衆議院

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第12号 平成31年4月24日(水曜日)

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平成三十一年四月二十四日(水曜日)

    午前九時開議

 出席委員

   委員長 葉梨 康弘君

   理事 石原 宏高君 理事 田所 嘉徳君

   理事 平沢 勝栄君 理事 藤原  崇君

   理事 宮崎 政久君 理事 山尾志桜里君

   理事 階   猛君 理事 浜地 雅一君

      赤澤 亮正君    大隈 和英君

      奥野 信亮君    鬼木  誠君

      門  博文君    門山 宏哲君

      上川 陽子君    神田  裕君

      黄川田仁志君    国光あやの君

      小林 茂樹君    古賀  篤君

      佐藤 明男君    中曽根康隆君

      福山  守君    古川  康君

      堀内 詔子君    三浦  靖君

      和田 義明君    逢坂 誠二君

      黒岩 宇洋君    松田  功君

      松平 浩一君    山本和嘉子君

      源馬謙太郎君    山井 和則君

      遠山 清彦君    藤野 保史君

      串田 誠一君    井出 庸生君

      柚木 道義君

    …………………………………

   法務大臣         山下 貴司君

   法務副大臣        平口  洋君

   法務大臣政務官      門山 宏哲君

   政府参考人

   (出入国在留管理庁長官) 佐々木聖子君

   政府参考人

   (外務省大臣官房審議官) 志野 光子君

   政府参考人

   (国税庁課税部長)    重藤 哲郎君

   政府参考人

   (厚生労働省大臣官房審議官)           田中 誠二君

   政府参考人

   (厚生労働省大臣官房審議官)           松本 貴久君

   法務委員会専門員     齋藤 育子君

    ―――――――――――――

委員の異動

四月二十四日

 辞任         補欠選任

  井野 俊郎君     三浦  靖君

  上川 陽子君     堀内 詔子君

  神田  裕君     佐藤 明男君

  黄川田仁志君     古賀  篤君

  古川  康君     大隈 和英君

  古川 禎久君     福山  守君

  源馬謙太郎君     山井 和則君

同日

 辞任         補欠選任

  大隈 和英君     古川  康君

  古賀  篤君     黄川田仁志君

  佐藤 明男君     神田  裕君

  福山  守君     古川 禎久君

  堀内 詔子君     上川 陽子君

  三浦  靖君     井野 俊郎君

  山井 和則君     源馬謙太郎君

    ―――――――――――――

四月二十三日

 表題部所有者不明土地の登記及び管理の適正化に関する法律案(内閣提出第三〇号)

は本委員会に付託された。

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 政府参考人出頭要求に関する件

 表題部所有者不明土地の登記及び管理の適正化に関する法律案(内閣提出第三〇号)

 裁判所の司法行政、法務行政及び検察行政、国内治安、人権擁護に関する件(技能実習制度の運用に関するプロジェクトチームの調査・検討結果)


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     ――――◇―――――

葉梨委員長 これより会議を開きます。

 裁判所の司法行政、法務行政及び検察行政、国内治安、人権擁護に関する件、特に技能実習制度の運用に関するプロジェクトチームの調査・検討結果について調査を進めます。

 この際、お諮りいたします。

 各件調査のため、本日、政府参考人として出入国在留管理庁長官佐々木聖子君、外務省大臣官房審議官志野光子君、国税庁課税部長重藤哲郎君、厚生労働省大臣官房審議官田中誠二君及び厚生労働省大臣官房審議官松本貴久君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

葉梨委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

葉梨委員長 質疑の申出がありますので、順次これを許します。黄川田仁志君。

黄川田委員 自由民主党の衆議院議員の黄川田仁志でございます。どうぞよろしくお願いいたします。

 今回は、さきの国会で議論になりました技能実習生の失踪問題等について、門山法務大臣政務官を中心とする技能実習制度の運用に関するプロジェクトチームがどのような調査、検討を行ったのか、また、その結果を踏まえて、法務省が技能実習制度の運用についてどのような改善等を行おうとしているのか、質問したいと思います。

 まず、冒頭で、基本的事項について確認させていただきたいと思います。

 担当の門山政務官、このPTで、どのような目的のもとにどのような事項について調査、検討を行ったのか、教えていただきたいと思います。

門山大臣政務官 お答えいたします。

 プロジェクトチームでは、技能実習制度のより適正な運用のあり方について検討し、運用上の改善を図ることを目的として、主として四つの事項について調査、検討を行いました。

 第一に、平成二十九年一月から平成三十年九月までに聴取票が作成された技能実習生の失踪事案を対象とした実習実施機関に対する不正行為の有無等に関する調査を行いました。

 第二に、平成二十四年から二十九年までの六年間の技能実習生の死亡事案に関する調査を行いました。

 第三に、失踪技能実習生に係る聴取票の様式や聴取方法などのあり方に対する検討を行いました。

 第四に、平成二十九年十一月に施行された技能実習法の運用状況の検討を行いました。

 加えて、プロジェクトチームでは、これらの調査、検討を踏まえて、失踪事案等の防止を図るための運用の改善方策も提示したところでございます。

 主な改善方策は、失踪事案について速やかに実習実施者の実地検査を行うなど初動対応を強化すること、送り出し機関の一層の適正化を図るため、二国間取決めの対象国を拡大するとともに、各取決めに基づく通報等の運用を強化すること、特定技能制度の省令を参考に、口座振り込み等の正確な記録が残る方法による報酬支払いを求めるため、省令等の改正を検討すること、外国人雇用状況届出事項に在留カード番号を追加し、厚労省と法務省の情報共有や警察との連携を通じ、不法就労等の摘発処分を強化すること、母国語相談、実習先変更支援等の支援制度や総合的対応策に基づく支援の周知を徹底し、これらの活用の拡大を通じ、実習生の保護を強化することなどでございます。

黄川田委員 ありがとうございます。

 失踪事案の調査についてなんですが、さきの国会で多くの質疑がありました。法務省では、従来から、失踪技能実習生から事情を聞き取って聴取票を作成しておったと承知しております。今回のプロジェクトチームが行った調査では、この聴取票とは異なって、主に実習機関、つまり、受入れ機関に対する調査でございました。具体的にどのような調査を行ったのか御説明いただきたいと思います。

佐々木政府参考人 お答えいたします。

 今回の調査は、平成二十九年一月から平成三十年九月までの間に、今お話しの聴取票が作成されました失踪技能実習生五千二百十八人の事案につきまして、その受入れ機関でありました実習実施機関四千二百八十機関を対象として、実習実施機関側の不正行為等の有無及び内容を可能な限り解明することを目的として実施をいたしました。

 調査の方法でございますけれども、技能実習生の失踪当時の賃金又は労働時間に関しては、実習実施機関に対して、その事務所等における実地調査を行うか、電話で依頼して郵送していただいた資料を精査する電話・書面調査を行うことにより、可能な限り賃金台帳や振り込み記録といった客観的な証拠を確認し、不正行為等の有無を調査をいたしました。

 加えまして、暴力行為やセクシュアルハラスメントといった人権侵害行為の有無が問題となる場合は、原則として実地調査によりまして、実習実施機関の職員や現在在籍しているほかの技能実習生から事情を聴取し、不正行為等の有無を調査したものでございます。

黄川田委員 ありがとうございます。

 調査方法が変わったということで、平成二十九年度分の聴取票の閲覧に基づいて、野党からは、例えば最低賃金違反が約七割に上るといった指摘がなされたと思います。今回、実施機関を中心として行った調査の結果、どのようなことがわかったのか、その違いを御説明いただきたいと思います。

佐々木政府参考人 先ほど御報告をいたしました調査方法によりまして、新たに最低賃金違反の疑いを認めた件数は五十七件ございました。今回の調査以前に既に最低賃金違反が判明して既に措置済みであったものが一件でございまして、最低賃金違反又はその疑いがある事案の合計は五十八件でございました。

 なお、今回の調査では、一部協力を拒否されたもの、あるいは倒産などの理由により調査を行うことができなかった機関もありますが、合計三千五百六十人分については賃金台帳等の客観的な資料を確認をいたしまして、うち二千三百人余りにつきまして、銀行口座への振り込み状況、給与の受領証などの支払いを裏づける資料を確認し、不正行為等の有無を判断したところでございます。

黄川田委員 今、この調査を拒否されたり、また倒産等があって調査できなかったというところがあったというお話がありました。今回の調査は任意の調査ということでございますから、この報告書によると、今お話があったように、協力を拒否した機関もあるということでございますが、現状で、実習生が、その協力拒否した実習機関にもいるという可能性も否定できないわけでありまして、この協力拒否の理由が必ずしも不正行為に基づくものとは言い切れないところはございますが、技能実習制度の適正な運用のためには引き続き調査ができるよう努力すべきだというふうに考えますが、いかがでしょうか。

佐々木政府参考人 今回の失踪事案調査の対象の実習実施機関で技能実習生が現在在籍中の機関につきましては、外国人技能実習機構又は地方出入国在留管理局におきまして、平成三十一年度末までに技能実習法ないし入管法に基づく実地検査等を行うこととしております。

 この技能実習法に基づく実地検査等に当たりましては、必要に応じて、その拒否等に対して罰則のある強力な調査を実施する方針としておりますが、特に今回、今御指摘の、調査を拒否した実習実施機関に対しましては、速やかに全件実地検査等を実施してまいります。

 また、今後、調査拒否などによって調査ができなかった機関から、技能実習計画の認定申請あるいは新しい在留資格であります特定技能の在留資格に係る申請がなされた場合には、外国人技能実習機構や地方出入国在留管理局におきまして、今回の調査への対応姿勢を踏まえた慎重な審査を行う予定でございます。

黄川田委員 ちょっと通告にないところで質問させていただきたいんですけれども、わかったら教えていただきたいんですが、やはりこの事例を見てみると、一般の日本の方よりも、実習による死亡事故、又は、溺れてお亡くなりになるという方も多いように感じますが、調査した結果、どのような感想というのをお持ちでしょうか。

佐々木政府参考人 死亡事案につきましては、今回、過去六年間の死亡事案につきまして、全て、これも詳細な資料について当たりました。

 その結果、技能実習中に、技能実習の作業をしている中での死亡事案もございましたけれども、その他、実習時間以外の死亡事故、あるいは一部自殺、それから交通事故等々のものもございました。特に、実習実施中に起こった死亡事故につきましては、既に労働関係機関それから警察等につきまして、私どもももちろんそうですけれども、対応していたということを確認しております。

黄川田委員 朝日新聞等によると、労災死亡事故の割合が、通常だと十万人当たり一・七人ということであるということでございますが、技能実習生で考えると、単純計算ではできないのかもしれませんが、新聞等によると十万人当たり三・七人というような結果も出ているというふうに掲載されたわけでございます。

 そのあたりについて、法務省ではどのように評価されていますでしょうか。

佐々木政府参考人 幾つか、数につきまして御報告を申し上げます。

 技能実習生の多くを占める二十代及び三十代につきまして、これは厚生労働省の作成における死亡者の割合について見ますと、平成二十九年で十万人当たり四十六人、それから、日本人につきまして、これは全体でございますけれども、死亡者の割合について見ますと、二十九年、十万人当たり一千七十五人となってございます。

 これに対しまして、今回の死亡事案につきまして、一応、機械的にでございますけれども、在留資格、技能実習の在留者数と死亡者数の推移ということで、平成二十七年が〇・〇二一%、二十八年〇・〇一三%、平成二十九年〇・〇一五%という数がございまして、先ほど一応御参考にお示しをした日本人の数、それから、ちょうど若者、二十代、三十代の数に比べまして著しく高いということではないというのが数値からうかがえます。

黄川田委員 ありがとうございます。

 それでは、技能実習法の運用状況の検証結果等について、引き続き質問させていただきたいと思います。

 平成二十九年十一月から技能実習法のもとで新制度が施行され、制度の適正化が図られているところでございますが、技能実習法の運用状況についてプロジェクトチームではどのような検証を行ったのでしょうか、御説明をお願いいたします。

門山大臣政務官 お答えいたします。

 プロジェクトチームでは、平成二十九年十一月に施行された技能実習法のもとでの制度の適正化のためのさまざまな仕組みについて、その運用実績の把握に努め、検証を行いました。その結果、各仕組みは、なお運用上のさまざまな課題を残してはいるものの、全体としては、技能実習制度の適正化のために一定程度機能しているものと考えられるという総括をお示しさせていただいたところでございます。

 一定程度機能しているという評価の根拠でございますけれども、まず、十三カ国との間で二国間取決めを作成し、送り出し機関の適正化を通じた制度の適正確保のために機能しているものと考えられること、第二に、技能実習機構が実習実施者や監理団体に対する実地検査を計画的に実施しており、その総数は平成三十年十二月末までに七千件以上に上っているということ、第三に、外国人技能実習機構が平成三十一年二月上旬までに約二千三百件以上の母国語相談を行うなど、技能実習生の保護制度の実施実績を積み重ねつつあること、第四に、これは確定的なことを申し上げるにはさらなる実績の積み重ねが必要ではあるんですが、技能実習法施行後の制度のもとで技能実習を開始した技能実習生の失踪率は、従来の制度のもとで技能実習を開始した技能実習生の失踪率より低いことなどを指摘させていただいたところでございます。

 もっとも、従来の運用において、失踪事案の届出受理後の証拠収集等の初動対応が必ずしも十分ではないなど、失踪事案等に対する対応体制には課題も認められたところでございます。

 そこで、先ほど私、最初に答弁させていただいたとおり、プロジェクトチームでは、こうした制度の運用の状況や課題の認識を踏まえ、失踪事案等の防止や送り出しの一層の適正化を図るため、先ほどお示しさせていただきました、初動対応の強化であるとか振り込みとか二国間取決めとか、そういったような具体的な改善策をお示しさせていただいたところでございます。

黄川田委員 ありがとうございます。

 今お話ししたように、今回の取りまとめでは、今後の運用の改善方策として失踪事案などに対する初動対応を強化するものとしておりますが、この初動対応の強化、これに対して、具体的にどのようなことを行うのか、御説明いただきたいと思います。

佐々木政府参考人 まず、技能実習生が失踪した場合、監理団体等が届出、報告を行うことが義務づけられておりますけれども、従来、この届出等を受理した場合に、必ずしも実地検査や関係証拠の収集は行われておらず、失踪等の背景に実習実施機関側の不正行為等がある場合にも適時に適切な対応がとられていない場合があったものと考えられておりまして、ここが大きな反省点でございます。

 そこで、今後は、失踪の届出等の初動対応を強化することといたしまして、具体的には、外国人技能実習機構又は出入国在留管理当局が速やかに実地検査を行うなどして、技能実習生の賃金や労働時間に関する証拠を確認、保全いたします。そして、不正行為等の有無を調査するなどの適切な対応をとるようにすることといたします。

 もちろん、調査等の結果に応じまして、関係機関への通報や出入国在留管理当局における処分、指導等の必要な措置をとり、不正行為等の速やかな是正を図ることといたします。

黄川田委員 ありがとうございます。

 今まで、失踪届出があっても、その実地検査というものが速やかに行われていなかったという経緯があると思います。今後、例えば失踪、死亡事案が報告されたら、これは、ある意味、どの程度しっかり行うのか、全件しっかり見ていくのか、それとも、それはそのときの対応によって変わっていくのか。どういう程度しっかりこの実地検査を行っていくのか、御説明いただきたいと思います。

佐々木政府参考人 今回の運用の見直しの結果といいますか、結論を踏まえまして、今御指摘の点につきましては、基本的には、全件いわば飛んでいくという対応をとろうと思っています。

黄川田委員 ありがとうございます。

 また、今回の取りまとめでは、今後の運用の改善方策として、二国間取決めの対象国拡大及び運用強化が明記されております。

 相手国と協力の上、不正行為を防ぐことができる二国間取決めは、技能実習制度の根幹を守る上で大変重要だと考えております。既に二国間取決めが行われている国とのやりとりの現状と、今後の運用対策はどのようなものか。

 また、中国、インドネシアとの間ではまだ二国間取決めが決まっていないということでございますが、これらの国に対しては一日も早い対応が求められていると思いますが、その進捗状況をあわせて教えていただきたいと思います。

佐々木政府参考人 今御紹介いただきましたように、この技能実習制度におきましては、不当に高額な手数料等を徴収する不適正な送り出し機関を排除することを主な目的として、送り出し国政府との間で二国間取決めの作成を行っており、現時点におきまして十三カ国との間で作成済みでございます。

 作成した二国間取決めに基づきまして、本年の四月五日現在の速報値で、我が国から送り出し国に対して四十一件の通報を実施するなどしており、通報に基づいて、送り出し国による調査等の必要な対応が行われていると承知をしています。

 また、逆に、送り出し国から通報等を受けた事例では、監理団体に対して実地検査等を行いまして、その結果、監理団体許可の申請取下げに至ったものもございます。

 今後、送り出し国当局への働きかけを強化をいたしまして、送り出しの適正確保を更に進めるとともに、送り出し国から我が国に対し通報等があった場合には、我が国当局において迅速、適切に対応し、不正行為等が認められる場合は厳正な措置をとってまいります。

 そして、この送り出し国からの通報がより適切になされるためには、各送り出し国に対して、監理団体が送り出し機関を含む関係者から実費以外の金銭を受領することは禁止されていること、こうした金銭の支払い事実を把握した場合には通報を行ってもらいたいということなどを平素から周知することが重要であると考えておりまして、そのようにいたします。

 各国との交渉状況でございますけれども、昨年末に関係閣僚会議において了承された総合的対応策におきましても、二国間取決めの作成に至っていない送り出し国のうち、中国、インドネシア、タイについて、ことしの四月を目途として早急に同取決めを作成することを目指すとされておりまして、このうちタイとの間では、本年三月末に二国間取決めの作成を行いました。残るのがあと中国とインドネシアでございますけれども、この協議は続いておりまして、可能な限り早期に作成できるよう、厚生労働省、外務省とともに協議を進めているところでございます。

黄川田委員 ありがとうございました。

 最後に、私から、この技能実習制度また特定技能制度について問題意識をお話をさせていただきまして、締めくくりとさせていただきたいと思います。

 技能実習法の第一条は、技能実習制度は人材育成を通じた開発途上地域等への技能等の移転による国際協力の推進を目的とする制度であるというふうに明記をしております。加えて、ほかの条文や規則により、監理団体、実習実施者及び技能実習生のいずれもこのような趣旨を理解して実習を行わなければならないと明記をされております。また、この報告書の結びにも、法の趣旨である制度の適正化を更に進めてまいりたいというふうにも書いてあります。

 しかしながら、私が技能実習生や監理団体、実習機関等とお話しさせていただく中で、実習生の多くは、お金を稼いで進学したり別の仕事につきたいというふうに考えている方が、ほとんどとは言いませんが、多数います。また、監理団体についても、やはり人不足が深刻であるという考えのもと、この技能実習制度を利用しているというふうにも見られる言動も見られるわけでございます。

