衆議院

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第15号 平成30年5月22日(火曜日)

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平成三十年五月二十二日(火曜日)

    午前九時開議

 出席委員

   委員長 平口  洋君

   理事 大塚  拓君 理事 門  博文君

   理事 田所 嘉徳君 理事 藤原  崇君

   理事 古川 禎久君 理事 山尾志桜里君

   理事 源馬謙太郎君 理事 國重  徹君

      安藤  裕君    井野 俊郎君

      池田 道孝君    泉田 裕彦君

      上野 宏史君    鬼木  誠君

      門山 宏哲君    神田  裕君

      菅家 一郎君    黄川田仁志君

      小林 茂樹君    高木  啓君

      谷川 とむ君    中曽根康隆君

      百武 公親君    古川  康君

      山下 貴司君    和田 義明君

      逢坂 誠二君    松田  功君

      松平 浩一君    柚木 道義君

      大口 善徳君    黒岩 宇洋君

      藤野 保史君    串田 誠一君

    …………………………………

   法務大臣政務官      山下 貴司君

   参考人

   (東京都教職員研修センター教授)         本多 吉則君

   参考人

   (消費生活専門相談員)  岡田ヒロミ君

   参考人

   (特定非営利活動法人スマセレ会長理事)      田中 喜陽君

   参考人

   (弁護士)        伊藤 陽児君

   参考人

   (公益社団法人全国消費生活相談員協会理事長)   増田 悦子君

   法務委員会専門員     齋藤 育子君

    ―――――――――――――

委員の異動

五月二十二日

 辞任         補欠選任

  神田  裕君     高木  啓君

  古川  康君     泉田 裕彦君

同日

 辞任         補欠選任

  泉田 裕彦君     池田 道孝君

  高木  啓君     百武 公親君

同日

 辞任         補欠選任

  池田 道孝君     古川  康君

  百武 公親君     神田  裕君

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 民法の一部を改正する法律案(内閣提出第五五号)


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     ――――◇―――――

平口委員長 これより会議を開きます。

 内閣提出、民法の一部を改正する法律案を議題といたします。

 本日は、本案審査のため、参考人として、東京都教職員研修センター教授本多吉則君、消費生活専門相談員岡田ヒロミ君、特定非営利活動法人スマセレ会長理事田中喜陽君、弁護士伊藤陽児君及び公益社団法人全国消費生活相談員協会理事長増田悦子君、以上五名の方々に御出席をいただいております。

 この際、参考人各位に委員会を代表して一言御挨拶を申し上げます。

 本日は、御多忙の中、御出席を賜りまして、まことにありがとうございます。それぞれのお立場から忌憚のない御意見を賜れれば幸いに存じます。

 次に、議事の順序について申し上げます。

 まず、本多参考人、岡田参考人、田中参考人、伊藤参考人、増田参考人の順に、それぞれ十五分程度御意見をお述べいただき、その後、委員の質疑に対してお答えをいただきたいと存じます。

 なお、御発言の際はその都度委員長の許可を得て発言していただくようお願いいたします。また、参考人から委員に対して質疑をすることはできないことになっておりますので、御了承願います。

 それでは、まず本多参考人にお願いいたします。

本多参考人 おはようございます。

 私、本多吉則と申します。長く高等学校の教育に携わっていた者なので、その立場から意見を述べさせていただきたいと思います。

 私は、成人の年齢を十八歳に引き下げることには賛成でございます。

 その理由といたしましては、早い時期から社会の構成員であるということを自覚させる必要があるのではないかという点、また、若い世代の意思を社会に反映させるべきだというふうに常々考えておりますので、そのことについて賛成であるという意見を述べさせていただきたいと思います。

 ただ、賛成と申しましても、現在の高等学校でさまざまな教育活動を行っておりますけれども、現在でも、法規範をしっかり教えるということについてはやや不十分なところがあるのかなという感じはいたしております。もちろん、権利を教えるのは当然でございますけれども、それに伴って義務ということも明確に教えるべきではないかなというふうに考えております。

 私は商業高校に長くおりましたので、商業科というところでは、特に商法等についての学習が科目としてはございますので、多くの生徒がそれで学んでおりますけれども、専門高校ではなくて普通高校というところでは、授業の科目という形では明確に民法、商法を教えるというところはなかなかないのが現状です。

 もちろん、その他のところで、さまざまな形で教育はしておりますけれども、それが十分かと言われると、なかなか、現状では、私の見るところでは十分とは言えないのではないか。

 ただ、高等学校と一口に言いましても、さまざまな学校がございますので、その差は非常に大きくあります。もちろん、学校が目指しているところも大きく違いますので、一律に高等学校はというくくりでなされると、なかなか議論が難しいのかなというふうに思っております。

 最近の高校生が昔とは違って変化をしているんじゃないかという意見もよく伺うところではございますけれども、社会がこれだけ変化してございますので、社会が変化しているので高校生だけが変わらないということは私はないと思っております。ただ、社会の変化に比べてもっと高校生が変化しているかどうかということについては、ちょっと私も定かに答えることができないというような感じではございます。

 最近の高校生の物の考え方ということ、これも非常に一口で言うのは難しいというふうに思っておりますけれども、彼らは非常に家庭の中で大切にされているんじゃないかなというふうに思っております。もちろん、少子化の影響があるのかなという感じはいたしております。

 それと、物事に余り深く固執しなくなったのではないか。こうならなければいけないとか、こうあるべきだというような意見を余り述べなくなってきているような、主張しなくなってきているような。これも、私の見るところは、物質的に相当豊かになってきていますので、そこのところの考え方が少し違っているのかな。

 それと、昔に比べて、昔といっても、私が高校生だったところとしか余り比べようがありませんけれども、知的にスマートになってきたかなというような感じを持っています。

 それで、今議論になっているところでありますけれども、高校三年生がいわゆる大人として感じられるかというところでございます。大人という定義もなかなか難しいわけでございますけれども、さまざまな形で責任能力があるとか自分で物事を判断するという、一般に考えている大人像と比較してみると、現状の高校生は余り感じられないというのが正直なところであります。

 ただ、彼らにしましても、成人というのはもう生まれたときから二十歳、二十というのは決まっていた形でありますし、また、彼らの保護者たちも二十歳が成人というのでずっと長くやってきておりますので、その影響も非常に大きいかなと思いますけれども、自主的に行動することは余りなくて、指示待ちということが非常に多く目につくようになってきているなということが言えると思います。悪い意味ではありませんけれども、無意識的に、自分たちは社会あるいは家庭、学校で保護されているという意識があるんじゃないかなというふうには思っております。

 次に、いわゆる大人になるためにはどういうふうにしたらいいのかということ、これも非常に難しく、一言ではなかなか言えないことでありますけれども、社会の一員としてほかの人と共同して何か事をなし遂げていかなければ生きていけないというところが実質的に理解されなければいけないんじゃないかなというふうに思っています。

 ただ、現在の二十歳前後の青年たちがそういうふうなことを自覚的に思っているかということについては、なかなか難しいかなというふうに思ってございます。

 私もよく生徒に講話する際に、高校生は、もちろん現在のところは子供であるけれども、もう肉体的には非常に大人である、何か大震災ですとか大きな災害があったら、まず最初に自分の体を守って安全配慮するんだけれども、その次には、周りを見て、自分より弱い人を助けてあげなさいということを常々申しておりました。やはり、その自覚をさせるためにも、社会の一員だということを明確に示してやるのが必要ではないかなというふうに思っております。

 特に高等学校では、皆さんは教科の活動ということに主眼が置かれているかもしれませんけれども、学習指導要領等でも特別活動というようなことが明示されております。そこでは、もちろん、さまざまな行事ですとかクラブ活動ですとかいうことが教育活動として取り上げられております。私は、クラブ活動ですとか、例えば生徒会活動ですとか、そういう形の活動が大人に向けての準備という形で非常に重要なのではないかなというふうに思います。

 それから、成人の年齢を十八歳に引き下げることになりますと、学校の中に十八歳と十八歳じゃない者が混在するではないか、それについては、なかなか心配の向きがございますけれども、私は、ほとんど心配がないのではないかと思っております、学校に関しては。

 と申しますのも、学校というところは、入学したときに、しっかり校則を守って卒業するという形で、現在のところは本人と保護者に約束させておりますけれども、その形がございますので、途中で成人になったという形でも、ほとんど現在のところは問題ないのではないかなというふうに思っています。

 一時期、昔、問題になったというか、運転免許証が十八歳で取られるところもありますので、そのときに、持っている者と持っていない者という形の指導の仕方が難しいのではないかということを言われたことがありますけれども、現在は、ほとんどそういうことはないというか、適切に処理されているというふうに思ってございます。

 それで、もう一つは、婚姻の開始年齢を女性に関しては十八歳に引き上げる、男女ともに十八歳にするということですけれども、このことに関しては全く学校では支障がございませんし、少なくとも、男女でその年齢の差があるということについては、非常に違和感を感じるというところでございます。そのように考えている生徒が大半であるというふうに思います。

 ただ、婚姻に関しては、現在では家庭科で指導してございますけれども、生徒に当事者であるという意識はほとんどないのではないかなという感じはいたしております。

 最後になりますけれども、成年と未成年が学校の中に混在するということの問題よりも、成年であるというのはどういうことなのだという意味をしっかり教えるということが私は重要ではないかというふうに思ってございます。

 現在のところ二十歳が成年になっておりますので、高校を卒業してから、さまざまな進路をとるとしても、二十までは二年弱時間が、空白があいてございます。私は、今ほとんどのお子さんが高等学校に進学してございますので、ほとんど十八歳のときに学校が適切な指導をしていくということで、今よりも効果的に成人ということの意識づけができるのではないかというふうに思っております。

 そうはおっしゃられても、学校が非常に忙しい、さまざまなことをしなければいけないというのは、皆様、先生方も御存じのこととは思いますけれども、これは日本の国民として最も根幹のところでございますし、学校教育でやらなければいけない最大重大事だと私は思っておりますので、そこのところは異議を唱える教育関係者はいないというふうに思っております。

 組織的に計画的にさまざまな、主権者教育ですとか消費者教育ですとか金融教育が可能になるのではないかというふうに思ってございます。特に、高校生のときにそういう教育をするということは、十八歳に、成年になるというところで、非常に現実性が高く効果的だというふうに思ってもございます。

 それと、私はいつもお話ししているんですけれども、高校生、特に高校三年生というのはすばらしい可能性を秘めております。これから日本を担う大切な人材でございます。早期に彼らに自覚を促して社会参加をさせていくというのが私たちの責務ではないかというふうには感じてございます。

 私は、教育の形、教育関係で仕事をしてまいりましたので、そのほかのことについてはなかなか専門でございませんので、学校でどうかということを中心にお話をさせていただきました。

 まことに雑駁で申しわけございませんけれども、簡単ですが、私の意見を述べさせていただきました。どうもありがとうございました。(拍手)

平口委員長 ありがとうございました。

 次に、岡田参考人にお願いいたします。

岡田参考人 おはようございます。

 消費生活専門相談員の岡田ヒロミと申します。よろしくお願いいたします。

 私は、消費生活相談現場に自分の人生の半分近くを費やしております。現在もなお消費生活センターに籍を置いておりますが、今回は、相談員として、相談員の経験を通して、かつ母親の一人として、成人年齢を十八歳に引き下げることに関しましては、国を挙げての消費者教育ないしは制度整備、そういうものに取り組んでいただくということを条件に、また期待いたしまして、賛成いたしたいというふうに思っております。

 私の四十年間の相談員生活の中で、やはり絶対忘れることのできない、成人になりたての事件というのがあります。

 一九七〇年代後半に、英語教材のアポイントメントセールスというのが大変若者に蔓延いたしました。悲しいかな、当時は法律的な適用もなく、また消費者センターもなかなか若者がたどり着くことができなかった。加えて、地方から出てきたばかりの大学生ですから、一日かけて事業者のところへ解約を懇願したんですが、結局受けてもらえなくて、そのビルから投身をした、投身自殺したという事件です。これは絶対に私の中では忘れられないし、私たちも忘れてはいけないというふうに思っています。

 ただ、現在は、法律も整備され、消費者センターもかなり多くなりましたので、またマスコミ等でも消費者被害に対しては報道されています、そういう意味では、このような悲劇は起きておりません。ですが、後に参考人として立つ増田参考人の方から具体的な事例が出ると思いますけれども、現実にはやはり成人になりたての被害というのは多く、また悲劇的である、経済的な悲劇なんですが、というふうに思っております。

 では、私自身が成人年齢を十八歳にすることに賛成という根拠なんですが、考えますと、今十四歳の中学生が四年後に成人になるということを考えますと、今の消費者教育等を考えると、これは大変心細い。内心、不安です。ですが、ではいつになったら、若者が自立して、なおかつ悪質な商法にひっかからない、自分の意思で自分に適切な契約ができる、そういう成年になるか、成人になるかといいますと、これまた見えないということが言えると思います。

 その意味では、やはり、十八歳に引き下げることに関しましては、消費者教育とそれから制度設計、その中でも法律の遵守がこれに関して必要であろうと思います。

 まず、消費者教育に関してですが、消費者教育推進法が施行されて四年過ぎました。ですが、いまだその実効性というのは、私ども相談員においてすら認識できておりません。なぜなら、相談員又は消費生活センターの出前講座に支えられている、加えて弁護士会や司法書士会の啓発活動をよりどころとしているという実態であります。そういうふうに考えますと、その消費者教育が今から何年後に実効性が上がるか、この保証は全くないのではないか、そういうふうに考えます。

 今回、四省庁関係の局長会議、連絡会ですか、におきまして、クラス消費者教育、クラスアクションというのが企画されております。それに、見ますと、大変今まで私たちが求めていたものが網羅されております。

 特に、学校における消費者教育というのは、今まで消費生活センターの所長等がお願いに上がって、そして限られた時間の中で単発で講座をする、特に、高校三年生に関しましては、卒業間際の二月の寒いときに講堂に集められて、震えながら聞くという状況です。その辺からしますと、やはり学校の授業時間、それから教員の理解、その辺が大きなネックとなっておりました。

 今回、文部科学省が大変力を入れて、学校教育、授業だけではなくて、教員の研修においてすら消費者教育というものを徹底するということ等を考えますと、今までよりは随分と消費者教育というのは実効性が上がるのではないかというふうに考えております。

 そういうことで、なお、消費者教育については、文部科学省だけではなくて、法務省においても委員会が開催されていまして、その中にも含まれていますので、関係省庁のさらなる努力を期待したいというふうに思います。

 一方、消費者の自立なんですが、では消費者教育だけで自立するかというと、果たして四年間でできるかということが一つ懸案となります。ですが、本当にやる気を出せば、今回の文部科学省のやり方が本当に実効性が上がるとすれば、これは可能性はあるというふうに思います。

 加えて、消費者被害なんですが、これは、もちろん教育することによって自分で判断できる消費者になるかと思うんですが、消費者被害のほとんどが、悪質な事業者による適正じゃない情報提供であったり一人一人の消費者の状況を悪用するような勧誘であったりというのが実態となっています。

 では、そういうものをなくすためにどうすればいいかということなんですが、そこで制度設計といいますか、法律改正等が考えられます。

 今回、消費者契約法で、今一番私たちの現場で多いであろう、消費者の状況を悪用するようなそういう商法、それから人間関係を悪用するような商法、そういうことによって契約した場合、消費者契約法の取消しの対象にするというふうに、今法律改正が進められております。それが実現すれば、かなり悪質な事業者はやっていけなくなるのではないかというふうに考えます。

 ただ、これらの手法というのは、若年者に限ったことではなくて、最も深刻なのはやはり高齢者なんですね。その意味では、せっかくの改正ですから、年齢を広げていただきたい。そうすることによって、現在の消費者被害というのはかなり減るのではないかというふうに考えております。

 それともう一つ、消費者契約法、最近すごく改正に改正を加えまして、規定が広まっております。ですが、残念なことに、裁判規範であるという根拠から、消費生活センターでは使い勝手が大変悪いです。その意味で、私たちが真剣に勉強したとしても、事業者を説得するということは不可能に近い。加えて、事業者の方も、なかなかわかりにくくて、特定商取引法のような業法と違って省令とか通達があるわけではないものですから、必要性はわかっているんだけれども、なかなかたどり着いていないという声も聞いております。

