衆議院

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第14号 平成29年4月28日(金曜日)

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平成二十九年四月二十八日(金曜日)

    午前九時七分開議

 出席委員

   委員長 鈴木 淳司君

   理事 今野 智博君 理事 土屋 正忠君

   理事 平口  洋君 理事 古川 禎久君

   理事 宮崎 政久君 理事 井出 庸生君

   理事 逢坂 誠二君 理事 國重  徹君

      赤枝 恒雄君    赤澤 亮正君

      秋本 真利君    穴見 陽一君

      安藤  裕君    井野 俊郎君

      池田 佳隆君    奥野 信亮君

      加藤 鮎子君    門  博文君

      神山 佐市君    菅家 一郎君

      城内  実君    國場幸之助君

      新谷 正義君    鈴木 貴子君

      辻  清人君    中川 郁子君

      野中  厚君    鳩山 二郎君

      藤原  崇君    古田 圭一君

      宮川 典子君    宮路 拓馬君

      八木 哲也君    山田 賢司君

      若狭  勝君    枝野 幸男君

      緒方林太郎君    階   猛君

      山尾志桜里君    浜地 雅一君

      吉田 宣弘君    畑野 君枝君

      藤野 保史君    松浪 健太君

      上西小百合君

    …………………………………

   法務大臣         金田 勝年君

   国務大臣

   (国家公安委員会委員長) 松本  純君

   法務副大臣        盛山 正仁君

   外務副大臣        岸  信夫君

   法務大臣政務官      井野 俊郎君

   外務大臣政務官      武井 俊輔君

   防衛大臣政務官      小林 鷹之君

   政府参考人

   (警察庁長官官房審議官) 高木 勇人君

   政府参考人

   (警察庁長官官房審議官) 白川 靖浩君

   政府参考人

   (警察庁刑事局組織犯罪対策部長)         中村  格君

   政府参考人

   (法務省刑事局長)    林  眞琴君

   政府参考人

   (法務省人権擁護局長)  萩本  修君

   政府参考人

   (外務省大臣官房参事官) 飯島 俊郎君

   政府参考人

   (防衛省防衛政策局次長) 岡  真臣君

   法務委員会専門員     齋藤 育子君

    ―――――――――――――

委員の異動

四月二十六日

 辞任         補欠選任

  吉野 正芳君     國場幸之助君

同月二十八日

 辞任         補欠選任

  城内  実君     穴見 陽一君

  國場幸之助君     八木 哲也君

  宮川 典子君     神山 佐市君

  宮路 拓馬君     加藤 鮎子君

  山尾志桜里君     緒方林太郎君

同日

 辞任         補欠選任

  穴見 陽一君     城内  実君

  加藤 鮎子君     鳩山 二郎君

  神山 佐市君     新谷 正義君

  八木 哲也君     池田 佳隆君

  緒方林太郎君     山尾志桜里君

同日

 辞任         補欠選任

  池田 佳隆君     中川 郁子君

  新谷 正義君     宮川 典子君

  鳩山 二郎君     秋本 真利君

同日

 辞任         補欠選任

  秋本 真利君     赤枝 恒雄君

  中川 郁子君     國場幸之助君

同日

 辞任         補欠選任

  赤枝 恒雄君     宮路 拓馬君

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 政府参考人出頭要求に関する件

 組織的な犯罪の処罰及び犯罪収益の規制等に関する法律等の一部を改正する法律案(内閣提出第六四号)


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     ――――◇―――――

鈴木委員長 これより会議を開きます。

 内閣提出、組織的な犯罪の処罰及び犯罪収益の規制等に関する法律等の一部を改正する法律案を議題といたします。

 この際、お諮りいたします。

 本案審査のため、本日、政府参考人として警察庁長官官房審議官高木勇人君、警察庁長官官房審議官白川靖浩君、警察庁刑事局組織犯罪対策部長中村格君、法務省人権擁護局長萩本修君、外務省大臣官房参事官飯島俊郎君及び防衛省防衛政策局次長岡真臣君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

鈴木委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

鈴木委員長 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。宮崎政久君。

宮崎(政)委員 おはようございます。自由民主党の宮崎政久です。

 法務委員会も、本日、このような形で開催ができる運びとなりました。

 前復興大臣の不適切な発言は、東北の皆様初め多くの方の信頼を失うこととなりました。私も、与党の一人として、改めておわびを申し上げますところであります。これからも被災地の皆様とともに復興を前進させていくために、今後とも緊張感を持って信頼の回復に取り組んでいくことをまずお誓い申し上げるものでございます。

 その上で、この法務委員会で組織的犯罪処罰法の改正案の審議を進めていく責務、当然私たちこの法務委員会に所属する議員としてございますので、理事、委員各位の皆様の御協力を改めてお願い申し上げるところでございます。

 さて、きょうは、前回の質疑で特に議論となっておりました、一般の方々はテロ等準備罪の捜査の対象にならない、この点について私は質疑を進めさせていただきたいと思っております。

 このフレーズというか、このことが最初どこから出てきたかということを言えば、過去に提出された共謀罪の法案と今回の組織的犯罪処罰法の改正案にあるテロ等準備罪は法形式が異なるということを説明する中で、つまり、犯罪の主体を団体から組織的犯罪集団に法文上も明確に限定したことにより、従前危惧されていた一般の団体であるとか一般の方々を取り締まりの対象としているものではない、こういう懸念への対応をした文脈でまず用いられてきたものと理解しております。

 順に確認をしていきたいと思います。

 まず、一般の方々はテロ等準備罪の捜査の対象とはならないという文脈において、この一般の方々というのはどういう意味でありましょうか。確認をさせてください。

林政府参考人 もちろん、一般の方々という言葉に定まった定義があるわけではなくて、使用される文脈によってその意味は異なると考えますけれども、本法律案の審議の過程で法務省が用いております一般の方々とは、本法律案の中でテロ等準備罪の犯罪主体を組織的犯罪集団に限定したということとの関係から、組織的犯罪集団とかかわりがない方々ということの意味でございます。

 言葉をかえれば、何らかの団体に属していない人はもとよりでございますが、通常の団体に属し、通常の社会生活を行っている方々という意味でございまして、そうした方々は、組織的犯罪集団、すなわち一定の重大な犯罪等を目的としているテロリズム集団、暴力団、薬物密売組織等とは無縁の生活を送っておられると考えられるわけでございまして、組織的犯罪集団に関与するということがないことはもちろん、また関与していると疑われることも考えられないということから、この一般の方々というのは組織的犯罪集団とかかわりがない方々という意味で用いているものでございます。

宮崎(政)委員 もちろん、今御説明のとおりでありまして、法案の法文上の文言で出てきているというわけではなくて、今まで質疑の中の説明で用いていることの説明をしていただいているということを改めて確認したいと思います。

 次に、同じこの文脈においてということでありますけれども、捜査の対象とならないというのはどういう意味で使われているか、御説明をお願いします。

林政府参考人 この捜査の対象というものももちろん定まった定義があるわけではなくて、使用される文脈によってその意味は異なると思いますけれども、処罰の対象というものが限定されているということを踏まえた上で、その上で、この法務省が用いている意味における捜査の対象とならないというものは、テロ等準備罪の嫌疑を受けて被疑者として捜査の対象とされることはない、こういう意味でございます。

宮崎(政)委員 そうすると、今の御説明を重ねますと、一般の方々はテロ等準備罪の捜査の対象とならない、こういうふうに、一つの文であるものをつなげますと、組織的犯罪集団とかかわりのない方々はテロ等準備罪の嫌疑を受けて被疑者として捜査の対象とはならない、こういう御説明になるかと思うわけでありますけれども、まず端的にお聞きしますが、なぜそう言い切れるのかというところを御説明ください。

林政府参考人 処罰範囲を限定する、法律の構成要件をつくる場合に、例えば一般の刑法犯のように犯罪の主体というものが限定されていない、例えば組織的犯罪集団に限定していない、こういった場合には、一般の方々も、犯罪が行われたという嫌疑があれば捜査の対象になろうかと思います。他方で、今回のテロ等準備罪におきましては、犯罪の主体を組織的犯罪集団に限定いたしました。そのことによりまして、組織的犯罪集団に関与しているという嫌疑がなければ当該人物に対する捜査は行われないわけでございます。

 加えて、組織的犯罪集団とは、一定の重大な犯罪等を行うことを構成員の結合関係の基礎としての共同の目的とする団体ということでございますので、国内外の犯罪情勢等を考慮いたしますれば、テロリズム集団、暴力団、薬物密売組織など、違法行為を目的としている団体に限られまして、一般の方々がこれらとのかかわり合いを持つということは考えがたいわけでございます。

 したがいまして、組織的犯罪集団とのかかわりのない一般の方々、すなわち、何らかの団体に属していない人はもとよりでございますが、通常の団体に属して通常の社会生活を行っている方々はこのテロ等準備罪の捜査の対象とならないと考えておる次第でございます。

宮崎(政)委員 今、定義も含めて御説明をいただいたかと思いますけれども、一般の方々、つまり、今の御説明の文脈でいえば要するに通常の社会生活を送っている方々でありますから、そういう皆さんが組織的犯罪集団とは無縁である、組織的犯罪集団とは無縁である以上、主体要件にかかわることがないということで、被疑者として捜査の対象にはならないということで、今、定義も含めて御説明いただいたところだというふうに思います。

 つまり、法案の条文の第六条の二に例示されているテロリズム集団その他の組織的犯罪集団、つまり、この委員会の中でも説明で出てきておりますけれども、テロ集団、暴力団、麻薬密売組織などの違法行為を目的とする団体に限られる組織的犯罪集団にかかわることなく通常の社会生活を送っておられる方々、つまり一般の方々が主体要件を満たすことはない、ゆえに被疑者として捜査の対象にはならない、こういう御説明であったかと思います。

 ただ、こういったことも考えられないでしょうか。例えば、テロ等準備罪について捜査があったり、捜査の結果でありますけれども起訴されて裁判になるというケースも考えられる。その後、それぞれ捜査であったり裁判の結果、テロ等準備罪を犯したとは証明されずに例えば不起訴になるとか裁判の結果で無罪になる、こういうことがあったという方がいたとする。

 この場合には、結果として不起訴や無罪になったという一般の方がテロ等準備罪の捜査の対象になっていたということになるんじゃないでしょうか。御説明をお願いします。

林政府参考人 今委員御指摘のような説明のもとで、文脈のもとで、結果的に無罪になった方、こういった者を一般の方々と呼ぶかどうか。

 これについては、それは文脈の中での言葉の使い方だろうと思いますけれども、一つ、テロ等準備罪に関する捜査の結果例えば不起訴となったり、裁判の結果無罪となったといたしましても、その理由はさまざまでございます。一概にそれが組織的犯罪集団とはかかわりのない方々とは言えないわけであります。例えば、暴力団員のように組織的犯罪集団の構成員であったといたしましても、今回のテロ等準備罪の捜査の中における具体的な犯罪の計画に関与していないことなどを理由としてテロ等準備罪が結果的に成立しないと判断されることはあり得るわけでございます。

 テロ等準備罪の捜査というものは、第一に組織的犯罪集団が関与する犯罪、第二に一定の重大な犯罪の計画行為、第三にその計画に基づく実行準備行為という三つの点について嫌疑がある場合に行われるものでございまして、例えば、およそ団体に属していない方、これはもとよりでございますが、通常の団体に属して通常の社会生活を行っている方々にそのような三つの点についての嫌疑が生じるということは考えられないと考えております。

宮崎(政)委員 それでは、聞き方を少し変えてみたいと思いますけれども、例えば殺人であるとか窃盗であるとか、これを一般の犯罪類型と仮に言わせていただきますけれども、一般の犯罪類型については、当然のことでありますけれども、いわゆる通常の社会生活を営んでいるような方が罪を犯したりまた捜査の対象になるということは、これは通常あり得るわけであります。これに対して、テロ等準備罪における今までの説明によりますと、通常の社会生活を送っている人が捜査の対象になることはないというふうな説明なわけであります。

 今私が例を挙げた一般の犯罪類型に当たるものと今回審議の対象としているテロ等準備罪とは、何が違って、どういう論理からこの説明の違いが出てくると言えるのか、改めて説明をお願いします。

林政府参考人 御指摘のとおり、例えば犯罪主体の限定などが加えられていない一般の刑法犯等を想定いたしますと、これは、通常の社会生活を送っておられる方々もこういった主体の限定のない刑法犯、犯罪を犯す可能性はあるわけでございます。したがいまして、具体的な嫌疑を受けて、その場合に被疑者として捜査の対象となること、あるいはさらに処罰の対象となるということは当然あり得るわけでございます。

 しかし、今回のテロ等準備罪については、これについて、組織的犯罪集団の関与という要件を新たに設けておるわけでございます。テロ等準備罪を犯すためには、組織的犯罪集団、すなわちテロ組織、暴力団、薬物密売組織という違法行為を目的とする団体、こういった団体に属するなどした上で、一定の重大な犯罪の計画行為及びその実行準備行為を行う必要があるわけでございます。

 そのために、通常の社会生活を送っておられる方々、あるいは団体にすら属していないような方々、こういった方々とテロ等準備罪を犯すということとの間には、特に組織的犯罪集団という要件があることによって大きな隔たりがあるというふうに考えます。

 その点が、一般の刑法犯について、一般の方々が捜査の対象になるのか、処罰の対象になるのかというその御質問との関係でいえば、今回のテロ等準備罪は、そうした組織的犯罪集団の関与という要件を設けることによってそうした意味での一般の方々が対象とならないように、今回の構成要件にしたという次第でございます。

宮崎(政)委員 テロリズム集団その他の組織的犯罪集団という定義を改めてしたことによる、のりの高さというか、そういったことの御説明をいただいたかと思います。

 もう少し聞き方を変えますと、今度は捜査の過程みたいなところから考えて御説明いただきたいと思います。

 テロ等準備罪の嫌疑が生ずると捜査が開始される。捜査を実施することで、犯罪の成否であったり、例えば起訴に値する程度に嫌疑があるかどうかということが調べられる。その結果、起訴に値するだけの嫌疑が例えばないということで起訴されない、これは裁定書の記載でどうなるかということは別にしまして、嫌疑なしとかそういうところはちょっと別に置いておきまして、起訴に値するだけの嫌疑がないとなって起訴がされないというような段階を踏んでいったということを考えてみる。

 そうすると、一度捜査の対象となったが起訴に値するだけの嫌疑がなく起訴されなかったという人の中で、その理由が組織的犯罪集団にかかわりがなかったことであったとした場合には、結果として一般の方が捜査の対象になっていたということになるのではないかと思いますけれども、この点の御説明をお願いいたします。

林政府参考人 その委員御指摘のような事案、例えば組織的犯罪集団に関与しているという嫌疑があり捜査の対象になったものの、捜査の結果または判決におきまして組織的犯罪集団にかかわりがなかったと認められて不起訴や無罪になる場合、こういったものはあり得ると考えます。そういった場合の捜査の対象になった方々、こういった方々を一般の方々と言うかどうか。

 これについては、先ほど申し上げたように、どのような文脈でそれを使うかということにかかわってくると思います。犯罪者、犯罪として成立を認められた者との比較において一般の方々と呼ぶことももちろん可能でございますし、それはその文脈の中での言葉の使い方であろうかと思います。

 しかし、このような方々を一般の方々と仮に呼ぶといたしましても、テロ等準備罪につきましては、先ほど来申し上げましたが、組織的犯罪集団の関与等の要件を設けたことによりまして、通常の社会生活を送っておられる方々、すなわち、団体にはそもそも属していないような方々はもちろんでございますが、通常の団体に属して通常の社会生活を行っているような方々、こういった方々とテロ等準備罪を犯すこととの間には大きな隔たりがあるわけでございます。

 御指摘のような場合があるといたしましても、犯罪主体を組織的犯罪集団に限定していない例えば他の犯罪の場合とは異なりまして、今回のテロ等準備罪におきましては、我々が一般の方々と言っている、すなわち、何らかの団体に属していない人、あるいは通常の団体に属し、通常の社会生活を送っている方々、こういった方々には具体的な嫌疑が生じて捜査の対象となるということは考えられませんし、処罰をされないということは、今回のテロ等準備罪において組織的犯罪集団という要件を設けたことによってそのようになるものと考えております。

宮崎(政)委員 今の主体論、捜査の過程と主体論との関係で、前回の質疑の確認をちょっとさせていただきたいと思います。

 盛山副大臣に確認をさせていただきたいと思います。四月二十一日、前回の法務委員会での逢坂委員との質疑での御発言について確認をさせていただきます。

 副大臣の御答弁の中で、一般の方が実際の調査の対象になるということは大変限られていると思いますし、その次の、刑事訴訟法上の捜査となることも限られていると我々は考えているところでございます、こういう御答弁があります。

 一方、金田大臣の御答弁は、その日も、前回も含めてそうですけれども、組織的犯罪集団とかかわりがあるという嫌疑のある人について捜査をするものでありますから、一般の方々を捜査するものではない、この御答弁であるわけであります。

 この一般の方々について捜査の対象となるかということについて、きょう、少し整理をさせていただきましたけれども、盛山副大臣の方から、四月二十一日の答弁の御趣旨などを御説明いただきたいと思います。

盛山副大臣 今、大臣の答弁と私の答弁の趣旨が違っているのではないか、こんなことでございましたが、これまでの委員と刑事局長とのやりとりで相当明らかになってきたと思いますが、大臣が答弁されているときにお使いになった一般の方々と、私が四月二十一日の答弁で申し上げた、グレーの人というふうに申し上げたかと思いますが、それをどういうふうに考えるかということかと思います。

 私は、逢坂議員からの御質問に対して、組織的犯罪集団に属している黒の人、これに属さない例えば白の人、そして、その間にある、嫌疑が生じたグレーの人、こういうふうに三つに分類して御答弁をいたしました。

 大臣が御答弁された一般の人々というのは、組織的犯罪集団とかかわりがない方々のことを言うと理解しております。私が答弁で申し上げた白の方というのがそれに当たると思います。

 これに対し、テロ等準備罪の嫌疑を生じた人を私はグレーの人というふうに言ったわけでございますけれども、大臣の答弁あるいは今の刑事局長の答弁にもありますとおり、テロ等準備罪の捜査は、第一に組織的犯罪集団が関与する犯罪であるかどうか、第二に一定の重大な犯罪の計画があるかどうか、第三にその計画に基づく実行準備行為があるか、こういう三点について嫌疑がある場合に初めて行われるものでございますので、通常の団体に属しまして通常の社会生活を送っている方々にそのような嫌疑が生じることは考えられないと思います。私も、先日の答弁の中で、グレーの人は全くの一般の方、真っ白な方とは違うと申し上げたつもりでございます。

 もっとも、私は、無罪推定の考え方によりまして、テロ等準備罪の嫌疑が生じたグレーの人も、黒と確定されるまでは白であり、一般の方と呼ぶことができるのではないかと考え、そういう方も捜査の対象となり得るという意味で答弁をしたものであります。

 なお、私は、そのように、白の人、グレーの人、一般の方々というふうに分けて説明をしたわけでございますが、犯罪主体を組織的犯罪集団に限定しない他の犯罪の場合とは異なり、テロ等準備罪におきましては、組織的犯罪集団とかかわりがない方々、すなわち、何らかの団体に属していない人はもとより、通常の団体に属し、通常の社会生活を送っている方々は捜査の対象とはならず、処罰されることはないと考えております。

 このような私の答弁が大臣の御答弁とそごしているように受け取られて、私も大変残念でございますけれども、その私の説明というか意図は大臣と全く同じでございます。誤解を与えたとしたら、まことに申しわけないと思っております。グレーな人にも、具体的な嫌疑が生じている以上、組織的犯罪集団とかかわりのない人ではないのですから、大臣が御答弁されているとおり、一般の方々には含まれないと考えていただければと思います。

 よろしくお願いします。

宮崎(政)委員 ありがとうございます。

 同様に、井野政務官にも確認させていただきたいというふうに思います。

 同じく四月二十一日の答弁でありますけれども、政務官の方から、疑いがある段階ではあくまでもまだ一般の方々であり、それが、捜査の結果、これは組織的犯罪集団に属する人々だということになった段階で、組織的犯罪集団に属する方々になるという御答弁と、捜査の結果、それが組織的犯罪集団の方だったのか、そうでない一般の方だったのかということが言えるんだというふうに思います、嫌疑の段階では、まだ捜査中でありますので、確定的には申し上げることができないということであります、こういう御答弁をいただいているところであります。

 あわせて、きょう、法文の言葉ではありませんけれども、一般の方々がテロ等準備罪捜査の対象にならないというようなことの議論と大臣の御答弁との整合性について御説明をお願いいたします。

井野大臣政務官 御答弁申し上げます。

 四月二十一日の法務委員会での答弁についてでございますけれども、先ほど宮崎先生が御紹介していただいたとおり、一般論として、刑事手続においては、黒か白かの未確定の段階でこれを黒と言うわけにはいかないので、その点、申し上げられないというふうに答弁したつもりでございます。

 いずれにしても、先ほど刑事局長、副大臣が答弁したとおり、テロ等準備罪においては、我々がこれまで一般の方々と言ってきた、組織的犯罪集団とかかわりのない方々、すなわち、何らかの団体に属していない人はもとより、通常の団体に属し、通常の社会生活を送っている方々は、そもそも主体の限定の観点から捜査の対象にはならないし、処罰をされないというふうに考えております。

 いずれにしても、そういった意味では、捜査の対象で、組織的犯罪集団とかかわりのある方々は、通常、大臣が答弁されているとおり、一般の方々とは違う位置づけになるのかなというふうに考えているところでございます。

宮崎(政)委員 きょう、改めて、このことだけに限って質疑をさせていただきました。

 お聞きいただいて、組織的犯罪集団というものの取り上げ、定義、のりの高さと私は先ほど申し上げましたけれども、そういうこともぜひ御理解いただきたいし、また、この委員会でも質疑がされている点でもあります。

 一定の重大な犯罪などを目的としているテロリズム集団、暴力団、麻薬密売組織のようなものが組織的犯罪集団でありまして、これがテロ等準備罪の主体であり、三つの要件でよく出てきますけれども、主体の要件、計画、そして計画に基づき、かつ計画と別の実行準備行為という三要件の主体の部分でありますので、この主体として想定されている者が、普通に、市井の生活というんでしょうか、一般的な社会生活を営んでいるような方々と縁があるわけではないということを含めて、従前の法案との対比の説明もしていただいたということだと理解をしているところでございます。こういったところもしっかりと国民の皆様に御理解いただきたいということをお願い申し上げまして、私の質疑を終えさせていただきます。

 ありがとうございました。

鈴木委員長 次に、平口洋君。

平口委員 このたびの法案は組織的な犯罪の処罰及び犯罪収益の規制等に関する法律等の一部を改正する法律案というものでございますが、その大もとになった条約、すなわち国際的な組織犯罪の防止に関する国際連合条約、いわゆるパレルモ条約あるいはTOC条約について、外務省にまずお伺いをしたいと思います。

 まず、対象犯罪をリスト化、つまり限定してかかるということはTOC条約上許されるものであるかどうか、それについてお伺いをいたします。

飯島政府参考人 お答え申し上げます。

 本法案の立案に当たりましては、過去の国会審議等において受けたさまざまな御指摘を踏まえ、政府として真摯に検討を重ね、その結果として、今回、一般の方々が処罰の対象とならないことを明確にするという観点等から、本条約が認めるオプションを活用するという新しいアプローチでテロ等準備罪を立案いたしております。

 すなわち、法文上犯罪主体が組織的犯罪集団に限られることを明記した上で、対象犯罪につきましても、組織的犯罪集団が関与することが現実的に想定される重大な犯罪に限定することとしたものでございます。

 このようなテロ等準備罪の対象犯罪の限定は、本条約が対象犯罪を組織的な犯罪集団が関与する重大な犯罪に限定することを条約上のオプションとして締約国に認めていることを活用したものであり、条約の義務を履行できるものと考えております。

平口委員 限定してかかることは許されるということを確認したいと思います。

 次に、同じく外務省ですが、主要先進国の中で、テロ等準備罪の対象を、長期四年以上の自由刑が定められている罪よりも刑を狭くしている、つまり刑を引き上げるなど狭くしている国はあるかどうか、それについてお伺いをしたいと思います。

飯島政府参考人 お答え申し上げます。

 一般に、他国が条約を国内で実施するに当たりましていかなる立法措置を講じているかについて我が国として必ずしも網羅的にその詳細を承知しているわけではございませんが、その上で申し上げますと、G7各国のうち重大な犯罪の合意罪を犯罪化している米国、英国及びカナダにおきましては、いずれも対象犯罪について法定刑による限定を行っておらず、本条約に言う重大な犯罪よりも広い範囲を対象犯罪としていると承知しております。

平口委員 自由刑が定められている罪よりも狭くしている国はないということで理解したいと思います。

 次に、同じく外務省にお伺いしたいんですが、TOC条約締結のためには合意罪かあるいは参加罪というものを設ける必要があるのでございますが、主要先進国の国内担保法の状況はどうなっているのか、お伺いをしたいと思います。

飯島政府参考人 お答え申し上げます。

 各国の法制の内容につきましては、各国の法令そのものの規定ぶりのみならず、実際の運用や背景を含めて全体像の中で検討する必要があり、これを我が国政府として一概に論ずることは困難なところがございますが、その上で申し上げますと、OECD加盟国全てに対して照会を行いましたところ、我が国を除くOECD加盟国三十四カ国の全てから、重大な犯罪の合意または組織的犯罪集団への参加の一方または双方を犯罪化しているとの回答がございました。

 また、これらのOECD加盟国のうち、本条約の締結に伴い新たな立法を行って合意罪または参加罪を創設したと回答した国はオーストリア、カナダ、ニュージーランド、ノルウェーの四カ国であり、それ以外の大部分の国は、従前から必要な国内法を有していたため、新たに犯罪化を行う必要がなかったものと承知しております。

平口委員 OECD三十四カ国のほとんど全てが国内担保法があるということで理解をしたいと思います。

 外務省はどうもありがとうございました。

 そこで、次に法務省にお伺いしたいのですが、TOC条約を実施するため、組織的な犯罪処罰及び犯罪収益の規制等に関する法律第六条の二のテロリズム集団その他の組織的犯罪集団による実行準備行為を伴う重大犯罪の遂行の計画というものについてです。

 まず、テロ等準備罪の対象犯罪は、従前の六百七十六から今般二百七十七に絞ったというふうに言っておりますが、どのような基準により選んだのか、御説明いただきたいと思います。

金田国務大臣 平口委員から御指摘がございました質問にお答えをいたします。

 ただいま外務省から説明がございました国際組織犯罪防止条約は、重大な犯罪の合意の犯罪化に当たりまして、締約国に対し、国内担保法上組織的な犯罪集団が関与するものとの要件を付すことを認めているわけであります。

 この要件を付した場合には、犯罪化が義務づけられる合意の対象は組織的な犯罪集団が関与する重大な犯罪となることから、組織的な犯罪集団が関与することが現実的に想定される罪を重大な犯罪の合意罪の対象とすれば、本条約の義務を履行する上で問題ないと解されているものと承知をするわけであります。

 そこで、このような解釈に基づきまして、長期四年以上の懲役、禁錮に当たる罪のうち、犯罪の主体、客体、行為の態様、犯罪が成立し得る状況、現実の犯罪情勢等に照らしまして、組織的犯罪集団が実行を計画することが現実的に想定されるか否かという基準によりましてテロ等準備罪の対象犯罪を選択しまして、本法案により新設することとした証人買収罪を除きまして二百七十七個としたものであります。

平口委員 はい、わかりました。

 それでは、次に、テロ等準備罪の対象犯罪には具体的にどのような犯罪、罪が含まれているのか、お伺いをしたいと思います。

林政府参考人 今大臣から答弁がありましたように、テロ等準備罪の対象犯罪は、長期四年以上の懲役または禁錮の刑が定められている罪のうち、組織的犯罪集団が実行を計画することが現実的に想定される罪を選択したものでございます。

 このテロ等準備罪の対象犯罪、おおむね五つに大別できるものと考えております。一つはテロの実行に関する犯罪、次に薬物に関する犯罪、次に人身に関する搾取犯罪、次にその他の資金源犯罪、最後に司法妨害に関する犯罪、こうした五つに大別できるものと考えているわけでございます。

 まず、テロの実行に関する罪でございますが、これは、テロによる甚大な被害の発生を防ぐという観点から対象犯罪とするものでございます。具体的には、組織的な殺人や現住建造物等放火などが含まれます。

 次に、薬物に関する犯罪。これは、テロ組織を含む組織的犯罪集団が違法に資金を獲得する典型的な手段であることから対象犯罪とするものでございます。具体的には、覚醒剤、ヘロイン、コカイン、大麻の輸出入、譲渡などが含まれるわけでございます。

 次に、人身に関する搾取犯罪でございますが、これは、やはりテロ組織を含む組織的犯罪集団により行われるのが通常であり、違法に資金を獲得する手段ともなることから対象犯罪とするものでございます。具体的には、人身売買や集団密航者を不法入国させる行為などが含まれます。

 次に、その他の組織的犯罪集団の資金源に関する犯罪でございますが、これは、薬物に関する犯罪あるいは人身に関する搾取犯罪、今申し上げたこの二つの犯罪類型以外の、テロ組織を含む組織的犯罪集団が違法に資金を獲得する手段となる犯罪であることから対象犯罪とするものでございます。具体的には、組織的な詐欺や組織的な恐喝、高金利の契約などが含まれます。

 司法妨害に関する犯罪でございますが、これは、テロ組織を含む組織的犯罪集団が組織を維持するために行われることが想定されることから対象犯罪とするものでございます。具体的には、偽証でありますとか組織的な犯罪に係る証拠隠滅などがこれに含まれるものでございます。

平口委員 テロ等準備罪の対象犯罪として、法第六条の二第一項の別表第四において適用する別表第三第二十五号におきまして、森林法第百九十八条、保安林の区域内における森林窃盗の罪が含まれているのはなぜでしょうか。海産物を盗んでもテロ等準備罪には当たらないのではないかと思います。それについて御説明をお願いします。

林政府参考人 まず、今回、対象犯罪の中で保安林の区域内における森林窃盗というものがございます。森林法の百九十八条でございますが、これは、その区域内において産物を窃取する罪でございます。組織的犯罪集団が組織の維持運営に必要な資金を得るために計画することが現実的に想定されることから対象犯罪としたものでございます。

 この森林窃盗の対象となる産物でございますが、これは、樹木など森林から生育、発生するもののほかに、さらに森林内の鉱物、土砂、岩石等の産出物が含まれます。このような森林窃盗の対象となる客体には、例えば材木や工芸用としての価値の高い樹木、あるいはマツタケのような食材としての高価なもののほかに、水晶などの鉱物、あるいはコンクリート原料としての価値の高い砂などが含まれ、これらを大量に盗んで転売することにより相当の経済的利益を生ずる場合がございます。

 組織的犯罪集団が組織の維持運営に必要な資金を得るために保安林の区域内における森林窃盗の実行を計画する例といたしまして、例えば暴力団等が土砂を販売して利益を得る目的で、保安林内の土砂を大規模に掘削して盗むことを計画することなどが考えられるわけでございます。

 実際に、良質の山砂を盗掘して販売する目的で、保安林の区域内である国有林の中で長期間にわたり継続的に従業員等を使って重機を用いて山砂の掘削を繰り返して、時価約四千万円にも相当する約五万立方メートルを超える山砂を採取したという事例もあるものと承知しております。

 こうしたことから組織的犯罪集団が計画をすることが現実に想定されることから、こうした保安林の区域内における森林窃盗というものは対象犯罪としておるわけでございます。

 一方で、お尋ねの海産物を盗むこと、すなわち一般に密猟と呼ばれるものにつきましては、例えば漁業法第百三十八条、百四十三条等の罪に当たる行為と考えられますところ、これらの罪は、法定刑は長期四年以上の懲役または禁錮には当たっておりません。TOC条約においてテロ等準備罪の対象犯罪とすることが求められている重大な犯罪には該当しないために、テロ等準備罪の対象犯罪とはしていないものでございます。

平口委員 同じく別表に掲げられている罪についてですが、所得税法第二百三十八条第一項では、偽りその他不正の行為により確定所得申告に基づく所得税の額について所得税を免れた者は、十年以下の懲役もしくは一千万円以下の罰金に処し、またはこれを併科するというふうにありまして、偽りによる所得税を免れる行為を禁止しているものであります。そして、この法案の第六条の二別表第四第一号において適用する別表第三第五十二号の規定によりこの法律が適用されることとなっております。

