衆議院

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第9号 平成28年11月18日(金曜日)

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平成二十八年十一月十八日(金曜日)

    午前十時開議

 出席委員

   委員長 鈴木 淳司君

   理事 今野 智博君 理事 土屋 正忠君

   理事 平口  洋君 理事 古川 禎久君

   理事 宮崎 政久君 理事 井出 庸生君

   理事 逢坂 誠二君 理事 國重  徹君

      赤澤 亮正君    安藤  裕君

      井野 俊郎君    大西 宏幸君

      加藤 鮎子君    門  博文君

      菅家 一郎君    城内  実君

      鈴木 貴子君    田畑  毅君

      武部  新君    辻  清人君

      中谷 真一君    野中  厚君

      藤原  崇君    古田 圭一君

      牧島かれん君    宮川 典子君

      宮路 拓馬君    山田 賢司君

      吉野 正芳君    和田 義明君

      枝野 幸男君    階   猛君

      山尾志桜里君    大口 善徳君

      吉田 宣弘君    畑野 君枝君

      藤野 保史君    木下 智彦君

      上西小百合君

    …………………………………

   法務大臣         金田 勝年君

   法務副大臣        盛山 正仁君

   法務大臣政務官      井野 俊郎君

   政府参考人

   (金融庁総務企画局審議官)            水口  純君

   政府参考人

   (法務省民事局長)    小川 秀樹君

   政府参考人

   (中小企業庁次長)    木村 陽一君

   法務委員会専門員     矢部 明宏君

    ―――――――――――――

委員の異動

十一月十八日

 辞任         補欠選任

  安藤  裕君     中谷 真一君

  奥野 信亮君     武部  新君

  鈴木 貴子君     加藤 鮎子君

  田畑  毅君     若狭  勝君

  宮川 典子君     和田 義明君

同日

 辞任         補欠選任

  加藤 鮎子君     鈴木 貴子君

  武部  新君     奥野 信亮君

  中谷 真一君     安藤  裕君

  和田 義明君     大西 宏幸君

同日

 辞任         補欠選任

  大西 宏幸君     牧島かれん君

同日

 辞任         補欠選任

  牧島かれん君     宮川 典子君

    ―――――――――――――

十一月十八日

 選択的夫婦別姓の導入など民法等の改正を求めることに関する請願(畑野君枝君紹介)(第五六一号)

 部落差別の解消の推進に関する法律案に断固反対し、成立させないことに関する請願(藤野保史君紹介)(第六二二号)

 国籍選択制度の廃止に関する請願(辻元清美君紹介)(第六二八号)

 同(中川正春君紹介)(第七〇〇号)

 もともと日本国籍を持っている人が日本国籍を自動的に喪失しないよう求めることに関する請願(辻元清美君紹介)(第六二九号)

 同(中川正春君紹介)(第七〇一号)

は本委員会に付託された。

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 政府参考人出頭要求に関する件

 参考人出頭要求に関する件

 民法の一部を改正する法律案(内閣提出、第百八十九回国会閣法第六三号)

 民法の一部を改正する法律の施行に伴う関係法律の整備等に関する法律案(内閣提出、第百八十九回国会閣法第六四号)


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     ――――◇―――――

鈴木委員長 これより会議を開きます。

 第百八十九回国会、内閣提出、民法の一部を改正する法律案及び民法の一部を改正する法律の施行に伴う関係法律の整備等に関する法律案の両案を一括して議題といたします。

 この際、参考人出頭要求に関する件についてお諮りいたします。

 両案審査のため、来る二十二日火曜日午前九時、参考人の出席を求め、意見を聴取することとし、その人選等につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

鈴木委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

 引き続き、お諮りいたします。

 両案審査のため、本日、政府参考人として金融庁総務企画局審議官水口純君、法務省民事局長小川秀樹君及び中小企業庁次長木村陽一君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

鈴木委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

鈴木委員長 これより質疑に入ります。

 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。菅家一郎君。

菅家委員 おはようございます。(発言する者あり)ありがとうございます。

 自由民主党の菅家一郎でございます。質問の機会を与えていただきまして、まずは御礼申し上げたいと存じます。

 民法の一部を改正する法律案について質問をさせていただきます。

 契約のルールを社会の変化に沿ったものとして、百二十年ぶりに、約二百項目に及ぶこのたびの大改正ということで、関係各位の皆様方、取りまとめに心から敬意を表したいと存じます。

 それでは、今回の改正案を提出した目的は何か、そして具体的にどのような改正項目があるのかを、まずはお示しいただきたいと存じます。

盛山副大臣 今、菅家委員から御指摘がありましたとおり、民法が制定されましたのは明治二十九年、一八九六年ということで、今からもう百二十年前になります。それ以来、債権関係の規定につきましては、実質的な見直しがほとんど行われず、制定時の規定、内容がおおむねそのまま残されたまま現在に至っているわけでございます。もちろん、百二十年ということでございますので、この間における我が国の社会経済情勢は大きく変わっております。取引の内容も高度化、複雑化し、情報伝達の手段、インターネットその他が飛躍的に発展する、いろいろな変化がございます。

 また、裁判の実務におきましても、多数の事件について民法の解釈あるいは適用する中で、膨大な数の判例が蓄積されております。さらには、確立された学説上の考え方が実務で広く受け入れられ、明文ではない法規として解釈の前提となっております。しかし、それらの中には、条文からは必ずしも容易に読み取ることができないものも少なくありません。法律の専門でない国民の一般にとっては、民法が定める基本的ルールがわかりにくい、こういうことになっております。

 そこで、民法のうち、取引社会を支える最も基本的な法的基礎である契約に関する規定を中心に見直しを行うこととしたものでございます。

 具体的には、職業別の短期消滅時効の特例を廃止することによる時効期間の統一化、年五%の法定利率の三%への引き下げその他、事業用融資の保証人になろうとすることについての大きな改正、そして四番目として、定型約款に関する基本的な規律の創設その他でございます。そしてまた、国民一般にわかりやすいものとする視点から、意思能力を有しない当事者がした法律行為が無効であることの明文化、将来発生する債権譲渡等についての明文化、賃貸借の終了時における条項の明文化、こういったものを盛り込んだものでございます。

菅家委員 それでは、今お示しされた点について、少し詳しく質問をしてまいりたいと思います。

 まずは時効についてでございますけれども、消滅時効については、知った時から五年という主観的起算点からの消滅時効の規定を新たに追加するとのことであります。

 現行法でも、一年、二年、三年、五年、それから原則的な時効期間である十年と、さまざまな時効期間の定めがありますが、短期消滅時効を廃止し、主観的起算点からの消滅時効の期間を五年とするとの規定を追加した、その理由についてお示しをいただきたいと存じます。

小川政府参考人 御指摘ありましたように、現在の民法百七十条から百七十四条まで、それから商法にも短期消滅時効の規定がございます。しかし、これらの規定は、その適用の有無の判断が困難であったり、社会経済情勢の変化に伴って合理的な説明が困難なものもございます。そこで、これらの短期消滅時効の特例を廃止した上で、基本的な時効期間については統一化を図り、シンプルなものとするということが合理的であると考えられたわけでございます。

 ただ、特例を単純に廃止するだけでは、例えば現在二年とされております生産者や卸売商人の売買代金債権の時効期間が今度は十年に大きく延長されることになるわけですが、これに対しては、関係諸団体からも、領収書の保存費用など弁済の証拠保全のための費用が増加するといった懸念が示されました。さらに、現在五年で時効が完成する商行為債権につきましても、商取引の実情として多数の取引債権に適用されておりまして、この規律を前提として安定した実務運用が行われているため、改正の影響を極力抑える必要があるとの指摘が、これも実務界から強く寄せられたところでございます。

 以上の問題状況を踏まえまして検討を進めまして、法制審議会では、現行法の十年という時効期間を維持した上で、権利を行使することができることを知ったときから五年の時効期間を追加し、そのいずれかが完成した場合には時効により債権が消滅するとの案が大方の賛同を得るに至ったところでございます。

 そこで、改正法案におきましては、先ほどお話がありました五年の主観的な起算点による時効期間を追加することといたしました。

菅家委員 私も、飲み屋のツケが一年だったのが延びるということになりますから、ある意味では一つの時代の流れかなというふうに感じます。

 さて次に、改正法案においては法定利率を年三%に引き下げることとしており、利率を引き下げることについては賛成であります。

 ただし、法定利率については貸出約定平均金利を参考にしているとのことでありますが、現在の貸出約定平均金利の水準は極めて低いですね。例えば、長期プライムレートなどの水準も低い状況であります。そのような中で、法定利率を三%に下げたとしてもなお高いというような印象がございますけれども、法定利率を三%にした理由をお示しいただきたいと存じます。

小川政府参考人 法定利率の引き下げ幅の検討に当たりましては、貸出金利の水準を参照にすべきであるというふうに考えられるわけですが、法定利率の適用場面はさまざまでありますため、借り手が大企業である場合だけでなく、中小企業あるいは一般消費者である場合の水準も広く考慮に入れる必要があるかと考えられます。

 例えば、借り主が大企業や公共団体である場合には極めて低金利となり、かつ、その貸付額も多額に上りますが、国内銀行の貸出約定平均金利の平均値にはこのような特殊性のある大口の貸し出しも含まれるため、貸出約定平均金利は、そのままでは、借り主が中小企業または一般消費者である場合も視野に入れた数値としては低過ぎるということに留意する必要があろうかと思います。

 同様に、御指摘がございましたプライムレートにつきましても、優良企業向けの貸し出しに適用される最優遇金利でありますために、借り主が中小企業または一般消費者である場合を視野に入れれば、これも相当に低いものと言わざるを得ないと考えられます。

 さらに、法定利率の引き下げの際には、遅延損害金の額が低くなり過ぎると債務の不履行を助長する結果となりかねないことや、これまで百二十年にわたりまして年五%で実務運用がされてきたこととのバランスも考慮する必要があるといった実務的な観点からの指摘も強くされたところでございます。

 改正法案におきましては、以上のさまざまな事情を総合的に判断するとともに、実務上取り扱いが容易な、簡明な数値とする必要性なども勘案いたしまして、引き下げ後の法定利率を年三%といたしたものでございます。

菅家委員 それでは、次は保証についてであります。

 事業性の融資については、経営者その他の個人が保証人となったため、その生活が破綻する例も少なくないと言われており、保証人の保護は重要であると認識をしております。

 今回、改正法案では、経営者以外の第三者が事業用融資の保証人となる際は、公証人による意思確認を受けなければ保証は無効になる規定を新設しているわけであります。

 経営者以外の第三者が保証人となることは全面的に禁止すべきというような意見もありますが、今回、公証人による意思確認を受ければ保証人になることができるとした、その理由をお示しいただきたいと思います。

小川政府参考人 法制審議会におきます審議の過程では、今御指摘がございましたような、事業のために負担した貸し金等債務を経営者以外の第三者が保証することを全面的に禁止するという意見についても検討が行われました。

 しかし、経営者以外の第三者によるいわゆる第三者保証の中には、これはエンジェルなどと呼ばれます、個人の投資家が事業の支援として自発的に保証することなども現に存在しているところでございます。このため、第三者保証を全て禁止することに対しましては、とりわけ中小企業の円滑な資金調達に支障を生じさせ、金融閉塞を招くおそれがあるとの指摘が中小企業団体からの強い意見として示されました。

 また、保証人がその不利益を十分に自覚せず、安易に保証契約を締結するような事態を防止する施策を講ずることができれば、第三者保証を全面的に禁止しなくても、保証人がその不利益の具体的な内容をよく理解した上で、保証契約を締結するかどうかを自己の資力や主債務者との関係その他の事情を勘案しつつ決定することができると考えられるわけでございます。

 そこで、改正法案におきましては、第三者保証を全面的に禁止する措置は講じないこととする一方で、保証人がその不利益を十分に自覚せず、安易に保証契約を締結する事態を防止するという観点から、事業のために負担した貸し金等債務を保証する際には、原則として公証人による意思確認を経た上で保証意思宣明公正証書を作成しなければならないとしたわけでございます。

菅家委員 公正証書を作成することとしても、それによって保証人の保護を図ることが本当にできるのか、公正証書は具体的にどのような手続を経て作成することとなるのか、公証人が公正証書を作成しないことになるのはどのような場面なのか、これについてお示しをいただきたいと思います。

小川政府参考人 事業のために負担した貸し金等債務に関しまして、保証人になろうとする者は、保証契約を締結する前に、保証意思宣明公正証書の作成を公証人に対して嘱託することになります。

 保証意思宣明公正証書は保証契約締結の日の前の一カ月以内に作成される必要がございます。保証人になろうとする者は、公証人に対し、保証意思を宣明するため、主債務の内容など法定された事項を口頭で述べなければならないとされております。

 そして、公証人は、保証人になろうとする者が保証しようとしている主債務の具体的な内容を認識していること、それから、保証契約を締結すれば、保証人は保証債務を負担し、主債務が履行されなければみずからが保証債務を履行しなければならなくなることを理解しているかなど、こういった点を検証いたしまして、保証人になろうとする者が相当の考慮をして保証契約を締結しようとしているか否かを見きわめ、仮に保証意思を確認することができないといった場合には公正証書の作成を拒絶しなければならないというわけでございます。

 このように、公的機関であります公証人が保証人となろうとする者の保証意思を確認することによりまして、保証人が保証のリスクを十分に認識することなく安易に保証契約を締結し、生活の破綻に追い込まれるという事態を抑止することができるものと考えております。

菅家委員 今回、改正が行われますと、さまざまな面で社会に影響が生じると考えられます。施行日を「公布の日から起算して三年を超えない範囲内において政令で定める日」としておりますが、この期間で法務省としてどのような周知活動を行う予定なのか、お示しをいただきたいと思います。

盛山副大臣 何しろ百二十年ぶりの大改正ということで、国民の皆さんに大きく影響を与えると思っておりますので、法律として成立した後は、その見直しの内容を国民に広く十分に周知する必要がある、そんなふうに考えております。

 現在の案では、改正法の施行日を、原則として公布の日から三年を超えない範囲内において政令で定める日としてございますので、この間に十分な周知活動、こういったものを行いたい。具体的には、今後検討していくわけになりますけれども、全国各地で説明会を開催すること、あるいは法務省のホームページ、こういった、国民に対してできるだけわかりやすい、効果的な周知活動を行っていきたいと考えております。

菅家委員 この法律によって、消費活動が円滑に、消費社会の成熟へつながりますことを御期待申し上げまして、質問を終わります。

 ありがとうございました。

鈴木委員長 次に、吉田宣弘君。

吉田(宣)委員 公明党の吉田宣弘でございます。

 本日も、法務委員会においてこのように質問の機会を賜りましたこと、委員長また理事の皆様、委員の皆様、本当に感謝を申し上げます。得がたい時間でございます、早速質問に入らせていただきたいと思います。

 私も大学時代は法学部におりまして、私が民法を勉強していた当時というのはまだ片仮名表記の時代です。だんだん片仮名表記で勉強していた方が少なくなっていくのかなと思うと、ある意味、非常に感慨深いものがあるのですけれども、その後、平仮名、いわゆる現代仮名遣いに変わって、今般、債権関係に関して大改正が行われるという意味におきましては、私も、やはり時代の流れ、変化、そういったものを感じながら今回も勉強をさせていただいたところでございます。

 質問に入らせていただきます。

 先ほど、菅家先生の御質問にもありました、そういう意味からすると、多少重複するところがあるかもしれませんので、その点については御容赦いただきたく思います。通告しておりました第一問目については、菅家先生の御質問にございましたので、その御答弁もこれからしっかり私も読ませていただいて、さらなる質問に続けたいと思います。一問飛ばして、通告の二題目から入らせていただきます。

 先ほど来、盛山法務副大臣また政府参考人の方から御説明もございましたけれども、ほかにも細やかな改正点も多いと思うんですね。このような多くの改正事項というのは、これまでどのような審議を経て今般の改正案としてでき上がってきたのか、また、このような基本的な法律の改正に当たっては、実務家や中小企業などのユーザーの声をしっかりと反映させる必要があろうと私は思っておりますけれども、この点についてどのような配慮があったか、当局からお聞きしたいと思います。

小川政府参考人 まず、提出に至ります経緯でございますが、平成二十一年の十月に、法務大臣から法制審議会に対しまして、民法のうち債権関係の規定について、契約に関する規定を中心に見直しを行うことを内容とする諮問がされました。

 これを受けまして、法制審議会には、法律実務家や各種団体の代表などの委員が参画する、これは民法(債権関係)部会と言っておりますが、この部会が設置されました。委員十九名の内訳は、学者七名、法務省三名のほか、裁判官二名、弁護士二名、経済団体、労働団体の代表四名、消費生活相談員一名でございまして、実務家やユーザーの声が反映されるように配慮がされたところでございます。

 そして、この部会におきまして、平成二十一年十一月から二十七年の二月までの五年余りにわたりまして、合計九十九回の会議、それから分科会としまして十八回の会議が開催されまして、その審議においては、さらにパブリックコメント手続を二度にわたって行い、関係諸団体のヒアリングも実施するなどして、部会に委員として参加していない団体などの意見を聴取する機会を積極的に設けてまいりました。

 このように、実務家やユーザーの意見を反映させた結果、保証人保護の拡充ですとか法定利率の見直しなどを初めとする実質的なルールの見直しを行う改正項目については、実務界からの改正の必要性の指摘などを踏まえた立案が行われておりまして、それが最終的な改正案の内容となっております。最終的な改正案の内容につきましても、実務において適切に運用することが可能なものとなっておるというわけでございます。

 以上のとおり、改正法案の立案に当たりましては、実務家やユーザーの声を適切に反映させたものと考えております。

 以上でございます。

吉田(宣)委員 丁寧な審議、そういったものがなされてきたというふうに受け取りました。

 今般の法律が晴れて成立した暁には、ユーザー、そういった方々に、法律事務所も含めてですけれども、本当にわかりやすい内容というふうなものになっているかとも思います。積極的に意義をこれからも見出していきたいなと私は思っております。

 次に移ります。

 先ほどの質問にもありましたけれども、私も、公証人の保証意思というものの確認手続、これは非常に大きな論点だと思われます。そのことについて触れさせていただきたいと思います。

 第三者保証は大きな論点ですけれども、今回の改正において、事業のために負担した例えば貸し金等の債務、これを主債務とする保証契約を締結する際に、保証人になろうとする者の意思、これはちゃんとそういうふうな意思がはっきりしているのかということについて、まさに法律のプロである公証人の方がしっかり確認をするというふうな手続が新設をされているということでございます。

 このような保証人の意思というものを確認するに当たってプロが担う、そういった規定の新設について、その趣旨を改めて確認させていただきたいと思います。

小川政府参考人 公証人によります意思確認の手続は、先ほども申し上げたところでございますが、保証契約のリスクを必ずしも認識しないで保証人になろうとする方が生じないように、いわば、そういった保証契約の持つリスクの確認を公的機関であります公証人のもとでしっかりチェックするということがその趣旨でございます。

吉田(宣)委員 確かに、以前は保証の範囲というものも、一般の国民からすると非常にわかりづらかった印象があります。特に、きょう質問できるかどうかわかりませんけれども、根保証というふうな余り一般の国民が聞きなれない保証形態があって社会問題になったことは、これは若干古い事件であったかと思いますが、私は鮮明に覚えております。

 そういった意味において、保証人が公証人のもとまで足を運ぶこと、手続を経るということは、しっかりと保証債務を負担するという意思が明確にあらわれるということであろうかと思いますので、保証人の保護には配慮がなされているというふうにも思います。

