衆議院

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第2号 令和5年3月8日(水曜日)

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令和五年三月八日(水曜日)

    午前九時開議

 出席委員

   委員長 伊藤 忠彦君

   理事 谷川 とむ君 理事 藤原  崇君

   理事 牧原 秀樹君 理事 宮崎 政久君

   理事 鎌田さゆり君 理事 寺田  学君

   理事 沢田  良君 理事 大口 善徳君

      東  国幹君    五十嵐 清君

      石橋林太郎君    岩田 和親君

      奥野 信亮君    加藤 竜祥君

      熊田 裕通君    塩崎 彰久君

      鈴木 馨祐君    田所 嘉徳君

      高見 康裕君    中西 健治君

      平口  洋君    平沼正二郎君

      深澤 陽一君    古川 直季君

      宮路 拓馬君    務台 俊介君

      八木 哲也君    山下 貴司君

      鈴木 庸介君    中川 正春君

      山田 勝彦君    吉田はるみ君

      米山 隆一君    阿部 弘樹君

      漆間 譲司君    日下 正喜君

      平林  晃君    鈴木 義弘君

      本村 伸子君

    …………………………………

   法務大臣         齋藤  健君

   法務副大臣        門山 宏哲君

   法務大臣政務官      高見 康裕君

   最高裁判所事務総局総務局長            小野寺真也君

   最高裁判所事務総局刑事局長            吉崎 佳弥君

   最高裁判所事務総局行政局長            門田 友昌君

   政府参考人

   (法務省大臣官房政策立案総括審議官)       上原  龍君

   政府参考人

   (法務省大臣官房サイバーセキュリティ・情報化審議官)           押切 久遠君

   政府参考人

   (法務省大臣官房審議官) 柴田 紀子君

   政府参考人

   (法務省大臣官房司法法制部長)          竹内  努君

   政府参考人

   (法務省民事局長)    金子  修君

   政府参考人

   (法務省刑事局長)    松下 裕子君

   政府参考人

   (法務省矯正局長)    花村 博文君

   政府参考人

   (法務省保護局長)    宮田 祐良君

   政府参考人

   (法務省訟務局長)    春名  茂君

   政府参考人

   (出入国在留管理庁次長) 西山 卓爾君

   政府参考人

   (厚生労働省社会・援護局障害保健福祉部長)    辺見  聡君

   政府参考人

   (農林水産省農村振興局整備部長)         青山 健治君

   政府参考人

   (防衛省大臣官房政策立案総括審議官)       石川  武君

   法務委員会専門員     白川 弘基君

    ―――――――――――――

委員の異動

三月八日

 辞任         補欠選任

  東  国幹君     古川 直季君

  岩田 和親君     務台 俊介君

  鳩山 二郎君     宮路 拓馬君

  深澤 陽一君     平沼正二郎君

  山下 貴司君     八木 哲也君

同日

 辞任         補欠選任

  平沼正二郎君     深澤 陽一君

  古川 直季君     東  国幹君

  宮路 拓馬君     中西 健治君

  務台 俊介君     岩田 和親君

  八木 哲也君     山下 貴司君

同日

 辞任         補欠選任

  中西 健治君     塩崎 彰久君

同日

 辞任         補欠選任

  塩崎 彰久君     鳩山 二郎君

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 政府参考人出頭要求に関する件

 裁判所職員定員法の一部を改正する法律案(内閣提出第一〇号)

 裁判所の司法行政、法務行政及び検察行政、国内治安、人権擁護に関する件


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     ――――◇―――――

伊藤委員長 これより会議を開きます。

 裁判所の司法行政、法務行政及び検察行政、国内治安、人権擁護に関する件について調査を進めます。

 この際、お諮りいたします。

 各件調査のため、本日、政府参考人として法務省大臣官房政策立案総括審議官上原龍君、法務省大臣官房サイバーセキュリティ・情報化審議官押切久遠君、法務省大臣官房審議官柴田紀子君、法務省大臣官房司法法制部長竹内努君、法務省民事局長金子修君、法務省刑事局長松下裕子君、法務省矯正局長花村博文君、法務省保護局長宮田祐良君、法務省訟務局長春名茂君、出入国在留管理庁次長西山卓爾君、厚生労働省社会・援護局障害保健福祉部長辺見聡君、農林水産省農村振興局整備部長青山健治君及び防衛省大臣官房政策立案総括審議官石川武君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

伊藤委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

伊藤委員長 次に、お諮りいたします。

 本日、最高裁判所事務総局総務局長小野寺真也君、刑事局長吉崎佳弥君及び行政局長門田友昌君から出席説明の要求がありますので、これを承認するに御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

伊藤委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

伊藤委員長 質疑の申出がありますので、順次これを許します。大口善徳君。

大口委員 公明党の大口でございます。

 大臣、就任されて四か月、本当に重責を担われておると思いますが、法務委員会、所信の質疑をさせていただきたいと思います。

 本年七月の六日、七日、司法外交閣僚フォーラムということで、日・ASEAN特別法務大臣会合とG7司法大臣会合を東京で開催する。まず、ASEANについて言えば、法務、司法分野においてASEAN域外国がASEANとの閣僚級会合を開催することはこれが初めてであると聞いております。

 我が国が長年続けてきた法制度整備支援により培った信頼関係をベースに、地政学的要衝に位置し、我が国の平和と安定、成長の鍵となるASEANとの関係を深めるまたとない舞台である、こう思います。

 また、ウクライナの事態を背景にドイツで開催された流れを受けたG7司法大臣会合は、日本での開催は十五年ぶりと聞いております。我が党としても、G7関係閣僚会合として司法大臣会合を開催すべきと提案してきたところであります。

 ASEANとG7の法務、司法閣僚が一堂に会して意見交換をするプログラムも企画しているとのことでありますが、このような、我が国がASEANとG7の懸け橋となるような企画は、法務、司法分野では史上初めてであり、今回開かれる他の関係閣僚会合の中でも例を見ないと聞いています。

 昨年から続くロシアによるウクライナ侵略と昨今の世界情勢を受けて、法の支配や基本的人権の尊重等の普遍的価値を共有することの重要性が改めて高まっている中、日本・ASEAN友好協力五十周年を迎えるとともに、我が国がG7議長国を務める本年、京都コングレスにおいてリーダーシップを発揮した我が国で、G7メンバーでは唯一の我が国が司法外交閣僚フォーラムを開催することの意義について大臣にお伺いします。

齋藤(健)国務大臣 御指摘のように、法務省では、法の支配や基本的人権の尊重といった普遍的価値を国際社会に浸透させるため、司法外交を展開してきたところであります。

 今年は、日・ASEAN友好協力関係五十周年というASEANとの関係で重要な節目に当たります。また、我が国はG7議長国という立場にあります。そこで、今年は、司法外交を一層飛躍させるまたとない機会だというふうに捉えまして、司法外交閣僚フォーラムとして、本年七月、東京で日・ASEAN特別法務大臣会合とG7司法大臣会合を同時期に開催をすることといたしました。

 まず、日・ASEAN特別法務大臣会合でありますが、これまでの日本とASEAN各国との協力関係を基盤としつつ、法務、司法分野における日・ASEAN協力を新たな段階へと導き、イコールパートナーシップの構築につなげていきたいと考えています。

 また、G7司法大臣会合につきましては、大口委員御指摘のとおり、昨年のドイツでの会合で醸成された機運、これを維持して、司法インフラ支援を含めた、ウクライナの復興支援等を始めとする、法の支配の推進に向けたG7の連帯、これを力強く国際社会に発信したいと考えています。

 そして、ASEANとG7の法務大臣等が一堂に会するセッション、アジア唯一のG7メンバーである我が国ならではのイニシアチブで、法の支配の推進と価値の共有について強力なメッセージを世界に発するチャンスであると考えています。

 これらの会合を通じて、我が国としては、ASEANとG7の懸け橋としてそのプレゼンスを高めるとともに、法の支配に基づく国際秩序の維持強化にリーダーシップを発揮していきたいと考えています。

大口委員 そこで、この会議の成果を一層高めるためにも、これらの会議の開催を我が国の法務省の具体的な施策や取組をアピールする機会と捉えて、どういう議論をしてどういう発信ができるのかという視点から積極的に工夫していただきたいと思います。

 例えば、法務省が行ってきた法制度整備支援は、価値観を押しつけることなく、相手国の文化や歴史等に配慮して寄り添いながら行ってきた支援であり、法務省の誇る極めて大きな武器として積極的にアピールすべきだと思います。

 また、ルールに基づいて紛争を解決することは、法の支配を浸透する上で極めて重要であります。我が国に深く根づいているソフトパワーであると考えています。

 そこで、法務省は、これとの関係で推進している国際仲裁の活性化、例えば、シンガポール条約の加盟や仲裁法の改正に向けた取組なども積極的にアピールできるのではないか。

 こういう基盤があることが、我が国における国際的な商取引やインバウンド投資を誘致することの上でも重要であります。せっかくASEANとG7の法務大臣等が一堂に会する史上初の場であることから、是非、効果的にアピールをするという観点から議論の在り方を検討していただきたいと思いますが、大臣の意気込みをお伺いします。

齋藤(健)国務大臣 今般、我が国でこれらの会合を開催するからには、法務省の具体的施策をアピールする千載一遇の好機、このように捉えて積極的に取り組んでいきたいと考えています。

 日・ASEAN特別法務大臣会合では、閣僚級と政府代表団のみが参加するクローズドセッションと、これに国際機関を加えたセッションの二つの場面で議論を行うことになります。そのため、閣僚級クローズドセッションでは、日本がASEAN各国と共同して取り組んでいる施策をアピールする一方で、国際機関を交えたセッションでは、日本と国際機関が共同して取り組んでいる施策、例えば、国連国際商取引法委員会、UNCITRALとの国際仲裁のルール作りなどをアピールすることが考えられます。

 さらに、会期中は、委員から御指摘のあった国際仲裁等に関するものも含め、多数のサイドイベントを開催するところ、法務省の各部局が積極的に施策をアピールする機会になると考えています。

 G7司法大臣会合とのジョイントのセッションでは、我が国がアジア唯一のG7メンバー国であることを最大限生かして、ASEANとG7の橋渡し役となり、法の支配という、民主主義陣営にとっての武器とも言える概念をASEANとG7とで共有できるように議論をリードしていく考えであります。

 会合開催を千載一遇の好機と捉え、法務省の施策をしっかりとアピールできるよう、全力で取り組んでまいりたいと思います。

大口委員 次に、本年度策定が予定されています第二次再犯防止推進計画についてお伺いします。

 平成二十九年十二月に策定された第一次の再犯防止推進計画では、それまで刑事司法関係機関が中心となってきた再犯防止施策について、国、地方公共団体、民間協力者が連携した取組を推進していくことが打ち出されたと考えています。

 我が党も、再犯防止対策強化プロジェクトチームを立ち上げて、この三者が連携した再犯防止の取組の在り方について、満期釈放者に対する支援の強化など、議論を重ねてきました。特に、保護司等民間協力者の活動支援の充実強化や地方公共団体による取組の促進については、その具体的方策を法務大臣に提言してきたところであります。

 第一次計画下において、我が党の提言などに沿って取組を行われてきたわけでありますが、第二次計画の策定に当たって、第一次計画における取組の成果と課題についてどのように捉えているか、法務大臣にお伺いします。

齋藤(健)国務大臣 第一次再犯防止推進計画により刑事司法関係機関を中心に進められてきた再犯防止の取組は、国、地方公共団体、民間協力者等が一体となって取り組むべき施策へと発展をしてきて、その取組が一定程度根づいてきたものと認識をしています。このことはまさに第一次推進計画の成果と考えています。また、そうした各種取組の結果、出所受刑者の二年以内再入率に関する政府の数値目標も達成することができました。

 一方で、刑法犯検挙者に占める再犯者率が高止まりしているなど、依然として解決すべき課題が認められることから、第二次計画の策定に当たりましては、有識者や関係省庁を構成員とする再犯防止推進計画等検討会において、第一次計画における成果を検証するとともに、今後の課題についても整理をいたしました。

 その結果、個々の支援対象者に十分な動機づけを行い、それぞれが抱える課題に応じた指導、支援を充実させる必要があること、支援のアクセシビリティーを高める必要があること、地方公共団体における取組を一層推進していく必要があることなどの課題が確認をされております。

 これらの課題を踏まえ、個々の主体性を尊重した息の長い支援の実現、相談拠点及び支援連携拠点の構築、地方公共団体の取組の推進等を基本的な方向性として、本年度中に第二次計画を策定すべく、議論を進めてまいりたいと思います。

大口委員 特に地方公共団体との連携についてお伺いします。

 地方公共団体では現在も様々な取組をされています。先進的な取組の例として、奈良県においては、県が財団を設立し、その財団が刑務所出所者を雇用して、住まいと就労先、これは林業を提供するという取組を実施しています。また、私の地元静岡市では、再犯防止相談支援事業として、行政の窓口等への付添い支援や長期的な伴走型の支援を実施しています。

 他方で、政令指定都市を除く市町村における地方再犯防止推進計画の策定数は千七百二十七分の三百三十七と、約一九・五%ということで、これは昨年の十月一日時点でありますが、再犯防止の取組には地方公共団体の間で格差が見られます。

 罪を犯した人の、刑事司法手続を離れ、やがて地域社会に立ち戻っていくことを踏まえますと、地方公共団体のみならず、国や民間がそれぞれの強みを生かして、地域のセーフティーネットに包摂していく必要があると考えます。

 第二次計画で、そうした地域による包摂についてどのような施策に取り組もうとしているのか、法務大臣にお伺いします。

齋藤(健)国務大臣 罪を犯した者が地域のセーフティーネットの中に包摂され、地域社会に立ち戻っていくということは重要であります。この点に関しては、住民に対する様々な行政サービスを提供する地方公共団体の役割が重要となります。

 地方公共団体からは、着実に進展している再犯防止の取組をより的確に進めていくため、国と地方公共団体の役割分担を明確化してほしいという旨の御要望を数多くいただいております。このような御要望も踏まえ、地方における再犯防止の取組がより進むよう、本年度中に閣議決定予定の第二次計画では、国、都道府県、市町村の役割分担を明記し、国においては地方公共団体が担う役割を支援していくことを盛り込むことを検討をしております。

 また、地域による包摂を推進するためには国等による適切な支援も必要と考えられますので、保護観察所、法務少年支援センターにおける地域援助の推進や、更生保護地域連携拠点事業の充実などの地域における支援の連携強化、保護観察所による刑執行終了者等に対する援助や、更生保護施設による訪問支援事業の拡充などの相談所の充実といった施策も盛り込むことを検討をいたしております。

 これらの施策を着実に進める中で、引き続き、国、地方公共団体、民間協力者等が連携し、地域における再犯防止に向けた取組を推進してまいりたいと思います。

大口委員 次に、令和三年四月に民法あるいは不動産登記法の改正がありました。これは、所有者不明土地の発生予防あるいは利用の円滑化を図るものであります。その中で、国民への影響が大きいものとして相続登記の申請の義務化がありまして、これが来年の四月一日が施行と、残り一年余となったわけでございます。

 そこで、この義務化についてしっかり国民の皆さんに広報していく必要があるわけですが、昨年七月に実施した法務省の調査では、相続登記の義務化を知っているとの回答が三三%にとどまっている、こういう状況でございます。

 そういう点で国民の周知がまだまだ足りないということとともに、不動産を所有していれば、日本で生活する日本人のみではなく、海外にいる日本人や国内外にいる外国人も同じく義務化の対象となるわけでありまして、そこに向けた周知も必要となってくるわけでございます。今後、政府の重要な施策として、これは法務省の取組のみならず、政府広報を用いるなど、省庁横断的な大規模な広報を行うべきである。

 また、地域レベルでは、地方自治体の広報誌や固定資産税の納税通知を活用したり、市役所のおくやみコーナーと連携したりすることも効果的であると思います。さらには、自治会、町内会、商工会といった地域に密着した団体の協力を得ることも大事であります。新制度の広報として、東京都のような先進的な取組をしているところもありまして、法務局の働きかけを通じて全国に広げていくなど、思い切った取組を進めるべきであります。

 海外にいる日本人や国内外にいる外国人に対する情報発信、これも世界各地の在外公館と連携を図る必要があるということでございます。

 ここの対応について、法務大臣にお伺いします。

齋藤(健)国務大臣 今般の相続登記の申請義務化は、過去に相続した不動産についてもその相続登記が未了の場合には適用対象となるなど、国民に大きな影響を与えるものであります。

 このため、義務化に向けた手続の負担軽減策を含めて、国民各層に十分な周知を図ることはもちろん、委員御指摘の外国人や在留邦人にも必要な情報を届けることが重要であります。

 法務省では、これまでも周知、広報の取組を進めてきましたが、委員御指摘のように、昨年夏の調査では国民の認知度は約三三%にとどまっており、更に一歩進んだ取組が必要と認識しています。

 今後は、全国の自治体や専門資格者団体はもちろん、各地の公共的団体、福祉、経済団体などとの具体的連携を全国各地で深め、先進的取組の全国展開を進めるとともに、引き続き、省庁横断的な広報活動にも取り組む予定であります。

 また、外国人や在留邦人に向けても、法務省ホームページにおける外国語での情報発信の充実や、法務局の多言語電話通訳サービスを用いた手続案内の活用のほか、関係省庁や司法書士会等との連携により一層の情報提供を進めてまいりたいと考えています。

大口委員 また、十万円以下の過料でありますとか、あるいは正当な理由に当たる場合どうなのかとか、こういうことがありますので、相続登記の義務化に伴う新制度の運用のルールを速やかに示す必要があるということでございます。

 そういう点で、一年前の段階でありますので、新制度の施行に向けた法務省の運用指針をパッケージとして示していただきたいと思いますが、大臣にお伺いします。

齋藤(健)国務大臣 大事な御指摘をいただきました。

 来年四月一日に施行される改正不動産登記法では、正当な理由がないのに相続登記の申請義務を怠った場合に、十万円以下の過料の適用対象となります。この過料手続の運用に対しましては、国民の関心も極めて高いため、法務省としても早急にその運用方針を明らかにする必要があると考えています。

 そこで、過料手続の内容や相続登記をしないことの正当な理由の類型等を、新制度の施行に向けた運用方針として、今月中を目途に公表することができるよう準備を加速したいと思います。

 新制度に関する国民の不安を解消するという観点もしっかり踏まえて、国民に向けて分かりやすい情報提供と新制度の理解の促進に引き続き努めてまいりたいと思います。

大口委員 また、今回、相続人申告登記というものが、これは簡便な方法でありますけれども、できるようになりました。

 本来は、遺産分割をきちっとやって、やる必要があるわけでありますが、相続登記の義務化という形で、こういう相続申告登記についても認められるようになったわけであります。この相続申告登記について、特に、単純な相続のケースでは、ウェブ上で手続を完結できるように、簡便な運用を実現してほしいと思うんですね。その実現のためには、手続に添付する戸籍や住民票について、行政機関の情報連携によって、添付省略を認める扱いを積極的に進めていただきたいと思います。

 相続登記の申請義務化に向けた環境整備として、また、国の、国民向けの情報提供の充実や、負担の軽い相続人申告登記の実現に向けてどのように取り組むか、民事局長にお伺いします。

金子政府参考人 相続登記の申請義務化により、相続登記を自ら行うことを検討する国民が増えることが予想されます。相続登記の経験がなく、難しいと感じる国民も多いと考えられるところでございます。

 そこで、法務省では、国民目線で相続登記の手続を分かりやすく説明したハンドブックを新たに作成し、昨年十二月に法務局ホームページで公開しており、今後、更に内容を充実させていくことを予定しております。

 また、法務局における相続登記の手続案内をウェブ会議の活用を含めて充実させるなど、国民の負担を軽減する取組を引き続き実施していく予定でございます。

 そして、申請義務を簡易に履行する手段として創設された相続人申告登記につきましては、相続本人による申出が可能となるよう、相続登記の申請と比較して手続を簡略にしたものとすることを予定しており、例えば、単純な相続の事案ではウェブ上で申出を完結させることができるものとしていくことや、申出に必要な添付情報につきましても、添付が必要な範囲を限定したり添付省略を可能にしたりすることで負担軽減を図る方向で検討を進めています。

 このような対応を含め、相続登記の申請義務化に向けた環境整備について引き続きしっかりと取り組んでまいります。

大口委員 そのほかに、相続土地国庫帰属法が成立して、今年の四月二十七日に施行する。これも、昨年七月の法務省調査では認知度が一六%であったと。この広報もしっかりやっていただかなきゃいけないと思います。指摘にとどめます。

 それから、所有者不明土地管理制度、これも今年の四月一日からの施行であるわけでありますが、やはり、司法書士さんとか土地家屋調査士さんがこの人材ということで、しっかりと活用していただくということも、当委員会の附帯決議を踏まえて対応していただきたいと思います。

 次に、最近の社会状況を踏まえた不動産登記の運用の見直しについて質問します。

 新型コロナウイルス、これは五月八日には五類への移行ということでありますけれども、今の状況は、病院や高齢者施設に入所している人が生活資金を得るために所有する不動産を売却しようとしても、施設にいるために、登記申請に必要な資格代理人との面談が実施できなかったり、外出を控えてオンラインで不動産取引を進めようとしても、資格代理人とは対面で意思確認を行う必要があったりするなど、不動産取引を行おうとする方と、不動産登記の現場で不便を感じる機会が増えているという声を聞いております。

 特に、施設入所中の場合に、権利証、登記識別情報の提出に代わる資格代理人との面談を円滑に行えるようにすることは、迅速な不動産取引のために喫緊の課題であります。

 これまで資格者代理人との対面での面談を前提とする運用が行われてきましたが、医療機関等の施設では入居者と外部の者との直接面談が厳しく制限される例が多くある状況を踏まえる必要がある。

 この点について、日本司法書士連合会では、司法書士が施設に赴いた上で、申請人と施設内でテレビ会議にて面談を行うことを可能とする新たな取扱いを要望していると承知しております。

 また、今後、例えば、資格者代理人が医療機関等の施設に赴いて、施設にいる申請人とテレビ会議を用いてリアルタイムで面談するような場合には、施設職員や申請人の家族の同席があり、資格者代理人が申請人の身分証の確認を事前に行うことなどの条件を満たせば法令上の適法な面談に当たることを明確にしていただきたいと思います。

 そして、そのほかにも、専門資格者である司法書士が職責として本人確認について実務で認められている対面にての面談や電話と書留郵便を併用する方法に加えて、ウェブ会議を用いた上でマイナンバーカードの確認や動画での記録等を用いた厳格な確認を併せて行う方法についても、導入に向けた検討を進めてほしいとの要望を聞いています。

 このようなデジタル対応を含めた新たな登記実務上の取扱いについて、法務省で速やかに検討を進めて、特にニーズの高い点について早急に方針を明確にしていただきたいと思いますが、法務大臣にお伺いいたします。

齋藤(健)国務大臣 不動産登記は、国民の重要な財産である不動産の権利関係を公示する制度でありますので、その手続には厳格性が求められていることから、登記識別情報の提供がない登記申請の場合については、不動産登記法に基づき、資格者代理人は、申請人との対面での面談による本人確認を行うということとされております。

 一方で、大口委員御指摘のように、新型コロナウイルス感染症の影響で、施設によっては、司法書士を始めとする資格者代理人であっても、入所中の申請人との対面での面談が認められず、円滑な登記申請や取引に不都合が生じる例があると承知をしております。

 そして、社会のデジタル化の進展を踏まえますと、資格者代理人が行う本人確認につき、テレビ会議、ウェブ会議を用いた面談を認めるニーズは十分に理解できるところであります。

 ただ、そのためには、対面での面談と実質的に同程度の本人確認の質が確保されるよう、運用上のルールを明確にする必要があると考えます。

 法務省としては、ウェブ会議を用いた面談による本人確認の取扱いについて、実務上のニーズが特に高い、申請人が施設に入所している場合の取扱いを始めとして、具体的な運用上のルールを明確にすべく、今後、スピード感を持ってしっかりと検討を進めてまいりたいと考えています。

大口委員 あと、高度人材について、今回、新たな仕組みが導入される。そのポイントと、いつから運用を開始するのかについてお伺いしたいと思います。

齋藤(健)国務大臣 現在、高度外国人材の受入れにつきましては、学歴や職歴、年収等に基づくポイント制によって、出入国在留管理上、高度専門職の在留資格を付与し、外国人家事使用人の雇用を認めるなどの優遇措置を講じているところであります。

 今回、新たな制度として、現行の高度人材ポイント制とは別に、学歴又は職歴と年収が一定以上の者にも高度専門職の在留資格を付与する特別高度人材制度、通称J―Skipと言っておりますが、これと、優秀な海外大学の卒業生に本邦での最長二年間の就職活動等を認める未来創造人材制度、通称J―Findと言っていますが、この二つの制度を創設することとしております。

 特別高度人材制度では、現行の優遇措置に加えて、さらに、外国人家事使用人の雇用可能人数の緩和等の点で拡充された優遇措置を受けることができます。また、現状、海外大学の卒業生は、在留資格、短期滞在で最大九十日間しか就職活動ができないところ、未来創造人材制度の創設により、優秀な海外大学の卒業生であれば、我が国において最長二年間の就職活動や起業のための準備活動を行うことができるようになります。

 これらの新たな制度により、高度外国人材の方々の受入れが更に進み、我が国の学術研究、経済産業にイノベーションがもたらされることで我が国の経済成長が期待できると考えられます。

 法務省におきましては、本年四月中の運用開始を目指し、先月二十二日からパブリックコメントの手続を開始するなど、現在、所要の準備を進めているところでございます。

大口委員 以上で質問を終わります。

 ありがとうございました。

伊藤委員長 次に、山田勝彦君。

山田(勝)委員 立憲民主党の山田勝彦です。どうぞよろしくお願いいたします。

 昨日の齋藤大臣の所信で述べられた外国人との共生社会実現に向けた環境整備について、中心にお伺いしてまいります。

 昨年十月、大変痛ましい、信じられない事件が報道されました。配付資料を御覧ください。

 外国人の留学生を鎖で拘束する、そういった日本語学校が報道されております。福岡市の日本語学校男性職員が、ベトナム人留学生を鎖で拘束した。

 入管庁は、人権侵害行為があったとして、新たな留学生の受入れを認めないという処分を迅速に下されたかと思われますが、この事件についての処分に至った経緯、そして、この学校の現状の運営状況はどういう状況か、教えてください。

西山政府参考人 御指摘の教育機関につきましては、昨年九月七日付で、新たな留学生を受け入れることを認めない措置を取ったものでございます。

 これ以上の詳細な処分の経緯等につきましては、訴訟係属中の個別事案でもありますことから、司法への影響に鑑み、お答えを差し控えたいと存じますけれども、その上で、一般論として申し上げますれば、訴訟係属中の事案において、裁判所により執行停止の決定が確定した場合には、処分の効力が停止するため、処分の効力が生じていないものとして適切に対応することとなります。

 法務省といたしましては、関係省庁とも連携し、留学生の立場に十分に配慮した適正な対応に努めてまいりたいと考えております。

山田(勝)委員 ありがとうございます。

 今、西山次長がおっしゃったように、留学生の立場に配慮した適切な対応、大変重要かと思います。このような痛ましい事件は二度とあってはならない、そのように強く思います。

 入管庁は、日本語学校における外国人の方々へのこのような人権侵害に対する防止策として、現状、どのような対策を取られているのでしょうか。教えてください。

西山政府参考人 入管庁におきましては、日本語教育機関への実地調査などを通じて、日本語教育機関において適切な在籍管理が行われているか、また、人権侵害行為などの告示基準に違反する行為が行われていないかなどを確認するとともに、留学生から任意の協力を得てヒアリングを行うなどして、留学生に対する違法、不当な行為が行われていないかどうか、実態の把握に努めているところでございます。

