衆議院

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第6号 平成31年3月26日(火曜日)

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平成三十一年三月二十六日(火曜日)

    午前九時開議

 出席委員

   委員長 葉梨 康弘君

   理事 石原 宏高君 理事 田所 嘉徳君

   理事 平沢 勝栄君 理事 藤原  崇君

   理事 宮崎 政久君 理事 山尾志桜里君

   理事 階   猛君 理事 浜地 雅一君

      青山 周平君    赤澤 亮正君

      安藤 高夫君    井野 俊郎君

      奥野 信亮君    鬼木  誠君

      門  博文君    門山 宏哲君

      上川 陽子君    神田  裕君

      黄川田仁志君    小林 茂樹君

      佐藤 明男君    杉田 水脈君

      冨樫 博之君    中曽根康隆君

      古川  康君    古川 禎久君

      堀内 詔子君    本田 太郎君

      宮路 拓馬君    務台 俊介君

      和田 義明君    逢坂 誠二君

      黒岩 宇洋君    初鹿 明博君

      松田  功君    松平 浩一君

      山本和嘉子君    源馬謙太郎君

      遠山 清彦君    藤野 保史君

      串田 誠一君    井出 庸生君

      柚木 道義君

    …………………………………

   法務大臣         山下 貴司君

   法務副大臣        平口  洋君

   法務大臣政務官      門山 宏哲君

   最高裁判所事務総局総務局長            村田 斉志君

   最高裁判所事務総局人事局長            堀田 眞哉君

   最高裁判所事務総局刑事局長            安東  章君

   最高裁判所事務総局家庭局長            手嶋あさみ君

   政府参考人

   (警察庁長官官房サイバーセキュリティ・情報化審議官)           高木紳一郎君

   政府参考人

   (警察庁長官官房審議官) 小田部耕治君

   政府参考人

   (金融庁総合政策局審議官)            油布 志行君

   政府参考人

   (総務省総合通信基盤局電気通信事業部長)     秋本 芳徳君

   政府参考人

   (法務省大臣官房審議官) 石岡 邦章君

   政府参考人

   (法務省民事局長)    小野瀬 厚君

   政府参考人

   (法務省刑事局長)    小山 太士君

   政府参考人

   (法務省人権擁護局長)  高嶋 智光君

   政府参考人

   (法務省入国管理局長)  佐々木聖子君

   政府参考人

   (外務省大臣官房参事官) 森野 泰成君

   政府参考人

   (文部科学省大臣官房審議官)           森  晃憲君

   政府参考人

   (厚生労働省大臣官房政策立案総括審議官)     土田 浩史君

   政府参考人

   (厚生労働省大臣官房審議官)           八神 敦雄君

   政府参考人

   (厚生労働省大臣官房審議官)           諏訪園健司君

   政府参考人

   (厚生労働省大臣官房審議官)           山田 雅彦君

   政府参考人

   (農林水産省大臣官房審議官)           小野  稔君

   政府参考人

   (中小企業庁事業環境部長)            木村  聡君

   政府参考人

   (観光庁審議官)     金井 昭彦君

   法務委員会専門員     齋藤 育子君

    ―――――――――――――

委員の異動

三月二十六日

 辞任         補欠選任

  赤澤 亮正君     冨樫 博之君

  鬼木  誠君     務台 俊介君

  上川 陽子君     堀内 詔子君

  国光あやの君     宮路 拓馬君

  中曽根康隆君     本田 太郎君

  和田 義明君     杉田 水脈君

  山本和嘉子君     初鹿 明博君

同日

 辞任         補欠選任

  杉田 水脈君     和田 義明君

  冨樫 博之君     赤澤 亮正君

  堀内 詔子君     上川 陽子君

  本田 太郎君     中曽根康隆君

  宮路 拓馬君     佐藤 明男君

  務台 俊介君     青山 周平君

  初鹿 明博君     山本和嘉子君

同日

 辞任         補欠選任

  青山 周平君     鬼木  誠君

  佐藤 明男君     安藤 高夫君

同日

 辞任         補欠選任

  安藤 高夫君     国光あやの君

    ―――――――――――――

三月二十六日

 国籍選択制度の廃止に関する請願(荒井聰君紹介)(第四二八号)

 同(佐々木隆博君紹介)(第四二九号)

 同(高木美智代君紹介)(第四三〇号)

 同(西村智奈美君紹介)(第四三一号)

 同(近藤昭一君紹介)(第四四八号)

 同(中川正春君紹介)(第四四九号)

 もともと日本国籍を持っている人が日本国籍を自動的に喪失しないよう求めることに関する請願(荒井聰君紹介)(第四三二号)

 同(佐々木隆博君紹介)(第四三三号)

 同(高木美智代君紹介)(第四三四号)

 同(西村智奈美君紹介)(第四三五号)

 同(近藤昭一君紹介)(第四五〇号)

 同(中川正春君紹介)(第四五一号)

は本委員会に付託された。

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 政府参考人出頭要求に関する件

 民事執行法及び国際的な子の奪取の民事上の側面に関する条約の実施に関する法律の一部を改正する法律案(内閣提出第二八号)

 裁判所の司法行政、法務行政及び検察行政、国内治安、人権擁護に関する件


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     ――――◇―――――

葉梨委員長 これより会議を開きます。

 裁判所の司法行政、法務行政及び検察行政、国内治安、人権擁護に関する件について調査を進めます。

 この際、お諮りいたします。

 各件調査のため、本日、政府参考人として警察庁長官官房サイバーセキュリティ・情報化審議官高木紳一郎君、警察庁長官官房審議官小田部耕治君、金融庁総合政策局審議官油布志行君、総務省総合通信基盤局電気通信事業部長秋本芳徳君、法務省大臣官房審議官石岡邦章君、法務省民事局長小野瀬厚君、法務省刑事局長小山太士君、法務省人権擁護局長高嶋智光君、法務省入国管理局長佐々木聖子君、外務省大臣官房参事官森野泰成君、文部科学省大臣官房審議官森晃憲君、厚生労働省大臣官房政策立案総括審議官土田浩史君、厚生労働省大臣官房審議官八神敦雄君、厚生労働省大臣官房審議官諏訪園健司君、厚生労働省大臣官房審議官山田雅彦君、農林水産省大臣官房審議官小野稔君、中小企業庁事業環境部長木村聡君及び観光庁審議官金井昭彦君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

葉梨委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

葉梨委員長 次に、お諮りいたします。

 本日、最高裁判所事務総局総務局長村田斉志君、人事局長堀田眞哉君、刑事局長安東章君及び家庭局長手嶋あさみ君から出席説明の要求がありますので、これを承認するに御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

葉梨委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

葉梨委員長 質疑の申出がありますので、順次これを許します。初鹿明博君。

初鹿委員 おはようございます。立憲民主党の初鹿明博です。

 トップバッターを務めさせていただきます。きょうは、初めてこちらの法務委員会で質問をさせていただきますので、どうぞよろしくお願いいたします。

 まず、このような質問の機会をつくっていただいたこと、委員の皆様に感謝申し上げます。ありがとうございます。

 まず最初に、今回、児童虐待防止法の改正に体罰の禁止をするという規定を設けるということになったということでありますので、その件に関連して、民法八百二十二条の懲戒権における体罰の意味というものを少し質問していきたいと思います。

 実は私、この問題をずっと何度も質問で取り上げさせていただいていて、前回の児童虐待防止法の改正のときも、懲戒権の中に体罰を含むという、この答弁をやはり変える必要があるんじゃないかという質問をさせていただきました。先般も質問主意書を出させていただいているところです。その回答を見ると、ちょっと残念だなというような回答が返ってきているんですね。

 そもそも、この八百二十二条の問題というのは、児童虐待防止法が制定をされる当初からやはり問題になってきて、ずっといまだに続いてきているわけですよね。

 ついに今回、法律に体罰を禁止するということを書くというところで、これは相当に私は進歩したな、前進だなとは思いながらも、でも、やはり一方で、八百二十二条では懲戒権の中に体罰が含まれるんだというこの答弁が維持されている状態だと、これは見直しをするということも言っておりますが、見直しされるまでの間、懲戒権の範囲に含まれる体罰が存在をしていて、懲戒権というものは親権者に認められている、でも児童虐待防止法では体罰をしちゃいけないと言われている、これはどういうことなんだろうというものの説明が非常につかないんじゃないかと思うんです。

 少しおさらいをしながら質問させていただきますが、まず、お手元に資料をお配りをさせていただいておりますが、平成十二年に、当時の民事局長であった細川さんという方が、田中甲議員の質問に対して、こうはっきり答えちゃっているんですよね。

 黒くくくってあるところの真ん中よりちょっと左側なんですが、「この懲戒には体罰も場合によっては含まれるわけですが、」とはっきり言っているんですよ、体罰も場合によって含まれるわけですがと。ただ、「それが子の監護上必要かつ相当なものとされるかどうかは、その社会の、時代の健全な常識により判断されるべきもの」であると。社会の常識によって判断されるけれども、体罰は監護上必要だったら一部入るんだという答弁がされてしまっているんですね。

 これを前提に私は質問など何度かしているんですが、質問主意書で、じゃ、子供の利益になるような教育上に必要な体罰というのはあるのかと、これは前回質問したとき、盛山副大臣はそういう体罰があると答えているので、じゃ、具体的に示してくれという質問をして、それで返ってきたのが、これは新聞でも報じられましたけれども、最後、三枚目の紙に答弁の四というのがあるんですが、ここではこういうことがお答えされているんですね。

 子が他者に危害を加えたことから、親権者が子に反省を促すべく注意をしようとしたところ、子がこれに応じずその場を立ち去ろうとしたため、親権者が子の手をとってこれを引きとめ、説教を継続する行為等は、その監護及び教育に必要な範囲内の懲戒に該当し得るものと考えられる。

 若干これはおかしいんじゃないかとみんな思うと思うんですよ。子の手を引っ張ることが、これが懲戒の範囲だと言っているんですが、実は、私が聞いているのは体罰かどうかということを聞いているのに、体罰かどうかと答えていないんですよね。ここがやはり、ちょっと皆さん方、法務省のごまかしじゃないかと思うんですよ。

 有形力の行使が全て体罰だったらこういうものも体罰なんだ、そういう説明をされるんですが、国の法律では体罰ということを規定していないのは事実ですけれども、もう一枚資料をつけさせていただいておりますが、子どもの権利委員会が、これは二〇〇六年に出している体罰その他虐待又は品位を傷つける形態の罰から保護される子供の権利というところで、きちんと実は定義がされているんですね、体罰について。

 まず、十一のところで、体罰を、どんな軽いものであっても、有形力が用いられ、かつ何らかの苦痛又は不快感を引き起こすことを意図した罰と定義するというふうに書いてあって、有形力を使ったものは全部体罰だとまずは規定をしています。

 しかし、その後、十三、十四、十五のところに下線を引かせていただきましたが、十三のところでは、しつけ及び規律の維持という積極的概念まで拒絶しようとしているわけではないと。

 十四では、子供を保護するための身体的な行動及び介入が頻繁に必要とされることを認識する、これは、何らかの苦痛、不快感又は屈辱感を引き起こすために意図的かつ懲罰的に行われる有形力の行使とは全く別である、人々を保護するために必要な有形力の行使は認めている。

 十五番では、教育その他の者、例えば施設にいる子供や法律に抵触した子供とともに働いている者が危険な行動に直面し、その統制のために合理的な抑制手段を用いることが正当化される、子供その他の者を保護する必要性を動機とする有形力の行使と、罰するための有形力の行使との違いは明確である。

 こういうふうに言っているわけですね。

 つまり、私が言いたいのは、先ほどの答弁の四で出した例、子供の手を引っ張るという行為、これは懲戒のためにやっているわけではなくて、その前の段階ですよ。行動を抑制したり制御するために行っている行為であって、これは体罰ではなくて、子供の行動を制止するための行動なんだと思うんですね。だから、これは懲戒に含まれるか含まれないかということは、私は含んでいいと思うんですよ。ただ、体罰には含まれないと思うんですね。

 だから、私が言いたいのは、民法八百二十二条の懲戒権の中に体罰は一切含まないということをはっきりしてもらいたいんですよ。じゃないと、やはりどこかで、しつけのためにやったんだという言いわけがずっと繰り返し続いていくことになると思うんですね。

 まず、子供の利益になるような体罰というのはあるのかということですよ。質問主意書で私も指摘しましたが、確かに、たたいたりすれば、子供はそれに従うようになると思います。しかし、それは心から、悪いことをしたから従っているんじゃなくて、もう一回たたかれるのが嫌だから同じ行動をしなくなっているだけで、必ずしも教育的な効果があるとは言えないと思います。むしろ、暴力を振るったりたたいたりすれば相手が言うことを聞くということを、逆に、それによって自分が身をもって学んでしまうことになる。

 そうなると、自分が子供を育てるときに同じ行動を子供にとったり、ほかの友達や何かとトラブルになったときに、相手に自分の言うことを聞かせたいために暴力を使うというように、教育上マイナスになることの方がはるかに大きいと思うんですよ。

 そこで、改めて大臣に伺いますが、この民法八百二十二条の懲戒権に体罰は一切含まれないというように、これまでの答弁を撤回若しくは見直しをしていただきたいのですが、いかがでしょうか。

山下国務大臣 お答えいたします。

 まず、その点については、体罰をどのように定義するかというふうな問題なんだろうというふうに考えています。

 と申しますのは、委員御提出の質問主意書に対する答弁書にもありますように、有形力の行使が子の教育及び監護に必要な範囲内の懲戒に該当するかどうかは、その時代の健全な常識により判断されるべきものであるというふうに考えているというのは、これは一貫した立場でございます。

 他方で、これまでの答弁においては、この体罰というものの定義が一定していないということを前提に、あらゆる有形力の行使が含まれるとすると、そういったものが体罰だという定義をするのであれば、そういったものも含まれ得るという、要するに有形力の行使でございますね、そういった文脈で答えているように思います。

 他方で、今般、親権者による体罰を禁止する規定が盛り込まれた児童福祉法の改正法案が提出されております。そうした中において、厚生労働省において、体罰の禁止や体罰禁止に関する考え方を国民にわかりやすく説明するためのガイドライン、これを設けると。予算委員会におきましても、子ども家庭局長の方から、今後、体罰の範囲、体罰の禁止に関する考え方等について、国民にわかりやすく説明するためのガイドライン等の作成をしたいと考えている旨の答弁がなされております。

 法務省としては、まず、そういった体罰の定義、これを厚生労働省と検討しながら、場合によっては、先ほど委員から御指摘がありました児童の権利委員会のこの解説等も参考にしながら検討してまいる。その上で、体罰の定義が固まりましたら、それに従って検討してまいりたいと考えているところでございます。

初鹿委員 ちょっと順番が逆のような気もするんですね。だって、法律にもう規定をするわけで、法律に書かれた時点で定義というのは定まっていないといけないと思いますので、少なくとも施行するまでの間にはきちんと決めていく必要がある。

 その上で、先ほど子どもの権利委員会の見解を示したとおり、有形力の行使であっても、体罰ではない有形力の行使というのもあるわけですよ。例えば、子供が走り出して車にひかれそうになったのを保護するために力ずくで引っ張り込む、これを体罰かといったら、体罰じゃないと誰もが思うわけで、有形力の行使が全て体罰だということは子どもの権利委員会も言っていないわけで、そこはやはり切り分けなければいけないと思うんですよ。

 今まで法務省は、なぜかそこが、有形力の行使は全部体罰だから、体罰も一部含まれるかもしれないみたいなことを言い続けてきていて、そこが間違っていたんだと思いますので、そこはきちんとしていただきたいと思います。

 その上で、今回、この八百二十二条自体も見直していくということが規定されるということですが、この見直し、検討には、八百二十二条自体を削除することも含めて検討されるという理解でよろしいんでしょうか。

山下国務大臣 お答えいたします。

 民法第八百二十二条の懲戒権の規定のあり方については、これは家族のあり方にもかかわり、国民の間でもさまざまな議論があることから、法務省としては、国会における今後の議論等をも踏まえ、速やかに必要な検討を行ってまいりたいと考えております。

 そして、八百二十二条については、平成二十三年の民法改正に向けた議論の際にも、この規定を削除すべきであるとの意見もございました。こういった意見も含めて、さまざまな選択肢を視野に検討がされることになるものと認識しております。

初鹿委員 世界的に見たら、やはりこの規定が置かれているということはちょっと違和感があるんだと思いますので、ぜひ廃止を目指して検討をしていただきたいということをお願いさせていただき、次の質問に移ります。

 次は、最近の東京入管における収容者に対する対応について、何点か指摘をさせていただきながら質問をさせていただきます。

 この委員会でも取り上げられましたが、三月十二日の日に、救急車を家族若しくは支援者の方々が呼んだところを、東京入管の職員が本人に会わせることもなく救急隊を二回追い返す、そういう問題があったということであります。

 この問題ですけれども、一言で言うと、ちょっと冷た過ぎるんじゃないのかなということですよ。対応が雑というか、冷た過ぎるんじゃないか。

 これは、単に救急隊と会わせていたり、また、家族がもう一度、これは午前中に面会をしていて、午後に医師の診察をさせるからということで、一回家族は帰っているんですよね。帰っていたら、その後、その収容されている本人から奥さんのところに電話があって、ちゃんと診てくれないし、もうあしたにも死んじゃうかもしれないみたいなことを言うから、慌ててまた入管に戻って、そのときにいろいろな支援者に連絡をしていって、何十人という人がそこに集まっている、そういう状態で救急車が一回呼ばれて帰されて、それでまた夜中にもう一回呼ぶということになったということですよね。

 普通の事態じゃないわけですよ。そういうことになって大騒ぎになっているんだから、せめて、家族が本人と面会をするようなことをしていれば、ここまではならなかったんじゃないかと思うんですよ。

 やはり、こういう異常な事態のときに、毎回やれとは言いませんよ、異常な事態になっているときはそういう丁寧な対応が必要じゃないかと私は思うんですけれども、大臣、この話を聞いて、一連の対応を聞いて、適切だったと思いますか。いかがですか。

山下国務大臣 まず、個別の事案につきましては、お答えは差し控えたいと思います。

 ただ、一般論として申し上げれば、今の御指摘については、受け付け時間として定められた時間以外の時間帯における面会というのは、これはやはり体制の面においても、あるいはほかの被収容者に対する処遇の面においても保安上の支障があるということは、これは否定できないところでございまして、すべからく許可するといった運用を行うことは困難であります。

 一般論でございますけれども、体調不良を訴えた場合に、日中に所在する医師の診断において異常がないとされ、その後、例えば医師あるいは看護師の判断において体調に変化がないというふうな場合において、そういった特別に時間外に面会させるという必要性が特段認められない場合にも、要請があるからといって家族の面会を認めるということは、なかなか現実的に困難ではないかというふうに考えております。

 また、救急車につきましても、例えば誰が呼んだのかということ、そのときの病状を、例えば客観的にそこの施設にいる医療関係者の判断であるとか、そういったことを踏まえて考えることは必要であろうとも思っております。

 さらに、一般論でありますが、こういった体調不良を訴えた場合において、例えば翌日以降、また必要があれば外部の病院に連行して各種検査を受けさせるといった取扱いもしているというふうに承知しておりますので、そういったことで、収容者の体調については万全を図っておりますし、そうしたことを踏まえて、例外的な取扱いということについてすべからく応じることができないということをぜひ御理解賜りたいと考えます。

初鹿委員 私も、毎回毎回やれと言っているわけじゃなくて、やはり、何か五、六十人集まっちゃっているような状態になったということですよね。それで余計入管の方はかたくなになってしまったのかもしれませんけれども、せめて救急隊員が本人の状態を確認するように、救急隊員だけでも本人を診るとか、そういうことぐらいはする必要があったんじゃないかなと思います。

 佐々木参考人、看護師が昨晩泊まっておりましたと答弁しているんですけれども、これは看護師じゃないですよね、准看護師ですよね。そこは間違いであったということでよろしいですよね。

佐々木政府参考人 私ども職員の中に准看護師の資格を持った者がございまして、その者が泊まっていたということを一般論で申し上げましたけれども、広い意味での看護師という意味で申し上げました。

初鹿委員 一般的に准看護師と看護師は違うと思いますので、やはり答弁は的確に、ちゃんと正確に言っていただきたいなと思います。

 では、次の質問に移りますが、ちょっと私の方で打った、給食についてのお知らせを見ていただきたいんですが、東京入管の給食が変更になったということで、これは、入管に掲示されていたものを収容者から聞き取った支援者の方から、更に私が聞き取ってつくりました。

 ここに何と書いてあるかというと、二月一日からしょうゆとみそ汁がなくなります、一月二十九日からショッピングリストにみそ汁が追加され、値段は二百四円で十食入りだ、給食に牛肉と豚肉は使用されていません。つまり、二月一日から、今まで出ていたみそ汁としょうゆがなくなって、欲しかったら売店で買えということに変わりましたと。

 牛肉と豚肉は宗教上食べられない方々もいるということも、それは理解はしているんですが、豚肉、牛肉は出しませんというふうに変わったということで、これに対して収容者の中からは、非常に食事が質が下がった、それで、兵糧攻めをしようとしているのか、そういう批判が出ているというか、寂しいなという声が上がっているわけですよ。

 まず、みそ汁をなくした、こういう対応をしているということについて、これは対応としていいんでしょうか。ちょっとやはり下がったと思われるんじゃないんでしょうか。

佐々木政府参考人 東京入国管理局におきましては、処遇環境の改善の一環として給食の質の向上を図っており、契約している給食業者と定期的に協議を行っております。

 今回、今御指摘の、二月一日に給食の内容を見直しまして、しょうゆやみそ汁を支給しないようにした理由でございますけれども、アレルギーや宗教により一層配慮をしようとしたためでございまして、実は、御指摘のしょうゆ及びみそ汁につきましてはどちらもアルコールが少量含まれていること、また、みそ汁については魚介類などのアレルギー成分が含まれていることから、少なからぬ被収容者の皆様方がこれに手をつけない、あるいは残すということがございまして、一つの試みとして支給を中止したという報告を受けています。

 今後も引き続き、官給食を含めた処遇環境の改善が図られるように努めてまいります。

初鹿委員 結構、人によってアレルギーだとか宗教上の理由で提供するものを分けていたりという、かなり細かいことをやっているということなんですが、一律しょうゆとみそ汁をなくすというのは、私はどうなのかなと思うんですよ。

 そもそも、調理にはしょうゆを使っていて、火にかけてアルコール分が飛ぶからいいんだみたいなことを言っているんですが、これは多分、イスラム教の方々からするとそれでもだめだということになるので、それ自体も何か適切ではないんじゃないかと思うんですよね。

 みそ汁がなくなったかわりにお茶を出しているというんですよ。お茶にかわったからいいんだろうという説明を受けたんですけれども、大臣、ランチを食べに行って、今まで御飯とみそ汁とサラダがついていたのが、次のときに行ったら御飯とサラダとお茶に変わっていたら、やはり、ちょっとこの店、何かサービスを下げたなと思いませんか。みそ汁がお茶にかわったんですよ。普通、みそ汁はやはりおかずの一つであって、お茶はお茶ですよ。だから、やはり処遇されている収容者の方からすれば、これはちょっと質を落とされたなと思うと思いませんか。大臣、思いますよね。

山下国務大臣 先ほど局長から答弁したとおり、アレルギーや宗教により一層配慮しようとしたということで、一つの試みとしてということでありますので、なお、今回のこういった試みの反響等も踏まえて、更にちょっと検討してまいりたいと思います。

