衆議院

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第16号 平成30年5月16日(水曜日)

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平成三十年五月十六日(水曜日)

    午前九時開議

 出席委員

   委員長 山際大志郎君

   理事 石原 宏高君 理事 谷川 弥一君

   理事 中山 展宏君 理事 永岡 桂子君

   理事 松野 博一君 理事 阿部 知子君

   理事 稲富 修二君 理事 佐藤 茂樹君

      池田 佳隆君    泉田 裕彦君

      岩田 和親君    大隈 和英君

      大西 宏幸君    岡下 昌平君

      加藤 鮎子君    金子 俊平君

      金子万寿夫君    神谷  昇君

      亀岡 偉民君    木村 弥生君

      小寺 裕雄君    古賀  篤君

      杉田 水脈君    鈴木 貴子君

      高木  啓君    武井 俊輔君

      長坂 康正君    西田 昭二君

      根本 幸典君    百武 公親君

      藤井比早之君    本田 太郎君

      三谷 英弘君    宮路 拓馬君

      村井 英樹君    大河原雅子君

      篠原  豪君    福田 昭夫君

      森山 浩行君    山崎  誠君

      吉良 州司君    源馬謙太郎君

      森田 俊和君    浜地 雅一君

      濱村  進君    中川 正春君

      塩川 鉄也君    浦野 靖人君

      串田 誠一君    玉城デニー君

    …………………………………

   国務大臣

   (経済再生担当)     茂木 敏充君

   内閣府副大臣       越智 隆雄君

   内閣府大臣政務官     村井 英樹君

   内閣府大臣政務官     長坂 康正君

   外務大臣政務官      岡本 三成君

   外務大臣政務官      堀井  学君

   農林水産大臣政務官    野中  厚君

   農林水産大臣政務官    上月 良祐君

   政府参考人

   (内閣官房内閣参事官)  高山 成年君

   政府参考人

   (内閣官房TPP等政府対策本部政策調整統括官)  澁谷 和久君

   政府参考人

   (内閣府知的財産戦略推進事務局長)        住田 孝之君

   政府参考人

   (消費者庁審議官)    橋本 次郎君

   政府参考人

   (法務省大臣官房審議官) 佐々木聖子君

   政府参考人

   (外務省大臣官房参事官) 林  禎二君

   政府参考人

   (文化庁長官官房審議官) 永山 裕二君

   政府参考人

   (厚生労働省大臣官房総合政策・政策評価審議官)  本多 則惠君

   政府参考人

   (厚生労働省大臣官房生活衛生・食品安全審議官)  宇都宮 啓君

   政府参考人

   (厚生労働省大臣官房審議官)           森  和彦君

   政府参考人

   (厚生労働省大臣官房審議官)           伊原 和人君

   政府参考人

   (農林水産省大臣官房総括審議官)         天羽  隆君

   政府参考人

   (農林水産省大臣官房輸出促進審議官)       新井ゆたか君

   政府参考人

   (農林水産省大臣官房生産振興審議官)       鈴木 良典君

   政府参考人

   (農林水産省大臣官房審議官)           池渕 雅和君

   政府参考人

   (農林水産省大臣官房審議官)           小野  稔君

   政府参考人

   (農林水産省大臣官房審議官)           山北 幸泰君

   政府参考人

   (農林水産省大臣官房国際部長)          渡邉 洋一君

   政府参考人

   (農林水産省生産局農産部長(政策統括官付))   岩濱 洋海君

   政府参考人

   (水産庁漁政部長)    森   健君

   政府参考人

   (水産庁漁港漁場整備部長)            岡  貞行君

   政府参考人

   (経済産業省大臣官房審議官)           吉田 博史君

   政府参考人

   (経済産業省通商政策局通商機構部長)       渡辺 哲也君

   政府参考人

   (特許庁総務部長)    小山  智君

   政府参考人

   (中小企業庁事業環境部長)            吾郷 進平君

   政府参考人

   (中小企業庁経営支援部長)            高島 竜祐君

   内閣委員会専門員     長谷田晃二君

    ―――――――――――――

委員の異動

五月十六日

 辞任         補欠選任

  池田 佳隆君     鈴木 貴子君

  大隈 和英君     宮路 拓馬君

  武井 俊輔君     金子万寿夫君

  森田 俊和君     吉良 州司君

  浦野 靖人君     串田 誠一君

同日

 辞任         補欠選任

  金子万寿夫君     本田 太郎君

  鈴木 貴子君     根本 幸典君

  宮路 拓馬君     木村 弥生君

  吉良 州司君     森田 俊和君

  串田 誠一君     浦野 靖人君

同日

 辞任         補欠選任

  木村 弥生君     百武 公親君

  根本 幸典君     藤井比早之君

  本田 太郎君     岩田 和親君

同日

 辞任         補欠選任

  岩田 和親君     武井 俊輔君

  百武 公親君     大隈 和英君

  藤井比早之君     池田 佳隆君

    ―――――――――――――

五月十六日

 ギャンブル等依存症対策基本法案(中谷元君外五名提出、第百九十五回国会衆法第二号)

は委員会の許可を得て撤回された。

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 連合審査会開会に関する件

 政府参考人出頭要求に関する件

 参考人出頭要求に関する件

 ギャンブル等依存症対策基本法案(中谷元君外五名提出、第百九十五回国会衆法第二号)の撤回許可に関する件

 環太平洋パートナーシップ協定の締結に伴う関係法律の整備に関する法律の一部を改正する法律案(内閣提出第六二号)


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     ――――◇―――――

山際委員長 これより会議を開きます。

 この際、お諮りいたします。

 第百九十五回国会、中谷元君外五名提出、ギャンブル等依存症対策基本法案につきまして、提出者全員から撤回の申出があります。これを許可するに御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

山際委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

     ――――◇―――――

山際委員長 内閣提出、環太平洋パートナーシップ協定の締結に伴う関係法律の整備に関する法律の一部を改正する法律案を議題といたします。

 この際、参考人出頭要求に関する件についてお諮りいたします。

 本案審査のため、明十七日木曜日午前八時十五分、参考人として東京大学社会科学研究所教授中川淳司君、東京大学大学院農学生命科学研究科教授鈴木宣弘君、東京大学大学院農学生命科学研究科教授中嶋康博君、特定非営利活動法人アジア太平洋資料センター共同代表内田聖子君の出席を求め、意見を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

山際委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

 引き続き、お諮りいたします。

 本案審査のため、本日、政府参考人として内閣官房内閣参事官高山成年君、内閣官房TPP等政府対策本部政策調整統括官澁谷和久君、内閣府知的財産戦略推進事務局長住田孝之君、消費者庁審議官橋本次郎君、法務省大臣官房審議官佐々木聖子君、外務省大臣官房参事官林禎二君、文化庁長官官房審議官永山裕二君、厚生労働省大臣官房総合政策・政策評価審議官本多則惠君、厚生労働省大臣官房生活衛生・食品安全審議官宇都宮啓君、厚生労働省大臣官房審議官森和彦君、厚生労働省大臣官房審議官伊原和人君、農林水産省大臣官房総括審議官天羽隆君、農林水産省大臣官房輸出促進審議官新井ゆたか君、農林水産省大臣官房生産振興審議官鈴木良典君、農林水産省大臣官房審議官池渕雅和君、農林水産省大臣官房審議官小野稔君、農林水産省大臣官房審議官山北幸泰君、農林水産省大臣官房国際部長渡邉洋一君、農林水産省生産局農産部長(政策統括官付)岩濱洋海君、水産庁漁政部長森健君、水産庁漁港漁場整備部長岡貞行君、経済産業省大臣官房審議官吉田博史君、経済産業省通商政策局通商機構部長渡辺哲也君、特許庁総務部長小山智君、中小企業庁事業環境部長吾郷進平君、中小企業庁経営支援部長高島竜祐君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

山際委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

山際委員長 これより質疑に入ります。

 質疑の申出がありますので、順次これを許します。古賀篤君。

古賀委員 おはようございます。自由民主党の古賀篤でございます。

 きょうは、このTPPの関係法案の審議に私も四十分の時間を頂戴しまして、まことにありがとうございます。

 このTPPに関連して申し上げますと、アメリカが抜けてのいわゆるTPP11という中での、改めてのこの国会での審議になっているわけでありますが、私も、国会に送っていただきまして、三期、六年目に入っているところであります。当時、二〇一二年に初当選させていただきましたが、自民党は野党で、そういう中で、多くの地元の皆様方に御声援いただき、国会に送っていただきました。

 このTPPの交渉あるいはTPPをめぐる動き、大変長い期間、あるわけでありますが、今申し上げた二〇一二年、この野党のときから、地元で農家の方から多くのお声をいただきました。TPPの交渉参加反対である、そういうお声をいただいて、国会に送っていただきました。

 そして、三回の選挙を重ねて現在に至っているわけでありますが、TPPの交渉に参加をして、アメリカが入った中でのTPPの締結、そして国会承認というのが、一昨年の、衆議院では十一月にございました。その間に、当選してからも、地元の農家の方々、農政連の皆様、あるいは、農業の関係者だけではなく、多くの方が、TPP、心配だ、不安だ、反対だという声があったわけであります。いろいろな会合がある中で、私もその会に出席をさせていただき、一緒に行動する場面がたくさんありました。

 一昨年の国会の承認、法案の可決においても、正直、大変悩みました。地元の方にも御相談をして、賛成をさせていただきました。その後にも、地元に帰って、農家の方を始め多くの方におわびをしました。多くの農家の方、あるいは農政連の方、自営の方、農業関係者だけでなく、皆さんの思いに十分応えられなかった、その反省に立って、今回、この法案の審議に臨ませていただいているところであります。これは、自民党の多くの議員も同じような立場だったろうと想像するところであります。

 我々がそういった思いに応えられるのは、きちんと、このTPPに入っていっても、農業が守られ、農業が発展し、そして農家の方が安心して次の世代にも農業を引き継ぐことができるように、我々は政治の立場からしっかり取り組んでいくことなんだろうというふうに思うところであります。

 きょうは、農水省から上月政務官にお越しいただいております。

 政務官も、政務官になられる前から、農政に深くかかわられてきたと承知をいたしております。今申し上げた点について、農家の方に対するメッセージ、あるいはこれからの農政に対する思いをぜひお聞かせいただきたいと思います。

上月大臣政務官 TPP交渉におきましては、農林水産分野につきまして、重要五品目を中心に関税撤廃の例外をしっかり確保し、関税割当てやセーフガード等の措置を獲得をしたところであります。

 その上で、国内対策につきましては、平成二十七年十月のTPP協定の大筋合意により、我が国農林水産業は新たな国際環境に入ったということ、また、昨年十一月にはTPP11の協定、大筋合意にも至ったところでありまして、こうした国際環境のもとで、先生が御指摘ありましたように、生産者が安心して再生産に取り組むことができるようにということで、総合的なTPP等関連政策大綱に基づき万全の対策を講じていく、そういったことといたしております。

 具体的には、産地競争力を強化するための産地パワーアップ事業でありますとか、畜産、酪農の収益力を強化するための畜産クラスター事業、その強化でありますとか、我が国農林水産物の輸出額を二〇一九年に一兆円にしていくといった目標達成に向けました輸出の拡大対策、そういったことなどを体質強化策としてしっかり講じていくということで、今やっているところでございます。

 また、協定発効後につきましても、経営安定対策といたしまして、国別枠の輸入量に相当する国産米を政府備蓄米として買い上げる、あるいは牛、豚のマルキンでありますけれども、法制化とそしてその補填率を引き上げる、あるいは糖価調整法に基づき加糖調製品を調整金の対象に追加する、そういった措置を講ずることといたしております。

 さらに、生産者の努力では対応できない我が国の農業の構造的問題というものもいろいろありますので、そういったところにも光を当てまして、農業競争力強化プログラムというのをつくりまして、先生にも御参加をいただいて、みんなで議論してつくったプログラムでございますが、生産資材価格の引上げ、あるいは農産物の流通、加工構造の改革、そういったものにも、これまでにないような取組も一生懸命、今やっているところであります。

 今、御指摘を聞いておりまして、本当に改めて、そのプログラムをつくったり政策大綱をつくったり、そしてその予算や制度などをつくったということは、もちろんそれは大切なのでございますけれども、その運用であるとか執行であるとか、そういった面において、農林水産業、漁業者の皆さん方の不安や懸念に改めてしっかり応えていくという気構えというのでしょうか、運用に当たっての心構えが本当に大切だということを、古賀先生の御指摘を聞きながら改めて感じたところであります。

 よく現場の声を聞いて、現場の皆さんと対話をして、今後、新たな国際環境、こういった厳しい国際環境のもとでも、安心して再生産ができる、次世代に日本農業を引き継いでいける、農林水産業を引き継いでいける、そういうふうになっていけるように的確に対策を講じていく、必要な見直し等も的確にやっていく、そういったことで、農林水産漁業者が安心して取り組んでいただけるような環境をつくっていけるように、しっかり頑張りたいと思っております。

古賀委員 御答弁、ありがとうございます。

 上月政務官がこの一連の農政についてずっと思いを持って取り組まれてきたことも、ずっと私も見てまいりましたので、大変期待をさせていただくところであります。

 自民党の公約、あるいは国会決議、大変大事でありますけれども、やはり信なくば立たずということで、しっかりと農家の方の気持ちに寄り添って、そして期待に応えるような農政をという思いで、私も取り組ませていただきたいと思います。

 この後も、済みません、TPPの中で専ら農林水産関係で質問を続けさせていただきたいと思っております。

 では、まず、基本的なことをお伺いしたいと思います。

 アメリカを含んだ当初のTPP、これはTPP12というんですか、その協定と、今回のアメリカ抜きのTPP11、この農林水産分野における協定の内容について、何か変化あるいは相違点があるのかどうかについて、まずはお聞かせいただきたいと思います。

池渕政府参考人 お答えいたします。

 TPP11は、TPP12協定の一部項目は凍結しておりますが、協定内容の修正はなく、我が国を含めて十一カ国全てについて、物品市場アクセスの譲許内容の修正は行わないということにしております。

 ただし、米国はTPP11の非締約国でございますので、TPP12において米国を対象といたしました米とか小麦などの国別枠は、当然のことながら適用されないということでございます。

古賀委員 次に、予算関連について、TPPの関連予算についてお聞かせいただきたいと思います。

 よくこのTPPと対比されるのがウルグアイ・ラウンドの対策費でありまして、事業費でこのウルグアイ・ラウンドの対策費は約六兆円、国費で二兆六千七百億円と言われております。このウルグアイ・ラウンドの対策というのは、金額が先行したとか、あるいは農業の体質強化と直接関係のない事業が多数実施されたというようなことが指摘されるところであります。

 今回、このTPP等の関連予算の総額は約一・七兆円と伺っているところでありますが、そのうち農林水産部門は幾らなのか。

 そして同時に、農水省が昨年の十二月に試算をされております。農林水産物の生産額への影響について、この試算結果においては、「関税削減等の影響で価格低下による生産額の減少が生じるものの、体質強化対策による生産コストの低減・品質向上や経営安定対策などの国内対策により、引き続き生産や農家所得が確保され、国内生産量が維持されるものと見込む。」というような試算結果が記されております。

 今お聞きしているこの農林水産の関係の予算、このほか、現在講じようとしている、あるいはもう既に実施済みの対策というのは、この試算結果につながるような十分な内容になっているのか、そのことをお聞きしたいと思います。

天羽政府参考人 お答え申し上げます。

 TPP等関連予算の総額などについての御質問をいただきました。

 これまで、農林水産関係の総合的なTPP等関連政策大綱を実現するための予算といたしまして、平成二十七年度の補正予算で三千百二十二億円、平成二十八年度の補正予算で三千四百五十三億円、平成二十九年度の補正予算で三千百七十億円をそれぞれ計上したところでございます。

 TPPにつきましては、特に農林水産分野につきまして、重要五品目を中心に関税撤廃の例外を確保いたしておりますし、関税割当てやセーフガード等の国境措置を獲得したところでございます。

 先ほど上月政務官から御答弁させていただきましたが、それでもなお残る農林漁業者の不安を受けとめ、安心して再生産に取り組めるようということで、平成二十九年十一月でございますけれども、総合的なTPP等関連政策大綱を決定をいたしまして、万全の対策を講じることとしております。

 具体的には、まず、体質強化対策ということでございますが、産地競争力を強化するための産地パワーアップ事業、それから畜産、酪農の収益力強化のための畜産クラスター事業、次に、我が国農林水産物の輸出額を二〇一九年に一兆円にするとの目標達成に向けた輸出拡大策などの対策を講じてきたところでございます。

 また、協定が発効した後のことでございますけれども、経営安定対策といたしまして、一つには、お米についてでございますが、オーストラリアに設定しております国別枠の輸入量に相当する量の国産米を政府備蓄米として買い入れること、二つには、牛・豚マルキンの法制化と補填率の引上げ、三つには、糖価調整法に基づき加糖調製品を調整金の対象に追加するなどの措置を講ずることとしておるところでございます。

 農林水産省といたしましては、引き続き、新たな国際環境のもとでも農林水産業を成長産業とし、農林漁業者の所得の向上を実現できるよう、政府一体となって取り組んでまいりたいということでございます。

古賀委員 今、各政策の御答弁をいただきましたが、万全の措置というような御答弁もありました。きちんとこれからも情勢に応じて柔軟に対策を講じていただきたいと思いますし、ただ、そのときに、当然予算が必要になってくる部分もあると思います。本当に実効性のある対策、政策、予算をしっかりと今後もやっていただきたいというふうに思います。

 次に、農業、このTPPの議論の中で、農政をめぐる議論の中で、これからは守りの農業から攻めの農業なんだ、攻めの農林水産業なんだというような議論あるいは主張をよく耳にして、そしてかつ、いろいろな政策が展開しているんだというふうに思います。

 改めてお聞きしたいのは、攻めの農林水産業というのはどういうことなのか。そして、この後お聞きしたいのですが、輸出との関連で、攻めの農林水産業について、少し内容についてお聞かせいただきたいと思います。

天羽政府参考人 お答えいたします。

 攻めの農業について御質問をいただきました。

 攻めの農業とは、農業、農村の潜在力を最大限に引き出し、強くて豊かな農業と美しく活力ある農村の実現を目指す政策の方向であるというふうに考えてございます。

 今後、人口減少に伴いまして国内マーケットの縮小が加速していくことが見込まれる中、我が国の農業を魅力ある成長産業にしていくためには、付加価値の高い農産物の生産、販売、さらには、海外マーケットの開拓を進めるとともに、農業の構造改革を進める必要があると考えております。

 このため、農林水産省におきましては、お米の政策改革、六次産業化、輸出の促進、農地集積バンクによる農地の集積、集約化、農協改革、生産資材の引下げ、流通加工構造の改革など、農業を強くするための改革を精力的に進めてまいりました。

 加えて、農村に活力を取り戻すということも重要でございまして、その施策も講じておるところでございます。地域の農業者が取り組む共同活動への支援などを行う日本型直接支払制度の創設、中山間地域につきましては、地域の特色を生かした多様な取組を総合的、優先的に支援する中山間地農業ルネッサンス事業の創設など、多様な施策を展開してございます。

 今後とも、これらの政策を車の両輪として推進していくことにより、強くて豊かな農業と美しく活力のある農村をつくっていきたいというふうに考えておるところでございます。

古賀委員 今お話ありましたように、確かに、しっかり農業を稼げるものにしていく、その中で美しい農村を守っていくということ、大変重要なポイントだというふうに思います。

 現場でいろいろな農家の方にお話をお聞きしますと、やはり攻めの農業という言葉がどうもしっくりきていない方もおられて、やはり具体的にこういうことをやるんだということをぜひ、皆様もそうですし、私も引き続き、わかりやすい説明をしながら、理解をいただきながら、この政策を展開していきたいというふうに思っているところであります。

 ここから、輸出について、少しお伺いいたしたいと思います。

 政府は二〇一九年に農林水産物の輸出一兆円の目標を掲げていると思いますが、まず一点お聞きしたいのは、現在、足元は、輸出総額は幾らになっているのか、そして、この一兆円達成に向けて、もうあと二年しかありませんが、どういった課題があるのか、そういった点についてお聞かせいただきたいと思います。

新井政府参考人 お答え申し上げます。

 我が国の農林水産物、食品の輸出額は、平成二十九年に八千七十一億円となりまして、五年連続で過去最高を更新しております。しかしながら、平成三十一年の輸出額一兆円目標を達成するためには、今後二年間で年率一一・三%ずつ輸出額を増加させていくことが必要となっております。

 このため、政府といたしましては、農林水産業の輸出力強化戦略等に従いまして多様な取組を進めているところでございます。また、今後取組を更に強化するため、昨年四月に創設されました日本食海外プロモーション、略称JFOODOでございますけれども、これによります海外マーケットのさらなる開拓、空港や港湾に近い卸売市場、それから生産物の流通加工施設等の輸出対応施設の整備を進めているところでございます。

 このような中、TPP交渉におきましては、我が国の農林水産物、食品の輸出拡大の重点品目について関税撤廃を獲得しております。具体的には、近年輸出の伸びが大きい牛肉につきまして即時から十年の撤廃、二〇一五年九月に輸出が解禁されましたベトナム向けリンゴについては三年目に撤廃、新興市場として輸出拡大を狙っておりますカナダ向けの花卉については即時撤廃、近年輸出の伸びが著しいベトナムで、ブリ、サバ、サンマなどの生鮮魚、冷凍魚について即時撤廃等となっております。

 また、ルールの分野でも、貨物取引を到着から四十八時間以内に許可するということで、輸出促進につながる規定が盛り込まれているところでございます。

 このように、重要な品目で関税が撤廃されること等、輸出拡大の加速化に資するものでございまして、これらのチャンスをうまく活用して、平成三十一年の一兆円目標の達成に向けて全力で取り組んでまいりたいと考えております。

古賀委員 今、御答弁の中でTPPとの関係についても触れていただきました。日本が輸出している上位の国の中に、六位が今も触れられたベトナム、あるいは八位シンガポール、九位のオーストラリア、こういったところがあるんですね。ですから、ぜひ、今回のこのTPP、二〇一九年はもうすぐやってきますので、なかなかすぐ効果というわけにはいかないと思いますが、ぜひこれを契機に、輸出にもチャンスということで、しっかりと取り組んでいただきたいというふうに考えております。

 現在、我が自民党も農産物の輸出促進対策委員会というのを立ち上げておりまして、これは、小泉進次郎委員長のもと、私も役員として、現在、二〇一九年の輸出一兆円、これは通過点だという思いで、更に先に続く農林水産業ということで、稼ぎの柱の一つにしたいということで検討を重ねているところであります。具体的に、計六回、これまで、お茶や青果、畜産、米、日本酒、水産、林産、種苗、あるいはその他多くの輸出関係者の方からお話を伺い、何が課題なのかということを今整理しているということで、今月何とか提言を取りまとめということで、今検討を進めているところであります。

 農産品の輸出における課題として、先ほどもいろいろな点を挙げていただきましたけれども、私が感じるのは、輸出先の国において、例えば放射性物質に関する規制だったり、検疫だったり、規格だったり、こういういわゆる非関税の障壁があるということを多く耳にするところであります。

 ぜひ、こうした非関税障壁に対して、政府一丸となって、内閣官房が中心となって、あるいはテーマによっては、GIとかは農水省が中心となって、各省を連携させ、より一体的に取り組んでいただきたい、積極的に取り組んでいただきたいと思うところでありますが、お考えの方をお聞かせいただきたいと思います。

高山政府参考人 お答えいたします。

 農林水産物の輸出に際しましては、委員御指摘のとおり、放射性物質、動植物検疫、規格、認証の問題など、さまざまな課題が存在してございます。そして、これら諸外国の規制への対応は戦略的に進めていく必要があります。

 そのために、農林水産省の取組はもとより、関係省庁の連携が不可欠と認識しておるところでございまして、私ども内閣官房も一体となりまして、こうした連携を一層円滑に行い、規制の撤廃や緩和、これに向けた取組を加速していきたいというふうに考えてございます。

古賀委員 今御答弁いただきましたけれども、私も役所にいたのでよくわかるんですけれども、それぞれ縦割りになりがちなところはどうしても出てくるということは、ぜひ、そういう前提に立って、あるいは認識に立って、より連携を図っていただきたいと思います。なかなか仕事がたくさんあって、そういう中でうまく連携するというのは難しいと思いますが、絶えず見直していただきながら、一体的な取組をぜひお願いしたいと思います。

 そして次に、食料自給率についてお伺いいたしたいと思います。

 今回のこのTPP、あるいは、きょうはTPPですけれども、日欧のEPA、こういうものに入っていくと、グローバル化の中で農業が展開すると、どうしても輸入が多くなって、その結果、日本の自給率が下がるんじゃないか、食料自給率が下がるんじゃないかというような声を耳にするところであります。一方で、先ほどの農林水産省の試算の結果は、食料の自給率というのは、二十八年度で、カロリーベースで三八%、生産額ベースで六八%の水準は維持されるというような試算結果になっているかと思います。

 今後、こういったTPPを展開していく中で、どうやって一方で食料の自給率を上げていくのか。先ほどお聞きしました輸出との関係で、例えば、輸出を促進すれば自給率にどうプラスになっていくのか、あるいは、どういう考えに立って輸出をしていくのか、自給率の観点でどういう輸出をしていくのかということを、お考えを聞かせていただきたいと思います。

上月大臣政務官 答弁の前に、先ほどの答弁の中で、私、生産資材価格の引下げと言うべきところを引上げと言ってしまったみたいで、申しわけございません、おわびして訂正をいたします。引下げをしていかなければいけないという取組でございます。

 自給率と輸出促進の関係でございますが、今委員から御指摘がありましたように、我々の影響試算の結果ではほぼ同程度になるというふうに見込んではおります。一方で、世界人口が大きく伸びていく中で、地球の温暖化も進んでいるということで、食料の安定供給を将来にわたって確保していくということが国民に対する国家の基本的な責務であるというふうに認識をいたしております。

 国内の農業生産の増大を図り、食料自給率を向上させていくということは、これからも大変重要な課題になっていくと思っておりまして、まず、国内外での国産の農産物の消費拡大をきちっと図っていくということ、あるいは食育をしっかり推進していくということ、それから消費者ニーズに対応した麦や大豆といったものの生産拡大、あるいは飼料用米で田んぼを維持するということ、そして付加価値の高い農産物の生産、販売や輸出を促進していくこと、優良農地を確保し、また担い手を育成していくこと、そういった各種の施策を総合的に、計画的に進めていくことが重要だと思っております。

 このうちで、御指摘のありました輸出につきましては、国内生産の増大を通じて食料自給率の向上にもちろん寄与することになりますので、大いに進めていくということで、今委員も、先ほどお話がありましたように、党の方でも大変積極的に御検討いただいているところであります。

 我々としましては、農林水産業の輸出力の強化戦略などに沿いまして、新たな市場開拓のためのプロモーションをやること、それから輸出環境課題の解決に向けたさまざまな取組、これは、先ほど委員からも御指摘がありました放射能の問題等々、さまざまな国際交渉が必要なものもありますから、そういった取組を加速化していくこと、そして輸出対応型の施設整備、ハード面でも必要なことがありますので、そういった多様な措置を講ずることといたしております。

 そういったことによって輸出促進を進めていき、食料自給率の向上に資するように頑張ってまいりたいと思っております。

古賀委員 輸出で食料の自給率を上げていくというのは、何か一見ぴんとこない部分もあったりするんですけれども、諸外国で見ると、例えばスイスだったりあるいはイタリアだったり、こういうところは輸入も多いんですけれども、輸出もしっかりあって、例えばイタリアとかはワインがあったり、あるいはスイスは乳製品があったり、こういう中できっちりと稼いでいる部分はあるというふうに聞いているところなんです。

 ちょっと細かい数字はきょうは持ち合わせていませんけれども、やはりこういった国をモデルにしながら、どうやって輸出で稼ぎ、そして自給率につなげていくかということもぜひ党の委員会でも考えていきたいと思いますし、政府でもしっかりと輸出に向けての支援をお願いしたいというふうに思います。

 そして、先ほど御答弁いただいた中で、新井審議官からJFOODOという紹介をいただきました。最後にお聞きしたいのが、このJFOODOについてであります。

 輸出をプロモーションしていくということが大変大事だという思いでおりますが、平成二十九年に、フランスの食品振興会、SOPEXAというものの日本版として、このJFOODO、日本食品海外プロモーションセンターというのが創設されたということであります。こうした機関を活用して、いろいろな日本の文化も含めて食を出していく、発信していくということが大変重要だというふうに思うところであります。

 例えば、一例でありますが、日本酒。こういったものも大変アメリカとか中国というところで消費が多い、輸出額が多いということでありますが、一方で、外国の方からすると、その日本酒がどういう品質のものなのか、どういう味なのか、そういうことがわからないという声もあるんですね。ワインとかはいろいろな、ちょっと私も詳しくはないんですけれども、いろいろな品質があって、そしてワインに対する知識の多い方もいてという中で非常に消費が多いということがあるわけですが、この日本酒についても、そういう意味では、もっと知っていただく、その一つの材料として、日本酒のラベルを英語表記し、あるいは統一したものにしてわかりやすくしていくということは大変重要なんじゃないかというふうに思うところであります。

 聞くところによると、このJFOODOでそういった調査もされているというふうにも伺うところであります。当然、日本酒だけじゃなくて、いろいろな戦略的な、出していくものを今、JFOODOの方で検討されているんだと思います。

 JFOODOの今の体制ですとか、どういった予算に基づいて今活動しているのか、あるいは今申し上げたこのラベルの話も含めて、ぜひ、今のJFOODOの活動状況について御答弁いただきたいと思います。

新井政府参考人 お答え申し上げます。

 日本食品海外プロモーションセンター、いわゆるJFOODOは、日本の農林水産物、食品に対する海外の需要、市場をつくり出し、輸出の拡大や生産者の所得の向上につなげる取組を促進するため、昨年四月に設置をいたしました。

 その後、小林栄三センター長のもと、体制の整備を行いまして、昨年の十二月には、和牛、水産物、緑茶、日本酒など、七つのテーマについてのマーケティング戦略を策定したところでございます。

 JFOODOの取組に参加する事業者については多数の応募がありまして、これらの事業者と協力しながら、戦略に基づくプロモーションを、今まさに実行を始めたところでございます。

 これまで、香港で、春節に合わせまして、日本産水産物を縁起のよいすしネタとして訴求するため、すし店の店頭で使える販促ツールの作成や、地下鉄の駅、それからバスでの広告の展開をいたしました。

 日本酒につきましては、ロンドンにおきまして、オイスターやチーズなど現地で親しまれている料理と組み合わせて、好みの日本酒が選びやすくなるような、相性のよい日本酒のタイプの銘柄を紹介するといった取組を行いまして、これからも、今後もその他の品目についても精力的に活動していこうというふうに考えているところでございます。

 また、日本酒のラベルにつきましては、現地の消費者の選択に必要な情報を整理するため、飲食事業者のニーズ等を調査し、ラベルに記載すべき項目の優先順位を今まさに検討しているところでございます。今後、その進め方や取扱いについて、関係省庁、関係業界と協議する予定でございます。

 また、JFOODOの予算につきましては、関係省庁に御協力いただきながら今年度の活動に必要な予算を確保しておりまして、農林水産省としては、引き続き、JFOODOの効果的かつ精力的な活動ができますよう、予算の確保に努めてまいりたいというふうに考えております。

古賀委員 ありがとうございました。今のJFOODOの活動、予算も含めて御答弁いただきました。

 まだ立ち上がったばかりなので、なかなかすぐに成果を出してくれというのも難しいんだと思います。だから、JFOODOの活動だけではなくて、輸出の促進というのは、ある程度、急ぎながらも、スピード感を持ちながらも、長い期間、十年スパンぐらいで考えていく必要があるんだというふうに思います。

 そういった中で、いろいろなお金が必要になってくる活動もあると思いますし、どうしても、私も財務省出身なんですけれども、財政当局はすぐ成果を求めるので、成果が出ていなかったら予算削減だみたいな話になるんですけれども、ぜひ皆様方も頑張っていただいて、三十一年度もしっかりと活動ができるような予算の確保を、予算要求がその前にありますけれども、きちんと考えていただきたいなというふうに思います。

 JFOODOの取組については、引き続き、私も注目していきたいというふうに思いますし、お酒のお話も先ほど伺いましたが、ぜひ、いろいろな品目がありますので、しっかりとした展開をお願いしたいと思います。

 時間もだんだんなくなってまいりましたし、もう質問の方はここまでとさせていただきたいのですが、きょう、茂木大臣にもお越しいただいておりまして、済みません、特に伺うことができずに終わろうとしているのですけれども、最後に一点だけ。

 TPP、これから更に拡大していくということが言われているところでありまして、例えばタイだとか韓国、台湾、イギリスというような国名も具体的に聞こえてくるところであります。当然、参加が広がってくると、アメリカも戻ってきてということだと思いますけれども、市場が広がっていく。参加が広がっていくというのは大変いいことなんだと思いますが、一方で、農水省の例えば試算、広がってくると、また全然違う影響になるんだろうと思います。それは、輸入しているもの、輸出しているもの、それぞれあって、そういう中で新たな対策が必要になってくるのじゃないかなというふうに思うところです。

 先ほど新井審議官が御紹介されたように、リンゴとかも、例えば台湾に対して輸出が多いんですよね、日本は。韓国も輸出上位国にありまして、アルコールとかホタテガイ、こういったものがあると聞いております。タイも輸出上位の七位に入っていて、こういったところの品目もしっかり見て、関税率はどうなのか、あるいはそれ以外の障壁はどうなのかということをきちんと把握していただいて、これから入ってくる国に対しての対応、あるいは、どういう手続になるか、まだちょっとはっきりしていないというふうにも聞いておりますが、ぜひ茂木大臣にも更に御活躍いただきたい、御尽力いただきたい、これはお願いでございます。一方的で恐縮ですが。

 では、せっかくですから、御答弁いただければと思います。よろしくお願いします。

茂木国務大臣 TPP11、二十一世紀型の自由で公正な新たな共通ルールをアジア太平洋地域につくり上げていく。昨年の一月二十三日に米国が離脱した後、まさに日本がリーダーシップを持ってこの協定をまとめてまいりまして、人口でいいますと十一カ国で五億人、そしてGDP十兆ドル、さらには貿易総額五兆ドル、こういう巨大な経済圏をつくり出すものであります。

 まずは十一カ国として、国内手続を経て早期に発効する、このことが最優先であります。その上で、このTPPの新しい二十一世紀型のルールを、保護主義が台頭する中で世界に広げていく、こういったことが視野に入ってまいりまして、今、何カ国か挙げていただきましたが、コロンビア、タイ、私も連休にタイに、バンコクの方を訪問させていただきまして、ソムキット副首相ともいろいろお話をしてきましたが、タイ、さらには台湾、そして英国等がこのTPP参加に関心を示している。このことを歓迎したい、このように今考えているところであります。

 基本的に、それによりまして、マーケットというものは広がっていく、また、TPPの効果というのは戦略的にも経済的にも高まっていくと考えておりますが、それに伴いますさまざまな課題につきましては、しっかりと分析して万全の対応をとってまいりたいと考えております。

古賀委員 茂木大臣、失礼しました。通告なしで丁寧に御答弁いただきまして、本当にありがとうございます。

 まだまだこれから、この法案、審議、承認、そして発効という中で、国も加わってきてというような、これからの展開があるということでありますので、そういう意味では、いろいろな節目節目での対策、そして、それを農業の関係者にきちんと伝えていって、対策に対しての取組をしていただく、この循環が大変大事になってくるんだというふうに思います。

 最後に、これはもう質問ではありませんので、お聞きいただきたいのですが、先ほど少しGIのことを触れさせていただきました。

 GIは、ほかの今回の法案と違って、もう既に施行しているんですよね。農水省が中心になってされているんだと思います。それ以外に、例えば日本酒だと、役所でいうと国税庁、その中でGI登録をしている。これは、まず日本酒という名前自体以外に、地域として立山とか山形というものを登録しているということを伺ったわけでありますが、じゃ、これを登録した上でどう生かしていくのかということを、お酒に限らず、今、例はお酒を挙げましたけれども、しっかりそこの生かし方も考えていただきたいなというふうに思うんです。

 というのが、実際使われる方というのは、これをどう生かしていいか、いまいちわからない部分があるんじゃないか。だからやはり、ほかがどうしているのかとか、ほかの品種はどうしているのか、あるいは海外はどういうふうな反応をしているのか、こういうこともしっかり情報を関係者に入れていただいて、そして地理的表示も含めていろいろな情報を共有するということが大変大事だというふうに思います。

 先ほどJFOODOの話をさせていただきましたが、例えば、ジェトロでも輸出の相談窓口を設けられているということを伺っております。ただ、現場の方に聞くと、そんな窓口は知らないとおっしゃるんですよね。

 だから、きちんとした広報をしないと、せっかくそういう体制をつくっていただいても、知られていなかったらやはり体制がないのと同じだということだと思いますので、これから輸出促進の提言を党で出すということを申し上げましたが、それを実行していく中で、じゃ、どうやって現場の方に知っていただくのか。それを利用していただいて、農家の方が、よし、俺は輸出もしてみよう、いろいろな国に出していこう、特にアジアは多いですので、アジアに更に展開していこうと。空輸とか船とか、コストの面がかかるので大変難しいところは多いと思うんですけれども、そういった点の克服も含めて、情報の発信をお願いしたいと思います。

 ジェトロだったりJFOODO、外の機関も大事ですけれども、やはり主体は政府であって、農水省にもぜひ先頭に立って頑張っていただきたいと思いますし、調整されるのは内閣官房だというふうに思いますので、その他関係省庁も含めて、ぜひ一体となっての取組をお願いしたいと思います。

 我々自民党もしっかりと、この輸出を含めて農業の対策に万全を期してまいりたいというふうに思いますし、引き続き茂木大臣そして上月政務官には御尽力いただきますよう、心からお願い申し上げまして、私の質問を終了させていただきます。