 これらの調査により日本語教育機関として不適切な行為が確認されるなど、留学生の受入れを行わせることが適当でない日本語教育機関に対しましては、日本語教育機関の告示基準第二条に基づく告示からの抹消を含め、厳正な対応を行っております。

 また、入管庁では、昨年二月に、日本語教育機関を対象に、留学生への人権侵害行為等を含む不適切な行為を防止するなど適正な運営を行うよう、改めて注意喚起を行っております。

 法務省といたしましては、先ほども申し上げたとおり、関係省庁とも連携して、留学生の立場に十分配慮した適切な対応に努めてまいりたいと考えております。

山田(勝)委員 ありがとうございます。

 任意で学生にヒアリングを行っているという御回答なんですが、しかしながら、それでは実態を把握するのにはサンプルとして不十分ではないかと思われます。

 私の友人で、日本語学校で長年現場の教員として勤めてこられたAさんから、日本語学校における実態、貴重な話を伺うことができました。

 こういった日本語学校の評価に当たって大切にしてほしいという基準が、留学生と教職員の人としての対等性や人権に着目した、そういった評価法が必要ではないかと。現在、認可取得後の学校を評価する基準として自己評価を入管に提出することになっていますが、学校経営者の上層部のみで回答している学校が多い状態だと聞いております。現に、この友人、長く日本語教師を務めてきたわけですが、こういった自己評価のシステムすら知らなかったと言われています。

 こういった自己評価は、提出するのみで、その後何も生きていないため、余り意味をなさない。そうではなくて、学生や現場で働いている教職員の直接の生の声を拾う仕組みが必要ではないかと思われます。校長や設置者は、授業に関わることが少ないため、実際の留学生そして教員の実情を把握しているとは考えられません。

 そこで、このAさんからの話から、改善策を二点提案させていただきます。

 一つ目が、学生や教員が自由に相談できる窓口を設置してほしいということです。一部の教員や学生の人権を侵害する行為など、実際、このAさんも、そしてAさんの友人も、ひどい有様を現場で見てきたそうですが、どこにそれを伝えればいいか分からず、結局、人権侵害が行われた現場は泣き寝入りするしかなかった、悔しい思いをした、そういうお話を聞きました。そういった声を届けられる窓口の設置が必要ではないでしょうか。

 そして、二つ目。先ほど、サンプル的に任意のヒアリングを行っているというお話ではあったんですが、日本語学校に通う留学生をほぼ対象にして、学生や教員アンケートの実施を行っていただきたい。実際に学生や現場で働く教員の声を直接拾うことで実態が把握できます。Aさんいわく、人権や教育の質が悪くて、声を上げても改善されない学校現場の場合、いい先生ほど、優秀な先生ほどやはり離職されていくというケースが出ています。学校側の不正や改ざんなどを防止するためにも、こういったアンケートを取った場合、ホームページ等々でその結果をオープンに公表することも大切だと思っております。

 齋藤大臣、この提案、いかがでしょうか。

齋藤(健)国務大臣 大変重要な御指摘だと思います。

 まず、人権侵害行為を把握するための留学生に対するアンケート、これにつきましては、昨年二月に入管庁において実施をしております。詳細、必要であれば、事務方から答弁をさせます。

 また、留学生からの相談につきましては、各都道府県に所在する地方出入国在留管理官署において受け付けているほか、外国人在留支援センター、FRESCにおいて、日常生活上の様々な問題に関する電話相談に多言語で対応する窓口を設置をしております。問題は、どれだけ周知されているかというところもあろうかと思いますが。

 今後も、御指摘を踏まえつつ、留学生に対する人権侵害行為等の不適正事案、これを見逃してはいけないということで、適切な対応の徹底をしっかり指示してまいりたいと思います。

山田(勝)委員 ありがとうございます。

 私が提案するまでもなく、留学生アンケートが実施されていたり、電話相談の多言語での窓口も設置されてある現状だという、前向きな、大変留学生に寄り添った入管庁としての取組をお話しいただきました。ありがとうございます。

 ちなみに、その留学生アンケートは、全留学生が対象になっている、どのような、もう少し具体的なお話を聞かせてください。

西山政府参考人 対象でございますけれども、在籍管理に懸念のある日本語教育機関百十三校のうち在籍者がいる三十四校につきまして、在籍する留学生に対して個別に聴取を行い、必要に応じてアンケートを実施したというものでございます。

山田(勝)委員 個別の調査、必要に応じたアンケートということなので、やはり総数としてかなり少ないんじゃないかというふうに思われますので、そういったアンケート、なるべく実際の留学生のほとんどにそういったアンケートが実施されるような仕組みであっていただきたいなと思っております。

 続いてなんですが、やはりこういう取組を通じて大切なことは、そういった留学生、若い外国人の方々に選ばれる日本でなければならないと思っております。その中で、実際の留学生の方々の悩みというか、日本における、日本語学校で勉強したり大学で勉強したりする上での悩みとして、一番多く挙げられているのがアルバイト時間の制限についてです。

 日本では、週二十八時間までの労働時間、それ以内で収めるようにというルールになっております。ただ、実態としては、アルバイト代で生活をしたり、また日本語学校の学費に充てたりということで、大変厳しい状況があるということで、もっと時間を、働けるようにしてほしい、こういった声が現場の方から多数聞かれております。

 齋藤大臣の方にも当然こういった声は届いているかと思われますが、日本がより選ばれる国であるために重要な検討事項かと思いますが、齋藤大臣の現状の御認識をお聞かせください。

齋藤(健)国務大臣 大変悩ましい問題だと思っておりまして、留学生の資格外活動許可につきましては、留学生本来の活動である学業を阻害しないというのは、やはりこれが前提とならなくちゃいけないんだろうと思っておりまして、アルバイトを通じて留学中の学費及び生活費を補うことにより学業の遂行に資するという観点から、申請に基づいて、資格外活動許可として一定の範囲内で就労活動が認められている、この考え方は外せないのではないかなと思っております。

 したがって、あくまでも留学生本来の活動である学業を阻害しない範囲で許可されるべきものということでありますので、一週につき二十八時間以内、また、在籍する教育機関が学則で定める長期休業期間にあるときは、一日について八時間以内とさせていただいているところでございます。

山田(勝)委員 ありがとうございます。

 大臣も御指摘のとおり、海外の事例等々でも、当然、無制限に働けるという国々がないということも、私も勉強させてもらっております。

 ただ、その上で、どうしてもお伝えしたいことが、先日もNHKの番組、衝撃だったんですが、今、日本の若者がオーストラリア、海外に出稼ぎに行っている。日本だけが先進諸国の中で賃金が上がっていない。これは、労働時間を純粋に比較していたら、給料というのは時間掛ける賃金単価ですので、やはり海外の方に流れていってしまう。やはりそこは、より時代の変化に合わせて、この二十八時間という規定が本当に適切なのか、海外と比較しても、労働時間をもうちょっと柔軟に見直すべきじゃないかというふうに思っています。

 例えば、お隣の韓国であれば、月曜日から金曜日までは二十時間。これは平日ですので、平日に八時間以上働いちゃいけない。しかし、学校がない土日は時間無制限となっております。つまり、このルールでいけば、三十時間でも、場合によっては週四十時間近く働くことも可能だということなので、こういう事例も参考にしながら、もう少し、二十八時間というこの今の制度を、幅を持たせる。当然、学業としてのバランスが取れる範囲で、例えば韓国のような、そういった仕組みも考えるべきだと思うんですが、齋藤大臣、改めてお聞かせください。

齋藤(健)国務大臣 日本が留学生にとって選ばれる国でなければならないという思いは共有をするところでありますが、その理由が、この資格外活動の時間にある、それだけにあるとは思っていないわけでありますが。

 資格外活動の許可は、やはりあくまでも留学生本来の活動である学業を阻害しない範囲で許可されるべきだということでありますので、その合理的な一定の時間を定めて、認めるということなんだろうと思います。

 現在認められている資格外活動の範囲を緩和することについては、やはり学業の両立という観点から慎重な検討が必要かなと考えております。

山田(勝)委員 慎重と言わず、前向きに是非検討いただきたいところでございます。

 続いてのテーマです。

 少子化、人口減少が加速している日本社会の中で、こういった外国人の方々に日本に来てもらう、そして日本で暮らしてもらうために、ますます日本語学校の需要というのは高まり続けます。しかし、この日本語学校の新設に当たっては、かなりハードルが高いという話も入ってきます。書類審査、そして面接試験など、なかなか厳しい実態があって、一回で許可が下りるということが余りないという話も聞いております。

 そこで、認可が取れなかった場合、その設置者に対して、現状どのような通知を行っているのでしょうか。お聞かせください。

西山政府参考人 委員今、認可というお話がございましたけれども、留学生を受け入れる関係、在留資格を認める関係では、私どもとしては、告示機関とするかどうかという判断をしているところでございます。

 委員の御質問が、その告示から外れた場合、通知をしているかという御質問でございますれば、留学生の受入れ機関として適切か否かを判断する観点から、日本語教育機関の告示掲載を希望する場合には、入管庁において、在留資格認定証明書交付申請の前に、事前に行政相談を受け付けておりまして、その結果は御連絡をいたしているものでございます。

 入管庁において、留学生の受入れ機関として適切でないと判断した場合は、その告示基準において該当していない適条及びその理由を通知した上で、改善すべき点についても御案内をいたしているところでございます。

山田(勝)委員 ありがとうございます。

 ということは、求められれば、しっかり文書で、該当しなかった理由、改善点をしっかりと各設置者に通知してあるという回答でよろしかったですね。

西山政府参考人 必ず文書でお答えしているという取扱いまではいたしておりません。ただ、口頭ではきちんと御説明をするように努めているところでございます。

山田(勝)委員 そこが問題だということを指摘させていただきたいと思っていて、相当なエネルギーや時間やお金をかけて、この日本語学校の設置準備、かかっています。当然、それは一回で諦めることじゃなくて、一年後にも再チャレンジしよう、そういう志を持って、思いを持って取り組まれている方々に対して、たった口頭で、駄目だった理由を説明するというのは余りに失礼ではないかと思います。

 ここはしっかり、なぜその基準を満たさなかったのか、どこが改善ポイントなのか、明確に文書で必ず示していくべきだと思いますが、大臣、いかがでしょうか。

齋藤(健)国務大臣 入管庁は、現行制度において、在留資格、留学の対象となる日本語教育機関を告示するという立場から、その適正な運用に向けた指導監督を行っている、そういう立場であります。

 ただ、今の御指摘の点については、私も重要なところがあるなと思いましたので、検討させていただければと思います。

山田(勝)委員 ありがとうございます。

 是非、前向きな検討、そして、文書で回答するということに何か特別な予算が必要なわけでもないので、しっかり対応していただきたいと思います。

 その上で、更にお聞きしたいんですが、通常、私も福祉をやっております、保育園とかの設置を申請した場合に駄目だった場合、そういった場合は不服申立てができるようになっております。つまり、文書で提示された理由に不服がある場合、更に不服申立てができるという仕組みがあります。

 しかし、この日本語学校の申請においては、先ほどから問題になっているように、既に文書での通知すら義務づけされていない状況、そして、それを強く求めて、ようやく来た文書の中身が実態と全然かけ離れていて、不服があっても、何もそれを申し立てる場がないということです。

 これも改善が必要だと思いますが、齋藤大臣、あわせて、日本語学校の申請、これから大変重要になってきます。しっかりこういった基準を守ろうと思って努力している設置者に対して、不服申立ての機会も併せて与えていくべきだと思いますが、いかがでしょうか。

西山政府参考人 まず、前提といたしまして御説明をいたします。

 先ほども申し上げましたように、私どもとしては、在留資格認定証明書交付申請の前に、事前の行政相談として受け付けて、そしてその結果を御連絡しているということでございますので、法律上、不服申立ての対象になるとは考えておりません。

 ただ、実質的な面で申し上げると、行政相談において、先ほども委員から問題意識、御指摘いただきましたが、私どもとしても、可能な限り、告示掲載できないという場合の問題点については御説明を申し上げており、それを踏まえて、それが払拭できた場合には、改めて行政相談という形でまた承るということは可能でございますし、そのように今後も取り扱いたいと考えております。

山田(勝)委員 法律上、不服申立ての対象にならないということですが、行政相談としての、事実上の不服申立てに近い形で当事者の方々の話を聞くこと、面談することはできるという回答かと思いますが、そこは、不服申立てをできるような形になるべくしていただいて、双方納得いく議論、公平な立場で、行政相談とかいう上から目線ではなくて、しっかり対等な立場でその問題点について話合いできる場が、より意欲ある人たちが必要とされる地域に日本語学校をこれからどんどんつくっていただく上でも必要だと思います。

 この今の基準は不透明過ぎて、やる気があっても、法務省、入管庁の裁量によってはじかれる。そうすると、どうしても意欲が下がってしまいます。そういうことがないような仕組みづくりというのを是非お願いしたいと思っております。

 続いてのテーマです。留学ビザの申請についてお聞きしたいと思います。

 海外の国ではあり得ないことが、日本の留学ビザで起きているというお話を聞きました。全く同じ書類を準備して提出しているにもかかわらず、その提出先が、例えば、東京入管であれば落とされて、同じ書類を名古屋入管で提出すれば留学ビザが下りた、こういう事例が多発していて、当事者の中では、そしてそういう方々を、留学生を支援する人たちでは、どの地域に留学ビザを下ろしやすい担当者がいるかとか、在留資格、そういった話が、情報がもう飛び交っているぐらいこれは周知されてきている事実になっています。

 これは日本でしかないことだ。よその国でこういう、同じ国内でありながら統一的な基準がないのは大変恥ずべきことだと思いますし、これは、窓口の担当者による恣意的な何か判断がなされているのか、やはり入管庁として統一的なルールが不足しているのか、いずれにしろ、これは現実的に起こっている問題であります。

 これに対して、まず大臣、なぜ、同じ国で同じ基準なのに、こうやって留学ビザの下りる、下りないが発生してしまうんでしょうか。

齋藤(健)国務大臣 まず、在留資格、留学に係る諸申請においては、審査に必要な書類の提出を求めるなどして、勉学の意思、能力並びに学費及び生活費を支弁する能力等について個別に審査を行っているのが現状であります。

 このような審査については、入管法等法令に基づいて行っており、入国・在留審査要領等を定め、地方官署に通知することにより、審査基準等について統一を図っているところではありますが、御指摘のようなことがないように、引き続き統一的な運用に努めてまいりたいと考えています。

山田(勝)委員 ないように努めるということなんですが、大臣、今私が伝えた話というのは本当に現場でよく聞かれている声なので、実態把握で、なぜそういうことが起きているのかというのを、しっかり現場に耳を傾けていただけないでしょうか。

 その上で、例えば、オーストラリアの国々では、こういった申請が、明確な基準があって、書類をそろえられたら全て通るのか、若しくは通らないのか、それは地域によってばらつきがあるようなことはないとされています。日本でこのような、担当者によってばらばら、判断されているということなんですが、審査基準が不明確だという意見も出ています。こういうふうに、事前に入管から示された書類を全てそろえたとしても下りないケースがある。海外では考えられないような事態が発生しているということなんですが、なぜ書類をそろえてあるのに下りないということが日本国内において発生しているんでしょうか。ちょっと現状をお聞かせください。

西山政府参考人 先ほども大臣から御答弁がありましたように、在留資格、留学に係る諸申請について、必要な書類の提出を求めた上で、勉学の意思、能力並びに学費及び生活費を支弁する能力等について個別に審査を行っているということでございますので、その個々の審査の結果が、求められた書類を出したそのこと自体で必ず認められる、認められないという形に審査結果がなるものでもございません。

山田(勝)委員 何で書類がそろっているのに駄目なのか。個別審査と今おっしゃいました。まさにその個別審査が、担当官によってばらばらの審査になり、留学生にとって大変ストレスのかかる状況を生んでいるのではないでしょうか。そういったところの改善が必要だと思われますが、また、ちょっと関連してなんですけれども、余りにも留学生の方々にとって日本政府が求める書類が多過ぎる。

 例えばオーストラリアであれば、残高証明と、あと英語の語学能力が分かるような、そういう評価シートぐらい、その二つぐらいで十分であったりする。

 一方、日本の場合は、何か家系図みたいなものも求められていたり、また、何年か分の通帳の写しも必要であったり、さらに、いわゆる、事実上の親になることが多いんですが、そういった保護者の所得証明までが書類として必要とされているということなんですが、なぜそういったことまで求めないといけないんでしょうか。経済的に豊かな家庭でなければ日本に来て留学できないということなのでしょうか。お聞かせください。

西山政府参考人 留学の在留資格を認めるには、本邦において学習し生活するのに十分な経費を支弁し得る資産又は資金を有していることが必要でございますので、そのため、留学生の在留資格に係る審査におきましては、預金、収入を証明する資料、申請人と支弁者の関係を明らかにする資料、奨学金の給付に関する証明書等の提出を求めているものでございまして、その一環として親の所得証明を求めているということでございます。

山田(勝)委員 こういった留学生の方々は、十八歳以上が対象になろうかと思いますし、十八歳、日本でももう成人になりました。もう自立した大人です。親の所得証明を条件にしている我が国は、本当にグローバルスタンダードと言えるのでしょうか。齋藤大臣、どう思われますか、この点、改善すべきじゃないでしょうか。

齋藤(健)国務大臣 今、事務的にも答弁しましたけれども、少なくとも、本邦において学習し生活するに十分な経費を支弁し得る資産又は資金を有している、これは必要なんだろうと思っております。

 その上で、どこまで必要かということについては、私はちょっと実務は余り詳しくないのでここで答弁は差し控えますけれども、この原則に従って適切に処理していかなくちゃいけない問題だろうと思っています。

山田(勝)委員 本人の所得証明で十分かと思われますので、ここも是非検討をいただきたいと思います。

 続いてのテーマです。大村入管のネパール人男性についてです。

 このテーマ、昨年から何度も取り上げさせていただいております。大村入管に収容されていたネパール人男性、二〇一九年八月十四日に大腿骨頭壊死症の診断を受けていながら、入管で適切な医療を受けられず、三年以上放置された結果、寝たきり状態になってしまわれました。

 一年前、法務委員会の理事である鎌田さゆり衆議院議員と石川大我参議院議員とともに、私、大村入管で御本人と面談し、御本人の口から、早く手術をしてほしい、自分の足で歩けるようになりたい、その悲痛な声を聞かせてもらい、すぐに大村入管の所長に申入れを行いましたし、その後、本委員会でも、何度も何度も当時の法務大臣に、手遅れにならないうちに一日でも早く手術をと要請を続けてきました。現在、彼は福岡の病院に入院しており、いまだに手術がなされていません。本当に残念で仕方ありません。

 先日、鎌田議員や石川議員とも、共にオンラインでネパール人男性と面談を行いました。今も毎日、痛みと闘いながらベッドの上で生活されており、今なお手術を望んでおられます。しかし、左足が麻痺と診断されており、現状では手術が難しい状況のようでした。もっと早く手術を行うべきでした。

 ここで、このネパール人男性に対し、本来あるべき治療方針などについて、ある医師より昨年六月に作成された医学意見書を紹介させていただきます。この医師、診療記録の提示を受け、本件患者の身体状況、本件患者、ネパール人男性のことです、診断された疾病について医学的な見地から意見を求められたもので、本書を作成した。医学意見書を作成した医師の見解です。

 本件患者は、二〇一九年四月に症状が出現したにもかかわらず、五月にレントゲン検査、八月にMRI検査が行われている。通常の国内の医療水準と比較し、診断の遅れは否めない。症状の改善がなく原因が不明であった時点で、まずは整形外科を受診させて、MRI検査等の精査を検討すべきであった。そのように指摘されています。

 本件患者の場合、二〇一九年八月の時点では、両股関節共に病型分類はタイプC1、病期分類はステージ2で、発症から四か月程度経過し、疼痛と歩行機能障害、ADL障害が続いていることが考えられる。手術療法の適応となる可能性が高い。この医師は指摘しています。

 二〇二一年三月九日に大村市民病院で実施された股関節MRI検査では、左股関節は変形性関節症の変化が出現しており、病期分類はステージ4に進行していると思われる。本書の作成時点での情報では、発症から三年以上経過し、現在は歩行不能で寝たきりに近い状態と思われる。現時点での人工股関節置換術の適応の判断、手術の適応の判断については、下肢筋力及び関節可動域等の身体所見の確認と筋力訓練等のリハビリテーションを実施の上で再評価が必要と思われる。

 この医師、二〇二二年六月二十四日、昨年の六月にこういった意見書を出しておりまして、最後にこう結論づけております。本件患者の場合、整形外科専門医による大腿骨頭壊死症についての定期的な経過観察が行われておらず、国内での医療水準と比較し適切でなかったと思われる。こういうふうに第三者の医師が結論づけている状況です。入管の医療行為は不適切であったということが明らかでございます。

 齋藤大臣、このネパール人男性、ひょっとしたら、もう本当に手遅れで、一生歩けないかもしれないという状況です。日本政府として、法務省として、齋藤大臣、どのようにこの男性に対して責任を取るべきだと思われているでしょうか。

齋藤(健)国務大臣 御案内のとおりだと思うんですけれども、私の頭の中にはいろいろなことが、去来するものがありますが、現在は、入管当局の医療的対応については国家賠償請求訴訟が提起をされておりまして、訴訟係属中の事案ということになっていますので、法務大臣としてちょっとコメントは差し控えたいなというふうに思います。

山田(勝)委員 しかるべきタイミングで、是非、齋藤大臣が法務省の最高責任者として本人と向き合っていただきたいし、謝罪が必要だ、しかるべきタイミングでは、思っております。

 その上で、以前もお示しした資料二を御覧ください。二〇一九年八月に、大村の入管センターから、このネパール人男性、外部病院に出された紹介状でございます。

 改めて確認したい記述でございます。この下の方、お忙しいところ誠に恐縮です、本センターは一時的収容所で原則的に根治治療は行わないこととしていますが、保存的加療が可能かどうか、加療方針につき御意見をお願いできればと存じますとあります。つまり、大村の入管の医師が外部の医療機関に紹介状を出すときに、このようなメッセージが出されているわけです。

 改めて確認をさせてください。入管では根治治療は行わない、そういう方針であるということでよろしいですか。

西山政府参考人 入管関連法令に、被収容者に対して根治治療を行わないとの規定は存在いたしません。

山田(勝)委員 なぜここに根治治療は行わないものと書いているのか、全くそのお答えとの整合性が取れない。これは以前からずっと続いていることです。

 私たちが、この紹介状を書いた医師と連絡を取りたい、その真意を聞きたいと言っても、入管側はつないでくれません。真相が分からない。

 これは大変重要なことです。この方は、まさに、この行為によって、根治治療を行わないという大村入管の医師の方針によって、生涯歩けないような、そういう障害を負いかけている状況。大変重要な課題でございます。

 入管の方針と、この紹介状で書かれている内容の整合性が取れない部分、これについてしっかりと説明を改めてしていただきたいと思いますので、委員長、是非理事会でお諮りをしてもらいたいと思います。お願いします。

伊藤委員長 理事会で議論させていただきます。

山田(勝)委員 ありがとうございます。

 その上で、更にこの件でお聞きしたいんですが、大村入管から福岡の病院に移送されたネパール人男性、実は、毎月十万円ほどの医療費、保険は適用になっているんですが、自己負担として医療費がかかっています。その医療費、現在、民間の支援者に丸投げ状態です。自力ではとても生活できない。

 本来、このような事態を招いた入管庁が費用負担すべきではないでしょうか。先ほどの医学意見書でも、特発性大腿骨頭壊死症は指定難病です。一般論で構いません。難病を患ったこのような外国人に対して定住者ビザを与えて、生活保護は受給できるようにする、それは可能だということでよろしいでしょうか。

西山政府参考人 一般論として申し上げますれば、在留資格変更申請等があった場合には、申請者の在留目的や活動予定など具体的な申請内容を踏まえ、変更を希望する在留資格への該当性などを審査し、その許否を判断しているところでございます。

 なお、生活保護についてお尋ねがございましたが、外国人の生活保護の受給については厚生労働省の所管でございますので、私どもでお答えする立場にはないと考えております。

山田(勝)委員 答える立場にあるから言っているのであって、入管庁が行った行為によって、例えばこの方であれば、難病を患ってしまっている、自力で生活していけないかもしれない、こういった方々に生活保護を支給するのは当然の国としての責務だと思っております。

 その上で、更にお聞きしていきたい。改めて、ちょっと驚くべき事実が分かってきました。

 二〇二二年五月、ネパール人男性は外部病院で検査入院をしています。その病院での診察記録に、実際の診察記録がこれです、本人の許可を得て私はもらっています、皆さんへの配付はしておりません、手術はネパールで行うのが本来妥当であるが、本人の強い希望があれば当科で行う予定とすると。実は、この外部病院では、本人の強い希望を受けて、手術を行うことができるという、これは実際に診察記録が残っています。

 しかし、突如、この数日後、手術の方針が転換されてしまい、大村入管から何かしらの圧力があったのではないかと本人も、そして支援者の皆さんも疑っているところです。外部病院が一度、手術をしよう、それができると判断したにもかかわらず、その後、手術をするという方針が撤回されてしまった。この手術、記録の経過を見ても明らかです。その間に何かしら大村入管の圧力があったのではないか、そこが懸念されている点です。

 さらに、二〇二一年十一月、ネパール人男性、この検査入院をする前です、大村入管の医師から驚くべき言葉をかけられていました。当事者である本人がメモを残してあったので、そのメモを、現物を見させてもらいました。もしこの手術を八十歳の人がした場合、九か月から一年でほとんど死にますよ、まだ三十代のあなたは八十歳まで生きたいでしょう、手術をすれば死ぬかもしれないということを医師から宣言された、このようにしっかりと記載がありました。

 これは、大村入管、どういう意図だったのでしょうか。最後、お聞かせください。

西山政府参考人 二点お尋ねがございましたが、いずれの点につきましても、プライバシー等の問題があるほか、訴訟係属中の事案に関する事柄でもございますので、詳細についての言及は差し控えさせていただきたいと存じます。

 なお、前者の点につきまして、一般論でございますけれども、手術の要否等に関する医師の判断について、入管側から病院に対し、判断を変えさせるなどの介入等を行うことはないということは言えるということでございます。

山田(勝)委員 このように、様々な入管の人権侵害が現実的に起こっています。今回、入管法の改正をするのであれば、こういったことを一つ一つ解決した上での改正でなければならないと思っております。

 終わります。ありがとうございました。

伊藤委員長 次に、鎌田さゆり君。

鎌田委員 立憲・無所属会派の鎌田でございます。よろしくお願いいたします。

 齋藤大臣、実は、前の大臣の葉梨大臣の最初のときにも、その前の古川大臣の所信に対しての質疑のときにも、一番最初に同じことを聞いているんですよ。今回も同じことを聞かざるを得ないんですね、一番最初に、齋藤大臣に。

 秘書官の方々はもう、ああ、あれかなと思われるかもしれませんけれども、齋藤大臣の所信の中に、日本の社会はこれから先、多様性を重んじて、多様性を認め合える、多様性の生きる社会を、その多様性という言葉が入っていないんですね。何か私、意地悪されているのかなと思っちゃうくらいなんですけれども。

 大臣、まさか大臣の中に多様性は重んじないということはないと思いますけれども、多様性ということについての大臣の御認識をまず伺います。

齋藤(健)国務大臣 私も国会答弁で、多様性を認めて共生する社会を実現していかなくちゃいけないということを度々申し上げているところでございます。

鎌田委員 それでは、通告に従って伺ってまいります。

 これからの日本は多様性を尊重する社会であるべきだと。私は、大臣と認識共有です。

 そこでなんですが、トランスジェンダーと性同一性障害、この違いについて、まずここではっきり認識を、理解を共有していかないといけないと思うんですけれども、大臣、この違いというものはどのように認識をされているでしょうか。

