衆議院

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第4号 令和5年3月29日(水曜日)

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令和五年三月二十九日(水曜日)

    午前九時開議

 出席委員

   委員長 伊藤 忠彦君

   理事 谷川 とむ君 理事 藤原  崇君

   理事 牧原 秀樹君 理事 宮崎 政久君

   理事 鎌田さゆり君 理事 寺田  学君

   理事 沢田  良君 理事 大口 善徳君

      東  国幹君    五十嵐 清君

      石橋林太郎君    岩田 和親君

      奥野 信亮君    加藤 竜祥君

      熊田 裕通君    鈴木 馨祐君

      田所 嘉徳君    高見 康裕君

      中曽根康隆君    鳩山 二郎君

      平口  洋君    深澤 陽一君

      山下 貴司君    鈴木 庸介君

      中川 正春君    山田 勝彦君

      吉田はるみ君    阿部 弘樹君

      漆間 譲司君    日下 正喜君

      平林  晃君    鈴木 義弘君

      本村 伸子君

    …………………………………

   法務大臣         齋藤  健君

   法務副大臣        門山 宏哲君

   経済産業副大臣      太田 房江君

   法務大臣政務官      高見 康裕君

   会計検査院事務総局第五局長            宮川 尚博君

   最高裁判所事務総局刑事局長            吉崎 佳弥君

   最高裁判所事務総局家庭局長            馬渡 直史君

   政府参考人

   (警察庁長官官房審議官) 親家 和仁君

   政府参考人

   (法務省大臣官房政策立案総括審議官)       上原  龍君

   政府参考人

   (法務省大臣官房サイバーセキュリティ・情報化審議官)           押切 久遠君

   政府参考人

   (法務省民事局長)    金子  修君

   政府参考人

   (法務省刑事局長)    松下 裕子君

   政府参考人

   (法務省矯正局長)    花村 博文君

   政府参考人

   (法務省保護局長)    宮田 祐良君

   政府参考人

   (法務省人権擁護局長)  鎌田 隆志君

   政府参考人

   (出入国在留管理庁次長) 西山 卓爾君

   政府参考人

   (厚生労働省大臣官房危機管理・医務技術総括審議官)            浅沼 一成君

   政府参考人

   (厚生労働省大臣官房審議官)           大坪 寛子君

   政府参考人

   (厚生労働省大臣官房審議官)           森光 敬子君

   政府参考人

   (厚生労働省社会・援護局障害保健福祉部長)    辺見  聡君

   政府参考人

   (経済産業省大臣官房審議官)           藤本 武士君

   政府参考人

   (防衛省大臣官房衛生監) 鈴木 健彦君

   法務委員会専門員     白川 弘基君

    ―――――――――――――

委員の異動

三月二十九日

 辞任         補欠選任

  岩田 和親君     中曽根康隆君

同日

 辞任         補欠選任

  中曽根康隆君     岩田 和親君

    ―――――――――――――

三月二十九日

 仲裁法の一部を改正する法律案(内閣提出第二八号)

 調停による国際的な和解合意に関する国際連合条約の実施に関する法律案(内閣提出第二九号)

 裁判外紛争解決手続の利用の促進に関する法律の一部を改正する法律案(内閣提出第三〇号)

同月十六日

 刑務所の名称変更に関する請願(末松義規君紹介)(第三三三号)

 国籍選択制度の廃止に関する請願(近藤昭一君紹介)(第三三四号)

 元々日本国籍を持っている人が日本国籍を自動的に喪失しないよう求めることに関する請願(近藤昭一君紹介)(第三三五号)

同月二十八日

 国籍選択制度の廃止に関する請願(枝野幸男君紹介)(第五七四号)

 元々日本国籍を持っている人が日本国籍を自動的に喪失しないよう求めることに関する請願(枝野幸男君紹介)(第五七五号)

は本委員会に付託された。

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 会計検査院当局者出頭要求に関する件

 政府参考人出頭要求に関する件

 仲裁法の一部を改正する法律案(内閣提出第二八号)

 調停による国際的な和解合意に関する国際連合条約の実施に関する法律案(内閣提出第二九号)

 裁判外紛争解決手続の利用の促進に関する法律の一部を改正する法律案(内閣提出第三〇号)

 裁判所の司法行政、法務行政及び検察行政、国内治安、人権擁護に関する件


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     ――――◇―――――

伊藤委員長 これより会議を開きます。

 裁判所の司法行政、法務行政及び検察行政、国内治安、人権擁護に関する件について調査を進めます。

 この際、お諮りいたします。

 各件調査のため、本日、政府参考人として警察庁長官官房審議官親家和仁君、法務省大臣官房政策立案総括審議官上原龍君、法務省大臣官房サイバーセキュリティ・情報化審議官押切久遠君、法務省民事局長金子修君、法務省刑事局長松下裕子君、法務省矯正局長花村博文君、法務省保護局長宮田祐良君、法務省人権擁護局長鎌田隆志君、出入国在留管理庁次長西山卓爾君、厚生労働省大臣官房危機管理・医務技術総括審議官浅沼一成君、厚生労働省大臣官房審議官大坪寛子君、厚生労働省大臣官房審議官森光敬子君、厚生労働省社会・援護局障害保健福祉部長辺見聡君、経済産業省大臣官房審議官藤本武士君及び防衛省大臣官房衛生監鈴木健彦君の出席を求め、説明を聴取し、また、会計検査院事務総局第五局長宮川尚博君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

伊藤委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

伊藤委員長 次に、お諮りいたします。

 本日、最高裁判所事務総局刑事局長吉崎佳弥君及び家庭局長馬渡直史君から出席説明の要求がありますので、これを承認するに御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

伊藤委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

伊藤委員長 質疑の申出がありますので、順次これを許します。熊田裕通君。

熊田委員 おはようございます。自由民主党の熊田裕通でございます。

 まずは、この発言の機会を与えていただきました理事始め関係の皆様に心から感謝を申し上げたいと思います。

 私は、去る三月十三日に、理事の皆さんと一緒に名古屋の刑務所、そして名古屋入管の視察の機会を得させていただくことができました。まず、刑務所はなかなかお邪魔する機会はありませんでしたが、近いところでありましたが、初めてお邪魔をして、刑務所の中、理事の皆さんと一緒に視察をさせていただきました。

 率直に感じましたのは、刑務所にも、この日本の高齢化がかなり進んでいるんだなということを実感をいたしました。労務をするわけじゃなくて、認知症にならないような、作業というよりも、そういったリハビリをされている姿も拝見をいたしました。

 今回、あってはならない刑務官の暴力事案によってこの視察が組み入れられたわけでありますけれども、私は別に、暴力に対して容認するつもりは全くありませんが、そもそも社会のルールに、守れなくて入っている人たちばかりであります。これから、懲役ではなく禁錮刑、ですから、それぞれの個人に合った指導をして……(発言する者あり)拘禁刑ですね、それぞれの個人に合った指導をして再犯を防いでいく、もう二度と帰ってこないようにするということでありますけれども、そもそもルール、しかも名古屋刑務所は、刑法犯ではなく、割と、俗的に言うととがった人たちがたくさん入っているところであって、この人たちにどう指導していくのか、なかなか難しいことをされなきゃならないんだなということを本当に実感として感じました。

 私は、先ほど申し上げたように、暴力を、今回の事案を容認するつもりはありませんが、最後に、離れるときに、刑務官の責任者の方に私が申し上げたのは、今回の事案は二度とあってはいけないことだと思います、しかし、この事案によって、通常にやっていらっしゃる刑務官の皆さんが萎縮することのないように、胸を張ってしっかりとやってくださいということを申し上げることしか実はできませんでした。本当に、実感として、大変だなということを感じたわけであります。

 もう一つ、その後、名古屋入管の方にもお邪魔をさせていただきました。ウィシュマさんが最後に滞在をされたお部屋も、実際、この目で拝見をさせていただきました。鎌田先生が思わず手を合わされている姿を見て、私も後ろで一緒に手を合わさせていただきました。

 昨年、法務の理事として、ウィシュマさんの最後の六時間以上にわたるビデオも私も拝見をさせていただきました。ちょうど同じぐらいの年齢の娘が私もおりまして、確かにこの入管に入らなきゃならないそれなりの理由はあったにしろ、異国の地で独りでどんな思いでおられたのかな、娘を思い出しながら見ていると、いたたまれない気持ちでありました。

 この事案につきましては、医療的体制や職員の人権意識の問題など、様々なことが指摘をされております。入管庁は、同様の事案の再発防止のために医療体制の強化などの改善策を取ってきており、現場を見て、改善状況に関する説明も受けさせていただきました。現場の職員の皆さんが今回の事案を重く受け止めて、その反省の下で改善に真剣に取り組んでいる姿勢を確かめることもできました。

 三月二十日には、収容に関する改善策の取組状況について、新たな公表がされたと伺っております。今回提出された入管法等改正のこの法案によって、一層確実にこの名古屋入管事案の再発防止がしっかりと図られることができるのか、まずは法務大臣に所見をお伺いいたします。

齋藤(健)国務大臣 私も名古屋入管は視察をさせていただきまして、ウィシュマさんのおられた部屋も見させていただきまして、全く同じ思いを共有させていただきます。

 入管庁では、これまで、名古屋事案の調査報告書で示された改善策を中心に、組織、業務改革に取り組んでまいりましたが、こうした取組により、常勤医師の確保等の医療体制の強化や職員の意識改革の促進など、改革の効果が着実に表れてきていると感じています。

 加えて、今回の改正法案には、例えば、入管収容施設において常勤医師を確保する上で支障となっている、民間医療機関と比較した待遇面での格差を是正するため、現行法における常勤医師の兼業要件を緩和し、柔軟な兼業を可能とする。それから、全件収容主義と批判されている現行法を改め、監理措置を創設し、収容しないで退去強制手続を進めることができる仕組みとした上で、収容した場合であっても、三か月ごとに収容の要否を見直して、不必要な収容を回避する。体調不良者の健康状態を的確に把握して、柔軟な仮放免判断を可能とするために、健康上の理由に基づく仮放免請求については、医師の意見を聞くなどして、健康状態に十分配慮して仮放免に係る判断をするように努めることとするなどの施策を今回の改正法案には盛り込んでいるわけであります。

 現在、入管庁が取り組んでいる組織、業務改革に加え、今回の改正法案により、名古屋事案と同様の事案を防止することが、私はできると確信をしております。

熊田委員 ありがとうございました。しっかり取り組んでいただきたいと思います。

 私は、ちょっと話題を変えて、送還忌避者、この問題について御質問したいと思いますが、これはインターネットを通じて一般の国民の皆さんも聞いていただいているので、基本的なことをお伺いしますので、おつき合いをいただきたいと思います。

 強制退去手続では、強制退去事由があって、本来退去すべき者が残留を希望するという場合は、約七割については、人道上の配慮の観点から在留を特別に許可しているということも伺いました。じゃ、残りの残留を認めなかった人については速やかに送還すべきだと考えておりますが、先日、入管庁がホームページで公表した「現行入管法の課題」でも、殺人や強盗致傷罪などで有罪判決を受け、刑務所出所後に難民認定申請をして、その後も複数回申請を繰り返すなどの事例の記載がございました。

 刑務所での服役後、送還前になって初めて行う難民認定申請などは、送還を免れるためであることが明らかではないかと考えております。このような送還忌避者による難民認定申請は認めるべきではなく、直ちに送還すべきだと考えますが、なぜ送還することができないのか、お答えいただきたいと思います。

西山政府参考人 現行入管法では、我が国で例えば重大犯罪を犯して有罪判決を受けたような者であっても、難民認定申請さえすれば、申請の理由や回数を問わず一律に送還が停止されることとされております。したがいまして、例えば難民認定制度の誤用、濫用が疑われる者についても送還することができない事態が生じているところでございます。

熊田委員 難民認定申請をする限り、回数や理由を問わずに送還できないというお答えだと思っておりますが、本当にこれは一般の国民の皆さんが聞いていて納得できるのか、私はいろいろなことを考えます。また、これらの者の管理が適切に行われていないことも指摘をしておきます。

 一枚目の資料を御覧ください。

 令和三年末で、三千二百二十四名のうち七十九名しか収容しておらず、一方、送還忌避者の中には懲役三年以上の実刑を受けた者のみだけでも三百人以上いるということですから、重大犯罪を犯した者も収容が解かれているということが明らかであります。

 さらに、令和四年の速報値では、収容が解かれた者のうち千四百人が逃亡しているということで、この中には、本来、解くべきではなかった前科を有する者も含まれているということも明らかで、国民が不安を覚えるという事態になっているのではないかと思っております。

 逃亡者数が増えている原因と、この逃亡者数の増加をどう捉えておるのか、お答えください。

西山政府参考人 もとより、仮放免中の逃亡の原因について、個別事案ごとで様々であると考えられまして、増加の原因について一概にお答えすることは困難ではございますが、他方、現行法上では、被収容者の収容を解く手段は仮放免しかないため、実務上、個別の事情に応じて仮放免を柔軟に活用し、収容の長期化等を回避してきたものでございます。

 しかし、この仮放免制度は、本来は一時的に収容を解除する制度でございまして、逃亡等を防止する手段が十分でなく、相当数の逃亡事案等が発生しているところでございます。

熊田委員 逃亡者数が増えていることは見過ごすことがない重大な問題と考えております。また、入管法の課題の事例の中に、これは二枚目の資料になりますが、強制わいせつ致傷罪で四年の実刑判決を受けた者が、刑務所出所後に難民認定申請をして仮放免許可され、その仮放免中に強姦致傷に及んで六年の実刑判決を受けたという記載があります。

 日本で性犯罪を行った者が、仮放免され、再度性犯罪を犯し、なぜいまだに退去させることができないのか。被害者が納得のいく説明ができないと思いますし、今後、この者が再度犯行に及んだら誰が責任を取るのかと考えざるを得ません。先日、法務省に説明を求めましたら、この者はまた仮放免されたということですが、このような者が仮放免されるなど、全く信じることができません。

 地元でこの話題を後援会の皆さんにお話をしたら、非常に皆さんが不思議がって、憤っておられました。個別の事案には答えられないというふうに思いますが、仮にこの方の支援運動があったとしても、毅然とした態度を取ってもらいたいと私も思いますし、私の支持者の皆さんもそのとおりだと言っておられました。

 今回、政府提出の改正法案には、一定の重大前科を有する者を送還停止効の例外の対象とするという規定を設けておると承知しておりますが、私が紹介した強盗致傷などで六年の実刑判決を受けた者が、この政府提出の改正法の規定上、送還停止効の例外に当たり送還できることになるのか、法務省の見解をお答えください。

西山政府参考人 今回の改正法案では、無期若しくは三年以上の拘禁刑の実刑判決を受けた者を送還停止効の例外として規定しておりますため、御指摘の仮放免中に強姦致傷に及んで懲役六年の実刑判決を受けた者はこれに該当することから、送還停止効の例外となり、難民認定申請中であっても送還が可能になります。

熊田委員 ありがとうございました。

 保護すべき者を適切かつ迅速に保護すること、また施設での処遇を適切に行うことは当然であります。私は、重大前科を有しながら難民認定申請を濫用する者など、退去させるべき者については迅速に送還すべきことが日本の国民の皆さんのためになると考えております。

 出入国在留管理は国家主権の最たるものであり、多くの国民は入管に対し、このような者を断固送還してくれることを求めており、正しいことをしていることと必ず理解していただけると思います。

 送還忌避問題の解決に向けた、最後に、大臣の意気込み、決意をお伺いをしたいと思います。

齋藤(健)国務大臣 現行入管法下で生じております送還忌避、長期収容の問題は早期に解決していきたいと考えています。他方で、人道上の危機に直面し、真に庇護すべき方々を確実に保護する、そういった制度の整備もまたやっていきたいと思っています。

 入管制度全体を適正に機能させ、保護すべき者を確実に保護しつつ、ルールに違反した者には厳正に対処、そういうことができる制度とするためには、こうした現行入管法下の課題を一体的に解決する法整備を行うということが必要不可欠であると考えておりまして、そこで、今回の改正法案におきましては、保護すべき者を確実に保護した上で、在留が認められない者については迅速に送還可能とする。また、長期収容を解消し、収容する場合であっても適正な処遇を実施する。そういう考え方の下に、様々な方策を組み合わせ、パッケージで課題を一体的に解決し、外国人の方々の人権を尊重しつつ、適正な出入国在留管理を実現するバランスの取れた制度にしようというものでございます。

 これは、令和三年通常国会に提出した法案について、修正すべき点を修正した上で再提出をしたものでありまして、国会において十分な御審議をいただけるよう必要な説明を尽くしてまいりたいと考えています。

熊田委員 終わります。ありがとうございました。

伊藤委員長 次に、日下正喜君。

日下委員 公明党の日下正喜でございます。よろしくお願いいたします。

 まず、三月十三日の名古屋刑務所の視察に関連し質問いたします。

 昨年十二月、名古屋刑務所において、二〇二一年から二二年の間に暴行を含む四百二十一件の不適正処遇事案があったことが報道されました。約二十年前にも暴行によって三名の受刑者が死傷するという事件があり、旧監獄法の全面改正がなされ、再発防止を誓い、進んできたはずの刑務所において、再び国民の信頼を損ねてしまう事件が起きてしまったことについては大変に遺憾に思います。また、約千名の受刑者を抱え、使命感を持って真摯に働かれている多くの刑務官や職員のことを思うと、大変に残念に思います。

 今回の事案は、受刑者の左まぶた付近にけがを認めた職員が当該受刑者に理由を確認したところ、別の職員に暴力を振るわれた旨を申告したことから発覚し、より詳細に監視カメラ等を用いて調査した結果、次々と不適正処遇が発覚したということでございました。二十年前の教訓が生かされていない状況に憮然たる思いを持ちました。もし監視カメラの映像がなかったとしたら他の事案も表には出なかった可能性があります。

 不適正処遇を行った看守など二十二名のうち、十五名は採用三年未満の若手で、組織的な関与ではなかったこと、また、それらを監督すべき職員も全く認識がなかったと伺いました。

