衆議院

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第10号 令和2年5月13日(水曜日)

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令和二年五月十三日(水曜日)

    午前九時開議

 出席委員

   委員長 松本 文明君

   理事 井上 信治君 理事 関  芳弘君

   理事 長坂 康正君 理事 牧島かれん君

   理事 宮内 秀樹君 理事 今井 雅人君

   理事 大島  敦君 理事 太田 昌孝君

      安藤  裕君    池田 佳隆君

      泉田 裕彦君    上野 宏史君

      大西 宏幸君    岡下 昌平君

      金子 俊平君    神田 憲次君

      小寺 裕雄君    杉田 水脈君

      高木  啓君    長尾  敬君

      丹羽 秀樹君    西田 昭二君

      平井 卓也君    藤原  崇君

      穂坂  泰君    本田 太郎君

      三谷 英弘君    務台 俊介君

      村井 英樹君    大河原雅子君

      黒岩 宇洋君    源馬謙太郎君

      後藤 祐一君    階   猛君

      中島 克仁君    中谷 一馬君

      柚木 道義君    吉田 統彦君

      早稲田夕季君    江田 康幸君

      佐藤 茂樹君    塩川 鉄也君

      藤野 保史君    浦野 靖人君

    …………………………………

   国務大臣

   (国家公務員制度担当)  武田 良太君

   内閣府大臣政務官     神田 憲次君

   内閣府大臣政務官     藤原  崇君

   政府特別補佐人

   (人事院総裁)      一宮なほみ君

   政府参考人

   (人事院事務総局給与局長)            松尾恵美子君

   内閣委員会専門員     笠井 真一君

    ―――――――――――――

委員の異動

五月十三日

 辞任         補欠選任

  池田 佳隆君     務台 俊介君

  泉田 裕彦君     高村 正大君

  杉田 水脈君     上野 宏史君

  泉  健太君     階   猛君

  源馬謙太郎君     黒岩 宇洋君

  吉田 統彦君     後藤 祐一君

  塩川 鉄也君     藤野 保史君

同日

 辞任         補欠選任

  上野 宏史君     穂坂  泰君

  務台 俊介君     池田 佳隆君

  黒岩 宇洋君     源馬謙太郎君

  後藤 祐一君     吉田 統彦君

  階   猛君     泉  健太君

  藤野 保史君     塩川 鉄也君

同日

 辞任         補欠選任

  穂坂  泰君     杉田 水脈君

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 政府参考人出頭要求に関する件

 国家公務員法等の一部を改正する法律案(内閣提出第五二号)


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     ――――◇―――――

松本委員長 これより会議を開きます。

 内閣提出、国家公務員法等の一部を改正する法律案を議題といたします。

 この際、お諮りいたします。

 本案審査のため、本日、政府参考人として人事院事務総局給与局長松尾恵美子君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

松本委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

松本委員長 質疑の申出がありますので、順次これを許します。今井雅人君。

今井委員 おはようございます。共同会派の今井雅人でございます。

 まず冒頭なんですが、この国家公務員法の改正案の質疑に当たりまして、先週から理事懇でいろいろ協議がされておりまして、私たちは、検察庁法のところ、特に勤務延長の部分に大変問題があるので、ここの部分に関してはやはり連合審査をやっていただきたいという申入れをずっとしておりまして、与野党間で協議が調っていなかったわけであります。

 そういうまだ協議中の段階に職権で理事懇が開かれて、そして委員会が開催されたということは、大変あってはならないことだと思いますので、二度とこういうことがないように委員長の差配をお願いしたいということを冒頭に申し上げておきたいと思います。

 その上で、きょうは武田大臣にお伺いをしていきたいと思いますけれども、先週ぐらいからSNS上で、ハッシュタグ検察庁法改正に抗議しますという動きが広がっているわけです。きょうの朝の段階ではもう一千万ツイート。一千万ですよ。もう東京の人口と同じぐらいのツイートが今展開されているわけでありますけれども、二〇一四年に大変議論になりました安保法案、このときもこんなことは起きなかったんですね。私が記憶している限り、こんなことは、これだけの数のツイートが広がっているのは初めてです。

 大臣、まず御意見をお伺いしたいんですが、今ちまたでこれだけの動きが起きているというのは何が原因だと思われておりますか。

武田国務大臣 さまざまな意見、声というものが存在することは存じておりますけれども、これはそれぞれの方々がそれぞれの考えによって発せられたことであって、一概には言えないとは思うんですけれども、政治というものに国民の皆さんが興味を持っておられるということも一つの理由に挙げられると思います。

 ただ、個別の意見について私から具体的なコメントというものは差し控えさせていただきたい、このように思います。

今井委員 きのう、森法務大臣が、この問題については、国民の理解をしっかり得るために丁寧な説明をしていきたい、一応このツイートに対してそういうコメントをしておられますけれども、大臣としてはその点はどうお考えですか。

武田国務大臣 これは、全ての分野、新たなる施策を発するときには、当然のことながら、国民の理解をいただくために丁寧な説明をしていくことは、これは当然のことだと考えております。

今井委員 その思いは共有していただきました。

 その上で、実はきのうの理事懇できょうの委員会の質疑が提案されたんですが、当初は、与党側から本日採決をしたい、こういう提案がありまして、驚きました。まだ我々が問題にしている部分を質疑もしていない段階で採決をしたいと。それは後々取り消されましたので、それは了としますけれども、提案があったことは事実ですので、それは本当にあってはならないことだと思うんです。

 大臣にお伺いしたいんですね。

 これだけいろいろな議論になっている今、そして、今、コロナ対策で、あすにも緊急事態宣言をどうするかというのが発表されるという、国民がそちらに物すごく今関心を持っている、こういう段階で、この法案をこんなに早く成立させようとする必要性は一体どこにあるんですか。大臣、提出者としてどう思われているかを教えていただきたいと思います。

武田国務大臣 新型コロナウイルス感染拡大防止に対しては、政府、そして多くの国民の皆さん方の御協力をいただきながら、今全員で取り組んでいるところには間違いはございません。

 そういう状況の中にこの法案をという御質問でありますけれども、いかなる状況であっても国家は機能していかなくてはならないと私は考えております。ここが一番政治としての重要な役割ではないかと思っております。新コロナ対策、これは重要でありますけれども、そういう中においても、しっかりとした、必要なものに関する機能というものは我々は果たしていく責務がある、このように考えております。

 今から将来の日本を見たときに、今手を打っておかなければならない問題というのはたくさんあると思うんです。これに関連してくるわけですけれども、やはり少子高齢化という問題、これに起因して生産年齢人口というものが低下してくる。一億総活躍という表現がありますけれども、ただ単に現役世代とリタイア、六十歳で線引きをするのではなく、そこで支え手と支えられる側を区別するのではなくて、今からは、全ての知見や経験や技術を生かして、総がかりで日本の活力と国力というものをつくり上げていかなくてはならない時代がやってくるんだと思っております。そうしたことに先駆けて、今、やはり我々は手を打っていくこと、これが重要となってくるわけであります。

 そこで、なぜ今ここをやっていかなくてはならないかといえば、今思いつきでこれは始まったことではないんです。委員御承知と思いますけれども、三十年八月の人事院の申出に始まり、さまざまな、人事局、国家公務員担当としても議論を行ってきたわけであります。これはちっちゃな問題じゃないんです。社会構造を大きく変えていくような大きな問題であって、これは幅広く、各省庁の特色もありますし、いろいろな意見を聞きながら今日までやってきたわけであります。

 民間の方でも、七十歳までの就業機会確保を努力義務とする法律が成り立っておりますし、公務員も多くの方がもう六十歳を迎えようとしておりまして、その中において、複雑高度化する行政の課題というものに的確に取り組むための我々は手だてを今から打っていかなくてはならないわけです。

 一方、六十歳前の職員を含めた人事管理や職員の職業設計に大きな影響が出ることも当然でありまして、さまざまな配慮が要るわけです。

 ここで、各府省においては、施行の前に十分な時間の余裕を持って、六十歳を迎える職員の継続勤務の意思確認などを行った上で、六十歳以降の職員に担ってもらう業務の具体的検討を行い、新規採用も含めた人事計画を立てる必要があるほか、若手、中堅時代からの計画的な人材育成についても検討していく必要があります。

 また、今般、地方公務員に対しても、国家公務員と同様に所要の法案を提出させていただいておりまして、各地方自治体においても、条例制定などを進める準備を進める時間的な余裕というものも必要となってくるわけです。

 こうしたことから、ぜひとも本法案については今国会で成立させていただき、四年度から施行することが必要と考えており、御協力をお願いしたい次第であります。

今井委員 誤解のないようにしていただきたいんですけれども、私たちは、今の現状の少子高齢化の中で、公務員の皆さんも定年を引き上げて、まだ六十代は元気な方はいらっしゃいますから、働いていただくということは大賛成です。ですから、その部分に関しては賛成したいんですけれども、この中に、どさくさに紛れて検察庁法のところの改正が入っているから問題だと僕らは申し上げているんです。

 昨年の十月、十一月のこの法案、法案をずっと何年も検討してこられたのは知っています。平成三十年の八月の人事院の勧告から検討して、去年の秋の段階で一回原案がまとまっていますね。その段階では、検察官の定年の引上げというのは確かに検討されていました。しかし、その中に、検察官の勤務の延長に関しては入っていなかったわけです。

 それが、ことし一月になって突然この勤務延長が入って、そして、一月三十一日に黒川検事長の勤務延長、定年の延長が行われた。これは当初にはなかったわけですね。ですから、何年も検討してきたということとこのことはまた別の問題で。

 お伺いしたいんですけれども、公務員の定年を引き上げることの緊要性はわかりました。必要性もわかりました。じゃ、検察官の勤務の延長を今ここで決めなきゃいけない緊要性は一体どこにあるんですか。

武田国務大臣 御指摘のように、元年十月、一応そうした形ができ上がった。それから通常国会で法案を提出されるまでの間、法務省の関係部局でいろいろなことが審議されたんだと思います。

 やはり、検事というのも一般職の公務員でありますから、彼らは彼らなりに、さまざまな角度から、現時点での組織、将来の組織像、いろいろなことを加味して考えられたんだと思います。その変遷については、私は法務省の職員でありませんので、そうしたことを口を挟む立場にはないわけでありますけれども。

 ただ、いずれにしても、今回急にこれはパッケージで提出するというふうに至ったわけではなくて、我々は、そのときの十一月の段階で、こうした自衛隊関係、そしてまた法務省関係に対しては、一般法の国家公務員法の改正と抱き合わせてやっていこうとする青写真を既に持っておったということは御理解をいただきたいと思います。

今井委員 詳しい内容についてはこれから次の仲間が質問していきますけれども、そもそも私たちは、この検察庁法のところが問題だと思っているわけです。

 その中で、なぜ私は武田大臣に質疑をしているのかが不思議でしようがないんです、正直言うと。今おっしゃったように、この束ねの中の方にある検察庁法の改正に関しては法務省が検討したんですよね。武田大臣は、この改正に関して何か関与しておられたんですか。

武田国務大臣 関与というか、取りまとめる立場であったということであろうと思います。

 具体的な、今おっしゃったように、法務省の内部でどういう議論がされたか、その方向性について、私はその場にいたわけでもないし、法務省の職員でないので、それは具体的に言えないわけですけれども、とにかく、取りまとめるということの作業に対しては私が携わったということは間違いありません。

今井委員 束ねるという判断をされたのは政府ですよね。その所管大臣を武田大臣になさったということですよね。ということは、この法案の中身は、全てやはり武田大臣が答える所管大臣だ、そういうことでよろしいんですか。

 これからいろいろと検察庁法の中身をお伺いしていくんですが、私たちは、これは非常に、検討は法務省で行われたし、専門的なこともたくさんあるし、これまで何十年にもわたって、検察官に関しては、ほかの国家公務員とは責任とかいろいろなものが違うので別の扱いをしてきた。何十年もそういう扱いをしてきたものを、まず解釈で変えてしまい、それから今回は、法案の中で従来の考え方を変えていく。大変大きなことをやっているわけです。歴史的に大きな転換をしようとしていることをやっているわけです。それはやはり、その事案の所管である法務大臣に考え方をしっかりと質疑するのが私は筋だと思うんですけれども、ここに来ていただけないんです。

 ということは、このことに関して、武田大臣は、みずからちゃんと勉強して、かわりに答えるということでここに来られていらっしゃるんですか。

武田国務大臣 先ほどから申しますように、私は取りまとめて提出した責任があるわけであります。その中において、自衛隊法や検察庁法などの改正内容については、それぞれの所管府省において責任を持って検討されたものであるということが大前提であります。