齋藤(健)国務大臣 性同一性障害者の性別の取扱いの特例に関する法律、ここにおきまして、性同一性障害者とは、生物学的には性別が明らかであるにもかかわらず、心理的にはそれとは別の性別であるとの持続的な確信を持ち、かつ、自己を身体的及び社会的に他の性別に適合させようとする意思を有する者であって、そのことについてその診断を的確に行うために必要な知識及び経験を有する二人以上の医師の一般に認められている医学的知見に基づき行う診断が一致しているものを指すというふうに承知しております。

 他方で、トランスジェンダーにつきましては、生物学的、身体的な性、出生時の戸籍上の性と性自認が一致しない人とか、あるいは、出生時に割り当てられた性別とは異なる性別の性自認、ジェンダー表現の下で生きている人々の総称などと説明されるなど、やや多義的な面があろうかなと観念されておりますが、ただ、法律上定義されているということはないというふうに認識をしています。

鎌田委員 これは、国際的に、トランスジェンダーの方に性同一性障害というふうに称することは非常に失礼なことだというのはもうグローバルスタンダードであります。

 世界保健機関のWHOが二〇一八年の六月に発表しています国際疾病分類、最新版のICD11版、これは三十年ぶりの改訂だったんですけれども、この中で、性同一性障害は精神疾患から外されました。つまり、病気でもないし障害でもないということが明確にWHOから発表されました。

 ですから、我が国のトランスジェンダーの方々は、国民として働いて納税して、そして、それぞれの幸せを追求する権利を持っています。ここに差別があってはならないと思いますけれども、大臣の御所見を伺います。

齋藤(健)国務大臣 トランスジェンダーの方々を含む性的マイノリティーの方々については、社会生活の様々な場面において課題が生じているだろうというふうに認識をしています。

 その課題は、例えば、公共施設、医療、就学、学校、社会福祉等の様々な場面でどのような配慮が合理的なのかですとか、いかなる施設の整備をなすべきなのかですとか、あるいは、御指摘のように、差別や偏見を解消するための教育や啓発、これはいかになすべきかですとか、極めて多岐にわたる課題があるというふうに認識をしておりまして、こういった課題を解決するために、今、関係各府省がしっかり横断的に連携をしながら個々の問題に取り組んでいくことが必要だろうというふうに考えています。

鎌田委員 多岐にわたる課題があって、省庁横断的にと。そこを是非期待をしたいと思います。

 ただ、日本はやはり遅れていますね。世界のこの多様性に対しては遅れています。ですので、私は法務大臣に、法務省がここをリーダーシップを取りながら、人権というものを真ん中に置いて進めていっていただきたいということは述べさせていただきたいと思います。

 大臣の所信の中にも、様々な人権問題への対応に触れられていらっしゃいました。そして、一人一人が互いを尊重し合える社会を目指すと述べられています。本当にそのとおりです。称賛です。

 ところが、岸田総理の秘書官をなさっていた荒井氏のさきの発言、これを齋藤法務大臣としてはどのように受け止められましたでしょうか。あわせて、岸田総理は、同性婚を認めると社会が変わってしまうという答弁をされました。大臣は何か変わるというふうにお感じになられましたか。伺います。

齋藤(健)国務大臣 まず、荒井元秘書官の発言ですけれども、私は、性的マイノリティーを理由として不当な差別、偏見はあってはならないというふうに考えておりますので、御指摘の発言は、多様性が尊重される社会の実現を目指すという政府そして私の気持ちとは全く相入れないものであります。そして、性的マイノリティーの方々に不快な思いをさせてしまうということでありますので、言語道断であるというふうに私は強く思っています。

 そして、総理の御発言についてでありますけれども、総理の発言は、これは推測するしかないんですけれども、総理は、この問題は、例えば、いろいろな影響が、さっき、いろいろな、トランスジェンダーを含め性的マイノリティーの方々の課題がたくさんあると申し上げましたけれども、そういう課題がたくさんあるということを総理なりの表現でお話しになったのかなと私は受け止めております。

鎌田委員 大臣、優しいですね。でも、その優しさは、実は総理に対しては不幸になるんじゃないかなと思うんですね。正しくあの総理の発言を受け止めれば、あれはやはり、どう聞いてもネガティブにしか聞こえません。家族観あるいは社会が変わってしまうという表現だったんですね。

 実は、私も社会が変わると思ったんです。だけれども、私の場合はすごいポジティブにです。ネガティブじゃなくてポジティブにです。ハッピーになる人が増えるというふうに社会が変わると思ったんです。だから、総理の発言のそのネガティブさに、何だこれはという、自分の変わるという感覚との違いに驚いたんですけれども。

 今日は資料配付をお許しをいただきました。つづりとしてジョイントを左上にされています、全部一緒になっているんですが、左上に資料一と書かれているものの、まず一枚目を御覧いただきたいと思います。

 これは、荒井氏の発言を受けて、秘書官更迭ということで、国連の事務総長の報道官の発言です。その本文の中の三行目後半からですが、事務総長は嫌悪(ヘイト)に強く反対しており、誰を愛し、誰と一緒にいたいかを理由に誰も差別されてはならないと述べたというふうに書かれてあります。

 この荒井氏の発言なんですけれども、今日の資料、また後で触れるんですけれども、後ろから二枚目、今日のジョイントされている全部のくくりの最後から二枚目にあります、それの用語解説というところの上から六段目、ここにアライと書いていますね。アライです。これは、いわゆる性自認、性指向は多様であるということで、性的少数者に理解のある人、理解者、支援者、応援者のことということで、アライアンス、これを略してアライと言っているんですけれども、世界では、荒井氏の発言がこのアライとかけられてしまって、とんでもない恥ずかしい状態になってしまったんですよ。

 ですので、私たちは、このことも踏まえて、岸田総理のネガティブな発言は、岸田総理の感覚も変えてもらわなくちゃいけないし、政府としてもこれを変えていただかなくちゃならないというふうに考えています。そこで紹介をしました。

 私たちは、一昨日の六日でありますけれども、いわゆる同性婚を認める民法改正案を衆議院に提出をいたしました。これは、つるされるままではなくて、私は、これは戸籍にも関わる法案でございますので、この法務委員会で議論をすべき、私たちが提出した法案だと思いますが、大臣、お考え、いかがお持ちになられますか。

齋藤(健)国務大臣 三月六日に御党が法案を提出されたことは承知しておりますが、その取扱いは国会においてお決めいただければなと思います。

鎌田委員 もちろん、国会において国対で決めるものだと思いますけれども、じゃ、大臣、同性婚について、法務大臣としてのお考え、岸田総理はあのときあのような答弁をなさいましたけれども、齋藤大臣、どうでしょう。

 参議院の予算委員会では、自分がLGBTQのGであるということをカミングアウトをして、私は一体いつになったら愛する人と結婚できるんでしょうかと、我が党の石川議員が予算委員会で質問しました。そういう人がこの世の中に八%はいると言われています。この法務委員会に、八%といったら、もしかしたらお一人いらっしゃるかもしれない。本当に少数です。たまたま多数と少数の違いだけなんですね。その方々も幸せに結婚したいと望んだら、それは認めてもよろしいと私は思いますけれども、法務大臣は、お考え、いかがでしょうか。

齋藤(健)国務大臣 前提として、全ての方々がお互いの人権や尊厳を大切にして生き生きとした人生を送ることができる、多様性が尊重される社会を実現すること、これは重要であると私は考えています。

 それで、今、同性婚の話がありましたけれども、私の高校時代の友人でも、そのときは全く気がつかなかったんですが、社会に出て弁護士になってからカミングアウトした友人もおります。そういう意味でいうと、いろいろなケースが皆さんの身の回りにもあるんだろうと思っております。

 ただ、これは総理と私は考えが違っているわけじゃないんですけれども、この同性婚制度の導入の問題は、やはり我が国の家族の在り方というものに密接に関わる問題だと思っておりまして、したがって、国民的なコンセンサスと理解というものがなければ、なかなか前へ進めるのが難しいと考えております。

 そのために、総理も繰り返しお話しになっておりますが、国民各層の意見、国会における議論の状況に加えて、同性婚に関する訴訟の動向、自治体におけるパートナーシップ制度の導入や運用の状況等をしっかり注視していくことが今やるべきことだなと思っています。

鎌田委員 大臣、お近くに当事者の方がいらっしゃった。その方が結婚を幸せの形とお考えになっているかは私は分かりませんけれども、でも、結婚というものは、皆さんに幸せの形として追い求める権利はあるわけで、大臣、もう一歩二歩、御理解ある御答弁を求めたいと思います。

 またちょっと、息抜きではないですけれども、資料をめくっていただきたいと思います。

 アメリカの駐日大使、日本の議会に対して、性的マイノリティーを保護する法律を希望する、明確で曖昧さのない法律、そして、この問題は岸田首相のリーダーシップに完全な信頼を置いていると。「フミオ キシダズ リーダーシップ オン ジ イシュー」ということが書かれてありますね。このように期待されています。

 さらに、次をめくっていただきますと、ジェシカ・スターン、アメリカのLGBTQ特使のメッセージです。政府の要人で、運輸長官、厚生次官補、大統領報道官、それぞれトランスジェンダーであることをカミングアウトをしています。国際社会は、もうそのように前へ前へと進んでいます。

 今大臣の御答弁の中に、地方自治体におけるパートナーシップ制度なども推移を見守る等の御答弁もありましたが、これは日本の十代や若者の皆さんにも、聞いてみなくても分かることだと思うんですけれども、普通に、ああ、彼、カミングアウトしたんだ、ああ、あの子そうだったんだと普通に受け入れて、普通にお友達として友情のきずなを育んでいっています。遅れているのは国会なんですよ。遅れているのは政治なんです。立法府なんです。

 私は、是非この婚姻平等法を議論をすべきであって、法務大臣として、全て、誰一人取り残さないという言葉もありました、所信の中に。その人権を真ん中にした法務省の大臣として、もう一度伺います。もう一歩二歩、前進的な御答弁をいただけないでしょうか。これは議論に資するテーマであるとかですね。無視しないでいただきたいんですよ。結婚したいと思っている同性カップル、そしてその下で育っている子供たち、いつになったら堂々とこの世の中で自分の性を明らかにして生きていけるのかという、その子供たちの声もあります。大臣、いかがでしょうか。

齋藤(健)国務大臣 法務大臣としての御答弁はもう先ほど申し上げたとおりで、つけ加えることはないんですけれども、国会における御党の法案をどうするかについては、国会の中で決めていただければと思います。

鎌田委員 じゃ、ここまでにとどめますが、法務大臣としてはという冠がありましたので、政治家齋藤健さんとしては前向きなのかなというふうな期待をしたいと思いますけれども。

 確かに、三十年前、四十年前は、例えば、周りにLGBTQの中のGの人がもしいたとしたら、本当に四十年前だったら、それを受け取った側は、正直に、少し生理的に気持ち悪いなというふうに感じる人もいたと思います。ただ、どんどん世界がアップデートされていっていますから、これをカミングアウトというのは人間宣言であって、私は生きているんだという宣言なんですね。もう隠れもしない、こそこそもしない、誹謗中傷を受けるんじゃないか、いじめられるんじゃないか、それも恐れないで、私は一人の人間ですということを宣言しているということでありますので、是非、この国会が、日本の政治、政府がアップデートしていけるようにしていただきたいということを述べて、次に移りたいんですけれども。

 今年、G7が行われます。今日配付しました資料の中に、G7の首脳コミュニケというものがあります。これは昨年のドイツのエルマウで行われたサミットの首脳コミュニケなんですけれども、首脳コミュニケですから、これは岸田総理ももちろん絡んでいる話ですね。この首脳コミュニケのジェンダー平等の中に、もう読んでください、何度も同じことになっちゃいますので読んでください。とにかく、LGBTQプラスの人々の完全かつ平等で意義ある参加を確保するということに、岸田総理はこれに合意というか一致をして、首脳コミュニケ、加わっているわけですね。

 ところが、今年、広島で議長をする日本のリーダーの岸田氏は、婚姻平等法にあのような答弁でした。これはダブルスタンダードですよ、ダブスタ。かぶっている仮面は人権を尊重するとなっているけれども、実は仮面を取ってみたら違うということがこの広島の首脳会議で明らかになることは間違いないので、これからでも遅くありません、法務大臣として、是非、総理に、進言するなり、立ち話でも結構です、おっしゃった方がよろしいと思います。

 先ほど大臣ちょっと触れてくださいました、トランスジェンダーの方々が日常生活を送る上で様々な不都合だったり不合理などがあるという点で、私も同じように、性同一障害者の性別の取扱いの特例に関する法律、これを取り上げさせていただきたいと思います。

 御存じのとおり、これは議員立法でした。この特例の中で、第三条に、性同一性障害という診断を受けた方は生殖腺を取り除く手術を受けなくちゃならない、身体の性器に係る部分に近似する外観を備えること、つまり、乳房を除去したり、体にいわゆる手術的な負担をかけてじゃないと戸籍上の変更は認められませんよという特例法になっています。

 そして、私が今大臣に問いたいのは、これは全部の人に強いられているんですね。これはせめて選択できるものに私はすべきだと思うんです。確かに、外観上がとても違和感を感じていて、外観上も一致したものにしたいという人もいるかもしれない。でも、外観上このままでいい、だけれども戸籍上は変えたいという選択の余地がここにはないということが私は極めて問題だと思うんです。

 大臣、この特例法を見直していくお考えはございませんか。

齋藤(健)国務大臣 御指摘の性同一性障害特例法では、性別の取扱いの変更の要件として、生殖腺がないこと又は生殖腺の機能を永続的に欠く状態にあることを求めています。これは、性別の取扱いの変更後に、残存する元の性別の生殖機能により子が生まれるようなことがあるならば様々な混乱や問題が生じることにもなりかねず、妥当ではない、こういった考えに基づくものでありまして、平成三十一年一月の最高裁判所の決定においては、当該規定が憲法に反するものとは言えないという判示をされているところでもあります。

 この性同一性障害特例法は議員立法であることに鑑みますと、今後の対応について、この点に関する議論の状況等をしっかり見ていきたいというふうに思っています。

鎌田委員 今、大臣、冒頭、御答弁の最初の方で述べられました御懸念については、そこはチェックのシステムをちゃんとつくればいいわけであって、それから、元々これを希望する方というのは、自分の、自認でもってその性ではないということで戸籍上の変更を申し出るわけですから、そこの御懸念については、ちゃんとそれを補完するシステムをつくれば私はクリアできると思うんですね。

 それから、議員立法であっても、これは別に議員立法をした方々がまた改正の申出をしなくちゃいけないというわけではありませんから、大臣は今、議論を注視していく、見守っていく旨の御答弁でしたけれども、これは是非、法務省の中で検討していただきたい案件です。当事者の方々はこのことを強く訴えていらっしゃいます。

 岸田総理はあのとき、あの荒井氏の発言もあり、それから答弁もありで、当事者の方々に謝罪、おわびをされたということですけれども、大臣、このトランスジェンダーの当事者の方々、それから支援している方々と面談したことはおありになりますでしょうか。それから、今後、そういう方々と面談をして、その方々の声を直接聞くという機会を設けるべきだと思います。そうすると、実際、リアルな声というものが酌み取れると思いますが、いかがでしょうか。

齋藤(健)国務大臣 まず、私、大臣になる前の議員のときには、そういう問題意識を持った集会にも参加をしておって、直接お話を伺う機会も持ってきております。

 二月十七日に、岸田総理、小倉内閣府特命担当大臣らが、御指摘のように、官邸で性的マイノリティーの当事者の方々から幅広くお話を伺ったということでありますので、法務省としては、当事者の方々からいただいたお話も参考にしながら、関係府省の一つでありますので、その一つとしてしっかり人権啓発活動等の取組を進めていきたいということに尽きるわけでありますが、今後、法務大臣として、更に誰からどのような形でお話を伺うかについては、政府全体の検討の中で検討されていくのかなというふうに考えております。

鎌田委員 大臣、是非、もうちょっと、もう今日は大臣だけの答弁を求めておりますので。

 でも、大臣になる前、そういう集会にも参加をされて、理解を示されているということは今御答弁いただきましたので、別に、対決する、けんかをするつもりもありませんので、是非、この課題について、これからも見守っていただきたいと思います。

 ちなみに、モノクロの、今日の資料の最後、外務省のウェブサイトから拾ったものなんですけれども、外務省のウェブサイトにも、これも読んでください、世界で、読まれたら、ああ、すばらしいことを日本はうたっているなというものが書かれてあります。でも、中身は伴っていませんということを指摘させていただきます。

 今日、資料で、カラーになっているのが一枚だけありまして、多様な性への理解と対応ハンドブック、これが表紙になっていまして、あと全部カラーなんですけれども、済みません、事務所の事情で全部モノクロになっていますが、お手元の資料。これ、全部プリントアウトすると大変な量になるんですけれども、この委員会には、我が党の山田勝彦衆議院議員、長崎県、そして大臣の所属される、御党、自民党には加藤代議士と。これは長崎県のホームページなんですよ。長崎県のホームページを見ていきますと、トップページがこの表紙になっていて、さらに、その次は、「はじめに」ということで、モノクロなんですけれども、これもカラーになっているんですが、このイラストのところ、右側のところ、性というのは、男、女だけではなく、一人一人違った性の在り方が存在するんだ。読み進めていくと、本当に長崎県すごいです。県内の性的少数者に関するアンケートも実施しているんです。それから、県内の性的マイノリティーの方々の声も紹介されています。

 驚きました。長崎県でこのような取組をされていて、やはり、地方自治体、東京都もそうですけれども、自治体はどんどんどんどん進んでいっている、それから民間の若者も進んでいっている。国会だけが遅れているということですので、そのことを改めて指摘するために、今日は長崎県のホームページからのこれを、私、すばらしいと思いましたので紹介させていただきました。

 戸籍法について伺っていきます。

 戸籍法の第十三条、ここに戸籍の記載について定めがあるんですが、性別の記載、この定めはありません。戸籍内の各人についての記載について、性別の記載をしろというのがないんですね。

 ただ、施行規則で、「戸籍の記載は、附録第六号のひな形に定めた相当欄にこれをしなければならない。」というふうにあるんですね。つまり、これをどう読むかというと、慣例的、踏襲的に記載されている性別なんです。戸籍法の法律では性別を記載しろという定めはないんです。施行規則だけなんです。

 ですから、戸籍を見ると、長男、長女、二男、二女というふうに、性別の男、女が書かれているんですけれども、それは慣例的、踏襲的であって、戸籍法十三条では求められていないという解釈、これで誤りないですよね。よろしいですか。

齋藤(健)国務大臣 確かにそうなんですが、一方で、御案内のように、戸籍は、日本国民の親族的身分関係を登録、公証するものでありますので、個人に関する基本的な事項として、実父母との続柄を戸籍に記載して男女の別を明らかにしているということであります。

鎌田委員 おっしゃるとおりです。続柄なんです。つまり、父母、親と子という、その続き柄、これが明確に戸籍に表されていればいい話であって、男、女は戸籍法十三条で求めていないんですよ、性別を書けというのは。あくまで施行規則なんです。

 ですから、戸籍に、例えば一人目の子供だったら一子、二人目の子供だったら、それが男性か女性か、あるいはその他の性というふうにその後なるかもしれませんけれども、子である続き柄が書かれてあれば十分なんですよ。そう思いませんか、大臣。

齋藤(健)国務大臣 冒頭、繰り返しになりますけれども、戸籍は、日本国民の親族的身分関係を登録、公証するというものであるので、実父母との続柄を戸籍に記載して男女の別を明らかにしている。

 仮に、戸籍の記載から性別が判別できないという場合に、婚姻をするに際して、その一方が男性で他方が女性かということが戸籍上判明しないということになります。

 また、男女の別は、個人を特定する事項として社会一般に用いられているものでありまして、現行法には、懐胎や出産をする者が女性であることを前提として女子ですとか女性というものが規定されているものがありますことから、性別の記載は現行法の下で必須ではないかと考えています。

鎌田委員 民事局長が参議院の方で答弁をした内容とほぼ同じで、済みません、ちょっとがっかりしました。

 戸籍法の十三条では性別の記載は定めていないんです。あくまで施行規則なんです。ですから、続柄として子であることが判明していればそれでいいんです。婚姻のときに、戸籍見せてよ、ああ男なの、女なのと、それを確認して婚姻する人はほぼいませんから。お互いの、二人で、婚姻の意思があるかどうかですから。

 この件は、引き続き私は問題意識として提起をしてまいりますので。というのは、法務省が戸籍にどう記載するかということを一つ、一歩踏み出すと、国内のあらゆる、いろいろな、証明書ですとか資格証ですとか、そういうところに性別を書くところがあります。あるいは性別を書くところを求めていないものもあったりするんですけれども。法務省がこの戸籍というところで一歩踏み出すと、いろいろなところに波及していって、まさに国際的な、スタンダードなものになっていきますので、是非これを検討していただきたいということはこれからも申し上げてまいります。

 それでなんですけれども、例えばカナダなんですが、二〇一九年から、パスポートを始めとする公的文書の性別欄で、いわゆるメンの男性と、それからフィメールの女性に加えて、X、その他ですね、男性でも女性でもないというものを選べるようになっています。まさに多様になっているわけです。

 LGBTQの方々の困難なリストの中には、パスポートの性別が外見と異なるから、出入国の際に海外で不審に思われて、別人と思われたりして、そこで入国を拒否されたり、様々な困難の声が上げられています。

 ですので、これはパスポートですから法務省は所管ではないですけれども、戸籍というところで、一つ、男、女、もう一つ、その他の第三の性としてXというものが示されると、例えば選挙人名簿ですとか投票人名簿、マイナンバーカード、様々なところに、まさに国際的な基準に沿って日本もアップデートしていけるということになるわけですので、私の持論というか、それを長々と申し述べてもなんですから、大臣、是非、このことはこれからも取り上げていきます、御検討いただきたいと思います。

 旧統一教会の信者の二世の方々の救済については、今、それぞれが鋭意取り組んでいるところなんですが、いわゆる合同結婚式、今年も五月に行われます。この合同結婚式で入籍の手続を取らなかった人は、その後、マインドコントロールから解けて、大丈夫な状態、まあ大丈夫な状態というか、戸籍を変更することが何も必要のない人もいれば、合同結婚式を機会に入籍をして、戸籍を変えるのにとんでもなく御苦労されている方々がいらっしゃるんです。

 これ、旧統一教会の二世信者の方々の救済の方策の一つとして、戸籍を元に戻すということを、少し前進したお考えを御検討いただきたいと思うのですが、いかがでしょうか。

齋藤(健)国務大臣 戸籍については先ほど申し上げたとおりなんですけれども、信者二世の方々の救済については私も非常に重い課題だと思っています。

 法務省では、法テラスに設置した霊感商法等対応ダイヤルにおいて、旧統一教会問題等に関する相談を受け付けておりまして、信者二世の方からも、実際、金銭トラブルのほか、心の悩み、親族関係の問題等、様々な相談が現に寄せられているところであります。法テラスでは、相談内容に応じて、これは弁護士の方だなとか、これは心理専門職の方だなというふうに、専門家の知見を活用するなどして、問題の総合的解決を図るために必要な対応を行っているところであります。

 また、関係機関、団体等との緊密な連携の下に、こうした相談対応等を通じて被害実態を把握、分析をして、包括的な支援体制の一層の強化につながっていくように努力をしていきたいというふうに考えています。

鎌田委員 是非やってください。もう二重三重に被害を被っています。大変な時間と労力がかかっていますので、御検討いただきたいと思います、また機会があったら、私は質問させていただきますので。

 済みません、通告していますが、次、刑法改正についてお聞きしようと思っていたんですが、入管行政に移らせていただきます。

 大臣、今日は三月の八日でございます。おとといの三月六日、名古屋入管でウィシュマ・サンダマリさんが亡くなった日でもあります。

 大臣は、ウィシュマ・サンダマリさんの亡くなるまでの経緯を映したビデオの一部でも視聴されていらっしゃいますでしょうか。あるいは、最終報告書をどのように御覧になって、思いをはせていらっしゃるでしょうか。披瀝をしていただきたいと思います。

齋藤(健)国務大臣 まず、ビデオの方ですけれども、衆参の法務委員会理事会において閲覧の対象となった映像等につきましては閲覧を終えています。

 その内容については、職員が介助等の対応を行う場面ですとか、ウィシュマさんが体調不良を訴える場面ですとか、職員がウィシュマさんに対し不適切な発言をした場面などが幅広く含まれておりました。

 そして、報告書の話もございましたけれども、私としては、報告書は、可能な限り客観的な資料に基づいて、医師、弁護士等の外部有識者の方々に御意見、御指摘をいただきながら、事実を確認して、考えられる問題点を幅広く抽出して検討がされたものというふうに私は認識をしているところであります。

 それで、その二つを含めて私が思いますのは、とにかくこのような事案を決して繰り返してはならないという思いを非常に強く持っております。

鎌田委員 大臣、この問題はまだ終わっていない。もちろん、国賠の案件でもありますけれども、終わっていません。

 というのは、私たち、二〇二一年の十二月二十四日に三百八十六分視聴しました。これでは足りないということで、その翌年の二〇二二年、昨年ですね、三月二十三日に二十六分視聴しました。

 ただ、私、まだまだ実は確認したいところがありまして。というのは、最終報告書で、三月四日の日、バイタルチェックができない状態になっているんですね。血圧と脈拍を測定できないウィシュマさんの状態になっているんです。その三月四日のバイタルチェックができなかった場面というのは、我々、視聴しているのかどうかという疑問が残るんです。

 ですので、まだこの件については、理事会でも発言をさせていただきましたけれども、更に視聴すべき点が残っていますし、この最終報告書、前の委員会では野党の階筆頭が再三指摘しましたけれども、報告書にまだ疑義が残っている点がございますので、この点はまだ終わっていない、これからもまだ私たちは追及していかなきゃならない。

 それは何よりも、別に入管の方々をどうしようという話じゃなくて、よりよい入管行政になる、被収容者の方が、先ほどネパール人の大村の方の話もありましたけれども、あの人はもう二度と自分の足で歩けないかもしれないんですよ、今のところ。また同じことを繰り返してしまうかもしれない。そういうことを二度と起こさないためと今大臣もおっしゃったんだから、そのためなんです。

 それでなんですけれども、実は昨日、我が党の部門会議があって、入管庁から、国内の入管収容施設におけるお医者さん、常勤医師の定員、それと充足数を出してもらいました。欠員状態のところが二か所あります。横浜、名古屋の入管収容施設では常勤医師がいないんですよ。医療体制をちゃんとやっていくと最終報告書で求められた、ちゃんと決意をしたにもかかわらず、常勤医師がゼロのところが、入管収容施設、あるんです。一刻も早くこれを解消してもらいたいです。

 大臣、御決意をお願いします。

齋藤(健)国務大臣 私は、今回のウィシュマさんの事件の反省の一つで一番大きいものの一つが医療体制の強化だというふうに思っておりますので、今まで前進はしてきておりますけれども、引き続きしっかり取り組んでいきたいと思っています。

鎌田委員 ありがとうございました。

 是非、前進したと言えるようにしていただきたいと思います。

 私の質疑時間は終了したんですが、米山代議士が調整しますということを言ってくれていますので、最後に一つだけ問いたいと思います。

 三月十日、あさってです、袴田巌さんの誕生日がやってきます。袴田巌さん、獄中で五十年以上にわたって死刑囚として生きてきました。毎日九時になると、今日は死刑執行されるんじゃないかという恐怖の中で耐えながら生きてきました。当然ですが、精神疾患を患いました。そして、来週、三月十三日月曜日です、袴田さんに対する再審、これが認められるかどうか、東京高裁で決定が言い渡されます。もし再審が認められると、検察は最高裁に対して特別抗告をする可能性があります。