 しかし、会社であれ、団体であれ、その組織風土というものは上層部がつくり出していくものです。認識がないこと自体が問題で、日常的なコミュニケーション不足もあったということですが、上司と部下との日常的なささいな会話や触れ合いの中に、人権感覚、人権意識、受刑者に対する蔑みや憎しみ、本人の不満や不安などがあったとしたら、言葉や表情ににじみ出てくるものだと思います。また、逆に、豊かな人権感覚は上司から部下へと流れ通っていくものだと思います。

 理念を組織に浸透させていくためには、形どおりのマニュアルや研修等では足りないのだと思います。施設の性格上、当然、厳しい規律があることは承知しておりますが、役職や階級、また、部署を超えた人間としてのつながりが希薄であったのではないか、新たな改革に向けては、人間的な触れ合いを縦にも横にも築いていくことが必要ではないかと思うのですが、法務大臣の所見をお伺いいたします。

齋藤(健)国務大臣 過去に重大な死傷事案が生じた名古屋刑務所において再びこのような不祥事が起きたことは誠に遺憾であります。

 職員間で日常的なコミュニケーションを図っていくことは、組織の風通しを良好なものにして、ひいては不祥事を生みにくい環境、こういったものを醸成していくことにつながっていくことから、委員御指摘のように、重要であるというふうに認識しています。

 本件における主な背景事情としては、名古屋刑務所職員による暴行・不適正処遇事案に係る第三者委員会、ここでの御議論を踏まえますと、現時点において、受刑者の特性に応じた処遇方法が十分に検討、共有されていなかったこと、委員御指摘のように、行刑改革会議提言に示された理念が十分に浸透していない状態となっていたこと、こういったことがあったものというふうに考えておりまして、これらに関連し、組織風土の在り方に関する意見も寄せられているところであります。

 今後も、第三者委員会の知見を仰ぎながら、本件事案の背景事情を含めた全体像を解明するとともに、必要な再発防止策を策定をし、国民の皆様の不信を払拭するように真摯に努めてまいりたいと考えています。

日下委員 先ほどもございましたけれども、名古屋刑務所には、指示に従わない受刑者、また、何度も要求を繰り返す、そういう受刑者もおられるということで、特に若い刑務官であるとか、やはり大変なストレスも抱えているというふうに思います。そういった意味では、看守、また刑務官のストレスケアの方も十分に御配慮いただきますようによろしくお願いしたいと思います。

 また、今回の事案では、カメラ映像や音声は職員がモニター室で目視チェックしていると伺いました。夜間は一人で行っている。数十の映像や音声を常時監視することは物理的にも到底不可能です。デジタル化の時代です。看守等の不自然な動作や受刑者の動作、音声に特異なものが認められたときには、それらを知らせるシステム、AI技術等を用いて構築できるのではないかと考えますが、法務省の御所見を伺います。

花村政府参考人 お答えいたします。

 名古屋刑務所職員による暴行、不適正処遇事案の発生につきまして、極めて重く受け止めております。誠に申し訳ございません。

 刑事施設におきましても、AI技術を始めとするデジタル技術を活用することにより、その業務を効率的かつ円滑に遂行する必要があると考えております。本件事案を受け、直ちにできる対策として、名古屋刑務所におきましては、ウェアラブルカメラを整備することで職員の勤務を可視化し、処遇困難な受刑者に対する適正な処遇の徹底を図るなどの具体的な再発防止策の準備を進めているところでございます。

 また、大臣の御指示により実施しました全国調査の結果も踏まえまして、当局から全国の刑事施設に対し、監視カメラ映像の継続的な検証体制の構築やウェアラブルカメラ等の積極的な活用などにより、職員の被収容者に対する不適切な言動の防止を徹底するよう指示したところでございます。

 いずれにいたしましても、第三者委員会の御知見、御議論も踏まえつつ、各施設の運営の実情に即した形で、委員御指摘のようなAI技術を始めとするデジタル技術を活用することにより、不適正処遇の防止にも資するような一層の業務の合理化、効率化を検討してまいりたいと考えております。

日下委員 ありがとうございます。

 次に、名古屋入管の視察に関連し質問いたします。

 ウィシュマ・サンダマリさんの痛ましい事件から二年が経過しました。昨年、ウィシュマさんの収容の様子や看守、看護師とのやり取りなどを映像でも拝見し、この度の視察では実際の収容室を見ることもできました。改めて御冥福をお祈りしたいと思います。

 名古屋局では、改善策として、非常勤医師三名、そしてこの四月以降に常勤医師も配置されると聞きました。その他、救急搬送の判断やバイタルチェックの手順に係るマニュアルも令和四年一月には作成されております。さらに、幹部職員、看護師資格を有する入国警備官が参加する診療室会議も定期開催され、被収容者の健康状態等について純粋に医学的見地からの意見具申を受ける機会も設けられているとのことでした。ウィシュマさんのような痛ましい事案を防止するためにも、こうしたシステムがきちんと運用される、血の通った運用がなされることを強く望みます。

 また、ウィシュマさんのビデオ映像でも、片言の日本語での会話は意思疎通の点でも大変不利な状況であったことがうかがえます。既に翻訳機器や医療診察時の通訳も含め複数で利用できる通話機の配備も整えているようですが、十分なコミュニケーションの確保は極めて重要でございます。やはり表情を見ながら意思を自由に表明できる通訳者の拡充も必要なのではないかと思います。この点について、法務省の御所見をお伺いいたします。

西山政府参考人 名古屋入管におきましてウィシュマさんが亡くなられた事案の調査報告書におきましては、体調不良を訴えるウィシュマさんとの間の意思疎通に問題が生じることがあったことを指摘し、改善策の一つとして、外国人である被収容者の体調等を正確に把握できるようにするため、速やかに基準を定めて、通訳等を積極的に活用することを示したところでございます。

 これを受けまして、入管庁では、医療に関するコミュニケーションが被収容者との間で適切に取られるよう、令和三年九月、医師による診療時には原則として全て外部通訳人を確保すること、また、被収容者からの体調不良の訴えを職員が聞き取る際には翻訳機を活用して意思疎通を図り、翻訳機では不十分と判断される場合には外部通訳人を確保することなどを指示したところでございます。

 現在では、当該指示に基づき、全ての収容施設に翻訳機が配備された上、これを用いて職員と被収容者とのコミュニケーションを行っているほか、医師による診療時には原則として外部通訳人をつけるなど、十分な意思疎通を図る対応を行っているところでございます。

日下委員 ありがとうございます。

 私が、例えば異国で、言葉の通じないところで同じように収容された場合、やはり翻訳機とか通話機を用いた意思疎通というのは非常に心細いという感覚を持ちました。できたら週に一回とか、収容者の状況を見ながら、本当にじかに通訳を招いて、そういうふうな意思表明ができる機会も設けていただければというふうに思いますので、よろしくお願いします。

 次に、再犯防止対策について質問いたします。

 再犯防止を地域で具体的に進めるためには、各自治体が行う地方再犯防止推進計画の策定が大変重要になります。現在、四十七都道府県全て策定済み、政令指定都市では二十分の十八都市、その他の市町村では千七百二十七分の三百三十七団体、約二割程度となっておりまして、まだまだ進んでいないのが現状でございます。

 出所者の保健、医療、福祉等の各種行政サービスへのアクセスや、地域住民の一員として地域で安定した生活を送ることを考えると、最も身近な基礎自治体が適切にサービスを提供できるかどうかが重要です。立ち直りを決意した出所者が安定して生活を送り、行き詰まりを感じるときに助けを求められるセーフティーネットを地域に張り巡らせていかなければならないと思います。

 全ての基礎自治体における地方再犯防止推進計画の策定など、地方における再犯防止の取組の推進に向けて、法務大臣の御所見及び御決意を伺いたいと思います。

齋藤(健)国務大臣 再犯を防止するためには、罪を犯した者が地域のセーフティーネットの中に包摂されて、地域社会に立ち戻っていくことが極めて重要であります。この点に関しましては、住民に対する様々な行政サービスを提供する地方公共団体の役割が重要になってくるわけであります。

 法務省では、これまで、地方公共団体による再犯防止の取組を支援するため、地方公共団体を対象にした協議会の開催ですとか、地方再犯防止推進計画策定の手引きの作成、配付などを行ってきたところであります。

 他方、地方公共団体からは、再犯防止の取組をより的確に進めていくために国と地方公共団体の役割分担を明確化してほしい旨の御要望を数多くいただいてまいりました。

 このような御要望も踏まえて、地方における再犯防止の取組がより進むように、本月十七日に閣議決定された第二次再犯防止推進計画では、国、都道府県、市町村の役割分担を明記して、国においては、地方再犯防止推進計画の策定の支援も含め、地方公共団体の取組を支援していくことを盛り込んだところでございます。

 第二次計画に盛り込んだ施策を着実に進めることで、引き続き、地方公共団体との連携を強化し、地域における再犯防止に向けた取組を推進してまいりたいと考えています。

日下委員 続いて、薬物事犯の再犯防止について伺いたいと思います。

 二年以内の再入率が窃盗に次ぎ高い覚醒剤取締法違反者についてでございますが、薬物事犯については、出所後も、特に保護観察のつかない満期出所者への切れ目ないケアが必要であります。薬物事犯保護観察対象者のうち、保健医療機関等による治療、支援を受けた者の数及び割合でございますが、全体の中で六・三%にとどまっており、まだまだ低い状況です。

 出所者が不安やいらいらを抱えたときに身近にすぐ相談でき、対応してくれる機関があれば、薬物事犯の再犯率をもう少し抑えられるのではないかと思います。

 薬物事犯者の再犯防止のために、こうした機関の理解、協力を得ながら地域につないでいくことが大切であると思いますが、法務省としてどのような取組を行っているのか、お伺いしたいと思います。

宮田政府参考人 保護観察におきまして、医療機関への受診につなげるなど、必要な指導や調整を行っているところでございますけれども、医療保健機関等につながる人の数というのはまだ十分ではないという状況でございます。

 また、御指摘いただきましたとおり、再犯を防ぐためには、社会で孤立させず、課題をキャッチして、必要な支援に円滑につないでいくということが重要でございます。

 そこで、薬物事犯者を含めました満期釈放者等に対する息の長い支援を確保するため、更生保護施設退所者等の自宅を訪問するなどの訪問支援事業を、今、全国八施設において展開をしてございます。

 また、地域支援ネットワークを構築するとともに、支援者の後方支援、いわゆる支援者支援を行う更生保護地域連携拠点事業というのを全国三か所で昨年十月から始めたところでございます。

 薬物事犯者が地域において継続的な医療や支援を受けられるよう、地域の関係機関との連携体制の強化を図るとともに、今申し上げました訪問支援事業や更生保護地域連携拠点事業などの充実に取り組んでまいりたいと考えております。

日下委員 時間が参りました。これにて終了いたします。

 ありがとうございました。

伊藤委員長 次に、鈴木庸介君。

鈴木(庸)委員 立憲民主党・無所属の鈴木庸介です。今日もよろしくお願い申し上げます。

 まず、台湾有事の際の法務省の対応について伺わせてください。

 正直、台湾有事は本当に起きるのか、今、いや、起こしてはいけないという議論が先に来なくてはいけないんですが、一部の政治家は、台湾有事イコール日本有事と断定して、戦争ありきで議論が進んでいるという状況に私は大変憂慮をしております。

 あらゆる努力をして戦争を回避しなくてはいけない。戦争が前提となっているような議論というのはちょっと常軌を逸しているのではないかなと思っておりますが、しかし、現実的にそうなった場合に最悪のシナリオを考えながら動くのも私たち政治家の仕事だと思いますので、今日の質問をさせていただきたいと思います。

 まず、ニュースで御覧になった方も多いかと思うんですけれども、今年、アメリカのシンクタンクのCSISというところが、台湾有事におけるシミュレーションを発表いたしました。この発表では、もし日本がアメリカに基地の使用を許したとして、巻き込まれた場合、被害についても、楽観的、ベーシック、あと悲観的といった形で具体的な数字を出しています。このリポートを法務委員会的な視点でちょっと読んでみたんですけれども、基本、民間が独自に作成した資料ですから、この結果について政府に評価を求めるつもりはないんですけれども、一般論としてお答えいただければ幸いです。

 まず、この調査では、アメリカ軍の死者や死傷者の数が、楽観的な見積りで七千人、悲観的な見積りでは一万人に上ってくるんですね。ここに、アメリカ軍だけじゃなくて、当然、人民解放軍の兵士とか、台湾の兵士の方とか、自衛隊員の皆さんとか、そして恐らく民間人の犠牲者も、残念ながら加わってしまうだろうというところになります。

 まず、戦争が起こって、このシナリオのとおりなら、台湾国内の各地、基地がミサイル攻撃にさらされるということになります。これは、基地の近くに住む人たちは当然逃げるわけですけれども、例えば花蓮県、現地の言葉ではホワリエン県というらしいんですけれども、ここは民間と共有の飛行場があります。去年はF16の演習などもやっていたということで、これは極めてミサイルが飛んでくる蓋然性が高いんですね。この中心の花蓮市だけでも十万人以上が住んでいる。ここから与那国島までは僅か百十一キロです。

 ちなみに、与那国町と花蓮市というのは姉妹都市協定を結んでいまして、かつては、与那国の漁師の皆さんが台湾でお魚を売って、買物をして島に戻ってきたというほどの仲なんですね。当然のことながら、この百十一キロを人々が漁船だろうと何だろうと来ることになるだろうと思います。

 まず、一つ目、お伺いしたいのは、この与那国島周辺の入管施設というのは、一体、今、どのような体制で運営されて、どのような業務をしているんでしょうか。

西山政府参考人 与那国島を始めとします沖縄県の離島に設置されている入管施設としましては、石垣島に福岡出入国在留管理局那覇支局石垣港出張所、それから宮古島に同支局宮古島出張所が設けられておりまして、それぞれの令和四年度の職員数は、石垣港出張所が十四人、宮古島出張所が十二人となっております。

 御指摘の与那国町は、石垣港出張所の所管というふうになってございます。

鈴木(庸)委員 これは、具体的には今どういった業務をされているんでしょうか。

西山政府参考人 通常の業務におきましては、一般の地方局、あるいはその出張所と同様に、出入国管理、それから在留審査等を行っているところでございます。

鈴木(庸)委員 十四人とか十一人というところで、与那国島近くにボートに乗って大量の皆さんがいらっしゃると思うんですけれども、そのときに入管としてどういう対応を取る御予定でしょうか。

西山政府参考人 体制面についてのお尋ねでございましたら、委員御指摘のような有事の場合には、詳細なシミュレーション等につきまして、具体的な想定は、事柄の性質上、差し控えますけれども、必要な人的体制をきちんと整えることとしております。

鈴木(庸)委員 そうなんですけれども、まず、ビザの件がありますよね。これは有事ですから、当然のことながら、皆さん、パスポートを持ってくるかどうかも分からないというような様々な事態が想定されると思うんですけれども。

 まず、これ、受け入れるんですか、受け入れないんですか、もし来た場合は。昨日ちょっと通告もしてあるんですけれども、ちょっと今さらっとしたお答えだったので、改めて伺いたいんですが。

西山政府参考人 一般論として申し上げれば、我が国に多くの避難民が到着するような場合の対応につきましては、避難民の保護、応急物資の支給、上陸手続、収容施設の設置及び運営、我が国において庇護すべき者に当たるか否かのスクリーニング等の一連の対応を行うことを想定しているところでございます。

 先ほども申し上げたように、具体的な想定については、事柄の性質上、お答えは差し控えさせていただきたいと存じますが、入管庁といたしましては、出入国管理等を所管する立場から、関係機関と緊密な連携を図り、適切に対応してまいりたいと考えております。

鈴木(庸)委員 台湾の皆さんは、今、ビザなしで来れますよね。その対応というのは堅持するという理解でよろしいんでしょうか。

西山政府参考人 委員御指摘のとおり、台湾につきましては、査証免除措置を実施している地域でございますので、短期滞在の在留資格で日本に入国する場合、事前に在外公館で査証を取得することなく、到着地での上陸審査を経て入国することが可能でございまして、委員御指摘の場面においても同様かと考えております。

鈴木(庸)委員 というと、ボートでいらっしゃる方でも何だろうと、台湾の皆さんがいらっしゃったときには、今の体制は合わせて二十数人ということだけれども、補強すると。そのときには入管体制を補強して、いらした皆さんに関しては、台湾国籍が証明できれば三か月間のビザの免除の枠で入れるので、台湾の皆さんは基本的に日本に来て問題ない、そういった理解でよろしいですね。

西山政府参考人 あくまでこれも一般論として申し上げますと、委員御指摘の状況を想定したとしても、一般論としては、あくまで、我が国に上陸しようとする外国人から申請があった場合に、上陸のための条件に適合しているかどうかを審査することにはなります。そして、条件に適合している場合には上陸を許可するということでございまして、また、先ほど想定のところで申し上げたように、庇護するかどうかといったスクリーニングもしっかり行いたいというふうに考えております。

鈴木(庸)委員 ありがとうございます。

 やはり、ポーランドがウクライナに対して国境を閉じなかったような対応というのは世界から尊敬されているところでありまして、日本も同じような対応を求められることになるかと思います。是非、有事の際のシミュレーションを重ねていただければとお願いを申し上げます。

 ところで、当然のことながら、残念なことながら、海岸に多くの遺体が流れ着くと思うんですね。この場合、対応はどのような対応になりますでしょうか。

親家政府参考人 一般的に申し上げますと、警察において死体を発見するなどした場合は、通常、その地を管轄する警察署の刑事部門の警察官が中心となって、刑事訴訟法に基づく検視等を行うこととなるところでございます。

鈴木(庸)委員 当然のことながら、相当な数になってしまうということなんですけれども、当然、そのときは、例えば東日本大震災のときに取られたような、補強するような対応を取られるという理解でよろしいですよね。

親家政府参考人 多数の死体が発見されたような場合におきましては、当該警察署だけで対応が困難というふうな場合も多いと思いますので、そういった場合には、きちんと警察本部の方で必要な調整を行いまして、本部や他の警察署から警察官を応援派遣して検視等に対応することとなりますし、さらに、当該都道府県警察だけでは対応が困難と考えられるような場合には、これはまた警察庁の調整の下、関係法令に基づく所要の手続を取った上で、他の都道府県警察からの応援派遣を受けて対応するということになろうかと思います。