 その意味では、今後、消費者契約法が今まで以上に使い勝手がよくて、なおかつ機能する法律になってほしい、そういうふうに考えております。

 こういうことが実際に実行されれば、四年後、成人年齢が十八歳になったときに、自立した若者、そして自分に適切な契約を判断できる若者が養成される、育つのではないかというふうに思います。

 相談現場におりながら、どうしてこんなことがわからないのとか、どうしてこんな契約をしたのと、本当に悔しい思いというか、むしろ母親の立場からすると情けない状況に遭遇することがあります。ですが、それはもちろん消費者が自立していない、若者が自立していないということもありますが、それよりもなおかつ、そういう若者を食い物にしているという現状、そちらの方が大事だろうと思います。

 今回、消費者契約法の中で、法執行に関して消費者庁が地方自治体を支援するというのが入っております。これは大変いいことだと思います。都道府県知事に対して指導権、行政処分の処分権ですかが与えられておりますが、これが使いこなされていません。実際にそれを使っている自治体自体が本当に少数です。だとすれば、地域で住民が悩んでいる、トラブルに遭っている、そういうものに対して積極的に取り組んでもらうことによって地域から悪質な消費者被害を排除できるというふうに信じておりまして、こちらに関しても大いに賛同したいというふうに思います。

 以上、中心的なものを申し上げましたけれども、はっきり申し上げまして、四年間で制度ないしは消費者教育が実効性が上がるということに関しては私は保証はできないと思います。ですが、今回の改正は国民からの要請ではないということを肝に銘じていただきたいと思います。つまり、国の事情で引き下げるんだということであれば、絶対に、若者が経済的な損失であったり精神的な被害を受けるような、そういう社会はつくってはならないと思いますので、ぜひ継続した消費者教育なり制度設計を実行していただきたい。そうであれば、今回の引下げは決して無駄ではなかったのではないか、そう思える時期が来るのではないか、そういうふうに思います。

 ありがとうございました。(拍手)

平口委員長 ありがとうございました。

 次に、田中参考人にお願いいたします。

田中参考人 皆さん、おはようございます。関西でNPO法人代表を務めております田中と申します。

 本日は、このような貴重な機会をいただき、まことにありがとうございます。

 スマセレとは、スマートセレクト、賢い選択を意味し、もともとは、兵庫県の大学生の消費者リーダー、くらしのヤングクリエーターというんですが、として活動していた大学生が消費者教育とキャリア教育で消費者市民社会の実現や若者の社会人基礎力の養成を目指していこうと立ち上げた学生団体から始まって、今はNPO法人になっているというところです。

 これまで多くの大学生に向けてイベント等をし、本日は、多くの大学生とかかわってきた立場を踏まえて、また、僕自身もまだ若いので、一人の若者として成年年齢の引下げについて意見を述べさせていただきたいと思います。

 初めに、自分の人生を豊かにしていく社会人基礎力の養成と、それから社会の将来を豊かにしていくであろう消費者市民社会の実現というのは相互に補完し合っていくもので、消費者教育とキャリア教育の両輪があって初めて自立した社会人を養成できると考えています。

 社会にはいろいろな人がいますので、成年年齢は何歳がいいのかと聞かれますと、いろいろな答えが返ってくるかと思います。したがって、何がよくて何が悪いのかという判断をできる立場ではありませんが、そもそもこのような議論がどこからなぜ出てきたのかというのが一人の若者としてまだわからないところです。

 副産物的なメリットは多く聞くものの、若者にとって主産物的な直接のメリットが何なのかわからず、むしろ、未成年者の取消権がなくなるというのは、多くの若者にとってデメリットになる可能性があるのではないかというふうに思います。

 早くから自立した社会人として扱われるのも、あくまで扱われるだけであって、先ほど申しましたように、消費者教育とキャリア教育の両輪がしっかり整っていなければ、望まぬ方向に進んでしまう可能性もあるのではないかと思います。

 また、当事者である十八歳、十九歳の若者に成年年齢の引下げについて聞いてみても、知らないという若者が多く、知っていたとしても、喫煙のことでしょうとか飲酒のことでしょうとか、またちょっと何か全然違うことの勘違いをしているというケースもあって、深く考えているとはまだまだ言えないのが現状ではないかなと思います。

 さらには、大多数の若者が成年年齢の引下げについて運動等をしているとかそういったことも聞かないので、若者が成年年齢を引き下げたいと考え、主体的に動いている状態ではないというふうに思います。

 ついおととい、本日急遽このような機会をいただくことが決まりましたので、周りの未成年を含む大学生に個別に意見を聞いてみました。すると、大体八十人程度に聞いたんですけれども、賛成は一人もいませんでした。一方で、絶対的に反対だという意見もほとんどなかったんです。では、どういう意見なのかというと、大半は、現状では反対なんだ、現状ではわからないんだ、そういう声が多くありました。

 社会の変化や消費者教育の現状も踏まえると、成年年齢の引下げについては慎重に議論していく必要があるのではないかというふうに考えます。

 成年年齢ですが、十八歳という時期は、多くの若者にとっては受験であったり就職であったりと、人生の大事な選択をしないといけない時期に重なっていて、そこまで考える余裕がないという声を多く聞きます。また、大学などに進学してひとり暮らしなど、生活環境の変化などもあり、さまざまな不安や悩みを抱える時期とも重なります。このような不安や悩みにつけ込まれて発生するトラブルもあるのではないでしょうか。

 確かに、契約などで不便だ、こういう声もあります。しかし、多くは保護者の理解を得ればよく、そこまで不便というものではないのではないかなというふうに思います。むしろ、一人で決めるのではなくて保護者などと相談して決めることが、自分のなかった視点を得れてよかった、そういうふうに言う若者も少なくありません。

 ましてや、仮に消費者被害に遭ったとしても、保護者など身近な人へ相談することは大切で、日ごろから相談できる関係を築いておけば、現在の、成年年齢が二十歳であったとしても、私は困ることはほとんどないのではないかなと思います。

 高校生や大学に入って間もない新入生と大学の上級生とでは、やはり、アルバイトであったりサークルとか、あと、そういったところで多様な人たちとかかわることによって社会的な経験に大きな差があり、何かトラブルに巻き込まれたときにどのように対応するかというところの対応力には差が出てくるのではないかなというふうに思います。

 学生の間はどこまでいってもやはり学生で、保護者の判断が影響することが多く、仮に成年年齢を引き下げたとしても、それが直接すぐに社会の一員であると若者が感じるということにはならないと思います。

 今ではSNSの普及などによって知らない人とつながるのが簡単な時代になりました。また、誰でも情報を発信できるという便利さの反面、あふれんばかりの情報の中から賢く情報を選択していくということが難しいです。

 最近では個人間の売買のできるサービスなどもあり、若者の多くはもちろん良心的な売り手から買ったりということはあるんでしょうけれども、売り手の中には悪意のある売り手もあり、そういった売り手とつながる可能性というのも十分にあります。

 昨今、奨学金を借りる若者も多く、経済的に余裕があるとは言えません。

 少し前に、私の身近なところでこんなエピソードがありました。

 大学四年生、もう成人をして二年ぐらいたったあるAさんの話なんですけれども、Aさんは理系の大学生で、研究室が忙しく、バイトもできない。生活は、奨学金を借りている。ある日、SNSから、知人に、毎月何もしなくても十万円稼げるビジネスがあると言われて、ノウハウ料として数十万円を払って、一度お金を払ってノウハウを買ったら、そのノウハウをほかの人に売れるから損することはないよ、そういうふうに言われたそうです。Aさんとしては、親に負担をかけたくない、そういう思いで契約したそうですが、結局、もうかることもなく、損をしてしまったと。

 このマルチ商法のような手口ですが、Aさんにとっては、簡単な気持ちで始めたというよりは、自分なりに考えて、親に負担をかけたくない、そういったところでした選択でした。SNSなどが普及し、若者の経済苦につけ込むような形でこのようなことが起きてしまいました。一つの問題にもさまざまな社会課題が関連していると思います。

 これまでの消費者教育はどうだったか、聞いてみました。

 学校でチラシがたくさん配られたりトラブルについて習ったりしたという声は聞きましたが、一方で、チラシが配られただけでまだまだしっかりと指導はされていないんだ、トラブルも多様化して追いついていないんだ、そもそも高校ではテストに出るかどうかということだけで勉強するかどうかを決めていて、そういったことに余り興味を持たないんだ、ましてや、高校という、身近に家族という頼れる人がいるために、なかなか自分事として考えることができないんだといったような意見がありました。大学生など少し自立した段階から初めて自分の周りのことについて考えることができるようになると思います。

 また、もし被害に遭ったときに、現在でも、たとえ今未成年であっても、数万円程度なら、相談そのものが面倒くさいから諦めるという人も少なくありません。仮に特例等ができて、十代後半という大事な人生に裁判などをして被害回復をするということは、極めて少ないのではないかというふうに思います。

 このようになると、少額な泣き寝入りというのが結果的にますますふえてしまうのではないかという懸念があります。そもそも、悪意のある売り手を近づけない、予防薬としての未成年者取消権は、今後も十八歳や十九歳の若者を守るとりでとしてあり続けてほしいと私は思います。

 現状として、まだまだ教育が不十分で、指導者の不足等の問題もあり、被害も多く、懸念事項もたくさんある、そして主産物的メリットがあるかまだまだわからない、こういった状態では、若者はまだ成年年齢の引下げを求めているとは言えないんだと思います。

 このまだというのは、今後当然、消費者教育やキャリア教育、こういったものが充実し、十八歳の時点で一定の判断力などがつき、若者からそのような声があれば、その段階で検討したらいいのではないかなというふうに思い、今はその議論が順序として逆になっているような気がします。

 やはりさまざまな社会課題が絡んでいることだと思いますので、その辺も踏まえて慎重に議論していただきたいと考えております。

 以上です。ありがとうございます。(拍手)

平口委員長 ありがとうございました。

 次に、伊藤参考人にお願いいたします。

伊藤参考人 愛知県の弁護士をしております伊藤陽児と申します。

 本日は、このような意見を申し上げる機会を与えていただきまして、まことにありがとうございます。

 私は、弁護士として消費者被害事件の救済に取り組むとともに、日弁連消費者問題対策委員会の消費者契約法を担当する部会と成年年齢引下げの問題に取り組むプロジェクトチームの両方に所属して、消費者契約法の改正と成年年齢引下げの問題に取り組んでまいりました。

 本日は、成年年齢の引下げにより十八、十九の若者に消費者被害が拡大するおそれを中心に、現在並行して審議されております消費者契約法の一部を改正する法律案の内容も踏まえ、意見を述べさせていただきたいと思います。

 私は、成年年齢引下げにつきましては、その是非も含め、慎重に議論が進められるべきと考えております。

 特に、これまで未成年者取消権によって被害防止と被害救済の両方の場面において保護されてきました十八、十九の若者に消費者被害が拡大するおそれに対する対応として、消費者契約法を始めとする消費者関連法の分野における施策が実現されているとは到底言えないと考えるからでございます。

 この点、法制審議会の答申は、消費者被害の拡大のおそれ等の問題の解決に資する施策の実現がされること、その施策の効果が十分に発揮されること、それが国民の意識としてあらわれることという三つのハードルを課していると理解できます。しかし、いまだ、一つ目のハードルである施策の実現すらできていないのではないかというふうに考えております。

 これまでの審議において、政府は、消費者保護のための施策の状況については、消費者契約法改正法案を本国会に提出した、消費者契約法改正も引下げのための環境整備の重要な一つだというふうに答弁されております。

 この点、今国会に提出されております消費者契約法の改正法案の内容のうち、主に若年者の消費者被害対策を念頭に置いたものと考えられるものとしましては、大きく二つございます。

 まず一つ目は、消費者の不安や恋愛感情等の好意につけ込んだ勧誘を理由とする取消権を新たに導入するというものでございます。これは、不安をあおる告知、改正法の四条三項三号ですね。お手元に資料をお配りしておりますけれども、消費者契約法の改正案の新旧条文対照表等をごらんいただければと思います。それから二つ目が恋愛感情等の人間関係の濫用、改正法の四条三項四号になりますけれども、などと呼ばれております。

 それから、若年者対策ということのもう一つ目ですけれども、事業者の消費者に対する情報提供義務について、これは消費者契約法三条でございますが、消費者の知識及び経験を考慮することを求めるものとする改正でございます。

 この消費者契約法の改正は、消費者被害の防止と救済のために一歩前進と言えますので、ぜひとも改正が実現することを望んでおります。

 しかし、成年年齢を引き下げるための条件の第一関門である消費者被害の拡大のおそれに対する施策の実現として十分なのかというふうに問われますと、残念ながら、これだけでは全く不十分であると言わざるを得ません。

 以下、その理由を述べたいと思います。

 まず、事業者の消費者に対する情報提供義務に知識経験を考慮することが加わりましたのは、トラブル防止の観点からは一定の意義はございます。ただ、あくまでも、そのように努力することを求める努力義務にとどまっておりまして、法的義務とはされておりません。

 また、改正の議論の際に消費者保護の観点から提案されておりました、当該消費者の需要及び資力に適した商品及び役務の提供について必要かつ合理的な配慮をするという規定も盛り込まれておりません。

 これらの点において、必ずしも十分とは言えません。

 次に、新たに導入される取消権でございますが、適用対象は、不安をあおる告知、それから恋愛感情等の人間関係の濫用という二つの類型に限定されております。

 典型事例を挙げますと、不安をあおる告知では、あなたは一生成功しないなどと告げて不安をあおってセミナーに参加させたりする、いわゆる就職セミナー商法などが典型例とされています。また、恋愛感情等の人間関係の濫用は、いわゆるデート商法が典型例とされております。

 しかしながら、国民生活センターのウエブサイトに消費生活相談データベースというものがありまして、そこで、キーワードを入れて検索することができるところがございます。そこで調べてみたところ、二〇一六年度で二十歳代の相談受け付け件数が総数で七万七千七百八十五件です。これに対し、デート商法として分類されている相談件数はわずか二百四十六件。これは、割合でいいますと全体の〇・三二%にすぎません。

 つまり、若者に生じている消費者トラブルあるいは消費者被害の本当の一部の類型についてだけ適用される規定であるということはよく理解しないといけないということになります。

 また、典型的な就職セミナー商法やあるいはデート商法などに該当する事例であったとしても、今般の消費者契約法改正法案の要件は、更にこれを絞り込むこととなっておりますので、必ずしも全てが適用対象となるとは限りません。

 例えば、改正法の四条三項四号、こちらをごらんいただきたいのですが、私が配付させていただいた資料でいいますと、四十六分の九ページの右側に、上の欄の四と書いてあるところがそれでございます。

 まず、恋愛感情につけ込む告知の要件でございますが、消費者が勧誘者に対し恋愛感情その他の好意の感情を抱いていることとありますが、それだけではなく、さらに、勧誘者も同様の感情を抱いているものと誤信している、つまり消費者がそう誤信していることが要件となっております。

 これは両思い誤信要件などと我々は呼んでおりますけれども、この要件があることによって、消費者としては自分は片思いだということは重々承知している、わかっているような場合で、でも、そのことを、この人、僕のことを好きだなというふうに思っている人がそれにつけ込んで契約を締結させようとするという事例は救われなくなってしまうということになってしまいます。つまり、両思いでないといけないということになりますね。

 また、そのような消費者の気持ちや感情を事業者が知っていた、勧誘する人が知っていたということも要件となっております。この、知っていた、わかっていたかわかっていないかという、主観に関することを消費者側が立証するというのは非常に難しいです。

 さらには、勧誘者が関係が破綻することになることを告げるというのが要件となってございます。そのため、契約してくれれば自分の基本給、給料が、ボーナスが上がって、だからもっとデートできるようになるよとか、結婚もできるようになるかもしれない、そんなことを、つまり、関係がよりよくなるかもしれない、破綻ではなくて、よりよくなるかもしれないといって契約をさせる、そんな事例には適用されない可能性があるというふうに考えられます。