 大臣、検察庁法に基づいて指揮権を発動していただいて、もし仮にそのような状態になったら、検事総長に指揮権を発動していただき、袴田さんに対する特別抗告をしないように発動していただきたい。いかがでしょうか。

齋藤(健)国務大臣 まず、検察が特別抗告すべきでないという御指摘がありましたが、これは、御案内のとおり、法務大臣として個別の再審請求事件に関わる事柄についてコメントはやはりできないだろうと思っています。

 それで、指揮権の発動の話もございました。

 個別の再審請求事件に関わる事柄でありますし、法務大臣が個別事件について指揮権を行使するか否かについて所見を申し上げるということは、それ自体、検察の活動に重大な影響を与えかねないと思いますので、お答えは差し控えたいなと思います。

鎌田委員 私は、このことを最後に申し上げて自分の質問を終わりたいと思いますけれども、これは再審妨害のおそれもあります、検察が特別抗告をすると。袴田さんは、年齢も、もう大臣御存じだと思いますけれども、精神疾患を患って、死刑制度はもうこの国にはないんだと日々語るようなくらい、大分病んでいらっしゃいます、心身共に。それを支える周りの方々は、今回の、来週月曜日の東京高裁からの再審決定、可否について見守っていますので、私は、指揮権発動は、これは法的に違法ではないわけですから、そのことは十分に検討されるべきだということを最後に申し述べまして、私の質問を終わります。

 ありがとうございました。

伊藤委員長 次に、米山隆一君。

米山委員 それでは、立憲・無所属会派を代表して質問いたします。

 先ほど鎌田委員からの分で、三分二十八秒間を減らしてお話しさせていただきたいと思います。

 昨年の十月十一日に、米軍横須賀基地の元従業員が、長時間労働で精神疾患を発病したことをめぐって国に損害賠償を求めた事件で、和解案を協議する期日において、裁判官と原告のみでなされる話合いを国側の代理人がICレコーダーで録音したという事案がございました。

 これはさきの臨時国会でも質問したことなんですけれども、これは調べましたら、前回も申し上げましたが、ICレコーダーには以前の期日のやり取りも録音されており、少なくとも実行した職員においては故意であると考えざるを得ません。

 裁判所における録音一般は、民事訴訟規則第七十七条で、裁判官の許可を得なければ行うことができないとされております。さらに、そこを超えて、裁判において、相手方当事者に聞かれない状態で裁判官と当事者が話し合うという、和解条件を検討する場においては、その録音自体が裁判という業務を妨害しているとも言えるところです。

 これにつきましては、さきの臨時国会で質問いたしまして、国の指定代理人として、防衛省の職員三人、また法務省の職員三人が訴訟に当たり、このうちの防衛省の職員一人が盗聴を行ったというふうに伺っております。処分についてお聞きしたところ、検討中とのことでございました。

 令和四年十二月二十三日付で防衛省のホームページにもこの事案に関しまして記載があるところなのですが、このホームページでもやはり、厳正に処分すると書いてあるだけなのでございますので、一体どのように処分されたか、それをお答えいただければと思います。

石川政府参考人 お答え申し上げます。

 御指摘の昨年十月十一日に録音行為が確認された南関東防衛局の職員につきましては、調査により判明した事実関係に基づき、本年二月二十二日付で停職三十日の懲戒処分といたしました。

 国の指定代理人である防衛省職員が規則に違反する行為をしたことは誠に遺憾でございます。これを厳粛に受け止め、再発防止策として、関係規則の遵守の徹底、そして指定代理人に対する教育につきまして事務次官通達を発出し、関係者に通知したところでございます。引き続き再発防止を徹底し、信頼回復に努めてまいります。

米山委員 分かりました。停職三十日ということであれば、それは恐らくホームページに書いてある事案から見て適正なんだろうなとは思うんですが、であれば、是非ホームページにも書かれたらいかがでしょうかと思います。

 それは御本人の名誉的な問題はあるんでしょうけれども、やはりこういうのは、ある種、一罰百戒といいますか、こういうことをするとこうなりますよと示すことが再発防止にもつながりますし、また、きちんと処分をされたということが、では、以後こういうことはないんだろうという、多くの国民にとっての信頼につながるといいますかね、裁判制度の信頼につながると思いますので、そこはホームページでも公表されることをされたらいかがでしょうかと思います。

 ちなみに、それについての御所見は伺ってよろしいでしょうか。この件は通告しておりませんが。

石川政府参考人 お答え申し上げます。

 ただいま申し上げました懲戒処分につきましては、二月二十二日付で南関東防衛局のホームページに公表しております。

米山委員 分かりました。

 そうしたら、それは多分、報告書の方ではないんだ、防衛省のところではなくて南関東の方にあるという、そういう趣旨ですよね。まあ、どうなんだろうと思いますが、私は、それは報告書の方に記載すべきだろうと思います。

 というのは、この事件について調べた人は、私を含め、報告書のホームページを見るのであって、なかなか南関東のところまでは見ないと思いますので、報告書の記載されている部分に記載することを求めるんですが、それについての御所見を伺います。

石川政府参考人 お答え申し上げます。

 ちょっと、ただいま私、ホームページと申し上げましたけれども、訂正させていただきまして、こちらは、記者に対して投げ込みをしている、紙でですね、ということでございました。

 そして、御質問に対しましてお答え申し上げます。

 十二月に公表したものは事案の事実関係のものでございますけれども、通常、防衛省のやり方でございますけれども、懲戒処分につきましては、その所属する部局の方から今申し上げたような形で公表することが通例になっております。

 いずれにしても、しっかりと公表しておるところでございます。

米山委員 結局御回答はいただけなかったわけなんですけれども。

 結局、今の御回答は、防衛省としてはそういうふうに、単に記者に投げ込むだけで終わりにしているので終わりにしますということだと思うんですが、やはりそうではないと思うんです。それはもちろん、事案によっては、例えば、本当は防衛省の中で完結するような事案で停職ぐらいの処分を受けたということであれば、わざわざそんな、御本人の名誉のこともありますから、ホームページで出すようなことではないとは思うんです。でも、本件は、やはり裁判制度、さらに国の指定代理人制度に対する信頼が揺らぐということなんだと思うんです。

 これはきちんと、どういう処分をされたかまで書いていただかないと、これを調べた人が、やはりこれは、国との裁判になったら録音されるんだ、黙ってされて、しかも処分もされないかもしれないんだと思っちゃうわけですから、そういう信頼回復のために、そこはきちんとその報告書の中で、処分に関してまで書くべきだということを申し上げさせていただきたいと思います。

 これに関しては、多分、これ以上押し問答をしても、適切にということしか言われないんでしょうから押し問答はしませんけれども、また今後聞かせていただきますので、一体全体どういう公表方法を今後されるのか、ホームページの報告書に書かれるのか、御検討いただければと思います。

 続きまして、最高裁判所にお伺いしたいんですけれども、この件についてお伺いしたいんですけれども、私は弁護士でもございますので、自らでも訴訟するということがございます。

 こういう場面というのは、それは自分でも想像がつくんですね。和解に際して、退席するときには、要するに、相手方、私の側じゃない側と裁判官が話すときには、全ての手荷物を持っていきます、持って退室します。

 これは、裁判資料というのは結構、紙で重いものですから、私、一度、ちょっと置いていっていいですか、一々これを全部またキャリーバッグに詰めて持っていくのは大変なので置いていっていいですかと言ったら、それはいけませんと。そんなことをしたらどうするか分からないんですから、いけませんよと言われたわけです。これは私、当然の対応だと思うんです。

 ところが、この防衛省のホームページにある報告書を見ますと、「手持ち資料以外を机上に置いたまま退席し、」と書いてあります。ということになりますと、このときには資料を置いていくことが許されたということになるんですけれども、これは一般的な対応なのでしょうか。それは、裁判官によって対応が違うということなんでしょうか。これについて御答弁をお願いいたします。

門田最高裁判所長官代理者 お答えいたします。

 民事訴訟手続におきまして和解協議をする際に、当事者から個別に意向等を聴取するということで、一方当事者が和解室から退室される場合に、自らの手荷物を全て持って出ていただくかどうかにつきましては、各裁判官が事案等に即して適切に判断しているものと承知しております。

米山委員 これも、私も、そこは確かに、一律にということではないんだとは思うんですね。場合によっては、もしかして何か、それこそ車椅子的なもので、しかも、絶対搬出するのに物すごい時間がかかるみたいなこともあろうとは思うので、ちょっとそれが適切な事案かどうか分かりませんが、そういうこともあり得るとは思うんですけれども、そこに裁判官の裁量があること自体はいいとして、しかし、やはり原則的にはそれは全部持っていくんだぐらいのガイドラインは示されてもいいんではないかと思うんです。

 だから、法定しろという意味ではないんですけれども、それこそ最高裁判所規則のようなもので、一定程度それは、資料を必ず、必ずとは言いませんけれども、原則としてちゃんと搬出するんだということをやるべきだと思うんですが、それについての御見解はいかがでしょうか。

門田最高裁判所長官代理者 お答えいたします。

 最高裁判所におきましては、昨年成立しました民事訴訟法等の一部を改正する法律によりまして、ウェブ会議の方法により行うことができる手続が拡大したことを受けまして、録音等の制限を定めた民事訴訟規則七十七条につきまして、民事訴訟に関する手続の期日や期日外の審尋などの民事訴訟手続のあらゆる場面におきまして、無断での録音や撮影が禁止されることとする内容の改正をしたところでございまして、この改正規則は今月の一日から施行されております。

 事務当局といたしましては、民事訴訟を担当する裁判官が、この改正規則の趣旨を踏まえて、各事件の期日等において適切な対応ができるよう、改正規則の周知に努めるなどしてまいりたいと考えております。

米山委員 これももうこれ以上押し問答はしませんが、要するに、録音するなと言えば、きっとそこから手荷物を持っていけということになるだろうという御答弁だったと思うんですけれども。まあ、そうではあるんでしょうけれども、そこは、とはいえ、実際、そうでないことも起こったわけですから、原則的にちゃんと手荷物を持たせてくださいと、子供に言うようなことなのかもしれませんが、言っていただければと思います。これもまたお伺いしようと思います。

 次に、今度は齋藤法務大臣にお伺いしますけれども、法務省の指定代理人の関与はなかったとのことでございますが、どのような調査をされたのでしょうか。もちろん参考人でも構いません。

春名政府参考人 お答えいたします。

 防衛省の職員による期日の録音行為が確認された期日に関与していた法務省の職員に対する聞き取り調査等を行いまして、法務省の職員が録音行為等へ関与したことは一切なかったということが確認できたということでございます。

 いずれにいたしましても、訴訟の場面におきまして今回のような事案が発生いたしましたことは法務省としても大変遺憾に存じているところでございまして、今後とも、国の利害に関係のある争訟をつかさどる立場にある法務省として、再発防止に努めてまいりたいというふうに考えております。

米山委員 もう今の回答で大分、次の質問の回答にもなっているのかもしれないんですが。

 これは事案として、防衛省のホームページに書いてあるところでその事案を見る限り、確かに、法務省はしろと言ったわけではもちろんなさそうに見える。単にその防衛省の職員の方も、それほどの悪気はなく、正確に記録するためにやっただけだという、それを信じるならですけれども、ことだとは思うんです。

 同時に、法務省の指定代理人というのは裁判のプロでございまして、それで、かつ、防衛省の方はそれほどではないということだとは思われるので、それはきちんと、録音なんかしちゃいけませんよと、特に、最近の公務員の方は、本当に正確性を求められるのか、あらゆる場面で録音されていますけれども、裁判の場では駄目ですよぐらいなことはちゃんとおっしゃられるのが、御指導するのが法務省の指定代理人のお仕事だろうと思います。

 ということで、その点につきまして、齋藤法務大臣の御意見、御所見を伺います。

齋藤(健)国務大臣 まず、事務方が御答弁したように、本件について法務省の職員の行動には問題がなかったというふうに承知をしております。

 いずれにしても、国の利害に関係のある争訟をつかさどる立場にある法務省として、再発防止には努めてまいりたいと考えておりまして、これまでに次のような再発防止策を講じたとの報告を受けています。

 法務省内に向けた再発防止策として、令和四年十月十四日、法務省訟務局訟務企画課長から法務局長、地方法務局長宛てに、指定代理人としての綱紀の保持等について、これは依命通知ですが、を発出して、裁判長の許可を得ない法廷等での録音行為は民事訴訟規則で禁止されていること、国又は行政庁の指定代理人等が録音行為等に及ぶことのないよう、注意喚起、周知の徹底等をするように通知をしております。

 また、行政庁に対しては、再発防止策として、同月十三日、ですから令和四年十月十三日ですが、新規の事件が係属した場合に発出する所管行政庁等の長に対する通知文書の留意事項において、法廷等における録音等については裁判長の許可を得ない限り禁止されていることを明記して、事件に関わる全ての行政庁に対し、録音等が禁止されていることを周知する取扱いとしたところでございます。

米山委員 それは大変結構なといいますか、そういうことをしていただけると、今後、国との裁判も、相手を信頼できるということだろうと思います。

 それに続きまして、先ほど鎌田議員からもお話がありましたウィシュマ・サンダマリさんの事件につきまして御質問させていただきたいと思います。

 こちら、常に、係属中の裁判については言えませんとおっしゃられると思うんですけれども、私、それは随分違うんじゃないんですかねと常々思っております。

 といいますのは、裁判の追行、それはもちろん、一定程度、国が裁量を持って行うことですし、その裁判の追行方針について余りにも言ってしまったら、国の利益が保たれないという部分はあるんでしょうけれども、同時に、裁判の追行もまた国民主権の下で国民のコントロールを得るわけでございます。ですから、その方針について、やはりそれは一定程度、支障のない範囲でではあるんでしょうけれども、しかし、その方針について根拠等々を示すというのは十分なすべきことだろうと思います。国の説明責任のうちの一つだと思います。

 これは先ほどもお話がありましたけれども、まず、ビデオとして記録の残っているもの、これは二百九十五時間分あるということであり、これを、裁判の中では全データの提出を求められておると伺っております。

 ところが、これに対して、国側の対応としては、証拠保全手続で遺族側に開示された五時間分の映像を提出するというふうに上申したということなんですけれども、二百九十五時間と五時間ですと二百九十時間分も差があるということでございまして、これは何で全データを提出しないのか。やはり一定の、この理由については説明する義務があるんだと思うんです。

 なぜ全データを提出しないのか、その御理由を伺います。齋藤大臣、お願いいたします。

西山政府参考人 訴訟係属中の個別事案における対応や方針等については、詳細を明らかにすることは、司法への影響に鑑み、基本的には差し控えるのが適切であると考えております。

 その上で申し上げますと、お尋ねの件につきましては、国側が証拠提出した約五時間分のビデオ映像は、裁判所から、証拠保全手続で再生済みの約五時間分について証拠として提出するようにとの勧告を受け、国としても証拠調べの必要性を認めて、提出したものでございます。

米山委員 結局、答えにはなっていないんですけれどもね。

 というのは、別に勧告を受けなくたって、それこそ国は、我々は全く過失がないという主張をされているわけじゃないですか。そうであるならば、過失がないことを証明するというのは、それは難しいわけですよ。どうしなければならないかというと、少なくとも、残っている直近のデータを全部見せて、ほら、過失がないでしょう、そういうのが普通なわけです。むしろ、この、五時間だから二百九十時間、出ていない分というのは、国が無過失主張をされるのであれば当然出さなきゃいけないはずなんですよ。だって、要するに、隠れているところに過失があったら、過失があるわけですからね。だから、国の訴訟行為としておかしいでしょうと思われるわけなんです。

 何で、この部分、国の無過失を立証するために提出しないんですか。

西山政府参考人 個別事案における対応や方針につきましては、先ほども申し上げたとおり、基本的に差し控えるのが適当であると考えております。

米山委員 そう言うんなら、それはそれでいいんですけれども、しかし、この事件はもはや、国際的に衆人環視といいますか、誰もが関心を持っていることなわけです。しかも、出さなくたって、訴訟行為自体からいろいろなことは推測されちゃうわけですよ。国が無過失主張をしているのに、無過失主張をするんだったらなるべく多くの時間のビデオを出さなきゃいけないのに、そして、過失がないでしょうと言わなきゃいけないのに、それを出さないということ自体、もはや、周りから、その部分に過失があることを隠蔽していると思われるんです。

 そういうふうに思われる訴訟行為をされていることについて、齋藤法務大臣の御意見を伺います。

齋藤(健)国務大臣 これは繰り返しになりますけれども、事務方が今答弁したとおりで、訴訟係属中ですので、それぞれの訴訟の中における対応についてはコメントを控えたいなというふうに思っています。

米山委員 私は今、訴訟係属中の訴訟については聞いておりません。このような訴訟追行をすることによって、諸外国から隠蔽されると思われることについてはどのようにお考えですかと聞いております。御意見を伺います。

齋藤(健)国務大臣 この点につきましても、裁判に与える影響もございますので、コメントは控えたいと思っています。

米山委員 非常に残念といいますか、特に自民党の先生といいますか、政府といいますか、誇りある日本と再三言われ、所信でもそういう、多文化共生社会ということをおっしゃられるわけです。それは、自分たちだけやっていると思っていたって駄目なんですよ。周りからちゃんとそういうふうにしているなと思われて初めて人は安心して共生できるわけです。いや、絶対この人たち、何か私に悪いことをしても証拠は全部隠しちゃうと向こうが思っていたら、それは多文化共生社会じゃないんですよね。

 ですから、幾ら訴訟がどうあれ、自分たちでやって、周りから見て信じられるということをされればいいんです。しかも、国は何せ、無過失だと主張しているんですから、それを出したって無過失のはずですよね、国が正しいことを言っているのなら。出したって何の問題もないはずなんです。しかも、相手方は提出を求めているんです。それなのに出さないということについて周りがどう見るか、諸外国がどう見るか、それはもう押し問答しませんけれども、是非そこはきちんと考えて適切な措置を取っていただきたいと思います。

 さらに、こちら、同じ話題になってしまうのかもしれませんけれども、遺族側は法廷での上映を求めたところ、法廷で上映してくださいと言ったところ、国は三月二日付の意見書で、映像はウィシュマさんの名誉、尊厳を侵害しかねない問題を生じさせるなどの理由で上映をしないように改めて主張したものの、名古屋地裁がこれを退けて、六月、七月に上映するということを決めたと報じられております。

 そこで、大臣に伺いますけれども、御遺族の皆さんが上映を望んでいるにもかかわらず、映像はウィシュマさんの名誉、尊厳を侵害しかねない問題を生じるというのは、一体具体的にどういうことなのか。これは抽象論ですから分からないんですよ。一体何があったら名誉、尊厳を侵害しかねない問題が生じるのか、どういう問題が生じるとおっしゃっているのか、それは言うべきだと思いますよ。これこそ、これも衆人環視なんですから、しかも御遺族が求めているんですから。一体何が名誉、尊厳を侵害しかねない問題なんですか。

西山政府参考人 お尋ねの点につきましても、訴訟係属中の個別事案における対応、方針に関わるものでございますので、基本的に差し控えさせていただきたいとは存じますが、その上で申し上げますと、御指摘のビデオ映像を広く一般に公開することにつきましては、保安上の問題に加えて、食事や着替えのほか、生活上のあらゆる様子等がつまびらかになるなど、個人の名誉や尊厳の観点からも問題があり、この点は御遺族が上映を望んでいたとしても解消されないものであるというふうに考えております。

米山委員 私、ビデオを見ているんです。ビデオを見た限り、それは、だって、入管施設ですから、すばらしくきれいな格好はしていらっしゃいませんよ、そんなドレスを着ているわけじゃない、普通のジャージを着ていらっしゃいます。もちろん、食事の場面も、ナイフとフォークでフランス料理を食べるようにお上品に食べているわけじゃありません、ごく普通の食事の仕方をしています。でも、あれは普通なんです。あの格好を見て、あの食事の仕方を見て、名誉や尊厳が侵害されると通常思いません。私は思わないです。なのに、何であれで尊厳が侵害されると思うか。

 でも、私、格好や食事の場面でなくて、尊厳が侵害されているなと思うところはあります。どこか。つらい、苦しい、医者に見せてくれと言っているのに、無視されているところです。あれを無視されているのを見ると、確かにこの方は入管の人から尊厳を持って対応されていない。

 だから、それが公開されたら、あたかもこの人が悪いかのように、この人が尊厳や価値がない人間だからこういう対応を受けていると思われるかもしれない、そういうことは確かに思いますよ。でも、それは別に、ウィシュマさんが本当は、本当はというか、もちろんなんですけれども、ウィシュマさんが価値がないからでは全然ないですよね。それは、入管施設の対応が、個人に対する尊厳を欠く対応だったからなんです。

 しかも、本当にこれは再三申し上げたいんですけれども、このビデオはもう、放映の仕方は分かりませんけれども、法廷で公開されるわけですよ。傍聴人をもしかして全部排斥するのかもしれませんけれども、通常、それはかなり厳しい。一定程度、傍聴人も入る。そうしたら、世の中に分かってしまうことなんです。今ほど言ったとおり、あの食事の状態も、あの格好も、何ほどもおかしくない。おかしいのは対応だけだ。しかも、保安上の問題なんか何ほども感じられない。

 それなのに、この国会の答弁で日本政府が堂々と、あれを見せたら個人の尊厳が侵害されるから見れませんと言ったら、日本政府は、裁判所が認めない限り、あれを隠蔽しようとしたんだ、入管の職員が尊厳を持って収容者に対応しなかったことを隠蔽しようとしたんだ、そう取るんですよ。

 もう一度、今度は齋藤大臣にお答えいただきたいんですけれども、この、映像はウィシュマさんの名誉、尊厳を侵害しかねない問題を生じさせる、御所見を伺いたいと思います。

 これはなぜかといいますと、裁判上でおっしゃられたことというのは齋藤大臣が言っているというたてつけですから、幾ら担当官が言っていようが。齋藤大臣御自身がそうおっしゃったというたてつけですので、一体全体、映像はウィシュマさんの名誉、尊厳を侵害しかねないとは、どういう問題を具体的に想定されているのか、御意見を伺います。

齋藤(健)国務大臣 これは組織で答弁させていただいておりますので、私が違った答弁をするということはないんですけれども、ただ、あえてつけ加えれば、例えば私が亡くなった後にどういう映像を公開されるかということを考えますと、その人の気持ちに寄り添って考えていく必要があるんだろう、それを他人が忖度するのはなかなか難しいのではないかなというふうには思います。

米山委員 齋藤大臣らしい、お気持ちを、組織の中で言われた御答弁だと受け止めさせていただきます。そして、それがきっと今後の訴訟追行に反映されるであろうというふうに御期待させていただきたいと思います。

 そうしますと、今の御答弁をいただいたので、その次の質問に対する御答弁もかぶるんですけれども、所信において、令和三年三月に名古屋入国管理局において発生した被収容者の死亡事案を重く受け止め、出入国管理庁の組織、業務の改革を更に進めるとともに、人権に配慮した適正な処遇の実施を徹底するための制度を着実に整備しなければなりませんと述べられております。

 そうしますと、この事案においてはウィシュマさんの人権が侵害されたという御認識だということでよろしいでしょうか。

齋藤(健)国務大臣 これは私の所信ですので、私からお答えしますけれども、私も、入管収容施設を視察をしたりもしてきておりますが、やはり、こういった施設において人権に配慮した適正な処遇を実施するということは、私はもう入管庁の責務であるとすら考えています。

 所信においても申し上げましたが、名古屋局においてウィシュマさんの貴い命が失われたことについては、非常に重く受け止めています。その上で、入管庁の調査報告書では、医療的対応のための体制整備やその運用が十分でなかったこと、職員の意識の問題など、様々な不十分な点が指摘されているところでありまして、私としては、こういったことにきっちりと対応していくことで身を処していきたいと思っています。

米山委員 ここは、お気持ちは非常に伝わってはくるんですが、同時に、大事なのは、やはり再発防止をしたらいいということではないんだと思うんです。

 これはやはり本当に衆人環視の、誰も見ていなきゃいいのかという話じゃないんですけれども、やはり、人権侵害をしてしまったなら、してしまった、済みませんと言うことが、それこそがむしろ人権を尊重しているということだと思うんですよ。人権を侵害していませんと言い続けることではなくて、だって、人間は失敗することは多々あるわけですから、日本政府として、対応にいろいろな不備があったという、それは故意ではなかった部分も多々あるのかもしれないけれども、しかし、ウィシュマさんという方の人権を侵害したのであれば、それは、侵害した、ごめんなさいと言う、そういう勇気を私は持つべきだと思うんです。それこそが尊敬される人権国家というものだと思います。

 ですので、答えづらい質問かも分からないんですけれども、人権を侵害されたという御認識はありますかという質問に対して、もう一度御答弁をお願いいたします。

齋藤(健)国務大臣 現在、御遺族が提起した国賠訴訟が係属中でありまして、訴訟の当事者の立場にいる私が御指摘の点について意見を申し述べるということは、やはり、司法への影響に鑑みて、差し控えるべきだと考えています。

米山委員 これも押し問答はしませんが、やがて裁判というのは必ず終わるわけですから、終わるということになりましたら、それはきちんと日本政府としての見解を言っていただければと思っております。

 次に、法務省の報告書は、これも再三、何度も同じことを聞いて恐縮なんですけれども、これは、専門家がレビューしたレビューしたといいながら、二人の医師と二人の弁護士、そして一人の国際機関職員と一人の住人、その周辺に住んでいる方ということですけれども、がレビューしたのみ。決して多くの専門家がきっちりレビューしたものとは思えない。かつ、報告書の中で指摘されていない事項で、それは明らかにおかしいでしょうというところも見られるわけなんです。

 これは、しかも、もはや法廷でも一般に公開されることになるわけですから、隠せば隠すほど多くの方から不審に思われますし、また、発見されていないいろいろな不備もあろうかと思います。ですので、タイミングの問題はあると思うんですが、これは是非一般に公開して、それこそ海外の方々も含めてチェックしていただくべきだと思いますが、それに対する御所見を伺います。また、それが駄目だというのであれば、またその御理由も付して御所見を言ってください。

西山政府参考人 御指摘のビデオ映像につきましては、保安上の問題に加えまして、先ほども御答弁申し上げましたが、ウィシュマさんの名誉、尊厳の観点からも問題があると考えており、情報公開法上もこれを不開示情報として取り扱っているところでございます。

 また、加えて、本件につきましては国家賠償請求訴訟が提起されており、訴訟係属中の事案に関する事柄を訴訟外で明らかにすることは、司法への影響に鑑み、差し控えるのが適当であると考えております。

 そのため、ビデオ映像の全てを一般へ公開することは相当でないと考えているところでございます。

米山委員 これも押し問答ですけれども、それは、やがて訴訟は終わりますから、そのときにきちんと検討されるべきことだと思います。それが、日本に対する信頼というものだ、信頼を確保する手段だと思います。

 また、医療の体制につきましてなんですけれども、これも再三お話ししているところではあるんですけれども、結局のところ、名古屋入管で起こったことというのは、担当の職員がスクリーニングしたということなんです。それはちゃんと根拠もあったわけでございまして、名古屋入国在留管理局被収容者処遇細則、(診療)第三十四条で、処遇担当統括は、被収容者が罹病若しくは負傷したとき又は被収容者から医療の診療の申出があったときには、局長に報告し、その指示を受けるものとするとあり、結局、これは事実上、局長がスクリーニングしている。局長はもちろん医者じゃないわけなんです。