 ただ、一方で、第三者保証はなるたけなくしていくべきであるというふうな御意見にも、やはりこれは重い意味があるというふうに思っております。この第三者保証をできれば全面的に禁止をしていければ私もいいなとも思うのですけれども、一方でやはり、そういった部分を全面的に禁止してしまえば、いわゆる信用というものの補完において、事業の資金繰りというのもなかなか難しくなってくるというふうなことかとも思っております。

 そういう意味では、中小企業へ円滑に資金を融資するに当たって、資金調達というものをやりやすくするという一方で、第三者という方を保護するというバランス、このバランスが非常に難しいのだとは思いますが、私は、この改正案については、そのバランスを本当に絶妙な感じで配慮をされている規定だというふうに思っております。

 質問を続けさせていただきます。

 今般の改正では、例えば主債務者である会社の取締役など、この意思確認を行う必要がない場合があるということでございますが、ここでもちょっと私確認をさせていただきたいんですけれども、この改正案において、公証人による保証意思の確認が不要となるのはどのような場合か、確認をさせてください。

小川政府参考人 改正法案におきまして、保証人になろうとする者は、債務者が法人である場合のその取締役など、それから、主債務者が法人である場合のその総株主の議決権の過半数を有する者など、また、主債務者が個人である場合のその個人と共同して事業を行う者、またはその個人が行う事業に現に従事している配偶者のいずれかである場合には、事業のために負担した貸し金等債務を主債務とする保証契約などの締結に当たりまして保証意思の確認は要しないということとしております。

吉田(宣)委員 これも一つの絶妙なバランスをとったというふうなことかと思います。

 次に、もしかするとこれが最後になるかもしれませんけれども、規定の中に、情報の提供義務というふうなものが盛り込まれているかと思います。

 改正法案において、事業のために負担をする債務について、完全に禁止するとの方策はとっていないと。保証人被害を防止する観点から、改正法案においては、第三者保証を念頭にさまざまな施策を実施しているというふうなことかと私は認識をしております。

 まず、保証人となろうとする者が主債務者の財産や収支の状況をあらかじめ把握をし、保証債務の履行を現実に求められるリスクというものを検討することができるとする、主債務者の財産や収支の状況等に関する情報の提供義務について、どのような改正が行われるかについて御説明を願いたいと思います。

小川政府参考人 保証人になるに当たりましては、主債務者の財産や収支の状況などをあらかじめ把握し、保証債務の履行を現実に求められるリスクを検討すること、これが非常に重要だというふうに考えております。とりわけ、事業のために負担する債務は極めて多額となり得るものでありまして、この債務を保証することは個人である保証人にとって負担が大きなものとなるわけでして、これを主債務とする保証においては、個人である保証人が主債務者の財産及び収支の状況を把握することが特に重要であるというふうに考えられます。

 しかし、現行法上は、保証人になろうとする者において、主債務者の財産及び収支の状況などに関する情報を得ようとしましても、これを制度的に保障する規律は設けられておりません。

 そこで、改正法案におきましては、保証人が個人である場合には、保証人保護の観点から、事業のために負担する債務を主債務とする保証などでは、その委託をする主債務者は、自己の財産及び収支の状況等に関する情報を保証人となろうとする者に対して提供しなければならないということとしております。

 その上で、この情報提供義務の実効性を確保する観点から、主債務者がこの情報提供義務を怠った場合には、そのために誤認をし保証契約の申し込みなどをした保証人に保証契約の取り消し権、これは債権者の立場にも考慮いたしまして、情報提供義務違反があることを債権者が知り、または知ることができたときに限るわけでございますが、保証人は保証契約を取り消せることとしております。

吉田(宣)委員 もう質問を終わりますけれども、まだ質問したい事項というのは実はたくさんたくさんございました。これからも、質問の機会をぜひいただきまして、国民の皆様にわかりやすい委員会審議に努めてまいりたいと思いますので、どうかよろしくお願い申し上げます。

 以上で質問を終わります。

鈴木委員長 次に、逢坂誠二君。

逢坂委員 おはようございます。民進党の逢坂誠二でございます。

 それでは、民法の改正について質疑をさせていただきたいと思います。

 私は、今回の民法の改正、いろいろたくさん、範囲が多岐にわたっているんですけれども、原理、原則、原点をしっかり確認しながらやっていくことが大事ではないかと思っています。取り組むべき物事が大きければ大きいほど原理、原則、原点を忘れがちになってしまって、その物事をなすことだけが目的になってしまうということがあるものですから、原理、原則、原点を確認しながら丁寧な議論をしていきたいというふうに思います。

 きょうの答弁ですけれども、基本的には民事局長に多くお答えいただきたいと思っています。必要があれば政務の皆さんにも御意見を伺いたいというふうに思います。

 まず最初に、今回の民法の改正ですけれども、これは何のために何を目的にして行うのかというところ、それはどうでしょうか。

小川政府参考人 現行民法は百二十年前にできた後、特に債権法に関する部分はほとんど見直しがされていない状況でございました。しかし、この間、社会、経済の変化は著しいものがあり、取引の高度化ですとか情報の発達など、さまざまな事象が生じております。それに対応するというのが一点目でございます。

 それからもう一点は、この間、学説や裁判などにおきまして一定のルール、いわゆる判例などによりますルールが形成されてきたわけでございますが、それは条文上からは見えない。要するに、国民の方からは条文を見ただけではそういった確立したルールも見えない状況でございましたので、その意味で国民にとってわかりやすいものとする、これが二点目の目的でございます。

逢坂委員 それで、原理、原則、原点みたいなことを確認させていただきたいんですが、まず、民法という法律は何のために存在をしているのか、どういうことを意図して民法というのは存在しているのか、そして、その作用を受ける者、誰のために存在している法律なのか、この点、いかがですか。

小川政府参考人 まず、民法とは何かという点でございますが、この点につきましては、学問的にもさまざまな考えがあるようでございます。

 ただ、大まかに言いますと、私人間の法律関係について定める私法のうち、一般法あるいは基本法とされているもの、これが民法であるというふうに言われているようでございます。

 それから、民法は誰のための法律かということでございますが、民法は、先ほども申し上げましたとおり、私法の一般法あるいは基本法でありまして、個人も法人も含むという意味で、広く人を対象として、裁判規範それから行為規範として機能するものでございます。

 そこで、民法が誰のためにあるかという点についてでございますが、以上申し上げました意味での、人のための法律であるというふうに考えております。

逢坂委員 そうなんですね。民法、私人間の取引、私人間のいろいろな関係に関する法律、それから広く人のためにある法律ということだというふうに私も理解をしております。

 そこで、加えて、今度は民法全般ではなくて債権法、これは同じような意味で、どういう目的、どういう作用をする法律であって、しかもそれは誰のためのものなのかというところについてお伺いします。

小川政府参考人 お答えいたします。

 まず、債権法でございますが、これは民法の条文の中で用いられている用語ではございません。ただ、民法は、その編別構成で申しますと、第三編に債権の発生原因であります契約、事務管理、不当利得及び不法行為に関する規定を配置しておりまして、これらをまとめまして一般に債権法と呼ぶものと承知しております。

 また、その意味での債権法は誰のための法律であるかということでございますが、民法は、先ほども申し上げましたとおり、私法の一般法あるいは基本法でありまして、個人も法人も含むという意味で、広く人を対象として裁判規範及び行為規範として機能するということを先ほど申し上げました。そして、債権法も、先ほど申しましたように民法の一部を形成するものでございますので、同様に、広く全ての人のための法律であると言えようかと思っております。

逢坂委員 民法全般も広く人のためのもの、それから、債権法、これも広く人のためのものということを改めて確認をさせていただきました。

 その上で、今回の民法の改正は、社会経済情勢の変化、これが制定後百二十年たって随分あるんだということと、国民にわかりやすくする。それは今までの判例の積み重ねなどで条文から読み取れないことがあるということでありますけれども、具体的な改正のスタートはどの時点だったでしょうか。改正作業のスタートという意味です。

小川政府参考人 お答えいたします。

 法務省としての検討作業ということで申し上げますと、平成二十一年十月、法務大臣の諮問を受けまして、これに基づきまして法制審議会での審議を開始いたしました。

逢坂委員 二十一年十月に当時の法務大臣から法制審議会に対して、民法のうちの債権関係の規定について、同法制定以来の社会経済情勢の変化への対応を図り国民一般にわかりやすいものとするなどの観点から、国民の日常生活や経済活動にかかわりの深い契約に関する規定を中心に見直す必要があるとして、債権法の見直しが諮問されたということであります。

 小川局長にお伺いしたいんですけれども、こういう諮問をするということは、突然諮問しようというふうにきっとならないと思うんですね。諮問するからには、諮問する前のさまざまな積み重ねといいましょうか、そういうものをどう捉えていたかということがあると思うんですけれども、諮問する前、一体この民法についてどんな動きがあって諮問に至ったのかというところは、今、ここは説明できるでしょうか。

小川政府参考人 民法の改正は、家族法の部分を除きますと、冒頭申し上げましたように、百二十年間、余り改正がされていない状況でございました。ただ、この間、例えば、借地借家法の整備ですとか製造物責任法の制定のような特別法で対応する、さらには債権譲渡特例法といった形で、具体的な問題については特別法で対応するという方法もございました。

 他方、民法は、現代語化が当時されておりませんでしたので、民法全体を見渡して現代語化をする動きも、これは平成の三年ころからスタートしたものがございます。その間におきまして、やはり、先ほど申し上げました、社会経済情勢の変化への必要性、あるいは国民にわかりやすいものにするといったことは認識されてきたものだというふうに理解しております。

 その上で、学界でも平成十年ころシンポジウムなども開かれて、債権法の改正が意識されるようになってきて、そういう意味では、徐々に徐々に債権法の改正の機運は高まってきたということかと思います。例えば学者のグループによる改正法の検討のグループなどができて、さまざまな立法提案もされ始めてきたというのが、平成二十一年の前の段階までの状況かというふうに理解しております。

逢坂委員 そうなんですね。個別法でいろいろ民法の改正されていないところを対応してきた、製造物責任法であるとか借地借家法であるとか、そういうことをやってきた。だがしかし、だんだん、私のイメージでは、多分それだけではもう済まない状況になってきているのかなと。

 だから、地震などに例えて言うと、プレートがだんだん褶曲してきて、だんだんエネルギーがたまってきて、それは個別のさまざまなことで対応してきたんだけれども、そのエネルギーが随分増大してきて、もう大改正せざるを得ないというところへ来たのかなという印象を持っているんですけれども、小川局長、どんなイメージを持ちますか、今回の民法改正。(発言する者あり)

小川政府参考人 先ほども申し上げましたように、百二十年間、債権法本体はほとんど改正がされない状態でございましたので、その意味では大分時間がかかったというのが率直な印象ではございます。

逢坂委員 今ちょっと、横の方から、遅きに失したという、やじのようなつぶやきが聞こえましたけれども。

 これは何で百二十年間改正できなかったか。本来であれば、何か事象が生ずるたびに少しずつ改正をしていくというのがある種の理想形、その方が国民にとっても都合がいいのではないかというふうに思うんですけれども、なぜ百二十年間やらなかった、できなかった、そのあたりはどこにあるとお思いでしょうか。

金田国務大臣 民法がなぜ柔軟に改正ができなかったのかという御指摘でございます。

 条文自体が民法は非常にシンプルに書かれておりまして、その規定内容の抽象度が高い、このように受けとめております。社会経済情勢の変化に対しては、その改正をしなくても、条文の解釈を施すことによって一定程度対応することが可能であった、こういうふうに考えられるわけであります。また、一定の分野における社会経済情勢の変化に対しましては、民法の特則を定めた法律を、先ほどのお話にもございましたが、個別に制定すること等で対応してきたという側面もあろうというふうに思います。

 他方で、民法の債権関係の規定というのは取引社会を支える最も基本的な法的基盤であるということから、その規定内容の見直しは取引社会に多大な影響を及ぼすおそれがある。そのために、民法の見直し作業は、法律の専門家でない国民各層からも広く意見を聴取しながら慎重に進められる必要があったということであります。そして、個別に特則を制定することに比べて、その改正に伴う社会的なコストというものが極めて大きい、このように考えられてきたのではないか、このように思います。

 そのため、民法の債権関係の規定につきましては、御指摘のように、本格的な改正に着手されないまま現在に至ったものと考えております。

逢坂委員 大臣から御丁寧に説明いただきまして、ありがとうございます。

 そこで、百二十年ぶりの改正ということなんですが、改正の理由、大きく二つ、社会経済情勢の変化ということでありますけれども、この社会経済情勢の変化というのはどういう変化というふうに、政府、立法している側としては見ているんでしょうか。

小川政府参考人 お答えいたします。

 具体的には、例えば契約ルールが直接対象といたします取引について言えば、恐らく大量の取引が頻繁に行われるようになり、しかも、新しい類型の取引なども生じてきているということが言えようかと思います。取引の複雑化、高度化という言い方もできるかと思います。

 それからまた、通信手段といたしましても、民法ができましたころは手紙などがベースだったところに、インターネットのような新しい情報伝達の手段も加わり、そういう意味では、意思表示の形成などに関しましても、従来の民法理論とは大分異なる面も出てきたという点も言えようかと思います。

 そういった社会、経済、あるいは例えば高齢化などもそういった要素に含まれようかと思いますが、さまざまな場面におきまして変化が生じてきているというのが前提ではないかというふうに認識しております。

逢坂委員 今、局長の中で、新しい類型の契約という発言がございました、新しい類型の契約というふうに発言したかと思っているんですが、具体的にそれはどんなものがありますかね。

小川政府参考人 お答えいたします。

 民法の債権法は、各種の契約を幾つか定めております。典型契約というふうに申しますが、賃貸借ですとか消費貸借ですとか売買といったことについて個別の規定を設けておるわけでございますが、例えば、従来は類型からいくと必ずしもどれに当てはまるかよくわからないようなもの、典型的には、リースのような賃貸借と融資の両方の内容を持つようなものといった、取引の工夫によってさまざまなものが出てまいりますので、そういったものを挙げることができようかと思います。

逢坂委員 あと、私は、今回の社会経済情勢の変化の中にもう一つ含めておかなければならないのは、取引がやはりグローバル化しているというところもあろうかと思うんですね。それからもう一つは、世界のいわゆる民法典の中の債権法、あるいは、世界の中では必ずしも債権法とは呼ばずに別な言い方をしている法律もあろうかと思いますけれども、世界の法律のトレンドといいましょうか、その動きも多少はにらんでいるのかなという気もしないでもないんです。

 まず最初に、グローバル化、取引が世界じゅうを駆けめぐっているという観点から、今回の債権法の改正はそういう視点も含んでいるのかどうか、含んでいるとすればそれはどういう部分なのか、そのあたりは視野に入っていないのか、そのあたりはいかがでしょうか。

小川政府参考人 お答えいたします。

 お話にございましたように、グローバル化というのがかなり進んでいるわけでございまして、例えば、地域によっては、具体的にはEUのようなところですと、比較的共通の基盤を持つ関係もあって、条約の統一によるような形で私法ルールを共通のものとするようなこともございますし、我が国が入っておりますUNCITRALにおきましてもウィーン売買条約というようなものが制定され、一種のグローバルなものに対する対応として、条約への対応というのがございます。

 ただ、民法ももちろん当然グローバルな意味を持つものでございますので、各国の状況、あるいはそういった条約の状況などについても、当然のことながら、関心は持って見てまいったわけでございます。

逢坂委員 契約のところは、私は実は余り、さほど詳しいわけではないんですけれども、世界の債権法といいましょうか、契約法といいましょうか、それと比較した場合、日本の民法の債権法というのはどういう違いがあるというか、あるいはどういう特色があるといいましょうか、世界のこの分野の法律と比べてどんな位置にあるのかということを御説明いただけますか。

小川政府参考人 お答えいたします。

 日本の民法のもともとはフランスを親としたようなものでございまして、そういう意味では、当時のヨーロッパの近代法を継受したものでございますので、そもそもの出発点から見ましても、比較的世界共通のかなり先端を行く法律を導入したと考えられると思います。

 その上で、日本の債権法の特徴といいますと、そういう意味では、もともと出発点からしましても比較的普遍的なものを持ってまいりましたので、例えば、私的自治の原則と呼ばれる基本的な考え方ですとか、契約違反をした当事者が相手方に一定の責任を負うといった考え方など、その意味では、世界的に見ましても普遍的な考え方を共有している法律という点、これが一つの日本の債権法の特徴として挙げることができようかと思っております。

逢坂委員 普遍的な考え方を共有している、それが日本の債権法の一つの特徴だということでありますけれども、もう一つ、社会経済情勢の変化ということが今回の民法改正の一つのきっかけ、理由でありますので、改めて、世界の債権法のトレンドみたいなもの、そういうことは今回、何か視野に入っているものはあったんでしょうか。

 世界の債権法がこのように変わっている、だから日本もそれに合わせなきゃいけないみたいなところというのはあったのかなかったのか。先ほど条約の話が出ましたけれども、条約以外にも何か法律関係でそういうところはあったのかなかったのか、お教えいただけますか。

小川政府参考人 お答えいたします。

 社会経済情勢が進展しておりますのは、もちろん日本だけのわけがございませんので、世界各国でそれぞれ民法を持ちつつ、そのもとで社会経済情勢の変化に対応するという作業は多くの国で行われていることだというふうに理解しております。

 例えば、日本が出発点といたしましたフランス法、あるいは、その後かなりいろいろな意味で参考にさせていただいたドイツ法などにおきましても、民法の改正が比較的頻繁に行われるところでございますが、最近になりましても大きな改正がされておりまして、そういったものについては、例えば定型約款のような問題はフランスでもそういった導入の議論がされておりますので、そういう面も考慮したものということが言えようかと思います。

逢坂委員 国際的な動きも、全面的にというか大幅にというかどうかは別にしても、多少視野に入っているということが理解できました。

 次に、もう一つの今回の改正の論点というか出発点として、国民にわかりやすくというのがあると。

 これまで、民法は、具体的に条文改正を行わずに、判例などの積み重ねによって条文を解釈してきた、だから国民にはわかりにくいんだということでありますけれども、例えば、具体的にこの項目というのはどんなことがあるのかというのが一つと、それから、その論点で改正した項目数というのはどれぐらいあるのかというのは、今おわかりになりますでしょうか。

小川政府参考人 まず、項目の数から申し上げますと、大体百四十ぐらいの項目が、今お話にありました、国民にわかりやすくする観点から判例などのルールを明確化したものでございます。

 具体的な内容を三点ほど申し上げますと、一つは、意思能力の無効であるということを規定しております。これは、いわば民法の基本的な理論としても当然のこととして確立したものでございますが、意思能力を欠いた場合にはその意思表示の効力が否定されるというものでございます。例えば、高齢で判断能力が低下した方などについてそういった問題が出てまいりますので、そういったものに対応することも含めて、規定を設けたわけでございます。

 それから二点目。私どもよく説明しておりますのは、将来債権の譲渡ということで、民法は債権の譲渡については可能であるということを書いてございますが、それが将来にわたって生ずるものについてどのようなものなのか、あるいは可能性がどうなのかということについては規定を設けておりません。

 しかし、最近は、資金調達の手法といたしましても、将来の債権の譲渡、あるいは譲渡担保という手法がかなりとられておりまして、判例も、これもいろいろ変遷はございましたが、将来債権の譲渡についてはもう確立した理論として認めております。これを今回は盛り込んだものがございます。

