衆議院

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第2号 平成30年11月13日(火曜日)

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平成三十年十一月十三日(火曜日)

    午前九時二十八分開議

 出席委員

   委員長 葉梨 康弘君

   理事 井野 俊郎君 理事 石原 宏高君

   理事 田所 嘉徳君 理事 平沢 勝栄君

   理事 藤原  崇君 理事 山尾志桜里君

   理事 階   猛君 理事 浜地 雅一君

      赤澤 亮正君    岩田 和親君

      奥野 信亮君    鬼木  誠君

      門  博文君    門山 宏哲君

      上川 陽子君    神田  裕君

      木村 次郎君    木村 哲也君

      黄川田仁志君    国光あやの君

      小林 茂樹君    小林 鷹之君

      佐藤 明男君    杉田 水脈君

      田畑  毅君    高木  啓君

      谷川 とむ君    中曽根康隆君

      古川  康君    古川 禎久君

      古田 圭一君    三ッ林裕巳君

      宮路 拓馬君    和田 義明君

      逢坂 誠二君    松田  功君

      松平 浩一君    山本和嘉子君

      源馬謙太郎君    津村 啓介君

      遠山 清彦君    黒岩 宇洋君

      藤野 保史君    串田 誠一君

      井出 庸生君    柚木 道義君

    …………………………………

   法務大臣         山下 貴司君

   法務副大臣        平口  洋君

   法務大臣政務官      門山 宏哲君

   厚生労働大臣政務官    上野 宏史君

   政府参考人

   (法務省大臣官房政策立案総括審議官)       金子  修君

   政府参考人

   (法務省民事局長)    小野瀬 厚君

   政府参考人

   (法務省刑事局長)    辻  裕教君

   政府参考人

   (法務省矯正局長)    名執 雅子君

   政府参考人

   (法務省入国管理局長)  和田 雅樹君

   政府参考人

   (文部科学省大臣官房審議官)           森  晃憲君

   政府参考人

   (厚生労働省大臣官房審議官)           松本 貴久君

   政府参考人

   (厚生労働省大臣官房審議官)           渡辺由美子君

   政府参考人

   (経済産業省大臣官房審議官)           新居 泰人君

   政府参考人

   (経済産業省大臣官房審議官)           大内  聡君

   法務委員会専門員     齋藤 育子君

    ―――――――――――――

委員の異動

十一月十三日

 辞任         補欠選任

  鬼木  誠君     岩田 和親君

  黄川田仁志君     三ッ林裕巳君

  国光あやの君     杉田 水脈君

  古川  康君     佐藤 明男君

  和田 義明君     古田 圭一君

  松田  功君     山本和嘉子君

  源馬謙太郎君     津村 啓介君

同日

 辞任         補欠選任

  岩田 和親君     高木  啓君

  佐藤 明男君     木村 次郎君

  杉田 水脈君     国光あやの君

  古田 圭一君     木村 哲也君

  三ッ林裕巳君     田畑  毅君

  山本和嘉子君     松田  功君

  津村 啓介君     源馬謙太郎君

同日

 辞任         補欠選任

  木村 次郎君     古川  康君

  木村 哲也君     和田 義明君

  田畑  毅君     小林 鷹之君

  高木  啓君     宮路 拓馬君

同日

 辞任         補欠選任

  小林 鷹之君     黄川田仁志君

  宮路 拓馬君     鬼木  誠君

    ―――――――――――――

十一月十三日

 出入国管理及び難民認定法及び法務省設置法の一部を改正する法律案(内閣提出第一号)

は本委員会に付託された。

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 政府参考人出頭要求に関する件

 裁判所の司法行政、法務行政及び検察行政、国内治安、人権擁護に関する件


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     ――――◇―――――

葉梨委員長 これより会議を開きます。

 裁判所の司法行政、法務行政及び検察行政、国内治安、人権擁護に関する件について調査を進めます。

 この際、お諮りいたします。

 各件調査のため、本日、政府参考人として法務省大臣官房政策立案総括審議官金子修君、法務省民事局長小野瀬厚君、法務省刑事局長辻裕教君、法務省矯正局長名執雅子君、法務省入国管理局長和田雅樹君、文部科学省大臣官房審議官森晃憲君、厚生労働省大臣官房審議官松本貴久君、厚生労働省大臣官房審議官渡辺由美子君、経済産業省大臣官房審議官新居泰人君及び経済産業省大臣官房審議官大内聡君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

葉梨委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

葉梨委員長 質疑の申出がありますので、順次これを許します。松平浩一君。

松平委員 どうもおはようございます。立憲民主党、松平浩一です。

 まずは、山下大臣、法務大臣御就任おめでとうございます。同じ法曹界の先輩が大臣に就任されたということで、私も個人的に大変うれしく思っております。

 それから、先日の所信表明、お疲れさまでした。差別や虐待のない人権に配慮した社会実現のためにどうしたらいいかですとか、国土強靱化、インフラ整備のためにどうしたらいいかなど、大臣から具体的な御意見があって、お考えはよくわかりました。

 ただ、気になったのは、会社法制についてです。こちらは所信の中でたった一言、「答申がされた場合には、できる限り早期に関係法案を国会に提出することができるよう所要の準備を進めてまいります。」というだけでございました。残念ながら、具体的にどうしたいというコメントがありませんでした。

 今や会社は、言うまでもなく、経済活動、社会活動で非常に重要な地位を占めています。会社法は会社の運営や組織のルールを定めるものでして、経済情勢とか社会の多様化、迅速化にどんどん対応していかなければならない、そう考えると、具体的なコメントがなかったのは寂しく思いました。

 山下大臣、もしかして、こんなことはないと思うんですが、余り会社法制を重視されていないということはありませんか。

山下国務大臣 お答え申し上げます。

 松平委員におかれましては、渉外法律事務所におかれまして渉外案件やあるいは企業法務に関する造詣が極めて深く、会社法制の重要性を御認識いただいた上での御指摘だと承知しております。

 御認識のとおり、会社法制は、経済活動に深くかかわり、国民生活の基盤となる重要な制度でございます。社会経済情勢の変化等に対応して必要な見直しをすることが肝要であることは理解しております。

 そして、このような観点から、昨年二月に法制審議会に、会社法制の見直しについて諮問を、法務大臣として、しているところでございます。法制審議会においては、本年二月の中間試案の取りまとめを経て、現在は本年度中の要綱の取りまとめに向けて審議が進められているものと承知しております。

 今般の会社法制の見直しは、株主総会の手続に関する合理化など委員御指摘のさまざまな諸点、そして企業統治に関する重要な見直しを含むものでございます。これらの点について、引き続き法制審議会において充実した調査審議がされることを期待しているものでございます。

 私といたしましては、諮問をさせていただいて、その答申を待つ身ということでございますので、そのような調査審議が十分になされることを期待しながら待っているところでございますし、また、そのような答申が出れば、その趣旨に従って、速やかな法案提出に向けて検討を進めたいと考えております。

松平委員 どうもありがとうございました。安心いたしました。充実した審議をしていただきたいと思っています。

 この会社法制の中で、特に時代の変化への対応が迫られている事項としてきょう取り上げたいトピックとして、株主総会の電子化、オンライン対応というものがあります。

 株主総会を開催するためには、御存じのように、会場費であるとか、運営に関係する設備費であるとか、警備員や誘導員の人件費など大変多くのコストがかかります。例えば会場費、東京国際フォーラムのような場所で開催した場合、三百万円以上かかります。その他に、役員、事務局、弁護士や株主、マスコミ等の方々が入る控室も必要です。警備会社社員の人件費もかかってきます。株主にお土産を配付する企業も多くありますけれども、出席株主の数によってはかなりの金額になります。仮に千人来るなら、お土産一個千円から二千円として、百万円から二百万円かかってしまいます。

 それから、機材も用意しなければならない。装飾品、受付カウンター、つり看板、スタンドマイク、プロジェクターといろいろで、そういう本当にコストがかかるんですけれども、準備のための時間も結構かかってきます。

 私も株主総会の準備の仕事もやったことがあるんですけれども、シナリオや想定問答をつくるのも、いろいろな質問を想定しなければいけないので大変なんです。もちろん、この委員会も同じかもしれないんですが、本当に大変でして、タイムスケジュールを組んだり、役員の動線を確保したり、警備員を配置したり、そして事前のリハーサルをする。本当に大変です。

 会社側だけでなくて、出席する側も、今や会社のグローバル化で、株主が日本にいるとは限りません。株主、東京にいるとは限らないです。経営のスピードも、昔と段違いに早い意思決定が求められています。

 そこで考えられるのが、株主総会のIT化、電子化です。企業にとって開催のための費用や時間を大幅に節約できて、株主にとってもメリットがあります。

 しかし残念ながら、この株主総会の電子化は、日本はとてもおくれている現状があります。この後紹介させていただきますが、これは海外では進んでおりまして、この点について問題提起をさせていただきたく思います。

 まず、ちょっと御説明させていただきたいんですが、株主総会の電子化は二つ分けられていまして、一つはハイブリッド型、一つはバーチャルオンリー型、この二つに分類できます。よく言われている通説的な説明をさせていただきますと、ハイブリッド型というのは、物理的な開催場所を決めてネットで遠隔から総会に参加できるというやり方です。バーチャルオンリー型というのは、もう開催場所もバーチャルで、バーチャルな空間で、ネットで総会に参加できるという方式です。

 アメリカにブロードリッジという会社がございまして、こちらは議決権の電子行使のための専用サイトを提供している会社なんですが、そこの調査によると、アメリカではもう四十二州、ほとんどの州がこのハイブリッド型の方を認めていて、物理的な場所で開催しないバーチャルオンリー型の方も、アメリカでは三十州がもう既に認めているということになっています。

 ここで資料一をごらんいただきたいんですが、これは今言ったブロードリッジ社の資料になるんですが、アメリカ全土においてハイブリッド型とバーチャルオンリー型の株主総会が開催された数、これを年ごとに示したものです。見てわかるとおり、総数は年々ふえていて、二〇一七年を見ると、上場会社のうち二百三十六社がバーチャルオンリーかハイブリッド型どちらかで総会を開催しています。

 ちょっとごめんなさい、この後の資料がないんですが、二〇一八年、ことしですね、これは三百社まで増加すると言われています。インテルとかフォードとかヒューレット・パッカードなど有名な会社も、結構このバーチャルオンリー、開催場所をバーチャルな空間でという方の株主総会を実施している状況にあります。この様子はこれらの会社のホームページ上で見ることができるので、もし興味があれば見ていただくと、非常に先進的な取組で驚かれると思います。

 この資料を見てちょっと興味深いのは、バーチャルオンリー型が年々ふえているというのに対して、この濃い方、ハイブリッド型はちょっと減少ぎみにあるということですね。やはり完全な電子化の方が好まれるということなのかなというふうに思っています。

 そこで、まずこの現行法の解釈を伺いたいんですが、ハイブリッド型とバーチャルオンリー型の株主総会、これは日本ではできるのかどうか、法律上許容されるのかどうか、これを伺いたいと思います。

小野瀬政府参考人 お答えいたします。

 まず、委員御指摘のハイブリッド型についてでございますが、取締役が実際に開催する株主総会の場所を決定し、これを株主に通知した上で、その場所に来ていない株主等についても、情報伝達の双方向性及び即時性が確保されるような方式によって株主総会に出席することを認めることは、会社法上許容されるものと解されます。したがいまして、実際に開催されている株主総会に株主がオンラインで参加することを許容すること、いわゆる御指摘のハイブリッド型の株主総会を行うことは、会社法上許容され得るものと解されます。

 これに対しまして、実際に開催する株主総会の場所がなく、バーチャル空間のみで行う方式での株主総会、いわゆるバーチャルオンリー型の株主総会を許容することができるかどうかにつきましては、会社法上、株主総会の招集に際しては株主総会の場所を定めなければならないとされていることなどに照らしますと、解釈上難しい面があるものと考えております。

松平委員 どうもありがとうございます。

 ハイブリッド型ではいろいろ条件をいただきましたけれども、許容され得る、こういうふうに明言していただいたことを大変うれしく思います。一方、バーチャルオンリー型、場所の関係、物理的場所が必要ということで、難しいということを了解いたしました。

 それでは、ちょっと伺いますけれども、実際にこのハイブリッド型などを日本で行われているかどうか、経産省さんに聞いた方がいいのかなと思いますが、把握している事例があれば教えてください。

新居政府参考人 お答え申し上げます。

 電子株主総会の開催実績でございますが、日本には上場していない中小企業も含めて株式会社が数多くございますことから網羅的な把握は難しいということもあり、電子株主総会が開催されている事例は承知してございません。

松平委員 事例は承知されていないということを承知しました。

 私の感触でも、実際やられているというのは非常に少ないものというか、聞いたことがありません。日本ではおくれている、これが本当、現実だと思います。

 なぜかというと、やはり、やっていいかわからない、法律が明確でなかった。きょう先ほど明確にしていただきましたけれども、法律が明確でなかったので、ちゅうちょしてしまう企業というのが実際のところ多かったんじゃないのかなというふうに思うんです。グレーのままで実際やってしまうと、株主総会というのは、決議取消しの訴えですとか無効訴訟など、かなり大きい訴訟となって、影響が大きくて、怖くてできないということだと思うんです。

 そこで、このハイブリッド型、一定の範囲で許容され得るということですけれども、先ほど条件もいろいろ言っていただきましたが、大丈夫なんだと確認できるように、わかりやすく、何か指針のようなもの、こういったものを策定すべきと思うんですけれども、いかがでしょうか。

新居政府参考人 お答え申し上げます。

 ハイブリッド型株主総会についての指針について策定すればどうかという御質問でございます。

 経済産業省といたしましては、この指針、ガイドラインのようなものを検討に入る前に、まずは実務上どのような点が不明確であるかについてきちんと把握することが必要だと考えております。

 例えば、オンライン上の出席をどう把握するか、又は、株主間の平等という観点から、オンラインで参加している株主が質問を希望する場合、物理的に出席している株主と同程度の質問が容易かどうかなど、実務上のまだ不明確な点があるということでございます。こういった点について、まずしっかりと検討してまいりたいと思います。

松平委員 どうもありがとうございます。

 法務省さんはいかがでしょうか、今のを聞いて。

小野瀬政府参考人 お答えいたします。

 ハイブリッド型の株主総会につきましては、IT技術等を用いて株主総会を適切に運営するに当たって、実務上どのような点に留意すべきか等が整理される必要があると考えております。

 ただいま経済産業省の方から、ハイブリッド型の株主総会についての実務上の課題等を把握し、検討していく旨の回答がありましたけれども、法務省といたしましても、経済産業省と協力の上、必要な検討をしてまいりたいと考えております。

松平委員 どうもありがとうございます。

 早くできるようになるように、ぜひともこの調査の方から早くやっていただきたいなというふうに思っています。

 一方で、バーチャルオンリー型の方です。こちらは先ほどなかなか難しいとおっしゃいました。であるとしたら、問題にならないように立法的な手当てをしたらいいのにというふうにも思います。

 将来的にはバーチャルオンリー型の株主総会が世界の主流になってくるということは間違いないというふうに思います。日本の会社が海外の会社に比べて株主総会に手間もコストも時間も莫大にかかるとなると、国際競争力が損なわれる可能性もあります。実際に日本に来なければ、会場に現実に自分自身が来なければ株主権を行使できないとなると、海外の投資家もちゅうちょしてしまうかもしれません。

 今私がここで言っているバーチャルオンリー型、これはあくまで選択制なんですよね、会社の。別に義務化しろ、全ての会社がそうしろと、そこまで言っているわけじゃないんです。

 ですので、会社がバーチャルオンリー型を選択しようとする場合、これは当然、定款変更が必要となってきて、株主の三分の二以上の特別決議になるので、もし株主さんが嫌でしたら、そのことに反対して採用させないことというのも株主は可能なんですよね。又は、もう本当に嫌だというのなら、その会社でそういうことを考えること自体が嫌だというのなら、株主は売ってしまえばいいという話もあります。

 バーチャルで株主総会に参加できるというのは、これは一方で会社にとってもアピールになります。日本は、株主総会を六月の終わりに集中して行われることが多いです。バーチャルオンリー型でしたら、株主も同日に開催されている複数の会社の総会に参加できるということになります。

 ここでちょっと海外はどうなっているか見てみましょう。

 資料二を用意しました。これは真ん中の方が、バーチャル・ミーティングス・パーミッテッドと書いてある方がバーチャルオンリー型を採用している国で、右の方のハイブリッド・ミーティングス・パーミッテッドという方がハイブリッド型を採用している国です。

 ハイブリッド型の方は、ほぼイエスと。バーチャルオンリー型の方、これを見てみると、カナダはイエスの方ですね。デンマーク、アイルランド、二つ飛んで、ニュージーランド、南アフリカ、スペイン、それからUK、USと、多くの国で許容されています。

 これはもう端的に聞きます。法制度として、日本でも、バーチャルオンリー型も会社の選択でできるようにしたらいいというふうに思うんですけれども、いかがでしょうか。

小野瀬政府参考人 お答えいたします。

 今、委員の方からバーチャルオンリー型株主総会についてのメリット、あるいは諸外国における許容状況についてのお話がございました。

 他方で、このバーチャルオンリー型の株主総会につきましては、インターネットを利用することが困難な株主が、事実上、株主総会における議論に参加することができなくなるのではないかというような懸念、あるいは、株主が取締役と対面して直接説明を聞くなどの機会が失われることになるのではないかといったような懸念が示されているところでもございます。

 このバーチャルオンリー型の株主総会に関する規律を立法によって整備することにつきましては、そのような懸念があることを踏まえて、慎重な検討が必要ではないかと考えているところでございます。

松平委員 今、慎重な検討が必要とおっしゃいましたけれども、これは変な話、株主権の問題なんですけれども、今の会社法、スクイーズアウトとかができて、少数株主を会社から追い出すことさえできるんですよね。それに比べたら、その制約、何か、相対的なもので済みませんけれども、大したことないようにも思うんです。

 これは先ほど申しましたように、定款変更には三分の二以上の特別決議もありますし、それに反対することもできるし、株式をもう売っちゃえばいいということもありますので、どうか積極的に考えていただけないものかなというふうに思ったりもします。

 これは経産省さんの方で、日本の会社をもっと魅力的にするために、このバーチャルオンリー型もできるように積極的に働きかけをすべきではないかというふうに思うんですけれども、いかがでしょうか。

新居政府参考人 お答え申し上げます。

 株主の同意を得た上でバーチャルオンリー型の株主総会を制度上認めることについては、総会の開催方法に関して企業の選択肢をふやすというメリットがあると考えております。

 他方、先ほど法務省から回答がございましたように、バーチャルオンリー型に同意しない株主についての手当て、まさにスクイーズアウトで株式を売ればいいか、それだけで十分かどうかというのも含め、関連する論点について幅広く検討する必要があると考えております。

 経済産業省は制度整備を提案する立場でございます。株主総会のあり方も含めて考えるべき大事な検討課題だと思っております。

松平委員 どうもありがとうございます。

 大事な検討課題とおっしゃっていただきました。ぜひこの議論を進めていただきたいなというふうに思います。

 この件でもう一つつけ加えさせていただくと、こういった対応がおくれたときのデメリットとして、電子化に対応するインフラサービス、このサービスも海外の会社にとられてしまうという懸念もあります。

 他の国ではこのサービスは既にやっています。やっている国があるので、このサービスを提供している国があるので、会社としても先行しているということになると、今後日本が対応していったときに、もう既に先行している海外の会社のサービスを使うということに往々にしてなってしまう。そうなると日本としてももったいない上、やはりここを日本も主導してサービスを育てるという意味でも、デジタルファーストを強く前に進めていただきたいなというふうに思っております。

