衆議院

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第14号 令和元年5月8日(水曜日)

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令和元年五月八日(水曜日)

    午後一時四十分開議

 出席委員

   委員長 葉梨 康弘君

   理事 石原 宏高君 理事 田所 嘉徳君

   理事 平沢 勝栄君 理事 藤原  崇君

   理事 宮崎 政久君 理事 山尾志桜里君

   理事 浜地 雅一君

      赤澤 亮正君    井野 俊郎君

      奥野 信亮君    鬼木  誠君

      門山 宏哲君    上川 陽子君

      神谷  昇君    神田  裕君

      黄川田仁志君    国光あやの君

      小寺 裕雄君    小林 茂樹君

      高木  啓君    中曽根康隆君

      古川 禎久君    本田 太郎君

      和田 義明君    逢坂 誠二君

      黒岩 宇洋君    松田  功君

      松平 浩一君    山本和嘉子君

      源馬謙太郎君    津村 啓介君

      遠山 清彦君    藤野 保史君

      串田 誠一君    井出 庸生君

    …………………………………

   法務大臣         山下 貴司君

   法務副大臣        平口  洋君

   法務大臣政務官      門山 宏哲君

   衆議院庶務部長      花島 克臣君

   最高裁判所事務総局人事局長            堀田 眞哉君

   政府参考人

   (公正取引委員会事務総局経済取引局長)      菅久 修一君

   政府参考人

   (個人情報保護委員会事務局次長)         福浦 裕介君

   政府参考人

   (総務省大臣官房審議官) 赤澤 公省君

   政府参考人

   (法務省大臣官房政策立案総括審議官)       西山 卓爾君

   政府参考人

   (法務省民事局長)    小野瀬 厚君

   政府参考人

   (法務省刑事局長)    小山 太士君

   政府参考人

   (法務省矯正局長)    名執 雅子君

   政府参考人

   (法務省保護局長)    今福 章二君

   政府参考人

   (出入国在留管理庁長官) 佐々木聖子君

   政府参考人

   (外務省大臣官房審議官) 大鷹 正人君

   政府参考人

   (外務省大臣官房審議官) 松浦 博司君

   政府参考人

   (文部科学省大臣官房審議官)           森  晃憲君

   政府参考人

   (農林水産省大臣官房審議官)           小野  稔君

   政府参考人

   (経済産業省大臣官房審議官)           成田 達治君

   政府参考人

   (観光庁審議官)     金井 昭彦君

   法務委員会専門員     齋藤 育子君

    ―――――――――――――

委員の異動

五月八日

 辞任         補欠選任

  門  博文君     小寺 裕雄君

  中曽根康隆君     本田 太郎君

  古川  康君     高木  啓君

  源馬謙太郎君     津村 啓介君

  串田 誠一君     杉本 和巳君

同日

 辞任         補欠選任

  小寺 裕雄君     神谷  昇君

  高木  啓君     古川  康君

  本田 太郎君     中曽根康隆君

  津村 啓介君     源馬謙太郎君

  杉本 和巳君     串田 誠一君

同日

 辞任         補欠選任

  神谷  昇君     門  博文君

    ―――――――――――――

五月七日

 戸籍法の一部を改正する法律案(内閣提出第五〇号)

は本委員会に付託された。

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 政府参考人出頭要求に関する件

 戸籍法の一部を改正する法律案(内閣提出第五〇号)

 裁判所の司法行政、法務行政及び検察行政、国内治安、人権擁護に関する件


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     ――――◇―――――

葉梨委員長 これより会議を開きます。

 裁判所の司法行政、法務行政及び検察行政、国内治安、人権擁護に関する件について調査を進めます。

 この際、お諮りいたします。

 各件調査のため、本日、政府参考人として公正取引委員会事務総局経済取引局長菅久修一君、個人情報保護委員会事務局次長福浦裕介君、総務省大臣官房審議官赤澤公省君、法務省大臣官房政策立案総括審議官西山卓爾君、法務省民事局長小野瀬厚君、法務省刑事局長小山太士君、法務省矯正局長名執雅子君、法務省保護局長今福章二君、出入国在留管理庁長官佐々木聖子君、外務省大臣官房審議官大鷹正人君、外務省大臣官房審議官松浦博司君、文部科学省大臣官房審議官森晃憲君、農林水産省大臣官房審議官小野稔君、経済産業省大臣官房審議官成田達治君及び観光庁審議官金井昭彦君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

葉梨委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

葉梨委員長 次に、お諮りいたします。

 本日、最高裁判所事務総局人事局長堀田眞哉君から出席説明の要求がありますので、これを承認するに御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

葉梨委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

葉梨委員長 質疑の申出がありますので、順次これを許します。田所嘉徳君。

田所委員 茨城一区の田所嘉徳でございます。

 質問の機会をいただきまして、感謝を申し上げたいと思います。

 まず、サービサー法につきまして、弁護士法の特例として制度が発足してから二十年が経過をして、さまざま与野党において改正の論議がされているということなので、質問をしようと思いましたが、大臣がまだ来ませんので、法曹養成制度についてまずお聞きをしたいと思っております。

 新制度につきましては他委員会に譲るといたしましても、法務委員会に適合するような、法曹養成制度について今聞いておかなくちゃならない、また発言しておかなくてはならないということで、質問をしていきたいと思います。

 これまで十五年間の経過を踏まえたわけでありますけれども、私は、そういう中で、法科大学院におけるプロセス教育というものは大変重要だろうというふうに思っております。その視点から質問をしていきたいと思っております。

 しかしながら、この法科大学院制度についてはさまざま批判もありまして、それはなぜそういう状況なのかということをまず聞いていきたいというふうに思っております。

 非常に志願者が減少している、激減しているということであります。これは、法科大学院、大きく法曹の需要が伸びるだろうということを見込んで、年間三千人の司法試験合格者を出し、法科大学院においては七、八割の合格ということを見込んで、そういったふれ込みでスタートしたわけであります。

 法科大学院は、年間百万円以上の学費を必要とするところも多く、また、既修者でも二年間を余分に必要とする。大きな負担がありますけれども、それを考慮してもなお魅力的に映ったんでしょう、たくさん応募者も殺到したわけであります。

 しかしながら、途中から、法曹の需要見込みは思ったほど伸びない、想定したほど伸びない、さらに弁護士も収入が低くて、三千人もの司法試験合格者を出すべきではないとの意見が台頭をしてきました。

 この目標は撤回をされ、そして合格率も当初と違って低迷をしている、入学者は千六百二十一人まで減少してしまったということであります。

 しかし、これはもう当初からわかったことだろう。七十四校で五千八百人も入れたわけでありますから、そもそもつくり過ぎたわけでありまして、目標の三千人も撤回したということで、公約は破綻したわけで、これでは若者が法曹への道を敬遠するのは当然だろうというふうに思っております。

 最初から制度設計、運用に問題があったのではないか、こういうふうに思いますが、これについてまず聞いておきたいと思います。

西山政府参考人 まず、御指摘がございました法曹人口の関係でございますけれども、御指摘がございましたように、これは平成十三年六月の司法制度改革審議会意見書でございますけれども、国民生活のさまざまな場面における法曹需要の高まりへの対応として法曹人口増大の必要性が指摘されまして、平成十四年三月の閣議決定において、平成二十二年ころには司法試験の合格者数を年間三千人程度とすることが目標とされたところでございます。

 ところが、司法試験の合格者数は、平成二十二年以降も二千人程度にとどまりまして、年間合格者数三千人の目標が未達成であったことや、法曹有資格者の活動領域拡大はいまだ限定的であり、司法修習終了直後の弁護士未登録者数が増加傾向にあり、法律事務所への就職が困難な状況がうかがわれたことから、平成二十五年七月の法曹養成制度関係閣僚会議決定におきまして、司法試験の年間合格者数を三千人程度とするという目標は現実を欠くものとして、事実上撤回されたところでございます。

 次に、法科大学院を中核とするプロセスとしての法曹養成制度につきましては、制度発足時に法科大学院の参入を広く認めた結果、数多くの法科大学院が設置されて過大な定員規模となり、司法試験合格者数についても当初の目標が実現できない中、法科大学院修了者の合格率が全体として低迷する事態になったものと認識しております。

 そして、平成二十七年六月の法曹養成制度改革推進会議決定においては、「法科大学院全体としての司法試験合格率や、弁護士を含む法曹有資格者の活動の場の拡がりなどが、制度創設当初に期待されていた状況と異なるものとなり、法曹志望者の減少を招来する事態に陥っている。」というふうにされたところでございます。

 このように、司法試験の合格者数や弁護士の活動の場の広がりなどが結果として当初予想されていました状況と異なったものとなったということについては、非常に残念であるというふうには認識をしております。

 法務省といたしましては、これまでの経緯もしっかり受けとめつつ、法曹養成制度改革推進会議決定の内容を踏まえまして、関係機関等と連携して、現在国会に提出中の法案に加え、法曹有資格者の活動領域の拡大に向けた取組など、法曹志望者の回復に向けて必要な取組を引き続きしっかり進めていきたい、このように考えてございます。

田所委員 法曹の需要見込みにつきましても、精緻な積み上げがされたわけではなくて、外国、全く土壌が違うところとの比較とか、そういった点で曖昧でありましたし、そもそも設置認可等について不適切な数だったということで、当然の帰結ということは今表明されたとおりだと思います。

 そういう中で、法科大学院の教育あるいは運用でも、これは反省すべき点が多いというふうに思っております。学校自体に司法試験に合格させるような教育のノウハウがなかったということだろうと思いますし、この法科大学院の急増に対応して、指導教員を裁判官や検察官の派遣によって充足させたということであります。

 さらに、司法試験対策になるような勉強を教えてはならないともとれるような、そういう指導を文科省もしておりました。そういったことから、司法試験合格者が低迷するのも当然だったということであります。

 そして、合格低迷さらには志願者の激減で批判されたことから、文科省では、途中から、合格率による公的支援の見直しを行いました。現実的な法科大学院の淘汰を始めたということになるわけであります。定員五千八百人だったものが二千二百人まで、七十四校が半分以下の三十六校ということにしてきたわけでありますけれども、これは非常に設置者に対しても、大変損害を与えるようなものだったろうというふうに思います。

 さらに、学生に対してでありますが、GPAの導入などによって進級判定や修了認定の要件を厳格化しました。最近では、標準修了年限を超えても三分の一が修了できないという大変厳しい状況です。このような実施が法科大学院離れに更に拍車をかけたということだろうというふうに思っております。

 このような未熟な指導体制、急激な方針変更、迷走が、法科大学院設置者とそこに在籍した学生に大きな損害、迷惑を及ぼしたわけでありますが、それらを踏まえて、法曹養成に特化した専門職大学院の教育の充実について、また、このように原級留置や退学者の割合が増大している状況をどのように捉えているのか、お聞きをしたいと思います。

森政府参考人 法科大学院の教育についてのお尋ねでございますけれども、法科大学院におきましては、平成十六年度に制度が創設された当初から、厳格な成績評価及び修了の認定を行うことが法律上規定され、平成二十一年には中央教育審議会において厳格な成績評価や修了認定の徹底が打ち出されたこともあり、御指摘のように、原級留置や退学等の理由で標準修業年限で修了できない者の割合は増加傾向となってございます。

 プロセスとしての法曹養成の中核である法科大学院におきましては、その教育の課程において厳格な成績評価や修了認定が行われることは必要であると考えておりますけれども、学生の状況に応じたきめ細やかな指導が重要でございまして、適切な運用を担保するため、現在国会で御審議いただいております法科大学院改革に係る法案におきましては、成績評価や修了認定の基準やその実施状況の公表を義務づけることとしております。

 また、法科大学院は法曹養成に特化した専門職大学院でございまして、その課程の修了者等に司法試験の受験資格が与えられるという特別な役割を有しています。このような位置づけを踏まえ、司法試験で問われる学識等を身につけさせることは法科大学院の本来的な役割でございまして、先ほど申し上げた法案においては、法科大学院においてそのような学識等を涵養すべきことを明確化することとしております。

 こうした法改正を踏まえた法科大学院のカリキュラムのあり方については、今後さらに、中央教育審議会においてしっかりと検討してまいりたいと考えております。

田所委員 法科大学院の志願者が減少している背景には、予備試験から司法試験を受け、合格する者が増加しているということがあります。これが、法科大学院の合格者低迷と志願者減少に直結しているわけであります。

 予備試験は、経済的に恵まれない者にも司法試験受験の機会を与えるべきであるという発想のもとに設置されましたけれども、しかし、所得証明等で判断するなんということでもなく、単なる法科大学院ルート以外の、費用と時間を回避できる別ルートとしての位置づけになってしまったのではないかというふうに思っております。

 それに対して、難関である予備試験を通ることにはそれだけで意味があって必要性が高いと評価する意見がありますが、それは私は、法科大学院のプロセス教育の重要性を理解しないものであるというふうに思っております。予備試験に行く人こそ、しっかりそのままプロセス教育を受けるべき人材であるというふうに思っております。法科大学院から途中に、そちらに移っていく人も多いわけであります。

 そういうことを考えれば、この予備試験というものが、まさにしっかりとした、すぐれた法曹をつくるために、別ルートとして大きくなったところに、この一貫教育を阻害する要因があったと思うんですが、それに対する意見をお聞きしたいというふうに思います。

西山政府参考人 委員御指摘のとおり、現行の法曹養成制度は法科大学院を中核とするプロセスとしての法曹養成を理念とするものでございまして、質、量ともに豊かな法曹を養成するため、このようなプロセスとしての法曹養成制度を引き続き実施していくことは重要であるということは認識してございます。

 他方、予備試験制度につきましては、法曹養成制度改革推進会議決定でも述べられているとおり、経済的事情や既に実社会で十分な経験を積んでいるなどの理由により法科大学院を経由しない者にも法曹資格取得のための道を確保するためのものと位置づけられておりまして、現在においても、そのような法曹資格取得のための道を確保する必要があり、予備試験制度は必要であると考えております。

 もっとも、推進会議決定におきましては、予備試験につきまして、出願時の申告によれば毎年の予備試験受験者の過半数を占める無職、会社員、公務員等といった者については、予備試験が本来の制度趣旨に沿った機能を果たしていると考えられるとする一方で、予備試験受験者の半数近くを法科大学院生や大学生が占める上、予備試験合格者の多くが法科大学院在学中の者や大学在学中の者であるといった状況から、制度創設の趣旨と現在の利用状況が乖離しているとの指摘があるというふうにされたところでございます。

 これらを踏まえ、推進会議決定におきましては、法科大学院集中改革の進捗状況に合わせて、法務省において必要な制度的措置を講ずることを検討することとされております。

 法務省としましては、まず、今般の法科大学院改革を、文部科学省と十分に連携しつつ、しっかりと進めることが最優先と考えておりまして、予備試験につきましては、かかる改革の実施状況等を踏まえ、また、文部科学省を始めとする関係機関の意見も聞きながら必要な検討を行ってまいりたい、このように考えてございます。

田所委員 よろしくお願いいたします。

 山下大臣、お戻りになりましたので、サービサーについて質問したいと思います。

 この委員会でも、先日、民事執行法の改正について審議をされました。可決されたところであります。同様に、適切な債権回収というものは大きな意味を持っております。

 そういう中で、サービサー法が、弁護士法の特例として発足以来二十年が経過して、さらなる充実を期して法改正がされようとしております。心配した債権回収という大変難しいことにおいて、非常に大きな役割を果たしてきました。

 そういう中で、今後、金融機関貸付債権の回収が中心だったものを、電気やガスなどの公共料金の滞納も対象とするなどの案が検討され、議員立法という形で提案されると聞いています。このような機能拡大には、取立てに当たっての弊害が生じないような新たな規律を定めるなど、いろいろな対応も必要だろうと思っております。

 与野党において手続を進めていることについてどのように考えているのか、あわせて、これまでの債権回収の状況の評価についても山下大臣にお伺いをしたいと思います。

山下国務大臣 まず、参議院本会議のため、この委員会に遅参いたしましたこと、委員長、そして田所委員、そして委員の皆様におわび申し上げます。

 そして、お尋ねですが、サービサー法改正の動きについては承知しておるところでございます。もっとも、御指摘のサービサー法改正案は議員立法によって検討が進められるところでございまして、現在、与野党において、法改正に向けて具体的内容等についての協議、調整が行われている状況と承知しておりまして、法務省としては、議員立法による検討状況をまずは見守りたいと考えております。

 サービサーによる債権回収の現状に関する評価でございますが、サービサー制度は、金融機関の不良債権処理のための特例的制度として平成十一年に運用がスタートしたところ、当時の金融危機の状況下における不良債権処理の担い手として重要な役割を果たしてきたと認識しております。近年でも、全国で八十社近いサービサーが営業を継続し、サービサー全体の取扱債権数は増加傾向にあるなど、新たな不良債権の発生も依然として相当規模で続いている中では、今後も当分の間は、不良債権処理の分野においてサービサーに期待される役割の重要性は変わらないものと考えております。

 また、サービサーによる債権回収については、サービサー法によって行為規制が厳格になされており、これまでサービサーが違法な方法により債権回収を行った事例は法務省において把握しておりませず、サービサーの業務の適正さは引き続き確保されているものと認識しております。

 サービサー制度を所管する法務省の立場からは、今後とも、不良債権処理の分野で培われてきたサービサーの経験や信頼が適切に活用されることが望ましいものと考えております。

田所委員 大臣、ありがとうございました。

 経営難に陥った企業の再建を支援するなどの新たな分野での活躍というものも求められております。そういったことに対するしっかりとした対応も考慮していただきたいということで、サービサーの質問はこれで終わりたいと思います。

 次に、国際司法。

 我が国は、物づくり技術において世界をリードして外貨を稼いで、経済を支えてきました。しかし、司法の分野においては国際競争力は高いとは言えないのであって、ここ十数年に日本企業がアメリカや欧州、中国で科された制裁金や集団訴訟で支払った和解金は数千億にも上るという数字もあります。また、日本企業のリーガルサービスへの支払いも巨額であります。

 企業の国際取引における紛争の解決手段として国際仲裁制度も活用されておりますが、これらもシンガポールや香港の十分の一にも満たないという状況で、国際舞台で活躍できるような法曹の養成が急務でありますが、これらについてどのように考えているのか、お聞きしたいと思います。

山下国務大臣 御指摘の観点から、今後、外国法や外国語にも精通し、国際的な分野に幅広く対応できる多様かつ専門的な法曹人材を養成し、その専門性が有効に活用されていくことは重要であると認識しております。

 取組につきましては、法科大学院において、例えば、実際の国際仲裁の紛争事例を題材に用いた授業を開講することであるとか、司法試験において国際関係法を論文式試験の選択科目として設けているほか、司法修習において、選択型実務修習の中で国際的視座を身につける一助となるプログラムを組まれているということでございます。