 さらに、このような要件に関して事業者の不当な行為があったことの立証責任は、消費者が負います。

 例えば、関係が破綻するということを告げたことを立証しようとしますと、メールなどが残っておればそれで何とかなるかもしれませんけれども、私の実務経験上、そのような悪質な商法をする事業者がわざわざ証拠を残すようなことはほとんどありません。そうすると、言った言わないという問題になりまして、消費生活相談の現場で相談員さんがこの規定を活用できるかというと、大変疑問でございます。また、弁護士の立場としても、裁判で立証しようと思うと、本人の証人尋問をやって、相手方勧誘者の尋問もやらないかぬということで、相当な苦労を伴うということになってございます。

 今、デート商法の要件を見てきましたけれども、もう一つの、不安につけ込む告知につきましても、特定の商法を意識して限定された要件となっており、さまざまな手口が存在する若者の被害全般を救済することは到底難しいというふうに考えております。

 このように、今回の消費者契約法の改正法案で導入される新たな取消権は、若者に多い消費者被害の類型のうちのごく一部の被害類型に適用範囲が限定されているほか、要件面でもかなり事例が絞り込まれておりまして、しかも、立証上のハードルがあるということになります。

 二〇一七年八月の消費者契約法専門調査会報告書を受けて取りまとめられました消費者委員会の答申では、こうしたさまざまな手口による被害を広く救済することができる受皿規定として、合理的な判断をすることができない事情を利用して契約を締結させるいわゆるつけ込み型勧誘の類型につき、特に若年成人、高齢者等の知識、経験、判断力の不足を不当に利用し過大な不利益をもたらす契約の勧誘が行われた場合における取消権を定めること、これを喫緊の課題として、異例の付言を行っております。

 また、日弁連や消費者団体も、こうしたいわゆるつけ込み型不当勧誘についての包括的な取消権を導入することが、成年年齢の引下げを仮に行う場合の最低限のセーフティーネットであると提言してきたところでございます。

 しかし、残念ながら、今回の消費者契約法改正案では、今述べたような包括的な取消権の制度は盛り込まれておりません。

 一方で、未成年者取消権、もう皆さん御承知と思いますが、未成年であると、つまり年齢を主張、立証するというだけで契約の取消しが無条件でできてしまうということで、後戻りのための黄金の橋であり、また被害抑制のための鉄壁の防波堤だということが繰り返し言われているところかと思います。成年年齢の引下げによって、十八、十九の若者はこの強力な権利を失うことになります。その一方で、今回の消費者契約法改正案に盛り込まれている取消権は、二類型に限定された厳しい要件の取消権です。

 若者が失う取消権とこの新たに与えられる取消権、これは余りにもギャップが大きいと言わざるを得ません。これが消費者被害の拡大に対応するための施策の実現として強調されているということについては、強い疑問を抱かざるを得ません。

 以上、申し上げた消費者契約法による手当てのほか、消費者委員会成年年齢引下げ対応検討ワーキング・グループや日弁連などは、消費者関連法に関する法整備といたしまして、特定商取引法の改正、割賦販売法及び貸金業法の改正によるクレジットや貸金の与信審査の厳格化、銀行等金融機関の総量規制の整備、こういった施策が必要不可欠であると指摘しています。しかし、これらにつき具体的な法改正による対応がなされたものはございません。

 最近の学生、若者に多い消費者被害としては、友人や先輩あるいはSNS上の知人に勧誘されて自己啓発セミナーに参加したところ、投資用教材のマルチ商法の説明が始まって、自分の成長にもなるしすぐに元は取れるよなどと言われて、お金を借りて買ってしまったというものだったり、お試しや無料体験をきっかけとして、高額なエステの契約を勧められるがままにクレジットを組んで次々と契約してしまった、そういう事例が多くなってございます。

 こうした事例には、人を疑うことなく信じてしまいやすいとか、人間関係を大事にしたい、自分を成長させたい、そういう若者の心理的傾向につけ込んで、また人間関係を利用する形で勧誘されることに加えて、収入や手持ちのお金が少ないということから、代金の支払いのために借入れやクレジットを利用しがちである、そういった特徴がございます。

 一般に消費者被害といいますと、単なると言うと語弊がありますけれども、ちょっとお金を損する被害というようなイメージが、もしかするとあるかもしれません。しかし、さまざまな消費者被害にかかわり、また被害者に向き合ってきた経験からつくづく感じますのは、消費者被害というのは、財産的な被害にとどまらない、その人の人生にとって回復しがたい深刻なダメージを与えてしまうことがあるということでございます。

 特に、若年者の場合は、その精神的な未熟さ、知識経験の乏しさから被害に遭いやすいというだけではなく、その脆弱さゆえに被害はより深刻なものとなる危険性があります。

 例えば、さきに述べました投資用教材のマルチ商法の契約をしてしまった事案ですけれども、結局、投資用教材のとおりにやってみたものの、そんな簡単にお金が稼げるわけもなく、借金の返済ができなくなってしまい、契約した当初は他人を勧誘するつもりはなかったんだけれども、借金の返済のために紹介のリベートを得ようとして、良心の呵責は感じつつも友達を勧誘して、自分が今度は加害者になってしまう。それにより、友人関係が破壊され孤立してしまう。その結果、誰にも相談できないということで、借金を返済するために新たな借金をするという多重債務の状態に陥ってしまいます。そして、無理なアルバイトを重ねて、もう学校も行けなくなって、体調を崩し就職活動もできなくなってしまう、そういう悲惨な事態に陥ってしまうというケースを実際に私も経験しております。

 言うまでもありませんが、彼が失ったのはお金だけではありません。まず、信頼していた友人に裏切られたという思いで人間不信となり、他人を信じる力を失いました。さらに、勧誘する側に回ってしまったということで、大切な友人関係を失いました。また、抜け出せない状況に陥る過程で、その自尊心までも失いました。

 こうした深刻な精神的なダメージを回復することは大変な困難を伴います。今後、新たに人間関係を築いていく上でも大きな障害になりかねません。また、多重債務の問題も、借金それ自体は破産手続によって免責を受けることができるかもしれませんが、信用情報にはその記録が残りますので、一旦失われた経済的な信用を直ちに取り戻すことはできません。したがって、将来家庭を持って住宅をローンで購入するというようなことが難しくなってくる可能性があります。人生の可能性を大きく狭めてしまうことになりかねません。

 もちろん、こうしたことは若年者でなくても起こり得ます。しかし、十八、十九という年齢は、進学、就職、あるいは引っ越し、こういう生活環境の大きな変化と人生における大きな節目を迎え、社会と接触する機会が一気にふえる、そういう時期でございます。こうした時期に十分な環境整備がなされないまま未成年者取消権を失ってしまう、こうした事態に陥る危険に、無防備な状態で若者をさらすだけの結果となりかねません。

 ところで、成年年齢を引き下げることの意義について、我が国の将来を担う若者に社会経済において積極的な役割を果たすことが期待されているなどと説明されております。しかし、法制審議会が示した三つのハードルの一つですらクリアされたとは言えないこの現時点において、引下げを先に決めてしまう、しかも施行日をもちろん当然決められてしまっているということは、いわば見切り発車と言うしかありません。

 まさに我が国の将来を担うことが期待されているはずの若者に、国が見切り発車のリスクを負わせてしまってもよいのでしょうか。そのリスクが現実のものとなった場合、希望に満ちた人生の第一歩を歩み始めたばかりの若者の将来を奪うことにもなりかねません。改めて、慎重な議論を進めていただくことをお願い申し上げる次第です。

 ありがとうございました。(拍手)

平口委員長 ありがとうございました。

 次に、増田参考人にお願いいたします。

増田参考人 公益社団法人全国消費生活相談員協会の増田と申します。

 きょうは、このような機会をいただきまして、まことにありがとうございます。消費生活センターで相談を受け付けている立場から、きょうは意見をお伝えしたいと思います。

 お手元に資料を配付させていただきましたので、それに基づきましてお話しさせていただきます。

 きょうは、未成年者契約の取消権を中心に、事例を踏まえて説明をさせていただければと思います。

 まず、公益社団法人全国消費生活相談員協会というのは、全国の自治体の消費生活センターに勤務する消費生活相談員の団体でございます。会員は約二千名おりまして、平日は通常、消費生活センターに勤務しておりますが、夜とか土日とかそういう休みのときに、私どもの活動に取り組んでいただいています。

 主な活動内容としましては、自治体の窓口がお休みの土日とかそういうときに、週末電話相談室を開設して個別の被害回復をすること。また、適格消費者団体として被害の未然防止をする。また、一番大きいのが、消費者啓発、消費者教育をしております。そういうような活動の中から、消費者の生の声を集約して、そして皆様のところにお届けしたいというふうに考えております。

 スライドの二をごらんいただけますでしょうか。

 マルチ取引の傾向を示すグラフでございます。若者のトラブルの特徴としてマルチ取引があるわけなんですけれども、マルチ取引自体は全体としては減少傾向にあると思います。ただ、二十歳代ではごらんのとおり増加傾向にありますし、よく見ていただきますと、十歳代もわずかずつですが増加していますので、大変注意が必要なところだと思います。

 マルチ取引自体は先ほど伊藤先生の方から詳しく御紹介ありましたけれども、特に地元の同じ高校の出身者によって、成人直後に勧誘をするということが多く見られます。そうしたとき、同じ地元で育って、そしてそこの地域で学んだということから非常に深い信頼関係がありますので、そこで勧誘をされると、あいつの言うことだからということで契約をしてしまうということはよく見てまいりました。

 そして、更に困ったことに、自分はやめたいんだけれども、友達を残したままやめることはできないといってその組織に残り続けるケースとか、そしてまた、その勧誘された人も、これはよくないからやめるようにといって消費生活センターに二、三人がかりで連れてくるわけなんですが、消費生活センターの一室で、私の前で泣きながらけんかをして、そしてやめさせるように説得をするというような、そういう場面もあります。

 それだけ人間関係が深いところでのやりとりがあるということが考えられると思います。そして、経済的な負担だけではなく、やはりそういう信頼関係が壊れるというようなことから、人生のスタートにおいて非常に深い傷を負うということがあります。

 以前は、サプリとか化粧品とかの商品を扱うことが多かったんですが、最近は、投資用DVDであるとか、もうけることを学ぶためのセミナー、それからオンラインカジノというようなことで、その価値がよくわからないもの、自分にとっても仕組みがよくわからないもの、そういうものについて、ただもうかる、利益があるというようなことに引かれて契約をしていくということが多くあるように思います。

 スライド三をごらんください。SNSをきっかけとした相談件数の推移です。

 若者は、SNSの利用頻度が大変高いので、相談件数もほかの世代と比べて多いと思います。二十歳代前半を中心に二〇一四年から増加が顕著となっていますけれども、特に女性の相談が多く寄せられていますけれども、これは健康食品の定期購入のトラブルが多発したことが原因と考えられます。

 スライド四の事例をごらんいただけますでしょうか。これは、私ども週末電話相談室に寄せられました若年者からの相談のごく一部を御紹介しております。

 本協会の週末電話相談室に全国から寄せられました相談は、平成二十八年度は二千六百九十四件で、このうち、十歳代の方からの御相談が百件、二十歳代の方からの御相談が四百三十五件で、十歳、二十歳代で約二割を占めています。

 1の事例を御紹介させていただきたいと思うのですが、モデルのレッスンを受けるよう勧められて十五万円の契約をし、クレジットカード十回払いにした。その後、三十六万円かかるが所属モデルにならないかと言われた。払えないと断ると、二十万円でいいと言われ、承諾した。しかし、高額で払えないので、やめたい。

 こうした事例は、成年年齢がもし引き下げられた場合、十八歳、十九歳にも発生するというふうに考えられますし、モデルなどの勧誘というのは、むしろ十八歳、十九歳の方からすれば非常に強い興味があるんだろうと思います。また、未成年であればクレジットカードの利用もかなり限定的ですが、成人となれば一定の利用が可能になりますので、契約が成立してしまうということになってしまいます。

 この事例においては、一回目の契約はキャッチセールスですのでクーリングオフの適用になりますけれども、期間が経過していれば活用できません。二回目の契約は、一回目からどのくらい期間が経過しているかにもよるかと思いますけれども、特商法の適用については争いが残るというふうに思います。そうしますと、消費者契約法と民法の活用ということになる。なかなか交渉が困難になっていくということになります。

 もう一つ御紹介したいのですが、スライド五をごらんいただけますでしょうか。5の事例でございます。

 友人に食事に誘われて行ったところ、貸し会議室でのオンラインカジノのビジネスセミナーだった。オンラインカジノサイトに登録し会員になるとカジノで遊べ、勧誘した人が会員になると利益になると勧められた。登録料は二十万円だったので持ち合わせがないと断ったが、キャッシングして払うよう言われ、断り切れず入会し、払った。

 この内容自体も、どういうサービスなのかということも非常に難しいところなんでございますけれども、オンラインカジノの会員契約のために二十万円をキャッシングして支払ってしまいました。

 今は、先ほどお伝えしたとおり、もうかる、利益がある、簡単に稼げるという言葉をキーワードに、若者たちがすぐに飛びついていくという傾向があるかと思います。こういう話は、二十歳代にとどまらず、十八歳、十九歳になればもっと魅力的になるのかなというふうに思います。

 この事例も、未成年であればキャッシングに制限がありますけれども、やはり成人だったために二十万円が借りられてしまった、そういう事例でございます。

 次に、スライド六で、相談が寄せられた場合の消費生活センターにおける対応について御説明したいと思います。

 まず、未成年者の契約の場合は、当然ながら未成年者契約の取消権を活用いたします。年齢の立証という非常に簡易な方法で取消しができますので、私たちは、まず若者たち、若者だと思った相談者からは、必ず一番最初に年齢を確認します。そうすると、未成年であると本当にほっとするんですね。ああ、よかったと思いながら相談を聞き取りをしていきます。成人していて、かつ現金で払ったというような場合は、本当に暗たんたる思いをしながら相談を受けている、そういう状況でございます。

 そういう意味で、未成年者契約の取消権というのは強固な防波堤になっているということと同時に、キャッシングなどの制限をしているということで、付随的に防波堤になっている。そして、消費生活相談員として感じることは、やはり未成年者の相談自体が少ないです。これはデータでもわかることだと思いますが、相談員としての実感があります。

 やはり、事業者の方が、未成年者契約の取消権を行使されればすぐに取消しをされてしまうということからも、なかなか未成年者にはアプローチしづらいんだろうというふうに考えております。

 成人の契約なんですけれども、この場合は特商法や消費者契約法を活用することになります。そのためには取引方法や要件の検討が必要ですので、ただ、勧誘方法が今非常に複雑になっていますので、簡単にこの適用を相手方は認めません。

 そこで、まず、適用されるのであるということを説得するところから始まります。さらに、返金の交渉をするということになりますので、消費生活相談員としては、聞き取る力、説明力、交渉力、説得力そして調整能力と、非常に高いレベルの能力が求められているというのが現状でございます。

 そして、最近は、一度払ってしまいますと回収することが非常に困難なケースも多くなっています。でも、一方では、先ほどスマセレの代表の方がおっしゃったように、若者は裁判をするというようなことは非常に少ないですので、消費生活センターのレベルで解決をするということを望んでいます。そうしますと、やはり解決ができないということもありますので、それをそのまま負債として抱え込んでしまうというようなことになっております。

 スライド七でございます。若年者の消費者トラブルの特徴ということでまとめてみました。

 二十歳直後から勧誘されることが多く、未成年者からの相談件数は余り多くありません。消費生活相談においては、特定商取引法の適用のない取引も多く、また、消費者契約法においてもつけ込み型の取引の手当てが不十分な中、未成年者契約は未成年者契約取消権により救済されることが多いです。その反面、二十歳になった途端に被害の回復に時間がかかってしまうということがあります。

 二つ目ですが、SNSなどバーチャルな人間関係を根拠なく信用しやすく、反面、リアルな友人あるいは親に相談しないというようなことが見受けられます。

 3ですけれども、インターネットは駆使していても、広告や情報の真偽を確かめるというような作業をすることが少ないのではないかと思います。これはほかの年代にも共通して言えることなんですけれども、インターネットの利用頻度が高い二十歳代は更にトラブルになることが多いのではないかというふうに思います。