 いずれにいたしましても、発生した事態に的確に対応できるよう、体制面も含め、必要な調整が図られるものと考えております。

鈴木(庸)委員 なぜ質問させていただいたかというと、この与那国島周辺を管轄するのが八重山警察署ということで伺っていまして、与那国島には駐在所が二つあるだけということだったので、だだっとなったときの、このシミュレーションに関しても、重ねて有事に対応していただければと思います。

 まずは、入管の方にも警察の方にも一定のシミュレーションがあるということで安心はしたんですけれども、ただ、この与那国島にも自衛隊の与那国駐屯地が御案内のようにありまして、安保三文書改正と防衛費増額の決定の後は、この島へのミサイル基地とか電子戦部隊の配備、こうしたこととか、あとは、空港滑走路の延長や海上自衛隊の軍港の建設案までが浮上しているという状態です。

 当然、戦渦に巻き込まれる可能性があるわけですから、これは様々なシナリオが想定されてくるわけですよね。まず、こちらに暮らす皆さんの安全確保など、縦割りではなくて、警察、入管など省庁横断型の問題について、齋藤大臣のリーダーシップでシミュレーションを重ねていただきたいと思います。

 また、これは御提案で、特に質問ではないんですけれども、これは入管行政なので、当然のことながら、台湾の皆さんが入ってきたときのIDチェックが必要になってくると思うんですが、全ての人がパスポートを持っているわけではないと思うんです。

 そうすると、台湾の場合、中華民国国民証というマイナンバーカードがほぼ一〇〇%に近い状態で普及しておりますので、これがまた分かりやすくて、生まれた場所によって最初の番号が決まるんですね。例えば、台北で生まれた方はマイナンバーの最初がAで始まって、次に性別や国籍で二桁、三桁目が決められて、四桁目から十桁目がランダムに付与されるんですけれども、こういったものもあるので、個人特定については、台湾はかなりデジタル化が進んでいるということですので、事前に、有事の際にはこうした情報の提供を台湾政府の方から法務省が受けるような体制についても是非御検討をいただきたいと思います。

 台湾有事を法務省的な視点で質問させていただきましたけれども、とにかく、台湾の皆さんが、何があっても日本には逃げてこれるというような安心が提供できればと思います。

 最後に、この問題についての大臣の御覚悟をお伺いできればと思います。

齋藤(健)国務大臣 私は、個人的には、台湾に何かあったときのためにどうしたらいいかというのを、法務大臣になる前から自分なりに研究をしてきております。なので、委員の問題意識には非常に共感を覚えております。

 政府の立場としては、台湾海峡の平和と安定は、我が国の安全保障はもとより、国際社会全体の安定にとっても重要であって、台湾をめぐる問題が対話により平和的に解決されることを期待するというのが政府の従来からの一貫した立場であるわけでありますが、その上で、あのお国の発言によれば、台湾統一には武力行使も辞さないという発言もあるわけでありますので、有事が起きた際の具体的な対応については、しっかりと、平素より関係省庁が連携をして必要な準備、検討を行っていかなくてはいけないし、行っているところでございます。

鈴木(庸)委員 引き続きよろしくお願いを申し上げます。

 続いて、技能実習制度について伺わせてください。

 改めて確認をさせていただきたいのは、技能実習制度というのは、その後の技術移転という義務が足かせになっていて、多くの実習生が、例えば、特定技能に在留資格を変更した後も、そこから経営とか管理とかいう起業ビザに在留資格を変更しようとすると、技術移転を求められて帰国を迫られるケースがあるということを前回の質疑でも御指摘をさせていただきました。

 これまで有識者会議の方も四回開催されていて、私も議論の概要を拝見しているんですけれども、まだ実情の把握というところに時間をかけているようで、かつ、こういう物言いも大変恐縮なんですが、メンバーの皆さんについても、いわゆる現場にいる実習生側の代弁者的な立場の方が誰なのかというのがちょっと不明確かなと思っております。

 まだ有識者会議の結論が出ておりませんので、有識者会議の質問はここではいたしませんけれども、是非、結論ありきではなくて、現場の実情に合った議論をお願いしたいと思います。

 その上で、改めて私の感じる矛盾について質問をさせていただきます。

 ベトナム語でボドイという言葉があるんですね。これは直訳すると兵士と訳されるんですけれども、日本にいらっしゃるベトナム人の皆さんが自分たちのことを形容するときによく使う言葉なんですね、ボドイって。

 このボドイをフェイスブックで皆さんちょっと一回検索していただければと思うんですが、かなりのコミュニティーページが出てくるんです。このコミュニティーページには、六千人とか七千人とかのメンバーがいるんですけれども、全く隠す様子もなく、働く人を募集していたり、夜のお店で働く人を募集していたり、あとは、明らかにこれは触法しているだろうというような募集もばんばん出てきます。これは当然、入管さんも警察さんも把握されているとは思うんですけれども。

 さらに、現場で日常的にベトナム人社会と関わっていらっしゃる行政書士の皆さんとかに伺うと、ここまで大っぴらにやっているというのは、技能実習生の皆さんというのは、いわゆるこうした不法就労を転職的な軽い感覚でやっているということで論じているんですね。

 まず最初にお伺いしたいんですが、入管庁さん、ベトナム人に転職的な発想があるということは把握はしていらっしゃいますでしょうか。また、それについてはどのように捉えていらっしゃいますでしょうか。

西山政府参考人 委員御指摘のようなSNSでのそういうものがあるといったところについては、実情としては一部把握している部分もございます。

 ベトナム人の方がどうなのかというところは、ちょっとそこまでの分析をできているわけでもございませんので、それについては言及はなかなか難しいかなと思いますが、技能実習制度は、もとより、実習に専念する研修という意味合いがありますので、専念いただく必要があるので、今委員がおっしゃいました転職ということになると、当然、失踪が前提になるのかなと思います。

 技能実習生の失踪の原因につきまして明確に特定することはなかなか困難な面がございますが、例えばですけれども、日本に入国後、入国前に支払った費用を返済するためなどの経済的な事情によりまして、技能実習生が新たな就労先を求めて失踪することはあり得るというふうに認識しておりまして、この問題につきましては重く受け止めているところでございます。

鈴木(庸)委員 結局、技能実習で来るといっても、繰り返しになるんですけれども、キャリアアップにならないですし、出稼ぎというインセンティブしかないのが今の現状だと思うんですね。どうせ出稼ぎで、技能実習が終わって帰国するならば、見つかるまで闇で働いていようと考える人がいるのも事実でございます。これは、違反は違反なんですけれども、制度を変えないと、やはりこういった人たちがいなくなることはないのかなとも思います。

 日本で滞在できる道もなくて、帰国してからのキャリアもなくて、さあどうしようというときに、失踪して違う仕事に行ったり、犯罪に走ったり、そういった人たちもいる中で、やはり、重ねてなんですが、技能実習という、技術移転を前提にしている点に最大の問題があると私は考えております。

 改めて、この制度のベースとなっている技術移転ということについて伺わせてください。

 入管庁は、帰国後の技術移転の状況について、お配りしている資料にもあるんですけれども、帰国後技能実習生フォローアップ調査があるとしている。

 この調査について伺いたいんですが、この調査は、令和三年の九月から十二月までの間に帰国したベトナム、中国、インドネシア、フィリピン、タイの皆さんに、帰国後の就職状況や、日本で習得した技術、技能、知識の活用状況をヒアリングしたものであります。入管庁としては、この調査を技能実習制度の適正、円滑な運用を図るための基礎資料とするとしているんですけれども、つまり、技術移転という趣旨について論理的な裏づけを得るための調査、だが、この調査に私は大きな問題があると考えております。

 調査は、まず、調査対象者に、直接ではなくて、所属する監理団体を通じて調査票を渡していて、さらに任意で、さらに、二万七千四十六の調査対象者に対して僅か二九・三%しか回答されていないんですね。

 まず伺いたいと思います。この調査が、統計的に有意で、実際に実習生の実態を把握していると考えていらっしゃいますでしょうか。

西山政府参考人 委員御指摘のフォローアップの調査につきましては、委員御指摘がありましたように、回答率として三割程度にとどまっているということでございます。

 他方、帰国後の技能実習生の実態につきましては、本調査と併せまして、監理団体等を対象として、前年度に帰国した技能実習生の就職状況の把握などを目的とした帰国後技能実習生に対する支援実態調査を行っているところでございます。

 本調査では調査対象の監理団体等のうち九二・五%から有効回答を得ており、外国人技能実習機構においては、これらの二つの調査によりまして制度の実態を把握し、制度の適正、円滑な運用を図るための基礎資料としているものでございます。

鈴木(庸)委員 今、西山さんがおっしゃっていただいた帰国後技能実習生に対する支援実態調査について後ほど質問させていただきたいんですけれども、このフォローアップについてなんですが、技能実習期間を通じて学んだことが、帰国後、役に立ったと回答した人が何と八九%にもなっていますね。役に立った具体的な内容、習得した、これは七六・四%と最も多くなっているんですけれども、その一方で、帰国後の就職状況について、雇用されて働いているなど就業が決まっている人は僅か四〇%なんですね。

 つまり、帰国後、役に立った、日本で勉強したことが役に立ったとおっしゃる方が九割もいるのに、実際に仕事をしている人は四割しかいないんですね。役に立ったというのは、これは何の役に立ったと思われますか。この五〇%の差はどこから来るんでしょうか。

西山政府参考人 本調査において就職が決まっていると回答した四〇%以外の元技能実習生の中には、日本で習得した技能等の活用を考えつつ母国で引き続き仕事を探している人、あるいは、技能実習三号や特定技能等の在留資格での再来日の準備を行っている方、そのほか、進学を予定している方などもおられるものと考えております。

 この点、日本で習得等した知識や技能等の帰国後における活用方法や将来構想は個々人で様々でありますことから、調査時点において就職先が決まっていないと回答した者であっても、日本で習得した技能や日本語能力、又は職場の安全管理等を生かした進路に進むことを視野に、委員御指摘のような、帰国後、技能実習期間を通じて学んだことが役に立ったと回答するケースは一定数存在するものと考えております。

鈴木(庸)委員 もちろん一定数存在はすると思うんですが、先ほどの四〇%のうちの六四%が、実習と同じ仕事又は実習と同種の仕事と回答しています。

 つまり、全実習生のうちの僅か二五%、約四分の一しか、一般に同じ仕事をできていないんですね。これは技術移転という評価をしていらっしゃいますか。

西山政府参考人 技能実習制度は、技能等の開発途上国等への移転を図り、開発途上国等の経済発展を担う人づくりに協力することを目的とする制度でありますため、技能実習生には、実習修了後、日本で習得した技能等を母国に帰って生かすことが求められるものではございます。

 本調査において、実習と同じ仕事又は実習と同種の仕事に従事していると回答した六四%以外の元技能実習生の中には、母国で就職活動中の者など、習得等した技能等を生かそうとしている者も含まれていると考えられ、また、本調査はあくまで、令和三年九月から十二月までの期間に実習を修了した技能修習生のうち、令和四年二月末までに回答のあった範囲、この範囲内における状況でもございますことから、例えば、回答後に、習得等した技能等を生かす業務に就いている場合なども当然あるものと考えております。

 とはいいましても、もとより技能実習を通じて習得等した技能等を母国において生かすことが望ましいと考えておりまして、制度を共管する厚生労働省や外国人技能実習機構とも連携しながら、制度の趣旨に基づいた技能実習が行われるよう、制度の適正化に努めてまいりたいと考えております。

鈴木(庸)委員 これはちょっと同じような質問で恐縮なんですけれども、先ほど、帰国後技能実習生に対する支援実態調査というのを言及されましたけれども、これは監理団体を対象に調査しています。

 ここでも、雇用されている、起業している、雇用されて働くことが決まっているが合わせて五八・九%ということで、フォローアップ調査と比べて二〇%近い大きな開きがあるんですね。

 統計的に、私も統計の専門家ではないですけれども、なかなかこれを有意な調査と言うのは厳しいのではないかなというのが正直な感想であります。どう考えてみても、この調査は、監理団体経由で得ている点、回答数が少ない点などを鑑みても、実態を捉えているとは言い難いと思います。

 くしくもなんですけれども、こちらの資料で出ているこの七千人超という数字は、失踪した実習生とほぼ同じ数なんですね。ですから、同じ数だけ違う見方をしている人がいるということも是非御考慮をいただきたいと思います。

 私が申し上げたいのは、この破綻している原則論にいつまでこだわるのかということなんです。どう見ても、日本に来させてやっている、便利に使いたいというのが抜けない中で、国力が衰えている今、ベトナム人の皆さんもオーストラリアや台湾の方をより魅力的に考え始めているという中で、ベトナムが経済発展していなくなったら次はスリランカなどほかの国から来るだろうみたいな、このぬるい感覚が我々から抜けていないのではないでしょうか。焦らなくてはいけないのに、焦っていないと思います。ですから、様々なビザのメニューを出しているというのは承知しておりますけれども、これがやはり、ベトナム人の皆さん、世界中の高度人材の皆さんには何の魅力もないメニューに映っていると私は断言したいと思います。

 あと、闇派遣のニュース、戻るんですけれども、これは失踪したベトナム人が別の場所で働いているというところなんですが、先ほど申し上げた転職という発想ですよね。技能実習生でい続けることのインセンティブというものがないわけですね。キャリアモデルもない。目指すキャリアがないから、当然こうやって、彼らで言うところの転職市場に流れていく。

 よくあるのは、三年で技能実習生二号を修了して、終わる前に失踪する。捕まったら、いずれにしても帰るわけですから、もう少し延ばせばいいじゃんという発想になってしまいますよね。そこから万引きとか犯罪に手を染めていく人が一定数いる。残念ながら、一部のベトナム人の皆さんが犯罪を犯しているのは事実ですけれども、結局、入れ方に問題がある。規範に直面するインセンティブがないというところが最大の問題であると私は考えております。

 技能実習生の方からお金をもらっている今の状況も問題ですよね。ほかのところから取れるようにするとか、中間搾取者を減らすとか、又は、介護のように、技能実習を務めれば、その後に技術・人文知識・国際業務のようなビザがもらえて永住権などへの道が開けるとか、そうやって将来性を示していかないといけないと思います。明確なステップアップを示して、単なる出稼ぎではなくて、日本に希望を持って来ていただけるように、有識者会議の結果を期待したいと思います。

 これに派生して、一つ、闇派遣のときなどによく使われるんですけれども、在留カードの偽造が横行しております。在留カードの偽造について、具体的な対策について伺えますでしょうか。

西山政府参考人 委員御指摘の偽変造在留カード、これは、令和三年中、当庁の手続において発見した偽変造在留カード件数は百六十三件となってございます。

 対策といたしましては、当庁のホームページにおいて、在留カードの見方について解説しているほか、在留カードの番号等を入力することにより失効していないかを確認することができる在留カード等番号失効情報照会というページを設けているところでございます。

 また、在留カードのICチップ内に記録された顔写真や氏名その他の情報を携帯電話などの画面に表示することができるアプリケーションを配布しております。もとより、その在留カードの名義人本人の明確な同意が必要ではございますが、その上で、このアプリを使用し読み取った情報と在留カードの券面を見比べることで、偽変造されていないかどうかを確認することができるようになっております。

 これらの対策につきましては、外国人を雇用している、又は雇用する予定のある事業主、企業や金融機関等に対し周知を行っているところでございますが、引き続き広報、普及に努めてまいりたいと考えております。

鈴木(庸)委員 よくある在留カードの手口としては、実際に存在する番号をどこかから拾ってきて、その在留カードに記載して。これがなぜ有効かというと、闇派遣を雇う側にとっても、取りあえず在留カードを確認しましたよねというエクスキューズになってしまう。働く側としても、取りあえずこれはありますよね、そこで、大丈夫ですよねみたいな、お互いのエクスキューズになってしまっているというところがあるようでございます。

 ですから、この在留カードの偽造については、なかなかこれは先進的な取組をされていると思います。是非是非、この後も引き続きしっかりやっていただければと思います。

 最後に、るる、この技能実習制度の問題については、やはり、技術移転という名目、大義、これが問題であって、やはりここの部分を直さないといけないと私の問題意識としてはございます。また、今、有識者会議が開かれているのも承知しておりますけれども、この全四回の議論を見ていると、ちょっと、実態の把握、さらには、先ほど申し上げたように、本当に現場で大変な思いをしている技能実習生の皆さんの現場の視点をどなたが代弁をしてくださるのかな、まあ、似たような発言をされている方はいるんですけれども、本当に現場で彼らとつき合っているような人たち、例えば、そういう行政書士さんとか、こういう人たちを入れてもいいのかななんて個人的には思うんですけれども、この問題、諸々について、齋藤大臣の覚悟、そして今後の見通しについて、お伺いできればと思います。

齋藤(健)国務大臣 委員から大変重要な御指摘をいただいていると理解しています。

 そもそも、技能等の移転を通じた国際貢献、このこと自体は私は意義のあることだと思っています。そういったことから、平成二十九年十一月に技能実習法が施行されて、我が国における適切な環境の下で段階的かつ計画的に技能を習得するための仕組み、あるいは、本国への技能移転を担保する措置を講じるなど、技能実習生がその制度趣旨に乗って技能実習を全うすることができるように取り組んできているのも事実であります。

 他方で、一部の受入れ企業等においては、この制度趣旨が必ずしも十分に理解されずに、労働関係法令違反ですとか、技能実習生の失踪等の問題が生じているというのも認識しておりまして、こういった問題につきましては、厚生労働省や外国人技能実習機構と連携しながら、運用の適正化のために取組を進めてきているのも事実であります。

 その上で、御指摘のように、技能実習の制度目的と実態、これを踏まえた制度の在り方というものをしっかり検討していく必要があるということで、このことも含めて、技能実習制度について、技能実習制度及び特定技能制度の在り方に関する有識者会議において、今、委員の構成の御議論もありましたけれども、そこで議論をいただいている段階であります。

 我々といたしましては、この有識者会議での御議論を見据えつつ、政府全体で丁寧に議論を進めていって、結論を出していきたいというふうに考えています。

鈴木(庸)委員 是非、こういう言い方もなんですけれども、私は、日本が尊敬されてほしいと思っております。台湾有事の問題にせよ、この技能実習生の問題にせよ、尊敬される国になれるよう私も一生懸命頑張ってまいりたいと思いますので、引き続きよろしくお願い申し上げます。