 また、この法曹養成課程にある者各自の自己研さんや経験の蓄積等を行っていくことも重要であると考えておりますが、法務省としては、日本企業の海外展開を支援し、国際的法曹人材の活躍にも資する観点から、東南アジア諸国に法曹あるいは弁護士を派遣し、現地の法律の運用や法的問題の実情等の調査を行い、その結果を公表するなどしているところであります。

 法務省としては、国際的な紛争の解決にかかわる人材も含め、優秀かつ多様な法曹人材を数多く輩出できるよう、文部科学省等と連携して必要な取組をしっかりと進めてまいりたいと考えております。

田所委員 わかりました。

 続けて、経済取引のグローバル化や対日投資を呼び込むために司法の国際化が必要でありまして、そういう中にあって日本法令の外国語訳整備が大変重要であります。将来ビジョンを議論する有識者会議もできたと聞いておりますが、これらをしっかりと推進してもらいたいというふうに思っております。

 最後に一つ述べて終わります。

 法科大学院修了生をどう活用していくかということであります。

 専門職の法務博士の学位が与えられることは大変私は大きな意味があると思っておりますが、これが広く理解されて評価されるような状況にはなっておりません。

 国会議員の政策秘書の選考採用審査認定の要件として各種国家資格の取得者が該当しておりますが、法務博士、専門職は含まれておりません。まさに立法府にあって大きな役割を果たす政策秘書であることから、法務博士をその要件として積極的に活用することが大変重要であると思っておりますので、今後の課題として、皆さんもよく理解をしてもらいたいというふうに思っています。

 以上です。

葉梨委員長 以上で田所嘉徳君の質疑は終了いたしました。

 次に、遠山清彦君。

遠山委員 公明党の遠山清彦でございます。

 山下法務大臣、きょうは、小出しではなくてまとめて、持ち時間を全部使って、死刑制度の存廃問題について質疑をさせていただきたいと思います。答えづらい質問もあろうかと思いますが、よろしくお願いをいたします。

 山下法務大臣の死刑制度に対する公式見解というか答弁は、既に本年三月八日の当委員会での私への答弁で理解をしております。念のために当時の答弁を引用させていただきたいと思いますが、大臣はこうおっしゃっております。「死刑制度について、国民世論の多数が、極めて悪質、凶悪な犯罪については死刑もやむを得ないと考えており、多数の者に対する殺人や強盗殺人等の凶悪犯罪がいまだ後を絶たないという状況等に鑑みると、その罪責が著しく重大であって凶悪な犯罪を犯した者に対しては死刑を科することもやむを得ないというふうに考えておりますし、死刑を廃止するということは適当ではない」という御答弁でございました。

 きょうは配付資料を二枚だけ配らせていただいておりますが、資料の一を見ていただきたいと思います。

 これは一種の目次となっておりますけれども、これは、今、超党派で、特に立憲民主党の先生方に多数入っていただいている死刑制度の今後を考える議連で、私は幹事長をしておりますが、そこの勉強会で国立国会図書館に依頼をして、わかりやすくまとめていただいたものでございます。

 1が「死刑廃止論の主な論拠」ということで、七項目挙がっております。2が「死刑存置論の主な論拠」ということで、六つの論点が紹介をされているわけでございます。

 この2の死刑存置論、日本の政府はこの立場をとっているわけでございますが、この論拠を見ていただきますと、大臣の、先ほど引用させていただいた答弁は、この資料一のペーパーに即して申し上げれば、(1)、(2)、(4)の論点に言及をして、それを根拠として形成されている答弁だというふうに理解をしております。

 つまり、日本の政府あるいは法務省としては、世論調査を尊重している、そこで示されている国民の一般的な法確信として死刑制度を支持しているということを根拠とし、また、死刑でしか償えない著しく重大な凶悪犯罪が、残念ながらと言った方がいいかもしれませんが、日本で起こっているというところから存置するのだと言っていると理解をしておりますが、これでまず、間違いないでしょうか。大臣に確認をいたしたいと思います。

山下国務大臣 私の死刑制度についての見解につきましては、先ほど委員が読み上げられた見解に尽きておるところでございます。

 他方で、委員お示しの国立国会図書館取りまとめによる資料につきましては、国立国会図書館はこういう論点で取りまとめをしているということであろうというふうに認識いたしましたが、内容の詳細が記載されていないため、これこれこれに限るのかというお尋ねに対しては、ちょっと一概にお答えすることは困難であるということで御理解賜れればと思います。

遠山委員 大臣、わかりました。

 それで、次の質問は、この配付資料の一の2のところで、(3)のところを見ていただきたいと思います。「最高裁判所は、死刑は合憲であると判断している」と端的に書かれているところでございますが、この中身については、一応、資料の二ということでつけさせていただいております。

 もちろん、判決文のこれは抜粋になっているわけでございますが、死刑制度の存廃の議論を勉強しておりますと必ず、この昭和二十三年三月十二日大法廷判決、最高裁の、死刑は合憲であると判断した判決が出てくるわけでございますが、法務大臣の先ほど私が引用させていただいた答弁、これは過去の法務大臣の答弁もほぼ一緒だと思いますが、ここにはこの昭和二十三年の最高裁の判決は言及されていないわけでございますが、なぜこの最高裁判決を死刑制度存置の根拠として大臣は挙げられていないのか、その理由があればお示しをいただければと思います。

山下国務大臣 お答えいたします。

 恐縮でございますが、先般の法務委員会での御質問が死刑制度の合憲性について直接尋ねられたものではなかったため、御指摘の最高裁大法廷判決を明示しなかったものでございますけれども、死刑を廃止することは適切ではないと判断する上で、そもそも死刑制度が合憲であるということは当然の前提であるということで認識しておるところでございます。

遠山委員 わかりました。

 それでは、この配付資料の二をちょっと見ていただきたいと思いますが、私の方で下線をつけたところが二カ所ございます。最初の下線のところをちょっと見ていただきたいと思います。読ませていただきます。「憲法第三十一条によれば、国民個人の生命の尊貴といえども、法律の定める適理の手続によつて、これを奪う刑罰を科せられることが、明かに定められている。」。

 ちょっとここで一回切りますが、これはもう大臣御承知のとおり、憲法第三十一条は、「何人も、法律の定める手続によらなければ、その生命若しくは自由を奪はれ、又はその他の刑罰を科せられない。」という憲法規定があるわけでございまして、これを逆から読めば、法律で定められた手続があれば死刑は合憲であると読めるわけでございまして、ここを言っているわけでございます。

 その後、またこちらの下線に戻りますが、「すなわち憲法は、現代多数の文化国家におけると同様に、刑罰として死刑の存置を想定し、これを是認したものと解すべきである。」、こういう昭和二十三年の判決文になっております。

 私は立法府の一員として当然に最高裁の判決を尊重する姿勢を持っているわけでございますが、ただ、この判決文を今改めて読み直しますと、憲法制定から七十一年が経過する中で、特にこの、今引用したところの後段のところにあります「現代多数の文化国家におけると同様に、」というところは、これは大きく変化をしているわけでございます。私、その昭和二十三年の段階で、世界各国どれぐらいの数が死刑を存置していて、廃止しているのか、データを持っておりませんが、ヨーロッパ諸国等の歴史を少し見てみても、昭和二十三年以降に死刑制度を廃止したところが多いわけでございます。

 単刀直入に申し上げれば、先般の私と大臣のやりとりでも申し上げましたように、現在、二十一世紀の今日では、現代多数の文化国家が死刑制度を廃止又は停止しているのが現状でございます。

 アムネスティ・インターナショナルの調べでは、世界百九十四カ国・地域のうち百四十二カ国・地域で、死刑制度は廃止あるいは停止をされているわけでございまして、そうしますと、私ごとき者が最高裁の判決を批判する立場にないことは重々承知の上で申し上げますが、少なくとも、この二十三年の判決で結論を補強するためとして引用されていることだと思いますが、今日では現代多数の文化国家は死刑を廃止しているわけでございますから、これを引用して補強することはできない考え方だというふうに私は思っておりますが、この点について大臣の御見解をお伺いをしたいと思います。

山下国務大臣 お答えいたします。

 まず、御指摘の判決以降も死刑制度の合憲性が争われた事件がございますが、近時の最高裁判所判決においても、死刑制度は憲法の規定に違反しないと判示されているところでございます。

 例えば、最高裁判所、平成三十一年二月十二日、第三小法廷判決におきまして、「死刑制度に関して憲法十三条、三十一条、三十六条違反をいう点は、死刑制度が憲法のこれらの規定に違反しないことは当裁判所の判例とするところであるから、理由がなく、」ということで判断が示されておるところでございまして、依然、そういった最高裁判所の合憲判断というものは維持されているというふうに考えております。

遠山委員 大臣のお立場でそういう御答弁をされたことは理解をいたしますが、私の問題意識というのは、時代の変遷に伴って国際社会とか国内社会の環境が変化をしたり、思想、思潮も変わってくるわけでございまして、それに応じて日本においても司法の判断あるいは法律も変えてきた歴史が、裁判所の歴史にもありますし、立法府の歴史にもあるわけでございまして、そういった観点から、今、一部指摘をさせていただきました。

 次に、資料二の二番目に下線を引いたところをちょっと見ていただきたいと思います。答弁は、政府参考人、矯正局長からいただきたいと思います。

 今大臣の御答弁にありました憲法の第三十六条、これは、ちょっと読みますと、「公務員による拷問及び残虐な刑罰は、絶対にこれを禁ずる。」というのが憲法第三十六条の規定でございます。

 そこで、日本において死刑制度を議論すると必ず問題になるのは、今、日本で死刑執行の方法として行われている絞首刑が、憲法第三十六条が絶対的に禁じている残虐な刑罰に当たるのか当たらないかというところでございます。

 昭和二十三年の判決の二つ目の下線部をちょっと読みたいと思いますが、「刑罰としての死刑そのものが、一般に直ちに同条にいわゆる残虐な刑罰に該当するとは考えられない。ただ死刑といえども、他の刑罰の場合におけると同様に、その執行の方法等がその時代と環境とにおいて人道上の見地から一般に残虐性を有するものと認められる場合には、勿論これを残虐な刑罰といわねばならぬから、将来若し死刑について火あぶり、はりつけ、さらし首、釜ゆでの刑のごとき残虐な執行方法を定める法律が制定されたとするならば、その法律こそは、まさに憲法第三十六条に違反するものというべきである。」、こういう判決になっているわけでございます。

 これは、一般論としては、死刑は直ちに憲法が禁ずる残虐な刑罰に該当しないとしつつも、火あぶり、はりつけ、さらし首、釜ゆでなどの方法による死刑は憲法が禁ずる残虐な刑罰に当たるという司法判断を示しているということでございます。

 そうすると、言いかえると、現在の日本の死刑の執行方法として規定されている絞首刑は残虐な刑罰に当たらないと司法が判断していると解釈できるわけでございますが、そこで、矯正局長に伺いますが、この現在の日本の絞首刑、死刑の執行方法としての絞首刑を規定した法律はどういうものなのか、また、その法律の概要についても御説明をいただきたいと思います。

名執政府参考人 絞首刑の執行方法につきましては、法律と同一の効力を有するものとして存続しております明治六年太政官布告第六十五号、絞罪器械図式で定められております。

 絞罪器械図式には、死刑執行に関する事項といたしまして、被執行者の首に縄を巻き、その縄を上方に固定し、本人が立っている場所の床面を開くことにより、本人の体の重みにより絞首するといった執行方法が定められております。

遠山委員 今局長の御答弁にありましたように、現在、二十一世紀に入って約二十年近い今日で、日本における死刑の執行方法の根拠になっている、法律と同一の効力を有する文書ということで、今示されたのが、明治六年太政官布告第六十五号、絞罪器械図式というものだということでございます。

 非常に古い、法律ではなくて、法律と同一の効力を持つ文書ということなわけでございますが、当然、この太政官布告が布告された明治六年には大日本帝国憲法も未制定でありました。これが現在の戦後の日本国憲法下でも有効な法律と同一の効力を有する文書と認められている理由について、局長、御説明をいただきたいと思います。

名執政府参考人 絞罪器械図式が現行憲法下においても法律と同一の効力を有するものとして存続しておりますことは、昭和三十六年の最高裁大法廷判決において示されております。

 同判決によれば、まず、旧憲法下におきましても死刑のような重大な刑の執行方法に関する基本的事項は法律事項に該当すると解するのが相当であり、絞罪器械図式は旧憲法下において既に法律としての効力を有していたものと解するのが相当であるとされております。その上で、現行憲法下においても死刑の執行方法に関する基本的事項は法律事項に該当するものと言うべきであり、絞罪器械図式が廃止され又は失効したと認めるべき法的根拠は何ら存在しないことから、絞罪器械図式は現行憲法下においても法律と同一の効力を有するものとして存続しているとされております。

遠山委員 そうすると、この絞罪器械図式というのが明治六年に布告されて、その後、きのう法務省の方からちょっと教えていただきましたが、明治十三年に一番古い近代刑法が日本で制定された。その明治十三年以降の旧刑法のもとでもこのやり方で絞首刑が執行され、その後、明治四十一年に今の刑法ができて、今の刑法の第十一条一項で死刑の方法として絞首が定められていて執行されてきた。それは前の大日本帝国憲法下で有効であって、それが有効でないという法的根拠が戦後もないので今も有効だというふうにしているということでございます。

 そうすると、いずれにしても司法の判断としては、繰り返しになりますが、火あぶり、はりつけ、さらし首、釜ゆでなどは憲法第三十六条が絶対的に禁じている残虐な刑罰になるけれども、この明治六年に定められた方法で行う絞首刑は合憲だという区別がされているということなんですが、これは実は先ほど冒頭に私が引用した昭和二十三年の判決の後段の下線部にも書いてあるんですが、「その執行の方法等がその時代と環境とにおいて人道上の見地から一般に残虐性を有するものと認められる場合には、」云々と言われているんですね。

 だから、私は二十一世紀に生きておりますので、二十一世紀に生きている時代と環境と考え方の目から見て、先ほど局長が御説明になった絞首刑が憲法が禁じている残虐な刑罰に本当に当たらないのかどうかというのは再考する余地があるんではないかと個人的には思っております。

 そこで、ちょっときょうはもう時間がないので最後の質問になろうかと思いますが、残りはまた来週やりますが、これは、火あぶり、はりつけ、さらし首、釜ゆでは残虐な死刑のやり方で、絞首刑はそうではないという区別がされているんですが、これについて法務省として医学的根拠は明確にあると考えられているのか。つまり、言いかえると、医学的に見て残虐かどうかということについて検証されたことはあるんでしょうか、絞首刑が。

名執政府参考人 現在の絞首刑の執行方法につきましては、昭和三十年の最高裁判決におきまして、「現在わが国の採用している絞首方法が他の方法に比して特に人道上残虐であるとする理由は認められない。」として、残虐な刑罰を禁止する憲法三十六条には反しないとされております。

 また、平成二十五年の大阪高裁判決におきましては、法医学者の証言、鑑定書を踏まえ、手順が適切になされた場合には、受刑者は、死刑の執行開始から意識を消失するまでの間に、一定程度の精神的、肉体的苦痛を感じることは避けがたいとしても、その時間は比較的短時間にとどまり、頭部離脱等の重大な身体損傷は生じないものと考えられることから、刑の執行方法として、残虐と評価できるほどに、受刑者に不必要な精神的、肉体的苦痛を与え、あるいは、重大な身体損傷を生じさせる危険性が高い執行方法であるということはできないとされていると承知しております。

遠山委員 時間が終了しましたので一言だけ申し上げて終わりたいと思いますが、今のお話がまさに司法判断だと思いますが、一点だけ、昭和三十六年の死刑制度にかかわる裁判の補足意見で藤田八郎判事がこういうことをおっしゃっているんですね。「刑法は死刑は絞首して之を執行することを規定しているけれども、絞首といつても、その方法のいかんによつては残虐にわたるおそれのあることは勿論であつて、」その後に「往年、満州国において行われた絞柱式による絞首刑執行の方法のごときは、今日の国民感情から見て、これを「残虐な刑罰」と称してあやまりないであろう。」という一文があるんですね。

 ですから、絞首刑でもやり方によっては残虐な刑罰だと言う判事もいたということだけ指摘をさせていただいて、続きはまた次回、やらせていただきたいと思います。

 ありがとうございました。

葉梨委員長 以上で遠山清彦君の質疑は終了いたしました。

 次に、黒岩宇洋君。

黒岩委員 立憲民主党・無所属フォーラムの黒岩宇洋でございます。

 五月一日に令和の時代を迎えまして、新天皇陛下そして新皇后陛下が即位されたこと、改めて私からも祝意を申し上げたいと思います。

 雅子皇后におかれましては、小和田家は本籍地を私の選挙区である村上市に置かれていたという御縁もありますし、おじい様の小和田毅夫さんが私の高校の先生も、私は在学していませんよ、していたということですので、そういう意味では、地方に縁があって、自分のおじい様が学校の先生という、ある意味、非常に一般の国民の家庭から嫁がれた、そんな皇室が、新たな時代、まさに国民から親近感を持って、また敬意の対象となっていくことを心から願います。

 また、国民の一人としても、象徴天皇制をしっかり尊重しながら、すばらしい時代を我々も迎えていくんだという、その思いできょうも質問させていただきたいと思います。

 平成の最後の質問で、これは代がわりにあるのかどうかはわかりませんけれども、恩赦という制度について、この機会にしっかりと振り返ってみようと。その制度自体を確認をしていきたいということで幾つか議論しましたけれども、時間もなかったということで、引き続き、これについて、法務省の見解、また流れの中で大臣の御見解もいただきたいと思います。

 これは何度も前回お話ししましたとおり、昭和二十三年に出されました恩赦制度審議会の最終意見書というものが、これが今の恩赦制度について、七十余年にわたってその方向性を決めている、ただ、この報告書自体ももう滅失してしまって、冊子として参考資料としてある、こういう状況の中ですという説明をさせてもらいました。

 そこで、この最終意見書に、これからの政令恩赦についての運用方針、これはもうわずかな、四行ぐらいで書いてあるので全文を読みますけれども、四行でこれからの運用方針を七十年前に書いているんですね。

 「従来は皇室の慶弔時などに際してこの種の恩赦の行われることが多く、今後といえども国家の慶事に当りよろこびをわかつ意味で一般的恩赦」、これは政令恩赦を指しますけれども、政令恩赦、「が行われることはなんら差支ないと思うのであるが、」この後が重要なんですね、「それ以上に、たとへば社会事情の変化、法令の改廃等のあつた場合に衡平の精神に基いて、さらにはまた刑事政策的観点より従前の裁判の効果を変更するような合理的な一般的恩赦」、政令恩赦、「が今後活発に行われ、政令による恩赦の中心をなすように運用されることを期待する。」、この四行なんですね。

 そこで、保護局長にお聞きしますが、この前段の、皇室や国家の慶弔時に喜びを分かつということも差し支えないけれども、問題はこの後段に書かれている、社会事情の変化や法令の改廃等や、また刑事政策の観点等によって行われた恩赦が戦後あったかどうか、この点をお聞かせください。

