衆議院

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第5号 令和5年4月4日(火曜日)

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令和五年四月四日(火曜日)

    午前九時開議

 出席委員

   委員長 伊藤 忠彦君

   理事 谷川 とむ君 理事 藤原  崇君

   理事 牧原 秀樹君 理事 宮崎 政久君

   理事 鎌田さゆり君 理事 寺田  学君

   理事 沢田  良君 理事 大口 善徳君

      東  国幹君    五十嵐 清君

      石橋林太郎君    岩田 和親君

      奥野 信亮君    加藤 竜祥君

      神田 潤一君    熊田 裕通君

      鈴木 馨祐君    田所 嘉徳君

      高見 康裕君    土田  慎君

      西野 太亮君    鳩山 二郎君

      平口  洋君    平沼正二郎君

      宮路 拓馬君    山口  晋君

      山下 貴司君    渡辺 孝一君

      鈴木 庸介君    中川 正春君

      山田 勝彦君    吉田はるみ君

      米山 隆一君    阿部 弘樹君

      漆間 譲司君    日下 正喜君

      平林  晃君    鈴木 義弘君

      本村 伸子君

    …………………………………

   法務大臣         齋藤  健君

   法務副大臣        門山 宏哲君

   法務大臣政務官      高見 康裕君

   最高裁判所事務総局総務局長            小野寺真也君

   最高裁判所事務総局民事局長            門田 友昌君

   政府参考人

   (警察庁長官官房審議官) 佐野 裕子君

   政府参考人

   (こども家庭庁長官官房審議官)          野村 知司君

   政府参考人

   (法務省大臣官房審議官) 柴田 紀子君

   政府参考人

   (法務省大臣官房司法法制部長)          竹内  努君

   政府参考人

   (法務省民事局長)    金子  修君

   政府参考人

   (出入国在留管理庁次長) 西山 卓爾君

   政府参考人

   (外務省大臣官房審議官) 中村 和彦君

   政府参考人

   (外務省大臣官房参事官) 片平  聡君

   政府参考人

   (経済産業省大臣官房審議官)           戸高 秀史君

   政府参考人

   (国土交通省大臣官房審議官)           笹川  敬君

   政府参考人

   (国土交通省大臣官房技術審議官)         奥田  薫君

   法務委員会専門員     白川 弘基君

    ―――――――――――――

委員の異動

四月四日

 辞任         補欠選任

  東  国幹君     土田  慎君

  岩田 和親君     山口  晋君

  鳩山 二郎君     宮路 拓馬君

  深澤 陽一君     平沼正二郎君

  山下 貴司君     渡辺 孝一君

同日

 辞任         補欠選任

  土田  慎君     東  国幹君

  平沼正二郎君     神田 潤一君

  宮路 拓馬君     西野 太亮君

  山口  晋君     岩田 和親君

  渡辺 孝一君     山下 貴司君

同日

 辞任         補欠選任

  神田 潤一君     深澤 陽一君

  西野 太亮君     鳩山 二郎君

    ―――――――――――――

四月四日

 刑事訴訟法等の一部を改正する法律案(内閣提出第四一号)

は本委員会に付託された。

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 政府参考人出頭要求に関する件

 仲裁法の一部を改正する法律案(内閣提出第二八号)

 調停による国際的な和解合意に関する国際連合条約の実施に関する法律案(内閣提出第二九号)

 裁判外紛争解決手続の利用の促進に関する法律の一部を改正する法律案(内閣提出第三〇号)


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     ――――◇―――――

伊藤委員長 これより会議を開きます。

 内閣提出、仲裁法の一部を改正する法律案、調停による国際的な和解合意に関する国際連合条約の実施に関する法律案及び裁判外紛争解決手続の利用の促進に関する法律の一部を改正する法律案の各案を議題といたします。

 この際、お諮りいたします。

 各案審査のため、本日、政府参考人として警察庁長官官房審議官佐野裕子君、こども家庭庁長官官房審議官野村知司君、法務省大臣官房審議官柴田紀子君、法務省大臣官房司法法制部長竹内努君、法務省民事局長金子修君、出入国在留管理庁次長西山卓爾君、外務省大臣官房審議官中村和彦君、外務省大臣官房参事官片平聡君、経済産業省大臣官房審議官戸高秀史君、国土交通省大臣官房審議官笹川敬君及び国土交通省大臣官房技術審議官奥田薫君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

伊藤委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

伊藤委員長 次に、お諮りいたします。

 本日、最高裁判所事務総局総務局長小野寺真也君及び民事局長門田友昌君から出席説明の要求がありますので、これを承認するに御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

伊藤委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

伊藤委員長 これより質疑に入ります。

 質疑の申出がありますので、順次これを許します。平林晃君。

平林委員 皆様、おはようございます。公明党の平林晃と申します。

 本日は、質問の機会を与えていただきましたこと、関係の皆様に心より感謝を申し上げます。また、大臣を始めまして御答弁いただく方、皆様、よろしくお願い申し上げます。

 それでは、早速質問に入らせていただきます。

 まず、仲裁法の一部改正について伺います。

 仲裁とは、当事者が紛争についての判断を中立的な第三者である仲裁人の判断に委ね、それに従うことをあらかじめ合意して行われる紛争解決制度であります。とりわけ国際事案に関しまして、国ごとに異なる裁判制度と異なり、国際的な中立性を確保できるということから、国境を越えた紛争解決は仲裁によることが世界標準になりつつあるということでお聞きをしております。

 国際仲裁の件数は世界的に増加をしており、とりわけアジアにおいて、香港国際仲裁センターはこの十年で三百件前後、シンガポール国際仲裁センターでは、この五年間では四百件以上、韓国の大韓商事仲裁院でも三百件から五百件程度で推移をしているということです。これに対して、我が国の日本商事仲裁協会、いわゆるJCAAにおいては、年間十件から二十件程度と低調に推移しているというふうに聞いております。

 そこで、法務大臣にお伺いをいたします。

 我が国における国際仲裁の利用件数が非常に低調である原因をどのように分析しておられますでしょうか。さらに、この状況を転じて国際仲裁を活性化させることは我が国にどのような利益があるとお考えでしょうか。御答弁をお願い申し上げます。

齋藤(健)国務大臣 委員御指摘のように、我が国における国際仲裁の利用は、我が国の経済規模に照らしますと、諸外国に比して相当に少ないのが現状であります。その理由といたしましては様々指摘をされておりますが、内閣官房に設置された国際仲裁の活性化に向けた関係府省連絡会議が平成三十年四月に取りまとめました国際仲裁の活性化に向けて考えられる施策、これによりますと、国際仲裁のユーザーである企業において国際仲裁の有用性に関する理解が十分でなく、また、海外へのマーケティングが不足していること、それから、国際仲裁に精通した人材が不足をしていること、それから、世界的に著名な仲裁機関や仲裁専門組織がないことなどが指摘をされております。

 一方で、国際仲裁は、訴訟に比べまして外国での執行が容易であること、非公開であり企業秘密が守られることなど、様々なメリットがあり、国際商取引における紛争解決のグローバルスタンダードとなっているのが現実であります。

 その上で、社会経済のグローバル化に伴いまして、日本企業の海外進出を更に後押しするためには、海外における取引から生ずる法的紛争がグローバルスタンダードな手続によって解決できる仕組み、これが整っていることが重要であると考えています。

 また、外国企業を我が国に呼び込むなど、海外からの投資を促すためにも、我が国における取引から生ずる法的紛争が、同じくグローバルスタンダードな手続によって、かつ英語で解決できる仕組みが整っていることが重要であります。

 このように、我が国において国際仲裁を活性化し、司法インフラとして整備することは、我が国の経済成長に貢献するものと考えているところです。

平林委員 大臣、御丁寧な御答弁、ありがとうございます。

 日本企業が進出していくためにも、また、日本に入ってきていただくためにも、やはりこの法制度は重要なんだろう。

 また、今、低調である原因として、様々ありましたけれども、有用性への理解が低い、あるいは人材、プロモーション不足、仲裁機関の知名度、こういったことが様々指摘されまして、こういったことをしっかりと進めていかなくてはいけないと認識をしたところでございます。

 続きまして、仲裁に関する法律の制定状況ですが、国連国際商取引法委員会、いわゆるUNCITRALにおいて、モデル法は一九八五年に制定をされ、これに準拠して、我が国は二〇〇三年に仲裁法が制定をされている。ところが、三年後の二〇〇六年に国際的なモデル法の一部が改正をされて、仲裁廷による暫定保全措置の執行等に関する規定が国際モデル法には設けられた。この部分について、我が国が、現行法が対応できておらず、今回の改正により整備しようとしていると理解をしております。

 ここで、この暫定保全措置についてお聞きいたします。

 現行法第十五条によれば、仲裁合意の当事者は裁判所に保全処分の申立てをすることができ、それを受けた裁判所は保全処分を命じることができます。

 この保全処分と暫定保全措置命令とはどのように異なるのか、政府の見解を伺います。

金子政府参考人 お答えいたします。

 保全処分と暫定保全措置命令は、いずれも当事者の権利を保全することを目的とする点では共通しておりますが、保全処分は裁判所が命ずるものであるのに対し、暫定保全措置命令は仲裁廷が命ずるものである、この点が大きな違いでございます。

 そして、国際的な事案では、保全処分については、当事者がその発令を求める保全処分ごとに管轄を有する各国の裁判所から発令を受ける必要があるのに対し、暫定保全措置命令については、仲裁廷から発令を受ければ足りるという点で違いが生じてまいります。

 例えば、被申立人が複数の国に財産を保有しており、その保全を図ろうとする場合、当該国の仲裁法制が国際商事仲裁モデル法に対応しているときは、仲裁廷から暫定保全措置命令の発令を受けることにより複数の国でその執行を求めることが可能であるのに対し、同じ内容の裁判所の保全処分の方を求めようとしますと、各国の裁判所においてそれぞれ申立てをしなければならないということになります。

 このように、暫定保全措置命令は、裁判所に対する申立てをせずに、仲裁手続の中で権利の保全に係る命令を受けることができるため、仲裁手続において紛争を解決しようとする当事者のニーズにかなうものと言うことができます。

平林委員 ありがとうございます。

 当事者の権利を保全する目的は共通しているけれども、発令主体が裁判所と仲裁廷で異なるということでありました。

 そもそも、仲裁制度を選択して、仲裁廷の判断に基づくということを合意しているのであれば、権利保全に関しても仲裁廷の中で実施していくということができる制度である、このように理解をしたところでございます。

 続いて、この暫定保全措置命令は、迅速性、これが重要ではないかと考えております。その意味におきまして、暫定保全措置命令が発出される、あるいはその後の執行等認可決定がなされるまでにはどの程度の時間がかかると想定をしておられるのか。相当程度の時間がかかるのであれば、仮に今回の法改正が成立をして暫定保全措置の執行規定が整ったとしても、実効性に疑問を感じます。

 この点について、政府の見解を伺います。

金子政府参考人 お答え申し上げます。

 暫定保全措置命令につきましても執行等認可決定につきましても、審理に要する時間は個別の事案に応じて様々でございますので、判断がされるまでの標準的な日数等をお答えすることは困難であることを御理解いただければと思います。

 暫定保全措置命令につきましては、申立人の権利を保全するという制度の趣旨に照らしまして、仲裁廷において迅速な審理、判断がされるということを期待しているところでございます。

 また、執行等認可決定につきましては裁判所が関与しますが、執行拒否事由の有無のみを審理するということとしておりますことから、裁判所において迅速な審理、判断がされることを期待しているところでございます。

平林委員 ありがとうございます。

 執行等認可決定については、裁判所が拒否事由の有無のみを判断するということで迅速性が期待できる。一方、暫定保全措置命令は、あくまで仲裁廷が成立してから発出される、申立ての内容もあって難しい、発令までの時期については一概に述べられないと。仲裁廷の構成に数か月はかかるのかな、そういう意味では、暫定保全措置命令の発出にも相当の時間がかかるのではないかというふうに考えられますので、やはり迅速性については疑問が残るかなと考えております。

 今回の法改正事由が、あくまで改正モデル法との整合であり、その意味で、暫定保全措置の執行規定を整えることに関しては理解をしておりますが、実質的な意味という部分では、引き続きの御検討をお願いできれば幸いでございます。

 続きまして、条約実施法について伺います。

 国際商事紛争の解決手段として、世界的に国際調停の利用が進み、仲裁と同様に調停の利用を促進するなどの観点から、二〇一八年、平成三十年ですけれども、国際連合総会において、調停による国際的な和解合意に関する国際連合条約、いわゆるシンガポール条約が採択をされています。

 同条約では、商事紛争に関する調停により成立した当事者間の国際的な和解合意について、一定の要件を満たす場合に執行力を付与するなどの規律を設けており、二〇二〇年九月十二日に発効しております。

 そこで、まずお聞きをいたします。

 シンガポール条約、二年半程度前の成立ですけれども、その署名国や締約国の現状と今後の推移の見通しはどのようになっているのか、あわせて、本条約は我が国にとってどのような意義を有するのか、政府の認識を伺います。

片平政府参考人 お答えいたします。

 調停に関するシンガポール条約は、商事紛争の解決方法である調停の利用を促進するため、調停による国際的な和解合意の執行等に関する枠組みについて定めるものでございます。

 現在、本条約の締約国は十一か国でありますが、署名国は米国等を含め五十五か国に上っており、今後、締約国の増加が期待されるところでございます。

 我が国が早期に本条約を締結することは、商事紛争を適切に解決するための環境を整備し、外国企業による投資活動の予見可能性を高め、ひいては日本企業の海外展開の促進及び外国からの投資の呼び込みに資するものであると思っております。このように、本条約の早期締結は我が国の経済発展に寄与するものであると考えております。

平林委員 ありがとうございます。

 今、締約国、十一というふうなお話でしたけれども、レクのときは十というふうにお聞きしていましたので、一つ増えているのかなと理解をしたところであります。

 今後も締約国の増加が期待されるのではないかなと。また、本実施法が成立し、条約締結も承認されれば、我が国も締約国拡大に積極的に取り組むと認識をしております。

 仲裁法同様に、この条約を承認することによって、我が国への国際的信用が向上し、諸外国からの投資の呼び込みなどにつながるとも考えておられる。だから条約締結が重要であるということであり、私も理解をするところであります。

 そして、この条約実施法の中では、第四条におきまして、個人が当事者となっている紛争、個別労働関係紛争、人事、家事に関する紛争にはこの法律の規定が適用されないこととなっています。その意図がどのような点にあるのか、政府の見解を伺います。

金子政府参考人 お答えいたします。

 条約実施法第四条第一号は、民事法の契約又は取引のうち、その当事者の全部又は一部が個人であるものに関する紛争に係る国際和解合意については条約実施法の適用を除外する旨を定めております。この規定は、調停による国際的な和解合意に関する国際連合条約の規定に沿ったものであり、その趣旨は、同条約が国際的な商事紛争に係る和解合意を対象として作成されたものであることに鑑み、企業間における紛争に係る和解合意のみを適用対象とするということにございます。

 それから、条約実施法第四条第二号は、個別労働関係紛争に係る国際和解合意について条約実施法の適用を除外する旨を定めております。この規定も調停に関するシンガポール条約の規定に沿ったものであり、その趣旨は、一般的に、労働者と事業者との間には交渉力や情報等の不均衡があることが想定され、当事者の真意に基づかない和解合意が成立するおそれが類型的に高くなると考えられることから、当事者間の合意を根拠に執行力を付与することが相当でないということにございます。

 さらに、条約実施法第四条第三号は、人事に関する紛争その他家庭に関する紛争に係る国際和解合意について条約実施法の適用を除外する旨を定めております。この規定も調停に関するシンガポール条約の規定に沿ったものであり、その趣旨は、家庭に関する紛争は、身分関係を形成又は変更し、その結果が当事者以外の第三者に効力を有するものであるという点において、公益性、後見性を有する紛争類型であること、特に強制執行の場面においては、各国固有の法的な文化や公序と衝突しやすいことから、当事者間の合意を根拠に執行力を付与することが相当でないと考えられることにございます。

平林委員 ありがとうございます。

 あくまでシンガポール条約の規律と同内容のものであり、基本的な趣旨としては、商事紛争に関わる和解合意にのみ強制執行を適用する、こういう規定であるというふうに理解をさせていただきました。

 続きまして、現在、我が国の国際調停機関における調停件数は本当に少ないというふうに伺っております。年間一件、二件というような数字であると。一方、諸外国の機関において、これは二十件から三十件程度ではないかということで、資料にも記載がございまして、拝見をいたしました。

 このように国内での処理件数が非常に少ない現状において、仮にこの条約実施法が成立をし、シンガポール条約が承認をされ、国内における調停の需要が、環境が整って需要が増加した場合、その需要に応えるだけの人材や施設は国内に整っているのでしょうか。この点に関しまして政府の認識を伺います。

金子政府参考人 お答えいたします。

 我が国の調停機関である日本商事仲裁協会、JCAAにおいては、外国語に対応可能な調停人候補者が二百名以上登録されております。また、京都国際調停センター、JIMCにおいても、我が国在住の調停人候補者が六十名以上登録されております。

 また、国際的な調停は、近時、オンラインで手続が進められることが多いと承知しておりますけれども、対面で手続を実施する場合には、調停機関や法律事務所の会議室等が利用されるものと承知しております。そして、我が国においては、さきに述べた調停機関において、国際調停のための施設や、オンラインによる調停期日の実施方法について適切にサポートしているものと承知しておるところでございます。

 このような状況を踏まえますれば、我が国においても国際調停の件数の増加には十分対応できるものと考えております。

平林委員 ありがとうございます。

 十分に受け入れる体制は整っているということでございました。

 この法案、しっかりと議論をして成立することによって、我が国の国際的信用が向上することを期待するものであります。

 続きまして、三本目の法律に関しまして伺っていければと思います。ADR法改正案でございます。

 平成十六年に成立した裁判外紛争解決手続の利用の促進に関する法律、これがいわゆるADR法ですけれども、紛争当事者がその解決に適した手続の選択を容易にし、国民の権利の適切な実現に資することを目的としているということであります。民間の紛争解決事業者が法定の基準や要件に適合していることを法務大臣が認証された場合には、認証紛争解決事業者となります。この認証紛争解決事業者による民間紛争解決に関し、所定の要件の下に法的効果が付与されるということになります。

 ここで法務大臣に伺います。

 公平中立性を保つため、認証紛争解決事業者になるための基準は厳格ですが、その数は、平成十九年の十事業者から、現在は百六十程度に増加していると伺っております。この一方で、受理件数はそれほど変化がなくて、二〇一〇年以降、千件を超えた辺りで推移をしている。この数字は、民事調停、家事調停の合計十六万件に比べれば圧倒的に少ない数となっております。

 この理由をどのように捉え、改善をどのように考えておられるでしょうか。法務大臣の御見解を伺います。

齋藤(健)国務大臣 御指摘のとおり、近年の認証ADRの利用件数は年間千件程度でありまして、認証ADR事業者の数からすれば十分に利用されているとは言い難い状況にあると認識をしています。

 その要因は様々考えられるところでありますが、認証ADRによる和解合意に基づく強制執行ができず、その実効性が十分に確保されないという制度上の課題があるだけではなくて、認証ADRの存在やそのメリット等が国民に十分認知されていないことも大きな要因であると考えられるところであります。

 そこで、法務省といたしましては、認証ADRにおける紛争解決の実効性を高めるため、今般、強制執行を可能とする制度を創設することといたしたところでございます。また、法務省ホームページへの掲載や相談機関等へのパンフレットの配布等を通じて認証ADRに関する情報発信を行っているほか、昨年度からは、ADR週間等を設定した上、関係団体等と連携した一体的かつ集中的な広報の実施等の取組を始めているところであります。

 さらに、ADRに情報通信技術を活用したODRを推進するためのアクションプランを策定し、ADR、ODRの周知、広報に加え、ODRの実証実験を通じた課題の抽出と対応策の検討等、ODRの社会実装に向けた環境整備のための取組を順次行ってきているところでございます。

 法務省といたしましては、ADRが国民にとって紛争解決の選択肢として広く利用していただけるよう、引き続き必要な取組を積極的に進めてまいりたいと考えています。

 先ほどの私の答弁で一点訂正をさせていただけたらと思うんですけれども、国際仲裁の利用件数が低調な原因の中で、世界的に著名な仲裁機関や仲裁専門施設がないことと申し上げるべきところを仲裁専門組織がないことと申し上げたところは、訂正をさせていただき、おわびをさせていただきたいと思います。

平林委員 ありがとうございます。

 強制執行に関しましてお話がまず冒頭ございましたけれども、まず、それが認知度が低い、それを改善するための取組として広報活動をしっかりやっていくということで、ADR週間、昨年十二月に第一回が開催されたと承知をしております。こういったことをしっかりと今後継続して取り組んでいただいて、国民全般にも知らしめ、また、当事者に関しましては法テラスなどでしっかりと御紹介をしていく、こういった取組を進めていただければなと思います。

 ODRと強制執行の件、続いてお聞きしていければと思います。

 まず、強制執行に関しまして、ADR法制定時の議論について、執行力濫用のおそれ、あるいは執行力が存在することによる利用者の萎縮が応諾率や和解成立率を低下させるのではとの懸念があったとお聞きしています。こうした懸念から、ADR法制定時の執行力の付与が見送られたと認識をしております。

 今回の法改正においてはこれを付与するということですが、こうした懸念、制定以来のおよそ二十年間で払拭されてきたとお考えでしょうか。政府の見解を伺います。

金子政府参考人 お答えいたします。

 御指摘のとおり、平成十六年のADR法制定時やその後の見直し時の議論におきましては、主に、債務名義をみだりに作成するような団体が出現するなど制度の濫用のおそれがあるとの指摘や、強制執行の可能性を認めることにより債務者を萎縮させ、かえって和解が成立しにくくなるおそれがあるとの指摘がされ、成立した和解に基づく強制執行の実現については将来の課題とされておりました。