 その上で、趣旨、目的が一つになるものであるならば、これは一緒にやっていこうということが自然な形ではないか、このように考えておるわけであります。

今井委員 そうしましたら、これから細かいことを、いろいろ中身について、実は経緯とかも非常に重要ですから、そういうことについてもお伺いしていきますが、十分なお答えがいただけないということであれば、やはり検討した法務大臣に出てきていただかなきゃいけないということになるんだろうというふうに申し上げておきたいと思います。

 ちょっと時間が余りありませんので、少し具体的なことをまずお伺いしたいんですが、先ほどちょっと話もさせていただいたんですけれども、今回の法案と、それから、黒川検事長の半年間勤務延長になった、このことは直接は関係ないという意見もちまたではありますが、私は実はそう思っていないんです。

 というのは、そもそも、検察官は勤務延長を認められないというのがずっと来たにもかかわらず、まずは現行法の解釈を変えて、黒川さんの、私はこれはもう完全に違法行為だと思うんですが、勝手に解釈を変えて、それで閣議決定をした。そして今回は、同じ考え方を整理して、それを法文の中に入れている。手法は違いますけれども、そもそもの考え方を変えてこういうふうに進めているという意味では、とても関係のある話だ。ですから、これは直接は関係ないと言っている人がいますが、実はとても関係あるんだと私は思っているんです。

 だから、この問題は非常に議論が必要だと言っているんですけれども、大臣、この点に関してはどう思われますか。

武田国務大臣 今回の解釈変更ということについて、今委員の御指摘は、概して言うならば、法改正のためにやったのか、黒川さんのためにやったのか、どっちなんだということだと思うんですね。紛れもなく法改正のためにやりました。

今井委員 仮に法改正のためにやったのであれば、法律をちゃんと変えてからやればいいだけの話であって、その前に解釈だけを変えて黒川さんの人事をゆがめたというのは、よっぽど問題じゃないですか。そちらの方に問題があるということですよ、今の大臣のおっしゃっているのは。

 堂々とここで、三年間延長できるような、なぜこれをこういうふうに変えるのかということをしっかり国会で議論して、それでみんなが納得した上でルールを変えて、それからやればいいじゃないですか。その前に現行法の解釈を勝手に変えて、特定の人事に介入してしまったわけですよ。それを閣議決定したわけですよ。それがおかしいと言っているんです。違いますか。

武田国務大臣 特定の人事に関することに対する私個人のコメントは差し控えさせていただきたいと思っておりますけれども、いずれにしましても、先ほどから申すように、検察官も一般職の国家公務員であり、国家公務員法の勤務延長に関する規定が検察官に適用されるとの今回の解釈については、検察庁法を所管する法務省において適切に行われたものと私の段階では承知をいたしております。

今井委員 いや、全くそうは思えませんが、その点については次の方に質問していただきたいんですが、時間がもうほとんど来ていますので、最後に一点だけ。

 今、検事総長、稲田検事総長ですけれども、定年が来年の七月ですかね、まであります。検事総長を任命する権限は閣議にありますね。しかし、検事総長をやめさせる権限はないはずです。よもや、今後、表で裏で政府から検事総長に圧力をかけて、早目にやめろというようなことは絶対やってはいけないと思いますけれども、そういうことは絶対に政府としてはやらないということだけ確認させていただきたいと思います。

武田国務大臣 これもまた、検察庁法に関する御質問でありますから、本来法務省からお答えすべき点だと思いますけれども、まず、検事総長の任命権者というのは内閣という、御指摘のとおりであります。そして、検察庁法第二十五条は、「前三条の場合を除いては、その意思に反して、その官を失い、職務を停止され、又は俸給を減額されることはない。但し、懲戒処分による場合は、この限りでない。」と規定して、検察官の身分保障を定めております。

 すなわち、具体的には、検事総長が意に反してやめさせられるのは、意に反してですよ、やめさせられるのは、定年退職であったり、心身の故障、職務上の非効率その他の事由によりその職務をとるに適しないときに、検察官適格審査会の議決及び法務大臣の勧告を経てその官を免ぜられる場合、また、国家公務員法上の懲戒の事由に該当するとして、任命権者である内閣が免職処分とする場合であり、内閣自体がその権限で検事総長を自由にやめさせることはできないということであります。

今井委員 時間になりましたので終わりますけれども、やはり、この検察庁法のところは本当に問題があると思いますから、私は、ここの部分は、もっと静かな環境のところで、法務大臣もちゃんと入れて、しっかり議論することをお願い申し上げまして、質疑を終わらせていただきたいと思います。ありがとうございました。

松本委員長 次に、階猛君。

階委員 立国社共同会派の階猛です。

 私は、法務委員会で野党の筆頭理事をしておりまして、本来ですと、この検察庁法の改正については法務委員会の場でしっかり議論すべきだということなんですが、武田大臣しか答弁者に大臣としてはならないということですので、やむなくこの場にはせ参じてまいりました。

 ただ、検察庁法の特殊性ということにも十分配慮した上で今回の法改正をしているのかどうか、これは本質的なところなので、まず、武田大臣に伺わなくちゃいけないと思います。

 検察官の職務と責任の特殊性というのは法文の文言にもある言葉なんですが、その意味について、大臣の理解を教えてください。

武田国務大臣 これは、本来であるならば、また法務省からお答えすべき点と思いますけれども、昭和二十四年、参議院法務委員会における逐条説明では、国家公務員法の特例に関する検察庁法第三十二条の二に関し、検察官は、刑事訴訟法により、唯一の公訴提起機関と規定されており、その職務執行の公正が、直接刑事裁判の結果に重大な影響を及ぼすとされております。このような職責の特殊性に鑑み、従来検察官については、一般行政官と異なり、裁判官に準ずる身分の保障及び待遇を与えられてまいりました。この特殊性は国家公務員法施行後も変わらないことから、検察庁法中、検察官の任命に関する規定を国家公務員法の特例としたなどと説明されているものと承知をいたしております。

階委員 今の大臣の説明は、検察官が準司法官であるということを述べられたというふうに理解します。

 もう一つ、検察官の特殊性ということでいえば、検察官は独任制の官庁だということが言われます。その独任制の官庁の意味するところ、これは、大臣、理解されていますか。

武田国務大臣 捜査等に関する所掌の業務の中において、まず、政治的中立性、そして、いかなる外圧も、これを受けることがない、それに左右されることがないということだと思います。

階委員 今のは、準司法官であることを別な言い方をしただけですよ。独任制の官庁の意味を教えてください。

武田国務大臣 検察権の行使に当たり、他の力に左右されることなく公正でなければならないため、独立的性格を持つというものであります。

階委員 独任制の官庁ということは、単独でいろいろなことを決められるということなんですね。単独で決められるということは、結局、組織として統一性がとれるのかという疑問も出てくるわけですよ。独任制の官庁とすることとしても、なぜ検察は不都合が回避されているのか、このことも特殊性だと思うんですけれども、その点について、大臣の理解を教えてください。

松本委員長 速記をとめてください。

    〔速記中止〕

松本委員長 速記を起こしてください。

 武田国務大臣。

武田国務大臣 検察官が独任制官庁であることということでありますけれども、これは法律上の用語ではなく、厳密な定義があるわけではないわけですけれども、一般に検察官が独任制官庁であると言われている意味については、刑事について公訴を行う権限等の検察権がおのおのの検察官に属し、検察官が自己の名において検察権を行使することと理解されているものと承知をいたしております。

階委員 それはそのとおりだと思いますよ。

 ただ、私がその上でお尋ねしたのは、独任制の官庁ということであれば、一人一人の検察官が自分の判断で決めることによって、事件の処理がばらばらになってしまう危険がありますよね。そういう弊害が生じないようになっているんでしょうか。実はなっていると思っていますけれども、その点も、検察官の職務と責任の特殊性だと思っております。

 独立性、あるいは独任制の官庁の弊害を防止するためにどういう仕組みがとられているのか、これは御存じですか。

武田国務大臣 検察権が行政権の一部であることから、検察官の権限行使が全国的に均斉かつ適正に行われるようにするためのものであると思います。

階委員 その全国的に均斉のとれた、均一に行われるようにするために、どういう方策がとられていますか。

武田国務大臣 統一ある組織体に編成される具体的方法についてだと思いますけれども、おのおのの検察官がその上司の指揮監督に服し、また、検事総長、検事長又は検事正がその指揮監督する検察官の事務をみずからが取り扱い、又はその指揮監督する他の検察官に取り扱わせることができるものとされております。

階委員 今大臣がおっしゃったことは、検察官一体の原則、あるいは事務引取り手続といったようなことについて述べられたと思うんですね。

 今、何点か、私との間で、検察官の職務と責任の特殊性についての議論をさせていただきました。この議論を踏まえると、独任制の官庁であり、弊害を防止するために検察官一体の原則をとっているという極めて特殊な存在で、一般の国家公務員とは違うんですね。そういう中で、もし定年について特例扱いを認めるとどういうことになるかということなんですよ。

 一体の原則がある中で、そもそも、特定の人物が特例扱いで勤務延長をする、その必要性は乏しいと思います。余人をもってかえがたいということは、検察官の今の制度のもとではあり得ないと思っております。

 他方で、検事総長が、先ほどおっしゃった事務引取り権というもとで下の検察官をコントロールできるということは、強大な権限も、一方で検事総長とか幹部の検事は持つということであります。その方がずっと長くそのポジションにとどまって、しかも、時の政権と近い人がその地位に長くとどまるということになりますと、検察官の中立性、公正性に多大なる疑念が国民の間に生じてくる。こういうことから、他の国家公務員とは違って、検察官については、やはり検察官の職務と責任の特殊性に基づいた独自の制度があってしかるべきだと私は思っています。

 ところが、先日の予算委員会での総理の答弁、検察官も一般職の国家公務員であり、国家公務員法の勤務延長に関する規定が適用されるという解釈、これを前提としているわけですよ。これは、全くもって検察官の職務と責任の特殊性を顧みない間違った解釈だと思います。大臣の見解はいかがですか。

武田国務大臣 まず、大前提として、検事総長も一般職の国家公務員であるという位置づけに変わりはない、これは事実であります。

 総理の発言は総理の発言といたしまして、とにかく、今先生が御指摘のことは、それだけ強大な権限を持つ検事総長が定年延長をして長くいたときには、それだけ長い間、下が支配されるじゃないか、つまり、ある意味で、司法権というか、検察権行使というものに対して何らかの圧力になるのではないかという懸念が示されておると思うんです。

 勤務延長については、いろいろな制約がつくんですね。そして、その時々の業務に著しい支障が生じたときという、その内容については世間にしっかりとさらされるわけでありますし、何も両手放しでこれは許されるわけではなく、さまざまな規制がつくわけですから、その心配には及ばないと私は考えています。

階委員 非常に結論部分がざっくりした説明で、説得力がないんですね。私は理詰めでやっているので、理詰めで答えてほしいんですよ。これは、法務委員会だと、こういうやりとりになるんですね。理詰めで答えられないんだったら、私は法務委員会でやるべきだと思いますよ。

 やはり、これは法案審議ですから、法文の解釈は非常に重要です。

 改正後の検察庁法第二十二条、きょう、皆さんのお手元に資料で配っております、一枚目、二枚目。皆さん、読む気になりますか、これは。改正後、こんな条文になりますけれども、特に、二項とか三項というのは、いわゆる読みかえ規定といいますけれども、かぎ括弧だらけで、何とかを何とかと読みかえるというのが延々と続いています。こんなのは読む気になりませんよね、大臣。どうですか、感想。

武田国務大臣 先生ほど法律に精通していないものですから、読むに苦しさはありますけれども、やはり読まなければならないと思います。

階委員 読まなきゃならないですよ。

 それで、この日本語として難解、不明なものを読み解いていきますと、まず、今申し上げました読みかえ規定、二十二条の二項に対応するのが、ちょっと前後しますけれども、四ページ目の資料です。二十二条の三項に対応するのが三ページ目の方です。少し、読みかえ規定、読みかえ後のところで見た方がわかりやすいと思いますので、これは参考までにつけましたけれども、それでも非常に読みづらいわけです。

 そこで、法務省に頼んで、これは図解するとどうなるんだということで、パネルにしました。ごらんください。

 パネルにすると、お手元に資料としても配っておりますけれども、要は、次長検事、検事長等という方々に対しては、六十三歳で基本的に役をおりていただいて、六十五歳の定年までは検事として務めていただく。そして、六十五歳になったら、場合によっては勤務延長で、今申し上げているのは全部政府の案ですね。それが一つ目の横棒ですね。そして、例外のまず一番目が、六十五歳を過ぎても勤務延長できるというものです。

