衆議院

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第2号 令和2年11月13日(金曜日)

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令和二年十一月十三日(金曜日)

    午前九時三十分開議

 出席委員

   委員長 義家 弘介君

   理事 伊藤 忠彦君 理事 稲田 朋美君

   理事 奥野 信亮君 理事 宮崎 政久君

   理事 山田 賢司君 理事 稲富 修二君

   理事 階   猛君 理事 大口 善徳君

      井出 庸生君    井野 俊郎君

      大塚  拓君    神田  裕君

      黄川田仁志君    国光あやの君

      小林 鷹之君    武井 俊輔君

      出畑  実君    中曽根康隆君

      野中  厚君    深澤 陽一君

      藤原  崇君    宮澤 博行君

      盛山 正仁君    八木 哲也君

      山下 貴司君    吉野 正芳君

      池田 真紀君    寺田  学君

      中谷 一馬君    松平 浩一君

      屋良 朝博君    山花 郁夫君

      浜地 雅一君    藤野 保史君

      串田 誠一君    高井 崇志君

    …………………………………

   法務大臣         上川 陽子君

   法務副大臣        田所 嘉徳君

   文部科学副大臣      高橋ひなこ君

   厚生労働副大臣     三原じゅん子君

   法務大臣政務官      小野田紀美君

   文部科学大臣政務官    鰐淵 洋子君

   最高裁判所事務総局家庭局長            手嶋あさみ君

   政府参考人

   (内閣官房内閣審議官)  梶尾 雅宏君

   政府参考人

   (内閣法制局第一部長)  木村 陽一君

   政府参考人

   (内閣府男女共同参画局長)            林  伴子君

   政府参考人

   (内閣府日本学術会議事務局長)          福井 仁史君

   政府参考人

   (警察庁長官官房審議官) 檜垣 重臣君

   政府参考人

   (警察庁長官官房審議官) 猪原 誠司君

   政府参考人

   (法務省大臣官房政策立案総括審議官)       竹内  努君

   政府参考人

   (法務省大臣官房司法法制部長)          金子  修君

   政府参考人

   (法務省民事局長)    小出 邦夫君

   政府参考人

   (法務省刑事局長)    川原 隆司君

   政府参考人

   (法務省矯正局長)    大橋  哲君

   政府参考人

   (法務省人権擁護局長)  菊池  浩君

   政府参考人

   (出入国在留管理庁次長) 高嶋 智光君

   政府参考人

   (文部科学省大臣官房審議官)           蝦名 喜之君

   政府参考人

   (文部科学省大臣官房審議官)           森  晃憲君

   政府参考人

   (厚生労働省大臣官房審議官)           度山  徹君

   政府参考人

   (厚生労働省雇用環境・均等局雇用環境総合整備室長)            岸本 武史君

   法務委員会専門員     藤井 宏治君

    ―――――――――――――

委員の異動

十一月十三日

 辞任         補欠選任

  小林 鷹之君     宮澤 博行君

  山下 貴司君     八木 哲也君

同日

 辞任         補欠選任

  宮澤 博行君     小林 鷹之君

  八木 哲也君     山下 貴司君

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 政府参考人出頭要求に関する件

 裁判所の司法行政、法務行政及び検察行政、国内治安、人権擁護に関する件


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     ――――◇―――――

義家委員長 これより会議を開きます。

 裁判所の司法行政、法務行政及び検察行政、国内治安、人権擁護に関する件について調査を進めます。

 この際、お諮りいたします。

 各件調査のため、本日、政府参考人として内閣官房内閣審議官梶尾雅宏君、内閣法制局第一部長木村陽一君、内閣府男女共同参画局長林伴子君、内閣府日本学術会議事務局長福井仁史君、警察庁長官官房審議官檜垣重臣君、警察庁長官官房審議官猪原誠司君、法務省大臣官房政策立案総括審議官竹内努君、法務省大臣官房司法法制部長金子修君、法務省民事局長小出邦夫君、法務省刑事局長川原隆司君、法務省矯正局長大橋哲君、法務省人権擁護局長菊池浩君、出入国在留管理庁次長高嶋智光君、文部科学省大臣官房審議官蝦名喜之君、文部科学省大臣官房審議官森晃憲君、厚生労働省大臣官房審議官度山徹君及び厚生労働省雇用環境・均等局雇用環境総合整備室長岸本武史君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

義家委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

義家委員長 次に、お諮りいたします。

 本日、最高裁判所事務総局家庭局長手嶋あさみ君から出席説明の要求がありますので、これを承認するに御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

義家委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

義家委員長 質疑の申出がありますので、順次これを許します。稲田朋美君。

稲田委員 おはようございます。自由民主党の稲田朋美です。

 上川大臣におかれましては、三度目の法務大臣、まことにおめでとうございます。今までも圧倒的な安定感で法務大臣としての職責を果たされてきたことに、深く敬意を表したいと思います。また、先ごろの所信において、誰も取り残さない社会の実現を目指すと強く宣言されたことに共感を覚えております。

 まずは、性犯罪の刑法改正についてお伺いをいたします。

 平成二十九年に刑法改正されまして、強姦罪の構成要件及び法定刑の見直しや、監護者わいせつ罪及び監護者性交等罪の新設等の改正が実現をいたしました。附則九条で三年目途の検討となって、ことしがその三年の目途でございます。

 昨年の三月に無罪判決が四つ出まして、そのうち二つは逆転の有罪判決、そしてその一つは最高裁で確定をいたしております。一審判決が余りにも一般常識とかけ離れているのではないかという批判もあり、大きな議論が巻き起こったわけであります。

 大臣にお伺いをいたします。

 刑法百七十七条、強制性交等罪の暴行、脅迫の要件、そしてまた百七十八条の抗拒不能要件について、余りにも厳し過ぎる、若しくは抽象的過ぎて、最高裁の判示に、最高裁で要件に当てはめてもばらつきが出ている。この要件を緩和するとか、また、ばらつきがないように、諸外国のように具体例を追加するとか、改善する必要があるのではないかと思います。そのほか、百七十九条の監護者わいせつ及び監護者性交等罪についての監護者の範囲を、やはり今の狭いものではなくて力関係の上下関係といったものに広げますとか、同意年齢の引上げ、公訴時効の停止若しくは撤廃等々も議論をすべきだと思いますけれども、今の検討状況、そしてその方向性についてお伺いいたします。

上川国務大臣 おはようございます。

 冒頭に、三度目の法務大臣ということでおっしゃっていただきましたけれども、私自身、一回目、二回目、それぞれ全力で投球をしてまいりました。三回目も、気持ちを新たに、フレッシュな気持ちで、初心の中で頑張ってまいりたいと思います。よろしくお願い申し上げます。

 また、誰一人取り残さない社会というのは、国連のSDGs、持続可能な開発目標ということで大きなコンセプトに挙げられている世界共通の理念であります。その趣旨の中でも、とりわけ性犯罪、性暴力の被害を受けた方々の人権の問題については、極めて大きな問題であるというふうに思っております。

 これから三年間を集中期間として対応していくということが決められたわけでございまして、今、法務省におきましては、性犯罪に関する刑事法検討会におきまして、被害者の方にも入っていただきながら検討を進めているところでございます。

 今、委員から御指摘されました、これまでの改正の積み残しの問題、また、さらに、先ほど少し挙げていらっしゃいましたけれども、例えば学校の教師と子供との関係の中のこうした問題につきましても最近極めて強いクローズアップをされているところでございまして、こうしたことにつきまして、処罰規定、どういう形で設けるかということについても議論が行われているというふうに思っております。

 性犯罪に係る刑事法のあり方の検討はまさに喫緊の課題でございますので、スピード感を持って、何としても充実した御議論をした上での対応を期待しているところでございます。

稲田委員 大臣は、党においては司法制度調査会長、そしてまた、この問題の議連の会長としてもずっと取り組んでこられ、提言もなされておりました。私が共同代表を務めております女性議員飛躍の会でも、森まさこ大臣に、この性犯罪の刑法改正について提言をしているところでございます。

 今、大臣おっしゃいましたように、スピード感を持って、また、たくさんの論点がございますので、もし切り分けられるものがあれば、ひとつ早目に、できるものがあれば実現をしていただきたいと思います。

 大臣も触れられた学校現場のことについて、きょうは高橋ひなこ文科副大臣にも来ていただいておりますので、御質問をいたします。

 平成三十年度の教育現場の懲戒処分等の状況で、わいせつ行為等で懲戒処分を受けた者は二百八十二人、平成二十九年の二百十人から増加をいたしております。このわいせつ行為をした教員、職員全て、全て刑事告発をしているというわけではございません。ある調査によりますと、告発して刑事手続がとられているのはわずか六%ということでございます。

 性犯罪は、これは親告罪ではなく、また、公務員については刑訴法二百三十九条二項において告発義務があるわけでございます。学校現場で性暴力、性犯罪が行われた場合、告発を義務づけるべきだと思いますが、副大臣の御見解をお伺いいたします。

高橋副大臣 御質問ありがとうございます。

 児童生徒を守り育てる立場にある教師が児童生徒に対してわいせつ行為を行うというのは、言語道断で、決して許されるものではありません。

 わいせつ行為等に関する教育委員会などによる告発の状況について、被害者の意向や、犯罪に当たると判断しなかったことなどから、必ずしも全ての事案に適正な告発が徹底されていない実態というのは承知しております。

 こうしたことも踏まえて、文部科学省では、公務員には告発の義務があること、警察機関等と連携して厳正に対応すること、被害者が告訴しない場合でも告発する必要があることなどについて、各教育委員会に通知をしてきました。また、本年六月に決定された性犯罪・性暴力対策の強化の方針において、告発を遺漏なく行うことについて明記されたことも踏まえて、各教育委員会の人事担当者を集めた研修会で、その趣旨を改めて周知をさせていただきました。

 今後は、適正に告発が行われなかった事例も紹介をしながら、告発を遺漏なく行うことについて、しっかりと周知徹底を図ってまいります。

 御質問ありがとうございます。

稲田委員 告発もそうでございますし、また、教員の免許状の管理の厳格化ということも必要でございます。そういった点もぜひお願いをしたいと思います。

 また、教師が教師をいじめるという、あり得ないような事件も起きたわけですけれども、いじめもそうです、またこの性暴力もそうなんですが、学校という現場があることによって発見がおくれたり、また、犯罪の温床になるというようなことがあってはいけないというふうに思います。犯罪を守るというようなことになってはいけないと思うわけであります。特に、学校現場において、先ほど大臣おっしゃいました、子供が性被害の対象になるということがあってはいけない、そういった上下関係のもとで、生徒と先生との上下関係のもとでそういう被害があるということは絶対に許されないというふうに思います。

 刑事事件、しっかりと告発をして、犯罪行為、真相を明らかにすべきだと思いますし、また、子供にかかわる仕事につくような場合は、そういった犯罪歴の調査を受けるとか、犯罪歴がないことの証明が要るとか、そういったことも私は必要になってくると思います。そういった点について、上川大臣の御見解をお伺いいたします。

上川国務大臣 性犯罪、性暴力でございますが、被害者の尊厳を著しく侵害し、その心身に長年にわたりまして重大な苦痛を与え続けるものでありまして、決して許されるものではございません。

 子供のときのそうした被害は大人になるまで黙っていざるを得ないということも明らかになっていることでございますので、子供のときにそのことの事実をしっかりと表に出せる環境をつくっていくということも、あわせて極めて重要であるというふうに思っております。

 先ほど委員から御指摘いただきました、学校が犯罪の温床になってはいけないという御指摘がございましたが、まさに学校の教師等による子供の性被害につきましては、子供にとりまして教師等に抵抗することは自分の居場所を失うことにつながる、こういう指摘もなされているところでございます。

 また、教師等がその立場や子供の脆弱性を悪用して性的行為に及ぶこと、このこと自体は、あってはならない言語道断の行為であるというふうに思っております。

 先ほど申し上げたとおり、法務省におきましては、現在、性犯罪に関しまして刑事法検討会を開催をしておりまして、今御指摘の点につきましても検討すべき論点の一つであるということでございまして、教師あるいはスポーツの指導者等が、その影響力があることに乗じまして性的行為をした場合の処罰規定を設けるか否かにつきましても、議論が行われている状況でございます。

 このことにつきましても喫緊の課題であると認識をしておりますので、スピード感を持って充実した御議論をしっかりと行っていただきたいと、大きな期待を寄せているところでございます。

稲田委員 ぜひよろしくお願いいたします。

 さて、今回のコロナで最も影響を受けたのは、やはり女性、そしてまた立場の弱い一人親の女性ということだと思います。

 そんな中で、直近の一人親世帯調査は平成二十八年ですが、母子家庭で、養育費について文書で取決めをしているのはわずか三一%、養育費の支払いを受けているのは二四%。世界で最低レベルなんです。OECD三十三カ国の中で、一人親の相対的貧困率、日本は最下位なんです。私、これは先進国として物すごく恥ずかしいことであり、これは政治の責任としてしっかりと見ていかなければならないと思っております。

 この養育費に関しましても、例えば、取決めはなくても自動的に一定額を相手に請求できるセーフティー養育費額制度や制裁の強化、また立てかえ払い制度など、諸外国の仕組みを参考とした我が国の独自の仕組みづくりが必要だと思うんですけれども、この制度的課題に関する現在の検討状況について、まず民事局長にお伺いします。

小出政府参考人 お答えいたします。

 養育費の不払い問題につきましては、自民党女性活躍推進本部で検討が進められた結果、ことしの五月に、養育費不払いの速やかな解消に向けた提言が取りまとめられ、六月四日に法務大臣に御提出いただいたところでございます。

 その中では、協議離婚に際して、養育費の取決めを原則義務化した上で、話合いができない事情があるときは、養育費の取決めができなくても協議離婚はでき、この場合に、子の年齢等によって自動的に定まる額を請求できるセーフティー養育費額制度を導入することや、義務者の自発的な支払いを促すために、悪質な不払いの制裁強化を検討することなど、養育費制度にかかわる幅広い提言がされております。

 法務省では、現在、養育費に関するこれらの制度的課題につきまして、省内の有識者会議であります養育費不払い解消に向けた検討会議、それから、法務省、厚生労働省の担当官による不払い養育費の確保のための支援に関するタスクフォースで検討を進めているほか、家族法研究会に法務省の担当者が参加して議論に加わっております。

 そして、先ほどの御提言も踏まえまして、例えば、法務省の養育費不払い解消に向けた検討会議におきましては、協議離婚の際に取決めがなくても当然に養育費額が定まる制度、また、養育費の支払いの場合の制裁強化策、また、公的機関が立てかえ払いにより支援を行う方策等が検討課題として掲げられておりまして、幅広い検討が進められているところでございます。

 法務省といたしましては、養育費の不払いの解消に向け、引き続き、これらの検討体制において充実した検討を行ってまいりたいと考えております。

稲田委員 ぜひ、喫緊の課題ですので、スピード感を持って法務省におかれて検討して、そして結果をまず出していただきたいというふうに思います。

 次に、小野田政務官にお伺いをいたします。

 先ほど民事局長がおっしゃいました党の女性活躍推進本部の取りまとめですけれども、これは小野田政務官が本当に熱意を込めて議論をされて、そして取りまとめに尽力をされてこられました。また、国会での御質問でも、養育費のために裁判手続をとらなければならない一人親の負担を軽減する観点から、住基ネットの活用など問題提起をされてきたところです。

 確かに、必ずしも大きな金額ではない養育費の支払いを求める一人親が本人で裁判を進めることは、いろいろとハードルがあって難しいというふうに思います。また、離婚した相手に裁判をしようとしても、相手の住所それから財産がわからなければ、調停、強制執行は難しく、断念しかねません。

 ことし四月に民事執行法が改正されましたけれども、一人親にとって裁判手続の負担が抜本的に軽減されるよう、政務官がおっしゃっている住基ネット、それからマイナンバーもおっしゃっていたかと思いますけれども、その活用も考えていくべきだと思いますが、養育費に関する裁判手続の利便性の向上に向けてどのように取り組んでいかれるのか、小野田政務官にお伺いいたします。

小野田大臣政務官 稲田委員、本当にありがとうございます。

 法務省では、現在、先ほど民事局長が答弁したように、家族法研究会における検討に担当者が参加するなど、養育費に関する裁判手続のあり方も含めて制度的に検討を進めているところでございます。

 また、養育費に関する裁判手続、具体的に申し上げますと、公的機関が養育費を支払うべき者の住所を住基ネットの情報に基づいて確認できる制度を設けることによって、権利者による相手方の住所調査、これが負担になって諦めているという方も多いので、この負担を軽減することができないかですとか、また、公示送達制度について、権利者の負担軽減や義務者の手続保障の観点から、より妥当かつ公平な規律は考えられないかといった問題意識を持って、省内の担当部局に必要な調査検討を指示しているところでございます。

 いずれにいたしましても、養育費の取決め、取立てを行う裁判手続をより利用しやすく利便性の高いものにすることというのは、養育費の支払い確保のために大変重要な課題だと私も認識しております。今後とも、各方面の意見を伺いながら、これらの課題についてしっかりと検討してまいりたいと思います。

稲田委員 ありがとうございます。

 本当に政務官がこの問題に非常に取り組んでおられていることに、私も非常に敬意を表します。

 また、マイナンバー制度、せっかくございましても、今回のコロナ禍でも、なぜ日本がこれだけいろいろな支援がおくれたのか。やはり、マイナンバーと情報のひもづけが余りにも少な過ぎる。もちろん、プライバシーの問題もありますし、最高裁の判決もございますけれども、ここからは、やはり今回のコロナの反省を踏まえて、どうすれば申請なくしても早く、本当に困っている人に、そして困っている人だけに十分な支援ができるか、これをマイナンバーと関連づけて検討をしていくべきだというふうに思います。

 次に、夫婦別氏の問題についてお伺いをいたします。

 夫婦別氏、いわゆる選択的夫婦別姓の問題は、ずっと、家族解体運動、また戸籍廃止運動、家族を大切にするか、それとも個人を徹底するか、戸籍をなくすかどうか、そういったイデオロギー論争の象徴として語られてきたと思います。

 我が自民党も、家族解体や戸籍廃止としての、イデオロギー闘争の象徴としてのいわゆる選択的夫婦別姓には反対ということで、その公約を書いたのは法務部会長時代の、野党時代の私でございます。

 ただ、そろそろ、イデオロギーの対立ということではなくて、やはり、結婚によって氏を変えた方、これは今現在、九六%が女性が男性の氏に変えているわけですけれども、その変更した者、多くが女性ですけれども、その不利益をどうするのか。また、いまだに九六%、九七%が女性が男性の氏に変えているという、その公平性のことについての問題の観点から考えるべきときが来ていると思います。

 平成二十七年の最高裁判決は、民法が選択的夫婦別姓を認めていないことが違憲ではないという合憲判決を下したわけでありますけれども、しかし、現行制度は違憲であるという少数意見は五名ございまして、特に女性の最高裁判事三名は全て、立法裁量を超えているという判示をしております。また、多数意見の判示の中にも、国会においてこの問題をきちんと議論すべきであるというメッセージがあるというふうに思います。

 民事局長にお伺いいたしますが、最高裁判決で、この点、どのように言及されているのか、簡潔に説明してください。

小出政府参考人 お答えいたします。

 委員御指摘の平成二十七年の最高裁判決におきましては、夫婦同氏制度を定める民法七百五十条は憲法の十三条、十四条一項、また二十四条のいずれにも違反しないとの結論が示された上で、夫婦同氏制の採用については、嫡出子の仕組みなどの婚姻制度や氏のあり方に対する社会の受けとめ方に依拠するところが少なくなく、この点の状況に関する判断を含め、この種の制度のあり方は、国会で論ぜられ、判断されるべき事項にほかならない旨が判示されたものと承知しております。

 他方で、これも委員御指摘のとおり、この判決では、女性裁判官三名を含む五名の裁判官から、夫婦同氏制を定めた民法の規定は、婚姻の際に夫婦が別の氏を称することを認めないものである点において、個人の尊厳と両性の本質的平等の要請に照らして合理性を欠き、国会の立法裁量の範囲を超え、憲法第二十四条に違反する旨の意見が示されたものと承知しております。

稲田委員 林男女共同参画局長に伺います。

 日本では、通称拡大ということで、通称の拡大が進んでいるわけでありますけれども、しかし、通称はあくまで通称で、法的な裏づけがなく、特に海外では、法的な裏づけのない通称ということがなかなか通用しないという場面もございます。

 男女共同参画局ではパブリックコメントでいろいろな意見を寄せられておられると思いますので、その主な意見を御紹介いただくとともに、諸外国で、この別氏の問題、そしてまた、法的裏づけのない通称という制度があるのかどうか、そういった点について御説明ください。

林政府参考人 お答え申し上げます。

 現在、内閣府では、第五次男女共同参画基本計画の策定作業を行っておりますが、その策定に当たって行った意見募集では、選択的別氏制度の導入を求める意見が四百件以上寄せられているところでございまして、その中には、旧姓使用を拡大しても対処し切れない支障があり、同制度の導入を求めるという意見が多数ございました。

 具体的な意見としては、大きく分けて三つのタイプがございます。

 一つは、旧姓の使用を拡大しても二つの姓の使い分けが必要であり、企業にとっては二つの姓を管理するためのシステムや事務処理に大きなコストがかかり、本人もさまざまな負担があるなど、本人と企業の双方に大きな負担がかかっていて女性活躍の妨げになっているというのが一つ。

 二つ目として、パスポートでは旧姓併記が可能となっておりますが、夫婦同姓を法律で義務づけているのは日本だけでございますので、国際社会では全く通用せず、海外で種々のトラブルの要因になっているというもの。

 そして三つ目として、一人っ子など、実家の氏を残したいために結婚をためらったり先延ばしたりするなど、少子化の要因にもなっている、こういった意見がございました。

 私どもが承知する限りでは、夫婦同姓を法律で義務づけているのは日本だけでございます。

稲田委員 政府が通称使用を拡大していることで、かなり女性活躍には資するんですけれども、それでもやはり通称である以上限界があるということでございます。

 例えば、あるジャーナリストの女性から聞いたんですけれども、海外で取材をするのにパスポートに括弧書きしてもらうのに、海外で取材をして、それが海外で報道されない限り括弧書きができないとか、実は要件は厳しいわけですし、通称ですと、何回か結婚しておりますと幾つも姓を持つということもございます。

 そういった点を考えますと、実は私、一つ提案がございまして、お手元に添付の資料ですけれども、婚前氏続称制度なんですが、民法の七百六十七条、これは今、婚姻によって氏を改めた者は、離婚すれば、もとの姓に復氏をするわけです。離婚すれば、もとの姓に、氏に復氏をするんですけれども、しかし、届出をすることによって婚姻中の氏を使い続けることができるという制度でございます。これを結婚の場合にも裏返して考えますと、夫婦同氏制度は維持しつつ、婚姻の際にどちらかの氏を選んで同姓に、同氏になりつつも、氏を変えた側の妻若しくは夫が三カ月以内に届出をすることによって、旧姓、すなわち生まれながらの氏を使い続けることができるという制度をつくってはどうか。こういたしますと、通称が法的にも裏づけを持つわけでございます。

 これは一つの案でございまして、これが全てというわけではないんですけれども、やはり私は、もうそろそろイデオロギー論争から脱却をして、そして、最高裁のメッセージにもあるように、議論をしていくべき時期にあるのではないかと思いますが、大臣の見解を伺います。

上川国務大臣 ただいま御質問をいただきまして、また、委員が具体的な提案をなさっていらっしゃるということも承知しているところでございます。希望すれば結婚前の姓を名乗れる選択的夫婦別氏制度の導入の問題ということで、法制審議会が答申した内容もございます。

 この件につきましては、直近、二十九年の世論調査でございますが、結果を見てみましても、まだまだ国民の意見が分かれているというのも現状でございます。容認が四二・五%、通称使用の法制化のみの容認が二四・四%、反対が二九・三%という、こうした数字でございます。五年ごとにやっている世論調査でありますので、少しずつ変化はしているものの、いまだこうした状態があるということについては、やはり国民的な議論をしっかりと踏まえるということが何よりも重要であるというふうに認識をしております。

 夫婦の氏に関する法制度ということでございますが、家族のあり方の根幹にかかわる問題ということで、先ほどの答弁にもございましたとおり、二十七年十二月十六日の最高裁の大法廷判決におきまして、国会で論ぜられるべきということでの指摘もなされているところでございます。国会におきまして議論をしっかりと進めていただきながら、その中で、具体的な制度のあり方を含めまして建設的な議論をしていただくということにつきましては重要なことであるというふうに思っております。

稲田委員 今、大臣から、国会でしっかりと議論を進めていくことが大事だという御答弁をいただきました。やはり固定観念にとらわれずに議論をするということが私は求められていると思います。

 最後に大臣に、大臣は所信の中で、人権侵害の対応の中で、新型コロナウイルスへの差別、偏見の問題、また性的指向、性自認を理由とする差別、偏見について述べられました。

 新型コロナウイルスについては、特に地方では、いわれのない損害賠償を請求されたり、引っ越しを余儀なくされたりということもあります。また、性的指向、性自認、いわゆるLGBTの方々ですけれども、当事者にとっては生きていく上での核であり、不可逆性のものであるにもかかわらず、病気や趣味のように扱われて、つらい思いをしている方々がいらっしゃいます。

 そういった事例について、コロナ差別解消法や、性的指向、性自認についての理解増進法といった立法が私は必要なのではないかなというふうに思います。一般的な人権擁護法案ではなくて、やはり個別法をしっかりとつくっていく、それによって人権を守っていくということが必要だと思いますが、最後にその点についての大臣の見解をお伺いいたします。

上川国務大臣 新型コロナウイルス感染症に関連して、感染者あるいはその御家族に対しまして、誤解や偏見に基づきましての差別は許されないことであると思っております。また、性的指向、性自認に関する理解の欠如に基づく偏見、差別についても、決してあってはならないと考えております。

 御指摘の点でございますが、現在、お尋ねのいろいろな法律の必要性についてはさまざまな御議論がなされているというふうに承知しておりまして、そうした議論の動向につきまして注視をしてまいりたいというふうに思っております。

 私どもの法務省では、人権擁護機関におきまして、人権啓発の充実、適切な相談対応、また人権侵犯事件の調査、救済に取り組んでいるということでございまして、コロナの問題、また性的指向、性自認の問題につきましての差別、偏見、これにつきましても、しっかりとそうした今持っている力をフルに活用して取り組んでまいりたいというふうに思っております。

稲田委員 質問を終わります。ありがとうございました。

義家委員長 次に、大口善徳君。

大口委員 公明党の大口でございます。

 上川大臣、三度目の法務大臣就任、非常に安定感のお仕事ぶり、期待をしております。また、来年、京都コングレスが開催される、大臣が主導してこられたことである。また、SDGsの誰一人取り残さない社会の実現を目指していく、司法外交を展開していく、非常に期待をしております。さらには、やはり今新型コロナ感染症が、また第三波ということも言われております。感染予防、感染拡大対策のさらなるレベルアップを法務省関連施設においてもしていかなきゃいけない。また、法務行政のデジタル化、IT化を力強く推進するということも決意をされているということでございます。私ども、全面的に協力をして、そして大臣が一筆書きキャラバンということで最前線の職員と対話をしながら法務行政に対する国民の信頼を得ていくということについて応援をしていきたい、こう思っておるところでございます。

 それでは、不払い養育費問題の解決の取組についてお伺いさせていただきます。

 我が国の子供の貧困率は一三・五%でありますが、大人が一人の場合の、一人親の世帯は四八・一%。コロナ禍で一人親家庭の子供さんは大変な影響を受けている。

 我が党は、私が座長を務めさせていただいています不払い養育費問題対策プロジェクトチーム、これを設置をしまして、そして九月三日、不払い養育費問題の解決に向けた緊急提言、子供たちの健やかな成長のためにを前法務大臣、そして前厚労大臣にお出ししたところでございます。