 今般のADR法の改正では、まず、制度の濫用のおそれにつきましては、国民において認証紛争解決手続が定着しつつあること、潜在的に当事者間の力の不均衡等が想定される消費者契約等に係る紛争や個別労働関係紛争につきましては適用除外としていること、和解に基づく強制執行が公序良俗に反するなどの場合には裁判所が強制執行を許さないものとすることなどとしておりまして、制度の濫用のおそれは払拭されているものと考えております。

 また、債務者の萎縮のおそれ等につきましては、強制執行を可能とするかどうかは債務者が民事執行をすることができる旨の合意をするかどうかに委ねられているため、債務者が強制執行されることを恐れて和解の成立が妨げられるといった懸念も払拭されているものと考えております。

平林委員 ありがとうございます。

 濫用のおそれについて、また萎縮懸念に関しましても、様々な理由から懸念が十分に払拭されていると考えているということでございました。

 更に伺ってまいります。

 特定和解の執行規定の適用除外に関しまして、ADR法改正案と条約実施法においては微妙に異なる部分があります。すなわち、条約実施法で除外されている人事、家事に関する紛争において、養育費等の金銭債権については除くこととしている。除外の除外ですので、すなわち執行規定が適用されることとなっています。

 この養育費等の金銭債権には民事執行が適用されることの意義を政府に伺います。

金子政府参考人 ADR法の一部改正法案におきましては、人事、家事に関する紛争は身分関係の形成又は変更に関わる紛争類型であり、当事者間の合意を根拠に一律に強制執行を可能とすべきでないと考えられることから、原則として強制執行を可能とする対象から除外することとしております。

 そのようにしつつ、養育費等に係る金銭債権につきましては、次の理由から、新しい強制執行の制度を利用することができることとしております。

 まず、子の福祉の観点等からその支払いの履行の確保が喫緊の課題となっていること。家庭に関する紛争ではあるものの、身分関係を形成又は変更するといったものではないこと。現行の民事執行法においても、強制執行を容易にする観点から様々な民事執行の特例が設けられていること。このような観点から適用対象としているものでございます。

 養育費等の金銭債権について、新しい強制執行の制度が適用されることは、その支払いの履行の確保を容易にするものであり、子の福祉等に資するものとして意義があるものと考えております。

平林委員 ありがとうございます。

 本件、我が党も、大口委員をリーダーとする不払い養育費問題対策プロジェクトチームが提言を提出するなど、積極的に取り組んできたと承知をしておりまして、大いに評価するところでございます。

 それでは、最後に、オンライン紛争解決手続、先ほどの大臣の御答弁にもありましたが、ODRについてお聞きできればと思います。

 その名のとおり、ODRは、ADRをオンラインツールによって実施するというもの、また、加えてAI技術も活用できるようになれば、利便性はより一層向上すると考えられます。ODRの推進に関する現在の取組、また、AI技術の活用に関する検討状況について政府の見解を伺います。

竹内政府参考人 お答えいたします。

 委員御指摘のとおり、ADRに情報通信技術を活用するODRは、司法アクセス向上に資する重要なインフラであると認識をしております。

 法務省におきましては、ODRの一層の推進を図るため、昨年三月に策定したアクションプランに基づきまして、ADR、ODRの一体的広報やODRの実証実験を通じた課題の抽出と対応策の検討など、ODRの社会実装に向けた環境整備のための取組を進めているところであります。

 また、アクションプランでは、AI技術の多様な活用の可能性等の検討やAI技術活用に寄与するデータベースの検証など、ODRの推進策を掲げておりまして、まずは、AIに関する現在の技術水準を踏まえつつ、具体的にODRのどのような場面での活用が考えられるかについて、本年度から検討を進めていく予定にしております。

 法務省といたしましては、ADRが国民にとってより利用しやすい紛争解決手段となりますよう、引き続き必要な検討を積極的に進めてまいりたいと考えております。

平林委員 ありがとうございます。

 オンラインの活用については、もう私も全く異論のないところであります。平日夕刻、あるいは土日、こういった時間にも対応いただけるとのことで、また、会いたくない当事者同士もオンラインであれば何とかできるなどの利便性があるということは、本当にそのとおりであると思います。

 一方で、AI技術、本年度から検討されていくというお話でしたけれども、二年前の取りまとめの中にも様々書いてあって、質問させていただいているんですけれども、期待感がある一方、技術レベル、信頼に足るものではない、その活用の在り方、まだまだ検討が必要ということだと認識をしております。

 AI技術については、今般の国会でも様々な議論があるようですが、現在、世界でどちらかというと懸念の報道が様々見受けられます。米国では、イーロン・マスク氏らがAIシステムの開発を六か月停止するよう提案をし、千三百を超える署名が集まった。イタリアでは、チャットGPTの使用を一時的に禁止するということが発表された。こうした動きで示されている懸念、まさにカーツワイルが論じた技術的特異点、シンギュラリティーですね、あの議論をほうふつとさせるものであります。

 いずれにしましても、重要なことはあくまでADRの信頼性である、その上で、今後のAI技術の発展を注視しながら、仮にAIがADRの利便性向上に資する、ODRに使えると判断すれば活用を検討するなど、慎重な態度で臨んでいただくことが適切かと考えております。

 時間となりました。以上で私の質問を終わります。ありがとうございました。

伊藤委員長 次に、鈴木庸介君。

鈴木(庸)委員 立憲民主党・無所属、鈴木庸介です。今日もよろしくお願いを申し上げます。

 まず、今日の質疑に立つ上で御指導いただきました、立教大学法学部教授で観光ADRセンター長の安達栄司先生と、家族のためのADRセンター、小泉道子さん、また、いつもながら法務調査室の皆様にも、心より御礼を申し上げたいと思います。

 まず、仲裁法の改正から伺わせてください。

 今回の改正前と改正後では具体的に何がどう変わるのか、教えていただけますでしょうか。

金子政府参考人 お答えいたします。

 現行法の下において、仲裁廷が行う仲裁判断につきましては、仲裁地が外国であったとしても、我が国の裁判所が仲裁判断に基づく民事執行を許す決定、執行決定といいますが、をした場合には、我が国において強制執行を行うことが可能でございます。また、現行法の下においても仲裁廷が暫定保全措置命令を発令することは可能なのですが、暫定保全措置命令に基づく強制執行を可能とする規定がないため、当事者の任意の履行に期待するほかなく、実効性が弱いという面がございました。

 そこで、改正法では、この部分につき、モデル法の規律を踏まえ、仲裁廷の暫定保全措置命令については、仲裁地が外国であったとしても、我が国の裁判所が暫定保全措置命令に基づく強制執行等を許す決定、執行等認可決定をした場合には強制執行をすることができる旨の規定を新設することとしております。

 また、申立人に生ずる損害や危険の発生を防止するために必要な措置や原状回復を命ずるもの、予防・回復型の暫定保全措置命令につきましては、確定した執行等認可決定のある暫定保全措置命令に基づく強制執行をすることができます。例えば、商品の供給を命ずる暫定保全措置命令につきましては、確定した執行等認可決定があれば、我が国の裁判所における強制執行として商品の供給を受けることが可能となります。

 これに対して、財産の処分禁止や証拠の廃棄禁止など一定の行為を禁止する命令につきましては、執行等認可決定を受けた上で、当該暫定保全措置命令の違反又はそのおそれがある場合に裁判所が違反金支払い命令を発令します。この確定した違反金支払い命令に基づいて強制執行ができるようになります。例えば、証拠の廃棄禁止を命ずる暫定保全措置命令につきましては、裁判所から執行等認可決定及び違反金支払い命令の発令を受けた上で、我が国の裁判所において強制執行の手続を行うことにより、違反金の支払いを受けるということが可能となります。

鈴木(庸)委員 ありがとうございます。

 国境を越えた紛争解決が行われるに当たり、真っ先に考えたのは裁判官をどうするのかなということなんですね。

 この法務委員会でも度々指摘させていただいているんですけれども、裁判官の皆さんというのは、労基の手も届かない別枠の法律の中で働いていて、残業時間も上限がない、エアコンも夜は消えてしまい、熱中症の恐怖におびえながら判決文を書いているなど、大変厳しい職場環境の中に置かれている。

 この状態の中で、今度は翻訳文の添付の省略ということで、国際仲裁、国際調停に基づいて強制執行をするために必要な裁判所の手続等においては、裁判所が相当と認めるときに、仲裁判断、国際和解合意等の翻訳文の添付を不要とすると。つまり、言い方を変えれば、裁判所側でその文書を読み解くということになりますよね。

 さらには、執行拒否事由の有無については、時に海外の法律に精通している必要がある、こういった必要も出てくると思うんですけれども、まず、こうしたことによって、裁判官の皆さんの英語力がかなり必要とされてくると思うんですけれども、この辺りの教育、体制について、最高裁はどのように取り組む予定でしょうか。

門田最高裁判所長官代理者 お答えいたします。

 仲裁判断の執行決定を求める申立て又は今回創設されます暫定保全措置命令の執行等認可決定を求める申立ての関係ですけれども、これにおきまして、裁判所が審理する事項は、基本的には執行拒否事由に限られるものと承知しております。

 その執行拒否事由の該当性に関する具体的な主張、立証というのは当事者の方で具体的に行っていただくものということになりますので、裁判所が一から仲裁判断書を読み込んで執行拒否事由があるかどうかというのを精査するということにはならないと認識しているところでございます。

鈴木(庸)委員 とはいえ、かなり、精査するところまでいかなくても、読まなくてはいけないということにはなりますよね。うんだけでいいですけれども。

門田最高裁判所長官代理者 お答えいたします。

 実際の事件におきましては、重要な争点に関する部分につきましては、外国語で書かれたものの解釈等も含めまして主張書面等において当事者から丁寧に御説明いただくということになるかと思います。それを確認的に読むということはあるかもしれませんけれども、訳文の添付が省略できる場合も、相当と裁判所が認めた場合ということになっておりますので、それはやはり、これは裁判所の方で読み解くのには荷が重いなというような場合につきましては、きちんと当事者の方に訳文をつけていただいて、その上で議論をしていくということになろうかなと思っております。

鈴木(庸)委員 申し上げたいのは、やはり、また負担が増えてしまうのかなというところなんですね。せっかく法整備がこうやって進んでも、裁判官の皆さんの勤務時間にしわ寄せがいったりとか、結果的に制度が回らなくなったり、時間が物すごくかかったりと、正確な英語の解釈に基づいた判断が行われなくなるといった、こうした課題がないように、是非とも最高裁については、こうしたことについての配慮をお願いできればと思います。

 次に、JIDRCについて伺わせてください。

 これは、一般社団法人の日本紛争解決センター、ジャパン・インターナショナル・ディスピュート・リゾリューション・センターということで、二〇一八年二月に、日本での国際仲裁や国際調停の一層の活性化に寄与するため、内外の仲裁機関、調停機関が仲裁や調停の手続のために審問を行う場合に、その審問の場所を提供したりしているということですけれども、このJIDRCに対して国際仲裁の活性化に向けた調査業務の委託が行われているということなんですけれども、これはどのような調査が幾らで行われているのかを教えていただけますでしょうか。

柴田政府参考人 お答えいたします。

 委員御指摘のとおり、JIDRC、一般社団法人日本国際紛争解決センターは、仲裁、調停そのほかの裁判外紛争解決手続の推進のため、国内外の仲裁等実施機関が利用可能な施設の開設及び運営、仲裁等に関する広報、研究、研修及び利用啓発、仲裁等の担い手となる人材育成等の、仲裁等の活性化に向けた取組をすることを目的とする民間の法人でございます。

 法務省は、国際仲裁の活性化に向けて、令和元年六月から令和六年三月までの五か年の事業として、仲裁審問施設の確保のほか、人材育成、広報、意識啓発等の有効な施策の在り方の調査等業務をこの業者に委託して実施しております。

 費用につきましては、この調査委託費に関しましては、当該五年間の国庫債務負担行為として合計約七億八千万円の予算が計上されており、この予算によって各施策を一括して実施しているところでございます。

鈴木(庸)委員 JIDRCさんのホームページとか、あと、実際ここで働いていらっしゃる方にお話を聞くと、設備はかなりいいということなんですけれども、私が気にしていたのは、これは五年間の計画ですよね、令和六年までの。今、令和五年ですよね。調査の結果が出る前にこの法律が出てきているということなんですけれども、これは、中間報告の段階で見切り発車したような、そんな理解でよろしいんでしょうか。それとも、何らかの調査結果が出てきて、それに基づいて今回の法律を組み立てたということになるんでしょうか。

金子政府参考人 仲裁活性化の一環として、施設はもちろん重要なんですが、日本の仲裁が十分に行われていない理由には様々なものがあって、法制度上もやはり国際標準に合わせるというのが今回の改正の主眼でございますので、施設の問題もあるとは思いますが、それとは別途、その法改正が必要であるという判断の下に、一応、調査委託の結果を待つことなく法改正をお願いしているという次第でございます。

鈴木(庸)委員 何でその調査結果を、それだけお金をかけて、結果が出る前にやるんだったら、その調査は何だったんだろうなというところが一つ疑問に残るところなんですが。

 もう一つ、これはちょっと通告していないんですが、伺わせてください。

 先ほども申し上げたように、このJIDRCは、最新の設備をかなりのお金をかけて整えているということなんですけれども、令和六年度以降については、予算がなくて、一部ではこの六月ぐらいに閉鎖してしまうんじゃないかみたいな、そんな心配をされている方もいらっしゃるんですけれども、この先どんな感じになるようにお考えでしょうか。

柴田政府参考人 委員御指摘のとおり、調査委託、今、四年が経過し、令和六年三月までということになっております。

 現在、この調査委託の中で、今後、国際仲裁の在り方についてどういったことが必要かということを検証しているところでございまして、その最終的な報告を待って今後の在り方を考えることになっておりますが、いずれにしましても、国際仲裁が非常に重要であることについては強く認識しておりますので、引き続き、国際仲裁活性化のための試みは継続していくことを法務省は考えております。

鈴木(庸)委員 申し上げたいのは、せっかくいいものがあってお金もかけているんですが、五年のところを四年目でこうなったり、何かちょっとかみ合っていない感じを感じるんですね、いろいろな方にお話を伺っていると。是非、国民や法曹の方々が分かりやすいように整備をお願いしたいと申し上げたいと思います。

 次に、仲裁法について伺わせてください。

 JCAAの関係ですけれども、一九五〇年に商事仲裁機関として発足して、六十九年目ということ、ホームページにもあったんですが、例年、JCAAの取り扱う仲裁事件が十件から二十件にすぎないと。一方で、シンガポールなら百五十件から四百、韓国でも三百から四百、ドイツでも百二十から百五十ということで、各国と比べて大きく水を空けられております。これはどういったことが原因と考えていらっしゃいますでしょうか。

柴田政府参考人 委員御指摘のとおり、JCAA、一般社団法人日本商事仲裁協会における近年の新規申立て件数を見ても、十件から二十件前後で推移をしていて、令和三年までこの傾向に大きな変化は見られません。

 この点につきまして、法務省が調査委託等をお願いしていますJIDRCからの報告によりますと、元々、国際仲裁の活性化に向けた基盤整備は、短期的に成果が表れるものではなく、中長期的な観点から検証すべきものである、また、新型コロナウイルス感染症の感染拡大により社会活動が停滞したことに加えて、海外に出向いての積極的なプロモーションや対面での説明機会を活用して我が国での仲裁を推奨する活動に支障が生じたこともあり、このような当初想定できなかった要因が国際仲裁件数が増加しなかったことに影響を及ぼしている可能性もあるといった指摘もなされているところでございます。

 いずれにいたしましても、法務省といたしましては、このJIDRCに委託中の国際仲裁の活性化に向けた基盤整備に関する調査業務の結果を踏まえまして、全体として、我が国の仲裁機関の取扱件数や、それから、我が国を仲裁地、審問地とする件数の増加を目指してまいりたいと考えております。

鈴木(庸)委員 これは二〇〇九年からこんな感じなので、コロナは関係ないと思いますけれどもね。

 その一方で、国際仲裁では、現地とのやり取りや言葉の問題など、母国を仲裁地にした方が有利に進むという声もございます。こうした評価について、これまで海外で仲裁手続に臨む日本企業が多かった中で、今後どのような形で国内での仲裁件数の増加を図っていこうと考えていらっしゃいますでしょうか。

柴田政府参考人 お答えいたします。

 我が国で国際仲裁を活性化させるためには、我が国を仲裁地とする国際仲裁の事件を増やす必要があります。

 そのためには、国際商取引の契約交渉過程において、国内外の企業に我が国を仲裁地とする紛争解決条項に合意をしていただく必要があります。そのため、法務省では、先ほどのJIDRCに対する調査等委託業務を通じまして、関係機関と連携しつつ、様々な機会を通じて、国内外の企業等に対する広報、意識啓発を進めてきました。

 具体的には、まず、国内企業向けに、我が国で国際仲裁を行うことのメリット等について解説したパンフレット等の作成、配布、経済団体等と連携した企業や企業内弁護士向けの勉強会やセミナーの実施、雑誌や動画等の媒体における解説といった取組を実施してきております。また、海外企業向けには、我が国の司法制度や裁判例の動向について英語で解説する記事をJIDRCのウェブサイトに掲載したほか、海外の仲裁機関等と連携して、海外向けのセミナーや説明会の実施といった取組を実施してきております。

鈴木(庸)委員 是非、国内の仲裁件数の増加を図っていただければと思います。

 続いて、国内拠点について伺わせてください。

 ADR法の制定時に執行力を付与しなかった理由と、一方で今回の法改正では執行力を付与するとしたこと、この理由、違いを教えていただけますでしょうか。

金子政府参考人 平成十六年のADR法制定時の議論ですが、主に、債務名義をみだりに作成するような団体が出現するなど制度の濫用のおそれがあるとの指摘、それから、強制執行の可能性を認めることにより債務者を萎縮させ、かえって和解が成立しにくくなるおそれがあるとの指摘がされ、成立した和解に基づく強制執行の実現については将来の課題として残されたということでございます。

 今般のADR法の改正では、国民において認証紛争解決手続が定着しつつあること、和解合意の当事者が当該和解合意に基づいて民事執行をすることができる旨の合意を要件としていること、潜在的に当事者間の力の不均衡等が想定される消費者契約等に係る紛争や個別労働関係紛争については適用除外としていること、和解に基づく強制執行が公序良俗に反するなどの場合には裁判所が強制執行を許さないものとすることなどの措置を講じておるところであり、制度の濫用のおそれは払拭されているものと考えております。

 また、強制執行を可能とするかどうかを債務者がその旨の合意をするかどうかに委ねるということとしております。したがいまして、債務者が萎縮してかえって和解が成立しにくくなるといった懸念も払拭されていると考えているところでございます。

鈴木(庸)委員 一部の事業者の皆さんからは、ADRによる合意書に執行力が付与されるということで、専門性の高い弁護士など複数の目で合意書をダブルチェックすることが必要になるという意見がございます。このため、ADR事業者の皆さんの負担の増加と、さらには、それを、料金を利用者へ転嫁していくしかないのではないか、そういった懸念についても声が出ております。

 例えば、今後なんですけれども、件数に応じた助成金とか利用者支援については検討をしていらっしゃるんでしょうか。

竹内政府参考人 お答えいたします。

 認証紛争解決手続におきましては、弁護士でない手続実施者は、手続の実施に当たり、法令の解釈適用に関して専門的知識を必要とする場合には弁護士の助言を受ける必要があることとされております。

 委員の御指摘は、特定和解の執行拒否事由の有無について確認するなどのため、この弁護士の助言に関する負担が増加することを懸念するものと理解をしております。

 弁護士の助言を受ける必要がありますのは、成立する和解が特定和解か否かにかかわらず、和解条項の内容等に応じて、債務名義とするのに適しているかなどの観点から、法令の解釈適用に関して専門的知識を必要とする場合に限られております。そして、そのような場合の助言の方法等につきましては、法令やガイドラインにのっとりまして、既に事業者ごとに実情に応じて様々な工夫がされているところでありまして、委員御指摘の助成金ですとか、あるいは利用者に対する金銭的負担が直ちに必要になるとは考えていないものでございます。

 そこで、委員御指摘のような懸念の声に対しましては、昨年三月に、一般財団法人日本ADR協会におきまして、執行力の付与を念頭に置いた和解条項作成のポイントに関する裁判官の講演等を内容とする実務研修・実務情報交換会が実施されるなど、民間における研修等の取組も始まっているところでございます。

 法務省といたしましては、国民や認証紛争解決事業者に対する新たな制度の周知のほか、こうした研修を充実させるための支援など、より適切な運用を図るための方策について必要な検討を行ってまいりたいと考えております。

鈴木(庸)委員 そうですね。やはり公証人の目が今まで通っていたので事業者の皆さんはひとまず安心だというお話があったんですけれども、これからはもう自分たちで将来的な強制執行力も含めたものをつくらなくてはいけないということなので、大変不安に思っていらっしゃる方がいらっしゃる。もちろん、元々、弁護士の知見を中に入れなきゃいけないというのは前提だということも理解しているんですけれども、是非、そういった不安な声がありますので、そこを御配慮いただければとお願いをしたいと思います。

 そうしたことも含めて、今後、この広報体制というか、これはどうやって周知をしていく予定でしょうか。

竹内政府参考人 お答えいたします。

 済みません、先ほどの私の答弁の中で、金銭的負担というふうに申し上げた部分があったかもしれません。申し訳ありません、金銭的支援というふうに訂正させていただきます。

 その上で、お答えを申し上げます。

 ADRの利便性向上を図るとともに、国民に対して広く周知、広報を行うことは、紛争解決のための選択肢を広げ、司法アクセスの向上に資するものとして重要であると認識をしております。

 法務省といたしましては、ADRの利便性向上を目的といたしまして、今般の新たな制度の創設に加えて、ADRに情報通信技術を活用したODRの社会実装に向けた環境整備のための取組を順次行っているところでございます。

