衆議院

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第7号 令和5年3月17日(金曜日)

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令和五年三月十七日(金曜日)

    午前九時開議

 出席委員

   委員長 大西 英男君

   理事 井上 信治君 理事 神田 憲次君

   理事 藤井比早之君 理事 宮路 拓馬君

   理事 青柳陽一郎君 理事 稲富 修二君

   理事 阿部  司君 理事 國重  徹君

      赤澤 亮正君    池田 佳隆君

      石原 宏高君    尾崎 正直君

      大野敬太郎君    工藤 彰三君

      小寺 裕雄君    杉田 水脈君

      鈴木 英敬君    瀬戸 隆一君

      田野瀬太道君    平  将明君

      中野 英幸君    中山 展宏君

      平井 卓也君    平沼正二郎君

      牧島かれん君    松本  尚君

      中谷 一馬君    太  栄志君

      本庄 知史君    馬淵 澄夫君

      山岸 一生君    岩谷 良平君

      浦野 靖人君    金城 泰邦君

      福重 隆浩君    浅野  哲君

      塩川 鉄也君    仁木 博文君

      大石あきこ君

    …………………………………

   内閣府大臣政務官     鈴木 英敬君

   内閣府大臣政務官     中野 英幸君

   内閣府大臣政務官     尾崎 正直君

   参考人

   (国立研究開発法人国立国際医療研究センター病院国際感染症センターセンター長)           大曲 貴夫君

   参考人

   (川崎市健康安全研究所所長)           岡部 信彦君

   参考人

   (一般社団法人日本プライマリ・ケア連合学会理事長)

   (医療法人北海道家庭医療学センター理事長)    草場 鉄周君

   参考人

   (一般社団法人日本医療法人協会副会長)      太田 圭洋君

   内閣委員会専門員     近藤 博人君

    ―――――――――――――

委員の異動

三月十六日

 辞任         補欠選任

  池田 佳隆君     中川 郁子君

  大野敬太郎君     中曽根康隆君

  緒方林太郎君     福島 伸享君

同日

 辞任         補欠選任

  中川 郁子君     小田原 潔君

  中曽根康隆君     細田 健一君

  福島 伸享君     緒方林太郎君

同日

 辞任         補欠選任

  小田原 潔君     池田 佳隆君

  細田 健一君     大野敬太郎君

同月十七日

 辞任         補欠選任

  池田 佳隆君     瀬戸 隆一君

  河西 宏一君     金城 泰邦君

  緒方林太郎君     仁木 博文君

同日

 辞任         補欠選任

  瀬戸 隆一君     池田 佳隆君

  金城 泰邦君     河西 宏一君

  仁木 博文君     緒方林太郎君

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 新型インフルエンザ等対策特別措置法及び内閣法の一部を改正する法律案(内閣提出第六号)


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     ――――◇―――――

大西委員長 これより会議を開きます。

 内閣提出、新型インフルエンザ等対策特別措置法及び内閣法の一部を改正する法律案を議題といたします。

 本日は、本案審査のため、参考人として、国立研究開発法人国立国際医療研究センター病院国際感染症センターセンター長大曲貴夫君、川崎市健康安全研究所所長岡部信彦君、一般社団法人日本プライマリ・ケア連合学会理事長、医療法人北海道家庭医療学センター理事長草場鉄周君、一般社団法人日本医療法人協会副会長太田圭洋君、以上四名の方々から御意見を承ることにいたしております。

 この際、参考人各位に御挨拶申し上げます。

 本日は、御多用中のところ本委員会に御出席を賜りまして、誠にありがとうございます。本案について、それぞれのお立場から忌憚のない御意見をお述べいただき、審査の参考にいたしたいと存じますので、よろしくお願いいたします。

 次に、議事の順序について申し上げます。

 まず、大曲参考人、岡部参考人、草場参考人、太田参考人の順に、お一人十分程度御意見をお述べいただき、その後、委員の質疑に対してお答えいただきたいと存じます。

 なお、参考人各位に申し上げますが、御発言の際にはその都度委員長の許可を得て御発言くださるようお願い申し上げます。また、参考人は委員に対して質疑をすることができないことになっておりますので、あらかじめ御承知おき願いたいと存じます。

 それでは、大曲参考人にお願いいたします。

大曲参考人 国立国際医療研究センターの大曲貴夫と申します。

 本日は、このような場を与えていただきまして、誠にありがとうございます。

 私は、現場で実際に患者さんを拝見する医師という立場におりますが、その立場から見えるところということで、今回の法案に関して意見を申し述べたいと思います。よろしくお願いいたします。

 私ですけれども、二〇二〇年の一月、それ以降、病院の現場でCOVID―19の対応に当たってまいりました。その中で思い返しますと、二〇二〇年の一月の終わりには、武漢からの帰国邦人の受入れということを行いました。端的には、帰国された方々全員の検査を行って、必要な方には隔離等々を行うといったことを行ったわけであります。その次に起こったのは、二月のいわゆるダイヤモンド・プリンセス号の対応でありました。これは本当に大変なミッションだったと思っております。

 その後、日本ではこれまでのところ第八波までの流行を経験してきておりますし、私たちも対応してまいりました。そこで強く感じましたのは、この感染症の対応、これは本当に災害と同じく有事対応そのものであるというものであります。

 当初は、一か所に大量の資源、人、物、それを投与すべき状況でありました。それは武漢のミッションもそうですし、まさにダイヤモンド・プリンセスの対応がそうだったわけなんですが、その後、感染が本当に日本中に広がっていきました。そして、日本中の方々が医療の現場でも、それ以外の場でも大変な思いをされました。

 それだけではなくて、非常に厳しいのは、対応が長期化しているというところでもあります。コロナ対応も、もう四年目に入っております。これを見ますと、災害、特に自然災害などとの対応とはやはり様子が違うと言わざるを得ないと思います。何よりも違いますのは、相手が新しい感染症であるというところです。

 私たちも、日本の最初の事例からほぼ見ておりますが、本当に、最初は全く何が起こっているか分からない、どういう病気なのか分からない、どういう広がり方をするのか分からない、重症になった場合にどうなるのか分からない、そもそも重症化するのかどうかも分からないという状況で対応したわけでありますが、時間とともに状態は明らかとなっていきます。

 ただ、問題は、病気そのものが時間とともにどんどん変わっていくというところがあります。それを受け止める医療の現場なり、あるいは社会の現場なりというところもどんどん変わっていきます。こうやって変わっていく中で、新しいものを対応しながら、これは遅滞なく対応する必要があります。

 じゃ、どうすればいいのかというところでありますが、これに対応するには、本当に、絶え間なく迅速に感染症に関する知見を広く得て、そして、その知見を基にして対処法を考えて対応していく、国として対応していく必要があります。

 これらの経験を踏まえて、私自身は、感染症も災害等と全く同じく、国の危機管理の対象として明確に位置づけることが必要と考えています。

 じゃ、そこをきちんと行うにはどうすればいいかといいますと、これはやはり危機管理ですので、明確な指揮命令系統が確実に必要であります。更に必要なことは、そこに対応するために必要な専門的な知見を的確に迅速に打ち込んでいく、そのような必要があることを痛感しております。

 よって、私は、今回の法改正が極めて重要であると考えております。

 今申し述べましたように、感染症というものは時間とともに、病気そのものもそうですし、取り巻く状況というものも著しく変化していきます。その感染症が新興感染症であれば、そもそも全く知見がないところから、それこそ迅速に、いわゆる感染症の状況を示す疫学情報、患者さんの情報を示す臨床情報、そして患者さんの中にいる病原体の情報を得るための検体、これらを得て、それらを解析をして、知見を得て、その知見を基に対策を検討していく必要があります。

 最も大事なのは、これを迅速に行うということであります。そこを迅速に回転させていくことによって、結果的に、ワクチンあるいは治療薬、診断薬といったものが出てきます。このような流れがうまく機能することによって、最終的に、必要とされる患者さんのいらっしゃる医療の現場にこうしたものが迅速に送り出されていきます。

 今回、国立健康危機管理研究機構を設置するための法案が提出されております。私は、その母体となる国立国際医療研究センターの一職員であります。この新組織に与えられた責務に応えるべく、現場でしっかりと準備を進めてまいる所存であります。

 何よりも大事な、専門家の組織と、そして行政組織の間の迅速かつ緊密、密接な連絡、そして検討、これが行われることによって必要な対応が迅速に行われるようになる、そのように考えております。

 最後に申し上げたいのは、仕組み、行政的な仕組みをつくる、専門家組織をつくるということの重要性は、これはもう言うまでもないわけですが、これらを支えるための人材がこの国には多数必要である、今は足りていないということを申し上げておきたいと思います。特に、感染症の危機管理に対応できる感染症の人材は全国的に不足しています。実はこれは、二〇〇九年、新型インフルエンザがありましたけれども、その頃からもう反省として出ていることなのですが、現状、二〇二三年の今でもなかなか足りていないという状況があります。

 これは、例えば中央ですとか都道府県といった行政の場でも不足があります。例えば、新型コロナの感染症で各地の保健所が人材不足で大変苦慮されましたし、都道府県レベルでも、専門知識を持つリーダー人材の不足というもので大変苦慮されたということを伺っております。

 また、臨床の場を見ていきますと、感染症の専門家の不足、これは以前から大きな問題でありましたし、これは、実際に対応する中で、十分なキャパシティーが確保できないということで、顕在化したと思っております。

 今回の法改正で指揮命令系統は明確化されます。ただ、この命令系統と、そして組織、これらがうまく機能するように、その中で働く専門人材の育成、これは中央の機能、中央の組織だけではなく都道府県、そして現場の保健所、病院も含めてなのですが、そうした専門人材の育成と、そして、そうやって育った人材を中央そして地域で確実に受け入れていただくための枠組み、ポジションがやはりなかなかないという問題がありまして、この受け入れていただくための枠組みづくりを、是非、先生方にはお願いをしたいと思っております。

 私からは以上でございます。ありがとうございました。(拍手)

大西委員長 ありがとうございました。

 次に、岡部参考人にお願いいたします。

岡部参考人 川崎市の健康安全研究所の岡部と申します。

 今日は、こういうような機会を与えていただきまして、ありがとうございました。

 私は、元々、小児科の臨床を長くやっていたんですけれども、国立感染症研究所が予研というところから組織が変わったときに感染症情報センターが設立され、そこに異動して、長い間、感染研にいて、今、現在の川崎市の健康安全研究所におります。

 私が国立感染症研究所にいる間に、まさに、二〇〇三年のSARSであるとかエボラであるとか、あるいは二〇〇九年の新型インフルエンザ対策、実際にそのときは対応に当たって、まさに特措法の作成というようなところに当たっていたものですから、そのときのことを含めて、感染症対策についてちょっとお話をしたいと思います。

 お手元にカラー刷りをしていただいた資料がありますけれども、最初、めくっていただくと、当時の二〇〇九年の日本の新型インフルエンザ発生のとき、パンデミックというふうに言って社会は騒然としたわけですけれども、しかし、蓋を閉じてみれば、死亡率は世界でも最低の方でありました。それは、恐らくは多くの方が、一般の方を含めてよく注意をして、今、マスク、手洗い、うがい、ソーシャルディスタンスなんて言われますけれども、個人衛生のレベルがふだんから高い国である、そして、医療機関へのアクセスが容易で、医療費も安い、大変だったんですけれども、多くの方が結局真面目に取り組んだという結果だと思うんですが、下に赤字で書いてあるように、当時は通常の医療体制で何とかやることができた、しかし、それを超えたときにどうしようという話が、その当時の大きい反省点でもありました。

 めくっていただきますと、これはいろいろなところで資料になっていますけれども、当時の金澤一郎教授が新型インフルエンザに対する対策の総括会議というのを行いまして、私とか尾身さんなんかがその中のメンバーに入っていたんですけれども、提言ということを、ここに書いてあるようなことを出しました。

 病原性等に応じた柔軟な対応であるとか、迅速、合理的な意思決定システム、地方との関係、それから感染症危機管理に関わる体制の強化、先ほど大曲先生がおっしゃった人材の育成が必要であるというようなことも、このときから申し上げていました。そして、法整備ということが、これが特措法につながったわけでありますけれども。

 ここは、いろいろないい提言をやったつもりなんですけれども、しかし、残念ながら、全部が生きているわけではありません。それが今回の発生のときに、非常に痛恨の思いをしたんですけれども。ただ、我々も反省をするわけですけれども、これを見直す機会というのがなかった。提言をしたものについて、どういうふうに行われた、あるいは、行われなかったのであればどういう理由があったのか、やはりそういうことを見直す機会が是非必要ではないかというふうに思います。

 したがいまして、今回も、永井先生たちの有識者会議から提言ができて、今回の法改正その他に恐らくは結びついていったと思うんですけれども、それについてどこかでちゃんと検証する、一定の期間に検証するということをしていかないと、この次のパンデミックに備えることができないのではないか、そう思う次第です。

 もう一つめくっていただきますと、これもいろいろなところで資料が出ているので御存じだと思いますけれども、そのときの、法整備をするということで新型インフルエンザ等対策特別措置法というものができたわけですけれども、その下の方に、緊急事態が起きたときにいろいろなことができるというような規定ができたわけです。しかし、これは多くは要請であって、命令とかそういうことではなく、それから、いろいろな要請をしながらも、もし何かあったときの救済であるとか補償であるとか、あるいは守られなかったときのペナルティーであるとか、そういうことが一切なかったわけです。

 しかし、当時、そのときは、そういったような強権的なことをやることについていかがなものかという疑問があちこちから呈されて、いろいろな議論の結果、こういうことになったわけですけれども、今回、これが動き出すときも、しかし、それは一体どういう権限があるのか、何か起きたときに、それに対する補償、救済はいかがなものかというような議論があって、小さい改正を繰り返してきたというような経緯があります。

 次のページを開けていただきますけれども、これは今、私たちが使っている感染症法が一九九八年に施行されたときの、それの前書きであります。これは今でもその法文の前に書いてあるんですけれども、赤字で書いてあるように、新しい感染症に対する対応をやらなくちゃいけない。

 しかし、三つ目のポツにありますけれども、一方、過去にハンセン病あるいは後天性免疫不全症候群、HIV、エイズですね、こういうようなところで、これが発生したときに、いろいろな差別、偏見、誹謗中傷といったようなものが出ました。したがって、こういったようなものに対して、そういう事実をしっかり受け止めて、今後に、そういうことがないように。そのために、四つ目のポツにありますように、感染症の患者等の人権を尊重しつつ、これらの者に対する良質かつ適切な医療の提供を確保し、感染症に迅速に、適確に対応することが求められる。

 これはずっと私は生きていくべきことだと思いますけれども、往々にして、大変な状況だというようなところに社会がなったときに、うっかりするとここが無視されるということがあります。もちろん、迅速にやらなくちゃいけない、あるいは、適切な対応をするということと同時に、やはりこういったようなことのバランスがいつも取れるような、そういったようなことにこれからもしていただきたいなというふうに思っております。

 その次のページにありますのは、これが発生したときの経緯がるる書いてございます。一番右側の方には、緊急事態宣言発令というものが出たんですけれども、世の中が騒然とする間、しかし、一番左の方に赤い字で書いてありますのが、原因不明の肺炎として分かったけれども、二週間、三週間ぐらいで新しいウイルスが出てきた、これが公表されました。また、それのウイルスの遺伝子というものは、それまでは何か月もかからないと分からなかったのが、一週間で配列が公開された。私たちはそれを使ってPCRという検査がすぐにできるようになり、また、ワクチンの研究者たちは、これを見て、今使われているメッセンジャーRNAワクチンの開発に取り組み、一か月後には動物実験まで入ったというようなものがあります。

 我が国でもPCRの技術はもう普通に使えるものでありますけれども、しかし、たくさんの患者さんが出たときにこれをどこでやるのか、その費用はどうなるのかといったようなことの規定がなく、また準備もなかったというのがあります。

 ワクチンの研究も、私はワクチンを長い間やっているんですけれども、ワクチンの研究は十分できていましたけれども、それを実際の製品にできるかどうか、そういったようなことが乏しかったことが我が国がワクチンの開発に遅れたというところでありますけれども、やはり、こういうような基礎研究を常に行えて、何かのときにはそれが通常どおりに動かすことができるということが重要であります。

 その次のページのところに、緊急事態宣言の意味と書いてありますけれども、世の中はロックダウンというようなことがこのときに聞こえて、非常に生活が脅かされるのではないか、もちろんそれはそうであるので、できるだけこういうことはやらない方がいいわけでありますけれども、医療の中では、やはり重症な方に対する適切な医療ができて、その医療というのは尊厳ある医療でないといけないと思います。みとりも当然ありますけれども、尊厳あるみとりをやって、なおかつ通常の医療の維持ができている。

 そのためには、感染を広げない工夫が必要なんですけれども、これができていれば緊急事態宣言なんというのは要らないわけですけれども、これらができているかどうか、これが一番、私は、当時も緊急事態宣言をやるときのポイントであって、単に数あるいは状況だけで判断するのではなくて、本当に医療が逼迫するような状態では、これは多くの方に迷惑がかかるので、そういうときがきっかけではないかというようなことを考えておりました。

 次をめくっていただきますと、そこにはハンマー・アンド・ダンスという言葉があります。海外でよく使うんですけれども、都市封鎖、ロックダウンというようなことが、いわば大きいハンマーでがあんとたたくわけですけれども、ちょっとよくなるとダンスのステージになるというようなことの繰り返しが感染症では起きることがあるということですけれども、日本はこれを、都市封鎖のような形は取れませんので、また取りませんので、緊急事態宣言といいながらも、海外に比べると緩いと言われました。しかし、その結果としては、何とか抑えることができているところもあるわけですけれども、感染症の広がりはそれを上回ったわけであります。