 次、二つ目のところ、今度は、次長検事、検事長等が六十三歳になって役おりをしない特例というのも入っています。そのまま六十五歳まで同じポストにいられるというところで、六十五歳になりますと、今度は、その後、勤務延長をして、これは、当初の段階から通算三年を超えないという趣旨から六十六歳までしか勤務延長はできなくて、六十六歳でやめることになります。これが二つ目です。

 そして、三つ目は、検事総長やそれ以外の検事についてなんですけれども、これも原則六十五歳で定年ということになりますが、特例扱いで勤務延長、六十八歳までできる。

 大まかに言うと、この三つのことは、さっき大臣も読むのが大変だと言われたあの条文の中に書いているわけですよ。何でこんな複雑なことをするんだということなんですね。もともとあった条文とは全く似ても似つかぬ、もともとあった条文というのは、さっき今井さんも取り上げていましたけれども、昨年の十月段階の条文とは全く違うんですね。

 昨年の十月段階の条文は、たったの三行ぐらいの条文でした。私の手元にある法務省の資料では、三行ぐらいの条文で、非常に中身もシンプル。一項では、検察官は、年齢が六十五年に達したときに退官する、二項では、次長検事及び検事長は、年齢が六十三年に達したときは、年齢が六十三年に達した日の翌日に検事に任命されるものとする、こういう非常に単純な条文でした。これがなぜこれほど変えられたのかということなんですね。

 まず、順を追って聞いていきますけれども、検察庁法三十二条の二という条文があります。この三十二条の二、お手元にありますか、三十二条の二ですけれども、こちらで言いますけれども、要は、検察庁法と国家公務員法との関係を定めた条文なんです。先ほど来取り上げた検察官の職務と責任の特殊性に基づいて、検察庁法二十二条は、国家公務員法の特例を定めたというふうに書いているんですね。

 この条文については変更はないという理解でよろしいですか。

武田国務大臣 変更はございません。

階委員 そこで、お聞きしますけれども、先ほど言ったように、検察官の職務と責任の特殊性があるにもかかわらず、一般の国家公務員と同じように検察官を定年の制度について扱おうとしているもので、この三十二条の検察官の職務と責任の特殊性に基づいて特例を定めたというところと反しないですか。矛盾しないですか。お答えください。

武田国務大臣 矛盾はしないと思っています。

階委員 それはなぜですか。

武田国務大臣 検察官の特殊性に基づいたために特例をしいたものだと思っております。

階委員 ちょっと今トートロジーになりましたよ。ちゃんと答えてください。なぜ矛盾していないか、もう一回答えてください。

松本委員長 速記をとめて。

    〔速記中止〕

松本委員長 速記を起こしてください。

 武田国務大臣。

武田国務大臣 検察官にも勤務延長制度が適用されると解釈変更を行い、検察官が独立した行政官庁として検察事務を遂行するという立場にあることや、検察官の職責については何ら変わることなく、したがって、特定の職員に定年後も引き続きその職務を担当させることが公務遂行上必要な場合に、定年制度の趣旨を損なわない範囲で、定年を超えて勤務の延長を認め、公務遂行に支障を生じさせないようにしようという勤務延長制度の趣旨は検察官にもひとしく及ぶと言えることから、検察官にも勤務延長制度が適用されることが検察官の責任と職務の特殊性と矛盾することはないと考えております。

階委員 ちょっと何か言っていることがよくわからないんですが、職務延長がなぜ許されるかということについて、先ほど総理の答弁を引用しましたけれども、検察官も一般職の国家公務員だからということなんですね。

 でも、一方で、三十二条の二は、検察官の職務と責任の特殊性に基づいて特例を定めたと言っているわけですよ。これは、一般の公務員とは違うんだという前提で二十二条を定めたということなので、一般の職員と同じように二十二条を定めるということとは全く相反すると思うんですね。

 一般職の公務員と同様の扱いをするというのであれば、この三十二条の二に反するんじゃないですか。

松本委員長 速記をとめてください。

    〔速記中止〕

松本委員長 速記を起こしてください。

武田国務大臣 本来ならば、法務省からお答えすべきものであると思いますけれども、参議院法務委員会、昭和二十四年、逐条説明では、国家公務員法の特例に関する検察庁法第三十二条の二に関し、検察官は、刑事訴訟法により、唯一の公訴提起機関と規定されており、その職務執行の公正が、直接刑事裁判の結果に重大な影響を及ぼすとされており、このような職責の特殊性に鑑み、従来検察官については、一般行政官と異なり、裁判官に準ずる身分の保障及び待遇を与えられてまいりました。この特殊性は国家公務員法施行後も変わらないことから、検察庁法中、検察官の任免に関する規定を国家公務員法の特例としたなどと説明されているものと承知しております。

 また、検察庁法の改正内容に関する御質問であることから、本来、またこれも、何度も言うようなんですけれども、検察官は、刑事訴訟法上、唯一の公訴機関である、その職務執行の公正が、直接刑事裁判の結果に重大な影響を及ぼすという職責の特殊性があり、準司法的性格を持っているとされ、一般行政官と異なる身分の保障及び待遇が与えられているものであります。

 もっとも、検察官に勤務延長の規定の適用を認め、あるいは役おり特例を認めるものとしても、内閣ないし法務大臣が自由に検察官を罷免したり、検察官に対して身分上の不利益処分を行ったりするものではないため、その身分保障を害するものではなく、したがって、検察官が準司法的性格を有するとされることと矛盾することではないと考えられております。

階委員 いや、私は、今の説明の中で、準司法官的性格とか、裁判官と同様の性格とか、そういう話もありましたけれども、大臣、裁判官について勤務延長とか役おりの特例とかというのは認められるんですか。

武田国務大臣 裁判官は、その特例は入っておりません。

階委員 なので、検察官の職務と責任の特殊性ということを、準司法官的性質とか、裁判官と類似した性格とか、そういうことを言うのであれば、むしろ、裁判官と同じように、勤務延長とか役おり特例とかを定めないのが自然な流れでしょう。おかしいじゃないですか。答えてください。

武田国務大臣 何度も申し上げるように、検察官もやはり一般職の国家公務員ですから。これは否定できないと私は思っているんですね、定められていますから。

 検察官というのは、その検察権の行使に当たりまして、他の力に左右されることなく公正でなければならないため、独立的性格を持つとされております。もっとも、勤務延長や役おり特例それ自体は、特定の職員に引き続きその職務を担当させることが公務遂行上必要な場合に、引き続き勤務を認めるとの趣旨に基づくものであり、本来的に、検察権の行使に圧力を加えるものではありません。

 したがって、検察官に勤務延長の規定の適用を認めることや、検察庁法案で役おりの特例を認めることは、決して検察官の独立性を害するものではないと判断をいたしております。

階委員 圧力を加えるものではない、検察官の職務の公正とかはちゃんと守られるから問題はないという理屈ですけれども、だとしたら、裁判官でも、理屈的には、勤務延長とか役おり特例とかを認めていいということになりませんか。

武田国務大臣 検事と裁判官というのは、決定的に違うのは、裁判官というのは特別職の国家公務員であるということであります。そもそも、国家公務員法、裁判官に適用はありません。一般職の国家公務員である検察官と同列に論じられるものではない、このように理解をいたしております。

階委員 いや、でも、何か御都合主義的な論法でして、一方では、検察官の職務と責任の特殊性ということでは裁判官と同じようなことを言い、一方で、勤務延長とかについては一般職の国家公務員と同じようなことを言い、何か、三十二条の二の検察官の職務と責任の特殊性に基づいて特例を定めるというのが全く空文化している気がするんですね。

 大臣のおっしゃる検察官の職務と責任の特殊性ということを本当に基盤とするならば、特例を定める場合も、もともとあった十月段階の法務省の案、これがベストであって、私たちもその案をベストだと思って修正案を出そうとしていますけれども、そちらの方がよかったということになりませんか。余りにも今回の案は、三十二条の二の検察官の職務と責任の特殊性を無視した、三十二条の二に反するというふうに思いますけれども、もう一回、十月段階に立ち戻って、そのときの案に戻しませんか、大臣。

武田国務大臣 十月案の方がいいと評価されているようですけれども、我々は、客観的に見て、今回の法改正と十月の時点では見る観点が違っているんですね。

 まず、法務省において、検察官の定年引上げに関する法律案策定の過程において、昨年十月末ごろの時点では、退官や異動により補充すべきポストが一斉に生ずるおそれがあるか否かという視点のみから検討し、検察官につきましては、勤務延長及び役職定年の特例に相当する規定を設けなくとも、公務の運営に著しい支障が生じるなどの問題が生じるとは考えがたいと結論をつけていたわけです。

 しかしながら、検察庁法の改正を含む法律案の提出に至らなかったわけです。本年の通常国会への提出までに時間ができたことから、昨年十二月ごろから、法務省の担当者において、改めて検討作業を行ったと承知しています。

 その際、検察官に勤務延長は適用されないとの従前の解釈を維持するのが妥当かどうかという観点に立ち戻って検討を行った結果、勤務延長制度が導入された昭和五十六年当時と比べ、社会経済情勢は大きく変化し、多様化、複雑化しており、これに伴って犯罪の性質も複雑困難化している中、検察官につきましても、業務の性質上、退職等による担当者の交代が当該業務の継続的遂行に重大な障害を生ずることが一般の国家公務員と同様である、このように考え、昨年十月末ごろ時点の考えとは別の視点から、検察官にも国家公務員法上の勤務延長制度の適用があるとの見解に至ったものと承知をいたしております。

階委員 何年もかけてこの国家公務員法の改正案を検討してきて、その中で検察庁法の改正も検討してきて、昨年の十月の段階で一応の成案を見たわけですよね。でも、その後、国会まで時間があるからということで見直して、それで今回の案になったというんですけれども、立ち戻って検討したとか言っていましたけれども、立ち戻って検討するのは、何年間もあったらできたはずであって、何でこの期に及んで、立ち戻って、勤務延長、是か非かを検討する必要があるんですか。何年間、今まで何をやっていたんでしょうね。おかしいじゃないですか。

 要は、ベストの案だというものは十月の段階で出ていたんだけれども、その後に黒川さんの勤務延長の話が出たから、それに合わせて、ベストの案をもっとおかしな案に変えたということじゃないですか。

 全く立ち戻って検討する理由がわかりません。なぜ立ち戻って検討したのか、この点だけ教えてください。時間ができたというのは理由になりません。

武田国務大臣 御指摘で、時間があったことは理由にならないとおっしゃりますけれども、時間があったのが一番の理由だと思います。

階委員 なぜ時間があったのは理由にならないと言ったかというと、何年間もかけて検討してきたわけですよ。それで十月末に成案を見た。だから、時間ができたから検討したというのは、それまでも検討する時間は幾らでもあったわけだから、おかしいじゃないですかということを言っています。

 だから、時間があったということは理由にならないので、立ち戻って検討した別な理由を挙げてください。

武田国務大臣 そうした時間が生じたために、やはり関係部局の皆さんが、現在そして将来の組織図、そうしたものを見きわめながら、さまざま考えられたんだと私は思っております。

階委員 ちょっと、もう一回聞きますよ。

 時間が今まで十分にあった。いろいろな省庁で検討する時間もあった。でも、臨時国会が終わって、この一月の国会までのわずかな時間でもう一回検討するというのは、時間があった以外の理由があるからじゃないですか。時間があったということのほかに、どんな理由があったんですか。

武田国務大臣 その部局の皆様方がその期間にどういう動機で、どういう考えで考え直されたのかということは私にもわかりませんけれども、そうした時間的余裕が生まれたことによって、冷静にいろいろと考える時間があったんじゃないかと思います。

松本委員長 速記をとめてください。

    〔速記中止〕

松本委員長 速記を起こしてください。

 武田国務大臣。

武田国務大臣 職務の特殊性又は職務遂行上の特別の事情から見て、特定の職員の退職により公務の運営に著しい支障が生ずると認められるとされる十分な理由があるとき、昨年十月末ごろ時点では、このうち前者の視点、すなわち、職務の特殊性から、職員の一斉の退職により補充すべきポストが一斉に生じることで、後任の補充に難を生ずるおそれがあるか否かという視点のみから検討しておりました。

 これに対して、昨年十二月ごろからは、従来から検察官に勤務延長制度は適用がないと解されていたこと、検察庁において、それまで検察官に勤務延長の適用がないことにより公務の運営に著しい支障が生じた特段の事例は見当たらなかったことから、十分に検討できていなかった、十月時点では十分に検討できていなかった後者の視点、すなわち、職務執行上の特別の事情からも、改めて検討した。

 その結果、検察官についても、他の一般職の国家公務員同様、職務遂行上の特別の事情から見て、特定の職員の退職により公務の運営に著しい支障が生ずると認められる場合があるとの結論に至り、今般の解釈変更を行ったものであると理解しておりまして、その期間におけるいろいろな考え方はそのとおりだというふうに思っております。

