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第17号 令和元年5月17日(金曜日)

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令和元年五月十七日(金曜日)

    午前九時開議

 出席委員

   委員長 葉梨 康弘君

   理事 石原 宏高君 理事 田所 嘉徳君

   理事 平沢 勝栄君 理事 藤原  崇君

   理事 宮崎 政久君 理事 山尾志桜里君

   理事 源馬謙太郎君 理事 浜地 雅一君

      赤澤 亮正君    秋本 真利君

      井野 俊郎君    尾身 朝子君

      奥野 信亮君    鬼木  誠君

      門  博文君    門山 宏哲君

      上川 陽子君    神田  裕君

      黄川田仁志君    国光あやの君

      小林 茂樹君    中曽根康隆君

      船橋 利実君    古川  康君

      古川 禎久君    堀内 詔子君

      宗清 皇一君    逢坂 誠二君

      黒岩 宇洋君    松田  功君

      松平 浩一君    山本和嘉子君

      森田 俊和君    遠山 清彦君

      藤野 保史君    串田 誠一君

      井出 庸生君    柚木 道義君

    …………………………………

   法務大臣         山下 貴司君

   法務副大臣        平口  洋君

   法務大臣政務官      門山 宏哲君

   最高裁判所事務総局総務局長            村田 斉志君

   最高裁判所事務総局家庭局長            手嶋あさみ君

   政府参考人

   (警察庁長官官房審議官) 田中 勝也君

   政府参考人

   (法務省民事局長)    小野瀬 厚君

   政府参考人

   (法務省刑事局長)    小山 太士君

   政府参考人

   (外務省大臣官房審議官) 高橋 克彦君

   政府参考人

   (厚生労働省子ども家庭局児童虐待防止等総合対策室長)           藤原 朋子君

   法務委員会専門員     齋藤 育子君

    ―――――――――――――

委員の異動

五月十七日

 辞任         補欠選任

  門  博文君     秋本 真利君

  上川 陽子君     堀内 詔子君

  和田 義明君     宗清 皇一君

  岸本 周平君     森田 俊和君

同日

 辞任         補欠選任

  秋本 真利君     門  博文君

  堀内 詔子君     上川 陽子君

  宗清 皇一君     船橋 利実君

  森田 俊和君     岸本 周平君

同日

 辞任         補欠選任

  船橋 利実君     尾身 朝子君

同日

 辞任         補欠選任

  尾身 朝子君     和田 義明君

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 政府参考人出頭要求に関する件

 参考人出頭要求に関する件

 民法等の一部を改正する法律案(内閣提出第五一号)


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     ――――◇―――――

葉梨委員長 これより会議を開きます。

 内閣提出、民法等の一部を改正する法律案を議題といたします。

 この際、参考人出頭要求に関する件についてお諮りいたします。

 本案審査のため、来る二十二日水曜日午前九時、参考人の出席を求め、意見を聴取することとし、その人選等につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

葉梨委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

 引き続き、お諮りいたします。

 本案審査のため、本日、政府参考人として警察庁長官官房審議官田中勝也君、法務省民事局長小野瀬厚君、法務省刑事局長小山太士君、外務省大臣官房審議官高橋克彦君及び厚生労働省子ども家庭局児童虐待防止等総合対策室長藤原朋子君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

葉梨委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

葉梨委員長 次に、お諮りいたします。

 本日、最高裁判所事務総局総務局長村田斉志君及び家庭局長手嶋あさみ君から出席説明の要求がありますので、これを承認するに御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

葉梨委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

葉梨委員長 これより質疑に入ります。

 質疑の申出がありますので、順次これを許します。源馬謙太郎君。

源馬委員 おはようございます。国民民主党の源馬謙太郎です。

 きょうは、民法等の一部を改正する法律案の中身について質問させていただきます。

 まず、この特別養子縁組制度の改正ですけれども、それに先立って、先日、法務委員会で里親制度について質問をさせていただきました。関連する制度だと思いますので、まず、残りの里親制度について質問させていただいてから、特別養子縁組制度について質問させていただきたいと思います。

 先日、厚生労働省の参考人の方に来ていただき、本日も来ていただきましたが、この里親制度についてお伺いをしてきました。まず、この里親制度、先日の御答弁の中でもありましたが、手当が出るということもなかなか知られていないというようなお話がありました。

 里親への支援というのは八万六千円あり、例えば養子縁組が成立した後の家庭には類似の支援がない、これというのはどういった背景があってのことなのか。また、今後こうした支援策というのは検討されることはあるのかをまず伺いたいと思います。

藤原政府参考人 お答え申し上げます。

 里親手当でございますけれども、里親が児童養護施設等と同様に社会的養護の受皿を担っているということに鑑み、支給をしているものでございます。

 養子縁組につきましては、縁組成立後は、一般の家庭と同様、法律上の親子関係を有するということとなります。そのため、養子縁組成立後の養親子に対しまして、一般の家庭との関係から、里親手当のような手当を支給するということは難しいというふうに考えております。

 ただ一方で、養子縁組成立後の養親子に対する相談支援につきましては、二十八年の児童福祉法の改正におきまして、児童相談所の業務として明確に位置づけておりますし、民間あっせん機関につきましては、平成二十八年に議員立法で制定いただきました養子縁組あっせん法において、その努力義務が法律に明確に規定をされているところでございます。

 こういったことから、厚生労働省といたしましては、児童相談所や養子縁組の民間あっせん機関による相談支援をしっかり充実していくということによって、養子縁組成立後の養親子に対する支援についても図っていきたいというふうに考えております。

源馬委員 ありがとうございます。

 今のお話はよくわかるんですが、里親をしている間は八万六千円出ていて、これが養子縁組までしていこうとなると、それがなくなってしまうというところで、里親から養子縁組に行くのをちゅうちょしてしまう、そういった事例というのは実際起こっているんでしょうか。

藤原政府参考人 里親制度でございますけれども、里親制度の中にも種類がございまして、通常、養育里親につきましては、委員御指摘になられました里親手当、一人のお子さんであれば月額八万六千円、これ以外に一般生活費といったものが出ることになっているわけでございます。

 また、養子縁組里親は、もともと養子縁組を目指してまず里親になっていただくという制度ですので、養子縁組里親に関しては、里親手当は出ませんけれども、一般生活費が出ている。

 そして、里親として養育を委託している間が過ぎて、養子縁組が、無事に縁組ができたといって、ある意味、その措置が解除をされるということになって、法律上の親子関係が生ずるということになった後は、確かにそういった経済的な金銭の支援はないというふうな、そういうふうな仕組みになっておりますので、養親候補者の方々のニーズといいますか思いといいますか、さまざまでございますので、そういったものを含めて、児童相談所の担当の児童福祉司がよく話を聞きながら、養育里親として登録していただくか、養子縁組里親として登録をするのかといったことを丁寧に支援をしていくということが重要かと思っております。

源馬委員 次に、養子縁組、普通養子縁組と特別養子縁組について伺っていきたいと思うんです。

 特別養子縁組、今回の法改正の中心になるものは、実親とは関係を切り、養親と本当の親子関係を結ぶというところで、そうした強い関係性があると思うんですけれども、一方で、普通養子縁組というのは、家の後継ぎですとか、家名だったりとか祭祀の継承や、財産、会社の継承といった目的で使われることが多い、こういうことが言われております。

 日本の特別養子制度、今まで、現行では六歳未満ですけれども、この年齢の壁によって、特別養子制度は諦めて、もう年齢がいっているからということで普通養子制度を活用している、こういった割合というのは現状どのぐらいあるんでしょうか。

小野瀬政府参考人 お答えいたします。

 特別養子縁組を望んでいたにもかかわらず、養子となる者の年齢がその年齢の上限を超えていたことから、やむを得ず普通養子縁組をしたという事例がどの程度あるか、こういうことにつきましては、申しわけございませんが、統計がございませんので、お答えすることはできないということでございます。

 ただ、厚生労働省の検討会が全国の児童相談所、それから民間のあっせん団体を対象にしまして実施した調査の結果によりますと、平成二十六年と二十七年の二年間で、特別養子縁組を選択肢として検討すべき子供について、年齢が問題となって特別養子縁組をすることができなかった事例が四十六件あったとされております。

 他方、この調査では、同じ二年間で、児童相談所又は民間のあっせん団体が関与した普通養子縁組が三十七件あったと報告されておりまして、このうち、養子の年齢が七歳以上であるケースが三十四件でございました。

 ただ、こういった二つの数字の結びつきといいますか、その関連が必ずしも明らかではございませんので、あくまでも推測ということになりますけれども、このようなことからいたしますと、現行法のもとで普通養子縁組をした子供の中には、特別養子縁組における養子の年齢の上限に達していなければ特別養子縁組を選択していた可能性があるもの、こういうものも含まれていると考えられます。

源馬委員 そうしますと、そもそもの現行での特別養子縁組の年齢というのは六歳未満ということなんですけれども、これは今回見直されるわけですが、ほかの国を見てみると、例えば、フランスでは十五歳、ベルギーは十八歳、イタリアも十八、イギリスも十八、アメリカは制限なし、韓国も十八歳となっていますけれども、日本がそもそも六歳未満と規定していたのは、どういった理由があったんでしょうか。

門山大臣政務官 お答えいたします。

 特別養子制度は、養親と養子との関係の、実親子間と同様の実質的な親子関係を創設することを目的とするものでございますが、養子となる者が六歳に達している場合には、実の親との関係が強くなっている可能性があり、また就学して分別が生じているため、六歳未満の子供の方が、養親と養子との間に実質的な親子関係を形成することが容易であると考えられたことがあります。

 また、子供の利益を考えると、特別養子縁組はできる限り早い時期に成立させることとし、養子となる者が早期に安定した家庭環境のもとで養育されることとなるのが望ましいと考えられていることもあります。

 さらには、我が国では、未成年者を養子とする場合には、特別養子制度だけでなく、普通養子制度を利用することもできますから、特別養子制度については、その適用対象を限定することにも一定の合理性があると考えられておりました。

 以上の理由から、養子縁組により実親子関係を終了させる新たな制度を創設するに当たっては、まずは妥当性が明確な場合に限るという趣旨で、養子となる者の年齢の上限が原則六歳未満とされたものでございます。

源馬委員 ありがとうございます。

 そうして決められたこの六歳未満というのを今度十五歳未満にするということは、どういった議論があり、そしてどういった背景があったんでしょうか。

 養親との信頼関係を築くには幼少の方がいい、六歳を過ぎてしまうと就学して分別もできてくる、いろいろな、当初六歳未満となった理由を御説明いただきましたが、それをあえて今度は十五歳未満にするというその理由、そして十五歳という年齢の合理的な理由、これも教えていただきたいと思います。

門山大臣政務官 先ほど先生からの前提質問がありましたけれども、今回の法案というのは、六歳から十五歳に年齢を引き上げて、特別養子縁組の成立要件を緩和することによって制度の利用を促進する、あるいは、そもそも、先ほど御回答もありましたけれども、本来なら特別養子を使われる者が年齢制限のために使われなかったということも相当あるということで、その利用拡大を狙っているものでございます。

 他方、原則的な上限年齢を今度十五歳とした理由についても御説明させていただきますと、民法上、十五歳に達すると、みずからの意思で普通養子縁組をすることができるとされていることから、十五歳に達している者について、家庭裁判所の審判によって縁組を成立させることは原則として不適当であると考えられるためでございます。

 この理由に加えて、子の利益の観点からは、やはりできる限り早期に特別養子縁組を成立させることが望ましいと考えられ、養子となる者の年齢の原則的な上限を十五歳未満とすることによって、遅くとも義務教育期間中には特別養子縁組の成立の申立てがされるよう促す効果があるということ、あるいは、特別養子縁組が未成年者の養育のための制度であることからすれば、特別養子縁組の成立に一定の養育期間が確保されるようにする必要があること等の事情も考慮しているわけでございます。

 以上のことを考慮して、本法律案では、特別養子縁組における養子となる者は、原則として、特別養子縁組の成立の審判の申立ての時点で十五歳未満でなければならないとされたものでございます。

源馬委員 もしわかればでいいんですけれども、これは通告をしっかりしていないので、わかればでいいんですが。

 今御答弁にあった、民法上、普通養子縁組が自分の意思でできるようになるのが十五歳であるからという理由も一番最初に御説明いただきましたが、普通養子縁組が十五歳で自分の意思で可能になるというそもそもの理由というのは、どういった背景があったんでしょうか。もしわかれば、参考人の方、教えていただきたい。

小野瀬政府参考人 お答えいたします。

 一般的に、例えば民法の契約ですとか取引行為ということになりますと、これは成年年齢、現在は二十ということになっておりますけれども、ただ、普通養子縁組のような身分関係につきましては、できるだけ、判断能力がありますれば、必ずしも契約といったような成年年齢ではなくて、もう少し若いときから、みずから判断、その行為をすることができるようにしていいのではないかということで、身分行為のそういう特質、そういうもの、あるいは、十五歳ということの判断能力、そういうことを考慮して、民法としては十五歳で普通養子縁組ができるというふうになっているものと理解しております。

源馬委員 身分関係ということでいいますと、結婚なんかも同じように自分の身分と関係するものだと思います。結婚は、今度成人年齢が引下げになるときに、女性も今まで十六歳だったのが十八歳以上になるということで、こうした結婚の自分の意思、より自分の意思が反映されると思う身分に関する結婚の年齢は十八なのに、一方で、養子に関しては十五歳で、みずからで判断できる、ここに合理的整合性があるのかどうか、御見解を伺いたいと思います。

小野瀬政府参考人 お答えいたします。

 身分行為をすることができる年齢をどうするかといいますものは、やはり、それぞれの身分行為の趣旨ですとか、あるいは、その身分行為をすることによってその人がどういう影響を受けるのか、どういう効果を受けるのかということ等を勘案して判断されているものだと思います。

 婚姻年齢につきましては、やはり婚姻して二人で共同して生活をしていくということになりますれば、現在の社会の状況ということを踏まえますと、現在は現行法では女性は十六歳となっておりますが、やはりもう少し引き上げるということで、十八歳が相当ではないかというふうに判断されたものでございます。

源馬委員 この上限年齢が十五歳未満になるということで、そこでも例外というのがありまして、十五歳に達する前から養親候補者が引き続き養育をしていた場合、あるいは、やむを得ない事由により十五歳までに申立てできなかった、こういった場合は十五歳以上でも可、こういったことになると思うんですが、この二つ目の、やむを得ない事由により十五歳までに申立てできなかった場合というのはどのようなケースが考えられるのか。

 また、これは、やむを得ない事由という抽象的なことで制限をすると、際限なくどこまでも運用されてしまうのではないかと思いますが、どのように制限をかけていくのかを伺いたいと思います。

小野瀬政府参考人 お答えいたします。

 御指摘のやむを得ない事由という要件でございますけれども、最終的には裁判所の判断に委ねられることになりますけれども、例えば、養親となる者が養子となる者の養育を開始してからまだ一、二年ぐらいしかたっていないということで、十分な熟慮期間がないうちに養子となる者が十五歳に達してしまった場合、こういったことなどが当たり得るものと考えられます。

 この要件の判断に当たりましては、家庭裁判所におきまして、成年に達するまでの短い期間しか残されていないにもかかわらず、実親子関係を終了させ、原則として離縁することができない養親子関係を形成させる必要があるかといった観点から、慎重に検討されるものと考えております。

源馬委員 ありがとうございます。

 十五歳に達して、例外があった場合は十八歳未満ということだと思いますが、十八歳は当然のことですけれども、十五歳も、先ほどの御答弁にもあったとおり、みずからの身分関係をみずからの意思で決めることができる年齢というような御答弁もありましたが、当然、そうすれば、自分の意思があるとは思うんです。

 現行法では養子になる候補者の同意というのは必要ないというふうにされておりますが、これも六歳ということもあると思うんですけれども、今回の改正によって、十五歳に達している者は、養子の候補者は同意が必要になるというふうに理解をしておりますが、養子になる候補者が十五歳に達している場合に、みずから同意する、つまり、特別養子縁組の場合は、実親と縁を切るという同意をみずからする。いろいろなケースがあると思いますが、それで親子関係が、実の親と解消される。まあ、それをみずから望むケースもあると思うんですけれども、一方で、やはり親への愛情があったりとか、そうしたケースも十分考えられると思うんです。

 そこで、みずからが同意をして自分の親との親子関係を絶ち切るという、その決定をするのに相当な葛藤や苦しみが生まれるケースもあるのではないかなと思いますが、こうした精神的な、そうした葛藤ですとか苦しみに対する支援、フォローというのは、何か考えているものはあるんでしょうか。

小野瀬政府参考人 お答えいたします。

 御指摘のとおり、特別養子縁組の成立について養子となる者に同意をしていただくということは、これは実親との親子関係を終了させることを決断させるものでございますので、その同意の有無を確認する場面では、その心情に配慮して、慎重にその意思を確認する必要があるものと考えております。また、十五歳以上の者について特別養子縁組を成立させる場合には、その心情も含めて、事後的なケアが必要になるというふうに考えられます。

 この点につきまして、養子となった児童に対する支援に関しては、平成二十八年の児童福祉法改正により、児童相談所が必要な援助を業務として行うべき旨が法律に規定されております。また、民間団体のあっせんにより行われる縁組につきましても、昨年四月に施行されました民間あっせん機関による養子縁組のあっせんに係る児童の保護等に関する法律において、民間団体は、養子縁組成立後の養親子に対し、その求めに応じて、必要な援助を行うよう努めるものとする旨の規定が設けられております。

 養子に対しましては、これらの法律の趣旨に沿って必要な支援がされるものと考えております。

源馬委員 今御答弁であったとおり、同意する場面なんかでも慎重にという御答弁がありました。

 この同意をしてもらうとき、誰が、その同意、養子となる本人の同意をどういった場面で確認するというふうに今見込んでいらっしゃるんでしょうか。

小野瀬政府参考人 お答えいたします。

 この養子となるべき者の同意につきましては、基本的には、裁判官が特別養子縁組の成立の審判の手続の期日において確認するか、あるいは家庭裁判所調査官が調査の手続を通じて確認することとなるものと考えられます。

源馬委員 こうした原則十五歳未満の子供たちに、本人の身分が変わる非常に大きな出来事になるわけですけれども、特に十五歳に近い年齢の子供たちというのは、やはり、もう自我も芽生えて、いろいろと自分の希望なんかもあるというふうに思うんですが、この制度、自分たちの身分にかかわる、しかも親子関係にかかわるこの制度のことを、やはり、六歳未満のときと違って、十五歳未満ということになれば、ある程度、実際にかかわる本人たちにも、こうした制度、このように変わってこうなるよ、その際は同意が必要で、実親との親子関係を切るということも自分で決断しなきゃいけないんだよみたいなことも含めて、これは本人たちにもやはりわかっていてもらう必要があると思うんです。

 この対象となる未成年の人たちにどのようにこの制度の改正についてわかりやすく伝えていくのか、また、未成年のまだまだ成熟し切っていないという年齢の子供たちに、この制度のことが、理解が促進すると考えているかどうか、伺いたいと思います。

小野瀬政府参考人 お答えいたします。

 家事事件手続法におきましては、特別養子縁組の成立の審判手続においては、家庭裁判所は、養子となる者の意思を把握するように努め、審判をするに当たってもその意思を考慮しなければならないこととされております。したがいまして、養子となる者が十五歳未満でありましても、家庭裁判所は、その者の意思を考慮した上で、特別養子縁組を成立させるか否かを判断することとなります。

 このように、養子となる者の意思を考慮するに当たりましては、御指摘のように、養子となる者に対してわかりやすく制度の説明をする必要がございます。

 この点につきまして、家庭裁判所におきましては、これまでも、子供の年齢あるいは発達の程度に応じて、家庭裁判所調査官が、養子となる者と面接する過程で、子供に法制度を説明した上で、その意思を把握してきたものと承知しております。

 特別養子縁組制度についての意思の把握や、その前提となる制度の説明につきましても、これまでの経験を生かして家庭裁判所において適切にされるものと考えられます。これによって、十五歳未満の子供に対しても特別養子制度についての理解を促進することができるものと考えております。

源馬委員 少し細かなところもちょっと伺っていきたいと思うんですが、今度は、養子は六歳未満が十五歳未満になる。一方で、養親になる者というのが、現行法では、一方が二十五歳以上で、他方が二十以上ということが定められていると思います。

 養子となる者の上限年齢が引き上げられて、一方で養親になる候補者の下限年齢というのが変えられていないということは、養親になる人と養子になる人の年齢が非常に近くなるケースも考えられると思うんですけれども、今回の法改正で、養子となる者の上限年齢は引き上げて、他方で養親になる下限年齢は変えなかったけれども、この近接する可能性とか、このことについてどのように法務省はお考えになっているか、伺いたいと思います。

門山大臣政務官 お答えいたします。

 源馬委員御指摘のとおり、今回の改正により、養子となる者の年齢の上限を原則として十五歳未満、例外の場合には十八歳未満まで引き上げると、理論的には養親と養子との間の年齢差がごくわずかになるということはあり得るところでございます。

 そのため、法制審議会の特別養子制度部会においては、養親となる者の年齢要件の見直しや養親子間の年齢差に関する要件を創設する等の考え方の当否についても検討はなされましたが、養親と養子との間の年齢差を法律で一律に定めるよりも、家庭裁判所が養親となる者の適性を総合的に判断する際に養子との年齢差を考慮することの方が個別具体的事案に応じて適切な判断がされることになるのではないかという指摘がなされ、このような考え方は採用されなかったものでございます。

 このため、本法律案では、養親子の年齢差に関する要件を設けることはしなかったものでございます。

源馬委員 ありがとうございます。

 更に伺いたいんですが、例えば、養子になる者の年齢が上限が上がるということで、養子となる者に子供がいるというケースも考えられなくはないと思うんですね。やむを得ない事由なんかがあったら十八までということになれば、子供がいる可能性もある。こういったケースはどのような扱いになるんでしょうか。

門山大臣政務官 本法律案の改正により、特別養子縁組により十六歳や十七歳の子供を養子とすることができるようになります。そのため、養子となる者に子供がいることも想定されますが、子供がいる者を養子とする特別養子縁組の成立を一律に否定すべき理由はございません。

 したがいまして、子供を持つ者も特別養子となることができると考えられます。

源馬委員 ありがとうございます。

 また参考人に伺っていきたいんですけれども、現行法では養親子は六カ月以上の試験養育が設けられていて、これは改正された後も同様だと思いますが、養親の養育能力を見たりとか、あるいは養親と養子の相性のマッチングなどを見るということだと思います。一方で、非常にセンシティブな時間というか、何か試験をされている、そういった期間になることは間違いなくて、これがもしパスできなかったら却下されてしまう、そういうような不安を抱えることもあると思います。

 試験養育期間というのが六カ月以上設けられておりますけれども、この間に養親となる者や養子になる者に対して何かをアドバイスをするとか、そういったものを含めてのフォローの体制というのは何かあるんでしょうか。

小野瀬政府参考人 お答えいたします。

 先ほど申し上げましたとおり、児童相談所は、児童福祉法に基づきまして、試験養育の期間中も含めて、養子縁組により養子となる者それから養親となる者について、その相談に応じて、必要な情報の提供、助言その他の援助を行うこととされております。

