衆議院

メインへスキップ



第6号 平成29年3月24日(金曜日)

会議録本文へ
平成二十九年三月二十四日(金曜日)

    午前九時三十分開議

 出席委員

   委員長 鈴木 淳司君

   理事 今野 智博君 理事 土屋 正忠君

   理事 平口  洋君 理事 古川 禎久君

   理事 宮崎 政久君 理事 井出 庸生君

   理事 逢坂 誠二君 理事 國重  徹君

      赤澤 亮正君    安藤  裕君

      井野 俊郎君    奥野 信亮君

      門  博文君    菅家 一郎君

      城内  実君    鈴木 貴子君

      辻  清人君    野中  厚君

      藤原  崇君    古田 圭一君

      宮川 典子君    宮路 拓馬君

      山田 賢司君    吉野 正芳君

      若狭  勝君    枝野 幸男君

      階   猛君    山尾志桜里君

      大口 善徳君    吉田 宣弘君

      畑野 君枝君    藤野 保史君

      松浪 健太君    上西小百合君

    …………………………………

   法務大臣政務官      井野 俊郎君

   参考人

   (日本大学大学院法務研究科教授)         角田 正紀君

   参考人

   (弁護士)        郷原 信郎君

   参考人

   (全司法労働組合中央執行委員長)         中矢 正晴君

   法務委員会専門員     齋藤 育子君

    ―――――――――――――

三月二十三日

 国籍選択制度の廃止に関する請願(佐々木隆博君紹介)(第四六八号)

 同(高木美智代君紹介)(第四六九号)

 同(辻元清美君紹介)(第四七〇号)

 同(西村智奈美君紹介)(第四七一号)

 同(中川正春君紹介)(第五〇二号)

 同(近藤昭一君紹介)(第五四四号)

 同(横路孝弘君紹介)(第五六〇号)

 同(小川淳也君紹介)(第五八七号)

 もともと日本国籍を持っている人が日本国籍を自動的に喪失しないよう求めることに関する請願(佐々木隆博君紹介)(第四七二号)

 同(高木美智代君紹介)(第四七三号)

 同(辻元清美君紹介)(第四七四号)

 同(西村智奈美君紹介)(第四七五号)

 同(中川正春君紹介)(第五〇三号)

 同(近藤昭一君紹介)(第五四五号)

 同(横路孝弘君紹介)(第五六一号)

 同(小川淳也君紹介)(第五八八号)

 共謀罪(テロ準備罪)法案の国会提出反対に関する請願(大平喜信君紹介)(第四七九号)

 同(穀田恵二君紹介)(第四八〇号)

 同(真島省三君紹介)(第四八一号)

 複国籍の容認に関する請願(中川正春君紹介)(第五〇一号)

 共謀罪創設反対に関する請願(大平喜信君紹介)(第五五九号)

は本委員会に付託された。

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 裁判所職員定員法の一部を改正する法律案(内閣提出第四号)

 裁判所法の一部を改正する法律案(内閣提出第五号)


このページのトップに戻る

     ――――◇―――――

鈴木委員長 これより会議を開きます。

 内閣提出、裁判所職員定員法の一部を改正する法律案及び裁判所法の一部を改正する法律案の両案を議題といたします。

 本日は、両案審査のため、参考人として、日本大学大学院法務研究科教授角田正紀君、弁護士郷原信郎君及び全司法労働組合中央執行委員長中矢正晴君、以上三名の方々に御出席をいただいております。

 この際、参考人各位に委員会を代表しまして一言御挨拶を申し上げます。

 本日は、御多忙の中、御出席賜りまして、まことにありがとうございます。裁判所職員定員法改正案及び裁判所法改正案につきまして、それぞれのお立場から忌憚のない御意見を賜れれば幸いに存じます。

 次に、議事の順序について申し上げます。

 まず、角田参考人、郷原参考人、中矢参考人の順に、それぞれ十五分程度御意見をお述べいただき、その後、委員の質疑に対してお答えをいただきたいと存じます。

 なお、御発言の際はその都度委員長の許可を得て発言していただくようお願いいたします。また、参考人から委員に対して質疑をすることはできないことになっておりますので、御了承願います。

 それでは、まず角田参考人にお願いいたします。

角田参考人 おはようございます。日本大学法科大学院で教員をしております角田と申します。

 私がきょう、こういう意見を申し述べる機会を与えていただいたのは、ふだんから関心のある事項だということもあって、まずは感謝申し上げます。

 きょうの意見の前提ですけれども、私は、かつて司法研修所で教官職を四年務めたことがありまして、司法修習あるいは修習生の実情について接していたということが一つございますし、現在は法科大学院で若い人たちの教育に携わっておりますので、学生たちあるいは司法試験、こういったものの実情について、日々その中に身を置いて仕事をしている、こういうことで、それを踏まえて意見を述べさせていただきたい、こういうふうに思います。

 早速ですけれども、今回の改正案、これは裁判所法の一部を改正する法律案の方ですけれども、こちらの内容を見ますと、要するに肝は、司法修習生に対して月額で十三万五千円の給付金を支給する、こういう制度を新設する、そして、一定の要件のもとだと思いますが、住居費用あるいは引っ越し、移転の費用、これについても手当てをします、そして、現行の貸与制も貸与額を見直した上で存続させます、二本立てでいきます、こういう内容になっております。

 これに対する私の意見は、これはもう強く賛成ということであります。

 その理由等について、少し背景も含めて広げてお話し申し上げたいと思いますけれども、出発点は、法曹養成制度がかなり危機的な状況にあるのではないか、こういう認識を持っておりまして、これについて認識を深めていただければありがたいな、こういうふうに思います。

 客観的な数字ですので、あらかじめお配りしてあります資料に数字をピックアップしてありますけれども、本年の、これは五月に実施されますけれども、司法試験の出願者数、これは法務省発表の、もちろん本年の分は速報値ですけれども、六千七百十六人ということであります。六千七百十六人という数字は、これはかなり衝撃的な数字であります。

 経年的にちょっとこれを見ていきますと、平成十八年度、約十年前ですね、法科大学院の修了生が、第一期ですが、初めて新司法試験を受験した年であります。この年が、二千百三十七人が新司法試験、しばらく旧試験を併存しましたので、これが三万五千七百八十二人の受験者で、合わせますと約三万八千人の出願者がおりました。ここからちょっと三年ほどさかのぼって平成十五年を見てみますと、出願者は五万人を超えているという数字であります。

 私は、昭和五十一年の司法試験に運よく合格した三十一期ということなんですけれども、当時、大体四万人から五万人の受験者で、前後、みんなそうだったと思います。つまり、四万人から五万人の若い人を中心として、法律家を目指して勉強して、試験を突破して法律家に育っていく、こういう循環があったと思います。

 これが、新司法試験になってからの数字、ちょっと簡単に紹介しますけれども、平成二十二年から二十四年、これは一万一千人台で推移していました。受験資格をロースクールの修了ということにかけたために、受験者がある程度減るのは、これはもう当然のことで、一万一千人台で推移していればそんなに問題がないと個人的には思いますけれども、これが平成二十五年には一万人ぎりぎりになり、平成二十六年には一万人を切って九千人台になり、二十七年、おととしですが、九千人も割り込む寸前の九千七十二人という数字になり、二十八年、これは去年ですけれども、七千六百四十四人と激減して、そしてことしの六千人台。ですから、本年の数字、これは下げどまったということであればまだしも、この推移を見ると、決して下げどまったのじゃないんじゃないかという懸念を一線の法科大学院の教員は持っております。

 法曹離れの原因については、いろいろ理由はあると思いますけれども、主たる原因は明らかに、一つは学生の経済的負担が重過ぎること、それから、当初、制度設計で言われていた法科大学院の合格率とちょっと違う、合格率が非常に低迷しているということ、この二点が非常に大きな理由であることはもう間違いないというふうに思われます。

 合格率の低迷の問題も非常に大きい問題なんですけれども、ただ、そこまで踏み込む時間はありませんので、きょうの法案との関連で、一の問題に関して絞って申し上げます。

 第一線で法科大学院の学生と接していて、やはり意欲もあるし、ある程度勉強すれば法律家になっていくだけの能力があるのではないかと思われる学生が経済的な理由で途中で退学をしていくという例が、これは毎年あります。恐らく日大だけではなくて、どの法科大学院でもあるはずだろうと思います。

 これは、授業料だけでどうしても百万という数字ですので、御承知のとおり、既修であれば二年、未修であれば三年、未修生であれば授業料だけで三百万の出費で、生活費だとか教科書の費用だとかそういったものを考えていくと、数百万の借金をとにかく法科大学院の修了の時点でみんな負う。貸与制というのは、ひとつ国家財政のことを考えたら合理性が全くないわけではないと私も思いますけれども、しかし、仮に現行のように二十万を毎月借りて返していくということだと、単純計算で二百五十万の借金が司法修習生の時代にふえる、こういうことです。恐らく私よりは郷原参考人の方が詳しいのでそういう話に触れられると思いますけれども、ですから、みんな、弁護士さんの多くが、まあ例外はあっても、数百万の借金を負ってスタートする。

 極端な事例になると、若い法律家同士の、判事補さんと弁護士さんの御夫婦で、二人分合わせると一千万近い借金を抱えてスタートする。やはりこれはちょっと変だと思います。我々の世代が若い世代に責任を余り果たしていないんじゃないかという感想をどうしても持たざるを得ないというふうに思います。

 これについて、法科大学院の方もいろいろ努力はしているわけですけれども、しかし、今回の改正が、この過重な経済的な負担の問題について解決策として大きな有効性を持っていくのは、これはもう間違いないと思います。客観的なことだけでなくて、多分、これから法曹を目指そうという若い人に、意欲というか気持ちの面でも非常に応援になるというような効果も恐らくあるのだろうというふうに思います。

 ただ、ここまで問題状況が、さっき申し上げたぐらい深刻なものになっているとすると、この手当てだけで十分かというと、それは、なかなかそういう言い方は難しいのではないかという気もしておりますので、後でちょっと触れますけれども、やはり何が必要かということをさらに検討して、必要な手当てがあれば、それを手を打っていくということが求められているのではないかということを申し添えたいというふうに思います。

 そして、これに関連して、ちょっと違う切り口の話ですけれども、ただ、一方で、国民の税金で法律家を育てる、こういうことになりますので、国民の方の納得を得る努力がやはり必要なのではないかという感じもいたします。要するに、長い目で見ると、税金を投入することに合理性を国民の多くが感じてもらえるということで循環していく、そういう話だろうということですけれども。

 抽象的な話だけしていてもあれですので、具体的な話をちょっと、一つだけエピソードを申し上げます。

 裁判官時代の終盤、順番というようなこともあるのかもしれませんけれども、新潟地方裁判所の所長職を、平成二十三年、要するに東日本大震災のあった年ですけれども、務めておりました。そのときに経験したことは、東日本大震災あるいは原発事故があって、新潟の地理的なものから、福島県等からの避難者が物すごく多くて、新潟は、中越地震ですとか新潟地震ですとか、非常に大きい地震に見舞われることの多い地域で、受け入れに積極的で、迅速にやられていました。