 それから三点目は、賃貸借の終了した際のルールということで、敷金の点を明確化し、それから原状回復につきまして、例えば、経年変化ですとか通常損耗のようなものは賃借人の原状回復義務に含まれない、これもいわば確立したルールとしてございますので、そういったものを盛り込んだということが代表例として挙げられようかと思います。

逢坂委員 御丁寧な説明、ありがとうございます。

 私のところへ今回の民法改正についていろいろ意見が寄せられる中の懸念の一つは、今回のわかりやすくするというところ、このことによって従来の判例とか従来の解釈が少し狭くなるのではないか、あるいは、それが変更されるのではないかという懸念をお持ちの声が寄せられるわけですが、善意に考えると、単にわかりやすくしただけなので従来とは全く変わりませんよということで、私は善意に理解をしたいんですけれども。

 百四十の項目を全部チェックするわけにもなかなかいかないんですけれども、局長、従来の判例や解釈と少し守備範囲が変わりましたとか、対応がちょっと変わったんだよねというようなところがあるのかないのか、その辺はいかがでしょうか。全部一〇〇%一緒というふうに解釈していいのかどうか、そのあたりはいかがでしょうか。

小川政府参考人 お答えいたします。

 判例がもちろんない場面もございまして、今回は、いわゆる通説と言われるようなものに依拠して見直しを、見直しといいますか、その通説の内容を明文化したというようなものもございますので、そういう意味では、既に社会のルールとして確立したものというよりは、ある意味通説的な見解を内容として盛り込んだというものもございます。

 ただ、そういったものも含めた上でということになりますが、今回の改正法案を策定する過程では、先ほど申しましたように、民法を国民一般にわかりやすいものとする観点から幾つかのルールを示すという点につきましては、そういうものをお示ししながら議論してまいりました。

 その上で、審議会での議論があり、パブリックコメントに二回かけ、そういった内容をお示しして、これで大丈夫かということについてもいわば確認をしながら手続として進めてまいりましたので、御懸念のような点は余りないのではないかというふうに考えております。

逢坂委員 判例のあるものについては判例にのっとってやった、通説については通説をある種条文化したと。でも、通説は、必ずいろいろな解釈の幅があったり、通説の範囲というのでしょうか、通説ですから、必ずしもそれが事実をピンポイントで的を射たことになっていないケースもあるわけですので、通説を条文化したというところについては、私はこれはやはり丁寧にチェックをする必要があるのではないかなというふうに思っています。そうしなければ国民の皆さんの疑問に答えられないというふうに私は思っております。

 ここは、きょうは入り口でありますから、私も実は幾つか、あら、これはどうかなと思っているものがありまして、それは後日の議論の中で一つずつ疑問を解消していきたいというふうに思います。

 ただ、いずれにしても、わかりやすくしたんだということではありますけれども、以前社会の中で行われていたことが条文化されて、全く同じように一〇〇%行われるかどうかについては、一〇〇%の保証はないという印象を持つんですけれども、そのあたりはいかがですかね。ちょっと質問がわかりにくいかもしれません。

小川政府参考人 お答えいたします。

 もちろん、そういうことに極力ならないように、いわゆる確立した判例というものを、その表現ぶりも含めて、パブリックコメントなどに付しながら、あるいは審議会の中でも慎重な議論を進めてきたということは言えようかと思います。

 ただ、民法は一種の裁判規範として機能するわけでございますので、その意味では最終的には裁判所の判断することではございますが、私ども、作業をする上では、今先生御指摘になった点についても十分配慮しながら進めてまいったというつもりでございます。

逢坂委員 もう全く、私は善意に解釈してそうなんだろうなというふうには思います。

 ただ、法律の条文は、私、この間も幾度か経験があるんですが、恐ろしいなと思うことがあるんです。国会でいろいろ議論をしていて、いや実はこの条文はこういう解釈ですよというような議論が、例えばある件についてあった場合に、それが十五年、二十年たってみると、後の人は何をやるかというと、その条文の字面だけを見て、そこでまた新たな解釈というか思いというか、それを吹き込んでしまう。条文の字面だけが後になるとひとり歩きするということが結構あったりするものですから、そういうケースを幾つか私なりに体験をしていて、やはり、これほどの大改正を行うときは相当慎重に条文のチェックもしなきゃいけないなという印象を持っております。この点は、きょうはこの程度にとどめさせていただきます。

 そこで、今入り口で二つの話をさせてもらいました。社会経済情勢の変化、それからわかりやすくということであります。それを踏まえて今度は、それぞれの議論の場でいろいろとやってきたわけでありますけれども、この法案が国会に出されたのは二十七年ですか、それに至るプロセスを簡潔に説明いただけますか。

盛山副大臣 これまでも局長その他から詳しく御答弁をしたところでございますけれども、二十一年の十月に法制審議会に法務大臣から諮問をいたしました。そして、二十七年二月に答申をいただいたわけでございまして、その間、先ほど来逢坂委員がいろいろ御質問をされましたけれども、多くの関係者の方にこの法制審議会に入ってもらうような形で、いろいろな各般の分野の御意見をうまく調整させていただいた。さらには、その中でも、途中でパブリックコメント、こういうものを経ながら、案文の作成というんでしょうか、まずはその前の案、骨子をどのように定めていくのか、そんなことをしたつもりでございます。

 それから、先ほど委員が御発言ございましたけれども、確かに、一旦法律として成立しましたならば、その後は、条文をどう解釈するか、どう読むかということになるわけでございまして、これまでの民法が百二十年改正されなかったということのように、できるだけ我々は長く安定して使っていただけるような案はつくるつもりでございます。

 ただ、逆に言うと、百二十年前、インターネットの影も形もなかったわけでございまして、そういった時代の変化に合わせて判例その他の解釈で事実上新しい法文のような形にしていくということにもなるでしょうし、あるいは、きょうのこの国会での審議もそうでしょうけれども、国会での答弁、やりとり、こういったものを参考にしながら今後解釈をしていってもらう。あるいは、我々の方としましても、この民法が成立した暁には、我々の方でこんなふうに考えているんだという、立法者の意思というんでしょうか、そういったものを明らかにし、そして、先ほど来御説明しておりますけれども、いろいろな形で国民の皆さんにできるだけわかっていただけるような広報、こういった活動にこれからも努めていきたいと考えております。

逢坂委員 これほどの大改正ですから、私は議論のプロセスが結構大事だと思っていまして、中間的な論点整理をされたときは五百項目ほどの改正、あるいはその論点についての中間報告があったというふうに承知しているんですけれども、これがどういうプロセスを経て現在のこの民法改正の法案につながっていったのか、このあたり、簡単に説明していただけますか。

盛山副大臣 法制審議会の民法の部会の委員は十九名でございますけれども、学者の方が七名、法務省が三名のほか、裁判官二名、弁護士が二名、経済団体、労働団体の代表、それから消費生活相談員、こういった方が入っておりまして、実務家やユーザーの声、そんなふうに配慮をしたつもりでございますし、そしてまた、部会でのヒアリングということで、日本証券業協会、不動産協会、日本司法書士会連合会、弁護士連合会その他、二十一の団体からのヒアリングも経ております。さらに、パブリックコメントの手続を二度経ておりまして、その過程におきまして、一般の個人の方はもちろんでございますが、経団連を初めとする多くの団体からのお声、そういったものを受けておりまして、そういったものを踏まえた形で我々は今回の民法の改正案をまとめてきたつもりでございます。

逢坂委員 私の質問の仕方がちょっと悪かったみたいで、ごめんなさい。

 中間論点整理で五百項目だった、それで、最終的に今回の改正法案に盛り込まれているのは二百程度の項目だというふうに承知をしているんですが、五百がどういう議論によって二百になったのか。どういう議論というのは、細かい、この項目がこんな議論でこれが落ちましたとかこれが入りましたということはいいんですけれども、大きなトレンドとして五百がどういう議論の方向感で二百になっていったのか、あるいは、どういうところが今回、やはりこれは民法の改正の課題としてはあるんだけれども盛り込まれなかったというのは、どういう基本的な考え方というか、全体を貫くようなものというのは何かあったんでしょうか。

 これは結構大きな議論だと思うんですよ。最初はやはりすごく風呂敷が広かったように思うんですね。

小川政府参考人 お答えいたします。

 今お話ございましたように、中間論点整理ということでパブリックコメントに付しました際には、項目数は五百を超えておりました。これは、委員の方からも御指摘ございましたように、当初は比較的広目にさまざまな関心事項、先ほど申し上げましたように、いろいろな形での立法提案などもございましたので、そういったものを広く検討の対象としたというところからスタートいたしましたので、かなり多いものとなっていたことは事実でございます。

 ただ、やはり、いろいろと反対意見のあるもの、まだ立法にはなじまないもの、あるいは立法化が非常に困難と思われるもの、技術的な面も含めてですけれども、そういったものもございますので、徐々に徐々に論点は絞り込まれていったというのが状況でございます。

 第二段階といたしまして、中間試案を出しまして、いわば試案という形でパブリックコメントに付したわけでございますが、そのときは項目数が約半分、二百六十程度でございました。

 これは、検討項目からこの段階で落ちた論点が幾つかございますが、やはり全体として見ますと、一方のあるグループは賛成をするけれども、あるグループは反対する、そういう意味では利害の対立の激しいような論点もございましたので、なかなか立法化がそういう意味では困難なテーマということが言えようかと思います。そういったものにつきましては、これも徐々に徐々に絞り込まれ、最終的には大方の異論のないテーマに落ちついて、要綱仮案の決定の段階では項目数が約二百になったというのが実情かというふうに考えております。

逢坂委員 幾つか類型をお示しいただきまして、ありがとうございました。

 五百が二百に絞り込まれていく類型を御紹介いただいたんですが、それぞれの、例えば立法化が難しいとか、あるいは反対、賛成が対立していたといったような類型の中で、代表例を幾つか御紹介いただけますか。例えば、こんな論点が最初にあったけれども、最終的にはこれがこんな理由で落ちたんだというような、それぞれの類型に従ってお教えいただけますか。

小川政府参考人 お答えいたします。

 例えば立法化が非常に技術的にも難しいというようなことも先ほど申し上げましたが、その例として、先ほど新たな類型の契約の中で御紹介しましたファイナンスリースなどがございまして、ファイナンスリースなどは、賃貸借類似の契約について賃貸借の規定を準用するということが検討課題と当初されておりました。

 ただ、先ほど申し上げましたように、ファイナンスリースは融資の部分と賃貸借がセットになったようなものでございまして、実質的には金融取引として単純に賃貸借の規定を準用することは妥当ではないなどの指摘がございまして、取り上げないこととされたものでございます。

 それから、意見の対立もあったということで申し上げますと、例えば事情変更の法理というのがございまして、契約の前提となった事情に変更が生じた場合に、一定の要件を満たせばその契約を解除することができることとする旨の規定を設けるかどうか、これがいわゆる事情変更の法理と言われるものでございますが、こういったものを設けるかどうかが一つの検討課題とされておりました。

 ただ、これについては、規定を設けてしまうと、むしろ自由な交渉を萎縮させるおそれがあるのではないかという反対意見、もちろん、一方では、これによって救済を図ることができるという賛成意見もあるわけですが、そういった意見の対立もございまして、盛り込まれることにはならなかったということでございます。

逢坂委員 そうですね、私も事情変更の法理というのを勉強させてもらいまして、ああ、なるほどなと。これは、確かにそういう思いを持っている人がいることは理解するけれども、そういうものが盛り込まれたときに、そのことによって不利益をこうむる人もいるなというような印象を私も持ちまして、こういうことは今回盛り込まないということはよかったなというふうに、私自身は個人的には思っています。

 実は、私の今回の民法改正に関する一つの着眼点は、冒頭に御答弁いただきました民法というのは何かというのは、それは広く人のための法律なんだということです。

 すなわち、どうしても、債権法の議論というようなことになってしまいますと、商取引をする主体といいましょうか、個人ももちろん商取引の主体であることは間違いないんですけれども、法人とか組織とか団体とか、そちらの視点の方が強くなって、いわゆる生の個々人といいましょうか、私人といいましょうか、そこの視点が抜け落ちてしまうおそれがあるのではないかなというのが私の一つの問題意識であります。

 これは後にまた御答弁いただきたいと思うんですけれども、今回のこの債権法の改正は何のために行うのか。何のためにというのは、いろいろな何のためというのがあると思うんですけれども、経済活動を活発化させるために行うのか。あるいは、個々人の取引あるいは個別の取引、それを安定化させるために行うのか。あるいは、取引の態様が非常に高度、複雑化していて、一般国民の皆さんにはなかなかわかりにくい取引もたくさんあるわけですね、そういうものを保護するといいましょうか、そういうために行うのか。

 こういったことをしっかり捉まえて行わないと、この債権法の改正をやった結果、私たちの社会が、あら、こんな社会を目指していたのかなというところがよくわからないものになってしまうんじゃないかなという懸念が私はあるんですね。

 だから、狙いをどこに定めて今回のこの債権法の改正というのはやっているのかというところについては、もう少し、今回の改正項目を全部足し合わせた結果どんな社会になるのかというのはよく見据えておく必要があると私は思っています。

 今私が言ったような観点で、実際に改正作業実務をやっておられた小川局長の方でどんなイメージをお持ちになっていますか。今回の答弁で小川局長が、いや、実はこれは経済取引を活発化させるためと言ったからといって、後にそれで揚げ足をとるつもりはありませんので。議論ですから、これは。いや、こんなイメージなんだよねとか、私が言ったような論点というか観点以外にもこんなことがあってやったんだよねとか、そのあたりはどうですか、実務をやっている者として。

小川政府参考人 そうですね。最初の方で申し上げましたが、民法は私法のいわば一般法ということですので、そういう意味では、まさに個人、法人、しかも余り色分けをせずに、非常に一般的な意味で人を対象とするものということが言えようかと思います。

 これに対して、商法は、当然のことながら商事ですので、営利行為をする会社であったり、いわゆる商人と言われる者を対象とするわけですので、その意味で商法は、当然のことながら、取引の活発化、あるいは最終的にそういった者の経済活動に資するということにかなり重点が置かれるものかと思います。

 ただ、もう一度民法に戻りますと、民法は一般的な法律でございますので、あらわれる人間は、事業者の場合もあれば、事業者の中でも当然のことながら大企業もあれば中小企業もあり、当然今度は消費者、消費者の中でも高齢の方であったり若い方であったり、さまざまな類型の方々を対象とするわけですので、もちろん一つ一つの項目を捉えれば、これは消費者の保護に資するものになります、あるいは、中小企業の融資に役立つものですということが言えようかと思いますが、全体としてのトレンドとして申し上げられるのは、やはり、私法の一般法として、あらゆる方に対して一定のルール、当然のことながら民法の理念としての公平ですとかそういったものについてのルールを提供するものだということが言えようかと思います。

盛山副大臣 ちょっと、私もこの調整過程に入っていたものですから、一つの例として申し上げますと、経済団体との調整の場合、例えば経団連ですとか商工会議所とか、彼らも大変広い業界を所管しているものですから、こちらの業界とこちらの業界の意見というのはなかなかうまく収束しない、そんなことも正直ございました。なかなか返事が出てこない、いや、しかし、こちらも期限があるんだからそろそろ出してくれといったようなやりとりがございました。

 そのうちでどういう例を挙げるのが適切かはわかりませんけれども、一つやはり大きな議論になったものとしては約款がございます。標準約款の部分でございます。

 なぜこれを今さら民法の中に置かなければならないのか、そういうところから議論が始まりました。それぞれ個別法で今うまくやっているじゃないか、余計なおせっかいはしないでくれみたいなようなこともございまして、いや、それは個別法に根拠が一応あるかもしれないけれども、やはり契約の一番大きなベースとして今回民法に入れるべきではないか、やはり一般の消費者あるいは一般の方とのルールを決めるにはここでちゃんと置いておくべきだろう、そしてその場合にはどういうふうにしていって、そしてそれが民法に対してそれぞれの個別法との関係をこれからどのようにしていくのか、そんなことでいろいろ調整を図った、その結果、今回提出した案になっているというふうにお考えいただければと思います。

逢坂委員 私は、今回の民法の改正がだめだとかということを必ずしも言っているわけではなくて、やはりこれほどの改正ですから、合成の誤謬が起こってはいけないなと思っているんです。

 合成の誤謬というのは、それぞれ個々の条文を見ると、それはそれで改正は理にかなっている、合理性があるというふうに思う、でも、全部それを足し合わせてみた結果、私たちの社会がこれからどんな方向へ進んでいくのかということを、もしかすると今回の改正で、特に経済活動において、ある一定の方向感が、見えるか見えないかはわかりませんけれども、場合によっては見えるかもしれない。そのときに、その方向感が正しいのか正しくないのかというのは、これは多分、私は政治家しか判断できないと思っているんです。

 個々の、個別の条文の具体的なことの、合理性があるとか合理性がないということは事務方の皆さんが高い能力で精いっぱいやっていただいて、その結果、社会がどうなるのかということについては、これは私たち政治家がやはり大きく担う部分だろうと思っています。

 それからもう一つ、後にもまた質問させていただきますけれども、今回の改正のプロセスを見ると、法人組織あるいは団体、先ほどのほかの方の質疑の中にも出ておりました、実務家とかユーザーという言葉が出てくるんですけれども、法人組織とか団体のヒアリングというのは結構多かったように思うんですけれども。

 やはり、自然人としての個人といいましょうか、そういう方々の声をどうやって酌み上げるかというところも非常に重要だと思っていまして、それをやれるのは、場合によってはやはり国会の場しかないのか。もちろん、パブリックコメントもありますけれども、パブリックコメントはやはり、この問題について非常に関心のある方が提出をしてくるわけでありまして、私たちが守らなければならないのは、多分、こういう問題に日常的には関心がない、だけれども、いざ何らかの商取引において契約をする、そのときに、あらという場面に遭遇した国民の皆さんに対して、ちゃんとした安定的な法制度が提供できているかどうかだというふうに思いますので、その観点を私は大事にしたいと思っています。

 そこで、また小川局長にお伺いするんですけれども、今回、平成二十一年から最後の、法案ができるまでの間、どんな団体からヒアリングされましたか。

小川政府参考人 お答えいたします。

 法制審の部会の中で、パブリックコメント手続が実施されています間に、これは事業者団体ですとか消費者団体という言い方ができるかと思いますが、こういった団体、合計二十一団体からのヒアリングを行っております。日本何とか協会とか日本何とか連合会とか、そういういわば業界団体のものと、それから消費者関係の方など。

 あるいは、個別の形でも、法制審の場でのヒアリングという形式ではなくて、事務当局で事情聴取を行って、その結果を書面で部会に報告する形式で、幾つかの業界団体などからもそういう形式でのヒアリングを実施しておりまして、こちらの方は、合計九団体からのヒアリングを実施しております。

逢坂委員 ちなみに、その二十一団体ですけれども、ここで読み上げさせていただきますと、日本貿易会、それから情報サービス産業協会、コンピュータソフトウェア協会、日本チェーンストア協会、日本証券業協会、京都消費者契約ネットワーク、消費者支援機構福岡、それから住宅生産団体連合会、日本建設業連合会、全国宅地建物取引業協会連合会、全日本不動産協会、不動産協会、不動産流通経営協会、日本司法書士会連合会、全国サービサー協会、信託協会、リース事業協会、ABL協会、ABL協会というのは何かちょっと私はわからないんですけれども、日本損害保険協会、日本賃貸住宅管理協会、日本弁護士連合会というのが二十一団体のようなんですね。