初鹿委員 それから、あともう一つ問題なのは、売店で買えるようにしているんですけれども、東京入管と牛久で、売店で売っているものが、東京入管の方が圧倒的に少ないそうなんですね。それで、差し入れも、東京入管はなかなか認めてくれないということなんですよ。

 なぜか、牛久では認められているようなことが東京入管で認められていないので、これもちょっと、品数をふやして、差し入れを認めるように改善をしていただきたいと思うんですが、これはいかがでしょうか。

佐々木政府参考人 今御指摘の物品購入でございますけれども、東日本センターと東京入管とでは物品の販売業者が異なることもございまして、購入できる食品の品数につきまして、御指摘のように、現在、東日本センターが百一品であるのに対しまして、東京入管は六十八品となっております。差異があるのでございますけれども、両施設におきまして、被収容者からの要望等も踏まえ、適宜、物品販売業者との間で折衝を行うなどして、その見直しに努めているものと承知をしております。

 それから、もう一つ御指摘いただきました差し入れの件でございますが、東京入国管理局では、同局において被収容者に物品販売を行っている業者を介した食品の差し入れは認めておらないと承知しています。これは、実は、東京入国管理局は東センターと比べまして入出所者及び被収容者数が非常に多くなってございまして、これで同局において被収容者に物品販売を行っている業者を介した食品の差し入れを認めた場合、当該業者の人手等の体制のほか、差し入れの対象となる被収容者の確認等の当局の体制がとれないため、これを認めていないものと承知をしております。

 もっとも、東京入国管理局では現金の差し入れは可能でございまして、その差し入れた現金で被収容者がみずから物品を購入するということは可能になっております。

初鹿委員 まず、現金もなかなか、収容されていると働けないから本人の稼ぎもないわけで、家族もなかなか生活が苦しい人も多いわけですからね。支援している方々からの差し入れとかはあるんだろうとは思いながらも、そんな簡単じゃないということも理解をしてもらいたいのと、やはり牛久と比べて物品数が半分近くしかないということもちょっと改めていただきたいなと思いますので、今後の検討としてお願いをいたします。

 次、写真を二枚つけさせていただいたんですが、これは、ちょっとネットにアップをされて話題になったというか問題になった写真なんですね。これは、高輪の病院に、被収容者が病院にかかるために連れていかれたところの写真なんですが、明らかに腰ひもがついて、前は手錠で、手を結わかれている状態で、横に入管の職員が、明らかにそういう職員だとわかるような格好で、連れていかれている。

 この後、職員が制服を着て連れていくということはやめるようになって、私服になっているということなんです。また、手についても、前の手は洋服で隠すようになった。ここまでは改善をしていただいたので、私もよかったなと思ってはいるんですが、ただ、腰ひもがいつも見える状態で連れていかれるので、収容者の方々からすると、本当にすごくそれがつらいと言っているんですね。

 確かに、逃亡の防止だとかそういうことから、何らかの逃げないような措置というのは必要だとは思いながらも、やはりあからさまに、何かした人だなというのが周りからわかるような状態というのは、本当に極力わからないようにする必要があるんじゃないかと思うんですよ。

 ですので、改めて、この腰ひもについても周りから見えないように連れていくように改善をしていただきたいと思いますが、いかがでしょうか。

佐々木政府参考人 御指摘のように、病院連行等の際の戒具の使用につきましては、私ども現場におきましても工夫を重ねているところでございます。

 今御指摘をいただきましたように、連行時に、まず、腰縄として捕縄を使用する場合には、そのひもが隠れる専用の上衣、ポケットつきのジャンパーのようなものでございますけれども、ポケットに手を入れているように見えるような形での戒具の使用など、護送に支障を来さない範囲内で捕縄を短く把持するというようなことなど、人目に触れにくい状態で使用しております。

 さらに、病院施設内の動線につきましても、できる限り一般の方との接触を避けるなど、病院にも御協力いただきながら、配慮をしているところでございます。

 引き続き、人権に配慮した処遇に努めてまいります。

初鹿委員 ぜひ、収容されている方が本当に、意地悪されているなとか嫌がらせされているなみたいに思われないような対応の仕方をしてもらいたいと思うんですね。

 ちょっと最後に、時間がなくなってきたので質問を飛ばして、一枚、最後につけた資料なんですが、東京入管の収容者数、どれぐらいの期間収容されているかというのを表にしてまとめてみたんですが、そうすると、やはりだんだん長期化しているんですよね。一年以上の人がどんどんふえていて、二年六カ月から三年未満なんという人までも出てきているというように、だんだん長期化している。

 やはり、この最大の理由は難民申請の問題じゃないかと思うんですよね。退去強制令書が出ても、難民申請をして、そして収容されている、却下されてもまた出すという、この繰り返しがされていて、多分いつまでたってもこれは終わらないんじゃないか。

 そこで、私からちょっと前向きな提案をさせていただきますが、ぜひ大臣、真剣に検討していただきたいんですけれども、今回、四月から特定技能という新たな在留資格を設けますよね。これは日本語の試験と技能の試験を受ければ一定の仕事につけるというものなんですが、収容されている方々に、この試験を受けることができるように道を開いてもらいたいんですよね。

 難民申請中の方、いろいろな状態の方がいると思います。仮放免になっている人もいれば収容されている人もいるし、オーバーステイの状態になっちゃっている人もいれば、特定活動として働くことが認められているような人もいたり、いろいろな人がいるんですが、だから、全てにうまくいくかどうかはわかりませんけれども、このままでいたら、ずっと申請をして却下されて申請しての繰り返しで、ずっと収容し続けて、終わりがいつまでもなくて何年も収容し続けて、世界からはひどいことをしているという批判をされるようになるわけですから……

葉梨委員長 質問時間が経過していますので、まとめて質問してください。

初鹿委員 これを解決するためには、ぜひ特定技能の試験をこの難民申請中の方でもできるようにしていただきたいと思いますが、いかがでしょうか。

葉梨委員長 山下法務大臣、簡潔にお願いします。

山下国務大臣 特定技能の試験は、基本方針において国外実施を原則としており、国内試験の実施は、所定の在留資格を有している者が円滑に特定技能の試験を受け、その資格に移行するためでございますが、ちょっと、難民認定申請を繰り返す被退去強制者にそれを認めるということに関しましては、これは慎重な検討が必要と考えておるところでございまして、こういった資格については試験の受験資格の中には入れていないというところでございます。

葉梨委員長 初鹿君、まとめてください。

初鹿委員 ぜひ長期収容がおさまるような方法を少し検討していただきたいと思いますので、よろしくお願いします。

葉梨委員長 以上で初鹿明博君の質疑は終了いたしました。

 次に、松平浩一君。

松平委員 どうもおはようございます。立憲民主党の松平浩一です。

 本日は、この間の三月四日、兵庫県警による無限アラート事件と呼ばれている事件がございまして、こちらはブラクラ事件というふうにも呼ばれているらしいんですけれども、その事件について質疑させていただきたく思っています。

 議論の前提として、この無限アラート事件について私の方から簡単に御説明させていただきます。

 報道によると、インターネット掲示板に無限アラートが出るページのURLを書き込んだということで、兵庫県警が不正指令電磁的記録供用未遂の疑いで十三歳の女子中学生と男性二人の自宅を家宅捜索した、そういった報道がありました。それで、聞いたところによると、この二人の男性については送検もされているということです。

 どういったURLのリンクを張ったのかといいますと、お配りした資料一をごらんください。こちらですね。

 リンクをクリックすると、ポップアップが表示されます。どんなポップアップかというと、こちらの資料一にありますように、「何回閉じても無駄ですよ〜」「プギャー!!」と書かれたポップアップです。このポップアップ、オーケーのボタンであるとか、閉じる、これを押しても閉じないんです。こちらはJavaスクリプトを使って警告ダイアログを表示させ続けるという非常に簡単な仕組みのようなんです。

 ブラウザーのウインドーというのは、皆さん御存じのとおり、閉じるのバツボタンがございますよね。そのバツボタン、普通は右上にありますけれども、こちらも、そのバツボタンを押したら普通に閉じるんですね。ウインドーを消したいときに、このバツボタンを押して閉じる。これはちゃんと閉じるんです。すなわち、全く、パソコンに何か破壊的なダメージを与えるかといったら、そういうことはないんです。

 こういうのを、ジョークスクリプトと呼ばれています。これは単なるいたずらなんです。このいたずらのページ自体、二〇一四年ぐらいからありまして、これまでも多くの掲示板、SNSで拡散されているものなんです。結構有名なものなんです。

 もう一つ、これは大事なことなんですが、今回捜査された女子中学生と男性二人、自分のサイトでつくってプログラムを置いたというわけじゃなくて、ネット上の別の場所にあった、こちらのURLをコピーして掲示板に張っていただけだったんです。リンクを張っていただけなんです、それだけ。その行為が今回問題とされているわけです。

 今ちょっとお話ししたような性質を考慮しますと、今回の行為というものが果たして、刑事罰、しかも懲役三年まで法定刑されている、そういう不正指令電磁的記録供用罪に当たるのか、家宅捜索までされるのか、結構疑問なわけです。

 今私が申し上げた兵庫県警の無限アラート事件の事実関係、警察庁として認識されているところ、いかがでございましょうか。

小田部政府参考人 お尋ねの事案につきましては、兵庫県警察におきまして不正指令電磁的記録供用未遂事件として捜査していたところ、所要の捜査の結果、触法事案と判明した一件につきまして児童相談所に通告を行い、また、成人による事件と判明した二件につきましては検察庁に送致したものと承知しております。

松平委員 そういうことなんですね。

 この事件に対するSNS、ネット上の反応、やはり結構祭りになっていまして、これは著名な方も発言されていらっしゃいますけれども、それも含めて紹介しますと、ほとんど実害がないにもかかわらず犯罪扱いするのはおかしい、もっと悪質なページは山ほどある、こんなのはネット犯罪じゃない、実物見たらわかるよ、これで補導されるとか本当に意味わからない、必要であれば証人として立ちます、そういった話、いろいろありました。ネット上の多くの人が、この事案が犯罪なのか、摘発までするのかという点を疑問に思っております。

 率直に、このような反応があることについてどのように思っていらっしゃいますでしょうか。警察庁、お考えをお聞きさせてください。

小田部政府参考人 お尋ねにつきまして、個別の事件捜査の詳細に関してお答えすることは差し控えさせていただきますが、兵庫県警察におきましては法と証拠に基づいて適切に対処しているものと承知しております。

松平委員 差し控えさせていただくとのコメントなんですけれども、それでは、今お話ししたような、この事件に対する意見というものが非常にネガティブな反応が多いということをぜひ参考にしていただきたいと思っています。

 ついでに言いますと、この反対の意見表明として、みんなで逮捕されようプロジェクトという運動まで起こってしまっています。こんなことが日本では犯罪とみなされます、じゃ、みんなで犯罪者になり逮捕されましょう、そういったプロジェクトです。

 それから、兵庫県警に対して情報公開請求をしている動きもあるようです。情報公開を請求している文書、これはどういったものかというと、兵庫県警において不正指令電磁的記録に関する罪に基づく取締りその他運用を行うに当たり、どのような内容をもって犯罪行為とするか、そういった構成要件を記載した文書、この文書について情報公開請求がなされています。

 この情報公開請求について、警察庁として把握されていますでしょうか。もし把握されているとしたら、なぜこのような情報公開請求がされるに至ったのか、背景など、お考えをお聞かせいただければと思います。

小田部政府参考人 個別の情報公開請求の理由や背景につきましては、警察庁としてコメントする立場にはなく、お答えは差し控えさせていただきたいと思います。

 なお、警察庁といたしましては、不正指令電磁的記録に関する罪につきまして、都道府県警察において適切な捜査が行われるよう指導を行ってきたところであり、今後とも適切な指導に努めてまいりたいと考えております。

松平委員 コメントする立場にないとおっしゃられました。

 では、私が、この情報公開請求がなされた理由というものをかわりに言います。一言、逮捕されたくないからなんですね。やはり、逮捕されて、萎縮しながら開発を行いたくないと。だから、違法と適法の線引きを知りたいんです。恣意的に運用されて逮捕されてはたまらないということなんです。

 この不正指令電磁的記録供用罪について、構成要件が不明確ではないかという点、これは私、先日、三月八日の法務委員会でコインハイブ事件を取り上げましたときにも質疑させていただきました。そのときに、政府参考人、構成要件の不正な指令の解釈について、こうおっしゃっていました。その機能を踏まえ、社会的に許容し得るものであるか否かという観点から判断すると。

 クリックすると、これは皆さんちょっと想像していただきたいんですが、懸賞に当せんしましたとか、怪しいページが立ち上がるものがあると思います。アダルトサイトとかの架空請求の画面でなかなか閉じないという、ちょっと迷惑な経験とかも皆さんあるんじゃないかなと思います。(発言する者あり)ないですか。まあ、ある方もいるんじゃないかと思います。

 今回のはそういったものじゃなくて、昔からやられている、単なるいたずらなんですね。いたずらって、先ほどの不正な指令のところなんですが、不正なのですかと。これは社会的に許容されているものじゃないかなと思っていました。いたずらが許容されていないと、ぎすぎすした社会になっちゃいますよ。寛容な社会であってほしいなというふうに思います。

 この話、今ネット上で、ポップアップ広告、至るところで行われていると思います。そのポップアップ広告が、どこまで大丈夫なのか、どこまでコンピューターウイルス罪に当たらないのか当たるのかという点とも関連してくると思います。

 これは、念のために御説明させていただきますと、ポップアップ広告というのは、我々があるウエブサイトにアクセスしたら、自動的にウインドーが立ち上がって広告が表示されるというものです。今、このポップアップ広告、広告の一手法として本当に一般的なものになっています。

 ただ、よく考えると、このポップアップ広告、厳密には、パソコン利用者の意思に反して動作されているものなんです。ポップアップ広告が出てきて、皆さん、邪魔邪魔、見たいものが見られなくなっちゃった、そういった場合が多いと思うんです。そうなると、意図に反する動作をさせるべき不正な指令に当たりますよ、これは。不正指令電磁的記録供用罪です。

 ただ、これはもう今さら取り締まれないんです。もうこれは一般的になっていますから、だから取り締まっていない。もう逮捕者だらけになってしまいます。

 しかし、ちょっとよく考えてもらいたいのは、このポップアップ広告というのも、最初は、誰かが一番最初に始めたときがあった。そのときはほかの誰もされていなかった。だから、最初にされたときは一般的じゃなかったわけです。つまり、社会的に許容されていなかったわけです。そういう意味でいうと、このポップアップ広告に限らず、どのサービスも最初は一般的じゃないわけですね。

 だから、やはり社会的に許容されているかどうかなんというのは、これだけ危ういものだというふうに思います。

 ことしの一月、グーグルが、ありがたいことに、クロームのブラウザーで広告ブロックをすると発表しました。ベター・アズ・スタンダードという、業界団体がアメリカにありまして、その基準に基づいて広告ブロックをするということのようです。ちょっと資料二として御用意させていただきました。裏をごらんください。

 これはブロックする広告の種類が載っているものなんですけれども、見ていただくと、左から二つ目の絵ですね、これは勝手に音楽が流れて動画も自動的に再生されてしまうような広告なんですね。こんなのがあって、今回のジョークスクリプトなんかよりもよっぽど意思に反して動作していますよね。

 コインハイブ事件も、前回の法務委員会で質疑させていただきましたけれども、こっちの方がよっぽどCPU窃盗の度合いが大きいんじゃないかと思います。

 もう一度言わせてもらうと、社会的に許容されているかどうかなんて危ういものだと思うんです。

 今ちょっと長々と問題にさせていただいている不正指令電磁的記録供用罪、こちらについて、法務省さん、ホームページでこう明言されています。「不正指令電磁的記録に関する罪は、いわゆるコンピュータ・ウイルスの作成、供用等を処罰対象とするものである」、そういうふうに明言されています。

 つまり、不正指令電磁的記録供用罪って、もう長たらしくて何かよくわからない、だから、コンピューターウイルスの作成、供用を処罰する、いわゆるコンピューターウイルス罪なんだよというふうに言っていらっしゃるものなんだと思います。だから、普通の人、一般人は、コンピューターウイルスをつくったり供用したりすると犯罪なんだというふうに理解すると思うんです。

 では、コンピューターウイルスというのは何なんでしょうか。

 法務省が出している、コンピューターウイルス罪についてという文書があります。これは資料三として出させていただきました。こういった文書ですね。

 最初の丸のところ、こちらを読ませていただきたいんですが、いわゆるコンピューターウイルスにはさまざまな種類のものがあるが、他のプログラムに寄生して自己の複製を作成し感染する形態のものに限らず、一般に、トロイの木馬、ちょっと括弧内は長いので省略します、ワーム、それからスパイウエアなどと呼ばれるものであっても、前記のように定義される不正指令電磁的記録に当たるのであれば、対象となり得ると。そういうコンピューターウイルスに関する解説がなされています。

 この文書を見ると、コンピューターウイルスは、他のプログラムに寄生して感染するようなもの、それに限られないとして、トロイの木馬、ワームとかスパイウエアが例として挙げられていますので、そういった害のありそうなものを一般人は想定するのが通常なんじゃないかなと思います。だとしたら、今回のは害のない単なるジョークプログラムです。コンピューターウイルスには該当しないと思うんです。その点、いかがかなと。

 コンピューターウイルスについて法務省として定義されているところというのはあるんでしょうか。ちょっと質問通告から一つ飛ばさせていただいています。お聞きしたいと思います。

小山政府参考人 お答えを申し上げます。

 まず、具体的な事例を御指摘されましたが、犯罪の成否は捜査機関により収集された証拠に基づき個別に判断されるべき事柄でございまして、この点についてはお答えをしかねるところでございます。

 その上で、一般論として申し上げますが、不正指令電磁的記録に関する罪は、一般にコンピューターウイルスと呼ばれるものを対象といたしまして、条文上の要件は、対象として、人が電子計算機を使用するに際してその意図に沿うべき動作をさせず、又はその意図に反する動作をさせるべき不正な指令を与える電磁的記録などと規定されているところでございます。

 したがって、条文上、コンピューターウイルスの定義規定は置かれておりませんが、そもそも、不正指令電磁的記録に関する罪の成立する範囲は、先ほど申し上げました条文の要件に該当するかによることとなりまして、その要件の一つである不正な指令の要件につきましては、議員からも御指摘ございましたが、社会的に許容し得るものが例外的に含まれるのを処罰対象から除外する趣旨であるところでございまして、指令が不正なものであるか否かは、そのプログラムの機能を踏まえまして、社会的に許容し得るものであるか否かという観点から判断することとなると考えております。

松平委員 済みません、コンピューターウイルスの定義はあるのかという点についてちょっとお聞きしたかったんですが、いかがでしょうか。

小山政府参考人 お答え申し上げます。

 条文上、コンピューターウイルスの定義という形で定義が置かれているわけではございません。

松平委員 そうなると、恐らく、先ほどの資料三、この書き方が余りよくないのかなというふうに思うんですね。並んでいる、今話した例が、これは害のあるものばかりなんですよ、スパイウエアとかトロイの木馬とか。なので、これは勘違いさせる要因になっていると思うんですね。

 今、定義、法務省としてはないとおっしゃられたんですけれども、経産省は、コンピュータウイルス対策基準でコンピューターウイルスとして定義していらっしゃるんですね。これは資料四をごらんください。

 資料四を見ると、下の方の括弧で囲んだ部分ですね。「第三者のプログラムやデータベースに対して意図的に何らかの被害を及ぼすように作られたプログラムであり、次の機能を一つ以上有するもの。」。一、自己伝染機能、ちょっと内容を飛ばします、二、潜伏機能、三、発病機能と。

 今回のジョークプログラムは、この経産省の定義からは全て当たりませんので、これはコンピューターウイルスには該当しません。

 今、法務省としてコンピューターウイルスを定義していないとおっしゃられましたけれども、そうであれば、ちょっと、コンピューターウイルス罪という略称、これは安易につけるべきじゃないのかもしれない。やはり混乱しますので。

 それで、一般的なコンピューターウイルスの理解それから今のこの経産省の定義、そういったものがやはり、定義は一般的に近いものだと思っているんです。

 ですので、今回の、すぐに消せるような、害のない、いたずらのプログラムをコンピューターウイルス罪で摘発したいのであれば、このコンピュータープログラムを、害のない、いたずらのプログラムが入るような定義を示してもらわないと、これは誤解を生じると思うんです。

 今回、これは刑法なんですね。業法とかじゃないんです。なので、やはり罪刑法定主義というところをきちんとやってもらいたいと思っています。

 今お話しさせていただいた、社会的に許容されないという解釈でこのような事態となってしまっている現状、それから、今お話をしたコンピューターウイルスの定義についての部分。実際に、今回のような、無限アラートの事案のようなことが現に起こってしまっているのは、これはやはり、コンピューターウイルス罪というものが不明確であるということに全て起因しているというふうに思っています。

 大臣、今までの話を踏まえて、いかがでしょうか。

山下国務大臣 まず、経産省ホームページによる定義に関しましては、所管外ということで、明確なお答えは差し控えさせていただきたいんですが、これは最終改定を見ると平成十二年の十二月二十八日なんですね。

 この不正指令電磁的記録作成罪は、これは、この後に条約が締結された欧州評議会サイバー犯罪対策条約を受けて、平成二十三年の改正で成立したものではないかということでございますので、その点から、この経産省ホームページがもし平成十二年以降改定されていないのであれば、そういったことからそごが生じているのではないかということを推察いたしますが、ただ、ちょっとこれは所管外でございますので、経産省がこういうふうに定義している意図、こういったものを出している意図は、若干、申し上げられないところでございます。

 コンピューターウイルスという形ではこれは定義しておらないんですが、刑法においては、不正指令電磁的記録という形でこれは定義がありまして、それにつきましては先ほど局長が申し上げたとおりでございます。

 こうしたことについて、これらの構成要件の明確性からすると、これは一般人であればその意義を十分理解し得るものであろうというふうに考えております。

 これに関して実害を求めるかどうかということに関しまして、意図に反する動作をさせるようなものであれば、やはりこれはこの不正指令電磁的記録ということに当たるのであろうということは一般人において判断可能であると思いますので、ちょっと御指摘のところとは見解を異にするというところでございます。

松平委員 今回の事件、これは運用の問題もあると思います。仮に今回の事件が、サイバー犯罪への知見がないから行き過ぎが生じてしまった、こういったことはあってはならないことだと思いますし、さすがに私もそうではないと信じたいと思っています。

 ただ、その観点からいうと、やはり知りたいのは、現場の方のサイバー犯罪への知見向上のため、そのためにどのような取組をしているのかというところです。

 まず、警察の方から教えてください。

葉梨委員長 警察庁高木サイバーセキュリティ・情報化審議官、質疑時間が終了していますので、簡潔にお願いします。

高木政府参考人 警察では、例えば、民間のIT技術者をサイバー犯罪捜査官等として中途採用しているほか、警察大学校等の研修施設における専従捜査員の育成、民間事業者が実施する講習への参加、情報通信部門と捜査部門の連携の強化等の取組を推進しているところでございます。