 しかし、短期間に一万人単位の避難者を受け入れたのはいいんだけれども、みんないろいろな問題を抱えていて、それぞれの分野で努力をしてもらうわけですけれども、法律的な問題についての需要もかなり高かったんですね。例えば、避難してきた土地だとか家の権利関係をめぐる問題ですとか、あるいは補償だとか賠償の問題がどうなるかとか、当面の法的な問題。感銘を受けたのが、新潟県弁護士会が本当に迅速に、全弁護士会を挙げて対応していただいたのを見て、やはり敬意を感じたところであります。

 ただ、それが、ほとんど反射的に弁護士会、弁護士さんたちがそういう動き、活動できる背景というか基礎には、やはり税金で自分たちが育ててもらっている、そういうことがやはり基礎にあって、特に余り難しいことを考えなくてもそういう動きに出るということがやはりあるんじゃないかと私なんかは思うんですね。これを、自己責任で、自分の費用で全部勉強して、自分の力で法律家になりなさいということだけを徹底していくシステムで、そういう敬意を感じるような公的な活動、それがどこまで維持できるのか、やはりそれは疑問があると思います。

 別にその例だけでなくて、一般的な、かつての国選弁護なんか、私は刑事裁判官の出身ですけれども、ほとんどもう手弁当で国選弁護の難件を引き受けてくれる弁護士さんが全然途切れないわけですね。それもやはり税金で育てられたということの基礎があればこそというふうに思って、要するに、循環じゃないか。だから、長い目で見ていく必要があるだろうということを申し上げたいと思います。

 それともう一つ。課題等の関係で、さっきもちょっと触れましたけれども、単発の制度、手当てだけでなくて、法律家を目指す若い人たちの立場で、長いスパンで、法学部時代から含めて、奨学金なんかの問題も含めて、どういう支援が求められているのかという需要を正確に把握して、それに対応していく手当てが必要であろうというふうに思います。

 なお、誤解がないようにということで付言しますけれども、国民の納得を得る努力というのは、何か特に立法府にこういうことをお願いしたいということじゃなくて、制度とか法律でもってこうしてくれという話ではなくて、恐らく司法研修所での教育とか、あるいは、多くの人は弁護士になっていく割合が非常に高いわけなので、弁護士会での若手の弁護士さんに対する研修を含めた働きかけだとか、そういったところに大きな役割があるのではないか、そういうことであります。

 時間の制約がありますので、この程度にいたします。

 ただ、最後に一点だけ、裁判所の定員法の関係について一言だけ触れますと、これは、恐らく予算措置をとられて、その連動している予算関連の法案だと思いますけれども、この中身を見ますと、民事訴訟事件の充実強化とか、あるいは家庭裁判所の事件数がまた右肩上がりでふえていますので、これに対する対応などを考えると、判事、書記官の定員をふやして、しかし一方、合理化の努力で全体の定員は減らされ、余りふやさない。合理性があるものだという感想を持っております。

 以上であります。(拍手)

鈴木委員長 ありがとうございました。

 次に、郷原参考人にお願いいたします。

郷原参考人 弁護士の郷原でございます。

 きょうは、このような機会を与えていただきまして、大変光栄に思っております。

 私は、平成十八年まで二十三年間、検察に所属して、検察の実務等にもかかわってきたほか、その退官前後に桐蔭横浜大学の法科大学院等で法科大学院の教育にもかかわりました。そういった経験、法曹としての経験と、それから、後ほどお話をいたしますが、総務省の行政評価局による、法曹人口の拡大及び法曹養成制度の改革に関する政策評価が行われた際に、研究会の座長代理として、この法曹養成問題についていろいろ調査検討を行いました。そういった経験に基づいて、まず、司法修習生に対する給費制度の創設が今回検討されていることについての私の考えを申し述べたいと思います。

 まず、結論から申しますと、司法修習生や若手法曹の現在の経済状況を考えたとき、その負担軽減のために修習給付金制度を創設されるということ自体は、私は望ましいことだと考えております。それ自体には賛成であります。

 しかしながら、こういう現状に至っていることについて、これがそもそも法曹養成制度改革の失敗というところにあるという認識を改めて持たないといけないんじゃないかと思います。そして、いわばその失敗の犠牲者になった、貸与制で今なお大きな借金を抱えている若手法曹がたくさんいるわけです。彼らをこのままの状態にして、これから先、修習給付金制度を創設していくということで果たしていいのかという点に若干問題があるんじゃないかと考えております。

 この法曹養成制度改革は、二〇〇一年の司法制度改革審議会の提言に基づいて、実働法曹人口五万人規模、そして司法試験の合格者数を平成二十二年ころには年間三千人程度とするということを目指して、そういう方針が打ち出されたことに基づいて進められてきたものでありました。

 しかし、まさに現状は、そういったことが全くうまくいかなかったどころか、結局、法科大学院の多くが募集停止に追い込まれ、そして法曹を目指す司法試験志願者自体も激減するということになって、結果的に、文科省から法科大学院に無駄な補助金を出させることで膨大な財政上の負担を生じさせたばかりでなく、拡大する司法の世界を目指して法科大学院に入学してきた多くの若者たちを、法曹資格の取れない法科大学院修了者、そして法曹資格を取っても仕事ができない、就職もできない、そういう修習終了者をたくさん輩出して、路頭に迷わせるという悲惨な結果をもたらしたわけです。

 私は、法科大学院教育にかかわっていたころから、そもそも、法科大学院の乱立によって司法試験合格者が当初の予定より大幅に低下するという予想のもとでは、司法試験合格に特化した法科大学院教育というのは早晩行き詰まるに違いないということを考えておりました。むしろ、司法試験合格を目指す教育だけではなくて、法科大学院としては、もっと経済社会のさまざまなニーズに応えられるような教育に転換していかなければ、恐らくこの制度は失敗するだろうということを述べてまいりました。実際に、その後の状況は、まさに惨たんたるものになっていったわけであります。

 そして、先ほども申しましたように、二〇一〇年に、総務省行政評価局で政策評価が開始されました。これも、もう既に三千人という目標が全く達成できない、二千人程度の合格者しか出せない状況になっているという状況を踏まえて行われたものでした。

 そして、その結果、研究会の成果に基づいて、その後、政策評価が行われまして、ここでは、年間合格者の数値目標を現状を踏まえて速やかに検討することとか、法科大学院に対して実入学者数に見合ったさらなる入学定員の削減を求めることなどの勧告が行われたものであります。

 こういう動きに合わせてといいましょうか、法務省の方でもいろいろな検討が行われて、二〇一三年には法曹養成制度検討会議の中間提言で、この三千人程度という年間合格者数を撤回するということが了承され、実質的には、法曹の大幅増員という計画自体が大幅に見直されるに至ったということになります。

 今回の給付制の復活というのも、このような法曹の大幅増員を目指してやってきたことが、結局、計画どおりにはできなかった、それ自体を見直さないといけなかったということに関連しているんじゃないかと考えられます。というのは、この年間三千人という合格者が実際には二千人程度にとどまっているという状況のもとで、一度、貸与制への移行が暫定的に停止されるという状況もあったわけです。もし法曹養成制度改革が予定どおりに進んでいたら、このような給付制の復活ということはなかったんじゃないかと思います。

 そのように考えますと、今回の司法修習生に対する給付か貸与かという問題は、国の政策が揺れ動いたことによってこのような状況に至っているという、この現実を直視しなければいけないと思います。

 そして、もし、今後、このような給付制度が今後の司法修習生のみに適用されるということになりますと、かなり大きな借財を抱えて出発した貸与法曹と給付法曹の差が若年世代の法曹の中に生まれるわけです。果たしてそれが今後の法曹の世界にとって望ましいことなのかということも考える必要があるんじゃないかと思います。

 そもそも、法曹の制度、司法制度というのは、国の社会のあり方そのものにかかわる問題です。日本の社会がどういう社会であり、その中で司法がどのような機能を果たすべきなのかということを根本的に考えた上で、法曹養成のあり方、法曹の数ということを考えなければならなかったんじゃないか。

 ところが、この法曹養成制度改革においては、まさに需給関係という、需給関係を考慮するという、法曹を、言ってみれば商品のように考える考え方に基づいて、数をふやせば事件がふえるだろうという単純かつ安易な考え方で制度改革が行われてきたわけです。こういう考え方を根本的に改めるということをまず行わなければ、今後、現状に合わせてびほう的に制度改革を行っていっても、根本的な解決にはならないように思います。

 それからもう一点、裁判所定員法の関係では、裁判所の定員の問題とは直接は関係いたしませんが、私は、弁護士として刑事事件にかかわる中で、裁判所の基本的な考え方の中で、実体判断というのが非常に重視されて、令状などの審査において十分な体制が構築されていないんじゃないかということを常日ごろから考えてまいりました。そのあたりのことを法務委員会の先生方にぜひ御認識いただきたいと考えております。

 とりわけ、今、刑事訴訟法の改正によって、通信傍受も大幅に拡大するということになっております。先日の最高裁判例で、GPS捜査について令状が必要とされるということになると、今後、立法措置も必要になります。このところの社会の複雑化、多様化、そしてIT技術の進歩によって、重大な人権侵害に当たるということで、令状審査の対象となる捜査というのはどんどんその範囲が広がってくるんじゃないかと思います。

 こうした中で、有罪、無罪の実体判断ももちろん重要ですけれども、捜査によって重大な人権侵害が行われることに対するチェックというのも、これも極めて重要なんじゃないかと思います。

 ところが、私は、これまでの刑事実務の経験で申しますと、日本の裁判所の体制というのは、令状審査の体制が非常に薄弱なんじゃないかと思います。実体裁判の方は、事件の重大性に応じて合議体で裁判が行われたり単独の裁判官で裁判が行われたりしますが、逮捕状、勾留状の発付、捜索・差し押さえ許可状の発付などは、多くは、まだ任官したての若い裁判官が一人でやるわけです。

 それでも多くの事件は適切な判断ができるんでしょうが、私が担当しております事件の一つである美濃加茂市長事件、今、上告審に係属中ですが、これなどは、五万人にも上る市民の代表である市長の刑事事件です。まさに、市長が逮捕され、勾留が継続されるかどうかというのは、その市民の生活にも市政にも重大な影響を及ぼすわけです。

 私が非常に違和感を覚えたのは、この事件で、勾留の理由として、逃亡のおそれというのが記載されていたことです。強制捜査が行われたら一時身を隠したりするおそれがあるというようなことを任官一年目の若い裁判官が理由にしていました。どうして市長が市民を置いて逃げるのか。これは確かに、教科書的には、独身で単身居住、年齢も二十代ということになると、逃亡のおそれあり。恐らく教科書的に判断したんだろうと思います。市長というのがどういう仕事であり、市民とどういう関係であるということが、恐らく実体験としてわかっていないのではないか。

 やはり重大な事件、重要な事件について、社会的にも重要な影響を及ぼすような事件については令状審査も慎重に行う必要があると思いますし、そういう面で、裁判所の体制も、これまで実体の審理についてしっかり行われてきた、それをさらに、そういう令状審査についても十分な経験を持った裁判官がしっかり判断をするということに必要な体制が整備されることが私は望ましいんじゃないかと思います。

 直ちに今、定員をどうのこうのという話じゃないんですけれども、裁判所の定員の将来の姿の中に、そういった観点も含めて考えていただければと考えております。

 私の方からは以上です。(拍手)