 なお、経済的な面ということにおきましても、児童相談所が養子縁組のあっせんをする場合には、子供は養子縁組里親に対して委託されることになりますが、養子縁組里親は、試験養育期間中も、委託を受けた子供について一般的な生活費の支給を受けることができます。

 また、民間あっせん団体が養子縁組のあっせんをする場合につきましても、養子となる者及び養親となる者に対して、試験養育の期間中も、民間あっせん団体が監護の状況等を把握、相談に応ずるなどの支援を行うこととなっております。

源馬委員 次に、実親がどういうふうに関与するかということについて伺っていきたいと思うんですが、実親が縁組に同意をしたとしても、これは現行法では、手続をしている最中であれば、いつでもその同意を撤回する、審判確定まではいつでも同意を撤回することができるというふうになっていると理解をしております。

 昨年六月十四日の朝日新聞の記事に、生後十日ほどの女の子を迎え入れて、すぐに縁組の申立てをしたが、三カ月後に実母と連絡がとれなくなったと家庭裁判所から連絡があり、その後連絡がとれたが、縁組は認めていないというふうに言われて、七カ月も一緒に暮らしたその女の子、女児と別れることになってしまったという記事がありました。

 更に言えば、養子に出すということは同意をしたんだけれども、やはり撤回して、撤回したんだけれども、そのまま子供を施設に預けたまま、自分では育てないというケースもあるというふうに聞いております。

 このように、実親が一旦は養子縁組に同意をして手続が進んで、もう少しで養子縁組できるというところに行く過程の中で、やはりやめた、撤回する、こういった例というのは実際どのぐらい起こっているのか。また、もし統計があれば、その理由というのはどんなものが多いのかを伺いたいと思います。

小野瀬政府参考人 お答えいたします。

 同意の撤回がされた件数、それからその理由につきましては、申しわけございませんが、その統計がございませんので、お答えすることができないということでございます。

 御指摘のとおり、同意を撤回して特別養子縁組の成立を阻止したにもかかわらず、その後も子供を引き取らないために、結局児童養護施設等で暮らすことになる子供がいる、こういう御指摘があるということでございます。

 この法律案では、第一段階の特別養子適格の確認の審判手続におきまして、実親が裁判所における審問の期日等でした同意については、同意をした日から二週間が経過した後は撤回することができないということにしておりますが、これによりまして今申し上げましたような事態を防止することができるのではないかというふうに考えているところでございます。

源馬委員 今回の法改正で、その第一段階において同意が撤回できるのが二週間ということになっているということなんですが、確かに、その撤回の期間というのは短くなって、審判が確定するまでにいつ撤回されちゃうかわからないという危険性は少なくなるとは思うんですけれども、先ほど御答弁の中でもあった、自分で撤回をしたにもかかわらず、引き取らずに、施設でそのまま預けてしまう、こういったことを防ぐ何か手だてというか、今、防ぐ手だて、手段が現状であるんでしょうか、又は、法改正をすることによってそうしたことを防いでいける何か手段があるんでしょうか。

小野瀬政府参考人 お答えいたします。

 今申し上げましたとおり、撤回は一応二週間という期間がございますので、その二週間の期間内に撤回されてしまいますればそこは特別養子縁組というのはできないということになってしまいます。

 ただ、その期間制限を設けることによりまして、そこはやはり撤回というものはかなり制約されると思いますし、また、しっかりとした同意というものをとっていくということで、そういった事態ができるだけ起きないようにするということが考えられるかと思います。

源馬委員 済みません、私の聞き方がちょっとわかりにくかったのかもしれませんが、同意を撤回したにもかかわらず、そのまま自分では引き取らずに、施設に置いたままにしてしまうということを防ぐことは何かできる手段があるんでしょうか。

小野瀬政府参考人 お答えいたします。

 同意が撤回されてしまいますとこれは特別養子縁組というものが成立できないということになりますので、あとは、その子供を実の親、実親が育てていくことができるかどうか、そういう問題になろうかと思います。

 したがいまして、そこは、何とか施設ではなくて実親が育てていけるような、そういう社会福祉的な支援というふうな問題になってくるのかなというふうに思われます。

源馬委員 わかりました。

 このように、例えば実子を手放すことになる親が撤回をする、そういう気持ちもわかるわけなんですが、今指摘をしてきたようなケースを生まないためにも、養子縁組に同意をしやすくするというか、それを撤回しにくくする、そのためにも、同意をすることになる実親への何かサポートとかフォローとか、そういった方策というのは何かあるんでしょうか。

小野瀬政府参考人 お答えいたします。

 厚生労働省におきまして、思いがけない妊娠に戸惑い、悩んでいる方を対象にしたリーフレットを作成し、特別養子縁組制度の周知を行っておりますほか、児童相談所や子育て世代包括支援センターなどで相談を受け付けているものと承知しております。

 また、児童福祉法では、先ほど来申し上げておりますとおり、子供の父母に対して、その相談に応じ、必要な情報の提供、助言その他の援助を行うこととされておりまして、厚生労働省におきまして、これらの規定に基づいて、養子縁組のあっせんを利用する子供の父母に対しても、あっせんの各段階で必要となる支援を適切に行っているものと承知しております。

 法務省としましても、実親が土壇場で養子に出すことを拒絶するような事態は好ましくないものであると考えておりまして、この法律案による改正後の新たな制度の効果的な周知などを通じて、厚生労働省の取組に協力してまいりたいと考えております。

源馬委員 次に、今回の法律案の中で、二段階手続の導入の部分について伺いたいんです。

 この二段階手続のうちの第一段階の特別養子適格の確認の審判をまずできるということで、実親の同意の撤回に制限を設けるに当たり、養子となる者の出生の日から二カ月を経過した後にされたものであることという要件があると思うんですが、この要件はなぜ設けられたんでしょうか。

小野瀬政府参考人 お答えいたします。

 一旦実親がしました同意、これが撤回できないということになりますと、実親は翻意したとしても特別養子縁組の成立を阻止することができなくなるわけでございます。

 このように、撤回制限の効果が重いものであることに照らしますと、同意の撤回を制限するためには、実親が精神的に安定した状況において、同意の効果を十分に理解した上で慎重に同意をすることができる仕組みを設ける必要がございます。

 ということでございますが、子供の出生の日から二カ月を経過した後にされた同意に限って撤回を制限することといたしましたのは、実親、特に実母は、子供の出生後、一定期間は精神的に不安定であることが少なくないために、その時期にされた同意はその効果を十分に理解せずにされたおそれがあるということでございますので、こういったことから、二カ月を経過した後にされたという要件を設けたものでございます。

源馬委員 ありがとうございます。

 少し、通告した質問を飛ばして、十八番目の質問をまず先にさせていただきたいと思うんですが、特別養子縁組の成立の手続についてです。

 今度は、今御説明があった第一段階については、児相長が関与することができるということが大きなところだと思います。この児相長が申立てをできるようになるということは、養親となる候補者の者の負担が少なくなるということの御説明を伺いました。実際には、実親とのかかわりを持たなくていいとか、そういったところでメリットがあるのではないかという御説明を事前に伺いました。確かにそのとおりだなと思います。

 そして、第一段階の手続が割と進めやすくなり、また、同意の撤回も二週間ということになり、大分進めやすくなるということもあると思います。

 そうしたケースで、まず第一段階で児相長が申し立てたことによって手続が進んでいって、そして、これが結果的に、第二段階で養親となる候補者というのがあらわれなかった場合、マッチングがうまくいかなかった場合、その子供にとっては、第一段階で、あなたの実親は養育困難であったり、又は親として不適当という烙印を押されて、そして一方で、養親となる人がまだいないという、非常に宙ぶらりんな、しかも実親についての不適格性なんかを認定されたというような状況になってしまうことも考えられると思うんですが、そのことについてどうお考えになるか、また、そうした場合も、裁判所から特別養子適格の確認の審判の結果というのが、つまり、第一段階で、実親についての不適格性なんかの認定というのが本人に告知されるものなのかどうか、伺いたいと思います。

小野瀬政府参考人 お答えいたします。

 委員御指摘のとおり、第一段階の審判がされた場合に、その養親となるべき者が、その審判を前提として、いつまでも第二段階の手続を申し立てることができるということにいたしますと、養子となるべき者の法的地位が長きにわたって不安定になるという問題が生じます。そこで、この法律案におきましては、第二段階の手続の申立ては児童相談所長の申立てによる第一段階の審判が確定してから六カ月以内にしなければならないということとしております。

 また、児童相談所長は、第一段階の手続の申立てをする時点で養親候補者を定めておくということが望ましいわけでございまして、それができない場合でも、申立て後速やかに養親候補者を定めるように努めることが期待されるものでございまして、この点につきましては、この法律案による改正後の児童福祉法において児童相談所長の努力義務として規定をするということになっております。

 また、審判の結果の告知でございますが、特別養子適格の確認の審判はいわば中間的な審判という側面を持っておりまして、それ自体に実体法上の効果はございません。また、実親による養育状況について判断されますこの第一段階の審判におきましては、実親による虐待等が認定される場合もございまして、そのような場合に、養子となるべき者に対して虐待等の事実が記載された審判書を送付することは適切でないこともあると考えられます。このため、この法律案におきましては、この第一段階の審判につきましては、養子となるべき者の利益を害すると認める場合にはその者に告知することを要しないこととしております。

源馬委員 ぜひ、努力規定を、大事なところだと思うので、しっかりと運用でやっていっていただきたいなと思います。第一段階から第二段階に行くまでの期間が制限をされたとしても、第一段階だけ終わって養親のマッチングがうまくいっていないということがあるとやはり子の福祉にとっては望ましくないと思うので、できたらやはり第一段階を申し立てる前に養親候補がしっかりいて、うまくマッチングできそうだということになってから申し立てるということがやはり基本的な進め方だと思いますので、ぜひその点は運用上しっかりと進めていただけたらなと思います。

 また、厚労省に伺いたいんですけれども、そうした面も含めて、児相長が果たす役割というのがこれから増加すると思います。そして、養子縁組に対する影響も大きく持つことになると思うんですけれども、児相長の人選というのはこれまでどおり地方自治体に一任していくということなのか、まず御見解を伺いたいと思います。

藤原政府参考人 お答え申し上げます。

 児童相談所の職員につきまして必要な専門性が確保できるよう計画的な人材確保、育成が図られるということは、もとより重要なことだと考えております。

 児童相談所長の権限についてでございますけれども、現行の児童福祉法の体制下におきましても、親権喪失、停止の申立てですとか児童の施設入所の措置の決定、こうした非常に重要な権限を有しているわけでございます。さらに、今回のこの民法改正法案における特別養子縁組の申立てという業務も新たに加わることになる。非常に重要な権限を有する職だというふうに認識をしているところでございます。

 そうしたことを踏まえながら各地方公共団体においてふさわしい人材を適切に選定されているものというふうに考えておりますので、自治事務のもとで同様の仕組みで進めていくべきというふうには考えております。

 なお、児童相談所におきましては、もちろん児童相談所長の能力も大事ですけれども、組織全体としての経験が蓄積をされ、引き継がれるようにするというふうなことも重要であると考えておりますので、児童相談所の体制強化といったことについても引き続き取り組んでいきたいというふうに考えております。

源馬委員 そうしたいろいろな役割もふえていく中で、厚労省としては、これからその役割が変化というか増大していくこの児童相談所の所長とか職員について、これから求められる人材というのはどういった人材が望ましいというふうにお考えなのか伺いたいと思います。

藤原政府参考人 お答え申し上げます。

 児童相談所長の要件といたしましては、児童福祉法に規定がございまして、医師ですとか社会福祉士ですとか心理学を専修した者ですとか一定の資格を前提にしている規定とともに、実務経験をもとにした要件、こういったことが幾つか規定をされておりまして、こういった要件を満たす者の中から各都道府県等におきましてふさわしい人材を配置をいただいているということだと認識をしております。

 また、児童相談所長のみならず、児童相談所の職員について、必要な専門性が確保できるように、計画的に人材の確保、育成を図られるということが重要であるということでございますので、各児童相談所において、組織としての経験が蓄積をされ、引き継がれるようにしていく必要もあるだろうというふうに考えております。

 このため、厚生労働省から都道府県等に通知を発出しておりまして、幹部職員も含めた個々の児童福祉司の方々が必要な専門性を確保できるような人事異動サイクルで人材配置を行っていただくこと、それから、将来的に指導、教育的な立場に立つ職員の計画的な育成をしていただくこと、また、積極的に児童相談所配属の経験者の再配置ですとか児童相談所OB職員の再任用についても御検討いただきたいこと、こういったことを依頼をいたしまして、自治体での工夫が進むように取組の周知も行っているところでございます。

源馬委員 最後に大臣にお伺いしたいんですけれども、この法改正によって、現状、年間五百件ほどの特別養子縁組制度の利用者というのがどのぐらいに増加すると見込まれているのか、これは一概に、正確な数を言うというのは難しいと思うんですが、どのぐらいふえると見込まれているのか、また、全体としての、家庭環境の中で養育される子供をふやしていこうという目標にどのように資していくのか、大臣の御見解を最後に伺いたいと思います。

山下国務大臣 特別養子縁組の成立の申立て、これにつきましては、養親となる方にも重大な決断を迫るものでございます。したがって、そういうこともございまして、今回の改正後に制度の利用者がどの程度増加するかということを予測することは困難であると考えております。

 その上で申し上げれば、これは一つの要素ということでございますが、厚生労働省の検討会が実施した全国の児童相談所及び民間あっせん団体に対する調査の結果、特別養子の制度上の障害のために特別養子縁組の利用を検討することができなかった事案として、二年間で二百九十八件が報告されておりまして、その中には今回の法改正により特別養子縁組を成立させることが可能になるものが相当数含まれているものと考えておりますので、今回の改正によって増加するであろうというふうに考えております。

 また、この目的に関しまして、今回の改正によって、現に児童養護施設に入所している児童等に家庭的な養育環境を提供するという、その選択の幅が広がるだろうと考えております。家庭環境の中で養育される子供をふやすという目的の実現に向けて相応の効果があるものと考えております。

源馬委員 ありがとうございました。終わります。

葉梨委員長 以上で源馬謙太郎君の質疑は終了いたしました。

 次に、藤野保史君。

藤野委員 日本共産党の藤野保史です。

 法務省は、今回の法案の提案理由の中で、現在、児童養護施設等の中には、保護者がいないことや虐待を受けていることなどが原因で、多数の子が入所しておりますが、その中には、特別養子縁組を成立させることにより、家庭において養育することが適切な子も少なくないと説明をされています。

 こうしたやはり虐待、あるいは経済的事情もあると思います、何らかの事情によって実の親が育てられない、そうしたお子さんを含めて全ての子供が成長と発達を保障されていくというのは、私も重要な課題だというふうに思っております。本法案は、今お話があったように、その選択肢の一つである特別養子縁組について、それをふやす方向で改正しようというものだと認識をしております。

 そのもとで、幾つか確認していきたいと思っております。

 まず、厚労省に確認したいんですが、現在、虐待やいろいろな事情から親元で暮らせない要保護児童というのは何人いるのか、そして、そのうち各種の施設で暮らしている子供は何人いるのか、何割に達するのか、お願いいたします。

藤原政府参考人 お答え申し上げます。

 平成二十九年度末現在でございますけれども、里親やファミリーホームに委託されている子供を除いた約三万七千人の児童が、児童養護施設や乳児院などのいわゆる施設で暮らしておられます。施設類型別に見ますと、主なところでは、児童養護施設が二万五千二百八十二人、乳児院については二千七百六人というふうになってございます。

藤野委員 そうした数万の子供たちが要保護対象であって、施設で暮らす子供が八割ということでお話があったと思います。

 法務大臣にお聞きしたいんですが、ちょっと重なるところもありますけれども、現状は、そういう意味では八割が施設で暮らしていらっしゃる、子供たちがですね。今回の法案で、ある意味、それをより家庭に近いといいますか、特別養子ですから家庭ですね、養育していこうということだと思うんですが、今回の法案でどれぐらいこれが進んでいくのか、これについてどのような見通しをお持ちでしょうか。

山下国務大臣 先ほどの答弁と若干重なる部分がございますが、やはり、今回、特別養子縁組の成立の申立て自体、養親となる者に相当な決断を迫るものでございますので、改正後に制度の利用者がどの程度増加するかを予測することは困難であると言わざるを得ませんが、その上で申し上げれば、先ほどちょっと御紹介した、厚生労働省の検討会が実施した全国の児童相談所及び民間あっせん団体に対する調査結果では、例えば実父母の同意要件や養子となる者の年齢要件などの制度上の障害のために特別養子縁組の利用を検討することができなかった事案ということで、二年間で二百九十八件が報告されております。その中には、今回の法改正により特別養子縁組を成立させることが可能となるものが相当数含まれているものと考えてございます。

 こういった数値もある中で、確かに、選択肢を提供するという意味において、現在相当数の方々が児童養護施設等に入っているわけですが、この選択肢の一つとして、特別養子制度が今回の制度の見直しによって更に検討されることがふえるのではないかと考えております。

藤野委員 今、厚労省の調査では二年間で二百九十八件、約三百件。そのほかに、先ほどの局長の答弁では、特別養子が要件を満たさないので普通養子の形式をとらざるを得なかったものもあるのではないかという答弁もありました。三百件ということで決して少なくはないんですが、しかし他方で、やはり要保護児童数が数万人、あるいは急増している虐待事案というものを考えますと、仮に本案で特別養子縁組を改正したとしても、多くの子供たちがこうした制度を活用できないということもやはり考えなければならないというふうに思っております。

 したがって、同制度とあわせて、社会的養育に関する制度全般についてやはり議論が必要ではないかというふうに思っております。

 配付資料の一は、政府の資料ですけれども、子ども・子育て支援新制度と社会的養護の制度全体像ということで御紹介をさせていただいております。この間、多くの努力がされてきたもとで、子どもの権利条約にもあります子の最善の利益というために、やはり日本でもこうした制度が具体化をされてきているということだと思います。

 二〇一六年には、児童福祉法の改正が行われました。これは全会一致で成立した法律でありまして、子供が権利の主体であるということを明確に規定した上で、その第二条一項では、子供たちがその意見が尊重され、その最善の利益が優先して考慮され、心身ともに健やかに育成されるよう努めるということも明記をされております。大変重要な法律だと思うんですが、これに基づいて、その翌年には、新しい社会的養育ビジョンというのがつくられております。

 厚労省にお聞きしたいんですが、このビジョンの主な内容といいますか、どのようなものでしょうか。

藤原政府参考人 お答え申し上げます。

 委員御紹介いただきましたとおり、まずもって、平成二十八年の児童福祉法改正をいただきまして、児童が権利の主体であるということを明記をいただき、その上で、家庭における養育環境と同様の環境において養育されるように必要な措置を講ずるとする家庭養育優先原則、これを法律に明確化をしたということでございます。

 厚生労働省としては、家庭養育優先原則を徹底すべく、施策を進めていくというものでございます。この土台といたしまして、有識者による検討会を設けまして、今委員が御紹介いただきましたビジョンを定めたところでございます。

 ビジョンの内容は非常に多岐にわたっておりますけれども、まずもって、やはり家庭的な養育の推進ということで、里親委託の推進ですとか特別養子縁組の推進、そして、現行の児童養護施設につきましては、小規模化、地域分散化、高機能化、こういったことを進めていくということによりまして、できる限り良好な家庭的な環境、質の高い個別ケアを行えるようにするということ。そして、市区町村でも、身近な自治体でございますので、子供を支える、子育てを支える体制をしっかりつくっていこうというふうな大きな柱でビジョンをおまとめいただきましたので、これをもとに、私ども、社会的養育推進計画の策定要領というものを政府として定めまして、今年度中に各都道府県に計画を策定いただくというふうにお願いをしているところでございます。

 この計画の中に、やはりこの里親の関係ですとか特別養子縁組の推進につきましても盛り込んでいただくということで、現在、検討を進めていただいているところでございます。

 厚生労働省といたしましても、都道府県におけるこの計画策定の進捗を把握をしながら、必要な支援を検討しながら、施策を推進していきたいというふうに思っております。

藤野委員 このビジョンについては現場からいろいろな意見がありまして、数値目標を掲げていますから、非常に高い数値目標、それとの関係でいろいろな意見があるのは認識しておりますけれども、やはり、こうした方向性ということで国が努力をしていくというのは大切なことだと思っております。

 先日、元家裁調査官の方からお話を聞く機会がありました。この方は、長年にわたって、少年事件、家事事件、そして特別養子縁組にも取り組んできた経験をお持ちの方でありました。その方も、やはり、特別養子縁組は大事なんだけれども、全体の政府としての構えが大事だ、全体としての手だてが大事だというふうに繰り返されておりました。

 特に印象に残ったのは、一人一人の子供の成長、発達、そして自立の段階に合わせた処遇になっているのか、そうした段階に合わせた意見表明の権利が与えられているのか、こういうことを指摘されていたのが非常に印象的でありました。

 その点でちょっと幾つか聞きたいんですが、先ほど言ったように、現状では、児童養護施設などの施設内処遇というのが、内処遇と言うと語弊がありますが、施設の処遇が八割ということ、圧倒的なんですが、今、それの児童養護施設について小規模化、高機能化というふうに答弁をいただいたんですけれども、この現場の方が言われているのは、小規模化は大事だけれども、今の大規模な施設が持っている問題を、小さくしても、それは集約されるだけで、本当の意味で子供一人一人の成長、発達、自立の段階に合った処遇になるのかというのはイコールじゃないんじゃないかというふうにも言われております。

 厚労省にまず理念を確認したいんですけれども、今おっしゃられた小規模化云々というのは、やはり一人一人の個別的な処遇を行うためにそういうことをやるんだということでいいわけですね。

藤原政府参考人 お答え申し上げます。

 委員御指摘いただきましたように、できる限り家庭的な環境で、小規模かつ地域分散化された施設にしていくということで施策を進めているところでございますが、やはり、小規模化かつ地域分散化ということをいたしますことによりまして、一般家庭に近い生活体験を持ちやすいということ、それから、子供の生活に目が届きやすく、個別の状況に合わせた対応をとりやすいということ、あるいは、生活の中で子供たちに家事や身の回りの暮らし方を教えることができるといったこと、そして、地域の分散化ということだと思いますけれども、地域住民との密接な関係を維持しながら家庭的な暮らしができる、こういった意義があるんだろうというふうに思っております。

 ただ、ただ小さくすればいいというものではないというふうな御指摘もごもっともでございますので、先ほど申し上げました社会的養育推進計画の中で、この児童養護施設の小規模化あるいは地域分散化の内容についても計画を盛り込んでいただくということにしておりますし、今年度の予算におきましても、小規模化する場合に常勤職員を一名加配ができるような、そういう予算も確保させていただいているところでございますので、財政的な支援も含めましてしっかり取り組んでいきたいというふうに思っております。