今福政府参考人 法令の改廃等に伴う恩赦があったかどうかということでございますけれども、例えば、昭和天皇御崩御の際の恩赦にございました。

黒岩委員 済みません、昭和天皇の御崩御と法令の改廃というのは、それはどういう関係ですか。

今福政府参考人 外国人登録法等の改正によりまして、指紋押捺等の罪が罪でなくなったという改正がございました。そういったことを背景として大赦令の対象になったと理解しております。

黒岩委員 じゃ、ちょっと聞き方を変えますけれども、恩赦事由として、これは法務省からいただいた資料をもとに私、お話ししていますけれども、平成元年はやはり昭和天皇御大喪ですよ。法令の改廃というのは、今言った、直前の沖縄復帰から二十数年の中であったということは承知しておりますけれども、今言ったように、きっかけとして国家、皇室の慶弔時ではない、明らかに、今言った外国人登録法が廃止になったのは別に平成元年じゃありませんから。

 じゃ、そういった社会事情や刑事政策の変更等によって、これをきっかけとして、そしてこの法務省の言うところの恩赦事由として行われた恩赦は、戦後ありましたか。

今福政府参考人 お尋ねのような、法令改正にすぐ伴って行われたかどうかとは違いますけれども、このような国家及び皇室の慶弔禍福といった時期に合わせて行われた恩赦の中に、今申し上げたような恩赦があったと申し上げたところでございます。

黒岩委員 局長、もうちょっと明確に答えてほしいんですよ。

 だって、法律の改廃があったら、その時点で恩赦を出してもいいわけですよ、別に、政令恩赦として。

 それがきっかけとなって、それが主な事由として恩赦を行ったことはあるんですか。ないならないでいいんですよ。ないですよ。

今福政府参考人 お答えいたします。

 先ほど申し上げたとおりでございまして、その都度その都度ではございません。国家の慶弔時等をきっかけといたしまして行われたと承知しております。

黒岩委員 ですので、あくまでも、国家の慶弔時に合わせてでしょう。

 先ほどのこの意見書では二つに分けているわけですよ。国家の慶弔時でも差し支えない、これは消極理由にしているんですね。だけれども、積極理由としては、社会事情の変化や法令の改廃があった場合に、ないしは裁判の効果を変更するような合理的な政令大赦が今後活発に行われと、いくべきであると。だから、前者と後者では恩赦事由として分けているわけですよ。

 ですから、後段の恩赦事由を主なものとして行われたものはあるんですかといえば、局長は、きっかけとしては国家の慶弔でしょう。そういうことでいいんですよね。

今福政府参考人 先ほど御指摘の最終意見書には、国家の慶事に当たり喜びを分かつ意味で政令恩赦を実施することも何ら差し支えないとしているところでありますが、そのほかにも、慶弔禍福をきっかけとして国民が心新たにする機会に、犯罪をした者に対しても、恩赦に浴させ、その改善更生の意欲を高めさせるなどの趣旨も含まれるものと考えられてございます。

黒岩委員 堂々めぐりになるので、やめます。

 恩赦事由というのは、戦後、並べられていますけれども、これ全て、どの国民が見ても、国家の慶弔時だけですよ。で、たまたま二十年、三十年あくと、その間に法律の改廃はあるに決まっているじゃないですか、それに合わせてとかいう話であってね。

 本来の七十年前のこの眼目は、慶弔事があろうがなかろうが、刑事政策においての転換期があれば政令恩赦を出していこうという、このことに、皆さん、これはもうおわかりだと思いますけれども、結局、それに即したことはやっていないんですよ。

 しかも、この七十年前の最終意見書しかないんですよ、我が国の恩赦制度の方向性を出しているのは。唯一、四行で書かれている運用方針、このぐらいは、担当部局として、担当省として、その方向性に沿っていただきたい。大臣としても、このことは重く受けとめていただきたいですよ。

 何度も言いますけれども、三権分立の例外をなす大変極めて重い制度なわけですから、それについて、七十年前のこの意見書しかないわけだ。ですから、その意見書に書かれたことぐらいは、私は尊重していただきたいということは強く指摘をしておきます。

 じゃ、話を進めますけれども、昭和天皇の御大喪恩赦で対象となった罪は、この政令の第一条で一号から十七号まで示されています。要するに、十七の罪が恩赦の対象になりましたよと。

 これを分類しますと、じゃ、この十七の罪、一体どういう分類なんですか。一号から四号までは、これは戦後の経済統制関係法令に違反する罪。これは、もうその後廃止になったようなものも含まれています。廃止していないものもありますけれどもね。二番目が、先ほどからおっしゃっている、第五号、外国人登録法。この後お聞きしますが、第六号から第十七号まで十二の罪、これは、未成年者喫煙禁止法とか、せんだっての議論でも出した、のぞき見なども入る軽犯罪法。

 このくくりはどういうくくりかというと、拘留又は科料のみを法定刑とする罪である、これはこの十二の罪だということなんですが、じゃ、この時点で拘留又は科料のみを法定刑とする罪というのは、全部で十二、この政令に書かれている十二の罪だけだったんですか。

今福政府参考人 確認をいたしましたところ、大赦令の対象となりました罪以外であっても、例えば、刑法の侮辱罪は法定刑が拘留又は科料のみでございました。

黒岩委員 そうですよね。ほかにもあるに決まっていますよ、十二だけのわけがない。

 じゃ、何で、拘留又は科料のみを法定刑とする罪の中でこの十二の罪が対象として選ばれたのか、その理由をお聞かせください。

今福政府参考人 その明確な理由は判然といたしませんけれども、内閣において、恩赦制度の趣旨、先例、社会情勢、国民感情等、諸般の事情、状況を総合的かつ慎重に勘案して、大赦になじむものと判断されたと考えられます。

黒岩委員 じゃ、お聞きしますけれども、この政令、起案したのはどこの部局ですか。

今福政府参考人 法務省でございます。

黒岩委員 正確に部局と課の名前をおっしゃってください。

今福政府参考人 法務省保護局でございます。

黒岩委員 課名までおっしゃってください。

今福政府参考人 その後、組織の変更がございますけれども、当時は法務省保護局恩赦課でございます。

黒岩委員 ですので、局長の部局で起案しているわけですよ。その起案している、時間は移ろいがあったにしても、その部局で、何で、三十年前のこの政令でこの十二の罪、何度も言っていますけれども、やはりのぞき見が入る軽犯罪法って何でだろうと。

 なぜですか、答えられないんですか。

今福政府参考人 今回は軽犯罪法がその中に含まれておりますけれども、御指摘ののぞき行為以外にも三十を超える行為を処罰の対象としておりまして……(黒岩委員「そういうことを聞いているんじゃないんです。だから、起案した部局なんですから、何で十二例が選ばれたんですか。それについてお答えください」と呼ぶ)はい。

 その件に関しましては、先ほど申し上げましたとおり、諸般の事情を考慮して決定をしたというものでございます。

黒岩委員 その諸般の事情により決定したという今の局長答弁、大事ですよ。

 じゃ、この答弁のもととなる何か根拠はあるんですか。

今福政府参考人 御指摘につきましては、申しわけございませんが、議論の経過に係る行政文書が現在保存されておりませんので、詳細は確認できてございません。

黒岩委員 ということは、諸般の事情というのは、今局長の御自身の主観ということですか。

今福政府参考人 私の主観ではございません。これまでの答弁でも申し上げているとおりでございます。

黒岩委員 これもこの前問題を指摘しておきましたけれども、この行政文書がない、誰も確認のしようがないということなんですよ。これは大問題だと言っているんですよね。

 それで、では、お聞きしますけれども、これは閣議請議するわけですからね、政令ですから。その原議書というものをいただきましたけれども、これも、保護局だけではとてもそれは判断できないですよ。やはりそれは、各、刑罰を有する法令の精査とかは刑事局も必要ですからね。これを見るだけだって、二十人ぐらいの人の決裁文書というものをいただいています。

 じゃ、これをお聞きしたいんですけれども、本当は官房長の方がよかったかな。当然、閣議請議するときに、法務省で、保護局なら保護局一局で完結する場合もありますけれども、この恩赦のように、ようにと言いましたから一般的にですよ、複数局が関与する閣議請議、その場合、各局同士のすり合わせ、調整というのは具体的にどういう形で行われていますか。

今福政府参考人 お答えいたします。

 それぞれの状況に応じて、必要な人と協議をしているというような形でございます。

黒岩委員 当然、それは文書にてやりとりをするんですよね。

今福政府参考人 必ずしも文書になるものとは限りません。

黒岩委員 口頭の場合もなきにしもあらずですけれども、ただ、各局で局長レベルでこれは決裁するわけですから、局長レベルで口頭でということは、私はあり得ないと思いますよ。局長レベルですり合わせるときには、これはさすがに文書をつくりますよね。

今福政府参考人 その場合も状況に応じてでございます。

黒岩委員 閣議請議するときの決裁で、局長同士ですり合わせなきゃいけないときに、これは本当に口頭だけでやるという答弁でよろしいんですね。

今福政府参考人 もちろん、閣議請議直前という形で最後の案を固めるというようなところにつきましては、きちっと協議をするということになろうかと思います。(黒岩委員「だから、その協議というのは文書という意味ですか」と呼ぶ)

 今の公文書管理のガイドラインに従いますと、重要な政策決定といったところについては、必要に応じて文書等で保存していく、作成していくというようなことになっておりますので、それに従うということになると思いますが……(黒岩委員「文書でやるということですね、口頭ではなくて」と呼ぶ)文書になると思いますが、しかし、今御指摘の点は、過去の、昭和天皇の……(黒岩委員「いや、恩赦のことを聞いているんじゃない。今、一般の」と呼ぶ)一般の方でございますか。

葉梨委員長 ちょっと、そこで質問しないで。ちゃんと一回り言わせてから。

今福政府参考人 一般論ということでございましたら、先ほど申し上げたとおりでございます。

黒岩委員 当然、公文書管理のルールは変わってきています。三十年前の、特に昭和の終わり、平成の初めとは違いますけれどもね。当然、私が今聞いたのは、複数局にまたがって局長が自分の判こで決裁するときに、局長同士のすり合わせが必要なわけですから、それについては、最後、詰めるときには口頭ではないですよねと言ったときに、それはやはり文書ですねという話なわけですよ。

 それで、今度は平成元年の恩赦の大赦令について、戻しますけれども、このとき、起案したのが平成元年の二月一日、決裁が二月四日、起案されてから四日間ある。この四日間、四日間かかっているんですよ、同じ省内で。この間の議論のプロセスについてどういったものがあるのか、確認できる範囲で答弁ください。

今福政府参考人 当時のこのプロセスにつきましては、確認できるもので私ができるものはこれしかございませんので、ここから申し上げますと、起案の日が元年二月一日、そして、その決裁が関係者に回ってそれぞれの判断をなされて、最終的な決裁が得られたのが元年の二月四日ということでございます。

黒岩委員 皆さん、私もこれをいただきましたけれども、二ページですよ。各部局、矯正局長から刑事局長、官房長、保護局長、事務次官ですから、二十人ぐらいの判こを押されています。でも、結局これだけなんですよね。仮に三十数年ぶりに実際に恩赦を行うときに、このペーパーだけですよ。

 確かに公文書管理はルールは変わっていますけれども、じゃ、この平成元年の時点での公文書ルールですと、この原議書は永久保存になっていますよ、これ自体は永久保存。で、これにまつわる、当然、各局の調整したものがペーパーであったであろうと思いますね。当然、文書で当時も詰めますよ。それは廃棄したのかどうかもわからないということでよろしいんですか。

今福政府参考人 委員御指摘のとおり、廃棄したものであるか、そもそも作成していないものであるのか、その点については判明いたしません。

黒岩委員 今の話を聞くと、もういかにもずさんだ。公文書管理法がなければ、その前の平成十一年当時の情報公開法とかがなければ、じゃ、当時の役所は、平成ですよ、公文書というのはつくられたかもつくられないかもわからない、勝手に捨てたかどうかもわからない。これは相当乱暴なことだと思いますね。

 さはさりながら、皆さんもルールでやるんでしょうから、お聞きしますが、昭和五十五年十二月二十五日の連絡会議申合せというペーパーがあります。これは、「公文書等の国立公文書館への移管及び国立公文書館における公開措置の促進について」と。この連絡会議というのは、各省庁の担当課長、法務省でいえば秘書課長なんでしょう、そのほかだったら文書課長とか。基本的には、財務省なら文書課長、他の省庁なら総務課長でしょう、これは公文書の担当者ですから。

 そこで、こうあります。公文書等の種別で、当該省庁、法務省なら法務省の文書管理規則等、だから、当該省庁の文書管理規則はあるわけですよ。平成元年当時の文書管理規則を出してくれと言ったら、ないと言うから、それも大問題ですけれどもね。その文書管理規則自体が私は永久保存だと思いますが、規則等により永久保存と定められているものは、作成後三十年たったら国立公文書館に移管するものであると。昭和五十五年ですから、平成元年の前ですよ。

 この永年保存と定められているものに、この恩赦の政令決定プロセスは入っていなかったんですか。

今福政府参考人 昭和天皇御大喪恩赦に関しましては、決裁原議が現在も行政文書として保存されている一方、御指摘のような、決裁原議につづられている案に至るまでにどのような手が加わったのか、その他についてのプロセスに関する文書は、現在、行政文書としては保存されておりません。

黒岩委員 じゃ、この連絡会議申合せには、「各省庁は、公文書等の国立公文書館への移管に関する具体的な計画を作成するものとする。」と書いてありますね。当時、計画があったわけですよ。その計画を示してもらえませんか。

葉梨委員長 これは官房長を呼ばないと。

 保護局長、答えられる範囲で答えてください。

今福政府参考人 当時のルールに従ってしたものと私ども承知しておりまして、それ以上のことは今申し上げられません。

黒岩委員 じゃ、これはお願いしておきますけれども、後で資料で結構ですよ。官房長のところにあるはずですから、それを私の方に後刻でいいですから提示をしてください。

 大臣も、これは平成の時代ですよ。もっといえば、二〇〇〇年になって、さまざまな公文書管理ルールができる、その前まで、こんな状況であった。

 今後、本当に今回の代がわりで恩赦が行われる。私が考えるに、当然これは法務省だけで完結できる話ではないと思いますよ、非常に高度に政治的な部分があるわけですから。そうなったときに、官邸も含めて、じゃ、どういうような議論をすべきか。今の話だと、書類は何にも残っていない。

 三十年たっているから、これは局長に聞きますけれども、今、恩赦係の人がいますけれども、この当時を少なくとも伝聞調で承継している人というのは保護局にいますか。

今福政府参考人 そのような職員はおりません。

黒岩委員 ですので、元号の制定については、これは新聞の報道ですけれども、そういった専門家がずっと元号制定についてかかわってきたとありますけれども、この恩赦については、人としても伝承がない、文書としても伝承がない。こんな状況で、山下大臣のときに行われるのかわかりませんけれども、本当に的確な恩赦が行われるのかどうか。

 的確と言いましたけれども、恩赦権というのは、やはりこれは結構な権利なんですよ。

 特に、平成のかわり目では大喪の恩赦と即位の恩赦と、その後、当時の皇太子殿下の御成婚の恩赦とあった中でもやはり大きな議論となったのは、政治恩赦、具体的には公職選挙法ですよ。これを含めるか含めないか。公職選挙法の場合は、非常にメリットがはっきりしているわけですね。公民権が戻れば、すぐに、その選挙違反した人間が選挙に加われるという。

 そんなところで、じゃ、この昭和天皇の御大喪恩赦での公職選挙法違反者への対応というのは、具体的には何がなされましたか。

今福政府参考人 まず、昭和天皇御大喪恩赦におきましては政令恩赦及び特別基準恩赦が行われておりますけれども、政令恩赦のうち、大赦令につきましては、その対象とする罪に公職選挙法違反が含まれていないことから、対象となった者はいません。

 復権令及び特別基準恩赦につきましては、いずれも対象とする罪が特定されていないことから、公職選挙法に違反した者が対象となっております。

黒岩委員 わかりづらいですけれども、いわゆる復権令では公職選挙法違反も対象になっていたわけですね。

 これは、その後の報道では約一万五千人が復権している。平成元年というのは一九八九年ですから、要は参議院選挙の年ですよ。ちょうど国政選挙のときにこれは行われるんですね。もう私の方で説明しますが、その次の今上天皇の即位恩赦、これは一九九〇年ですから、これはまた総選挙のあった年だ。この年も約五千人の公職選挙法違反の人たちが救済されている。これは選挙の後ですね。

 だから、こういうものは時の与党によって、やはり非常に政治的な、公職選挙法違反ですから、与党と野党のどちらの陣営が違反しているかどうかというのは、それは私もわかりませんが、ただ、これは非常に、直近の選挙で罰金刑を受けた人間が復権するというのは、これは実際には違反した人にとってはありがたい話ですよね。

 次の皇太子殿下の御成婚のときは、これはまさに一九九三年のあの政治改革選挙の直前ですよ。これも政治恩赦に対する非常に批判があったんだけれども、時の法務大臣である後藤田正晴法務大臣が、政令恩赦で救うのは見送られたんだけれども、しかし、特別基準恩赦の審査の対象にするんだと法務大臣が自分の見解を示して、結果的にはそれが対象になっちゃったんですよね。

 大臣、このように、恩赦のあり方によっては、非常に司法の公正さといったようなものがねじ曲げられる可能性がある。

 そこで、最後に指摘しますし、大臣に御答弁をいただきますけれども、実は、この七十年前に出された最終意見書というのは非常に示唆に富んでいるんですよ。最終意見書の総括的意見というところで、こう書かれています。政令恩赦、個別的恩赦を通じて、それが従来のごとく政府内の手のみによって決定されるということも、事の重要性に鑑み、適当を欠くだろうと。非常に示唆に富んでいますね、適当を欠くだろうと。恩赦は憲法上内閣の責任において行われるべきものであるけれども、それは民意を反映せしめることは、民主主義の原理からいって正当であり、かつ、必要と考える。また、それによって他面恩赦権濫用の弊を防止されると信ずるものである。ここまで書かれているんですよ。

 大臣、昭和三十三年に恩赦法の一部改正が参議院を通過しています。具体的には、この恩赦制度というものを事後にもチェックできる恩赦審議会というものをつくって、そこに衆参の議長や、また検事総長や最高裁判所の長官や日弁連の会長などを入れて、政府の一部の手によってではなく、民主的にこの恩赦というものをしっかりと考え、検証しようという。私は、こういったような大胆な改革をもうする時期に来ていると思っておりますが、山下大臣、担当大臣としての所見をお答えください。

葉梨委員長 山下大臣、簡潔にお願いします。時間が来ています。

山下国務大臣 一般論として申し上げれば、恩赦を行うか否かにつきましては、現行の法に基づいて、内閣において、恩赦制度の趣旨、先例、社会情勢、国民感情等、諸般の状況を総合的かつ慎重に勘案して判断すべきものと私も承知しておるところでございます。