 次に、デジタル化といえば、もう一つトピックとして、上場会社の株主総会資料の電子提供というもの、こちらも重要なトピックと思います。

 アメリカやカナダでは、ノーティス・アンド・アクセス制度というものがありまして、こちらは、株主と会社間で効率的な対話を行うという目的で、株主総会資料の提供にインターネットが活用されています。この制度の会社側のメリットは、総会の資料を印刷して郵送するというプロセスが不要になります。

 これは、ちょっと資料三をつけました。

 こちらをごらんいただきたいんですけれども、この制度導入による費用削減の効果については、先ほどから何度も出ているこのブロードリッジ社の調査によると、制度を採用している企業全体で、印刷、郵送費用の削減額は、これはFY一五だから二〇一五年度ですね、三百五十二・百万ドルということで、調査時のレートでいうと、日本円で四百四十億ぐらいという金額になっています。これは一社平均で十五万ドル、日本円で千八百万円程度削減できるという計算になります。

 経団連の参加企業四十一社を対象としたアンケート調査では、招集通知関連書類の印刷や封入等にかかる期間は二週間もかかっている。そして、印刷、封入等にかかる費用が一億円を超える企業が、一億円ですよ、これは八社も存在するというふうに出ていまして、非常にコストもかかっています。

 経産省の資料によると、ノーティス・アンド・アクセス制度と同様の制度を日本でも採用した場合、これを想定して見積もると、コスト削減見込み額は、一社当たりで標準化すると、平均で二千五百万円という数字も出ています。

 したがって、総会資料の電子化というところ、これに関してもぜひ進めていただきたいというふうに思っているんですが、この点に関してどのように考えておられますでしょうか。

小野瀬政府参考人 お答えいたします。

 現行法上、株式会社は、株主総会の招集に当たりまして、株主に対して株主総会資料を提供しなければならないこととされておりますけれども、株主の個別の承諾を得れば、書面にかえてインターネット等を用いて資料の提供をすることができるものとされております。

 しかしながら、上場会社等におきましては、多数の株主から個別に承諾を得ることが実際上困難であることから、株主総会資料の電子提供を促進することが難しいとの指摘がされております。

 このような状況を踏まえまして、法制審議会の会社法制(企業統治等関係)部会におきましては、現在、株主総会資料をウエブサイトに掲載し、株主に対してそのアドレス等を書面により通知した場合には、株主の個別の承諾を得ていないときであっても適法に提供したものとする、こういった制度を新たに設けることが検討されている、そういう状況でございます。

松平委員 個別の承諾を得なくてもいいようになるというのは非常に大きな進歩だと思います。こちらは本当にすばらしいと思います。

 ただ、私、この電子化を進めるに当たっては一つ大事なポイントがあると思っています。

 今おっしゃっていただいた案、私も見たんですけれども、これはよく見ると、その案はこうなっているんですね。個別の承諾を得なくても電子提供できますよ、しかし、株主は希望があれば書面でも交付請求できますよと。書面での交付請求、だから、書面で欲しいと思えば書面での請求もできるというふうになっているんです。

 つまり、その案では、せっかく電子化で電子的に提供できるようにしても、株主が書面で欲しい、紙で欲しいと言った場合、デジタルで提供しようとしていた資料を印刷して郵送して紙で渡さなきゃいけないというふうになっているんですよね。

 私、ここで指摘したいのがここの部分でして、この書面請求権も会社の選択でなくせるようにしたらいいんじゃないかなと思うんです、これは定款でですね。せっかく先進的な会社がデジタルオンリーでやろうとしても、請求があれば紙で対応しなければならないというのであれば、今までと手間数は変わらない、一緒で、デジタル化は進まないですよ。

 つい先日、これは議員のお仲間にも出席された方はいらっしゃるかと思うんですが、新経済連盟主催の最先端ビジネスセミナーというものが参議院議員会館で行われまして、私も聞きに行ったんですけれども、ここで、freee株式会社、ベンチャー企業で、今はもう非常にでかい会社となっているfreee株式会社のCEOの佐々木さんが講演されていて、同じことをおっしゃっていました。電子化を進める際は例外なき電子化こそが重要だ、プロセスの九割を電子化しても、紙とか有人とかオフラインのプロセスを例外で残してしまうと、ユーザー体験は零点になると。

 デジタル化を進めようという気概があるのであれば、書面での交付請求、これはできないようにするというふうにしてもいいんじゃないかなというふうに思います。この点について、実は質問通告をしていないので、私はこれは言いっ放しになっちゃうんですが、そういう意見もあるということで、次に行きたいなというふうに思います。

 次に、株主代表訴訟についてトピックとさせていただきます。

 株主が会社にかわって役員の責任を追及するという制度、株主代表訴訟という制度があります。実はこの株主代表訴訟制度、日本は国際的に見ても株主代表訴訟が行われやすいというふうに言われています。

 諸外国では、株主代表訴訟を提起する権利は少数株主権というふうにされています。少数株主権とは何かというと、一定割合、一定の株を持つ株主、例えば十株とか百株とか千株とか、そういう一定数を持つ株主のみが行使できる権利を少数株主権というんです。だから、諸外国では、つまり、一定の株式を持っていないと株主代表訴訟を提起できない。

 一方、日本では、単独株主権といって、一株しか持っていなくても代表訴訟を提起できます。この違いは結構大きいです。提起時に、日本では濫訴を排除する仕組みというのが余り設けられていないですし、裁判で株主権の濫用だということで却下された例というのは今までも極めて少数です。

 また、株主代表訴訟の場合の申立て手数料、これは請求額がいかに高額であっても、一律一万三千円と非常に安くなっています。

 オーストラリア、カナダ、フランス、ドイツ、日本、イギリス、韓国、そういった国々の株主代表訴訟制度を調査した研究というのがなされました。JITEという研究誌にこちらは載っていたんですけれども、それによると、日本のみが唯一株主代表訴訟を提起するインセンティブを株主に与えている、安かったりそういうことなんですが、そういう法制度を持つ国として位置づけられてしまっています。

 もう実際に、海外で上場会社に対して株主代表訴訟を提起されることは極めてまれになっています。アメリカは別ですけれども、海外でも極めてまれと。

 例えばイギリス、英国では、一九九〇年から二〇〇六年の間に公表された裁判例の中で、株主代表訴訟に関するものというのは三件しかありません、十六年の間ですね。一方、日本では、同じぐらいに、年間六十件から八十件で推移されていると。年によっては百件を超えるというところもあります。

 このように、日本は、株主代表訴訟を非常に起こしやすくなっているという現状について、法務省として何か問題意識を持っていらっしゃいますでしょうか。

小野瀬政府参考人 お答えいたします。

 ただいま委員の方から、株主代表訴訟をめぐる諸外国の情勢などにつきましてもお話があったところでございます。法務省といたしましても、この株主代表訴訟につきましてはさまざまな指摘がされているということは認識しております。

 例えば、株主による責任追及等の訴えについて、この訴えを提起された役員等が訴訟対応に追われ、業務に専念できなくなって、株式会社にとって大きな負担となるなどの問題点があるといったような指摘が主に企業実務家からされております。

 また、会社法上、原則として、株主が一定期間継続して株式を保有していれば責任追及等の訴えを提起することができることとされておりますため、主に企業実務家からは、株主から安易に訴えの提起がされるおそれがあるとの指摘もされているところでございます。

松平委員 ありがとうございました。そういった問題意識を持っていらっしゃるということで承知いたしました。

 この株主代表訴訟、構造をちょっと申し上げますと、これは昭和二十五年に制度が導入されている。そのときから構造は全然変わっていなくて、本当に昔の制度を現在でもそのまま使っているというふうに言えると思います。

 そればかりか、平成二十六年、会社法が改正されましたけれども、いわゆる多重代表訴訟の制度というものが設けられまして、親会社の株主から訴訟を提起されるというリスクというものも負うことになりました。つまり、子会社の役員などは、今までよりも株主代表訴訟のリスク、これがふえてしまっているという状況がございます。

 株主構成も現在どんどん国際化が進んでおります。そこで、やはり、日本の株主代表訴訟が濫用的に利用されないか非常に心配しています。日本企業の業務妨害、そのような形で海外から利用されたりする可能性、こちらはやはり心配です。今おっしゃっていただきましたように、訴えられてしまうと、本当にその取締役は訴訟対応に追われて、本来の業務に専念できなくなってしまいますし、会社も対応が必要になってしまいます。補助参加などですね。さらに、海外からの訴訟となると、負担もより重くなるかもしれません。

 したがって、私、現行の株主代表訴訟制度について見直しの必要性があるというふうに思っています。見直しの方向性なんですけれども、私もちょっと考えてみたんですが、会社の役員の任務懈怠責任、この責任を問うことが多いんですけれども、この責任の内容にもいろいろあると思うんです。

 その中には、会社経営者の判断が尊重されてもよいという類型があります。そのような類型については、株主代表訴訟提起の手続をもっと厳格にしたり、担保提供の制度がありますけれども、この金額を大きくしたり、取扱いを分けるということも十分に考えられるのではないかなというふうに思います。

 この代表訴訟ができた昭和二十五年からもう実務の蓄積というのは十分にあるので、そのような対応は可能かというふうに思います。

 あと、この見直しの仕方として、三つほどちょっと考えてみたので簡単に紹介したいんですが、例えば、株式を一%以上保有している、これは何%でもいいんですけれども、保有している株主のみとかが提起できる少数株主権にしてしまうということも考えられますし、訴えに必要な要件、株主が悪意でないということを株主の側、訴える側で疎明することを要件としたり、訴えられた役員以外の、例えば全役員が訴えに理由がないと判断した場合は、裁判所はそういった事情も考慮して訴えを却下できるような仕組みを設けるですとか、そういった考え、いろいろアイデアは浮かんでくると思うんですが、こういったふうに見直しを考えていただくということについて、いかがでございましょうか。

小野瀬政府参考人 お答えいたします。

 株主代表訴訟の趣旨でございますけれども、役員等の責任追及の判断を専ら会社に任せますと、役員間のなれ合い等により、本来追及されるべき責任が追及されないおそれがあるというところがございます。

 また、役員等の違法行為を抑止し、ひいては企業経営の健全性を確保するという機能、あるいは、役員等の義務違反行為によって会社が損害をこうむった場合に、その役員等の損害賠償責任を追及することによって会社の損害を填補し、ひいては株主全体の利益を回復するという機能があると考えられております。

 このような重要な機能があるということに加えまして、近年は、株主による責任追及等の訴えに係る訴訟の件数が減少しておりまして、こういったことに鑑みますと、株主による責任追及等の訴えの提起に新たな制限を設けることにつきましては慎重な検討が必要ではないかと考えているところでございます。

松平委員 減少しているといっても、もしかしたらそれは一時的かもしれない。やはり制度上、根本的なところというところも考えていただきたいなというふうに思います。

 本日、この株主代表訴訟の件のほか、さきに株主総会のバーチャル化、それから総会資料の電子提供について、ちょっと私なりに意見を言わさせていただきましたけれども、こういった会社法制度、会社運営のデジタル化について、これはぜひ大臣のお考えを聞いておきたいなと思います。大臣、お聞かせいただければ幸いです。

山下国務大臣 お答えいたします。

 さまざまな建設的な御提言、ありがとうございました。

 もとより、今日の社会においては、IT等の情報技術の進歩に伴い、高度情報通信ネットワーク化が進んでおります。会社運営においても、国際的な競争の中で、IT環境の変化に迅速かつ的確に対応することが求められているものと認識しております。

 他方で、会社法制は、適切な会社運営が行われることを確保して、会社にかかわるさまざまな関係者間の利害を調整するものでもございます。

 そうしたものも踏まえながら、今日のIT環境の変化に対応した仕組み等の検討に当たっても、こうした会社法制の意義を踏まえながら行われていくということが重要であると認識しております。

松平委員 どうもありがとうございます。

 私としては、電子化や国際化といった時代の流れに対応した仕組みとして、日本の企業の稼ぐ力を後押しする、そういった法制度をつくっていく責任があるというふうに思っています。ぜひ前向きな、積極的な検討をお願いしたいと思います。

 以上で、私からの質疑を終わらせていただきます。

 本日は、どうもありがとうございました。

葉梨委員長 以上で松平浩一君の質疑は終了いたしました。

 次に、逢坂誠二君。

逢坂委員 立憲民主党の逢坂誠二でございます。

 それでは、早速質問に入らせていただきます。

 きょうは大臣の所信への質疑ということでありますので、先ごろ、性犯罪を厳罰化する刑法改正が行われました。これに関して、随分、附帯決議もたくさんつけられました。大臣は、今回の所信の中でこの附帯決議についても言及されております。「附帯決議においても、被害者の二次被害の防止や、その心情に配慮することが求められています。」という言及をされているわけですが、この心情に配慮するという附帯決議に関して、大臣にお考えをお伺いしたいんです。

 現在、強制性交罪は十年の消滅時効、それから強制わいせつ罪は七年の消滅時効ということになっているわけですが、小さなころ、幼児期あるいは子供のころに性犯罪の被害を受けた人というのは、なかなか言い出すことができないという現実があろうかと思います。例えばドイツなどでは、性的虐待を初めて他人に話すことができた平均年齢、四十六歳という調査報告もあるようでございます。

 したがいまして、こういったことを考えてみると、この消滅時効について見直すということが必要なのではないかと思います。例えば、時間を長くするとか、あるいは、ある一定の年齢、成年期になるまで消滅時効の進行をとめるとか、いろいろな方策が考えられると思うんですが、この検討について、大臣、どのようにお考えでしょうか。

山下国務大臣 お答えいたします。

 まず、被害者の心情への配慮についてでございますけれども、御指摘のとおり、衆議院法務委員会の附帯決議におきましては、二次被害の防止や被害者の心情への配慮等が指摘されております。これらを着実に実施することは、被害者に寄り添った支援の実施や刑事司法に対する信頼を確保するためにも、極めて重要であると認識しております。

 それに沿った検察庁に対する通達の発出や各種研修を実施しておりますし、また、附則においては、施行後三年を目途として実施する性犯罪に関する総合的施策検討に資するために、今、性犯罪に関する施策検討に向けた実態調査ワーキンググループを設置して、性犯罪の実態把握のためのヒアリング等を行っているところでございます。

 そして、さらに、特に幼児期に性犯罪の被害を受けた被害者について、例えば公訴時効の制度について御指摘がございました。

 確かに、幼児期に性犯罪の被害を受けた方が被害を話せるようになるまで時間がかかるという御指摘があることは承知しております。そして、年少者が性犯罪の被害者となった場合に、その被害が心身に与える影響は極めて深刻であります。厳正な対処が必要であると認識はしております。

 他方で、お尋ねのような場合のみを念頭に公訴時効の撤廃又は停止をする制度を設けることについては、性犯罪についてのみ、そういった事例を念頭に公訴時効の撤廃又は停止を認めるということは、他の犯罪についての公訴時効の制度との整合性あるいは時効制度の趣旨との関係、これをやはり慎重に検討しなければならないということと、あと、公訴時効期間の進行を停止したといたしましても、これは特に、私も昔検事をやっておりまして経験があるんですが、年少者の記憶については、やはり時がたつとともに変容のおそれがまず大きくなることは否定できないということがございます。

 そうしたことを考慮すると、停止をしたということで犯罪事実の立証が困難になる場合も珍しくないという実態がございます。性犯罪については、被害者の供述が唯一の証拠である場合もありまして、そのような場合には、これは他方で、被疑者、被告人の防御権の観点からも、証拠の散逸ということが問題になるということもございます。十分な検討が必要であるというふうに考えております。

 いずれにいたしましても、附則について施策のあり方に関する検討が求められているということで、先ほど申し上げた実態調査ワーキンググループにおいて被害の把握を進めた上で、検討してまいりたいというふうに考えております。

逢坂委員 大臣、たくさん答弁いただきましたけれども、それでは、法務省で今このことについて、幼児期に性犯罪を受けた方々がこの消滅時効によって実際には訴えられないというケースがあるわけですけれども、そういうことについて具体的にどんな取組をしているのか、もう一回、端的に言ってもらえますか。そのワーキングチームをつくっているとかなんとかということがありましたけれども、ワーキングチームをつくっただけなのか、具体的に調査をしているのか、具体的にヒアリングをしているのか。やっているのかやっていないのか、そこを明確にしてください。

山下国務大臣 お答えいたします。

 実態ワーキンググループにおきましては、さまざまな施策について調査を行っているところでございます。例えば、性犯罪被害者の心理等についての調査研究、これはやはり、心理状況、あるいは記憶に対する効果というものも含まれると思います。また、性犯罪等被害者の実態把握のための調査研究であるとか、そういったことを多角的に今、実態把握ワーキンググループによってヒアリングを行っているということでございます。

逢坂委員 公訴時効が過ぎたために事件化できなかった性暴力の詳細、あるいは相談件数、不起訴件数、そういうものについて具体的にチェックをしているというわけではないということですね。要するに、制度とか心理状況がどうであるとかということを専門家からヒアリングをしているということなわけですね。いかがですか。

山下国務大臣 お答えいたします。

 まずは実態においてそれを調査させていただき、そして、その実態を把握した上で諸施策の要否またその内容について検討すべきだと考えておりますので、今、さまざまな観点から実態調査をワーキンググループにおいてさせていただいているところでございます。

逢坂委員 この問題、これ以上きょうは突っ込みませんけれども、いずれにしても、幼児期に犯罪を受けた被害者の救済をどうするかということにしっかり対応していただきたいと思います。先ほどの答弁を聞いていると、幼児期に性被害を受けた人は何となく泣き寝入り、仕方がないんじゃないかというふうにも聞こえかねない、そういう答弁にもとれますので、ぜひこの点はよろしくお願いしたいと思います。

 それからもう一点ですけれども、時間がたつと証拠がどんどんどんどん滅失していく可能性が高くなるとか、あるいは幼児期の記憶が変わっていく可能性があるということでありますけれども、今問題にしているのは、幼児期に性被害を受けた人をどうやって救済するかということを問題にしているわけであって、今の大臣が述べられた理由というのは、今すぐに訴えられる人についてはこれは適用にならないわけで、すぐ今の時効の範囲内でやれる人については問題にならないわけで、幼児期の人が訴えられるチャンスの拡大をするということは、それは少しでも権利の救済につながるということだと思いますので、ぜひ積極的に検討いただきたい、そう思います。

 それでは次に、今回の所信の中で、大臣も入管法の改正に言及されました。入管法の改正についてお伺いをしたいと思います。

 まだ、正式な審議の開始はきょうの衆議院の本会議というふうに聞いておりますが、審議の条件が整ったかどうかはまだ承知はしておりませんけれども、その前段となるような話を少しお伺いしたいと思います。

 まず、今回の外国人人材というのは、大臣、これはドイツでもよく議論になっていると承知をしているんですが、労働力なのか人間なのかという観点で、大臣の基本的な考え方をお伺いしたいんです。

 外国人の人材を活用するということは、安い労働力なんですか。それとも、そうではない、日本人と同等の報酬を得る、同等以上の報酬を得る。しかも、外国人の方が入ってくるとなると、日本語の教育の問題や住居の問題や、さまざまな対応をしなければならない。そういうことを冷静に考えてみると、日本人と同等以上の報酬を払うのであれば、外国人の人材の方々に払う報酬、コストというのは日本人より高くなければ私はまずいのではないか、そう思うんですけれども、その点の考え方、いかがでしょうか。