藤野委員 しっかりやっていただきたいと思うんですが、やはり現場ではなかなか苦労している。その苦労の一つとして、入り口の問題を指摘されております。

 といいますのは、例えば虐待などで子供が一時保護された。その後、ではこの子をどうするのかということで、児童養護施設などに入所してもらうのか、あるいはやはり一旦家庭に戻ってもらうのかということを判断する、こういうふうになっていくと思うんですが、その際、児童相談所ではいろいろな検査とか調査をやられるというふうに聞いているんですけれども、一般的なあれで結構なんですが、大体どのようなことをやられるんでしょうか。

藤原政府参考人 お答え申し上げます。

 一時保護をした児童の施設入所措置や里親委託措置への変更などを行っていくことになるわけでございますけれども、まずは、一時保護した後に、行動診断といいまして、一時保護施設の中での生活、行動をよく職員が見て、生活の場におけるやりとりをするというのが一つあります。それから、児童心理司の面接ということでカウンセリングをする。そして、必要に応じてだと思いますけれども、医師の診断。あるいは、加害している保護者についても、その間、状況によりますけれども、面会をして状況をヒアリングするといったこともまずなされるわけでございます。

 そういった子供の状況を踏まえまして、児童相談所における援助方針会議、これは児童相談所の運営指針に規定がございますけれども、援助方針会議を開催をいたしまして、調査や社会診断、心理診断、医学診断といった判定等の結果に基づきまして、子供の最善の利益を確保する観点から、その後どういうふうに支援をしていくのかということを、援助の方針を作成して決定するというふうなことになっております。

 この援助方針会議については、当然のことでございますけれども、児童相談所の担当の児童福祉司や心理司、場合によってはドクター、医師でございますし、そして所長若しくはスーパーバイザーが同席をして、これもケースによりますけれども、一時保護所の職員が行動を見た場面での進言をするという意味もありますので、一時保護所の職員、こういった方々で構成をされて援助方針会議が開かれるというふうな状況になっております。

藤野委員 そうした手続も経て入所される方も結構いらっしゃるんですが、その入所の大半といいますか、二万五千を超えるのが児童養護施設なんですね。

 児童養護施設というのは、そうしたある意味いろいろ個別的な診断をして、この人はこういう子だなとやった上なんですが、で、最近は小規模化も進んでいるんですが、しかし、まだやはり、例えば五十人以上というところが全国で二百七十件を超えているとか、百人以上を超えているところも二十カ所以上、超えているとか、いろいろな、この人はこういう問題を抱えているねというのを個別に見たにもかかわらず、児童養護施設は、実はゼロ歳から十八歳まで、非常に幅広い年齢層で、性別も問わず、いろいろな問題も問わず、中には障害を抱えている、知的障害とかADHDとか、いろいろなものを抱えている子供たちも、ある意味で、言葉は悪いですけれども、一緒になっているという実態があるわけですね。

 ですから、皆さんも小規模化を進められている、この努力は非常によくわかりますし、かつ、大規模施設でも職員の皆さんは本当に一生懸命されているということも本当にわかった上でなんですけれども、しかし、やはり子供の最善の利益という、個別化という点からいきますと、そうしたちぐはぐさ、入り口が大事だということでいろいろやられているんだけれども、実際には二万五千を超える子供たちが、一緒くたといいますか、入ってしまったら同じになってしまうというのがまだ非常に多く残っているということなんですね。

 この点について、厚労省としては今後どのようにしようとしているんでしょうか。

藤原政府参考人 お答え申し上げます。

 委員先ほど御指摘いただきましたとおり、入所されているお子さんの状況もかなり難しいお子さんがふえているという状況もございまして、例えば障害を有する子供の数を五年ごとに調査をしている入所児童等調査というものがございますけれども、それで見ましても、年々、障害等を有する子供の数が増加をしており、現在では、児童養護施設における障害を持ったお子さんの割合が約三割というふうになっているところでございます。

 こういったことからも、施設の人員配置の充実を図るとともに、障害を有する場合など、心理的なケアが必要な子供ですとか医療的なケアが必要なお子さんに対する専門的なケアを実施をする必要性が生じる場合が多々ございます。こういった場合に、心理療法担当職員や看護師の配置についても進めてきたところでございます。

 今後、児童養護施設につきましては、個々の子供のニーズに応じたきめ細かな支援が可能となるように、先ほど来申し上げているように、小規模化、地域分散化をしっかり進めていくということですけれども、それに加えて、施設の職員の配置も強化をする必要があるということで、小規模化、分散化した場合の常勤職員一名の加配ということについて、今年度の予算で新規で加配を確保したところでございます。

 こういった状況も踏まえまして、厚生労働省といたしましては、障害を有するなど個別的な対応が必要な子供に対してもより適切に対応が可能となるように、引き続き必要な支援の拡充に努めてまいります。

藤野委員 ぜひ、そこを考えていただきたい。

 今、三割というお話がありましたけれども、この三割、二八・五%だと思うんですが、これは平成二十五年、つまり二〇一三年なんですね。ですから、もうそれから五年近くたっております。恐らくこれはまたふえていると思いますし、二〇一三年から虐待事案というのはほぼ倍増しているんですよね。

 ですから、そういう点で、もっともっとこうした点に配慮していただきたい。やはりゼロ歳から十八歳まで同じ施設で、先日、児童養護施設での性的事件の初めての厚労省の調査も出てきましたけれども、私も読ませていただいたら、やはりそうした異性が同じ場所でいるとどうしてもそういう傾向があるんだというふうに厚労省自身も指摘をしておりましたけれども、少年院でさえ男性と女性を分けているもとで、まあ、ちょっと比べられませんが、いずれにしろ、そうした問題を現場としては感じているということはぜひ認識をしていただきたいと思います。

 次に、子供の知る権利についてお聞きしたいと思うんですが、子供から自分の出自に関する情報を求められた、提供を求められた件数というのが、厚労省の調査では、二年間で、児童相談所で十五件、民間あっせん団体で九件あったと認識をしております。これは氷山の一角だというふうに思います。

 大臣にお聞きしたいんですが、みずからの出自を知る権利というのは子供にとってどういう意味を持つのか、そして、これはやはり特別養子縁組成立後も重要なのではないかと思うんですが、いかがでしょうか。

山下国務大臣 御指摘のいわゆる出自を知る権利、これも非常に重要なものであると考えております。

 また、特別養子縁組によって養子となった者において、みずからの実親が誰であるかなどの事情を知ることは、みずからのアイデンティティーの確立等の観点から重要な意味を有するものであると考えております。

藤野委員 元家裁調査官の方の話では、その方の経験ですけれども、少年事件でも特に難しいケースというのは、そうした特別養子縁組でみずからの出自がわからないということが関係していたケースもあるというお話をお聞きしまして、やはりこれは非常に深刻であり、難しい問題だなと思います。

 これは、やはり親の側のプライバシーの問題もあると思うんですね。意に沿わない強制性交等によってそういう状態になってしまったというケースもあるでしょうし、あるいは何らかの病気や犯罪が関係しているケースもあります。ですから、これは確かに難しい問題なんですが、しかし、今回、特別養子縁組制度を広げるわけですね、そういう意味では。広げることに伴ってそうしたケースもやはりふえざるを得ないとなってきますと、やはり当然、これに対して対応していく必要があると思います。

 厚労省にお聞きしたいんですが、こうしたことにどういう手当てを考えていらっしゃるか。もし今あれば、教えてください。法務省か。

小野瀬政府参考人 お答えいたします。

 養子となった者がみずからの出自を知ることができる手段でございますけれども、一つは、戸籍の閲覧というものがございます。これは現行法のもとでもそうでございますが、改正法の後もここは変わりませんが、特別養子縁組の成立の審判が確定しまして、その届出がされますと、養子は、実親の戸籍から除籍されまして、養親の戸籍に入籍されます。その際に、養子の続き柄は、例えば長男又は長女のように実子と同様の記載がされることになりますが、養子の身分事項欄には民法八百十七条の二による裁判確定日といったような事項が記載されますために、当該養子の御自身が特別養子であることを知る手がかりが残されているものでございます。

 そして、その養子は、実親の戸籍から除籍された後も、その除籍がされたときの実親の戸籍を閲覧することができますことから、実親の氏名等を知ることができることとされております。

 なお、そのほかにも、特別養子縁組につきましては、これは家庭裁判所の審判で成立するものでございますので、家庭裁判所の記録の閲覧、謄写等の申立てといったような方法でも実親の氏名等を知ることができるというものでございます。

藤野委員 これは大変難しい問題でありますので、運用に伴って、ぜひいろいろ工夫をしていっていただきたいというふうに思っております。

 次に、これも現場からお聞きしますと、児童相談所に弁護士の方が常勤又は非常勤でいると大変大きな役割を果たしているというふうにお聞きをしております。

 ちょっと時間の関係でこちらで言わせていただきますけれども、今、二百十一カ所の児童相談所のうち、常勤職員として弁護士が配置されているのは七カ所で九人、和歌山県、福岡県、新潟市は一カ所で三人、名古屋市は三カ所で三人、そして福岡市というふうに聞いております。

 これについて、メリットはどういうものがあるというふうに、厚労省、お聞きしておりますか。

藤原政府参考人 お答え申し上げます。

 児童相談所におきましては、例えば親権停止の申立てですとか、裁判所とのやりとりを行うような業務も多々ございます。また、そういうふうな純粋な法律的な業務でなくても、例えば親の意に反して入所の措置をしなければいけないようなケース、そういったときに、制度がこういうふうに、法律がこういうふうになっているから、あなたはお子さんと別れて、子供は入所させるんですよというふうなことを法律に基づいて説得をするというふうな、そういうふうな場面もございます。こういった場面で、弁護士を配置いただいて、法的な知見を生かして業務に支援をいただいているというような現状がございます。

 今回の改正法の中では、もともと弁護士については配置又はこれに準ずる措置というふうに規定をしておりましたけれども、今回これに、日常的に法的な助言指導を受けられるような体制を講じるというふうに規定を追加をいたしまして、弁護士さんが非常勤でたまに来るというふうなことではなく、日常的に必要なときに助言指導を受けられるような、そういう体制を講じなさいというふうな規定を設けているところでございまして、これによりまして、弁護士の配置を更に進めていきたいというふうに考えております。

藤野委員 大臣にもお聞きしたいんですが、やはりこれは非常に大きな役割を持っておりまして、法務省としてもその認識をお持ちか。そうであれば、やはり法務省としても何らかの努力ができるのではないかと思うんですが、いかがでしょうか。

山下国務大臣 児童相談所において常時弁護士における指導又は助言を得ることというのは非常に重要だというふうに考えておりまして、これは、ことし三月の関係閣僚会議において、「児童虐待防止対策の抜本的強化について」の決定の中でも触れられているところでございます。

 この特別養子制度の改正案に関しましては、例えば、本法律案においては、特別養子制度の利用を促進するため、手続を二段階に分けて、第一段階の特別養子適格の確認の審判手続においては、児童相談所長による申立てや手続参加を認めることとしております。そして、その手続において、児童相談所に法律の専門家である弁護士の職員が配置されることにより、特別養子適格の確認の審判手続における児童相談所長の権限行使が適切に行われ、手続を円滑に進めることができるものと考えられます。

 こういったこともございまして、児童相談所に弁護士職員が配置されることは、特別養子制度の利用促進のためにも重要でありますし、そのほか、児童虐待防止対策の対応のためにおいても重要であると考えております。

藤野委員 そのとおりだというふうに思います。

 これはルポルタージュなんですけれども、大久保真紀さんという方が書かれた「ルポ 児童相談所」というのを大変興味深く読んだんですが、この中に、福岡市のこども総合相談センターの藤林武史所長のインタビューというのも出ておりまして、そこにも今答弁あったようなことが更にリアルに書かれておりまして、こう言っているんですね。

 当初の目的は、迅速な子供の保護、虐待防止という観点で配置しましたが、実際には想定以上の成果がありました。児童福祉司だけでなく、センターで働く職員の子供の権利に関する意識が高まったし、親権への適切な理解も深まったと思いますと。

 おもしろいのは、私や児童相談所職員が、子供の権利を知らず知らずのうちに制限していたことにも気づかされました、子供の意見表明権を保障するとはどういうことかということも、私も含めて職員が学びました、そういうコメントでありまして、大変重要だなというふうに思っております。

 そういう意味で、ぜひ常勤で、先ほど日常的にと言いましたけれども、やるという方向も強めていただきたいというふうに思います。

 そして、もう一点お聞きしたいんですが、予算の問題であります。

 先ほど紹介した社会的養育ビジョンでは、有識者の提言の中には、国による支援として、「国は必要な予算確保に向けて最大限努力し、実現を図る。」という指摘もあります。

 今年度予算では、児童虐待防止対策や社会的養育関係予算全体として、前年度比百五十億円増の千六百九十八億円が計上されているというふうに認識はしております。まあ、ふえてはおります。しかし、やはりまだまだ足りないという声が現場からは出ている。

 厚労省が平成二十八年度、二〇一六年に行った先駆的ケア策定・検証調査事業というのがあります。これはみずほ総研が委託を受けて行った調査。児童養護施設等の小規模化における現状・取組の調査・検討報告書という報告書で、私も読ませていただきました。

 非常に生の声をたくさん紹介されているんですが、この中で、経済的課題というものにつきましても項がありまして、例えば、児童養護施設では、小規模だけでの予算では運営できないとか、あるいは、建設に関する費用の高騰により入札が不調になるとか指摘をされております。あるいは、乳児院につきましては、当時の施設長や理事などが多額の寄附をして建設費を何とか確保したとか、あるいは、補助金なしで全て自己財源で建設したとか、いろいろ苦労が記されております。

 厚労省にお聞きしたいんですが、やはり現場の声としては更に予算の増加が必要ということなんですが、そうした方向で努力すべきじゃないんでしょうか。

藤原政府参考人 お答え申し上げます。

 国際的に見まして、各国の社会的養護の関係予算が、定義が違うので単純に比較することは難しいということでありますけれども、日本の養護に係る予算が低水準にあるというのは事実だというふうに認識しておりまして、先ほど委員が御紹介いただきましたように、私ども、今年度の予算につきましては、里親養育の推進ということを大幅に拡充、それから児童養護施設における小規模かつ地域分散化された体制の充実、そして施設職員のプラス一%の処遇改善などを始めといたしまして、社会的養育関係予算の充実を図りまして、ただいま委員から御紹介いただきましたように、前年度から百五十億円増の千六百九十八億円を確保しているところでございます。

 三月十九日に、私ども、児童虐待防止強化のための児童福祉法の改正案を国会に提出をさせていただきましたけれども、同じ日に、「児童虐待防止対策の抜本的強化について」というものを関係閣僚会議としても決定をいただいております。

 この中では、この法案を国会に提出をすることに加えまして、さまざまな施策を列挙しておりますけれども、二〇二〇年度の予算に向けて更にその具体化を図るというふうなことで取りまとめいただいておりますので、引き続き必要な予算の確保に努めていきたいというふうに考えております。

藤野委員 ぜひお願いしたいと思います。

 一つ紹介したいのは、その「経済的課題」の中で、こういう声もあるんですね。国、県の負担割合が下がり、自己負担の額が大きくなっていると。

 これは、お聞きしますと、そういう制度改正はしていないというふうにお聞きしたんですが、ただ、やはり現場からこういう声は上がっていて、報告書にも載っているわけで、制度の徹底も含めて、しっかりとやっていただきたいというふうに思います。

 今、国際的なこともおっしゃいましたけれども、配付資料の二はそれであります。

 厚労省の二〇一四年度の児童福祉問題調査研究事業における報告書で、この報告書を見ますと、GDPに占める社会的養護の費用、もちろん制度も違いますけれども、政府の調査でも、アメリカやカナダが二・六%に対して、日本は〇・〇二%。デンマークは〇・七五%、ドイツは〇・二三%、それともやはり桁が違っておりまして、やはり、今回、二〇一六年の児福法改正も受けて国を挙げて取り組もうというわけですから、予算の問題は引き続きしっかりと努力していただきたいと思います。

 最後に、大臣にお聞きしたいんですが、今回、特別養子縁組制度ということで、これは実親との親子関係を切るという点でいいますと、やはり普通養子縁組よりも強い。強いわけだけれども、あえてそれをやるということでその制度がつくられて、かつ、今回、それを更にある意味広げようということであります。

 それなりの理由というのは何なのかといいますと、やはり子供の利益だというふうに思うんですね。やはり虐待というのが、虐待を受けたことによって人生が本当に狂わされてしまう、一人一人の子供にとっても大変なことであります。一人一人の子供が本当にかけがえのない、かけがえのない存在だと思うんですね。

 だから、その利益を守るために、今回、特別養子縁組制度という、ただでさえきつい制度を変えようとしているという点でいいますと、今回は、子の最善の利益を優先して、いろいろな制度の趣旨もあるけれども優先して、多くの関係者が立場の違いを超えて努力しようというあらわれの一つだと思うんですね、この法案。ですから、やはり社会全体の覚悟のようなものが私は問われていると思っております。

 そういう意味で、大臣にもぜひその覚悟をちょっと伺いたいと思うんですが、いかがでしょうか。

山下国務大臣 今回の特別養子制度改正でありますが、そもそも特別養子制度は、専ら子供の利益を図るための制度でございます。そして、例えば、現に児童養護施設に入所している児童等に家庭的な養育環境を提供するための選択肢となり得るというところで改正をお願いしているものでございます。

 そしてまた、子供は我が国の宝であることはもう言うまでもございません。そして、そういった特別養子制度を考えざるを得ない子供たちに対して、それも含めて、子供の利益を図るために、やはり我々法務省としてもさまざまな制度において全力を尽くしてまいりたいと考えております。

藤野委員 終わります。ありがとうございました。

葉梨委員長 以上で藤野保史君の質疑は終了いたしました。

 次に、遠山清彦君。

遠山委員 公明党の遠山清彦でございます。

 きょうは厚労省の皆さんにも来ていただいておりまして、民法の一部改正案について質疑をさせていただきたいと思います。

 今回の法改正につきましては、私は個人的に大変深い感慨を持っております。それは、自民党の野田聖子議員と一緒に私は約十年かけて、まあ勉強会を立ち上げたところから起算しておりますが、昨年の四月一日から施行されております養子縁組あっせん法という議員立法、これは私、野田先生と一緒に策定をさせていただいて、国会で、三年前だったと思いますが、二年前ですかね、全会一致で通させていただいて、昨年四月から施行されたということでございます。

 先ほど来ありますとおり、日本の児童福祉政策において最大の問題の一つというのは、要保護児童の多く、圧倒的多くですね、八五%と言われておりますが、この児童の多くが家庭的環境ではなくて施設で養育をされているということでございます。

 もちろん、私もこの要保護児童の養育をされている施設を幾つか回らせていただきましたが、大変立派な施設もございますし、施設の職員も大変日々苦労しながら努力をされているわけでございますけれども、やはり、さまざまな事情によって生みの親、実親が子供に家庭的環境を提供できないといった場合に、もうこれは言わずもがなのことですが、なるべく家庭的な環境が提供されるような状況を政治の責任において整備していくことが大変大事だというふうに考えております。

 その意味で、もちろん今回の法改正は、児相、児童相談所の改革も含まれているわけでございますが、私は、民間のあっせん機関による養子縁組あっせん事業といったものも大変重要な役割を果たしているのではないかというふうに思っております。

 この民間あっせん機関が特別養子縁組制度の中で果たしている役割について、まず、政府はどのように評価しているのか、これは厚労省の見解をお伺いしたいと思います。

藤原政府参考人 お答え申し上げます。

 平成二十八年に改正した児童福祉法におきまして家庭養育優先原則が明記をされ、これに基づいてさまざまな施策を推進しているわけでございますが、養子縁組の民間あっせん機関につきましては、児童相談所とともに養子縁組の利用促進に重要な役割を果たしていただいているというふうに考えております。

 平成二十八年に議員立法によりまして養子縁組あっせん法を制定いただきました。この法律に基づきまして、許可制度の導入など養子縁組あっせん事業の適正な運営の確保、そして民間あっせん機関による適切なあっせんの促進、そして私どもが所管をしております児童相談所との連携の推進、こういったことが、この養子縁組あっせん法ができたことによって一層図られるというふうに考えております。

遠山委員 ありがとうございます。

 今の答弁の中にも一部含まれておりますが、この特別養子縁組制度の活用を拡大していくという上では、児童相談所と民間あっせん機関がいわば車の両輪であるという認識が大事だと考えております。実は、この考え方については、我々がこの議員立法をやっていた当時の厚生労働大臣でありました塩崎先生ともこの認識を共有して、一緒に政府そして議員立法側の法整備を進めた経緯がございます。

 その大事な民間あっせん機関なんですが、残念なことがことしありました。

 ことし三月十九日、大阪市内のNPO法人インターネット赤ちゃんポストという組織が、大阪市によって養子あっせん事業を不許可とされる事案がございました。報道によりますと、このインターネット赤ちゃんポストという名前の団体が不許可になった理由としては、多額の金銭徴収があり、また、NPO法人の代表が株主をしている株式会社と一体で営利事業を行っていることなどが挙げられております。

 この養子縁組あっせん法の立法者の一人である私としても、法律に基づいて、問題のあるこういった事業者については、今後も各自治体において厳格な審査と運用を求めたいと思っております。

 その上で、再び厚労省にお伺いをしますが、ホームページ等で、自治体の許可を受けずに養子縁組あっせんをうたっている、いわば不法な団体、個人があるという指摘がございます。

 この場合、要は、簡単に言うと、大臣、ホームページで養子縁組あっせんを検索したときに、普通はこのあっせん業者というのは自治体からの許可を受けていなければできないわけですが、その許可を受けている自治体を明記せずにホームページだけ出しているということになります。その時点で実は違法なわけでございますが、一般の国民の皆さんは、それは必ずしもわからない。それで、ホームページ上に、どこの自治体の所管かもわからないので、どの自治体もそこを指導監督しないということになってしまうんですね。ですから、結局、言葉が適切かどうかわかりませんが、野放しになってしまう可能性が高いということなんです。

 もし、そういう法的知識がない方が、例えば養子縁組をしたいとか、実親側、養親希望者側、双方いるわけですが、そこのホームページ上の自称あっせん事業者に連絡をとってしまうとトラブルに巻き込まれる可能性があるということで、そうしますと、自治体が許認可権を持っているので、国じゃないんですが、ただ、どの自治体にも許可を受けていないということは、どの自治体も関心を持たないわけで、エアポケットみたいに野放しになる可能性がある。ここは国が対処すべきではないかと私は思っておりますが、これは厚労省、いかがですか。

藤原政府参考人 養子縁組あっせん法の許可を受けずに養子縁組のあっせんを行っている事業者があれば、当然同法に違反をするということとなります。

 厚生労働省といたしましては、具体的な事案を把握した者から例えば連絡があれば、これを受け付け、各自治体と連携をして、事案に関する事業者が養子縁組あっせん法の許可を受けているかどうかを確認し、その上で関係する自治体と連携をしながら適切な対応をとっていきたいというふうに考えております。