 法務省におかれましても、有識者による養育費不払い解消に向けた検討会議、そしてまた、法務省、厚労省が連携した不払い養育費の確保のための支援に関するタスクフォース、そして商事法務研究会の民事基本法制の見直しの観点からの家族法研究会で議論を展開しているところでございます。そして、九月の九日に、この法務省の検討会で中間取りまとめを出されました。我が党の緊急提言も反映されたものと考えております。

 この問題は子供たちを守るための喫緊の課題であることを改めて認識して、養育費がより確実に支払われるよう、運用改善や制度見直しに向けて検討を速やかに進めていただきたいと考えております。

 法務大臣の御見解を賜りたいと思います。

上川国務大臣 父母の離婚後の子の養育に関する問題の一つとしてこの養育費の不払いを解消することについては、子供の生活あるいは未来を守る観点から大変重要な喫緊の課題と認識しております。

 この課題につきましては、御党におきまして、大口座長のもとでプロジェクトチームをしっかり立ち上げていただきながら、御熱心に検討を進めていただき、また、緊急提言をまとめていただきまして前大臣の方にお持ちいただいたということについては、大変敬意を表したいというふうに思っております。

 養育費の不払い問題につきましては、現在、法務省内の有識者の検討会議、また厚労省とのタスクフォースにおきまして、運用改善で対応可能な課題や、そして制度面で対応しなければならない課題ということで、鋭意努力しているところでございまして、特に、法務省の担当者も参加する家族法研究会におきましては、民事法制の観点から幅広く検討が進められているという状況でございます。

 父母の離婚に伴う子供の養育のあり方に関する問題でございますので、チルドレンファーストという視点に立ちまして、しっかりと、また迅速に検討を進めてまいりたいというふうに考えております。

大口委員 制度論を考えますときに、養育費の権利の性質を明確にする必要があると考えております。これまで、監護親の非監護親に対する養育費の請求権、こういう観点であったわけでありますが、これは民法七百六十六条の監護親から非監護親に対する養育費支払い請求権というものを根拠にしていると言われておりますけれども、やはり、これは子供の非監護親に対する養育費請求権や子供の扶養料の請求権というもので、子供のための重要な権利という観点から考える必要があるのではないかと思います。

 そういう点で、民法には、子の非監護親に対する請求権や親の支払い義務について明確に定める規定がありません。養育費の不払い解消に向けた制度見直しを行うためには、まず、前提として、養育費請求権や扶養料請求権が子供の命を守るための極めて重要な権利であって特別の保護に値するものであることを民法上明らかにすべきではないかと考えますが、法務大臣の見解を求めます。

上川国務大臣 御指摘の民法の第七百六十六条でございますが、子の利益の観点から、離婚時に夫婦間で取り決めるべき事項の一つとして、子の監護に要する費用の分担、これを明示しているところであります。また、一般に、親が未成年の子に対して負う扶養義務につきましては、兄弟姉妹等の他の親族に対する扶養義務と比べてもより重い義務として理解されているものでございます。

 しかしながら、御指摘のとおり、民法上は、未成年の子に対する扶養義務につきまして、その重要性に着目した独自の規定がないということでございます。

 この点につきましては、養育費の請求権、また未成年の子の親に対する扶養料請求権につきましては、裁判手続において、現状よりも更に特別な取扱いをすべきであるとの意見もございますが、そのためには、それらの権利が実体法上特別の保護に値するものであることが示されている必要があるのではないか、こうした指摘もございます。そうした指摘も踏まえまして、法務省の担当者も参加しております家族法研究会、養育費請求権等につきまして民法に独自の規定を設けることの是非も検討されているものと承知をしております。

 いずれにしても、養育費の支払いの確保は、子供の健やかな育ち、成長のために極めて重要な課題であると認識しておりまして、しっかりと取り組んでまいりたいというふうに考えております。

大口委員 不払い養育費問題について、離婚時の養育費の取決めがなされていないということが大きな要因であります。稲田委員からも御指摘がありました。

 しかしながら、協議離婚における養育費等に関する調査については、厚生労働省が行っている調査しかなく、法務省はこれまで実態調査を行っていません。我が党では、現在、養育費問題に関する制度論の検討も進めていますが、法務省でも、今後、養育費不払いの解消を始め離婚後の子供の権利をしっかり守っていく観点から、制度面の課題をしっかり検討していただくことになっています。そのためには、エビデンスに基づいた対応策を講じることが重要であり、法務省みずから実態調査を実施すべきであると考えています。

 我が党の緊急提言でも、我が国の離婚の九割を占める協議離婚の実態、協議離婚における養育費の取決めの状況等、また、養育費を支払っていない義務者の生活状況、養育費の不払いが子に与える影響等について速やかな実態調査を実施するよう強く求めています。

 これらを踏まえ、この実態調査、いつまでにどのように取り組んでいくか、法務大臣の御見解をお伺いしたいと思います。

上川国務大臣 家族法制のあり方、その見直しにつきましては、子供に対して極めて大きな影響を与えるものであるということ、また、子供の健やかな成長が阻害されるといった事態が生じることがないように、委員御指摘のとおり、実態に基づくファクトベースの議論というものを進めていくことが必要不可欠であるということについては認識を共有しているものでございます。

 これまで、自治体あるいは当事者団体、支援団体等からヒアリングを実施するなどしてきたところではございますが、委員が座長を務められておられます公明党不払い養育費問題対策プロジェクトチームからも申入れがございました緊急提言の内容の一つが、協議離婚や養育費に関する実態調査ということでございまして、この実態調査の一環として、今年度中の実施に向けまして準備を進めているところでございます。

 子供の目線からの議論、こういったことが何よりも大事ということでございますので、担当者に対しましては、未成年期に父母の離婚を経験した子供の意識に関する調査を指示したところでございます。

 充実した調査を実施してまいりたいと思っております。

大口委員 また、我が党の緊急提言等を受けまして、一人親にとって最も身近な相談窓口である自治体において一人親等に向けた早期の支援、解決を実現できるよう、法的支援の充実を調査分析する自治体モデル事業が、調査研究委託費ということで来年度の概算要求に盛り込まれています。このようなモデル事業を行うことは法務省では初めての試みだと聞いております。

 IT技術を活用したオンラインでの法的支援、ADR、ODRの活用、あるいは裁判所提出書類の作成支援を行う司法書士の活用など、これまで力を入れてこなかった新たな法的支援のあり方について、幅広く実証的な取組を進めていただきたいと考えます。

 このモデル事業の検討状況についてお伺いしたいと思います。

小出政府参考人 お答えいたします。

 委員御指摘のとおり、養育費の不払い問題について、自治体における効果的な支援のあり方に関しまして、モデル事業の実施を通じた調査研究委託事業が法務省の令和三年度概算要求に盛り込まれております。

 この事業は、公明党の、御指摘の緊急提言におきまして、地方自治体の窓口への法律専門家等の配置やITツールを活用した相談支援、あるいは、地方自治体の窓口と連携した認証ADR機関、弁護士、司法書士等による紛争解決支援といった、法的支援充実に向けた調査研究をするための自治体モデル事業を実施することといった御提言をいただいたことも踏まえまして、法務省として初めて概算要求に盛り込んだものでございます。

 法務省といたしましては、養育費の取決めに向けた法的支援や紛争の解決策のあり方に関する課題や、養育費の支払い確保のために自治体が行っている先進的で実証的な取組等を調査分析することを検討しているところでございまして、効果的な調査分析方法等について引き続き検討してまいりたいと考えております。

大口委員 次に、現在、実務において参考とされている養育費の算定表の水準というものは一人親には使いにくいものであります。

 我が党の緊急提言でも、法務省において、当事者の利便性の観点から、双方の収入や子供の人数等を入力すれば自動的に標準的な養育費額が算定される計算ツールを作成し、公開することを提案し、その際、そこで算定された金額が上限であるとの誤解をされないように配慮すべきことも付言をしております。

 このような提言を踏まえて、一人親が使いやすい養育費に関する計算ツールを作成し、公開することについてお伺いしたいと思います。

小出政府参考人 お答えいたします。

 養育費算定の目安として、家裁実務を担当する裁判官が研究した成果である養育費の算定表、これが実務に広く定着して、裁判所のホームページでも公開されていると承知しております。こういった現状を踏まえまして、委員が御指摘の緊急提言におきまして、養育費算定表についての自動計算ツールの提供等を検討すべきであるといった御指摘をいただいております。

 この点は、法務省の養育費不払い解消に向けた検討会議におきましても、本年九月の中間取りまとめの中で、「ひとり親でも支払われるべき養育費の水準把握が容易となるよう、法務省ホームページ等において、養育費自動計算ツールの提供を開始するなど情報提供を充実させるべき」とされたところであり、法務省としても問題意識を持って検討しているところでございます。

 もっとも、現行の算定表につきましては、示されている金額に幅があり、また、あくまで目安を示すものであることから、この表を自動計算ツールとして提供するに当たって、検討すべき課題もあるところではございます。

 養育費の不払いを解消する観点から、父母間での養育費の取決めが円滑に進められることが重要であると考えておりまして、こういった観点から、引き続きこの点についても検討を進めてまいりたいと考えております。

大口委員 また、法テラスの養育費の問題についての役割が大事である、こういうふうに考えております。

 そういう点で、一つは、シングルマザーなど、法テラスにおいて法律相談援助を利用する際、養育費等の問題に精通した弁護士との相談が容易となるよう、法テラスと弁護士会とが連携して、法テラスの契約弁護士名簿に専門分野や相談対応時間などの記載情報を充実させるなど、取組を進めるよう求めています。

 また、二つ目に、養育費を含む家事事件について利用者目線に沿った対応が可能となるように、日弁連、弁護士会、法テラス等が連携し、法テラスの契約弁護士及び常勤弁護士に対する養育費を含む家事事件の研修の実施を検討するよう求めています。

 この二つの取組を確実に実施するよう、法務省におかれては、これからどう対応していくのか、お伺いしたいと思います。

金子政府参考人 お答えいたします。

 二つの取組について御質問いただきました。まず、契約弁護士名簿の記載の点ですが、法テラスでは、既に一部の地方事務所において取扱分野や相談対応時間、夜間、休日の対応の可否などを記載した契約弁護士名簿を公表しているところでございます。利用者の利便性を向上させるためにも、そうした情報を利用者に提供するための取組を更に進めていく必要があるものと認識しております。

 一方で、法テラスの契約弁護士名簿の記載情報を充実させるためには、各地の弁護士会や契約弁護士等の理解、協力が不可欠でございます。利用者のニーズに応え、より一層利用者に寄り添った法的支援を提供できるよう、法テラスとともに各地の弁護士会等と協議し、現在の契約弁護士名簿に追記すべき記載内容、名簿の公開、周知のあり方、その他契約弁護士の取扱分野や相談対応時間等に関する情報を利用者に提供するための方法などについて検討を進め、各地の弁護士会や契約弁護士等に理解、協力を求めてまいりたいと考えております。

 それから研修の点ですが、日弁連、弁護士会において実施が検討されている養育費を含む家事事件の研修に協力するとともに、より多くの法テラスの契約弁護士や常勤弁護士等がその研修に参加できるよう、法テラスとともに検討を進めてまいりたいと考えております。

大口委員 この点は支援団体からも強く求められております。しっかりお願いしたいと思います。

 また、法テラスでは、新型コロナウイルス感染症感染拡大に対応して、電話による法律相談を行うとともに、一部オンラインによる法律相談を行っており、この対応を来年三月末まで継続をして実施するとしております。

 我が党は、法テラスのオンラインによる法律相談について、コロナ禍における臨時の対応ではなく恒久的なものにすべきである、また、一部しか実施されていないオンライン相談を全国の法テラスの全ての地方事務所等で速やかに実施する必要があると考えています。また、全国の法テラスの全ての地方事務所に配備する必要があるタブレットなどの端末導入経費を国が全額負担し、相談者が利用しやすい環境を整備すること、そして、生活困窮者が民事法律扶助を活用しやすくするために立てかえ金の月々の返済額を減らす、また、返済を一時停止するなど、柔軟な対応を積極的に推進することを緊急提言でも強く求めております。この点について、法務省の見解をお伺いしたいと思います。

金子政府参考人 お答えいたします。

 法テラスでは、新型コロナウイルス感染症の影響等により、対面によらない法律相談のニーズが高まっていることを踏まえまして、令和二年五月以降、電話やオンラインによる法律相談の運用を実施したところでございます。この電話やオンラインによる法律相談につきましては、今後も利用者のニーズを踏まえ、必要な体制を整備して、さらなる充実強化を図る必要があるものと認識しておりまして、法務省としても、必要な協力を行うとともに、その実施状況等を検証し、継続的な実施に向けた検討を進めてまいりたいと考えております。

 償還金額の減額や償還猶予につきましては、法テラスにおいて引き続き、利用者の置かれた実情に即した柔軟な対応を行い、立てかえ金の償還が困難な方に配慮した運用がなされるものと認識しており、法務省としても償還方法の変更を必要としている方に適切な申請をしてもらえるよう、周知、広報のあり方等について法テラスとともに引き続き検討してまいりたいと考えております。

大口委員 また、法テラスの業務についてお伺いしたいと思うんですが、弁護士の場合は、法テラスの法律相談援助を経由して代理援助、そして書類作成援助を行います。司法書士の場合は、書類作成援助を行うことができますが、これは持ち込みによるものであります。その持ち込みによる以外、相談から書類作成支援につなげる、書類作成相談援助が法テラスの業務として認められていないので、書類作成相談援助を経由して書類作成を行うことはできません。

 この法務省の検討会の中間取りまとめでも、養育費を請求する裁判所の手続について、司法書士による申立書等の書類作成援助の活用のあり方を検討してはどうかと指摘されておりますし、司法書士法第三条一項五号では、裁判所に提出する書類の作成について相談に応じることが司法書士の業務とされています。一人親のニーズに応えるため、不払い養育費解消のための手段として、司法書士による書類作成相談援助を経由した調停、審判、強制執行の手続に係る書類作成援助という新たな選択肢を設ける必要があります。

 早急に、これは総合法律支援法を整備して、書類作成相談援助の類型を新たな選択肢として法テラスの業務に含めるべきと考えますが、法務省の見解をお伺いします。

金子政府参考人 お答えいたします。

 御指摘の書類作成援助は、代理援助と比べまして、一般的に立てかえ金額が低く利用者の費用的な負担が小さくなるケースが多いため、書類作成援助が適している事案については、より積極的に書類作成援助の活用を進めていくことが重要であると認識しております。

 法テラスにおいては、司法書士による書類作成援助のより積極的な活用に向けた取組として、書類作成援助の利用が適していると考えられる事案につきましては、利用者に対し、書類作成援助による利点等を説明するなどして利用を促しているほか、一部の地方事務所におきましては、司法書士のみによる法テラスが実施する法律相談枠を設けるとか、試行的に、書類作成援助の利用が適していると考えられる事案について司法書士に配填するなどの取組も実施しているところでございます。

 御指摘の司法書士による裁判書類作成のための相談を新たに法テラスの業務とすることにつきましては、総合法律支援法の改正が必要になりますところ、現行の枠組みの中で書類作成援助を促進するために法テラスが現在取り組んでいる取組の状況を検証しつつ、民事法律扶助の対象とすべき相談の範囲や、民事法律事務の書類作成援助とは別に民事法律扶助の対象とすることの必要性など、さまざまな観点から引き続き検討してまいりたいと考えております。

大口委員 神奈川と埼玉で一部司法書士の枠を設けています。何か連合会がそのお金を負担しているようでございます。

 利用者にとってみれば、やはり困窮家庭が多いわけでありますので、本当に、家庭裁判所の利便性の向上とセットで書類作成援助に結びつける選択肢、これをしっかり設けるべきだ、こう思います。法務大臣には通告していないですが、ちょっと、お考えがありましたら。

上川国務大臣 今委員御指摘のように、何よりも国民の皆さんにとっての利便性の向上という形で対応していくというのは、これは基本的な考え方であるというふうに思います。

 今委員からさまざまな御提言を改めてしていただくことができまして、こうしたことについてもしっかりと取り組んでまいりたいというふうに思います。

大口委員 ありがとうございました。

 次に、家裁の調停、審判手続のリモート化を含めた検討をお願いしたいと思います。

 IT化によって広く国民が利便性を享受することができるように、ウイズコロナ、ポストコロナの観点からも、民事裁判手続のIT化は今法制審で審議されていますが、家事事件の調停、審判手続等についてもこれはIT化の議論を、民事裁判手続のIT化の後にやるんじゃなくて同時進行でやるべきである、こういうふうに考えているところであります。

 そういう点で、また緊急提言でも養育費の調停審判について、やはり今回、我が国の離婚の九割が協議離婚なんです。家庭裁判所が本当に機能しているのかと疑問があるんです。ですから、私は、やはり家庭裁判所がしっかり利用者の立場だったり国民の立場に立って利用しやすいようにリモート化も含めてあり方を検討すべきだ、早急にやるべきだ、こういうふうに考えているところでございます。

 それで、例えば相手にかかわり合いたくないと思っている方々、DVの被害を受けている一人親の方は、期日に出頭することは困難なわけであります。ですから、調停、裁判期日のテレビ会議などを実施して裁判所に行かなくても手続が実施できるように、リモート化など、利用者目線に立った、このあり方というのを、これは法務省、最高裁、また日弁連、今それこそ家事ワーキンググループで検討も、私どもの提案を受けてやっていただいているようでありますけれども、その点について法務大臣から御答弁をお願いしたいと思います。

上川国務大臣 家庭裁判所における調停手続等をよりよく、利用しやすくすること、その上で、その際にITの積極的な活用、リモート化ということの御指摘がございましたけれども、これは利用者である国民のために大変重要であるというふうに認識をしております。

 先ほど御指摘ございましたけれども、なかなか父母だけでは養育費の取決めを決することが難しい事情がある場合などにつきましては、家庭裁判所における調停手続の利用というのは極めて重要なものであるというふうに位置づけられるものと考えております。

 一人親の中には、仕事のために平日の昼間に期日に出席することが難しいとか、あるいはDV被害等のために出席することが困難だったりするなどにおきましても、調停手続を利用するということについて容易にする上で、御指摘のようなオンラインを利用した、またADRの活用等も含めまして極めて重要であるというふうに思っております。

 先ほど御指摘ございました、現在、民事司法の在り方に関する法曹三者連絡協議会の家事ワーキンググループにおきまして検討を進めているところでございます。具体的には、裁判所に出頭する利用者の負担を軽減するため、調停手続等のリモート化、例えばテレビ会議の利活用につきまして実務的な観点から協議しているところでございます。

 今後も引き続きまして最高裁判所及び日本弁護士連合会と連携をいたしまして、調停手続等をより国民の皆さんに利用していただくことができるよう、さらなる検討を進めてまいりたいというふうに思います。

大口委員 まさにADRがなかなか利用されていないということがあります。

 AI技術とかIT技術を使った、オンラインによるADR、ODRの活用によってこの不払い養育費の問題は解決していくということについて、法務大臣の見解をお伺いしたい。

上川国務大臣 御指摘のようなODR、オンラインを利用したADRの活用につきましては、本人の負担軽減の観点からも重要な意義を有するものと考えております。

 法務省におきましては、自治体における法的支援のあり方等を調査分析するために、令和三年度に養育費不払い解消に向けた調査研究委託を実施することを検討しておりまして、概算要求にも含めているところでございますが、その中に、御指摘のODRの活用を含めた支援のあり方についても検討をしてまいりたいというふうに考えております。

大口委員 成長戦略フォローアップが、この七月、閣議決定されまして、法務省もODR推進検討会を設置されました。

 やはり、AI技術とか、あるいはIT技術を活用したODRというものは、さらにこれは、ADRを更に進化させた形で推進すべきではないかと思います。この点についても大臣の御見解をお伺いしたい。

上川国務大臣 ただいま委員御指摘のとおり、内閣官房にODR活性化検討会が設置されまして、本年三月の取りまとめを受けまして、法務省におきましては、本年十月の段階でODR推進検討会を設置いたしまして、ODRの推進に向けて、ADR法の関連の規律の見直しなどの検討を行っているところでございます。

 オンライン調停を始めとするODR、これは、時間、また場所の制約を受けることなく、非対面で迅速に紛争解決をすることができる。その意味で、当事者の事情を踏まえた、きめ細やかで柔軟な対応を可能とする有用な紛争解決手段であるというふうに認識しております。

 司法制度、とりわけ民間紛争解決手続、ADRの認証制度を所管を、私ども法務省、しているわけでございますので、国民の司法アクセスの向上を図る観点から、このODRを始めといたしまして、IT、AIを活用した民事紛争解決機能の強化を図っていくことは極めて重要と考えております。

 引き続き取組を進めてまいりたいと思っております。

大口委員 以上で終わります。ありがとうございました。

義家委員長 次に、階猛君。

階委員 立憲民主党の階猛です。

 本日は、大臣所信に関する質疑を行いたいと思います。

 まず、大臣所信の中で、大臣が述べられたこととして次のようなことがありました。これまでの二度の法務大臣在任時から、法の支配の貫徹された社会、中略しますけれども、そういった社会の実現を目指し、法務行政に取り組んでまいりましたというくだりがありました。

 まず、大臣にお伺いします。

 法の支配の貫徹された社会というのはいかなる社会を意味するのでしょうか。

上川国務大臣 さきの私の所信に述べさせていただきました法の支配の貫徹された社会についての言及ということでございますけれども、取り上げていただきまして、法の支配が実現された社会についての御質問ということでございます。

 法の支配の意義という観点でございましょうか、こうした基本的概念について、きょう冒頭の一問目にいただいたところでございますが、実は私、一回目の法務大臣に就任したのが平成二十六年の十月でございましたけれども、その法務委員会におきまして、江田五月議員から同じ質問を受けたことを思い出すわけでございます。

 その際、江田議員は、法の支配について質問されて、江田議員が留学されたイギリスでのルール・オブ・ローを日本語に翻訳したものが法の支配であるということを明確にお述べになりました。そして、ルール・オブ・ローというのは、もともとは、裁判所の前では王様も国民も対等であることを意味する、そして、日本では法の支配の意義については非常に多義的である、こういったこともおっしゃっていらっしゃいました。法の支配が多義的であるということを踏まえて、私自身、法の重要性が社会に浸透しているということが極めて重要であるということをそのときに強く感じたところでございます。

 法の支配とは、もともと、専断的な国家権力の支配を排斥し、権力を法で拘束することによって国民の権利、自由を擁護することを目的とする原理であると認識をしております。

 そして、現在、この法の支配の内容として重要なものは、憲法の最高法規性の観念、また、権力によって侵されない個人の人権、そして、法の内容、手続の公正を要求する適正手続、デュー・プロセス・オブ・ローということであります、また、権力の恣意的行使をコントロールする裁判所の役割に対する尊重などが考えられているというふうに考えております。

 私は、このような法の支配の内容が浸透している社会、これが法の支配の貫徹された社会であるというふうに考えております。

階委員 ありがとうございます。

 私どもも、新しい立憲民主党ということで、この立憲という言葉、これはまさに法の支配と直結すると思っていまして、最高法規である憲法のルール、また、その下位規範である法規範をしっかり守って権力を行使しなくてはいけないということが我々も目指すところであります。

 ただ、そういう中で、さきの国会で問題になったのは、法改正を経ることなく、国会答弁で公にしていた法解釈を変更して、変更後の解釈に基づいて、変更後の法を適用したということが黒川氏の人事ではありました。

 こうしたことは、まさに今、法の支配について説明された、とりわけ適正手続ということに関して言うと、真っ向から反するのではないかと思うのですが、大臣はいかがお考えでしょうか。

上川国務大臣 まず、解釈変更ということでの御指摘がございましたけれども、法令の解釈あるいはその変更というものについて、決まった手続や方式があるわけではないものと承知をしております。

 その上で、法令の解釈は、当該法令の規定の文言また趣旨等に即しつつ、立案者の意図や立案の背景となる社会情勢等を考慮するなどして論理的に確定されるべきものであるというふうに考えております。そして、検討を行った結果、従前の解釈を変更することが至当であるとの結論が得られた場合には、これを変更することがおよそ許されないというものではないというふうに考えられるわけでございます。

 このような考え方につきましては、我が国において従来からとられてきたものと認識をしており、検討を行った結果、従前の解釈を変更することが至当であるとの結論が得られた場合におきましては、これを変更することがおよそ許されないというものではなく、法の支配に反するものではないと考えているところでございます。

階委員 解釈の変更が許されるかどうかということを問題にしているのではなくて、まさに適正手続を法の支配のもとでは求められるわけですけれども、この適正手続ということが今回の解釈変更では全く行われていなかったのではないかという問題意識なんですね。

 手元に、今行われている法務・検察行政刷新会議の議事録を私、持ってきていますけれども、その中では、法務行政の透明化ということがまさに議論されている中で、重要な解釈変更については、法律の制定、改廃の場合に準じ、文書主義に基づき必要な行政文書が的確に作成、保存されるとともに、所要の規定に基づく決裁がなされるよう、法務省内のルール又は運用について必要な見直しを検討すべきであるとか、あるいは、今回の解釈変更のような、今回のというのは例の検察庁法の件ですけれども、今回の解釈変更のような重要な意思決定については、今後はより早期に、国民に対してわかりやすい説明がなされるべきという指摘が、これは第六回の議事録ですけれども、されているわけですよ。解釈変更が必要だという場合であっても、適正手続を踏んで行うべきではないかと。

 要するに、今回は、口頭での決裁とか日付のない文書を使って協議しているとか、あとは、決裁を誰が最後に判断したのか、これは私も、文書を見ても、法務大臣なのか次官なのかよくわからないんですね。そういったところで手続的にいいかげんであるし、また、解釈変更されたということは国会議員も含め国民には一切知らされていなかったわけです。私たちが知ったのは、まず黒川氏が勤務延長されて、これはおかしいんじゃないかということが国会で取り上げられて、しばらくした後、総理が本会議の答弁で、今般解釈変更しましたと。ここで初めて知ったわけですよ。この点も、適正手続に関してはおかしい。

 これは、私だけではなくて、まさに法務・検察行政刷新会議のメンバーも同じような問題意識を持っておられるんですけれども、こういう適正手続に反するような法解釈の変更並びにその運用、おかしいと思いませんか。大臣、率直にお答えください。

上川国務大臣 先ほど御紹介をいただきました法務・検察行政刷新会議におきまして、これは前大臣が設置したところでございます、国民の皆様からより一層信頼される法務・検察行政のあり方についての三本柱での検討要請ということでございました。

 その中に、第六回目の主張として、今階委員がお読み上げになったような文言につきましては、私も毎回委員会の議事録を拝見しております。公開のところでやられているということでございまして、国民の皆様からの目線ということでのお立場で、皆様忌憚のない御意見を寄せていただいておりますが、そうした御意見ということについては、私は真摯に受けとめるべき内容であるというふうに思っております。

階委員 真摯に受けとめるべきというのは、やはり今回の解釈変更には、特に手続の面においては問題があったということは大臣もお認めになるということでよろしいですか。

上川国務大臣 私、実は、お尋ねの解釈変更の当時、法務大臣の立場にございませんで、私が知り得る情報というのは、保管されている行政文書、また担当職員からの説明ということでの状況把握はしてまいったところでございます。

 これは違反であるかどうかということでの御質問でございますが、今回の解釈変更につきましては、行政文書、その決裁の取扱い、これが論点になっていたというふうに認識をしていることでございますが、法務省においての当時の理解あるいは当時の運用に従って行われたというふうに認識をしているところでございます。

 その意味では、今の御質問について、これについて違反であるというようなことの部分のお答えにはならないかもしれませんけれども、今の段階で、私自身、その当時の理解や運用によって法務省の中で行われていたことだというふうに、その意味ではそういう認識をしております。