鈴木委員長 ありがとうございました。

 次に、中矢参考人にお願いいたします。

中矢参考人 おはようございます。私は、裁判所職員でつくっております全司法の中央執行委員長をやっております中矢と申します。

 最初に、このような機会を与えていただいたことに対して、皆様に心から感謝を申し上げたいと思います。

 私は、裁判所職員の職員団体ということでありますし、私自身、昭和六十三年から、全司法の委員長に就任しますまで二十七年間、裁判所書記官として仕事をしてまいりましたので、その裁判所職員の立場から、今般提出されております裁判所職員定員法の一部を改正する法律案について、私なりの考え方をお話ししたいと思っております。

 最初に結論を申し上げますと、大変失礼な言い方になって恐縮ではありますが、あえて申し上げるなら、十分なものではないと言わざるを得ないと思っております。その理由は、次に述べる三点であります。

 第一点目でありますが、裁判官、裁判所書記官について、今年度の増員を下回る増員数となっている点であります。

 定員振りかえを除く実質的な増員数で見ますと、今年度の増員数は、裁判官三十二人、書記官三十九人でしたが、平成二十九年度の増員数として示されているものは、裁判官が二十七人、書記官が二十四人となっております。職場実態からしますと、本来はもっと多くの増員が必要だと考えておりますが、少なくとも、今年度と比較してその増員数を下回る理由はないのではないかと思っております。

 裁判官の増員も重要ですが、私のきょうの立場でありますので、職員のことを中心にお話をさせていただきたいと思います。

 現在、裁判所の中でとりわけ増員の必要性が高いのが家庭裁判所であります。事件数も増加傾向にあることに加えて、三点申し上げます。

 一つ目として、離婚や子供をめぐる問題など家庭を取り巻く社会環境が複雑になっているもとで、裁判所に求められる役割も大きくなっております。

 また、二つ目ですが、平成二十五年から家事事件手続法が施行され、これまで以上にきめ細かな事件の処理が求められるようになっている点であります。

 第三点目に、成年後見制度でありますが、認知症などの方に裁判所が後見人や保佐人をつけるシステムでありますので、高齢化社会が進むもとで、今後ますます重要になります。昨年四月には成年後見利用促進法が成立をし、今月中にも政府における基本計画が策定されて、これに従った取り組みが実施されていくというふうに承知をしておりますので、これを踏まえた人的体制の整備が必要であります。

 この成年後見のように、家庭裁判所の手続には、民事や刑事の訴訟、いわゆる争いとは違って、申し立てに基づいて裁判所が事実を調査し決定をする、いわゆる非訟事件と呼ばれる手続が多く存在します。こういう手続では、裁判官の指示を受けて実際の実務を担当する書記官が、当事者との調整を行ったり判断に必要な資料をそろえたりと、大きな役割を果たします。また、家庭裁判所においては、弁護士を頼まずに当事者御本人が申し立てをする事件も多いことから、手続を進めていく上で、書記官が時間をかけて丁寧に説明するという必要性も大きくなっております。

 家裁の体制が実際に必要だということで、この数年間、全国の家庭裁判所に一定数の書記官が増配置をされてきました。しかし、毎年の増員数が家庭裁判所に増配置するだけの人数に足りないために、その大部分は地方裁判所や簡易裁判所からの配置がえ、私どもは人員シフトと呼んでおりますが、この人員シフトによって行われております。

 それでは、人員が減らされている地方裁判所の方はどうかというふうに見ますと、民事事件では、昨今の社会経済情勢を受けて、ますます複雑困難化する事件について適正迅速に処理することが必要であります。

 刑事事件でありますが、このところ、準抗告といいまして、勾留など、被告人などの身柄の決定に対する不服申し立ての手続ですとか、医療観察といいまして、心神喪失等の状態で重要な行為を行った者に対して入院を決定するような手続が増加をしております。また、国対被告人の関係で、犯罪を犯した者を処罰するというのが刑事手続の基本的な構造でありますが、近年は、被害者保護のためのさまざまな手続が導入をされ、事件関係者の情報の秘匿ということも求められるということであります。

 敷衍しておきますと、裁判の公開という基本的な考え方がありますので、かつては、裁判所に出されたものは公開されるものだという考え方が主流でありましたが、現在では、個人情報の秘匿については、刑事事件だけではなく、民事や家事の事件においても厳格になってきておりまして、その分、慎重さが求められ、事務量もふえているという問題もございます。

 このように、従来の刑事裁判という枠におさまり切らない事務もふえてきており、それに従って、事件数にあらわれない現場の負担も増加をしているところであります。とりわけ、昨年五月に刑事訴訟法が改正をされ、順次施行されておりますことから、今後これに対する対応も必要になります。

 地方裁判所についていいましても、これまでにお話ししてきましたとおり、家裁へのシフトの受け皿ということではなくて、むしろ、それぞれの分野について人的体制の整備を図る必要があると考えております。

 また、人員シフトという問題では、地方から都市への人員シフトという問題もあります。家裁を中心に大都市の人員が必要であることから、この間、毎年地方の庁の職員が減員をされており、今年度でいえば、札幌高裁管内で七名、広島高裁管内で十一名、高松高裁管内で七名、福岡高裁管内で十五名が削減をされました。決して地方の職場に余裕があるわけではありませんし、人数の少ない小規模庁において人員を削減するということの影響は、大規模庁と比較しても大きいものがあります。また、地方における国民の司法アクセスという観点からも、地方へのしわ寄せは限界があります。

 以上のことから、法案の数にとどまらない、大幅増員が必要であると考えております。この点が一点目であります。

 第二点目として、家庭裁判所調査官の増員がない点であります。

 家裁調査官は、心理学、社会学、社会福祉学、教育学などの専門的知識を活用し、調査、調整活動を行う専門職であります。本日お配りをしてあります資料の最初がレジュメになっておりますが、開いていただきますと、三ページ、四ページあたりのところに、現場の家裁調査官からの聞き取りをもとに作成をしました家裁調査官の役割と昨今の職場実態について記載してありますので、ごらんをいただければ幸いに思います。

 ここでは、家裁調査官の仕事について簡単に説明をさせていただきますと、少年事件でいいますと、未成年者が引き起こした事件は、まず、原則として全件家庭裁判所にやってきます。その中で、家庭裁判所調査官が最初に面談を行って、非行の原因や背景、少年の状況などを調査し、それを踏まえて処分に対する意見を述べています。調査官の取り組みは、単なる事実の調査ではなく、少年の立ち直りや再犯防止のために大きな役割を果たしております。家事事件について申しますと、夫婦関係を調整する事件における子供の意思を調査したり、子供と離れて暮らしている親との面会交流をコーディネートしたりする。あるいは、成年後見において、成年後見を受ける本人の調査や、複雑困難な事件の調査をするといった役割を担っております。

 このように、家庭裁判所における調査官の役割は極めて大きく、かつ、調査官の調査の対象になっております少年や子供、家庭をめぐる状況がどんどん複雑になっているわけですから、その仕事も年を追うごとに複雑になり繁忙になっております。人と向き合う仕事でありますので、時間で区切ることも難しく、きちんと行おうとすればするほど非常に時間と労力を要する仕事であることを御理解いただきたい、こういうふうに考えております。

 そして、家裁の充実を図ろうとすれば、家裁調査官の人員体制の整備なしには考えられません。しかし、家庭裁判所調査官は平成二十一年度に五人の増員を行ったのを最後に増員が行われておらず、今般提出されております法案でも増員がありません。

 私どもに対する最高裁の説明では、近年のピークであった昭和五十九年と比較して、近年で三十余年前の五十九年だそうでありますが、五十九年と比較をして少年事件が著しく減少していることが増員を要求しない理由とされていますが、平成十一年以降、司法制度改革が行われ、及び先ほどから述べています近年の社会状況によりますと、家庭裁判所が扱う事件の領域は格段に広くなっておりますし、求められる役割も大きくなっております。また、減少したとされる少年事件についても、少年をめぐる社会状況が複雑になっていることに加えて、被害者保護のための取り組みなどもあって、三十年以上前の昭和の時代とは比較できない事務処理状況にあるというふうに考えております。

 現場の調査官からは、近年の少年の特徴として、自分の世界にこもりがちで非社会的な少年がふえており、少年がどのようなメカニズムから非行を起こしてしまったのかを解明するために少年の話を聞き出すのも非常に時間や手間がかかっているということの声も聞かれます。

 以上のことから、家裁調査官の増員が必要不可欠であるという点が二点目であります。

 第三点目でありますが、協力義務のない政府の定員合理化計画に協力をしている点であります。

 法案では、裁判所裁判官、裁判所書記官の合計で六十三人の増員がある一方、政府の定員合理化計画に協力をして七十一人を削減するために、差し引きで八人の減員となっております。

 きょうお配りをしてあります資料の中に、こういう二十年ほどの裁判所予算と定員、定員振りかえを除いておりますので、少し、その点はありますが、増員分などを記載した一覧表を入れております。

 政府は、平成二十六年七月に、定員合理化計画を閣議決定いたしました。裁判所はこの計画の対象ではありません。ところが、政府が定員合理化に対する協力を要請し、最高裁がこれに協力をする形で、毎年必ず定員削減が行われています。私たちの理解では、裁判所はこの定員合理化については協力する義務がないというふうに考えておりますが、いかがでございましょうか。

 削減される定員は、技能労務職員が対象になっております。具体的に言いますと、庁舎清掃などを担当する庁務員、庁舎管理などのための守衛、裁判所の声の窓口となってきた電話交換手、庁外の尋問や検証、少年事件における身柄押送などを担ってきた自動車運転手などの職種であります。裁判所は、従来、これらの職員を自前で配置することによって、きめ細かく行き届いた運営がされてきたものであります。この定員削減が行われることは、職員の立場としてはじくじたる思いがあります。

 仮に、政府の政策によってこれらの職種が担ってきた業務をアウトソーシングせざるを得ないのであれば、せめてこの定員を削減するのではなくて、定員振りかえなどの措置も使いながら、裁判所の定員として活用していただきたいと考えています。さきに述べた裁判部門の充実に充てるということはもとより、職員の目から見ますと、事務局部門であっても、情報セキュリティーは非常に大切な問題になっておりますが、情報セキュリティーの対策であったり、情報公開や裁判制度を広く国民に伝えるための広報活動、あるいは、国民が安心して利用できる庁舎にするためにかかわる業務など、人的体制を整備する部門はたくさんあるというふうに考えております。さらに視野を広げれば、裁判官不在庁の解消を初めとした国民の司法アクセスの拡充のための人員配置など、司法の容量拡大の観点から必要な人員配置もあるものと考えます。

 さらには、社会情勢が大きく動いておりますもとで、昨今、原発訴訟でありますとか基地訴訟を初め、国民的な議論や社会的な論点を含んだ事件も多く係属するようになりました。こうした傾向は今後ますます強まるのではないかと考えています。私は、こうした事件について適正迅速に対応する上でも、裁判官や裁判所職員の人員配置の整備が重要だと思います。

 裁判所の予算は、かつては国家予算の約〇・四%と言われておりましたが、現在は〇・三%台を推移しております。ある意味、マンパワーが全ての役所であります。そのほとんどが人件費でありますので、必要な人的体制を整備することを正面に据えて、予算の面でも三権分立にふさわしい拡充が図られることを願っております。

 以上のことを訴えまして、私からの陳述といたします。

 御清聴ありがとうございました。(拍手)