 運用を改めたということでしたら、この細則もちゃんと変えないといけないはずなんです。幾ら運用だけ変えましたといったって、細則がこうなっていたらまた同じことが起こり得るわけですよ、だって規則上は問題ないでしょうという話になっちゃいますから。

 なので、これは、ちゃんと対応したということは、この名古屋出入国在留管理局被収容者処遇細則第三十四条も改正されたということでよろしいですか。改正されたなら、その中身も教えてください。

西山政府参考人 まず、体調不良者等に対する対応につきましては、被収容者処遇規則第三十条の第一項におきまして、「所長等は、被収容者がり病し、又は負傷したときは、医師の診療を受けさせ、病状により適当な措置を講じなければならない。」と定めているところでございます。

 また、御指摘の名古屋出入国在留管理局被収容者処遇細則第三十四条は、「処遇担当統括は、被収容者がり病し若しくは負傷したとき又は被収容者から医師の診療の申出があったときは、局長に報告し、その指示を受けるものとする。」と一項で定めている上、二項におきまして、処遇担当統括は、前項の場合において、急を要し、局長に報告するいとまがないときは、直ちに医師の診療を受けさせた上、速やかに局長にその状況を報告しなければならないなどと定めているところでございます。

 他方、事案発生当時、名古屋局におきましては、ただいま申し上げた処遇細則の規定があるにもかかわらず、委員御指摘がございましたように、看守勤務者や看護師等によるスクリーニングが行われ、局幹部による診療申出事実の把握や医師の診療の必要性等の判断が行われていなかったということでございます。

 調査報告書では、この点につきまして、外部有識者の御意見、御指摘も踏まえ、局幹部は、被収容者の体調や診療の申出事実等を的確に把握し、必要に応じ、外部の医療従事者による対応を検討、指示できる体制を構築しておくべきであった旨、指摘したところでございます。

 このような調査結果を踏まえ、名古屋局におきましては、現在では、被収容者からの診療の申出があった場合には、直ちに全件、診療申出を聴取し、必要な決裁が行われております。

 このような現在の運用は、先ほど申し上げた名古屋局の処遇細則第三十四条第一項、第二項に沿うものでございまして、これによって診療申出事実を把握した局幹部は、被収容者処遇規則第三十条第一項に従って適切に医療措置を講じることとなります。

 したがいまして、お尋ねのような改正等はなされていないということでございます。

米山委員 今の答弁を聞きますと、結局、スクリーニングをする人が現場の看護師、准看護師から幹部になっただけなんですよ。それは運用としては全例診療することにしていますけれども、幹部が必要ないと言ったら診療しなくていいことになっちゃいますよね、今の答弁を伺う限り、三十四条の書きぶりもそうですから。

 そうしますと、幹部は医者じゃないので、ついでに言うなら、むしろ職員さんは看護師と准看護師だからまだしも医療知識がありますけれども、幹部はそれすらないわけですよ。運用として全部診せているからいいといえばそうなのかもしれませんが、それはちょっと違いますよね。やはり、そのやり方では結局、幹部のスクリーニングになってしまう、医師でない者のスクリーニングになってしまいますので、それは医師法にも反すると私は再三指摘しているところなんです。

 それは、基本全例、まあ、本当に診療するかまではいいですよ、限界だってあるでしょうから、オンライン診療をするなり、症例を全部書いて、バイタルを書いて、それを少なくとも医師が見た上でどうするか判断するかぐらいのところまではあり得るのかもしれないんですけれども、少なくとも局幹部が最終的に判断をできるというたてつけでは、また同じことが起こります。

 これに関しまして、齋藤大臣の御所見を伺います。

齋藤(健)国務大臣 先ほどの答弁になりますが、体調不良者等に対する対応については、被収容者処遇規則第三十条第一項がございまして、御案内だと思いますが、収容施設の所長等は、被収容者が罹病等したときは、医師の診療を受けさせ、病状により適当な措置を講じなければならないというふうに定められているところもあるわけでございます。

米山委員 それは確かに、そちらと併せて読むとそうなるんですけれども、しかし、そこはしっかりと、もう少し明確にされたらいかがかと思います。

 それでは、最後の質問に移らせていただきます。

 こちらは資料で配付したところなんですけれども、聴覚支援学校に通っていた女児が重機にはねられて死亡した事故をめぐり、遺族が運転手らに計六千百万円の損害賠償を求めた訴訟の判決で、被告側は、これから賠償する側ですよね、週三十時間以上働く聴覚障害者の平均月収は全労働者平均の七割というデータを基礎に逸失利益を算出すべきだ、要するに、一般の方の七割にすべきだと言ったんですけれども、親御さんとしては、それは、だって、聴覚障害があったって同じように稼ぐことがあるじゃないかと主張されて、結果、八五%という判決になりました。

 これは、今までよりは、七割よりは増えていますから、むしろいいというふうに報じられているわけなんですけれども、それは、今ほど申しましたとおり、親御さんにしてみれば、何でうちの子がほかの子と違う扱いを受けなきゃいけないんだというお気持ちになられると思います。

 これは何も聴覚障害だけではございませんで、さらには、視覚障害の方も、また運動障害の方に関しても、全部、あらゆる障害を持つ方に関して、同じことが起こっております。それから、何もお子さんにも限らない。

 ただ、成人していますと、実際にその方が稼いでいるという現状があるわけなので、それは判断できるんですけれども、お子さんに関しましては、健常者の方だって、健常者という言い方もなんですけれども、障害がない方だって稼いではないわけですよ、障害がない方が平均的に稼ぐかどうか分からないんです。その方だって、別に、もしかして将来何かの、事故か何かに遭われて障害に遭って、その方は稼がないかもしれないのに、健常者の方は、将来、通常、平均値は稼ぐとして逸失利益が計算され、障害のある方は、平均値としては稼がないという前提で計算されてしまうわけなんです。これは、裁判の場にいますと、非常に理不尽を感じる、命の値段に対して非常な理不尽を感じるところでございます。

 これは、恐らく、どうするかはともかく、話としては聞くと思うんですけれども、こういった賠償が、特にお子さんの賠償において障害が物すごく影響してしまうということについて、ちょっと一般的な質問で恐縮ですけれども、齋藤大臣の御所見を伺います。

金子政府参考人 民法第七百九条は、「故意又は過失によって他人の権利又は法律上保護される利益を侵害した者は、これによって生じた損害を賠償する責任を負う。」と定めておりまして、一般的には、ここで言う損害には、治療費などの積極損害のほか、不法行為がなかったとすれば得られたであろう財産上の利益である逸失利益が含まれると理解されております。

 このような理解を前提に、現在の裁判実務では、逸失利益の額の算定に当たりましては、将来収入の見通しを基礎とするという運用がされているものと承知しております。そのため、障害があることが逸失利益を低減させる方向で考慮されることがあり、その結果、障害のある方の損害賠償額が低くなることがあるということは承知しております。

 他方、近時において、将来の障害者雇用に関する社会状況の変化等をも考慮して、障害があっても全労働者の平均賃金に近い額を基礎として逸失利益を算定する裁判例が複数現れているものというふうに承知しております。

 このような現行の損害賠償制度は、不法行為がなかったとすれば得られるであろう財産上の利益を逸失利益として加害者に賠償させるものであって、もとより、命に値段をつけようとするものではないものと承知しております。

齋藤(健)国務大臣 現行の損害賠償制度は、不法行為がなかったとすれば得られるであろう財産上の利益を逸失利益として加害者に賠償させる、この逸失利益をどう考えるかというのは、米山委員おっしゃったように、いろいろな考え方があるんだろうと思いますが、ただ、確かなことは、加害者に逸失利益を賠償させるものであって、命に値段をつけようというものではないということは申し上げたいと思います。

米山委員 時間が過ぎているので簡潔にまとめますけれども、それはもちろんそうなんですけれども、しかし、事実上、被害者の御家族の方々はやはりそういうふうに受け止めますし、また、死亡なら命の値段的な話になるでしょうけれども、障害があって、そのまま生きていくという場合においては、その人の生きる糧だったりもするわけですが、それがやはり障害があるかないかで全く変わってしまうというのは極めて理不尽だと思います。

 これは、問題が非常に複雑なので一朝一夕で解決できるわけではないんですけれども、少なくともお子さんの賠償に関しましては、何せ健常者だって別に稼いでいるわけじゃないわけですから、皆さん同一に平均値で扱うというようなことを、ある種の何か、立法であるのかガイドラインであるのか分かりませんけれども、決めれば解決可能なことでもあろうかと思いますので、是非御検討いただければと思います。

 以上で私の質問を終わらせていただきます。ありがとうございました。

伊藤委員長 次に、沢田良君。

沢田委員 日本維新の会、埼玉の沢田良です。

 本日は、昨日お伺いしました齋藤大臣の所信について質問をさせていただきます。

 この通常国会でもいよいよ法務委員会が動き出しますので、齋藤大臣、そして伊藤委員長始め与野党理事の皆様、委員の皆様、そして委員会の運営を担っていただいております委員部、そして法務職員の皆様、どうぞ本日はよろしくお願いいたします。

 私は、昨日の大臣所信を伺わせていただきまして、さきの臨時国会で伺った所信と変わった点があることを大変うれしく聞かせていただきました。それは職員の皆様の働きぶりについて言及があったことです。

 私は、さきの臨時国会での大臣所信に対する質疑において、職員の職場環境への言及がなかったことを指摘させていただきました。大臣からは、それはトップに立つ者として当然のことと考えていたので、あえて言う必要はないと判断した、その旨の御答弁をいただき、職員の皆様の働きやすい環境、職場環境、この整備は当然重要であるとの大臣の心強い御認識を伺いました。

 今回は冒頭から、誇りと使命感を胸に日々現場で職務に精励している職員の姿を見てまいりましたと述べられており、結びにおいても、副大臣、法務大臣政務官、そして全職員と気持ちを一つにして、様々な課題に着実に取り組んでまいりますと決意を表明されております。

 昨年から、大臣の交代を含め、正直、この法務委員会、いろいろとございましたが、齋藤大臣御就任からの四か月が大臣と職員の皆様との信頼関係に大きく寄与していた結果としての言葉であれば、本当に心強いと感じます。

 さて、職員の皆様の職場環境整備において、いわゆる公務員の働き方改革が私は鍵となると考えております。働き方改革は、働きやすさのみならず、優秀な職員の皆様が力を発揮しやすくなり、生産性の向上、ひいては国民の皆様にとっての利益にもつながるものと思っております。同時に、省庁のトップでもあります大臣がリーダーシップを発揮できる、まさにベストを尽くせる環境というものも大変重要と私考えております。

 G20への外務大臣の欠席について、私の所属いたします日本維新の会からも、おかしいという声を再三申し上げてきたのですが、外務大臣にしかできないことを放棄してしまう事例を生み出す今の国会の在り方に、私、一国民としても、切実にやり方を考えていただきたいとも感じております。

 我が党の音喜多駿政調会長が大臣の無駄遣いといった言葉を、したことが、まさにそのとおりと大きくメディアにも取り上げられましたが、齋藤大臣にとって、大臣の役割とはどのようなもので、ベストを尽くすための環境とは一体どのようなものなのか、御意見がありましたら教えてください。

齋藤(健)国務大臣 私は、二十三年間、大臣に使われる側で勤務をした経験があります。そのような経験からは、やはりいかなる時代においても、清廉かつ優秀で志の高い官の存在は日本にとって宝だし、これを維持向上させていかなくてはいけないというふうに、両方経験した立場から思っています。

 そして、法務大臣に就任して四か月がたとうとしていますが、その中で、法務省の官僚の皆さんはもちろん、日々極めて高い緊張感の中で職務と向き合う現場の職員、そういった方の姿も見てきました。

 私、両方経験したことから申し上げますと、やはり大臣がどういう物を言うか、その一つでかなり職員に大きな影響が出る。逆の立場で、大臣秘書官もやっていましたので、それはよく自分としては認識をしているつもりであります。

 したがいまして、そういう点も含めて、私は霞が関は世界最強の集団であってほしいと思っていますので、そういった職員らが常に誇りと使命感を胸に抱き、全力を尽くすことができる環境を整える、両方経験した私がそういう役割を積極的に果たしていきたいというふうに考えているところです。

沢田委員 ありがとうございます。ちょっと答弁に鳥肌が立ちました。私も、本当にまさに官僚の皆さんが世界一の集団になっていただけるように、そういった部分を国会からも提案をし続けていきたいなというふうに思っております。

 ここで少し視点は変わりますけれども、本日のように委員会が開催される際の大臣の日程についてお伺いしたいと思います。

 本日も九時から法務委員会が始まりましたが、この後、午後の時間帯に参議院の予算委員会での答弁が予定されており、また法務委員会に戻ってこられます。会期中はこのように複数の委員会等における出番が重なることもございます。また、委員会での答弁は、総理の意思、大臣の意思、そして政府内での調整などを加味した上で、大臣と法務省とで最適な答弁を準備してから委員会に御出席することが必要となりますので、御準備も当然あると思います。

 そこで、大臣にお伺いいたします。

 例えば、委員会が九時から十七時まで一日開かれるような場合の日程について、朝は何時から準備が始まったり、何時に打合せが終わるのかというのを、やはり今ライブで見ている方もいますので、ちょっと教えていただければと思います。

齋藤(健)国務大臣 これは大臣によっても随分違うんじゃないかなというふうに私の経験から思いますけれども、私の場合、例えば今日のケースで申し上げますと、家を、宿舎ですけれども、六時半に出てきて、それでずっと委員会が始まるまで答弁のチェックを、いろいろ修正してもらったり、いろいろありますので、それをする。それで、一日、今日の場合は国会で答弁をさせていただいて、夕方、また通常の公務をやらなくてはいけないということになっていますので、それが今日なんですけれども。

 私が申し上げたいのは、私もさることながら、準備する人たちが相当大変だなということ。大臣がつかまらないわけでありますので、相談もできないということになっているわけで、この答弁書も、こう耳をつけている人は恐らく徹夜でやられているのかなと思いますと、いろいろなことを思わざるを得ないところであります。

沢田委員 ありがとうございます。

 私も初めてちょっと今大臣のを見せていただいたんですけれども、附箋がすごく入っているんですね。こういった職員の皆様の大変な御尽力があっていろいろなところができているところも、やはり国民の皆様からすれば余り見えない部分で、テレビだけで、大臣の答弁だけ見ると、どちらかというと、発言を間違ったところであったり、そういったところだけが見えて、あたかも何か仕事をしていないというようなイメージを与えてしまうんですけれども、私が国会議員になって感じることが、本当に大臣も副大臣も含めて、こういうふうにお時間を大変いただいている中で、すごくこれは、重要な議論もかなりあるんですけれども、それでもやはり我々の国のリーダーには自由に飛び回っていただきたいなと。そして、決定や決裁に関して、自由に動ける体制を、常時動いていただきたいなと。

 私は、自分がいろいろな経済団体にも所属しているんですけれども、ある程度の企業のトップは、ほとんど、一日に一時間から二時間ぐらいしか仕事に集中しない、あとはやはり決めたりとか判断するというところにおいて動かれているというのが、私はいい企業の証明でもあると思いますので、是非そういった部分でもお願いしたいと思います。

 そして、先ほど大臣からも御答弁ありましたが、やはり大臣が今答弁されたようなスケジュールで動かれるということは、それをサポートする職員の皆様が、大変、それ以上の御負担になっているというところは言えます。

 私は、先日の衆議院の予算委員会にて、こういった国会対応による公務員の皆さんの負担について、河野太郎公務員制度改革担当大臣と話をさせていただきました。河野大臣からは、霞が関の働き方改革と国会改革は裏表の関係にある旨の御答弁があり、私もこれは大いに共感したところです。

 こうしたスケジュール感を当たり前のものとせず、引き続き改革していくことが必要だと私は思っております。大臣、そして公務員の皆様にもリーダーシップや高い能力を発揮していただく、これ、環境整備が、私はこれからの国会に一番必要な部分だというふうに思っております。

 国会改革については大臣の立場からお答えいただくのはちょっと難しいと承知しておりますが、法務省での更なる働き方改革を進めていくために具体的にどのように取り組んでいきたいのか、また、もしここに課題がある等ございましたら教えていただければと思います。

齋藤(健)国務大臣 国会のことはちょっと差し控えることにしまして、法務省においては、もう既に組織として取組が行われておりまして、令和三年に策定したアット・ホウムプランという、ちょっとかけているわけですけれども、これに基づきまして、アット・ホウムプラン・プラスワンに基づき、女性職員の活躍推進及びワーク・ライフ・バランスの実現に向けた取組を推進をしているところです。

 具体的には、ワーク・ライフ・バランスの実現のための取組としましては、テレワークの活用等により働く場所と時間の柔軟化を推進。これは、私が昨年着任した直後に、法律で国会で答弁をしなくちゃいけないときに、朝、自宅でお子さんの面倒を見ている職員とウェブで国会のレクをやるということも実際に行われておりました。それから、業務の効率化、デジタル化の推進、当然のことです。勤務時間管理の徹底、全ての職員が家事、育児、介護等をしながら活躍できる職場環境の整備、年次休暇の取得促進と、取得が当たり前の職場づくりなどの各種取組を進めているところです。

 また、女性職員活躍推進のための取組としましては、仕事と生活を両立しながら活躍できる環境づくりを進めているほか、女性職員の採用拡大、女性職員の登用に向けた職務経験の付与や研修参加機会の確保等による女性職員のキャリア形成支援、計画的育成、女性職員が抱える悩みや心配事の相談ができる体制づくりなどを進めているところであります。

 これは組織としてやっていることなんですが、私自身は、先ほど申し上げましたように、大臣の一言というのがいかにその末端に大きな影響を及ぼすかというのを実際に経験をしてきておりますので、できるだけ、そういう、余計な仕事が発生しないように、大臣としての行動を律していきたいと思っています。

沢田委員 ありがとうございます。

 今も、やはり女性が結構活躍できる提案がいっぱいあったのと同時に、私も昨年当選したんですけれども、いろいろな委員会に入らせていただきまして、法務省の職員さん、女性が結構元気な方が多いなというイメージは、正直、アイデアを持っている方が多いなというイメージがございます。

 続きまして、次の質問に入らせていただきます。

 昨日も、衆議院本会議では、新型インフルエンザ等対策特別措置法及び内閣法の一部を改正する法律案についての趣旨説明と質疑が行われました。

 三年余りにわたって試行錯誤を重ねながら続いてきた新型コロナウイルス感染症への危機対応が大きな転換点を迎えております。マスクが取れる当たり前の毎日にぐっと近づいてきたなというふうにも感じております。

 法務省の管轄する出入国在留管理庁では、いわゆる水際対策を各省庁と連携して行ってこられたことと思います。新型コロナに対する水際対策は、限られた時間の中で未知のウイルスに対応するという大変厳しい戦いであり、その時々でできる最善を尽くしていただいたと私は思っておりますので、その都度の政治的判断に正当性はあり、批判するつもりはもちろんございません。

 ただ、日本におけるコロナ対策が転換点を迎えた今、これまでの対策を一度振り返り、よかった点も悪かった点も検証していく作業が必要だと考えております。そして、そうした丁寧な検証こそが行政の信頼にもつながるのではないかというふうに考えております。

 ちなみに総理は、今後に向けて、内閣感染症危機管理統括庁の新設、内閣危機管理監との連携、日本版CDCと呼ばれる国立健康危機管理研究機構などの取組を改善として進めていくとおっしゃっております。

 いろいろな管轄がまたがる複雑なオペレーションがあるのは重々承知しているんですけれども、法務省として、この三年半の経験を通して、日本における水際対策はどのように強化されたのか、又は、同じようなことが次に起きたときに迅速な対応が可能になったなど、改善できた点や、積み上がった情報からの新しい提起などありましたら御紹介いただけないでしょうか。

西山政府参考人 これまで、新型コロナウイルス感染症の水際対策に当たっては、検疫体制や防疫措置の実施状況等を勘案し、新型コロナウイルス感染症の内外の感染状況や主要国の水際対策の状況等を踏まえながら、政府全体として適切に判断してきたところでございます。

 この点、入管庁におきましては、新型コロナウイルス感染症の感染が深刻な国、地域における滞在歴がある外国人について、我が国の利益又は公安を害する行為を行うおそれがあると認める相当な理由があるとして、令和二年二月一日から令和四年九月四日まで、入管法第五条第一項第十四号を適用して、上陸拒否の措置を講じていたものでございます。

 今後、新たな感染症が発生した場合におきましても、その感染症の特性に合わせ、入管庁としても、これまでの経験を踏まえまして、関係省庁と連携し、より一層迅速かつ適切に水際対策を講じてまいりたいと考えております。

沢田委員 御丁寧にありがとうございます。

 ただ、どうしても、言葉が難しいと、国民の皆様が、安心感というものがつながっていかないものもたくさんございますので、どんなに法律が変わっても、国民の皆様が安心を実感するまで時間がかかる問題でもございます。是非、大臣の側からも、国民の命を守る意思、そして、先手先手に動いているという安心感を発言等でポジティブに発信していただけるといいと思いますので、よろしくお願いいたします。

 続きまして、旧統一教会問題についてお伺いいたします。

 旧統一教会問題について、昨年の秋以降、大きな関心を集め、国会においても、いわゆる霊感商法に関わる被害者救済法が成立いたしました。法務省においても、法テラスに相談窓口を設けるなど、被害者救済に努めていただいております。

 しかし、被害者救済法が成立してからは、メディアの報道も急激に鎮火してしまい、相変わらず、喉元過ぎれば熱さ忘れるではありませんが、世の中の関心事から旧統一教会問題が離れていっておると、私、感じております。

 法案成立は、終わりではなく始まりです。これから丁寧に状況を確認しながら、法の穴ができていないか、チェックが必要だと考えております。

 そこで、まずは、法テラスにおける旧統一教会問題に関する相談件数の推移について、法務省にお伺いいたします。

竹内政府参考人 お答えいたします。

 法テラスでは、昨年十一月十四日、霊感商法等対応ダイヤルを開設いたしまして、年末年始を除きます平日に、旧統一教会問題やこれと同種の問題に関する相談に対応しているところでございます。

 法テラスに寄せられた相談のうち、旧統一教会に関する相談の件数の推移でございますが、昨年十一月十四日から同月三十日までの間に百七十二件、十二月一日から同月二十八日までの間に二百四件、本年一月四日から同月三十一日までの間に百六十七件と推移をしております。昨年十一月の相談受付期間が約半月間でありましたので、これを踏まえますと、相談件数は、窓口の開設当初からは若干の減少傾向にあると言えるのではないかと考えております。

沢田委員 ありがとうございます。

 ただ、まだサンプル件数が少ないので何とも言えないですけれども、世の中の雰囲気よりかはまだまだ御相談があるという状況だと思います。

 それでは、齋藤大臣、今伺いました相談件数の状況なども踏まえて、現時点での問題意識を教えていただけないでしょうか。

    〔委員長退席、藤原委員長代理着席〕

齋藤(健)国務大臣 今、法務当局から答弁したとおり、法テラスに寄せられた旧統一教会に関する相談件数は、窓口を開設した当初から若干の減少傾向にあるということであります。

 もっとも、旧統一教会問題については、関係省庁連絡会議が設置していた合同電話相談窓口やこれを継承した法テラスの窓口において、昨年九月五日以降、継続して相談対応を行ってきたものの、現在もなお一月当たり百件を超える相談が寄せられている状況であります。このことから、依然として、旧統一教会に関する様々な問題を抱え、誰にも相談できずにお困りの方々が相当おられるのではないかと考えています。

 法テラスにおいては、引き続き、旧統一教会問題でお困りの方々に広く利用していただくため、窓口の積極的な周知、広報を行うとともに、問題の総合的解決に向け、関係機関、団体等との連携を図りつつ、弁護士、心理専門職等の知見を活用した適切な相談対応を行っていくものと承知をしております。

 我が省としても、関係機関、団体等との緊密な連携の下、包括的な支援体制の整備、強化及び周知、広報等を徹底するとともに、様々なニーズ等を十分把握し、より一層充実した支援を行うなど、被害者の実効的な救済に全力を尽くしてまいりたいと考えています。

沢田委員 ありがとうございます。

 世論だけを見て政治をしているのではないのかと言われてしまわないように、御丁寧に対応をよろしくお願いいたします。

 続きまして、平成三十年四月一日に設置され、五年目を迎えた大臣官房国際課について伺います。

 昨今の緊張感高まる国際情勢を受け、法の支配や基本的人権の尊重等の普遍的価値を共有することの重要性が高まっており、これらの価値を世界に浸透させる取組である司法外交、これを更に推し進めることに大いに期待しているところです。担当する国際課が活躍することに、私、大変期待しております。

 ちょっとここ、国際課の方で具体的な取組を質問したかったんですけれども、ちょっと時間の都合上、省かせていただきます。申し訳ございません。

 こういったものが、国際会議、今年行われますけれども、日・ASEAN友好協力五十周年の節目の年に当たる本年七月、ASEAN各国の法務、司法大臣を日本にお招きし、日・ASEAN特別法務大臣会合が開催されます。また、同様に、G7司法大臣会合も開催されます。議長国として、またG7唯一のアジアの国でもある日本の役割は大変重要と考えております。

 そこで、大臣にお伺いします。

 このG7司法大臣会合での齋藤大臣の役割、発信は、今後の我が国にとって大変重要な局面だと考えますが、そこにおいて、国際課の進める司法外交、これを大臣自らいろいろな場所で関係各国に売り込むというお考えはございますでしょうか。

    〔藤原委員長代理退席、委員長着席〕

齋藤(健)国務大臣 御指摘のとおり、司法外交の推進は、法の支配や基本的人権の尊重といった普遍的価値を共有する各国と連携を強化して、法の支配に基づく国際秩序の維持強化に寄与するものであります。

 とりわけ、今般のロシアによるウクライナ侵略によりまして国際秩序が大きく揺らぐ中で、このような普遍的価値を守る必要性、重要性はますます高まっていて、そういう局面において、我が国においてG7司法大臣会合、そして日・ASEAN特別法務大臣会合が行われるということは極めて時宜を得た展開になっていますので、この場を利用して、この目的である、法の支配に基づく国際秩序の維持強化、これを一歩でも前進させるように力を尽くしていきたいと考えています。

沢田委員 ありがとうございます。

 いろいろ聞くと、まだまだ五年目ということで、国際課の方が、歴史ある法務省の中でちょっと立ち位置がまだ小さいのではないかというようなことも私の耳に入ってきますので、是非、これは大臣主導で新しいアクションにつなげていっていただくことを御検討いただければと思います。

 続いて、資料を配付させていただいたんですけれども、法教育の推進についてお伺いいたします。

 法教育について何度か法務省の担当者の方と意見交換させていただきましたが、率直な感想として、本当にすばらしい取組だなというふうに思って、私、いろいろ調べてまいりました。

 本日お配りした資料を御覧ください。

 これは、元のものがこういったファイルになっているんですね。これは小学校向けに作られております。私には小学校五年生になる娘と二年生になる息子がいるんですけれども、これを家に置いておいたら、勝手に見て、ぶつぶつぶつぶつ言っていたんですね。これ分かるの、意味はと言ったら、全然分かるよということで、今度は法務省の職員さんからいただいたこのDVD、これはちょっと配付資料にないんですけれども、これは小学校版と中学校版があるんですけれども、小学校二年生の息子まで、この中学校バージョン、ちゃんと見切れたんですね。そこにおばあちゃんも参加して、全員がへえという、すごい見やすいコンテンツになっているなというふうに感じました。

 私、日本の投票率の低さが、日本の公教育における民主教育の足りなさ、こういったものを指摘する有識者の声を結構個人的に調べておりまして、私も、日本の民主主義は、これは厳しい言い方ですけれども、ほぼざると言ってもおかしくないぐらい、他国に比べて、何もやっていないように感じております。だからこそ、この法教育、それは、補完する大きな可能性を確信しました。