階委員 まず、公務の運営に著しい支障が生じる場合というのは検察官にはないだろうということで、昨年の十月の段階で案がつくられたわけですよね。

 ところが、立ち戻って検討したら、やはり公務の運営に著しい支障が生じる場合があるということになったということは、なぜ最初の段階で、公務の運営に著しい支障が生じる場合があるということを認定できなかったのか。同じ観点から検討して、最初の方では、それについて、支障が生じる場合はないと言っていたのに、なぜ今回は、あるというふうに百八十度変わったんですか。おかしいじゃないですか。

武田国務大臣 それは、その段階では職務の特殊性のみから判断してきたことが理由だと思います。

階委員 職務の特殊性、最初の方でさんざん議論しましたけれども、それを、職務の特殊性と、あと、じゃ、何が今回新たな視点として加わって、それで結論が百八十度変わったんですか。

武田国務大臣 職務の特殊性又は職務遂行上の特別の事情、遂行上の特別の事情があると思います。

階委員 今、条文を見ていますけれども、公務の運営に著しい支障が生じると認められる場合には、役おり特例というのはありますね。今大臣がおっしゃられたもう一つの理由、これは、条文上、どこに書いているんでしょうか。

松本委員長 速記をとめてください。

    〔速記中止〕

松本委員長 速記を起こしてください。

 武田国務大臣。

武田国務大臣 改正後の国家公務員法第八十一条の七第一項第一号であります。

階委員 職務の執行上の特別の事情を勘案してというところですか。(武田国務大臣「そうです」と呼ぶ)

 職務の執行上の特別の事情、これは、検察官の場合は、先ほどの特殊性から考えると、ないんじゃないかというふうに理解しますけれども、これは、職務の執行上の特別の事情はあって、でも、公務の運営に著しい支障が生ずるということはないというのが検察官だということですか。

 まず、もう一回整理しますね。

 公務の運営に著しい支障が生ずるということは、検察官の場合にはないということが十月の整理だった。これはそのまま維持されている。ところが、新たな観点で、職務の執行上の特別の事情を勘案すべき場合はあるということなので、勤務延長とか役おり特例を認めたということなわけですね。

 じゃ、公務の運営に著しい支障は生じないけれども、職務の執行上の特別の事情がある場合というのはどういう場合なんですか。具体的に説明してください。(武田国務大臣「ちょっと済みません、もう一回いいですか」と呼ぶ)

 もう一回言いますね。

 八十一条の七、改正後ですね、この条文について聞いています。第一号です。

 先ほど、検察官については、退職により公務の運営に著しい支障が生じるという場合はないということでした、十月の段階では。ところが、時間があったので、改めて立ち戻って検討したら、新たな観点として、職務の遂行上の特別の事情というのは生じ得るということなので、勤務延長とか役おり特例を認めることにしましたということなんですね。

 しからば、公務の運営に著しい支障が生じないという場合だけれども、でも、職務の執行上の特別の事情が生じるという場合はどういう場合なんですか。私は、そんな場合はあり得ないんじゃないかと思っていますけれども、それを具体的に説明してください。

武田国務大臣 職員の職務の遂行上の特別の事情を勘案して、当該職員の退職により公務の運営に著しい支障が生じると認められた事由とされておるんですけれども。(階委員「その事由は何ですか。それは具体的に何かと聞いているんです」と呼ぶ)

 特定の職員の退職により公務の運営に著しい支障が生じると認められる十分な理由があるとき……(発言する者あり)職員が退職するということですよ。職員が退職するから、公務の運営に著しい支障が出るということを考えられるわけですから。その原因は、職員が退職するからです。

松本委員長 階先生、申しわけないんですが、質問、大臣にわかるように、ちょっと整理していただけますか。

階委員 大臣、退職によって公務の運営に著しい支障が生じる場合はないんだという結論が十月段階ではあって、それで当初の案がつくられたんですよ。

 でも、今大臣は、退職によって公務の運営に著しい支障が生ずる場合があるとおっしゃっていて、十月の話と全く矛盾しているんじゃないですか。

武田国務大臣 先ほども申しましたけれども、十二月に改めて検討したわけですね。それで、昨年十二月ごろからは、従来から検察官に勤務延長制度は適用がない、こういうふうに理解されておった、また、検察庁においては、それまで検察官に勤務延長の適用がないことにより公務の運営に著しい支障が生じた特段の事例は見当たらなかったとされてきた、そういうことから、十分に検討できていなかった後者の視点、すなわち、職務執行上の特別の事情からも改めて検討したところ、検察官についても、他の一般職の国家公務員同様、職務遂行上の特別の事情から見て、特定の職員の退職により公務の運営に著しい支障が生ずると認められる場合があるとの結論に至ったわけです。それで今般の解釈変更を行ったものであると理解を我々はしているわけであります。

階委員 それで、話がもとに戻っちゃったんですけれども、要は、その今おっしゃったことは具体的にどういう場合なのかということを聞いているんですよ。

松本委員長 速記をとめて。

    〔速記中止〕

松本委員長 速記を起こして。

 武田国務大臣。

武田国務大臣 重大かつ複雑困難事件の捜査、公判を担当する検察官や、当該検察官を指揮監督する検察官が退職により交代することで、捜査、公判において時宜に即した適切な対応ができなくなることなど、重大な障害を生ずる場合などが考えられております。

階委員 重大かつ複雑困難事件というのはどういうような事件ですか。

武田国務大臣 さまざまであります。

階委員 答えになっていないですよ。条文の解釈を聞いていますからね。

 先ほど大臣が答弁された一号に定める事由、これの具体的な例を挙げてください。

武田国務大臣 例えば、社会経済情勢が大きく変化をし、国際的な組織犯罪や捜査手法に工夫を要するサイバー犯罪などが多く発生するなど、犯罪の性質は複雑困難化しております。

 このように複雑困難化した犯罪の捜査等を公平かつ適正に行うためには、特定の分野に知識がある若年の者が捜査等に当たれば足りるというわけではなく、捜査等一般についての多様な知識経験を生かして捜査等を行う必要がございます。

 また、複雑困難な事件の真相を明らかにするためには時間を要することもあり、そのような事件の担当検察官が途中で定年退職となり、別の検察官がその捜査、公判を引き継ぐこととなると、その遂行に多大な困難を伴うことになるなど業務の継続的遂行に重大な障害を生ずることがあると考えられております。

階委員 資料の五ページを見ていただきたいんですが、これは、役おり特例、幹部の検察官が六十三歳を過ぎたら役おりをするのが、役おりをして平検事になるのが原則なんだけれども、その特例で引き続き同じポストにとどめさせる、この必要がないんだということを説明した文書が私の資料の五ページなんですよ。

 この見解の中で、当該職員の職務の特殊性があることや職員の年齢別構成等の事由により管理監督職にふさわしい職員が不足していることで、管理監督職の欠員を補充できないことで、公務の運営に著しい支障が生ずる場合があり得ることから、特例を定めているものということで、この中に、当該職員の職務の遂行上特別の事情があってというのを書いていますよね。これは十月の段階のペーパーですよ。職務の遂行上の特別の事情があって、公務の運営に著しい支障が生ずる場合であってもこの特例は必要ないんだ、もうそういう結論も出しているんですよ。

 大臣のさっきおっしゃられた新しい観点というのは、もう十月の段階で入っているじゃないですか。おかしいですよ。何を言っているんですか。ちょっと撤回してください。

武田国務大臣 今先生御指摘の部分ですけれども、これは国公法の件に関して書いているのではないでしょうか。

階委員 それで、国公法の規定を検察庁法に入れるかどうかということについて、結論を出したのがこのペーパーなんです。入れる必要がないという結論なんですね、この資料は。

 入れる必要がないと判断するに当たって、当該職員の職務の遂行上特別の事情ということもちゃんと踏まえた上で結論を出しているわけだから、新たな観点とは言えないじゃないですか。もう既にそれも含めた検討の結果がこれであって、だから、やはり十月の段階でベストの結論は出ているんですよ。

 もう何も新しい要素もなく、ただ単に、私は、黒川さんの勤務延長を認めるために後づけでこの法案を、ベストの法案を間違った法案に変えたと思っていますけれども、今の説明を聞いていても、何ら、時間があったから変えたとか、原点に立ち戻って考えたとか、そうした極めて抽象的で曖昧な理由しか返ってこないわけです。

 新しい理由って何だといいますと、今私が指摘したとおり、全く新しい理由でも何でもなくて、当初からあったじゃないですか。だから、おかしいんですよ。もとの法案に戻すべきです。大臣、どうですか。

武田国務大臣 先ほども申しましたけれども、昨年十月末ごろ時点では、先ほどから申す前者の視点、すなわち、職務の特殊性だけを見て、特殊性だけの視点からつくり上げたものだと思うんですね。職員の一斉の退職により補充すべきポストが一斉に生ずることで、後任の補充に難を生ずるおそれがあるか否かとの視点のみから検討しておったということなんです、その時点では。

 それに対して、昨年十二月以降の部分に関しては、従来から検察官に勤務延長制度は適用はないと理解されていたこと、検察庁においては、それまで検察官に勤務延長の適用がないことにより公務の運営に著しい支障が生じた特段の事例は見当たらなかったことから、十分に検討できていなかった後者の視点、すなわち、職務遂行上の特別な事情からも改めて検討をしたわけです。

 その結果が、検察官についても、他の一般職の国家公務員同様、職務遂行上の特別の事情から見て、特定の職員の退職により公務の運営に著しい支障が生ずると認められる場合があるとの結論に至り、今般の解釈変更を行ったものであると理解しており、御批判は当たらないものと理解をいたしております。

階委員 いや、だから、結論、五ページ目の最後ですね、公務の運営に著しい支障が生じるなどの問題が生じることは考えがたく、検察官については、改正国家公務員法第八十一条の五と同様の規定を設ける必要はないということなんですよ。だから、国家公務員法の方にちゃんと書かれている。職務の遂行上特別の事情があって、公務の運営に著しい支障が生ずる場合というのはないんだよという結論なんですよ。

 だから、もうこの段階で、大臣が言ったことも全部考慮した上で、検察官には役おり特例とか勤務延長の特例は必要ないということで結論が出ているわけだから、それでいいじゃないですか。何も変な法律に変える必要はないですよ。どうですか。

武田国務大臣 先生から賜った資料のペーパーは十月段階のペーパーで、職務の特殊性のみの視点から煮詰めてつくり上げたものであり、このペーパーの中には、その後の、職務遂行上の特別の事情というものは入っていないように私は理解しておるんですけれども。

階委員 いや、それは全部検討した上で、結論のところで、公務の運営に著しい支障が生じるなどの問題が生じることは考えがたくと。

 この公務の運営に著しい支障が生じるというのはどんな場合かというと、二つ挙げているわけですよね、最初の方に。大臣がさっきから言っている、職務の遂行上特別の事情があって、当該職員を異動させることにより公務の運営に著しい支障が生ずる場合、あるいは、当該職員の職務の特殊性があることや職員の年齢別構成等の事由により管理監督職にふさわしい職員が不足していることで、補充できないことで、公務の運営に著しい支障が生じる場合。

 公務の運営に著しい支障が生ずる場合、二つの場合を挙げていて、結論としては、いずれの場合についてもこういう規定は設ける必要はないということなんだから、全部検討されていますよ。なぜ前半の方は検討されていないというふうに言えるんですか。

武田国務大臣 確かに、先生おっしゃるように、いただいたペーパーの4の(1)には、国公法上、先ほど、前者、後者、二つ書かれておりますけれども、(2)の中では、片方しか検討されていないんです。確かに、(1)では両方、前者、後者、書かれていますけれども、検討段階に至って、(2)については、特殊性の視点から見たことしか書かれていないんです。御理解ください。

階委員 それは、書かれていないのはなぜなんですか。

 だって、私も法律家だから、問題設定に対して、結論は、公務の運営に著しい支障が生じるなどの問題が生じることは考えがたくというこの結論は、二つの場合、双方についてかかっているというのが当然の読み方ですよ。まして、プロが書いている文章で、一方の場合しか検討していないというのはあり得ないわけですよ。そんな人は、法務省にもしいたとしたら、失格ですよ。あり得ないと思いますよ。

 だから、この文章は、そんな都合のいいような読み方をするんじゃなくて、全体について、公務の運営に著しい支障が生じるということはないんだということを結論として出したものだというのが正しい読み方で、だとすれば、十月の結論を変える必要はないということだと思います。どうですか。

武田国務大臣 何で書かれていないかという原因は、やはり検討されていなかったからだと思うんです。いや、これは事実ですよ。しっかりと検討されているんだったら、書かれていると思いますよ。

