衆議院

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第3号 平成29年3月8日(水曜日)

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平成二十九年三月八日(水曜日)

    午前九時三分開議

 出席委員

   委員長 鈴木 淳司君

   理事 今野 智博君 理事 土屋 正忠君

   理事 平口  洋君 理事 古川 禎久君

   理事 宮崎 政久君 理事 井出 庸生君

   理事 逢坂 誠二君 理事 國重  徹君

      赤澤 亮正君    安藤  裕君

      井野 俊郎君    岩田 和親君

      奥野 信亮君    門  博文君

      菅家 一郎君    城内  実君

      鈴木 貴子君    辻  清人君

      長坂 康正君    野中  厚君

      藤原  崇君    古田 圭一君

      宮路 拓馬君    宗清 皇一君

      山田 賢司君    吉野 正芳君

      若狭  勝君    枝野 幸男君

      階   猛君    山尾志桜里君

      大口 善徳君    中川 康洋君

      畑野 君枝君    藤野 保史君

      松浪 健太君    上西小百合君

    …………………………………

   法務大臣         金田 勝年君

   内閣府副大臣       石原 宏高君

   法務副大臣        盛山 正仁君

   法務大臣政務官      井野 俊郎君

   最高裁判所事務総局家庭局長            村田 斉志君

   政府参考人

   (内閣府大臣官房審議官) 大塚 幸寛君

   政府参考人

   (法務省民事局長)    小川 秀樹君

   政府参考人

   (法務省刑事局長)    林  眞琴君

   政府参考人

   (法務省入国管理局長)  和田 雅樹君

   政府参考人

   (厚生労働省大臣官房審議官)           吉本 明子君

   政府参考人

   (厚生労働省大臣官房審議官)           中井川 誠君

   法務委員会専門員     齋藤 育子君

    ―――――――――――――

委員の異動

三月八日

 辞任         補欠選任

  宮川 典子君     岩田 和親君

  若狭  勝君     宗清 皇一君

  吉田 宣弘君     中川 康洋君

同日

 辞任         補欠選任

  岩田 和親君     長坂 康正君

  宗清 皇一君     若狭  勝君

  中川 康洋君     吉田 宣弘君

同日

 辞任         補欠選任

  長坂 康正君     宮川 典子君

    ―――――――――――――

三月八日

 国籍選択制度の廃止に関する請願(浅尾慶一郎君紹介)(第四三四号)

 もともと日本国籍を持っている人が日本国籍を自動的に喪失しないよう求めることに関する請願(浅尾慶一郎君紹介)(第四三五号)

は本委員会に付託された。

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 政府参考人出頭要求に関する件

 裁判所の司法行政、法務行政及び検察行政、国内治安、人権擁護に関する件


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     ――――◇―――――

鈴木委員長 これより会議を開きます。

 裁判所の司法行政、法務行政及び検察行政、国内治安、人権擁護に関する件について調査を進めます。

 この際、お諮りいたします。

 各件調査のため、本日、政府参考人として内閣府大臣官房審議官大塚幸寛君、法務省民事局長小川秀樹君、法務省刑事局長林眞琴君、法務省入国管理局長和田雅樹君、厚生労働省大臣官房審議官吉本明子君及び厚生労働省大臣官房審議官中井川誠君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

鈴木委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

鈴木委員長 次に、お諮りいたします。

 本日、最高裁判所事務総局家庭局長村田斉志君から出席説明の要求がありますので、これを承認するに御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

鈴木委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

鈴木委員長 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。逢坂誠二君。

逢坂委員 民進党の逢坂でございます。大臣、きょうもよろしくお願いいたします。

 きのうも三人の我が党の質疑者が質問させていただきまして、その冒頭に、それぞれがそれぞれの言葉で大臣の辞任を求めるという発言をされました。私も、大臣とは親しい雰囲気でいろいろとやりとりはさせていただいているわけでありますけれども、大臣の資質についてはやはり疑問を持たざるを得ないというふうに思います。

 特に私が残念だったのは、大臣が記者クラブで配付したあのペーパー、あのペーパーが出たときに、私はもう、大変恐縮だけれども、これは大臣としては答弁にたえ得ないというふうに判断せざるを得ないと思ったからであります。特に、提出を検討している閣法であること、だからそういう状況にあるから答弁はちょっと勘弁してよというふうに私には読めたわけですね。そういう点において、非常に私は、やはり大臣の資質として疑問があるというふうに思います。

 それから、きのうですけれども、私、きのうの井出委員の質問というのは本当に大変すばらしい質問だったと思っています。非常に丁寧に、今回の、いわゆる政府で言うところのテロ等準備罪の位置づけ、重要さ、それを話されたわけであります。

 こんなことを言っているんですね。「恐らく、戦前戦後を見ても、これは本当に大きな転換点ではないか。」「今までの刑法の改正の中で一生懸命守ってきた大事な謙抑主義、罪刑法定主義の原則というものを、ここで一気にぐわっとふやしてしまって本当にいいのか、それだけの危機感はあるのか。」「金田大臣がその任に当たっている、その危機感、緊張感というものがどれだけあるのかということを伺っておきたいと思います。」というふうに質問しているんですね。

 この井出委員の質問、実は、我が家でもインターネットテレビで見ていて、本当に、今回政府が出そうとしているテロ等準備罪、共謀罪なるものが、単に危険だとか危ないとか不安だとかという性質のものではなくて、明治以来の日本の刑法の大転換になるんだ、そのことがきのうの井出委員の質問で非常によくわかった、すばらしい質問だったと、我が家の中でも、きのう帰ったら言っておりました。

 それに対して大臣がどう答えたか。最後のところだけ、結論のところだけ言わせていただきますと、「現行法の規定との整合性を欠くものではないのではないかというふうに考える次第であります。」。

 違うんですよ。この法律がなぜ必要かということを聞いていたわけではないんですね。この法律は、明治以来の日本の、旧刑法を含めても、大転換になるんだ、その緊張感や覚悟を持ってこの法案審議に臨んでいるのか、臨もうとしているのか、そこを問うているわけですよ。それは個別の条文がどうこうという話ではないんですね。政治家として、これほどの大転換を日本の刑法の中でやる、その覚悟はあるのかということを問われているわけですよ。

 ところが、残念ながらの答弁だったと私は思っています。きのうの大臣の答弁を聞いた直後に、私も、ここで、残念だと思わず口走ってしまいました。この覚悟なしにテロ等準備罪、新共謀罪の議論をするということは、私は、大臣としてはやはり緊張感、覚悟に欠けているというふうに指摘せざるを得ないんですよ。そういう意味も含めて、きょうは大臣の資質を問うというようなことも含めた質問をしたいというふうに思います。

 そこで、まず大臣に、テロ等準備罪というふうに所信の中でもおっしゃっているわけですが、テロ等準備罪というのは一体何なんですか。

金田国務大臣 昨日の井出委員の御質問に続いて、ただいまの逢坂委員の御指摘に対しましては、私は、本当に緊張感と覚悟、そういうものを持って、委員の御指摘にあったように、しっかりと、謙虚に、そして誠意を持って対応していかなければいけないという思いを新たにして、ただいま伺っておった次第であります。

 そういう中におきまして、テロ等準備罪とはどういうものであるかというふうに御質問がございました。

 具体的内容につきましては、たびたび申し上げておりますように現在検討中でございますので、基本的な考え方として、対象を組織的犯罪集団、つまり重大な犯罪等を行うことを目的とする集団に限定することを検討しておりまして、国内外の犯罪の実態、そういうものを考慮いたしますと、そうした犯罪組織による犯罪の中で重大なものの典型がテロ組織によるテロである、このように私は受けとめております。

 そういう中で、テロ等準備罪というものは、重大な犯罪の合意に加えて実行準備行為が行われたときに初めて処罰する、そういう、実行準備行為を伴う。

 そのテロ等準備罪を検討しているということでございます。

逢坂委員 大臣、テロ等準備罪、危機感、緊張感、覚悟を持ってこの法案審議に臨む。私、今の大臣の答弁を聞いていて、本当にそうなのかなと思わざるを得ないんですよ。

 テロ等準備罪、これはまさに、今、焦点ですよね。それを、答弁の紙を見て、その最後、テロ等準備罪のところへたどり着くまで、冒頭、少しずつ読みながら進んでいく、そういう姿勢で本当に大丈夫なのかなと思うんです。大臣の口でぱんぱんと出てくるぐらい気持ちの中にたたき込んでおかないと私はまずいというふうに思いますよ。

 では次に、ちょっとお伺いします。

 きょうは、細かいところが答えられたとか答えられないとかということを問うつもりは私は全くありません。

 それじゃ、テロ等準備罪のテロ、これは大臣、どのようなものだとお考えですか。

金田国務大臣 テロ等準備罪のテロとはどのようなものか、意味かというお尋ねと受けとめております。

 用いられる文脈とかそういうものによって違うとは思いますけれども、一概には申し上げることは困難かとは思います。

 一般的には、例えば、特定の主義主張に基づいて、国家等にその受け入れ等を強要し、または社会に恐怖等を与える目的で行われる人の殺傷行為等を指して用いられる、そういう、テロというものの意味ではないかなというふうに承知をいたしております。

逢坂委員 大臣の今の説明の中で、用いられる文脈の中で変わってくるといった趣旨の話がありました。

 そういうものを、法令上、例えばここからここまでがテロだというふうにきちんと限定できるかどうか、この点、私、非常に曖昧だと思います。これは、もし今後出てくる法案の中で、ここからここまでがテロであり、ここは違うんだということがないということになれば、それは、捜査をする側、権力の側の恣意的な判断で、これはテロだ、テロではないということが行われるのではないか、そういう気がいたします。

 それから、もう一点です。

 特定の思想信条という言葉を言われました。このテロ等準備罪は、特定の思想信条、これもテロの取り締まりの対象になるというふうに考えておられるんでしょうか。

金田国務大臣 先ほど申し上げました中で、特定の主義主張に基づきと申し上げたつもりでございました。その点はよろしく受けとめてください。特定の主義主張に基づいて国家あるいは社会に恐怖等を与える目的で行われる人の殺傷行為というふうに受けとめている、このように申し上げたつもりであります。

逢坂委員 特定の主義主張に基づく、そこには思想信条というものは入るのか入らないのか。

金田国務大臣 一概には申し上げられないものと考えております。

逢坂委員 一概には申し上げられないということは、特定の思想信条も、場合によってはテロ等準備罪の対象になり得るということ……(発言する者あり)その辺を丁寧に説明してください。後ろから全然違うという声が上がっていますけれども。

金田国務大臣 取り締まる対象として、主義主張そのものを取り締まるものではないということだけは申し上げておかなければいけません。

逢坂委員 これも法文がちゃんと出てからしっかり議論したいと思いますが、非常にやはりこれは危ういというか微妙なところなんですね。

 やはり、きのうも大臣はおっしゃっておられましたけれども、内心を取り締まることはできない、憲法十九条でしたかの規定に反する。非常にこれは微妙なんです。だから、本当に、答弁も、相当にこれは精緻な答弁をしなければいけないというふうに思います。

 それじゃ次に、私は気になっていることがあって、これは予算の分科会でもやらせていただきましたが、きのうの答弁の中にもありました。この点をちょっと改めて確認したいんです。

 きのうの宮崎委員の質問の中で、大臣はこうおっしゃっておられるんですね。これは要するに予備罪についてです。「予備罪は予備行為を処罰するものであって合意を処罰するものではない」、「客観的に相当の危険性がなければ処罰の対象とならず、条約の趣旨に合致しないおそれがあるために、予備罪を設けただけでは条約を締結できない、」という答弁をされているわけです。

 そこで、私が、政府が現行法上的確に対応できないとして例示をしたハイジャック事案と、それから薬物事案などを例にして、質問主意書を出させていただきました。

 「テロ組織が複数の飛行機を乗っ取って高層ビルに突撃させるテロを計画した上、例えば、搭乗予定の航空機の航空券を予約した場合」、これが、現行法では必ずしも十分に取り締まることができないのでテロ等準備罪が必要なんだという政府の言いぶりでありました。

 それに対して、私は、これは殺人予備罪あるいはハイジャック予備罪を適用する余地はないのかというふうに質問したわけであります。それに対して、政府の答弁はどうであったか。解釈のところは除きますけれども、「このような解釈を踏まえて個別の事案ごとに判断されるものと考えている。」という答弁なんですね。

 ということは、大臣、改めて確認をしますけれども、政府が示したテロ事案あるいは薬物事案、これらは殺人予備罪、あるいはハイジャックの場合はハイジャック予備罪、これの適用の余地は一〇〇%ないというものではないという理解でよろしいですよね。

金田国務大臣 ただいまの質問にお答えをいたします。

 これまでも何度か議論になりまして、申し上げてまいりました内容にかかわることでございます。

 犯罪の成否については、捜査機関が収集した証拠に基づいて個々に判断すべき事柄である、一概にお答えすることは困難なんですけれども、実務上参考とされております予備罪に関する裁判例がございました。裁判例によれば、予備とは、構成要件実現のための客観的な危険性という観点から見て、実質的に重要な意義を持って、客観的に相当の危険性の認められる程度の準備が備えられたことを要するとされております。東京高裁の昭和四十二年判決でございます。これが、裁判例として申し上げているわけですが、実務上参考とされている予備罪に関する裁判例。これは何度か申し上げております。