階委員 特に、適正手続に反しているんじゃないかということで、上川大臣に対してぜひお伺いしたいのが公文書の扱いですね。

 これは一ページ目につけておりますけれども、前回、上川法務大臣が就任されていたときに法務省が公文書管理のプロジェクトチームを省内に設置したと。私、この後、このプロジェクトチームがどういう作業を行って、どういう決定をして、どういう運用をしているのか、つまびらかでありませんけれども、とにもかくにも、こういうプロジェクトチームをつくるほど、上川法務大臣は、もとより公文書管理法をつくられたときにもかかわっていたお立場ですから、当然といえば当然かもしれませんけれども、それほど公文書管理に強い関心を持ち、そして一生懸命取り組んでこられた大臣だと思うので、あえて伺います。

 今回の解釈変更、これだけ重要な変更で、社会的にも重要な関心を呼んだ変更が、文書が作成されないまま口頭で決裁がされているとか、協議に用いられた文書には日付がないというあたり、これは、公文書管理を進めてこられた大臣としては異議を唱えるべきではないかと思うんですけれども、このあたり、率直にどうお考えになりますか。

上川国務大臣 今、委員の配付された資料という形で、私が三十年の四月、三年前でございますけれども、立ち上げました公文書管理・電子決裁推進に関するプロジェクトチーム、このことにお触れをいただきました。

 もとより、行政文書は健全な民主主義の根幹を支える国民共有の知的資源ということで、主権者である国民が主体的に利用し得るものである。その意味で、行政機関におきましては、行政文書の適正な作成、そして整理、保存等を通じて、行政が適正かつ効率的に運営されるようにするとともに、国の諸活動を検証可能とし、現在及び将来の国民に説明していく責務があるというふうに理解をしているところでございます。

 不断の見直しということが極めて大事であるというふうに思って、このプロジェクトチームも早々に立ち上げて、そして中間報告という形で報告を私が発表をさせていただいて、そしてまた担当が、私は大臣を退任いたしましたので、その後は、刑事参考記録についての公文書のあり方ということについては引き続き今も検討が進められているところでございます。

 およそ、行政の活動をするに当たりまして、その手続について、政策立案過程も含めて、きちっと文書を残していく、そのことが、民主主義の中で国民が将来にわたってこの文書を利活用することができるためには最低限の前提であると思っております。つまり、作成をする、この作成をするということが極めて重要な点であると私は思っております。

 その意味で、今御指摘の点につきまして、今回は、その当時の私は担当ではございませんけれども、その意味では、具体的にその状況等をつぶさに知り得る立場ではございませんけれども、その当時はそうした対応をしたというふうに理解をしております。

 しかし、そうした文書についての、しっかりと残していく、あるいはそれは作成していくということについて、しっかりとした規定に基づいてしっかりと対応していただくことができるようにしていくというのは極めて重要なことだというふうに思っております。

階委員 この件については、私どもの党内の法務部会でも議論になっていまして、いつも法務省の担当者は、法務省の規則に照らして、口頭で決裁するとかあるいは日付がないということは問題にならないというようなことを言っていて、私は当然、こういう、国会で示した解釈を変更するような手続で用いられる文書はつくられるべきだし、日付も入れられるべきだと思っているんですけれども、その必要はないというのが法務省のルールだという説明をされるわけですよ。

 こういうルールは即座に改めるべきだと思いますけれども、大臣のお考えをお願いします。

上川国務大臣 今、私、公文書管理の重要性に鑑みて、文書作成の極めて重要な役割ということについて申し上げたところでございます。

 その際に、全ての記録をしっかりと残していくための作業ということについては、これまではそうしたルールになっていなかったというような説明については、そのようなことであったのだろうなというふうに思うところでありますが、今後、今、刷新会議の中でも御検討をいただいているところでもございますし、また、具体的な提言という形になろうか、御意見という形でお寄せいただけるものというふうに思っておりますので、私としては、それを真摯に受けとめるということは、私自身同じように考えているというふうに申し上げたいというふうに思っております。

階委員 同じ方向で考えているという趣旨だと思うんですが、ぜひこれは早急にやっていただきたい。これは、検察の信頼を回復していく、法務省の信頼を回復するという意味でも、早急に着手していただきたいと思います。

 大臣の決意をもう一度伺います。

上川国務大臣 国民の皆さんの信頼というのは、そういうところの積み上げからくると思います。

 私としても、公文書管理法を制定するときに深くかかわった人間として、また同時に、法務省の今の状況から、国民の皆さんの信頼を得るための極めて重要な要素として、ただいま御指摘いただいたことについては早急に対応してまいりたいというふうに思っております。

階委員 ありがとうございます。

 そして、もう一つ、前国会からの積み残している問題について、大臣の所信に絡めてお伺いしたいと思います。

 大臣の所信の中で、「国民生活の安全、安心の実現をその使命とする法務行政は、国民の皆様からの信頼なくしては成り立ち得ません。」というくだりがありました。

 これに絡んでですけれども、先国会では、法務省の幹部を長年務めた黒川前検事長の、緊急事態宣言下ですよ、その事態の中で新聞記者らとかけマージャンを行った、これは法務行政や検察への国民の信頼を大きく損なったのではないかと思いますが、この点について、大臣の見解をお願いします。

上川国務大臣 黒川氏についてでございます。

 東京高等検察庁のトップとして、公私を問わずにみずからを律し、国民から疑念を抱かれないよう格段に意を注ぐべき立場にあったと思います。にもかかわらず、御指摘のような非違行為に及んだものと承知をしておりまして、このような行為につきましては、検察の信頼を損なう不適切な行為であったというふうに考えております。

 検察の使命でございますが、刑罰権の行使を適正にするということのためには、何といっても国民の皆さんの信頼が不可欠でございます。その意味で、今後、国民の皆さんからの信頼を維持し続けるために、私もしっかりと覚悟しながら、職員一丸となって全力で職務に当たってまいりたいというふうに、これは覚悟と情熱というふうに申し上げましたところでありますが、改めてその覚悟をしているところでございます。

階委員 もう一つ、信頼失墜につながっているのが、こうした黒川氏のような人物を、余人をもってかえがたいとして、法解釈を変更してまで勤務延長する人事を法務省が閣議に当時諮っていたわけですね。このことも法務行政への国民の信頼を大きく損なったのではないかと思いますけれども、この点については、大臣、どうお考えになりますか。

上川国務大臣 黒川氏の勤務延長についてでございますが、これは、令和二年一月末当時の判断という形で、当時の大臣のもとで、検察庁が業務遂行上の必要性に基づき、検察庁を所管する法務大臣から閣議請議を行って閣議決定されたものということでございます。その上で、引き続き勤務をさせることとしたものというふうに承知をしているところでございます。

 そうした一連の動き、その当時でありますけれども、いろいろな動きがございまして、国民の皆様から、なかなかわかりにくい意思決定ということも含めまして、理解が得られなかったというふうなことと思っておりますが、いずれにしても、国民の信頼を失墜していくということは、信頼を損ねるという行為につながったというふうに思っておりますので、その意味では大変遺憾だというふうに思っております。

階委員 この人事が国民の信頼を失ったのは二つ大きな理由があると思っていまして、一つは、要は、見る目がなかった、それほど前例のない勤務延長をするんだからよっぽど立派な人を選ぶのかと思いきや、さっき一点目で申し上げたような、緊急事態宣言下でマスコミの人たちとマージャンをするような人物を選んだ、その見る目のなさに対する批判というか、信頼の失墜。

 もう一つは、余人をもってかえがたいからそのポストにつけるんだと言いながら、マージャン問題が起きるや否や、すぐやめられましたよね。すぐやめられた後、後任の方も短期間務めてすぐかわられましたよね。結局、余人をもってかえがたいポストって存在しないじゃないかという話、これも国民の信頼を失わせたと思っているんです。

 そこで、参考までにお聞きしますけれども、これまで黒川氏以外に検察官の勤務延長が行われた例はあるんでしょうか。事実関係をお尋ねします。

上川国務大臣 黒川氏以外の例はないものと聞いております。

 先ほどちょっと質問の中でございました、この勤務延長につきましては、私はその当時法務大臣の職になかったということもございまして、この令和二年一月末の当時の判断といたしましては、検察庁の業務遂行上の必要性に基づいて、検察庁を所管する法務大臣から閣議請議を行って閣議決定されて、引き続き勤務させることにしたというふうに承知をしております。

 その意味で、検察は適正な刑罰権の行使をするということに照らして考えてみると、さまざまなこうした一連の活動ということについての部分について、国民の皆さんの信頼を失墜したというこの結果については極めて重要だと認識しておりまして、その意味で、私自身、この信頼を回復するために全力で取り組んでいきたいという覚悟を申し上げたところでございます。

階委員 まず一つ明らかになったのは、余人をもってかえがたいというポストは、これまで黒川氏の東京高検検事長以外に事例はなく、かつ、黒川氏の後、別に、そのポストについた人がずっとその地位にとどまっているわけでもないということで、結局、検察官の勤務延長というのは必要ないんじゃないかということがわかったというのが一点。

 それから、当時の人事権者の判断、これは上川大臣とは無関係な話なので、当時の判断が、もし仮に、黒川氏というのは本当に重要な人で、この任を継続するべきだということを法務省が間違いなく判断されたというのであれば、その当時の判断が正しかったというのであれば、これは、今回のかけマージャンで検察への信頼を失墜させたというのは、要は、メンツを潰されたというか、自分たちがせっかくあなたしかいないと思って選んだのに何やっているんだということで、普通は怒り心頭になると思うんですね。ところが、こうした黒川氏の不祥事に対し、おざなりな調査で、懲戒処分に当たらない訓告ということで済ませたわけですよ。これは、法務行政への国民の信頼を回復するどころか、更に損なったのではないかと思いますが、大臣の見解はいかがでしょうか。

上川国務大臣 今回の黒川氏の処分、これを決するに当たりましては、法務省内で必要な調査を行った上で、さまざまな事情を総合的に考慮して、監督上の措置として最も重い訓告をしたと聞いております。

 私も当時おりませんでしたので、その事情については前任者ということでございますので、今申し上げた内容でございますが、いずれにいたしましても、黒川氏の行為につきましては、検察の信頼を損なう不適切な行為であったというふうに考えておりまして、その意味で、今後、国民の信頼を維持し続けるためには職員一丸となってさまざまな努力を重ねていかなければいけないというふうに思っています。

階委員 処分が重いか軽いか、これは議論があるのはわかります。ただ、ここもまさに法の支配のもとに要請される適正手続ですね。どのようにしてこの処分が決まったのか、ここが不透明だという問題もあったわけです。

 これは資料の二ページ目につけておりますけれども、「黒川氏処分 深まる疑念」ということで、私もこのときに質問をさせていただきましたけれども、森法務大臣がどのようにしてこの処分を決めたのかという説明について、答弁がいろいろ変わったわけですね。

 例えば、この記事でいいますと、二十二日の段階で森法務大臣は「法務省内、内閣と様々協議を行った。この過程で、私は色々な意見も申し上げたが、最終的には内閣で決定された」。これが二十二日です。ところが、その後、報道で、法務省が懲戒処分の戒告が相当というふうに意見をしたけれども、官邸との協議を受けて、より軽い訓告になったことが報じられたというのが新聞で出たということで、その後、多分、官邸に批判の矛先が向かうということを避けようとしたのかどうかわかりませんけれども、二十六日の法務委員会では、「法務省として訓告が相当と考え、検事総長に伝えた。検事総長も訓告と判断。内閣に報告したところ、「異論がない」と回答」。

 最初の説明では最終的には内閣で決定されたものが、今度は法務省と検事総長の間で決めて内閣に報告ということで、話が変わっているわけです。

 さらにさらになんですけれども、この後、法務・検察行政刷新会議で森法務大臣がお話しされていることがあります。この処分について、「一部、法務官僚の方で厳しい処分を要求したけれども、政治の力で軽い訓告処分になったと報道をされましたが、これは逆でございまして、」ということで、少し中略しますけれども、「実際は、私一人が最も重い処分を意見としては申し上げましたが、プロとしての法務官僚、検察出身の検事さんたちが、前例や人事の指針に基づいて意見を言ったことを聞いて、結局みんなで決めた処分です。」ということで、何が本当のことなのか、全くわからない状況です。

 この黒川氏の処分、決定された経緯、これも極めて重要な意思決定だと思いますので、この意思決定の形成過程にかかわる文書もぜひつくっていただきたいと思いますが、公文書管理に精通していらっしゃる上川法務大臣のリーダーシップで、ぜひこうした文書をつくっていただけないでしょうか。御答弁をお願いします。

上川国務大臣 ただいま委員から、前森大臣の発言も含めまして、経緯についての御指摘がございましたけれども、一般にでございますが、人事上の処分のプロセスについてはお答えを差し控えるものというふうに考えております。基本的には、人事に関することはお答えを差し控えるものというふうに私は心しているところでございます。

 結果として、今のように、いろいろなプロセスを経ながら、黒川氏の処分については訓告が相当であるという結論に至ったものというふうに考えております。これは、必要な調査を行った上での処分というふうに考えているところでございます。

階委員 いや、今の処分が決まるまでの過程は、法務大臣だけじゃなくて総理もお答えになっていますから。これはだから、別に秘匿すべきものでもないし、どのような経緯でこの処分が決まったのか、法務大臣の答弁も変わっていますから、二転していますから、ぜひ、これは整理していただいて国会に出していただきたい、我々に示していただきたい。これはやはり、公文書管理という意味で非常に重要なことだと思います。

 経緯も含めた意思決定に至る過程並びに当該行政機関の事務及び事業の実績を合理的に跡づけ又は検証することができるよう、文書を作成しなければならない、公文書管理法に条文がありまして、その中に、職員の人事に関する事項というのも列挙されています、例示されています。ですので、これはつくるべきです。

 しかも、先ほど申し上げましたとおり、何が真実だかわからないわけですから、我々も実態を知りたい。ぜひ、国民の知る権利に応える意味でつくっていただきたい、そして示していただきたい、もう一回お願いします。

上川国務大臣 繰り返しでございますが、黒川氏の処分を決するに当たり、必要な調査を行った上で、さまざまな事情を総合的に考慮して、監督上の措置として最も重い訓告としたというふうに聞いております。

 人事のプロセスについて明らかにすることによりまして公正かつ円滑な人事の確保に支障を及ぼすおそれがあるというふうに思っておりまして、その意味で、人事のプロセスについては差し控えるのが相当ではないかというふうに申し上げたところでございます。

 行政機関の保有する情報の公開に関する法律におきましても、不開示事由として規定されているものとして、これは五条の六のニということでありますが、「人事管理に係る事務に関し、公正かつ円滑な人事の確保に支障を及ぼすおそれ」があるという点も含めまして、そのように判断しているものでございます。

階委員 公文書管理法の制定にかかわった大臣にお尋ねします。

 公文書管理法第四条には、先ほども言いました、行政機関の職員は、当該行政機関における経緯も含めた意思決定に至る過程並びに当該行政機関の事務及び事業の実績を合理的に跡づけ又は検証することができるよう、処理に係る事案が軽微である場合を除き、次に掲げる事項その他の事項について文書を作成しなければならないということで、五号には「職員の人事に関する事項」というのがあります。

 もう釈迦に説法だと思いますけれども、その下のガイドラインでも、「主管局長や主管課長における経緯・過程について、文書を作成することが必要である。」とか、ガイドライン上もそうした文書の作成が求められていると思うんですけれども、これは法に照らして、私は無理なことは言っていないと思うんですね。

 つくるべきだと思いますけれども、これは、実は、大臣が就任する前ですけれども、先ほど言った解釈変更についても、その当時、国会の議論を経て、解釈変更というか検察庁法の改正案の策定、これに係る経緯文書というのも、事後的に法務省の刑事局でつくられたというのがあります。同じように、今回の処分についても、事後的になりますけれども、経緯の文書というのをつくっていただきたい、そして示していただきたい。もう一度、大臣の答弁をお願いします。

上川国務大臣 文書の管理についての適正性ということについては、さまざまな視点も含めまして、また、現場の状況に即しまして検討していくべき事柄であると思います。不断の見直しをしてまいりたいというふうに思っております。

階委員 もう一度、お尋ねします。

 検察庁法改正案のときと同じように、今回も経緯の文書をつくっていただきたい。公文書管理法に基づいて、それは当然やるべきだと思っています。その必要は私はあると思っているんですが、大臣は必要ないとお考えなんでしょうか。

上川国務大臣 人事に関する事柄についての、全般的に文書がどのようになっているのかも含めて、少し調査をしてみたいと思います。

 文書をつくるかつくらないかという御指摘でございましたので、私自身は、基本的に、人事に関するプロセスは、さまざまな理由で、こうしたところで答弁は差し控えるという事柄であると思います。今、一般に新聞紙上に出ている、その文面をもって、それをつないでいくとどうなのというような、そうしたことではなく、しっかりとした形で今後やっていかなければいけないというふうに思っておりますので、その意味で、前向きな形で、この課題につきましては前向きに取り組んでいくという形で、将来に向けての展望ということを持って進めてまいりたいというふうに思っております。

階委員 将来に向けての展望もいいんですけれども、この件について文書をつくるお考えはないんですか。経緯文書をつくるお考えはないんですか。

上川国務大臣 今、文書をつくるつくらないという結論だけのお話でございますが、状況がわかりませんので、その意味で、ここで今のように、イエス、ノーの判断をするというのはなかなか難しいというのが正直なところです。

 その意味では、こうしたことについては、刷新会議の中でもさまざまな御提案もされておりますので、そうしたことも含めて、一連の流れの中で、これから先のことについての展望をするためにも、どうしたらいいのかということを考えていきたいと思います。

階委員 では、なるべく早いタイミングで、今の件についてどのようにされるのかということを委員会に提出していただきたいと思いますので、委員長、よろしくお取り計らいください。

義家委員長 まずは、現段階では御意見として承ります。

階委員 御意見というか、今のやりとりを踏まえて、大臣の方で検討されるということをおっしゃいましたから、検討した結果を委員会に提出してほしいということを委員長に御提案申し上げます。よろしくお取り計らいください。

義家委員長 後刻、理事会で検討いたします。

階委員 それと、やはり公文書に絡む話ですけれども、黒川氏については別途、刑事手続も進んでおりました。結果的には不起訴処分になって、その理由について検察当局が報道陣に説明したやに報じられています。ただ、その会見記録というのは公表されていません。その理由はなぜなのか。

 今回のケースは極めて特殊でありまして、検察幹部と報道関係者らが被疑者となって、いずれも起訴猶予。起訴猶予ということは、犯罪は成立するけれども起訴はしませんよということで、何かお手盛りというか、身内に甘いような処分がされたのではないかという疑惑があります。

 他方で、報道陣に説明したことが公表されないと、一方でマスコミも当事者ですから、両者結託して、本当に正確な情報が伝わらないのではないかということで、厳正中立な処分が行われたのか、正確、詳細な報道が行われたのか、疑いが生じるような事案です。

 このような報道陣への説明について、会見記録を作成して公表しないと、これもまた、検察への国民の信頼を回復するどころか、更に損なうことにつながるのではないかと思っております。ぜひここも会見記録を公表していただきたいと思うのですが、いかがでしょうか。

上川国務大臣 まず、検察当局におきまして、個別事件の報道内容や記者会見での公表のあり方につきまして、そもそも、法務大臣として所感を述べるということについては差し控えさせていただきたいというふうに思っております。

 御指摘の事件について、今のような御説明がございましたけれども、一般論として申し上げると、記者会見や記者発表における公表については、個別の事案ごとに、公表をするか否かとか、あるいは程度とか方法というものを判断しながらしているのではないかというふうに思っているところでございます。

 慎重な判断をしながら、検察当局において対応していくというふうに思っております。

階委員 まさに今、検察への信頼を回復するということが重要なテーマになっているわけでして、私たちとしては建設的な提案をしているつもりなんですね。むしろ、もう実際に行ったことなわけだから、それを包み隠さず国民に公表することで適正な処分だったということを示せるわけでして、それをやらないと、今回、マージャンをやったのが検察とマスコミで、適当なことでお茶を濁しているんじゃないかという疑念が消えないわけです。

 だから、今回については、ぜひ公表していただくことが検察への信頼回復につながるということは大臣に御認識いただきたいということを申し上げます。

 その上でなんですけれども、法務・検察行政刷新会議、私も議事録を見ていますけれども、本当に皆さん真摯な議論をされていまして、私も非常に勉強になります。

 ただ、この議論されているテーマ以外でも、私も、今申し上げたような点も含めて、法務省や検察への国民の信頼を回復するためにまだやるべきことがあるのではないかと思っておりまして、大臣としては、この会議の議論されているテーマ以外で何かお考えになっていることはありませんか。

上川国務大臣 この法務・検察行政刷新会議でございますが、前大臣が、国民の皆様からより一層信頼される法務・検察行政のあり方について、三つの柱を中心に、各方面の有識者の方々により御議論をいただいているところであります。一点目は検察官の倫理、そして二点目は法務行政の透明化、そして三点目は、我が国の刑事手続について国際的な理解が得られるようにするための方策ということでございます。

 これは委員会の第一回目だったと思いますが、何を検討するのかということについては、それぞれの委員の方々から御関心あるいは御疑問の点も含めまして問題提起をしていただきながら、委員会を全体としてどのように進めるかも含めて、当初、フレームワークを決めた上で進めていただいているというふうに理解をしております。

 自由闊達な御議論、そして全てが公開の場で行われているということでございますので、その点について、私は、この法務・検察行政刷新会議の自由な御討論というのを見守ってまいりたいと思っております。

 冒頭申し上げたように、これの第一回から今までに至る過程については、議事録を拝見させていただいておりますけれども、それぞれお立場も、専門家の方もいらっしゃれば、国民目線でということをあえて申し上げた上で御発言なさっている方もいらっしゃるということでございますので、自由闊達に取り組んでいただくということが何よりも大事ではないかというふうに思っております。

階委員 大臣は見守るということなので、私から一つ提案させていただきたいと思います。

 きょうの質問で明らかにしたように、今回の定年延長の解釈変更は手続的に非常に問題があった。かつ、解釈変更をした結果、実際の運用がどうだったかというと、本来選ぶべきではない人を結果的に選んでしまったりとか、余人をもってかえがたいというのは検察という職務ではなかったということも明らかになってきたわけです。

 そうであるとすれば、一旦ここは引き返す勇気を持っていただきたい。つまりは、解釈変更については撤回し、そして、これまで検討してきた検察庁法の改正案、これについても一回白紙に戻して検討していただくということが、私は最も法務省や検察への国民の信頼を回復するために重要なことではないかと思います。

 ぜひ大臣には、今の点、解釈変更の撤回、検察庁法改正案の、白紙に戻して、私は去年の十月段階の案でいいと思っていますけれども、そうしたことも含めた再検討、この二点をやるべきだと思いますが、大臣の見解をお願いします。

上川国務大臣 私も、九月の十六日から大臣に就任をいたしまして、国民の皆さんから信頼をどのように得るのかということについては、未来志向でいくということが何より大事ではないかというふうに思っております。その意味で、これまでのことについても、しっかりと文書あるいは伺うというような形で状況について把握をしながら、これからの課題と業務ということについても進めているところであります。

 この刷新会議の御議論は大変私は有意義だというふうに理解をしておりまして、この中で、先ほど解釈変更のところについての御議論もございましたけれども、公文書における位置づけ、こういうことについては前向きに対応していきたいというふうに思っておりましたところでありましたので、こういったことを率直に、結論というか提案を先に出していただけるようにしていきたいなというふうに思っております。

    〔委員長退席、稲田委員長代理着席〕

階委員 刷新会議の議論を尊重されているというのはすばらしい大臣の姿勢で、きょうの答弁でも感じました。ただ、更にそれを一歩進めて、私は、やはり信頼回復の一番の方策は、解釈変更を撤回するということと、検察庁法の改正案、これは白紙に戻して新しい案を考えるということだと思っております。きょうはこの程度にとどめますけれども、これからも、きょうのような大臣の御答弁を聞いていると、私は、すばらしい建設的な議論ができると思っていますので、ぜひ今後ともよろしくお願いします。

 話題をかえます。

 先ほど稲田先生からもちょっと御指摘があった部分だと思いますけれども、まず、大臣所信の関連する部分を申し上げます。

 「近時問題となっている新型コロナウイルス感染症に関連した差別や偏見、インターネット上の誹謗中傷は、その被害に遭われた方々に対する深刻な人権侵害となりかねません。」、中略しますけれども、「これらのさまざまな人権問題を解消し、差別のない社会の実現を目指すため、調査救済活動に粘り強く取り組むとともに、効果的な人権啓発活動にしっかりと取り組んでまいります。」、こういう御発言がありました。

 一方、このようなことを考えるに当たって、憲法上の表現の自由との関係が問題になってきます。さきの予算委員会で、我が方の奥野委員の質問に対して菅総理は、表現の自由は制約されることはありませんと端的におっしゃっていましたけれども、一切制約されないということはないと思うんですが、まず大臣に大もとの考えをお尋ねします。表現の自由の制限はいかなる場合に許されるか、お答えください。

上川国務大臣 表現の自由でございますが、憲法二十一条一項で保障されております。これは、民主主義社会におきまして、特に重要な権利として尊重されなければならないものであるというふうに認識をしております。

 他方、二十一条一項も、表現の自由を絶対無制限に保障したものではなく、公共の福祉のため必要かつ合理的な制限を是認するものというふうに認識をしております。例えば、名誉を毀損する行為、あるいはプライバシーを侵害する行為、こういったことは違法となることがあるというふうに承知をしております。

階委員 もうちょっと踏み込んでお話をしたいんですが、公共の福祉による制約という場合に、表現の自由のような精神的自由については、いわゆる内在的制約ということで、他者の人権との衝突が生じる場合には公共の福祉による制約が許されるということなんだと思います。他方、経済的な自由ですね、営業の自由とか財産権の保障とか、こうした分野については、公共の福祉という場合に、外在的な制約、政策目的による制約というのも許されるというふうに、憲法の本などには書いていると思うんですね。

 ところで、今回のコロナ問題、コロナによる誹謗中傷というのは、まさに内在的制約の場面というのも一つあると思うんですね。他者の人権である名誉権とかプライバシー権を侵害しているという、人権と人権とが衝突するので制約が許されるという部分と、もう一つ、公共的な問題が発生するのではないかと思っていまして、というのは、こうした誹謗中傷が広まっていくことによって、感染した人は、自分が感染したかもしれないと思ってもなかなか検査に行かないとか、あるいは、自分が陽性だと発覚したときに、後で質問しますけれども、COCOAを使って情報を登録して周りにいた人に知らしめるということをなかなかやりたがらない。こういったことが起こり得るので、そういった観点からも、そういった表現を制約しなくちゃいけないというふうに私は考えられるのかなと思うんですけれども、そうしたことについて、大臣は、今言ったようなことは表現の自由の制約の事由になるのかどうか、もしお考えがあればお答えください。

上川国務大臣 委員から、内在的、外在的ということで、表現の自由の類型について御指摘がございました。

 この今回の感染症の、新型コロナ感染に係る誹謗中傷等の事柄につきましては、今私どもの人権救済の機関におきましても、大変いろいろな視点での、電話やあるいはSNSでの相談が寄せられているところでございます。大きく類型を二つに分けるという形で、まだ星雲状態のようなところもございますので、まず実態の中でどのような具体的な問題や課題があるのかということについてしっかりと調査と分析をしていくということが、そして、それに基づく対応ということについても的確にできるようにしてまいりたいというふうに思っております。