松平委員 ありがとうございます。

 ほかにも、法務省、検察と、あと裁判所についても知見の向上についてお聞きしたかったんですが、ちょっと申しわけございません、時間の関係で。

 やはり現場の方の知見というものが、解釈、運用に当たって大変重要となってきますので、その点、どうぞよろしくお願いしたいと思います。

 私の質問はこれで以上になります。どうもありがとうございました。

葉梨委員長 以上で松平浩一君の質疑は終了いたしました。

 次に、松田功君。

松田委員 おはようございます。立憲民主党・無所属フォーラムの松田功でございます。

 きょうは、部落解放、部落差別解消推進法のまた第六条関連について、取組について御質問をさせていただきたいと思います。

 二〇一六年の十二月に、部落差別解消推進法が制定をされました。これによって全国で取組も進められていることであります。部落差別解消推進法制定後、法務省として、全国の自治体に過去の人権問題に関する調査について照会を行うとともに、人権教育啓発推進センターに委託して、有識者会議を設置し、実態調査を進められておることと思います。

 その中において、有識者会議の検討結果、実施すべきとされた調査内容、四つほどございますが、一つは、法務省の人権擁護機関が把握する差別事例の調査、二つ目が、地方公共団体、教育委員会も含みますが、把握する差別事例の調査、三番目に、インターネット上の部落差別の実態にかかわる調査、四番目に、一般国民に対する意識調査。順次作業を進め、準備の整ったものから着手をされていくというふうに思っておりますが、この四項目の進捗状況についてお答えをいただきたいと思います。

高嶋政府参考人 お答えいたします。

 委員御指摘のとおり、部落差別解消推進法第六条には実態調査の実施が定められておりますが、参議院の附帯決議におきまして、当該調査により新たな差別を生むことがないように、真に部落差別の解消に資するものとなるように慎重に検討せよ、こういうふうな指摘がありましたことから、御指摘のとおり、昨年度、その内容、手法等に関する調査研究を人権教育啓発推進センターに委託し、同センターにおいて、有識者会議を設置して検討を進めました。その結果、先ほど御指摘のとおり、四項目について調査を実施すべきとされたところでございます。

 その御質問の進捗状況でありますが、調査結果への影響を避けたいと思いますので、詳細についてはお答えを差し控えたいというふうに思いますが、最初の三つの調査事項、すなわち、法務省の人権擁護機関が把握する差別事例の調査、それから地方公共団体及び教育委員会が把握する差別事例の調査、さらに三つ目のインターネット上の部落差別の実態に係る調査については、既にもう調査に着手して、所要の作業を進めているところでございます。

 それから、最後、四つ目の一般国民に対する意識調査につきましては、これは三十一年度予算でお願いしているところでございますので、その成立後に実施して、三十一年度中に終わらすことを予定しております。

 以上でございます。

松田委員 最初の三つがもう着手をしているということであります。

 そういった中で、地方公共団体から差別事例の調査結果について、これについてどのような形で分析をされているのか、お聞かせいただきたいと思います。

高嶋政府参考人 お答えいたします。

 地方公共団体が把握する差別事例の調査につきましては、まだその結果を集める段階にはなっておりませんが、この各地方公共団体から得られた差別事例につきましては、それを類型別に事例数を整理しまして、法の規定を踏まえて、部落差別の解消に向けていかなる相談体制の充実を行っていくべきか、あるいは、いかなる啓発を今後行っていくのが効果的かという観点から分析したいというふうに考えております。

松田委員 ぜひ効果的なる分析の仕方を進めていただきたいと思います。

 また、次に進みますが、一般国民に対する意識調査のサンプル数、また、調査方法、実施時期についてお答えいただけますでしょうか。

高嶋政府参考人 お答えいたします。

 四つ目の一般国民に対する意識調査の件でございますが、本件に係る参議院附帯決議の趣旨を踏まえまして、当該調査によって新たな差別を生むことがないよう留意しつつ、かつ、それが真に部落差別の解消に資するものとなるよう、その内容、手法等については慎重に検討し、実施することとしております。

 御質問の意識調査のサンプル数ですが、これは一万人としております。回答をお願いする相手方の数が一万人でございます。

 それから、調査方法については、原則として、調査員が調査対象者に対して調査の趣旨等を口頭で説明の上、調査票を配付し、後日回答を回収するという手法を予定しております。

 また、調査の実施時期につきましては、先ほど答弁させていただきましたように、三十一年度中を考えております。

 以上でございます。

松田委員 一番の相談の窓口になる地方公共団体とは、やはり連携を多く図っていただくということが大きくなっていくと思います。また、一般国民に対する意識調査の結果について情報を共有し、また、国だけの調査であればサンプル数も限られているため、地方公共団体とも調査項目を共有するなどして調査の精度をぜひ上げていく方向を進めていただければというふうに思っておりますので、よろしくお願いいたします。

 続きまして、インターネット上の部落差別情報に対する対応策についてお伺いをさせていただきたいと思います。

 インターネットを介した人権侵犯事件は、近年、高い水準で推移をされているということであります。インターネットを介することで、差別や社会的排除につながるメッセージ、情報が多く拡散されており、また、これは大変な問題であり、深刻な状況であるということが言われております。インターネットを利用して不特定多数の人々に対して差別的な書き込みをすると、差別の助長や拡大をしてしまうということで、悪質な差別行為であるとも言われておりますので、こういったことをできるだけ取り締まっていけるような体制づくりは多く進めていかねばと思っております。

 そんな中で、同和地区を特定させる書き込みについて掲載をしている場合についての対応についてお聞かせをいただきたいと思います。

高嶋政府参考人 御指摘のとおり、インターネット上で、特定の地域を同和地区である、あるいは同和地区であったと指摘する内容の情報が掲載されている事案があると承知しております。

 法務省の人権擁護機関では、そのような情報を認知した場合は、人権侵犯事件として立件の上、調査を行うこととしております。その上で、侵犯性が認められる場合、違法性が認められる場合は、当該情報の発信者に対して同種行為をやめるよう説示したり、プロバイダー等に対しましてはその当該情報の削除を要請するなどの対応に努めてきているところでございます。

松田委員 また、同和地区を特定させる情報に対して削除等の要請等の対応をされているということも今少しお話もありましたが、措置対象として見直されてきたいろいろな経緯をもう少しお話をいただければと思います。

高嶋政府参考人 お答えいたします。

 インターネット上における差別の助長、誘発につながる識別情報、識別情報と申し上げますのは、例えば、ある地区が特定の国の方が集住するような地区であるというような、そういう意味での識別、特定をする情報のことを識別情報と我々は呼んでおりますが、こういう差別の助長、誘発につながる識別情報については、従前、差別を助長、誘発する目的がある場合は、当該情報の摘示がなされた場合に削除要請の対象とする運用をしております。これは現在もそうであります。

 ただ、御質問は平成三十年十二月に当局が発出した通知文書に関してと思いますが、昨年十二月二十七日付で、インターネット上の同和地区に関する識別情報の摘示事案の立件及び処理についてという内容の調査救済課長依命通知を発出しております。

 これは、識別情報の中に、特定の地区が同和地区などと指摘しながら、その一部に、文面上、差別解消目的であるかのように標榜したり、紀行文の体裁をとるなどしているものがありまして、このようなものが先ほど申し上げた差別を助長、誘発する目的と言えるのかという点で疑義があったものですから、その考え方を整理した依命通知でございます。

 その依命通知の内容でございますが、そもそも部落差別というのは、それ以外の属性に基づく差別とは異なりまして、差別を行うこと自体をもともと目的として政策的、人為的に創出された、本来的にあるべからざる属性に基づく差別であるという理解に立ちまして、特定の地区を同和地区と指摘する情報を公にすることは、目的のいかんを問わず、人権侵害のおそれが高い、すなわち違法性の高いものであると考えました。

 そこで、今般、識別情報の摘示事案における法務局での立件及び処理についての考え方を整理した上で、学術研究等の正当な目的による場合で、かつ、情報の摘示方法等に人権侵害のおそれが認めがたい場合、こういう場合は除きまして、それ以外の場合は、原則として、差別助長、誘発目的の有無を問わず削除要請等の措置の対象とするという考え方に整理したものでございます。

松田委員 わかりました。

 それでは、引き続きまして、人権侵犯事件として調査した件数、また各救済措置の件数を少しお答えいただきたいと思います。

高嶋政府参考人 部落差別に関しましては、人権侵犯事件として新規に救済手続を開始した件数が、平成二十八年は七十八件、二十九年は八十六件、三十年は九十二件でありました。そのうち、インターネット上の識別情報の摘示事案の立件は、二十八年は二十六件、二十九年は三十八件、三十年は四十二件でございました。

 今のは立件の数でございますが、そのうち、処理の件数について言及させていただきたいと思います。

 プロバイダー等に対して削除要請を行った件数は、平成二十八年は十七件、二十九年は二十七件、三十年は五件であります。また、書き込みをした相手方に対して説示を行った件数は、二十八年はゼロ件、二十九年は三件、三十年はゼロ件でございました。なお、二十九年に説示を行った三件のうち二件については、プロバイダー等への削除要請とあわせて行ったものであります。

 ネット以外の部落差別に関する人権侵犯事件につきましての処理ですが、これは相手方に説示を行った件数が、二十八年二件、二十九年ゼロ件、三十年一件となっております。

松田委員 それでは、通告してある次のものとその次をちょっとあわせて聞きたいと思います。よろしくお願いします。

 今もちょっとお話ありました件数の処理について、インターネットのプロバイダーの協力要請、また指導についても今進めていることであります。それについて、協力要請や指導についてお答えをいただきたいということと、じゃ、それを先にお願いします。協力要請、指導についてどういった形で進めているか。

秋本政府参考人 お答え申し上げます。

 差別を助長、誘発する情報を含めまして、インターネット上の違法・有害情報への対応につきましては、表現の自由に配慮しつつ、各通信事業者におかれまして、利用規約等に基づき、削除等の適切な対応を行うことが基本と考えております。

 ただし、個々の通信事業者のお取組に全てを委ねるのではなくて、通信関連の業界団体におかれまして、違法・有害情報への対応等に関する契約約款モデル条項というものを平成十八年十一月に策定しております。そして、この十二年余りの間に何度となく改定を重ねてきておりまして、この策定、改定作業に通信主管庁として総務省もオブザーバーとして参加する形で支援をしております。

 また、こうした業界団体のモデル条項を踏まえまして、各通信事業者におかれまして、約款等に基づき適切な対応をとるよう促しているところでございます。

 総務省といたしましては、関係事業者や法務省と協力しつつ、今後も、インターネット上の人権侵害情報に対しまして適切に対応してまいりたいと考えております。

松田委員 総務省の方からもそういった見解ですが、電気通信事業協会、テレコムサービス協会、インターネットプロバイダー協会、日本テレビ連盟の通信四者に対して、取組についてもいろいろと適正な対応をとるということで実施をされていることと思います。

 しかしながら、それ以外のプロバイダーのところの対応についてはいかがされているか、お答えください。

秋本政府参考人 お答え申し上げます。

 総務省では、インターネット上の人権侵害情報に係る書き込みへの円滑な対応を可能とするために、昨年十月から、法務省とともに、四団体に所属していない、海外事業者も含めた関連事業者との意見交換の場を開催しております。

 総務省といたしましては、インターネット上の人権侵害に対しまして幅広い関連事業者において適切な対応が図られますよう、今後も対応してまいりたいと考えております。

松田委員 そこで、地方自治体等の人権関係部署との連携についてお答えをぜひいただきたいと思います。

高嶋政府参考人 お答えいたします。

 法務省の人権擁護機関におきましては、都道府県や市町村を含む多様な人権啓発主体が連携協力するための横断的なネットワークを形成し、これを通じて、地方自治体との間で部落差別解消等を含む各種啓発活動の実施について意見交換や情報共有を行って、連携協力を図っております。

 具体的には、人権啓発活動ネットワーク協議会という名称の協議会を設置しまして、各地で連携を図っているところでございます。

 また、部落差別等のさまざまな人権問題に関して個別の地方自治体からその地域の法務局に問合せや要望があった場合には、法務局から必要な情報提供や助言等の対応をするとともに、本省におきましても、必要に応じて、各地の法務局から報告を受けることによって自治体の要望等を把握し、部落差別解消の施策に生かしてきたところでございます。

 さらに、法務省の人権擁護機関では、地方自治体を始めとする関係行政機関の通報等により、インターネット上で特定の地区を同和地区であると指摘するなどの内容の情報が掲載されるという事案を認知した場合には、人権侵犯事件として立件しているところ、これは先ほどお話ししたところと同様でございます。

 以上でございます。

松田委員 次の質問に行きますが、このたび、法務省が、二〇一九年三月十二日に、選挙の立候補者が街頭演説でヘイトスピーチをするなど、選挙運動で政治活動の名をかりた形で差別発言をされることに対して、適切な対応をとるように求める通知を全国の法務局に出されたということであります。

 これの通知の趣旨、経過、また、人権侵犯事件として処理した場合、候補者にどのような対応をとるのか、お答えをいただきたいと思います。

葉梨委員長 高嶋局長、質疑時間が終了しております。簡潔に。

高嶋政府参考人 お答えいたします。

 選挙運動等の機会に行われた不当な差別的言動につきましては、それが選挙運動としてなされたことのみをもって直ちに違法性が否定されるものではなく、当該発言の内容、前後の文脈、言動等がなされた状況等を踏まえて総合的に判断する必要がある。その際に、選挙運動等の自由にも十分配慮すべきであるということでありますが、かかる観点を通知したものでありますが、これは法的観点からいえば極めて当然のことでありまして、人権擁護機関の調査、救済の方針において基本的に変わるところはございません。お尋ねの通知は、そのような理解を明確にする趣旨で法務局に示したものでございます。

 それから、そのような案件があった場合につきましては、被害申告等がありましたら、法務局において立件の上、調査し、その結果、人権侵犯性が認められる場合は、事案に応じて適切な措置を講じることとしております。

松田委員 ありがとうございました。

 まだまだ差別問題が解決するわけではありませんので、また、インターネットの書き込み等、どんどんどんどん大きな問題もふえております。そういった形でぜひ適切な対応を願うことをお願いしまして、質問を終わらさせていただきます。

 どうもありがとうございました。

葉梨委員長 以上で松田功君の質疑は終了いたしました。

 次に、山尾志桜里君。

山尾委員 立憲民主党の山尾志桜里です。

 皆様のお手元の資料の、二枚めくっていただいた、「失踪技能実習生の現状」、このペーパーの記載について、きょうは十五分、集中的に質問させていただきたいと思います。

 まず、私の問題点を申し上げます。この赤囲いの失踪の原因の記載、これが一つ。その下の聴取結果、聞き取りのままという記載ぶりが二つ目。この二点であります。

 一点目は、要するに、契約賃金以下、最低賃金以下、これに基づく失踪をあたかも実習生側の帰責に位置づける評価、表現方法は、当然のことながら、政務官のプロジェクトチームなるところで改めていただくのが当たり前であるということ。

 もう一点は、この聴取結果ですけれども、例えば、失踪動機、下から二行目、低賃金(最低賃金以下)が二十二人(〇・八%)という記載があるんですけれども、こういう記載をそのままペーパーに記載していいんですかという問題意識です。要するに、同じ聞き取りで月額給与や労働時間も聞いていて、この具体額から換算したら六割から八割は最賃以下だった、こういう私たち自身の手書きの結果も出ているわけです。それとかなり乖離のある結果を一方だけ載せるのが適切ではないということ。

 そして、このそごも含めて、与党の皆さんが、必ずしも、この聴取による現状把握は正確性を欠いているという認識に立ちながら、政府もこの認識に立ちながら、この聴取結果の一面だけをこの紙に記載し続けることは、間違った認識を国民に与えるからやめてくれと、ごく普通のことをずっとお願いをしております。

 まず、大臣に聞きましょう。

 大臣、この前、政務官に聞いたことですけれども、この資料の一枚目と二枚目ですね。新しいこの基準で、一年以内に受入れ機関の責めに帰すべき事由により行方不明者を発生させていないというようなことが必要とされているわけですが、この責めに帰すべき事由の解釈です。最賃割れあるいは契約賃金割れ、これによって行方不明者を発生させた帰責は、実習生側と機関側と、どちらに認定するんですか。

山下国務大臣 これにつきましては、受入れ機関において例えば法令違反であるとかあるいは契約違反等があった場合、そういったものに基づいて行方不明を発生させたということであれば、これは受入れ機関の責めに帰すべき事由ということになります。

山尾委員 そういった契約賃金以下、最低賃金以下は受入れ側の帰責事由だと、大臣も答弁をいただきました。

 次、入国管理局長にお伺いをいたします。

 改めて、三枚目の現状の紙をごらんください。この失踪原因の2、要するに、この失踪の原因の評価の仕方というのは、受入れ側の不適正な取扱いは、労働時間が長いとか暴力を受けたとか帰国強制とか、そういったものしか例示をしていないんですけれども、この「「帰国を強制された」等、受入れ側の不適正な取扱いによるもの」の、この「等」の中に、契約賃金以下による失踪、最低賃金以下による失踪、これは当然受入れ側の不適切な取扱いだと思いますけれども、新しい政省令でもこれは受入れ側の帰責にカウントするわけですから。この「等」の中に、契約賃金以下、最低賃金以下、実は入るんですか。

佐々木政府参考人 ここに言っております不適正な取扱いの一つにはなると思います。

山尾委員 政務官、次、お伺いをいたします。

 皆さんのお手元の資料の四枚目、五枚目を見てほしいんですけれども、四枚目の下、今私が佐々木局長としたやりとりを法務委員会の中で前の和田局長とやりとりをしたことを、多くの委員の方は覚えていらっしゃる方もいると思います。

 もともと和田局長は、さっきの紙を見て、この「等」の中には最賃とか契約賃金割れは入らないという答弁を同じ質問の中でしていたんです。それは私はおかしいんじゃないかということを言って、委員長も、適切かどうかは別として、おかしいじゃないかというようなことを委員長の席から言って、最終的に局長は答弁を変更したわけですね。この「等」には入りますと、最賃以下あるいは契約賃金以下。

 これは、あえて善解をすれば、局長すら誤解するような表現ぶりを、政務官、プロジェクトチームでこの表現を改めないんですか。

門山大臣政務官 新しいPTでは、こういう御指摘も受けていることも踏まえて、客観的な、なるべく正確に調査したものをありていに出していくという方針は確立しております。

 今後どうするかについては、またそれについても言及はするつもりでございますけれども、とりあえず、この聴取票があった、これ自身として資料価値はあるわけでございますので、それを踏まえて今回このPTの結果を出させていただくということでございますから、このPTの結果を見ていただいて、それに基づいてより正確なものを出すという意味で、ここの、今のこの既に出した聴取票を修正するというものじゃなくて、ここで新しい、よりしっかりわかるものを出していきたいというふうな方針で考えているという意味で御理解いただければと思います。

山尾委員 全く理解できません。

 政務官、そうすると、この聴取票の表現ぶりについて、より誤解を招かない表現ぶりがあるんじゃないか、こういう検討はPTの中でされたんですか、されていないんですか、どちらですか。

門山大臣政務官 当然のことながら、これだけ問題になっているわけでございまして、誤解を招くような表現というか、いろいろ議論になっているということは認識した上で、今回、しっかりとしたものを出そうというふうにはしているわけでございます。

山尾委員 質問に答えてください。この聴取票の表現ぶりを検討し直すということはしているんですか、していないんですか。

門山大臣政務官 今回のPTの中で、聴取票の表現、聴取票というか、聴取票に出てこのまとめたものを、表現ぶりを検討することはしていませんけれども、そもそもこの聴取票のあり方、こういう聴取票の書きぶり、聴取票自体に非常に問題があったという認識で、聴取票自体のあり方を根本的に変えるという検討は行っております。

山尾委員 そうすると、平成三十年十一月二十一日のこの法務委員会で、大臣が、この表現ぶりについて、「より誤解を招かない表現ぶりというものも今後PTの中で検討していただきたいと思います。」と答弁していますけれども、大臣の指示に反して、検討していないということでよろしいですか。

門山大臣政務官 そういう指示があったので、今度出されるPTの報告書の中では、より客観的な指標を求めて、客観的な書きぶりで報告を出すように指示をして、そのような結果になるように今努めているところでございます。

山尾委員 答弁をすれ違わさせないでいただきたいんです。だって、この聴取票そのものの表現ぶりに問題があるんでしょう。しかも、その聴取手法そのものに問題があるんでしょう。問題がある聴取手法に基づいた聴取結果やその評価を、なぜ、その記載を改めないまま、法務省が新たに別のものを出すんですか。

 そして、大臣自身が、もう一度言いますけれども、この表現ぶりについてPTの中で検討していただきたいと言っているんですよ。

 そして、政務官、今何か、私のPTでは客観的なものを出すということが何か確たる方針になっているとか言っていましたけれども、そんなこと言っていませんでしたよね、全く。前の国会で私たちがこの件について何度言っても、それもPTでやります、これもPTでやりますとずっと言っていたじゃないですか。

 どうして、局長まで間違えるような表現ぶりのものを国民に流布させたまま、改めないんですか。改めなくていいという理由を教えてください。

門山大臣政務官 今回委員が出されたこの資料、御指摘の資料というのは、あくまで聴取票の内容を、集計結果をそのまま示したものであるということでございます。そこに、注に書いてあるとおりでございますから。これについては、これが間違っているというわけではございませんけれども、確かに、その内容については、そのままお出ししてしまったということでございまして、いろいろ誤解を招いている部分がある。

 ですから、今回のしっかりとしたPTの中では、いろいろ裏づけ資料も含めた上で、しっかりと集計結果を出させていただくということで、それを議論の前提にしていただきたい、そのように答えている次第です。

山尾委員 前の間違った紙をきちっと訂正しなければ、それは前提になりませんよ。訂正してください。

門山大臣政務官 誤解を招くような内容だと思いますけれども、この聴取票自体というのは、技能実習生が失踪時点の認識等を書いたもので、それはそれ自体として参考になる資料でございますから、現時点でこれを撤回して新たなものをつくるじゃなくて、これはこれとしてありながら、新しいものはしっかりとしたものを出していきたい、そういう認識で我々はこのPTをやってまいりました。

山尾委員 このままいくと、報告書が出された後に集中審議、求めますよ、当然。当たり前でしょう。

 大臣も本当にそういう認識なんですか。政務官、今、誤解を招く表現だということを認めつつ、そしてこの一枚紙の、聴取方法そのものにも課題があったということを認めつつ、正しいと思われる方法で正しい結果を私の報告書で出しますと言っていますけれども、じゃ、どうして、課題がある、正しくない面があったこの紙を国民に流布させたまま、じゃ、この紙は、この部分はちょっとやはり訂正の必要がありますとやればいいじゃないですか。何もそこを、どうしてこの紙は絶対に維持するということにこだわるんですか。

 大臣、どうぞ。

山下国務大臣 私の答弁、山尾委員が資料で配っていただいておりますけれども、「等」の中に、不適正な取扱いにあるものを示す中に、低賃金、契約賃金以下あるいは最低賃金は含まれていないということは申していなかったということで、この「等」をどこまで開くかというふうな問題というふうに私は考えた上で答弁させていただいておりました。

 そして、この取りまとめにおいては、ここの2の失踪の原因というのは、これは聴取票の結果のみならず、さまざまな聴取結果を踏まえて記載したものでありますが、「等」という表現の中に、どこまで開くかにおいて、例えば1という中に低賃金(最低賃金以下)というところを表記しておりますので、重ねて記載しなかったのであろうというふうに考えております。

 他方で、この失踪した技能実習生に係る聴取結果というところで、これはもう聞き取りのままというところで記載せざるを得ないわけでございますが、こうした記載をせざるを得ない部分が、聴取票の聴取の項目が少し、ちょっとざっくりし過ぎではないかであるとか、もう少しきちんと聞くべきであるのかというようなことについては、今PTで検討していただいておりまして、この聴取票の書式の変更も含めて検討しているということでございます。