山下国務大臣 まず、ドイツを例に、外国人を労働力として見ているのかという御指摘がございました。

 これは、法務省としては、労働力、ワーキングフォースという物理的な力として考えているわけではなくて、外国の方についても一人一人の人間であるというふうに見ていることは当然でございます。

 そして、この新たな外国人材の受入れにおきましては、そういった観点から、例えば、一号特定技能者に対して支援をしているところでございますし、さらに、この新たな外国人材の受入れに限らず、更に多く、今、二百六十万人を超える我が国に在住している外国人を含めて、その外国人の受入れ・共生のための総合的対応策、これを関係閣僚会議を開きまして検討している。もとより、一人一人の人間としてやっているというところでございます。

 そして、賃金の多寡につきましては、これは一に、雇用契約に基づくものなのであろうというふうに考えておりますが、他方で、外国人と日本人が不当な差別があってはならないということで、今回の法律案にも、差別があってはならないということで書いておりますというところでございます。

逢坂委員 もう一回、端的にお伺いします。

 それでは、今回、新たに法で決められる外国人人材について、特定技能一号、二号について、その方々に対する報酬というのは日本人と同等以上という理解でよろしいでしょうか。

山下国務大臣 お答えいたします。

 この法律につきましては、差別的取扱いをしてはならないというふうに書いております。そして、報酬要件、これにつきましては、実は他の在留資格も同じなんですが、日本人と同等の報酬要件というのは、上陸審査基準省令というところで定められているというところでございます。そこに他の在留資格と同様の規定を設けるというふうに考えております。

逢坂委員 他の在留資格と同様の規定ということは、日本人と同等の報酬以上ということでよろしいですか。

山下国務大臣 おっしゃるとおり、法務省令において、日本人と同等額以上の報酬とすることを規定するということを検討しているということでございます。

逢坂委員 外国人材の場合は、それに加えて、例えば日本語教育でありますとか住宅環境の整備でありますとかさまざまな相談事とか、いろいろなことをやらなければいけない、日本人と違った側面があると思っています。日本人と同等の報酬以上を払う、若しくは同等、さらに、日本語や居住やいろいろな相談体制にお金がかかるということになりますと、外国人材の活用というのは、支出全体で見れば日本人を雇用するよりも実はお金がかかることだ、そういうことに論理的になるような気がするんですけれども、いかがでしょうか。

山下国務大臣 まず、外国人材の受入れ、共生のために日本語教育に一定のコストがかかるというのは御指摘のとおりでございます。

 ただ、今回の新たな受入れ人材の拡大につきましては、国内人材の確保あるいは生産性向上、それをやってもなお人材が不足している、来ない分野ということで、その産業上分野について、日本で活躍しようというスキルを持つ外国人に活躍していただこうというものでございます。

 そうしたことから、単純に、要するに、日本人の、国内人材の活用をしてもなおギャップがあるわけですから、そこの段階で日本人と同等のというふうなところと言えるかどうかということは一概には言えないのではないかというふうに考えております。

逢坂委員 何を答弁しているか意味がよくわからないんですが、私は、この外国人人材に対する日本人の認識をやはり変える必要があると思っているんですよ。今までの技能実習や留学生の労働の現場を見ていると、留学生や技能実習の方が安い、だから使う、そういう認識が広がっているのではないかという気がするんです。そのことについてはまたいずれかの委員会で詳細にやりたいと思いますけれども、だから、まず大臣の認識が非常に大事なんですよ。

 大臣が、外国人材は安い労働力の導入なんだというふうに考えているのか。そうではないんだ、日本人と同等以上の報酬を払うということをまず法律の中あるいは政省令の中で書くとするならば、それ以外にも、外国人の場合は、日本語教育だとか相談体制だとか住宅だとか、いろいろな支援をしなければいけない。だとするならば、日本人よりもお金がかかる人材なのではないか、そういう認識を逆に大臣が持つことが大事ではないかという指摘なんですが、いかがですか。

山下国務大臣 お答えいたします。

 まず、安価な労働力だという認識については、それは当然持っておりません。だからこそ、法律にも、差別的な取扱いをしてはならないというふうに記載しておるわけでございます。

 そして、外国人が、一定の外国において、日本に限らず、生活をしていく、学んでいく、働いていく、そこには一定のコストがかかることも事実でございます。私も、四年、アメリカにおりました。その過程において、さまざまな周囲の支援があったわけでございます。

 我が国が目指している、外国人の多文化共生社会というものも当然あるわけでございます。このグローバル社会において、そうした多文化共生社会を実現していく、これも我が国が目指すべき社会であろうというふうに考えておるわけでございます。

逢坂委員 余り質問にきちんと誠実に答えていただいていないんですが。

 安価な労働力でないという答弁はいただきました。だけれども、報酬をお払いする、報酬以外にも、日本人以上にさまざまな対応、対策が必要になる。だから、報酬以外のコストも考えたら、日本人の人材を活用するよりも実はお金のかかる、そういう人材が外国人人材なのではないですか、そういう認識はお持ちですかと私は聞いているんです。

山下国務大臣 お答えいたします。

 今、コスト・ベネフィットの観点からお問合せがあったように考えますが、まず、コストの話で申しますと、これは、同一の労働条件下で日本人も来る、外国人も来る、それでどっちがというふうな問題ではこの局面ではないわけであります。今回は、国内人材の活用の手段をとっても、そして生産性向上の手段をとっても、なお人材不足が深刻な分野にスキルを持った外国人を入れていただくということでございます。

 そして、仮に一定のコストがかかるにしても、これは、労働というのは、働いたコストの分、それを例えば労働の成果によって付加価値を設ける、そしてそれが日本の経済の発展につながる、そういうふうに私は認識しておるわけでございます。

 したがって、日本人の労働力と外国人の労働力の対価、例えば時給で重ね合わせて検討するというふうな姿勢には立っていないということでございます。

逢坂委員 私が聞いているのは、どういう価値判断をするかを聞いているんでは全くなくて、日本人の人材よりも外国人の人材を使うということは、報酬条件が日本人と同等以上というふうに定めているんなら、それ以外にかかるコストが外国人材の方が多いから、客観的に見て外国人材の方がお金がかかるんですよね、そのことはお認めになりますか、そういう認識はございますかと、ただその事実を聞いているだけです。それがいいとか悪いとか、何も聞いていません。

山下国務大臣 そこの比べ方がちょっと一面的に過ぎるのではないかというふうに考えております。

 繰り返し申し上げますように、そこは日本人と外国人が労働力の競争関係にある分野ではなくて、国内人材の活用を図ってもなお深刻な人手不足がある、そこに日本で働こうと思っておられる外国人に来ていただくということでございます。そして、その労働力をもって日本経済が発展していくということがあります。

 そして、さらに、外国人の受入れ総体ということでありましたら、今、グローバル化した社会におきまして、多文化共生を実現する上で、恐らくさまざまなコストはあろうかと思います。しかし、それが、多文化共生社会を実現するグローバルな価値を日本が共有するということで、受け入れるメリットというものはあろうかと思います。

 ですから、単に日本人と外国人の労働力のコストだけを瞬間で比べてやるということについては、ちょっと一面的に過ぎるのではないかというふうに私は考えております。

逢坂委員 私の質問に一面的に過ぎるという御批判をいただきましたけれども、私はそういうことを言っているんじゃないんですよ。単に、外国人材を活用する方が同じ報酬の日本人を活用するよりも社会全体としてのコストはかかりますよね、その認識はございますかと、ただそれだけの話ですよ。

 お答えいただけないようですから、この質問はこれでちょっと、また次回、どこかでやりたいと思います。

 それじゃ、大臣、今回、日本は深刻な人手不足だ、そのときによく言われるのは、選ばれる日本になるかどうか、これが大事だということを言われます。労働条件が悪かったり、生活の環境が悪かったりすれば、日本は選ばれる日本にはならない、こういう指摘が多いわけです。

 選ばれる日本になるためにはどういう条件が必要だと思いますか。

山下国務大臣 お答えいたします。

 まず、今、グローバル社会の中で、さまざまな分野で人手不足が、日本のみならず、いろいろなところで生じているという現状がございます。そうした中で、外国の方がどこの国で働こうかというところで、さまざまな労働における条件、そういうのを見る。賃金もそうかもしれません。あるいは、労働法制もそうかもしれない。あるいは、生活において安心、安全で暮らせるということもそうかもしれません。多文化共生社会を実現しているかどうか、そういったことも含まれると思います。

 そして、この法律の審議、そしてさらに、外国人受入れ・共生に当たっての総合的対応策を検討するに当たって、そうした外国人が我が国で働き、暮らし、そして学んでいただく、そうしたニーズに応えるということをしっかりと追求していきたいと考えております。

逢坂委員 選ばれる日本になるためにはさまざまな対策が必要だ、その総合的な対策を今つくろうとしているんだということ。その具体的な中身については必ずしも十分答弁があったとは思えませんけれども、今言ったその総合的な対策というのは、いつまでにつくるんですか、もうできているんですか。

山下国務大臣 総合的対応策につきましては、外国人材の受入れ・共生のための関係閣僚会議において年内に決めるというふうに考えております。

逢坂委員 法案を提出しているわけですから、私は、その対応というのは非常に大事なものだと思うんです。いらしていただく外国人材にどういう対応をするのか、それをことしの、年内にというのは少し遅過ぎるというふうに思います。なるべく早くそれを、法務省としての考え方を整理して、こういう考え方で対応しようと思っているから今度在留資格も拡大をするんだということがなければまずいと思いますので、この点は指摘をさせていただきたいと思います。

 それから次に、今回の外国人材の在留資格の拡大によって、日本人の雇用が奪われることがあってはならないというふうに私は思います。これへの対策はいかがですか。

山下国務大臣 お答えいたします。

 まず大前提として、この制度といいますのは、生産性の向上や国内人材の確保、それをしてもなお深刻な人材不足が認められる、そういった産業上の分野に対して認めるものでございます。したがって、この外国人材の受入れが行われる産業上の分野というのは、国内人材の活用をしてもなおまだ人手不足がある分野ということになります。

 そうした中でその受入れを行うわけですから、この段階で、もう人手不足ということでございます。そして、その中にはもう既に、国内人材の活用、こういったものが実際に入っている、あるいはそれが見通せる、それでもなお足りないところに入ってきていただくわけでございます。そうしたことから、外国人が入ってくることによって雇用が奪われるということはないのではないかと思っております。

 また、将来的に、一旦受け入れた後においても、継続的な状況の把握と将来展望によって、関係省庁において、生産性向上や国内人材の確保の取組によって受け入れた分野において必要とされる人材が確保されつつあると認め得るとき、この段階では、将来生産性が向上する、将来国内人材を確保するということも当然計算に入っているわけであります。その上で、将来的に国内人材の活用ができそうだということになると、それも踏まえて、外国人材の新規入国の一時的な停止をとるというわけであります。ですから、その停止をする段階においては人手不足の段階ということになります、将来的な国内人材の確保は見通しということになりますので。

 そういったことで、委員が、あるいは世上指摘されますような、人材が確保されたと認められるにもかかわらず、外国人材がどんどんどんどん労働市場に流入し続け、労働市場等に混乱を来すということはないのではないか、必要な対応ができるようにしっかりと運用をしてまいりたいと考えております。

逢坂委員 基本的な考え方について、私は理解します。

 ただ、私が聞いたのは、日本人の雇用が奪われないようにするためにどうするのかということを聞いたんです。何か考えていますかということを聞いたんです。

 だから、雇用を奪われないために、確かに、生産性の向上とか日本人の雇用、例えば女性とか高齢者とか、さまざまな対応をしていくということはわかりますよ。だけれども、具体的にそれを実効力あるものにするためにどんなことを考えているのかということを聞きたかったんですが、この点も課題だということは、きょうは指摘だけにとどめさせていただきます。

 それから、総理は、これは移民ではないということを繰り返し述べておられるようですが、私は、移民であるかないかということは余り大きな論点ではないような気がするんです。なぜか。移民の定義がさまざまありますので、移民であるかないか、移民の定義を定めずしてそういうことを言ってみても、ほとんど意味のない議論になってしまうと思っているんです。

 ただ、今回の在留資格の拡大でどんな方向を持っているのか。特定技能一号、二号と拡大をする、その方々は、ある一定の期間日本で御活躍をいただいたら、帰国をする、これが制度設計の大きな前提という理解でいいですか。

山下国務大臣 お答えいたします。

 特定技能一号につきましては、最長在留期間は五年ということになっております。

 そして、特定技能二号におきましても、その特定二号に係る資格活動をしていただくということが前提で、その更新をするということになっております。したがって、日本国内において特定技能の資格活動をしていただくということがこの前提になっておるわけでございます。

逢坂委員 特定技能一号は五年だということは明確におっしゃいました。

 特定技能は、その特定技能の資格活動をしていただくことが前提だと。それは帰国を前提にしているんですか、それとも、そうではないんですか。その点、はっきりさせてください。

山下国務大臣 これは特定技能二号に関してでございますね。

 特定技能二号に限らず、いわゆる就労資格というものに関しては、その資格に基づいた活動をしていただくことが前提になっております。その活動をしていただかなくなった場合においては、これは更新が認められないということになりますと、これはもう在留資格を失うということになりますので、これは帰国をしていただくということになろうかというふうに思います。

逢坂委員 それは当然の話です。在留資格に認められない活動をしたら、それは帰国していただくのは当たり前です。

 それでは、裏返して言うならば、在留資格に該当するような活動をしていれば、特定二号については何年でもいられるということが制度設計の前提ですかということを聞いているんです。

山下国務大臣 お答えいたします。

 もとより、在留資格の更新については、最高裁の判決もございますけれども、法務大臣の広範な裁量にあるわけでございますけれども、この更新につきましては、更新すべきと認める相応の理由というものを法務大臣が判断する。それが備わっているということであれば更新は認められる、逆に、備わっていないということであれば更新は認められないというふうな制度になっております。

 これは、この在留資格全てにわたって、失礼、全てではないですね、在留資格について、この特定技能の二号も例外ではないということでございます。

逢坂委員 それでは、特定技能二号については、法文上あるいは政省令上、在留の上限期限を定めるということはしないという理解でよろしいですね。その都度、更新に当たって判断をするということですから、在留の上限期間を定めるということはしないということでよろしいですね。

山下国務大臣 在留期間を定め、そしてその更新を認めるという制度のたてつけでございまして、その更新があっても何年までというふうな上限を定めることは、特定技能二号については考えておりません。

逢坂委員 了解いたしました。特定技能二号については上限を定めないということのようでございます。

 さて、そこで、厚生労働省、政務官に来ていただきました。ちょっと質問の順番を入れかえましてお話を伺いたいんですが、現状で、今回提出された法律がどうこうではなくて、現状の外国人材への医療、年金、労働、介護、これらの保険制度の適用はどういう実態になっているのか。私の認識では、日本人と同じ条件のもとで、日本人と同様の適用がされるのではないかと思っているんですが、いかがでしょうか。

上野大臣政務官 お答えいたします。

 医療保険や年金など社会保険制度においては、制度の対象者が日本人であるか外国人であるかによって差異を設けておりません。

 また、労働保険においても、制度の対象者が日本人であるか外国人であるかによって差異を設けておらず、今回、新たな受入れ制度によって日本に来る外国人が労働保険の適用事業に雇用される労働者であれば、労災保険及び雇用保険が適用されることとなります。

逢坂委員 改めて確認をさせていただきましたが、今回の特定技能一号、二号ができても、さまざまな社会保障制度の適用は、日本人と同様の条件のもとで、同様に適用されるんだということでございますね。よろしいですね。うなずいていらっしゃいますので、それで理解いたしました。

 そこでなんですけれども、これは今後もこのままいくつもりなのかどうかという点について、何か現時点でお考えはありますでしょうか。

上野大臣政務官 先ほども少し答弁させていただきましたけれども、今回の新たな受入れ制度によって日本に来る外国人、これまでと同様に、医療保険、また年金など社会保険制度についても適用される、同じく、労災保険、雇用保険についても同様に適用されるということでございます。

逢坂委員 じゃ、先の見通しは決まっていないという理解でよろしいでしょうか。

 現状は今聞きました。今後、在留資格が拡大をされる、外国人材の受入れをこれから、法務省の姿勢としては人手不足なのでやっていこうという基本姿勢が示されているわけですので、それによって、今の、現状の社会保障制度の適用条件その他を変えるか変えないかについては、現時点では何も言えない、わかっていない、決まっていない、議論していない、そういう理解でよろしいでしょうか。

上野大臣政務官 先ほど御答弁させていただいたとおりでありますけれども、現状、日本人であるか外国人であるかによって社会保険制度また他の制度についても適用を変えていないということでありまして、新たな受入れ制度によって日本に来る外国人に対しても同様に適用されるという理解であります。

逢坂委員 そこまでは理解しました。その制度を、それじゃ、これからも、来年も再来年もその次も続ける予定でいるという理解でしょうか。

上野大臣政務官 先ほど、現状についてお答え申し上げました。今回の入管法の改正に基づきまして、取扱いをどうすべきなのかということについては検討してまいります。

逢坂委員 検討してまいりますということは、方向性を含めて今の時点では未定だ、検討の中でどうするかを決めるということでしょうか。そうであれば、うなずいていただければ。

上野大臣政務官 現在検討中でありまして、しっかり議論を重ねてまいります。

逢坂委員 社会保障の適用関係についても未定だということなのかなというふうに思いました。

 今の政務官の答弁では、今の、現行の制度をそのまま続けるとも答弁されませんでした。検討中なんだという話をされました。検討の中身もお話しされませんでした。現時点でそこは明らかになっていないというふうに、私は、今の時点では理解せざるを得ないということだと思います。

 政務官、済みません、わざわざ来ていただきまして。これでよろしいですので、どうぞ御退席ください。

葉梨委員長 では、どうぞ御退席ください。

逢坂委員 さて、それで、次です。

 今回の特定技能の一号、これは技能実習の延長というふうに見えるわけですが、技能実習を終えた者は無試験で特定技能一号に移行できるわけですので、延長というふうに見ることができるわけですが、大臣、現行の技能実習制度、この実態についてどういう認識を持っているかということをお伺いしたいんです。

 御案内のとおり、もう巷間言われていますけれども、現在、技能実習生、二十九年は、七千名近い方が実習元からある種避難せざるを得なかった。あるいは、いろいろな事情があると思います。私は、失踪という言葉は実態を知れば知るほど適当ではないというふうに思うんですが、実習元にいられなかった、そういう方が七千名も、二十九年、一年間でいる。

 こういう実態を踏まえて、政府は二千八百名余りの方から聞き取り調査をしているというふうに承知をしておりますが、その聞き取り調査を踏まえて、技能実習の現場、現実、それを大臣はどのように捉えておられますか。これは事務方の答弁というよりも、政治家としてどう思っているかということを誠実に答えてもらいたいと思います。

山下国務大臣 お答え申し上げます。

 技能実習制度につきましては、制度開始以来、さまざまな御指摘があったところでございます。そして、それらの御指摘を踏まえて、昨年十一月から技能実習法の改正がなされ、運用をされてきたところでございます。

 その技能実習全般についてどのような御指摘がされているかというと、例えば、海外で、私がベトナムの高官に会った際には、技能実習制度を高く評価しているところがございました。そのベトナムに限らず、さまざまな国で、この技能実習においてスキルを身につけた、そして自国に戻ってきた、そうしたことについて高く評価している声が聞こえたものはございます。

 ただ一方で、失踪、これがあるということは否定できないということでございます。この失踪原因については、これまで調査もしておりますけれども、より高い賃金を求めてということがかなり多いという部分はございます。ただ一方で、また人権侵害的な取扱い、そういったこともあろうかというふうに考えております。