 この件については、私も所信の中で申し上げましたけれども、大変重要な問題であり、また、今第三波が到来している、こういう中で、ますます萎縮して、またさらに、こうした誹謗中傷のゆえに、自分自身が外にそのことの事実を出せないと今御指摘ありましたけれども、そういうことになってしまうということになりかねないので、そういったことも含めて、丁寧に、しかし粘り強く、しっかりと取り組んでまいりたいと思っております。

階委員 厚労省の参考人、いらしていますかね。そちらの方ですね。

 お伺いしますけれども、今申し上げました、COCOAの利用が余り進んでいないという背景には、こうした誹謗中傷を恐れてということもあるのではないか。あるいは、検査の受け控えというのも誹謗中傷を恐れてのことがあるのではないかと思うのですが、このあたり、厚労省としてはどういうふうに考えていますか。

度山政府参考人 なかなか具体的にどういう影響がということは申し上げにくいのですけれども、一般論としては、やはり感染者等に対する差別、偏見、誹謗中傷というのは、御指摘いただいたとおり、例えば症状が何かあったとしても、それも受診を控える、検査をしないということですとか、そういうことを通じて、結局は社会全体の感染拡大とか重症化ということにつながりかねない、そういう危険性はもちろんあるだろうというふうに思いますし、そういう意味でいうと、新型コロナウイルスに対する感染というのは、御本人、一生懸命気をつけて御生活を皆さんされておられると思いますけれども、でも、気をつけて生活していたとしても起こり得るということでもありますし、あるいは、エッセンシャルワーカーに対する差別とか誹謗中傷みたいなことも言われていますけれども、そういうことがやはり広まりますと、医療とか社会機能の維持が困難になる。だから、皆さん一人一人の問題にも降りかかってくる問題、そういう認識が必要だろうというふうに考えております。

階委員 誹謗中傷は、そういう意味でもあってはならないと思うのですが、もう一問、厚労省にお伺いします。

 きょうお渡ししている資料の三ページ目に、いわゆるCOCOAのQアンドAというのをつけていますけれども、例えば問八ですね、「アプリでは、どのような通知がきますか。」と。「新型コロナウイルス感染症の陽性者が、本人の同意のもと、陽性者であることを登録した場合に、その陽性者と過去十四日間に、概ね一メートル以内で十五分以上の近接した状態の可能性があった場合に通知されます。」ということで、本人の同意が通知の前提になっていますね。

 それから問十、「新型コロナウイルス感染症の陽性者と診断されましたが、アプリで登録しなかったらどうなりますか。」という問いに対して、「陽性者と診断された場合に、アプリへの登録は、利用者の同意が前提であり、任意です。」というふうになっています。

 これは、任意とか同意というのを入れていることによって、せっかくのアプリが活用が進まないということは、非常に私はもったいないことだし、問題があると思っています。プライバシーの侵害とか、そういうことについては、我々法務委員会としてもしっかり取り組んでいきたいと思うんですが、その上で、このアプリのやり方、本人の同意がなくても通知できるようにすることが感染防止にとって重要ではないかと思うんですが、そのような方向に持っていくお考えはないですか。

    〔稲田委員長代理退席、委員長着席〕

度山政府参考人 お答えを申し上げますが、アプリを御個人が利用していたとしても、システム上、誰が利用しているかということは全く匿名の世界で構築をされているので、そういう意味でいうと、御本人が例えば感染ということがあったときに、それを登録するというのは、ある意味では御自身にやっていただくほか方法がない。そういうことでいうと、ある意味、プライバシーが確保されて、いろいろな人が利用しやすい、そういう仕組みになっている、そういうふうに考えているところであります。

階委員 いや、ちょっとそれだと不完全だと思っていまして、例えば陽性を確認したら、本人の同意を得なくても、何らか第三者の操作によってその情報が行き渡るようにするとか、そうしたことも考えていいんじゃないかなというふうに思います。

 ちょっと時間になりましたので終わりますけれども、またそのことについては議論させていただきたい。

 きょうはちょっと法科大学院のことについても伺いたいと思って、政務官にもお越しいただいたのですが、済みません、時間が終わってしまったので、またの機会にぜひよろしくお願いいたします。失礼します。

 では、終わります。ありがとうございました。

義家委員長 次に、稲富修二君。

稲富委員 立憲民主党の稲富でございます。

 きょうは質問の機会をいただき、ありがとうございます。

 上川大臣に対して、やはり先ほど来、国民の信頼について多岐にわたって質問がございました。同じく、私もやはり、大臣所信において、大臣が、法務行政は国民の信頼なくして成り立ち得ないということをきっぱりとおっしゃり、信なくば立たずということで、先ほど覚悟もお示しになられました。

 実は、これはやはり、この法務委員会、背景がございまして、昨年の秋の臨時会から、河井大臣、当時の大臣が一カ月余りで辞任をし、当委員会にもあるいは国会にも何ら説明がないまま、そのままになっているということ、そして、年が明けて、常会においても、先ほど来あったように、解釈変更がかなり物議を醸してまいりました。

 私にとってみれば、だめ押しはやはり黒川氏でございまして、かけマージャンをし、点ピンだったから、軽微だったからとか、本人が反省しているからとか、常習性も認められないだとか、非常に身内に甘い処分があったわけでございます。

 私、法務委員会、初めてだったんですけれども、去年の臨時会から、この一年は、本当に安定しないといいますか、本当に大事な法案を審議するというよりも、そういったことに忙殺をされてきた一年だったなというふうに思うわけです。ゆえに、各委員から大臣に対する、何といいますか、期待といいますか、安定しているというのは、裏返しはそういうことがあったからでございます。

 そこでお伺いします。

 先ほど来あるように、法務・検察行政刷新会議、これはもう、もちろん説明がありましたけれども、私はやはり、検察に関しては検察の理念というものが書いてあって、ここに力強く書いてあると思います。やはり、こういった理念に立ち返ってやるということだなというふうに思うわけです。そこで、やはり、覚悟を、先ほど大臣おっしゃいましたが、これからどうするのかということを改めてこの場でお伺いをしたいというふうに思います。

上川国務大臣 法務行政を遂行する上で、法務行政は国民の安全、安心、そして生活万般にまたがるさまざまな分野を所掌しておりますので、そうしたことが国民の協力と理解がなければ成り立ち得ない、こういう認識のもとで、法務行政に対して国民の皆様からの信頼、これが失墜しているということについての、その上で、私は、その回復を図るということに絶えず心を砕いて取り組んでいかなければいけない、こういう意味で、覚悟と情熱というふうに申し上げたところでございます。

 前大臣がこの時期におきましても大変取り組んでいらっしゃいましたけれども、大臣みずからが法務・検察行政刷新会議を立ち上げられまして、そして一層信頼される法務行政のあり方について国民の目線で御議論いただきたいということで、三つの柱を示されたところであります。そのうちの一つが検察官の倫理ということでございましたし、また法務行政の透明化、さらには我が国の刑事手続について国際的な理解が得られるようにしていくための方策ということで、議論、今、鋭意取り進められているところでございます。

 検察の理念ということについては、検察の中でも大変重要な取組になっているところであります。絶えず、この理念に基づいて、しっかりと取り組んでいくということが極めて重要でありますが、国民の皆さんからの声もしっかりいただくと同時に、私ども法務省の体制は、五万三千人の皆さんが、今、五万四千人の方々が全国津々浦々で活動しておりますので、そういうお気持ちそのものも前に向かって、しかも国民の皆さんからのさまざまな批判なども受けながら取り組んでいるということでありましたので、それをしっかりと前に向かって、そして今の現下の問題、コロナの問題もございます、さまざまな問題に対して、前に向かって前進していくことができるようにしていく。このことをしていくためには、私自身も、過去そして未来を見据えるという形の中で日々努力をしてまいりたいというふうに思っております。

 その意味で、実は、一筆書きキャラバンという名称でございますけれども、全国の津々浦々で法務行政を支えていただいている職員の皆さんと対話をしていきたいというふうに思って、この間、取組をスタートしたところであります。

 とりわけ、現場で国民の皆さんとコロナ禍で対話をしていきながら業務を遂行しているところの皆さんの声を聞きたいということも、私の中では非常に強いものがございます。田所法務副大臣、小野田法務大臣政務官、手分けをして、全国の法務省の官署施設を全て回りましょうということで、職員との直接対話を重ねてきている状況でございます。また、訪問できない官署もありますし、海外で勤務している、一人で頑張っているところもありますので、ウエブ会議等を開催しながら、あらゆる問題意識また改善方策、これを具体的にお寄せいただくことができるように、まず私どもの方から行って聴取をしてまいりたいというふうに思って、スタートしているところであります。

 非常に、現場に行きますと、声が出ています。そして、意見も寄せられています。そして、これを早い段階で形にしていく、あるいは精査をしながら形にしていく、こういうことも極めて重要だなということを改めて感じておりまして、やってよかったなというふうに思っております。

 また、この場でもいろいろな形で御説明をする機会もあろうかと思いますが、ぜひ、こういったことを通じて、職務を通じて国民の皆さんの信頼を得ることができるように、全力で取り組んでまいりたいと思っております。

稲富委員 信頼回復に向けてお取組をいただいているということで、ぜひ頑張っていただきたいというふうに思います。

 続きまして、詐欺と万引きについてお伺いをしてまいりたいと思います。

 コロナ禍にあって、各報道機関、詐欺という言葉を聞かないときがないぐらい多くの報道がこれまでありました。例えば、コロナ悪用、詐欺暗躍、高齢者の在宅、つけ入るとか、十万円、特別定額給付金をめぐる詐欺だとか、給付金、助成金名目で詐欺、巣ごもり狙う詐欺メール、持続化給付金、詐欺グループ摘発等々、報道が後を絶たないわけでございます。

 特殊詐欺自体がそのときの人々の不安、期待を生じさせる事象の利用を手口としているため、コロナ禍における手口、態様は、マスクの購入、給付金に係るものからキャッシュカードの不正取得まで、多岐にわたっております。このような特殊詐欺の被害に遭われる方の多くは高齢者ということも伺っております。

 そこで、警察庁に伺います。

 特殊詐欺の認知件数、近年の傾向、コロナ禍に便乗する特殊詐欺の件数、コロナ禍に便乗する特殊詐欺の占める割合、また、詐欺の態様も変わってきていると思いますので、そういった傾向についてお伺いをします。

猪原政府参考人 令和二年九月末現在の特殊詐欺の認知件数は約一万件、被害総額は約百九十六億円と、いずれも前年同期比で減少しているものの、依然として高水準の被害が発生しており、深刻な情勢にあるものと認識しております。新型コロナウイルス感染症に関連した特殊詐欺については、九月末現在、未遂二件を含めまして四十九件認知しており、特殊詐欺全体の認知件数に占める割合は一%未満となっているところであります。

 特殊詐欺は、新型コロナウイルス感染症など社会の関心が強い事項を巧みに利用するなど、社会情勢等の変化に応じて犯行の手口を巧妙に変化させており、引き続き、手口の変化等も踏まえつつ、諸対策を推進してまいりたいと考えております。

稲富委員 さまざまな対策そして効果について改めて伺います。

猪原政府参考人 新型コロナウイルス感染症に関連したものも含めまして、特殊詐欺につきましては、昨年六月の犯罪対策閣僚会議において決定されましたオレオレ詐欺等対策プランに基づき、被害防止に向けて政府全体で取り組んでいるところであります。

 警察といたしましても、犯行拠点の摘発等による実行犯の検挙や上位への突き上げ捜査、事件の背後にいると見られる暴力団等に対する多角的な取締り、犯行に利用された固定電話番号の利用停止要請等の犯行ツール対策等の取締りに加え、関係省庁、事業者、さらには幅広い世代に対し高い発信力を有する方々と連携しながら、あらゆる媒体を活用した広報啓発活動、金融機関窓口を始めとした関係事業者における声かけ等の被害予防対策を推進しているところであります。

 各対策それぞれの効果について明確に申し上げることは困難でありますが、特殊詐欺の認知件数は平成三十年から、被害額は平成二十七年からそれぞれ減少に転じており、本年も同様の傾向にあるところであります。

稲富委員 ありがとうございます。

 特殊詐欺自体は減っていっているということ、そして、コロナ詐欺、さまざま報道はあるけれども、実は件数としては四十九件、未遂が二件ということでございます。イメージするよりも、私はもっと多いのかなと思ったら、今認知されている段階ではそうだということです。

 ただ、先ほど来あるように、態様を変えていくということでありましょうし、これから第三波、そして今後またどういう事態になるかわからないということを考えれば、さらなる対応が必要かというふうに思います。

 そこで、ちょっと大臣にお伺いします。

 これら対策をとったとしても特殊詐欺はなかなかなくならないということで、やはり対策の効果には限界があるということかと思います。より効果の高い対策として、やはり罰則が、詐欺罪であれば上限は懲役十年ということでありますが、これを引き上げるというような、直接的な抑止につながるような法整備なり対応というものをもう考えてもいいのではないかというふうに思いますが、大臣の見解を伺います。

上川国務大臣 委員御指摘のとおり、いわゆる特殊詐欺の態様につきましてはさまざまなものがございます。

 刑法では、詐欺罪の法定刑は十年以下の懲役とされているところであります。また、いわゆる組織的犯罪処罰法におきましては組織的詐欺罪が規定されておりまして、その法定刑は一年以上の有期懲役とされ、刑の上限は懲役二十年となるものでございます。さらに、二個以上の罪を犯した場合については、併合罪として刑が加重されるという状況でございます。

 現行法におきましてもこのように相当に重い処罰が可能であるということでございますので、御指摘の法整備の要否についてでございますが、実際の処罰の実情等を踏まえ、法定刑を引き上げるべき状況にあるのかどうか、また、いわゆる特殊詐欺のうち、重く処罰すべき態様を過不足なく明確に定めることができるかといった点が検討課題になろうかというふうに思います。

 いずれにいたしましても、特殊詐欺に対しましては厳正な処罰が重要であるということでございまして、委員御指摘のとおり、検察当局におきまして、悪質な事情を適切に主張、立証することで厳正な科刑の実現に努めているところでございます。引き続き適切に対処していくものと承知をしております。

稲富委員 続きまして、万引きについて伺います。

 コロナ前の統計によれば、全刑法犯に占める万引きの割合というのはどんどんふえていっているということでございます。

 まず、警察庁に伺います。

 このコロナ禍においてもこの傾向は維持されているのか、そして万引きの数はどうなっているのか、まずお伺いします。

猪原政府参考人 令和元年における万引きの認知件数は、九万三千八百十二件と、平成二十二年以降減少傾向にあります。本年一月から十月末までの万引きの認知件数は、七万一千六百五十一件と、昨年同期比、マイナス八・四%、マイナス六千五百六十九件であります。

 しかしながら、刑法犯認知件数に占める万引きの認知件数の割合は上昇傾向にあり、令和元年中は一二・五%、また、本年一月から十月末までの刑法犯認知件数に占める万引きの割合は一三・九%となっております。

 警察といたしましては、関係機関、団体と連携しまして、万引きをさせない環境づくりを促進するため、防犯カメラの設置、死角のない商品陳列、従業員による来店者への挨拶、声かけ等の小売店舗における防犯対策の推進を働きかけているほか、きめ細かな情報発信などを行っているところであり、引き続きこうした対策を着実に推進してまいりたいと考えております。

稲富委員 ありがとうございます。

 件数自体は減少傾向であるけれども、全刑法犯に占める万引きの割合というのはふえていっている、これは変わりがないということかというふうに思います。

 大臣に伺います。

 こういう薄利多売のような商売で、万引きというのは経営そのものを脅かす重大な犯罪である。そしてまた、これから新しい生活スタイルが始まって、外食がない、なかなか出れない、あるいはスーパーで買う、そういう場面がふえてくるかもしれません。

 更に言うと、単に、個人、窃盗が高齢者の方がふえているとか、あるいは集団の窃盗がふえているということで、特に集団での窃盗については、計画的な悪意ある犯行として罰則のレベルを通常の万引きより引き上げるなど、先ほどの議論と同じですけれども、そういった抑止を何らか働かせるべきじゃないかというふうに思うわけですが、大臣の見解を伺います。

上川国務大臣 窃盗罪の件でございますが、刑法におきましては、法定刑は十年以下の懲役とされております。また、二個以上の罪を犯した場合には併合罪として刑が加重されるわけでありまして、その場合の刑の上限は懲役十五年となるところであります。

 現行法におきましても相当に重い処罰が可能でありまして、御指摘の点でございますが、実際の刑罰のやはり実情等を踏まえまして、法定刑を引き上げるべき状況にあるのかどうか、また、集団による窃盗という御指摘がございましたが、そのうち重く処罰すべき態様を過不足なく明確に定めることができるかといった点が検討課題となるということはさっきと同じでございます。

 いずれにいたしましても、集団による窃盗に対して厳正な処罰が必要であるということについては委員御指摘のとおりでございまして、検察当局におきまして、悪質な事情を適切に主張、立証することにより厳正な科刑の実現に努めており、引き続き適切に対処していくものと承知をしております。

稲富委員 ありがとうございます。

 これからまた第三波で生活スタイルが変わっていき、先ほど来の、犯罪態様も変わっていくということでございますので、ぜひその時々に応じた対応をいただければというふうに思います。

 続きまして、入国管理と在留資格についてお伺いをしてまいります。

 先日、私の地元福岡なんですけれども、うれしいニュースがありまして、日本語教育機関の留学生が、この四月に入学予定だった留学生が、入国ができずにいた留学生が、この十一月、つい先日、福岡に来たというニュースでございます。これは地元の方からいただきました。東京まで車で行って、公共交通機関が使えないので、そこで福岡まで車で来てという、非常にうれしいニュースでございました。

 やはり、この間、日本語教育機関は、四月入学予定だった留学生がゼロで、来年度、次年度の申込みというのも、申し込めるかどうかわからないということで、ことしも留学生がゼロじゃないか、あるいは来年もまた申込みができない、申請ができないからゼロではないか、そういうことで非常な危機感を覚えていたわけでございます。そういう中で、ようやく学生が来たということでございます。

 そこで、大臣に基本的なことを伺います。

 入国制限が緩和を徐々にされておりますが、こういう留学生の対応はどうなっているのか、あるいは外国人の入国状況はどうなっているのか、そして、皆さんが一番関心があるのは、今後の緩和の見通しはどうなのかということをお伺いをしたいと思います。

上川国務大臣 法務省といたしましては、これまで、国内への感染者の流入防止のため、水際対策に万全を期して、国内での感染再拡大の防止に努めつつ、国際的な人の往来の再開に向けて、政府全体としての検討結果を踏まえながら、必要な措置を講じてきたところでございます。

 十月からでございますが、原則として、国、地域について、主に中長期滞在者を念頭に、ビジネス上必要な人材等や、また留学、家族滞在等のその他の在留資格を有する者につきまして、追加的な防疫措置を条件として新規入国を許可するということとしているところであります。

 入国の状況ということでありますが、現在、留学生を含めまして、外国人が新規に入国を求める場合につきましては、それぞれの在留資格に応じて在留資格認定証明書交付申請など従来の手続をとった上で、追加的な防疫措置として定められた要件に従って入国するということが可能となっている状況であります。

 そこで、本年の外国人入国者数でございますが、五月には最も少ない四千五百人であったものが、十月には約三万五千人となっておりまして、このうち留学生の入国者数については約八千百人となっている現状でございます。

 適切な防疫措置をとる。これが重要でありますが、それと感染再拡大の防止と両立する形で、どのように国際的な人の往来を段階的に再開するのかにつきましては、これは政府全体として各国、地域における新規感染者数の動向を含みます感染状況、また国内の感染状況及び医療体制等、さまざまな情報、知見に基づきまして、適切なタイミングで、総合的な判断が必要となるというふうに考えております。

 法務省といたしましても、今後もこうした政府全体としての検討に協力をし、政府の新型コロナウイルス対策本部の検討結果を踏まえた上で、必要な措置をしっかりと講じてまいりたいと思っております。

稲富委員 ありがとうございます。

 今後については、まさに難しい判断で、今すぐこの場ではということは、言えないことはあると思いますが、私は基本的には、防疫措置をとった上で、それでやはり入国を進めるべきは進めるという方、私はそういう立場です。ですので、さまざまな課題があると思いますが、ぜひお取り組みをいただければと思います。

 前法務大臣、森法務大臣にも、やはり日本語教育機関の、先ほど申し上げたように、ことし、そして来年と、学生さんが来なければ経営自体が立ち行かなくなるということもあり、これまで緩和のみならずさまざまな対策を実はとっていただいているというふうに伺っております。引き続き、その点もお願いできればと思います。

 続きまして、特定技能について伺います。

 新たな在留資格ができて一年七カ月ということでございます。そこで、まず基本的な事実関係を伺います。この特定技能の資格を受けた方の数、そして当初の見込み、最大の見込みは何名だったのかということをお伺いします。

高嶋政府参考人 お答えいたします。

 この特定技能につきましては、一昨年の法案で法律が成立して、昨年の四月一日以降施行しているものでございますが、現に、今特定技能の資格で在留している者の数、これは本年八月末現在の速報値で約七千五百三十八、それから九月末現在は、今公表に向けて精査中でございますけれども、概数で八千七百人となっております。

 この受入れ見込み数につきましては、制度開始、すなわちことしの四月一日以降、五年間で最大三十四万五千百五十人ということで見込んでおりますが、現在は、先ほど申し上げましたとおり、九月末現在で概数で八千七百人という状況でございます。

稲富委員 ありがとうございます。

 事実関係として、五年間で最大見込みの三%にもいっていないというのが現状でございまして、これは別に、コロナがあったからというのもありますけれども、その前、コロナが感染拡大する前から、最大の三十四万五千というところに遠く及ばない数だったという事実があったかと思います。

 そこで、お手元の資料で、この法改正をされた附則の「検討」の中で、附則十八条の二のところで、「施行後二年を経過した場合において、」「必要があると認めるときは、その結果に基づいて所要の措置を講ずる」ということでございますので、在留資格に関する制度のあり方などをどうするのか。もうすぐ二年になろうとしておりますので、大臣、どうされるのか、お伺いをいたします。

上川国務大臣 法律の施行後の二年経過措置ということで、附則の十八条二項に記載されている状況でございますが、特定技能の在留資格に係る制度のあり方については、関係地方公共団体、関係事業者、地方住民その他の関係者の意見を踏まえて検討を加えるという旨規定されているところでございます。

 施行から一年半ということで、先ほど数字も明らかにさせていただいたところではございますけれども、なかなか、コロナのこともございまして、海外からの特定技能外国人の受入れが相当期間停止をしている状況でございますが、今後、施行状況を把握、分析をした上で、さまざまな方々からの御意見を伺いながら、特定技能制度のあり方につきましても総合的な検討を行ってまいりたいというふうに考えております。

稲富委員 これは業種、十四業種があって、確かに、コロナがあって、当初想定していない事態があって、例えばここにある十四分野の業種で、宿泊とか航空とか外食とか、そういったところはむしろもうどうするのかという産業なので、そこで外国人に働いていただくという状況ではないというのはそのとおりです。一方で、建設業なんかは、現場ではむしろ必要であることは変わりないということがあります。

 先ほど申し上げましたように、当初これは、日本の経済のため、人材不足で、人手不足で人が必要だからということで、最大見込み三十四万五千人余りを法でつくって受け入れるということをやってきた。しかし、実際にはその三%にも満たない状況であるということから、これは、検討を加える段階ではなくて、やはり当然変える必要があるという段階にもう来ているんだと思うんですね。

 ぜひもう一度、大臣、やはり、もうこれだけ当初の予定とは違った状況、そして違った数である以上、これは変える必要があるということをお認めいただいて、やはり制度を見直していくということをぜひ御答弁いただけないでしょうか。

上川国務大臣 まさに委員御指摘のように、特定技能十四業種ということで、当初三十四万ということのマックスを想定したところであります。需要予測をした上で、そのトータルとして三十四万という数字を出して、そして、それに見合う、多文化共生も含めまして対応していこうということであります。

 コロナで、やはり業種によってかなり差があるなということでありますので、やはり何といっても現状をしっかりと分析をしていくということが必要ではないかというふうに思っております。

 先ほど申し上げましたとおり、特定技能制度のあり方につきましても総合的な検討をしていく必要があるというふうに理解しております。

稲富委員 検討ということでございますが、これはもう必要不可欠だというふうに私は思います。ぜひ、関係地方公共団体、関係者を含めて検討を加えていただいて、この制度のあり方を見直していただきたいというふうに思います。

 以上をもちまして終わります。ありがとうございました。

義家委員長 次に、池田真紀君。

池田(真)委員 池田真紀です。よろしくお願いいたします。

 早速質問に入らせていただきます。

 まず最初は、入管法とか難民法、在留資格に関して二つほど質問をさせていただきたいと思っております。

 この間ですが、施設内での餓死、ハンスト、あとまた長期収容ということで、国内外での批判を浴びているのが今の日本の現状であります。

 現在、収容・送還に関する専門部会にて、送還忌避者の増加、そして収容の長期化を防止する方策といったものが検討されているということでございますけれども、しかし、この部会の資料にでさえ疑義があったり、そして、今も、現在、この法務省のホームページで公開はされておりますけれども、一部文言が削除されたということもあったことが事実ではあります。

 そして、この公開の中身ですが、反省のおわびではなく、御指摘を受けたのでお知らせという表記にも少し違和感を感じるんですが、今後もこういったことを踏まえてチェックをしていきたいというふうに私は思っているところでございます。

 さて、現在ですが、在留特別許可に対して、二〇〇六年、九千人台だったのが、二〇一八年には千三百七十人に落ち込んでいます。また、難民認定率は、先進国の中でも受入れに非常に消極的で、〇・四%というような背景があるわけでございますので、まず、この実態なんですが、この在留特別許可の実態についての問題認識を大臣にまずお伺いしたいと思いますが、いかがでしょうか。

上川国務大臣 こうしたさまざまな課題、問題があって、また、皆様からも多数の御意見を寄せられながら、長期収容の問題も含めまして、今、提言をおまとめいただきました収容・送還に関する専門部会、こういったものをきっちりと精査をしながら、この在留特別許可に関する事項も含めて、法改正を今進めているところでございます。

 これから進めていくに当たりましても、いろいろな視野から判断をしていかなければいけないということだと思っておりますので、いろいろな御意見もいただきながら、私ども、それに対して真摯に取り組んでまいりたいというふうに思っております。

池田(真)委員 はい、ありがとうございます。

 まず、上川大臣、前のときに大臣になられているときに、実際に大臣宛てに難民審査参与員の問題発言と行動に対する申入れ書というのが提出されているかと思います。ここで、人格の攻撃とか、あと、侮辱、名誉侵害とかといったものは論外ということはもう当然でありますけれども、しかし、具体的にどういうことなのかということですが、例えばどういうことが行われているのか。

 あなたは難民ではない、難民としては元気よ過ぎる、本当の難民はもっと力がない。それで、調書では、難民にしてはあなたは威勢がよ過ぎますと記されていたり、あと、もっと弱い大変な人が大勢いる。あなたなら、ここはちょっと国名を伏せますけれども、○○に帰っても元気にやっていける。それで、調書では、それだけの元気があるのであれば帰国して活動することも可能ではありませんか、などです。そのやりとりの後に、○○地域の紛争状況、元気かどうかは難民の認定とは何も関係ないと代理人が話を説明しますと、次の人が待っている、何度も同じことを言わないでいい、本人も代理人も意見書に書いてあることと同じことを言っているだけだ、次の人の審理を受ける権利の侵害になりますよと言ったり、本当に幾つかあるんですが、屈辱等だけではないこととして、今、難民の選ぶ、選定に関することだけもう少し御紹介をさせていただき、共有したいと思います。