 ありがとうございました。

伊藤委員長 次に、吉田はるみ君。

吉田(は)委員 立憲民主党の吉田はるみです。本日もどうぞよろしくお願い申し上げます。

 では、早速でございますけれども、同性婚のことについてまず取り上げさせていただきたいと思います。

 その前に、私の地元の杉並区で、先日、三月十五日、パートナーシップ条例がようやく成立しました。本当に喜ばしいことで、こうして性の多様性や家族の多様性がどんどんと認められる社会になってほしいなと私自身は思っています。

 やはり同じ時期といいますか、これも三月二十二日の報道で私も目にしたんですけれども、三重県の明和町というところではファミリーシップ条例が成立して、この四月からファミリーシップ制度がスタートいたします。パートナーシップ制度というのは聞いたことがあるという方が多いかと思うんですけれども、ファミリーシップ制度、これも新たな自治体が取り組むものとして、私、大変注目しております。

 ちょっと御参考までにその内容を御紹介したいんですが、パートナーシップ制度は、戸籍上の性別に関係なく、お互いを人生のパートナーや家族として尊重し、継続的に協力し合う二人がパートナーシップ関係にあることを表明する、そしてそれを自治体が認めるというものなんですけれども、公営住宅に入れたり、いろいろなことが可能になります。

 また、一歩進んで、ファミリーシップ制度は、一緒に暮らしている子供も家族として証明する。その証明を受ければ、法律上、戸籍上別々でも、形式上は家族と認められるということです。行政サービスだけでなく、将来的には医療機関での同意なども可能になります。

 ここが本当に、愛し合う二人がいる、家族であるときに、そのもう一人の方が苦しい状況にいる、病と闘っているときに、家族と認められず、病室にも入れない、その方の本当に一番そばにいて手を握ってほしいときに、その方がいないという苦しみ、これは、私は当事者の方々からたくさん聞いていて、本当にそれが可能になってほしいなというふうに思っているところです。

 こういう話をいたしますと、こういった考えに反対の意見を持っていらっしゃる方は戸籍の話になるんですね。そこで、ちょっと見てみたいと思います。齋藤大臣にも、予算委員会のときに、同性婚や、可能になると戸籍は壊れますかというような質問をしたとき、そのようなことはありませんという御答弁をいただいておりまして、実際に、じゃ、どうなるんだろうというところを皆様と一緒に御確認させていただければと思います。

 配付資料の一を御覧ください。これが現行の戸籍です。このように今矢印をつけておりますけれども、夫そして妻という形で配偶者区分が書かれておりまして、その人それぞれ、この義太郎さんは長男、梅子さんは長女という形になっています。同性婚になった場合、これは何にも変わる必要がなくて、長男、相手の方が、例えば次男、あるいは三女と長女、こういうような書き方になるだけというふうに私は理解をしています。

 この点で、ただ、一つ気になるのが、この配偶者区分です。夫、妻というふうに書いてあるんですけれども、これは明確に必要なんでしょうか。改めて考えてみると、同性婚の場合、じゃ、どっちが夫でどっちが妻かとかとよく言われたりするんですけれども、いや、そもそも、この夫、妻という配偶者区分、必要なんですかということをちょっと私は考えているんですね。

 戸籍が必要になるときというのは、例えば、パスポートを取得するとき、相続のときの続柄の確認、また、日本国籍の確認ということで、私たち、国会議員として立候補するとき、日本国籍であるかという確認のために戸籍が必要です。配偶者区分というのは必要なんですかねというところに、そもそもの疑問に戻ってきたんですが、齋藤大臣、この点、いかがお考えでしょうか。

金子政府参考人 お答えいたします。

 戸籍法におきましては、戸籍の記載事項として、夫婦については、夫又は妻である旨を記載しなければならないとされております。これは、現行の民法において婚姻の当事者は夫と妻であると規定されているところ、このような婚姻関係を明確に公示するために規定されているものと考えられます。

 このような戸籍の取扱いに、現状、特段問題があるとは考えておらず、妻又は夫である旨を戸籍に記載しない取扱いとすることは考えていないところでございます。

吉田(は)委員 今、法律上そういうふうに書いてあるからということだったんですけれども、改めて、大臣、この点というのはどんなときに必要になるんでしょうか。必要性をお感じになりますでしょうか。

齋藤(健)国務大臣 まず、同性婚が今認められていない前提でありますので、その前提でこの法律が今できているということなんだろうと思います。

吉田(は)委員 なかなか答弁は難しいかもしれないですが、同性婚とか全く関係なく、婚姻の中で、夫、妻というふうに配偶者区分を書く必要性自体を私は余り感じていないので、それはなくてもいいんじゃないですかということだったんですけれども、もう一度、今度、次回、しっかり私も戸籍法を調べさせていただきたいというふうに思います。

 では、続きまして、今日はたくさんお伺い、確認したいので、さくさく行きたいと思います。次が、配付資料の二を御覧ください。

 今度は、選択的夫婦別姓の戸籍の記載方法になります。これも、もう本当に長年、選択的夫婦別姓、もう議員立法として国会に何度も提出され、なかなか成立しない。社会の理解とかいろいろ言われるんですけれども、やはりここも、戸籍がという言葉が出てくるんですね。

 へえ、じゃ、もし選択的夫婦別姓を可能にした場合、どんなふうに戸籍が変わるのかということを見てみたいんですが、これはもう法務省のホームページにもございます。二十七年前、もう既に法制審の答申案に基づいて戸籍の記載例が書いてあります。これがその記載例になるんですけれども、皆様御覧のように、えっ、何が違うのという感じなんですけれども、これは、戸籍に記載されているもの、甲野義太郎さんというフルネームがあります。お相手の方、乙野梅子さん、フルネームが書いてあります。今の現行法の戸籍と違うことは、フルネームが書いてある、それだけです。なので、選択的夫婦別姓、これを可能にしたところで、私は全く戸籍上問題ないと思いますし、壊れるというのが、どこが壊れるのというぐらい思っています。

 一つ議論があるという点に関して、私もそうだろうなと思う点が二枚目ですね。配付資料二枚目のところです。

 今、お子さんが筆頭者の氏になっています、姓になっています。ここに関しては、この当時、法制審の答申案に基づいてこのように書かれていますので、この時点では筆頭者の名前にするということでこういう形でお子様が記載されています。ここは様々な御意見もあると思いますので、今後、国会の方で活発な議論をしていけたらなというふうに思うんですが、名字に関しては世界的にも大きな変化が訪れていることを感じます。

 大臣も御留学経験があるので、海外の状況もよく御存じなのではないかと思うんですが、私の学んだイギリスでは、最近のお子さんは、お父さんとお母さんの名字を合わせて、真ん中を線でつないで、両方の名字を使うというダブルバレルドというシステムで名前を名のる方もいますし、先日、私もこれは知らなくて、ああ、そうなんだとちょっとびっくりしたんですけれども、中国は伝統的に夫婦別姓の国でありますけれども、最近のお若い方、二十代から以下の方々は、中国の方というのは名字一文字の方が多いと思うんですね、王さんとか楊さんとか劉さんとかという形で一文字が多いなと思っていたんですけれども、この間、聞いたら、二文字、私は吉田なので二文字なんですけれども、そういう形で、漢字二文字の方が増えている。これはどうしてと聞いたら、やはりお父さんとお母さんの名字を合わせて二文字にしているということでした。

 ああ、そうなんだなというふうに私も改めて感じたんですが、この辺り、大臣、社会がかなり変化してきているという中で、戸籍に関しても、このように特に何か大きな混乱がないように私は感じるんですが、大臣の御見解を伺います。

齋藤(健)国務大臣 御指摘の戸籍の在り方については、選択的夫婦別氏制度について、平成三年及び平成二十二年に民法及び戸籍法の改正法案を準備をしたということでありましたが、その一環として法制審でそういう記載の仕方も答申がなされているということでありますが、しかしながら、毎度繰り返しますが、この問題についてはまだ国民の間に様々な意見があったほか、当時の政権内においても様々な意見があったことから、改正法案の提出にまでは至らなかったという経緯がございます。

 その上で、状況は変わってきているじゃないかという御指摘かと思いますが、ただ、依然として、現在でも国民の間に様々な御意見があるのも現実でありますので、今後とも、国民各層の意見や国会における議論を踏まえてその対応を検討していく必要があるんだろうと思っています。

吉田(は)委員 齋藤大臣も大臣というお立場にいらっしゃって、閣僚のお一人でいらっしゃるので、なかなか難しい答弁だろうなというふうにはお察し申し上げます。

 しかしながら、やはり社会はどんどん多様化が進んでいます。

 先ほどの三重県の明和町の町生活環境人権課の方の言葉は私はすごいなと思ったんですけれども、瀬田係長の言葉です。今後は県内や全国の自治体と連携を進めていくとともに、サービスの拡充などにも努めていきたいと。

 もう地域から、全国各地からこういう動きが広まっています。永田町が最後にならないようにということだけは私は強調させていただきたいなと。どうしたんだよ、永田町、国会はと、法整備だけが遅れているということになってはいけないというふうに思いますので、たくさん議論したらいいと思います、でも、議論もしないというのは、これはまさに国民から負託を受けている私たち国会議員としては、それは議論しましょうということを申し上げたいと思います。

 そして、性の多様性のもう一つが、私がとても違和感を感じている一つのことでもあるんですけれども、続きまして配付資料の三を御覧ください。

 G7に向けて各国大使館も様々な会議を重ね、今活発に動いているところだと思います。これも、G7各国の性的マイノリティーに関する法律状況の比較の表になるんですが、ここで注目していただきたいのは日本です。

 まず、LGBT差別禁止法、これがまだできていません。何か、これも今、状況はどうなのかなと。まさか統一地方選挙があるから先延ばし、それはやめてくださいねと私は思っているところなんですが、進めていただきたい。そして、婚姻の平等、同性婚に関しましても、今、私が取り上げさせていただきました。私は、差別法と同性婚、これはセットだと思っています。片方だけということになると、やはり、差別はしないけれども結婚はできないよというのは、とても私は納得できないところでございますので、これは是非考えていただきたいところ。

 そして、人権の面から私はとても違和感があるのが、このところです。子供がいてはいけないという子なし条件、そして、生殖能力をなくさなければいけないという不妊条件、結婚していてはならないという非婚要件、これが日本は全部あります。

 確かに、G7の中で、ほかの国はないんですよ。ただ、ヨーロッパの中でも、最近まで手術要件がある国があったんですけれども、やはりこの三月、大きく動いた国があります。それは、北欧の国フィンランドです。三月四日に手術要件を撤廃する法律が成立しまして、この四月から施行されます。

 こういうふうに、日本全国だけではなく、世界も動いているわけなんですが、改めて、委員の先生方にもちょっとこの要件を見ていただきたいと思いまして、配付資料四を御準備いたしました。

 改めてこの要件を読んでみると、どうお感じになるでしょうか。この法律の第三条の四号、五号のところをそのまま読み上げさせていただきます。「生殖腺がないこと又は生殖腺の機能を永続的に欠く状態にあること。」、これが四号。そして、五号が「その身体について他の性別に係る身体の性器に係る部分に近似する外観を備えていること。」。

 これは、要は子供を産む身体的機能を完全になくすこと。そして、五番は、その性に係る性器、それを備えている、それに似せたものを備えていること。私、これを見て、えっ、現代でこれをまだ言うんですかという、すごい違和感があったことなんですね。

 この法律は、今まで二回見直しされています。一回は、子なし要件のところで、未成年という形にしました。それがあるんですけれども、そしてまた、成人年齢十八歳に伴って、そこの改正もしております。

 しかし、私が一番気になっているのは、こういった子供を産むという機能を完全に停止するというようなことを国が要求できるのかなというところなんですけれども、今日は厚労省にも来ていただいています。ちょっと医療の観点から教えてください。

 まず、手術をしたくてもできないような医療上の問題があるというケースもあると思います。年齢のこともございますし、また成長期、成長期というか、十八歳以上ですけれども、それでも、ホルモンバランスが崩れたり、いろいろな身体的な負担、やりたくてもやれない方、また、この手術がどの程度体に負担のあるものなのか。一説には、命の危険を懸けてまで性別変更手術をすると言われています。医療の面からその点を教えてください。

辺見政府参考人 お答え申し上げます。

 性別適合手術に限らず、一般的に手術を受ける際には、医師からその手術で得られる結果やリスクについて十分な情報を提供される中で、本人の意思を尊重しながら実施されるべきものと認識をしております。

 性別適合手術につきましては、日本精神神経学会作成の性同一障害に関する診断と治療のガイドラインというものがございまして、現行のガイドラインにおいて、健康に重篤な明らかな影響を及ぼすような疾患が否定されていることなどの性別適合手術を実施するための条件が示されており、それらの条件を満たさない場合は、本人が手術を受けることを望んでも手術を受けられない場合があると承知をしております。(発言する者あり)

吉田(は)委員 ダメージがあるということでしょうという、本当に、今おっしゃっていただきましたけれども、やはりちょっと国会の議論も、私は思います。私自身も医学の専門家ではございません。ですので、やはり国民に伝わりやすい言葉で是非教えていただけたらありがたいなと思います。

 まず、当然そういった身体的な負担があるわけなんですけれども、今、子供を産めなくする、子供を持つ可能性をその人から取り上げるというところを考えたときに、もしかしたら委員の先生方からは違うよと言われるかもしれないんですけれども、私はやはり、ふっと頭に浮かんでくるのは優生保護法のことです。これはもう二十七年前です。その当時は、障害者差別だというふうに思わず、疑問を持たず、この法律が適用され、そして不妊手術を受けられてきたわけだと思うんですが、今ももしかしたら、この性別変更手術、みんながすべきだ、当然だろうというふうに思っていらっしゃる方もいるかもしれませんが、これから五年、十年とたったときに、あんなことが行われていたんだよという時代が来るんだというふうに私は感じています。

 改めて、委員の先生方、ちょっと見ていただきたいんですけれども、それはどのぐらいの人数いるんですかというところです。配付資料五を御覧ください。これは、性別変更手続を可能にした議員立法から、どのぐらいの性別変更手術が行われ、そして、それを基に裁判所が戸籍上の性別を変える件数があるかというところのグラフになります。これは、直近でも九百件ちょっと下回るくらいなんですけれども、このところ、大体毎年九百件前後の認容が、裁判所で認められています。私、これは本当に大きな、多い数字だなというふうに思っています。これだけの方が本当に命の危険や、性別を変えるというのは本当に大変なことだと思うんです。それをやっていらっしゃるという事実に改めて深く考えさせられたんです。

 厚労省に伺います。

 この九百件という中で、今、性別変更手続、これは保険適用されます。しかし、保険が使えなくなるケース、これは、ホルモン療法と一緒にすると自費になる、混合診療だということで。実際、国内ではどの程度の性別変更手続が行われているのか、直近の数字を教えてください。

森光政府参考人 お尋ねがございました、国内で保険適用されております性別適合手術でございます。これには、例えば精巣摘出術ですとか子宮全摘術など、複数の種類がございます。NDBオープンデータに基づきますと、それぞれの手術に関して、令和二年度における年間の算定回数、要するに手術件数ということになるかと思いますが、それぞれの手術につきましては十件未満又はゼロ件という状況になっております。

吉田(は)委員 九百件近くで、日本で行われている手術は十件未満という今御回答をいただけました。

 つまり、私も調べているんですけれども、海外でほとんどの方が手術をされるんですよ。これは、もちろんお金の面もあるんですけれども、私、その当事者の方々に思いをはせたときに、皆さんも、どうですか、普通の手術を海外で受けるときだって、言葉が通じない、もしかしたら全身麻酔になって、そのとき、どうやって、誰に意思を伝えるんだろう、相当不安だと思いますよ。その中で、やはり生殖機能を全部取るような、かつ大がかりな手術をするというのは、これは当事者の方々の不安を思うと、私は本当につらいなというところなんですけれども、是非、この現実を受け止めて、この保険適用の課題も私は国会で議論させていただきたいということを申し上げたいと思います。

 それでは、この性別変更、また性の多様性、家族の多様性、こういったことを、是非この国会でもますます議論が深まることを願っておりますということを申し上げて、これに関する質問は終わります。

 引き続きなんですけれども、今度は刑事事件の手続です。

 先日、本当に私としては深い感慨を持ってその決断を拝見しましたが、袴田事件の再審決定がされました。本当にこれは、最後に再審決定がされたのが一九八九年ですので、実に三十四年ぶりの決定でした。そこに至るまでの、袴田さん、そして御支援者の方々はもちろん、司法に携わるあらゆる方々のことに私は本当に敬意を表するんですけれども、ここでまず質問をさせていただきます。

 死刑事件が再審となった場合、普通は死刑案件というのは裁判員の対象になるということなんですけれども、今回の再審は裁判員制度の対象にならないというふうに聞いています。これでよろしいでしょうか。

松下政府参考人 お答えいたします。

 裁判員の参加する刑事裁判に関する法律附則におきまして、同法施行前判決が確定した事件であって施行後に再審開始決定が確定したものについては、同法二条一項、四条を適用しないと定められておりまして、御指摘のとおり、裁判員法が施行された平成二十一年五月二十一日の前に判決が確定した事件で施行後に再審開始決定が確定したものは裁判員制度の対象とはなりません。

吉田(は)委員 ということで、当然、公判前整理手続という、公判が始まる前にすごい時間がかかるもの、これが省かれるということになるんだと思います。気になるのは、一体、あとどのぐらい時間がかかるのというところなんですけれども、過去、死刑判決で再審になったもの、四件です。その中で、最短で一年六か月、最長で三年かかっています。

 今回、個別の案件はと言われると思うので、一般的なところで答えていただければと思うんですが、前回は三十四年前です。全然、ちょっとやり方も、こういった裁判員制度もないような時代だと思うんですけれども、今回、こういった再審決定がされてこれから公判に入っていくとき、最高裁に伺いたいんですが、さっき言った一年六か月という短い、最長三年、これよりも長くなったり短くなったりする可能性があるんでしょうか。もしあるとしたら、その理由も併せて教えてください。

吉崎最高裁判所長官代理者 お答え申し上げます。

 個々の事件における審理期間につきましては、個別具体的な事案の内容や当事者の訴訟活動、すなわち、当事者から提出される主張や証拠の内容、量、また提出時期などによって事件ごとに異なるものでございますので、今後行われる再審事件につきまして、過去のものと比べてその審理期間が一般的に長くなるか短くなるかについてお答えすることは困難でございます。