 その一環といたしまして、認証ADRについて、法務省ホームページへの掲載や相談機関等へのパンフレットの配布を通じて情報発信を行っているほか、昨年度からは、ADR週間等を設定した上で、関係団体等と連携した一体的かつ集中的な広報の実施の取組を始めたところでございます。

 法務省といたしましては、本法案の成立後、制度内容を国民一般に広く周知することはもちろんのことでございますが、ADRが国民にとって裁判と並ぶ魅力的な選択肢となるよう、引き続き必要な検討を行ってまいりたいと考えております。

鈴木(庸)委員 今の答弁の中でも、裁判と並ぶ魅力的な選択肢というお話があったんですけれども、ADRを利用される多くのケースは、御案内のように消費者事件であります。ある方の肌感覚ですけれども、八割近くが消費者事件じゃないかと言う方もいらっしゃるんですね。

 今回、なぜ消費者事件が適用されないのか。消費者事件の多くを解決できないのでは、法改正の効果自体に疑問がつくのではないでしょうか。

金子政府参考人 お答えいたします。

 ADR法の一部改正法案におきましては、消費者と事業者の間で締結される契約に関する紛争に係る和解合意につきましては、強制執行を可能とする対象から除外することとしております。

 法制審議会の関係する部会におきましての調査審議におきましては、この消費者と事業者の間で締結される契約を対象とするということについても検討がされたものの、認証紛争解決事業者が行う紛争解決手続については、消費者と事業者との間で締結される契約に関する紛争において、当事者間の潜在的な力の不均衡や情報の格差等から、消費者を保護するための制度的な担保が必ずしも十分ではないとの懸念も指摘されたところでございます。

 このような指摘を踏まえまして、消費者契約に関する紛争につきましては、類型的に当事者間の潜在的な力の不均衡や情報の格差等が想定され、消費者を保護する観点からは、認証紛争解決事業者が行う紛争解決手続において成立した和解に基づく強制執行を可能とすることについては慎重であるべきと判断し、今回の改正においては、強制執行を可能とする対象から除外とすることとしたものでございます。

 このような議論の結果、消費者契約に関する紛争の解決について強制執行ができないという点では現行法から変更がなく、この点では改正法の利用の限界はあるということは御指摘が当たっている面があると思いますが、養育費の支払いの合意などには適用されることとするなど、ニーズを踏まえた対応も併せてしているところでございます。

 いずれにしましても、改正後の利用状況を注視してまいりたいと考えております。

鈴木(庸)委員 潜在的な力の不均衡とおっしゃるんですけれども、適用除外が求められる理由の一つに、先ほどおっしゃった、今、弱者、消費者の保護というものがありますけれども、そうであるならば、例えば、消費者に対して一般的な合意解除権を付与する、そうすることによって、一度手続において成立した和解合意にも拘束されないで、自己の権利の実現を求めて、裁判所の、また再度のADRに訴えることが可能になるのではないでしょうか。

 こうしたことが検討されないで一律に消費者事件が除外になるということについては、どのように受け止めていらっしゃいますでしょうか。

金子政府参考人 お答えいたします。

 委員が御指摘されたような、片面的な和解でされた合意を解除することができるようにするという御指摘と全く同じではないんですが、法制審議会の関係する部会における調査審議では、そのような、同様の観点から、消費者紛争に係る和解合意について、消費者が事業者に対して請求権を有する場合にのみ執行力を付与するという方策があるんじゃないかという意見がございました。

 このような意見に対しては、和解合意そのものとは別に、当該和解合意に基づいて民事執行をすることができる旨の合意をする必要があるということとするのであれば、実際、今回の改正はそうしているんですけれども、対象となる和解合意の内容を限定したところで、和解合意に基づく民事執行をすることができる旨の合意をするということが想定し難く、実益に乏しいとの指摘がされておりまして、関係する部会においてコンセンサスを得ることができなかったという経緯もございました。

 また、調停は、いずれにしても話合いによる解決を目指す手続でありますことから、委員御指摘のように消費者に対して片面的な解除権を認めるということは、和解合意を得ることを難しくするという側面もございます。

 また、このようなADR機関でされた合意は、それはいわば和解契約という性質を有しますので、何らかのそこに瑕疵がないにもかかわらず、一方的に解除権を付与するということについては、法的安定性の観点から、かなり問題もあるのではないかというふうに感じます。

 このようなことから、今回の改正におきましては、先ほど申し上げた理由もあって、適用除外として明確性を期したというものでございます。

 いずれにしても、先ほども申し上げましたが、改正後の利用状況を注視してまいりたいと考えております。

鈴木(庸)委員 消費者保護については、こっちを押せばこっちが引っ込むみたいな難しいところがあるのも承知しておりますけれども、是非、不断の改革をお願い申し上げたいと思います。

 ありがとうございました。

伊藤委員長 次に、米山隆一君。

米山委員 それでは、会派を代表して質問いたします。

 まず、仲裁法の一部を改正する法律案についてお伺いいたします。

 私も、正直に申しまして、この制度自体は知っておりましたが、その中身は詳しくありませんでした。しかし、今どき、グーグルという便利なものがありますので、検索いたしますと、お手元にある資料の一ページ目、二ページ目がヒットいたします。こちらを見ますと、世界全体の仲裁件数が三千件程度で、そのうちのシンガポールでの仲裁所、仲裁するところですね、では千件程度、パリのICC、国際商業会議所が八百件程度を受けている。対して、日本商事仲裁協会の件数は、お手元の資料三枚目になりますけれども、年によって変動がありますが、おおむね年間二十件程度ということで、文字どおり桁が一つ二つ違うという状況でございます。

 この原因は一体何で、そして、今般の改正、すなわち暫定保全措置命令に基づく強制執行を可能とする改正によってこれの違いは改善するのか、法務大臣の御所見を伺います。

齋藤(健)国務大臣 我が国の仲裁の利用が活発でない理由には様々なものがあると考えられますが、その理由の一つには、我が国の仲裁法が最新の国際商事仲裁モデル法に準拠していないことを挙げる指摘もあります。そういったことから、日本仲裁人協会や日本弁護士連合会等からも、仲裁法の見直しを求める声がございました。

 今般の改正はこの指摘に沿うものでありますが、先ほども言いましたとおり、仲裁の利用が活発でない理由には様々なものがあると考えられることから、この改正のみで我が国における国際仲裁の件数がどの程度増加するかを予測することは困難であります。しかし、仲裁の利用の促進に向けて課題を一つずつ克服していく必要があると考えております。

 この改正は、国内外の企業が我が国の仲裁手続をより利用しやすいものとするための環境整備の一環でありまして、我が国における国際仲裁の活性化に資するものと考えているところであります。

米山委員 資料を見ていただきますと、ロンドン、パリ、香港、ストックホルムなどがあるわけなんですが、それらの都市は、長く商業の中心であったということがあるんだと思います。一方、シンガポールはそうかというところはあって、調べますと、シンガポール国際仲裁センターなどは近年非常にシェアを伸ばしてきたと伺っております。

 今ほど、大臣、日本でも頑張って伸ばしていくというようなお話があったんですが、そうしますと、このシンガポールなんかは非常に学ぶべきことが多い事例だと思うんですけれども、このシンガポールの国際仲裁センターは何でこんなに伸びたとお考えでしょうか。御所見を伺います。

柴田政府参考人 お答えいたします。

 シンガポールに関しまして、この点、内閣官房に設置された国際仲裁の活性化に向けた関係府省連絡会議というものが平成三十年四月に取りまとめた国際仲裁の活性化に向けて考えられる施策というものがございますが、これによると、国際仲裁の活性化には、英語で仲裁を執り行える人材の育成という観点も重要である旨の指摘がされております。英語を公用語とし、英国法にルーツを持つ法制度を有する国であるシンガポールにおいては、こうした面でもとより有利な環境にあったと考えられます。

 また、シンガポールにつきましては、仲裁人協会が、仲裁人、仲裁実務家向けの研修や、資格認定講座等を開催し、スキルアップや情報交換を図るなどの人材育成、広報が行われているほか、政府の支援の下で、旧税関庁舎を改装するなどして仲裁施設が開設され、その施設に仲裁機関を始めとする関係機関等を誘致、集約するといった取組が行われているものと承知しております。

 このように、シンガポール国際仲裁センター、SIACが近年取扱件数を伸ばした背景には様々な要因があるものとは思われますが、いずれにしても、国際仲裁の活性化に向けた基盤整備は短期的に成果が表れるものではないため、前提となる有利な環境の存在に加えて、時間をかけた長期的な取組が功を奏したのではないかと考えております。

米山委員 確かに、シンガポールは、地理的な、東南アジアのど真ん中にあったり、英語だったりとあると思うんです。

 じゃ、ほかの国はどうなんだということで、韓国やマレーシア。マレーシアは一応、英語ができるんだろうとは思いますが、韓国は日本と似たような状況だったりするわけです。韓国やマレーシアの仲裁機関も仲裁件数が伸びておりまして、韓国は、二〇一七年で国内で三百七件、国際仲裁が七十八件、合計三百八十五件の仲裁をしておる。やはり日本とは桁が違う。マレーシアは、二〇一八年に三百八十七件を受理したと伺っておりますが、今度は、じゃ、韓国やマレーシアはどんないい点があったというふうにお考えでしょうか。

柴田政府参考人 お答えいたします。

 このような外国の仲裁機関の取扱件数が多い理由につきまして、法務省では、国際仲裁の活性化に向けた基盤整備に関する調査等業務を実施するに先立って、韓国及びマレーシアを対象としたアジアの仲裁機関における国際仲裁手続の利用促進方策についての調査研究を委託実施しております。

 この報告によりますと、韓国については、官と民が連携し、外国仲裁機関への研修等の名目での人員の派遣や、海外の国際仲裁紛争会議へのスタッフの派遣をしていること、内外の大学及びロースクールからのインターンの受入れといった取組を行っていること、交通アクセスのよい仲裁施設の存在などが指摘されています。

 また、マレーシアにつきましては、先ほどの報告によりますと、長らく英国の植民地であったこともあり仲裁に関する知見と経験を有していたことのほか、仲裁関連の国際会議など多数の国際仲裁イベントの開催や、国際仲裁人材を養成するための模擬国際仲裁イベントの開催をしていること、マレーシア以外の国々の著名な仲裁専門家が仲裁機関に多数就任していること、政府から無料で供与されている充実した仲裁施設の存在などが指摘されているところでございます。

米山委員 あちこちのいいところをいろいろおっしゃられたんですけれども、やはりこれは、皆さん、えっと思うと思うんですよ。そんなにいろいろいいところがちゃんと分かっていた人がやっていて、何でこんなに周回遅れなんですか。もう桁が違って、正直、頑張ります頑張りますと言いますけれども、じゃ、今まで寝ていたんですかという話になるんだと思うんですよ。だって、こういうことが起こっているのは何年も前から分かっていたわけでしょう。一体全体何でこんなに日本だけ遅れているのか。

 いや、英語だ英語だとおっしゃいますけれども、韓国だって英語じゃないわけで、法制度なんかは日本とかなり類似していますから、別に法制度的に、何せ、韓国と日本がそんなに違うかと言われると、それは正直違わない。むしろ韓国は日本の法制度を大分、模倣と言われると怒られるでしょうけれども、それを参考にしてつくったものですからね。そうだとすると、一体何でこんなに日本だけ遅れたのか。

 また、これから伸ばしていくというならそれはそれでいいんですけれども、一体全体、目標はどこなんですか。韓国ぐらいを目標にするのか、それともシンガポールを目標にするのか、ロンドンを目標にするのか。やはり、どこを目標にするかで、桁も違うんだし、かかる予算も違うんだし、やる方向も違うわけじゃないですか。何となく漠然と頑張りますと言うんじゃなくて、一体全体、日本の問題はどこにあって、どのぐらいの予算をかけて、何年ぐらいで一体どのぐらいのところを目指すのか、その御見解を伺います。

柴田政府参考人 お答えいたします。

 委員御指摘のとおり、マレーシアにつきましては、長らく英国の植民地であったこともありまして仲裁に関する知見と経験を有していたことなど、我が国との前提となる環境の相違があるものと考えられますが、他方で、韓国など前提条件が我が国と比較的似通っていると思われる国と比較してもなお我が国の国際仲裁の件数が低調なのは、もう御指摘のとおりでございます。

 その理由といたしましては、内閣官房に設置された国際仲裁の活性化に向けた関係府省連絡会議が平成三十年四月に取りまとめた国際仲裁の活性化に向けて考えられる施策においては、国際仲裁のユーザーである企業において国際仲裁の有用性に関する理解が十分でなく、また、海外へのマーケティングが不足していること、国際仲裁に精通した人材が不足していること、世界的に著名な仲裁機関や仲裁専門施設がないことといった指摘がされているところでございます。

 また、韓国やマレーシアにおいては、UNCITRALが策定した最新の国際商事仲裁モデル法に対応するなど、必要な法整備がされているという指摘もございます。この点の対応がこれまでなされていなかったことも、我が国における国際仲裁の利用件数の低調の一要因となっている可能性があると考えております。

 先ほど来申し上げておりますように、現在、調査委託業務を実施中でございます。まさに、先ほどの前提を踏まえまして、この五年間の調査委託の中で、今後の国際仲裁の活性化に向けた有効な施策の在り方、目標をどこに置くのか、そういったことについて検討しておるところで、現時点ではお答えすることは困難でございますが、この調査委託の中でそういったことについて総括したいと考えております。

米山委員 現時点で全く、要は目標がない。皆さん、頑張る頑張ると言っておきながら、一体全体、どのぐらいの予算で、どのぐらいかけて、どこに行くのかがまるで決まっていないというのはなかなか驚きなんですけれども。

 ちなみに、ドイツ、イタリア、スペインの仲裁機関での取扱件数を教えてください。

柴田政府参考人 お答えいたします。

 ドイツに関しまして、ドイツの仲裁協会における国際仲裁事件の新規受理件数は、同仲裁協会のウェブサイトによりますと、平成三十年に五十件、令和元年に五十件、令和二年に六十五件、令和三年に四十三件であると承知しております。

 現在、イタリア、スペインの仲裁機関における取扱件数については承知してございませんが、引き続き、こうした各国の仲裁件数等についても、この調査委託の中で情報収集していきたいと考えております。

米山委員 そこは実は私の趣旨なんですけれども、ドイツは、日本と似た、似ているというか、間もなくドイツにGDPは抜かれるんでしょうけれども、世界の立ち位置は似ているんだと思うんです。歴史的な経緯も似ているといいますか、第二次大戦を含めて。

 その中で、ドイツは、件数も実は日本と似ているわけですよ。二十件と五十件ですから、桁は同じなわけです。要は、ロンドンやパリが仲裁しているんだし、仲裁って、必ずしも仲裁したら偉いということでもなくて、例えば、シンガポールなんかは、恐らくですよ、欧米の企業と例えばフィリピンの企業なんかがやるときに、どっちの有利になってもいけないから第三国みたいな、そういう視点はあるんだと思うんですよ。日本の企業にとって不利になるという話であるならば、それは、日本の企業が外国の企業とやるような案件に関しては、近いことだし、特に日本の中でやるようなことに関しては日本でやればいいじゃないかと。

 だから、そういう意味で、私も別に、仲裁の制度を整えること、それ自体はいいと思うんですけれども、何でもかんでも、俺たちは必ず世界に伍していかなきゃならぬというのは、それは違うんじゃないかと。要するに、アジアの仲裁センターは、もはや事実上、絶対にシンガポールから動きっこないでしょう。だと思うんですよ。千件と二十件で、これから、周回遅れどころか、もう三周ぐらい遅れている中で、私たち、一生懸命アジアのセンターになろうと思ってひたすら予算をつぎ込みますなんていうのは、極めてばかばかしい作業だ。

 そうじゃなくて、もちろん、再三申しますとおり、国内が海外とやる案件みたいなのに関して、国内企業、やるのは、仲裁って何せ双方が合意で仲裁条項を書かなきゃいけないわけですから、そのときに、いや、国内でやるんだから国内のセンターでやりましょうよというのはいいと思うんですけれども、何か、今から頑張って、アメリカの企業とフィリピンの企業が合弁で企業をやるのに、日本の仲裁センターを使ってくださいみたいなことを必死でやるというのは、それはもう無理でしょうと思います。

 ですので、これは、先ほど、私はてっきり何か目標があるかと思っていたら、目標はないということですので、是非ここは現実的な御検討をいただいて、制度の整備はいいんですけれども、過ぎたる望みはせず、別に、ドイツだってそうなんだから、ドイツぐらいな感じでいいんじゃないですかと思いますので、それを述べさせていただいて、一言大臣に御所見を伺います。

齋藤(健)国務大臣 大変貴重な御指摘をいただいたなと思っています。

 やはり、日本企業にとって利用しやすい制度であって、その結果として件数が増えていくということがすごく大事だと思っていますので、御趣旨を踏まえてしっかりやっていきたいと思います。

米山委員 では、次に、今度は暫定保全措置命令についてお伺いいたします。

 今般の仲裁法改正で、暫定保全措置命令を出す要件が類型化されまして、この暫定保全措置命令を得ますと、裁判所に執行等認可決定を求める申立てをすることができるということが定められました。これは、先ほど来お話しになっておりますモデル法二〇〇六年改正に対応したものということで、それは当然すべきだというふうに思います。

 一方で、先ほど来お話ありますけれども、この暫定保全措置命令というのは、性質上、早期に発令しなければ意味がなく、アメリカ仲裁協会、中国国際経済貿易仲裁委員会、香港国際仲裁センター、国際商業会議所、日本の商事仲裁協会、それから大韓商事仲裁センター、ロンドン国際仲裁裁判所、シンガポール国際仲裁センターなども、仲裁廷が構成される前の段階において緊急仲裁制度を導入して、緊急仲裁人の保全処分発令権限を認めているというふうに承知しております。

 ところで、日本の仲裁法及び今回の仲裁法改正では、この緊急仲裁制度の規定が置かれておらず、第二条において「この法律において「仲裁廷」とは、仲裁合意に基づき、その対象となる民事上の紛争について審理し、仲裁判断を行う一人の仲裁人又は二人以上の仲裁人の合議体をいう。」と定めて、仲裁法二十四条は、仲裁廷は何々措置を講ずることを命ずることができると定めております。

 そうすると、これは、緊急仲裁制度で本当にこの暫定保全措置命令ができるのか文言上必ずしも明らかでないと思うんですけれども、緊急仲裁人、JCAA、日本商事仲裁協会は緊急仲裁人を置けるわけなんですが、暫定保全措置命令を命ずることはできるのでしょうか。御所見、根拠とともにお答えください。

金子政府参考人 緊急仲裁人の制度は、仲裁機関の仲裁規則において導入されている制度でございまして、仲裁廷が構成されるまでには仲裁手続の開始から一定の期間を要することから、その間、緊急に暫定保全措置命令を要する場合に選任されるものと承知しています。

 御指摘のとおり、改正仲裁法は緊急仲裁人の規定を設けていませんが、例えば、仲裁規則に緊急仲裁人による暫定保全措置命令の発令を認める旨の規定が設けられており、当事者がそのような仲裁規則に従うことを合意した場合には、これらを根拠として緊急仲裁人が暫定保全措置命令を発令することができるものと考えられます。

 したがって、当事者がJCAAの仲裁規則に従うことを合意した場合、このような場合には、当該仲裁規則の定めに基づき、緊急仲裁人は保全措置命令を発することができるものと考えております。

米山委員 もちろん、JCAAでやっているわけですから、その規則になきゃおかしいわけなんですけれども、でも、やはりこれは、法律上は判然としないという規定ぶりなんだと思います。こういうのは、確かに、実例が積み上がっちゃえばいいんだという話になっていくのかもしれないんですけれども。

 それこそ、先ほど来お話をしておりますシンガポールの仲裁センターなどでは、そういうところはちゃんと立法上で措置されておる、暫定仲裁人が暫定保全措置命令をできるというふうになっていると私は理解しているんですけれども、そうであるなら、この問題も、今後そのように、日本だってやはりそこは立法的に明らかなように解決するべきだと思うんですけれども、立法的に解決する予定があるか、御所見を伺います。

金子政府参考人 お答えいたします。

 緊急仲裁人に関する規定を設けるかどうかということにつきましては、法制審議会仲裁法制部会における調査審議でも、仲裁法においては特段規定を設けないとすることに特段の異論が見られなかったところでございます。

 その理由としては、UNCITRALの仲裁モデル法には緊急仲裁人に関する規定が設けられておらず、仲裁機関が必要に応じて仲裁規則で定めれば足りると考えられること、緊急仲裁人に関する規定を設けている仲裁規則において、緊急仲裁人による暫定保全措置命令は仲裁廷を拘束せず、仲裁廷が事後的に暫定保全措置命令の変更等をすることができるものといったものであるというようなことが挙げられます。

 そこで、今回の改正仲裁法では緊急仲裁人に関する規定を設けないこととしておりますが、現時点においては、御指摘の点について、立法的な手当てを行う必要はないものと考えております。

    〔委員長退席、藤原委員長代理着席〕

米山委員 そこは、法制度というのは何がベストか分からないところではあるんですけれども、でも、先ほど来のお話の中で、日本は、仲裁をやるといいながら法改正が非常に遅れていたり、要は、ずっと後追いでやっていくだけでは、それは遅れていくんだろうなと思います。もちろん、何がベストか分からないので、正直、確かに、必ずしなきゃいけないかどうかは私もちょっと断言しづらいんですけれども。

 しかし、いろいろな工夫をして、それぞれ頑張っている国があるわけですから、日本も、ひたすらどこかの後追いではなくて、自らいろいろな制度をつくっていくということがあってもいいのではないかということを申し上げさせていただきたいと思います。

 次に、袴田事件についてお伺いいたします。

 東京高裁が三月十三日、地裁決定を支持して、検察の即時抗告を棄却する決定を出しました。検察が特別抗告を断念したため、再審開始が確定しております。

 ところが、この契機となりました二〇一四年三月二十七日の決定が静岡地裁のホームページに記載されておらず、支援団体が掲載を求めていると報道されております。

 なぜこの歴史的決定が掲載されていないのか、その理由を掲載基準とともにお答えください。

小野寺最高裁判所長官代理者 お答えいたします。

 下級裁の判決等を裁判所ウェブサイトに掲載するかどうかの判断は、各庁で行うこととされております。

 今般、掲載しなかった理由について報告を受けておりませんので、静岡地裁が御指摘の決定を裁判所ウェブサイトに掲載しなかった理由について、最高裁判所としては承知しておりません。