 普通に考えれば、難民として認めてくれる国を選ぶのではありませんか。難民の日本の認定率が非常に厳しいことを把握していなかったのですか。難民認定が厳しい日本に来たこと自体、難民の行動として不合理だという発言とか、難民申請者のくせに働いていいのか。この方は、申請者は在留資格があって、就労を許可されていたという方ではありますが、そのことを知らなかった方がいらっしゃったと。それで、同席をしていた方が慌てて、働ける難民もいるんですということを耳打ちをしたら、その参与員さんは、ふてくされながら、じゃあいいけどさというような態度をしたと。でも、そのことも調書にも残っていないというようなことがありました。

 実際にいろいろと今検討を進めているということもありますので、記録の作成の問題、あと質の問題、そして、あと量の問題ですね。次の人が待っているんだ、大変なんだということであれば、量の問題ということがいろいろあるかとは思います。このようなことで、現在の、質の問題についての取組状況というのをぜひ伺いたいと思っているのですが、政府参考人で結構ですが、いかがでしょうか。

高嶋政府参考人 委員御指摘の申入れ書については、当然、出入国在留管理庁としても承知しております。

 当時、法務省におきましては、その申入れを受けまして、難民担当の審査参与員等の方々に対して、御指摘の申入れ書を配付したり、あるいは協議会の場などを通じて注意喚起をしましたり、必要に応じて当該難民審査参与員本人に直接御指摘の内容をお伝えするなどしているところでございます。

 不適切な言動がもしあったとすれば、これは本当に大変申しわけないと思っておりますけれども、今後、そのような点も含めまして、あと、難民認定の質をやはり向上させるということが我々も非常に大事なことと思っております。それについてはこれからもしっかりとやってまいりたいと考えております。

池田(真)委員 法改正に向けてということでございますので、これは改めて、また引き続き議論させていただきたいと思っております。

 この件に関してもう一つ、子供がいる場合についてだけちょっと確認といいますか、質問させていただきたいと思っております。

 令和元年度の送還忌避者三千百人のうち仮放免の方二千二百四十二人。うちですが、未成年の方の人数、確認をしていきたいというふうに思いますが、参考人、お願いできますか。

高嶋政府参考人 送還忌避者のうちの未成年の数についての御質問でございますが、御指摘のとおり、令和元年六月末現在で、送還忌避者の数は収容中の者それから仮放免中の者含めて三千百人でありました。そのうち、収容中の者が八百五十八人、それから仮放免中の者が二千二百四十二人でございました。そのうちの未成年者の人数ということでございますけれども、今回、取り急ぎ集計した速報値として申し上げますと、収容中の送還忌避者八百五十八人のうち二名、それから仮放免中の送還忌避者二千二百四十二人のうち三百二人の合計三百四人でございました。

 以上でございます。

池田(真)委員 ありがとうございます。

 三百四人もお子さんが、今、この日本に、これは速報値ということですので、実態はもしかしたらもっと多いかもしれないし、どうかもわからないということです。

 このお子さんのいる状況ですが、たまたま、たまたまと言うのも変なんですけれども、私もソーシャルワーカーでもありますので、先日、仮放免で、難民認定申請中の方も中にはいらっしゃいますが、たまたま二人の中学生、お話をする機会がありました。

 仮放免の親のもとで、この日本で生まれて日本で暮らす、そういった方でありましたけれども、その会場にいたというだけではなくて、非常にたくさんのお手伝いをしてくださいました。すごく生き生きとして、さらには、私が日本語だけでしたので、さまざまな語学についてですが、通訳も積極的に、通訳としていたわけではないんですけれども、お手伝いをしてくださるというようなことですが、大変生き生きして印象的でありました。しかし、その笑顔の裏に、その子供は、自分がその後どうなるのかというような不安でいっぱいの状況なんですね。

 今の日本の現状ですと、子供たちの在留資格と入管の収容の問題というのは非常につながっておることは、もう当然皆さんも御承知おきだと思いますけれども、この子供たちが在留資格を得られないことと、そして、現在、在留資格がないことを理由に、近い将来、入管の収容施設に収容されるのではないか、そして強制送還されるのではないかということが予想されるわけです。

 子供たちはどこまでわかっているかわからないけれども、とにかく、将来、夢を抱けない。大きくなったら何になりたいのかということで、非常に勉強も熱心にやっていますし、人のお手伝いも非常に生き生きとされていましたし。その活動を通して私にぽろっと、通訳になれるかなと言ったんです。こういうこともふだんはなかなか口にできない子供たちがたくさんいる。日ごろ、その御家族といいますか、方を支援している方からちょっとお聞きしましたら、不登校だというようなこともお聞きしました。非常に生きづらい状況と将来希望を抱けないというような子供たちが今この日本にいる、この制度の中にいるということであります。

 つい数日前ですが、テレビでもちょうど、深夜、深夜ではないのかな、十時ごろでしたけれども、在留資格のない子供たちの実態について取り上げた番組がありまして、私も会館で拝見をしました。そういうときに、子供たちにだけ在留資格を与える検討がもし今されていたとしても、子供たちだけではなくて、その御両親やその御家族にも在留資格を与えなければ意味がない。家族の統合、彼女たち彼らにとってみての人権といったものに非常に配慮する必要があると思っています。

 現に、二〇〇〇年ごろまでであれば家族全員在留特別許可が与えられただろうというふうに思われる案件といいますか事例が、現在は認められていない。しかも、これは法務大臣の権限ということもありますので、非常にその辺の透明性とかそういったことは議論されているかとは思いますけれども、この辺の受けとめといいますか、大臣の所感をお聞きしたいと思います。

上川国務大臣 収容・送還に関する専門部会でさまざまな御提言をいただいております。それを踏まえまして、今委員御指摘の在留特別許可に関する事項も含む法改正につきまして、検討を進めている状況でございます。

 これまでも、在留特別許可の許否判断に当たりましては、個々の事案ごとに、子供の教育状況あるいは本邦における定着性を含めまして、在留を希望する理由、家族状況、人道的な配慮の必要性等を総合的に勘案しながら実施をしている状況でございます。

 私からは、出入国在留管理庁に対しまして、委員御指摘の子供への配慮の必要性も含めて、さまざまな御意見にしっかりと耳を傾けながら、必要な検討を行うように指示をいたしました。

池田(真)委員 ありがとうございました。またその続きをぜひ私も議論してまいりたいというふうに思っておりますので、よろしくお願いします。

 続いてきょうは、時間が限られておりますが、子供シリーズでいきたいというふうに思っています。関係部署の皆さんにもおいでいただきました。

 次は、生殖補助医療の問題ですが、とりわけ親子関係についてなんですけれども。

 平成十五年の九月十六日に生殖補助医療関連親子法制部会で、私の認識するところでは記録がとまっているんです。なので、今の現状といいますか、お聞かせいただけますでしょうか。参考人、お願いします。

小出政府参考人 お答えいたします。

 委員の御指摘の、精子、卵子、胚の提供等による生殖補助医療によって生まれた子の親子法制につきましては、平成十三年四月から法制審議会生殖補助医療関連親子法制部会において検討がされてきたところでございます。

 この問題に関する法制審議会における検討は、生殖補助医療としてどのような医療行為が許されるかという行為規制に関する厚生労働省における法整備の条件整備の一環として開始されまして、そのような行為規制を前提とした検討がされてきたところでございますが、生殖補助医療の行為規制等のあり方をめぐりまして国民の間にさまざまな意見があったことから、平成十五年以降厚生労働省における検討は行われておらず、したがいまして、法制審議会における親子法制についての検討に関しましても、御指摘のとおり、平成十五年九月から休止した状態になっております。

 その後、平成二十五年から議員立法に向けた検討が進められてきたものと承知しておりまして、法務省としてはその議論の動向を見守るなどしてきたところでございます。

池田(真)委員 わかりました。ありがとうございます。

 今、医療行為自体についての議論ということだったんですが、しかし、私たちもやはり責任ある立場でさまざまな法律や制度といったものを議論していく必要があるというふうに考えております。

 諸外国の例を言ったら切りがないと思いますけれども、例えば、ニューヨーク州といっても、やはりこれも、公聴会で三十九人が証言し、議論が出尽くしたというふうに見えたとしても、その後、議会での法案審議といったのが数年続いたり、また、その法案ができるまでの関連法案が二十一も提出をされたりというようなことを繰り返した上で成立をしたりということの実例といいますか経緯があります。

 しっかり、その辺の取組として、私の思うところでありますのは、やはり、会派内での議論は当然行っておりますけれども、子供の出自を知る権利、リプロダクティブヘルス・ライツといったものの理念といったものをしっかりと、抜け落ちるようなことがないようにしていくことが極めて重要だと思います。特にですけれども、子供の知る権利ですね、卵子、精子提供者の匿名性の要望よりも本質的に優先されるものという考えを私は尊重しております。

 ぜひこの辺についての、大臣の所感で結構ですので、お伺いしたいと思います。

上川国務大臣 ただいま委員御指摘になりました、いわゆる子の出自を知る権利の取扱いの問題等でございますが、どのような生殖補助医療をどのような体制や手続のもとで行うべきかという行為規制の問題であると認識していますが、これは生殖補助医療の問題を検討する上で非常に重要であるというふうに考えております。

 法務省におきましても、生殖補助医療によって生まれた子の親子関係につきましては、先ほど民事局長が答弁したところではございますが、議員立法に向けた御議論が今推進されているということでありますので、その動向を見守りつつ、適切に対応してまいりたいというふうに考えております。

池田(真)委員 議論を深めて、しかも関連法案を含めて議論が広がることを私も努力をしたいというふうに思います。

 次ですが、警察などということで、などという表現にとどめさせていただこうと思っていますけれども、一例を挙げた方がいいということでしたので、行方不明の子供の対応について、現在何か課題認識があればということで、政府参考人、お願いできますでしょうか。

檜垣政府参考人 お答えいたします。

 子供の行方不明事案につきましては、家族や友人関係のトラブル等から家出を図るケースや、SNSを通じて誘い出され犯罪被害に遭うケースなど、さまざまな要因がございますが、子供の生命身体の安全を確保するため、早期発見、保護を図り、また保護者等の責任ある方に確実に引き渡すことは、警察として重要な課題と認識しております。

 子供の行方不明事案を認知した場合には、行方不明となった背景の解明を図りつつ、早期発見、保護に努め、保護者等に確実に引き渡せるよう、引き続き適切に対応してまいりたいと考えております。

池田(真)委員 現状はわかりましたが、課題も一部見えたようにも思っています。

 昨年ですが、一例として申し上げますと、北海道で九月に、行方不明となっていた十代の少女が、警察が送り届ける船上の、船の上から飛びおりて亡くなったということの事件がございました。

 私は、北海道の九月、本当に冷たかっただろうと思いますし、本当に怖かっただろうなとも思います。しかし、警察が送り届けようとしているその先の人生こそが一番彼女にとっては怖かったんだというふうに思います。

 今御答弁の中からもわかったんですが、確実に引き渡すというお言葉が二回出てまいりましたが、そのことが適切かどうか、そのタイミング。安全にという言葉も出てきました。それを確保するためにどうするかということを、ぜひ子供の立場から考えていただきたいというふうに思っています。

 大臣の所信の演説の中で、子供の虐待防止の対策というところの中で、法務省の児童虐待防止対策強化プランと同時に、法務少年支援センターの心理の専門的知見を生かした支援を推進するというような表現もございました。

 この矯正心理専門職とか法務教官というのは、いずれも犯罪とか非行の防止が前提にあるということでありますので、子供から見た場合での信頼構築の関係ではないんですね。一生懸命やっていると思いますよ、その専門職の方は子供さんを理解していると思いますけれども、子供さんから見たら、申しわけないけれども、時間はかかることですし、もしかしたらそうならない場合も多いだろうというふうに私も思っている立場でもあります。

 そういったときに、依頼元で関係者からの統計もきのうお伺いしましたけれども、はっきり言って、警察だけ頑張ってもなかなか、安全にといったときに、どうやって、できればといったときに、その辺のしっかりした聞き取りといいますか受けとめといいますか、いろいろなところが傷ついている子供たちが多いと思います、心も体もぼろぼろだったり、不安で押し潰されそうだったり、そういう人たちをやはり警察だけで受けとめるというのはなかなか、役割分担しないと難しいと思いますので。はっきり言って敵なんですよね、敵。子供から見た場合に敵。居場所がない子供たちだから、しっかりここを共同でできるような対策をとっていただきたいと思っています。

 虐待防止の中でいいますと、子供のアドボカシー制度、こちらを、ようやっと厚労省の部会では三回目で登場しておりますので、子供の意見表明、子供の権利、制度ということで、子供の味方をつけるという検討をぜひしていただきたいというふうに思っております。

 この辺について大臣に御所見をいただきたいなと思ったんですが、ちょっと時間がありますので、次にまとめて、子供の部分にかかわってくると思いますので、御意見をお伺いしたいと思います。

 今度は、コロナ差別についての確認になります。

 これは、きのう出たてで、非常に分厚いのを私も、コロナの関係の資料、これは出たてだったので、ここについての質疑をさせていただきますという通告だけだったので、ちょっと中身まで踏み込むのは当然できなかったわけでございますけれども。端的に言いまして、この差別問題について、出口といいますか現状、端的で結構でございますので、そこだけお答えいただけますか。参考人、お願いします。

梶尾政府参考人 新型コロナウイルスというのは誰もが感染するおそれがあるということですので、差別や偏見などはあってはならないということでございまして、感染症対策の分科会のもとに本年九月に設置されました偏見・差別とプライバシーに関するワーキンググループでは、個人のプライバシーの尊重ということと感染拡大防止の両立を図りながら、偏見、差別に対してどのように取り組んでいくのかということにつきまして、医療機関ですとか学校、あるいは高齢者施設の方々などからの聞き取りによる実態の把握などを行いながら、今後必要と考えられる取組につきまして専門家の方々に御議論をいただいたところです。

 そして、昨日、御紹介いただきましたとおり、これまでのワーキングでの議論を踏まえまして、感染症に関する正しい知識の普及ですとか啓発、教育を強化していくこと、相談体制の強化といった、国や自治体、関係団体、NPO、報道関係者などが今後更に取組を進めるに当たり踏まえるべきポイント等、御提言をいただいたところでございます。

 これを受けまして、政府といたしましても、SNSやホームページ、政府広報等でしっかり、まず、感染症に関する基本的な情報の周知、そして、差別、偏見等の防止に向けた啓発や教育に資する発信を強化していくですとか、関係する各機関の職員の研修等におきましてもそういったことの正しい知識の周知等、また、自治体における体制の構築への国の支援ですとか、政府で統一的なホームページをつくりまして、差別の事例、こういうものがある、そして、悪質な行為については名誉毀損だとか民事上の損害賠償請求の対象になるといった法的効果を有する可能性があるといったことも周知をする、また、地方自治体が新型コロナウイルス感染症に関する情報を公表する際の基準というのを定めていますけれども、これも、この感染症の特性を踏まえた情報の公表のあり方や基準について改めて考え方を整理して公表するなど、関係省庁や自治体等と連携しながら更に取組を進めて、偏見、差別等の防止につなげていきたいというふうに考えております。

池田(真)委員 法務省としての取組ということで、啓発とかそういうことは何となくわかったんですが、やはり、今回、この意義といいますか、このコロナの対策会議の方で意義というのは、全省庁にまたがってやっていくということが極めて重要なんだろうなというふうに思います。

 と申しますのも、この偏見、差別の問題って、ポスターを張ったりとか、啓発していきましょうというだけでも、そういうことを悪気なく言っている人というのはなかなか気づかないし、そんなもの見に行かないですね。誰かが、それってだめよというおせっかいの方がいてとか、あるいはそういうのを言わない雰囲気をつくっていくとか、もっと言うと理解者をふやしていくということも大事だと思いますので、こういった形で、いろいろと制度をつくっていったり、予算をかけていろいろな事業をやっていくということと同時に、地域で一人一人の市民が取り組むということも同時に重要だというふうには思っています。

 ただ、コロナに関しては、まだわからないことということで、非常にみんなが、恐怖だったりいろいろなことがあるかもしれませんが、そういったこと自体が偏見を生むきっかけにもなっているので、政府に関しては、正しい情報を発信していくこと、これはもう何よりも大事なことだと思います。

 例えばなんですが、私、前に、HIVの免疫機能障害ということで、平成十年に、障害者手帳という中で認定をされるということになったんですが、その前後は、自治体の事業といたしまして、HIVのホームヘルプに特化した事業を自治体でやったということがありました。それは、やはり、偏見、差別を生まない、そしてすぐに支援に結びつけるということがあったかと思います。

 こういうことを踏まえますと、今新型コロナの感染という、この今の現代の中で、非常に医療の、介護の逼迫している状況もあれば、差別、そのほかの職場も当然そうだと思いますけれども、そういう中で、ひとつ、この差別をなくしていく、偏見もなくしていく、そして正しい知識と正しい理解をつけていくということで、そういう積極的な事業というか施策につなげていくことも非常に重要だと思っておりますので、そもそもこういった会議自体、情報自体は、各府省庁との連携を強めていただきたいんですね。

 法務大臣の方からいろいろと各大臣に具体的な事業まで提案というのはなかなか難しいかとは思いますが、こういう、せっかくやれる会議がございますので、そのようなことをぜひ、所見といいますか、期待も込めて、ちょっとお願いをしたいんですが、御意見お願いできますでしょうか。

上川国務大臣 まさに、今回の提言につきましては、この政府の新型コロナウイルス感染症対策分科会のもとに置かれた偏見・差別とプライバシーに関するワーキンググループ、これが設置された上で、親会の方に、新型コロナウイルス感染症対策分科会に提出されたものというふうに理解をしているところであります。

 私どもの法務省もそうでありますし、また厚労省、先ほど答弁されましたけれども、それぞれの省庁の力を結集して、そして提言がネットワークのようになって、そして今のように偏見、差別を受けている、あるいは受けるおそれのある人たちを取りこぼすことがないようにしていくということは非常に重要であるというふうに思っております。委員御提言の、その政府間の中での連携ということについては、まさに極めて重要であるというふうに思っております。

 加えて、子供については、やはり何よりも犠牲になってはいけないというふうに思っておりますので、そこのところにつきましても、私どもの方は、例えばSOSミニレターというようなものがございまして、これは子供の権利を擁護する観点から、毎年、四年生、五年生ぐらいのお子さん、一千万人ぐらいの方に配付をして、みずからの言葉で今の現状について書いていただくということであります。丁寧にフォローしていくということもあわせて、本当につながりをそこで切らないようにしながら、またその問題解決につなげていくということでありますので、こういったことを重ねながら、コロナの問題についてもしっかりと対応してまいりたいと思っております。

池田(真)委員 ありがとうございます。

 もう質問時間が終了しましたので、最後、お呼びしていた耐震基準については、ちょっとまた改めてにさせていただきたいと思います。おわび申し上げます。

 最後になりますけれども、前段の委員からの質問、そしてあと大臣の意見表明もございましたが、法務行政の信頼の回復、確立といったところに、やはり今国会並びに来年いろいろ用意されている法案を含めてですが、非常にここは重要だというふうに思っております。私も、今国会、来てびっくりしたのが、この臨時国会でびっくりしたのが、何か今までは……

義家委員長 お時間が過ぎておりますので。

池田(真)委員 ごめんなさい。

 いろいろとこの件については今までにないことが行われたので、信頼を回復してまいりたいと思います。今後ともよろしくお願いいたします。

 ありがとうございました。

義家委員長 午後一時から委員会を再開することとし、この際、休憩いたします。

    午後零時三十五分休憩

     ――――◇―――――

    午後一時開議

義家委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。

 質疑を続行いたします。寺田学君。

寺田(学)委員 御指名いただき、ありがとうございます。寺田学と申します。

 法務委員会、私は議員を十五年やっていますが、初めて所属をさせていただきました。願いがかないましてこういう機会をいただきましたこと、心から関係各位の皆さんに感謝申し上げます。

 そしてまた、上川大臣とは、当然初めて質疑をさせていただきます。よろしくお願いします。

 仲よくしている自民党の同じ当選回数ぐらいの議員から、将来上川総理を目指して頑張るんだということを非常に熱く語られたときがありまして、そういうお声をいただいている方なんだなということをしみじみかみしめながら、いろいろ質問させていただきます。

 三十分いただきましたので、在留特別許可の問題の件と選択的夫婦別氏、そして引き出し屋と通称呼ばれる案件に関してです。

 まず、在留特別許可に関しての質問です。

 当初、質問の機会をいただくことになってから、予定はしていなかったんですけれども、先ほど池田委員の方も質問されましたけれども、数日前の番組も拝見をしまして、自分が質疑機会を得るときにこのことに触れないわけにはいかないなということで、質問をさせていただきます。

 ここにいらっしゃるベテランの方々は別として、私自身初めてですので、基礎的なことから学び直しているんですけれども、いわゆる入管法の五十条の四に、「その他法務大臣が特別に在留を許可すべき事情があると認めるとき。」ということで、通称としての在留特別許可制度というものが確立をしている。

 レクの段階で役所の方々にお話をしたんですけれども、何でこんなものを設けているんですかと、そもそも論としてお伺いしたところ、もちろん、今までの慣習法的なものとともに、裁判の中で、この国に在留していいかどうかというのは自由な行政裁量が設けられていて、それは法務大臣がお持ちになっているんだというお話を受けました。

 そういう仕組みの中で、とはいえ、その自由裁量という中において、今まで過去の積み上げというものもありますし、ある程度のガイドライン、どのような場合に認められるのかというガイドラインというものが役所の方からも示されていて、それも拝見をいたしました。

 さまざま、在留を希望する者で、家族状況や素行やら何やらという話はあるんですけれども、その中に、人道的な配慮の必要性という非常に主観によって判断される項目が入っていて、これのみにはよらないんだとは思いますけれども、そのような視点、観点をもとに、物すごい強い力だと思います、在留を認めるか認めないかということを法務大臣はお決めになるお立場にある。

 ですので、上川大臣として、この人道的配慮とはどのように捉えられているのか、そのことを、上川大臣としてのお考えをまずはお伺いしたいと思っております。

上川国務大臣 さまざまな理由で、日本の国の中で活動する、あるいは滞在をする、これは、今、国際的なグローバル化が進み、また、そういう中にあって人の移動ということについても進んでいる時代でありますので、こういう方々をどのような形で日本が受け入れるのか、この在留資格をめぐる議論というのはこれまで積み重ねられてきたところでございます。

 この出入国管理及び難民認定法、ここにおきまして、先ほど委員の方から御指摘をいただきました五十条の第四号にあります「法務大臣が特別に在留を許可すべき事情」ということの中で、人道上の配慮としてという、こういう一文が来ている状況であります。

 お一人お一人の置かれている立場というのは異なりますので、これまでも実績の積み上げの中でさまざまな判断を重ねてきたというのが、これまでの入国管理の中での取組であったというふうに思います。ただ、それぞれ判断する方によって差があってしまっては、これはまた問題があるということで、そういった事例の中で一つの筋を決めていくという意味でのガイドラインというものは、これは極めて重要な要素であるというふうに思っております。

 このガイドラインにつきまして、平成二十一年の七月に、当時の入国管理局が、在留特別許可に係るガイドラインという形で、改定、公表しているところでございまして、この記載のとおりでありまして、この人道配慮の内容といたしましては、難病等により本邦での治療を必要としていることでありますとか、本邦で出生し、また本邦の小中学校に在学している実子を監護及び養育している事情等がある、こうしたことがこれまでの実績の中で多分出てきたことだというふうに思います。

 こういった点につきまして、この在留特別許可における判断の基準というものの一つであるというふうに認識をしております。

寺田(学)委員 幅広い自由裁量が設けられていることへの是非、それに対する検討、それに対するガイドラインとあると思いますが、現時点において、まさしく法務大臣でいらっしゃる上川大臣が自由裁量を持って、一つのガイドラインとして人道的な配慮というのはありますけれども、お持ちになっているので、物すごい私は強い力だと思っているんです。制度的な是非を言っているんじゃないんですけれども。

 何で難病の方、何でこの日本で生まれて在留資格がないけれども学校に通った子は、在留資格がないけれども特別な在留許可を与えているんでしょう。何でなんですか。

上川国務大臣 人道的な配慮の要件の一つとして今のような項目が挙げられているところでありますが、いずれにしても、総合的な判断で決めていくというのがこの許可の一つの大きな出口でありますので、ここのところはいろいろな要素を組み合わせながらということだと思います。

 私自身、具体的な判断をしている立場にはございませんので、それぞれの専門分野をしっかりと持った形で、また、その判断をするに当たってはさまざまな意見を聞かせていただきつつ総合的に判断をする、まさにその中にこうした要件もその一つとしてあるというふうに思っております。

寺田(学)委員 聞き方を変えますけれども、何か追及していっているわけでもなくて、まさしく、大臣として、個人としてという言い方はふさわしくないですけれども、人道というものをどのように捉えているのかということを、大きな権限をお持ちの方として、制度的には自分では判断していないとお話がありましたけれども、権限をお持ちなのは大臣ですので。

 大臣としての人道とは何だというのを、私はぜひこの問題を考える上での基本に立ちたいと思っているんです。大臣にとっての人道というのは何なんですか。

上川国務大臣 私は、今回、さまざまな報道等におきまして、特に長期収容にかかわる問題については、これは人権にかかわる問題である、まさに人道にかかわる問題であるというふうに理解をしております。余りにも長い期間、長期に収容されている状態ということが、その人の一つの精神あるいは心身に対していい影響を及ぼすわけはございませんので、そういった観点から考えてみても、さまざまなその方の置かれている状況を、一つのその方の生きる権利、人権として捉えて、そして対応していくということがベースにあるのではないかというふうに思っております。

 在留特別許可の判断に当たりましては大変大きな権限があるということでありますので、これまでの議論の、実際に審査をしていく中で出てきたさまざまな実例ということを踏まえた上で、このようなことを特出ししながら、しっかりと共通の基盤でそれぞれの一つずつの案件に対して対応していくということが必要ではないかというふうに思っております。

 私も所信の中で人権の問題であるというふうに申し上げたところであります。長期収容の問題は、とりわけそういう配慮からしっかりと対応するようにというふうに指示をしておりまして、今のような御質問に対しては、そのような対応をしてまいりたいと、これからも思っておるところでございます。

寺田(学)委員 ちょっと時間もかかるのでこれ以上進められないですけれども、おととい私が見たのはクローズアップ現代というものです。そこには二つの家族が出てきました。さまざまな理由があって日本に暮らすことになったけれども、在留資格がなくて、先ほど言われたとおり、長期で拘束されてとか、さまざまな、二家族目のところは、子供としてはどんどん日本の学校で育ちながらも、もし在留許可が認められるのであれば、家族がばらばらになる可能性があるということでした。

 お忙しいと思うんですけれども、クローズアップ現代、ごらんになられましたか。なかったら見てください。どうですか。

上川国務大臣 この間のクローズアップ現代も含めまして、その前の、シリーズで取り上げていただいております、これについて拝見させていただいております。また、そうした実態を踏まえて、私どもの行政業務、法務業務の中で、しっかりと、検討をする際に声として参考にさせていただいているところでございます。

寺田(学)委員 人道って何かとさんざん言いましたけれども、私も答えがなかなか表現しづらいんですけれども、やはり、ああいうときを見たときに何とかしてあげたいと人間として思う、その感情そのものが根源的にあるところ、人道の根源だと私は思っているんです。

 ですので、もちろん、こういう広範な自由裁量を持っている制度自体の是非は議論されるべきだと思うんですけれども、現時点においてはお持ちになっているわけですので、まさしく御自身の大臣としての感情、感性というもの、人道的な感性というものを大事にしてやっていただきたいなと思うのと、先ほど池田委員のところで、在留資格がない子供たちが、今のところ把握しているのは約三百人ということでした。私は、まずは、この子供たちにはしっかりと、大臣の人道的な観点で、基本的には在留の資格を与えるというのが人道的な観点だと私は思っています。先ほど答弁の中で、子供への配慮の必要性等も検討するべきだと、これからの検討に対しての指示は出されていますけれども、今申し上げたこの三百人、わかっている範囲では三百人ほどいる未成年の子供たちに対する人道的なあり方、このことを御答弁いただきたいと思います。