 当面は、技能実習制度の新制度の導入や特定技能制度の新設を踏まえて、今後の状況を見守っていきたいというふうに考えておりますが、将来的には、技能実習制度本来の趣旨である国際協力に更に特化していくのか、特定技能制度を拡充していくか、制度のあり方を根本的に考えていく必要があるというふうに私自身考えておりますので、引き続き、法務省内でも御検討いただきたいというふうに思っております。

 また、地方入国管理局並びに法務省の入管管理局におきましても、管理するのは人であり数字ではない、数字の先に人がいるということを踏まえて、しっかりと対応していっていただきたいというふうに思いますので、よろしくお願いを申し上げまして、質問を終了したいと思います。

 どうもありがとうございました。

葉梨委員長 以上で黄川田仁志君の質疑は終了いたしました。

 次に、浜地雅一君。

浜地委員 公明党の浜地雅一でございます。

 早速質問をしたいと思います。少し私が早く終われば、時間調整をしてみたいと思っておりますけれども。

 まず、門山政務官、技能実習制度の運用に関するプロジェクトチームの調査のヘッドとして大変御尽力いただいたことを評価をしたいわけでございますが、しかし、そもそもこのプロジェクトチームで調査をしなければならなかったのは、もともと聴取票の集計ミスがあったわけでございます。この点については、そのことでやはり当委員会、特に理事会の場において、さまざまこの数字について理事の皆さんと協議をしまして、特にそのことも影響してこの法務委員会の審議がおくれているということは厳しく指摘をした上で、質疑に入りたいと思っております。

 先ほど黄川田委員からも御質問ございましたが、今回、実地調査の方法が、実際に現地に赴いてお話を聞いた実地調査が一千五百五十五機関、しかし実際には現地に行かずに電話及び書面調査のみで終わっていますのが二千百七十七機関ということでございますが、改めまして、調査方法として実地調査と電話・書面調査に分かれているのはなぜなのか、どういった基準で分けたのか、しっかりした説明をしていただきたいと思います。

佐々木政府参考人 今御指摘の二つの方法、いずれの方法をとるかにつきましては、まず、既に失踪から三年以上がたち、賃金台帳の保存期間三年が経過し、かつ暴力等を受けた旨の訴えもない事案では、調査の全体的な迅速性等も考慮いたしまして、基本的には電話・書面調査を用いました。

 他方、失踪から三年未満の事案につきましては、賃金台帳の保存期間内でございまして、賃金台帳を確認できると考えられましたため、現地に赴いて実地調査を基本としたものでございます。

 また、賃金、労働時間関係以外の暴力その他の人権侵害行為の有無が問題となる事案につきましても、これは関係者からきちんと直接の聴取を行う必要性が高いということから、実地調査を行うことを基本としました。

浜地委員 一つは、賃金台帳の保存期間が三年ということで基準があったので、実際に現地に行っても台帳がなければ余り意味がないということだったかもしれませんが、それで分けたと。

 一つ評価できるのは、暴行事案や人権侵害事案については、かなり過去のものでも現地に赴いてしっかり話を聞いたということでございます。

 そこで、では、給与について、特に、先ほど、三年経過したものは賃金台帳の保存期間が過ぎているので破棄されている可能性もあるということです。

 そうなると、この報告書を見ますと、客観的資料を用いて認定をしていったということなんですが、実際に書面調査や電話調査の中で、賃金台帳がないのに、どうしてそれは、例えば最低賃金違反でないとか契約違反でないということが認定できたのか、給与についてどのような認定の手法をとったのか、特に客観的資料がない場合にどのような方法をとったのかについて御説明いただきたいと思います。

佐々木政府参考人 まず、給与につきまして、今御指摘もいただきましたように、できる限り賃金台帳等の客観的な資料により支給額を把握し、かつ、可能な場合には、更に給与の振り込み記録等によりまして実際の支払い額が賃金台帳等の記載と合致していることを確認し、支給額を認定をいたしました。

 その上で、最低賃金違反か否かという判断につきましては、このようにして認定した給与の支給額を所定労働時間に基づいて時給換算した額を、当該地域の最低賃金額と比較するなどの方法によって、疑いが認められるかどうかを判断をいたしました。

 今御下問の、そうしたものが見つからなかった事案についてということでございますけれども、事実認定の段階で、もともと私どもが入国審査あるいは在留審査のときに有していたもの、それから、賃金台帳そのものではありませんけれども、実際に現地に赴きましたときのタイムカード、それからその会社が有していたその他の記録等によりまして、判断できる限り特定をしたものでございます。

浜地委員 確かにこれは裁判の判決のようなものじゃないので、大体、行政の調査というのはそういった手法をとられていると思っております。

 ただ、これは野党の皆さんからもさまざま御指摘あろうかと思っておりますが、一部、誰が見ても客観的な資料で認定できないものもあれば、あとはやはり推認を使ってやっている部分もあろうかと思っておりますので、その点については、しっかりと、今後この内容について聞かれるようなことがあったときにはそういう御説明もやるのがやはり国民に対する一つ丁寧な説明だと思っております。

 では、暴行事案については、実際に再聴取できた人もいれば、再聴取できなかった、当然これは入管法違反で退去された方もいらっしゃるわけでございまして、特に暴行については客観的証拠というよりも本人の供述等が大事になろうかと思っておりますが、暴行についてはどのような手法をとって認定をしていったのか、御説明いただきたいと思います。

佐々木政府参考人 先ほど御報告をいたしましたように、暴行等、人権侵害が疑われるような事案につきましては原則として実地調査をいたしました。

 そのときに、その実習実施機関の役職員あるいは今在籍中の技能実習生から、その職場においてそのようなことが今ないか、それから過去にもなかったかということをできるだけ聴取をするようにいたしました。これは個別に事情を、可能な限りその付近にいらっしゃる方から聞き取るということをいたしました。

 また、一部、報告書にもございますけれども、失踪技能実習生で、既にもうその機関からは離れたけれども、いろいろな理由でまだ我が国に在留している方もいらっしゃいますので、その中で協力をいただけた方には、本人からの再聴取なども行ったところでございます。

浜地委員 やはり、余り認定の方法をつまびらかにすると、今後の調査においても、まあ、そういう方はいらっしゃらないかと思いますが、そういう調査方法がなされているのであれば台帳を少しあらかじめ加工しておこうとかということもあり得ますので、これ以上聞きませんけれども、やはり、しっかりとそのような認定が、さまざまな認定の仕方があったということを答弁をいただいたということだと思っております。

 次に、新制度下で受け入れた技能実習生の失踪状況という、このポンチ絵の方の二枚目の方にございますが、平成二十九年が失踪率が約二・〇%ということで、我々が昨年、入管法の審査をしているときは、まだ平成三十年の数字が出ていなかったわけでございます。

 途中経過で計算をすると二・〇%を下回るのではないかというような計算も、私自身もしたことがあったんですが、結果、平成三十年度を見てみますと、失踪者も当然、これは母数がふえていますので、ふえたわけでございますが、失踪率も、結果、約二・一%に上昇をしていたわけでございます。これは、平成二十九年の十一月から新制度が運用された後の制度でございますので、この数字については、私自身は少し残念な感想を持っております。

 しかし、他方で、この二ページ目の下の表の(三)の新規入国後約一年経過時点の失踪状況ということで、これは、旧制度の一年前に入国した人と新制度で入国した方がきちっと数字を分けられて、ちょうどここが制度のはざまでございましたので、それで見ますと、旧制度の方が一年後に失踪した割合は約三・三%、これに対して、新制度における一年後の失踪状況は一・四%ということで、これは、制度の期待どおり低下をしているということでございますが、しかし、総数が二・一%ふえている。

 一年経過後については、新制度は低下傾向にあるということでございます。しかし、これは、実際、賃金が上がってきたから失踪しないのか、若しくは、保証金が取られていないから、無理のない、転職はできませんけれども、仕事を求めて失踪していないのか。又は、機構が今度、実地調査を七千件以上やっていますけれども、そういったものがきいているのか、この数字の変化をどのように評価をしておりますか、御答弁いただきたいと思います。

佐々木政府参考人 さまざまな要因があると思いますので、確たることは申し上げられないのですけれども、一つ、今回、新制度で大きな変化になっていると思われますのは、入国をする段階で、もともとの送り出し機関、あるいは送り出し国もバックアップをしておりますけれども、その方たちが、この技能実習というのはこういう制度なのだということをきっちりと正確に理解をしていただくための取組を、二国間協議などで強く申し入れているところでございます。

 ここで新制度下と言っておられる方の中には、もともと入国の段階ではまだ旧制度であって、入国をしてくるときの理解がもしかしたら不十分だったかもしれないという方も入っていらっしゃいます。一旦、在留期間の更新あるいは変更などの手続をとったところで新制度下の扱いになりますので、もともと入国の段階が旧制度だったという方も入っています。だんだんこれが、入国の段階から新制度の方がこれからふえてまいりますので、その意味では、もともとの理解が昔よりは正確なものになっているということはあると思います。

 ただ、なお、一人でもまだ失踪者が出ているということでいいますと、道半ばだと思っております。

浜地委員 やはりこの技能実習制度は、旧制度で始めたもので、さまざまなほころびがあった中ですよ、正直言いまして。これを新制度に変えることによって、特に二国間取決めも含め、また技能実習生自身の意識として、どんなものかというものがわかった上で入国が始まっているんだと思っていますので、特に来年の数字が大事になってこようと思っています。恐らく、来年になってくると大分新制度がふえておりますので、そういった点も引き続きウオッチをしていただいて、これで終わりではなく、しっかりと新制度の効果というものが出ると、非常に国民も、また技能実習生自身も安心されるというふうに思っております。

 次に、聴取票を大きく改訂をされました。しかし、今回ちょっと、そもそもの原因が、聴取票の、聴取のやり方といいますか、そういったものが非常に曖昧な部分もあったりして、それがまた集計ミスにもつながったりして、やりまして、この聴取票をもとにした技能実習生の現状というペーパーはもう使わないということを、この調査報告書でも明記をされております。

 そうなると、この調査票を改訂はしていくんですけれども、今後、どういう点は改めて、データには使わないんですよね、じゃ、聴取票は何に活用していくのか、こんなに詳しく書いて。それを御答弁いただきたいと思います。

佐々木政府参考人 まず、どのように変えていくかということでございますけれども、ごらんをいただきましたように、聴取項目を大幅にふやして詳細なものとしております。

 例えば、旧聴取票では月額給与という項目がありましたけれども、これが額面賃金額を示すのか手取り賃金額を示すのか明らかではありませんでしたが、新たな聴取票では、約定賃金額、額面賃金額、手取り賃金額などを明確に区別をして聴取をすることといたしました。

 また、同じように、労働時間という旧聴取票での項目につきましても、一体、残業を含めているのか含めていないのかということも明らかではありませんでしたので、新たな聴取票では、所定労働時間あるいは残業時間ということを区別をいたしました。

 これをどのように使うかということですけれども、まずは、一つ、先ほど申しましたように、この聴取票から得られて、その実習実施機関自体が不適切な取扱いをしているということがうかがえましたら、それは、飛んでいく、実地検査をすることの端緒といたします。加えまして、これだけ詳細に実態を把握をして、それを制度全体の適正化の分析にも使っていこうと思っています。ですので、個別の事案とそれから制度全体の実情把握ということの両方に使っていこうと思います。

浜地委員 わかりました。

 次に、これも簡単で結構です、今度、特定技能制度を参考にした省令改正を予定をされていると聞いていますが、具体的にその内容について、端的に答弁いただきたいと思います。

佐々木政府参考人 まず一つは、特定技能制度が先行したことでございますけれども、技能実習生に対する報酬の支払いを、口座振り込み等の現実の支払い額を確認できる方法で行うこととするということを考えております。

 それからあわせまして、これも特定技能制度で先行した仕組みでございますけれども、失踪に帰責性がある実習実施者につきまして技能実習生の新規受入れを一定期間停止をするということも、特定技能の制度に倣っていこうと思っております。

浜地委員 非常に、口座振り込み、地方の銀行も理解を示しているというふうに聞いておりますので、これで一つの客観的な、今後の調査のデータにもなろうかと思っていますので、これは非常に評価をしたいと思っています。

 もう最後の質問にしたいと思っております。

 これは大臣に最後お聞きしますけれども、私、今回のこの調査をされて、一時、最低賃金が七割に上るのではないかというショッキングな数字が出ましたけれども、結果、これをやってみて、そこまでの悪い数字ではなかったということは非常に安心はしたわけでございます。

 今回、やはり、実習実施者の方には、こういう調査をされるんだと。最低賃金違反や契約違反ということはやはり一つの摘発の端緒になるんだと。今回も、全て疑いのある事案は労基署に通報されているわけでございますので、そういった意味では、技能実習生に対して、こういう制度になったというアナウンスも必要なんですが、やはり実習実施者の方に対しても、契約違反であったりとか暴力事案が起きれば、このように案件として実際に事件化されるんだということの少し注意喚起をする意味でも、こういった調査をやったことを私は広く広報して、実習実施者の方々の、姿勢を正すと言ったら、当然ほとんどの方がちゃんとやっていらっしゃいますが、そういった不正をやっていらっしゃる方については、やはり注意喚起の意味も大変含まれると思っておりますが、今後の技能実習制度、この広報も含めてどのように考えるか、最後に大臣の答弁をいただきたいと思います。

山下国務大臣 浜地委員御指摘のとおり、今回、できる限り客観的な資料に基づいて網羅的な調査を行ったことにより、より技能実習生の実態を把握することができたと考えております。ただ、その中で、一部の実施機関において不正、不当な取扱いがなされておったことが確認されたことについては改めて遺憾でございまして、しっかりと、是正の提言なども含まれておりますので、取り組んでまいりたいと思います。

 そして、今回の調査・検討結果は、これは、三月末に法務省のホームページに掲載するなどして公表しており、一部の実習実施機関に不正の行為の疑いを認め、労働基準監督機関への通報等も行っておりまして、その内容については、報道等を通じても幅広い周知がなされたものと承知しております。これにより、技能実習制度における法令遵守の必要性について、監理団体や実習実施者に改めて強く認識させる効果があったというふうに考えられます。

 今後は、プロジェクトチームの示した改善方策に基づいて、失踪事案等が発生した場合に、速やかに実地検査を実施するなど初動対応を強化するということ、そして関係機関との密接な連携のもと、二国間取決めの拡大、強化など、失踪の防止に資する施策を着実に実施してまいりたいと考えております。

 これらの取組の実施とあわせて、不正に対しては、関係機関が連携して厳正に対応し、毅然とした対応をとること、技能実習は、技能等の習得という制度の趣旨に従い、関係者が法令を遵守して実施しなければならないことについて、さまざまな機会を通じて周知徹底を図り、制度のより一層の適正化を実現してまいりたいと考えております。

浜地委員 ありがとうございます。

 時間になりました。終わります。

葉梨委員長 以上で浜地雅一君の質疑は終了いたしました。

 次に、山本和嘉子君。

山本(和)委員 おはようございます。立憲民主党・無所属フォーラムの山本和嘉子でございます。

 きょうは、法務省プロジェクトチームの調査・検討結果報告書についての集中審議ということでございます。順次、その件につきまして質問を進めさせていただきたいと思います。よろしくお願いいたします。

 まず、調査のやり方についてお伺いをしたいと思います。

 実習機関に対しまして実地調査のための訪問を打診したものの、業務の都合などで日程調整が折り合わなかった実習機関に関して、実地調査にかえて、電話とか書面の調査を行ったというふうにあります。つまり、受入れ側に対しまして、事前に了解をとって訪問しているということでございます。

 しかしながら、実習生の失踪事件を起こしている当事者の実習機関は、そもそも、残業代や賃金の未払いなどの問題を起こしている可能性が大きいと思います。そこに、いついつ調査に入りますからという日程の打合せをして調査に行くということは、証拠を隠すというようなことにつながるという意味で問題があるのではないかなというふうに思います。

 さらに、会ってももらえない、つまり、より疑いの濃い事業者に対して、電話や書面での調査に切りかえた理由について教えていただければと思います。

佐々木政府参考人 まず、調査の手法についてでございますけれども、今御指摘をいただきましたように、本来、全部抜き打ち調査で行くということが効果的であったのかもしれませんが、今回、何千件という件数を一定の期間内に実地調査をするということで、先方の担当者が不在でありまして赴いたけれども全く調査ができないということがないように、原則として、事前の連絡を行ったものでございます。

 今お話しの、もともと実地調査に行く予定だったけれども電話あるいは書面調査に切りかえた事案ということでございますけれども、これはやはり、先方の責任者の都合がつかない、それから、先方が多忙を理由に当局の来訪を拒否といいますか拒んだなどの理由がございました。

 これらにつきましては、この案件に限らず、今技能実習生がいる実習実施機関につきましては平成三十一年度中に実地調査をする予定でございまして、中でも、今回の拒否をされたので実地ができなかったというものにつきましては優先的に処理をしたいと思います。

山本(和)委員 失踪者を生んだ事業者、実施機関に関して、客観的に見ていただいているとは思うんですが、抜き打ちをするのもありかなというふうにも長官はおっしゃってはいただいておりましたが、私は、ちょっとそれもやはりすべきだったのではないかなというふうに思います。多くの失踪者を出している理由がどこにあるのかというのを探る調査でもありますので、真意がどこにあるのかというのをやはりそういう抜き打ちを通して発見できるというのもあると思いますし、疑いがあるということを前提として調べるというのも必要だったのではないかなというふうには思います。

 今長官の方からお話ありましたけれども、今回の調査の中で、協力を拒まれたというために調査を行うことができなかった機関が百十三機関、対象者が百五十五人分ということでございますけれども、この百十三機関に対して、その後、現在までの間で調査が行われたかどうか。今後調査をするということでございますけれども、進捗状況だけ教えていただければと思います。

佐々木政府参考人 ある程度計画的に行ってまいりますが、今、企画中でございます。

山本(和)委員 実習生が残っている機関に関しては平成三十一年度に調査をするということでございましたけれども、実習生が残っている機関というのは、例えば農家とかそういうところだったら、一人だけの実習生だった可能性もありますよね。そうなると、失踪してしまったら、もうそこには実習生はいないことになります。そうなると、もういなくなっているからそこは調査しないということになるんでしょうか。

佐々木政府参考人 お答えいたします。

 技能実習生が既にいないということになりますと、恐らく調査の優先度は下がってくると思いますが、恐らく、今御指摘のような、その機関が今後また別の技能実習生あるいは特定技能の外国人を受け入れるということになったときには、今回私どもの調査をいわば拒まれたということも踏まえて、厳格に審査をする予定でございます。

山本(和)委員 入ったから調査しますとかじゃなくて、拒んだということなので、やはりきっちりと最後まで調べるべきだとは思います。

 続きまして、質問を続けてまいりたいと思いますが、失踪者本人への調査について伺っていきたいと思います。

 今回の調査では、聴取票にかかわった失踪実習生のうち現在も日本に在留している九十六人のうち、調査への協力を得ることができた七十四人から聴取を行ったというふうに記されています。今回の調査の目的は、なぜ失踪が起きているのかを探るものだと思います。それなのに、失踪した人、特に日本に残っている人だけしか調べていないということでございます。