遠山委員 わかりました。

 ぜひ、今の御答弁だと、もしそういうインターネット上で養子縁組あっせん、私たちやりますと、許可を得ずにやろうとしている個人とか団体を発見したら、今の御答弁だと厚労省に連絡いただければ対処しますということですが、これは法務省も当然、今回の法律、民事局を中心に関与しているわけですから、そういう情報に接したり情報提供があった場合には適切な対処をしていただきたいということを御要望申し……ああ、じゃ、大臣、御答弁。

山下国務大臣 まず、そういった無許可のあっせんは犯罪でございます。懲役一年以下又は百万円以下の罰金に処するという立派な犯罪でございますので、そうしたものに対しては厳正に対処したいと考えております。

遠山委員 大臣、力強い御答弁をありがとうございます。ぜひお願いします。

 今度は法務省にお伺いをします。

 次の問題は、今の問題とやや隣り合わせの問題とあえて言っておきますが、この養子縁組あっせんの枠外の話なんです。

 可能性としてですよ、大臣、実親と養親希望者側の直接のやりとりが、今はもうIT化が進んでいますので、容易になるわけですね。普通は、大臣、児相を通したり、あるいは、今私が質問で言及した民間のあっせん機関を通して養子縁組の話を進めるのが普通なんですが、仮に、実親で子供を育てられないという人と、私は養子が欲しいという養親希望者が、親族でもないんだけれども、このIT化の時代で、どこかでつながって直接やりとりをする。

 これも、まあレアなケースですけれども、理論上可能性としてあるのは、養親希望者の方が、子供を育てられないと言っている実親に、これは仮定の話ですよ、百万円上げますよと。それで実親側が、それはありがたい、じゃ、うちの子供をぜひ養子でというやりとりを、児相とか民間のあっせん機関も通さずに話をやって、そして必要な書類を整えて、当然その百万円の授受のことは言わずに、家庭裁判所の審判に持ってくる。

 私が聞きたいのは、家裁はそれを見抜くことができますかということなんですね。家庭裁判所で見抜けないとどうなるかといえば、試験養育に行きます。試験養育六カ月、問題なく、その赤ちゃんか、今回の改正では大分上の子供も含まれる可能性はありますが、試験養育期間が無事終わると、実は、その百万円の金銭授受ということがわからなければ、法律上はそのまま特別養子縁組が成立する可能性も否定できないというふうに思っております。

 これは事務方から御答弁いただくことになっていますが、いずれにしても、個人間のやりとりで、今私が申し上げたケースは、大臣御承知のとおり、人身売買に当たる可能性が高い事案ですので、完全にこれはもう犯罪になるわけですが、ただ、IT化がここまで進んで、みんなスマホを持っていて、いろいろな形で出会いがあって、子供を手放したい、養子に出したい実親側と、養子が欲しい養親者側が、個人のやりとりでつながってしまうとこういうことが起こり得るということについて、政府はどういう見解かというのをちょっとお答えいただきたいと思います。

小野瀬政府参考人 お答えいたします。

 特別養子縁組の審理をいたします家庭裁判所におきましては、実親による養子となる者の養育状況ですとか、養親となる者の生活歴、家庭環境、そしてまた養子縁組をする動機、養親となる者と養子となる者との適応可能性等を総合的に考慮した上で、特別養子縁組の成否を判断することになりますけれども、委員御指摘のとおり、その際には六カ月以上の試験養育の結果等についても詳細に検討することとなっております。

 また、一般的に、特別養子縁組の成立の審判の申立ては、児童相談所あるいは民間あっせん団体のあっせんを経ているものが多いと考えられますことから、これらのあっせんを経ておらず、養親となる者が養子となる者を監護するに至った経緯が明らかでない、こういったような事案等につきましては、養子縁組をする動機等について、より慎重に審理、判断がされることになるものと考えられます。

 このように家庭裁判所において適切に審理、判断がされることから、特別養子制度が御指摘のように悪用されるということはないものと考えておりまして、本法律案による改正後も引き続き適切な運用がされることを期待しているものでございます。

遠山委員 ありがとうございます。

 私もそう簡単に悪用できる仕組みになっているとは思いませんが、ただ、いろいろな技術の進歩でいろいろなケースが起こり得るということを念頭に置いて、また裁判所の方にも法務省としても目配りをしていただきまして、しっかりと家庭裁判所における調査、審問、審判、こういったところをしっかり担保してほしいと思います。

 この後は、法務大臣に二問、御質問をさせていただきたいと思います。

 一つは、今回の法改正案の中に、実親の同意に撤回の制限が盛り込まれております。

 この次の質問でも伺うのであれなんですが、実は、実親が子供を養子に出していいですよという同意をして、今はこの制限がありませんので、養親希望者は、養子にしたい子供、なるであろう者を試験養育しながら、どこかの段階で実親がやはり同意を撤回しますと言ったら終わってしまうという不安を抱えながら試験養育するということがあるわけであります。

 恐らくそれを変えるために、同意に二週間の撤回制限というのをかけるということなんですけれども、まず、この同意に撤回制限をつける目的と、それが養子縁組あっせん事業の現場に与える影響についてどうお考えになるか、お話しください。

山下国務大臣 御指摘のとおり、養子縁組の成立について実親の同意が必要であるところ、この同意について、現行法のもとでは、実親は、一旦同意をしても、特別養子縁組の成立の審判が確定するまで撤回することができるものとされております。

 こうした現行法のもとでの取扱いについては、養親となるべき者が、実親による同意がいつ撤回されるかわからないまま、養子となるべき者の試験養育をしなければならないとの問題点が指摘されておるところでございます。

 そこで、本法律案では、養親となるべき者がこのような不安定な状態で試験養育をしなければならない事態を回避する観点から、第一段階の特別養子適格の確認の審判手続において実親が裁判所における審問の期日等でした同意については、同意をした日から二週間が経過した後は撤回することができないこととしたわけでございます。

 他方で、同意の撤回制限により、実親は、その同意後に翻意したときでも特別養子縁組の成立を阻止することができなくなるという重い効果が生じることに照らし、本法律案においては、撤回が制限される同意につきましては、審問期日においてしたものなど、新しい手続法の百六十四条の二第五項に従って行われたものに限っておるわけでございます。

 こうした規律は、実親がそこの同意をする場合には、事前に裁判官等から同意の効果について適切に説明を受け、十分に理解をすることを前提とするものであり、実際にも、実親の同意の真摯性が確保されるよう適切な運用がされるものと考えております。

遠山委員 大臣、今の御答弁にも若干含まれていたんですが、次の私の質問は、ここは、撤回の制限の期間を二週間にしているんですね。この同意を撤回することができる期間、改正案で二週間、これは、実の親の立場に立ちますと親子関係を断絶させるかどうかにかかわる極めて重大な判断でありまして、恐らく、法制審までのいろいろな議論の中でも、熟慮期間を長くとるべきではないかと。

 私の拙い勉強では、フランスの立法例ではそういう期間を二カ月にしているから、二週間じゃなくて二カ月にすべきだという意見も部会等で出たというふうに伺っておりますが、これを二週間にした理由は何なのか、お答えいただければと思います。

山下国務大臣 御指摘のとおり、同意の撤回制限は実親に重大な影響をもたらすものでございます。その上で、この制度におきましては、実親について、熟慮を重ねた上で同意をするとの決断に至ることになるということを確保しております。

 すなわち、同意をするか否かについて決断する期限は特に定められておりません。ですから、同意をする前に、熟慮に熟慮を重ねていただくということをまず考えております。

 その上で、撤回が制限される同意は、実親が裁判所の審問期日においてした同意か、又は家庭裁判所の調査官の調査を経て書面でした同意に限られるという、同意要件にも一定の形式を求めているというところでございます。

 このように、実親には同意をする前に熟慮する機会があり、また、裁判手続において同意の真摯性について慎重に判断がされるということでございまして、その上でなされた同意であるということを前提にしております。

 そして、二週間という期間は家事事件手続における不服申立ての一般的な期間等を考慮して定めたものでございまして、そうしたことから、慎重になされた上での同意ということで、二週間が経過すると撤回することができなくなるものとしたわけでございます。

遠山委員 ありがとうございます。

 もうほとんど持ち時間がございませんので、コメントを一つだけして終わりますが、今の大臣の御答弁の最大のポイントは、そもそも、養子を出すということに同意をしようという実親が、同意をするまでの期間、しっかりと熟慮をして、慎重かつ丁寧な手続で実の親が同意をするということがまず大前提なんですね。その同意をしたけれども、また次の、法律に定められた期間の二週間の間で熟慮をして撤回をしなければ、その後は撤回できないということなんです。

 私が野田聖子先生と議員立法をやるのに国会成立まで約十年かかったわけですが、この間いろいろなヒアリングをしておりましたら、言葉は悪いですけれども、ぱぱっと実親の同意をとっているケースというのも大分、当時聞きました。実の親なんだけれども子供を養子に出すというのは、大体、複雑な事情とか苦しい事情とか人に言えない事情とかを抱えているケースも多くありまして、だから、同意するときにも、その場の感情の勢いだったりとか、周りからわあっと説得されてぱっとやっちゃったりとかということが現場ではあるということを結構聞きました。

 ですから、ぜひ、大臣の御答弁にあったように、同意そのものが出るプロセス自体が非常に懇切丁寧、慎重であるということをなるべく現場で担保できるようなことをしていただきたいということを要望申し上げまして、きょうの私の質疑は終わりたいと思います。

 ありがとうございました。

葉梨委員長 以上で遠山清彦君の質疑は終了いたしました。

 次に、石原宏高君。

石原(宏)委員 自由民主党の石原宏高でございます。

 本日は、民法等の一部を改正する法律案、特別養子縁組の制度の見直しに関して質問をさせていただきます。

 少し前ですが、「はじめまして、愛しています。」というタイトルの、俳優の江口洋介さんと尾野真千子さんが主演するドラマで、特別養子縁組を扱うドラマがありました。特別養子縁組制度を扱っているドラマであり、珍しくて見ていたんですけれども、養子として受け入れる予定の男の子との悪戦苦闘、やがて心のきずなが生まれる内容は、本当に心の温まるものでありました。

 特に、男の子が居間に冷蔵庫の中身を全部ばらまいてしまうシーン。ジュースなんかは、ジュースの瓶から全部ジュースをばらまいてしまう、また、マヨネーズも全部ばらまいてしまうシーンがありまして、テレビに出てくる児童相談所の方が、それは養親が男の子を受け入れてくれるのか、男の子が試す行動であるという説明をするシーンがありまして、大変迫力があって、驚きを感じながらも、そういうことがあるのかなというふうに関心を持って見ておりました。

 身寄りのないお子さん、親の貧困や暴力によって実親と住むことができない子供がいる現状、子供のいない家庭等が特別養子として受け入れてくださることは、私は個人的にはすばらしいことではないかというふうに思います。

 こういう国会の場で余り自分の家庭のことを話すのははばかられるんですけれども、実は、私の父方の祖父は、祖母と結婚する前に違う方と結婚していて、男子を授かっておりました。ただ、残念なことに最初の奥様と祖父は若くして死別したものですから、その男の子は親戚の養子として育てられることになりました。でも、その方とは、名前を挙げるのはどうかはありますが、小川のおじちゃんと我々は言って、祖父の法事など、あらゆる機会でお会いして、仲のいい親類でありました。

 また、ちょっとお恥ずかしい話ですが、私が小学校の一年生のころ、私の父に、おまえは裕次郎の養子になってやれと言われて泣きじゃくったという話を、私が少し物心のついたころから聞かされたことがありました。

 そんな経験から、私は養子については余り抵抗感がなくて、むしろ、なぜ日本では、戦前は親戚が養子に受け入れることが一般的であったのに、今は少し違うのかなということに少し疑問を持っているのが事実でありました。

 少し前置きが長くなってしまいましたけれども、質問に入らせていただきたいと思います。

 まず、法務省にお伺いします。繰り返しになってしまうかもしれませんが、この特別養子制度の見直しの背景と意義についてお聞かせください。

小野瀬政府参考人 お答えいたします。

 特別養子制度でございますが、専ら子供の利益を図るための制度でありまして、現に児童養護施設に入所している児童等に家庭的な養育環境を提供するための選択肢となり得るものでございます。

 また、近時の報告によりますと、例えば虐待を受けたといったような理由によって児童養護施設に入所している児童、そういった中には、特別養子縁組によって家庭と同様の養育環境において継続的に養育を受けられる可能性がある者もいるとの指摘がございます。しかしながら、特別養子縁組の成立件数は年間五百件程度にとどまっております。

 この点につきまして、児童相談所それから民間あっせん団体を対象としました調査の結果によりますと、選択肢として特別養子縁組を検討すべき事案であるのに、養子となる者の年齢の上限などの法律上の要件を満たさないこと等が原因で特別養子制度を利用することができなかった事案が、二年間で二百九十八件あったという報告がございます。

 また、児童福祉の現場からは、特別養子縁組の成立に必要な実親の同意が縁組成立の審判が確定するまでいつでも撤回することができるとされておりますために、養親となる者は、あらかじめ実親が同意している場合であっても、撤回されることを恐れて申立てをちゅうちょすることがあるとの指摘もされております。

 また、さらに、特別養子縁組の成立の審判手続が養親となる者の申立てによることとされておりますことから、例えば児童虐待等をした実親が特別養子縁組に同意していない場合など、養親となる者が審判手続において実親と対峙して、実親による養育が著しく不適当であること等を主張、立証していかなければならない。そういうことのために養親となる者がやはり申立てをちゅうちょすることがあるとの指摘がされております。

 そこで、今回の改正案でございますけれども、特別養子制度の利用を促進して、家庭的な環境のもとで養育をすることが適切な子供がその必要に応じて制度を利用することができるようにするために、養子となる者の年齢の原則的な上限を引き上げるとともに、その審判の手続の合理化をするというものでございます。

石原(宏)委員 ちょっと重なってしまうかもしれないんですけれども、今、最後に御説明がありました、特別養子となる手続が今度、二段階の手続になって、第一弾は特別養子適格の確認の審判、第二弾は特別養子縁組の成立の審判の二段階に分けられておりますけれども、ちょっとかぶってしまいますけれども、この二段階に分けた理由を御説明ください。

小野瀬政府参考人 お答えいたします。

 特別養子縁組は、実親による子の監護が著しく困難又は不適当であることその他特別の事情がある場合に成立させることができるものでございますが、現行法のもとでは、この要件に該当するか否かは、家庭裁判所の最終的な審判において初めて明らかにされることになります。このために、仮に養親となる者の試験養育が順調に進んだとしましても、最後に家庭裁判所が特別の事情の存在を否定して縁組の成立を認めないという事態が起こり得るわけでございます。

 また、現行法のもとでは、養親となる者が実親による子の養育状況について事実上立証しなければならない、また、手続において実親と対峙しなければいけないという場合もございます。また、さらに、養親となる者の本籍ですとか住所が実親に知られてしまうという問題がございます。そのため、例えば児童虐待等があったような場合に、養親となる者の負担というものが小さくないわけでございます。

 そこで、この法律案では、この問題に対応するために、御指摘のとおり、成立手続を二段階に分けておりまして、まず第一段階の手続においては、実親に関する要件、すなわち実親による子の監護が著しく困難又は不適当であるか、あるいは実親の同意があるかといったような要件について審理をして、第二段階の手続については、専ら養親に関する要件、すなわち養親の監護能力ですとか、あるいは養親子の適合性を審理することとしております。

 こうすることによりまして、養親となる者は、第一段階の審判によって子供が特別養子の対象となることが確定した後に、安心して試験養育などの手続を進めることができるようになります。

 また、この第一段階の手続につきましては、児童相談所長にも申立て権を付与することとしておりますし、また、養親となる者が申立人になる場合でも、児童相談所長が手続に参加することができることとしています。

 また、さらに、第二段階の手続では実親を関与させないこととしておりますので、こういったことから、養親が実親と対峙しなければならなくなる事態を回避して、あるいはまた、養親となる者の本籍や住所が実親に知られないようにするということが可能となります。

 このようなことから、手続を二段階に分けているものでございます。

石原(宏)委員 次に、先ほど質疑の中で、今回の制度の見直しで特別養子となられる養子候補者の上限年齢が六歳未満から十五歳未満に引き上げられること等によって、どのぐらい、年間五百件というのがどのぐらいふえるかという質問がありましたけれども、その推定は法務省の方はしていないということだったんです。

 ちょっと同じような質問になってしまうかもしれませんが、厚労省にお聞きしたいと思うんですけれども、直近の数値で、里親、また児童養護施設、乳児院、児童心理治療施設、児童自立支援施設、母子生活支援施設、ファミリーホーム、自立援助ホーム等に、何歳ごとにというのを統計をとられていると思うんですけれども、今回の法の改正によって特別養子になることができる方が六歳未満から十五歳未満になりますので、ゼロ歳から十四歳の子供が何人ぐらいいるのか。

 先ほど、児童養護施設の人数というのは二万五千という話がありましたが、平成二十五年の数字を国会の調査室のを見ると二万九千人になっていて、もしかすると十四歳未満で計算されているのかなと思ったんですが、どれだけおられるのか。

 何を言いたいかというと、ゼロ―十四歳の方が対象になってくるので、この中からどのぐらいなる可能性があるか。多分、それは法務省と同じように厚生労働省も推定はされていないと思うんですけれども、ちょっとその規模感を知るために教えていただけますでしょうか。

藤原政府参考人 お答え申し上げます。

 ゼロ歳から十四歳の子供で、里親に委託し、あるいは施設等に入所している子供の数でございますけれども、年齢別の状況が、五年ごとの調査で把握をしているものですから、直近のデータが平成二十五年二月一日現在の調査によるものとなります。

 この調査結果によりますと、ゼロから十四歳の子供の数、合計でいいますと三万六千三百四十二人。このうち、里親に委託している子供が三千三百八十八人。以下、施設に入所している子供の人数になりますが、児童養護施設では二万千八百八十五人、乳児院三千百四十七人、児童心理治療施設九百十五人、児童自立支援施設九百五十六人、母子生活支援施設五千四百六十八人、ファミリーホーム五百八十三人というふうになっておりまして、合計三万六千三百四十人という人数になっております。

 なお、本調査は五年に一回実施をしておりまして、平成三十年二月一日現在の調査がちょうど今現在集計中というところでございます。

石原(宏)委員 ちょっと順番を変えますけれども、法務省にお聞きしますけれども、私の事前のレクでは問い十なんですが、今回、六歳未満から十五歳未満になるんですけれども、ケースによっては十八歳未満まで特別養子になる可能性があるので、十八歳未満で、現行制度の中で年間どのぐらいの方が普通養子縁組となっているのか、数字がわかれば教えていただけますでしょうか。

小野瀬政府参考人 お答えいたします。

 十八歳未満で普通養子となった人数については、統計はございません。

 ただ、未成年者で裁判所の許可を得て普通養子となった人数は、最高裁判所の調査によりますと、平成二十八年四月から二十九年三月までの一年間で四百八十人ということでございます。

石原(宏)委員 特別養子で五百人前後で、それで普通養子縁組でも四百八十名という、まあ、千名ぐらいの方が、年間、未成年でなっているということではないかと思います。ちょっと規模感で、済みません、確認をしたかったので質問をさせていただきました。

 それで、法務省にお聞きしたいんですけれども、今回の制度で、実親の同意がなくても、実親が子供を育てる資力がなかったり、また、暴力の危険性があった場合、虐待の可能性があった場合、特別養子適格の確認の審判が認められて、さらには、その暴力を振るっているような実親の抗告があってもその特別養子適格が認められ続ける可能性、特に、虐待に遭っている子供なんかは、これが実親からの抗告があっても認められ続けて、特別養子縁組がかなう必要性があるんじゃないかと私は思うものですから、そういう可能性があるということでいいのか、ちょっとお答えいただけますでしょうか。

小野瀬政府参考人 お答えいたします。

 特別養子適格の確認の審判がされるためには原則として実親の同意が必要でございますが、例外的に、御指摘のとおりの虐待、悪意の遺棄その他養子となる者の利益を著しく害する事由がある場合等には、実親の同意がなくてもその審判をすることができるとなっております。

 実親が子供を育てる資力がないケースにおきましても、そういった、資力がなくなるに至った理由ですとか監護状況に照らして、悪意の遺棄等に該当すると認められる場合には、実親の同意がなくても特別養子縁組の成立が認められるということがございますし、また、暴力の危険性があるケースにおきましても、その状況に照らして、虐待等に該当すると認められる場合には、同様に特別養子縁組の成立が認められます。

 また、以上の点は、実親によって抗告がされた場合であっても同様でございます。

石原(宏)委員 特別養子となる子供が十五歳以上の場合も、特例で特別養子縁組が認められるケースがあります。その場合は本人の同意を求めることになりますけれども、特別養子縁組の場合は、実親との関係がなくなり、相続権もなくなります。

 そのような点を、例えば、特別なケースで十五歳以上の子供の場合、同意を得なければいけませんから、相続権がなくなるといったような事実、そういう法的な事実というのをちゃんと、その同意を求める十五歳のお子さんに対して同意を求める際に確認をするのか。

 また、ケースによっては、普通養子縁組であれば、両方の、実親と養親の両方から相続権を持つことができますから、そっちの方が将来的な相続権みたいなことがあると有利になることもあるかもしれないので、そういう十五歳以上のお子さんの同意を求めるケースの場合、ちゃんとそういう法的な事実というものを説明するのか、説明をして同意を求めるのか。また、その説明をして同意を求める方は裁判所のどういう立場の方がやられるのか。教えていただきたいと思います。

小野瀬政府参考人 お答えいたします。

 御指摘のとおり、特別養子縁組が成立いたしますと、実親子関係が終了して、相続権を失うなどの重大な効果が生じるわけでございます。

 このことからいたしますと、家庭裁判所は、十五歳に達した養子となる者が特別養子縁組の成立について同意をしている場合には、その同意が普通養子縁組との違いや相続を含む親族関係の終了といった特別養子縁組の法的効果を的確に理解した上でされていることを確認する必要があるものと考えられます。

 そのため、事案ごとの判断にはなりますものの、家庭裁判所、具体的には例えば家庭裁判所の調査官などが想定されるわけでございますが、同意の有無を確認する過程で、普通養子縁組との違いあるいは相続を含む親族関係の終了といった特別養子縁組の法的効果を説明することになるものと考えられます。

石原(宏)委員 法務委員会に来まして、串田委員から離婚された親子の親権の話がずっと一般質疑の中でも話されている中で、それをちょっと考えながら、今回の件でちょっと気になったことがあったものですから、ちょっと御確認をさせていただきたいんです。

 夫婦が離婚をして、その後、例えば奥様が再婚し、新しい夫とお子さんが特別養子縁組を結ぶ場合、まず、離婚した夫の同意が必要ではないかと思うんですが、その同意が必要なのか。

 また、もし離婚した夫の方が同意をした場合、例えば養育の支払いの義務とかはなくなるのか。また、例えば、串田委員なんかは、合意をすれば両親の親権みたいな話があるわけですけれども、その親権というのはなくなってしまうのか。また、面会権みたいなものも、そういう権利もなくなってしまうのかどうか。