鈴木委員長 ありがとうございました。

 以上で参考人の方々の御意見の開陳は終わりました。

    ―――――――――――――

鈴木委員長 これより参考人に対する質疑に入ります。

 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。山田賢司君。

山田(賢)委員 私は、自由民主党の山田賢司でございます。

 三人の参考人の皆様、本日は、お忙しい中お越しいただきまして、大変貴重な御意見をお聞かせいただきまして、本当にありがとうございます。

 また、この問題につきまして質問の機会を与えていただきました委員長初め理事の皆様、各委員の皆様にも感謝申し上げたいと思います。

 特に、この裁判所法の改正、司法修習生に対する給費制の問題、実は、私は全く法曹資格も何も持っていないんですけれども、当選以来この問題にずっとかかわってまいりました。きょうもビギナーズ・ネットの皆さん、お越しになられています。ビギナーズ・ネットの皆さんというのは、司法修習生の給費制を実現するためにということで、ずっと運動してこられました。こういう方々が熱心に訴えてこられました。これは、与党だけではなく野党の先生方も一生懸命賛同いただいて、その会に出ているとこれだけ国会議員がみんな与野党賛成しているんだからなぜ実現しないんだといった思いで活動してきたことが、ようやく日の目を見た。まだ法案が通ったわけではないんですが、これを速やかに実現させていきたいと思っております。

 そこで、質問させていただきたいんですが、まず角田参考人に御質問させていただきたいと思います。

 司法修習生に対して給費制、給費を与えること、これ自体は全く強く賛成とおっしゃっておられます。我々もその思いなんですが、一方で、これは参考人もおっしゃっておられたように、国民の理解を得る必要がある。

 さまざまな職業、いろいろな職業、それぞれが社会にとって有益、社会に役に立つ仕事がある中で、あえてこの法曹養成、司法修習生に対して給費制をもって給費を与える、この意義について御意見を先ほどお聞きしたんですけれども、これを国民に納得いくようにということが何より大事だということなんですけれども、ほかの資格とは違って、法曹については給費制でもってやらないといけない、ここについてちょっとお聞きをしたいと思うんです。

 これは、弱者を助けるとか、そういった崇高な理念、税金で育ててもらったんだから社会に還元しないといけない、こういう思いをみんな持つはずだ、これはそのとおりなんですけれども、必ずしもそういう弁護士の方ばかりではなくて、弱者の権利を守る本当に地道な活動をやられる方もいれば、高いお給料をもらわれて、そして、先生、先生と言われる、こういった先生もいらっしゃる。私はそのことが悪いとは思っていなくて、そういう仕事もあっていいでしょうし、企業の法務なんかをやって高い収入を得られる弁護士さん、これもいても全然構わない。

 社会に貢献するという意味では、必ずしも弁護士さんとか法曹の方だけが社会に貢献するわけではない。国立大学、あるいは私学も私学助成という形で、ほかの学部の方々も税金で養ってもらっている。そして、ほかの仕事の方々も、ボランティア、いろいろなことでもって社会へ貢献されている。そんな中で、法曹については税金で面倒を見てあげてでも社会に貢献する。国民に対してどう納得していただくか、御意見をお聞かせいただければと思います。

角田参考人 大事なところをお聞きいただいたので、問題意識としてはそのとおりだと思います。

 医師でも、あるいは警察官でも、公的な色彩のある仕事というのは非常に無数にあるわけですね。その中で、どうして法律家について給付の問題が出てくるか。

 私が思うには、やはり国の基本的な骨格というか成り立ちが、法律による行政ということで全体が動いているということが、これはもう憲法上の原理ですけれども、あると思います。それから、法の支配ということで、社会のいろいろな物事を動かすあらゆるものを法律に従って動かしていく、こういうことで適正な社会の運営ができる、こういうことになっているわけなので、法律家の仕事の質が、上、下ということじゃなくて、性質がやはりそういった社会の仕組みの根幹にかかわるものだ。結局、そこがうまく回ることで国民にもこれは実質的に還元されている、そういう理解である程度説明ができる、整理できるんじゃないか、こういうふうに考えております。

山田(賢)委員 ありがとうございます。全く同感でございます。

 ただ、給費制、与えてあげないといけないという問題、このことは私も全く大賛成なんですが、これは実は問題の本質ではないのではないかなと思っておりまして、これは郷原参考人も御指摘になられたように、法曹制度改革、これが果たして正しかったのかどうか、このことについて疑問を持っております。これは、野党の先生方、階先生もいろいろ資料を、さきの委員会で見せていただいたんですけれども、法科大学院に行かないといけないから経済的負担があって、そこからさらにまだ司法修習に行かないといけない、だから、ここに問題があるのではないかと思っております。

 私は、法科大学院自体は否定するものではなくて、やはり、いろいろなさまざまなバックグラウンドを持った方が社会に必要なさまざまな素養を身につける、高い教養を身につけて、その方が法曹を担うことは大切なことなので、それ自体は否定しないんですけれども、必ずしも司法試験の資格要件にする必要はないのではないか。

 さっさと通して、さっさと合格して、安心してそこからもっと幅広い素養を身につけてくれと、弱者の保護であったり、虐待ということの現実だとか、あるいは国際的に貢献される方もいるでしょうし、そういったさまざまなカリキュラムを学ぶことで、教養あるいは素養の高い法曹人材を出していくことが世の中にとってプラスではないかと思うんです。

 そこで、郷原参考人にお聞かせいただきたいと思うんですが、今回の法曹制度改革というのは失敗だったというところ、私もそこはそうじゃないかなと思っておるんですけれども、では、前の制度はよかったのか。多分、プロセスということを考えたときは、この理念は正しかったのではないかな、理念はよかったんだけれども、手段が間違っていたのではないかというふうに思うんですけれども、その点について、こうすべきだったということ、もしくは、今からでもいいからこうした方がいいという御意見がございましたら、お聞かせいただけますでしょうか。

郷原参考人 今お尋ねの点は、法曹というものを社会の中でどう位置づけていくのかということにかかわる問題だろうと思います。

 もともとの、日本の社会における司法ないし法曹の役割というのは非常に限られたものでしかなかったわけですね、二割司法という言葉もあったように。さまざまな、社会の中で起きる問題解決が司法によって行われる割合というのは非常に低かった。だから、それに伴って、法曹資格者というのは非常に希少価値を持った存在だったわけですね。

 それを根本的に変えて、もっと司法的な解決を社会の中でふやしていこうという方向性で行われたのが司法制度改革であり法曹養成の制度改革だと思うんですが、それじゃ法曹というもののあり方を変えるのかというと、結局それはなかなか簡単なことじゃないと思うんですね、裁判所の制度、検察、弁護士会、さまざまな、もう既にでき上がった司法インフラというのがあるわけですから。そういうものを、いきなり数をふやしていこうとしたからこういうことになってしまった。しかも、そこで数を考えるに当たって、先ほど申し上げたように、まさに法曹を商品のように考えて、需給関係だけで考えてしまった。

 やはり、そこに、法曹の役割を変えていくのであれば、では法曹はどういう役割を果たし、そして、法律的な仕事というのは必ずしも法曹に限らないわけですね。周辺の士業というのもありますし、それから、企業などで法務で活躍する人材には必ずしも法曹資格が必要じゃない人もいる。そういう意味では、弁護士資格にも、イギリスのように、ソリシター、バリスターという、法廷弁護士、非法廷弁護士を分ける制度もあり得ます。そういうさまざまな制度の中から、日本の実情に合った制度を選択していくべきだったと思うんですが、それが十分に検討されないまま、ただ数だけ、五万人とか三千人とかということが先行してしまった、そこに根本的な問題があるんじゃないかと思います。

山田(賢)委員 ありがとうございます。

 数のことも問題なんですけれども、以前、たしか、昔の司法試験というのは知識に偏重しがちだった、そこを変えていかないといけないから、幅広い素養を身につけるというようなことがうたわれていたような、そのこと自体は私はいいことだなと思っていたんです。

 では、法科大学院というのはそういう教育をし始めた、でも、その法科大学院で学んでいることが司法試験に出るのかというと、司法試験の問題を通らないことには、司法試験に合格しないことには法曹になれない。また、法科大学院というのは、司法試験の合格者、合格率が低いと、劣った大学だということで補助金が削減されたり廃止に追い込まれる。そうすると、結局、司法試験に通る大学院がいい法科大学院になっていくということなど、最後はやはり試験に通るための大学で、究極いろいろなものをそぎ落としていくと、予備校みたいに受験勉強だけをやっているところが合格率の高い、いい法科大学院になってしまうんじゃないかというふうに考えるんですね。

 だとすると、何が間違っているのか。社会で求められる法曹に対する素養と、法科大学院で教えていること、これは恐らく多分マッチしているんじゃないかなと思うんです。では、司法試験がそれにマッチしているのか。司法試験に通ること、そして法科大学院で教えていること、社会で必要なこと、どっちかというと、司法試験というものが、社会で求められる法曹の素養とちょっとずれているのではないかな、このように思うんですけれども、これはまず、角田参考人、御意見がもしありましたら教えていただければと思います。

角田参考人 非常に難しい質問だろうとまず思います。

 理念的に、法科大学院の理念は、さっき委員も言われたとおり、知識だけに偏ったことでなくて、本当に深みのある法律家を育てようということで、理念については正しかったと思いますし、法科大学院は、恐らく、多少ニュアンスは違っても、そういう方向でそういう法律家を育てようとして努力してきたことも間違いないと思うんですね。

 問題は、司法試験の出題がどうだったかとか、司法試験がそれに対応するものだったかどうかというのは、これはちょっと何とも、検証、評価が難しいところですけれども、私なんかは、法科大学院で教えているものを、もう少しそれを配慮した出題にしてもらえたらいいなという感想は持っております。ですから、それは解決の一つの手がかりにはなるだろうと思います。

 ただ、その問題だけで、今の法曹養成制度がうまく回らなくなっていることが全部問題解決につながるのかというと、それはなかなか難しくて、非常に広範な問題をはらんでいるというふうに思います。ちょっと一概には言えないかなという感想です。

山田(賢)委員 ありがとうございます。

 時間もなくなってきましたので、最後にお聞きしたいのは、司法修習所の意味は何なのかなというところです。

 多分、法科大学院というのは実務に即した勉強をするところだと言われていて、司法修習は実務を勉強するところだと言われて、三年間法科大学院で実務に即した勉強をやって、実務研修を司法修習所でやって、では即戦力で働けるかというとそれでもだめだ、弁護士事務所に行って、軒弁、いそ弁とやらないと使い物にならない。

 実社会で考えて、四年間、大学を出て、そこから三年勉強して、さらに試験受けて、一年半たって、三十手前になってまだ社会人経験が全くなくて使い物にならないということは、何か間違っているのではないかと思うんですね。

 角田参考人は司法修習所にいらっしゃったからなかなか否定しにくいとは思うんですけれども、郷原参考人、ぜひ、司法修習所の意味がどういうものなのか、これはどっちかでいいんじゃないか、司法修習所でやっているようなことを法科大学院でやるか、法科大学院でやるようなことをいっそ司法修習所で、幅広い素養を含めて教えた方がいいんじゃないか、このように思うんですが、いかがでしょうか。

郷原参考人 私が司法研修所にいたころは二年でした。非常にのんびりとした時代だったわけですが、今、一年になって、その一年の間にどこまで十分な実務の教育ができるかというのは、確かに非常に疑問な点があります。