 これを見たときにというか、これを聞いたときに、いや、もちろん、私はこの団体からヒアリングするというのは何も問題はないと思う、だけれども本当にこれで、私が言うところの自然人といいましょうか、こういう業界に詳しくない国民の皆さんの思いというか声というかがちゃんとこの法律の中にうまく入れ込められているのかどうか、あるいは、これらの団体にはふだん縁のない人たちが、この法律が成立し施行したときに、この法律を受けとめて、ちゃんと納得できるものになっているのかどうかという視点で、やはり国会では議論しなきゃいけないんだろうと思っています。

 結構法制審も、国の審議会は結構やっつけ仕事でやるという場面が多くて、私も、自治体にいたころにも、国の審議会というのは形骸化していてどうしようもないということを随分批判していたんですが、そういう観点から見ると、まあまあ丁寧にやっているんじゃないかなというふうに私は感ずるんです、時間もかけて。それだけに問題が大きかったんだとは思うんですけれども。

 そうはいうものの、民法の大きな目的が、やはり広く人であります。もちろん法人も含みますけれども、幅広く人でありますから、その観点で、この法改正が大丈夫かというところをよく見ておく必要があるんだと思っています。

 そこで、今回こういう経過でこの改正法案が出てきたわけですけれども、よく私が聞くのは、この法改正を急いでほしいという人の声は、あんなに丁寧な手続をやって、法制審でもやり、各種団体からも声を聞き、途中にパブリックコメントもあり、法人からも個人からも意見があってできた改正案なんだ、だから、国会でそんな時間をかけて審議する必要はないんだとおっしゃる方が中にいるんですね。

 でも、私は、やはりそうじゃない、国会は法制審の追認機関ではありませんので、法制審で議論されたところに、もしかして抜け落ちているものがあったりすれば、やはりそれはちゃんと補わなければいけないというふうに思っていますし、出てきた改正案が、これは法制審の議論では十分ではないな、やはり国会の目線で見たときに、ここはちょっと手直ししなきゃならないなということを指摘し、場合によっては手直ししていくというのが国会の役割だと私は思うんですけれども、この点は、政務三役の皆さん、いかがでしょうか。

盛山副大臣 例えば、今委員が読み上げられた団体でも、やはり全ての団体が入っているわけじゃありませんですね。そうしたら、そういう声をどのようにしてうまく酌み上げているのかということになりますし、委員がおっしゃったように、一般の方の、普通の、本当に個人の目線、そういうものをどのようにしていくのか、これは大変重要なことだと思っております。

 もちろん、法制審議会、私ももともと法務省の公務員ではなかったわけでございますけれども、法務省に来てみると、法制審というのは予想以上に丁寧に時間をかけて、やはり、特にこういう民法だとか、そういう基本的な法律ですから、予想以上に丁寧に時間をかけ、そしていろいろな方々の御意見も聞きながら、間違いがないようにしているなというふうに私自身感じました。

 ただ、さはさりながら、そこにおられる法律の本当の専門家の方々、そういった方々の目線だけで一〇〇%いいのかというのは、委員がおっしゃるとおりだろうと思います。やはりいろいろな方々の目で見て、本当にこれがパーフェクトであるのかどうか、そういった形でもんでいくことは大変大事なことだと思っております。

 そうは申し上げましたけれども、私どもとしましては、法制審での審議だけではなく、我々の目線も加えまして、十分に審議にたえる、余り御修正をいただかなくてもいいような案にして提出したつもりではございますので、よろしくお願いします。

逢坂委員 閣法として提出するからには、不都合があったら修正もいいですよなんてことは軽々しく言えないことは、それは私もよくわかるんですが、ただ、やはり百二十年でありますので、この積み重ねの中でやることでありますから、私は、場合によっては、ここは少しというようなところはよく考えてみた方がいいなと思っています。

 それで、きょうは個別、各論には入りませんけれども、私が見ている中でやはり心配だなと思っているところは、約款のところも若干心配ですし、保証のところも少し心配かなという、いえ、現状でも保証は心配なんですけれども、でも改正案で大丈夫かなと、ちょっと思っているところもありまして、それについてはまた後ほど、個別の論点の中で話をさせていただきたいと思います。

 そこで、これも今度事務的なこと。小川局長、きょうは済みません、何か小川局長とばかりやりとりして、多少通告のないところもあったので、無理をして答弁をしてもらってありがとうございました。きょう答弁したことを、後になって、十一月の十八日にあんな答弁したじゃないかということは私は言いませんので、御安心ください。ほかの人が議事録を見て、言わない保証がないところはちょっとあれですが。

 それで、今回、この民法の債権法の改正ですけれども、これに伴って関連法の改正というのは何本ぐらいあるんでしたか。

小川政府参考人 今回、民法改正案とあわせまして、いわゆる整備法案を提出しておりまして、対象となります法律は二百十五本だと記憶しております。

逢坂委員 そうなんですね。そうなんですねというのは、私も見てびっくりしたんですが、二百十五本なんですよ。それで、いや、もちろん、私は残念ながらこの二百十五本のどこがどう改正されているのかを全部チェックし切るだけの能力も時間的余裕もないんですけれども、やはり今回の改正はそれぐらいのことであるということは、我々は国会議員として認識せざるを得ないと思っています。

 議論ですから、一〇〇%満足のいくところまで全部やれるかどうかというのは、これは私はわからない。わからないというか、そんな無責任なことで逢坂誠二いいのかとお叱りを受けるかもしれませんけれども。ある一定のところで議論というのは区切りをつけなければいけないということも私はわかるんですけれども、それにしてもやはり結構大きいなというのが正直な感じですね、二百十五本でありますから。それで、法律名を見てみると、やはり結構重要な法律が入っているんですね。だから、これは、やはり丁寧に議論するということが私は必要なんだと思っています。

 最後、大臣、きょう私は入り口の議論しかしませんでした。中身の議論は入りませんでしたが、民法は広く人を対象にしている法律であるということ、それから、私の感覚でいえば、法人組織、団体の観点も大事だけれども、やはり人、個人、そういう視点が大事であるということ、さらにまた、改正内容が非常に多岐にわたっているというようなこと、こうしたことを踏まえてみると、やはり丁寧な議論が必要だなというふうに感じております。

 先ほどの、わかりやすくといったところを一つとってみても、通説を条文化したなんというところについては、これは相当丁寧にチェックをしておかなければ、後に要らぬ論争を生みかねないというふうにも思いますので、修正するとかしないとかは全く別にして、丁寧な議論が要るというふうに思っているんですが、大臣、感想はいかがでしょうか。

金田国務大臣 委員御指摘のとおり、人の視点といいますか、それを非常に大切にしながらこの民法の改正案について議論をしていく、特に債権法の分野でございますから、人との関係というのは非常に重要でございますから、そういう丁寧な議論になる、そしてまた、お互いによりよい形で仕上げていくという視点もやはり必要なんだろうというふうに思います。そういう視点で、御指摘のとおり、私たちも臨んでいきたい、こう思っております。

逢坂委員 多分、丁寧に丁寧にやり出したら相当な時間がかかるというふうに思っています。それは、与野党の中で、どの程度の密度の濃さでやるかということは古川筆頭とも協議しながら決めていきたいと思うんですけれども、でも、やはり、不安を残したままで、大丈夫だよということでやる部分というのは極力少なくしなきゃいけない、そう思っておりますので、これから、場合によっては長いつき合いになるかもしれませんが、よろしくお願いいたします。

 ありがとうございます。

鈴木委員長 次に、井出庸生君。

井出委員 民進党、信州長野の井出庸生です。本日もよろしくお願いを申し上げます。

 民法、債権法部分の大改正の実質的な質疑、審議のスタートということで、私も、法改正の必要性というところからまず伺っていきたいと思います。

 平成二十一年の十一月からでしょうか、法制審議会でこれに関するものが始まって、二十七年二月まで九十九回の議論を重ねられた、そのことに対しては率直に敬意を申し上げたいと思います。

 ただ、その議論の中で、当初想定されていたものとまとまったものと、その結果というものも大分異なっただろうと思いますし、法案の、法改正の必要性というところをやはり丁寧に議論をしていく必要性というものはあるのではないかなと思います。

 まず、小川さんに伺いたいのですが。今回、よく二百項目の改正だと言われているんですが、私、この法務省からいただいた新旧対照表、ちょっとこれは引っぺがして汚くなっちゃって申しわけないんですが、新旧対照表で、法改正の「(新設)」というところがございます、この新設というものを朝ちょっと一生懸命数えてみたら、二百八個あった。数え間違いもあるかもしれませんので、その数は別に、そこは正確性を期しているわけではないんですが。

 今回の民法改正というものは、民法の分量が従来よりふえるということは簡単に言えるのかどうかというところを、まず基本的な認識を伺いたいと思います。

小川政府参考人 お答えいたします。

 現在の民法の条文数は、いわゆる枝番号も含めまして千百三カ条ございます。

 民法改正法案におきましては、このうち改正の対象として改正がされたものが二百五十七カ条でございます。それから、八十五カ条が枝番号を付して新設されておりまして、トータルでいいますと、新設された分、それから削除された分もございますので、非常に今回の改正によって条文数が膨らんだということではないとは思っております。

井出委員 新設されたものと削除されたものがある、総じてそんなにふえたわけではないというようなお話もあったんですが、例えば、日弁連の方で、民法改正に合わせて一つの本を出されているんです。日弁連さんなので、「消費者からみた民法改正」ということで、二十四のテーマを厳選されたというように書かれているんですが、二十四のうち最初と最後は、議論のいきさつとか今後の国会審議とかというところ、本論と関係ないんですが。

 この本を見たときに、これは日弁連さんが求めていたものなのかどうかわからないんですが、二十二の具体の項目を挙げられているうち、たしか五つのものは見送られた、残りの十七はいずれも新設ですとか明文化、これまでになかったものを加えられている。

 ちょっとこの本を読んでから新旧対照表を数えてみたんですが、そうすると、今回の改正によって民法がより詳細な、具体的な記述になってくる、そういうところは一般的に言えるかどうか、ちょっと教えていただきたいと思います。

小川政府参考人 かつての法律、とりわけ明治時代にできました民法などに見られるのは、非常にシンプルな条文の立て方でございます。原則は書かずに、例外だけを書いて原則も読ませるような、そういう非常に技術的な手法などもとられた結果、日本の民法の条文は、条文数も世界に比べますと比較的少ないというふうに言われておりまして、非常にそういう意味では読みづらい面もあったかと思います。

 今回の改正は、もちろん、例えば保証のところなど何カ条も枝番号がついたりしていますけれども、非常に詳細に、具体的な規定として、最近の法制執務に基づいて設けておりますので、その意味では、かつてよりも具体性を持った規定ぶりになっているということは言えようかと思います。

井出委員 今、具体性を持った記載ぶりというお話がありました。

 大臣、先ほど逢坂委員への答弁の中で、これまで民法改正がなされなかったところについて、現行民法がシンプルで抽象的であって柔軟にいろいろなことに対応が可能であったというようなお話もあったんですが、現行の民法の持っているシンプルさ、抽象性というものは民法のよいものとして評価をされているのか、それとも、もうこれは変わっていかなきゃいけないというお考えなのか。それを大臣と局長にそれぞれ伺いたいと思います。

小川政府参考人 もちろん、国民にとってわかりやすいものにするという観点からは、先ほど言いましたように、非常にシンプルで、例外だけを書いて原則も理解しろというようなやり方は決して親切なものではないというふうに思っておりますので、わかりやすいという観点からすれば、いろいろと、そういった国民一般が読む法律である、理解する法律であるということを前提とした規定ぶりとしていくというのが意味のあることではないかというふうに考えております。

盛山副大臣 先ほどからいろいろなやりとりをしておりますけれども、何しろ百二十年たっております。そうすると、いろいろ、インターネットが典型だと思いますけれども、明治二十九年に想定していないものをどのように規定していくか、これも大事であります。

 あるいは、その間、シンプルであったがために何とかいろいろな解釈で読み込んできたということは言えるんですが、逆に、それは、いろいろな形で判例ができているものですから、条文を読んでいるだけでは理解できない。それをやはり今回わかりやすく、条文を読んだだけで、つまり、いろいろな判例に当たらなくても、一般の人が条文を読んだだけである程度わかりやすくしようじゃないか、そんなところも入れなくてはならない。

 しかしながら、何もこれから百二十年改正しないというつもりではないんですけれども、ある程度の期間、この新しい民法でいろいろな事態に対応していくということを考えますと、やはり若干は抽象的な形の表現も含めて、ある程度長く使っていただけるよう、そんなことも考えながら、現在の民法のよいところ、それはそれである程度生かしながら、そうはいっても、今のこの時点で、どうすれば国民の皆さんあるいは外国人の皆さんに読んでいただいてわかりやすくなるか、そんなことを考えてまとめた現在の案でございます。

金田国務大臣 委員が私の先ほどの答弁を引いていただきましたから、お答えをさせていただきますけれども、先ほどの御質問というのは、御承知のとおりなんですが、民法が社会経済情勢の変化に応じてなぜ柔軟に、フレキシブルに改正してこなかったのかという、その点を考えてみた場合に、先ほどおっしゃった、条文自体がシンプルに書かれておることから規定内容の抽象度が高い、だから、改正をしなくても条文の解釈を施すことによって一定程度対応することが可能であったと考えられるということを申し上げたわけであります。その点をつけ加えておきます。

井出委員 私も、民法がわかりやすくなる、今回の法改正の大きな目的、それから、法制審でも、わかりやすくしていこうというところは最初からそんなに異論はなかったかと思うんです。

 民法、特に債権法の部分ですね、当事者間の契約ですとか合意をするときに、裁判法規ですから、争いがあったときにこれが一つの物差しになるんじゃないかと思うんです。争いがなければ民法の出番はないと思うんですけれども。そのときに、ですから、私は、抽象性というものがむしろ当事者間の合意というものをつくりやすくしてきたんじゃないかなとか、当事者の合意、契約ということにおいて、民法の抽象性、シンプルな条文というものは一定の役割を果たしてきたんじゃないかなという疑問を、特に法制審の一回目、二回目の議論で改正の必要性ということを徹底的に御議論されているんですけれども、その中で、抽象性、シンプルな条文のよさというものもあったのではないかなと考えるに至ったんですが、そのあたりはどうでしょうか。

小川政府参考人 もちろん、法律の適用される場面はさまざまございますので、その場面に即して考える必要があろうかと思いますが、裁判の規範として、先ほどのお話であれば、紛争が生じて裁判になった場合について見れば、抽象的な条文を前提といたしますと、やはり予測可能性という観点からすると劣る面があるのかなという気はいたします。あるいは、先ほど来話が出ていますように、裁判所が抽象的な規定について補充する必要が出てこようかと思いますので、さまざまな問題はあり得るかとは思います。

 他方、裁判まで至らなくても、取引の過程で考えますと、債権法の規定というのは、契約法のルールとして、いわゆる任意規定ではございますが、最終的には合意がない場合も任意規定によって定まるというルールになるわけですので、その意味でも、一定の具体性を持った規定の方が契約に伴うコストという観点からしてもいい面があるのではないかなと。

 済みません、私のかなり個人的な部分かもしれませんけれども、そういうふうに感想を持ちました。

井出委員 ありがとうございます。

 私も民法は大変不勉強なので、余り何か学説的な議論をしてもこっちがぼろが出ちゃうので、話を進めてまいりたいと思います。

 私、民事裁判の件数というものをちょっと調べてみたんです。これは恐らく裁判所の方で出されていると思うんですけれども、裁判を迅速化しなければいけないということで、平成十年代からいろいろな研究をされてきておりまして、その中で民事第一審訴訟事件全体の概況というものがありまして、それを見ますと、昭和の初めは、民事第一審で新たに受理した件数というものが三万七千七百六十三件だった。それが、多少線がふえたり減ったりはしているんですが、おおむね上がっていって、平成二十一年が二十三万五千五百八件でピークを迎えております。その後、これは昨年のものはないんですが、平成二十六年になりますと十四万二千四百八十七件。民事裁判は必ずしも債権関係だけではないのですが、民事の全体像を見るとそういう状況であります。

 法制審の第一回、第二回のときに委員の方も言われているんですが、今何か変えないと困ることがあるのかと。そういうことに対して、わかりやすさを追求していくということも確かに大事、社会経済情勢の変化に照らしていくということも大事なんですが、実際、民法の出番となる裁判も、これは偶然なんですけれども、この民法改正の議論が始まった年が件数がピークで、その後減ってきているんですね。そういう、実際の民事の紛争に照らした必要性の議論というものが、この七年間の間にあったのかないのか。詳しくは、多分、もう長年の議論ですから、記憶の範囲、感覚的なところで結構ですが、ちょっとお答えいただければと思います。

小川政府参考人 裁判の件数そのものとリンクしたという点はちょっと私の方も承知しておりませんが、やはり裁判自体は、件数は仮に減ったとしても、さまざまなテーマについて複雑化しておりますので、裁判所からも法制審に委員が出ていましたし、弁護士の方も委員が出ていましたので、そういう意味では、実務に即して裁判実務について意識した発言などはされていたというふうには承知しております。

井出委員 最高裁の方も入られていましたし、弁護士の方も入られていたので、当然そのあたりの視点は持っていただいていたと思うんです。

 ここ五、六年、ずっと事件の数が減ってきている。それはなぜかというと、別に、それは決して現行の民法のままでいいという話では直接的にはないと私も思っているんですが、例えば、裁判に至らなくてもADRの活用がふえてきたとか、さまざまな要因があるかと思うんです。

 最高裁の裁判の迅速化に向けた報告書の中に、ADRがふえてきているということについて、次のような記載があります。ADRの利用の進展、費用面等からの提訴回避などによって訴訟事件が減少している一方、労働関係、交通関係、ITはちょっと関係ないとしても、新しい取引形態が問題となる訴訟、こういったものが、当事者間の対立が先鋭化する傾向、また質的に困難な事件の類型が増加をしている、こういうことが書かれてありまして、これを見ますと、紛争の場は裁判だけじゃない、ADRもあると。

 もっと言えば、今は企業で働く弁護士というのも一昔前に比べれば圧倒的にふえていると思いますし、裁判以外の場で、当事者間で物事を解決するという場面がふえてきているかと思うんです。その一方で、紛争の中身というものは難しくなり、多様化している。

 そういう意味においては、私は、民法を具体的にして、これまでいろいろな特別法ですとか通説、判例によっていたものをある程度まとめて、わかりやすくぽんと提示をするということは大変効果があることかなと思いますが、そういうことは効果があるというお考えでよろしいかどうか、ちょっと教えてください。

小川政府参考人 もちろん効果のあることだというふうに考えております。

井出委員 ですから、民法改正の必要性というものを少し具体的に考えていかなければいけないなということで今のようなお話をさせていただいたんです。

 例えば、先ほど小川さんのおっしゃった少子高齢化、高齢化というようなことも社会経済情勢の変化に挙げられておりましたが、少子高齢化を情勢変化と捉えるんだったら、やはり、民法でいえば相続の部分ですとか、そっちを見直さなければいけないのかなと思っております。ですから、やはりもう少し、わかりやすさ、社会情勢の変化から、この法改正につながる具体的な、本当に必要性があるんだというところを今後の議論の中で示していっていただければな、そんなふうに今考えております。

 その一方で、私は、これは民法に限らないんですが、法律がふえる、法律が具体的になる、そういうことに対しては、また一つ不安に思っているところがございます。民法の債権法の部分は、当事者間の契約、合意で済めば、裁判に至らなければ、そうそう出番はないわけですし、もともと民法というものは、逢坂委員のときの議論にもありましたが、私人間の、人と人とのやりとりの中で発生するもの、私法であって、刑法とは明らかに違うわけです。