吉田(は)委員 お姉さんの秀子さんは九十歳、袴田さん自身は八十七歳という御年齢でございます。是非そこにも、皆さん、思いをはせていただけたらなというふうに私個人は感じております。

 では、ちょっと補償のことをお伺いしたいと思います。

 刑事事件で、もし死刑判決を受けて、刑事訴訟法というんでしたっけ、それで補償がされます。無実の罪を着せられて死刑囚として長期間拘置された者に対する補償についてなんですけれども、一日当たりの補償額、お幾らぐらいになりますでしょうか。

松下政府参考人 お答えいたします。

 済みません、その前に一点だけ。公判前整理手続の件でございますが、裁判員制度の対象にはなりませんけれども、公判前整理手続には付することができるというふうに法律上のたてつけとしてはなっておりますので、付するか付さないかというのは事案によって異なるところでございます。それを一言申し上げておきたいと思います。

 今のお尋ねの件でございますけれども、補償のことでございます。刑事訴訟法等により身柄が拘束された後、無罪の判決が確定した場合には、刑事補償法に基づきまして、無罪の判決をした裁判所に対して補償の請求をすることができ、裁判所は補償の請求に理由があるときは補償の決定をしなければならないこととされております。

 その上で、抑留又は拘禁による補償におきましては、同法において補償の一部又は全部をしないと規定する場合を除きまして、その日数に応じて、一日千円以上一万二千円以下の割合による額の補償金を交付することとされております。

 その額をどのように定めるかでございますけれども、それに当たりましては、裁判所は、身柄拘束の種類及びその期間の長短、本人が受けた財産上の損失、得るはずであった利益の喪失その他、刑事補償法四条二項にいろいろな事項が記載されておりますけれども、その諸事情など、その他一切の事情を考慮して補償金の額を定めることとされております。

吉田(は)委員 今、刑事補償のものを袴田さんの場合に当てはめてみました。

 一九六六年八月十七日に逮捕され、二〇一四年三月二十七日に保釈されるまでの一万七千三百八十九日間、これはもし最高額が出た場合でも、一日一万二千五百円ですね、二億一千七百三十六万二千五百円。もし最低の千円の場合、これは僅か千七百三十八万九千円です。

 これは全然お金の問題じゃないと思うんですけれども、やはりこの金額や時間を思ったとき、ちょっと大臣に改めて伺いたいんですけれども、奪われた時間、自由、名誉、これは取り戻せないと思うんです。本当にこういうことがあるとき、もちろんいろいろなお考えがあるかと思うんですが、これは一般的に伺います。

 無実である人を拘束したり、また自由を奪う、これは本来できないはずなんですが、その権力というものを持っているのが司法、検察であり、そしてその判決を出す裁判所であり、こういったところになると思うんです。私、強大な権力だと思います。

 また、法務行政、そのトップに立たれるのが法務大臣であると思うんですが、私は、司法に対して、また法務行政に対して大変なリスペクトを持っているんですが、強大な権力であるからこそ、適正にその権力は行使されるべきだという私は立場なんですが、大臣は、今、法務行政のトップにいらっしゃって、また、こういった状況を鑑みて、どうお感じになり、今後どのような御覚悟で業務に当たられるのか、改めて伺いたいと思います。

松下政府参考人 失礼いたします。

 先ほど、私、言い間違えてしまいまして、上限額、御指摘のとおり一万二千五百円でございます。申し訳ございません。

齋藤(健)国務大臣 まず、袴田さんの事件そのものに関しては、私、ちょっと発言は控えるべきだろうと思っておりますが、当然のことながら、権力の行使に当たっては謙虚にかつ慎重に行うべきだということは当然だと思っておりますので、もしそういうことでないようなケースがあるのであれば、私は毅然として対応していきたいというふうに思っています。

 それで、ちょっと訂正なんですけれども、先ほどの私の答弁の中で、選択的夫婦別氏制度について、改正法案を準備したのが平成三年及び平成二十二年と申し上げましたが、平成八年を平成三年と言い間違えたようでありました。おわびして訂正させていただきたいと思います。

吉田(は)委員 ありがとうございます。

 やはり、司法また法務行政、大変に重要な、国の、法の支配ということで大変に重要な部分であると思いますので、是非その強大な権力は適正に行使していただきたいということを申し上げまして、質問を終わりたいと思います。

 ありがとうございました。

伊藤委員長 次に、寺田学君。

寺田(学)委員 寺田です。

 質疑時間を十五分いただきましたので、質問させていただきたいと思います。

 先ほどから質疑者の方々がこの間の視察の件をお話しされていますので、冒頭に一言申し上げたいなと思うんですが、本当に視察に行ってよかったなと思っています。

 刑務所と入管に行きましたけれども、刑務所で、やはり、熊田さんが言われていましたけれども、私も印象に残ったのは、自分の父親よりも上の年齢のおじいちゃんたちが収容されていて、その中で様々なケアをされていたというのを見ました。

 あのときに思い出したのが、有名な映画ですけれども、「ショーシャンクの空に」という映画の中で、中にいる方、おじいちゃんが長いこと刑務所にいて、ようやく外に出るんですけれども、社会になじめずに、最後は、結局のところ自ら命を絶つというような形になっています。

 本当に、矯正の在り方というのはどう考えるべきなのかなというのを、あのおじいちゃんたちの背中を見ながら、所長ともお話をしましたけれども、考えなきゃいけないなと思います。単に懲罰的に自由を奪うということ自体が果たして再犯を防ぐことにつながっているのかということは、あの背中を見ながら感じた次第です。矯正に関してはまた別の機会に是非とも質疑させていただきたいと思います。

 今日は、入管と性犯罪刑法についてです。

 入管法についても、今回提出されていますので、準備を自分なりに進めているところです。

 ただ、その中で、法務省から、入管からも話を聞きますし、民間の団体の方々から話を聞きます。どちらが話していること自体も、指摘をしている部分、注目している部分に事実はあるんだろうとは思いながら、法務省は法務省で、先ほど熊田さんが話をされていましたけれども、犯罪者が送還忌避者の中にいるのだというところをもって全体を語る部分はありますし、他の方々も、本来救うべき方々がいるのだというようなところに力点を置きながら、それで全体を語る部分がありまして、どちらも大事な意見だということで、できる限り客観的に受け止めているんですが、まだまだ、実態を知るという意味においては、情報であったりデータというものは私は不足しているのではないかなと思っています。

 そういう意味において、今後どのような審議の在り方になるか、審議するのかどうかも含めて、いろいろ議論はあると思いますが、入管として今行っている業務の在り方、実績、対応、それらのものをできる限り開示をして、その事実を基に議論していくことが一番大事じゃないかなと思っています。

 通告をしていますけれども、法改正の必要な理由というものは先ほどの質疑の中でもありましたので、今申し上げた点、大臣にお伺いしたいんですが、詳細なデータや実情というものを積極的に公開していくということの必要性について、大臣、どのようにお考えか、お話しいただければと思います。

齋藤(健)国務大臣 改正案について、国民の皆様の十分な御理解を得るとともに、国会で十分な御審議をいただく、そういう目的のためには、改正法案の立法事実などの情報について、開示可能なものは適切に御説明をしていくことというのは私は当然のことだろうというふうに思っています。

 御説明までに相当の時間を要する場合や、お求めの情報そのものをお答えすることが困難な場合ももしかしたらあり得るかもしれないと思いますが、そのような場合でもできる限りの説明をするよう、入管庁に適切に対応するように指示していきたいと思っています。

 いずれにしても、改正案の必要性、理由が国民の皆様方に伝わるように、その数値、データを含めて必要な説明を尽くしてまいりたいと考えています。

寺田(学)委員 入管の方々と話をしている中で感じること自体は、やはり必要以上に、情報を出すことに対する拒否感という言い方がいいのか、おそれというのか、様々なことはあると思います。

 ただ、ここはちょっと誤解を恐れずに言いますけれども、我が党の中でいろいろ意見を出して提案をしている法案の中身もありますけれども、いずれにせよ入管という行政組織は残るわけで、その入管という行政組織自体の信用を高めるということは、どのような立場であっても大事なことだと思います。そのことを高める上において、実際がどうなっているのかということをできる限り開示をして、それらに対して一つ一つ丁寧な説明をし、その中で価値観というものを国民と共有して物事を進めていくことが大事だと思います。

 ですので、現段階で申し上げたいことは、できる限り、細かい情報であっても、今まで出していない情報であっても、作業に時間がかかるとすればその時間は待ちますので、しっかりと出していただきたいというふうに思っています。

 今、それぞれ、出していただきたいことについて列挙したいと思っています。そのことに対して今この段階でお話しできること、開示できることは限られると思いますので、私が求めていることに対して入管としてどう捉えているか、そのことを含めてお話しいただければと思いますけれども。

 まず、難民認定率という言葉というか指標というものは、結構多くのところで目にします。私自身不思議に思っていたのは、難民認定率に関して法務省、入管として出したものはなくて、ほぼ全ては、政府以外のところから出ている数字というものが、報道を含めて、引用されながらやっている。

 難民認定率をどのように計算するのかによって、正直、その率自体の持つ意味合いというか実態を示すものは変わってくると思います。その年に申請された数を分母にし、その年に認定された難民の数を割ってしまうと、実際のところ、その人自身がどのように認定されたかどうかというよりは、その瞬間、その一年、単年だけ見て、申請されたものと認定されたものを単純に比べること自体が果たしてどれぐらい実態を表しているのかというのは議論があると思います。

 それは、分母を今度は申請者数ではなくて処理数にする、及び様々な違う形にするのでまた数字も変わってくると思いますけれども、今もう一定程度、難民認定率というもの自体が民間の方々を含めて出されておりますので、私は、政府としても、申請者数ではなく処理数ですかね、その年に処理された数とその年に認定された難民の数を要素としながら、難民認定率、そういうふうに呼ぶこと自体が入管としてどう考えるかはあると思いますが、政府として難民の認定率というものを出すべきではないかなと思っています。

 もちろん、それにはかなりの注釈を入れたいという気持ちは合理的には分かっていますけれども、今、既存の数字がかなり出て、〇・三とか〇・七とか、いろいろなところから様々な数字が出ているので、政府としてもちゃんと出すべきではないかなと思っています。

 それとともに、難民認定以外にも、庇護、人道的配慮ということで庇護していますので、その庇護全体を分子にしたもの自体も出すべきではないかなと思っています。できる限り実態というものが伝わるような数字にしてほしいなというふうに思います。

 それとともに、今、難民申請者の方々をABCDに振り分けていると思いますが、この振り分け後、その振り分けたABCD毎の様々な認定率というものも出すべきではないかなと思います。ですので、ABCD、申請者、Aが難民認定の可能性が高いもの、BとかCとか、C自体は、前回と同じようなものを理由なく出しているものと分けていますけれども、このABCD毎の難民認定率というものも出してほしいなと思います。

 それとともに、今、申請を処理するまでに約三年ぐらいかかっていると言われていますけれども、恐らくABCDごとに処理の期間は違っていると思いますので、振り分けABCD別の、AとA以外でもいいですけれども、ABCD毎の難民の判断、いわゆる原審までかかった期間、平均期間はどれぐらいになっているのか。Aだけ早いのか、ABCD全部同じなのか。どういう形なのか、実態はあると思いますので。いわゆる平均期間も、ざっくり今全部交ぜて約三年と言われていますけれども、この振り分けのABCDごとの平均期間も知りたいと思います。

 A自体、ここから申し上げるのは、この振り分け自体が適正なのかどうかということを判断する上での一つの要素になると思うんですけれども、振り分けA案件であったにもかかわらず不認定となった事例、そういうものの主な理由、逆に、BCDに振り分けながら難民認定に至ったケース、あると思いますけれども、それの理由というものもちゃんと示してほしいと思っています。

 もう一方で、今は難民認定に関してですけれども、送還忌避者。送還忌避者というこの言葉の選び方も正直どうかなと思います。難民認定、難民の認定申請をしている方々がいるわけですから、その方自体を忌避者と呼ぶこと自体がふさわしいかどうかという議論はありますが、便宜的に今そういう言葉を使っていますので、忌避者のことを申し上げますけれども、それの最新の人数。

 あと、先ほど熊田委員の方から犯罪者の話がありました。ちょっと熊田さんの資料を手元に置きながら見ていますけれども、送還忌避者の中には犯罪者の方がいるのだ、そこは程度として多いのだと言っているのか、どう言っているのか、受け止め方、発信者の違いがあると思いますけれども。

 罪種別で二千六百二十件ということで、薬物関係が六百七十二件、以下、入管法、窃盗、何とかとありますけれども、入管法自体を入れているのは私はどうかなと思いますので、この入管法を除いた、罪種別の件数ではなくて人数、本当に犯罪者が送還忌避者の中にいるのだ、じゃ、何人ぐらいいて、どういう罪を犯しているのか。罪種別だと、これ、同一人物が複数の罪をやると一つ一つのところにカウントが入りますので、その送還忌避者の方々の犯罪がどのような様態なのか、それを示すために、入管法違反を除いた上での犯罪を犯した人の人数を知りたいです。

 あと、難民申請をされている方々は、送還忌避者の中で、この資料を基にすると、三千二百二十四の忌避者の中で千六百二十四名ですかね、難民申請中の方々がいますけれども、その方々が、先ほども申し上げた振り分けの段階ではどのABCDの振り分けになっているのか、そういうことの傾向を知りたいと思っています。そういうものも出してほしいと思います。

 それと、あと、民間の支援団体の方々からもお話しされているんですが、これは在特と関わることだと思いますけれども、本当に救うべき人たちがいるのではないか、いるのだというような主張があって、私も実例をいろいろ聞いていると本当にそうだなという部分もあります。ですので、送還忌避者の中で、日本で生まれた子供の数、それと日本の小学校、中学校、義務教育課程に通う子供の数、あと日本人と結婚している者の数、作業が大変かもしれませんけれども、送還忌避者とはどういう方々なのかということを知る上で私は大事なことだと思いますので、そこは是非とも数字を出してほしいというふうに思っております。

 今、もろもろ申し上げましたが、まだ出てくるとは思いますが、現段階において、入管としてお話しすることがあればお話ししてください。

西山政府参考人 ただいま大臣からも答弁がございましたように、改正法案について国民の皆様に十分な御理解をいただくとともに、国会で十分な御審議をいただくためにも、必要な情報につきまして可能なものは適切に御説明すべきだということは、私どももしっかり考えているところでございます。

 今委員から様々な数字についてのお尋ねがございました。お尋ねの数値のうち、現在申し上げることが可能なものは送還忌避者数の最新の数でございまして、令和四年十二月末時点の速報値で四千二百三十三人というふうになってございます。

 それ以外の数値につきまして、難民の関係にしろ、送還の忌避の関係にしろ、そもそも通常の業務で統計として取っているものがないということがまず前提としてございます。また、その集約のために、地方官署等で保管している個別事案の記録を一件ずつ確認する必要があるといったものもございます。また、そういった確認を行った上でも、さらに、お求めの数値が正しく算出することが困難な可能性もまたございますけれども、そういった関係で、お答えに相当な時間を要する場合もございますし、情報そのものを正しく数値としてお答えすることが困難な場合もあり得ることは御理解いただきたいとは存じますが、委員の御指摘はしっかり真摯に受け止めたいと思いますし、適切に対応させていただきます。

寺田(学)委員 もちろん皆さん忙しいと思いますが、十分な時間を確保できるようにこの段階からお伝えをしているという部分を踏まえて、是非とも対処してください。理事会の方でもしっかりと審議したいというふうに思います。

 性犯罪の方に移ります、残り五分を切りましたので。

 報道を含めて、いろいろリアルタイムで支援者の方々とも見ていましたけれども、かなり大きな前進をした部分があると思います。不同意性交についての罪名が入ったり、あとは、性交同意年齢の引上げがあったり。ただ、十分ではない部分も私はあると思っています。

 ちょっと短い時間ですのではしょりながら質問しますけれども、いわゆる性交同意年齢の年齢差要件、五歳ということになりました。法制審の中での議論というものを見ていますので、結果として五歳差に収まったその経緯というものは文章上から感じ取ることはできると思いますが、これ自体が、四歳までの差であれば罰しないという形だと思いますけれども、その罰しないことの理由自体が、対等性がその間であれば保たれているであろうからということだと思いますが。

 大臣にちょっと最後聞きたいんですけれども、そういう場合でいうと、一般的に、性犯罪が起きる、及び性の搾取が起きるというのは、男性から女性の方というのはありますので、その一般的に沿いますけれども、高校を卒業した十八歳の男性と十四歳の中学校二年生の女子中学生ですけれども、この二人を比べた場合に、果たして対等なのか。一方は、もう働く自由も移動の自由もありますけれども、一方の女子中学生の場合は、働く自由も義務教育課程ですからないですし、経済的に得ることも当然できませんし、移動の自由もないです。これ自体を半ば対等性が保たれているから合法であるという考え方自体は、なかなか私は承服し難いなというふうに思っています。

 この、今一例を出しましたけれども、十八歳と十四歳、一般的に対等だと大臣は思われているか。性的な意味で聞きますけれども、対等な関係を保てるとお考えかどうか、大臣、いかがですか。

齋藤(健)国務大臣 対等かどうかは、それぞれケースによって考えていかなくちゃいけないと思っています。

 まず、御指摘は、年齢差が五歳差未満であっても対等な関係とは言えない場合があるのではないかという問題意識に基づくものだと理解しています。

 今回の法改正におきましては、いわゆる性交同意年齢は、暴行、脅迫などといった、意思決定に影響を与える事由がなくても、性的行為をしたこと自体で一律に性犯罪が成立するものとする年齢、そういう年齢を決めているわけでありまして、そのために、いろいろ御意見はあると思いますが、刑罰の謙抑性の観点に照らして、刑法等一部改正法案においては、その要件を満たすだけで例外なく対等な関係はあり得ないと言える場合だけに限って処罰対象とする、そういう考え方に立って五歳差を要件としたということであります。