 我々から見ると、若手の弁護士というのが、まだ十分に実務能力が身についていない人も多いと思いますし、結局は、最終的には実務法曹というのは実務の中で勉強してもらうしかないという面がありますので、そういう面で、司法研修所の教育というのをどこまで持っていくかというのは、確かに国民負担との関係もあって、難しい問題なんじゃないかと思いますし、いろいろ考え方は分かれるのかなと思います。

山田(賢)委員 ありがとうございます。

 法曹養成のハードルを余り上げ過ぎると、質の高いものを求めているはずが、実は優秀な方々からそっぽを向かれて、そんなに難しいことを言うんだったらいいよということで、優秀な人材が法曹に来なくなること、これは実は社会にとっての損失でもありますので、もっと開かれた法曹、そして、その中で優秀な人材が来て、それがひいては日本の発展につながるようにと願って、私の質問を終わらせていただきます。

 本日は、参考人の皆様、ありがとうございました。

鈴木委員長 次に、國重徹君。

國重委員 おはようございます。公明党の國重徹でございます。

 きょうは、三名の参考人の皆様に、御多用の中、当委員会までお越しいただきまして、貴重な御意見を賜りましたこと、心より感謝と御礼を申し上げます。

 中矢参考人の御意見も非常に参考になりました。その上で、きょうは法曹養成制度についてお伺いしていきたいと思いますので、もし、中矢参考人、時間切れで質問できなければ、御容赦いただきますよう、よろしくお願いいたします。

 まず、角田参考人、郷原参考人にお伺いいたします。簡潔にお答えいただければと思いますけれども、お二人はなぜ法曹を目指したのか、司法試験を受験しようと思ったのか、まずこれについてお伺いいたします。

角田参考人 ちょっと不意をつかれた質問ですけれども、私の場合は、実は大学を出て、一度サラリーマン、商事会社に勤めていました。サラリーマンの生活を実際にやってみると、法学部出身だったので、法律家の道の方が魅力的だったというふうに感じて、実際に法律家に、運よく司法試験に合格して、なってみると、やはり自分が選んで、後悔はない、こういうことであります。

郷原参考人 私の場合は余りに特殊ですので、御参考になるかどうかわかりませんが、私は大学の理学部を出まして、民間会社に勤めておりまして、一年八カ月で、なぜやめたかというと、その仕事が全く合わないということで、廃業したわけであります。そのときに、一から、ゼロからやり直すとすると、やはり一番魅力的だったのが司法試験であったというのが第一の原因です。法学部にも行かず、独学で勉強いたしまして、司法試験に、二年余りでしたか勉強して、何とか合格しました。

 そういうことが当時は可能でした。それは、今のような法科大学院という制度がありませんでしたし、法学部を出ていなくても、全く対等の立場で司法試験を受けることができた。あとは一発の試験で何とかなるという時代でした。

 なぜ目指したかというと、法曹を目指したところはそういうことです。検察の世界に引っ張り込まれたのは、たまたま、そういうふうに勧誘されたから。何かだまされて、引きずり込まれたようなものだというふうに本にも書いております。

國重委員 お二人の参考人、ありがとうございました。

 一般の受験生とはちょっと違う、やや、どちらかというとマイノリティーの部類の受験生だったかと思いますけれども、では、その上で、今の法曹養成制度、今の法科大学院また司法試験制度であれば、今お二人が大学生または社会人だったとして受験されるかどうか、お伺いいたします。

角田参考人 これは、ちょっと答えにくいことですけれども、しかし、今の状況だったら、多分試験を受けていないのじゃないかなというふうに思いますね。

郷原参考人 全く無理だったと思います。経済的にも時間的にも、こんな状況のもとでは私は法曹など目指せなかったと思います。

國重委員 今、郷原参考人は、時間的にも経済的にも無理だったという、理由も付加されて答えていただきました。

 では、角田参考人、目指さなかったんじゃないかというような結論を言われましたけれども、なぜそう思われますか。

角田参考人 理由を省略しましたけれども、やはり経済的な理由ですね。今の必要な費用を考えたときに、それはもう全く無理だったと思いますね。

國重委員 その上に立って、どう改善していくのかということを、お二人の具体的な実体験に基づいて今言っていただきましたので、より皆様にわかっていただけるようになったかなと思うんですけれども。

 よくここで言われるのが、法科大学院ができて時間もお金もかかるようになった。確かに、私も一理あるなというふうに思います。私は法科大学院に通っていませんので、このことがなかなか実感としてわからないところもあるんです。謙虚にこのことは学んで検討していかないといけないと思っておりますけれども。

 一方で、時間とお金がかかるといえば、医学部。お医者さんを目指す人たちも、やはり時間もお金もかかる、だけれども、医学部人気というのは衰えていない、どちらかというと、この十数年でも志願者がどんどん上がっていっているんですね。だけれども、法曹志願者は、お金、時間がかかる、ほかさまざま理由があるかもしれませんけれども、これで志願者が減っているということになると、お金や時間もあるかもしれないけれども、それ以外のところでもやはり大きな原因もあるのではないかというふうに思います。

 お二人の実体験で、到底、経済的にも時間的にも目指せないということでしたけれども、今、法科大学院で教鞭をとられた経験からしても、一般的にどういうところが一番大きな原因だと思われるか、それを改善するためにどうすればいいか、急所の部分、いろいろな複合的な原因があるかと思いますけれども、どう思われているか、お伺いいたします。

角田参考人 二つの答えが必要だと思いますけれども、一つは、経済的な問題をやはりまず考えなきゃいけないんですけれども、これは、大学院サイドから考えると、奨学金の問題が一番大きいと思います。各大学そうですし、やはり、個人で負担するのがもし難しいのであれば、もう授業料全額免除あるいは半分免除、そのほかのあらゆる奨学金を財政的に可能な範囲で各大学考えていると思います。

 ただ、問題は、この話になると、奨学金破産だとかそういったもっと一般的な問題、大きな問題が存在するわけで、個別、この法曹養成だけにかかわる問題じゃないと思います。やはり後で返済を求める奨学金というのは、およそ法律だけじゃなくて、勉強しようとする若い人たちに対して非常に負担になり、勉学の意欲自体を低下させる、そういうものになっているのであれば、これに対してやはりできる範囲のことをやっていかなきゃいけない、これが一つ大きく答としてあると思います。

 それからもう一つは、やはりやりがいが、昔は司法試験というと、憧れのような、本当に役に立つ、意味のある仕事ができるんじゃないか、もう無前提にそう感じられる状況があったと思いますね。そこが多少不明確、不明確というか、絶対的にこの道しかない、これを絶対にやりたいと思わしめるようなものが、法律家の世界や司法の運営の中にそれがもし昔と比べて少し低下、これはわかりません、わかりませんけれども、もし低下しているとすれば、そこはやはり考えなければいけないというか反省しなきゃいけないというか、ということだろうと思います。魅力的なものにするために、みんな努力しているとは思いますけれども、改めてもう一度考えてみる必要がある、そういうことかなというふうに思います。

郷原参考人 やはり、一言で言うと、リスクが大きいということなんじゃないかと思います。

 結局、法科大学院を出て司法試験に合格して法曹資格を取るということが全て今の法科大学院の前提になっていますから、それが、もうほかの選択肢は考えないような、最初から司法試験一本、法曹一本という非常に優秀な人たち、昔で言えば、五百人ぐらいの人たちというのはそういう人たちなんでしょうが、それを外れる人というのは、社会人とかいろいろな経験、経歴の人がいて、そういう人たちにとって、リスクが相当程度あり、それは合格のリスクがあって、法曹資格を取っても、では弁護士として食えるのかというリスクもあります。そういうものの中でどんどん人気が失われていったんじゃないかという気がします。

 そこに、先ほど山田委員の質問にも出ていました司法試験のあり方の問題、これが、昔の司法試験よりも、いろいろ実務能力を問ういい問題にしようというふうに競って各分野の問題がレベルアップされた結果、なかなか普通の能力では十分な合格答案が書けない人が大部分ということになって、それが何か、かなり運によって合否が左右されるようになってしまっているというのが、先ほど申し上げた総務省の政策評価に関する研究会のときにも、いろいろな人からそういう声が出ていました。そういう面でも、試験におけるリスクが大きい。

 いろいろな面で、そのリスクの大きさが若者たちに司法試験を目指すことをちゅうちょさせているんじゃないかと思います。

國重委員 ありがとうございました。

 では次に、先ほど郷原参考人は、需給関係の発想で、数をふやせば事件もふえるというような安易な発想での法曹養成制度改革だったというような旨のお話をされたかと思います。ここを見直していくべきなんだということであれば、合格者はもともと三千名を目指していました。私も、そんなものは無理やろうということで実感として思っていましたけれども、今現在、千五百名程度を目指すということかと思います。この合格者の人数についてどのようにお考えなのか、お伺いしたいと思います。

郷原参考人 先ほど申しましたように、法廷弁護士というのを基本的に前提とする弁護士の数ということであれば、現在の千五百人でも多過ぎると思いますし、弁護士の仕事の領域がどれだけ拡大していくのかという問題だと思います。

 先ほど、商品のように考えていたというところの中に、その商品自体が価値もどんどん拡大していくから需要が高まっていくんだというような発想もあったんだろうと思うんです、単なる数だけじゃなくて。しかし、残念ながらそれは、法曹資格というのとは必ずしもマッチしなかった。法曹資格がなくてもできる仕事というものは、必ずしも法曹資格者のニーズにつながらないんですね。

 そういう面で考えますと、現在の千五百人も、このまま続けていくには、現状の弁護士の世界の実情のままでは多いんじゃないかという気がいたします。

國重委員 ありがとうございました。

 では最後に、角田参考人と郷原参考人にお伺いしたいと思いますけれども、先ほど、いわゆる谷間世代、貸与制のもとで司法修習を学んだ方たちに対する何らかの経済的支援なり配慮なりということが必要なんじゃないかというようなことがあったかと思います。角田参考人の「意見の骨子」というところにも書いてありますが、「税金を投入することに対する国民の納得を得る努力」ということも必要かと思います。

 私が普通に地元を回って小単位の懇談会とか開くときに、よく、いろいろな質問とか意見とか言ってもらうときに多く出るのが、国民年金を受給されている方が生活保護に対する批判を言われる方というのは結構いらっしゃるんです。それに対して、私も丁寧にそこは説明をするんですけれども、やはりそういった税金の使い方というところに関して意見が出ることがあります。

 今、この谷間世代の方、私ももっともだなと共感する部分も多くあります。その一方で、弁護士になって年収一千万円以上稼いでいる谷間世代の方もいらっしゃいます。

 こういうことを含めて、どういうような経済的な配慮とか措置をしていけばいいと考えているのか、またその理屈、理由、国民の皆さんにもし言うのであればどのようなことをお考えか、お伺いしたいと思います。

角田参考人 論理的にというか、形式的に考えると、制度の切りかえ時に多少のでこぼこが出るのはやむを得ないじゃないかという論理は一つあり得るわけなんですね。

 ただ、先ほどの話に出ていたように、同じ法曹で貸与制と給付制で、本当に数年前後だけで大きな差ができるというのは、これは非常に不公平で、しかも、法律家のその後の物の考え方だとか活動にも影響を与えかねない面もあると思いますので、私は、できれば、やはり谷間の世代、四、五年間ぐらいになるんでしょうか、救済の措置を考えていただきたいなと思います。