 そういった中で、十一月に施行されたこの制度、これをしっかりと適用するということで、そうした負の部分、これについてはしっかりなくしていこうというふうに考えております。

 例えば、本年九月末現在で三千七百回の実地検査、こういうものを行っていたりするわけでございます。そして、これは送り出し国との協力が必要だということで、技能実習に関しましては、十カ国との間で二国間取決めをやり、悪質ブローカーの排除であるとか、そういった情報交換、これもしっかりやろう、そして保証金の徴収、これをやめようということ、これもしっかりと意見交換をさせていただいているところでございます。

 そうしたことをしっかりとやっていく中において、海外からも評価の高い、実は今回、アメリカの人身取引報告書で、これまで技能実習制度については相当厳しい評価が出されておったんですが、今回の技能実習法の施行を受けて、この人身取引報告書においては最高ランクのティア1に日本が評価されることになった、こういうことも御紹介させていただきたいと思います。

逢坂委員 大臣はどう思っているかということを聞いたんですが、たくさんお話しいただきました。

 高く評価されている、その面は私はないわけではないんだろうと思うんですが、制度を考えるときには、高く評価されているところよりも、課題や問題になっているところをしっかり克服していくということを前提にして次の制度をつくらないと、これは悪いものにふたをしたまま次の制度へ移行するということになると、その悪いことが拡大しかねない。

 だから、その意味で、二千八百人ですか、聞き取り調査をしたという実態をもっと真正面から受けとめて、大臣もその現実、厳しい現実の方をやはりしっかり見なきゃいけないと思うんですよ。高い評価のことだけを言っていたのでは、私は意味がないというふうに思います。

 そこで、大臣、その二千八百件のそれぞれの聞き取りの個票、この公開はしていただけるんでしょうか。現状がはっきりしないと、課題の克服はできないんですよ。もちろん、これは個人情報とか不都合なものはマスクして構いませんので、これは出していただけますか。

山下国務大臣 お答えする前に、先ほど、技能実習法の改正と申し上げましたが、これは施行でございます。申しわけございませんでした。訂正させていただきます。

 そして、調査票の開示でございますが、この調査票というのは、失踪した技能実習に係る聴取票というのが、これは失踪した技能実習生から任意に聴取した情報でございます。

 これは厳密に言えば、当該技能実習生は、入管法に違反し資格外活動を行った者、つまり、入管法違反容疑者ということになります。当該調査票自体は、刑事訴追を受けるおそれのある者からの聴取結果そのものであるということになります。これが開示されると、そのまま開示されるということになれば、今後の調査ないしは捜査への協力が得られなくなる可能性がある、今後の調査業務や捜査に与える影響が極めて大きいということをまず考えなければならない。

 そして、聴取票の記載内容は、個人に関する情報、こういったものが含まれておるわけでございます。これを開示すれば、個人の特定につながり、また、技能実習生のみならず、受入れ機関や送り出し機関の個人情報も含まれる。このような者のプライバシーの観点からも、慎重に検討しなければならないと考えております。

 したがって、調査票そのものの開示ということに関しましては御容赦いただきたいと思っております。

 しかしながら、調査票を取りまとめた結果の公表に関しては、調査項目及びその結果の内容も踏まえ、公表を控えるべき項目の有無も含めて、慎重に今検討を行っているというところでございます。

逢坂委員 まず、取りまとめの結果については、出せそうなニュアンスの答弁を今いただきましたが、ニュアンスの答弁です、出すとは言明していないようですが、それは出すのは当たり前ですよ。調査していて、そのまとめも出さないなんというのは、税金で仕事をしていて、その結果もちゃんと公表しないなんというのは、それは職務怠慢になりますよ。だから、そんなものは出すのは当たり前。

 ただ、私は、最近の政府のやり方は信用していない。昨年、裁量労働制に関して、厚生労働省がデータを出しました。取りまとめのデータだけ出した。ところが、個票を出してもらった、それを突き合わせたら、個票と不突合が山のようにあったんですよ。

 それで、今回も、お手元に資料を用意しました。法務省が提出している資料で、「失踪技能実習生の現状」というところがあって、失踪の原因というところ、二の1、「より高い賃金を求めて失踪するものが多数」、より高い賃金を求めてというまとめにしているわけですよ。

 でも、これは、より高い賃金とはどういう内容なのか。例えば、すごく高額の人、給料をもらっていて、更に高い賃金をもらいたいと思っているのか。そうではないんだ、全く不当な賃金の実態なので、より高いというふうに言っているのか。それはもう全く性質が違うんですよ。だから、政府に取りまとめさせたらこういう中身のわからないまとめをするから、個票を出してくれと言っているんです。

 実際に個票を見ると、個票の中には書いてあるじゃないですか。「低賃金」という項目があって、さらにその隣に「契約賃金以下」、さらにその隣に「最低賃金以下」、こういうことも書いてあるんですけれども、こういう中身をはっきり出さないと、ただ、「より高い賃金を求めて」のまとめでは我々は信頼できないんです、今の政府は。だから、個票を出してくれと言っているんです。

 それから、個票は、プライバシーに関するものは私はマスクしていいと言っているんです。プライバシーに関するところをマスクして出してくれれば、犯罪捜査の阻害になることもないわけですから。

 なぜ出せないんですか。出さないと、これは審議の条件が成り立ちませんよ。現行制度を出発点にしているわけですから、現行制度のどこに課題があるのか、その情報、政府が持っているのは、それは明らかにすべきじゃないですか。いかがですか。

山下国務大臣 お答えいたします。

 先ほど、政府が提出するデータの信頼性について厳しい御指摘がございました。またそういったことのないように、しっかりとまた精査をして、提出するかどうかということも慎重に検討させていただきたいと思っております。

 そして、個票を出す、生データを出すということに関しまして、先ほど申し上げたように、これは、要するに、入管法違反の容疑者、被疑者から聞き取った内容ということになります。刑事訴追を受けるおそれのある者からの聴取結果そのものということになります。これを開示するということがどのような影響を、今後の調査あるいはそれに基づく例えば刑事捜査に影響があるのかということは、慎重に検討しなければなりません。

 また、プライバシーの範囲がどの程度であるのか、調査項目が詳細であればあるほど、そのデータを突合すれば、人物の特定、あるいは事業所の特定につながるということもございます。

 そうしたことも慎重に検討させていただいた上で対応を検討させていただきたいと考えております。

逢坂委員 今の答弁、全く理解できません。改めて個票の提出を求めたいと思います。個人情報に関するところはマスクして構いませんので。それがないと本格的な審議に入れないということを指摘したいと思います。

 次に、十一月の、先般の参議院の予算委員会で、山下大臣はこう発言されております。外国人材の受入れ人数に関して、四万人ということ、これは本年八月の概算要求時に初年度の受入れ見込み数を算出した数字、受入れ見込み数をなるべく近日中にお示ししたい、これは法案の審査に資するようしっかりと出していきたい、こういう答弁を参議院でされております。

 きょうから法案の審査が始まります。午後にも本会議で、条件が整えば、多分、我が党からは山尾さんが質疑に立つということになっています。法案の審査に資するように受入れ見込み数を明らかにされるということですので、法案の審査が始まってからはだめなんですよ。せめてきょうの午前中までに、この四万人の内訳、あるいはさらなる受入れ見込み数があるならその内容、これは提出いただけますか。

山下国務大臣 お答え申し上げます。

 逢坂委員御指摘のとおり、初年度の受入れ見込み数を含め、規模感、受入れ見込み数をなるべく近日中にお示ししたい、そして、これは法案の審査に資するようにしっかりと出していきたいという思いは全く変わっておりません。

 そして、そのために、受入れ業種における具体的な受入れ見込み数について、関係業所管庁において現在精査中でございます。その結果につきましては、今回の法案に資するように近日中にお示しする予定であります。

逢坂委員 きょうの午後の本会議の質疑までには出せないという答弁ですか、今のは。

山下国務大臣 現在、具体的な受入れ見込み数、この規模感がしっかりわかるよう、伝わるような検討状況について、各業所管省庁において現在精査中でございます。そして、結果については、この法案の審議に資するように近日中にお示ししたいというふうに考えております。

逢坂委員 きょうの本会議までには出せないという答弁と理解をいたします。そう理解せざるを得ません。これでは本当に法案の審議に入れないということを指摘をしておきたいと思います。

 最後です。日本人学校のことについてお伺いをします。

 内容をたくさん聞きたいんですけれども、平成二十五年五月一日現在、日本語学校に三万二千六百二十六人が在学していた。それから、平成二十九年五月一日には七万八千六百五十六人、日本語学校に在籍していた。この四年間で二・四倍に、日本語学校へ通う外国人の方が膨れ上がっています。

 これは、日本語学習熱が海外で急増しているんでしょうか。このあたりの要因、大臣はどう思われますか。

葉梨委員長 山下法務大臣、質疑時間が終了しておりますので、簡潔にお願いします。

山下国務大臣 はい、わかりました。

 これにつきましては、近年、アジアを中心とした日本企業の海外進出や、日本の高度な技術や文化に対する関心が向上したことにより、日本語を習得して専門学校や大学に進学し、日本企業に就職を目指す外国人がふえたこと等が原因であろうというふうに考えております。

逢坂委員 この問題、また深くやりたいと思いますので。

 きょうはこれで終わりたいと思います。ありがとうございます。

葉梨委員長 以上で逢坂誠二君の質疑は終了いたしました。

 次に、源馬謙太郎君。

源馬委員 おはようございます。国民民主党の源馬謙太郎でございます。

 まずは、山下大臣、法務大臣御就任おめでとうございます。尊敬する山下大臣ですから、いろいろと私も胸をかりながら、しっかりと議論をさせていただきたいというふうに思います。

 きょうは、大臣の所信についての質疑の時間をいただきまして、ありがとうございます。

 この大臣の所信の中にもございました、経済社会に活力をもたらす外国人を積極的に受け入れていく必要があるということで、外国人材の受入れについても言及がされました。また、まだ正式な審議はこれからと理解をしておりますが、今国会の大変大きな議題になるということだと思いますので、その正式な審議に入る前に、私からも幾つか質問をさせていただきたいというふうに思っております。

 先ほどの大臣の答弁の中にも、大臣が四年間アメリカにいらっしゃったというお話がありました。私も、大臣同様、四年アメリカにおりまして、またカンボジアにも長く住んでおりました。そういった意味で、海外を経験しておりますので、外国人として海外に住んでいた経験がありますし、やはり特にアメリカなんかはそうした外国人の力というのが社会の活力になっている。これは大臣が所信で述べられている、経済社会に活力をもたらす外国人を積極的に受け入れる、まさにこういったことだというふうに思います。

 さらに、今いろいろな業界で人材、人手不足が深刻だということも、私もこれは地元でいろいろなお話を伺っております。

 そういった意味で、外国人の人材を受け入れていく、このことについては、私はそれを否とするものではございません。やはり必要なんだなというふうに思っています。

 ただ、これだけ今多くの国民の皆さんがこの法案に関して不安を持っていたり、いまいちわかりにくいということがあるのも事実だというふうに思います。

 そこで、まず大臣のお考えをお伺いさせていただきたいんですが、先ほどの逢坂委員からの御質問にもありました、そもそも今回の外国人の受入れというのはどういったものを目指しているのか。

 例えば、今までの予算委員会であるとか本会議の安倍総理であるとか大臣の御答弁を聞いていると、基本的に家族は帯同できなくて、人手不足がある業種に限って、その人手不足を補うために外国人の人材に入ってきてもらって、しかも、例えば不況になったりあるいは人手不足が解消したら、これは帰ってもらうことが前提だと、非常に虫がいい、日本側の都合だけの政策のような御答弁も幾つかありました。

 そもそも、そんな政策で日本が本当に選ばれるかどうかもわかりませんけれども、これからどのように外国人を受け入れていくべきだ、日本の社会としてどのように受け入れていくべきなのかという大臣のお考えを伺いたいと思います。

 外国人には、定住、これは永住じゃなくても構いません、ある程度定住してもらって、大臣が所信でおっしゃっているように、経済や社会に活力をもたらしてもらうために入ってもらうのか、若しくは、あくまでも今の日本の経済で人手が足りないという分野を補うために、まさに日本の都合の、一時的な受入れで入ってきてもらうということなのか、そのあたりの大臣のお考えをお伺いしたいと思います。

山下国務大臣 お答えいたします。

 源馬先生におかれましては、アメリカのみならず、カンボジアで武器回収ということで、カンボジアの国民のためにも活躍されたということで、本当に共生社会を体現された先生からの御指摘であります。非常に重く受けとめたいと思うのですが、まず、どのような社会を目指そうとしているのかということについて、まず今回の法改正、新たな外国人材の受入れ拡大に関しましては、これは、生産性向上やあるいは国内人材の活用をしてもなお深刻な人手不足にあえぐ産業上の分野がございます。そこに、その一定の技能、専門性を持った外国人、日本で働いてやろうというふうな外国人に入ってきていただく、そうした在留資格を拡大するものでございます。

 もとより、優秀な人材を我が国に引きつけるためには、これらの方を、労働者としてのみならず、我が国で働き、生活する方として受け入れ、我が国がその処遇や生活環境等について一定の責任を負うべきものであることは当然でございます。そして、新たな外国人材の受入れのみならず、もう既に日本には二百六十万人の外国人の方がおられます。ここにおいて、この外国人の皆様と日本が共生していく、そうした多文化共生社会、これをつくっていくということは極めて大事であるということでございます。

 他方で、入国管理におきましては、法務大臣、さまざまな検討をしなければならないということがございまして、上陸審査に関する七条を見ますと、例えば在留資格「別表第一の二の表」、これは今回の特定技能もそこの表に入れる予定でございますけれども、この「活動を行おうとする者については我が国の産業及び国民生活に与える影響その他の事情を勘案して法務省令で定める基準に適合すること。」ということが、上陸審査基準ということで法律で定められております。

 こういったことも配慮しながらこの受入れを図っていく、そして、受け入れた外国人に関して、共生、ともに生きていく、こういうことを実現したいと考えております。

源馬委員 ありがとうございます。

 もう少し大臣のお考えをお伺いしたいんですが、今の御答弁で、今回のこの特定技能一号、二号の枠については、あくまでも生産性向上であるとか国内の人材確保、これをやってもまだ足りないところに入ってきてもらうという枠だということは理解をしておりますけれども、更に踏み込んで、やはりそうすると、外国人が入ってくるわけですから、先日、十一月十日のTBSの「報道特集」という番組で、私の地元の浜松市長が出ておりまして、浜松というのは、今、外国人が二万一千人ぐらいいらっしゃいます。全体の人口は八十万、そのうちの二万人以上が外国人の方です。これは、一九八八年の段階ではわずか三千人の外国人がいらっしゃいました。これが、九〇年に改正入管法ができて、そして急増して、一時三万人にまで行きましたけれども、一時リーマン・ショックなどで減ったといいましても、まだ二万人以上の外国人の方がいらっしゃるわけですね。

 さらに、この市長はおっしゃっていましたけれども、少しぐらいの経済変化、これはリーマン・ショックも含めてですが、ちょっとぐらいの経済変化があっただけではなかなかやはり帰らない、むしろ定着することを望んで、そして、この日本の、浜松でいえば浜松の社会に一緒になって暮らしていく、究極的には永住を望んでいる人たちがやはり多いんだというのが実態だと思います。

 これは、浜松市長のお言葉をかりれば、実質的なやはり移民だと思うんですね。この移民の定義がどうかとか、今回この法案が通れば移民政策になるかどうかという議論は私も不毛だと思いますが、市長はインタビューの中でも、もう移民は既にいるんだ、移民じゃないといろいろな言葉を操って繕っても意味がない、そして、短期の一時的な労働者、ロボットとして捉えてはやはりうまくいかない、血の通った人間である、定着してもらうという発想こそが社会を活性化していくためには重要なんだ、こういうことをおっしゃっていますが、こういったことも含めて、もう一度、大臣の、今回の特定技能一号、二号だけではなくて、外国人を日本に受け入れていく、こういった視点から大臣の大局観をお聞かせいただきたいというふうに思います。

山下国務大臣 お答えいたします。

 委員の御地元の浜松は、大変外国人の受入れについてさまざまな取組をしているところでございます。浜松における外国人というのは、これは就労資格というよりは地位又は身分に基づく定住者ということで日系人の方がおいでだというふうに聞いております。ですから、ちょっと特定技能の場面とは異なる部分はございますけれども、いずれにせよ、この日本に来た、ともに暮らし、そして働く、そうした外国人をいかに社会の一員として受け入れていくかということは極めて重要な視点であろうというふうに考えております。

 そうした視点を持ちながら、外国人との共生社会の実現に向けた環境整備、これをしっかりやってまいりたい。そのために、外国人の受入れ・共生にかかわる関係閣僚会議、これについては、内閣官房長官とともに私が議長を法務大臣としてさせていただいているところでございます。そして、そうしたことをしっかりと検討をさせていただいて、環境整備を外国人総体としてさせていただきたいというふうに考えております。

源馬委員 ありがとうございます。

 大臣の御答弁のとおり、今回の特定技能一号、二号だけにかかわらずいろんな在留資格があって、これから外国人がやはりふえていくということは間違いのないことだと思いますし、今回の特定技能一号、二号ができたら、ますます外国人の数というのはふえていくわけだと思いますので、今大臣がおっしゃった、外国人全体を日本社会に受け入れて、そして共生していくにはどうしたらいいのかということもあわせてぜひ御検討いただきたいなというふうに思います。

 ちなみに、浜松では、これは在留資格が違うからですけれども、日本生まれの日本育ちの外国人というのがかなりふえておりまして、平成二十八年でも、小学校一年生になった百六十三人の外国人のうち、もう七三%以上は日本生まれ、日本育ちの外国人ということになっております。これは、特定技能二号で例えば在留期間がどんどんどんどん長くなっていくことでも起こり得ることだと思いますし、そうした子供たちをどう社会に受け入れていくかということも含めて、長期的な視点でぜひ考えていただきたいなというふうに思います。

 さらに、今の大臣の御答弁の中にもありました、やはり人手が足りないというところが今回の特定技能一号、二号の業種の選定、分野の選定の大きな柱になっているというふうに思います。幾ら生産性向上をしたり、これも再三繰り返されておりますけれども、国内の人材を確保してもなお足りないという分野に外国人に入ってもらうということだと思います。

 それぞれの省庁でそれぞれの分野で人手不足があるかどうかを判断されている状況だと思いますが、もう少し具体的に、どのように判断をされているものなのか、教えていただきたいと思います。

和田政府参考人 お答えいたします。

 人手不足の状況につきましては、できる限り客観的な指標を用いまして判断することが重要であると考えているところでございまして、当該指標につきましては、受入れ分野決定のプロセスの検討の中で各関係省庁との協議を踏まえて決定されるものでございますが、その際には、有効求人倍率でございますとか各業種におきます公的な統計、業界団体を通じました所属機関への調査など、そのような指標を用いるということを考えているところでございます。

源馬委員 今お答えいただいたさまざまな指標、統計ですとかそれから調査の結果、こういったものは、各省庁それぞれで違う指標を使ったり違う調査を使ったりするということなんでしょうか。あるいは、さらに、同じ数字でも各省庁によって違う使い方をしたりするケースというのはあるんでしょうか。

和田政府参考人 お答えいたします。

 それぞれの分野におきまして、その分野ごとの業の特殊性がございますので、それぞれの特殊性に応じて使う指標は異なってくることはあろうかと考えております。

源馬委員 これは例えばなんですけれども、私、地元の方からこの前お話を伺いまして、いろいろな分野やいろいろな業種の方が、うちの業界も外国人を受け入れたいというような要望を各省庁に出しているというふうに思いますが、例えば、私がお話を伺った産業廃棄物の関係の業界の方からは、要望を出しているけれども、技能実習制度で既にその分野と認められている分野じゃないと、今回のこの特定技能一号、二号の分野にはなり得ないという回答をもらったという方もいらっしゃいます。