 ちょっと話は変わるんですけれども、データを出すというお話に関して、入管庁が非常に抑制的だという御指摘がありました。私も官僚経験が長いものですから、数字を出すことについての懸念というのは共有するところがあるんですね。それは、御指摘いただいて、様々、本当はざっくりやれないところを、前提をつけながら一生懸命出しても、それが結果的に数字が独り歩きするということを非常に恐れるわけであります。ですから、これから出すデータについても、しっかり我々も、前提条件もしっかりお話しさせていただいた上で提供させていただきたいなというふうに考えています。

寺田(学)委員 質疑時間が終わりましたので終わりますけれども、しっかりと情報を出して、それを説明するのがこの場だと思いますので、説明をすること、十分そういう時間を確保したらいいと思いますので、その中で数字をちゃんと出していただきたいと思いますし、性犯罪に関しては、この部分と時効の部分は非常に強い問題意識を持っていますので、それはそれでまた別途、質疑させていただきたいと思います。

 終わります。

伊藤委員長 次に、阿部弘樹君。

阿部(弘)委員 日本維新の会の阿部弘樹でございます。

 二問の質問をさせていただきます。

 まず最初は、有事に起因する精神障害について御質問させていただきます。

 戦争神経症というものは、広く、ベトナム戦争以降、アメリカ社会などで非常に問題になって、そういうトラウマが帰還兵に非常に強い精神的ストレスを与えて、結果、社会復帰がままならない、あるいは様々な精神病を惹起するということでございます。この法務委員会では、ある意味では、人権の確保というのが大きなテーマでございますから、そのことについてお尋ねします。

 まず、現在の自衛隊員の、そういう有事の際に精神疾患が発症する、戦争神経症、精神病になった場合の対応というのはどのようにお考えでしょうか。

鈴木政府参考人 お答えをいたします。

 委員御指摘のとおり、厳しい勤務環境下における隊員の心理的ケアは重要な課題であり、防衛省・自衛隊は、十一個の自衛隊病院と防衛医科大学病院のうち、十の病院に精神科を設置し、精神科の医師約七十名、精神保健指定医約三十名、百九十五の病床を有しているところでございます。

 自衛隊病院等において受入れ能力を超える場合につきましては、隊員が適切な治療を受けられるよう、関係医療機関、団体等ともしっかり連携を取ってまいりたいと考えております。

阿部(弘)委員 日本は過去、幾多の戦争を経験しております。日清、日露、それと、さきの第二次世界大戦もその一つでございます。

 日本の国立精神病院の歴史を見ますと、各地に精神病院ができております。その特徴として、日本海側に精神病院が、療養所が日露戦争以降造られてきている。千葉県には国府台病院というところがございます。ですから、主に軍人さんたちを、精神科の治療をするための病院でございます。

 その国府台病院の兵士の記録、当時はカルテと呼ばずに日記と呼んでいたんですね。その中に、数多くの帰還兵の方々が、精神的に病んで、その記録を読みますと、単に軽い精神病ではなくて、重たい精神病になっておられる方が見かけられるわけでございます。

 自衛隊病院は多くの精神科医がありますが、今の体制というのは、軽い精神病、抑うつ状態や、重くてもうつ、それと、様々な精神病を惹起された場合にということでございますが、私の意見としては、今の精神病院は有事に備えた精神医療ではないというふうに感じておりますが、いかがでございましょうか。

鈴木政府参考人 お答えいたします。

 防衛省におきまして精神科を設置しておりますが、やはりそれでは対応できないケースも多々あると考えております。そういった受入れ能力を超える場合につきましては、やはり、我々では対応できないものにつきましては、関係団体、関係医療機関等にお願いするしかないと思っておりまして、そういったところとしっかり連携を取ってまいりたいと考えております。

阿部(弘)委員 これから、有事の際の保健医療計画というものを、既に厚生労働省は作っておられるかもしれませんが、内閣府におきましても、そういう有事における精神医療についての計画を是非ともお作りいただきたいと思っております。

 ここに、ある本が最近出版されております。精神障害兵士の病床日誌、これは、本来は国府台病院のカルテですから、保存年限を超えれば廃棄されるものですが、その記録は、日記として、ある病院に保管されておりました。それを出版されたということで、当時の兵士の苦しみというものが、よく現在に分かるわけでございます。家庭裁判所が裁判記録を廃棄した問題は非常に残念でございますが、こういったことが後世の政策に非常に役立つというふうに考えておるわけでございます。

 重い精神病になった場合には隔離病床が必要ですので、圧倒的に自衛隊の精神科では隔離病床が少ないですから、恐らく治療ができないと思うんですね。その際には、国立療養所や民間精神病院などの協力を得たらどうかというふうに考えておりますが、厚労省、せっかく来てありますから、お答えいただけますか。

鈴木政府参考人 お答えいたします。

 先生おっしゃるとおり、やはり、我々の自衛隊病院等におきまして対応できないものというのが発生する場合につきましては、御指摘のとおり、国立病院含め関係団体、それから関係医療機関等とも連携を取りながら対応させていただきたいというふうに考えているところでございます。

阿部(弘)委員 それでは、国民事態法について、有事の際の。

 もちろん、ウクライナを見ておりますと、侵攻による、あるいは戦闘行為により攻撃を受けるのは、兵士だけではないですね。ミサイルが飛んできた場合には、ミサイルを受けた町、その周辺の国民は非常に強いストレスを感じてしまう。ですから、同じような精神疾患になる。少なくともPTSDなどの皆さんがよく御存じの病気にはなる可能性が高いわけですけれども、そういう場合に備えた国民保護計画というものは、厚労省はお作りですか。

浅沼政府参考人 お答えいたします。

 厚生労働省におきましては、武力攻撃事態等における国民の保護のための措置に関する法律に基づきまして、武力攻撃事態等に際し、国民の保護のための措置を的確かつ迅速に実施できるよう、厚生労働省国民保護計画を定めているところでございます。

 具体的には、基本方針におきまして、基本的人権の尊重、国民の権利利益の迅速な救済、高齢者の方、あとは障害者の方への配慮等を規定するとともに、平時におきましては、地域における健康危機管理体制の整備や情報収集、国民保護措置に関する訓練の実施、また、有事におきましては、医療の提供、保健衛生の確保等、避難住民等の救援に関する措置といった事項を計画の中で定めております。

 この計画に基づきまして、武力攻撃事態等が生じた場合には、国民の生命、身体等を保護する措置を確実に講ずることができるように取り組んでまいりたいと考えております。

阿部(弘)委員 「戦争とトラウマ」という本も同じ著者で出ておりますが、強い衝撃を受けた場合には、人はストレス反応を起こしてしまう。不眠であったり抑うつであったり、不安が高まったりということであります。

 先ほどの、侵攻などの事態のときには計画はあるということですが、二行ぐらいしかその計画が書いていなかったんですけれども、精神医療についてのしっかりとした、特に、重い精神病になると思いますが、隔離室などの身体拘束を必要とするような医療が私は必ず出てくると思いますが、そういった点は、民間病院との連携などをお考えでしょうか。いかがですか。

大坪政府参考人 お答えをいたします。

 先生御指摘のような、武力行使があったりですとか有事の場合の医療の対応といたしましては、例えば災害時でありましたら、中心的な役割を担う災害拠点病院ですとか、精神科においては災害拠点精神科病院、こういったものを順次進めておりまして、今現在で、拠点となる精神科病院は三十六病院、全国にあるところであります。

 また、災害を超えた武力攻撃の有事の際には、そういった、先生御指摘のような精神疾患、こういったことも当然重要でありまして、先ほど参考人が申し上げたような国民保護計画、それ以外にも、平時から、医療計画、この中で、五疾病五事業の中の、五疾病の中に精神医療というものを設けておりまして、これは令和六年度から次の計画に移っていきますけれども、不断のこういった見直しを行っているところであります。

阿部(弘)委員 その五疾病の話をされると、またどんどん突っ込みたくなってくる話で、それは違うでしょう。五疾病の話と違うでしょう、有事の話は。生活習慣病と一緒なんですか。

大坪政府参考人 失礼いたしました。

 平時の体制も確保しつつ、また、武力行使の有事の体制といたしましては、先ほど申し上げました災害時においての災害拠点精神科病院、こういったところの整備を都道府県の協力をいただきながら進めております。

 また、それ以外にも、核兵器や生物兵器、化学兵器といった、災害、テロの発生を想定をいたしました研修ですとか訓練、こういったことを行っておるほか、参考人が先ほど申し上げました国民保護計画に基づき、公的な医療機関、また民間の医療機関に対しましても、そういった有事においての派遣を依頼する、こういったことで、計画に基づき準備をしているところであります。

阿部(弘)委員 答弁を作られた方のセンスを疑いますね。全くそういうことを聞いていないんですよ。災害のことではなくて、ミサイルが飛んできて、その周りにいた方々が、肉親が亡くなり、そして家屋が破壊される、そういうときの国民の精神状態。想像の話でございますが、そういうことも起きてくる。

 人権擁護の観点から、国民の人権を保護する窓口として、法務省、どのように考えてありますか。

鎌田政府参考人 お尋ねのミサイル攻撃等の有事の場合に限った話ではございませんが、精神疾患を抱えている方やその疑いのある方が、法務省の人権擁護機関に対し、人権相談として抽象的な心の悩み、不安を訴えてくることは、実務上、現在でも散見されるところでございます。

 このような場合、特定の相手方による人権侵犯事実が具体的に想定されるのであればともかく、そうでなければ、相談者の意向を確認した上で、精神保健福祉センターを紹介するなどの対応を法務省の人権擁護機関としては行っているところでございます。

阿部(弘)委員 是非とも政府を挙げてこの事態に取り組んでいただきたいと思います。

 次の質問に移りたいと思います。

 私は、時間は余りなかったんですが、成年後見制度について御質問させていただきたいと思います。

 この成年後見制度ができて約二十年近くたつわけでございます。当初は肉親などを後見人に選任するところだったんですが、その数が激減してきて、専門家が後見人に選任されることがある。保佐人やあるいは補助人を選任されるはずが、ほとんどが後見人を選ぶ。つまり、障害者の権利が失われる決定をいきなりなさってあるんじゃないかということ、これが国連の障害者委員会で廃止という指摘を受けているんじゃないかと思われますが、いかがでございますか。

金子政府参考人 お答えいたします。

 現在、成年後見制度として三類型、後見、保佐、補助という類型がございます。

 今先生御質問の中で、保佐、補助であるべき人なのに後見の開始になっているんじゃないかというお話がありましたが、ちょっとそれは、元々の要件が、精神状態によって要件が違っていまして、ただ、その運用については、もしお尋ねであれば最高裁の方からお答えがあると思いますが、御指摘の、国連障害者権利委員会から受けた勧告の内容について御説明したいと思います。

 障害者権利委員会の総括所見では、成年後見制度について、意思決定を代行する制度を廃止する観点から、全ての差別的な法規定及び政策を廃止し、全ての障害者が法律の前にひとしく認められる権利を保障するために民法を改正すること、必要とし得る支援の水準や形態にかかわらず、全ての障害者の自律、意思及び選好を尊重する支援を受けて意思決定をする仕組みを設置することなどの勧告がされたものと承知しています。

阿部(弘)委員 私も、二十年前に民法改正に携わりまして、当初は、後見人は親族が行って、そして、権利能力も、行為能力については保たれていくんだなというふうに思っておったんですが、もうほとんど裁判所の決定は、全てがいきなり後見人、病気の性格からしても後見人を選んでおけと。一方で、法務省の方は、任意後見人やその他の制度についての普及は余りお進めにならない。

 全て後見人ばかりだということですから、いきなり行為能力を制限してしまうものですから、おじいちゃんが、どこどこに行きたい、お彼岸にお墓参りに行きたい、お彼岸におはぎを食べたいと言っても、前の日に言ったらできないわけですね、通帳が凍結されているわけですから。おばあちゃんは困ってしまうわけなんですよ。

 だから、そういう障害者を差別するような制度は、国連は、見直してください、少なくとも支援付意思決定制度に変えてくださいということを、この二十年間の運用で。

 実際に、後見人を、成年後見を選択する人たちの数がそんなに増えていないんじゃないですか。減ってきて、市町村同意の成年後見制度が増えてきているんじゃないですか。いかがですか。

馬渡最高裁判所長官代理者 お答えいたします。

 成年後見制度の申立て件数というのは年々増えてきております。その中で、市町村長申立ての事案というのは増えてきておりまして、その要因にはいろいろあると思いますが、例えば、独居老人、孤独な老人の認知症の方なども増えてきているという背景があるのではないかというふうに考えているところでございます。

阿部(弘)委員 第二次の、市町村、都道府県の成年後見制度を普及する計画を立てるようにというふうに今行ってあるところでございますが、法的能力、行為能力が、成年後見の決定に至る簡易精神検査では、私は非常にひど過ぎるなと思っているんですよ。長谷川式で、点数がこの以下だから、もうおはぎは食べられないんですよ、お彼岸にお墓参りできないんですよといきなり制限する。ほかの障害者でそういう制限をしますか、大体。おかしいですよ、一部能力が劣っただけで。それは通告ないけれども、お答えできますか。

金子政府参考人 成年後見人の職務は、本人の法律行為の代理あるいは財産管理ということになりますが、他方で、本人の心情に配慮する、それから本人の意思を尊重する義務というのを法律上負っていることになっておりまして、日常生活の、何を食するかというところまで関与するというのが成年後見人の職務ではないものと思っております。

伊藤委員長 時間が参りました。

阿部(弘)委員 はい、最後にします。

 資本主義経済の中で私どもは生活しておりますので、お金がないといろいろな行為ができないわけでございますから、単に認知症の検査で点数が低くなったからといって、ここにいる皆さんもいずれ老いというのは迎えます。その中で、ある瞬間になったらお墓参りもおはぎも食べられなくなる、そういう制度というのはおかしいと思いますので、是非とも、もう二十年もたちましたので、御検討願いたいというふうに要望いたしまして、私の質問を終わります。

 ありがとうございました。

伊藤委員長 次に、沢田良君。

沢田委員 日本維新の会、埼玉の沢田良です。

 阿部委員に引き続き、法務行政のこれまでとこれからについて、幾つかのポイントに絞って質問させていただきたいと思います。

 齋藤大臣、伊藤委員長を始め理事、委員の皆様、委員部、法務省の皆様、本日もどうぞよろしくお願いいたします。

 さて、先ほど熊田委員、日下委員、そして寺田委員からもお話ありましたが、三月十三日には、委員部、法務省の皆様の御尽力あって、名古屋入管そして名古屋刑務所を視察する機会をいただきました。

 刑務所の中に入るという経験は私は初めてでございまして、実際に足を踏み入れてみると、ドラマや映画でイメージしていた以上の強い緊張感を肌で感じました。

 法治国家であります我が国において、安心、安全な暮らしの表裏一体として、いろいろな理由によって法を犯し刑に服している方々がいらっしゃいます。一般的に、怖い、危険な職場と考える刑務所において、日々職務を全うなさっています刑務官の皆様あって、当たり前の毎日があると考えると、私は敬意しかありません。すさまじい緊張感やストレスにさらされる業務からか、離職する方が多いとお聞きしております。

 まずは、刑務官がほかの公務員と違って特に負担が大きいと思われるポイント、又は三年未満での離職率について法務省に伺いたいと思います。

花村政府参考人 お答えします。

 その前に、名古屋刑務所職員による暴行、不適正処遇事案の発生につきまして、極めて重く受け止めております。誠に申し訳ございません。

 平成二十八年度から平成三十年度までに採用された刑務官のうち、採用後三年未満で離職した者の割合は、男性が一九・三%、女性が三四・〇%となっております。

 刑務官は、二十四時間三百六十五日、被収容者の収容を確保し処遇を行うものでありますことから、多くの者に昼夜交代制勤務を命じておりますほか、非常事態が発生した場合には、夜間、休日でございましても緊急に非常招集されるなど、その勤務は不規則で負担が大きいものとなっております。

 加えまして、近時は、高齢者など処遇に特別の配慮を要する被収容者の割合が増加傾向にあり、刑務官の負担は一層大きくなっているところでございます。

 刑事施設がその役割を適切に果たすためには、刑務官の能力の向上を図りますとともに、刑務官が職務遂行能力を十分発揮できるようにする必要がございます。

 これまでも、ワーク・ライフ・バランス実現のための各種休暇の取得促進、早出遅出など勤務時間の柔軟化、一部業務へのテレワークの導入や業務の効率化などにより、職場環境を整備したところでございまして、引き続き適切な措置を講じてまいりたいというふうに感じております。

沢田委員 御丁寧にありがとうございます。

 私も、先ほど言ったポイント以外に、今言った部分も含めて、やはり結構ハードな職場だなというふうに感じます。

 人事院の年次報告を調べると、国家公務員の離職率は、令和二年度の給与法適用職員で六・九%、行政執行法人職員で六・〇%、全職員で七・〇%、男性七・三%、女性五・六%となっています。先ほど答弁にありました刑務官の離職率と比べると、かなりの差があると言わざるを得ません。一般的に若手公務員の離職率は民間よりもずっと低いと言われていますが、特に女性刑務官の三年未満の離職率については、私は、ちょっと衝撃的とも言える数字を御答弁いただきました。

 この離職率の高さを考えますと、先ほど御答弁があったように、ほかの公務員とは違った、負担の部分以上に御苦労をされている刑務官の皆様がいるのではないのかというふうに私自身ちょっと感じております。採用前にミスマッチを防ぐことはもちろん、採用後のフォローや心身のケアといった点にも格段の配慮が必要と考えます。

 先日の二十七日に開かれた人事院の有識者研究会では、国家公務員の長時間勤務を改善するため、職員の選択によって週休三日制を取得できるよう求める提言を取りまとめたというニュースがありました。提言では、質の高い公務の持続的な提供に向けて、超過勤務の縮減が必要不可欠とし、政府全体の取組として、一層の業務改善を要請しているともありました。刑務官のように離職率が高い職種についても、様々な検討を重ねて、少しでも働きやすい環境をつくるべきと私は考えております。

 大臣に御質問させていただきます。

 刑務官の皆様の今後の労働環境について、人員の拡充も含めた環境整備や心身のケアを強化していくことなどを含めてどうお考えか、教えてください。

齋藤(健)国務大臣 私も、刑務所を視察をしておりまして、本当に過酷な、大変な職場だなということは肌で感じてまいりました。

 特に、二十四時間三百六十五日、収容をしっかり確保して処遇を行わなくてはならない。さらには、矯正局長も話しましたが、当然のことながら昼夜交代勤務にならざるを得ないということですとか、非常事態もそれなりに発生するものですから、その場合は夜間、休日も関係なく非常招集されるということで、そういう中で勤務が不規則で負担が大きいものになっています。