 ちょっと気になったものですから、教えていただければと思います。

小野瀬政府参考人 お答えいたします。

 実父母が離婚しまして、例えば実母が再婚をした場合でありましても、子供とその実母の再婚相手が特別養子縁組をするためには、原則として実父、実の父の同意は必要でございます。これは、あくまでも離婚しても父であることには変わりはございませんので、やはり実父の同意は必要でございます。

 他方で、養育費の支払い義務ですとか、あるいは子供との面会交流につきましては、これは法的な親子関係を前提とするものでございます。したがいまして、子供と実母の再婚相手との間の特別養子縁組が成立しますと、その実父との法的な親子関係が終了いたします。したがいまして、このように親子関係が終了いたしますと、実父は養育費の支払い義務を負うことはなくなります。また、子供との面会交流を求めるということはできなくなるというものでございます。

石原(宏)委員 ちょっとその点、面会交流の約束をしたのに会わせないようなケースがある中で、もしかすると、こういう形で十五歳とか十八歳となってくると、法的な知識があると別れた奥さんがこういうことをやってくることもあるのかなと思って、今までのこの法務委員会の議論の中でちょっと気になったんで、その点、確認をさせていただきました。

 まだ時間があるんですけれども、大分質問が消化してきてしまっているんで、ゆっくりとやりたいと思います。

 この衆議院の調査局の資料の中にも載っていなかったんですが、インターネットなんかを見ていると、養親となる方々、夫婦ですね、受け入れることは配偶者も認めなければいけないと思いますので、インターネットなんかを見ていると、所得の制限はない、所得の下限はないと。私なんかは、銀行員なものですから、余り低所得の方が果たして養親になれるのかなとちょっと疑問に思ってしまうことがあるんですけれども、そもそも、所得の下限みたいなものが養親となる方々にあるのかないのか、そして、もしないのであれば、ではどのような観点から養親となることを家庭裁判所は認めるのか、説明のできる範囲で教えていただければと思います。

小野瀬政府参考人 お答えいたします。

 民法におきまして、特別養子縁組における養親となる者について、所得の下限を定めるような規定はございません。

 もっとも、特別養子縁組は養子となる者の養育のための制度でございますので、養親となる者が適切な養育能力を有していない場合には、これは縁組を成立させることはできないわけでございます。したがいまして、養親となる者の養育能力、こういった観点から、この縁組を成立させるかどうか、こういった判断をする際には養親となる者の経済状況も考慮されることとなります。

 ただ、具体的にどの程度の経済状況というものが必要なのかどうかといいますのは、やはり個別の具体的なケースに応じて、本当にその養子を今後養親となる者が育てていけるかどうか、そういった個別の事案に応じて裁判所の方で適切に判断していくということになろうかと思います。

石原(宏)委員 今のことに関連して、今度法改正がなされると、先ほどもちょっと御質問させていただきましたけれども、十五歳以上の子供もケースによっては特別養子になることができるわけですけれども、そのときには、先ほども質問させていただきましたけれども、十五歳以上のお子さんに対しては同意を必要としているんです。

 先ほどは、普通養子と特別養子の違いなんか、また相続権の話なんかということをちゃんと調査官が説明をするという御回答をいただいたんですけれども、ちょっと適切かどうかわからないんですが、十五歳以上で十八歳未満の同意を得なければいけないお子さんに、養親の、この養親は所得は大体このぐらいですよとか、この人は持家を持っていますよとか、そういう情報も、十五歳以上十八歳未満のお子さんで判断を、同意をするということになれば、何か判断材料としては、私は個人的には、知ってもいいんじゃないかなと。ある程度意識も持っているので、いいんじゃないかなと思うんですが、こういう養親の所得とか持家の状況等、そういう経済的な状況について、十五歳以上十八歳未満のケースの場合、先ほど言った家庭裁判所の調査官が説明をされるんでしょうか。

小野瀬政府参考人 お答えいたします。

 御指摘のとおり、養子となる者が十五歳に達している場合には、特別養子縁組の成立には養子となる者の同意が必要でございます。また、この同意といいますものは、やはり真摯な同意であるということは必要ではございますが、必ずしも養親の経済状況等を知っていなければこの同意ができないというようなことではない、知っている必要はないというふうには考えられます。

 したがいまして、家庭裁判所において、養子となる者に対して養親となる者の経済状況を詳細に伝える必要はないものと考えております。

 ただ、例えばでございますけれども、養子となる者が養親の経済状況等を誤認しているというような場合には、事実関係の誤認がないように必要な事実を伝えていくということによって、先ほど申し上げました真摯な同意であるかどうかということを確認していくことになるものと考えられます。

石原(宏)委員 済みません、小野瀬局長。もし、十五歳以上のお子さんがそういうことを調査官に教えてくださいと言ったら、それは教えなければいけないんでしょうか。

小野瀬政府参考人 お答えいたします。

 なかなか、これはケース・バイ・ケースで、どこまで詳細かということになろうかと思います。

 例えば、やはり家庭裁判所の調査官において、どこまで、今申し上げました、養子となる者、子供が例えば誤認しているのかどうかとか、あるいは、どこまでの説明をすればその同意がやはり真摯なものというふうに言えるかどうか、そういったことを個別具体的なケースに応じて適切に判断していくことになろうかと思います。

石原(宏)委員 ありがとうございます。

 時間も大分たってきましたので、最後に、特別なケースの場合は特別養子縁組の年齢上限を十八歳未満まで可能にしておりますけれども、なぜ二十歳未満とか、そういうことではないのか、十八歳未満というふうになったのか、この理由を教えていただきたいと思います。

小野瀬政府参考人 お答えいたします。

 この法律案におきましては、特別養子縁組が成立するまでに十八歳に達した者は養子となることができないこととしております。

 これは、特別養子制度が専ら未成年を家庭的な環境において養育するための制度であるということを一つの理由とするものでございまして、未成年者につきましては、令和四年四月一日には成年年齢が十八歳に引き下げられるということから、先ほど申し上げました特別養子制度の趣旨に照らして、十八歳に達した者は養子となることができないということにするものでございます。

石原(宏)委員 ちょうどあと残り四十五秒になりました。

 私、個人的に思うのは、養子というのはどんどんどんどん世の中が受け入れていった方が、世の中にとってはすごくいいんじゃないかと思うんです。ただ、やはり先ほどから数字で児童施設にいるお子さんが多いという中で、ぜひ、法務省、厚生労働省、いろいろな団体も使っての社会的に啓蒙活動をしていただいて、本当に養子というのが当たり前だというような世の中にしていっていただきたいなと思います。

 私は、先ほどお話をしたように、祖父の最初のお子さんのケースとか、おじさんの養子になれと言われたようなことがあったんで抵抗感がないんですが、ぜひ、多くの方々が抵抗感のないような社会にしていただければと思います。

 そのことだけ申し上げまして、私の質問を終わります。ありがとうございました。

葉梨委員長 以上で石原宏高君の質疑は終了いたしました。

 次に、黒岩宇洋君。

黒岩委員 立憲民主党・無所属フォーラムの黒岩宇洋でございます。

 法務省に確認でお聞きしますけれども、今回の法改正の目的、これが、児童養護施設に入所中の児童等に家庭的な養育環境を提供するため、特別養子縁組の成立要件を緩和すること等により、制度の利用を促進すると。この目的のために、今回、養子候補者の上限年齢の引上げを行う、こういう法改正なんですが、この引上げを行うことの立法事実といいますか、大きな要因というものを一つ挙げていただけますでしょうか。

小野瀬政府参考人 お答えいたします。

 近時の報告によりますと、児童養護施設に入所するなど社会的な養護を必要としている児童、平成三十年三月末の時点で約四万五千人に上っておりますけれども、その中には、特別養子縁組によって家庭と同様の養育環境において継続的に養育を受けられる可能性のある者もいるとの指摘がございますが、この特別養子縁組の成立件数は、年間五百件程度にとどまっております。

 また、児童相談所あるいは民間あっせん団体を対象とした厚生労働省の調査結果によりますと、選択肢として特別養子縁組を検討すべき事案であるのに、法律上の要件を満たさないこと等が原因で特別養子制度を利用することができなかった事案があると。その中で、平成二十六年、二十七年の二年間でございますが、年齢の上限が六歳であることを理由としたものが四十六件だったというふうな報告がございます。

 このように、六歳以上の子であったとしましても、特別養子縁組を必要とする者が一定程度存在するものと考えられますことから、この法律案では、養子となる者の年齢の上限を引き上げて、家庭的な環境のもとで養育を必要としている子供に対して、その機会を拡大することとしているものでございます。

黒岩委員 ありがとうございます。

 これは、きょう何度も出てきます厚労省のアンケート調査、これが数字的な大きな要因になっているということになっているわけですけれども、私、やはり数字の読み方はしっかりしておかなきゃいけないと。いつも立法事実については、各法案についても、この点については私は指摘し続けておるんですけれども。

 この数字だけを単純に読むと、年間約五百件と言いますけれども、直近だと六百件、特別養子縁組がある。平成二十六年、二十七年で、上限年齢を理由とするものが四十六件ということは、これを半分にすると二十三件です。

 そうなると、一年間の特別養子縁組の総数からすると四%弱なんですよね。先ほどから、これを十五歳に引き上げることによってどれほど養子縁組の数がふえるのか、これはケース・バイ・ケースと言っていますけれども、ただ、この唯一のデータからすると四%弱なんですよ。これを多いと見るか少ないと見るかというのは価値の判断ですけれども、私は、さほど多いとは思いません。

 逆に、実父母の同意を得られない、ハードルが高いという件数だと二百五件になりますので、これはむしろ、これだけ見る限りだったら、じゃ、実父母の同意を、撤廃しろとは言いませんが、何か要件を緩和するとか、同意を得やすい実務上の措置をとるとか、こういった方が、私は、立法事実からの改正手法としてはある意味合理的じゃないかと思うんですが、この点、法務省としていかがでしょうか。

    〔委員長退席、石原(宏)委員長代理着席〕

小野瀬政府参考人 お答えいたします。

 今委員御指摘のとおりの調査結果からいたしますと、やはり、特別養子縁組の利用を促進するためには、実親の同意についての何らかの手当てというものも必要だと思われます。

 ただ、この実親の同意要件につきましては、やはり、この特別養子縁組が、実親との間の親子関係が終了するという、これは非常に重大な効果があるものでございますので、実親の同意要件のそのものの緩和というものにつきましては、なかなか慎重な検討を要するものと考えられたところでございます。

 ただ、手続的な問題として、審判の確定までいつまでも撤回が可能といった点、そういった点につきましてはやはり問題であるとの指摘がいろいろと現場からも出ているものでございますので、その点についてこの法律案では手当てをしたというものでございます。

黒岩委員 私も決して、先ほど申し上げた実親の同意を撤廃しろとか、又は相当以上の緩和をとは言っていませんし、私が申し上げたいのは、やはり立法事実であるこのデータからどう何を読み取るかということを導きたいと思っているんですね。

 私、この説明を聞いたときも、これは厚労省にかなり入念に聞きましたけれども、ぱっと見ただけではやはりなかなかわからないんですよ。二百九十八件とぱっと出てきますけれども、じゃ何のうち二百九十八件なのか、全く規模感もイメージできないので。

 そこで、厚労省にお聞きしますけれども、まず、調査していますと言っていますが、調査対象、調査した対象というのは一体どこですか。

藤原政府参考人 お答え申し上げます。

 調査対象は全国の児童相談所それから民間のあっせん団体になっておりまして、平成二十六年度及び二十七年度の実績を聞いておりますので、全国の児童相談所については二百九カ所の児童相談所、民間のあっせん団体については二十二カ所に対しての調査となっております。

黒岩委員 まあ、そういうことですね。

 それで、次、お聞きしますけれども、これは何件という、件という言葉がありますけれども、児童相談所に、聞く相手は児童相談所ですよ、じゃ、この何件とありますけれども、何について、どの範囲について聞いたんですか。その範囲の対象は件なのか人なのかわかりませんけれども、その総数をお答えください。

藤原政府参考人 お答え申し上げます。

 先ほど来数字が出ている二百九十八件、そのうち年齢要件四十六件というふうにございますが、対象二百九十八人でございます。

 また、どういうケースを対象にして調査をしたかということかと思いますけれども、平成二十六年度、二十七年度までに社会的養護措置をとった、施設の入所とか、そういった措置をとった児童のうち、障壁がなければ選択肢として特別養子縁組を検討すべきと考えられる児童、例えば……(黒岩委員「そこまでじゃなくて、総数を」と呼ぶ)総数。二百九十八件のうち……(黒岩委員「違います、違います」と呼ぶ)

黒岩委員 もう一回、聞きますよ。

 今おっしゃった、まずは、総数の対象は、室長のおっしゃったとおり、施設ないしは里親に措置した人ということでしょう、二十六年、二十七年で。これが範囲ですよ、対象の。

 じゃ、総数の人数を教えてください。

藤原政府参考人 申しわけありません。

 二十六年度、二十七年度の数字ではないんですが、平成二十九年度の新規で、例えば児童養護施設に新規で入所をした措置の数で申し上げますと四千五百九十一人でございます。それから、乳児院の場合ですと千八百七十人というふうになっております。二十九年度の数字で申しわけありません。

黒岩委員 もう何度も言っていますけれども、この二十六年、二十七年調査をもとに我々は今議論しているんですよ。引き上げる必要があるのか、そして、それはどれほどの効果があるのか。

 室長、これ、もう事前に専門官に聞いています。二十六年、二十七年で一万八千九百三十九人ですよ。

 こういう数字はどこにも書いていないでしょう。だから、この概要、ポンチ絵を見たって、みんな、イメージが湧かないわけですよ。いきなり二百九十八人という数が降ってきて、多いんだか少ないんだか、何と比べていいんだかわからない。

 整理していきますよ。

 今言ったように、二百九カ所と二十二カ所の、児童相談所とそして民間あっせん団体全部に調査をかけた、二十六年、二十七年の。その対象はといったら、施設なり里親なり措置した、この二十六年、二十七年で措置した児童の数全員ですよと。だから、多いんですよ。一万八千以上。

 そこで、さっき室長がお答えになりかけたんだけれども、じゃ、その一万八千九百三十九人のうち、今回の二百九十八件というのは、どうやって縛りをかけた数字なんですか。

藤原政府参考人 お答え申し上げます。

 この中で、選択肢として特別養子縁組を検討すべきというふうに考えられる事案についてお聞きをして、回答が上がってきたものが二百九十八件。例としては、長年にわたって親との面会交流がない児童ですとか、将来的にも家庭復帰が見込まれない児童などということでございますけれども、特別養子縁組を選択肢として検討すべきだけれどもできなかった事案はというふうな質問に対して回答が返ってきたのが二百九十八件だったということでございます。

    〔石原(宏)委員長代理退席、委員長着席〕

黒岩委員 わかりました。

 具体的な事例は、今室長がおっしゃったように、長年にわたって親との面会交流がない児童とか、将来的にも家庭復帰が見込まれない児童という縛りをかけて、結果、この一万八千何百人の中から二百九十八件です、こういうことですね。

 そうすると、その一万八千から見ると、この二百九十八名というのは三%弱なんですよ。逆に言えば、九七%以上の人はこの特別養子縁組制度を検討すべき人じゃない。ほぼ全員ですよ。そうすると、この九七%以上の人はどうなるかといったら、また今までと同じように八割五分は施設に行っちゃう、まあ一割五分は里親とかファミリーホームですけれども、こうなっちゃうんですよ。

 本当にこんなので、この数字どおりと我々は理解していいんですか。これだったら、特別養子縁組制度ができたって、今言ったように一万八千のうち三%弱しか、これは全部特別養子縁組に行くかどうかわかりませんよ、検討すべき人程度ですよ。その中で、実父母の同意は要件緩和されないわけだから、上限年齢の撤廃となると年間で二十三件ですから、さっき私が申し上げた四%弱ですね、多くても。これでよろしいんですか。

藤原政府参考人 お答え申し上げます。

 確かに委員おっしゃるとおり、この二十六年度、二十七年度の調査で回答があったものについては二百九十八件、また、年齢要件が原因であったというふうなものが四十六件であったということは、この調査結果として事実でございます。

 私どもは、特別養子縁組、養子縁組や里親委託も含めてですけれども、家庭養育原則を進めていきたいということで、里親委託の推進や特別養子縁組をこれからしっかり進めていきたいというふうに思っております。まだまだ認知度も低いかと思いますので、しっかり周知をしながら進めていきたいと思っておりますし、また、現在、今年度中に社会的養育推進計画を都道府県に策定をいただくということにしております。

 この中には、特別養子縁組がパーマネンシー保障の観点から非常に重要、有効な選択肢であるので、対象になり得る子供の数を各都道府県で把握をしていただきたいというふうなお願いを今しているところでおります。その把握をしっかりしていただいた上で、十分なアセスメントとマッチングを行っていただいて計画を策定いただくということをお願いしたいと思っておりますので、そういった意味では、現在、確かに、ニーズの数字としては二十六年度、二十七年度の調査の結果でございますけれども、今後、こういったニーズをしっかり定量的に把握をしながら施策を進めていきたいというふうに思っております。

黒岩委員 私は、このやりとりは、法務大臣にも民事局長にも、ちゃんと聞いていただきたいんですよ。このデータをもとにこの法案を作成しているのは民事局なわけですから。

 この二百九十八の数字はと、私も厚労省に詰めてきましたよ。このアンケート調査をやっているのは厚労省だから。ただ、民事局でもこの話を私は一度も聞いたことがないので、しっかりとした、この数字の出方とかがどこまで理解されているかというのは、私は正直、心もとない思いです。多分、ここで民事局長に一個一個聞いていたら、なかなかそこまでの詳細なことは、もしかしたら、局長が一つ一つこれを見て法案をつくっているわけではないでしょうから、そこまでは把握していなかったかもしれない。それが私は心配なんですよ。何度も言いますけれども、この調査一つから、この調査を大きなもととして我々は今この法案の審議をしているし、法案をつくったわけですから。

 今の、これだけ見ると、とにかく、一万八千何ぼのうち三%弱しか、特別養子縁組の検討にすべきという中に入ってこない。ただ、僕は、これは結論から言うと、この数字はちょっと違うんですよね。

 厚労省に聞きますけれども、室長、いいですか。

 さっき、二百九十八人の縛り、二つあったうちの一つが、長年にわたって親との面会交流がない児童とあります。これは、二十六年、二十七年に新たに児童相談所に相談してきた人、これを施設に振り分けたわけですよ。一万八千人のうち、恐らくは、一万四、五千人かな。でも、新たに施設に入った児童に、長年にわたって親との面会交流がない児童っているんですか。

藤原政府参考人 お答え申し上げます。

 平成二十六年度から二十七年度までに社会的養護措置をとった児童の中で障壁となっている事案が幾つあったかということで二百九十八件でございますので、二十六年度、二十七年度までに入所をされたお子さんの中には、面会交流がほとんどない、長年親と交流していないという児童が含まれるというふうに考えております。(黒岩委員「までというか、二十六年、二十七年でしょう」と呼ぶ)

 ちょっと確認をさせていただいてよろしいでしょうか。

黒岩委員 私にいろいろと教えてくださった専門官を連れてくればいいじゃないですか。室長、私ね、こういう状況だから懸念だと言っているんですよ。専門官から聞いています、長年にわたって面会交流がない人というのは含まれていないと。含まれていないんですよ。だから安心してください、一万八千が実は母数じゃないんですよ。

 新規の施設に入る人の場合は、例えば、生まれる前から、自分はもう育てられないというお母さんから相談を受けたようなケースで、これは後段の方ですよ、二つ目の縛り、もうとても将来的にも家庭復帰が見込まれない、こういったケースの子なんですよ。

 それと、もう一つ言いますが、里親制度についても、この場合は、室長、聞いてください、二十六年、二十七年、新たに里親になったというと何千ロットですから、そうじゃないんですよ。これは、施設にいて、里親へと措置変更した人。

 この数字を、本当は僕、聞きたいんだけれども、今言ったように、里親の場合は措置変更したという限定がかかっている。そして、施設に入った人の場合は、長年の面会交流していない人が入っていなくて、今言ったように、もう家庭への復帰が見込まれない人、こういう分母になっているんですよ。

 こういうのをつかんでもらわないと、さっき私が言ったように、これだけ読むと、一万八千分の二百九十八ですになっちゃうけれども、これは後で分母を確認してください。もうちょっと分母が小さいはずですから。

 これは、私の方で、ちょっともう提言だけしておきますけれども、こんな調査で、いきなり概要で二百九十八件なんていったって、これ、ぱあっと右から左に読んでいったら、何のことかさっぱりわからないんですよ。こんなことで、法務省、法律つくってもらっちゃ困りますよ。

 この場合だったら、今、一万八千人分もう全部調べたわけだから、二百九の児相そして二十二の民間団体。今、児相だって二百十一にしかなっていないし、そして民間のあっせん団体は十九ですから、ほとんど変わっていない。

 ですから、今ある要保護児童全部の四万五千人に、この同じ調査をかければいいんですよ。そうでしょう。そうすると、長年面会交流していないという人も上がってくるし、里親の中でも、その人によっては、特別養子縁組を使えたら使いたいな、そう思っている人が、これは全部児相を通しますから、児相から上がってくるわけですよ。その数字の中で、上限年齢がひっかかるとなったら、多分、これは余りいいかげんなことは言えませんけれども、相当な数にふえてくるわけですよ。そうすると、よりこの改正の、目的に対する手段として改正の意義がわかってくる、こういうふうに説明をしていただきたいということで、この数字、こだわらせていただきました。

 私、いつも、だから、もう本当に数字的に示していただきたいという、何度も何度も言っていますけれども、これはもう提言にしておきますよ。両省、そこをちゃんと確認してくださいよ。今私が言ったことぐらいは、法務省の担当者がすらすらと言ってもらって、その理解のもとに法案をつくりましたよと、一元で、ワンストップで我々委員に説明をしていただきたいと、今後お願いをいたします。

 じゃ、先を急ぎます。ちょっと横に飛ばして、3に行きますので。

 これは、改めてですけれども、また民事局長にお聞きしますが、今回の改正ではなくて、昭和六十二年の制度創設でいいんですが、この特別養子縁組制度の創設の理由を端的に、改めておっしゃってください。

小野瀬政府参考人 やはり、この創設でございますけれども、家庭的な養育環境に恵まれない、そういった子供に、特別養子というものによって、実の親子関係と同様の安定した親子関係のもとで家庭的な養育ができる、そういう環境を提供するための制度というものでございます。

黒岩委員 ありがとうございます。

 これは概要にも書かれていますし、より家庭と同様に安定した環境、これは改めての確認ね。

 そこで、私、この後お聞きしたいのが、夫婦共同縁組についてですよ。特別養子縁組の場合は、夫婦共同縁組が、これがもう必置として課されていますので。

 じゃ、片や普通養子縁組では、この夫婦共同縁組というのは、条件を課されているんですか。

小野瀬政府参考人 お答えいたします。

 ございません。

黒岩委員 では、なぜ特別養子縁組は夫婦共同なんですか。

小野瀬政府参考人 お答えいたします。

 夫婦共同縁組の制度を採用することといたしましたのは、子供の福祉を図るという特別養子制度の目的ですとか、あるいは、実親との親子関係の終了、離縁の原則的禁止といった重大な効果が生じること等に鑑みますと、養親となる者は、将来にわたって養子を確実、適切に監護、養育することができる者であることを要して、そのためには養親となる者が夫婦であることが望ましい、こういった理由で、この制度創設の際に夫婦共同縁組の制度を採用することとしたものでございます。