 帰国した人々に対しても、各国から例えばサンプル的にでも調べた方がいいのかなというふうには単純に思うんですけれども、その方がより具体的に問題点が明らかになったのではないかなと思うんですが、そのあたり、日本にいる人だけしか調べなかったという理由、明らかな理由があればおっしゃってください。

佐々木政府参考人 幾つか理由がございます。

 まず一つは、技能実習生の帰国後の連絡先を私どもが把握をしていないということでございます。一般に、関係法令上、帰国後の連絡先につきまして把握することが求められているものではないからでございます。

 もう一つは、御指摘のような帰国後の元技能実習生に対する調査ということを日本国が行うとなった場合に、相手国の主権の侵害ともとられかねないことから、そのような調査を実施することについて慎重な検討が必要であると考えているからでございます。

 その意味から、一般的に、所在の把握をしていない帰国後の元技能実習生を対象とする調査は難しいと考えております。

山本(和)委員 ありがとうございました。

 監理団体もその所在というのは把握していないということになるんですよね、そうなると。

佐々木政府参考人 それは、いわば民民の関係で、さまざまだと思います。

山本(和)委員 ありがとうございました。

 去年とかは九千人とかいう失踪者が出ているという現状も明らかになっておりますけれども、実習生や受入れ側の個々の問題ではなくて、やはり制度的な問題もあるからこそ、失踪という事案が出てきたんだと思うんです。

 本来であれば、技能をしっかり日本で学んでいただいて、それを母国に持ち帰っていただく、そういう国際貢献の意味もあるこの実習制度ということでございますので、失踪するという理由が、各国からそういう志を持って日本に働くために来たのに失踪するというのは、本当に、日本側、受入れ側からすると大変申しわけないかなという気がしますので、どういう状態で帰国されたのかという真情はちょっと聞いておきたい気はしたんですけれども。

 引き続きまして、失踪実習生がいること自体、構造的な人権侵害の可能性もあると思います。日本政府は、こうした人々に対して、大変な思いをした実習生に対して道義的な責任を果たすという視点でも、各国に対して調査の要請をしてもおかしくないと思うんです。帰国した実習生に対して、各国に対して調査の要請をしてもおかしくないのかなと。そうした視点でいえば、例えば二国間取決めに基づいて調査を行うことも可能なのではないかなと思います。

 例えば、ベトナムとの二国間取決めについては、以下のような内容が明記されています。

 ちょっとそれを読ませていただきますけれども、問題解決について、日本の省及びベトナムの省は、覚書に基づく活動の実施において相互に協議し、生じる問題の解決、その内容としては、失踪した技能実習生、不法残留となった技能実習生並びにベトナムの送り出し機関、日本の監理団体及び日本の実習実施者による両国の法令違反を含むが、これに限定されないという内容でございますが、において相互に協力し、適当な場合には、外交使節団を通じて、それぞれの国における関連する省庁と友好にかつ緊密に協力し解決するというふうに書いてございます。

 これに従えば調査ができるような気がするんですけれども、そのあたり、いかがでいらっしゃいますでしょうか。政務官、お願いします。

門山大臣政務官 お答えいたします。

 そもそも、技能実習生の帰国後の連絡先については、これは、制度上、入管当局において連絡をとることが想定されていないので、また、関係法令上もそれを把握することが求められていないため、把握しているものではないという前提がございます。

 また、委員御指摘のように、我が国の行政機関が外国に所在する送り出し機関を通じて帰国後の元技能実習生に対する聴取を行うということとした場合でも、相手国の主権の侵害ともとられかねないことであるので、そのような聴取を実施することについてやはり慎重であるべきであると考えております。

 したがいまして、委員の御指摘の点を踏まえてもなお、帰国後の技能実習生を対象とする再聴取を実施することは難しいのではないかというふうに考えております。

山本(和)委員 難しいということでございましたけれども、帰国された方、どういう状況で日本を離れてしまったのかという調査まで、お互い各国の主権があるということでございますけれども、こういうプロジェクトチームの調査をされた時点で本当にたくさんの問題があったということですので、そういう意味でも、やはりおもんぱかって、どういう状態だったかと聞くことはないことはないと思いますので、そのあたり、お含みおきいただければと思います。

 次に、厚労省の方にお尋ねをしたいと思います。

 厚労省の労働基準局では、外国人技能実習生の実習実施者に対する平成二十九年の監督指導、送検等の状況という報告書が公表されています。この報告に書かれている調査方法、そして、監督指導というのがどのように行われているのか、それを御説明いただきたいと思います。

田中政府参考人 お答え申し上げます。

 労働基準監督署におきましては、各種の情報から労働基準関係法令違反が疑われる外国人技能実習生の実習実施者に対して重点的に監督指導を行っております。

 平成二十九年の一年間におきましては、外国人技能実習生を使用する五千九百六十六の実習実施者に対して監督指導を実施いたしております。その結果、監督指導を実施した実施者のうち七〇・八%に当たる四千二百二十六事業場で労働基準関係法令違反が認められたため、是正指導を行ったところでございます。

 なお、たび重なる指導にもかかわらず是正しないなど、重大、悪質な場合には書類送検に至る場合もございます。

山本(和)委員 その調査というのは抜き打ちとかでやっていらっしゃるんでしょうか。

田中政府参考人 適正な調査を行うために、予告をすることなく事業所に立ち入って行っております。

山本(和)委員 ありがとうございました。

 今、厚労省の方からお伺いしましたけれども、監督指導の件数、五千九百六十六件ということでございました。その七割が、四千二百二十六件が労働基準法令違反ということでございます。

 この結果はプロジェクトチームによる報告とは少し数字が違うのかなという印象を受けました。プロジェクトチームの報告では、新たに疑いを認めた不正行為等の種別及び件数が、調査した四千二百八十機関中、六百三十一機関というふうになっています。割合にして一四・七%、厚労省の調査と比較すると約五倍近い開きがあると思います。

 もちろん、調査した分母も調査方法も違うと思いますが、単純比較しても大分隔たりがある、そういう印象になりますけれども、これをどう捉えておられるか、法務省の方にお聞きしたいと思います。

佐々木政府参考人 今委員からも対象が違うというお話をいただきましたけれども、私ども、失踪した技能実習生の聴取票に基づきまして対象を特定して調査をしたというものでございまして、今厚生労働省からお話のありました調査とは基本的に全く別の観点から行われているものでございまして、この比較につきまして、法務省としてコメントは難しいと考えております。

山本(和)委員 コメントは難しいということでございましたけれども、厚労省の報告書を読んで、一年間に五千九百六十六件という、非常に多いと思いますけれども、監督指導をされているということでございます。

 片や、プロジェクトチームでの調査では、あらかじめ日程を打ち合わせて行う調査。不正行為が七百二十一人しか発見されていないということ。ということであれば、労働基準監督署の監督指導で改めて問題が明らかになったケースが相当の数があるのではないかなというふうにも思います。

 厚労省の方は、摘発することも視野に置いて抜き打ちで行うという監督指導ですけれども、そういう、方法が違うので結果が異なるのはもう当然だと思います。しかしながら、実習生の置かれている状況を改善しようという目的は法務省も厚労省の方も同じだと思います。

 そこでお聞きしたいのは、労働基準監督署が指導を行った監督指導と今回のPTで報告書に上がった全ての事案に対して、厚労省の調査との突き合わせとかはされているのかどうか、お聞きしたいと思います。

佐々木政府参考人 従前から、労働基準監督機関と外国人技能実習機構、そして私どもの地方出入国在留管理庁との間では相互通報制度を実施をしておりまして、それぞれが何らか問題を発見したときには相互に通報するということになっているところでございます。

 今回の調査の結果、数をお示しをして、問題がうかがわれたという事案があったわけでございますけれども、これにつきましては、もう既に労働基準監督機関に通報をしているところでございます。

 今後、監督指導等が監督機関において行われて、またその結果を私どもにお知らせをいただきまして、今度は入管としての、例えば不正行為の処分をするなどに活用していくということになります。

 ですので、二つ別々の調査をやって、その突き合わせをするという手法ではなくて、それぞれが問題を把握をしましたときに相互に通報することによりまして、お互いに、一つは端緒とする、それから問題を共有をするというようなことで、関係を密にしてまいりたいと思っております。

山本(和)委員 ありがとうございます。

 ぜひ連携をとっていただいて、どういう実態がそれぞれあるかというのをそれぞれにきっちり把握をしていっていただきたいと思います。

 それと、引き続いて、厚労省からレクを受けた際に、労働基準局では、重大そして悪質な労働基準関係法令違反により送検したのは、さっきもおっしゃいましたけれども、三十四件ということでございました。

 悪質な場合など、入国管理局に通報しているというふうにもおっしゃっていただいていましたけれども、一方で、その後の入管の措置はわからないというふうに厚労省はレクでおっしゃっていたんですけれども、こうした情報についてはどうでしょうか。今、そういうレクを厚労省から受けたんですけれども。

佐々木政府参考人 先ほど申しましたように、相互通報制度は従前からあったものでございますけれども、御指摘のように、それぞれがそれぞれの行政の調査等を行った後に、更にその結果をもう一度フィードバックをするというところにつきましては、これまで不十分な点もあったと思いますので、また今回のことも一つのきっかけとして、更に密に連携をとっていこうと思います。

山本(和)委員 その後の措置というのをそれぞれフィードバックするのは、それは大変なことだ、一件ずつフィードバックするのは大変なことだと思いますが、ぜひそういうふうにもしていっていただきたいと思います。

 引き続きまして、監理団体についてお伺いをしていきます。

 監理団体は、その実態というのを私もいろいろと調べさせていただきましたけれども、平成二十九年、一昨年の十二月十四日に法務省入国管理局入国在留課が出した、「送出機関との不適切な関係についての注意喚起」という文書がございます。監理団体が監理費に該当しない金銭を送り出し機関を含む技能実習の関係者から受け取った場合は、監理団体の許可取消しの対象となる、そのほか罰則も適用されますというふうにあります。

 また、監理団体は非営利なことが前提ですけれども、諸手続や実習生らのケアを理由に毎月の監理費を実習生が働く企業などから取っていると。実習生一人につき月三万円から、中には七万円というケースもあるようでございます。

 ベトナムの送り出し会社から監理団体へのキックバックも問題になったと思いますけれども、実習実施者と監理団体が事実上一体化して悪事を働いているというケースもあるという話も、この間、法務省のレクでも伺いました。

 それほど、監理団体の問題があるとわかっているというにもかかわらず、今回の調査に関しまして監理団体から調査を行わなかった、その理由をお願いします。

佐々木政府参考人 今回の失踪事案に関する調査は、実習実施機関における労働関係法令違反や人権侵害行為といった不正行為の有無を明らかにするということを目的として実施をしたものでございました。

 このような目的を達するために最も直接的な方法として、実習実施機関が保管している賃金等に関する記録を入手したり、その会社の役職員あるいは従業員から事情を聴取するという方法によって調査を行うこととし、監理団体を直接の対象とした網羅的な調査は行わなかったものでございます。

 ただし、今回の調査におきましても、例えば実習実施機関から必要な書類が入手できないといった場合には、監理団体から関連の資料を入手するなど、必要に応じて監理団体の調査も行いました。

 また、実習実施機関に不正行為の疑いが認められる場合に、監理団体もこれに関与をしている疑いがあるというものもございましたので、その場合につきましては当該関与について調査を行ったところでございます。

山本(和)委員 後でいろいろお聞きしますけれども、死亡事案とかというのはやはり監理団体の方から報告が上がっているというふうにも思うんですけれども、やはり監理団体についてもしっかり今回のPTの調査、せっかくこの分厚い調査の報告も来ているわけですから、そこはしっかりと聞くべきだったんじゃないかなというふうには思います。

 この報告書の中にもあるように、聴取票における失踪動機や賃金そして労働時間等の労働条件にかかわる記載内容は、入国警備官が、あくまで被聴取者である失踪技能実習生の供述について、実習実施機関への調査確認等を行うことなくそのまま記載したものである、そういうものであるところ、プロジェクトチームは、上記のような指摘等をも踏まえて、実習実施機関側への確認による失踪事案の実態調査を行ってその結果を公表することとしというふうに、最初の方のページにありました。

 入国警備官が確認調査をすることなく聴取票を書いたことによって、さまざまな疑義が今回発生したんではないかなというふうにも思います。

 そのためにこのプロジェクトチームが立ち上がったんだと思うんですけれども、このプロジェクトチームのメンバーの中は、やはり法務省や入国管理局のメンバーで構成をされています。それが果たして公正な調査なのかというふうにも思ってしまいます。本来は第三者機関がしっかりと調査をするということも、そういう人も入れて調査するという手法もあるんではないかなと思うんですが、その辺を大臣からお願いします。

山下国務大臣 お答えいたします。

 今回の調査、失踪事案調査や死亡事案調査につきましては、これは技能実習生の個人情報や実習実施機関等の業務情報そのものに触れる行政調査でございます。そのため、守秘義務を有する関係職員が法令の根拠に基づいて実施したものでございます。

 そのような調査の性質上、そもそも、法令上の根拠や守秘義務を有していない外部の専門家等に関与していただくことが困難であったということは御理解賜りたいと思います。

 ただ、他方で、これは、弁護士でもあります門山政務官に議長を務めていただき、その強力なリーダーシップで調査を進めていただきました。そして、この調査におきましては、客観的な資料の精査、分析を重視するということで客観性を担保し、そして関係者のプライバシー等にも配慮しつつ、調査・検討結果報告書において、手法や結果について、具体的かつ詳細に公表しているところでございます。

山本(和)委員 大臣、ありがとうございました。

 個人情報は本当に大事なことだと思うんですけれども、今回のプロジェクトチームの調査報告というのは、やはり短い期間の中でこれだけの調査をされたということなので、法務省や入国管理局だけでやられたというのもわからなくはないんですけれども、今後、こういった新しい技能実習制度が始まっていろいろな事案が出てきた場合、そういう意見を言っていただく方も、学識経験者とかそういう方も必要になってくるのではないかなというふうに思います。そのあたりも意見として言わせていただきたいと思います。

 続きまして、プロジェクト資料によりますと、実習先に問題がある技能実習生に対しては、実習先を変更ができることということでございました。実際に転籍を行った事例も、少ないながら、二十件あるというふうにも書いてあります。しかしながら、失踪してしまった実習生に対しても新たな受入れ機関を保障する、そういったふうな仕組みがあってもいいのかなというふうにも思いますが、そのあたり、どのように思っていらっしゃいますでしょうか。

佐々木政府参考人 今御指摘ありましたように、これは外国人技能実習機構が行っていることでございますけれども、実習実施者の不正行為等によって実習の継続が困難となった場合、技能実習生の保護の観点から、実習先の変更に係る必要な支援を行っております。

 失踪技能実習生のうちで、失踪後に不法就労をするに至った場合ですとか、あるいはもう既に在留期間が経過をしてしまってオーバーステイになっているような方につきましては、退去強制手続がとられるということですので、そこから技能実習の継続を前提とする実習先の変更支援、この対象にはならないところでございます。

 しかし、実習実施者等の責めに帰すべき事由によりまして、やむを得ず実習実施者から技能実習生が逃げ出したような事案につきましては、先ほど申し上げました外国人技能実習機構において、事実を確認の上、実習先の変更や一時宿泊先の提供の支援などを行っているところでございます。

山本(和)委員 ありがとうございます。

 今おっしゃっていただいたとおり、フォローする体制もあるということでございますけれども、勝手に逃げてしまった場合、それは難しいんだというのはもうよくよくわかるんですけれども、失踪実習生は、もう本当によっぽどの理由があっての失踪だと思うんです。母国に大変な借金をして日本に来て、その借金を返すためにしっかりと日本で務めを果たさなければ、お金をためなければならない。帰国すれば、その返すことのできないお金に追われる、借金に追われるということになると思うんです。

 それが逆にまた失踪者を生んでしまっているというような状況にあると思うんですけれども、やはり実習先に問題がある疑いがある場合、求めに応じて失踪実習者も速やかに新しい実習先を紹介できるという仕組みがもっとあればいいかなというふうには思います。そこは、今おっしゃったように難しい部分もあると思いますけれども。

 続きまして、死亡事案についてお伺いをしてまいりたいと思います。

 報告書によりますと、関係情報との照合等により、この期間の技能実習生の死亡事案の網羅的な確認作業を行ったというふうにありますけれども、具体的にどのような情報をもとにどのような確認作業をしたのか、調査の具体的な方法、技能実習との関連性の有無、そういったものをきっちり判断したという基準があれば教えていただきたいと思います。

佐々木政府参考人 今回調査の対象といたしました死亡事案は、平成二十四年から二十九年までの六年間の技能実習生の死亡事案、合計百七十一件でございました。

 本調査におきましては、監理団体等から提出されました死亡事故報告書、死亡診断書又は死体検案書、それから賃金台帳等の関係書類、これを精査をいたしまして、死因、死亡理由、死亡結果と技能実習の関連性の有無それから程度、関係機関による対応状況等の確認、分析を行ったものでございます。また、必要に応じて、実習実施機関からも追加書類を入手して精査をいたしました。

山本(和)委員 ありがとうございます。

 その死亡事案の中で、病死が五十九件、その中で死亡への影響が疑われる過重労働の事実が認められたのが二件ということでございます。

 しかしながら、心疾患による突然死や、過労死が疑われるものももっとあるんじゃないかなと思うんです。過労死が疑われるものについて、勤務実態や職場環境そして住環境など、きっちりと調べたのか、ちょっと教えていただければと思います。

佐々木政府参考人 先ほど御報告をいたしましたように、一件一件ごとに、さまざまな関連の資料を入手をして確認、分析を行いました。

 例えば、実習現場以外で技能実習生さんが亡くなった場合につきましても同様の調査、分析を行っておりまして、その書類の中に居住場所の状況につきましてもあるものにつきましては、その資料の範囲内で把握をし、分析の要素といたしました。

山本(和)委員 済みません、いろいろお伺いするんですが、その百七十一件全部、そういう調査はなされたということでよろしいですか。

佐々木政府参考人 これは全てをいたしました。

 実は、報告書にもありますように、入管として把握漏れをしていたという案件もございましたけれども、もともと入管として把握をしていたものにつきましては、既にその事案が起こったときに相当の調査は行っておりまして、それを全部精査し直した上で、なお必要なものについて、今回、追加的に収集をして確認をしたというものでございます。百七十一件全部を行っております。

山本(和)委員 今、記載漏れということがございましたけれども、その記載漏れ、四十三件ありましたと報告書にありますが、しかしながら、実習生百七十一人の死亡のうち、四十三件を今回の調査まで把握できていなかったということが記されていたんですけれども、これはちょっと問題なのかなというふうにも思いました。

 まだ更に死亡事案があるのではないかなというふうにも疑ってしまいますけれども、その可能性があるのかどうかということと、そのPTの資料にも、届出、団体に対する指導が十分でなかったというふうに書かれてあります。今後の監理団体への指導、それがどのように行われるのか、いかがでしょうか。