 お尋ねの掲載基準につきましてですが、当該決定がされた平成二十六年三月二十七日当時、裁判所ウェブサイトへの裁判例掲載は、平成十三年十一月二日付、下級裁ホームページ掲載原稿の作成等についてという事務連絡に基づき行われており、この事務連絡におきましては、掲載すべき刑事再審請求事件の選定の目安は明示されていませんでしたが、掲載すべき刑事判決の選定の目安としては、社会における紛争解決の参考となるようなもの、又は公害訴訟や行政訴訟のように地域住民の利害など公共の利益に関わるもので、判例タイムズや判例時報に掲載されるものよりもやや広めのものとする、刑事事件については、プライバシーについて高度の注意を要するとともに、掲載により被害者感情を著しく害するものや模倣性の高いものなどの特殊性に配慮する必要があるなどとされていたところでございます。

米山委員 非常にぼやっとしたお話なんですけれども。

 ちなみに、今のお話からすると、やはり最高裁から事務連絡が行っているわけじゃないですか、そのときに。それに基づいて判断されたということですよね。ということは、今後についてだって、また事務連絡なりなんなり、若しくは、何ならもうピンポイントでそれを掲載しなさいと事務連絡したらいいんだと思うんですよ。

 ですので、これは是非掲載すべきだと思うんですが、最高裁として、若しくは静岡地裁でもいいんですけれども、今後掲載するお考えがあるのかないのか、お伺いいたします。

小野寺最高裁判所長官代理者 お答えいたします。

 静岡地裁においてこれは判断されることとなりますけれども、最高裁といたしましては、今後、御指摘の決定が確定したことを受け、静岡地裁において、裁判所ウェブサイトに掲載するかどうか適切に判断されるものと承知しております。

    〔藤原委員長代理退席、委員長着席〕

米山委員 官僚答弁ですから、きっと来るんでしょうけれども、それは全国民が注目していることであり、かつ、当然、掲載すべきことであろうと思います。情報というのは、やはり掲載して、共有して意味があるものですからね。

 かつ、今ほどの御答弁ですと、恐らくはきっと掲載されるだろうと思いますので、今後、注目させていただいて、されなければ、再三聞かせていただいて、事務連絡を出してくださいと言わせていただきますので、是非そこは、任せておくと言いながら、きっと事実上の御指導はあるに違いないですし、先ほどおっしゃられたとおり、事務連絡するわけですから、是非きちんと御連絡していただければと思います。

 次に、余り本論に関係ないといいますか、法律そのものでない追及ということで大変大変恐縮ではあるんですけれども、やはり聞かざるを得ないということで聞かさせていただきます。

 先般、週刊誌で、齋藤大臣が、恐らく、たった今、後ろに座っておられる中村明日香秘書官を休日の地元の政治的イベントに帯同されているということが報道されております。報道は写真もついておりますし、そもそも記事の中で、それ自体は事実ですと双方が認めておられますというふうに書いてあるので、事実関係としては事実なんでしょうと思うんですが、改めて伺います。

 齋藤大臣が中村秘書官を、休日、政治的イベントにも帯同されたことは事実でございましょうか。事実であれば、帯同された理由とともにお答えください。

齋藤(健)国務大臣 お尋ねにつきましては、法務行政に関する連絡対応や打合せ等のために、秘書官を休日ではあるが帯同したことがあったことは事実でございます。

米山委員 そのような勤務をされることが常態化しているとの報道もなされております。

 齋藤大臣就任後の休日数、例えば、この半年ぐらいで休日が三十日あったんだけれどもというような形で、その休日数に対して中村秘書官が何日間休日出勤をしたのか、御教示ください。

齋藤(健)国務大臣 お尋ねは個別の職員の勤務状況に関する事柄でありますので、プライバシーの観点からこのような場でお答えすることは基本的には差し控えたいんですが、私の名誉にも関わることでありますので、あえてお答えをいたします。

 秘書官の勤務実態としましては、まず、平日につきましては、ほとんどの夜、会食が入っておりますので、大体午後六時前後には秘書官は解放されております。それから、同じく平日の朝は、日によりますが、今日のように早朝の答弁の打合せがあれば別ですけれども、大体、平均すれば午前八時前後ぐらいから秘書官が迎えに来て帯同することに、これは大体平日です。土日等の休日における私の政務先への帯同につきましては、私が昨年十一月十一日に法務大臣に就任してからもうすぐ五か月を迎える間を通して、土日どちらかの形で、合計四回ほどであったということでございます。

 このような勤務実態に関して御指摘の報道がなされているわけでありますが、その表現ぶりの評価につきましては、ここにいる皆さんに委ねたいと思います。

米山委員 母数が、言っていただけなかったんですけれども、五か月ですから、大体、月に土日等、八回あるとすると、四十分の四で、十回に一回ぐらいな確率だということで、もちろん、それは確かにすごく数が多いということではないんだとは思います。

 ただ、ちなみに、短いながら、そんなこと言うのも本当に恐縮ですが、私も知事経験がありまして、知事になりますと、当然、随行の秘書職員というのがつきます。もちろん、知事は、休日に公務イベント、いろいろな県のイベントとかに出ますので、それは随行職員が公務として、交代交代ですけれどもついていただくわけなんですが、これも、知事とはいえ、その間には政務があるわけです。後援会のイベントがあったり、また、他の政治家の応援に行くみたいな、政治家のイベントに行くということもあります。そういうときは、新潟県がというか、恐らくほかの県も全部一緒だとは思うんですけれども、必ず公用車は降りて、自分の秘書ですよね、自分の私設秘書というか、全く自分のお給料から払って雇っている自分の秘書に車で来てもらうなり、自分でタクシーを呼ぶなりして一人で行くなりして、それは全く分けておりました。

 そういう在り方からすると、やはりちょっと、連絡とはいいながら、一体全体、何でその政務のところに一緒に行かなければならないのか、それは公私混同ではないのかと思うのですが、御所見を伺います。

齋藤(健)国務大臣 御指摘につきましては、法務行政に関する、先ほど申し上げましたけれども、連絡対応、いろいろなことが土日にも起こります。それから、こうやって、平日におきましてはじっくりと議論する時間も取れないケースがありますので、移動中にいろいろな打合せをするということもありますので、そういう意味で、秘書官を帯同することがあったということであります。

 法務大臣としての職務を全うするためのものでありまして、私として、公私混同とは考えておりません。

米山委員 週刊誌でもそうおっしゃっていましたから、そうおっしゃるんだと思いますけれども、正直、知事だって同じなわけなんですよ。もちろん、緊急連絡も必要ですから、私も担当秘書に、休日も業務用の携帯電話を持っていてくださいねというふうには言っておりました。めったにしないけれども、電話があったら出てくださいと言っておりました。

 ただ、実際にやはり電話をしたのは、本当に、大雨が降ったとか、鳥インフルエンザがありましたみたいな惨害があったか、あと、これは非常に正直に言うと、鍵を忘れて中に入れなくなってしまいました、済みません、今は夜ですみたいな、とほほなことも年に一回ぐらいはあったんですけれども、そういう、やはり緊急なとき以外は連絡はしなかったです。

 あとは、もちろん、忙しいからじっくり相談する時間がないというのはそうかもしれないんですけれども、いや、しかし、それは時間をつくったらいいじゃないですかというか、それは平日の時間のうちにちゃんとつくるのが、それこそ働き方改革というものじゃないですか。

 もちろん、私、齋藤大臣はよく存じておりますし、非常に高潔な方だ、それは分かってはいるんですけれども、しかし、緊急対応を理由に一人の職員を長時間拘束する、また、打合せの時間だということを理由に休日の移動時間みたいなものを使うというのは、それはむしろ、マネジメントとしてどうなんですかね。やはり、そういうことをしないで済むようにするのが働き方改革であり、働きやすい職場であり、また個人の尊重というものではなかろうかと思います。

 大臣、所信の中で、法教育の推進に関して、一人一人が自らの考えをしっかり持ち、多様な考え方を認め合い、互いを尊重して生きていく力を身につけられるよう、積極的に推進するとおっしゃっておられるわけでございます。

 本当にこんなことを言うのも恐縮な部分もあるんですけれども、やはりそれは、自分の考え方でそんなふうに職員を使っちゃいかぬといいますか、自分は忙しくて移動時間でも使いたいにしたって、人は休みたいかもしれないわけですので、そこはきちんと時間を分割して、やはり今後は、特に休日に政務に行くようなところに職員を使われるというのは控えるべきではないかと思うのですが、御所見を伺います。

齋藤(健)国務大臣 まず、うちの大臣秘書官の勤務実態については先ほど申し上げたとおりでございます。これが大臣秘書官として過重な勤務実態であるかどうかについては、それぞれ皆さんの御判断にお任せをしたいと思っております。

 私、二十三年間官僚として勤務した経験がありまして、そのような経験からは、いかなる時代においても清廉かつ優秀で志が高い官の存在は重要なものと考えています。そのような官、すなわち職員自らが常に誇りと使命感を胸に抱いて全力を尽くすことができる環境を整える役割を果たす必要があると私は考えているので、御指摘のように、働き方改革を積極的に推進すること、職員のプライベートな時間を尊重することはもちろんのことであると考えています。

 その上で、実は私自身、通産大臣の事務の大臣秘書官を務めた経験がございます。そのときは、朝迎えに行くところから、夜、会食が終わって御自宅に送るところまで、全部同行をしておりました。土日の政務、公務、プライベートを含めまして、ほとんど全て同行をいたしておりました。大臣は隅田川に近いところにお住まいでありましたので、そういう勤務実態でありましたので、私は、近くにワンルームマンションを借りまして、家族と別れて、そこに住んで対応をしておりました。

 今から考えれば、それは昭和ですねで終わってしまう話なのかもしれませんが、ただ、そのときの経験が、いかに、政治家の人たちの視点はこうなんだ、こういう苦労をされているんだ、こういう切り口でお話をするとそういう方には理解をしていただけるんだろうというようなことが物すごく私の経験としてその後に生きたということも事実でございますので、私としては、それを今やれと言っているわけではありませんが、そういう側面もあります。

 私としては、先ほど申し述べたとおり、今回の帯同は法務行政に関する連絡対応等のためのものであるわけでありますが、今申し上げたような意味というものもあるのではないかと考えております。これをどう評価するかにつきましては、皆さんの御判断に任せたいと思います。

米山委員 もう最後はそれぞれの判断というのは、それはおっしゃるとおりだろうとは思うんですけれども。

 最後に、じゃ、私のということで言わせていただきますけれども、ちなみに、私は、前任の方が割にそういう勤務を職員に求める方でございましたが、私は、そんなのは無駄でしょうと。今どき、何のためにインターネットがあると思っているんですか、知事レクなんというものは、ワードを使って、もちろん秘匿性を確保してですよ、ネットを使ってワードの修正履歴を使えば一発でしょう、知事、もたもたしたことは言わずに、修正したいところは自分でワードを修正すればいいでしょうと。職員に学んでほしい、自分がこんなふうに思っているということを学んでほしいと思っていることがあれば、何も一緒にいていただく必要はない、メールでもチャットでも、それで書けばよろしいのだ、それは分かってくれればいいのであると思っておりまして、私は実際にそれを導入して、勤務時間が非常に短くなって、皆さん非常に喜んだ。確かにそのとおりとおっしゃられておりましたよ。

 ということで、要は、今、齋藤大臣は官僚ではなく大臣になられたわけですから、齋藤大臣が新たな手法を使えば、皆さん、今度は非常に時間を節約して、自宅にいながら大臣のすばらしい志を学べるわけですから、是非そういった新しい手法を使って職員の皆さんの働き方を改革していただけるように私からお願いさせていただきまして、ちょうど十秒を残して、私の質問を終わらせていただきたいと思います。

 どうもありがとうございました。

伊藤委員長 次に、山田勝彦君。

山田(勝)委員 立憲民主党の山田勝彦です。どうぞよろしくお願いいたします。

 ADR法の改正について議論する前に、法務省所管の訴訟事件、重大な事件について伺わせていただきたいと思っております。

 同性愛者であることを理由にウガンダで迫害を受けた女性が、二〇二〇年に来日し難民申請をしたが、入管庁はそれを認めず強制送還の対象にしました。女性は、処分が不当であるとし国に難民認定を求め訴訟を行い、大阪地裁は女性を難民と認めました。三月三十日、国が控訴を断念したため、女性の難民認定が確定しました。時を同じくして、三月二十四日、入管庁は、難民認定のポイントを整理したガイドラインを初めて策定し、LGBTなど性的マイノリティーやジェンダーに関連した迫害も難民に該当し得るとしました。

 控訴を断念された御判断、そして、私たちが、不透明であった認定基準、認定基準をずっと求めてきたんですが、新たにこういうガイドラインが作成されたこと、どちらも私たちが求めていたことですし、歓迎すべき内容でございます。

 しかし、この事件は、当然、これで済まされません。日本の難民認定の奥深い闇が明らかになりました。本来難民認定されるべき外国人を強制送還しようとした事実について、徹底した検証がこれから求められます。海外ではあり得ない事件が起きたと思っております。この女性は、入管庁から強制送還を命じられ、この三年間、大変な恐怖と不安の中、本当に苦痛な日々を過ごされていたことだと推察されます。

 法務行政の最高責任者である齋藤大臣にお伺いします。この事件について、私は重く受け止めるべきだと思っておりますが、大臣の受け止めについて、特に、この三年間、なぜ三年もの時間を要したのか、お伺いいたします。

齋藤(健)国務大臣 まず、本件、個別案件でありまして、その詳細を大臣の立場でコメントするのはいかがなものかなと思うところが正直あります。

 ただ、訴訟の段階で、今回の経緯を振り返ってみますと、原告から新たに提出された証拠について、原告の供述の信用性を裏づけるものとして今般の判決がなされたということであります。そのことは十分承知しておりますが、これ以上ちょっとコメントは差し控えたいと思います。

山田(勝)委員 大臣のお立場もあられるとは思います。

 今言われたように、この女性は、たまたま運よく、優秀な、本当に一生懸命証拠を集めようとしてくれる弁護士に出会われたから救われた。

 難民申請者に証拠の提出を求めるだけで、入管庁は、この事件、女性がウガンダで同性愛者ということで迫害されていたという訴えに対して、それが事実かどうか確認もしていないという説明でした。そして、強制送還を命じていた。このような運用がいかに恐ろしいことなのか。

 これは、現実に起こったこととして、日本に来日したクルド人の難民申請が認められずに、入管庁によってトルコに強制送還されてしまって、その帰国後に当局に逮捕され、尋問を受け、その後、何かしらの事情によって殺害されてしまっている、そういう痛ましい事件も事実としてあります。こういうことは絶対にあってはならない。だからこそ、難民認定の在り方というのが、大変、外国人の、人の命に関わる、人権に関わる問題であるということでございます。

 今回、難民認定を求める訴訟で国は敗訴しました。さらに、運用を改める新ガイドラインを入管庁は公表しました。今後は、これからは、このように、母国の事情によって明らかに迫害など命の危険が及ぶような、そういう外国人、ウガンダ出身の例えば同性愛者が日本政府に助けを求めてきた場合、速やかに難民認定されるのでしょうか。大臣、教えてください。

齋藤(健)国務大臣 今回、特にこのガイドライン、手引を策定したということにつきましては、例えば今御指摘のありましたように、性的マイノリティーであることに関連して迫害を受けるおそれを有する方について、外国政府機関やUNHCR等から収集した当該申請者の出身国情報等を適切に参照しつつ、当該申請者の個別の事情も検討の上、難民条約上の難民に該当する場合には、難民として適切に認定してきたところでもありますが、それがより明確になるということであります。

 これによりまして、入管庁の難民審査に携わる職員が手引を参照することで、より適切で効率的な審査につながっていくだろうということですとか、あるいは、申請者の方で、難民該当性を判断する際に考慮すべきポイントを踏まえつつ申請を行うことができるようになるとか、迅速な難民認定につながっていくということを私どもは大いに期待しているところでございます。

山田(勝)委員 ありがとうございます。

 本当に、迅速な難民認定、課題だと思っております。海外では、迅速に難民認定されるような、あらゆるそういった出身国情報というのをしっかり調査して、リスト化して、そのリストに該当すれば認定する、そういう仕組みになっています。

 日本も是非、難民認定の在り方、特に、私たち立憲民主党は提案し続けております、入管庁から独立した第三者機関による難民認定の仕組み、こういったことも来週から始まる入管法の改正で徹底的に議論させていただきたいと思っております。

 それでは、本日のテーマである裁判外紛争解決手続、いわゆるADR法の改正について質問をさせていただきます。

 そもそも、現行のADR法で執行力がないことにより、どのような不具合があっているのでしょうか。教えてください。

金子政府参考人 お答えいたします。

 現行法の下では、認証紛争解決手続において成立した和解に基づいて強制執行することが許容されていない、執行力がないということでございます。そのため、認証紛争解決手続において当事者間で和解が成立したとしましても、当事者が任意にその和解に関する債務を履行しない場合には、その合意に基づいて強制執行ができないものですから、強制執行を行うことができるようにするため、他方の当事者が改めて裁判所に訴えを提起するなどの措置を講ずる必要があるということになります。

 このように、現行法の下では、強制執行により権利の実現を図るためには、今申し上げたようないわば二重手間の手続が必要になるということになっているため、認証紛争解決手続の実効性が乏しいのではないか、ここで和解をしても、任意に履行しなければ改めて裁判所に行かなきゃいけないといったことがあるのであれば、翻って、ここでの認証紛争解決手続の和解をするということの実効性に疑問符がつく、こういうことでございます。

 そこで、今般の改正により、認証紛争解決手続において成立した和解に基づく強制執行を可能とする制度を創設し、もって認証紛争解決手続の実効性を高めようとするものでございます。

山田(勝)委員 ありがとうございます。

 確かに、現行のADRを活用して、話合い、協議の場に臨んで、一定成立しかけても、それが合意に至らない、そしてもう一度本来の裁判をやり直さないといけない、こういったことが常態化していた、いわゆる二度手間であれば、改善しないといけないということ、しっかり理解できました。

 今回の改正のポイントとして、認証紛争解決手続において成立した和解合意、裁判所が審査をし、執行力を付与する制度ができるということ、執行力の付与により強制執行ができるようになる、つまり、従来の和解合意よりも強力な法的効果が生じることになります。そのため、和解合意をすることの重みが増し、和解に当たり、御本人がきちんとその和解の内容を理解したり、これまで以上に公正な手続で和解をすることが求められるようになります。よって、現行ADR法第六条第五号の弁護士の助言制度がより強化され、実質化される必要があると考えます。

 この点について、ガイドライン等において運用上の改善が図られるべきではないでしょうか。

竹内政府参考人 お答えいたします。

 強制執行を可能とする特定和解の制度の創設によりまして認証ADRの利用がより一層促進されるためには、利用者がこれによって不測の損害を被ることがないように適切に運用されることが重要であると考えております。

 ADR法上、弁護士でない手続実施者は、手続実施に当たり、法令の解釈適用に関し専門的知識を必要とする場合には弁護士の助言を受ける必要があることとされております。

 例えば、和解条項の内容等によりましては、債務名義とするのに適しているかといった観点から、正確な用語を選択するための専門的知識が必要になることがあると考えられます。

 こうしたことも踏まえまして、新しい制度の導入後も、認証ADRが適切に実施されるよう、委員御指摘のようなガイドラインの見直しを含めた運用面の検討を図ってまいりたいと考えております。

山田(勝)委員 ありがとうございます。

 是非とも、強制力が伴うからこそ、調停人に対しより専門性が求められ、ガイドライン上でより明確に示していただく必要があると思っておりますので、御検討よろしくお願い申し上げます。

 次に、執行力を付与できる和解合意の紛争解決事業者、この認証についてお伺いします。

 現行法では、弁護士会であれば、民間ADRの紛争解決事業者になれていました。しかし、改正案では、特定和解の紛争解決事業者になるためには、弁護士会であっても法務大臣からの認証が必要となります。

 現状の民間ADRの年間申立て件数、二〇二〇年度の統計では、約千六百件のうち、弁護士会が約千件、そして弁護士以外の認証事業者は六百件。事実上、現状、ADRの主な担い手は弁護士会です。なぜ、これまでどおりの運用でなく、新たに弁護士会に対してもこの認証を求めるような、そういう制度になっているんでしょうか。

金子政府参考人 ADR法の一部改正法案では、弁護士会ADRの手続において成立した和解合意であっても、その弁護士会ADRが法務大臣の認証を受けたものでない限り、調停において成立した和解合意に基づく強制執行を認めないということとしております。

 その理由ですが、和解合意に基づく強制執行を認めるためには、その前提として、その調停手続の公正かつ適正な実施が一律に制度上担保され、かつ、それが広く国民に周知されている必要があります。弁護士会ADRにも認証を受けているところと受けていないところが現状ございますが、このような現状において、弁護士会は法律の解釈適用における専門的知識は有するものの、全ての弁護士会ADRの手続で先ほど述べたような制度的担保がされているというわけではなく、改正法の施行までの間にこれを満たす共通の準則を求めることが容易でないなどの指摘もあったところでございます。

 そこで、今般のADR法の一部改正法案におきましては、弁護士会ADRであれば一律に対応するというような姿勢は取らなかったというものでございます。

山田(勝)委員 ありがとうございます。

 完全認証制度にすることで、事業者による独自性や自主性でなく全国一律の統一的な制度運用を図っていきたいという趣旨、制度的な担保をしっかりと取っていきたいという趣旨であったと思います。