 ありがとうございました。

山際委員長 次に、西田昭二君。

西田委員 おはようございます。内閣委員会での質問の機会をいただきました自由民主党の西田昭二でございます。

 まだまだふなれでございますが、しっかりと皆様方に応えられるように努めてまいりたいと思っております。

 きょうは農林水産委員会とちょうど委員会がかぶっておりましたので、途中からの参加でありましたが、少し質問がかぶるようでありましたら御了承いただきたいと思っております。

 それでは、環太平洋パートナーシップ協定の締結に伴う関係法律の整備に関する法律の一部を改正する法律案に関連して質問をさせていただきたいと思います。

 昨年のアメリカのTPPからの離脱を受けて、アジア太平洋地域における経済連携の推進のためにリーダーシップを発揮してTPP11協定の交渉を牽引してこられた茂木大臣に、改めて敬意を表するところでございます。

 安倍総理は、TPP協定の意義について、アジア太平洋地域に自由や民主主義や基本的人権そして法の支配、こうした価値を共有する国々とともに二十一世紀にふさわしい新たな経済ルールをつくって、人口八億人、世界経済の四割近くを占める広大な経済圏を生み出し、その中で私たちもしっかりと経済的な利益を享受していく、新たな価値がしっかりと評価されていく、そういう経済圏をつくっていきたいという旨を平成二十七年十一月の衆議院予算委員会で答弁しておられますが、米国が離脱したTPP11協定の意義や同協定を早期発効させる必要についてどのように考えておられるのか、伺いたいと思います。

茂木国務大臣 西田議員御指摘の、自由で公正な二十一世紀型の新しいルール、これを世界の成長センターでありますアジア太平洋地域に確立していく、この意義は、TPP12においても、またTPP11においても基本的には変わらないものである、このように考えております。

 TPP11、昨年の一月二十三日に米国がTPPから離脱を宣言した後、まさに我が国が議論を主導して、私も昨年十一月のベトナム・ダナンでの閣僚会合で共同議長を務め、アイン商工大臣とともに大筋合意に至り、わずか半年で、ことしの三月八日、チリ・サンティアゴで署名式を迎えることができたわけであります。

 これは、世界的に保護主義が台頭する中で、日本がリーダーシップを発揮して自由で公正な二十一世紀型の新しいルールを確立するとともに、人口規模でいいますと、八億人からアメリカが抜けるということで五億人ということですが、GDP十兆ドル、そして貿易総額五兆ドルという巨大な一つの経済圏をつくり出していくものであります。我が国にとっても、またアジア太平洋地域の将来にとっても画期的な成果であると考えております。

 今後は、各国とも国内手続を進めることになります。既にメキシコは、グアハルド大臣も相当頑張っていただいて、四月の二十四日にはTPP協定が承認されているなど、予想以上のスピードで各国の動きが出てきております。

 日本も、この国会で、TPP協定、そして今御審議をいただいております関連国内法の早期承認、成立、これを図ることによりまして、TPPの早期発効に向けた機運を更に高めていきたいと考えております。

西田委員 今ほど、大臣の本当に力強い決意のようなものをお伺いさせていただいて、大変心強いところでございます。

 また、TPP協定とTPP11協定、今のお話にもあるんですけれども、その意義に変更はないのか。また、変更があった場合に迅速に対応できるものと思っておりますが、その辺のことについてもお伺いをさせていただきたいと思います。

澁谷政府参考人 お答え申し上げます。

 TPPの意義は先ほど大臣が御説明したとおりでございますが、その上で、TPP11におきましては、もともとのTPP12の特徴であるハイスタンダード、ルールが最先端であるという、ハイスタンダードを維持する、そういう観点から、もともとの協定内容の修正などを行わずに、知的財産関連など、ごく一部のルールのみを凍結するということで合意したものでございます。

 その意味では、変更点という意味では凍結ということになるわけですけれども、第一条で、もともとのTPP協定の内容をこの協定に組み込むことといたしまして、そのうち二十二項目については適用停止、いわゆる凍結ということをうたっているところでございます。

 しかしながら、二十二項目にとどまっておりますので、もともとのTPPの、ハイスタンダードでバランスのとれた、そういう意義は変更がないものというふうに考えております。

西田委員 ありがとうございます。

 先週八日に開かれました衆議院本会議において、安倍総理は、新協議は、日米FTAと位置づけられるものではなく、その予備協議でもない、協定の早期発効を目指すことが、TPPのメリットを具体的に示し、アメリカの経済や雇用にもプラスになるとの見解を深める大きな力になる、TPPが日米両国にとって最善だと考えているとの答弁をしておりましたが、総理の言っているTPPはどのTPPを指すのか、改めて確認をさせていただきたいと思います。

澁谷政府参考人 お答え申し上げます。

 アメリカがTPPに戻るという場合、これはあくまで仮定の話でございまして、理論上はというふうに申し上げたいと思いますが、あくまで理論上でありますが、二つパターンがありまして、一昨年の二月、オークランドで署名したTPP12協定をアメリカ自身が国内手続を進める、こういうケースと、今回のTPP11協定に新規加盟するという、この二つのケースが考えられるわけでございます。

 ただ、当の本人のアメリカ自身がTPPに戻るということを明言していないわけでございますので、予断を持ってどのケースというふうに申し上げることは困難でございますが、いずれにしても、十一カ国に加えて、アメリカが入る形でTPP協定の内容を実現するということを、総理も含め、政府として申し上げているところでございます。

西田委員 ありがとうございます。

 五月九日の日中韓ビジネスサミット後の安倍総理のスピーチの中で、両首脳と日中韓FTA及びRCEP交渉の加速化に向けて連携することで一致されておりました。三国間の経済的な結びつきを強め、また、世界の成長センターであるアジアの活力を取り込み、さらなる成長を実現していきたいと考えていますとの発言があったわけでありますが、TPPと中国が中心となって進めているRCEPとの整合性はどういうことになるのか、伺わせていただきたいと思います。

林政府参考人 お答えいたします。

 TPP11協定は、二十一世紀にふさわしいハイスタンダードな貿易・投資ルールの基礎となるものでありまして、TPP11協定の早期発効は、御指摘のありましたRCEPを含む、我が国が交渉中の他の経済連携交渉の加速につながるものと考えております。

 また、RCEPは、TPPに参加していない中国や韓国を含む巨大広域経済連携でございまして、我が国企業にとっても、世界で最もダイナミックに成長する地域のサプライチェーン構築に寄与するものと考えています。

 我が国としては、アジア太平洋地域における自由貿易を推進すべく、TPP11協定の早期発効を目指すとともに、引き続き、包括的でバランスのとれた質の高いRCEPの早期妥結を目指しまして、精力的に交渉を進めてまいる考えでございます。

西田委員 今ほどの話で、TPPとRCEPの連携強化ということの必要性についても確認をさせていただいたと思っております。

 今後は、茂木大臣が中心となって米国との交渉をしていくということでありますけれども、引き続き、米国に対し、TPPへの復帰について具体的に再交渉していくのか、その辺について再度お答えを賜りたいと思っております。

茂木国務大臣 急に御質問をいただきましたので。

 これから米国との間で開始することになりましたFFR、これは、フリー、自由で、フェア、公正、そしてレシプロカルですから、まさに日米双方にとって利益となるような協議を進めていきたい。日米間の貿易・投資の問題、さらには、共通なルールに基づいて自由で開かれたインド・太平洋をつくっていく、そのために日米がどう協力していくか、このことを中心に建設的な議論を行っていきたいと考えております。

 もちろん、決して簡単な協議ではないと思っておりますけれども、双方にとって利益となるような道を探っていく、こういう協議を進めてまいりたいと考えております。

西田委員 大臣に、済みません、急な振りで申しわけありませんでした。ありがとうございます。

 米国との再交渉も本当に大変重要であります。同時に、TPP11の発効要件には、六カ国以上が議会承認等を終えることが定められております。早期に国内法の手続を完了し、最初の六カ国入りにリーダーシップを示し、国益にかなう交渉を進めていくということが非常に重要だと考えております。

 日本が中心となってここまでまとめてきたという上でも非常に重要なことだと考えておりますが、その点についてどのように考えているのか、伺いたいと思います。

澁谷政府参考人 TPP11の参加各国は、三月のチリでの署名式の際の閣僚声明にあるとおり、TPP11の早期発効に全力を挙げるというのが共通認識でございます。

 先ほど大臣からお話がございましたとおり、メキシコは、既に四月二十四日に11協定が上院で承認をされまして、国内手続完了、一番乗りということでございます。

 ほかの国でも、既にニュージーランドやオーストラリアでも議会手続が始まっていると承知しているところでございまして、我が国も、今御審議いただいております協定、法案、できるだけ早期に承認、成立をお願いしたい、我が国としても、各国の機運を盛り上げるためにも主導していきたいというふうに考えているところでございます。

西田委員 ほかの国の状況もお伺いをさせていただきました。だからこそ、これまで中心となってきた日本がおくれをとらないためにも、しっかりと取りまとめをしていかなければならないと思っております。

 今月の茂木大臣とタイのソムキット副首相との会談において、タイ側よりTPP参加に対して意欲表明があったということでありますが、TPPを成長の礎とする日本にとって心強い動きであると思っております。

 自由貿易を推進する多国間連携を強固なものにするためにも、参加国の拡大は重要なことだと考えております。緊密に情報交換を行い、積極的に後押しする準備はあるのか、伺いたいと思います。

澁谷政府参考人 御指摘のとおり、新しい国や地域の加盟を通じて、TPPのハイスタンダードでバランスのとれた二十一世紀型の新しい共通ルールを世界に広めていくということが、TPP参加国共通の思いであるわけでございます。

 その意味で、今御指摘のあったタイのほか、コロンビア、英国、台湾、韓国など、さまざまな国や地域がTPPへの参加に関心を示していることを歓迎しているところでございます。こうした国や地域に対して、我が国としても必要な情報提供等を行っていきたいと考えているところでございます。

 また、こうした新たな加盟につきましては、いずれにしても、協定発効後に正式な協議が開始されるという手続になるわけでございますが、その前に予備的な協議などを行う必要がある場合の対応方針などについては、十一カ国でよく調整をする必要がございます。この作業についても、我が国が主導して必要な調整を行っていきたいと考えているところでございます。

西田委員 引き続き、その調整をお願いしていきたいと思っております。

 また、TPP協定後の日・EU・EPAの発効が見込まれておりますけれども、日・EU・EPAについては、どのような経済効果や成長が見込まれているのか、その点について伺いたいと思います。

澁谷政府参考人 お答え申し上げます。

 御指摘の日・EU・EPAの経済効果につきましては、TPP11の経済効果とあわせまして、昨年の末、公表したところでございます。

 私どもの方で、GTAPと言われる国際標準のモデルを活用いたしまして分析を行ったところによりますと、日・EU・EPAの経済効果につきましては、我が国のGDPの押し上げ効果が約一%、数でいいますと約五・二兆円、それから、労働力、労働供給、約二十九万人の雇用増、そういう効果が見込まれると試算しているところでございます。

 従来の、経済連携協定による関税削減という直接的な効果だけではなくて、貿易や投資機会が拡大することで国内の生産性向上を促し、それが雇用の拡大につながるという、まさに経済連携の推進が国内経済の好循環につながる、こういうモデル、前提を置きまして分析を行っているところでございますので、TPPとともに、日・EU・EPAを日本経済の強力な成長エンジンとしていきたい。

 その実現に向けて、昨年の十一月に改定をいたしました総合的なTPP等関連政策大綱で取りまとめた施策、中小企業の海外展開の支援でありますとか農林水産業の体質強化策、こういった施策を着実に実施していくこととしたいと考えております。

西田委員 それでは、よろしくお願いをいたしたいと思います。

 多くの日本企業が生産拠点を置いているタイの合流は、日本にとっても有益なものと考えております。

 私の地元石川県の企業も、タイに三十社、三十四拠点が進出しております。また、現在、輸出額は約五十一億円となっておりますが、タイがTPPに参加した場合、今後の見通しはどのように推移していくと考えておられるのか、伺いたいと思います。

澁谷政府参考人 お答え申し上げます。

 タイにつきましては、TPPの参加に強い関心を示してはおりますが、現時点でまだ正式に参加を前提にした協議を行っていないところでございますので、タイが参加した場合の経済効果についての精緻な分析は行っていないところでございます。

 タイは、人口約六千五百万人、GDP約四千億ドルという市場でございます。また、多くの日本企業が進出している東南アジアでの最大規模の日本企業の拠点であるわけでございまして、TPPの活用による新たなグローバルバリューチェーンの構築などを実現する上で、タイが参加することの経済的意義は非常に大きいものと考えているところでございます。

西田委員 私ども、北陸、石川県にとっても大変期待をしているところでありますので、またよろしくお願いしたいと思っております。

 石川県の基幹産業であります機械産業については、工業機械や自動車関連などの企業が輸出額において大きな割合を占めているところでございます。特にアメリカへの輸出が多いことから、アメリカが離脱したTPPでは海外需要の伸びが限定的になるのではないかと心配をする声が聞こえてきますが、それについてはどのように考えているのか、伺いたいと思います。

渡辺(哲)政府参考人 お答え申し上げます。

 TPP11によりまして、米国抜きでも、十一カ国の人口は五億人、それからGDPは十兆ドルという大きな経済圏が生まれるわけでございます。日本からTPP11域内への輸出額も約十・四兆円ございます。そのうち、一般機械は一・五兆円、自動車、自動車の部品の関連で二・四兆円の輸出がございます。それから、TPP11にはベトナムなど成長著しい新興国が含まれておりまして、これは地域の中堅・中小企業の方々にとっても、TPP11によりまして今後の海外展開のチャンスが大きく広がるものと期待をしております。

 経済産業省におきましては、TPP11のチャンスを新たな市場開拓につなげていただくために、全国で中堅・中小企業の方々にメリットの御説明をするとか、それから、新輸出大国コンソーシアムというのを既に始めておりまして、国内での事業計画の策定から、海外での販路開拓、現地での商談のサポートなど、切れ目のない御支援をして海外展開の後押しをしていきたいと思っております。しっかりやっていきたいと思います。

 ありがとうございます。

西田委員 本当にアメリカの離脱は大変心配する声がありますけれども、しっかりとTPP11の説明をしていただいて、安心を与えるような形で進めていただきたいと思っております。

 石川県全体の輸出額は、平成二十四年は二千百九億円だったものが、平成二十九年には二千七百三十八億円と一・三倍にふえております。その中でも、特に食品や伝統工芸品の輸出額の伸びは四倍と顕著であります。

 昨年、石川県庁が、東アジアの中心地シンガポールにおいて、食品や伝統工芸品等を対象としたビジネス商談会を開催させていただきました。四十三社が参加し、海外のバイヤーに積極的に県産品を売り込むことができました。石川県は、これまで、このような海外での商談会等に積極的に取り組んできたところであります。五年前と比較して、食品や伝統工芸品が二・三倍と着実に増加させてまいりました。

 TPP協定の締結により、今後これらの伸びはどのように推移すると考えられるのか。また、石川県だけではなく、日本全体ではどのように推移していくと考えられるのか。その辺についてお伺いをさせていただきたいと思います。

澁谷政府参考人 お答え申し上げます。

 昨年だったと思いますけれども、トランプ大統領が離脱表明をして、その後、TPPがどうなるかわからないといったような状況の中で、あるテレビが、TPPの見通しが暗くなったことでがっかりした人の特集という番組をやっておりまして、その中で、加賀友禅の事業者の方が、TPPを活用して輸出しようと思っていたのに、そういうコメントをされていたのが非常に印象に残っているところでございます。

 TPP11は、アメリカがいないわけでございます。それでも、例えば、マレーシアの米の関税四〇%の撤廃でありますとか、陶磁器の関税、ベトナムは四〇%ぐらいかけておりますけれども、こうしたものの撤廃など、石川県を含む我が国の食品や地域工芸品の輸出に弾みがつくというふうに考えているところでございます。

 我が国全体として、TPP11の経済効果として、輸出増のGDPの押し上げ分は〇・三六%と見込んでいるところでございまして、いずれにしても輸出は拡大するという、全国的にも見込んでいるところでございます。

 TPP等関連政策大綱を踏まえ、海外展開の支援を含めたそういう施策をきめ細かく行っていくことで、TPP11の効果が地方産業にも及ぶよう、政府全体として努力していきたいと考えております。

西田委員 私たち石川県にとっては、伝統工芸品というものが本当に数多くあるわけであります。その辺に光を差すようなことで、少しでも道筋をつなげていただければと思っております。

 今後、更に少子高齢化が進み、国内市場の縮小が見込まれる中で、このような食品や伝統工芸品などの地域の零細企業にとっては海外への販路開拓がますます重要になってきていると考えますが、中小零細企業にとって、国や都道府県等の支援がなければ、海外での販路開拓に取り組むことは非常に困難だと考えております。

 国としてこのような事案に支援していく準備はあるのか、改めてその辺についてもお伺いをさせていただきたいと思います。

吾郷政府参考人 お答えします。

 御指摘のとおり、人口減少、高齢化等により国内市場を取り巻く環境が変化する中で、海外需要を獲得することが大変重要でございます。経営資源に限りのある中小企業が積極的に海外に展開するためには、きめ細かな支援が必要だというふうに考えております。

 このため、中小企業に対しましては、海外展開の段階に応じた支援を行っているところでございます。

 具体的には、情報収集の段階では、中小企業政策のポータルサイト、ミラサポなどのウエブサイトあるいは説明会等での情報提供。そして計画、準備の段階では、海外展開の戦略策定に向けたフィージビリティースタディーであるとか新商品開発に対する助成。そして現地進出の段階では、海外の展示会あるいは商談会における販路開拓支援。そして事業の安定、拡大段階では、現地での法務、労務等の専門家支援などに取り組んでいるところでございます。

 また、ジェトロ、中小企業基盤機構などの支援機関が結集して設立されました新輸出大国コンソーシアム、ここにおきまして、支援機関間での連携を強化いたしまして、切れ目のない支援を実施しているところでございます。

西田委員 ぜひとも、国に対する期待も大きいのでありますので、しっかりと切れ目のない施策をお願いしたいと思っております。

 次に、農業分野について質問をさせていただきたいと思っております。

 まず、農林水産委員会における決議とその整合性についてでありますけれども、第百八十三回国会の衆参の農林水産委員会において、TPP協定交渉参加に関する決議が行われており、同決議で、米、麦、牛肉・豚肉、乳製品、甘味資源作物などの農林水産物の重要品目について、引き続き再生産可能となるよう除外又は再協議の対象とすることとされていましたが、政府は、TPP11協定も同決議の射程に含まれるという認識のもとでTPP11協定の交渉に当たったのか、TPP11協定の合意内容は同決議との整合性はとれているのか、改めて伺いたいと思っております。

澁谷政府参考人 お答え申し上げます。

 私、TPPの交渉に日本が参加したときからずっとかかわっておりまして、私は常に国会決議のコピーをずっと持って交渉に臨んでいたところでございます。

 国会決議は大変厳しい内容でございましたけれども、それを盾に各国と粘り強く交渉を行った結果、特に重要品目についてさまざまな措置を獲得することができた。また、ほとんどの国が農産品を含めて九八%以上の関税撤廃を実現している中で、我が国としては二割近くの品目について関税撤廃の例外をかち取ったということでございます。

 決議を踏まえた交渉の結果、国益に資する結果となったというふうに考えているところでございます。

西田委員 大変厳しい協議の中で国益を守られたということを、お話を伺わせていただきました。

 広域的な経済連携の進展が我が国の経済発展によい影響を与え、また地方経済の活性化につなげることを期待しておるところでございますが、一方で、TPP11協定に対しては、TPP協定ほどではないにしても、農林水産分野へのマイナスの影響を心配する声があるのも事実でございます。

 TPP11協定による我が国経済への影響、とりわけ農林水産分野へのマイナスの影響を心配する声もありますが、日本の農林水産業をしっかりと守っていくためにも、万全の対策が必要だと考えております。

 また、安倍総理は、八日の衆議院本会議において、農林水産物への影響について、きめ細やかな対策を講じることで、なお残る不安や懸念にもしっかりと向き合っていくと答弁をしておりましたが、具体的にどのような対策をとられるのか、伺いたいと思います。

天羽政府参考人 お答え申し上げます。

 まず、TPPの交渉結果についてでございます。

 農林水産分野におきまして、重要五品目を中心に関税撤廃の例外をしっかり確保いたしましたほか、関税割当てやセーフガード等の措置を獲得したところでございます。

 例えばお米についてでございますが、国家貿易や枠外税率といった現行制度を維持したといったようなことで、品目ごとに、それぞれ、重要五品目、しっかりとした国境措置を獲得しておるところでございます。

 その上でということでございますけれども、国内対策につきましては、平成二十七年十月のTPP協定の大筋合意により、我が国農林水産業は新たな国際環境に入っておるわけでございます。また、昨年の十一月にはTPP11協定の大筋合意にも至ったところでございまして、こうした国際環境のもとでも生産者が安心して再生産に取り組むことができるよう、総合的なTPP等関連政策大綱に基づいて万全の対策を講じることとしておるところでございます。

 具体的にはということで申し上げますが、まず、体質強化対策といたしまして、産地競争力を強化するための産地パワーアップ事業、それから畜産、酪農の収益力強化のための畜産クラスター事業、さらには、我が国の農林水産物の輸出額を二〇一九年に一兆円にするとの目標達成に向けた輸出拡大対策などの施策を講じているところでございます。

 さらに、協定発効後に向けまして、経営安定対策といたしまして、国別枠の輸入量に相当する国産米を政府備蓄米として買い入れること、牛・豚マルキンの法制化と補填率の引上げ、さらには、糖価調整法に基づき加糖調製品を調整金の対象に追加するなどの措置を講ずることとしておるところでございます。

 さらに、生産者の努力では対応できない我が国の農業の構造的課題の解決を図るため、農業競争力強化プログラムに基づきまして、生産資材価格の引下げや農産物の流通、加工構造の改革にも取り組んでいるところでございます。

 農林水産省といたしましては、引き続き、積極的に施策を講じることで農林漁業者をしっかりと応援してまいりたいということでございます。

西田委員 今ほど説明をいただき、まだまだ、本当に多くの農林水産業の従事の方々が、心配の声がありますけれども、一つ一つ支援を、対策を講じていただきたいなと思っております。

 今ほどお話もありましたけれども、我が国の重要な品目であります米については、アメリカやオーストラリアから国別枠の輸入米の数量が拡大し、国内の米の流通量がその分増加することとなれば、国産米全体の価格水準が下落することも懸念されたことから、地元の石川県を含めて、全国の米の主産県においては、今も多くの農家が懸念と不安を持っていると伺っております。ぜひとも力強い対策をお願いしたいと思っております。

 TPPを契機に、攻めの農林水産業への転換として、経営マインドを持った農林漁業者の経営発展に向けた投資意欲を後押しするため、担い手の経営発展や畜産の収益力強化に必要な機械、施設の導入支援などについて、補正予算が累次に措置され、協定発効に先立って、各種の体質強化がとられておるところでございます。

 石川県を含め、全国の生産現場において、関税削減等に対する農林水産業者の懸念と不安の多くが払拭されたことにつながっているのではないかと考えておりますが、将来にわたって、意欲のある農林漁業者が希望を持って経営に取り組めるよう、引き続き、万全の対策をとっていただきたいと思っております。

 政府としても、今後、引き続きの対策として、先ほどの話もありますが、しっかりと準備はしているのか、伺いたいと思います。

天羽政府参考人 お答え申し上げます。

 先ほど御答弁させていただきましたとおり、平成二十七年十月のTPP協定の大筋合意によりまして、我が国農林水産業は新たな国際環境に入ったということでございまして、総合的なTPP関連政策大綱に基づきまして必要な施策を講じてきたところでございます。

 昨年七月の日・EU・EPA交渉の大枠合意、昨年十一月のTPP11の協定の大筋合意を踏まえましてこの大綱は改定されておるところでございますが、この大綱においては、強い農林水産業を構築するための体質強化対策につきまして、引き続き所要の見直しを行った上で必要な施策を実施するということとあわせまして、関税削減等に対する農業者の懸念と不安を払拭し、TPP又は日・EU・EPA発効後の経営安定に万全を期するため、生産コストの削減、収益性向上への意欲を持続させることに配慮しつつ、協定発効に合わせた経営安定対策の充実等の措置を講ずるとされておるところでございまして、引き続き、改定された大綱に基づきまして、万全の対策を講じてまいりたいと考えております。

西田委員 ありがとうございます。

 石川県の農業について言えば、生産額の半分は米が占めており、最も重要な産品で、私たちの住んでいる能登のような中山間地域でも、圃場整備を入れて区画を広げ、集落営農から生産法人化した組織が近隣の手に負えなくなった集落の農地まで引き受けて、耕作に手のかからない水稲と麦、大豆を組み合わせた経営を行っております。

 他方で、TPP対策では、海外から特別枠で入ってくる米が市場に出回らないような措置が施されているとのことでありますが、具体的にどのような対策であるのか、伺いたいと思います。

岩濱政府参考人 先生御指摘のとおり、お米については、豪州向けの国別枠の設定によりまして輸入米の国内での流通数量が増加することになれば、国内米全体の価格水準が下落することも懸念されます。

 こうした中で、政府備蓄米については、現在、適正備蓄水準を百万トン程度といたしまして運営しております。通常の場合、五年持ち越し米となった段階で飼料用等として売却をしております。

 これについて、TPP対策として見直しを行い、これまでの備蓄運営に加えまして、国別枠の輸入数量に相当する国産米を備蓄米として買い入れ、国別枠の輸入数量の増加が、国産米、国産の主食用米の需給及び価格に与える影響を遮断することとしております。

 これによりまして、米農家の再生産が確実に可能となるよう努めてまいります。

西田委員 よろしくお願いいたしたいと思います。

 私の地元には、昨年、初競り価格が実は一房百十一万円という、ルビーロマンという石川県を代表するブドウを始め、加賀しずくという梨があるんです、一個六百グラムもする。石川県農林水産部の方がしっかり取り組んでつくっているんですけれども、昨年初出荷させていただきました。本当に、一個六百グラムで、かじるとジューシーで大変おいしい。私も初めてこんなおいしい梨を食べたなというものがありますけれども。

 また、これも、一箱六個入りなんですけれども、一箱で十万円の初値がついた、のとてまりというシイタケなんです。非常に大きくて肉厚で、物すごい分厚い、ステーキのように食べるようなブランド農作物がまだまだほかにたくさんあるんです。また、加能ガニや、能登寒ブリ、フグ、アワビ、ナマコ、トリガイ、能登を代表する水産物が本当にたくさんあるわけであります。ぜひとも委員の皆さん方には能登に食べに来ていただきたいなと思っております。

 過疎化の進む中で、能登地方では、黒毛和牛の能登牛をブランド化しようと奮闘しており、畜産は地域の重要な産業となっております。TPPに参加することにより、このような地域や日本を代表するブランド農林水産物をより一層世界の市場に輸出していけるようになるのではないかと思っておりますが、同時に、農林水産物を輸出する際には、GI産品など日本ブランドの基準をしっかりと守っていかなければならないと考えます。

 海外での模倣品を防ぐためにも、迅速で的確な対応や取組が必要だと考えておりますが、そのことについて伺いたいと思います。

新井政府参考人 お答え申し上げます。

 我が国の農林水産物の輸出の促進のためには、海外における模倣品の排除は極めて重要でございます。この観点から、農林水産省の委託事業におきまして、都道府県、ジェトロ等を構成員とする農林水産知的財産保護コンソーシアムを組織いたしまして、海外における模倣品の監視等を行っているところでございます。

 このコンソーシアムによる調査におきましては、海外で生産された産品に日本の地名等が付された事例が多数発見されております。日本のGI産品についても、真正でないタイ産の夕張日本メロンが発見されたため、本事業を活用いたしまして、タイの事業者に名称の不正使用を停止するよう警告書を送付いたしまして産品の名称を変更させることとしたところでございまして、具体的な効果も出ていると認識しているところでございます。

 なお、海外での模倣品の排除を更に徹底するためには、当該国におきまして名称等を知的財産の保護の対象としていただくことが必要でございます。

 このため、我が国におけるGI制度の保護を進めていきたいというふうに考えておりまして、日・EU・EPAにおきましては、我が国の四十八産品とEUの七十一産品の農産物の相互保護について合意をいたしたところでございます。また、その他の国につきましても、タイ、ベトナムの政府とGIの協力について合意をしておりまして、相互保護のための試行的事業を行っているところでございます。

 さらに、平成三十年度予算におきましては、外国へのGI登録申請の支援を行うこととしておりまして、海外における地理的表示の保護について、引き続き取り組んでまいる考えでございます。

西田委員 ありがとうございます。

 大分時間も来ましたので、最後に。

 日本とアメリカの間では、茂木大臣とライトハイザー通商代表との間で、自由でかつ公正な、相互的な貿易取引のための協議を開始することに決定したばかりであります。これらの交渉や協議の中で、我が国の農林水産物の取扱い、位置づけについて心配もございます。強い農林水産業を構築するため、引き続き政府一丸となって取り組んでもらいたいと考えております。

 我が国の農林水産業を守る、このことを念頭に通商交渉に挑んでほしいと考えますが、政府の決意をお伺いさせていただきたいと思います。

村井大臣政務官 お答え申し上げます。

 西田委員御指摘のとおり、国内の農業への影響については、生産者など関係者の間に不安の声があることは十分に認識をしているところでございます。

 そのため、既に話が出ておりますけれども、昨年十一月には総合的なTPP等関連政策大綱を改定いたしまして、農林水産業の体質強化対策など、引き続き万全の対策を講じているところでございます。

 いずれにいたしましても、我が国としては、いかなる国とも国益に反するような合意を行うつもりはないということを申し上げさせていただきたいと思います。

西田委員 以上で質問を終わります。ありがとうございました。

山際委員長 次に、高木啓君。

高木(啓)委員 自由民主党の高木啓でございます。

 きょうは、TPP協定及び関連国内法の整備についてということで、四十分の質疑の時間をいただきました。どうぞよろしくお願い申し上げたいと存じます。

 最初に、ちょっと復習なんですけれども、今日に至るまでのTPPの流れについて確認をしておきたいと思うんです。

 我々自由民主党はもともとこのTPPに反対だったのではないかというような議論が先般の本会議でも出ておりまして、他党からの代表質問でもそういう指摘があったと思うんですが、私たちは、平成二十四年の衆議院選挙のときに、公約では聖域なき関税撤廃には反対ということで、その後、二十五年二月に日米首脳会談で、聖域なき関税撤廃を前提としないことということを確認した上で、この交渉に参加表明をしたわけであります。このことはやはりきちっと押さえておかないと、何かそごがあってはいけませんので、ぜひここは確認をしておきたいと思うわけであります。

 その同じ年の七月に、マレーシアでの交渉会合からTPPに参加をするということになりまして、このことは我が国の、ある意味では、自由貿易体制を守っていくとか、これからの国策として大変大きな政治的な決断であったというふうに思うわけであります。

 現在に至って、TPP11の協定に署名をするということがことしの三月に行われたということになるわけでありますが、この間の政府の動き、これは今私が御指摘を申し上げたことで間違いがないかどうか、ちょっと確認をさせてください。

越智副大臣 これまでのTPPの交渉、そして現在に至るまでの経緯ということでございますが、委員御指摘いただいたとおり、二〇一二年衆議院選挙における自民党の公約は、TPPに関しては、聖域なき関税撤廃を前提とする限り、TPP交渉の参加に反対するというものでございました。

 この自民党の公約を踏まえまして、安倍政権の発足後間もない二〇一三年二月、日米首脳会談で、TPPにおいては、一方的に全ての関税を撤廃することをあらかじめ約束することは求められないことを安倍総理とオバマ大統領が直接確認した上で交渉参加を決断し、二〇一三年七月から、委員御指摘のとおり、日本政府としましてTPP12の交渉に参加をしたわけでございます。

 その後の経緯でございますが、日本としては、攻めるべきは攻め、守るべきものはしっかり守るとの姿勢で交渉に臨みまして、約二年間の厳しい交渉を経て、TPP12協定は、二〇一五年十月に米国アトランタにおいて大筋合意に至りまして、二〇一六年二月にニュージーランドのオークランドにおいて署名が行われたわけでございます。その後、昨年の一月二十三日に米国がTPPからの離脱を宣言し、その後、我が国が議論を主導しまして、茂木大臣が昨年十一月のベトナム・ダナンでの閣僚会合で共同議長を務めまして、大筋合意に至ったわけでございます。

 米国の離脱表明からちょうど一年後のことしの一月二十三日に東京で開催されましたTPP11の首席交渉官会合におきましてTPP11協定文が最終的に確定し、三月の八日にチリで署名式が行われたということでございます。

 このことは、世界的に保護主義が台頭する中で、日本がリーダーシップを発揮して、自由で公正な二十一世紀型の新しいルールを確立するものでありまして、我が国にとっても、またアジア太平洋地域の将来にとっても画期的な成果であるというふうに考えているところでございます。

高木(啓)委員 ありがとうございました。

 今確認をさせていただきましたが、そういうことで、TPP11に参加をするということが、我が国にとって一つの大きな山を越えたと私は思っているんですね。

 その後、今政務官からもお話がありましたとおり、二十九年一月にトランプ大統領がアメリカの大統領に就任をして、そしてTPP12から離脱を表明をするわけであります。それから今日に至るまで、TPP12から11にシフトチェンジをするということで、我が国はもう一山越えなければいけなくなったということだと思うんです。

 私は、この12から11にシフトチェンジをしたということも、これも我が国の外交的あるいは経済政策的に極めて高く評価をされるべきだというふうに思っております。さらに、それが短期間でこの11がまとめられた、つまりそれは、我が国主導でまとめ上げることができた、このことは大変高く評価されるべきでありまして、識者の間でも、特に民間の研究機関も、みずほ総研などは、これは我が国にとって快挙だということまで言っていただいているわけであります。

 ですから、このTPP12から11に一つ山を越えたときに、アメリカが離脱をした後、この11、新たにこの仕組みをつくろうとしたその理由とかあるいは意義というのが明確にあるんだろうと思いますけれども、そのことをぜひ国民にわかりやすく説明をしていただきたいと思います。

澁谷政府参考人 お答え申し上げます。

 TPPは、関税削減による貿易の促進だけではなくて、知的財産、国有企業、環境、労働など幅広い分野で二十一世紀型の自由で公正なルールをアジア太平洋地域につくり出していくものでございます。アメリカが抜けても、人口約五億人、GDP約十兆ドルという巨大な市場が生まれるわけでございます。そこでは、投資先で技術移転などの不当な要求がなされない、知的財産がきちんと保護される、こうしたルールが共有されるわけでございまして、我が国の中堅・中小企業はもとより、各国の企業にとって多くのビジネスチャンスを広げるものというふうに考えております。

 TPP11の参加十一カ国は、アメリカの離脱表明を受けた後、何度か会合を開きました。保護主義的な圧力が見られる中で、だからこそ、残った十一カ国でこの最も先進的で包括的な協定を実現しようではないか、こういう思いを共有するに至りまして、合意に至ったものでございます。その合意に至るまでの過程におきましては我が国が議論を主導してきたことは、先ほど副大臣がお話ししたとおりでございます。

 自由で公正な共通ルールに基づく自由貿易体制こそが世界経済の成長の源泉でありまして、このTPP11によりまして、日本が二十一世紀型の新しいルールづくりをリードする、また実際リードしたということの意味合いは非常に大きいと考えているところでございます。

高木(啓)委員 先ほど越智副大臣の肩書を間違えてしまって、失礼しました。副大臣に大変すばらしい御答弁をいただきまして、ありがとうございました。失礼いたしました。

 今御答弁がありましたが、このTPP11を早期にまとめるという決断、そしてまとめ上げたという実績、これは先ほど来申し上げておりますように、私は高く評価をすべきだと思っておりまして、それはなぜかというと、今御答弁にもありましたけれども、もっとわかりやすく言えば、自由貿易の新たな基準、新たなスタンダードを、我が国主導で、このアジア太平洋地域につくったということだと思うんです。つまり、今後の貿易ルールづくりにおいて、このTPP11の内容が新たな基準になっていくということが大事なことなんだろうと思います。

 我が国は、今まで、いろいろな動き、いろいろな外交的な、あるいは経済的な動きがあったと思いますけれども、はっきり言って、つくられた基準の中でうまくその基準を利用して生きていくということについては、非常に私たちは上手だったと思います。これはもう有史以来、私はそうだと思うんですけれども。しかし、基準をつくるということを余りしてこなかったと思います。ですから、今回のこのTPP11こそ、我が国が主導して基準をつくった、我が国が主導して基準をつくることになったということは明らかなことでありまして、一つのモデルをつくったということですから、これは大変評価をされるべきことだと思います。

 そして、更に言うならば、TPP11こそ、これからの我が国の成長戦略の柱になっていくんだということでありますから、二重、三重の意味でこのTPP11というのは評価をされるし、あるいは、これはやはり大切なものなんだ、だからこそ我が国挙げて、茂木大臣を中心に、それにかかわる省庁の皆さんも一生懸命努力をされて、これをつくり上げてきていただいたわけであります。このことは、私は大変高く評価をしていきたいと思うわけであります。

 さて、先日、五月十日の農水委員会で、私、ちょっと差しかえで委員として出させていただいておったんですが、そのときに、日米FTA、これから創造されるというか、トランプ大統領はそうしたい、こう言っているんですけれども、二国間FTAよりもTPPが有益である理由は何かということが委員会の中では問われておりましたが、そのときに、何となく明確な答弁がなかったように私は聞きました。

 私は、この問題というのは必ず出てくる話だと思いますので、仮に日米のFTAというのがこれから交渉されるとすれば、それよりもTPP11はもっと我が国にとって有効なんだということを、具体的に数値をもって国民に私は示して、だからTPP11なんだというふうに言っていただきたいと思うんですけれども、いかがでしょうか。