葉梨委員長 山尾君、まとめてください。

山尾委員 全くまとめられないぐらい、ひどい話ですよ、こんなの。委員会で前提にしていた話と違うことを政府がやっているじゃないですか。そんな無理筋の解釈を国民や私たちに強いて、新しいのを出すから前のは撤回しない、こんなの、許されないと思いますよ。

 これは引き続き質疑でもやっていきますし、これは理事会で協議させていただきたいと思います。

葉梨委員長 はい、後刻協議いたしましょう。

山尾委員 以上です。

葉梨委員長 以上で山尾志桜里君の質疑は終了いたしました。

 次に、藤野保史君。

藤野委員 日本共産党の藤野保史です。

 厚労省と法務省は、外国人技能実習制度の柔軟化に向けた検討チームを立ち上げて、三月十九日に初会合を開いております。

 厚労省にお聞きしますが、なぜこの検討チームを立ち上げることになったのか、そのきっかけは何なんでしょうか。

山田政府参考人 お答えします。

 昨年十月の自民党法務部会で、より実効的な技能実習が可能となるよう、技能実習計画の内容について円滑化を検討する旨の決議がなされました。

 これを受けて、先月二十八日の自民党法務部会において、厚生労働省から、技能実習制度に関し、より実効的な技能実習が可能となるよう、技能実習計画の内容について業界団体、地域等から要望を聴取し、その円滑化を検討することを説明しました。

 このような経緯により、今般、三月十九日に技能実習の職種のあり方に関する検討チームを設置したところであります。

藤野委員 自民党の法務部会の決議がきっかけであったと。

 三月十九日の初会合には二団体を呼んだと聞いておりますが、どの業種の団体で、どのような意見が出たんでしょうか。

山田政府参考人 お答えします。

 三月十九日に開催した第一回技能実習の職種のあり方に関する検討チームでは、地域の水産加工関係の団体それから中小企業団体に対して、技能実習計画の内容についてヒアリングを行いました。

 団体からは、自然条件や季節性の影響への対応、それから二号移行対象職種の追加等について要望があったところです。

藤野委員 これはいつまでに結論を出されるのか。それまでにどのような団体を呼ぶつもりなのか。その中で、技能実習生から話を聞く予定はあるんでしょうか。

山田政府参考人 お答えします。

 技能実習の職種のあり方に関する検討チームについては、四月までに五回程度開催をし、技能実習を行っている業界の団体、中小企業の団体、寒冷地、離島等の地域等からのヒアリングを行い、対応策をまとめることを予定しております。

 技能実習生から直接お話を伺うということは予定しておりません。

藤野委員 自民党の法務部会の決議に基づくわけですが、実習生には話は聞かない。団体、関連地域ということでありますが、結局、これは使う側のための検討ということになるのではないか、そのおそれがあるんじゃないかということなんですね。

 今も、企業による悪質な技能実習生の使い方といいますか、働かせ方というのは相次いでいるわけであります。

 配付資料の一を見ていただきますと、これは新聞報道でありますが、ことしの一月二十六日、三菱とパナソニック、技能実習、認定取り消しと。三菱につきましては、計画外の作業をさせているわけですね。

 今回の検討チームは、ある意味、今の計画の作業よりも広げようということでありまして、非常に似たような話であります。

 配付資料の二を見ていただきますと、これは日立であります。日立の笠戸事業所でも、同じように、目的外の職場に配置していたとか、例えば、電気組立てという技能を学ぶために来たのに、トイレを取り付けさせていたとか、窓を取り付けさせていたとか、全く関係のない作業をさせていたという疑いで、今調査がされております。

 法務省に確認したいんですが、この日立の笠戸事業所、これはまだ調査中ということで間違いないでしょうか。

佐々木政府参考人 調査検討中です。

藤野委員 調査中ということでありまして、配付資料の三を見ていただきたいんですが、実は、こういう事案が相次いでいるということで、法務省も厚労省などと連名で通達を出しております。

 要するに、実習計画外の作業をさせたら、それはもう実習制度そのものを否定するといいますか、要するに、技能以外のことをさせる、計画そごという言葉らしいんですが、計画そごであれば本来の役割を果たせないということで、こういう通達も出されて、適正化を図る。厳正な対処を行うこととしていますというふうに注意喚起をされているわけでありまして、まさにこの問題は技能実習制度の根本にかかわる大問題だと思っております。

 それが、三菱、日立、きょうはちょっと紹介していませんが、日産自動車とか、あるいは、ここにあるような、パナソニックはちょっと違いますが、起きているということで、大臣にお聞きしたいんですが、これは要するに、計画そごがなぜ起きたのかというのは、例えば日立でいえばまだ調査中なんですね。だから、再発防止策もまだわからないわけであります。そんな状態で、この技能実習制度が柔軟化されていく、緩和されていく。

 作業以外、要するに必須作業と言われるもの以外もどんどん広げていこうということになれば、企業側による今も起きている悪質な運用というのが更に拡大する可能性があると思うんですが、大臣、こういう認識はないんでしょうか。

山下国務大臣 御指摘の厚生労働省による技能実習の職種のあり方に関する検討につきましては、これは、より実効的な技能実習が可能となるよう、技能実習計画の内容について業界団体、地域等から要望を聴取して、その円滑化を検討することを目的として行われているものと承知しております。

 お尋ねの企業に関する案件、これは個別事案なので詳細なお答えは差し控えますが、一般論として申し上げれば、今御指摘の厚生労働省の検討というのは、これは今後ということでございまして、お尋ねの個別事案については、既に違反事実があるということなのであれば、法令違反が疑われる事案については、既存のルールにおいて、法務省及び厚生労働省並びに外国人技能実習機構が連携しつつ、違反事実の有無等を調査の上、技能実習法令に従って厳正に対処するということになります。

藤野委員 ちょっと今、質問と答弁がすれ違ったんですが、それは今から聞こうかと思っていたんです。

 私がお聞きしたのは、要するに、今後と大臣がおっしゃった、まさにそのことなんです。厚労省が、こういう、実習生に必須作業以外のことをやらせようということを、今まさに柔軟化ということで検討チームを立ち上げてやっているわけですね。法務省からも行っておられる。こういうことをやれば、今でさえ悪用があって、それが調査中であって再発防止もまだわからないという、このもとでそれを緩和すれば、更に悪用の幅が広がってしまうじゃないかという質問なんです。

 大臣の今の答弁は、既に起きた事案でありますから、これはもうきっちりやっていただきたいんですが、今後そういうことになるんじゃないかというのが私の質問です。

山下国務大臣 いずれにせよ、やはり技能実習制度というのは技能実習計画の中でやっていただく必要がある。したがって、その計画を外れたものについては、これはルール違反ということになるということでございます。

 その計画の中において、計画は、これは実習生の同意も得た上で技能実習計画ということが運用されていくわけでございますけれども、そうした中で、その計画、あるいは技能実習制度についてどのような制度が適当であるのか、あるいは、そういった円滑化が必要なのではないかということについての検討については見守ってまいりたいと考えております。

藤野委員 いやいや、見守っていただいては困るという質問なんです。

 というのは、既に悪用が起きている。今の計画とおっしゃいました、今の計画外のことを実際にやらせているわけです。日本を代表する日立とか日産とか三菱がやらせているわけですね。通達も出されて、今、調査もされているというもとでですよ。

 調査の結果、判明した結果、それならまあ広げても大丈夫だねということでもし結論が仮に出たのであれば、そういう検討を今やられているというのはわかりますよ。しかし、まだ調査中であって、しかも、まだどういう対策が必要なのかもわからないもとです。もとで、今、いきなりこういう検討が始まっている。

 だから、見守っていただいては困る。しっかりと責任を持って、この日立の場合はどうだったのかという結論を出して、その後で、ではどうするかという話の中で議論していただきたいわけですね。

 その上で、もう一回お聞きしますが、別の角度からお聞きしますが、なぜ今なのかということなんです、大臣。なぜ四月末なのかということなんです。先ほど答弁があった、お尻が決まっているのか。

 それは、四月に新しい制度が始まる。この新しい制度のたてつけというのは、まさに特定技能が、必要な業務というこの業務と、その関連する業務もできる、こういうたてつけであります。関連業務というふうに分野別方針などでは言われておりまして、この関連業務って何なんだということをこの間ずっと、私も法務省にレクで聞いてきたんです。

 といいますのは、技能実習法の中にも関連業務という言葉があるんです。御丁寧に、周辺業務という言葉もあるんですが。必須業務、関連業務、周辺業務というのがあって、それぞれ、必須業務は二分の一以上じゃなければならないとか、関連業務は二分の一以下でなければならないとか、いろいろあるにはしても、大臣、関連業務という言葉は同じなんです。

 今回の質問に当たりましても、その検討チームで検討している、広げる、柔軟化するというのはどこなんだと聞いたら、要するに、はっきり言わないんですけれども、関連業務のところも含まれるというような説明だったわけであります。

 となってくると、四月からは、そういう関連業務をできる特定技能が始まる。同じ工場、同じ職場で特定技能労働者と技能実習生が働くということも十分考えられるわけですね。その場合に、一方では、法律上も関連業務が完全に認められている、二分の一以上でなければならないなんという時間的制約も全くない特定技能労務者が働くわけですね。他方、同じ工場なりで、時間的制約とかいろいろな制約がある技能実習生が働く。これを解消したいということが動機なんじゃないかと思うんですが、大臣、いかがですか。

葉梨委員長 では、佐々木入国管理局長、まず。

佐々木政府参考人 今御指摘のように、技能実習法上の関連業務は、必須業務に従事する方によって当該必須業務に関連して行われることのある業務であって、修得等をさせようとする技能等の向上に直接又は間接に寄与する業務であって、当該業務に従事させる時間が全体の二分の一以下ということとされています。

 これに対して、特定技能の方の関連業務、これは各分野別運用要領に規定をされておりますけれども、この一号の特定技能外国人が従事する分野ごとの業務にあわせて、当該業務に従事する日本人が通常従事することとなる業務に従事することができるとするものであって、主たる業務に関連性があると考えられることから認めているものでございます。(藤野委員「ちょっと委員長、関係ありません」と呼ぶ)

葉梨委員長 ちょっと説明を聞いてから。

佐々木政府参考人 ですので、その意味では、特定技能の関連業務は、技能実習制度とは異なって、関連業務に従事することができる例えば具体的な割合を一概に定めるものではないというものでございます。

藤野委員 委員長の指揮で局長に答弁させて、私も一応聞こうかと思いましたけれども、全く関係ない。

 私は動機を聞いているんです、四月から始まる。片や検討チームは、四月末までに結論を出す。何でこれは急ぐんですか。一緒、両方合わせようとしているんじゃないですかという質問です。端的に。

山下国務大臣 先ほど局長が答弁しましたように、両者は別の、関連業務という言葉でありますが、別の考え方に立っております。

 そして、委員の御指摘ではありますが、この両者を連携させるためにお尻を切っているのではないかということについては、私はそういうことであるとは聞いておりません。別の検討ということでやっているというふうに承知しております。

藤野委員 それは、非常に私は、それを信じておられるのであれば、本当なのかなと。

 結局、技能実習制度というのは本音と建前というのが乖離しているというのは指摘をされてまいりました。今回、この検討チームが本当にそういう方向で動けば、この本音と建前の乖離というのが更に進む。特定技能が始まって、同じ職場で、同じような関連業務をこっちはやって、こっちはやらないということがまさに現実化するわけですね。そのもとで、いきなりこういう検討チームを立ち上げて、四月末と期限を区切ってやろうとするというのは、本当に技能実習制度を何だと思っているのか、技能実習生を何だと思っているのかという怒りを禁じ得ないわけですね。

 そういう、もう本音と建前をごまかすやり方をやめるべきだというふうに厳しく指摘したいと思います。この問題は引き続き追及していきたいと思います。

 もう一点、別のテーマですが、お聞きしたいんですけれども、来週からいよいよ新しい外国人の受入れがスタートするわけで、我々は反対ですけれども、上限、五年で三十四万人とも言われております。

 この受入れが入り口とすれば、出口に当たるのは退去強制手続だと思うんです。

 私、この問題を取り上げてまいりました。先日の当委員会でも、退去強制手続における収容の必要性、要否、あるいは収容の期間、あるいは仮放免の許否、いずれについても入管局の裁量が余りにも広い、法律上の明文がないという指摘をさせていただきました。そのもとで、深刻な人権侵害が相次いでいる。きょうも、他の委員から指摘もありました。

 この現状を放置したまま外国人労働者の受入れを拡大すれば、さらなる人権侵害が起きると思いますので、この退去強制手続、これは今こそやはり見直すべきじゃないかと思うんです。

 そのために、ちょっと質問したいんですが、まず前提として、法務省、お聞きしますが、現行法は全件収容主義と呼ばれておりますが、なぜこう呼ばれるんでしょうか。

佐々木政府参考人 入管法におきましては、退去強制手続において、違反調査から送還に至るまで、容疑者を収容することを前提に条文が構成されておりまして、このことをもって全件収容主義と呼ばれることがあります。

藤野委員 そのとおりなんですね。退去強制事由に当たる疑いがあれば、基本的には収容して、疑いを調べるところからして収容していくという意味での全件収容なんです。

 きょう取り上げたいのは、かつて法務省も、この全件収容主義、やってみた、やってみたけれどもいろいろ問題があるということで、この全件収容主義を見直そうと法務省自身がされていたことがあるんですね。

 例えば、一九六九年の入管法改正案第四十五条二項、ここでは、収容令書の発付について以下のように規定しておりました。

 ちょっと時間の関係でこちらで紹介させていただきますが、地方入国管理官署の長は、入国警備官から収容令書の発付の請求があった場合においても、刑事訴訟に関する法令等により身体を拘束されている者、括弧、これは一号です、老幼、疾病その他身体の故障により収容にたえることが困難と認められる者、これは二号です、逃亡のおそれがなく、かつ、収容を猶予すべき事情があると認められる者、三号については、地方入国管理官署の長は収容令書を発付しないことができるという文言であります。

 法務省にお聞きしますが、当時の、一九六九年の政府はなぜこうした改正案を提案したのか、国会でどのように説明しているでしょうか。

佐々木政府参考人 議事録を確認いたしました。

 当時の中川入国管理局長から、今御紹介の同法案第四十五条につきまして、外国人の人権を尊重する精神から、現行令の規定している必要的収容を緩和した旨の説明がなされております。

藤野委員 今答弁があったとおりであります。配付資料の四の下段に当たる部分でございます。

 要するに、外国人の人権を尊重する精神から、全件収容、ここでは必要的収容という言葉になっておりますが、全件収容を緩和したと。これはなかなかの表現だなと思いますが、緩和をしたということなんですね。

 つまり、現行制度というのは、先ほど言ったように、退去強制の対象者じゃないかなという疑いがあれば、その疑いを晴らすことも含めて収容するわけですね。

 ところが、六九年のこの改正は、それに加えて、いや、疑いがあっても、例えば刑事手続の問題があるとか、あるいは健康上の理由があるとか、さらに、逃亡のおそれがないとか、そういう場合は収容しなくていいですよというふうに修正した、緩和したわけでありますね。

 もちろん、この六九年の改正法は、全体としては外国人の人権を更に制約しようということで、全体としては改悪なんですね。

 ですから、これも、六九年も廃案になったし、その後、七一年、七二年、七三年と出るわけですが、いずれも廃案になるんです。それは、やはり全体としてまずかったから。

 ただ、やはりこの全件収容に関しては、収容の要否、必要性、あるいは収容の期間、後でも言いますけれども、期間についても法律で一定の歯どめをかけようとしていたというのは、これは事実だと思います。

 それで、もう一点紹介したいのは、その六九年が緩和だとしますと、その後提出された七三年の入管法の改正案、これはこういうふうに規定しております。

 四十八条になりますけれども、地方入国管理官署の長は、容疑者が第三十三条各号の一に明らかに該当すると認められる場合で、かつ、その者が逃亡し、又は逃亡すると疑うに足りる相当の理由があるときは、収容令書を発付して、入国警備官に当該容疑者を収容させることができるという規定なんです。

 これも法務省に確認したいんですが、これはなぜこういう改正案を提案したのか、国会でどのように説明しているでしょうか。

佐々木政府参考人 当時の入国管理局長からも、同様に、外国人の人権尊重により一層の配慮をする趣旨である旨の説明がなされております。

藤野委員 そうなんですね。

 先ほどは外国人の人権に配慮、今回はより一層人権尊重に配慮というので、これは当時の田中法務大臣も、紹介しますと、現行の入国管理令では、退去強制手続を進める場合には容疑者を必ず収容しなければならない、身柄を収容しなければならないことにしておることを改めまして、退去強制事由が明らかで逃亡のおそれがある場合に限りまして容疑者を収容することとするとともに、収容できる期間も短縮しまして、より一層人権尊重を図ったことでございます。当時の法務大臣もこう答弁しております。

 まさに、六九年の入管法が、ある意味で、しないことができるという言いぶりなんです。身体の健康の問題や逃亡のおそれがないときはしないことができますよという書きぶりなんですけれども、しかし、七三年は更に一歩進めまして、しないことができるということはすることもできるわけですけれども、七三年の場合は、逃亡すると疑うに足りる相当の理由がない場合は収容することができないという規定なんですね。できないという規定。

 だから、これは、いわゆる緩和と先ほど六九年の答弁がありましたけれども、緩和にとどまらず、そういう逃亡のおそれがない限りは収容できないという点では、私は、これは全件収容主義をもうやめますよという宣言に等しいというふうに思います。

 大臣にお聞きしたいんですけれども、やはり、過去、全件収容主義について、法務省自身がこういう緩和、あるいはもうやめようという改正案を国会に提案されてきた。そして、その趣旨はと問われて、当時の大臣などは、より一層外国人の人権尊重を図るためだと答弁しております。

 今、政府が外国人の受入れを大規模に拡大しようとしているときであり、大臣自身も人権尊重ということをおっしゃっておられる。こういう局面で、入り口は広げる、そうであれば、出口に当たる退去強制手続でも、より一層人権尊重の趣旨を高めて、この全件収容主義を見直すべきじゃないですか、法律上も。いかがですか。

山下国務大臣 御指摘の、五十年前、あるいは四十六年前の出入国法案、これは収容令書に関するものでございまして、収容令書と退去強制令書があるわけでございます。

 四十六年前の例えばこの改正案では、退去強制令書による収容は現行とほぼ変わらず、送還するまでの間は退去強制令書によりその者を収容することができる旨の条文になっておったわけでございます。そのことを前提といたしまして、結局、この退去強制を行うに当たっては、その者の送還を確実に実施するとともに、その者の本邦における在留活動を禁止する目的から、身柄を収容して行うことが原則であると考えております。

 そして、この一九六九年及び一九七三年の法案において、退去強制手続における収容令書による収容の規定の見直しにつきましては、これについては、例えば自発的に出頭した者に関しては収容令書を執行しないというふうな手続も、今、現状、運用でやっておるところでございまして、その趣旨は体しているのであろうと考えております。

 他方で、退去強制令書に関しましては、これは、収容の規定については現行法の規定と同様であるということは先ほど御指摘したところでございます。収容に関しましては、これは御本人が、我が国においてもはや在留できない、あるいは在留が適当でないと判断された者でございまして、本人の意思に基づいて帰国していただくことによって収容は解かれるというものでございます。

 他方で、そういった個々の状況も踏まえて、現状においても、在宅のまま違反調査を進めたり、仮放免制度を弾力的に運用するなどして、人権に配慮した柔軟な対応を行っているところでございます。

 したがって、全件収容の見直しということは考えていないわけでございますが、被収容者に関しましては、今後とも人権に配慮した取扱いを図ってまいりたいと考えております。

藤野委員 いろいろおっしゃいましたが、全く質問に答えておりません。

 要は、政府自身が見直しをされたということ、私はこれは大事なことだと思うんですね。それはなぜかというと、当時、大問題になっていたわけです。

 実は、この衆議院の法務委員会に小委員会というのが設置されまして、収容に関する、それはなぜかというと、当時、収容所で、今とはちょっと違いますけれども、やはり過酷な長期収容等を原因として、さまざまな人権侵害が起きていたんですね。中には、法務省の、長崎の大村の二十年史というのには暴動と書かれているような、これは法務省側の表現ですけれども、そういう事態も起きて、実際に、この衆議院の委員会として、当委員会として大村に調査に行ったりもしているわけです。

 そういうことが六〇年代はずっと続いて、先ほど言った法務省の提案にも私は結びついていると思うんです。参議院でも同様の調査が行われております。そういうことも議事録に載っております。

 ですから、そういうことも受けて、当時の政府はそれなりの対応といいますか、全件収容主義を見直さないと大変なことになる、実際に大変なことになったわけで、そういう対応をされたわけです。それは私、大事な動きだったと思うわけです。

 今、大臣も行かれた牛久のセンターも始めとして、先ほど東京入管の御指摘もありました。今、既に人権侵害が相次いでいる。このまま更に三十数万人の外国人の受入れを拡大して、出口だけは今までと同じようなやり方を続けていく、裁量でやらせてもらいますと。先ほど言ったのも全部裁量です。大臣が、自発的な手続とか仮放免等いろいろおっしゃいましたが、全部裁量なんです。

 それが六〇年代に大問題を起こしたから、当時の法務省は法律を変えようという判断をされたんです、立法判断されたんです。ですから、私は、今立法判断が必要じゃないかという質問なんです。もう一度お答えください。

山下国務大臣 まず、入管施設において人権侵害が行われているということについてはにわかに同意しかねるというところと、あと、三十四万五千百五十人というふうな御指摘がありました。これについて、これが、出口が強制退去だということではなくて、出口は任意の円滑な御帰国でございます。そういったところがやはり大原則なのであろうと考えております。

 そして、従来の政府の修正案、これは収容令書、これの弾力的な運用でありまして、退去強制令書ではないということでございまして、引き続き、そういったことを踏まえながら、必要に応じて、これらの仮放免制度の弾力的運用であるとか、そういったことも検討してまいりたいと考えております。

藤野委員 時間ですけれども、この問題は引き続き追及していきたい。

 先ほどちょっと聞き逃せない答弁があったのは、収容所で人権侵害は起きていないというような趣旨の答弁をされましたけれども、とんでもない認識だと思いますよ。

 これはもう物すごい人権侵害が起きているわけです。その原因として私は裁量が広過ぎるという話をしているわけで、その認識そのものが私は問題だというふうに思いますし、配付資料の六には、東京弁護士会の直近の見解、提案も出しております。東京弁護士会としても全件収容主義を見直すべきだという中身なんですね。これはなぜかというと、そういう人権侵害があるからだということを厳しく指摘して、質問を終わります。

葉梨委員長 以上で藤野保史君の質疑は終了いたしました。

 次に、浜地雅一君。

浜地委員 公明党の浜地雅一でございます。二十分、時間を頂戴しました。

 きょう、私は、一般質疑でございますので、少し細かい論点、保証について議論をしてみたいと思っています。

 御案内のとおり、二〇一七年五月に、民法の一部改正、大改正が成立をしまして、二〇二〇年の四月一日から施行の予定となっております。その中で、保証契約について、特に根保証と言われるものにつきましては、極度額を定めないと無効になる、そして、特に事業用の貸金につきましては、公証人による保証人の意思確認が必要になったわけでございます。

 貸金については、この根保証について、特に極度額また公証人による意思確認ということが非常に周知をされているわけでございますが、もう一つ、賃貸借契約、家を借りたときにも、その保証人となるべき方については、どこまで負債を負うのか、債務を負うのかということで極度額を定めなければならないというふうになっております。