佐々木政府参考人 御指摘のように、今回の把握漏れにつきましては、これも大きな反省点でございます。

 今回、全ての死亡事案、これは、外国人の方がお亡くなりになりましたときに、市町村長から入管に対してその事実が通報されます。その通報された死亡事案をもう一回全部精査し、技能実習生さんがいないかということについても今回確認を行ったところでございます。

 報告書の中にもありますように、この把握漏れに幾つかの理由といいますかパターンがございまして、今御指摘のように、監理団体から報告が上がっていなかった、あるいは、地方入管までは行ったけれども本省が把握をしていなかった、本省まで来ていたけれども本省の中で埋もれさせてしまったというようなことがございました。

 再発防止策の内容といたしまして、まずは、御指摘のように、監理団体について、そういう事案があったときにはすぐさま外国人技能実習機構へ届出を、具体的には技能実習実施困難時届出という書類になりますけれども、これを提出すべきことにつきまして指導、周知を徹底をしてまいりたいと思います。

 また、入管の中での手続の不備につきましては、もう既に体制を改めました。

山本(和)委員 ありがとうございます。

 もう、ちょっと時間がなくなってまいりまして、最後、大臣にお伺いをしたいと思うんですけれども、今回、技能実習二号を修了、今度の新制度の件です、技能実習二号を修了した者は特定技能に移行できるということでございますけれども、特定技能一号に移行する実習生は二〇一九年度から五年間で四五%というふうに試算している。

 つまり、技能実習制度は、母国で働くため技能を身につけるという本来の目的から、日本国内での単純労働をするための制度に実質的に変わってしまうんではないかというふうにも思います。このままでは、ますます技能実習の本来の意義から離れて、ちょっと矛盾が拡大してしまうのではないかな、むしろ技能実習制度そのものが、実習生として来ている海外の若者たちを本当に苦しい労働に追いやってしまっているのではないかなというふうに思います。その結果、毎年一万人近い失踪者となってきているというふうにもあらわれていると思います。

 少なくとも、本来の海外への技術移転を目的とした技能実習を明確にして、範囲を少し限定して縮小するとか、新しい制度としてもっともっと見直して整えていく必要があると思いますけれども、そのあたりの、大臣、御所見をお伺いしたいと思います。

葉梨委員長 山下法務大臣、簡潔にお願いします。

山下国務大臣 委員御指摘のとおり、まず、残念ながら、一部の監理団体や受入れ企業において賃金不払いや長時間労働等といった労働関係法令違反等の問題が生じていることは、重く受けとめているところでございます。

 他方で、技能実習制度に関しては、例えば、帰国後、身につけた技能を生かして起業するなど、そうした若者も送り出し国に存在するところでございまして、送り出し国政府の大臣などとよく話はするわけですが、高く評価されていることも事実でありまして、適正化を図りつつ維持発展させるべきものだと考えております。

 その意味におきまして、平成二十九年十一月に技能実習法が施行され、さまざまな、例えば検査、監査など措置もとりましたし、また、二国間取決めによる送り出し機関の適正化にも努めているところでございます。そうした取組をしっかりと着実に続けることでこの技能実習制度の適正化を図ってまいりたいと考えております。

山本(和)委員 これで質問を終わります。

葉梨委員長 以上で山本和嘉子君の質疑は終了いたしました。

 次に、松田功君。

松田委員 おはようございます。立憲民主党・無所属フォーラムの松田功でございます。

 立憲民主党は、ジェンダー平等で、女性の活躍推進を願っているところでありますが、佐々木長官におかれましては、ぜひ、長官ということでございますし、働く現場の女性のパイオニアになるような、ぜひ明快な御答弁をいただければ幸いでございます。よろしくお願いいたします。

 それでは、質問に入らせていただきたいと思います。

 改めて、この技能実習制度の問題、創設時から数多い問題が指摘はされてきた制度であります。いろいろな現場で、国としての全体的なあり方として、日本として送り出し国に貢献をする、そういった大きな意味があったと思われます。

 そういった中で、日本国内において数多い問題、また送り出すときのいろいろな諸問題もある、問題点がいろいろ指摘され、また法改正もし、いろいろありますが、そういった中で改めてちょっとお伺いをさせていただきたいと思います。

 厚生労働省のホームページによりますと、外国人技能実習制度は、我が国が先進国としての役割を果たしつつ国際社会との調和ある発展を図っていくため、技能、技術又は知識の開発途上国などへの移転を図り、開発発展途上国などの経済発展を担う人づくりに協力することを目的とすると書かれております。

 今さらながら目的を申し上げたのは、この制度が日本にとってのみ都合がよい制度になってしまっていないか、検証の必要があると思うからであります。

 不正行為などのさまざまな問題が起こった原因は、実習実施者や監理団体、技能実習生本人がこの制度の趣旨を正しく理解していないからだ、だから今後は出入国在留管理当局が制度の趣旨を正しく理解してもらうように努めるというようなことが、今回のプロジェクトチームの報告書に書いてありました。

 しかし、本当に制度の趣旨を正しく理解していないのは、この当事者三者だけなのでしょうか。

 この四月より特定技能制度が始まりました。法務省によると、初年度は技能実習生からの移行が大半を占めると試算されておりますが、きちんとした技能実習計画に基づき技能を習得した外国人の方のみが移行の対象になるわけです。すなわち、実習実施機関の不正行為により技能を学べなかった外国人はそれぞれの母国へ帰り、技能を習得できた外国人は、母国へ帰ることなく、日本で特定技能者として働くことができる制度がつくられたわけです。何か違和感を覚えませんか。

 発展途上国の経済発展を担う人づくりに協力するはずが、技能を習得した優良な実習生が、日本の人手不足を補うために雇い入れることができるということなんです。技能実習生の意思で決めることができるとはいえ、日本という国が国際社会への貢献策として導入された制度を別の目的に使うことができるというのは、少しおかしいと思いませんか。

 技能実習制度は、日本の人手不足を補うための技能予備校のようになっていないかと思います。この制度を正しく理解しなければならないのは政府の方でないかと思われますが、法務大臣の御意見をいただきたいと思います。

山下国務大臣 お答えいたします。

 まず、技能実習制度の意義につきまして、これにつきましては先ほど委員から御紹介いただいた厚生労働省のとおりでございます。

 そして、その意義に関しましては、例えば日本の丁寧な建築、土木の技術等も高く評価されているところでございまして、実際に多くの技能実習生が実習を全うし、中には、帰国後、身につけた技能を生かして起業するなどしている者もかなりおるということで、私も何人かの送り出し国政府の大臣など高官と対話したところでは、高く評価されていることも事実でございます。

 そうしたことにおいて、技能実習制度については、これは意義はあるのであろう。そして、この制度は、適正化を図りつつ維持発展させるべきものであろうというふうに考えております。

 他方で、残念ながら、先ほど御指摘もあったように、賃金不払いや長時間労働といった労働関係法令違反の問題が一部の監理団体や受入れ企業において生じているということは大変重く受けとめております。

 そうしたことから、技能実習制度につきまして、平成二十九年十一月に技能実習法が施行され、これは与党のみならず、野党の皆様の幅広い賛成もいただきながら成立したものでございまして、この法に基づいて適正化に努めているというところでございます。

 今後も、この技能実習法をしっかりと適用する、そして、今回の調査において不十分なところがあったところにつきましては、提言等に基づいて是正策を速やかに講じていくということで、この技能実習につきまして、しっかりと制度を、適正化を図ってまいりたいと考えておるところでございます。

松田委員 大臣がおっしゃった部分は、本当にそういうことも思ってはいるんです。しかしながら、その本来の趣旨を受入れ側の人たちも理解をきちっとしていただければ問題というのは実は起こらない部分が多いということで、何でそういうことが起きているのかということも含めた中で、ぜひ政府側の、要は、法務省だけでなく、厚生労働省を含め、総務省も含め、いろいろな、人にかかわる部分、そこの部分で非常に理解をしていただいて、それが地域や日本の皆さんとのコミュニティーや、また、いろいろな日本人のよさを技能以外にも学んで、学んでと偉そうに言っちゃいけないですね、理解をしていただいた中で、そういったことのよさを母国に帰ってやっていただくというのが大義であるということであれば、今回、いろいろな問題点が起きていること自体も、非常に社会問題としては大きいと思っています。

 十分そのことは御理解をされているということは認識はしておりますが、事実としての部分として、そういった技能実習制度の現状であるということをちょっと確認もしたかったこともございますので、ぜひ、その辺を御理解いただきたいというふうに思っております。

 それでは、次の質問に入らせていただきたいと思います。

 技能実習生の聴取票について、今後公表しないとされておりますが、それはどうしてでしょうか。

 確かに、技能実習の実習実施側への確認調査がされていない一面的な情報であることも確かですが、こういった形で聴取が公表できないということを言われていることの理由を少しお答えいただきたいと思います。

佐々木政府参考人 今御指摘いただきましたように、この聴取票ですが、入管法に違反して資格外活動等を行った失踪技能実習生から任意に聴取した情報を記載しているものでございまして、その聴取は内容の公開を前提として行われておらず、その記載内容は失踪技能実習生等の個人に関する情報そのものでございます。

 このような性質を有する聴取票の記載内容が広く開示されることになりましたら、今後の調査や捜査への協力を得られなくなる可能性があるほか、個人の特定につながったり、失踪者本人のプライバシー等が損なわれるおそれもあります。これが聴取票を閲覧あるいは公開しないということの理由でございます。

 ただ、今回のプロジェクトチームの結論にもございますように、今後、新しい聴取票をもって、具体的な、例えば不正行為を発見するというような、審査、在留管理に使っていくことはもとより、その内容を踏まえて、技能実習がどのような実態にあるかということについて検証をし、検討をした上で、それはそれで公表をしていこうと思っておりまして、その点、PTの報告書にも書いてあるところでございます。

松田委員 いろいろ今回の調査結果を見ますと、五千二百十八人の失踪技能実習生のうち、最低賃金違反が五十八名、全体のわずか一%強となっています。しかし、我々野党が昨年、手書きで書き写した調査票二千八百七十枚のうち、千九百二十七名が最低賃金未満。総数に対する割合は、最賃未満が六七%あったわけです。これはちょっと違い過ぎないかというふうに思います。そういったことも含めた中で、実習先の確認がされていない一面的な情報とはいえ、一%と六七%です。これはちょっとあり得ない数字だと思います。

 また、昨年、法務省が、最賃以下を二十二名と発表したんです。我々が手書きで写した中でも千九百二十七名中、二十二名なんです。公表せずチェックされていない場合、果たして、人権侵害を受けている技能実習生に対し適正な対応がされているか、これが心配になっちゃうんですね。

 本気で実態を解明しようと思っているのか、また、個人情報の部分は例えば黒塗りにしてコピーして情報を出すということはすべきだと思いますが、いかがでしょうか。

佐々木政府参考人 今御指摘の、実態を把握しようとしているのかということにつきましては、まさにしているところでございまして、具体的な事案につきまして、聴取票を一つのきっかけにして、より深掘りをしていく、これはまさに出入国在留管理庁の在留管理、一部入国管理のところも含みますけれども、の使命だと思っているところでございます。

 先ほど、先生方が聴取票をもとにいわば割り出した最低賃金以下と、それから今回の結果が余りにも違うではないかということにつきまして、考え方をお示しさせていただきますと、まさに、これまでも申し上げておりますように、今回、このことをきっかけにして、多くの実習実施機関に、実態に当たって、実地調査のものとそれから書面調査のものはございますけれども、できるだけ客観的な資料に基づいて、その実態を検証したところでございます。

 ただ、反省点としましては、聴取票そのもののそれぞれの書きぶりが不明確であったというところはございまして、まさに、月額給与というのは、聴取を受けた実習実施者の方がその言葉を聞いて何を意味してお話しになられたかというところが恐らくまちまちであったのだと思います。

 そのことは、今回の調査で、実際に生資料に当たって検証をしたこととの違いが出てきたということからしますと、むしろ聴取票の項目に問題が、不明確だという問題があったわけでございまして、そこは今度の改善点の中で、理解が揺るがない、きっちりした定義のなされている項目の聴取票をこれから使っていき、それを一つの調査のきっかけ、それから内容の要素として、実態の解明に努めていこうとしているところでございます。

松田委員 実態解明は、その気持ちとしてされているということは、していないということではないとは思うんです。

 我々は、現場で起きている問題に対してのリアルタイムな部分があって、いろいろ報告が上がってからやるもの、リアルタイム感の中でいろいろ調べたいし、誰も悪い人をつくりたいとも思っているわけじゃないし、是正して、いい形に持っていけるのであれば、それはいろいろ出してもらって、だめだろう、だめだろうというわけじゃないんですよね。それによってどう、いいふうにしていくかということが物すごく重要なんですよね。

 だから、その意味の観点で、雇っている人たちにも理解もしてもらわなきゃいけないし、送り出すところもそうだし、いろいろな人にきちっとやるということをいかに理解してもらうかということが重要なんですね。それは、最低賃金割れで雇ってというふうにはならないでしょう、基本的な部分で。だから、そういうことをきちっと明確にどうしていくかという観点から物事をやっていくということじゃないと、全く意味がない。

 だから、そういう意味では、出していただいて、それできちっと、指摘がされたら、それをどうしていくかということを真剣に考えていただければというふうに思っておりますので、ぜひ、その辺をよろしくお願い申し上げたいと思います。

 次に移ります。

 技能実習の実習実施機関への調査方法と資料の客観性についてお伺いをさせていただきたいと思います。

 直接調査は、賃金台帳その他の客観的資料を入手するために行うということですが、その調査は、事前に連絡を入れてから行ったと聞いておりますが、本当でしょうか。

 労基署など、当然抜き打ちで調査を行うわけですが、そうすることにより、ありのままの正確な情報を入手できると思います。そうして入手したものが客観的資料というものではないかと思うんですよね。改ざんしたり口裏合わせをしたり、そういったことができる時間を与える調査方法では、実態の解明ができにくいと思いますし、できないと思います。

 どうしてこのような調査方法をとったのか、また、この調査で入手した資料が正しいと思う根拠をお聞かせください。

佐々木政府参考人 今回の実地調査に当たりまして、事前に赴く先に連絡をして、いわば訪問の日時を決めて赴いたということは本当であります。

 本来であれば、抜き打ちで、より実態をということもしたいところではございましたけれども、今回、何千件という調査対象を一定期間の間に調査をするということをお約束をしていたものですので、このような手法をとったものでございます。

 実際に、先ほど来申し上げておりますように、賃金台帳あるいはタイムカード、それから報酬の支払いがわかるようなもの等々の提出を、協力をいただいて得たというところでございますが、それぞれのものについて、例えば労働時間でありますと、タイムカードの情報、それから労働時間が記録されているものの情報等々、それぞれの情報を突き合わせをして、できるだけ正しいものを追求したということがございまして、客観的資料で調査をしたと考えているところでございます。

 ただ、一部、私どもが見ても、客観性や信憑性に疑義を生じさせる事情が一部にございましたので、その点につきましては、なお調査を継続しているところでございます。

松田委員 やはり人間の心情が絡むから、調査が来ると思うと、ああ、どうしよう、どうしようと絶対思うわけですよね。それを告知したら、絶対そう思いますから。いけないものは書類をなくしちゃうとかね。

 だから、そういうことをしたら本当に実の部分が全く失われちゃうというのは、この調査以外でもあるわけなので、法務省がということではないですけれども、やはりそういったもので、問題点を何とか改善していこうという思いの中であるなら、そこは少し変えていかないと実態的な部分が生まれないし、改善へ進まないと思うので、ぜひ、その部分については、せめてそういった形でやっていくような思いの中でぜひやっていただきたいというふうに思います。

 次に移ります。

 実習実施機関への実地調査を電話・書面調査に変更した理由で、実地調査でなく電話・書面調査をとった件数が二千百十七件とあります。実地調査すべきところを、訪問を打診したものの、日程が調整できずに、電話・書面調査に変更した件数は何件になりますか。

佐々木政府参考人 今回の調査、対象であります四千二百八十の実習実施機関のうち、電話・書面調査を実施したものが二千百七十七機関です。

 このうち、当初は実地調査を予定をしていたものの、予定が折り合わない等の理由で、電話・書面調査に変更したものは、今回、取り急ぎ集計した手元の速報値で申し上げますと、約百六十機関、対象者約二百二十人でございます。

松田委員 今回の調査は、機構の定期的な実地検査ではなく、技能実習生が何らかの理由で失踪した案件なわけですから、安易に電話や書面調査に変更して調査が完了したとされるのは、ちょっとどうかなという部分があります。

 電話・書面調査で判明した違反のほとんどが軽微な書類不備となっていますが、これは実習実施機関からの一面的な調査を信頼しての結果なわけですから、この中にセクハラやパワハラなどの人権侵害が隠されている可能性はないのでしょうか。その可能性を考えていないとするならば、この調査の姿勢自体に問題があるように思われますので、その辺について少しお聞かせいただきたいと思います。

佐々木政府参考人 報告書にも記してございますように、人権侵害行為が認められたという事案、三十六人ございました。そのうち、過去の調査により既に措置済みでありましたものが六人、今回新たに人権侵害の疑いを認めたものが三十人とありました。

 この具体的な事案ですけれども、例えば、現場の責任者による技能実習生に対する暴力行為あるいはその疑いなどが含まれておりますけれども、これにつきましては、もともと人権侵害が疑われるという案件につきましては実地調査を原則といたしたものでございまして、その結果判明したのがこの数でございます。

松田委員 ちょっと細かく聞きますが、どのような証拠に基づいてその三十六人の人権侵害が認められたのか、お伺いしたいと思います。あわせて、その三十六件のうちにセクハラやパワハラ、暴力は何件ありましたか、お聞かせください。

佐々木政府参考人 調査方法が、人権侵害の疑いがあるものについては実地に行ったということを申し上げましたけれども、その場で実習実施機関や、それから今いる現役の技能実習生からの聴取を行いまして、例えば、そうした暴力行為などが職場であるのか、またあったのか、特に、失踪した特定の技能実習生がいたときにどうであったのかというようなことを、会社側それから技能実習生側、両方から聴取をしたものでございます。(松田委員「件数は」と呼ぶ)

 先ほどの三十六件のうち、既に措置済みのものが六件でございまして、残りの三十件、三十人がこの人権侵害行為でございますけれども、セクハラ又はその疑いを認めたものというのは、この中にはございませんでした。暴力があったと疑われる事案、あるいはパワーハラスメントという意味で申しますと、その暴力行為の動機との関係におきましてなかなか特定は難しいのではございますけれども、暴力があったと疑われる事案が相当数ございました。

松田委員 今いる実習生やいろいろ聴取して調べられてということで認めたということであります。

 今回の調査の場合、元技能実習生が今も日本にいる場合は本人に再聴取したということであります。その再聴取においても、セクハラや暴力などの人権侵害があったと言われた場合は実習実施機関側にも話を聞くとか、そういうふうに調査されていると思います。

 そうであっても、否定する場合もあるかもしれません。そのように、当事者同士の話が食い違っている場合、また、時間がたっていろいろな証拠的なものが取りそろえられない、また、実習生の今いる人たちが、それを言ったら自分たちもされるんじゃないかと思って、正直に言っていただけるかどうかという部分もあります。