 刑法と民法の一番の違いは何かといえば、やはり制裁、罰則の懲役、服役というところが一番大きな違いだと思うんです。

 民法という法律を具体化していく、それは法規範というものをふやしていくということになるんですが、一方で、社会的には、例えば習俗であったり礼儀作法であったり、道徳や倫理、そういった社会規範で解決をしてくるものもある。当然、契約や合意というものは、そうした社会規範の中で、お互い、それぞれの当事者同士が持つ社会規範を前提に合意がなされるものも数多くあると思うんです。

 そうした中で、いろいろな紛争の場面がふえているということにおいては、先ほどADRの後に申し上げたように、法文を具体化する必要はあるかもしれない。しかし、民法の具体化、改正というものが、これは一面、反面的に捉えると、日本の社会規範、習俗とか倫理、道徳、礼儀、そういったものになかなかよることのできない社会になりつつあることの一つのあらわれではないかな、そんなことを考えるんですが、ちょっと小川さんの見解をいただきたいと思います。

小川政府参考人 今御指摘ありました社会規範というのは、一般に人間の社会生活を規律する規範をいうとされておりまして、社会規範の中には、社会倫理ですとかあるいは慣習などのほか、法規範も社会規範の一種とされているようでございます。

 社会規範は、もちろんさまざまな類型のものがあるわけですが、逆に民法の方から見ますと、民法、特に家族法のようなものを除いて債権法について言えば、基本的には、契約自由の原則あるいは私的自治のルールが働くわけで、当事者の合意によってルール化されているものということが言えようかと思います。

 その意味では、倫理ですとかそういったものが直接債権法の世界に入り込む場面は本来余りないだろうと思うんです。ただ、やはり、公序良俗に反するとかあるいは信義則に反するというような形で、妥当な結論を得るためにそういった社会規範が作用するという場面はあるのかなというふうに思っております。

 そういう意味では、やはり法律のありようとしては、そういった社会規範を常に意識し、そういったものを念頭に置きつつ、それが余り乖離すると、社会規範と法というのが乖離するということは望ましいことではないと思いますので、常に社会規範も意識しながら対応していく必要があろうかというふうに考えております。

井出委員 大臣にも少し伺いたいのですが、例えば民法によらず憲法もそうなんですが、憲法で法務省関係でいえば、犯罪をした加害者の方については令状をきちっと示さなければいけないとかいろいろな定めがあって、犯罪の被害に遭われた方についてはほとんど記載がない。そのことについてはかなり長い間いろいろな御議論があって、実際そこを、憲法を改正すべきだという方もいらっしゃる一方で、法律でさまざまな犯罪被害者支援というものをやってきた、だから、それは決して、憲法に書いていないことはやらなくていいということでは全くないと思うんですね。

 私がこの民法の改正でもやはり同じようなことを考えるのは、人と人が社会で生きていく上ですから、当然ルールや法律が必要なのですが、ルールや法律が多過ぎるということは、果たして日本という国にとってよいのか。小川さんが先ほど言われたんですが、日本の民法というのは世界の各国と比べても条文が少なかった、それはやはり一つこれまでよかったところであって、維持していくべきようなところではないかなという思いを私は持っているんですが、大臣の忌憚のない御意見を伺いたいと思います。

金田国務大臣 委員御指摘の社会規範と法規範という議論の中で、やはり社会規範というのは人間の社会生活を規律する規範をいうんだ、そして、その社会規範は非常に広義のもので、その中に社会倫理とか慣習とか、そのほかに法規範が含まれると一般にはされているんじゃないか、私はこう思うんですね。

 だから、民法について言えば、民法自体が法規範なんですけれども、これを取り巻く各種の取引慣行や商慣習というものが社会規範を形成すると考えられるわけですが、適切なものはやはり法規範として必要なのではないか。

 そしてまた、法規範と社会規範が乖離していくということに対しても、局長から説明がありましたが、やはり必要に応じて本来見直しを行うことも必要なときもあるのではないか、こういうふうに思っております。

井出委員 この議論に少し関連して、法制審の議論の中で、中井さんという方の御発言の中にあったのですが、民法は俳句か散文かというようなお話がありました。民法が俳句か散文かというのは、文字どおり、俳句はその抽象性を詠み込んで、そこから伝わってくるメッセージを、民法でいえば人と人とのルールの間に生かしていく。それが散文、説明文になっていくことに対する疑義をその中井さんという方は呈されていたんですが、冒頭の法制審で、一回目、二回目、法改正の必要性を議論していたときは、結構こういう議論が多かったように見えるんですね。

 例えば、今この議論の中でもありましたが、非常に簡素であって、判例や取引の実務のルールで対応してきたから改正をしなくてもよかったんだ、そういうことをおっしゃられる方もいますし、そもそも、債権法に係る当事者同士の合意とは一体何ぞや、そんなような提起をされる方もいて、これは大変私自身も理解、結論を出すところが難しいところなんです。

 その中で、これは鹿野さん、幹事の方がおっしゃっていた言葉を御紹介しますと、「合意の尊重とは、契約に関係する紛争の解決において、まず当事者の合意の趣旨を出発点としようということだと思います」「それは、形式的に契約書に書かれているものをすべて押し通さなければならないということを意味するのではない」「むしろ、法的に尊重されるべき「合意」とは何かを検討していくことこそが重要だと思います。」こういうことをおっしゃられていて、この議論がスタートしたときは、民法、債権法の改正に何か一つの大きな目的、理念をきちっと明示するのか、それとも、これから各論でやっていきますが、個別のいろいろな問題を解決するのにとどめていくのか、そこでかなり時間を割いた論争がされているんです。

 小川局長に伺いたいのですが、五百の項目が二百になって、先ほどの御発言の中では、大体大方の方が異論のないところに落ちついたと。この結果というものが、当初、民法の改正をしなければいけない、それに一体どこまでかなっているものなのか、これは点数をつけるとどのぐらいなのか、そういうことをちょっと伺いたいんですが、いかがでしょうか。

小川政府参考人 私も法務省の職員として法制審の幹事で法律の立案作業にかかわったことがございますが、やはり比較的最初はさまざまな立法提案などがあって、幅広く意見を伺いつつも、最終的には、民事法の特に一般的な法律でございますので、それぞれ利害の対立があって、どちらかに有利になると、それに反する勢力にとってみると有利にはならない、そういう関係もございますので、法制審議会の中の合意を形成していくことがなかなか難しいのはしばしば経験するところでございます。

 そういう意味では、今回の民法の手法も、当時、さまざまな立法提案などもございましたので、幅広く受けとめた上で、徐々に徐々に、最終的には五年以上かけて合意を形成していったものだと思います。そういう手法は決して特殊なものではないというふうに理解しております。

 ちなみに、やはり点数はちょっと私としてはつける立場にはないのかなというふうに感じております。

井出委員 百点満点だと言っていただいても十分よかったんですが、大変控え目に御答弁をいただいたのかなと思います。

 かなり難しい議論であったということは容易に想像できるんですが、では、実際、民法改正になって、先ほども少し議論がありましたが、一体これからどういう社会になっていくのかな、そういうところも少し考えていかなければいけないんですが。

 きょうは一例で少しお話をしたいんですけれども、今回、四本柱の法改正がある、その中で法定利率の問題があるかと思います。これまで五%だったものを三%にして、そして変動制にする。この趣旨は、昨今の経済情勢ですとか、経済が変わるから損害賠償とかの利率も少し変動がある方がしかるべきだ、一律五%というのはちょっとおかしい、そういう趣旨で今回御提案をいただいていると思うんですけれども、その趣旨を改めて御説明いただきたいと思います。

小川政府参考人 お答えいたします。

 民法の法定利率の規定は、幾つかの場面に適用されるものでございまして、当事者間で利息の合意がない場合のまさに法律で定める利率であったり、金銭債務の支払いがおくれた場合の遅延損害金の算定の率にもなりますし、それから、今回明文化したわけですけれども、いわゆる中間利息の控除にも用いられるものでございます。

 この五%という数字は、それこそ百二十年前に、当時の貸出金利などを念頭に置いて、法定利率でいえば五%が当然だという趣旨で定められたものがその後百二十年間ずっと続いてきたというものでございまして、先ほど言いました幾つかの適用場面、例えば遅延損害金の算定になりますと非常に金額がふえていく状態になりますし、中間利息について言えば、現状の利率に比べて今度は額が減る傾向があるということになるわけですので、そういう意味で、非常に不公平な状態になっていたということが言えようかと思います。それを是正するというのが今回の改正の大きな目標でございます。

 当然のことながら、現在、超低金利の時代ですので、その時代とのミスマッチということを前提とした上で不公平感をなくすというのが改正の趣旨でございます。

井出委員 ちょっと私の理解不足もあると思うので、もう一度お尋ねをしたいんです。

 中間利息の控除にかかる利率が変動制となった場合、その適用利率によって損害賠償額に差が生じることになる。従来の損害賠償、一律の利率のときの方が、同じような損害賠償事例のケースがあったときの被害者、だから、あの人は何年前にこういうことがあって、この人はこういうことで同じようなことがあってといったときに、被害者間の公平性を考えれば、一定の利率、そこで公平性ということを重視してきたのではないのかなというところと、あと、損害の予想の可能性、そういうところをこの一律の利率というものは重視されてきたんじゃないかと思うんですけれども、ちょっともう一度御説明をお願いします。

小川政府参考人 ちょっと私の説明が不十分でしたが、今回の法定利率の見直しは二つの内容を持っております。

 一つは、五%という現行の法定利率を三%に引き下げる。これは、現在の経済情勢を見ながら、貸出金利をベースにしつつ、それこそ百二十年間続いてきたというふうな事情ですとか、あるいは遅延損害金としての意味なども考慮した上で三%に下げるというのが一つ。これは、経済的な実情にまず合わせましょうということです。

 それからもう一つは、将来にわたって市中金利との乖離が生じないようにするための変動制の採用でございます。私がまず申し上げましたのは、中間利息の控除の場面では、五%よりも三%にした方が、損害賠償額は基本的には、少なくとも逸失利益という場面でいえばふえていくということになりますので、そういう意味で、今までは非常に実勢から離れた金利を指数とする計算によって、本来の中間利息の控除というものから見ると低額に抑えられていたという点が、今回の是正される内容でございます。

 それから、変動制は、緩やかな変動制と私ども称しておりますが、見直しの期間も三年を期間としますし、その計算方法によりましても、非常に緩やかな形ということになります。そういう意味で、そうアップダウンが激しいような性質のものではございません。

 また、一定の基準時を設けることといたしますので、損害賠償の中間利息控除について言えば、損害賠償の請求権の発生時、つまり事故時に、その時点での法定利率を基準とするということになりますので、その意味では公平は保たれているのではないかと理解するところでございます。

井出委員 三%にまず下げて、経済の実情を反映する。そこは、五を三にする、五がいいのか三がいいのかというところの論争はありますけれども、一定の公平な物差しなのかなと思います。緩やかな変動制というところは、もう少し議論があるかなと思うんです。ですから、要は、その二つの案件というのは、やはりそのときの経済情勢をきちっと反映していこうというのが一つの立法趣旨かなと思います。

 ちょっとその事例を一つ挙げたいんですが、これはたしか二〇〇六年、二〇〇八年ぐらいに起こった問題なんですが、火災保険の構造級、要は木造か鉄筋かみたいなところで、保険会社がその基準の算定をいじくって、契約をふやすために、木造なんだけれども安い保険料を取ったりとか、そういうことが問題化したことがあって、後でお金を支払わなきゃいけないというような問題が発生をした。そのとき、保険会社側は、たしか、そういったことに関する賠償の時効というのが三年なんですけれども、そこをもっと、七年さかのぼって、会社側に責任があるので支払うことにします、利率も商法の方の六%を採用したというようなことを聞いているんです。

 結局、そうした当事者間の合意が何よりですから、そういう事例はこれからもあると思うんですね。いろいろなことが、消費者と企業との間に問題があって、企業が何かお金を払わなければいけない。法律に則して払う額は少ないのかもしれないんですけれども、企業も恐らく、信用ですとか株価ですとか、その後、企業の再スタートのことを考えれば、消費者により満足をしていただくような契約を提示することも、これからも往々にしてあり得ると思うんです。

 そのときに、一つ、経済の実情に応じるということを今回の法改正の中で打ち出すことが、私は、少なからずいろいろな影響が出てくるんじゃないかなと。裁判にならなければ民法の出番ということは基本的にはないんですが、裁判にならない契約の上でもいろいろな影響が出てくると思いますし、また、全然それと逆の見方をすれば、法律の趣旨は経済情勢に応じた利息の支払いというのに変わったのに、世の中の実態が全くついてこないということも想定されるのではないかと思うんですね。契約が、合意される契約で、今までどおりの契約がいろいろなところで続いていく。そういう両面考えられるかと思うんですけれども、そういうことについて、ちょっと見解をいただきたいと思います。

小川政府参考人 遅延損害金の部分ももちろん合意によって損害額を定めることは可能でございます。それは債権法に一貫して流れています私的自治の適用できる範囲だと思いますので、その意味では、法律が変わっても、合意によって解決される部分というのはもちろんあると思いますし、それは、変わる部分もあれば変わらない部分もあるということだとは思います。

井出委員 この話をお話しさせていただいたのは、今おっしゃった私的自治、その私的自治が一番重要なんですけれども、そっちがうまくいけば、いろいろな取引や合意、契約というものは問題ないと思うんですが、そうはいっても、やはり民法が変わるということは、その法律の趣旨、理念が社会に与える影響というのは大変大きいんじゃないかと思うんですね。

 そうしたときに、冒頭の話になるんですが、やはり民法を具体化していく、これまであった抽象、普遍的、シンプルな条文から具体化をしていくということは、これから各論の部分で問題があるというところは取り上げていきたいと思いますが、一般論で言っても、やはり社会に大きな影響というものが予想される、そう考えているんですけれども、その点についてちょっとコメントをいただきたいと思います。

小川政府参考人 繰り返しになりますが、民法は私人の一般法でございますので、その意味では広く人全体に適用されるものでございます。

 もちろん、そういう意味で、民法の持つ意味が大きいということは言えるだろうと思いますので、民法が変われば、それに伴って変わることの意味も大きいというふうには理解しております。

井出委員 今、変わる影響が大きいということでお話をいただいたんですが、今回、法改正の大きな目的であるわかりやすさというところで、わかりやすさというのは誰にわかりやすいのかといえば、国民だと思うんですね。それは人に限らず、法人とかいろいろなものも人として、あらゆる人ということで入るかと思うんです。

 そのわかりやすさというものが法制審の中では最初から合意もあったし、我々だって、わかりやすさ、それはそうだよねということで思います。その中で、特に法制審では、ユーザーですとか消費者、要は一般国民ですね、特定の団体とかそういうものではなくて、そうした人たちに対しというような御意見もあったかと思うんです。

 当初、小川さんもそこに幹事としていらっしゃって御記憶があるかと思うんですが、消費者といいますか、そうした視点に立つ幹事や委員が五人しかいないんじゃないか、ほかの、大学の先生が十八人もいる、それで果たしてわかりやすい民法になるのかというような問題提起があって、結局、その後、そこの部分のくだりを私もまだちょっとフォローし切れていないんですが。

 結果として、メンバー人選の問題というものは、この出てきた法改正案では杞憂に終わった、そういうふうに考えていいかどうか、それとも、そこはなかなか未解決な部分で、九十九回目になっても少し議論が残ったのか。その部分について教えていただきたいと思います。

小川政府参考人 もちろん、法制審議会での委員の構成には、研究者の方も多く入っておられますが、これも繰り返しになりますが、実務家、ユーザーの方もお入りいただいて、その他、ヒアリングですとかパブリックコメントでも意見を頂戴していますので、その意味で、決して学理的な関心にかかわるというものではなく、実務的な運用という面からも十分評価できるものとなっていると思いますので、冒頭の御趣旨であれば、杞憂で終わったというふうに理解しております。

井出委員 パブリックコメントを二回やっていただいて、そういう意味では、いろいろな声を聞く機会というものをとっていただいたのかなと思います。大方の人が賛成するところで落ちついた、そういう話をいただきますと、私も余り反対する理由もないのかななんということを思ったりもする、思ったりするだけで、実際そうするかどうかわからないんですけれども。

 そのときに、ただ、そうはいいつつも、今、先ほど民法というものが社会に与える影響は大きいということを言われましたので、やはりしっかりと審議を尽くしていかなければいけないと思いますし、そういう意味では、慎重に慎重過ぎるぐらいの、本当に大丈夫かというような、いろいろな問題提起をしていくところから始めていってもいいのかと思うんです。

 法制審に係ることなので、最後、少し大臣に伺いたいんですが、逢坂先生も少し、法制審が絶対ではないというような話をされました。刑事訴訟法は昨年でしたよね。(盛山副大臣「去年からことし」と呼ぶ)去年からことしでしたね。もう十年も前のことのように感じるんですが。そのとき、法案の修正を私なりに、私としては大変不満なんですが、修正を少しでもという思いでさせていただいて、合意をさせていただいた。

 それに少し後日談がありまして、私、あれだけあの問題にかかわったものですから、官僚の方とざっくばらんに話をする機会がございました。そのときに、ある方に言われたのは、刑事訴訟法の法制審というのは徹底的にやったんだ、あらゆる団体の言うことを聞いて徹底的にやって、だから、まさか国会で修正があるとは思わなかった、政府の立案側にも、やはり立案の趣旨からいって修正できる部分とできない部分がある、大体それは、刑事訴訟法に関して言えば、法制審で出し切った、これ以上何があるんだとその方は思っていたそうなんですね。

 私から申し上げますと、それは、法制審に入られる方ほど刑事訴訟法や民法に対して専門の知見があるわけではないんですが、それが社会、国民に与える影響、国民にかかわるものであれば、やはり私のような素人でも物を言っていく必要性というものはあると思います。

 今回、大変、九十九回、六年間という御議論を積んでいただいたと思うんですが、もう一度、平らな視点からといいますか、これを一から見直していく必要があると思います。ですから、私は、大方の皆さんのまとまるところで落ちついたというものであっても、やはり、そこは一からきちっと見ていく必要があり、正すべきところが見つかれば、それは速やかに正すというのがあるべき議論の形ではないかな、そんなふうに考えているんですが、大臣のお考えを伺いたいと思います。

金田国務大臣 法制審で六年をかけたその議論というのは、非常に努力というものをお感じいただけるんだろうというふうに思います。その場での議論も、回数もおっしゃっておられましたが、十二分にやってきたのも事実だと思います。

 したがって、私は、法制審の結果も、ここで議論をさせていただくときには尊重をさせていただくということは必要ではないかと考えております。

井出委員 まさに、尊重はしていいんですが、ここの議論も尊重していただきたいと思いますが、もう一度お願いいたします。

金田国務大臣 私は、そういう意味も込めて申し上げたつもりでありました。もちろんこの場での議論も非常に大切だ、こういうふうに思っております。

井出委員 そうしましたら、また次回は参考人をお招きして、いろいろ御意見をいただきまして各論を深めてまいりたいと思いますので、今後ともよろしくお願いします。

 きょうは終わりたいと思います。どうもありがとうございました。

鈴木委員長 この際、暫時休憩いたします。

    午後零時二十七分休憩

     ――――◇―――――

    午後一時十三分開議

鈴木委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。

 質疑を続行いたします。階猛君。

階委員 民進党の階猛です。

 金田法務大臣、本日はよろしくお願いします。きょうは、最初の質疑ですので、大きなところを大臣にぜひお答えいただきたいんですが、今回、民法の債権法のところは百二十年ぶりの改正ということで、大改正になっております。よく閣法については、最初に大臣の方から趣旨説明が行われて、速やかに御審議の上、成立をというお話があるわけですけれども、速やかにといいましても、法律の質や量によって、おのずと速やかにについても意味が変わってくると思うんですね。今回、この大改正ですから、先ほど井出委員からも質問の中でお話があったように、やはり国会の議論も尊重していただいて、じっくりと議論を尽くすべきではないかと思います。