 その方にお話を聞くと、ほかの省庁ではそうとも限ったことでもないという判断もあるというふうに聞いていると。つまり、各省庁によって、例えば産廃業者だったら経産省ですけれども、経産省では既に技能実習制度で認められている分野じゃないとだめだ、ほかの省庁ではそうじゃなくても大丈夫、こういった差が出てきているという実態があるのかどうか、伺いたいと思います。

和田政府参考人 お答えいたします。

 今回の特定技能外国人材といいますのは、生産性の向上でございますとか国内人材の確保のための取組を行ってもなお外国人材の受入れが必要と認められる業種で受け入れられるものでございますので、それが必ずしも技能実習二号への移行職種として認められるものと合致する、同じ範囲になるものとは論理的になっているものでは別にございませんので、そのようなことで、同じでなければならないというような考えをとっていることはないかと承知しております。

源馬委員 そうすると、各省庁ごとにそれぞれ全くばらばらの選び方をするわけではなくて、ある程度は統一された客観的な指標を用いるということでよろしいんでしょうか。

和田政府参考人 それぞれの業種ごとで使う指標は違うにせよ、同じような考え方に基づいて選んでいるものと考えております。

源馬委員 これは今後の話になりますが、例えば、その分野で人手不足が解消されたときに、該当する分野の外国人の受入れを停止するというような制度設計にもなっていると思いますが、そのときも、各省庁とか各分野ごとにばらばらな基準ではなくて、同じような基準でできるような仕組みをぜひつくっていただきたいなというふうに思います。

 また、この分野についてなんですけれども、これも法案審議の過程で、先ほども大臣からも御答弁がありました、人数ですとか分野についても明らかになっていくというふうに思いますけれども、これが進んでいくと、あくまでも人手が足りない分野、国内の人材がなかなか入ってくれない分野、そして生産性向上をしても足りない分野に外国人に入ってもらう。これをずっと続けていくと、日本人がなりたくない分野にどんどん外国人が入ってきて、例えば、きつい分野、介護とか、よく言われている建設業、そういったところでもいいですけれども、そこに入りたくないという分野がどんどんどんどん日本人がいなくなって、そこにどんどん外国人が入ってきて、そこの分野は外国人に賄ってもらう、特に介護なんかはそういうふうになっていくんじゃないかという懸念がありますが、そうした懸念というのはどういうふうに払拭できるんでしょうか。

和田政府参考人 生産性向上等の努力の中には、職場における環境の改善でございますとか待遇の改善でございますとか、そのような、日本人の雇用を進めるべく努力というものも含まれておりますので、そのようなことを通じて、その職場が外国人だけになるというようなことはないように努力をしていかれるものと承知しております。

源馬委員 その努力をしてもだめだった分野に外国人を受け入れるという制度なわけですよね。ということは、日本人はますます入らなくなっていくんじゃないでしょうか。その分野に外国人を一度受け入れてしまったら、その分野はもう外国人に面倒を見てもらう。ますますこれは定着化、それは永住とは結びつかないといっても、その分野は外国人しか入ってくれないわけですから、どんどん定着していくことになっていくと思いますけれども、そのあたりについてどうお考えでしょうか。

和田政府参考人 先ほどもお答えいたしましたが、その分野におきます努力の中で、待遇改善その他によって、外国人だけになるのではなく、日本人についても雇用されるような環境整備を整えていくということが努力される、そういうことの中で、外国人と日本人が同じように働いていくということを実現していく、そういうような観点で考えているところでございます。

源馬委員 それでしたら、今その努力をすればいいんじゃないかなと思うんですが、努力をしてもだめだったから入れるということですよね。もう少しそこら辺、またで結構ですけれども、お伺いをしていきたいなというふうに思います。

 さらに、今ある技能実習制度との関係性について伺いたいと思います。

 技能実習制度の趣旨と今回の特定技能一号、二号の制度の趣旨と、それから類似点あるいは違い、どういったものがあるのかをちょっと端的に改めて教えていただきたいと思います。

和田政府参考人 お答えいたします。

 特定技能一号及び二号に係る新たな受入れの制度は、深刻な人材不足に対応するため、生産性の向上ですとか国内人材確保のための取組を行ってもなお人材を確保することが困難な状況にある産業上の分野において、一定の専門性、技能を有し、即戦力となる外国人材を我が国に受け入れようとするものでございます。

 他方、技能実習制度でございますが、これは、人材育成を通じた開発途上地域等への技能、技術又は知識の移転を図り、国際協力を推進することを目的とする制度でございまして、両制度は趣旨が異なったものでございます。

源馬委員 今回のこの特定技能一号は、技能及び日本語の能力水準について、技能実習を三年間修了したものは試験を免除されるというふうに理解をしておりますが、こういった場合、本人がもし希望すれば、技能実習修了後も特定技能一号として無試験で日本で就労を続けることができるものだと思いますけれども、これは、技能実習制度の、そもそも日本の技術を海外途上国への技能の移転を図るという教育的な制度の意味合いという趣旨と反するものではないかと思いますが、そこはどう整合性をとられるんでしょうか。

和田政府参考人 お答えいたします。

 技能実習生が技能実習二号を修了後、特定技能に移行したということでございますけれども、この場合に、本人が就労目的での在留をした後に、我が国で培った技能などを本国に持ち帰って必要な技能移転を行っていただくということになろうかと思われますので、技能実習制度の趣旨がそれによって没却されるものではないというふうに考えているところでございます。

源馬委員 済みません、ちょっと今のはわかりにくかったんですけれども、技能実習が終わった後に特定一号の資格を更に取って在留期間を延長させてもらうということもあり得るということで、私は、これは本来の、自国に帰ってもらって、そこで日本で得た技術を生かしてもらうという制度とはやはり矛盾するんじゃないかと思うんですけれども、もう一回ちょっと御説明していただけますか。

和田政府参考人 お答えいたします。

 技能実習を終えられた方がどのような形で技能を移転するかというのはさまざまでございまして、特定技能に移られた後に就労された後に帰国されて技能を移転するという形もあろうかということでお答えした次第でございます。

源馬委員 もちろんそういうこともあるでしょうけれども、私は恐らく、長く働けるんだったら、特定技能に移って働くという外国人が多いんじゃないかなというふうに思います。そうすると、やはり、その方たちは本来の制度の趣旨とは反した形になって在留されるんじゃないかなというふうに思います。またこのあたりも改めてお伺いしたいと思います。

 そうなった場合、今の日本の永住者の在留資格というのは、原則として十年以上継続して在留していて、そのうち五年間は就労資格又は居住資格で在留しているというふうになっていると思います。

 今後、この特定技能一号と二号において、一号はマックス五年、二号は延長の回数の上限はないということでしたけれども、あるいは技能実習生も今最長五年いられると思います。こういった技能実習生を、例えば三年なり五年経験して、特定技能一号に移行して、例えば最長五年間やったとして、そうすると、合計十年以上在留したら、そのうちの五年間は就労資格として居住したことと認められることになるのか。つまり、技能実習や、この特定一号、二号での就業期間というのは、永住資格にある就労資格、就労期間の五年間というものに加味されるのかどうか、お伺いしたいと思います。

和田政府参考人 お答えいたします。

 まず、前提として申し上げますが、永住許可につきましては、例えば五年間就労して、十年間引き続き居住した場合に、そのことによって自動的に永住が与えられるという制度ではございませんで、永住許可についての法律上の要件として、素行が善良であること、独立の生計を営むに足りる資産又は技能を有すること、法務大臣がその者の永住が日本国の利益に合すると認めることというこの三つの要件を法律で規定しているところでございます。

 その上で、ガイドラインといたしまして、永住許可に関するいわゆる国益要件の中で、「原則として引き続き十年以上本邦に在留していること。ただし、この期間のうち、就労資格又は居住資格をもって引き続き五年以上在留していることを要する。」このように規定しているところでございます。

 現行制度の運用上、技能実習での在留につきましては、国益要件の十年以上の継続在留には含まれますけれども、開発地域、途上地域等への技能等移転を目的とするものでありますことや、在留期間に上限が定められていることから、就労期間、就労資格による五年間の在留には含めないということで考えているところでございます。

 特定技能につきましては、現在検討中でございます。

源馬委員 わかりました。

 まだいろいろと質問したいんですが、この技能実習との関係についてお伺いすると、先ほどもお話が出ておりましたけれども、失踪者、昨年は七千人以上ということで、ことしも六月までで四千人、昨年のペースを上回る数の失踪者がいるということですが、これを昨年の法務委員会でも質問しましたけれども、いろいろな対策をとるということですが、それでもふえてしまっている。この背景にはどういったことがあるのか、お聞かせをいただきたいと思います。

和田政府参考人 御指摘のとおり、技能実習につきまして、失踪している者が相当数いるということは事実でございます。その中には、高い賃金が得られる就労先を求めて失踪する者、そのほか、厳しい指導が行われたなど受入れ側の問題により失踪する者などがいるということを承知しているところでございます。

源馬委員 時間になりましたので終わりますが、やはりこの背景には、外国人の分母がふえたということもあると思うんですよね。もう少し詳しく、また今度質問させていただきますが、こうしたいろいろな懸念もありますし、外国人受入れがどういった形での受入れになっていくのかという、まだわかりにくいところもあると思いますので、これからも議論を尽くして、皆さんに明らかにできるようにぜひお願いしたいと思います。

 ありがとうございました。

葉梨委員長 以上で源馬謙太郎君の質疑は終了いたしました。

 次に、津村啓介君。

津村委員 尊厳死、安楽死の法制化、終身刑の導入、そして外国人労働者問題、本日は、以上三つのテーマについて質問いたします。

 大臣、まず冒頭伺いますが、尊厳死と安楽死、前者を消極的安楽死、後者を積極的安楽死という言い方もございますけれども、この二つはどう違いますでしょうか。事前の質問通告二問目の肝の部分ですので、ちょっと縮めた質問にしておりますけれども、短くお答えください。

山下国務大臣 まず、安楽死というものの中には、例えば積極的安楽死というものがございます。これにつきましては、一般的に、苦痛の甚だしい死期の迫った方について、その苦痛を軽減又は除去するために死期を早める措置をとる場合をいうものというふうに理解しております。

 そして、安楽死の中の消極的安楽死というものがございますが、これにつきましては、例えば輸血であるとか強心剤の注射を続ければ、延命、命を延ばすことはできる、ただ、これは患者の苦痛の時間を延ばすだけであると考えてこれをやめる場合のように、死期が迫っていて、しかも耐えがたい苦痛のある患者について、患者や近親者の意思で積極的な治療を施すのをやめる、こういったような場合が消極的安楽死だと言われていると理解しております。

津村委員 簡潔な御答弁、ありがとうございます。

 安楽死、尊厳死をめぐりましては、このほかにも、自殺幇助の問題、あるいは医療現場で行われている緩和的鎮静、セデーションのテーマなど、幾つかございますけれども、本日は、焦点を絞る意味で、今大臣が二つに分けていただきました消極的安楽死と積極的安楽死、そのうちの消極的安楽死に当たります尊厳死に絞って議論を進めたいというふうに思います。

 大臣、現在、我が国において、今大臣がお述べになりました延命治療の中止、いわゆる尊厳死は法律で認められていますか。

山下国務大臣 実は、尊厳死という言葉の定義も、必ずしも消極的な安楽死と一致しているかという問題がございまして、例えば、尊厳死につきましては、本人の生前の意思等に基づき、生命維持装置によるほかの延命の道がない場合に、施さないか、取りやめて尊厳に満ちた自然死につかせるものというふうに理解をされております。

 ただ、延命の道がない場合にこれを施さないということが、要は不作為に基づくその死期を早める行為になるということになるのであれば、これはさまざまな、同意殺人であるとか、あるいは例えば自殺関与であるとかということの構成要件に当たり得る可能性はあるということで、慎重な検討が必要であるというふうに考えております。

津村委員 法務委員の皆さん、きょうはプリントをお配りしていますので、よろしければごらんいただければというふうに思います。

 一枚目は、「世界の安楽死を巡る動き」というタイトルになっておりますけれども、こちらは、ことしの秋に、第四十回の講談社ノンフィクション賞を受賞されたこちらの本、「安楽死を遂げるまで」という、今、大変、本屋さんで平積みになっている本ですけれども、こちらの中から参照させていただいたものでございます。

 これをごらんいただきますと、日本では、一九七〇年代、世界の潮流にほぼ平仄を合わせるように、安楽死あるいは尊厳死の議論がスタートをしております。

 しかしながら、九一年の東海大学の事件、九六年、九八年と、安楽死あるいは尊厳死をめぐる医療現場での幾つかの事件がございまして、残念ながら、その後、この議論はタブー視をされるようになっております。

 そうした中で、厚労省が二〇〇六年の富山県での事件をきっかけに動きをしまして、終末期医療の決定プロセスに関するガイドラインを作成、〇七年のことであります。ここに書いてありますように、消極的安楽死については容認の方針ということで一般的には理解をされているところでございます。

 ただ、幾つか問題点がございます。

 確かに、この二〇〇七年の厚労省のガイドラインが策定されて以降、延命治療の中止によって医師が刑事責任を問われた事例は起きていません。

 しかしながら、一つは、このガイドラインの中身が、判断の手順を示すという体裁になっておりまして、刑事免責の要件が必ずしも明確ではないこと、それから、厚労省のガイドラインということですけれども、医療現場では、例えば、消防庁に所属している救急隊員の方々が、DNARといいますけれども、患者やあるいは家族の意向によっては、心肺停止状態のときに心臓の蘇生装置をつけたくない、つけないでほしいという意向を示す患者については、DNARというのは蘇生措置をしないという意味ですけれども、そういう判断をする場合もございます。

 しかし、その救急隊員の方が、では、厚労省のガイドラインを見るのかという、所管官庁として、そもそも殺人罪という重罪の刑事責任の範囲を示すわけですから、厚労省のガイドラインで判断しろというのは、余りにも法務省としては無責任といいますか、罪刑法定主義の観点からも問題があるのではないかと思います。

 立法府である国会で正面から議論して、これは法的な位置づけを明確にすべきだと思いますが、大臣、いかがですか。

山下国務大臣 お答えいたします。

 まず、津村委員から、「世界の安楽死を巡る動き」という資料を拝見いたしましたが、これにつきましては、先ほど私が申し上げた積極的安楽死と消極的安楽死、これを二つを合わせているのではないかというふうに考えております。

 例えば、東海大学の医学部付属病院については塩化カリウムを注射する、あるいは、川崎協同病院事件では……(津村委員「経緯は聞いていません」と呼ぶ)ということで、このように、事ほどさように、安楽死の定義というものは難しいわけでございます。

 そして、御指摘のガイドラインというのは、厚労省において策定された人生の最終段階における医療・ケアの決定プロセスに関するガイドラインのことをされておられるというふうに考えておりますが、これは、このガイドラインに記載されておるように、人生の最終段階を迎えた本人、家族と医師を始めとする医療・介護従事者が最善の医療ケアをつくり上げるプロセスを示す目的で作成されたものでございます。したがって、その目的に沿うように、人生の最終段階における医療ケアのあり方や医療ケアの方針の決定手続について記載されているものというふうに承知しております。

 だとすれば、このガイドラインというのは、刑事上の責任とは別途の観点から作成されたものであると承知しており、その内容について、刑法を所管する大臣として、罪刑法定主義の観点から問題が生じるのではないかということについて、その問題が生じるということについては、これは目的が違いますから、所管も違いますから、思ってはいないということでございます。

 尊厳死につきましては、これが法的に認められるかどうかを含め、医学あるいは道徳、宗教、倫理観等々、深く密接にかかわる本当に難しい問題でございます。刑事責任の存否という刑事法の側面だけを取り上げて一面的に論ずるということは適当ではないのではないか。その意味で、幅広い観点から議論され、広く国民のコンセンサスを得るべきであるというふうに考えております。

 したがって、法務省といたしましては、国会での御議論も含めて、さまざまな議論の動向を注視してまいりたいと考えております。

津村委員 大臣に二つ伺いたいと思います。

 一つは、この厚労省のガイドラインが、厚労省自身が行った意識調査において、医師の三三・八%、看護師の四一・八%、介護施設職員の五〇・二%がこのガイドラインの存在を知らないということであります。

 今大臣は所管じゃないので関係ないというような御答弁をされましたけれども、こうした、これまで、刑事責任を問われたケースも現にある非常にデリケートなテーマについて、刑法所管官庁としての法務省の見解が明らかでないために、事実上、この問題に目を背けている医療現場の方は大勢いらっしゃって、このガイドラインのことも知らない、そして、非常に延命治療の中止というのは危険なことだ、法的リスクがあることだということで、そもそもそういう対応をしないというお医者さんもたくさんいる。医療現場が非常に混乱していると思うんですね。そのことについては、やはり法務省として見解を示すべきだと思いますけれども、いかがですか。

山下国務大臣 先ほど委員からお叱りを受けましたが、先ほども申し上げたように、刑事責任を問われている事例においては、例えば、作為に基づく積極的安楽死ではないかというふうに認められる事例もあるところでございます。

 このように、犯罪の成否というのは、個別具体的な事案に応じて、収集された証拠に基づき、捜査機関や裁判所により判断されるべき事柄でございます。

 御指摘のガイドライン、これはあくまで、人生の最終段階における最善の医療ケアをつくり上げるプロセスを示すために厚生労働省が作成したものでありまして、刑事上の責任とは別途の観点から作成されたものであるということでございます。

 したがって、法務省において、犯罪の成否について、本当に個別具体的な証拠関係や法律関係、状況によって異なる中で、御指摘のような見解をお示しすることは適当ではないというふうに考えております。

津村委員 この尊厳死、安楽死の問題といいますのは、一九〇七年に刑法ができた当時には想定されなかった状況に対してどう考えていくかという問題だというふうに思います。

 二十世紀後半以降、医療、医学が飛躍的に進歩した。そのことによって、かつてなら自然死をしていたはずの患者の方が、本人の意思に必ずしも関係なく、人工的な生命維持装置で長期にわたって寝たきりの形で延命することが技術的に可能になった。そのことによって、患者や家族の方々が心身に大変な苦痛を覚え、人の尊厳が問われるような状況が近年になって生まれてきた。そのことに先進諸国がどう対応していくか、そういう問題なんだというふうに思います。

 そう考えたときに、日本は世界で最も医療が進んでいる、あるいは世界で最も高齢化が進んでいる、まさにこのテーマに最も真摯に向き合うべき使命と資格を持った国ではないか、私はそう思うんです。

 実際に、これは自民党さんの、一枚めくっていただくと、九月の毎日新聞ですけれども、終末期医療のあり方について党内で議論をお始めになって、場合によっては来年以降、新法の整備をということも議論されているわけで、これはまさに党派を超えて議論するべきことだとも思いますし、私ごとですけれども、ことしの八月の国民民主党代表選挙で私がこの尊厳死、安楽死の法制化について触れさせていただいたのも、これから少子化、高齢化、多様な価値観の共生といった日本社会の新しいありように即した新しい日本人のライフスタイルというものを私たちの世代が、来年には平成の御代も終わります、新しい時代を私たちの世代で、新しいルール、そして新しい答えをつくっていく、その非常に重要なテーマかな、そんな思いでこの議論を取り上げさせていただきました。大変重く深いテーマだと思いますので、これからも繰り返し取り上げさせていただきたいというふうに思います。