 そこで、まず前提で、基本的なことでございますが、賃貸借契約の保証契約において極度額を定めなければならない場合はどういった場合なのか、まず簡単に確認をしたいと思います。

小野瀬政府参考人 お答えいたします。

 賃貸借契約に基づく賃借人の債務を主たる債務といたします保証契約につきましては、保証人が個人であり、かつ、それが根保証契約、すなわち、一定の範囲に属する不特定の債務を主たる債務とする保証契約に当たる場合には、極度額の定めが必要となります。

浜地委員 保証人が個人の場合でございますので、今は、どちらかというと法人が連帯保証人になって契約等を結ぶ場合もございます。その場合は、極度額の定め等は必要ないということだろうと思っております。

 そこで、今、私の方で、現場からぜひ聞いてほしいという御要望は、いわゆる今の賃貸借契約、旧賃貸借契約とあえて呼ばせていただきます、二〇二〇年四月からは新しい法律になるわけでございまして、そこで、現在締結されている賃貸借契約が二〇二〇年四月一日以降の新民法において更新された場合に、連帯保証人の皆様方は果たして極度額を定めた保証をしなきゃいけないのか、それとも旧法のまま、定めないままいけるのかというところをぜひ聞いてほしいというところでございます。

 そこで、一つまず、主契約でございます賃貸借契約が新法施行後に法定更新をされた場合、法定更新というのは、専門家の皆様はもう御案内のとおりでございますが、期間が来る一年前から六カ月前までの間に、借り主であります賃借人がこの賃貸借契約は更新しないよとあえて言わなかった場合には、同一の条件で賃貸借契約は更新をされるということになるわけでございますが、この法定更新が行われた場合に、果たして、逆に連帯保証人の方ですね、保証人の方はその場合、新旧どちらの適用になるのか、御答弁いただきたいと思います。

小野瀬政府参考人 お答えいたします。

 今委員御指摘の場面におきましては、まず、保証契約について、例えば、新たな合意がある場合か、ない場合かというふうにまず考え方が分かれようかと思っております。

 そこでまず、新たな合意がない場合につきましてお答えいたしたいと存じます。

 一般的に、建物の賃貸借契約に基づく賃借人の債務について保証契約が締結されていた場合に、賃貸借契約の法定更新に当たりまして、改めて保証契約を締結する合意をしたりとか、あるいは保証契約を更新する合意をしなかったとしましても、保証人は、特段の事情がない限り、当初の保証契約に基づいて、賃貸借契約の更新後に発生した賃借人の債務についても保証債務を負うとされております。

 そして、改正法の附則におきましては、「施行日前に締結された保証契約に係る保証債務については、なお従前の例による。」と規定しております。

 このことからいたしますと、施行日前に締結された保証契約に基づきまして法定更新後の賃貸借に基づく債務について保証債務を負う場合には、その保証契約には旧法が適用されるというふうに考えられます。

 これに対しまして、賃貸借契約が施行日後に法定更新されるに当たりまして、保証人が新たに保証契約を締結したり、あるいは保証契約を更新する合意をした場合には、その保証契約は新法施行後の保証契約というふうに評価されますので、その保証契約には新法が適用されると考えられます。

浜地委員 次の質問は、先ほどの答弁からしますともうわかり切ったことでございますが、あえて聞きます。

 先ほどのは、賃貸借契約が法定更新、法律によって更新をされた場合ですが、では、施行前に締結された賃貸借契約が新法施行後に合意で更新をされた場合には、その連帯保証契約は新旧どちらの適用になるのか。先ほどの御答弁で大体わかっておりますが、あえて正確に答弁いただきたいと思います。

小野瀬政府参考人 お答えいたします。

 賃貸借契約が合意更新された場合の保証契約につきましても、先ほど申し上げました法定更新された場合と同様の説明が当てはまるものと考えております。

 したがいまして、賃貸借契約の合意更新に当たって、改めて保証契約を締結したり、合意によって保証契約を更新したのではなく、保証人が施行日前に締結された保証契約に基づいて合意更新後の賃貸借契約に基づく債務について保証債務を負う、こういう場合には旧法が適用されます。

 これに対しまして、新たに保証契約を締結したり保証契約を更新する合意をした場合には、新法が適用ということになろうかと思います。

浜地委員 結構、現場からは、新しく極度額の定めのある保証契約を結ばないと無効になるんじゃないかという御懸念もあったものですから、このような質問をさせていただきました。

 そこで、合意更新の中の一つなんですが、自動更新条項というのがある場合がございます。

 先ほどの法定更新は、六カ月前までに、更新しないと積極的な意思表示をしない場合に、契約は自動的に更新されるわけでございますが、この自動更新条項は、例えば、賃借人が期間が満了する一カ月以内に何ら異議を述べない場合には、自動的に更新されます。それに伴って、賃貸借契約が自動更新された場合においては、保証契約も自動的に更新をされて、これに保証人は異議を述べないといった契約書が結構散見されるわけでございますが、この何らも異議を述べなかった保証人の保証契約は、それでは新旧どちらの適用になりますでしょうか。

小野瀬政府参考人 お答えいたします。

 今委員御指摘のようないわゆる自動更新条項がある場合でございますけれども、こういった条項が設けられておりまして、実際にも、保証人が異議を述べる機会を与えられないまま賃貸借契約が更新されたというような場合ですと、これは、保証契約について新たな合意をしたとか、あるいは保証契約について合意更新がされたというふうには解されませんので、その場合には、保証人は施行日前に締結した保証契約に基づいて更新後も保証債務を負担しているものと考えられます。

 したがいまして、このような場合には、やはり旧法が適用されるものと考えられます。

 ただ、御指摘のような自動更新条項があって、保証人が何らの異議を述べなかった場合でありましても、例えば、個別の取引の事情の中で、賃貸人と保証人との間で協議をして更新後の保証契約の内容について見直しがされるといったような場合には、実質的には合意更新がされたと評価することができる場合もあり得ると考えられます。

 したがいまして、異議を述べなかった場合でも、そういった個別の取引の事情によっては合意更新がされたと評価されて新法が適用ということもあり得ますので、最終的には事案に応じた個別の判断ということはあり得ようかと思います。

浜地委員 済みません、かなり専門的に細かく聞きましたので、しんとした雰囲気になりましたが。

 結構、居住権は大事なので、保証契約が無効になってしまうと、結局はこれは、保証人さんの利益というよりも、やはり居住自体が結構、脅かされるような事態になってはいけませんので、ある意味、旧法から新法に変わるときにおいては、恐らくまた法務省にもお問合せが来ようかと思いますので、しっかり整理をしていただければと思っています。

 そこで、次に、細かい話から少し大きな話に戻りますが、経営者保証ガイドラインというものが平成二十六年の二月から運用を開始されました。

 私、平成二十四年当選ですけれども、当時は、金融円滑化法がございまして、この円滑化法を延長するか延長しないかという議論になっておりまして、私は延長しない方がいいんじゃないかというような立場でございましたが、我が党内でも延長すべしという意見もありました。

 その中で、当時はまだ自公政権が立ち上がったばかりで、まだまだ負債を抱えた経営者が多い、また会社の調子も悪いというところで、非常に、その後の出口として、金融円滑化法をやめた後に経営者の保証の問題も含めてどのように整理をしていくのかということで出てきたのが、この経営者保証ガイドラインであったかというふうに思っています。

 ただ、それから非常に時代は変わりまして、この六年間で倒産件数も非常に減っているということでございますが、私がこの中で非常に評価をしたいのは、民法の場合は、事業用の貸付けについては、今度の新しい法律は、極度額を定め、公証人の意思確認も必要だというような要件を課しましたが、この経営者ガイドラインは更に一歩進んで、経営者については保証をとらない取組を推進をしたのがこの経営者保証ガイドラインでございます。

 また、実際に保証をとられた後も、債務整理の段階になったときに、破産をしますと、個人の財産ですと九十九万円までしか認めることができません。しかも、九十九万円ではなかなか再起ができない、また自宅も基本的には売却をしなければならないということです。

 特に、公租公課、税金や社会保険料等については免除になりませんので、たとえ経営者は破産をしたとしても、どちらかというと、経営が厳しいときには、銀行の方に自分は一千万ぐらい給料をとっているよと、でも実際は二十万ぐらいしかとっていない中、生活をされて、税金だけが膨れ上がって、再生に非常に足かせになっているという現状があったわけでございます。

 税金の方は免除するわけにはいきませんので、そういう意味では、経営者に保証をとらずに、事業用資産については再起ができる、また仮に保証がついていたとしても、今は三百六十万円まで手元に状況によっては残せて、そして、華美でない自宅については、住宅も残せる、そして、このガイドラインに沿って整理をした場合には、残った債務については放棄をしてもらうということで、まさに経営者が再建をする、一度失敗をしても新たなチャレンジをするという意味では大変大きなガイドラインだと思っております。

 そこで、運用から約四年たつわけでございますが、まず、政府系金融機関について、この経営者保証ガイドラインに基づいて経営者について保証をとらないで融資をした事例、また、今後のこの取組を推進していくにおいてポイントとなるべきところ、課題、それがございましたら御答弁いただきたいと思います。

木村政府参考人 お答え申し上げます。

 経営者の個人保証に依存してまいりました従来の融資慣行を改善いたしますため、平成二十五年十二月には、日本商工会議所及び全国銀行協会が、一定の要件を満たす場合には経営者の個人保証を求めないことなどを定めました経営者保証ガイドラインを取りまとめたところでございます。

 これを受けまして、中小企業庁はこれまで、中小企業に対しましてガイドラインの周知、普及に取り組みますとともに、政府系金融機関に対しまして、ガイドラインに沿った無保証融資の拡大に向けた取組を指導してきたところでございます。

 その結果でございますが、新規融資に占めます無保証融資の割合は、ガイドライン運用開始時の平成二十六年二―三月期には、件数ベースで一五%、金額ベースで二二%であったものが、平成三十年四―九月期には、件数ベースで三六%、金額ベースで五三%とそれぞれ増加しているところでございます。

 中小企業庁は、政府系金融機関における経営者保証に係る対応実績につきまして、従来から新規融資に占める無保証融資の割合を公表しているところでございますが、これに加えまして、平成三十年度分から、新たに、事業承継時の新旧経営者からの保証の徴求状況につきましても公表を開始する予定にしてございます。

 また、金融庁や関係団体との連携のもとで、専門家によるきめ細かい相談対応の支援を行いますなど、引き続き、政府系金融機関や民間金融機関から融資を受けようとされる中小企業の方々のガイドラインの活用を促してまいりたい、このように考えてございます。

 以上でございます。

浜地委員 御答弁ありがとうございます。

 件数にして約四割、そして、金額にして約五〇%の政府系金融機関の融資が保証をとられていない。第三者じゃなくて経営者本人にとっていないということでございますので、これは非常に画期的なことだなと思っています。

 先ほど、御答弁の中で、事業承継のときの保証のあり方も今後しっかりと把握をしていきたいということで、当然、税制改正で、昨年、事業承継についてはさまざまな改正を行いましたが、やはり保証がネックになって、株の方の譲渡についてはうまくいくけれども、そうではないという声もございますので、ぜひこれは進めていただきたいと思っています。

 そこで、先ほどは政府系金融機関を聞きました。民間金融機関についてはどのような状況になっており、どのような課題があるのか、これは金融庁に、最後、御答弁いただきたいと思います。

油布政府参考人 お答えを申し上げます。

 経営者保証ガイドラインの民間金融機関におけます活用状況でございますが、直近の数字が平成三十年度上半期でございます。中小企業向けの新規融資に占める経営者保証に依存しないものの割合は、件数ベースでございますが、約一九%でございます。同じ基準で調査を始めましたのが平成二十七年度の上半期でございますが、これは一二%でございましたので、六%強の増加でございますが、五割以上は増加しているという状況にございます。

 それから、経営者保証は円滑な事業承継の阻害要因になり得るという御指摘がございます。

 この事業承継のときの対応につきましては、同じく平成三十年度上期におきまして、新旧経営者の両方から二重に個人保証を求めているという割合は今一九%程度でございます。同じ基準で調査を行いました平成二十八年度下期、このときにはこの数字は四六%でございましたので、それと比べると半分以下に低下はしているということで、一定の改善が見られつつあるところかなというふうに考えております。

 ただ、改善の度合いが金融機関ごとにばらつきも見られております。この点、私どもの方で、昨年、ガイドラインの実態調査を行いまして、結果も公表しておりますけれども、経営者保証に依存しないような金融機関では、例えば、営業現場、支店の担当者が保証の要否を簡単に判断しやすいように、金融機関が内部規定で更に細かい具体的な判断基準をつくったりする、こういった取組などが行われております。

 今後につきましては、こうした調査の結果も踏まえまして、このガイドラインの活用状況などにつきまして、個々の金融機関の頭取を始めとする経営トップと対話を行うとか、あるいはすぐれた取組を行っている金融機関の事例を金融業界全体に周知する、こういったことも含めまして、民間金融機関が過度に個人保証に依存することなく融資を行うように、また経営者保証の存在が事業承継の、円滑な承継の妨げになることのないように、更に取組を進めてまいりたいと思っております。

浜地委員 ぜひ、民間金融機関でも更に取組を進めていただきたいと思います。

 ただ、さっき御答弁の中で、過度に保証をとらないようにということですので、当然、保証を全部とってはだめだとなると、逆に今度は金融機能が失われるので。石原先生、銀行出身でございますが。

 そういう意味でいうと、本当にとらなきゃいけない保証人は、ある程度それは当然だと思っています。特に経営者の奥さんとかそういった人にとる事例もあったりしますけれども、今、政府系金融機関では、経営者の奥様にとって、例えば破綻をしてしまったところにはもう請求もしていないというような運用も聞いております。

 ですので、担保、保証というものは必要でございますが、やはり再生を阻害するような、そういった取組はやめて、しっかりとまた再生できるような、そういった金融市場にしていただきたいと思います。

 以上で質問を終わらせていただきます。ありがとうございます。

葉梨委員長 以上で浜地雅一君の質疑は終了いたしました。

 次に、門博文君。

門委員 自由民主党の門博文でございます。

 きょうは、質問の機会を頂戴いたしまして、ありがとうございました。

 主には、先ほど松田委員も御質問されておりましたけれども、部落差別の問題についてお聞きしたいと思うんですけれども、その前に一問、判事の政治的活動について質問させていただきたいと思います。

 先日の委員会で、串田委員より、ある判事の政治的活動についての質問がありました。私も、そのとき初めてこのことをお聞きしまして、強い関心を抱きました。週末、自分なりに少し資料を当たってみまして、報道などの資料が主ではありますけれども、判事という職業が政治的活動を厳に慎むべきとされている中で、これが事実であるとすれば大変重大なことだと思いました。

 日本国憲法第十九条で、思想及び良心の自由が保障されております。思想、良心の自由は尊重されても、それはあくまでも個人としてさまざまな思想、信条を持ち、また表現するのは自由ということであると思います。その一方で、憲法第九十九条で、天皇、摂政、国務大臣、国会議員、そして裁判官その他の公務員に、憲法を尊重し擁護する義務を課しています。

 個人と職業人としての判事、それぞれの権利と義務、どちらが尊重されるべきなのでしょうか。

 私が調べた限りでは、当事者は、この場合、匿名で意見表明をしております。後ろめたさを感じている証左であり、身分を秘匿して天皇制について異論を展開しているということであります。

 こういう政治的なみずからの心情を主張するのであれば、例えば職を辞して、若しくは正々堂々とみずからを名乗り出て行うべきではないかと思います。その上で、憲法を尊重し擁護する責任を負う職業人として、この矛盾にどう向き合えるのか。憲法を尊重して擁護する義務を負う判事が、いかに個人的な心情とはいえ、憲法にある象徴としての天皇を否定するということは、その判事が下す判決に信頼が寄せられるはずがないと私は思います。個人的な思想と、職業として求められる判断基準、政治的中立を上手に区別して使い分け、職務が行われているのか、甚だ疑問に思わざるを得ません。

 そこで、この件について、当局はこの事実を、真実を、どのように確認、把握しているのか、お聞かせいただきたいと思います。

堀田最高裁判所長官代理者 お答え申し上げます。

 委員御指摘の新聞記事の件に関しましては、委員からも御指摘ございました裁判官の私生活上の自由や思想、表現の自由にも配慮しつつ、慎重に調査しているところでございます。

 現時点では、新聞記事の対象となったと考えられる裁判官からの事情聴取等を行いましたものの、本人は新聞記事に記載された事実関係を否定しておりまして、服務規律違反の事実があったことは確認できていないところでございます。

 事実関係を適切に確認できるよう、引き続き慎重に調査してまいりたいと考えております。

門委員 ぜひ、早急に、そして的確な対応をしていただきたいということを強くお願いをしたいと思います。

 続きまして、次は、部落差別のことについて質問させていただきたいと思います。

 先ほど申し上げましたように、松田委員の質問と重複するところもあるかと思いますけれども、御容赦いただいて、質疑を続けさせていただきたいと思います。

 部落差別解消推進法ができまして二年余り、いまだになくならない差別について心を痛めるところであります。また、昨今では、特にインターネット上で、確信犯的に部落差別をあざ笑うがごとき事例が散見されております。

 本来であれば、社会全体がこのことをよく理解し、部落を根拠に差別を助長したり表現するものに対して、それがどうしたと無視する、無関心に対応できる世の中が来れば理想ですけれども、残念ながら、このような心ない言葉や表現、行動が人をさげすむ道具や対象になっているのが現実であります。

 私たちは、この悲痛な叫びを全身に受けとめ、国際化が急速に進んでいる現代において、そして何よりも、東京オリンピック・パラリンピックの年を目前にした今こそ、この問題に断固として対応していかなければならないと感じております。

 そこで、質問に移らさせていただきます。

 まずは、インターネット上での最近の部落差別を助長するような事例についてお尋ねしたいと思います。

 お手元に資料を配付させていただきました。これは、インターネット上に掲示されている部落差別を助長する内容のページのコピーであります。本来は、黒塗りしたりとか、写真も、そのものを載せたものをここで提示をさせていただけたらと思ったんですけれども、まさにそのことをすること自身が、意図してこのことをやっている者の意図を助長するかのようなことになってしまわないかということの懸念も含めて、一部、そういう加工をして配らせていただきました。

 ごらんのとおり、「差別をなくそう」というタイトルでカムフラージュしておりますけれども、事実は明らかに違います。黒塗りをした箇所ですが、ここには地域が特定できるような写真を載せ、そしてまた住所、そして個人の氏名までも克明に記載されております。当事者の立場に立てば、いたたまれない憤り、胸が張り裂ける思いだと思います。こんなことは絶対に許してはなりません。

 そこで、まずは、法務省として把握されておりますこれらの類似案件について、その状況をお聞かせ願えますでしょうか。そしてまた、あわせて、相談件数や削除要請された件数や、現実に削除できた件数などもお答えをいただきたいと思います。

高嶋政府参考人 お答えいたします。

 実際の案件の具体、詳細にわたらない範囲で、類型的な点を紹介させていただきたいと思います。

 まず、一つの類型は、同和地区であったとされる地域名を全国的に示した一覧形式の書き込みのものがございます。また、先ほど資料で示されたように、特定の地域について、その風景や現存する建物等の写真を掲載しつつ、地名や住所を挙げ、これを同和地区、又は同和地区であったなどと指摘するものがございます。その中には、差別反対を標榜するような書き込みもございます。

 人権擁護当局としましては、人権侵犯性、違法性の認められるものにつきましては削除要請等の措置を講じているところでありまして、実際に削除された件数については統計をとっていないため正確な数値をお示しすることはできませんが、平成二十九年に削除要請した件数は二十七件でございまして、そのうち約六割が削除されているという現状でございます。

 以上でございます。

門委員 ありがとうございました。

 今御報告いただいた件数は、どの件数も、私はやはり氷山の一角だというふうに思います。その数字の後ろ側には、どこに相談してよいのかわからずに諦めたものや、気持ちとしては決心できていてもなかなか行動に移せていないものも多数隠れているものだと思います。そのことにも思いをはせながら、この書き込み、掲示に対しての削除要請について、具体的にお尋ねをいたします。

 このインターネットの問題ですけれども、他の人権問題にも共通していますし、また、さまざまな誹謗中傷などが匿名でインターネット上にはびこっている現実があります。表現の自由などの観点でなかなか難しい現実もあろうかと思いますが、私は、表現の自由が優先されて、人の心が傷つけられることが許されてはならないと思っております。この場合の表現の自由と人権、どちらが優先されるべきか、答えは明白であると思います。

 そこで、これらのインターネット上での問題について、削除要請という形で法務省は取り組んでいただいていると思いますけれども、具体的な対応としてどのような手順を踏まれているのか、教えていただけますでしょうか。また、そして最近、これまでの考え方より更に踏み込んだ方針を打ち出されたということも聞いておりますけれども、その点も同時にお聞かせいただきたいと思います。

高嶋政府参考人 削除要請等のあった案件でございますが、一般に、人権侵犯事件の調査救済手続は、人権侵害の疑いのある事実が生じた地域を管轄する法務局、地方法務局において取り扱うのが原則であります。

 全国各地の複数の地域につき、これを同和地区であると特定する数件の書き込みについて、仮にその発信元が同一場所から、同一人からということがわかるような場合は、これは各地の法務局でそれぞればらばらにやるということではなくて、その発信元の地域を所管する管区の法務局に全ての事件を集約し、その法務局から一括して削除要請等を行う扱いをするという場合もございます。

 いずれにしましても、書き込みをされた地区の関係者の申立て等による場合、それから職権による場合の二種類がございます。

 もう一つの質問でございますが、法務省の人権擁護局における最近のこの部落差別の書き込みに関する考え方の整理であります。

 このような部落差別に関する書き込みについては、積極的に差別助長、誘発目的が認められる場合にのみ削除要請の対象としてきたところではございますが、インターネット上の部落差別の書き込みにつきましては、先ほど資料で御指摘がありましたように、部落差別解消という文言を一部に書き添えることによって、あたかも部落差別の助長、誘発目的ではないかのような体裁をとっているものも見られるところでございます。

 かねて、このような書き込みへの対応を検討すべきではないかというふうに指摘がございまして、今般、当局において改めて検討いたしました。

 その結果として、そもそも部落差別というのは、それ以外の属性に基づく差別とは異なる点がございまして、すなわち、部落差別というのは、差別を行うこと自体を目的として政策的、人為的に創出された、本来的にあるべからざる属性に基づく差別であるという点、このような部落差別の特殊性を踏まえて、特定の地域を同和地区である、あるいはあったと指摘する情報は、それを公にすること自体、目的のいかんを問わず、人権侵害のおそれが高い、すなわち違法性の高いものであるというふうに考えております。

 そこで、このような部落差別の特殊性及び平成二十八年に成立、施行になりました部落差別解消推進法の趣旨をも踏まえまして、特定の地域を同和地区である、又はあったなどと指摘する書き込みは、その目的を問わず、原則として削除要請等の措置の対象とすると整理したところでございます。

 もっとも、学術研究等の正当な目的による場合で、かつ、情報の摘示方法等に人権侵害のおそれが認めがたい、そういう場合は例外として削除要請はしない、こういう整理をしたところでございます。

 かかる新たな運用に基づきまして、インターネット上の部落差別の解消に向けて適切に取り組んでまいりたいと考えております。

門委員 よろしくお願いいたします。

 時間が迫ってきておりますので、最後の質問を手短にお願いしたいと思うんです。

 お聞きしますと、改めてなんですけれども、法務省の人権擁護局、法務省の人権擁護部門の人員は、本省で、少し失礼な言い方ですけれども、たった二十四名、そして、全国の法務局、地方法務局で二百五十九名、計二百八十三名の体制と伺っております。