 また、破産法二百六十五条でございますが、債権者を害する目的で債務者の財産を隠匿した者は、債務者について破産開始が決定したときは、十年以下の懲役もしくは一千万円以下の罰金に処し、またはこれを併科するとあり、これはいわゆる詐欺破産というものでございます。この罪についても、第六条の二第一項の別表第四第一号において適用する別表第三第八十五号によりましてこの法律が適用されることになっております。

 このような経済犯罪がテロ等準備罪の犯罪となっているのはなぜか、お伺いしたいと思います。

林政府参考人 御指摘のありました所得税法違反、偽りその他不正の行為による所得税の免脱等でありますとか破産法違反の詐欺破産、こういった経済犯罪についての対象犯罪として掲げている理由についてお尋ねでございました。

 これらの犯罪、こうした経済犯罪につきましては、組織的犯罪集団が組織の維持運営に必要な資金を得るために実行を計画することが現実に想定されると考えましたところから対象犯罪としているわけでございます。

 まず、組織的犯罪集団が偽りその他不正の行為による所得税の免脱等の実行を計画する例といたしましては、例えば暴力団がその組織の維持運営に必要な資金を得るために、組織的に所得を隠匿して脱税することを計画するといったことは考えられるわけでございます。

 また、組織的な犯罪集団が詐欺破産の実行を計画する例といたしましては、例えば暴力団が組織の維持運営に必要な資金を得るために、破産手続が見込まれる会社の財産を隠匿してその分け前を得るといったことを計画することなどが考えられるわけでございます。

 こういったことから、これらの犯罪も、組織的犯罪集団がその組織の維持運営に必要な資金を得るために実行を計画することが現実に想定されますことから今回の対象犯罪として掲げているわけでございます。

平口委員 はい、わかりました。

 次に、テロ等準備罪の対象犯罪には一般人が行い得る犯罪も含まれているところでございます。このことについて、不当ではないかという説がありますが、いかがでしょうか。

林政府参考人 およそ一般人が行い得る犯罪、対象犯罪としてはそのような犯罪が含まれておりますけれども、これは、テロ等準備罪におきましては、犯罪主体を限定しないで一般人が行い得る犯罪を合意の処罰の対象としている、あるいは計画の処罰の対象としているわけではございませんで、テロ等準備罪につきましては、対象となる団体を組織的犯罪集団に法律上限定した上で、今回の構成要件としているわけでございます。

 組織的犯罪集団は、組織的犯罪処罰法上の団体の中で、一定の重大な犯罪を行うことを構成員の結合関係の基礎としての共同の目的とする団体をいいまして、国内外の犯罪情勢等を考慮いたしますと、テロリズム集団のほか、暴力団、麻薬密売組織あるいは振り込め詐欺集団などの違法行為を目的としている団体に限られるわけでございます。

 一般人が行い得る犯罪というものは、例えば刑法上の犯罪は多数ございますが、そういった犯罪が今回の対象犯罪とされているといたしましても、こうした構成要件の全体の中で対象となる団体の限定などによりまして一般の方々がテロ等準備罪の処罰の対象となることはないわけでございますので、こうした構成要件のつくり方は合理的なものであると考えております。

平口委員 それでは、最後に大臣にお伺いをいたします。

 テロ等準備罪の対象犯罪にはテロとは関係のない犯罪も含まれているのですが、テロ等準備罪と呼ぶのは不適当ではないかという説があります。これについて御所見をお伺いいたします。

金田国務大臣 お答えいたします。

 テロ等準備罪の呼称は、国内外の犯罪の実態を考慮すると、組織的犯罪集団の典型がテロリズム集団であり、テロリズム集団による重大犯罪の典型がテロであること、また、テロ等準備罪は、計画行為に加えて実行準備行為が行われたときに初めて処罰するものであること、以上から、罰則の実態を反映したものとして適切である、このように申し上げます。

 なお、一般に、テロリズム集団を含む組織的犯罪集団は組織の維持拡大等のためさまざまな犯罪を行うものであり、テロ等準備罪の等とは、テロリズム集団を含む組織的犯罪集団が関与して実行されるテロリズム以外の組織犯罪を指すものであります。

平口委員 以上で私の質問を終わります。

鈴木委員長 次に、吉田宣弘君。

吉田(宣)委員 おはようございます。公明党の吉田宣弘でございます。

 本日も、テロ等準備罪の質疑の機会を賜りましたこと、委員長そして理事の皆様、委員各位に心から感謝を申し上げたいと思います。

 先日、大変残念な発言で前復興大臣がおやめになられました。新しい吉野復興大臣には被災地の皆様に本当に心から寄り添って活躍していただきたいと思いますが、吉野大臣はこの法務委員会にも所属されておったということで、本当に大きな期待を持っているところでございます。

 私は、震災のことを少し思いながら今話を聞いておりました。私は生まれ故郷は熊本ですが、熊本も地震がありました。そのときに、東日本大震災のときもそうだったんですけれども、火事場泥棒が発生したわけですね。特に、福島の件では、あそこは立入禁止区域になってしまって警察が取り締まれない、警察すら入れないというような状況の中、それでも被災者の財産を狙って窃盗に行く人間がいたと承知しております。

 すなわち、これは窃盗の既遂とか未遂とかいうレベルではもうどうしようもない、予備でもどうしようもない、そういった状況なんだろうと思います。その意味においても、実行準備行為の段階で取り締まる本法律というのは意義があることだろうなと思いながら、先ほど少し、うっすらと考え事をしたりしておりました。

 被災者がただでさえ大変な思いをしているところに、その財物を狙って、恐らく組織的犯罪集団であれば狙いを定めてとりに行く、そういった悪いやつらはやはり早期に検挙しておかなければ被災者が二重の苦しみに遭うというふうなことを思いながら、委員会で先ほどまで少し考え事をしていたところでございます。

 済みません、前置きが長くなりましたけれども、質問に入らせていただきます。

 本法案に関する質疑がこれまでなされてまいりましたけれども、かなり深みを持ってきたなということを率直に感じております。この法案については、条約との関係という側面、国内法整備という実体法としての側面、それから、この法律が成立して、それが運用される、執行される段階における手続法的な側面から、さまざま議論がなされたところだと承知をしております。

 まず最初に、そもそも論から少し入らせていただきたいと思います。

 テロ等準備罪、これはTOC条約の国内整備法としての必要性というところが認められているところでございますけれども、TOC条約に参加するためには、参加罪というものを国内法で整備しなさいということなのか、また合意罪というものを国内法で整備しなさいということなのか、どちらかを選択していいですよというたてつけになっているかと思います。

 そもそも論で恐縮ですけれども、本委員会でまだ触れられていないようなので、この点、なぜ参加罪というものの法整備でなかったのか、法務省に確認をしたいと思います。

林政府参考人 TOC条約の五条で、参加罪あるいは組織的な重大な犯罪の合意のいずれか一方あるいは双方の犯罪化を締約国に義務づけているわけでございますが、この中で、お尋ねの参加罪につきましては、その内容は、参加者が組織的な犯罪集団の犯罪活動に積極的に参加する行為だけでなく、組織的な犯罪集団のその他の活動に積極的に参加する行為、こういったことについても犯罪化することを義務づけることになります。特に、後者の方のような、特定の犯罪行為と結びつかないような行為を犯罪化することとなりますと、これは我が国の法制になじまないと考えられたところでございます。

 他方で、合意罪の方につきましては、これについては特定の犯罪の実行を合意することの犯罪化を義務づけておりますけれども、我が国では既に一定の犯罪については実行の着手前の共謀または陰謀が独立の犯罪とされていたこと、こういったことから現行法制との親和性も認められると考えられました。

 こういったことから、参加罪については我が国での導入というものがなじまないと判断したわけでございます。

吉田(宣)委員 お手元に資料をお配りさせていただきました。参加罪は日本の国内法秩序上はなかなかなじまないということでございますけれども、参加罪をいわゆる採用している国が二十七カ国あります。一方で、合意罪というものを採用している国が二十一カ国となっている。両方を採用している国もあったりするわけですけれども、日本の国内法としてはなじまないことから参加罪が選択されなかったということでございます。非常に賢明な判断であったろうと思います。

 私も、この参加罪というあり方は国内法的にはやはりなじまないし、参加罪であれば恐らくそれだけ人権制約の度合いも強いのであろうという理解をしております。

 その上で、合意罪を採用している二十一カ国中、条約のオプションとして認められている準備行為を要求し、なおかつ犯罪主体を組織的犯罪集団に限定している国は何カ国ぐらいあるのか、教えていただければと思います。

飯島政府参考人 お答えいたします。

 我が国からOECDに加盟している三十四カ国に対して照会を行い、重大な犯罪の合意罪の犯罪化を実施していると回答した二十一カ国のうち、御指摘の、合意の内容を推進するための行為を伴うもの及び組織的な犯罪集団が関与するものという双方のオプションを選択している旨を国連に対して通報している国はないものと承知しております。

吉田(宣)委員 ないということですね。

 いわゆる犯罪主体を限定し、準備行為を要求している合意罪のたてつけにしている国は、今テロ等準備罪が審議中ですけれども、もしこの法律が成立すれば、それはOECD諸国の中で日本だけということになるのでしょうか。済みません、重ねてですが、その点を確認させてください。

飯島政府参考人 お答え申し上げます。

 御指摘のとおりでございます。

吉田(宣)委員 OECD諸国の中で準備行為と組織的犯罪集団というような限定を加えている国はないということですが、オプションとして準備行為を付加すること及び主体を限定すること、それは犯罪の範囲を狭めていることになります。したがって、他の国と比べれば、恐らくそれだけテロ等準備罪というのは謙抑的、抑制的、人権にできる限り配慮した法律のたてつけになっているのだろうというふうな理解をしたいと思います。

 このように非常に抑制的なたてつけをしている法律であろうと思いますけれども、いまだに、思想、良心の自由というものを侵害する違憲立法であるというような御意見も聞かれるところでございます。先日お越しくださった参考人のお一人の方も、そのような趣旨のことをおっしゃっておったようでございます。

 では、金田大臣、憲法にかかわる大切なことなので御答弁いただきたいんですけれども、この法律、テロ等準備罪は思想、良心を処罰の対象とするものなのでしょうか。お聞かせいただければと思います。

金田国務大臣 お答えをいたします。

 テロ等準備罪におきましては、犯罪遂行の計画行為及びこれに基づく実行準備行為という行為を処罰するものでありまして、人の内心や思想、良心を処罰するものではありません。

 かつての組織的な犯罪の共謀罪におきましては、国会審議等において、内心が処罰されることとなるなどの不安や懸念が示されたわけであります。この指摘を重く受けとめて真摯に検討を重ねた結果、今回提出いたしました法案のテロ等準備罪におきましては、犯罪の計画行為に加えて実行準備行為があって初めて処罰の対象とするということによりまして、人の内心や思想、良心を処罰するものではないことについても一層明確にするとともに、処罰範囲も限定したものであります。

 このように、テロ等準備罪は、人の内心や思想、良心を処罰するものでないことは明らかでありまして、国民の不安や懸念を払拭できる内容になっているものと考えております。

吉田(宣)委員 大変に明快な御説明であったかと私は承知をしております。

 では、この点を少し一歩進めさせていただいて、先ほど申し上げました参考人の方のお話の中で、これは共産党の藤野先生が少し触れられた事例なんですけれども、花見か下見かというふうなお話があったかと思います。花見か下見かというものは外形からはわからない、したがって、心の中で何を思っているのか、内心を処罰するものである、違憲の可能性があるといった趣旨の御意見があったかというふうに私は記憶しております。

 でも、現行法上、刑法百四十八条の一項に規定されている通貨偽造罪、構成要件を少し省略して読ませていただくと、行使の目的で通用する通貨、紙幣を偽造した者は三年以上の懲役に処するという規定がされております。すなわち、行使の目的という目的犯でありますが、通貨を偽造している外形からは行使の目的があるのかどうかはわかりません。

 としますれば、先日の参考人の御意見をこのまま通貨偽造罪に当てはめれば、通貨偽造というのは行使の目的があるかどうかは外形的にはわからない、したがって、その偽造者というものは内心を処罰されるものであって、違憲の可能性があるということになろうかと思うわけですけれども、私は法律家ではございませんので詳細はわかりませんが、通貨偽造罪が違憲立法であるというような理論や学説やそういった御主張には私は触れたことがございません。

 もし皆様の中にそういった主張の方がいらっしゃるのであればぜひお聞かせいただきたいのですけれども、先日の参考人の方の御意見をそのまま当てはめれば、この通貨偽造罪は憲法違反ということになってしまおうかと思います。

 そこで、花見か下見かについて、これは実行準備行為にかかわる話でありまして、本委員会でも明らかになってきているところでございますが、この実行準備行為はいわゆる計画と切り離されて評価されるべきものではないと承知をしております。確かに、花見か下見かは行為の目的として行為者の主観にかかわるものであって、この主観を内心と表現することも日本語の使い方として間違ってはいないのであろうと思いますが、法的判断というのはそういうことではなかろうというふうに思っております。

 そこで、刑事局長にお聞きをしたいのですけれども、花見か下見かの事例で、花見目的で歩いている行為、実行準備行為に該当するような下見目的として歩いている行為のいずれかに該当するのは、行為者の主観とかいうものではなくて、私は客観的に判断されなければならないものであろうと考えておるのですけれども、刑事局長から御答弁をいただければと思います。

林政府参考人 テロ等準備罪における実行準備行為というものについては、一つに、計画とは別の行為であって、二つには、計画に基づいて行われる、そして三つには、その計画をした犯罪を実行するためという、この準備行為というものを言っておるわけでございます。そういった定義から、実行準備行為に当たるかどうかというのは、個別具体的な事実関係、特に計画において合意されている内容に照らして判断されるべきものと考えます。

 その際に、例えば行為の目的などについて捜査が行われることはあり得るところだと思います。委員も御指摘になられましたいわゆる目的犯の目的など、現行の刑事罰則におきましても行為者の主観が構成要件の一部となっている場合といったものがございますが、その場合と同様に、実行準備行為の認定に当たっては、客観的な証拠や供述の裏づけ証拠の有無、内容といったものを重視した上で、主観というもの、特に行為の目的などについての捜査も当然あり得るものと考えます。行為者が主観すること自体、現行法制との比較において、それ自体に問題があるわけでは全くないと考えております。

 その上で、花見か下見かというような御指摘の場合におきましても、まずは計画との関係で、当該行為が計画に基づくと認められるかどうか、こういった点がまず問題になります。その点の判断に加えまして、例えば当該行為をしている者が持っている携帯品でありますとか、あるいは当該行為をしている際の状況などの外形的な事情から、花見目的なのか、犯行場所の下見目的なのかといったことが当然区別され得て、その点についての捜査を尽くすということになろうかと思います。

 一般論を申し上げれば、もし、外形的に下見目的であったこと、こういったことが証拠上明らかにならなければ、これが実行準備行為とは認められないと考えられるわけでございます。

吉田(宣)委員 刑事局長、ありがとうございます。極めて明快なお話であったろうと思っております。

 次に、計画と準備行為の関係について質問したいのですけれども、我が党の國重理事の質問において、実行準備行為は処罰要件ではなくて構成要件であるということが明らかになったところでございます。

 では、質問の前提として、刑罰法規における構成要件の機能について、刑事局長からまずお話をお聞かせいただければと思います。

林政府参考人 構成要件は、犯罪として法律上規定された行為の類型でございます。いかなる行為が犯罪とされ、いかなる刑罰が科せられるかがあらかじめ国民の代表者である議会の制定した法律において明確に定められていなければならないという意味におきまして、国民を国家の恣意的な刑罰権の行使から保護し、国民の行動の自由を保障する、こういった機能を有すると考えられております。

 すなわち、法律により構成要件を明確に規定することによりまして、当該構成要件に該当する行為の類型以外の行為については、国民が行ったとしても処罰されることはなく、自由に行動ができる、こういった点で国民の行動の自由を保障する機能があると考えられております。

吉田(宣)委員 私も大学時代に刑法を学びまして、構成要件の機能として、今局長からお話があったような、法益を保護するということ、及び、極めて重要なのは、国民が自由に活動する範囲というものを明確にして、これをやらなければ処罰されることはないんですよといういわゆる自由保障機能、二つの機能を担っていると。

 この構成要件の機能をテロ等準備罪で、法益保護機能の観点から、この法律をつくることそのものが実は法益保護を図ることであろうと私は思っております。すなわち、これまで罪ではなかった範囲について、これを罪とすることによって、国民の自由であったり、財産であったり、社会の平穏であったり、また国家の秩序であったり、そういったものを保護する機能が果たされる、一方で国民の自由は十分保障されなければならないわけであって、そういった点から、この自由保障機能というものも決して忘れてはならない大切な機能であると私は理解をしております。

 そこで、計画と実行準備行為とは明確に区別ができるものであろうかと。例えば、計画を立てるために下見をしたというような下見行為は準備行為なのか。区別できなければ、今局長から説明があった自由保障機能が著しく害されるんだろうと思いますが、刑事局長からお話をいただければと思います。

林政府参考人 実行準備行為とは、計画とは別の行為であって、計画に基づき行われる犯罪を実行するための準備行為をいうわけでございます。このように、実行準備行為とは計画に基づき行われるものであるというものが法律上明確になっておりますので、計画が成立していない段階の行為が実行準備行為に該当すると認められることはございません。

 したがいまして、計画が成立したとは言えないような段階で仮に下見行為を行ったといたしましても、その下見自体は実行準備行為とは認められないということになります。

吉田(宣)委員 計画に基づいて行われる準備行為であるということが犯罪の成立要件であって、この点は構成要件上明確であろうというふうに思っております。

 これまで見た限りでございますけれども、本法律というのは、条約との関係で、まず参加罪をとらなかった、合意罪を採用した、しかも合意罪については準備行為を付加した、加えて主体も組織的犯罪集団に限定している、他国では例がないぐらい厳しいたてつけになっている。

 そしてまた、実体法としても、先日参考人で井田先生にお越しいただきましたけれども、井田先生の評価と申しますか、いわゆる三重の限定で濫用が防がれていると。すなわち、先ほど申し上げたように処罰というものを、これまで犯罪じゃなかった部分も処罰化する、これは早い段階で処罰するということでございますが、処罰の早期化をいかに多面的に侵食しないように範囲を限定していくかが大事であって、今回の法案は三重の限定をかけてしっかり濫用の防止等々を図ることができているというふうな評価もいただいているところでございます。

 加えて、構成要件の明確性という観点からも、先日の法務委員会において藤原先生から、裁判所で要求する程度にこの構成要件も明確になっているということも明らかになったところでございます。

 したがって、私は、この法案については、実に謙抑的で抑制的なたてつけになっている、徹底的にそれがなされているというように理解をしているところでございます。

 ただし、この実体法がいかに謙抑的で抑制的なたてつけになっている、それだけ国民の自由保障機能にも厚く配慮した規定になっているとしても、法運用の段階で濫用を許してしまえば、実は、これまでの政府の努力であったり、手続法たる刑事訴訟法などの規定とは離れて実体法として審議している我々の審議の努力というのは水泡に帰してしまうと言っても過言でなかろうと私は思います。

 話は多少変わりますけれども、昨今、警察の姿勢には若干問題があるのではないかなと私は思っております。

 例えば、車両取りつけ型のGPS捜査、これは最高裁によって強制処分であると断じられたところでございます。警察はこれまでの運用でこれを任意捜査というようにやってきたということですが、残念ながら最高裁は、そういう性質のものではなくて、これは強制処分なんだというふうな判断をしたところでございます。

 この点、やはり最高裁の判決というのは重く重く受けとめなければならないわけでございますが、警察においてこの判決を受けてどのような改善策をとられたのか、確認させてください。

高木政府参考人 御指摘の判決は、広域にわたる連続侵入窃盗事件において、被告人を含む犯人グループが夜間に車で高速度で広域移動するなどして尾行が困難であったため、ひそかにGPS端末を被告人らの使用車両に取りつけて、その位置情報を取得した事案に関するものでございます。

 こうしたいわゆるGPS捜査につきましては、これまで警察において任意処分として実施可能と解釈して運用してきたところ、任意処分の範囲内にとどまるか否かについては裁判所の判断が分かれていたものでございます。

 警察庁といたしましては、最高裁判所におきまして当該GPS捜査が強制処分に該当する旨の判断が示されたことを真摯に受けとめ、即日、都道府県警察に対して通達を発出し、こうした捜査を控えるよう指示したところでございます。

 今後の対応につきましては、判決の趣旨を踏まえ、関係省庁とも必要な連携を図りながら、適切に検討してまいりたいと考えております。

吉田(宣)委員 よろしくお願いします。

 ただ、それ以外にも、例えば監視カメラが問題になった事案もございました。冤罪が複数回発生した県警もございます。また、あろうことか、証拠を偽造した警察官がいた場所もあります。残念なことですが、いずれも九州の話でございまして、私は、警察は違法捜査などもってのほかである、国民を守ることが警察の責務であるということ、そういった使命感というものを高潔な心で日々養っていただきたいなと思います。

 その上で、テロ等準備罪に戻りましてお聞きしたいのは、組織的犯罪集団や計画を探知するためには現行の捜査手法では不十分であるから、本法律の成立をきっかけに新たな捜査手法が導入されて、国民の人権が不当に侵害されるのではないかという御心配の声があるようでございます。

 この点、非常に大切な点なので金田大臣に御答弁いただきたいのですけれども、お聞きしたいのは、このテロ等準備罪の捜査がどのように行われるのか。御答弁を願えればと思います。

金田国務大臣 吉田委員の御質問にお答えをいたします。

 テロ等準備罪につきましても、現在行われている他の犯罪と同様の方法で、刑事訴訟法の規定に従って必要かつ適正な捜査を行うことになります。

 また、テロ等準備罪の新設に伴って新たな捜査手法を導入するための法改正を行う予定はございません。

 そして、現行法におきましても、ひそかに行われる謀議等に関する証拠の収集というものは必要かつ適正な捜査により行われているところでありまして、テロ等準備罪の捜査につきましても、他の犯罪と同様に、刑事訴訟法の規定に従いまして証拠物や供述の確保が行われることとなります。

吉田(宣)委員 今の御答弁を受けて少し前に進ませていただきますけれども、テロ等準備罪が新設されることでメールやLINEが監視されるのではないかという御心配のお声があるとお聞きをいたしました。

 例えば、組織的殺人罪や薬物事犯というのは通信傍受法の適用対象でございます。かつ、これらの犯罪というのはテロ等準備罪の対象でもあります。

 そこで、端的にお聞きしたいと思います。テロ等準備罪の捜査に通信傍受が用いられることはあるのか。この点、刑事局長から御答弁をお願いしたいと思います。

林政府参考人 現行の通信傍受法では、通信傍受が許される範囲には非常に厳格な要件が定められております。そこに限定的に列挙された対象犯罪についての捜査でなければ通信傍受はできないわけでございます。テロ等準備罪はこの通信傍受の対象犯罪ではなく、したがいまして、その捜査として通信傍受を実施することはできません。

 また、テロ等準備罪を通信傍受の対象犯罪に追加する法改正については予定しておりません。

吉田(宣)委員 すなわち、この犯罪で通信傍受という捜査手法が行われることは現行法制度上ないということが一点と、これからそのような方向での法改正も行う予定はない、この二点が今のことで明確になったかと思います。

 我が国の警察に対するお気持ちというものを私なりにいろいろと推しはかって、次の質問を警察の方にさせていただきます。

 我が党の國重理事は、安倍総理に対する質問で、国民の懸念を真摯に受けとめ、違法捜査を防止し、捜査権が適正に運用されるよう一層のリーダーシップをとってほしいと訴えました。これに対し総理は、成立後も国民に不安や懸念を抱かれることがないよう捜査の適正確保にしっかり取り組むと答弁されました。この総理の答弁を決して霧散させてはいけないというふうに私は思っております。

 この総理の答弁を受けて、法運用の具体的任を担う官僚としての受けとめを警察からお聞かせいただければと思います。

高木政府参考人 警察庁といたしましては、捜査の適正確保に向けた取り組みを今後一層強化していかなければならないと受けとめております。

 具体的には、各都道府県警察の捜査幹部や捜査実務担当者を集めて開催する各種会議、警察庁の担当者が各都道府県警察に赴いて実施する巡回業務指導、警察大学校等における各級幹部や捜査実務担当者を対象とする各種教養等のさまざまな機会を捉えて、適正捜査の指導を継続的に徹底して行い、捜査の適正確保に努めてまいりたいと考えております。

吉田(宣)委員 しっかりやっていただきたいと思います。国民がしっかり警察を応援している、そういった環境づくりのためにも警察には真摯に取り組んでいただきたいと思いますので、どうかよろしくお願いいたします。

 時間が間もなく参りますので、問いをあと二問残しておりますが、一問にくくらせていただいて、一問飛ばす形で、最後の質問に移らせていただきます。

 テロ等準備罪には自首減免規定というものが設けられております。この自首減免規定の法文を少し見てみますと、六条の二のただし書きに「実行に着手する前に自首した者は、その刑を減軽し、又は免除する。」というふうに書いてあります。一方で、現行刑法の中にも自首に関する規定がされております。少し読ませていただくと、「罪を犯した者が捜査機関に発覚する前に自首したときは、その刑を減軽することができる。」というふうに記載されております。

 この二つの規定を比べてみると、違いがあることがわかります。刑法の規定によると、「減軽することができる。」というのは任意規定かとも思いますが、やらなくてもよいということなんだろうと思います。一方で、テロ等準備罪の自首規定は「刑を減軽し、又は免除する。」となっているわけですね。だから、減軽しなさい、場合によっては免除しなさいというようなたてつけになっているわけでございます。

 こういった法のたてつけから、テロ等準備罪においては自首したら免除されるという、これはかなり期待度が大きいものだと思うんですけれども、その結果、密告が推奨されたり、密告社会となっていく、また引っ張り込みなんかが行われて冤罪を生み出すのではないかという批判があるようでございます。これに対して、刑事局長から答弁を求めたいと思います。

林政府参考人 テロ等準備罪では自首による刑の減軽または免除は必要的なものとされておりますが、これは、自首を奨励して重大な犯罪が実行されて甚大な被害が生ずることを未然に防止する、こういったことの必要性が高いという政策的な配慮に基づいて設けているものでございます。

 密告社会になるのではないかという点でございますが、テロ等準備罪の適用対象というのは先ほど来申し上げているように組織的犯罪集団でございます。そして、テロ組織や暴力団組織による殺傷事犯の計画など、こういった組織的犯罪集団が関与する重大な犯罪の計画行為やその実行準備行為についての自発的な申告を促すというものでございます。

 そういった意味で、国民の一般的な社会生活というものとは無関係でございまして、これによって密告社会になるといった批判は当たらないものと考えております。

吉田(宣)委員 時間が参りましたので、質問を終わります。ありがとうございました。

鈴木委員長 次に、緒方林太郎君。

緒方委員 民進党、緒方林太郎でございます。

 きょう法務委員会の質疑に立たせていただきますこと、本当にありがとうございます。

 きょうは、共謀罪の関係ということで四十五分、質疑の時間をいただきまして、本当にありがとうございます。

 今回、共謀罪をテロ等準備罪と言いかえたことについて、最初に私の頭によぎった言葉というのがあります。これは刑法を考えるときに非常に重要な示唆をする英語での言葉でありまして、ハードケーシーズ・メーク・バッドロー、困難な事例が悪法をつくるという言葉があります。

 大臣、この言葉を知っていますか。

金田国務大臣 緒方委員の御質問にお答えします。

 今まで存じておりませんでした。

緒方委員 これは、アメリカ等々で、裁判事例で過酷な事例、非常に厳しい事例に対応しよう、対応しようとするが余り、法の解釈を変えたりとか、法の解釈を広げたりとか、そうすることによって結果として法律が悪法になっていく、そういう内容の言葉であります。これは重要な示唆を提供していると私は思います。

 恐らく、今回、共謀罪をテロ等準備罪と言いかえたことというのは、テロというハードケースをつくり出してしまえば、それによって大半の説明責任はそのハードケースに押しつけることができて、それによっていろいろなことが正当化されていく、こういうことじゃないかと思うんですね。

 実際にいろいろな方が、共謀罪のときは世論調査で数字が悪かった、けれども見てみろ、テロ等準備罪と名を言いかえた瞬間にこういうことになるじゃないかと。まさにテロリズムというハードケースをつくり出すことによって説明責任をそっちに押しつけて、そして法を強引に通していこうとする、この姿勢は問題だと思いませんか、金田大臣。

金田国務大臣 ただいまの御指摘に対しましては、私は同じ思いを持つものではありません。

緒方委員 テロという言葉を使っていることによって大臣そして政府の説明責任が軽減されている、そういう御意識をお持ちですか、大臣。

金田国務大臣 テロ等準備罪という呼称は、私は、罰則の実態を反映したものとして適切である、このように考えております。

 すなわち、テロ等準備罪の創設によりましてテロリズム集団を含む組織的犯罪集団による犯罪の実行着手前の段階での検挙、処罰が可能になるということでございまして、こうした犯罪による重大な結果の発生を未然に防止することができるようになる、これは非常に重要なポイントだと思います。

 また、国内外の犯罪実態を考慮すると、組織的犯罪集団の典型はテロリズム集団であります。そして、テロリズム集団による重大犯罪の典型がテロである、このように考える次第であります。

 さらに、テロ等準備罪は、計画行為に加えて実行準備行為が行われたときに初めて処罰するものである。

 したがって、テロ等準備罪は呼称も含めてこうした罰則の実態を端的に反映したものでありまして、国民の皆様にはこのテロ等準備罪の内容を御理解いただく上でも適切であって、御指摘は当たらない、私はこのように思っております。

緒方委員 過酷な事例、ハードケースを挙げることによっていろいろな措置を正当化していく、私は外務省にいましたのでよくわかりますけれども、世界各国を見てみて、これは典型的な独裁者の手法であります。古今東西、独裁者が使用してきたやり方であります。絶対にこんなことに味をしめちゃいけない。一九三三年、ドイツで法律ができたときも、こういったハードケースを挙げることによって成立したんじゃないですか。(発言する者あり)

鈴木委員長 御静粛に願います。

緒方委員 これは典型的な独裁者の手法であります。

 大臣、こういうやり方、絶対に味をしめるべきではないというふうに思いますけれども、いかがですか。

金田国務大臣 私どもはそのようには思っておりません。

 その後で申し上げたいんですが、今、世界じゅう、いろいろなテロの被害が出ております。そういう実態については、外務省がきょう御出席のようでございますから、そちらの方から説明をしていただければ、今の置かれた現状というものがわかるのではないかと思います。

緒方委員 それでは、テロ、テロと言われるので、その件について、きょうはしっかりと質疑をさせていただきたいと思います。(発言する者あり)

鈴木委員長 静粛に願います。

緒方委員 まず、テロ防止関連条約ということについてお伺いをいたしたいと思います。

 端的にお伺いをいたします。TOC条約はテロ関連防止条約ですか、岸副大臣。

岸副大臣 今、テロ防止関連条約、十三ほど挙げておりますが、その中には入っておりません。

緒方委員 しかし、その条約を国内に忠実に反映したものの名前はテロ等準備罪であります。テロ等防止関連条約であるというふうに思われますか、副大臣。

岸副大臣 名称としてテロ等準備罪が国際組織犯罪防止条約を担保するものであるかどうかということでございますか。済みません、ちょっともう一度はっきり。

鈴木委員長 緒方君、もう一度重ねてください。

緒方委員 テロ等準備罪処罰法と国会の本会議で安倍総理は言われました。テロ等の中にはいろいろな概念が含まれるんだと思います。テロ等防止関連条約だというふうに思いますかというふうに聞いています、副大臣。

岸副大臣 今回の国際組織犯罪防止条約のことでございますが、テロも含むより幅広い国際的な組織犯罪の一層効果的な防止をするための国際的な枠組みという位置づけでありまして、特定の態様のテロに絞ったものではないということでございます。

緒方委員 いや、イエスかノーかで答えていただければよくて、テロ等を防止するための関連の条約ですかというふうに聞いているんです、外務副大臣。

岸副大臣 今の御質問ですけれども、それは関連条約の十三条約のことをおっしゃっておられるんですか。

 そうじゃなくて、今回の国際組織犯罪防止条約、いわゆるTOC条約は、テロを含む国際的な組織犯罪を一層効果的に抑止するために、また、これと闘うための協力を促進するための国際的な法的枠組みを創設する条約でございます。