 しかし、検討を後者においてはされていなかったから書かれていなかったというのが現実であると思いますし、従来から検察官に勤務延長制度は適用がないと理解されていた、検察庁において、それまで検察官に勤務延長の適用がないことにより公務の運営に著しい支障が生じた特段の事例は見当たらなかったことなどから、十分に後者については検討ができていなかったというのが事実だと私は理解をいたしております。

階委員 検討されていなかったということが直ちに言えるかということなんですね。

 私は、もし推測するとすれば、むしろ、余りにも当然のことで、検察官一体の原則からすれば、職務の遂行上特別の事情があって、異動させて、公務の運営に著しい支障が生じるというのはあり得ないんですよ。最初に申し上げましたとおり、検察官一体の原則で、余人をもってかえがたいというのは、検察官の場合にはないんですよ。

 だから、検討するまでもなく、前段については、これは勤務延長あるいは役おり特例は必要ないよねと。だから、検討の段階では書かれていないんだけれども、結論としては、その部分も含めて公務の運営に著しい支障が生じるということはないんだというふうに言っていると思いますよ。当然ですよ、そんなの。

 書かれていないから検討していないというのは、論理的には成り立ちません。書かれていないのは、至極当然のことだから書かなかったまでで、そして、その至極当然なことも含めて、結論段階では、公務の運営に著しい支障がないというふうに結論づけたというのが正しい読み方で、それ以外の読み方はないと私は思います。どうですか。

武田国務大臣 一方のみを検討したから、一方のみを書いたというのが事実ではないかと思います。

階委員 なぜもう一方の方は検討しなかったのか。私は、検討するまでもなく、当然のことだからだと思っていますけれども、なぜ検討しなかったんでしょうか。

武田国務大臣 従来から検察官に勤務延長制度は適用がないとされておったこと、検察庁において、それまで検察官に勤務延長の適用がないことにより公務の運営に著しい支障が生じた特段の事例は見当たらなかったことから、十分に検討をしていなかったものと判断をいたしております。

階委員 だから、検討するまでもないということじゃないですか、今大臣がおっしゃったことは。検討するまでもないから検討しなかったということでしょう。私が言ったとおりじゃないですか。検討するまでもないから検討しなかったということじゃないんですか。(武田国務大臣「それはちょっと違うね」と呼ぶ)ちょっと違うとおっしゃる、何がどう違うんですか。検討するまでもないから検討しなかった、今までそんな前例もなくて、あり得ないから検討しなかったということじゃないですか。

武田国務大臣 事例が見当たらなかったから検討しなかったというのが事実だと思います。

階委員 いずれにしても、最終的な結論は、いずれの場合も公務の運営に著しい支障が生じるなどの問題が生じることはないということなんですよ。だから、後づけで無理やり変な法案に変えるのはおかしいということと、最後、一点だけ指摘しておきたいと思います。

 今回、先ほど言った読みかえ規定で、現行法では人事院の承認となっているところが、内閣の定めというふうに置きかわっているところがありますよね。七ページ、八十一条の三の二項ですね。再延長ですね。勤務延長の再延長のときに人事院の承認なんですが、これは、人事院の承認を得ないと、再延長は現行法のもとではできないということでいいですか、大臣。現行法のもと、現行法で聞いていますよ、人事院の承認を得ないと。

武田国務大臣 二回目については、そのとおりであります。

階委員 その上で聞きますけれども、前半の方で申し上げました検察庁法三十二条の二では、検察官の職務と責任の特殊性に基づいて特例を定めるものの中には、検察官の罷免に関する、検察官の適格審査会を定める二十三条というのもありますね。二十三条も特例ということになっています。

 この特例を置いているということは、検察官適格審査会が罷免する場合に権限を持っているわけなんですが、人事院の承認というのは、この二十三条と反しませんか。検察庁法二十三条と、今申し上げました人事院の承認を必要とすること、これは整合しますか。お答えください。

松本委員長 速記をとめてください。

    〔速記中止〕

松本委員長 速記を起こしてください。

 武田国務大臣。

武田国務大臣 二十三条は、これはやめさせる場合のときで、今の話は延長させる場合で、ちょっと質を異にするものだと思います。

階委員 しかし、その再延長の際に人事院の承認が得られないということになりますと、これはそこでやめさせることになりますよね、承認が得られないと。つまり、人事院がやめさせるかどうかについて判断権を持つことになるんですけれども、これは現在の検察庁法と矛盾しませんか。

武田国務大臣 人事院が反対したというのは、単なるもう定年退職ということになると思いますが。

階委員 定年退職ということだけではなくて、勤務延長を八十一条の三の二項で再延長しますということですから、もう勤務延長はしているわけですよ。勤務延長した後の再延長だから、定年延長した後の話なんです。

 途中で人事院が口を挟んでやめさせるということは、この検察庁法の現行法の規定と整合しないんじゃないですか。

武田国務大臣 やめさせるときと延長するときは、質を異にすると思いますよ。

階委員 しかし、検察官の職務と責任の特殊性ということに配慮して、検察官の身分にかかわることについては、この検察庁法について書かれているわけですよね。それを国公法で規定していいというのは、ちょっとこの検察庁法の三十二条の二が予定しているものではないんじゃないですか。

武田国務大臣 先生がおっしゃるときは、無理強いでやめさせる場合のことをおっしゃっていると思うんですけれども、これは人事院の査定ですから。

階委員 じゃ、時間が来ましたので、またこれは続きをやりたいと思いますけれども、武田大臣、真摯に御答弁されているとは思うんですが、やはり専門外ということで大変御苦労をされていて、本来、法務省が答えるべきところというような御答弁も随所にありました。法務大臣にぜひこの場に来ていただいて、再度質問させていただきたいということを委員長に申し上げます。ぜひよろしくお願いします。

松本委員長 後ほど、理事会に諮ります。

階委員 じゃ、終わります。

松本委員長 次に、黒岩宇洋君。

黒岩委員 立国社の黒岩宇洋でございます。

 今の話を聞いていても、この検察庁法の改正、本当に大変評判悪いですよ。私もそうですが、多くの方が、やはり、この二月の検事長の定年延長の後づけに検察官の勤務延長さらには役おりの特例を設けている、こういうふうに見ているわけですね。

 こんな評判の悪い法案を、今本当にコロナで皆さん苦しんでいる、そんなどさくさに紛れて、火事場泥棒という話がありますけれども、これは、先週の金曜日に至っては、そんな中で採決しようとしていたんですからね、与党は。こうなると、火事場泥棒どころか、盗人たけだけしい。こんなことを今やっているんですよ。金曜日に採決をですよ。一千万人の人たちが不安でツイートする、こんな危うい法案を、金曜日わずか一日で採決までと提案してきている。きょうも提案してきている。このことには、私もツイートして皆さんとともに強く抗議をさせていただきたいと思っております。

 武田大臣は赤坂宿舎にお住まいですかね。けさ、宿舎の前、報道陣でごった返していましたよね。すごかったですよ、カメラとペンの記者で。誰を追っているんだとメディアの方に聞いたら、河井前法務大臣だそうです。けさの新聞の一面にも、政治資金規正法違反ないしは公選法違反で立件されるのかと。

 この事件は、これはあくまでもメディアの、ある意味いぶかった見方ですけれども、昨年末から大変今の検察が積極的にこの事件に取り組んできた。その裏は、そのころから、検事総長人事で、今の現総長に対し、早く退いてほしいという、そんな話が官邸から届けられ、これに対して現総長サイドは、これはどう考えても検察の独立性に対する介入だろうという反発があった。これによって、つい最近まで安倍政権にいた閣僚に対する事件を積極的に追っているという、このような見方がされているわけですね。これはあくまでも見方ですよ。

 広島がこんな状況になって、きょう、メディアも言っていましたよ。これじゃ、昔の映画のタイトルの「仁義なき戦い 広島死闘篇」だ、ある意味、検察と官邸の「仁義なき戦い 代理戦争」だと。

 私は、こんな、きな臭く見られている法案を、今、このコロナの状況で審議していくのは……(発言する者あり)黙っていてくれ。

 大臣、コロナがおさまって、静かな状況で審議したらいかがですか、じっくりと。お答えください。

武田国務大臣 新コロナ感染症拡大防止対策については、政府を挙げて取り組んでいるところであります。

 大変な、国民にも我慢を強いる非常事態ではありますけれども、こういう事態であった中でも、国家というものは機能していかなくてはならないと私は考えております。

黒岩委員 今の国家の機能性と分けて質問しています。

 今、法案の中身というのは、このように、検察の独立性、すなわち、準司法機関の独立性を脅かすのではないか、それがひいては三権分立を毀損することになるのではないか、このようなおそれを、民主主義の根幹である、主権である国民が憂えている。そして、検察内部においても、今申し上げたような亀裂が走っているのではないか。

 そんな状況の法案を、先週、ゴールデンウイーク明けのたった一日で質疑、採決、このような拙速なことでよろしいと大臣は思っているのか、お答えください。

武田国務大臣 この国会審議日程については国会でお決めになることである、このように承知をいたしております。

黒岩委員 わかりました。この後、国会では決め切れない、大臣の決断によることを聞きますけれども、そのときはきちんとした判断をしていただきたいと思います。

 けさの、これも新聞の一面で、検察庁法改正案の、検事長の定年延長がされたんですけれども、この変更についての議事録がないと。この中で、三点の書類が出てきたというんですけれども、一つ大きなもの、これは私が、ことしの二月、予算委員会で森大臣と議論したんですけれども、閣議決定されたのが、定年延長ですね、一月の三十一日。閣議請議が一月の二十数日だったと覚えていますけれども、解釈変更についてはその前に行われていたという、これが法務省の主張でした。

 じゃ、その主張を裏づけるものを出してくれと言ったときに、これは内部メモといって、二〇二〇年の一月十六日、二〇〇一一六と、そして何のクレジットもない、そんな紙一枚が我々のもとに、そして予算委員会の理事会にも示された。

 じゃ、これだけで、実際に一月十六日が本当に特定できるのか。実際に重要なのは、その閣議請議の前に法解釈の変更を行ったのかどうか。行ったことを証明できるのか。

 そこで、私は森大臣に、これは内部というわけだから、法務省内のパソコンで打ったものですね、ならば、プロパティーを出してくれと、わずか一月ぐらいしかたっていないから。森大臣は、それは、証明するためのものを、法務省の事務方にしっかりと探させます、こう答えて、衆議院の予算委員会は閉じました。

 武田大臣、そのプロパティーを出してください。

武田国務大臣 お尋ねの文書ファイルのプロパティーに含まれる情報からは、当該文書に関する意思決定の時期は明らかとはなりません。

 また、このプロパティーに含まれる情報には、個人情報やファイルの置き場所などに関する情報が含まれており、これが明らかになれば、セキュリティー上の問題などを生じるリスクがあるため、これを開示することはできません。

黒岩委員 二つに分けて聞きますよ。

 何で一月十六日ということがプロパティーで特定できないんですか。

武田国務大臣 私の方は、法務省からそういう報告を受けているということです。

黒岩委員 一般論で聞いているんです。

 コンピューターのプロパティーで日時が特定できないなんということがあり得るんですか。

武田国務大臣 全て明らかにするということは、これはセキュリティーにかかわる問題だと思いますよ。

黒岩委員 答えてください。

 プロパティーで日付が特定できないことがあるのかどうか。イエスかノーかで答えてください。

松本委員長 速記をとめてください。

    〔速記中止〕

松本委員長 速記を起こしてください。

武田国務大臣 さっきから言うように、セキュリティー上の問題があるので、日時だけを公表したところで、その内容というものは出てこないんじゃないですか。

黒岩委員 プロパティーで日時は特定できる。むしろ、プロパティーの役割の一つが日時を特定することですよ。

 プロパティーで日時が特定されないことがあるのかどうか、答えてください。

松本委員長 速記をとめてください。

    〔速記中止〕

松本委員長 速記を起こしてください。

 武田国務大臣。

武田国務大臣 セキュリティー上、中身を出せないとなれば、日時だけしか出てきませんよ。

黒岩委員 大臣、ということは、日時は特定できるんですね。答えてください、特定できるかどうかも。

武田国務大臣 ですから、逆に、日時だけだったら、どんな文書かわからないでしょう。

黒岩委員 いいんです、出せるか出せないかで。

 プロパティーだけ、いいですか、そのうちどれが出せるか、どれがセキュリティーにかかわるかというものが分割できる。ですから、日時は特定できますね。

武田国務大臣 ですから、全てを出したらセキュリティー上問題が出るということなんです。御理解ください。

黒岩委員 全てなんて言っていません。検察庁の勤務延長についてという、この表題だけ出ればいいんですよ。

武田国務大臣 日時だけでは中身はわかりません。

黒岩委員 そのことを言っているんです。日時は特定できますね、プロパティーで。

松本委員長 ちょっと速記をとめてください。

    〔速記中止〕

松本委員長 速記を起こして。

 国務大臣。

武田国務大臣 どの文書もできるんでしょうけれども、日時だけではその内容を特定することはできないということです。

黒岩委員 では、大臣、これは解釈変更ですよ、勤務延長の。何のセキュリティーに影響するんですか。

武田国務大臣 プロパティーを出すこと自体がセキュリティー上問題があるということなんです。

黒岩委員 具体的にわかるように言ってください。

武田国務大臣 このプロパティーに含まれる情報には、個人情報やファイルの置き場所などに関する情報が含まれておりまして、これが明らかになれば、セキュリティー上の問題を生じるリスクになるということです。