 ただ、このようなすばらしい取組でも、法教育自体がなかなか進まないのが悩ましいところです。

 二〇二〇年の三月、小学校における法教育の実践状況に関する調査研究報告書で公表したデータは、外部人材と連携した法教育の授業を実施している小学校は三七%、法教育を実施するに当たっての課題として、法教育に十分な時間を取る余裕がないが六六・二%に上ったとあります。この教材は法務省の法教育推進協議会が作成しているんですが、法教育教材について、利用したことがある、これは僅か七・九%、教材を知っているが利用したことはない、これは五九・五%、教材を知らない、三二・六%ということです。教材を利用したことがある割合は、二〇一二年度の七・五%から微増にとどまっています。

 これだけ本当にすばらしいコンテンツなんです。これだけに、もったいないなというふうに強く感じておりまして、この法教育を担当している法務省大臣官房司法法制部の皆さんと意見交換もさせていただいたんですが、皆さん、本当に熱量も高く、前向きに活動されていて、私も大いに触発をされます。

 ここに載っているかわいいリスも、これはホウリス君というもので、こういった、職員の皆様であったり、鎌田委員も、私、鎌田委員から教えていただいたんですけれども、こういうかわいいキャラクターがいるんだよということも教えていただき、教育現場の大変さ、これは重々理解しておりますので、そういった中で、教育現場にどんどんどんどんコンテンツとして、やっていく人を育てていくとか教えていくという作業、これは大変複雑というか難しいと思います。けれども、この複雑化する社会の中、法教育は、これからの日本をしょって立つ子供たちにとっても、私は必要な教育だと考えております。

 そこで、齋藤大臣に提案をさせていただきたいんですが、法教育の推進については、学校現場のマンパワーに頼らないコンテンツ制作、グッズ製作に振り切って、先生方のサポートや御負担がなくても子供たちが楽しく見れるものにする方向でいきませんか。

 例えば、GIGAスクール構想で、今、小学校ではタブレットが一人一台あります。オンラインコンテンツとして、更に子供たちが楽しみながら学べるものにするということと、今回御紹介したこのクリアファイル、こういったグッズを全国全児童に配付するというところから進めていけば、学校の先生の御負担も少ないですし、こういった情報を伝えていくという作業もかなり軽減されると思うんですけれども、大臣、どうでしょう。

齋藤(健)国務大臣 御指摘の法務省に設置しております法教育推進協議会には、現場の教員や教育学者、文部科学省担当者などにも委員として参画をいただいて、学校現場における法教育を充実させる方策等について継続して検討していただいております。

 この協議会では、これまで、学校現場のニーズ等を踏まえて、御指摘のように、視聴覚教材を含む法教育教材を作成するなどし、法務省において、今度は教材の周知のための取組等を行ってきているところであります。

 委員御指摘のように、生徒や児童が法教育に関心を持つことができるようにするためには、教育や学校現場に関する知見を得た上で、教材の充実やその周知などの取組を進めていくことが不可欠であると考えています。こうなりますと法務省だけでは難しいということでありますので、文部科学省との連携を一層緊密にして、学校現場における法教育の充実、とりわけ教材の充実を含めて取り組んでまいりたいと思います。

沢田委員 ただ、大臣、私の息子は、これが家にぽんと置いてあって見ていたんですよ。だから、やはり、いろいろな連続性は当然必要だと思います、勝手なことはできないとは思うんですけれども、やはり、まず形から入っていくというのも私は本当に大事だなと思っていて、マイナンバーカードの普及促進に、最近では「スパイファミリー」という大人気の漫画が使われました。是非、貪欲に、法務省は攻めているなということを、法律が子供たちにとっても身近なものになる、また、我々大人も見るきっかけになりますので、是非、本当にこの方向性、大臣の剛腕で進めていっていただければと思います。

 お時間となりまして、今日準備していただいた質問をちょっと飛ばしになります。準備していただいた皆様、本当に申し訳ございません。

 以上で質問とさせていただきます。どうもありがとうございました。

伊藤委員長 次に、阿部弘樹君。

阿部(弘)委員 日本維新の会の阿部弘樹でございます。

 今日は、二点質問させていただきます。

 まず最初に、心神喪失者等の医療観察法について質問させていただきます。

 二〇〇三年、平成十五年からもう二十年、月日がたつわけでございますが、法改正、制度の問題点など様々なところがあるとは私は思っておるんですが、それについての改正、見直しは行われておりません。

 私は、一九九七年、神戸小学生殺人事件の担当をしておりました。その資料が、最高裁、何度も同じことを言いますけれども、その資料がシュレッダーにかけられたというのは本当に、私は非常に複雑な思いでございます。

 また、昨今、十七歳の少年が中学校に侵入し、中学校教員を刺した事件。その直前には猫を殺したというふうに本人が証言してありますが、まさに愛玩動物、犬や猫、あるいはカエル、自分より弱いものを殺したりする。

 行為障害というのが、この頃、この年齢にまれにあります。神戸小学生殺人事件の方も行為障害でございました。当時の総理大臣、橋本総理大臣が、この病気はどんな病気だということを、私、当時、精神保健福祉課に所属しておりましたので、お問合せがありまして、局長にこういう病気があるんだという話をさせていただいたところでございます。

 また一方で、私は、予算委員会などでも、京都アニメーション事件、ガソリンをまいて建物に放火すれば大勢の方が亡くなるということ、あるいは、大阪の曾根崎、精神科クリニックにやはりガソリンをまいて多くの方々を死に至らしめた、そのほか、徳島でも、アイドルのコンサートで、その一階下のところにガソリンをまいてやはり殺そうと試みる人が逮捕されております。

 昨今、そういう事件が目に余るように、そして、心を病んだ方々がそういう手法で道連れ殺人できるんだということに気がついてしまったということに、私は非常に不安を感じるわけでございます。

 まず最初に、医療観察法の六罪種、限定するのを少し見直して、もっともっと幅広にこの法の運用をしてはいかがかということを思うわけでございます。

 実は、津久井やまゆり園で知的障害の入所者の皆様方を死傷させた事件では、あの方は措置入院をすぐに短期間に終え、そして犯行に及んだことがあります。ですから、運用自体をもっと幅広に、そして治療を受けていただくということが障害者の利益につながると思いますが、この六罪種の見直しについてどのようにお考えか。

松下政府参考人 お答えいたします。

 医療観察法におきましては、殺人、放火等の一定の重大な罪として規定されている行為に限って対象行為とした上で、検察官による不起訴処分において、対象行為を行ったこと及び心神喪失者又は心神耗弱者であることが認められた者、あるいは、対象行為について、心神喪失者と認められて無罪の確定判決を受け又は心神耗弱者と認められて刑を減軽され、実際に刑の執行を受けない者を同法による処遇の対象としております。

 これらの六罪種を選定した経緯ですけれども、立法当時、様々な議論を経て、いずれも個人の生命、身体、財産等に重大な被害を及ぼす行為である上、実態として心神喪失者等により行われることが比較的多いものであるということに鑑みて、心神喪失等の状態でこれらの行為を行った者については、特に継続的かつ適切な医療の確保を図ることが肝要であるということで選定されたものであると承知しております。

 その対象の範囲を拡大することにつきましては、こうした立法当時の議論や限定された趣旨を踏まえまして、仮に対象行為の罪種を拡大するとすれば、新たに対象とする行為が、先ほど申し上げた二つの大きな要件に該当するものと言えるのかどうかといった観点から、さらに、病状の改善及びこれに伴う同様の行為の再発の防止を図り、その社会復帰を促進する必要があることだけではなく、対象者の人権にも十分に配慮する必要があるということを踏まえて、慎重に検討することが必要であると考えております。

阿部(弘)委員 ありがとうございます。でも、ちょっと長過ぎるから、短くていいですよ。

 僕は、当時、研究班を立ち上げて、この法律を作る段取りをしてその課を去りましたが、元々参考にしているのは、イギリスの精神保健法、メンタル・ヘルス・アクトでございます。イギリスは、もう何度もお話ししますように、ブロードモアという重度精神障害者のための治療施設が刑務所内にございます。それ以外についても、中等度の、犯罪を犯した精神障害者の治療施設もあるわけでございまして、当時は、まずブロードモアなどの重度の精神障害者の治療を優先してきたわけでございますけれども。

 ただ、今般、いろいろな事案が目に余るものがありまして、中等度の治療施設については、今は国公立病院に限られている治療施設をもっと民間病院に広げれば、その制度を運用できるのではないかというふうなことを、私は、もう法律が改正されて二十年たちますから、そのことを常に言い続けたいというふうに思っているわけでございます。

 次に、医療観察法は治療困難なケースを対象から除外してありますが、やはり、重度の精神障害があったにしても、一定の治療を施せば、その効果があるわけでございますから、その点も変更すべきではないかと思いますが、これは厚労省ですかね、民間病院の活用も含めてお答えいただければ。

辺見政府参考人 お答え申し上げます。

 医療観察法におきまして、入院医療につきましては、同法第十六条におきまして、指定入院医療機関が国又は都道府県立病院等に限定することとされております。

 この趣旨は、一般の精神医療とは異なり、公共性及び専門性が極めて高いことに加えまして、裁判所の決定に基づく医療でありますことから、全国で公平、一律に実施されなければならないことなどを考慮しているものと承知をしております。

 厚生労働省といたしましては、引き続き、対象者に対する適切な医療の提供や円滑な社会復帰を促進するため、法務省とも連携しながら必要な取組を進めてまいりたいと考えております。

阿部(弘)委員 患者さんの病状とか責任能力を判断する、このような基準に変更すれば、中等度の、現在の医療観察法の対象者よりも更に幅広にこの法律が運用できるのではないかというふうに考えるわけでございます。

 最後に、医療観察法は最初に鑑定入院を行いますが、鑑定入院の費用が、ずっとこの二十年、全く変わっていない。医療観察法の入院治療施設は診療報酬の一・四倍とおおよそ定められてありますから、それなりに、物価スライド相当ぐらいはあるんですけれども、お答えしにくいでしょうけれども、鑑定入院費用をどうやって決めているのか、お答えいただけますでしょうか。

吉崎最高裁判所長官代理者 お答え申し上げます。

 委員御指摘の鑑定入院における費用に関しましては、裁判所規則におきまして、裁判所が医療施設の管理者の請求により、入院に要した費用等を支払うものとされておりまして、その額は、裁判所の相当と認めるところによると定められていることから、各裁判体が個別の事件ごとに決定すべきものとされております。

 その点につきまして、鑑定入院費用の多寡を事務当局が評価したりすることは適切ではないと考えております。

阿部(弘)委員 答弁はもう最高裁は結構なんですけれども、医療観察法の、今回、予算も計上されてありますから、やはり、鑑定入院も医療観察法に基づく行為だというふうに私は考えますので、それもやはり、時勢に応じて、ある一定の額がアップしていくべきじゃないかなと思っております。非常に医療観察法の治療施設は恵まれた報酬、対価をいただいておりますので、その点はお含みおきいただくという点で結構でございます。

 次の質問に移ります。

 日本では、なぜ裁判所の判決に人々が従っていくのか、判決を守るのかという御質問をさせていただきます。

 まず最初に、諫早干拓請求異議訴訟、これは確定判決が分かれた判決でございます。ですから、訴訟を行った、あるいは住民にとっては、どちらに従えばいいのかということ。

 少し話しますと、僕は、エマニエル・カントの哲学書が非常に好きでございまして、二律相反、非常に違った判断が出たわけでございます。日本人は真面目ですから、判決が出ればそれに従うわけですけれども、二つの違う判決が出たわけでございますから、その点について御説明いただけますでしょうか。

青山政府参考人 お答えいたします。

 諫早湾干拓事業をめぐりましては、平成十四年の十一月に、漁業者等が潮受け堤防の撤去と排水門の開放を求める訴訟を佐賀地裁に提起いたしました。同訴訟につきましては、平成二十二年十二月、福岡高裁が国に開門を命じる旨の判決を出し、国が上告しなかったため、福岡高裁判決が確定いたしました。

 国は、福岡高裁確定判決の開門義務の履行に向けまして環境アセスメントを行いまして、開門した場合に生じる影響等につきまして調査等を行い、必要に応じてその影響を回避、低減するための対策を検討するとともに、対策工事の実施のため、地元関係者への戸別訪問、関係自治体との協議、調整等を進めた上で、平成二十五年九月から十月にかけまして工事着手を三回試みましたが、地元関係者の反対により、対策工事を実施することができませんでした。

 この間、平成二十三年四月、開門に反対します長崎側の農業者、漁業者等が、排水門の開放差止めを求めまして長崎地裁に開門差止め訴訟を提起いたしました。

 そして、平成二十五年十一月、長崎地裁は、判決が出るまでの間の仮処分としまして、国に対し、開門してはならない旨を命じました。これにより、国は、平成二十二年の福岡高裁確定判決による開門義務と、長崎地裁の仮処分決定によります開門禁止義務の、二つの相反する法的義務を負うこととなりました。

 平成二十六年一月、国は、佐賀地裁に対しまして請求異議の訴えを提起しまして、平成二十二年の福岡高裁確定判決後、地元の反対や開門禁止の仮処分といいました事情変更が生じたことを根拠に強制執行を許さないよう求めますとともに、強制執行停止を申し立てたところでございます。

 請求異議訴訟につきましては、令和四年三月、福岡高裁におきます差戻し審におきまして、開門を命ずる平成二十二年の福岡高裁確定判決に基づく強制執行を許さない旨の判決が出されました。訴訟相手方当事者は最高裁へ上告等を行っておりましたが、今月、三月一日に、最高裁は上告を棄却し、上告審として受理しない決定を出し、令和四年三月の福岡高裁判決が確定したところでございます。

 以上でございます。

阿部(弘)委員 この判決というのは、最高裁の判決が、仮処分が認められて、結果的に国の施策を是認する、追認する判決になった。

 私は、子供の頃、絵本で、海幸彦、山幸彦というのを見たことがあります。まさに現代でもそういうことが起きて、そして、国が行う行為について、最高裁が、それがいいんだというふうに認めたということで、統治行為論という考え方がいろいろなところでありますけれども、それを是認されたんだなというふうに思っております。今も当事者から様々な陳情は起き続けていると思いますが、そういう方向でいくんだろうというふうに思っております。

 次に、カルロス・ゴーンさんの事件、ちょっと御説明いただけませんでしょうか。

松下政府参考人 ゴーン被告人につきましては、金融商品取引法違反及び会社法違反の罪により公判請求されたものと承知しております。

阿部(弘)委員 いや、レバノンに逃げられたでしょう。そのことも含めて御説明いただけますでしょうか。

松下政府参考人 お答えいたします。

 ゴーン被告人については、保釈を許可決定されておりましたが、その後、保釈取消し決定がされておりまして、その理由は、裁判所の保釈条件に違反して我が国から逃亡したことによるものと承知しております。

阿部(弘)委員 ここで本題に移ります。何で日本の裁判では裁判結果を守るのか、あるいは司法の、法の支配を守っていくのかというところですが、先ほどのエマニエル・カントの話です。

 カントさんは哲学の哲人と言われますが、それまで、キリスト教支配、目に見えないものが様々な権威を持って支配していく、それでは駄目なんだということで、知性や悟性や、そして感性、目に見えるものが全てだというふうに、科学的な知見に基づいて人間は理性的に判断するものだと。ですから、それによってコペルニクス的転回を来し、今の近代的な、ボアソナードさん、日本の刑法、民法の父と言われますが、そういう方々にも影響を及ぼしている。ある意味じゃ、形而下は様々、イスラム法、国によって、権威主義国家であったらその方々を中心に法律が定まっていきますが、少なくとも日本は、西洋、大陸法や英米法などを参考に今の法体系があるわけでございます。

 じゃ、何で日本人はそういう法律を守っていくのか。金子局長がおられたら金子局長にも質問したかったんですけれども、民法論争があったじゃないですか、明治期に。日本は、ナポレオン、フランスの民法を参考にしたり、あるいは、刑法、一部ドイツ刑法も参考にしたわけでございますが、それを取り入れようとしたときには国民は激しく抵抗した。でも、今は法律に従う、民法でも刑法でも。

 裁判所の方にお聞きしますけれども、いかがですか。何で判決に国民は従うんでしょうか。

小野寺最高裁判所長官代理者 お答えいたします。

 今委員からお尋ねをいただきました点につきまして、事務当局として直接的にお答えするというのはなかなか難しいというのは御容赦いただきたいというふうに思います。

 私どもの方から申し上げられるとすれば、一般論となりますけれども、判決が当事者や国民にとって分かりやすく、説得力を有するということは重要であるというふうに考えております。また、判決に至るまでのプロセス、これも納得性の高い審理運営を実現するということが望まれているものというふうに承知しております。

 裁判所といたしまして、これまでも具体的な事件の裁判を通じて審理運営の改善及び判断の質を高めるよう努めてまいりましたけれども、引き続き、国民の司法に対する信頼を高めて、その期待にお応えしていきたいというふうに考えております。

阿部(弘)委員 答弁は、裁判長が立派な判決を出すからみんなが従っているんだというふうにお答えいただくのかと思ったんですけれども、若干、一般論で終始されていました。

 カントさんは、知性や悟性、そして理性、感性を議論してあります。ですから、共通の価値観、それを持っていればもちろん従っていくわけでございますが、カルロス・ゴーンさん、裁判の最中から様々な御意見をお述べになっておられたわけです。もちろん宗教を区別するわけではありませんけれども、宗教ももちろん、大多数の日本、どういう信条であったか、どういうお育ちであったかは私は存じ上げませんが、カルロス・ゴーン事件については、もう一度最高裁、逃げられたわけでしょう、保釈中に。これはやはり法の支配を軽視されたということでようございますかね。最高裁、お願いします。

吉崎最高裁判所長官代理者 お答え申し上げます。

 突然の御指摘でございまして、さしたる準備をしてございませんけれども、いずれにしましても、個別の裁判の当否について私どもの方から申し上げることは差し控えさせていただきます。

 被告人が不正に出国し裁判を開けないということにつきまして、その状態になっていることにつきましては遺憾であると考えております。

阿部(弘)委員 いや、本当に遺憾なことですよね。これからダイバーシティーの日本になっていきます。じゃ、外国の方々に日本の法律を理解していただくということについては、どのようなことを法務省として取り組まれていきますか。

西山政府参考人 我が国に在留する全ての外国人が地域社会で安全、安心に暮らしていただくために、また日本人と外国人の共生社会の実現という観点からも、外国人の方に我が国の社会の制度やルール、生活習慣を理解してもらうことが非常に重要であると考えております。

 入管庁では、外国人材の受入れ・共生のための総合的対応策に基づき、日常生活におけるルール、習慣を始め、安全、安心な生活、就労のために必要な基礎的情報を盛り込んだ生活・就労ガイドブックを政府横断的に作成し、多言語に翻訳して、外国人生活支援ポータルサイト上に公開をしております。

 また、入管庁としては、地方公共団体において、外国人が行政や生活の情報について多言語で相談できる一元的相談窓口の設置、運営を行う場合に、外国人受入環境整備交付金による支援を行っております。この一元的相談窓口では、日本と母国の法律の違いなども含め、ガイドブック等を用いながら外国人住民に丁寧に説明するための取組も行われているものと承知しております。

 今後とも、様々なツールを使いまして、外国人の方に対して必要な情報の発信に努めてまいりたいと考えております。

阿部(弘)委員 もう時間も迫ってきましたが、大臣にお尋ねいたします。

 何でこのように日本では裁判所の判決に国民が従っていくのか、守っていくのかについて、お考えをお聞かせください。

齋藤(健)国務大臣 残念ながら、法務省として、現状、今の阿部委員のお尋ねを実証できるようなものを持ち合わせていないということでありますので、一般的にお答えすることはできないんですけれども、あえて私自身が感じるところで申し上げるということをすると、恐らく、日本人が裁判所の判決を守っているということの背景には、我が国の司法が全体として公正公平であるということで、国民から信頼されているということも理由の一つにはあるのではないかなと考えています。

阿部(弘)委員 私も、そのように思っております。司法に携わる方々、それは、裁判所でもあり、検察官でもあり、そして弁護士の皆さん方でもあると思います。何よりも、国民の勤勉性あるいは国への信頼というものがあって裁判の結果に従っていくんだというふうに思っておるわけでございます。

 私は、大河ドラマ「どうする家康」が大好きでございます。あの中で出てきました、じゃ、一番、この国のあるじは誰だという問いに、国民の皆さん方を、農民の皆さん方を指して、この方々だということをおっしゃられました。まさに日本でも国民主権でございます。国民の信頼あっての司法、法の支配であるというふうに私も信じておりますので、是非とも、今日皆様おそろいでございますが、そのことをお願いしまして、私の挨拶を終わります。

 ありがとうございました。

伊藤委員長 午後三時から委員会を再開することとし、この際、休憩いたします。

    午後零時四十六分休憩

     ――――◇―――――

    午後三時開議

伊藤委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。

 質疑を続行いたします。牧原秀樹君。

牧原委員 自由民主党の牧原秀樹でございます。

 法務委員会での質問は、一期目のときに、児童ポルノの所持罪についての、他委員会から来て質問をした以来二回目、法務委員会に属するのは初めてでございますので、ちょっと改めて、司法とか法の支配とか、こういうことについて質問をさせていただきたいというふうに思います。

 私は、一九九四年に司法試験に通って、四十九期になります。そしてまた、ニューヨーク州の司法試験は二〇〇〇年に受かっておりまして、こういう意味で、日本、アメリカ、ヨーロッパ、あるいはほかの国に行ったときにも、必ず司法の在り方というのを見るようにしてきております。

 各国、統治機構は様々です。どうやってその国を統治していくかということについて、人類は知恵を絞りながら、それぞれの形をつくってきました。

 その中で、三権分立で司法というものが置かれているということは極めて重要で、例えば、ほかの国に行ったときに、その国の裁判所、司法システムが信頼できるかどうかというのは、その国で経済活動をやろうかとか、その国で住もうと思うかとか、そういうことに非常に大きな影響をする、実は、その国の信用度を測るバロメーターにもなります。

 今日のある新聞でも、インドについて、すごく経済は発展しているけれども、司法システムがほぼ機能していないので、これが機能しないと本格的な経済成長はないんだというような話が出ておりました。

 実際、私が弁護士をメインでしていた、九七年からやっていましたけれども、当時、中国に進出をするということがようやく始まった頃でしたけれども、我々からすると、中国では司法システムが健全には機能していないという状況で、いろいろなトラブルがあっても全部向こうに取られてしまう、こういうことになる。そうなると、やはり、そういう国の投資をみんなやめようということになるわけですね。

 逆に、ほかの国から見ると、日本の司法システムが本当に信頼できるかどうかというのは、実は大変重要なことでございまして、どんなにほかで、行政が頑張っても、何が頑張っても、あそこはいざとなったときに司法が駄目だよねということになると、なかなか発展しないということになります。

 それは、最後、司法というのは、自由と人権のとりでであるということですし、私も、そうしたことを最後は守り抜くんだという誇りを胸に国会議員としても活動させていただいております。

 齋藤大臣の所信表明でも、法の支配についてありましたけれども、私が非常に一つ懸念しているのは人の問題です。どんなにいろいろなことがあっても、最後は人なんですね。人がちゃんとしっかりしているということが、その分野の信用性だったり、発展だったり、充実だったりということに欠かせないわけですけれども。

 司法分野については、私が修習生の頃、一九九五年とか六年とか、こういう頃は、まさに、弁護士の数が少な過ぎるんじゃないか、一部の人がすごく利権を、あるんじゃないか、そしてまた、裁判官や検察官みたいに定年がある場合には、どうしても、合格年齢が当時は二十八歳強が平均、そして合格率は大体、司法試験の場合は二%、百人に二人しか受からない試験であって、私の一番仲がいい、隣に座っていた人も、四十二歳で初めて合格したということですから、もう事実上、裁判官になったり、検察官になったりするのは難しい。こういうような事情があって、もっと若い人をどうやって受からせたらいいんだろうかということで、丙案と言われた、三年以内の人が合格を優遇されるというような案が出てきたんですけれども、その後、一気に、司法制度改革というのがあって、ロースクール構想とかいろいろある中で、ロースクールが入って、そして修習は二年だったのが短くなって一年半になったり、前期修習がなくなったり、そして、いわゆる給費制、これがなくなったりということがございました。

 私は、当時、修習生だったり若手の弁護士でしたけれども、いずれもこの分野の改革というのは反対でした、率直に言って。というのは、単純な話で、要するに、どの改革も、よりお金がかかる、そしてより時間がかかる。そして、その時間やお金をかけたのに、必ず弁護士になれるという保証も、あるいは司法関係者になれるという保証もないし、なおかつ、弁護士になった場合には、数が一気に増やされたので、要は、就職先すら見つからない、なっても当番弁護士や国選弁護人を奪い合うみたいな、こういう事態になっている、こういうことが言われて、魅力がなくなったわけですね。

 現に、今日はちょっと資料をお配りしましたけれども、これは、例えば、新司法試験制度は、そもそもロースクールの合格人数で絞っているということもありますので、単純に旧司法試験と同じ合格人数で測れないということは重々承知の上で、単純に司法試験の受験者数を見ると、ピークである平成の十四年、十五年とかは四万人を超えている。こういう人たちが、将来、自分は司法関係者になりたいと思って受験をしていたわけですね。

 それが、去年になると、新司法試験については三千八十二人です。元々三千人の合格を目指すというふうにやっていたわけなのに、この司法試験を受けている人は三千八十数人しかいない、こういう状況になっています。

 ロースクールをスキップするための予備試験は逆に倍増しているので、これはいかにロースクールという場所が、もちろん教育はいいんです。私もロースクールは何回も行っていて、現場の人たちの努力とか、それが、内容がけしからぬとかいうわけじゃないんです。単純に、ロースクールに行くために二年も、数百万もお金をかけて、そして、仲間が就職をしてばりばり稼ぎ始めているときに、自分は借金を負って、そしてロースクールに通わなきゃいけないということをやはりみんな苦痛だと思うので、要するに予備試験の方に流れているという状況は明らかです。

 二枚目は、ロースクールのことで、ロースクールも、最初は七十校以上できて、そして、地方の自治体の大学にも結構できまして、これはむしろ地方活性化になるんだという意見は当時も相当ありました。しかし、現実には、司法試験への合格率なんかがやはり出ちゃって、合格率の低いところは敬遠されたりするようなことがあって、今、ロースクールはかなり数も減っています。

 そして、志願者の方も、平成十六年のときには七万二千八百人もいたのに、一時期は八千人ぐらいになって、三枚目に、今年はまた少し増えていますので、現場の皆さんの御努力もあって少し増えていますけれども、増えているといったって七万二千人いた頃から思うと六分の一ぐらいしかいない、こういう状況でございます。

 入学定員数もどんどん減ってきている。そして、入学定員の充足率というのも、一時期は六割ぐらいになっています。これも御努力で、数も減ってきている上にちょっと御努力もあって、ここは増えていますけれども、明らかに一時期と比べると人気等も落ちているということで、今、私も大学生の法学部の人なんかに聞くと、もう全然これに魅力を感じないどころか、一部には、法学部の最低合格点数というのはどんどん下がっていて、むしろ経済学部とか文学部の方が上になってきているというようなことも報道で伺ったことがあります。

 こういうものを見ますと、やはり、一九九九年に司法制度改革というのをやって、本当に大議論に大議論を重ねて、今回もIT化の法案なんかが準備されたりして、悪いことばかりじゃなくてかなりいいことも多かったと思いますけれども、司法試験改革のこの分野については、果たしてこれで本当に、データを見て、よかったのかどうか、改めて、法務省としての総括と、もしよくないという点があるんだと認識がされるのであれば、その改善策についてお伺いします。