 そういった場合のことだと立証責任とかが非常に難しい部分がありますが、その辺についていかがでしょうか。

佐々木政府参考人 まさに、実際に現場で調査に赴いた全国の職員、機構の職員も含めますけれども、の悩みどころであったと思います。

 まずは供述を聞くわけですけれども、その供述内容が食い違うということはございまして、そのときに、それぞれの、双方のと申し上げた方がいいかもしれませんが、の供述を具体的に裏づける資料の有無などをできる限り確認をしたところでございます。

 例えばでございますけれども、暴力を受けたというときに、けがをしたときのお写真ですとか診断書があればもっといいのです。今回あったというわけではありませんが、例えばそういうものを探すように努めたというところでございます。あるいは、行動の制限をするというのも人権侵害の一類型だと思いますけれども、そうした、何々してはならないというような裏契約書的なものがないかどうかということを、現場で調査に赴いた職員は極力手に入れるように努力をしたと承知をしております。

松田委員 実際、努力もされている中でありますが、要は、電話調査で終わっちゃうと、そこまでもいかなくて、実態的なものももう出てこないということも考えられるということが、私はこう言いたい。

 要は、した、しないとか、立証しようと思っても、月日が、調査が入るのが遅かったからもうそのもの自体も全くない感じになっちゃうということで、調査が遅くなった部分、本当の今リアルタイムの現場で起きていることがリアルタイムじゃなくなっちゃって、立証するものができなかった悲しい人たちがいっぱいいる。下手したら、入管で収容されている人もいるかもしれないですね、それで。だから、そういったことの現状がこの技能実習制度の問題としては非常に大きいということが言えるわけであります。

 だから、またお話もしますけれども、そういった形で逃げなきゃいけなかった人たちは救わなきゃいけないわけですよね。そういった思いであることは、重要でありますので、ぜひよろしくお願いします。

 次へ進みます。

 実習実施機関に協力を拒まれてしまって調査を行うことができなかった実習機関に対する今後の対応について、お伺いをしたいと思います。

 協力を拒んだ実習機関から技能実習計画の認定申請や特定技能の在留資格にかかわる審議がなされた場合には慎重な審査を行うとありますが、その慎重な審査手段としての実地検査も事前に通知するのでしょうか。

佐々木政府参考人 今回の調査を拒否された理由はさまざまだと思いますけれども、そもそも、やはり調査を拒否されたということでいいますと、私どもとしては、疑いといいますか、怪しいとは思っているわけでございます。

 先ほども御報告をいたしましたように、今回の調査対象の実習実施機関で今でも技能実習生が在籍をしているところにつきましては重ねての実地調査をいたしたいと思っておりますけれども、特に、この調査を拒否した実習実施機関に技能実習生が在籍しているということであれば、優先的に、しかも事前の通告なしに行って調査をしたいと思います。

松田委員 実際、問題があるところというのは、事前に通知しなくても、時間経過が、タイムラグが起きちゃうということもあって、実習実施機関が認定申請などのアクションを起こしていない限り、そのままの状態がずっと続いているということになります。書類の改ざんなどの時間稼ぎに使われる可能性もあります。その間、実習実施機関で働いているほかの技能実習生が人権侵害に当たったままということにもなります。

 協力を拒むような実習実施機関は危ないと考えて、早急に対策をされないといけないと思いますが、いかがでしょうか。

佐々木政府参考人 御指摘も踏まえて対応してまいります。

松田委員 また、機構の三年に一度行っている定期的な実地検査との関係がどうなっているかということと、今回協力をしなかった実習機関は優先的に検査に行くなどの連携した対応は考えられていますでしょうか。

佐々木政府参考人 定期的な機構の調査、立入り、これにつきましては、予定どおりといいますか、粛々と進めていくものでございます。

 ただ、今御指摘の、今回疑念が残ったものについて機構も優先的に対応していく、これは、入管と相談をしながら、そのように依頼をしたいと思います。

松田委員 時間がございますが、ちょっと質問を飛ばさせていただいて、十三番の質問、大臣にちょっとお伺いをしたいと思います。大臣、いいですか。ちょっと飛んじゃいます、よろしくお願いします。

 今、シェルターで保護されている元技能実習生の処遇について、法務大臣の方にちょっとお伺いさせていただきたいと思います。

 さまざまな人権侵害を受けて逃げた技能実習生を保護している団体がございます、御存じかと思いますが。本来であれば、監理団体が責任を持って保護し、新しい実習先を紹介しなければなりません。また、新制度のもとでは、機構が保護、支援を行うことになっておりますが、旧制度のもとで入国した技能実習生の場合、運よくシェルターに保護されるか、資格外就労やオーバーステイで摘発され、入管に収容されておしまいになってしまいます。

 新制度になり失踪者が減ったとはいえ、依然多くの技能実習生が不当な扱いを受け、実習先から逃げ出してはいるのです。今後のために制度の見直しをするのも必要ですが、今現在、被害に当たって保護されている方の処遇についても議論すべきではないかと思います。

 保護されている彼ら、彼女らは、このまま日本で働くことはできません。かといって、母国へ帰るわけにはいかないんです。これはなぜか。借金を背負ったり、途中で逃げたことによる違約金の支払いを迫られているからなんです。

 日本に来て技術を身につけて母国に帰るという夢を持って来日した彼ら、彼女らに政府として何の救済もしないというのは、余りにも無責任ではないでしょうか。

 失踪の理由はいろいろでしょう。彼ら、彼女らに全く非がない場合も多いわけですから、せめて借金が返済できるように就労を認めることはできないものでしょうか。というか、認めた方が僕はいいと思います。

 例えば、今回の調査結果から不正行為による失踪と認定された七百二十一人について、法務大臣が在留特別許可を出すなどし、新たな就労先を支援すべきではないかと思いますが、大臣のお考えをお聞かせください。

山下国務大臣 お答えいたします。

 御指摘ではございますけれども、やはり我が国の入管法上は、我が国で認められた在留資格に基づいてその活動をやっていただくということが前提となっております。そして、それにおいて違法が認められた場合に、例えば不法在留あるいは不法就労となったことについて、やはりそれは法律にのっとった取扱いというのをせざるを得ないということは御理解賜りたいというふうに考えております。

 そういったことで、今回、新制度におきましては、御指摘のように、実施者の不正な行為によってなられた場合に機構が支援をするというような制度がございます。その制度につきましては、監理団体による入国後講習や、あるいは、その実習実施者に対する実地検査のさまざまな場面において、技能実習手帳を活用しながら、保護、支援制度の周知を徹底しているところでございます。

 旧制度における技能実習生の扱いにつきまして、これはお尋ねではございますけれども、これに関しましては、やはり、本来の入国管理法のたてつけというものを踏まえながら対応せざるを得ないというところで御理解賜りたいと考えております。

松田委員 大臣、この調査に対して、不正が実習実施機関であるというふうに法務省も認めているわけです。僕はやれると思っておりますが、七百二十一人の中には、入管に収容されている元技能実習生もいるはずなんですね。彼ら、彼女らが、同じように被害者であることは間違いないわけなんです。オーバーステイや不法就労という、生きるために働かざるを得なかった罪だけで収容され、強制帰国を待つというのは、余りにも非道じゃないかなというふうに思います。

 私が面会した元技能実習生の一人は、ひどい労働環境をJITCOに相談して、立入調査も入った。しかし、社長が否定し、職場環境は改善されなかったようです。その後、日本とベトナムの両国の監理団体に訴えたそうですが、助けの手はなかったと。これは、元技能実習生からの一方的な話であります。後でこの実習先の会社は労基法違反で摘発されたそうなので、問題のある実習先であったと判断できると思います。

葉梨委員長 質疑時間が来ていますので、まとめてください。

松田委員 はい、済みません。

 そのように不正な被害に遭って失踪した実習生に、救済措置はやはり考えるべきだというふうに思っております。また、収容施設も満杯状態であるということは大臣も御存じと思います。そういった意味において、ぜひ、法務省としても真剣に取り組む価値があると思いますが、いかがでしょうか。

葉梨委員長 大臣、一言、もう時間が来ているので。

山下国務大臣 はい。

 入管法等に従って適正に検討せざるを得ないというところでございます。

松田委員 ありがとうございました。

 では、大臣、よろしくお願いいたします。失礼します。

葉梨委員長 以上で松田功君の質疑は終了いたしました。

 次に、源馬謙太郎君。

源馬委員 おはようございます。国民民主党の源馬謙太郎です。

 きょうは、技能実習生のPTについて伺っていきたいと思います。

 まず、細かな数字の確認からさせていただきたいと思います。

 今回の調査対象が、五千二百十八人の失踪技能実習生に係る実習実施機関四千二百八十機関ということでございます。先ほどから質疑でたびたび出ているとおり、これまで、我々野党の国会議員が個票を調査をして、最賃割れですとか、そういった疑いがあるんではないかというようなことが発覚をして、このPTで調査をされたということだと思います。

 この中で、賃金台帳ですとかタイムカードの写し、それから賃金及び労働時間に関する客観的な資料を入手できたものが二千九百九十三機関分ということであって、これは全体の四千二百八十のうちの六九・九%になるわけですけれども、この中で、協力を拒否した機関ですとか、倒産したり所在不明になった機関、この二百七十機関と協力拒否した百十三機関、こういったところから客観的な資料が得られなかったということはわかるんですけれども、残りの九百余りの機関から客観的資料が得られなかったというのは、どういった背景で資料が得られなかったのか。

 また、実地調査をしたんだけれども資料が得られなかったのは何件ぐらいあって、そして、電話や書面調査をしたんだけれどもそれを結果的に得られなかったというのが何件あったのか、その内訳も教えていただきたい。

佐々木政府参考人 まさに御指摘のように、実地調査なり電話をかけて書類を送ってくださいという協力依頼をしたにもかかわらず、ありませんといって入管として入手できなかったというのが背景でございます。

 そして、どのくらいのものが入手できなかったということを御報告しますと、客観的資料を入手できなかったのは七百三十九機関。これのうち、ちょっと今回取り急ぎ集計した速報値で申し上げますと、実地調査を行ったにもかかわらず、その客観的資料が入手できなかったのは約二百機関、それから、電話・書面調査を行ったにもかかわらず、入手ができなかった機関が約五百四十機関でございます。

源馬委員 ありがとうございます。

 実地調査をしたんだけれども、特にですね、現地に赴いて実地調査をしたんだけれども客観的資料が得られなかったというのは、もう既に破棄されていたとか、三年経過していたとか、そういうことでよろしいんでしょうか。

佐々木政府参考人 それが主でございます。

 保存期間中にもうなければ、それは違反行為になりますので、違反問題の方にオンして計上をしているものでございます。それを超えて、もう本来保存義務はないけれども、やはりない、そのほかのタイムカードなどもないというのが、入手できなかったものでございます。

源馬委員 ありがとうございます。

 そうすると、この実地調査をしたにもかかわらずの約二百、それから電話調査の約五百、合わせて七百三十四件の資料が得られなかったのは、二種類しかなくて、一つは、もう保存期間を経過しているもの。もう一つは、保存しなきゃいけない期間なんだけれども、違反をして、もう既になくなっている、これはもう既に通報済みのものであるという理解でよろしいですか。

佐々木政府参考人 基本、結構でございます。

源馬委員 基本と言われるとよくわからないんですが、それでいいということでいいんでしょうか。

佐々木政府参考人 賃金の問題につきましては、今ので結構です。

 そのほかに、人権侵害で調査をしているものもあります。聴取票の中にその疑いがあるものが記載されている場合は、それを理由に全件実地調査の方に行っていますので、行ってみたところ、何もそれを裏づけるようなものが得られなかったということはあり得ます。

源馬委員 今、でも、お伺いしたのは賃金台帳やタイムカードの写し等の客観的資料ということなので、暴力とかそれには余り関係ないんではないかと思うんですが。

佐々木政府参考人 それは、基本的には、聴取をする会社側、それから、もし技能実習生が残っていたら聴取をするということでございますけれども、それに協力を得られなければ手ぶらで帰ってくるということになるかと思います。

源馬委員 じゃ、その七百三十四件にはそれも入っているということでいいですね。もし違えば、また後で訂正してください。七百三十四件の客観的資料が得られなかったものの中には、賃金台帳等はあるけれども、暴力の疑いがあるという指摘があって、それに対する客観的資料がなかったということも含まれているのか、含まれていないのか。これは単純な質問なので、はっきりと。

佐々木政府参考人 それは含まれます。

源馬委員 わかりました。

 では、賃金に関することだけではないということでした。

 一方で、次にお伺いしたいのは、会社側がつくる賃金台帳とかタイムカードだけではなくて、実習生へ振り込みで給料を払った、その振り込み履歴が確認できたのは、対象となった四千二百八十機関のうち、何件あったんでしょうか。

佐々木政府参考人 賃金の振り込み件数につきまして、今回、調査の対象項目としておりませんでしたので、その数につきましてお答えは困難なのですが、他方で、実地調査又は電話・書面調査におきまして、調査対象である失踪技能実習生のうち、合計三千五百六十人分の賃金台帳等の客観的資料が入手できています。

 そのうち、六割以上の二千三百人余りにつきましては、実習実施者から技能実習生に対する報酬の銀行口座への振り込み記録あるいは技能実習生の給与受領証等を、報酬の支払い状況を裏づける資料として確認をしております。

    〔委員長退席、石原(宏)委員長代理着席〕

源馬委員 二千幾つかと、ごめんなさい、ちょっと後でまた数字を教えていただきたいんですが、聞き逃してしまいました。

 つまり、その数の人たちには、会社側がつくった賃金台帳とかではなくて、客観的に振り込んだ、あるいは客観的に実習生が受領したという証拠があったということだと思うんですが、それこそがまさに、それがあって初めて、ちゃんとした、企業側が言っている額が正しかったという客観的資料じゃないかなというふうに思います。一方的に賃金台帳とかだけだと、やはりそれは幾らでも後で操作はできるわけですから。しかも、事前にいついつ行きますよと言って調査をしているところもあるわけですから。

 本来、この調査結果で出すべきは、客観的資料というのはその数だと思うんですけれども、もう一回その数をちょっと教えていただきたいと思います。

佐々木政府参考人 三千五百六十人分の賃金台帳等の資料が入手をできており、その六割以上の二千三百人余りにつきまして、銀行口座の振り込み記録などがあって突合ができているというものです。

 もとより、この二つだけを突合したわけではございませんで、先ほども申しましたように、例えば労働時間であれば、タイムカードあるいはそのほかの記録した紙なども協力を得て入手をしているところでございます。

源馬委員 この三千五百六十の賃金台帳等の資料が得られた中で、どのぐらいの件数でこれは違反がないという認定をしているのか。そしてさらに、そのうちの二千三百が振り込み履歴とか受領証があったということなんですが、このうちの何件で、しっかりと会社側の言い分と合っている、最賃割れとかではない件数というのはどのぐらいあったんでしょうか。

佐々木政府参考人 申しわけありません。今申し上げた二つ以上の書類を突き合わせて確認をしたうち、どれだけに問題があったかという数については集計をしておりません。

源馬委員 わかりました。では、また改めてそれはお伺いしたいと思います。

 続きまして、協力拒否をした百十三の機関ですとか、倒産したり所在がわからなくなった二百七十機関、これらの機関について、特定技能の在留資格については慎重な審査を行って、必要に応じて法令の規定による実地検査等を行う必要があるというふうに報告書でありますけれども、具体的にどのように、これらの協力を拒否したりした機関に対して今度の特定技能の分野で対応していく方針なのか、政務官にお伺いしたいと思います。

門山大臣政務官 お答えいたします。

 今回の失踪事案調査の対象実習機関等で技能実習生が今も在籍中の機関に関しましては、外国人技能実習機構又は地方入国管理局において、平成三十一年度末までに技能実習法ないし入管法に基づく実地検査等を行う方針であり、とりわけ調査拒否をした実習機関に対しましては、速やかに実地検査等を実施してまいりたいと考えております。

 また、調査拒否等により調査ができなかった機関に係る情報については、外国人技能実習機構及び地方入国在留管理局とも共有しており、今後、調査拒否等をした機関から技能実習計画の認定申請や特定技能の在留資格に係る申請がなされた場合には、外国人技能実習機構や地方出入国管理局において、調査への対応姿勢を含めた慎重な審査を行う予定でございます。

源馬委員 協力拒否した会社についてはそうして厳しく調査をしていくことは可能かと思うんですけれども、倒産をしたりとか所在がわからなくなった会社というのが、例えば新たな会社を設立して、そしてこの特定技能あるいはまた技能実習制度を利用しようとした場合、それは把握をできるんでしょうか、今の仕組みの中で。

佐々木政府参考人 今後、今御指摘の倒産、所在不明等の実習実施機関から技能実習計画の認定申請あるいは特定技能の在留資格に係る申請がなされるということは、とりあえず想定しがたいとは考えております、その会社がなくなってしまっていたとすれば。

 仮に、その申請がなされた場合、それから、何らかの情報、形を変えて新しいものにしてというような情報が得られたときには、慎重な審査を行います。

源馬委員 それは情報が得られたら当然そうだと思うんですが、ちゃんと情報を得ることができるんですかという質問なんです。

 つまり、所在もわからなくなってしまった、一回倒産をしてしまった。もう一回、実はその会社が、わかりませんけれども、例えば最低賃金以下の賃金で雇っていたりとか、人権上問題があるような扱いを仮にしていた、今回はそれが調査できなかった。そしてその会社が、一度は会社を清算したんだけれども、また別の会社をつくって、同じようなことをやってやろうというケースが出てくるかもしれませんが、それは対応できるんでしょうか。

佐々木政府参考人 会社のありようにつきまして、入管として一〇〇%トレースをできるかというと、それは難しいと思います。

 ただ、関係省庁とも協力を得て、何らかのいわば疑念を持たれるような情報については積極的に入手をして、活用していこうと思います。

源馬委員 つまり、今回の調査でやはり調査できなかったところもあって、それはもちろん仕方ないところもあると思いますが、そこに何か問題のもととなるようなものも潜んでいる可能性もあるわけなので、これで十分ということではなくて、きっちりと、この問題の芽を摘めるような調査、そしてこれから運用をしていってもらいたいなというふうに思います。

 ちょっと順番が変わりますが、多分七番目に通告させていただいている質問だと思うんですけれども、今回の調査で、前回、非公式の勉強会という委員長が開いてくれた場の中で御説明を私も聞かせていただきましたが、法務省の方からいろいろな事例を出していただきました。その中に、最低賃金割れではないということで、最低賃金ぴったりの額だった会社があったわけですけれども、今回の調査で最低賃金の額ぴったりの額だったという件数というのはどのぐらいあったんでしょうか。

門山大臣政務官 お答えいたします。

 今回の調査対象である実習実施機関のうち、最低賃金額と同額の賃金を支払っていたと認められる実習実施機関の正確な数につきましては、そのような観点での集計を行っていないため、正確な数値としてお示しすることは困難でございます。