 しかし、事実上の主な担い手は、現状、やはり弁護士会であって、三十六の弁護士会に三十九のADRセンターがあり、このうち認証しているのは七弁護士会にとどまります。今回の改正、私も含めて、大変前向きな改正だと理解していますし、大いに活用してもらいたいと思っているからこそ、弁護士会の認証が進んでいかなければ、せっかくの法改正も、ADRの利用が進まないことに至ってしまう、そういう懸念があると思いますので、しっかりその辺りは、是非とも弁護士会に協力してもらうよう法務省からも働きかけが必要ではないかなというふうに感じております。

 弁護士以外も、今回、紛争解決事業者として認証を受ける、そして法的執行が可能になる。そうであれば、当然、その事業者の質というのが問われてきます。この場合の人材の質、どのように確保されるのでしょうか。教えてください。

竹内政府参考人 お答えいたします。

 ADR法におきましては、委員御指摘のとおり、手続実施者が弁護士以外の者であることもあるわけでございますが、取り扱う紛争の範囲に応じまして和解の仲介を行うのにふさわしい者を手続実施者として選任できることや、その選任方法を定めていることなどが認証基準とされております。

 この認証基準に適合しているかどうかの審査は、申請者の取り扱う紛争の範囲を踏まえた上で、個々の紛争ごとに、その分野、種類、規模に鑑みまして、その解決を図るために必要な能力ですとか経験を有する者を手続実施者として選任する仕組みが備わっているかなどを判断することで適切に行われているものと承知をしております。

 こうした審査や監督を適切に行うことによりまして、認証ADRの手続実施者の能力は確保されているものと考えております。

山田(勝)委員 ありがとうございます。

 法律にも確かにこの認証の基準というのが明記されています。しかし、例えばその中でも、和解の仲介を行うのにふさわしい者を手続実施者として選任することができる、こういう曖昧で抽象的な表現にとどまっています。

 弁護士以外の適格者として、先ほど御答弁にもあったんですけれども、どのような資格やキャリア、具体的にどういった方々を想定しているのか、教えてください。

竹内政府参考人 お答えいたします。

 手続実施者に必要とされる能力は、取り扱う紛争分野によって異なり得るところであると考えられますけれども、一般論といたしましては、法律に関する専門的能力だけではなくて、和解の仲介を行う紛争分野や紛争解決の技術に関する専門的能力も含まれるものと考えられます。認証基準に適合するためには、こうした能力や経験を有する者を手続実施者として選任する仕組みが備わっていることが必要となってまいります。

 このような観点から、各認証ADR事業者は、手続規程等におきまして手続実施者の資格要件を定めておりまして、弁護士や司法書士などのいわゆる士業者であることを資格要件としている例もあれば、家庭裁判所調査官や裁判所の調停委員として一定年数以上の勤務経験を有していた者を資格要件としている例もあるものと承知をしております。

山田(勝)委員 ありがとうございます。

 より強い権限が与えられるようになるため、特に紛争解決事業者の質の確保、今回のポイントの一つだと思います。紛争当事者が安心して、この改正されるADRをより活用していただくために、人材の質の向上、これを努めていただきたいと思っております。

 次に、養育費などの和解合意に対する執行力付与に関してお聞きします。

 日本は、いわゆる先進諸国の中で唯一、裁判所、行政機関などの公的機関が関与しない協議離婚制度を設けており、離婚全体の中で協議離婚は八八%を占めています。そして、協議離婚では、養育費の取決めがないケース、取り決めても支払われないケースが相当割合発生しています。

 その点で、今回の法改正で民間ADRでの養育費等の和解合意に対して執行力付与が可能となったことは、一人親支援の観点からも大変よいことではないかと私自身考えております。

 しかし、養育費でトラブルが起こるようなケース、一人親世帯やそのお相手の方は、いずれも経済的に余裕がないことが想像されます。民間ADRを利用したくても、その利用手数料の負担が重荷となってしまいます。

 民間ADRの当事者手数料について、特にこのような一人親支援など、政府の方から何か支援があれば教えてください。

野村政府参考人 お答え申し上げます。

 一人親家庭への支援ということを考えます際に、養育費の履行確保、これは非常に重要な課題であるというところで考えております。

 養育費の履行確保につきまして、政府としても、取り組むべき課題の中で一つ大きなものであるとの認識に立ちまして、今、法制審の家族法制部会におきましても議論が進められているところでもございますが、こども家庭庁におきましても、そういった議論が進んでいる中ではありますけれども、現状でもできるものから取り組んでいくということは重要であると考えておりまして、養育費の関係では、離婚前後親支援モデル事業というのを取り組んでおります。その中で、養育費の履行確保に資する支援、取組を行う自治体への財政的な支援を行っております。そうした中で、一部の自治体においては民間ADRを活用した取組も実施をしていただいているものと承知をしております。

 こうしたモデル事業の実施、さらには、そのモデル事業を使ってどのような取組が現に自治体で行われているのか、こういったことを横展開することを通じまして養育費の確保といったものを広げてまいりたいと考えております。

山田(勝)委員 大変すばらしい取組だと思います。国が自治体と連携して、こういった一人親家庭の支援、より民間ADRが活用されて、養育費が適正に払われるようになっていく、そのために必要な支援だと思います。

 現状、この制度、大変いい制度だと思うんですけれども、どれくらいの活用が対象の自治体に対して今進んでいるんでしょうか。教えてください。お願いします。

野村政府参考人 事業実施の報告とかが出ております。確定ベースは、令和三年度でございますけれども、九十一でございます。終わったばかりの年度でございますけれども、令和四年度で、補助協議などがありまして、補助金の採択をした自治体数は、ちょっと済みません、正確な端数まで記憶がありませんが、百七十前後であったかと承知をしております。

山田(勝)委員 ありがとうございます。

 社会福祉事務を取り扱う対象の自治体が九百ぐらいで、現状、二割程度まで来ているということなんですけれども、まだまだ、本来こういったこと、そういった情報が届けば多くの人が、活用が進むと思いますし、是非ともこの制度を周知していただきたいというふうに思います。

 実効力が課題としてあった、そして、現状、これまでのADRでは、話合いのテーブルに着いても五〇%程度までしか合意に至らなかったというようなことも担当者の方から御説明をいただきました。

 今改正によって、特定和解、こういった定義が新たにできました。特定和解が成立したとしても、それに従わない場合、どのような措置が、今改正案によって取ることが可能になるのでしょうか。教えてください。

金子政府参考人 お答えいたします。

 ADR法の一部改正法案におきましては、当事者が特定和解について、裁判所の審査を経て、民事執行を許す旨の決定、これは執行決定といいます、これを得ることによりまして強制執行の申立てをすることができることとしております。

 強制執行には様々な種類が存在しますが、例えば、特定和解に基づく債務としての金銭の支払いが履行されない場合には、債務者の給与債権の差押えあるいは預貯金債権の差押えなどを行うことが可能となります。

山田(勝)委員 ありがとうございます。

 こういった形で実効性も出ていくということで、是非ともこの民間ADRの活用というのを推進していきたいと私自身も思っているところです。

 法務省自ら公表しているデータによると、しかし、現状は、ADR、相当な知名度不足という状況で、ADRの名称も裁判外で第三者の関与の下で合意による解決を図る手続があることも両方聞いたことがないという方が約七割に達しているという現状です。こういったADRということについて国民的な周知、広報、こういったものを今改正によってより積極的に行っていく必要があるのではないかと考えております。

 齋藤大臣、これは予算も含めてのことになろうかと思います、そういった、国民の皆さんにADRをどんどん積極的に活用いただくための戦略やそのための予算などについて、お考えがあればお願いいたします。

齋藤(健)国務大臣 御指摘のとおり、広く国民にADRを利用していただくためには、認証ADRの存在やそのメリット、こういったものを知っていただくことが重要だと認識しています。

 法務省では、法務省のホームページへの掲載や相談機関等へのパンフレットの配布を通じまして認証ADRに関する情報発信を行っているほか、昨年度からは、ADR週間、こういったものを設定した上で、関係団体等と連携した一体的かつ集中的な広報の実施等の取組を始めているところであります。

 また、法務省に設置をいたしました有識者から構成される会議におきまして、効果的な周知、広報の在り方について検討し、これを踏まえて具体的な施策に反映をしているところでございます。

 繰り返しになりますが、ADRが国民にとって紛争解決の選択肢として広く利用していただけるよう、引き続き必要な取組を積極的に進めてまいりたいと考えています。

山田(勝)委員 是非ともお願いいたします。

 私も初めて法務省の方からレクを受けて知ったんですが、ADRの日というのも存在しているということで、多くの皆さんにADRという言葉が身近になじんでいくといいなというふうにも思います。

 続いては、国際調停についてお伺いします。

 シンガポール条約は、国際商取引紛争の解決手段として国際調停が国際仲裁と並んで各国で活用される中、その紛争解決の実効性を高めるため、国際商取引に関する和解合意に加盟国間で互いに執行力を認め合うという国際条約です。元々、対象を国際商取引とすることを前提として交渉されてきたため、家事事件については、養育費に関する紛争を含めて全般的に適用除外とされ、執行力はないものと考えております。一方、ADR、今回の改正法では、養育費に関する一定の和解合意には執行力があるとされています。

 本改正案では、国際的な家事事件であっても我が国における執行力が認められるということになりますが、シンガポール条約のないような海外、外国で日本のADR法が適用されずに執行力が認められない、一見すると矛盾しているような話なんですが、こういった問題をどのように考えているのか、御所見を伺います。

金子政府参考人 お答えいたします。

 御指摘のとおり、調停に関するシンガポール条約は、人事に関する紛争その他家庭に関する紛争に係る国際和解合意については適用されないので、養育費に関する合意については強制執行ができないということになります。

 他方、ADR法の一部改正法案においては、原則として人事、家事に関する紛争について強制執行を可能とする対象から除外しつつも、それらの紛争のうち、養育費等に係る金銭債権に関する特定和解については、今般創設される執行決定の手続を利用し、強制執行を可能としております。

 また、この新しい強制執行の制度につきましては、我が国に住所を有する日本人同士の紛争に限られず、当事者の一方が外国に住所を有する場合や当事者の一方が外国人である場合など、国際的な事件であっても、我が国の認証紛争解決手続において成立した特定和解に該当し得る限り適用され得るということになります。

 こうした対応としたのは、養育費等に係る金銭債権については、子の福祉等の観点等からその支払いの履行の確保が喫緊の課題となっていること、強制執行を容易にする観点からこれまでも様々な民事執行の特例が設けられていること等を踏まえまして、調停に関するシンガポール条約における考え方とは別に、我が国の国内法における対応として、特定和解に基づく解決の実効性を高める方策が必要であるとの考えに基づくものでございます。

 一方、外国において我が国の認証紛争解決手続において成立した特定和解に基づく強制執行を許容するかどうかということにつきましては、当該外国における国内法等における対応に委ねられているということになるので、一概にお答えすることが困難ということでございます。

山田(勝)委員 ありがとうございます。

 今の御答弁で確認をさせていただきたいんですが、例えば、AさんとBさんがいて、Aさんが海外からBさんに養育費を払ってもらう、そういう合意ができていた場合、日本にいるBさんに対して、そういった合意ができているにもかかわらず海外にいるAさんに対しBさんから養育費が払われない、約束が履行されていないという場合に、Aさんは強制執行の申立てが日本の裁判所にできるのでしょうか。

金子政府参考人 ちょっと、私、質問を全部理解できているかどうか分からないんですが、AさんとBさんの間で、外国においてされた……(山田(勝)委員「国内においてされた」と呼ぶ)日本の国内においてされたですね、日本の国内での認証ADR機関を使ってされた合意であれば、強制執行することが可能になります。

山田(勝)委員 ありがとうございます。

 このように、養育費の問題が今回の改正で幅広く解決に至っていくことを願っております。

 こういうADR、国際的な問題もそうですが、やはり大事になるのは人材、法曹人材の育成というのはとても重要な課題であるということで、最後にこのテーマでお話をさせていただきたいと思っております。

 二〇二三年三月二十四日に、第二東京弁護士会会長の声明文が発表されています。いわゆる、司法修習期間中に給与又は修習給付金を受け取ることができなかった谷間世代に対する一律給付の実現を求めるという要望内容でございます。

 まずは、政府参考人にお伺いします。

 こういった不公平な状況がずっと改善されずに放置をされています。谷間世代の方々は、本来法曹人材として国から公的に受ける支援が受けられない状態で、今なお不公平な扱いを受けて、経済的な負担にも苦しまれている状況です。

 なぜこういった谷間世代に対して、こういう要望が上がっているにもかかわらず、いまだ谷間世代の給付、実現しないんでしょうか。

竹内政府参考人 お答えいたします。

 委員御指摘の貸与制の対象となりました新六十五期から第七十期までの司法修習生につきましては、旧六十五期までの給付制の下の司法修習生や、修習給付金制度の対象となる第七十一期以降の修習生と比較いたしますと、経済的な支援策としてその内容に違いがあるということは認識をしておりまして、この新第六十五期から七十期までの修習生について、いわゆる谷間の世代というふうに言われているものと承知をしております。

 もっとも、貸与制を含む各支援制度でございますが、いずれも、その時々の司法修習生の規模ですとか我が国の財政状況等の事情を考慮しつつ、司法修習生が修習期間中の生活の基盤を確保して修習に専念できるようにし、修習の実効性を確保するための方策の一つとして採用されたものでございまして、いずれも合理的な内容と理解をしております。

 したがいまして、司法修習生となった時期によりまして、結果としてその時々の法律に基づいて実施された経済的支援の内容が異なるからといいまして、それが不合理又は不公平な差異となるものではないと考えております。

山田(勝)委員 いや、今の答弁で誰も納得しないと思うんですよね。国の財政状況なんて、こうやって法曹人材で、こういった法曹界で、今回のADRもそうですが、様々な紛争を解決しようと様々な志を持って、これから弁護士になり、裁判官になり、そういう人たちに対して、国の財政事情とか全く関係ないことで、この谷間世代、本当に解決しないといけない。

 私もそうなんですけれども、いわゆるロスジェネ世代なんですね。僕は、この谷間世代で、大臣にも聞いてもらいたいんですけれども、すごく違和感を思うのは、ロスジェネ世代に関しては、就職氷河期に対しては、やはり声が大きいので政府は動くんですよね。そういうところにいろいろな支援がなされるようになりました。しかし、この司法修習生に対する、谷間世代に対しては、やはり国民的世論がなかなか上がっていないことが理由なのか、こういった不公平感がいまだ放置され続けている状況です。私は、これは国会において放置してはいけない問題だと思っております。

 そんな中、実は国会でも動きがあって、この声明の中に書いてあるんですが、こういった国会議員の多くのメッセージが寄せられている、この谷間世代の解決をすべきだということで。その数が今もはや三百七十通を超えていて、過半数を超えている。立法府の多くの国会議員さんがこの問題を応援している。これは恐らく、今お座りの与党の、自民党の法務委員会の所属の先生方もこの応援メッセージの中には含まれている可能性が高いと思っております。

 そこで、お聞きしたいんですけれども、法務省の従来の見解は、まあそういうことでしょう。

伊藤委員長 先生、申合せの時間が過ぎておりますので、手短にお願いします。

山田(勝)委員 済みません、分かりました。

 じゃ、最後に、大臣、一人の政治家として、この問題を早急に解消すべきという決意をいただけないでしょうか。

齋藤(健)国務大臣 一政治家としてこの場で答弁するのはちょっとできないんですけれども、法務大臣として出席をさせていただいているので、法務大臣としての考えは、組織としてここで答弁させていただいているので、先ほど来答弁させていただいたとおりでございます。

山田(勝)委員 時間が参りました。

 ありがとうございました。

伊藤委員長 次に、漆間譲司君。

漆間委員 日本維新の会の漆間と申します。

 今日は、今回は、国際仲裁の活性化、特にこれに絞って質問をさせていただきます。国際仲裁活性化頑張れという方向で質問をさせていただきます。

 改めて、国際仲裁の活性化は我が国にどのような利益をもたらすのでしょうか。お伺いいたします。

柴田政府参考人 お答えいたします。

 社会経済のグローバル化に伴い、日本企業の海外進出を更に後押しするためには、海外における取引から生ずる法的紛争が我が国においてグローバルスタンダードな手続によって解決できる仕組みが整っていることが重要でございます。また、我が国に対する海外からの投資を促すためには、我が国における取引から生ずる法的な紛争がグローバルスタンダードな手続によって解決できる仕組みが整っていることが重要です。

 このように、我が国における国際仲裁を活性化し、これを司法インフラとして整備することは、我が国企業の海外進出を後押しするとともに、海外からの投資を我が国に呼び込むことに資するものであり、我が国の経済成長に貢献するものと考えています。

漆間委員 私の地元大阪では、国際金融都市を目指しているところであります。これは菅政権時に号令があったところなんですけれども、国際金融都市を目指す地方都市にとっても、こういう国際仲裁の活性化は非常に重要なものだと思います。

 先ほど、米山委員の方、資料もあったので、ちょっとかぶる質問になってしまうんですが、我が国及び海外諸国の仲裁件数と近年のトレンド、時系列のトレンド、これについてお伺いいたします。

柴田政府参考人 お答えいたします。

 我が国における国際仲裁の利用は、我が国の経済規模に照らすと諸外国に比して少ないというのが現状です。例えば、シンガポールの代表的な仲裁機関であるシンガポール国際仲裁センター、SIACの平成二十九年から令和三年までの毎年の新規受理件数を見ると、一部の例外を除いて、おおむね四百件から五百件の間で推移しているところです。他方、我が国の代表的な仲裁機関である一般社団法人日本商事仲裁協会、JCAAにおける同一の期間の新規申立て件数を見ると、十件から二十件前後で推移している状況でございます。

漆間委員 やはり、私も、この件数を聞きまして、海外諸国と比べると非常に少ないんだなということを感じております。

 今回の仲裁法の改正後において、我が国が目指している方向性、ビジョンはどのようなものなのか、お伺いいたします。

柴田政府参考人 お答えいたします。

 国際仲裁の活性化については、政府全体で取り組む重要課題として位置づけられており、平成二十九年九月に、内閣官房に、国際仲裁の活性化に向けた関係府省連絡会議が設置され、平成三十年四月、国際仲裁の活性化に向けて考えられる施策が取りまとめられております。

 そこでは、シンガポールを含むアジア諸国が国際紛争解決のハブ化を目指して利用件数増加の成果を上げていることを踏まえ、我が国においても、国際的な紛争解決のアジアにおける中核と位置づけられることも視野に入れ、国際仲裁の活性化のための総合的な基盤整備を早急に進める必要があるとされているものと承知しております。

 これまで法務省では、この取りまとめに基づき、一般社団法人日本国際紛争解決センター、JIDRCに調査等業務を委託するなどして、人材育成、広報、意識啓発、施設の整備等の各施策を実施してきましたが、仲裁法の改正後も、引き続きこの取組を進めていく必要があると考えております。

漆間委員 連絡会議で、国際仲裁の活性化に向けて考えられる施策が、平成三十年、六年前に取りまとめられたというところでありますが、一方で、シンガポール国際仲裁センター始め、シンガポールが国際仲裁機関及び仲裁地として現在の地位を確立した要因としては、当然、アジアのビジネスハブとして地の利があることだったり、イギリス法、英国法をルーツとする実体法や手続法が安定していること、言語が英語で利用しやすいことなどが挙げられますが、国際仲裁のハブとなることを目指して国を挙げてプロモーションを実施したことによることも大きい、これは要因として大きいと思われます。

 以上を踏まえて、我が国としては、従来よりどのようなプロモーション、広報活動を行ってきたのか、お伺いいたします。

柴田政府参考人 お答えいたします。

 平成三十年に取りまとめられた国際仲裁の活性化に向けて考えられる施策では、最新の国際水準に見合った法制度の整備を検討するのみならず、広報、意識啓発について官民が連携して進めるべきと指摘されております。

 法務省は、このような指摘を受けて、令和元年度より、一般社団法人日本国際紛争解決センター、JIDRCに委託をし、関係機関と連携しつつ、様々な機会を通じて、国内外の企業等に対する広報、意識啓発を進めています。

 具体的には、国内企業向けには、我が国で国際仲裁を行うことのメリット等について解説したパンフレット等を作成し配布したほか、経済団体や日本組織内弁護士協会、JILAと連携するなどしてセミナー等を実施したり、法律雑誌に国際仲裁の基礎知識を分かりやすく解説する内容の寄稿をしたりする取組を実施してきました。

 また、海外企業向けには、我が国の司法制度や裁判例の動向等について英語で解説する記事をウェブサイトに掲載したほか、海外の仲裁機関等との間で協力覚書、MOUを締結し、国際仲裁に関するセミナーの共催等の取組を行ったり説明会を実施したりする取組を実施してきております。

漆間委員 それにもかかわらず、我が国における国際仲裁の取扱件数が低調である原因はどのように分析しているんでしょうか。

柴田政府参考人 お答えいたします。

 これまで行ってきた広報、意識啓発活動の分析について、法務省が調査等業務を委託している一般社団法人日本国際紛争解決センター、JIDRCからは、中間報告において、周知啓発活動は、中長期的スパンで見るとき、我が国における国際仲裁の活性化につながるものと期待できる、他方で、新型コロナウイルス感染症の感染拡大の影響等により、海外に出向いてのプロモーションを行ったり国内企業を訪問したりするなど、対面の説明を行う活動が十分にできなかったといった報告を受けているところです。

 先ほど御指摘のありましたシンガポールとの比較の観点に関して申し上げますと、まず、シンガポールの仲裁機関の取扱件数が多い理由につきましては、外国であるため必ずしも詳細には承知していないものの、同国においては、いち早く仲裁人、仲裁実務家向けのセミナーやトレーニングを定期的に開催し、スキルアップや情報交換を図る、官民が連携して海外から仲裁案件を呼び込む活動を行うなどの取組を行い、成果を上げたものと考えられます。これに対して、我が国では、広報、意識啓発活動等の取組を始めて間がないことが、シンガポールと比べて件数が少ない理由の一つと考えております。