 次のページには、ノンファーマスーティカル・インターべンションという言葉が書いてありますけれども、三密を避ける、マスク、手指衛生、ソーシャルディスタンス、これは非常に古典的なやり方でありますけれども、一定の感染症を抑える効果はあります。つまり、医薬品によらない介入でありますけれども、しかし、医薬品はやはり必要でありまして、それが出てくることによって、医薬品による介入。しかし、これはやはりいつでも両方要るものであって、今の少し落ち着いた状態であっても、感染症を基本的に避けるという方法は、これは忘れてはいけないことになります。

 加えて、次のページになりますけれども、いわゆるファーマスーティカル・インターべンション、医薬品が出てきた、つまりワクチンが出てきたというのは、大変大きいツールでありました、大きい武器でありました。そのために、次第に緊急事態宣言というのは、あるいは蔓延防止も、やるかやらないかというような議論がありましたけれども、そうなってくると、感染症対策というだけではなくて、私権制限をどの程度にするのか、あるいは教育機会が奪われてしまう可能性がある、社会経済をどういうふうに動かすか、こういうようなところのバランスが重要になりました。

 どうなるとウィズコロナかというのは、二〇二一年の三月に、私がここに書いたところなんですけれども、次のページにありまして、ここにるる書いてありますけれども、真ん中の辺りに、やはり、できるだけ広げない工夫、人々の注意、それから、重症者に対する適切な医療、軽症者は外来治療ができる、そして通常の医療の維持ができれば、これがウィズコロナではないかと思うわけです。今、このフェーズには入りつつあるときであるというふうに思うわけですけれども、しかし、それは注意をしなくてもいいということではなくて、やはり注意をしながら普通の生活をするということではないかと思います。

 次のページを開けていただきますと、パンデミックの対応戦略ということが書いてあります。Aとしては、封じ込める、例えば中国のようなやり方。それから、Cの方は、被害抑制と書いてありますけれども、感染者数よりも重症者に目を向けるんだということが、例えばスウェーデンのやり方。日本はちょうどその中間のところでありますけれども、感染者数をできるだけ抑制して、死亡者数を一定数以下にとどめる。でも、この右側の矢印が上下にありますように、常にそれは医療負荷と、それから社会経済活動との取引といいますか、両方のトレードオフをやるということになります。

 しかし、こういうポリシー、基本的な考え方というのは非常に大切で、それによっていろいろな戦略が出てくると思うんですが、私が思うには、残念ながら、そのポリシーの決定と表明、実行を行うような、司令塔と言われるようなところがどうも明瞭ではなかったような気がします。やはりそういうところを、常日頃からこういうところの訓練をやるところが必要ではないかと思う次第です。

 次をめくっていただきますと、感染症対策の基本的なことは、これはいつでも同じですけれども、右側の下にあるような、早く見つける、サーベイランス体制といいますけれども、これをしっかりやっておくということ。そして、それを見た場合に、リスク分析を行うということ。それに対する適切な対応をして、その結果として日常の予防策につなげるわけですけれども、ここにはリスクコミュニケーションという言葉が出てまいります。ただし、私はリスクのところに括弧をつけたんですけれども、コミュニケーションというのは、片っ方から説明するだけではなくて、両方の話をしながら進めていくということであり、これが日常から行っていかなくちゃいけないことであるということになります。

 次のページですけれども、したがいまして、医薬品によらない介入、医薬品による介入、加えて社会経済への介入が必要になってくるわけです。つまり、病気ではありますけれども、医療的な処方箋だけではなくて、社会の病としての社会への処方箋が必要になってくる。これが、医療、個々の医療、それから公衆衛生、行政、そして社会にとって必要な法律の整備であろうというふうに考える次第です。

 一番最後ですけれども、これはいろいろな経緯のことではないんですけれども、私の感染症の大先輩である相楽先生という方が亡くなられたんですけれども、十年ぐらい前にこんな話をしていました。みんな忘れているけれども、感染症は本当は怖いものだ、でも、その怖さというのは知っていれば抑えることができるということもみんな忘れているというようなことを私に教えていただきました。

 私は、この言葉をもって、これから先の感染症対策も続けていきたいと思います。

 以上です。ありがとうございました。(拍手)

大西委員長 ありがとうございました。

 次に、草場参考人にお願いいたします。

草場参考人 一般社団法人日本プライマリ・ケア連合学会理事長の草場と申します。

 私は、プライマリーケア、つまり一次医療、分かりやすい言葉で言いますと、かかりつけ医機能という言葉もございますけれども、そういった立場で働いている医療者として発言をさせていただきたいと思います。どうかよろしくお願いいたします。

 資料の方を使いながらお話をさせていただきます。

 一枚めくっていただいて、今回の特措法の改正に関する基本的な見解でございます。

 私は、昨年の五月、六月に開催された新型コロナウイルス感染症対応に関する有識者会議に一委員として参加をさせていただきました。主に、診療所等で発熱外来や有症状者に対する訪問診療を提供してきたプライマリーケア医療者の立場から意見を述べさせていただきました。

 今回の改正は、この提言に基づいて政府の新型コロナウイルス感染症対策本部が発出した、方向性の方針に沿った法律改正というふうに理解をしております。

 令和四年、昨年の十二月にこの指針にのっとって感染症法等の改正がなされたというふうに理解しておりますけれども、そちらの改正でかなりいろいろなものが反映されておりますが、それと表裏一体の内容であるというふうに理解をしております。

 今回、昨年の議論を直接させていただいた立場から、今回の改正案に対して評価できる箇所と、より今後更なる検討が必要な箇所について、意見をさせていただきたい。それと併せて、これはこの法案だけではないんですけれども、政府全体で取り組んでいただきたいプライマリーケアの課題について最後に意見をさせていただいて、十分間のお話をさせていただきたいと思ってございます。よろしくお願いいたします。

 まず、今回の法案の中の政府対策本部長からの指示権ということに関してでございますけれども、これは有識者会議の中でもパンデミック発生時の初動に非常に手間取ったということで、この経緯を踏まえて、設置時から指定行政機関や都道府県知事に対して早期に指示を出すことが可能になったという点については、大変評価できるかなと私個人も考えてございます。

 とはいえ、これは事前の十分な準備が、体制整備がないと、幾ら早期に指示が出せるといっても、笛吹けど踊らずといった状況になる可能性が高いということをちょっと危惧しているところでございます。

 具体的には、政府、自治体の一体感のある初動ということが非常に重要だと思います。私が今診療しております北海道でも、当初、知事の方から先に緊急事態宣言というものが出まして、その後、国が追認するみたいな形で動いたということで、非常に道民としては混乱した部分がございましたけれども、そのためには、一体感のある初動というものを実現するために、平時から両者の協力体制というものを是非構築していただいて、危機を想定したようなシミュレーション演習みたいなものを是非定期的に実施していただきたいなというふうに考えております。

 また、医療界だけではなく、産業界とかあるいは学術研究機関、感染症の専門的な機関が今後できますけれども、そういったところとも平時からしっかり連携を取っていただいて、次の予兆がある場合にはいち早く戦略を立案し実行できる体制というものも必要ではないかというふうに考えております。特に、地震等で、地震災害への対応というものは非常に練られているものがございますけれども、感染症についても是非そういった対応というものを事前に構築していただきたいなと感じております。

 次のページでございます。

 感染を防止するための協力要請という点に関して、事業者に対する命令とか措置ということに関する議論があったと思います。実効性を高めるために今回一定の基準を策定するということ自体は非常にいいことかなと。今まで都道府県によってかなり発動条件にばらつきが正直あったかなと思っていましたので、これは有効かなというふうに感じて拝見いたしました。

 ただ、これについては有識者会議でもいろいろな議論がございまして、協力要請を行うに当たって、エビデンスに基づいた、病原体の特性に応じた科学的あるいは合理的な対策というものをしっかり議論していただきたい。また、意思決定のプロセスについて、一層の明確化、体系化を図るということ。そして、私、大事だなと思いますのは、根拠のない過剰な不安、こういったものについて、意思決定が余り影響されないように、科学的な議論ということを是非やっていただきたいというふうに感じています。

 また、要請の名の下に私権制限というものが行われたという不安がやはりございましたので、是非、人々の多様な利益、意識に配慮していただくように、専門家の意見ももちろん大事なんですけれども、それに加えて、実際その制限を受ける当事者の声を幅広く聞いていただくようなことを是非意識いただきたいと思っています。特に、なかなかメディアとかでも声が出てこない若者とかいわゆる子育て世代、こういった方とのコミュニケーションというものは非常に重要だなというふうに感じているわけでございます。

 次のページをお願いいたします。

 今回構築される内閣感染症危機管理統括庁についてでございますけれども、今回のパンデミックでは、私自身も、現場で働く中で、いろいろな会議体から指令とか指示みたいなものが発出されて、なかなかそれに混乱するような状況がございました。ですので、この見えにくい問題に関して、各種政策の統一性を担保する仕組みが構築されたということ自体は非常に評価していいかなと私自身は思ってございます。

 ただ、具体的な業務の詳細というものは余り明示されていないところがございますけれども、私、現場の立場からは、こういった点を是非配慮いただきたいなというふうに考えてございます。

 まず、行政からの通知、事務連絡というのが、今回かなり五月雨式に、ほぼ毎週二回とか、月に三、四回、どんどんどんどん通知が来ました。現場ではなかなかそれに対応ができない。ですから、これが指示なのか、単なる情報提供なのか、あるいは技術的なアドバイスみたいなものなのか、こういった性質が通知に余り明確でないので、これを是非明確にしていただきたいというふうに考えています。

 実際、指示が行われたということで、どちらかというといわゆる省庁の方はもう指示を出しましたということで終わりになるんですけれども、ただ、現場で実際にそれが行われているかどうかというモニタリングは、実は余りなされていない。ですから、実際どうなんでしょうかとお聞きすると、分かりませんという話がよく聞かれました。ですので、こういったモニタリングを併せて実施するということを是非お願いしたいなというふうに思っています。

 また、次のページでございますけれども、これはメディアのお話でございます。

 新興感染症に対する正確な理解というものがなかなか難しかった。ですので、政府、自治体、医療界からの発信というものはもちろん不断にやっているわけでございますけれども、是非、メディアから正確な発信を行っていただきたい。特に、若者のメディアについては、SNSなどいろいろな発信方法というものを工夫していただいて、リスクコミュニケーションというものを平時から準備していただきたいというふうに思っています。

 最後に、都道府県の役割でございますけれども、昨年の感染症の改正で、緊急時の入院勧告措置については知事の指示権限を創設するという方向が示されるなど、自主性を高める動きというものが出てきたことは私は評価をさせていただきます。

 ただ、統括庁が今回できるということで、統括庁と都道府県の関係、その際に、都道府県によって状況が相当違うということが、今回、三年間の中でもよく分かったと思います。ですので、自治体ごとの創意工夫というものを発揮いただけるように、戦略の策定、財政支援、医療資源の確保等、こういったものについて、是非、自治体の自由度というものをある程度しっかり拡大していただきたい。そして、地域の実情に応じた対応というものを認められる状況をつくっていただきたいなというふうに考えてございます。

 次のページをお願いいたします。

 そうした統括庁の管理体制については、今回、危機管理監、また危機管理監補、そして医務技監が担う危機管理官という形で、内閣から出る情報と厚労省の情報というものが結構一元化されていなくて、非常に現場は混乱していたんですけれども、それが統一された形で出るということは、非常に次のパンデミックではメリットがあるなというふうに感じています。

 ただ、パンデミックでは、厚労省行政だけではなくて非常に幅広く、休業などの経済的な影響、また、児童など学校教育への影響など、非常に多方面に影響があります。ですので、厚労行政だけではなく幅広い対応というものを、是非統括庁の中でも考えていただきたい。具体的には、平時から様々な省庁のメンバーというものをしっかり配置をいただくことが必要だと思います。そして、密接に連携を取っていただきたい。

 そして、最後に、行政官、医療専門職だけじゃなくて、マスコミュニケーション、そして行動科学、実際に国民がメディアから発信されたときにどういう反応をするか、そういったことに対する専門家というものが今回はなかったという点が、非常に議論の中で難しかったことだと思います。

 ですので、有識者の皆さんからの発言があったり、政府からの発言があったり、これは食い違っているじゃないか、いろいろな議論があったと思うんですけれども、やはり、プロフェッショナルの力を是非生かしていただいて、幅広い専門家を統括庁の中に事前に採用いただくということを検討いただけないかなというふうに、私、考えてございます。

 次のページをお願いいたします。

 これは今回の法案だけではないんですけれども、私の立場、プライマリーケアの立場からの意見でございます。

 今回の危機管理の中で、危機時だけの議論というのがあるんですけれども、やはり、平時からこういった準備を備えながら、危機時にさっと動く、そのための連続性というものは非常に私は重要だと思っています。

 特に、プライマリーケア、診療所とか小病院の立場ですと、突然、危機時にいろいろなことを、重いことをやれと言われても、非常に困るわけですね。ですから、平時からの対応が重要だということをお話しさせていただきます。

 実際、今回、発熱や上気道症状を持ってコロナ感染の可能性がある患者さんに対して診療を提供できた医療機関というものは、外来の検査、診察は四〇%から五〇%程度ということで、半分弱でございます。これは、私が勤務する札幌、北海道の室蘭という町でも、大体これとほぼ変わらない数字。また、往診、訪問診療は実際一〇%から二〇%、非常に少ない医療機関が対応をしたということでございます。これは第六波までのデータでございます。

 ですので、ワクチン接種も含めて、かかりつけ医と思って受診を相談しても、いや、あなたはかかりつけ患者じゃないよという形で断られるような事態というものは、これはあらゆる地域で本当に日常的に今回は起きたということでございます。ですから、かかりつけ医というのは何だろうか、ふだんからかかっているつもりだったけれども診てもらえない、非常に国民にとってはショッキングな出来事が今回は起きたと理解をしています。結果的に、診てくれるところに患者さんが殺到するという形になりました。

 これは、ただ、医師、医療機関のエゴの問題ではない、あくまでもこれは医療の構造的な問題だというふうに私は考えております。

 結果的に、先ほどお話ししたように、一部の医療機関に感染症外来、往診、地域包括ケアの負担みたいなものが集中して、多くの医療機関が疲弊し、対応に限界ができたということが現状であります。

 私の医療法人の中でも、多くの看護師が、これ以上やるのであればもう退職したい、先生、いいかげんにしてほしい、どこまでこの患者さんを診るんですかという声が切実に聞かれました。いろいろな形で慰留をして何とか踏みとどまってもらったんですが、辞めた方も結構いらっしゃったということでございます。

 ですから、こういった状況が今度のパンデミックで起きてほしくないということを切に感じるわけでございます。

 ですので、先ほど冒頭にお話ししたように、危機時に要請という形でお話をしても、対応できる基盤がない医療機関というのは動けません。ですので、平時と危機時を分離した議論というものはよく行われるんですけれども、やはりこれは、私、現場の中では机上の空論だなというふうに感じるわけでございます。

 ですので、今回、この法案とはちょっと違いますけれども、次のページでございますが、政府が提案するかかりつけ医機能が発揮される制度整備というものが、全世代型社会保障会議の中で今後展開されるというふうに理解してございますけれども、ただ、この中に多くの問題がございます。

 今回のこのかかりつけ医に関しては、継続的な医療が必要な方だけ、限定になっています。ですので、継続的な医療は必要ないけれども、何かあれば風邪などで受診する、あるいは健康相談とか予防医療、こういった対応で受診したいという国民はかかりつけ医を持てないという形に今回はなっています。

 ですから、比較的若年の多くの国民にとっては、パンデミック時に受診、ワクチン接種ということに関しては、今回のこの法案では機能が動かない、十分安心できない形になっていますので、これはやはり改善をいただきたいというふうに強く思っています。

 また、今回の法案の中は、かかりつけ医機能というもの、まだ細かいことは決まっていないと思うんですけれども、書かれているものは、慢性疾患、日常的な疾患に対する診療機能、時間外の対応機能、在宅医療、こういったものが含まれてございますけれども、今回、パンデミック時の診療対応というものをやるかどうかということは全く入っていません。ですので、ここは非常にやはり不安な状況。

 また、これが含まれたとしても、かかりつけ医機能というものは全て満たす必要はありません、このうち一部でもいいんです、地域で面として対応しますという議論になっているんですけれども、ただ、面としてというのは、実際、患者さんの立場からいうと、定期的に毎月行っている方がパンデミックに対応しないとなると、では、どうしたらいいんだという大きな問題が起きてくるわけでございます。

 ですから、かかりつけ医がパンデミック時に外来受診可能なのか、ワクチン接種できるのか、あるいは往診ができるのか。こういったものができない場合、どういう形で診るか。受診難民ということで、今後また問題が起きてくる可能性が高いというふうに感じています。

 最後に書いてございますけれども、パンデミック時に診療対応する医療機関、今回、都道府県と協定締結をするという形で決まってございますけれども、この医療機関と今回議論されるかかりつけ医機能を発揮する医療機関というものが、今回は完全に分離された状態で議論されています。

 私は、これはやはり統合して、両方が一致する形じゃないと、安心してパンデミック時に受診ができない、そして、締結医療機関だけに重い負担がかかる。私自身がつらい経験をしたようなことが、多分また次回起きるわけでございます。ですので、継続性を持った安定した医療提供体制というものを実現するために、両者を合致させるような政策を、是非、先生方にはまた検討いただきたいということを、プライマリーケアの立場から考えているわけでございます。

 以上、ちょっと長くなりましたけれども、私からの意見でございます。

 ありがとうございました。(拍手)

大西委員長 ありがとうございました。

 次に、太田参考人にお願いいたします。

太田参考人 日本医療法人協会の太田でございます。

 この度は、このような貴重な機会をいただき、感謝申し上げます。

 私からは、今回のコロナ禍における医療現場の状況をお話しさせていただくとともに、今後の五類への感染症法上の類型見直しに際して注意が必要な点に関して、意見させていただければと思います。