上川国務大臣 法律を制定すればできるということ、あるいはそれがなければできないという問題では必ずしもないというふうには思っているところでありますので、先ほどの、在留許可を与えるについては人道的な配慮ということに触れて、子供の問題については特に重きを置きたいというふうに思っております。

寺田(学)委員 ありがとうございます。

 もちろん、それによって家族が引き裂かれること、そのことによる子供の、自分は残るけれども親とばらばらになってしまうということを子供に選ばせる部分も過酷なものがあると思いますので、そういうことも総合的に御判断いただきたいと思います。

 選択的夫婦別氏に行きたいんですが、ちょっとその前に一個だけある、引き出し屋のことをまず、一問だけですので、大臣にも知っていただきたいんです。

 引き出し屋という犯罪の形態の呼び方があります。何かというと、引きこもっている、子供に限らず成年以上の方々ですけれども、それが、ある業者によって、いや、いい施設がありますのでということで、その本人の意思とは、全く同意を得ずに、引き出してその施設に連れていく。中には、行きたくなくて、高速道路の途中でドアをあけておりて、亡くなったか大けがを負われたというケースもありました。

 一部には裁判を起こしているケースはありますけれども、一般的に、この問題を政府のどこが所管しているか、誰が面倒を見るのか。まさしく自分の意思とは全く反した形で、人権的にも侵害される形で自由を奪われていくというケースが散見されますし、まだまだ起きています。ですので、このことは、もう一問だけですけれども、どうか、人権擁護の立場に立つ法務省としても、本件に関してしっかりと当事者意識を持っていただきたいというのが質問の意図ですので、簡単な質問になってしまいますけれども、大臣、責任の一端を担っていただくことをお話しいただければと思います。

上川国務大臣 大変痛ましい案件ということで御紹介をいただきました。

 正当な理由がなく、本人の意思に反して行動の自由を制約するようなことがあれば、行為は許されないということは言うまでもないことでございます。

 当省は、人権擁護機関におきまして、被害者からの申告等に基づいて人権侵犯事件として調査を行って、その調査結果に基づいて人権侵害に当たるか否かの判断をしながら、事案に応じた適切な措置を講ずるということでございます。被害申告がなされた場合には、人権侵犯事案として調査を行って、適切に対応するということでございます。

 未然に防ぐということも非常に重要かというふうに思っておりますので、そういう問題につきましては、私、しっかりと問題意識を持って、よく検討してまいりたいと思っております。

寺田(学)委員 ありがとうございます。

 残り十五分で、選択的夫婦別氏の方に入りたいと思います。

 私自身、結婚していますが、妻には名字を変えてもらいました。もちろん、いろいろ議論はしましたけれども、両者の合意のもとで、彼女は私が今まで使ってきた姓に今、戸籍上なっています。そういうことで、本来、別氏制度が認められていたら別氏がよかったという話もされました。そういう意味で、私自身も当事者としての責任を持っているなというのもあるので、このことをずっと追っかけて、議員活動の中でやってきたんです。

 そういう中で、いろいろ、同じように仲間の中で、今回、菅総理になられて、委員会質疑の中で、菅総理が以前、別氏、選択的夫婦別姓のことに賛同する立場で議員活動してきたことを問われて、今どうですかという話をされて、私は政治家としてそうしたことを申し上げてきたことに責任があるという発言をされたことが、かいわいでは非常に話題になりました。

 先ほど稲田先生が、今いらっしゃらないですけれども、もうイデオロギーを超えてちゃんと議論しようと、今いらっしゃいましたけれども、稲田委員があえてそうやって言っていただいたので、私も本当に、この問題自体がイデオロギーの枠組みの中で議論されること自体に非常に大きな違和感がありましたので、何党だからとかどういう思想だからということをまず一旦脇に置きながら、本当に必要なことは何なんだろうと議論しなきゃいけないと思うんです。

 そういう意味で、私はこの総理の発言というのは非常に大きな発言だと思いますし、そしてまた、法務大臣が上川さんになられているということ自体も大きなめぐり合わせだと私は思っているんです。

 通告していますけれども、本件に関し、法務大臣になられてから、この選択的夫婦別氏制度について総理とお話をされたでしょうか。

上川国務大臣 菅内閣総理大臣が、先日の参議院の予算委員会の方で、今委員が御指摘のあったような御発言をなさったわけでございます。私は、その前に、私のことも尋ねられましたので、その答弁もしたところでございます。

 総理大臣とどのようなお話をするかということについては、一つ一つ、こうやった、言った言わないというようなことについては、ちょっと、このところでお答えは差し控えさせていただきたいと思います。

寺田(学)委員 内容はお伺いしません。本件に関して、大臣として総理とお話をされましたでしょうか。

上川国務大臣 そのこと自体をお答えするということについて、差し控えさせていただきたいと思います。

寺田(学)委員 もう既にされているのであればそれでしょうけれども、ぜひお話をされてください。

 結構重い発言だなと、多分、総理自身としても、さまざまな環境を勘案しながら、そういう総理としての発言をされたんだろうなというふうに思います。

 先日出された男女共同参画の基本方針の中にも、さらなる検討が必要ということで、選択的夫婦別氏のことに関して表記がされていて、国会における議論を一つ注目していくという言い方をされて、一般的なことを言うと、夫婦を一つの姓にすること自体は、明治時代ですから閣法で出されているものだと思いますけれども、基本的に国会の議論というのは、一般的には、閣法で出てきている問題に関してこのような形で議論して議事録に残ることがいわゆる国会での議論、各党での議論ではなくて国会での議論とはこういう形なんです。

 この国会の議論をという一つの言い方をされている趣旨というのはどういうことを指されているんでしょうか。

上川国務大臣 選択的夫婦別氏制度の導入の問題ということで、我が国の家族のあり方に関する問題でございます。国民の理解を得て行うということが極めて重要であるということでありまして、国民を代表する国会においての議論の動向というのは極めて重要なものであるというふうに考えております。

 夫婦同氏制度を定める民法第七百五十条の合憲性について判断がされた平成二十七年十二月十六日の最高裁判所の大法廷判決におきましても、夫婦別氏制度の採用につきましては、婚姻制度や氏のあり方に関する社会の受けとめ方に依拠するところが少なくなく、この点の状況に関する判断を含め、この種の制度のあり方につきましては国会で論ぜられるべきということとされているところでございます。

 こういう御指摘もございまして、法務省としては、引き続き、きょうのような、まさに御議論をしっかりと踏まえていきたいというふうに思っておりますけれども、さまざまな御意見があるということについては、きょうの午前中の御議論でもあったところでございますので、幅広くしっかりと対応してまいりたいというふうに思っております。

寺田(学)委員 ですので、政府の考えも含めてちょっとお伺いをしたいんですけれども、この間の男女共同参画の議論の、その基本方針の中でも、さらなる検討が必要という、その検討の必要性を明記されております。

 この選択的夫婦別氏制度の検討自体というのは、誰のどういうことに対して必要性が生じて議論がされている、議論の必要性の対象、ターゲット、何をもとにそういう議論の必要性を感じていらっしゃるのか、御答弁いただけますか。

上川国務大臣 まず、この選択的夫婦別氏制度の導入に関しましては、委員御承知のとおり、平成八年及び平成二十二年に、法案の提出に向けまして、法制審議会が答申した内容について、法案の、改正案の提出に向けて準備をしてきたところであります。

 しかしながら、この問題については、先ほど申したように、世論の調査のところをシンボリックに代表するわけでありますが、平成八年当時は自民党、また平成二十二年当時は民主党を中心とした、それぞれ当時の与党内においても異論があったことなどから、改正法案の提出までには至らなかったというふうに認識をしております。

 この検討については、例えば世論調査につきましては、五年に一回、世論調査を実施しておりますので、トレンドとしての動き方については、これはさまざま今変化も見られている状況でありますし、また、直近の二十九年でいきますと、若い世代の方たちの意見というのと、世代間にかなり違いがある、こういったこともございまして、やはり家族のあり方についての世論の動向等も変化をしている、こういったところも見定める必要があるというふうに思っております。

 先ほど、委員の方から、御自分の事例に即して、御自分の世代、世代というか、のときには、奥様の方が氏を御主人の方の姓にそろえたということでの同一ということでありますが、私の世代のとき、私も夫の姓にそろえているという状況でございます。そのときにもさまざまな議論がございました。そして、今もまたそうした議論がなされているということでございます。

 こうしたことを、やはり氏の問題、長い間かかってきたところでございますので、こうした考え方、また最近の状況につきましても、特に若い人たちの考え方、こういったものもしっかりと踏まえた上で、この問題についての取組をしていく必要があるということを私自身は考えております。

 世代間の違いということもありますけれども、やはり時代が変わっていく、未来の志向で考えていくということも極めて重要だなというふうに、私自身は個人的に思っている状況であります。

寺田(学)委員 恐らく、物事、全員が賛成したり全員が反対することになかなか難しい問題があって、何に重きを置いて物事の価値観を進めていくのかということだと思います。

 その点に関しては、今はっきりと、大臣個人としてのお考えとしては、未来の方々ということに御言及をいただいたと思います。

 正直、家族のあり方という言葉が何度も出てくるんですが、家族のあり方というのは何を指しているのかなというのを、こういう議論をする上で基本的に考えたんです。家族のあり方というのは何なのかということと、家族のあり方というものを国がどこまで法律で限定をし、あり方を、物事を限定していくのかということの議論が多分根幹にあると思うんです。それが時代の流れなのか、世代なのかわかりませんけれども、いろいろ考え方が変わってきている。

 大臣、家族のあり方とは、どのように、何のことを指していると、御答弁されていましたけれども、よろしくお願いします。

上川国務大臣 家族のあり方という言葉から持つイメージというのは、恐らくさまざま、きょうここにいらっしゃる皆さんも含めて、いろいろなことを思い浮かべられるのではないかというふうに思います。まさにそれが一人一人の持つ、ある意味では御自分の家族をどのようにつくっていくのかとかということにもかかわる意思決定のことだというふうに思っております。

 実は、私もこれは非常に関心が深くて、民法でどういうふうに規定されているのかということでございますが、民法におきましては、家族という用語は実は使われていないんです。ゆえに、家族に関しての定義というのはございません。

 ただ、親族について規定する民法の第四編というのがありまして、ここにおきまして、章の構成があるんですけれども、そこに、第一章は総則ということでありますが、第二章に婚姻ということ、そして第三章には親子という関係、そして第四章として親権というふうになっているわけでありまして、そういうことから考えてみましても、婚姻した夫婦及び親子の関係そのものを家族と捉えて、それを基本としているのではないかというふうに思うわけであります。

 冒頭申し上げたように、家族のあり方はそれぞれ一人一人の心の中あるいは生き方とかと深くかかわることでありまして、そのことをもってさまざまな御意見があるということを今回の氏の問題につきましても申し上げている次第でございます。

寺田(学)委員 まさしく冒頭と末尾にも大臣が言っていただいたとおり、家族のあり方というのも本当にいろいろあって、人それぞれなんだというところに尽きると思うんです。そういう意味において、結婚した場合には氏を一つにしなければならないという家族のあり方を法律で限定していること自体にさまざまな意見が出ているのも事実だと思うんです。

 私は、まさしく大臣の言われるとおり、家族のあり方は人それぞれだと思うので、できる限り、そのそれぞれに合った形の法体系であるべきだと思っています。同一にしたい方もいるでしょうし、別で家族のあり方を模索していく夫婦だってあっていいと、私は思っているんです。

 逆に言うと、なぜこの夫婦の同姓を強いる法律が今存置しているのか、それ自体は、どういう保護法益というか、何を守ろうとしてそれは残り続けているのかというのも、こういう議論を国会でする以上は、私は必要だと思うんです。

 現行のこの同姓にするという法制度自体は、これは何のためにあるんですか。

小出政府参考人 お答え申し上げます。

 夫婦同氏制度の意義や趣旨ということでございますけれども、平成二十七年の最高裁判決では、この同氏制度につきまして、我が国の社会に定着してきたものであり、社会の自然かつ基礎的な集団単位である家族の呼称を一つに定めることには合理性が認められる、また、夫婦同氏制は、家族を構成する一員であることを対外的に公示し、識別する機能を有しており、嫡出子が両親双方と同氏である仕組みを確保することにも一定の意義がある、また、家族を構成する個人が、同一の氏を称することにより家族という一つの集団を構成する一員であることを実感することに意義を見出す考え方も理解できるといったような判示をしておりまして、夫婦同氏制はこのような意義を有するものと考えているところでございます。

寺田(学)委員 時間が来たので、もう終わりにしなきゃいけないんですけれども、大臣、本当に期待しています。

 かつ、国会の中での議論というのはできる限り私もやりたいと思っていますし、世論調査も、私は五年待つ必要はないと思います。ですので、できるだけ早く、大臣のタイミングでやっていただきたいと思いますし、あと、三択で、通称もいいかどうか、同姓がいいのか、別姓を選択的に認めるのかだけで私はいいのかなと思います。そういうような形でいろいろ議論を進めさせていただければと思います。

 きょうはありがとうございました。

義家委員長 次に、藤野保史君。

藤野委員 日本共産党の藤野保史です。

 大臣は所信で、法の支配という言葉、五回使われております。

 先ほど階委員との質疑で大変大事な答弁があったと思うので、確認させていただきたいんですけれども、法の支配の内容について大臣はどのようにお考えなのか、ちょっと確認させてください。

上川国務大臣 法の支配とは、もともと、専断的な国家権力の支配、これは人の支配ということでありますが、これを排斥し、権力を法で拘束することによって国民の権利、自由を擁護することを目的とする原理であるというふうに認識をしております。

 現在、この法の支配の内容として重要なものとして、先ほど来四点挙げさせていただきました、憲法の最高法規性の観念、権力によって侵されない個人の人権、法の内容、手続の公正を要求する適正手続、そして権力の恣意的行使をコントロールする裁判所の役割に対する尊重などが考えられているところでございます。

 先ほどの御質問は、法の支配が貫徹された社会ということで……(藤野委員「結構です」と呼ぶ)結構ですか、はい。

藤野委員 きょうは、私、日本学術会議の問題を質問したいと思うんです。

 というのは、これは単に六名の学者の方の問題ではないし、学術会議だけの問題でもない、まさに国民全体の権利、自由、これに深くかかわる問題だと。今大臣がおっしゃったように、法の支配というものが、まさに国民の権利や自由、これを擁護していく、それを目的とする原理だということでありますから、その所信とも深くかかわると思います。ですから、ぜひ大臣と、国民の権利を守るという点にかかわって議論させていただきたいと思っております。

 安全保障関連法に反対する学者の会によりますと、きょうまでに、大学人だけでなく、映画、演劇人、作家、ジャーナリスト、宗教団体、環境保護団体など、千を超える団体が抗議の声を上げております。これはやはり、学問の自由だけでなくて、表現の自由とか信教の自由とか、まさに広範な人権にかかわる重大な問題であるということの反映だと思います。

 抗議の声明も多数出されておりまして、私も多く読ませていただいておるんですが、その声明の中に何度も出てくるのが、戦前の京大で起きた滝川事件であります。

 文科省にお聞きしますが、滝川事件というのはどういう事件だったんでしょうか。

森政府参考人 いわゆる滝川事件につきましては、文部科学省内に当時の記録が残っているわけではございませんけれども、昭和八年に、京都帝国大学法学部に所属する滝川幸辰教授につきまして、その学説を理由に同教授の著書の発禁処分や休職処分などがなされたものと承知しております。

藤野委員 そうなんですね。それに対して、同じ学部の、法学部の二十名を超える教授が抗議のために辞職する事態になりまして、まさに学問の自由、大学の自治がじゅうりんされた事件であります。

 実は、今回の学術会議問題とこの滝川事件というのは、大変よく似ているんですね。まるで、なぞっているかのようであります。

 第一に、滝川教授は、当時、政府の政策、例えば治安維持法とかに反対していたこと。第二に、当時の政府が戦争に突き進んでいるもとで、その戦争に対して非協力的だったこと。第三に、当時の法制局によって、当時の政府の行為が正当化されたことであります。

 まず、第一の点ですけれども、配付資料の一をごらんいただければと思うんですが、京都帝国大学新聞、一九二八年五月二十一日付で、「治安維持法を緊急勅令によつて改正する必要?」という滝川教授の寄稿なんですね。

 ちょっと紹介させていただきますと、治安維持法は悪法である、そのわけは内容が極めて漠然としていて、法律の専門家にとってもどういう行為をすれば治安維持法で罰せられるかということがはっきりわからない、規定の言葉そのものが極めて取りとめがないからである。今の刑法では罪刑法定主義ということが基本観念の一つになっているが、これは何が犯罪であるか、その犯罪に対してどんな刑罰が加えられるかということを、法律の規定で明らかにして、社会人の権利ないし自由を保証するためである。「処が治安維持法はこの点からみて極めて不都合な法律のやうに思はれる、「国体ヲ変革シ」とか」「言葉自体が極めて抽象的で、どの程度の行為がそれに当るか之れは専門家の間でも必ず異論があることゝ思ふ、」

 ここからが大事だと思うんですけれども、この規定を解釈し適用する裁判官が、甲であるか、乙であるかにより、恐らくはかなり隔たりがある結果になると思われる。そういう規定は法律殊に刑法としては絶対に避けなければならない、というのはともすれば一般人に何だか裁判が、当局者の政治的方針によって動くような誤解を抱かしめる危険があるからである。こういう指摘なんですね。

 大臣にお聞きしたいんですが、この滝川教授というのは刑法学者なんですね。刑法の観点からこうおっしゃっているんですけれども、刑法の大原則、基本観念の一つである罪刑法定主義の観点から、治安維持法についてですけれども、言葉自体が極めて抽象的、不都合だと言っているんですが、この指摘は、私、当然だと思うんですけれども、大臣、どのようにお考えになりますか。

上川国務大臣 今、委員が、滝川幸辰教授の治安維持法に対する考え方について、新聞での、読み上げていただいたわけでございますが、このことについてどう思うかということでありますが、個人の御見解を述べたということでございまして、法務大臣としてお答えすることにつきましては差し控えさせていただきたいと思います。

 治安維持法につきましてはさまざまな御意見があるものと承知をしているところでございます。

藤野委員 罪刑法定主義から見て定義が曖昧だという批判は共謀罪のときもありまして、私も法務委員会で質疑に立ったんですけれども、今回任命拒否された学者の中にも同様の指摘をされた方もいらっしゃいます。

 同じ資料で、滝川教授は、こうも指摘しているんですね。

 下の方ですけれども、幸か不幸か臨時議会は政府と在野党の解散恐怖、解散ですね、解散恐怖のために、停会又は停会でほとんど何の仕事もしないで会期を終わったため、そこに黄色い線が、二段目の中ほどというか、ちょっとのところに引いてありますが、治安維持法の改正も審議未了ということで一応けりがついたと。

 ちょっと飛んでいただきますと、「然るに議会が終つて数日たつかたゝぬ間に政府は治安維持法改正を緊急勅令として実現しやうといふのである、」

 もうちょっと行っていただいて、議会に提出せられて審議未了となった法律案を議会閉会後直ちに、会期の延長をなし得たにもかかわらず、緊急勅令として出そうという企ては実質的に憲法違反である。またこの態度が議会否認であると言われても恐らくは弁解の余地はなかろうと。

 一番最後のところですけれども、四段目のところ、いずれの点から考えても治安維持法を緊急勅令とすることは不純な動機が含まれておるように思われる、不純でないならば不純でないという理由を公表するがよい、それを公表せぬ限り不純なものを不純であると考えるのが普通人の頭であって、それを無理に正常であると考えよという方が無理であると思う。こうやって結んでいるんですね。

 実質的に憲法違反、そして議会否認、そして、その背後には不純な動機がある、もしないというなら理由を公表しろ、公表せぬ限り不純なものを不純であると考えるのが普通人の頭であって、それを無理に正常であると考えよという方が無理である。私、この部分を読んで、学術会議の問題に幾重にも重なるなと思ったんです。

 大臣、お聞きしますが、滝川事件というのはこういう事件なんですね。こういう人が弾圧された。時の政府の政策に真っ向から反対しているわけですね。この点で、滝川事件と学術会議は似ていると、大臣、思われませんか。

上川国務大臣 今委員がお読みになりましたところから、委員の御見解という形で、またそういった御意見があるものというふうに承知をしておりますが、個人の見解ということでございますので、法務大臣としてのお答えにつきましては差し控えさせていただきたいと存じます。

藤野委員 これだけじゃないんですね。

 第二に、滝川教授というのは、当時の政府は戦争にもう突き進んでいるわけです。配付資料の二を見ていただければと思うんですが、その中で、戦争という国策そのもの、何か個々の政策というより、戦争そのものに非協力的だったんですね。配付資料の二は後でまたちょっと触れますけれども、いろいろな事件が起きる中で滝川事件というのが起きていたと。

 配付資料の三といいますのは、これは極東国際軍事裁判の速記録であります。一九四六年六月十九日の分で、これは滝川教授自身が証人として出廷した際の速記録であります。

 黄色いところを読みますけれども、「私ハ一九二五年(大正十四年)頃ニ始マツタ大学ノ軍事教練ニ反対ヲ表明シマシタ。」「一九三一年(昭和六年)又ハ一九三二年(昭和七年)私ハ満州事変ニ反対スル論文ヲ発表シマシタ。一九三三年(昭和八年)「ヒツトラー」ガ独逸ニ於テ政権ヲ獲得セル際、私ハ「ヒツトラー」ニ反対スル論文ヲ書キマシタ。其ノ時、一九三三年(昭和八年)ニハ日本政府ハ「ヒツトラー」ノ方法ヲ模倣シテ居リマシタ。」

 つまり、大臣、滝川教授というのは、軍事教練とか満州事変とかヒトラーとか、そういうものに反対していたわけで、当時戦争を進めようとしていた政府にとってはもう邪魔で仕方なかったと思うんですね。

 今、日本を見ますと、安保法制がつくられ、共謀罪法もつくられ、特定秘密保護法がつくられ、今まで専守防衛と言っていらっしゃった皆さんを含めて、敵基地攻撃論まで検討されている。まさに、戦争する国づくりが進められているわけですね。

 そのもとで、日本学術会議は、二〇一七年、これは一九五〇年と六七年に続いてですけれども、二〇一七年に軍事研究はしないという声明を出した。これはやっぱり、戦争に協力しないよという学術会議の姿勢というのは、今の政府にとっても邪魔で仕方がないと思うんですね。

 大臣、お聞きしますけれども、この点でも滝川事件と似ていると思われませんか。

上川国務大臣 重ねての御質問でございますけれども、こうした個人の考え方、見解につきましては、法務大臣としてお答えをすることにつきまして差し控えさせていただきたいと存じます。

藤野委員 これだけじゃないんですね。もう一つだけ、滝川事件にかかわって非常に似ているのは手続面です。

 文科省にお聞きしますが、戦前、京都帝国大学官制第二条二項というのはどのような定めだったでしょうか。

森政府参考人 京都帝国大学官制第二条の第二項というのは、この京都帝国大学の人事に関しての規定がございまして、「総長ハ高等官ノ進退ニ関シテハ文部大臣ニ具状シ判任官ニ関シテハ之ヲ専行ス」と定められておりまして、この高等官の中に教授等が含まれるというものでございます。この具状という語は、一般的には詳しく事情を書いて上申するという意味で用いられているものと承知しております。

藤野委員 そうなんですね。

 現在の日本学術会議法も学術会議からの推薦に基づいて総理が任命するとなっているんですが、要するに、政府が単独で決められない仕組み、当時の帝大総長の具状、申し上げるというか、具状があって、それで進退を決めましょうと、高等官、この場合大学教授ですけれども、そういう仕組みになっている。政府が一人で決められないよという点では、戦前と共通しているんですね。

 ところが、当時の文部大臣、戦前ですけれども、この京都大学総長、小西総長という方の具状というものがなかったんですね。なかったにもかかわらず勝手にやっちゃった、処分を強行したということで、これが違法じゃないかということで問題になりました。

 配付資料四枚目を見ていただきますと、当時の新聞、大阪朝日新聞、一九三三年五月二十五日付ですけれども、要するに、今おっしゃっていただいたように、具状がないということが問題になった。これは法律に反するじゃないかと。勅令ですから、なかなか重い法律なんですけれども、当時は。それが手続を踏んでいないということが問題になって、結局、ここにありますように、法制局が研究するんですね、法制局。それで、「官制違反でないといふに一致し、政府はこの点においては疑義が存しないといつてゐる、」と。

 要するに、内閣法制局で検討した、その結果、政府は問題ないと言っていると。これも今回とそっくりであります。しかも、興味深いのは、法制局が当時よって立っていた論理というか論法というか、それまで似ているんです。

 配付資料の五を見ていただきますと、これは国会の議事録、珍しく手書きの議事録しかなかったんですけれども、当時、一九三三年五月二十五日の文官高等分限委員会、ここで横溝幹事という方が答弁されている。

 黄色く塗っているところなんですが、「大学官制第二条第二項ノ具状ハ単ニ大学総長ニ具状ノ権能ヲ与ヘタルニ過ギズシテ総テノ場合ニ於テ大学総長ノ具状ヲ要スト為スモノニアラズ、」と。つまり、当時の法制局の説明は、必ずしも全ての場合に具状しなくてもいいんだよ、そういう説明なんですね。

 翻って現在を見ましても、二〇一八年十一月十三日の文書で法制局の確認をしているというんですが、そこも、必ずしも任命すべき義務があるとまでは言えない、こういう言い方なんです。

 だから、法制局が法の支配というか法の定めをねじ曲げて無理筋の解釈をするというときは、必ずしもそれは必要ないとか、そういう論理、論法になってくるというふうに思います。この点でも滝川事件と似ていると思います。

 これについてはもう答弁が同じになると思いますので聞きませんが、こういう形で、滝川事件と学術会議というのは、法の支配がねじ曲げられていくと、そのもとで言論弾圧が行われていって、後づけで同じような正当化がされたということであります。

 きょう特に取り上げたいのは、より深刻な問題として、この一連の弾圧の動きと国会が決して無関係でなかったということなんです。むしろ、滝川事件でも、後で申し上げますけれども、天皇機関説事件でも、国会議員が事件に先立って質問で取り上げて、政府に罷免を求めるんです。

 配付資料の六を見ていただきたいと思うんですけれども、これは宮沢議員という方が一九三三年二月一日に衆議院予算委員会で行った質問であります。

 これはちなみに滝川教授が失職する三カ月前でありますが、こう質問しているんですね。「所謂大学ニ於キマス赤化教授ニ対スル罷免ヲ要求シタイノデアリマス、」こう言って、いろいろな方を挙げる中で、黄色く塗っていますけれども、「ソレカラ更ニ某京都大学ノ教授ハ何ト言ッテ居ルカ、」といって、これは滝川教授のことも挙げるわけですね。

 そして、私がなるほどと思ったのがこの一番下の段であります。「斯ウ云フ風ナ意見ヲ持ッタ者ガ矢張国家ノ禄ヲ食ンデ、教職ニ就イテ天下ノ青年ヲ指導シテ居ル、」と。国家の禄をはんでいるから政府に盾突くのはけしからぬと。これもまさに、今学術会議をめぐって目の前で展開している論理なんですね。

 大臣、こうした言論への攻撃というのは、皮肉なことにというか、当然にというか、言論の府である国会にも影響を与えました。

 配付資料の七を見ていただきたいと思うんですけれども、これは前田利定という元逓信大臣、農商務大臣もされた方で、この方が六十五回の貴族院本会議、これは一九三四年ですけれども、二月九日、本会議での答弁であります。先ほどの資料六の宮沢議員の質問は一九三三年で、この前田議員の議事録は、それから一年たった一九三四年に、一年前の国会の様子を当事者が振り返った貴重な証言なんです。こうおっしゃっているんですね。