澁谷政府参考人 お答え申し上げます。

 まず、TPP11の経済効果でございますが、私ども昨年末に公表しておりますが、我が国のGDPの押し上げ効果が約一・五%、約八兆円でございます。それから、〇・七一%、約四十六万人の雇用増、こういう効果を見込んでいるところでございます。

 TPP12の経済効果の約六割と、まあ四割減という結果なんですが、貿易量でいいますと、アメリカが抜けると貿易額は半減するはずなんですが、効果は四割減にとどまっているということは、実は、アメリカが抜けても、他の国、特に途上国との間で、物流改善ですとか税関手続の簡素化といった、そういう非関税障壁の削減によりまして取引コストの低下などが進む、こうしたことの効果が実はかなり大きいということでございます。先ほどお話がございましたとおり、TPP11が更に多くの新しい加盟国を入れて拡大していけばこの経済効果は更に大きくなる、こういうものでございます。

 一方、いわゆる日米FTAにつきましては、これはあくまで仮定の話でございますので、政府として効果等の試算は行っていないところでございますが、先生あえて御質問でございますので、参考として申し上げれば、日米FTAを前提にしたGDPへの影響について、民間の学者さんが出している最近のデータとして、これはたまたまけさの日経新聞でも紹介されておりましたが、政策研究大学院大学で川崎研一教授という方がいらっしゃいますが、この方の試算によりますと、GDPの押し上げ効果は約一・〇七%と試算されているところでございます。

高木(啓)委員 そういう数値をぜひ示していただいて、国民にわかりやすく、だからTPP11なんだということは、これからもぜひ折を見て説明をしていただきたいと思うわけであります。

 さて、先般、五月九日に開催をされました日中韓のサミットがありましたが、この日中韓サミットでは、その共同宣言の中で、日中韓FTA及びRCEPについて、交渉加速化へ一層努力することを再確認したというふうに、この共同宣言で言われているわけであります。

 TPP11の協定締結は、この日中韓サミットで言われるところの日中韓FTAあるいはRCEP、このことに、これからそっちは進んでいくんですけれども、どういう影響を及ぼしていくのか。つまり、このTPP11が、もう既に協定自体は固まって署名をして、これから発効までどのぐらいかかるかは別にして、発効するという前段まで来ている、そこから更に日中韓FTA、RCEP、これから交渉を加速化させていくということなんですが、どういう影響があるか、教えていただけますか。

林政府参考人 お答えいたします。

 委員御指摘のとおり、さきの日中韓サミットにおきましては、質の高いRCEPの早期妥結及び日中韓FTAの交渉を加速するために一層努力するということで一致してございます。

 TPP協定は、二十一世紀にふさわしいハイスタンダードな貿易・投資のルールの基礎となるものでございまして、TPP協定の早期発効は、RCEPを含む、我が国が交渉中のほかの経済連携交渉の加速を後押しするものと期待しているところでございます。

 我が国としては、アジア太平洋地域における自由貿易を推進すべく、TPP協定の早期発効を目指すとともに、包括的でバランスのとれた質の高いRCEP及び日中韓FTAの早期妥結を目指して、引き続き精力的に交渉を進めていく考えでございます。

高木(啓)委員 交渉中の日中韓FTAあるいはRCEPの交渉を後押ししていくというのはそのとおりだと思いますが、もう一つここで重要なことは、TPP11の協定の内容が、先ほども申し上げましたけれども、これからの貿易協定の基本、スタンダードになっていく、それ以上あるいはそれ以下というものも、いろいろな意味で、これからの交渉事の中で後ろに下がるということはもうあり得ないわけですから、だからこのTPP11を早く協定を固めたかったんだと私は思っているんですよ。それが戦略としても正解だと思うんですよ。

 ですから、これから進めていく新たな貿易のルールづくりが、TPP11が、少なくともこれがスタンダードになっていくという前提で進んでいくんだと思います。

 さて、アメリカが参加をしないということになったことで、凍結項目というのが、二十二項目と言われておりますけれども、できました。この凍結項目は、凍結でありますから、凍結解除ということに、アメリカが参加を表明をすれば、なる可能性というのはあるんだろうと思っているんですけれども、この凍結項目の取扱い、仮にアメリカが参加を表明をするということになれば、これはどういう扱いになるんでしょうか。

澁谷政府参考人 お答えいたします。

 仮にでございますが、アメリカがTPP11に加入したいと言ってきた場合でございますが、TPP11協定の第五条が加入の規定でございます。この規定に従いまして、その時点でのTPP11の締約国とアメリカとの間で合意する条件に従って加入する。すなわち、TPP11の締約国が全て合意するということが必要でございます。

 その上で、凍結項目でございますけれども、正式には協定第二条で規定の適用の停止というふうに言っているところでございますが、これは若干いろいろ誤解があるようでございますが、例えばアメリカが戻ってきたら自動的に解除されるとか、そういう規定には全くなっておりません。この凍結を終了させるためには、締約国全体の合意が必要だと規定されているところでございます。

 したがって、アメリカの主張のみによって解除されるということはございませんで、その扱いについては全て締約国の判断に委ねられているということでございます。

高木(啓)委員 今の答弁は極めて重要ですよね。つまり、アメリカのいいようにはならないんだ、だから、早くこの11が固まることが大事だったんだということだと私は理解をしています。

 ですから、この11をまとめていただいたということの意味は、これから時間を経るごとに大きくなっていくんだろうと思いますし、いつ発効されるのかということも、これももちろん大事なことで、できるだけ早く発効していただきたいと思うんです。

 つまり、締約国が合意をしなければルールは変更ができないんですよということだと思いますので、このことは極めて重要なので、ぜひ、これからもそういう姿勢で、11の皆さんと一緒になって、これからの自由貿易をどう守っていくのかぜひ考え、そして悩みながら進んでいただきたい、こう思っているわけであります。

 さて、貿易の枠組みをつくる上で、当然、我が国の戦略として、守る産業分野、あるいは部分といったらいいんでしょうか、と攻める分野というのがあって当然だと思います。それはそれぞれどういう産業分野なのか。またあるいは、守りつつ攻めるという分野もきっとあるんだろうと思いますので、そのあたりのことについて見解を聞かせていただきたいんです。

澁谷政府参考人 お答え申し上げます。

 なかなか一概にはお答えしにくい御質問でございますが、あえて申し上げますと、守るべき分野といたしましては、TPP12の交渉においては、先ほども御説明した国会決議がございました。国会決議を踏まえまして、重要五品目を中心に、ほかの国が九八・五%以上農林水産品の関税を撤廃する中で、我が国は約二割の関税撤廃の例外を確保し、また、関税割当てやセーフガードといった措置も獲得をしたところでございます。

 攻めの分野としては、関税交渉として、日本以外の国に対して関税撤廃を強く要求し、結果として、日本以外の国に工業製品の九九・九%の関税の撤廃を実現したところでございます。

 また、投資、サービスの自由化についても、各国と個別に、各国の規制を撤廃、緩和するといったような交渉を個別に行う、これもかなり厳しい交渉だったわけですけれども、その結果、例えばコンビニなどのサービス業の出店規制を緩和するといったようなことがかち取れたわけでございます。

 また、共通ルールとして、技術移転要求の禁止、電子商取引におけるソースコード、ソフトウエアの設計図のようなものですが、こうしたものの移転、アクセス要求の禁止、知的財産の一層の保護といったようなことも規定に盛り込めたところでございます。

 また、広域経済連携としてのTPPの効果を最大限に発揮し、新たなグローバルバリューチェーン構築につながるよう、メード・イン・TPPという考え方のもと、原産地規則の完全累積化、これを認めたことなども特筆すべき点であると考えております。

高木(啓)委員 守る分野、攻める分野、いろいろあると思いますが、私は、攻める分野の一つだと思っておるんですけれども、最初に、電子商取引のことについてちょっとお伺いをしておきたいと思います。

 電子商取引のルールについて、他の貿易協定と比較して、TPPの内容というのは先進的と言えるのかどうかという議論があると思います。

 いろいろな識者の論文や意見を聞いてみると、いろいろな考え方があるんでしょうけれども、率直に言って、TPPの電子商取引のルールというのは、我々が理解をする上でどう考えたらいいのかということを端的にお伺いしたいんですけれども、教えていただけますか。

渡辺(哲)政府参考人 お答え申し上げます。

 TPP11協定、電子商取引につきましては、情報の国境を越える移転の自由化、それからサーバーなどの設備を自国内に設置しろと要求してはいけませんという禁止条項、それからソフトウエアの設計図とも言えますソースコードの開示要求を禁止するといった、電子商取引に関します先進的な規律が盛り込まれているところでございます。

 こうした規律は、狭義の電子商取引にとどまらず、これからIoTですとかそれからビッグデータの活用など、日本が強みを持つ物づくりの分野でも大変重要なものでございまして、我が国産業界もこれらの規律を高く評価しているところでございます。

 なお、今申し上げた規律以外の一部の条文におきまして、もちろん、第三国間のFTAよりも規律の対象範囲の狭いものとか、規律の義務が緩やかなものはございます。

 しかし、全体で見ますと、今申し上げた先進的な規律を始め、先進的で、かつ高いレベルの規律が盛り込まれておりまして、こうした電子商取引のルールは、今後の経済連携協定のモデルとして、二十一世紀の世界のスタンダードになっていくものと考えております。

高木(啓)委員 よくわかりました。

 つまり、TPPの電子商取引のルールは先進的である、これからのモデルになり得るんだということだと思います。

 私は、いわゆる今おっしゃっていただいた電子商取引が先進的であるべきだというふうに思っていますので、今、電子商取引の保護主義化ということが懸念をされているわけであります。お話にありましたように、データを移転させちゃいけないとか、サーバーを自国内に置けとか、その情報を開示しろとか、いわゆるデータローカライゼーションと言われているものについて、やはりTPPが一つの防波堤になるべきだというふうに思うわけであります。

 お隣の国の中国は、サイバーセキュリティー法、いわゆるインターネット安全法とも言われておりますが、こういう法律をつくって、どんどんどんどん電子商取引に対して保護主義化を進めているわけであります。

 ですから、そういう流れにくみすることなく、あるいはそれに対抗をしなければいけないし、そうしなければ自由貿易の役割あるいは自由貿易の枠組みというのは守れないと思いますので、ぜひTPPの先進的な電子商取引のルールというものを世界に広めるべく努力をしていかなければいけないというふうに思うわけであります。

 EUはデジタル単一市場づくりということを標榜してやっておりますし、そういうEUの考え方も一つあるんだと思いますので、私たち、このアジア太平洋地域でTPPをつくる上では、ぜひ、この電子商取引、先進的で、そして自由度の高いものをつくっていただきたい。

 私は、この電子商取引こそ、これからの貿易ルールをつくる上で死活的に大事だというふうに思っています。

 それはなぜかというと、今、世界の投資家の目が向いている産業分野というのは主に三つしかないというふうに言われておりまして、一つはバイオテクノロジー、二つ目は環境ビジネス、三つ目がIT関連産業、こう言われているわけであります。

 先日、ある勉強会でデータをいただいたんですが、世界の企業の時価総額ランキングがこの十年でがらっと変わっています。

 二〇〇七年、今からちょうど十年ぐらい前は、時価総額で一番大きな金額を持っていたのは石油産業のエクソン・モービルでありました。二番目がペトロチャイナ、三番目が電機のGE、四番目がチャイナモバイル、五番目が金融の中国工商銀行、これがベストファイブ。これが約十年前。

 ところが、十年たって、二〇一七年は全部入れかわっておりまして、一番がアップル、二番がグーグル、三番がマイクロソフト、四番がフェイスブック、五番がアマゾンですよ。全部これはIT関連であり、いわゆる電子商取引によって伸びてきている産業であります。もっと言うと、今の現状は、六番目に投資ファンドのバークシャー・ハサウェイが入っていて、七番目がアリババ、八番目がテンセントというふうに中国企業が入ってきている。ここがやはり問題なんだと思うんですね。

 中国は、だからこそ、この電子商取引に対して、国営とも言えるようなこうした企業をもっともっと大きくしていくという意味での保護主義化を進めてきているんだろうと思いますので、こうした今のこの動きに対してTPP11はどうできるのかということをぜひ真剣に考えていただいた上で先進的な仕組みをつくっていただきたい、こう思っているわけであります。

 このTPP11の協定が締結されることを一つの奇貨として、今言ったような電子商取引を始めとする我が国の産業の強化、そのための体質改善というものはやはりどの産業でも求められるんだろうと思います。もちろん、既にそうなっているところもあるんだろうと思いますが、しかし、先ほど来、我が党の古賀先生やあるいは西田先生が御指摘をされたように、一次産業についてはやはり相当なてこ入れも必要だと思っております。

 今後、先ほどお話があった、特に重要五項目についてはどのようなてこ入れを考えているのか。あるいは、水産業をこれからももっと、我が国は海に囲まれている国ですから、水産業の振興もぜひてこ入れをしていかなきゃいけない。どういう方策を持っているのか、お伺いをしたいと思います。

天羽政府参考人 お答えを申し上げます。

 平成二十七年十月のTPP協定の大筋合意により、我が国の農林水産業は新たな国際環境に入ったというふうに考えております。昨年十一月にはTPP11協定の大筋合意にも至ったところでありますが、こうした国際環境のもとでも生産者が安心して再生産に取り組むことができるようということで、総合的なTPP等関連政策大綱を策定し、これに基づき万全の対策を講じていくこととしておるところでございます。

 具体的には、体質強化対策といたしまして、産地の競争力を強化するための産地パワーアップ事業、畜産、酪農の収益力強化のための畜産クラスター事業、さらには輸出の拡大対策といったものを講じておりまして、重要五品目を含めた我が国農林水産業の体質強化対策を講じてきているところでございます。

 特に重要五品目につきましては、協定発効後の経営安定対策といたしまして、お米についてでございますが、国別枠の輸入量に相当する量の国産米を政府の備蓄米として買い入れること、糖価調整法に基づく加糖調製品を調整金の対象に追加すること、牛・豚マルキンの法制化と補填率の引上げなどの措置を講ずることとしてございます。

 水産業につきましては、別途、御説明をさせていただきます。

森(健)政府参考人 お答え申し上げます。

 水産業の体質強化につきましても、総合的なTPP等関連政策大綱に基づきまして、持続可能な収益性の高い操業体制への転換を図るため、担い手への漁船導入でございますとか、産地の施設の施設整備、さらに漁船漁業の構造改革等を進めてきているところでございます。

 また、我が国の品質の高い水産物の輸出拡大に向けましても、オール・ジャパンでのプロモーション活動でございますとか、水産加工施設のHACCP対応等も推進をしてきているというところでございます。

 今後とも、現場の声に寄り添いながら、新たな国際環境のもとでも、水産業を成長産業として、次世代を担う漁業者等が所得向上、競争力の強化に積極的に取り組めるよう後押しをしてまいりたいと考えているところでございます。

高木(啓)委員 ぜひお願いをします。一次産業については、人手不足の問題も含めて、対応をぜひ考えていただきたいと思います。

 私は東京選出の議員でありますが、東京というところは何か一次産業というのは余りないように思われるかもしれませんけれども、多摩地域は実は半分はもう山でございますし、林業もあるし、農業ももちろんありますし、それから漁業も、伊豆諸島を抱えておりますから漁業もありますし、あるいは多摩地域では畜産もやっていますし、何でも、ですから、東京も同じなんですよ。

 ですから、こうしたTPPで、やはり重要五品目を始めとする農業、水産業、あるいは畜産も含めてですけれども、ぜひそのてこ入れ対策を考えていただきたい、こう思います。

 その一つのきっかけになるかなと思っているのは、実は一次産品の品質に対する基準づくりだと思うんです。

 先ほど、水産の関係でHACCPの話がありましたけれども、一番わかりやすいのは、これからオリンピック、パラリンピックがありますので、オリンピック、パラリンピックに食材を提供できるかどうかという、GAPという基準があるんですけれども、これをやはり一つの奇貨として、このGAPの認証を取っていくことによって、世界に通用するいわゆる食材の生産、あるいは食材の宣伝も含めてですけれども、我が国の一次産品というのはこんなにいいものなんですよというものを客観的にわかる指標でぜひつくっていただいたらどうかなというふうに思っています。

 そこで、このGAP制度とTPP11の関係についてどう考えるのか、ぜひ教えていただきたいと思います。

鈴木政府参考人 お答えを申し上げます。

 GAPの取組及び認証取得の推進は、国産農産物の二〇二〇年東京オリンピック・パラリンピック競技大会への供給のみならず、委員御指摘の輸出の拡大、さらには農業人材の育成など、我が国の農業競争力の強化を図る観点からも極めて重要であると考えております。

 また、現在、農林水産省では、総合的なTPP等関連政策大綱に基づき、二〇一九年の農林水産物、食品の輸出額一兆円目標の達成を目指し、農林水産業の体質強化に向けた必要な施策を推進しているところであります。

 こうした中で、特に、国内環境整備の一環として、GAP認証の取得の拡大に向けた指導体制の整備や認証取得に係る補助などの取組、日本発のGAP認証の国際規格化を目指し、国際的なステークホルダーへの官民連携した働きかけの取組などを進めているところであります。

 こうしたGAP認証の取得の拡大などの取組を通じて、我が国の農産物の輸出拡大に努めてまいりたいと考えております。

高木(啓)委員 ちょっと時間もないので質問をまとめますけれども、ですから、GAP認証をチャンスと捉えて取り組むべきだということを私は申し上げたいんですね。

 このGAP認証を取得するための制度というのがあって、これが、生産者あるいは政府及び公的機関、それぞれ問題を抱えているわけですよ。ですから、GAP認証を取るためには、今申し上げた、一次産品が世界標準であるべきだという前提に基づいて、このGAP認証をどうやって取っていくのか、そのときの生産者そして政府、公的機関の課題というのは何なんですか。

鈴木政府参考人 お答えをいたします。

 GAP認証の取得推進に当たっての課題につきましては、生産現場におけるさらなる認知度の向上、認証取得の拡大に対応するための指導員、審査員の確保、審査コストの削減、認証取得による経営改善効果の明確化、流通、小売業者などの理解増進などが挙げられるというふうに考えております。

 これらの課題に対応するため、農林水産省としては、都道府県や生産者団体と連携した生産現場への周知徹底、都道府県などに対する指導員、審査員の育成支援、団体認証の推進による審査コストの削減や認証取得費用への支援、優良事例表彰による認証取得の効果の周知、食品製造、小売などのフードチェーン全体でのGAPの価値を共有するための会議の開催などを行っているところであります。

 今後とも、輸出拡大や人材育成など、我が国の農業競争力強化を図る観点から、GAP認証取得等の取組の推進を図ってまいりたいと考えております。

高木(啓)委員 GAP制度の問題点を端的に言うと、一つは、生産者の皆さんがその制度を取ることによって、品質の基準が確定をして販路が広がるということをきちっと皆さんが広報すること、これが一つ。そして、そのときに、この認証を取るためにはお金がかかりますので、これを、しっかりと資金的な対策を政府としてとっていただくこと、これが二つ目。もう一つは、審査員が圧倒的に足りませんよ、今。

 二〇二〇年まで、オリンピックまでもう既に八百日と言われている中で、オリンピックが終わってしまうと急にしぼんでしまうんではないかという心配を私はしているんですよ。ですから、その八百日の間にどうするのかと同時に、その先も含めて、我が国の成長産業の一つとしての農林水産業、あるいは酪農も含めた畜産業も含めて、これをしっかりとやっていくことが大事なので、ぜひ、このGAP制度の広報宣伝を始めとするさまざまな対策を、政府には強くお願いをしておきたいと思います。

 今、GAPの現状というのはもう皆さん御承知のとおりで、取っているところはほとんどないですよ。今、GAPの認証を取っている経営体というのは全国で一%に満たないんですよ、まだ。これで本当に大丈夫なんですかと私は言いたい。オリンピックも食材提供できるんですかと言いたい。もっと具体的な数字を言うと、東京にはコマツナという野菜がありますけれども、コマツナでさえ、六・三%しかGAPを取っていないんですよ。選手村に出せるんですか、この食材を。出せないでしょう。

 だから、こういう今の現状をぜひ認識していただいて、ぜひ格段に努力をしていただきたい、こう思います。それは、東京都も努力をしなきゃいけないので、東京都にも厳しく言ってください。東京都も努力しなきゃいけない。組織委員会も努力しなきゃいけないんですよ。だから、そういうことをぜひ言っていただきたいと思います。

 最後になりますが、いずれにしても、我が国として新たな基準、スタンダードをつくって、TPP11を主導していくことが、自由貿易を守り、アジア経済圏が世界の貿易モデルになり得るんだろうと私は思っています。

 アメリカのトランプ大統領は、相互的というフレーズ、レシプロカル、先ほど茂木大臣もおっしゃっていましたけれども、フレーズが好きなんですから、相互的にアメリカも得をするんですよ、自由貿易を守っていくことが大事なんですよということをぜひアメリカにも言っていただいて、この枠組みの中に一日も早くまた戻ってきてもらいたいということもお願いをして、言っていただきたいと思うわけであります。

 我が国としてこれからどのような理想を持ってこの将来構想を描いていくのか、最後に越智副大臣の決意を聞かせていただければと思います。

越智副大臣 お答え申し上げます。

 まず、TPP11でありますけれども、ここまで高木委員からも再三御指摘をいただいたとおり、世界的に保護主義が台頭する中で、自由で公正な二十一世紀型の新たなルールづくりを日本がリードし、アジア太平洋地域におけるハイスタンダードな貿易・投資の枠組みを確立するというものでございます。

 まず、我が国としては、このTPP11協定の早期発効に全力を挙げるということでございます。その上で、TPP11が発効した後は、新たな国、地域の加盟によりまして、保護主義に対して、TPPの新しいルールを世界に拡大していくということが視野に入ってまいります。

 この観点から申し上げますと、コロンビア、タイ、台湾、イギリスなど、さまざまな国、地域がTPPへの参加に関心を示しているということでございますが、これは歓迎したいというふうに考えております。新規加盟の対応方針などについては、我が国が主導しまして、必要な調整を行っていきたいと考えております。

 今後、TPPが拡大していくことで、TPPの新しいルールが通商交渉のモデルとなって、二十一世紀の世界のスタンダードになっていくことを期待したいと考えております。

 その上で、委員から御質問がございましたアメリカについてでありますけれども、四月の日米首脳会談において、両首脳間で率直な議論を行う中で、安倍総理からトランプ大統領に対しまして、TPPの意義、マルチの枠組みのメリット、そしてTPP11の早期発効を目指すという日本の立場についてしっかりと説明をいたしました。

 日米首脳会談で新たに設けることとなりました茂木大臣とライトハイザー通商代表との間の自由で公正かつ相互的な貿易取引のための協議、FFRでは、フリー、フェアな貿易体制を目指すとともに、レシプロカル、日米双方の利益となるグッドディールを目指していくことが重要となると考えております。

 今後、この協議の中で、それを通じて日米両国が日米経済関係及びアジア太平洋地域の発展にいかに協力すべきか、そして、TPPの持つ意義を含めて建設的な議論を行っていきたいというふうに考えているところでございます。

高木(啓)委員 ありがとうございました。

 最後に一言だけお願いをさせていただきたいんですが、TPP11の事務局は我が日本に置かれるというふうに聞いておりますけれども、この事務局機能は絶対に手放さないようにしていただきたいと思います。我が日本国がこのTPP11の事務局をやっていくんだという決意を持って取り組んでいただきたいと思います。

 以上で終わります。

山際委員長 次に、浜地雅一君。

浜地委員 公明党の浜地雅一でございます。

 公明党としましては一時間質疑時間をいただきましたが、私は三十分間、二人に分けて質問をしたいと思っています。

 私の質問は概括的なところをお聞きしようかと思っておりますけれども、まず、今回のTPP11、非常に画期的な条約に基づく関連法の整備に入れるなと思っております。

 といいますのは、私も二年前、外務省で政務官をさせていただきました。国際社会における貿易のルールというところでは、WTOというところがございます。多くの加盟国がある中で、担当の皆さんは頑張ってはいらっしゃいますけれども、なかなか自由貿易に向けての全体の動きというのは進まなかったのが実感でございます。

 非公式会合にも出させていただきましたが、二度出していただきましたかね、一度出していただいて、その後、半年後に出ましたけれども、同じ内容をどうしても話している状況でございます。これは決して担当者が悪いわけではございません。それほど、やはり世界の中でルールをつくっていくというのは非常に難しいんだなということを実感した次第でございます。

 そこで、TPP、アメリカが最初主導してきましたけれども、今回、残念ながらアメリカは現在離脱をしておりますけれども、逆に、初めて日本がリードする、自由貿易の仕組みをつくるということにおいて、大変期待をしたいというふうに思っております。

 そうはいいましても、やはり大きな流れとしての自由貿易をつくるということは大事でございますが、やはり日本経済にとって、このTPP11、まず、どのような経済効果がプラスになるのかというところが気になるところでございます。

 内閣府の試算によりますと、これまでも何度も説明をしていただきましたこのTPP11、GDPで一・五%プラスの効果がある、また雇用においても、四十六万人の雇用を生む、そういう試算がございます。しかし、よくこの試算を見ますと、輸入はマイナス〇・三八%、輸出はプラス〇・三六%ということでございますので、やはりこれは輸入が若干ふえるという試算でございます。それを補うのが、民間消費でありますとか、又は直接の投資、そして政府の調達によって一・五%のGDPのプラスを得ようという政府の試算でございます。

 ですので、私、そこでもう一つ気になるのが、カナダとニュージーランド以外は既にEPAを締結しているという現状がございます。かつ、カナダについては日本が占める貿易量の全体の一・四%にすぎない、また、ニュージーランドは同じく〇・四%にすぎないということで、いわゆる初めて包括的な障害を取っ払う国については、非常に割合は低いわけでございます。

 そこで、私、本来であれば各国ごとの輸出入の割合でありますとかGDPの押し上げ効果を聞きたかったわけでございますが、なかなか計算は難しいということでございますので、先ほども私、問題意識に出しました、カナダ、ニュージーランド以外は既にEPAが締結済みであること、そのような中、このTPP11の発効による具体的なメリット、各国ごとのメリットで特徴的なものはあるのかどうか、これを端的にお聞きしたいと思います。

澁谷政府参考人 お答え申し上げます。

 具体的にということでございますので、幾つか例示をして御説明させていただきたいと思います。

 関税分野の合意内容につきましては、日本以外の国の工業製品の九九・九%の関税を撤廃ということでございますから、ほとんどの国で一〇〇%近い撤廃ということでございます。

 先ほどオーストラリアとEPAがあるという御説明がございましたが、日豪EPAでは、例えば輸出額の七五%が即時撤廃ということだったわけですけれども、乗用車、バス、トラックの新車輸出額の一〇〇%がTPPにおいては即時撤廃となるということでございます。

 また、ニュージーランドにつきましても、我が国からの工業製品の輸出額の九八%以上が即時撤廃、残りも七年目までに全て撤廃ということがかち取れたところでございます。

 農林水産品につきましても、例えばベトナムにつきましては、日越のEPA、これはWTO税率一〇%がまだ維持されているわけでございますが、これは冷凍のブリとサンマについてということでございますが、これにつきましてもTPPでは即時撤廃ということでございます。

 農業者にとっても、品質が高く、海外で人気の高い日本の農産品の販路を拡大する新しいチャンスということだと思います。

 それから、ルール面につきましては、投資先での技術移転要求の禁止といったような投資ルールの強化、それから通関手続の迅速化、知的財産の一層の保護、それからベトナムとかマレーシアにおけるコンビニなどのサービス業の出店規制の緩和といったことがかち取れたところでございます。

 また、WTOの政府調達協定に参加をしていなかったマレーシア、ベトナム、ブルネイとの間では、TPPに政府調達章があることをもちまして、今回新しくこれらの国々の政府調達市場が開放される、これも我が国にとっては大きなメリットになると考えているところでございます。

浜地委員 細かく御説明いただきまして、ありがとうございます。

 私ども、御説明を受けておったわけでございますが、改めて、そういった指摘をする方がいらっしゃいましたので、各国ごとの特徴的なTPP11の効果についてお聞きしたところでございます。

 先ほど私も述べましたとおり、いわゆる輸入に比べて輸出が若干低下しているという点がございます。しかし、ここは、新輸出大国コンソーシアムで押し上げていこうということでございまして、私も地元の企業、私、九州なんですが、地元の企業さんでもこの新しいコンソーシアムに向けての問合せは非常に多いというのが実感でございますので、我々議員も含めて、しっかり宣伝をしながら、政府としても、最終的には輸入よりも輸出が上回るような最後の試算が将来的に出てくるとすごくいいのかなというふうに思っております。

 それと、先ほどもございましたとおり、ベトナムのお話がありましたけれども、今回、TPPに入る唯一の社会主義経済国としてのベトナムがあると思っています。ベトナムの政治家ともお話をしたことがあるんですが、非常に積極的でした。

 また後ほどRCEPの話もしたいと思うんですが、やはり社会主義国家のベトナムが、さまざま国有企業の壁でありますとか政府調達の壁に向かって、このTPPの枠組みを使ってうまくワークするんだということが示せることによって、また他の社会主義経済の国に対してもいい影響が出るのではないかなというふうに私自身は思っております。

 次に、凍結項目についてお聞きをしたいと思って、先ほどは自民党の先生からもさまざまございました。どうしても、米国が抜けたということで、各国がもともと持っていた思惑というものが少し表に出たのが今回の凍結項目だったのかなというふうに私自身は感じております。

 日本ではよく問題にされておりましたといいますか、よくフォーカスをされておりましたISDS条項について、これはもう、日本にとってマイナスの点において主張する方がいらっしゃったわけですが、私は、このISDS条項、やはり推し進めるべきだという立場でございます。

 そこで、凍結された凍結されたと言われておりますが、これは一部が凍結されたというふうに聞いております。具体的にはどの部分が凍結されて、どの部分が残っていくのか、それについて端的にお答えいただきたいと思います。

澁谷政府参考人 お答え申し上げます。

 TPP11におきます凍結項目二十二項目でございますが、TPP12が有しているハイスタンダードな水準を維持しつつ、十一カ国全てが合意できるバランスのとれた内容を目指してTPP11の交渉を行っていく中で決まったものでございます。

 その中の一つ、ISDS、投資家と国との間の紛争解決でございますが、御指摘のとおり、我が国としては、これはISDSを盛り込む方向で12でも交渉を行ってきたところでございます。

 TPP協定第九章、投資章に規定される義務にかかわるISDSという、この制度の大枠は維持されております。

 その上で、いわゆるプラスアルファに当たる部分だと思いますけれども、個別の投資許可、投資に関する合意にかかわるISDS条項が凍結されたということで合意されたものでございます。

浜地委員 個別の投資合意、投資許可について凍結をされたということですが、日本政府が個別にやったものを急に許可を取り消すなんということはなかなか想定しづらいと思いますけれども、このTPP11に入っている国々でなかなかこういったルールがわからないところで、かつ政治状況等あったときに、急にこの投資合意また許可が取り消されるというようなことがありますと、やはり我が国企業が海外進出する際において漠然とした懸念が生じようかというふうに思っています。

 その点について、どのように日本政府として対応していくのか、そのお考えをお聞かせいただきたいと思います。

澁谷政府参考人 TPP協定の第九章、投資章で規定しております投資のルールは、投資に関して、つまり、投資先の国、投資の受入れ国が、内国民待遇、最恵国待遇、つまり、特定の外国の投資家だけを差別してはいけない、狙い撃ちしていろいろな嫌がらせをしてはいけない、こういうのが大原則でございます。

 この投資章の主要な規定の違反によって損害が生じた場合には、ISDSで訴えることが凍結された後でも可能でございますので、海外に進出する日本企業にとっても有用な規定が維持されているというふうに考えているところでございます。

浜地委員 ありがとうございます。

 今の御説明で私も納得する部分はございますが、このISDS条項の凍結された部分についても、また今後動きがあればぜひ努力をしていただきたいというふうに思っています。

 次に、知的財産の凍結項目についてお聞きをしたいと思っております。

 一般医薬品が五年、また生物製剤データが八年ということで、特にこれはアメリカまたオーストラリア等々でさまざまな主張があったというふうに思っておりますが、アメリカが抜けたということで今回凍結されることになりました。

 私も、日本企業、特に日本の製剤メーカー等の影響がどうなるのかということもお聞きしたかったわけでございますが、これは各社によって立場が違いますので、余り国会答弁には資さないだろうと思って、聞くのをちょっと遠慮したいと思っております。

 そうなりますと、こういった、特にこの生物製剤等や医薬品のメーカーなど知財全般において、それ以外でも多くの項目が凍結されたわけでございますが、我が国企業の有する知的財産を適切に保護することができるのか、それについてどのようなお考えを持っていらっしゃるのか、内閣府にお聞きしたいと思います。

澁谷政府参考人 お答え申し上げます。

 知的財産の分野では、凍結項目二十二項目のうち十一項目が知的財産分野で凍結されております。御指摘の医薬品とかあるいは著作権に関する項目でございますが、他方、例えば、営業上の秘密の不正取得、あるいは不正商標ラベルや包装を使用した場合に刑事罰を科すことを義務化するといったような規定、あるいは地理的表示の保護に関する規定など、我が国が高い関心を有していた規定については維持されているところでございます。

 TPP12が合意したときに、地方の中小企業の社長さんの談話が新聞で紹介されておりましたけれども、例えば、ベトナムに投資をしようと思っていたけれども、営業秘密の不正使用などについて取締りの規定がないということで、大企業ならばそれはちゃんとリスクヘッジできるんだけれども、我々中小企業ではなかなか難しくて投資をちゅうちょしていたが、TPPのルールができれば安心して投資できる、このようなコメントが載っていたのを思い出しているわけでございますが、そうした我が国の企業にとって非常に有用な規定は維持されているというふうに考えているところでございます。

浜地委員 具体的な中小企業の方々の事例も踏まえてお答えをいただきましたので、非常に現場の声を反映された御答弁だったと思っております。

 私もこの凍結項目を見まして、さまざま言いましたけれども、そう大きく日本企業には影響がないんじゃないかなというふうに思っております。特に製薬の部分につきますと、日本は当然これからシェアをどんどんふやさなければいけない状況にありますけれども、やはりアメリカ企業等々が一つ大きな関心を示しているのかなというふうに思っています。

 実は、私のいとこも某日本の製薬メーカーにおりましたので、このことを聞きましたら、問題ないというふうなことを言っておりました。その企業にとっては問題ないかもしれませんが、つくっているメーカーにとっては問題がありますので、これ以上はやめますけれども、概括的に、そう大きな影響はないんじゃないかなというふうに思っています。

 しかし、今回凍結をされた中で、特に著作権の保護期間の延長等々、逆に、凍結をされたんだけれども、今回このTPP関連法において国内整備をされようという項目がございます。

 先ほどの著作権の保護期間の延長や技術的保護手段、また、衛星・ケーブル信号の保護、審査遅延に基づく特許権の存続期間の延長等々が凍結をされておりますが、今回は国内法整備をしようというふうにされておりますが、それはなぜなのか、お答えいただきたいと思います。

澁谷政府参考人 お答え申し上げます。

 御指摘のとおり、凍結された項目は、我が国を含め各国について、制度整備を行う国際的な義務が生じないということになるわけでございますが、我が国は、TPP11協定の閣僚声明でもうたっておりますように、TPP12のハイスタンダードな内容を維持するという立場で私どもは臨んでいたわけでございます。

 したがって、限定された数の凍結項目でまとめ上げたのが我が国であるというまず実績があるわけでございます。

 第二に、11の交渉を主導してきた我が国といたしまして、12のハイスタンダードを維持するという、その交渉中の立場を一貫して具体的に実践することによって、凍結項目の解除などをいずれ十一カ国で議論するような場合においても、我が国が既に国内整備済みだということを背景に議論を主導しやすいという効果も期待しているところでございます。

 また、第三に、凍結項目について、各国の判断で実施することが禁じられているわけではありませんので、あくまでも自主的な判断として、我が国としては、TPP11協定発効を機に、凍結項目を含む12協定の内容について、我が国においては制度化をしたいというふうに考えているところでございます。

浜地委員 ありがとうございます。

 次に、これは仮定の話になってしまいますが、タイのTPP参加についてお聞きをしたいと思っております。

 先ほども大臣が御答弁されておりましたが、このゴールデンウイーク中にタイを訪れて、ソムキット副首相とお会いをされたというお話を聞きました。ぜひ、そのことについても、お話しできる部分で、後ほど、もし御答弁できればと思っております。

 私もソムキットさんに実際にお会いしたことがございます。やはり非常に聡明な方で、まさにタイの政権の中で経済を引っ張る方であるというふうに思いました。

 私も実際タイに行ったときに感じたことでございますが、日本製の車も非常に多い。トヨタ車がほとんど走っていたように思います。それと、日本の企業が既にタイには多く海外進出をしておりまして、恐らく東南アジアでは進出数は一番ではないかなというふうに記憶をしております。

 そうなりますと、私は、タイが参加する経済的メリットとして、既に現地生産も行われている中、どちらかというと、タイがハブになって、今、バンコク等を中心に東南アジアの経済が動いているわけでございますが、日本にとって大きな経済効果がどれほどあるのかなというふうに感じるところでございます。

 タイが仮に、仮の質問でございますが、TPP11に参加した場合の経済効果をどのように考えていらっしゃるか、内閣府にまずお聞きしたいと思います。

澁谷政府参考人 お答え申し上げます。

 先ほども申し上げたかもしれませんが、タイは、参加への強い関心を示しておりますが、まだ正式な参加表明を行っておらない、正式な参加協議を行っていないということでございますので、私どもとしても、タイを含めた経済効果分析というのはまだ公式には行っておらないわけでございます。

 ただ、タイは、人口六千五百万、GDP四千億ドルという市場であります。先生御指摘のとおり、多くの日本企業が進出している、東南アジア最大規模の我が国企業の拠点であるわけでございます。

 TPPは広域経済連携でございますので、我が国の企業の一大拠点が含まれることで、タイを含めた、新しいTPPを活用したグローバルバリューチェーンの構築など、経済効果が大きく見込まれるところでございます。