 二ページです。私の管理する名古屋記念病院です。名古屋市南東部にある四百床規模の急性期病院で、地域の二次救急を支える病院です。当院は、コロナパンデミックの初期、二〇二〇年の二月から帰国者・接触者外来を開始、三月初めからは入院患者の受入れを行い、現在までに千人を超えるコロナ患者に入院医療を提供してきました。

 三ページです。既に、新型コロナウイルス感染症は、ワクチンや治療薬の普及により、多くの国民が恐怖を感じる感染症ではなくなってきています。しかし、新型インフル特措法が適用される新興感染症の感染初期は、現在とは全く状況が異なると思われます。新型コロナも、当初は致死率も高い非常に怖いウイルスでした。

 四ページです。私は、二〇二〇年のゴールデンウィーク、第一波、最初の緊急事態宣言下で設営された宿泊療養施設に一週間泊まり込み、患者のPCR検体を取っておりました。県から医師の派遣を要請され、自院の医師に頼むことも難しく、自分が出務したのですが、本当に怖かったことを覚えています。自分が死んだら家族はどうなってしまうのか、病院はどうなってしまうのか、まさに戦場に赴く兵士の心境だったと思います。治療法も確立していない、ワクチンもない時期の新興感染症の初期対応は、医療従事者にとって精神的に非常に大きな負担であることは御理解いただきたいと思います。

 当初、コロナ病床がなかなか増えないと言われました。しかし、全ての医療スタッフが対応できるわけではありません。皆、家族がいます。子供もいれば、年老いた両親もいるのです。業務命令で働かせようとしても、嫌な人は病院を辞めてしまいます。説得を繰り返し、仲間を集め、徐々に病床を拡大していったのが現場の実情です。

 今回の感染症法の改正で、事前に都道府県と医療機関が協定を締結することが求められることになりました。これは効果的ではあると思います。当院がコロナ初期からコロナ診療に参画した主な理由は、新型インフルエンザ感染症に対する協力医療機関として指定されていたからです。もちろん、地域医療において自院に求められる役割を果たすという医療者としての矜持もありますが、事前の役割の設定は、病院スタッフを導いていく上で重要だと思います。

 五ページです。しかし、二〇二一年に入ると、民間病院のコロナ診療への参画が少ないとマスコミで批判されることがありました。いまだに誤解している人もおられます。しかし、全国で、コロナ初期からコロナ診療に参画できる機能のある民間病院は、当院と同じくコロナ診療に参画しておりました。

 六ページです。これが誤解の元となった資料です。左上ですが、民間病院のコロナ患者の受入れが、公立病院七一%、公的病院八三%と比較して、二一%であるとされています。これがマスコミで取り上げられ、大きな誤解を呼びました。しかし、この資料は、二〇二〇年の十月に厚労省が発表したもので、第二波までの状況です。民間病院は小規模な病院も多く、適切な感染防御着も行政から支給されておりません。病院支援策が現場に行き届き始めたのは、二〇二〇年の冬、第三波からになります。

 右下に、公立、公的、民間の病院数の割合、ICUを持つ病院数の割合が書かれています。オレンジが民間病院です。百万人以上の都市部において、ICUを備えるレベルの民間病院は四二%ですが、右上、コロナを受け入れていた病院は五二%です。病院の機能として、コロナ対応すべきと考えられる民間病院は、公立、公的病院と同様に、コロナ対応初期からコロナ診療に積極的に参画していたことが分かります。

 七ページです。大阪におけるコロナ入院患者受入れの実数の推移です。ピンクが民間病院、緑が自治体立病院ですが、ちょうど第三波の頃、民間病院も含め病院支援策が届くようになった後は、民間病院が主体になってコロナ診療を行ってきたことが分かります。今後の新興感染症対応においても、民間病院が診療に参画できる支援策の策定は重要だと思います。

 八ページです。今日私がお話ししたい一番のポイントです。今後の新興感染症対応時においても、感染症医療と一般医療との両立は重要であるということです。

 コロナ対応では、一般医療との両立の重要性が、当初、軽視されたと感じています。コロナ病床確保が政策的に最優先され、一般医療、救急医療に大きな影響が出ました。医療現場に余力がない中で、多くの都道府県で、一般医療とのバランスを考慮せず、知事から半ば強引に、コロナに病床、マンパワーを割くことを求められました。その結果、現在も救急搬送困難事例数は高止まりしております。

 今後の都道府県と病院間での協定締結においては、一般医療、特に救急医療との両立に配慮が必要です。確保病床数ありきでの短期間での都道府県の計画策定は、救急医療を含む一般医療に大きな影響が出る可能性があります。

 九ページです。その重要性を裏づける資料です。これは、千葉県の、デルタ株が流行した二〇二一年夏、第五波までの救急搬送のデータです。

 当時、救急搬送の逼迫が首都圏で大きな問題となりました。ピーク時、救急搬送台数千三百台のうち、コロナ陽性者の搬送は百九十人。コロナ関連の救急搬送は、全体の一五%にすぎません。日本には、ほかの疾患で医療を必要とする多くの患者がいることは、今後の新興感染症対応を考える上で忘れてはならないと思います。

 しかし、感染症対応を行う医療機関の現場は、非常に厳しい状況にあります。十ページ、今年の一月の新聞記事です。会計検査院の調査で、病床確保料により病院が大幅に黒字になったと伝えられた記事です。確かに、調査のとおり、多くのコロナ対応をした病院が黒字になったことは事実です。しかし、真に問題なのは、コロナへ対応した二百六十九病院が、コロナ前、二〇一九年度は平均四億円の赤字だったという事実です。大学病院、自治体立病院、民間病院を含め、公立病院は補助金を入れての数字です。

 日本の急性期医療は、長年の診療報酬の抑制で、産業として成立しないレベルまで経営環境が悪化していたということは、御理解いただきたいと思います。日本の病院現場は、余力のない状況で、新型コロナという新興感染症と向かい合うこととなりました。新興感染症への対応には平時の医療機関に余力が必要であるということが余り議論されておりません。

 十一ページです。五月の八日からの感染症法上の位置づけの見直しに関して、最後に意見させていただきます。

 これは、一月二十七日、政府対策本部が類型見直しを決定した日に行われた厚生科学審議会感染症部会の概要です。感染症法上の位置づけの変更に関してマスコミは、感染症専門家が、国民の生命及び健康に重大な影響を与えるおそれがある状態ではなくなったため、位置づけ変更を了承したと伝えました。しかし、そうではありません。その前に書かれている、感染症法に基づく私権制限に見合った状況ではないと判断されたことで専門家が類型変更を了承したということは、申し上げておきたいと思います。

 十二ページです。この決定は、決して国民の生命及び健康に重大な影響を与えるおそれがないと判断されたからではありません。感染症法の議論は、昔から、公衆衛生上の利益と私権の制限のバランスが議論されてきました。その観点から、感染症法上の類型の見直しが了承されたわけです。

 しかし、国民の生命及び健康に重大な影響を与えるおそれは、感染が拡大し、医療が対応し切れず、医療が逼迫すれば起こり得ると、我々医療者は考えております。今後、医療が逼迫しない形での体制の移行が重要となります。

 三月十日に政府の移行案が発表されました。今後、都道府県で、新たな病床確保料や診療報酬を基に移行計画が策定されることになります。

 今後も、コロナで入院医療が必要な患者がスムーズに入院できる体制を構築する必要があります。しかし、それは容易ではありません。

 オミクロン株の感染力は非常に強く、どれだけ努力をしても院内感染、クラスター発生を完全に防ぐことは難しく、これまで多くの医療機関が大変な思いをしてきました。決して感染対策を怠った病院だけでクラスターが発生したわけではありません。どれだけ努力をしても、無症状の患者が感染を広める本ウイルスの院内感染は防ぎ切れないのが現実です。

 病院には、コロナウイルスに脆弱な高齢者や基礎疾患を抱える人が多く入院しています。我々は極力、そのような方々を守らなければなりません。そのためには、クラスター発生時、院内の感染拡大を抑えるために、一時的に病棟への新規入院を止める措置も必要となります。病床稼働は下がり、経営的にも大きなダメージを被ることとなります。

 現在、院内クラスター発生時の医療機関を支援するスキームがありますが、これが維持されないと、今回発表のあった移行策だけでは、感染者の入院を受け入れる病院が今後増えない可能性もあり、危惧しております。是非、この点は今後御配慮いただければと思います。

 以上です。御清聴ありがとうございました。(拍手)

大西委員長 ありがとうございました。

 以上で各参考人からの御意見の開陳は終わりました。

    ―――――――――――――

大西委員長 これより参考人に対する質疑に入ります。

 質疑の申出がありますので、順次これを許します。神田憲次君。

神田(憲)委員 おはようございます。自由民主党の神田憲次でございます。

 今日は、四名の参考人の先生方にお越しいただきました。本日は誠にありがとうございます。

 早速、質疑の方に入らせていただきます。

 先ほど、大曲参考人の方からも、令和二年のときの状況というお話がありました。そもそもは、令和元年の十二月に、中国武漢市での肺炎の症状のような感染症とおぼしきものがWHOに報告されるというところからスタートされるわけです。

 三月の九日の日だったんですが、ちょうど地元紙に、懐かしいダイヤモンド・プリンセスという名前が登場しました。それは、三重県の鳥羽港にダイヤモンド・プリンセス号が入港して、三年ぶりの再開であるということが記事として出ておったわけです。

 我が国にとっては、このダイヤモンド・プリンセスが、二月の一日でしたか、横浜港に寄港して、そこに乗組員が千名余りと、それから乗船されている観光客二千六百名余り、合計三千六百名余りで、五十七か国の人がということだったと思います。この中に確定症例が七百十二例ありましたし、それから実際に十四例の死亡というようなことがもう既にこのダイヤモンド・プリンセス号の中で起きていたというのが、我が国に大いなる困難を持ち込むということになった。これが最初のCOVID―19だったということかと思います。

 まず、大曲参考人にお伺いしたい点は、この一番最初の段階の救命救急、医療の現場で最前線でこの困難に立ち向かわれたときの状況及び患者さんを診断したときの率直な御意見をお聞かせ願えたらと存じます。

大曲参考人 ありがとうございます。

 幾つかございます。

 まずは、病院の中で見えた風景というところでありますけれども、実は一月に我々はもう既に数名、コロナの患者さんを拝見していました。基本的には、軽症と言うと本人には申し訳ありませんが、人工呼吸が必要になるような方はいらっしゃらなかったんですね。ですので、どうも中国の様子と違うと思ってはおったんですが、実際にダイヤモンド・プリンセスから降りてこられた方々は全く様相が違っていまして、やはりクルーズ船のお客さんということが背景にあるんだと思うんですが、比較的高齢の方も多い、何よりも重症な方が非常に多いというところですね。

 当時は、治療法がありませんでした。もう一つは、その際にどうやったら助けられるかというノウハウはゼロだったわけです。ですので、その当時得られた、我々は中東呼吸器症候群の知見を参考にしましたが、それを基に治療を組み立てて、あとは、準備はしておって本当によかったと思いますが、ECMOを始めとしたいわゆる集中治療ですね、でき得ることを、重症の肺の感染者の場合何をやるかということに関してやっていたというところです。やはり厳しいのは、病気が初めての病気ですので、それらが正しいかどうかが分からない、あとは、実際によくなる見込みがあるかどうかが分からないということでした。

 もう一つは、やはり、我々自身が感染したらどうしようかという怖さも当然あったのは間違いありません。精神的にはへとへとになったというところがあります。

 何よりも、特に、重症例はよくならないんですね、三週間たっても、四週間たっても。という中で診ていくのは非常に厳しかったということと、やはりそこで専門家を集めてしっかり診ていくのはなかなか大変でして、非常に大変だったことを覚えています。

 もう一つは、一方で、横浜港でダイヤモンド・プリンセスの対応に多くの方が当たっていらっしゃって、そこでも人が不足していたわけですね。行政対応される方と、あとは、感染症の専門的な対応ができる人間です。そこも我々の方側からスタッフを送る必要がありまして、二面方向で対応するということに、特に人材の確保に非常に苦慮したことを覚えております。

 以上です。

神田(憲)委員 ありがとうございます。

 日本にとっての未体験の感染症、今、非常に苦労があったというお話ですが、この感染症がその後、その症例を見た結果、日本の公衆衛生上、それから社会にどんな影響を及ぼすというような見通しがお立ちになりましたか。

大曲参考人 特に、最初の頃の経験に関して言いますと、最初の三か月、四か月に本当に厳しい状況で診療したわけなのですが、そこで、おおむねの病気としての全体像が見えるようになったということがあります。あとは、治験が、これは国際共同治験でしたけれども、何とかうまくいって、五月には最初の治療薬を何とか世の中に送り出せました。それによって、少なくとも治療という観点では最低限の準備は何とかできたというのが、二〇二〇年の五月頃の我々の心持ちです。

 非常に難しかったのは、一方で、この病気がどんどん全国に広がっていきますと、また問題が出てきまして、一つは、最初は軽症なのに、急変するとかですね。ですので、その見守りの体制をどうするのかということですとか、あるいは、患者さんの数が多くなる中で、どうやって保健所と医療機関で、要は患者さんを、自宅の方をどう診るのか、入院されている方をどう診るのかということが喫緊の問題となったわけなんですが、そこがインフルエンザのこれまでの流行とは全く様相が違っておりましたので、そこにどう対応していくかということが問題になりました。ですので、最初の三か月、四か月の経験だけでは、そこまでやはり見通せていなかったと思っています。

神田(憲)委員 専門家の先生でも見通すことができなかった。結果として今現在、三年強の時間が経過して、八回の波があったということが現実としてあるわけです。

 COVID―19が、日本の対応において、国際報道の中には、日本での死亡者数の発表ということにおいては大変少なく発表されているんじゃないかというような報道もあったわけですが、先ほど岡部先生の方からも、この点、G7の中でも最低だというお話があったかと思います。

 我々はこのCOVID―19の前にMERS、SARSというのを経験しておりますが、国内症例としては一件もなかったということがオフィシャルな発表としてあるわけです。返す返すも、この時点で、きちんとした組織の確立であるとか、それから人的な配置を含めたマンパワーの充実であるとかというようなことが準備できているならば、今回のCOVID―19への対応は大きく変わったなどというような論評もあるわけです。

 そこで、岡部先生の方に、先生のレジュメの中に、危機管理としての対応ができないという認識を各方面が持つべきだという御意見、これについてもう少しかみ砕いてお話をいただければと存じます。

岡部参考人 御質問ありがとうございました。

 G7の中で一番低い死亡率であったというのは、新型インフルエンザ、二〇〇九年の出来事でありますけれども、今御質問の中にもあったように、今回のCOVID―19でも、致死率ということからいえば、我が国は相当低い方になっております。これだけ高齢化社会が進んでいる中で、ハイリスクの多いポピュレーションの中でも致死率が低かったということは、これは誇ってもいいところではあると思いますけれども、委員の御質問にありました危機管理という面では、二〇〇九年のときに、通常の医療を超えたときにどうするんだという議論がほとんど行われていなかった。その反省点として、危機管理対応ということは大きい話題になりました。

 しばしば、私たち、医療あるいは公衆衛生の中でも、危機管理対応をどうするんだというのは、この十年間、大きいテーマではありましたけれども、それに対する実際の人材の育て方、私、感染研にいて、二〇〇九年、あるいは二〇〇三年のSARSを経験していたんですけれども、感染研にいる間、私が一番苦労したのは、人材といいますか、職員数の削減と予算の削減にどういうふうに闘うか、これが私のいた後半の感染研のことで、ということは、余り起こりそうにもないことだから、そこに対する注意はそこそこやらなくちゃいけないけれども前面に出てこなかったというのは、大きい大きい残念なところでありました。

 恐らく今回も、今は非常に熟して、いろいろなところで、対策を考えろ、あるいはそれが必要だという声がありますけれども、先ほども申し上げましたように、例えば五年たって何もなかったときに、本当にここから先が必要なのか、必要がないと思ってやっているのか、そういうような見直しあるいは反省、そういったようなことをきちっとやることが危機管理対策であるというふうに思います。

 ちょっと長くなりましたけれども、危機管理対応というのは危機があったときにやったのでは間に合わないので、是非、平常時からそういうことができるような仕組みをつくっていただければと思います。

 以上です。

神田(憲)委員 ありがとうございます。

 我が国の危機管理対応、先ほど大曲先生おっしゃったように、自然災害等であれば、はっきりと目に見える形というのがそこに存するわけですから、過去においても現在も、その対応というのは事前にということがある程度備わっていると言っても過言ではないと思います。

 結果として、備わっていなかったから、医療の逼迫という事態を招いてしまった。患者が全国に散見されても、救急車で運ばれても診てもらうことができないというような事態に至ったわけです。

 そこで、先生の御意見の中にあちこち散見されるんですが、組織を今後つくっていく、さらには、仕組みづくりの上で、どういう観点に注視しながらこれから先、備えなければならないというふうにお考えでしょうか。大曲参考人。

大曲参考人 ありがとうございます。

 もちろん、今回の法案でもうたわれているように、指揮命令系統をはっきりさせて、その指揮命令系統の中にある機関全体が緊密に連携をするということは大前提だと思うのですが、もう一つあるのは、どのような危機を我々は想定し得るのかということに関して、やはりリスク評価をしておく必要があると思います。仮想の想定をやはり幾つも立てておくということだと思います。その上で、準備に落とし込んでいくということは必要だと思います。

 あとは、特措法があるということは、新型コロナの対応で、実は非常によかったと私は思っています。特措法はどちらかというと新型インフルエンザの対応を想定として作られたものでありますが、コロナという事例で落とし込んでいったときに、やはりなかなか我々が対応できなかった面というのがはっきりしてきました。そこのところをはっきりさせて、先ほど岡部先生も評価ということをおっしゃっていたんですが、はっきりさせた上で、次の対策にどう備えるのかということに落とし込んでいく必要があると思います。そこは、草場先生のおっしゃったプライマリーケアの現場、太田先生のおっしゃった普通の医療の現場の、一般医療の共存も含めてというところまで落とし込んで準備が必要だと思っております。