 あくまで事例ごとの判断でありますので、個別具体的な事実関係のもとで予備罪が成立する可能性を全く否定するものではありませんが、このような裁判例の考え方に従いますと、テロ組織が複数の飛行機を乗っ取って高層ビルに突撃させるテロを計画した上で、計画に基づいてそのうちの一人が搭乗予定の航空機の航空券を予約または購入しておったということのみをもって、その他の犯行の実現に向けた行為が行われていない場合に、予備罪は成立しない事案が多いというふうに考えられる、このように考えているわけであります。

逢坂委員 大臣の答弁のとおりだと思うんですよ。予備罪が成立しない事案もあるだろうし、政府が示したいわゆる今回の三つの穴と言われるもの、テロ事案も、場合によっては現行法の中で殺人予備罪やハイジャック予備罪が適用される場合もあるというのが、私は、それは正しい物の見方だというふうに思います。

 しかしながら、政府はそういう事案を出して、これが、現行法の中でなかなか適用しがたいものもあるからその穴を塞ぐために今度は新たなテロ等準備罪を国会に提出すると言っているわけですが、そこで私は非常に不安になるんです。

 それはなぜか。

 今まさに大臣がお示しになった昭和四十二年六月五日の東京高裁判決、ここには何が書いてあるか。今大臣もお読みになりましたけれども、「実質的に重要な意義を持ち、客観的に相当の危険性の認められる程度の準備が整えられた場合たることを要する、」。「客観的に相当の危険性の認められる程度の準備が整えられ」る、これがなければ予備罪としては当たらないんだということをこの判決では言っているわけですよね。

 でも、それで不十分だといって今度の新共謀罪、テロ等準備罪を創設するわけですから、今度はこの「客観的に相当の危険性の認められる程度」というのがどうなるのかというのが私は焦点になると思うんですよ。

 客観的に相当の危険性が認められるのであれば予備罪で、現行法で対応できる可能性が極めて高い。ところが、それでは十分ではないんだと。だったら、「客観的に相当の危険性」ではなくて、どんな言いぶりになるのか私はわかりませんけれども、「客観的に相当」が落ちるのか、客観的に危険性が認められるのか、このあたり、大臣、予備罪を適用できないものに今度の新たな法を適用させるというときにはどの程度の危険性、どの程度の要件が必要だというふうに考えているんでしょうか。

 これは個別条文の問題ではありません。いかがですか。

金田国務大臣 ただいまの質問にお答えいたします。

 予備は、予備行為の危険性に着目して処罰するものである、このように考えております。

 テロ等準備罪は、重大な犯罪の合意が危険性や違法性を有することを前提に、それと一体となって十分な危険性や違法性がある実行準備行為が行われたときに処罰可能とするもの、このように考えている次第であります。

逢坂委員 今の説明で、従前の予備罪と新たにつくろうとしているテロ等準備罪の違い、どこが違っているのか、指摘できますか。

金田国務大臣 お答えをいたします。

 その違いとなれば、予備行為の危険性が、予備ですね、着目される。予備行為の危険性と、それと一体となる危険性の違いというふうに考えております。

逢坂委員 法案がまだきちっとでき上がっていない、前だということで、これ以上はやりませんが、この昭和四十二年の東京高裁の判決、「客観的に相当の危険性の認められる程度の準備」、ここのところの基準といいましょうか、この準備が整えられることがこれまでの予備罪の条件であった。

 でも、その予備罪では十分ではないから、もう少しここを、平たい、一般人の言葉で言うと緩やかにしなければ、私、今度の新しいテロ等準備罪の適用はできないと思うんですよ。これはだから、要するに「客観的に相当の危険性の認められる」という程度を、少しレベルを下げる、下げないと、今と同じこのレベルでいい、この「客観的に相当の危険性の認められる程度」のレベル、今と同じでいいというのであれば予備罪でいいわけですよ。ところが、その程度をやはり下げないと、多分新たなテロ等準備罪は立法する意味がないんですね。

 これは、でも、国民にとってみると非常に大きな不安ですよ。これまでは、客観的に相当な危険性が認められる、そうでなければ予備にはならなかった、予備罪にはならなかった。でも、今度は、その程度が下がるということは、国民の側からしてみると、罪の対象になる範囲が広がる、しかも、先ほど話があったとおり、テロの範囲もなかなか明確に言うことはできない、そういう状況の中で、はらはらせざるを得ない、そういう私は案件だと思うんですね。

 だから、大臣、法律ができ上がるのはいつになるのか私はわかりませんけれども、でき上がったらこういうところは丁寧に説明いただかないと相当に不安なことになるというふうに私は思っています。

 それじゃ次にお伺いしますが、「テロを含む国際的な組織犯罪を一層効果的に防止し、」というふうに大臣の所信の中で書いてあります。

 今回のテロ等準備罪の創設によって、テロはどういうメカニズムで防ぐことができるようになるんでしょうか。私、正直なことを言うと、この法案ができてもテロの抑止につながるのかどうか、非常に曖昧だなと思っているんですよ。テロはどういうメカニズムで、今度の法案ができれば抑止できるんでしょうか。

金田国務大臣 担保法の整備をする、国際組織犯罪防止条約、TOC条約を締結することによりまして、国際的な、例えば逃亡犯罪人の引き渡しや捜査共助ができる、そして情報収集ができる、これにおいて国際社会と緊密に連携することが可能になる、そして我が国がテロ組織による犯罪を含む国際的な組織犯罪の抜け穴になることを防ぐことができる。

 また、テロ等準備罪の整備等を行うことによりまして、テロ組織を含む組織的犯罪集団によります犯罪というものを未然に防止することができるといったような観点で、テロの対策として可能な手法となる、このように考えております。

逢坂委員 今大臣が説明になったのは、テロ等準備罪という新たな法律の効果ではないんですよ。今大臣が説明になったのは、パレルモ条約、TOC条約を締結すれば、国際的にそういうやりとりが可能になるという話なんですね。私が聞きたいのはそこではないんです。

 テロ等準備罪なる法律ができることによって、それじゃテロを限定しましょう、今回、所信の中では「テロを含む国際的な組織犯罪」というふうに言っていますので、国内テロは、今回のテロ等準備罪によって、どのように、どのようなメカニズムでこれは抑止できる、これは「防止」という言葉が書いてありましたか、防止できるというふうに考えておられるんでしょうか。

 これは、法文の問題ではなくて、法律をつくるときの大きな方向性の問題だと思います。いかがですか。

金田国務大臣 テロ等準備罪、これを設けることによりまして、ただいま御指摘ありましたテロを含む組織犯罪について、実行着手前の段階での検挙、処罰が可能となって、その重大な結果の発生を未然に防止することができるようになるのではないかというふうに私どもは考えている次第であります。

逢坂委員 実行着手前に取り締まることができる。

 今、予備罪も実行着手前というふうに捉えることができると思うんですが、それは違いますか、大臣。

金田国務大臣 予備罪も実行着手前のものであります。

逢坂委員 であるならば、予備罪ではだめで、なぜテロ等準備罪なら有効なのか、ここはやはり明らかにしなきゃいけないと思うんですよ。いかがですか、大臣。

金田国務大臣 予備罪が設けられている罪も存在をいたします。

 先ほどもお話がございましたように、客観的に相当の危険性が必要とされており、未然防止という観点からは十分とは言えないという視点、これが私どもの考えている部分でございまして、テロ組織によるテロ行為は、一たび実行された場合には取り返しがつかない結果が生じるために、計画発覚後はできるだけ早く検挙すべきであるが、現行の予備罪だけでは不十分である、このように考えている次第であります。

逢坂委員 「客観的に相当の危険性の認められる程度」では不十分である、だからテロ等準備罪を創設するんだというふうに私には今聞こえたんですが、ここは本当に、私は非常に大きなポイントだと思いますよ。

 客観的に相当の危険性が認められなくても場合によっては罪になり得るというのが今度のテロ等準備罪だと思うんですよね、今の答弁からすれば。だったらこれは相当危うい。客観的に相当の危険性がないのに、場合によっては今の程度よりも下げるということを、あえて、改めて大臣は私に今言ってくれたんだと思うんですよ。これは、私はやはり相当に注意を要するというふうに思います。

 法案がまだできていない段階ですので、この点もきょうはこの程度にとどめます。

 そこで、大臣が二月にお出しいただいたペーパー、お出しいただいたという言い方も変ですね、記者クラブに提出をしたペーパーですけれども、テロ等準備罪に関する法案は現在提出を検討している閣法であること、だからちょっと答弁についてはまだまだ十分ではないよというような趣旨が書かれているわけです。

 私は実は、確かに議院内閣制であることは私も承知はしておりますけれども、閣法を議論する際に、なぜ、その作成中の法案あるいは政府としてほぼ固まった法案を与党に出して、与党だけで議論をして、そして、それが固まらなければ国民やあるいは野党にも示せないのかというのが、私は意味がわからないんですよ。これはずっと日本ではそういうふうに行われてきておりますけれども、いや、我々が政権のときもそうしてきました。だけれども、なぜそうなのか、そこにどんな合理性があるのか、国民の目線で見たときにどんな合理性があるのか、私にはよくわからないんですね。

 三権分立という観点からしても、行政府と立法府の、場合によってはあらかじめの、癒着と言うと言い過ぎかもしれませんが、談合ではないか、そうも思えるんですよ。内閣の中だけで原案をつくる、原案ができたら国民にも与党にも野党にもひとしく出すというんだったらまだ私は理解できるんですが、なぜ与党限りなのか、なぜ与党で議論が終結しなければ国民に出せないのか。

 この点、大臣、どう思われますか。

金田国務大臣 ただいまの逢坂委員の御指摘に、私の思いは、いまだ成案に至ったものではない現在も、その内容についてはぎりぎりの最終的な検討を行っていることは既に申し上げているとおりであります。法案の具体的な内容等に関します質問については、政府としては、責任を持ってお示しできる成案を得た段階で十分に説明を尽くさせていただくというのは、従来から申し上げてきたところであります。

 法案の作成過程においてのお話になりますと、その進捗状況を踏まえて必要に応じて適時適切に与党と相談をさせていただいているところでございます。

逢坂委員 政府の中において責任ある答弁ができるようなレベルになるまでなかなか表に出しづらいんだということには、私は、ある一定の合理性があるような気がします。ただ、まあ、私はそれは必ずしも支持はしないんですけれどもね。民主主義はプロセスだと思っていますから。

 私が聞いているのはそこではないんです。政府の中で、ある一定程度の答弁ができる程度までに確からしさが高まる、これは、私は何もテロ等準備罪のことだけを言っているわけではありません、一般の法案を含めて全部なんですが、そうしたら、その次になぜ与党にしか出さないのか、ここを聞きたいんですよ。そこに合理性はあるんでしょうか。

金田国務大臣 現在、成案を得ていない段階、検討途中である、今後変更があり得る情報など、こうしたものを公にすることによりまして、国民の皆さんの誤解や臆測を招いて、不当に国民の間に混乱を生じさせるおそれもある。そして、責任ある答弁を行うという観点からまいりますと、そういう、不当に混乱を生じさせるおそれがあることは適切ではない、このように考えるわけであります。

 そのようなことを防ぐために、政府として責任を持ってお示しできる成案を得た段階で十分に説明を尽くさせていただきたい、このように考えておる次第であります。

逢坂委員 残念です、大臣。

 民主的である、あるいは民主制とか民主主義というのはどういうものか。結果だけよければいいのではないんですよ。民主制というのは、物事を解決していくプロセスが共有されるということが非常に大事なんです。そのことによって、国民にとって不都合な結果であっても、プロセスを共有することによって、国民の皆さんは、なぜ国民にとって不都合な結果が出たのかということが理解できる、そういう作用を持っているのが実は私は民主主義だと思っています。

 だから、プロセスをどうやって公開するかということは民主主義の肝なんです。それを、いたずらに混乱させるとかそういう言葉で、だからそのプロセスは見せないというのは、非民主的ともとられるんですよ。

 だから、民主主義は、多数決というのは一つの意思決定の方法ではありますけれども、多数決だけが民主主義の意思決定の方法ではないんです。賛成はできないけれども納得せざるを得ないなというのも実は民主主義の一つの大きな意思を決める方法なんですね。にもかかわらず、教えないことの方が混乱を防ぐことができる、よらしむべし、知らしむべからずみたいな発想で大臣をやっているというのは、私は、少しお考えを改めた方がいいんじゃないかと思います。

 私、古くは成田空港、昭和四十二年だったと思います、閣議決定して、昭和五十三年でしたか、暫定開港した。あれは、成田空港は、手続、プロセスが非常にやはりまずかったと思っています。きょうはたくさんしゃべる時間はありませんけれども。そして、同じ時期にドイツのミュンヘンでも新空港の計画があり、ミュンヘンの新空港ができ上がったのは一九八八年ぐらいだったと思います。だから平成に入ってからだったと思います。成田空港に比べるとすごい時間がかかったんです。

 ところが、ミュンヘンと成田の違いは何かというと、意思決定の過程を国民につまびらかにして、説明をして、反対運動もあったけれどもそれも受けとめて、最終的にミュンヘンの空港は完全な形ででき上がったんです。成田は、残念ながら、我々の年代ならよく知っています、相当激しいいさかいがあり、そして現段階でも、成田は、完全な形で当初予定した空港にはなっていないですね。