緒方委員 意味が通じないんですよね。私は何度も、イエスかノーかで答えてくださいと言っています。テロがあって、そして、テロ以外のさまざまなものが多分テロ等の中に含まれるんでしょう。それは言葉の流れからしてそうです。だから、テロ等を防止するための関連条約ですかという非常に単純な質問でありまして、イエスかノーかでお答えください、副大臣。(発言する者あり)

鈴木委員長 御静粛に願います。

岸副大臣 繰り返しになりますけれども、先ほどからのTOC条約は、テロを含む組織犯罪を一層効果的に抑止するという観点でございます。

緒方委員 それでは、テロの定義についてお伺いをいたしていきたいと思います。

 根源的な問いをさせていただきますが、テロ犯罪と刑法犯はどういうところが違うというふうに思われますか、大臣。

井野大臣政務官 テロ犯罪と刑法犯、テロの実行の部分、例えば殺人であったり、さまざまな今回の組織的犯罪の中に、いろいろ別表に書かれておりますけれども、当然包含するものも多いのかなというふうに思います。

緒方委員 テロ犯罪というのと刑法犯罪というのを分けて、テロ犯罪の方だけを取り出して、そして新たな刑法体系をつくろうとするわけですから、何かが違うわけですよね。テロ犯罪と刑法犯というのはいかなる意味において異なるというふうに思いますか、大臣。

盛山副大臣 今回、テロ等準備罪ということで新たな刑法の実体法を一つふやすことにはなりますけれども、ちょっとお尋ねの趣旨がなかなかうまく把握できないんですけれども、今までの例えば殺人罪ですとか窃盗罪ですとかそういうようなものだけでは、今回の条約を批准するに当たってそれだけでは十分ではないものですから、それで、今回入れるということを我々は考えております。

緒方委員 単なる一般的な刑法犯であれば刑法犯で罰すればいいんですけれども、ただ、さまざまなテロ条約を受けるときに、テロというものだけを特出しして、そしてそれで法体系をつくっていくわけですよね。なので私は聞いているんです。テロ犯罪と一般の刑法犯というものの違いについてどう思いますかというふうに聞いているんです、金田大臣。

金田国務大臣 通告がありませんので、その点は、テロリズムの定義として捉えて、私はお話をさせていただきました。(発言する者あり)

鈴木委員長 静粛に願います。

金田国務大臣 テロリズムとは、一般には、特定の主義主張に基づいて、国家等にその受け入れ等を強要し、または社会に恐怖等を与える目的で行われる人の殺傷行為等をいうものと承知しておる次第であります。

緒方委員 その趣旨はこの法律のどこに盛り込まれていますか、大臣。

金田国務大臣 テロリズム集団について、テロ等準備罪の組織的犯罪集団の典型としてわかりやすいものとして例示をしております。このテロリズムの用語は、今述べたテロリズム、先ほど述べましたね、その定義の一般的な意味を前提として用いていると申し上げます。

緒方委員 テロ行為というのは、行っている犯罪というのが例えば同じ犯罪であったとしても、行う人間の信条、政治的な信条で行うとか、そしてそれを受ける人間の心理状態とか、そういうものに影響するから、だからそれを特出しして、テロということで別個の法体系、切り出して……(発言する者あり)うるさいな。

鈴木委員長 御静粛に願います。

緒方委員 そういう心理状態があるから、それを切り出して……(発言する者あり)

鈴木委員長 御静粛に願います。

 続けてください。

緒方委員 そういう心理状態がまさにあるから、だから特別に切り出しているということなんですね。その概念がどこに盛り込まれていますかというと、ぽつんとテロリズム集団ということを書きましたというだけでは法体系として不十分だと私は思いますね。

 テロを防止するということであるからには、そのテロというものに適切に対応するための規定がどこか法律に盛り込まれていないとおかしいというふうに思いますが、金田大臣、いかがですか。

金田国務大臣 TOC条約を締結しまして、そしてテロ等準備罪ができる、そういたしますと、第五条の犯罪化義務を担保して国内法のテロ等準備罪の法律ができると、我が国がテロリズム集団による犯罪を含む国際的な組織犯罪の抜け穴となることを防ぐことができるということが、やはり国際的な逃亡犯罪人の引き渡しあるいは捜査共助が可能となる、そしてそれが充実をしていくということで、結局はテロ等犯罪の未然防止につながり、国民の安全、安心につながる、そういう考え方が条文にしっかりと出ている、私はこのように考えております。

緒方委員 では、再度外務副大臣にお伺いします。

 私は、外務省でテロ関連条約担当でありました。担当でありましたので、テロ条約の構造を大体知っております。出てくる用語というのは大体決まっていて、相手の意思とかに影響する、例えば英語でインティミデートという言葉を使ったりとか、そういうのが入ってくるのが常なんですね。特に今回の条約の中には、相手の心理に訴えかけるような、そういうことを要件としたものは全く盛り込まれておりません。これでどうやってテロ等を取り締まる条約だというふうに定義することができるんですか、副大臣。

岸副大臣 まず、一般論として、国際的な組織犯罪とテロ犯罪、テロ活動の間には強い関連性があるというふうに言われておるところであります。また、この条約の交渉過程におきましても、対象となる犯罪を具体的に列挙すべきというようなお話もございました。その中で、テロ活動その他を対象に含めるということについても議論がなされたところでございます。

 本条約を採択しました二〇〇〇年十一月の国連総会の決議におきましても、国際的な組織犯罪とテロ犯罪との関連性が増大しており、本条約がこのような犯罪行為と闘うために有効な手段であるということが指摘をされているところでございます。

 その上で、テロリズム集団が本条約に言う組織的な犯罪集団に該当する場合、そのような組織が行う犯罪は本条約の対象になるということでございます。

緒方委員 大体今ので構図がわかりました。つまり、今回のTOC条約というのは、テロを防止することを目的としているのではなくて、結果ですよ。目的じゃない。結果としてそういうこともあり得るということを言っただけであって、テロを防止する目的の条約ではないじゃないか。今の副大臣の言われた答弁も、結果としてそうなる、そうなることもあると。今副大臣が言われたことも、結果としてそうだ、目的じゃない、そういうことでよろしいですね、副大臣。

岸副大臣 この条約は、テロだけではなくて、テロを含む組織犯罪という意味であります。それを未然に防ぐという意味がこの条約にある、このように考えております。

緒方委員 しかし、目的であれば、条約の前文のところにテロリズムという言葉とかそういうものが出てくるはずであります。テロを抑止する目的だとかそういうことが出てくるのが常であり、それがないにもかかわらずテロ防止を目的としたということは言えないと思います。あくまでもこれは結果じゃないですか。それはそれでよろしいですね、副大臣。

岸副大臣 先ほども申したとおりなんですけれども、条約の文章自体にテロリズムという文言が含まれていないからといって、この条約自体がテロと関連しないということを意味するものではないというふうに考えております。

緒方委員 だから、私は関連性を否定していないじゃないですか。結果としてそうなるということを、本当にそうかどうかはともかくとして、それをあえて前提とした上で聞いているんです。これは、テロを防止する目的の条約ではなく、その結果として、場合によってはテロを抑止することがあり得る、それだけの条約にすぎないということでいいですねと聞いているんです、副大臣。

岸副大臣 今申しましたように、テロを含む組織犯罪を防止する条約であります。ですから、それは目的と考えてもよろしいんじゃないでしょうか。

緒方委員 条約にしても法律にしても、目的規定というのはどこに書かれるか。前文であります。前文のところに一言も出てこないものを目的だと言うのは、これは無理がありますよ。

 国際組織犯罪とリンケージがあることについては、私はこれは否定をしていません。ただ、その中で、では国際組織犯罪とテロ犯罪の関係がどうなのかということですけれども、国連の文書の中では、その間にリンクがあると言っています。国際組織犯罪、トランスナショナル・オーガナイズド・クライムとテロリストクライムの間にはリンクがあると言っています。あくまでもこの二つは別概念だと思いますけれども、どうですか。

岸副大臣 繰り返しになって恐縮なんですけれども、テロリスト、テロリズム犯罪というのは国際的組織犯罪の中に含まれている、このように考えておるところでございます。

緒方委員 それだと、言葉としておかしいんです。であれば、国際組織犯罪という概念があってその中にテロ犯罪が一〇〇%含まれるのであれば、そもそもリンクなんか生じないんです。中に全部含まれているんです。

 リンクについて懸念を表明したりいろいろしているのが、国連文書であります。つまり、そこから示唆されるのは何かといえば、国際組織犯罪という言葉とテロ犯罪というのは別概念であるということ、これが示されているじゃないですか。副大臣、そんな答弁はだめですよ。

鈴木委員長 御質問してください。(発言する者あり)御静粛に願います。

岸副大臣 まず、テロリズムにつきましては、その定義につきましては、国際法上は確立した定義があるわけではないということは申し上げておかなければいけないと思います。

 先ほど、一般的にはということで法務大臣からテロリズムにつきましてはお話があったとおりでございますけれども、その上で、国際的な組織犯罪とテロ活動との間の強い関連性があるということが指摘をされている、こういうふうに考えているところです。

 本条約の策定に向けた交渉過程においても、対象犯罪を列挙すべきではないかという議論の中で、テロ活動をその対象に含めるということの議論をされたところであります。ですから、本条約を採択した二〇〇〇年の十一月の国連総会の決議において、先ほど申しましたようなことが指摘をされたというところでございます。

鈴木委員長 速記をとめてください。

    〔速記中止〕

鈴木委員長 速記を起こしてください。

 緒方林太郎君。

緒方委員 国連の文書等々を見ても、副大臣、よろしいですか、さっき関連性があると言いました。英語にするとリンクであります。リンク・ビトウイーン何とかアンド何とかというのが、最後、この条約を国連総会で採択したときも、まさにそういうもののリンクがある、それを関連性と訳しているんだと思います。私、いろいろな国連文書を見ました。国連の安保理決議などを見ました。リンク・ビトウイーン・AアンドBというときに、どっちかがどっちかの包含関係にあることは一度もありませんでした。

 ということは、このケースでもリンクがある、関連性があるということですけれども、それはまさに一旦別物であって、それが関連性があるということなので、語義的に考えれば国際組織犯罪の中にテロ犯罪が含まれるというような言い方は成立しないでしょう、含まれるのであればそもそもリンクなんか出ないわけですよ、中に含まれているんですから、国際組織犯罪とテロ犯罪は概念として別物だということでよろしいですねと聞いているんです、副大臣。

岸副大臣 二〇一五年五月に作成をされました国連事務総長報告におきましても、テロ組織と国際組織犯罪集団との間には関係性がある、理論上は区別されるが、その区別は実際には必ずしも明確でない、こういうふうに書かれておるところであります。

 また、G7の文書の中でも、テロ対策の項目のもとで、TOC条約の締結を求め、そのための日本の努力を評価する、このようにも書かれているところであります。

緒方委員 今の答弁が正しいのであれば、テロ犯罪を含む国際組織犯罪という言い方は間違っています。一旦区別するものであるが、その境目がよくわからないということだけですね。

 ということは、これまでずっと国民にテロ犯罪を含む国際組織犯罪と言ってきたこと自体は間違いですね、副大臣。区別されると今言いましたね。

岸副大臣 区別される。その区別は実際には必ずしも明確でないというふうに事務総長がおっしゃっていることでありますけれども、実際そういうことであると思います。テロ犯罪を含む国際的組織犯罪ということだと思います。

鈴木委員長 速記をとめてください。

    〔速記中止〕

鈴木委員長 速記を起こしてください。

 再度の御答弁をお願いいたします。岸外務副大臣。

岸副大臣 先ほど申しましたけれども、国連事務総長報告においては、テロ組織と国際組織犯罪集団との間には関連性がある、理論上は区別されるが、その区別は実際には必ずしも明確でない、こういうふうにおっしゃっておるということです。

緒方委員 ということは、包含関係にないということですね、副大臣。

岸副大臣 これは含まれる、このように解釈をしております。

鈴木委員長 速記をとめてください。

    〔速記中止〕

鈴木委員長 速記を起こしてください。

 今のは包含関係にあるかないかの質疑でありますので、その答えをお願いします。岸外務副大臣。

岸副大臣 境目がはっきりしないということでございます。そういう意味で、重なっている部分があるということであります。

緒方委員 いや、重なっている部分があることについても、関連性があるから一部重なっている部分があるんだと思いますが、さっき副大臣が言われたのは、国際組織犯罪というのがあって、その中にテロ犯罪というものが全部含まれますからと、政府の答弁はこれまでそういうふうに言ってきているんです、テロ犯罪を含む国際組織犯罪と。一部のテロ犯罪を含むとか、そんなことは一言も言っていないですね。そういうふうに言うことによって国民を誘導しているわけです。

 けれども、先ほど副大臣が言ったのは何かといったら、国連事務総長報告でも、一旦区別される、区別されるけれども、その区別の境目がよくわからないと。副大臣の言っていることはさっきから矛盾しまくっているわけですよ。包含関係にあるのか、国際組織犯罪の中にテロ犯罪が全部含まれるのか、そうでないのか、それについて答弁してくださいとさっきから聞いているんです、副大臣。

岸副大臣 テロを含む国際的組織犯罪ということで申し上げれば、国際的組織犯罪とテロ犯罪、これはかなりの部分で重なっているということだと思いますが、そういうことであると思います。

緒方委員 区分されていると言ってみたり、含まれると言ってみたり、かなりの部分がと言ってみたり、何一つとして安定しないんですよね、答弁が。副大臣、はっきりとした答弁をお願いします。

岸副大臣 かなりの部分というのは除外していただいて結構ですけれども、いずれにしても、国際的組織犯罪とテロ犯罪、これは重なっている部分があるということです。(緒方委員「重なっている部分がある、重なっている、どっち」と呼ぶ)重なっている。

 そして、重なっていない部分のこともおっしゃるかもしれませんが、例えばテロ犯罪については、個人の犯罪等もあるということであります。

鈴木委員長 速記をとめてください。

    〔速記中止〕

鈴木委員長 速記を起こしてください。

 岸外務副大臣。

岸副大臣 繰り返しの部分もございますが、先ほど申しましたとおり、国際的組織犯罪とテロ犯罪の間は、区別は必ずしも明確ではないというのが事務総長報告でございます。その上で、ですから、この国際的組織犯罪とテロ犯罪は重なっている部分があるということだと思います。

 そして、重なっていない部分については、個人で行っているテロ等については今回の対象ではないというふうに考えているところでございます。

緒方委員 そうすると、テロ犯罪を含む国際組織犯罪という言い方自体がミスリーディングですね。それはミスリーディングですよ、含まれない部分があるわけですから。それはミスリーディングですね、副大臣。

岸副大臣 これは先ほどから申していますけれども、テロ犯罪がそこの中に含まれている部分があるわけですから、ミスリーディングではないと考えております。

緒方委員 それでは、先ほど後ろから質問主意書でも出せばいいじゃないかという話がありましたので、質問主意書に基づいて質問をさせていただきたいと思います。

 テロリズムの定義についてですけれども、一般的な意味として承知しているものとして、何と言っているかというと、「特定の主義主張に基づき、国家等にその受入れ等を強要し、又は社会に恐怖等を与える目的で行われる人の殺傷行為等をいうと承知している。」と。これについて、特定の主義主張とは何ですかと聞いたら、「一般的な意味としてのテロリズムに係る集団が行う殺傷行為等のよりどころとなる主義主張」ということです。

 この特定の主義主張をさっき言った定義のところに入れると、テロリズムという言葉を説明するときに、その説明の中にテロリズムという言葉が入ってくるんです。自家撞着を起こしていませんか、副大臣。

岸副大臣 今の御質問には同意できません。

鈴木委員長 では、再度お願いします。

岸副大臣 今の委員のお問い合わせには同意することができません。

緒方委員 いやいや、私は論理学の説明をしているわけであって、テロリズムという言葉を説明するときに、全部いろいろなものを代入していくと、その定義の中にテロリズムという言葉が入ってくるんです。これだと、どんどんどんどん議論がループしていって、何がテロリズムなのかということについてわからないじゃないですか。これはまさに自家撞着なんですよ。これが政府の答弁なんです。それがおかしいでしょうということを聞いているんです、副大臣。

鈴木委員長 速記をとめてください。

    〔速記中止〕

鈴木委員長 速記を起こしてください。

 岸外務副大臣。

岸副大臣 テロリズムの定義につきましては、先ほどの主意書の前段の部分にもございます。また、先ほど大臣からの答弁にもあったとおりでございますが、この質問主意書の中身の部分につきましては、通告をいただいておりませんでしたので、詳細についての答弁は今は差し控えさせていただきたいと思います。

緒方委員 では、今考えていただいても結構ですよ。けれども、これは政府答弁で、恐らく外務省も法務省も協議にあずかって、この中のどなたか、後ろにおられる方から話を聞いていただいても結構ですよ、しっかりと詰めて答弁書を書いたはずですね。

 そのテロリズムの一般的な定義の中に特定の主義主張とある、そしてその特定の主義主張を説明してくれと言ったら、その言葉の中にテロリズムという言葉が入ってくる。これであれば、まさにこの法案の、テロ等準備罪ということでテロという言葉が入ってきているにもかかわらず、そのテロの中身が自家撞着を起こしている内容のものであるというのは、これは国民からして納得のいくものにならないでしょうというふうに聞いているんです。

 まさに私は見て思いましたよ。本当にこれは変な答弁だなと思いましたけれども、これが政府の見解であるのであれば、この自家撞着についてどう思われますかということを聞いているんです。外務副大臣でも法務大臣でも結構ですよ。どちらでもいいですから、このテロリズムの定義が自家撞着を起こしていることについて御答弁ください。

岸副大臣 先ほども申しましたとおり、事前に御通告をいただいておりませんでしたので、直接に正確にお答えをすることは今この場では困難、このように考えております。

緒方委員 けれども、自家撞着を起こしていることについては、テロリズムの定義の中にブレークダウンしていくとそこにテロリズムが入っているということは、論理として、ループをして自家撞着になるということはお認めいただけますね。これはどちらでも結構ですよ。答弁いただければと思います。

岸副大臣 繰り返しになって申しわけございませんが、御通告をいただいていないわけであります。

 また、この主意書につきましては、この答弁書のとおりである、このように考えております。

緒方委員 答弁書のとおりだということなんですけれども、答弁書のとおりだと、本当にそんなに難しい話ではなくて、単にテロリズムの定義というのがあって、特定の主義主張と書いてある。その言葉は何ですかと聞いたら、それを説明するのはテロリズムを使わないと説明できない。そもそもこの特定の主義主張というのは、一般的な意味においてテロリズムに係る集団が行う殺傷行為のよりどころとなる主義主張と。つまり、テロリストが起こしている行為は、もともとの主義主張があれば、その主義主張がある限りにおいては特定の主義主張になるわけであって、それがテロリズムの定義だと。はっきり言って、これは何を言っているかわからないんですね。何を言っているか本当にわからないです。

 大臣にお伺いをいたします。今私が言っていることをわかっていただけていると思います。自家撞着を起こしているというふうに思いませんか、金田大臣。

金田国務大臣 委員が今御指摘されている内容については、この条約の考え方、外務省が説明をしている中での話でございますので、突然振られましたが、私から申し上げるわけにはいきませんが、ただ、自家撞着をしているという意味を、通告のない中でのその御質問については、やはりぜひともわかりやすく事前に通告していただくというのがよろしいんじゃないかと思います。

緒方委員 私は質問主意書を二回も出しています。今、後ろの方からブリーフを受けていただいて結構だというふうに言っているんです。後ろにおられる方、誰か、大臣か副大臣にブリーフしたらどうですか。してくださいよ、今。今待ちますから。皆さん方は詰めて、内閣法制局と議論したはずですよ。であれば、まさにここで自家撞着を起こしているような理屈を、どこかであなた方はそれを論理立てて説明できるようにしているはずであります。それを今説明していただいて結構ですので、誰か答弁ください。

鈴木委員長 速記をとめてください。

    〔速記中止〕

鈴木委員長 速記を起こしてください。

 緒方林太郎君。

緒方委員 では、刑事局長。

林政府参考人 自家撞着という意味は、私、即座に理解できませんが、言われておりますその答弁書の中で、「「特定の主義主張」とは、一般的な意味としてのテロリズムに係る集団が行う殺傷行為等のよりどころとなる主義主張をいい、」というところの部分についてお答えしているのは、これは、特定の主義主張というものが、テロリズム集団が行う殺傷行為等のよりどころとなる主義主張であるという関係性を答弁したものと私は理解しております。

 そういった意味において、質問に対してまた同じことで答えるとか、あるいはお答えの中に質問の前提が全て含まれているという意味での自家撞着そのものというふうな理解は私はしておりません。

緒方委員 閣議決定している答弁書ですよ。私は、特定の主義主張が何かというところで、次の答弁書で来たものをそのままぱかっとはめたら、それは単に関係性を述べたものであって、それが全てではないみたいな言い方をされると、閣議決定した質問主意書なんか何にも信頼することはできないですよ。

 今私が言っているのは、本当に単純に、テロの定義の中に特定の主義主張に基づくとあるから、その主義主張は何だと聞いてみたら、答弁書でこういうものだと考えていると言うから、それを入れたら全く議論がぐるぐるぐるぐる回って成立しないでしょうと。何か関係性とかそういう言葉をいろいろ使われましたけれども、はっきり言って、刑事局長の言っていることは全く論理的じゃないですよ。もう一度答弁ください。

林政府参考人 この場合の特定の主義主張というものが、テロリズムの一般的な意味としての特定の主義主張のどういうものを意味するのかという御質問なのかということを前提として、その中身を御説明したわけではなくて、この特定の主義主張というのは、主義主張がテロリズムに係る集団が行う殺傷行為等のよりどころとなっている、そのような主義主張を意味しております、このようにお答えしているわけでございまして、全く同じ質問の中身を答えの中に入れ込んで、その質問に対して答えていないという性質のものではないと考えます。

緒方委員 いや、そう言ってしまうと、だってこれは答弁書に「お尋ねの「特定の主義主張」とは、一般的な意味としてのテロリズムに係る集団が行う殺傷行為等のよりどころとなる主義主張をいい、」ということで書いてあるわけですから、そこはまさにそういうものなわけですよ。それをもともとの定義のところに入れたら理屈が成り立たないですよね。理屈が成り立たないから、だからテロが何であるかということを国民はわからないわけですよ。

 皆さんはよく言われます、わかりやすい事例を挙げたと。わかりやすい事例を挙げてテロリズム集団と言っているけれども、そこには、まさに看板に偽りありであって、そのテロリズムが何であるのかということについて実は中身が全くわからない、議論がループするようなものを置いて、あとは雰囲気だけ感じて、テロリズム集団はこんなものだと大体思ってくださいねということで例示をしている。全然わかりやすい事例じゃないじゃないですか。この主意書の答弁からテロリズム集団が何であるかということについてイメージできる人は全然いないですよ。そんなことはわからないですよ。

 そういう雰囲気だけで、テロリズムというのは、テロリズム集団というのは大体こんなものだと思ってください、そういう一般的なすごく曖昧な定義だけを置いて、それでわかりやすい事例になるんですかね、金田大臣。

金田国務大臣 テロリズムというのは、テロ等準備罪のテロリズム集団につきましては、先ほども初めに申し上げましたが、組織的犯罪集団の典型としてわかりやすいものを例示したものであって、このテロリズムの用語は、今述べたテロリズムの一般的な意味を前提として用いているものであります。

緒方委員 今のは全然答えていないです、大臣。わかりやすくないじゃないですか。単にすごく不安をあおるだけですよ。

鈴木委員長 再度質問してください。

 速記をとめてください。

    〔速記中止〕

鈴木委員長 速記を起こしてください。

 緒方林太郎君。

緒方委員 テロリズムは国際的な定義がないということ、それは私もいろいろな議論の中でよく存じております。しかし、国内で一般的にこういうものだというふうに言っている。

 しかも、特定秘密保護法、同じく担当ですね、特定秘密保護法では「政治上その他の主義主張に基づき、」という定義が、テロリズムの定義としてございます。なぜ、この特定秘密保護法におけるところの「政治上その他の主義主張に基づき、」という言葉を「特定の主義主張に基づき、」というふうにこの答弁書で言いかえているんですか、大臣。

井野大臣政務官 私の方から少しお答え申し上げます。

 他の法律においては、テロリズムについて「政治上その他の主義主張に基づき、国家若しくは他人にこれを強要し、又は社会に不安若しくは恐怖を与える目的で人を殺傷し、又は重要な施設その他の物を破壊するための活動」などと定義している例があると承知しておりますが、それぞれの法律におけるテロリズムの意義と今回の法案におけるテロリズムの意義との異同については、一概にお答えすることは困難であるというふうに考えます。

緒方委員 これまで、議法でドローンの法律と特定秘密保護法、この二つの中にテロリズムの定義があります。それは、政治上の主義主張に基づきと。

 一概に答えるのは難しいということでありましたけれども、しかし、それらの法律においては十分絞り込んでいるわけですよね。政治上その他の主義主張ですから、代表的なものが政治上だと。それをあえて覆すだけの理由は何ですかということを聞いているんです。では政務官。

井野大臣政務官 今回の法律、テロ等準備罪のテロリズムというのは、先ほど来申し上げているようにあくまで例示でございまして、テロリズムという定義を明確にする必要というものはこの法律においては肝ではないというふうに考えております。

 そういった観点から、テロリズムという言葉は、先ほど申し上げたとおり、一般的な意味を前提として用いているということでございます。

緒方委員 すごい答弁でしたよ。テロリズムという言葉を定義する、これは全然この法律において肝でも何でもないと。すごい答弁でした。

 最後に、一言だけ言わせていただきます。

 なぜこういうことが起きるかというと、政治上その他の主義主張としてしまうと、今回のテロ等準備罪というものの中でカバーできないものがあるんですよ。だから特定の主義主張と言いかえているんです。範囲を広げているんです。けれども、範囲を広げた結果として、これが物すごく苦しいから、それが何なのかと聞かれてしまうと、自家撞着を起こすような説明にしかならないわけですよ。だから問題だと言っているんです。

 この点、引き続きやらせていただきますので、質問を終えさせていただきます。

 ありがとうございました。

鈴木委員長 次に、階猛君。

階委員 民進党の階猛です。

 まず、前回、私の質疑のときに問題となった政府参考人の取り扱いについて、委員長にお尋ねします。

 前回、またその前の質問のときもそうでしたけれども、こちらから要請していないのに、政府参考人の招致をこの委員会の多数決で決めたということは衆議院規則違反だというふうな指摘を私はしました。

 また、改めて調べてみますと、与野党の申し合わせで、政府参考人の招致については質疑通告の時点であらかじめ要請するということで、私はそのような要請はしておりません。このルールにも違反していたということであります。

 今後の本法案審査における政府参考人の取り扱いについてどのように考えるのか、委員長から御説明をお願いします。

鈴木委員長 では、私の方から。

 本法案は、新たな刑罰規定を設けるものであり、国民の関心が非常に高く、与野党ともの充実した審議と国民への詳細な情報提供が必要であると考えております。そのために、細目的または技術的事項につきましては、刑事罰則の理論や捜査、公判の実務などに精通した法務省刑事局長が詳細な答弁を行う必要性は非常に高いものと考えております。

 そういったことから、四月二十一日の委員会におきまして、本案審査中の法務省刑事局長の常時出席が必要と判断をし、衆議院規則第四十五条の三にのっとり、お諮りしたものであります。

 その一方で、法務省刑事局長が出席していることによりまして質疑者の質問権を制限するという意図はありませんので、委員長としましては、答弁者の指名に当たり、質疑者の意向を尊重することといたします。

 ただし、細目的または技術的事項に関する質問が繰り返し度を超すと思われる場合には、政府参考人を指名することがあり得ることを付言しておきたいと思います。

 以上です。

階委員 今、申し合わせについて私は引用しました。これは明文でこう書かれています。政府参考人を招致する場合は、質疑通告の時点であらかじめ要請し、理事間協議を経て、委員会において議決し、委員長が招致する。あくまで、質疑通告の時点であらかじめ要請というのが前提なわけです。これには反していると思いますが、いかがでしょうか。

鈴木委員長 言葉上はそうかもしれませんが、内容として必要だと思って判断しました。

階委員 この申し合わせというのは、与野党の、国会審議を活性化しようということで、平成十一年に定められた重要な取り決めだと思っていますけれども……

鈴木委員長 平成十二年です。

階委員 失礼しました、ちょっと今見てみますね。平成十二年ですね、平成十二年一月十八日の申し合わせ事項です。

 これにはさっきのようなことが書いてありますけれども、これを委員長の一存で変えるというのは、今までどこの委員会でもなかったことであります。確かに、この法案は、国民生活にとって重大な法案で関心も高い。ただ、そのような法案はこれまでもたくさんあったわけでございます。

 なぜこの法案に限ってそのような特別扱いをするのか、申し合わせ違反をするのか、この点についてちゃんとわかるように説明してください。

鈴木委員長 まず、平成十二年の申し合わせは今のとおりでありますが、十一年の申し合わせ事項では、政府参考人に行うよう努めるものとする、そういう項目もございます。つまり、政府参考人を活用してしっかり議論しろというのもありまして、今回は、我々も何度も何度も政府参考人の活用をお願いいたしました。

 ただ、残念ながらそうした許可といいますかがありませんでしたので、政治家同士の議論が大事なことはわかりますが、それだけでは議論が深まらぬという判断のもとに、衆議院規則四十五条三に基づいて、委員会で諮って決定したものであります。(階委員「ちょっととめてください」と呼ぶ)

 速記をとめてください。

    〔速記中止〕

鈴木委員長 速記を起こしてください。

 階君。

階委員 私もそうでしたけれども、技術的、細目的事項を伺う場合には後日政府参考人に質問しますと私も言いました、前回のときにも。また、私どもの同僚議員も政府参考人を適宜質問の答弁者に加えております。

 だから、私どもは別に、必ずしも政府参考人の同席を絶対認めないという立場ではないわけです。だからこそ、私たちは、このような前例のないやり方で質疑を行うべきではないということを強く主張しました。

 私は法務大臣の答弁能力が欠如していることを如実に示すことが今回の取り扱いではないかと思うんですが、大臣の答弁能力に問題があるからこのようなことになったんじゃないですか、違いますか。我々の問題ですか、どちらの問題ですか。

鈴木委員長 それについてはお答えをしかねます。

階委員 では、前回の私の質疑の中で問題になったのは、私のこのような質問でした。共謀罪の捜査は実行準備行為の後に行われるのでしょうか、それとも前に行われるのでしょうか、こういう質問でした。

 私は、捜査という場合に強制捜査という限定を加えてはおりません。ですから、強制捜査、任意捜査、全てを含めて聞いているわけです。これは極めて本質的な質問であって、私は全然技術的、細目的事項ではないと。まさに国民の皆様にとっては重大な関心事であります。だからこそ、取り締まる側の刑事局長、検事出身ですよ、取り締まる側に答弁させないで、国民の代表である大臣みずからが答弁すべきだと考えたわけです。

 衆議院規則四十五条の三、細目的または技術的事項の私の解釈、これは間違っているということになりますか。委員長、お答えください。

鈴木委員長 間違っておりません。

階委員 間違っていないということでした。

 そこで、間違っていないということであれば、私は当然、答弁に立った刑事局長に対して厳しく抗議せざるを得ません。それは正当な国会での議論だと考えます。

 ところが、あろうことか、そうした抗議に対して自民党の議員から、今のはテロ準備行為ではないかというようなレッテル張りの不規則発言がありました。

 これは法務大臣にお尋ねしますけれども、今回の法案については、いわゆる共謀罪の創設が国民の自由な言論を萎縮させ、権力に対して物言えぬ社会をもたらすのではないかという懸念、不安が国民の間に広まっているわけです。その法案を審議し、国民が注視するこの委員会の最中に、野党議員の正当な根拠に基づく抗議をテロ準備行為とレッテル張りし、権力に物を言うのが犯罪行為であるかのような空気をつくるのは極めて問題だと思います。

 大臣の認識を伺います。

金田国務大臣 階委員の御指摘、幾つか中身があったと思います。

 ある言動にテロ等準備行為とレッテルを張ることによって国民の自由な言動を萎縮させること、その可能性があるのではないかというこの法案の中身の議論としましては、申し上げます、テロ準備行為とレッテルを張るという意味が明らかではなくて、おっしゃる意味のレッテルを張るという意味が明らかではありませんし、お答えすることは適当でない、このように考える次第であります。