浜地委員 ありがとうございました。

 それでは、茂木大臣、お疲れさまでございます。少し、タイのTPP参加についてお聞きをしたいと思っております。

 私が懸念しておりますのは、経済としては、確かに東南アジアのハブでありますし、日本企業も多く参加をしておりますし、今、タイ・プラスワンということで、タイを拠点に、カンボジアまたミャンマー等についても、これから展開をする回廊等もできていることも承知をしておりますけれども、二〇一四年、タイはクーデターがございました。今、軍事政権でございます。

 実際に、二年前、外務で政務官をさせていただいたときに、OECDの東南アジア地域プログラムの参加についても、非常にこれに対して懸念をする国もあった状態でございます。憲法については、国民投票は終わったというふうに聞いておりますけれども、内容についても、少し人権や民主主義のところが後退したんじゃないかなという指摘もございます。

 そして、何よりも、民主化のための選挙がどうしても延び延びになってしまっていて、ことしの十一月の予定が来年二月になるんじゃないかという報道もございます。

 そういった、経済面でのプラスがあるタイではございますが、やはり民主化プロセスが不透明な部分がある中で、今後、タイのTPP参加に向けて、日本がどのような役割を果たすべきとお考えなのか、茂木大臣のお考えをお伺いしたいと思います。

茂木国務大臣 タイでありますが、委員御指摘のように、メコンデルタ地域、この中心的な国でありまして、日本のタイとの関係、非常に古くからでございます。そして、今、日本から現地に進出している企業、五千社を超えると言われておりまして、今後、日本企業のサプライチェーン、バリューチェーン、こういったものを考えても、タイのTPP参加、この経済的な効果は非常に大きいのではないかな、こんなふうに思っているところであります。

 確かに、委員御指摘のように、経済的にも、タイというのは、東南アジアの国々の中でも前の方を行っているという部分もありますし、地政学的にも非常に重要な立場にある。ただ、民主化プロセス、これを考えたときに、今後どうなっていくか、こういったことには注視をしていきたい、こんなふうに考えております。

 いずれにしても、日本として、新たな国、地域の加盟を通じて、TPPのハイスタンダードでバランスのとれた二十一世紀型の新たな共通ルール、これを世界に広めていくということが必要であると思っておりまして、これはTPP参加十一カ国の共通の思いでもあると思っております。

 その意味で、関心を持ってくれている国、中南米でいいますとコロンビアであったり、さらにはタイ、そしてまた台湾、そして英国、こういった国に対して必要な情報の提供を行っていきたいと思っております。

 私も、ゴールデンウイーク、タイの方を訪問させていただきました。そして、経済政策全体を統括しておりますソムキット副首相とも直接意見交換をしてきたところでありまして、委員御案内のとおり、ソムキット副首相、大変な知日家でありますし、日本の温泉のことは日本人以上に知っている、こういう状態でもありますけれども、副首相としては、タイ国内の産業の高度化に向けた改革を進めていく上でも、TPP11にぜひ参加したい、こういった強い意向が示されたところでありまして、我が国としても、情報提供等、タイの取組に対して必要な支援を行うこととしたいと思っております。

 先ほど澁谷調整官の方からも答弁をさせていただきましたが、新たな国、地域の加盟につきましては、発効後に正式協議が開始されることになりますが、そのための対応方針について、十一カ国の間で認識を共有、確認しておく必要があると思っておりまして、この七月にも改めて首席交渉官会合を東京で開催したい、このように考えておりまして、今後とも我が国が主導して必要なさまざまな調整も行っていきたい、こんなふうに思っております。

浜地委員 大臣、ありがとうございました。

 大臣とソムキットさんの会談が行われて、恐らく相当、多分意見が合ったんじゃないかなというふうに感じております。何となくお二人は合うんじゃないかなというふうに感じているところがございまして。

 これからタイも選挙があって、その中で、やはりこういう国際スタンダードにプロットされることが、今後、民主化政権ができたときに、やはりまたそれをひっくり返すようなことはできないんだという一つのキーになろうかと思っておりますので、そういう意味で、私も、このタイのTPP参加、ぜひ積極的に進めていただきたいというふうに思っております。

 あと残り五分になりましたので質問を少し飛ばしますが、今現在、米国が発動しております鉄鋼、アルミの追加関税措置についてちょっと聞きたいと思っております。

 鉄鋼については約二五%、アルミ製品については一〇%の追加関税をしているわけでございますが、これについては、結局のところ、我が国の鉄鋼やアルミ製品の競争力が強くて、結果的にはアメリカ経済にデメリットであるというような見方もございます。そういったことがしっかりアメリカ経済がわかることによって、やはり自由貿易が大事なんだというふうに認識をしていただきたいなと私は思っております。

 じゃ、具体的には、我が国のどのような製品分野において競争力があるのか。全体の報道ではわかるんですが、具体的にお答えいただきますとまたイメージが湧くものですから、端的に外務省にお答えいただきたいと思います。

林政府参考人 お答えいたします。

 米国の追加関税措置に関しまして、日本からの輸出品が米国の安全保障に悪影響を及ぼすことはなく、むしろ、高品質で多くが代替困難な日本製品は米国の産業や雇用にも多大な貢献をしているというのが我が国の立場でございまして、しかるべき説明もしてきているところでございます。

 そのような製品の例といたしましては、例えば、我が国から輸出されている深海油田の井戸を掘るためのパイプ、あるいは自動車部品用の特殊な鋼材といったものがございまして、米国内でも高い競争力を有する品目と認識しているところでございます。

浜地委員 そうですね。余り具体的な品名を言うとということでしょうが、私が聞いている限りによりますと、もう日本製品を使わないと立ち行かない産業もあるというふうに聞いておりますので、ぜひそういったところをアピールしながら、この追加関税措置の撤廃もそうでございますが、やはり自由貿易に移っていくというところを説得していただきたいなと思っています。

 最後の質問にしたいと思いますが、RCEPの交渉状況についてお聞きをしたいと思っています。

 皆さんも御案内のとおり、RCEPには中国、韓国が入る予定、またインドもこれに参加をする予定でございます。

 中国に対しましては日本の貿易量の二一・六%を占める、また韓国は五・七%を占めるということでございますので、かなりこれは日本企業にとっても大きなメリットがあろうかと思っております。

 実際、RCEPが締結されましたら、SPSですね、いわゆる植物の検疫の措置等もこの分野の項目に入っているというふうに聞いておりますし、また、知財につきましては、この前、ドラえもんの商標が、北京の裁判所が一応無効と判決をしましたが、やはり、日本企業にとっては、中国の知財の扱い方は非常に懸念するところでございます。

 そして、何といっても、先ほど高木委員からもお話ありましたが、電子商取引のルールについては、中国は越境データの取扱いについては厳しいルールを課しておりますので、これについてもやはり自由化というものが求められるだろうというふうに思っております。

 そこで、RCEPが締結されれば、さまざまな分野において我が国にとってのメリットは大きいと思いますが、ただ、なかなか難しいハードルもあろうかと思っていますが、今の交渉状況について、林さんの思いも含めて聞かせていただければと思っています。

林政府参考人 お答え申し上げます。

 RCEPは、私が課長をしていたときに交渉を始めた交渉でございまして、特別な思い入れもございます。

 委員御指摘のとおり、RCEPには、知財、SPS、電子商取引といったさまざまな分野のルールが含まれてございます。このRCEPの締結によりまして、世界の成長センターである東アジア地域における貿易の自由化、円滑化並びに効率的なサプライチェーンの構築が図られることは、日本の企業にとってもメリットが大きいと考えてございます。

 現在のRCEPの交渉状況について申し上げますと、各分野の論点が絞り込まれつつある状況にございます。また、七月一日には東京で中間閣僚会合を開催いたしまして、議論をリードしていくという所存でございます。

 我が国は、年内妥結を目指すASEANを支持しておりまして、引き続き、包括的でバランスのとれた質の高い協定の早期妥結を目指しまして、精力的に交渉を進めてまいりたいと思います。

浜地委員 ぜひ交渉妥結に向けて頑張っていただきたいと思っています。

 以上で終わらせていただきます。ありがとうございます。

山際委員長 次に、濱村進君。

濱村委員 公明党の濱村進でございます。

 午前中最後の質問となりましたが、よろしくお願いいたします。

 まず、TPP11でございますが、もともとTPPとして十二カ国でやってきたわけでございますが、残念ながら、米国、アメリカが抜けたということでございます。このこと自体は、残念は残念であるというふうには思うわけですが、引き続きアメリカに対しては、二国間のFTAの話とかもございますけれども、日本としては、TPPが最善であるという、このスタンスは変わらないということでございます。

 その上で、TPP11、幸か不幸か、アメリカは抜けてしまわれたわけでございますけれども、十一カ国になります。この十一カ国、どちらかというと、この締約国は成長余力のある国々が多いというふうに思っておりまして、日本の輸出産業からすれば、この締約国の成長をしっかり取り込んでいければ日本の企業にとっても成長を見込めるのではないかというふうに思っておりまして、これはチャンスでありメリットであるというふうに考えておりますが、越智副大臣の御所見をお伺いしたいと思います。

越智副大臣 TPP11のチャンスについて御質問いただきました。

 TPPは、これまでの二国間EPAと違いまして、新しい巨大な一つの経済圏をつくり出していくものでございます。経済効果の分析におきますと、全体を見ますと、GDPで七・八兆円、また、雇用でいきますと四十六万人の増加ということが試算で出されております。

 具体的な効果について申し上げますと、日本以外の参加国における工業製品の九九・九%の関税が撤廃されることとなります。日本の中小企業等にとっても輸出拡大の効果が期待されるということが言えると思います。また、農業者にとりましては、品質が高く、海外でも人気の高い日本の農産品の販路を拡大する新たなチャンスをもたらすというふうに考えております。

 また、ビジネス環境を改善するさまざまなルールとして、進出先での技術移転要求の禁止といった投資ルールの強化、通関手続の迅速化、知的財産の一層の保護、コンビニなどサービス業の出店規制の緩和などが盛り込まれたわけでございます。この結果で、中小企業を含む日本企業の海外展開が後押しされるということも期待しているところでございます。

 まずは、TPP11の早期発効を実現するとともに、中小企業の海外展開支援、農林水産業の体質強化策など、TPP等関連政策大綱で取りまとめました施策を着実に実施していくことで、これらの効果を最大限実現していきたいというふうに考えているところでございます。

濱村委員 ありがとうございます。

 今、副大臣のお話で、中小企業にとっても輸出拡大の効果が見込めるということでございます。これは本当にぜひやっていただきたい、というよりも、やっていきたいというふうに思うんですが、地元、私は兵庫でございますが、地元でこういう話をすると、なかなか皆さん、ぴんとこられていないというような状況もございます。

 そういう意味でいうと、大きく二通りぐらいあるのかなと思っておりまして、まず、知財に関して申し上げますと、中小企業の皆さん、外国の出願に要する費用とかはなかなか高額で手を出しにくいというような悩みがあったりとか、あるいは、権利侵害へ対応するための費用は高額であると。なかなか、大企業のように自前でそういう知財部門とかを持っていないということもありますので、難しい点もあろうかとは思います。

 こうした課題について、政府としてしっかり取組をお願いしたいと思いますが、どのような取組を行うのか、確認したいと思います。

小山政府参考人 中小企業が海外展開を行う上で、特許を始めといたしました知的財産をいかに海外において取得し、活用、更に保護していくかというのは重要な課題であるというのは私たちも認識しております。さらに、中小企業の多くにつきましては、やはりそのための資金とか人材、情報というのは不足しているのではないかという状況にあるということも認識しております。私たちとしても、そのような中小企業の知財活用へのきめ細かな支援が重要だと考えております。

 このため、特許庁におきましては、海外展開を目指す中小企業の方々を、情報収集から侵害対策に至るまで、それぞれの段階で支援しております。

 簡単に御説明いたしますと、まず、情報収集につきましては、全国四十七都道府県に設置しております知財総合支援窓口というところにおきまして、弁理士、弁護士等の専門家が海外進出の際の知財のリスクや外国出願の手続について情報提供や助言を行っております。

 また、実際に出願の際には、翻訳や弁理士等の代理人に係る費用の半分を補助しております。

 また、海外で知財を侵害された場合の対策といたしましては、模倣品が出回ってしまった場合には、その製造販売事業者に警告状を送るための調査費用、さらに、悪意の第三者が自社ブランドを先取りしたといったような場合には、先取りされた商標権を取り消すための審判請求等の費用などの一部について補助をしております。逆に、外国企業から訴えられるリスクにつきましては、外国での知財訴訟に係ります弁護士費用を賄います保険の加入のための費用の一部を補助しております。

 いずれにしましても、今後とも、中小企業の方々が海外でも知的財産をしっかりと活用し保護できるよう、引き続き支援をしていきたいと思っております。

濱村委員 非常に丁寧に御答弁いただきまして、ありがとうございます。非常に重要な施策に取り組んでおられますので、こうしたメニューがありますよということを知らしめることも重要かなということを改めて感じました。

 その上で、もう一つ、融資について確認したいんですね。

 中小企業といっても、なかなか、即座に向こうに行って資金調達できるかというと、そうではないんだろうというふうに思いますが、その融資あるいは資金調達の活動の課題についてはどのように取組を行うのか、確認します。

高島政府参考人 お答えいたします。

 今委員から御指摘のございましたとおり、中小企業が積極的に海外展開をしていく上で、資金繰りが課題として挙げられることも多くなってございます。中小企業の海外展開を支援する上では、円滑な資金調達環境の確保ということが重要な課題であるというふうに認識をいたしております。

 このため、日本政策金融公庫におきまして、海外展開でありますとか海外展開事業の再編に取り組む中小企業が必要とする資金に対する融資を行ってございます。また、中小企業の海外に設立しました海外現地法人などが日本政策金融公庫の提携先である海外などの金融機関から円建てではなく現地流通通貨建てで借入れを行うといったことに対しましては、債務を保証するといったことも行っております。

 これらによりまして、海外展開に取り組む中小企業の円滑な資金調達を支援しているところでございまして、引き続き中小企業の海外展開に伴う資金調達を後押ししまして、中小企業の海外展開を一層促進してまいりたいと考えております。

濱村委員 国内においてはなかなか海外現地金融機関との対話ができるわけじゃないので、実際どのようなことができるかというところはまだまだ不安感があろうかと思います。そういったところも丁寧に話ができる状況もつくっていただきたいというふうに思っております。

 続きまして、凍結項目、二十二項目あるわけでございますけれども、その中で何点かお伺いしたいと思っておりますが、まず技術的保護手段についてお伺いします。

 これは凍結されたわけですけれども、当初言われていた技術的利用制限手段の定義規定を新設して、当該手段を回避する行為をみなし侵害とする規定を設けるというような改正、これ自体はやるのかやらないのか。ちょっとどちらか、まず確認をしたいと思います。

澁谷政府参考人 お答え申し上げます。

 TPP11では、TPP協定の十八・六八条、技術的保護手段の規定が凍結されております。著作物等について、許諾されていない行為を抑制する効果的な技術的手段について、これを権限なく回避する行為また回避することを目的とした装置等の製造、サービスの提供等の行為に対して、民事上、行政上の救済措置を講ずること、また、故意かつ商業上の利益又は金銭による利益のためにこれらの行為が行われた場合には刑罰の対象とする、これが十八・六八条の趣旨でございまして、この規定が凍結されたことによりまして、締約国はこのような技術的保護手段についての救済措置等に係る義務を負わないということになります。

 一方で、先ほど申しましたとおり、TPP11協定において凍結されることになった事項も含めて、我が国としては凍結項目も含めてTPP12協定の内容について全て実施するということでございまして、御指摘の技術的保護手段に関する事項についても今回の国内法において改正を行うこととしているところでございます。

濱村委員 国内法ではしっかり改正するということでございました。

 その上で、確認したいんですけれども、TPP11協定の中では凍結したということになりますので、そういうことであれば、我が国から輸出するような場合についてはなかなか、検討をしなければいけないことがあるんじゃないかと思っておるんですが、例えば、映画であったり映像コンテンツ、こういうものを海外に出していく場合に、違法コピーできないようにするようなコピーガード、これが破られてしまうようなことが起きてしまうんじゃないかと思っているんですね。

 そうなると、海賊版のコンテンツが販売されたりするという懸念があるのではないかと思うんですが、いかがでございましょうか。

澁谷政府参考人 お答え申し上げます。

 先生の御指摘は、海外における海賊版コンテンツの蔓延等についての御懸念ではないかと思いますが、確かにアクセスコントロールの回避というこの十八・六八条、権利者の適切な保護を図る観点から極めて重要なものだというふうに私どもは認識しているところでございます。

 今回、11協定では凍結をされましたが、我が国においては本事項についても制度改正をする。これは、制度が未整備となっている国々に対しても率先して働きかけていく、そういう趣旨のあらわれだというふうに御理解いただきたいと思います。

 なお、知財の協定の中に、十八・五八条、これは複製であります、それから十八・六〇条は譲渡でありますが、これについては凍結の対象になっておりません。したがいまして、各国におけるいわゆる海賊版の製造、複製、販売、譲渡については民事責任、刑事責任を問い得るということでございます。

濱村委員 民事責任も問い得るということでございますので、そこは一定、理解いたします。

 その上で、もう一点確認したいんですが、インターネットサービスプロバイダーでございますが、これも凍結ということでございますが、これは、内容についても御説明いただいた後に、この凍結の影響による懸念について確認したいと思います。

澁谷政府参考人 インターネットサービスプロバイダーの規定でございますけれども、これは、我が国とアメリカで若干制度の仕組みが違いますけれども、権利侵害の疑われるような内容がインターネット上にアップされた場合に、プロバイダーがどういう形で責任を負うかということについて定めをしたものでございます。

 いわゆるアメリカ型のやり方、それから日本流のやり方についてもTPP協定上は読めるような形になっているところでございますが、これを各国でも広げて、きちんとした権利保護を図ってほしい、こういう趣旨でございますが、今回この規定が凍結されまして、導入義務を負わなくなるわけでございますが、まず私どもの、日本としては既にそういう制度を持っているということ、それから、実は、多くの国で既にそのような制度を有しているか、あるいは他の条約に基づいて制度の導入義務が課されているということでございますので、凍結の影響はさほど大きくないというふうに考えているところでございます。

濱村委員 今の技術的保護手段においても、あるいはインターネットサービスプロバイダーにおいても、日本としては国の基準としてしっかりとやっている部分があるんですが、それを今回、締約国となっているような国々に要請するのは、なかなかまだハードルが高かろうというところもあろうかと思います。ぜひとも、こうしたところを主導権を握って、太平洋地域における情報のやりとりにおいて主導権を握っていっていただきたいというのが私の趣旨でございます。

 その上で、少し電子商取引についてお伺いしたいと思っておるんです。

 先ほど来質問の中にも少し出てきておりましたけれども、データローカライゼーションの防止ということは規定されておるわけですね。このことを端的に言えば、インターネット上のサービスとかで、そのサービスを提供する外国の国内で物理的なサーバーを置きなさいよというような要請がデータローカライゼーションだというふうに思いますが、このこと自体は非常に大事なことだと思っています。

 ただ、そうはいっても、RCEPとか、中国が参入するような枠組みの協定を検討するに当たっては、少しハードルになる可能性もあるんじゃないかなと思っております。影響についてどのようにお考えなのか、御所見をお伺いします。

澁谷政府参考人 お答え申し上げます。

 先生御指摘のとおり、TPP11の電子商取引のチャプター、これは一つの目玉だというふうに12のときに御説明をしていたところでございますが、コンピューター関連設備の自国内設置要求の禁止といったような先進的なルールが盛り込まれたところでございます。

 この規定は、いわゆる電子商取引のみならず、IoT、ビッグデータの活用など、我が国が強みを持つ物づくりの分野でも極めて重要なものでございまして、我が国の産業界もこのルールを高く評価している、また、TPP11の凍結項目にはぜひ入れないでほしいといったような要望もいただいてきたところでございます。

 結果的に、電子商取引の規定は全て維持されているということでございます。国際的枠組みにおける今後のルール形成における規範とすべきといったような形で私ども考えておりますし、産業界もそのような要望をしているところでございます。

 一方、先生から御指摘いただいた中国でございますが、昨年六月に施行したサイバーセキュリティー法におきまして、重要情報インフラ運営者に対し、個人情報それから重要データの中国国内での保存義務を規定しているというふうに承知しているところでございます。

 いずれにいたしましても、TPP11協定において盛り込まれたこうした先進的な規定を一つの規範といたしまして、他の通商協定や国際的枠組みにおけるルール形成を目指していきたいと考えているところでございます。

濱村委員 ありがとうございます。

 最後に、インターネットにおける海賊版対策について伺います。

 今般、知的財産戦略本部検証・評価・企画委員会コンテンツ分野会合で議論されて、日本の漫画やアニメの著作権を侵害する海賊版サイトについては接続できないようにするということを検討されました。これは、平成三十年四月十三日に、知的財産戦略本部、知財本部と犯罪対策閣僚会議として、短期的な緊急措置としてのサイトブロッキングを実施すると表明されましたが、結果的に遮断行為をされる状況には至りませんでした。

 結果論としてはこれはよかったなと私は思っているんですが、法的な整理としてはどういう整理をしたのか、確認をしたいと思います。

住田政府参考人 御指摘のございましたとおり、四月十三日に知的財産戦略本部・犯罪対策閣僚会議におきまして、インターネット上の海賊版サイトに対する緊急対策を決定したところでございます。

 この緊急対策におきましては、運営管理者の特定が困難で、侵害コンテンツの削除要請すらできないような悪質な海賊版サイトが出ているということを踏まえまして、まず、こうした特に悪質な海賊版サイトのブロッキングに関する考え方の整理をいたしまして、ただいま御指摘のございましたとおり、法制度整備が行われるまでの間の臨時的かつ緊急的な措置といたしまして、民間事業者による自主的な取組として、三つのサイト及びこれと同一とみなされるサイトに限定してブロッキングを行うことが適当と考えられるという政府としての考え方を示したものでございます。

 この法的整理につきましては、今回の緊急対策におきましては、ブロッキングというのは、憲法第二十一条第二項、電気通信事業法第四条第一項に言う通信の秘密を形式的に侵害する可能性があるわけでございますが、仮にそうだとしても、刑法第三十七条の緊急避難の要件、これは現在の危難があるということと、他の手段を講じてもできないという補充性と言われているものと、法益権衡、この三つの要件でございますけれども、これを満たす場合には違法性が阻却されるものと考えられるとしておりまして、この三つの要件についても検証をしたところでございます。

濱村委員 今、刑法三十七条の緊急避難に当たるという話でありましたが、今の現状からすると、なかなかそうは当たらないねというのは社会一般で言われていることでございます。

 一方で、大事なのは、通信の秘密を侵害するという一方で、正当行為であれば違法性阻却されるということをしっかりと担保していくことだと思っております。

 その上で、今、通信事業者も、例えばメールとかあるいはインターネットを見られるようにするというためには、通信の内容を一部見ているわけですね。そういう意味でいうと、通信の秘密を侵害している。だけれども、インターネット接続のため、あるいは通信を行うためには、IPヘッダーであったりネットワークアドレスとか見なきゃいけないよねということであるので、これは正当業務行為として、違法性阻却されるということになっていますが、何ら法的根拠がないという状況です。これはちゃんと対処をすべきだと思っております。

 ですので、法整備をぜひやっていただきたいと思っておりますが、今回の悪質な海賊版サイトについては、しっかりと法案を検討するとおっしゃっておられるんですね。ですので、ぜひやっていただきたいと思っているんですが、目的と手段を間違っちゃいけないなと思っています。

 目的は、漫画とかアニメとかのそうしたコンテンツがちゃんと、消費者の皆さんに費消されるときに、権利者が適正に利益を得られる状況をつくっていくことが大事である。だからこそ、それを産業政策上位置づけていくということが大変重要であると思っておりますが、この点、経産省、お伺いします。

吉田政府参考人 お答えいたします。

 コンテンツ産業は我が国の強みの一つでございまして、国内はもちろん、国外市場に向けましても、持続的に発展していくための取組ということを行っております。

 御指摘のとおり、コンテンツの権利者やクリエーターの利益を適正に確保するということによりまして、次のコンテンツを生み出すということにつながるものでございます。コンテンツ制作を継続的に行うことができる環境を整備するということは、産業の健全な発展にとって大切と考えております。

 このようなコンテンツ産業の健全な発展を阻害する海賊版ということについて対策を行っていくこと、大変重要でございますけれども、これは、一つの対策を行えばそれで全て解決するというものではございませんで、今御議論いただいております法的措置の検討以外にも、サイト運営者への削除要請だとか消費者への広報活動、あるいは広告出稿抑制など、さまざまな対策を、考えられ得る対策を組み合わせて行っていく必要がございます。

 そういう観点から、関係省庁や関係団体と連携して、経済産業省としても対応しているところでございます。

 権利者やクリエーターに利益を適切に確保し、コンテンツ産業の発展につなげるという観点からも、海賊版対策に引き続き取り組んでまいりたいと考えております。

濱村委員 今、海賊版サイトと言っているのは、要は、著作権料を払わずに無償で、ユーザーもネット上でただで漫画を見られるというわけでございますが、著作権料を払っていれば、そこはビジネスモデルとして、どこかで収益を上げるんだから、成り立っていいですよという話だと思いますが、そういうところが成り立つか成り立たないかというところも、ちゃんとビジネスモデルとして検討をいただきたい。

 もう一個あるのが、漫画家であったりクリエーターであったり、そういう人たちでも、名前が売れているような人以外で、まだまだこれだけでは飯を食えませんという人もいらっしゃいます。そういう人は、あっ、この漫画おもしろいねで、目に触れることこそが大事だというようなお考えの人もおられます。ですので、そういう方々をも生かせるようなことも含めて御検討をぜひお願いをしたいと思います。

 海賊版サイト、これは悪質ですので絶対許しちゃいけないということでありますけれども、これはしっかりと、今は法的整備を行うということでありますが、今般の緊急措置でいえば、ISP事業者に対して遮断をすることを要請はしていませんと。要請はしなくて、自主的な判断にお任せしますよというような話でした。

 これは事業者の自主的判断に任せられるわけですけれども、これは事業者からすれば、訴えられる、訴訟リスクもあるわけですね。一方で、もっと言うと、実際に、とある弁護士さんが訴訟を起こしておられます。そういうことも含めて考えますと、リスクを事業者に負わせるようなことはやめなければいけないというふうに思っております。

 どういう方向で今後の法整備の検討を進められるのか、御所見をお伺いします。

住田政府参考人 今回の緊急対策は、あくまで法制度整備が行われるまでの臨時的かつ緊急的な対応としてのものでございます。

 この臨時的かつ緊急的な対応、法制度整備が行われるまでの間ということで考えておりますので、必要な法制度整備については次の通常国会への提出を目指して検討を行うということを先般の会議でも確認をしているところでございます。

 通信の秘密の問題を含めまして多方面でさまざまな御意見があるということは承知をしておりますので、法制度整備に向けましては、関係者の理解を得ながら、十分な議論を踏まえて、かつ迅速に、関係省庁とともに連携しながら検討してまいりたいというふうに考えております。

濱村委員 来年の通常国会ですね。じゃ、しっかりと検討をお願いします。

 検討する方々の中に、ぜひとも情報法制に詳しいような方も入れていただきたいなというふうにも思っております。

 そうした形で成案を得る中で、データの自由な流通を促進するようなTPPができ、そして、そのTPPの上でさまざまなコンテンツを海外に打って出るというようなことができると、これは大きな大きな日本の産業政策の一つであろうと思っておりますので、取組を更に進めていただきたいとお願いを申し上げて、私の質問を終わります。

 ありがとうございました。

山際委員長 午後一時から委員会を再開することとし、この際、休憩いたします。

    午後零時二分休憩

     ――――◇―――――

    午後一時二十五分開議

山際委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。

 質疑を続行いたします。串田誠一君。

串田委員 日本維新の会の串田誠一でございます。

 きょうは、TPPの関係法律の整備に関して質問させていただきますが、TPPというのは、今回、11、12、あとは、凍結というようなこともあって大変わかりづらいのかなと思います。さらに、一般的には、TPPというと、農業生産物、水産物そして工業生産物の各国の駆け引きというような印象を国民は持たれているのではないかと思うんですが、その中で著作権というものが今回TPPの中でも盛り込まれているわけでございますので、本日は、その著作権に絞りまして質問をさせていただこうと思います。

 その前に、まずは、最近、漫画村だとかの海賊版のサイトでブロッキングだとかの問題がありまして、総務委員会で質問をさせていただいたんですが、そのときの整理の中で、これは総務省で、これは内閣府でというふうに非常に細かく区切りをされているということを実感したわけでございますので、この著作権に関しては、各省、この二つの省が中心となるんでしょうけれども、どのようなことで区分けがなされているのか、まず説明をしていただきたいと思います。

住田政府参考人 御指摘のサイトブロッキングその他に関する点でございますけれども、四月十三日の知的財産戦略本部・犯罪対策閣僚会議におきまして、緊急対策を決定をしたところでございます。

 本件は、いろいろな役所が関連をしております。例えば、知財戦略という観点からいきますと内閣府、電気通信事業法の所管といったような観点からいきますと総務省、その他、著作権法という意味では文科省といったようなところがさまざまに関係をしておるわけでございますけれども、このインターネット上の海賊版につきましては、侵害行為が巧妙化、複雑化をして、被害の深刻化が注目され始めた二〇一六年から、サイトブロッキングを含む対策方法につきまして、知的財産戦略本部で検討を続けてきたところでございます。

 今回の対策に関しましても、海賊版対策の一環として、知的財産戦略本部のもとで、関係省庁と連携して検討を行ったものでございます。

 この検討の過程におきましては、既に児童ポルノに関しまして実施をされておりますブロッキングの考え方を参考としております。この児童ポルノの対策におきましては、通信の秘密との関係で、民間事業者を中心とした法的考え方の整理のもと、総務省の研究会で検討を経た上で、犯罪対策閣僚会議で対策を講ずるということになったものと承知をしております。

 こういった経緯を踏まえまして、今回の緊急対策の取りまとめにおきましては、犯罪対策閣僚会議と、著作権を損なう海賊版サイトの対策という意味で、知的財産戦略本部との合同会合ということで開催をし、決定を行ったところでございます。

 今後の法制度整備を含めまして、関係省庁と十分に連携しながら取り組んでまいりたいというふうに思います。

串田委員 今、たくさん答えていただいたんですが、大まかに、ソフト面といいますか中身に関しては内閣府の知財で、外枠的な、ハード的な部分が総務省というような、私、印象を持っているんですけれども、そんなような感じなのかなと思いますが。うなずかれていないので、そうじゃないのかなと思うんですけれども、ちょっとそんな印象を受けていて、非常に、質問をするにおいても、どこの省庁であるのかというのがちょっとわかりづらいというのがあったものですから、お聞きをさせていただきました。

 ところで、このTPPに関しまして、いろいろ、農業とか、あと工業に関して盛り込むというのは非常にわかりやすいんですが、著作権をこのTPPに盛り込もうとしている積極的な国というのはどういったところなんでしょうか。

澁谷政府参考人 お答え申し上げます。

 TPP12協定のときは、今のチャプターごとに、大まかなチャプターごとにワーキンググループがつくられまして、そのワーキンググループごとに議論がされておりました。

 知的財産のワーキンググループ、かなり長時間議論したわけですが、私も最初からかかわっておりましたけれども、もともと、知財において著作権の保護というのが重要な論点の一つであるというのは割と一般的な認識であるということだったと思うんですけれども、TPP協定の知的財産章において著作権に関する規定を設けること自体については、当初から余り大きな議論にはなっていなかったように記憶しております。

串田委員 そうはいっても、今回凍結ということで、アメリカが加わらなかったことによって凍結というような取扱いというのが行われるということは、凍結されているものが著作権の中でも二つに分かれる、これは後でちょっと触れられれば触れたいと思うんですが。

 そういう意味では、アメリカが加わることによって、仕方ないという国があるんだと思うんです。だけれども、アメリカが入らない限りは、著作権についてはとりあえずは凍結をしてもらわないとギブ・アンド・テークにならないぞ、そんなような気がするんですけれども、この保護期間を、著作権の保護期間、五十年から七十年になるわけですけれども、この延長を望んでいない国というのはあるんでしょうか。

澁谷政府参考人 お答え申し上げます。

 交渉の中において、どこの国がどういう立場だというのはなかなか申し上げにくいところがあるわけでございますが、端的に事実だけ申し上げますと、TPP参加国のうち、アメリカ以外で、オーストラリア、シンガポール、チリ、ペルー、メキシコ、これらの各国は、既に著作権の保護期間が七十年以上、こういう制度になっているということでございます。

串田委員 そうしますと、今の国以外が、逆に言えば保護期間を延ばしたくないということで、凍結になるのかなという気がいたします。

 そういった意味では、その国は、恐らくアメリカに対する輸出というのがそのほかで見込まれる。その採算が合わない以上は著作権の延長というものに応じるメリットがないというふうに考えているのかなとちょっと思うんですけれども。

 この凍結の中で、国内に関してだけ保護期間を延ばす、我が国が延ばす積極的な理由というのは何なんでしょうか。

澁谷政府参考人 お答え申し上げます。

 TPP11協定において凍結されることになった事項につきましては、我が国として制度整備を行う国際的な義務を負わないということでございますけれども、まず第一に、我が国は、TPP11協定の交渉において、12のハイスタンダードな内容を維持すべきという立場で臨み、凍結項目はできるだけ限定された数にするべきだという形で、まさに、我が国がそういう形で議論を主導してまとめたということが第一点目でございます。

 二点目といたしまして、この11の交渉を主導してきた我が国として、12協定のハイスタンダードを維持するというこの立場を一貫して具体的に実践することによって、いずれ将来、凍結項目を解除する、そういう議論を十一カ国で議論する際に、我が国が既に国内の制度を整備済みだということをもって議論が主導しやすい、こういう効果も期待されるというのが第二点目でございます。

 第三点目は、凍結項目について、各国の判断で実施することが禁じられたわけではないということなので、あくまでも各国の自主的な判断に委ねられているということで、我が国としては、11協定発効を機に、凍結項目を含む12協定の内容について、必要な制度改正を行うということにしているわけでございます。

 著作権の保護期間について特に申し上げますと、この延長をする、七十年にするということでございますが、我が国が保護期間を延長すると、既に七十年以上としている、かつ相互主義を採用している多くの国において、我が国の著作物の保護が延長されるというメリットがあります。

 また、長期間にわたり得られる収益によって、新たな創作活動なり、新しいアーティストの発掘、育成が可能となり、文化の発展に寄与するといったようなメリットが期待されるということをもちまして、我が国としては、今回の法改正におきましても二年前と同じ内容にしているところでございます。

串田委員 その趣旨はよくわかりました。

 一方、凍結というのが、保護期間以外にアクセスコントロール、違法視聴を防止するというような部分もこれは凍結されたということなんですが、保護期間というのは各国でいろいろな考え方があるんだと思うんです。しかし、アクセスコントロールというのは違法視聴ということでありますので、これは各国ともに、このアクセスコントロールというのは当然締結されていっていいのではないかなと思うんですが、これが凍結されている理由というのは何だったんでしょうか。

澁谷政府参考人 お答え申し上げます。

 今回、二十二項目凍結をされました。それぞれの項目によって凍結を主張する国の理由が違うんですけれども、制度改正したくないとか嫌だとかという端的な理由というよりは、むしろ、国内で既に制度がある、あるいは、将来制度改正をする意思はあるけれども、その国内でやろうとしている制度が本当にこのTPP協定にぴったりと符合するものかどうかということの自信が持てないので、とりあえず凍結してほしいといったような主張をする国が実はかなりあったわけでございます。

 TPPの場合は、協定違反となりますと、最終的に経済制裁まで紛争処理で行ってしまうということになりまして、そういうことをかなり懸念している国があったというのは一般論として申し上げたいところでございます。

 その上で、今回のTPP11のアクセスコントロールについて凍結をしたわけですが、これは、先ほど午前中の質疑でもお答えいたしましたが、私どもとしても、権利者の適切な保護を図る観点から極めて重要な規定だというふうに認識をしているところでございます。今回凍結をされましたが、我が国では本事項についても制度改正をする、よってもって、この制度が未整備となっている国に対しても、引き続き我が国が率先して制度整備を働きかけていきたいと思っているところでございます。

 なお、凍結をされて、各国において必ずしもこのとおりの制度改正がなされなくても、凍結されていない項目の中に複製権あるいは譲渡権についての規定が残っておるところでございますので、各国におけるいわゆる海賊版の製造、複製、販売、譲渡については民事責任、刑事責任を問えるというふうに考えております。

串田委員 そういうものを締結したとしても、国内でそれを整備する自信がないというような部分が説明がありました。アクセスコントロールということを、国として防御できない、そういう趣旨なのかなとは思うんですが。

 一方で、非親告罪が今回凍結が外れたというふうにお聞きしております。これは、かなり国が、著作権を侵害したことに対して積極的に乗り出してその捜査なりをしないと、非親告罪というのは実現できないのかなとは思うんですけれども、これは、アクセスコントロールは各国においては整備をする自信はないといいながら、非親告罪化ということに関しては各国は既になされているのか。あるいは、それを行う自信が各国にあるということで、この凍結がアクセスコントロールはされ、非親告罪化というのは凍結が外れる、こういう理解でよろしいんでしょうか。

澁谷政府参考人 お答え申し上げます。

 著作権等侵害罪の非親告罪化につきましては、実は、十二カ国の中で既に多くの国が非親告罪となっているところでございまして、むしろ、これの改正に恐らく国内で一番大きな議論になったのは我が国ではないかと思います。私の部屋にも随分、漫画家の方がたくさん交渉中にいらっしゃいまして、御意見をお聞きした記憶がございます。

 既に多くの国でそういう制度になっているということに加えまして、最終的な規定の中に、非親告罪というのは原則にはなりましたが、適用範囲を市場における著作物、実演又はレコードの利用のための権利者の能力に影響を与える場合に限定することができるという注が設けられたということをもちまして、今回はこれは凍結ということにはならなかったということでございます。