 インターネット広告とかSNSがきっかけになったり、アフィリエイト、ドロップシッピング、バイナリーオプション、さまざまなアプローチ、新しいサービスが次々と出てくる中で、応用力というのが身についておりませんので、トラブルに巻き込まれてしまうというふうに思います。

 4として、契約に関する知識が乏しく、どのような場合に契約が成立になるか、一旦成立した契約は簡単には解約ができないというようなことの理解がありません。

 5、その場の雰囲気を壊さないようにしたいという気持ちが強いので、事業者からの勧誘をきっぱり断ることができないというのが実情です。

 6、自身の支払い能力について十分な判断ができないため、借金やクレジットということで分割での支払いを提案されると、将来的に困難になるという予測がつかず、それを受け入れてしまう、そういう傾向があると思います。

 そして、スライド八ですけれども、こうした状況において、若年者の消費者被害防止、被害回復のために必要な手当ては何が必要かということを列挙させていただきました。

 まずは消費者教育ですけれども、教員自身の指導方法、教材の活用方法の習得、消費者教育を実施できる環境の整備ということを挙げさせていただきましたが、これは、実際に超多忙な先生方の間でこれが実行できるのか、非常に不安があります。それから、地域の消費生活センターとの連携とか、教育の現場に外部の専門家を活用する仕組みを整備していただきたいと思います。消費者庁、文科省、法務省、金融庁の連携、これは既に四省庁関係局長連絡会議として発足していただいていますので、今後これが、一番トップのところではなく、現場にまできちんと実効性があるような形でおりてきてもらうということを期待しております。そして、自治体と教育委員会との連携をしていただきたいと思います。

 私どもの団体では、無償で消費者啓発講座を展開しております。ここ三年間、毎年二百件から三百件を全国でやっています。無償でやると言っても、時間がなくて開催していただけないというのが教育現場なんですね。ですから、そういうところにぜひ私どものような講師が行って話をさせていただきたいといつも考えております。

 そして、特商法、消費者契約法のさらなる整備、そして、事業者による年齢や状況に応じた配慮というものが必要だと考えております。

 そうしたことが、では、果たして今現在できているかということについて不安があるということを述べているのがスライド九でございます。

 1のところで、文科省が平成三十年一月に発表しております平成二十八年度消費者教育に関する取組状況調査、百十九ページに出ておりますけれども、「成年年齢の引下げを踏まえ、新規・拡充した取組の有無」については、「新たに、もしくは拡充して実施することとなった取組はない」八三・五%が最も多く、約八割を占めている。一方、「新たに、もしくは拡充して実施することとなった取組がある」九・五%と、「現在はないが、今後実施予定」というのが七%、いずれも一割未満となっているということが報告されております。

 また、高校における新学習指導要領の完全施行は二〇二二年でございますので、それが現場で効果として実感できるのは一体いつのことなのかということが非常に不安に思っております。

 そして、消費者志向経営を目指す事業者においては、年齢や状況に応じた配慮をしていただきたいと考えております。現状においては、それが十分かどうかというのが不安に思います。確かに、若者の消費者トラブルは悪質な事業者によるものが大変多くあるのは事実です。ただ、優良な事業者が、果たして若者に適切なサービス、商品を提供しているかとなったときに、そこもやはり問題があるのではないかというふうに思います。

 事例を御紹介しておりましたけれども、その中のスライド五で、結婚式場の事例がございます。

 結婚式場の説明に行き、当日契約をしたら割引になると言われて契約をした。だが、二軒目の式場の方がよかったので、翌日キャンセルを伝えると、予約金三十万円を払うように言われた。約款では、契約成立後のキャンセル料は予約金三十万円となっていた。ほとんど何もサービスを受けていないのに三十万円も払うことに納得がいかない、そういう事例でございます。

 結婚式というのは必要なサービスでございます。ただ、人生においてそう何度も経験する人は少ないです。しかも、親の関与が非常に大きい、そういう契約だと思います。百万円、二百万円の契約でもあります。そうしたときに、契約をとりたいというのは事業者の方としては当たり前だとは思うんですけれども、やはりそういう特性を考えていただいて、親に相談したのかとか、どういう結婚式が希望なのか、予算は幾らなのか、そういうことをいろいろ聞いて、プランを幾つか用意して、こういうプランがありますよ、親に相談してくださいというようなことまでも言っていただくのがあるべき姿なのではないかというふうに思います。

 もちろん、消費者の方も、よく考えるべきところを、今だけ、きょうだけ、あなただけの商法をここでやられて契約してしまうということはあってはならないわけですけれども、やはり、優良な事業者であれば、消費者に対する年齢や状況に応じた配慮というものをぜひしていただきたいというふうに思っております。

 そして、スライド十でございますけれども、やはり、知識、社会的経験、判断力、資力が不足しているばかりではなく、そして解決方法自体も知らない若者が多くいる。そういう中から、今、成年年齢を引き下げることによって、今の二十歳よりもっと未熟な十八歳、十九歳が悪質事業者のターゲットになって、若者の消費者被害の増加が容易に予測されます。

 若者は国の宝だと思います。人生のスタートで負債を抱えることは、将来にわたってマイナスの影響を及ぼすと思います。こういうような状況において成年年齢引下げは、今、時期尚早ではないかというふうに私どもとしては考えておりますので……

平口委員長 時間が限られていますので、結論をお急ぎください。

増田参考人 はい。

 慎重な検討をお願いしたいと思います。

 以上でございます。(拍手)

平口委員長 ありがとうございました。

 以上で参考人の方々の御意見の開陳は終わりました。

    ―――――――――――――

平口委員長 これより参考人に対する質疑に入ります。

 質疑の申出がありますので、順次これを許します。上野宏史君。

上野委員 自由民主党の上野宏史でございます。

 五人の参考人の先生方、大変貴重な御意見をいただきまして、ありがとうございました。

 まさに歴史的な民法の改正、成年年齢の引下げの審議がされているところでございます。しっかり御意見を参考にさせていただいて、議論を進めていきたいというふうに思います。

 では、順次質問させていただきます。

 今回、民法の改正案、成年年齢を二十歳から十八歳に引き下げるということであります。これは民法のみならず、関係法律二百数十本というところに影響を与えるということでありますけれども、加えて、これは法的な関係のみならず、一般社会において、まさに十八歳になった方々が大人として取り扱われるということでもあるというふうに思います。

 この点について言うと、一般社会にこれまである意味出ていなかった方々が、一般社会でいろいろな経験をすることにもなる、自分の責任でいろいろな行動をするようになる。それが大人としての自覚を促したり、又は社会に活力を与えるという考え方もあれば、また一方で、まだまだ今の十八歳、十九歳の方々というのは未熟である、考え方もちょっと幼いというような考え方もあるというふうに思います。

 そこで、これは全ての参考人の方々にお伺いしたいんですけれども、伊藤参考人は陳述の中でも少し触れてもいただいたんですけれども、若年者、特に十八歳、十九歳の、今回の民法の改正で大人として扱われるようになるであろう方々の現状と、あとは成熟の度合い、それから、大人として取り扱われることによって自主性が尊重される、又は社会性が養われる、自立を促されるということで、これは社会にとっても意義があることだという考え方についての御所見を、それぞれお伺いしたいというふうに思います。

本多参考人 私は、最初のところの陳述でもお話しさせていただきましたけれども、十八歳、十九歳、現状ではそれほど大人だというような感じでは受け取れないところがあるかもしれない。ただ、それはそういう形で、今の現状ですので、これからさまざまな形で教育をしていくということが非常に重要なのではないかというふうに思っております。

 以上です。

岡田参考人 やはり、同じ十八歳であっても個人差がありまして、中には、十六歳でもきちっと、立派な大人的な考え方や行動をとっている人もいれば、十九歳、二十ないしは二十何歳になっても自分で判断ができないというような若者も多いです。そんな中で、確かに、突然、十八歳になって成人だと言われてちゃんとできるかといいますと、その辺は心細いと思います。

 ただ、この法律が通ったとしても、今十四歳の子供が十八歳となると四年間ありますので、この四年間が大変貴重であるし、使い方によっては十分自立する可能性はあるのではないか、そういうふうに思います。

田中参考人 十八歳と十九歳の現状についてですが、先ほどもちょっと述べたんですが、いろいろ受験とか新生活とかそういったところで、そういったところまでまだまだ余裕がないのが現状で、成熟の度合いとしては、やはりまだまだ自分事としてそれを考えられている段階ではないのではないかなというふうに思います。

 自立が促されるということに関しましては、確かにそういう側面もあるのかもしれませんが、デメリットというところの方がまだまだ多くて、本当に若者が自立をしたいというふうに思ったときに初めてそれはそういうふうに自立を促していただけたらいいのではないかなというふうに思います。

 以上です。

伊藤参考人 大人だ、成人だというふうに言われるということで自覚が促されるという実態は、それは効果としてないとは言いません。

 ただ、家庭の教育なんかで、私も、今十八歳の大学生になったばかりの子供がおりますけれども、ここで彼のことを言うわけにはいきませんが、どちらかというと、家庭の教育の中で、うちなんかでは、もうあなたは大学生で十八なんだから、民法では成年ではないかもしれないけれども、自分のことは自分で決めなさいというような教育をしています。そういうふうに常々言っています。

 ただ、そうはいっても、これまで高校で生活をしてきて、大学になり、先輩やいろいろな人と接する中、またバイトをする中でいろいろな経験を積み重ねながら大人になっていくのかなということを、まさに今、大学生活をしている子供を見ながら思っているところでございます。

 ですので、一律にいつということではなくて、どのような経験を積み重ねるかという点でいいますと、高校生の間に大人だと言われたって、高校の中でかごの中にいるじゃないかということになってしまいますので、果たして自覚が持てるのかというのは疑問があります。

増田参考人 まだ自立しているというふうには考えておりません。

 家庭教育が非常に大きい影響は及ぼすというふうに思いますので、学校教育のみならず、家庭でしっかり教育していただきたい。

 それから、非常に個人差があると思いますので、個人が、人によっては自立していると思っているケースであっても、経験に裏づけされていないということで、客観的にはまだまだ自立していないというようなケースは多くあるのではないかというふうに思います。

上野委員 ありがとうございます。

 次に、成年年齢を引き下げることに対する世の中の反応ということで、世論調査の数字を一般的に見ると、もちろん、引き下げた方がいいという意見もあれば、なかなか引き下げに対しては現状反対をするという声も多く聞いているというところでもあるというふうに思います。

 その中で、まさに、今回の法律改正案によって成年年齢とされるような方々の思いがどうなのかというのが何よりも大切なところかなというふうに思います。この点、本多参考人とあと田中参考人にもお伺いをしようと思っていたんですが、先ほど陳述の中でしっかりお話を聞かせていただいたので、本多参考人にお伺いをしたいというふうに思うんですけれども。

 特に、若年の方々が、成年年齢が引き下げられて、自分たちが成人、大人として取り扱われる、成年として取り扱われるということについて、どういう思いを持っているのか。まだなかなか認識をしっかりされていないということかもしれないんですが、自分たちが成年として取り扱われるようになった場合にどう思われるか、現状どういう思いを抱いているのか。もし御所見があれば、お伺いしたいと思います。

本多参考人 今、どういうふうに成年年齢が引き下げられたときに思っているかという種類のことでありますけれども、現状は、ほとんど、成人年齢が引き下がるということについての意識はないと思います。

 ただ、それは、先ほども申しましたように、彼らは生まれてから成人は二十という形でありますし、親の世代も二十という形でずっと来ておりますので、それは、私は教育の形がそうであったからそうだというふうに思いますので、ここのところは、先ほど言ったように、社会全体でそれをバックアップして、成人として盛り上げていくというところがとても重要なんじゃないかなというふうには思っております。

上野委員 ありがとうございます。

 次に、消費者トラブルについて、現状をちょっとお伺いをしたいというふうに思います。

 今回の法改正で危惧をされるというのが、新たに成年となる年齢の方々、十八歳、十九歳の方々が消費トラブルに巻き込まれるんじゃないかということであるというふうに思います。また、そのときに救済がなかなか困難になってくる可能性があるということでもあるというふうに思います。

 この点について、先ほど、こういった消費者トラブル、特に高齢者の方々の方がより問題なんだというお話もあったと思うんですけれども、特に、他の年代の方々と比べて、若年の方々の消費者トラブルの現状と、あと、未成年者取消権の使用の現状であったり、又は、成年年齢が引き下げられたときの影響ということについて、岡田参考人と、あと増田参考人にもお伺いをしたいと思います。

岡田参考人 ありがとうございます。

 消費者センターにおきまして感じることは、一番やはり消費者被害に遭っているのは高齢者。通信関係が案件として多いものですから、三十代、四十代が多いんですが、個別で考えますと、やはり高齢者の被害というのはお金を持っているだけに深刻で、なおかつ判断力もかなり怪しくなっているということを踏まえて、その辺が、相談を受けていても、よくこちらも認知できない部分があるもので、果たしてその交渉のときにどういうふうに持っていくかとか、その辺で苦労します。

 一方で、若者に関しましては、本人から相談が寄せられるというより、むしろ、十八歳、十九歳の場合は親から相談されるということが多くて、本人が自主的に自分のトラブルを認識して解決しよう、そういう姿勢は余りないのかなというふうに思います。

 ただ、未成年であれば、もう即取消しはできますから、やはりセンターとして苦労するのは、二十代のトラブルだろうと思います。

 その場合におきましても、契約に至る経緯を十分に聞いた上で、事業者に対しては問題点を提起するというやり方で解決に至るということは、大方あると思います。

増田参考人 私も、今の二十代前半の相談がそのまま十八歳、十九歳におりてくるだろうというふうに思いますので、そうしたときに、未成年者契約の取消権が使えないとなれば、やはり特商法、消費者契約法、民法ということになりますので、そちらの方の制度設計をきっちりとしていただきたいという希望があります。

 それと、先ほどお伝えしたとおり、やはりその決済方法についてが一番重要な問題になってきますので、いろいろな決済方法を提供していただいている事業者さんには、やはりその使い方、メリット、デメリットを十分に説明していただくということが次の問題になるのかなというふうに思います。

上野委員 ありがとうございます。

 時間が限られているので、最後に、本多参考人にお伺いをしたいというふうに思います。

 まさに成年年齢が十八歳に引き下げられるということで、これから消費者教育であったり、又は自立に向けたさまざまな人格的な教育も含めて、教育の現場でどういった対応をしていくのかということが大変大事になってくるんじゃないかなというふうに思います。

 現場におられた立場から、現在、現時点での教育の現場でのそういった十八歳、十九歳の方々又はその前段階の方々に対する教育の現状、成年として社会に出ていくための教育についての現状と、あと、今回この法案が成立をすると、まさに十八歳の方々が成年ということになるわけですけれども、それに向けてどういう対応を現場でしていくべきなのか、御所見をお伺いしたいと思います。

本多参考人 現状でも消費者教育等はやっておりますけれども、成人年齢が十八歳に引き下げられるという形であれば、学校では、計画的に、意図的に、年間を通して、もちろん、三年生にだけではなくて一年生のときから、どういうステップをとってどういう形をとるかということを学校全体で、学校もさまざまな学校がありますけれども、その学校の置かれている、社会から期待されている役割を果たすためにそれは十分にやっていけるというふうに思いますので、計画的にできるというふうには私は考えております。

上野委員 ありがとうございました。

 限られた時間でありましたけれども、大変貴重な御意見をいただきました。

 我々、またこの法務委員会、またこの衆議院においてしっかりと議論して、よりよい形、制度設計をしていきたいというふうに思います。

 きょうはありがとうございました。

平口委員長 次に、國重徹君。

國重委員 おはようございます。公明党の國重徹でございます。

 本日は、五名の参考人の皆様に、何かと御多用の中にもかかわりませず、当委員会にお越しいただきまして貴重な御意見を賜りましたこと、まずもって心より感謝と御礼を申し上げます。

 十五分という限られた時間でありますので、早速質問に入らせていただきます。

 まず、本多参考人にお伺いいたします。

 民法の成年年齢を今回十八歳に引き下げようという民法改正法案でありますけれども、成年年齢を十八歳に引き下げるメリットについてどのようにお考えか、お伺いいたします。

本多参考人 お答えさせていただきます。

 最初に、冒頭にお話し申しましたけれども、高校三年生、十八歳になったときに社会の構成員であるということの自覚をしっかり持たせるということは、非常に重要なことであります。そして、これから日本の社会を背負っていく彼らでありますので、若い世代の意思を社会に反映させるという形の一歩になるのではないかなというふうに思っています。