 ただ、言われるように、国民の納得というのはもう絶対的な前提だと思いますので、少し細かく、例えば貸与制の場合には、結局、返済を免除するとか一部免除するとか、いろいろなやり方も考えられるわけですし、それから個々人の資力の問題も全く無視はできないわけで、そんなことをやってもらわなくても十二分に構わないという人にまでそれをやることの合理性は余りないだろうと思いますから、やはり、もしそういうことの手当てを考えるのであれば、少しきめの細かい、個別の事情を踏まえた制度にしていかないと、なかなか一律の制度だとうまくいかないのではないか、そういう感じがします。

郷原参考人 私は、先ほど申し上げたように、公平という観点からしても、若手法曹に二種類できてしまうことは適切でないという観点からしても、少なくとも、基本給付金の部分は、新たに給付するというよりも、それに相当する金額を貸与制のもとで借りている人たちに免除してあげるという制度が適切なんじゃないかと思います。

 もちろん、十分もうかっているからもういいです、幾らでも返しますという人は返してもらってもいいと思うんですが、基本的には、基本給付金の部分は何らかの手当てをすべきじゃないか。

 そして、そのことについての国民の理解を得るためには、やはり法曹養成にかかる費用全体を、もう一回、法科大学院という制度自体の見直しも含めて考えてみるしかないんじゃないかと思います。

國重委員 大変参考になりました。

 以上で終わります。ありがとうございました。

鈴木委員長 次に、階猛君。

階委員 民進党の階猛です。

 三人の参考人の先生方からは、本当に貴重な御意見を伺いました。

 また、私の前のお二人の質問者も大変すばらしい質問をされて、やはりこれぞ国会の質疑だなと。ふだん、この委員会は、官僚の人たちが変な入れ知恵をして審議が中断したり、また的外れな答弁があったりして、なかなか議論が白熱しないんですけれども、私は、こういう議論こそ国会ではやるべきだと思っております。

 いろいろなお話があった中で、私が衝撃を受けたことは、角田参考人そして郷原参考人、いずれも、今の法曹養成制度の仕組みでは法曹を目指していなかった、このような発言をされた。お二人のような優秀な方が法曹になりたいと思わないこの制度というのは、本当にこの後成り立つんだろうかとつくづく思いました。

 私も一応法曹の端くれですが、私も同じ思いです、今の制度だったら。私は、法曹になる前は銀行員でした。たまたま銀行が破綻したので法曹を目指すことになりましたけれども、でも、当時は、まだ乳飲み子を抱えて、働きながら勉強して、運よく司法試験に受かることができましたけれども、今の制度では到底、司法試験を目指すことすら考えられなかった。

 また、銀行が破綻したんですけれども、そのときに私が身にしみて痛切に感じたのは、問題の先送りは非常に危ういということでした。私の銀行だけではなくて、今から二十年前、金融危機ということで、多くの大銀行が破綻しました。なぜ破綻したかというと、不良債権の処理の先送りです。もっと問題が小さいうちに解決していれば、銀行は破綻することもなかったし、国民の血税でその尻拭いをさせることもなかった。

 今の問題は、個別の銀行の問題ではありません。三権の一つである司法が問題を先送りして崩壊するのではないか、そういう危機だという認識を私は持っています。同じ問題意識を持っていらっしゃるかどうか、三人の参考人にお伺いしたいと思います。

角田参考人 お答えいたしますけれども、現行の法曹養成制度に大きな課題があるという認識は、先ほどから申し上げているとおり、あります。

 ただ、もう一つ、一方で考えるのは、現に学生を受け入れて教えている立場からしますと、こういう法曹養成制度については余り頻繁に、制度を変える、ああする、こうする、そういうことはやらない。一旦それで動き出したら、できるだけ基本線はその線で一貫してやっていくという安定したものでないと、これはむしろ、受験生、学生、若手の法曹の方たち、みんな困るだろうという感じもあります。

 ちょっと迂遠な方向から話をしましたけれども、かつての司法研修所で教えていた時代には、要するに勉強だけして、例外はもちろんあります、だけれども、勉強だけして大学を卒業したという経歴で入ってきてという修習生がもう圧倒的に、九割以上がそうだったんですね。

 ただ、今、法科大学院、日大の場合には夜間開講、要するに、今まで法曹を目指していなかった人たちにも来てもらえないかということで工夫した一つが夜間開講で、そうすると、司法書士だとか銀行員の方だとかあるいはメーカー勤務の方だとか、要するに、あらゆる分野の人たちが学生として来てくれて、これから成果を上げなきゃいけないと思っていますけれども、非常に幅広い層が法律家を目指してやってきてくれている。

 現に動いている現行の法曹養成制度については、この基本線はやはり守って、もちろん微修正は必要だと思いますけれども、余り大きく変えないで一貫してやっていかないと、また大きく変えることはむしろ大きなリスクがありはしまいか、そういう感じがいたします。

 ちょっと答えになっているかどうか、あれですが。

郷原参考人 危機的と言えるかどうかは別として、現状、非常に大きな問題があることは間違いないと思います。

 やはり、最近の若い法曹、法律家を見ていると、余裕がないというんでしょうか、何か、伸び伸びしているところが余り感じられないんですね。本当に有為な、適性のある若者たちが法曹になっているのかどうかということが何となく疑わしい結果なんじゃないかという気がしています。

 やはり法科大学院が設置されて、法科大学院での教育で、司法試験、司法研修所も一年、ずっときゅうきゅうとして余裕がない中で実務能力を涵養せざるを得ない、こういう状況が過去、全体的な、実務的な対応能力の柔軟性を失わせているんじゃないかという気がいたしております。

中矢参考人 裁判所の職員の採用者の中で、法科大学院を卒業して裁判所の一般職を受験して合格し、採用されるという方がかなりふえているなという印象を持っています。やはり、司法試験を目指して法科大学院まで進んだ後、仮にその道を断念するとしたときの選択肢が非常に少ない。裁判所の採用試験の場合は、試験科目が司法試験と非常に似通っておりますので、ある意味、潰しの先といいますか、そういう先として考えられているのかなと思います。

 先ほどほかの参考人から御意見がありましたとおり、そういう法曹の道を目指した者が、きちんと将来が、生活設計が立つような仕組みというのが必要なんだろうというふうに考えております。

階委員 ちょっと時間が足りなくなってきましたので端的にお答えいただきたいんですが、私、前回この委員会で、大臣との質疑の中で、要は、この給費制の復活によって法曹志願者をふやすという目的がある、ところで、その目的がこの法案で達成できるのだろうかという問題提起をしました。

 なぜならば、現役の大学生にアンケート調査をしたところ、今法曹を志願している人たちではなくて、要するに志願者をふやしたいわけですから、過去に法曹を志願していた人あるいはそもそも志願していなかった、この人たちが何がネックになっているか、これを重視すべきではないか。何がネックになっているかという中で、まさに法科大学院に通うことによって経済的負担が大きい、そして時間もかかる、そして受かるかどうかわからない、また何度も試験も受けなくてはいけない、こういうことで、皆さん法曹を諦めたり、志願しなかったりしている。

 だから、私は、この問題を直視すれば、今何をやるべきか。給費制も別に否定するわけじゃないですけれども、その前にやるべきことは、受験資格を見直す、先ほど山田委員も同じようなことをちょっと御指摘されましたけれども、受験資格を見直して、法科大学院を修了しなくても受験はできる、予備試験などを受けなくても受験はできる、こういう試験制度に、従来と同じような試験制度に戻すべきではないかというふうに考えていますが、この件について角田先生と郷原先生にお答えをお願いします。

角田参考人 裸で考えると、そういう御意見というのは当然論理的にはある考え方だろうというふうには思います。

 ただ、むしろ今の問題は、ロースクールのあり方を考えるときに、予備試験とロースクールの関係、これが一番難しい問題だろうと思います。それ以上に、全く資格なしにというコースを設けるのはちょっと難しいかなというのが直観的な感じです。

郷原参考人 私は、現在の法科大学院と予備試験の関係を考えれば、法科大学院をずっと存続、このまま存続していくことはもう既に適切とは言えなくなっているんじゃないかという気がしております。合格率という面で考えても、予備試験合格組の方が圧倒的に高いわけですね。それは結局、司法試験の合格ということに関して言えば、法科大学院は十分な機能が果たせていない、残念ながらそれを認めざるを得ないと思います。

 ですから、法科大学院は、そこを出なければ司法試験が受験できないということではなくて、もっと有為な人材をたくさん吸収できる法科大学院は、当然そこを出たら司法試験に受かれるという期待が持てるわけですから、そういう形でたくさん若者たちを集めて、そして、中には、その中でもっとほかの教育、ほかの面の素養を身につけさせる教育をする余裕もあるんだろうと思うんですね。そういったところが法科大学院として残っていって、なおかつ、必ずしも法科大学院を出なくても司法試験が受験できるという形にしていった方が、多様な法曹資格者を育成するという面ではプラスになるんじゃないかと思います。

階委員 ありがとうございます。

 それから、郷原先生の方から、令状発付の手続について御指摘がありました。私もなるほどなと感じました。これからこの国会ではいわゆる共謀罪法案が審議され、万々が一これが成立、施行されるということになれば、今まで以上に令状の役割というのが重要になってくると思うんですね。通信傍受、あるいは今後導入されるであろうGPS、あるいは検証などなど、これは恐らく、当事者、すなわち調べられる側の意見は聞かずに令状を発付するということになりますから、まさに裁判官の判断力、これが非常に大事だと思っております。

 しかるに、現在の状況、お話しされたとおり、今の若い裁判官、特段そういったことについて精通されていないと思われる裁判官が、果たして今後ますます重要になってくると思われるそういった令状発付を一人でやっていいのだろうか、私は本当にこれは大事な問題だと思います。

 どのような対応を考えていくべきか、郷原先生に最後、お尋ねしたいと思います。

郷原参考人 やはり裁判所として、そういう面の裁判官の能力を育成するための、これまでにはない取り組みをしないといけないと思います。

 これまで、どちらかというと裁判所では、裁判官個人の能力というところに全て委ねてきたように思うんですが、残念ながら、令状の部分は本当に駆け出しの裁判官の人たちができる範囲でやっているということで、十分なチェック機能が果たせていない、それを裁判所が組織としてしっかり高めていくということが必要なんじゃないかと思います。

階委員 まだちょっと時間があるようなので角田参考人にもお尋ねしますけれども、私も司法修習生のときに令状発付の実務をちょっと横で見させていただきましたけれども、非常に流れ作業で、本当にこれで一件一件チェックしているんだろうかと思いました。刑事裁判官としての御経験があるということなので、これは、どうやってチェックしているんだろうかということを、ちょっと実務家の立場からお答えいただけますでしょうか。

角田参考人 それじゃ、簡単にお答えしたいと思います。

 令状審査については、かつてと比べると非常に難しい制度、事例がふえているのは間違いありません。ですから、裁判所の方も、特に新任の判事補に対する教育は、司法研修所、それから集合の研修、あるいは大庁に配置して、まず練達の裁判官の指導のもとでやってもらってと、そういう努力を積み重ねてきております。

 ですから、個別の事例の中でやはりどうしてもうまくいかなかったという事例が出てくるのは、これはもう事柄の性質上しようがないと思いますけれども、そこは準抗告ですとか不服申し立ての制度で修正できるというのは制度の建前にもなっていて、裁判所はそれで適正に運用、これは建前でなくて、適正に運営しているというふうに認識しております。