串田委員 今、そういう交渉過程を聞くことができましたので、少し合点がいったかなという気はするんですけれども、国内において非親告罪化というのは大変議論がなされていたわけでございます。

 一方、国内における非親告罪も、コミケだとかパロディーに関してはこれは非親告罪化から外れるという答弁が、まあ法案的には明確に書かれているわけではないんでしょうけれども、そんな答弁がなされているとお聞きしているんですが、この点、ちょっと通告はないんですけれども、諸外国も、このコミケだとかパロディーというのは国内と同じように除外規定というような形で設けられているんでしょうか。

永山政府参考人 済みません、事前に通告がなかったもので、詳細については把握しておりませんけれども、恐らく諸外国では一般的に、先ほど申し上げた、TPP12、十二カ国中、非親告罪の国が、ベトナム、日本を除いて全て非親告罪ということでございますので、基本的には例外はないというふうに承知しておりますので、それぞれ、可罰的違法性といいますか、その立件といいますか、裁判に訴える過程でそういうものとのバランスをとっているのではないかというふうに考えております。

串田委員 そこの部分をちょっと懸念しているのは、国内ですごく議論がなされたというのは間違いないわけでありまして、その際、コミケだとかパロディーはどうなるか、そういう議論がある中で、コミケはこの非親告罪の中には入らないというようなことが明らかになったということもありまして、コミケファンというのは大変安堵したという部分もあるところでございます。国内的にいうと、そういう意味では、著作権者、そういったような活動をされている方からすると、非親告罪というのは大変憂慮すべき事柄であった部分の駆け引きの中で、コミケというものが外れるというようなことで、かなり安心したという部分があるわけでございます。

 一方、今お話を聞きますと、TPPを締結した国に関しては例外がないという部分がございますので、そう考えますと、諸外国の著作物に関しては非親告罪化でこちらの著作物に関してもいろいろと厳しく対応をされてしまって、国内でパロディーだとかコミケは非親告罪化されていないというような扱いの中で、TPPが締結されると諸外国は違う扱い方がなされるというようなことが出てきてしまうのかな、そういうような部分はいろいろこれからの中で配慮していただきたいというような気がいたします。

 次に、アクセスコントロール、先ほどちょっと触れましたけれども、今回国内整備をしたということなんですが、ちょっと違和感を感じたのは、違法視聴をこれまで国内で整備されてこなかったというのがすごく不思議なんですが、これは何か理由があるんでしょうか。

永山政府参考人 お答え申し上げます。

 平成二十四年の著作権法改正におきまして、アクセスコントロール技術の一部、DVDとかに施されております暗号型の技術でございますが、それを平成二十四年の改正で著作権法における規制の対象に追加いたしました。

 その際の検討過程において、今回TPPの整備法で新たに規制の対象にいたしますアクセスコントロール機能のみを有する保護技術についてもそのとき検討の対象になりましたけれども、平成二十四年当時、保護の対象にすべきだという積極的な御意見もありましたが、公正な利用と権利の保護とのバランスを図りながら制度のあり方を検討する必要があるというふうにされまして、二十四年では結論を得るには至らなかったという経緯がございます。

 今回、TPP12の協定の交渉の妥結を受けまして、改めて議論を行いました。その際には、やはりアクセスコントロールの回避によりまして権利者の保護されるべき利益に大きな影響が生じているとか、国際的な制度の調和という観点、また、今回の改正では、著作物の公正な利用とのバランスに留意するという点についても、そういう点に配慮した制度設計というものについて成案を得ております。

 そういうことを踏まえまして、今回、TPP協定の締結に伴う整備法において対応するということにしたものでございます。

串田委員 海賊版の規制についてお聞きをしたいと思うんですが、国内におきましては、ついこの前も議論がなされたわけでございます。通信の秘密を侵すのではないかというような議論もあるんですが、一方、アメリカ、今回はTPP11に入らないということですけれども、将来的にFTAとか、そういったような形で著作権の問題というのもやはり議論をしていかなければいけない中で、米国は、CLOUD法、要するに、データがサーバーを通過するときに米国政府の大きなクラウドの中を通過するということで、政府がそれを閲覧することができるというようなCLOUD法というのが設けられているわけでございます。

 そういった意味で、このTPPが締結されることによって、将来的にそのような各国間の海賊版なりの対応の仕方についての規制というのが同一化していく、要するにスタンダード化されていくのかどうか、この点についてはいかがでしょうか。

永山政府参考人 今委員からアメリカにおけるCLOUD法の動きがございましたが、今回のTPP協定の中では、海賊版対策を含む民事上、刑事上の手続について規定をされ、それがTPPのルールとして各国で採用されるという意味では、共通化していくといいますか、各国で採用されていくということになろうかと思いますが、今御指摘のアメリカにおけるCLOUD法につきましては、まだ文化庁として詳細を承知しているわけではありませんけれども、文化庁として現時点でそのような制度の導入に関する要望とかニーズは把握していないので、我が国として、文化庁として、現時点でそのような、採用するという考えは持っておりません。

串田委員 著作権というのは大変デリケートなことでございますので、しっかり国内においても検討していただきたいと思います。

 終わります。ありがとうございました。

山際委員長 次に、玉城デニー君。

玉城委員 自由党の玉城デニーです。

 環太平洋パートナーシップ協定の締結に伴う関係法律の整備に関する法律の一部を改正する法律案、質問をさせていただきます。

 実質、特別委員会ではなく常任委員会、この内閣委員会での審議はきょうから始まったばかりといいますか、いよいよ、前のTPP十二カ国ではなく、アメリカ抜きのTPP11については、しっかりとその経緯ももう一度再確認をしつつ、では、我が国にとってこのTPP11がどのようなものになるのかということを、私は丁寧に審議を進めていく必要があるのではないかというふうに思っております。

 二〇一〇年、当初八カ国から始まったTPP交渉に、二〇一三年七月から日本が加わりました。以降、参加予定国が十二カ国になり、政府は、二十一世紀型の新たなルールを構築し、世界のGDPの約四割、人口の一割強を占めるアジア太平洋、この経済圏を取り込むことによって、経済効果で実質GDPを二・五九%、約十四兆円押し上げ、雇用を一・二五%、約八十万人増加させる見込みであると当初うたっておりましたが、今回のTPP11では、実質GDPが二・五九%から一・五%、経済効果が十四兆円から八兆円、さらに、雇用の効果が一・二五%から〇・七%、八十万人増加させる見込みが四十六万人と、ほぼ半分になっている。それだけアメリカとTPPとの関係は、非常に大きな、その経済力の面から見ても大きいものであったであろうというふうに、当初のTPPのもくろみを、もくろみといいますか、考えをそのように受け取っていたわけです。

 その後、二〇一六年二月に署名、二〇一七年一月に国内手続完了を寄託者であるニュージーランドに通知した後、同じ二〇一七年の一月に、米国トランプ大統領が、TPP離脱の大統領覚書を出して離脱を表明いたしました。TPPからの完全離脱という表現を行い、マルチではなく二国間の貿易協定の方が自国にとって有利であるという明確な考え方を示して、TPPから離脱したわけですね。

 その後、十一カ国によるTPP早期発効を目指して議論が再開し、協定締結のための国内法整備として今般この関連法案の審議に至っているという、この流れをいま一度確認させていただきます。

 では、きょうは茂木大臣とそれから堀井政務官にそれぞれ質問させていただきたいと思いますが、そもそも、このTPPは、十二カ国による協定締結とそれに関する国内関連法を整備する必要性があったのでありますが、米国が離脱するTPP11での協定締結であれば、各国の人口及び経済の規模等を勘案し、対応できるための法改正という手段ではなく、新たに個別の法案として提出し、そして更に十分な審議に付すべきではないかというふうに思います。その点から大臣にお伺いしたいと思います。

茂木国務大臣 おととし、平成二十八年の十二月に成立をいたしましたTPP整備法、正確には環太平洋パートナーシップ協定の締結に伴う関係法律の整備に関する法律におきましては、TPPを実施するために必要不可欠なものとして、関連する国内法の規定の整備を総合的、一体的に行ったところであります。

 今回は、TPP12、この協定が有しているハイスタンダードな内容を維持しつつ、十一カ国でTPPの早期実現を図ろうとするTPP11協定の締結に伴う改正でありまして、ハイスタンダードは維持をしながら、そして国内においてもそれに必要なさまざまなルールを整備していくという意味におきまして、確かに、米国が抜けることによりまして、TPP11の全体の経済規模、例えば人口でいいますと八億人が五億人になる、そしてまた経済規模でいいますと十兆ドル、こういうことになるわけでありますが、それでも、守るべきハイスタンダードというものは基本的には変わらないと考えておりまして、主として国内法におきましてはTPP整備法の施行日のみを修正するシンプルな内容であることから、現在提出しているTPP整備法の改正法案、こういう形をとったわけであります。

玉城委員 今大臣がおっしゃったように、確かに、輸出を支える工業製品について、十一カ国全体で九九・九%の品目の関税撤廃が実現し、さらには、高いレベルの自由化が全体的に図れるというのがTPP協定の効果であるというふうに書かれております。

 他方、私が思いますのは、やはりそれは、環太平洋という考え方を当初その構想の中に入れてあった米国がいてこその、このTPP12の考え方だったと思います。

 さらに、本法案の改正についても、私、冒頭申し上げました、きょう、この内閣委員会での審議が始まったばかりであります。この法案について、いわゆる手直しだけをすればすぐ実行できるという考え方もあろうかと思いますが、本来であれば、関係する法案審議のための常任委員会は、例えば内閣、外務、農水など多岐の委員会にわたるわけであります。

 ですから、本来であれば、参考人質疑あり、公聴会あり、各委員会の合同審査などあり、慎重な法案審議を進めることは、国民への説明責任という意味で、立法府の責務を果たしていくという意味で重要な方法ではないかと思うわけですね。これは、理事会の中でのそれぞれのお諮りをお願いしたり、あるいは他の委員会にもそのようなことをお願いして、より慎重で、前回のTPP12のときにどのような議論が足りなかったのかということもしっかり重ねていく必要があるというふうに思うわけです。

 ですから、このTPP11の意義についても、国の重要施策として進めようとする政府並びに所管省庁からは国民に対して説明責任をしっかり果たすべきだと思いますし、政府・与党はそのための努力を丁寧に重ねていただくべきだと思います。

 しかし、今般、このように米国抜きのTPP11、TPP12ですと、全体のGDPでは日本とアメリカで約八割近くのGDPを占めていた、日本のカウンターパートであるアメリカが抜けた後のTPP11を早期に発効させるという理由がおありであればお聞かせください。

茂木国務大臣 TPP11、二十一世紀型の自由で公正な新たな共通ルールをアジア太平洋地域につくり上げる。確かにアメリカは離脱をしているわけでありますが、カナダ、メキシコ、ペルー、チリ、太平洋の反対側の北米から中南米、こういった国も加わっているわけでありますが、全体で、先ほども申し上げたように、人口五億人、GDPでいいますと十兆ドル、貿易総額五兆ドルという巨大な一つの経済圏をつくり出していくものであることは間違いありません。

 そして、そこでは、関税削減だけではなくて、投資先で技術移転などの不当な要求がなされない、そして知的財産が適正に保護されるなどのルールが共有されることから、我が国の例えば中堅・中小企業にとっても多くのビジネスチャンス、こういったものが広がってくるんだと思っております。

 例えば、日本のコンビニ、これは非常に世界の中でもすぐれたノウハウ、こういうものを持っていると言われておりますが、こういったものがアジアに展開していくときに、出店規制等々の問題から、十分その持っている能力を発揮できなかった、こういったことも今後払拭をされていくわけであります。

 アメリカが昨年の一月二十三日にTPPから離脱を宣言した後、十一カ国、議論を重ねまして、米国抜きでもTPPを早期に発効させる重要性について一致し、結束を維持して、この三月の八日にチリのサンティアゴにおきまして署名に至ったところであります。

 自由で公正な共通ルールに基づく自由貿易体制こそが世界経済発展の源泉である、そのように考えておりまして、TPP11によりまして、二十一世紀型の新しいルールづくり、これをまさに日本がリードすることの意味合いは非常にまた私は大きいと思っておりますし、我が国にとっても、そしてまたこれはアジア太平洋地域の将来にとっても画期的な成果である、このように考えております。

玉城委員 確かに、アジアを経済圏に取り込むという意味では、フランチャイズチェーンそれからサプライチェーンの拡大は非常に、グローバル化を目指す企業にとってはその方向性は歓迎であるというふうに思います。

 他方で、やはり経済力、購買力の大きなアメリカが今までは相手であるという考えがありました。アメリカと日本が大部分を占める一大経済圏をアジア太平洋に構築して、経済的、その目的を果たしていくという。

 ということは、TPP12当初の方向性は、このTPP11では若干変化しているのではないかと思いますが、大臣、いかがですか。

茂木国務大臣 新しい共通ルールを発展するアジア太平洋地域に広げていく、さらにそれを世界に拡大していく、こういう将来的な基本方向というのは、当初のTPP12、そして今回のTPP11においても変わっていないと思っておりまして、このTPP、これは生きている協定、リビングアグリーメント、このように言われておりまして、新たな国、地域の加盟を通じて、保護主義が世界的に台頭する、こういった中にあって、TPPの新たなルールを世界に拡大していくことが必要だと考えております。

 こういった観点から、例えば、太平洋同盟でいいますと、もうメキシコが入り、そしてチリが入り、ペルーが入るという中で、コロンビアも参加に強い意欲を持っているわけでありますし、我が国のバリューチェーンそしてサプライチェーンからも重要なタイであったり、また台湾、英国までが参加に対して関心を持っている。こういったことを歓迎したい、そのように考えておるところであります。

 新規加盟の対応方針などについても、我が国が議論を主導して、必要な調整、こういう形をとってまいりたいと考えております。

玉城委員 ハイスタンダードなルールづくりをし、TPPがこの日本におけるさまざまな産業の伸長、伸び行く、その手だてになるということだと思います。

 では、堀井大臣政務官に伺いたいと思いますが、ASEAN十カ国プラス日本、中国、韓国、日本も入っていますが、さらに、オーストラリア、ニュージーランドと別交渉中のRCEPでは、より互恵的でより柔軟なルールを探る交渉がこれまで行われているものと思います。

 例えば、このTPP11の締結、発効によって、中国などは、急ぐ必要はないというコメントを出しておりますし、また、このRCEPに参加するオーストラリアは、日豪EPAより牛肉の関税の削減力はこのTPPで大きくなっておりまして、有利に働くというふうな報道があり、さらに、ニュージーランドは競争力の高い乳製品の対日輸出の拡大をこのTPPで図るということを考えると、RCEPというもう一つの、より大きな、より柔軟な形をつくるものが、TPPの成立、発効によってRCEP交渉の障害になるものは生じないのか、確認をさせていただきたいと思います。

堀井(学)大臣政務官 お答えをいたします。

 TPP11協定は、二十一世紀にふさわしいハイスタンダード貿易・投資ルールの基礎となるものであります。TPP11協定の早期発効は、むしろ、RCEPを含む、我が国が交渉中の他の経済連携協定交渉の加速につながるものと期待をいたしているところでございます。

 我が国としては、アジア太平洋地域における自由貿易を推進すべく、TPP11協定の早期発効を目指すとともに、引き続き、包括的でバランスのとれた質の高いRCEPの早期妥結を目指し、精力的に交渉を進めていく考えでございます。

玉城委員 であれば、このTPP11の動向をきっちりと見据えていくという意味からも、RCEPの交渉もやはり時間をかけてしっかり行っていく必要があるであろう。

 ですから、TPP11を先に先に進めていこう、TPP12である程度もうルールづくりはできているから、凍結する項目を置いておけば、すぐに我が国の利益につながるようなことをやっていこうと思ってはいても、やはりこのTPP11によって高い利益を得られるのはグローバルな企業が中心になるということは間違いないと思います。

 では、中小企業がここからどうやって伸ばしていこうかということを考えると、その前段で、では人材をどうやって確保するか、その資本をどうやって蓄えておくかということの前段階にまだまだ準備と、そのための支援策が必要ではないかというふうに私は思います。

 さて、今回、TPP11の交渉過程で、米国の脱退に伴い凍結する二十二項目、特定の規定の適用の停止を織り込んでおります。米国の不在に伴い停止する項目を絞り込み、TPPの高い水準を維持するという説明がされています。

 茂木大臣、これは、後に米国がTPPに参加、復帰するということを想定若しくは期待しての仮という意味での措置なんでしょうか。

茂木国務大臣 まず、TPP11でありますが、事実関係として、三月の八日に既に十一カ国で合意をして署名をいたしております。そして、既に各国が国内手続を進めておりまして、メキシコは四月の二十四日に既にこの国内手続が終わっております。

 私も、各国のカウンターパートの大臣ともいろいろな協議、電話を含め、しておりますけれども、予想以上のスピードで進んでいる。これは、ゆっくり進むというより、かなりスピード感を持って進んでいるな。これまでTPP11の交渉をリードしてきた日本が、しっかりとこの国会でこのTPPの協定、そしてまた国内法、承認、成立をさせることがTPP11の早期発効につながっていく、このように考えております。

 そして、TPP11の成立といいますか発効によりまして誰が裨益をするか。確かに、大企業、既にグローバル展開をしております。そういった大企業にとってもプラスになってまいりますが、先ほども申し上げたように、中堅・中小企業、これから国内だけではなくて海外、成長するアジア太平洋地域に打って出る、このためにも大きなやはりベースになっていく。そのために、なかなか、大企業と比べて調査能力が低かったり、チャネルを持たない中小企業等々に対してもしっかりした支援策をとってまいりたい、こんなふうに考えております。

 その上で、TPP11については、TPP12協定が有しているハイスタンダードな内容を維持しつつ、十一カ国全てが合意に参加できるバランスのとれた協定が実現をできたと考えております。

 ハイスタンダードを維持する、一方で、各国が合意できるものをつくる。なかなか難しいところはあるんですけれども、余りハイスタンダードにしようと思うとなかなか各国が合意をできない、バランスをとろうとするとスタンダードが低くなってしまう、こういう懸念もあったわけでありますが、早期にハイスタンダードなものが私は実現できた、このように考えているところでありまして、このTPP11の早期発効というものが、委員御指摘のように米国のTPP復帰を促すことにもつながる、これが十一カ国共通の期待であります。

 我が国としては、米国に対して、TPPの持つ経済的、戦略的重要性、そして、間違いなく経済のグローバル化、さまざまな分野での技術革新、一番進んでいるのはアメリカですから、こういった新しいルールのもとでのさまざまな取引が行われる、このことがアメリカの経済やそして雇用にとってもプラスになる、こういったことを改めてしっかりと訴えていきたいと考えております。

玉城委員 では、大臣にもう一点お伺いいたします。

 もし後日、米国がTPP11に復帰を希望する場合、もとのTPP12に戻るように、結局TPP12協定の場合と実質的に同一であることを踏まえ、一部改正を行うことで対応するという説明もあるとおり、やはりアメリカが復帰をするということも、ある程度想定、前提になっているというふうに思います。

 では、新たな加盟交渉国であるアメリカに対して要求を新たに求めることは、先行参加国として可能であると私は思うわけですね。そのことについて、アメリカが戻ってくる場合に、では、アメリカに何がしかの条件を付して、この条件もぜひのんでくださいよという、よりハイスタンダードな要求を求めるということはお考えですか。

茂木国務大臣 これは、TPPの協定上どうなっているかということでありますが、米国が仮にTPPに加盟する際には新規加入の扱いとなる、第五条で加入の規定がございますが、これに規定されているとおり、TPP11協定の締約国と新規加入国との間で合意する条件に従って加入することになる、これが五条であります。

 こうした新規加入協議については、最終的にいかなる条件で加入するかということについて、もともとの加入国と新規加盟国、仮にこれをアメリカとしますと、そことの間での協議の結果、個別具体的に決まっていくことになると思っております。

 ただ、まず、これが発効する、その段階で入っている国の合意がなければ新規加入というものはできない、こういう前提であります。

玉城委員 そのアメリカの合流が、いわゆる二十二項目の凍結とされている、凍結ということはやがて解凍されるということですから、凍結だけをもって、アメリカが参加することによってよりハイスタンダードになるというと、これは逆に日本の農業ですとかさまざまな分野に与える影響が、またその懸念が復活するということになり、国民の激しい反対世論は、その批准し、進めている中にあっても、いろいろな思いが惹起するのではないかというふうに思います。

 では、最後に二点、堀井政務官に伺いたいと思います。

 今般、米国が離脱、不参加したことによる、そのアメリカは、一対一の協定を求める、ウイン・ウインの関係ではなくてゼロサムの考え方でいくんだということがトランプ大統領の考え方ですが、別の貿易協定として、アメリカが望むように、日米FTAなど、交渉をアメリカ側からこの間求められた経緯がありますでしょうか。

堀井(学)大臣政務官 お答えをいたします。

 日米経済対話の議論の中では、二国間FTAに関する米側の考え方が示されております。また、ライトハイザー米国通商代表による連邦会議における発言にもあるとおり、将来的な可能性として、米側にそのような見解もあることを承知をいたしております。

 いずれにいたしましても、我が国としては、TPPが日米双方にとって最善との立場から、どのような枠組みが日米経済関係及びアジア太平洋地域にとって最善であるかを含め、建設的に議論をしていきたいと考えております。

玉城委員 日本側がさまざまな国に対してバイの関係のFTAやEPAを、お互いがウイン・ウインの関係をつくるために交渉するということは、私も反対するものではありません。

 しかし、日米FTAは、米韓FTAを例にとってみても、このTPP以上にアメリカ側の高い要求が日本に求められるということが懸念されているわけですね。

 ですから、TPPのグローバルな関係の中でアメリカが参加をすることの方が、より各国にとっても日本にとってもウイン・ウインの関係に近づけやすい、つまり、ゼロサムの関係ではなくウイン・ウインの関係をつくりやすいという考え方が当初のTPP12だったと思います。

 最後に一問、お聞かせください。

 日本から、では、この日米FTAなど、逆に、TPP11の枠外でFTAなど二国間交渉の用意があるなど、事前協議等について、公式、非公式を問わずアメリカ側に求めた、そういう経緯はありますか。

堀井(学)大臣政務官 外交上のやりとりについてはお答えを差し控えたいと考えますが、その上で申し上げるとするならば、我が国としては、TPPが日米両国にとって最善と考えており、その立場を踏まえ、米側と議論に臨んできているところでございます。

玉城委員 ですから、今最後におっしゃったように、やはりTPPはアメリカ抜きでは語れないです。ですから、アメリカが戻ってくるときに日本がどのような用意を整えておくかということをもっと国内議論でしっかり構築しておかないと、アメリカが入ってきた途端、大打撃を加えられてしまうということがないようにしっかり準備をしなければならないということを申し上げ、質問を終わらせていただきます。

 ありがとうございました。ニフェーデービタン。

山際委員長 次に、福田昭夫君。

福田(昭)委員 立憲民主党の福田昭夫です、まだ入党させてもらったばかりでありますけれども。

 今回、内閣委員会での質問は初質問となります。環太平洋パートナーシップ協定の締結に伴う関係法律の整備に関する法律の一部を改正する法律案について、私も前回質問をする予定でしたが、与党の強行採決で質問をする機会が失われました。したがって、今回は原点に戻って、高度な自由貿易とは何ぞや、それで国益はちゃんと守れるのかという観点から政府の考えをただしてまいりますので、答弁者は簡潔にお答えください。時々茂木大臣にもお聞きしますので、よろしくお願いいたします。

 まず、TPPの基本的な考え方の存廃についてであります。

 一つ目は、生きた協定。

 三年後の見直しが規定されているようでありますが、生きた協定と言われておりますけれども、これは、11に引き継がれるんですか、どうなんですか。

澁谷政府参考人 お答え申し上げます。

 TPP協定におきましては、TPP委員会という委員会があるわけでございますが、協定発効の日から三年以内に、及びその後は少なくとも五年ごとに、締約国間の経済上の関係及び連携を見直す、こういう規定が二十七条の二条一で規定されております。この規定は、TPP11協定でもそのまま組み込まれているということでございます。

福田(昭)委員 それでは、これは常に、三年後、そして五年後、五年後と見直しがなされる、こういうことですね。

 それでは、二つ目ですけれども、ネガティブリスト方式についてであります。

 TPPでは、自由化から除外したい領域、項目を各国があらかじめリストにして出す方式で、ここに挙げられていないものは、本文で適用外とされていない限り、全て自由化の対象となるということでありますが、これも引き継がれておりますか。

澁谷政府参考人 お答え申し上げます。

 TPP協定は、今先生御指摘のとおり、投資、サービスに関しては、原則自由化するという原則のもと、自由化に関する規定を適用しない場合には各国が必要な留保を行う、いわゆる例外となる分野のみを留保表に記載するというネガティブリスト方式を採用しているところでございまして、この方式の留保表もそのまま11協定で組み込まれているところでございます。

福田(昭)委員 そうすると、このネガティブリストを、今回TPPを結ぶに当たって、日本は何か提出したものはありますか。

澁谷政府参考人 日本の部分は全く変更がございません。

福田(昭)委員 そうすると、このネガティブリスト方式は投資分野にだけ該当させて、それ以外の分野は該当しないということですか。

澁谷政府参考人 投資及びサービスの分野ということでございます。

福田(昭)委員 では、投資及びサービス以外はこのネガティブリスト方式は採用されない、こういうことですね。

澁谷政府参考人 投資及びサービス以外、例えば国有企業等についての規定の例外を各国が求める場合は、その国有企業の例外表というものが別途附属書になっておりまして、いわゆる留保表という形で別表になっておりますのは投資とサービスの部分ということでございます。

福田(昭)委員 そうすると、このネガティブリスト方式には農業分野は入っていないんですね。

澁谷政府参考人 あくまで投資とサービスの分野ということでございます。

福田(昭)委員 そうすると、農業の分野には聖域はないということですね。

澁谷政府参考人 投資とサービスについては、原則自由化するということが投資及び越境サービスのチャプターで規定をされているところでございまして、それの例外を留保表ということでございます。

 農業というのは、恐らく物品関税の話を先生おっしゃっているとしたら、それは第二章、全く違うチャプターでございます。

福田(昭)委員 違うチャプターかもしれないけれども、結局、後でまたやりますけれども、そうすると、農業については除外がないということでしょう。違うんですか。

澁谷政府参考人 物品関税、物品貿易の関税交渉を行う中で、そもそも交渉のテーブルから除外するというものはTPPにおいてはなくて、交渉の中でそれぞれの例外をかち取る、こういう交渉方針でございます。

福田(昭)委員 じゃ、それは後の項目でまたやらせてもらいます。

 それでは、三つ目ですけれども、ラチェット条項の適用についてであります。

 越境サービス章にあるラチェット条項は、発効時の各国の規制や法律の自由化水準を低めてはならないという決まりであります。適用される分野では、企業への規制を強化することも、民営化したサービスを再公営化することもできません。これも引き継がれておりますか。

澁谷政府参考人 御指摘のラチェット条項、ラチェットは歯車の歯のことですけれども、投資、サービスについて、先ほど言いましたように、ネガティブリストで留保表を、各国が留保を提出しているわけでございますけれども、今ある制度をそのまま留保したいという現在留保と、将来どういう規制の強化をするかわからないから将来にわたって留保したいという将来留保と、二種類ございます。

 現在留保、すなわち現在の制度をそのまま残したいという形で現在留保に載せているものにつきましては、少なくとも、変更を行う際に現在の内容より後退させない、これがいわゆるラチェットということでございます。

 このラチェットにつきましては、11協定においても組み込まれているところでございますが、ただ、我が国の社会保険サービスのように、将来にわたって規制の強化もあり得るというものは将来留保表に各国とも記載をしている、こういうことでございます。

福田(昭)委員 そうすると、医療保険などについては留保されていると。

 それでは、今回の法案、改正の中で、例えば水道が今回民営化をするということで、多分これはTPPの先取りかと思いますけれども、例えば、今、大体自治体が水道事業をやっていますけれども、上水道事業をやっていますけれども、これが一旦民営化された、そうしたら、もう一度公営化するということはできないということになりますけれども、それでいいですか。

澁谷政府参考人 水道事業につきましては、どちらかといいますと、これは公営サービスということで、政府調達の分野に属するのではないかと思いますけれども、コンセッションも含めて、今回は政府調達の対象にしているところでございます。

福田(昭)委員 基本的に、公的健康保険も政府のサービスですよね。水道事業も、地方自治体ですけれども、公共サービスですよ。しかし、考え方は同じなんじゃないですかね。

 やはり、もし、水道が民営化しちゃった、しかし、これは大失敗だったということで、もう一回公営化する、こんなふうな話になったときに、このラチェット条項で留保していないと戻せないんじゃないですか。どうなんですか。

澁谷政府参考人 留保というのは、制度を留保するものでございまして、水道事業とかそういう形ではなくて、例えば建設業法でありますとか、そういうものについての留保であります。

 ちなみに、TPPの自由化というのは、これは内外無差別、つまり、外国企業だけを締め出すということはいけないということでございまして、それ以外のさまざまな規制は、基本的にはTPP協定に何ら反するものではないというふうに理解しているところでございます。

福田(昭)委員 また後でやりますが、そうやって民営化をして失敗して、もとに戻したというのは、実は郵便局もあるわけです。郵便事業もあるわけですよ、国によっては、しっかり。ですから、これはとんでもない条項なんですよ。しかも、今言っているけれども、自由な貿易というのがいかに弊害が大きいかというのは後の議論の中で申し上げますけれども、私は、とんでもない話だと思います。

 四つ目ですけれども、規制の整合性についてであります。

 各国の規制や法律を、TPPルールとして継続して統一していくためのメカニズムが規制の整合性と言われているようでありますが、既存の規制撤廃だけでなく、規制の立案から、実施、見直しの過程から、利害関係者、多くの場合は企業や投資家の意見が取り入れられ、私たちの知らない間に規制緩和がどんどん進むおそれがある、こんなふうに言われておりますけれども、これも引き継がれますか。

澁谷政府参考人 規制の整合性、第二十五章でございますけれども、これについてもTPP11では組み込まれております。

福田(昭)委員 それでは、例えばですけれども、これも何か既に行われているんじゃないかなんて言われておりますけれども、我が国の例えば医療審議会とか薬価審議会のメンバーに利害関係者として外国資本の製薬会社の代表などが入ってくるということはありませんか。あるんじゃないでしょうか。どうですか。

伊原政府参考人 お答え申し上げます。

 今、先生の方から、薬価の検討とかに外国の方が参加するのかということでございますけれども、現在、中医協におきましては、TPPの議論の以前から、内資、外資を問わず、日本の国内で医薬品を製造、流通、販売されているということもありまして、彼らの意見を聞くという場を設けております。

 したがいまして、TPPのあるなしにかかわらず、当然、意見を聞くということはやっておるところでございます。

福田(昭)委員 意見を聞くということでありますが、それが正式に医療審議会とか薬価審議会のメンバーになっているんですか。どうなんですか。

伊原政府参考人 現時点においては、例えば中医協という中の正式なメンバーにはなっていないと承知しております。

福田(昭)委員 意見を聞くだけならまだしも、もし正式なメンバーになっているとしたら大変な話ですよ。そうならないように注意をしておきたいと思います。

 次に、五番目ですけれども、秘密主義についてであります。

 交渉の過程について、交渉中はもちろん、発効後四年間は非開示のルールが今までありましたけれども、これも引き継がれているんですか。

澁谷政府参考人 TPP12交渉のときは、交渉に参加する際にいわゆる秘密保持に関する書簡というものを取り交わしているわけでございますが、11の交渉のときにはそういうものはございません。

福田(昭)委員 それでは、秘密保持の書簡を取り交わしていない、ルールがないというならば、我が国がどのように交渉してきたのか、その交渉の過程と、それから交渉のために使った費用総額、これを全部開示すべきだと思いますが、開示する用意はありますか。

澁谷政府参考人 TPP11の交渉は、昨年の実質七月から、箱根の首席交渉官会合から始まったわけでございますが、交渉会合ごとに丁寧に情報を公表している、説明をしているところでございますし、ベトナムのダナンで昨年十一月大筋合意をした、あるいは三月に署名をしたというときにも、その概要を公表するとともに、説明会等で、交渉の過程も含めて、合意内容について丁寧に説明をしてきているところでございます。

 今後とも、TPP協定の内容や趣旨、解釈等について丁寧に御説明をさせていただきたいと思っております。

福田(昭)委員 それは、まとめて文書にして国会の方に出しているんですか。

澁谷政府参考人 私どものホームページ上で公開させていただいております。

福田(昭)委員 ちょっとそれは失礼じゃないの、ホームページに公開している。

 やはりこれは国会に、委員会に出してくださいよ、委員会に。委員会に出されているんですか。委員会に出してくださいよ。

 これは、委員長、ぜひ理事会で取扱いをお願いします。

山際委員長 後ほど理事会で協議をいたします。

福田(昭)委員 公表してきたんじゃ、何も隠す必要もないでしょうから、しっかり出してください。私も、途中参加なのでよくわからないところがある。しっかり出してください。

 それでは次に、TPPとTPP11の違いについてであります。

 一つ目は、協定の発効要件と正文についてであります。これについて、違いがあったら教えてください。

茂木国務大臣 まず、TPPの発効要件について、TPP12の協定では原署名国のGDPの要件がありまして、GDPの合計の八五%以上を占める、そして、その少なくとも六つの国が国内法上の手続を完了する必要がありましたが、TPP11協定におきましては、このGDP要件、これを外しまして、少なくとも六又は少なくとも半数のいずれか少ない方の国が締結完了をするというシンプルな発効要件としたところであります。

 また、正文についてでありますが、TPP12協定におきましては、日本は途中から交渉に参加したわけでありますが、日本の交渉参加前から、英語、フランス語及びスペイン語、これが正文という形になっていたわけでありまして、TPP11協定におきましては、TPP12協定の内容を十一カ国で早期に実現するという目標のもと、TPP12協定を組み込む法形式といたしました。そのため、正文につきましても、組み込まれるTPP12協定の正文との継続性、整合性を確保する観点から、これを踏襲することになったわけであります。

 なお、日本語を正文としない条約等におきましても、国会提出に当たり、日本語の訳文を作成、提出してきておりまして、TPP11協定についても同様の対応をとっているところであります。

 さらに、WTO等の……(福田(昭)委員「もういいですよ、簡潔でいいです」と呼ぶ)では。

福田(昭)委員 大臣、日本が主導したというなら、日本語がなくちゃおかしいですよ。それぐらいの日本の国としての矜持がなくちゃ。後から参加したといったって、カナダだって後から参加して、ケベック州のためにわざわざフランス語もつくってもらったわけです。それぐらいのやはりしっかり国の立場というのを主張すべきだと思います。回答は要りません。

 それから二つ目ですけれども、これは時間の関係で意見だけ申し上げますが、ハイレベルな自由貿易だと言っておりますけれども、しかし、TPPは自由貿易ではなく、大企業、投資家の支配する協定だ、こう言われております。こう指摘しておるのは、米国のノーベル経済学賞受賞者のスティグリッツ博士です。TPPのことを、自由貿易協定ではなく管理貿易協定だ、それは大企業や投資家が支配する、管理する貿易協定だ、自由貿易であればたった三ページで済むと。そのとおりですよね。三十章あるけれども、貿易が書いてあるのはたった五章、一章だけでしょう。

 ですから、これはまさに自由貿易協定ではないんですね。まさに一%の大企業と富裕層がさらなる富を得るためのルールだ、こう言われておりますが、TPP11もそれに多分変わりないんだと思いますけれども、後でカナダの北米自由貿易協定、NAFTAが二十年たってどんな結末になっているのか、後でまた議論をしたいと思います。

 それから三つ目、史上最悪の農業潰し協定だと言われております。それは、全く除外規定がないし、七年後、再協議を約束させられております。TPPによる日本の関税撤廃率は九五%で、農林水産品では、二千五百九十四品目のうち二千百三十五品目、八二%が撤廃される。聖域としては、重要品目も百七十品目、二九%、重要品目以外では九八%が撤廃となる。自民党がぎりぎり越えられない一線としていた日豪EPAを上回る、史上最悪の農業潰し協定だと言われております。

 これまでの自由貿易協定、FTAやEPAには、関税の撤廃、削減をしない除外や再協議の対象がありましたが、今回、TPPにはその規定がないわけでありますが、その規定がないのはどうしてですか。

澁谷政府参考人 先生がおっしゃっているのは、関税交渉のときの、即時撤廃、一年後撤廃、五年後撤廃、十年後撤廃のような、そういうカテゴリーの中の一つとして、これは再協議の対象、あるいはこれはそもそも交渉の対象から除外する、こういうようなカテゴリーがないという、規定というよりはそのカテゴリーがないということをおっしゃっているんじゃないかと思いますけれども。

 TPP協定、これはいろいろな、交渉によってそのカテゴリーは異なるわけでございますが、TPP協定の場合は、全ての品目を交渉のテーブルにのせる、これは実は、我が国が交渉に参加する前の日米首脳会談の結果でもそう書かれているわけでございます。全ての品目を交渉のテーブルにつけた上で、その上で、例外をきちんとかち取る、こういう方針で私どもは交渉に臨んだということでございます。

福田(昭)委員 それでは、七年後に、今回は米国が抜けましたけれども、農産物輸出国、米国を抜けば四カ国の要請に応じて、米国も入れて当時は五カ国ですけれども、関税、関税割当て、セーフガードを含む全面的な見直しの要請を、協議を行うことを義務づけられていますけれども、このことはTPP11でも変わりありませんか。

澁谷政府参考人 七年後の再協議の規定は、二年前の特別委員会でもかなり御議論があったところでございます。

 TPPは原則関税撤廃ということでやってきておりますので、物品関税章の中に、例えば十年後撤廃ということで約束したものについては、発効後いつでも、そのステージングといいますか、何年後撤廃という期間を短くしろという交渉、再協議をいつでもすることができるという規定があるわけでございます。