 まずは、この点について大臣の認識をお伺いさせていただいてよろしいでしょうか。

金田国務大臣 ただいま階委員から御指摘がありました。

 私は、丁寧な国会での議論というのが必要だと思っております。同時に速やかにということで、丁寧かつ速やかに議論を進めていきたい、このように思っております。

階委員 なるほど。なかなか奥の深い御答弁でありますが。

 ただ、他方で、やはり実務界からは、成立のめどをはっきりしてほしいというような声も聞くわけですね。

 実務界だけじゃなくて、例えば司法試験の受験生、これも、今回の改正によって、私は大分勉強の負担が軽くなるような気がするんですね。というのは、先ほどもありましたように、百四十項目ですか、今まで自分の頭に置いておかなくちゃいけなかった判例の知識、法律の解釈が条文に全部書いてあるわけですから、これは司法試験の受験生にとっては本当に大歓迎な話ですよね。逆に、そこまでいっちゃうと、私は、弁護士資格というのは何のためにあるんだろうかというか、そんなに難しい試験を課す必要もないんじゃないかという気もするわけですけれども。

 まあ、それはおいておきまして、こういった法律、成立時期は、これは国会の審議の後ですから、今言うわけにはいかないというか言ってはいけない話で、ただし、成立した後、施行期日については公布から三年以内という定めがありますけれども、大体イメージとして、公布から三年以内の中でもどれぐらいで施行したいというふうに考えていらっしゃるのか、この点について大臣、お答えをお願いします。

盛山副大臣 私の方からとりあえず御説明をさせていただきます。

 階委員よく御案内のとおり、法律の施行日というのは、やはりある程度わかりやすい日にちでないといけないと思います。例えば十一月の十八日だとかしますと、もちろん、法律の内容次第では急いで公布即日施行もあるわけでございますけれども、これだけの大きな大改正でございますし、そして、午前中の質疑でもありましたように、その後、我々法務省の方からも丁寧な説明、国民への周知、そういった活動もしたいと思っておりますので、切りのいいとき、例えば一月の一日だとか四月の一日だとか、そういうタイミングになるようなことであり、なおかつ、今の提出しております案にありますように、三年以内で政令で定める日、そんな形で我々の方としては準備をさせていただきたい、そんなふうに思っております。

階委員 今の御答弁は了としますけれども、これが結構微妙ですよね。年内に成立して切りのいいところだと二〇一九年の一月一日、審議を行って年をまたぐと、切りのいいところで三年以内だと二〇二〇年の一月一日ということで、切りがいいところを重視するのか、それともその期間をなるべく長くとるのかというところでちょっと変わってくるような気がするんですね。

 大臣にもちょっと御確認したいんですが、切りのいいところでということで一月一日とか四月一日を優先させるのか、それとも、周知期間三年というところを、なるべく余裕を見て長目にとるのか、このあたりについて、ちょっと、優先順位というか感触をお聞かせいただけますか。

金田国務大臣 三年の中での切りのいいところというところで考えていくのかなというふうにイメージをいたしております。

階委員 そうすると、仮に年をまたぐとすれば二〇二〇年一月一日というのが可能性として出てきますが、年をまたがないとすると二〇一九年一月一日という可能性も出てくるということだと思います。これ以上は問いませんけれども、そういうふうに、今審議していることが年内かそうじゃないかによって実務にも多分大きな影響を与えるんだと思います。

 我々としてはしっかり議論をしていきたいと思います。その結果、年をまたいだというときに、切りのいいところというとやはり二〇二〇年というところも視野に入ってきちゃうわけですけれども、余り先送りするのも私はよくないだろうなというふうに思いますし、そこは、私は、切りのいいところも大事なんですけれども、やはりある程度早期に、成立したら施行するということも考えていただかなくてはいけないのかなと思っておりますので、その点を申し上げておきます。

 次に、法定利率について。

 先ほど来議論がありました、なぜ三%にしたのかということで、最近の金融情勢を見ていますと三%でも高過ぎるんじゃないかというような御意見もありましたけれども、改めて、この法定利率、三%とした理由といいますか理論的な根拠、これを大臣からも御説明いただけますでしょうか。

盛山副大臣 私の方から先に、簡単に御説明をさせていただきます。(階委員「ちょっと時間がないので」と呼ぶ)はい。では、簡単に御説明をさせていただきます。

 階委員、もうよく御案内のとおりでございまして、法定利率は高い方がいいのか安い方がいいのか、人によってもいろいろ利害が違います。そんな中、やはりわかりやすい金利というのも必要でございますのと、それから、現行の五%、これをどの程度下げるのか、そんなこともございまして、現行の市中金利を考えると同時に、実際に御担当の方、中小の方を含めてお借りになるときの実勢の利率、そういうことも考えました。百二十年にわたり年五%といったようなことのバランスも考えまして、いろいろ審議の末、三%というふうにしているものでございます。

階委員 だから、そのいろいろというところをもうちょっと詳しく聞きたいんですよ。三%というのが適当に決められたとしたら、それはそれで問題ですので、何かもうちょっと理論的な根拠を具体的に説明できないかということで大臣にお尋ねしております。

金田国務大臣 現在の市中金利の水準というものを考えて法定利率を引き下げることにしたのはそのとおりでありまして、考慮した要素としては、やはり、市中金利の指標にはさまざまなものがあるんですけれども、貸し金債権の利息を算定する場面ではもちろんですけれども、金銭債務の遅延損害金を算定する場面でも、ほかから金銭を調達するときの利息分が主な損害として想定されるわけでございますことから、法定利率の引き下げ幅の検討に当たっては、預金金利なんかではなくて貸出金利の水準を参照すべきだということであります。

 もっとも、例えば借り主が大企業や公共団体である場合には極めて低金利となる、かつ、その貸付額も多額に上るわけですけれども、国内銀行の貸出約定平均金利の平均値にはこのような特殊性のある大口の貸し出しも含まれるため、貸出約定平均金利がそのままでは、借り主が中小企業または一般消費者である場合も視野に入れた数値としては低過ぎることにも留意する必要がある。同様に、プライムレートについても、優良企業向けの貸し出しに適用される最優遇金利であるために、借り主が中小企業または一般消費者である場合を視野に入れれば、相当に低いものと言わざるを得ない。

 さらに、法定利率の引き下げの際には、遅延損害金の額が低くなり過ぎると債務の不履行を助長する結果になりかねない。

 これまで約百二十年にわたって年五%で実務の運用がされてきたこととのバランスもある。

 こういうことを考慮いたしまして、改正法案において、以上のような事情を総合的に判断いたしまして、簡明な数値とする必要性なども勘案して、法定利率を約三%に引き下げることとしたものであります。

階委員 それとともに、私は、考慮要素として頭に置いておかなくちゃいけないのは、今回初めて法定利率が変動金利になるということだと思うんですね。しかも、この変動金利、先ほど緩やかな変動制だと誰かがおっしゃっていましたけれども、要するに、施行から三年ごとに見直しが入ってくる、その見直しをするときに、その見直し前の水準の測定期間と見直し時の測定期間、両者の測定期間の平均金利を比べて、それが一%以上上下したら、変動して新たな金利になるということなんですね。

 ところで、仮にですけれども、この法律が成立して、施行されるのが二〇一九年一月一日だったとしておきましょう。そのときに、三年後の見直し時期は二〇二二年の一月一日ですね。そのときに比べる期間はどうなるかといいますと、二〇一四年一月から二〇一八年十二月の五年間、まずこの平均金利を出します。他方、もう一方の比べる期間、これは二〇一七年一月から二〇二一年十二月、この五年間の平均金利を出します。

 恐らく、最初の測定期間と後者の測定期間、今、金利がゼロ%台で推移していますから、前者の測定期間は多分、市場ですから物すごく上に行く可能性もなきにしもあらずですけれども、今の日銀の失敗した金融政策を前提にすれば、二〇一八年十二月ぐらいまでに大きく金利がはね上がるということはないと思うんですね。つまり、前者の測定期間は二〇一四年一月から二〇一八年十二月の五年間の平均だと言いました、これを平均しても〇・何%だと思うんですよ。〇・九とか〇・八とか、そんなものだと思うんです。

 ここから、その後の測定期間、上に行くことはあっても、下に一%下がったらマイナスになりますよね、仮に前者が〇・八とか〇・九だったら。そうすると、さすがに銀行とかお金を貸す人がマイナス金利では貸さないと思いますから、最初の測定期間が仮に〇・八とか〇・九だったら、そこからマイナス一%、下がるということはあり得ないんですよ。つまり、三%が二%に下がるという可能性はないということだと思うんですね。ということは、今の時点で三と決めてしまったら、もう未来永劫、恐らく三より下がることはないということも頭に入れておかなくちゃいけないと思うんです。

 だからこそ、最近の金融実態を見ていれば、二%ぐらいにしておいて、上に行く分には三年ごとにどんどん改定していけますからいいと思うんですけれども、下方硬直性がある今の金融情勢のもとではやはり三%というのは私は高過ぎると思っていて、二%ぐらいがいいところじゃないかなという気がするんですけれども、二%にすべきではないか。変動金利だけれども、今の制度のもとではこれ以上下に行くことは現実無理だという中で、二%にすべきではないかと私は思うんですけれども、どうでしょうかね、この考え方。

金田国務大臣 階委員が大変に、金利の現状も踏まえ、経済の現状も踏まえ、そういう計算をされてお示しになりました。

 私も、その辺の具体的な試算とか見通しについて、御指摘の趣旨はわからぬでもないんですが、やはりそれを検証する意味においては、ちょっと事務方の方を見たんですが、今資料を持ち合わせていないものですから、それにお答えを申し上げるのは難しいんですけれども。

 ただ、私が先ほど申し上げましたように、繰り返しになっちゃうんですけれども、やはり、引き下げ幅を定めるに当たって考慮した要素というのを先ほど申し上げました、その考え方をまた繰り返し述べざるを得ない。その結果、三という数字に今なっているということを申し上げたいと思います。

階委員 そこで、さっきおっしゃった答弁の中で、今回の変動制度が下には行きづらい制度になっているというところがちょっと考慮要素の中に抜けているんじゃないか。さっき言ったような、今の金利の情勢から、この制度のもとでは三が二に下がるということはほぼあり得ない、まず絶対あり得ないと言っていいと思うんですけれども、そういう中で、上にはどんどん変わり得るわけだから、あらかじめセットしておく数字は二ぐらいでいいんじゃないかというのを私は申し上げたかったわけです。

 これについてはまた改めて事務方とも議論させていただきたいと思いますが、大臣に一つだけ、これは、くぎを刺すと言ったらちょっと僣越ですけれども、提案理由の説明の中で、法定利率について、「現行の年五%から年三%に引き下げた上で、市中の金利動向に合わせて変動する制度を導入することとしております。」というくだりがありました。これは、市中の金利動向に合わせて変動する、そのまま読めば上にも下にも変動するというふうに読めますでしょう。実際は、今私が指摘したとおりで、もともと、今の金利情勢からすると、測定期間が恐らく〇・七とか〇・八とか〇・九とかという数字になった場合は、これは変動するとは言っても上方向にしか変動しないんだということはぜひ御理解いただいた上でこれから御議論させていただければなというふうに思います。

金田国務大臣 今の点につきましては、後で事務方にその辺はよく確認をしてみたいというのが本音であります。

 ただ、法定利率が三%を下回らない原因としてはやはり現時点で貸出約定平均金利が空前絶後のレベルで低下しているというお話がございました。基準割合がこれ以上大きく低下することは実際上想定しがたい、そのために改正法案の法定利率が三%を下回ることは想定しにくいかもしれませんが、これは現状の貸出約定平均金利の水準が極めて低いことによるものでもあるということは御理解をいただきたいというふうに、私の思いとしてお話をさせていただきます。

階委員 幸か不幸か、そういう状況の中で法改正の議論になったんですね。普通の金融情勢で、金利が二パーとか三パーとかのときだったらこういう問題というのは生じないんですけれども、でも、我々の所管じゃないからいいんだみたいなことじゃなくて、やはり、この法律は世の中全体に影響するわけですから、今のことはぜひ頭に置いていただかなくちゃいけない。

 それから、三にするか二にするか、たかが一%じゃないかという考え方も私は全然違うと思っていまして、これも先ほど来議論が出ていますように、逸失利益の損害賠償、この中間利息を控除する場合の利率が三になるか二になるかによって全然金額が変わってくるんですね、損害賠償で請求できる金額が。だから、この時点で金融情勢に合わせた判断をしておかないと、どうもやはり賠償請求をする側にはちょっと不満感が残る結果になりかねない。

 せっかく五を三にして、法務省としては現下の金融情勢に配慮して損害賠償を請求する側の利益にも配慮したんだと胸を張るかもしれませんけれども、今や世の中は、五が三になるだけじゃ満足し切れない、こういう状況にあるということも頭に入れていただいて、柔軟に考えていただければと思います。

 その上で、もう一つ、きょうは限られた時間ですので大まかな話をしたいと思います。

 保証の問題、これはこの法案の中でも大きな争点になってくると思います。幾つか論点があると思うんですが、個人保証の制限、規制をするということでありますが、これは条文でいいますと、四百六十五条の六あたりに出てきます。

 冒頭に、「事業のために負担した貸金等債務を主たる債務とする保証契約」という表現があります。「事業のために負担した」という枕言葉がついていますので、例えば、結婚式とか葬式で物入りになったのでお金を借りますというときの保証人になる場合とか、あるいは、それこそ損害賠償でお金を払わなくちゃいけなくなったのでお金を借りますというときの保証人になる場合とか、あるいは、もっと言うと、ギャンブルでお金を借りる場合にその人の保証人になる場合、こういうのは含まれてこないと思うんですが、それで正しいですか。

金田国務大臣 正しいです。

階委員 そうすると、大体、ギャンブルでお金を借りる人が保証人を頼む場合に、ギャンブルに使うからということで保証を頼むということは普通はないと思うんですね。ちょっと金が必要になったので、悪いけれども保証人になってくれないかみたいな感じで保証人になってもらうわけですよ。ところが、実態はギャンブルだったとした場合、この今の枕言葉の部分からは外れますので、こういった保証はもう無条件、無制限にできるという理解でよろしいですか。

金田国務大臣 根保証以外は無条件でできるということになろうかと思います。

階委員 おっしゃるとおりで、根保証で金額の上限というのは定めなくちゃいけないかもしれませんけれども、それ以外、例えば今回みたいに公正証書の作成を義務づけるとか、そういう規制は入っていないわけですね。

 私がバランス論で考えると、事業のための借り入れについて保証した保証人というのは、将来債務保証を求められる場合であっても、事業が失敗したんだからまあしようがないかなと。ところが、ちょっと金を借りるので保証してくれと言った人に保証したら、ギャンブルで物すごいすっていた、返せないからと保証が求められた、これは、事業のための保証人よりもはるかに保証人としては酷だし納得いかないと思うんですね。

 今回の法案は、今の大臣の答弁のように、こういうギャンブルのための借り入れ保証については何ら手当てがなされていない。これはちょっと何か、バランス論としてどうかなと素朴に思うんですけれども、いかがでしょうか。

金田国務大臣 改正法案では、公証人によります意思確認が必要となる主たる債務というものを、事業のために負担した貸し金等の債務に限定をしております。これは、事業のために負担した貸し金等債務の保証については、特にその保証債務の額が多額になりがちである、それから、保証人の生活が破綻する例も相当数存在するという指摘があることを考慮したものであります。

 そして、もっとも、公証人による意思確認の手続というのは、真に保証の意思を有する者をも含めて、一定の手間やコストを負担させるものであります。したがって、事業のために負担した貸し金等債務以外の債務を主たる債務とする個人保証にも対象を拡大すると、必ずしも保証額が高額ではないものについても公証のためのコストをかけさせることになるといったふうに、かえってその場合には弊害を生じさせるおそれも否定できないと考えております。

階委員 少額の債務であればいいのかもしれませんけれども、ギャンブルで結構大きな額になることだってあるじゃないですか。こうしたところが保証が一律有効というのも、ちょっと私は納得できないような気がするんですね。

 何かもうちょっと、せっかく個人保証を規制するのであれば、本当に何のメリットもなくリスクだけ負うのが保証の特質ですから、そのリスクが顕在化したような、その中でも最たるものが意味のない、ギャンブルの借金が膨らんだような、そういう場合で保証される方について配慮するというのは大事なことではないかなと思うんですけれども、これは大臣の政治家としての考え方をお聞きしたいところでもありますが、いかがでしょうか。

金田国務大臣 改正法案におきましては、現時点で特に保証人保護の必要性が高いと考えられる類型の保証を抽出する趣旨で、公証人による意思確認が必要となる主たる債務を事業のために負担した貸し金等債務に限定することにしたものであります。

階委員 これもこの後事務方とも議論したいと思っていますけれども、まず一点申し上げたいのは、個人保証を規制すると言っていますけれども、対象となる主たる債務の範囲がちょっと狭きに失しているんじゃないかということを問題提起させていただきたいと思います。

 他方で、個人保証の規制が及ぶ保証人の範囲について、何かいろいろ例外がありまして、主たる債務者が法人その他の団体である場合には、理事とか取締役とか執行役とかこれらに準ずる者とかが除かれたりするわけですね。

 私も、被災地で、被災した中小企業の方とかにお話を聞いて、再建する過程で事業承継をしたいというときに、ネックになるのは法人なんですけれども、やはり個人保証を、承継する人もやらなくちゃいけないということで、経営者はさすがに保証してもしようがないかなという気もしないでもないんですが、この経営者の保証についても、今や金融庁とか経産省がガイドラインをつくって、なるべく保証に頼らないようにしましょうという流れになっています。

 そういう中で、経営者のみならず理事とか取締役とか執行役、必ずしも経営の根幹に携わらないような人たちも例外となっている。これはちょっと広過ぎるんじゃないか。経営者ぐらいで、実質経営者でもいいですよ、要は、その法人、会社なり団体なりを動かしている人だけに例外はとどめるという方向の方がいいんじゃないかと思うんですが、この点について、大臣の大まかな考えを伺ってもよろしいでしょうか。

金田国務大臣 委員が御指摘になりましたのは、保証人になろうとする者がその三つの事例となる場合は、御承知のように、保証意思宣明公正証書による保証意思の確認が不要であるということになっているわけですね。その三つ、それが広過ぎるんじゃないか、例外になってという御指摘だと思うんですが、事業のために負担した貸し金等債務を主債務とする保証契約等を締結するに当たりまして、保証意思宣明公正証書の作成は不要なものとしているわけですね。そして、保証意思の確認は要しないということになっております。

 その理由としては、例外とした者は、主債務者の事業の状況を把握することができる立場にあって、保証のリスクを十分に認識せずに保証契約を締結するおそれが一般的に、類型的にといいますか、低いというふうに言えるという考え方によるものでございますし、また、中小企業に対する融資の実情としましては、これらの者による保証というのは企業の信用補完あるいは経営への規律づけといった観点から有用とされていますから、これらの者による保証が融資の前提とされていることが実際にも少なくないんですけれども、厳格な意思確認の手続を義務づけると、時間やコストを要することとなって円滑な資金調達が阻害されるおそれがあることも否定できないということを考慮いたしまして、この例外の三つの例を定めたという経緯だと私は考えております。