 私は、そういう中でも一生懸命やってくださっている方々が職場が嫌になって辞めるということが本当にあってはならないと思っていますので、御指摘のように、職場の体制を含めて、あるいは適切な、適正な人材の確保を含めて、一生懸命取り組んでいきたいと思います。

沢田委員 どうもありがとうございます。

 大臣所信でも、職場環境を含めて大臣の強い思いをいただきましたので、是非、今回、視察に行かせてもらった経験として、次につなげていただければと思います。

 次に、マイナンバーの活用についてです。

 私は、マイナンバーをフルスペックで活用することがこれからの日本の新しい社会保障を考えるために必須だと考えております。ただ、今のマイナンバーは、御存じのとおり、税と社会保障、災害対策にしか使えず、相性のよいサービスなどが統合できなかったという話はいろいろな省庁からも教えていただいております。

 そんな中、岸田総理はマイナンバーカードの利活用を広く考えておられ、少し状況が変わるのではと期待しております。マイナンバーカードの利活用とマイナンバーの活用はもちろん違うものとはなりますが、法務省が取り扱うデータ、個人情報、例えば戸籍事務、所有者不明土地対策など、マイナンバーとの連携ができるものもあると考えます。

 特に、所有者不明土地対策については、恐らく法務省の中でも、マイナンバーをどのように生かすか様々な議論があったと理解しておりますが、実際に今までどのような議論があったのでしょうか。また、検討する中で利活用まで至らなかった点についても教えてください。

金子政府参考人 令和三年の不動産登記法改正は、所有者不明土地の発生予防等を目的とするところ、所有者不明土地の主要な発生原因は、相続登記や住所変更登記がされないことにあります。そのため、その解消のための登記を進めるためには、所有権の登記名義人の法定相続人が誰であるか、また、その登記名義人の氏名、住所の変更情報などを取得することが必要になります。

 令和三年の法改正に際し、そのための方策を検討したところ、現在のマイナンバー制度における情報連携によっては、連携可能な情報の内容に限界があり、法定相続人の範囲や個人の氏名、住所の情報を取得することが困難であるため、マイナンバーを所有者不明土地対策へ活用することには限界がありました。

 したがいまして、先般の不動産登記法の見直しでは、マイナンバーを活用した方策を盛り込むことにはならず、住所変更等の未登記への対応として住基ネット等による情報連携を進めることになったという経緯がございます。

 もっとも、法務省としましては、今後とも、マイナンバーの積極的な活用に向けた政府全体の様々な検討や取組状況等をしっかりと把握しつつ、引き続き所有者不明土地対策の実効性を高めるべく必要な検討を行ってまいりたいと考えております。

沢田委員 ありがとうございます。

 このままちょっと大臣にお伺いしたいんですけれども、法務省の所管、例えば戸籍事務や在留関係なども、マイナンバーと連携できるようなものが私はあると思っております。

 今後、法務省におけるマイナンバーの活用、大臣、どのようにお考えでしょうか。

齋藤(健)国務大臣 戸籍事務や在留関係手続においてマイナンバーを活用していくということについては、法務省としても今後とも検討していくべき課題だと認識をしています。

 戸籍事務につきましては、令和元年に戸籍法が改正されたことを受けまして、法務省において新たに構築する戸籍情報連携システムを通じて、戸籍に関する情報をマイナンバーを活用して行政機関に提供する仕組みの構築というものを今進めているところであります。今後は、令和六年三月から、御案内のように、社会保障や税などの事務において活用される予定になっています。

 また、デジタル社会の実現に向けた重点計画、ここにおきましても、中長期在留者に関する行政手続の事務、これにつきましては、従来のマイナンバー利用事務からの拡大を図るとされておりまして、これを踏まえて、在留関係手続へのマイナンバーの活用の実現に向けても引き続き取り組むことにしているところでございます。

沢田委員 ありがとうございます。是非進めていただければと思います。

 このマイナンバーの活用には、当然、デジタル化と、今大臣からもいろいろいただいたんですけれども、ちょっと、公文書の管理について、デジタル化について気になる部分がありましたので御紹介をさせていただきます。

 内閣府の調査では、公文書等の管理等の状況についてというものがございます。この調査によると、行政文書ファイルを千件以上保有する政府機関を比べると、政府の公文書を電子媒体で作成、保存できるデジタル化の割合が最も低かったのは公安調査庁で一・七%。厚労省が一・八%で続き、法務省が四・一%。最も高かったのは総務省の八六・九%。消費者庁が八五・九%、海上保安庁が八一・一%。ちなみに、令和三年度の法務省の行政文書ファイル保有数は、全体で百二十八万五千八十六件、うちデジタル化されているものが十四万四千七百五十一件で一一%、これはかなり低く感じます。

 質問させていただきます。

 このように法務省や公安調査庁が取り扱っている公文書について、デジタル化が進んでいない大きな理由としては何があるんでしょうか。

押切政府参考人 お答え申し上げます。

 先ほど委員からも御指摘がありましたが、令和三年度に法務省が新規に作成し又は取得した行政文書ファイル等に占める電子媒体の割合は四・一%であったと認識しております。

 電子媒体の割合がこの程度にとどまった理由を一概にお答えすることは困難でございますが、法務省では、決裁の判断に必要な資料が紙媒体であることも多く、電子決裁とすることでかえって非効率となる業務が多いことが理由として挙げられます。

 もっとも、行政文書ファイルの管理を含む行政のデジタル化は推進していくべきものと認識しております。法務省としては、昨年九月三十日に法務省デジタル・ガバメント中長期計画を策定したところですが、この中長期計画には、デジタル社会の実現のために法務省が迅速かつ重点的に実施すべき施策を盛り込んでおり、これらの施策を実現すべく、デジタル化に向けた取組を進めております。

 引き続き、この取組を進めることによって、行政文書の電子化についても推進してまいりたいと存じております。

沢田委員 ありがとうございます。

 ちょっと、昨日、日本維新の会の中でも部会があって、デジタルをずっと追ってもDXにはならないという話があって、やはり仕事自体を全部生まれ変わらせることがトランスフォーメーションそのものだという話を聞いて、ああ、すばらしいなと。やはり、そういうところがあると思いますので、全体的な動きとして動いていただければと思います。

 最後になりますが、ちょっとAIの利活用について、大臣所信では、翻訳についてAIを使いたいというのが載っていたんですけれども、もしこのAIについて、大臣自身、御意見がございましたら、最後にいただければと思います。

齋藤(健)国務大臣 AIやICT等の技術革新が進む中で、その活用推進は、私は、政府全体の課題でありますし、法務省におきましても、業務の質、効率性及び利便性の向上のため、AI等の最新技術の活用について戦略的かつ迅速に検討する必要があると思っています。

 委員御指摘のように、日本とアメリカのITの活用方法の違いを考えますと、日本は、既存の業務を効率化するにはどうしたらいいかと考えるんですけれども、アメリカの場合はそうではなくて、仕事そのものの在り方を変えるためにIT、AIを利用する、そういう大きな違いが一般論としてあるみたいでありますので、そういうことも心に入れながら、現在、法務省では、日本法令の外国語訳の翻訳、それから刑事施設における被収容者の物品の管理業務、保護観察におけるアセスメント、こういった分野についてAIの活用に向けた取組を推進してきているところでありますので、今後とも、AI等の最新技術の適切な活用に向けて、引き続き取組を推進してまいる所存であります。

沢田委員 どうもありがとうございました。ぎりぎりまで御説明、本当にありがとうございます。

 以上となります。

伊藤委員長 次に、鈴木義弘君。

鈴木(義)委員 国民民主党、鈴木義弘です。

 早速質問に入りたいと思います。

 ちょっと、なかなか自分が答弁者に立ったときに難しい質問をするなというふうに自分でも思うんですけれども、でも、これが社会の中で今やはり問いかけられてきているかなというふうに思います。

 法務省所管の大臣ということで、法律、それと世の中にある道徳、モラル、自然法など、明文化されていない規範を大切にしてきた日本人の価値観というのがあるんだと思うんですね。それが少し綻びが出てきたんじゃないかと私は感じるんです。このままでいいわけがないんですけれども、じゃ、どう直していくか。法律を作ったから直るわけじゃないんだと思うんですね。

 ただ、やはり、例えば地域のコミュニティー一つ取っても、この間も御質問したかもしれませんが、少しずつ崩壊してきちゃっているんですよね。じゃ、法律でそれをがちゃっとやったからうまくいくかって、そうならないと思うんです。

 だから、そういう社会の変化に、法務行政のトップとして、やはり情報を発信するなり意見を発信していくのが必要なことなんだと思うんですけれども、その点についてまずお尋ねしたいと思います。

齋藤(健)国務大臣 多くのいろいろな考え方を持った人が社会として生きていくためには、やはり一定の規律、ルールみたいなものが当然必要になってくると思います。

 その上で、それを法令に基づいて行うだけではなくて、やはり一人一人の持つ倫理観、道徳観というものとセットで、両方相まって、私は社会が健全なものになっていくんだろうというふうに思っています。

 人々の考え方も時代によって大きく変わってくるんだろうと思いますので、明治時代と昭和時代と今の令和では大きく変わってきているんだろうと思います。

 私が申し上げたいのは、問題意識は共有するのでありますけれども、倫理、道徳のことについて、時代に応じて変わっていく必要はあると思っています。特に主導的立場にある人の使命感みたいなものも、非常に、その時代に応じて変わっていくんだろうと思いますが、そこについて、法務大臣がここでこうすべきああすべきということを答弁するのは差し控えなくちゃいけないと思いますが。

 ただ、社会が健全なものとなっていくためには、法律による規律と、それから道徳、倫理による規律の両方が相まって必要なんだろうなというふうには思っています。

鈴木(義)委員 例えば、昨日もお話ししたんですけれども、地元で土手際にトンネルがありまして、車がすれ違いできないんですね。必ず、一台入ってくれば手前で止まって、何台か行かせる。十年か十五年ぐらい前は、五台ぐらい行かせると相手方が止まってくれて、こっちが五台行かれる。それがいつの間にか、この十年、十五年の間ですかね、どんどんどんどん入ってくる。前が空けばどんどん入ってくる。十台だろうが二十台だろうが、どんどん入ってくる。その先でまた狭くなっているところがあって、これも、すれ違いするのに、やはりちょっと運転がうまくないとこするぐらいの狭いところがある。そこが詰まってきているのにどんどん入ってくる。だから、我先に行くことが、自分の欲望というのかな、仕事なのかプライベートか分かりませんけれども、でも、行けば詰まってしまうのに、今度こっち側も渋滞してしまう。

 これはモラルというのか、道徳というだけで収まらないんじゃないか。要するに、社会的なジレンマに陥っちゃっていることが、今まではそういうことがなかった、なかったというより、規範が、社会規範があったんでしょうね。お互いさまという言葉も今ほとんど聞かれなくなってしまった。それを、じゃ、法務省の大臣がこうだああだと言っていいのかといっても、でも、法務大臣だから言うべきことじゃないかなと思うんです。

 例えば、次の二問目の質問に移るんですけれども、SNSが発達したことで自分で情報発信が自由にできる時代になったんですね。それはすごく画期的でいいことだと思うんですけれども、これが動画だとか映像が、私もユーチューブを見たり、ネットでいろいろな情報を取ったりしますのでいいんですけれども、そういうことが、例えばかけ放題とか取り放題のお店、ある回転ずし屋さんで問題になったのもありますよね。食べるんならいいんです、かけ放題、取り放題で。でも、それを面白おかしく映像を撮って、ただ流すだけ。ほとんど口をつけない。それが当たり前になってしまうんじゃ、やはり物のありがたみとか食の大切さということを、面白おかしくすればいいのかといったら、私は違うんじゃないかと思うんですね。

 だから、今、前段で申し上げたような規範とかモラルがあるのか分からない、物を大切にする、また食事のありがたさが分からないような動画、映像がどんどんアップされて、面白おかしくされることで、自分たちの満足なのか、鬱憤を晴らしていることなのかよく分かりませんけれども、それが社会で起きてしまっている。じゃ、法律で、刑法で、何とか法というのを作って刑罰を与えたからそれが止まるかといったときに、そこは止まらないんじゃないかと思うんです、次のものが出てくるだけの話で。

 それについてどういう取組をしていくのか、善後策があるのか、お答えいただければと思います。

高見大臣政務官 鈴木委員のお話を伺いまして、トンネルのお話、SNSのお話、私も問題意識を共有するところもありますし、私の体験から思うところもありますけれども、私から一定の価値観とかモラルとか、そうしたことが、何がいい悪いということを申し上げることは慎重にならざるを得ないことをまず御理解をいただければと思います。

 ただ、その上で、価値観が多様化、複雑化する現代社会においては、自らの考えはしっかりと持ちつつ、ただ、他者を尊重して、社会の一員として共に生きていける若い力を育むことは私は非常に重要であるというふうに考えています。

 そのような観点から、法務省では、基本的人権や法の支配、法や司法制度の基礎となっている価値などを理解して法的な思考を身につけるために法教育の浸透に向けた取組を行っているところであります。

 法務省としましては、関係機関等と連携をしながら、法教育の浸透に向けて積極的に取り組んでまいりたいと考えています。

鈴木(義)委員 多様性のある価値観だからということで認めるということに例えば取られた場合に、じゃ、やっていいんじゃないかとなりますよ、今の答弁だと。駄目なものは駄目だって何で言わないのかということ。あなたのやっていることも多様性だからどんどんやってもらって、自分の価値観でどうぞやってくださいといったら、今私が例示を挙げたことは全然解消されない。それでいいかということです。やはりそこは毅然として、こういうことは駄目なんです、多様性の中だけれどもこれは駄目なんですとやはり言わないと、いい方向には向いていかないような気がするんですけれども、もう一回御答弁できますかね。

高見大臣政務官 改めて答弁をさせていただきます。

 今委員が御紹介になった、明らかに法律に触れるような行いをしている、これについては、明らかに駄目なものは駄目とはっきり申し上げなければいけないと思います。

 ただ、多様性についてお話がありました。多様性というのは、一般には、いろいろと異なるさまというものを指すものとして用いられているものと認識をしております。

 私は、我が国社会において多様性が尊重されて、全ての人がお互いの人権や尊厳を大切にして、生き生きとした人生を享受できる共生社会の実現に向けて、政府全体として、引き続き、様々な国民の皆様の声を受け止めてしっかりと取り組んでいくことが重要であるというふうに考えているところであります。

鈴木(義)委員 例えば、去年、食事に行ったところで、家族連れで食事に来られていたんですね。私は秘書と一緒に、いつもお世話になっているところなので、行ったら、がやがやがやがや、子供が、幼稚園に行っているか行っていないかぐらいの子供ががやがやしているんだけれども、会話がちょっと耳に入って、この小さい子供に言い聞かせたって分からないんだからしようがないんだって親御さんが言うの。それは、自分たちだけがそのお店にいるときはいいよ。違う客もいる中で、なぜそれを制止できないのか、それも多様性なのかということなの。そういったことを言っているんですよ。

 多様性を尊重しないとは言っていないの。でも、他人に迷惑をかけるようなことは、法律で禁止することじゃないじゃない。それは規範ですよ。他人に嫌な思いを、同じ一つの空間の中でいたときに、それを昔は行儀が悪いと親が制したものですよ。おじいちゃん、おばあちゃんがばかやろうと怒ったものですよ。それを今、誰もやらなくなっちゃったと思うんですね。

 もう一点。

 今日もAIだとかITの話がありますし、これから、民事訴訟法で、デジタル化していくという法案も出てくると思うんですけれども、私たち、ふだん当たり前のように本人確認というのをされるんですね。運転免許証、保険証、今総務省が一生懸命推奨しているマイナンバーカードなんですけれども。

 ネットで私も物を買うし、チケットを予約するときもあります。決済はクレジットカード。でも、クレジットカードが本人確認がされているかどうか、ネットじゃ分からない。でも、本人確認で、私もクレジットカードを使って、後ろに何とか番号というのがついているからそれを入れると、決済が終わりました、商品を受け付けます、予約を受け付けますというふうになっているんだけれども、ネットの世界じゃ、全然、本人確認のホの字もない。でも、本人確認、本人確認。市役所に行っても県に行っても国に行ってもそうだと思うんですね、本人確認。

 去年、遅ればせながら、私、マイナンバーカードを申請したんです。これでできちゃう。自分の名前と住所、生年月日だとか入れて、写真を撮る、これで。ぴっと撮って。後ろの背景があるとかないとかで、一回申請したら、駄目です、もう一回撮り直せといって、もう一回申請し直しましたけれども。

 じゃ、そのときに、全然赤の他人がその写真に写っていたときに、マイナンバーカードを発行されて、それを市役所なら市役所に取りに行ったとき、その写真と私が同一人物だったら、その発行はされちゃうんです。本人確認、誰がどこでしているの。それが一つ目です。

 時間がないので、もう一つお尋ねします。

 それと、たまにコンビニでお酒だとかたばこを買うときに、二十歳未満じゃないよと、ここのボタンを押してくれといって、押すんですね。知り合いの店員さんだったので、私、十八に見えますかねと言ったら、いや、いいから押してくれと言うんだ、簡単に言えば。議員会館の下にコンビニもありますよ。そこに行って、酒とかたばこを買おうといったら、店員さんがこのボタンを押してくださいと言う。私たち、二十五歳以上にならないと衆議院になれない、でも、ボタンを押せと。要するに、形骸化しちゃっているということなんです。

 本人確認をしろというふうにくどく言ったりなんなりする反対側で、何で、じゃ、私が二十歳前後に見えるというんだったら、私はちょっと童顔じゃなくなってきたので、十八とか十九はちょっとなかなか難しいかなと思う。でも、なぜそれで私に二十歳未満のボタンを押させるのか、違いますよというボタンを押させるのか。いや、警察から言われているから。それは意味があるかという話なんですね。

 よく聞く話なんですけれども、お酒だとかたばこを子供に買ってこいと言われたときに、親御さんが、私が買ってこいと言ったから、お金を持たせて使いに行かせるんですけれども、お店でそれを言うと、前は出しちゃっていた。今はもうちょっと厳格にやっている話は聞くんですけれども。