 ところが、日本のように撤廃しないというのがかなりの品目に上るというのは、各国にとっては想定外だったようでございまして、それで七年後の再協議というのが別途また来たわけでございます。

 ただし、一般的に見直し、再協議というのはどこにでもある話でございまして、いずれにしても、国益に反する合意は一切しない、これは二年前の特別委員会から政府として一貫して申し上げているところでございます。11でもこの規定はそのまま組み込まれているところでございます。

福田(昭)委員 そんなことが通用するんですかね。

 だって、今話があったように、いつでも撤廃の協議ができることになっているんでしょう。そのための農業の小委員会も、貿易委員会もできることになっているんでしょう。その中で議論されたときに、農業貿易に関する小委員会ができるんですよね、そのときに、さらなる市場開放の圧力が恒常的にかかったときに、じゃ、それはだめですと断れるんですか。

澁谷政府参考人 農業小委員会などの規定もそのまま組み込まれておりますけれども、TPP委員会及び各小委員会の意思決定は全てコンセンサス方式ということでございますので、我が国が反対する限り合意はできないということでございます。

福田(昭)委員 調査室がつくってくれた資料によりますと、TPP参加国十一カ国の関税撤廃率は、品目ベースでは、カナダ、メキシコ、ペルーが九九%、その他は一〇〇%。貿易額ベースでは、メキシコが九九%、その他は一〇〇%です。日本のみ、品目、貿易額ベースともに九五%です。日本だけですよ、九五%。

 これが各国から、例えば品目ベースでメキシコ、ペルーが一〇〇%になりました、日本以外は全て品目ベースでも貿易額ベースでも一〇〇%ですと言われたときに、断り切れるんですか、どうなんですか。

澁谷政府参考人 今先生から、日本だけ九五%と、大変お褒めの言葉をいただいたというふうに受けとめさせていただきました。

 各国とは、日本は譲れない一線があると、国会決議も常に見せながら交渉してきたところでございます。TPPは総合的な交渉、全てパッケージの交渉でございまして、さまざまなルールについて、各国とも、センシティブな部分については、これはどうしても例外を認めてほしい、そういう関係の中で全体として合意をしたものでございます。発効した後で、日本は撤廃していないからここだけ撤廃しろということが単品で交渉されても、日本としてはそれは断り続けるということだと思います。

福田(昭)委員 あなたもいつまで交渉官でいるかわからないんだよ。そんな無責任なことを言っちゃだめだよ。本当に無責任だね。日本の国益を本当に守ろうという意思はあるのかね。びっくりしちゃう、本当にね。

 大体、これはアメリカの要求で入れた再協議でしょう。しかも、P4の原則って何ですか、P4の原則って。

澁谷政府参考人 P4、それから日本が入る前にもホノルルで確認されましたが、関税は全て撤廃ということでございます。

福田(昭)委員 じゃ、聖域なき関税何々は参加しないと言って、安倍総理の約束と違うんじゃないですか、自民党の約束と。

澁谷政府参考人 そうした原則の中で、大変厳しい交渉の中で例外をかち取ったということでございます。

福田(昭)委員 それは詭弁というもので、もう要するに聖域なんかなくなっちゃっているということでしょう、基本的に、制度として。あとは、わずか少し残っているものがいつなくなっちまうかというだけの話じゃないですか。まるっきり、これは公約違反ですよ。こうやって国民や国会をだましてきた。本当にとんでもない話だ。

 次に、四つ目ですけれども、TPP協定とは別枠で、米国からの米の輸入枠、SBS米は、WTO枠での中粒種、加工用に限定したSBS米は六万実トンとする。それから、国別枠のSBS米、米国は七万実トン、これは、アメリカが入らないから、当然なくなったということでいいんですか。

岩濱政府参考人 お答えいたします。

 中粒種、加工用に限定しましたSBS方式については、TPP協定に記載された国際約束ではありませんが、TPP交渉の機会を含め、さまざまな意見交換の場において国内の実需者や輸出国からの要望があったことを踏まえまして、我が国として、既存のWTO枠のミニマムアクセスの運用見直しを実施することとし、TPPの合意と同時に公表させていただきました。

 こうした経緯も踏まえまして、中粒種、加工用SBSの実施時期については、TPP協定の発効時期とは関係なく、今後、米をめぐる国内外の諸情勢を踏まえながら、慎重に見きわめてまいりたいというふうに思っております。

福田(昭)委員 これはなくなったという話じゃないの。結論だけ言いなさい、イエスかノーか。

岩濱政府参考人 繰り返しになりますが、米をめぐる国内外の情勢を踏まえながら、慎重に対応してまいりたいというふうに思います。

福田(昭)委員 何だよ、それはアメリカに遠慮しているというだけの話じゃないか。ちゃんと、別枠なんだから、それはなくなったということにすべきだよ。いかがですか、大臣。

茂木国務大臣 御意見としては承りました。

 その上で、先ほど福田委員の方からも、自由化の数字、各国挙げていただきましたが、まさに我が国として、攻めるべきは攻め、守るべきは守る、こういったもとで合意した結果があの数字でありまして、しかもパッケージ合意ですから、基本的に、全体でこれで合意をした。その上で見直すということになりますと、コンセンサス方式をとることになるわけでありますから、我が国として、国益を害するような、こういった合意はどの国ともするつもりはございません。

福田(昭)委員 そろそろ時間がなくなってきましたので、もう一つだけ。

 企業投資家と国家との紛争解決手法、ISD条項についてでありますが、これは時間がないので説明はいたしませんけれども、私は、基本的に、企業や投資家が国家を乗り越えるような仕組みはだめだと思っています。やはり国家あってこその企業や投資家ですから。ですから、まさにISD条項は、企業や投資家が国家を訴えて損害賠償金を取るというとんでもない仕組みです。これは、全く私は非民主的な仕組みだと思っております。

 したがって、こうしたものはぜひ、今回、投資の部分等が凍結になっておりますが、これは完全に廃止すべきだと思っています。

 更に申し上げれば、今、北米自由貿易協定の見直しをアメリカがやっておりますけれども、その中でアメリカ自身が、言い出しっぺのアメリカ自身が、ISD条項を使わない、やるときには国内法廷で裁くとしております。

 ですから、日本も、もしこんなものを入れるというときには、日本の国内の法廷で裁く、これぐらい、やはり日本の主権をはっきりさせるような協定にしなければだめだ、こう思っていることを、次の質問者が来ましたからやめますけれども、ぜひ、こういう意気地のない協定はやめるということを申し上げて、私の質問を終わります。

山際委員長 次に、大河原雅子君。

大河原委員 立憲民主党の大河原雅子でございます。よろしくお願いいたします。

 きょうからCPTPPの質疑が始まりました。私は参議院の時代にこのTPPの協定に出会いというか、余り出会いたくなかったんですけれども、このTPPという自由貿易の極致ともいうべきものに、日本がみずから進んでその中に入っていく。

 自由というイメージはかなりいいイメージだと思いますが、実際は、国の体力、大小さまざまありながら、その国々が一つの土俵で戦う、いわば弱肉強食の世界が現出するということが、私にとっては、非常に小さな島国であり、そして、四季には恵まれていますけれども、戦後、食料難の時代から国力を得て経済が発展してきた中で、実は、この国の本当の豊かさを生み出すものがまだまだ完成していないんじゃないか、むしろ、そのあるべき姿を見誤っているのではないか、そんな思いを抱きながら、参議院時代には、TPPを慎重に考える会の事務局長として、TPPには大きな危惧を抱き、反対をしてまいりました。

 そういう意味で、このTPPは、日本の私たちの生活のありとあらゆる場面にさまざまな影響を及ぼします。特に私は、食の安全に関する分野に関心を持ってまいりましたけれども、そしてまた、そのような活動に取り組んでまいりましたけれども、今回、きょうの質疑も、危険にさらされる食のシステム、日本の食のシステム全体に思いを起こして、質疑をさせていただきたいというふうに思っております。

 TPPについて、これまで政府は、国民への情報提供、二〇一五年の十月にTPP交渉の大筋合意ということを行って、成立をいたしまして、そのことをもって、国民にもどういうものであるかかなり説明をしたというふうに思います。

 しかし、そのときの説明は、日本の食品の安全が脅かされることは一切ない、遺伝子組み換え食品の表示も含めて、食品表示の要件も変えることはないんだ、日本の制度の変更は設けられていない、御安心くださいということの一辺倒だったというふうに思っています。

 TPPについて、政府は、国民への情報提供、意見交換の場をこの間もつくってきたと総理の答弁でもあるわけですけれども、一体どのぐらいの説明をしてきたのか。説明会の開催状況、出された意見の集約など、これについてまず伺いたいと思います。TPP、そしてCPTPPを含めての話で三百回以上と言っていらっしゃるんだと思うんですが、具体的にはどうだったんでしょうか。

澁谷政府参考人 お答えいたします。

 TPP12の交渉中ないし参加前もいろいろ説明会とか意見集約を行っているところでございますが、二年前の特別委員会で、大筋合意後、どれだけ説明したかということを聞かれておりますので、そこからいろいろカウントしてございます。

 大筋合意後三百回以上でございまして、11も含めますと三百四十一回、延べ四万八千名の方を対象に説明会を開催させていただいているところでございます。

 説明会は、主として農業関係者、中小企業関係者、それから一般の方を募集して開催する場合、それから、各省ごとにいろいろな業界団体ごとにと、いろいろパターンがございますけれども、内閣官房は何度か一般の国民向けの説明というのを行っております。

 その場で、確かに食の安全について御懸念を御披露されるような出席者の方もいらっしゃいましたけれども、私の方から、これに対しては丁寧に御説明をさせていただいているところでございます。

大河原委員 私も地域で活動し生活をする中で、この説明会になかなか出会わなかったんですね。こんなにやっている、でも、例えば新聞とかメディアがこれだけ取り上げて、どういう意見が出て、そのことについて政府がより掘り下げて説明をしたのかどうか、そのことについてはいまだに疑問を持っております。

 今、澁谷さんが回数とかを示してくださったんですが、申しわけないんですが、これはきのう通告したので、一覧表とかいただいていないんですね。ですから、どんな意見が出てきたのかも、ぜひ資料としてみんなにわかるようにお示しをいただきたいというふうに思います。

 委員長、この資料の要求、お願いしてよろしいでしょうか。

山際委員長 後ほど理事会で協議いたします。

大河原委員 はい。

 政府が出してくるデータについて、非常に、一つ一つ懐疑的にならざるを得ない現状がございますので、気を悪くなさらないで、事実を出せばいいことだけでございますので、よろしくお願いいたします。

 そして、今回のCPTPPですけれども、TPPからCPTPPへ、どのように変わったのか。つまり、CPTPP、つまりはコンプリヘンシブ・アンド・プロダクティブですか、包括的そして……(茂木国務大臣「プログレッシブ」と呼ぶ)プログレッシブ、先進的なという、どこが包括的で、どこが先進的になったんでしょうか。その点について、大臣にお答えいただいてよろしいんでしょうか。

茂木国務大臣 今回、協定につきまして、CPTPPと略称では呼ぶ形になっておりますが、この基本的な協定の枠組み自体、これは変わっていないわけでありますが、それをもう一度捉え直して、この協定、これは市場アクセスだけではなくて、投資のルールであったりとかさまざまなサービスの分野も含む、極めて広い、包括的な内容をカバーしている。

 同時にこれは、これまでのさまざまな経済連携協定には見られないような進んだ形の、まさに二十一世紀、先取りしている協定である、こういったことから、包括的及び先進的、こういうタイトルをつけさせていただいたところであります。

大河原委員 TPP12から11になったわけで、しかも、アメリカがいない中で協議を図った、日本がリーダーシップをとった協定ということですよね。あの12よりも更に包括的、先進的と言われるところの意味が、私はやはりちょっと、本当ですかと。規模は小さくなっているし、それにつけても、アメリカが来るのをいまだに待っているというところで、何か日本がリーダーシップを持ってこの東アジアの地域の経済に積極的にかかわれるのか、非常に疑問に思っています。

 CPTPPになっても食の安全保障や食料主権が守られるのか、この点について伺っていきたいわけですけれども、安倍総理は、TPP協定の意義については、アジア太平洋地域に自由や民主主義や基本的人権、法の支配、こうした価値を共有する国々とともに二十一世紀にふさわしい新たな経済ルールをつくるというふうに高く志を述べられたわけなんですけれども、アメリカが離脱して、TPP協定の意義とか早期発効の必要性というのはどんなふうにあるんでしょうか。特に私は、食の安全保障、食料主権、このことをどう守っていくのかということについて、ぜひ茂木大臣から伺いたいと思います。

茂木国務大臣 TPP11、これは先ほども申し上げましたが、二十一世紀型の自由で公正な新たな共通ルールをアジア太平洋地域、まさに世界の成長センターでありますが、ここにつくり上げて、人口でいいますと五億人、GDP十兆ドル、貿易総額五兆ドルという巨大な一つの経済圏をつくり出すものであります。

 そして、そこでは、関税削減だけではなくて、投資先で技術移転などの不当な要求がなされない、また知的財産が適正に保護されるなどのルールが共有されることから、我が国の大企業だけではなくて、中堅・中小企業にとっても多くのビジネスチャンスをもたらすものだ、このように考えているところであります。

 そこで、先ほど、自由、公正そして法の支配等、基本的な価値観を共有する国々でこういったものをつくっていくという新しいルールでありますが、当然、そのルールというのはよいルールでなければならない。それは、企業にとっても、また生活者にとってもそういうものであるべきだと考えております。

 TPP協定におけます食品安全にかかわる、これはWTOのルールと基本的に同じでありまして、我が国の食品安全を脅かすようなルールは一切ない、このように考えておりまして、これまでもそのように説明をしてきております。この点につきましては、TPP11におきましても全く変わりないと考えております。

大河原委員 茂木大臣も、そしてまた総理も、このTPPの意義については、先ほどの、基本的な価値を共有していく、その経済圏というものについての効果、メリットをおっしゃるわけなんですが、総理はこうも言っているんですよね。まず、TPPは消費者の生活を豊かにする、参加国間の貿易障壁は激減していくわけなので、域内のさまざまな商品を安く、手軽に安心して手に入れることができると言っています。

 これは、とりもなおさず、日本にとっては更に輸入が増大するというふうに思うわけですけれども、国内の生産が減り、輸入ばかりになっていくときに、とても私は、今、食の安全のところで条文的には何も変わっていないというふうにおっしゃっていたと思いますけれども、条文に書いてあることを総合して組み合わせて考えていくと、どうも安心できないことがたくさんあるんじゃないかというふうに思います。

 それで、ちょっと確認なんですけれども、TPPからCPTPPに変わったときに、これまでは、遺伝子組み換え作物食品の規制と貿易に関する直接的な関連する条項というのは、第二章の内国民待遇及び物品の市場アクセス、そして、特に二十九条、現代のバイオテクノロジーによる生産品の貿易、それから第七章の衛生植物検疫措置、第八章の貿易の技術的障害、十八章の知的財産、これが直接的に関係あるところだろうと思いますが、間接的には九章の投資とか第二十八章の紛争解決、こういったものが関係してくるということで、これに変わりはないでしょうか。

澁谷政府参考人 第二章、それからSPS、TBT章については一切凍結とされておりまして、そのまま組み込まれて、全く変更はございません。

 知的財産は、著作権でありますとか生物製剤のデータ保護期間などは凍結されておりますが、恐らく御懸念の点についても変更は全くないというふうに考えております。

大河原委員 先ほども申し上げましたけれども、食料自給率自体が低い国でこのような経済協定をした中で、ここに海外、域内から安くて安心できるものが入ってくるならあれですが、さまざまなものが入ってきて、日本の農業も実は人口減少と相まって疲弊をしていってしまう、そういう反動が出てくるんじゃないかと危惧いたします。

 そこで、食料自給率のことについて、これは今目標を持っておりますけれども、食の安全保障と自給率の確保というのは、貿易をする以前に、大事な国の役割だと思うんですけれども、ここでは、世界的な地球の環境自体も激変をする中で、世界の天候とか食料問題に左右される輸入に更に依存していく形になる。

 輸入に頼るこの日本の現状というのは、多くの方たちが、いやあ、たくさん安いものが入ってくる、そういう心配を忘れてしまうような状況を、総理の発言とか、何かイメージ操作と言ったら申しわけないですけれども、そちらが強調されればされるほど、国の安全保障についてきちんと実質的な確保をすることが国の役割だと思うんですけれども、改めて、この輸入に頼る日本の現状、それから自給率の目標というものを伺いたいと思います。

茂木国務大臣 食の安全保障、フードセキュリティー、これはいろいろな定義の仕方というのはあると思うんですけれども、例えば日本人一人一人を見ても、ある側面は消費者であり、またある側面は、企業に勤めていたり、農業従事者である、生産者である、さまざまな立場を持っていると考えておりまして、それは例えば、こういった経済連携協定によって海外の安い、また多様な品種、しかも安全なものが国内に入ってくるというのは、消費者の側から見るとメリットをもたらす。

 同時に、攻めの農業、こういったことも強化をしていくという観点からすれば、今後、日本の、世界にないようなおいしい、そして安全ですばらしい食品というのは、どんどん今まで以上に海外展開をできる。そうなりますと、日本の農業者にとっても、基盤、体質を強化することにつながっていく。それはまさに、日本の食料安全保障といいますか、自給率を上げる上からも重要なことであると思っておりまして、そういったさまざまな貿易の取引、サービスの取引、多面的に見ながら、日本としてしっかり経済成長も図れるような政策をとってまいりたいと考えております。

天羽政府参考人 数字につきまして補足をさせていただきます。

 食料の安定供給を将来にわたって確保していくことは国民に対する国家の基本的な責務であり、国内農業生産の増大を図り、食料自給率を向上させていくことが重要と考えておりまして、食料自給率の目標につきましては、食料・農業・農村基本法第十五条におきまして、食料・農業・農村基本計画の中に定めることとされております。

 平成二十七年三月に閣議決定されました現行の基本計画では、平成三十七年度の食料自給率を、カロリーベースで四五%、生産額ベースで七三%の目標を設定しておるところでございます。

大河原委員 茂木大臣にもお答えをいただいたんですけれども、図らずも、一人一人にはいろいろな役割というか側面があるとおっしゃったんですけれども、生産者であっても経済にかかわる方たちであっても、一人として消費者じゃない人はいないんですね。どんなにすばらしいものをつくって輸出をしていても、その方の毎日毎日の生活を支える、そうした食料がしっかりと安全に確保される。つまり、国にとっては、国民を飢えさせない、どんな状況になっても飢えさせない。

 そして、そのことは、とりもなおさず、外からお金を出せば買えるからいいやという話ではなくて、輸出をメーンにしなければならないような体力の弱い国々では、南北問題、御承知だと思いますけれども、その食料を自分たちが食べるのではなくて、海外に送る。つまりは、輸入をする側がその相手の国から食料を奪っているとも言うことができてしまいます。

 それぞれの国が、自分の国の、自国の環境に合って、そして持続可能な食料生産が可能になるということがなければ、私は、まず、貿易をしていく、そういう資格が実はないんじゃないかというふうにも思うほどです。

 この意味では、今、目標をどうやって達成していくのかという課題は、農業分野の方ですごく議論になります。一時的にも価格は下がりますから、生産者に対する補填をしていくこととか、すごく波及する場所は多いんですね。しかも、正確な、あるいは、さまざまなシチュエーションで、想定額、被害額とか、そういった影響額が算出されないうちに、すごく漠とした形でしか今私たちの議論の中に示されていないのが現実なんです。ぜひ、この食料安全保障、食料主権、このことにも気持ちをいつも置いていていただきたいと思います。

 それで、私は、この食料安全の中でも特に遺伝子組み換え食品について、都議会議員の時代から取り組ませていただきました。

 遺伝子組み換え食品のことについては、多くの方たちが自分が食べているという意識がないままに、日本は食料輸入大国ですから、大豆もトウモロコシも、飼料としても輸入をしてきた経緯があります。

 日本は世界で一番遺伝子組み換え食品を食べているんだ、そういうことを誇るのか、私は余り誇れないんじゃないかと思いますが、遺伝子組み換え食品の安全性を審査する、こういったところに、長年食べ続けた場合の影響とか全く考慮されているとは思えないんですね。

 食品安全委員会の専門委員会が次々に審査して合格を判断しているんですけれども、改めて、安全審査の手順を伺いたいと思います。

宇都宮政府参考人 お答えいたします。

 遺伝子組み換え食品につきましては、食品衛生法に基づきまして、品目ごとに、食品安全委員会による科学的なリスク評価の結果を踏まえた上で、厚生労働省におきまして、その安全性を確認した上でその品目を公表し、食品としての流通を認めるという手順になっているところでございます。

大河原委員 本当に輸入する食べ物が多くなるので、その中に入っている遺伝子組み換えのことの安全性を確認するというのが物すごい大仕事になるし、しかも、それはスピードを持ってやらなければできなくなっている状況があるんだというふうに思います。

 しかし、このことも、私たちの食生活を見れば、一品一品の安全性というよりは、例えば、日本食の中に総合してどういうことが起こるのかというような調査なり研究なりというものを政府は怠っているんだと私は思います。ぜひ、この状況を踏まえて、ある種の改善がなされることを期待いたします。

 世界の遺伝子組み換え農作物の栽培状況もどんどん広がってきているとはいえ、このTPP関連でいえば、アメリカとかカナダとか、ブラジルとかチリとか、そういったところはGM大国ですね。そういう意味で、本当に私たちの食生活が守られるのか。幸いに日本では、安全審査して合格は出ているけれども、例えば商用栽培されている作物は、バラ以外はないわけですね。ですから、地域で食べたくないよ、そういう安全性、消費者の選ぶ権利をしっかりと守るという空気は常にあることを意識していただきたいと思います。

 それで、日本には、そうした意味から、自治体が、遺伝子組み換え作物をつくらない、そういう条例ですとか、学校給食の食材の指針などにも使わないルールというものを持っていたりします。このことが今後も守られていくのかどうか。お隣の韓国は、米韓FTAで、学校給食に遺伝子組み換え作物は使わないと言っていたのが、そういうことが変えられてしまうというような事態が起こっていると聞いています。

 遺伝子組み換え食品は安全だというふうに大々的に広報もしているわけですけれども、消費者は食べたくないとする人が多い現実、そして、こうした遺伝子組み換え作物をつくらない自治体や生産者の方たちがたくさんおられることをしっかりと意識して、こうした自主的な判断が守られるようにしていただきたいんですが、このことについてはいかがでしょうか。

澁谷政府参考人 お答え申し上げます。

 二年前の特別委員会でも同じような、特に自治体の地域振興条例、地産地消のようなものがTPPに違反するのかどうかという御質問は何回かいただいたところでございます。

 遺伝子組み換え食品を含めて、ちょっと御通告をいただいたので、いろいろ考えてみたんですけれども、例えば中学校の給食でそういうようなルールがつくられたとすると、まず思い浮かぶのは、政府調達の規定に違反するかどうかということだと思います。

 何度も御説明しているかと思いますが、TPP協定の政府調達章の規定は、我が国の約束内容はWTOで約束しているのと全く同様でございますので、TPPで何かが変わるわけではありませんし、しかも、食料提供サービスの調達自体は対象外になっておりますので、恐らく政府調達で何かそれが問題になるということはないと思います。

 多くの方が御懸念されるのは、恐らくISDSでそうした企業が訴えてくるんじゃないかということだと思いますけれども、ISDSというのは、第九章、投資章に規定されている義務に国が違反をして、それによって損害を受けた場合に損害賠償を訴えるということでございまして、しかも、環境とか健康などの目的のための必要かつ合理的な規制そのものは妨げられないと明記されているところでございますので、なかなか考えにくいものがありますし、そもそも、食品の安全とか表示に関するルールは、第九章というよりは、先ほど申しましたとおり、SPSとかTBT章に規定されているものでございます。

 ISDSはこうしたTBTとかSPSに規定された義務の違反を訴えるものではないということですので、食の安全について、その必要な規制が、何か規制をしたときにISDSで訴えられるということはなかなか想定しにくいのかな、このように考えておる、これは二年前に御説明したのと全く同じでございます。

大河原委員 私は、二〇一二年ですか、ワシントンDCへTPPの調査に参りまして、バイオテクノロジーの業界の方たちとも意見交換させていただいたんですが、日本が持っている遺伝子組み換えの表示、この制度についてはもう要らなくなりますよというふうにはっきり言われました。

 それで、大体アメリカ人は、そういった表示について、遺伝子組み換えのことなんか何にも気にしていないんだというふうに言われていたんですが、そんなことはなかったんですね、実は。表示を求める運動は大きくなってきましたし、実は、この遺伝子組み換えの栽培にも、もうこの開発にも限界があるというようなことが見えてきております。

 それで、遺伝子組み換えの表示というのは、まさに遺伝子組み換えを食べたくない消費者にとっては必要不可欠な道しるべなわけです。それで、この表示の問題については、現行の表示制度がEU、諸外国と比較しておくれているというふうに私も実は思ってきましたし、いまだにその議論はなかなか決着をしていない。遺伝子組換え表示制度に関する検討会で検討され続けてきた経緯があります。でも、まだ決着を見ていないということなんです。

 検討されてきた中には、検討の結果が出ていますけれども、遺伝子組み換えでないという表示が実はできなくなるような、そういう結果が出ているんですね。EUの場合は、入っているか入っていないかがわかるような、検出一%以下ということで、日本の場合は五%未満ということなので、かなり幅があります。遺伝子組み換えが入っているか入っていないか、入っていないというふうにしたときに、遺伝子組み換えでないという表示が、実は入っているというものと表現で同じになっちゃうわけです。

 ですから、消費者の選択の権利が奪われかねない状況になっているということがあって、この検討会の報告を受けて、今後の表示制度がどういうふうに変化をするのか、遺伝子組み換え食品を食べたくない消費者の権利を尊重してほしいわけですが、どうなるのか、この辺を伺わせてください。

橋本政府参考人 お答えいたします。

 遺伝子組み換え表示制度のあり方につきまして御議論いただくための検討会を消費者庁で開催いたしまして、その結果を取りまとめた報告書が三月二十八日に公表されたところでございます。

 報告書には、消費者の誤認防止や消費者の選択幅の拡大等の観点から、これまでどおり遺伝子組み換え農産物の混入を五%以下に抑えているものについては、適切に分別生産流通管理を行っている旨を任意表示することができるとした上で、遺伝子組み換えでないという表示は不検出である場合に限るということが適当であること、それから、現行制度を維持することとなった点についても、事業者の皆様の自主的な情報提供に向けた取組が望まれることなどが盛り込まれております。

 今後、これを踏まえまして、消費者庁において制度設計の検討を行った上で、消費者委員会への諮問、パブリックコメント等の手続を行いまして、適切に食品表示基準改正作業を進めてまいりたいと考えているところでございます。

大河原委員 これからパブコメもとって、国民の声をしっかりとまた受けとめていただかなくてはなりませんので、ぜひ食料安全保障、そして食料の自主権、こういったことを重要視していただきたい、守っていただきたいというふうにお願いいたします。

 このTPPの、CPTPPの質疑は始まったばかりですので、これからもしっかりと議論させていただきたいと思います。

 ありがとうございました。

山際委員長 次に、森山浩行君。

森山(浩)委員 立憲民主党の森山浩行でございます。

 TPP関連法の整備法についてということでございます。攻めるべきは攻め、守るべきは守るというような意気込みで取り組んでいただいているわけですけれども、まずは大臣には、このTPP11の意義について、また、国内の産業につきましては対策をしても千八百億円ほどの影響があるというふうにされておりますけれども、じゃ、そのかわりに、攻めるべきは攻めるという部分、いわゆる海外の事業あるいは輸出、こういったものにどのぐらいとれるのか、あるいはどのぐらいとろうとしているのか、金額あるいは市場規模みたいなものがもしありましたら、目標を含めてお願いをいたしたいと思います。

茂木国務大臣 TPP11につきましては、昨年一月の二十三日、米国がTPPから離脱を宣言した後、まさに我が国が議論を主導して、私自身も昨年十一月のベトナム・ダナンでの閣僚会合でベトナムのアイン大臣と共同議長を務めまして、大筋合意に至りまして、そして、昨年の箱根から考えますと、わずか半年で、三月八日、チリのサンティアゴで署名をすることができたわけであります。

 TPP11交渉におきまして、TPPのハイスタンダード、これを維持しつつ、早期に十一カ国で合意を実現する、こういう二つの目標、この両立というのはなかなか難しい課題でありましたが、我が国が主導して粘り強く交渉を重ねた結果、凍結項目二十二項目に絞り込むことができたわけであります。

 我が国が果たしてきたリーダーシップに対しましては、三月八日、署名式の前に閣僚会合が開かれたわけでありますが、チリのムニョス外務大臣が進行しまして、最初はメキシコのグアハルド大臣から始まってオーストラリアのチオボー大臣、ずうっと発言をして、最後に私が取りまとめの発言をするということでありましたけれども、各国がやはり、日本がいなかったらこのTPP11はまとまっていなかったと謝意が表明をされたところであります。

 まさに、保護主義、こういったものが台頭する中で、我が国がリーダーシップをとって、自由で公正な二十一世紀型の新しいルール、共通のルールを世界の成長センターであるアジア太平洋地域に確立していく、この意義は非常に大きいと思っております。

 この経済効果についても御質問ありましたが、内閣官房のGTAP、このモデルの分析では、GDPの押し上げ効果七・八兆円、そして四十六万人の雇用増と、大きな効果が見込まれるところでありまして、これは大企業だけではなくて、今後、関税が削減をされ、投資のためのルールが緩和をされたり共通化される、こういったことで、物づくりを始め、さまざまな技術、ノウハウを持っている日本の中堅・中小企業がこれから海外に展開していく、こういう大きなチャンスを開くものでもある、このように考えております。

森山(浩)委員 七・八兆円という数字をいただいております。これは、今回、TPP11が発効していったら、自然とそうなるんだよという数字であるのか。これからいろいろなことをやって、目標にしていくという数字であるのか。

澁谷政府参考人 お答え申し上げます。

 GTAPというモデルを使って試算をしているわけでございますけれども、GTAPは、各国、主要な国際機関等も使っておりますが、政策分析のツールでございます。すなわち、経済連携の効果が、どのような形、どのようなメカニズムで成長につながっていくのかということを検証するための素材としても使われておりまして、私どもの場合は、関税が引き下げられることに伴う、いわゆる輸入価格が下がるということに伴う効果のみならず、例えば、非関税障壁が削減されることに伴う貿易・投資コストの削減、これに伴う貿易・投資が盛んになる。そういたしますと、競争がふえて生産性が向上する、こういったような効果も見込んでいるところでございます。

 ただし、これは、TPPが発効すれば自動的にそうなるというものではなくて、海外展開を支援する、あるいは国内産業の高付加価値化、新しいバリューチェーンに組み込まれるように国内産業の足腰も強くしなきゃいけない。また、農業の足腰も強くしなきゃいけない。こういったことを、昨年十一月に取りまとめた総合的なTPP等関連政策大綱の中で各種施策をうたっているところでございまして、そうしたものの政策展開を踏まえてこうした経済効果の実現を目指していきたいと考えているところでございます。

森山(浩)委員 ありがとうございます。

 日本の国内産業への影響千八百億円、それに対して七・八兆円、これを目指していくということでありますので、また、一つ一つの政策についてもお話をしていきたいというふうに思います。

 まず、条約そのものについて、TPP11では、発効しない条項、二十二の凍結項目、今御説明ありましたうち三項目、これについては、国内法の整備を今回提案をされています。これは、TPPが発効するときにやるんだと言っていたものを、今の段階でやらなきゃいけないというのはなぜでしょうか。

澁谷政府参考人 お答え申し上げます。

 今先生御指摘のとおりでございまして、二十二項目、凍結項目がリストアップされておりますが、そのうち、我が国で制度改正が必要な項目が三つございます。

 午前中からまた御議論になっておりますが、著作権の保護期間の七十年への延長。それから、アクセスコントロールの回避と言っておりますが、技術的保護手段。ブラックB―CASカードみたいな、ああいうものを取り締まるような、そういうものであります。それから、特許の審査期間が遅延した場合の特許期間の延長。この三点が我が国にとっては法改正事項でございますが、これがいずれも凍結をされているということでございます。

 私どもとしては、もちろん凍結されておりますので制度改正を行う国際的な義務は負わないわけですけれども、我が国がTPP11を主導して12のハイスタンダードを維持するんだ、したがって凍結はなるべく少なくしようということで各国を取りまとめてきたという経緯があるということ。

 また、いずれにしてもこうした規定は必要だと私どもは考えておりますので、各国を今後、凍結解除に向けていろいろ説得をする、議論をする過程において、私どもの方で既に制度改正しているということがやはり必要じゃないかということ。

 さらに、いずれにしても、各国が、これは禁止されているわけではありませんので、各国の自主的な判断で行えるということで、私どもとしては、この三点については、二年前と同じように、TPPの発効を契機として制度改正を行いたいと考えているところでございます。

森山(浩)委員 これは義務じゃないんですよね。義務じゃない中で、交渉の中で出していくということなんですが、TPPが発効するというときに、この三項目を凍結解除するというラインであったものを、アメリカが参加をしない今の状態でこれをやってしまうということは、これは、アメリカが帰ってくるときのカードを、ある意味、交渉のカードを失うことにはなりませんか。

澁谷政府参考人 私ども、これはいずれにしても必要な制度であると。どちらかといいますと、各国にも同じような制度改正をしてほしいと願っているものでございますので、何かカードに使うというよりは、やはり率先して制度改正をして、各国に働きかけをしていきたい、私どもとしてはこういう立場でございます。

森山(浩)委員 さらに、外資に開放する公共調達ということで、今、日本の部分に関してはこれまでと変わらないんだよというお話がありました。海外の方で公共調達がオープンになることによっての影響というのはありますか。

澁谷政府参考人 先ほどもちょこっとお話が出たと思いますけれども、TPPの政府調達章の規定、それから、その中で我が国が約束している内容は、既に発効しているWTO上の政府調達協定、GPA協定で私どもが約束している内容と全く同様でございますので、TPPによって特に地方自治体の政府調達が変わるということは全くございません。

森山(浩)委員 それでは、総合的なTPP等関連政策大綱、平成二十九年の十一月二十四日に決定をされたものでございますけれども、この中の柱の一つに、中小・中堅企業の海外展開についての部分があります。

 今回のTPP11によって何ができるようになるのか、分野ごとに、どこから売り込むべきか、あるいは、どこの地域にどんな形で売り込むべきかといった形で、この新しい協定に沿った形での説明会というようなものは開かれる予定がありますか。

渡辺(哲)政府参考人 お答え申し上げます。

 委員御指摘のとおり、TPP11のメリットが、これまで海外展開に取り組んでおられない各地の中堅・中小企業の方々も含めて全国津々浦々に行き渡る、皆さんに知っていただくというのは大変重要だと思っております。

 このため、もう既に、TPP11のメリットですとか、それから利活用のための支援策、こういうものにつきまして説明会を始めているところでございまして、これを今後しっかりやっていきたいと考えております。

森山(浩)委員 そうですね。大企業については、自分の中でしっかり海外への展開の戦略、戦術も練っていけるんでしょうけれども、中小・中堅となってくると、政府の後押しあるいは手引きというようなものも非常に大きいのではないかと考えております。

 TPPを契機に、新輸出大国コンソーシアム、これではどのような支援を強化するということになっておりますか。

渡辺(哲)政府参考人 お答え申し上げます。

 委員の今御指摘いただきました新輸出大国コンソーシアムでございますけれども、これは、実は、二〇一六年二月に、ジェトロが事務局となりまして、中小企業基盤整備機構、それから全国津々浦々の商工会、商工会議所、それから地域の金融機関の方々、それから自治体といった支援機関の方を結集していただいて、コンソーシアムということで立ち上がったところでございます。

 輸出先の市場の情報の収集から始まりまして、海外展開の計画の策定、それから販路開拓に至るまで、さまざまな段階におきまして、地域の中小企業の方に寄り添ってきめ細かな支援をしていくという仕組みでございます。

 これまで既に、実は、中堅・中小企業の皆様、全国七千社以上の方に登録していただいておりまして、海外展開の成功事例も出てきているところでございます。先月も、第四回の輸出大国コンソーシアム会議というのを開きまして、支援強化の方向性について議論を行ったところでございます。

 TPP11を契機に、全国の中堅・中小企業の皆様が海外展開に積極的に取り組めるように、しっかりと支援してまいりたいと思います。

森山(浩)委員 ありがとうございます。

 さらに、TPPの域内にはムスリムが中心の国もあります。市場としてはどのぐらいになるんでしょうか。ハラールレストランにつきましては、ガイドブックに誤りがあったというような形で問題になったような事例もあったりするわけなんですけれども、ハラール食材あるいはレストラン、こういったものについての支援は考えておられますか。

小野政府参考人 お答え申し上げます。

 宗教上、食事、礼拝等、規範がございます訪日ムスリム旅行者に対しましては、滞在時の食事等に不便を感じることがないよう対応していくということが重要な課題というふうに認識しております。

 御指摘のガイドマップの作成でございますけれども、地域に根差した訪日ムスリムへの直接の対応につきましては、一部の地方公共団体などで取り組んでいるものと承知いたしております。

 農林水産省におきましては、事業者側の取組を強化するためにインバウンド対応ガイドブックというものを作成いたしまして、飲食事業者に対しますハラール対応の際の留意すべき点などにつきまして情報提供を行い、訪日ムスリムに対する食事環境の向上に努めておるところでございます。

 また、三十年度におきましては、国内におきますハラール対応を志向する食品製造事業者ですとか飲食事業者に対しますセミナーの開催等によりまして情報提供を行っているというところでございます。

 引き続き、ムスリム旅行者の食事に関します対応について取り組んでまいりたいと思っております。

森山(浩)委員 ありがとうございます。

 この委員会でも、和食が世界遺産になった、これに合わせて米の海外への輸出というようなものも大事だというお話もしておりますが、いろいろな形で、TPPを契機に外へ向けていくというようなところも意識をしていただきたいというふうに思います。