黒岩委員 しゃくし定規な答弁、ありがとうございました。

 せっかくのこの御代のかわりの一つの機会なんだから、そのときにいる大臣として、歴史的大臣として、やはりちゃんと受けとめて対応していただきたい、このことを申し上げて、質問を終わります。

 ありがとうございました。

葉梨委員長 以上で黒岩宇洋君の質疑は終了いたしました。

 次に、山本和嘉子君。

山本(和)委員 立憲民主党・無所属フォーラムの山本和嘉子でございます。

 きょうも質問の機会を頂戴いたしましたことを心から感謝申し上げまして、質問に入らせていただきたいと思います。

 今国会の所信で、大臣が、再犯防止推進計画に基づいて、就労、住居の確保、高齢者や障害のある者、薬物依存を有する者への支援ということなど、犯罪や非行をした者の立ち直りに必要な指導や援助を適切に実施するということをおっしゃっておられました。

 しかしながら、こういうことがそう簡単ではないということも事実でありまして、これまで再犯が繰り返されているということも事実であると思います。そういった意味でも、踏み込んだ取組をということを所信でおっしゃったんだと思います。

 そこで、まず、我が国におけます再犯者率の現状についてお聞きしたいと思います。

西山政府参考人 お答えいたします。

 刑法犯検挙人員に占める再犯者の人員の比率、御指摘がありました再犯者率、これにつきましては、三十年版犯罪白書によりますと、平成二十九年の再犯者率は四八・七%でございまして、平成九年以降一貫して上昇し続けております。

 現状に関する認識としては、やはり再犯防止対策が重要である、このように認識をいたしております。

山本(和)委員 今おっしゃった、二十九年が四八・七%、平成九年以降も上昇傾向にあるということなんですけれども。

 例えば、法務省と厚労省では、連携をして、就労支援そして住居支援、福祉支援、そういう各対策を行っていると思うんですが、ハローワークの職員が刑務所に出向いて、受刑者への就労相談そして情報提供、就労プログラムなどの提供を行ったり、協力雇用主と出所者のマッチングをする施策も実施されているということでございます。

 しかし、一般社会の経済状況の悪化、そして社会の偏見、そういうことによって、受刑経験者の雇用確保というのは現実的には大変厳しい状況であるというふうにも認識しております。同様に問題になっているのが、住居など生活基盤のない出所者の再犯が多いということもあると思います。

 再犯者率は、今お聞きしたとおり、平成二十九年で四八・七%、平成九年以降上昇ということでございますけれども、法務省では再犯防止に向けて具体的にどのような対策を講じようとされているのか、大臣からお聞きしたいと思います。

山下国務大臣 お答えいたします。

 まず、委員に御理解賜っていただいているとおり、新たな被害者を生まない、安全、安心な社会を実現するために、犯罪をした者等の再犯防止が特に重要である、これは政府一丸となって取り組むべき重要施策の一つとして認識しておるところでございます。

 そして、議員立法である再犯防止推進法、これが平成二十八年十二月に成立いたしまして、これに基づいて、政府においては、平成二十九年十二月、再犯防止施策の総合的かつ計画的な推進を図るため、再犯防止推進計画を閣議決定したところでございます。

 この推進計画におきましては、五つの基本方針のもと、就労・住居の確保や保健医療・福祉サービスの利用の促進といった七つの重点課題について、百十五の具体的施策が盛り込まれているところでございまして、現在、政府においては、この推進計画に基づいて、犯罪をした者の就労、住居の確保を始めとした取組を進めているところでございます。

 引き続き、犯罪をした者などが社会の中で受け入れられることができるよう、地方公共団体や民間協力者、保護司や協力雇用主など民間協力者などとも緊密に連携しつつ、推進計画に盛り込んだ一つ一つの施策を着実に実施してまいりたいと考えております。

山本(和)委員 ありがとうございます。

 再犯防止計画に基づく基本方針ということで、今百十五の施策ということもおっしゃっているということで、大変数多い施策があるということもよく理解はできます。

 この質問をするに当たって、いろいろと、各国の事例とか再犯防止に係る施策など、諸外国の問題などもいろいろと調べてみたんですけれども、特にデンマークでは、社会理念の一つであるノーマライゼーションという考え方が犯罪者にも適用されているということでございます。

 犯罪者へのノーマライゼーションとは、犯罪者を社会的ニーズのある一市民というふうに捉えて、社会の中で普通に生活をして活動できるということが彼らの本来あるべき姿であるという考え方なんですけれども、刑務所収容者を可能な範囲で社会生活に近づけて、家族や友人、地域社会など、外部社会との接触を保つというようにしてスムーズな社会復帰につながるようにする方法なんです。

 こうしたノーマライゼーションは、日本の刑務所とはかなり、考え方とか方法とかも全然違っているとは思うんです。ノーマライゼーションというと、日本では障害者福祉の用語として知られていると思います。犯罪を犯した人にもノーマライゼーションを適用することは、彼らに対する偏見を取り除いたり、犯罪を犯した者の社会復帰を図るという上で有効な考えではないかなと思います。

 犯罪を犯してしまう者の多くは、社会的な環境に恵まれない、あるいは何らかの障害を持っている場合が多いと思います。彼らを社会的にサポートすることで犯罪に至る過程を排除していくということは理にかなっているようにも思うんですが、法務省として、こうしたノーマライゼーションについてどのように捉えておられるのか、大臣の御意見をお聞きしたいと思います。

山下国務大臣 お答えいたします。

 委員御指摘のノーマライゼーション、これは、論者によってちょっと意義が多義的になることもありますし、適用場面も異なり得るということで、そのこと自体についてはちょっと論評は差し控えさせていただきます。

 他方で、委員御指摘のとおり、受刑者を一般社会にできる限り近い環境で処遇することは、受刑者の自発性、自律性を涵養し、社会適応性を向上させ、改善更生及び円滑な社会復帰の実現を図るという点で大きな意義があると考えております。

 現状として、現在、刑事施設においては、受刑者処遇の目的を達成する見込みが高いと認められるなどの要件を備えている場合に、例えば、職員の同行なしに刑事施設から外出し又は外泊する制度、あるいは、職員の同行なしに刑事施設の外の事業所に通勤させて業務に従事させる外部通勤の制度、さらには、収容を確保するため通常必要とされる設備又は措置の一部を設けず、又は講じない開放的施設における処遇など、開放的な環境の中で受刑者を処遇するさまざまな制度を運用しているところでございます。

 引き続き、個々の受刑者の特性や必要性等を精査しつつ、これらの制度を適切に運用し、受刑者の改善更生及び円滑な社会復帰を図り、再犯防止に努めてまいりたいと考えております。

山本(和)委員 ありがとうございます。

 ノーマライゼーション、さまざまな意見があるということですが、大きな意義があるということもおっしゃっていただいたんです。

 ノーマライゼーションの考え方で一つ注目すべきところは、家族や友人との矯正での接点のあり方ということが言われていると思うんですが、例えばデンマークでは、受刑者との面会、家族の面会、友人との面会に、面会場所にソファーが置かれていて、お茶を飲みながらとかいう自由な雰囲気で面会ができるということでございます。

 日本のそういう受刑者との面会は、十五分とか三十分とか短時間に限られていて、ガラス越しで、ある一定の距離を保ちながらの面会であるということでございます。面会の手続にも時間がかかるということも聞いておりますが、こうした面会について、日本の施設でも、諸外国の例などを参考にしたり、何らかこういう検討とかは考えられたことなどはあるのかどうか、ちょっと教えていただければと思います。

名執政府参考人 委員御指摘のとおり、受刑者の改善更生、円滑な社会復帰を図る上で、家族や友人、知人などとの交流が重要であると考えております。

 刑事施設におきましては、一般的に、法令に基づき、受刑者の面会の場所や時間等について必要な制限をしているところですが、面会場所につきましては、開放的な状況で面会をすることを適当とするような事情がある場合、仕切りの設備のない場所で面会させるなどの対応をしているほか、面会時間につきましても、申出の状況、内容等に照らして、時間を延長するなどの配慮をしているところでございます。

 また、面会や信書の発受に加え、特定の要件を満たす者につきましては電話による通信を認めるとともに、それ以外の者についても、親族などが刑事施設から遠く離れた場所に居住している場合など、面会が困難であると認められる場合には、人道的な観点から電話を認めることもございます。

 以上のとおり、受刑者が社会との健全で良好な関係を維持することは重要であり、面会などはそのための重要な手段であると考えておりますので、今後とも適切な運用に努めてまいりたいと思っております。

山本(和)委員 収容が長期間になればなるほど家族や友人との関係性も薄くなっていくと思いますし、今おっしゃっていただいたように、収容施設と家との距離がある場合の電話とかというのも有効だとは思うんですが、出所後の生活のイメージがつくような環境づくりというのがすごく大事だと思いますので、その辺は検討はされていると思うんですが、諸外国の例などもいろいろ参考にしていただく、こういう考え方もあるということは意見で申し上げておきたいと思います。

 あと、続きまして、ノーマライゼーションの考え方、引き続きお聞きしますけれども、社会に普通にある仕事を体験させて、なおかつ社会復帰後の自立のために貯金ができるということ、デンマークのノーマライゼーションの考え方の中であるということなんですけれども、就労においては、技術習得を目的とした家具製造、板金や大工や修繕、洗濯などの作業が、月曜日から金曜日まで一週間に三十七時間は働いて、賃金を得て出所後の生活資金にすると。

 この部分は、きのう法務省の方からレクを受けた際に、そういう仕事をして賃金を得るということは日本の制度においてはなじまないというふうにはおっしゃっていたんですけれども、日本では、出所後において、お金がなくて、住むところもなくて、それでホームレスになったり再犯につながる例も多いと思うんです。ただ、日本では、賃金という位置づけではなくて報奨金という制度があって、額も月に三千円とか五千円程度、出所時にまとめて支給をされるということなんですが、出所時の生活資金となるほどの額ではないのかなと、まあ刑が短ければ短いほど、そういうふうには思います。

 こういうお金の面で出所後の生活や、いろいろ更生の面で再犯防止につながるような議論などはされたりはしているのかどうか、ちょっと教えていただきたい。

名執政府参考人 受刑者が刑事施設の外で作業を実施するものといたしましては、職員の同行なしで刑務所施設外の事業所に通勤する外部通勤作業、また、近隣の介護施設などで理髪などを行う社会貢献作業、職場定着を図るため希望の職種と同一職種の企業などに赴き行う職場体験など、さまざまな機会を設けてきているところでございます。

 中でも外部通勤作業につきましては、刑事施設内における作業だけでは取得できない高度な技術、技能等を習得させることもできる上、社会における就労形態を通じて勤労生活の意義と価値を受刑者に体感させるとともに、社会の中で正しい人間関係を築く方法を学ばせる効果があることですので、今後も積極的な運用に努めてまいりたいと思っております。

 また、作業報奨金につきましては、刑務作業に従事した受刑者に対しまして、原則として釈放の際に給付する金銭でありまして、その意義は、主として受刑者の勤労意欲を高めることにより改善更生の意欲を喚起し、所持金を持たせて釈放することにより円滑な社会復帰の一助とすることにあると認識しております。

 この額につきましては、今申し上げましたような意義を考慮しつつも、刑務作業が懲役受刑者にとっての刑罰の内容そのものでありまして、社会における自由な労働とは本質的には異なるということなども考慮して慎重に検討すべきものと承知しております。

 ただ、委員御指摘の点も踏まえ、今後とも、諸般の事情に応じて適切な金額を支給できるように努力してまいりたいと思います。

山本(和)委員 ありがとうございます。

 デンマークのノーマライゼーションという考え方、今回紹介をさせていただいたのは、罪を犯してしまった人がどうやって自立更生していけるか、そのことを刑務所にいるときから、それから刑務所を出た後も一貫した形で考えて、それを支え続けるという海外の支援のあり方というふうに捉えて申し上げたんです。でも、今御紹介いただいたとおり、日本でもそういう就業する部分もあるということなんですが、やはりそれを蓄えてというわけではないですよね。

名執政府参考人 ただいま御指摘の点は、やはり刑務作業を外の場所で行うということですので、そこは報酬として金銭をもらうということではなく、作業報奨金として計算されるということでございます。

山本(和)委員 ごめんなさい、わかりました。報奨金としてそれをまた支給してということなんですよね。

 再犯防止という意味で、手厚くというふうには、それは刑を犯した人たちですので、そこまではならないかもしれないんですけれども、再犯して罪を繰り返す、例えば高齢化してしまった方には特に重要な視点なのかなというふうにも思います。

 日本では、高齢者による再犯も多いと思うんですが、罪を犯した高齢者が最終的には地域社会に定着していくということ、つまり行き場についての合意形成ができていないというふうにも思います。

 行き場というのは、地域社会や家族しかない中で、最終的にそこに行き着くという理解がなかなか進んでいないということなんですが、例えばイタリアやデンマークでは、罪を犯した高齢者を、罪を犯したことは悪いけれども、同時に、生活に困難を抱える人というふうな位置づけをしている、生活に障害のある方々同様に地域で包括的に生活の場を提供しているということで、そうしたことによってイタリアやデンマークでは高齢者の犯罪率が低いということなんですが、こうした国々の制度に学ぶことは多いのかなと。

 そこで、日本での高齢者の再犯防止について、議論や取組があれば教えていただければと思います。

西山政府参考人 犯罪をした高齢者につきましては、福祉的支援が必要な方も少なくなく、その再犯を防止して社会復帰を図るためには、刑務所内や保護観察中の指導等だけでなく、刑事手続終了後も社会内で安定して生活することができるよう、福祉サービスにつなげることが重要であると考えております。

 そのため、法務省におきましては、これまで、矯正施設における社会福祉士等の活用や保護観察所における福祉サービス利用に向けた調査、調整機能の強化、矯正施設、保護観察所及び地域生活定着支援センター等の多機関連携による、釈放後速やかに適切な福祉サービスに結びつける特別調整の取組の一層着実な実施、更生保護施設における支援の充実などの取組を進めてきたところでございます。

 こうした取組を進めました結果、六十五歳以上の高齢出所者の二年以内再入率は、平成十九年出所者では二八・三%であったのに対し、直近の平成二十八年出所者では二〇・六%と、十年前に比べて七・七ポイント減少するなど、一定の成果が認められるところだと考えております。

 もっとも、高齢出所者の二年以内再入率は、非高齢者と比べると高い傾向にはあるということでございます。

 そのため、平成二十九年十二月に閣議決定されました再犯防止推進計画において、保健医療・福祉サービスの利用の促進等が重点課題の一つに位置づけられていることを踏まえつつ、今後とも、厚生労働省や地方公共団体、民間団体等と連携し、必要な福祉サービスにつなげるなど、高齢者の再犯防止対策にしっかりと取り組んでまいりたいと考えております。

山本(和)委員 ありがとうございます。しっかり取組をまた進めていただきたいと思います。

 続きまして、かなり以前の話になるんですが、平成十九年に開催された法務省の法制審議会の被収容者人員適正化方針に関する部会で、社会奉仕命令を遵守事項の一手段として更生保護法に導入することが提案されたということでございます。

 これは、犯罪者を、一般社会の中で通常の社会生活をさせながら行動の自由に一定の制限を加える遵守事項を課して、定期的にコントロールを加え、犯罪を起こさない生活に導くものということでございますが、このコミュニティーオーダーは犯罪者の社会復帰政策として有効だと考えられますけれども、日本でなじむかどうかという課題もあると思うんですが、このコミュニティーオーダーについて法務省は現在どのように考えられているのか、教えていただければと思います。

今福政府参考人 まず、保護観察所におきましては、平成二十七年六月から、公園や河川等公共の場所での清掃活動あるいは福祉施設での介護補助といった地域社会の利益の増進に寄与する社会的活動を継続的に行う、社会貢献活動と申しておりますが、これを保護観察対象者に対しまして特別遵守事項により義務づけるなどして実施しているところでございます。

 この社会貢献活動につきましては、再犯防止推進計画においてもその一層の充実を図ること等が求められておりますことから、平成三十年度には、有識者による検討会を設置いたしまして実施状況の検証を行い、より効果的な運用のあり方について検討をいたしたところでございます。その結果、この社会貢献活動が再犯、再非行の防止に寄与しておりまして、社会性の向上、自己有用感、規範意識の高まりなどの処遇効果が認められたところでございます。

 こうした検討の結果を踏まえまして、社会貢献活動をより柔軟に実施できるようにしたところでございまして、今後とも、社会貢献活動を効果的に活用して再犯防止を推進してまいりたいと考えております。

山本(和)委員 ぜひよろしくお願いしたいと思います。

 続きまして、ちょっと内容が変わるんですが、法科大学院の制度についての質問をさせていただきたいと思います。

 文部科学委員会において議論されている法科大学院の制度改正に関連して、この議論の前提として平成十三年に司法制度改革審議会が提出した意見書について確認をしていきたいと思うんですが、この意見書は今回議論になっている法科大学院を含む司法制度改革全体の議論のたたき台になっているものと考えます。

 司法制度改革の議論が始まっておおよそ二十年の歳月がたちますが、実際の制度改正が行われて十五年、本来なら、改正の成果が出てきて、その全体的な総括、その総括の上、次の方向性を定めるという時期だと思います。しかし、実際、この法案では全体的な総括が見当たらないと思います。

 法科大学院の制度改正の話を文部科学委員会だけで行うということになってしまっていますが、やはり司法制度改革の評価をいま一度法務委員会の方でもすべきだと思います。その必要性があるのではないかなとは思いますけれども、そうした中で、まず、この意見書について質問をしたいんです。

 意見書の発端は、平成十一年七月の内閣に司法制度改革審議会が設置されて、二年間の集中審議でまとめられたというものなんですけれども、二十一世紀の司法を支えるための人的基盤整備として、法曹の質と量を大幅に拡大することを目指すと。また、二十一世紀を担う法曹に必要な資質として、豊かな人間性や感受性、幅広い教養と専門的知識、柔軟な思考力や説得、交渉の能力など基本的資質に加えて、社会や人間関係に対する洞察力、人権感覚、先端的法分野や外国法の知見、国際的視野と語学力などが一層求められるということでございます。

 非常に高い理想を掲げていると思うんですが、私は、この司法改革の目標自体は普遍的なものであると思います。方向性は間違っていないと思うんですが、この大きな方向性、今回のこの制度改革で変化があるのかどうか、そのあたり、大臣からお聞きしたいと思います。

山下国務大臣 お答えいたします。

 今回の改正案は、司法制度改革意見書に掲げられたプロセスとしての法曹養成の理念を堅持しつつ、法科大学院教育の抜本的な充実、法学部三年と法科大学院二年のルート、いわゆる3+2と言われておりますが、これを標準的な運用としつつ、在学中受験資格を導入することによる時間的、経済的負担の軽減、そして、法科大学院の定員管理による予測可能性の高い法曹養成制度の実現といった必要な改革を行うものでございまして、委員御指摘の意見書の理念を変更するものではないと考えております。