 ここにおられる委員の皆さんも、ひょっとしたらそういうギャップに改めてお気づきいただけるのかと思いますけれども、極端な言い方ですけれども、一億三千万人余りというか弱の人権問題を守り、そして、今や多くの外国人を受け入れている我が国の状況で、この三百名弱の部門ということはいかにも脆弱じゃないかなというふうに思います。

 そして、もう一つ、専門性についてもここでお伺いしたいんです。

 これが最後の質問になりますが、地方法務局、法務局というのは、私たちの感覚からいいますと、登記に行ったり、それから供託金を供託したりとか、そういう類いの役所というふうに見ておるんですけれども、そこが人権の窓口ということを考えますと、そこの職員の方々の専門性とか今後の問題点ということは、現在のところどういうふうになっておりますか。最後の質問です。よろしくお願いします。

葉梨委員長 高嶋局長、簡潔にお願いします。質疑時間が終了しています。

高嶋政府参考人 御指摘のとおり、人権擁護業務は、高い専門性と対人能力、コミュニケーション能力を必要とする部門でございます。

 御指摘のとおり、人権擁護業務に携わる法務局職員というのは、他方で登記事務等にも従事しておりまして、人権擁護部門だけに専従しているというわけではございません。いろいろな人事サイクルの中で、他の部門、特に登記部門等に配置されることもございます。その中で、人権擁護部門に配置されたときには、短期間で各種の研修等を受けることで必要な専門性を習得し、日々の業務に当たらせているところでございます。

 特にインターネットの人権侵害への対応は非常に専門性が高いものですから、他方で迅速に処理しなくちゃいけないという問題もございますので、平成二十九年五月から、各法務局から年間で十六名前後の職員を人権擁護局に派遣させまして、一カ月間の集中的な研修を実施して、これを各局に持ち帰らせているところでございます。

門委員 ありがとうございました。

 ぜひ、人員、それからスキルも含めて、充実を図っていただきたいと思います。

 ありがとうございました。

葉梨委員長 以上で門博文君の質疑は終了いたしました。

 次に、石原宏高君。

石原(宏)委員 自由民主党の石原宏高でございます。

 法務委員会の一般質疑で質問をさせていただきます。

 いよいよ四月の一日から新たな在留資格での外国人の受入れがスタートしますが、試験の実施予定等が報道され始めております。時事通信や日経の報道によれば、四月に試験を行うのは、介護、外食、宿泊の三分野と報道されております。

 資料を配らせていただいておりますが、お手元に資料が届いていれば、資料一を見ていただきたいんですけれども、法務省に作成いただいた現状の試験の予定のまとめになっております。

 これを見ますと、技能実習制度のない介護、外食、宿泊の三分野について、技能実習生からの移行がないですから、早目に試験をやらなきゃいけないということで四月に試験が実施をされるということがわかりますけれども、技能実習制度がないから、こういう試験が最初にスタートするという理解でよろしいでしょうか。まず、法務省の方にお伺いいたします。

石岡政府参考人 お答え申し上げます。

 委員御指摘のとおり、介護分野、宿泊分野及び外食業分野の三分野において、本年四月に特定技能一号の試験を実施する予定と承知しております。また、これらの試験に加え、国際交流基金の実施する国際交流基金日本語基礎テストも四月実施予定と承知しております。

 具体的には、介護分野の試験及び国際交流基金日本語基礎テストにつきましては、本年四月十三日と十四日にフィリピンにおいて、宿泊分野の技能試験につきましては、本年四月十四日に国内七カ所、札幌、仙台、東京、名古屋、大阪、広島、福岡の七カ所において、さらに、外食業分野の技能試験につきましては、本年四月二十五日に国内二カ所、東京、大阪の二カ所において、それぞれ実施されると承知しております。

 また、その他の分野につきましても、平成三十一年度中の試験の実施に向け、所要の準備をそれぞれ進めているものと承知しております。

石原(宏)委員 続けて法務省に伺います。

 私の資料の二ページ目、これも法務省の資料ですけれども、要するに、試験を受けてからどうやって在留資格を取っていくかみたいな、それがポンチ絵で描いてあるんですけれども、スケジュール感というか、どのぐらいの時間がかかるかみたいなことをちょっとお伺いしたいんです。

 四月に試験が行われるわけですが、試験に合格した方が、合格の通知が来ると、受入れ機関と雇用契約を締結して、そして、新しく新設される入国在留管理庁に申請をして新たな資格を得るという形になると思うんです。

 四月に、今御説明いただいたように三分野で試験が行われて、合格者が出て、中旬から下旬ぐらいに試験があるんですけれども、どのぐらいで発表されるかわかりませんが、その後、雇用契約を結んで、在留庁に申請をして、そして審査があって、資格を得て働き始めると思うんですけれども、大体、めどとして、四月に試験を受けられる方がどのぐらいから仕事がスタートできるのか、また、在留資格を取るための審査というのはどのぐらい時間がかかるのか、ちょっとイメージを教えていただきたいと思います。

石岡政府参考人 お答え申し上げます。

 御指摘の介護、宿泊、外食業の三分野の技能試験につきましては、おおむね五月の中旬から五月の下旬に合格が発表されると承知しております。

 そして、これらの試験に合格した外国人のうち、まず、国内で合格した外国人について申しますと、国内で合格し、他の要件を満たす外国人が、速やかに受入れ機関との間で特定技能雇用契約を締結し、在留資格変更許可申請を行った場合でございます。その場合、同申請の標準処理期間は二週間から四週間としておりますので、早ければ六月中に在留資格変更を許可することが可能と考えており、その時点から就労することが可能となります。

 次に、国外で合格した外国人についてでございますが、国外で合格し、他の要件も満たす外国人が、速やかに受入れ機関との間で特定技能雇用契約を締結し、在留資格認定証明書交付申請、これを行った場合、同申請の標準処理期間は一カ月から三カ月としておりますので、この場合も、早ければ六月中に在留資格認定証明書を交付することが可能であると考えております。

 ただ、在留資格認定証明書の交付を受けた外国人は、その後、査証の取得手続などを行うことが必要となるため、実際に本邦に入国し就労を開始する時期は七月ごろになるのではないかと考えております。

石原(宏)委員 ありがとうございます。イメージが湧きました。

 ちょっとまた法務省に聞きたいんです。

 在留資格の申請に際して、支援計画の提出が求められると思うんです。支援機関の登録は四月一日から順次行われるということなので、今、六月か若しくは七月ぐらいから働き始めることができるということなんですけれども、申請は多分もう少し前になるんですけれども、これから、四月一日から支援機関の登録を受け付けるので、実際、間に合うんでしょうかね。ちょっとそこのところが気になっているんですが、御回答ください。

石岡政府参考人 お答え申し上げます。

 まず、適正な支援を自身で行う能力と体制を有する受入れ機関につきましては、登録支援機関に支援を委託しなくても特定技能外国人を受け入れることができるため、四月一日以降、申請準備ができ次第、外国人本人の入国、在留諸申請を行うことが可能です。

 他方で、お尋ねにあるとおり、登録支援機関に支援を委託しなければ特定技能外国人の受入れができない受入れ機関の場合は、四月一日以降、登録支援機関が登録を受けるのをお待ちいただく必要がございます。

 そこで、法務省におきましては、登録支援機関に支援を委託する必要がある受入れ機関が、制度開始後できるだけ早期に特定技能外国人を受け入れることができるようにするため、登録支援機関の登録申請があれば、できる限り速やかに審査を終えるように努めていきたいと考えています。

 また、四月以降に、在留資格、特定技能一号へ移行予定の技能実習二号修了者等のうち、予定している登録支援機関の登録に要する手続を待つ必要がある場合には、同一の受入れ機関において就労することが予定されていることや日本人と同等以上の報酬を受けることなどの一定の要件のもとで、就労可能な在留資格である特定活動を付与することといたしております。

 いずれにしましても、法務省といたしましては、特定技能制度が円滑に運用開始されるよう努めてまいりたいと考えております。

石原(宏)委員 次に、試験を四月に実施する分野について質問したいと思います。

 まず、介護について、介護技能評価試験と介護日本語評価試験をフィリピンにて四月十三日、十四日に実施する予定であり、応募もスタートして一週間ぐらいがたっていると思うんですけれども、応募状況はどんな感じでしょうか。

 また、試験の内容は、厚生労働省が関与して作成しているというふうにお聞きしましたけれども、フィリピンでの試験実施主体はどのような会社で、委託する試験実施者が信頼の置ける主体なのか、また、試験の方式がCBT方式と聞いておりますけれども、この試験をやると、不正が起こりにくい試験なのかどうか、あわせて御回答いただければと思います。

八神政府参考人 お答え申し上げます。

 第一回の介護技能評価試験、介護日本語評価試験につきましては、今委員御指摘ございましたように、四月の十三日及び十四日にフィリピンで実施をするため、三月二十日から申込みの受け付けを開始してございます。現時点で既に定員に達する応募がございまして、現在、申込みの受け付けを締め切っている状況にあると承知しています。

 試験実施主体ですが、プロメトリック株式会社、これは、国際交流基金が四月から新たに実施する国際交流基金日本語基礎テストの実施主体に選定をされており、実績のある主体であると考えております。

 CBT試験の不正対策ということですが、プロメトリック株式会社は、二十年を超えるCBTの運用実績で蓄積されたノウハウを活用し、CBT方式による試験の実施と不正防止に関する十分な研修を受けた試験監督員を配置した上で、試験前の本人確認、私物のチェック等を行うとともに、監視カメラによる試験実施中の監督を徹底すること等により、試験の適切な運営を図っていくということでございます。

石原(宏)委員 宿泊分野についてもお聞きします。

 試験の実施主体の一般社団法人宿泊技能試験センターとはどのような団体でしょうか。また、四月の十四日に国内各地で、札幌、仙台、東京、名古屋、大阪、広島、福岡で試験が実施されますけれども、応募人数はトータルで何名程度か、教えていただけますでしょうか。

金井政府参考人 お答えいたします。

 宿泊分野の試験実施主体であります一般社団法人宿泊業技能試験センターにつきましては、これは、宿泊関係の四団体でございます、一般社団法人の日本ホテル協会、そして一般社団法人全日本シティホテル連盟、全国旅館ホテル生活衛生同業組合連合会及び一般社団法人日本旅館協会が、共同で昨年九月に設立した団体でございます。

 また、国内の試験の応募状況でございますけれども、同センターからお伺いしているところでは、昨日の三月二十五日時点で四百六十六名となってございます。

石原(宏)委員 四百六十六名ということで、実は、初年度の宿泊分野の、この新しい制度の外国人の受入れ見込み数というのは九百五十名から千五十名ということなので、四百六十六名が募集されているということで、もう一度秋ぐらいにやられるということなので、その人数に近い試験が受けられるということではないかというふうに思います。

 次に、外食分野について質問をさせていただきたいと思います。

 試験実施者の一般社団法人外国人食品産業技能評価機構というのはどのような団体ですかということと、あと、受験者数が、四月の二十五日に試験をやるんですけれども、東京で百七十名、そして大阪で百六十八名という定員になっております。

 ちょっとお伺いしたいんですが、初年度の外食の受入れ人数の見込みというのは四千人から五千人なんですが、この試験だけだと三百数十名ぐらいで、もちろん、海外での試験も予定されて、秋にも予定されているんですけれども、実際に四千人から五千人を考えているのにちゃんとそろうのかどうか、人数がちゃんと予定どおりになるのかどうか。先ほど、宿泊の方は四百六十六人がもう応募しているということで、九百五十人から千五十人でしたから、できるという感じがするんですけれども、外食の方は、ちゃんとそれで人数が、初年度の四千人、五千人にいくのかどうか、お答えいただければと思います。

葉梨委員長 農水省小野官房審議官。もう時間ですから、早く。

小野政府参考人 お答え申し上げます。

 予定人数に届くのかということですけれども、一回目は四月に日本でやる、海外でも二回程度、国内でも二回程度予定されていまして、それに沿うような形で進めたいというふうに思っております。

石原(宏)委員 時間が参りましたので終了させていただきたいと思いますけれども、また新しい制度の経過を、引き続き法務委員会の一般質疑の中でしっかりとフォローしていかなければいけないと思いますし、きょう御説明をいただいて、大体申請にかかる時間とかというのもよくわかりましたので、ぜひ、こういうこともいろいろな国民の方に周知徹底していただいて、非常に関心を持っている点だと思いますので、広報の方もしっかりやっていただきたいと思います。

 質問を終わります。ありがとうございました。

葉梨委員長 以上で石原宏高君の質疑は終了いたしました。

 午後一時から委員会を再開することとし、この際、休憩いたします。

    午前十一時五十二分休憩

     ――――◇―――――

    午後一時開議

葉梨委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。

 質疑を続行いたします。階猛君。

階委員 国民民主党の階猛です。

 きょうは平成最後の三月二十六日ということなんですが、もうすぐ新しい元号も決まります。昨今では平成最後の何とかという言葉がちまたではよく聞かれるんですが、もうすぐ新しい元号が決まれば、その新しい元号最初の何とか、こういう言葉がまたあふれてくると思うんですね。

 ところで、内閣から出されているこの法案、民事執行法及び国際的な子の奪取の民事上の側面に関する条約の実施に関する法律の一部を改正する法律案、これはもうすぐこの委員会でも審議がされるんだろうと思っていますけれども、その中で、この法案が成立したときの法律番号、法律番号というのは、平成の時代に成立したものであれば、例えば平成三十一年法律第何号というような形になるわけですけれども、我々がこれから審議するこの法案について言えば、ひょっとしたら新しい時代になって成立するかもしれない、こういう微妙な時期に差しかかっているわけですし、ひょっとすると新しい時代の第一号の法案がこれになるかもしれない、こういう状況です。

 ところで、私、これをめくってみますと、三十ページというところに、この法律が成立した後、法律番号が平成三十一年法律第何とか号、第何とか号のところは空欄になっています。平成三十一年とあらかじめ印字してあるんだけれども、本当にこれでいいんでしょうかということなんですね。

 もうはなから国会では平成三十一年中に成立し、そして公布するんだというふうに決めてかかっているのであれば、それは国会軽視であるし、問題だし、逆に、それはどうなるかわかりませんということであれば、はなからここに平成三十一年と書くべきではないし、いずれにしても問題だと思っています。

 まず、なぜ平成三十一年法律第何とか号というふうに条文上なっているのか。これは民事局長でいいですか。お答えください。

小野瀬政府参考人 お答えいたします。

 一般に、内閣提出法案につきましては、その法案の規定の中で未公布の法律に付される法律番号を引用する際には、その法律案が提出された年を付しまして、例えば、平成三十一年法律第ブランク号などと記載するのが慣例になっております。このことは、法律案の規定の中で、当該法律案が成立した際に付される法律番号を引用するというケースにおきましても同様でございます。

 この国会に提出いたしました民事執行法改正案におきます記載は、このような慣例に倣ったものでございます。

階委員 では、仮にこの法案が新しい時代になって成立されて公布された場合、今のこの文言は変わらないということでいいんですか。

小野瀬政府参考人 お答えいたします。

 この民事執行法の改正案におきます平成三十一年法律第ブランク号の記載をしておりますけれども、この改正案が平成三十一年四月中に成立しなかった場合のこの記載の取扱いにつきましては、現時点では、関係各所とも相談の上で検討する必要があるものであると認識しております。

階委員 ということは、どうなるかわからないということなんですよね。

 どうなるかわからないんだったら、平成三十一年というところ自体もブランクにすればいいんじゃないですか。なぜそうしないんですか、お答えください。

小野瀬政府参考人 先ほど申し上げましたとおり、内閣提出法案につきましては、未公布の法律に付される法律番号は法律案が提出された年を付すという、その慣例に倣ったものでございますので、提出した三月時点における平成三十一年ということを使わせていただいたというものでございます。

階委員 おまけに、御丁寧に、その下を見ますと、以下平成三十一年改正法というところまで書いているんですよね。

 これはこのまま条文が残る可能性もあるようなさっきのお話でしたけれども、非常に何か見ばえが悪いですよね。もしこれが新しい時代になって最初の法律になった場合に、平成三十一年改正法という、これはちょっとおかしいでしょう。

 だから、まだ今審議が始まっていないわけですから、これぐらいの訂正だったら、私は別に野党だって反対するとは思えないし、やるべきではないでしょうか。

小野瀬政府参考人 済みません、先ほど私、提出を三月と申し上げましたけれども、二月の誤りでございました。

 先ほど申し上げましたとおり、提出された年を付すという慣例に従っておりますので、私どもといたしましては、法案としましては平成三十一年という記載にさせていただいておるというものでございます。

階委員 慣例ですから、別に拘束力はないわけです。

 大臣、今のやりとりを聞いていて、もしこの法案が成立した日がちょうど時代の変わり目で、もし法律第一号というふうになった場合に、この文言がこのまま残るというのは非常に見ばえが悪いと思いますよ。修正するなら修正するということでこの場で言っていただければ、タイミングについてはもちろんいろいろなタイミングはあるんでしょうけれども、この文言をそのまま残すというのは、私はおかしいと思います。

 ということで、御見解をお願いします。

山下国務大臣 これは、こういった提出時の慣例で、その後、引用をするときにどのような略称にするのかという慣例によるものだろうと思っております。

 これは、法務省がこの法律に限ってやったことではなくて、他省庁であるとか、あるいは、これは時代を超えることもそうですが、例えば年度がかわることもあり得ると思うんです。というのは、提出時は例えば平成二十七年でありますけれども成立は二十九年だったというような場合には、当然、審議の過程で、二十七年法というのを二十九年法というふうに変えるわけです。

 こういったことは多々あろうかと思われますので、そういった取扱い、これは国会一般の取扱いの慣例によるものですから、それも検討した上で考えたいと思っております。

階委員 さっきから慣例という言葉が言われておりますけれども、慣例はないですよね、これ。初めてのケースじゃないですか。あらかじめ元号がいつ変わるというのはわかっていて、それで、その直前に法案が提出され、そして変わり目で成立するかしないか、微妙なときになっている。これは慣例はないと思いますよ。

 元号が変わるかどうかという話ですから、年度がかわるとか、西暦の年がかわるとかとはちょっと重みが違うと思うんですね。私は、慣例がないことなので、ここは、平成三十一年とはなから決めて、平成三十一年改正法というふうに条文に書いているのはいかがなものかと思いますよ。

 ここは、やはり法をつかさどる法務大臣として、あるいは国務大臣として、しっかり問題を内閣で共有していただいて、もし、こういう文言で成立、公布の時期が新しい時代になったらどういうふうにこの条文を書きかえるのか、あるいは、私は書きかえないという選択はないと思うんですが、書きかえないのか、そうしたことをちゃんと問題提起していただいて、内閣で早目に方向性を決めるべきだと思いますけれども、大臣、もう一度お願いします。

山下国務大臣 これは法律の特定の方法として、元号とまた年数、そして法律第何号というところで特定しているんだろうというふうに考えておりますので、それをちょっとこの場で申し上げるということはできないんだろうと思っております。

 元号と年号で特定するという意味においては、年数が変わっても、法律の特定という意味においては、これは同じ扱いなんだろうというふうに考えておりますので、元号が変わるということとあるいは年数が変わるということは基本的には同じではないかというふうに今考えておりますが、なお議員の問題意識につきましては、さまざまな、これまでの取扱いも含めて検討していきたいと考えております。

階委員 多分、実務上の取扱いは、文言がどうであれ、新しい時代に成立して、それで第一号の法律だったら、新しい年号が来て、何とか年、それで第一号、こういうふうになるわけですね。

 私が問題視しているのは、実際の法律番号とこの条文上の書きぶりですね、平成三十一年改正法、これが食い違うようなことがあると、せっかくの新しい時代の第一号の法律が、ちょっと整合がとれなくて見ばえが悪いんじゃないかと思います。

 慣例がない話ですので、ぜひこれから御検討いただきたいと思っております。最初の方で、他の省庁ともいろいろな絡みがあるというお話もありましたので、これはぜひ内閣の方で御検討いただきたいと思います。よろしいですか。

小野瀬政府参考人 御指摘の、三十一年四月中に成立しなかった場合のこの記載の取扱いにつきましては、関係各所とも相談の上で検討してまいりたいというふうに考えております。

階委員 では、きょうはこの程度にして、もう一つ積み残しの問題がありましたので、最高裁に来ていただいております。

 最高裁、この間の家庭裁判所での殺人事件について、警備体制に不備があったのではないかという問題意識をお伝えしたと思います。

 不備があったかどうかという前に、事実関係ですね、警備の人員がこれまでどうなってきたのか。同じ質問ですので繰り返しませんが、ファクトだけ、まず教えてください。

村田最高裁判所長官代理者 まず、警備業務に従事する守衛の減少数でございます。

 前回、平成二十九年から平成三十年にかけての守衛の減少数、十六人とお答えしたんですけれども、これは下級裁の人数でございまして、このほかに最高裁の減少もございましたので、平成二十九年度から平成三十年度にかけての全国の守衛の減少数は十八でございました。このうち、東京地裁、東京家裁管内はいずれも減少なしでございました。

 その上で、委員の御質問であるところの平成二十一年度から平成三十年度にかけての全国の守衛の減少数ですが、下級裁判所で百三十七人、最高裁判所分を含めますと全国で百四十五人の守衛の減少となっております。

 このうち、東京地裁管内を担当する守衛は十一の減少でございまして、東京家裁管内を担当する守衛は六人の減少でございました。(階委員「ちょっと、まだ質問通告されていますよね、ほかの数字もありました」と呼ぶ)

 その場合の外部委託の予算額でございますけれども、守衛の削減分と直接の対応関係がないので、そこだけ切り出せないというのは前回申し上げたとおりでございますが、外部委託費を申し上げますと、平成二十一年度は約七億円でございました。平成三十年度が約十四億円、平成三十一年度が約十五億円となっております。

 東京高裁及び東京地家裁管内の予算額につきましては、平成二十一年度が約一・八億円、平成三十年度が約二・四億円になってございます。

階委員 今のような数字で、警備業務の人数は定員減少に伴ってかなり減っているということがわかりました。

 その上で、今回の事件に関して、裁判所として警備面等で反省すべき点はないのか、お答えください。

村田最高裁判所長官代理者 御指摘の件につきまして、亡くなられた被害者と御遺族の方には改めてお悔やみを申し上げます。

 その上で、現段階で把握している事実関係でございますけれども、東京家庭裁判所においては入庁時に所持品検査を実施しているところでございますが、今回の事件は、被害者の方が東京家庭裁判所に来庁した、建物に入ろうとした際に、庁舎の外にいた加害者が走り寄ってきて、所持品検査場より手前、被害者が玄関の中に入ろうか入るまいかという、その玄関入り口付近において加害行為があって、その後、加害者は直ちに建物の外といいますか敷地外に逃走したというふうなところまで、客観的な事実としては確認ができております。

 更に詳細な発生状況、経緯につきましては、なお関係者から事情聴取するなどして、更に詳細な事実関係の把握に努めておりますので、なお、まだちょっと十分に把握できていないところがございまして、警備面等での不備の有無については、きょうの時点ではお答えを差し控えさせていただきたいと思いますが、引き続き警察の捜査に可能な協力をするとともに、さらなる事実関係の把握に努めて、それを踏まえて適切に対処してまいりたいと考えております。

階委員 今の事実関係だけでも反省すべき点は明らかになっていると思いますよ。

 というのは、入り口のところに入るか入らないか、ドアを通るか通らないかのところで事件が起きたわけでしょう。もう家庭裁判所の敷地内に入っていますよね。皆さんの管理権ですよ。そこで事件が起きたんだから、皆さんに警備の責任はあるでしょう。その警備の責任を果たせなかった、このことについてはどう考えているんですか。