 次のテーマに移ります。死刑制度と終身刑の導入についてということであります。

 ことし、オウム真理教の死刑囚の方々の死刑が執行されました。大変大きなニュースでもあり、世界的にも注目をされたところだと思います。実際、先月ですけれども、超党派でIPUという、万国議会同盟ですか、に参加をさせていただきましたが、イギリスの代表団の方々と日本の議員代表団のバイの会談で最初に聞かれた質問が、なぜ日本は今も死刑を存続しているのかということでありました。

 オウムという事件は非常に大きなテーマで、私は死刑制度自体は維持していくべきものという現在立場ですけれども、しかしながら、執行の状況でありますとか、あるいは無期刑、あるいは終身刑、そういったものも緻密に議論していくべき時期に来ているのではないかと思います。

 再来年ですか、国連の刑事政策に関する会議が日本で行われるという中で、日本が場合によっては人権の面で何をやっているんだというふうにお叱りを受けかねない状況だと思っていまして、少し議論をさせていただきたいと思います。

 このプリントをもう一枚おめくりいただきますと、四ページ目ですけれども、こちらは昭和三十年代からの死刑の確定人数を書いたもの、判決の方ですけれども、昭和三十年代から四十年代にかけては毎年二十人前後の死刑が確定していますけれども、その後、一人とかゼロとか、昭和の末期から平成の初めにかけては一桁がずっと続きます。しかしながら、平成の十五年、十六年ごろからまた死刑の確定人数が大幅にふえまして、十年ほどそうした状態が続いて、また大きく減っている。

 これは、犯罪の件数も年によっては倍近くふえたり減ったりすることはあるんですけれども、それにしても死刑確定の数の波が大きいな。とりわけ、平成の二十年前後、大きな死刑確定の数がふえている時期があるんですけれども、大臣、こうした死刑の基準といいますか、そうしたものは時期によって大きく変わるものなんでしょうか。そういうことがあり得ると思いますけれども、だとすれば、どういう理由でこの死刑の数がある時期大きくふえて、またその後で大きく減っているのでしょうか。

    〔委員長退席、石原(宏)委員長代理着席〕

山下国務大臣 死刑と申しますのは本当にまことに厳粛な刑罰でございます。そして、個々の死刑判決、これにつきましては、裁判所において、個々の証拠関係あるいは事件の経緯、犯行状況等を踏まえまして子細に検討した上で、それぞれの個別の判断をしているということでございます。だとすれば、御指摘の人数につきまして、これは裁判所における個々の判断の集積ということでございます。

 この裁判所の個別の判断につきまして、法務大臣としてお答えする立場にないということを御理解賜りたいと思います。

津村委員 個別の事案について聞いているわけじゃなくて、マクロ的な刑事政策の動向について私は分析を一緒にさせていただきたいということを申し上げているんです。

 もう一つの資料、一枚おめくりいただきますと、無期刑、無期懲役の方々が仮釈放される事例があります。

 仮釈放が安易にされるのであれば、やはりそれは被害者感情からして死刑にするべきだと。この無期刑の仮釈放と死刑というのはある意味では非常に近い関係にあるわけですけれども、ごらんいただきますとわかりますように、仮釈放された方の平均受刑在所期間、何年刑務所にいたら仮釈放されるのかという数字をごらんいただきますと、平成の初期は十九年とか十八年とかで仮釈放されている。しかし、その後、二十年以内に仮釈放された方は平成十四年を最後におりませんで、現在では、平均受刑在所期間は三十年を超えています。三十五年という年もあります。

 つまり、今、日本の司法で起きていることは、死刑の確定の数が、ある時期、平成二十年ごろから減少してきている。その一方で、無期刑の方々の仮釈放は厳しくなっている。そういう形で死刑を、死刑から無期懲役、あるいは事実上の終身刑にシフトしてきているというふうに読めなくもありません。実際に、谷垣法務大臣は、この死刑の問題、終身刑の問題についての御答弁の中で、無期刑の仮釈放の期間が延びているということについて言及もされています。

 大臣は、死刑制度のこれからについて、これは一つ私からの提案ですけれども、死刑制度自体は、国家転覆とか内乱罪とか殺人罪以上に重たい国家としての刑罰があっても、これは一つの判断だと思いますし、私自身も死刑制度を今直ちに廃止すべきと考えておりませんけれども、国際社会の潮流あるいは現在の刑事政策の変遷を見ても、私は、死刑の執行を極めて抑制的に運用しつつ、仮釈放の在所期間の長期化あるいは終身刑という制度の導入についても考えていくべきだと思いますが、大臣、いかがでしょうか。

山下国務大臣 多くの御指摘をいただきました。

 まず、死刑というのがマクロ的な経済政策に基づいて分析が可能かという点に関しては……(津村委員「経済じゃないですよ。経済政策と言っていない」と呼ぶ)刑政ですね、失礼、刑事政策を縮めて刑政と言うものですから。刑事政策に基づいてやるかという御指摘につきましては、これは、先ほども申し上げたように、死刑というのはまことに厳粛な刑罰であり、非常に重大な犯罪に対して裁判所が慎重の上にも慎重な審議を重ねて判決を下しているということで、マクロ的分析になじむかというと、私はそうではないのではないかというのを法曹実務家として感覚を持っているところでございます。

 そして、無期刑の仮釈放の平均在所期間につきましても、これも仕組みをまず御説明させていただきますと、受刑者の仮釈放を許すか否かについては、地方更生保護委員会の専権に属しているわけでございます。個別の事案ごとに三人の委員から成る合議体が、仮釈放の許可基準に照らして、改悛の状であるとか改善更生の意欲等を考慮して判断しているということでございます。

 無期刑受刑者については、その仮釈放の判断については、法務大臣の権限から独立した合議体により、仮釈放の許可基準に照らして個別の事案ごとに特に慎重かつ適正に行われているというふうに承知しております。

 そうだとすれば、お尋ねの無期刑仮釈放者の平均在所期間につきましても、地方更生保護委員会による個々の事案についての慎重かつ適正な判断の積み重ねの結果ということでございます。

 そうしたことから、法務大臣としてコメントすることは差し控えたいと思います。

 そして、終身刑、つまり、仮釈放なき終身刑についての御提言がございました。

 この仮釈放のない終身刑というのは、裁判の段階でおよそ仮釈放の可能性はないということで言い渡すことになりますが、現行刑法の刑罰体系、これは、特に無期刑に関しては、行刑の段階で仮釈放の当否を審査する、要は、行刑の効果を見ながら審査する仕組みとなっているということで、その根本的な仕組みが違うということになります。

 そして、仮釈放のない終身刑について、刑事政策の研究者、この文献などを見ますと、社会復帰の可能性がおよそない自由刑は、生きながらにして人を殺すに等しく、死刑よりもむしろ残酷であるとか、社会復帰に向けた処遇という概念が成り立たず、純粋な隔離にならざるを得ないため、矯正の現場が困難に陥るといった批判や指摘が存することであるということでございます。

 そうした指摘を検討しながら、これは刑罰のあり方の根幹にもかかわるものでございます。今後、幅広い議論が行われていくことが望ましいというふうに考えておりますので、それを見守ってまいりたいと思います。

 そして、死刑の執行の慎重化について、これは御提言がございました。

 もとより、死刑の執行については、申し上げるまでもなく、死刑は人の命を絶つ極めて重大な刑罰でございます。その執行に際しては慎重な態度で臨む必要があるものと考えております。ただ、それと同時に、法治国家においては、確定した裁判の執行が厳正に行われなければならないということも言うまでもないというところでございます。

 こういった死刑の判決というものにつきまして、極めて凶悪かつ重大な罪を犯した者に対し裁判所が慎重な審理を尽くした上で言い渡したものということの上に立って、法務大臣としては、裁判所の確定した判断を尊重しつつ、法の定めるところに従って慎重かつ厳正に対処すべきものであるというふうに考えております。

津村委員 私は、国際的な潮流の変化、そしてオウム事件のその国際的な受けとめ、国内の受けとめも含めて、現実的な刑事政策の見直しを御提案したつもりでしたが、大臣からは、現在の制度の仕組み、現状追認的な制度の御説明に終始されたことは、大変残念であります。

 改めて申し上げますが、死刑の執行については、私は、死刑制度を維持しつつ、通常犯罪については執行を停止するということを国際的にもわかる形で宣言をされ、終身刑を導入する、あるいは、現在の無期刑のまま運用を続けるのであれば、仮釈放について今以上に慎重にしていくべきということを御提言申し上げまして、次のテーマに移ります。

 外国人労働者問題、これから長い時間をかけて慎重に議論しなければいけないところですけれども、まず冒頭、大臣に苦言申し上げたいと思いますが、大臣は、参議院での質疑の中で、四万人という、ひとり歩きしているということかもしれませんが、数字について、今後精査をして、受入れの規模について御答弁をされるということをおっしゃった中で、法案の審議に資するようしっかり出すという言い方をされました。

 しかし、もう間もなく、法案審議が始まろうとしておりますけれども、この四万人にかわる数字というのは出されていませんよね。その状態で審議に入るということであれば、法案の審議に資するようしっかり出すというお言葉がうそになってしまいますけれども、いかがですか。

    〔石原(宏)委員長代理退席、委員長着席〕

山下国務大臣 参議院予算委員会に関する私の発言でございますが、この受入れに関する法案あるいは法務省設置法に関する法案、この審議に資するように速やかにお示ししたいという思いに変わりはございません。

津村委員 その思いじゃなくて、形で出してくださいよ。

山下国務大臣 受入れの数については、現在、業所管省庁においてその見込み数を精査しているところでございます。その上で、今後、法案審議に資するよう速やかにお示ししたいと考えております。

津村委員 法案審議、始まっちゃうんですよ。その前に出さなきゃ意味ないじゃないですか。

山下国務大臣 重ねてまことに恐縮でございますが、この法案について審議、そしてこの法務委員会における審議に資するように、しっかりとそうした規模感がわかるようなことをお示ししたいと考えております。(津村委員「ちょっと、済みません、理事の方、整理してください。速記をとめてください」と呼ぶ)

葉梨委員長 では、速記をとめてください。

    〔速記中止〕

葉梨委員長 速記を起こしてください。

 山下法務大臣、資するというのはもう既に答弁をされておりますので、具体的にどういう形で資するのかということを、ちょっと補足的にも答弁をしていただきたい。

山下国務大臣 まず、法案審議に資するということにつきましては、法案の全体像をお示しして、そして、この法務委員会におきまして審議が具体的に始められますれば、その審議においてしっかりと御検討をいただけるように、しっかりとした規模感、それをお示しするようにさせていただきたいと考えております。

津村委員 法務委員会だけじゃないはずですよね。衆議院の本会議で、この後、総理が答弁になる、その質問をきのうじゅうに質問通告しなきゃいけなかったんですよ。もう法案の審議のプロセスは始まっているんです。法務委員会の質疑のことを聞いているんじゃないんです。きょうのこれからの安倍総理と諸先生方の質疑に間に合っていないということを問題視しているんです。なぜ間に合っていないんでしょうか。

山下国務大臣 この見込み数につきましては、これは、業所管庁、これがしっかりと、人手不足の深刻さ、それを踏まえて、そして、国内人材確保の観点あるいは生産性の向上の観点をしっかり見きわめ、そしてどの程度であるかということを精査した上でなければということでございます。

 そして、今その精査の作業ということを業所管庁においてやっているところでございまして、その見込みが得られ次第、この法案審議に資するよう、速やかにお示ししたいということでございます。

津村委員 今大臣は業所管庁、業所管庁と何度もおっしゃいましたけれども、大臣が法案の審議に資するようしっかり出すとお述べになったにもかかわらず、このタイミングで数字を出してきていない業所管庁があるという意味ですか。

葉梨委員長 山下大臣、質問時間が終わっておりますので、手短に。

山下国務大臣 いずれにせよ、今、業所管省庁において、その見込み数を精査しているところであるということでございます。

津村委員 数字を出してきていない業所管庁はどこですか。

葉梨委員長 時間が終わっておりますので、もう簡潔に。(津村委員「ちゃんと答えなかったらとめてください」と呼ぶ)いやいや、答えるって。

山下国務大臣 ですから、業所管庁において、その見込み数を精査しているということでございます。(津村委員「どこですか。どこですかと聞いているんです」と呼ぶ)

葉梨委員長 速記をとめて。

    〔速記中止〕

葉梨委員長 速記を起こして。

 山下法務大臣。

山下国務大臣 今現在、いずれの業所管庁においても、この見込み数を精査しておるところでございまして、整い次第、法案審議に資するように提出させていただきたいということでございます。

津村委員 大事なテーマですので、私の質問時間はこれで終わりますので、ほかの法務委員の先生方、ぜひこの後も厳しい追及を続けてください。

 大臣、厳しいやりとりもさせていただきましたけれども、私は大臣と同じ選挙区の人間でありまして、ふだんはライバルでもございます。しかしながら、同郷の同世代の政治家がこうして国務大臣になられて、非常に重要な国策について議論をされているのは非常にすばらしいと思いますし、御活躍にエールを送りたいと思います。

 そんな思いもあって、私は、私たちの世代がこれから向き合っていくべきテーマとして、尊厳死でありますとか、あるいは死刑制度でありますとか、幾つかの問題提起をさせていただきました。政府を批判する趣旨ではなくて、一緒に考えていきましょうという問題提起であります。ぜひ受けとめていただきまして、これからも活発な議論をさせてください。

 終わります。

葉梨委員長 以上で津村啓介君の質疑は終了いたしました。

 次に、黒岩宇洋君。

黒岩委員 無所属の会の黒岩宇洋です。

 山下大臣におかれましては、政務官から引き続き大臣ということで、三期目の大臣ということですから、非常に大抜てきだということは、私も、年は一つ違いますけれども、同世代として大変期待をしております。

 また、法務大臣は近年、比較的、ある程度の経験者といいますか、年齢も経た方がなられていますので、そういう意味では、五十代が若いとは申しませんけれども、法務大臣にしては若いその立場で、さまざまな、維持する政策を進めることも大事ですし、また、改革すべきは改革していっていただきたいと思っております。

 今回また、外国人を受け入れるという、大変この国の形を変えるような大きな法案ということで、私、質問通告はあえてしていないんですけれども、きょう午後、本会議に立ちますので。ただ、今の流れで、幾つか本会議質問の前にやはり確認をしておきたいので、大臣、答えられる範囲で答えていただきたいんです。

 特に、外国人の受入れの見込み数について、大臣が、参議院の予算委員会でも、四万人規模という報道が出ている、これについての内訳についても、繰り返しになりますが、委員会質疑でも、これは我々にとっては本会議質疑でも同じですので、資するように近日中に出していくという中で、今、各省庁が見込み数を精査しているという答弁でした。

 これは、今、各省庁から要望のあった十四業種ということになっていますけれども、まず、業種と我々が使っております、法律では分野になりますけれども、この分野の定義というものは一体どうなっているのか。これは各省庁ごとなのか、それとも法務省としてしっかり定義があるのかどうか、この点について教えてください。

山下国務大臣 分野につきましては、これは改正法の案にもございますように、分野別運用方針というのを定めることになっておりまして、その分野につきましては、業所管庁、それと法務省、さらには関係省庁、厚労省であるとか外務省、国家公安委員会など、そして関係閣僚の皆様とやって最終的にこの分野別運用方針が決まる、こういうことになります。

黒岩委員 大臣、ストレートに答えていただいて。不確定なら不確定でも結構なんですよ。

 私が申し上げているのは、今我々が通常使っている、業種という言葉を使っています。これは法務省のペーパーでも、今、各省庁から上がっている十四の業種という言葉を使っています。ただ、これは法案上は業種という言葉ではなく分野なんですけれども、この業種又は分野というものが、これが法務省として、各省庁に通則的な定義としてあるのかどうか、この点をお答えください。

山下国務大臣 ありがとうございます。

 分野の考え方につきましては、この基本方針においてどのような定義にするのかということで定めるということになります。これは閣議決定される基本方針でございます。

黒岩委員 ですので、今時点では業種の定義すらないということでよろしいですよね。

山下国務大臣 今、十四業種について、各所管省庁から深刻な人手不足であるということで出されているところでございます。

 そして、それをさらに、分野ということで、産業上の分野、人手不足が深刻な分野ということでの規定に関しては、この業種とは異なる概念だということでございます。

黒岩委員 一個一個確認しますけれども、今おっしゃった、大臣の言う基本方針に定められる分野、この定義はまだ決まっていない。そして、今各省庁から上がっている業種と分野は異なる。この二点、確認ですけれども、この理解でよろしいですね。

山下国務大臣 御指摘のとおりでございます。

黒岩委員 大臣、そうしますと、今、受入れの見込み数と言っているんですけれども、厳密に言うと、その分野すらまだ定義が決まっていない、そういうたてつけなんですよね。そんな中で、今、どうやって各行政所管庁に、業所管庁に精査をさせているのか、どういうやりとりをしているのか、その点について具体的に教えていただけますか。

山下国務大臣 まず、分野の定義につきましては、法律案におきまして、人材を確保することが困難な状況にあるため外国人による不足する人材の確保を図るべき産業上の分野として法務省令で定めるものをいうというふうに記載しておるところでございます。

 そして、業種の中でどのように分野を切り分けるかということに関しては、このような、先ほど申し上げたような人材の確保を図るべき産業上の分野としてどういうものがあるのかということで、関係各省庁との協議の上で決まるということでございます。業種全体にわたって人材不足が発生しているのかというと、そうではない分野もあり得るということでございます。

 そして、今その受入れ人数の規模感を示すためにお示ししようとしているのが、結局、この制度を運用するに当たって、一体どれだけの、特定技能一号あるいは特定技能二号、新たな在留資格に基づく外国人が入ってくるのかということをやはりお示しする必要があるんだろう。そういった規模感をお示しする中で、今現在、十四業種というところがそれぞれ受入れを希望しているというところで、この十四業種ということでの総体ということで、受入れの人数の規模感をお示ししようというふうにしているわけでございます。

黒岩委員 大臣、非常に複雑な法のたてつけなので、そこを整理して説明いただくと私どもにわかりやすいんですが。

 今大臣がおっしゃいました、確かに、個別具体的な分野名、これは名ですよ、定義ではなくて、分野名は法務省令まで落とし込まないことには出てこないんですね。今我々、通常、介護だとかクリーニングだとか造船だとかいうのを一般用語として業種と言っていますけれども、これが正式に分野の名称になるには法務省令まで落とし込まなければ、何が対象分野か、名称がわからない。

 問題は、私が申し上げているのは、その前の、分野の定義はどうなんですかと私は申し上げました。これは、今大臣もおっしゃった、政府の基本方針に書き込まれるまでは分野の定義すらまだ決まっていなくて、結局は、今各省庁が、各府省庁の理解というか、自分たちの理解でこういう業種ですよと上げてきている、こういう段階ですよね。

 こんな中で、どこまでのことが、大臣も精査精査とおっしゃいます、私はかなり概括的なものしか出ないと思っているんですが、精査しているという限りには、かなり正確に受入れ人数が出てくると私どもは理解してよろしいんでしょうか。

山下国務大臣 まず、受入れ人数につきましては、規模感をお示しするために、しっかりとした今精査をしているところでございます。

 そして、分野に関しましては、例えば、一定の業種に属するからといって、そこの業種に属する職種が全て人手不足かというと、そうではない場合もあり得るわけです。

 この受入れ資格に関しましては、真に、要するに、生産性向上をやり、そして国内人材の確保もやり、それでもなお足りない、深刻な人材に悩む産業分野であるということをやはり認定する必要があるということでございます。その正式な認定がなされるのは、やはり法務省令であるということになるわけでございます。