山本(和)委員 ありがとうございます。

 意見書に関する方向性は変わらないということなんですけれども、大学や法科大学院で学ぶ期間を短くするということ、そして、法科大学院在学中に司法試験を受験できるようにすることという制度自体は、変わっていっているんだなというふうに理解はするんですが、先ほど申し上げた意見書では、新たな法曹養成制度の整備として、司法試験という点、さっき大臣もおっしゃいましたけれども、点のみによる選抜ではなくて、さまざまな教育を有機的に連携させたプロセスとしての法曹養成制度を新たに整備すべきという、その中核をなすものとして法科大学院を位置づけたということでございます。

 法科大学院は、入学選抜方法において公平性や開放性や多様性を旨として、新司法試験の合格率を七、八割となるように充実した教育を行うということでございます。こうした法科大学院の理念や位置づけは、今回どのように変わっていくのか。法科大学院にかかわる専門家の皆さんの御意見などによりますと、法科大学院の司法試験の予備校化になるんじゃないかという懸念もありますけれども、いかがでしょうか。

森政府参考人 お答え申し上げます。

 今回の改革案におきましては、法曹になろうとする者に必要とされる学識、能力を始め、法科大学院において涵養すべき学識等を具体的に規定するということと加えまして、学部の早期卒業を前提とした法学部と法科大学院との連携を強化いたしまして、その上で、法科大学院在学中受験資格による司法試験を可能とするということ、それから、法務大臣と文部科学大臣の相互協議の規定を新設して、法科大学院の定員に関して決める、そういうことを内容としてございますけれども、こういうことによりまして、法科大学院教育の充実を図るということと、時間的、経済的負担を大幅に軽減するということと、それから、予測可能性の高い法曹養成制度を実現する、そういうことを目的としておりますけれども、プロセス養成を実現するということにおいての理念については、変わるものでは全くございません。

山本(和)委員 今、変わらないというふうにはおっしゃいましたけれども、学修する期間が短くなるということで、試験に対するカリキュラムの中身も変わっていくのではないかなというふうには思うんです。司法試験重視で、定義づけられたプロセス重視ではない法科大学院になってしまわないかというふうにも、ちょっと懸念はあるんですけれども、大学院そのものの存続理由にかかわる事態になるかもしれないというふうな懸念も言われている中で、ちょっと疑問が残るところなんです。

 続いて、司法試験についてお聞きしたいと思うんですが、意見書では、法科大学院の教育内容を踏まえたものとして、かつ、十分にその教育内容を修得した法科大学院の修了者に新司法試験実施後の司法修習を施せば、法曹としての活動を始められる程度の知識や思考力や表現力を備えているかどうかを判定できるということを目的とするというふうにしています。

 従来の司法試験からの脱却を目指したということでございますけれども、こうした司法試験の改革目的について変化するのか、また、司法試験の時期や司法修習の時期などが変わっていくのか、そのあたりを教えていただきたいと思います。

西山政府参考人 まず、司法試験の実施につきましては、司法試験委員会に委ねられているところでございますが、今回の制度改革による在学中受験資格の導入につきましては、司法試験の実施時期や法科大学院教育課程との連携、法科大学院生の学修到達度の確保といった点での検討の必要性が指摘されているところでございます。

 そこで、法務省としましては、改正法案が成立いたしますれば、法科大学院教育と連携した司法試験のあり方について、司法試験委員会とも連携したしかるべき会議体を速やかに設置して、検討を進めていくことを予定しております。

 その会議体においては、法科大学院の新たな教育課程の内容やカリキュラム編成、学生の学修到達度等の議論と並行して、関係者の協議により、司法試験の実施時期を含む司法試験のあり方について必要な検討が行われるものと考えております。

 また、司法修習についての御指摘がございましたけれども、司法修習につきましては、最高裁判所の方で判断されることではございますが、この司法試験と同様の時期に、できるだけ早く、このプロセスの過程と整合するように検討がなされていくものと考えております。

山本(和)委員 ありがとうございます。

 続きまして、予備試験制度についてちょっとお聞きしたいんですけれども、今、法科大学院で教えている現場の方々から予備試験の問題が提起されていると思うんですが、例えば、予備試験の誤った運用をそのままにして、法科大学院の制度をさわる制度変更は本末転倒であるのではないかという意見もあります。政府自身も、二〇一五年六月の法曹養成制度改革推進会議において、「本来の趣旨を踏まえて予備試験制度の在り方を早急に検討し、」というふうにあります。必要な方策を講ずるというふうに述べておられます。

 予備試験は、もともと経済的な事情などで法科大学院に進学できない人のための制度であると思うんですが、実際には、特別な受験資格はなくて、誰でも受けられ、合格すれば法科大学院修了と同等にみなされるために、実質的な抜け道となって、法科大学院生も受験しているということでございます。

 この制度を見直さない限り、法科大学院の制度だけを変えても仕方がないというふうに思うんですけれども、このことに対しての御認識はどうなのか、ちょっと聞きたいと思います。

葉梨委員長 西山総括審議官、時間が来ていますので、簡潔にお願いします。

西山政府参考人 委員御指摘の推進会議決定におきましては、確かに、制度創設の趣旨と利用状況が乖離しているというような指摘もあるのも確かでございます。

 もっとも、この推進会議決定におきましては、一方で、出願時の申告によれば受験者の過半数を占める無職、会社員、公務員といった者については、これらの者に法曹資格取得のための道を確保するという本来の制度趣旨に沿った機能を果たしていると考えられるというふうにもされているところでございまして、一定の積極的な評価も一方でされているということでございます。

山本(和)委員 ありがとうございます。終わります。

葉梨委員長 以上で山本和嘉子君の質疑は終了いたしました。

 次に、源馬謙太郎君。

源馬委員 国民民主党の源馬謙太郎でございます。

 きょうも質問の機会をいただきまして、ありがとうございます。

 長いゴールデンウイークが終わりまして、私は地元が浜松なんですが、浜松ではゴールデンウイークは浜松まつりといって大きなお祭りがありまして、ほとんどそのお祭りに参加をするゴールデンウイークだったんです。

 大臣や副大臣、政務官の皆様もそれぞれゴールデンウイークの期間があったと思うんですけれども、通告していないんですが、まず最初に確認をさせていただきたいと思います。

 私は、これはある先輩から伺って、知らなかったんですが、緊急事態発生時などに備えて、閣僚の皆様の参集等の対応についてという決まりがあるということで、各閣僚が東京を離れる場合には、あらかじめ副大臣、内閣官房副長官を含む、又は大臣政務官が代理で対応できるように各省庁等において調整しておくというような規定があるそうでございまして、この長い十連休というゴールデンウイークの期間中も、そのようにして法務大臣始め副大臣、政務官で調整をされて、緊急事態、何か起こったときのためにどなたかが在京されていたということでよろしいのか、確認だけさせてください。

山下国務大臣 御指摘のとおり、大臣、副大臣、政務官においてそれぞれ分担いたしまして、在京、いわゆる在京当番と言われておりますが、務めておったところでございます。

源馬委員 非常に大変だったと思います。ありがとうございます。

 それでは、質問に入らせていただきたいと思います。

 まず初めに、特定技能について伺っていきたいと思います。

 四月の一日から外国人の新たな在留資格の特定技能制度が始まりまして、いろいろな報道で、早速、この特定技能に関する課題なんかも報道されるようになってまいりました。ある報道によりますと、四月の二十五日に開催された外食産業の特定技能試験の定員、これが三百三十八人だったんだけれども、もう募集開始日に定員が既にいっぱいになったと。一日足らずで枠がいっぱいになってしまって、希望しても全員が受験することができないような状況になってしまったということを受けて、新たに約千人が受験するようにもした、こういうような状況があったと聞いております。

 そこで、まずは農水省の参考人に伺いたいんですが、特定技能における外食業種の資格試験において、四月の二十五日と二十六日で、結果的に何人受験できて、また、希望したんだけれども受験できなかったという外国人、この特定技能の資格を求める外国人の方がどのぐらいいらっしゃったのか、お聞かせいただきたいと思います。

小野政府参考人 お答え申し上げます。

 四月に実施いたしました外食業分野におきます試験の受験者でございますけれども、これは二日間合計で四百六十名でございました。

 なお、受験を希望したものの、申請受け付けの終了によりまして申込みができず、受験できなかった外国人の人数は把握しておりませんが、より多くの受験機会を確保できるよう、しっかりと取り組んでまいりたいと思います。

源馬委員 まず初めに三百三十八人の枠で、それがすぐにいっぱいになって、新たに合計千人受験できるようにしたわけですよね。それで、結局受けたのが四百六十人だったということは、応募がそれに届かなかったのか、枠がいっぱいにすぐなっちゃって、慌てて枠をふやしたんだけれども、結局その枠までいっぱいにいかなかったのか。それとも、枠はいっぱいになったんだけれども、五百四十名ぐらいの方は結局受験をせずに、四百六十人の方のみの受験になったのか。どういった経緯で四百六十人になったのか、教えていただきたいと思います。

小野政府参考人 この二日間の申込者でございますけれども、これは六百三十一名でございます。そのうち四百六十名が受験したということでございます。

源馬委員 そうすると、最初に三百三十八人の募集をしてすぐにいっぱいになって、千人受験できるように枠をふやしたんだけれども、それが見込み違いで六百三十一人の応募しかなく、受験も、百八十人近くが受験を何らかの理由でキャンセルして受けなかった、結局四百六十人しか受けなかったという理解でよろしいですか。

小野政府参考人 そういうことでございます。

源馬委員 ありがとうございます。

 続いて、観光庁の方にもお伺いしたいんですが、同じようなことで、宿泊分野の試験においては、試験の申込者は七百六十人がいたんだけれども、実際に受験したのは三百九十人だったという報道もありました。

 これは、今の農水省と同じような現象が起きたのか、どういった背景があったと分析されているんでしょうか。

金井政府参考人 お答えいたします。

 特定技能における宿泊分野の技能試験は、四月十四日に、国内七カ所、札幌、仙台、東京、名古屋、大阪、広島、福岡において実施いたしました。技能試験の申込みを締め切った四月三日時点の申込者が全国で七百六十一名でしたが、試験当日の受験者は三百九十一名であったところでございます。

 御質問の受験率の問題につきましては、個々の受験者が試験会場にお越しにならなかった理由までは定かではございませんけれども、同じく四月に試験を実施しました外食分野などの状況も把握しながら今後の対応を検討してまいりたいというふうに考えてございます。

 また、申込みの状況につきましては、三月二十日に受け付けを開始して、四月三日に締切りを行いましたけれども、東京、大阪などの六会場では満員となりまして、札幌会場だけは満員に達しなかったというところでございまして、今後は、この点につきましても、より多くの受験機会を確保できるよう、今後の対応を検討してみたいと考えております。

源馬委員 ありがとうございます。

 この申込者の数は、定員いっぱいだったんでしょうか。それとも、もう定員を上回る数の申込者があったのか。つまり、定員でその申込書も打ち切ってしまったんでしょうか。

金井政府参考人 お答えします。

 それぞれの会場におきまして、試験会場の規模でありますとか試験実施の体制などを勘案しまして、ある一定以上に達しました段階で、これ以上ふえると対応を当日できなくなるかもしれないということで募集をとめた、停止したというところがあるということでございます。

源馬委員 そうしますと、これは農水省も関係すると思うんです、同じことだと思うんですけれども、定員を設定していて、それに達したから応募を打ち切ったということで、応募できなかった人もいたわけですよね。

 一方で、七百六十人応募してきたんだけれども、それは結局定員だったんだけれども、実際に受験したのは半数近くだったということは、そのキャンセルした人がいなかったら、もしかしたら受けられた人はいたかもしれないという認識でよろしいんでしょうか。

金井政府参考人 会場の状況などを勘案しまして停止をしましたけれども、実際どのぐらいの方が来られるかということは、最初だということもありまして予想ができなかったものですから、そういったことで、実際は三百九十一名ということでございましたけれども、いずれにしましても、今後、これはより多くの受験機会が確保できるように検討してまいりたいというふうに考えております。

源馬委員 そうしましたら、観光庁の参考人の方と農水省の参考人の方、お二人にお伺いしたいんですが、今回、外食業種と宿泊業種で試験をやってみて、結果、こういうことになった。

 繰り返しますが、農水省の担当の外食業種では、定員がすぐにいっぱいになったので、これはもっと来るだろうということで千人の枠にしたんだけれども、結局、応募もそれを下回って六百三十一人だった。さらに、二百人近くが受験をしなかった。こういう背景があった。

 宿泊の分野では、七百六十人の定員で打ち切ったんだけれども、結局半数近くの人しか受験に来ずに、もしかしたら、定員で締め切っていなかったらもっと応募したかった人がいたのに、ここを打ち切ってしまったという結果になった。

 このことを今回どのように総括されているのか。もちろん、最初なので完璧にということは難しいと思いますが、これを生かして次どういうふうにしていくのか。そもそも、これだけ受験率が低いというのは想定されていたのか。例えば、ほかの外国人に関する試験で、申込みの半分ぐらいしか大体試験を受けないよという想定がもともとあったのかどうか。そのあたりについても、今後の対応策とともにお伺いしたいと思います。

小野政府参考人 お答え申し上げます。

 四月に実施した試験の申込状況を踏まえまして、六月下旬に、全国七カ所におきまして約二千名程度の追加の試験を実施するということとしております。それから、これに加えまして、秋以降に三千人規模の試験を実施すべく準備を進めておりまして、受験希望に応えてまいりたいと思っております。

 なお、受験率を高める方策につきましては、いろいろ、申込方法ですとか運営の方法ですとか、六月の試験結果も見つつ検討してまいりたいというふうに思っております。

金井政府参考人 お答えします。

 今後の宿泊分野の技能試験の実施につきましては、他の分野の試験の状況も把握しながら、今後、できる限りより多くの受験者の受験機会を確保できるように、試験の申込方法とかあるいは実施体制などの具体的な改善方策を検討してまいりたいというふうに考えております。

源馬委員 今お二人の参考人の方から言っていただいた対応策というのは、申込みしやすいとか、更に枠をふやすということだと思います。それはそれで必要だと思うんですけれども、この受験率の低さというのにどう対応していくのか。申込みだけしておいて受験しないという、これはどういうことがあってこうなったのか、それに対する対応策というのはどうお考えなんでしょうか。

小野政府参考人 お答え申し上げます。

 四月に実施した試験でございますけれども、これは最初の試験でございまして、なかなか正確に予測することは難しかった状況でございます。

 今後につきましては、その申込みの方法を、今回は申込み当日に定数を超える申込みがあったということで打ち切りましたけれども、会場を確保しまして申込みしやすいようにするということですとか、あるいは、受験料の支払い方法についてもちょっと検討すべき部分があると思いますので、今後対応していきたいと思っております。

金井政府参考人 お答えします。

 宿泊分野につきましても、試験の申込み方法あるいはその確認の仕方、そこら辺をしっかりこれからもよく検討しまして、次回以降、ちゃんとした形で改善方策も検討してまいりたいと思っております。

源馬委員 ありがとうございます。

 今、小野審議官から御指摘があった受験料の扱いですね。これは各省庁で決めていくものなのか、あるいは法務省がまとめて決めるのか、ちょっと私は制度上わかりませんけれども、やはり申し込みするときに受験料を払うみたいな、普通の大学受験と同じようにしていけばこういうキャンセルというのはそんなにふえていかないんじゃないかなと思うので、そんなに高い受験料でなくてもいいので、そういったこともぜひ法務省でも検討していただければというふうに思います。

 続いて、技能実習生について、前回の集中審議で伺えなかった部分について伺っていきたいと思います。

 技能実習制度で、監理団体が受入先機関の財務状況を確認するということになっていると思います。確認対象の書類として、直近二事業年度に係る貸借対照表及び損益計算書又は収支計算書の写し、直近二事業年度に係る法人税の確定申告書の写し、納税証明書の写し、中小企業診断士や公認会計士等の公的資格を有する第三者が改善の見通しについて評価を行った書面等々というふうにあります。

 これらの確認書類というのは確かに会社の身体検査を行う上で当然あってしかるべきものだと思いますが、その前提として、そういう書類のチェックをどなたが行っていたんでしょうか。その方のチェックで、財務状況をしっかり適正に確認することができていたんでしょうか。

佐々木政府参考人 技能実習法令上、団体監理型の技能実習につきましては、事業所ごとに選任することとされている監理責任者の指揮のもとで、監理団体の職員が、傘下の実習実施者に対して三月に一回以上の頻度で実地に監査を行い、実習実施者が備え付けている帳簿書類等を閲覧し、適切に技能実習が実施されているか否かの確認の上、その結果を監査報告書をもって外国人技能実習機構に報告することとされています。

 そこで、その帳簿書類がちゃんと見られているかということでございますけれども、監理責任者につきましては一定の講習の受講が義務づけられておりまして、それらの講習におきまして、監査における具体的な手法や視点等についての講義が含まれており、講義によりましては、その関係書類の見方などが指導されているものと思われます。

 加えまして、技能実習法令上、監理団体の実習実施者に対する監査が適切に実施されますよう、監査能力につき一定の要件を満たす外部役員又は外部監査人を置くこととされており、これによりましても、監理団体による監査の実効性を担保をしています。

 加えまして、さらに、技能実習計画の認定申請の際に、技能実習生を受け入れる企業等の貸借対照表、損益計算書などの財務状況に関する書類の提出を外国人技能実習機構が求めておりまして、実習実施者の実施体制の適正性について確認をしているところでございます。

源馬委員 ありがとうございます。

 農水省の小野審議官と、金井審議官には、もう質問はありませんので、ありがとうございました。

 今教えていただいた財務状況のチェックですが、これは特定技能の受入れ機関においても同じようにチェックをされるのか、あるいは、違うのであれば、どのように受入れ機関の財務状況というのをチェックしていくのかについても伺いたいと思います。

佐々木政府参考人 今度、特定技能制度におきましては、特定技能外国人の安定した就労活動を確保するため、受入れ機関に対し、特定技能雇用契約を継続して履行する体制を有していることを求めております。

 そして、特定技能雇用契約を継続して履行する体制を有しているとは、受入れ機関が事業を安定的に継続し、特定技能雇用契約を確実に履行し得る財政的基盤を有していることを指します。

 今度、この審査自体は入管が行いますけれども、特定技能に関する在留資格認定証明書の交付申請あるいは在留期間更新許可申請の際には、受入れ機関に対して、やはり貸借対照表や損益計算書等の決算書類の写し等の添付を求めることとしておりまして、地方出入国在留管理局がこれらの書類を精査し、先ほど申しました、受入れ機関が確実な財政的基盤を有しているかどうかということの判断を行います。

源馬委員 ありがとうございます。

 これは先日の集中審議でもお伺いしたことなんですが、やはり、私たちがチェックした個票で、実際に失踪した技能実習生が訴えていることがあって、そして、一方で、今回、受入れ機関を調査して出してきたものがある。やはり、両方の話を聞かないと正しいことというのは明らかにならないんじゃないかなという思いは、まだいまだに持っています。