黒岩委員 では、お聞きしますが、単親、片方の親で、今おっしゃった子の福祉を図るということはできないんでしょうか、また、将来にわたって乳幼児を確実、適切に監護、養育することはできないのでしょうか。できないとすれば、理由を明確にお答えください。

小野瀬政府参考人 お答えいたします。

 なかなか、親による子の監護の可否といいますか、どういう監護をしていくかといいますものは、いろいろケース・バイ・ケースな部分もあろうかと思いますけれども、夫婦ということになりますと、例えば一人の親について何らかの事情が生じて監護ができなくなったというような場合でも、他方の親の方で監護を続けていくことができる、こういったようなこともあろうかというふうに思っております。

黒岩委員 では、先を急ぎますね。

 では、我が国以外の主な主要国で、特別養子制度における夫婦共同縁組、これはほかの国では制度はどうなっていますでしょうか。

小野瀬政府参考人 お答えいたします。

 各国の制度につきまして網羅的に把握をしておりませんのと、また、各国において前提とします養子制度、大きく異なるものですので、単純に比較することは必ずしもできない面もあろうかと思っておりますが、その上で申し上げますと、例えば、韓国におきましては我が国と同様に夫婦共同縁組の原則を採用していると言われておりますが、フランスあるいはイギリスにおきましては単身の縁組も可能であるというふうに言われております。

黒岩委員 そうですね。

 これは法務省からいただいた解説書で、各国の比較が出ていますけれども、確実に義務化されているのは日本と韓国だけ。イギリスに関しては単身でも原則オーケー、そのほか、私がこれを読む限りは、特にフランスとかイタリアなどは単身でもかなり容易に認められている、こういうことですよね。

 にもかかわらず、この外国との比較において、局長、同じ質問ですけれども、日本はなぜこの共同夫婦縁組という制度を昭和六十二年でとったと、法務省としては理解しているんでしょうか。

小野瀬政府参考人 お答えいたします。

 今御指摘のとおり、外国の法制度におきましては夫婦共同縁組を採用していない、そういうところもあることは承知しておりますけれども、その当時、制度創設の際に夫婦共同縁組の制度を採用することといたしましたのは、先ほども申し上げましたとおり、将来にわたって養子を確実、適切に監護、養育することができる者であることを要し、そのためには夫婦であることが望ましいとの理由によるものでございます。

黒岩委員 これは、当時の特別養子縁組制度の法改正のときの担当者だとお聞きしている方が、改正養子法の解説で幾つか記されているんですけれども、外国制度との比較でこういう説明がなされています。

 外国は、特別養子縁組が未成年者の養子縁組の原則形態である、翻って我が国は、独身者であっても普通養子縁組ができるから、特別養子縁組で夫婦共同であっても不当な結果は生じない。

 これは、法務省の見解としてよろしいですか。

小野瀬政府参考人 おっしゃるとおりでございます。

黒岩委員 これは私、自己矛盾だと思うんですよね。

 これは、しっかりと理解すると、独身者だったら、普通養子縁組があるからいいじゃないか、特別養子縁組じゃなくてもいいよとなると、では、何で特別養子縁組が必要なんですかということになっちゃうんですよ。そうでしょう。

 だって、独身者だって、今言ったように、普通養子縁組と特別養子縁組は決定的に違う。特別養子縁組の意義というのは、きょう、朝からずっと法務省も主張していた、特に実親との縁が切れる、相続や扶養の義務を負わない、この特別な意義があるんでしょう。その特別な意義を、単身者が要請するときに、その特別の意義のない制度があるから、結果として不当なものは生じないと。

 こんなことを言っているんだったら、今、特別養子縁組そのもの自体の意義も、これはある意味、尊重していないことになるし、今回の十五歳への引上げの議論なんて、根底から覆るような話ですよ。いかがですか。

 単身だったら普通養子縁組だけでいい、せっかく意義深い特別養子縁組は要らないじゃないか、これ、論理的におかしいと思いませんか。

小野瀬政府参考人 お答えいたします。

 御指摘のとおり、特別養子と普通養子は、これは効果が違いますものですから、完全に特別養子のニーズといいますか、そういったものを普通養子によって置きかえるということは、これはできないわけでございます。

 したがいまして、御指摘のとおり、普通養子縁組ができるということから、直ちにそれは、特別養子の必要性というものを直接的に論じるというのは難しい面もあろうかと思います。

 ただ、効果は違うものといたしましても、やはり実親ではない者との間で親子関係を形成して、養親が今後養育をしていく、そういう意味では、共通な面もございます。

 したがいまして、特別養子の要件を考える際に、仮にそういった要件から外れる者があったとしても、そういった者につきましては、なお普通養子縁組という道もあるということがやはり一つの考慮要素にはなり得るものだということで、当時の立法がされたものだというふうに理解しております。

黒岩委員 私、やはり時代背景もあると思うので、昭和六十二年の改正ということですから、その前からの議論があったと。その中で、やはりもう三十数年、時代でいうと二時代前ですからね。そのときの、こう言ってはなんですが、この紋切り調な、不当な結果は生じないということに対して、現民事局長が、直接導かれるわけじゃないと言うのは、私は、国会答弁として、非常に柔軟性があって、意義あるものだと思います。

 ただ、結果として、効果としての違いがあれど、それはそれでという話でしたが、ただ、やはり、そのぐらい、三十数年前に法改正にかかわった方の平成五年の解説本ですけれども、非常にかたくというか、その時代の硬直化した感覚というのが表現の端々に伝わってくるというのが私の率直な思いですね。

 それで、この昭和六十二年の、昭和の時代の法改正であれ、事前に中間試案が出ているわけです。その中間試案の中では、配偶者のない者でも特別養子縁組の養親となることができるという案があったわけですよね。結果的には共同夫婦縁組になるわけですけれども、これは意見を募ったと。今でいうところのパブリックコメントみたいなものなのでしょう。結果として共同夫婦縁組が選ばれたわけですが、今言ったように、昭和六十二年以前の議論でも、配偶者のない者でもいいじゃないかと。

 ただ、そのときに、これも解説本によると、一般養子に増して、まあこれも普通養子ですけれどもね、普通養子に増して、円満な安定した家庭生活を営んでいる夫婦がともに養親になるという理由で、この配偶者のいない人、単身は却下されたと。

 これはお聞きしますよ。

 普通養子と特別養子との比較、すなわち、実親との縁を切る切らないの比較でこういう表現が生まれたんでしょうけれども、私がお聞きしたいのはその比較ではなく、先ほどから言っている、普通養子か特別養子ではなくて、単身親子家庭、母子家庭であったり父子家庭であったり、現実にたくさんあるわけですよ。その家庭と比較して、夫婦共同の方がより円満な安定した家庭生活と言えるのかどうか、これは民事局長としてお答えください。

小野瀬政府参考人 お答えいたします。

 家庭における子供の養育状況といいますものは、これはやはり個々の家庭の状況によってさまざまだと思います。ですから、単身の世帯における子育ての状況と、それから夫婦の世帯における状況というものを一般化してやはり論ずるというのはなかなか難しい面もあろうかと思っております。

 ただ、先ほど申し上げましたとおり、夫婦ということで、二人の監護、教育に当たる者がいるというような場合には、仮に一人の者が何かあった場合でもというようなところもございます。そういった観点で、やはり、夫婦共同縁組といいますものが、養子を確実、適切に監護、養育するという点では、そちらの方が相当ではないかという、こういった理解のもとで現在の夫婦共同縁組の制度を採用しているのではないかなというふうに私どもとしては理解しているところでございます。

黒岩委員 では、大臣、お聞きしますよ。これは大臣の御判断として、今やりとりしていますのでね。

 大臣も、単親の、片親家庭、今は特別養子縁組を組むとかいう意味じゃありませんよ。現状の母子家庭であったり父子家庭と、あとは配偶者がいる家庭と比較して、配偶者のいる家庭の方が安定的な家庭、子を養育するには適切な家庭、そのように理解されていますか。

山下国務大臣 まず、我が国の社会においても、婚姻をしていないけれども子供を適切に監護、養育している方は大勢おられるものと承知しております。

 他方で、この特別養子の制度、特別に創設されたというのが、目的において、家庭に恵まれない子に温かい家庭を提供してその健全な養育を図ることを目的として創設された、専ら子供の利益を図るための制度であること、そして、効果において、実親子関係を終了させるということと、そして離縁が原則としてできないということ、そういう効果がございます。

 そうした目的と効果に鑑みて、やはり、将来にわたり養子を確実、適切に監護、養育することができることを確保するという観点を強調され、夫婦共同縁組の制度を採用したということにつきましては、私自身も今なお相応の理由があるものと考えております。

 その見直しについては、今後の特別養子縁組の運用状況等も踏まえながら、慎重に検討する必要があるものと認識しております。

黒岩委員 おかしいですよ。

 じゃ、父子家庭、母子家庭の方が、これはイエスかノーで答えていただきたいんですが、こちらの方が、先ほど……だから、後ろから渡す必要ないですって。子の福祉とか温かい家庭とかいったときに、こちらの方が適当ではないということでよろしいですね。

山下国務大臣 まず、私が申し上げたのは、この特別養子というのは、目的及び効果において特別な制度だということでございます。その制度の中において、どのような制度を構築するかということにおいて、先ほど局長が申し上げたような理由などによって、夫婦の共同縁組の制度を採用したということでございます。ですから、個別の家庭において価値判断をしているわけではございません。

 ただ、そういう特別養子という制度をつくるに当たって、将来にわたり養子を確実、適切に監護、養育することができることを確保する観点から夫婦共同縁組の制度を採用したというものでございまして、そのことについては、今なお相当の理由があるというふうに考えているところでございます。

葉梨委員長 黒岩君、質疑時間。

黒岩委員 最後に、私の提言で終わりますけれども、個別だ個別だと言うんだったら、例えば、さっき出てきた、今回の改正によって、二十歳の親が十七歳を育てる、三歳ってどうなんですか。この議論でも、一律それは排除しない、一つ一つ審判で見ると。いいと思いますよ。

 じゃ、経済状況。確かに、子供を育てる所得がなければなかなか大変でしょうという議論になりました。でも、それも、経済的なものも審判で総合的に判断する。いいじゃないですか。

 じゃ、何でこの共同夫婦縁組だけ、単身者を一律排除しちゃうんですか。一つ一つ審判で見ればいいでしょう、個別で判断するんだったら。何でこれだけ画一的に判断するんですか。

 時間がないからいいですけれども、こういうような議論をしっかりしていただきたい。

 大臣、そういうことなんですよ。一歩も二歩も踏み込んでくださいというのは、もう見てくださいよ、昭和六十二年以前の議論と今の時代がどれだけ変わっているか。このことを強く指摘をいたしまして、私の質問を終わらせていただきます。

 どうもありがとうございました。

葉梨委員長 以上で黒岩宇洋君の質疑は終了いたしました。

 午後一時から委員会を再開することとし、この際、休憩いたします。

    午前十一時五十六分休憩

     ――――◇―――――

    午後一時一分開議

葉梨委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。

 質疑を続行いたします。井出庸生君。

井出委員 よろしくお願いいたします。

 きょうも性犯罪です。

 先日の山井委員とのやりとり、大臣の最後の御答弁の前半は非常によかったなと、きのう、改めて議事録を見ていて思ったんですが、性犯罪許さぬという思いは同じである、検事をやっていたこともあるしというような、ああいう、やはり答弁もパッションだな、そんなことを感じた次第でございます。

 きょうは、警察庁の田中さんにも少しパッションのある答弁をお願いしたいなと思うんですが、まず、前回、私が、東京と大阪の性暴力救援センターが講演で発表したもの、それから、法務省での検討会で発表した、要は、性暴力救援センターに来られる方のうち半数は警察に申告ですとか通報をしていない、そういうことを両センターが言っているんですが、そのときに田中さんの方から、具体的にどのように集計されたものであるか把握をしていないのでコメントは難しい、そういう御答弁がありました。

 この答弁の趣旨が、両センターの示されたデータやその主張そのものを、何か不正確であるとか、それは信憑性が疑わしいとか、そういう趣旨であってはほしくない、先日されていた答弁がそういう趣旨であってほしくないなと思うんですが、そのあたりを確認させてください。

田中政府参考人 御指摘のデータにつきましては、それぞれ、作成された方の御見識に基づいて作成され、分析されているものと承知をしておりますが、具体的にどのような方法で集計されているのか承知していないことから、先日の答弁では、警察庁としてコメントする立場にないとの認識を示したところでございます。

 この答弁は、御指摘のデータでありますとか主張の信憑性について述べたものではないことを御理解いただきたいというふうに思っております。

 警察庁といたしましては、被害者支援団体等の方々の御意見等は貴重であると認識いたしておりまして、引き続き、そういった御意見を伺いつつ、被害者の心情に配意した適切な性犯罪捜査が行われるよう、都道府県警察を指導してまいりたいと考えております。

井出委員 そこで、もう一つ、きょうは配付資料を用意してきました。

 パネルの方は、配付資料の要約、パネルなので少し見やすく要約をしたものなんですが、大きな字で、一年間に六万から七万人の女性が無理やり性交されたことがあると書いてあります。

 これは以前も少し触れましたが、内閣府が二〇一八年三月に発表している調査で、七・八%が異性から無理やり性交されたことがあると回答している。そこで、日本人の総人口から女性の人口を出し、そこから調査対象外である未成年を除き、そして、調査対象者の年齢が四割が六十歳以上だったので、調査対象者の平均年齢を六十歳と推定して、六十で最後割って、年間に換算すると一年間でどのぐらいの方がそういう大変つらい、嫌な思いをされているのかという数字を、これも大阪の性暴力救援センターさんの方で出された数字です。その下の、相談先、警察、二・八%という大きな字も、これも内閣府の調査で出てきた割合なんですね。

 強制性交等罪、強姦の認知件数というものは前回お示しをしました。最近だと千件前後で、かつてはもっと多くて、平成十年から平成二十九年までの間、年間の認知件数の平均をとると一千六百八十四件でしたので、大体年間千五百件ぐらい、そういう数字を立てて、確かに、千五百件を五万とか六万という数字で割ると二・五から三%という数字が出てきまして、この内閣府の調査に回答している二・八%という割合ともかなり近いものがある。

 そうしますと、やはり一年間に六万人から七万人、六万人前後の女性が無理やりそうした性交されたことがあるということも、私はある程度、今お話ししたような説明を私もことしの一月に受けましたし、これも一つ重い数字として受けとめなければならないと思っているんですが、そのことを警察庁の田中さんに伺いたいと思います。

田中政府参考人 お示しをいただきました資料につきましては、内閣府が平成三十年三月に男女間における暴力に関する調査報告書として公表した資料に掲載されたデータ等を用いて、大阪SACHICOにおかれて作成をされたものというふうに承知をいたしております。

 内閣府の報告書に掲載されましたデータは平成二十九年に行われた調査の結果でございますが、この調査におきましては、暴力や脅迫が用いられたものに限らないものとして、無理やりに性交等をされたことがあるかを聞いたところ、あると答えた女性の割合は七・八%であったというふうに承知をいたしております。また、無理やりに性交等をされた経験があると答えた女性のうち、五八・九%はどこにも相談せず、また、相談先として警察に連絡、相談したと回答した方の割合は二・八%であったというふうに承知をいたしております。

 警察におきましては、警察に相談等をされなかった方の事情を把握しているものではないところでありまして、また、配付資料の数値は作成された方の御見識に基づいて算出されたものでありまして、警察としてコメントする立場にはございませんが、内閣府の調査結果のとおり、性犯罪の被害は潜在化しやすいことから、警察におきましては、警察本部や警察署の性犯罪捜査を担当する係への女性警察官の配置の促進、性犯罪被害者に対する相談体制の充実等の取組を推進するとともに、ワンストップ支援センターとも連携し、被害の潜在化防止に努めてまいりたいと考えております。

井出委員 この六万、七万という数字は以前も少し紹介をしまして、そのとき大臣からも少しコメントをいただいたんですが、ただ、私がもごもご、ぼそぼそと当時は言葉で紹介しただけでして、きょうのような丁寧な説明はそのときはできなかったんですが、ちょっと一言、感想をパッションを込めて伺っておきたいと思うんですが、この数字に対するですね。

山下国務大臣 この数値の積算自体は、この資料をSACHICOの代表の加藤さんですかが作成されたということで、それについてちょっとコメントはできない、推計の部分もございますので。

 ただ、一方で、やはりそういった暗数が性犯罪においては多いということは一般に言われていることでございまして、また、そういうことを念頭に、しっかりとそういう被害にも対応していくということが大事であろうということを改めて思っているところでございます。

井出委員 次に、被害届の受理、不受理、前回少し議論したところを伺いたいんです。

 前回、明確な虚偽ですとか、それから著しく合理性を欠くもの以外は受理をする、そういう答弁があったんですが、少し私の方で調べてみましたら、被害届の受理については、犯罪捜査規範、昭和三十二年に出ているものの第六十一条一項、警察官は、犯罪による被害の届出をする者があったときは、その届出に係る事件が管轄区域の事件であるかどうかを問わず、これを受理をしなければいけない。長野県の方が東京で被害に遭われたら、長野県の警察も受理をしなければいけない、東京に言ってくれというような対応は、この捜査規範上は認められない。それからまた、届出が口頭であるときは、警察官がその被害届を代書、かわって書くというようなことも書いてあります。

 それから、恐らくこれが前回の答弁の根拠だと思うんですが、警察庁が平成二十四年に都道府県警に「迅速・確実な被害の届出の受理について」という通達を出しています。その中で、「被害の届出に対しては、被害者・国民の立場に立って対応し、その内容が明白な虚偽又は著しく合理性を欠くものである場合を除き、即時受理すること。」、それから、届出を受理しなかったものについては、適宜の様式により届出の内容、状況等を記録化し、所属長に報告をすると。

 こういうことが書かれているんですが、これを見ると、やはり、被害届を受理をしない、門前払いをする、そういうケースというのは、この間も例外的というお話がありましたが、本当にごくごく少ない、ごくまれなぐらいな、数的に言えば、そういう状況じゃないかと思うんですね。

 そこを少し、前回、把握をしていないというようなお話がありましたが、現場で、本当に例外的、もう本当に数少ない、そういう取扱いになっているのか、そのあたりをもう一度田中さんに伺いたいと思います。

田中政府参考人 先生からも御紹介がございましたが、警察におきましては、被害の届出に対しましては即時受理を原則といたしますが、その内容が明白な虚偽又は著しく合理性を欠く場合は例外的に受理しないこととしておりまして、こうした受理しないケースを、先日の答弁におきまして、例外的なケースというふうに申し上げたところでございます。

 ただ、このようなケースの数や割合については警察庁として把握しておりませんので、推測を申し上げることは差し控えたいというふうに考えております。

 警察庁といたしましては、引き続き、被害の届出への対応も含め、被害者の心情に配意しつつ、適切な性犯罪捜査が行われるよう、都道府県警察を指導してまいりたいと考えております。

井出委員 被害届を受理される受理されないというのは、本当に被害に遭ってそれを訴え出る人、それが、警察官側から見て、ちょっと合理的じゃないなとか事実関係が曖昧だなというようなものもあろうかと思いますけれども、やはり、被害を受けた方からすれば受理をしていただきたい。

 それから、もう一つは、受理されても、その後どうなったんだというようなこともあろうかと思います。まあ、事実上、捜査が難しいからずっとそのままになってしまうというようなこともあろうかと思うんですが。

 そこで、被害届の受理、不受理についてはやはり一度調べていただきたいなと。前回そこを明確な答弁をいただけなかったんですが、被害届の不受理についても、何か書式に書いて、所属長ですか、刑事課長に出すのか、署長に出して決裁の山の中に入っているのかわかりませんが、この通達や捜査規範を見ていれば、調べることは可能じゃないかなと思うんですね。それをぜひ、今後の法改正の議論ですとか、性犯罪とどう向き合っていくかという議論に参考になる大きなところだと思いますので、ぜひ調べていただきたいんですが、田中さん、いかがでしょうか。

田中政府参考人 若干事務的、技術的なところがございますので、答弁が長くなることをお許しいただきたいと思いますけれども、まず、先ほど御指摘ございましたように、警察が性犯罪の被害について相談を受けるなどした事案であって、被害届の受理に至らなかったものにつきましては、各都道府県警察において届出の内容、状況等を記録化することとされているところであります。

 しかしながら、この記録は事案の内容に応じて適宜の様式により作成されるものでありまして、被害届の不受理に関する報告のみを取り出して集計することは極めて困難でございます。

 したがいまして、不受理の件数を把握するためには、結局、性犯罪に関する全ての相談を精査することになってくるわけでございます。

 警察が性犯罪の被害について相談を受けるなどした事案で、被害届の受理に至らなかったものにつきましては、さまざまな態様のものがあるところでございます。

 例えば、電話やメール等により匿名で相談がなされるもの、当事者の人定や事実関係が明らかでなく、相談内容から犯罪の構成要件に該当するか否かが判断できないものなどがあるほか、被害に遭われた本人以外の家族や友人、知人といった第三者からの相談も含まれているところであります。

 また、相談された方から聴取した場合でも、羞恥心等から相手方の処罰や警察による捜査を求めないなど被害申告をためらうもの、当初、被害申告の意思が明確でなかったが、一定の年月が経過した後に改めて被害の届出がなされるものもございます。

 したがいまして、個々の事案に関し、相談の時点において性犯罪の被害申告の意思があるか否かというのは必ずしも明確に判断できるものではないことから、被害を届け出る意思があるにもかかわらず届出をするに至らなかったケースの件数や割合を把握することは極めて困難であるというふうに考えております。

井出委員 私は、不受理になった記録が、適宜の様式ですから、保存の問題もあろうかと思いますので、過去のものは、本当はやれればいいんですけれども、お願いするつもりはなくて、現実的に実現できるとすれば、これから、少し時期を限定してもらってもいいと思うんですね。そういう形で少し、警察の対応というものがやはり被害者にとって重要で、対応していただきたい。

 おととしの刑法改正では、それは検察の方の話にもなるんですけれども、起訴、不起訴、不起訴のときなんかは少ししっかりと説明を被害者にするようにというような附帯決議も入れたんですが、捜査がなかなか証拠がなくて進まないとか、起訴に至らないとか、そういうことはあろうかと思うんですけれども、やはり捜査機関側がやるべきことを尽くす、尽くしてくれるというその姿勢というものは大変大事だと思いますし、やはり一番大事なのは、被害を申告に行ったときにまず対応する警察の方。それは、警察の方はたくさんいて、被害者が来て、その中のお一人が対応するということなんですが、被害者からすれば、その対応してくださった方がもう本当に警察の代表といいますか、そういう思いで被害を申告されると思いますので。