 ただ、そのためには、周りが、社会全体が十八歳を成年で扱うという形のコンセンサスがぜひ得られたいというふうに思っています。

國重委員 ありがとうございました。

 本多参考人の資料の中にメリットとして書かれてありましたのが、もちろん自覚というところもそうですけれども、高校在学中に真実味を持って成年の概念を指導できるのは大きな利点である、現状では、高校卒業後、二、三年で成年になるので高校在学中の指導が効果的に機能していない点があるというように書かれたものもございました。

 こういったものも確認して、次に岡田参考人にお伺いしたいと思います。

 岡田参考人は、消費生活専門相談員として長年御活躍されてきたということで、先ほども本当に現場の実態に即したお話をお伺いして、大変勉強になりました。

 岡田参考人は法制審議会の民法成年年齢部会にも参加されておりまして、そこの議事録も読ませていただきました。その中に、平成二十一年二月二十六日の会議におきまして、このようなことを言われております。

 十八歳で未成年者取消権を使うケースがあるかというと、それほどないのです。同時に、では二十歳になっているからもう消費生活センターで救済できないかというと、それもないと考えますと、十八歳に引き下げられたから被害が拡大するということが、どうしても現場の人間としては違和感があります。

 パブリックコメントの中で、相談員の方が何か被害がふえると書いてありましたけれども、そういう認識は私の周りでは深刻に受けとめていません。確かに十八歳に引き下げたとき、一時期にふえるかもしれないけれども、ではそれによって救済できないかというと、それもないと思っているので、このためだけに二十歳であるべきだということに関しては、もう一つ納得できないという気持ちでおります。

 下がった一年とか二年とか、それはあるかと思います。ただ、できればそういう被害に遭ったときに、その人間がすぐに行動を起こしてくれることをむしろ期待したい。それが消費者教育であり、法教育かなと思うのですと。

 十八歳に引き下げて消費者トラブルが非常にふえるとか、こういったことについて改めてどのように思われているのか、お伺いしたいと思います。

岡田参考人 かなり前の話で、記憶が定かでないんですけれども、その時点では、確かに、成人年齢が十八になることによって急激に相談件数がふえるという印象は私の周りではありませんでした。なおかつ、反対意見の中で、マルチ取引がメーンみたいなプレゼンが多かったものですから、その辺で、いや、マルチ商法だけではないんじゃないかという気持ちもありましてそういう発言になったんですけれども。

 先ほど増田参考人の統計にもありましたように、確かにふえるのはふえるんです。ですが、ほかの年代に比べて飛躍的にふえるというようなそういう印象はどうも持っていない。なおかつ、成人になったから即ほっぽり出すような、そういう対応はセンターではやらないということで、先ほども申し上げましたように、やはり年代というよりも、売り方に問題があるということ、それから、消費者の自立がまだ十分でない、その辺をテーマでセンターでは講習をしておりますので、そういう発言になったというふうに思っております。

國重委員 前回の参考人質疑の際に、山下先生という方がお越しになられて、その中でこのようなことを言われておりました。

 取引経験の不足から若者が消費者被害に遭うおそれがあるというのであれば、人の経験不足につけ込むような取引の方を規制するべきなのであって、若者が取引をすることを制限することは、政策論としては本筋ではないということです。経験不足につけ込む形での消費者被害というのは、今の二十代の若者にも生じているのですから、十八歳、十九歳の若者だから懸念されるものではありませんと。

 そうしますと、この問題は、高校生の間に消費者教育を徹底するとともに、消費者保護の法律を充実させることで、取引経験が不足した若者であっても回復不可能な財産被害が起きないような環境を整えるということによって対処することが、政策論として本筋であるはずですと。

 この意見も聞いて、なるほどなということで思いました。

 その上で、やはり消費者教育というのはしっかりやらないといけないと私も思っております。先ほどの御意見、さまざまお伺いしますと、今の消費者教育では非常に心もとないというような御意見でございました。

 その上で、先ほど岡田参考人は、若年者への消費者教育の推進に関する四省庁関係局長連絡会議で、二〇一八年二月二十日に、若年者への消費者教育の推進に関するアクションプログラムを決定した、こういった中には私たちが求めていたものが含まれているというような意見陳述がございました。

 私もいろいろ考えますと、私も慎重派であります、そういったものを踏まえても、やはり二十代以上の方も被害が多いということになると、やはりこれは消費者教育がまだまだ十分にされていないということもあるかと思います。こういったことで、今回の法改正を機に消費者教育を一層強化していくことが重要だと思っております。

 私たちが望んでいるものも先ほどのアクションプログラムに含まれているということでありました。その上で、何がこれからの一番の消費者教育の課題になるか、何が重要なポイントになるとお考えか、お伺いします。

岡田参考人 先ほどは少し遠慮がちにお話ししたんですけれども、今回のアクションプログラムを拝見しまして、文部科学省が飛躍的な前進と、私たちからすれば、今までこういう行動をどうしてとってくれなかったのかなと思うような動きをしているというふうに考えまして、やはり相談現場ないしは相談員協会もそうですけれども、出前講座をやる場合に一番ネックになっていたのが教育現場の時間であり、また、そこに従事している教員であったり校長であったり、そういう方の理解ですよね。なおかつ、その上の教育委員会と消費者センターが全くパイプがないという部分で、今回はそれが実現するのではないか、パイプが太くなるんじゃないかというふうに思っておりまして、今まで私たちが願っていたことが実現するかなというふうに思いました。

國重委員 ぜひ、私もそういったところを期待しながら、しっかりと文科省、消費者庁にも、また今後も引き続きそれはしっかりとチェックをしてまいりたいというふうに思います。

 消費者教育は重要であると。ただ、まだ十分に浸透していない現状もある、私も現場の若者とかに聞くと、そういった認識を私も持っております。

 本多参考人に再びお伺いいたします。

 消費者教育は重要だけれども、まだ浸透していないという意見、御指摘もございます。今後、いかにこの消費者教育を促進、強化していくかが大切な課題になってまいります。

 他方で、現場の教員に私もお伺いしました。すると、やはり現場の教員の方というのは負担が大きい。今、働き方改革国会と言われておりますけれども、特に、教員の働き方改革というのも叫ばれております。

 そういった中で、これは私は当委員会でも取り上げましたけれども、例えば主権者教育とかオリパラ教育とか、○○教育というのが多くて、もうその○○教育というのに辟易としている教員もいる。その中で、どのようにして教員の負担も考えた上で現実的で実効的な消費者教育を進めていくべきと考えるのか、学校現場に長くいらっしゃった参考人の御意見をお伺いしたいと思います。

    〔委員長退席、門委員長代理着席〕

本多参考人 述べさせていただきます。

 ただ、高等学校というのはさまざまな課題を抱えておりまして、学校一つ一つが全く違いますので、目標も違うし、やり方も違うし、全て一律で同じような形では多分できないと思います。

 ですけれども、やはりその学校が持っている課題をどう克服するかということを使いながら、先ほどおっしゃられた忙しいというのは確かでございますけれども、さまざまな形でプランを立てながらやっていくということは非常に重要でありますし、それは学校の姿勢が問われているというふうに思います。学校の姿勢というときには、学校というのは学校独自にあるわけではございませんで、社会から要請されているということは非常に大きいと思っておりますので、このことについては最重要課題というふうに私は思っております。

國重委員 その最重要課題であることを特に校長等の管理職の方にしっかりと浸透させるような取組を政府としてもしていかないといけないと思っております。

 続きまして、増田参考人、田中参考人にお伺いしたいと思います。

 今、高校までの消費者教育ということでお伺いしました。今回、十八歳に成年年齢を引き下げるという民法改正案を今審議しております。十八歳という成年年齢になれば完成された大人に急になるというわけではなくて、この成年年齢というのは大人の入り口なんだ、徐々に成熟していくという観点で若年者への支援、保護をしていく必要があるというふうに考えます。これは今までもそうだったんじゃないかなというふうに思います。二十になったからといって急に大人になったというものでもなかったかと思います。そういう意識をより強く持っていかないといけないと思っております。

 こういった点からすれば、十八歳になる前の消費者教育も重要であるけれども、十八歳以降の消費者教育もまた重要である。大学における消費者教育については、大学の自治の原則からガイダンスなどで対応せざるを得ないという現状もあるかと思います。今後、工夫次第では大学というツールを使うということができるのか、使えないということであれば、大学生に向けた消費者教育を充実させるためにどのような場を使うのが効果的か、お伺いしたいと思います。

 特に、田中参考人の資料を読ませていただきますと、ちょっとすぐに見つかりませんけれども、大学の先生とかに話しても、消費者教育といっても余りぴんときていない方が多いというような記述もございました。そういったものも踏まえて、増田参考人、田中参考人にお伺いいたします。

    〔門委員長代理退席、委員長着席〕

増田参考人 現状、私どもとしては、大学祭などに出向きまして、そこで消費者相談を受けたり啓発をしたりしています。また、大学に一日消費生活センターという形で窓口を設けるような活動もしています。ただ、それを受け入れてくださっている大学というのが非常に少なくて、やはり地元の消費生活センターと密接に関連して、例えば、大学の相談窓口に何か相談があったときに直接センターに職員が連絡できるような、そういう仕組みをつくるとか、やはり地元、地域の消費生活センターと強い連携をつくっていただきたいなというふうに思っております。

田中参考人 大学の中で受ける消費者教育ですが、ガイダンス以外にも、例えば消費者教育というと大分幅が広いものですから、消費者教育にできそうな授業というのは中には当然あると思います。

 今、そういったところで、大学の先生なんかと一緒に、授業の一こまをおかりしてそういう消費者教育を実施するということを行ったりもしているのですが、実際のところ、やはり、それは大学の先生とたまたまどこかで知り合ってそういう機会がないと、なかなかそういったところには、お金の問題とかいろいろあってできないのが現状なので、そういったパイプを何か太くするというようなものがあれば大学の中でもいろいろな消費者教育ができて、さらにそれとサークル活動みたいな課外活動を絡めればアクティブラーニングのようなことができて、大学の中でももっと、消費者教育は生涯学習だと思うので、いろいろなことができるのではないかなというふうに思います。

國重委員 ありがとうございました。

 伊藤参考人にも本当は、法曹が消費者教育によりコミットしていくためにはどのようなことが考えられるかとかいうことをお伺いしたかったんですけれども、ちょっと時間が参りましたので、これで終わりたいと思います。

 きょうは五名の参考人の皆様に貴重な御意見を賜りまして、本当にありがとうございました。しっかりとこれを踏まえてまた質疑をしてまいりたいと思います。

 ありがとうございました。

平口委員長 次に、山尾志桜里君。

山尾委員 立憲民主党の山尾志桜里です。

 本日は本当にありがとうございます。私の方からも、限られた時間、できるだけ有効に使わせていただきたいと思います。

 まず、伊藤参考人にお伺いをいたします。

 消費者契約法、今特別委員会の方で、できるだけ共通項を探し出して、与党と野党でいいものにしようと私たちも頑張ってはいるのですけれども、かなり、私たちからするとちょっと歯がゆい出来事が起きております。

 このことをちょっとお伺いしたいんですが、契約法の閣法の提案であります四条三項の三号と四号、つまり、社会生活上の経験が乏しいことから不安を抱いているとか、社会生活上の経験が乏しいことから恋愛感情を抱いたとか、そういう場合には取り消せるという新設のものですけれども、私の質問は、この社会生活上の経験が乏しいことからという要件は本当に若者保護になるんですかという疑問なんです。

 これは、私は、取消しの要件を絞り込めば絞り込むほど立証の負担が拡大して消費者に不利益になる、そしてまた、この要件というのは、若者である、経験が乏しいということだけじゃなくて、経験が乏しいから不安になったとか、経験が乏しいから恋愛感情を抱いたとか、そういう因果関係の部分までこの被害者となった若者に立証を強いるような、そういう法文になっているのではないかというふうにも思いまして、この点を伺いたいんです。

 何かこの要件を入れることが、まるで消費者庁は若者を大事にしていますということを明確にしている記号として使われている面が今委員会の中でありまして、私は、全くそうじゃない、むしろ若者保護のためにもこういう余計な要件はできるだけ入れない方がいい、削除する方がいいと思っているのですけれども、伊藤先生、この点、いかがでしょうか。

伊藤参考人 社会生活上の経験が乏しいことからという要件があるということなんですけれども、それが若者の被害を画するということになっているかということなんですが、この新しく新設される取消権というのは、合理的な判断ができない状態を利用するということを、それは不当な行為だということで取り消せるようにしようというふうに理解しております。

 そうなりますと、合理的な判断ができない状態にあるということは、必ずしも経験があるとかないとかいうことだけではなくて、それ以外にも、そのときにたまたまいろいろな不幸な出来事があって心身として弱っている、こういうような場合もあると思うんですね。例えばデート商法でいえば失恋したばかりだったとか、そういうこともあるわけで、それが判断力の低下あるいは合理的に判断できない状況にあるということは、経験の不足だけではなく、さまざまな原因によってそういう状態にあるということが考えられると思います。

 その意味でいうと、社会生活上の経験ということで若者の被害を全て救えるようになるということでは必ずしもないであろうというふうに考えております。

山尾委員 伊藤参考人にもう一点お伺いをしたいんですけれども、こうやって対象年齢とか対象商法を取り消せる範囲としてどんどんどんどん厳しく絞り込むほど、この対象には当たらない高齢者とかこの対象には当たらない商法というもの、商法というのはつまり業態ですね、そういうものがどんどんどんどん民法上の取消しの対象からも事実上認められにくくなっていくのではないかという懸念があります。

 さらには、取り消される類型というのがどんどんどんどん絞り込まれて、それを、悪徳業者というのは今かなりこの議事録を読み込んでいると思うんですね。これがどんどん広報されることになると、むしろ、さっき先生が御指摘された、破綻を告げるということが要件になっているので、破綻を告げないマニュアルをつくるとか、できるだけメールを残さないマニュアルにするとか、そういった形でいわゆる悪徳業者のビジネスのやり方のリニューアルをむしろ利するような危険さえ、私はここ数週間の消費者特の議論も聞いていて思うのですけれども、こういった点についてはいかがお考えでしょうか。

伊藤参考人 その点なんですけれども、確かに、社会に対して発するメッセージとして、なぜ、例えば、両思いである場合は取り消せる、でも片思いの場合は取り消せないのかというところは、わからないわけですね。そうすると、やはり社会に与えるメッセージとしては、どうしてもそれはこの範囲でしか取り消せないということが、裏返しで、今先生おっしゃったように、そういうメッセージになりかねないという危険はあるだろうと思っています。

 もちろん、一般的に民法の不法行為によって解決するということもありますので、悪質な商法だということは同じだとは思いますけれども、そういったものと消費者契約法に規定される中で限定されていくということは、その裏返しで解釈される危険性はあるというふうには思います。

山尾委員 岡田委員にもお伺いしたいと思います。

 今と関連するんですけれども、先ほど岡田委員は、できるだけ年齢の対象を広げて、使い勝手のいい契約法にしてほしいということをおっしゃっていて、こういうことができるという前提で引下げには賛成だというふうにおっしゃっておられました。

 実は、今申し上げたこの新設の、契約法の三号、四号。最初、担当の福井大臣は、霊感商法なんかについては、通常の社会生活の経験を積んできた消費者であっても、一般的にはこの要件に該当すると本会議場で答えていたんですね。それが実はきのうになって突然、霊感商法なんかについては、若年者であれば一般的には該当する、若年者でない場合でも民法により救済されることがあると。要するに、契約法では若年者ではない人は救済されないというふうに今答弁を修正したいということをきのう言い出して、まだこれは別に修正が、私たちはそんなのおかしいと言っていますが、少なくとも、もしこういった形で、突然対象が若年者に大臣答弁でぎゅっと絞り込まれるようなことになると、先ほど委員が懸念していた、できるだけ年齢は広く、使い勝手のいい契約法という趣旨とはちょっと外れてくるのではないかなと思うんですけれども、先ほど私が伊藤参考人に聞いた質問とあわせて、少しコメントがあればお願いします。