 お尋ねの中身が……(発言する者あり)

鈴木委員長 御静粛に願います。

金田国務大臣 お尋ねが当委員会における審議の経過に関してのものであるならば、法務大臣としてはお答えする立場にはないので、お答えすることは差し控えさせていただきます。

 しかし、テロ準備行為とレッテルを張るという意味が明らかではなくて、お答えすることも適当ではない、このように考えております。

 ただ、テロ等準備罪の、この議論の中身の議論に関しましては、レッテルを張ることによって国民の自由な言動を萎縮させる可能性があるのではないかということに対しましては、私どもは、そういう思いやそういうことには絶対にならない、このように考えておる次第であります。

階委員 今も、私がこの問題を取り上げるとおさまりがつかなくなるぞみたいな、まさに私のこの国会での発言を弾圧するような不規則発言がありました。そこで……(発言する者あり)

鈴木委員長 御静粛に願います。御静粛に願います。(発言する者あり)御静粛に願います。

階委員 議場で暴行に及んだという不規則発言が、今、宮崎委員からありました。これはどうぞ記録にとどめてください。

 確かに、私は規則違反だとする抗議を、今のはテロ準備行為じゃないかと不規則発言をした土屋理事に対して詰め寄った、そのときに肩に手をかけたのは事実であります。不快な思いをさせたのであれば、おわびをします。

 しかしながら、先ほど述べたとおり、野党議員の正当な理由に基づく抗議をテロ準備行為とレッテル張りし、権力に物を言うのが犯罪行為であるかのような空気をつくるのは極めて問題であります。

 委員長にお願いしたい。

 土屋理事の先日の不規則発言が本法案に対する国民の懸念、不安を広め得るものであったということに関して、土屋理事の謝罪と発言の撤回をさせていただきたいと思います。委員長にお願いします。

鈴木委員長 速記をとめてください。

    〔速記中止〕

鈴木委員長 速記を起こしてください。

 この件につきましては、後刻理事会で協議します。

 階猛君。

階委員 私は、今一番懸念しているのは、この法案ができることによって物を言えない空気が世の中に広まることを懸念しているわけです。

 その重要な法案を審議している過程の中で、まさに物を言えないような空気をつくる発言、あるいは、この問題を取り上げたらおさまりがつかなくなるぞといった発言、私はこんな発言で萎縮するわけにはいきません。どうぞ理事会で私の行動を取り上げていただいて結構でございます。

 私は……(発言する者あり)

鈴木委員長 御静粛に願います。

階委員 私は、正当な抗議を行いました。(発言する者あり)

鈴木委員長 静粛に願います。

階委員 それに対して根拠なく犯罪者呼ばわりすることは、刑法でいえば名誉毀損あるいは侮辱罪に該当し得るんです。一般社会であれば、名誉毀損された被害者は加害者を現行犯逮捕できます。その際、必要相当な範囲で有形力を行使することもできます。これはぜひ国民の皆様に知っておいていただきたいと思います。

 私がここで泣き寝入りすることは、言論弾圧に対する合法的な対抗手段ですら国民が行使できないという誤ったメッセージを伝えることになるから、私はあえてここで取り上げさせていただいております。

 重ねて委員長にお願いいたします。

 土屋理事のさきの不規則発言が本法案に対する国民の懸念、不安を広め得るものであったことに関し、謝罪と発言の撤回をさせていただきたいと思います。よろしくお願いします。

鈴木委員長 本件につきましても、後刻理事会で協議します。

階委員 その上で、問題の質問、今回の共謀罪の捜査は実行準備行為の後に行われるのかどうかということに対して前回大臣が強制捜査はできないと答弁した、その後に刑事局長が出てきたわけですけれども、先ほど言ったとおり、刑事局長は技術的、細目的事項しか答弁できないわけで、この答弁は私は聞いた覚えがありません。

 そこで、大臣に改めてお尋ねします。任意捜査に限ってで結構ですが、任意捜査は今回の共謀罪においては実行準備行為の後に行われるのか、それとも前に行われるのか、明確に御答弁をお願いします。

金田国務大臣 中身の御質問をいただきました。そこで、階議員にお答えをさせていただきます。

 捜査は個別具体的な事実関係のもとで行われるものでありまして、その開始時期について一概にお答えすることは困難なのであります。そして、テロ等準備罪についても、他の犯罪の捜査と同様に、捜査機関が犯罪の嫌疑があると認めた場合に初めて捜査を開始することができるのであります。

 実行準備行為が行われておらず、テロ等準備罪が成立していない段階においては罪を犯したとは言えないわけでありまして、まず、テロ等準備罪を理由に強制捜査を行うことはできません。他方、実行準備行為が行われていない段階であっても、個別具体的な事実関係のもとで、犯罪の嫌疑があり、捜査の必要性があると認められる場合には、手段の相当性が認められる範囲において任意捜査を行うことが許されるものと考えております。

 以上であります。

階委員 要するに、今の答弁は、犯罪が成立する前の段階でも任意捜査は可能であるということを述べているわけです。これは、刑事訴訟法百八十九条二項、犯罪があると思料するときでなければ捜査機関は捜査できないという条文があります、この明文の規定に反しているのではありませんか。お答えください、大臣。

井野大臣政務官 先ほど大臣が申し上げたとおり、個別具体的な事実関係のもとであり、犯罪の嫌疑があるということであれば、当然、犯罪があると思料するという部分に該当するものだというふうに考えますので、任意捜査はできるというふうに考えます。

階委員 犯罪成立前でも、犯罪があると思料する場合に当たるということでよろしいんですか。

井野大臣政務官 申しわけありません、先ほど申し上げたとおりです。

 百九十八条二項の条文が、済みません、ちょっと手元になくて。(階委員「百八十九条二項です」と呼ぶ)百八十九条二項ですね、犯罪の嫌疑があるでしたか。(階委員「犯罪があると思料する」と呼ぶ)犯罪があると思料すると。そういったことでありますので、それはすなわち犯罪の嫌疑があるというふうに考えられますので、捜査の必要性がある場合、犯罪の嫌疑がある場合には、当然、百九十八条二項に基づいて捜査することは可能である……(階委員「百八十九条二項」と呼ぶ)ごめんなさい、百八十九条二項に基づいて捜査することができるというふうに思います。

階委員 私は政務官と同じく弁護士資格を一応持っていますけれども、犯罪があると思料するというのは、既に犯罪が起きているということを前提にして、犯罪があると考えたときに捜査に着手できる、つまり、犯罪捜査というのは既に起きた犯罪を捜査するものであって、これから起きる犯罪を捜査するものではないということで百八十九条二項というのは設けられていると考えたわけです。

 私のこの考えは反していますか。犯罪が成立する前から捜査はできるんでしょうか。お答えください。

井野大臣政務官 捜査の実務にかかわるものでありますので、より詳細は、恐らく刑事局長等が詳しいんでしょうけれども、私の拙い経験というか、いろいろ見聞きしていく中において、例えば犯罪の嫌疑があるとする、薬物犯罪とかのですね。なかなか密行性が高いわけでございますので、そういった中で、現実に薬物の密売、売買が行われるであろうという場所において、任意捜査としてその場に赴いたり、はたまた内偵捜査という形で、犯罪の嫌疑が行われるであろうという場所で内偵捜査、つまり任意捜査ですけれども、こういったことを行うことは十分あるように捜査実務をとられているんだろうと私は思います。

階委員 あらかじめ委員長に申し上げますが、答えられない場合は私は別途参考人にお尋ねしたいと思いますので、答えられない場合は答えなくて結構ですので、その点、政務三役には御留意いただければと思います。

 では、百八十九条二項の解釈については、きょうはこれ以上立ち入りません。やや技術的、細目的事項にかかわるかもしれませんのでここでは踏み込みませんけれども、いずれにしましても、大臣は、このテロ等準備罪なるものが実行準備行為があって初めて成立するものだということは言われましたですよね。それは間違いないですよね。うなずいていただければ結構です。

 そうだとすると、実行準備行為がなくても任意捜査は犯罪成立前から着手できるということを言われたということで、それだったら、必要性、相当性とか言いますけれども、捜査される側からすると、実行準備行為前から、いつから捜査が始まっているんだろうということで、極めてこれは監視への不安が高まるわけです。

 今回、実行準備行為に当たる行為が対象犯罪の実行計画に基づくものでなければ、いわゆるテロ等準備罪と言われるもので処罰することはできないわけですね。ですから、実行準備行為が行われた、共謀罪が成立したといったとしても、肝心の実行計画に基づくかどうかというところが明らかにならないと処罰はできない。

 そこで、お尋ねします。実行計画に基づくものかどうかはいつどのように判断するのか、大臣にお尋ねします。事前に通告しております。大臣、どうぞ。

金田国務大臣 ある行為が計画に基づいて行われたか否かにつきましては、捜査機関によって収集された証拠によって認定されるべきものでありまして、個別具体的な事実関係、特に計画において合意された内容に照らして判断されるべきものと考えられますし、いつ判断するのかということになりますと、これは、刑事事件の捜査、公判における手続の進捗に応じて、各段階において認定判断が行われることとなるものと考えます。

階委員 極めて抽象的で漠然としておりまして、いつ捜査が開始されているか、これは任意捜査ですからね、令状もないわけですから、第三者のチェックが入らない、捜査機関の一存でいつ捜査が開始されるかわからない。これこそまさに監視社会への不安ですよ。不安につながります。

 そこで、きのう、NHKの「クローズアップ現代」という番組、夜十時からありました。その中で、XKEYSCOREという大量監視システムについて取り上げていました。きょう、NHKの「NEWS WEB」からこの件について書かれたニュースサイトの写しを持ってきましたので、ごらんになっていただければと思うんですが、アメリカの国家安全保障局、NSAがXKEYSCOREというネット上の電子メールや通話記録などを収集、検索できるとされる監視システムを日本側に提供したという記述がスノーデン・ファイルの中にあったということが、NHKのきのうの番組でも報じられておりました。

 この監視システムは、グーグルという超有名な検索サイトがありますが、その機能をさらに拡張して全世界のあらゆる人間の通信、プライバシー情報を検索できる、そういう恐るべきシステムであります。こうした監視システムを日本側に提供したという報道があります。防衛省に来ていただいておりますが、この真偽についてお答えください。

小林大臣政務官 委員御指摘の報道については承知をいたしております。

 スノーデン元CIA職員が不法に持ち出したとされる出所不明の文書の内容を前提とした質問につきましては、コメントすることは差し控えさせていただきます。

階委員 なぜコメントできないんでしょうか。単純な事実関係を聞いておりますけれども、答えられない、コメントできない理由をお答えください。

小林大臣政務官 繰り返しになって恐縮ですけれども、不法に持ち出したとされます出所不明の文書の内容を前提とした質問については、コメントすることは差し控えさせていただきます。

 なお、一般論といたしまして、我が国と米国は日米安保体制のもとで平素から必要な情報交換を行っておりますが、その具体的な内容につきましても、相手国たる米国との関係もありますことから、お答えを差し控えさせていただきたいと思います。

階委員 では、ここでは、XKEYSCOREなる大量監視システム、これの提供を受けていないということも言えないということですか。否定もできないということですか。

小林大臣政務官 再度繰り返しになって恐縮ですけれども、出所不明の文書の内容を前提とした質問につきましては、コメントすることは差し控えさせていただきます。

 なお、情報業務の具体的な内容につきましては、将来の効果的な情報活動の支障となるおそれがあることから、お答えを差し控えさせていただきます。

 いずれにしても、防衛省の情報収集活動は法令を遵守して適正に行われており、通信の秘密などを侵しているものではありません。

階委員 そこで、今問題になっている共謀罪に、今後、もしこれが制定されることになって、任意捜査も捜査機関の一存で早い段階から始められるという可能性もあるようですから、XKEYSCOREというのが用いられる危険性があるのではないかというふうにも思います。

 改めて大臣に聞きますけれども、こうしたシステムをもし使うとすれば、憲法で保障された通信の秘密を害するものであります。XKEYSCOREに限りませんけれども、そういった通信の秘密を侵害する任意捜査の手法は、共謀罪を含めて犯罪一般の捜査に用いられることはないというふうに理解してよろしいですか、法務大臣。

盛山副大臣 以前の委員会でもお答えしたかと思いますけれども、今回のテロ等準備罪の法案というのは、刑法における刑罰、実体法を決めるものであります。

 今やりとりをしております手続、これは刑事訴訟法の手続になりますけれども、この手続について、今回のテロ等準備罪の法案で何らか変更を加えようというものでは全くありません。そこをまず、ぜひ御理解賜りたいと思います。

 その上で、今の委員の御質問でございますけれども、委員が御指摘のとおり、通信の秘密というのは憲法に定める重要な権利であります。これを制約する捜査は一般に強制捜査であると解されるところでございまして、これを任意の処分として犯罪一般の捜査に用いることはありません。

階委員 きのうの番組でも報じられていましたけれども、アメリカではテロ対策と称してこのXKEYSCOREシステムというのが導入されたわけですけれども、どんどん監視対象が広がって、一般国民のプライバシーものぞき見る、こういったこともあったわけですね。だから、私は、そういうことは日本で決して起きてはならないというふうに考えております。

 大臣に改めてお尋ねしますけれども、今後、仮に共謀罪が施行されるようなことがあったとしても、通信の秘密を侵害するような任意捜査の手法は絶対に用いられないということを宣言、断言してもらえますでしょうか。

金田国務大臣 お答えをいたします。

 先ほど副大臣からも答弁申し上げましたが、通信の秘密は憲法に定める重要な権利であります。これを制約する捜査は一般には強制捜査であると解されますが、その任意の処分として犯罪一般の捜査に用いることはない、このように申し上げます。

階委員 それでは、次に、通信傍受のことも確認しておきますけれども、今回のいわゆる共謀罪、政府が言うところのテロ等準備罪の対象犯罪の中には通信傍受の対象となるものも多数含まれております。こうした犯罪の共謀があったかどうかの有無を確認するために通信傍受ができるように法文上は読み込めるわけでございますけれども、こうしたことはあり得ないのかどうか。大臣、お願いします。

盛山副大臣 今、階委員のお問い合わせでございますけれども、法文上明らかかということにつきましては、私どもとしては何も追加することはないということは明らかであるかと思いますが、通信傍受法による通信傍受は、通信傍受法の別表に掲げられた対象犯罪について、同法が定める厳格な要件を満たした場合に限って、裁判官が発する傍受令状により傍受することが許されるものでございます。

 テロ等準備罪は通信傍受の対象犯罪ではなく、テロ等準備罪をその対象犯罪に追加する法改正を行うことも予定しておりません。したがって、テロ等準備罪を対象犯罪として通信傍受を行うことはできません。

階委員 通信傍受法第三条第一項第三号の解釈として、死刑または無期もしくは長期二年以上の懲役もしくは禁錮に当たる罪が別表第一または別表第二に掲げる罪と一体のものとしてその実行に必要な準備のために犯されるということであれば、今回のいわゆる共謀罪は、長期二年以上ですから、一体のものとして実行に必要な準備のためにまさに犯されるものであるというふうにも考えられます。

 そこで、私は、現行の通信傍受法のもとでも共謀罪の傍受ができるのではないかという問題意識を持っております。この件についてもまた、細部にわたるようであれば政府参考人に聞いてもいいんですけれども、もしお答えになれることがあればお答えください。振るのであればいいです。ないですね、答えはないですね。では、これは改めてお尋ねします。

 そこで、次の質問に移らせていただきます。

 今回、共謀の当事者間の話し合ったことが犯罪成立の大きな要件になってくるわけですね。

 いわゆる共謀行為の当事者が二人いたとしましょう。AさんとBさんで対象犯罪の共謀をしたとしましょう。そのうちの一方が共謀を認めている、他方が共謀を否認している、他に客観的な証拠、物的証拠はなくて、唯一の証言がAさん、Bさんのうちの一方の証言だったということであるならば、一人は否認している、一人は共謀があったと言っているということだけでもって共謀の事実があったというふうに認定できるのかどうか、大臣にお尋ねします。

井野大臣政務官 先生が御指摘の点は、まさに刑事裁判実務にかかわるものでございますので、私の方から先に答弁させていただきますけれども、判例によりますと、共犯者の自白は本人との関係においては被害者や目撃者の供述とその本質を異にするものではないという確定判例がございますので、否認している本人の有罪認定の証拠として用いることは当然可能でございます。

 もっとも、刑事裁判では、研修時代の一番最初に学ぶことかと思いますけれども、共犯者の自白については刑事裁判の実務上巻き込みの危険が大変にあるということが広く認識されておりまして、弁護人らによる厳しい反対尋問を経た上で、その上でさらに客観的な裏づけ証拠の有無などといったものが通常の刑事裁判実務では検討されておりますので、そういった共犯者供述の信用性については十分な吟味、検討が行われて有罪の認定証拠にされるのではないかなというふうに考えております。

階委員 法律家でない大臣にも国民の常識に沿った答弁をお願いしたいと思っているんですが、一方がやったと言っているわけですね、他方はぬれぎぬだと、やっていないと言うわけですよ。これって、安倍総理が、総理の夫人が百万円を渡したと籠池理事長に言われている、ところが、そんなことは事実無根だということを安倍総理の側は言っている、その際に、悪魔の証明だということを言っていました。やってもいないことを証明するのは、悪魔の証明で無理なんだということを言っていました。

 今の井野政務官の答弁によりますと、この共謀罪の共謀を認定する際は、一方がやったと言えば、一方がやっていなくても、やったという事実が認定される可能性があるということです。だから、これは極めて冤罪の可能性が高いと考えますけれども、大臣、こういう認定の仕方で本当にいいのでしょうか。法律家ではない立場からの大臣の答弁をお願いします。

金田国務大臣 テロ等準備罪の立証につきましても、他の多くのひそかに行われる罪の場合と同様の方法で、刑事訴訟法の規定に従って必要な立証を適切に行うこととなるものと考えております。共犯者の供述に頼らなければ立証できないとは考えておりません。

 その上で、刑事裁判の実務においていわゆる引っ張り込みの危険があることが広く認識されている共犯者の供述については、弁護人らによる厳しい反対尋問を経た上で、裏づけ証拠の有無あるいは範囲といったものも含めて、裁判所における信用性に関する慎重かつ十分な検討を尽くした上で初めて有罪の証拠とされるものであると申し上げます。

 このような点については捜査においても当然に前提とされておりまして、捜査に当たりましては客観証拠や供述の裏づけ証拠の収集が当然重視されるものと考えられまして、御指摘のような懸念は当たらないものと考えます。

階委員 つまり、監視体制を強化するということを言っているわけですか。供述に頼らないで、先ほどのXKEYSCOREあるいはそれに類するような監視システムで客観証拠を集めるということを言っているわけですか。大臣、確認させてください。

金田国務大臣 先ほども申し上げましたが、いわゆる引っ張り込みの危険があることが広く刑事裁判の実務において認識されている共犯者供述については、弁護人らによる厳しい反対尋問を経た上で、裏づけ証拠の有無、範囲などを含めて、裁判所における信用性に関する慎重かつ十分な検討を尽くした上で対応していく、こういうことになります。

階委員 引っ張り込みの危険ということを再三言われています。共犯者の一人が自分の罪を軽くしようと思って相手方を罪に陥れるようなことを言う、これを引っ張り込みの危険というわけですけれども、この引っ張り込みの危険を構造的に高めるような条文のたてつけになっていますね。

 今回の法案の六条の二第一項本文ただし書き、「ただし、実行に着手する前に自首した者は、その刑を減軽し、又は免除する。」ということで、やっていなくてもやったという人、やりましたという人は刑を減免されるという規定を設けています。構造的に引っ張り込みの危険が増す、冤罪の危険が増すと言えるのではないでしょうか。大臣、いかがでしょうか。

金田国務大臣 テロ等準備罪の捜査、公判活動についても、他の犯罪と同様に、刑事訴訟法に基づいて適正に行われるものと考えております。

 刑事裁判の実務において一般に巻き込みの危険があるということは申し上げたとおりでありますし、指摘されていることでもございますが、そのように認識されておりますので、弁護人らによる厳しい反対尋問を経た上で、客観的な裏づけ証拠があるかどうか、範囲がどうかといったような点を含めて、裁判所においてその信用性について慎重かつ十分に吟味、検討が行われて初めて有罪の証拠とされるものであります。

 この点はテロ等準備罪についても同様でありまして、御指摘は当たらない、このように考えております。

階委員 準備行為がなされる前から任意捜査はできると。そして、多分、その任意捜査の焦点は、共謀があったかどうかを認定するための証拠集めということになろうかと思います。

 その場合に、やはり任意捜査に名をかりた監視の手法がふえるだろうと考えます。また、監視がされていない場合は共謀に参加した当事者の供述に頼らざるを得ないわけでありまして、大臣も言っているように引っ張り込みの危険がもとよりある中で、今回の法案はそれを増すような自首減免規定がある。

 さらに言えば、昨年、刑事訴訟法が改正されまして、刑事裁判で証人が自分が刑事責任を負うような不利益な証言をしたとしても刑事的な責任を負わないという刑事免責の手続も、来年の夏ぐらいから導入されることになっているわけです。

 刑事免責と先ほどの自首減免、こういったものが相まって、私は、もしこの共謀罪というものが導入されたならば、共謀の認定のためにどんどんどんどんこうした引っ張り込みの危険というのがふえていく、冤罪の危険がふえていくと考えますけれども、大臣、そうじゃないですか。

金田国務大臣 先ほどから申し上げましたが、テロ等準備罪の捜査、公判活動につきましても、他の犯罪と同様に刑事訴訟法に基づいて適正に行われるものでありますし、また、裁判所においてはその慎重かつ十分な吟味、検討が行われて初めて証拠とされるということも申し上げました。

 それから、このテロ等準備罪、非常に厳格な要件として三つ設けております。それを踏まえて嫌疑があるかどうかから始まるわけでありますから、そういうことを全て御理解いただければ、理解していただけるものと思います。

階委員 理解できません。また後日質問します。

 以上です。

鈴木委員長 階君の質疑の冒頭で、平成十二年の申し合わせと参考人招致の決議についてお尋ねがありましたので、改めてお答えしますが、平成十二年の申し合わせは、衆議院規則四十五条の三に基づいて委員会が政府参考人を招致することを妨げるものではないということを理解することを申し上げておきます。

 午後一時四十分から委員会を再開することとし、この際、休憩いたします。

    午後零時七分休憩

     ――――◇―――――

    午後一時四十分開議

鈴木委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。

 質疑を続行いたします。上西小百合君。

上西委員 よろしくお願いします。

 本日の質問は、テロ等準備罪を成立させなければTOC条約に加盟できないという意見がある中、私は、TOC条約に加盟するのに成立は不要、こういう立場で、金田大臣のこの法案にかける意気込み、そしてこの委員会の審議中に起こった事象に関しての感想をお聞きしたいと思っております。何も難しいことは一切お伺いをいたしません。ですので、大臣の心に思っていらっしゃることをお話しいただくようにお願いしたいと思います。

 テロ対策のためだけの法案であれば、私だって大賛成なんです。でも、これは明らかに違います。この法務委員会での答弁を聞いていると、これはまさに国民をだますためにテロとつけてみただけ、こう言わざるを得ないと思っているんです。

 先ほど、階議員も触れられましたけれども、先週の委員会で、委員長許可をとって打ち合わせをした民進党の議員に対して、自民党の土屋正忠議員から、あれはテロ等準備行為じゃないか、こういうふうな言葉が投げかけられました。そして、その言葉に激高して肩を突いて抗議した民進党の階議員に、今度は与党席から、あれは暴力じゃないか、手を出すな、こういうふうに騒ぎました。

 でも、はっきり申し上げて、本当に皆さん方、あの程度のことで暴力だと思っているんでしょうか。いつの間にこんなに国会議員がひ弱なものになったかなというふうに思っています。私は以前、自民党議員に、いわゆるセクハラやじというものですよね、言葉の暴力を受けましたけれども、そのときも、私、一切ぎゃあぎゃあ騒がなかったですよ。それが国民の代表ですか。国民の代表なら、もっとどっしり構えていただきたいな、こういうふうに思っております。

 そして、あの発言は、自民党議員の中で、このようなテロと全く関係のない打ち合わせであっても、テロ等準備罪だ、こういうふうな言葉を利用して共謀罪を成立させようとしている、してしまおうとしている、こういうふうな考え方がはびこっている証明ではないかというふうに思っているんです。

 これは、打ち合わせをした逢坂議員そして枝野議員、階議員が二人以上で計画をした者、そして階議員が実行部隊、こういうふうに解釈をされたのではないかと思うんですが、この件に関して、大臣の御見解、感想をお聞かせいただきたいと思います。

金田国務大臣 ただいま上西委員から御質問をいただきました。

 この点について、仮にお尋ねが当委員会における審議の経過に関してのものであるとするならば、法務大臣としてはお答えをする立場にはないので、お答えをすることは差し控えさせていただきたいと思います。

上西委員 これは、大臣の目の前、もう本当にすごく近い距離ですよね、その距離で起こった出来事なんです。

 大臣、もちろん全て、あれだけ白熱したわけですから、目の前でごらんになったと思うんですね。私、別に難しいことは聞いていない。どう思ったんですか、一個人として心の中で。本音を聞きたいなと思うんです。どう思われたか、感想をお聞かせ願えないですか。

金田国務大臣 差し控えさせていただきたい立場は変わりません。したがってそのように申し上げますが、この法務委員会の議論というものは、非常にいろいろな角度から、非常に有意義な議論というのがこれまで行われていることを、私は今までのこの委員会に参加させていただいて感じておるところであります。その思いの原点は、全て、国民の安全、安心、そして幸せを願う立場から頑張っておられる皆様である、こういうふうに私は思っておりますので、そういうことで理解している範囲内であってほしいと常に考えているわけであります。そこをどうか御理解ください。

上西委員 範囲内であってほしいと願うことは自由なんですけれども、やはり法務大臣の答弁というのは、報道でも、大臣も目にされることはあると思いますけれども、やはりたどたどしいですし、何も答えていない、こういうのが現状なわけなんですね。そういう中で、自民党議員からこういうふうな発言が起こった、これに関して答えもできない、何も発言ができないということは、やはり私は後ろめたいことがあるんだなというふうに感じざるを得ないと思っています。

 そして、自民党土屋理事は、メディア……(発言する者あり)

鈴木委員長 御静粛に願います。

上西委員 メディア取材に、やじを飛ばしたが、中身は覚えていないというふうにお答えになっているんですけれども、これは本当に覚えていないのか。あれだけの発言をしたわけで、覚えていないというのが本当なのかということを、委員長のもし御許可をいただけるのであれば、土屋理事にお答えいただきたいなと思うんですが、いかがでしょうか。

鈴木委員長 それは本委員会の趣旨に外れますので、これは却下します。

 続けてください。

上西委員 はっきり言いまして、土屋理事、あれから本当に沈黙を守っていらっしゃいますけれども、重大な発言だと思いますよ。ですので、やはりこれは私は後ろめたいことがあるんだなというふうに判断せざるを得ないと思っています。ですので、しっかりこの発言に対しての責任をとっていただきたいというふうに思っています。

 この土屋発言、この法案が可決されれば、一般社会であのようなことが起こるのではないかということがあり得るから私はこの法案に反対という立場をとっているんです。

 テロなんて関係ないのにテロ準備行為というふうに断言されてしまう、そして、階議員が土屋発言に激高して肩を押した、この一連の流れ、これは一つのパックなんですね。この一連の流れが全て事を物語っているんです。それはなぜかというと、例えば一般人が集まって話し合いをする、そこに警察が来てテロだと言われる、そうすると、びっくりして、ちょっと待ってくださいよということで警察にさわる、それが公務執行妨害ということになってしまうわけなんですね。

 特定秘密保護法が成立し、そしてフルスペックの盗聴法も成立しました。ここで共謀罪が適用されれば、これはまさに戦前の特高警察なんですよ。これと同じことが起こる。これは思想警察なんです。

 これはまさに安倍総理と自民党が考えそうなことだなというふうに思うんですけれども、ここで一番重要なのは、ここの法務委員会の自民党議員がこの重さに気づいていない。だからこそ土屋議員もあんなに軽率な発言をされたんだ、こういうふうに思いますし、そして、自民党議員の皆さん方もそれをかばっていらっしゃる、こういうふうなことだと思っています。その程度の考え方でこの法案を可決させてしまおうとしている。

 現実に、警察白書を見ると、刑事犯罪の認知件数は、二〇〇二年、二百八十五万件、そして昨年は九十九万件なんですね。大幅に減少している。それにもかかわらず、監視を強化させる、警察の権限を増大させる必要がどこにあるんでしょうか。法務大臣にお聞かせいただきたいと思います。

金田国務大臣 先ほど申し上げましたように、控えさせていただきたいという部分はそのままでございますが、ただいま警察官の職務の遂行に関するお尋ねであったと思うんですけれども、これについては、これも私の所管ではございませんので、そういう意味において、ぜひ御理解いただきたいと思います。

上西委員 そういう答弁ばかり繰り返しているからだめだと言われるんですよ。

 はっきり申し上げて、この法案で国民の監視が強化されるわけですから、この必要がどこにあるんですかと。今、やはり、これは国が国民を信用していないからこそ、共謀罪を持ち出してきてこの法案を成立させようとしている、そのための法案だ、そういうふうなことだと私は思っています。副大臣だって、一般人も対象になる、こういうふうにおっしゃったじゃないですか。

 自民党の皆さん方は、これがテロのためだと自分自身をもだましているんじゃないかな、テロのためだけの法案だなんということで自分たちをもだましているんじゃないかというふうに私は思っています。本気でこれがテロ対策だなんと思っている議員は、私ははっきり言ってお気楽な議員だと思います。

 今回の共謀罪は、結局、野党が何を訴えても、そして与党が何も考えなくても、この法案は強行採決でどうせ成立させられてしまうんだと思います。こういうふうな状況に関して、今この法務委員会にいて共謀罪を成立させようとしている委員はやはり恥ずべきだと思っていますし、金田大臣も、この法案を成立させた大臣として、この法案を成立させてしまえば歴史に名を残す悪大臣になってしまうと思いますけれども、その覚悟はあるんでしょうか。

盛山副大臣 私の方からまずちょっと御説明をさせていただきたいと思います。

 これまでの委員会のやりとりで述べておりますとおり、今回のテロ準備罪というのは、実体の法、刑罰、これについて定めようとするものでありまして、刑事訴訟法の手続について今回の法案で一切変更しようとするものではありません。ですから、そこのところをぜひ御理解していただきたいというのが第一点でございます。

 それから、TOC条約を批准、締結する、そしてそのために今回のこの法案を成立させていただきたいと我々は申し上げているわけでございますが、これを成立させ、締結することが、テロを含む組織犯罪といったものを抑えていくためのまず最初の、一番スタートであるということもぜひ御理解をしていただきたいと思います。

上西委員 大臣が何でこんな簡単なことをお答えにならない、本当に簡単なことだと思うので、何でお答えにならないのかというのが私は不思議で不思議でしようがないんですけれども。

 今副大臣がおっしゃられたように、TOC条約に加盟するためにこの法案の成立が必要か不要か、これはまだ意見が分かれているところですから、私は反対の立場で質問しているということをはっきり申し上げたいと思います。

 そして、この法案が強行採決されたとします。ここにいらっしゃる方々は、やはり法律の専門家であったり、非常に法律に詳しい方々ばかりだと思うんですけれども、それでもこれだけこの委員会は今紛糾をしているわけなんです。現場の警察官が一つ一つの事象を、これはテロだ、これはテロじゃない、どうやって判断するんですか。

 安倍政権がここ数年やっていっていることは全てそうなんです。法案が施行された後にどう運用していくのか全く考えられておらず、官僚が言うままに法案を成立させているだけだというふうに私は捉えてしまいます。

 監視社会が強化され、そして、思想警察の再来だと言われる警視庁になってくる。権限を増大させていく警察を監視する必要性、これに関してはどうお考えでしょうか。国家公安委員会の事務局は事実上警察の中に存在しています。本来であれば国家公安委員長にお伺いする質問かもしれませんけれども、今回、あえて金田法務大臣の覚悟をお伺いしたい。

 もし強行採決で通過させるとしたら、法務大臣は、警察官に対する監視の強化をどのように判断されるか、どのように考えておられるか。法務大臣のお考えをお聞かせいただきたいと思います。