 いずれにせよ、国際仲裁の活性化に向けた広報、意識啓発等は、短期的に成果が表れにくいものであり、中長期的な取組を要するところ、法務省からJIDRCに委託している調査等業務は令和元年度から五か年の事業として実施されていることから、令和五年度末の本調査等業務の終了時までに得られる調査分析の結果等を踏まえ、今後の広報、意識啓発活動につき必要な検討をしてまいりたいと考えております。

漆間委員 中長期的にこれはかかるものだということなんですけれども、シンガポールや香港は、コロナ禍において、素早い電子化、オンライン対応により、コロナ特需を取り込み、短期的に国際仲裁地としての人気度を大きく伸ばし、ヨーロッパからアジアに仲裁地の勢力が移ったという報道もあったところであります。

 そこで、仲裁手続のオンライン化は時代の流れからしても進んでいくものと思われますが、現時点で電子化、オンライン対応はしているのか。日本における国際仲裁のオンライン化の今後の課題はどのように把握しているんでしょうか。お伺いいたします。

柴田政府参考人 お答えいたします。

 近時、国際仲裁におきましては、日本の代表的な仲裁機関であります日本商事仲裁協会、JCAAを含みまして、手続にオンラインを活用する例が増えているものと承知しております。

 この点、我が国は、国連国際商取引法委員会、UNCITRALに対して、仲裁や調停といった紛争解決手続の分野におけるデジタル化の動向や実態の調査等を目的とするプロジェクトの実施を提案して、これを実現させ、さらには、法務省の職員を国連事務局内に派遣して同プロジェクトの実施に従事させているところです。

 法務省としては、仲裁を含む紛争解決手続のオンライン化に対処するための国際的なルール作りにリーダーシップを発揮することにより、我が国の国内法制と親和性がある国際ルールの形成に向けて積極的に対処しているところであり、今後も引き続きこのような取組を継続してまいりたいと考えています。

漆間委員 これは先ほど大臣からも少し答弁があったところなんですけれども、今回の法改正において、どの程度の申立て件数、増加を見込んでいるのか、具体的にお願いいたします。

金子政府参考人 お答えいたします。

 国際仲裁の活性化のためには、最新の国際水準に対応した法制を備えていることが重要であるとの指摘があり、今般の改正はこの指摘に沿うものでございます。

 しかしながら、仲裁の利用が活発でない理由には様々な要因が考えられ、今般の改正のみで我が国における国際仲裁の件数がどの程度増加するかを予測することは困難でございます。とはいえ、仲裁の利用の促進に向けて課題を一つずつ克服していく必要があるというふうに考えております。

 今般の改正は、国内外の企業が我が国の仲裁手続をより利用しやすいものとするための環境整備の一環であり、我が国における国際仲裁の活性化に資するものと考えております。

漆間委員 こちらも先ほど米山委員の方から質問があったと思うんですけれども、さらには、我が国における国際仲裁の取扱件数増加をもたらすターゲット層はどこだと考えておりますか。お伺いいたします。

柴田政府参考人 お答えします。

 平成三十年に取りまとめられた国際仲裁の活性化に向けて考えられる施策では、日本企業等を当事者とする国際仲裁については、相手方になり得る企業等が多く存在する国、すなわち、日本企業が比較的多く進出している国や日本企業の国際取引における商流の経由する地が属する国の経済団体、法律事務所等をターゲットとすべきこと、それから、外国の当事者同士による仲裁、いわゆる第三国仲裁については、我が国との経済関係が比較的深い国あるいは今後様々な面での交流が進展すると考えられる国等を主なターゲットとすべきと指摘されているところです。

 我が国の国際仲裁の取扱件数を増やすための今後の方策については、現在調査委託中でありまして、令和五年度末の調査等業務終了時までに一定の結論を得る予定でございます。

漆間委員 そういった地域以外にも、例えば、大企業をターゲットにするのか、中小企業も含めてターゲットにするのか、あるいは訴額、金額ですね、どの程度を想定しているのか、個人事件はターゲット外なのか、より限定したマーケットに照準を合わせる必要があると思いますが、いかがでしょうか。

柴田政府参考人 お答えいたします。

 先ほども申し上げました国際仲裁の活性化に向けて考えられる施策の中では、既に国際仲裁を利用している大企業においても、日本を仲裁地とすることを始め、仲裁を更に利用するための方策が必ずしも十分ではない可能性があること、そして、中小企業においては、そもそも国際仲裁が認知されていない可能性があることを踏まえて、国内外の企業等への国際仲裁を利用すること及び日本を仲裁地とすることのメリットなどについての広報、意識啓発が重要であるとされており、大企業と中小企業の双方を広報、意識啓発のターゲットとすることとされています。

 現在実施中の調査等業務においては、国際仲裁の活性化に向けた効果的な施策の在り方について、まさに検討しているところであり、今後得られる調査分析の結果等を踏まえ、御指摘の観点も含め、今後の施策を検討してまいりたいと考えています。

漆間委員 大手メーカーや商社などもターゲットになり得ると思いますが、そういったところからの声はしっかりと把握しておりますでしょうか。これは法務省と、あと、もしよろしければ経産省の参考人にもお伺いしたいと思います。

戸高政府参考人 お答え申し上げます。

 経済産業省におきましては、法務省、日本商事仲裁協会、日本国際紛争解決センターとともに、業界団体等向けの説明会や個別ヒアリングを行っております。業種や企業規模に応じた個別の実態やニーズを把握した上で、御要望に沿ったきめ細やかな情報提供を行っているところです。

 一昨年、昨年度、二年間で十六件の説明会を実施をしておりますけれども、この説明会におきましては、仲裁と調停、裁判の違い、メリットを教えてほしい、また、トラブルになった具体的な事例を知りたいといったお話を伺っております。

 こうした取組を通じまして、仲裁制度の理解促進に一定の効果が得られているものと認識をしているところでございます。

 また、法務省におきましても、二〇一九年度から、委託事業の中で仲裁活性化に向けた施策を検討されていると承知をしておりまして、この中でも大企業を含む企業向けアンケートを実施され、御意見の把握に努められているものと承知をしております。

 これらで寄せられている御意見を踏まえまして、国際仲裁の活性化に向けて引き続き尽力をしてまいりたい、このように考えております。

漆間委員 日本の国際仲裁制度、プレゼンス向上のためには、本法改正のみならず、どのような取組が必要と考えておりますでしょうか。例えば日本の強みを生かした独自の仲裁制度における取組であったり、例えば知的財産関連や建築業など専門仲裁部門の創設などが考えられると思いますが、いかがでしょうか。

柴田政府参考人 お答えいたします。

 国際仲裁の活性化については、国際仲裁の活性化に向けた関係府省連絡会議が平成三十年に取りまとめた、先ほどの国際仲裁の活性化に向けて考えられる施策において、最新の国際水準に見合った法制度の整備のほか、人材育成、広報、意識啓発、施設の整備といった基盤整備について、官民が連携して進めるべきと指摘されており、現在、法務省ではかかる基盤整備に向けて取組を進めているところです。

 専門仲裁部門の創設についてお尋ねいただいたところですが、我が国には、例えば、知的財産仲裁に関しては日本知的財産仲裁センター、スポーツ仲裁等に関しては日本スポーツ仲裁機構といった専門仲裁機関が存在しており、日本の国際仲裁制度のプレゼンス向上のためにはこれらの専門仲裁機関の強化等も有益と思われるところです。

 法務省としては、専門仲裁機関の強化等については、内閣官房に設置されている国際仲裁の活性化に向けた関係府省連絡会議の構成員であるスポーツ庁、特許庁等を始めとする関係各府省とも適切に協力してまいりたいと考えています。

漆間委員 国際仲裁の活性化に向けた連絡会議の言及がございましたが、内閣府、外務省、スポーツ庁、経産省、特許庁、国交省の局長級が構成員とのことですけれども、これまで、各庁から国際仲裁の活性化に向けた提案はどのようなものがあったのか。また、連絡会議での具体的な提案については都度発信すべきではないかと思いますが、いかがでしょうか。あと、国際仲裁の活性化に向けて考えられる施策、これ、五年前か六年前にまとめられたとのことですけれども、この更新作業みたいなものは行われているんでしょうか。併せてお伺いいたします。

柴田政府参考人 お答えいたします。

 国際仲裁の活性化に向けた関係府省連絡会議においては、平成三十年四月に国際仲裁の活性化に向けて考えられる施策が取りまとめられて以降は、同会議の下に置かれた幹事会において、この国際仲裁の活性化に向けて考えられる施策に基づいた各省の具体的な取組について報告や意見交換が行われてきております。その中では、例えば、知的財産推進計画に国際仲裁活性化に係る記載を盛り込んだことなど、各省庁の所掌に関連した取組が報告されています。

 以上のような関係府省連絡会議幹事会の議事次第及び配付資料は、開催の都度、内閣官房のウェブサイトに掲載、公開され、発信がなされているところでございます。

 このような政府全体の取組にもかかわらず、我が国の国際仲裁の件数が大きく増加するに至っていないことは御指摘のとおりですが、国際仲裁の活性化に向けた広報、意識啓発等は、短期的には効果が上がりにくく、中長期的な取組を要するものであることから、引き続き取組を継続してまいりたいと考えています。

漆間委員 この施策の更新については。

柴田政府参考人 失礼いたしました。

 御質問の更新については、現時点ではされておりませんが、今後検討していきたいと考えています。

漆間委員 国際仲裁活性化に向けて、国際仲裁人の人材確保の取組についてお伺いしたいと思います。

 紛争について判断する仲裁人は、一般には当該紛争の分野の専門家を選任していると思いますが、法的な判断と各分野の専門性、双方を確保することは簡単ではありません。十分な専門性を持たないために、その判断に不満があるケースも多いとお聞きしております。

 そのような人材はどのように確保しているのか。また、我が国における仲裁人及び仲裁実務家の育成、トレーニングについては、現在、具体的にどのように行われているのでしょうか。人材育成が急務となっている現状において、具体的な候補者に対する高度なトレーニングや認定講座など、即戦力を高める仕組みが必要ではないかと思いますが、今後、更なる育成に向けて新たな取組など考えておりますでしょうか。お伺いいたします。

柴田政府参考人 お答えいたします。

 委員御指摘のように、先ほど来引用しております国際仲裁の活性化に向けて考えられる施策では、人材育成等の環境整備についても官民が連携して進めるべきと指摘されているところです。

 法務省は、このような指摘を受けまして、令和元年度より実施している調査等委託業務においては、国際的に評価の高い国際仲裁人、国際仲裁代理人を務めることができる人材の育成等に関する取組を進めています。

 具体的には、民間事業者に委託するなどして、大学生、法科大学院生等を対象とした出張講義と、司法修習生の選択型実務修習としての国際仲裁プログラムの導入、弁護士に対するセミナー、それから資格認定講座等を提供するとともに、ビデオ教材等の開発、配信を行ってきています。

 十分な能力を有する人材を育成することは容易ではありませんが、これまでの取組の中には高度な内容を取り扱うものもございます。例えば、世界最大のADR資格認定・研修機関である英国仲裁人協会、CIArbと連携し、短期集中の資格認定講座を実施しているところ、その中には英語でのロールプレーやディスカッションを含むハイレベルな内容を取り扱うものもあると承知しています。

 今後につきましては、法務省としては、令和五年度末の調査等業務終了時までに得られる調査分析の結果等を踏まえ、人材育成等の環境整備に関しても更に必要な検討をしてまいりたいと考えています。

漆間委員 ちょっと通告を、一つ質問を飛ばしまして、次の質問に移ります。

 プレゼンスに関する話なんですが、国際取引の契約実務の観点からは、日本法準拠となった場合は日本での仲裁手続の選択も視野に入ってくることが多いと思われますが、日本の企業が当事者となっても相手方との競争力などの観点で日本法を準拠法とできないことも多々あるように思います。日本の企業と契約したい、日本法準拠でも許容する、日本での仲裁手続も許容するといったような流れが必要であり、つまるところ、世界的に見たときの日本企業の競争力が向上しないと国際仲裁手続の案件増加につながらない部分もあるのではないかと思いますが、こちらは経産省と法務省、両方にコメントを求めたいと思います。

戸高政府参考人 お答え申し上げます。

 日本での国際仲裁手続案件がなかなか伸びない理由といたしまして、御指摘の競争力の差異も含めて複数の要因があるものと理解をしております。

 具体的には、例えば、日本を仲裁地として選択していただくための国際的な認知度の不足、また、国際仲裁に精通した人材、仲裁制度を熟知した方、そしてまた国際的認知度の高い仲裁人、こうした人材の不足などが主要な原因であると考えております。

 経済産業省といたしましては、先ほど御説明いたしました国内向けの説明会、また海外向けの説明会も引き続き開催をいたしまして、認知度を高めていくとともに、関係省庁とともに、連携し、我が国の国際仲裁の取扱件数を増やすためにしっかりと取り組んでまいりたいと考えております。

柴田政府参考人 お答えいたします。

 我が国の国際仲裁の取扱件数を増やすための方策については、まさに委員御指摘のようなものも含めて、今後、様々な観点からの検討が必要であると認識しています。

 先ほどから申し上げております令和五年度末の調査等業務終了時までに調査分析の結論を得る予定であり、その結果等を踏まえ、必要な検討をしてまいりたいと考えています。

漆間委員 紛争について判断する仲裁人は、一般的には当該紛争の分野の専門家を選任するため、専門知識を有する点はメリットと思われる一方、裁判官ではなく、過去の判断も非公開となっていることがあるため、予測可能性が低いという点がデメリットであるように思われます。

 国内外における仲裁手続の潜在的な利用者が、仲裁人の判断に対する予測可能性を高めてより利用しやすくするために、何らかの政策は考えておりますでしょうか。日本商事仲裁協会、JCAAによる仲裁人リストの公表などもされているところではありますが、国として、例えば、我が国の仲裁関連事件や関連する重要な裁判例の英訳発信などの取組を速やかに進めるべきではないかと思いますが、いかがでしょうか。

柴田政府参考人 お答えいたします。

 仲裁は、一般に、手続の内容が公開されない点においてメリットがあるとされています。そのため、判断の集積や公開は容易ではなく、仲裁人の判断に対する予測可能性を高めるために、法務省においては、過去の仲裁判断を集積して公開するということは、現時点においては考えてはいません。

 しかし、他方で、国際仲裁の活性化に向けた基盤整備の一環として、これまでも、海外企業向けに、仲裁に関連する我が国の裁判例等を英語で解説する記事を調査委託先のウェブサイトに掲載したり、あるいは各種セミナーの中で抽象化した事例を活用しながら国際仲裁のメリットを説明するといった取組を実施してきております。

 引き続き、我が国における国際仲裁の活性化に向け、必要な取組をしてまいりたいと考えています。

漆間委員 予防・回復型の暫定保全措置命令について、執行等認可決定の申立てから強制執行までの進行、タイムラインはどのように想定されておりますでしょうか。仲裁手続の当事者が裁判所に対して保全処分の申立てをする場合に想定される進行とタイムラインと違いはあるのか、お伺いいたします。

金子政府参考人 お答えいたします。

 予防・回復型の暫定保全措置命令につきましては、仲裁廷がその要件を審査して発令した後、申立人が裁判所に対して執行等認可決定の申立てをし、当該決定を受けた上で、確定した執行等認可決定のある暫定保全措置命令をもって強制執行の申立てをすることによって執行されることになります。なお、執行等認可決定の申立てについては、裁判所は執行拒否事由の有無のみを審理するものとなっております。

 これに対して、裁判所に対する保全処分の申立てにつきましては、裁判所がその要件を審理し、保全処分を発令した上で保全処分が執行されるという違いがございます。

 なお、執行等認可決定の審理に要する時間等は個別の事案に応じて様々であり、判断がされるまでの標準的な日数等をお答えすることが困難でございますが、今御説明したとおり、裁判所は執行拒否事由の有無のみを審理するということとされておりますので、迅速な審理、判断がされることが期待されるところでございます。

漆間委員 暫定保全措置命令に係る損害賠償命令について、改正モデル法と比べますと、申立人の責めに帰すべき事由との要件が加えられておりますが、これにより被申立人の保護に欠けることはないのか、具体的にどのような場合に申立人の責めに帰すべき事由があるものと判断されるのか、お伺いいたします。

金子政府参考人 暫定保全措置命令に係る損害賠償命令の規定は、仲裁廷において不当に発令された保全措置命令による損害の賠償を命ずる権限があることを明確にするものでございます。

 暫定保全措置命令は迅速に発令されることが求められることから、申立人は発令要件の存在を疎明すれば足りることとする一方で、暫定保全措置命令を受けた者、被申立人ですが、が被る損害の填補を目的として、発令時において申立人に対して、担保を提供することができることともしております。

 したがって、暫定保全措置命令の発令要件が存在しなかったことなどが後に判明することもあり得ることから、改正法においては、暫定保全措置命令の取消し等を可能とするとともに、当該取消し等がされた場合における損害賠償命令の規定を設けることとしているものでございます。

 ただし、暫定保全措置命令が取り消された場合にすべからく損害賠償を命ずることとしますと、暫定保全命令の申立てを萎縮させるということにもつながりかねません。そこで、改正仲裁法第二十四条第八項では、損害賠償命令の要件として申立人の責めに帰すべき事由があることを掲げたものであり、この要件によって被申立人の保護に欠けることにはならないと考えております。

 申立人に責めに帰すべき事由があるというのは、当初から暫定保全措置命令の発令要件を欠いており、申立人はそのことを知るべきであったにもかかわらず申立てをした場合や、そのことを知っていながらあえて申立てをして暫定保全措置命令の発令を受けた場合を意味することになりますが、その例としては、申立人が自己の権利は存在しないことを認識しながら、自己に不利益な証拠をあえて隠すなどして被申立人の財産の保全を命ずる暫定保全措置命令の申立てをしたような場合が想定されます。

漆間委員 日本における国際仲裁の活性化のためには、少なくとも、英語文書について、仲裁判断書の翻訳文の提出の省略を広げていくことが必要かと考えられますが、裁判所において、このような国際事件に対応できる人材や仕組みの構築はどのように進められる予定なのか、お伺いいたします。

門田最高裁判所長官代理者 お答えいたします。

 裁判官の英語能力そのものにつきましては、個々の裁判官によって差があるというところではございますけれども、在外研究の経験を積んだ者等もおりますので、英語の文書を閲読して理解することができる裁判官は一定程度存在していると認識しております。

 もっとも、実際の事件において重要な争点となる部分については、外国語で書かれたものの解釈等も含めまして、主張書面等において当事者から説明されることになると思われまして、そのことにより充実した審理が可能になると思っております。

 また、国際的な事件に対応する仕組みの構築という点につきましては、これは実際の事件の件数とか内容によるところも大きゅうございますので、現時点で確たることは申し上げられないところなんですけれども、大規模庁におきましては、その事務分配によりまして、仲裁関係事件手続を集中的に取り扱う部を定めるといったことも考えられるところでございます。

漆間委員 こちら、通告にないこともちょっと一点お伺いしたいんですけれども、二〇二五年大阪・関西万博なんですけれども、これは国際仲裁地としてのプレゼンス向上に資するというふうに思うんですけれども、何かこちらに関してコメントはありますでしょうか。

金子政府参考人 万博が大阪で開催されることで世界中の注目を浴びると思いますが、それと国際仲裁の活性化、私の中ではいま一つ結びついてこないんですが、もし委員の方で、こういう論理関係で資することがあるということを御教示いただければ幸いです。

漆間委員 今、大阪・関西万博、これは決定いたしておりますけれども、同じところで、IRであったり、あと国際金融都市、先ほども申し上げましたが、そういったところも大阪は今頑張っているところでありますので、そういったことも含めて、関西万博で、多くの国の方にお越しいただいて、ここで国際仲裁もできるんだよみたいなことをアピールしていただければ、そういうふうに、万博が国際仲裁のレガシーとして残っていくのではないのかなと思いますが、これは私の提案ということなんですけれども。

 最後に、質問が変わりますけれども、国際仲裁の活性化に向けて、齋藤大臣から意気込みをお伺いしたいと思います。

齋藤(健)国務大臣 法務省におきましては、まず法整備を一方の柱、それから人材育成、広報、意識啓発、施設の整備といった基盤整備をもう一方の柱、この二つの柱をいわば車の両輪として国際仲裁の活性化を進めてきたところ、今般の法改正によりまして、法整備の面では最新の国際水準に見合う法制が実現をすることとなります。

 法務省といたしましては、もう一方の柱である人材育成等の基盤整備を着実に進め、将来、我が国がアジアにおける有力な国際紛争解決拠点の一つとなることを目指して、我が国の経済発展に寄与してまいりたいと考えています。

漆間委員 是非、国際仲裁として、日本がプレゼンスをしっかり示せるように、よろしくお願いいたします。共に頑張っていきたいと思います。

 ありがとうございました。

伊藤委員長 次に、鈴木義弘君。

鈴木(義)委員 国民民主党の鈴木義弘です。

 今日の議論を聞いておりますと、どんどん解決できる案件を日本の国内に呼び込もうというふうに言うんですけれども、私はちょっと、そもそも、紛争だとか調停がなくて、通常の商取引ができればいい話だと思うんですよね。だから、お金を出して物を買います、こっちから売ります、お金がちゃんと入ってくれば、紛争もないし、調停の手続をする必要もないし、それでいいんじゃないかと思うんですけれども、わざわざ一生懸命努力して、コストをかけて日本に来させるというのが、どこまで必要なのかなというのが個人の感想なんですね。

 だから、犯罪を犯す人がいなければお巡りさんはいなくていいという考えですね。また、犯罪を予防するためにお巡りさんが必要というのはあるかもしれませんけれども。

 それについて、大臣にまずお尋ねしたいんですけれども、国際仲裁の取扱いが低調なこと、要するに、逆に言えば、日本の企業とかほかの企業が商取引をしたときに、うまくいっているんだったら低調でいいはずなんです。わざわざこれを上げる必要はない。物を売ってお金が、取引、違うサービスを提供して、ちゃんとその対価がもらえれば問題ないんですけれども。