岡田参考人 私、民法改正の法制審もかかわったんですが、そのときに感じたことは、消費者契約法がよくぞこういう形で成立したなと。民法をすごく、特別法でありながら、よくここまで通ったなという感じをすごく強くしました。

 ところが、債権部分が変わってから、どうも経済界の反発が、消費者契約法に限らず、特定商法に関しても、今までのいわゆる企業ポリシーというんでしょうか、そういうことがどうも感じられないような気がするんですね。

 本来、やはり消費者契約法というのは、事業者と消費者の情報量であったり交渉力であったり、そういうものに差があるからこそできているわけなので、にもかかわらず民法と同じような厳しい決め方をするんだとすれば、やはり私たちからすれば、労働契約以外全ての消費者契約を適用される消費者契約法ですから、もっと原点に戻ってほしい、そういうふうに思います。

山尾委員 ありがとうございました。

 増田委員にもお伺いをしたいと思います。

 先ほどの資料を改めて見まして、増田委員の参考資料なんですけれども、電話の聞き取りのトラブル事例ですか、四ページから五ページにかけて、若年者のトラブル事例、これは全部二十以上の方によるトラブルなんですけれども、一から六を見ると、今回新設されると言われている消費者契約法の取り消せるという類型、これにどれも当たらないんですよね。不安をあおるとか恋愛感情を利用するというトラブル事例ではどれもないんですね。

 そうすると、こういったトラブル事例が、十八歳、十九歳に対象を広げていったときに、新しくできると言われている消費者契約法では全然取り消せるという救済の対象にならないということだと思うんです。

 少し実態でお伺いしたいんですけれども、やはり私、業者は、カモとなる相手が取消権を持っている年齢なのかどうかというのをかなり敏感に確認をし、すごく巧妙にやりとりの中で知ろうとしていると思うんですね。

 そういう実態について、例えば、被害者の方からのヒアリングだとか、あるいは業者の方とも、説得のやりとりの中で、少し具体的に、取り消せないということをわかった上でこうしているというようなことがわかるようなエピソードなどあれば、具体例を教えていただきたいと思います。

増田参考人 未成年者かどうかということをまず確認し、十分わかっていながらアプローチをしていますので、そこのところは、まず成人になってからのアプローチがほとんどです。

 それと、未成年だとわかった場合は、関係を築きながら、メールとかやりとりをしながら、お誕生日まで待って、そしてその後に契約をさせるというような、育てるというか、そういうようなケースというのもよくあります。

 ですから、未成年者の契約取消権というのは非常に防波堤になっているということは、まさしくそういうことですし、それから、消費者契約法の取消し事由に関しましても、先生おっしゃられたように、常に争いがありますので、要件がたくさん出てくれば、それを一つ一つ、事業者を説得し、理解、納得していただかないと話合いの土俵にのれないというようなことがありますので、大変苦労しているというのが実態でございます。

山尾委員 それでは、本多委員にお伺いをしたいんですけれども、先ほど、現場の感覚からしてもということで、法規範の指導というのがなかなか十分にできていない、こういうお話がございました。

 それで、これもまた増田委員の資料なんですけれども、九ページ、文科省が平成三十年に発表した消費者教育に関する取組状況の調査結果というのを引いていただいておりまして、これはもちろん現場で調査をしたと思うんですけれども、成年年齢の引下げを踏まえて、新たに、あるいは広げた消費者教育の取組の有無というアンケートについて、そういう取組はないという現場の声が八三・五%であった、こういう状況であるわけです。

 こういう中で、改めて、やはり、自覚を促すということを私は一概に否定はしませんけれども、しかし、こういう取組がまだまだ不十分な中で、自覚を促すことを先行させて、十八歳、十九歳が、こういった本当にかなり巧妙な悪徳商法にひっかかって、きょうの話だと、場合によっては、それこそ友達を失い、命を失うような、そういうリスクも起きかねないというような、ここのリスクの部分について、本多参考人、いかにお考えでしょうか。

本多参考人 消費者教育に関して、文科省の発表でこれだけ低いということについてはちょっと驚いていますけれども、ただ、学校では必要があるところはやっているというところで、非常に取り組んでいるということは私は言えると思うんですね。

 それと、先ほどお話しになった、法規範をしっかり教えなきゃいけないというところの私の意味は、今は、子供たちに権利という形を、こういうことが守られているとか、こういうことが権利としてあるということも教えていますけれども、それに引きかえて義務もあるんだよということは社会の一員としてしっかり教えるべきだという趣旨でお話を申し上げたというところでありますので、よろしくお願いします。

山尾委員 そうしますと、本多参考人は、いわゆる少年法の引下げも今後検討に入れていくべきだ、どちらかというと賛成のお立場だということなんでしょうか。

本多参考人 少年法のどのことをおっしゃられているのか、ちょっと今はっきりわからないんですけれども、少年法全体的にどうこうということについてはちょっと私はここではお話ができないんですけれども、どのことと具体的にお話しになれば、そのことについてはお答えできるかと思うんですけれども。申しわけございません。

山尾委員 わかりました。結構です。

 本当は田中さんにもお伺いしたかったんですけれども、時間切れになってしまいました。でも、こうやって当事者の立場を持ってきてくださったことに感謝をし、皆さんに感謝をし、質問を終わりたいと思います。

 ありがとうございました。

平口委員長 次に、柚木道義君。

柚木委員 国民民主党の柚木と申します。

 参考人の皆様、きょうは、貴重な御意見を賜りましてありがとうございます。

 実は、厚生労働委員会でも参考人質疑をしていて、ちょっと行ったり来たりしていたものですから、聞き漏れあるいは質疑の重複があったら御容赦を賜れればと思います。

 まず、田中参考人と伊藤参考人にそれぞれ伺いたいと思います。

 通信サービスと未成年との関係について、この質問の中にもあったとは思いますが、国民生活センターの年報によりますと、二十歳未満の相談のうち、運輸・通信サービスが六六・一%と突出しております。そして、これに対して、全年代で見るとこれは三一・七%にすぎないわけでして、倍ぐらいなんですね。

 消費生活相談の内容がこのように運輸・通信サービスに著しく偏るというのは、実は二十歳未満だけに見られる特徴でございまして、これは未成年者がインターネットを通じて大人の知らない間に取引できてしまうことが理由ではないかというふうに考えられます。

 具体的には、例えば、ネット通販あるいはオンラインゲームを利用するために、大人の知らない間に子供がクレジットカード等を利用して高額な課金決済をしてしまうといった消費者相談が多いということでございます。

 十八歳成年になると、未成年者取引権が使えなくなる結果、このような消費者被害への対処が行いにくくなると考えるわけでございますが、それぞれ、田中参考人、伊藤参考人から御答弁をいただければと思います。

平口委員長 田中参考人と誰ですか。(柚木委員「伊藤参考人」と呼ぶ)はい。

田中参考人 未成年とかが通信サービスが大きくなるというのは、例えば、今、大学に入るときも、入学式にもう既に友達と行くというのが結構当たり前になっています。この友達というのは、決して高校からの友達とかではなく、大学に入る前にSNSなんかでつながった、そういった友達と一緒に行く、こういったことです。そういうSNSなんかでいろいろな人とつながる中で、時には、新入生のふりをしてそういった場所に入ってくる、そういった悪質な事業者というのも中にはいます。

 そういった面で、十八歳とかがそういった通信サービスとかそういったところに巻き込まれやすいのではないかというのは、そういったところにあるのではないかなというふうに思います。

 以上です。

伊藤参考人 まず、情報通信サービスというと、通信販売だとか、ゲームだとか携帯、スマホなどを通じた取引に関するトラブルとかじゃないかなというふうに思います。

 もちろん、未成年者取消権がなくなれば、ただそれを理由にして取り消すことができなくなるという点で、あとは通信販売の規定だとかそういったものを活用して取消しをしていくということはできる可能性はありますけれども、当然その救える幅が狭まるということは間違いないだろうとは思います。

柚木委員 これは、そのほかのさまざまな事案についても、私、この委員会を通じて、いわゆるインターネットを通じた、SNSも含めて、さまざまな事案に、トラブルに巻き込まれる若年成人がふえてしまう可能性については指摘をし、また、これは当該の省庁においてもそういう認識もしているという答弁もいただいておりますものですから、こういった点の議論をよく踏まえた法改正の議論が深まることを私としても求めていきたいと思っています。

 続きまして、美容医療トラブルについて、これは同じく伊藤参考人の御見解を伺いたいんですが、こちらについても非常に、特に女性ですね、トラブルの相談がふえておりますし、とりわけ十八歳、十九歳のインターネットにかかわる調査においても、これはまさに、男性とちょっと違う形で、こういう傾向が示されております。

 これは、十八歳、十九歳の若年者本人の判断で今後は医療行為についても医療が受けられることになるということでございまして、若い年代の方々の中で、その年代特有の部分もあると思うんですが、そういった、とりわけ容姿に対する不安とか願望とかそういったことに乗じて、美容外科の手術あるいは脱毛手術による被害がふえてしまう懸念がございます。

 この美容医療の広告の中にはこういったものもございます。医療保険がきくのに、手術料十万円、こういった高額な保険外医療をうたうものがあったりするわけでございまして、こういった点の適正化を図ることも非常に重要だと考えますが、伊藤参考人の御見解を伺えればと思います。

平口委員長 参考人は誰ですか。(柚木委員「伊藤参考人」と呼ぶ)伊藤参考人。

伊藤参考人 広告の適正化ももちろん重要な課題だと思います。

 特に、ちょっと私、女性の方のというよりも、男性の方の若者のトラブルとして、美容医療ではないですが、包茎手術の被害の弁護団に入っていたりということがあります。その中では、まず七万円でできますよというふうにうたって、しかも無料のカウンセリングを受けられるということで、実際に行ってみると、そのぐらいの金額では、本当に糸が残るような、傷跡が見えるような、そんな手術しかできない、もっときれいにやろうと思うと三十万、五十万かかるよというようなことで、やはりその表示の仕方の問題によって被害に遭っているということは多々見られる、経験しているところでございます。なので、規制の強化というのは重要だと認識しております。

柚木委員 そういった観点からいうと、実は、当委員会と並行して、消費者契約法の改正案も、まさにきのうも質疑されて、こういったところにかかわる部分が実は非常にポイントになっておりまして、それこそ、不安の定義づけ一つとっても、法律の運用解釈によっていろいろな幅を持ち得るということで、今おっしゃっていただいたように、男女問わず、こういった不安や願望に乗じたこのような部分、懸念に対しての適正化を図ることが非常に重要であるということは、今お伺いできたと思います。

 次に、田中参考人と増田参考人に、委員長、よく聞いておいていただけますか、何回も繰り返し聞かれるので。田中参考人と増田参考人に伺いたいと思います。

 マルチまがいのネットワークビジネス対策について、それぞれ御所見を求められる部分があったと思うんですが、私も、若い人を対象にしたマルチまがいの消費者被害が、これは現在でも、若年層、特に二十を超えた部分でふえている中で、十八歳成年に引下げとなると、この被害がこの年代にまで、もっと言うと、更に拡大をしていくということが懸念をされると考えておりまして、まさに、友人関係、クラブ活動等の人間関係、もちろん学校外の活動も含めて、そういった人間関係を利用したマルチまがいの消費者被害について非常に対策が求められると思っていまして、それぞれ御所見をお持ちである田中参考人と増田参考人の御答弁をお願いできればと思います。

田中参考人 マルチまがいの勧誘等につきましてですが、このマルチ商法的なのが、大体、大学の中で四年に一回出てくるというのが結構言われています。それはやはり一通り人が入れかわったときというので、そういう面では十八歳、十九歳というとサークルの中でも下級生になりますので、先輩からそういった圧力を受けて、そういったところに巻き込まれる可能性というのは十分に考えられるのではないのかなというふうに思います。

 そういったところにどういうふうに対処したらいいのかというのは、ちょっとすぐには思いつかないんですけれども、何かしらの対処はしないと今以上に広がってしまう可能性は考えられるのではないかなというふうに思います。

 以上です。

増田参考人 大学の中で蔓延するということがよくありまして、それも非常にレベルの高い大学で、各地でそういうことがありました。それが先ほど御紹介した投資用DVDであったりセミナーだったりとかするわけです。

 また、連鎖販売取引に関する、確かに連鎖販売取引であるということで要件が厳しいですので、それに該当しない場合は特定商取引法の適用がないということから、非常に解決することは難しい。それから、海外のカジノのオンラインであるとか、そういう形で実態の見えないものにお金を払っているというケースが大変多くありますので、消費生活センターとしても大変困っているという状況にあります。

柚木委員 それぞれ対策が非常に重要で、それがなくして成人年齢引下げということになると非常に、今カジノのお話もあったんですけれども、それこそ今後いわゆるカジノ法案についても国会の議論があるわけでありまして、その点についても今お述べいただいたということでございます。

 そのために必要なものとして、まさに若年層における学校教育等の必要性が強く指摘をされておりまして、これについてはちょっと岡田参考人と増田参考人にお伺いできればと思うんです。

 これまでの学校教育では、事実上は教職の方やあるいは大人の方に従順に教育を受けられているということを一つの前提に、そしてまた、周りの子供たちとも仲よくできる子供づくりを目指して道徳教育あるいは生徒指導、クラブ活動などを行ってきた面があると思いますが、十八歳成年の前提としては、あるいは選挙権、そして国民改正投票、国民投票でも言えることだと思うんですが、これは自分の意見を、いわゆるノーとはっきり言える、空気を読み過ぎるのではなくて、そのことがなければ、さまざまなそういった先ほどの例のような犯罪に巻き込まれていくことも、つまり、同調圧力が結構日本は強くて、またそれに対してなかなか自己主張できない側面があると思うんですね。ですから、いわゆるノーと言える若者というか、自分の意見をしっかりと主張できる若者を育てることも非常に重要な、ある意味教育の方針転換にかかわるような側面もあると思います。

 法制審の民法の成年年齢部会の第十回の会議で岡田参考人は消費者教育について御意見を述べられておられますし、また、学校での消費者教育のあり方については増田参考人も述べておられると思います。したがいまして、それぞれの御所見を岡田参考人、増田参考人から伺えればと思います。

岡田参考人 法制審のときも多分申し上げたと思うんですけれども、現在もそうなんですが、消費者教育と法教育が縦割りなんですよね。そのいい例が、弁護士会においてもそれぞれのグループで活躍していらっしゃるという現状があります。

 なおかつ、大学の法学部の学生が消費者被害にひっかかるという部分では、やはり法律の勉強と実際に日常の生活における契約に関しての知識とは違うんだなというふうに考えます。

 今回、法務省で開催されました会議において、法教育と消費者教育を連携させるということがちょっと書いてありますけれども、これは絶対必要だろうと思う。中身に関しては、ほとんど重なっているんですよね。それが別々にやられているという部分で大変もったいないというふうに思いますので、やはり法教育と消費者教育はドッキングさせることによって、更に多くの場面、出前講座であれ、講座の回数をふやすとか、そういうことが必要だろうというふうに思います。

増田参考人 私も同じ意見でございます。ノーと言える若者を育てていただくということと、それから悪質な事業者にならない若者になっていただく、両方の問題があるかと思います。

 そういう意味で、法教育と消費者教育をぜひセットでやっていただくということと、それから、それをするための時間をつくっていただく、あるいは講師を呼び寄せるというようなコーディネートをする、そういう人をつくって、それを活用していただくというようなことをお願いしたいと思います。

柚木委員 もう最後にいたします。

 伊藤参考人に伺います。

 先ほど消費者契約法の改正との絡みで申し上げたんですが、今回の消費者契約法は、未成年者取消権に相当する十八歳、十九歳の取消権についてということで今質疑を始めておりました。今回の消費者契約法改正で認められたつけ込み型不当勧誘についての消費者契約法による取消権の創設だけではなくて、やはり、特定商取法上の民事ルールの特則の創設など、消費者保護民事ルール規定の創設、あるいは特定商取法についての若年者勧誘に対する事業者への規制強化、そして若年者のクレジット契約及び借入についての資力要件、そしてその確認方法の厳格化、そして消費者教育の充実強化に向けての抜本改革など、あわせて行うことがなくしては非常に懸念をされる部分が多いと考えておるものですから、最後、御答弁をお願いいたします。