金田国務大臣 上西委員にお答えします。

 先ほどから申し上げておりますが、お尋ねのことに直接お答えするという意味におきましては、所管外の事柄であるということは申し上げざるを得ません。

 そういう意味において、一般論として、私は、多くの警察官は誠実に職務の遂行に努めているものと思っておりまして、テロ等準備罪を新しく設けることが権限の濫用につながるという理由は見出しがたいのではないか、このように考えている次第であります。

 いずれにしましても、テロ等準備罪処罰法案が成立した後は、適切な運用がなされるように法律の趣旨を周知していくことが大切ではないか、このように考える次第であります。

上西委員 権限の濫用がないということは何を根拠におっしゃっているのか、さっぱりわからないわけなんですね。

 そして、警察の権限をどんどんこれから大きくしていく、警察の権限を増大していくということに関して、国民の関心はやはり強くなっていくということ、声が上がっているわけなんですよね。それに関して、警察に対しての監視、本当に正しい捜査をしているかの監視をするかどうか、これを大臣が何の考えもないというのはやはり問題だと思うんです。今、国家公安委員会がしっかりと警察を監視し切っているということはあり得ないんですよ。国家公安委員会は警察の中に存在をしている。

 金田大臣は、私、はっきり申し上げて、共謀罪の答弁はできないけれども、そのほかのことはある程度はできる方なのかなと思っていましたけれども、今回、何の答弁もしてくださらなかった。知識なんか要らないじゃないですか、単に感想だけお話ししてくださいというふうに申し上げても、何も答えてくださらない。それは答えるところに値しない、そればかりじゃないですか。感想ぐらい言ったらいいと思いますよ。

 ただ、国会議員の仕事というのは、法案が通る通らない、これだけが仕事じゃないですから。そして、今回のように問題のある法案ですから、法案が通った後にするような作業、運用をしっかり守っていく、そういうふうなことが非常に大切になってくるわけなんです。それだけの覚悟をして法務大臣にはしっかりとこの法務委員会、ここで答弁していただきたいと思います。

 そして、自民党議員から軽率な発言がありました。これは、私、自民党議員の本心だと思っているんです。ですので、こういうふうなところもしっかり自民党議員の中で精査をして、そして、もしそれが本当に自民党の考え方なのであれば、それを国民に正々堂々と説明していただきたいと思います。

 そういうふうな形で、私はもう時間が来ましたので質問を終わらせていただきたいと思いますが、大臣、きょう答弁を一つもしてくださらなかったことは非常に残念です。

鈴木委員長 次に、逢坂誠二君。

逢坂委員 民進党の逢坂誠二でございます。

 それでは、きょうも質問をさせていただきますが、質問に入る前に、きょうの午前中の階委員と委員長のやりとりについて少し言及をさせていただきます。

 きょうの階委員とのやりとりの中で、鈴木委員長は、四月二十一日の階委員の質問、あれは局長答弁ではなく大臣が答弁すべき事項であり、階委員の抗議内容は正当であったということを認めたというふうに私は承知いたしております。

 であるならば、まず一点目、委員長にはこの点についてしっかり謝罪をしていただきたいというふうに思います。

 それから、現在、政府参考人が、これは質疑者の意に沿わない形で、常時登録をされる形になっているわけであります。

 ただ、この点については、委員長から、その政府参考人の指名に当たり、質問者の意向を尊重する、ただし、技術的、細目的な事項につき繰り返し大臣に聞くような場合は局長を指名することもある、こういう運用を委員長の思いでしていただいているわけでありますけれども、委員長がこの階委員の質問の中で、大臣が本来答弁すべきことについて局長を指名した、そういうことでありますから、差配のミスがあるわけであります。

 そういう観点からいいますと、私は、この運用をする責任、その任にはないのではないかというふうに思うわけでありまして、この運用を撤回していただきたいというふうに思っております。

 それから、階委員の抗議、その抗議の手法についてはいろいろ問題がある、私はそういう部分もあろうかと思います。その点について、階委員も午前中謝罪をいたしておりました。しかしながら、階委員が抗議をする、そのことにはやはり理があったというふうに思うわけでありまして、そのことに対して、階委員も申しておりましたけれども、土屋理事のそのときの発言について、謝罪、撤回をしっかりしていただきたいというふうに思っております。

 以上の点について適切な対応をしっかりしていただくということがなければ、今後の審議というのはなかなか難しいというふうに思っております。

 逆に言うならば、この点についてしっかり委員長の方で適切な対応をするということであれば、今後の審議、二日、委員会の提案もされているわけでありますけれども、これにはしっかり応じてまいりたい、そう思っております。

 委員長の御見解をお伺いします。

鈴木委員長 まず、二十一日の階委員の質疑の際の私の指名についての御意見がありましたが、基本的には委員長の議事整理権だと思います。

 そうした中で、階委員の意向とは違ったかもしれませんが、それについては、階委員のいわゆる異論は承知はします。ただし、それについて委員長が一つ一つ謝罪する問題ではありませんので、これについては御理解賜りたいと思います。

 それから、先ほど来の話については、理事会での協議でありますので、この場では申し上げられません。理事会の協議に任せます。

逢坂委員 理事会で協議をするということで、それは承知はいたしましたが、一点目でありますけれども、委員長、これはこれまでの通常の委員会運営と違うんですよ。これまでの通常の委員会運営は、質疑者も了解した上で政府参考人の登録がされているわけですよ。今回はそうではないんです。質疑者が了解しない中で、ある種職権で委員長が政府参考人の登録をしているわけであります。

 これは、これまでの国会にない、前代未聞のことであるということはこれまでも明らかになっているわけですが、そういう中で、質問者の意図に沿わない答弁者を指名する、これについては、改めて強く抗議をすると同時に、重ねて委員長の謝罪を求めたいというふうに思います。

 この点については以上にとどめさせていただきますが、後の理事会でまた議論させていただきたいと思います。よろしくお願いいたします。

鈴木委員長 続行してください。

逢坂委員 さて、そこで、法案の中身を議論したいんですが、また委員長にお願いしたいんですが、私は、技術的な細目についてもし及ぶような質問が私からあった場合は、それは、大臣なり副大臣なり政務官が答えられないということであれば、その旨を言っていただければ十分かと思います。そして、それを私が引き取って、後日政府参考人に聞くのか、改めて私が政府参考人に聞くのか、それは私に判断をさせていただきたいというふうに思いますので、もし答えられないということがあれば、その旨を申していただきたいというふうに思います。

 さて、そこでなんですが、今回の法案ですが、この法案が仮に成立をする、そして施行される、成立をすればいずれかの時期に施行されることになるわけであります。この時点で、大臣、今回の法案が施行された時点で組織的犯罪集団というのは日本の国に存在しているんでしょうか。

金田国務大臣 ただいま御質問いただきました点については、直ちには即答は、登録もございませんし、即答は避けざるを得ません。

逢坂委員 私は、これまでの答弁のやりとりを見ると、この法が施行された直後に組織的犯罪集団というのは存在していないのではないかというふうに思うんですね。

 それはなぜかというと、これまでの答弁の中で、共謀罪の嫌疑が生じた段階で当該団体が組織的犯罪集団であるか否かを判断する、捜査する、調べる、そういうこれまでの答弁を繰り返されているわけであります。であるならば、この法律が施行された時点では組織的犯罪集団というのはそもそも存在していない、そう見るのが妥当ではないかと思うんですが、副大臣、政務官、もし大臣、お答えがあればお願いします。

金田国務大臣 今申し上げたのにつけ加えさせていただきますと、個別の具体的な事件を離れて組織的犯罪集団への該当性だけを検討するものではないので、お答えは困難であるということを申し上げておきます。

逢坂委員 具体的個別の事件を離れて組織的犯罪集団の存在を判断するものではないから、答えることは困難であるというような……(金田国務大臣「該当性ですよ、該当性だけを検討するものではない」と呼ぶ)該当性、検討するものではないので、答えることは困難であると。

 それでは、重ねて言いますが、該当性を個別の事案を離れて検討しないということであるならば、検討していないわけですから、論理的には、その段階で組織的犯罪集団が存在しないというふうに思うんですが、いかがでしょうか。

盛山副大臣 この法律がいつ成立して、いつから施行されるかということにもなるわけでありますけれども、その時点、将来の特定の時点で国内がどのような状況になっているのか、今、そういったことは我々は神様ではありませんのでわからないということはまず御理解いただけると思います。

 そして、法律の施行の前、施行日の前という段階では、当然この法律は施行されていないわけでありますが、例えば、一カ月後のこの日から施行されるというような状況で、そして何らかの懸念されるような状況に仮になっている場合、そういった場合には、法が施行される施行日においてどういうふうにしようか、そういうことは考えていくことになるのではないかなと思います。

 いずれにせよ、逢坂委員がおっしゃるとおり、法が施行されるまでは何とも言えないわけでございますね、そこは。ただ、施行されたその日の段階でそういう組織的犯罪集団になるものがある、そういう嫌疑がその日に起こっていて、そういうふうに認定をしなければならないようになるかどうか、それは今の時点では何とも言えない、こういうことではないかと思います。

逢坂委員 盛山副大臣、丁寧に答弁いただきましたけれども、私が聞いているのはそういうことではないんですよ。

 要するに、法が施行されたその瞬間に世の中に組織的犯罪集団なるものがそもそも存在する、そういう考え方なのか、それとも、具体的な嫌疑が生じた段階で当該団体についていろいろと調べる、それで初めて組織的犯罪集団なるものが存在する、認定される、そういうものなのかということを聞いているんです。

盛山副大臣 今、逢坂委員がおっしゃった後段は、私はそのとおりだと思います。つまり、法というのは施行日以降適用されるというのはそのとおりでございます。

 ただ、将来のある特定の時点で何が起こっているか、今言えませんですし、そしてまた、この法律が例えば一週間後に施行されるだとかそういう段階になっている場合に、そういう何らか懸念するような状況に仮になっていれば、法が施行された日に何をどうするのかということは準備しなければならないのではないかと申し上げたわけであります。

逢坂委員 後段はそのとおりだとおっしゃっていただきましたけれども、すなわち、法が施行された瞬間、その瞬間は組織的犯罪集団というのは私は存在していないというふうに思うんですよ。それは、仮にその時点で嫌疑が生じる団体があったとしても、その瞬間に、本当にその嫌疑が罪であるかどうか、確からしさは、その瞬間には多分一般的にはわからない。だから、法が施行された瞬間には組織的犯罪集団は事実上存在し得ないというふうに思うんですけれども、副大臣、大臣、どちらでもいいです、いかがですか。

盛山副大臣 逢坂委員がおっしゃっていることと私が申し上げていることと、内容は同じような趣旨だと思うんです。ただ、時間というのは流れているものですから、これが組織的犯罪集団である、あるいはテロ等準備罪の嫌疑があるというところへ判断するのにどれぐらいの時間がかかるかということだろうと思うんですね。そういうことを判断するのに一週間かかるのか、あるいは一日で済むのか、あるいはもっと短い時間なのか、ちょっとその辺のタイミングのことまでは何とも言えませんですけれども、施行日の午前零時の段階では存在しないかもしれないけれども、午前一時になったらばそれはということになるやもしれません。これは何とも言えません。

金田国務大臣 ある団体が処罰対象団体であるか否かというのは、収集された証拠によって個別に判断されるものであろう、このように考えます。それを離れて、団体のあるかないか、存否を申し上げることはできない、このように考えます。

逢坂委員 すなわち、大臣の答弁、個別の事件を離れてその団体が組織的犯罪集団であるかどうかというのは判断できない、それはそのとおりだと思うんですよ。ということは、法が施行された瞬間、そのときは組織的犯罪集団はない、論理上ないというふうに言わざるを得ないと私は思うんですね。

 それで、仮に嫌疑を生ずるような団体があったときに、場合によっては、事案によっては、その瞬間に組織的犯罪集団というふうに認定されることはあるにせよ、可能性としてあるにせよ、法律が施行されたその瞬間には、基本的には、認定行為というものはないわけだから、その段階ではゼロだというふうに私は思うんですが、これは認識は間違っていないですよね。副大臣でも大臣でも、どちらでもいいです。

盛山副大臣 先ほどの繰り返しになりますけれども、論理的にはそうだと思います。ただ、その認定までの時間が、一日か、一週間か、あるいは一時間か、そういった違いはあろうかと思います。

逢坂委員 それともう一つ、組織的犯罪集団というのは、個別の事案によって、これが組織的犯罪集団だとか、ないとかといろいろ判断をしていくことになると思うんですが、その数というのは変化し得るということでよろしいですよね。事案によって、共謀罪の嫌疑が生ずるようなことが起こる、そして、当該団体が組織的犯罪集団であるかどうかを判断する。だから、結果的に、嫌疑が起こるたびにその判断をするわけだから、数がふえたり減ったりするということでよろしいですよね。

盛山副大臣 逢坂委員のおっしゃるとおりだと思います、その時点で判断しますものですから。

逢坂委員 そういうふうに考えてみると、嫌疑が生じた段階で組織的犯罪集団であるか否かを判断する、しかもその件数は、総体として減ることもあるだろうし、ふえることもあるだろうし。事件が終了すれば、それは場合によっては解散するということもあるかもしれませんから。でも、ふえるということも当然あり得るわけですね。

 ふえるときの組織的犯罪集団に属する人というのは、もともとどんな人か。それは、以前は組織的犯罪集団にかかわりのない人に対して、組織的犯罪集団であるかどうかを判断するということになりますよね。論理的にそうですよね。いかがですか。

盛山副大臣 午前中にもお話がありました一般の人の範囲なんかとちょっと共通になってくるのかもしれません。組織的犯罪集団であって、そして計画と実行準備行為、そこがあって初めて嫌疑がある、そして捜査をする、こういうことになるわけなんですが、そこで対象の人が本当に黒であるのかどうかということになりますので、その段階でないと何とも言えない、こういうことになるかと思います。

逢坂委員 だから、白の方がいる、でも、嫌疑が生じた段階で白の方が盛山副大臣の言葉をかりるとグレーになる、でも、それを調べた結果、黒にもなり得るし、白にもなり得るということですよね。

 だったら、出発点はやはり白の方、嫌疑がかかった段階で白の方、盛山副大臣はグレーになるという非常に上手な答弁をされておりますけれども、白の方がグレーになったその段階でやはり捜査なり調査なりが始まるということですから、盛山副大臣は丁寧に前回御答弁いただきましたけれども、ケースの多い少ないはあるかもしれませんけれども、改めて、一般の方が捜査の対象にはなり得るということでよろしいですよね。

盛山副大臣 そこは午前中にも御答弁したかと思うんですけれども、何らかの嫌疑がなければ捜索はないわけですから、その段階で、やはり一般の人ではないんじゃないかなと我々は思います。つまり、組織に属さない、あるいは、何らかの嫌疑がかからないような行動をしている方あるいはそういうグループであれば、全く嫌疑がかからない真っ白な状態なわけですから、何らかあったその段階で、そういうグループあるいはそういう人たちは一般の方ではない。また、そういう方は、いつだったかも申し上げましたけれども、ボリュームとしては大変少ないものではないかと我々は考えております。

 また、今回のテロ等準備罪で、そういう対象を、今回は準備罪ということで、今までよりも、既遂罪というところからどんどん観念を変えていくわけでございますので、そこに当たっての運用というのは大変慎重でなければならない、そういう前提で法案をつくったつもりでございます。

逢坂委員 しつこいようですけれども、白の方が盛山副大臣の言い方で言うとグレーになる、グレーになった段階でそれは一般の方々ではないのだということをおっしゃいました。でも、グレーの方は、調べたら、白にもなり得るわけですよね、黒にも白にもなり得る。ということは、もともと一般の方々に対して捜査をしなければ白なのか黒なのかがわからないということではないかというふうに思うんですよ。

 それともう一つ、盛山副大臣はグレーという言葉を使いましたけれども、グレーか白かわからない、ちょうど境界領域にいる人というのも私はいると思うんですよ、この組織を調べるときには。本当にそれが組織的犯罪集団にかかわっているグレーさがあるのか、いや、もしかしたらこの人はもともと白かもしれないなという方を調べないと、その嫌疑というのははっきりしてこないわけでありますから、どうしても領域ぎりぎりのところ、そこを調べざるを得ないのではないかというふうに思うんですが、そういう観点からいうと、一般の方々もやはり、ケースは少ないというふうにおっしゃいましたけれども、対象になるというふうに私は思うんですが、いかがですか。

 大臣、御答弁ですか。同じ答弁でしたら結構です。

金田国務大臣 私からお答えしますが、捜査は犯罪の嫌疑がある場合に開始されるものであることは御承知のとおりであります。テロ等準備罪についても、他の犯罪の場合と同様に、犯罪の嫌疑がなければ捜査が行われることはありません。

 テロ等準備罪は、対象となる団体を組織的犯罪集団に限定し、一定の重大な犯罪を遂行することを計画することに加え、実行準備行為が行われた場合の、厳格な三要件を設けております。そして、テロ等準備罪の嫌疑があると認めるためには、組織的犯罪集団が関与していることを含むこの三つの要件についての嫌疑が必要であるということであります。

 そのときに、国内外の犯罪情勢等に照らせば、組織的犯罪集団と言えるのは、テロリズム集団、暴力団、薬物密売組織など、違法行為を目的とする団体に限られるところでありまして、そのような組織的犯罪集団が関与していることについての嫌疑がなければ、テロ等準備罪について捜査が行われることはないわけであります。

 したがいまして、組織的犯罪集団に関与している嫌疑がある者について捜査が行われるものでありまして、一般の方々を捜査するものではありません。

逢坂委員 大臣、御答弁ありがとうございます。

 大臣、嫌疑というのは誰に生ずるんですか。嫌疑というのは誰に生ずるのか、教えていただけますか。組織的犯罪集団に属している人は、嫌疑ではなくてすっかり黒なわけですから、それは嫌疑ではなくてまさに罪に該当することになる。嫌疑というのは誰にかかるんですか。

金田国務大臣 お答えをいたします。

 組織的犯罪集団にかかわりのある方に対してということである。

逢坂委員 組織的犯罪集団にかかわりがある方というのは、どういうふうに調べるんですか。

 大臣、今の件は答えられないということでよろしいでしょうか。技術的細目にかかわることだから答えられない、組織的犯罪集団にかかわる方はどのようにして調べるのかということは技術的細目であるから答えられないということで、大臣、よろしいでしょうか。

金田国務大臣 実務にかかわる話でもございますので、刑事局長からお答えさせたいと思います。

逢坂委員 今ちょっと声が出ましたけれども、大臣、技術的細目にかかわることについては政府参考人が答弁をするというようなルールですので、実務だから政府参考人が答弁するという規則にはなっておりませんので、そこのところはお間違えのないようにしていただきたいと思います。

 よろしいです、わかりました。この問題ばかりやっているわけにはいかないので。

 私は、一般的に考えて、組織的犯罪集団にかかわりがあるかどうか、そういう人であるかどうかを調べるというのは、一般の人を調べなかったらわからないんじゃないかという気がするんですよ。組織的犯罪集団にかかわっているんだとわかれば、それはグレーな人もいるかもしれないし、そうじゃない人もいるかもしれないということだけれども、かかわるというのはどういうことなのか。それは、一般かどうかわからない、そこがやはり嫌疑の出発点じゃないかと思うんですが、単純に大臣、いかがですか。捜査はどうするかということではなくて、いかがですか。

金田国務大臣 なぜ一般の方々はテロ等準備罪の捜査の対象とならないと言えるのかという御質問に私は受けとめました。

 一般の方々がテロ等準備罪の捜査の対象となることはないと考えております。犯罪の主体を組織的犯罪集団に限定しない場合には、一般の方々も、犯罪が行われたという嫌疑があれば捜査の対象となるかもしれません。他方、テロ等準備罪においては、犯罪の主体を組織的犯罪集団に限定したことにより、組織的犯罪集団に関与しているという嫌疑がなければ当該人物に対する捜査は行われないということになります。

 加えて、組織的犯罪集団とは、一定の重大な犯罪等を行うことを構成員の結合関係の基礎としての共同の目的とする団体をいうことでありますから、国内外の犯罪情勢等を考慮すれば、テロリズム集団、暴力団、薬物密売組織など、違法行為を目的とする団体に限られるのであって、一般の方々がこれらとかかわり合いを持つことは考えがたいのであります。

 したがいまして、組織的犯罪集団とかかわりのない一般の方々、すなわち、何らかの団体に属していない人はもとより、通常の団体に属して通常の社会生活を送っている方々はテロ等準備罪の捜査の対象とはなりません。

逢坂委員 一般の生活を送っている方々は捜査の対象にはならない。きょうはこの質問はもうこの程度にとどめたいと思うんですが、後でもう一回議事録を丁寧に読んで再質問したいと思いますが、それでは、大臣のお気持ちというかお考えでは、いわゆる組織的犯罪集団にかかわりのない方、これが大臣の定義で言う一般の方々というふうに私は承知はしておりますけれども、一般の方々は一〇〇%捜査の対象にはならないということでよろしいですね。

金田国務大臣 逢坂委員のただいまの御指摘、私はそのとおりと考えています。

逢坂委員 わかりました。非常に重要な答弁をいただいたと思っております。組織的犯罪集団にかかわりのない方々は一〇〇%捜査の対象にはならないと。了解いたしました。

 それでは、次の質問に移らせていただきます。

 きょうは警察庁からも来ていただいておりますが、その前に、まず、これは確認ですけれども、副大臣でも大臣でも構わないんですが、共謀罪の嫌疑が生じた段階で任意であれ強制であれ捜査に入ることができるわけですが、捜査に入る段階というのはそれぞれ事案によって違う、計画段階でも入るだろうし、実行準備段階でも入るだろうし、それは事案によって違うから、いろいろな段階で捜査に入るんだということでよろしいですよね、その事案によって。

盛山副大臣 これまでにも御答弁しているとおり、何らかの犯罪の嫌疑がなければ捜査というものは行われません。そしてまた、個別具体的な事案ごとに判断をしてまいりますので、いつからその捜査がスタートするのかということをお答えするのはなかなか困難でございますが、これも繰り返しになりますけれども、三つですね、組織的犯罪集団、計画、実行準備行為、それが三つまとまった場合においてということで考えております。

逢坂委員 そこで、実は、捜査というのは一般の国民はなかなかわかりにくいものだと私は思います。私自身もそんなに詳しいわけではない。

 警察庁にお伺いしますが、捜査令状をとる前に、嫌疑が生じた段階でいろいろな捜査をするということになろうと思います。捜査と言ってよいのか、調べと言ってよいのか。嫌疑が本当に嫌疑なのかどうかという、嫌疑の段階から本当にそれがだんだん確度が高くなっていくというふうに思うんですが、その際に、警察内部だけで行える捜査、例えば、尾行あるいは免許証登録情報の確認、自転車防犯登録情報の確認、非行歴の確認、それから指紋の確認、こういったことは捜査令状がなくても一般的に行われるという理解でよろしいでしょうか。

高木政府参考人 警察は、法令上認められる範囲内において、個別の事実関係に即して、捜査目的を達成するため必要な捜査を行うものでありまして、一概にお答えすることは困難でありますけれども、その上であえて申し上げますと、嫌疑の具体的な内容、証拠の収集状況、当該手段によって得られる証拠の価値、緊急性の程度などを総合的に勘案しまして、必要性、相当性が認められる範囲内におきまして御指摘のような捜査手法が用いられることもあり得るものと考えております。

逢坂委員 今私が言ったような捜査手法はあり得るということ。

 それでは次に、もうちょっと進んで、例えば近所の聞き込み。家族構成はどうですか、御主人は何時ぐらいに帰ってくるんでしょうね、帰宅時間、あるいは、どのような人が出入りしているんでしょうねといったようなことを聞くこと、聞き込みですね。あるいは携帯電話の使用状況。これは携帯電話会社の約款にもそういうことがあるかと思うんですけれども、そういうことは確認できるのかどうか。あるいはクレジットカードの使用履歴。どこでどのように使っているのか。あるいはレンタカー。レンタカー会社に照会をして、レンタカー会社が納得すれば、このレンタカーを誰がどういうふうに使ったかということも、これは捜査令状なしに行えるという理解でよろしいでしょうか。

高木政府参考人 個別の事実関係に即して、捜査目的を達成するために必要な捜査を行うということでありまして、必要性、相当性が認められる範囲内において行うというものでございます。

 お尋ねのありました携帯電話の使用状況につきましては、捜索・差し押さえ令状による差し押さえという形で対応することとなります。また、近所の聞き込み等につきましては、相手方の御協力を得た上でということになります。また、各種の、クレジットカードの使用歴あるいはレンタカー会社からの情報等につきましては、刑事訴訟法第百九十七条二項に基づきまして、捜査関係事項照会書によって照会するという形で情報をいただくということは、事案によってあり得るものでございます。

逢坂委員 そうですね、捜査事項照会で入手できるということは結構あるんだと私も承知はしております。以前も、私、随分、捜査事項照会を受けて、いろいろな情報を私の判断で提供したことがかつてございました。

 この捜査事項照会というのは、裁判所の判断は不要という理解でよろしいでしょうか。

高木政府参考人 警察からの照会書に基づきまして事業者において回答をいただくというものでございまして、裁判所の令状を得て行うものではございません。

逢坂委員 それでは、もう少し例示を言いたいと思うんですが、捜査事項照会で入手できる情報として、戸籍、住民票、それから在学に関するもの、例えば通信簿とか学校にどれぐらい行っていたかの出欠日数、あるいは車両情報、不動産情報、所有者の情報の登記など、あるいは会社情報の調査、役員にどんな方がいるかとか、あるいは出入国の履歴、金融機関の口座の履歴、借入金の状況、スイカなどICカードの利用状況、あるいはポイントカード、こういったものについても捜査事項照会で入手できる。もちろん、これは相手方が出すと言えばということだと思いますけれども、これも行えるということでよろしいでしょうか。

高木政府参考人 あくまで個別の事実関係に即して、捜査目的達成のために必要があり、相当であると認められる範囲内でということでございますけれども、また、お尋ねのありました事項につきましては、当該照会先の事業者等の御協力が得られる場合には情報が得られる場合もございます。

逢坂委員 今幾つか例示を出させていただきましたが、国民の皆さんは余りこういうことを聞くことがないと思いましたので、あえて例示を出して質疑させていただきました。

 ただ、金田大臣によりますと、一般の方々は一〇〇%捜査の対象にはならないというふうにおっしゃっておられましたので、この共謀罪に関して、こうしたことが一般の方々には及ばないのかなというふうには思うんですが、どうも私は、きょうの金田大臣の一般の方々には一〇〇%捜査が及ばないという答弁は、にわかにはちょっと理解しがたいものですから、後日、これは議事録を精査の上、もう一回質問させていただきたいと思います。

 それでは、次です。

 TOC条約との関係についてお伺いをしたいんですが、今回、対象犯罪を二百七十七に絞った。二百七十七に絞った根拠というのは、TOC条約の五条ですね。

 まず、二条に用語の定義があって、「「重大な犯罪」とは、長期四年以上の自由を剥奪する刑又はこれより重い刑を科することができる犯罪を構成する行為をいう。」ということで、一般的に長期四年以上の刑というふうに言われているものであります。

 長期四年以上の刑を全部対象にすれば、一説には六百以上の長期の刑が対象になると言っておられたわけでありますけれども、今回はそうではないんだ、五条の規定によって、五条にはオプションがついている、国によっては組織的な犯罪集団が関与するものというオプションをつけることができるんだということでありました。

 それでは、これはどっちへ聞いたらいいんでしょうか、法務省にまず聞いたらいいんでしょうか。まず、長期四年以上の刑というのは幾つぐらいあって、組織的な犯罪集団が関与するものというふうにオプションをつけたものは数として幾らになるのか。これは刑事局長にお答えいただけますか。

林政府参考人 今回の長期四年以上の懲役、禁錮に当たる罪というものについて全て挙げるとすれば、それは今委員が言われた六百を超える数になろうかと思います。

 その上で、今回は、組織的犯罪集団が実行を計画することが現実的に想定されるか否かという基準により対象犯罪を選択いたしまして、今回の対象犯罪につきましては、今回の法案で新設されます証人等買収罪を除いて、二百七十七という個数の対象犯罪になったということでございます。

逢坂委員 刑事局長、今私が言った以外の条件をちょっと付加したように思うんですが。計画されることが現実的に想定されるものを加味すれば二百七十七と言ったんですけれども、私が聞いたのは、四年以上の刑で、しかも組織的な犯罪集団が関与するもの、関与できるものというふうに読んでもいいかと思いますけれども、これはどのぐらいの数になりますか。

林政府参考人 条約との関係で今申し上げました。国際組織犯罪防止条約は、重大な犯罪の合意の犯罪化に当たり、締約国に対して、国内の担保法上において組織的な犯罪集団が関与するものという要件を付すことを認めているわけでございます。

 この要件を付した場合に、この条約の解釈として、犯罪化が義務づけられる合意の対象は組織的な犯罪集団が関与する重大な犯罪ということになりますことから、今回、国内担保法において組織的な犯罪集団が関与することが現実的に想定される罪を重大な犯罪の合意罪の対象とすることであれば、この条約の義務を履行する上で問題がないと承知しているわけでございます。

 こういった条約の解釈に基づいて、先ほど申し上げたように、今回は、組織的犯罪集団が実行すること、計画することが現実的に想定されるか否かという基準にのっとって対象犯罪を選択したものでございます。

逢坂委員 計画されることが現実的に想定されるか否かの基準にのっとってというお話をされました。

 この基準というのは具体的にどういうことなのかということをお伺いしたいんですが、今回の刑期四年以上の犯罪が規定されている刑、例えば公職選挙法違反なんというのも、これは多分五年だったかと思いますけれども、あります。あるいは鉱業法、これも刑期が五年以上だったかというふうに思うんですが、これらが入っていない理由というのは、計画されることが現実的に想定されない、そういう判断なんでしょうか。

林政府参考人 個別の罪ごとの理由についてはお答えできると思いますけれども、今、今回の組織的犯罪集団が実行を計画することが現実的に想定されるか否かという基準と申し上げました。そのときには、犯罪の主体、客体、行為の態様、それから犯罪が成立し得る状況、現実の犯罪情勢、こういったところに照らして、組織的犯罪集団が実行を計画することが現実的に想定されるか否かという基準によって対象犯罪を選択いたしました。

 したがいまして、対象犯罪になっていないものについては、今申し上げたような考慮事情に照らして、組織的犯罪集団が実行を計画することが現実に想定されないという判断をしたゆえに、対象犯罪から落としているということになります。

逢坂委員 幾つか具体的な基準をお話しいただきましたが、あえて鉱業法を取り上げさせていただきますが、鉱業法はなぜ組織的犯罪集団が具体的に現実的に計画することが想定されないのか。私は、一般論としては、鉱業法、鉱山からあるいは土地の中から不法に鉱物をとること、これの罪が規定されているわけですが、組織的犯罪集団が関与する可能性というのは低くはないのではないかという気がするんですけれども、この点、いかがでしょうか。

林政府参考人 今委員御指摘の鉱業権によらない鉱物の掘採等の罪でございます。鉱業法百四十七条第一項に規定する罪でございますが、これは、法定の除外事由がないのに、鉱業権によらずにまだ掘採されていない鉱物を掘採するなどする罪でございます。鉱物の無許可探査等の罪は、鉱業法第百四十八条第一項に規定する罪でありまして、これは、経済産業大臣の許可を受けないで鉱物の探査等を行う罪でございます。

 鉱物の掘採や探査により経済的利益を得るためには、通常、多額の資本をもとに高度の技術及び設備を備えた上で大規模に掘採等を行う必要がございます。組織的犯罪集団が組織の維持拡大のために資金を得るためにこうした形での罪を実行することは現実的に考えがたいと考えました。また、組織的に鉱業権によらない鉱物の掘採や探査が行われた事例があるとも承知しておりません。

 このように、行為の態様、現実の犯罪情勢等を踏まえると、組織的犯罪集団がこれらの罪の実行を計画するということが現実的に想定しがたいと判断したものですので、今回は、法案においてこれらの罪を対象犯罪としなかったものでございます。

逢坂委員 刑事局長、私、逆じゃないかと思うんですよね。

 要するに、今いみじくも刑事局長も答弁されましたけれども、鉱業権を取得しないで鉱物を不法にとる、そのためには、大きな組織や、場合によっては機械や設備がなければこれはとれないのだというふうに言いました。個人ではやり得ない可能性の方が高いんじゃないですか。だったら、組織的犯罪集団が実際に計画する可能性、それが想定されるということが高いのではないかと思うんですけれども、いかがですか。私はこの辺の基準が非常に曖昧だと思っているんですよ。いかがですか。