黒岩委員 すごくわかりやすいです。

 だったら、大臣、大臣のおっしゃるとおり、個人情報とどこの棚に置いたか、これを黒消しで出せば、セキュリティー上問題ないということですね。

武田国務大臣 セキュリティーに関することなので、全てを慎重に対応していかなくちゃならぬと思います。

黒岩委員 では、委員長に求めますけれども、今言ったように、具体的にどの部分がセキュリティーなのか。今、個人情報と出ました、そしてファイルの棚と出ました。ファイルの棚がどこまで法務省でセキュリティーなのか、私はそれも相当疑念を持っていますけれども、それをしっかり出すようにしてください。私はこんなことで時間をとる気はないんです。

 私が今申し上げたのは、この解釈変更が実際に検事長の定年延長の前にされたのかどうかというのは、この法案審議でも大変重要なんですね。なぜならば、我々は、定年延長という人事の後づけで解釈変更が行われ、なおかつ、その後づけとしてこの改正案を通し、今まで個人的な延長の事例だったものを、これを制度化、一般化しようとしている、このプロセスが問題だと言っているわけですから、今申し上げた、解釈変更が実際の定年延長という法律事項の前だったのかどうか、これを証明していただかなければいけない。これは委員長に要請しておきます。

松本委員長 後ほど、理事会に諮ります。

黒岩委員 この法案の問題はいろいろとありますけれども、法案のたてつけとして、これはいわゆる束ね法です。ですから、これは、政府が略称でつけた国家公務員法等一部改正案、こう呼んでいるわけですけれども、その中で検察庁法改正案という言葉は使われていない。ある意味、消えているわけですよね。

 では、大臣、この束ね法、何本の法律を束ねていますか。

武田国務大臣 今回の国家公務員法等の改正案は、少子高齢化が進み、生産年齢人口が減少する我が国において、その豊富な知識、技術、経験等を持つ職員に最大限活躍してもらいつつ、複雑高度化する行政課題に……(発言する者あり)丁寧にやっていますので。的確に対応していくという趣旨、目的が同一である法案を束ねて改正することとしており、具体的には、国家公務員法、一般職の職員の給与に関する法律、国家公務員退職手当法、検察庁法、検察官の俸給等に関する法律、自衛隊法、防衛省の職員の給与等に関する法律、七本ですか、を束ねております。(黒岩委員「七本でいいんですか」と呼ぶ)十本。ごめんなさい。

黒岩委員 そういうたかだか十本の話を、丁寧に答えると言って、平気で七本と間違える。勘弁してくださいよ。こんな方が所管大臣で、そして検察庁法の答弁をして。

 僕は、十本だと答えるのが当たり前で、私が言いたかったのは、十本もの法案を束ねるという結論に行きたかったのに、まさか間違えるとは、驚きました。(武田国務大臣「言い間違い、言い間違い」と呼ぶ)そういう問題じゃない。十と七を言い間違えるような人にこんな丁寧な議論は、私は難しいと思いますよ。

 じゃ、大臣、聞きますが、今の十本の法案の一個一個の賛否というのは、各会派で同じだと考えているんですか。それとも、十本の法案一つずつそれぞれ、我々は会派として賛否を示せるんですか。お答えください。

武田国務大臣 それぞれの会派の考え方はそれぞれの会派でお考えになることだと思います。

黒岩委員 十本についてそれぞれ示せるかと聞いているんです。

武田国務大臣 十本については、趣旨、目的が一つなので一つに束ねていますけれども、それは各会派で後々判断していただきたいと思います。

黒岩委員 束ねたのは政府です。国会が束ねたわけじゃありません。束ねた結果、それぞれの賛否を示すことができるのかと聞いているんです。イエスかノーで答えてください。

武田国務大臣 それは国会の審議によるものだと思いますよ。

黒岩委員 違います。そうなんですか。答えてください。

 じゃ、国会によって、与野党協議でできるんですね。

武田国務大臣 一般に、法案に盛られた政策が統一的なものであり、その結果として法案の趣旨、目的が一つであると認められるとき、あるいは内容的に法案の条項が相互に関連して一つの体系を形づくっていると認められたときは、一つの改正法案として提案することができると我々は考えております。

 今回の国家公務員法等の改正法案につきましては、豊富な知識、技術、経験等を持つ職員に最大限活躍してもらうことを趣旨、目的としておりまして、これらについては自衛隊法や検察庁法についても同一であることから、一つの法案として束ねることが適切である、このように考えたものであります。

黒岩委員 委員長、注意してください。全く答えていないですよ。そんな答弁は求めていないでしょう。

 いいですか。この十本の束ね法で包含されている十本、一本一本それぞれ賛否を示すことができますかと聞いているんです。イエスかノーでしかありませんよ。さっき大臣はイエスと答えたんですよ。取り消さなくていいんですか。裏方、ちゃんと言った方がいいですよ。さっき、議事録、イエスで残っていますよ。

武田国務大臣 それは委員、我々が考えることじゃないと思いますよ。

黒岩委員 ということは、イエスということもあり得るということですね。

武田国務大臣 何度も言うようですけれども、一緒だから束ねているんです。

黒岩委員 何度でも言いますけれども、先ほどイエスと答えたから、それでいいんですね。これはこのまま進めますよ、イエスということなら。

武田国務大臣 我々としては、一つの法案として御審議いただきたいと考えているということなんです。

黒岩委員 そんなことは聞いていません。

 だから、十本の法案について、それぞれの意思を示せますかと聞いているんです。

武田国務大臣 それはこちらが言う話ではなくて、我々としては一つの法案として提出させていただいているわけで、一つの法案として御審議いただきたいと考えるのは当然のことだと思いますよ。

黒岩委員 だから、一つの法案として出したわけですから、一つの法案として賛否を示すことしかできないという理解でよろしいですね。

武田国務大臣 表明の仕方というのはさまざまだと思いますけれども、審議は一つです。

黒岩委員 そういう、摩訶不思議な、全く意味のわからないことを答えないでください、会話として。

 いいですか。一つの法案にまとめたわけですから、その中の十本の法案、それぞれに賛否、意思を示せることはできないわけですよね。

武田国務大臣 私どもは、さっきから何度も言うように、一つの法案として束ねて提出させていただいたわけですから、一つの法案として御審議をいただきたいと言っているわけであります。

黒岩委員 じゃ、聞きます。その束ねた法案をばらばらにすることはできるんですか。

武田国務大臣 我々は、法案を一つに束ねて提出させていただいたわけですから、一つの法案として審議をいただきたい。このことをお願いいたしたいと思います。

黒岩委員 じゃ、今時点では、大臣は、束ねを解くことができない、ないしは、束ねを解く気はないということですよね。

武田国務大臣 我々は一つの法案として束ねて提出させていただいたわけでありまして、一つの法案としてどうか御審議をいただきたいと思います。

黒岩委員 大臣、大臣のお願いを聞いているんじゃないんです。

 具体的に言えば、検察庁法だけ賛成、反対、国家公務員法だけ賛成、反対、こういうことを我々はできるんですか、この束ね法で。イエスかノーかで答えてください。できるのかどうか。

武田国務大臣 我々は一つの法案を提出させていただいておりますので、採決についても一つであろうかと思います。

黒岩委員 早く言ってくださいよ。こんなので七分もとる必要ない、できないんですよ。

 そこで、僕は、大変問題だと思うのは、今回のやはり一千万ツイートですよ。いいですか。

 じゃ、大臣、さっき最初に聞きました。じゃ十本、特に国家公務員法とこの検察庁法、これが、どちらも賛成ですということが予期されるなら、先ほどおっしゃった、趣旨も目的も一緒だと、加えて予期されるなら、これをまとめてというのも、ある程度私は合理性もあると思う。しかし、少なくともこの一千万世論は抗議すると言っている。すなわち、検察庁法に反対だと言っている。今、我々、議論の中でも、少なくともあの二つの特例が入っている限りは、この検察庁法は認められないと言っている。

 大臣、これ、束ねて出したからには、今大臣がおっしゃるように、出したからには、今言った別々の賛否は示せないということになっちゃったわけですけれども、大臣は、これ、押しなべて、多くの国民は、国家公務員法に対しても検察庁法に対しても、同じ賛否、同じ認識を持っていると思ってこれを束ねて出したんですか。

武田国務大臣 我々も、提出させていただいておりますので、できることならば全て賛成していただきたいという気持ちでありますし、また、先ほど委員がおっしゃったように、ツイートのお話がありましたけれども、国民の中にはそうしたいろいろな声があることも我々は承知をいたしますし、そうした声には耳を澄ましていきたい、このように思っています。

黒岩委員 できたら賛成をという気持ちはわかりますけれども、これは降って湧いた法案じゃありませんよ。このコロナ騒動、大変、コロナで、世間の関心は、もう不安でコロナに集中してきた。その直前、少なくとも二月の上旬の予算委員会などでは、この検察官の定年延長問題というのはある意味大変注目を浴びて、そして、国民からこの延長自体に反発の声が上がっていたわけですよ、つい数カ月前まで。急に、この土日で、ツイートで沸き上がった民意じゃない。もともと、底流どころではなく噴出していた民意。

 このことを、大臣、踏まえずに、今言ったように、穏やかに皆さんに賛成していただきたいと思ったから出した、こんな鈍い感覚で出したんですか。お答えください。

武田国務大臣 先ほどから申しておりますように、目的と趣旨が同じだから出しておるわけであって、ただ、これは、我々政治家、国民の理解を得られるように丁寧に説明をしていく必要は当然のことだと思います。

黒岩委員 私は、今申し上げた、少なくとも、二月、三カ月前の予算委員会や、さまざまなメディアでも、この延長問題というのは本当に火を噴いたわけですよ。こんな不合理で不公正なことがあるのか、こういう国民の受けとめ方だった。官邸という権力の中枢に更に力が集まるのかという、まさに真っ当な不安がそのときに湧き起こり、今も全く同じ思いですよ。ツイートを見る限りも、そのころの方向性と変わった、少なくとも、抗議しますとおっしゃっている一千万人の方々は同じ思いがそのまま続いているんです。

 この思いを見誤るとすれば、全くもって民意に耳を傾けていない。ないしは、コロナで少しこの検察庁問題が、この反発の声が聞こえなくなったから、じゃ、やっちゃおう。だからこれを、枝野代表始め、火事場泥棒とまさに言っているんですよ。でも、そうは国民は問屋が卸さない。喉元過ぎれば熱さ忘れるなんて甘いものじゃない。そのことは、大臣、胸に刻んでいただきたいと思う。

 そして、八日、採決を迫ってきた与党。十本を束ねて、これほど論点があり、そして、専門的な答えや答弁もきょう返らない、返ってこない場面が多々ある。このような審議で拙速に、じゃ、法案を通しますよ、そんなわけにはいかないということは改めて申し上げておきます。

 たくさん質問したいことがあったんですが、ちょっと飛ばして、機会があればまた質問しますけれども、一点、ちょっと事務的になるかもしれませんが、改めての確認で御答弁を求めたいんですけれども、今回の改正案が通ったときに、今回の法案が通った際に、今問題となっている、特定の個人名を挙げて恐縮ですが、黒川検事長の定年というのは、延長は何歳まで可能になるんですか。その前に、この改正案が通ると通らないで何か影響が与えられるのか。そして、黒川さんの延長は何歳まで可能になるのか。

武田国務大臣 一般論を申し上げたいと思いますが、次長検事及び検事長は、六十三歳以降、役おりの特例により最長六十五歳まで、さらに、勤務延長の規定を適用することにより最長六十六歳まで勤務することが可能となっております。

黒岩委員 ということは、六十六歳までということですね。

武田国務大臣 一般論で申し上げます。

 そのとおりであります。

黒岩委員 裏方、本当にいいんですか。本当にいいんですか。私は間違っていると思いますよ。こんな簡単な年数の計算もできないんですか。

 再答弁を求めます。

武田国務大臣 先ほど答弁したとおりでありますけれども、一般論としては、次長検事及び検事長は、六十三歳以降、役おりの特例により最長六十五歳まで、さらに、勤務延長の規定を適用することにより最長六十六歳まで勤務することが可能となっております。