 回顧いたしますれば、昨年、第六十四回帝国議会の当時にありましては、陰雲低迷いたしまして、白日なお暗きの思いがありました。言論は重苦しいところの空気に封ぜられまして、陰惨なる光景を呈しておりました。貴族院と言わず、衆議院と言わず、議員は自由にその言論を吐露することさえも控え目がちに、目には見えませぬけれども、何だか絶大の重圧の力で、どこかからか制肘、抑制せられるような思いがいたされたのであります。昔のよく物の本などには、物のけの出るうし三つ時には屋根の棟が三寸下がるというようなことをもって深夜の光景をば説いておりますが、私どもは昨年の議会当時におきましては、あたかもこの議会の天井が三寸と言わず何メートルか低くなったような気分でおったのであります、こういう証言であります。

 言論の府であるはずの国会が、白日なお暗きと、重苦しい空気、絶大の重圧の圧力で異様な雰囲気だったことをリアルに伝えております。

 そして、これで終わらないんですね。

 翌年の一九三五年二月の帝国議会貴族院本会議では、天皇機関説を唱えていた美濃部達吉、当時貴族院の勅選議員でありました。この美濃部達吉が激しく攻撃をされ、九月にはもう辞任に追い込まれます。翌年、一九三六年二月二十一日には、その美濃部さんが右翼に襲撃、銃撃をされて重傷を負います。その数日後にあの二・二六事件が起きるわけですね。

 一九三八年には国家総動員法が成立し、一九四〇年には大政翼賛会が設立されます。日本共産党を除く全ての政党が解散して、大政翼賛会に合流する。一九三三年の滝川事件から、わずか七年です。わずか七年で、日本共産党以外の政党がなくなる。議会を議会たらしめる存在であるはずの政党がみずから解体してしまったんですね。これはこの日本で実際に起きたことなんです。

 大臣、お聞きしたいんですが、私、この当時の動きを象徴する方の一人が金森徳次郎という方だと思うんです。大臣、この方、御存じでしょうか。

上川国務大臣 御質問の金森徳次郎氏でございますが、生前に法制局の長官をされた方であると思っております。さらに、戦後、第一次吉田内閣の憲法制定当時の担当の国務大臣を務められた方ということで、国会でも大答弁をされた方というふうに承知しております。

藤野委員 そのとおりであります。大蔵省や大学教授を経て、一九三四年に法制局長官に就任されます。大学教授時代は憲法を教えていらっしゃって、天皇機関説も唱えていたと言われております。そして、この天皇機関説をめぐる審議でも法制局長官として答弁に立たれていた。

 配付資料の八がそのときの答弁であります。

 ここを読みますと、まず、美濃部博士のとっておられます各種の憲法上の論点につきましては、政府が今までとっておりまする方針と違うところが幾つもあるわけでありますと。違うんだということをはっきり答弁されているんですね。その上で、しかし、それは学問上の見解として、独立の見解として述べておられますので、政府として、その見解それ自体の当否を直接に争う必要もないと考えられます。でありますから、一口に申しますれば、学問固有の範囲において、政府が直ちに所見を披露することは適当ではないように思って差し控えた方がよろしかろうと考えておる次第であります、こういう答弁なんです。

 これはよくある答弁だと思うんですね。上川大臣も、きょう、私の質問に対して、繰り返し、個人の見解だからと答弁されました。よくあるんですよ。

 ところが、この答弁、要するに、詰められるわけです。この議事録を読みますと、けしからぬと言え、けしからぬと言え、天皇機関説はだめだと言えと。こういう攻撃といいますか、質疑の中で、このラインを、この答弁ラインですね、いや、それは学問固有の範囲だから、政府が直ちに所見を披露することは適切ではない、適当でない、ここをしっかり守って答弁された。これが理由の一つになって、法制局長官を事実上罷免されるわけです。

 大臣、お聞きしますけれども、こんな答弁で罷免されるとすれば、同じく国会で答弁に立つ身として、危険だと思われませんか。

上川国務大臣 国会においての発言ということについては、それぞれの発言者が責任を持って発言することであるというふうに思っております。

 私も国会の、委員長を始めとして先生方の御質問に対しては、真摯にお答えしてまいりたいと思っているところでございます。

藤野委員 大臣がそういう御答弁をされて、それがいかに、仮に適当だったとしても、それが戦前はそうではなかった、そういう事実があるということなんですね。

 先ほどおっしゃったような、その金森氏が戦後、憲法改正担当大臣になるわけです。

 配付資料の九をごらんいただきたいと思うんですが、戦後、日本国憲法を国民に普及するために、政府主導で三つの解説書がつくられます。有名なあの「あたらしい憲法のはなし」、兵器が袋に入って、電車とかがわあっと出てくるという、あれが「あたらしい憲法のはなし」ですけれども、それ以外に二つ、「新しい憲法 明るい生活」というものと、新憲法の解釈という三つの本が国民向けに発行されました。

 資料の九は新憲法の解釈というものに……(発言する者あり)済みません。解説ですね。これに吉田茂首相と並んで金森徳次郎氏が憲法改正担当大臣、国務大臣として寄せた序文であります。

 冒頭に「私は世にも珍らしい幸運者であった。今回の改正憲法の議会審議に当り、百余日に旦って、両院の有力なる議員諸君と共に、論議を交換し、或る時は氷よりも冷かなる態度を以て法理の徹底を計り、或る時は熔鉄よりも熱き心意気に乗って運営の将来を痛論した。」

 この世にも珍しい幸運者というのは、単に何か百余日議論できたということじゃないと思いますね。戦前のそうした経験を経て、自分が憲法の改正担当大臣としてそういう立場に立った、世にも珍しい、そういうことだと思います。

 その思いというのは、実は当時の議事録からもひしひしと伝わってまいります。配付資料の十をごらんいただきたいんですけれども、これは、金森氏は、それこそ百余日にわたって、いろいろな条文について逐条的に答弁に立たれるわけです。私、読みましたけれども、中でも、学問の自由についての答弁は一味違う。これは、一九四六年七月十六日の帝国憲法改正委員会の議事録ですが、学問の自由を保障する目的とは何かと聞かれて、こういうふうに答弁しております。

 「目的ト致シマシテハ、斯様ニ致シマセヌケレバ人類全体ノ行クベキ本来ノ道ヲ誤ルニ至ルト云フコトヲ避ケント欲スル趣旨ヲ眼目トシテ居リマス、」

 人類全体の行くべき本来の道。私、ちょっとこれは、何回か読み返しましたけれども、やはりそう書いてあるんです。これは、やはり真実が否定される、事実が否定される、反知性がはびこっていく。その中で、戦争がとめられなかった、戦争に突き進んでいった、人類全体の行くべき道を誤ってしまった、それを二度と繰り返さないために学問の自由を保障する、そういう趣旨だという答弁なんですね。

 そして、その後、ちょっとページが変わりますけれども、ここもやはり実情を感じるんです。「従来ノ日本ノ実情ヲ御覧ニナレバ分リマスルヤウニ、又過去ニアリマシタ所ノ多クノ場合ヲ御覧ニナレバ分リマスルヤウニ一ツノ政治的ナル権力ガ、自分達ノ行動ヲ思フヤウニ発展セシメヨウト致シマスルト、各人ガ其ノ心ノ自然ノ伸ビ方トシテ学問ヲ研究致シマスル所ニ、大イナル妨ゲヲ生ズル訳デアリマス、」こういう答弁です。

 そして、大臣にお聞きしたいんですけれども、私が感銘を受けたのはこの次のところなんです。近くは我々が多く身近に経験したところであります、したがってこれは憲法に掲げて大いに保障することはひとり当然であるばかりでなく実際的の必要性が多いわけでありますと、ここまで言っているんです。

 要するに、憲法の条文として保障するのは当然だ、それだけでなく、実際的の必要が多いわけでありますと。これはやはり自分の経験に基づいてそこまで言ったというふうに私は思うんですね。これは今の学術会議をある意味ほうふつとさせるような、実際の必要であります。

 大臣、お聞きしたいんですけれども、戦前、法の番人の一人として法制局長官を務められた方が、まさに天皇機関説をめぐって辞任に追い込まれた。その方が戦後、憲法改正担当大臣になって、学問の自由についてもこれほど熱い答弁をしている。こうした戦前戦後の動きについて、率直にどうお感じになりますか。

上川国務大臣 率直に、今この議事録を拝見させていただきまして、議事録の重要性も改めて認識したところでございますけれども、この金森大臣の立場の中で、こうして憲法そのもの、つまり法の支配の一番真ん中にある憲法、及びそれに関係する基本法、さらには法律を守っていくという、法の支配の一丁目一番地の御議論ということについては、深く今読ませていただいたところでございます。

 そもそも、学問の自由に関する規定とか、制定過程につきましては、これは当時の政府の考え方ということでございまして、私は今、法務大臣として、所管ということでございませんので、そのことについては差し控えさせていただきますが、先ほどのような個人的な思いを持った次第でございます。

藤野委員 法の支配の一丁目一番地という御答弁がありました。本当にそうだと思うんですね。

 まさに、戦後の政治の出発点、憲法の土台中の土台に、それを答弁した人が、学問の自由をめぐってこうした経緯をたどっていたということは、やはり、権利を守っていくということとの関係で、学問の自由がいかに大事な位置にあるかということを示しているというふうに思います。

 最後になりますけれども、抗議声明の中でもう一つ、多く引用されているのが、ナチス・ドイツ時代でルター派の牧師だったマルチン・ニーメラーの詩なんですね。こういう詩です。

 ナチスが共産主義者を攻撃したとき、私は声を上げなかった。なぜなら私は共産主義者ではなかったから。社会民主主義者が牢獄に入れられたとき、私は声を上げなかった。なぜなら私は社会民主主義者ではなかったから。ナチスが労働組合員を攻撃したとき、私は声を上げなかった。なぜなら私は労働組合員ではなかったから。ナチスがユダヤ人たちを連れ去ったとき、私は声を上げなかった。なぜなら私はユダヤ人ではなかったから。そして、ナチスが教会を攻撃したとき、私のために声を上げてくれる人は誰一人残っていなかった。

 有名な詩ですけれども。

 実は、滝川事件に対して、当時のマスコミとかあるいは学界の反応というのは鈍かったんです。東大を始めほかの大学は沈黙を保って、京大は孤立しました。ところが、弾圧は京大にとどまらず、先ほどの配付資料二にありますけれども、二年後の一九三五年には、東大で天皇機関説事件が起きます。そして、その三年後の一九三八年には、六帝大全部に荒木文部大臣が人事介入を行っていく。そして、大学にとどまらず、先ほど言ったように、国会全体が萎縮していく。そして、滝川事件からわずか七年で、我が党を除く全ての政党が解党して、いわゆる政党政治、ひいては議会政治がやはり崩壊していくわけです。ニーメラーの詩というのは、言葉というのは、日本でもまさに同じ時期に進行していたということであります。

 これは決して過去の問題ではありません。イタリア学会というところが抗議の声明を出しているんですけれども、こうおっしゃっているんですね。

 「たかが六人が任命されなかっただけで、ガリレオを持ち出すのは大げさであり、学者はそうした政治的な喧噪から離れて研究をしていれば、好いではないかと思う人がいるかもしれない。ましてや一部の学者の話であり、自分たちには何の関係もないと思っているかも知れない。しかし、問題の本質は、時の権力が「何が正しく、何が間違っているかを決めている」点において、ガリレオ裁判と変わりない。」こういう指摘なんです。

 大臣、この指摘、どう思われますか。

上川国務大臣 当時の状況についても踏まえながら、委員から御指摘をいただきました。

 こうした過去のさまざまな事象についてしっかりと学んでいく、過去に学ぶという、教訓を学ぶということについては、未来を考える上でも極めて大事なことであるということを改めて認識したところでございます。

藤野委員 もう終わりますけれども、やはりこれは本当に国民全体の問題だと思います。

 紹介したいのは、女性労働問題研究会というところが十月六日に声明を出しておりますが、「現場で働く女性と研究者が連携し、女性の人権にもとづいた働きやすい社会を作ることを目指してきた当研究会は、さまざまな研究活動を通し、女性労働に対する軽視や蔑視を取り払うことなしに女性の活躍はないことを実証してきました。そうした活動は、先入観を排し、忖度なく実態に即した研究ができる自由と、これをもとに率直に政府に政策提言していける条件の保障なしではありえません。また、そのような研究と提言なしに女性が真に活躍できる政策作りは困難です。」こういう指摘なんです。

 これで終わりますけれども、まさに今回の任命拒否問題、国民全体の問題であって、これを強権で押し通すような政治に未来はありません。今ここでとめなければならない。任命拒否の撤回、この一点を強く求めて、質問を終わります。

義家委員長 次に、串田誠一君。

串田委員 日本維新の会の串田誠一でございます。

 まず最初に、性犯罪被害について質問させていただきたいと思います。

 午前中、稲田先生が大変重要な質問をされておられました。その続きをさせていただきたいと思うんですが、事案としては、先ほども例に挙げられました、実の父親が娘に対してということに対し、今月の六日、最高裁が名古屋高裁に対する判決の上告を棄却したということで、事件が確定したわけでございます。

 その中で、名古屋高裁は、父親が実の子に対し継続的に行った性的虐待の一環だという実態を十分に評価していないということで一審判決を覆したわけでございますが、これまで、昭和二十四年五月十日の最高裁の判例ですと、百七十七条の暴行、脅迫は被害者の抗拒を著しく困難ならしめる程度のものであるということで、犯行当時の暴行、脅迫を基準にしていたのだろうかなというふうに思うんですが、今回の名古屋高裁は、犯行当時だけではなくて、それまでの継続的な虐待というものの一環というものも評価しているという点では、昭和二十四年の最高裁の判決に対する解釈変更が行われたという理解でよろしいんでしょうか。

上川国務大臣 委員御指摘の事件でございますが、本年十一月四日に、最高裁判所におきまして、被告人の上告を棄却する決定がなされたものと承知をしております。

 お尋ねにつきましては、個別具体的な事件における裁判所の判断にかかわる事柄であるため、法務大臣として所見を述べることは差し控えさせていただきます。

 昭和二十四年の、先ほどの最高裁の判決の解釈についてというお尋ねでございましたならば、専門的、技術的な、こうした内容でございますので、刑事局長から答弁をさせたいと思います。

川原政府参考人 お答えを申し上げます。

 今大臣から答弁がございました二十四年の最高裁判決の解釈ということでございます。

 これは、串田委員もよく御存じのとおりでございますが、平成二十九年の刑法改正前の強姦罪における暴行又は脅迫につきまして、この昭和二十四年五月十日の最高裁判決によりまして、抗拒を著しく困難ならしめる程度のものをいうとされておりまして、これは、現在の強制性交等罪についても同様であると考えられております。

 なお、その判断のあり方でございますが、この二十四年の判決は程度の問題を言っておりますが、その判断のあり方といたしましては、昭和三十三年六月六日の最高裁判決がございまして、これによりますれば、単にその暴行、脅迫のみを取り上げて観察すればそのような程度に達しないと認められるものであったとしても、相手方の年齢、性別、素行、経歴等やそれがなされた時間、場所の四囲の環境その他具体的事情のいかんと相まって、相手方の抗拒を著しく困難ならしめるものであれば足りると解されているところでございます。

 以上でございます。

串田委員 今、昭和三十三年の判決を挙げていただきましたが、最終的に、やはり抗拒を著しく困難ならしめる程度かどうかという判断にたどり着いてしまうんですね。

 前にこの点について質問させていただいて、刑法百七十六条の強制わいせつ罪の暴行、脅迫は、もう有形力の行使でいいんだ、通常の暴行でいいんだと言っておきながら、百七十七条には、同じ文言なんですよ、暴行、脅迫と書いてあるのに、急にこの暴行の程度を、著しく困難ならしめる程度というように急にハードルを上げるわけです。何で同じ文言なのにハードルを上げるのか、国会の質疑が行われたのかと言ったら、その国会の質疑というのは現在存在していないと。昭和二十四年に突然そういう判例が出されて、それにずっと苦しめられている性被害者というものがいらっしゃるんじゃないか、先例を踏襲しているだけということで。

 考えてみると、暴行というのは、一の強度のある暴行があったら、それを抵抗したら、次に二が来るわけです。二を抵抗すると今度は三が来るわけです。三が来ると今度は四が来るわけです。要するに、抵抗を続ければ続けるほど、暴行という強度が上がっていくわけです。そして、最終的には著しく困難になる。だから、著しく困難になるという犯罪が成立するためには、ずっと抵抗し続けていかなきゃいけないわけですね。そんなようなことを経験して、娘は、抵抗すればもっと強力なのが来るだろうということで、ちょっとでも暴行されたら、もうそれは諦めるしかないわけですよね。

 そういう意味からすると、それは、じゃ、実の父親と子供だけの関係なのかというと、そういう経験を積んだ人であるならば、ほかの人から暴行を受けたとしても、それ以上の抵抗をすれば更に来るだろうという経験則のもとで、もうそれ以上抗拒はできなくなるわけですよ。

 そういう意味からすると、暴行、脅迫を著しく抗拒不能だというような、そういうような定義自体がもう無理なんじゃないか、解釈論として。暴行、脅迫をされたら、テレビなんかでは、抵抗したら次に刺されたりすることもあるわけでしょう。そうすると、著しく困難になるまでの間抵抗し続けるという、うまいぐあいに段階を積んでいくなんということがあり得るかという話なんですよ。

 そういう意味では、この暴行、脅迫というものを、昭和二十四年、それも突如ですよ、何の質疑もなされていない中で、そのときに何でこれは、おかしいなと思うのは、抗拒を著しく困難ならしめる程度のものであれば足りると言うんですね。暴行、脅迫が、百七十六条は普通でいいと言っているのに、百七十七条は急にハードルを高くして上げながら、判決の書き方は、足りると書いてあるんです。こんなにハードルを上げながら足りるっておかしいじゃないですかという質問をしたら、そのときに刑事局長は、当時弁護人は、抗拒不能でなければならないという主張をしていたので、そこまでは要らないよということで足りるとしたんですよ、こういうような言い方でしたよね。それでよろしいですか。

川原政府参考人 お答え申し上げます。

 委員御指摘のとおり、この点につきましては、私の前任の刑事局長でございますが、御質問に対して、そのようなお答えをしたものと承知しております。

串田委員 要するに、被告人の弁護人の抗拒不能でなければならないという主張に対して、いや、そこまでは要らないんですよと言っているだけで、そこまでが要件として必要だとは言っていないんですね。なのに、それが先例となって、昭和二十四年から今までずっと来ちゃっているわけですよ。

 やはりこれは、ぜひ刑法を、民事とも食い違っちゃいますから。民事は七百九条で不法行為、これは程度がないから、民事では損害賠償が認められても、刑事では、暴行、脅迫があったとしても、著しく困難にならなければ無罪になる。さっき言ったように、ちょっとした暴行でも、これ以上あったら殺されるかもしれないといって諦めてしまった人は、無罪になっちゃうんです。こういうような規定というのはやはりおかしいというようなことで、ぜひ改正に向けて検討していただきたいと思うんですが、大臣、いかがでしょうか。

上川国務大臣 現在、法務省におきましては性犯罪に関する刑事法検討会が開催されているところでございますが、委員が御指摘の点も含めまして、強制性交等罪の暴行、脅迫要件のあり方が検討すべき論点の一つとして挙げられているところでございます。また、議論が行われているということでございます。

 具体的にその内容については、私自身が所見を述べることは差し控えたいというふうに思っておりますが、この性犯罪に関する刑事法のあり方の検討につきましては、私自身、喫緊の課題であるというふうに考えておりまして、スピード感を持って充実した御議論が行われるということについては期待をしているところでございます。

串田委員 次に、障害児者への性犯罪に関しても検討していただきたいと思うんですが、先ほど、監護者規定で、百七十九条、十八歳未満の監護者規定というのがつくられましたが、障害児者というものに対する性犯罪というのは非常にふえている。逆に、非常にふえているというのは数字だけで出ているだけで、氷山の一角で、これをやはり訴えることができない障害児者もすごく多いんですね。

 障害児者に対しては、やはり、障害児者と類型的な監護関係にある場合には、何らかの性的な関係があった場合には、もうそれは同意がないんだ、障害児者を守っていかなきゃいけないんだという規定が必要である、そういう声も非常に強まってきているわけでございます。

 ぜひ、障害児者、これは本当に犯罪数が多いので、特別規定の創設というのはこれは必要であると私は思うんですが、大臣、この点についても検討していただけるということでよろしいでしょうか。

上川国務大臣 障害者を被害者とする性犯罪につきましては、障害者が被害に遭いやすいという実態を踏まえまして、障害者の特性に配慮した規定を設ける必要がある、そうした指摘があることにつきましては承知をしているところでございます。

 先ほど申し上げましたとおり、法務省においてただいま開催しております性犯罪に関する刑事法検討会におきましては、準強制性交罪等の心神喪失、抗拒不能の要件のあり方、また、地位、関係性を利用した犯罪類型のあり方が検討すべき論点として挙げられているところでございます。その中におきまして、被害者が障害を有する場合につきましても議論が行われているところでございます。

 今の段階で所見を述べることについては差し控えさせていただきたいというふうに思いますが、今委員の御指摘の案件につきましても、この中で御検討をしっかりしていただけるものと期待をしているところでございます。

串田委員 性犯罪に関してはもう一点、性的同意年齢、これは日本は十三歳ということで、諸外国と比べてもかなり、著しく低いんですね。これはもう喫緊の課題であると思っております。

 これは、大臣、早急にこれについての改正も進めていただけていると思うんですが、現在、何歳ぐらいが検討の年齢なのか、もしよろしければ教えていただければと思います。

上川国務大臣 ただいま検討中ということでございますので、現行法上の十三歳未満とされていることについて、御意見として、引き上げるべきという御意見があることは十分承知しているところでございます。

 現段階におきまして、今私の立場で申し上げるということについては差し控えさせていただきたいと存じますけれども、性犯罪に係る刑事法のあり方、この検討は喫緊の課題であると再三申し上げているところでございます。とにかくスピード感を持って充実した質疑を行っていただき、そして、しっかりとそれを踏まえて対応することができるように期待をしているところでございます。

串田委員 個人的には十六歳ということを私としては要望したいなというふうに思っておりますが、十五歳、十六歳程度のところが今議論されているのかなという感じがいたしております。

 次に、子供の親権問題、これも大臣の所信に書かれているところでございます。

 特に面会交流についてきょうお聞きをしたいんですが、きょうは養育費に関していろいろと御意見がございました。私は、養育費についてはしっかりと支払いがなされる制度がつくられるべきであるというふうに考えています。

 内閣府の調査によりますと、子供の育児は、父親が一、母親が九、これが三一%、二対八が二四%、三対七が一七%、〇対一〇というのも九%もあるわけですね。今、圧倒的にやはり女性が育児をしているというのは現実的なことでございまして、離婚であろうと別居であろうと、子供を養育しているという実態に合わせ、収入を得ている側が養育費を払うというのは、これは当然のことであるというふうに私は思っております。

 養育費が成人年齢で影響を受けるのではないかという、二〇一八年のときに小野瀬民事局長とさんざん私、やらせていただきまして、二〇一八年の前に協議離婚だとかあるいは調停離婚だとかで、成人に達するまでというふうに書いてあるのが多いんですね。そのときに、成人年齢が十八歳になったらば十八歳で打切りになるんじゃないかと国民が大変心配する、だから法律でこれは二十歳なんだと書いてくれと小野瀬民事局長にずっと言ったんですけれども、どうしても法律に書いてくれなかった。だったら、しっかりと広報してくださいとお願いしましたところ、法務省が、成人年齢引下げに関する養育費の影響についてという広報を書いていただきまして、これは二十歳までなんだよと書いていただいたんですね。

 二〇二二年四月一日から、もうあと一年ちょっとでございますけれども、こういう混乱が起きないようなことはしっかりとこれからも広報していただきたい。また、公表していただいたことに対して感謝を申し上げたいと思います。

 ただ一方で、きょう、資料をお配りさせていただきましたが、資料一は、これは昨年の国連の勧告でございます。

 質問通告でも正確にここを引用させていただきましたが、この中で、(b)のところ、「児童の最善の利益である場合に、外国籍の親も含めて児童の共同養育を認めるため、離婚後の親子関係について定めた法令を改正し、また、非同居親との人的な関係及び直接の接触を維持するための児童の権利が定期的に行使できることを確保すること。」ということで、これは国連が勧告をしているわけでございます。このFのところの「家庭環境及び代替的監護」の後ろについている条文というのは、子どもの権利条約の条文を引用されている。

 要するに、子どもの権利条約を日本は一九九四年に批准しながら、この部分について十分でないということで勧告がなされているという事実が現実に去年行われているということでございます。

 法務大臣、このような国連の勧告に対して、大臣としてはどのように受けとめ、どのような政策をこれから展開するのか、御説明いただきたいと思います。

上川国務大臣 昨年の二月に児童の権利委員会の総括所見の内容について、ただいま委員から御指摘になった点については承知をしているところでございます。その趣旨については、しっかりと受けとめるべきではないかというふうに認識しているところでございます。

 我が国は、児童の権利条約の趣旨に照らし、子供の最善の利益を確保するという観点からこれまでも必要な対応を講じてきたところでございまして、児童の権利条約につきましても誠実に遵守してきたというふうに認識していることであります。

 例えば、平成二十三年の民法改正におきまして、離婚後も適切に親子の面会交流等が行われることを促進する趣旨で、離婚の際に子供の利益の観点から定めるべき事項の一つとして、面会交流を条文に明記するなどの法改正をしております。

 このような法改正の趣旨につきましては、先ほど委員から御指摘になられましたとおり、広く周知するということが何よりも大切でありますので、そういった点も含めまして広報にも努めているところでございます。

 もっとも、父母の離婚に伴う子供の養育のあり方についてでございますが、制度及び運用のいずれにつきましても、子供の利益の観点からは必ずしも十分なものとなっていないとの指摘がされるなど、さまざまな意見があるということも確かなところでございます。

 その上でございますが、父母の離婚後の子の養育のあり方につきましては、現在、法務省の担当者も参加しております家族法研究会におきまして、民事法制の観点から幅広く検討が進められているということでございます。私といたしましても、国際的な潮流を踏まえた上で、また、各方面の方々からの御意見も十分に伺いながら、チルドレンファーストという視点で、父母の離婚後の子の養育のあり方につきましてしっかりと検討を進めてまいりたいというふうに考えております。

串田委員 先ほど子どもの権利条約という話がありまして、今、大臣から研究会というのがありました。九月に最新版というのも出ているんですけれども、残念ながら、ここに一言も子どもの権利条約という言葉がないんですよ。双方の議論というのは、各国はもう三十年ぐらい前に終えているんですね。例えば、アメリカも単独親権でした。ドイツも単独親権でした。それが、アメリカは共同監護に変わり、ドイツでは最高裁が違憲判決になって、そして共同配慮という、同じなんですけれども、そういうふうに改正されてきて、もう三十年前なんですね。

 ですから、三十年前のことを幾ら議論しても、各国はもうずっと経験しているわけで、それをどうやって子供のために乗り越えるのかということを実は調べなきゃいけないんじゃないだろうか。そのためには、アメリカやカナダや、あるいはヨーロッパではフランスやイタリアやドイツや、これは中国も韓国もそうなんです、日本以外は全部、ほとんど共同親権ですから。そういうほかの国がどうやって乗り越えてきたのかということの論点整理が必要なのであって、各国の三十年前のことを議論して、子どもの権利条約が一言もないような研究をしても、これは各国が子どもの権利条約を前提にして非難しているのに、ずれちゃっているわけですよね。