村田最高裁判所長官代理者 敷地内で発生した事件であるというのは御指摘のとおりでございます。

 ただ、何かあらかじめ手だてを講ずることによってこれが防げたのかどうか、そういう意味で落ち度があったかなかったか、このことについては、詳細な事実関係を把握した上で検討してまいりたいというふうに考えております。

階委員 私も弁護士なので、家庭裁判所とか何度も入ったことはありますけれども、いつも守衛さんが入り口のところに立っているじゃないですか。あの人たちは何をしていたんですか。

村田最高裁判所長官代理者 当時立哨をしていた警備員は中にも外にもおったんですけれども、これらの者からの事情は聴取をしております。おりますが、まだそれで十分かどうかというところで、分析の途中でございます。ですので、そこに何か落ち度があったかなかったか、この辺については、更に詳細を検討して分析してまいりたいと考えております。

階委員 前回質問して、次、質問しますよと言って、もう四、五日たっているわけですよ。それで何も責任について言えないというのはおかしいでしょう。大体、どういう事件が起きたのか、その重大性を認識しているんですか。とんでもないことですよ。

 法の支配を貫徹すべき裁判所で力の支配が行われた。これは、前回言いましたけれども、あってはならないことなんですよ。そういう重大なことが起きたという問題意識があれば、今のような答弁はないはずです。そんなんじゃ、質疑を続けられませんよ。真面目に答えてください。時間は十分与えたはずですから。お願いします。

村田最高裁判所長官代理者 当時の目撃状況等、詳細は分析中でございます。いろいろ残っておる証拠等から、先ほど申し上げたような事実経過、加害者が駆け寄り、そして加害行為に及んで逃走するまで約十秒でございました。この間、何ができたのか、できることがあったのかなかったのか、これは更に検討してまいりたいというふうに考えております。

階委員 何のために守衛があそこに立って、いつも見張っているか。私、弁護士バッジがないと入れてもらえないんですよ。あそこを通してもらえないんですよ。そういうことは事細かにチェックしているのに、刃物を持っていた人はフリーパスですか。おかしいでしょう。

 明らかに、私は、警備に問題があった。その背景に人員を減らしたことが影響あったのかどうか、そこはわかりませんけれども、警備体制に問題があったという反省はあってしかるべきではないですか。反省の弁はないんですか。

村田最高裁判所長官代理者 外におりました守衛、中にもおりました守衛、いずれからも事情聴取をしておりますが、その中で見落としのようなもの、あるいはそもそも体制として不備であったかどうかというのは、もう少し分析をして、評価をさせていただきたいと思います。お時間をいただきたいと思います。

階委員 全然、皆さんには、裁判所に対する信頼が揺らぐことへの危機感とか、そういうのが感じられないんですよ。もっと危機感を持っていただきたいし、もっと迅速に対応していただきたい。これは何なんですか。人が一人死んでいるんですよ、裁判所の入り口で。とんでもないことが起きていますよ。

 私も、家庭裁判所の前で、多分離婚調停を終えた御夫婦なのか離婚した方なのか、トラブルになっている姿を見たことがありますよ。そういうときに、警備員が、ここは裁判所だからやめてくださいと割って入ってとめた、そういう光景も見たことがあります。今回、刃物を持って走って入ってきた人を、何でとめられないんですか。

 ちなみに、その警備員は外部委託なのか、それとももともとの職員なのか、この点は把握していますでしょう。

村田最高裁判所長官代理者 申しわけございません、警備員の属性については把握しておりません。(階委員「だめだ、そんなんじゃだめだ、質問できないよ、いいかげんですよ」と呼ぶ)

葉梨委員長 村田局長、現時点ではなかなか調査し切れていないという答弁なんだけれども、早急にちゃんと、大事な事件ですから、やりますということをちゃんと言ってください。

村田最高裁判所長官代理者 委員御指摘のとおり、大変重大な結果をもたらした事件であるということは我々としても受けとめておるところでございます。ですので、慎重に検討をさせていただいておるところでございまして、もう少しお時間をいただきまして、分析の後、また御報告させていただきたいというふうに思います。

階委員 では、しっかりした文書の形で、証拠に基づいて説明をして、そして、反省すべき点があれば反省すべき点もちゃんと記載していただいて、再発防止策もちゃんと記載していただいて、そうしたものがきっちりそろわなければ、裁判所への信頼は回復できないと思いますよ、安全面の信頼は。そこは重々肝に銘じてください。

 時間が無駄になってしまいました。その責任も感じてください。

 さて、四月一日から新しい外国人の受入れ制度が始まります。

 一月二十三日の閉会中審査、私も質問しましたけれども、ほかの委員からも、地方から都市部に流出してしまうのではないかということで、地方の人手不足は解消に至らないんじゃないかという問題意識から質問がされていたわけです。佐々木政府参考人の方からは、状況に応じた対応、調整を早急に講ずるとか、協議会による大都市圏での受入れの自粛要請や、人材引き抜きの自粛要請なども期待できる、あるいは、転職に伴う在留資格変更の必要性等の厳格な審査を行うといったようなことが答弁としてありました。大臣もそうした趣旨の答弁をされていたと思います。

 まず、状況に応じた対応とか調整というのは具体的方法が明らかではないと思いますし、自粛要請ということについて言えば、受入れ側が自粛したとしても、働く外国人は拘束できないはずですし、実効性がないと思います。それから、在留資格変更の厳格な審査というんですけれども、どういう審査を行うのか、これも明らかではないと思います。

 もう一歩具体的な内容、あるいは実効性のある内容をここで説明していただく必要があると思います。大臣からの御答弁をお願いします。

山下国務大臣 まず、大都市に外国人材の受入れが過度に集中しないようにすること、これはもう政府としてもこの問題意識は共有しているところでございます。

 その全体像からまず申し上げますと、今、大都市に集中するのではないかというふうに言われていることについて、一つは、やはり地方にちゃんとした受皿があるのかという点がございます。その地方における受皿をしっかりつくるという意味において、例えば、ワンストップで外国人が理解できる言語で情報を受け取れる、地方公共団体における一元的相談窓口の整備支援であるとか、あるいは、外国人の受入れ支援や共生支援を行う受皿機関の立ち上げなど、地方公共団体が行う先導的な取組に対する地方創生推進交付金などによる支援などをしていきたいと考えております。

 そして、都会でなければ外国人の快適な受入れが成らないというのがあるのであれば、そうしたことのないように、さまざまなマニュアルであるとかそういったものをつくらせていただく。

 一方で、実際に地方で就労することの魅力、これも周知していく必要があろうというふうに考えております。

 というのは、東京で働くということは、確かに賃金は高いかもしれませんが、家賃であるとか、あるいは、言葉が通じないといいますか、言葉がそれほど日本人並みではない外国人にとって、苦痛なものの一つに通勤がございます。長時間電車に揺られて来るという都会がよいのか、あるいは自転車で通勤できるという地方がよいのか。あるいは、地方ならではの、例えば企業における人的な関係であるとか、そういったものを周知させていくということになろうかと思います。

 そして、御指摘の協議会については、これは分野別の所管省庁も加わっていただいて、もちろん我々法務省等の規制所管庁も加わらせていただいて、人手不足が深刻な分野について、全国的に人手不足の状況や偏在の状況を把握して、それについて適正な配分というか、やはり協議会全体としては、一つの地域だけがどんと突き抜けて伸びるということは望んでいないわけでございますから、そうした分野が、全国において必要なところに必要な人材が行くということも、自主的な取組として図っていただけるのであろうと考えております。

 そうした中で、例えば、自主的な取組の一つとして、自粛等ということがあり得るのかもしれない、協議会の中でですね、というふうなことも考えております。

 また、法務省が行う厳格な審査というのは、例えば、地方から都会に移る場合に、要は引き抜きとか、本来、要するに、仲介とかそういうことをしてはならない者の仲介により転職をするということが散見される場合があろうかと考えます。そういった場合には、受入れ機関の変更というのは、これは在留資格の変更になりますので、そうした際に、どのようなきっかけで変更するのか。その際に、本来、職業紹介等を行えない者が関与しているというようなことが判明したら、そこの変更については、厳しい審査として、場合によっては認めないというようなことも考えていきたいと考えております。

階委員 そうすると、それこそ、より高い賃金を求めて転職しましたという場合は、別に引き抜かれているわけでもないわけで、本人の自発的な意思だから、それはその厳格な審査でも防ぎようがないですよね。確認まで。どうでしょう。

山下国務大臣 基本的に、そういった審査の要件を満たしているのであれば、これは資格変更を認めるということにはなります。

 ただ、その分、従前勤めているところの人間関係であるとか、そういったところで継続的に働いていただけるということのメリット、これもしっかりと伝えていきたいと考えております。

階委員 そうはいっても、外国の方は、もともとその地域に地縁、血縁があったわけでもなく、やはり一番の目的はお金を稼ぐということで来られている。そうなると、やはり待遇がいいところにどうしても流れるんじゃないかなと思います。

 きょうは厚労省にも来ていただいていますけれども、例えば介護報酬という場合は、国の制度上、都市部の方が最初から高く設定されているわけですよね。こうした中で、ほかの業種よりも更に外国人材が大都市圏に集中してしまうのではないかという懸念があるんですけれども、厚労省参考人、いかがですか。

諏訪園政府参考人 お答え申し上げます。

 介護報酬につきましては、法律上、事業所が所在する地域等も考慮した、サービス提供に要する平均的な費用の額を勘案して設定することとされておりまして、人件費の地域差を介護報酬に反映するための仕組みとして、地域区分を導入してきてございます。

 これにつきましては、公平性、客観性の観点から、民間の賃金水準を反映して設定されている公務員の地域手当、これに原則準拠しておりますことから、他の業種よりも更に外国人材が大都市に集中する要因になるとは考えていないところでございます。

 ただ、いずれにしましても、今、厚生労働省としましては、各都道府県におきまして、全四十七都道府県で法務省主催説明会において参加するなどにより、あるいは、都道府県の部局長会議等におきまして、介護分野における外国人材受入れの趣旨や取組などについて四十七都道府県の周知を進めるとともに、地域医療介護総合確保基金を活用した都道府県の人材確保のための取組等を厚生労働省のホームページに掲載するということを、まず今、取り組んでいるところでございます。

階委員 介護の場合は、公務員と同じように、やはり地域間の格差が、もう制度上そうなっていますから、例えば協議会で相談して、この地域は給料が高過ぎるから少し減らしたらどうか、そんなことはできないですよね。そして、全体をならして人が都市部に集まらないようにということはできないですよね。

 それと、協議会で自粛要請するなんてこともあるようですけれども、先日、黒岩さんの質問だったか、どなたかの質問だったか、三月十三日の厚労省の答弁の中で、外国人材の受入れをする施設、大体全国で十一・三万カ所と言っていました。

 この十一・三万カ所、協議会に全部入ってきて、コントロールできるんですかね。十一・三万カ所、あなたのところは多過ぎるから減らしなさいとか自粛しなさいとか、そんなことができるんですかね。そもそも十一・三万カ所で協議会って、どんなふうに運営するのか見当もつかないんですけれども、そのあたりはどのように考えているんですか。お答えください。

諏訪園政府参考人 お答え申し上げます。

 協議会の具体的な進め方につきましては、今後、それぞれの事業所がサービスごとに所属する協会などございますので、そうした関係団体を通じて、具体的な運営のあり方について検討を進めていきたいというふうに考えております。

階委員 四月一日から始まるこの新しい制度、今の段階で、協議会のあり方、どういうふうに運営していくか決まっていないということなんですが、それでいいんですか。おかしくないですか。

諏訪園政府参考人 お答えいたします。

 協議会につきましては、今年度中を目途に立ち上げるということで現在調整しております。

 そうした中で、委員御指摘の具体的な議論の進め方、これについて検討、調整しているということでございます。

階委員 十一・三万の施設が協議会に入って、本当に適切な受入れ体制、地方にもちゃんと人が行くような体制を整えられるのか、非常に疑問です。

 そういう中で、やはり、私ども提案しているように、地方、東北なら東北、九州なら九州、そういう地方ブロックごと、あるいは受入れ機関、各外国人労働者と契約を結ぶわけですから、その受入れ機関ごとに一定の枠を設ける。

 例えば、分野別の協議会の場でそういう全体枠をどのように配分するかということも議論した上で地方の枠というのは決められるというふうにも思いますし、そういうことで、協議会に全部丸投げしないで、あくまで協議会からは一次的なニーズを上げてもらう場ということにして、最終的には法務省が主体的に、地方ごとあるいは受入れ機関ごとに受入れ枠を決めた方が、私は、都市部に集中しない実効的なやり方というのが確立できるのではないかと思いますけれども、法務大臣、お願いします。

山下国務大臣 まず、特定技能制度においては、分野というのが、これは人手不足が深刻で外国人の人材の受入れが必要な産業上の分野ということで法定されているということで、地方によって区分けするということは法律上求められておりません。

 それは、やはり在留資格というのが、これは日本国内における在留資格という、本邦における活動を定めるものであるということ、加えて、仮に御指摘のように地域ごとの上限を定めるということについては、要は、地域というのを、例えば都道府県ごとにするのか、あるいは、例えば東北なら東北、北海道なら北海道という、より広い形にするのか、あるいは、その地域ごとにおいて、客観的、合理的な共通指標を適切に設定することができるのか、上限を適切に設定することができるのかなどの課題があるものと考えております。

 例えば、ある地域において新しく大規模な工場が新設されるといったときに、地元の方も、国内人材も活用していただくんですが、そういった中で、人手不足の状況がその地域に新たにでき得るということもあり得る。そういったときに、余り細かい地域ごとの上限設定では、実際に、分野別運用方針では五年先の上限として運用するわけですから、そうした細かい区分けでは適切な配分というのが果たして可能なのかといったような疑問もございます。

 また、受入れ機関ごとの上限設定についても、やはり、受入れ機関ごとにどういった指標を設けるのかというふうな問題、そういったものもございますので、私どもとしては、この分野別運用方針において、分野ごとに、今後、向こう五年受け入れる数、これを上限として運用させていただくという限度において、あとは、協議会等における自主的な取組であるとか、あるいは地方の魅力を増していく、あるいは地方に暮らした方が手残りが多いというようなこともあろうかと思います。そうしたこともしっかりと周知していくという形で、大都市の偏在というのを防ぎたいと考えております。

階委員 今、地方ごとの枠を決めるのは難しいんだという理由についてるる述べられているんですけれども、これは一月二十三日の我が党の源馬委員の質問に対する答弁の中で、大臣は、各地域における人手不足も加味した上で、分野別運用方針に記載されている五年の受入れ見込みなどというのも判定している、こうお答えになっています。

 つまり、今回の五年の三十四万という数字は、ボトムアップで、地方のニーズ、地方の人手不足、こうしたものを積み上げていって出された数字だというふうに私は受け取ったんですね。

 だとするならば、地方ごとに、この地域は何人ぐらい必要なのかということもわかっているはずだから、それを前提にして地方ごとの枠というのは決められるのではないかと思うんですよ。なぜできないのか、私はよく理解できないんです。

 もともとのこのたてつけ、三十四万人に至った、地方の人手不足も加味して決められていった、そういうたてつけ、プロセスを考えると、地方ごとの枠というのは決められると思いますが、いかがでしょうか。

山下国務大臣 お答えします。

 もちろん、地方の事情も加味して、その三十四万という数字は、三十四万五千百五十人ですね、定めたというのがございますけれども、これについては、委員の御指摘は、地方ごとに、地域ごとに上限を設けるということで、それ以上その地域には受け入れられませんというふうな上限を設けるということが果たして適当かどうか、客観的な指標ができるのかどうか、そういったことがあろうかということで、先ほどのように答弁させていただいたわけでございます。

階委員 やはり全国で三十四万というパイがあるわけですね。パイがあるわけで、それをいかにバランスよく切り分けていくか。そのためには、何ら、物差しというか、あるいはミシン目というか、そういうのをなしで、その三十四万は自由に切り分けられる仕組みがいいのか、あるいは、ある程度ミシン目なり物差しなりというのをつくっておいて、それに基づいて配分する方がいいのか。私は、後者の方が、地方の人材不足解消には資すると思っています。

 ちょっと、質問の流れで、通告の九番目の話に飛びますね。

 地方の人材不足解消に資するようにするために、ワンストップセンター、相談窓口の話、あるいは受皿機関、こうしたこともやるんだというのも、さっき御説明ありました。

 ところで、この委員会でも、地方に丸投げではないかと何人かの委員が指摘されていたんですけれども、私、きのうレクで法務省の方に来ていただいて、びっくりしました。各都道府県に四十七個ワンストップセンターをつくるんだと言っておったので、じゃ、岩手県はどこにつくるんですか。いや、それは把握していませんと。把握していないんですよ。

 あるいは、これは朝日新聞の記事ですけれども、ワンストップセンターの整備費の交付金の申請、まだ数が少ないみたいですね。こういう中で、本当にワンストップセンターというのが機能するんだろうか。法務省が司令塔の役割を果たすと言っていますけれども、全然果たされていないのではないかと思います。

 全国約百カ所、百カ所を上回っていると思いますけれども、その外国人の相談窓口、ワンストップセンターの準備状況が本当はどうなっているのか、これを具体的に御説明ください。

山下国務大臣 お答えいたします。

 この交付金、一元的相談窓口の設置、拡充について交付金により財政支援をするということで、これは二通りございまして、一つは整備費として三十年度の補正予算で十億円、運営費として三十一年度予算案で十億円計上されております。整備費については満額、運営費については半分ということで、それぞれ上限一千万までということでございますが、整備費については三月十五日まで、運営費については三月二十日まで、それぞれ公募を行ったところでございます。

 そうした中で、交付金の対象となる地方公共団体は全部で百十一団体でございます。そして、このうち、整備費又は運営費のいずれか、あるいは双方について申請した地方公共団体は六十八団体に達しております。内訳について、整備費については三十七団体、運営費については六十二団体であります、重なる団体もございますが。

 そうした中で、まだ申請していない団体につきましては、これは、受け取ることとなる交付金を予算に計上して議会の承認を得るなど所要の手続を行う必要があるということが理由だというふうに承知しております。

 そういったさまざまな事情から今回の申請期間中に申請に至らなかった団体もあるということでございまして、私どもとしては、四月以降に予算措置をしても窓口の整備を実施したいとする地方公共団体も多数あると考えておりますので、そうした地方公共団体の事情にも配慮し、必要な繰越し手続をとった上で、二次募集を行えるよう努めてまいりたいと考えております。

階委員 司令塔なんだから、尻をたたいて、しっかり四月一日に間に合わせろとやらなくちゃだめじゃないですか。

 ちなみに、岩手県もこの窓口をつくられるようですけれども、どこにつくられるんですか。把握されていますか。

山下国務大臣 済みません、ちょっと私に質問通告がなかったので、今ちょっとこの時点では私自身把握しておりません。

 ただ、各都道府県において、どこに設置するのかということは、国から決めるのではなくて、各都道府県によって、最も適切と思われるところ、岩手県、大変広うございますから、そういったところで、どこに設けるのがよいのかということは各地方自治体にお任せしているというところでございます。

階委員 四月一日から法律が始まって、新たな外国人の受入れ制度をやらないと大変なことになると、秋の段階でおっしゃっていたじゃないですか。それを進めるためにもこの相談窓口は重要だということもおっしゃっていたじゃないですか。どこにつくるかは自治体に任せていいと思いますよ。でも、今の段階で、どこにつくる予定かというのも把握されていないというのはどういうことなんでしょうか。

 きのうの段階では、事務方は、わかっていない、地元に任せているという話でした。ということで、四十七都道府県、全然把握していないんじゃないですか。きのうの段階ではそう答えていました。

山下国務大臣 説明に伺った者がどのような説明をしたかということでございますが、他方で、結局、今、自治体の中でも、どこに置くのかというふうな調整もしているというところでございます。そういった中で、やはり自治体の中でここに置くのだという調整を了して、そして我々にもこういうふうなお話がある、一般論でございますが。

 岩手が今どういう状況かということは、今、私自身承知しておりませんけれども、そういった、各地方自治体でどこに置くのだということについてまず決めていただく必要があるということでありまして、そういった情報は、もちろん決まり次第、我々も収集させていただいて、必要なところで周知させていただきたいと思っております。

葉梨委員長 階君、まとめてください。

階委員 これで質問を終わりますけれども、きのう、そういうやりとりをして、私の方から、四十七都道府県、それぞれの相談窓口をどこに設置されるのか一覧表で出してくださいということで、出しますと言って、来たのがこれですよ、都道府県四十七団体。何県はどこの場所とか一切書いていませんよ。それが、この時期ですよ。もう四月一日から始まろうとする段階で、まだ場所すら法務省として把握していない。とんでもないと思いますよ。

 これで四月一日から法律の制度を始められるのか、また、そもそも急ぐ必要があったのか、甚だ疑問ですということを申し上げまして、質問を終わります。

葉梨委員長 以上で階猛君の質疑は終了いたしました。

 次に、串田誠一君。

串田委員 日本維新の会の串田でございます。

 質問の前に、つい一時間前に拉致特別委員会が設定されまして、あしたから拉致特別委員会が始まるんですけれども、大臣にちょっと一つお聞きをしたいんですが、ここの委員会に参加している方も、もう皆さん、この日本の拉致問題というのは早急に解決をしたい、全員が早く生還してもらいたいと思っていらっしゃると思うんです。

 そういう中で、今この日本は、アメリカから拉致の常習国としてホームページに挙げられている。そしてヨーロッパからも、先月は子どもの権利委員会から、子の連れ去りの法律の改正をしろという勧告がある。そして、今月の頭にはフランスの国営放送で日本の拉致が特集された。そして、今月の二十九、三十日にはイタリアの有名なテレビ局が取材に来ると言われています。

 こういうようなことが、日本のこの拉致問題に関してマイナスになっていると思わないでしょうか。大臣のお考えをお聞きしたいと思います。

山下国務大臣 委員の御指摘は、アブダクション、これをどう訳するかというふうなことなんだろうと思いますが、我が国が取り組んでおります北朝鮮などによる拉致被害につきましては、国民が国家により拉致された、これは紛れもなく我が国全体で取り組んでいかなければならない問題でございます。

 他方で、今アブダクションという言葉で表現されております、親による連れ去りというふうに我々は呼んでおりますが、これは、そもそも、夫婦仲よく暮らしているころには子供さんがいて、その一方が、一方の監護権を害する形で連れ去ったというふうに言われているものをアブダクションというふうに表現されているものでございます。

 そうだとすると、この両者は全く違うものであるということでございますし、そのことが外国の誤解を生むものとは私自身は考えておりませんが、仮にそういった誤解を生むのであれば、丁寧に説明をしてまいりたいと思っております。

 そして、いずれにせよ、こういった連れ去りに対して、国際規約であるハーグ条約、これについては我が国も締約国としておるところでございますし、先日、本会議で審議入りさせていただいたこの民事執行法そしてハーグ条約実施法の改正案、これによっても結果的にそういったニーズにも資するものではないかということを丁寧に説明させていただきたいと思っております。

串田委員 その説明は、日本の法務大臣がこの法務委員会で説明するのなら、ああそうですかと聞く人はいるかもしれないですよ。だけれども、アメリカは拉致の不履行国としてホームページに赤い枠で掲載されているわけだし、そしてヨーロッパでもこれを解決してくれというようなことで勧告が出されているんですよ。こういうようなことをこの国だけで勝手に解釈して、これは別の拉致なんだ、これは大した拉致じゃないんだと言っているということ自体、これはおかしいと思います。