 ただし、取り急ぎ集計した値として申し上げるならば、今回の調査で賃金台帳等を確認することができた二千九百九十三機関のうち、おおむね九百機関強については失踪直前の時期に最低賃金額と同額の給料が支払われていたものとうかがわれるところでございます。

源馬委員 私が受けた印象では、これは、最低賃金額ぴったりに合わせて台帳とかを出したんじゃないかなという疑いも拭えないんじゃないかという印象を受けました。

 法務省としては、今回の調査をして、この九百件、二千九百件のうちの九百件、この九百件の最低賃金ぴったりの額を出してきたということについてはどのように判定をされているのか。これはもう最低賃金割れではないからセーフだという認定なのか、いや、ちょっと疑わしいんじゃないの、この前の勉強会でもそういうコメントも出されていました。グレーである可能性はあるという御意見も現場の方から出されていました。どういうふうに認定しているのかを、見解を伺いたいと思います。

    〔石原(宏)委員長代理退席、委員長着席〕

佐々木政府参考人 今お話しの、調査の過程で得られた資料につきましては、それはそれで把握をするのですけれども、あわせまして、そもそも、雇用契約を結ぶときにどのくらいの額で雇用契約を結んだかという資料も、もともと入国審査のときのものがございまして、中には、そのときもその額であったというものもございますので、それの適否はおいておくといたしましても、その調査に当たってそれに無理無理合わせたというものではないと認められる事案もあります。

源馬委員 そういう事案もあるんでしょうけれども、そういう事案もひっくるめて、この九百の最低賃金の額ぴったりの額を出してきたところは、受入れ機関がこういうふうに言っているんだから、最低賃金ぴったりだろうが何だろうが、これは適正であるというふうに今回の調査で分類をしたのかどうかをお伺いしたいんです。

佐々木政府参考人 少なくとも最低賃金違反ではないという分類はしております。

源馬委員 それは実習生に確認したんですか。

佐々木政府参考人 確認できる、要するに実習生がいるというところについては、今御指摘のようにインタビューをしています。

源馬委員 そもそもの問題なんですが、今私が問題提起をさせていただいたように、会社側だけの調査では、先ほどおっしゃっていただいた振り込みの履歴とかあるなら別ですけれども、賃金台帳だけだったら、幾らでも後から変えられるんじゃないかという疑いはあるわけですね。これはお認めになると思います。

 一方で、実習生の話だけ聞いて、失踪した実習生が自分の失踪を正当化して、こんな扱いを受けていましたと言う可能性も私もあると思います。

 それがあって、両方確認をしなきゃいけない。

 一度は個票があって、その個票の中には、こういうひどい扱いがあって、七割以上も最低賃金割れだったというのが出てきて、それが全部本当かどうかわからないけれども、調査をしなきゃいけない。受入れ機関は、今おっしゃったように、二千九百九十三機関のうち九百機関が最低賃金ぴったりの額を出して、何か怪しいぞと法務省の方もこの前の勉強会でもおっしゃっていた。

 そうしたら、やはり両方を突き合わせて確認をして、失踪した技能実習生の話も聞き、そこも調査をして、受入れ機関の言っていることも調査をして、それで初めて適正だったかどうかというのがわかるんじゃないですか。いかがですか。

佐々木政府参考人 今お話しのように、さらなる調査の深掘りというのはまだしていくわけでございまして、特に技能実習生、それから新しい特定技能の受入れに際しては慎重な審査をしてまいります。

源馬委員 そうすると、今回の調査で四千二百八十機関を調査したんだけれども不正が認められたのは七百二十一人分だったという調査結果は、ちょっとやはり、私はミスリーディングするような調査結果だと思うんですよね。

 私は、より正しく実態を言うなら、今回調査した件数は七十四件だったと。つまり、実習生にも話を聞けた、それが両方できた件数が七十四件、その七十四件しか調査できなかったというのが正しい今回の調査の結果ではないかと思いますが、御見解を伺います。

佐々木政府参考人 今御指摘のように七十四人には話を聞きましたし、先ほども申し上げましたように、実地調査に赴いて、そこにいる技能実習生にも、失踪技能実習生ではない、今在籍をしている技能実習生にも話を聞いていますので、その意味では一つの補強資料になったと思います。

源馬委員 いや、今の後段はやはり違うと思います。別の人ですから、失踪した原因が違法な扱いだったと訴えている人とは違う人が今働いていて、しかも、その現場で、自分の職場でそんなことは今普通に考えたら言えないわけなので、それは全然違うと思います。

 つまり、七十四人の実際に被害を訴えたという人にも話を聞けた、そして受入れ機関の話も聞けて調査をした、七十四件しか調査ができなかった、本来の調査ができなかったということではないかと思いますが、もう一回御見解をお伺いします。

佐々木政府参考人 今回、できるだけ客観的な資料を得て、少なくとも問題があったところについてこの数でしたというお示しの仕方をしているものでございまして、ほかのところが全てよかったですという含みのものではございませんので、先ほど申しましたように、必要な調査、あるいは今後申請が出てきたときの慎重な審査、これは引き続き行ってまいります。

源馬委員 やはり、先ほどもおっしゃったように、わからない、わからなかったケースもあるわけですね。客観的な資料といっても、会社が一方的に出してきたもの、それは通帳の振り込み履歴なんかが含まれていればまた別だと思いますが、ただ台帳だけとかそういったケースもあった。それで、正しい、本当にこれは白だというふうに言えないということは法務省も認めていると思います。

 さらに、この二千九百九十三のうち、九百は最低賃金ぴったりの額を出してきた。これも、現場の方がこれはちょっとグレーの可能性もあるなという感想を持つ中身だったわけなので、少なくとも、四千二百八十機関のうち不正があったと認められたのは七百二十一人だけだったというと、そのほかは不正がなかったかのようにやはり聞こえるので、そのほかはちゃんと調査できなかったというふうにしっかりと認識を表明していただきたいというふうに思いますが、最後にもう一回、御見解をお願いします。

葉梨委員長 では最後に、佐々木長官、簡潔にね。

佐々木政府参考人 調査をした結果、疑いがその時点では認められなかったという理解でおります。

源馬委員 ありがとうございました。

 調査はしたけれども、やはり疑いがあるかないかもわからなかったということだと思います。

 以上で質問を終わります。ありがとうございました。

葉梨委員長 以上で源馬謙太郎君の質疑は終了いたしました。

 次に、山井和則君。

山井委員 二十分しかありませんので、順番に行かせていただきたいと思います。

 今の源馬議員の質問にもありましたように、今回の調査等は極めてずさんで、ぜひこれは再調査を求めたいと思います。一方しか調査をせずに、それで白だった、そういうのは調査とは言いませんから、世の中では。話にならないと思います。

 本題に入る前に、ちょっと最近、深刻な問題が出てきております。一、二問、その質問をさせていただきたいと思います。

 配付資料をごらんください。伊藤詩織さんという方が、ミー・トゥーということで、性被害を明らかにしておられます。

 ここに記事がありますように、一ページ目、伊藤さんは二〇一五年四月、就職相談のため男性と都内で飲食した際に、意識を失い望まない性行為をされたとして、警察に告訴。準強姦容疑で捜査されたが、嫌疑不十分で不起訴処分となった。

 会見で伊藤さんは、日本では七月に改正刑法が施行されたが、強制性交罪も、被害者が抵抗できないほどの暴行、脅迫を受けたと証明できないと罪に問えないことは変わらない、三年後の見直しでさらなる議論が必要だと。また、会見では、公にしてからバッシングを受けて、前のように生活できなくなった、しかし、隠れなければならないのは被害者ではない、話すことでよい方向に変えていきたいと。

 実際、この方は、公表してからいろいろなバッシングを受けて、日本に住みづらくなって、今ロンドンに移住をされております。

 次のページ、その伊藤詩織さんの支援の会が発足しました。

 さらに、次の四ページを見ていただきたいんですけれども、この伊藤詩織さんの件だけではなくて、最近報道を見ておりますと、こういう、大量のお酒を飲ませて意識を失わせ、それで性暴力を加えたと。

 これ、ひどいなと思うんですけれども、連日の報道で、どんどん相次いで不起訴になっているんですね。その理由は、抵抗したことが証明できないと。それは、睡眠薬飲まされたり大量の酒飲まされてふらふらになっていたら、抵抗できるはずないじゃないですか。

 それで、かつ、「就活セクハラ」「学生は防衛策を」と五ページに書いてあるけれども、いや、防衛策するのは学生じゃないでしょう。そもそも、そういうことを放置している国の法律なり法務省が何とかしないと。酒飲んだら危険ですよ、酒飲まされて性暴力受けても、無罪放免になりますよ、そんな法治国家、ないでしょう、先進国で。これは本当に深刻過ぎる話なんです。

 そこで、山下大臣に冒頭、一問お聞きしたいんですけれども、私の理解が間違っていたら教えてほしいんですけれども、一般論としては、大量にお酒を飲ませて、意識がなく、抵抗できない状態で性暴力を受けても、結局、現状では不起訴になる可能性が高いというふうに理解していいんですか、今の日本では。

山下国務大臣 これは、個別の事件を離れて、あくまで一般論として申し上げれば、人の心神喪失若しくは抗拒不能に乗じ、又は心身を喪失させ、若しくは抗拒不能にさせて、性交等やわいせつの行為をした場合には、刑法に規定する準強制性交等罪や準強制わいせつ罪が成立し得るものと承知しております。

 そして、個々の事実関係を踏まえてのお話でございますが、お尋ねのように、大量にお酒を飲ませて抵抗できない状態というのが、先ほど申し上げた、準強制性交等における、心身を喪失させ、あるいは抗拒不能にさせてに当たる場合には、先ほど申し上げた準強制性交等罪や準強制わいせつ罪が成立し得るものと承知しております。

 他方で、不起訴になるかどうかにつきましては、これはもう、証拠関係を踏まえて犯罪の嫌疑が十分でない場合における嫌疑不十分や、あるいは犯罪の情状や被害者の意向等の犯罪後の状況から訴追を必要としない場合における起訴猶予などさまざまであるところ、起訴すべきかどうか、不起訴とすべきかについては、検察当局において個別の事案ごとに証拠関係に基づき判断されるものということでございまして、一概に申し上げることは困難であります。

 しかしながら、御指摘の性的な被害につきましては、いわゆる暗数も相当あるというふうにも考えられますので、まずは性犯罪の実態を把握することが重要でありまして、法務省としては、暗数も含めて性犯罪被害の実態を把握し、それを踏まえて、性犯罪に関する施策のあり方について必要な検討を加え、性犯罪被害で苦しむ方をなくすように努めてまいりたいと考えております。

山井委員 これは報道で見るぐらいですけれども、私、山下法務大臣になって、最近こういう、お酒を大量に飲ませたり、そういう形で性暴力して、不起訴になっているケースがふえているような気がしてなりません、ここ一、二年で。

 ですから、その事実関係を確認したいので、本当かどうか、それを確認したいので、ぜひ法務委員会の理事会に、最近のここ数年のこういう案件と、起訴になった案件の、不起訴、起訴の資料を、私も印象なので、わかりませんので、事実関係を確認したいので、理事会に提出していただけませんか、委員長。

葉梨委員長 御指摘がございましたので、後刻、理事会で協議します。

山井委員 これは私、与野党関係ないと思うんです。本当に、報道を見ていて、何党関係なく、本当に悪質な犯罪が放置されているんじゃないかというのを、これは別に私だけじゃなくて、多くの人が本当に思っているんです。

 それで、もう一点だけ。

 これは山下大臣、問題意識を多分持っておられるんじゃないかと思うんです。これは別に政争の具にするために私は言っているんじゃないのでね。これは問題意識を持っておられないかということと、この六ページ、七ページにありますように、例えばスウェーデンなどでは、暴行、脅迫等がなくてもレイプ罪が成立するとか、これはヒューマンライツ・ナウの資料ですけれども、その次の七ページにありますように、暴行、脅迫等の要件を求める法制度の国でも、日本より広くレイプ罪を想定しているとか。

 これは、やはり本当に刑法の改正というものを議論しないと、私、本当に、連日、新聞を読むたびに暗たんたる気持ちになりますよ。意識を失わされて抵抗しなかったから不起訴って、それはないでしょう、どう考えたってと思うんですが、刑法の改正をぜひ検討していただきたいと思いますが、いかがですか、大臣。

山下国務大臣 冒頭、私は、委員の今の御指摘、私の大臣就任以来云々というところがありましたが、これは全く同意しかねる話でございます。それにつきまして申し上げたいことはあるんですが、これは貴重な審議の場でございますので、そこはあえてのみ込んで答弁させていただきますが。

 これにつきまして、まず、暴行、脅迫要件の改正についてお尋ねがありましたが、平成二十九年の刑法の改正の際には、この要件を撤廃、緩和することについて、暴行、脅迫のような外形的行為がないときは被害者の同意を証明することが容易でないことなどから慎重な検討を要するものとして、そのような改正が行われなかったところでございます。

 現在、暴行、脅迫につきましては、強制性交等罪における暴行、脅迫は、従前の強姦罪における暴行、脅迫において、最高裁判所の判例上、反抗を著しく困難ならしめる程度のものであれば足りると示されており、強制性交等罪についても同様と考えられるところでございます。

 そして、この相手方の反抗を著しく困難ならしめる程度のものであるかどうかは、これも最高裁判所の判例上、単にこの暴行、脅迫のみを取り上げて観察すればそのような程度には達しないと認められるものであっても、被害者の年齢、行為の時間、場所の四囲の環境その他具体的事情と相まって、相手方の反抗を著しく困難ならしめるものであれば足りると解されておりまして、例えば、具体的な状況において、手首をつかんで引っ張る、あるいは、背後から抱きつく、下着を脱がせる、ソファーに押し倒すなどの有形力の行使のみが認定された事案で、被害者と被告人の体格差や犯行場所に二人きりであったことなどを踏まえ、反抗を著しく困難ならしめる程度の暴行、脅迫があったものと判示したものがあると承知しております。

 こういったことから、検察当局としても、具体的な事案に即した適切な立証活動に及び、また適切な判断に基づいてしているものと私は認識しておりますけれども、引き続き、性犯罪被害の実情の把握等を着実に進めてまいりたいと考えております。

山井委員 先ほどの、山下大臣になってからこの種の事件の不起訴がふえたということは、私の印象論ですので、謝罪して撤回したいと思います。

 ただ、私は報道を見てそう感じましたので、本当にそうなのかどうかということは実際の資料を見ないとわかりませんので、先ほど言いましたように、ぜひ委員長、そうでないとおっしゃるのであれば、実際、過去数年の経緯がどうなのかということを、委員会に資料を提出していただきたいと思います。

葉梨委員長 一般的な傾向としてそういう傾向があるのかどうかという御指摘ですね……(山井委員「いえいえ、数字です、何件告発されて、何件不起訴になって、起訴になったかということを提出してください」と呼ぶ)いずれにしても、理事会で協議をします。

山井委員 はい、申しわけありません。

 それで、この外国人技能実習生の件なんですが、昨年、私も含めて、二千八百枚、写させていただきました。

 それで、配付資料にもありますように、もう多くは語りませんが、今回、余りにもずさんだと思います。私たちの書き写しでは、五千人ぐらい最賃割れだというふうに認定したのが、五千人のうち五十八人、一%しか認定されない。これはもう、はっきり言って、調査がひど過ぎる、調査になっていないと言わざるを得ません。

 それで、一問目、きのう私に出てきた資料、十九ページを見てください。

 ここで、源馬議員の質問にもつながるんですけれども、この十九ページの資料の下、七百二十一人は不正行為の疑いを認めたということですが、三千七百七十七件も、上記以外、その中には、書類不備を認め、労働基準監督機関への通報を行ったものも含むとなっているんですね。

 ということは、ちょっとお聞きしたいんですが、これ、そもそも、四千四百九十八件のうち通報を行ったのは何件ですか。軽微なものも含め、通報を行ったのは何件ですか。

葉梨委員長 通告はされていますか。(山井委員「いや、していないです。きのうの晩もらったので、この資料」と呼ぶ)そういうときは、事務方を登録するようにしてください。後で調べさせますので。

山下国務大臣 今、ちょっと通告を受けていないので、ちょっと答えかねます。

山井委員 そうしたら、ちょっと私の質問をしている間に答えてください。

 シンプルクエスチョンで、四千四百九十八件のうち、労基署に通告したのは何件かというのは、これはシンプルファクトですから。別に……

葉梨委員長 いずれにしても、そういうシンプルファクトを答えるために政府参考人がおりますので、登録するようにしてください。

山井委員 はい。

 いや、そんなこともわからないとは、私もびっくりしました。

 それで、私、もう一つ、今回びっくりしたのは、二千八百枚、私たち書き写しましたけれども、書き写しだけでは不十分なので、正式な情報開示請求で出してもらおうと思って、これ、数万円かかったんですけれども、開示請求したんです。ところが、結果的に、これは全部真っ黒なんですよ、二千八百枚。

 私たちが書き写しましたよ。でも、しょせん書き写しだから、本物を当然見たいじゃないですか。そう思って開示したら、これ、出てこないんですよ。ということは、これは今後も出てこないんですか。

 なぜならば、これだけ劣悪な労働条件で、失踪というよりも、人権侵害や労基法違反で緊急避難したんじゃないかということがわかったのは、この黒塗りを、法務委員会の、これは与野党含めてかもしれません、委員長さんも含めてだと思いますけれども、皆さんが英断で黒塗りを取ってくださったから、あ、こんなひどい状況だったのかということで、これは与野党関係なく、改善に、前に進んだと思うんですよ。ところが、これがまた後退しちゃって、二度と公開しない。

 そうしたら、今後、失踪の数もふえていますから、山下大臣そして葉梨委員長、ぜひ、これが公開されなかったら、劣悪な状況は明らかにならなかったんですよ。それをもう一回出さない、隠すというのは、私、全く理解できないんです。本当に、法務委員長そして厚生労働大臣が、改善したい、改善したかどうかをチェックしたいと思われるのであれば、ぜひとも今後も、新制度になってから、また最新のこの聴取票、プライバシーや犯罪に関係することは黒塗りでいいですから、ぜひ改めて開示していただきたいと思いますが、いかがですか。

葉梨委員長 資料のお取扱いについては理事会で協議いたします。昨年閲覧を認めたのも、そういう形でコピーをして出すということまで理事会で認めたわけではございませんので、そのような御指摘もあったということを踏まえて、後刻、理事会でも協議をいたします。

 その上で、山下法務大臣。

山下国務大臣 まず、聴取票に係る情報公開請求に対するお尋ねがありましたが、情報公開法に基づく開示請求については、情報公開法の手続と要件にのっとり、適切に開示、不開示の決定をしているというところでございまして、お尋ねの聴取票についても、同法の規定にのっとり判断したものでございます。

 そして、新制度下の聴取票を公表すべきではないかとのお尋ねがありましたが、聴取票は、入管法に違反して資格外活動等を行った失踪技能実習生から任意に聴取した情報を記載したものであります。その聴取は内容の公開を前提として行われておらず、その記載内容は失踪技能実習生等の個人に関する情報そのものでございます。このような性質を有する聴取票の記載内容が広く開示されれば、今後の調査や捜査への協力が得られなくなる可能性があるほか、個人の特定につながったり、失踪者本人のプライバシー等が損なわれるおそれもございます。そのため、聴取票は、本来、閲覧や公開に応じられない性質の文書であると考えておりまして、聴取票を公表するということは考えておりません。