 次に資料二をお見せしたいと思いますが、これはことしの七月、欧州議会が、賛成六百八十六票、反対一票、棄権八票で日本に対する非難決議が行われたものであります。二月にフランスの上院議会で全会一致で非難決議が行われた、そのときに質問させていただいたんです。これに対して対応しないと次はもっと強いものが来ますよと。そうしたら、欧州本会議でこういうことになってしまう。

 この後どうなるかというと、昨日の本会議で山尾議員がマグニツキー法という、人権問題について言っておられました。私もその議連に入っているんですが、制裁規定で考えられるのはビザとか資産凍結ですよ。考えられるのは、シェンゲン協定というのが今協定されていてビザが免除されているわけですけれども、これが日本の国民に対しては欧州への旅行に対してビザを免除しないというようなことも十分考えられるわけですよね。次が必ず来るわけですから。

 この国連の勧告のときにも、外務省は何か言ったのかといったら何も言わなかったらしいんですよね。何か、日本はこういうふうに今やっていますよと言うんだったらいいけれども、無視なんですよ。二月のフランス上院議会のときにも無視で、今回の七月のときにも、恐らく無視なんです。こうやって無視していくと、どんどんどんどん圧力といいますか制裁が強まっていくということになって、全国民にも影響してくるわけですから、法務省としては本当に真剣に考えていただきたい。

 特に、資料二で見ていただきますと、下から三行目なんですが、迅速に対処する必要があるというのは、この子供の連れ去り問題なんですね。これは子どもの権利条約が挙げられて、全ての子供は、子の利益に反するものでない限り、両方の親との関係や直接的な交流を維持する権利があるとされているということで、欧州議会は、子どもの権利条約を挙げながら連れ去り問題を問題視している。

 これは、ヨーロッパにいる日本人の子供は連れ去られない、要するに、子どもの権利条約は守られているんですよね。ところが、日本にいる外国人の子は連れ去られたまま放置されているから、これは怒るに決まっているわけですよ。やはりこういったようなところも、ちょっと法務大臣として真剣に取り組んでいただかないと、国際問題として、ここにも書いてあるように、国際ルールを守らない、遵守していないように見受けられるということでありますので、ぜひこれはしっかりと検討していただきたい。

 先ほど大臣が申し上げられました民法七百六十六条には、監護者の決定の次に面会及びその他の交流、その後に監護に要する費用の分担、養育費ですよ。だから、面会交流が実は条文上は先にある。先にあるから優先されるというわけじゃないですよ。だけれども、並行して、車の両輪としてやっていかないと、一方だけどんどん進めていってしまうということになれば、これはやはり国際問題としてどうなんだろうかということを真剣に検討していただきたいと思います。

 きょうは所信に関してなので、この問題はまた続けさせていただきたいと思うんですが、次に児相問題。児相の一時保護も大事なことなので、大臣もずっと、虐待の保護というのを書いてあるんですが。

 ここに、資料一の下の方に、これは児相問題のことなんですけれども、「児童を家族から分離するべきか否かの決定に関して義務的司法審査を導入すること、」と書いてあるんですが、これはなぜこんなふうに書いてあるかというと、子どもの権利条約にはジュディシャル・レビュー・デターミンと書いてあって、司法審査が必要になっているんですよ、子どもの権利条約。これが日本には定められていない。

 ですから、児童相談所に通報があると一時保護するんですけれども、その通報が正しいかどうかという判断がなされないまま一時保護されているんですね。児童相談所に保護されると、学校にも通えない。携帯電話も取り上げられて、友達にも連絡できない。義務教育も受けられない。これは一歩間違えると虐待になっちゃっているんですよ。

 そういう意味では、しっかりと、通報による保護の時点で、本当にそれが虐待によるものかどうかという、子どもの権利条約をしっかり守るよう、これは厚労省と法務省が縦割りを打破してやっていかなければならないことなんですが、これを子どもの権利条約を遵守するよう、しっかりと法規制をしていただきたいと思うんですが、大臣、いかがでしょうか。

上川国務大臣 平成三十一年の二月におきまして、児童の権利委員会における対日審査の総括所見、御指摘の要請がなされたことにつきましては、承知をしているところでございます。

 この点につきましては、先ほど、日本の状況について勧告やらなされても、日本としては何も発信していないということもございまして、私自身は、やはり日本の状況について報告をしていくというようなことは、これは広報的にもやっていくべき事柄ではないかというふうに思っているところでございます。

 そうしたことも含めまして、今検討していることも含めて、しっかりとチルドレンファーストの観点から対応してまいりたいというふうに思っております。

串田委員 ぜひお願いしたいと思います。

 そして、児童相談所は今、混合処遇として、非行児童も虐待をされた子供も一緒になっているというようなこともあって、逆に大変な状況でございます。それを打破するのは非常に、箱物をまたつくらなきゃいけないということもあるんですが、里親制度というものをどんどん活用していただいて、一時的に一時保護をされても、すぐに里親に、一時里親という形で個別の対応をして、温かいぬくもり、そしてそれは通学もできるということでございますので、里親制度の活用をもう少し進めていただくということをお願いをしたいと思います。

 最後に、ちょっとがらっと、これは再犯防止との関連なんですけれども。

 私、プリズンドッグというものを進めさせていただいていて、現在、動物虐待にならないような環境省の動愛法数値規制というものが、ことし十二月に確定していくわけでございますけれども、そのために保護犬や保護猫というのは大変多く出てくるわけでございます。

 現在、島根県のあさひ社会復帰センターでは、このプリズンドッグの一部が展開されているわけでございますけれども、もう少し、プリズンドッグ、プリズンキャットというような形で、これは、再犯率、再入所率が非常に低くなるそうなんですよ。動物と触れ合うことによって心が優しくなるのかもしれませんが。

 そして、保護犬や保護猫が助かるという意味では、ちょっと今、刑務所の刑務作業が硬直化して、昔と変わらないことをずっと何かやっているような、ちょっとそんなような印象を持っているものですから、時代に即応した、動物にも優しい、そして受刑者の再犯率も下がり、そういうような刑務作業というものをぜひ進めていただきたいと思いまして、私、刑務所へ視察に行って刑務所長にお願いをしているんですけれども、環境省の小泉大臣が共感していただいて、法務省にも話をしておいたよというようなことでもあるんですが、ぜひ、プリズンドッグ、大臣としても進めていただきたいと思うんですが、いかがでしょうか。

上川国務大臣 ただいま委員御指摘のドッグあるいはキャットについて、プリズンドッグ、プリズンキャットということでございますが、やはり再入所率が低いという効果も出ているというふうに認識をしているところでございます。

 日本の刑事施設について今どのような取組をしているのかということについては、刑務作業として取り組んでいるということではなくて、むしろ改善指導の一環として動物介在型の教育プログラムを実施しているということでございます。

 私も島根あさひ社会復帰促進センターに行かせていただきまして、大変、受刑者の方々が、改善更生というようなプログラムでありますけれども、日常の中でドッグがいるという状況を見ながら刑務作業等にも取り組んでいる、こういう実態を見ましても、こうした取組については海外でもたくさんの事例があるということでありますので、そうした事例をしっかりと学ばせていただきながら、また、この島根あさひを筆頭にしてさまざまなパピーのプログラムもございますので、そういったものを伸ばしていきたいというふうに思っております。

串田委員 動物にも優しい刑務作業、刑務所の施設にしていただければと思います。

 どうもありがとうございました。

義家委員長 次に、高井崇志君。

高井委員 国民民主党・無所属クラブの高井崇志でございます。

 質問の機会をいただき、ありがとうございます。私も法務委員会は初めての質問でございますので、頑張りたいと思います。

 ただ、先に新型コロナウイルス対策、大変重要なので、そしてきょうは厚生労働副大臣、三原先生、大変お忙しい中来ていただいているので、順番を変えて先に質問させていただいて、終わったら退席をいただいて結構でございますので、ちょっと質問をしたいと思います。

 この間、厚生労働省は大変頑張っていただいて、特に支援金、いろいろなコロナ禍で苦しんでいる方の支援制度、厚生労働省はかなり拡充をされて、そして当初つくった制度でいろいろ不備があると随時その通達を出したりして、かなり緩和、ここまで緩めていいのかというぐらい、なかなか柔軟に対応していただいて、私は大変すばらしかったなと。ただ、強いて言えば、やはりそれがまだまだ周知されていないんじゃないかなという面もあって、もっともっと周知を頑張ってほしいな、そうすれば救われる方がまだまだいらっしゃるというふうに思っています。

 ただ、一点だけやはりちょっと苦言を呈さなきゃないというか、ぜひ変えてほしいのがありまして、これが小学校休業等対応助成金という制度でございます。これは、小学校や保育園など、休業によって保護者の方が休まなきゃなくなったときにその分を補償するという大変素晴らしい制度なんですが、残念ながら、千七百二十億の予算のうちまだ二割ちょっとしか消化されていない。

 それは何が一番問題かというと、会社が申請しなきゃいけない。それから、会社が、これがかなりネックなんですけれども、特別休暇、特別有給のような制度でないとなかなか難しい。これは厚生労働省が通達でそうじゃなくてもいいですよと言っているんだけれども、なかなか会社とすると、就業規則で休暇というのは決めなきゃないというルールがまた一方であるものですから、そう簡単に気軽に休ませることができないということで、特に中小零細企業は特別休暇なんという制度がないところが多くて、それを新しくまたつくるんだったら無理だといって、申請できないお父さん、お母さんが、物すごくたくさん私のもとには声が届いています。

 これは厚労省の担当の方とも話したんですけれども、休業支援金は結構柔軟に対応してくれていて、今月中には何か会社の協力は得られなくても大丈夫なような基準変更するという報道もありましたけれども、ぜひ、私は、この休業支援金を見習ってというか、この小学校休業等対応助成金も、同僚議員からも何度か質問していますけれども、ぜひここで、副大臣、前向きな御答弁をいただけないかということでお願いしたいんですけれども、いかがでしょうか。

三原副大臣 委員がお尋ねになりました小学校休業等対応助成金、これは、労働者から事業主が助成金を利用してくれないといった相談があった場合には、全国の都道府県の労働局におきまして、労働者の意向を踏まえた上で、事業主に対して積極的な働きかけを行っているところでございます。

 事業主が有給の特別休暇制度を設け、環境整備に取り組むことを支援する制度のため、個人に対しての支給ではないため、助成金の趣旨を事業主に御理解いただき、制度を導入していただけるように、引き続き周知や働きかけに努めてまいりたいと思っています。

高井委員 まあ、なかなか難しいという答弁なんですけれども、きょうあえて副大臣に来ていただいたのは、これは局長さんにしてくれませんかと言われたんですけれども、これは実は、さっきの休業支援金と局が違うんですね。休業支援金は職業安定局がやっている。そして、この小学校等休業助成金は雇用環境・均等局がやっている。職業安定局ではかなりそういう融通がきいていることが、局がまたがって変わってしまうとできなくなっているというふうに私には思えます。これはぜひ、もう副大臣のリーダーシップで、これはもう大臣まで上げなくても、副大臣の決断でできるレベルじゃないかと思います。

 まあ、制度はよくわかります、私も役人出身だったので、厚労省の方の、制度がそうなっているんですと。だから、やはり、もう制度を見直さないといけない。

 ちょっと、私のもとにメールで、あるお母さんから来たものを読ませてください。

 子供を持つ母はとにかく忙しいんです。急いで帰宅して御飯をつくらなければいけない。通常業務の傍らで、会社の総務と交渉したり、制度の説明をしたり、労働局に電話したり、普通のパートではここまではしません。大多数が諦めているんです。うちは無理だと言われて、終わっているんです。厚労省は、制度の枠組みと制度の趣旨、どちらが大切なんですか。この制度の趣旨は、働く保護者と子供を助けるためのものでしょう。幼い子供のコロナ休校時の、そばにいて安心させたり、世話をするための制度でしょうと。

 やはり、趣旨を考えていただいたら、当初つくった制度はそうだったかもしれませんけれども、そこは、第三次補正もやるのであれば、もう制度そのものを変えるぐらいのこともやって、やはり、困っている人によって、大企業で特別休暇がある人はもらえるけれども中小零細企業でもらえないという差別は、本当にかわいそうですし、これはほとんどの方は欠勤扱いで休んでいるんですよね。欠勤ということは、給料をもらえないだけじゃなくて、年金とか社会保険料をわざわざ会社に払いに行ったそうですよ、七万円とか、給料をもらえないのに。

 そんな不公平なことがやはり起こっているんだということを、ぜひ、これはちょっと役人任せにしないで、副大臣からもう一度その実態を見ていただきたいと思うんですけれども、ぜひもう一声いただけないですか。

三原副大臣 この場で直ちに何をするということは申し上げられませんが、今委員の御意見、これは大変重いものだと思っておりますので、しっかりと受けとめまして、引き続き、より一層の働きかけ、そして周知、そういうものに努めてまいりたいと思います。

高井委員 大変力強い目力で、ぐっと言っていただきましたので、信頼したいと思いますけれども、これは本当に周知だけではやはり限界があります、会社は幾ら周知されても。ですから、やはり制度そのものを変えていく。

 これは大変残念なことですけれども、女性の自殺が十月に急増して、前年比八二・六%ふえたという衝撃的なデータが出ていますけれども、私はこのことも関係ないとは言えないと思いますので、ぜひ副大臣のリーダーシップで、これは特に困っている方は女性が多いので、やっていただきたいと思います。

 では、どうぞ、お忙しいですから、退席してください。

 それでは、もとに戻りまして、法的安定性について、まさにこの法務委員会の一丁目一番地だと思いますけれども、質問したいと思います。

 これは先ほどからるる階委員とかからも質問が出ている問題ではあるんですけれども、やはり、その法解釈ですね。私は、今回の日本学術会議の問題、あるいはその前の検察庁法の問題も、やはり法解釈を、国会で答弁したことが何か政府の内部文書で変わってしまうというのは非常に、違和感というか、絶対あってはならないことだと思っていまして、ちょっとその観点から質問いたします。

 まず、ちょっとこれも順番を変えて、法制局に聞きますが、これは法制局と内閣府で平成三十年の十一月十三日に整理したペーパー。きょう配ればよかったなと思って、失敗したんですけれども。

 その前に、もう皆さんよく御存じのとおり、一九八三年には国会でこういう答弁がされている。推薦され、それをそのとおりに内閣総理大臣が形式的な発令行為を行うものだ、あるいは、学会から推薦していただいた者は拒否しない、そのとおりの形だけの任命をしていくと、ここまではっきり答弁しているわけですね。それが、平成三十年に、このペーパーでは、推薦のとおりに任命すべき義務があるとまでは言えないと考えられると。

 私は、解釈の変更というのはあっていいと思うんですね。時代の要請に応じて解釈の変更はすればいいけれども、それを、今、内閣府は、解釈の変更はしていないんだ、一貫しているんだと言うんですけれども、明らかに、この国会答弁と、この平成三十年のペーパー、あるいは最近の内閣府の答弁は違う。やはりこれは、何か法解釈を変更した、これはやはり法制局としては法解釈の変更だというふうに認められませんか。

木村政府参考人 解釈を変更したかどうかということを判断いたしますためには、まず、昭和五十八年の日本学術会議法改正当時の解釈がどうであったかということを、当然、改めて確認することが必要になると思います。

 まず、昭和五十八年の日本学術会議法の改正でございますけれども、その審議以前からございます基本となる考え方に立脚して行われているというふうに考えております。

 すなわち、これは、昭和三十年代、四十年代に国立大学の学長の任命をめぐって明らかにされたところの、憲法第十五条第一項に規定する公務員の選定が国民固有の権利であるという国民主権の原理との関係で、任命権者は、公務員の任命について国民に対して責任を負わなければならず、個別の法律において、ある行政機関における公務員の人事について、当該行政機関の職務の独立性等に鑑みて、何らかの申出や推薦に基づいて任命すると規定している場合であっても、かかる原理との調整の見地から、任命権者が国民に対し責任を負い得ない場合には任命をしないことができるという、そういう基本的な考え方に立脚した上で昭和五十八年改正というのは行われたものと理解をしております。

 平成三十年のペーパーは、この延長線上において、改めてその解釈を明確にしたものであるという認識でございます。

高井委員 百歩譲って、では、この平成三十年十一月のペーパーが、その当時からあったんですかと言っても、ないというか、答えが返ってきていないみたいですけれども、こういう考えでやっていたとしても、そのときの国会答弁でここまで答弁をしている。

 これは、例えば、この間の予算委員会、十一月四日の予算委員会で加藤官房長官がこんな答弁をしています。「それぞれの時代の中で答弁をされたということで、その趣旨を今の段階で具体的に把握することは難しい」とか、その当時は何か、「その新しい制度によって会員としてふさわしい者が推薦されることになる、こういった期待があったんではないかというふうに思います」と。思いますというのもどうかと思いますけれども。

 あるいは、これは産経新聞の十月二十四日の記事だと、要は、要約すると、中曽根総理始め、当時、なかなかこの法律が通るかわからない難しい状況になってきた、反対もあって。その中で、やはり形式的に任命するんだということをはっきり答弁しないと国会を通らないかもしれないということで、かなり答弁したんじゃないかということも推測できると書いているんですけれども、私もそうじゃないかと思います。

 であれば、例えば想定問答に書いてあったとしても、そこから踏み込んで国会で答弁したら、それがやはり確定した解釈なんじゃないですか。それは、例えば、想定問答と違うことを大臣が言っちゃったら、皆さん、もしそれが本当に間違っていて、変えたかったら、その後訂正するための何か行為をしますよね。だけれども、それが訂正しないまま何もなく終わったら、それはその解釈がやはり法律の解釈じゃないですか。

 それを、そのときは実は内部ではこういう検討をしていて、しかも公表もできないような資料でずっと考えていたんだなんて言われたら、国民としては、そんな法的安定性のない法律で、政府でいいのかということになります。

 これは、上川大臣、まさに所信でも、法の支配が貫徹された社会というのを一番に言われましたけれども、こういう状況で、法的安定性というのは保たれるんですか。

上川国務大臣 今委員からは、日本学術会議に関するケースということで御質問を行われてきたというふうに思っておりますが、一般的な考え方ということでございますけれども、法令の解釈あるいはその変更というものについて、決まった手続や方式があるわけではないものと承知をしているところでございます。

 その上で、法令の解釈につきましては、当該法令の規定の文言、趣旨等に即しつつ、立案者の意図や立案の背景となる社会情勢等を考慮するなどして論理的に確定されるべきものである、そして、その検討を行った結果として、従前の解釈を変更することが至当であるとの結論が得られた場合には、これを変更することがおよそ許されないというものではないというふうに考えております。

 法解釈と、また、今、答弁と、その具体的に、答弁書と、そして、御自分が、直接、国会の中で答弁した内容とのギャップみたいなお話もございましたけれども、個別案件については差し控えさせていただきますが、基本的にはそうした物の考え方で進めている状況でございます。

高井委員 個別案件で言ってくれと言いませんけれども、今の御答弁は、私がさっき言ったように、別に法解釈しちゃだめだと私は言っていません。法解釈変更は別にしたっていいと思います。

 ただ、するときにはきちんと手続とか、あるいは国民の皆さんに知らせる方法が必要であって、今回のケースというとまた答えないから、では、一般論として、想定問答で何かつくっていたことに大臣が別のことを答えて、それをそのまま修正もせず、あるいは、どこかで公表してとかということもせずにそのままずっと来て、それが後から、いや、あのときの実は想定問答にはこう書いてあったんだ、でも、それは国民に全然公開されていないと。

 こんな状況を許して、本当に法的安定性は担保できるんですか。

木村政府参考人 まず、一般論でございますけれども、解釈を変更する方法につきましては、明確な基準というのはやはり存在はいたしておりません。

 いずれにいたしましても、その当該解釈変更が国民の義務や権利にどんな影響を及ぼすか、そういった見地から適切に判断されるべきと考えられておりまして、これは、一義的には当該解釈変更に係る法令の所管省庁において判断されるべき事柄であろうというふうに思います。

 他方、今回の学術会議法につきましては、昭和五十八年当時からの解釈変更ではないと私どもとしては考えております。

 それはなぜかということでございますけれども、御指摘の、確かに形式的任命という答弁はございます。内閣府からは、四十年前のものであって、その趣旨を今把握することは難しいとお答えになられておりますが、先ほどの政府の基本的な考え方、それは、通常、今回、昭和五十八年に、選挙制から推薦制に変わりまして、新しい制度によって会員としてふさわしい者が推薦されてくるようになるであろう、そういう期待があった上で、推薦者を単に任命していくだろう、こういう意味において、形式的な任命行為になるであろうという趣旨を答弁されているというふうに認識をしておりまして、この考え方自体には、当局として格別の異論はございません。

 また、つけ加えますと、政府の基本的な考え方、昭和三十年代、四十年代に国立大学の学長の任命を通じて明らかになったものでございますけれども、仮にそれを外れるといいますか、それを変更するということに仮になりましたならば、そのような考え方の変更等を整理した、当然、資料が残っているべきものであろうというふうに思いますけれども、そういったものは何も残っておりません。

 私どもとしては、やはり、昭和五十八年当時、それ以前の国立大学の学長の任命をめぐって明らかになった従前からの基本的な考え方を無視していたとは到底思えないものでございますので、そうである以上、平成三十年の整理ペーパーというのはやはり解釈を変更したものではないというふうに考えているところでございます。

高井委員 長々答弁されましたけれども、だから、このペーパーの正当性とか、そのときの考えが間違っていたと言いたいんじゃなくて、それと違ったことを国会で答弁したんだから、そっちに拘束されるんじゃないんですかと。そっちと、当時の国会答弁で言ったことと違う考え方であれば、それは法的安定性が保たれないんじゃないかということを大臣に聞きたいんです。

 大臣、お答えください。

上川国務大臣 今、内閣法制局の方から答弁をした内容でございます。

 そのときの状況についてということで答弁をしたわけでありまして、私がそれに対してコメントをするという立場でもございませんので、一般論としてはちょっと答えにくいケースということで御紹介いただいたなというふうに思います。更に重ねて御質問していただくことができればなというふうに、率直に答えさせていただきます。

高井委員 ちょっと時間がないので、かみ合わないんですが、ただ、大臣がそういう姿勢であると、やはり、所信で言われた、法の支配の貫徹された社会というのが本当にどこまで守られるのかというのが非常に心配だなという気がします。

 ちょっとこれはまた時間があるときにやりたいと思います。

 それでは、もう一つ大きなテーマで、選択的夫婦別氏制度について、午前中もいろいろ議論がありましたけれども、これは、よく上川大臣も、国民の意見が分かれているというふうにおっしゃいますが、これは平成二十九年の調査を言われて、だけれども、反対は三割ですよね。

 しかも、最近のやはりこの機運を見ると、明らかに若い人を中心にどんどんどんどん機運は高まっていまして、まず聞きたいのは、調査をもっと頻繁にやりませんか。五年に一度という、何か、いろいろ聞いたら、法務省から要求すれば内閣府でやれると。しかも、これ、調査の母数は幾らですかと聞いたら、二千九百ぐらいと。二千九百の母数の調査なんか毎年やってもいいんじゃないかと、何で五年も待つ必要があるんだと。

 これは今の直近の数字をやはり大臣は速やかに調べて、国民の声というのはどうなっているのかというのを聞くべきじゃないかと思いますけれども、いかがですか。

上川国務大臣 世論調査におきまして国民意識を定点的に観測をしながら、この問題につきましても、国民各層の意見を幅広く聞くということ、このことは非常に重要なことだと思います。

 世論調査におきまして性別、年齢別の調査というものを実施しておりますので、そうした細かなクロス分析等をいたしてみましても、若い世代の皆さんと明らかに、御高齢の皆さんと、私の世代も含めて上の世代の皆さんとの考え方、あるいはあり方、社会のあり方も違ってきているというのも確かであります。

 また、最近は、女性の活躍、こういったことについて極めて強い打ち出しをし、また少子の問題もございますので、こういう時代背景の中で、皆さんのこの氏の問題についての考え方もひとつ深い形での思いをされていらっしゃるのではないか、こんなふうにも思っているところであります。

 五年に一回の開催という、ほぼ五年に一回ということでございますが、今回、次期の、五次ですね、男女共同参画基本計画の策定に当たりまして、この間、参議院の方でも衆議院の方でも申し上げたところでありますが、内閣府が、あ、衆議院の方ではそういう質問はございませんでしたけれども、若い人たちからの意見募集という形でかなり広範な意見を集約していていただいている、また同時に、いろいろな皆さんからの意見集約もしていらっしゃるということでありますので、そういった、ほかの調査というものも踏まえさせていただきながら、今すぐに、予算も要ることでありますが、いつということについて申し上げることはできませんけれども、よく考えて検討してまいりたいというふうに思っております。

高井委員 いや、本当に、平成二十九年の調査をいつも持ち出すのはもうやめた方がいいんじゃないかと。大分変わってきていると思いますよ、感覚的にも。

 あと、もう一つ、大臣も、これも大体お決まり文句で答えられるのは、国会における議論を注視するということなんですが、ただ、国会といっても、多分、野党はもうみんな賛成、改正すべきという意見で、与党さんがいろいろな意見があるのはもちろん承知していますけれども、ただ、それじゃ、どうやって国会でそんな議論が起こるんですかね。自民党さんが検討するのを待つしかないんですかね。

 これはやはり、平成八年に法制審で答申が出ていて、法務省として、二回ですか、法改正も提案しているわけですから、やはり法務省から国会に対して、与党にということですけれども、何らかの働きかけをしていただかないと、お互いが、賛成、反対が分かれている中で、みずから議論が沸き起こるというのは難しいと思うんですね。

 ですから、国会での議論を見守るというのは本当に逃げでしかないと思いますし、ほかの閣法なんかは、全然そんな言い方を誰もしないわけですよ。政府で勝手に出してどんどん通そうとするのに、何でこれだけ国会で注視となるのか。ちょっとその辺を少し、どう思われますか。

上川国務大臣 この氏の問題、選択的夫婦別氏制度の導入ということで、法制審議会の答申を踏まえた改正案につきましては、平成八年及び平成二十二年に、法案の提出に向けまして準備をいたしたところでございます。

 しかしながら、この問題につきましては、国民の間にさまざまな意見があったわけでございますし、今もあると思います。そして、平成八年当時は自民党、また平成二十二年当時は当時の民主党を中心とした、それぞれの当時の与党内におきまして異論があったこと等から改正案の提出に至らなかったという、こうした経緯があったということでございます。

 今、全て、この問題につきまして、さまざまな角度から、きょうも午前中から御質問がございましたけれども、いろいろな角度のお考えがあるというのも事実でありまして、今のように、法制審が出した案が、過去二回にわたりまして、また、政権が違う中でそれぞれ異論があって提出できなかった、こういう事態を含めますと、やはり、何といっても、きょうこうして御議論をいただいているということ自体も、これまで私も二回、今回三回目でありますが、言われてきておりますが、今回はいろいろな方が御質問されてきたということでありますが、まさにそうした議論そのものが国民の声を代表する国会の議論として非常に重要であるというふうに思っております。

 こうした御議論をしっかりと受けとめさせていただきながら、さらなる検討を進めてまいりたいと思いますし、また、世論の動きにつきましても、圧倒的というふうにおっしゃいますが、少数の方の意見もしっかりと聞かなければいけないという問題でもございますので、丁寧な議論をしていく必要があるというふうにも思っているところでございます。

 いずれにいたしましても、国会での御議論を注視してまいりたいと思います。また、そのための努力をしてまいりたいというふうに思っております。

高井委員 前向きな決意を聞けたと判断いたしました。

 本当はマグニツキー法もやりたかったんですけれども、時間がなくなりましたので、また改めてと思います。

 ありがとうございました。

義家委員長 次回は、公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。

    午後三時三分散会


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