 民主主義というのはプロセスが大事なんですよ。そこを切り捨てることの方が混乱を招かない、そういう発想だから、私はこの国はいろいろな部分で不都合が起きているんだと思うんですよ。

 大臣、もう一回聞きます。なぜ与党に最初に法案を出すことに合理性があるのか。いかがですか。

金田国務大臣 逢坂委員の、民主主義はプロセスであるという御発言を賜りました。私も、プロセスは大切だ、このように思っております。

 そこで、その上で御質問にお答えをいたしたいと思いますが、政府提出法案につきまして、その成案を得る過程で、必要に応じて与党と相談をし、その意見も踏まえた検討を行うことは当然のことであると考えております。この点は、民主党政権のもとにおいても同様であったと認識をしております。

 その上で、テロ等準備罪につきましてはまだ成案を得ておりません。その内容等について、与党との相談を継続して行っている現状であります。そのような検討中の段階で、そのために条文の内容についても変わり得る状況において、国会の場で具体的な条文の内容を踏まえなければならない答弁をいたしますことは、責任ある答弁を行うということの観点からは困難でありまして、かつ適切ではないものと考える次第であります。(発言する者あり)

逢坂委員 後ろの方からのやじの中にも、議院内閣制だからそれは当然なんだというやじも飛んでおります。

 議院内閣制であるということは、確かにそれは私もそのとおりだと思うんですが、一方で、三権分立という観点でありますとか、あるいは国民という目線で考えたときに、答弁がしっかり固まらない前に表へ出せないんだ、限定的に出せるのは与党だけであるということは、本当にそれは民主的なのかどうか、考えてみる大きなポイントだと私は思っているんですね、民主主義を考える上で。(発言する者あり)

 それで、民主党政権のときも確かにそうしていた、それはそのとおりです。この間ずっと、どの政権であってもそれをやっていたんだと思います。でも、本当にそれでいいのかということを、そういう疑問を持ちながらやった方が私はいいと思うんです。国民にとって何が民主的なのか。与党にとって都合がいいとか政府にとって都合がいいでは、それはだめなんですよ。そこのところが……(発言する者あり)これぐらい後ろの方からいろいろな声が出る、私は、これはしっかり問題意識として持っておいた方がいい案件だと思うんです。

 しかも、私が何でこんな問題を持ち出したかというと、今度はテロ等準備罪に戻っていきますけれども、今回、法案が提出される前になぜこれほどの議論になっているかということなんです。それは、条文もつまびらかに決まっていない段階から、政府の側でアナウンスをしたからなんですよ。

 特に私がこの点について問題意識を持ったのは、一月十六日の菅官房長官の記者会見でした。言葉は正確ではないかもしれませんけれども、共謀罪ではなくて今度はテロ等準備罪にするということと、それから、一般の人は対象にならないということと、前の法案とは全く違うんだということを記者会見で公言されたわけですよ。だから、私は、であるならばその内容についてこれは聞かざるを得ない。

 そのときに、私が疑問に思うのは、法文ができてもまず与党に示す、そして都合のいいアナウンスだけをしている、そして、ぎりぎりの重要な論点になると、成案ができていないから答弁できない、そして、二月の六日でしたか、記者クラブにはああいうペーパーを配る。全くこれは民主的とは思われないんだ。一方的に都合のいいことを発信しているだけ。

 最近、レッテル張りとか印象操作とか、そういう言葉が国会議論の中で随分出てきますけれども、内容も十分固まっていないのに、今政府がやっていること、法務省がやっていることは印象操作ではないか、そう思うんですよ。大臣、いかがですか。

金田国務大臣 ただいまの逢坂委員の御指摘に対しまして、新たな法案の提出に当たりましては、国民の皆さんに対する丁寧な御説明が必要であることは十分に認識をしているつもりであります。そのため、法案について、成案を得ていない現段階においても、その検討の方向性等については可能な限りでの御説明を行っているところであります。

 一方で、いまだ法案について成案を得ておらず、現時点で説明できる内容にはおのずと限界があることにも御理解はいただきたい、このように思っている次第であります。

 今後、成案を得た後には、具体的な法案の内容に基づきまして御説明を尽くしてまいる所存であります。

逢坂委員 そういう基本姿勢であるならば、テロ等準備罪について限定的なことは言わない方が私はいいと思うんですよ。従来の共謀罪と全く違う、一般の人は対象にならない、そして、報道などでは、構成要件を厳しくしたというような報道がされています。構成要件を厳しくしたかどうかなんて、まだわからないんですよ。

 それじゃ、大臣、ここを聞きましょう。構成要件、厳しくなるんですか、今度のテロ等準備罪は。

鈴木委員長 逢坂君、時間が参っておりますので。

逢坂委員 失礼しました。

金田国務大臣 ただいまの逢坂委員の御質問につきましては、具体的な内容でもございますので、成案を得てからお答えをしたいと考えております。

逢坂委員 それじゃ、構成要件を厳しくしたテロ等準備罪は今の段階ではまだ言えないということだと理解をいたしました。

 質問したいことは山のようにありますけれども、時間になりましたのでやめます。

 大臣、どうもありがとうございます。

鈴木委員長 次に、枝野幸男君。

枝野委員 枝野です。

 今、逢坂さんが大変本質的なことを聞いてくださいましたので、続けて伺います。

 では、NHKの、構成要件を限定したという報道は誤報である。いいですね、法務大臣。(発言する者あり)

鈴木委員長 時計をとめてください。

    〔速記中止〕

鈴木委員長 速記を起こしてください。

 金田法務大臣。

金田国務大臣 委員御指摘の報道は承知をしておりますが、その内容につきましては、対象の処罰範囲は狭くなるというふうなことを報道したのかと承知しておりますが……(発言する者あり)個別の内容については、先ほども申し上げましたように、成案ができて御説明をさせていただきたい、このように考えております。

枝野委員 いいですか、こちらから不規則発言が出ていますが、NHKがどう報道しようと、それは報道の自由です。だけれども、まだ成案を得ていなくて説明できない状況であると国会であなたは答弁されているんですから、法務省として外に説明できるような状況でないという客観状況に対して、こういうふうに固まったとNHKが報道しているということは、NHKの報道は事実でないということになるということを法務大臣は答弁されたんですけれども、NHKの皆さんはこれをよく考えていただきたいということだし、NHKだけではありません、けさの東京新聞を読んだら、また法案の中身が出てきています。

 先ほどの逢坂さんの、大変すばらしい質問だったと思うんですが、実は僕、済みません、若干、一点だけ違うところがあるかなと思っていまして、この法案がイレギュラーなんですよ。

 確かに、政府において法案作成のプロセスにおいては、まず政府内でいろいろな作業が行われます。その次には、法案によっては閣内の調整があるので、内閣官房を含めて閣内の調整がいろいろ行われます。ある段階では、与党の重立った中枢部のところと、これは大事な問題だからあらかじめ根回しをしておかないとみたいな話があることはありますが、そして、ある段階で、与党に、今の平場に説明がなされるということになるわけです。それより前に野党には説明しません。我々のときもそうでした。それは当然です。

 でも、普通の法案は、与党の平場に説明をしたら直ちに野党に説明に参ります。何となれば、国会でもめたくないから。それは法務省に限らずどの役所でも、我々が与党のときも、与党の平場に出したら野党に説明します。

 なのに、今回だけは、与党に説明した説明の中身すら答えられない。どこが違うんですか。

金田国務大臣 現在、私どもが今行っております、検討中と申しておりますが、まだ与党内で調整中であります。

枝野委員 いいですか、与党に説明する前にも、世の中に伝えてパブリックコメントをとることだってあるんですよ。与党の平場で説明しているんですよ。

 先ほど、可能な限り説明してきましたと。可能なことについては説明してきましたということを大臣御自身がおっしゃいました。

 では、きのう山尾さんが聞きました、最初に与党の平場で説明したときに、テロという文言が入っていたか入っていなかったかは、可能な限り説明できる範囲の外側なんですね。

金田国務大臣 ただいま御指摘の点も含めて、現在調整中であります。

枝野委員 今のは答えになっていないと思いますが。

 与党に対して平場で説明をした最初の説明にテロという文言が入っていたかどうかという過去の客観的事実について、それは説明できない。可能な限り説明してきたという、可能な限りの範囲に入っていないんですねということなので、まだ法案の中身は調整中ということとは全く関係ありません。お答えください。

金田国務大臣 ただいまの御質問に対しましては、与党と私どもとの間で、どういう説明をし、かつ調整をしているかについては、発言を差し控えさせていただきたいと思います。

枝野委員 私、この間、予算委員会の分科会で、最後にこう申し上げたんですよ、私も賛成できるような法案を出してくださいと。

 僕は、テロの対策のために処罰対象を広げること自体はあり得ることだと思っているんですが、まさにその法案をつくるプロセス自体が非常に隠蔽主義で、こういうやり方で進めたら、中身以前の問題として、今の法務省は信用できないという話になってしまうんですよ。だから、このプロセス論はそういった意味からも大事なんですよ。

 もう一つ。きのうの山尾さんの質問の中で、曖昧でしたので。

 与党に提示した文書は公文書に決まっているじゃないですか。違いますか。公文書でしょう。

金田国務大臣 お尋ねの点につきましては、公務員が作成した文書であるという点からいたしますと公文書である、このように考えております。

枝野委員 公文書管理法には、「行政機関の職員が職務上作成し、又は取得した文書であって、当該行政機関の職員が組織的に用いるもの」。組織的に用いるものじゃないものを与党に説明したら大変ですから、公文書ですよ。いずれ公開の対象なんですよ。だから、ここで答えたらいいんですよ。そういうのを隠蔽しようとするから、黙っているからもめるんですよ。

 テロという文言は最初になかった、だけれども与党の指摘を受けて、テロという文言を追加しようとしている、こんなの、各報道機関が当たり前のように報道しているのを、なぜ国会でだけお答えになれないのか。その姿勢が、一つ問われている大きな問題なんですよ。わかっていますか、何が問われているか。

金田国務大臣 検討過程にある文書について公開すべきかどうかという点については、その事案によって、それは公開することの時期というものもあろうかと考えます。

枝野委員 先ほどのNHKやけさの東京新聞もそうですけれども、それは秘匿性を持つ文書というのは公文書の中にありますよ。でも、その中身がこの間ばんばんばんばん報道されているじゃないですか。報道機関がいろいろな努力をして、秘匿したい情報を出している、これは立派なことですよ。

 でも、ここで聞かれて答えられない、答えるべきではないというものが漏れているということは、それはあなたの部下かあなたの仲間の政党の人たちが漏らしてはいけないものを漏らしているから報道されているんですよ。

 では、そこをちゃんと調査してください。

金田国務大臣 マスコミに条文案等が出回ったことについての御指摘だと思います。そういうマスコミの報道があることについての御指摘だと思いますが、御指摘のような報道がなされたことは承知をいたしております。

 テロ等準備罪の条文案等が報道された理由につきましては、私は承知をいたしておりません。私の了解のもと、法務省が現在検討中の条文案をマスコミに示したこともありません。その上で、担当部局、刑事局になりますが、担当部局が検討中の法案を報道機関に提供した事実があるか否かを確認しているところであります。確認結果を踏まえて適切に対応させていただきたいと思います。

 なお、法務大臣として、報道機関に対して、取材活動そのものについて調査を行うべきものではないということは当然であることを念のためお断りはさせていただきます。

枝野委員 最後の部分はいい答弁でした。

 あなたの部下が漏らすか、あなたの属している与党が漏らすかしなければ出ないようなことが、しかも一回限りじゃありません、条文が出たのは深刻ですけれども、その後も次々と各マスコミから報道されています。ということは、常にだだ漏れになっているということですよ。だだ漏れになっているような情報なのに、国会で聞かれたら答えられないという姿勢は、それはおかしい。本当に外に向けて出せない情報ならば、もっと厳重に情報管理するべきですよ。それは、メディアの行動を抑制するんじゃなくて、あなたの部下や与党の内部に対して厳重な情報管理しろということを徹底しなきゃおかしいわけですが。

 一度条文が出た後も次々と、私たちは報道を見て、えっ、こんなことになっているのと思って、国会で聞いたら答えられないというのが繰り返されているわけですよ。それだけでも、僕、大臣の適格性、問題だと思いますよ。

 中身の話を申し上げたいと思いますが、きょうは大臣の適格性を問うということで聞いていますので、基本的には後ろに聞かなくて結構です。大臣がわかっていなければ、わかりませんとお答えいただければいいんです。

 これはわからないかもしれませんが、大臣、丑の刻参りというのは知っていますか、丑の刻参り。

金田国務大臣 枝野委員に引き続きお話を賜りたいと思います。

枝野委員 私も知らなかったので、普通知らないと思うんですが、何か、夜中の丑の刻に、わら人形をつくって、わら人形にくぎを打ちつけて呪い殺そうとする。

 これは殺人未遂になるかどうか知っていますか。

金田国務大臣 ならないのではないでしょうか。

枝野委員 はい、なりません。

 何でですか。わかりました、専門家じゃないですから、何でだと思いますか。

金田国務大臣 それのみをもって人が亡くなるというものではないということかなと思います。

枝野委員 そうなんです。人の命を奪うという危険性がないからなんです。

 法益を侵害する、例えば人の命とか、人の財産とか、そういう法益を侵害する危険がない行為は処罰の対象にならないんです。これが刑法の大原則なんです。御理解されますか。同意されますか。