 答弁を聞いておりますとなかなか難しいのかなとは思うんですが、少しちょっとこれから先を、法改正の議論が何年先になるかわかりませんが、少し時期を区切ってでも結構ですので、検討だけでもしていただけないでしょうか。ちょっとお願いいたします。

田中政府参考人 一部繰り返しの答弁になって恐縮でございますが、被害届の受理に至らなかった性犯罪の被害についての相談につきましては、さまざまな態様のものがあるところでございます。

 先ほども例として申し上げましたが、匿名で相談がなされるもの、あるいは、人定、事実関係が明らかでないもの、あるいは被害に遭われた本人以外の方からの相談、そういったものもあるところでございます。

 また、被害者本人から相談を受けた場合でありましても、被害申告をためらうもの、あるいは、当初、被害申告の意思が明確でなかったが、一定の年月が経過した後に改めて被害の届出がなされるものもございます。

 したがいまして、個々の事案に関しまして、相談の時点において性犯罪の被害申告の意思があるか否か、これは資料に当たりましてもなかなか明確に判断できるものではないということでございまして、この件数、割合、これを把握することは極めて困難というふうに考えております。

井出委員 そうしましたら、大阪とか東京のSARCとかSACHICOには多くの被害者が相談に来ている実績があって、その両機関と少し相談をして、その両機関は少なくとも、かなり、お一人お一人、聞ける範囲のことを聞いていると思いますし、警察にどうして行かなかったの、どうして行ったのというようなことも当然知見があると思うんですね。

 そこに少し御相談をして、どうして警察にその人は行けなかったのか、行ってもだめだったのか、若しくは、どうしてその人は警察に行って相談に乗ってもらったのか。そういうことも、多少なりとも、被害者がたくさんそこに相談しているから、多少の類型化といいますか、傾向はつかめるんじゃないかと思うんですが、じゃ、そっちからやっていただくというのはどうですか、両機関とちょっと一緒に調べる。

田中政府参考人 一部繰り返しでございますが、性犯罪の捜査において、最初の被害の相談の段階から被害者の心情に配意した対応を徹底することは重要だ、これは私どもも認識をいたしているところでございます。

 警察庁におきましては、既に被害者支援団体の方々の御意見もるる承っているところでございますけれども、引き続き、そういった方々の御意見も伺いながら都道府県警察の指導をしてまいりたい、このように考えております。

井出委員 もう時間になりましたので終わりますが、その繰り返しの答弁がちょっと変わるように、こちらもまた繰り返し聞いていきたいと思います。

 法案の方も重要な関心を持っておりますので、引き続きお願いします。

 どうもありがとうございました。

葉梨委員長 以上で井出庸生君の質疑は終了いたしました。

 次に、串田誠一君。

串田委員 日本維新の会の串田でございます。

 今、井出議員から性犯罪の問題が質疑されておりまして、私も通告をさせていただいているんですが、冒頭だけ、ちょっと確認をさせていただきたいと思います。

 前回、法務大臣との質疑が何となくうまくかみ合っていなかったんじゃないかと私は思っているんです。というのは、懲戒の中に性犯罪というのが入ってはいないという法務大臣の答えで、それはもう当然のことでございまして、要するに、暴行、脅迫というのが、懲戒権、これは、しつけというような言い方で暴行、脅迫を行っている事案というのが去年もことしも起きたわけでございまして、そういったような、暴行、脅迫というものが懲戒という形の中で行われて、その先に傷害やあるいは性暴力というのが行われるのではないかということを質問させていただいたんです。

 八百二十二条の懲戒というものに対して、子供の側から、これは正しい懲戒で、これは正しくない懲戒というのを、子供の側からは何を基準にして判別したらよろしいでしょうか。

山下国務大臣 まず、前提として、八百二十二条の懲戒権は子の利益のために行使されるべきものであり、子の監護及び教育に必要な範囲を超える懲戒は、懲戒権の行使として許容されない違法なものでありまして、子もそれに従う義務はないものと考えられます。

 そして、ある行為が民法第八百二十二条の懲戒権の行使として許容されるか否かというのは、社会と時代の健全な社会常識により判断されることになるものと考えられますが、児童虐待に当たる行為が懲戒権として許容されないものであることは明らかであります。

 もっとも、児童虐待の場面においては、子供がその判断を適切に行うことができるかどうかにかかわらず、子供が親権者に対して抵抗することは困難な場合が多いと考えられます。したがって、児童虐待の防止、これをしっかり取り組む必要があるということで、その予防、早期発見、発生時の迅速的確な対応など、総合的な対策を進めていくことが重要である、こう考えておるわけでございます。

串田委員 子供がそれに従う必要はないというところが、子供としてどうやってそれを、従う必要のない懲戒であるかどうかというのを判断したらいいのかということをお聞きしているんですね。

 例えば、体を押しつけられた、押さえつけられた。それで終わる場合もあれば、その後に殴られる場合もあれば、蹴られる場合もあれば、その後に性的な暴力を加えられる場合もあるわけです。体を押しつけられた時点で、子供はこれをはねつけていいんですか、そして、そういうこと自体を子供ができると思いますか、法務大臣。

山下国務大臣 御質問ではございますが、体を押しつけられたという、その押しつけられる部位、あるいは押しつけられた先の部位、あとは、時間帯でありますとか、どういう体勢であるのかとか、そういったこともございます。ですから、それは健全な社会常識により判断されることになるということで、一概に判断基準をここでお話しするということはできないと考えます。

串田委員 仮に、抵抗というのが正当防衛的な意味で、一般的には殴り返すとか、そういうようなことが通常には考えられたとしても、子供が親を殴り返すということ自体はしたくないという子供だってたくさんいると思うし、それはやはり道徳観念からもすべきでないというような考えを持っている子供もいると思うんですよ。

 だから、どんなに親が、懲戒権の行使が違法であったとしても、子供が必ずしもそれに抵抗できるとは限らないわけですよ。その先に性的な犯罪が行われた場合ということが十分に、犯罪の成否をするに当たっては考慮しなきゃいけない。その時点での暴行、脅迫が、一般人の、最高裁の二十四年五月十日の判例、著しく抵抗が困難であるかどうか、そういう暴力であったか、そういう脅迫であったかという、一般人と同じような基準でこの親権者と未成年者の間の性的な暴力行為を同じように当てはめていくということに対しては、国民は大変な違和感を持っているということなんだと思います。

 昨日も、あの名古屋の三月の判例を前提にした番組が流されていました。こういったようなことが何回も流されているということは、この無罪判決に関して国民はやはり違和感を持っている。親と未成年者との間は、未成年者は抵抗をすることが大変困難な状況であるということを、この判例自体が、判断自体が考慮されているのかどうかということに対して、大変、国民としては違和感を持っているんじゃないかなと私は思います。

 そういう意味では、この最高裁の判例が親子の関係でも当てはまると言っていない以上は、一般人と同じような基準で、メルクマールで、これを当てはめるということに対しては、子供の人権を守ることができないのではないかと、私としては、まあ提案といいますか、その点についての子供の人権というものの、懲戒というものは子供が抵抗しちゃいけないんだという回答がありましたから、抵抗しちゃいけないという回答があったのに、一線を越えたときは、あるいは何か別の目的のときには抵抗していいんだというようなことを言われても、子供としては現場では非常にそんなようなことはできにくいということを、これは判例を判断するときには十分配慮していかなきゃいけないんだということを指摘して、次の、今回の法案について質問をさせていただきたいと思います。

 この特別養子制度は、大臣の趣旨説明ですと、児童養護施設に入所中の児童等に養育環境を提供するというふうになっております。そうであるなら、本法案は児童養護施設の入所中の児童等に限る、当面はこれに限るというように大臣としては断言していただきたいんですが、いかがでしょうか。

山下国務大臣 私の趣旨説明でそのように申し上げたところですが、これは、特別養子縁組の対象となる子供は、保護者がおらず、又は虐待を受けているなどの理由で児童養護施設に入所中の子供が多いと思われることから、そのように例示をさせていただきましたが、これは、児童等にということで申し上げているものでございまして、それに限るものではなくて、法律上は児童養護施設に入所中の児童等に限定されておらず、この点は本法律案による改正後も変わらないということでございます。

串田委員 といいますのは、今、日本は単独親権下であります。こういったようなときに、同居親と新たな再婚相手との間でこの特別養子制度というものが適用されるということに対しては、大変不安を持っていらっしゃる別居親というのがいらっしゃるんですね。

 どうしてかといいますと、先ほど石原委員が大変すばらしい質問をしていただきましたが、親子の縁を完全に切られるわけですよ。そして、現在、面会もままならない状況なんです。ですから、本当は養育を一生懸命やりたいけれども、養育をやらせてももらえない状況の中で、今度は親子の縁を切られてしまうんですよ。

 それを今、二十四カ国ですか、調査を開始している、共同親権、共同養育というものを取り入れようと検討している中で、この単独親権という、面会をもさせてもらえないような状況で、親子の縁を切るという法案を先に成立をさせるということについては大変問題だと思うんですが、法務大臣の御意見を伺いたいと思います。

山下国務大臣 まず、前提として、串田委員がおっしゃっている例というのは、子供がいる夫婦が離婚をし、その一方が親権者となった場合で、その親権を有する親が相手と再婚した後に、その再婚相手と子供との間で特別養子縁組を成立させるといった事例をお尋ねなんだろうというふうに思います。

 いずれにせよ、こういった特別養子縁組の場合には、第一段階におきまして、そもそも、実親による子の監護が著しく困難又は不適当であるか、あるいは実親の同意があるかといった要件について、これはしっかり審理をしていただくということになりますので、その過程で、不適切な、そういった不当に親子の関係を終了させるといったところは、家庭裁判所の調査等において、審理の段階において適切に対応があるのであろうというふうに考えております。

 実務的なことについては、当局にも答えさせようと思います。

串田委員 ただ、民法の八百十七条の六では、実親の同意がなくてもいい場合が書かれているわけです。

 先ほど、民事局長の回答からも、原則という言い方をされた。原則は同意が必要であるという、この原則というのがくせ者でして、例外というのが八百十七条の六に書かれているんですけれども、これは、虐待や悪意の遺棄その他養子となる者の利益を著しく害する事由がある場合はという中で、養育さえも面会さえもさせてもらえない状況の中では、これは、その者との間で親子の関係をずっと続けるよりは養親の方がいいだろうという判断をされるおそれがあるから、質問しているんですよ。

 そして、今、単独親権の場合には、片方の親が片方の別居親をずっと悪く言い続けるという制度だから、これは改正しなきゃいけないというのをさんざん言わせていただいているんです。

 要するに、争わなくてもいい夫婦が、別れるときになって、一人だけ親権者にさせられる、一人だけ監護者に選定されるという、この極めてまれな制度を我が国がとっているから、争いを生じさせて、相手の方を悪く言う、双方が悪く言って、自分が親権者になるようなことをさせているのが今の日本の法律なんですよ。そういうようなことが成功しているから、一人が監護者になっている。

 この成功するような方法で、八百十七条の六が適用されることがあるんじゃないかということを心配しているんですが、いかがでしょうか。

小野瀬政府参考人 お答えいたします。

 委員御指摘のとおり、原則として、特別養子縁組の成立には実の親の同意が必要でございます。

 例外的な場合としましては、その意思を表示することができない場合、あるいは、父母による虐待、悪意その他養子となる者の利益を著しく害する事由がある場合はこの限りでないとなっております。

 いろいろ、当事者間に紛争がある場合に、一般論として申し上げますれば、家事審判の手続の中で、当事者が自己の主張を正当化するために他の者を非難したり、あるいはその主張を否定したりすること、こういったこと自体はしばしば生じ得るものと認識しております。もっとも、裁判所におきましては、そのようなことがありましても、証拠に基づいて適正な判断をすることが期待されており、また、かつ、現にそのような運用がされているものと承知しているところでございます。

串田委員 今、例外は証拠に基づくという話がありましたが、そうした場合には、同意の場合には何ら問題がないのかというところを考えていただきたいんです。前に大岡裁きの話を予算委員会でさせていただきました。子供が痛いと言うから手を離した、今は手を離した方が不利に扱われるのがこの国の制度なんです。

 そして、今回の特別養子制度も、面会も養育もさせてもらえない、もう二年間も会わせてもらえないという別居親がざらにいるんですよ。そういう中で、今度特別養子制度を採用したいといったときに、自分は子供にも会えない、この子供にとっては自分という親としての存在を、この子供の福祉には十分に愛情を注ぐことができない、泣く泣く同意をする親は結構、私はいると思いますよ。この制度で、そういうような、追いやって、諸外国では救われているような親が、我が国だけは単独親権、単独監護だから子供にも会えない、面会もできない、だから子供にとっては自分の存在自体が幸せにはできないと思って、泣く泣く同意をする親だってたくさんいると思うんですよ。

 大臣、こういうので同意があるということで、この特別養子制度を採用していいと思いますか。

山下国務大臣 串田委員御指摘のところは、面会交流、これを、別れた子供と親権を持っていない親との間でもしっかり行うべきだというふうな前提に立たれるんだろうと思いますし、その点においては我々も全く同じでございます。

 ただ、特別養子のこの制度自体においては、これは第一段階の手続、第二段階の手続に分かれておるわけですが、その第一段階の審理において、実親の同意が本当にあるのかどうか、真意に基づくものであるのかどうか、そういったものも審理されるでしょうし、実親の同意がないと判断されるような例外的な場合というのが、これはまさに例外的な場合ですから、本当にそのような、監護が著しく困難であるとか、子供の利益を著しく害する事由があるかどうかについては、これは家庭裁判所においてしっかりと審理されるというふうに考えておりますし、そのような運用を期待しているところでございます。

串田委員 そのような運用がなされていないから、国連からも勧告されているんですよ。

 今、エビデンスの話が先ほど民事局長からありましたので、ちょっと質問の角度を変えさせていただきたいんですが、外務省のハーグ条約室では、ハーグ条約は国際結婚に限るものではない、例えば、日本の夫婦のうちの一方がアメリカに子供を連れ去った場合には、このハーグ条約によってその子供は連れ戻されるという理解でよろしいんでしょうか。

高橋政府参考人 お答えいたします。

 委員御指摘のとおり、ハーグ条約の対象は国際結婚に限られるものではございません。

 したがいまして、例えば、子が日本から米国に不法に連れ去られた場合ですけれども、日本に残された親は、日本の中央当局であります外務省領事局のハーグ条約室に対して返還援助を申請することができます。日本中央当局は、援助決定後、米国中央当局と連絡調整を始めるとともに、当事者に対して必要な支援を行うという形になります。

 また、不法に連れ去られた場合でなくとも、面会交流をしたいという場合には、同様に、中央当局間の協議によって面会をアレンジするということが可能でございます。

 不法な返還の部分に関して申し上げれば、最終的に子の返還を求める裁判がアメリカで申し立てられた場合には、返還命令が確定し、その場合には、州によって手続は異なりますけれども、連れ去った親が子の返還に応じない場合には、裁判所侮辱罪が適用されるなど、制裁金や身柄拘束が命じられることなどがありまして、これでもって執行を確保する、そういう流れになってございます。

串田委員 法務大臣もよく聞いていただいたと思うんですけれども、日本の夫婦の片方の親がアメリカに連れ去ったときには、しっかりと日本の政府も加わって、子供が連れ戻されるんですよ。ところが、日本の夫婦の一方が東京から例えば埼玉だとか千葉だとか神奈川だとかに連れ去ったときに、日本は返してあげないじゃないですか。おかしいと思いませんか。外国に連れ去ったら戻されるのに、何で国内だったら戻されないんですか。

 だから、これを改正しなければ余りにも不平等であり、諸外国から比べればおかしいと指摘されるのは当然なんですよ。

 ところで、返還を拒絶することもできる場合がありますとハーグ条約の質問欄では書かれていて、子の返還拒否事由を主張する当事者は、それを裏づける資料を裁判所に提出する必要がありますと書いてありますが、この裏づける資料というのはどういったものなんでしょうか。

小野瀬政府参考人 お答えいたします。

 返還拒否事由、子の返還が子を耐えがたい状況に置くこととなる重大な危険があること、こういう返還拒否事由がございますが、その判断に当たっては、常居所地国において子が申立人から身体に対する暴力等を受けるおそれの有無や、相手方及び子が常居所地国に入国した場合に相手方が申立人から子に心理的外傷を与えることとなる暴力等を受けるおそれの有無等の事情を考慮することとされております。

 そして、過去における配偶者等からの暴力の被害を立証するための証拠資料といたしましては、これは個別の事案によるものでございますが、例えば、子の常居所地国における医師の診断書ですとか写真、あるいは、一時避難先の関係者の陳述書、警察や在外公館等に対する相談時の申立人の状況等の照会結果等が考えられるところでございます。

串田委員 これからいろいろな実務的なものも確認させていただくことは出てくると思うんですけれども、今、最初の医師の診断書はいいですよ。だけれども、相談事例までも裏づけ資料になるから、現在、日本の場合には、相談するということを勧めるわけでしょう。そうすると、相談しただけで証明書が出るから、それをもって拒絶をすることができるという扱い方をされていて、別居親としては大変な悲しい思いをさせられているという声が多いわけですよ。

 恐らく、今言われたのも、その相談事例だけではこのハーグ条約の返還拒否事由には私は当たらないというふうに思っているんですけれども、相談事例だけでこのハーグ条約拒否事由ということになるというふうにおっしゃるんですか。

小野瀬政府参考人 お答えいたします。

 証拠資料といたしましては、先ほども申し上げましたように、さまざまなものが考えられるものでございますので、そういったものを総合的に判断するということになろうかと思います。

 また、先ほど相談についても申し上げましたけれども、この相談につきましては、その相談した事実といいますよりも、相談時の申立人の状況といったようなところがこの考慮事由としては考えられるのかなというふうに思っているところでございます。

串田委員 ハーグ条約の場合には、日本同士の夫婦においても、これは監護権があるというだけで、このハーグ条約が適用されるわけですよ。日本の場合には、債務名義がなかったら強制執行してくれないわけですよ。そして、今言ったようなことで返還もされない。こういうように極めて不平等な扱い方をされている中で、親子の縁を切られるという不安感を持つのは当たり前なんです。

 ですから、この特別養子制度は、そういう観点から、児童養護施設というのは私は大いに賛成ですよ、そういう家庭環境を子供に与えるというのは。ただ、今のような、単独親権下の、共同養育をも与えてもらえないような、親の縁を切られるような今の不平等な扱い方をされているのは事実なんですから、ここら辺についての適用については認めない方向で適用させていただきたいと思っているんです。

 民法七百六十六条の改正のときの趣旨をお聞きしたいと思いますが、これは連れ去りを阻止するために設けられたと言われていますが、事実でしょうか。

山下国務大臣 平成二十三年に成立した民法等の一部を改正する法律により、民法第七百六十六条が改正されました。これは、家庭裁判所における調停又は審判の際のみならず、当事者間における協議の際にも、面会交流など、子供の監護について必要な事項を定めるに当たっては子の利益を最も優先して考慮しなければならないとの理念を明記することとされております。

 また、これにつきましては、例えば子の監護費用の負担とか、そういったことも七百六十六条にも含まれているところでございまして、この二十三年改正は子供の利益を重視することを示したというものでございまして、子供の連れ去りの防止そのものを目的とするものではないということでございます。

串田委員 当然なんですけれども、それは。

 連れ去りを少なくすることができるという趣旨というのが七百六十六条の制定の中では言われていた事実があるかどうかを確認させてください。

山下国務大臣 一般論としては、夫婦で離婚について協議している際、またその協議をする前に子供を不当に連れ去り、一方の親と子供との交流を一方的に絶つことにより子供の利益が害される場合があるものと考えられます。このような場合においては、平成二十三年の民法改正の趣旨に照らしても、不当な連れ去りがあったということは子の監護者等を定める際に考慮されるべきでありまして、平成二十三年の国会審議でも当時の法務大臣から同様の認識が示されておるところでございます。

串田委員 平成二十五年の国会での安倍総理も同じような趣旨であって、七百六十六条が改正されたときには不当な連れ去りというものをなくすということも制度趣旨の中に入っているというふうになっているわけです。

 とするならば、先ほど言われたような連れ去ることの正当事由というものが証明できない限りは連れ去りというのは不当であって、これは連れ去った側に不利益な扱い方をすべきであるというような運用が現在なされているという理解でよろしいでしょうか。

小野瀬政府参考人 お答えいたします。

 国内における子の連れ去りの場面におきましては、一般に、連れ去られた親の方は、子の監護に関する処分の審判を申し立て、その手続において、子の引渡しを命ずる旨の審判を求めることになると考えられます。このように、国内における子の連れ去りの場面では、一般に、子の父母のうちどちらを親権者又は監護権者とするのが相当であるかを判断した上で子の引渡し請求の当否が判断されることとなる点で、こういった実体的判断を伴わないハーグ条約実施法の適用場面とはその前提が異なるものと考えております。

 したがいまして、子の引渡しが認められるか否かの判断に当たりましては、現在の実務では、従前の監護状況、現在の監護状況や父母の監護能力等々、さまざまな事情を総合的に考慮しているものと認識しております。

串田委員 時間ですけれども、七百六十六条は、正当な理由がない限りは不当な連れ去りであるから不利益にならなきゃいけないんだというのがこの七百六十六条の立法趣旨というか、その制定過程の中でそうやって議論されているわけですから、しっかりとこの議論に基づいた運用を実務でもしていただきたいということを申し上げ、またこれを続けてやらせていただきたいと思います。

 ありがとうございました。

葉梨委員長 以上で串田誠一君の質疑は終了いたしました。

 次に、山本和嘉子君。

山本(和)委員 立憲民主党・無所属フォーラムの山本和嘉子でございます。

 民法の改正法案ということで、順次質問をさせていただきたいと思います。

 今回の民法改正案は、昭和六十二年に特別養子制度が創設されて約三十年、初めて見直しが行われようということでございます。毎年三千人の子供たちが施設に預けられておりますけれども、養子となって家庭の中で養護を受けられるのは四百名から五百名ほどだというふうに聞いております。

 そうした状況の中、まず、この特別養子制度見直しが行われることになった背景、そのきっかけを大臣の方から御説明いただければと思います。

山下国務大臣 お答えいたします。

 特別養子制度は、専ら子供の利益を図るための制度であり、現に児童養護施設に入所している児童等に家庭的な養育環境を提供するための選択肢となり得るものでございます。

 特別養子縁組の成立件数は年間五百件程度にとどまっているところでございますが、児童相談所及び民間あっせん団体を対象とした調査の結果によれば、選択肢として特別養子縁組を検討すべき事案であるのに、養子となる者の年齢の上限などの法律上の要件を満たさないことなどが原因で特別養子制度を利用することができなかった事案が、平成二十六年及び平成二十七年の二年間で二百九十八件あったと報告されているところであります。

 また、児童福祉の現場からは、養親となる者は、実親が縁組の成立にあらかじめ同意している場合であっても、その同意が後に撤回されることを恐れて申立てをちゅうちょすることがあるとの指摘がされているところでございます。さらに、現行の特別養子縁組の成立の審判手続は、養親となる者が審判手続において実親と対峙して、実親による養育が著しく不適当であること等を主張、立証しなければならないということであるために、養親となる者が申立てをちゅうちょすることがあるとの指摘もなされているところでございます。