黒岩委員 二度聞いて、再答弁しても六十六歳だと。違うんじゃないですか。

 これ、現在検事長である者が検事総長になり、そしてその検事総長が定年を延長され、これは法改正されれば、そのときに、法改正の二〇二二年の四月一日をまたいでまた三年の延長が認められれば、六十八歳の前日まで定年延長が可能なんじゃないですか。

武田国務大臣 一般論として、検事総長は六十八までですね、検事総長は。

黒岩委員 わかりました。

 私は、今申し上げたとおり、黒川検事長は、じゃ、検事総長になれば六十八歳まで定年延長は可能ということですね。

武田国務大臣 一般論として答えたわけで、個別の人事が絡む問題についてはコメントを差し控えたいと思います。

黒岩委員 一般論で可能なら当然可能だし、しかもこれは、結論から言うと、この改正案が通ろうが通るまいが可能なんですよ。

 だから、ポイントは、この、ことしの一月三十一日に閣議決定をして、そして、今まで検察官はただ一人も勤務延長していなかった、これを法解釈の変更といって勤務延長させた時点で、ナンバーツーである東京高検検事長は、これは法制度的に、ナンバーツーの検事長、ナンバーワンの検事総長と、それから五年間、本来ならもう目の前で定年だった人間が、五年間、検察のまさにトップもトップでその職責を全うすることができる。これはすごいことですよ。

 検察そのものも大変大きな権力を持っている。その中のナンバーツーの人間が、五年間、更に長期にわたって力を持つ。こういったことが法解釈の変更で行われ、そして、今、自民党席からありましたが、これが、今後全ての検察官に当てはまる可能性がある、そんな制度なんですよ。だから国民が不安になっているんじゃありませんか。

 しかも、この強大な権力の生殺与奪を、これは内閣が握る。独立機関である人事院ではない、内閣が握る。これは、大臣、まさに民主主義の、三権分立の崩壊だし、こんなことが認められたら、国民主権の民主主義の敗北ですよ。

 改めて申し上げます。大臣、この法案を、束ね法案を解く方法は、一つだけあります。それは国会にはできません。その手法は何だかわかりますか。

 この法案を束ね法から解く方法は、一つだけあります。その方法は何ですか。

武田国務大臣 教えていただきたいと思います。

黒岩委員 申しわけないですけれども、束ね法の所管大臣がこれでは、私は困ったものだと思いますよ。

 これは、国会法で言うところの五十九条、内閣が立法府に対して撤回の申出をすることなんです。それで、立法府から承諾を得れば、これは束ね法を解いて出し直すことができる。

 最後に要請します。今、るると、この問題、法案の問題点、第一弾として束ね法としての問題点を申し上げた。これは、これほど性格の違う内容であるがゆえに、そして賛否も分かれるがゆえに、国民が不安であるがゆえに、一回撤回を申し出て、そして束ねを解いて慎重審議をしていただきたい。大臣、いかがですか。

武田国務大臣 先ほどから何度も申し上げましたように、束ねて法案を提出させていただいております。一つの法案として審議をいただくことをお願い申し上げたいと思います。

黒岩委員 これで終わりますけれども、これだけの問題点に対して本当に耳を傾けない、そして一ミリも姿勢を変えない。これは、私は、やはり、立法府という、国民の声を聞き、その中から、議論をした中で合理的な方向性を見出していく、このことに対して、そして国民の声に対して全く聞く耳を持っていなかった。このことを断じて、質問を終わらせていただきます。

 ありがとうございました。

松本委員長 次に、後藤祐一君。

後藤(祐)委員 立憲民主・国民・社保・無所属フォーラムの後藤祐一でございます。

 まず、今回の束ね法の国家公務員法改正部分には我々は問題ないと考えておるんですが、検察庁法改正案の部分については大問題だということで、先ほど階委員からもお話がありましたとおり、我々野党会派として、むしろそこの部分を取り除いて通すべきではないかという修正案を提示させていただいているということをまずもって申し上げたいと思います。

 その上で、この検察庁法の問題点、大きく二つあります。一つは、定年延長、勤務延長が裁量的に行われるのではないかという点。もう一つが、きょうはこの点を特に質疑したいと思いますが、いわゆる役おり、検事長は六十三歳になったら役をおりなきゃいけない、それを、特別に認められた場合は六十四歳、六十五歳になってもいいですよというこの役おりの特例というものが、今、お手元の配付資料、まだ配っているところですかね、今回の検察庁法の改正案二十二条五項というところでこれが新たに認められてしまっている。ここが恣意的に運用されるのではないかという懸念を持っているわけでございます。

 そこで、先ほど階委員も質疑で触れておられましたけれども、この役おり、検事長の役おりを特例で延長できるという規定について、武田大臣、議論させていただきたいと思いますが、お手元の配付資料、大臣のところにもう来ていますか。階先生のときと同じ資料ですが、これは、昨年の十月段階で法案をつくっていたときの、法務省の逐条解説的なものをつくる中の一部でございます。同じ資料です。

 この中で、昨年十月の段階では、検事長は六十三歳になったらもう強制的にやめるという法案になっていたわけです。役おりの特例、すなわち、六十三歳以降も検事長が居座るということは認められない。

 その理由として、そこに書いてあるように、この1から4は私がつけました、1、職制上の段階がなく、降任等が概念し得ないことから、他の一般職の国家公務員に比してより柔軟な人事運用が可能である。つまり、係長、課長補佐、課長とか、そういうのがないんですね、だからやりやすいと。二つ目、定年に達したときに退官することとされているため、同時期に一斉に退官することとはされていない。3、異動時期は誕生日を基準としていることから、一斉に異動することにもならない。4、適切な時期に異動を前倒しするなどすることが容易であって、異動による補充すべきポストは一斉に生じることにもならない。

 こういった理由があって、一番下のところですが、昨年十月の段階では、公務の運営に著しい支障が生じるなどの問題が生じることは考えがたいと。つまり、六十三歳で強制的に検事長が全員やめても公務の運営に著しい支障が生じる問題は生じないということを昨年十月の段階で認めているわけですが、まず、武田大臣、この事実関係を確認させてください。

 昨年十月の段階の案をまとめるときの判断をお聞きしますが、検事長、次長検事もそうですが、六十三歳になったら全員やめる、役おりの特例でそれを延長することを認めなくても、公務の運営に著しい支障が生じるなどの問題は生じないということでよろしいですか。確認です。

武田国務大臣 法務省に聞いてもらった方が詳しいとは思うんですけれども、法務省においては、検察官の定年引上げに関する法律案策定の過程におきまして、昨年十月末ごろ時点では、退官や異動により補充すべきポストが一斉に生じるおそれがあるか否かという視点のみから検討し、検察官については勤務延長及び役職定年の特例に相当する規定を設けなくとも、公務の運営に著しい支障が生じるなどの問題が生じることは考えがたいと結論づけていたものと聞いております。

後藤(祐)委員 法務省に聞きたいので。法務大臣、与党が認めないじゃないですか。何度も何度も、きょう武田大臣はおっしゃっていますけれども、だったら、与党の皆さん、森大臣がそこに座ることを認めたらいいじゃないですか。我々は求めているんですから。

 改めて、委員長、この次以降の質疑で、場合によっては連合審査なども含めて、森法務大臣を、来ていただくことを求めたいと思います。

松本委員長 後ほど、理事会に諮ります。

後藤(祐)委員 先ほどの答弁に加えて、階先生の質疑の中で武田大臣は、こういった検事長の六十三歳以降も居座れる規定をつくらなくても、公務の運営に著しい支障が生じるような事例は特段見当たらなかったというところまでおっしゃっていますが、それでよろしいですか。昨年十月の段階の話ですよ。

武田国務大臣 事例が見当たらなかったということでございます。

後藤(祐)委員 昨年十月までの間は、検事長が六十三歳以降居残っても、公務の運営に著しい支障が生じるという問題が起きるようなケースはなかったという明確な答弁でありました。これは重要です。

 昨年の十月までは、検事長が六十三歳以降居残るということを認めなくても、公務の運営上、支障は生じなかった、そういう事例はなかったという明確な答弁がありました。

 そこで、次に行きたいと思いますけれども、では、今回出された検事長の役おりの特例、六十三歳以降も居残れるという条文、皆さんのお手元の二ページ目、検察庁法二十二条五項の改正案ですが、この二十二条五項は、公務の運営に著しい支障が生ずると認められる事由として内閣が定める事由があると認めるときに、六十三歳以降居残れるというふうに条文上されています。

 これも条文から明らかなんですが、大臣、確認しますけれども、検事長が六十三歳以降も居残れるという役おり特例を認めないと公務の運営に著しい支障が生じるということがあり得るということですか。

武田国務大臣 特例は必要だと思います。

後藤(祐)委員 いや、それは提案しているんですから。そのことを聞いているんじゃないです。

 この二十二条は、公務の運営に著しい支障が生じると認められる事由として内閣が定める事由があると認めるときは、六十三歳以降、検事長は居残れるという条文を提案されているんですから、そういうことは起き得るということですか。

 つまり、この提案されている二十二条五項で、検事長が六十三歳以降も居残れるという特例を認めないと、公務の運営に著しい支障が生じることがあり得るということですか。これは当然のことを聞いているんですよ。

武田国務大臣 起き得ると思います。

後藤(祐)委員 重要な答弁です。

 今、二つ重要な答弁がありました。昨年十月までは、六十三歳以降、検事長が居残るという特例がなくても支障はない、そういった事例はないということを先ほど答弁されました。そして今、今回の法案で明らかなように、六十三歳以降、検事長が居残るという特例を認めないと、公務の運営に著しい支障が生じることがあり得るという答弁がありました。

 では、聞きたいと思いますけれども、昨年十月以降、検事長が六十三歳を超えて居残り続けられるように今回のような法改正をしないと、公務の運営に著しい支障が発生する、そんな具体的な立法事実はどこにあるんですか。

武田国務大臣 勤務延長制度は、特定の職員に定年後も引き続きその職務を担当させることが公務執行上必要な場合に、定年制度の趣旨を損なわない範囲で、定年を超えて勤務の延長を認め、公務遂行に支障を生じさせないようにしようという趣旨から設けられているところであり、このような趣旨は検察官にもひとしく及ぶと考えられることから、現行国公法上の勤務延長制度は検察官に適用されると解されることとしたものであり、改正法においても同様に勤務延長制度を適用するため、所要の読みかえ規定を設けることとしたものであります。

 今般の国家公務員法改正法案において……(後藤(祐)委員「役おりです、二十二条」と呼ぶ)

松本委員長 大臣、続けてください。

武田国務大臣 役おり……(後藤(祐)委員「私、勤務延長のことは聞いていないです。とめてください」と呼ぶ)

松本委員長 ちょっと速記をとめて。

    〔速記中止〕

松本委員長 速記を起こしてください。

武田国務大臣 検察官の役おり制度の導入により、次長検事や検事長につきましては、年齢が六十三歳に達した日の翌日に検事に任命することとなりますが、当該次長検事及び検事長の職務の遂行上、特別の事情があって、その異動により公務の運営に著しい支障が生ずる場合に、引き続きその官及び職を占めたまま勤務させる必要があると考えられる。そのため、検察官についても、国家公務員法と同様の趣旨から役おりの特例を設けるものとしたものです。(発言する者あり)

松本委員長 後藤先生、もう一回ちょっと整理して質問してください。

後藤(祐)委員 武田大臣、こっちの話を聞いてください。質問の趣旨がわかっていないんだから、質問者の方を聞いてください。

 具体的な事例を聞いているんです。

 昨年十月までは、検事長が六十三歳以降居残る必要はなかった、そういう公務上の障害はなかったと答弁がありました。そして今回、検事長に六十三歳以降も居残れるようにしないと、公務の運営に著しい支障が生じ得ると答弁がありました。具体的にどういうケースですか。

 これまで、少なくとも十月までなかったわけですから、昨年十月以降の、武田大臣、質問を聞いてください、昨年十月以降、検事長、まあ次長検事でもいいですよ、の人事で、これを六十三歳以降まで残さないと公務の運営に著しい支障が生じたケースって、具体的な人事、どのケースであったんですか。

武田国務大臣 個別具体的な事案についてはちょっと控えさせていただいたわけですけれども、確かに社会情勢が大きく変化しているんです。そして、国際的な組織犯罪や捜査手法に工夫を要するサイバー犯罪などが多く発生もしております。犯罪の性質というものは複雑困難化もしています。

 このような複雑困難化した犯罪の捜査等を公平かつ適正に行うためには、特定の分野に知識がある若年の者が捜査等に当たれば足りるというわけではなく、捜査等一般についての多様な知識経験を生かして捜査等を行うことが必要となってまいります。