神田(憲)委員 ありがとうございます。

 準備の必要性ですが、一方で、先ほど岡部先生、公立の病院にお勤めの時代、人員の削減と予算の削減を強いられたと。日本人の命を守るという最前線にいらっしゃる先生方が、それだけやはり今回のCOVID―19、コロナというものを経験なさって、今後において、これから先起こり得るであろうという予見を持って感染症に当たらなきゃいけない、その上で今回の改正があるわけですから、これから先、特に岡部先生が望むことがあれば、最後にお聞かせください。

岡部参考人 ありがとうございます。

 ある未知の感染症が出た場合の対応というのは、これはもう誰も分からないわけであります。未知の中でいろいろな苦労をされたというのは、今、お三方の参考人がそれぞれおっしゃっていますけれども、しかし、感染症というくくりでいった場合には、基本的にやることは共通のことがいっぱいあります。そこを大事にして育てて、育てていくというのは、対応することに対する仕組みであり、あるいは人材であり、それから実行する人たちを育てていくということが大切なわけでありまして、未知のもの全てに各論的に備えるのは無理であります。

 しかし、繰り返しますけれども、基本的な大切なことをふだんからそこに、いわば耕していくような状態、これが求められることではないかと思います。

 以上です。

神田(憲)委員 ありがとうございました。終わります。

大西委員長 次に、太栄志君。

太委員 おはようございます。神奈川十三区の太栄志でございます。

 先生方に質問させていただきます。

 まず、今後の我が国の感染症対策、そして危機管理体制の強化へ向けて、大変貴重な御助言をいただきましたこと、心から感謝申し上げます。

 まず、草場先生にお伺いさせていただきたいと思います。

 昨年の有識者会議、メンバーだった草場先生にお伺いしたいのが、昨年六月の会議の報告書では、政府のコロナ対策について、「今後とも社会経済財政への影響、財源のあり方、施策の効果などについて多面的に検証が行われ、的確に政策が進められることを求めたい。」と、更なる検証の必要性が示されました。

 先生は、政府によるコロナ対策の予算の使い方の精査や、あるいは効果の検証など、今後の検証の必要性についてどのようにお考えなのか、まずその点、教えてください。お願いいたします。

    〔委員長退席、藤井委員長代理着席〕

草場参考人 御質問ありがとうございます。

 先生おっしゃるとおり、予算の使い方という点に関しては、どうしても危機時には、最優先に必要な事項に関して、とにかくまず徹底的にいろいろな予算を使いながら感染対策を行うということは、私はやむを得ない部分があるかと思います。先ほどお話があったように、非常に未知のウイルスに対する防御策ということに関しては、どうしても様々な形でやらざるを得ない。

 ただ、それに対する、事後の検証ということに関しては、やはり今回もなかなかそういった議論というのが乏しかったなと感じています。もちろん、病院等の病床の確保ということに関してたくさんのお金が使われている状況でございますけれども、果たしてそれが全て有効に使われたのか、そういった点に関してはいろいろな議論があると思います。

 ですから、まず最初は大胆にお金を使うということはいいと思うんですが、ちゃんと事後検証ですね、しっかり定期的にチェックを入れていく、その仕組みを今後のパンデミックの中でも是非取り入れていかなきゃいけない、それが私自身の問題意識でございます。

太委員 先生、どうもありがとうございます。

 先ほど触れられましたのが、パンデミックにおいて、児童など学校教育への影響について言及されましたが、それと、昨年の報告書の取りまとめの直後に、子育て中の方の声も聞いて報告書に盛り込みたかったというふうに、先生、御指摘されておりました。

 問題意識はどんなことだったのか。といいますのも、やはりこの三年間、特に乳幼児期から学童期にかけての子供たちというのが、本当に触れ合いやコミュニケーションを制約されながらの三年間、言語発達に影響が出る可能性も指摘されておる中で、是非とも、先生のこの点、この御発言に関しての御見解をお聞かせください。お願いいたします。

草場参考人 今御指摘いただいた点、非常に重要な問題だというふうに捉えています。

 今回は、お子さんに関しては比較的重症度が低いという形の感染症の特徴がございました。ただ、それがどうしても、高齢者と同様のかなりしっかりとした感染対策を行う、その部分はやむを得ない部分はあったんですけれども、現場ではやはり、そういったお子さんを抱えるお母さん方の非常につらい状況。

 私自身もたくさんのお子さんを診療しているんですけれども、そういった中で、ふだんの活動が全て制限されている、いろいろな、日々の授業もそうなんですけれども、例えば学習発表会であったり、あるいは卒業旅行であったり、そういったふだん提供されているものが非常に欠けているという状況で、精神的にもかなり苦しんでいる状況というものがお子さん方にあったというふうに思っています。

 ですので、発達障害というところまで全ての方が行くわけではないんですけれども、バランスですね、感染対策の強度というものをどう設定するか。リスクに応じて、高齢者と、ふだん健康な方と、そしてお子さんということをちゃんと分離しながら、きちんと議論をしていくということをしなきゃいけない。そういった点を今回のパンデミックでは大変強く感じました。

太委員 どうもありがとうございました。

 続いて、また草場先生に質問させていただきたいんですが、先生先ほど、平時から、先ほど来本当に岡部先生もおっしゃっているように、平時からの備えということは大変重要だと思っております。

 平時から危機を想定したシミュレーション演習を定期的に実施することが必要だと先ほど先生お話しされましたが、私は、外交とか安全保障、このことを専門にしておりまして、先日ちょうど、台湾有事を想定したウォーゲーム、軍事、外交のシミュレーションに参加しました。これまで様々、各自治体と、また厚労省なんかが一緒になったシミュレーションなんかを見させていただきまして、本当に似通っているんだなと改めて思っているところであるんですが、まさに緊急時、有事を想定した様々なシナリオに基づくシミュレーションは、有事の際の意思決定と、また政策の改善を図っていく上で、やはり大変重要だというふうに思っております。

 ただ、もう既に、新型インフルエンザ特措法の第十二条ですか、そこで、新型インフルエンザ等対策についての訓練を行うよう努めなければならない、こういうふうに規定されております。そして、既に様々な訓練、演習、シミュレーションが行われていることを承知しております。

 それでは、先生が先ほど言及されましたが、具体的にどのような感染症危機を想定したシミュレーション演習を行うべきだとお考えなのか、その点について、もし御見解ございましたら教えてください。お願いいたします。

草場参考人 非常に重要な御指摘だと思います。

 シミュレーション演習という形で書かせていただきましたのは、一つは、今回は、有識者の集まるアドバイザリーボード、そして内閣のまた動きというものも、それぞれありながら、若干食い違いながら動いて、しかも、メディアに対する対策というものも、若干ぶれがありながらあった。だから、そういった点に関して、どういった形で意思決定をしていくかというプロセス、そういったものを是非シミュレーションでやっていただきたい。これが一つ、非常に重要な点でございます。

 もう一個は、現場でコロナ対応をずっとしてきた医療機関の立場からいいますと、今回のような結構強毒性の、当初、アルファとか、本当にデルタぐらいまでは非常に強かったわけでございますけれども、そういった場合に、実際、普通の診療所、一般の病院というものがどういう感染対応を取るのか、そういったことに関して、本当に慌てふためいたところがあります。あとは、高齢者が療養している介護施設、高齢者が居住している老人ホーム等の施設、そういったところも本当に困惑したわけでございます。

 ですから、そういった、地域の中の医療機関、介護施設も含めた想定演習というものをしっかり定期的にやっていく。その際に、自施設では何が足りないか、そういったものを確認しながら、不足分というものを補うような、そういったシミュレーションというのを、中央と現場と両方で、シミュレーションを是非やっていっていただきたい。恐らく自然災害ではそういったことが行われていると思いますので、是非、パンデミック等を想定した演習というものをやっていただきたいなというふうに考えております。

 以上でございます。

太委員 どうもありがとうございました。

 同じ質問を、大曲先生にも教えていただけますでしょうか。これまで実際現場でどういったシミュレーションが行われてきたのかと、今後の課題について教えてください。お願いいたします。

大曲参考人 ありがとうございます。

 これまでの感染症対策のシミュレーションという意味では、特措法があって、特措法の中に幾つかガイドラインがありますけれども、では、そのガイドラインの内容をどうやって現場で落とし込んでいくのか、それができるのかどうかという形でのシミュレーションというものは、例えば国そして都道府県という形でかなり行われてきたと思います。机上演習が中心でありました。

 もうちょっと現場に近いところになりますと、例えば医療機関、中でも感染症指定医療機関を中心とした医療機関、また地域によってはそこに関連する医療機関や診療所も含めて、感染症の事態の発生時のトレーニング、例えば患者さんの搬送ですとか、実際に受け入れたときの医療対応ですとか。私、新宿におりますけれども、新宿区ですと、例えばワクチンの接種時のアナフィラキシー等が発生したときの対応ですね、そうした訓練といったことも行っておりました。

 これからやっていくべきことというのは、先ほどの草場先生のお話とも関わっていくのですが、政府レベルでの対応に関して言いますと、これは私個人の意見でありますが、ある程度蓋然性が低いような状況、例えば、エボラのように死亡率が高い、でも、その感染症が物すごく広がったらどうなるのかといったような想定の下に訓練をしていくといったことは大事だと思います。これは、コロナのような病気は例えばMERSであるんだけれども、だったらそれを想定して対応ができていたのかという観点からはやはり不足があったと思いますので、その観点からの発言が一つ。

 それともう一つは、繰り返しになりますが、こういった新興感染症、特にパンデミックになるようなものは、全ての医療と介護の場でやはり受け止める必要がありますので、そこを、全体の底上げという観点でのシミュレーション、そしてトレーニングといったものはやはり必要になってくると思います。

 具体的な話というところでは、先ほど草場先生がおっしゃったので、割愛したいと思います。

太委員 先生、どうもありがとうございました。具体的に教えていただきまして、ありがとうございます。

 今、先生御指摘された、蓋然性が低い、そういったケースもしっかりと想定をしていくということ、これは大変重要だと思っております。

 国立感染研の感染症危機管理研究センターの斎藤センター長ですか、昨年この国会でも発言されておりましたが、これまで確かにシミュレーションは行われてきた、ですけれども、これまでのやり方というのが、過去問を解くことの繰り返しだった、これまで経験したところまでの対応をなぞっただけで演習は終わってしまっていた、過去のシナリオだけにとらわれて、訓練や演習で柔軟性を失っていたことを反省しているということでありましたので、是非とも、そういった意味でも、蓋然性の低い、そういったことも想定しながら、過去のおさらいだけでなく、柔軟性を持った演習ということが必要だと思っておりますので、引き続きこの点も参考にさせていただきたいと思っております。どうもありがとうございます。

 続きまして、内閣感染症危機管理統括庁の実効性についてお伺いしたいんですが、先ほど大曲先生、感染症をまず国の危機管理の対象だとしっかりと明確に位置づけることだ、その上で指揮系統も明確に位置づけるべきだということでお話しされましたが、今回の統括庁を先生はどういうふうに見られているのか、もし御見解がありましたら教えていただきたく、お願いいたします。

大曲参考人 ありがとうございます。

 危機管理統括庁に関しては、これはやはりあるべき組織だと思っています。もちろん、内閣レベルから厚生労働省、そして我々研究機関レベル、もうちょっと言えば現場レベルといったところに筋を通した指揮命令系統ができるということは、非常に重要であります。非常に分かりやすいですね。それが一つ。

 また、もう一つは、危機管理統括庁があるということで、私たちが想定するのは、統括庁の下に各省庁が連携して動くということが非常に重要なんだと思います。それができるようになる、迅速に。そうした形ができるということが非常に重要だと思っております。

太委員 先生、ありがとうございました。

 連日この統括庁の問題を国会で審議させていただいておりますが、まだやはり縦割り構造が残って、複雑な指揮命令系統や、権限の不備など、まだまだ司令塔機能が果たせる状況とはなり難いと思っておりますので、そこはしっかりと、これからもよりしっかりとした明確な指揮系統へとつなげていかなきゃいけないと思っております。ありがとうございます。

 最後に、ごめんなさい、余り時間がないですね。そもそも、今回の危機管理統括庁、岸田総理が想定したのが、健康危機管理全般を行う健康危機管理庁としての構想でスタートしたはずなんですが、感染症危機管理を含めたあらゆる危機に包括的に対処するオールハザード型の危機管理の組織も必要だと思うんですが、その点に関して教えていただきたいと思っております、先生方の立場から。岡部先生、もし御見解ありましたら、お願いいたします。

岡部参考人 御質問ありがとうございます。

 非常に大きい御質問なので、どうして答えたらいいのかなかなか思いつかないところでありますが、ただ、オールハザードというのは、先ほども申し上げましたように、共通点としてのハザード対策はいっぱいあると思います。しかし、病気を一つ取っても、慢性の病気であったり急性の病気であったり、うつり方が強い弱い、重症度が違う、いろいろなタイプがありますので、全てをひっくるめればいいのであるということではないと思います。

 私は感染症の立場ですので、今まで日本の対策といいますか、感染症法の中でも、不明のものに対する対応というのは非常に弱い。病気が決まったものに対しては先ほどの訓練についても対応があったり、あるいは仕組みがあったりするんですけれども、不明のものを早く見つける、早く見つけてそれに対して対応していくということについて、感染症法の中でも私は欠点だというふうに思っています。

 つまり、今回も、COVID―19が出た、原因不明だったけれどもCOVID―19だと分かった、それから我が国に入ってきたのでありますから、この病気に対するというのはあるんですけれども、それが日本に入ってきたときに、最初に入ったときに見つけられたかどうか。不明の肺炎というものでは、それをシェアする仕組みや何かがないわけですね。

 ですから、オールハザードというのは不明のことに対する対応が多いんですけれども、一定の筋道をつけておかないと、何か空想のような形ばかりになっているのではいけないので、きちんとしたレベルをやって、だんだんそれのレベルアップをしていくという考え方が重要ではないかと思います。

 以上です。

太委員 先生、どうもありがとうございました。

 ごめんなさい、時間になってしまいまして。本当は草場先生に、先生が、感染症有事のときにはかかりつけ医の制度、これをしっかりと橋渡し役として機能させるべきだということであって、私も本当に賛同しているところなんですが、それに関して説明していただければと。どうかよろしくお願いします。最後、お願いします。

草場参考人 ありがとうございます。

 先ほど強調いたしましたけれども、やはり、平時と危機時を完全に分離することはできない、つまり、平時にできている以上のことを危機時に要請されてもできないというのが、正直、医療機関を運営する立場からの実感でございます。ですから、感染症対応も、事前にきちっとしたそういう体制をつくらなきゃいけない。

 そして、多くの医療機関が実際、感染症に対応したわけでございますけれども、中にはなかなかできなかった、構造的な問題とか、いろいろな、医師の問題も含めてあった。ですから、構造的な対策というものを平時からつくるためには、やはりかかりつけ医というものの機能をしっかり向上させていく。

 そして、現状でいいんだということではなくて、それは国がちゃんと対策をするからいいんだではなくて、我々医療者自身も、感染対応ができるような環境をつくっていくということを平時からやるべきである。それを促すようなかかりつけ医機能の強化というものを、今回の議論の中で、また別の法案でございますけれども、是非取り組んでいただきたいというふうに強く思っています。

太委員 どうも本当にありがとうございました。

 引き続き、本日の御助言を生かしながら、危機管理体制強化へと進んでいきたいと思いますので、どうぞよろしくお願いいたします。

 どうもありがとうございました。

藤井委員長代理 次に、浦野靖人君。

浦野委員 日本維新の会の浦野靖人です。よろしくお願いいたします。

 本日は、皆さん、お時間のない中、参考人として出席いただいて、ありがとうございます。

 まず一点目ですけれども、大曲参考人は、明確に賛成というお話、先ほどもありました。ほかの参考人の三名のお方に関しては、明確に賛成、反対というお話、お話の中ではありませんでしたので、もちろん、消極的賛成とか積極的な賛成とかいろいろあるとは思うんですけれども、今回の法案について、どういうお立場を取られるのか、それを少しお聞かせいただけたらと思います。

岡部参考人 御質問ありがとうございます。

 私は、先ほどもちょっと申し上げましたように、二〇〇九年のパンデミックの反省に立っての金澤先生の検討会、その中のメンバーの一人に入って、法整備が必要である、そして、特措法が生まれることになり、その特措法については、オリジナルの特措法については、逐次相談をしながら、作成の方に向けた方でありますので、特措法の存在そのものは非常に重要だと思います。改正も必要だと思います。

 問題は、その運用のやり方で、それが、俗な言い方ですけれども、伝家の宝刀でありますから、それをいつでも振り回すのではなく、どういうときに必要であるのか。つまり、リスク分析をきちんとやって、遅れることなく、しかし早まることなく、これは非常に難しいところだと思うんですけれども、そのような議論が常日頃から行われていることが必要であって、その運用のタイミングをきちんとやっていただければということが前提ですけれども、特措法のような法律はやはり必要であるという立場です。

 以上です。

草場参考人 私自身は、今回の改正に関しては、総論としては賛成をしているところでございます。

 ただ、各論については、先ほどちょっとコメントを細かくさせていただいたように、実際の運用のところでやはり注意しなきゃいけない部分は相当あるというところで、そこまでは全然書き込まれていない状況だと思いますので、その点を是非注視しながら見ていきたいという立場でございます。

 以上です。

太田参考人 ありがとうございます。

 私も、総論としましては、指揮命令機構を見直すための今回の特措法の改正等々に関しては賛成でございます。やはり、今回は報告書を基に様々検討されておりますけれども、何らかの形で見直すべき。