 そこで、本法律案では、特別養子制度の利用を促進し、家庭的な環境のもとで養育することが適切な子供がその必要に応じて制度を利用することができるようにするために、養子となる者の年齢の原則的な上限を現行の六歳未満から十五歳未満に引き上げるとともに、一定の要件のもとで実親の同意の撤回を制限し、さらには、養親となる者が安心して手続を進められるようにするために、児童相談所長の手続関与を認めることとする、あるいは、その手続を第一段階と第二段階に分けるなど、特別養子縁組の成立の手続を合理化することとしているところでございます。

山本(和)委員 ありがとうございます。

 今回の見直しということですけれども、大きく四つあるのかなと思います。

 一つ目は、養子となるべき者の上限年齢の引上げ、そして二つ目は、養子縁組を二段階の審判で成立させるということ、三つ目は、児童相談所長に養子縁組の審判の手続への関与を容認すること、四つ目は、実親の同意の撤回の制限を行うということでございます。

 そこで、二つ目と三つ目の改正点であります、養子縁組を二段階の審判で成立させること、第一段階目の手続である特別養子適格の確認の審判手続に児童相談所長が関与できるということの趣旨と具体的な内容、そして、見直しの結果どういうことに効果があるのか、そのあたりを教えていただければと思います。

小野瀬政府参考人 お答えいたします。

 現行法のもとでは、養親となる者が実親による養育状況について事実上立証しなければなりませんし、また、実親が特別養子縁組に同意していない場合など、手続において実親と対峙しなければならない場合がございます。また、養親となる者の本籍や住所が実親に知られてしまうという問題もございまして、これらのことが養親となる者の負担となっているとの指摘がされているところでございます。

 このような問題に対応するため、特別養子縁組の成立手続を、まずは、実親に関する要件について審理する第一段階の手続と、それから養親に関する要件について審理する第二段階の手続に分けた上で、第一段階の手続については、児童相談所長にも申立て権を付与することにしておりますが、児童相談所長が申し立てるということになりますと、これは児童相談所長の方で先ほど言いましたような実親による養育状況について立証していくというようなことになりますので、養親となる者のそういった立証の負担等が軽減されるということになるわけでございます。

山本(和)委員 ありがとうございます。

 続けて、一つ目の改正点である、民法の見直しである養子となるべき者の上限年齢の引上げについて、現行法の民法第八百十七条の五の上限年齢を六歳未満から十五歳未満に大幅に引き上げることとした理由を伺いたいと思います。

小野瀬政府参考人 お答えいたします。

 この法律案におきましては、家庭的な環境のもとで安定的に養育をすることが適切である子供について、現在の民法の年齢要件を満たさないために特別養子制度を利用することができない場合がある、こういった指摘があること等を踏まえまして、養子となる者の年齢の上限を引き上げることとしております。

 ここで養子となる者の年齢の上限を原則として十五歳未満といたしましたのは、民法上、十五歳に達しますと、みずからの意思で普通養子縁組をすることができるとされておりますことから、十五歳に達している者について、家庭裁判所の審判によって縁組を成立させることは原則として適当ではないのではないかというふうに考えられるためでございます。

 また、民法上、十五歳に達した者はみずからの意思で普通養子縁組をすることができることとされておりますことからしますと、この年齢に達した者について、例外的に家庭裁判所の審判により特別養子縁組を成立させる場合にもその意思を尊重するのが相当であると考えられますため、この法律案では、養子となる者が十五歳に達している場合には、その養子となる者の同意がなければ特別養子縁組を成立させることはできないというふうにしているものでございます。

山本(和)委員 ありがとうございます。

 それに加えて、今回、例外的という話も出ておりましたけれども、例外的に、十五歳に達するまでに特別養子縁組の成立の審判の申立てがされなかったことについてやむを得ない事由がある場合、申立てのときに十五歳以上十八歳未満までは養子となることができるということとしておりますけれども、その際、その養子となる者の同意が必要である。

 これは、十五歳に達するとみずからの意思で普通養子縁組が可能になるため設けられたものと思いますけれども、この点について、法制審の部会では、十五歳の未成年者に実親子関係を絶ち切る決断をさせるのは、その子に強い葛藤をさせることになって好ましくないという意見も出ているんですけれども、それでもなお十五歳に達した者の同意を必要とする理由をお聞きしたいと思います。

小野瀬政府参考人 お答えいたします。

 法制審議会の議論におきましては、委員御指摘のような議論がされたことは事実でございます。

 ただ、十五歳に達した者について同意を要する理由は、先ほど申し上げましたとおり、やはり十五歳に達した者は自分の意思で普通養子縁組をすることができるということでございますので、十五歳に達した者の同意を得ないで特別養子縁組を成立させるというのはやはり相当ではないだろうというふうに考えられるところでございます。

 ただ、こういった方の同意を得る際におきましては、そういった方の心情に配慮して同意をとるといったことがやはり必要になってくるかと思っております。

山本(和)委員 ありがとうございます。

 この上限年齢の見直しというのはかなり思い切ったものになると思います。

 この上限年齢について、法制審議会の部会では十三歳とする案も出ていたというふうにも聞いております。また、ある程度意思表示や判断ができる年齢とされている十一歳から十二歳程度であれば、特別養子になるということの意味をある程度理解できる年齢と考えられると思います。この点について、そもそも上限年齢を引き上げること自体、現行の特別養子制度が子供に安定した家庭養育環境を提供し、子供の成長と子供の将来のための制度趣旨からは逸脱するのではないかという意見もあると聞いております。

 上限年齢を引き上げることは、特別養子制度の制度趣旨を変えてしまうことになるのではないかなと思いますが、そのあたり、大臣の御所見をお伺いしたいと思います。

山下国務大臣 特別養子制度創設の背景と申しますのは、我が国においては、古くから、他人の子供を戸籍上実子として届け出て養育するという、いわゆる、わらの上からの養子と言われる例が少なくなかったことがあったと言われております。

 ただ、この特別養子制度、これは、現代的な趣旨としては、養親と養子との間に実親子間と同様の実質的な親子関係を創設することによって、養子に家庭的で安定した養育環境を提供することを目的とするものであるとされております。

 そして、現行の上限年齢であります、民法第八百十七条の五において原則として六歳未満の者が特別養子となることができるとされているのは、養子が小学校に上がるまでにそのような親子関係を創設するのが望ましいと考えられたからであります。

 もっとも、今日における発達心理学等の知見によれば、親子関係は子供の年齢によってさまざまに変化するものでありまして、ある程度年長の子供でも、養親との間で年齢に応じた実質的な親子関係を築くことはできるとされているところであります。

 そうすると、今回の改正後も、養親と養子との間に実親子間と同様の実質的な親子関係を創設することによって養子に家庭的で安定した養育環境を提供するという、この特別養子制度の趣旨、目的は特に変わるところはないというふうに考えております。

山本(和)委員 ありがとうございます。

 続いて、この特別養子制度について、近年、子供の最善の利益のためには、出自に関する告知が必要であるというふうにも考えられています。上限年齢を十五歳に引き上げれば、養子となる者は、自分の出自を十分に理解した上で特別養子となることが望ましいのではないかなと思いますけれども、その上で、普通養子の未成年縁組ではなくて、実親との縁を絶つという特別養子縁組を必要とするのはどのような場合であるのか、法務省に伺いたいと思います。

小野瀬政府参考人 お答えいたします。

 特別養子縁組が必要となるケースとしてはさまざまなものがございまして、一概にお答えすることは困難でございますが、特別養子縁組がもともと、わらの上からの養子等を念頭に創設されたものであることからいたしますれば、例えば、実親が低年齢で子供を出産して、みずから養育することができないため施設に預けられた子供について養子縁組をする場合などが典型的なケースとして考えられます。

 また、この法律案では特別養子縁組の原則的な対象年齢を十五歳未満にまで引き上げることとしておりますので、改正後でございますが、例えば、子供が小学生や中学生になった後、実親から日常的に虐待を受けるなどして実親による適切な監護が期待できなくなるに至った、こういったようなケースについても特別養子縁組の対象となり得るものと考えられます。

山本(和)委員 ありがとうございます。

 特別養子縁組となる者の上限年齢を引き上げることは、養親との生活に不適応を起こすリスクもあるというふうにも思います。そのためにも、特別養子縁組の成立後も、養親や特別養子へのさまざまな支援を行う必要があると思います。そして、適切な支援をするためには、当事者である養親や特別養子のニーズに応じた仕組みづくりも必要なのではないかなというふうにも思います。

 現行制度において、特別養子縁組成立後の養親や養子に対して、それぞれ、どのような支援を行っているのか、これは厚労省の方からお聞きしたいと思います。

藤原政府参考人 お答え申し上げます。

 虐待を受けたなどの事情により親元で暮らせない子供たちもできる限り家庭的な環境で育つことができるようにしていく、これは非常に重要なことでございます。

 厚生労働省といたしましては、平成二十八年の児童福祉法改正によりまして定められました家庭養育優先原則を徹底するため、里親委託の推進や児童養護施設の小規模化等に取り組んでいるところでございます。

 この取組の一つといたしまして、家庭復帰が困難な子供たちに永続的に安定した養育環境を提供するため、特別養子縁組の利用促進にも厚生労働省として取り組んでいるところでございます。

 平成二十八年の児童福祉法改正では、養子縁組成立後も含めた養親、養子への相談援助を都道府県の業務というふうにして、法律上明確に規定をいたしまして、児童相談所での取組を強化しております。また、民間のあっせん機関を通じて養親子となる家庭についても、昨年四月に施行されました養子縁組あっせん法において、養子縁組成立後も相談支援を行うよう努めるというふうに規定をされてございます。

 厚生労働省といたしましては、こうした取組を補助する補助事業もやっておりますので、補助事業の実施などによりこれを支援しており、引き続き養子縁組にかかわる親子を支援してまいります。

山本(和)委員 ありがとうございます。

 今、現状の支援体制について伺いましたけれども、この法案が成立した後、当事者のニーズに沿った支援体制を構築するためには、そのニーズを酌み取っていくことが必要であると思います。

 今回、養子となるべき者の上限年齢を六歳未満から十五歳未満への引上げということで、そこにも新たなニーズが生じるのではないかなというふうには思います。そのニーズをどのように把握しようとしているのか。また、厚労省が中心となっておまとめになった新しい社会的養育ビジョンの示している親そして養子の支援体制とはどのようなものなのか、教えていただければと思います。

藤原政府参考人 お答え申し上げます。

 厚生労働省では、平成二十九年の八月に、委員から御紹介いただきましたように、新しい社会的養育ビジョンを検討会において取りまとめていただきました。この中で、「児童相談所と民間機関が連携した強固な養親・養子支援体制を構築し、養親希望者を増加させる。」というふうなことが盛り込まれているところでございます。

 このビジョンを受けまして、平成二十八年改正後の児童福祉法に定められた家庭養育優先原則を徹底するため、都道府県社会的養育推進計画策定要領を国の方からお示しをいたしまして、各都道府県に社会的養育推進計画を今年度中に策定をいただくようにお願いをしているところでございます。

 厚生労働省といたしましては、養子縁組に関する自治体の計画策定と実行をさまざまな形で支援をしていきたいというふうに思っております。

 まず第一に、児童虐待防止対策体制総合強化プラン、これは昨年の年末に策定をいたしましたものでございますが、これに基づきまして、児童福祉司を二千人程度増員をし、その中で里親養育支援児童福祉司を新たに配置をすること、また、児童相談所職員向けの研修におきましても養子縁組に関する内容を更に充実をさせること、養子縁組の民間あっせん機関との連携を予算事業などを通じまして促進をしていくこと、こういった形で支援をしてまいりたいと思っております。

 都道府県社会的養育推進計画につきましては、国として、都道府県の進捗状況を毎年度把握、評価、公表し、必要な支援策を検討していくということとしておりますので、こういった枠組みの中でしっかり対応してまいりたいと思います。

山本(和)委員 ありがとうございます。

 私は、やはり、できるだけ家庭的養育環境で子供たちを育てる必要があるというふうに思います。

 厚労省の児童虐待対応における司法関与及び特別養子縁組制度の利用促進の在り方に関する検討会というのの調査では、公的な責任として社会的養護を行う必要がある保護者のない児童、被虐待児など家庭環境上養護を必要とする児童は、約四万五千人いるというふうにしております。その四万五千人について、新しい社会的養育ビジョンでは、どのような視点で、どのような施策を講じようとなさっているのか。その内容、今後の施策の見通しなどを教えていただければと思います。

藤原政府参考人 お答え申し上げます。

 御指摘いただきました新しい社会的養育ビジョンでは具体的な数値も提示をしているところでございまして、例えば、三歳未満についてはおおむね五年以内、それ以外の就学前の子供につきましてはおおむね七年以内に里親委託率七五%以上を実現をすること。ちなみに、現在の里親委託率は一九・七%でございます。それから、第二といたしまして、おおむね五年以内に現状の約二倍である年間一千人以上の特別養子縁組の成立を目指すことなどが示されたところでございます。

 政府の方では、この検討会で取りまとめていただいたビジョンに基づきまして、各都道府県に社会的養育推進計画策定要領を示しているところでございます。具体的には、都道府県における社会的養育全体の体制整備の基本的な考え方ですとか、里親への委託の推進に向けた具体的な取組の内容、特別養子縁組等の推進のための支援体制の構築、こういった点について盛り込んだ計画を今年度中に策定いただくということでお願いをしているところでございます。

 国の方でも、各都道府県の計画策定を支援をするとともに、策定後、計画の進捗状況をしっかり把握をして、その上で、またさらなる必要な支援策についても検討するという枠組みで支援を図ってまいりたいというふうに思っております。

山本(和)委員 ありがとうございます。

 厚生労働省さんの方で今御説明があったような施策を講じるためには、担う専門性の高い人たち、それの育成も必要であると思いますし、また、そのためには国による予算措置も必要であるのかなというふうにも思います。各児童相談所が児童虐待への対応などで多忙をきわめている中、人材の育成については時間も費用もかかると思います。

 厚生労働省においては、このビジョンが達成できるように、予算措置も含めてしっかり取組を進めていただきたいとも思いますし、今おっしゃられました、おおむね五年以内に約二倍である一千人の特別養子縁組の成立を目指すというふうにおっしゃいましたけれども、先ほど申し上げました、児童虐待など家庭環境上養護を必要とする児童四万五千人の中で、目標の一千人以上というのが果たして恵まれない子供たちをケアするに足りていると思うのか、そのあたり、厚生労働省からお聞きしたいと思います。

藤原政府参考人 お答え申し上げます。

 まず、社会的養育ビジョンで示している、現状の二倍である年間一千人以上の特別養子縁組の成立という目標でございます。

 現行、ここ数年、五百人、六百人ぐらいということで推移をしているわけでございますけれども、現状の約二倍ということを日本全体のマクロの目標として国としては設定をしているということでございます。

 この数字が多いか少ないかということを一概に私ども、申し上げることはしにくいんですけれども、まずは、やはり現状の特別養子縁組をとにかく利用を促進をする、必要なお子さんのもとにそれが利用できるように届けるということが重要かと思っておりまして、先ほど来御答弁申し上げておりますが、都道府県の社会的養育推進計画、今年度中につくっていただくようにお願いしているわけでございますが、その計画の中で、今回の民法改正による特別養子縁組の見直しにも留意をしつつ、検討対象となる子供の数をまずは把握をしていただくということをお願いをしておりまして、その上で十分なアセスメントとマッチング等を行っていただいて、特別養子縁組によるパーマネンシー保障を優先して検討するということを都道府県に対して明示して求めているところでございます。

 また、民間あっせん機関につきましても、養子縁組あっせん法に基づく適正化と業務の質の向上を図りまして、養子縁組民間あっせん機関助成事業という予算事業がございます。こちらについても今年度予算でも拡充を図っているところでございますので、こういった支援策も活用しながらしっかりと進めていきたいと思っておりまして、特別養子縁組のより一層の活用を促していく観点から縁組の利用促進を目指してまいりたいというふうに思っております。

山本(和)委員 ありがとうございます。

 ぜひ、その利用促進、進めていただきたいと思います。

 ちょっと質問の視点を変えますけれども、平成二十八年五月十八日の厚生労働委員会における児童福祉法改正案の審査に当たり、当時の塩崎厚労大臣が委員会の答弁の中でおっしゃっているのは、例えばドイツでは、法律ではないけれども就学前の施設入所はしないという方針だ、イギリスに至っては、小学校の六年生まで施設には入れない、こういうことが原則となっているというふうに御答弁されています。

 一方、日本では、先ほどの家庭環境上養護を必要とする児童は約四万五千人、そのうち里親に委託されている児童は、平成二十九年度、約一三%ということでございます。ドイツやイギリスと違って日本では施設で集団生活を送っている児童が圧倒的に多いということなんですが、それはなぜだと考えているのか、厚労省からお考えをお聞きしたいと思います。

藤原政府参考人 お答え申し上げます。

 委員御紹介いただきましたように、里親やファミリーホームへの委託率につきましては、我が国でも年々着実に増加はしております。二十八年度では一八・三%、直近のデータである平成二十九年度では一九・七%というふうになっているわけでございますが、ただ、御指摘のとおり、欧米主要国に比べまして、日本は施設養護の割合が高い現状になっているということも事実でございます。

 日本において施設養護の割合が高くなっている理由といたしましては、終戦直後に、身寄りのない子供について、現在の児童養護施設が中心となって受け入れてきたという歴史的な経緯もあるというふうに承知をしております。

 ただ、一方で、虐待を受けたなどの事情によりまして親元で暮らせない子供たちが、できる限り家庭的な環境で育つことができるようにしていくということは非常に重要でございます。厚生労働省としては、平成二十八年の児童福祉法改正で定められました家庭養育優先原則を徹底をするため、児童養護施設等の小規模かつ地域分散化を進めるとともに、里親委託の推進や特別養子縁組の利用促進に努めているというところでございます。

 先ほど来御答弁申し上げておりますが、現在、都道府県に対しまして、こうした施策をしっかり推進していくための計画を今年度中に策定をいただくようにお願いをしているところでございますので、こうした都道府県での計画の策定状況も把握をしながら、しっかり引き続き支援をしてまいりたいというふうに考えております。

山本(和)委員 ありがとうございます。

 私が先ほど申し上げた割合からいいましても、まだまだ、満足に家庭的な環境で育つことができない子供もいる、家庭的な環境で育つことができている子供たちが少ない、割合的には少ないのではないかなというふうに思います。より多くの子供たちが家庭的な環境で育つということができるように、社会的養育ビジョンの実現にも大いに期待をしていきたいと思います。

 一方で、先ほど海外のお話もいたしましたけれども、海外の取組も日本の制度を見直していく上で必要になっていくのではないかと思うんです。

 例えばイギリスでは、養子縁組に関する支援の制度が発達している、その中でも、ポスト・アダプション・センターという養子縁組の支援機関が有名であるということでございます。ポスト・アダプション・センターは、養子縁組後の養子、養親、実親への直接的なサポートに加えて、ソーシャルワーカーや学校の教員、その領域にかかわる専門職を対象とした研修会も行っているということでございます。

 その活動を紹介されて、大事だなと思ったのは、特に養子縁組される子供については、その多くがネグレクト、虐待や家族の機能不全を経験している、年齢も平均すると四歳程度ということになりまして、繰り返されるトラウマや喪失を経験しているということでございます。このような経験によりまして、養子縁組後、家庭や学校や地域でさまざまな情緒的問題、そして人間関係上の問題、行動上の問題、そういう問題を生じることが多くて、子供と家族へのサービスとして、それらに応じた助言やカウンセリング、トレーニングなど多様なサービスを提供しているということでございます。

 特に、子供たちが通う学校にトレーナーというものを派遣して、心理的ケアをする方法や偏見を取り除く講習を行っているということが印象的なお話だったんですけれども、ぜひ御参考にしていただければと思いまして、御紹介させていただきました。

 子供の出自を知る権利について、引き続き伺います。

 厚生労働省の社会保障審議会児童部会新たな子ども家庭福祉のあり方に関する専門委員会では、特別養子縁組制度の利用促進のために必要な措置として、子がみずからの出自を知ることは、人が成長していく上で重要な過程であり、権利性も認められる。特別養子縁組が成立した後でも、できる限りみずからの出自を知る権利を保障することは、子供の福祉を図る上で極めて重要である。そこで、特別養子になった子供が、将来、養子縁組に至った事情などを知ることができるようにするために、行政機関が保有する記録保管のあり方、保存期間、子供が当該記録にアクセスする仕組みを明確にすべきであるというふうな提言をされています。

 子の出自を知る権利について、大臣がどのようにお考えなのか、伺いたいと思います。

山下国務大臣 特別養子制度は、実父母との法律上の親子関係を終了させるものであります。しかし、一方で、養子となった者にみずからの出自を知る機会を与える必要があるのではないかという議員の問題意識は重要であると考えております。

 現行法のもとでは、特別養子縁組の成立の審判が確定し、その届出がなされますと、養子は、実親の戸籍から除籍され、養親の戸籍に入籍されます。その際に、養子の続き柄は、例えば長男又は長女のように、実子と同様の記載がなされます。しかしながら、養子の身分事項欄に民法八百十七条の二による裁判確定日等が記載されるため、当該養子が特別養子であることを知る手がかりは残されている記載になっております。

 そして、養子は、実親の戸籍から除籍された後も、その実親の戸籍を閲覧することができることから、実親の氏名等を知ることができることとされておりまして、それをよすがとして見るような配慮もされているところでございます。

 特別養子縁組につきましては、全件が家庭裁判所の審判手続を経ることとされておりまして、家庭裁判所に記録がある限りは、その記録の閲覧、謄写等の申立てをすることができるということにもなっておりますので、これは裁判官が申立てを相当と認める必要がありますが、裁判官が申立てを相当と認めた場合には、これを通じて実親の氏名等を知ることができるということになっております。

山本(和)委員 ありがとうございます。

 先ほど申し上げた記録の件ですけれども、私は、現状では、行政機関の保管のあり方、保管の期間について、子供が当該記録にアクセスする仕組みというのが不十分ではないかというふうにも思います。というのも、昨今、児童相談所の記録の引継ぎの問題もいろいろありました。

 そこで、裁判所の審判書や調査官の記録など、保存期間はどれぐらいあるのか、お伺いをしたいと思います。

村田最高裁判所長官代理者 お答え申し上げます。

 特別養子縁組の審判事件記録の保存期間自体は五年間でございますけれども、特別養子縁組を認める審判書の原本につきましては、より長い保存期間が定められておりまして、記録から分離をして、審判確定の日から三十年間保存することが義務づけられております。

山本(和)委員 ありがとうございました。

 今回、約三十年ぶりに特別養子制度を見直すということでございますけれども、子供によりよい養育環境を与えていただけるように、しっかりと取組を進めていっていただきたいと思います。

 そのことを申し上げて、終わらせていただきます。

葉梨委員長 以上で山本和嘉子君の質疑は終了いたしました。

 次回は、来る二十二日水曜日午前八時五十分理事会、午前九時委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。

    午後二時二十三分散会


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