 ただ、一層の努力が必要だというのは、もう委員御指摘のとおりだろうというふうに思います。

階委員 終わります。ありがとうございました。

鈴木委員長 次に、畑野君枝君。

畑野委員 日本共産党の畑野君枝でございます。

 本日は、角田正紀参考人、郷原信郎参考人、中矢正晴参考人に貴重な御意見をいただき、ありがとうございます。

 まず、裁判所職員定員法改正案について、中矢参考人に伺います。

 法案には、国家公務員の女性活躍推進とワーク・ライフ・バランス推進への協力の趣旨に鑑み、同様の取り組みを行うことから定員上の措置を講じているとあります。また、昨年八月、最高裁が財務省に提出した増員要求が、今回の法案では減少しております。こういった点を含めて、全司法労働組合として、裁判所の人的、物的充実を求めて国会請願署名にも取り組んでいらっしゃるわけですが、今回の法案についてどのようにお考えになっているのか伺いたいと思います。

中矢参考人 お答えいたします。

 まず最初のワーク・ライフ・バランス等に関する定員の問題ですが、裁判所の職場においても女性の活躍というのは非常に重要な課題だろうというふうに考えております。国の機関が率先して女性が活躍できる職場になっていくということが必要だろうと思っております。裁判所職員は全体として女性の割合が非常に高く、とりわけ妊娠、出産という適齢期にあります三十代半ばの職員を見ますと、男性よりも女性の方が比率が高くなっているということがございますので、男女ともに育児、介護などの家庭責任を果たしながら職務に精励できる職場環境をつくっていくというのは非常に大事だと思っております。

 そうした点からは、今回、そうした趣旨で裁判所事務官の増員が盛り込まれていることについては前向きに評価をしております。

 ただ、実際に配置される人員というのは、数をお聞きしていますのは、最高裁に一人と全国八つの高等裁判所の管内に一人ずつというふうに聞いておりますので、ワーク・ライフ・バランスの推進で効果を上げるというためにはまだまだ不十分な数だろうと思っておりますし、事務官だけではなく、先ほどの陳述でも申し上げました、書記官や家裁調査官などの職種についても同じような定員の措置が必要だと考えております。

 とりわけ家裁調査官は女性が非常に多い職種で、職種全体を通じても半数以上が女性ですし、若い層になればもっと女性の比率が高くなる職種でありますので、育児休業などを取得されるケースが非常に多くて、切実な問題であります。

 職場の中で育児休業などをとられる方がいますと、その職員の分をほかの職員がカバーをするという必要があるわけでありまして、最高裁当局は育児休業の代替要員の確保については御努力をいただいているところでありますけれども、調査官、書記官などの資格職種については、事実上、その給源になるのが退職者ぐらいしかありませんので、同一職種での代替要員がなかなか見つからないという問題もあります。

 また、育児休業のように丸一日とってしまうというようなケースではなくて、時間で取得する育児時間といったような場合、累計しますと、大きな庁でいえば常に一人以上の人員が欠けている状態で処理をしているような形がありますので、ぜひ、こういう点では、今年度まずこうした定員上の措置を認めていただいた上で、次年度以降はこの数の面でも職種の面でも拡大することを検討していただきたいというふうに考えております。

 次に御質問がありました概算要求との差という問題であります。

 概算要求ということで八月に最高裁が財務省の方に対して提出をしております予算を見せていただきますと、判事が二十七人、書記官が三十四人、事務官が十九人で、合計七十一名ということになります。先ほどお話をしました定員削減への協力でいきますと、この概算要求でいえばプラス・マイナス・ゼロ、そういう状況なわけです。

 概算要求自体は、先ほど陳述をしましたとおり、職場の実態から見ればまだまだ不十分な数であるというふうにも思っておりますし、私たちとしては最高裁にはもっと増員を要求してほしいと思っております。また、定員合理化計画については反対という立場でございますが、ただ、一方、少なくとも、最高裁が必要だと考えて財務省に提出をされている概算要求ですので、せめて政府にはこの満額で認めていただくということをお願いしたかったというふうに思っております。

 それから、委員にも御指摘をいただきましたとおり、全司法労働組合の取り組みとして、きょうの資料の中にもこういう署名用紙を入れさせていただいておりますが、全司法は毎年、国民がより利用しやすい司法の実現のために裁判所の人的・物的充実を求める請願署名に取り組んでおります。私どもは、職員の社会的地位の向上とともに、国民のための裁判所実現を組織の目標として掲げておりまして、この署名は表題どおり、国民がより利用しやすい司法の実現のためにということを目的にしております。そのためには、裁判所の人的、物的充実と予算の拡充が必要だということでありますし、そうした中で、私どももよりよい仕事をしたいという立場からこういう署名に取り組んでおります。

 司法制度改革に向けた一九九六年以降の取り組みでありますが、これにつきましては与野党を含めた超党派で御支持をいただいておりまして、これまで二十年間、本国会において請願を採択していただいております。その点では、この場をかりて、与野党各党の皆様方に心から感謝を申し上げたいというふうに思います。

 こうした請願の趣旨を踏まえて、最高裁も人的、物的充実のために御努力いただいており、政府にも御配慮いただいているということは承知をしておりますが、なおこの定員の面でもその趣旨を生かしていただきたいということをお願いしたいというふうに考えております。

 以上です。

畑野委員 ありがとうございます。

 そこで、中矢参考人に、先ほど、なかなか私たちもふだんお話を聞く機会がないわけですが、書記官の具体的な仕事の内容について少し触れていただきました。また、家庭裁判所調査官の役割や職場の実態についても少し触れていただきましたが、時間が余りなかったと思いますので、そのあたりでもう少しお話ししていただくとありがたいと思うのですが。

中矢参考人 お答えをいたします。

 裁判所の書記官という仕事であります。

 私も、先ほどお話をしましたとおり、二十数年間書記官として仕事をしてまいりましたが、書記という名前が示すとおり、もともとの業務は、法廷に立ち会って調書を作成し、記録を作成、保管するという仕事であります。こういう仕事、いわゆる公証官としての役割というのは引き続き重要でありますけれども、現在、書記官が担当している仕事全体から見ると、その比重は相対的に低くなっているというふうに思います。

 現在、書記官が多くの時間を費やしておりますのは、法廷に立ち会いをする公判部の書記官であっても、期日前ですとか期日間の当事者間のさまざまな調整や事件の進行管理が中心でありますし、裁判官が起案されました判決のチェックをすることなども含めて、裁判官と一体でチームになって仕事をし、訴訟の進行を担うという役職になっております。いわば、裁判官についているスタッフ、サポートして一緒に仕事をするという形で仕事をさせていただいております。

 とりわけ、先ほど家裁のお話をいろいろしましたが、その中で述べた非訟といった分野は、裁判所法六十条三項にも、「裁判官の行なう法令及び判例の調査その他必要な事項の調査を補助する。」といった趣旨も含めて、当事者に働きかけたり、裁判所が決定をするための資料を収集し、その内容を検討するといったことも含めて、書記官が中心的な役割を担っております。

 先ほどのお話の中で、成年後見のお話をしました。少しお話をさせていただければと思いますが、成年後見でいいますと、窓口に当事者の方が来られたところの窓口相談から始まりまして、決定までのさまざまな手続をサポートし、事実の調査をし、決定後は、選任された後見人の相談にも乗りながら、適切に処理できるようにというふうにやっております。

 とりわけ、成年後見で、書記官の関係でいいますと、この間、不正防止ということが極めて重要になっておりまして、後見人などが不正な手続、場合によっては横領といったようなこともないようにこれをチェックするという仕事を一義的にさせていただいていますのは書記官であります。預金通帳であるとか財産管理の帳簿などが出てきた際に、その内容を精査して、不正が行われていないかどうか、そういうことも書記官の役割になりますし、後見人は、一旦後見人がつきますと、その方が回復されるかお亡くなりになるまでずっとそういう仕事が続くということになりますので、事件としてはふえていく一方、こういう形になります。

 もう一つ、家裁調査官でありますけれども、家裁調査官の役割として、一つは、少年事件における役割というのがございます。

 少年事件の場合は、成人の事件と違いまして、少年、未成年者が非行をした場合には、原則として全ての事件が家庭裁判所に送られてまいります。その家庭裁判所に送られてきた事件について、最初に、心理学や教育学の知識を持った調査官が面会をすることによって、何をやったかということだけではなくて、どうしてやったのか、それから、やったこと自体は大したことがなくても、その少年の状況を見るとやはり一定の公的な措置が必要なのではないかといったところまで含めて見きわめをいたしますし、そういう過程の中で発達障害などが発見をされたり、こういうケースもございます。そういうふうな形で面談をした上で、処遇に対しての意見を裁判官に対して述べるとともに、さまざまな働きかけを通じて、少年が更生をする、再犯を、二度と起こさないというようなことも努力をしているところであります。

 また、家事事件については、争っている当事者や、親の争いに巻き込まれている子供との面接ということが中心になります。資料にも書いていますが、夫婦関係調整事件ですとか面会交流において具体的な役割というのを果たしております。面会交流などでは、今、当事者間の紛争が非常に激しい事件が多いということであったり、面会交流の趣旨が必ずしも、本来子供のための手続でありますけれども、当事者双方の言い分が強くぶつかり合うということで、なかなか苦労している、こういうことも聞いたりいたします。

 以上です。

畑野委員 ありがとうございました。

 次に、裁判所法改正案にかかわって、司法修習について伺います。

 司法修習制度においては、国が責任を持って法曹三者を統一的に養成するという見地から給費制がとられてまいりました。ところが、二〇〇四年の裁判所法改正で、給費制が廃止されて貸与制が導入されました。

 私たち日本共産党は、給費制の廃止に反対をして、多くの法曹関係者の皆さんとともに給費制の完全復活を求めてきたわけでございます。

 そこで、角田参考人、そして郷原参考人に伺いたいと思います。

 将来の法曹が修習に専念して専門性を高めていくことは、市民の権利と自由の保障につながりますし、国民の利益に資することになると思います。この法案は貸与制を維持するということを前提としておりまして、給付額が不十分であることや、新六十五期から七十期まで、無給世代、谷間世代の救済がないということなど、幾つかの問題点があると思っております。

 参考人の皆さん、どのように今後のことについてお考えでしょうか。

角田参考人 これまでこの席で述べてきたとおりですけれども、とにかく大きな第一歩である、しかも有効性もあるだろうというふうに思います。

 ただ、委員が言われましたように、やはりもう少しこうしてほしいという点が全くないわけではないので、今御指摘になった点も含めて、課題として検討していただければというふうに思います。

郷原参考人 これまでにも申してきましたように、現状のもとで給費制を復活させること自体は私は望ましいと思いますが、根本的な問題解決になっていない最大の理由が、貸与世代に対する対策を何も講じないまま、ですから、もともと根本的に何が問題だったのかということをなおざりにしたまま、今回、現状対応的な措置だけとるということは、やはり私は適切ではないんじゃないかと考えております。