 ただ、詳細に関してというところまでは、様々な問題はあるかと思いますので、その辺に関しましては、先生方でしっかりと御議論いただければというふうに思います。

浦野委員 ありがとうございました。

 我々も、国会の議論を通じて賛成、反対を決めるわけですけれども、一〇〇%、今回の法改正が全てを網羅して万全なんだということには、恐らく、大曲参考人もそこまでは思っておられてはいないのかなとは正直思っているんですけれども、ただ、お立場もありますので、質問はしませんけれども。

 今回、我々、新型コロナが始まってこの数年、本当に、ありとあらゆる困難に、国内、国民の皆さん含めて、懸命に対応してきたと思っています。その中で、私が今一番問題じゃないかなと思っていることの一つに、やはり情報の出し方、これが非常に今回うまくいかなかったんじゃないかということを感じています。

 というのは、今、我々現代人は、ネットという情報の海にぼおんと放り込まれて、そこをみんな浮き輪もつけずに泳いでいるわけですよね。その中で、正しい情報、間違った情報、それをどう判断していくのか。特に今回、コロナに関しては、本当に、ありとあらゆる情報がネットの中で伝播されて、専門家ですら、やはり、これが正しいのか間違っているのかということを時間をかけないと分からないというものもたくさん出ました。

 人間って、やはり、自分がそうだろうと思うような情報にどうしてもすがって、それが誤りであっても、それが正しいと思ってしまう傾向がどうしてもあるものなので、例えば、私、この例を出すのが正しいかどうかは分からない、僕も専門家ではないので、そういう知見を持っているわけではないんですけれども、例えば、イベルメクチンの話題がネットでは大きく取り上げられました。

 私は、イベルメクチンがコロナを治すというのはデマだと思っています。ただ、それが本当にデマかどうなのか、正しいのかどうなのか、いまだに決着がついていないのがネットの世界なんですね。いまだにイベルメクチンを信じている人たちはいます。私の知り合いにも、私はイベルメクチンで治りましたと、はっきりおっしゃる方もいらっしゃいます。でも、それが本当かどうか確認しようがありません。

 ただ、でも、そういった情報がネットにあふれ返って、誤ったこと、専門家の皆さんは、それは誤りですとちゃんと言っていただいていますけれども、でも、その情報よりも、イベルメクチンで治ったという情報の方がネットの世界では大勢を占めてしまっている時期もあったわけですよね。

 そういったことに関して、私は、これから、科学的に正しい情報をいかに国民の皆さんに伝えるかというのは、ネットの世界、ネットが主流になりつつある情報世界で非常に難しい問題で、これは先ほど草場参考人も発言をされておりましたし、太田参考人も、ネットではなくて、新聞記事が誤解を招くような内容、ともすれば、誤解を招くような書き方をされることもあるということをおっしゃっていました。

 それは、新聞もそうですし、ネットもそうですけれども、正しい情報が何なのかというのは、みんなもちろん手探りの中でやってきた。だからこそ、私は、今回の法改正でそういったところを、きっちりと、正しい情報を国民にどれだけしっかりと伝えることができるのかという、この部分は統括庁をつくることによって前に進むというふうにしてもらいたいというのがあるんですね。

 その部分に関して、参考人の皆さんから、統括庁でそういったところが前進するのかというのを、ちょっと意見をお聞かせいただけたらと思います。

大曲参考人 ありがとうございます。

 御指摘になった点は大変重要なところでありまして、それは当然ながら進めるべきだと思っていますし、統括庁がうまく機能することによってそれに資すると思っています。

 一つは、関係する、情報のずれといったところがありましたけれども、それがないようにする、そこもまた指揮命令系統だと思うんですが、それが一つありますし、あと、やはり、統括庁がありますと、それなりの立場の方が発言をされるというところは国民にとって非常に影響は大きいと思いますし、あとは、政府機関の強さというのは情報量だと思います。大事なことは一回だけでなくて、何度も何度も何度も出していく。そして、結果的に誤った情報よりも情報量が多くなれば、それが正しい情報に、正しいこととして世の中に受け入れられていくというところはあると思いますので、そういった観点で、危機管理庁がうまく動くといったところを期待しております。

岡部参考人 ありがとうございます。

 科学的なものに対するある一定の見解と結論を得るには、やはり時間が必要になります。どうしても、検証ということをやって、それで初めて正しいことが分かるんですけれども、ただ、こういう危機的な状況にあるときにはそれを待っていられないので、ある一定の見解で出すということになります。

 しかし、それはどこがどういう立場で出しているのか、その背景はどういうものであるかということを説明しているところが正しい情報である、でも、正しい情報がずっと正しいわけではなくて、科学は常に反省をし検証をし、違えば違ったと言わなくちゃいけないので、そういう立場にある場所あるいは人が説明をしているかどうかを判断することが必要であるというふうに思います。

 それから、統括庁の話が出ていましたけれども、例えば、日本の中で、今まで、いわゆる説明、報道に対する担当者というものは恐らくはいないんじゃないかというふうに思います。特に、私がやるような感染症であるとか、あるいは医療であるとか、医療の専門家ではあるけれども、説明をどういうふうにしたらいいかというトレーニングは受けていないわけです。海外ではそういうものに対する報道担当、報道の専門だけれども、科学的なことを理解して、医学であれば医学のことも分かっている人がそれを説明して、やり取りができるという担当があるので、私はそういう部署は必ず必要だと思います。

 ただし、常に批判的な意見というものは耳を傾けなくてはいけないので、それが一方通行にならないように、それが、先ほど申しましたコミュニケーションという、片方向にならないで双方向になる、それを常に維持をしていくということが必要だろうと思っています。

 長くなりますけれども、ただ、今のネット社会はもう一つの問題がありまして、それは、子供たちに対する教育として、どういうところであれば正しい情報が出るかということを教育の中で一つ教えていかないと、乱雑な中で取捨選択ができなくなるのではないか、そういう思いもしております。

 以上です。

草場参考人 御指摘いただいた点、大変重要な問題だと思っています。

 私は、大きく二つ課題があると思います。

 一つは、リスクコミュニケーションということで、伝える内容を、どういった形で内容を構成するか。それは非常に、専門家的には、例えば統計学の知識であったり、いろいろな理論があるものを発言するわけでありますけれども、その内容を分かりやすく、プロセスを明確にしながら示していく。それが、普通の、一般の国民が分かるようにするというのは大変な作業ではあるんですけれども、それを何とかしっかり構成していくということをやっていかなきゃいけない。これが統括庁の非常に重要な仕事になります。

 ですので、先ほどお話ししたように、コミュニケーションのプロフェッショナルであったり、あるいは行動科学、実際にそういった情報を聞いたときにどういう行動を一般の方が取るかということに関する専門家、そういった方を是非入れていただいて、いろいろな発信をしていくということをやっていただきたい。

 もう一つは、今御指摘いただいたネットの問題でございますけれども、やはり、SNSの中では、例えば、よく言われますけれども、インフルエンサーという非常に発言力が強い方、そういった方が一言言うだけで、ばあっと何十万の方に広がるというのがございます。ですから、インフルエンサーの方に、場合によってはそういった状況の中ではちゃんとネットワークを組んで伝えていくような、つまり、個別的な戦略というものをネットの中でやはり取っていく必要があるかなというふうに感じています。

 以上です。

太田参考人 ありがとうございます。

 やはり、国民の方がメディアリテラシーを高める、先ほど教育の話もありましたけれども、これは間違いなくこのネット社会においては重要だろうというふうに思います。ただ、情報の出し手がどれぐらい信頼をされるような形の組織になっているかというのは、非常にやはり重要だろうというふうに思います。

 今回、道中、ここの参加者、皆、アドバイザリーボードや何かに関与しているようなところがある者なんですけれども、かなりの科学的な情報や何かを厚生労働省のアドバイザリーボードから出しておりますが、やはり、陰謀論だとか、いろいろな形でその意見を否定される方々というのは、ネット上でたくさん出たと思います。

 やはり、そこの出し手、政府と言ってもいいかもしれませんけれども、そこがいかに対国民のためにしっかりとやっているかというのを信頼されるような形で、常日頃、情報の出し手というものが襟を正してやっていくというのが一番重要なのではないかなというふうに思っております。

 以上です。

浦野委員 ありがとうございました。

 これからも、恐らく同じような課題をネットの世界で、多分、正しい情報と誤った情報を繰り返し国民が取捨選択をして、それで最終的に正しい方向へ行くとは思うんですけれども、これは非常に難しい問題ですので、私は、これは政府はしっかりと対応していかないといけない問題だと思っています。

 もう時間が来ましたので質問はしませんけれども、特にやはり子供、先ほど岡部参考人もおっしゃいましたけれども、子供に対するそういう情報のそういうものというのはなかなか厳しい、難しいものがあって、私も保育園を経営させていただいているものですので、親御さんを含めて、正しい情報が何なのかというのは非常にみんな悩まれておりました。

 そういったところがしっかりと今回の法改正を機に発信できるようにしていただけたらと思っていますので、今日は、どうもありがとうございました。

藤井委員長代理 次に、福重隆浩君。

福重委員 公明党の福重隆浩でございます。

 本日は、お忙しい中、四人の有識者の先生方に御出席をいただき、冒頭の意見陳述で、コロナの最前線で御奮闘いただき、大事な御指摘をいただきましたことを心から感謝申し上げます。本当にありがとうございます。

 早速でございますが、質問に入らせていただきます。

 まず初めに、四人の参考人に御意見をお伺いいたします。

 コロナウイルスの第五類移行に伴い、ある医療関係者から、新型コロナは終息していない、五類になった新型コロナが終わったという誤解が国民の間で広がることが不安に覚えるとの報道がございました。また、厚労省は、五類引下げ後も新型コロナウイルスの感染症の名称は継続することとしています。これは、名称変更によって、今後、感染対策は行わなくてもよいと受け取られないように配慮する必要があるとの判断であると認識をしております。

 このような状況を踏まえ、五類移行時、政府からも、国民の皆さんに対して、今後、何らかのメッセージの発信が必要と思いますが、専門家のお立場から、新型コロナが終わったなどの誤解を避けるため、どのようなメッセージを発信することが重要と思われますでしょうか。御意見をお伺いいたします。

大曲参考人 ありがとうございます。

 先生のおっしゃった問題意識は、我々、本当に共有しているところであります。決してコロナは終わっていないと思います。その中で、どういうメッセージが必要かという観点でありますが、やはり各論から考えていくのがいいと思います。

 具体的には、やはり、医療体制自体がまだ、新型コロナを受け止めていく、完全にがっしりと受け止めていくための構築の途上であるというところはしっかりと伝えていくべきだと思います。

 例えば、コロナの患者さんの受入れ一つ取っても、これまで診断に関わってこられなかった例えば診療所ですとか、入院診療に関わってこられなかった入院医療機関での受入れというものが今後進んでいくわけなんですけれども、そこには必ずや困難があると思います。それは、先ほどお話があった、クラスターが起こったりですとかということはあるわけですが、そこも支援をしながらやはり乗り越えていく必要があるわけですね。あるいは介護施設の対策も全く一緒です、感染対策も含めて。それらはまだ完成の、完成といいますか準備ができるまでの途上であるということは非常に大事ですし、そちらの点は伝えていく必要があると思います。

 あとは、場合によっては、また今後、波が来る中で、医療が厳しい状況になるというのは十分に想定し得ると私は思っています。そのときには、場合によっては国民の皆様方にやはり御協力をいただく必要はあると思います、感染対策という観点でですね。そういう準備もやはりまだ必要であるんだということは、お伝えいただければと思っております。

岡部参考人 ありがとうございます。

 一、二、三、四、五という分類でいくと、いかにも一類が一番危なくて、五類になるともう大丈夫だというような順番ではないかという誤解があるんですけれども、あくまで対策上の分類、それから、多いか少ないかで一、二、三、四、五といったような分類をしているわけで、決して、五類に格下げをしたとか、五類に成り下がったとか、五類だからもう大丈夫ということではないと思います。

 感染症としての、先ほど申し上げましたような忘れてはいけないことは必ずあるわけですから、感染症としての対策はこれからも続けていく必要があるわけですけれども、ただし、先ほど参考人の方もおっしゃっていましたけれども、アドバイザリーボードでも、この二類、五類の議論をしたときに、大切なのは、軽く成り下がったわけではない、しかし、人権に抑制を与えるほどの状況ではなくなった、なので二類ではない方が妥当だろうというような議論をしたわけでありますから、病気としての本質は、やはり、病気というのは、軽い病気であってもたくさんかかれば、その中には重篤な方が出てくるわけですから、そういうようなところにも目を向けなくちゃいけないというのが五類であろうというふうに思います。

 決して、軽く成り下がって、ちょっと例としておっしゃったような消え去った病気ではもちろんないわけですので、今後も注意をし続ける必要は確実にあるというふうに思います。

 以上です。

草場参考人 私は、民間の医療機関として、実際、コロナの患者さんをたくさん診察しておりますけれども、今も、やはり検査をさせていただくと、コロナの方というのはどうしても出てきている状況でございます。ですから、なくなるということは今後はない。

 ただ、やはり、一般的な国民生活の自由度と感染対策とのバランスということが常に議論されるべきであり、そのバランスの中で今回はちょっと、少し緩い形にかじを切った。ですから、医療機関としては常に緊張感がありますし、当然、高齢者がたくさん住まわれているような介護機関では非常に、常に感染対策をしながらやっている状況は全く変わっていません。

 ですので、いろいろな形で解除はされていくんですけれども、めり張りをしっかりつけた形で、厳しく、リスクが高いところに関してはしっかり守っていこう。でも、ある程度、日常生活とのバランスの中でリスクが低いと思われる部分に関しては少し緩くしていく。そのめり張りをしっかりつけた形での今後は発信というものを、五類になった以降は特にやはり出していただきたいなというふうに思っています。

 以上です。

太田参考人 ありがとうございます。

 これから、ウィズコロナという言葉があります、まさにコロナウイルスと共存していくというステージに入っていくということです。

 先ほどからありましたけれども、コロナウイルス自体が、特に感染力が大きく減っただとか弱毒化したというわけではなくて、やはり高齢者や基礎疾患のある方々が感染すれば、それなりの患者さんがお亡くなりになられる。第八波でも、一日、ピーク時、三百人を超える方がお亡くなりになられるというウイルスであることは変わらないわけであります。

 そういう意味では、やはり、基本的な感染の対策というのは各国民の方々にちゃんと今後も続けていただいて、そういうウイルスと共存して、社会が、経済社会活動と感染対策を両立していくという時代がウィズコロナなんだ、以前に戻ることができるわけではないんだというメッセージは、やはり国民の方々に伝えていただければというふうに思っております。

福重委員 ありがとうございました。

 実は、この質問は時間があったらと思ったんですけれども、ちょっと最初の方で聞いておきたいと思います。

 実は、私、先日の内閣委員会の質問の中で、私、地元は群馬県なんですけれども、群馬県では、病院間の入院を調整する病院間調整センターというものを開設をして、そしてコロナ患者さんの病院の入院先、こういったものを調整する機関というものをつくっておりました。これは大変有効であったというふうに思っております。これが五月八日から、今も徐々に縮小しておりまして、廃止される方向になるんですけれども。

 今の大曲先生、それから先ほどの太田先生からも、この入院の調整というのは困難を来すのではないかというようなお話もあったと思うんですけれども、私は、ある一定期間、こういったものは必要ではないかな、政府が財政措置をして、各自治体でこういったものがあった方がいいと思っているんですけれども、端的に、四人の先生方に一言ずつ御意見を聞かせていただければ。

大曲参考人 ありがとうございます。

 地域あるいは都道府県レベルでの入院調整機能は、私も当面は必要だと思っています。現状を見ても、入院先を探すのが困難な事例が多数あるということを考えても、これが一日、二日で変わるようなものとは思えませんので、やはりそれが地域に落とし込まれるまでの時間、そこまでは継続する必要があると考えております。

岡部参考人 ありがとうございます。

 入院調整という機能が病名で行われている場合には、入院調整は必要がないと思うんですね。つまり、病気はあくまで症状で入院が必要かどうか決めるわけで、となると、医学的な判断が必要になります。つまり、機械的な入院調整は通常は必要ないわけですし、入院を必要とするかしないか、それは医療、例えば開業の先生と病院の、あるいは中病院から高次の病院、それぞれのところでの話の方が恐らくは手っ取り早いし、事情がよく分かると思うんです。

 ただ、だんだん増えてきているような状況であったり、それから、お互いの病棟の状況や何かは非常に狭いところでしか分かっていないので、そこを広域に一定度つかんでいる、そういう機能は必要だろうと思います。

 つまり、何か困ったときには、やはりそういう入院調整といったようなところが存在している方がいいと思うんですけれども、ただ、それは五類という病気で、単に普通のところが、民間的なところでやると個人情報に抵触するというようなこともあるので、なかなか難しいところだと思うので、やはりそこは公的に調整ができるという機能は私は今のところは必要だというふうに思っています。運用の仕方になります。

草場参考人 私も、一定程度、まず維持していく方がいいかというふうに思ってございます。

 実際、現実的には、やはり先ほど岡部先生がおっしゃったとおり、患者さんの重症度によって入院が必要かどうかを判断していきますので、医療者の判断というものが重要になってきます。ですから、病名だけではいかない。

 ただ、今、現実的には、まだ病院側も新型コロナに対する危機感とか緊張感、警戒感というのは非常に強い状況があります。ですから、重症度が問題ないからという形で、あるいは重症度が重いからという形で依頼をして、すぐ受け入れてもらえるかどうかというのは、私みたいな診療所でやっている立場から見ると不安がございます。

 ですから、ある程度まだ、少し経過措置という形で是非やっていただきたい。でも、最終的には、それが消えて、ふだんやっているような病診連携の中での入院調整という形に統合していただきたいというのが願いであります。