山井委員 じゃ、昨年、理事会でこれを公開して、何かトラブル、不都合があったんですか、一つでも。山下大臣、答えてください、そこまでおっしゃるのであれば。

山下国務大臣 昨年の公開につきましては、もともと我々がそういった聴取票を公表するということについては、先ほどるる申し上げた理由から、これは考えていなかったところでございます。しかしながら、他方で、委員会の御要請がございました。そして、その当時、網羅的な調査がなされていなかったということがございまして、そうしたものにかわるものとしてお見せしたところでございます。

 そうしたところで、我々としては、理事の皆様に限定的に開示をさせていただいたということで考えております。そうしたことをぜひ御理解賜ればと考えております。

山井委員 質問に答えてください。

 開示したことによって不都合は一件でもあったんですか、お答えください。

葉梨委員長 いや、この質問に対しては、私は、大臣は答えておると思います。

 それで、この資料の今後の取扱いについては、昨年皆様が書き写された聴取票なども資料として、具体的な行政調査が始まっておるところでもございますので、そのような状況も踏まえて、先ほど来申し上げているとおり、後刻、理事会で協議をいたします。

山井委員 その具体的調査が、被害者にほとんど聞かず、一方的で、調査になっていないから言っているんじゃないんですか、原票を出してくれと言って。

 山下大臣、質問にちゃんと答えてください。不都合は一件でもあったんですか。

山下国務大臣 具体的にどのような不都合があったかということを答えること自体が、この聴取票の内容について公表しないことの趣旨に抵触いたしますので、お答えは差し控えさせていただきたいと考えます。

山井委員 逆に、不都合というのは、法務行政がどれほど技能実習生に対して冷たくて、人権侵害や労基法違反を放置していたかばれたという、それはあなたたちにとっての不都合なんじゃないんですか。

 技能実習生にとっては、皆さん喜んでおられるんですよ。自分たちの心の叫び、誰も聞いてくれなかった暗闇の中で、人権侵害や労基法違反で泣かされて、中には自殺や死亡までしている人もいる。そういう実態から、全然、法務省はそれを公開どころか隠蔽してきた、握り潰してきた、それが明らかになったということに、技能実習生や支援団体は大喜びだったんですよ。それを隠すということは考えられません。ですから、ぜひとも公開していただきたいと思います。

 続いては、今回、また死亡事案、自殺と死亡者が、病死五十九件、自殺十七件、出ておりますが、この中にパワハラや長時間労働、過労死というのがあるんじゃないかと思います。

 これは厚労省になるかもしれませんが、この中で、単月百時間、二カ月連続八十時間の長時間労働、過労死ライン超えは何人か、そもそもこれらの死亡者の残業時間を全員把握しているのか、全員に労災はおりているのか、お答えください。

田中政府参考人 お答え申し上げます。

 今御指摘ありました病死五十九件、自殺十七件につきましては、法務省で取りまとめたPT調査結果において、平成二十四年から平成二十九年までの間に把握した件数と承知しております。

 厚生労働省におきましては、労災認定に係る保険給付調査結果復命書の保存年限が五年でありますことから、平成二十五年以降の死亡事案について確認を行ったところですが、当該期間に係る病死は五十四件、それから自殺は十四件でございました。このうち、いわゆる過労死として認定したものは一件でございます。

 具体的な労働時間等につきましては、個別事案であり、回答を差し控えたいと思います。

葉梨委員長 山井君、質疑時間が終了しておりますので、まとめてください。

山井委員 はい、わかりました。

 これで終わらせていただきますが、ますます失踪者もふえ、私の聞いている話では、ことしに入って、技能実習生や留学生、外国人、ベトナム人などの死亡者はふえているという悲鳴も聞いております。減っているんじゃない、ふえているんです。ぜひともこの審議を続けていただきたいと思いますし、再調査を改めて求めたいと思います。

 ありがとうございました。

葉梨委員長 以上で山井和則君の質疑は終了いたしました。

 次に、藤野保史君。

藤野委員 日本共産党の藤野保史です。

 さきの臨時国会で私たちが問題にした聴取票の取りまとめ、この中身もそうですが、やはり表現ぶり、これなんですね。失踪した原因は実習者の側にあるという印象操作だと我々は指摘をいたしました。大臣の答弁も、九割の技能実習はうまくいっている、こういうことなんですね。で、今回はどうなのかということであります。

 私、今回の報告書、何度も読ませていただきましたけれども、印象としては、失踪については、野党の最賃以下七割という言い分は間違っている、失踪技能実習生の再聴取をしたが曖昧な言い分だった、実習先企業の言い分は客観的資料で裏づけられている、こういう印象が物すごく強く読んだ者に、私には迫ってきたということなんですね。

 死亡について言えば、死亡事案と技能実習との関連性はないということが繰り返されておりました。

 本当にそうなのか、根拠に基づいているのかということをちょっと聞いていきたいと思います。

 まず、失踪についてですけれども、実地調査をやられておりますが、前提として国税庁にお聞きしたいと思うんですけれども、国税庁の査察の場合、連絡等はどのように行うのか。

重藤政府参考人 お答えいたします。

 査察調査ということでございましたが、査察調査は、国税通則法に規定する犯則調査手続に基づいて行うものでございます。内容的には、犯則嫌疑者等の承諾を前提とした質問、検査、領置といった任意調査を行う場合、それから、必要がありますときは、裁判官の許可を得て臨検、捜索、差押え、記録命令つきの差押え等の強制調査を行う場合がございます。

 査察調査につきましては、法律上、事前通知等の定めはなくて、調査着手する際には強制調査を行うことが一般的でございまして、その場合は特に事前通知等を行うことはないのが一般的であるというふうに承知しています。

藤野委員 事前通知を行うことが一般的ではないと。

 厚労省にお聞きしますが、労基署の調査の場合はどのようになっていますでしょうか。

田中政府参考人 労働基準監督署におきましては、監督指導を行う際、適正な調査を実施する観点から、予告を行うことなく事業場に立ち入ることといたしております。

藤野委員 今答弁がありましたように、やはり適正な調査を行うためには、予告なしに入るというのがやはり当然だと思うんですね。

 法務省にお聞きします。今回の調査はどうだったんでしょうか。

佐々木政府参考人 多数の実習実施機関を対象として、限られた人員体制のもと、一定の期間で調査をする必要がございましたので、調査の場所に赴いて、そこに人がいないということを避けるために、事前にアポイントをとりました。

藤野委員 ですから、普通の政府がやられている調査とも大きく違うわけですね。事前に連絡をする。しかも、これは一般的な調査ではなく、失踪という事案が起きた、まさに合理的に推認される、隠すとかさまざまな、そういうことが合理的に推認されるような場合でありまして、そういう意味で、非常に異質な調査が行われたというのはまず大前提として認識しなければならないと思います。

 報告書の十一ページ以下を見ていただきますと、この報告書自体でも、新たに疑いが認められた不正行為として事例を七つ挙げていらっしゃる。その七つの事例のうち実に六つで、虚偽の報告書、虚偽の賃金台帳ということがあるわけです。

 事例の一では、虚偽の賃金台帳等を作成した。事例の二では、地方入管局に対して虚偽の報告を行っていた疑いがある。事例三は、賃金台帳を作成していなかった。事例四は、賃金台帳を廃棄していた。事例五は、監理団体が虚偽の内容の監査結果報告書を提出していた。事例七も、監理団体が虚偽の内容の監査結果報告書を提出していたということで、要するに、この報告書そのものからも、虚偽の賃金台帳とか虚偽の監査報告書というのが多数なわけですね、皆さんが挙げられた事例の中でも。

 大臣は、可能な限り賃金台帳やタイムカードといった客観資料を入手したと答弁されているわけですが、その客観資料の中身がやはり問題なんです。しかも、事前に通知をしている。

 法務省にお聞きしたいんですが、今回、軽微な書類不備によるものは調査から外れていると説明されていますが、その件数は何件でしょうか。

佐々木政府参考人 二千六十人分、千七百八十八機関です。

藤野委員 二千六十件、千七百八十八ということでありました。

 まとめた概要ペーパーの一枚目の(三)を見ますと、調査結果(軽微な書類不備に係るものを除く。)とあるその下に、最低賃金以下が五十八人とかいろいろ書かれているんです。二千六十件といえば、五千二百十八人のうちの四割なんですね。ですから、大変な数が調査から除かれている上で、五十八人という数字が出てきている。

 しかも、軽微と今おっしゃったんですが、軽微なのかということなんですけれども、厚労省にお聞きしたいんですが、賃金台帳というのにはどういう項目があるんでしょうか。

田中政府参考人 賃金台帳に記載すべき項目は、労働基準法施行規則第五十四条において列記されております。

 具体的には八項目です。

 一、氏名、二、性別、三、賃金計算期間、四、労働日数、五、労働時間数、六、労働基準法の規定によって労働時間を延長し、若しくは休日に労働させた場合又は深夜に労働させた場合には、その延長時間数、休日労働時間数及び深夜労働時間数、七、基本給、手当そのほか賃金の種類ごとにその額、八、労働基準法の規定によって賃金の一部を控除した場合には、その額。

 以上八項目を記載する必要があるとされております。

藤野委員 配付資料一を見ていただきたいんですが、これらの項目、今答弁をいただいた項目というのは実際の賃金計算にもろにかかわってくるものなんですね。これの記載の不備が二千六十と。いろいろあった中身は教えてくれないんですけれども、それが調査対象から外れている。だから、本当にその賃金がどういう計算のもとに払われたのかというのがわからないわけです。賃金台帳というのは、三年間の保存が罰則つきで義務づけられている重要な書類なんですね。そういう書類が二千六十も、それ以外にもあると思いますけれども、軽微と果たして言えるのか。

 法務省にお聞きしたいんですが、先ほども答弁ありましたけれども、賃金台帳以外で、銀行への振り込み履歴書やあるいはサイン、受領証などで確認したのは全体のうち何件でしょうか。

佐々木政府参考人 三千五百六十人の賃金台帳を入手したもののうち二千三百人余りにつきまして、振り込み明細あるいは受領証などを入手しています。

藤野委員 もともと五千二百十八人のうち三千二百六十は括弧つき客観資料、そのうち二千三百が振り込み履歴書やサインで確認したというわけですから、もともとの五千二百十八との関係でいえば半数に満たない、四四%が台帳以外のものでチェックされたということで、逆に言えば、六割は台帳でしかチェックできていないということになります。

 企業の言い分が六割ということなんですが、企業の言い分だけではないということで、先ほども実習生からも聞いたんだというお話をされました。では、仮にその実習生が現在もいらっしゃる場合に、実習生から聞き取ったのは何人ということになるんでしょう。何件ということになるんでしょうか。

佐々木政府参考人 実地調査を実施しました千五百五十五の機関のうち技能実習生から事情聴取したのは、取り急ぎの集計で八百六十機関です。

藤野委員 ですから、いろいろ裏づけを得られている、賃金台帳だけでないとおっしゃるんですが、振り込み履歴とかサインは四割強、今おっしゃったように実習生からの聞き取りも千五百五十五機関のうち八百六十ですから、半分ぐらいであります。

 だから、基本的には、恐らく六割とか五割は企業側の言い分のみなんですね、賃金台帳という。ですから、今回の調査そのものが、もともと二千六十件の書類不備、軽微かどうかも含めて、これが外れている問題、銀行振り込みやサイン等による確認が四割強、あるいは実習生の聞き取りも六割、半分ぐらいということで、やはりこうした点がチェックされていない、企業側の資料のみがベースになってしまっているという点を踏まえなければならないと思うんですね。

 これ以外のチェック方法として、私が考えられるなと思ったのが給与明細書なんです。

 これも前提として国税庁にお聞きしたいんですが、所得税法では、この給与明細書、支払い明細書についてどのようにしていますでしょうか。

重藤政府参考人 お答えいたします。

 所得税法の第二百三十一条におきまして、居住者に対し国内において給与等、ちょっと一部省略しますが、の支払いをする者は、省令の定めるところにより、その給与等の金額その他必要な事項を記載した支払い明細書を、その支払いを受ける者に交付しなければならないというふうに規定されているところでございます。

藤野委員 明細書を交付しなければならない。

 厚労省にも確認したいと思います。この点、厚労省はどのように説明していますでしょう。

田中政府参考人 厚生労働省のホームページにおきましては、労働条件、職場環境に関するルールに関する労働関係法令等について幅広く情報提供をしているところでございまして、賃金についても、労働関係法令のほか、労働者の生活の保障のための規定を紹介をしております。

 お尋ねの給与明細書の交付義務につきましては、「所得税法では、給与を支払う者は給与の支払を受ける者に支払明細書を交付しなくてはならないと定められています。したがって、会社には従業員に給与明細書を交付する義務があり、給与を支払う際に交付しなければいけません。」と厚生労働省のホームページにおいて情報提供をさせていただいております。

藤野委員 ですから、会社には従業員に給与明細書を交付する義務がある、給与を支払う際に交付しなければいけませんということなんですが、法務省、今回、給与明細書を出してくださいと言ったんでしょうか。

佐々木政府参考人 今お話がありましたように、給与明細書は御本人に対して発行されるものですので、私どもが実習実施機関に赴いて調査をした、そこで実習実施機関からその提出を求めているものではありません。

藤野委員 そんなことを言っているんじゃなくて、まともな企業なら給与明細書のコピーは必ずとるんですよ。給与明細書、一個も出てこなかったんですか。そんなことないでしょう。

佐々木政府参考人 あくまで賃金台帳で確認をしましたので、なおかつ、労働基準法においてその保管が義務づけられていないこの明細書については求めませんでした。

藤野委員 労基法上で求められていなくたって、所得税法上求められているんですよ。厚労省のホームページでも、出せ、交付しなければならないと書いてあるわけですよ。それはルールなんです。

 しかも、昨日のレクでも、あったところもあったというんですね。それはそうだと思いますよ。普通の会社であれば、台帳だけでなく、給与明細書を発行するわけだから、そのコピーをとるわけです。それとダブルチェックしたらいいじゃないか、そういうことなんです。なぜされなかったんですか。

佐々木政府参考人 先ほど御報告しましたように、三千五百六十の賃金台帳に加えて、振り込み明細や受領証などで二千三百を突合して確認をしていますので、そちらの手法をとったということでございます。

藤野委員 それでは四割にも達しないから不十分でしょうと言っているんです。

 給与明細書は必ず交付しなきゃいけないんだから、必ずあるわけですよ。それと台帳と照らし合わせれば、それは皆さん方の主張を裏づけるものになるじゃないですか。何でその作業をやっていないのか。それすらやらずに、会社側の資料だけで結論づけている。そういう調査のやり方を問題にしているわけであります。

 配付資料の二を見ていただきますと、これもある企業の一例なんですけれども、そこにありますように、やはりわかりやすいんですね。出勤日数、欠勤日数、出勤時間、時間外勤務時間、基本給、時間外賃金、通勤手当、雇用保険、健康保険料、介護保険料、厚生年金保険料、所得税、住民税。だから、こういったことがわかって全体像が見えてくる。

 だから、振り込みだけだと、率直に言いますと、大事だと思いますけれども、これだけだと生の金額しかわからなくて、もともとが幾らで、幾ら引かれた上でその振り込み額になったのかというのはわからないんです。だから、振り込みを調べたとおっしゃられても、こっちとしては、ああそうですかとならないんですよ。

 だから、こういう資料が出てきて、その最後の数字が、差引き支給額がその振り込み額と一致しているというのであれば、その調査は確かにそうですねということになるんですけれども、そうならない。

 台帳ではそうでしたとおっしゃいましたけれども、先ほど、源馬委員の質問でも、何と二千九百九十三のうち約九百が最賃と同額というのは私もちょっとびっくりいたしましたけれども、ですから、そういうものに今回の報告書がどういう評価を加えているかということなんですね。調査に限界があるのはもちろん承知もしておりますけれども、だったら、そういう書きぶりをするべきだし、一方に何か印象として正しいというような印象を与えるべきじゃないと思うんです。

 例えばで言いますと、報告書の十六ページには、再聴取された七十四人の方の話と、それに対して調査をされた結果が書かれております。

 私は、率直に言って、ここを読むたびに怒りが沸いてくるんです。といいますのは、要するに、退去強制手続による聴取票を用いた回答について、手取り額なのか額面額なのかを聞いたとか、あるいは、賃金がこう書いてあるけれどもどうなのかと聞いたら、同程度だったとか多いとか少ないとか、労働時間も多いとか少ない、同じとか、こう聞いて、要するに、随分違いますよということをるる書かれているんです。実際、聴取票のやつと違うよということがるる書かれていて、非常に曖昧だということが読む方には印象づけられる。

 さらに、最後に、その真ん中あたりに、今回の再聴取のときも、最賃以下だと答えた人について改めて聞いているんですけれども、再聴取のときは、不明という回答が一人で、もう一人は最低賃金の意味がわからない旨回答したということが書いてある。非常にもう、供述そのものが曖昧だということが読めるわけですね、事実かもしれませんが。

 その後なんです。この後、この二人について、実習機関側について、いずれも最低賃金を否定し、一人については、本人の賃金台帳等の客観的資料を調査した結果、賃金の支払いに不適正は認められず、こういう結論になっています。もう一人についても、資料は廃棄済みだったものの、当該実習機関で現在実習を行っている実習生の資料を調査したところ、賃金の支払い状況に不適正な点は認められなかったという結論なんですね。

 ですから、ここを読みますと、要するに、実習生はもう全く曖昧な答えを連発していて、他方、実習機関側については不適正は認められなかったという書きぶりなんですね。

 これは政務官にお聞きしたいんですけれども、やはり調査の限界というものは恐らくみんなわかっていると思うんです。その上での調査だということで私たちも臨ませていただいております。にもかかわらず、この評価の部分、これは何でこういう評価になってしまうんですか、なぜ不適正はないと言い切れるんですか。

門山大臣政務官 お答えいたします。

 この書きぶりをどう評価、委員がそのように、ちょっとおかしい、印象はそうじゃないかと受けられたという点は御指摘として受けとめますけれども、我々が書いたのは、客観資料をなるべく調べて、これだけは認められた。その認められたもの以外だって、それは、それが認められなかったというだけで、その認めなかった中はもう全部適正だなんとは私自身は全く思っていないわけでございます。

 例えば、その中には調査できなかったものとか回答を拒否したものもありますし、その中にも、委員御指摘のように、最賃違反が疑われる可能性というのは、私はこれは十分あるんじゃないかという認識を持っています。私の印象から見れば、再調査の結果、これだけ出てきてしまったという印象を持っているわけですけれども、やはりこれが全部であるということは私自身は全く思っていません。

藤野委員 そういう今の政務官の悩みが全く見えないんです。むしろ、先に実習生の言い分を書いて、後ろでそれを否定するという書きぶりなんですよ、客観的に。読んだ方としては、要するに、否定されて、しかも、それは客観資料なるもので裏づけられているというふうに読めるというか、読まざるを得ない。こういう報告書は私はまさに印象操作だと思うんです。