林政府参考人 今指摘されている罪につきましては、通常、多額の資本をもとに高度の技術及び設備を備えた上で大規模に掘採等を行う必要があるわけでございますが、暴力団等の反社会的組織の活動実態を踏まえますと、組織的犯罪集団がこのような資本、技術及び設備を必要とする大規模に行われる行為に関与するということが現実的には考えがたいということで、組織的犯罪集団が組織の維持拡大のために資金を得るためにこれらの罪を実行することは想定しがたい、このように考えたものでございます。

逢坂委員 何で私はこの質問をするかというと、私の地元に大規模なセメントの原料になる鉱山があるんです。これは露天掘りです。

 そして、そこは非常に広大な土地でありまして、場合によっては誰でもが入っていける。もちろん、道は限られていて、フェンスがあって中には入れないというものがあるんですが、そういうところへ入っていって、そこにとめてある重機を使って、例えば夜中なんかに、とても広いエリアですので、埋蔵量はこの先、多分二百年とか三百年分ぐらいあるというふうに言われているすごいセメントの鉱山なんですが、そういうところだと、そこにある機械を使って掘削して、そこからセメントの原料になるものを持っていけると私は思うんですよ。そして、それを例えば何か悪さをしようとする集団が資金源にしようとすることは現実に想定し得るのではないかというふうに私は思うんですが、いかがですか。

林政府参考人 今の委員御指摘のような態様について、別罪で対象犯罪ということにすることは可能だと思いますが、鉱業権によらない鉱物の掘採等につきまして、あるいは鉱業法の規定に基づく対象犯罪につきましては、通常、多額の資本をもとに高度の技術及び設備を備えた上で大規模に行う必要がございます。暴力団等の反社会的な組織が、その活動実態を踏まえますと、そういった行為を、資本、技術及び設備を必要とする、そして大規模に、外から明らかにわかるような形で行われるこのような犯罪を、自分たちの組織の維持拡大のために継続的に資金を得るためにこういった罪を実行していくことは考えがたい、このように考えたわけであります。

逢坂委員 これは、林局長、後でまた丁寧にやりますけれども、私、判断の分かれるものはあると思うんですよ。二百七十七が絶対、これで唯一無二の対象犯罪だというふうには言えないのではないかと思うんです。

 外務省から武井政務官に来ていただいておりますけれども、二つ。

 今回のTOC条約五条第一項の(a)の中に括弧があって、「犯罪行為の未遂又は既遂に係る犯罪とは別個の犯罪とする。」という規定があります。これはどういう意味なのか、教えていただきたい。

 私の理解では、これは国民の皆様にはわかりにくいあれですけれども、既遂、未遂、さらにその次の予備以降のことを言っているんだというふうに思うんですが、これは予備から先のことを言っているんだという理解でよいのかどうか、この点が一つ。

 それから、今回のTOC条約の対象犯罪二百七十七、これはただの一つも減らすことはできないし、ただの一つもふやすことはできない、そうお考えになっているかどうか。

 この二点、簡潔にお答えください。

武井大臣政務官 お答えいたします。

 まず、最初の御質問でございますけれども、御指摘の部分は、重大な犯罪の合意または組織的な犯罪集団の活動への参加を各国の国内法で犯罪化するに当たりまして、合意内容たる犯罪また参加対象たる犯罪の未遂または既遂とは別個の犯罪とすることを求めるものでございまして、犯罪化の対象となる行為につきまして、犯罪の実行の着手に至らない段階で処罰し得るものでなければならないと考えております。

 それから、もう一つの二百七十七の件でございますけれども、そもそも、この法案を立案するに当たりまして、さまざまな過去の法案への御意見、御指摘を踏まえまして、政府として真摯に検討しました結果、先ほどもお話がございましたが、一般の方が処罰の対象にならないことを明確にするというこの新たなアプローチで、今回、テロ等準備罪を立案したところでございます。

 そういう意味で、法文上犯罪主体が組織的犯罪集団に限られることを明記した上で、対象犯罪につきましても、組織的犯罪集団が関与することが現実的に想定される二百七十七に限定をしたところでございまして、この二百七十七というものが本条約の義務を履行するために必要なものであると考えております。

 以上です。

逢坂委員 随分疑問がたくさん出ましたので、またやらせていただきます。

 ありがとうございます。

鈴木委員長 次に、井出庸生君。

井出委員 午前中、宮崎委員の質疑の中で、一般の方々とはどうであるかということが改めて定義をされました。

 その中で盛山副大臣は、グレーの人は一般の人とは言えないのではないか、そういう御趣旨の発言があったのではないか。その前は、きょう御説明があったように、白の方と黒の方とグレーの方がいる、グレーの方は見きわめてみなければならない、そういうお話だったかと思うんです。

 そもそも、大臣の答弁と副大臣の答弁が整合していない、そういう新聞報道に端を発して、きょう、その大臣との答弁の整合性についても言及されたと思いますが、グレーの方々というのは一般の方ではないと。かつては、グレーの方々は白か黒か大変難しいとおっしゃっていた部分、そこをもう変えてしまったということでよいのか、改めて確認したいと思います。

盛山副大臣 二十一日だったですか、前回のときの答弁が、私の説明が余りうまくなかったのかな、そんなふうに思いまして、きょうも朝、宮崎委員の質問に対して大臣からも答弁がありましたし、私からも御答弁したとおりでございまして、前回私は、白と黒、そしてちょっと間のよくわからない人がグレーかなということで、そういう表現を使ったわけでございます。

 先ほど来大臣あるいは私の方からも御答弁いたしましたとおり、組織的犯罪集団に入っている人で何らかの嫌疑が生じる以上、それを一般の人と言うかグレーの人と言うか、その表現をどうするかということでありますけれども、やはり嫌疑があるということは真っ白で何にもない人とは違うのかなということで、一般の人に対して嫌疑がかかることはありませんよ、そういうふうな御答弁をしたつもりでございます。

井出委員 私は、過去の副大臣の答弁の方が正しかったと思うんです。説明の仕方がまずかったのは今の方で、最初の二十一日の説明の方が大変実直であったと思うんです。

 今、盛山副大臣からグレーの方についてお話があって、副大臣の午前中の言葉をかりれば、一般の方々が対象になるということはありませんというこれまでの大臣の答弁は、完全に白の方の話をしているのであって、グレーの方の話はしていない、そういうような補足の説明もございました。

 まず、大臣に根本的に伺いたいんですが、本当に嫌疑が、証拠が十分あってこれは間違いない、テロ等準備罪にかかわっている、そういう人を黒とする、そんなことは全くないというのを白とする、そうであれば、その間のグレーの人というもの、そうした存在があり得ることをお認めになるのか、また、その方が一般の方か否かというところはどのように判断されるのか、大臣からお言葉、コメントをいただきたいと思います。

金田国務大臣 井出委員からの御質問でございますが、私の答弁と副大臣の答弁が違うのではないかという御指摘があった。私から御説明を申し上げるといたします。

 私は、組織的犯罪集団にかかわりのない方々はテロ等準備罪の捜査の対象となることはないということを述べておるわけであります。

 テロ等準備罪におきましては、犯罪の主体を組織的犯罪集団に限定したことによりまして、組織的犯罪集団に関与している嫌疑がなければその人物に対する捜査は行われない。

 加えて、組織的犯罪集団とは、一定の重大な犯罪等を行うことを構成員の結合関係の基礎としての共同の目的とする団体をいうことでありますから、国内外の犯罪情勢等を考慮すれば、テロリズム集団、暴力団、薬物密売組織など、違法行為を目的とする団体に限られるわけでありまして、一般の方々がこれらとかかわり合いを持つことは考えがたい。

 したがいまして、組織的犯罪集団とかかわりのない一般の方々、すなわち、何らかの団体に属していない人はもとより、通常の団体に属して通常の社会生活を送っている方々はテロ等準備罪の捜査の対象とはならない、このように申し上げたいということを申し上げてきました。

井出委員 組織的な犯罪集団にかかわっているか、かかわっていないかというのは、どうして白黒がはっきりつくのか。

 質問の仕方を変えますけれども、通常の生活というのは一体どのようなものなのか、コメントをいただきたいと思います。

金田国務大臣 ただいまの御指摘にお答えをいたします。

 一般の方々という言葉に定まった定義があるわけではなく、使用される文脈というものもその意味はあるとは思いますが、私が申し上げている一般の方々というのは、組織的犯罪集団とかかわりがない方々という意味であります。

 言葉をかえれば、何らかの団体に属していない人はもとより、通常の団体に属して通常の社会生活を送っている方々ということでありまして、そうした方々は、組織的犯罪集団、すなわち一定の重大な犯罪等を目的としているテロリズム集団、暴力団、薬物密売組織等とは無縁の生活を送っておられると考えるわけでありまして、組織的犯罪集団に関与することがないのはもちろんのこと、関与していると疑われることも考えられないのであります。

井出委員 何らかの団体にある人が所属しているかどうかというのは大変難しいと思うんですよ。その個人がその団体に入っていなくても、入っている認識がなくても、団体側に巧妙に引っ張り込まれるということは十分あるかと思うので、そこは簡単にいかないと思うんです。

 きょうの午前中と今の話を聞いていますと、組織的犯罪集団にかかわりがあるかないかというところで物すごく基準を引かれているかと思うんですが、この共謀罪、テロ等準備罪というものは、まず組織的犯罪集団か否か、その嫌疑、それから計画、それから実行準備行為、その三つが整って初めて強制捜査が始まる、任意捜査はその前にもできるとも言われております。ですから、きょうの午前中の、組織的犯罪集団にかかわりがあるかないかだけをもって一般の人とそうでない人との区別を簡単につけていいものなんでしょうか。

井野大臣政務官 先ほど来大臣が御答弁されているのは、主体をまず今回の法律では限定しているというところがみそでございまして、普通の殺人罪とかは主体は限定しておりません。人を殺した者はとしか書いてありません。あくまで、今回、組織的犯罪集団がという主体を限定しておりますので、そのような組織的犯罪集団に該当する人ないしはその周辺にいる人間というのはかなり異質な方というか、一般の方とは違う、暴力団とか薬物犯罪にかかわる人だとか、そういう趣旨で申し上げているところでございますので、一般の人とは明らかに違ってくるのではないかというふうに考えているところでございます。

井出委員 今の答弁を踏まえて大臣に伺いたいんですが、そうしますと、では、組織的犯罪集団で、犯罪にかかわらなくて、飯をつくる係とか、もっと言えば、その組織的犯罪集団に身内はかかわっているけれども、その家族とか、そういうものをどんどんどんどん軽々にグレーの部類に入れていくということになるんですか。

盛山副大臣 これまでもお答えしていると思いますが、まずは組織的犯罪集団かどうか。一人であれば組織にならないわけですから、まずそこがあります。

 そして、その組織的犯罪集団の中でも、計画を立てる、計画を共有、意識を共有する、そこも大事でございますね。つまり、例えば使いっ走りみたいな人で、全く内容がわかっていなければ今回の対象にはならないわけでありますから、一般の方かどうかということでは、組織的犯罪集団に属するかどうかということがまず最初の大きな区分になりますよということ。

 そして、その後、実際に嫌疑があるということを判断していくためには、その中で、組織があり、計画をちゃんと立てて、その計画に加わっているというんですか、計画、認識を共有していること、さらには実行準備行為、こういうことになるわけですから、そこのところで相当程度絞り込みがあると思いますので、ある組織に属しているから、そしてその組織が仮に組織的犯罪集団であるとして、全部が全部それで嫌疑がある対象になるということではありません。

井出委員 盛山副大臣の答弁はだんだん変わってきたのが残念ですが、常に実直であると思います。

 まず、組織的犯罪集団か否かの嫌疑が一つハードルであって、今、計画、準備行為と。しかし、今までの答弁、今までのここまでの議論ですと、テロ等準備罪が成立、嫌疑があるかないかは、やはりその時点、その事象で決まるんだと。だから、計画や準備行為に端を発して任意捜査なりが始まって、組織的犯罪集団か否かというのは、犯罪集団がこれとこれとこれと決まっていれば捜査の余地はないんですけれども、それは定義はしてあるけれども、決まっていないんだから、計画や準備行為、何かしらそれに関する情報提供があって、そっちから捜査が始まって、共同の目的があるかどうか、組織的犯罪集団かどうかというところが最後に来ることは、今までの議論だと十分あると私は思うんですよ。

 そうすると、きょうのように組織的犯罪集団か否かで一般の人かどうかを決めるということは、やはりこれまでの答弁と異なりますし、かつての答弁に戻していただいた方が議論が進むと思いますが、大臣、いかがですか。

金田国務大臣 そもそも、組織的犯罪集団に関与しているとの嫌疑がなければ捜査は行われないわけであります。そして、一般の方々がテロ等準備罪の捜査の対象となることはない、このように申し上げております。

 犯罪の主体を組織的犯罪集団に限定しない場合には、一般の方々も、犯罪が行われたという嫌疑があれば捜査の対象となるんですね。他方、テロ等準備罪におきましては、犯罪の主体を組織的犯罪集団に限定したことによって、組織的犯罪集団に関与しているという嫌疑がなければ当該人物に対する捜査は行われないのであります。

 加えて、組織的犯罪集団とは、一定の重大な犯罪等を行うことを構成員の結合関係の基礎としての共同の目的とする団体をいうわけでございますから、国内外の犯罪情勢等を考慮すれば、テロリズム集団、暴力団、薬物密売組織など、違法行為を目的とする団体に限られる、一般の方々がこれとかかわり合いを持つことは考えがたいのであります。

 したがいまして、組織的犯罪集団とかかわりのない一般の方々、すなわち、何らかの団体に属していない人はもちろんですけれども、通常の団体に属し、通常の社会生活を送っている方々はテロ等準備罪の捜査の対象とならないということになるわけであります。

井出委員 先日の参考人質疑で、小林よしのりさんが、大半は物言わぬ市民だ、それがある日突然、例えば子供が学校のことで何かあったとか、それから近くに何か自分の住まいの環境権を乱すような建物ができるとか、そういうときは物言う市民になるんだと。

 大臣の言う通常の生活、では、大臣は通常の生活をされているんですか。

金田国務大臣 私はそう思っております。通常の生活です。

井出委員 まあ、通常の生活とは思いませんが、犯罪には関係ないと思いますので。

 大臣はそれでも、組織的犯罪集団にかかわりのない人は関係ないと言い張るわけですよ。盛山さんはそれでも、先ほど私が再三聞いて、組織的犯罪集団にいるかいないか、それだけじゃないと。その後、計画と実行準備行為がありますからね。

 だから、きょうの午前中の議論と、あと、大臣がいまだに堅持されている、組織犯罪に入っていないイコール一般の人々、その決め方は、最終的には林さんに解説していただく以外ないかと思うんですけれども、大臣の、組織的犯罪集団か否かで一般かどうかを決めると、これは共謀罪じゃなくて参加罪みたいな解釈になっていませんか。どうですか。

林政府参考人 まず前提としまして、捜査というものは、犯罪の嫌疑ありとしたときに始まるということでございます。この場合の犯罪、例えば一般の刑法のような犯罪は犯罪主体を限定しておりません。したがいまして、刑法に書かれているような犯罪行為というものがあって、それとの関係で嫌疑というものが生まれれば、一般の方も捜査の対象となるわけでございます。

 それとの比較でいきますと、今回、テロ等準備罪は三つの大きな要件を付しております。その中の最初の要件が、組織的犯罪集団という要件であります。そうしますと、テロ等準備罪というこの犯罪は、少なくとも団体の中で、団体の活動として行われるという要件になっております。その観点でいきますと、そもそも団体に属さない人については今回のテロ等準備罪の嫌疑というものは生まれませんので、まずそれは対象とならないと言えると思います。

 さらに、今回、団体という要件を、組織的犯罪集団という形で、犯罪実行の目的を持っている団体、このように限定しております。そうしますと、通常の団体、そのようなものがない団体というものは捜査の対象とならないわけでございます。

 その中で、捜査の開始が犯罪の嫌疑ということになりますと、先ほど申し上げた三つの要件でもって、組織的犯罪集団が計画をし、その実行準備行為をした、こういうことによってテロ等準備罪の嫌疑が生まれるわけでございますが、最初の、大臣が言われた少なくとも組織的犯罪集団の関与、この点でございますが、これがなければそもそも犯罪の嫌疑というものは生まれないわけでございますので、そういった段階でその嫌疑のないものについては捜査の対象になりません、こういうことを申し上げているわけです。

 それで、捜査が開始されてから、捜査の対象となった組織的犯罪集団の関与というものの嫌疑があり、その中の構成員であるとかそういった人たちに対しての捜査が始まります。

 その中には、もちろん、捜査の結果、テロ等準備罪の成立がされない者は当然出てまいります。

 その結果もまた理由はさまざまでございまして、例えば構成員ではあるけれども、実際、今回の問題とされている計画には関与していない、こういった場合もございます。そういった形で不起訴になったり無罪になったりすることはございます。

 またあるいは、組織的犯罪集団と目される実態が認められたとしましても、その団体に属してはいたけれども、実際のところ、その団体が犯罪の実行を目的として存在していたということを認識していないような者もおります。そういったものもテロ等準備罪は成立しません。

 そういった形で捜査が遂げられて、組織的犯罪集団の関与という嫌疑を含む犯罪の嫌疑があると称して捜査が始まったけれども、実際には不起訴になったり無罪になったりする、こういう者がおりますが、では、これを一般の方々と言うかどうか。

 これについては、私は、その文脈で言う言わないは、それは言葉の使い方だろうと思います。そこにまた、一般の方々だと言わないと何か犯罪者であるというような何らかの評価を加えてしまうとか、またその逆であるとか、そのような評価の意味内容は全く抜きにしまして、一般の方々とそれを呼ぶかどうかは、それは言葉の使い方であろうと思います。

 ただ、仮にそれを一般の方々だと使ったといたしましても、そうすると、では、その一般の方々をテロ等準備罪は捜査の対象とするのかということになれば、いや、それは違います。先ほど申し上げたように、大臣が今まで言われているように、組織的犯罪集団にかかわりがない方、そういった意味の一般の方々については、そのような、捜査の結果、不起訴になったり無罪になっている方々を仮に一般の方々だと呼ぶといたしましても、そういった組織的犯罪集団にかかわりのない方が捜査の対象となるということにはなりません、このようなことを申し上げている次第であります。

井出委員 大変丁寧な答弁をいただきまして、要は、組織的犯罪集団に入っていても認識がないとか、いろいろなことで調べてみたら、やはり不起訴ということがある。ですから、グレーな部分ですよ、調べてみなきゃわからない。やはり二十一日のお話が一番正しかったと思うんです。

 要は、言葉遣いなんですよね。言葉遣いの問題だ。だから、私は、大臣の言葉遣いがよくないとずっとこれまで申し上げてきているんです。

 お経読みの前に治安対策一般論の中で話をしたときに、一般の方とそうでない人というのは、犯罪とかかわりがあるかないかという一般論をやりました。覚えていらっしゃいますよね、私がくどいほどぎりぎり聞きましたので。

 だから、その観点に立てば、グレーの人で、調べた結果白だったという人はやはり一般の人だとしなきゃまずいんじゃないですか。いかがでしょうか。

金田国務大臣 テロ等準備罪に関する捜査の結果不起訴となったり、裁判の結果無罪となったとしても、その理由というのはさまざまなんですね。組織的犯罪集団とはかかわりのない方々とは言えないのであります。

 例えば、先ほど刑事局長の説明において例を幾つか出していただきましたが、暴力団員のように組織的犯罪集団の構成員であったとしても、具体的な犯罪の計画に関与していないことを理由としてテロ等準備罪が成立しないということもあり得るわけであります。

 捜査は犯罪の嫌疑がある場合に行われるものでありまして、テロ等準備罪の捜査というのは、先ほどから御説明申し上げていますように、第一に組織的犯罪集団が関与する犯罪、第二に一定の重大な犯罪の計画行為、第三にその計画に基づく実行準備行為、この三つの点について嫌疑がある場合に捜査が行われるものであります。

 通常の団体に属したり、通常の社会生活を送っている方々にそのような嫌疑が生じるということは考えられないわけであります。逆に言えば、捜査の対象となっているということは、少なくとも組織的犯罪集団とのかかわりがあるという嫌疑が認められたということでありまして、その意味でも、組織的犯罪集団とかかわりのない一般の方々はテロ等準備罪の捜査の対象とはならない、このように考える次第であります。

井出委員 いやいや、グレーの部分で調べた結果白だった人はやはり一般の方々とした方がいいんじゃないか。(発言する者あり)ちょっと静かにお願いします。

 目的は盛山副大臣の答弁を二十一日に戻していただくことなのでお伺いしますが、きょうも午前中、御自身で無罪推定の原則ですとかおっしゃられたと思うんですけれども、だから、グレーな人が任意捜査なりなんなりの対象になるということは、嫌疑があるのであればそれはそのとおりだと思うんですけれども、だけれども、その嫌疑があることをもって一般の人ではないというその言葉遣いはやはり私はまずいと思いますよ。

盛山副大臣 私の言葉遣いがまずいようであればおわびをしなければならないと思いますけれども、午前中も申し上げました、結局、先ほども刑事局長が何度も詳しく御説明もしたところでありますが、何らかの嫌疑があるということは、言葉遣いの問題かもしれませんが、一般の人かどうかということになれば、真っ白の一般の人ではないということにはなると思うんですね。ただ、その後よくよく調べてみると、仮に限りなく黒に近くても、黒ではないグレーであればそれは無罪推定をする、こういうことになるわけでありまして、実際に捜査をして判断しなければ、個々のケースについてどうなるかわかりません。

 そこのところを、私が舌足らずだったからかもしれませんですけれども、私はグレーの方という言い方を二十一日にしたわけでありますし、そしてまた、きょうの朝、あるいは先ほど来の御答弁で、どういう方を一般の方と言うかということについては三つの要件を何度もお話してありますけれども、そういうところで、何らかの嫌疑が生じるという段階でやはりそれは一般の方とは言えないんじゃないかということを大臣も刑事局長も言っております。私もそのように考えております。

井出委員 二十一日の答弁が正確なのであって、舌足らずではなくて、きょう、舌が過ぎたというふうに私は思うんです。

 ちょっと、グレーだから白とは言えないというきょうの答弁は、無罪推定の話と、丁寧に控え目に言っていただいているとはいえ、やはりそれは真っ向から対立するような話、盛山副大臣は穏やかな方ですから、そうとはとりたくないんですけれども、穏やかな方がそこまで言うなら相当重大な答弁ではないかなと思います。

 きょう人権擁護局長にちょっと来ていただいておりますが、今のやりとりですね。捜査の対象の嫌疑があってそれが晴れる、理由はさまざまだと大臣はおっしゃいました。確かに、限りなく黒で起訴猶予という方もいるかもしれません。その一方で、本当に白の方もいると思います。私は、そういう意味で、グレーの方々が一般の方々とは言えないというきょうの言葉遣い、人権擁護局長としてはこれを認めてはならないと思いますが、いかがですか。

萩本政府参考人 一般の方々という言葉についてのお尋ねでしたけれども、法案に関連するこれまでの答弁の中での説明ぶりを念頭に置いてのお尋ねでありまして、人権擁護局としては、所管外ということになりますので、お答えは差し控えたいと思います。

井出委員 もう少し一般論で、この法案もそうですし、通信傍受もそうだった、特定秘密もそうだった、さかのぼれば治安維持法もそうだったのかもしれません。こういう刑事立法をするときに必ず、一般の人々は関係ありませんと。捜査権限、権力のある側の方が簡単に一般の方々は関係ありませんと言うこの歴史を人権擁護局長としてどう考えるか、聞いておきたいと思います。

萩本政府参考人 一般の方々あるいは一般の人々という言葉そのものに何か定まった意味、意義というか定義があるわけではなく、使用される文脈によって意味は異なるのではないかと思います。

 したがいまして、適当かどうかということにつきましても、その言葉がどのような文脈で、どのような意味合いで使われたかによるというように思いますので、一概にお答えするのは難しいと思います。

井出委員 政治家や官僚の方がよく一般の国民という言葉を使われることがあるんですが、それは、難しい法案をわかりやすくですとかいろいろな意味があるかと思うんですが、私自身はそういうことにも大変抵抗を感じています。

 今回の一般の方々という言葉遣いは、犯罪に関係があるかないか、罪の対象であるかないか、それをぎりぎりやっていけばやはりグレーの人がいるんですよ。だから、やはりそこはできるだけ抑制的にするべきだということはもう何回も質疑で申し上げてまいりました。強くそのことは自制を求めたいと思います。

 盛山副大臣は、四月の十四日にも、何があってもこれは絶対真っ黒、真っ白である、この辺というものが難しいわけでありますから、どのように判断していくのかというのは大変難しいと。それから、我々行政の方では、ある程度間違いのないように判断しているつもりではございますが、それでもなお判断の誤りがあった場合、例えば司法による判断というのも含めて、問題のないようなルールづくり、立法をやっていくと。

 この二十一日、十四日の答弁が、権力、捜査権限を扱う役所として大変謙虚で謙抑的な答弁であるということは改めて申し上げておきたいと思います。

 次に、組織的犯罪集団が限定されているという話。

 これはちょっと林刑事局長に伺いますが、私が前回、右翼で、左翼で、極左はどうだ、革労協はどうだ、そういう話を聞いたら、右翼、左翼だからといって一概にそうではないと。テロ集団だって暴力団だって、暴力団は指定暴力団とそうでないものがありますということは局長もお認めになった。ですから、テロリズム集団、暴力団、詐欺集団というものはおっしゃるように例示である、組織犯罪集団というものを法律で定義している。だとすれば、果たしてその定義が本当に限定的なのか、私はそこをきょうちょっと伺っていきたいんです。

 破防法で、破防法の対象の団体というものをどう定めて、そしてその対象の団体というものがどのぐらいあるのか、教えていただきたいと思います。

林政府参考人 今、破防法を言われました。

 この破防法は、団体規制の法律でございまして、刑罰実体法ではございません。犯罪の範囲を画する際の組織的犯罪集団という定義は今回のテロ等準備罪の中に掲げてございますが、一方で、破防法の対象団体というのは、こういった破防法で定められている要件に従って団体規制のために掲げられており、それを確定しているわけでございまして、そこのところは、端的に申し上げまして、私ども刑事局では全く、刑罰法ではないものですから所管をしておりませんので、承知しておりません。

井出委員 破防法や団体規制法には、例えば破防法に関して言えば、この法律は、団体の活動として暴力主義的破壊活動を行った団体に対する必要な規制措置を定めるとともに、暴力主義的破壊活動に関する刑罰規定を補整し、もって、公共の安全の確保に寄与することを目的とすると。実際、本当に数える程度の団体しか指定されていないと思うんです。

 また、破防法の三条には、この法律による規制及び規制のための調査は、第一条の目的を達成するため必要最小限度においてのみ行うべきだ、いやしくも権限を逸脱して、思想、信教、集会、結社、表現及び学問の自由並びに勤労者の団結し、及び団体行動をする権利その他日本国憲法の保障する国民の自由と権利を、不当に制限するようなことはあってはならないと。

 テロ等準備罪、共謀罪というものは、本当にテロのような犯罪が起こってしまったらまずいから、それを未然に食いとめる、暴力主義的破壊活動と似たような意味合いがあるなと私は思っているんです。その一方で、このテロ等準備罪は、さんざん議論の中で、労働組合、NPO、環境系の活動団体、そういうものは対象になりませんということをるるおっしゃってきているんですが、破防法にはしっかりそれが明文化されている。テロ等準備罪、共謀罪というものはそういう法文による明文は一切ない、テロも暴力団も詐欺集団も例示であると。

 ですから、私、今回のものは、限定されている、限定されていると言っていますけれども、ほかのものと比較したり、その根拠をぎりぎり詰めていけば決してそんなに限定されているとは言えないと思いますけれども、その点はどうでしょうか。

林政府参考人 まず、テロ等準備罪の構成要件は、刑罰規定として非常に厳格に要件が限定されている、このように私は認識をしております。

 その上で、破防法等との関係でございます。

 テロ等準備罪というのは、刑罰の対象、処罰の対象をいかにするかという規定でございます。刑事実体法でございます。

 他方で、破防法の規定されているこれは団体規制のためのものでございまして、例えばそういった一定の要件を定めておきまして、その要件に当たるものについて団体の活動制限を行ったり、一番大きいのは解散指定の請求を公安審査委員会に行うとか、こういった行政的な規制のための要件を定めているわけでございます。これが団体規制ということでございます。

 そういったことによりまして、団体規制、行政規制の目的で定める指定といった手続と、今回のように、どの範囲で処罰がなされるのか、その場合には当然それは裁判所によって最終的に直接的に判断をされるわけでございますが、そういった形で規定されている刑事実体法、この大きな違いがまずございます。

 その上で、例えばこういった組織的犯罪集団というものが行う計画及び実行準備行為を、その処罰の範囲を定めるに当たり、破防法の団体規制のような手続的なものを取り入れて、あるいは要件的なものを取り入れて事前に網羅的にさまざまな指定をしておくことができるのかということでいきますれば、これは現実問題として全く困難であろうかと思います。

 なぜならば、さまざまな組織的犯罪集団というものは、その態様は全くさまざまでございます。国内のものもあれば、国外に拠点を置くようなものもあるし、非常にその態様もさまざまでございます。こういったものを現実の問題として網羅的にその要件を定めて指定しておくという行政手続的な、行政規制的な手法を入れることは現実的に困難でございますし、仮にもしその団体を事前に指定する枠組みをとった場合には、事前に指定されていない組織的犯罪集団が対象犯罪の合意に加えて実行準備行為などを行った場合に処罰の対象とすることができないということになりまして、こういったもので事前に指定しておくという手法を刑事実体法の処罰要件の中に入れ込むことは甚だ問題が大きい、こう考えております。

井出委員 立法の枠組みは私は余り答弁としては求めていないんですが、ただ、あらかじめ指定しておくということは大変困難だ、犯罪集団も大変その態様がさまざまであるということは全くそのとおりだと思いますし、だから、今まで議論してきた、その時点において物事を判断していく。そう考えれば、組織的犯罪集団というものは、定義は置いていますけれども、やはり一個一個のものを見なければ何も言えない。だから、そうじゃないから大丈夫ですよというようなことをどうして軽々に言えるのかなと私は思うんです。

 一つ伺いますけれども、よく、共同の目的があって、指揮命令系統ということをおっしゃられますよね。例えばIS、イスラム国なんかは、指揮命令系統は本当に上下関係があるのか、各国で独立でやっている、そこにその共謀関係が見出せるのか。私は、この定義をもってしても、果たしてISというものは対象にすることが難しいんじゃないかと思うんですけれども、それはいかがですか。

林政府参考人 具体的に実在するIS等がこの組織的犯罪集団に当たるかどうかということについては、当然、その具体的な事実関係に基づいて、証拠に基づいて認定されるべき問題でございますので、そのことをここでお答えすることは困難でありますけれども、どのような要件がないと組織的犯罪集団と認められないのか、その必要な要件というものは今回厳密に定めておるわけでございます。

 単純に組織的犯罪集団に該当するかどうかということについては、その組織的犯罪集団の意義といたしまして、団体のうちで共同の目的が重大な犯罪を実行することにある多数人の継続結合体である、こういった要件がございますし、さらに、その団体のうちというのも、組織的犯罪処罰法に団体の定義がございます。その団体の定義というものは、その団体の中で犯罪実行の目的または意思を実現する行為の全部または一部が組織により反復して行われる、こういった組織的な性質を持っているものでなければなりません。この場合の組織というものについてもまた組織的犯罪処罰法で定義がございまして、この組織というのは、指揮命令に基づき、あらかじめ定められた任務の分担に従って構成員が一体として行動する人の結合体、こういった組織の定義がございます。

 したがいまして、こういった団体の中に組織というものがあり、この組織というものは指揮命令に基づいてあらかじめ定められた任務の分担に従って構成員が一体として行動する人の結合体ということでございますので、指揮命令関係と役割分担というものがこの組織の中の組織構造に内在しているようなものでなければ今回の組織的犯罪集団というものには当たらない。

 このように重層的に組織的犯罪集団の要件というのは定まっておりまして、これは非常に厳格な要件でございます。この要件が満たされるかどうか、認定できるかどうかはそのための立証が必要でございまして、組織的犯罪集団の認定については立証のハードルが非常に高いものとなっているものと考えております。