 そこで、今後、先日の審議でなかなか難しいというお話がありましたが、自国に帰国してしまった実習生から話を聞けるようにする今後の対策というか、送り出し機関を通して追っていくのか。もう帰っちゃったら後は知らないというのは今後の制度のためにもよくないと思いますので、そういったこと、今検討している範囲で結構ですので、何かありましたら伺いたいと思います。

佐々木政府参考人 まず、事実といたしまして、出入国在留管理庁において、技能実習の帰国後の連絡先について把握することはしておりません。仮に連絡先がわかっている場合でありましても、御指摘のような、帰国後の元技能実習生に対して日本から調査を行うということは、相手国の主権の侵害ともとられかねないことから、慎重な配慮が必要でございます。

 ただ、これは帰国をした技能実習生の調査に必ずしもかわるものではございませんけれども、従来から、入管におきまして、技能実習期間を満了せずに途中で帰国をする技能実習生、すなわち、まだ退去手続になっていないけれども、途中で技能実習をやめて帰られる方々につきまして、出国の時点で、空海港の入国審査官が書面を用いて出国の意思確認というのを行っているところでございます。ここで、出国間際の最終的な局面でも、技能実習生が強制帰国をさせられるものでないか否か、あるいは技能実習に何らかの問題がなかったのかどうかということの確認を行っております。

源馬委員 ありがとうございます。

 特定技能と技能実習生についての御質問はここまでにしたいと思います。

 続いて、巨大IT企業への規制についての質問をさせていただきたいと思います。

 最近、こうした巨大IT企業、プラットフォーマーと呼ばれるそうした企業への規制、これをしっかりやっていこうという動きが加速をしていると思います。

 四月の二十四日にも、経産省、公正取引委員会、総務省、有識者で合同で協議をするデジタル・プラットフォーマーを巡る取引環境に関する検討会というものが公正競争に対する規制案をまとめたという報道もありました。また一方で、個人情報保護委員会では、二〇二〇年に向けて検討している個人情報保護法改正の原案を発表されたということでございます。

 報道によりますと、このデジタルプラットフォーマー、いわゆるGAFAが代表例だということが報道されておりますが、こういった規制をこれからかけていく上で、どこまでをデジタルプラットフォーマーと定義をして、例えばプラットフォームをネット上に提供している規模によって、あるいはその事業の規模によって規制をかけるかかけないかというところを線引きするのか。こういったことも含めて、定義があるのかどうかを、これは経産省にお伺いしたいと思います。

成田政府参考人 お答え申し上げます。

 今委員からの御質問の中にもありましたけれども、昨年七月に、経済産業省、公正取引委員会、総務省が共同で設置をいたしましたデジタル・プラットフォーマーを巡る取引環境整備に関する検討会、こちらでは、デジタルプラットフォーマーについて、デジタルプラットフォームを運営、提供する事業者と広く定義して、検討を行ってきております。

 同検討会におきましては、デジタルプラットフォームにはさまざまな業種、業態が含まれるということから、具体的な規律を検討するに当たりましては、まず一つ、オンライン・ショッピング・モールであったりとかアプリストアなどのいわゆるマッチング型なのか、あるいはSNS、検索サービス等の非マッチング型なのかといったような違い、それから、あるいは収益構造そのほかのビジネスモデルがどのようなものになっているか、こういった観点から分析することが有用ではないかといった御指摘もいただいております。

 また、昨年十月に経済産業省が実施しました取引実態に関するアンケート調査、これにおきましては広くオンラインプラットフォームを利用する事業者を対象といたしましたが、いわゆる不公正な取引実態ということにつきましては、オンライン・ショッピング・モールやアプリストアに関する回答がほとんどでございました。

 それから、本年二月から三月には、公正取引委員会が、実態調査の一環として、まず、オンラインストア、アプリストアを利用する事業者に対象を限定してアンケート調査を実施したと承知しております。

 いずれにしましても、今後、政府といたしましては、規律の対象となる定義、範囲を含め、具体的にルールの整備の検討を進めてまいりたいと考えております。

源馬委員 済みません、時間が少なくなってきてしまいましたので、合わせて伺いたいんですが、公正な競争というのはもちろん大事であって、一方で、個人情報の保護も大事な観点だと思います。このことについて、他国で、進んでいると言われている欧米において、デジタルプラットフォーマーに関して、公正競争の側面からどういう規制をしているのか、あるいは個人情報保護の部分からどのように制度を設けているのかを、それぞれ、公正取引委員会、個人情報保護委員会の参考人の方から伺いたいと思います。

葉梨委員長 では、菅久公取経済取引局長、簡潔にお願いします。

菅久政府参考人 お答え申し上げます。

 お尋ねの公正競争に関しましては、欧米におきましては、我が国の独占禁止法に相当する競争法、これがそれぞれございまして、デジタルプラットフォーマーによる競争制限行為に対しましては、おのおのの競争法が適用され、対処されているという状況にございます。

 また、欧州におきましては、オンライン仲介サービスについて、取引条件の公正性、透明性の確保の観点から契約条件の明確化などを定めました、オンライン仲介サービスのビジネスユーザーにとっての公正性、透明性の促進に関する規則案、この策定に向けまして調整が進められているというふうに承知しております。

福浦政府参考人 個人情報保護についてお答え申し上げます。

 個人情報保護に関しましては、欧州においては、新しい統一的なルールでありますGDPR、一般データ保護規則が昨年五月二十五日から施行されておりまして、この中で、データポータビリティーの権利などを含みます本人の権利が定められております、規律をしております。

 また、米国につきましては、日本の個人情報保護法のように、民間の事業者による個人情報の取扱いを一般的に規制をする包括的な連邦法はございませんで、金融や医療を始めとして、分野ごとに個別に措置されているものと承知をいたしております。

源馬委員 時間が来てしまいましたので終わりますが、総務省から赤澤審議官もおいでいただいたのに、間に合いませんで、済みませんでした。

 終わります。

葉梨委員長 以上で源馬謙太郎君の質疑は終了いたしました。

 次に、津村啓介君。

津村委員 最高裁判所大法廷は、平成三十年十月十七日に、東京高等裁判所判事である岡口基一さんを戒告処分とする決定を下しました。

 最高裁事務局に伺います。

 この処分はどういう理由で行われ、また、どういう効力を持つのでしょうか。

堀田最高裁判所長官代理者 お答え申し上げます。

 委員御指摘の分限裁判でございますが、これにつきましては、当該裁判官がツイッターで書き込みをしたという行為に関する事件でございます。

 個別の裁判官に対する分限裁判の効力についてのお答えは差し控えたいと存じますが、一般論として申し上げますと、戒告の処分でございますので、その責任を確認し、将来をいさめるものとされておりまして、裁判官に対する戒告の裁判が確定いたしましたときは、その全文を官報に掲載して公示することとなっております。

 また、戒告の裁判を受けた場合、いわゆるボーナスの一部であります勤勉手当の額が、戒告がなかった場合よりも少なくなるといった不利益を受けるといったことがございます。

津村委員 個別の事案のことはこの後触れますけれども、戒告処分より重い処分は最高裁の中ではないというふうに認識をしております。違ったら正してください。

 それよりも重い裁判官に対する処分としては、裁判官訴追委員会の訴追と裁判官弾劾制度によって弾劾されるケースとの間が、例えば、通常の公務員であれば停職とか減給ですとかいろいろな処分の態様があるわけですけれども、戒告とこの弾劾、訴追との間にそういう処分がないということは非常に均衡を失するのではないかと思うんですけれども、停職、減給処分を含む倫理規程を設けていないのはなぜですか。

堀田最高裁判所長官代理者 お答え申し上げます。

 裁判官分限法に基づく処分には戒告のほかに過料の裁判がございまして、この二つの措置については、過料の方が重い措置というふうに理解しているところでございます。

津村委員 私の記憶が間違っていたら正していただきたいんですけれども、過料は一万円以下だったように思うんですけれども、違いましたでしょうか。

堀田最高裁判所長官代理者 御指摘のとおり、一万円以下でございます。

津村委員 戒告よりも一万円以下の過料の方が重いということですね。

堀田最高裁判所長官代理者 そのように理解をしております。

 手続が分限裁判として行われる以上、官報に実名で掲載されて公示されるなど、非常に重い処分として機能しているものと認識しております。

津村委員 私のさっきの質問にも答えていただきたいんですが、その制度はわかりましたけれども、停職、減給などの処分を含む倫理規程を定めるべきではないかという私の提案に対してお答えください。

堀田最高裁判所長官代理者 立法制度にかかわる点もございますが、私ども司法行政の立場の理解といたしましては、停職あるいは減給という処分を裁判官に科しますことは、憲法上の裁判官の身分保障の規定との関係の問題があるものと承知しているところでございます。

津村委員 一万円以下の過料と戒告はオーケーで、停職や減給はだめというのはなぜでしょうか。先ほど手当については一部減額されるというのがあったんですけれども、そのラインがよくわかりません。

堀田最高裁判所長官代理者 お答え申し上げます。

 減給の処分につきましては、裁判官の報酬を減額するということで、報酬を減額されないという憲法上の規定との関係があるものと承知しております。

 それに対しまして、先ほど申し上げました勤勉手当につきましては、報酬不減額の保障の直接の対象ではないというふうに理解しているところでございます。

津村委員 過料の上限の増額についての議論はないんでしょうか。

堀田最高裁判所長官代理者 過料の額に関しましては、立法上の事項でございますので、お答えは差し控えたいと存じます。

津村委員 法務大臣にもぜひ聞いていただきたいんですけれども、過料の上限一万円というのは、私は過少に思います。立法上のことであれば、これは内閣の問題かもしれませんし、私は倫理規程等でこれを運用上決めることも可能ではないかと思いますので、その旨提言させていただきます。

 その上で、次の質問に入らせていただきますけれども、この岡口裁判官は、「最高裁に告ぐ」という本を書かれております。この中で、こういう記述がございます。

 分限裁判において東京高裁が提出した証拠、六月十二日付の吉崎東京高裁事務局長作成の報告書、それから七月四日付の報告書、この二つを引いて、林長官は、ツイートを続けるということであれば、それを前提にして分限裁判を検討せざるを得ないと述べたという記載。それからもう一つ、当職、吉崎事務局長は、これまでとは違う局面に入ることを予告されているのは認識できているか、ツイートをとめれば、それはそれで一つの姿勢を示すことになるというアドバイスをもらったのは認識できているか、そのアドバイスを断ったという認識はあるかなどと順次尋ねた。

 これは吉崎さんが出された報告書であって、岡口さんが言っていることではないんですけれども、もしこういうやりとりがあったとすれば、要するに、ツイッターをやめたら分限裁判にかけないよという意味に通常とれると思うんですけれども、これは、職務上の優位性を利用して本来義務のないことを強制しているという点でパワハラに当たるのではないかという指摘が民間の方からもされています。私もそうとれるようにも思うんですが、人事局長の認識を問いたいと思います。

堀田最高裁判所長官代理者 お答え申し上げます。

 委員御指摘の点は、個別の裁判官に対します個別の分限裁判事件において提出された証拠の内容に関することでございまして、分限裁判手続が非公開とされていることからも、その内容についてはお答えを差し控えたいと存じますし、個別の裁判官とその所属の裁判所の長等とのやりとりの内容についてもお答えを差し控えたいと存じます。

津村委員 私にはどちらが正しいかわかりませんけれども、この公刊された書物、岩波書店から公刊された書物において、高裁の長官がパワハラともとられかねない発言をしているということを公に示されているわけで、その根拠として、東京高裁が最高裁に提出した報告書の記載がそのまま掲載されているわけですから、これは、もし事実に反するのであれば、それこそ抗議をするなり処分をするなりすべき、最高裁の威信にかかわることだと思うんですけれども、違いますか。

堀田最高裁判所長官代理者 先ほどもお答え申し上げましたとおり、個別の分限裁判事件の証拠の内容にかかわることでございますので、お答えを差し控えたいと存じます。

津村委員 高裁判事の分限決定については不服申立てができないという問題もございます。これは、上級裁判所に対してなされたこの申立てについて上級裁判所が審理するわけですから、仮に地裁の判事であれば、それは高裁で審理されて、不服があれば更に上の最高裁に上げることができるんですが、高裁判事の場合は一回だけしか、つまり、上級である最高裁で一回決定が下れば、岡口さんはこれに対して不服申立てができない。しかも、公開することができるんですけれども、公開されなかったので、岡口さんはこれを非常に、密室で行われた決定だということで批判をされています。

 この批判にはぜひ反論すべきだと思うんですけれども、いかがですか。

堀田最高裁判所長官代理者 個別の分限裁判の手続等についてのお答えは差し控えたいと存じますが、一般論として申し上げますと、裁判官に対する分限裁判は、裁判官分限法及び裁判官の分限手続規則等に定められた手続にのっとって行われているものと承知しております。

津村委員 この手続が、裁判官の場合と一般の公務員の場合で著しく均衡を失するということを指摘しておきたいと思います。

 私は、反論すべきではないですかという言い方をしましたが、反論ができていないと思うんですね。その意味において、私は、今見聞きする限り、岡口裁判官の主張に理があると思います。この仕組みの見直しについて、ぜひ提案させていただきたいというふうに思います。

 次のテーマに移ります。

 山下大臣に、皇位の安定的継承について伺いたいというふうに思います。

 山下大臣は、平成二十九年、二年前の六月八日の憲法審査会におきまして、二つの重要な論点を提起されています。一つは旧宮家の皇籍復帰について御提案されているんですけれども、今でも、この旧宮家の皇籍復帰というのは現実的な選択肢として議論していくべきとお考えですか。もしそうだとすれば、理由も教えてください。

山下国務大臣 お尋ねの件につきましては所管外でございます。私は今、法務委員会において法務大臣として立たせていただいておりますので、法務大臣の所管外であることにつきましてはお答えを差し控えさせていただきます。

津村委員 特例法においては、特例法施行後、つまりこの五月一日以降、速やかに政府において皇位の安定的継承について議論すべきだということでありまして、政府の構成員である、また法律の専門家である山下大臣にこの質問をさせていただくのは当然のことだと思っていますけれども、いかがですか。

山下国務大臣 政府の見解につきましては、安倍総理が平成三十一年三月十三日の参議院予算委員会において、安定的な皇位の継承を維持することは、国家の基本にかかわる極めて重要な問題であり、男系継承が古来例外なく維持されてきたことの重みなどを踏まえながら慎重かつ丁寧に検討を行う必要がある、そして、女性皇族の婚姻等による皇族数の減少等については、皇族方の御年齢からしても先延ばしすることができない重要な課題であり、この課題への対応等についてはさまざまな考え方、意見があり、国民のコンセンサスを得るためには十分な分析、検討と慎重な手続が必要である旨答弁されているものと承知しております。

津村委員 今の総理のコメントとこのときの山下さんの御発言に、私はそごするところがあると思うんです。

 と申しますのは、山下大臣は、皇位継承の安定のための議論は必要だけれども、既にある皇位継承順位を人為的に、事後的になきものにするということには極めて消極的だ、こうおっしゃっているわけですね。

 皇室典範を今後議論していく、何らかの前提なく議論していくというのが安倍総理のお立場だと思うんですけれども、皇室典範の皇位継承順位を変えれば、それは当然、人為的、事後的にその継承順位が変わる、これはもう定義によりそうなると思うんですけれども、そうしたことに極めて消極的だと大臣が言っているということは、皇室典範の議論をするなと言っているに等しいわけですけれども、議論をすると言っている安倍さんとの見解とはそごしませんか。

山下国務大臣 委員が質問の前提としてるる述べられたことの当否も含めて、これはもう所管外でございますので、答弁は差し控えさせていただきたいと思っております。

津村委員 政府の一員として答弁していただきたいと思います。

 速記をとめてください。

葉梨委員長 いいえ。時間も来ていますので、その発言は質疑時間終了後の発言ですから、終了してください。

津村委員 今後とも議論させていただきます。

 終わります。

葉梨委員長 以上で津村啓介君の質疑は終了いたしました。

 次に、藤野保史君。

藤野委員 日本共産党の藤野保史です。

 私は、外国人の人権の問題についてお聞きをしたいと思います。

 まず前提として、大臣に確認したいんですが、大臣は当委員会の質疑でも、外国人の入国を認めるか否か、認める場合にどのような条件のもとにこれを認めるかについては、国家の自由裁量に属すると答弁されております。国家の自由裁量というわけですが、その根拠というのは何だというふうにお考えでしょうか。

山下国務大臣 お答えいたします。

 御指摘のとおり、私は、国際慣習法上、国家の自由裁量に属するものとされていると承知しておる旨答弁しているわけですが、この点に関しては、最高裁判所のいわゆるマクリーン事件最高裁判所判決におきまして、国際慣習法上、国家は外国人を受け入れる義務を負うものではなく、特別の条約がない限り、外国人を自国内に受け入れるかどうか、また、これを受け入れる場合にいかなる条件を付すかを、当該国家が自由に決定することができるものとされていると指摘した上で、憲法上、外国人は、我が国に入国する自由を保障されているものではないことはもちろん、所論のように在留の権利ないし引き続き在留することを要求し得る権利を保障されているものではないと解すべきであると判示しているところであるということでございます。

    〔委員長退席、石原(宏)委員長代理着席〕

藤野委員 今大臣がお触れになったマクリーン事件最高裁判決、これでもやはり国際慣習法ということが、今答弁ありましたけれども、挙げられておって、そのもとで広い裁量があるんだ、こういうことであります。

 マクリーン事件といいますのは、御存じの方も多いと思うんですが、米国籍を持つロナルド・アラン・マクリーンという方が一九六九年に日本に入国して、英語教師として生計を立てる傍ら、日本の古典音楽に興味を持って、研究したいということで在留期間の更新を一九七〇年に申請をした。しかし、これは認められなかった。そこで、このマクリーン氏が一九七〇年九月に行政訴訟を起こして、この不許可処分の取消しを求めたという事件であります。一九七三年に地裁判決が下り、七五年に高裁判決が下り、七八年に最高裁判決ということであります。

 実に、訴訟提起から四十八年、最高裁判決から四十一年が経過をしているということでありまして、このことを前提に、今御答弁ありました国家の自由裁量についてお聞きしたいと思います。

 もちろん、マクリーン判決も最高裁の判決でありまして、私も立法府の一員としまして司法の判断は尊重するものであります。他方、やはり一九七八年の判決でありまして、そこから四十一年以上たつわけであります。その間、同判決がよって立つ、まさにその国際慣習法も、大きく変化をしてきていると認識をしております。

 外務省にお聞きしたいんですが、我が国が締結している主要な国際人権、人道条約について、いつ締結され、いつ発効したか、先日いただいた資料全部でもいいので、お答えください。