 以上です。

    〔藤井委員長代理退席、委員長着席〕

太田参考人 お答えします。

 一部、特に、本当に病診連携とか病病連携、我々、病院と診療所の連携、病院と病院との連携というのはそういうふうに呼んでおりますけれども、その中で、まずは入院を行う形に移行するというのが、今度の、五月の八日以降のスキームです。ただ、それがスムーズにいかない場合は、当然、先生おっしゃられるとおりございます。そのために、やはり一部、どうしても本当に入院調整が病診、病病だけではできないときのバックアッププランとして、やはり移行期間にしばらくの間は行政や保健所等が関与いただくという形が今後のウィズコロナへの移行に重要ではないかというふうに思います。

福重委員 ありがとうございました。

 私も、ある一定期間をしっかりとフォローしていただくことが大事だと思いますので、四人の参考人の御意見、大事にさせていただきたいと思っております。

 続いては、大曲先生にお伺いをしたいと思います。

 大曲先生は、我が党が発行しております月刊公明の中で、新型コロナの類型を二類相当から五類へ変えることに賛成の立場を表明されておられます。それは、新型コロナに対する国民の受け止め方の変化と、適切な予防や治療を行えば重症化を防げるようになった点を挙げられておられます。

 その上で、季節性インフルエンザと比較しても新型コロナの感染者数は多く、社会に与える影響も大きい、特に医療への影響は、今後も、数年から長ければ数十年単位で残ることもあり得ると考えているとおっしゃっておられます。

 医療全般への具体的な影響とはどのようなことが考えられるのか、お示しいただければと思います。

大曲参考人 ありがとうございます。

 まず、医療への直接的な影響から申し上げますと、やはり、おっしゃったとおり、インフルエンザと比較しても本当に医療を必要とする患者さんの数は非常に多いというのがこれまで示されたところだと思います。

 元々、日本の医療は余裕がない中で、そこに上乗せでこのコロナを要は対応していく必要が出てきたわけでありまして、そのキャパシティーをどう確保するのかということが非常に重要だろうと思います。

 なかなか簡単でないのは、コロナは、もちろん治療に非常にヒューマンリソースを必要とするということもありますけれども、感染しやすいというのが非常に問題でして、それで感染対策に必要な労力、資源というものが非常に多いというのがやはりネックになっていると思います。

 それらが間接的に影響して、もろもろに影響が出ています。それは、診療所を含めた外来の診療もそうでしょうし、端的なところはやはり救急医療ではないかと思うんですね。

 救急医療がなぜ厳しい状況にあるのかというのは幾つも要因が考えられて、簡単なことではないんだとは思うんですが、一つは、やはり感染対策の重みといいますか負荷というものは大きいと思います。かからないように対策をする、コロナかもしれない、そうかどうか分からないときには個室で例えば外来で管理をするということになると、例えば救急外来も、部屋が埋まってしまって、次の救急車を受け入れる余地がなくなる、そういったことは容易に起こります。

 こういったものがまだ十分には解決していないという状況にあると思いますので、これは、専門の領域の方々が今どうするかということを御検討されているところだと思います。

福重委員 どうもありがとうございました。

 先ほど、四人の参考人のお話を聞かせていただきまして、今回の法案改正は、総論は賛成で、各論には詰めていかなくちゃいけないことがたくさんあるよという御指摘をいただきました。

 今後、先生からそういったことも様々御知見をお聞かせいただきながら、本当に、国民に寄り添って、国民の命を守る、そういった改正になるように我々も努力していきたいと思いますので、今後とも御指導と御鞭撻のほどよろしくお願い申し上げます。

 本日は大変にありがとうございました。

大西委員長 次に、浅野哲君。

浅野委員 国民民主党の浅野哲でございます。

 参考人の皆様におかれましては、本日は、お忙しい中、様々な観点から御意見を頂戴させていただきました。本当にありがとうございます。

 私の方からも数点質問をさせていただければと思うんですが、私自身、今回のこの法案審議に当たっては、やはり平時からの備え、そして、今回のようなパンデミックが起こった初動期においては、国がしっかり指揮命令権を発動させ、統率の取れた対応をすべきだというふうには思っております。ただ、有事、パンデミックが広がり、かなり地域ごとの差が顕在化した状況においては、やはり都道府県あるいは現場での判断が尊重され、そして迅速な意思決定と的確な対処ができる、そんな環境をしっかり構築できるような仕組みを整えておくべきだろう、そのようにも考えております。

 その観点から、今日は、現場への権限の付与の在り方といいましょうか、どのように国と自治体あるいは医療機関が役割分担をしていくべきなのか、こうした観点から質問させていただきたいと思っております。

 まず、草場参考人にお伺いをしたいんですけれども、先ほどの資料の中でも、自治体による創意工夫が発揮できるように、国は必要な財政支援や医療資源の確保に重心を置きながら支援をしていくべきだというような趣旨の発言をされておりまして、私もそのとおりだというふうに思います。自治体の自由度をどのような観点から拡充すべきだとお考えなのか、少し先ほどよりも具体的な観点を交えて御意見を頂戴できればと思いますので、よろしくお願いしたいと思います。

 また、草場参考人の後、岡部参考人にも同様な観点で御答弁いただければと思います。

草場参考人 御質問ありがとうございます。

 私は北海道で現在医療を提供している立場でございますが、やはり北海道は、御存じのとおり、いち早くコロナの感染症が、最初に到来したということで、本当に、二〇二〇年の二月から結構大変な状況になっていった。

 そんな中で、知事がいち早く緊急事態宣言を北海道独自で出したという形で、それが、いろいろな批判もあったり、肯定的な意見もあったり、いろいろあったわけでございますけれども、そういった、地域ごとにやはり感染症の流行の状況というのはかなり違う。遅れてやってくる場所もあれば、先行してやってくる北海道みたいな場所もある。そういったときに、一律という形になってしまうと非常にやはり動きづらい。我々、現場でやっていても、この状況でいいんだろうか、国が全く動いていない中で北海道ものんびりしていていいんだろうかということで、非常に不安を感じたことを、二〇二〇年の二月、三月、覚えてございます。

 ですから、まず、危機に関する宣言というか、その発動みたいなものを地域によってやはり細かく分けてやっていただきたい。最後の方は大体そういう形になってきたと思うんですけれども、新しい感染症においても常にその意識を持っていただきたいというのが一つ。

 そのときに、北海道の中でいろいろな対策をする際に、やはり道自体はなかなか財源がない中で、果たして医療機関に対する補償というのができるかというと、非常に難しかった。我々もかなり医療を縮小しながらやっていって、経営的にも厳しい状況も結構ありました。

 ですから、そういった点が、財源を裏づけながら、危機管理というものを、先手先手を打って、地域ごとに変えてやっていくということを是非やっていただきたい。具体的にはそういったことを考えております。

 以上です。

岡部参考人 御質問どうもありがとうございます。

 基本的には、私もアドバイザリーボードとか分科会でも申し上げていたんですけれども、確かに地域差が非常に大きいというのがあります。それは、感染症の病気そのものの発生状況もありますし、重症度、そこにおける医療の資源、医療の在り方、それから日常からの周辺の医療あるいは行政との話合いのやり方や何かで、様々な条件があるので、日本全国一斉にというのは、これは難しいと思います。

 つまり、その状況に応じては、自治体の状況あるいは判断、そういったことを尊重できるような仕組みが必要であると思います。実際に、緊急事態宣言のようなときも、必ずお伺いしていたのは、それで自治体の長はどういうことをおっしゃっていますかというようなことを私は何回もお尋ねをしたんですけれども、それによって最終的な判断だと思います。

 ただ、基本的な在り方、こうなったらこうすべきだというようなことは、一定の方法論が決まっていないといけないので、そこは国として定めてもらうことだと思います。

 それから、もう一点は、私も川崎市というところにいるんですけれども、何か決まって実行するためにはどうしても先立つものが要るということなので、それの裏づけをどうしておくかということも自治体にとっては重要なことじゃないかと思います。

 以上です。

浅野委員 ありがとうございました。

 お二人とも、宣言発出の柔軟性であったり、あるいは財政的な支援の更なる柔軟性確保というところに関心がおありなんだということを理解いたしました。

 その上で、続いては、今は自治体について聞いたんですけれども、次は、医療機関に関して同様な趣旨の質問をしたいと思います。

 こちらは、まず太田参考人、そして草場参考人、お二人にお伺いしたいんですが、危機管理の要諦というのは、やはり常に最悪の事態を想定して平時から準備を怠らないことだというふうに思っておりますが、先ほど資料でも示していただきましたように、医療機関の現在の経営実態というものを見ますと、非常に苦しさもあるということを改めて再認識をさせていただきました。

 ただ、有事になったときに、治療に当たったり様々な対応をするのはまさに医療機関の皆様であるわけで、医療機関が感染症危機に備えるということは避けられないわけであります。その備える上で、医療機関自身でできること、そして公的支援が必要なことというふうに分けて考えた場合に、今回のコロナ禍から得た教訓ですとか、あるいは今後国に求めたいことなどがあれば、是非お聞かせいただきたいと思います。

太田参考人 ありがとうございます。

 今現在、この法案とは別に感染症法の改正が先日ありましたけれども、そういう形で、今後の新興感染症の対応に関しましてある一定程度の準備をする枠組みが決まりつつございます。事前に、各都道府県と病院が協議をして、どういう状態になったら病床を確保して動いていくかというのを事前に協定を結ぶという形になっています。

 これは、私、発表の中でも言いましたけれども、非常にいいことだと思っています。それが決まることによって、病院の中で、当然のことながら、感染防御着やなんかの備蓄ですとか、あとスタッフの訓練、様々なことを当然行っていくという形になりますので、そういう事前の準備、災害対策と同じですけれども、そういうものを、協定を結んだ医療機関が行っていくというのが重要になるかと思います。

 ただ、そのためには、先ほども御指摘いただきましたけれども、まず、感染防御着を全部備蓄しておくだけでもかなりの経済的な負担がございますし、また、今回のコロナもそうでしたけれども、感染症の初期のときというのは、病院の経営、医療機関の経営というのは大幅に毀損いたします。それを、スタッフを鼓舞しながら、一緒にパンデミックに向き合って戦っていこうという形で病院組織を持っていくというものに関しては、明らかに財政的な支援、裏づけというものをいただかないと我々現場としても戦えないというふうに思っておりますので、そこの部分に関しましてはしっかりとした支援策というものを行政、国には求めたいと思っております。

 以上です。

草場参考人 私、プライマリーケアの立場から御説明したいと思います。病院ではなくて、一般的な診療所などのイメージでお答えしたいと思うんですけれども。

 一つ重要なのは、先ほど言った感染対策の物品の備蓄みたいなものも非常に重要だと思うんですけれども、そもそも、平時から、感染症の患者さんをきちんと診ていく、いわゆる感染症の患者さんを診るための動線、そして普通の患者さんを診るための動線というものを診療所の中で分離するということは結構大変です。そのためには、やはりインフラ的なもの、つまり環境的な部分に関する投資というのが必要になってきますので、そういった部分に関するサポートというのをしていただくというのが一点。

 もう一点は、やはりオンライン診療。オンライン診療を使うことができると、もちろん直接診療しなきゃいけない方もたくさんいらっしゃるんですけれども、感染が非常に流行が強いときには、むしろオンライン診療で通常の方を診ていく、つまり、感染するリスクを減らすということができます。そのためのインフラというものが診療所の中に今非常に少ない、オンライン診療を提供できるところも非常に少ないという状況がありますから、そういった部分に関するインフラ投資ということに関して平時からサポートをいただくような仕組みというものが必要かなと感じています。

 以上です。

浅野委員 ありがとうございました。

 続いての質問は、岡部参考人そして大曲参考人にお伺いをしたいと思います。

 今回、管理統括庁を設置をして、省庁横断的な平時からの備えの体制を構築するということになります。そして、有事の際にはその統合調整を行うということなんですが、やはり、今回、パンデミックを経験して、医療機関のみならず、例えば、子供たちが一斉休校になったりだとか、高齢者あるいは基礎疾患を持っているいわゆるリスクの高い方々をどう守っていくかという話ですとか、あるいは、患者の方たちをどう移送するか、そして、自宅で療養できない方を、ホテルを、部屋を借りて、そこで療養をしていただくこと、とにかく厚生労働省以外の省庁も巻き込んだ幅広い統合調整というのが必要になりました。

 伺いたいのは、やはり私が特に関心があるのは、先ほど申し上げた基礎疾患のある人や高齢者そして子供など、リスクの高い人や、あるいは、生活環境上、接触機会の多い、子供たちなんかはまさにそうですけれども、こうした方々をいかに守っていくのかという部分、つまり、統括庁がそうした方々に対してどういう統括調整を行っていくべきなのか、そのときどういう役割を果たすべきなのかというところについて、少し抽象的な質問にはなるんですが、今後、統括庁がそういった方々も含めて統合調整をしていく上で、今回、高リスクな方々や子供たちを守るという上で得られた教訓というのが何なのか、どういったところを今後に生かすべきなのか、そういった点で御意見があれば頂戴をしたいと思います。

岡部参考人 ありがとうございます。

 統括庁がどういう役割かというところまで、私、感染症の方から余り踏み込むことはできないんですけれども、ただ、高齢者ということを考えた場合に、ハイリスクということで、医療をやるところではないので、なかなか、高齢者施設に対する感染症対策を含めた医療側のアクセス、あるいはそれに対して準備を行っておくということが非常に欠けていたのではないかと思います。

 子供さんの話が出ましたけれども、でも、子供たちは、集団生活をしているところなので感染症が広がりやすく、学校という中には、学校保健安全法があり、そこで、感染症も含め、学校感染症をどうするかというようなことが決まっています。しかし、ハイリスクであるシニアの方々、高齢者が集団で生活をするというのは最近の出来事ですので、そこに対してどういう感染症対応をするのか、支援をするのか、準備をするのかということは余り明確ではないというふうに思います。

 したがって、そういうグループで人がたくさん集まっているところで、特にハイリスクの方が集まっているところでどういう感染症対策をやるかということは、全てが自助努力ではできないので、そこに対する支援は必要であろうというふうに思います。

 まさに、子供たちも含めですけれども、全てを統括庁でやるというようなことはなかなか難しいと思うんですけれども、例えば学校の問題も、文科省がやり、厚労省がやります。そこをすり合わせながらやっているわけですけれども、やはり意見をきちんと聞けるというところは、統括的にやるところにやっていただきたいところで、そこが、子供の意見、子供の意見というのは子供の状況ですね、置かれた状況であるとか、高齢者の状況、あるいは感染症でいえば感染症の対策のところの専門のところの意見をちゃんと聞けるというような構造が必要じゃないかというふうに私は思います。

 以上です。

大曲参考人 ありがとうございます。

 大変大きな問題で、どこまで具体的にお答えできるかちょっと自信がないのですが、ただ、一つあるのは、医療体制の強化ということは非常に重要で、そのとおりだと思うんですが、一方で、今回、様々な場で議論がありましたが、社会のもろもろの構造を見たときに、感染症にぶち当たったときに、本当に、強いのか、柔軟にやり過ごせるような状況になっているのか、そういう観点での準備というものはやはり必要ではないかと思っています。それができるのは恐らく各省庁の連携の中だと思います。

 例えば、保育所ですとか医療機関ですとか介護施設等を考えても、安全な場所としていくにはどうすればいいかということを考えると、構造をどうするかとか、換気をどうするかとか、そういった話があります。そういったものも、広く長期的に捉えて考えれば安全な社会づくりなんだと思うんです。そこは単純に医療とか介護の話だけでは当然ないわけでして、そこには、平時からの備えということで、各省庁で連携して御対応いただければと思います。

 さはさりながら医療のことも大事で、ただ、やはり今日の話でも何回も出ておりますが、結果的に、柔軟に、しかも強靱に対応しようということになりますと、リスクの高い高齢者あるいは小児も含めた全ての方をしっかりと受け止められる盤石な医療体制というものがやはり重要だなと思います。それがないと、いざというときにストレッチが利かないというのが今回の反省だと思いますので、改めて医療体制の、今のでいいのか、充実するにはどうすればいいのかということに関しては御検討をいただきたいと思っています。

浅野委員 時間が参りましたので、終わります。ありがとうございました。

大西委員長 次に、塩川鉄也君。

塩川委員 日本共産党の塩川鉄也です。

 四人の参考人の皆様には、貴重な御意見を賜り、本当にありがとうございます。何よりも、コロナ対応の最前線で御尽力をいただいてきたその取組に心から敬意を表するものであります。

 それで、私の方からは、最初、四人の参考人の皆様にお答えいただきたいということで、一問、お聞きをいたします。

 この間、新型コロナウイルス感染症につきまして、諸外国と比べて感染者数、死亡者数を抑えてきた、発生初期と比較をして、重症度が低下をしているということとともに、やはり感染者数が非常に増えている中で、死亡者数が大きく増加をしております。

 一つ一つの波を三か月単位ぐらいでくくった死亡者数を数えてみますと、第四波が五千人ぐらい、第五波が三千人ぐらい、オミクロン以降の第六波が一万、第七波が一万三千、第八波は二万を超えるという点では、非常にこの間、急速に、亡くなられた方が増えているという特徴があります。

 こういった状況について、深刻な事態だと私は受け止めているんですけれども、どのように評価をしておられるかということを一つお聞きしたいのと、それを踏まえて、この死亡者数が過去最多になったことを踏まえたときに、政府の今後の公衆衛生体制ですとか医療提供体制の取組が大丈夫なのか、この点についてのお考えをお聞かせいただけないでしょうか。

大曲参考人 ありがとうございます。

 まず、一点目のことからお答えしますと、恐らく日本は、諸外国がこれまでくぐり抜けてきた状況に至るまでに数倍時間がかかっているんだろうと思います。言い方を変えますと、これまでに国民の中で既にコロナにかかった方の比率が、諸外国と比べて明らかに低いんだと思います。それは、先日公開された抗体検査の結果でも明らかだと思います。