金田国務大臣 それは私も承知しておるつもりであります。

枝野委員 だから、予備罪についての判例があるんですよ。客観的に相当な危険、この場合の相当というのは、普通の、日常用語の相当、相当大変なんだな、大きいんだなでなくて、客観的になるほどと多くの人たちが納得する。いや、丑の刻参りだって、本当にあれで人が死ぬと思っている人は多分世の中に〇・何%かいるわけですから。普通の人から考えて危険性があるというようなことがあったとき初めて予備罪になる。だからああいう判決が出ている。

 これが刑法の判例、通説ですが、こういう考え方に同意されますか。

金田国務大臣 私も、枝野委員と同じ思いを持ちます。

枝野委員 問題は、今回は予備に至らないものも処罰の対象にしなきゃならないと言っている。そして、予備に至るためには客観的に相当な危険が必要であるということは、客観的に相当な危険がない行為も処罰の対象になり得るというふうにしか、ここまでの御答弁からは理解できないんです。だから問題なんです。

 客観的に具体的な危険がない行為は、今検討しているものでも処罰の対象に入れるつもりはないとおっしゃれますか。

金田国務大臣 委員御指摘の内容については、予備罪というのは、予備行為自体の危険性が問われるんだと思います。そして、テロ等準備罪は、合意プラス実行準備行為、一体としての危険性が問われる。そういう考え方で、プラスしているんですけれども、頭を整理いたしております。

枝野委員 今のお答えは、今度の法案でも客観的に相当な危険性が必要であるというふうなお答えにしか聞き取れないんですが、それでよろしいんですね。これは、後ろの人、よく考えた方がいいですよ。

金田国務大臣 委員の御指摘に対して先ほど答弁させていただいた、予備罪は予備行為自体の危険性と申し上げました。それで、テロ準は……(発言する者あり)テロ等準備罪は、いや、今考えていますから。合意プラス実行準備行為の一体としての危険性であって、実行準備行為の危険性ではない、このように考えております。

枝野委員 いや、これは結構、ある意味ではいい答えをしていただいたと思っていて、相当処罰対象は絞られることになると思うんですよね。

 先ほどの丑の刻参りの話と一緒ですけれども、よく言われていますけれども、例えば、新橋で仕事帰りのサラリーマンが五人ぐらいで集まって、酒飲んで、上司の悪口を言いながら、あのやろう、もう首絞めてやろうぜと話をしても、殺人にはならないですよね。

 つまり、共謀というのは、そこで話されている会話だけでは、本気なのかそれとも単なるざれごとなのか、当人以外は内心は実はわからないというのは、この間予算委員会の分科会で申し上げました。

 したがって、あのやろう、ぶっ殺してやろうぜと何人かで話をしている行為自体は、丑の刻参りと一緒で、この人は誰かのことを殺してやりたいぐらい恨んでいるということの客観的な材料にはなるかもしれないけれども、犯罪を犯す、人の命を奪う、法益を侵害するという具体的な危険性は一般的にはない。だから、こうした行為は刑法の大原則として処罰や捜査の対象にならないんですよ。単に、話し合って、あのやろう、ぶっ殺してやろうぜでは、殺人の予備どころか共謀にもならない。それは同意されますよね。

金田国務大臣 それは、委員のお話に同じであります。

枝野委員 ということは、準備行為そのものが相当客観的、具体的に、もちろん、大臣の説明によれば共謀という事実と合わさってですが、法益を侵害する客観的、具体的な状況がなければ、やはり全体として法益を侵害する客観的な相当な危険性というのは生じないということになる。これは今後の相当大きなポイントだと思います。それを広くとればおかしなことになるし、狭ければ実は予備罪と変わらない。もし予備罪で足りない犯罪類型があるならば、そこについて個別にやればいいことになるということを指摘しておきたいというふうに思っております。

 いろいろなことをきょうの段階で聞いておきたいというふうに思うのですが、僕は、この間の予算委員会の分科会でも申し上げましたし、今も申し上げましたが、確かに、テロを防ぐためには、前広にいろいろなことを、やれることはやった方がいい、そのことについては全く同意しているんですよ。やるべきだと思っているんですよ。ただ、なぜそれが共謀罪につながっていくのか、さっぱりわからなくて。

 大臣、最近の先進国、フランスなどでは組織的なテロ犯罪、大変残念な、大きな犯罪もありましたが、最近の、特に先進国において行われているテロ犯罪、かなりの部分がいわゆる一匹オオカミによるテロ。そして、これが、情報、捜査の端緒というか、事前に予兆をつかむことを含めて大変難しい。これこそが、特に日本においては一番喫緊に、強力にやらなきゃならないテロ対策ではないですか。

金田国務大臣 テロ対策としてのローンウルフのお話が出ました。

 テロ対策というのは、やはり罰則の整備だけではなくて、広範な情報収集、そしてその情報の的確な分析、それから国際協力の推進、あと日本の国の水際対策の強化、そういったような総合的な対策が必要なんだろう、こういうふうに基本的に考えております。

 TOC条約の締結とか、あるいはその国内担保法案の整備というのも、こうした我が国のテロ対策の一環として行うものであって、ですから、総合的な対策の一つとしてテロ対策に十分に資するものである、このように考えているわけであります。

枝野委員 もちろん、刑罰法規をどうするかだけではないというのも間違いありません。それから、確かに組織的なテロにも備えなければなりません。でも、実は大臣は余りお答えいただいていないんですが、やはり一匹オオカミ、問題は深刻でしょう。そのことについては同意されますよね。

金田国務大臣 一匹オオカミであろうと組織であろうと、その対策は重要である、こういうふうに考えております。

枝野委員 だとすれば、なぜここで共謀罪を無理するのか、さっぱりわからないわけですよ。

 つまり、テロの場合は、それは一匹オオカミによるテロでも多くの人の命が奪われるということが実際に世界じゅうで起きているわけですから、組織的に行われた場合とそこの違いがないわけですよ。一匹オオカミも含めてテロについては、あらかじめ早い段階で、起きてしまう前に何とかおさめたい、抑えたいということであるならば、むしろ、今ある犯罪体系のうち、殺人ならば予備がある、ハイジャックも予備がある、では、本当に、ほかに予備罪を設けて、客観的、具体的な相当な危険があれば実行の着手前段階でも取り締まるというような必要性はないのか。こちらこそ真剣に考えなければならないことであって、なぜ組織犯罪だけを一生懸命先行させるのか。

 しかも、共謀という、これまた大きな争点なんですが、盗聴の対象にはしないとおっしゃっているんだけれども、共謀についてどうやって事前に材料を収集するのか、これはさっぱりわからないわけですよ。そんなもの、捜査機関が事前にメモとか何かを手に入れることができるような間抜けなテロ集団だったら、それはいろいろな手で、こんな犯罪類型をつくらなくたって取り締まれますよ。だけれども、内々こっそりと、したたかに大きな犯罪を準備していてみたいな話をできるだけ前広でやりたい、そのためにこういう法律をつくるんだったら、それに対して、通信傍受、盗聴法の対象にはしないというのは、まさに、今目の前だけ乗り越えればいい、取り繕っているとしか思えないんですけれども、どうですか。

金田国務大臣 テロの典型というのはやはり組織的に行われるものだ、こういうふうに考えております。そして、ローンウルフ、一匹オオカミと言われるようなテロであっても、実際には組織的な背景があるのではないかという点も重要ではないかと考えております。

枝野委員 申し上げておきたいんですが、これはマスコミ等に、改めて共謀罪、また少し手を入れて出すと言われ始めてから相当な時間、法務省内外、内部でしょうが、調整をして、それからいろいろ具体的な中身が報道されていながら国会には出てこないで、相当長期間調整しています。なおかつ、それに基づいて我々が国会で質問しても、お答えになってくれない、どういう中身になるのかお答えになっていただけませんから、仮に政府・与党で決定しても、この間、政府・与党で検討していた時間ぐらいの期間を我々に与えていただかないと、まともな審議なんかできませんからね。

 あらかじめ、決まったこと、大体方向が出たことをちゃんと国会で説明していただいていたのなら、できるだけ早く審議に入ることはありますけれども、どう考えても、一番早くから見ればおととしの暮れぐらいから、出すんじゃないかと言われてきた。その分とは言いませんけれども、この間かなり具体的なことが報道されているけれども、国会で聞いても答えてくれない。それでは我々も準備のしようがない。賛成できるんだったら賛成したいわけですし。

 というような時間、専門家の検事さんたちが一生懸命、何人でやっているんですかと聞いたら法務省は答えてくれませんでしたけれども、相当な人数でやっている話、それを、出てきたらすぐ審議しろだなんて話は、ここまでの大臣のこの法案に対する答弁のあり方から、とてもむちゃなことを迫るんだということを申し上げておいた上で、一般質疑じゃないと聞けないことを一点だけ聞いておきたいんです。

 法務大臣、法務省の中には、裁判官から検事へと転官して、法務省の職員をしている方が六十五人いらっしゃるんですって。わかるんですよ、その中には、民事局担当とかで、裁判官の経験を踏まえて、法務省に来て民法の改正とか民事訴訟法の改正とかに携わるというような人がいるのはよくわかるんですが、よくわからないのは、例えば会計課長が裁判官、この人はまさか裁判所に戻らないんでしょうね。

 つまり、民事法とか、裁判官の現場の経験がある方が法務省に事実上の出向をしてくることで、それは意味があるというポジションがあるのは否定しません。否定しませんが、例えば会計課長だなんというのは、そういう話では全く意味がないと思いますし、訟務局訟務支援管理官とか訟務局民事訟務課長、つまり、訟務局というのは、国が当事者である裁判についての国の弁護団ですよ。そこに裁判所から来た人が仕事している、しかも、課長とかという大事な仕事をしている。

 まさか、この人が一定期間したら人事異動でまた裁判所に戻って、今度は中立公正ですなんて顔をするなんということは、大臣、許しちゃいけないと思うんですが、どう思いますか。

金田国務大臣 ただいま枝野委員から、いわゆる裁判官出身の方が法務省に来て、そして法務省からまた裁判所に戻るということのあり方等についてお話がございました。

 例を会計課長にとられましたが、御指摘のポストは、法務省全体の行政事務を理解しなければいけない、的確に予算要求をまとめるといった高い行政能力が要求される、そういう仕事だと思っております。そのためには、適材適所の観点から、その時々に応じて、裁判官出身を含む適切な者を配置していかなければいけないというふうに考えておる次第でありますし、必ずしもこの出身でなければいけないんだというようなことまで考えているつもりはありません。

 しかしながら、一方で、法務省で勤務をされた方が、それを通じて得た行政能力をまた法務省以外の場所で発揮するというんでしょうか、そういうふうな視野の広い人間を確保していくという努力も、それなりの非常に重要な意味があるのではないかというふうに思っているわけであります。

 したがって、人事交流という考え方にもつながる話でございますが、その辺は、そういう見方を私も持っていることはお話をさせていただきます。

枝野委員 聞かれたことに答えていただいていません。

 大臣のおっしゃっている一般論について、私は否定しません。だから、例えば民事局などについてそうした方がいることは否定しないし、それから、最初裁判官になったんだけれども合っていないからということで、片道切符で検察庁に来られる、法務省に来られる、そういう方がいること、これも否定しません。

 問題は、行ったり来たりすることです。行ったり来たりするような、つまり、本籍は裁判所にありながら法務省に来ている方が会計課長をやるとか、あるいは、また裁判所に戻ることが想定されている方が国の代理人である訟務局の仕事をするとか、これは明らかに不公平だ。

 来てもらった人には片道切符で仕事をしてもらうか、それとも、裁判官だからこそできる、民事局とかの、そういうまさに司法の現場を知っているポジション以外のところで仕事をさせたら、それはもう戻さない、これはしっかりやってもらわなきゃいけないと思いますし、これは今後も一般質疑その他でお尋ねをしていきたいと思っています。

金田国務大臣 一言だけ。私の答弁が足りなかったかもしれないなと今感じましたので、手を挙げました。

 法曹は、法という客観的な規律に従って活動をする、それで、裁判官、検察官、弁護士といういずれの立場に置かれても、その立場に応じた職責を全うすることに特色のあるものでありますから、このような人事交流が裁判の公正を阻害することもないというふうに申し上げるのを忘れておりました。

枝野委員 短く言いますけれども、検事と裁判官とかなら今の話はわかるんですよ。

 法務省は検察官の資格を持っている人がほとんど幹部になっていますが、それは別に全然マストじゃないんですよ。これは行政なんですよ、司法ではないんですよ。そこはちゃんと勘違いしないでいただいて、私は、ダイレクトに判検交流のことを批判したんじゃなくて、訟務局とか会計という、法務省の、まさに行政そのものの仕事のところを指摘した、そこは勘違いしないでいただきたい。

 終わります。

鈴木委員長 次に、藤野保史君。

藤野委員 日本共産党の藤野保史です。

 大臣は、所信表明の中で、テロ等準備罪の創設などを含む法案をできる限り早期に国会に提出できるよう目指してまいりますと述べられました。テロ等準備罪という言葉をあえて使われた。これを聞いた国民は、この法案はテロ対策なんだな、そういう印象を受けると思います。

 ところが、昨日来、その所信表明に対する質疑では、テロという文言について全くお答えにならない。成案が出てから説明すると。所信表明でテロ等準備罪と述べながら、その所信への質疑では、肝心のこの部分についてなかなか答弁されない。先ほどテロの定義をおっしゃったので、後で聞こうと思うんですが。