井出委員 ISがこれに該当するかどうかも答えることは困難だと。それはハードルが高いとおっしゃいますけれども、ISが認定できないのであれば、テロ対策なのかというところは大変に疑問だと言わざるを得ません。

 私は逆の観点で聞きたいんですが、組織的犯罪集団だと大変限定をしていますけれども、でも、実際、テロ等準備罪というものは、二人以上で計画をして準備行為をしていくと。二人以上の計画ということは、二人でもいいわけですよね。その二人は果たして団体の認識を持つ必要があるのか。本当に、暴力団と二人組でやるのじゃ、その団体の認識というのは、自分たちの間でも世間から見ても全然違うでしょう。

 もう一つどうしても聞いておきたいのは、なぜ共謀という言葉を二人以上の計画とわざわざ変えるのか。共謀の方がよっぽど犯罪に対する計画を想起させるし、計画といったって、夏休みの計画じゃないんだから、犯罪に対することなんですから、そこをどうして、二人以上の計画、そうぼやかしておきながらも、一方では組織的犯罪集団なんです、ISも当てはまりません、そういうことが言えるのか。その開きについてちょっと教えてください。

林政府参考人 まず、今回の計画というものは、二人以上で計画となっておりますけれども、これは、組織的犯罪集団の団体の活動として組織によって実行されるものについて、二人以上で計画するということになっております。この二人以上というのは、計画のところで限定しております。

 そして、これはやはり組織的犯罪集団の団体の活動としてという要件がございますので、この組織的犯罪集団というのは、当然、多数人の継続的結合体でなくてはなりません。恐らく、仮に二人という団体が存在し得るのかということでいえば、多数人の継続的結合体というものが、例えば一人がその団体から抜けた場合に、抜けてもその団体というものの存在が維持できるのかどうか、継続するのかどうかという観点で考えられますので、二人だけでの団体というものは想定しがたいと考えます。

 その上で、二人以上で計画という部分がなぜ共謀という形になっていないのかということでございます。

 共謀ということであれば、当然一人で共謀ということはございませんので、共謀という言葉が使えます。一方で、計画となりますと、計画という言葉は、一人で計画することもございます。今回は、当然、組織犯罪対策でございますので、一人での計画というようなことは考えずに、二人以上、こういう限定を付しました。まず、その意味で今回二人以上というものがここの計画という言葉の関係で入っているというふうに御理解いただきたいと思います。

 最後に、共謀という言葉と計画という言葉でございますが、共謀については、現行法上、例えば共謀罪というのがございます。あるいは陰謀罪というのもございます。こういった言葉については、現行法上、組織的な要件はございません。組織性を付加した要件で共謀するというようなことにはなってございません。また、共謀という言葉は、現行法上、共謀共同正犯という言葉でも使われます。この共謀共同正犯における共謀というものも、組織性の要件というのは前提としておりません。

 そうしたことから、今回改めてテロ等準備罪を立案するに当たりましては、共謀という言葉これ自体が、現行法上との関係でいえば組織性の要件を付さない概念であります。また、海外における英米法上の共謀罪、コンスピラシーというものについても、海外では組織性の要件は付しておりません。そういったことから、今回は、テロ等準備罪は厳格な組織性の要件を付した合意を処罰する、こういったことを的確にあらわすために、共謀という言葉ではなくて、二人以上の計画という言葉として立案した次第であります。

鈴木委員長 井出庸生君、時間が参っております。よろしくお願いします。

井出委員 共謀という言葉に組織性はないと。でも、私は、共謀という言葉の方がグループ性はすごくあると思いますよ。

 もう一つ、組織要件というお話があったんですが、組織要件をつければそこに主従関係が生まれてきますよね、その計画を立てた人、そうでない人、かかわりがないという人、薄い人。その点についてまた今度議論をしていきたいと思います。

 きょうは終わります。ありがとうございました。

鈴木委員長 次に、藤野保史君。

藤野委員 日本共産党の藤野保史です。

 二十五日に行われました参考人質疑は大変参考になりました。立場の違いを超えて、本当に認識が深まったなと感じております。これは委員全員の共通認識ではないかなと思っております。

 本法案の充実した審議という点でいいますと、やはり、こうしたさまざまな角度からの意見をお伺いする、これは不可欠だと思っております。今後も参考人質疑の開催を何度も強く求めていきたいと思います。

 二十五日に法務省が、テロ等準備罪の対象犯罪の類型別の個数という資料と、未遂・予備罪(準備罪)のある対象犯罪という資料を出してまいりました。私たちは、法案審議の前提だということで、これらの資料をずっと求め続けてきたわけですが、十四日の趣旨説明から十日以上たって、ようやくその一部が出されてきたということであります。これを見てみますと大変興味深い。きょうもこれについてお聞きをするわけですが、こうした資料は法案審議の大前提として本当に欠かせないと思うんですね。

 これ以外にもたくさんあります。例えば、私たちは、起草過程における外務省公電というものも求めております。きょうは、松本国家公安委員長にお越しいただいております。二十一日には岸田外務大臣にお越しいただいたわけですが、その際、二十一日には外務大臣がこうおっしゃっているんですね、起草過程の、テロリズムを含むかどうかという話のときに。これはぜひ、公電も含めて、かつての起草の経緯、全体を見ていただき、日本の態度について確認していただきたいと思います、こう答弁いただきました。公電も含めて全体をと外務大臣がおっしゃっているわけですね。

 例えば、第七回の起草委員会の非公式協議、この協議は大変重要な協議でありまして、共謀罪が本当に必要なのかどうか、それまでの政府の説明とがらりと変わってくる一つのターニングポイントになるのがこの第七回起草委員会なんですが、ここで何が話し合われたのか、これは本当に共謀罪が必要なのかどうかと考えるときにどうしても必要ということで、私たちは非公式協議の公電を含めてやはり公開すべきだということを要求しております。この場で外務大臣に、公電も含めて全体を見てと答弁いただいているわけですから、これはやはり提出を求めたい。

 委員長に改めてお願いしたいんですが、こうした資料の提出をお願いしたいと思います。

鈴木委員長 私からも要請しておきます。

藤野委員 参考人質疑では、早川参考人などから、対象犯罪はまだまだ減らせると思うという指摘がありました。そこで、本法案の対象犯罪について見ていきたいと思います。

 まず前提として、法務省に確認したいんですが、本法案の対象犯罪をどうするか検討するに当たって、TOC条約を締結している他の国の状況、これについても調査はされたんですよね。確認です。

林政府参考人 他国の法整備の状況については、外務省において必要な範囲で調査したものと理解しております。

藤野委員 具体的に見ていきたいというふうに思うんですね。

 提出していただいたこの資料、これには、例えば傷害罪、刑法二百四条がテロの実行に関する犯罪ということで分類されております。恐らく、他の国々でも傷害罪は対象犯罪になっていると思うんです。しかし、この傷害罪というものそのもので見ても、日本と他国では大変大きな違いがある。日本の傷害罪というのは刑法二百四条の一本でありまして、人の身体を傷害した者は十五年以下の懲役または五十万以下の罰金に処する、これだけなんですね。これに対して他の国々ではどうなのか。

 配付資料を見ていただければと思います。これは、森下忠教授の「現代の国際刑事法」という二〇一五年の本からおかりしているものです。

 ここにありますように、上の方が傷害罪、下の方が窃盗罪ですが、まず傷害罪。大陸法系の国々のうち、イタリア、スイス、オーストリア、ドイツ、フランス、それぞれの国で傷害罪がどう罰せられているか。もちろん、大前提としまして、各国の犯罪構成要件というのは違いますし、法体系も違います。ですから、これは厳密な比較というよりは傾向、国際的な動向を知る手がかりとしてお配りさせていただいているわけですが、見ていただきますと、どの国も、軽い傷害、重い傷害、特別重い傷害と区別しております。

 そして、イタリアでは軽い傷害は三月以上三年以下の懲役、スイスでは三年以下の軽懲役、オーストリアでは六月以下、そしてドイツでは三年以下、フランスでは三年以下。つまり、TOC条約の言う長期四年以上、こういう立場からしますと、これらの国々の軽い傷害というのは対象犯罪にならない、重大な犯罪には当たらないということになってきます。

 フランスの場合ですと、八日間を超える労働不能を生じさせる、一週間以上働けない、そんな傷害でも軽い傷害であります。逆に、フランスにおける重い傷害というのは、凶器を用いた身体の一部の切断、または永続的に障害を与える、これが重い傷害なわけですね。イタリアでも重い傷害というのは四十日を超える疾病または労働不能、スイスでも身体の一部の切断または機能不全、オーストリアでは二十四日を超える病疾または労働不能、ドイツも身体の重要な部分の損傷、機能不全ということになっております。

 ですから、各国はこういう状況で、他方で日本は傷害の程度を全く問わない、一律に十五年以下の懲役または罰金。素手のけんかでちょっとかすり傷を負わせたという場合でも傷害罪ですし、凶器で手足を切断する、これでも同じなんです。他国ではそれをやろうぜと言って共謀しても共謀罪にならないような、けんかの相談まで日本では共謀罪の対象になってくる。

 大臣にお聞きしたいんですが、各国の法体系、構成要件の違いはあるとしても、日本の対象犯罪は、二百七十七ではありません、傷害罪という一つの犯罪、一つ一つで見ても、他国に比べて広いと思われませんか。

金田国務大臣 テロ等準備罪の対象犯罪というのは、死刑または無期もしくは長期四年以上の懲役もしくは禁錮の刑が定められている罪のうち、組織的犯罪集団が実行を計画することが現実的に想定される罪を選択したものであります。

 そして、傷害罪、刑法第二百四条は、人の身体を傷害する罪であって、テロリズム集団がテロの実行のために計画することが現実的に想定されることから対象犯罪としたものであります。

 テロ等準備罪については、対象となる団体をテロリズム集団、暴力団、薬物密売組織などの組織的犯罪集団に限定しておりまして、正当な活動を行っている団体がテロ等準備罪の適用対象となることはないということであります。したがって、お尋ねのような……(藤野委員「聞いていない」と呼ぶ)なることはないということであります。

藤野委員 答弁になっていません。私が聞いたのは、傷害罪という一つだけを見ても、他国は懲役刑を区分しているわけです。重大な犯罪に当たらないとなっているわけですよ。ここが日本は広いんじゃないかというのが私の質問です。

金田国務大臣 それは法体系の幅の問題ということになろうかと思いますが、他国の傷害罪との比較をこの場で厳密に行うことは難しいんですけれども、傷害罪の態様と結果についてはさまざまなものがあるものと思います。

藤野委員 私は、体系について問わないと冒頭に申し上げました。そして、聞いたのは一つの犯罪であります。一つの犯罪について聞いているので、それについてのお答えが全くないということです。

 では、もう一つ聞きます。

 この法務省が提出した資料の中で、窃盗罪、刑法二百三十五条は、テロの実行のための犯罪ではなくて、その他資金源犯罪に分類されております。他方で、強盗罪、一条横の二百三十六条はテロの実行に関する犯罪に分類されている。これは何で違うのか。

 もう一回配付資料一を見ていただきますと、下の方に窃盗罪の国際比較がありまして、これも、ヨーロッパ各国では、単純窃盗、重い窃盗、そして凶器を持った窃盗あるいは侵入窃盗という三つに区分しているわけですね。そして、イタリア、オーストリア、フランスで単純窃盗は三年以下であります。三年以下、つまりTOC条約では重大な犯罪に当たらない。

 他方で、日本の刑法は全く区別なく、一律に窃盗として十年以下の懲役または罰金ということであるわけですね。

 ですから、ここでもお聞きしたいんですが、今度は窃盗です、大臣。一つの犯罪なんです、体系じゃありません。他の国では重大な犯罪に当たらないような軽微な窃盗、万引きとか、そういうものが日本では共謀罪の対象になってしまう。大臣、これは広過ぎるんじゃないですか。

林政府参考人 各国で窃盗罪をどのように構成するか、先ほどの傷害罪をどのように構成するか、これは各国でその態様に応じてさまざまな定め方がございます。条約はそのことを当然の前提として、条約での重大犯罪をどのように掲げるかというところで、個々の犯罪名を列挙してリスト方式でいくのかどうか、いろいろ議論しましたが、最終的には法定刑においてその重大犯罪を定めようとしたわけでございます。しかも、その法定刑は長期四年以上という形で、長期ということを基準にして法定刑を定めました。

 その結果、各国では、細かく窃盗罪の中身を分けて法定している国であれば、それらのうちの長期四年を下回るような刑、罪名については対象犯罪となりませんが、日本においてはそれを分けておりませんので、それは長期四年以上ということで全部入るということになります。これは条約がそのような定め方をしていることに基づくことで、条約はそれを前提として定めているわけです。その上で今回の対象犯罪としておりますが、各国では必ずしも組織的な要件をつけていないこの合意罪を、合意を処罰する犯罪を、日本の場合はテロ等準備罪という形で、組織的犯罪集団のという組織的な要件を付した上で対象犯罪としているわけでございます。

藤野委員 いや、もう全く質問に答えていないわけですね。

 大臣、では、話し方を変えますけれども、例えば窃盗罪、法務省が出してきた窃盗罪はテロ犯罪じゃなくて、その他資金源だというんですね。他方で、強盗罪はテロ犯罪だというんです。各国では法定刑の違いしかないわけですよ、ほかの国でいえば。質的な違いだという分類にはしていない。日本は、窃盗はその他資金源、強盗はテロ犯罪。何でこんなに質的に違うんですか。

林政府参考人 今回、我が国の場合は対象犯罪というものの絞り込みを行いました。絞り込みを行った結果が対象犯罪となっているわけでございますが、その際、今回の対象犯罪としたものの中で、五分類に分類を一応いたしましてお示ししたところでございます。

 その際、御指摘のとおり、窃盗については、その他資金源犯罪、資金源に関する罪として分類しております。強盗罪につきましては、テロの実行のために計画することが現実的に想定されるということから、テロの実行に関する犯罪、罪として分類しております。

 もっとも、テロ等準備罪の対象犯罪は五類型でございますが、従来から申し上げておりますように、必ずしも一つについて必ず一つの分類に当たるというわけではなく、複数の類型に該当し得るものが少なくない、こういったことから、これまで、その分類については網羅的にお示しすることは困難であると説明してまいりましたが、今回それをお示ししたわけでございます。

 その際にも申し上げておりますが、今般、個々の対象犯罪がどの類型に分類されるかということについては、五類型の複数の類型に当たり得ると考えられる罪についても、あえて最も特徴的な一つの類型のみで掲示をしているということで、今回お示しさせていただいております。

藤野委員 答弁としては最後の部分だけでいいんです。長々と事実をずっとしゃべるのはやめていただきたい。事実ですから、それは私たちは認識しております。委員長も、その点はきちっと指導していただきたいと思います。

 そして、今申し上げたのは、一つ一つの犯罪で見ると各国に比べて広過ぎるんじゃないかという側面であります。

 逆に、なぜ今回対象から外れたのかよくわからない。なぜ除外されたのか。

 先日の参考人質疑で、高山佳奈子京大教授は、今回の対象犯罪から公職選挙法、政治資金規正法、政党助成法違反が全て除外されていること、並びに特別公務員職権濫用罪、暴行陵虐罪も除外されている、あるいは組織的な経済犯罪、さらには公用文書、電磁的記録の毀棄罪なども除外されていることを指摘され、これらはTOC条約との関連でいえばTOC条約が犯罪化しようとしていることに反するのではないかという提起をされました。私もそのとおりだと思います。

 組織的犯罪集団、マフィアなどは、政治家や警官と深く結びついて、そこから経済的利益を得ていく、これは常識であります。これらの犯罪が日本の対象犯罪から除外されている。これには、TOC条約との関係で、私は大変大きな疑問があります。

 そもそも、このTOC条約の第八条を読みますとこう書いてあります。公務員に対し、当該公務員が公務の遂行に当たって行動しまたは行動を差し控えることを目的として、当該公務員自身、他の者または団体のために不当な利益を直接または間接に約束し、申し出または供与すること。そして、(b)では、公務員が自己の公務の遂行に当たってと。要するに、第三者が公務員に対してやらせた場合と公務員自身がやった場合の両方を条約そのものに書いているわけですね。にもかかわらず、それに関連するような条文が外されている。

 イタリアでは、マフィアと政治家の癒着を断つために禁錮刑が八年から十年に強化されるとか、いろいろされているわけです。組織的犯罪集団にしっかりと対処していこうとすれば、そうした政治家や警察、公務員というのは当然対象になってくる。なぜこれが漏れたのか。

 これは大臣にお聞きしたいんですけれども、一般市民には傷害とか窃盗とかいうことについては諸外国よりも広く、諸外国では重大な犯罪に当たらないようなものまで共謀罪の対象にしながら、一方で、政治家や特別公務員、典型的なのは警察です、有力者が関与するような、あるいは企業が関与するような犯罪は除外されている。大臣、これは余りに不均衡だと思われませんか。

金田国務大臣 藤野委員の御質問にお答えしますが、まず私から基本的な考え方を申し上げます。

 テロ等準備罪におきましては、国際組織犯罪防止条約上の組織的な犯罪集団が関与するものとのオプションを活用し、組織的な犯罪集団が関与することが現実的に想定しがたいものを対象犯罪から除外いたしましたほか、過失犯等の適用が考えられない罪や、既に共謀罪が設けられているなどの理由で対象犯罪とする必要がない罪といったものを除外したもの、その結果であるということで御理解をいただきたいと思います。

 基本的な考え方を申し上げましたが、あと、詳細については刑事局長から。

藤野委員 私は、大臣がそうやって現実的に想定とおっしゃるのであれば、公務員と組織的犯罪集団のつながり、あるいは政治家と組織的犯罪集団のつながり、こんなものも現実的に想定されるんですよ。これが除外されている。これは本当に不均衡だというふうに思います。

 そして、きょうは国家公安委員長においでいただいておりますので、ちょっとその点についてお聞きしたいと思います。先ほど組織的犯罪集団かどうかというお話がされました。これについて、私は、誰がどうやって判断するのかということについてお聞きしたいと思っております。

 先ほど井出委員から破防法の話が出ましたが、私も三月八日の当委員会で、破防法とオウムなどを対象にする団体規制法をお聞きしました。きょうは、同じ団体規制法である暴力団対策法についてお聞きしたいと思います。これはまず国家公安委員会にお聞きしたいんですが、同法は、どんな手続あるいは要件で団体を指定し、規制を行うのか。端的に。

中村政府参考人 お答えいたします。

 お尋ねの、まず暴力団対策法におけます指定暴力団の指定の要件でございますけれども、一つには、その構成員が資金獲得活動を行うに当たり、その威力を利用させ、または威力を利用することを容認することを実質上の目的とするものであること、二つには、犯罪経歴保有者が一定の割合以上存在すること、三つ目に、代表者等の統制のもとに階層的に構成されている団体であること、以上の三つの要件を全て満たす必要がございます。

 次に、手続についてでございますけれども、指定をしようとするときは、その主たる事務所を管轄する都道府県公安委員会による、指定に係る暴力団の代表者等からの公開による意見聴取、さらに実質上の目的に係る要件に該当することについて有識者であります審査専門委員からの意見聴取を経る、こういったことを含めまして、国家公安委員会による要件該当性の確認、そうしたことが行われた後に当該都道府県公安委員会によりまして指定暴力団が指定されるということでございます。

藤野委員 今、基本的な要件と手続について御答弁いただきました。

 もう一点だけ、要件のところで、組織内の構成員の中に占める犯罪経歴保有者の比率が政令で定められていると思います。これはたくさんあるんですが、例えば十人から十四人の場合だったら何%か、あるいは五十人から五十四人の場合だったら何%か、百人から百九人の場合だったら何%か、そして千人以上だったら何%か。これをお答えください。

中村政府参考人 お答えをいたします。

 一定の割合と先ほど申しましたけれども、これにつきましては暴力団対策法第三条第二号に定めがございます。

 お尋ねの、十人から十四人までについては三〇・七七%、五十人から五十四人までについては一二・〇一%、百人から百九人までにつきましては八・〇一%、それから千人以上ということでございますと四・一一%となっております。

藤野委員 ですから、暴対法の場合は、メンバーの中に犯罪経歴保有者が何人いるか、何%か、そこまで厳格に、ある意味客観的な数値で定めているわけです。だから、いわゆる主観的な認定が排除されていく、勝手に認定できない。そういう制度的仕組みが客観的にあるわけですね。ところが、共謀罪で言う組織的犯罪集団にはこんな要件は全くありません。

 配付資料の二、二枚目を見ていただきたいんですが、これは手続の概略図なのでありますが、今答弁いただいたように、上から下に行くような手続が要るわけですね。一番上に書いてありますように、公開による意見聴取が行われる。その意見聴取では、こちらでいいますと、指定しようとする暴力団側に意見陳述並びに証拠提出の機会を与える。そして、その下の黄色いところになるわけですが、捜査機関以外の都道府県公安委員会や国家公安委員会や、そこに線を引っ張っておりますが、審査専門委員、審査専門委員というのは民間から選ばれる委員であります。つまり、捜査機関以外にこれだけの第三者が関与して、しかも公開で決定される。

 国家公安委員長にお聞きしたいんですが、なぜ暴対法はこれだけ厳格な数値要件やあるいは手続を定めているのか。これは、当時の国会で、憲法との関係を意識して相当議論されたからではないでしょうか。

松本国務大臣 暴力団対策法は、市民生活の安全と平穏の確保のため、暴力団員が行う一定の暴力的要求行為等につきまして、都道府県公安委員会の判断で禁止命令等を発出することができるとされているものでございます。

 この命令は、裁判所の事前審査を経ることなく、都道府県公安委員会の判断のみで、違反した場合には罰則の対象となる法的義務を相手方に負わせるものであるため、結社の自由にも配慮して、規制の対象となる指定暴力団については、法にその要件を詳細に規定した上、厳格な手続によって指定することとしているところでございます。

藤野委員 今御答弁いただいたように、憲法の結社の自由との関係もあって法に詳細な要件を規定したということでありました。まさに、普通の労働団体や市民団体がまかり間違っても指定されてはならない。だから、これだけきっちりとした要件と手続が定められたということであります。

 大臣にお聞きしたいんですが、先ほどもお話がありましたけれども、組織的犯罪集団の認定に当たってはこうした指定制度はないわけですね。これは局長もたびたび認めておられますし、先ほどもその理由をおっしゃったように思いますが、組織的犯罪集団の認定に当たってはこういう指定制度はないということでよろしいですね、大臣。

金田国務大臣 お答えします。

 ありません。

藤野委員 こうした指定制度がないということは、組織的犯罪集団の認定に当たって、公開の手続もない、指定される側に反論の機会もない、捜査機関以外の第三者、公安委員会とか民間の審査専門委員、そういうものが関与することもない、捜査機関だけが関与する。結局、捜査機関による恣意的判断が可能な仕組みなんじゃないですか、大臣。

盛山副大臣 先ほどから刑事局長を含めて御答弁しておりますように、法によってその目的とするところが違います。団体規制法、破防法と今回のテロ等準備罪は違うわけでもございますし、そして、これまでにも御説明しておりますように、我々は憲法を含む法令を遵守して、法令に従った形でやっておりますし、さらには、捜査令状その他をとるというときには、裁判所その他、ほかの機関のスクリーニングというか関与、こういったことも行われますので、我々としては適正に行われるものと考えております。

藤野委員 大臣に改めてお聞きしたいんですが、今見てきたような指定制度はないわけです。憲法との関係で、憲法に違反しないように、まかり間違っても普通の団体が指定されないように、そういう制度はないと。大臣、そうであれば、結局、捜査機関による恣意的な判断を防ぐ仕組みがないじゃないか、こういうことなんです。

金田国務大臣 お答えをいたします。

 一般に、捜査は適正に行われているものと承知をしております。(藤野委員「捜査の話じゃないですよ。認定の話です」と呼ぶ)

鈴木委員長 続けてください。

金田国務大臣 我が国においては、裁判所による審査が機能しておりますし、捜査機関による恣意的な運用はできない仕組みとなっております。また、捜査機関内部における監督の仕組みや民事上の国家賠償制度など、事後救済制度が充実しておりまして、それが捜査機関の権限濫用を抑止する機能も果たしております。

 したがって、テロ等準備罪の適用について、捜査機関がその権限を濫用することはできないものと考えております。

藤野委員 事後的救済とかおっしゃいましたけれども、捜査機関が恣意的に判断するということは否定できませんでした。やはり今回はそういう仕組みなんです。この中で一般の方々もそうした対象になっていかざるを得ない、そこを防ぐ仕組みは全くないということであります。

 そこで、次の問題をお聞きしていきたいんですが、大臣は先ほど、一般人が捜査の対象になることは一〇〇%ないとおっしゃいました。大臣、一〇〇%、これは間違いありませんね。

金田国務大臣 お答えいたします。

 間違いありません。

藤野委員 先日、二十五日の参考人質疑で、法律の専門家と言われる方は井田参考人、高山参考人、早川参考人だったと思います。それぞれ何とおっしゃったか。

 山尾委員が、一般人が捜査の対象になると思うかと聞いたのに対して、井田参考人は、誤った人を捜査の対象にしてしまうおそれというのは、それは全ての刑罰法規につきもの、こうおっしゃいました。高山参考人は、私は、なると考えておりますと。そして、オウムや最高裁の決定を示した上で、私は、一般人が、捜査権限が濫用されなくてもその対象に入ってくる、こうおっしゃいました。早川参考人は、副大臣の方がそういう意味では法律家に近い感覚でお答えになったのではないかしらというふうに思っていますと発言をされました。

 大臣、法律の専門家である参考人、法律の専門家という区切りでいえば三人全員が、一般人は対象になると言っているんです。大臣は一〇〇%ならないと言っている。これはおかしいんじゃないですか。

金田国務大臣 一般の方々がテロ等準備罪の捜査の対象となることはないものと考えております。

 組織的犯罪集団に関与しているという嫌疑があって捜査の対象となったものの、捜査の結果、例えば不起訴となったり、裁判で無罪になる場合はあり得る。その場合、そのような方を一般の方々と言うか言わないかということは、どの文脈で一般の方々と言うかという、言葉の使い方の問題となります。そのような方々を一般の方々と言うことは可能ではあるかもしれませんが、そのように言ったとしても、そのような方々が組織的な犯罪集団にかかわりのない方々であることにはなりません。

 例えば、暴力団員のように組織的犯罪集団の構成員であったとしても、具体的な犯罪の計画に関与していないことを理由としてテロ等準備罪が成立しないこともあり得るわけであります。およそ犯罪主体を組織的犯罪集団に限定しない他の犯罪の場合とは異なって、テロ等準備罪におきましては、我々がこれまで一般の方々と言ってきた組織的犯罪集団とかかわりがない方々、すなわち、何らかの団体に属していない人はもとより、通常の団体に属し、通常の社会生活を送っている方々は捜査の対象とはならず、処罰もされないのであります。

 私はこのような考え方に変わりはありませんし、私どもの答弁はそのような意味を申し上げているわけであります。

藤野委員 あくまで一般人は対象にならないとおっしゃっていまして、これがやはり参考人の皆さんの認識あるいは国民一般の認識と大臣がいかにかけ離れているかというのを改めて確認させていただきました。

 ちょっと具体的な事例で見ていきたいと思うんですね。先ほどの法務省が提出したテロ等準備罪の対象犯罪の類型を見ますと、文化財保護法第百九十五条、重要文化財の損壊等がテロ犯罪に分類されておりました。

 最近、寺社などへ液体などをかける行為が多発しております。昨年十一月十五日には滋賀県の十四の寺社に傷や落書きがあった。十一月二十日には奈良県の興福寺、二十一日には東大寺、ことし四月一日には京都の下鴨神社、重要文化財十一施設に液体がかけられた。四月三日には沖縄県首里城、同じ日には東京の明治神宮と多発しているわけですね。

 奈良県の東大寺も沖縄の首里城も大変有名な観光地であります。観光地をぶらぶら歩いている人がいたとして、それが観光なのか犯罪の下見なのか、これもわからないわけですが、きょうは少し別の角度から聞いてみたい。他者の通報によって捜査の対象になってしまうという問題であります。

 警察庁にお聞きしたいんですが、捜査の端緒として最も多いのは何なんでしょうか。

高木政府参考人 お尋ねにつきまして、警察庁の犯罪統計により、平成二十七年の刑法犯認知件数の端緒別を確認いたしますと、最も多い端緒は被害者、被害関係者の届け出でありまして、全体の八九・九%を占めております。

藤野委員 今御答弁いただいたように、捜査の端緒と言われるものの中で一番多いのは八九・九%。これはいわゆる通報なんですね。件数でいえば、総数百九万八千九百六十九件のうち九十八万八千二百四十三件を占めております。

 つまり、自分は関係ないよ、自分はそんな悪いことをしないから、捜査の対象になんかなるはずがないと思っていても、他人から見てちょっと何だか怪しいと思われれば、その人から通報が行って捜査が始まっていく、捜査の端緒になっていく。自分は関係ないと思っていても第三者が、先ほどの文化財保護法の例でいえば、観光地をぶらぶら歩いていた、ペットボトルも持っていた、もう要らないやと思った、こっそり捨てた、そうしますと、何か怪しいということになって通報される可能性もあるわけですね。

 ここは法務省にお聞きしたいと思います。捜査の端緒の九〇%、八九・九%が通報であります、圧倒的多数です。一般論で結構ですが、共謀罪でも捜査の端緒に通報がなり得る、これは間違いありませんね。

林政府参考人 犯罪の類型にこだわらず、捜査の端緒の中にそのような通報が入っていることはそのとおりでございます。

藤野委員 犯罪の類型にかかわらずということでありますから、共謀罪についても捜査の端緒になり得る。実に九割ですよ、九割が他者の通報。共謀罪が新設されれば、多くの犯罪が新設されるんです。それに伴って通報も行われることになる。幾ら自分は関係ないと思っていても、他人から怪しいと思われれば通報されて、いつの間にか警察の監視対象、捜査対象になりかねない。

 大臣にお聞きするんですが、共謀罪が新設されたら、おちおち観光もできない、非常に息苦しい、そういう社会になっていくんじゃないですか。

盛山副大臣 何度も御説明していますけれども、この共謀罪は刑法、実体法を追加するということで、手続法ということを改正するものではありませんから、共謀罪が成立する成立しないのいかんにかかわらず、どういう形で犯罪の嫌疑があって捜索が行われるのか、こういうことかと思います。

 そして、今回の御懸念のテロ等準備罪の場合でございますけれども、これも何度も御説明しておりますが、大きな三つの要件、こういったものがなければ嫌疑というものが起こらないわけでございますから、例えば、隅田川かどこかわかりませんですけれども、そういうところでお花や川を見にぶらぶら歩いている、だからといって、それで嫌疑があるということには決してならないと思います。

藤野委員 刑事訴訟法の手続にのっとって行われるのは当たり前でありまして、その手続にのっとって何を調べるかを問題にしているわけです。花見か下見か、目的でしかわからない、大臣はそこをしっかり調べるとおっしゃった。それは刑事訴訟法の手続にのっとって調べるんでしょう。しかし、内心を調べていくことになる、これを私は問題にしているわけです。

 二十五日の参考人質疑でも、このことが大きな議論になりました。井田参考人はこうおっしゃいました。内心を見るというのはある意味では当然、内心を見るのは当然だという話になってくる。そして一方、高山佳奈子教授は、内心を調べるというのは憲法上重大な疑義がある、こうもおっしゃいました。

 大臣にお聞きしたいんですが、大臣は四月六日の本会議で私の質問に対して、実行準備行為に当たるかどうかは、行為の目的などについても捜査が行われることはあり得ると答弁いただいております。行為の目的を捜査する、これは、井田参考人がおっしゃった、内心を見るのは当然だ、この意見と同じ趣旨だというふうに考えていいですか。

盛山副大臣 ちょっと質問の御趣旨が必ずしもはっきり、私どもはよく理解できませんですけれども、実行準備行為というのは、計画とは別の行為であって、計画に基づき行われる資金または物品の手配、関係場所の下見その他の計画をした犯罪を実行するための準備行為をいうわけでありますし、その実行準備行為に当たるか否かは、個別具体的な事実関係、特に計画において合意された内容に照らして判断されるべきだと思っております。その際、行為の目的などについても捜査が行われることはあり得るところであります。

 テロ等準備罪は、犯罪実行の計画行為に加えて実行準備行為が行われて初めてこれらの行為を処罰するものでありますので、内心を処罰するものではないということは明らかであると私たちは考えております。