黒岩委員 そうなんですね。そのたてつけというか、流れは私も理解をしております。

 だからこそお聞きしたいんですけれども、今、法務省は入管局だと思いますけれども、じゃ、どの部局のどの役職の人が、今十四業種、これは各省、例えば宿泊とか建設になれば国交省に複数あるわけですけれども、この分野ごとの今言った見込み数をどうやって精査しているのか。各省庁に丸投げでしているわけではないと思うんですね、ないと思うんですよ。どういう手順、どういった体制で今精査をしているのか。丸投げで、各省庁、上げてこい、これは今の大臣のおっしゃっているたてつけからしてもあり得ないし、あってはならないわけですから、どうやって精査の手順を踏んでいるのか、この点をお聞かせください。

山下国務大臣 精査の手順につきましては、これは入管法改正でございます、入管局を挙げてやっているということで、その精査の責任者は、入管局においてはもとより入管局長でございますので、精査の詳細については、可能であれば、入管局長をお呼びいただいて質疑の機会を与えていただければと思います。

 そして、もとより法務省といたしましては、これは法務大臣である私が責任者ということでございます。

黒岩委員 そうですね。通告もしていないですし、担当局長も呼んでいないので。

 あと、わかる範囲で確認したいんですけれども、私も、実はきょう法務委員会の理事会で、この見込み数について、じゃ、いつまでに出るのかというやりとりをしております。これは大臣の耳にも入っていると思いますけれども、あすの昼までにこの見込み数が出てくるという答えが返ってきているんですけれども、これは大臣、それでよろしいですか。

山下国務大臣 今のお話は、恐らく理事会におけるお話なんだろうと思っております。この委員会の理事会における御判断につきましては、我々法務省としても真摯に受けとめたいというふうに考えております。

黒岩委員 そうですね。政府としても、立法府のこの方針といいますか要請については真摯に受けとめていただきたい。

 今、大臣、真摯に受けとめるとおっしゃった限りには、やはり今、法務委員会の理事会では、筆頭間協議でありますけれども、あすの昼までには、この見込み数、この数字をしっかりと、しかも十四業種ごとに内訳を出して、そして総数を出すと私どもは打ち返していただいております。これについて、法務省としても真摯に応える、すなわち十四業種ごとにしっかりとした数字を出していくという理解でよろしいでしょうか。

山下国務大臣 いずれにせよ、行政府といたしましては、委員会の理事会での御決定、これについてはしっかりと対応させていただきたいと考えております。

黒岩委員 さっき大臣が法のたてつけについて触れられたんですけれども、私は、このたてつけに大変不信感というか違和感を持っております。

 これは時系列でいいますと、きょうこの後の本会議で私あれしますが、法案を成立させる。私も条文をみんな読みましたけれども、非常にこれは概括的なものですよね。そこまでは国会で審議します。

 その後に、閣議決定で政府の基本方針を決める。これは、各省庁の一般的、通則的な、じゃ、労働力の不足とはどういったことを指すのかという一つの基準が示される。

 その次に、関係閣僚会議、これは防衛大臣を除く全ての府省庁の閣僚が入っているわけですし、議長は山下大臣でありますので、官房長官と法務大臣になりますので、これは会議の司会なのかな、でも、議長は多分、法務大臣と官房長官になりますので。その中で、今度は個別の分野について、各省庁ごとと言ってもいいんですけれども、その受入れの、労働力不足の基準又は、これは技能水準もここで運用方針でしっかりと決めていくわけですよ。恐らく、今回は、受入れがこれだけで、そこに達する技能水準の人がこれだけ要る、ここまでは僕は出せないと思いますよ。恐らく、労働力不足というところだけで見込み数を出すんだと思いますけれども。

 それにしても、今言ったたてつけの段階でいいますと、法案が成立した後に、その後に政府基本方針で各省庁にまたがる通則的な判断基準を示し、その後に今言った運用方針、これも厳格に言いますと、規制省庁側、法務大臣と外務大臣と厚労大臣と国家公安委員長、この四人と、そして例えば、国交省なら国交省の大臣の五人で話し合って決めていく。ただし、あらかじめ、防衛大臣を除く関係閣僚会議全ての人たちの了解も得るという、これだけ、この後に法務省令に落とし込むわけですから、いわば四重層になっているわけですね。法案、閣議決定、関係閣僚会議決定、そして法務省が定める省令と。

 これを私はたてつけとしてずっと入管局からの説明を聞いていましたので、なかなか今まで、じゃ、規模はと言っても答えられないのはある意味仕方ないのかなと思っていたんですけれども、あすになって十四分野ごとに出すという、これは逆の意味で、本当に出せるのか。今言った閣議決定や関係閣僚会議の決定をすっ飛ばして、どういう形で規模感が出るのか、大変不思議なんです。

 ですから、今お聞きした、どういう作業で、大変大きなステージをある意味抜かして、そして実務的な数字だけ出てくるのか。この素朴な疑問に、大臣、答えていただけませんか。

山下国務大臣 お答えいたします。

 まず、法律のたてつけの問題と、そしてまた受入れの規模感を示す受入れ人数の数字について、これは二つございます。

 まず、法律のたてつけについては、法律が決まった後に、これで例えば閣議決定に基づく基本方針が決まり、分野別の運用方針が決まる。そして、省令につきましても、例えば、七条で言う上陸基準省令などでさまざま定めるということも落とし込まれていくわけでございます。これが正式な法律のたてつけでございます。

 他方で、今回、法案審議に資するために提出させていただくということについて、理事会の御決定がありますれば出させていただきたいと申しますのは、それぞれの受入れの、要するに規模感ということで、どれだけの外国人の方が新たな入国資格で、在留資格で入ってくるのかということを示す、それをお示しさせていただきたいということでございまして、法律上、しっかりと分野別で決まるというところは、これはやはり法律の授権がないとできないものですから、法律の成立がないとできません。

 しかしながら、審議に資するために、実際にこれは受け入れられる規模なのかどうか、それに対して法務省の、例えば今回の改正法案について、これにしっかり対応できる体制なのかどうか、そういった審議をしていただくために、その受入れの規模感というのをお示しするということでございます。

黒岩委員 恐らく、外国人の需要までは落とし込めないと思いますよ。

 少なくとも労働力不足数でしょうね。これは求人倍率と現実の労働の必要人数ということの比較等で出していくんだ、そういったことを各行政所管庁の方に投げているんだということだと思いますので、それはそれとして、規模感として承りたいと思いましたし、私、午後の登壇でこういったことが中身に含まれていますので、これもきっちり今後議論していきたいと思っています。

 私、入管法自体のたてつけ、もともとの、今回ではないですけれども、これははっきり言って、さらっとしたものなんですよ。だって、在留資格を書き込むというだけで、それについての非常に技術的で実務的なことは省令に落とし込むというものだったんですけれども、今回、私は、入管法自体の特性を悪用したとは言いませんが、悪用したとは言いませんけれども、この入管法のたてつけに更に複雑なものを入れ込んだ。だから、先ほど申し上げた、閣議決定を間に入れて、関係閣僚会議決定も間に入れて、そして省令まで入れる、こういう形になってしまった。結果として、大変わかりづらいものになってきたわけですね。

 骨太方針が六月に出て以来、何せ、業種にしたって五業種がばあんと報道されたり、いきなり五十万人が出てきたり、途中で十四業種になったり、それから二十五万人になったりと、とにかくいろいろな数字は躍るけれども、私たちは中身を聞いても、実は今のたてつけのせいで、一切、閣議決定もしなければ何もわからないんですよ、こういう説明を聞かされてきたわけです。

 大臣、大丈夫です、これは指摘ぐらいで終わらせますので。

 ですので、私は、こういった入管法の特性と、更にそこに複雑に書き込んだ形によって、結果として非常に、外国人受入れ制度だけじゃなくて、私どもの本当に国の労働市場や産業構造すらも変えていくような、そんな制度を、実質的な議論がこれからできていくのかということに大変懸念を持っておりますので、その点は、大臣としても政府としても、しかと受けとめていただきたいと思っております。

 それで、大臣、入管法というのは歴史もありまして、その都度その都度変更されてきた、そういった内容だと私も理解をしております。

 戦後の黎明期のころは私はわからないんですけれども、例えば、私、一九九〇年、これは完全にバブルの全盛期のころ、たまたま原宿の路地裏に居候住まいをしておりました。そのころは、代々木公園に行くと、多くの中東からの外国人があふれ返っていたんですね。実際に労働力として働いていたというのは、これは紛れもない事実です。

 ただ、不正で入国してくる、就労する人たちもふえてきたということで、一九八九年の入管法改正で、特に中東のある国の方たちが、今まではビザなしで来れたものが、ビザが必要になった。

 結果的に、あぶれて、なかなか職がないということで、代々木公園、そして上野公園、これはもう本当に中東の方たちであふれていましたよ。聞けば、本国ではブローカーがいて、パスポートをある程度のお金で渡す。加えて、原宿と上野、この二つだけの単語を聞いて本国から来る。それで、成田からこの二つの単語を頼りに、原宿なら代々木公園、上野なら上野公園に行くと、もう同胞が待っていて、住まいから、そして仕事まで世話をする、こういうシステムになっていたということを聞いております。

 それが、いざバブルが崩壊して、それまであふれ返ってきた代々木公園には、扉が閉ざされて、そして、五つか六つの言語で立入禁止と。日本人も立入禁止になった。

 こういったことを国内外から見て、日本人というのは、どうしても景気や経済優先なんだなと。本来、労働力というのは、これは物ではない、人がやってくるわけですから、いざやってきたときに、どうやってその人たちと共生していくか、こういったことに対してやはり配慮が足りないのではないかとずっと言われてきました。

 現在の技能実習生にもこの負の側面があると言われていますし、現実に、私たちも、技能実習生の、非常に生活や雇用環境の処遇が悪い方たちの話を聞いても、そのような部分があると思っています。

 ですので、ここから大臣の見解を求めたいんですけれども、やはり継ぎはぎで、その場その場の経済や景気状況で、労働力不足を克服しなければいけないのは我々もよくわかっているんですけれども、そのことと外国人という人を受け入れることの法的な制度の整合性をしっかり合わせていくということが、私は今の時代、大変重要だと思っているんですよ。その辺について、私は、山下大臣に本当に蛮勇を振るっていただきたい。

 このことを改めてお聞きしたいので、大臣の決意も、これから本当に、午後、登壇しますけれども、改めて、大臣、所信質疑ですので、示していただきたいと思います。

山下国務大臣 黒岩委員、ありがとうございます。同じ世代、同じくする者として、御指摘の光景、目に浮かぶものでございます。

 そうした中で、法務大臣を拝命いたしましてぜひやらせていただきたいのが、一方で、やはり今、二百六十万人も日本に外国人がおられる。そしてさらに、この法案を認めていただけるのであれば、我が国において働いてくださる方、力をかしてくださる一定のスキルを持った方がふえるんだろう、こういうふうに思っております。そうした中で、多文化共生社会、オリンピック・パラリンピックの競技大会も控える中で、日本でしっかりと実現したいという思い、これはございます。

 ただ、他方で、法務大臣として、例えば、先ほど御紹介した入管法七条における、我が国の産業及び国民生活に与える影響その他の事情を勘案して法務省令などを定めて運用しなければならない、そのこともやはり考慮しながら、その両立をしっかりと図ってまいりたいというふうに考えております。

黒岩委員 ありがとうございます。

 経済界からも強い要請が上がってきているのもわかります。私のもとにも届きます。また、地方も、農業や建設現場からも、本当にこのままでは産業自体がもたないという声も聞いております。この部分を我々は決してないがしろにするつもりはありません、大変大事です。

 と同時に、くどいようですけれども、AIとかITとかではないわけですから、やはり人の力をかりる限りは、そこに対して、特に人権を所管する省庁の大臣として、そこはしっかりと、二兎を追う者は二兎を得るような、そんな丁寧な綱さばきをしていただきたい。

 このことをお願い申し上げまして、大臣所信に対する質疑とさせていただきます。どうもありがとうございました。

葉梨委員長 以上で黒岩宇洋君の質疑は終了いたしました。

 次に、藤野保史君。

藤野委員 日本共産党の藤野保史です。

 山下大臣は所信の中で外国人材の受入れについて述べました。きょうはこの問題に絞ってお聞きしたいと思います。

 通告していないんですが、この委員会にかかわる重要問題でちょっと御指摘したいと思うんです。

 けさの六時九分にFNNのプライムニュースで、今までずっと話題になってきました四万人の受入れ問題についての報道がされております。ちょっと紹介しますと、政府が、二〇一九年の一年間で六十万人以上の労働者が不足し、最大で四万七千人の新たな受入れを見込む試算をまとめたことが取材で明らかになったと。具体的には、政府は、二〇一九年の一年間で六十一万から六十二万程度の労働者が不足し、およそ三万三千人から最大で四万七千人を超える新たな受入れを見込む試算をまとめた、今後五年間では、百三十万から百三十五万人の労働者が不足し、二十六万から三十四万程度の受入れを見込んでいる、こういう報道であります。

 大臣、これはどういう報道なんですか。

山下国務大臣 本日朝、そのような報道がなされたことについては承知しております。そして、その内容につきまして、これは今、先ほどもう繰り返し申し上げたとおり、受入れを希望する十四業種の業所管省庁において見込み数を精査するところでございます。そして、それについては法案審議に資するよう適切な時期に明らかにしたいというのが私どもの立場でございまして、その報道内容についてコメントをするということは差し控えさせていただきます。

藤野委員 今まで何人もの議員が質問したのに対して、知っていてああいう答弁をされていたということに大変驚きました。

 これは、我々があれほど求めてきたわけであります。大臣自身が五日の参議院の予算委員会で、審議に資するための資料としてしっかりと出していきたいと答弁をされた。審議に資するためと大臣自身おっしゃったわけですね。それから一週間以上たっております。近日中とおっしゃっても、出てこない、出てこないということできょうを迎えて、けさの理事会でもこれは大変な問題になった話であります。

 それが、もう一つ、今のはFNNですけれども、NHKでも報じられておりまして、NHKは十一時四十四分の配信、まさにこの委員会の真っ最中ですね。ついさっきこういう数字が報道される。この国会の審議は何なんだという話になるわけですね。

 大臣、もう一回お答えください。これはどういうことなんですか。

山下国務大臣 私は、内容を承知したというのではなくて、そのような報道があったという事実に関して承知しているというふうに申し上げたことでございます。そして、その中身につきましては、今見込み数を精査しているところであるということについては同じでございます。

藤野委員 では、これは法務省が提供した数字なんですか。

山下国務大臣 私の承知する限り、それはないということでございます。

藤野委員 それは、はっきり調べられて今お答えになったわけですか。

山下国務大臣 私、ずっと法務委員会におりましたので、ここにおる限りにおいてということでございます。

藤野委員 要するに、国会でこれだけ問題になり、野党も重ね重ね要求していた資料が、我々に出す前にメディアにこうやって流れている。しかも、これは野党だけではなくて、与党の皆さんも非常に関心のある法案にかかわる問題でありますし、大臣自身が審議に資する資料だと御自身で述べていらっしゃった資料であります。それがまさに委員会の途中も含めて出てくるということは、これは本当に異常な状況だと言わざるを得ないと思います。

 これはちょっと我々としても、説明がどうしても必要だと思います。この委員会が終了した後でも、すぐに法務省から説明をいただきたいと思いますが。お願いします。

山下国務大臣 報道の経緯につきまして調べるということについて、これはなかなか、守秘の部分もございます。

 また、法務省からこの情報が流れたかどうかということについて、調べられる範囲で調べてみたいと考えております。

藤野委員 それを調べて我々に説明していただく、野党だけではなく、与党もかかわる問題ですから、理事会で説明していただくということでよろしいですね。

山下国務大臣 理事会の御判断に従いたいと思います。

藤野委員 委員長、この件は、与野党を問わず、大変重要な問題であります。理事会での説明を強く求めたいと思います。

葉梨委員長 後刻、理事会で協議をいたします。

藤野委員 こういうことが重なりますと、やはり、本当に国のあり方にかかわるような重大な問題、大臣自身もおっしゃっているような重要法案であります。それがこういう形で数字が出てくるということ自体が、私は充実した審議を妨げかねないと言わざるを得ないというふうに思っております。

 質問に入っていきたいと思うんですが、この四万人とあわせて、私たちは、法務省が行われた、失踪と言っておりますけれども、失踪した技能実習生二千八百九十二人からの聞き取り、この個票、原本と取りまとめの資料というものも求めております。とりわけ個票については、これは大変重要な資料だと思っております。

 配付資料の一を見ていただきたいんですが、これは個票ではなくて一部を取りまとめたものでありまして、失踪の原因というところがえらく強調されているわけですが、これを見ますと、1技能実習を出稼ぎ労働の機会と捉え、より高い賃金を求めて失踪するものが多数と。2は、人権侵害行為等、受入れ側の不適正な取扱いによるものも少数存在したと。より高い賃金を求めているということを強調し、人権侵害は少数だということが強調されているのが、この法務省の資料であります。

 他方、配付資料の二を見ていただきますと、これは、そのうち聞き取りを行った項目、これを示したものでありまして、聴取票であります。

 これを見ますと、大変いろいろな項目があります。送り出し機関、ブローカーにチェックするところもあります。送り出し機関に払った金額、送り出し機関以外に払った金額、こういうのもあります。そして、月額給与、給与から控除される額、失踪後の住居、就労先をあっせんした者、あっせん手数料など、非常に大事だなと思われる項目が並んでいるわけでありまして、これは、先ほどの指摘もありましたが、原本を見ないとわからない。

 例えばということで法務省にお聞きしたいんですが、聴取票には、配付資料の二の黄色く塗っているところですけれども、「低賃金」「契約賃金以下」「最低賃金以下」というのがあるんですが、これはそれぞれ幾つあったんでしょうか。

和田政府参考人 お答えいたします。

 実習実施機関から失踪した技能実習生に係る聴取票につきましては、これは失踪した技能実習生から任意に聴取した情報で……(藤野委員「数だけで結構です」と呼ぶ)数につきましては、現在、調査項目及びその結果の内容を踏まえ、公表を控えるべき項目の有無を含め、慎重に検討を行っているところでございます。

藤野委員 これはおかしいですよ。野党の合同ヒアリング、三回行われましたが、そのうち一回と三回で答えている数字であります。

 もう一回お答えください。

和田政府参考人 ただいま御指摘のありました項目を含め、そのほかの項目も、公表する可能性があることから、現在、改めて精査中でございます。

藤野委員 これは野党のヒアリングで累次にわたって答えているわけですね。ヒアリングで答えられて、正式な委員会で答えられない理由は何ですか。

和田政府参考人 先ほども申し上げましたとおり、さまざまな項目につきまして、その結果の内容につきまして、公表する可能性が……(藤野委員「公表しているでしょう」と呼ぶ)公表すべき事項をどの事項であるかということを今検討して、改めて精査しているところでございます。

藤野委員 私はあえて絞って、ヒアリングで法務省自身がお答えになった項目だけ聞いているんです。答えてください。

和田政府参考人 大変恐縮ではございますが、先ほど来申し上げておりますとおり、検討をして、現在精査中でございます。(藤野委員「だめ。根拠を聞いているんです、根拠を」と呼ぶ)

葉梨委員長 藤野委員、野党のヒアリングと言われましたが、私は野党のヒアリングには出ておりませんので、ちょっとそこら辺の経緯がよくわからないんですけれども、この件については、後、また理事会で協議もいたしますけれども、質疑を続けていただきたいと思うんですが。(発言する者あり)速記はとめません。