 また、複雑困難な事件の真相を明らかにするためには時間を要することもあり、そのような事件の担当検察官が途中で定年退職となり、別の検察官がその捜査、公判を引き継ぐこととなると、その遂行に多大な困難を伴うことになるなど業務の継続的遂行に重大な障害を生ずることがある、このようなことが考えられる、これが事由になるかと思います。

後藤(祐)委員 具体的なケースでお答えください。

 今大臣がおっしゃったような立法事実を一般的に、こういうことが起きるかもしれないというのが現実に具体的に起きたケースはあるんですか。黒川検事長のケースがそうなんじゃないんですか、大臣。

武田国務大臣 個別具体的なことについてはコメントを差し控えさせていただきたいと思います。

後藤(祐)委員 黒川さんのケースは、今おっしゃった、検事長が六十三歳でやめてしまうと、公務の運営に著しい支障が生じたケースなんじゃないんですか。ちゃんと答えてください、もう過去に起きていることですから。

武田国務大臣 これは個別人事にかかわることですので、コメントは差し控えさせていただきたいと思います。

松本委員長 速記をとめてください。

    〔速記中止〕

松本委員長 速記を起こしてください。

武田国務大臣 過去にあるかないかというのを、私の知る限りではちょっと記憶しておりません。

後藤(祐)委員 そうしますと、六十三歳で検事長がやめると困る、その後も居座れるという立法事実は、具体的にはまだ発生していないということですか、大臣。

武田国務大臣 いろいろと犯罪が複雑多様化している中で、今までとは状況が違うわけですから、そうした可能性は出てくるというふうに思います。

松本委員長 ちょっと速記をとめて。

    〔速記中止〕

松本委員長 速記を起こしてください。

 武田大臣。

武田国務大臣 事案はないんですけれども、先ほど言ったように、犯罪が複雑困難化している、こうした事情を鑑みると、そうしたこともあり得るということです。

後藤(祐)委員 今、事案はないとお答えになりました。この二十二条五項、検事長が六十三歳以降も居座ることができるという規定に該当するようなケースはこれまでなかった、こういう答弁。

 もう一度確認させてください。なかったんですね、これまで。

松本委員長 時間をとめて。

    〔速記中止〕

松本委員長 速記を起こして。

 武田国務大臣。

武田国務大臣 十月時点ではございませんでした。

松本委員長 後藤祐一君、もう一度。

後藤(祐)委員 十月以降、今までの間に過去の話としてあるかどうかを聞いています。

武田国務大臣 十月段階ではなかったですけれども、十二月以降、検察庁法の改正を含む国家公務員法改正法案については、提出に臨時国会は至らなかったわけですから、その間、通常国会の提出までに時間ができたことから、法務省において検討作業を進められたわけであります。そういうことですね。

松本委員長 速記をとめてください。

    〔速記中止〕

松本委員長 速記を起こしてください。

 武田国務大臣。

武田国務大臣 過去に役おり制度があったかないかということなんですか。役おり制度が過去にあったかないかということですか。

松本委員長 速記をとめてください。

    〔速記中止〕

松本委員長 速記を起こしてください。

 後藤祐一議員、もう一度大臣にわかりやすく。もう一度整理してください。

後藤(祐)委員 明確ですよね、質問。

 昨年十月以降、今までの間に、検事長が六十三歳以降まで居座らなきゃいけないような、そんな立法事実がありましたか。具体的な人事のケースでありましたかと聞いています。黒川さんのケースがそれに当たるんじゃないんですかと聞いています。

武田国務大臣 十月の段階まではございませんでした。

松本委員長 ちょっと速記をとめてください。

    〔速記中止〕

松本委員長 速記を起こして。

 武田国務大臣。

武田国務大臣 役おり制度というのは現行法上ないわけですから、そのため、役おり制度というものも今までなかったわけであります。当然のことだと思います。

後藤(祐)委員 役おり制度は、それはありませんよ。ですが、役おり制度が必要な理由として、六十三歳以降も検事長が居座らないと困るような事態が起き得るという説明をさっき御自分でされたじゃないですか。

 そういう事例が、昨年十月から今までの過去の間に、具体的な人事のケースであったんですか、それは黒川検事長のケースだけではないですかと聞いているんです。

武田国務大臣 勤務延長をどうかといえば、そのとおりです。(後藤(祐)委員「勤務延長のことは聞いていません」と呼ぶ)

 黒川さんの件は勤務延長の件じゃないですか。

後藤(祐)委員 黒川さんは勤務延長ですよ。ですが、黒川さんのようなケースが、まさに今回皆さんが提案されている、六十三歳以降も検事長に居座らなきゃいけないような、先ほど大臣御自身が説明した、複雑化しているとか、そういった立法事実がまさに体現されたような具体的な人事のケースなんじゃないんですかと聞いているんです。

 もう、ちょっと、これは六回目になります。これ、答えないんだったら、これ以上質疑を続けられないですよ。

武田国務大臣 私の承知しているところについて言えば、黒川さんの件以外にはありません。

後藤(祐)委員 つまり、この二十二条五項の、検事長が六十三歳以降も居残れるという規定は、黒川さんのケースにのみ、過去当てはまった立法事実だということでよろしいですね、大臣。

武田国務大臣 何度も言うように、今後の複雑困難化した社会に対応していく必要があるんです。御理解ください。(後藤(祐)委員「答弁したじゃないですか、確認しているだけですよ」と呼ぶ)

 現在はそうですけれども、今後あり得ることを想定してやっておるわけです。

後藤(祐)委員 でも、重大な答弁がありました。

 検事長が六十三歳以降も居残れるとするこの役おりの特例については、少なくとも黒川さんのケースは、この立法事実の具体的な例であるという明確な答弁がありました。重大な答弁です。

 まさに、この法案は、黒川さんのケースを後づけで認めるための法案だと言っているようなものじゃないですか、大臣。大臣の御見解を問います。

武田国務大臣 本年一月の解釈変更後のことでもありますけれども、黒川検事長については、検察庁の業務遂行上の必要に基づき勤務延長をさせたものであります。

後藤(祐)委員 そんなことは聞いていませんよ。

 黒川さんのケースだけが、検事長が六十三歳以降も居残れるという今回の提案の具体的な立法事実であるとするならば、まさに今回の検事長法の改正案は、黒川さんのケースを後づけで認めているための法案じゃないですか。それについての大臣の見解を問うています。

武田国務大臣 先ほども申しましたように、これは黒川さんのための法改正ではありません。何度も申し上げています。黒川さんのためにやった法改正ではないということを御理解ください。

後藤(祐)委員 では、昨年十月以降現在まで、黒川さん以外のケースで、この二十二条五項が適用されるような具体的な人事のケースがあるかどうか、お答えください。

武田国務大臣 これも先ほど申しましたけれども、事例はないんですけれども、今後、ありとあらゆる可能性があるんですよ。そのためにやっているんです。今だけの話じゃないんです。今後のことを見据えて我々は動かなきゃだめなんですよ。御理解いただきたいと思います。

後藤(祐)委員 でも、重大な答弁がありました。少なくとも現時点まで、この二十二条五項に基づいて検事長が六十三歳以降も居残れる、この立法事実は黒川さんのケースしかないということの明確な答弁がありました。これははっきり言いましたよ、今。重大な事実じゃないですか、これだけで。

 じゃ、これからそんなにあるんですか、六十三歳以降。そんなにあるんですか。

 実際、検事長のクラスで、例えば、ついこの前、三月二十七日に六十三歳を迎えられた小川広島高検検事長、この方は、六十三歳を迎えて定年で退官されました。また、ことし、この後、八月二十八日に六十三歳を迎える予定である上野大阪高検検事長は、既にことし一月に退官されています。あと、七月三十日に六十三歳を迎える予定の林名古屋高検検事長がどうなるかというのはあるかもしれませんよ。

 どれだけあるというんですか。実際、この小川さんのケースのように、ちゃんと六十三歳で退官されている方もいるわけですよ。そして、今までこれを厳密に守ることで、検事長は六十三歳でやめるということを現実にしっかりと確実に守ることで、政府、内閣の介入を防いできたというのが検察のあり方だったんじゃないですか。

 大臣、まさに、じゃ、黒川さんのようなケース、これから、そんなにいっぱい発生するんですか。

武田国務大臣 これは原則ではありませんけれども、当然、あり得る話であることには間違いないと思います。

後藤(祐)委員 ここを使ってしまったら、検察が、本当は政府の介入は受けていないのに、政府の介入を受けているのではないかと思われちゃうんですよ。

 黒川検事長は、今回のようなことをしてしまったがために、検察は今の政権に対して手心を加えているんじゃないかと世の中の皆さんがすごく思うから、これだけのツイートになっているわけじゃないですか。実際に検察の方はそんなことしていないと思いますよ。だけれども、そう思われちゃうんですよ、この人事をしてしまったがために。そこが問題だという認識はありますか、大臣。

武田国務大臣 その件に関すれば、法務省で適切に判断されたもの、このように承知をいたしております。

後藤(祐)委員 大臣の御見解を聞いています。

 この二十二条五項を何度も使うようなことになれば、どんどんどんどん、検察に対する国民の信頼は、この黒川さんの一件だけでこれだけ崩れた。もっと崩すつもりですか。もう二度とこの規定は使わない、それが検察を守るということじゃないですか。大臣の見解を聞いています。

武田国務大臣 その要件というものを明確化してまいりますので、大丈夫だと思います。

後藤(祐)委員 どんな要件ですか。具体的にわかる形のものにしてください。今示してください。

武田国務大臣 慎重な判断がなされるよう、人事院規則等を踏まえて判断してまいりたいと思います。

後藤(祐)委員 具体的に言ってくれないと、こんなの、どう濫用されるかわからないじゃないですか。今のでわかりましたか、与党の皆さん。

 具体的に言ってください、どんな基準なのか。

武田国務大臣 人事院規則また国会の議論を踏まえて、法務省で適切に判断してまいりたい、このように思います。

後藤(祐)委員 基準は具体的なものは今ないということでよろしいですか。

武田国務大臣 人事院規則そして国会の議論も踏まえて、今後検討していきたいということです。

後藤(祐)委員 はっきり答えてください。

 検事長が六十三歳以降も居残れるようにする、それが可能な場合の、どんな場合が可能なのかの基準は、現時点でないということでよろしいですか、大臣。

武田国務大臣 例えば、職員の退職による担当者の交代が、業務の継続的遂行に重大な障害を生ずる場合などに考えられる。

 いずれにせよ、今後、人事院や国会での御審議を踏まえ、法務省において具体的内容についての検討を進めるものと承知をいたしております。(後藤(祐)委員「今あるかないか」と呼ぶ)今はありません。

後藤(祐)委員 濫用されると怖い。だから、どんな基準なんだ。それを審議するのが法案審議じゃないんですか。ありませんってどういうことですか。そんなの、これでいいですよなんて言えるわけないじゃないですか。第二の黒川、第三の黒川を生むだけじゃないですか。基準はありません、何ですか、それ。それを示していただけないと、この審議なんかできないですよ。

 それをちょっと、どんな基準で二十二条五項を運用するのか、ある程度の方向性だけでも示していただかないと、審議に応じられないです、これは。

武田国務大臣 先ほど言った人事院の規則とか国会議論を踏まえて、施行日までにはしっかりと明らかにしてまいりたいと思います。(発言する者あり)

 先ほど申し上げたように、今の段階では、職員の退職による担当者の交代が業務の継続的遂行に重大な障害を生ずる場合等が考えられますけれども、具体的な内容については、今からいろいろな議論を踏まえて、施行日までにしっかりとしたものを明らかにしてまいりたい、このように考えております。

後藤(祐)委員 二十二条五項がどう運用されるかの基準が示されたら審議の続きをやりましょう。

松本委員長 速記をとめてください。

    〔速記中止〕

    〔委員長退席、宮内委員長代理着席〕

    〔宮内委員長代理退席、委員長着席〕

松本委員長 速記を起こしてください。

 野党の皆さんが、答弁が不十分であって、こういう答弁では審議を続けることができないということで、退席をされました。立憲民主・国民・社保・無所属フォーラムの皆さん及び日本共産党所属委員の出席が、ごらんのとおり、得られておりません。

 理事をして、理事の皆さんが、各会派の理事のところに足を運んで出席方を求めたわけでありますが、今、出席を得られません。

 したがって、委員会質疑を進めるに当たって、これから各党会派、理事をして、委員会、進め方について、再度協議をいたします。

 そのために、暫時休憩といたします。

    午後零時五分休憩

     ――――◇―――――

    〔休憩後は会議を開くに至らなかった〕


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