伊藤参考人 おっしゃるとおりだと思います。

 先ほども御紹介しましたが、若者の消費者被害は、クレジットや借金をして購入するということで被害が拡大また深刻化するという面がありますので、やはりそれを防ぐためには、割賦販売法や貸金業法の規制、あるいは総量規制の導入とか、そういったことがやはりセットでなされないと、実際の被害の防止、救済は図れないんじゃないかなというふうに考えております。

柚木委員 終わります。

 全ての参考人の方に伺えなくて恐縮でございましたが、それぞれ非常に重要な御提言を賜りましたことを感謝申し上げて、質疑を終わります。

 ありがとうございました。

平口委員長 次に、黒岩宇洋君。

黒岩委員 無所属の会の黒岩宇洋でございます。

 きょうは、五人の先生方、大変貴重な御意見、ありがとうございます。

 早速、まず伊藤先生に、消費者契約法について幾つか確認をさせていただきたいと思います。

 これは、先ほど山尾議員からもあったように、きのう、本会議答弁の修正を、本当は、本会議答弁の修正というのは、本会議ですから、議運、議院運営委員会でしかできないんですけれども、私、消費者特にも入っているので、消費者特の委員会で修正させてくれという異例なことがあったんですよ。その内容をちょっとここでします。

 消費者庁の皆さん、院内テレビを見ていますか。重要な参考意見を聞きますので、しっかり聞いておいてくださいね。

 それで、我々は、ずっと消費者契約法の中で懸念していたのは、社会生活上の経験が乏しいからというこの要件、四の三の三号、四号に係りますけれども、これは、若年者だけ特化なんですか、中高年は振り落とされるんじゃないですかという、この懸念に対して、ずっと、ありません、ありませんと消費者庁は言ってきました。

 そして、五月十一日の本会議質問で、同じ、この要件はどうなんですか、中高年は振り落とされないんですかという質問に対する大臣の答弁がこれです。社会生活上の経験を積んできた消費者であっても、これはちょっとかいつまめば、社会生活上の経験を積んできた消費者、中高年とかいう意味ですよ、若年者以外という意味です、であっても本要件に該当するものと考えます、こういう答弁だったんですね。

 これを、きのう持ってきた大臣答弁修正案というものはこうなったんです。今言った、通常の社会生活上の経験を積んできた消費者というものは全部落としてください、まず落として、新文言が加わって、新文言が、若年者であれば本要件に該当すると、がらっと変わったんですよ。今まで、中高年は振り落とさない、基礎のように、どっちも年齢の概念はないですよと言っていたのが、がさっと本会議答弁修正で、若年者であればとつけ加えて、今言った、社会経験を積んだ者というのは落とされた。明らかに、これは年齢で、若年者だけはこの要件がかかります、中高年はかかりませんよという答弁になっている。(発言する者あり)そうそう、与党も認めていない。大事なこと。

 最後に、ここもちょっと先生聞いてほしいんですけれども、この後また新しい文言が入って、また、若年者でない場合でも、これは消費者契約法ではなく、民法により救済されると。民法というのは、具体的には、九十六条の取消し、強迫、詐欺、九十条の公序良俗、この無効、今度は七百九条の不法行為の損害賠償、これで救済されると。この後、差があるのかどうかも確認しますけれども、結果、被害者の救済に差はなく、本要件が被害者の分断を招くことなどはないという結論、これは変わらないということになったんですよ。

 私、指摘をするんですけれども、これは今まで契約法になかった概念で、二重の意味で分断が起こったと思っています。

 今までの現行の取消し条項というのは、総論的に言ったら、不当な勧誘については取り消せますよと。具体的には、六つの項立てですよ。四条一項の一で不実告知、四条一項の二で断定的判断の提供、四条の二で不利益事実の不告知、四つ目が、四条の三項の一号で不退去、五番目、四条の三項の二号で退去妨害、六番目、四条の四項で過量契約。

 これは、今言ったように、この六つは行為類型なんですね、こういう行為はだめですよと。ただ、今まで、概念として、当然、この行為類型においては、対象者は全く限定なし、若年者、高齢者とか関係なし、全ての消費者ということですよ。だって、そうですよね、もともと、一般法の民法、特例法の契約法ということは、まずは民法で取消しとかできるのは、さっきの民法のところで言いました。でも、それには当たらない、強迫とか詐欺には当たらないけれども、特例法で、民法とは違う、こういう行為類型においては、これは特例的に取消権が認められるということを行為類型で示すわけですよ。

 だから、今の現行契約法では、対象者では一切分断がないんです。

 ですが、これは一つ目の分断ですけれども、今回は、今言ったように、三号、四号においては、就職セミナー、デート商法においては、中高年は除外、若年者のみという、今言ったように、契約対象が年代で分断されます。

 加えて言うと、今度は与党修正で、改正条文じゃなくて修正新五号と六号で、だんだんややこしくなってきた、まあ、ここは聞き流してもいいです。

 五号については、現在の生活の維持に不安を抱いている者について、これは取り消せる。この五号は、若年者、高齢者の区別ない。これは対象者の区別がないんですよ。三号、四号は、今言ったように、若年者のみで高齢者は除外。今言ったように、修正五号は分断なし。修正六号が、霊感商法など、特別な能力による知見として、重大な不利益を与えて不安をあおるというものが出てきて、これは、説明ですと、ごめんなさい、失礼、さっき間違えました、新五号は、加齢又は心身の故障による、それで現在の生活の維持だから、五号は高齢者のみなんです、若年者が含まれないんです。現在の生活の維持に不安というのは、これは若年者が含まれずに高齢者のみという分断があるんですよ、五号は。修正六号は、今言った、特別な能力、霊感商法とか、対象者の概念がありませんから、これは今までどおり、対象者によっては分断なしということです。

 だから、一つ目の分断は、今言ったように、三号、四号なら若年者のみ、修正五号は高齢者のみという分断が起きている。一つ目です。

 二つ目の分断が、今まで、さっき申し上げた一般法と特例法の関係において、まず、特例法は特例法で完結するんですよ。行為類型においては、これは全て特例、要するに、契約法の中で取り消せるなら取り消せる、無効にするなら無効にできるということで、完結するんですね。

 それが、今回、入れ込み型で、今言ったように、例えば三号だったら、就職セミナー、これは、若年者のみこの三号、契約法で救済できます、取り消せますよ、ただし、先ほどの説明であったように、中高年については民法で対応だと。今までなかった概念です。すなわち、民法の、直接的には、取消しなら九十六条、無効なら公序良俗の九十条、損害賠償なら七百九条の不法行為ということで、三号には、今言ったように、対象者によって、行為類型は一緒ですよ、同じ行為類型、就職セミナーとか、これは願望の実現に対する不安ですから、願望の実現に対するという行為類型は同じ、だけれども、若年者は契約法で救済、中高年者はここに一般法が入ってきて、入れ込む形です。

 これは全部、今言った四号にも通じます。四号も、デート商法、これは、若年者については契約法、特例法で対応、それ以外、中高年は、今言った民法で救済。

 今言った五号については、加齢に基づいて、現状維持については、今度は、高齢者については契約法で対応、若年者については民法でという入れ込み。

 だから、特例法の中に一般法を入れ込んで、今言ったように、ある人は特例法というもので救済されるけれども、ある人はこれで救済できません、ある年齢層は民法でという、これもまさに分断ですよ。特例の方が当然消費者にとっては利益があるわけですから。民法でやるんだったら、特例の意味がないわけですから。

 今言った、年齢層による、対象者によっての分断と、特例法と民法の救済によるという、まさにこれも上下の分断がある、このことについて率直にどう思われますか。

伊藤参考人 消費者契約法が、民法の特別法、消費者と事業者との間に適用される特別法であり、消費者契約における一般法として制定されているのは、事業者と消費者との情報や交渉力の格差に着目して規定された、そういう法律であるということを考えますと、それが、同じように不当な契約類型であるにもかかわらず、年齢によって民法あるいは消費者契約法というふうに分かれてしまうというのは、確かにわかりにくいし、法律の趣旨に反するのではないかというふうに思います。

黒岩委員 これは伊藤先生と一時間ぐらい逐条審査をやりたいところですけれども、済みません、本多先生に。

 成人年齢の、高校生の現場をよく知る先生の意見、大変参考になりました。合わせて二点聞きますね。

 先生が、十八歳、高校三年生の現場で、成人になった人とならない人で混乱が起きるかもしれないけれども、過去の例でいうと、運転免許、自動車なら十八歳、自動二輪なら十六歳、こういったことは、そのとき混乱が予測されたけれども、現場では整理されたとおっしゃっていますね。

 これなんですけれども、私の経験ですと、私が高校に入りました。私の高校は、まずは、法律ではオーケーですけれども、校則で、高校を卒業するまでは自動車免許は取っちゃだめ。自動二輪、十六歳で法律上取れるんですけれども、これは、新潟県で百十何校あるうちで、私の高校だけ、自動二輪の免許は取ってよし、ただし乗っちゃだめ、こういうおもしろい校則で、ちなみに、私が高校一年生のときに、三年生の先輩が二人乗りで崖から三十メートル転落した事故を起こして、これ以来、うちの高校も自動二輪も取っちゃだめになって、新潟県全部、高校が校則で取らないという。

 私の言いたいのは、これは、今言ったように、高校ごとによってとか、県じゃありません、高校ごとに。これは後で大学に来てほかの県立高校に聞いたら、みんなだめでした、自動二輪も自動車免許も。だから、高校によって、うちは十八歳の年度末まではだめだよと一律に決めるんですよ。高校によってですよ。高校によって一律ですよ。でも、成人年齢は、うちの高校は成人は十八歳の年度末までですよ、それまで契約も取消しができますなんてできないでしょう。これこそ全国一律で、高校だろうが何だろうが十八歳で成人ですよ。

 だから、そういう意味では、先生の御指摘は大変参考になったんですけれども、今回の成人年齢とはちょっと異色であると思っています。ですので、やはり混乱する可能性があるということにお答えいただきたい。

 もう一つ、先ほど婚姻年齢のところで家庭科の話が出たんですが、これはちょっと確認なんですけれども、私の高校時代は、確かに高校になると男子は家庭科も技術もなくなりました、体育が週四時間。女子は、週二時間が体育で、週二時間が家庭科でした。ちなみに、中学三年の三学期に、我々の中学は、家庭科が女性、技術が男性だったんだけれども、一学期間だけ、学習指導要領で変わって、男子が三学期は家庭科、女子が技術・家庭。だから、かなり移行期間だったんですよ、私の年代。

 それで、聞きたいのは、今の高校現場でも同じく女子だけ家庭科をやっているんですかという質問。私は、ちょっともう時代おくれだなと思いますけれども。

 仮にやっているとすると、今回この婚姻年齢が十八に上がったことによって、女子だって、家庭科があるからといって婚姻とは直接関係性を持って考えてはいないと先生おっしゃいましたので、じゃ、十八歳になったら、今、家庭科が例えば女子だけだとして、女子も家庭科がなくなるということになるのかどうか。

 今の運転免許の件と家庭科の今の存在のあり方、この二点について教えてください。

本多参考人 運転免許の例はちょっと、おっしゃられるとおり、レベルが違う話だったかもしれませんので、そのことについてはお断りしますけれども、さっきの免許のこともありますけれども、学校では校則でやりますので、もちろん法律が優先されますので、私の知っているところで、昔、免許のところでも取らせないとかというような運動を起こしていたところがありますけれども、今はほとんどないのではないかなというふうに、それは調べていませんので明確にお答えできませんけれども、思っております。

 それから、家庭科については、現在、高等学校は男女共修でございます。

黒岩委員 わかりました。

 五人の先生方、済みません、大変貴重な意見、これを法案審議に生かしていきますので。ありがとうございました。

平口委員長 次に、藤野保史君。

藤野委員 日本共産党の藤野保史です。

 きょうは、五人の参考人の皆様、本当に貴重な御意見をありがとうございます。

 早速質問させていただきたいと思います。

 先ほど田中参考人からは、若者が今、主体的に動いている状態ではないという御指摘がありました。そして、岡田参考人からは、今回の成年年齢の引下げは国民からの要請ではない、国の事情で引き下げるものである、そうであれば若者が被害を受けることがあってはならないという御指摘をいただきました。そのとおりだなと思って聞いておりました。

 国の事情という点でいいますと、この間の経過でいいますと、日弁連の意見書では、二〇一六年二月十八日、こう書いているんです。民法引下げについて、二〇〇七年五月に成立した日本国憲法改正手続に関する法律、いわゆる国民投票法、これが契機だと。同法の附則第三条第一項で「成年年齢を定める民法その他の法令の規定について検討を加え、必要な法制上の措置を講ずるもの」という規定があって、これに基づいていると。ですから、二〇〇七年、第一次安倍政権のもとで憲法改定の動きとともに現在に至っている。

 この附則第三条一項を受けまして、法制審が開かれました。その法制審が二〇〇九年に答申を出しております。その法制審の答申は、いわゆる三つのハードルと言われる、一つ目が、若者の自立を促すような施策あるいは消費者被害の拡大のおそれを解決する施策が実現されること、そしてこれら施策の効果が十分に発揮されること、そして施策の効果が国民の意識としてあらわれること、この三つを要求しているんです。

 五人の参考人全員にお聞きしたいんですけれども、この法制審の三つのハードルですが、これはクリアされているというふうにお考えでしょうか。

本多参考人 現在のところ、私は、クリアされているとは思っておりません。ただ、できるというふうには思っております。

岡田参考人 私も、クリアされているとは思っておりません。だからこそ、国を挙げて実行しなきゃいけないんだろうというふうに思います。

田中参考人 同じように、クリアされているとは思っていません。

 一つ目の若者への施策というところに関しては、若干そういったことが考えられているようでもありますけれども、まだまだそれが現場に即した形になっているとは思いません。

 以上です。

伊藤参考人 消費者被害の拡大の防止の施策については、先ほど申し上げたとおり、まだ施策の実現すら、第一の関門すらできていない、ましてや、その効果を検証したり、それが国民に浸透しているということは到底まだ至っていないというふうに考えます。

増田参考人 実現できていないと思っております。

藤野委員 ありがとうございます。

 そこで、増田参考人と伊藤参考人にお聞きをしたいんですが、増田参考人の資料の中で、「最近は、一度支払ってしまった場合、被害回復が困難なケースが多くなっている」という指摘があります。これがどのような実態なのかということと、あわせて、先ほど伊藤参考人からは、非常に、財産的被害だけではなく、その後の人生にかかわるような被害も多く出てきているというふうにお話がありました。この点について、先ほども具体例をいただいたんですが、ほかに何かあれば、またお教えいただければと思います。

増田参考人 幾つかの要因があるかと思うんですけれども、まずは、取消しを使える、あるいはクーリングオフが使える、そういう要件についての争いが事業者の方とありまして、それを認めないというケースがあります。それによって返金されない。

 それからあと、事業者の実体がつかめないというケースがありまして、そうした場合、交渉すること自体が非常に困難になっているというケースです。

 それから、カード決済をしていればクレジットカード会社の協力を得られますけれども、消費者金融から借りたりということになると、もう相手の懐に入っていますので、それを返させるということは非常に困難な状況になっている、そういうことです。

伊藤参考人 財産的被害以外の損害というところですけれども、やはり人間関係の破壊ですね。友人関係というのもありますし、また恋人関係、それから離婚してしまったというケースもあります。自分自身の被害を取り返すために、何とか友達からお金を借りて対応しようとしたことによってその友達の信用を失ってしまうとか、そういうケースはよく見ることですし、私が今実際に依頼を受けている方で、若者で多重債務に陥った方が途中で行方不明になっちゃった、それで、お父さんが連絡をとれないんだと言われて、結局、警察に逮捕されてしまって、そこで居場所が判明したというような、そういったケースもございます。

藤野委員 次に、田中参考人にお聞きしたいんですが、今回、十八歳、十九歳については、やはり自己決定権を拡大していくという側面もあると思うんですね。

 先ほど、副次的というお言葉も使われながら効果のお話をされていたと思うんですが、一方ではそういう自己決定権が拡大していくという側面と、しかし被害に遭うという現実の側面というものを、若者の観点からどのようにお感じでいらっしゃるか、お願いします。