 政務官がそうおっしゃるんであれば、何でそういう書きぶりをしないのかということなんですよ。

 今回の、やはり私、最低賃金、先ほど山井委員からもありましたけれども、野党のという指摘がこの報告書の冒頭に書かれているんですが、私たちが指摘をしたのは、政府が、今の技能実習制度はうまくいっている、そういう説明をしてあの法案を出してきたからなんですよ。で、国会でるる説明された、うまくいっている、うまくいっていると。聴取票を見たら、八割がより高い賃金を求めて、こういう説明をされた。これが出発なんです。

 検証すべきはここであって、我々がその聴取票に基づいて、それは、聴取票はそういう性質のものですから、それはそうですよ。それはそうですけれども、皆さん方がもともと全部フルで見られるものに基づいてああいう評価をしたことが最大の出発点であって、そこを評価し、否定するなら否定すべきなんですよ。

 今回、これを読みますと、何か我々が、限られた、限定されマスキングもされている資料で、かつ、閲覧しかできないというもとでやったものが否定され、何度も否定されているんですけれども、間違えているんじゃないか、対象を。

 より大事なのは、やはり、技能実習の実態を把握して、一人でも多くの権利侵害をなくす、防止する、救済していくということだと思うんです。今回の報告書がそれに資するものになるのか。この姿勢では、やはりそういう姿勢が読み取れないわけですよ。

 やはり、実習生の言うことは曖昧であり、企業の方は客観的に証明されたみたいなことをやられますと、今後も技能実習を続けて、特定技能はそれを土台にしていくという、そこが非常に不安になってくるということなんです。

 そういう意味でも、今回の報告書は到底納得できる中身ではありませんし、今後も、これを出して終わりというわけにはいきません。引き続き調査もされるということなので、引き続き追及をしていきたいと思います。

 先ほどの答弁の中身、ちょっと法務省に確認したいんですが、これは大臣にお聞きしたいと思います。といいますのは、四月十六日の参議院法務委員会で、我が党の仁比委員の質問への答弁で、山下大臣が、協力を拒否した、調査を拒否したところについては実地検査等を実施してまいりたい、平成三十一年度末までにと答弁されております。

 私、この調査というのは抜き打ちでやるべきじゃないかと思うんですが、いかがですか。

山下国務大臣 御指摘のとおり、今回の失踪事案調査の対象実習実施機関で技能実習が在籍中の機関に対しては、平成三十一年度末までに実地検査等を行う方針でございます。

 そして、とりわけ今回の協力を拒否した実習実施機関等に対しては速やかに検査等を実施してまいりたいと考えておりますが、その実地検査等の際は、今回の調査への協力を拒否した経緯も踏まえ、原則抜き打ちでの実地検査等を実施し、在籍中の技能実習生に係る賃金台帳等の客観的資料等をより慎重に精査するなどの厳格な検査を実施してまいりたいと考えております。

藤野委員 ぜひ、要するに、拒否している、悪質と思われる事案ですから、そこは抜き打ちでやっていただきたい。

 もう一点、これらの受入れ機関はそうなんですが、悪質な事案ほど、監理団体がかかわっている蓋然性が高いわけです。この三百八十三機関に対応する監理団体についても抜き打ち検査の対象とすべきだと思いますが、いかがでしょうか、大臣。

佐々木政府参考人 調査の手法につきまして、状況を踏まえて一番効果的な調査方法を考えます。

藤野委員 皆さんの報告書でも、七事例のうち、五事例で監理団体が関与しているんですよ。だから、悪質な事案というのは実習実施機関だけでは隠せないし、そういう意味では、監理団体がかかわっているというのが推認されるわけですから、合理的に。ぜひ、新たに行われるこの追加調査については監理団体も対象としていただきたいと思っております。

 もう一点、死亡事案についてもお聞きしたいと思います。

 報告書の二十四ページは実習外としてまとめられた死亡事案なんですけれども、この「外」に当たるものについて、幾つかは言及されておりますが、結論としては、「死亡への影響が疑われる過重労働の事実を確認することができたものはなかった。」と結論されておりますが、ちょっと時間の関係でこちらで言いますけれども、この実習外の事故のうち、ここに記されております、二十三ページに記されておりますのは、実習外の事故のうち交通事故死が二十四件を占めており、五十三件のうち二十四件を占めており、うち十四件が実習先への出勤中又は実習先からの帰宅中の事故であるとあります。

 法務省にお聞きしますが、この十四件中の出勤中、帰宅中というのは、それぞれ何時で、どのような事故だったんでしょうか。

佐々木政府参考人 件数は手元にございませんが、この十四件のうち、帰宅中、夕方の時間帯の事故が多く見られました。

藤野委員 多く見られたというのは。もうわかっているでしょう、十四件しかないんですよ。

佐々木政府参考人 数え上げておりません。

藤野委員 夕方の帰宅中ということは、仕事が終わった後ということになります。出勤中であれば、一旦リフレッシュして行かれる場合もあると思いますが、帰宅中ということになりますと、なぜ過重労働との関連を否定されるのか。その点は何か根拠があるんでしょうか。

佐々木政府参考人 今御指摘のように、夕方の交通事故死につきまして、長時間の実習により疲労していたことが原因となっているという可能性も考慮し、調査に当たりましては、死亡事故報告書や死体検案書のみならず、可能な限り、タイムカードの写しなど労働時間に関する客観的資料も取り寄せた上、残業時間について精査を行ったものでございます。

 その結果、それら資料によりまして、交通事故死への影響が疑われる過重労働の事実を確認することができなかったというのが根拠でございます。

藤野委員 だから、そう書きますと、なかったというふうに読むでしょう、要するに関連が。過重労働との関連ですね。ここは過重労働の事実を確認することができなかったという結論になるわけです。過重労働がなかったということになるわけですよ。関連性を確認できなかったというならわかるんですが、何でこれが「過重労働の事実を確認することができたものはなかった。」という表現になるわけですか。

佐々木政府参考人 先ほど申し上げたとおりでございまして、そうした労働時間等に関する資料の結果、過重労働の事実を確認することができたものはなかったというのが事実でございます。

藤野委員 人が亡くなっている事案に対して、事前のレクでも言を左右にして出さないわけです、わずか十四件の内訳についても。

 書きぶりについても、ここだけではありません。死亡事案にもかかわらず、おおむねわかったとか、二十八ページには、必要な調査をおおむね行うことができているとか、これは印象の問題かもしれませんが、私は、一件でも重大な問題であるにもかかわらず、ここの報告書から読み取れる、起きてしまった事案に対する構えといいますか、姿勢といいますか、非常に問題だと思うんですね。その関連性もなかったということを非常にやはり読む方としては印象づけられる。到底許されないというふうに思います。

 そういう意味で、この問題、もう時間も来ましたので終わりますけれども、決してきょうだけで終わりというわけにはいかない、追加調査も含めて厳しく注視していくということを述べて、質問を終わります。

葉梨委員長 以上で藤野保史君の質疑は終了いたしました。

 次に、串田誠一君。

串田委員 日本維新の会の串田でございます。

 改めて、今回の技能実習生に関するプロジェクトチームが何のために行ったのかという目的を説明をしていただきたいと思います。

佐々木政府参考人 この技能実習制度の運用に関するプロジェクトチームは、さきの臨時国会の入管法改正案の審議の中で失踪技能実習生の問題が指摘されたことなどを踏まえ、法務省として、出入国在留管理の観点から、技能実習法の施行状況の検証等を行い、運用上の改善を図ることを目的として行ったものでございます。

串田委員 運用上、これから技能実習生も多く入ってくる、その運用をしっかりと法に照らして遵守をしていくということもありますし、失踪という問題が社会的に非難されている中では、それの因果関係というものも明確にし、そういったようなことを除去するということが必要であるということで調査が行われたんだと私も理解しています。

 そういう意味で、今、国内では、ブラック企業という名前もありますが、いろいろな企業があるわけで、今回の失踪という状況の中では企業をかばう必要はないわけですよね。本当に何か問題があるんだったら問題があることを明確に示して、問題があるのであればこういうような指摘もされるんだよということで、将来、今度、技能実習生がたくさん来られたときにはそういうことがないような、ちゃんと受入れ体制をしないとそれは問題になるんだということが指摘されるんだということはやはり明らかにしていかなければいけない、そういうような姿勢が大事だと思うんです。

 ですから、かばうというふうに私は言っているわけではないんですが、そういう意味では事実を明確に示していくということは大事だと思うんですけれども、労働条件が法に合致しているということを証明するのは、使用者なんですか、従業員なんでしょうか。

葉梨委員長 これはどなたに質問。

串田委員 もし厚労省の方がいらっしゃらなくて答えられないのであれば、私の方で答えたいと思うんですけれども。

葉梨委員長 お願いします、厚労省を呼んでいないので。

串田委員 これは、労働条件に合致しているということを証明するのはやはり企業だと思うんですよ。例えば残業で割増し賃金が発生するときに、何時から何時と従業員の頭の中で計算して、それを証明していくことはできないですから。

 ですから、ちゃんと労働条件に合致しているということを証明するためにいろいろな証明資料というものの保存義務というのが法律上定められていると思います。ですから、労働条件に合致しているというのは企業なわけですね。

 今回、そこの証明が不十分だったというときに、それを表現するときに、不正が明らかに証明できなかったという、今回の報告書はそんなようなニュアンスになっているんですけれども、法に適合していることが証明できなかったというふうに書くのが、これは今の原則から照らし合わせれば正しいのではないかと私は思うんですけれども、いかがでしょうか。

佐々木政府参考人 今回、基本的に、報告書の中身もそうなっておりますけれども、不正事案を見つけ出す、不正事案を調査した、なので、これだけの不正事案が確認をされましたという御報告になっていると思います。

串田委員 ただ、その証明をする資料を一切見せられないわけですから、こちらとしてはチェックできないわけですよ。

 そうすると、法に合致しているということを証明できたものがこれだけありますよというんだったらいいけれども、証明できないということであれば、証明できなかった数というふうに言わないと、例えば、不正が証明できたということは、賃金台帳とか労働時間から明らかに最低賃金違反だと証明できたから初めて証明できたということになるんでしょうけれども、それを避けるんだったら、不正な資料を廃棄すればいいわけですよ。廃棄すれば証明できないことになるわけだから、不正は証明できなかったの中に入ってしまうじゃないですか。

 法律に適合することを証明できなかったというふうに報告書で書くからこそ、将来、受け入れる企業は、しっかりと証明する資料は用意しなきゃいけないんだなというふうになるわけですよ。そうでなかったら、何かぐあいが悪かったら廃棄すればいいんだなということになるんじゃないんですか。いかがでしょうか。

佐々木政府参考人 まさにそうしたことがないように、実地調査につきましては、今ある資料だけではなくて、一体いつまでどういう資料を持っていたかということを、従業員あるいはそこにいる技能実習生などに聞いて、事実の把握に努めたところでございます。

串田委員 堂々めぐりはあれですけれども、努めて、証明が、資料がはっきりしなかったということなんでしょう。だったら、法律に適合した証明ができない企業というふうに言わなきゃだめじゃないですか。

 堂々めぐりになってしまうんですけれども、そういうことをしていかないと、受け入れる企業がしっかりとやらない。前向きな、やはりこれからの企業に対するそういう啓蒙活動というものをしていかなきゃいけないんじゃないかと思いますよ。

 不正が証明できなかったと言っていたら、不正なものの証拠は、何かあったら、それはもう先ほどからずっと質問されているように、事前に何日に行くからなんて連絡があれば、これはぐあいが悪いものだなと思ったら廃棄すればいいわけですから、そうしたら不正が証明できなかったになっちゃうじゃないですか。やはりそれは、表示の仕方としては、今後、技能実習生を受け入れるという立場の中では、やはり企業としてそれだけの覚悟を持ってもらいたいということはやはりしていかなければいけないんじゃないかなと思うんです。

 先ほど、最低賃金が一円も狂わない企業が九百あるということでしたが、この九百という企業の中で、労働時間がはっきりと証明できている企業というのはどのぐらいあったんでしょうか。

佐々木政府参考人 その掛け合わせは手元にございません。

串田委員 これも厚労省がいないから答えられないということになるのかもしれませんけれども、大臣も、質問しませんがね。最低賃金というのは、労働時間が何時間で払われたのが幾らだということで、割り算で出てくるんですよ。労働時間がはっきりしていないのに最低賃金が出せるということ自体が、これは普通じゃないですよ。

 そして、労働時間というのは、労働委員会だとかいろいろな労基の訴訟などをすれば、これはやった経験がある人はわかると思うんですけれども、タイムカードだけじゃないんですよ。例えば、準備期間とか後片づけの時間を労働時間に入れてもらえなかったなんという主張はざらにあるわけです。

 タイムカードだけで労働時間と台帳を照らし合わせる、でも、今回は労働時間さえも照らし合わせられなくて、そして最低賃金と同じだからこれは問題ないんだ、そういうくくりをして企業を甘やかしてしまったら、また同じことが起きるんだ、私はそう思うんです。

 そういうのを確認していないんだったら、それは確認していないということで、適正なことが証明できなかったにしなければいけないんだと思うんですけれども、どうなんですか。労働時間が証明できなくて、何で最低賃金というものと合致していると言えるんですか。

佐々木政府参考人 今、先ほど申し上げた数字のうち労働時間がわかっているものというお問いでしたので、統計的に持っていないということを申し上げましたが、今回の調査で、まさに委員御指摘のように、最低賃金以下かどうかということを判断をするに当たりましては、当然ながら報酬とそれから労働時間の割り算をしたものでございます。

串田委員 事前の打合せでも、台帳は見たけれども労働時間がわからなかったという回答がすごく多かったんですよ。ですから、そういう意味では、労働時間が明確にならないで最低賃金というのは普通は出てこないとは思うんですが、それは提案として、今度、受け入れる企業というものにしっかりと、そういったものを準備させる。今回は銀行口座に振り込むということにさせたというのは、私、非常に大きな前進だと思いますよ。ですから、そういう意味で、これからこういう失踪でいろいろなごたごたが起きないようにも、受入れ企業にはしっかりとしたそういう準備をさせていかなければいけないということの中で提案させていただいているんです。

 もう一つ、今回の個票の中のアンケート調査の中で、入国前に説明をされた金額という項目があるんですよ。で、これが、例えば二十万円と書いてあったのが、現実に支払われたのは十万円だと書いてあるわけですよ。それと今度の失踪、これを兼ね合わせると、非常に私は気の毒だなと思うんですよ。

 だって、日本に来る前に説明を受けたのが二十万円と思って来たら、十万円だった。そして、その十万円は最低賃金ぴったりだから問題ないでしょうと言われたら、誰だって。それは、入国前に言われた金額で保証金を積み、いろいろな親族から借金をして日本にやってくるわけですよ。

 今払われる金額がどうかというよりも、入国前の説明がどういうことで行われたのかという調査をしないのはなぜなんですか、今回の。

佐々木政府参考人 今御指摘のような調査を徹底して行う場合には、技能実習生の入国前に誰がどのような説明を行ったのかを帰国した技能実習生に聴取をしたり、あるいは、送り出し国において当該入国前の説明を行った人から説明内容を確認するなどして調査をする必要があるものと考えられます。

 帰国した技能実習生について追跡ができないというのは先ほど申し上げたとおりでございまして、今回は調査の対象外としたものでございます。

串田委員 大臣、この入国前に幾ら、これは個票の中のアンケート調査ですから、これは政府がつくったものですよね。入国前に説明を受けたという項目があって、そして、現実には支払われたのはこうだということがあったときに、このまま放置しておいたら、やはり同じことが起きると思うんですよ。

 国内で幾ら最低賃金を上回っているとかといっても、入国前に言われた金額と現実の金額が大幅に離れていたら、それは、来る人間として見れば、だまされたと思うわけですよ。

 ここのチェックはしっかりしなきゃいけないんですが、今回、それは調査としてはしなかったということなんですけれども、今後ここの部分の管理、これをしっかりしていただきたいと思うんですが、大臣のお考えをお聞きしたいと思います。

山下国務大臣 まずは、こういったことに関しまして、例えば失踪した技能実習生に係る聴取票において、書式を大幅に変更して、例えば約定賃金額の内訳等を聴取するということにもしております。

 また、契約時の賃金というのは入国時において確認が可能でございまして、その後、幾ら支払われたかについて把握する方法がないのか、そういったこと、特定技能の仕組みなども参考にしながら、提言にも、預金振り込みをすべきだというような提言もあることでございますので、そうしたものを関係機関と検討しながら、しっかりと把握できるような仕組みを整えてまいりたいと考えております。

串田委員 今、局長の話だと、誰がどういうふうに言ったのかはわからないという話でしたけれども、受け入れる側に聞かないと、これは書けないと思うんですよね。

 そういう意味では、受入れ企業が非常にいい条件で言っておいて受け入れておきながら、これは戻れないですよ、あっ、違ったと言えば、自分たちの国に。

 そうだとするならば、ここの部分というものをやはりはっきりと管理していかないと失踪というのはなくならないと思いますので、ここだけは本当に厳重に、受入れ企業が勝手にそんなことを言って呼び寄せておきながら違うことをやったということ自体は、これは厳罰に処すというか、そういうことを許さないというような方針でやっていただきたいということを申し上げて、私の質問を終わります。

 ありがとうございました。

葉梨委員長 以上で串田誠一君の質疑は終了いたしました。

     ――――◇―――――

葉梨委員長 次に、内閣提出、表題部所有者不明土地の登記及び管理の適正化に関する法律案を議題といたします。

 趣旨の説明を聴取いたします。山下法務大臣。

    ―――――――――――――

 表題部所有者不明土地の登記及び管理の適正化に関する法律案

    〔本号末尾に掲載〕

    ―――――――――――――

山下国務大臣 表題部所有者不明土地の登記及び管理の適正化に関する法律案につきまして、その趣旨を御説明いたします。

 この法律案は、所有者不明土地問題への対策の一環として、不動産登記簿の表題部所有者欄の氏名又は名称及び住所の全部又は一部が正常に登記されていない表題部所有者不明土地について、その登記及び管理の適正化を図るために必要となる措置を講ずることにより、その権利関係の明確化及びその適正な利用を促進しようとするものであります。

 その要点は、次のとおりであります。

 第一に、表題部所有者不明土地について、その登記の適正化を図るための措置として、登記官に所有者の探索のために必要となる調査権限を付与するとともに、所有者等探索委員制度を創設するほか、所有者の探索の結果を登記に反映させるための不動産登記法の特例を設けることとしております。

 第二に、所有者の探索を行った結果、所有者を特定することができなかった表題部所有者不明土地について、その適正な管理を図るための措置として、裁判所の選任した管理者による管理を可能とする制度を設けることとしております。

 以上が、この法律案の趣旨でございます。

 何とぞ、慎重に御審議の上、速やかに御可決くださいますようお願いいたします。

葉梨委員長 これにて趣旨の説明は終わりました。

 次回は、公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。

    午後零時四十分散会


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