門山副大臣 現行の法科大学院を中核とするプロセスとしての法曹養成制度は、司法試験という点のみによる選抜をしてきた様々な問題点があったわけで、それを克服するために導入されたものと理解しており、現在もなお重要な意義を有しているものと認識しております。

 もっとも、近年の法曹志望者数の減少については重く受け止めており、現行の法曹養成制度の在り方について様々な御意見があることも承知しております。一層高度化、複雑化する法曹需要に的確に対応し、国民にとって身近で頼りがいのある司法を実現するためには、より多くの有為な人材が法曹を志望するような環境整備が重要であると考えます。

 法科大学院教育の充実や、法曹資格取得までの時間的、経済的負担の軽減を目的とする、いわゆる法曹養成制度改革法が令和四年十月に全面施行されたところでございます。本年の司法試験からは、新たに法科大学院在学生の中にも一定の場合に司法試験の受験資格が付与され、また、法学部三年と法科大学院二年のルート、いわゆる3+2の制度でこの受験資格を得た受験も始まります。

 法務省といたしましては、引き続き関係機関とも連携しながら、法科大学院教育等を一層充実させるための支援、3+2の制度の更なる周知を行うとともに、法曹の魅力や幅広い分野での活躍についての積極的な情報発信など、より多くの有為な人材が法曹を志望する環境づくりに全力で取り組んでまいります。

牧原委員 まあ、そういう答弁になると思いますが、とにかく、当事者意識を持ってやってもらいたいと思います。旧司法試験制度で合格した人とロースクールに行った人が、めちゃくちゃロースクールに行った人の方が優秀で、すごい、さすがロースクールだと言われない限りは意味がないんですよ、はっきり言って。ですから、そこはちょっと本当に、若い、これから目指す人の視点を忘れないでもらいたいと思います。

 その典型的な一つが、谷間世代と言われている人たちの修習費の問題です。

 これは、二〇一〇年に、当時、修習費、一年延期をやるということで、二〇一一年から、いわゆる修習費、我々の頃はあった修習費というのが廃止にされました。その後、私も当時は落選中で、一つこれを私はやるために再選を目指していたところもあるんですけれども、再選後、私は最初に自民党の司法制度調査会の事務局長になって、三千人の見直しとか、前期修習の復活に加えて、この給費制の復活という文言を提言に入れさせていただき、その後、二〇一七年に、修習給付金というのか、名前は変わっていますけれども、月十三万ぐらいなのかな、一応復活をしたということになりますが、今度は、谷間の六十五期―七十期の人は何もなくて、かなりの人が借金を背負いました。

 これは、完全に私は制度の犠牲者だというふうに思っております。この皆様は度々集会をやって、とにかく、自分たちが制度の犠牲者になったのは何でなんだというやるせない思いを抱えたまま、何とか、谷間だったけれども回復してもらえないかという訴えをしております。

 改めてこの点についての法務省の見解を承ります。

竹内政府参考人 お答えいたします。

 委員の御指摘は、新六十五期から第七十期までの司法修習生について、その前後の時期の司法修習生には採用されておりました給費制や給付制を採用することなく、修習資金を貸与していたことを指すものと理解をしております。

 もっとも、これらの制度は、その時々の司法修習生の規模ですとか我が国の財政状況等の事情を考慮しつつ、司法修習生が修習期間中の生活の基盤を確保して修習に専念できるようにし、修習の実効性を確保するための方策として採用されたものでありまして、いずれも合理的な内容と理解をしております。

 委員御指摘のいわゆる谷間世代の司法修習生であった方に対して、金銭給付などの事後的な救済措置を講ずるべきという御指摘があるところでございますが、既に法曹となっている方々に対して国による相当の財政負担を伴う金銭的な給付等を意味することとなりますので、国民的な理解を得ることは困難であるというふうに考えております。

 また、仮に何らかの救済措置を講ずるといたしましても、従前の貸与制下において貸与を受けていない方々等の取扱いをどうするかというような制度設計上の困難な問題もあるところでございます。

 また、この修習貸与金につきましては、経済的な事情によって法曹として活動に支障を来すことがないようにするための措置といたしまして、貸与金の返還期限の猶予というような制度も制度上認められているところになっておりまして、このようなことから、いわゆる谷間世代の司法修習生であった方に対して、立法措置による抜本的な救済策を講ずるということは困難でありまして、救済策を講ずることは考えていないところでございます。

牧原委員 今の、何か修習に専念するために貸与制が入ったみたいなものは、もう完全に詭弁なんですよね。それじゃ、給費制だった頃の修習生は、全く修習に集中していなかったという話になります。逆なんですよね。もう本当に、借金を背負いながら修習をやって、それがずっとならいいですけれども、なぜか自分たちのときだけそうなっているというのは完全に制度の犠牲者でございますので、ここはやはり、引き続き私は検討を求めたいというふうに思います。

 次に、私も実は任期付採用で政府に入ったことがございます。経産省に入って国際通商の紛争とか交渉の担当官をやったんですけれども、その中で、民間の弁護士が政府に入ってやれることとやれないことというのはつくづく感じました。

 やれないことの一つというのが、私は実は訟務だと思っています。

 国が訴えられたりして訴訟したときに、現在、私が副大臣をやった厚労省なんかでも、ちゃんと法務担当をつけて、法的に対応できるようにという体制を整えて、これは全省庁でやるべきなんですけれども、国自体が訴訟でやるような場合というのは、やはり、民間の弁護士が来てやるというのは、守秘義務とかいろいろなことを考えてもやるべきでは私はないと思っていて、そうすると、裁判官か検察官の方が基本的にはやることになると思うんですけれども、その性質上、考えると、検察官の方がやるというよりは、やはり裁判官出身の方、特に民事訴訟をやっているような方がやる方が私は筋がいいというふうに思っています。

 一方で、中立性の問題があって、何か裁判官が一方で国の訴訟をやりながら一方で裁判をやるというのはなかなか難しいんじゃないかという当時指摘があって、それを、割合を減らしてきているという話は理解していますけれども、現在、かなりその割合は減ってきているというふうに理解をしています。

 私は、これ以上プロの裁判官の割合を減らすというのは限界に来ていると思いますし、そうすべきじゃない、こう思いますけれども、この点についての法務省の見解をお伺いします。

門山副大臣 国を当事者等とする訴訟は増加傾向にあり、これらの訴訟に迅速かつ適切に対応していくため、訟務の体制を充実強化していくことは重要なことと認識しております。

 また、国を当事者等とする訴訟において、委員御指摘のとおり、法律による行政の原理を確保し、適正な訴訟追行を行う観点から、訟務部局に裁判官出身者を人材として配置することも重要な意義を有するものと考えております。

 令和四年四月時点で、訟務検事に占める国の指定代理人として活動する裁判官出身者の割合は約三割となっておりますが、その数や割合を減らせば減らすほどよいとは考えておらず、様々な観点から見たバランスも重視して人材を配置していくことが相当と考えております。

牧原委員 三割ですから、単純に言うと七割、検事出身の方あるいは民間の弁護士を入れるとかいう形だと思うので、これは私はもう限界だ、こう思いますので、この後、定員法もありますけれども、是非ここも一つの私は論点かなと思います。

 次に、私が修習時代以来すごく問題意識を持っていたことの一つとして、性犯罪系の問題がございました。私が修習のときに、当時は強姦罪でしたけれども、やりまして、私が主張した量刑と左陪席の人が主張した量刑がかなり差があって、それでその裁判官、裁判長と激論になりまして、それは、過去の例を見ると、私が主張する刑は重過ぎるんだ、こういう話でした。

 しかし、女性の方が、夜、例えば脅されて、変な話、お金にするかそういう犯罪にするかと言われて、お金がもったいないからこっちですという人はいないわけですね。その被害者の方も大変悲惨な状況だったんです。だから、これはやはり私は、性犯罪系のものが軽過ぎるのは、明治時代以来の男尊女卑を引きずっているからだ、その量刑を引きずっているからだという問題意識を強く持っていました。

 二〇一七年に大改正が行われて、最低刑も三年から五年に引き上げられる、あるいは、強姦じゃなくて強制性交罪というふうな名前に変わったりしましたけれども、今回もまた大きな改正をして、不同意性交罪になるというような報道も聞いておりますけれども、この根底に流れる立法事実と思いについてお伺いをします。

門山副大臣 性犯罪、性暴力は、被害者の尊厳を著しく傷つけ、その心身に長年にわたり重大な苦痛を与え続けるものであって、決して許されるものではございません。

 性犯罪については、平成二十九年に法定刑の引上げや強制性交等罪の整備などを内容とする刑法の改正が行われましたが、その附則において、施行後三年を目途として、性犯罪に係る事案の実態に即した対処を行うための施策の在り方について検討を加えることが求められておりました。

 これを受けて、法務省において性犯罪に関する刑事法検討会を開催するなどした上で、令和三年九月、性犯罪に対処するための法整備について、法務大臣から法制審議会に諮問がなされました。

 その後、法制審議会の部会において、様々な立場の委員に多角的見地から合計十四回にわたって調査審議をしていただき、本年二月、法制審議会から、暴行、脅迫、心神喪失、抗拒不能の要件の改正、いわゆる性交同意年齢の引上げ、公訴時効の見直しなどを内容とする答申をいただいたところでございます。

 性犯罪への適切な対処は喫緊の課題であり、答申の内容を踏まえ、速やかに国会に法案を提出できるよう、引き続き準備を進めてまいります。

牧原委員 是非ここは、今国会で提出されれば極めて重要な法案になると思いますし、新しい時代に合わせて、我々は、明治時代以来のことを断ち切らなきゃいけない、新しい時代をつくっていくという覚悟を持ってやっていかなきゃいけない話だと思っています。

 同じように、ネットというものが今あって、特に盗撮、これは私は前々から問題だと思っているんですけれども、つまり、被害がめちゃくちゃ大きいわけですね、あっという間に拡散します。しかし、今までは、軽犯罪法とかあるいは条例違反とか、人のうちに入ればそれは住居侵入だとかいって全然違う筋でやるしかなかったんですけれども、これについても、やはり今回、一部ですけれども新設を検討されているということですが、その立法事実と思いについてお伺いします。

門山副大臣 先ほど申し上げましたとおり、本年二月、法制審議会から、性犯罪に対処するための法整備についての答申をいただきましたが、その中には、委員御指摘のとおり、いわゆる盗撮も含めて性的姿態の撮影行為の罪の新設などが含まれております。

 御指摘の点も含め、性犯罪への適切な対処は喫緊の課題であり、答申の内容を踏まえ、速やかに国会に法案を提出できるよう、引き続き準備を進めてまいります。

牧原委員 以上の二つは、やはり被害者の被害の大きさと罪とがが合っていない、典型的にもう時代に合わない部分だと思いますので、やはりこれも極めて重要なものだと是非法務省もお考えいただきたいと思います。

 次に、家族法の検討なんですけれども、私、ずっとこの親子の問題をいろいろな形で議員としてやっているんですけれども、これもやはり世界から見て日本の欠陥の一つだと私は思っております。

 というのも、ある一方の親が子供を連れていってしまうということが非常に頻発していて、ハーグ条約で、国際的な場合にはそれは駄目だよというふうになっているんですけれども、国内の場合には基本的にはいまだにそれが起きている。ある日突然、家に帰るといないという形で、しかも、行方不明になっちゃったのか事故に遭ったのか分からない、こういうことがすごくあって、しかも、その後、いると分かってもなかなか会えないという状況が続いています。

 もちろん、DVみたいな事案というのは最優先で保護しなきゃいけませんので、これはもう必ず保護するということになりますが、そうじゃない場合でも、日本はなかなか親子が交流できないということがございます。

 なので、我々は、よく面会交流という言葉がある、面会って、何か拘置所とかで会う面会みたいなイメージになっちゃうので、親子交流という言葉に直すべきだという主張もさせていただいておりますが、やはりこれを何とか日本の欠陥としてしっかり取り組んでいただきたいという思いが一つ。

 これに関連して、共同親権という問題もあって、日本は単独親権なので、どうしても親権の奪い合いというところで、子供が横で犠牲になりながら、親が本当に激烈な争いをするという例を私も家庭裁判所の調停等でいっぱい見てきました。

 これは本当に子供にとって不幸なので、私は、原則として共同親権を導入すべきだ、そうじゃない場合、例えばもちろんDVみたいな場合はそんなことは必要ありませんけれども、こういうように変えていって、親子のきずなというのは大事だという法体系に変えなきゃいけないと思っておりますけれども、大臣の御認識を伺います。

齋藤(健)国務大臣 本件に係るケースは本当に様々あるので、一概にお答えすることは困難であるんですけれども、一般論として申し上げれば、父母の離婚等に伴って父母の一方と子が別居することになった場合において、適切な形で親子の交流の継続が図られることは子の利益の観点から重要であるというふうに認識しています。

 父母の離婚後の親権制度や親子交流の在り方については、もう御案内だと思いますけれども、現在、法制審議会において調査審議が進められておりますので、諮問した立場である法務大臣として現段階で具体的な意見を述べるのは差し控えるべきなんだろうと思いますが、国民の間の様々な意見に幅広く耳を傾けながら、しっかりと議論を重ねるということが重要であると認識しています。

 これらの家族法制の見直しにつきましては、昨年十二月六日から今年二月十七日までの間、パブリックコメントの手続が実施をされ、非常に多くの団体、個人から様々な御意見をいただいたところであります。法制審議会においては、今後、国民から寄せられた意見も参考にしつつ、子の最善の利益を確保するという観点から、充実した調査審議がスピード感を持って行われることを期待をしております。

牧原委員 是非お願いします。

 これは私も何年も取り組んでいますが、子供は大きくなっていっちゃうんですよね。それで、やはり自分の子供の成長を見届けることができないつらさというのは、これを苦にして命を絶たれる人も過去何人もいます。私も、お会いをした方が、その後、命を絶たれたということもございます。

 また、これは一概には言えませんけれども、児童虐待がよく報道でありますけれども、お母さんの交際相手による虐待というのは結構あるんですね。これも、もし実の父親と会っていたら、恐らく何らかの歯止めが利くんじゃないかと思うんですけれども、やはり、誰かに頼らなきゃいけないというときにそういう非常に強い男性とやって、男性は、自分の子じゃないせいなのか何だか分かりませんけれども、虐待になってしまう、死亡に至る例、こういうのはすごく多いです。

 ですから、やはりいろいろな意味で、私は、親子の交流をきちんと、それが原則にしていくということが大事だし、親子の縁というのは永遠のきずなだというふうにするのが原則だというふうに申し上げたいと思います。

 もう一つ、先ほど来申し上げている司法制度改革の中の一つとして、裁判員制度について取り上げたいと思います。

 私、アメリカとかヨーロッパとか、いろいろな国の裁判を見ていまして、通常、大陸法系とか英米体系とかというんですけれども、やはりアメリカとかは、多民族で、お互いを基本的には信用していないというところにベースがあります。なので、契約書もびちびちに分厚いのを作りますし、その中で、裁判も、民主的な関与によってその信用性を確保するみたいなところで、いろいろなところに民主的手続が入っているわけですけれども、日本は、さっきも話がありましたが、司法の権威、これをどうつくっていくかというところに、果たして民主的な手続を取ることが適切なんだろうかというのが私の問題意識でございました。

 裁判員制度、例えば、昨年でいうと六億三千九百万ですかね、今年も同じ予算、これは裁判員の日当。その他の運営経費で、昨年は九億四千万、今年は八億七千万。こういう予算もかかって、これはずっとかかっているわけですけれども、果たして裁判員をやらないと日本の司法制度は本当に権威が保てないのか、そういうことも考えながら、そろそろ、裁判員制度のこれまでの総括と、司法制度の権威の在り方についてはもう一度抜本的に考え直した方がいいんじゃないかと思いますが、大臣の見解をお伺いします。

齋藤(健)国務大臣 裁判員制度は、御指摘のような御意見もありますけれども、国民の皆様が刑事事件に参加をし、その感覚が裁判の内容に反映されることによって、国民の皆様の司法に対する信頼や支持が深まり、司法がより強固な国民的基盤を得ることができるようになるという重要な意義を有していると思っています。平成二十一年に施行されてから、これまでおおむね順調に運営され、国民の皆様の間に定着をしてきているものと認識をしています。

 法務省では、平成三十一年一月から令和二年十二月までの間、刑事法研究者や裁判所、日弁連、検察庁、警察庁の関係者のほか、被害者団体関係者等の有識者により構成される裁判員制度の施行状況等に関する検討会を開催し、制度と運用の両面について活発な意見交換をしていただいてきましたが、その取りまとめ報告書におきましても、裁判員制度はおおむね順調に運用されていると評価されたものと承知をしております。

 法務省としては、現時点で裁判員制度について法改正を要する点はないとは考えておりますが、裁判員制度が引き続き我が国の司法制度の基盤として重要な役割を果たすことができるよう努めてまいりたいと考えています。

牧原委員 改めて齋藤大臣のリーダーシップに御期待をいろいろ申し上げて、質問を終わらせていただきます。

 ありがとうございました。

伊藤委員長 次に、鈴木義弘君。

鈴木(義)委員 国民民主党の鈴木義弘です。

 大臣の所信に対して質問をしたいと思います。

 まず、漠然とした問いかけなんですけれども、大臣が考える正義というのは何かなというのが一番、まあ、難しい問いかもしれませんけれども、でも、法務省の所管の一番トップとして大臣を、職を行うに当たって、何が正義かというのが自分の中の尺度にならないと、軸にならないと、やはりそれと対比してどうしようかという判断ができないんじゃないかと思うんです。そこのところで、もし簡潔に御答弁いただければ。

齋藤(健)国務大臣 私も、これまで時々正義という言葉を使ってきているんですけれども、ただ、御指摘のこの言葉は、用いる文脈はもちろん、用いる方によってもその意味合いが変わり得るものでありまして、法務大臣が正義とはこういうものだというふうに一概にお答えをするのはちょっと困難なんですけれども、その上で申し上げれば、正義というものは、そういうものと考えられるだけに、各人が正義であると考える中において、正義と正義が衝突したり、あるいは意見が対立することもあり得る、そういった性格のものなんだろうと思っています。

 だからこそ、私は、我が国社会が、一人一人がお互いを尊重し合える社会、そしてルールの下で共に幸せに生きていける社会、こういうことになることが重要であると考えておりまして、そのような社会が実現されることはある種の正義なのではないかなと考えています。

鈴木(義)委員 これは例えがいいか分かりませんけれども、私もちょっと剣道をやっていた時期があって、剣道で、相手を打たせようと思って、気を吐くように相手を追い込まさせると、相手が打ってきたところを隙として打ち返すんですね。

 今起きている世界のいろいろな事変だとか戦争も含めて、どっちが本当のことを言っているのか、私たちは一方的な情報しか得られない。例えば、湾岸戦争のときもそうだし、イランのときもそうですね。大量破壊兵器があるから日本は協力するんだ。その後、誰も検証しない。どっちが正義だったのか、どっちの言い分が正しかったのか、それの、ずっと国際情勢の中でやっていかなくちゃ、判断していかなくちゃいけないと思うんですけれども、やはりそこのところを一番大事にしなくちゃいけない。何をもって正義とするか、まあ、大義でもいいと思うんですけれども、そこのところが必要かなというふうに思っております。

 それともう一点、今日も法の支配という言葉がよく出てきたんですけれども、もう一つ、昨今よく使われる言葉が多様性という言葉ですね、いろいろな分野で使われますから。

 例えば、じゃ、レッドデータブックに掲載されているような動植物、魚でも何でもいいんですけれども、それがなくなってしまったらまずいだろうということで、人間が手を入れてそれを保存しようとする。でも、自然の摂理からいったら、もしかしたらその種は途絶えてしまう、まあ、人間だけはずっと、五百万年ぐらい生き長らえてきているんですけれども。でも、それを、私たちの価値観で手を入れてしまっていいのかどうかということですね。でも、多様性が大事なんだという言葉。それについて、もし御見解をいただければありがたいんですけれども。

齋藤(健)国務大臣 大変難しい御質問なんですが、多様性という言葉については、一般には、いろいろと異なる様というものを指すんだろうと思っています。

 私、生物学については詳しくありませんけれども、ただ、先ほども正義のところで申し上げましたけれども、現にそれぞれいろいろな個性を持った人が存在をしている中で、一人一人違った個性を持ちながらもお互いを尊重し合える社会、そして共に幸せに生きていくことができる社会というふうになることが重要でありまして、そのためには、多様性が尊重をされるという社会が非常に重要だなと思っておるので、そういう意味で多様性という言葉を私は使わせていただいているということであります。

鈴木(義)委員 例えば、地元でもあったんですけれども、防災無線を使って、小学生の子供たちが下校するときに、地域の皆さん、私たちを見守ってくださいとアナウンスをかけたら、うるさくてしようがないから、市役所に電話をかけて、爆弾を仕掛けるぞと言って、事件になってしまったんです。じゃ、そういった人たちのその苦情みたいなものが、多様性という言葉で受け止めちゃっていいのかどうかということですね。

 それとあともう一つ、一人だけの意見で、例えば、市役所に苦情が行きました、イベントを中止しろ、うるさくてしようがない、俺は夜仕事して昼間寝ているんだからやめろ。ああ、そうですか、じゃ、そういう苦情があったんだからやめましょうと。これも多様性なのか。一人の意見を多数の意見として取り扱ってしまって、大多数の人が不利益を被るようなことがあっては、私はならないんだと思うんですね。

 だから、そういったときには、やはり法務省のトップとして、一つの事例が上がったときに、いや、これはこういう見解ですよということを情報発信していかないと、例えば、昔、お客様は神様ですというのがすごくはやって、お客様は神様なんだから、何を言われてもじっと我慢するんだ。それが、今日ではカスハラになっていくわけですね。お店でチョンボをやったがために、店長を、土下座しないと駄目だ。それが映像で流れて大騒ぎになったのも記憶に新しいと思うんですけれども。脅迫罪があって、強要罪があって、私は強要罪に該当するかなと。そこまで相手の尊厳を踏みにじるようなことをさせることが、この社会でいいのか。

 ただ、一つの言葉が独り歩きしていって、いろいろな形で社会が盛り上がってしまって、それが一つの新しい価値みたいな形になってしまうと、見誤ってしまうんじゃないか。だから、先ほどお尋ねした正義だとか多様性をどう捉えるというところにつながっていくんですけれども、御所見をいただければありがたいなと思います。

齋藤(健)国務大臣 今の鈴木委員の経験されたようなことは、私の地元でも時々あることであります。例えば、保育園などの開設計画が、近隣住民から園児の声がうるさいといったことで断念に追い込まれるみたいなケースも実際にあるわけであります。

 このような状況は、私は、言うならば個人と地域社会の利害が対立するということになってくるわけでありますので、一つ一つケースが違うので一つ一つのことは言えませんが、一般論として言えば、その線引きはそれぞれ具体的な事情を勘案した上で考えられるべきものなんだろうと思っていますが、私が、先ほども申し上げたように、我が国社会が、一人一人がお互いを尊重し合える社会、そしてルールの下で共に幸せに生きていける社会となること、これが重要だと考えているものですから、先ほど鈴木委員がおっしゃったようなケースは、そういう意味で、私が考えている多様性には該当しないんじゃないかなというふうに思っています。

鈴木(義)委員 今のに関連してですけれども、法の支配ということで、立法は国会ですから、法律を作っていくんですけれども、意外とやはり、地元でいろいろなお話を聞いたり要望をいただく中で、法律では処置できない、解決できないことが増えてきているんじゃないかなと思うんですね。

 じゃ、それを新しい立法をすることによって解決できるかというと、感情的なものであったり。それは一人一人が、今大臣がお答えになったように、尊重し合う社会にすればいざこざもないんだろうといいながらも、やはり人は感情の動物だから、そこのところを法律でぴっと線を引いたから、じゃ、みんな豊かに暮らせるかといったときに、難しい事象が増えてきてしまっているような時代なのかなと思うんです。

 例えば、去年も予算委員会で質問をしたときに、今だけ、自分だけ、お金だけだと。なおかつ、学校現場で何を教えているかといったら、自分らしく生きろと。自分らしく生きろというのは否定するものじゃないんですけれども、裏返して考えれば、好きなことはやるけれども嫌いなことはやらないというふうにも捉えられるんです。自分らしく生きろ、自分のやりたいことはやるけれども。でも、それで社会規範が保たれるかといったら、嫌なことでもルールだったら守らなくちゃいけないだろうというのを、やはり社会の中で一つの価値形成をしないと、感情と感情のぶつかり合いになってしまって、近隣住民とのトラブルだとか、自分の感情で苦情だけを言って、それに呼応するような形で行政が対応するというのが、本当に住みやすい社会なのかといったときに、私は違うんじゃないかと思うんですけれども、もう一回だけ、御答弁。

齋藤(健)国務大臣 おっしゃるように、私の地元なんかでも、例えば自治会で何かやろうとしたときに、なかなかまとまらないで、前へ進まない、これは法律ですかと言われると、それはそうじゃないんだろうと思います。

 繰り返しになるんですけれども、私は、やはり我が国社会が、一人一人がお互いを尊重し合える社会、そして一定のルールの下で共に幸せに生きていく社会ということを前提にして、こういうものが話合いでスムーズに前へ進むように、そのためには、いろいろ道徳ですとかそういう基本的なものも必要になってくるんだろうと思いますけれども、そういう形で、基本的には我が国社会がそういう社会になるように努めていくということになるんですかね、恐らく。

鈴木(義)委員 なかなか難しいし、解決するすべがあるかなと思うんですけれども、地域コミュニティーがやはり崩れてきちゃっているんだと思うんですね。

 結局、自治会だとか町会も、役員をやれと言えば、私は町会、自治会をやめます、PTAも一緒です、消防団も一緒。地域に今まで、当たり前のようにというわけじゃないんですけれども、ボランティアをやっていただいた、崇高な考え方を持って地域社会で貢献をしてくれた人がいっぱいいたんですけれども、それがもう崩れ始めています。それをどう直していくかということが一番課題だと思うんですが、是非この後も議論ができればなというふうに思います。

 昨年の四月にも法務委員会でお尋ねをしたんですけれども、大臣は所信の中で、再犯防止に向けた取組について、国、地方公共団体、民間協力者が一体となって息の長い支援が可能となるよう、保護司などの民間の方々の活動を支援するというふうに述べられているんですね。

 私の地元で保護司の活動をされている方の聞き取りをしたときに、やはり、ボランティアで自分で自腹を切っていろいろなことを、自分の担当者に対して説明をしたり、対応したりしているんです。今年の予算で、昨日説明を受けたんですけれども、共生社会云々といったときに、そこにざくっとした金額の予算が掲示されているんですけれども、保護司の活動をサポートしますと昨年も答弁していただいたんですけれども、じゃ、今年幾ら増やすことができたのか。じゃ、一人当たりにして、今まで出していた金額に五千円増えたのか一万円増えたのか、活動費としてですね。その辺、もし分かれば、担当の方で結構ですから。

宮田政府参考人 お答え申し上げます。

 保護司の負担軽減ということに関しまして、令和五年度予算に、まず一つ、事務補佐員を活用した保護司会への支援というものを計上してございます。これは、保護観察所それぞれに、五十三人になりますけれども、事務補佐員を配置しまして、保護司会運営で一番手間のかかる会計事務等を支援するスタッフを置いて保護司を支援しようとするものでありまして、約九千五百万円新しく計上させていただいております。

 それと、保護司活動の中のデジタル化も進めているところでございまして、現在、保護司専用ホームページというのを開発して、保護司さんの活動を支援しているわけですけれども、現在、タブレットを保護司会に四百四十三台お配りしているんですが、これを追加で更に四百四十三台、合わせて八百八十六。保護司会といいますのは全国に八百八十六ありますので、全保護司会に行き渡るような追加の予算を計上させていただいております。これが令和五年度で五千七百万円でございます。