 やはり、これでは所信質疑というものがなかなか成り立っていかない。所信で述べられたことについて聞いているわけですから。これでは、やはり所信質疑、今回の委員会の趣旨そのものがやはり成り立たないわけですし、改めて大臣の資質が厳しく問われてくると思います。

 その上で大臣にお聞きしたいんですが、大臣は、成案が出てから十分に説明したい、こうおっしゃるわけです。ということは、成案が出た後であれば説明するのか。きのうも聞かれておりましたが、例えば、テロという文言が原案にあったのかなかったのか。その後、与党協議を経て、つけ加わったのか、つけ加わらなかったのか。これは成案が出た後であれば説明されるんでしょうか、大臣。

金田国務大臣 現在検討中で、ぎりぎりの検討中でございます。成案を得てからということは繰り返し答弁をしてまいりました。出てから説明をするということを申し上げてまいりました。また、これからも、そういうふうな点も含めて、必要に応じてまたお答えをさせていただきたいと思っています。

藤野委員 今、必要に応じてと大臣はおっしゃいました。この必要かどうかというのは誰が判断するんでしょうか。

金田国務大臣 国会との関係において、必要な状況というものをしっかり受けとめて対応していきたい、こう思っています。

藤野委員 国会との関係と今おっしゃいました。私たちは、選挙で選ばれた全国民の代表であります。憲法四十三条にも規定されている。国民の代表として、行政府をチェックする役割を私たちは担っているわけであります。

 そこで、今大臣は国会とおっしゃいましたが、国民の代表である我々国会議員が質問するということは、これは答弁する必要があると思われませんか。

金田国務大臣 御指摘は私もそう思いますが、成案を得た上で適切に対処をしていきたい、国民の皆様の視点に立って適切に対処をしていきたい、このように考えております。

藤野委員 いや、今、成案を得た後の話をしておりますし、国民の視点ということであれば、国民は、まさにこのテロという文言が原案にあったのかなかったのか、それがその後の与党協議を通じてどうなったのか、大変大きな関心を抱いている。だから、私たちは、その代表者として大臣にお聞きをしているわけです。

 大臣、このテロの文言のプロセスについて、成案を得た後、説明していただけますね。確認します。

金田国務大臣 先ほど来申し上げておりますが、必要に応じてしっかりと説明をさせていただきます。

藤野委員 そう言われると、ちょっと戻っちゃったので、もう一回聞きたいんですが、私たちは国会議員として、大臣がおっしゃったような国民の視点で聞いているわけです。この国会議員の質問は必要だ、答える必要があると思われるんですか、思われないんですか。では、この点だけお答えください。

金田国務大臣 それは、必要に応じてと申し上げるのは、さまざまな、必要になれば、そういう状況というものもあると思います。そういうものをしっかりと踏まえて答弁をしていきたい。

藤野委員 何だか、やはりあの文書のときに戻ったなと。

 要するに、国会議員は国民の立場で質問するわけですね。その国会議員の質問に対してまともに答えようとしない、そういう姿勢が今も私はあらわれていると感じざるを得ないわけです。

 必要に応じてとおっしゃるのであって、しかも国会の状況、国民の視点とおっしゃるのであれば、私たち国会議員が国民の代表として質問するわけですから、このプロセスを答えないなんということはあり得ないというふうに思います。このことはちょっと厳しく指摘をしておきたいと思います。

 その上で、この原案なるものにはテロリズムの文言がなかったという点については、国民の多くが大変大きな関心を持っております。そこで、この点についてお聞きをしたいと思います。

 これにかかわる答弁というのはたくさんあるわけですが、私は、二月十七日に予算委員会で大臣にもお聞きをしました。そのときに大臣は、二〇〇五年の当委員会、二〇〇五年十月二十八日の衆議院法務委員会での南野大臣の答弁との関係で答弁をいただきました。

 改めて南野大臣の二〇〇五年の答弁を御紹介したいと思うんですが、国際組織犯罪防止条約、TOC条約ですが、組織的な犯罪集団とは、金銭的利益その他の物質的利益を直接または間接に得るための重大な犯罪等を行うことを目的として一体として行動するものをいうと規定しておられます。したがいまして、御指摘のような宗教目的や政治的目的でつくられた団体が純粋な精神的な利益のみを目的として犯罪を行う場合には、この条約に言う組織的な犯罪集団には当たらないこととなると考えられます。

 これが二〇〇五年の南野大臣の当時の答弁でありまして、私は、これと大臣は同じ立場かということを二月十七日の予算委員会で聞かせていただきました。これに対して大臣は、同じだと答弁いただいたわけですが、大臣、間違いありませんか。

金田国務大臣 お尋ねの平成十七年十月二十八日の衆議院の法務委員会での当時の大臣の答弁でございますが、この答弁は、過去の法案の、組織的な犯罪の共謀罪の団体には宗教的目的や政治的目的のためにつくられた団体も含まれているかとの、具体的な法案の存在を前提とした質問に対する回答であります。

 これに対しまして、今回提出を予定している法案については、いまだ成案を得ておらず、現在、条約との整合性を図りながら、いかなる範囲が必要かつ適正であるかを、外務省を含めた政府内部においてぎりぎりの検討を続けているところであります。

 お尋ねにつきましては、新しい法案について成案を得た段階で、外務省とともに、条約との関係も含めて、法案の内容について改めて御説明をしたい、このように考えている次第であります。

藤野委員 大臣、私が聞いたのは、法務大臣の、TOC条約、いわゆる国際組織犯罪防止条約についての解釈なんですね。条約はというふうに言っているんですよ、南野大臣は、「条約に言う「組織的な犯罪集団」には当たらない」と。そのときの具体的法案とかこれからの提出予定法案とかじゃなくて、条約について聞いているんです。それに対して大臣は、二月十七日に同じだと答弁されているんです。これは間違いありませんよね。

金田国務大臣 当時の答弁は私も当然に承知しておりますが、ただ、現在、成案に向けて、先ほども申し上げましたが、外務省と条約との整合性を図りながら、いかなる範囲が必要かつ適正であるのか、外務省を含めた政府内部と検討を続けております。

 そして、今御質問の部分は、まさに条約上の関係、整合性の非常に重要な部分でありますから、そこは外務省にお聞きいただければありがたいと思います。

藤野委員 では、二月十七日の答弁を変えられるということですか。同じでなくなる可能性があるということですか、大臣。

金田国務大臣 この間も答弁しましたときに、たしか私も申し上げていたと思うんですが、外務省とともに、条約との関係も含めて、法案の内容について成案を得た段階で改めて御説明したいということも申し添えていたと思います。

藤野委員 では、聞き方をちょっと変えてみますけれども、二月十七日のとき、大臣はこうおっしゃっているんですね、私の質問に対して。仮に、純粋に精神的利益を得る目的のみで行われるものがあるとすればという仮定の話でありまして、そのようなテロが現実にあることを認めた趣旨ではない、こう答弁しております。

 大臣、これは間違いありませんか。

金田国務大臣 宗教上や政治上の主義主張に基づくテロであっても、現実には、純粋に精神的な利益を得る目的のみで行われることは想定しがたいと考えていると申し上げたつもりであります。

藤野委員 確かに、その後にこうおっしゃっているんですね。現実には、組織的犯罪集団がテロを含めた組織犯罪を行うに当たって、純粋に精神的な利益を得る目的のみで行うことは想定しがたいと。想定しがたい、こうおっしゃったわけですね。

 性質上、組織的犯罪集団に関与することが現実的に想定されるとかされないとか、こういうのは、二〇〇五年当時の審議、私、国会議事録全部読んできましたけれども、全く出てこない言葉なんですね、性質上とか、想定とか。

 大臣、これはやはり当時の答弁と違うということじゃないですか。

金田国務大臣 私の記憶では、性質上という文言は申し述べていないと思います。

藤野委員 それは二月十七日の答弁ですか。それですと、二月十七日の場合は、現実にはと私におっしゃいました。現実には想定しがたい、これは間違いないですね。

金田国務大臣 それはそのとおりだと思います。

藤野委員 それで、これは、要するに二〇〇五年の答弁には出てこない言葉なんですね。同じテロというものに関することなんです。今回は六百七十六から二百七十七、限定していくなんという話もあるわけですが、大臣、この想定というのは、テロの中で、現実に想定されるものとそうでないものがある。

 大臣、想定というのはそもそもどういう意味なんですか。

金田国務大臣 通常あり得ると考えられるかどうかという趣旨で用いております。

藤野委員 通常あり得るかどうか、これは誰が判断するんですか。

金田国務大臣 申し上げるまでもないかもしれませんが、事柄によってさまざまでございますから、一概には申し上げることはできないと考えております。

藤野委員 一概に申し上げられないと。それによって処罰にかかわる犯罪を規定しよう、こういうことなんでしょうか。

 大臣、私が聞いたのは、純粋なテロが含まれるかどうかということなんですね。それについて大臣は、通常想定しがたいとおっしゃいました。純粋なテロが通常想定しがたいというのはどういうことなんですか。一概に言えないとおっしゃいますけれども、ちょっともう一回お答えください。

金田国務大臣 ただいま申し上げたのは、想定の用語を聞かれたので、一概には申し上げられないというふうに申し上げたつもりであります。

藤野委員 改めて確認しますけれども、二〇〇五年には、南野大臣は全くそういう限定をしておりません。大臣は今回そういうことをおっしゃっているわけですけれども、これはやはり答弁を変えたということでよろしいんですか。

金田国務大臣 お尋ねの点につきましては、現在、外務省とともに、条約との関係も含めて、法案について成案を得た段階で、法案の内容につきまして改めて御説明をしたい、このように考えております。

藤野委員 これは、TOC条約がテロ防止条約なのかどうなのかにかかわる大問題でありまして、それの担保法である本法案がその担保法たり得るのかにかかわる重大問題なんです、大臣。

 南野大臣は、純粋なテロは含まれないと言っているんです。つまり、TOC条約は本来的には、それは関連はあるかもしれません、関連はするでしょう。しかし、本来的にはTOC条約は、いろいろな議論の結果、わざわざ、テロ犯罪は除外する、区別する、そういう経過を経てつくられたものだ、それを理解しているから、二〇〇五年の段階で南野大臣はわざわざ、含まれない、当たらないという答弁をされているんですね、大臣。

 ですから、懲役四年以上という、ある意味、性質には関係しない、形式的物差しで数を選んだということであります。

 今回は対象を絞ってくる、その絞る物差しは何なんだという場合に、この現実的に想定なるものが、現実的に想定なる文言が基準になっているんじゃないのかという疑いが出るわけですね、大臣。それはどうなんですか。

金田国務大臣 ただいまの委員の御指摘にお答えをしますが、テロ等準備罪に関する法案の具体的な内容がいまだ成案に至っておりません。現在も、ぎりぎりの最終的な検討を行っております。

 法案の具体的な内容等に関する御質問につきましては、政府として責任を持ってお示しできる成案を得た段階で十分に説明を尽くさせていただきたい、このように考えております。

藤野委員 では、要は、南野大臣の答弁と金田大臣の答弁は違うわけです。変えられるわけですね。変えられるなら、変える理由を御説明ください。

金田国務大臣 条約の解釈は外務省において変えていないものと思います。(藤野委員「大臣の答弁です」と呼ぶ)当時の理解と私の理解との間で違いはない、このように考えております。

藤野委員 いやいや、もう一回、南野大臣の答弁を読みますね。「純粋な精神的な利益のみを目的として犯罪を行う場合には、この条約に言う「組織的な犯罪集団」には当たらない」、何の留保もありません、大臣。何の留保もないんです。「純粋な精神的な利益のみを目的として」というだけなんです。

 それに対して大臣は、対象犯罪、同じ対象犯罪です、対象犯罪について、現実的に想定されるもののみを規定すると。現実的に想定ということをおっしゃったんですね、現実的に想定。これは加わっているわけです。加わっているんじゃないんですか。加わっているとしたら、加わった理由を御答弁ください。

金田国務大臣 何度も申し上げて恐縮なんですが、対象犯罪のあり方については現在検討中なわけであります。したがいまして、その成案を得た段階で十分に説明を尽くさせていただきます。

藤野委員 では、もう一つ、別な角度からお聞きします。

 特定秘密保護法で、テロリズムという定義はどうなっていますか、大臣。

金田国務大臣 委員から通告がございませんでしたので、持ち合わせておりませんので、差し控えさせていただきます。

藤野委員 わかりませんか、後ろ。十二条二項の一号です。

金田国務大臣 ただいま持ち合わせておりませんので、改めて準備をした上で答弁をさせていただきたいと思います。

藤野委員 そこは、通告はあれとしまして、では、こちらで紹介させていただきます。法文をそのまま読ませていただきます。「テロリズム(政治上その他の主義主張に基づき、国家若しくは他人にこれを強要し、又は社会に不安若しくは恐怖を与える目的で人を殺傷し、又は重要な施設その他の物を破壊するための活動をいう。」、これが特定秘密保護法上のテロリズムの定義であります。「政治上その他の主義主張に基づき、」と。

 大臣は、二月十七日の予算委員会、私の質問に対して、こうおっしゃったんですね。さっきも言いましたけれども、仮に、純粋に精神的利益を得る目的のみで行われるものがあるとすれば、仮定の話でありまして、そのようなテロが現実にあることを認めた趣旨ではないと。要するに、そういう純粋なテロは仮定の話であって、そのようなテロはないんだ、こういう答弁をされました。