 大体、この日本の拉致の問題は、国際世論あるいは皆さんの協力を得て解決をしていかなければなかなか解決できないと思いますよ。今回だって、米朝会談でトランプ大統領にお願いしているわけですから。そのトランプ大統領が国内の議会から日本の拉致問題をどうにかしろと突き上げられているんですよ。そういう人が日本の拉致問題だけ一生懸命やるということ自体、アメリカの国内は納得するわけないじゃないですか。まずは国内の問題を解決しろと言われて当たり前だと思いますよ。

 私は、そういう意味で、拉致の特別委員会の一員として、とにかくこれに全力を挙げるためには、日本国内がこの問題に関して、とにかくマイナスになるような要因は全部省いていかなければ、これは何年もかかっているんですから、解決できないわけで、そんなふうに、国内は、これは親の場合だから連れ去りで、拉致とはまた違うんだと言っているというのは、私はこれはちょっと違うなというのをまず申し上げておきたいと思います。

 それでは、通告どおりの質問をさせていただきますが、窃盗罪というのはなぜ処罰されるんでしょうか。

小山政府参考人 刑法二百三十五条の窃盗罪、これは他人の財物を窃取することを要件とする犯罪でございます。

 その法定刑は、十年以下の懲役又は五十万円以下の罰金とされております。

串田委員 そういう二百三十五条という規定を設けなくて、とられたら個人間で解決させればいいじゃないですか。何でわざわざ国が刑事罰を科すんですか。

小山政府参考人 お答えをいたします。

 他人の財物を窃取する行為につきましては、個人の社会生活にとっての財産の重要性に鑑みれば、これは私人間の解決に委ねるのではなく、国家による処罰の対象とすべきものと考えております。

串田委員 物を盗まれたときに、自分の物を持っていった人間を見つけて、たまたまよそを向いているから、それを自分で取り返してきた、これは犯罪になるんですか。

小山政府参考人 犯罪の成否は捜査機関により収集された証拠に基づき個別に判断されるべき事柄でございまして、一概にはお答えいたしかねますが、あくまで一般論として申し上げますと、刑法二百四十二条におきましては、自己の財物であっても他人が占有するものであるときは他人の財物とみなすこととされており、一般に、財物の所持者が法律上正当にこれを所持する権限を有するかどうかは問わないものとされております。

串田委員 今、それが起訴されるかどうかはわからないにしても、その趣旨というのは、自救行為をしてはならない、なぜならば、物を盗んだ場合にはちゃんと窃盗罪という規定があるから、だから、その規定に従ってやっていくということが趣旨なのであって、それを使わずに自分でそれを取り返してきてはいけないという趣旨であると思いますが、それで構いませんか。

小山政府参考人 個別の事案におきまして、どういう場合に犯罪が成立するかにつきましては非常に難しい問題がございます。

 先ほど申し上げましたように、重ねてになりますけれども、一般論として申し上げて、刑法二百四十二条においては、自己の財物であっても他人が占有するものであるときは他人の財物とみなすという規定があるというところで御理解をいただきたいと思います。

串田委員 外国で、他人の物を盗んでも、それは処罰されない、自由に盗んでいいよという国は、世界じゅうで何カ国あるんでしょうか。

小山政府参考人 諸外国の法制を網羅的に把握しているものではございませんで、窃盗を処罰していない国の存否は承知していないところでございますが、いずれにいたしましても、窃盗は自然犯、これは性質上社会倫理に反するものとして犯罪とされるものの典型でございまして、通常は処罰の対象としているのではないかと考えているところでございます。

串田委員 恐らく、どこの国も処罰をしているんだと思います。ですから、窃盗をしたら処罰されるんだというのは誰でも知っていることだと思うんですよ。ですから、例えば、行ったことのない国に旅行に行ったときに、そこの旅行先が物を盗んでも自由だというふうには誰も思わないし、恐らく処罰してくれるだろうというふうに思うんだと思います。これは、窃盗罪の保護法益に関して、世界じゅうが同じように物を考えているからなんだと思うんですね。

 通告のときにお話をさせていただきましたが、子供の連れ去りに関して、子どもの権利条約に関しては、共同で養育をする、例えばアメリカの場合には共同監護法というものが締結をされています。そして、この子どもの権利条約に対して批准している国は百九十六カ国、ほぼ全世界の国が批准をしている。そして、子供の共同養育を認めていない国というのは恐らく日本と北朝鮮だけ。まあ、トルコは宗教的に違うかもしれませんが、日本と北朝鮮だけが単独親権というふうにくくられています、この言葉の定義は別にしても。

 私が言いたいのは、窃盗罪の保護法益は、誰もがこれは守ってくれると思っている、これを守ってくれない国はないんだと思っている。ですから、旅行するときに、その国は守ってくれるかどうかをチェックするなんという人はいないわけですよ。「地球の歩き方」にも書いているわけじゃないし、当たり前だと思っている。そういう意味で、全世界の百九十六カ国が、子供を連れ去っては共同養育を侵害するということで処罰をしているのが当たり前だと思っている、そういう人たちが、この日本に来たときにも当然守ってくれるだろうと思うんじゃないですか。それを、日本はちゃんと、連れ去りについて刑事上、例えば刑法二百二十四条で未成年者拐取罪として成立をするという理解でよろしいでしょうか。

小山政府参考人 犯罪の成否は捜査機関により収集された証拠に基づき個別に判断されるべき事柄でございまして、お答えは差し控えさせていただきます。

串田委員 回答を差し控えるのはいいんですけれども、それで人生を狂わされている人がいるんですよ。

 大臣、ちょっと聞いていただきたいんですけれども、今、日本は連れ去りに関してはほとんど処罰されないんです。そして、連れ戻した人間だけが誘拐罪で処罰されているんですよ。さっき、窃盗罪のときには、取り戻していたらだめだと言われたんです。なぜだめなのかというと、持っていくのを処罰するから、そちらでちゃんと規定するから取り返しちゃいけないんですよ。ところが、日本は、世界じゅうで連れ去りを処罰しているのに、この国は北朝鮮と一緒に、子の連れ去りについて処罰をしないから、自分で取り戻そうとすると、これだけは処罰されると言っているんですよ。これは不合理だと思いませんか、大臣。

山下国務大臣 片方の、一方の親が持つ監護権の侵害に対して、どのような例えば担保をとるのか、それが罰則であるのか、あるいはさまざまな家事審判手続であるのか、それは各国の法制によって異なるのであろうというふうに思っております。ですので、子の連れ去りに関してどのような刑事罰で臨んでいるのか、あるいはそもそも刑事罰を必要としているのかいないのかについては、これは各国の法制によるところがあるというところであろうと考えます。

串田委員 そういう自由はもうないんですよ。窃盗をされたときにその国に相談に行ったら、それがどうかしたんですかと言われているのと一緒なんですよ。

 それでは、例えば外国で物を盗まれたといったときに日本人としてはその後どういうふうな対応をしたらいいのか、きょう外務省の方にも来ていただいているので、お答えいただきたいと思います。

森野政府参考人 今先生がおっしゃったとおり、国際社会において一般的に窃盗が犯罪として各国の法律で規定されているということが言えると思いますが、仮に渡航先の国の法律上窃盗が犯罪とされておらず被害を受けてしまったという邦人から大使館において対応を求められた場合、その内容によっては当該国に対して窃盗品の返却を確保するよう申出を行うなど、可能な範囲で対応を行うこととしております。

 ただ、もちろん防犯そのものがそもそも重要ですので、外務省としては、防犯、回避に役立つような基本的な情報を外務省の海外安全ホームページに掲載して、注意喚起を行っているところでございます。

串田委員 世界じゅうが認めて保護されているものが、よもや日本では保護されていないとは思わない。

 これは、世界じゅうがそうだからと言っているだけじゃないんです。日本が一九九四年にこの条約を批准しているんですよ、共同で養育をすると。それに基づいて、世界じゅうの国がこれにのっとった法律になっているから、日本だってそうだと思っているわけです。ところが、役所に相談したら、それがどうかしましたか。そうしたら、自分の国、例えばアメリカだったら、アメリカの国の国務省に相談する。どうしようもないんですよ、日本は約束を守っていないから。それで、大使館に行く。どうしようもないんですよ、日本は守っていないと言うしかないんです。

 そういう人間が、今度、もうこの国は守ってくれないからといって自分でそれを取り戻す。これはほかの国だったら正当防衛とか緊急避難になるのに、この国だけはそれを処罰をしているんですよ。

 これは、そういう人たちはまだ祖国が理解しているからいいんですよ。日本の人たちは祖国が守ってくれないんですよ。世界じゅうが認めているこの権利を、日本の人たちは、子供を連れ去られたまま、国は守ってくれないんです。おじいちゃん、おばあちゃん、守ってくれないんですよ。

 山下法務大臣、そろそろ本格的な活動をしていただけませんか。私も、法務委員会でもっといろいろな質問をしたいんですよ。山下法務大臣、どうですか。

山下国務大臣 子の連れ去りに関しましては、これは、ハーグ条約は民事上の側面に関する条約ということで、それに我が国が加盟しているということでございます。それに更に進んで、刑事上の責任あるいは犯罪の成否についてどうするかということは、これは各国の対応によるんだろうというふうに考えております。

 そしてまた、アメリカ国務省の年次報告書についても御指摘がございましたけれども、この二〇一八年の報告書において、これは前年の二〇一七年の評価でございますが、ジャパン・ハズ・メード・メジャラブル・プログレスということで、子の連れ去りにつき重要な前進があったということも認められているところでございます。

 法務省としても、引き続き、アメリカあるいは各国、大使館あるいはその他のチャンネルで、我が国の状況あるいはその法案の内容等を説明して、理解を得ていく努力をしていきたいと考えております。

串田委員 今ずっと話しましたけれども、世界じゅうが守ってくれる法律をこの国は守ってくれないということ、焦燥感というのが、重大な事件をまた引き起こすんじゃないかと私は大変心配しているんです。

 きょう、ハーグ条約の実施法の保護法益も聞こうと思いましたが、これはこれから法案もありますので、またそのときに質問したいと思います。

 ありがとうございました。

葉梨委員長 以上で串田誠一君の質疑は終了いたしました。

 次に、井出庸生君。

井出委員 よろしくお願いいたします。

 きょう、まず簡単な方からいきたいと思います。

 配付資料、昨日の毎日新聞なんですが、裁判記録について、上川陽子前法務大臣の単独インタビューでございます。

 少し内容をかいつまんで御説明をしますと、刑事裁判の記録の保存について、「プライバシーに配慮し活用策を」という上川前大臣の御提言ですね。公開の法廷で審理される刑事裁判の記録は検察庁に保管をされる、法務省は昨年、一定の時間がたった重要な記録のリストをまず公表する、公開を前提に国立公文書館にそうした重要な記録を移していく方針を打ち出したと。

 この件について、上川前大臣はインタビューの中で、公文書は将来の国民も含めた共通の知的財産で健全な民主主義を支える基盤である、刑事裁判の記録も歴史的価値が非常に高い貴重な文書が含まれると。それから、重要な記録は百年先の国民がその判断を参考にしたり検証したりできるようにするべきだと。この百年先というのは、極めて重要な考え方であろうと思います。

 上川さんは、さらに、大臣に就任後、この刑事裁判記録の一部を国立公文書館に移して活用できないかと考えられたとお話をされ、実際に、その重要な記録、刑事参考記録と言われている重要な記録をごらんにもなった、確認をしたと。非常によく残している、こうした記録は、実は現在でも法務大臣、総理大臣との合意で国立公文書館に移管できるのだが、現状は、谷垣さんが法務大臣のときに軍法会議の記録を移しただけにとどまった、慎重な検討が必要だと考えたのだろうと上川さんはおっしゃっているんですね。

 昨年、上川さんが、その軍法会議以外の重要記録も移すべきだと考えたのはどうしてなのかと問われて、ここも非常に大事なんですが、個人の名誉、プライバシーと、国立公文書館で保存する公共性とを調和させる知恵があるのではないかと考えましたと。

 これは、とりあえずとかではなくて、本格的に刑事裁判記録の国立公文書館への移管の検討、その第一歩をしたい、そうお考えなのではないかなと、私は大変これを重く受けとめていて、これ全部、昨年の国会答弁でやっていただけると、僕はもう感動して涙を流したと思うんですけれども、大変いいインタビューだと思います。

 それから、刑事参考記録のリストについても、将来の国民の利益に奉仕をしようとする研究者の要望に応えなければいけない、そういうことをおっしゃっていて、法務省には早期に結論を出してほしいと。

 これは、上川大臣に本当に国会の答弁でやっていただきたかったと思うんですが、上川大臣の後任の山下大臣にこのことを国会答弁に残していただきたいと思いますが、積極的な答弁をお願いします。

山下国務大臣 昨年四月に、法務省内に公文書管理、電子決裁推進に関するプロジェクトチームが立ち上げられて、刑事参考記録を含む刑事裁判記録の保管のあり方等についてさまざまな検討が行われました。そして、昨年九月、当時の上川法務大臣において、それまでの検討状況を踏まえ、刑事参考記録の国立公文書館への移管を試行すること及び刑事参考記録のリストを作成し開示することなどの方針を示したものでございます。

 昨年九月に示された方向性につきまして、これは私も、当時、法務大臣政務官としてプロジェクトにおける検討にもかかわってまいりましたが、明治期前半の治罪法時代の刑事参考記録を対象として、まずは一件ないし数件の刑事参考記録の移管を試行するなどといったものであり、移管の実現に向けて一歩進んだものであると考えております。

 もっとも、移管を実現するためには、相当古い時期の刑事参考記録の内容を確認した上で、記録の内容を公にした場合の事件関係者の名誉、プライバシー等を害するおそれの有無やその程度等といった問題点の洗い出しを行うとともに、移管のプロセスについて関係機関と協議することが必要であり、また、事件関係者のプライバシーに配慮した事件の特定のあり方等についての検討を行うことも必要であるということで、まさに上川前大臣指摘の知恵が必要にされるんだろうということで、今、事務レベルでの作業を進めておるところでございます。

 私としても、速やかに課題についての検討を進め、刑事参考記録の移管の試行及びリストの作成を実現してまいりたいと考えております。

 今後も、上川前大臣の思いをしっかりと受け継いで取り組んでまいりたいと考えております。

井出委員 上川前大臣は、今、試行的な移管というお話がありましたが、その最後に、この試行的な移管を通じて課題を洗い出して、コンスタントに移管が進むようガイドラインを示す必要があると。

 これも大変すばらしい御発言であるなと。ぜひ、このガイドラインというものも進めていただきたいと思いますが、一言だけお願いいたします。

山下国務大臣 今、事務方を中心に検討を、どのような形の移管があるのかということで事務レベルの作業を進めているところでございまして、詳細については、必要であれば、刑事局長から答えさせます。

葉梨委員長 何か詳細、説明は必要ですか。

井出委員 いえ、では詳細は後で聞きます。ありがとうございます。

 そこで、刑事裁判は、今こうやって、公文書館への移管と、あともう一つは、刑事裁判記録という重要文書のリストを公開しようという流れになっている。最高裁、民事の裁判記録が、東京地裁で特別保存されているものが十一件しかない、宙に浮いているものが二百七十件あって今処理をしてくれている。それから、過去三年分の特別に保存してある記録については前回答弁をいただきました。

 この際、民事の方も、ちょっと各地裁に、少し時間がかかってもいいですから、今一体どれだけ、過去三年と言わずに、特別保存されている文書があるか、それをリストとして各地裁でつくって、最高裁の方で把握をしておく。

 刑事裁判の刑事参考記録というのは、毎年、例えば昨年の七月末だったら、この記事にもあるんですけれども、七百二十二件、これは法務省は把握している。こういうことをぜひ最高裁にも、民事の分野でも、リストづくり、特別保存記録の全容の把握を進めていただきたいと思いますが、いかがでしょうか。

村田最高裁判所長官代理者 お答え申し上げます。

 民事事件の記録につきまして、事件記録等保存規程九条二項の特別保存に付された場合には、各裁判所におきまして、事件ごとに特別保存記録等保存票というものを作成しなければならないことになっております。

 この保存票は、司法行政文書に当たりまして、情報公開の対象になり得ますので、これとは別に一覧表のようなリストを重ねて作成し、また公開するというところまでの必要性は低いのかなというふうに思っております。

 最高裁判所の把握という点では、特別保存に付した場合には最高裁事務総局総務局に報告をすることになっておりますので、その報告を受けて把握をしているというところでございます。

井出委員 その報告の文書の保存期限が三年しかないから全容がわからないというのが現状だと思うんですけれども。

 一体どこにどれだけの記録があるのかということは、刑事裁判の方で今検討してもらっているような、やはりリストをつくっていただければ、これは民事においても、この上川さんのお言葉、将来の国民の利益に奉仕しようとする研究者の要望、これは民事にもあると思いますので、また引き続き聞いていきたいと思います。

 それから、時間がないので、性犯罪の問題ですね。これも私、質問のたびに一問はするという決意を持って今国会に臨んでおりますので、聞いていくんですが、時間の関係で。

 前回の大臣の答弁で、性犯罪被害、これを少なくするべきという点においては大臣も私と同じ思いであると。もうこれは釈迦に説法だと思いますが、性犯罪というのは、被害届の件数を減らせばいいというものではないと思います。被害届が出せない方というのもいらっしゃる。

 一つ、きょうは数字を御紹介したいんですが、ことしの一月に日弁連で勉強会がありまして、医療の現場から見た性犯罪、性暴力被害者のための支援と課題、こういうタイトルで、大阪の、性暴力救援センター大阪、SACHICOの加藤さんという先生がお話をされていたんです。

 大臣もよく御存じだと思いますが、内閣府の男女間における暴力に関する調査、これは三年ごとにやっている調査で、異性から無理やり性交されたことがあるというのが七・八%いる。これは三年ごとに調査をしていて、この七・七、七・八というのはほぼ一定をしている。

 これは、日本人が二〇一五年の十月の国勢調査で一億二千七百万人、そのうち女性が六千三百五十万人。この調査は成人対象ですので、未成年の一千二百万人を引いて、五千百五十万人の成人女性、これに七・八%を当てはめると四百一万七千人。調査対象は、六十歳以上が四割、この調査はいるんですね。ですから、この四百一万七千を六十で割りますと、おおよそ年間に六万六千九百五十という数字が出てくるんですが、これは一年間に六万人から七万人の女性が異性から無理やり性交されたことがあると感じざるを得ない体験をされているのではないかと。

 この七・七、七・八というのは、繰り返しになりますが、三年ごとに調査をしても同じような数字が出ている。この現実についてもやはり重く受けとめていただきたいと思いますが、この数字についての見解を伺っておきたいと思います。

山下国務大臣 ちょっと、計算上の数字について、若干、法務大臣としてコメントは差し控えさせていただきたいのですが、ただ、先般も申し上げたとおり、実態をしっかり把握した上で検討すべきだということについては、いわゆる暗数も含めて性犯罪被害の実態を把握することにより、性犯罪被害で苦しむ方が少なくなるよう努めてまいりたいという趣旨で申し上げたものでございます。

 先般成立した、平成二十九年に成立した刑法の一部を改正する法律の附帯決議においても、性犯罪被害が潜在化しやすいものであることが指摘されておりますし、また、当省の法務省総合研究所において計四回実施した犯罪被害実態、これはいわゆる暗数調査でございますが、性的な被害には暗数が相当数あることがうかがわれているところでございます。

 今後も、今、性犯罪に関する施策検討に向けた実態調査ワーキンググループにおいて性犯罪被害者からのヒアリング等を実施して、法総研においても、捜査機関への申告の有無等も含め、第五回の犯罪被害実態調査、これは暗数調査を今行っているところで、そういったところでしっかりと把握して適切な対応を考えていきたいと考えております。

井出委員 いじめ、体罰それから児童虐待、そういったものがいけない、そういうことがわかるにつれて相談件数がふえてきている。

 私は、相談件数がふえる、そういう事例がふえるということは、じゃ、警察は何やっているんだ、児相は何やっているんだ、防げていないじゃないか、そういう話じゃなくて、暗数が出てきているという一面もあろうかと。性犯罪というのは必ず、私も、こうした類いで、性犯罪とは何がいけないんだと、そのことをきちっと今後の議論で周知できれば、必ずもっと相談も出てくるだろうし、それに対する対応というのも迫られると思いますし、特に暗数を頭の中心に置いた検討、実態把握をぜひお願いしたいと思いますが、最後に一言お願いします。

山下国務大臣 委員の御指摘も踏まえて、しっかりと、声を上げられなかった方々の声をできるだけ拾い上げていく、そういった努力をしてまいりたいと考えております。

井出委員 じゃ、指摘を踏まえていただいた答弁をもとに、また次回やりたいと思います。

 ありがとうございました。

葉梨委員長 以上で井出庸生君の質疑は終了いたしました。

     ――――◇―――――

葉梨委員長 次に、内閣提出、民事執行法及び国際的な子の奪取の民事上の側面に関する条約の実施に関する法律の一部を改正する法律案を議題といたします。

 趣旨の説明を聴取いたします。山下法務大臣。

    ―――――――――――――

 民事執行法及び国際的な子の奪取の民事上の側面に関する条約の実施に関する法律の一部を改正する法律案

    〔本号末尾に掲載〕

    ―――――――――――――

山下国務大臣 民事執行法及び国際的な子の奪取の民事上の側面に関する条約の実施に関する法律の一部を改正する法律案につきまして、その趣旨を御説明いたします。

 この法律案は、民事執行制度をめぐる最近の情勢に鑑み、債務者の財産状況の調査に関する制度の実効性を向上させ、不動産競売における暴力団員の買受けを防止し、子の引渡し及び国際的な子の返還の強制執行に関する規律の明確化を図るなどの目的で、民事執行法及び国際的な子の奪取の民事上の側面に関する条約の実施に関する法律の一部を改正しようとするものであります。

 この法律案は、まず、民事執行法の一部を改正することとしており、その要点は、次のとおりであります。

 第一に、債務者の財産状況の調査に関する規定を整備することとしております。

 具体的には、財産開示手続の申立て権者の範囲を拡大し、手続違背に対する罰則を強化するとともに、債務者の有する不動産、給与債権、預貯金債権等に関する情報を債務者以外の第三者から取得する手続を新設することとしております。

 第二に、不動産競売における暴力団員の買受け防止に関する規定を設けることとしております。

 具体的には、最高価買受け申出人が暴力団員等であること等を不動産競売における売却不許可事由とし、執行裁判所が警察への調査の嘱託をした上で、この事由の有無を判断する手続等を新設することとしております。

 第三に、国内の子の引渡しの強制執行に関する規定を整備することとしております。

 具体的には、子の引渡しの強制執行は、執行裁判所が決定により執行官に子の引渡しを実施させる方法により行うこととし、その申立ての要件や執行場所における執行官の権限等に関する規定を整備することとしております。

 また、この法律案は、国際的な子の奪取の民事上の側面に関する条約の実施に関する法律の一部を改正して、国際的な子の返還の強制執行について、その申立ての要件や執行場所における執行官の権限等に関する規定を、改正後の民事執行法に基づく国内の子の引渡しの強制執行に関する規定と同内容のものに改めることとしております。

 以上が、この法律案の趣旨でございます。

 何とぞ、慎重に御審議の上、速やかに御可決くださいますようお願いいたします。

葉梨委員長 これにて趣旨の説明は終わりました。

 次回は、公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。

    午後二時二十分散会


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