 国内産業ですが、水産業への影響、また浜の広域的な機能再編、あるいはブランド化などについての御説明をお願いします。

森(健)政府参考人 お答え申し上げます。

 TPP11におけます水産物の国境措置につきましては、海藻類は関税削減によって関税を維持したところでございます。また、アジ、サバ等については即時関税撤廃を回避いたしまして、長期の関税削減期間を確保するといったような交渉結果となっております。

 この影響につきましては、主な水産物で見ますと、イワシ、ホタテガイなどにつきましては、TPP11参加国からの輸入実績がない、あるいはまたほとんどないということ等から、特段の影響は見込みがたいと見込んでおります。また、アジ、タラなどにつきましても、その関税削減期間を確保したということ、さらにTPP11参加国からの輸入実績も少ないといったところから、影響は限定的であるというふうに見込んでいるところでございます。

 他方、長期的には国産価格の下落も懸念されるということもございますので、さらなる競争力強化が必要であるということで、広域浜プラン等に基づく浜の機能再編等の体質強化対策を講じているところでございます。

 この体質強化対策につきましては、引き続きまして、担当の部長の方から御説明させていただきたいと思います。

岡政府参考人 浜の広域的な機能再編についてお答えさせていただきます。

 水産庁では、水産業の競争力強化を図るため、複数の漁村地域が連携しまして、市場の統合などの浜の機能再編に取り組んでございます。通称、私ども、この施策を広域浜プランと呼んでございますが、こういった施策を通じまして、現在、全国百四十三の地域で取組を進めているところでございます。

 例えば、大阪府泉州地域におきましては、これまで複数の浜で荷揚げされていました水産物を岸和田の市場に集約するとともに、鮮度保持対策の追加、あるいは取引を相対から競りへ移行するなどによりまして、魚価の向上を実現しているところでございます。

 水産庁としましては、引き続き、全国の浜の活力再生広域プラン、通称広域浜プランでございますけれども、こういった取組を推進しますことで、生産の効率化あるいは販売力の強化を図り、水産物の輸出増にもつなげてまいりたいと考えております。

 加えまして、水産物のブランドについてもお問合せがございましたので、お答えさせていただきます。

 水産庁では、五年間で漁業者の所得向上、これを一〇%引き上げる、こういったことを目標にしまして、浜ごとに、創意工夫のもとで、水産物のブランド化あるいは輸出の促進、こういったものによります収入向上対策などなどを取りまとめました浜の活力再生プラン、こちらの方は通称浜プランと呼んでおりますが、これを推進しておりまして、現在、全国六百六十の地域で推進しているところでございます。

 例えば、北海道オホーツク海沿岸にございます雄武地域、ここでは、衛生管理対策あるいはHACCPの認証取得など、海外からのニーズに対応する形で地域ブランドを確立しまして、これによりましてホタテの海外輸出への成果を上げているところでございます。

 水産庁としましては、引き続き、この浜の活力再生プランの着実な推進を通じまして、漁業者の所得向上、また地域の活性化を推進してまいります。

森山(浩)委員 ありがとうございます。

 クールジャパンについて、コンテンツ、低いコンテンツ産業の一体的海外展開の推進ということでお願いをしておきたいと思います。

 ありがとうございました。

山際委員長 次に、吉良州司君。

吉良委員 国民民主党の吉良州司です。

 質問に先立って、まずお断りしておかなければならないことがあります。

 きょう、TPPという大事な議論でありますけれども、国民民主党としてまだ賛否、結論が出ていないこともありまして、きょう私自身が質問する内容、そしてまた提案する内容というのは、ひとえに議員個人としての吉良州司の責任で行うものである、党を代表してのものではないということをまずはお断りをしておきたいと思います。

 また、きょうの質問は、TPPを通して日本の国益をより大きくしたいという思いで、かなり大胆なことも提案といいますか議論の題材にしたいと思っておりますので、その辺もまた御理解をいただきたいと思います。

 この内閣委員会において、三月二十八日にも私自身、質問に立たせていただきまして、茂木大臣に対してTPPの意義ということについてお尋ねいたしました。もう重複を避けたいので、その際に、一言で言えば、大臣の方からは、二十一世紀型の極めて高いレベルの地域包括的な経済連携ができるということは大変大きな意義があるというふうに答弁いただいたと思っています。

 そして、大臣の先ほどの答弁にもありましたけれども、私自身、アメリカが離脱する中で、日本がまさに中心となってこの短期間の間にこのTPP11をまとめたということも大変高く評価しておりまして、これはある意味ではどう転ぶかわからないトランプ大統領のおかげだと思いますけれども、日本外交が本当に独自の道を、時にはアメリカと、まあアメリカは常に大事な国なので配慮はしつつも、このTPPのようなことでは、たもとを分かってでも日本の国益を追求していく、そしてその上でリーダーシップを発揮していくという姿勢を出せたことは大変いいことだと思っています。

 その意味でも、茂木大臣、河野外務大臣始め内閣府の皆さん、また外務省の経済局を中心とした皆さんの御苦労に対して、ねぎらいと感謝を申し上げたいと思っています。

 意義について、前回、今言いました、一くくりにした茂木大臣からの答弁に対して、私の方で何点か、政府からは言いづらいでしょうという意義について申し上げさせてもらいました。

 一つは、これは私の持論なんですが、日本経済と世界経済というのは極めて強い連動関係にあるので、世界経済がよければ日本経済がいい、世界経済が悪ければ日本経済が悪い、そういう中にあって、世界経済をよくすれば日本経済がよくなる。そういう意味で、TPPを締結し、このTPPをよりよきものにする過程の中で、世界経済に貢献し、それが日本経済をよくすることにつながるということも前回言わせていただきました。

 それと、地政学的意義ということで、中国とは未来永劫仲よくしていかなければいけない国であるけれども、ある意味では、ライバル関係でもあり、時には緊張関係もある関係であります。そういう中で、中国を中心とする上海協力機構、これが中国、ロシア、中央アジアを中心としたランドパワーであるのに対して、TPP加盟国は、自由な投資、自由な貿易、そして自由な海上輸送、海上航行を志向するシーパワーである、この地政学的意義もあるということも申し上げました。

 それともう一点、このTPP合意の中で最もいい制度だと思うのが、私は、原産地累積制度だということも申し上げました。

 つまり、メード・イン・TPPということで、マザー工場だとか主要部品の工場を日本に維持しながら、また、日本が海外に直接投資をしている国、又は日本の調達先、又は供給先である海外の事業所そして工場と、原産地、付加価値を合算して、メード・イン・TPPとして関税のメリットを受けられる、これが大変いい制度であるということも申し上げました。

 そして、それに関連して、チャイナ・プラスワンという日本の外交戦略があります。これは、中国への投資をしたいけれども、中国が、時に政治的なリスク、場合によっては経済的なリスクもある、それにかわる代替地として、日本政府も東南アジアを中心に、日本企業が中国の代替、又は中国と並行して、リスクヘッジのために新たな投資を行いたいということに備えて、インフラを整備する、こういう外交戦略を持っていますけれども、これも非常に重要で、この原産地累積制度があるがために、日本の企業が中国の代替地として考えるときに、このTPP加盟国をその俎上に上げるだろう、優先順位を高くするだろう、そういう意味もあるということを申し上げました。

 これは私の方から申し上げたことでありますけれども、前回申し上げなかったことで、政府に対してお願いがあるのは、ISDSに対する説明なんです。

 後で全体最適と部分最適の議論をさせてもらいたいと思っていますが、どうしても、ISDS制度というと、アメリカの企業が、自分の不利益が出てきたときに、日本政府をわがまま三昧に訴えてしまうんじゃないかという議論がよく出てきます。だけれども、私が政府にお願いしたいのは、私もずっと商社勤めで、海外の途上国に対する投資等を行っていました。今でも、TPP加盟国ではないですけれども、御承知のとおり、ボリビアあたりは、日本企業が投資をしようとする際には、ある一定の条件で迎え入れておきながら、国有化とまではいかないけれども、国の出資比率を大きくするといったような、大きな、途上国の政府による条件変更がある。こういうようなことに備えて、ISDSという制度は、日本にとって、日本企業にとって大事。だからこそ、日本の経済連携、あまたありますけれども、基本的には全部、ISDSを入れている。

 ですから、ISDSという制度は、日本企業がこれから途上国に対していろいろ投資をしていくときに日本企業を守るための制度なのであるということを、もっともっと強く強調して説明をしていただきたいと思っています。

 その上で、きょうは、今申し上げたことと重複しない議論をさせていただきたいと思っています。

 まず、TPP11の成功は、先ほど言いました、称賛しますけれども、米国を迎え入れることの意義、経済規模からいっても、世界的な影響力、また、TPP12になったときの影響力も考えて、米国を再度迎え入れるということを積極的に推し進めるべきだと思っていますけれども、茂木大臣として、米国を再度迎え入れることの是非について、その可能性についてどう見られておられるか、まずは答弁をいただきたいと思います。

茂木国務大臣 まず、吉良議員には、これまでTPPの議論に際しまして深い御理解をいただき、また、さまざまな形で御提案等々、前向きな御提案をいただいていることも心から感謝を申し上げる次第であります。

 TPP11の参加国、日本に限らず、各国が、やはり米国に復帰をしてほしい。これは単に、米国のGDPであったりとか国内マーケットの問題だけではなくて、やはりアジア太平洋地域全体で新しい二十一世紀型のルールをつくっていくという中で、米国の存在、これは大きいと思っております。

 同時にこれは、我々十一カ国だけではなくて、米国にとっても経済のグローバル化、技術革新が一番進んでいるのは米国でありますから、TPPというものは、米国にとっても経済、雇用面で大きなプラスをもたらす。こういったことを米国に対しても改めて訴えかけていきたいと思っております。

 ぜひ復帰をしてほしい、こういう思いを持っておりますけれども、もちろん、トランプ政権としての判断、こういったものも出てくるんだと思います。

 トランプ大統領は、二国間のディール、こういったものを志向しているのは間違いないわけでありますが、その一方で、TPPについても、アメリカにとってもよりよいものになるのであれば必ずしも全面否定するわけではない、こういう考え方を持っている。こういう印象を、過日の日米首脳会談に私も同席をさせていただきましたが、そのような印象を持って帰ってきたところであります。

吉良委員 今、茂木大臣の方から、米国は間違いなくバイを志向しているという話がありましたけれども、一点確認で、どれだけ日米FTAというバイの交渉を求めてきても、日本政府としては絶対応じない、応じていただきたくないのでありますけれども、その辺について言える範囲で答弁いただければと思います。

茂木国務大臣 四月の日米首脳会談で合意をいたしました自由で公正かつ相互的な貿易取引のための協議、FFRと呼んでおりますが、これは、日米間の貿易・投資を更に拡大をさせて、公正なルールに基づく自由で開かれたインド・太平洋地域における経済発展を実現するための方策について議論をする。

 我々として二国間のFTAは念頭に置いておりませんし、この点についても首脳会談で米側に強調したところであります。したがいまして、このFFR、この協議は日米FTA交渉と位置づけられるものではなく、その予備協議でもないと思っております。

 二国間のディール、いろいろな、協議というのはさまざまあると思いますが、そういったFTAという枠組みを念頭に置きながら協議を進めるということではない。ただ、この協議というものがまさにレシプロカル、フリーでフェアでありながら、レシプロカル、相互に利益になるような協議になるように、建設的な議論が進められればと思っております。

吉良委員 姿勢については了解しました。

 FTAに乗ることなきようお願いしたいと思っていますが、逆に、FTAを拒否し続ける意味でも、そうではなくてマルチで、TPPでやりましょうと言うことが大事だと思っています。

 そういう意味で、先ほど、米国、最もグローバル化して、また技術の進歩も著しい国だというような説明がありましたけれども、TPPの方がバイよりもいいよという説明をしていかなければいけないと思うんですが、これまで米国に対してどう説明してきたのか。又は、今は局面が変わっているとも言えますので、これから、もう一回、米国よ、復帰しろよと言うときに、どういう説明をされるおつもりか。

 先ほどの答弁と少し重なる部分があるかもしれませんけれども、お聞きしたいと思います。

茂木国務大臣 四月の日米首脳会談では、安倍総理からトランプ大統領に対しまして、日本としてTPP11の早期発効を目指す、こういった日本の立場、そして先ほど申し上げたようなTPPの意義、さらには、新たな投資ルールであったりとか知財の保護などマルチの枠組みのメリット、こういったこともしっかりと説明をしたところであります。

 米国の経済、雇用にとってどうプラスになるか。若干、先ほど答弁申し上げましたが、もう一点、こういうマルチの枠組みのメリットでありますけれども、米国が強い関心を持っております、新興国の一部によります強制的技術移転であったりとか知的財産の保護、また、市場歪曲的な措置等の問題への対応策としても、これは日米でやってもしようがないわけですね、ある意味。TPPのようなハイスタンダードなマルチの枠組みづくりが有効である。こういったことを改めて米側とも話をしたいと思っております。

吉良委員 最後の後段のところ、ある意味では、日米手を携えてといいますか、先進国が途上国に対して一緒にレベルを高めていきましょうという、そういう説明は非常にいいというふうに思っています。

 実は、私がこういう質問をするというのは、私自身の無知もさらけ出すことになるんですけれども、実は私は、アメリカの経済構造といいますか、産業構造といいますか、グローバルな産業構造について少し誤解をしていたんです。

 どういうことかといいますと、例えば今も米中の貿易摩擦が再燃しようとしていますけれども、私はどう考えていたかといいますと、トランプさんは全くわかってないなと。確かに貿易は赤字だよ、だけれども、何で赤字になるかといえばアメリカが中国に投資しているからじゃないか、その投資している中国企業なり合弁企業からアメリカに輸出しているんだから、貿易上は赤字になっても、その輸出元、アメリカの投資先、合弁先、そこがもうければもうけるほど配当としてアメリカに還流してくるじゃないのと。だから、物の流れからすると中国からアメリカへだけれども、金も同時にアメリカに入ってくるじゃないの、こう思っていたわけです。

 ちょっと、資料を見ていただきたいと思うんですね。

 資料の一です。まず、一番最初にある資料の一は、これは日本の経常収支です。私が今言った、自分の無知をさらすと言ったのは、日本の産業構造と同じようなものだろうと想像していたことによります。

 これを見ておわかりいただけるように、緑は第一次所得収支、つまり、投資先からの配当収入及び金融投資から起こる金利収入が第一次所得収支のほとんどですけれども、日本は、最近は石油価格が高くなるか低いかによって、貿易部分については赤字になったり黒字になったり、ある意味ではゼロを基本にプラスになったりマイナスになったりする。けれども、今言った所得収支については、第一次所得収支については、一貫して大きく、かつふえている。最近も二十兆円前後の収入がある。収入といいますか、所得がある。

 これは、日本が今目指している名目GDP成長率というのが三%ですから、五百数十兆円の三%といったら十六、七兆になるわけですけれども、それを大きく上回る所得が今言った配当、金利収入であるということです。

 ですから、先ほど言いましたように、日本の場合は、仮に貿易が赤字になっても、その赤字先というのは親子関係であったりして、結局、投資からの配当収入として戻ってくる、又は連結対象としてドルベースで認識すれば大きな利益になる、このように思っていました。

 ところが、次のページ、資料二をごらんください。

 これは、米国の経常収支の内訳をあらわした図です。同じように、緑色は第一次所得収支です。オレンジ色がサービス収支、そしてブルーが貿易収支になっています。

 先ほど茂木大臣がおっしゃったように、アメリカの場合は知的財産というのが非常に大きい。このサービス収支の内訳、細かく見ていませんけれども、これには大きく、今言った知的財産、特許等の収入が入っていると思います。

 けれども、第一次所得収支というのを見てください。下の方に実数字も入れています。二〇一七年で見たとき、二千百七十億ドル、ざっと二十三兆円、これは日本の第一次所得収支と大して変わりがないんですよね。今アメリカのGDPは日本の四倍ありますので、それから考えると、異様に小さいということがわかります。その分、貿易収支というのは本当に大きなマイナスになっている。

 先ほど、米中の貿易摩擦で私が勘違いしていたということの実例として、伸び行くアップル、アップルのスマホ、その部品をどこから調達しているか。いろいろなところから調達していますけれども、最も大きい工場、事業所の一つは台湾の鴻海が成都で運営している工場、そこからの米国への輸出、五兆円ほどあります。これは投資じゃないですよ、鴻海がやっていますから。完全なOEMかどうかわかりませんけれども、そういう意味では、純粋に委託生産なんですよね。ですから、鴻海が幾ら輸出してもうけたとしても、そこからの配当収入はアメリカには入ってこない。まあ、だからといって、貿易赤字を減らすというトランプさんのやり方、今のような貿易摩擦に発展するようなことがいいとは思いませんけれども。

 繰り返しますが、私自身の無知蒙昧も含めて、こういうアメリカを再度TPP12に引き込んでいく際には、アメリカの産業構造、こういう経常収支の状態をよく把握した上で、それでもトランプさんが、又はアメリカの事務方が、いや、日本の言うとおりだと言うような説明をしなければ、表面的な説得ではとても復帰するインセンティブにはならないだろうというふうに思っています。

 そういう意味で、政府としても、外務省の北米二課、また内閣府の方で相当な分析、勉強はしているとは思いますけれども、この辺の米国の産業構造というものをよくよく勉強して、説明していってもらいたいなと思っています。

 この件について、茂木大臣、どう思われますか。

茂木国務大臣 確かに、現在の多国間のさまざまな取引関係を見るときには、単に貿易だけではなくて、所得収支も含めた経常収支がどうなっているか、こういったことも念頭に入れながら分析をしていく、御指摘のとおりだと思っております。

 恐らく、一九八〇年代、日米間でさまざまな貿易摩擦があった当時は、日本もある意味、日本で製造して、それをアメリカに輸出をする、こういう構造で、部品なんかにしましてもかなり日本でつくるという構造から、今は圧倒的に日本も現地生産、こういったものがふえてきておりまして、日本の企業は今アメリカでさまざまな投資をしておりますが、こういった日系企業によりますアメリカでの雇用、これが八十六万、こういう数字になっているわけであります。

 さらには、その日系企業がアメリカでも販売をいたしますけれども、それが同時にまた第三国に輸出をする。この額というのが、実は、日米の貿易赤字よりも大きい額を日本の企業がアメリカからもう一つの国に輸出をするという形もとっているわけでありまして、多面的にこういった問題を見ていかなければいけないと思っております。

 トランプ大統領、メーク・アメリカ・グレート・アゲインという形でありまして、恐らくこれは、アメリカの雇用であったりとか所得、こういったものを再びふやしていく。こういう観点から、日米間ではどんな協力ができるんだろうか、こういう建設的な議論を進めていきたいと思っております。

吉良委員 ありがとうございます。

 これから、きょうのある意味では一番重要なポイントになってくるんですけれども、どういうことかといいますと、米国を復帰させるために、日本がやはり、TPP11をまとめたように、中心になってリーダーシップを発揮しなければいけないというふうに思っています。

 その際に、あれだけ皆さん苦しい思いをして、まずはTPP12をまとめ上げていた。その後、アメリカが離脱することになった。で、もう一回、アメリカを復帰させる。この際、再交渉になるような、十二カ国といいますか、もう合意した十一カ国がまた大幅な再交渉を余儀なくされるような事態は避けなければいけない。でないと、TPP12の再合意というのは成らないと思っています。

 そういう中で、じゃ、どうやったらアメリカをもう一回引き込むことができるのか。私は、日本がキーだと思っているんです。

 そういう意味で、日米FTAはやらない、そして、十一カ国全体にわたる再交渉の余地というものを極めて小さくしながらやっていくためには、日本が何らかの形で、アメリカを引き入れるための、また、それを十一カ国が支援するような道を日本が提示しなければいけないのかなとも思っているんです。そして、それは日本の国益にかなうやり方でなければならないと思っています。

 そういう意味で、かなり大胆な議論を今からさせていただきたいと思っています。

 TPPの賛成論と反対論、これはいろいろな見方がありますけれども、ざっくり言ってしまうと、TPPの賛成派は、大概が全体最適を求める派です。そして、反対する人たちは、多くの人が部分最適。これは、どっちがいい、どっちが悪いと言っているのではないですけれども、農業のここが傷む、こういう産業のここが傷む可能性がある、だからだめだという部分、それから、傷むところはあるかもしれないけれども、それは何とか手当てをしていきながら、日本全体の国益が増進できるのであれば思い切って一歩踏み出そうという全体最適を主張する、この議論だと思うんです。

 私は、全体最適に立つ立場です。その際に、ここにいる全員の委員の皆さんもそうだと思いますし、賛成論である私もそうですけれども、この日本の中で、誰一人として、農業がどうなってもいいとか、農業従事者の生活がどうなってもいいと思う人は誰一人いない。誰もが日本の農業を守りたい、農業に携わる人を守りたいと思っている。そういう中にあって、やはり国益を増進しなければいけない。まずは、このことを断った上で話をさせてもらいたいと思っています。

 というのは、私は、農業分野の、関税も含めたさらなる開放ということを提案しようと思っているんです。

 資料の三を見ていただきたいと思います。これは、大岡越前守の三方一両損というのは有名な話ですけれども、私流に三方一両得というのをつけている、命名している考え方です。

 極論していますけれども、左上の紫のところに書いてある、TPPにおいて、農産物関税の撤廃、完全自由化、一番極端なことを書いています。一方で、米、麦、大豆、肉、酪農などの主要産品に対して、農家に対して直接支払いを行うという形で、三者、三方とは何かといいますと、消費者であり、農業従事者、まあ農業であり、そして輸出産業を中心とする産業。

 仮の話ですけれども、農産物の関税がなくなった場合には、外国産の輸入農産物が日本の市場に入ってくることになります。その農産物を中心としたところは価格が大幅に下がってくる可能性がある。これは、消費者にとっては選択肢はふえるし安くなるので、消費者のメリットになることは間違いないです。

 後で説明、重複しますけれども、消費者にとっては、もっといいのは、私の思いでは、さっき言った、何らかの形で生産コストと市場価格のこの差を、WTO上の違反にならない範囲において、直接支払いにおいてその差を埋めるということになれば、仮に外国産のものが市場に千円で出ている、日本で同じものを出そうとするとコストが三千円かかっている、けれども、二千円は直接支払いで補助として来るということになると、日本の農家も千円で市場に出せるようになるということですね。そうすると、消費者は、外国産の関税をなくしたおかげで、外国産はもちろんだけれども、日本の安心、安全で質のいい、おいしい農産物を安く手に入れることができる、買うことができるようになる。

 日本の場合は、有名ブランドをつくっているような農家は、仮に市場価格の平均が千円であったとしても、自分は少々高くても買ってもらえる、品質にそれだけの自信があるということであれば、二千円で出せるわけですよね。そうすると、二千円の補助をもらい、かつ、マーケットとの差の千円も、プラスアルファが大きくなります。

 右下の産業については、当然ながら、相手国の工業製品、化学製品等の関税が下がる、なくなりますので、輸出増、売上、利益増。それは結果的に、法人税を通した税収増を招きます。全てを賄えるかどうかわかりませんけれども、私は、この産業の利益増、税収増によって、さっき言った、農家の生産コストとマーケット価格の差を埋める財源として使うべきだというふうに思っています。こうすることによって、消費者もハッピー、農業者もハッピー、そして産業もハッピー。

 これは、さっきの全体最適と部分最適でいいますと、釈迦に説法にはなりますけれども、部分最適の人は、TPPに入ればここが傷む、この人たちが困るから入っちゃならぬということになります。そうすると、今の国益が一〇〇とすれば、一〇〇のままになります。私は、今、るる説明していたような考え方でもってやれば国益が一〇〇から一一〇になります、その一一〇のふえた一〇のうちの税収が四なりあればそこから農業に対する手当てをする、そのことによって国益が増大し全体最適が追求できる、そして部分最適で傷むかもしれないところにきちっと手当てができる、このように考えています。

 この考え方に対しての茂木大臣の所見をお伺いいたします。

茂木国務大臣 委員の方から、わかりやすい形で資料を提示いただきました。

 恐らく実際は、先ほど、TPPの経済効果、このGTAPモデルを使った場合にどうなるか、GDPの押し上げ効果、雇用の効果のお話もさせていただきましたが、こういったものがぐるぐると回りながら最適の解が出てくる。

 同時に、例えば消費者の方というのは、単純な消費者として存在するだけではなくて、場合によっては、その方が輸出大企業に勤めていたり、地域の中小企業ですばらしい物づくりをしていたり、また農業をやっていたり、いろいろな形で幾つかの顔を持つということがあって、この消費者の方が仮に農業をやっていてさまざまな工業製品を買うこともあるでしょうし、逆に、会社勤めの方が日本のいい農産品を日々の家庭に並べているということもあるんだと思います。

 こういうサイクルの中に、さらに、成長センターであるアジアというマーケットが視野に入ってくるということで、よりダイナミックにこういったものが回せるような形にはなってくると思っております。

 そして、委員の方から、アメリカが復帰することの重要性であったりとか、また、消費者の利益は何か、こういうことについても前向きな御提言をいただいたところでありまして、我々も、アメリカには復帰をしてほしい、こういう考えを持っておりますが、その一方で、十一カ国、このTPP11をまとめるに当たって、TPPのハイスタンダードを維持しながらバランスのとれたものにしていく、各国の利害、ぎりぎりの調整をしましてつくったガラス細工のような協定でありますから、なかなか、一部のみを取り出して再交渉をする、見直しをする、このことは難しいという側面もあるとは考えております。

吉良委員 ありがとうございます。

 ですから、最後の部分については、何というか、ほかの国がまた国内調整を含めて高いハードルを課すようなことがあってはならない。だから、ほかの国から見れば、ハードルがかえって低くなったというやり方をしなければいけない。

 そういう中にあって、日本が隗より始めよではないですけれども、さっき言った、最後は、農家も守り農業も守りつつ、日本がもう少し開放することによってまとめられないかなという考え方を持っているということを披露させてもらいました。

 もう一点だけ。

 今、消費者についての言及があったということを言ってもらいましたけれども、日本の農業を考える際に、例えばお米を食べなくなったとか、人口減、それから若い食欲旺盛な人たちが減ってきているというようなこともあって、やはり農産物に対する需要をどう維持していくかというのも非常に大事だと思っているんですよね。

 そういう意味で、農産物が高いよりは、いいものが、繰り返しますけれども、安心、安全で、安くて、よくて、おいしいものが安く消費者の手に入るということは、需要を維持したりふやしていくことになると思いますので、それは、めぐりめぐって農業全体の発展に寄与することだとも思っていますので、私は結構いい考え方なのではないかなというふうに思っています。

 ただ、こういう、農産物の関税を低くしようとか、また、なくそうとかいうような考え方を披露すると、必ず出てくるのが食料安全保障の問題です。全部海外に頼って日本の食料安全保障というのを守れるのか、こういう議論が必ず出てきます。

 そこで、残された時間については、食料安全保障についての現状の確認、また、私の持論も披露させていただきたいと思っています。

 まず、大臣、世界で一番農産物の輸入が多い国ってどこか御存じですか。ちょっと質問通告で、大臣にするとはしていないんですけれども。

茂木国務大臣 ちょっと正確な回答かはわかりませんが、私にとっては中国のような気がいたします。

吉良委員 ありがとうございます。

 確かに今は中国が一番輸入額が大きい。ただ、少し前までは、まだ中国の経済成長がここまでないときは、アメリカが一番大きな輸入国でした。今でも二番目だと思います。

 アメリカといえば、すぐ頭に浮かぶのは、農産物の輸出国。資料の四を見ていただきたいと思うんですが、今も回答あったとおり、この資料の四は、農産物輸入額上位十カ国の農産物の輸入額、輸出額、そして純輸入額というものを示した図です。

 これを見たときに、結構意外だと思われるのは、さっき言いました米国、それから真ん中あたりにありますオランダ、またフランス、カナダ。今申し上げたような国々は、結構、農業大国というイメージが強い国です。事実、農産物の輸出額は非常に大きいですが、同時に輸入額も非常に大きな国々だということが言えると思います。

 これはどういうことかというと、これらの先進国は、国民に対して豊かな食生活を保障するということが一番の主眼にあって、農産物についても、ある意味では比較優位の原則をとっているということですね。ですから、その国の土地柄からして競争力がない、なじまないと言われるものについては積極的に輸入をし、そして、まさに得意とする農産物については輸出をして、農産物の輸出大国になっている。

 そういう意味で、一つ固定観念である農業大国と言われるところは、同時に農産物の輸入大国でもあるということを、まずは、このTPPの議論、また農業はどうなるんだというときに、みんなで認識しておく必要があると思って、このグラフを提示させてもらっています。

 同時に、資料の次のページ、五を見ていただきたいと思います。よく食料自給率という話が出ますけれども、これは、農水省のホームページより抜粋した穀物自給率の比較表です。

 日本の議論の中で、自給率をもっとふやせふやせと言っています。それ自体は間違ったこととは思いません。でも、実際どういう国が自給率が高いのか、見てください。

 パキスタン一一四%、マラウイも九四%、カンボジア一〇二%、チャド九九%、マリ八五%、ニジェール八四%。今申し上げた国々は、大変失礼なので、ちょっと国全体としては言葉を選ばなきゃいけないんですけれども、パーキャピタのGDP等を見ても決して豊かな国とは言えない、食生活も十分ではないだろうと思われる国が、食料自給率がというか穀物自給率が極めて高い。

 茂木大臣、このことは御存じだったでしょうか。

茂木国務大臣 恐らく、穀物の中でも、こういった国々を見ますと、比較的麦をつくる国というのは多くて、麦は同じ穀物の中でも比較的、それほど土壌によらずに連作がきいたり、こういった効果というのは一つあるのかなと思っております。

 あとは、人口に対する国土面積の広さというのも、やはり、日本であったり韓国、オランダ、こういった国が自給率が低いところから見てとれるんじゃないかなと思っております。

吉良委員 何が言いたいかというと、その資料五の、今言った穀物自給率の表の下に、カロリーベースの総合食料自給率計算式というのがあります。左の方で、一人一日当たりの供給カロリーを分母として、分子を一人一日当たり国産供給カロリーとしております。これは農水省の定義であります。これをブレークダウンすると、右側のようになると思います。

 この右側のブレークダウンを見たときに、仮に、括弧の中、輸出も輸入もゼロだったとしますと、結局、国産供給カロリー割る人口分の国産供給カロリー割る人口というふうになって、一〇〇%になります。

 どういうことかというと、その上の国々でもわかるように、海外から農産物を買う経済力のないところは、結局、この輸入がゼロになって、もちろん輸出余力もありませんから、高くなる。海外から、さっき言った比較優位の中で、自分が苦手な農産物を買う、その経済力があるところは、アメリカ、フランスのように、まさに農業大国であれば、輸入も多くなるけれども、それでもプラスマイナス、輸出が多くなる。日本の場合は、圧倒的に輸入が多くなるということをあらわしているということです。

 ですから、穀物自給率だったり、食料自給率を考えるときは、こういった要素もあるんだということを頭に入れておく必要があると思います。

 次に、資料六を見ていただきたいんですけれども、この資料六は、外務省が、一番下の出典のところに書いてありますけれども、「我が国の「食料安全保障」への新たな視座」ということで、外務省の経済局の安全保障課が有識者に提言をお願いして出した、その中に入っている、食料安全保障への新たな視座、平時、有事の分類と対応ということで、平時における食料安全保障に対してどういうことが必要なのかということを書いている。そして、いざ何かあった有事における食料安全保障の観点から、どういう対応をしなければならないかということを書いています。

 これは、同じ趣旨のものが農水省のホームページにも出ています。私はちょっと見比べたんですけれども、正直言って、こちらの方がより詳細に書かれておりましたので、こちらの方を出させてもらった次第です。

 食料安全保障の議論をするとき、何となく、輸入途絶になったり、海外で一朝有事があったら、もうパニックになって、日本国内で国民に対して食料供給ができなくなるのではないかという漠然とした不安が国民にあると思っています。

 これは、ある意味、私自身が大学時代にやっていましたロッククライミングと似たところがあって、ロッククライミングって、知らない人から見ると、あんな垂直の壁を、よくあんな危なっかしいところを登るなというふうに思いますよね。ところが、実は、結構物すごい安全装置をつけて、それを実行しながら登っていくんですね。

 こんな、委員会で恐縮ですけれども、ほんの少し脱線させてもらって、どういうメカニズムかといいますと、よく金づちみたいなもので打つじゃないですか、くぎみたいな。あれはハーケンというんですけれども、あれを岩と岩の割れ目にかあんと打ちつけて、そこにひもを通して、そこに今度、カラビナといって、よくリュックについているような、こう動くものがあって、そこにひもを通して、自分がロープを巻き付けていますから、例えば数メートル登ると打ちつけて、そして今言ったものをかけて、そこに、自分と下の人で結ばれている、ザイルといいますけれども、それをかけるんです。

 ここで一回ザイルをかけますと、そこから例えば二メートル先に登ったとします。その間、ハーケンを打ちつけることなく、ザイルを通さなかったとします。そこで滑落しましたとなりますと、下の人は注意深く、上の人間がちゃんと登っているか見ていますから、滑落したと思った瞬間、ロープが伸びないようにするんです。その仕組みは、もうここでは。

 そうすると、二メートル登った分の倍だけ落ちる、ここでロープが固定されていますから。二メートル登って、二メートル、その分落ちる。四メートル落ちるだけなんです。

 ですから、下の人が二十メートル下にいるときに登っていくと、これは大変なことになるなと思いますけれども、実際はそういうメカニズムで安全を確保しながら登るんですね。

 実は、食料安全保障というのも、私に言わせるとそういうもので、精緻に分析をしないと、今言った、何か一朝有事があったら全てだめになるというようなイメージをどうしても持ってしまうんですけれども、ここにある、また、きょう、委員の皆さんも大臣もなかなか時間がないと思いますけれども、平時において何をしておかなきゃいけないんだ、そして平時については、有事に備えるべき事柄は何か、そのシミュレーションとかも含めて、ここにあることをやっておくと、備蓄との組合せにおいて、皆さんが、さっき言ったロッククライミング、危なっかしいなと思うほどの実はリスクではないと私自身は思っています。

 そういう意味では、外務省の諮問した研究チームが出したこの研究成果というものは、私が読んだときに非常に説得力のあるものでありました。

 そういう意味で、私が全体最適と部分最適と冒頭に申し上げましたように、この日本において誰一人、農業がどうなってもいいとか農家がどうなってもいいという人はいない。みんなが守りたいと思っているけれども、それでも全体最適のためにTPPに一歩踏み込み、そして、農業については、急がば回れも含めて、結局は農業の振興につながるんだというアイデアを、タブーなしに一回検討してみる、きちっと分析してみる価値があるんだろうと私は思っています。

 そういうことも含めてTPPを更に進めていただきたいし、今申し上げたような観点も含めて米国を再度招き入れてほしいというふうに思っています。

 これについて、最後、茂木大臣からの答弁をお願いします。

茂木国務大臣 この安全保障、食料にしても、それから外交上、まさにエネルギーの安全保障についても、いかにリスクを軽減させていくか、そして、コンティンジェンシー、緊急の事態にどう備えるかと平時から考えておくか、極めて重要だと考えております。

 ロッククライミングも、仕組みについてはわかりましたが、それでも私はやはり怖いな、こんなふうに思っているところでありますが、TPPについては勇気を持って、これからしっかり進めていきたいと思っております。

吉良委員 ありがとうございます。終わります。

山際委員長 次に、中川正春君。

中川委員 大分質疑も時間が長くなってきまして、お疲れだろうと思うんですが、それぞれ、大臣、最後まで頑張ってください。よろしくお願いをしたいと思います。

 私の立場は、マルチでルールをつくっていくということ、自由貿易ということを原則にしながら、それぞれの状況に応じて体系をつくっていくということ、これは日本にとっても正しい生き方だというふうに思っています。

 特に、最近は、トランプ大統領だけではなくて、ヨーロッパでもあるいは中国でもそうですが、それとは違った形の秩序で世界を塗りかえていこうという、そんな勢力も出てきていますが、それだけに、これまで一つ一つ積み上げてきた私たちの世界観といいますか、それは大事にしていきたいというふうに思っています。

 その上で、しかし、それが今度は、日本の国益あるいは日本の生きざまということになると、よほど日本の構造というのをしっかり踏まえた上で、特に車と農業政策が、今回、一番最初のTPPの交渉のときからバーターで取り上げられて、それぞれ日本のいわば社会の特色というか経済構造の特色として挙げられて、それのプロとコンといいますか、いい面、いわゆるそこが引き立てられる面と、それで傷つく面、あるいは恐らく秩序が壊されていく面が問題になって、それをどう解決をしながらこの問題を進めていくかというのが課題だったんだと思うんです。

 それから見ていくと、農業政策、あるいはまた凍結された部分が二十二項目、今ありますけれども、こうしたところも含めて、やはり日本の国内政策が私は十分でないというふうに思いますし、このまま中途半端に進めれば、国内の産業構造そのもの、特に農業が、非常に大きな壁にぶち当たるというよりも、恐らくある意味では消滅してしまうような、そういう分野が出てくる可能性がある。

 そこが問題なので、この問題については少し立ちどまって、国内政策をもっと国民に、一つは説明しなきゃいけないということと、それからもう一つは、いわばだましちゃいけない。小手先で政策を打ったよ、大綱をつくったよ、それで十分なんだよというようなデータを出して、それで国民を、何といいますか、目先で誘導するような、そうした政策というのは、これは間違っている、禍根を残す。非常に大きな、次の世代に向かって問題になっていくだろうという、その危機感を持って議論をしたいというふうに思います。

 そんな前提に立って話を進めていきたいというふうに思いますので、よろしくお願いをします。

 まず、今回はTPP11でありますが、アメリカが離脱をしたということなんですけれども、アメリカと二国間交渉をするかしないか、あるいはTPPへ向いて、もう一回アメリカを誘い込むのかどうか、現実にそれができるのかどうか。その見通しとして、さっきからいろいろな答弁を聞いていると、さっぱりわからない。何を言わんとしているか、大臣、わからないんですよ。