田中参考人 自己決定権に関してなんですけれども、じゃ、十八歳、十九歳までに自己決定が一切できないかというと、大学に行ったりとか、それまでに習い事をしたりとか、さまざまな場面で自分の決定というのはちゃんと保護者なんかと話し合いながらできるというふうに思います。

 そういった面では、被害が拡大してしまうというところのデメリットの方が今のところは大きいというふうに感じています。

 以上です。

藤野委員 本多参考人にお伺いしたいんですが、教育の現場という点でいいますと、先ほど紹介した、法制審が出た二〇〇九年時点よりも更に深刻になっている側面もあるのではないか。例えば、子供の貧困の問題や、あと全国一斉学力テストによってかなり競争的な状況も広がっている、あるいは高校無償化の条件がこの間後退してきているなどですね。あと、教員の側でいいますと、大変忙しい、繁忙化が非常にこの間進んでいるというような状況で、消費者教育の方にお聞きしても、メニューはわかるんだけれども、ほかの教科のものでもう手いっぱいでなかなかできないというお話もお聞きをいたしました。

 その中で、全日本教職員組合が意見書を二〇一六年に出しているんですけれども、教育という現場において子供たちの利益の実現のためには、教師と生徒だけではなくて、当事者がそれぞれかかわり合うことが重要だという指摘をされておりまして、ですから、成年年齢が引き下げられますと、少なくとも保護者がかかわりにくくなるんじゃないのか。

 いや、それは、そんなことはないと、いろいろやりようはあるのかもしれませんが、学校という場が、決して教師と生徒だけではなくて、保護者も重要な役割を果たして、お互いがその役割を果たしていくんだという指摘がありまして、こうした観点で見た場合、この成年年齢の引下げというのがどのような影響を与えるというふうにお感じでしょうか。

本多参考人 かかわりの問題ですけれども、成人年齢が引き下げられたからといって、成人に達した生徒の保護者が全くかかわらないということはないと思います。

 現在の形では、日本では、私も勤務したことがございますけれども、定時制課程なんかですと、もう明らかに成人になっている生徒もおりましたけれども、学校で何か行うということについては問題はないというふうに思っています。

 ただ、前段のお話ですけれども、学校でさまざまなことをする、普通の企業で考えるよりは少し時間がかかるというところは御理解いただきたいというふうに思います。

 主権者教育ですとかさまざまな教育も担っておりますけれども、私の感じているところでは、安全教育なんかは随分昔からずっと続けてやってきております。それは、生徒のことも考え、社会のことも考え、必要であるということが全部認識されているからでありまして、今回の成人年齢の引下げということについても同様に考えられますし、高校生のときに、効果的に、本当に現実味を持って、卒業したら、就職するにしろ進学するにしろ、成人になるんだということを踏まえながら学校でも教育ができるということは、教育効果が上がるのではないかというふうに私は思っております。

藤野委員 岡田参考人と増田参考人にお聞きしたいんですが、岡田参考人も、先ほど消費者契約法等が使い勝手が悪いというお話をいただきまして、説得する際にも使いにくいし、事業者の側も使いこなせていないという御指摘があったと思うんです。増田参考人も、十一ページのところで事業者の配慮について指摘をいただいております。

 こうした事業者の、実際に接せられて、事業者側の考え方といいますか、必要と思われる対策といいますか、そういうものを教えていただければと思います。

岡田参考人 先ほど申し上げましたように、特定商取引法であったり割賦販売法、業法ですよね、これに関しては、私ども相談員以上に、事業者は真剣に取り組みます。その意味では、法律をうまく利用する場合もあるかもしれませんが、守るということに関して熱心だ。

 ところが、一方で、消費者契約法に関しては、あちらからすればリスク回避の部分があるので、やはり勉強しなきゃいけないと思うんですよね。消費者契約法を知ることによって、そこによって取り消されたり約款が無効になるということがないように、知らなきゃいけない。また、消費者センターと交渉の段階で、当然、対等に話ができるような、そういうところまで至ってほしいんですが、事業者が消費者契約法の勉強をしたとか、時々私は呼ばれてお話に行くんですけれども、今までそういう話は聞いたことがない。

 そういう実態なので、ぜひとも消費者契約法に関しても、民法の特別法であるという部分では、業法を網羅しているという、業法の上の段階になりますよね。ですから、その辺では勉強してもらわなきゃいけないというふうに思います。

増田参考人 事業者の方にも幾つか種類があるかと思いまして、一生懸命勉強して、その結果、脱法的なことをやる、あるいはきちんと遵守して実行するという形で、種類があるのかなというふうに思います。そして、私どもが説明するまでもなく理解していただいた上で、話合いの土俵にのっていただきたいというふうに思うのが一つです。

 それと、さらに、事業者の配慮ということを私お伝えしていますけれども、やはり心ある事業者であれば、今回、消費者契約法の中に配慮という義務は取り入れることはできませんでしたけれども、そういうことを事業者の方のガイドラインというか、そういう形でも取り入れていただきたいというふうに思っています。

藤野委員 伊藤参考人にお聞きしたいんですが、いわゆる消費者委員会からの答申書の中にもあえて付言も行われたということで、今後必要な中身、例えば平均的な損害額の推定規定というのも今回は入らなかったというふうに聞いていますが、今後何が必要かという点について言っていただければと思います。

伊藤参考人 今御紹介いただいた平均的な損害の額を含めて、規律のあり方は検討されるべきだと思います。

 さらに、今回、つけ込み型の規定、二類型について取消権を設けるということになっておりますけれども、それをもっと広く、判断力の不足に乗じたような、あるいは不足につけ込むような取引類型について取り消せる受皿規定が必要だというふうに考えております。

藤野委員 きょうは、本当に貴重な御意見をありがとうございました。私たちも、今後、この民法の改正というのは本当に国民全体の人生にかかわってくる大事な法律だと思いますので、徹底して審議していく、その参考にさせていただきたいと思っております。

 きょうは、ありがとうございました。

平口委員長 次に、串田誠一君。

串田委員 日本維新の会の串田誠一です。

 最後の質疑者となりました。長い間、ありがとうございます。

 まず最初に、本多参考人にお聞きをしたいと思うんですけれども、学校の教育者としてもずっと携わっていらっしゃった中で、先ほどの御説明の中では、生徒が非常に保護者に大切にされているとか、固執することがないとか、意見を余り言わないとか、そういうことがあったわけなんですが、今回法律が制定されますと、あと四年後ですか、平成三十四年に施行されるんですけれども、そういう状況の中で、この四年間で自覚のある成年に育て上げることができるのかどうかということの部分の中で、一つ、ゆとり教育というのがあると思うんです。

 ゆとり教育は平成二十二年までがゆとり教育なので、平成三十四年に十八歳になるというのは平成十六年生まれかなと思うんですが、ちょうどそのゆとり教育のど真ん中の世代が十八歳になるということの部分で、今までの経験の中で、ゆとり教育を受けていた子供とそうでない子供との違いで今回の成人年齢が引き下げられることに対する対応が変わるのかどうか、その点について、今までの経験からお話をしていただければと思います。

本多参考人 ゆとり教育のことでありますけれども、それについて意識したことはございません。差はないというふうに思っております。

 それから、四年間で間に合うのかということでありますけれども、学校だけで全て間に合うかというのは、それはなかなか無理な話でございまして、社会全体がそのようになっていくということが私は前提ではないかというふうには思っておりますけれども、四年間という時間は長いようでありますけれども、短くもあります。ただ、学校では、さまざまなプランを立てながらやっていく上では十分な期間かなというふうには思っています。

 ただ、なったからといってそれまでやらなくていいということでは全くございませんので、今からもう、それまでやっていかなければならないというふうには思っております。

串田委員 次に、ギャンブルについてちょっと残りの四人の方にお聞きをしたいんですけれども、私も別の日のこの委員会で質問させていただいた中で、ギャンブルといいますと競馬、競輪、競艇、オートレースですか、この四つは成人年齢が引き下げられてもまだ二十歳以上じゃないとできない、そういうことになっていたんですが、先ほど、増田参考人のお話の中でも、投資のDVDというのが売られているというようなことであるし、田中参考人の話でも、親に負担をさせないために、いろいろなそういう話になって数十万円を負担したとかということがあるんですが、ギャンブルといいますと競馬、競輪とかがすぐ思い浮かぶんですが、むしろFXとか仮想通貨だとかそういったようなものが、もうギャンブルと余り変わらないんじゃないかと私はちょっと思っているんです。

 参考人の皆さん方は、今までの相談とかは、例えば二十代で競馬にとち狂ったとか、競輪でとか、そんなことの相談なのか、あるいは、先ほどのFXとか仮想通貨とか、すぐに損害が発生するようなことが逆に野放しになってしまうというか、ギャンブルだけ特別扱いをしていくということ自体が現実的なのかどうかというのを、ちょっと参考人の皆さんにお聞きしたいと思います。

岡田参考人 消費者センターの相談に関しましては、二十代というのはないんですが、三十代、四十代で競馬必勝法という、いわば簡単に勝つとかそういうのがすごくトラブルとして起きたことはあります。ですが、二十代、十代でそういうのというのはちょっと聞いておりません。

田中参考人 私の周りでも余りそういうFXとか仮想通貨というのにめちゃくちゃお金をつぎ込んでいる、そういった若者はいないんですが、最近、それに近いもので、今、バイナリーオプションというのが割とはやっていて、そういったところに、SNSとかから勧誘を受けて、はまってしまう若者というのはいますが、それ以上のことはちょっとわからないです。

 以上です。

伊藤参考人 ギャンブルで、今カジノなんかも話題になっていますけれども、そのものに対して何らかの価値がある、それに対する対価を払う、それが値段が変動するというものと、ただゼロサムのギャンブルというものとはやはり違うであろうと。

 ただ、かなり偶然に左右される部分が大きいので、ギャンブルに近いぐらいの強い規制は必要ではないかというふうには思います。

増田参考人 ギャンブルだけの問題ではないというふうに思います。

 おっしゃるとおり、FXであるとか、あるいはネット上のオンラインカジノとか、バイナリーオプションとか、適切な取引もあるし、そうじゃないものもある。ただ、そのリスクについての説明が十分されていない、周知されていないという中からトラブルになっているというふうに思います。

串田委員 典型的なギャンブルを二十にするということ自体の考え方というのはわかるんですが、それ以外の部分については、非常にそれに近いものがあるのにかかわらず、同じように扱わないということ自体というのが一つ大きな問題なので、そういうところの被害というのを非常に、これから若い人たちに危険性というものを知らしめていかなければいけないのであって、典型的なギャンブルだけを二十にしたから守っているというのはちょっと違うのかな、どちらかを同じようにしていくということなのかなとちょっと思ったんですけれども。

 次に、伊藤参考人にお聞きしたいと思うんですが、消費者契約の中で典型的な二つの、不安の契約と、あとデート商法とか、非常にそういう意味では例としては少ないという意味で、七万七千件でしたか、デート商法は〇・三四%でしたか、お聞きしていたときはそんな感じだったんですが、非常にそういう意味で少ないのだけを取引の中に入れているということなんですが、もっと多いものというのはどういうもので、今回、成人が下げられたときにはこういうところの取引がむしろ非常に重要なので、消費者取引の法案においてもこういったものを本来は盛り込まなければいけないんじゃないかとか、そういうことがお考えにあれば、お聞かせいただきたいと思います。

伊藤参考人 若者に多いものとしては、特に二十を過ぎてからふえるものとしてよく言われるのが、マルチなんかがふえるということです。また、やはりお金をもうけたいというか、お金がもうかりますよというような話、マルチにも通じますけれども、そういうものがふえてくるということになりますので、それに対して本当に今回ので拾えるかというと、十分ではないというふうに考えます。

串田委員 先ほど田中参考人の話もありましたが、親に負担をさせたくないというのは、一方では、教育に関して、親が子供に対して教育費というのを大変一生懸命負担しているという部分を子供が見て、それを何とか子供心に親の負担というのを軽くしてあげようというようなことだと思うので、そういう意味では、やはり教育費を無償にしていく、教育に対する負担というのを少なくしていくということが、今言ったような子供のそういう発想というものを逆に減らしていくのかなと思うので、そういう多面的な部分というものもしていかなければいけないのかなとは思います。

 次に、岡田参考人にちょっとお聞きしたいんですが、先ほど消費者契約法が非常に使い勝手が悪いということで、別の委員からもお話があったかと思うんですけれども、具体的にはどんなようなときに、この法律がこうあったらもっと助けられたのにとか、もっと速やかに解決できたのにとか、そういうことがあれば、具体的な例を挙げていただければと思います。

岡田参考人 今、消費者契約法の改正の審議のお話を聞きまして、ショックを受けているところなんですが。

 まず、やはり消費者契約の基本法であるということからすると、最初は業法を使うけれども、民法との間で使うのが消費者契約法なんですね。ところが、先ほど申し上げましたように、裁判規範という部分では、具体的な解釈というのがないんですよ。

 その意味で、ぜひとも、トラブルが出てきた、そういうトラブルに関して消費者庁が解釈したといった場合は、そういうものを即刻国民に知らせるとか、そういうことをやってくれれば少しは使われるのかなというふうに思いますけれども、我々も法律の専門家ではないし、事業者はもちろんのこと、専門家、バックに弁護士がいるとはいうんですが、そういう間で消費者契約法を使って消費者トラブルを解決するということはなかなか今の状況では容易ではない。

 そういう意味では、ぜひもっと活用できる法律になってくれれば、私たちにとっては大変強いよりどころになるんだということを主張したいと思っています。

串田委員 法律をつくった後に魂を入れろ、そういうことなのかなと。せっかくいい法律ができても、それが周知徹底されなければ宝の持ち腐れということになるのかな、そういう感じがしたわけですけれども。

 田中参考人にちょっとお聞きをしたいんですが、先ほど、大学で初めてある程度自覚を持つんじゃないかというような話があったんですけれども、一方で、高校で成人を迎えるということになると、本多参考人もお話がありましたが、高校時代にしっかりと、要するに成人になるということはどういうものであるのか、そういう機会を与えることができると思うんです。

 一方で、今までの状況ですと、大学時代に成人であるということを教えるというようなことになるのかなと思うんですが、参考人は大学生と非常につき合いも長い中で、現在の、大学生である場合もあればそうでない場合もあると思うんですが、十八歳から二十歳までの間に、成人であるということがどういうものであるかということを教わる機会というのは、現実にはあるんでしょうか。

田中参考人 教わる機会としてはほとんどなくて、それこそ親からそういったことを言われたりとか、そういったのが多いのではないかなというふうに思います。

 成人になるときにどうだったかという質問を大学生にしてみたところ、権利と責任について考えましたという子もいた一方で、何も考えていませんでしたという子がいるのも実際のところです。

 以上です。

串田委員 本多参考人にお聞きをしたいと思うんですけれども、本多委員は商業関係の高校であるということなんですが、ちょっと今の商業高校の実態というのが詳しくは私もよくわからないんですけれども、一般的には、すぐに仕事につくことのできる実践的な教育を教えているというような部分なんですが、普通教育と商業高校というのは、そういう意味で、成人という認識、自覚を、教育の課程の中で違いはあるものなんでしょうか。

本多参考人 私は商業高校が長かったというお話をしましたけれども、現在は商業高校でも就職する者の数は半分近くでありまして、半分は大学等に進学する形になっております。

 普通高校というくくりでありましても、ほとんどが進学をする学校もございますし、進路が多様で、進学する生徒もおれば働く生徒もおればというような学校もありまして、一律ではありません。

 ただ、先ほど言いましたように、民法の改正、これは根幹でありますので、私の考えとしては、何よりも増して高校では生徒に教えていかなければいけない最重要なことだというふうに思っております。

串田委員 きょうは、多方面からいろいろな参考人の方にお話を伺いまして、大変参考になりました。

 どうもありがとうございました。

平口委員長 これにて参考人に対する質疑は終了いたしました。

 この際、参考人各位に一言御礼を申し上げます。

 参考人の方々には、貴重な御意見をお述べいただき、まことにありがとうございました。委員会を代表して厚く御礼を申し上げます。

 次回は、公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。

    午後零時二分散会


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