大鷹政府参考人 お答え申し上げます。

 主要な条約、今の委員の御質問ですと、七〇年代末以降が該当するのかなというふうに思いますが、例えば、社会権規約、自由権規約、この二つは一九七九年に締結しております。また、いわゆる人種差別撤廃条約、これは一九九五年でございます。さらに、拷問等禁止条約は一九九九年に、そして、難民の地位に関する条約は一九八一年に締結しております。

藤野委員 これ以外にもあるわけですけれども、その全てがこの一九七八年のマクリーン判決後に締結され、発効しているというふうに思います。

 外務省、間違いないですか。

大鷹政府参考人 今申し上げた条約につきましては、委員の御指摘のとおりでございます。

藤野委員 いわゆる国家の自由裁量、外国人の受入れに関して自由裁量があるということなんですが、その根拠が国際慣習法ということであります。

 としますと、大臣、お聞きしたいんですが、大臣の国家の裁量というものも、やはり国際的なこうした人権諸条約、この到達を踏まえたものというふうになるという理解でよろしいでしょうか、一般的に。

山下国務大臣 もとより、我が国の憲法上、日本国が締結した条約及び確立された国際法規は、これを誠実に遵守しなければならないとされているところでございます。

 他方で、委員御指摘の国際人権諸条約につきましては、外国人の入国及び在留の許否等に関する国家の裁量を制限する旨の明文の規定は設けられていないというふうに承知しているところでございます。

藤野委員 私が聞いたのは、こうした国家の裁量というのが決して、いわゆる自由な、制限のないものではなくて、根拠となっている国際慣習法、これに基づいてやはり制約を、制約というんですか、それを踏まえた上での裁量だということなんですが、その点はそれでよろしいということですか。

山下国務大臣 国家の自由裁量といっても、こういった裁量権の行使が恣意的であってはならないということは当然であると考えております。

 そこで、入管法においては、上陸審査や退去強制手続において、入国審査官による審査、特別審査官による口頭審理、法務大臣の裁決という判断主体を異にする三段階の慎重な手続が設けられていることや、上陸許可の基準を法務省令において明確化しているところであります。

 さらに、法令によるものに限らず、出入国在留管理庁においては、各種の要領やガイドラインを策定することにより、入管行政のさまざまな手続の公正の確保と透明性の向上を図っているというところであり、これらの制度の趣旨に沿った適切な運用に努めてまいりたいと考えております。

藤野委員 公正の確保と透明性の向上とおっしゃるんですが、実態がなかなかそうなっていない。実際には、この四十年以上前のマクリーン判決を事実上盾にしてといいますか、その後の国際的な人権諸条約の到達を踏まえない裁量論が、入管の実務でも、そして裁判の実務でも行われているというのが実態であります。

 このマクリーン判決というのが余りにも緩やかな文言で広範な裁量を認めているように読めるために、それが実際に、じゃ、その裁量が裁量権の範囲なのか、それとも、それを逸脱して、例えば国際人権条約等に反している逸脱なのかというこの判断が事実上ないがしろにされているという例がいろいろたくさんあるわけですね。それが今の実態だということであります。

 やはり、確かに国家に主権はありますし、法務大臣にも裁量はあると思うんですけれども、しかし、その裁量というのも、憲法や条約、大臣がおっしゃったような法律とか省令、こういうものに拘束されるはずでありまして、まして、やはり人権といいますのは、これを緩く認めてしまいますと、今の時代でいえば、すぐにヘイトとか、あるいは排外主義というものにつながりかねない問題でもあります。

 ですから、そうした点で、この人権という分野に関する自由裁量というのを広範に認めるというのは非常に危険な面がある。だから、自由な裁量というのは、この分野ではあり得ないというふうに思うんですね。

 この点で私が注目しておりますのは、マクリーン判決以後、確かに最高裁はこういう判決なんですが、多くの事案で裁量権の逸脱を緻密に事実認定をして、いや、これはやはり裁量権を超えているねという認定を下している判決が積み重ねられてきているということであります。

 配付資料の一を見ていただきたいんですけれども、この泉徳治さんという方は、今、東京弁護士会の会員でいらっしゃいますが、元最高裁の判事でもいらっしゃる方でありまして、この方が寄稿されている論考なんですが、黄色く塗っているところを読ませていただきますと、こうおっしゃっているんですね。ちょっと字が潰れていて恐縮なんですけれども。

 「行政庁たる法務大臣は、「国家」とは当然に立場を異にし、憲法、条約はもとより、法律、政令、省令、更には条理や、そこから導かれる法の一般原理に拘束され、裁量権の行使について、憲法等から導かれる裁量権統制の諸法理を踏まえた個別審査を受けなければならない。」。

 その横の黄色いところは、「私が本稿で訴えたいことは、一般論としてのマクリーン基準そのものの変更ということよりも、1、出入国管理関係処分に関する裁量の審査についても、裁量権統制の諸法理を踏まえた個別審査をおろそかにしてはならず、2、個別審査の際に、同基準が掲げる「事実に対する評価が明白に合理性を欠くかどうか」、「社会通念に照らし著しく妥当性を欠くことが明らかであるかどうか」についての評価をするに当たり、憲法や条約等の趣旨を判断基準として取り入れることを忘れるべきではなく、3、マクリーン判決後に発効した難民の地位に関する条約、市民的及び政治的権利に関する国際規約」「等により、マクリーン基準の中身が今日では実質的に変容していることに留意すべきであるということである。」、こういう指摘なんですね。

 この指摘は非常に興味深いと思いまして、マクリーン基準は確かに、ある意味、抽象的な裁量論ということなんですが、しかし、その裁量論というのも、ちゃんと個別審査すれば、その後に日本が締結した国際条約等の判断基準に立って、その裁量は実際に裁量権の範囲にとどまっているのかということをやれば、変わってきている。その意味で、マクリーン基準が実質的に変容しているという表現を、この方はされております。

 これは、この論文でも極めて具体的に紹介されておりまして、これを全部紹介するわけにはいかないんですが、少しだけ、ちょっと時間をいただいて紹介しますと、例えば事実認定の過誤。事実認定は裁量と関係ありませんから、かなりの判例が蓄積されているんですね。

 例えば、これはちょっと読むとあれなので、こちらで紹介しますと、離婚の意思がないのに離婚するつもりだといって処分してしまったケース、これは大阪高判、九八年十二月二十五日です。あるいは、重婚関係ではないのに重婚関係だと認定して処分してしまったケース、これは名古屋地判の二〇〇六年六月二十九日。こうしたものがあったり、あるいは国際人権規約や難民条約で、福岡高判の二〇〇五年三月七日は、裁量権の逸脱があるというふうに、そういう条約に照らして指摘をしております。

 あるいは、考慮すべき事項を考慮せず、考慮すべきでない事項を考慮しているというのが資料の二枚目の二十三ページ以下にあるんですが、これも、考慮すべき事項を考慮したかどうかというのは、裁量とは余り関係ないんですよね、事実認定の問題ですから。

 ここでは、例えば、長期間平穏かつ公然と日本に在留し、善良な一市民としての生活基盤を築いていることを考慮しなかったということで、東京地判がこれは裁量権の逸脱だと認定しております。脳腫瘍摘出の手術を受け、術後五年間は経過観察を受ける必要がある点を考慮しなかったケースとか、いろいろあるわけですね。

 あるいは、平等原則違反、比例原則違反、適正手続違反ということで、実際には多くの判例で、マクリーンのような、もう司法審査はありませんとか、もう裁量は全部行政にお任せですとか、そういうことではなくて、個別のチェックが積み重ねられてきているという指摘であります。これは大変大事だなというふうに思うんですね。

 この指摘は、大臣、この泉さんの指摘は司法に関する指摘なんですが、私は、これは行政にも当てはまるんじゃないかということで、大臣にお聞きしたいんですね。

 ここで言っていますのは、二十一ページにあるんですけれども、「マクリーン判決自体が、以上のように、司法審査を実質的に放棄したともいえるような問題を露呈しているのは、」、ここからなんですけれども、「あまりに概括的な表現で法務大臣に広範な裁量を認めるマクリーン基準を一般論として掲げることによって、それを楯に個別審査をなおざりにし、憲法による基本的人権の保障を軽視したからである。出入国管理関係処分であっても、同基準が掲げる一見抗し難い抽象的原理に麻痺して思考停止に陥ってはならないことを教えている。」、こういう指摘をされております。

 ここで大臣にお聞きしたいんですが、これは司法に対する指摘なんです、確かに。司法に対して思考停止に陥ってはいけないよという指摘なんだけれども、しかし、マクリーン基準が一般的で、大臣に余りにも広範な裁量を与えているという点では、これは行政にも当てはまるのではないか。

 だから、行政としても、やはりこうした思考停止に陥ってはいけないという点では同じなんじゃないかと思うんですが、この指摘、どのように受けとめられますか。

    〔石原(宏)委員長代理退席、委員長着席〕

山下国務大臣 お答えいたします。

 委員御指摘の論文は、いずれも著者が個人の立場で執筆したものであるということでございまして、法務大臣として、その評価にかかわる答弁というのは差し控えたいと思いますし、これを前提とした答弁も差し控えさせていただきたいと考えております。

 なお、いわゆるマクリーン事件最高裁判所判決は、国際慣習法上、国家は、特別の条約がない限り、外国人を自国内に受け入れるかどうか、これを受け入れる場合にいかなる条件を付するかを自由に決定することができると指摘しているところであって、この判決は現在まで変更されていないと承知しております。

 他方で、先ほど申し上げましたように、我が国の憲法上、日本国が締結した条約及び確立された国際法規の誠実な遵守義務があるところであって、外国人の入国や在留の許否等に関する判断をするに当たっては、各種人権を尊重すべきという国際人権条約の趣旨及び精神も考慮することは相当であるということは考えております。

 そういったことから、例えば、私が先ほど御紹介申し上げたように、入管法に基づいて、例えば、慎重な手続を設けたり、あるいは上陸許可の基準を法務省令において明確化したり、各種要領やガイドラインを策定して判断しているところでございます。

藤野委員 いや、大臣、いろいろおっしゃいましたけれども、そうやって実際に定めたものが、裁量によって運用されているんですよ。実際に、それが裁量逸脱でおかしいじゃないかと争ったら、裁判の実務では、今言った以外の判例では、それはマクリーンを盾に、極めてもう丸投げのような、司法審査を放棄するようなことも一方ではまだあるんですね。ですから、これを取り上げたわけであります。

 これは、一論文ではなくて、やはり、司法界、あるいは憲法学界、あるいは弁護士実務という観点からでも、このマクリーン判決はもうやはり乗り越えるべき対象だという認識が広がっているんですね。四十年以上たって、その事件が起きたときからいえば、もう半世紀たっているわけですね。全く国際環境も変わっている、日本の裁判実務の積み重ねも変わってきている。これを踏まえないで、現実に合った司法活動もできないし、人権保障もできないという認識が広がっているわけです。

 例えば、配付資料の二を見ていただきたいんですが、これは、判例百選一の、外国人、マクリーン事件の解説なんですが、愛敬浩二名古屋大学教授による解説の最後にこう書いてあります。「マクリーン基準は、」、飛ばしますが、「現在も、国際人権法の観点からみて問題のある退去強制を正当化する役割を果たしている。よって、国際人権法の発展と行政裁量論の深化を踏まえて、「マクリーン判決を超える」ことは、憲法学にとっても喫緊の課題である。」という指摘なんですね。

 判例百選でここまで言われている、そういう位置づけであり、かつ、資料の一でも紹介しましたように、この課題を、現場では、一個一個の判例の積み重ねによって、ゆっくりとした足取りではありますけれども、やはり、こうして乗り越えようとしている。国際的な水準を目指して、人権保障の水準を目指して、実質的な審査、裁量権に逸脱しているかどうかという判断を、やはり裁判も頑張ってやっているわけですね。

 だから、もう、マクリーンが変更されていませんとか先ほど大臣おっしゃいましたけれども、そういう発想じゃだめなんですよ。最高裁が動くかどうか、これは大事ですよ、それは司法の判断ですから。しかし、行政として、これから外国人の受入れの司令塔として大臣が働かれるわけですから、その司令塔として、やはり、マクリーンが変更されていないからそれでいいんですでは困るんです。今の国際の人権水準や、あるいは、まさに求められている水準にやはり大臣が立っていただかないと、半世紀前の古色蒼然とした裁量論から抜け出していただかないといけないと思うんですが、もう一度、大臣、この決意を。

山下国務大臣 まず、法務大臣としては、先ほど申し上げたように、恣意的な裁量は行ってはならないということで、諸条約の趣旨等も踏まえた判断基準を定立し、その判断を行っているところでございます。

 それを申し上げた上で、最高裁の大法廷判決を超えろという御指摘につきましては、これは、先例拘束性もある最高裁判例でございます。また、それを行政府の一員として超えるという決意を申し上げるということは当然できないわけでございまして、その点につきましては、お答えは差し控えさせていただきたいと考えております。

藤野委員 大臣、私が言ったのは、マクリーンを盾にして、マクリーンを口実にして、みずからの裁量の範囲です、こういうやり方はやめるべきだと言っているんです。一個一個の自分の行政処分が、果たして、人権という立場から見て、裁量権の逸脱に当たっていないのかどうか。これはやはり、まさに行政府の長として、司令塔として、これから外国人を大規模に受け入れていくという立場でいえば必要でしょう、そういう指摘なんです。何も司法を超えろとかそういうことを言っているわけではありません。ですから、そこは間違えないでいただきたい。

 もう一点、ちょっと聞きたいのは、配付資料の三なんですけれども、これも同じく幅広い裁量でいいのかということなんですね。

 今、大臣も恣意的ではいけないとおっしゃいましたが、しかし、実際は非常に恣意的に行われているわけです。入管法の中で、退去強制手続あるいは収容にかかわる部分というのは、実にもう制定以降六十年以上にわたって本格的改正をされておりません。それほど前のものを根拠に、それを運用しているわけですね、解釈によって。

 その解釈が非常に今、人権侵害を生んでいるんですが、そういったことが世界で起きているもとで、この配付資料の三にありますのは、昨年の七月十三日に、国連で、安全で秩序ある正規移住のためのグローバルコンパクト最終案がまとまったという、これは国連広報センターのホームページの記事であります。

 この最終案を実際に採択したのが配付資料の四でありまして、昨年の十二月にモロッコで採択をされました。この採択には、外務省から鈴木憲和政務官が訪問されて、日本代表として出席をされております。

 外務省に確認しますが、このグローバルコンパクトというのはどのような内容で、そして、日本政府の態度というのはどのようなものなんでしょうか。

松浦政府参考人 お答え申し上げます。

 移住グローバルコンパクトは、移住を余儀なくされる原因への対処、協力等に係る、法的拘束力を持たない政治的文書でございます。各国の主権が尊重されるとされており、国内法制度に基づき、実施可能なものを選択して実施することになってございます。

 政府としては、国連が移住という問題に取り組み、初めてその国際的枠組みとして移住グローバルコンパクトを採択したことは評価しております。安全で秩序ある正規の移住を推進していくためには、各国の協力が必要不可欠です。本コンパクトは、そうした協力の意思を確認するための文書と理解しております。

 今後とも、国際社会との緊密な連携のもと、移住に係る問題の前進のため、アジアや中東、アフリカ諸国、中南米等への支援に引き続き取り組んでまいる所存でございます。

藤野委員 確かにこれは条約ではありませんので法的拘束力はないんですが、やはり、国連が移住という問題に取り組んで初めて合意した、極めて画期的な枠組みだと思うんですね。

 移住というのは、受け入れる側も、あるいは送り出す側も、それぞれ複雑な課題に直面しておりまして、なかなか今まではこの課題で国連レベルでの合意というのはできなかったんですけれども、今回、その双方の立場も踏まえて、二十三項目にわたって国際的に初めて合意ができたというのは、私は大きな一歩だと思っております。

 大臣にもお聞きしたいんですが、これはやはり、政府の一員として、法務省もこの実現に向けて努力していく責任があると思うんですが、いかがでしょうか。

山下国務大臣 お答えいたします。

 御指摘の移住グローバルコンパクトにつきましては、法務省としても、国連が移住という問題に取り組み、同分野において初めてとなる国際的枠組みとして採択に至ったということは評価しているところでございます。

 他方で、同文書は、各国の主権を尊重しつつ、国際的な移住の問題について、法的拘束力を持たない政治的文書として取りまとめられたものでございます。したがって、我が国の出入国在留管理制度の運用に際しましては、移住グローバルコンパクトの趣旨を尊重しつつ、我が国の主権に基づき適切に対処していく所存でございます。

藤野委員 いや、主権とおっしゃいますけれども、主権といっても、やはり国際慣習法上、一番冒頭に確認しましたけれども、自由裁量なりというものも、やはり国際慣習法上を踏まえて、これは当然行わなければならないわけですね。

 この移住コンパクトというのは、まさにそれでいいますと、国際慣習法のもう最前線のものであります。ようやく、確かに法的拘束力はないけれども、苦労に苦労を重ねて合意に達したものなんですね。ですから、主権という名のもとにこれを全く取り入れないとかいうことは到底、もう論としてもあり得ないし、せっかくの、日本政府も参加してここまで来たこの合意を、やはり、今回、外国人を受け入れていく上でどのように具体化していくかというふうに考えることこそ大臣の立場であって、この二十三項目、それぞれ見ていきますと、非常に、データの収集を含めて、なるほどなと思わされるものなんです。ですから、そういうことをやはりむしろ積極的にやっていく必要がある。

 きょうは、時間の関係で一つだけ御紹介しますけれども、配付資料の四枚目と五枚目ですけれども、英文と和訳が、パラグラフ二十九というのがあります。これはいわゆる収容に関する提言でありまして、この中のcというところをちょっと紹介させていただきますと、「移住者が恣意的に収容されず、収容の決定が法律に基づいて、比例的であり、正当な目的を持って、個人ベースでなされ、適正手続や手続的保護措置を完全に遵守して、」、この後なんですけれども、「出入国管理収容が抑止力として推進されず、移住者に対する残虐な、非人道的な又は品位を傷つける取扱いとして用いられず、国際人権法に従うことを確保するよう、出入国管理収容に関連する法律、政策、実務を見直し、改訂すること。」とあるんですね。

 大臣、これは仮訳ですから、正確に訳していただければと思うんですが、いずれにしろ、やはり残虐あるいは非人道的、品位を傷つける扱いとなってはならないとか、そうならないように、人権に見合うように、やはり法律、政策、実務の見直しが提言をされておりまして、私はこれは大事な観点だというふうに思うんです。

 私も、茨城県の牛久の収容センター、収容所を見に行きましたけれども、やはり、非人道的な収容の場面というものもじかにこの目で見てまいりました。国際的に見て、やはりこうした、これは一つの収容の例ですけれども、水準に近づけていく、法務省としてもやはりこうした対応をとっていくということが求められていると思うんですね。現状からいくと、これは急務だというふうに思います。