 ということは、まだかかっていらっしゃらない方が相当にいるということですので、今後、流行が繰り返されていく中で、ちゃんと対策をしないと、また多くの方が感染して、結果的に、リスクの高い方を中心に残念ながら亡くなる方が増えていくということは十分起こり得ることだと思います。

 当然それは防ぐべきことでありまして、それは二点目の御質問への回答につながっていくわけなんですけれども、一方で社会の活動は正常化する中で、これをどうするかというのは極めて簡単ではない問題だと思います。

 ただ、今、状況を見ていきますと、重症になられる方、亡くなられる方の多くは、やはり高齢の方を含めた、いわゆるハイリスクと言われる方々であります。そうした方々をいかに徹底的に守っていくのかということが非常に重要だと思います。そういう意味で、病院、介護施設の感染対策といったものは非常に重要だと思います。

 もう一つは、医療へのアクセスといいますか、仮にかかってしまったという場合に、そうしたリスクの高い方々にいかに早く診断と治療を届けるか、そういう体制づくりが必要だと思います。

 介護施設の話を聞いても、入所者がお熱を出されたという場合に、なかなか検査をするまで時間がかかるといった厳しい状況というのがあるのはまだ伺っていますし、じゃ、陽性になった、治療が要るとなったときに、内服のお薬なり点滴のお薬なりがすぐに届けられるのかどうかといいますと、日本全国、全体を見たところで、それが十分に体制が整っているのかといいますと、僕はまだだと思っています。

 ですので、そこをしっかりと迅速に整えていくということが必要で、結果的に、何とか亡くなる方を少なくできるというところにつながるのではないかと思っております。

 以上です。

岡部参考人 御質問ありがとうございます。

 先ほどもちょっと申し上げましたように、どんな病気でも、数がどんどんどんどん増えてくれば、そこに一定の重症者、残念ながら亡くなられる方も出てくるので、できるだけ感染症はやはり小規模に抑えていくということがあると思います。ただ、小規模に抑えるために人々が物すごい不便を強いられるということではいけないので、そこのバランスが結局一番難しいところではありますけれども、そこを考えながら対策を取っていくということが必要だろうと思います。

 それから、死亡者数が第八波において数として増えているのは、アドバイザリーボードでも、専門家が集まっていろいろな議論をして、ペーパーを出しております。

 恐らくは、一つは、やはり今申し上げたように、母数が大きくなっている。しかも、それは、全数報告というものをやめたために、恐らくは、検査をしていない方、あるいは検査をしたけれども届けられていない方もいるだろうというふうには思います。しかし、それは、一方では、全数の登録をやることに対する負荷というところからきていることで、やむを得ないことではありますけれども、死者数が増えるというのはやはり余りありがたいことではない。

 したがって、基本的には数を減らすということですけれども、ただ、それだけではなく、死亡の状況が、一番最初、私、今臨床ではやっておりませんけれども、厳しい肺炎の状況から、慢性の病気の状態にある病気がかかって、それによって全身の状態が悪くなっていくというところで、全体の病気の経過が変わってきている。したがって、そこを全体で支援をしていく必要があると思います。

 また、一方では、現在の、我が国だけではないと思うんですけれども、死亡数の統計の取り方というところに、なるほど、いろいろな欠点があるなということが分かりました。例えば、死に至ったときの原因の定義であるとか、どのぐらいの間隔をもって、コロナが原因であったのか原因ではなかったのか、あるいは、実際にはコロナであっても届けていない場合もあるわけなので、そういう死亡統計ということに対する見直しも必要ではないかというような提言をしております。

 以上です。

草場参考人 先ほど御指摘いただいたように、死亡者数の増加という点に関してはやはり懸念すべき状況だというふうに理解をしています。実際、本当に、こういった状況の中で高齢者の健康をどう守るか。そのためには、先ほど申し上げましたけれども、やはりめり張り。リスクが高い方、高リスクの方に対するしっかりとした感染防御、一般の比較的元気な方に関しては緩くしていく、そのめり張りをどうつけていくかというバランスですね、これを常に慎重に考えなきゃいけないということに私は尽きるかなというのがまず一点であります。

 もう一個は、医療提供体制のお話がございましたけれども、健康であっても、発熱、そして上気道症状が出て、せきが出て苦しいという状況は健康な方でも当然ありますので、そういったときにスムーズに受診できる、これが、今回のパンデミックでは当初非常に難しかった。受診が断られるというケースがあったり、保健所に連絡をしても電話がつながらないという形で、結果的に自宅で亡くなった方もおられた。こういったことはもう二度と繰り返してはいけない。

 そのためには、私は持論としてずっとお話ししていますけれども、いわゆるかかりつけ医というものを、国民がしっかりアクセスできる状況をしっかり提供する。それは、今は国民自身の責任の中でかかりつけ医というのを持つということをやっていますけれども、それだけではなくて、国の制度として、きちっとかかりつけ医を持って、何かあれば気軽に電話ができる、そして、そこに必ずアクセスをして、受診がもしできない状況でも、かかりつけ医が、例えば、この病院に行けば大丈夫であるとか、ここではちゃんと検査ができますから行ってごらんなさいというふうに言っていただく。そういった医療のアドバイザーとなるかかりつけ医というものを国民が必ず持つような方向性というものを是非つくっていく、それが一番重要なことかなと思っています。

太田参考人 ありがとうございます。

 お亡くなりになられる方が非常に増えている、まさに私、問題だと思っておりますが、今後もやはり多くの患者さんがコロナにかかっていくということでいいますと、増えていくことは致し方ないというふうには私自身は思っています。

 ただ、欧米と比べますと、欧米は、第一波、第二波、第三波でかなり大きな感染になって、その段階で亡くなられた方が今まで出ている。日本は、何のかんの言って、国民がみんなで協力して時間を稼ぐことができたというのは非常に大きなメリットだろうと思います。ワクチンも手に入れることができました。治療薬も手に入れることができました。なので、これを適切に使えば、高齢化率が世界一で、高齢人口が非常に多い我が国ではありますけれども、諸外国と比べてしっかりとしたいい成績は私は残せるだろうと思います。

 そのために、今、政府の五月八日以降の移行策というのが提示されているわけで、方向性としては正しいと思います。高齢者施設にいかに早期に診断をして治療する体制を構築するか等々あるわけですが、万全かといいますと、これから我々医療現場が試される。病床確保の数も、かなり病床確保料が減額されることによって、大きく減ったりする地域も出てくるかもしれません。診療報酬の方の移行もあります。入院調整の問題もあります。これがちゃんと、求められる方々、高齢者、基礎疾患のある方々に適切に医療が提供できるというところまでこの移行策がスムーズに持っていけるかどうかというのは我々の努力にもかかっているところがありますし、注視していかなければいけないというふうに思っているところでございます。

塩川委員 ありがとうございます。

 もう一問、やはり四人の皆様にお伺いしたいんですが、尾身茂コロナ対策分科会会長は、幾つかの場面で専門家の意見を聞かずに政府が決め、発表してしまうことがあった、安倍元総理のときのマスク配付や、菅前総理のときのGoToキャンペーン、岸田総理の濃厚接触者の待機期間短縮などがそうだ、あるときは十分に聞いてくれるけれども、あるときは全く聞いてくれないということが何度かあったのは事実ですと述べておられます。

 専門家の科学的知見が生かされなかったと感じたような場面がおありだったか、このような、尾身会長と同じようなことを感じたことがあったかどうか、その点についてそれぞれ御意見をいただけないでしょうか。

大西委員長 申し上げます。

 塩川君の持ち時間が少なくなってきておりますので、参考人の御答弁は簡潔にお願いいたします。

大曲参考人 ありがとうございます。

 実際の場でどうだったかということは、僕は実は見聞きできる立場にありませんので分からないわけですけれども、私自身は、国、あとは東京都という形で、専門家ということで発言する機会を与えていただいて、専門的な知見を打ち込んで、打ち込んでといいますか、お伝えしてきたつもりであります。

 最終的な判断としてそれを生かした判断がされるかどうかというのは、また別の場での御判断だと私は認識をしております。

岡部参考人 御質問ありがとうございます。

 二〇〇九年のパンデミックのお話をしたんですけれども、そのときに比べれば随分、専門家と政府関係とのコミュニケーションが取れるようになってきていると思います。ただし、まだ十分ではないと思います。

草場参考人 私は、国の組織に所属してやったことはないので、具体的な細かいことは分かりません。

 ただ、やはりもう少し、決定に関するプロセス、こういう形で考えて、でもこれを危険だと思うのであえてこうしたみたいな、そのワン、ツー、スリーのステップというものを示した形で結論が出てほしい。それが分からないので、突然ぱっと結果だけ出る、それに対して、今までの変化、なぜこう変化したかは分からない、その点は現場からもちょっと不安を感じる部分が非常にありましたので、そういったプロセスの明示、開示というものはやはりやっていただきたいなと思っておりました。

 以上です。

太田参考人 私は、専門家の役割というのはあくまでも助言だと思っております。その助言を基に、最終的に責任のある者が方針を決定するという形です。

 なので、決して専門家の助言どおりにならないということが私は問題だとは思いませんが、あくまでも、その決断をした理由等々をやはり説明をしていただくということが重要なのではないかというふうに思っております。

塩川委員 それぞれ簡潔にいただきまして、ありがとうございます。

 若干時間がありますので、もう一問。

 さきの問いに戻るんですけれども、やはり死亡者数の多い中で、今後の対応について、必要な医療提供体制などが求められているという点について、太田参考人の今日の意見陳述のペーパーでも記述がありましたけれども、クラスター発生時の医療機関への救済策がないと、感染者を受け入れる入院医療機関が増えない可能性が危惧される、適切な対応が必要だとしておられます。どのような対応が必要だとお考えなのかについてお示しいただけないでしょうか。

太田参考人 ありがとうございます。

 先ほどから申し上げているように、これから高齢の方々を守っていくというのがコロナ対策の主眼になってくるだろうというふうに思います。

 そういう意味では、どうしても、感染力の強いウイルスですので、高齢者が集団でいる病院ですとか高齢者施設での院内感染、施設内感染、クラスター発生というのは防げないわけですが、できる限りその犠牲を小さくしていくというのが重要です。

 まずは、早期の検査です。今回の移行に際して、検査に関しては公費から外れるというのが一般の外来のルールにはなりましたが、一応、施設内、病院内でのクラスターの拡大防止のための検査に関しては公費負担を継続していただけるという形で、先日、三月十日の政府方針は出ているということで、ここに関しましては何とか御配慮いただいたというふうに思っています。

 あともう一つは、やはりクラスターが発生しますと、スタッフが疲弊するだけではなくて、その病棟等を一時的に閉じたりというような形で、かなり経済的、経営的に大きなダメージが施設、病院に発生します。今まではそれに対して重点医療機関等の制度をある一定程度流用して支援を行うということができていたわけですけれども、五月八日以降それがどうなるかというのがまだ明確に示されてございません。そこがやはり多くの医療機関等々が心配しているところでございますので、是非ともその辺に関しましては政府として御配慮いただきたいというふうに思っているところでございます。

 以上でございます。

塩川委員 ありがとうございます。

 終わります。

大西委員長 次に、仁木博文君。

仁木委員 有志の会の仁木博文と申します。

 本日は、新型インフルエンザ特措法の改正に伴う意見陳述、四人の参考人の皆様方、本当にありがとうございます。

 まず、大曲参考人の方にお聞きしたいと思います。

 先生の今のお立場で、例えばメイド・イン・ジャパンのワクチンが今のところ誕生していません。日本と経済規模そして国力からいってもちっちゃな国、例えばキューバ、自前のコロナワクチンを作っておりますね。何が原因だとお考えですか。

大曲参考人 ありがとうございます。

 こちらに関しては、日本の今の規制等々を踏まえた中で、一方で、世界にワクチンを送り出すような段階で求められるようなスケール、治験としてのスケールを求められる中で、要はそれができるような体制が今回のコロナの前までできていなかったということなんだろうと思います。

 つまり、新規に病気が発生したときに、迅速にワクチンの種を開発して、それを多くの国で治験を行う、しかも、今回、特にワクチンの開発の早期の段階では、求められる患者さんの数が非常に大きいというところもありましたので、そこのところをちゃんと系統立ってできるような体制づくりがやはりできていなかったということであろうと思います。例えば国際治験を行うためのパートナーとなるような国とか組織の確保とか、その点の準備がやはり必要だったとは思います。

仁木委員 もう一点お聞きします。

 先生、初期に、先生の今のお立場、そして先生のいらっしゃる医療機関においては、新規の未曽有の例えばウイルス感染者が治療なされるところだと思います。思い出していただきたいんですけれども、例えば、治療薬の開発が急がれました。既存の承認を受けている治療薬で目的の違う形のお薬、例えばアビガンとか、寄生虫のお薬、イベルメクチン、そういうのを使ってはどうかという議論がこの国会でもなされました。

 結果として、先生、今落ち着いているところでいうと、例えば中等症以上、重症患者さんにおきましてはレムデシビルとステロイドの合併療法等々あると思いますし、先生のところから、いわゆるエンピリカルなリサーチというか、実証的な研究の下でなされたトライアルの治療方法が確立して、例えば中等症以上、これから疾病分類が五類になると一般の市中病院においてもそういう患者さんを治療していかなきゃいけなくなるわけでありまして、ある種、ガイドラインというか、プロトコールというか、そういうのをお示しになる必要もあると思います。

 先生、そういうふうなことの体制ですけれども、今、国会で議論に上がった今のお薬等々、あるいはそういった今のスタンダードになりつつある治療、先生のところでやられたことというのは、横展開する上で何か問題を感じていらっしゃいませんか。それとも、そういった国民の声とか、また、違う研究でそれぞれ御専門の立場の方の御意見ですね、新薬、まさに創薬には時間がかかりますから、そこまでの間のそういった形の対応、これは、何か現場にいらっしゃってお感じになったことがあればおっしゃっていただきたいと思います。

大曲参考人 ありがとうございます。

 特に、治療法がある程度確立するまでの間にどうすべきか、治療法がない中でどうすべきかということは大変悩んだところであります。いろいろ考えたところもありましたし、また、他国での状況もいろいろと学びました。

 結果的に分かったのは、正当な手続を踏んだ、いわゆるランダマイズド・コントロールド・トライアルと言われるような、偽薬と本当のお薬を比較した試験をきっちりやる、有効性もきっちり出す、安全性もきっちり見るということ、これを迅速にやる、それで世の中で誰にも認めていただけるような結果を出すということをしないと、お薬として出せるお薬というのはやはり出せないんだというのが我々の学んだことです。それは米国等の研究者との議論でも全く意見が一致しているところでありまして、要は、次のことがあったとき、それができるような体制というものが必要だと思いますし、そこは我々も構築に頑張りたいと思います。

仁木委員 以上のことを見ましても、その一つのことは大きいことですけれども、やはり私は、コロナ禍のこの三年以上の、国民が例えば七万二千人以上亡くなった大きな犠牲と、大きな社会的そして経済のダメージを受けた、その検証をしっかりとレビューして、それをまた次の備え、体制づくりに生かすべきだということを再三申し上げておりますし、先日も岸田総理や加藤大臣にも申し上げたところでございます。

 今、先生、私が何でこういうことを最初、冒頭質問したかといいますと、この後、厚生労働委員会の方でも、岸田版CDCと私は言っていますが、国立感染研と先生のいらっしゃるNCGMが合併して、いわゆる研究機構、健康危機管理研究機構というのが誕生するわけですけれども、私は、欧米の、特にアメリカのCDCのような機関をこの際つくっていただけるということを想定していましたし、実は昨日もこの場でそういうことを申し上げたんですけれども、今回のインフルエンザ特措法におけるいわゆる統括庁、プラス研究機構、合わさったものが理想的だと思うんですね。

 つまり、先生が今おっしゃったような、例えば先生のNCGMにおける患者さんのいろいろなデータがあると思うんですね、パラメーターがあると思います。肺の所見もあると思います。そういうのを、ほかの同じレベルで医療をしているところ、コロナ患者さんですね、そういういろいろなパラメーターを血液検査等々で蓄積していただいて、どういった治療を施したらどうなったかということを本当にやっていくことによって、創薬のスピードも速くなったと思いますし、場合によっては、ゲノム医療も、これはゲノム医療法案はまだできていないんですけれども、そういったゲノム医療における議論も、かなりこれから、創薬という面でも欠かせないそういう技術でございますので、そのことの加速にもつながると思うんですが。

 私が言いたいのは、そういった横展開をしようと思っても、NCGMそして国立感染研が合わさった研究機構と司令塔が、ちょっと一体感がないんですね。

 今回の四人の先生方、特措法において、司令塔の人員とか御存じですか。実は百一人、マックスです。これは少な過ぎると思いませんか。どう思いますか、先生。この人数とお立場ですね。これは、医務技監がいて、そして内閣の官房副長官補が三名いるんですけれども、そういうのがやる、例えば、新しい研究機構、あるいはほかの省庁等々の調整役だと思うんですけれども、イメージとしては、そういったところで、何かそこでまた別個、専門的な会議、審議会をつくったりして、そこでまたその都度その都度、上がったことに対して、岸田総理の御判断の下でまた、こういう研究をやるのかどうか、あるいはそういう指令を出していくのかどうか、そういうのを決めていくような感じになりかねないんですけれども。

 昨日も、その担当のトップになるかもしれない後藤大臣に質問しましたが、何か分かりにくい答弁で、はっきりしなかったんですけれども、その辺に関して、ちょっと言いにくい立場かもしれませんが、先生、今、どうお感じになっていますか。

大曲参考人 ありがとうございます。

 行政機構の中でどれぐらいの人員が必要なのかということに関しては、私はよく分かっていないと思います、正直、自分自身は。中身での人の動き、物事の動きというものは分かっていないと思います。ですので、正直分からないと思うんですが、ただ言えるのは、我々の足下のことはよく分かります。