畑野委員 時間が参りました。

 参考人の皆さん、きょうはありがとうございました。

鈴木委員長 次に、松浪健太君。

松浪委員 日本維新の会の松浪健太であります。

 三人の参考人の皆様、本日はまことにありがとうございます。

 前回の委員会の質疑で、私も、これまでの政策、いっとき三千人まで年間ふやそうというようなことまで考えたけれども、結局それに見合った訴訟が起きたわけでもなくて、これは私はいい見誤り方だった、日本がアメリカのような訴訟社会にはならなくて、離婚等においても、訴訟よりも、その前に抑えようという動きもやはり各国よりも強いんだというふうに思います。

 しかしながら、私も余り雑誌などは持ってくることはないですけれども、二月二十五日の「ダイヤモンド」なんか、「司法エリートの没落」なんて、こんなに派手なものが本屋に並ぶと、若い人たちが司法の世界を志そうという気持ちがやはりある程度滅入るということはあるんじゃないかなと思います。

 まさに、法曹に対して、かつてはすごく敬意もあったと私は思います。法曹が法曹たる、文系最難関資格として輝くためには、私は、法曹の黄金のトライアングル、これは何かというと、きょう若い皆さん来られていますけれども、法曹を志す人たちの高い志、夢がある、これが成り立つためにはやはり国民から敬意がある、そして、その敬意のある人たちはやはり多くの収入があってしかるべきだろう。先ほどの質問の中で、お医者さんの話がありました。医者を志す人は多くいる、なぜかというと、やはり医者はもうかりまんねんというところは、これは必ずあると思うんですね。

 そういう意味では、需給ギャップは崩れているし、これまでの政策はやはり私は誤っていたというふうに思うんですけれども、角田参考人と郷原参考人に、この政策変更について、先ほどは大きく変えるべきではないという御意見もありましたけれども、これまでは成功していたのか、まさに僕は失敗していたと思うんですけれども、これは失敗していたということは素直に認めるべきなのかどうかということと、それに対する御感想を手短にお願いします。

角田参考人 司法制度改革の中で、この法曹養成制度を現在のような形にしようというのは非常に熱を持って語られて実行されたわけですけれども、そういう観点で見直した場合に、うまくいったのか、それとも余りうまくいかなかったのか、こういう評価を求められれば、余りうまくいっていないというふうに評価せざるを得ないだろうというふうに思います。

 ただ、これをどう変えていくかということについては、繰り返しになりますけれども、余り抜本的に大きく制度を何度も何度も変えるということ自体がむしろ大きなマイナスだと思いますので、しかも理念としては今の法曹養成制度は間違っていたということはないと思いますので、できるだけこれを生かす形で見直しをしていく方向がいいのではないか、こう考えます。

郷原参考人 先ほども申しましたように、私は、法曹養成制度改革は大失敗だと思っております。

 その失敗の大きな原因として、先ほど申しましたことに加えて、文科省と法務省という、考え方が全く違う役所がこの法科大学院を中心とする法曹養成制度をつくろうとしたために、まさに役所の、省庁間のすき間に入り込んでしまった。これが非常に大きいと思います。

 法務省の中にある考え方は、旧来の法曹を中心とする、かなり固定的な考え方です。そういう考え方のもとでは、どうしても、法曹の能力が相当高くなければ法曹資格が与えられないということになります。文科省は、大学との関係でまたいろいろな事情があったんだろうと思いますけれども、そういう法曹をどれだけ輩出できるかということの見きわめも余り十分行うことなく、七十校もの法科大学院の設置を認めてしまった。

 もともと、その段階で制度が失敗することはもう目に見えていたと思います。それを、失敗が目に見えていたのに、その後十年近くも同じ方向で引きずってしまった。それが全ての間違いなんじゃないかと思っております。

松浪委員 特に、今、後半、法務省と文科省の問題、私も、それははっきりとこういう場でおっしゃるというのは非常に意義深いことであろうかと思います。

 やはり、法科大学院をつくり過ぎたという問題があろうかと思います。この「ダイヤモンド」にも、七十一校か四校かのうちの二十六校が、もうこれは募集を停止していると。私、これはいいことだと思います。

 やはり法曹はベスト・アンド・ブライテストの世界ですから、幾らたくさんつくっても、角田先生は一橋出身でいらっしゃって、郷原先生は東大出身でいらっしゃいますよね。これは、二十七年の合格者数、合格率ですけれども、やはり一位は一橋、四九・六%、東大が四八・〇%ということになっております。今は文科省も残酷な仕組みをつくっていまして、法科大学院公的支援見直し強化・加算プログラムということで、法科大学院をA、B、Cに分けて、そして補助金の出る分担率もそれで変えていく。私は、これはいたし方のないことだと思います。残念ながら、先生教えていらっしゃる日本大学は、一六年の司法試験の合格率は七・〇%ということで、やはり私は、ここは本当に競争の世界ですから、競争原理が働いて、それゆえに敬意が集まる。

 特に私、この間、実務の問題を前回の質疑で行いました。法科大学院で実務の経験ある皆さん、どれぐらいいらっしゃるんだと。それは、実務経験を持っている人は半分いないですよ。半分実務経験ない人たちの中で実務の能力を上げろといっても、これまた、なるほどな、文科省と法務省の間のエアポケットに陥っているなというふうに思いました。

 ですから、法科大学院は、これから絞って、私は、もっと絞った上で、補助金配分率ももっと上げる。そして、実務の人材を、もっと実務経験をふやしてやる。郷原先生の、これは卓見だと思うんですけれども、もう二〇〇五年の段階で実務経験後受験枠なんというのを先進的におっしゃっているわけで、私は、法科大学院を出たんだから逆に修習の中でこうしたものは軽くなるんだとか、そういう逆インセンティブがあるぐらいの法科大学院であるべきだと思いますけれども、これから法科大学院の数をぐっと絞っていくことについて、端的に御意見を伺いたいと思います。

角田参考人 これは、絞っていくというよりも、自然淘汰に近い形でこうなってきていると思うんですね。現象的にはこれはやむを得ないことだろうと思いますけれども、しかし、被害者は学生だったんじゃないかというふうに思います。要するに、募集停止に追い込まれた大学院に、最初のうたい文句はほとんど法曹資格を得られるはずだ、こういうことで言われていたわけですから、そういう大きな犠牲を払ってこうなっているという点については、非常にやはりそこは申しわけないな、この世代として、そういう感じを持ちます。

 したがって、自然に絞られていくのはもうやむを得ない流れだという認識です。

郷原参考人 絞っていかざるを得ないと考えておりますが、問題はその絞り方だと思います。

 淘汰に委ねるといっても、企業は別に淘汰に委ねてもいいわけですが、法科大学院を淘汰に委ねることが、それだけが正解なのかというと、そこにぶら下がっている学生がいるわけですし、少なくともこれまでの十年余りを考えてみると、そういう法科大学院に引きずられてしまって、随分、若い世代、時間を無駄にしてしまった人もいる。そうなると、何か、自然な成り行きというようなものではなくて、もっと抜本的な対策を講じないといけないんじゃないかと思います。

 私が聞くところによりますと、最近の法科大学院の中には、志願者とか定員が充足していないと補助金が停止されてしまうということで、およそ司法試験に合格する可能性もないような学生でも、とにかく数を集めるしかないというようなところもあるらしいんですね。それはもうその人にとっても不幸ですし、結局社会的にも無駄が生じると思います。

 そういう意味では、確かにこのあたりで抜本的に、これから先の法科大学院の残すべき数、規模というものをもっと強烈に政府主導で考えて、それに合うような今後の体制というのをつくっていかないといけないんじゃないかと思います。

松浪委員 私も、抜本改革、必要だと思うんです。ここにもあるように、一八年度から募集停止を表明したある大学では、専任教員数が十二人で集まった学生は十人で、教員の方が多かったという、こんな冗談のようなことも出てきているわけですから、これはもう抜本改革をせざるを得ない問題であろうというふうに思います。

 こうした中で、今、実務経験の問題も申し上げましたけれども、これは明らかに政策の失敗なんですね。

 私はもともと厚生労働行政が主なんですけれども、例えば歯医者さんの数がふえてしまった、この場合は、大学で、ある程度文科省と連携をして厚労省の場合は課長級で交差して人材を配置しているので、そこは連携いいんです。では、今、柔道整復師、これも平成十年から二倍ぐらいになっているんですね。なぜ二倍になったか。この場合は、学校、専門学校をつくるというのを厚労省は抑えてきたんだけれども、政府は抑えてきたんだけれども、政府が裁判に負けたわけですね。裁判に負けたから、一気にふえて、柔整師の数も倍ぐらいになって、食えない、不正受給がふえるという悪循環に陥った。

 少なくとも、この問題は、我々は、そうした裁判に負けたものでもないということで、行政の問題、我々が未来を見誤ったという問題に端を発するので、これはやはり抜本改革が必要であろうと思います。

 私は、やはり、階先生おっしゃったように、司法試験の受験資格を大きく持つ、そのかわりに法科大学院卒業者を企業が青田買いしていくようなものは必要なんだろうなというふうに思います。

 前回の質問では、私は、ネットとかでもう先生方は御存じだと思いますけれども、まだ司法試験を受ける前の予備試験合格者に対して大手法律事務所が既にリクルートしていくというふうな例を出したんですけれども、その原因を、端的に、お二人に、なぜだろうという分析を願います。

角田参考人 最後の、大手の法律事務所が青田買いをするというのは、やはり事務所にとって優秀な人材をとにかく早期に確保してしまいたい、直接的にはそういうこと、非常に望ましくないことではないかなというふうに思います。

 もともと法曹養成については、確かに、きょうの議論でいろいろな方面から出ていたように、最終的にどういう姿が我が国の司法を運営する上でよくて、しかも数はどの程度というところを、やはりもう一度きちっと確定した上で、あるいは議論した上で方向づけをしていくのが必要だというのは、それは、きょうの議論を聞いていて、私も、なるほどそういうことはあるなというふうに思ったところであります。

郷原参考人 恐らく、大手法律事務所というのは司法試験合格者の中の一番上のクラス、二、三百人ぐらいのところを獲得したいと考えているだろうと思うんです。それが、法科大学院を出て司法試験に合格した人の中にそれが多いのか、予備試験組の方が多いのかというと、最近は予備試験組の方が多くなっているという認識があるから、そういう青田買いという方向に行くんだと思いますし、結局、法科大学院が司法試験に合格させるという機能しかなければ、もうその予備試験との比較になり、結局、そういう司法試験の受験のための塾のようなところの方が効率的だということになれば、そっちの方から大手事務所に流れていくということにならざるを得ないんじゃないかと思います。

松浪委員 済みません、中矢参考人にもちょっと伺いたいことがあったのですけれども、時間が終了してしまいましたので。

 とにもかくにも、きょういらっしゃっている若い法曹を目指す皆さんにしっかりと夢を持っていただけるような、まさに私は、法曹の黄金のトライアングル、先ほどのは必要だと思いますので、今後ともどうぞよろしくお願いします。

 ありがとうございました。

鈴木委員長 これにて参考人に対する質疑は終了いたしました。

 この際、参考人各位に一言御礼を申し上げます。

 参考人の方々には、それぞれ貴重な御意見をお述べいただき、まことにありがとうございました。委員会を代表して厚く御礼を申し上げます。ありがとうございました。

 次回は、公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。

    午前十一時三十二分散会


このページのトップに戻る
衆議院
〒100-0014 東京都千代田区永田町1-7-1
電話(代表)03-3581-5111
案内図

Copyright © 2014 Shugiin All Rights Reserved.