 そこの方向性を、日本の政府としては、しっかり腹を据えてこうしていくんだという話をまずやっていただきたいと思います。

茂木国務大臣 我が国としては、日米両国にとって、さらにはTPP参加国も含めて、TPPが最善である、こういう立場でありますし、そのことにつきましては、先日の日米首脳会談におきましても安倍総理からトランプ大統領に対して明確に、その旨も説明をしているところであります。

 そして、今後、まさに話合い、協議でありますから、どうなっていくか、進展について全てを見通すことは難しいわけでありますが、これは日米二国間の貿易・投資だけではなくて、公正なルールに基づきます自由で開かれたインド・太平洋地域をつくっていく、そのために日米がどう協力をしていくか。フリー、フェア、そしてレシプロカルですから、まさに日米双方にとって利益になるような解を見出していきたい、こんなふうに考えているところであります。

中川委員 わけがわかりません。

 二国間でやるのか、それとも、あくまでもこのTPPへ向いてアメリカを誘い込んでいく、二国間はやらないんだと言うのか、どっちなんですか。

茂木国務大臣 この協議は二国間で行います、協議については。そして、その上での経済連携のあり方等々について、アメリカは恐らく二国間のディールというものを志向しているにしても、我が国としては、マルチの枠組み、TPPが最善である、こういう立場で交渉に当たりたいと思っております。

中川委員 それは、翻訳すると、バイで交渉するということは始めます、しかし、その条件としては、TPPで到達をした部分を超えて日本に不利になるような、あるいは、マルチのメンバーに不利になるようなことは認めていきません、その範疇の中でしっかりおさめますという翻訳でいいですか。

茂木国務大臣 二段に分けてお話しした方がいいと思いますが、まず、日本を除くTPP参加国でいいますと、仮にアメリカがTPPに復帰をするということになりますと、現加盟国の合意が必要になってきますから、それは、不利益になる形の合意というのは考えられないと思っております。

 また、日本との関係で申し上げますと、我が国は、米国だけではなく、どのような国とも、国益に反するような合意を行うつもりはございません。

中川委員 いや、言葉尻を捉えて申しわけないんだけれども、国益に反するような交渉をしないといったら交渉にならないんですよ。国益に反するような交渉をしたから農業政策が必要だったんだと思うんですよ。これからもそういう形で、我々に不利な条件も出てくれば有利な条件も出てくる、その中でどう折り合うか。さっきの、全体でどう折り合っていくかということだと思うんですね。

 そこにもごまかしがある。国益には不利にならないようなというようなことは、私は言わない方がいいと思います。これから出てくる話の、これは前段部分なんですけれども、もっとそれを具体的に申し上げたいことがあるものですから、あえて申し上げました。

 実は、ウィリアム・ハガティ駐日大使が、十五日のコメントで、今USTRのメンバーが日本に来日をしているということを前提にして、茂木大臣とこのUSTRの代表との間での話は、グレートアドバンシズという言葉で、要はその中身に大きな進展があったんだというふうな、あるいはあるんだというふうな、そういう表現をして、大使がコメントを出しているんです。

 これがメディアに今流れているんですけれども、この中身というのは何なんですか。

茂木国務大臣 ハガティ大使のコメントについて詳細は存じ上げておりませんが、当然、これは米国側だけではなくて、日本側も今回のFFRという新たな協議を通じて大きな成果を得たい、レシプロカル、相互にとって利益になるような成果を得たいと思っておりますから、そういった期待を当然ハガティ大使としてもお持ちなのではないかなと思います。

中川委員 私も、連休にちょっとアメリカに行く機会があって、このUSTRのメンバーとも話合いをするきっかけをつくって、やったんですけれども、二国間でやりますよ、その条件は、基本的にはアメリカの利益、アメリカ第一主義で、原点に返ってやりますよというふうな話でありました。

 一般的には、よく言われるんですが、マルチでやる環境とバイでやる環境を比べると、バイでやる環境の方が大国にとっては、ということは自分で大きな市場を持っている、そういう国にとっては非常に有利な形になる。それがいわゆるカードとして、自分の国の市場がカードとして使えるという意味でということだと思うんですが。

 ということで、アメリカにとっては、ある意味、国益ということだけを考えれば、あるいは、今の利益、長期的にグローバルでどういうふうに人類が繁栄していくかというようなそういう大きな局面に立った話じゃなくて、アメリカをいかに救うか、いかに大統領選挙、次の中間選挙を克服していくかということから考えたら、これは非常に、ある意味有意義な選択であったというふうな共和党系の人たちの話がありました。

 それについては、大臣、どう思いますか。

茂木国務大臣 共和党系の議員の皆さんの中にもTPPについて賛意を示されている方はかなりいらっしゃる、こんなふうに思っております。

 二国間で協議をいたしますけれども、例えばこれは日本とアメリカだけのゼロサムゲームという、グローバルな経済の状態で今ないのは確かだと思っておりまして、例えば先端技術、この不正な取得の問題であったり、知的財産の保護、さらには市場歪曲的な措置の問題、こういう問題に対しては、日本やアメリカ、こういった国がリーダーシップをとりながら、二カ国だけでやるというよりも、マルチの枠組みでやはりそういったものを、ルールをつくっていくということが必要でありまして、そこでは、日本、アメリカの間、ウイン・ウインな関係、レシプロカルな関係、こういうものが築けるのではないかなと考えております。

中川委員 そういう合意が既にできているのであれば、あるいはそういうスタンスに立って話し合っていこうということができているのであれば、それはそれで評価のできることでありますが、それは茂木大臣の希望的観測なんだと思うんですね。

 証拠に、もう一方的に米国というのは、よく言われる鉄鋼とアルミニウムの輸入制限と関税の引上げをやって、恐らくこれをディールとして、カードとして使いながら次のステージへ行こうとしているんだと思うんです。こんなものは、国際的な基準とかなんとかというのは関係なし、アメリカの一方的な議論の中で始まってくる話だと思うんです。

 こういう類いのものはこれから幾つか出てくると思うんですが、二国間で、話合いの出発点で、そこのところをはっきりしていかなきゃいけないと思うんですよ。こういう条件を出してくる限り話合いには乗らないというようなことから出発しないと、さっきの茂木大臣のような、グローバルな話にはならないんだというふうに思うんです。

 それぐらいの覚悟はおありだというふうに私は思うんですけれども、どうですか。

茂木国務大臣 基本的なスタンスは先ほど答弁させていただいたとおりでありますが、協議でありますから、具体的に協議の項目をどうしていくのか、どういうタイミングで協議を行うのか、これは、まず基本的には事務方で詰めながら、また、それぞれ、私のところにもライトハイザー通商代表のところにも上がっていって、そして今度は閣僚同士の協議、こういったことにつながっていくんだと思っております。

中川委員 なかなかぴたっとした回答がないので、こんなところに埋もれていると私も次には進めないので非常に残念なんですが。

 ある程度、私ははっきり物を言っていかないといけないんだと思うんですよ。そんなオブラートに包んだ格好のいい話だけじゃなくて、アメリカ相手のこれはディールですから、やはりこっちも言うべきことはしっかり事前に表に向かって言っておくということでないと、これは押し切られる可能性がある、こっちの準備がないままに向こうのペースに引っ張り込まれる可能性があるという懸念を持ちます。

 それで、凍結条項というのが二十二項目あって、その中で、日本にとって、これは日本は本当はやりたくなかったんだけれども、さっきの話で、グローバル基準の中でやらざるを得ない。私もそのとき著作権なんかの話に関与はさせていただいたんですけれども。法律はつくったけれども、今、凍結というような形になっていますよね。そういう部分というのは、この二十二項目の中に個々にあります。

 これはグローバルスタンダードだということが一方であるんですけれども、もう一方で、本当にスタンダードなのかな、どうなのかな。どっちかというと、アメリカンスタンダードというような形で交渉されて進んでいる部分というのもあるんだと思うんですね。

 米国との交渉で、ここの部分はどうされるつもりですか。このまま、もうしっかりまとまったものとして交渉の対象にもしないで、いや、これはもうこれでいいよ、この二十二項目についてはという前提なんですか。それとも、これも含めて基本からやるんだ、二国間ではということですか。どちらですか。

茂木国務大臣 このTPPの凍結二十二項目でありますが、ハイスタンダードを維持する中で各国の利害を調整するという中では、本当に短期間でよく絞り込めた、二十二項目に絞り込めたと思っておりますが、今後、二十二項目の扱い、これは日米間だけで決められる問題ではもちろんないわけでありまして、凍結項目につきましては、第二条「特定の規定の適用の停止」が規定しておりますとおり、凍結を終了させるためには締約国全体の合意が必要でありまして、これは米国の主張のみによって解除されるということではなくて、その扱いについては全ての締約国の判断に委ねられるということになります。

 アメリカがTPPに対してどういう関心をどこまで示して、また、凍結項目についてどのような考え方であるか、聞く機会はあるかもしれませんけれども、その場で、ボブ・ライトハイザーと私でイッツ・ア・ディールと言って終わる話ではないと思っております。

中川委員 日本の国内法も、そうした意味で、これは凍結されているんだろうというふうに思うんですが、この際、もとに戻したらどうですか。そこからもう一回、話を始めたらどうですか。(茂木国務大臣「もう一度、ちょっと」と呼ぶ)

 例えば、著作権なんかは五十年から七十年ということになった。法律は、それで前回通した。しかし、これが凍結されているから、そのまま法律も凍結ということではない。法律はもう有効に動いているんですか。

茂木国務大臣 著作権につきましては七十年ということで考えているわけでありまして、これはハイスタンダードを維持するということでありますけれども、決められましたことは、そこまでの規定といいますか、そこまでのルールは守るわけでありますが、ある意味、それを超えていることを各国がやるものを妨げる、こういう形にはなっていないわけであります。

 この著作権の問題につきましても、多くの国で、七十年、こういう動きは起こっているわけでありますし、日・EUの間でも近々そういった形の合意が行われるわけでありまして、著作権をしっかりと保護するということによりまして、日本のコンテンツであったりとか、また、新しいアーティストを育てる、こういった観点からも重要であります。

 さらには、今後、我々としては、この凍結項目、将来的に解除ということを他の参加国にも話をしていきたいと思っておりまして、そのときに、日本としてはもうこれについては手当てができているんだと言った方が、やはり説得力を持って説明ができるのではないかな、説得ができるのではないかなと思っております。

中川委員 これまでの議論は違うんですよ。日本のコンテンツは海外へ輸出をしっかりするだけの体制が整っているかというと、そうじゃないんだ。海外から入ってきている。だから、七十年が海外にとっては有効なんですよね。

 同時に、日本の国内でも、再販というか、一遍、著作権が切れたものがもう一度出版されていくプロセスというのが、日本のいわゆる出版界では非常に大きなウエートを占めているということの中から、五十年を七十年にしてもらうと困りますねというふうな話がるるあった。

 そういうことに対して、世界的には七十年になっているんだから、それに合わそう、仕方ないねというような、そんな議論が延々と続いてきて、ここまでになっているということ。

 それを頭に置いて議論しないと、さっきのような、どこの国の人かわからないような、そういう答弁になってしまうということだと思うので、その辺、やはりアメリカとやっていくにしても、もう一回、そうした意味での、日本の国益の原点というのを探りながら、しっかりやってもらいたいというふうに思います。

 次に、農産物の関係なんですが、これも私、さっき申し上げたように、基本的な政策が本当は必要なんだと思うんですね。

 実は、この農産物への影響というのは、あれは何というシステムでしたっけ。(茂木国務大臣「ワイドワーク」と呼ぶ)ワイドワークじゃなくて、電算システムで結果を出してくるやつ。(茂木国務大臣「GTAP」と呼ぶ)GTAP、そのGTAPでこれだけ影響が出ますよというのが出てきています。これは誰が見ても批判するところなんですけれども、このGTAPの前提というのは、国内の政策大綱によって、生産自体は減ずることなく、持続することを前提として算出をしてありますということなんです。

 これは、私も防災の関係の担当をしたことがあるんですけれども、例えば南海トラフであの地震が揺ったときに、日本全国でどれだけの影響が出ますかということをまず想定して、その想定に基づいて、では、どういう政策を具体的にやっていかなきゃいけないか。その一つ一つの政策の積み上げがどこまでその想定を減ずることができるか。

 例えば、あのときの発表では、死者が三十二万三千人、被害の総額というのは二百二十兆円という、とてつもない数字が出ました。私、実は、これを担当して、テレビの前でこのことを発表したんです。そうしたら、あっちこっちから非常に大きなクレームが出ました。中川さん、うちの地域ではもう、津波で、そこまで想定されたら、ここで生活するなということと同じじゃない、五分で三十二メーターの津波が来るというのは、そんな話はあり得ないだろう、何でそんなことをテレビの前で発表するんだということで、非常に大きなクレームを得たことがありました。

 しかし、話はそこから始まるんですよ。そこから始まって、いかに減災をしていくか、いかに被害をゼロに持っていくかという政策が積み上げられて、そこから安心感というのが生まれてくる。そこから、政策に対して、危機感を持って、ここはやらなきゃいけないんだという当事者自身の意識というのが生まれてくるんです。

 今の想定はその真逆であって、生産自体というのはもう政策大綱で大丈夫なんだよ、大丈夫だから心配しなくていいよという話なんです、これ。そんな出し方、ありますか。だから、政策が小手先になるんだということだと思うんですね。

 私は、この試算といいますか、この想定というのは、農林省はやり直さなきゃいけないと思う。農林省は闘わなきゃいけないんですよ、あなた方は。だから、そういう意味では、全く今のこの政策の基本というのがつくられていないという思いがするんです。

 農林省から来ていただいていますけれども。

野中大臣政務官 先生から、まず、対策を打つ前の試算を出してから対策を打つべきであるという恐らく御指摘だったというふうに認識をしております。

 振り返りますと、平成二十五年に、相手に全てを譲って、そして国内対策を打つ前の試算が三兆円と出て、その数字が本当に走り出して、私も地元で、多くの農家の方が心配されて問合せをしてきたという記憶がございます。

 やはり、影響試算というのは、現実的に起こり得る影響を試算するものでありまして、対策なしの試算というのはないものでありまして、私どもとしましては、国境措置を獲得した後に定性分析を行って、そして、国内対策を講じたものによって試算する、影響試算を出させていただきまして、その結果、九百億から一千五百億と数字を出させていただいたところであります。

中川委員 納得できません。

 現に人口減少があり、あるいは過疎化があり、生産基盤そのものが非常に大きく崩れ始めているじゃないですか。そういうことがあるにもかかわらず、全てこれからも平準化された形で持続が可能ですよ、それは大綱でもってそういうふうにいけますよ。ところが、一つ一つ今始まっている大綱の予算案は何でやっているか。これは皆、補正予算を中心に組み上げているんだと思うんですね、この対策は。

 補正予算というのは、例えば、協同組合をつくって、ここに一つの工作物を建てます、それに補助金を出しますよ、営農の基盤整備のためにそれに補助金を出しますよ、こういう類いのやつはいわゆる補正予算ということで、その都度その都度考えていけるわけだけれども、今考えているのは構造的な話なんだと思うんですよ。それぞれの、畜産価格にしても、あるいは穀物価格にしても、ぐっと下がってくる。下がってくる中で、どのように合理化して、生産性を上げて、かつ生産母体の組織を変えて、そして新しい農業を向いて挑戦をしていくというのは、これは一時的な政策に対して補助金を出すのじゃなくて、構造的に変えていく部分だから、そういうふうな仕組みをつくらないと基本的な解決にならない。ところが、その部分は、農協をいじめているだけで、あとは何もないということじゃないですか。

 だから、私たちは以前から、これは構造的に変えていこうと思ったら、EUの中でずっとやられてきたように、あるいは、それぞれのこうした局面に立った国々が構造的にぐっと底から支えていくようにということで、戸別の所得補償というような制度を、米だけじゃなくてあらゆる農業基盤の基本的な考え方に持っていこうじゃないか、それから一つ組み立てられるような絵柄というのを、ゼロから出発したときにどこまでそれを積み上げなきゃいけないのか、どこまで合理化を引っ張っていかなきゃいけないのかということを考えようという、そういう構想というのを描いてきたというふうに自負をしています。

 それは、政権交代してから、全く頭から否定されて、否定されてというより、一部残っているんですけれども、名前を変えて、わざわざ違ったイメージをつくり出そうと無理しているわけですけれども、ここに来て、やはりその原点に私は戻るべきだというふうに思います。そうした政策が基本にあって、このTPPが、日本でも安心して、それじゃいいじゃないかという話になるんだと思うんです。

 そこのところを指摘をさせていただいて、まだまだ不確定なところと、それからリスクが高過ぎる、そして日本の国内政策がとんでもない形で、小手先で移ろうとしているということを指摘させていただいて、時間が来たようでありますので、質疑を終わります。

 以上です。ありがとうございました。

山際委員長 次に、塩川鉄也君。

塩川委員 日本共産党の塩川鉄也です。

 TPP整備法案について質問をいたします。

 本来であれば、二つの常任委員会に置かれた協定と整備法案ですから、しっかりと深めた議論をする上では一体の議論の場も必要なんですよ。そういったこともなしに、それぞれの委員会でそれぞれでやってというふうにはならないということはまず最初に申し上げておきますし、また、十本の法案との関係でいっても、対応する役所も五つもあるわけで、関係委員会との連合審査を含めた、複数の大臣を並べたしっかりとした議論を行うのも当たり前のことであって、こういったことについて、しっかりとした審議の場を保証しないという中での議論の進め方というのは極めて重大だということを冒頭申し上げ、徹底審議、慎重審議を行うべきことを申し上げておくものであります。

 その上で、四月の日米首脳会談において、トランプ大統領が、アメリカ第一の立場から、一方的な鉄鋼、アルミニウムの輸入制限を行いながら、TPPに戻りたくない、二国間協議がいいと明言をしているもとで、安倍総理が、日米の新たな経済協議の枠組みをつくることで合意したことは極めて重大であります。

 そこで、日米二国間交渉に関連して、まずお尋ねをいたします。

 外務省にお聞きしますが、この整備法案の本会議での我が党の笠井亮議員の質問に対して安倍総理は、米側は二国間ディールに関心を有していると承知しておりますと二回答弁をしていました。

 トランプ大統領が二〇一七年一月に大統領に就任した後、米国USTRに対して、一月二十三日付で大統領覚書、TPP交渉及び協定からの米国の離脱を発出しております。そこでは、個別の国と直接一対一、又は二国間、今後の貿易協定を交渉していく考えであると述べています。

 トランプ大統領が一対一で取引を行うと書くその政治的意図について、日本政府は具体的にどのように認識ないし分析しているのか、この点についてお答えください。

岡本大臣政務官 今委員御指摘いただきましたように、さまざまなところで大統領はコメントしていらっしゃるので、米側が二国間ディールに関心を有していることは十分に承知をしておりますけれども、その手のうちまで私ども分析する立場にはございません。

 先ほど来議論になっておりますように、我が国といたしましては、TPPこそが日米両国にとって最善の策だというふうに考えておりますので、この立場を踏まえて今後も議論を推進してまいりたいと考えております。

塩川委員 トランプ大統領が二国間ディールに関心を置いているということであります。

 覚書でトランプ大統領は、米国がTPP署名国として離脱し、かつ米国が永続的にTPP交渉から離脱することを指示したわけです。

 本年のダボス会議において初めてトランプ大統領から米国がTPPに参加する可能性について言及があったということですけれども、このアメリカ・トランプ大統領の立場として、日本との一対一取引、ディールというその姿勢というのは一貫しているんじゃないですか。

岡本大臣政務官 トランプ大統領が一対一のディールということに興味を有していることは、先ほど来、認識しているということを申し上げたとおりでありますけれども、これまでの両国間の議論の中でさまざまな議論をともにしていこうというふうに合意ができておりまして、先ほど来、茂木大臣もおっしゃっておりましたけれども、その会話は二国間であっても、私どもが最も最善と考えておりますのはTPPであることは間違いございませんので、その立場を踏まえた議論をこれからも進めてまいりたいと考えております。

塩川委員 二国間の話も出ました。二〇一七年二月十日の日米首脳会談共同声明は、米国がTPPを離脱した点に留意し、両首脳は、これらの共有された目的を達成するための最善の方法を探求することを誓約した、これには、日米間で二国間の枠組みに関して議論を行うこと等を含むとあるわけです。

 この二国間の枠組みというのには、麻生副総理とペンス副大統領の経済対話、またライトハイザーUSTR代表と茂木大臣による貿易通商問題の新協議機関、この設置は当然入るものと考えますが、それでよろしいでしょうか。

岡本大臣政務官 この二国間の枠組みにつきましては、今委員御指摘をいただきましたように、先般の日米首脳会談で茂木大臣並びにライトハイザー通商代表との間で合意をいたしました自由で公正かつ相互的な貿易取引のための協議、いわゆるFFRを開始するということも含まれているというふうに思いますし、加えまして、これまで議論となっておりました麻生副総理とペンス副大統領の間で行われてきております日米経済対話、もう既に昨年の四月、十月、二回行われておりますけれども、このことも含まれておるというふうに考えております。

塩川委員 二国間の枠組みとしているものに、日米経済対話そして今回のFFRも入るということです。

 安倍総理は、二〇一六年にトランプ氏が大統領に当選するという機会で、国会ではTPPの審議を行っていたところでしたけれども、米国抜きのTPPは意味がないとしながら、二〇一七年に日米二国間枠組みを約束し、ペンス副大統領・麻生副総理の経済対話を創設し、二〇一八年でも、ライトハイザー・茂木新協議機関、FFRの創設を行ったということです。

 ことし四月の日米首脳会談でトランプ大統領が、私は二国間交渉を好むと発言をしております。トランプ氏のこのような発言の裏には、安倍総理が大統領覚書を踏まえて、いわば日本側からみずから進んで日米間協議の創設を約束してきた、そういう積み上げがあったからじゃありませんか。

岡本大臣政務官 今御指摘のある、いわゆる麻生副総理とペンス副大統領の日米経済対話におきましても、また、先般合意されました茂木大臣とライトハイザー通商代表とのFFRに関しましても、二国間の協議ではありますけれども、決して先方が一方的に何かを押しつけるようなことではありません。

 麻生・ペンス会談におきましては、三つの大きな目的を共有して、その三つの目的というのは、貿易及び投資のルールと課題に関する共通戦略、二つ目には経済及び構造政策分野での協力、そして三つ目には分野別協力の三つの柱に議論をするということで合意をしております。

 また、先般の茂木大臣とライトハイザー氏のFFRにつきましても、これは決して、事前協議をやるですとかというような類いのものではありません、FTAの交渉と位置づけられるものでもありません。あくまでも、この場でお互い相互利益にかなうものを議論していこうということで、私どもは、その中でもTPPが最も双方の利益にかなうと考えておりますので、そのことを強調してまいりたいと考えております。

塩川委員 私がお尋ねしたのは、結局、こういった二国間協議というのは、日本側の提案で行われているというのが経緯じゃないですか。

茂木国務大臣 四月の日米首脳会談、私も同席をさせていただきまして、自由で公正かつ相互的な貿易取引のための協議、FFRと呼ばれているものを立ち上げることにしたわけでありますが、これは、R、レシプロカル、まさに相互が利益になるような協議をしようということで合意をしたものでありまして、どちらかから持ちかけて、どちらかが渋々受けた、こういう形ではないというものであります。

 そして、二国間でしますのは協議です、基本的に。二国間の協定をするということではない、このように今考えておりまして、先ほど来申し上げておりますように、我々は、日米両国にとってもTPPが最善であると考えておりますし、ほかのTPP参加国についても同じ思いを持っていると考えているわけであります。

 そういった中で、例えばTPP12のときも、TPP12、このマルチの交渉を進めながら、日米間は並行交渉、こういうのも行ったわけでありまして、グッドディール、いい取引をしたいという米側の思いはあって当然でありまして、そこの中でどういった交渉をしていくかということに今後なっていくと考えております。

塩川委員 TPPの議論のときでも、マルチと同時にやはりバイでどんなことが行われていたかということに重大な関心を国民は持っていたわけであります。麻生・ペンス経済対話などは総理がみずから提案したということをおっしゃっておられたわけですし、そういった経緯というのを踏まえての動きということが言えるわけです。

 安倍総理はもちろん、米国がTPPに戻ってきてほしいと期待感を寄せている。ただ、トランプ大統領は、かなりよい条件を得る必要があるとか、多国間交渉よりも二国間交渉の方が好きだと主張して、TPPに入らないとか、ハードルを高くしているわけです。

 結局、このトランプ大統領の一対一の取引、ディールの不変の姿勢に総理の方が迎合してつなぎとめているというのが事の経緯じゃないのかということを指摘せざるを得ません。

 ことし四月の十二日に、トランプ大統領がライトハイザーUSTR代表とクドロー国家経済会議委員長に対し、米国が有利な条件でTPP復帰を検討するとのことでしたが、トランプ大統領は、TPPへ復帰しても、あるいはしなくても、日米間の協議、一対一の取引は今後も行われることになるということが言えるだろうと思っています。

 茂木大臣にお尋ねしますが、先ほどちょっとダブるように答弁がありましたけれども、ライトハイザーUSTR代表と茂木大臣による新協議の設置、FFRについて、日米経済対話との関連、またその違いというのはどういうものなのかについて御説明いただけますか。

茂木国務大臣 FFR、これは、私とボブ・ライトハイザー通商代表の間で行われる、恐らくラリー・クドローも絡んでくるとは思うわけでありますが、日米双方の利益となるように、日米間の貿易や投資を更に拡大させ、公正なルールに基づく自由で開かれたインド・太平洋地域における経済発展を実現する、こういう目的で行われるわけでありまして、ある意味、日米経済対話、これはかなり幅広い分野を扱っておりまして、完全にそれの一部というわけではありませんが、そこの中の特定の分野にフォーカスをして協議を進める、そして、その協議の経過、結果等につきましては、適時これを、麻生副総理、ペンス副大統領のもとで行われている日米経済対話に報告する、こういう全体の枠組みになっております。

塩川委員 先ほど岡本さんの方のお答えにもありましたように、日米経済対話は三つの柱で、貿易・投資や経済構造、また分野別の協議、そういうのに対して、FFRについては、日米間の貿易投資を更に拡大させていくという目的で、今大臣がおっしゃったように、幅広い分野の一部ということではないけれども、特定分野にフォーカスをしているという話でした。

 その結果は日米経済対話に報告をするということですけれども、そうなると、ここで、特定分野にフォーカスするとはいうんですけれども、議題、課題として、そうはいっても、関税措置や非関税措置、全分野を視野に入れて相手側の、双方と言ってもいいんでしょうか、その関心事項、つまり、関税措置、非関税措置の全分野を視野に入れた交渉のテーブルということにはなっていくんじゃないですか。

茂木国務大臣 まさに、FFR、これから協議が始まるわけですから、そのTORにつきましては、今後、両国側で調整をしていくということになるんですが。

 若干、先ほどの私の答弁の中で具体的な分野にフォーカスをすると申し上げましたが、先ほど申し上げたように、日米間の貿易・投資、さらに、公正なルールに基づく自由で開かれたインド・太平洋地域をつくっていくためにどうしたらいいか、こういう脈絡で申し上げましたので、フォーカスの仕方が単純に日米間に限定されたもの、こういうことではないということは御理解ください。

塩川委員 インド、太平洋という視野はあるよという話ということだと思いますが。

 そこで、取り上げるテーマの話をお聞きしたわけで、お答えになっていないんですが、例えば日米二国間で行うようなそういった協議の課題として、この間も議論になっているような自動車とか、医薬品や医療機器とか、牛肉とか食品添加物とか、金融・証券、知的財産、国民皆保険、こういうものも議論の対象になるというふうに考えてよろしいんですか。

茂木国務大臣 具体的な議論の対象はどういう分野になってくるか。まさにこれは、今後、日本もそうでありますし、アメリカ側も、それぞれ関心を持っている項目は何なのか、こういったことを出し合う中で決まっていく、そのように考えておりまして、できるだけ具体的なテーマについて協議をしたい、こんなふうに思っておりますが、まさに今、それが進んでいるプロセス、始まったところだ、このように考えております。

塩川委員 双方の関心を持っている項目を出し合う、アメリカ側が関心を持っている項目も出してもらうという話で、そういう点では、TPPの日米の懸案交渉で論点になっている項目も紹介したわけですが、一昨年のTPPの国会審議でも、市民団体が懸念をしているそういう課題というのも、当然のことながら、アメリカ側の関心ということであれば上がってくるという話になるわけです。

 ライトハイザー通商代表は、ことし一月のワシントンの米商工会議所の講演で、日本との経済関係について、いつかはFTAを結びたいと思うと語っていました。こうした流れを見ても、二国間協議というのは、アメリカが狙うFTAに一段と踏み込むということにならざるを得ないんじゃないかと思うんですが、この点についてはいかがですか。

茂木国務大臣 その講演の内容を今つまびらかに私も記憶しておりませんが、時点はいずれにしてもことしの一月、まさにFFRが立ち上がる前でありますし、いつかはという問題でありますから、そういった願望をその時点においてはお持ちになったのかもしれません。

塩川委員 これは、ですから、引き続きの関心であることには変わりがないと思います。

 答弁にもありましたように、米国側の関心を持っている項目を出し合う、そういう場としてFFRでの議論があるといったときに、米国側の要求の具体を見てみたいと思うんですが、トランプ大統領とライトハイザーUSTR代表のもとで、二〇一八年USTR外国貿易障壁報告書がことしの三月末に公表されました。一部ではありますけれども、米国の要求がリアルにわかる資料であります。

 外務省にお尋ねしますが、まず、このUSTR外国貿易障壁報告書に対して、これまで日本政府はどのように回答、対応してきたのか。このことについて説明してもらえますか。

岡本大臣政務官 今御指摘のありました米国の報告書は、米国の一九七四年通商法に基づきまして、毎年行政府から議会に提出されているものでありまして、米国から見て、貿易相手国に対する関心事項についての報告書でございます。

 私ども、相手方の報告書でございますので、その内容につきまして、私どもが一々何か戦略を持って行動を起こすということはいたしておりません。

塩川委員 一々行動を起こすことはないというお話でしたけれども、文書で米側に、そういった中身、回答について渡したということもありますよね。

岡本大臣政務官 二〇一六年に、文書で先方に出したことはございます。

塩川委員 ですから、そういうふうに回答を返しているということは現にやっているわけですよね。それはもう文書で出しているわけです。

 昨年四月に立ち上げた日米経済対話ですけれども、このUSTR外国貿易障壁報告書を踏まえて何らかの議論をしたんだと思うんですけれども、その中身はいかがですか。

岡本大臣政務官 具体的な中身について、ここで全部つまびらかにすることはできませんけれども、米国が、我が国との貿易におきまして、自動車分野等について興味を有していることがございまして、そのことについての議論等はしているというふうに承知をしております。

塩川委員 ですから、日米経済対話においても、このUSTR外国貿易障壁報告書を踏まえて議論を行っている、今、自動車分野でというお話もありました。

 昨年の十月においての議論では、それ以外にも、例えば、アイダホ産のポテトチップ用バレイショに対する輸入停止措置を解除する、こういうことも話し合われたと承知していますが、それでよろしいですか。

岡本大臣政務官 議論はいたしました。

塩川委員 具体的に措置したのではありませんか。

岡本大臣政務官 アイダホ産のジャガイモの輸入の解禁はしております。

塩川委員 ですから、ことしの三月に出したこの二〇一八年のUSTR外国貿易障壁報告書でも、二〇一七年、日本は、アイダホ州産のポテトチップ用バレイショに対する十年に及ぶ輸入停止措置を解除したと。これは、ですから、日米経済対話の議論を踏まえての措置ということがここにも書き込まれているということです。

 ですから、二国間のこういったディールという流れの中での日米経済対話において、このUSTRの外国貿易障壁報告書を踏まえた議論が行われ、また、具体的な解除措置なども行われているという流れというのが出てくるわけです。

 そこで、茂木大臣にお聞きしますが、そうすると、今後は、このFFRにおいてUSTR外国貿易障壁報告書に基づく対日要求の議論を行うということにもなりますね。

茂木国務大臣 米側の関心事項、これは米側において今後示されるんだと思っております。

 その文書に書いてあることをそのまま要求されるのか、そこの中でフォーカスを絞っていろいろな議論をしたいというのか、また違ったテーマについて議論をしたいというのか、これは米側の立場だ、こんなふうに思っておりますが。

 何にしても、いわゆる協定の枠組みをつくるわけではない。さまざまな協議というのはあるわけでありますし、例えば、TPPをまとめるに当たっても、各国との間で、サイドレター、こういったものも交換しております。これは二国間のディールなんです、三国間でやることもありますけれども。こういったディールというものは当然さまざまな交渉の中で出てくるものだと思っておりますけれども、それ自体が通商の枠組みをつくるというのとはイコールではないということは御理解ください。

塩川委員 ただ、協定までいかない過程においても当然ディールもあって、具体的な要望に応えるという流れというのがある。バレイショの話なんかは、そういうことで出てきているわけであります。

 そういう意味でも、今大臣お答えになったように、こういったUSTRの関心事項を書いた報告書の中身も当然議題に上っていくFFRになるということは、今お話しされたとおりだと受けとめました。

 そこで、具体的な、このUSTR外国貿易報告書に基づく要求と、それに対する日本政府の対応についてお尋ねしたいんですが、厚生労働省にお尋ねします。

 この報告書、日本関連部分の三番目に牛肉及び牛肉製品が挙げられています。米国の牛にはBSEの危険性があります。TPPの入場料として、二十カ月の月齢を三十カ月齢に緩めるということもかつて行われたわけですが、この報告書において、USTRは、全ての月齢の牛肉及び牛肉製品を受け入れ、市場を完全に開放するよう働きかけていくとしております。

 これは、日本政府、厚生労働省としてどのように受けとめているんですか。こういう要求を受け入れるんですか。

宇都宮政府参考人 お答えいたします。

 今委員御指摘のように、USTRの外国貿易障壁報告書におきまして、米国は引き続き、OIEにおける米国の評価と整合させるべく、日本が全ての月齢の米国産の牛肉及び牛肉製品の輸入を認めるよう主張していると承知しているところでございます。

 厚労省といたしまして、BSE対策につきましては、国内、国外の双方でBSEが発生するリスクは低下したということで、国内の検査体制、輸入条件といった対策全般につきまして、食品安全委員会の科学的な評価結果に基づいて、必要なリスク管理措置の見直しを行ってまいりました。

 米国を含みますBSE発生国から輸入される牛肉の月齢制限撤廃につきましては、科学的に対応することが必要でございまして、昨年四月、食品安全委員会におきまして、現在、月齢条件を三十カ月齢以下としている、米国産に限らず、米国産を含む十三カ国産の牛肉につきまして、新たな知見等を踏まえた、輸入条件の月齢を更に引き上げた場合の科学的な審議を進めることとされたところでございます。

 現在、食品安全委員会におきまして、評価に必要な資料を提出した、これも米国に限りませんが、米国を含みます三カ国につきまして審議が行われてございまして、厚生労働省としては、食品安全委員会の科学的なリスク評価結果に基づいて対応していくこととしているところでございます。

塩川委員 科学的審議というんですけれども、もともと、このTPP交渉の入場料として、二十カ月齢を三十カ月齢に緩めた。あれも、科学的な審議といっておいてやって、まともな、それが妥当な審議だったのかということがまさに根本から問われていたわけですよね。今回も、同じ理屈で同じことを繰り返すのでいいのかというのが問われるわけです。

 アメリカは、BSEの検査率は一%未満で、ほとんど検査されていません。屠畜段階でのしっかりした特定危険部位の除去もしっかりと行われていないということもされています。二十四カ月齢のBSE感染牛も出ているという話もあり、食の安全基準を犠牲にしていいのかということがやはり大もとから問われている。

 食の安全基準は、各国の独自性があって当然じゃないですか。そういうものを全部横並びにするということ自身に、やり方として、それがルールだというやり方は国民の安全を損なうものだということを言わざるを得ません。

 最後に、大臣にお尋ねしますけれども、米国抜きのTPP11というのは、日本が国際的に約束した市場開放や規制緩和の到達点であります。米国との二国間協議は、この到達点に立って、より大幅な譲歩を求める米国には、それが新たな出発点となるんじゃないのか。TPP11が規制緩和の到達点、それを土台にして、更に出発点として大幅な譲歩を求める、これが二国間協議にならざるを得ないのではありませんか。

茂木国務大臣 必ずしも私はそのような認識を持っておりません。

塩川委員 TPP11は、日本がTPPで国際公約をした関税撤廃と非関税障壁撤廃の到達点であります。TPP11をベースに米国からは譲歩を迫られて、また、TPP11の発効後は、再交渉条項で加盟国からさらなる措置を求められない、そういうことは断言できますか。

茂木国務大臣 いずれにしても、我が国として、国益に反するような合意を行うつもりはございません。

塩川委員 それで、過去、さまざまな貿易交渉においてアメリカの要求を丸のみしてきたという経緯というのは、忘れるわけにはいきません。

 このTPP、TPP11、そして日米二国間交渉が日本経済と国民生活に大打撃を与えることは必至であります。TPP交渉での、こういった譲歩した到達点をスタートとしてさらなる譲歩を重ねるような、こういったことはきっぱりとやめるということを求め、質問を終わります。

    ―――――――――――――

山際委員長 この際、連合審査会開会に関する件についてお諮りいたします。

 ただいま審査中の本案に対し、農林水産委員会から連合審査会開会の申入れがありましたので、これを受諾するに御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

山際委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

 また、連合審査会において、政府参考人及び参考人から説明又は意見を聴取する必要が生じました場合には、出席を求め、説明等を聴取することとし、その取扱いにつきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

山際委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

 なお、連合審査会の開会日時等につきましては、委員長間で協議の上決定いたしますので、御了承願います。

 次回は、明十七日木曜日午前八時理事会、午前八時十五分委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。

    午後五時二十六分散会


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