 そして、きょう、逢坂委員の質問に対しては、こうおっしゃったんですね。特定の主義主張に基づいてと。後は、以下は同じだったと思いますが、特定の主義主張に基づいて、国家や社会に恐怖等を与える目的で人の殺傷行為等を行うこととおっしゃいました。

 大臣、これは、現行法上は政治上の主義主張です。私に対しては、純粋に精神的なテロというのは仮定の話であって、ないんだとおっしゃいました。そして、きょうは特定の主義主張とおっしゃいました。どれが大臣の見解なんですか。

鈴木委員長 速記をとめてください。

    〔速記中止〕

鈴木委員長 速記を起こしてください。

 金田法務大臣。

金田国務大臣 委員の御指摘で、政治的な主義主張に基づくものが、純粋に精神的な利益を得る目的でどういうふうにかかわるか、そういうものについては一概には申し上げられないと考えております。

藤野委員 私の質問は、大臣自身が、きょう、特定の主義主張とおっしゃったんですね。

 では、私に対する答弁はいいとしましょう。現行法上、政治上のとあるわけです。これとの違いは何ですか。

金田国務大臣 先ほど、テロ、テロリズムという用語の意味について説明をした際に申し上げたわけですが、特定の主義主張に基づいて、国家等にその受け入れを強要したり、社会に恐怖等を与える目的で行われる人の殺傷行為等を指すものだと申し上げて、そのように指して、その用語を、そのように意義を指し示して用いられる場合があるものと承知をしている、このように申し上げたつもりであります。

藤野委員 何だかさっぱりわからないんですが。

 では、ちょっとまた別の聞き方をしますが、政治上であれ、特定のであれ、テロというのは、大臣の中では、想定されるものと想定されないものがある、こういうことですか。

金田国務大臣 そのとおりになろうかと思います。

藤野委員 今のはちょっと重大な答弁だと思いますよ。

 大臣、テロの中に、現実で想定されるものとそうでないものがある、こういうことですか。もう一回お答えください。

金田国務大臣 現実に想定されるものとそうでないものとがあるということを申し上げたつもりです。

藤野委員 現実にというのの意味がよくわからないんですが。想定もわかりませんけれども。

 要するに、人を刑罰の対象にしようという、そのまさに定義にかかわる問題で、現実にとか、想定とか、こんなことを使っていいんですか、大臣。

金田国務大臣 それは成案を得た場合にしっかりと、そういう説明も条文に沿ってできるものと考えています。

藤野委員 これは本当に重大な問題だと思っていまして、やはり曖昧であってはいけない、人権侵害につながるということなわけですね。

 テロについて、含むか含まないか。南野大臣は、純粋なテロについては含まないと明確に言っているわけです。それに対して金田大臣は、現実に想定とか、よくわからないものを持ってきた。

 その現実に想定するというのは、誰が想定するんだ、現実とは何なんだ、想定とは何なんだ。そんなことで刑罰法規が選抜されて、仮に絞り込みが行われるとすれば、時の政権によってこれは幾らでもできるということじゃないですか、大臣。

金田国務大臣 先ほどから申し上げておりますように、成案においてしっかりと示して説明をするつもりでおります。

藤野委員 いや、だから、その成案をつくるプロセスの話をしているんです。時の政権が、現実に想定とか想定でないとか、勝手に決めて別表なんかをつくっちゃって、どうするんですか。私はその物差しを聞いているんです。別表がどうなるか、成案がどうなるか、その前提として、大臣は現実に想定とおっしゃったんですね。これは南野大臣の答弁と全く違うわけです。一方では、六百七十六を二百七十七にするという話が進行しているわけです。

 大臣、この現実に想定というのは私はキーワードになってくると思いますけれども、これについてまともに説明できるんですか、今後。現実に想定ということで答弁を維持できるんでしょうか。

金田国務大臣 先ほどから繰り返しになりますが、法案の具体的な内容等に関する御質問については、政府として責任を持ってお示しできる成案を得た段階で、その点も含めて十分に説明を尽くさせていただきたいと考えております。

藤野委員 この点については、引き続き質問をしていきたいと思います。その犯罪のリストが出て、それが現実的に想定というのはそれぞれどういうことなのかとかですね。いずれにしましても、刑罰法規にかかわる重大な問題であります。この刑罰法にかかわる基本的な認識についても大臣にお聞きしたいと思っております。

 議論を具体的にするために一つの事例を紹介したいんですが、一九四二年から四五年、戦中ですけれども、治安維持法に違反したという罪でジャーナリストなど六十名近くが逮捕された事件がございます。横浜事件と言われる事件であります。

 これは、出版社の改造、中央公論、日本評論社の編集者、編集長などが捕まって、横浜で拷問され、そのうち四人が亡くなり、その後一人も亡くなったということで、横浜事件と言われるもので、戦中最大の冤罪事件と言われております。

 実はこれは、横浜といいますが、発端といいますか事件の生まれたところは富山県でありまして、私は北陸信越ブロック選出ですので、富山県は地元の一つであります。その一つ、朝日町というところで旅館をやっている、紋左という旅館があるんですね。そこにたまたま慰労として、編集者たちが、ジャーナリストが旅行に行っていた、そして写真を撮った。皆さんもやると思うんです、記念にと。そうしたら、その写真が何と、共産党再建準備会、共産党を再建する証拠だとされて、治安維持法で逮捕されるわけですね。拷問され、自白を強要され、死に至る方もいらっしゃった。まさに大冤罪事件なんですね。

 これは、その後、冤罪であることも決まりまして、ただ、裁判では免訴という非常に不当な形になったんですが、いずれにしろ、五十年以上前の事件でありますけれども、この横浜事件の犠牲者の御遺族の方は、いまだに賠償を求めて裁判で闘っていらっしゃいます。

 そして、今のは横浜事件ですけれども、これに限らず、やはり多くの自白等による冤罪、これによる国家賠償を求めるという闘いはずっとありまして、多くの方が国家賠償を求める立法措置を求めて闘っていらっしゃいます。

 大臣にお聞きしたいんですが、治安維持法の問題、治安維持法の被害というものは今も続いていると思うんですね。今も苦しんでいらっしゃる。そして、やむにやまれず裁判や、あるいは立法措置を求めていらっしゃる方がたくさんいる。大臣、こういう認識でよろしいでしょうか。

金田国務大臣 個別の事件にかかわる御質問でございますので、発言は、コメントは差し控えさせていただきたいと思います。

藤野委員 私は、横浜事件だけについて聞いているわけではありません。その御遺族の方ももちろん今も闘っていらっしゃいますが、それ以外にも、要するに、治安維持法のもとで理由なく逮捕、投獄され、自白を強要され、それを不当だということで国家賠償を求めることを初め、さまざまな方が今も苦しんでいる。多くの方が今も苦しんでいるという認識はあるのかということなんです、大臣。個別の事案ではありません。

金田国務大臣 個別にどういう事件があるかについては発言は差し控えさせていただきますが、しかしながら、冤罪があってはいけないという御指摘は、そのとおりだと思っております。

藤野委員 ちょっとお答えいただきたいんですが、要は、今も苦しんでいる、昔の話じゃないんだ、今の話なんだ、こういう認識があるかどうかということなんです。大臣、お願いします。

金田国務大臣 委員が御指摘のような訴訟があることについては、個別の訴訟の当事者のお立場についてコメントをすることは、やはり、訴訟への影響を考慮する立場からもお答えは差し控えたい、このように考えます。

藤野委員 これは訴訟だけじゃないんです。立法措置を求めているんです。私たちは求められているんです。国家賠償する特別措置をつくってくれという請願を毎年いただいているんです、大臣。

 ですから、私の質問の趣旨は、訴訟がどうとかそういうことではなくて、昔の話ではないんだ、今も続いている話なんだ、こういう認識が大臣にあるかどうかなんです。

 大臣、これは刑罰法規の根本にかかわる問題だと思われませんか。

金田国務大臣 繰り返しになりますが、やはり、個々の訴訟当事者のお立場についてコメントすることは、私からは差し控えさせていただきたいと思います。

藤野委員 法務大臣というのは、刑罰にかかわる法規も担当されるわけですね。九十年以上前にできた、治安維持法が施行されたのは一九二五年です。九十二年前にできたたった一つの法律が、それによっていまだに苦しんでいる方を多く生んでしまった。

 そういう一つの法律、刑罰にかかわる法律がここまで人の人生に影響を与えるんだということの重みを感じられないんですか、大臣。

金田国務大臣 先ほども申し上げましたが、冤罪があってはならないということは、私もそのように考えております。

 その上で、現在、議論の対象とされておられるのがテロ等準備罪のお話でございますので、この考え方を問われているという立場でお答えをもしさせていただけるのなら、戦前とは異なって、現在の捜査機関による捜査については、日本国憲法のもと、裁判所が、捜査段階においては厳格な令状審査を行って、また公判段階においては証拠を厳密に評価して事実認定を行う、有罪か否かを判断することによって捜査機関の恣意的運用を防ぐ制度が有効に機能しているというふうに私は考えております。

藤野委員 私たちは今、刑罰法規を変える、しかも、先ほど来指摘がありますように、刑法の大原則である罪刑法定主義や行為主義、これに深く関係する、危うくする法律をつくろうとしているわけですね。これがどれほど多くの人の人生に影響を与えるか。これは、私たち国会議員、とりわけ法務委員は、立場の違いを超えて、本当にこの重みを受けとめなければならないと思いますよ。

 その上で、大臣はまさにこの法律を、先ほど大臣自身がおっしゃいました、共謀罪にかかわる法案を議論しようとしている、したいと言っている。であれば、そういう大臣だからこそ、この重みを感じていただきたいと質問していたわけです。それに対して、重みが全く感じられない。大変残念だというふうに思います。

 改めて、この刑罰法規が持つ重み、人に与える重みについて全く真摯に答えようとしない金田大臣に法務大臣をやる資格はないと言わざるを得ないと思います。

 その上で、残った時間でもう一点お聞きしたいと思います。

 安倍総理は、予算委員会の質疑で、普通の団体が組織的犯罪集団に一変した例としてオウム真理教を挙げました。オウム真理教は、今、無差別大量殺人行為を行った団体の規制に関する法律、いわゆる、通称団体規制法という法律の対象になっていると思います。

 そこで、この団体規制法あるいは団体を規制する法律について、大臣の認識をお伺いしたいと思います。

 法務省が所管する団体規制法としては、破防法、そして今言った、オウム等を対象にしている団体規制法があると思います。大臣に概略をお聞きしたいんですが、破防法とか団体規制法というのは、どんな手順で団体を指定して規制を行うんでしょうか。

金田国務大臣 公安調査庁は、破壊活動防止法に基づきまして、暴力主義的破壊活動を行う危険性のある団体の調査を行いまして、規制の必要があると認められる場合には、団体の規制に関し適正な審査及び決定を行う機関である公安審査委員会に対しまして、その団体の活動制限や解散指定の請求を行います。

 また、無差別大量殺人行為を行った団体の規制に関する法律に基づいて、過去に無差別大量殺人行為を行って、現在も危険な要素を保持していると認められる団体について調査を行いますとともに、公安審査委員会に対し、観察処分または再発防止処分の請求を行います。また、観察処分に付された団体に対しましては、報告聴取、団体施設への立入検査等の規制措置を行います。

 以上です。

藤野委員 今御答弁いただいたとおりであります。

 つまり、破防法の場合は、まず団体についての調査があって、それを団体に通知して、団体からの弁明、いや、私は違うんだという弁明を聞いたりして、その上で審査が行われ、それが団体に当たるかどうかという決定が行われるということで、決定されたら、活動が制限されたり、解散指定されたりもするわけであります。

 オウム等の団体規制法の場合は、プロセスは大体同じなんですが、最後の処分の内容が、観察処分であったり、再発防止処分であったり、立入検査があったりという違いはあるわけですが、おおむね同じであります。

 大臣にお聞きしたいんですが、今度の共謀罪法案、テロ等準備罪法案でもいいんですが、こうした意味での団体規制とは違うものと理解してよろしいですか。

金田国務大臣 テロ等準備罪は、重大な犯罪の合意という行為に加えまして実行準備行為が行われたときに初めて処罰されるものとすることを検討中であります。

 したがいまして、テロ等準備罪は、行為を処罰の対象とするものであって、御指摘ございましたような団体規制を行うものではありません。

藤野委員 団体規制ではないということを確認いたしました。

 団体規制の場合は、まず、その団体が当該法律の予定する団体に当たるかどうかが問題になる。つまり、法適用の一番最初でその団体の性質が問題になるわけですね、その集団の性質。問題は、今回の法案はそれとは違うということであります。

 大臣、先ほど、総理もそうですけれども大臣も、ある普通の団体が組織的犯罪集団に一変する、こうおっしゃるわけでありますが、一変するという場合、この犯罪集団の一変するという判断は一体どこでやられるんでしょうか。どの時点でやられるんでしょうか。

金田国務大臣 具体的な事案において、ある団体が組織的犯罪集団に該当するか否かということは、当該事案の時点において、構成員の結合の目的が犯罪を実行することにあるか否かによって判断されるものであると考えております。