 そのほか、保護司の社会的認知度の向上であるとか、新規の予算もまた計上して、保護司活動を支援したいと思っております。

鈴木(義)委員 そうしますと、今御答弁いただいて、個人的にその活動をサポートというより、費用に関わるところは、今回の令和五年度のときには、今の事務局的な経費だとか、タブレットを配付したということで、個人個人には活動費にプラスアルファするということはしていないということですね。

宮田政府参考人 お答え申し上げます。

 委員御指摘のところは、例えば保護観察を担当いただいたときのケースで、例えば、現在ですと、通常ですと一月当たり四千四百六十円をお支払いしていて、特に、手間がかかったと言うとちょっと語弊がありますけれども、非常に熱心に取り組んでいただいたような場合には、特別ということで一月当たり七千六百六十円、そういったような補導費という形で保護司さんにお支払いしているわけですけれども、これについては増額というのは今回ございません。

鈴木(義)委員 例えば、面接をしますとか、月に一回とか二回とかされていると思うんですけれども、これだけ燃料代が上がってきちゃうと、この中でやりくりできるのかということもありますよね。

 だから、そこのところはやはり、保護司のなり手もそんな、こう増えているわけじゃないから、どっちかというと、ちょっと御辞退するよという人の方が多い話も聞くし、後任の保護司を選任するのもなかなか受け手がいない。こういう状況の中で、もう少し活動する環境を整えてあげないと、大臣が所信で述べていた、再犯防止に向けた取組、息の長い支援ということにつながっていかなくなっちゃうんじゃないかということなんです。

 九千五百万、予算を割いてもらったとしても、でも、法務省の全体の予算は少なくなってきているわけですよね。トータルでは令和四年よりも令和五年の方が少ないわけですから、そういったところを、じゃ、どうするのと聞かれたときに、ここまで頑張ってやっていますと言いながらも、やはり拡充をしてもらわないと、なり手がどんどんどんどん減ってしまうんじゃないかと思うんです。

 次に移りますから、後でまた議論させてもらえればと思うんですけれども。

 高度、複雑化する法務、司法制度を支える人材育成について、関係機関と連携するというのは確かにいいことなんですけれども、前任の牧原先生が質問したのとは若干違うんですけれども、結局、科学技術だとか医学、薬学とか、そういう俗に言う理系、理系と言うのは余り私は好きじゃないんですけれども、技術に関わるところの案件が複雑怪奇になってきていると思うんです。それを、裁判員の方なのか、いろいろな事務も含めて、法務省の中でもそうなんでしょうけれども、結局、そういう人材を増やしていく努力をしていかないと、実際裁判になったときに、よく分からないよというのでは、ジャッジできないんじゃないかと思うんです。

 ですから、例えば、先ほども、三年の二年とかといって、法科大学院の話もありましたけれども、じゃ、司法試験が通りました、普通のトレーニングじゃなくて、そこから、物理ができるとか、医学ができるとか、生物ができるとか、そういうコースもつくっていかないと、この人材育成につながっていかないんじゃないかという考え方です。それを一つの、ルーティンというのかな、制度として、法曹界の中でつくっていかないと、いつになっても、技術者の視点から見たときの今の裁判の対応、しづらいんじゃないか。

 高等技術裁判所というのはあるのは承知しているんですけれども、全部が全部そこに持っていかれるわけじゃなくて、地裁でも、一番最初は、損害賠償だとか、民事でやる、そういうことがもう起こっているわけですから、それに対応する人材をやはり育成していくのが大事ではないかと思うんですけれども、御答弁いただければありがたいんですけれども。

竹内政府参考人 お答えいたします。

 委員御指摘のとおり、複雑化、高度化する法的需要に対応するためには、いわゆる理数系を始めとした、法律以外の分野を学んだ者を含めまして、多様なバックグラウンドを有する層の厚い法曹を確保することが必要であるという認識をしております。

 こうした中で、近年、法曹志望者数が減少してきたことについては重く受け止めているところでございまして、より多くの有為な人材が法曹を志望するような環境整備をしていかなければならないという認識でございます。

 先ほども副大臣から御答弁ございましたが、そのために、いわゆる3+2という制度が今年からスタートをすることになりますので、法務省といたしましては、引き続き関係機関とも連携しながら、法科大学院教育の一層の充実のための支援ですとか、3+2の制度の更なる周知とともに、法曹の魅力や、あるいは委員御指摘のような幅広い分野での活躍についての積極的な情報発信など、より多くの有為な人材が法曹を志望する環境づくりに向けて全力で取り組んでいきたいと考えております。

鈴木(義)委員 情報発信するんじゃなくて、やはり仕組みとしてつくっていかないと駄目だと思うんですね。

 例えば、医学部で医者の免許を取って、自分が、大学病院で働くのかどこの病院で働くか分かりませんけれども、自分の専門科目というのは、医師免許を取った後に、結局、内科、外科だとか小児科だとかと、こうなっていくわけじゃないですか。だから、それと同じような、そこで二年でも三年でもまたトレーニングできるような仕組みをつくらないと、情報だけ出しますから有為な人材来てくださいというだけではつくれないだろうということなんです。

 今、頑張りますという答弁はもらえないんでしょうけれども、でも、それを喫緊のうちにつくっていかないと、要するに、司法のことは分かるけれども、技術は全然分からない、じゃ、誰か参考人で呼んだときに、アドバイスをもらってそれを基にしてといったときに、そのアドバイスをもらったときの知見自身も自分の中にないと、言っていることが分からないんじゃないかということですね。

 これからいろいろな国等ともっと活発に貿易をしていく形になれば、相手が外国の企業だったり外国人だったりするわけです。日本で働いている外国人、外国の企業もありますから。そこと裁判になったときに、技術的な視点がなければジャッジできないだろうという考え方。是非御検討いただければなというふうに思います。

 それともう一つ、これも去年の法務委員会で私が提案して、大臣がそれを酌んでくれたのかなと思って読んだんですけれども、区分所有法の検討についてなんですね。

 去年質問したときに、昭和三十八年に作った法律が、当時は一棟の中で十軒とか二十軒の世帯を一つの想定で作った法律だったんだそうです。今は五百軒とか千軒、二千軒、大世帯のマンション、タワーマンションもそうです。じゃ、それが七十年使えるのか、八十年使えるのかと尋ねても、分からないとみんな言う。でも、どこかでエンドが来る。エンドが来たとき、誰が、じゃ、その解体費用を出すのかというのを、約六十年もたっちゃっているんです、だから、今準備しないと。全部税金で、代執行でできるわけじゃないんだと思うんです。それの準備をしていく。例えば補償金に代わる積立金を裁判所なら裁判所に積み立てるとか、そういう制度を、答申をもらうならもらってもいいんですけれども、もっとスピード感を持って制度設計していく時期に来ていると思うんですけれども、御決意を大臣にお尋ねしたいと思います。

齋藤(健)国務大臣 建物の老朽化と区分所有者の高齢化、こういったものを背景として、区分所有建物の所有者不明化や区分所有者の非居住化といったものも進行してきておりまして、区分所有建物の管理、再生の円滑化等に向けた区分所有法制の見直しを図ることは極めて重要な課題になってきていると認識しています。

 関係閣僚会議の基本方針というものにおきましては、令和四年度中、できるだけ速やかに論点整理を取りまとめ、法制審議会への諮問などの措置を講ずるということとされていたところでありますので、これを踏まえて、法務省としても検討を加速し、昨年九月に、論点整理の取りまとめを受けて、法務大臣から法制審議会に対し、区分所有法制の見直しに関する諮問を行ったところであります。

 法制審議会におきましては、区分所有法制部会を設置し、同部会においては、昨年十月からもう五回の会議が開催されておりまして、急ピッチで精力的に調査審議が進められているところです。

 区分所有法制の見直しに関する答申や法案提出の時期については、まだ法制審議会で議論をされている最中ですので、いつということは申し上げることができないんですけれども、ただ、課題の緊急性を鑑みて、スピード感を持った、充実した審議に期待をしているところであります。

鈴木(義)委員 以上で終わります。ありがとうございました。

伊藤委員長 次に、本村伸子君。

本村委員 日本共産党の本村伸子でございます。どうぞよろしくお願いを申し上げます。

 今日は国際女性デーということで、日本は、とりわけ政治の分野、そして経済的な分野で男女の格差があり、ジェンダー平等が遅れております。この格差を是正をし、そして、性別に関係なく、誰もが尊厳を持って自分らしく生きていくことができる、そうしたジェンダー平等に向けて、私も全力を引き続き尽くしていきたいというふうに決意を新たにしております。そのことを表明いたしまして、通告に従いまして質問をさせていただきたいというふうに思います。

 まず、名古屋刑務所職員による暴行、不適正処遇事件についてお伺いをしたいと思います。

 昨年八月、名古屋刑務所の刑務官一人が受刑者一人にけがを負わせた事件が発生をし、そして、調査を進めたところ、刑務官二十二名が三人の受刑者に対して暴行を繰り返し、顔や手をたたくなどの暴行が百七件、土下座をさせるなどの不適正な処遇が三百五十五件の、合わせて四百六十二件、確認されたということです。

 昨年三月には、受刑中に亡くなられた受刑者の御遺体に傷痕が多数残っていたということで、御遺族が第三者委員会に対して調査を求めている事件もございます。

 名古屋刑務所は、過去にも深刻な死亡事件がありました。二〇〇一年、当時の副看守長などが消防用のホースを使って受刑者の肛門に放水し、直腸などが裂け、そして傷を負った受刑者が細菌性のショックで亡くなられるという事件がありました。そして、二〇〇二年には、刑務官などが、受刑者の腹部を革手錠つきのベルトで締めつけ、外傷性ショックで死亡させるという事件がございました。

 今回の名古屋刑務所の事件を受けて、過去の事件を調べようということで、二〇〇三年三月に開示をされました被拘禁者に関わる死亡帳、視察表、カルテ、保護房動静記録、これを出してほしい、また、死亡帳調査班による中間報告と最終報告の提出を求めたところ、破棄したという報告を受けました。法務省の中でも、重要な資料が廃棄をされております。

 そこで、お伺いしますけれども、資料が開示になった経緯、そして死亡帳調査班ができ、報告が出された経緯、そして廃棄をした経緯、この点を法務省にまず確認をさせていただきたいと思います。

花村政府参考人 お答え申し上げます。

 その前に、名古屋刑務所職員による暴行、不適正処遇事案の発生につきまして、極めて重く受け止めておるところでございます。誠に申し訳ございません。

 当時、国会に提出いたしました死亡帳や死亡帳調査班の調査結果などの一連の文書につきましては、現在保有しておりません。確認できました範囲で申し上げれば、過去の名古屋刑務所における受刑者死傷事案を契機に、全国の行刑施設における過去十年間の被収容者死亡事案の死亡帳の写しや、死亡原因に疑わしい点があると指摘がなされた事案に係る診療録や視察表などの写しを国会に提出したものと承知をしております。

 お尋ねの死亡帳調査班につきましては、多数の被収容者死亡事案について死亡原因に疑わしい点があると指摘がなされたことなどを踏まえまして、職員による違法な暴行により死亡した疑いがないかを調査するため、法務省に設置されたものと承知をしております。

 死亡帳調査班におきまして、死亡帳のほか、診療録を含む死亡被収容者の身分帳簿などの精査や、職員からの事情聴取、法医学専門医等からの意見聴取を実施した結果を取りまとめ、当時、公判係属中であった名古屋刑務所の事件を除き、全件につきまして刑務官等の違法な暴行によって被収容者が死亡した疑いはないものと判断されたものと承知してございます。

 御指摘の文書をいつ廃棄したかについては、記録がないため確認することはできませんが、一般論として申し上げれば、定められた保存期間を経過した行政文書は、国立公文書館に移管する場合を除き、廃棄することとなっております。

 以上でございます。

本村委員 法務省でも重要な資料がこうして廃棄をされているというのは大問題だというふうに思います。

 この死亡帳が公開されたのは、元々、法務省の矯正局長の国会答弁において、各刑務所で死亡した受刑者について取りまとめられた資料はないという虚偽説明を行っていたということが発覚をし、そして法務委員会から死亡帳全体の開示を求められた。ほかの資料も、参議院の法務委員会の要求によって開示をされたものでございます。

 この名古屋刑務所の死亡事件というのは、国会を揺るがし、従来の監獄法を抜本的に改正をして刑事施設及び受刑者の処遇等に関する法律に至る大事件だったわけです。それに関わる資料が廃棄をされたというのは大問題ではないですか。法務大臣、お答えください。

齋藤(健)国務大臣 行政文書をその保存期間において適切に保存し管理することは重要なことだと認識をしております。

 今局長が説明したとおり、お尋ねの死亡帳などの資料は、当時、死亡帳調査班による検証が行われ、その調査結果については、第三者の有識者による行刑改革会議で徹底した御議論を既にいただいたものと承知をしています。

 なお、行刑改革会議の資料については、国立公文書館に移管し現在も保管されているほか、行刑改革会議の議事録や配付資料については、現在も法務省のホームページに掲載をしているところでございます。

本村委員 じゃ、大臣は、これは問題じゃないというふうにお考えなんでしょうか。

花村政府参考人 お答え申し上げます。

 当時は、情報公開法等に基づき文書を保存しておりまして、現在、お尋ねの文書は保有していないところでございます。

 もっとも、委員御指摘の資料に関連して申し上げれば、例えば、死亡帳調査班の調査の概要でございますとか、当時の国会での御指摘につきましては、行刑改革会議第五回の資料として法務省のホームページに公表されており、ここに一定程度の情報が整理されておるというふうなところでございます。

本村委員 やはり、写しに関して、廃棄されたということは大問題だというふうに思っております。原本、写し、大問題だというふうに思っております。

 被拘禁者に関わる死亡事件、重大事件の資料は、保存し、後々にも検証できるようにするべきではないかというふうに思いますけれども、大臣、いかがでしょうか。

齋藤(健)国務大臣 刑事施設において被収容者が死亡した際には、規則及び訓令に基づいて、医師の立会いの下で検視を行い、自殺又は犯罪による死亡の疑いがないと断定できない場合には、検察官及び司法警察員に対して通報するということとされています。

 また、刑事施設における死亡事案は、今述べた刑事施設の長の検視の結果にかかわらず、各矯正管区が毎月、全件公表しているところであるところです。

 なお、平成十五年の通達によりまして、被収容者の死亡後、上級庁に報告する文書である被収容者死亡報告につきましては、保存期間が三年から十年に延長をされております。

 今後とも、刑事施設がこれらの過程で作成又は取得した行政文書については、公文書管理法に基づき適切に管理してまいりたいと考えております。

本村委員 刑事施設被収容者の方々、被拘禁者の方々が亡くなられたことに対して、やはり重く受け止めないといけないというふうに思うんですよ。後からしっかりと検証できる資料はしっかりと残しておかなければいけないというふうに考えております。

 今回の名古屋刑務所職員による事件に関してですけれども、二〇一九年度―二〇二二年度で、名古屋刑務所の視察委員会が様々な問題で実情調査の依頼をしておりました。

 実情調査の依頼総数、職員の言動関係など、何件あったのか、それぞれお示しをいただきたいというふうに思います。

花村政府参考人 お答え申し上げます。

 お尋ねの、名古屋刑務所視察委員会が名古屋刑務所長に対して施設運営の実情について調査依頼をした件数、またその内訳につきましては、以下のとおりでございます。

 令和元年度の実情調査の依頼件数は二百二件、うち職員の言動に関するものが四十七件、その他のもの、食事や物品、設備等に関する要望などでございますが、百五十五件。

 令和二年度の実情調査の依頼件数は二百六件、うち職員の言動に関するものが二十七件、その他のものが百七十九件。

 令和三年度の実情調査の依頼件数は百七十九件、うち職員の言動に関するものが五十四件、その他のものが百二十五件。

 令和四年度は、十二月のものまででございますが、実情調査の依頼件数は百十九件、うち職員の言動に関するものが二十三件、その他のものが九十六件でございます。

本村委員 元々、名古屋刑務所の視察委員会も、職員の言動の関係で調査をしてほしいということで依頼をしていたわけです。結構、暴力、言動の暴力ですとか、言葉による暴力ですとか、そうしたことがあったわけですけれども、暴力を防げなかったという問題があります。

 資料の一に今のおっしゃっていただいた数字があるんですが、次にめくっていただきまして、資料の二のところにございますように、二〇二〇年度、二〇二一年度、名古屋刑務所視察委員会は名古屋刑務所長に対して、所内での調査では限界があるため、客観的な第三者による調査等、一定の対策を講じることを求める意見を出していたということですけれども、そのような意見はどう対応されてきたのでしょうか。

花村政府参考人 お答えいたします。

 名古屋刑務所視察委員会は、令和二年度及び令和三年度におきまして、名古屋刑務所長に対し、職員の言動関係の実情について、所内での調査では限界があるため、客観的な第三者による調査等、一定の対策を講じることを求める意見を出していたものと承知をしております。

 名古屋刑務所は、当該意見を受けまして、全職員を対象に、被収容者に対して指示、指導等を行う際は、常に厳正な勤務姿勢を保持しつつ、感情的にならずに、相手の人権に配慮した対応を行うよう研修等を行っているものの、第三者による調査は実施していなかったものと承知をしております。

本村委員 視察委員会の指摘をやはり実行してこなかったわけですね、法務省が。

 今後、名古屋刑務所視察委員会からの意見のように、刑務所内の調査には限界があるということで、客観的第三者による調査を行うべきだというふうに思いますけれども、大臣、いかがでしょうか。

齋藤(健)国務大臣 刑事施設視察委員会は、それぞれの刑事施設に置かれていて、その施設の運営に関して刑事施設の長に対して意見を述べ、施設運営の向上に寄与する重要な役割を担っていると考えています。

 名古屋刑務所視察委員会から重ねて貴重な御意見をいただきながら、今回の名古屋刑務所における一連の暴行、不適正処遇事案を発生させたことは、その意見を施設運営に適切に反映できていなかったと言わざるを得ず、誠に遺憾であります。

 刑事施設視察委員会制度や被収容者を救済する仕組みの在り方についても、現在、名古屋刑務所職員による暴行・不適正処遇事案に係る第三者委員会、ここで御検討をいただいているところでありますので、その結果を踏まえて適切に対応してまいりたいと考えています。

本村委員 是非、視察委員会のこの意見については重く受け止めていただきたいというふうに思います。

 刑事施設ではないんですけれども、入管施設で、ウィシュマさんは、二〇二一年一月二十八日、外部の病院に連れていってほしいと泣きながら訴えたんですけれども、聞いてもらえず、一月三十日に入国者収容所等視察委員会に対して手紙を投函をいたしました。にもかかわらず、開封されたのは、ウィシュマさんが亡くなった後の三月八日、二年前の今日でございました。

 刑務所などの刑事施設でも、手遅れということがあってはなりません。被拘禁者の視察委員会への手紙の開封の頻度も、二か月に一回ということではなく、もっと短くするべきだというふうに考えますけれども、大臣、いかがでしょうか。

齋藤(健)国務大臣 刑事施設視察委員会は、刑事施設の運営に関して刑事施設の長に意見を述べるものであり、個別の救済は、別途、各種の不服申立て制度が用意されているところであります。

 もっとも、刑事施設視察委員会は、当該施設の視察、被収容者との面接、被収容者から提出された意見、提案書などによりその実情を把握し、実務上必要な場合には、刑事施設の長に対して説明を求めることなどを通じ、被収容者に対する不適切な処遇の防止に資する役割を果たしていると承知しています。

 刑事施設視察委員会の運営の在り方はもとより、被収容者を救済する仕組みについても、現在、名古屋刑務所職員による暴行・不適正処遇事案に係る第三者委員会で御検討いただいていますので、その結果を踏まえ適切に対応してまいりたいと考えています。

本村委員 是非この点も改善をいただきたいと思っております。

 先ほど来御議論がありますように、三月六日、ウィシュマ・サンダマリさんが亡くなられて二年目の命日でございました。心から哀悼の意を申し上げたいと思います。

 ウィシュマ・サンダマリさんの事件については、資料の三で、経過の資料を出させていただきました。

 大臣には、前回、名古屋入管のウィシュマさんの映像記録について視聴することをお願いを申し上げましたけれども、見るということで約束をしていただきました。先ほど、鎌田議員の質疑に対して、視聴したということでしたけれども。

 資料の四に、私たち法務委員が、理事会の皆さんと有志の皆さんが見た、二回のビデオ、一回目は六時間半、二回目は二十六分ということで、二百九十五時間残っている中で、二回この分、見させていただいた分が表の左になります。それの時間の、右の方なんですけれども、裁判で今度放映される五時間分がどこの部分なのかということで資料を出しております。

 これは、ちょっと分かりにくいんですけれども、実は、九か所ぐらいこの法務委員会で見ていない部分があります。時間を細かく見ていただくと分かると思うんですけれども、九か所ぐらい私どもがまだ見ていないところがあります。

 大臣には、どこの部分を、日時と、何時間ぐらい見たのかというのをお伺いしたいと思います。

齋藤(健)国務大臣 御指摘のビデオ映像に関しては、衆参の法務委員会理事会において閲覧の対象となった映像等について私は閲覧を終えたということでありますが、何日の何時の部分を見たかなど、ちょっとこの場で詳細をお答えするのは困難なんですけれども、令和三年十二月や令和四年三月に衆参の法務委員会理事会において閲覧された映像や、国家賠償請求訴訟に証拠提出された映像についてはしっかり見させていただいております。

本村委員 トータルどのくらい見たということになりますか。

齋藤(健)国務大臣 令和三年十二月二十四日、二十七日に衆参で、国会で閲覧された映像は三百八十七分、そして、令和四年三月二十三日、二十四日に閲覧された映像が二十六分ですので、これを合わせた、三百八十七分プラス二十六分というものは見ているということだと思います。

本村委員 ビデオを見て、二度と起こさせてはならないという決意を先ほども答弁されておられましたけれども、二度と起こさせないために、私たちは引き続き検証をし、そして再発防止策をしっかりとさせなければいけないというふうに思っております。

 先ほど、この出入国在留管理庁の、四の資料なんですけれども、時間のところで細かく見ていただくと、九か所ぐらい法務委員会では見ていないビデオが書かれているんですが、ちょっと誤解を与える表だというふうに思いますので、また分かりやすい表を出し直していただきたいということもお願いを申し上げたいと思います。

 いまだに、ウィシュマさんに関わる資料で開示をされていないものが幾つもございます。国会には真相を究明する責任があると私は考えておりますけれども、資料の五につけさせていただきましたけれども、以下の資料について国会に提出をしていただきたいというふうに思っております。先ほども、入管に過失がないというなら全映像を出してそのことを証明するはずだ、それができないのだから隠すのではないかという御議論もございましたけれども。

 一番目には、名古屋入管のウィシュマさんの全映像記録。二番目は、二〇二一年一月三十日に入国者収容所等視察委員会宛てにウィシュマさんが投函した手紙。三つ目は、看守勤務日誌。四つ目が、看守業務概況。五つ目が、カウンセリングメモ。六番目が、診療等を受ける被収容者を収容区ごとに記載したメモ、リスト。七番目が、被収容者診療簿。八つ目が、診療結果報告書。九番目が、被収容者申出書。十番目が、投与記録。十一番目が、被収容者らの情報等を記載したメモ。十二番目が、引継ぎ簿。十三番目が、被収容者面会簿。十四番目が、A氏との面会状況等に関する看護師作成メモ。十五番目が、A氏と支援者らの面会時の言動が書かれた記録、録画、録音などの資料など、ウィシュマさんに関する出入国在留管理庁が持っている一切の資料。

 出していただきたいと思いますけれども、いかがでしょうか。

西山政府参考人 御指摘の資料には、ウィシュマさんやそのほかの被収容者、関係者等のプライバシーに関わる情報や、収容施設における保安上の支障等を生じさせ得る情報等、情報公開法上の不開示情報に該当する情報が含まれております。

 また、本件につきましては国家賠償請求訴訟が係属中であり、訴訟係属中の事案に関する事柄の詳細を国会で明らかにすることは、司法への影響に鑑み、基本的には差し控えるのが適当であると考えているところでございます。

本村委員 大臣、公表してください。

齋藤(健)国務大臣 組織として答弁をさせていただいておりますので、局長の答弁と同旨でありますけれども、基本的に差し控えるということでありますが、国会における資料の閲覧については、国会の御判断が示された場合には適切に対応していくということであります。

本村委員 今大臣が言われましたように、国会が出させるという意思を示せば、私たちはチェックをすることができるわけです。ですから、是非、出させて、国会でチェックをさせていただきたい。

 委員長、是非、この資料を出させていただきたいと思いますけれども、委員長、お願いしたいと思います。

伊藤委員長 ただいまの件については、理事会にて協議をいたします。

本村委員 是非お願いをしたいというふうに思います。

 ウィシュマさんの命を救う機会は何度もあったと私は考えております。そのことをまた議論させていただきたいんですけれども、昨日、入管法の改悪法案が国会に提出をされました。今よりも深刻な人権侵害を引き起こす、最悪のケースでは、強制的に帰国をさせられて、結果的に命が奪われるのではないか、性暴力や暴力に遭う危険性が高くなってしまうのではないかという懸念の声が広がっております。この入管法案は廃案にするべきです。

 大臣は、真に庇護するべき方々をより確実に保護する制度を早期に整備と言いますけれども、真に庇護すべきではないと恣意的に判断をされ、命や尊厳、暮らしが奪われることは人道上あってはならないというふうに思います。まずやるべきことは、自由権規約九条四項の規定に沿って、入管施設に収容が必要かどうかを入管以外の裁判所が審査する仕組みをつくるべきです。大臣、まずこれをやるべきです。

齋藤(健)国務大臣 私ども、改悪とは全く考えておりませんので、今御指摘の点も含めまして、国会で健全な議論がなされることを御期待申し上げます。

伊藤委員長 本村伸子君、時間が参りました。

本村委員 人権を守る役割を是非法務大臣が果たしていただきたいということを強く求め、質問を終わらせていただきます。

 ありがとうございました。

     ――――◇―――――

伊藤委員長 次に、内閣提出、裁判所職員定員法の一部を改正する法律案を議題といたします。

 趣旨の説明を聴取いたします。齋藤法務大臣。

    ―――――――――――――

 裁判所職員定員法の一部を改正する法律案

    〔本号末尾に掲載〕

    ―――――――――――――

齋藤(健)国務大臣 裁判所職員定員法の一部を改正する法律案について、その趣旨を御説明いたします。

 この法律案は、近年の事件動向及び判事補の充員状況を踏まえ、判事補の員数を減少するとともに、裁判所の事務を合理化し、及び効率化することに伴い、裁判官以外の裁判所の職員の員数を減少しようとするものでありまして、以下、その要点を申し上げます。

 第一点は、近年の事件動向及び判事補の充員状況を踏まえ、判事補の員数を十五人減少しようとするものであります。

 第二点は、裁判官以外の裁判所の職員の員数を三十一人減少しようとするものであります。これは、事件処理の支援のための体制強化及び国家公務員のワーク・ライフ・バランス推進を図るため、裁判所事務官を三十九人増員するとともに、他方において、裁判所の事務を合理化し、及び効率化することに伴い、技能労務職員等を七十人減員し、以上の増減を通じて、裁判官以外の裁判所の職員の員数を三十一人減少しようとするものであります。

 以上が、裁判所職員定員法の一部を改正する法律案の趣旨であります。

 何とぞ、慎重に御審議の上、速やかに御可決くださいますようお願い申し上げます。

伊藤委員長 これにて趣旨の説明は終わりました。

 次回は、公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。

    午後四時二十四分散会


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