 その国の商習慣、日本は日本の商習慣。先週の質疑、一般質疑だったんですけれども、商慣行というのが、日本の中で、当たり前に空気のように私たちが積み上げてきた価値観で取引をしているわけ。でも、ほかの国はそういう、日本と同じようなルールじゃないから、仲裁しましょうとか調停しましょうという話になってくるんだと思うんですけれども、その辺の認識がどうなされているのか、まずお尋ねしたいと思います。

齋藤(健)国務大臣 委員おっしゃるように、仲裁の件数が多いということはトラブルが多いということでありますので、多ければ多いほどいいということでは必ずしもないと思うんですけれども、ただ、実際、現実にトラブルが生じた場合におきまして、より簡便で短い時間で処理ができるという仕組みがあるということが、それはいいことじゃないかと思いますので、進めているということでございます。

鈴木(義)委員 私、経済産業委員会にも所属しておりまして、去年も、貿易保険法の改正があったんですね。

 リスクをなるべく取りたくないのはどこの企業でも個人でも一緒だと思うんです。そのために保険に入るんですけれども、例えば仲裁の、今回出してきている法律とは別に、そんなことをする前に保険で下りてきちゃえば、仲裁をやる必要がない。だって、じゃ、百億の損害がありました、保険で百億もらえるんですといったら、仲裁、調停を申し入れて、それで時間をかけて百億回収しなくたって、こっちからもらえちゃうんだったらやらないでしょう。

 その辺はどう認識されているんですか、今回の法律の改正で。いきなりの質問でしたか。

戸高政府参考人 お答え申し上げます。

 今、保険のお話がございましたけれども、貿易保険に関しましては、いわゆる戦争危険とか、そういった予期せぬ貿易上のトラブルというものを、そのリスクをカバーするためにやっている制度でございまして、そういった制度ということでございますけれども、国際仲裁ということになりますと、議員御指摘のとおり、やはり商習慣も違いますし、他方で、やはり日本の企業、海外で稼いでいくというのは大変大事な課題でございます。

 その中で様々なトラブルといったものが出てまいりますので、そういった中で、今大臣がお答えされたように、簡易で、そしてまた低廉な価格でスピーディーに解決する制度というのは大変大事なことではないかというふうに感じているところでございます。

鈴木(義)委員 前に、大手ゼネコンさんが中東で建築か土木を請け負ったときに、日本の大手ゼネコンさんは国内で小さい物件で中小に圧力をかけるような仕事をしないで、中東でどんどん稼いだ方がいいじゃないですかという話をしたら、いや、鈴木さん、お金がもらえないんだよと言われたことがあったんですね、そのゼネコンの担当の方に。それを解決するために、今回の法改正になるんですかね。イエスかノーかで。

戸高政府参考人 お答えいたします。

 様々、海外とのビジネスについてはパターンがあろうかと存じます。なかなか、国際的な商取引、もうけるというのは簡単ではないという中で、それぞれ企業が御尽力されているということではないかと思います。

 まさに、やはり契約の中で、実際にどういうふうなことが合意されていて、それが守られているのかということを第三者の立場をかりてしっかりとはっきりさせていくというのは、国際的なビジネスとして、打ちかっていく中で大変大事な課題だというふうに認識をしておりまして、そういった中で、この国際仲裁の活用、また、それが日本でしっかりと仲裁ができる環境が整えられているということが大変大事だという中で、こういった制度の拡充というのが進められているというふうに認識をしております。

鈴木(義)委員 じゃ、今まで、我が国における国際仲裁の活性化に向けて、法務省もいろいろ取り組んできたんだと思うんですけれども、簡潔で結構ですから、一つでも二つでも、成果をお話をいただきたいんです。

 それともう一つ、専門分野の高い仲裁人の人材の確保に向けて今後どう取り組んでいくのか、お答えいただきたいと思います。短めで。

柴田政府参考人 お答えいたします。

 まず、国際仲裁の活性化に向けた取組の成果ですが、法務省が一般社団法人日本国際紛争解決センター、JIDRCに委託するなどして実施している調査等業務において、人材育成、広報、意識啓発等の各施策は、新型コロナウイルス感染症の感染拡大の影響等もありまして、様々な困難に直面したものの、効果も上げ始めているものと認識しております。

 例えばですが、JIDRCからは、令和五年三月までに仲裁実務家を合計十以上の大学等に派遣し、延べ二十五以上の出張講義を行ったり、先ほども申し上げましたような英国仲裁人協会、CIArbと連携した資格認定講座や司法修習生に対する選択実務修習の提供を開始し、これまで、資格認定講座では延べ約七十名が合格し、選択実務修習では延べ約三十名が参加しております。また、これまで約百回のセミナー、シンポジウムを実施し、オンラインも含めて延べ八千名以上が参加しております。

 こういったことが報告されており、一定の成果を上げているものと承知しております。

鈴木(義)委員 先ほども質問にもあったんですけれども、中小零細企業、仮に五百万なら五百万の品物をC国ならC国に送りました、お金がもらえない、じゃ、仲裁廷に申込みしましょうというのが今回の法律になっているんでしょうけれども、弁護士法が、改正、随分前になって、損害賠償に対して、一千万だったら幾らもらえるとかというその金額がなくなったんですよね。不動産の取引だったら三%、今でもそれを上限にしてくださいというような三%ルールみたいなのは残っているんですけれども。

 そうすると、中小企業に啓蒙啓発をしていくに当たって、どのぐらい費用がかかるのかが、ホームページでいろいろ資料を見ても、相対してだから、案件によって、難易度に応じて、金額に応じて、金額がばらばらなんだと思うんですね。ただ、大体、今までの実績でいって、どのぐらい費用がかかっているのか。じゃ、申し込んだ方がいいのか、日本の裁判所に提起した方がいいのかという判断が、具体的なものが出てこないと判断できないんじゃないかと思うんです。まあ、相談してからでいいんじゃないかというのもあるんでしょうけれども。

 その辺は、今回の法改正である程度の目安みたいなのを出していく考えがあるのかどうかですね、特に中小企業に対して。啓蒙啓発をしていきますというのは、先ほどの前任の方の答弁はされているんですけれども、どのぐらい費用がかかるのか。一千万で五百万かかるのか、八百万かかるのかですね。五十万でできるのか、じゃ、仲裁に申し込んでみようという話になるし、その辺の具体例を一つか二つ挙げてもらったらありがたいんですけれども。

戸高政府参考人 お答え申し上げます。

 今議員御指摘の、どれくらいお金がかかるのかということで、これはJCAA、日本商事仲裁協会のデータでございますけれども、例えば請求金額二千万円の場合には、いろいろ仲裁をするための管理料金が五十万円、報償金というのが仲裁人の場合はございますけれども、それが大体二百万円とかぐらいかかるといったものがございます。それが、請求金額一億円になりますと管理料金が百三十万円になる、請求金額が十億円ですと管理料金は四百万円、また仲裁人の報償金が一千万、三千万といった形で、大体そういった相場というものは、協会の方のところで情報提供されていると承知をしております。

鈴木(義)委員 ネットで調べてみたら、日本に五つ、大手の法律事務所があるんですね。自分のところはこういうのが得意分野ですよといって、ばあっと書いてあるんです。そこに国の名前が書いてあったり、国際調停というのかな、紛争の解決に、お手伝いしますと書いてあるんです。うちはMアンドAもやるし、いろいろなことをやると、いっぱい自分のところの得意分野がずっと書いてあるんですけれども、そういったところに依頼をするのと、今回の法改正で国際仲裁廷を、形をつくっていこうとするんですけれども、どっちをみんな選択するんですかね。

金子政府参考人 いずれにしても、当事者が契約をするときに、特に国際商取引の分野では、必ず、契約の内容とともに、紛争が生じた場合の解決方法というものを明記するのが通常です。

 当事者がどういう紛争解決を選ぶかということにつきましては、委員の質問の中でも御指摘いただいたとおり、どういう紛争解決方法を取るかによって、どの程度の経費が必要になるのかということと密接に関係する部分もあると思います。

 その辺の経費は、例えば、仲裁機関であれば、ホームページ等に一応の目安等が出ているので、そういうことも参考にして考えるんだと思います。

 いずれ、一長一短を考えながら、メリット、デメリットを考えながら選択されていくということになるんだろうというふうに思います。

鈴木(義)委員 そういうことも、ある意味では公な法律の改正になっていくわけですから、比較対照するようなものをホームページでアップしてもらえると、利用する側は使いやすいですね。この分野だったらここにお願いする、この分野だったらここにする、この分野だったらここにするというのが、是非やってもらいたいなと思います。

 あと、細かい話をお尋ねしたいんですけれども、仲裁法の十四条によれば、仲裁合意が存在するにもかかわらず、仲裁の合意の対象となる民事上の紛争について訴えが提起された場合、一定の場合を除き、受訴裁判所は、被告の申立てにより、訴えを却下しなければならないというふうにされているんだそうです。

 つまり、仲裁の合意は、憲法が保障する裁判を受ける権利を制約するものであることからすれば、当事者間で慎重な意思の形成がなされる必要があるんじゃないか。

 今回の法改正は、改正モデル法、オプション1、第七条六項に対応し、仲裁の合意の書面性について緩和がされているというふうに言われているんですよね。

 このように、仲裁の合意には訴訟手続を排除する重大な効力を有していることに鑑み、具体的にどのようなものが書面性を満たしているものとするのか、お尋ねしたいと思います。

金子政府参考人 お答えいたします。

 仲裁合意の書面性についてのお尋ねですが、現行法では、仲裁合意は原則として書面によってしなければならないとされていますが、電磁的記録によることも可能としておりまして、その意味で、書面性の要件は一定程度緩和されていると言えます。

 今般の改正では、UNCITRALの最新のモデル法の内容に沿って、更にこの点を緩和し、書面によらないでされた契約であっても、仲裁条項が記載され、又は記録された文書又は電磁的記録が当該契約の一部を構成するものとして引用されているときは、書面性を満たすものとしています。

 これによりまして、例えば、海上で沈んだ船舶を引き揚げるサルベージ契約などにおいて、これは非常に緊急性が高いため書面を交わしているという余裕がないこともあるんですが、そのため口頭で締結されることが多いんですが、このような契約において仲裁条項を含むモデル契約等が口頭で引用されたという場合には、書面性の要件が満たされる場合があるというふうに考えられます。

鈴木(義)委員 緊急性を要するときに契約できるかというのはあるんですけれども、スタンダードな契約書があってしかるべきだと思うんですね。後からでもいいから、実施した後に、事後からでも契約を結ぶということを、義務づけるまでいかなくても、それを必要なんだという形を取っていけば、そんなにいろいろな事例が、世界でいろいろな事件が起きたときに、そんなにいっぱいはないような気がするんですね。今、例示を挙げてもらって、サルベージ船の話をしていただいたと思うんですけれども。

 そういったものを、グルーピングするんだったらして、それに基づくのは、こういう契約書を後からでもいいから事後契約してくれというふうな形を取った方が、より第三者に対して明示できるんじゃないかと思うんですけれども、その辺のお考えはどうですか。

金子政府参考人 仲裁合意がされますと、仲裁の手続を取ることなく裁判所に訴えを提起して紛争の解決を求めるということが基本的にはできなくなるということがありますので、基本的には書面性の要件が非常に重要だと思います。今回の改正においても、緩和しているとはいえ、書面性の要件を広い意味では残しているというふうに言えると思います。

 委員の問題意識が、そのようなもののいわばひな形のようなものですかね、何か用意して予測可能性を高めるということなのかもしれませんが、これもいわば当事者間の契約の中の問題ですので、基本的には、当事者間が仲裁による解決を望むということをきちんと書かれていて、それで、どういう仲裁機関を使い、どういう法律を適用してもらうというようなことがきちんと書かれているということが必要だということは、仲裁法の趣旨からしても明らかになっているんだろうと思います。

鈴木(義)委員 分かりました。

 もう一点お尋ねします。

 仲裁判断の執行決定を求める申立てにおける仲裁判断書の翻訳文の提出の省略についてなんですね。

 通常英語で出される国際仲裁の判断は、日本の裁判所を通じて実際に効力を持たせようとすると、日本語に訳す必要があるんだ、それが企業にとっては手間やコストがかかると指摘されているんです。

 今改正は当事者の負担が軽減されるものと評価することができるんですが、一方で、国際仲裁の活性化のためには、翻訳文の添付の省略における、裁判所が相当と認めるときの相当性については明らかにすべきだと考えます。ここで言う相当性というのは具体的にどういうことを指しているのかということですね。

 いろいろなケースがあるからという話になっちゃうんですけれども、でも、前の質問でお尋ねしたように、契約なんだから相対してケース・バイ・ケースになっちゃうのは分かるんですけれども……

伊藤委員長 鈴木さん、時刻が参りました。

鈴木(義)委員 分かりました。

 それについて、じゃ、お尋ねします。

金子政府参考人 お答えいたします。

 今般の改正により、仲裁判断の執行決定を求める申立てにおいて、裁判所が相当と認めるときは、当事者の意見を聞いて、仲裁判断書の日本語による翻訳文の提出を省略することを可能としております。

 このように、翻訳文の提出を要しないものとすることを可能とした趣旨は、翻訳文の作成が当事者の大きな負担となる場合がある一方で、翻訳文の提出がなくとも、当事者の手続保障に欠けることがなく、かつ、裁判所において適切に判断することが可能であるという場合があることによります。

 そして、そのような場合に該当するか否かは、事案に応じた裁判所の適正な判断に委ねるのが適切と考えられることから、裁判所が相当と認めるときという要件を設けたものでございます。

 最終的には、翻訳文の提出の省略を認めるか否か、及びどの範囲で省略を認めるかにつきましては、裁判所が、個別の事案において、被申立人の意見も聞いた上で、審理のための必要性等を踏まえて判断すべきものであると考えられますが、当事者の手続保障と裁判所の適切な判断に問題がないと認められる場合、例えば、裁判所が強制執行を認める範囲、給付文言を特定する必要があると考えるときに、仲裁判断の主文に相当する部分以外については翻訳文の提出の省略を認めるなど、翻訳文の提出の省略を認めたとしても手続の公正を欠くことがない場合にはそのような扱いが認められるものと考えられます。

鈴木(義)委員 ありがとうございました。終わります。

伊藤委員長 この際、暫時休憩いたします。

    午後零時十六分休憩

     ――――◇―――――

    午後三時十三分開議

伊藤委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。

 質疑を続行いたします。山下貴司君。

山下委員 自由民主党の山下貴司でございます。

 本日は、発言の機会をありがとうございます。

 私も法務大臣在任当時、こういった、特に仲裁、調停の国際的な側面について取り組んできて、今般、本当にこの分野に造詣の深い齋藤大臣が直接この法律を改正されるということで、本当にありがたく思っております。

 まず、当局に聞きますが、調停、仲裁という一般の方にはなじみのない制度についてということでございますが、一応、配付資料を用意いたしました。仲裁と調停はそれぞれ、裁判とどのように異なるかについて、資料一、これは法務省提出資料を基に作らせていただいたものでございますけれども、おおむねこのとおりでいいかというのは、民事局長、よろしいですかね。

金子政府参考人 はい。資料一、拝見しました。このとおりで間違いないと思います。

山下委員 調停、裁判、そして仲裁、違いがあるんですけれども、メリットとしては、資料六、これは法務省資料ですが、先般、民事局長もおっしゃったように、裁判にない仲裁、調停のメリットとして、裁判だと誰が担当になるか分からない、必ずしもその分野に精通した方じゃない方が裁判官になることも実はあるわけですよね。しかも、外国の、国際紛争だと、外国の方がよく分かっているかどうか全く分からないというところですが、仲裁、調停であれば、第三者の中立的、専門的な方を選任可能でありますし、手続や規則や使用言語、これが当事者同士で柔軟に設定可能であったり、非公開であるということで企業秘密や評判を守ることが可能。特に知的財産の関係で仲裁手続、調停手続が用いられることも多いわけでございまして、これが公開の法廷でなされると非常にまずいということもあります。また、条約が、ニューヨーク条約、シンガポール条約、あるということで、国境を越えた強制執行が容易ということでございます。

 そうしたメリットのある中で、今回の改正は、先ほどの資料六にも概要がありますけれども、裁判手続に代わるADR、つまり、裁判外紛争解決手続である仲裁、調停について、国内手続、国際手続において、例えば、仲裁においては暫定保全措置や、そして、調停においては強制執行手続を整備する。あるいは、翻訳文の省略や、国際仲裁、国際調停の保全、執行について専門的知見を持つ裁判官が多い東京、大阪に管轄を認めて、事件を集中的に処理するというものであります。

 これは、ようやく条約を担保する法制ができたということで、まさに日本の国際仲裁、国際調停はこれからというところだと思いますので、非常に高く評価したいと思います。

 特に、国内外の調停の和解合意に基づく強制執行が可能になったということで、これは平林議員も午前中に指摘したとおり、養育費についてこれを認めたというのは非常に大きいものがあると思います。これまで強制執行ができなかったんですね、調停で合意しても。これは非常に大きいということで、一人親で御苦労されている方にとっても朗報であろうと思います。

 また、国際紛争解決手段としての国際仲裁、国際調停についても大きな改正がなされたということですが、これは大前提として、仲裁、調停というのがそもそもどれぐらい利用されているのかについて、そもそも調停についてはどうなのか、国内と国際的なものに分けて、ちょっと局長にお答えいただきたいと思います。

金子政府参考人 お答えします。

 調停の利用件数のお尋ねですが、国内は年間千から千五百件程度、国際は年間一、二件というふうに承知しています。

山下委員 まず、国内については、本法改正のADR法の対象である認証紛争解決事業者によるのは、局長おっしゃったとおり、年間千から千五百件程度で、そのうち四割、五割、あるいは多いときでは六割は和解合意が成立しているんですね。活用されているということで、こういったところで強制執行が整備されたというのは非常に大きいと思います。他方、国際調停はもう寂しい限りであります。

 次に、仲裁についてですね。仲裁については、法務省が提供した資料三によると、令和三年、日本商事仲裁協会、JCAAの仲裁件数は十五件。一方で、資料四のJIDRC、これはオリンピック関連のスポーツ仲裁なども含めて二十九件となっている。ただ、仲裁には、ほかに知的財産関係の仲裁もあるはずなんですね。

 日本において仲裁は何件ぐらい行われているのか。今回、法改正をわざわざするわけですから、それを、国内仲裁、国際仲裁、分けて、ちょっとその件数を法務省がどのように把握しているのかということについて伺います。

金子政府参考人 仲裁の利用件数ですが、まず、国際の方は、JCAAが扱ったものとして、御指摘のとおりですが、年間おおむね十件台で推移していると思います。それから、国内の方は、一番多い、建築工事紛争審査会というところがしている仲裁で、年間三十から四十件、このほか、日本知的財産仲裁センターというところも扱うようですが、近年は仲裁事件の取扱いはほとんどないというふうに承知しています。

山下委員 今の局長の御答弁ですと、オリンピック関係の、要はJIDRCが取り扱ったのが、資料の四によると令和三年度は二十九件になっているわけですけれども、これは仲裁じゃないんですか。法務省としてどういうふうに全体を把握しているのか。

金子政府参考人 仲裁の件数の数え方として、仲裁機関の方からする数え方と、JIDRCのような施設の側から数える数え方がございますけれども、JIDRCが扱ったオリンピック関連のスポーツ仲裁などを含めると二十九件となっているのは御指摘のとおりでございます。これも仲裁でございます。

山下委員 あえてこういうふうに聞いたのは、局長、法務省で仲裁、国内、国際、どれだけ把握しているんだということを聞いたところ、レクの段階では正確な数字は把握していなかったんですよ。わざわざ法律を変えようというのに、しかもこれは骨太の方針に載っている、国際仲裁を活性化しましょうと言っているのに、代表的なJCAAの数字をまず出してきたんですね。それだと余りに少な過ぎる。ただ、例えばJIDRCだと二十九件ということで、ここら辺の数え方もちょっと整備してもらわないと、今後こういうことが必要だということが分からないんですけれども、そこら辺、局長、どうですか。

金子政府参考人 御指摘ごもっともかと思います。今後、そのように努めていきたいと考えています。

山下委員 それで、今回、特に国際紛争解決のための国際仲裁、国際調停について聞きたいんですけれども、資料二を用意したんですけれども、国際紛争というのは、外国の裁判所でやるか、国際ADR、仲裁あるいは調停で解決するしかありません、世界中を管轄とする裁判所がないものですから。

 裁判手続はそれぞれの国で手続や執行も異なって、また、全くその法律に造詣がない外国の裁判官もおられるわけで、例えば、場合によっては陪審とか、そういうところでアウェーの裁判もあり得るわけですね。

 そうなってくると、この資料の二の「国際仲裁・調停の需要は非常に高い」というところを見ていただければ分かるんですが、これはロンドン大学のクイーン・メアリー校の資料を基にしたものなんですが、結局、クロスボーダーで訴訟をやりましょうというのが望ましい解決だと思っている人は二%しかいないんですよ。国際仲裁、あるいはそれにADRを加えたもの、あるいは調停、これで九割なんですね。ということは、国際紛争においては九割以上がこうした国際仲裁や調停が望ましいと思っているんですよ。

 国際仲裁、調停というのは、大企業だけが活用するものじゃありません。先生方の周りの企業の方も、やはり海外進出しているんですね。中小企業でもどんどんしています。そういったときに、紛争が起きたときにどうするんだといったときに、こういった国際仲裁、調停を日本でできるようにする、あるいは制度を整備する、これは極めて重要であります。

 そういった中で、例えば、今後、イギリスも加盟するCPTPP、いわゆるTPP11や、中国も入っているRCEPなどの締結によって、こういった国際取引も活性化しますけれども、紛争も増えますよね。

 これは外務省にお聞きしたいんですけれども、CPTPPやRCEPなどで国際仲裁や国際調停のそもそも適用があるのか、あるいはニーズが増えるのかということについて、外務省としてどうお考えかということについて伺います。