 それでは、和田局長、数が出せないという根拠をもうちょっと丁寧に説明してください。

和田政府参考人 現在、先ほどの聴取票のことにつきましては、いろいろな御指摘がございましたので、その聴取票の取りまとめました結果につきまして、どのような形で公表するかということを検討させていただいているところでございまして、その中で、改めて現在精査をしているところでございますので、現在、そういう状況にあるということでございます。

藤野委員 これは、答えた数字すら言わないというのはなぜかというと、例えば、最賃三十二、これは少ないんじゃないかと私は率直に思うんですね。契約賃金が百七十七、二千八百九十二のうち。本当にそれだけなのかと誰もが思います。だから原票を出してくれという話と、あわせて項目も出してほしいと言っているわけです。

 だから、実態を国民から隠そうとしているんじゃないか、だから出さないんじゃないかという話にもなるし、あるいは、百七十七とか三十二とか、一旦言った数字が本当にそうなのかということにもかかわってくる。だから聞いているわけですね。そういうことを聞かないと、勝手に取りまとめて、より高い賃金を求めてなどという、あたかも何かそういう身勝手な要求として失踪したかのように言っている。こういう印象操作がやられかねないから、資料を出してほしいと言っているわけであります。

 大臣、これはやはり個票が大事だと思うんです。個票を提出していただきたいと思いますが、いかがですか。

山下国務大臣 まず、御指摘の調査票自体の開示につきましては、先ほど来申し上げておりますように、失踪した技能実習生から任意に聴取した情報であるということで、これは入管法に違反し資格外活動を行った者、入管法違反容疑者あるいは被疑者であって、当該調査票は、刑事訴追を受けるおそれのある者からの聴取結果そのものでございます。これが開示されることになれば、今後の調査ないしは捜査への協力が得られなくなる可能性があり、今後の調査業務や捜査に与える影響が大きいと考えております。

 そしてまた、記載内容は個人に関する情報そのものであり、これを開示すれば個人の特定につながり、また、技能実習生のみならず、受入れ機関や送り出し機関の個人情報も含まれ、そのような者のプライバシーの観点からも問題があるということでございます。

 したがって、調査票そのものの開示については応じられないということをぜひ御理解賜ればと思います。

藤野委員 とんでもない話でありまして、入管法違反の容疑者と言われましたけれども、その前に、この方々は、最賃法違反、最賃違反の賃金しか払われていない可能性もある。最賃法違反ですよ、これは。あるいは契約賃金以下の項目もある。契約賃金違反、これは労基法違反の可能性もある。だから、容疑者どころか被害者じゃないですか。被害を受けたからそういう状況になっている。

 しかも、後で出しますけれども、中には暴力を受けたり、あるいは非常に過酷な、労災を受けて、骨折しても二日しか休めないとか、そういう状況に置かれて、命の危険にさらされるようなこともあって、やむを得ずその場所を逃げていくということもあるわけですね。それがあっての括弧つきの失踪であり、それがあっての収容なわけです。いきなり収容されるわけじゃないんですよ。だから、そういう点で、それを理由に公開しないということにはならないと思います。

 しかも、プライバシーについては、我々も言っていますが、必要なところは、在留カード番号もありますけれども、そういうところは黒く塗っていただければいいわけで、幾らでもやりようがある。裁量労働制のときも個票を出していただきました。

 これをもう一回出していただきたいと思う。理由にならないと思います。

山下国務大臣 繰り返しになりますが、先ほど入管法違反容疑者と申しましたのは、やはり、あくまで入管法の観点からそれを検討した場合には、それはそういう法適用になるということを御説明申し上げているわけでございます。つまり、資格外活動を行っているということは、これは入管法に照らしてどういう評価になるのかということを御紹介申し上げたところでございます。

 そして、当該調査票の個票の提出につきましては、やはりそうした刑事訴追を受けるおそれのある者からの聴取結果そのものであるということ、そして、今後の調査、捜査への協力が得られなくなる可能性があるということ、これについては重ねて申し上げますし、プライバシーの観点からも問題があるということは重ねて申し上げさせていただきます。

藤野委員 いや、問題があるのは大臣の方だと思いますよ。

 容疑者だからという言い方がどれだけ収容者を傷つけるか。本当に、容疑者、その前には、技能実習生であり、働いている人であり、海外から夢を持って技能を身につけようという思いで来られているわけですね。中には借金を背負ってまで来ている人がいる。ところが、全然違う労働条件で働かされる。この場所にそのままいたら大変なことになるということで、あえて失踪するわけです。それを十把一からげに容疑者と名指しをし、まして声なき声を上げられない、本当に支配従属関係があって声を上げられないけれども、この個票を見ればその一端がわかるかもしれない、そういう大事なデータです。

 我々法務委員会がその声を踏まえて審議するかどうかが問われている。そのときに、逆に容疑者であることを根拠にして、その声なき声を出さない理由にするなどということは絶対に許されない。もう一回お答えください。

葉梨委員長 どういう形であれば出せるかも含めて、少し丁寧に答えてください。

山下国務大臣 入管法に違反し資格外活動を行った者ということでどのように評価されるかということで、法適用の観点から申し上げた次第でございます。

 そしてまた、個票そのものを出すことについて適当ではないという理由については、先ほど申し上げたとおりでございます。

 そして、今取りまとめた結果の公表に関して、公表を控えるべき項目の有無も含めて慎重に検討を行っているところでございます。

藤野委員 この個票につきましては、引き続き提出を厳しく求めていきたいと思います。

 ちょっと時間があれなんですが、本法案は人手不足をもともと理由にしております。しかし、そもそも何で人手不足になっているのかというところが大事だと思うんですね。

 人手不足業種として十四の業種が挙がっておりますが、私、これを調べてみますと、いずれも、いわゆる重層下請、そうした構造がありまして、この重層下請による構造的な低賃金や労働条件の劣悪さというのが指摘されてきたところばかりであります。

 二〇一六年の十月二十八日、我が党の仁比聡平参議院議員が参議院の本会議で質問したことに対しまして、世耕経産大臣が、縫製業についての実態を調査するという答弁をされました。それに基づいて、翌年、経産省は、繊維産業界における下請取引の実態調査というものを行っているんですね。

 配付資料、その前に、経産省に聞きたいと思うんですが、この調査の中で、最賃等の引上げに伴う取引単価の引上げ状況の結果があると思うんですが、これを紹介してください。

大内政府参考人 お答え申し上げます。

 配付資料の最後のものだと思いますけれども、経済産業省が平成二十九年二月から三月に実施いたしました繊維業界における下請取引実態調査における最低賃金等の引上げに伴う取引価格の引上げ状況についてお答え申し上げます。

 繊維業界全体につきまして、一番右でございますが、特に協議は行っておらず、引き上げられていないが六三・四%、協議を行ったが引き上げてもらえなかったが六・〇%、協議を行った結果、最低賃金・工賃の上昇分の一部のみ引き上げられたが九・三%であり、これらの合計は七八・七%となっております。

 また、岐阜県の縫製業におきましては、特に協議は行っておらず、引き上げられていないが五三・一%、協議を行ったが引き上げてもらえなかったが一六・三%、協議を行った結果、最低賃金・工賃の上昇分の一部のみ引き上げられたが二〇・四%であり、これらの合計は八九・八%となっております。

藤野委員 今答弁いただいたように、これは貴重な調査だと思うんです。経産省自身が繊維産業におけるさまざまな調査をされておりまして、その中で、最賃を引き上げるわけですけれども、ですから、使用者は基本的には払わないといけない。しかし、元請からの単価、元請からの工賃がそれに見合って上がらないものですから、どうしても引き上げられないという状況なんですね。それが全体の八割とか、岐阜県においては九割に達しているという状況をお示しいただきました。

 ですから、私が申し上げたいのは、こういう状況、いわゆる下請の末端で技能実習生始め働かれている方、真面目な経営者の方は、払いたい、最賃も上がったしという思いもあるわけですけれども、肝心の元請からの工賃が上がらない。どうしたってこれは厳しいものがあるわけですね。

 大臣、やはりこういう状況に合わせてメスを入れていかないといけないんじゃないかと思うんですが、大臣、いかがでしょうか。

大内政府参考人 まず、経済産業省の取組について御紹介させていただきます。

 経済産業省では、下請取引の適正化を通じて、下請中小企業が賃上げできる環境を整備するため、平成二十八年九月に、未来志向型の取引慣行に向けて、世耕プランと申しておりますが、を取りまとめまして、これに基づき、下請代金の現金払い化やコスト負担の適正化などに向け、関係法令の運用強化や手形通達の改正を行っております。

 また、改正内容等を踏まえまして、下請事業者と親事業者との間で適正な下請取引が行われるよう、国が策定する下請ガイドラインについて、望ましい取引事例、ベストプラクティス等を追記する等の改正をしたほか、世耕プランの重点三課題の一つとなっていた型の取扱いについても、型の廃棄、保管料支払い、マニュアル整備等の具体的なアクションプランを平成二十九年七月に取りまとめました。

 こうした取組を踏まえまして、主要産業界に対して自主行動計画の策定を要請し、現在までに、繊維業界を含む十二業種、三十団体に計画を策定、公表していただいております。

 引き続き、賃金適正化を始め下請取引改善に向けた取組を進めてまいりたいと考えております。

藤野委員 それは私も説明いただいて踏まえておりますし、ガイドラインも読ませてもらいました。ただ、その後、改善が見られたのかと聞きますと、それはもう把握していないわけですね。この調査自体は一つの調査だと思いますし、継続してやる必要があると思うんですが、実態は改善していない。

 同じ経産省さんの調査でこういう結果も出ているんですね。最賃が上がったけれども、逆に、発注事業者から協議がなく、一方的な要請で従来に比べて取引代金の切下げが行われたことがありますかという、上がるどころか切下げが行われた、しかも一方的に、協議なしというのが三五%あるわけであります。

 ですから、やはり大臣、今度は大臣にお聞きしたいんですが、こういう構造があるわけです、既に。低賃金、低工賃ですね。ここにメスを入れないまま、いや、人手が足りませんから、これは外国人で補いましょうというやり方をしても、これは問題解決するどころか、むしろ深刻化する、そうなっていくんじゃないですか、大臣。

葉梨委員長 山下法務大臣、簡潔にお願いします。

山下国務大臣 まず、これにつきましては、一般論として申し上げれば、国内人材の確保や生産性向上の取組を行ってもなおというところを見るわけでございます。その国内人材確保の取組の中に処遇の状況であるとか御指摘の部分というのも含まれておりまして、それについても業所管庁との協議あるいは関係閣僚会議の中でも見させていただきたいというふうに考えております。

藤野委員 ここがまさに重要でありまして、そこなしに幾ら入れても意味がないということを指摘したいと思います。

 最後に、資料の提出についてはしっかり求めて、質問を終わります。

葉梨委員長 以上で藤野保史君の質疑は終了いたしました。

 次に、串田誠一君。

串田委員 日本維新の会の串田誠一でございます。

 山下新法務大臣、御就任おめでとうございます。

 通常国会においても、法務省においては何十年も改正されなかった法律が改正されていたということで、私も少数政党なものですから、いろいろな委員会に質問させていただいたりしているんですが、私から見て、何か法務省は一番頑張っていらっしゃるなと思っております。その流れをぜひ山下大臣にもつなげていただきたいと思うんですが、その一つとして、きょうは共同親権をちょっとお聞きしたいと思います。

 ことしの七月でしょうか、読売新聞で、上川前法務大臣が共同親権については検討を表明という大きな見出しで記事になっております。この上川大臣のバトンを受けてやるんだというのを所信表明で言われておりました。これは共同親権に関しても検討するという理解でよろしいんでしょうか。

山下国務大臣 お答え申し上げます。

 まず、上川前法務大臣からのバトンを受け取るということに関しましては、私自身、上川前法務大臣のもとで政務官として務めていたわけでございます。そして、上川前大臣におかれましては、国民に寄り添った法務行政の実現や国民にわかりやすい説明、国内外を問わない積極的な広報等に全力で取り組まれ、着実に成果を上げられた。その一端が通常国会での法案の成立についても見られたところでございます。

 そうしたことにおいて、国民の皆様が納得し、共感し、信頼していただけるということ、国民に身近な民法、刑法、各法令の基礎となる基本法令の整備を通じた法秩序の維持や国民の権利擁護を任務とするということで、その信頼が大事であるということを上川大臣はお示しになられたということでございます。

 そうした上川大臣を始めとする先人が築き上げてきた国民に信頼されてきた法務行政をしっかりと引き継いでまいりたい。そして、平口副大臣、門山政務官、法務省五万三千の職員と協力して、全員野球で課題から取り組んでいきたい、その思いを述べたものでございます。

 そして、次に、御指摘の七月の読売新聞の取材につきましては、御指摘のような読売新聞の記事が報道されたということは認識はしておるんですが、上川前大臣は、在任時は、親子法制の諸課題について不断の検討を重ねていくという謙虚な姿勢を持ち続けたいという趣旨の発言をされておられました。そうした意味において、前大臣と同様に、子供の利益を最優先に考えるという視点で、親子法制の諸課題について必要な検討を進めてまいりたいという思いを持っておるところでございます。

串田委員 新聞によりますと、「単独親権制度の見直しも含めて広く検討してみたい」というふうに、かなり具体的に記事になっております。

 今回、入管法の問題もあります。そういう意味では、グローバル化していくということも事実だと思います。そういう意味では、親権に関しては、単独親権と共同親権という二つの制度があるわけですけれども、先進国において、単独親権と共同親権と、どちらの制度を各国が採用されているのか、お聞きしたいと思います。

小野瀬政府参考人 お答えいたします。

 先進国の現在の状況につきまして網羅的に把握しているものではございませんが、少なくとも、アメリカ、イギリス、フランス、ドイツ、カナダ、イタリアなど、日本を除くG7各国におきましては、離婚後の共同親権制度を採用しているものと承知しております。

串田委員 今の答えを聞いていただいたと思うんですが、先進国中、単独親権というのは我が国だけなんですよ。あとは全部共同親権。何で我が国だけが単独親権なのか。グローバル化してくるわけですから、日本人も海外で暮らす、そして海外の人も日本で暮らす。そういう中では、親子のあり方というものは、やはり世界標準になっていかなければならないと思うんです。

 ほかの国がみんな共同親権なのに、なぜ我が国が単独親権なのかということを含めて、大臣として、やはり検討を始めていただかなければいけないと思うんですが、この点、いかがでしょうか。

小野瀬政府参考人 まず、私の方から、今委員御指摘の、現行法、我が国の法制がなぜ単独親権としているのかということについて答弁させていただければと存じます。

 親権には、子供の監護あるいは教育に関する意思決定を始めといたしまして、やはり適時適切な権限の行使が求められるものが含まれておりますけれども、父母が離婚して共同生活を行っていない場合には、父母間で意思疎通をうまく図れずに、適時適切な親権の行使が難しいこともあると考えられます。

 このように父母が婚姻関係にない場合にも、親権を共同して行使すべきものといたしますと、円滑に意思決定がされずに、子の利益に反するおそれがあります。また、父母間の感情的な対立が根深い場合のように、そもそも夫婦が協力して親権を行使することを期待することができないこともありますことから、離婚後におきましては、父母の一方が単独で親権を行使することとされたものと考えられております。

山下国務大臣 今、民事局長から説明をさせましたけれども、単独親権においては、我が国において採用しているそれなりの理由があるというわけでございます。破綻した夫婦において共同で親権を行使するのが妥当であるかという問題もございます。

 ただ、子の養育につきまして、一般論といたしましては、父母は、離婚した後であっても、子供にとっては親であることは変わりはございません。離婚後も両親が適切な形で子の養育にかかわるということは、子の利益の観点からも非常に重要なものであるというふうに考えております。

 これらの問題につきましては、今、さまざまなところで、例えば議員連盟などについても検討がなされているものと承知をしておりますが、法務省としても、そのようなさまざまな場面において必要な説明や協力をさせていただいておるところでございまして、そういった議論も踏まえながら、引き続き検討してまいりたいというふうに考えております。

串田委員 弊害がないとは言いません。そういう中で、ほかの先進国が全て共同親権というのは、弊害を超えるさらなるメリットがあるからだと私は思うんですよ。

 単独親権というのは、親権がどちらかの一つになってしまうわけです。そして、それはどういうことを意味するかといえば、子供の監護に関しても、どちらかがそれを奪い取り合おうとしてしまうんです。ですから、今の弊害も鶏と卵の関係でありまして、どちらか一方を単独親権にするためには、片方を悪者にしようという流れになりがちなんですよ。

 そういうようなことがないような共同親権になることによって、離婚するときにも、片方をあえて悪者にしなくても済む。そして、子供を相互の親が一緒になって養育をするというのが共同親権のあり方ですから、弊害はあるかもしれない、しかし、それを先進国は乗り越えているわけですから、ぜひとも我が国もそれについて検討していただきたいと思うんですが、大臣、もう一度所感をお願いいたします。

山下国務大臣 お答えいたします。

 単独親権につきましては、親権者と認められなかった他方の親を親権者として不適格であるという趣旨を含むものではないわけではございますが、他方で、やはり一般論として、先ほど申し上げたとおり、離婚した後であっても子供にとって親であることは変わりがない、その委員の御指摘も含めて、国会におけるさまざまな議論を注視しながら、引き続き検討してまいりたいというふうに考えております。

串田委員 ハーグ条約に関する不履行ということで、米国から不履行国というふうに認定されているわけでございます。それに関して、執行法の改正等もあるかと思いますが、根底的に言うと、やはり、我が国の親子のあり方というものも含めて批判されていると思うんですが、この不履行国と認定されたことに対して、大臣の御意見をお伺いいたします。

山下国務大臣 御指摘の認定と申しますのは、アメリカの国務省ですね、これが恐らく本年五月に公表した国際的な子の連れ去りの問題に関する報告書ではないか。その中で、我が国の取組について、米国から我が国への子の連れ去りの件数が減少したという改善があったとの評価がなされる一方で、子を連れ去った親に対する裁判所の返還命令を執行する効果的な手段がないというふうに評価され、御指摘のとおり、米国の国内法の定めにより、不履行のパターンを示す国ということで分類されたものと承知しております。米国から一方的にこのような評価がされたことというのは、まことに残念であるというふうに考えております。

 ただ、私としても、ハーグ条約実施法が適切に運用され、子の返還が適切に実現されることは重要であるというふうに考えております。そこで、先月四日、十月の四日には、民事執行法制の見直しについて、ちょうど法制審議会から答申がなされたわけでございます。これは、もう前に諮問をしていたところではございますが、その答申において、ハーグ条約実施法に基づく子の返還の手続についても、その実効性を確保しながら、子の心身の負担にも配慮した規律を設けること等が盛り込まれているところでございます。

 法務省としては、この要綱に基づく関係法案の立案作業、これを行うとともに、米国に対しても、関係機関と連携しつつ、外交ルートを通じ、我が国の取組についてしっかりと情報提供を行うなど、相互の理解を深めてまいりたいと考えております。

串田委員 DV被害者はしっかりと守らなければなりません。しかし、自分の子供に会えないという親がいらっしゃることも、これは事実なんです。ほかの先進国もそういう長い歴史の中で築き上げてきた共同親権ということを、ともに改正していきたいと私は思っております。今後もまた、これを取り上げていきたいと思います。

 本日はこれで終わります。ありがとうございました。

葉梨委員長 以上で串田誠一君の質疑は終了いたしました。

 速記をとめてください。

    〔速記中止〕

葉梨委員長 速記を起こしてください。

 この際、暫時休憩いたします。

    午後零時五十九分休憩

     ――――◇―――――

    〔休憩後は会議を開くに至らなかった〕


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