 この点については、重ねて求めてもあれなので、引き続きこの問題については質問で追及したいというふうに思っております。

 その上で、最後に、今回始まった外国人の受入れ拡大に当たっては、今申し上げた司法や行政だけでなく、やはり立法府としても立場を問われていると思っております。

 最後に、この立法府の問題として、配付資料の六を見ていただきますと、かつて、一九五四年から、当委員会、衆議院法務委員会のもとに、外国人の出入国に関する小委員会というものが設置をされております。一年以上にわたって審議をしておりまして、第一回の審議は、そこにありますように、昭和二十九年ですから一九五四年の七月八日。同年の六月二十九日に長崎県の大村入国収容所を視察した報告がメーンなんですね。

 ここでは、本当にいろいろ言っているんですが、議事録を読みますと、無意義な長期収容は国家経済から見て不得策であるばかりでなく、被収容者たちの感情、境遇からの将来の国交に及ぼす影響を考えるとき、何とかしなければならないと感じさせられましたとか、まさに、読んで私も今と同じじゃないかというふうに感じるような感想が出ております。

 もう一つ、もう時間も来たのであれですけれども、大村入国者収容所二十年史というのが実はありまして、きょうちょっと配付資料では紹介していないんですが、これは法務省の大村入国収容所が作成した貴重な記録であります。

 ここを見ますと、私、注目したのは、国会の委員会とか国会議員が物すごく調査に行っているんですね。昭和三十一年には衆議院法務委員長とか、三十二年には外務委員長とか、三十三年には外務委員長一行五名とか、三十四年には法務委員会一行とか、三十七年には外務委員会とか、まさに多いときは年に一回ほど行っているんです。

 やはり、私は現場を見るのが大事だなというふうにも思っておりまして、これはぜひ委員長にもお諮りしたいんですけれども、今後やはり大規模に受け入れていく、これは入り口の問題だと思います。同時に、やはり出口の収容の問題というのもまだまだ知られておりませんし、かつ、先ほど言ったように、もう六十年以上改正されていないという点では立法府の態度も問われているというふうに思います。

 ぜひ、委員長、当委員会としても、こうした視察や集中審議というものを検討いただきたいというふうに思います。

葉梨委員長 後刻、協議をいたします。

藤野委員 終わります。

葉梨委員長 以上で藤野保史君の質疑は終了いたしました。

 次に、串田誠一君。

串田委員 日本維新の会の串田でございます。

 最初に、共同親権に関して調査を開始してくださると勇断していただいたということを、ずっと放置されていた条約を遵守していかなければいけないというような方向性を示していただいたことに対して、まずは敬意を表したいと思います。

 今回、非常に連休の中で実は大変苦しんでいる別居親というのがたくさんいらっしゃったという声が私の方に届いているんですね。本来であれば、諸外国では犯罪とされている連れ去りを、今の現状は、特権として与えると。

 どういうことかというと、この連休中も一度も会わせない。今後、運動会も五月、六月に開催されるような学校もふえてきましたが、運動会の日にちさえも、聞いても教えないという学校のそういう扱い方も行われています。こういったような特権が行われているというような状況が連れ去りを横行させているんだというようなこともありますので、これについてはまた別の機会に質問させていただこうと思っていますので、そのときはよろしくお願いいたします。

 きょうは、井出議員が長年ずっと取り扱っていた性犯罪の中の一部であります親子間の性犯罪について、私なりにちょっとお聞きをしていきたいと思うんです。

 まず、刑法百七十九条、監護者わいせつ及び監護者性交等の犯罪なんですが、この制定理由をまずお聞きをしたいと思います。

小山政府参考人 お答え申し上げます。

 刑法百七十九条の監護者わいせつ及び監護者性交等の罪は、十八歳未満の者に対し、その者を現に監護する者であることによる影響力があることに乗じてわいせつな行為又は性交等をした場合を処罰するものでございます。

 その制定理由でございますが、一般に、十八歳未満の者は、精神的に未熟である上、生活全般にわたって自己を監督し、保護している監護者に精神的、経済的に依存しているところ、監護者が、そのような依存、被依存ないし保護、被保護の関係により生ずる監護者であることによる影響力があることに乗じて十八歳未満の者に対しわいせつな行為や性交等をすることは、強制性交等罪等と同じく、これらの者の性的自由ないし性的自己決定権を侵害するものであると言えます。

 そこで、このような行為類型につきましては、強制性交等罪等と同等の悪質性、当罰性が認められると考えられることから、新たな犯罪類型として、監護者性交等罪及び監護者わいせつ罪を設け、強制性交等罪等と同様に処罰することとしたところでございます。

串田委員 趣旨はよくわかりましたが、条文を見ますと、乗じてというふうになっているんですけれども、これによって、百七十六条、あるいは第二項だと百七十七条の例によるとなっているんですが、百七十六条だと、十三歳未満の者に対し、わいせつな行為をした者、これの例によるということなんですが、そうしますと、この百七十九条というのは、被害者が同意をしているか、していないかということを問わずという条文上の読み方として構わないんでしょうか。

小山政府参考人 御指摘のとおりでございます。

串田委員 そうしますと、同意をしていても、同意をしていなくても犯罪が成立をするということになるわけですが、ここの条文の中の、現に監護する者、この現に監護する者というのはどういうものなんでしょうか。

小山政府参考人 お答えします。

 刑法百七十九条の監護者わいせつ及び監護者性交等罪等の罪の主体は、その者を現に監護する者、今委員御指摘のとおりでございます。

 でありますところ、ここで、監護するとは、民法に親権の効力として定められているところと同様に監督し、保護することをいいます。したがって、その者を現に監護する者とは、十八歳未満の者を現に監督し、保護している者のことでございます。

 なお、本罪は、当該行為者が法律上の監護権を有するか否かに着目したものではないことから、事実上、現に十八歳未満の者を監督し、保護する関係にあれば、法律上の監護権に基づくものでなくても、現に監護する者に該当し得るところでございます。

串田委員 もう少し細かく聞きますと、現に監護するというのは養育をしているということと同意義なのか、違いがあるのか。もしこの点について違いがあるとしたら、何が違うのかをちょっと明らかにしていただきたいと思います。

小山政府参考人 ある者が現に監護していると言えるためには、民法における監護の概念に照らしまして、現に十八歳未満の者の生活全般にわたって、衣食住などの経済的な観点や生活上の指導監督などの精神的な観点から依存、被依存ないし保護、被保護の関係が認められ、かつ、その関係に継続性が認められることが必要であると考えられております。

 具体的には、同居の有無、居住場所に関する指定等の状況、指導状況、身の回りの世話等の生活状況、生活費の支出などの経済的状況、未成年者に関する諸手続等を行う状況などの諸事情を考慮して判断されるものと考えられております。

串田委員 そうしますと、例えば、父親、母親のうちの父親が単身赴任をしているという場合には、この現に監護する者に入るんでしょうか。今の話ですと何となく入らないような感じもするんですが、経済的に、給料を入れていれば入るのかなとも思うんですけれども、この点についてはどうなんでしょう。

小山政府参考人 お尋ねの例につきましては、個別に判断されるべき事柄ではないかと考えております。

 特定の要素だけで、先ほど申しました、指導監督などの精神的な観点、あるいは衣食住などの経済的な観点から依存、被依存ないし保護、被保護の関係が認められるということにはなりませんので。ただ、単身赴任のときにどうかと申しますと、それはケース・バイ・ケースで、当たる場合もあれば当たらない場合もあるのではないかなとは考えられるところでございます。

 いずれにいたしましても、しつこいようでございますが、先ほど申しました諸事情を総合的に勘案いたしまして依存、被依存等の関係が認められること、また、その関係に継続性が認められるというところが必要でございます。

串田委員 意外と、刑法の解釈の中では、罪刑法定主義という観点からすると、結構、今の解釈というのは罪刑法定主義からするとかなり甘い解釈なんじゃないかなというふうな気はいたします。

 単身赴任でも、経済的に、援助そのものが依存しているということになるわけですよ、単身赴任ですとね。やはりそれに関して、乗じてというのは影響力があることに乗じてということなので、単身赴任していようが何しようが、給料を家に入れているからその者は生活が成り立っているという部分では、影響力があることに乗じているというふうに私は言えると思うんですけれども、個別的に判断するというようなことで罪刑法定主義的には問題ないんですか。私は、それはこれに該当するというふうに、原則は該当するというふうに思うんですけれども、いかがでしょうか。

小山政府参考人 お答えいたします。

 先ほど御指摘のありました、私もお答え申し上げましたけれども、この監督、保護の内容の中で、先ほど申しました、衣食住などの経済的な観点、あるいは生活上の指導監督などの精神的な観点から監督し、保護しているという関係でございまして、それが単身赴任であっても、でも、その単身赴任というものが一言でどういうような、何年も同居していなくて、全くそういう、実際に生活上の指導監督などを行えない状況にあって、ただお金だけが払われているような状況の場合もあるでしょうし、それはやはりケース・バイ・ケースのところがあるのではないかと考えてございます。

串田委員 端的に聞きますと、民法八百二十条の親権者と刑法百七十九条の現に監護する者とは一致するものなんでしょうか、一致しないんでしょうか。

小山政府参考人 先ほどもお答えいたしました、これは現に監護しているところを要求しているところでございまして、イコールの概念ではございません。

串田委員 そうすると、親権者でも現に監護する者に当たらないということになるのかなと思うんですけれども、結局、この制度趣旨としては、被害者が非常に抵抗がしにくい人間関係、親子関係というのはまさにそういうことなんでしょうけれども、さらに、経済的、精神的とおっしゃられましたが、ここというのは、かなりバランスというのがいろいろと親子によってずれが発生するのかなと思うんですね。

 例えば、父親の場合には、一般的に働いている人が多いのかな、これはいろいろなパターンがあるので断じませんけれども、男性が働いて給料を家に入れる。母親はどちらかというと、これは数の比較なんですけれども、これも断定はいたしませんが、家にいて家事をやっている人も多いのかな。そうすると、お母さんの場合には精神的な、お父さんの場合には経済的なという意味で、バランスが同じように経済的、精神的というような父親、母親というのはいなくて、どちらかにバランスがずれるのかなと思いつつも、しかしながら、それによってその子供というのは影響力を受ける。非常に抵抗がしにくい。

 そういうものに乗じて性犯罪を行った場合には、それはやはり性犯罪として刑法上処罰をされるんだというふうに私は理解しているんですけれども、このような理解では間違いなんでしょうか、確認させてください。

小山政府参考人 お答えをいたします。

 現に監護する者であることによる影響力でございますけれども、その中には、それを了解するかどうかの意思決定に直接影響を与えるものだけでなく、被監護者がわいせつな行為、性的な行為に関する意思決定を行う前提となる人格、倫理観、価値観等の形成過程を含め、一般的かつ継続的に被監護者の意思決定に作用を及ぼし得る力が含まれると考えられるところでございまして、ですから、直接的な経済的、金銭的なものである必要はないというところだと思います。

串田委員 それを踏まえた上で、ちょっと別個の、例えば、刑法百七十七条の暴行、脅迫ということが規定としてありますが、性的犯罪行為を行っている最中に脅迫を行い続けるということはないと思うんですね。事前に脅迫があって、そして、これは何か抵抗するとその脅迫どおりの結果をもたらされるんじゃないかという不安があって、抵抗ができなくなる。

 だから、脅迫行為と実行行為との間には時間的なずれが発生することは十分想定できると思うんですけれども、この間隔というものはどの程度のものまでは許されるのか、そういうものというのはあるんでしょうか。あるいは、時間じゃなくて場所ですね。ある一定のところで脅迫をされて、別の場所でその行為を行われたときに抗拒不能になるというようなこともあり得るのかどうか、この点はどうでしょうか。

小山政府参考人 刑法百七十七条前段の強制性交等罪における「暴行又は脅迫を用いて」というところの解釈でございますが、ここにつきましては、一般に、暴行、脅迫によって反抗を著しく困難にする状態が性交等の時点においても存在することが必要ではございますが、暴行、脅迫が性交等の時点まで継続する必要はない、すなわち、反抗を著しく困難にする状態が存在すれば、暴行、脅迫が性交等の時点まで継続する必要はないものと解されていると承知しております。

 したがいまして、一般論として申し上げれば、今お尋ねがございました暴行、脅迫行為と性交等の行為との間に時間的間隔あるいは場所的な離隔がありましたとしても、暴行、脅迫行為によって反抗を著しく困難にする状態が性交等の行為の時点においても存在すると認められる場合には本罪が成立すると考えられるところでございます。

串田委員 また、それを前提として、民法八百二十二条では「懲戒することができる。」ということになっていますが、懲戒をすることができるということは、懲戒を受ける側は抵抗してはいけないという趣旨に解していくことになるんでしょうか。

小野瀬政府参考人 お答えいたします。

 御指摘のとおり、民法八百二十二条は、親権を行う者は、第八百二十条の規定する監護及び教育に必要な範囲内でその子を懲戒することができるとして、親権者の懲戒権を定めております。このような範囲内で親権者の懲戒権が行使される場合には、子はそれに従う義務があるものと一般的に解釈されております。

 もっとも、この懲戒権の行使は子の利益のために行われるべきものであって、子の監護及び教育に必要な範囲を超える懲戒は懲戒権の行使として許容されない違法なものでありますので、子もそれに従う義務はないものと考えられます。

串田委員 総括しますと、程度を超えた場合に、子供がいきなりそれについて、お父さん、そこは行き過ぎだよとか言うようなことというのは非常に難しいんじゃないかな。ある一定まで懲戒していくけれども、それ以上になると、それは法律に反しているからそこからは抵抗させてもらいますよと言う子供というのは、これはなかなか想定できないんじゃないかなというふうに思っているんですが、この懲戒権というのは親権者であればいいわけですから、未成年者なわけですね。

 そうすると、総括的に話を戻しますと、ある一定の特定の事件に関して言及するつもりはありませんが、三月に名古屋の岡崎支部で判決が出された、父親が娘に対して性交を行ったことに無罪判決が出たということで、裁判官は、その時点で抗拒不能であるかどうかという、その時点というポイントを非常に捉え過ぎているという部分を私は非常に感じているんですね。

 十八歳までは同意も不同意も関係なく犯罪が成立する、それは影響があるからだということなんですが、今回の事件では十九歳。そして、中学生からずっと暴力をされて、そして性的な行為もされているということも裁判所では事実認定をしている。そして、民法では八百二十二条で、未成年者は親権者として懲戒を受けなければいけないという状況で抗拒ができないというような規定までありながら、十九歳だからといって、いきなりその時点のポイントだけを捉えて無罪判決をしていくということに対して、私はちょっと、国民からしても落ちつきの悪い判決になっているのかなというふうに思っているんです。

 今、先ほど言われたように、暴行や脅迫は行為が行われた時点になければいけないというわけではないんだ、それが影響がありさえすれば適用がされるんだという理解であるとすれば、十八歳までの間で行われていることに関して、十九歳においても影響を及ぼしているということは、観念的にはあり得る、一般論としてあり得るかどうか、確認したいと思います。

小山政府参考人 犯罪の成否につきましては捜査機関が収集した証拠に基づき個々に判断すべき事柄ではございますが、あえて一般論として申し上げますれば、今お尋ねのありましたものの中で、例えば条文の中でいいますと、準強制わいせつ及び準強制性交等というのもございます。これは、人の心神喪失若しくは抗拒不能に乗じ、又は心神を喪失させ、若しくは抗拒不能にさせて、わいせつな行為をした、あるいは性交等をしたというところを処罰することになっておりますので、その事例の判断によって、こういうような事実関係が成立するのであれば、こういう抗拒不能に乗じたというような犯罪が成立する場合もございます。

串田委員 百七十七条が、暴行又は脅迫の中で著しく抵抗をすることができない場合。百七十六条はそういう要件は満たされていなくて、今回の件は同意がないという判決の中で記載がされているので、訴因を変更すれば少なくとも百七十六条は成立していたのかな、無罪ではないのかなというようなこともちょっと思っているんですけれども。

 その時点、行為の時点に余りにも着目をし過ぎるというようなことがあると、私は国民感情的には少し親子関係との関係でおかしいかなとも思うんですけれども、最後に、大臣、感想があればお聞きをして、終わりにしたいと思います。

葉梨委員長 山下法務大臣、御感想を。

山下国務大臣 これに関しましては、局長が随時申し上げておりますように、やはり個別の証拠関係によって異なってくるんであろうと思います。

串田委員 ありがとうございます。終わります。

葉梨委員長 以上で串田誠一君の質疑は終了いたしました。

     ――――◇―――――

葉梨委員長 次に、内閣提出、戸籍法の一部を改正する法律案を議題といたします。

 趣旨の説明を聴取いたします。山下法務大臣。

    ―――――――――――――

 戸籍法の一部を改正する法律案

    〔本号末尾に掲載〕

    ―――――――――――――

山下国務大臣 戸籍法の一部を改正する法律案につきまして、その趣旨を御説明いたします。

 この法律案は、国民の利便性向上及び行政運営の効率化を図るため、一定の行政手続において戸籍証明書の添付を省略できるような措置を講ずるとともに、戸籍証明書の提出が必要な場合においても、本籍地の市町村長以外の市町村長に対する戸籍証明書等の交付の請求、戸籍電子証明書提供用識別符号等の発行の制度を設け、その取得の効率化を図るなど、戸籍の制度について所要の整備を行おうとするものであります。

 その要点は、次のとおりであります。

 第一に、法務大臣が、磁気ディスクをもって調製された戸籍又は除かれた戸籍の副本に記録されている情報を利用して、親子関係の存否その他の身分関係の存否に関する情報、婚姻関係その他の身分関係の形成に関する情報その他の戸籍関係情報を作成し、これを、行政手続における特定の個人を識別するための番号の利用等に関する法律に基づき、行政機関、地方公共団体等からの照会に応じて提供することができるようにする措置を講ずることとしております。

 第二に、戸籍又は除かれた戸籍が磁気ディスクをもって調製されているときは、戸籍に記録されている者等は、本籍地以外のいずれの市町村長に対しても戸籍証明書等の請求を可能とすることとしております。現行の制度では、相続手続等で過去の戸籍をさかのぼって取得しようとする場合に、それぞれの本籍地の市町村役場に対して郵送又は直接出向いて戸籍証明書の請求をする必要があるところですが、この制度を導入することにより、最寄りの市町村役場で戸籍証明書を取り寄せることができるようになるものであります。また、戸籍証明書等の交付にかえて、その提供をもって、行政機関等が電磁的記録である戸籍電子証明書等を取得することができる戸籍電子証明書提供用識別符号の発行の制度を設けることとしております。

 第三に、戸籍の記載の正確性を担保するための措置として、市町村長及び管轄法務局長等による調査権の明確化、戸籍の訂正手続の見直し等を行うこととしております。

 以上が、この法律案の趣旨でございます。

 何とぞ、慎重に御審議の上、速やかに御可決くださいますようお願いいたします。

葉梨委員長 これにて趣旨の説明は終わりました。

 次回は、来る十日金曜日午前八時五十分理事会、午前九時委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。

    午後五時七分散会


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