 ただ、そうすると、先生が今おっしゃったのは横展開というところだったんですが、横展開をするには相当な人員がやはり要ると思います。知見を集める、解析をする、大きなデータを扱うといったところと、それらをまとめて、そして展開するという、ある意味コミュニケーションも大事でして、そこにも十分にやはり人を割いていただけないかなというのは、私も現場としては思っています。

仁木委員 ありがとうございます。

 そういうことで、私、今回のこのコロナ禍を経て、パンデミックという中で何を学んだかというと、今回の死亡者数が少ないのも、国民の属性であったり、国民の努力もあったと思うんですけれども、やはり私たち人間が、行動科学というか、いろいろな情報をインプットされて、それに基づいてアウトプット、いわゆる行動を起こしていく、特に、行動変容という言葉が生まれました。

 行動変容する上で大切なリスクコミュニケーション、これは、例えば、今皆さんに思い起こしていただきたいんですけれども、テレビをつけると、小池都知事、あるいは大阪府、吉村知事、あるいはまた政府、安倍総理あるいは菅総理、そういうところがあったと思いますけれども、やはりこの辺の、国民に的確な行動変容をしていただくようなリスクコミュニケーションのありようも大切だと思っています。

 そういうことで、新型インフルエンザ特措法でできる今回の司令塔というのは、そういうことも踏まえて、いわゆる行動科学的な概念を用いて、あくまでもEBPMというエビデンスに基づいた政策立案というか決定をしていくべきだと思いますけれども、このことに関して、岡部先生、何か御知見はありますか。

岡部参考人 ありがとうございます。

 全てになかなかエビデンスができ上がるわけではないので、全てがエビデンスに基づいて何か行動するというのは難しいと思います。

 しかし、そこに、経験あるいは専門領域の話が必要なので、そういうものに対するコミュニケーションはきちんと取っていって、それは一般の方のコミュニケーションもそうですし、行政の中でのコミュニケーションもそうですし、それから専門家対、先ほど御質問の政治をやる方々とのコミュニケーションも同様だと思います。

 したがって、先ほども申し上げましたコミュニケーションを専門にする、必ずしも口先だけという意味ではなくて、専門的な知識に立脚したような、おっしゃるような行動科学であるとか、医学だけではない分野に精通した方の広報あるいは報道、そういったようなものがこれからも必要だろうと思います。

 それに加えては、やはり人数というものは適切な人数が必要であるというのは大曲先生と同じです。

 以上です。

仁木委員 そこで、今、実態からしてどうかなと思うような政策も結構あるんですね。例えば、今、全国旅行支援であったり、あるいは水際対策、これはどういう要件がそういった助成を使えるかというのを御存じかどうかということがあるんですけれども、例えば、ワクチン接種が三回終わっていたら、自由に海外へ行って帰ってきて、拘束時間もなくそのまま自宅へ帰れるという状態なんですね。それが、ワクチン接種の最終、三回目が一年前であったとしてもそうなんです。

 でも、実際、医学的に言いますと、ワクチンの有効性、これはやはり、抗体、いわゆる免疫力が落ちてくると思うんですね、時間とともに。ですから、最初は六か月であったものが五か月になったり、最近では三か月で二価ワクチンを打てるとか、そういう状況になっていると思うわけです。

 ですから、科学的エビデンスといいつつ、現場がそうなっていないということも踏まえながら、大曲先生、場合によったら新しい研究機構の中でまた重責を担われるかもしれませんが、そういった形で、新しい司令塔との関係を、より、そういう横展開、そしてまた、そういったEBPMというのを理解していただいて、場合によったら、例えばアクリル板一つを取ってみても、これは五月五日から飲食あるいはこういった建物がどんどんドラスチックに変わるかもしれませんが、このアクリル板をどう処分するのか。もしかしたら五類からまた二類に厳しくなるかもしれない、そうしたら、これは保管しておいた方がいいのか、それともリサイクルしてアクリルメーカーにまた出せばいいのか。でも、それにもお金がかかっていますよね。

 そういう限られた資源、これは医療の現場もそうですけれども、国家としても限られた資源をどのように配分していくのか、これはやはり有効性といわゆるリスク、このメリット、デメリットというのを考えて判断しなきゃいけない。私は、司令塔というのはそういう役割を担うんだろうなというふうに思っています。

 そういう意味で、こういった横展開に関して、今日は私は強く、また、参考人の皆様方もこれから政府の様々なところで御提言されるようなお立場の方でございますので、またおっしゃっていただきたいと思います。

 そして最後に、草場先生、かかりつけ医のことをおっしゃっていましたが、先生は基本的に、例えばイギリス型のGPみたいなかかりつけ医というのを想定されているんでしょうか。どういうのが理想的なかかりつけ医だと思われていますか。最後に質問したいと思います。

草場参考人 私は、イギリス型の、いわゆるGP制度という形で、全国民に必ず割りつける、家庭医を必ず割りつけるという形は日本ではすぐにはやはり難しいと思っています。

 ただ、少なくとも、かかりつけ医を持ちたいという方がちゃんとひもづく、そして、かかりつけ医側もこの人がかかりつけ患者であるということを認識する、その一対一の関係というものがまずあるということ。そして、そのかかりつけ医が、一定程度、感染症対応ももちろんそうなんですけれども、コモンディジーズという、よくある疾病、よくある症状に対して対応できるということを担保する。まずそこからスタートしていくということでいいのかなと考えております。

仁木委員 ありがとうございます。

 今後、厚生労働委員会の方でも、全世代型社会保障制度の中でかかりつけ医の問題も議論していきたいと思いますので、先生の今御回答いただいたことも参考にしまして、頑張っていきたいと思います。

 今日はありがとうございました。終わります。

大西委員長 次に、大石あきこ君。

大石委員 れいわ新選組の大石あきこと申します。

 参考人の方、どうぞよろしくお願いします。

 太田参考人が、初動対応のときに、まるで戦争のようだった、戦地に赴くような気持ちだったとおっしゃっていて、まさにコロナというのがそういう戦争のようだったなというふうに思っています。そして、これは今なお終わっていないだろうと私は思うんですよ。現場で一生懸命働いて食い止めようとしている方々のことを思えば、これは今なお終わっていない。

 でも、これをもう終わりかけで、戦後処理にかかろうとしているのが今の国のやり方だと考えており、この法案もそういう目で厳しく見ていかないといけないと考えております。やはり、自公政権ですとかこの国会の中と国会の外のギャップというのは大きいなというのは、今日、参考人の皆様のお話を聞かせていただいても改めて感じております。

 私は、今回、地方衛生研究所のことをメインに様々お伺いしたいと考えているんですけれども、私自身は、元々大阪府で公務員をしておりまして、衛生研究所の職員ではないんですけれども、環境職という、技術職という形で公害問題などを窓口に様々地衛研とも関わりがあったんですね。

 地方衛生研究所って地味なので、そんなに知られていなかった。それこそ、コロナがやってきて皆さんがPCR検査をするところというところで大きく話題にもなりましたけれども、当時は本当に人に知られずに、例えば、アスベストという発がん性のある建材ですとかそういったものを国が危険性を分かっていながら規制をせずにたくさん使ってしまって、その結果として、働いている人ですとか、その家族、そして地域住民さんが大いに暴露されてしまったということを用意周到に地図にしていたりとか、そういう研究をされている、ひっそりと、でも地道に情熱を持って市民のための科学というものを追求されている方々に非常に敬意を持って、そういう研究や知見というものが社会を前進させてきましたし、それを尊重できるような政治、行政でなければならないというふうに使命感を感じておりました。

 もう一つの、私の大阪と地衛研という関わりにおいて大きかったのは、二〇一二年に、大阪府と大阪市の、維新市政、府政ですけれども、独立行政法人化すると。大阪府と大阪市でそれぞれあった地衛研を、二つを一つにまとめて、そして民営化手法で独法化する、そのようなことを決定したのが二〇一二年だったんです。

 独法化がいいかどうかというのは今回は触れませんけれども、ただ、その議論の中で、単純検査だからそれは外に外に出すんだとか、二重行政の解消、無駄なものは二つを一つにしてやってしまっていいという暴論の中で独法化というものが進められて、私は非常に危機感を持ち、一職員としても、また一市民としてもそれに反対してきました。二〇一四年に独法化するという話だったんですけれども、それこそ、各界、ある意味、厚労省も動いてだと思いますけれども、延期され、でも、いろいろあって、二〇一七年四月に独法化されてしまったんですね。

 独法化は象徴的なことだと思いますけれども、岡部参考人もおっしゃったと思うんですけれども、全国でも研究所の研究員というのが非常に減らされてきました。

 私、先週、質疑にも立って、これが先週の資料なんですけれども、見ていただいていいですか、遠いですけれども。この青い方のグラフ、減っているのが実数ですね。全国の衛生研究所の二十年の職員の推移、減っています。二〇〇九年、新型インフルが起きたときも、これは減らしたら駄目だ、体制強化が要るんだと専門家が言ったのにもかかわらず、右肩下がりに下がっております。そういう全国で右肩下がりになったのに対して、更に大阪ではこんなに減っているぞというのも今回グラフにして提供したんですよ。

 全国で二十年間かけて減り、減ったピークが二〇一八年度、マイナス一八・七%なんですね。その翌々年にコロナが来ていますから、このように減らされた体制でコロナを迎えた。大阪に至っては、独法化のときに更にマイナス四二・八%まで減員されているんだという、ここに、今回のこの戦争とも呼べるような状況。そして、大阪でもコロナの死亡ワーストワンが続いています。これだけが原因ではないですけれども、やはり科学的な意思決定ですとかそういうことを軽視する在り方というのが、今回のコロナ対策で無策が出てしまったんじゃないかということを私は先週質疑で行いました。

 そして、私は今、地方衛生研究所で、コロナの検査分析とか追跡調査、そういう領域の分野での人員削減のことを説明しましたけれども、のみならず、医療分野ですとか、今日来ていただいている方、様々な領域でも、こういったこと、人材やお金がないんだとか、又は科学的な意思決定が担保されていないということが問題となって、コロナ禍で火を噴いたのだと考えます。

 こういった、戦争でもそうですし、災害でもそうですし、今回のパンデミックでもそうですけれども、普通の生活をしている人からしたら、私も含めですけれども、どうしても風化してしまう。これはある意味でやむを得ない面があるかと思います。だから、これをどう、次、再発防止するために何をやっていくのかという議論が重要だと思います。

 もちろん、風化してはいけない、リメンバーを呼びかけ続けるということも非常に大事です。そして、起きてしまった、本来起きてはならなかった、食い止められたことが起きなかったということに対し、又は、医療現場や研究所、保健所の現場で、とんでもない、過労死レベルの仕事を続けさせられて病んでしまった人、辞めてしまった人もおられますし、人生がそこで止まってしまったという方もおられますから、そういうことへの反省や補償というものも必ず必要だと考えます。

 そして、今一番やらなきゃいけないことというのが、どうしても社会では風化してしまうので、だけれども、関心が高まったときにこそ、次を起こさないために、最低限、法的に必要なことを書き込まなきゃいけないと考えております。

 それで、衛生研究所のことでいえば、先週も質疑で提案したんですけれども、このように、国は、財政措置したんだ、横ばいに人員の予算を措置していますと言うんですけれども、実数で減っているんじゃないか、実際減っていることが問題になったんだから、法律の中で、標準の人員体制、これを担保するようにということを書き込まなければいけないということを私は提案しました。

 岡部参考人にお伺いしたいんですけれども、こういった、今のうちに次のために法的に書き込むということはどう思われるか。その際、単に書き込めばいいというものでもないですし、何か法的にこの際整備しておいた方がいいものというのを、改めてポイントを教えていただけたらと思います。よろしくお願いします。

岡部参考人 御質問ありがとうございます。

 地味な地衛研におりますので、ずっとやっていますけれども。

 ただ、私、先ほど申し上げましたように、例えば、感染研にいたときの後半の十年間は、人員削減と予算削減との闘いでした。地衛研は更にそれよりひどい状況にあります。地域によって違うので、私のいるところはまだいい方なんですが、お示ししたようなグラフのように、各地の衛研の方で、人数の削減、それから統廃合、もちろんそれに関する予算の削減というのは非常に頭の痛い問題で、地衛研の中でも、それに対する要望を繰り返して行っております。

 それは、おっしゃるように、地衛研がどういう仕事をしていたかということがなかなか目立たないところでもあるのですけれども、実際に、危機という状況だけではなくて、日常から、それこそ市民の健康を守るというような形での検査、そういうものに対する重要性を是非多くの方に分かっていただきたいところでありますし、ただ、それがどういうことをやっているかということの説明を我々がもっとやらなくちゃいけないということになろうかと思います。

 また、何か書き込むということですけれども、今、御存じだと思うんですけれども、地衛研は今まで法的な位置づけが全くなくて、通知でそういうものが設置されていたというのが、今回、地衛研も地域保健法の中に組み入れるというような話も出てきていますので、そういうところは期待するところであります。全ての検査、研究をやるわけではないんですけれども、きちっとそういうようなところで、公的な機関が、民間ではできない、利益とかそういうこととは離れたところでのきちっとした検査、研究を続けるところであるというところに対する支援、理解はいただきたいというふうに思います。

 以上です。

大石委員 ありがとうございます。

 まさに今おっしゃられたようなことに関連して、岡部参考人と太田参考人にお伺いしたいんですけれども、まさに、それぞれの研究所ですとか医療現場というのは、コロナだけやっているわけじゃないですよね。むしろ、コロナ前は、コロナ以外もいっぱいやっているというわけです。

 保健所もそうですよね。今回、保健所にたくさん人はつけたんだとか、又は、データにすると、保健所の職員は横ばいかちょっと増えているんですね。でも、だから国は措置していますでは違うんだよということを言いたいんですよね。保健所に関しても、自殺予防の精神の業務ですとか、又は、社会が孤立化している中で母子に関することとか、今、保健所の社会的役割が上がっていて、求められることが上がっている中で、だけれども、そのつけられている人数が足りない、そういう問題も見ていかなきゃいけなくて、なので、そのお二人に是非現場のことをお伺いしたいんです。

 研究所にも医療にも、コロナ以外でふだんやられていることがいっぱいあると思うんですね。先ほど、病院でも、元々赤字じゃないか、それがコロナで黒字になった、せこいみたいな報道じゃないだろうと。前の、元、なぜ赤字なのかというところに着目しなければ、コロナのようなパンデミックが来ても、当然対応できる体力がないということを示唆していただいたと考えます。

 なので、そういった、コロナ以外でも元々、岡部参考人も人員削減との闘いをされていた、太田参考人もそのように前からの赤字を問題にされていて、そのお二人が、元々の、今、コロナ以外で何かボトルネックになっていることというのがあれば、教えていただけたらなと考えます。よろしくお願いします。

岡部参考人 ありがとうございます。

 おっしゃったように、地衛研というのは、必ずしも感染症だけをやっているのではなくて、環境に関する問題であるとか、水であるとか、食の安全であるとか、いろいろなことをやっております。そこのレベルを落とさないようにしながら今回の対応というのは、非常に難しい。

 となると、例えば、PCR検査でも、無尽蔵に引き受けるわけにはいかない。しかし、それを自動化するんだとすると今度は膨大な予算が要るというジレンマに苦しみながらやっております。

 しかし、将来的には、全ての検査をやるわけではないけれども、基礎的な検査、それから、地方衛生研究所というのは検査だけをやっているのではなくて、例えば感染症情報の分析であるとかサーベイランスであるとか、そういうところも実は担当をしているんですけれども、なかなかそこにも日が当たらないので、そういうことを含めた形での地方衛生研究所のサポートというものは是非やっていただければと思います。

 幸いにして、パンクになってしまったような地衛研はないんですけれども、ただ、その代わり、例えば純粋なる研究的な業務がちょっと後回しになっているとか、長い目で見ると非常に損失だと思いますので、そういうようなことをきちんとできるような、平時にこそそういうような議論をやっていただければと思います。

 以上です。

太田参考人 ありがとうございます。

 病院の置かれている状況、コロナ前もかなり厳しかったというのは先ほどお話をさせていただきましたが、今、五月八日以降の移行策の後には、基本的に元に戻ろうとしています。元に戻すということは、医療が持続的に維持できるような状況じゃない世界まで、診療報酬だとか病床確保料、補助金を下げるという形で今動いているということに関して大きく危機感を持っています。

 やはりウィズコロナにおいて医療機関が医療を提供するためには、多分、以前のところに戻るのではなくて、新たなこれぐらいの体制をつくらなきゃいけないというところに戻らないと、持続可能な医療にならないというふうな危惧をしております。

 さらに、最近は光熱費の高騰、物価の高騰、また、岸田首相が年頭におっしゃられましたように、物価上昇率を超える処遇改善というのを、我々、公定価格である診療報酬の下で医療は行っていかなければいけないという形になります。二〇二四年は、診療報酬、介護報酬、障害サービス報酬の同時改定の年、当然、財源の限られている状況の中での単価の見直しの議論のタイミングではありますけれども、是非とも、国民の方々、先生方におかれましても御理解いただいて、何とか医療がしっかりとした体制で維持できるように御配慮いただければというふうに思っています。

 以上となります。

大石委員 皆様、ありがとうございました。

 この法案で統括庁をつくってPDCAを回すんやと内閣官房の後藤大臣がおっしゃるんですけれども、こういう現場の声を聞いて長期に横たわる課題というものを解決しないと、これはPDCAを回すなんというのは全くほど遠いことだなと改めて感じ、私のできることをやっていきたいと思います。

 どうもありがとうございました。終わります。

大西委員長 これにて参考人に対する質疑は終了いたしました。

 この際、御挨拶申し上げます。

 参考人各位におかれましては、貴重な御意見をお述べいただきまして、誠にありがとうございました。委員会を代表いたしまして厚く御礼を申し上げます。(拍手)

 次回は、来る二十二日水曜日午後零時五十分理事会、午後一時委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。

    午後零時三分散会


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