階委員 今の答弁は三年ぐらい前だったらそのとおりかなと思うんですけれども、さっき言いましたとおり、金融庁とか経産省はそもそも経営者の保証もとらないようにしましょうというような方向でのガイドラインをつくっているわけですから、ちょっと、申しわけないですけれども、一周、二周おくれた御答弁だったのかなという気がします。

 今、少しだけきょうは御質問しましたけれども、私、銀行で社内弁護士をしていたので、実は私は一番詳しいのはこの分野なんですよ。質問しろと言われたら多分三年ぐらい質問できると思うんですが、そこまでは言いませんけれども、ぜひじっくり議論をさせていただきたいと思います。大臣の手をそんなに煩わせるつもりはありませんけれども、なるべく事務方に質問するようにしますけれども、ぜひ慎重審議、御協力いただければと思います。

 きょうはありがとうございました。

鈴木委員長 次に、藤野保史君。

藤野委員 日本共産党の藤野保史です。

 今回は、民法の債権関係法が百二十年ぶりに改正されるということで、大変大事な審議が始まったというふうに受けとめております。

 政府は先ほど来、改正理由につきまして、社会、経済の変化への対応、そして国民一般にわかりやすい民法にすると御答弁されておりますが、大臣に、さらにちょっと具体的にどのような変化への対応なのか、さらにはどの点が国民にわかりにくいのか、もう少し詳しく教えていただければと思います。

金田国務大臣 委員御指摘の、二点ございます。

 まず初めの、社会、経済の変化について、具体的内容いかんというお話でございます。

 今回の改正におきましては、社会、経済の変化に対応するための改正事項は少なくありません。少なくないんですが、ここで言う社会、経済の変化としては、具体的には、例えば、取引量の劇的な増大、取引の内容の複雑化、高度化、それから情報伝達手段の飛躍的な発展といったようなものが挙げられるのではないかなというふうに考えます。

 例えば、取引量の増大や取引内容の複雑、高度化は、約款を利用した取引の劇的な増大を招いている。そして、このような時代に対応するためには、定型約款に関する基本的な規律を創設することとしているということが例として挙げられております。

 それから、二つ目の、基本的なルールが見えないような状況に対する御質問だと思いますが、今回の改正では、民法の基本的ルールが国民一般に見えない状況を解消する、そして国民一般にわかりやすいものとするために多くの改正を行っているわけであります。

 基本的ルールが見えない状況というのは、膨大な数の判例や確立した学説上の考え方といった基本的なルールは民法の条文にはあらわれていないわけであります。したがって、民法の条文を見てもその内容を読み取ることが困難な状態となっているということを申し上げたい、このように考えております。

藤野委員 今詳しく答弁いただきましたが、取引の量の増大や、複雑、高度化、さらにはわかりやすくするということであります。

 こうした変化がこの債権という世界で、これはやはり民法ですから、事業者対消費者だけでなく、消費者と消費者、あるいは事業者と事業者、まさに多角的にかかわってくる、債権法の世界では、この変化がより重要な要素になってくる。とりわけ、当事者間による、おっしゃったような情報量の格差、あるいはそれに基づく交渉力、契約を結ぶ際、その交渉力の差という形でも顕著にあらわれてくるのがこの債権法だと認識をしております。

 大臣にお聞きしたいんですが、これから審議をしていく上で、大もとにある複雑さといったような変化を受けて、当事者同士の契約自由に委ねてしまうとこれはどうしても契約弱者が不利な状況に陥ってしまう、そういう債権関係が生まれてしまう、そういうおそれが今大きくなっていると思うんですね。ですから、先ほど答弁で、個人の視点が大事だとか人の視点が大事だという答弁も大臣はされておりましたが、今後の新しい債権法の役割として、交渉力の格差や、そうしたことにも配慮して、契約絶対、契約自由だけではない、やはりそうした生身の現実に配慮した法律をつくっていくことが必要だと思うんですが、そういう考え方について、お考えをお聞かせください。

金田国務大臣 契約の当事者に情報の格差が生じているというようなことを今おっしゃられたと思います。

 そういった問題は、民法はやはり私法の一般法であるという考え方、そのために、取引当事者の情報あるいは交渉力の格差の是正を図るといった、消費者の保護それ自体を目的とする規定を設けるのであれば、特別法である消費者契約法などによることが基本になるかな、こういうふうにも思うんです。

 この点、今回の改正では、例えば賃貸借のように国民に身近な法律関係に関して現在の実務で通用している基本的なルールを適切に明文化することによって、法律の専門家でない国民一般にも民法をわかりやすいものとしていくということが目指されているのではないか。

 したがって、消費者取引でも多用されている約款に関して言えば、社会、経済の変化への対応の一環として、基本的な法律関係を明確化することによって紛争解決や紛争予防を図るということを目指しているものもあるわけであります。だから、これらの改正は、消費者保護を主たる目的とするものではないんですけれども、消費者の権利利益の擁護に資する、そういった効果を発揮することが期待されるのではないかな、こういうふうに考えております。

藤野委員 いや、約款などの個別例じゃなくて、全体としてのお考えをお聞きしました。

 といいますのも、消費者契約法とおっしゃいましたが、それはあくまで事業者と消費者、こういう世界でありますが、民法というのは、消費者と消費者、あるいは事業者と事業者、大企業と中小企業とか、そういうところにもかかわってくるわけで、ですから、まさに基本法としての民法で、基本的な考え方として、そうした変化に対応して、そうした格差、契約弱者を生まないという観点を大事にすべきじゃないかという指摘であったということであります。

 その上で、時間の関係もありますので次に行きますが、きょうは個人保証についてお聞きをしたいと思っております。

 先ほど来も議論がありましたけれども、入り口ですので、私もさかのぼって考えたいと思うんですが、やはり、この個人保証の問題、長い歴史がございます。

 日弁連などの調査によると、現時点でも、借金の肩がわりや保証で、それが原因となって倒産している人が破産債務者の四人に一人に上っているだとか、あるいは、自殺も比較的多いわけですが、その中でも経済苦を理由とするものがまだやはり多い。

 かつて、SFCG、商工ファンドの問題なども社会問題化いたしました。私も、かつて国会の秘書をしていた時代に、多重債務、クレ・サラ問題を担当いたしまして、民商の皆さんや多重債務の皆さんが各地で開いていた多重債務問題の対策相談会というのがありまして、通称道場と言われておりました、剣術道場ではないんですが。ひまわり道場とかいろいろあったんですが。

 そこでは、多重債務に陥った方、あるいはそれを抜け出した方が、まさに多重債務の方同士が教訓を持ち寄って、どうやってそこから抜け出していくのか、あるいは過酷な取り立てにどうやって適切に対応していくのか、こういったことを本当に当事者同士が知恵を出し合って対応するし、弁護士さんもそれに知恵と力をかしていく。そういう場に私も参加させていただいて、本当に血のにじむような、文字どおりそうした経験でこの問題を切り開いてきた。当時はまだ上限金利の規制がありませんで、そのもとでの本当に苦しい闘いだったわけですけれども、そこから一歩一歩改善してきた。政府も、それに基づいていろいろ努力をされてきたと私も認識をしております。

 そのもとで、金融庁にまずお聞きしたいんですが、この間、金融機関から借り入れている企業のうち、経営者本人による個人保証を求めていない融資の割合はどれぐらいでしょうか。

水口政府参考人 お答え申し上げます。

 民間金融機関が無保証での新規融資や保証の契約の解除等を行った件数につきましてですが、平成二十七年十月から二十八年三月までの六カ月間で約二十二万五千件、新規融資全体に占める無保証融資の割合が約一二%でございます。

藤野委員 これは二〇一四年に始まっているわけで、そのもとで一割を超えつつあるということだと思います。

 今おっしゃっていただいた数字は、先ほど御指摘もありましたけれども、経営者保証に関するガイドラインというのが、金融庁と経産省がかかわって、そして民間ベースでつくられまして、まさに個人保証に頼らない保証をどうやるかというガイドラインがつくられて、これは本当に、先ほど言ったような当事者の方や弁護士の方、運動団体の方が切実に求めていた、そういう運動を受けてつくられた制度の一つだと私も認識をしております。

 そして、政府系金融機関もこれに基づいてやっていると思うんですが、政府系金融機関における実績も教えてください。

木村政府参考人 政府系金融機関におきます経営者保証ガイドラインの運用の状況でございます。

 本ガイドライン運用開始時の平成二十六年の二月―三月期には、件数にして新規融資全体の一五%、金額で二二%でございましたけれども、平成二十八年の四月から九月の間でございますと、件数にして三三%、金額で五一%ということで、その割合は着実に増加しているというふうに考えてございます。

藤野委員 民間に比べてやはり政府機関は非常に努力されている。平成二十六年、二〇一四年二月にスタートした時点では、件数では一五%、金額では二二%ですが、二年たちますと、それは件数で三二、金額では五一%まで、いわゆる無保証融資が実現している。やればできると、私はこれを見て思いました。政府が率先してそういう例をつくっていると思いました。ですから、そこを本当に今回の法改正もさらに後押しする、それをまさに踏まえた上での民法のルールをつくっていくことが求められていると思っております。

 そしてもう一つ、少しだけ紹介したいのは、今言った経営者ガイドラインだけでなく、政府はこの間、さまざまな機関でさまざまな取り組みを、経営者保証だけでなく第三者保証でもやってこられた。

 ちょっと時間の関係で私の方で紹介させていただきますが、中小企業庁が二〇〇六年に、信用保証協会に対して、第三者保証について原則禁止する通達を出されました。そして、二〇〇九年には、内閣府が自殺対策の一環として、連帯保証人について、「制度・慣行にまで踏み込んだ対策に向けて検討する」ということを決めました。

 政府は、二〇一〇年の金融資本市場及び金融産業の活性化等のためのアクションプラン、この中で、「経営者以外の第三者の個人連帯保証を求めないことを原則とする融資慣行を確立し、また、保証履行時における保証人の資産・収入を踏まえた対応を促進する」、こういう、まさに政府としてのプランも出されている。こうしたことを受けて、金融庁は、二〇一一年に監督指針を改正しました。お聞きしてもいいんですけれども、こちらで言いますと、これも、「経営者以外の第三者の個人連帯保証を求めないことを原則とする」という監督指針の改正であります。

 そして、二〇一三年には、今言った経営者保証ガイドラインができ、政府は、二〇一三年には、日本再興戦略の中で、新事業を創出する、あるいは開廃業一〇%台を目指すための施策としてこの経営者保証ガイドラインを位置づけているというわけです。

 全体としての位置づけ等にはいろいろ意見もありますけれども、しかし、少なくとも政府自身が、こういう保証に依存しない、これを経営者だけじゃなく第三者でもずっとやってこられた、努力されてきた。先ほど言ったように、政府系金融機関では、金額で言えば五割を超えるところまで来ているわけで、これはやればできるというふうに私は強く思うわけです。

 大臣にお聞きしたいんですが、こうした一貫した流れといいますか積み重ねがあるわけでして、今度の債権法の改正も、この流れを前に進める、そういうものであるべきだと思うんですが、御認識はいかがでしょうか。

盛山副大臣 ちょっと、法制審議会での過程につきまして、私の方から御説明させていただきます。

 法制審議会における審議の過程では、事業のために負担した貸し金等債務を経営者以外の第三者が保証することは全面的に禁止すべきであるとの意見がありました。

 しかし、経営者以外の第三者によるいわゆる第三者保証の中には、エンジェルなどと呼ばれる個人の投資家が事業の支援として自発的に保証することなども現に存在しております。このため、第三者保証を全て禁止することに対しては、特に中小企業の円滑な資金調達に支障を生じさせ、金融閉塞を招くおそれがあるとの指摘が中小企業団体から特に強い意見として示されました。

 やむなく保証人となる原因にはさまざまなものがあると考えられますけれども、保証意思の形成過程には問題があるという事象に対しては、今回の改正で創設する保証委託時の情報提供義務に関する規定や意思表示に関する一般的な規定によって対処するという方策もあると考えられます。

 そこで、改正法案におきましては、保証人がその不利益を十分に自覚せず安易に保証契約を締結する事態を防止するという観点から、事業のために負担した貸し金等債務を保証する際には、原則として、公証人が保証意思を確認しなければならないこととしまして、第三者保証を全面的に禁止する措置までは講じないというふうにしたものでございます。

藤野委員 資金調達の必要だとか、あるいはエンジェルのような人がいるんだというお話ですけれども、では、そもそも聞きたいんですが、第三者保証に関して言えば、誰が第三者保証を求めているのか。

 これは中小企業庁にお聞きしたいんですが、中小企業庁で委託したアンケート調査、この中で、第三者保証が求められる原因として一番多いのは何だというふうに。

木村政府参考人 当庁で平成二十四年度にアンケート調査を行っております。

 第三者保証の提供を第三者から受けているというふうに御回答された中小企業のうちの約九割は、金融機関から第三者保証を求められたという回答でございます。

 その理由といたしましては、やはり債権の保全、これは当然だと思いますけれども、会社の信用力が低い、あるいは経営者の信用力が低い、経営責任の明確化といったようなことを理由に金融機関から第三者保証を求められているという調査結果がございます。

藤野委員 ですから、この委託調査によりますと九割というか九三・七%、もう圧倒的なんですね。要するに金融機関が求めている。先ほど言ったエンジェル、要するに自分から申し出た人、第三者が積極的に提供を申し出たというのは一・三%しかないわけです。

 そういう意味では、この第三者保証、エンジェルと言われるようなたくさん資産を持っている方は、ある意味、その資産を担保にして物的担保をやればいいわけですが、保証というのはまさに一般財産全体にかかっていく。全く性質が違ってくるわけで、それがまさに悲劇を生んできた根本にあるわけで、それを金融機関が求める。これだけ足りないからこの物的資産に担保をつけてくれとかいうんじゃなくて、まさに丸ごと押さえようとしているというのがこの第三者保証ではもう九三・七%なわけですから、結局そこの都合が優先されているというのが実態だというふうに思います。

 大臣、今度は大臣にお聞きしたいんですが、せっかく政府も、原則だめなんだ、経営者保証も第三者保証も、原則それはだめだ、それに頼らないことをやってこそ悲惨な事例もなくなるし、ある意味、政府が再興戦略と言っている金融業のまともな発展にもつながる、こういうことで鋭意この間やってこられた。その原則だめだという道筋が今回の民法改正でもとの金融実務に戻ってしまうんじゃないか、こういう懸念があるわけですけれども、大臣、この懸念についてはどのようにお答えになるんでしょうか。

盛山副大臣 まず、私の方から答えさせていただきます。

 大きく二つあると思います。

 主債務者の配偶者を除外する理由としましては、個人……(藤野委員「配偶者は聞いていません。後で聞きます」と呼ぶ)はい。

 では、共同事業者みたいな話をします。

 いずれにせよ、先ほどから先生がおっしゃっておられる実態があるわけでございます。こういう金融の実態、現状を踏まえながら、理想としましては、先ほど来金融庁なりあるいは中小企業庁が話をしておりますけれども、個人保証を求めないようにしていくという流れがあるわけでございますけれども、何%かは別にして、ある程度進んでいるとはいえ、まだまだやはり現状はそういう状況であります。

 それを、今回こういうような法案を出しましたのは、やはり、保証意思宣明公正証書の作成を義務づけるところをどこまでにすべきかということ、そして、今の金融の現状を踏まえながら、法制審議会において、我々が承知をしております中小企業あるいはその他の関係者の御要望、そういうことを踏まえまして例外として扱うというような形で今規定を設けているということであります。

金田国務大臣 改正法案も監督指針も、それぞれ、民事上の基本的なルールに基づくものであるか、あるいは行政的な手法を通じたものであるかには違いがありますけれども、いずれも、保証契約については、契約自由の原則に委ねることとはせずに、保証がもたらす弊害を念頭に置いて不健全な保証を抑止していこうという趣旨に基づくものである、したがって、監督指針と改正法案とでは方向性に違いはないものと考えておりまして、改正法案によって金融庁の監督指針がある現状よりも第三者保証が広がるといった事態が生ずることにはならないものと認識をいたしております。

藤野委員 先ほど私は道場の話をしましたが、本当にまともな金融機関だったら、さっき言ったような経営者ガイドラインとかにのっとってやるわけですね。そうじゃなくて、そういうことを守らないブラックな金融機関に頼らざるを得ない債務者というのがやはり生まれてきてしまう、そのときに保証が求められる、そういったときに、この制度で、今回の法案改正でそれがストップできるのか、防ぐことができるのかということなんですね。

 やはり、この保証の問題では情義性ということが問題になります。情によって、頼むよと言われて、保証人に仕方なくなってしまう。本当に困っていますから、その人から言われてなってしまう、一般財産を保証してしまうということはあるわけです。

 この情義性の問題というのは、公証人のところに行って、いろいろ債務者から情報提供を受けて、そういうことでクリアされるような実態では率直に言ってないわけであります。そういう点の保証が、公証人の手続が一つふえたとしても、仕方なく保証債務を負うという悲劇がなくなる保証が、担保があるのかということなんですね。

 そういう点でいえば、この点が、逆に言えば、あなた、この書面ありますよね、公正証書ありますよねということで、あなたは自由意思で、自分の意思で債務保証したんですからというふうに、逆にお墨つきを与えることになりかねない。

 過去には、自由意思どころか、公正証書を捏造までして、そういう事件を起こしたというのがまさに商工ローンの話でありました。公正証書というのはそういう過去の実例もあるわけですよ。そういう点を踏まえてお聞きをしているわけで、この公証人がきちんと機能する、今回は機能するという制度的担保はどこにあるんでしょうか。

小川政府参考人 お答えいたします。

 公証人をめぐって商工ローンの時期に一定の問題が生じたのは御指摘のあったとおりかと思いますが、今回は、この民法の改正に伴って新しく設けられます保証意思宣明公正証書につきましては、十分なチェック事由、法律でも定まったものでございますので、さまざまな事情についての検証を行うこと、これは当然でございます。

 公証人につきましては、法務省の方でのきちんとした監督がございますし、必要に応じて懲戒もございます。また、当然のことながら、事務の適正さを担保するために、通達などを適時発出して遺漏のない措置をとっていきたいというふうに考えております。

藤野委員 本当にそうなるのかという点で、今後も審議をしていきたいというふうに思っております。

 別の角度からいいますと、これは、金融機関にとってはそういうお墨つきが得られるという反面、保証人になる人にとってはさらなる負担といいますか、例えば公証人というのは全国に五百人いらっしゃって、三百の公証役場がある。一つの役場で一人ないし八人が働いていらっしゃるそうですが、大都市にはそれなりの公証役場があるんですけれども、地方に行きますと非常に少ないんですね。私は北陸信越ブロックなんですが、あの広い長野県で七カ所、新潟県では五カ所、北陸、富山、石川、福井、三県、三カ所ずつしかないわけでして、保証人にしてみればわざわざそこまで行かなきゃいけない、あるいは手数料も払わないといけない、公正証書を出してもらう上で。

 そういう意味では負担になってくるわけで、その点も考えると、やはり今回のこの制度が本当に機能するのかという点はこれからさらに質問で聞いていきたいというふうに思います。

 その上で、先ほど出ました配偶者の問題、適用除外、公正証書をつくらなくていいですよという類型の中に、四百六十五条の九第三号後段ですけれども、いわゆる配偶者、一定事業をされているということでありますが、配偶者が入っております。