藤野委員 ですから、当該事案の時点ということなんですね。

 いわゆる団体規制の場合、一番初めです、事案が起きる前から団体がその対象になるかどうかが決まる。ここから調査が始まっていきます。しかし、共謀罪の場合はそこじゃないんです、まさに事案。ですから、団体の性質以前に、二、三人が話し合っていて、何かそれが犯罪っぽい、あるいは嫌疑を持たれるということになれば、そこから調査が始まるわけですね。

 大臣、大臣は二月二十二日の予算委員会等で、組織的犯罪集団に当たるかどうかは、具体的な事案の嫌疑が生じた時点で判断すると答弁されていますが、ここで言う嫌疑、疑い、これは犯罪集団に対する嫌疑ではありませんよね、だから。そういう理解でよろしいですか。事案に対する嫌疑ということでよろしいですか。

金田国務大臣 テロ等準備罪につきましては、一定の重大な犯罪の合意に加えまして実行の準備行為が行われたときに初めて処罰されるものとすることを検討中ではありますが、法案の成案を得ていない現時点では、どのような場合に嫌疑が認められるかについて詳細な説明をすることは困難であります。

 なお、捜査の開始時期は、個別具体的な事案において、嫌疑の内容、程度に応じて定まるものでありまして、一概には申し上げられませんで、この点におきましてもお答えは差し控えさせていただきたい、このように考えております。

藤野委員 いや、私が聞いたのは、先ほどの答弁で、当該事案の時点だとおっしゃいましたね、一変するかどうかというのは。事案の時点ですから、集団が生まれた時点じゃないわけです。事案が嫌疑の対象だということと私はイコールだと思うんですが。前者は当該事案とおっしゃいました。それを、具体的な嫌疑でいうと、それは事案の嫌疑ですねということを聞いたんです、集団ではありませんねということを聞いたんです。これはどうですか。

金田国務大臣 刑事訴訟法は、警察官が犯罪の嫌疑があると認めたときに捜査を行うものとしているものと考えております。

藤野委員 もう終わりますけれども、これは団体規制でないとおっしゃいました。ですから、その嫌疑というのは団体に対する嫌疑じゃないんですね。事案とおっしゃいました。事案に対する嫌疑なんです。

 ですから、やはり今回の法案は、二、三人、あるいは複数の人が話し合っているということをまさに捜査していく。まさに共謀罪だということを指摘し、今後も質問することを申し上げまして、終わります。

鈴木委員長 次に、松浪健太君。

松浪委員 日本維新の会の松浪健太であります。

 今回、質問の前にでありますけれども、私も、この法務委員会、きのうから審議を聞いておりまして、何かかみ合わないな。私自身もオブザーバーとして理事会にも参加しているんですけれども、きょうも質問通告がどうのと。どういうことなのかなというふうに聞いてみますと、さっきも事務方さんにも聞くと、民進党の皆さんは、今回、質問通告については、大臣の資質について、適格性についてということのみということであります。

 なかなか、通告というのは野党の戦略として、私も野党の端くれとして、一度はこういうこともあってもいいのかなとは思いますけれども、普通は挨拶をしたらこちらも挨拶で応える、これが人間の常識でありますけれども、やはり国会のルールとして、与党の皆さんも随分とお人よしだなとは思いますけれども、こうしたことは、ある程度の通告を一度出してそれをやりとりするというようなのがやはり国会の慣例として、法務委員会でもあり得べきかと思いますので、委員長にはこのことを、また後刻お願いをいたしたいと思います。

 では、質問に入らせていただきます。

 きょうは、私の方も、共謀罪についてはもう大臣もおなかがいっぱいかと思いますので、これについては触れませんけれども、先般、私は、さきの二月十四日の予算委員会でハーグ条約についての質問をさせていただいたわけであります。

 御承知のとおり、民法七百六十六条が改正をされて時間も経過をしているわけであります。以前、継続性の原則とか、こういったものを論点とした民法七百六十六条の改正時は、私は法務委員ではありませんでしたけれども、自民党にも民主党にも、そして、当時は恐らく無所属だったと思いますけれども、城内先生なんかにも、たくさんの先生方に御質問いただいて、協力をしてこれがなされたわけであります。

 しかしながら、子を連れ去られた親が、特に男性の場合はDVの嫌疑をかけられて、屈辱のうちに、非常につらい思いをして自殺をされるというような例も、当時、朝日新聞の記者の方がそういう自殺をされたというのも、私がこの活動にかかわるきっかけだったわけであります。

 二月十四日も、私の地元の支持者の方でもこうした方がいらっしゃいまして、その方のよく見ているSNSで、私の質問の直前にも、この問題で同じ悩みを持っている方が、本当に親しい仲間が、明るい人だったけれども、この問題に耐え切れずについに自殺をなさったというようなことも予算委員会のときには取り上げさせていただきました。

 また、これは国際問題だ。先般は、ゴールドマン法という法案をアメリカがつくったという事実、これは外務省の方も本当に余り内容を精査していなかったので、質問のときに訳もつくってくださって、解釈もつくってくださったんですけれども、これについては、国賓の行き来とか、こういったものもとめるとか、安全保障上の措置を講じるとか、かなり、人権問題としては非常に深刻な問題であります。

 さらには、沖縄選出のある議員さんがおっしゃっていましたけれども、アメリカに行ったときに拉致問題を訴えた、日米地位協定を訴えた、日本は何を言っているんだ、こうした問題があるじゃないかということを逆に向こうから反論をされて、結局は日米地位協定を覆すには現在の日本の法の運用じゃ限界があるんだよなんということを沖縄の先生から私も先般伺って、大変この問題、やはり私たちはしっかりと対応していかなければならないと思うわけであります。

 こうした法律の問題に入る前に、なぜ子の連れ去り等が根本的におかしいのかということを、子供の心理という面からまずは取り上げさせていただきたいと思います。

 最近は非常に、人間の脳に関する知見というか、最近本屋さんに行くと、脳に関する本なんかが随分並んでいるんですね。例えば、男と女の脳は、右脳と左脳が、脳梁の太さが違うので右脳と左脳のコンビネーションが違う、だから男は地図が読める、バランスが悪いから立体視ができるんだとか、サイコパスの方は、例えば、脳の中の扁桃体という恐怖を感じる部分の働きが弱い、さらに、内側、前頭皮質とつながりが弱いから、いわゆる良心とか、衝動的な役割については、こうしたことが弱いからサイコパスになる。その分、サイコパスの方は、この社会でも、特に政治家、弁護士、こうしたところでは果断な決断ができるとか、外科医さんとかもこうした形質の方が多いと。

 脳の形質というのは、こうしたさまざまな役割がわかってきて、国民の皆さんにも、今、子供の脳とか、大人の脳でもいろいろな種類があるというのは大分浸透してきていると思うんですね。

 そこで、先般も親子断絶防止議連なんかでも出ていましたけれども、子供の場合は、脳の組織が入れかわりが早いから幼児性健忘症というものがあるということであります。子供は物を忘れやすいと。

 それに加えて、きょうはちょっと、私の四枚目の資料でありますけれども、これを見ていただきたいんですが、この四番目の資料、これは藤田保健衛生大学の宮川先生のおつくりになった資料ですけれども、ウェイドさんという学者の記憶植えつけ実験というものが出されています。

 これについては、例えば、四枚写真を用意して、三枚はその人の若いころの写真、小さいころの写真、四から八歳のときの写真、一枚は、この右にあるように、子供のころの写真を、気球に乗ったことはないんですけれども、気球に乗っていたというようなのを入れる。この四つのストーリーを、第二段階で、あのときこうだったね、一はこう、二はこう、三はこう、四はこうと、気球に乗ったときもどうだったかというようなことをお話ししていただく。イメージをして話していただくらしいですね。イメージを話していただいて、この被験者は大体、ここにあるように十八から二十八歳ですけれども、ではこれはどうだったかというと、結果は、ここにあるのは、十八から二十八というともう大人ですけれども、こうした人たちは、気球に乗ったことはないのに、ああ、気球に乗ったのを思い出したよ、気球に乗ったときはこうだったねということを説明し出した。

 いかに子供のころの記憶というものについてはあやふやになるのか。これがいわゆる幼児であれば、にせ記憶というのは重々に刷り込みが非常に可能だということであります。

 こうしたことを、この親子断絶の問題からいうと、期間があいてしまうと、非常に、この親子の問題については子供が刷り込みをされる。もし離された父親だったら、父親にひどいことをされたんだとか。

 さらに言えば、ハイダーの認知的バランス理論というのがあるんですけれども、両方のバランスをとるようになるわけですけれども、親が離れていると、やはり片親と、近しい方に近づいていくという心理も働くというような心理学的知見というものがある。

 こうしたことがいろいろ今出ているわけでありまして、まずもって伺いたいのは、これからこういうものを扱う調査官それから裁判官においても、こういう裁判にかかわる皆さんは、こうしたことについて最新の知見を学んだ方がなされるべきであると私は非常に思いますけれども、現在の仕組みはどうなっているのか伺いたいと思います。

村田最高裁判所長官代理者 お答え申し上げます。

 委員御指摘のとおり、子をめぐる家族間の紛争におきましては、子の特性を理解し、これに応じた判断を行う必要があるものというふうに理解をしております。

 裁判官といたしましては、個別の事件を処理するに当たりまして、子の特性等を適切に把握、評価するために必要な専門的な知見及び技法を有する家庭裁判所調査官による調査を活用しておりますが、これに加えまして、裁判官みずからも子の特性に関する知見を得ることも重要であるというふうに認識をしております。

 このような観点から、裁判所におきましては、これまでも、家庭裁判所調査官の研修を充実させることはもちろんでございますが、家事事件を担当する裁判官を対象にいたしまして研修を行ってきておりまして、精神医学の専門家でありますとか心理学等の専門家をお招きして御講演をいただいたり、これを踏まえた共同研究を実施したりするといったことをしております。

 裁判所といたしましては、子をめぐる紛争を担当する裁判官その他の職員が適切な知見を得ることができるよう、一層の研修の充実に努めてまいりたいというふうに考えております。

松浪委員 具体的になんですけれども、今申し上げた幼児性健忘とにせ記憶の関係とか、それから先ほど申し上げたハイダーの認知的バランス理論なんというものも、やはりそれは具体的には教えられているんですか。

村田最高裁判所長官代理者 お答え申し上げます。

 今、手元に詳細な、御講演いただいた内容の資料がございませんので、その理論について研究を深めたかということは直ちにはお答えしかねるんですけれども、司法精神医学ですとか教育学それから臨床心理学、学校心理学、こういったさまざまな、関連する分野の大学の教授の方あるいは医師の方をお招きして御講演をいただいておりますので、御指摘のありましたようなものについても触れられていることがあろうかというふうには思います。

松浪委員 短くでいいんですけれども、こうした最新の知見を、親子断絶の問題とかこうしたものにかかわる方には特にこれから研修をしていただきたいと思いますけれども、それについて一言でお願いします。

村田最高裁判所長官代理者 先ほども答弁いたしましたとおり、研修の充実につきましては、裁判官それから家庭裁判所調査官につきましても一層の充実を図っていきたいというふうに思っております。

松浪委員 それでは、本題というか、今回のハーグ条約にかかわる問題点について触れていきたいと思いますけれども、継続性の原則というのが非常にネックになって、ハーグ条約においては連れ去ったら現状に戻さないといけないというのがあるわけでありますけれども、なかなか日本の方では、民法七百六十六条を改正したのに、その運用についてはまだまだ問題がある。

 今まではアメリカだけが問題でしたけれども、私は、先般の予算委員会では、イタリアでも大手紙が大きくこれを報道しているというような現状もありまして、やはり国際問題としてこれ以上広がりを見せる前に、我々は拉致問題も抱えているわけでありますから、ここをしっかりと対応しないといけないと思いますけれども、まずもって、端的にこの継続性の原則というのを、もう一度大臣に定義を伺いたいと思います。

金田国務大臣 松浪委員の御指摘、御質問でございます。

 御指摘の継続性の原則とは、裁判所が親権者や監護者の指定をする際の基準として、親子の心理的な結びつきを重視し、それまでの監護状態を継続させることが子の利益にかなうという考え方を指しているものと承知をしております。

松浪委員 しかし、これが非常にネックになってこうした連れ去りの問題があるということでありますので、先ほどからの、民法七百六十六条の改正時に参議院法務委員会で、当時は江田法務大臣ですか、御答弁されているのは非常にいい答弁だと思うんですけれども、「継続性の原則があるから、だから連れ去った方が得だと、そういうことがあってはいけない」というような、これは平成二十三年五月二十六日の参議院法務委員会の答弁でありますけれども、これについては金田大臣も全くこの答弁を踏襲されているということでよろしいわけですね。

金田国務大臣 両親が離婚する際の親権者の指定につきましては、どちらの親を親権者とするのが子の利益に資するかということを最も優先して考慮する、そして判断がされているものと考えておるわけであります。

 したがいまして、私は、具体的には、それまで主としてその子を監護してきた者は誰かということに加えて、父母の側の事情として、それぞれの養育能力、子に対する愛情、監護に対する熱意、居住環境、そして面会交流に対する姿勢、監護補助者の有無及びその態勢というんですか、そういうものを……(松浪委員「大臣、それは聞いていないです。済みません、その法務委員会での平成二十三年の答弁を踏襲していらっしゃるのか、それだけです」と呼ぶ)

鈴木委員長 許可を求めて発言してください。

金田国務大臣 その点につきましては、私は、今申し上げた中の……(松浪委員「いや、答弁、今僕が申し上げたのを踏襲しているか」と呼ぶ)