 そういうことが世の中で起きているにもかかわらず、やはりきちっとそこのところは、どうしていくかというのを、時間が来ているのでもう終わりますけれども、方向づけを出していこうとするのか、お尋ねしたいと思います。

高見大臣政務官 お答えいたします。

 前段のマイナンバーの部分につきましては、当省の所管外ですので、お答えは差し控えさせていただきます。

 契約一般の本人確認ですけれども、私法上の契約には様々なものがございまして、契約の締結に当たって当事者が相手方の本人確認を行っている、その目的は様々でございます。したがって、特段の法律の定めがなければ、契約の相手方の本人確認の方法については各当事者の責任において判断されるべきでございまして、どのように本人確認を行えば足りるのかということについて一概にお答えすることは困難でございます。

鈴木(義)委員 時間が来たので終わりますけれども、やはり、そこのところをよく、方向づけを出さないと駄目だと思います。

 終わります。

伊藤委員長 次に、本村伸子君。

本村委員 日本共産党の本村伸子でございます。どうぞよろしくお願いを申し上げます。

 私も、名古屋の刑務所、そして名古屋入管の視察に参加をさせていただきました。名古屋の刑務所では、刑務官の増員というものが喫緊の課題であるということを痛感をいたしましたし、名古屋入管では、もっと調査をする時間が必要であるというふうに思いました。ちょうどハンガーストライキを当時やっていたようでございまして、なぜそうしたことを知らせていただけなかったのかということも思います。更にこの点についても今後質疑をさせていただきたいというふうに思っております。

 一昨日なんですけれども、私、名古屋の地方裁判所へ行きまして、名古屋入管で亡くなられたウィシュマさんの御遺族が提訴をされた裁判で上映される予定の映像記録五時間弱を視聴してまいりました。私たち法務委員会でも二回ほど見させていただきましたけれども、まだ私たちが見ていない九十一分十一秒ぐらいの映像も含まれておりました。

 ビデオが残っている二〇二一年二月二十二日の段階から、ウィシュマさんの足は十分機能していない、歩けないような状態で、食べたいけれどもできないと切ない声で訴えておられました。二月二十二日の段階で、既に点滴、入院が必要だったというふうに思わざるを得ない状況でございました。救急車を呼ぶなど、何度も何度も、本当に命を救うことができる機会は何度もあったということも再確認をさせていただきました。

 今日は、このウィシュマさんの死亡事件に関わりまして、機能しなかった視察委員会の抜本的な強化について質問をさせていただきたいというふうに思っております。

 先回もお話をさせていただいたんですけれども、ウィシュマさんは、二〇二一年一月二十八日、外の病院へ今すぐ連れていって、そして、私が死んでもいいのかと泣きながら訴えておりました。しかし、聞いてもらえず、一月三十日、視察委員会へ手紙を投函しました。この手紙がもっと早く開封されていれば、そしてもっと頻繁に視察委員会の視察があれば、そして視察委員がウィシュマさんと面会できていれば、命を救うことができたかもしれないというふうに思うわけです。この視察委員会の機能、権限を抜本的に強化しなければならないということを痛感しております。

 大臣に、視察委員会について、次のような改革が必要だということで幾つか御提案を申し上げたいというふうに思います。

 一つ目は、現在、入国者収容所等視察委員会は、東と西の二つしかありません。やはり刑務所のように全ての収容施設ごとに設置することが必要です。そしてもちろん、独立性を担保した上で設置することが必要だというふうに考えております。

 また、二つ目なんですけれども、元視察委員の方から、十分な視察時間、回数を確保することが難しかったという御発言があります。各収容所に対して、十分な視察時間、回数を確保すること、また、フォローアップも含めてちゃんとやるということ。イギリスでは、一回の視察で五日間、百項目以上の調査を行うということもあるそうです。そして、夜間の視察もあるそうです。これは、新津久美子さん、研究者である新津さんがおっしゃられているんですけれども、そうしたことからも学ぶべきだというふうに思っております。

 そして三つ目なんですけれども、運用要領に代わる規則、基準については、入管が決めるのではなく、人権保障の知見がある第三者によって定めるということ。

 そして四つ目、提案箱に投函された意見は、入管の関与なく視察委員会が直接開封すると同時に、入管の関与なく翻訳を迅速に行うということ。

 そして五つ目ですけれども、被収容者に制度を十分周知すること。

 そして六つ目ですけれども、提案箱に手紙を提出することによって不利益を被らないように確実にすること。そして、結果を通知すること。

 そして七つ目ですけれども、緊急性の高い相談にも対応できる体制を取ること。

 そして八つ目ですけれども、事前通知なく視察できるようにすること。

 そして九つ目ですけれども、以上の改善を行うためにも、必要な予算と人員を確保することが必要だというふうに考えております。

 こうしたことなど、是非改革を進めていただき、独立性の担保ですとか、権限を持った視察委員会に改善するべきだというふうに考えますけれども、大臣、いかがでしょうか。

齋藤(健)国務大臣 入国者収容所等視察委員会は、入国者収容所等の適正な運営に資するために、入国者収容所等の視察や被収容者との面会を行うなどして、その運営に関して入国者収容所長等に意見を述べる独立の行政機関になっています。

 視察委員会は、独立した立場で、全国十七官署の各収容施設の被収容者から直接委員が意見を聞くことも可能であり、さらに、各収容施設に設置された提案箱を通じて委員が直接被収容者の意見等を把握できるなど、国、入管庁とは一線を画した第三者機関でありまして、専門性、第三者性は十分に担保されているものと認識しています。

 委員の御指摘は、視察委員会の独立性を一層高めるとともに、その活動をより充実したものにすべきであるという観点からのものと受け止められるわけでありますが、視察委員会は、現行制度においても独立した立場で適切に活動し、その役割を果たしていける、そういう仕組みになっています。

 いずれにしても、多様な関係者の御意見に耳を傾けつつ、視察委員会の委員の方々の御意見も伺いながら、同委員会のより一層適切な運用の確保に努めていきたいと考えています。

本村委員 ウィシュマさんの事件では機能しなかったわけでございます。東と西の二か所しかないということですと、やはりきめ細かく見ることができませんし、きめ細かく救済もできないというふうに考えます。

 そして、今度の入管法の改定案なんですけれども、この視察委員会に関わる条文の改定も書かれていますけれども、ここの中には、事前に通知をしなくても視察できるようになっておりますでしょうか。

西山政府参考人 現在、実際上、視察委員会に視察を行っていただく場合に、やはり事前の準備や、あるいは面接を希望する被収容者を募るといった場合もございますので、事前に視察予定を決定しているというのが実情ではございますが、決して事前通知なく視察することができないというふうになっているわけではございません。

本村委員 では、もっと積極的にやっていただきたいというふうに思っております。それができるんだと明記をすることを含めて。

 こういう視察委員会の点についても、今回の入管法の改定案は全く不十分だというふうに思っております。これは廃案にして、人権を本当に守るものに練り直していただきたいというふうに思っております。

 時間がございませんので、次にテーマを移らせていただきますけれども、知る権利についてお伺いをしたいんですけれども、大臣に。

 基本的人権であり、ほかの人権の保障、促進には欠かせないものだというふうに考えますけれども、大臣、いかがでしょうか。

齋藤(健)国務大臣 まず、前提として、法務大臣として、憲法の一般的解釈について所管を超えてお答えする立場にはないということを御理解いただきたいんですけれども、その上で申し上げますと、いわゆる国民の知る権利については、憲法に明文の規定が設けられているものではありませんが、憲法第二十一条の保障する表現の自由や、憲法のよって立つ基盤である民主主義社会の在り方と結びついたものとして十分尊重されるべきものであると考えられていると認識をしています。

本村委員 重要な基本的人権だというふうに思います。

 政府が説明責任を果たしていない問題があると私は認識をしております。

 今回は、三菱重工の、三菱航空機のですね、スペースジェット、これは予算委員会のメンバーでも視察に行った旧MRJの問題なんですけれども、その点を質疑をさせていただきたいというふうに思います。

 今日は経済産業副大臣にも来ていただきました。

 三菱重工が、この国産ジェット旅客機スペースジェットの開発事業から撤退するということを発表をいたしました。これまでも国費も、そして愛知県のお金もつぎ込んできたものが失敗したわけでございます。

 そこで、経済産業副大臣にお伺いをしたいんですけれども、三菱重工及びその子会社である三菱航空機のスペースジェット、旧MRJ事業に対し投入してきた国費の額をお示しをいただきたいというふうに思います。

太田副大臣 お答えいたします。

 今お尋ねのございましたスペースジェット事業に対して投じられた国費の額ということでございますけれども、まず、スペースジェット事業の支援を目的とした予算事業は存在いたしません。一方で、スペースジェットに限らず、幅広く航空機開発の基盤となります要素技術の開発、これを目的として四事業がございます。

 順番に申し上げますと、燃費向上のための空力設計に係る先進技術、機体の軽量化のための炭素繊維複合材成形技術、運航時の異常データを検知し故障を予知する技術、先進的な操縦システムの四つでございますが、これらについて、公募を経て三菱航空機株式会社が採択をされ、総額五百七・五億円が交付されております。

本村委員 この四つの補助金ですとか、あるいは委託費が含まれているそうですけれども、民間航空機を想定していましたねということを確認させていただきたいと思います。

太田副大臣 御指摘の事業等につきましては、先ほどもお答えしましたけれども、航空機産業の競争力強化等を目指した取組の一環として、民間航空機を中心に、広く航空機開発の基盤となる要素技術の開発を目的として実施をされたものでございます。

 ただし、航空機は、民生、防衛分野共通の技術、産業基盤を有しておりますから、その成果については、民生、防衛の分野を問わず、今後の航空機開発に幅広く活用されることを期待しております。

本村委員 経済産業省からいただいた資料でも、明らかに民間航空機の技術開発の事業なんだということで書かれているわけでございます。

 この四つの補助金等については、応募者数、採択数、端的にお示しをいただきたいと思います。

藤本政府参考人 お答え申し上げます。

 環境適応型高性能小型航空機研究開発の補助金につきましては、平成二十年三月に公募を実施し、当時のエムジェット株式会社、現在の三菱航空機株式会社一者が複数年の事業計画で応募し、採択されております。

 高度複雑システム故障予知検出技術開発の補助金につきましては、これは単年度になりますけれども、平成二十二年十二月に公募を実施し、三菱航空機株式会社一者が応募し、採択されております。

 エネルギー使用合理化先進的技術開発費補助金、炭素繊維複合材成形技術開発につきましては、平成二十年三月に公募を実施し、当時のエムジェット株式会社、現在の三菱航空機株式会社一者が複数年の事業計画で応募し、採択されております。

 民間基盤技術試験研究、先進操縦システム等研究開発につきましては、平成二十年一月に公募を実施し、当時のエムジェット株式会社、現在の三菱航空機株式会社一者が複数年の事業で応募をし、採択されております。

本村委員 この国費約五百八億円、そして愛知県は百億円ぐらい支援したというふうに知事から述べられておりますけれども、三菱重工は、技術者を三菱重工の防衛部門に転籍させて、日本、イギリス、イタリア共同開発の次期戦闘機に生かすというふうに言っております。

 この点、この事業の撤退、失敗について、第三者の検証委員会をつくり、検証するべきだというふうに考えます。そして、会計検査院については、会計検査するべきだと考えますけれども、お答えをいただきたいと思います。

太田副大臣 御指摘の事業は、先ほど来申し上げておりますように、要素技術の開発を目的としたものでございますから、直接的にスペースジェット事業の撤退に関して補助金等の取扱いを定めたものはございません。

 ただ、当該事業の補助金の交付条件及び委託契約におきまして、当該事業で生み出された技術が後に民間ビジネスにおいて実用化した場合に一定の収益、売上げ納付を求めることとしておりました。

 ただ、それが実用化される段階に至らなかったということでございますから、収益、売上げが発生していないということで、納付を求めるには至っておりません。

 今回、三菱スペースジェットが開発中止になりまして、国産旅客機の商業運航という当初の目的を達成できなかったことは極めて残念であり、重く受け止めております。

 開発中止に至った背景にはいろいろなことがございましたけれども、一つは、安全性に関する規制の認証プロセスへの経験、ノウハウの不足、エンジン等の主要な装備品を海外サプライヤーに依存してきたことで交渉力が低下したこと、さらには、リージョナルジェット市場の環境変化、コロナ等によって生じました、など様々な要因があったと認識しております。

 これまでの取組をしっかりと振り返って、目標を実現できなかった要因と、それから得られた成果、これを十分に検証した上で、この経験を今後の航空機産業の発展につなげていくことが大事だと考えております。

 御指摘の検証でございますけれども、具体的な検証の進め方につきましては今後適切に検討してまいります。

宮川会計検査院当局者 お答え申し上げます。

 委員お尋ねのスペースジェット事業に限らず、幅広く航空機開発の基盤となる技術の開発等を目的といたしまして、経済産業省から補助金が交付されるなどしてきたと承知しております。

 会計検査院は、交付された補助金がそのような目的を達しているか、会計経理が予算、法律等に従って適正に処理されているかなどに着眼して、これまで検査を実施してきたところでございます。

 これまで検査報告に掲記した事項はございませんが、今後の経済産業省の対応や国会での御議論等も踏まえまして、引き続き適切に検査してまいりたいと考えております。

伊藤委員長 時間が参りました。

本村委員 はい。

 民間機の開発だったものが軍事転用されるということはあってはならないというふうに考えます。その点を強く指摘を申し上げまして、質問を終わらせていただきます。

 ありがとうございました。

     ――――◇―――――

伊藤委員長 次に、本日付託になりました内閣提出、仲裁法の一部を改正する法律案、調停による国際的な和解合意に関する国際連合条約の実施に関する法律案及び裁判外紛争解決手続の利用の促進に関する法律の一部を改正する法律案の各案を議題といたします。

 順次趣旨の説明を聴取いたします。齋藤法務大臣。

    ―――――――――――――

 仲裁法の一部を改正する法律案

 調停による国際的な和解合意に関する国際連合条約の実施に関する法律案

 裁判外紛争解決手続の利用の促進に関する法律の一部を改正する法律案

    〔本号末尾に掲載〕

    ―――――――――――――

齋藤(健)国務大臣 仲裁法の一部を改正する法律案につきまして、その趣旨を御説明いたします。

 この法律案は、裁判外の紛争解決手続である仲裁について、最新の国際水準に対応する形で強化を図り、その利用を一層促進するため、仲裁法の一部を改正しようとするものであります。

 その要点は、次のとおりであります。

 第一に、仲裁廷が行う仲裁手続について、国際連合国際商取引法委員会が策定した国際商事仲裁モデル法の改正に対応するため、仲裁判断があるまでの間、仲裁廷が発する暫定保全措置命令について、その類型及び発令要件等に関する規定を整備するとともに、裁判所の執行等認可決定を得ることにより、暫定保全措置命令に基づく民事執行を可能とするなど、最新の国際水準に見合った法制を整備することとしております。

 第二に、仲裁手続に関して裁判所が行う手続について、東京地方裁判所及び大阪地方裁判所にも管轄を拡大するとともに、仲裁判断の執行決定を求める申立てに係る事件等の手続において、裁判所が相当と認めるときは、仲裁判断書等について、日本語による翻訳文の提出を省略することができることとしております。

 続いて、調停による国際的な和解合意に関する国際連合条約の実施に関する法律案につきまして、その趣旨を御説明いたします。

 この法律案は、調停による国際的な和解合意に関する国際連合条約の締結に伴い、その的確な実施を確保するため、調停において成立した和解合意に基づく民事執行を可能とする制度を創設することにより、裁判外の紛争解決手続である調停について、最新の国際水準に対応する形で強化を図り、その利用を一層促進することを目的とするものであります。

 その要点は、次のとおりであります。

 第一に、民事又は商事の紛争に係る調停において当事者間に成立した合意であって、当事者の全部又は一部が日本国外に主たる事務所を有するとき等の一定の事由に該当するものを国際和解合意と定義した上で、この法律案の規定は、国際和解合意の当事者が、条約又は条約の実施に関する法令に基づき民事執行をすることができる旨の合意をした場合について適用することとしております。

 第二に、この法律案の規定は、当事者の全部又は一部が個人であるものに関する紛争、個別労働関係紛争及び人事その他家庭に関する紛争に係る国際和解合意等には適用しないこととしております。

 第三に、国際和解合意に基づいて民事執行をしようとする当事者は、裁判所に対し、執行決定を求める申立てをしなければならないこととし、裁判所が、国際和解合意が効力を有しないものでないか等の執行拒否事由の有無を審査することとするなど、執行決定の手続に関する規定を整備することとしております。

 続いて、裁判外紛争解決手続の利用の促進に関する法律の一部を改正する法律案につきまして、その趣旨を御説明いたします。

 この法律案は、我が国における裁判外紛争解決手続の利用を一層促進することを目的として、調停による国際的な和解合意に関する国際連合条約の実施に関する法律の制定と併せて、認証紛争解決手続において成立した和解合意に基づく民事執行を可能とする制度を創設するため、裁判外紛争解決手続の利用の促進に関する法律の一部を改正しようとするものであります。

 その要点は、次のとおりであります。

 第一に、認証紛争解決手続において紛争の当事者間に成立した和解であって、当該和解に基づいて民事執行をすることができる旨の合意がされたものを特定和解と定義した上で、この法律案の規定は、特定和解に適用することとしております。

 第二に、この法律案の規定は、消費者と事業者との間で締結される契約に関する紛争、個別労働関係紛争及び人事その他家庭に関する紛争に係る特定和解等には適用しないこととしております。ただし、扶養義務等に係る金銭債権に係る特定和解は、この法律案の規定を適用することとしております。

 第三に、特定和解に基づいて民事執行をしようとする当事者は、裁判所に対し、執行決定を求める申立てをしなければならないこととし、裁判所が、特定和解が効力を有しないものでないか等の執行拒否事由の有無を審査することとするなど、執行決定の手続に関する規定を整備することとしております。

 以上が、これら法律案の趣旨でございます。

 何とぞ、慎重に御審議の上、速やかに御可決くださいますようお願い申し上げます。

伊藤委員長 これにて各案の趣旨の説明は終わりました。

 次回は、公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。

    午後零時十六分散会


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