 先ほど情義性という問題がこの保証では大きいと、要するに、頼むよと言われて、もう断れないという話をさせていただきましたけれども、まさに配偶者というのはこの情義性の典型といいますか、主たる債務者、現実には夫が多いわけですが、これが破綻した場合にその配偶者がともに経済的に追い込まれる。これを当然視するがごとき、前近代的な規定だというふうに私は思うわけであります。そして、この規定が存在する、生まれるということは、要するに経営者の配偶者は保証人になるのが当然だというメッセージを発することになるんじゃないのか。

 大臣、こういうメッセージを今度の改正で発していいんでしょうか。

盛山副大臣 今委員がおっしゃった御指摘があることは我々も十分承知しております。他方、どこまでをどういうふうに扱うべきかということで法制審議会で議論をしたわけでございます。

 個人事業主に関しては、経営と家計の分離が必ずしも十分でないところが一般的でございます。そうすると、主債務者と、一般的には御主人でしょうけれども、その配偶者、妻、奥さんが経済的に一体的であるということが多いことから、配偶者を保証人とすることによって金融機関から融資を受けている事例が現在多いというのが現状かと思います。

 そして、そんな中、個人事業主の配偶者は事業の状況ということを当然のことながら一般的にはよく知り得る立場ということであり、また保証のリスクについても認識しているという可能性が大でありますことから、保証意思宣明公正証書の作成を義務づける必要性に乏しいというふうに考えたわけでございます。

 法制審議会では、このような実情を踏まえ、さらに中小企業側の意見も踏まえまして、主債務者の配偶者を例外として扱うということが強く主張され、そこで、主債務者が個人事業主である場合のその配偶者については、主債務者の事業に現に従事していることを要求することで、主債務者の事業内容をなお一層把握可能な立場にある場合に限定して例外として扱うということにしたわけでございます。

 そういう点ではいろいろな議論がありましたけれども、こういうような限定の中であればやむを得ないかということでの案と御理解いただければと思います。

藤野委員 新しい時代の変化に対応するというふうに冒頭おっしゃいました。その中には、取引関係だけでなく社会の発展というのもあると思うんですね。民法というのはまさに人を中心に組み立てられるものでありまして、憲法でいえば個人の尊厳というものがあるもとで、ここでは、まさに配偶者は保証人になって当たり前だ、一緒に生活基盤が奪われるということを当然視するかのような規定になってしまっているという点は、私は時代の変化という立法趣旨そのものにもそぐわないというふうに言わざるを得ないと思います。

 法制審の議論では、京都大学の教授である潮見佳男教授がこうおっしゃっていました。世界的にこのような規定を設けるということは、個人的には非常に恥ずかしいことではないかと思います、その背後に特に産業界のお考えがあるとしたなら、そういうものを担っていかれるというのは今後の日本の経済社会ではなかろうかと思いますし、ヨーロッパなどでは、近親者保証については、先ほどの暴利行為だのあるいはそれ以外の構成によってこれを否定するという方向が既に定着していると思います、こういう指摘であります。

 これは私は当然の指摘だなというふうに思うんですが、大臣、この指摘、どのように受けとめられますか。

金田国務大臣 先ほど副大臣から申し上げた考え方と同じであります。

藤野委員 これは、やはり本当に考え直していただきたいなというふうに思うんです。

 同じ法制審で、東京大学の教授である道垣内教授はこうおっしゃっているんですね。配偶者による保証というのは最も不当威圧等の存在が推定されるものであるわけですと。そして最後に、今後、本規定の空文化に努力したいと。空文化に努力したいと審議会の場でおっしゃっているわけで、審議会の議論で、まだ議論中であるにもかかわらず空文化に努力したいと言う、私はちょっと、初めてこれは見たわけであります。

 そういう点で、個人保証の分野というのは多くの問題がございます。法制審の段階では、まさに第三者保証の原則禁止や、あるいは保証があったとしても責任財産を制限していく、そういう議論もありました。しかし、それが最終的にはなくなってしまっているというようなお話もあります。

 そういう点で、今後、参考人質疑もありますけれども、そうした場を通じてこの問題について大いに議論していきたいし、そのためにもしっかりと審議時間を確保していただきたいということを最後にお願いしまして、質問を終わります。

鈴木委員長 次に、木下智彦君。

木下委員 日本維新の会、木下智彦です。

 きょうもお時間をいただきまして、ありがとうございます。金曜日の午後、最後ということで、なるべく手短にやっていきたいなというふうに思うんですけれども。

 きょう、朝からいろいろお話を聞いておりました。やはり、まず基本的なところからお話を聞かせていただきたいなと改めてきょうは思ったんですね。

 その一番最初の部分、まだ法案に入る手前の部分だと思うんですけれども、法律案の提案理由の説明、趣旨の中でも、それからきょうの御答弁の中でも、制定以来百二十年間、社会、経済の変化への対応を図り、国民一般にわかりやすいものとするような観点からと。百二十年間そのままだったというようなお話をされておりました。

 本来だったら、時代の変化は、法律は的確にやはりやらなきゃいけないし、国民にもわかりやすいものをつくっていかなければならない。百二十年間と言いながら、少なくとも戦後七十数年の間にそういったことをやはり怠っていたんだろうな、普通であれば、国民にわかりやすいような法律、それから時代の流れに沿ったような、そういったものをつくっていくような不断の努力とそれから議論が行われなければならなかったはずだと。しかし、それが今回、きょうの御答弁を聞いていても思ったんですけれども、それは、認識を新たにしてみると、それをある意味で怠っていたということになるんですかね。

 これをまず最初に、今までこれを怠ってこられたから今回の改正があるのかどうか、この辺の認識をまず聞かせてください。

小川政府参考人 お答えいたします。

 御指摘ございますように、債権法に関する部分は百二十年間ほぼ改正をしてこなかった状態でございます。

 その間、一つには、特別法で、例えば借地法、借家法、あるいは製造物責任法ですとか債権譲渡特例法といった特別法、さらには近時は、消費者契約法ですとか労働契約法のように他省庁にもまたがるようなものとして特別法が制定され、それによって対応されてきたということが一点挙げられます。

 もう一点は、立法理由の一つにかかわるわけですが、比較的条文がシンプルな中にあって、判例、学説の発展があり、確立した判例、確立した通説といったものが生まれ、それによって一定の規範としての意味を持つような状態が続いたということでございまして、結果としてその間改正がされなかったわけですが、実務としては運用はきちんと行われてきたということだろうというふうに思っております。

木下委員 そういう形でやってきたんだということは承知しております。

 ただ、結局は、今言われていたように、特別法、特別措置法であるとか、それから判例で判断されてきたというふうなことなんですよね。それじゃだめだから、だめだからなのかどうかということもまたこれは一つポイントだと思うんですけれども、だから今回改正をするんだ、私はそういう解釈をしているんですけれども。

 大臣、ここでちょっと、今のお話を聞いていただいていたと思うんですけれども、実際にこれをだめだったと言うのはなかなか言いにくいところだと思うんですけれども、ある意味、認識をやはり改めて、今までの特別法それから判例、そういったものでやっていくということを少しでも変えていくということが今回のこの民法の債権法にかかわる部分の改正という認識で正しいのかどうか、それから、大臣がその辺を実際にはどう思っていらっしゃるかということをまず聞かせていただけますか。盛山副大臣でも結構です。

盛山副大臣 まず、私の方から御説明をさせていただきたいと思います。

 先ほど、民事局長の方からも話がありました。そして、木下委員からも御指摘がありました。民法というのは大変基本的な法律であり、午前からの審議の中でもありましたけれども、それなりにシンプルでよくできていた法文ということもありまして、それで何とかやってきたということでありますけれども、さすがに百二十年たちまして、制度疲労というんでしょうか、余りに状況が変わってきたということ。

 それから、一固まりでうまく特別法その他でできるところはやってきたわけでございますけれども、債権というのは契約の部分でございますので、我々の社会というのは、まず普通、大体何らかの取引、契約というのがあるのが一般的で、一番基本的な、基礎的な部分でございます。そういう一番基礎的な法規でございます民法の第三編の規定を直すというのは、ここを直すとこっちも直さないといけない、またこちらにも当たりがあるというようなことで、債権編の規定を直すというのはある程度大きくまとまった形でやらないといけない、しかも、それが一般の国民の方々に、皆さんに影響がある、そういうことで慎重に進めなければならない、そういったようないろいろな理由がありまして、ここまで時間がかかってしまった。

 そして、平成二十一年から七年かけてということでございますけれども、民法の全面的な見直しという検討を法制審議会でいたしまして、少しずつ手直しということではなく、ここまで来た、そしてそれをやっと今回御提案できるようになった、そんなふうに御理解いただければと思います。

金田国務大臣 今、民事局長並びに副大臣から申し上げたとおりでありますが、私としては、やはり、特に国民一般にわかりやすいものとするという観点から、見直しをする際にどうしても民法において行うことが必要とされる内容としては、消滅時効期間とか法定利率制度の見直し、あるいは定型約款に関する基本的な規律の創設といったようなものは、まさに民法において見直しを行うことが必要とされるものだというふうに受けとめておりまして、民法自体を見直さざるを得ない状況に直面をしているんだというふうに認識をしております。

木下委員 皆さんからお答えいただいて、本当にありがとうございます。

 今の話を聞いていても、やはり民法というのは大きい、基本的な部分だし、だから変えるところもなかなかままならなかったんだという話だと思うんですね。

 これはほかでもあるんだろうなと思っていて、やはり、民法、それから刑法であるとか商法であるとか、こういったものは、結構、今までの改正の話を見ていても、いざ改正するというふうになったときには、あれもこれも、あれもこれもと、いろいろな議論が出てくる。いろいろな議論が出てくるから時間もかかるし、大幅な改正にやはり手をつけていくということになる。そうなると、さっき言われたように七年かかるであるとか五年かかるであるとか、それから、きょうの審議でも言っていましたけれども、項目でも五百項目ぐらい出てきたとかいうふうな話になる。これがあるから、百二十年間そのままになってきたんだというふうに私は思うんですね。

 こういったやり方をどこかでやはり変えていかなきゃいけないんだと思うんですね。それが今回の、まずは手をつけていこうということだと思うんですけれども。

 これは、やはり私は思うんですけれども、国会のやり方ということを改めてちょっと考えさせられるなと。

 ちょっと関係ないことを言いますけれども、例えば我が党なんかは、改正論議をするべきだというふうに大きく言っております憲法のお話なんかもそうだと思うんですね。やはり今の憲法なんかも時代にそぐわない部分が出てきている、もしくは解釈が、いろいろな意味でいろいろな意見が出てくる。

 こういった形になったときに、その部分だけに焦点を当てて、そこだけでも改正しようじゃないかというふうな話をやはりやっていかなければ、いつまでたっても何にも変わっていかないし、そして、その法律、憲法、それぞれがもうどんどん現実とかけ離れたものになっていくのではないかというふうに思っているんです。だからこそ、きょうちょっとこういう話を長々とさせていただいたんです。

 大臣に、そう思いませんかというふうなことを聞こうと思っていたんですけれども、今、もう大臣も副大臣もうなずいていただいておりますので、そういうふうな私の意見に御賛同いただけているんじゃないかなというふうに思います。

 それで、ただちょっと……(発言する者あり)聞いた方がいい。そうしたら、御答弁いただけますか、どう思われるかということを。(金田国務大臣「せっかくですから前に進めてください」と呼ぶ)前へ進みましょうか。わかりました。では、また次回にでもその辺も聞かせていただければと思います。

 そういった意味で、今回のこの民法、きょうもいろいろと話をされていましたけれども、私も全部はまだ読めておりませんけれども、法制審議会の内容、これは答申が出るまで五年から七年というふうな形でずっと議論されてきて、いろいろなことを書いています。これは相当読み応えがあるなと。全部読めなくてきょうここに立っているので非常に申しわけないんですけれども。

 やはり、これを見ていて、それから、きょう、逢坂先生でしたか、その辺の話をいろいろとされていて、ちょっとその辺の話をまとめてみると、この今回の改正について、五年の間に九十九回の会議がされて、分科会を十八やられ、それからパブリックコメントをとられということで、さっき言ったとおり五百項目ぐらい上がってきて、それが中間試案になって二百六十、最後に二百ぐらいの項目に論点整理がされたというふうなことだったんですね。

 逢坂先生が言われていたのは、法制審議会のあり方というところで、一般の人たちの意見が余り入っていないじゃないかというような感じのことを言われていた。だからこそ国会で審議がされるべきだというふうな話をしていたんですけれども、これから先、この法案について審議がどれぐらい続くのか。先ほど共産党の方も長い審議時間をとりたいとか言われていましたけれども、本当にいいのかなと思うんですね。いや、別にいいと思うんですよ、今の状態の中では審議はしなきゃいけないかもしれないけれども。

 ちょっと突拍子もないことを言いますけれども、きょう話を聞いていて思ったんですけれども、国会議員、今ここの委員会にいるような人たちが、ある種、法制審議会の中に入って議論するようなことはあってもいいんじゃないかなというふうに私は思ったんです、特に民法のこの話に関しては。そうすると、国会議員、やはり相当厳しいです。ただ、仕事していない国会議員が多いとかと言われる中で、本来の役割からすれば、こういうことも積極的に私は考えていくべきなんじゃないかなと。

 これは質問通告していません。きょうの審議を聞いていて、ふっと思いついたんですけれども、そういったことは本当にできないかなと思うんですけれども、どなたがお答えいただけるか、ちょっとわからないですけれども、そういうことは考えられませんかね。(発言する者あり)

盛山副大臣 今、逢坂先生が御発言されましたが、国土審議会のように、衆議院議員、参議院議員が入ると規定されているものも中にはございます。しかしながら、一般的に、国会議員がメンバーに入るというのは普通の審議会ではございません。多分それは、我々は立法府のメンバーでございますから、立法府、この国会の場で審議をすればいいということであって、そして、学識経験者や御担当の専門家、そういった方にお入りをいただいて審議会の場では審議をして案をつくろう、こういうことではないかと私は思います。それが一般的ではないかと思います。(発言する者あり)

木下委員 そうですね。いろいろな御意見、周りからも言っていただいています。司法制度審議会があるじゃないかとか。

 ただ、私は思うんです。今回の、法務省が管轄しているような民法であるとか、こういったものに関して、特に百二十年も変わってこなかったわけですよ。ということを考えたら、そういうことももっと積極的に検討されるべきだし、なぜそんなことを言うかというと、そうすることによってこの国会の審議が短くても充実したものになるんじゃないか、私はそういうふうに思いまして、ちょっと一つの提言として聞いていただければいいかなというふうに思いました。

 そんなことを言いながら、時間がどんどん過ぎておりますが、勝手なことを言ったんですけれども、では、中身の話も少しだけさせていただきたいなと思います。

 大臣がこの趣旨を説明されたところで一番最初に出てきたのが、消滅時効というお話をされておりました。

 その前に、私は井野政務官が言われていたこともちょっと言いたかったんですけれども、井野政務官がこの審議になる前に民法の話をされたとき、司法試験に合格されて弁護士資格を持たれているんでしたね、司法試験を制する者というのはどんな者かというと、民法を制する者が司法試験を制するんだと言われていたと思うんですよ。それは何でかというと、それが非常に難解だということ、それから、判例であるとかそういったものを全部多岐にわたって覚えていかなければいけないしということで、これは一般の人だけじゃなくて、司法試験をパスすることを目指しているような方々もそういうことなんだなというふうに思ったんですよ。それを前にくっつけたかったんですけれども、せっかくだから、今ちょっと目が合ったのでお話をさせていただきました。

 ちょっと話が戻ります。消滅時効の話なんですけれども、医師の診療に関する債権は三年、飲食店の飲食料に係る債権は一年などとされている短期消滅時効の特例を廃止して統一化を図るというふうに言われている。

 そこで思ったんですけれども、そもそも、なぜ医師の診療は三年で、飲食店の飲食料は一年とされていたのかなと。なぜこんなことを聞くかというと、素人の意見のような感じですけれども、やはり根本の理由が明確じゃなければ、今回統一化されることが妥当なのかどうなのか、これは判断できないと思うんです。だから、あえて聞かせていただきたいんですけれども、何でこういう形にばらばらだったんですか。

小川政府参考人 お答えいたします。

 御指摘ありましたように、現行法の百七十条から百七十四条までの規定は、一定の債権について短期消滅時効というものを定めるものでございます。その趣旨とされますのは、特例の対象とされた債権は比較的少額であるということを踏まえて、特に時効期間を短期間にしてその権利関係を早期に決着させることにより、将来の紛争を防止することにあると言われております。

 ただ、特に御指摘もありましたように、一年のものがあったり二年のものがあったり三年のものがあったりというところが次の問題ですが、こういう形で現行法が時効期間を一年から三年などと短縮いたしましたもとになっておりますのは現行法の制定当時のフランス民法でございまして、フランス民法を参考にしたというふうに言われております。

 当時のフランス民法にも、六カ月、一年、二年、五年といった短期の時効期間が定められておりまして、例えば、小売商人の売却した商品の代価についての債権ですとか、我が国の弁護士に類似する職業であります、代訴士と言われますが、この報酬債権の時効期間は我が国の民法と同様にフランス民法でも二年とされておりました。

 そういうことから考慮いたしましても、基本的には、やはりフランス民法の影響を非常に強く受けたものであるということが言えようかと思います。

木下委員 成り立ちが結構ばらばらだったり、よその国の法律を見本にしてやったとかという形で、やはりこれは統一しなきゃいけないんだなと、改めて今の話を聞いて納得しました。でも、こういうことを今まで何でそのままにしていたんだろうなということも同時にやはり思ってしまうんですよね。

 きょう、内容についてはもうこれぐらいにしておこうかなと思っているんですけれども、恐らく、これから先、一個ずつやっていると、今みたいな話を全部やはり聞いていかなきゃいけないと思うんです。この場でそれを全部やっていくんですかということだと私は思うんですね。

 当然のことながら、ここにいらっしゃる委員の方々は、法制審議会の議論の内容、すごい数ですけれども、それぞれ目を通されるんだろうなというふうに思っているんですけれども、やはりそういうことをやるためにも、さっき言いました、法制審議会に対する国会議員のアプローチの仕方というか参加の仕方、こういったことをもう少し議論するべきではないかなというふうに思うこと。

 それから、ちょっと早目ですけれども、もうまとめに入ります。

 そういうことを考えると、閣法もそうですし、それから議員提案の法律でもそうだと思うんですけれども、おかしいと思ったことをどんどんとやはり提案していって、そういうことが政局に引っ張られてとまるというようなことは、こういうことに関しては特にないようにして、より積極的に議論するべき。そこは、私は思うんですけれども、今までの国会の審議の慣例であるとか、そういったことを乗り越えてやはり話をしていくべきだ。きょうのこの法案について考えるに当たって、改めてそういう思いを私ちょっと強くいたしました。

 そういったことを主導なさるお立場が大臣だというふうに思いますので、大臣、最後に一言、これはいつも最後に一言と言うと怒られるんですけれども、ぜひともよろしくお願いします。そういうことで、一言お願いします。

金田国務大臣 委員からのお話は貴重な御意見として伺わせていただきました。丁寧で速やかな、そういう審議を私どもも努力していきたい、このように思っております。(発言する者あり)

木下委員 ありがとうございます。

 なるほどという声を聞かせていただきましたが、どうもありがとうございました。

鈴木委員長 次回は、来る二十二日火曜日午前八時五十分理事会、午前九時委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。

    午後二時四十三分散会


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