鈴木委員長 許可を求めて発言してください。

 大臣、続けてください。

金田国務大臣 私がでしょう。(松浪委員「はい」と呼ぶ)私が踏襲している……(松浪委員「踏襲していると一言でよろしいです」と呼ぶ)はい。

 二十三年の民法等の一部改正に際しての考え方について、今申し上げた形になっているわけですけれども、私は、別居をする際に子供を連れ去った方が親権者の指定において有利になるということには直ちにはならないのではないかなという理解も持っているつもりであります。

松浪委員 これにこの時間を費やすとはちょっと思わなかったんですけれども、継続性の原則がある、つまり、自分が連れ去ったということが、いきなり連れ去って、もとのところへ戻すというのがハーグ条約の趣旨でありますので、僕は非常にこの当時の法務大臣答弁、明快だなと思って挙げたわけですけれども。

 もう大臣、一言でよろしいので、この連れ去り得、継続性の原則があるからといって、連れ去った方が得だ、そういうことがあってはならないとおっしゃっているので、そのスタンスは変わりませんね。もう本当にイエス・オア・ノーでよろしいので、当時の大臣答弁を踏襲するとおっしゃっていただければそれでよろしいです。

金田国務大臣 細かくいろいろ申し上げて、時間を費やしてしまいました。イエスで、もちろんであります。

松浪委員 どうもありがとうございます。

 これは最高裁についても言えるんですけれども、当時、継続性の原則を適用すべきではないという議員の指摘に対して、最高裁の家庭局長が、「法改正等が行われた場合、新たな定められた法律の趣旨にのっとった法の解釈、適用あるいは実務の運用」がなされるべきであると答弁をされているわけですけれども、当時家庭局長が答えているんですけれども、当然最高裁のスタンスもそのとおりであるということを確認したいと思います。

村田最高裁判所長官代理者 お答え申し上げます。

 親権者の指定等の判断は、事案に応じて、裁判官が個別具体的な事情のもとで判断すべき事柄ではございますけれども、民法七百六十六条で「子の利益を最も優先して考慮しなければならない。」とされていることを踏まえまして、一般的には、子の福祉の観点からさまざまな事情を総合考慮して判断することになると思っております。

 委員御指摘の、平成二十三年民法等の一部改正の際の、当時の最高裁家庭局長の答弁もそういった趣旨のことを答弁しておりまして、それについては変わりがないものというふうに考えております。

松浪委員 この当時の答弁、私は非常にいい答弁だと思うんですけれども、これがなかなか裁判結果に反映をされていないのではないかなというふうに感じております。

 特に、一月二十六日に東京高裁で、離婚訴訟の高裁判決で、これは千葉の松戸で画期的な判断が出ていたわけですけれども、結局高裁がひっくり返した。そのときにも報道が、産経新聞は、同居の親を優先する従来の継続性の原則に基づいて親権者を認めたとか、日経では、弁護士さんの批判として、従来どおり継続性だけを重視した判決というようなことが書かれているということでありまして、各紙、継続性の重視がまだ過度であるということを書いているわけであります。

 私は、高裁の判決といえど、やはり法の範囲には服するべきだというふうには当然思いますけれども、高裁判決、民法七百六十六条を改正したにもかかわらず、いまだにハーグ条約の趣旨等と、我が国も批准しているわけですけれども、これと食い違っていると私は感じるんですけれども、大臣、いかがですか。

金田国務大臣 御指摘ございましたが、別居する際に子供を連れ去った方が親権者の指定において有利になるということにはならないというふうに私も理解をしたいと思っております。

松浪委員 ありがとうございました。

 これから、やはり私どもは世界の潮流としっかりと流れを合わせてやらないと、国際問題にこれ以上発展するようなことがあっては国益にはかなわないし、何よりも、冒頭に挙げました自殺をされた方々の思いに報いるためにも、我々こうしたことはしっかりとやっていかなきゃいけないと私は思います。

 では、次の問いに移ります。

 これも先般の予算委員会で私が取り上げました、内閣府が行っている講演事業においてでありますけれども、さきの家裁の判決を掲げました、この家裁判決を何とか覆そうということで署名運動をされている人たちが、NPO法人が、内閣府が委託をしている事業において署名活動を行った。当初は、役所の方は、これは時間が、講演が終わった後だからいいんだというようなことをおっしゃっていましたけれども、先般の予算委員会では、加藤大臣はやはりそこはしっかりと覆されて、これは望ましくないことであるということもおっしゃっていただきました。

 この全貌は、私が二枚目の資料につけました。一枚目が今の事業、二枚目がその事業について書かれた、もともと私もこの記事でこうした状況を知ったわけでありますけれども、その記事をつけさせていただいた。

 それから、そのとき、私の質問を用意するに当たって、内閣府が調査を進めておりまして、ようやく先週の金曜日に紙で出てきたんですけれども、この記事に関しては、ここに書かれたとおり、「昨年十二月二十二日に」云々、本当に三行しかないんですけれども、「再発防止策を講ずる。」とあるんですけれども、どのような再発防止策を講ずるわけでありますか。

石原副大臣 松浪委員にお答えいたします。

 済みません、再発防止策の前に、ちょっと、内閣府の書面でやった説明が少し短かったものですから、答弁をさせていただきたいと思います。

 お尋ねの事実確認については、当該研修の講師、当該研修会事務局の岩手県の民間団体の方及び十四人の受講者の全員に対して事実を確認した結果、当該研修会の事務局の方が研修会終了後に会場に残っていた三人の参加者に対し署名用紙等を配ったことが判明いたしました。

 研修会の終了後とはいえ、研修とは無関係の活動が行われたということは決して望ましいことではないというふうに考えまして、当事者に対し厳重に注意をしたところであります。

 そして、再発防止策に努めてまいりますというふうに書面でお答えさせていただきましたが、再発防止策につきましては、具体的に、こういうセミナーをやるような形のときに、契約に当たり、委託事業の受注者や再委託の業務を定める仕様書の中に事業の目的以外の行為はしてはならない旨を明記するなど、事業の適正な遂行に努めてまいりたいというふうに考えているところであります。

松浪委員 こう聞くと、普通にああそうかなとなるんですけれども、これは三行の短い文章なんですけれども、「同研修会を実施した岩手県内の団体の者が署名用紙等を配った。」、括弧して「(講師が署名活動を実施したものではなかった。)」と書いているんですけれども、この講師が所属している団体がもともとこの署名活動を行っていて、その割には、岩手県内の団体の者が勝手に配ったんですよなんていうことを書かれているんですよ。

 僕がこれを最初に内閣府に調査をお願いして、途中で聞いていた話は、最初、この講師に聞くだけ聞いてくれと言ったら、講師にというか調査してくれと言ったら、この講師は、そんなこと知らないよと言われて、そんな事実はないということを言われたんです。ですから、私は、この出版社を通じて、本当にそういう人はいるのか、裏をとっているんですね、連絡もつくんですね、そうですよということをもう一回内閣府にお伝えしたら、では今度は全員調査しますというふうになって、まあ本当に三人かどうかわかりませんけれども、それはお答えになったのであればそうだと思いますけれども、そういうふうになった。

 でも、少なくとも、この講師、自分の団体が全国的に行っているものを、そこで勝手にまかれたんだ、それは知らなかったというのは、私としては、本当に、その場でやって、そんなことあり得るのかなと思うんですけれども、これについて、ここだけじゃなくてほかのところについても、それは調査されるんですか、されないんですか。

大塚政府参考人 お答えいたします。

 今回の件につきましては、先ほど副大臣から御答弁のとおり、関係者に調査をいたしまして、その結果の、先ほどの仕様書等々に記載をするという方向での再発防止策でございます。

 まずは、この再発防止策の運用をきちっと徹底いたしまして、またその後何か個別の事態が生じれば、その段階で、当然この仕様書にのっとった対応をきちんといたしたいというふうに考えております。

松浪委員 どうしてこういうことをやるかといいますと、この案件だけではなくて、特に、女性団体にどういうふうにお金が回っているかということもレクのときに聞きましたけれども、国としては、こういうときには厚生労働省の方がかかわってくるわけですけれども、何ら指針を決めずに、この団体に限らずですけれども、女性団体には、駆け込んだ人たちというのがいて、駆け込んだ人たちの数に応じてお金が出るというような仕組みになっていて、数がふえた方が当然収入もふえるというような仕組みになっているわけであります。

 こうしたことについて、例えばDVシェルターにDV被害を訴える者を収容する場合、政府はその認定基準とか認定手法とかをどのように定めているのか伺います。

吉本政府参考人 お答え申し上げます。

 DV被害を訴える者については各都道府県の婦人相談所が必要に応じて一時保護を行うということになっておりまして、その判断については各都道府県における婦人相談所が行うということで、みずから保護を行う場合もあれば、おっしゃるように、委託をして、民間シェルターにおいて保護をするというケースもございます。

 具体的にどのような場合に一時保護を行うかにつきましては、適当な寄宿先がなく、その者に被害が及ぶことを防ぐために緊急に保護することが必要であると認められる場合、また、その者に対する最終的な措置がとられるまでに一定期間の入所が必要であると認められる場合、一時保護所での短期間の生活指導、自立に向けた援助が有効であると認められる場合、心身の健康回復が必要であると認められる場合に行うものというふうにしておりまして、心身の健康状態、配偶者からの追跡のおそれ、また経済状態等を総合的に勘案するということにしているところでございます。

松浪委員 今るるありましたけれども、一言で言えば、長い答弁をいただきましたけれども、国は何も決めていませんよ、都道府県に任せていますよということだけであります。

 そうしたときに、やはり、私はDVはあってはならないと思いますよ、本当にDVはあってはならないんですけれども、逆に、こうしたものを隠れみのにして、結局、悪質な弁護士さんとかこういう団体の方がうそを言って、私のおつき合いしている方々はそういううそに、私は昔、新聞記者をやっていまして、痴漢冤罪ネットワークなんというのも取材したことがあるんですけれども、痴漢冤罪なんというのは、もう本当にこれは立証が難しい。さらにDVの場合は、痴漢冤罪みたいなパターンに加えて、それを後ろで知恵をつけるような人たちがいるというところで、私は二重に、痴漢冤罪よりも、一応DV冤罪と言いますけれども、冤罪じゃなければDV冤罪的ケースと言いますけれども、こうしたケースにおいて、やはり国としても各都道府県に、どうした対応でこうした冤罪的なケースが起きないのかという指導は必要だと思いますけれども、いかがですか。何かそういうことをやっていますか。

吉本政府参考人 先ほど申し上げましたところの具体的な考え方につきましては、もちろん、各都道府県に対しまして、それを踏まえて実施するようにということで周知をしているところでございます。

 さらに申し上げますと、婦人相談所におけるガイドラインというものもございまして、より細かな運用について指針的なものを国といたしても定めておりまして、そこにおきましては、本人との面談で得られた情報の確認が必要な点がある、その他不明な点については、その御本人のみならず、本人の了解を得て関係機関に照会をするなどする、また、それまでの経緯など情報を得ることが必要な場合もあるといったようなことも示して、その判断の参考としてもらうようなことをしているところでございます。

松浪委員 きょうは、まあ、縦割りな話だとは思いますけれども、法務委員会でこれをお願いするわけにはいきませんけれども、この議論は厚生労働省の方で大臣にもしっかりとお伝えをいただいて、これについてはしっかりと対応を講じていただきたいと思うわけであります。

 また、法務省に伺いますけれども、このDV認定の手続について、また、こういう告発する女性や女性団体が故意に冤罪を演出するような懸念について、きょう僕が取り上げた団体のことを言っているわけじゃないですよ。こうしたことが非常に皆さんの声として強いものですから、法務省についてはこういう懸念に対応いただきたいというふうに思うんですけれども、いかがですか。

小川政府参考人 お答えいたします。

 まず、御指摘いただきましたとおり、裁判手続の中で事実に反する虚偽の主張が認められてしまうことがないように、裁判所による事実認定の正確性が確保される必要があるというふうに認識しております。

 そのような観点から、裁判手続の中では、法律上、当事者双方に対して主張する機会、あるいは主張を裏づける資料を提出する機会が付与されているほか、裁判所によります事実認定においても証拠調べの結果等に基づいてするものとされておりまして、そういう意味では、裁判所による事実認定の正確性を確保する制度が整備されているところだというふうに理解しております。

 いずれにいたしましても、個別の事案における判断については、各裁判所において、ただいま申し上げましたような制度を適切に運用した上で適正な事実認定がされていくものと承知しております。

松浪委員 もう時間もなくなりましたので最後の質問とさせていただきますけれども、先ほどのような女性団体等がなぜこうした極端なところに走るかというと、やはりこうした団体をやっていらっしゃる方に、非常に、例えば慰安婦問題とかこういうもので極端な活動をされている団体に深くかかわっていらっしゃる皆さんとか、そういった皆さんが多く入っていらっしゃるというようなことをよく聞くわけであります。

 ですから、今回、男女共同参画局の事業についても、副大臣にお願いをしたいのは、こうした背景についての調査というようなものもまたお願いしたいわけでありますけれども、いかがですか。

石原副大臣 鋭意検討させていただきます。

松浪委員 前向きに検討をお願いして、質問を終わります。

鈴木委員長 次回は、公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。

    午前十一時五十五分散会


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