藤野委員 いや、今のはおかしいんですね。実行準備行為があるから内心を処罰しないとおっしゃるんですが、その実行準備行為に当たるかどうかを判断する際には目的つまり内心を調べざるを得ないとおっしゃっているわけです。だから、全く限定にならない。限定にならないどころか、理屈としても破綻していると思いますよ。

 大臣、大臣の答弁なんです。大臣は答弁で、行為の目的などについても捜査される、実行準備に当たるかどうかですよ、実行準備行為に当たるかどうかでこうおっしゃっているわけです。大臣、これは、井田参考人がおっしゃった、内心を見るのは当然だということと同じ趣旨ですかということなんです。

井野大臣政務官 済みません、先ほどから内心、内心とおっしゃっておりますけれども、内心という言葉よりも、私は、普通の犯罪であれば主観面を調べるということであります。なぜ主観面を調べなきゃならないか。例えば、車で人を殺してしまった、これは故意がなければ過失致死、故意があれば殺人、主観面を調べるのは当たり前でございますので。それを、内心というのか、我々はどちらかというと、主観面を調べることは当然であるというふうに思います。

藤野委員 今何かおっしゃいましたけれども、それは客観的な行為が発生しているわけです、交通事故なりなんなり。それがなぜ起きたのか、それを調べる際に主観を調べるのは当たり前ですよ。

 しかし、この共謀罪というのは客観面は何もないんです。わからないんです、外で見ても、花見か下見か。だから、主観面といっても、内心の捜査に近づいていかざるを得ない。今おっしゃったのは、結果が発生している、あるいは法益侵害の危険性が発生している、これが大前提です。そのときに目的を調べるのとは全く違う。

 もうそろそろ大臣が答弁してください。

金田国務大臣 お答えいたします。

 実行準備行為に当たるか否かという判断に際して、行為の目的などについても捜査が行われることはあり得るところでありますが、いわゆる目的犯の目的など、現行の刑事罰則において行為者の主観が構成要件の一部となっている場合と同様に、実行準備行為の認定に当たっては、客観証拠や供述の裏づけ証拠の有無、内容が重視されるものと考えられます。

 このように、実行準備行為に該当するか否かを判断するに際しては、行為者の主観を考慮すること自体に問題があるわけではありません。その上で、御指摘の場合についても、計画との関係で、当該行為が計画に基づくと認められるか否かに加えて、当該行為をしている者の携帯品、当該行為をしている際の状況など、外形的な事情から花見目的か下見目的かは区別され得るものと考えられます。

 一般論として申し上げるならば、もし外形的にも下見目的であったことが証拠上明らかにならなければ、実行準備行為とは認められないものと我々は受けとめております。

藤野委員 現行法上も目的罪があるんだと。先ほども通貨偽造罪などを挙げられましたが、あれはやはり客観面があるわけです。

 通貨偽造罪で言えば、刑法百四十八条ですが、一項、行使の目的で、通用する貨幣、紙幣または銀行券ですね。通用する、おもちゃのコインじゃだめなんです、人生ゲームのお札じゃだめなんです。通用する貨幣というのが構成要件になっている。つまり、精密な通貨があるときにその目的が問題になってくる。これが現行法なわけですね。共謀罪は全く違うんです。客観的な、通用する貨幣というような外形、外から見てわかるものがないもとで捜査をしていく。だから、内心に踏み込んでいかざるを得ないわけですね。

 大臣は今何か、携帯品でありますとか当該行為をしているとかいろいろおっしゃいましたけれども、目的を調べる、対象が目的であるということは変わらないわけですよね。そのもとで、それを客観的に裏づけていきたいと。だから、捜査の対象の問題と、その対象をどういうやり方で裏づけていくか、客観的な証拠等で裏づけていくか、これはまた別問題でありまして、私は前の方の、対象は目的、主観、内心であるということを指摘しているわけですね。

 大臣、それではもう一個お聞きしたいんですが、今、外形的な事情からとおっしゃいました、携帯品とか。共謀罪の場合はそう簡単ではありません。何しろ、まだ結果も、行為も行われていない。そこにおける外形的な事情とは何なのか。典型的に考えられるのが、盗聴や盗撮によるある意味客観的な証拠であります。大臣がおっしゃった外形的事情の中にはそうしたものも含まれるというふうに考えていいんでしょうか。

金田国務大臣 外形的な事情を今お尋ねになりましたから、例えば花見であればビールや弁当を持っているのに対して、下見であれば地図や双眼鏡、メモ帳などを持っているというような外形的な事情というのはあり得るわけですね。そして……(発言する者あり)

鈴木委員長 御静粛に願います。

金田国務大臣 通信傍受の対象に、例えばテロ等準備罪は入っていないわけであります。

藤野委員 双眼鏡を持って、バードウオッチングとか、花だけじゃなくて、鳥も来ますから。いやいや、笑っている場合じゃなくて、それでは全く区別にならないと言っているんです。そんなことで判断されたら大変だと言っているわけです。笑っている場合じゃないですよ、大臣。

 やはり、内心を調べていくというのは、そういうおかしなことになっていくわけです。そこを今度の共謀罪というのは明らかに調べていく。一般の方が、全く第三者が関与しないような手続で、捜査機関が犯罪集団じゃないかと考えたら捜査の対象になっていく。そういう点で、本当にこれは内心を捜査し、処罰する憲法違反の法律だということを指摘して、質問を終わります。

鈴木委員長 速記をとめてください。

    〔速記中止〕

鈴木委員長 速記を起こしてください。

 次に、松浪健太君。

松浪委員 日本維新の会の松浪健太であります。

 質問に入る前に、昨日の理事懇談会で、私はこんなけしからぬことはないという事案がありました。本日、三枚目につけましたこの紙は、理事懇談会で配られた紙をもとに、私の方でしっかりとTBSの報道を見てもう一度正確に書き直したものであります。

 先般、Nスタという二十六日のニュース番組、TBSの番組のナレーションで、法務省の幹部の発言がありました。法務省幹部A、野党の質問は重箱の隅をつつくような細かいことばかり、このままでは司法試験の合格者しか大臣になれなくなる。幹部B、野党も野党だが、与党も強引さが目立つ、実質的な法案の議論が進むか心配だ。

 大臣、この幹部A、幹部Bの発言、何か問題はありますか。

金田国務大臣 松浪委員の質問にお答えいたします。

 この紙を見る限り、法務省幹部の発言内容となっております。でも、私としましては、幹部A、幹部Bとはなっているものの、法務省の職員の発言とは思いたくないといいますか、こういう発言があったというのは初めてここでお見せいただきましたが、そういう発言があってはいけないというふうに思っております。

松浪委員 あってほしくはないといいながら、この程度の発言、私は何の問題もないと思いますよ。普通に新聞記事で、新聞社がこの委員会の状況を見て、野党の質問は重箱の隅をつつくような細かいことばかりだなと。僕らでもここで言っています。司法試験の合格者しかこれはなかなか答えられなくなりましたね、そんなことを書いて、新聞社に文句を言う人がいますか。いませんよ。

 そしてまた一方で、野党も野党だが、与党も強引さが目立つ、実質的な法案の議論が進むか心配だと。心配して何がおかしいのか。これはバランスがとれていますよ、はっきり言って、記事として。偏向していないんです。野党も野党だけれども、与党も与党だと言っている。

 こんなこと、当たり前のことですよ。刑事局長にわざわざ求めませんけれども、刑事局長もこのことを内心で思っているかもしれない。内心を推しはかると、思っているかもしれない。

 しかし、問題は、きのうの理事懇談会で、この皆さんが笑って済ませられる問題を、民進党さんが法務省さんにクレームを入れたんですかね。それで、井野政務官が理事懇の場で、四十二人の幹部全員をヒアリングして、こんなことでわざわざヒアリングして調査を行う。これは、法務省の職員の思想信条、たまったものじゃないですよ。

 先ほど階議員は言っていましたね。階議員は何と言っていましたか。階議員は、物を言えない雰囲気をつくる法案を審議していると言いながら、この程度のことで法務省の幹部に聞き取りをする。法務省はどうかしている。

 これは法務省だけじゃないですよ。こんなくだらない問題でわざわざヒアリングまでされたんじゃ、僕はもともと新聞記者ですけれども、記者として、こんなことを、当たり前のことを少し聞いただけで、それでヒアリングをする法務省。普通の企業だったら、内部告発もだめだということですか。内部告発まで行っていないんですよ。告発だったら大したものだ。

 こんな当たり前のことを調べたんでしょう。法務省は、今回のこんな程度のことで調べたことは僕は問題だと思うので、これは誤りだったということを法務省として認めないといけないと思います。そうじゃなきゃ、今後もこういうもので、野党から、当たり前のこんな報道であったら常に調べますと。どちらか答えてください。

金田国務大臣 先ほどは、このペーパーを見て、突然だったんですが、先ほどの答弁をいま一度整理し直してお話しさせていただきたいと思います。

 御指摘の調査、先ほどの答弁の調査を野党からの御指摘を受けて事務方において行った結果が、先ほど引用された政務官の四十二名ということにつながっているというお話でございます。

 法務省内においては、国会審議のあり方に意見を述べる考えはなく、幹部が当該発言をすることはあり得ないと考えられたものの、御指摘がありましたことから、念のため、四十二名の幹部に事実関係の確認をした結果、そのような発言をした事実はないとの判断に至った旨報告を受けております。

 国会においてお決めになるべき国会審議のあり方について、行政府である法務省の幹部が意見を述べるようなことがあるとすれば、それは適切なこととは思われません。

 法務省幹部が取材に対し発言した内容は、もはや内心にとどまるものとは言えないし、幹部職員が取材に対し幹部としてふさわしい適切な発言をすべきことは当然でありますから、取材活動を不当に制約するものでもないと考えております。

 したがって、御指摘になりましたような点があるとは考えていないわけであります。

 以上であります。

松浪委員 大臣、今の御返答、私は大変問題があると思いますよ。これを裏返せば、では、法務省の中でこの発言はなかった、幹部でなかったということは、このTBSの番組はうそだと言っているに等しいんですよ。

 大臣、TBSの番組はうそですね。

金田国務大臣 報道の根拠は承知しておりません。したがって、コメントを差し控えさせていただきます。

松浪委員 では、大臣、次に私が、このような幹部の発言が出たときに、法務省さん、確認してください、これは不適切でと、これと同じようなケースがあればまた。

 僕は、政治家としてはすぱっと、金田大臣ですから、長い仲ですから、こんなくだらないことで今回法務省はこんなのを調べたのは間違いだった、次からやらないと言った方が、これは政治家の大臣としての発言だと思いますよ。こんなものでまた次調べるとお答えになると、私は政治家としてのこけんにかかわると思います。

 そしてまた、マスコミとしても、記者もこんなことを聞かれてはたまらないですよ、はっきり言って、こんなくだらないことで。

 またこんなくだらない対応を求めたら、やるんですね。

金田国務大臣 松浪委員の御質問でございます。

 私は、必要に応じて適切に対処をしていきますと申し上げたい、このように思っております。

松浪委員 何度もこの問題をやりたくないので、最後に一問だけお聞きします。

 この調査をやったことを、調査をやる以前に大臣は御存じだったのか、やった後に事後で報告を受けたのか、それだけお聞かせください。

金田国務大臣 御推察があるかもしれませんが、事後報告であります。

松浪委員 正直、事前にこんなことを聞いたら、普通、政治家ならはねますよ。

 ですから、与党の皆さんも、今回の問題は僕がやる問題じゃなくて与党が言わなきゃいけない問題だと思いますし、こんなことを聞いて、今後とも理事会はこういうことを許すのかどうか、後刻理事会で。僕は、こんなくだらないことを受けた法務省もだめだし、省としての対応はね、この程度で出した民進党さんも問題があると思いますので、もう一度、後刻理事会で協議いただきたいと思いますが、委員長、いかがですか。

鈴木委員長 後刻、理事会でしっかり協議いたします。

松浪委員 こんな問題で長くやるつもりはありませんでしたが、ちょっとかかってしまったのは残念であります。

 次です。産経新聞を載せさせていただきましたが、きょうも報道がさまざまありましたように、我が党としては五つの、何度も申し上げていますけれども、公明党さんの加憲に倣って加法という形で、今回のテロ準備罪、国民の皆さんが、TOC条約をしっかりと批准した上で、今のものよりもより安心できるようになるテーマを掲げているわけであります。

 その中で、特に可視化の問題を掲げてまいりました。私も、捜査現場にこれが負担がかかるというのであれば考えようだなというふうに思っておりましたけれども、実際、今、可視化は当然、先般の刑訴法が公布をされて、次の施行まで時間がある、現在も裁判員裁判対象事案などはトライアル、試行の時期でありますけれども、これにこれを乗せたとて、我々は捜査現場で実際の皆さんの声を聞くと、本当にあったとしても、このテロ準備罪、はっきり言って怖くて、内心の自由に踏み込むとかこうした批判がある中で、実際は任意でも我々はこれをやるでしょうねという声が大半でありまして、大半というか、はっきり言って、私が聞いた警察庁それから法務省の皆さんの意見では全てと言ってもいい状況であります。義務化されると、違ったときの義務違反が困るなというぐらいの感覚であろうかと思います。

 そこで、この問題を掘り下げていきたいというふうに思うんですけれども、裁判員裁判対象事案に可視化を義務づける方向になりました。この意義をどういうふうに捉えて裁判員裁判を対象としているのか、まずもって伺います。

林政府参考人 まず、取り調べの録音、録画については、被疑者の供述の任意性等の的確な立証、判断に資する、あるいは取り調べの適正な実施に資するという要請がございます。

 しかし、全ての事件を一律に録音、録画制度の対象とすることは、その必要性、合理性に大きな問題があって、制度の運用に伴う人的、物的な負担も甚大となる、また、捜査への影響を懸念する意見もある、こういったことから、法律上の制度としては、取り調べの録音、録画の必要性が最も高い類型の事件というものを選び取って義務づけの対象としたわけでございます。

 そして、裁判員制度対象事件については、これはいずれも重い法定刑が定められている重大な事件でありまして、取り調べ状況をめぐる争いが比較的生じやすく、また、取り調べ状況について裁判員にもわかりやすい立証が求められる、こういったことから、録音、録画の必要性が最も高い類型の事件である、こういうものとして選択されたわけでございます。

松浪委員 簡単に言えば、裁判員裁判対象事案は、裁判員、つまり一般の方々ですから、素人だから画像があった方がわかりやすいだろうというのが、法務省の、今の林局長の答弁だったと思います。私が意見交換する法務省の幹部もそういうふうにおっしゃいますが、しかし、先般、指宿信先生という成城大学の先生、この先生は、昨年も「被疑者取調べ録画制度の最前線」なんという本もお書きになっている、各国のこうした可視化の専門家であります。この先生がおっしゃっていたのは、素人ほど画像を見せてはいけませんよと。

 画像というのは、映像というのは非常に強い力がある、だから我々は、弁護人がこのシーンを求めればそれを証拠提出するというような抑制的なあり方でまずは進めていかねばならないだろうというふうに、これは十分考えます。ただ、やはり証拠として、このテロ準備罪は内心に踏み込む等の批判があるのであれば、国民の皆さんに安心を持っていただくために、これをしっかりと担保しようというのが我々の考え方であります。

 そして、これまでの対象事案は、可視化は今二・八%程度だといいますけれども、これを入れたからといってそんなに数がふえないということも現場の皆さんはよくわかっているわけであります。

 そこで、取り調べの録画現場のことで伺おうと思います。

 よくこの先生が指摘をされますのが、カメラのアングルによって偏見をもたらすことが指摘をされている。どういうことかといいますと、英語で言いますと、カメラ・パースペクティブ・バイアスという、カメラの見方、つまり、例えばここに大臣がいらっしゃいますけれども、大臣をここから、横から見ていると客観的に見られるけれども、ズームアップして大臣がこういうふうに例えば答弁されているのを見ると、何か悪い人に見えるな、こういうことが実際あるわけであります。

 ですから、実際の可視化において、その人たちの表情を正面から撮る、もしくは光の当たりぐあい、こうしたものによって、そしてまた、うつむきかげんに、取り調べがあるとうつむいてくる、うつむいてくると、何かこの人はやはり悪いことをしているんじゃないかなというような印象を見ている人に与える。こういうものをカメラ・パースペクティブ・バイアスというふうに専門用語では言うんです。

 現在、トライアルで試行している現場では、こうしたことについてはどのような配慮がなされているのか、伺います。

林政府参考人 御指摘のカメラ・パースペクティブ・バイアスに関しましては、一部の研究者の論文等によりますと、取り調べの録音、録画の方法に関する海外の研究者の研究成果であって、例えば取り調べを受ける被疑者だけを撮影する方法は、取り調べ官のみを撮影したり、被疑者と取り調べ官の双方を撮影したりする方法と比較して、自白の証拠価値が強く認められる傾向がある、こういったものの内容であると承知しております。

 こうしたカメラのアングルに関する指摘というものは、刑事訴訟法の改正の際の審議の中でも幾つか御指摘があったように思います。

 例えば現在の検察官の取り調べにおきましては、まず、部屋の中の全体像が映る部分、それから被疑者の表情が映る部分、そして検察官が、これは後ろ姿になりますけれども、検察官の姿が映っている部分、こういった形で、全体の様子あるいは被疑者の表情、そして検察官の動き、こういったものが全体でわかるようなアングルで録音、録画を行っているものと承知しております。

 いずれにいたしましても、こういった録音、録画の実施方法というものについては、録音、録画自体が、これを開始してそれほど歴史が長いわけではございませんので、今後とも、そのあり方については不断の検討を重ねていくべきものと考えているところでございます。

松浪委員 今おっしゃったとおりでありまして、季刊「刑事弁護」八十九号、二〇一七年には、立命館大学の若林先生のお言葉によりますと、日本で用いられている二画面方式で実験をしてみると、有罪率の判断が、被疑者フォーカスだと四五・五%、ニュートラルだと三〇%、取り調べ官にフォーカスをすると二二・五%という順番に下がってくるという、カメラ・パースペクティブ・バイアスの確認ということも紹介をされている中であります。

 今まさに、施行までまだ時間がありますので、これについては、今まで、角度で違うんじゃないかとかそういうことは、国民の皆さんもそこまで考えてなかなかやってはいないと思いますし、特に、いわんや、裁判員制度でいわゆる素人の皆さんが人を裁く場においては、重々この点については御配慮いただきたいと思います。

 これはラシターさんという研究者の結果によるものらしいですけれども、ニュージーランドですと、こうした取り組みが、イコールフォーカスという、互いに向かい合って、かなり客観的に見える方式をとっているということでありますけれども、こうしたことについて御認識はありますか。通告はしましたが。

林政府参考人 一部の研究者の論文等によりますと、ニュージーランドにおいては、取り調べの録音、録画に際し、被疑者のみを撮影することに伴う偏向を防止するために、被疑者及び取り調べ官の双方を真横から撮影するイコールフォーカスという手法が導入されている、そのことについては承知しております。

松浪委員 重々こうした取り組みも生かしていただきたいと思うわけであります。

 きょうは国家公安委員長も来ていただいているので、本来であれば、こうした可視化の具体的な捜査における活用についての質問を予定しておりましたけれども、先にテロの状況について伺いたいと思います。

 事は、今、組織的犯罪集団等と書かれていますけれども、先般も私も紹介したように、テロの脅威というのが、こうしたテロ関連の書籍によりますと、民族紛争型や左翼型から宗教型に移っている、とりわけイスラム過激派によるものにシフトしているということは、この現場にいる皆さんは異論のないところだと思います。

 特にアルカイダ系のテロリストというものについては、普通の元祖アルカイダから、イデオロギー的に鼓舞を受けている星雲状のアルカイダ星雲、そしてまた、その思想ウイルスに感染した、これは松本さんという警察庁の方の定義によると、勝手にアルカイダという、まさにピラミッド形の組織ではない、緩やかなネットワーク型組織であって、これは役割を分担している組織的犯罪集団と認定するには非常に難しいものであろうかと思います。

 朝方、岸外務副大臣が、テロが含まれるのか含まれないのかという定義も、こういうものから考えればテロを定義することが非常に難しくなっているなというふうに思うわけでありますけれども、東京五輪などの大きな国際イベントで今後どのようなタイプのテロを想定しているのか、まずもって伺います。

松本国務大臣 現下の国際テロ情勢は、本年一月にトルコ・イスタンブールにおける銃乱射テロ事件が、三月には英国ロンドンにおける車両等使用テロ事件が発生したほか、四月にはロシア・サンクトペテルブルクにおける地下鉄爆破テロ事件などが発生するなど、一層厳しい状況にあります。

 また、ISILやアルカイダが我が国や邦人をテロの標的とすると繰り返し述べていることなどからも、我が国に対するテロの脅威はまさに現実のものとなっていると認識をしているところでございます。

 さらに、我が国におきましては、平成三十一年にラグビーワールドカップ二〇一九日本大会の開催が、また、平成三十二年に東京オリンピック・パラリンピック競技大会の開催がそれぞれ予定をされているところでございまして、これらの大会の安全、安心確保に向けまして、関係機関とも連携をしまして、さまざまな場面を想定しながらテロ対策等を着実に推進し、警備に万全を期すよう、引き続き警察を指導してまいりたいと思います。

松浪委員 テロは事前阻止が明らかに必要なことだということは言をまたないわけでありますけれども、その情報収集のためには、余り言いたくはありませんが、通信傍受等の手法で対応しないとなかなかこれは進んでこない。

 私も一覧表を、この委員会で最初に出たときに紹介しましたけれども、日本の司法傍受というのは年間四十件ほどでして、アメリカで四千件、そしてフランスで五万件を超えるという現状の中で、さらにこれにプラスして、各国では、日本以外の国では、こうした司法の令状発付による盗聴だけではなくて、大臣とか検察官とか、さまざまな行政側による行政傍受というものがかなり広範に行われているわけであります。

 こうしたテロの事前阻止における通信傍受の役割についての認識を伺います。

白川政府参考人 お答え申し上げます。

 諸外国におきまして通信傍受がどのように運用され、テロ対策上どのような効果が上がっているかについて、詳細は承知しておりません。

 ただ、その上で申し上げますれば、現在の通信傍受法においては、組織的に敢行される殺人、爆発物の使用、逮捕監禁等が通信傍受の対象犯罪として規定されておりまして、テロ組織がこれらの犯罪行為を行った場合には、法に定める要件と手続に従って、当該事案の犯罪捜査としての犯罪関連通信を傍受することが許されることとなります。

 この法律は、犯罪捜査のための通信傍受について定めるものでありまして、過去に犯罪が何ら発生していない場合の通信傍受、または具体的な事案の捜査目的以外の通信傍受を行うことはできないところでございますが、先ほど申し上げましたとおり、本法の定める要件と手続に従って捜査が行われ、結果としてテロの事前阻止につながることもあり得るものと理解しております。

松浪委員 一旦テロが起こってしまうと、またこれは、やはり通信傍受は必要だったんだとかいって一気に広がる前に、私は、やはりテロ対策については適正な通信傍受というものはあってしかるべきであろうと思います。

 そして、我々も議員立法を今用意しておりまして、可視化の問題、そしてまた通信傍受についても議員立法をつくっております。前回の通信傍受法の改正で、今までの対象事案、別表二がふえたわけでありますけれども、それでも余りにテロに対して私は無防備だと思います。我が党では、こうしたものを、テロに関するものということで四つぐらいに類型を分けておりまして、きょうは、そのうち、テロでインフラ破壊にかかわるものとか、さまざまこれはテロだろうというのがあるんですけれども、その中でこれは第一に抜き出している部分であります。

 この別表二なんですけれども、これは平成十年に最初に通信傍受法が出されたときに、テロの実行に関するものでこれは含まれていたんですけれども、途中でこれを抜き取ってしまった。当時、平成十年はそれを随分と抑制的に考える流れがあったので抜いたけれども、もう一回の改正のときにもまだ落ちています。そのときにはまだテロ等準備罪もなかったわけですから、前回の通信傍受法改正のときに落ちてもそれは仕方がなかったのかなというところはあるかもしれませんが。

 これは、皆さんごらんになって、深刻なテロだと思いませんか。航空機の強取、つまりハイジャックにかかわるもの、それから人質による強要、化学兵器の禁止及び特定物質の規制に関する法律、サリン等による人身被害の防止に関する法律、まさにテロ以外の何物でもないものが司法傍受もできないのかと。

 こんなことで、今回、今、内心の自由がどうのとかそういうことも課題になって、それも大事ではありますけれども、もともとが組織犯罪防止条約で、それだけだったらいいんですけれども、いやしくもテロ等準備罪という法律に名称が大きく変わって、準備行為を要件としてテロに対する対策をするんだというのであれば、この程度のこと、与党の皆さんも、通信傍受を広げると国民感情が云々とありますけれども、はっきり言って、ハイジャックとかサリンとか化学兵器とか、この部分に広げても、正直、国民の皆さんはこれは十分納得をいただけると私は思うんです。

 これは警察庁ですね。では、国家公安委員長、航空機の強取に関する法律で司法傍受もできないというのは、捜査上やはり厳しいものがあるんじゃないですか。

白川政府参考人 私の方からお答えさせていただきます。

 通信傍受の対象犯罪につきましては、国会での御議論を経まして現在の形になっているものと承知しておりまして、対象犯罪のあり方については広く国民の理解を得ることが必要と承知しております。

 昨年……(松浪委員「いいよ、もう。国家公安委員長と言ったから、いいです」と呼ぶ)

松浪委員 今政府参考人がおっしゃったのは政府の見解ですけれども、そういうのはわかっているんですよ。その議論があったのも、私、さっきも申し上げました、テロ等準備罪ができる前の話。

 今回は、刑法の枠組みが大きく変わって、そしてテロを正面から取り上げているわけですから、国家公安委員長、航空機の奪取、ハイジャックとかサリンによる人身被害に司法傍受も行えないというのは、捜査上やはりこれはテロに対して厳しい状況であるなという認識があるかどうかだけお答えください。

松本国務大臣 通信傍受は組織犯罪捜査において有効な捜査手段ではあるものの、通信の傍受については、憲法上の通信の秘密等、関係者の権利保護等について十分な配慮が必要になることから、その対象範囲の拡大等につきましては極めて慎重な検討が必要と考えております。

 昨年の通信傍受法の改正によりまして、通信傍受の合理化、効率化が図られたばかりでございまして、まずは、今般の改正法の適切な運用に向けてしっかりと取り組むよう警察を指導してまいりたいと思います。

松浪委員 では、聞き方を変えます。

 大臣は、ハイジャックとかサリンによる人身被害、これは深刻なテロだとお考えですか、それとも、そうではないと。

松本国務大臣 御指摘のとおりと存じます。

松浪委員 これは深刻なテロであります。深刻なテロを取り締まるのに通信傍受もできない状況というのは、テロ等準備罪等が有効に働くためには私は問題があると思うんですけれども、大臣、いかがですか。

松本国務大臣 捜査機関の権限創設につきましては、国民の権利やプライバシー等の観点からさまざまな御議論もあると承知をしております。こうした点にも配慮する必要があると存じておりまして、御意見につきましてはしっかりと受けとめさせていただきたいと思います。

松浪委員 これ以上は申し上げませんけれども、国民の皆さんが今のやりとりを見ていたら、ああ、こんなことでテロに対して本当に、この法律ができても実際に手段がないじゃないかと思わざるを得ない。サリンをまかれても通信傍受もできない、ハイジャックされても通信傍受もできない。しかも、別に行政傍受しろと言っているんじゃない、司法傍受ですよ。これは明らかに、テロ等準備罪、穴があいているなと言われても仕方がないと思います。

 私たちは、国民の皆さんには安心を持っていただきたい。だから、はっきり言って、通信傍受をむやみに拡大しろと言っているわけではありません。しかし、これは仮にも皆さん政府が、平成十年には、当然、自民党政権時代でありまして、そのころに、通信傍受というのは明らかにテロとして必要だと。最初に入れるのは大変だから、ちょっと次は見送ってしまったという内容でして、きょういらっしゃる自民党も公明党の皆さんも、連立政権としてそれは既にあったわけでありますので、これについては本当に。

 いや、通信傍受というと国民の反応が怖いからと。国民の反応は怖いけれども、やはり、テロ等準備罪というのであれば、実質的に捜査機関にもしっかりと最低限の武器を与えないと、これは私は機能しないものであろうと思います。

 あと、GPSの捜査についても伺います。

 これこそ、この委員会の冒頭に一覧表にいたしました。我が国では任意捜査で行われていたGPSについて、最高裁から大変厳しい結果が出ました。これも、実は、我々政治家がもっと先にGPSについて最低限の法律をつくっておけば、私は、最高裁であそこまで厳しい判決が出ることはなかったなと思います。逆に、任意に甘えて、各国ではさまざまなルールづけをやっているのに、やはり甘えてしまったためのしっぺ返しを大きく受けたものだと私は個人的には思います。

 ですから、この捜査ができないのは本当に日本ぐらいという一種異常な状況になったし、警察庁の現場で話を伺いますと、やはりこれは二年ぐらい前から判決が、こちらの地裁ではいいよ、こっちはだめだよ、高裁に行っても判断が割れるよという状況が続いてきた。警察の皆さんも、こうした判決が続いてくると、これは証拠採用されるんだろうかということで、実際問題、このGPS捜査は現場では激減をしているし、捜査員の皆さんも裁判で割れるようなものは使えないということですから、これは、遅かれ早かれグローバルスタンダードというか、我が国のスタンダードでもありました。

 安心できる形で、はっきり言って、犯人に、GPS捜査を今までそんなにやっていたんだなと国民に広く知られたことで力は半減しているし、令状が要るということで余計半減で、これは立法したとしても、今までの任意捜査に比べたら、半々で、四分の一ぐらいの感覚かなと思いますけれども、それでもやはりやれることというのは、捜査員も我々の税金で養っているわけでありますから、一日尾行されるために本人がこうやって動くのか。まあ、前近代的ですけれどもね。これだけ携帯電話が発達していろいろな連絡もできる中で、こうやって人間が追うというのもナンセンスな話だとは思いますけれども、それが我が国の今の司法の実態であります。

 テロ捜査において、GPSがなくなって捜査に支障がないのかどうか。ドイツなんかだと、あの表にも書きましたけれども、一日だけであれば令状は要らないそうですね。二十四時間を超えて二日にわたってくると、これは捜査員一人分を超えるからということで令状を請求する。私は、個人的にはこれぐらいの法律を日本はつくっておくべきだったなと思いますけれども、しかし、あれだけ厳しいのが出ると、やはりアメリカのように令状は義務づけていけないのかなとも思いますけれども。

 それはとにかくといたしまして、捜査に関する支障は現場には全くないのかどうか、伺います。

白川政府参考人 お答えいたします。

 警察庁におきましては、各都道府県警察に対しまして、検証として行うものも含め、いわゆるGPS、移動追跡装置を用いて車両の位置情報を取得する捜査を控えるように指示したところでございます。

 テロ事案についてどのように捜査をするかにつきましては、まさに個別具体の内容に即して考えられるものでありますことから、移動追跡装置を用いた捜査ができないことにつきまして、支障を一概に申し述べることは困難でございます。

松浪委員 役所としては、これは捜査に支障があります、ありますと言えない立場もわかりますけれども、しかしながら、私が今申し上げましたように、国民の皆さんの安心という点でも、テロ捜査にGPSもつけられないって、こんな平和なというか、テロ捜査にはやはりこうしたものは国民も望んでいると私は思いますよ。そうでないと、有限な捜査員のワークフォースが、しっかりと有益に、有意義にやることはできないというふうに思います。

 時間は大丈夫、終わりですか。あと一分。またこれは微妙なあと一分なんですけれども。

 本来は、可視化について、現行の裁判員裁判対象制度で可視化が行われるときに、今も、銃刀法違反などであれば可視化はかからないけれども、これが殺人を犯していたとなると途中で可視化がかかってくるというふうな形を考えれば、よく法務省の方から二百七十七全てにかけるのかなんという話がありましたけれども、運用においては、今申し上げましたように、これから、トライアルでやっております今申し上げた殺人罪のような例で、途中まで可視化していなかったけれども、その疑義が生じてから可視化を行うというようなことも十分に可能でありまして、技術的に、そしてスキーム的に、これはそんなに捜査現場の負担にならないということを次回は事例をもって、通告もしておりますので、明らかにしたいと思います。

 ありがとうございました。

鈴木委員長 次回は、公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。

    午後五時十分散会


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