中村政府参考人 お答えいたします。

 調停、仲裁、それぞれについてお答えをいたしますと、まず、調停につきましては、CPTPP協定では、投資家と国との間の紛争解決の場合について第九・一八条、それから、国と国との間の紛争の場合について第二十八・六条におきまして、それぞれ調停の利用に関する規定を置いているということでございます。

 また、RCEP協定におきましても、これは国と国との間の紛争解決だけでございますが、第十九・七条において、調停の利用に関する規定がございます。

 あと、仲裁の方でございますが、CPTPP協定の方の第九章におきまして、投資家が請求を仲裁へ付託できる、いわゆるISDSの手続に関する規定がございます。

 これらに基づく調停、仲裁の件数の推移に関してでございますけれども、これまでのところ、調停、仲裁、またCPTPP協定、RCEP、いずれにつきましても、日本が国として当事者になった案件というのはございません。

 あと、日本以外の締約国につきましても、ちょっと調停については承知しておりませんし、仲裁の方は、UNCTADという国際機関が投資仲裁の件数などをデータで集めていますが、そこを見る限りは、ほかの締約国もCPTPPの仲裁はまだ利用していないということでございます。

山下委員 国相手ということになると、そういったところ、RCEPとかCPTPPに規定されているのはそうなんですが、CPTPPとRCEPによって期待されているのは、要するに、民民の関係でもいろいろな経済活性化をする、そこで紛争が起きた場合にどうするかというところがあるんだろうと思います。

 だからこそ、去年の骨太の方針で、対外経済連携の促進という項目があります。その中に、国際仲裁の活性化を図るという文言が、骨太で入っているんですね。要するに、閣議決定されているんです。だから、これはもう政府全体の方針ということになっているわけです。

 ところが、既に指摘がありましたように、国際仲裁あるいは国際調停というのが非常に寂しい状況にあるということで、今回ちょっとそれについて法務省の見解をただしていきたいんですけれども。

 まず、仲裁に関して、国際仲裁は、前提として仲裁合意というのが必要です。この仲裁合意というのは、大体、契約書上明記されているものなんですね。だから、契約の段階で明記されていなきゃいけないということなんです。

 我が国における国際仲裁の件数が増えるためには、企業が国際的な取引をする際に、契約書作成の段階で、日本の都市を仲裁地とするか、あるいは日本の仲裁機関を仲裁機関と定める仲裁合意が契約書に盛り込んである、この必要があるというふうに考えているわけですけれども、これはやはり、大企業も中小企業も国際紛争に直面するわけですから、日本に仲裁機関があった方が企業にとってはるかにいいわけです、信頼性があるということであります。

 もう一つ、実務的なことを言うと、契約書にそういった仲裁条項やADR条項があった方が、実は、仲裁に訴えますよ、これは強制力がありますから、あるいは、ADRをやりますよというふうになった方が、後で和解をやりやすいんですね。結果、安くつくという効果もあるんです。だから、契約書にこういった条項を盛り込むことが極めて大事なんです。

 契約書の仲裁合意条項、確認ですけれども、法務省、どこまで明記される必要があるのか。仲裁で解決しますよというだけじゃなくて、仲裁地や仲裁機関も必須なのではないかというふうに私は聞いているんですが、どうでしょうか。

金子政府参考人 お答えいたします。

 仲裁法上は、当事者が仲裁合意をする際に、仲裁地、仲裁機関、準拠法、仲裁人、言語等について定めることが必須とはされておりません。

 もっとも、実際には、仲裁合意をする際には、仲裁条項において、仲裁地を東京などの都市名で定めるとともに、利用する仲裁機関を定めることが一般的であるものと承知しております。例えば、日本の主要な仲裁機関であるJCAAのホームページにおいても、実務上特に重要な取決めとして、仲裁条項において仲裁地と仲裁機関名を定めることが推奨されております。

 また、仲裁条項において、仲裁人の数、あるいは仲裁手続による使用言語、あるいは準拠法などが定められることもあるものと承知しております。

山下委員 おっしゃるとおり、法律上の必須ではないけれども、例えば、国の中のどこの都市かというのは実務上当たり前なんですよね。例えば、逆に考えれば、アメリカのどこだといったら、アラスカでもいいのか、どこでもいいのかということじゃ駄目なんですよ。ワシントンとかいうふうになっている。日本だったら東京あるいは大阪というふうに明記させることが大事で、これは契約段階から要るんですよ。もめてからは合意がなかなか難しいですから、最初から、紛争が起きる前の契約段階から要るわけですね。

 法務省に伺いたいんですが、じゃ、東京あるいは日本の都市を仲裁地、あるいはほかの、仲裁機関としている仲裁合意条項、そういった契約というのは大体どれぐらいあるというふうに把握されておられますか。加えて、これを増やすためにどういうふうな取組をしてきたのかということです。

柴田政府参考人 お答えいたします。

 法務省が調査委託をしているJIDRCにおきまして、かつて、日本企業に対して、日本企業における仲裁手続の活用の実態に関するアンケート調査を行ったことがございます。その報告書が公表されております。その報告書によりますと、アンケート調査の結果、日本企業が契約書において指定したことのある仲裁地、上位五か国は、シンガポール、日本、米国、欧州、香港とされているものがございます。

 また、現在もJIDRCにおいては、日本企業に対する仲裁地等の選定状況についてはアンケート調査が引き続き実施されているものと承知しております。

 法務省としては、こうした調査の成果も注視しながら、引き続きこの取組について進めていきたいと考えております。

山下委員 そういう契約があるということを把握しているだけじゃ駄目なんですよ。何件ぐらいあって、それが足りているのか足りていないのか、足りていないのであればしっかり働きかけをする、これを是非お願いしたいと思います。これは答弁は求めませんが、局長、大臣には是非お願いしたいと思っています。

 我が国における国際仲裁の活性化の意義、これまでの取組ですけれども、先ほど来、平成三十年の関係閣僚会議の分析結果がありました。執行力が不十分であった、これは今回、一定程度解決されたということであります。人材がないということに関しては、先ほど、法曹としては二百名の仲裁人名簿があるということですけれども、国際仲裁や国際調停というのは、Jリーグみたいに、よそから持ってくるんですよ、スター選手を、イニエスタみたいな人を。それで、ああ、日本の国際仲裁機関はすごいねということになるんです。だから、そういったこともしっかりやってもらいたいし、法務省の中にもそれ専用の部署を設けないと、とても世界には太刀打ちできないと思います。

 先ほど、また、調停、仲裁に機関や組織はないというところを大臣が答弁されましたけれども、私が法務大臣の在任中に、京都に京都国際仲裁センターが開設されました。また、退任後間もなく、JIDRCへの調査委託が行われました。また、在任中の平成三十一年の初頭に香港に行き、国際仲裁、調停、紛争に関する協力覚書を、たしか大臣同士で、あるいは法務部長官と締結したはずです。インドや、ワシントンの投資紛争国際解決センター、ICSIDなど、国際仲裁機関を訪問して意見交換のルートをつくったはずなんですね。

 じゃ、それ以降、どういう取組を法務省はやってきたのか。例えば、関係閣僚会議は平成三十年以降開かれているのか、開かれているとしたらどういうことが話し合われたのかについて質問します。

柴田政府参考人 お答えいたします。

 その前に、先ほど委員が、仲裁地を東京と明記することに関してどのような取組をしてきたかという御質問に関して、ちょっとお答え、失念した点がございました。

 法務省といたしましても、仲裁地を明記することが非常に大事であるということは重々認識しておりまして、そういった観点で、先ほどのJIDRCに、調査等業務の中で、国内外の企業等に対する広報、意識啓発を進めております。

 具体的には、我が国で国際仲裁を行うことのメリット等について解説したパンフレット等の作成、配布、それから、経済団体や日本組織内弁護士協会、JILAと連携するなどしたセミナー等の実施、法律雑誌への国際仲裁の基礎知識を分かりやすく解説した記事の寄稿、我が国の司法制度や裁判例の動向等について英語で解説する記事のウェブサイトへの掲載等を実施してきております。

 また、企業に対して助言をする立場の弁護士等の理解を得ることも重要であることから、法務省では、JIDRCに委託するなどして、大学生、法科大学院生を対象とした出張講義、司法修習生の選択型実務修習としての国際仲裁プログラム、弁護士に対するセミナー、資格認定講座等の提供などの取組を、そういった観点からも行ってきております。

 また、今の委員の御質問でございますが、内閣官房に設置されました国際仲裁の活性化に向けた関係府省連絡会議が平成三十年四月に取りまとめた国際仲裁の活性化に向けて考えられる施策においては、人材育成、広報、意識啓発、施設の整備といった取組を総合的に進めることが指摘されております。

 ところで、法務省では、平成三十年四月に、国際仲裁の活性化を含む司法外交の推進力となる司令塔組織として、大臣官房国際課を新設しております。そして、この国際課が中心となりまして、法務省として、令和元年六月から令和六年三月までの五か年の事業として、JIDRCに対して、人材育成、広報、意識啓発、施設整備といった各施策に包括的に取り組みながら、国際仲裁の活性化に向けた有効な施策の在り方について調査等事業を委託したほか、法務省と経済産業省を事務局として、国際仲裁の活性化に向けた関係府省連絡会議の幹事会を年二回程度開催して、関連各府省の取組の報告を受け、我が国における国際仲裁の活性化に向けた方策を議論しております。

 また、法務省におきましては、カウンターパートとなる他国の法務省、司法省との間で協力覚書の署名、交換を推進して、海外機関と連携しながら具体的な取組を進めてきております。

 具体的には、委員御指摘の、法務省が平成三十一年に香港特別行政区法務庁との間で締結した協力覚書に基づきまして、令和二年九月、それから令和四年三月に香港国際仲裁センターと国際仲裁の活性化に関するセミナーを共催したほか、令和三年七月にはシンガポール司法省との間で協力覚書を締結して、これに基づいて、シンガポール国際調停センターを研修実施機関とする、東南アジア、太平洋及び南アジア諸国を対象とした国際仲裁、国際調停に関するセミナーを実施しております。

山下委員 じゃ、その関係閣僚会議は開かれていないわけですね。経産省と法務省でやっているということで、そういう理解でよろしいですね。

 先ほど、資料四、ありますけれども、国際仲裁活性化に向けた調査委託の現状と展望というところで、法務省がその後やった委託、これは令和元年度からですから、二年の三月からですけれども、実績については、その施設整備のところで、例えば虎ノ門の施設ということになると、令和二年度二十五件、令和三年度二十九件、令和四年度十三件ということになっている。虎ノ門の施設は収支面では自立困難ということになっている。あるいは、アンケートもやりましたということがつらつら書いてあります。

 ところが、資料六を見てください。ほかの国でどうやっているのかということなんですね。

 ほかの国では、例えばシンガポール、これは著名な仲裁施設があるということで、アジアにおける国際仲裁の拠点となっているわけですね。インドやベトナムでも、たしか私のときにつくろうとしていました。

 韓国の仲裁機関も、例えば韓国の経産省が、アメリカ最大の仲裁機関で長年経験を積んだ人を、サムスンに入って、サムスンの、次期法務部長と目されていた方を引き抜いて、韓国の仲裁機関の事務局長に据えているんですね。

 シンガポール、韓国、香港、これを見ると、人材派遣を他国にやったり、例えば香港なんかでは、ワンフロアを年間十七円で貸しているんですよ、その仲裁機関に。やはり国家の持ち出しがあるんですね。

 なぜそんなことをしているかというと、それはやはり、韓国でいえば、韓国の仲裁機関を世界に売り込むことは韓国ブランドを世界に売り込むことになる。実際、中小企業も関わる紛争解決が自国でやられることのメリットというのは計り知れないんですね。

 そういったことからすると、日本の取組というのはまだまだほとんど足りていないというふうに思われるんですが、この虎ノ門の施設、要するに令和五年度までということですけれども、利用状況はこういうことなんですが、まさか打ち切るということはないでしょうね。法務省、答弁お願いします。

柴田政府参考人 お答えいたします。

 虎ノ門の施設の利用状況につきましては、JIDRCの報告によりますと、虎ノ門施設が開業した令和二年三月からの仲裁事件の取扱件数は年間十件台から二十件台であり、また、同施設の利用料収入等は年間一千万円から二千万円で推移しているということでございます。そのため、JIDRCからは、この先、国からの調査委託費を考慮しても、専用施設の利用料収入等のみで経常的運営経費を賄うことは難しいことがこれまでの調査によって判明している旨の報告を受けています。

 国際仲裁の活性化に向けた関係府省連絡会議が取りまとめた国際仲裁の活性化に向けて考えられる施策では、仲裁施設の設備は、民間を主体として取り組むべきものであるとされたことを踏まえて、本調査等業務では、本業務実施期間終了後は、民間団体において適切な仲裁審問施設を確保し、適切な利用料金やサービス内容を設定して自主的に運営していくことが予定され、その実現可能性についても調査事項に含まれていること……(山下委員「いいです、大体分かりました」と呼ぶ)はい。

山下委員 ちょっと時間がないので、大臣に伺いますけれども、大臣、要するに、自立困難だというのは分かるんです。ただ、ほかの国はみんな、自国で法解決をするということのメリット、これを見て、資料五のように、相当な予算あるいは支援をやっているということであります。

 そうだとすると、大臣から伺いたいんですけれども、現在のJIDRCにおける調査委託事業、今年度で終了ということではなくて、新たな仲裁法でどう活用されるのかというのは見ないといけないと思います。

 ですから、そういったことでこの調査委託事業を引き続き維持するということで、恒久的な施設が必要であれば、現在、なぜか法務総合研修所の教室が、歴史ある法務省の赤れんが棟に入っているわけですよ。それを国際仲裁の新たな拠点にするとか、あれは重要文化財ですから、そういったことをやるべきではないかということで、仲裁機関の支援を検討すべきではないかということなんですが、大臣、お答えください。

齋藤(健)国務大臣 まず、日本も人口減少していって、そういう中で日本の経済を活性化していくためには、様々な努力をしてきているわけですね、経済連携を進めようとか。進めれば進めるほどトラブルも増えるということでありますので、そのトラブルを早期に解決するための仲裁システムの整備というのは必要だと。

 ところが、一方で、現実に使われているケースというのが非常に少ない。少ない下で、施設を始めとして巨額の財政資金を使うのはいかがなものかという意見もあって、何といいますか、鶏と卵みたいな関係になっているのも現実だろうと思います。

 ただ、大きな目的としては、これから日本が海外へどんどん出ていって、その力によって活性化をしていかなくちゃいけない時代を迎える中で、仲裁というものを、国際仲裁というものをもっともっと活用していかなくちゃいけないということは大きな方向としてはあるわけでありますので、その方向を見失うことなく、しっかり検討していきたいと思っています。

山下委員 大臣、要するに、日本にないと駄目なわけですよ。せめて、私が大臣のときにやらせていただいたんですが、経団連などの経済三団体、経済団体に対して、直接大臣が働きかける。あるいは、今年、G7とASEANがあって、G7、ASEAN対話がある、そういった場で是非働きかけていただきたいんですが、その点について、大臣、いかがですか。

齋藤(健)国務大臣 先ほども鶏と卵の話をしましたけれども、全く同感でありますので、多くの企業で国際仲裁の重要性を認識をして活用していかれるということのために、私も汗をかいていきたいと思っていますので、経済団体等に対して仲裁のメリットをアピールする働きかけを行うことも含めまして、しっかり検討して、実行していきたいと考えています。

山下委員 大臣のリーダーシップであれば必ずできると思います。

 終わります。ありがとうございました。

伊藤委員長 次に、本村伸子君。

本村委員 日本共産党の本村伸子でございます。どうぞよろしくお願いを申し上げます。

 仲裁法について質問をさせていただきたいと思います。

 まず、今回の法案の大前提の話なんですけれども、仲裁制度というのは、憲法三十二条、裁判を受ける権利を、民事の両当事者が自主的に放棄するというものです。仲裁合意が安易に認定されますと、裁判を受ける権利が侵害されることにつながりかねないというふうに考えております。その点、大臣の御認識を伺いたいと思います。

齋藤(健)国務大臣 仲裁合意は、当事者が当該紛争の解決を仲裁人に委ね、仲裁判断に服する旨の合意をいうわけであります。

 仲裁合意の対象となる民事上の紛争について訴えが提起されたときは、裁判所は原則として訴えを却下しなければならないものとされているところであります。仲裁法第十四条第一項です。

 もっとも、裁判所が、仲裁合意が無効、取消しその他の事由により効力を有しないと認めるときは、裁判所は訴えを却下することなく当該紛争についての判断を示すことができるということになっております。

 したがいまして、仲裁合意が効力を有しないと認められるときは仲裁合意の当事者に裁判を受ける権利が保障されているということでありますので、御懸念は当たらないと考えています。

本村委員 法案は、国内仲裁、そして国際仲裁の判断までの間で、権利、証拠を保全するための命令、暫定保全措置命令に基づく強制執行も可能となるというものですけれども、国内の方で考えてみたいというふうに思っております。

 国土交通省に今日来ていただいたんですけれども、公共事業に関して、ある下請施工業者が、納得できないことがあった、裁判を起こそうということで考えたそうですけれども、その契約の中に仲裁合意が入っていた、それで裁判はできないということになってしまったと。ある都道府県の公共事業の契約書にはほとんど仲裁合意が入っているというお話でございました。

 そこで伺いたいと思うんですけれども、国や地方自治体の公共事業の契約、あるいは国家プロジェクトであるJR東海のリニア事業の契約の中で仲裁合意というものが含まれているのかどうか、その点、状況をお示しいただきたいと思います。

笹川政府参考人 お答えいたします。

 国や地方公共団体が発注する公共工事の請負契約書は、その大部分が、中央建設業審議会が決定、勧告する公共工事標準請負契約約款に準拠しておりますけれども、この約款では、あっせん又は調停により解決する見込みがないと認めたときは、仲裁合意書に基づき、建設工事紛争審査会の仲裁に付し、その仲裁判断に服することを規定しております。

 したがいまして、大部分の公共工事の請負契約では仲裁合意が含まれているというように承知しております。

本村委員 現行の仲裁法では、圧倒的な力関係の格差があるということで、例えば、消費者と事業者、個別労働問題紛争に関しては仲裁合意の特例がございます。それは、圧倒的な力関係の格差があったらフェアでない方向になる可能性があるからだというふうに思っております。

 この建設の関係でいいますと、発注者ですとか元請などに、一次、二次、三次、四次、重層的な下請構造の下でなかなか物が言いにくいということがあるかというふうに思うんですけれども、そういったときに、裁判を受ける権利は自主的に放棄するべきなのに、自主的に本当に放棄をしたのかということが問われてくるというふうに思います。デメリット、メリットをちゃんと下請の皆さんも納得して仲裁合意したのかということが問われてくるというふうに思っております。

 日本国内あるいは国際的なサプライチェーンの中においても、力関係というのは圧倒的な格差があるケースがございます。それは、消費者と事業者、労働者と事業主だけではありません。事業をやっている企業対企業の取引であったとしても、圧倒的な力関係の格差という契約は多くあるというふうに思いますけれども、その点、大臣の御見解を伺いたいと思います。

齋藤(健)国務大臣 一般論ですけれども、仲裁合意の当事者間において、その事業規模や交渉力等に違いがある場合はあり得るのではないかと思います。

本村委員 社会的なそういう力関係の圧倒的な格差があるという当事者間で、弱者の側が仲裁制度を利用することを不本意に押しつけられるということがあってはならないというふうに考えますけれども、大臣、いかがでしょうか。

齋藤(健)国務大臣 その点は同感でありまして、仲裁法は、仲裁制度の利用に当たっては当事者間の仲裁合意を必要としておりまして、一方の当事者が他方の当事者に仲裁制度の利用を押しつけるというようなことにはならないというふうに考えています。

 また、仲裁法上は、仲裁合意が効力を有しないときは、裁判所に対して訴えを提起することができます。そのほか、裁判所に対し仲裁判断の取消しを求めることもできます。さらに、裁判所に対し仲裁判断の執行決定を求める申立てがなされた場合であっても、仲裁合意が効力を有しないことを執行拒否事由として主張することもできます。

 このように、仲裁法において、当事者が仲裁合意が効力を有しないことを主張して、裁判所において争う手段も保障されておりますので、御懸念には当たらないものと考えております。

本村委員 次にちょっと確認をさせていただきたいのが、仲裁人というのがやはりフェアな方でなければならないというふうに思いますけれども、人数、どういう人がなっているのかという点、法務省さんに教えていただきたいと思います。

金子政府参考人 お答えいたします。

 例えば、我が国の仲裁機関である日本商事仲裁協会、JCAAの仲裁人リストには、二百名以上の仲裁人候補者が登録されております。

 どのような方がという御質問がありましたが、弁護士や学者のほか、業界の実務に精通している者が仲裁人候補者として登録されているものと承知しております。

本村委員 社会的な力関係で格差がある当事者が不利益を押しつけられないために、仲裁人の公正性、独立性を確保することが極めて重要だというふうに思いますけれども、仲裁人の公正性、独立性を担保する制度についてお示しをいただきたいと思います。

金子政府参考人 まず、仲裁法は、仲裁人の公正性又は独立性を疑うに足りる相当な理由があるときは、仲裁人を忌避することができるとしております。また、仲裁人に自己の公正性又は独立性に疑いを生じさせるおそれがある事実を開示する義務を課しております。

 次に、仲裁人が今御説明した開示義務に違反したような場合には、仲裁手続が日本の法令に違反するものであったとして、仲裁判断の取消し事由や仲裁判断の執行拒否事由になるものとしております。

 さらに、仲裁法には、仲裁人がその職務に関し賄賂を収受した場合などは、拘禁刑に処する旨の罰則も存在しております。

 現行仲裁法において、仲裁人の公正性、独立性を担保する制度として以上のようなものが設けられているものと認識しております。

本村委員 この仲裁人の忌避事由についてなんですけれども、仲裁人の公正性又は独立性を疑うに足りる相当な理由というのは、なかなか立証するのは困難だと思うんですけれども、具体的にはどういうものでしょうか。

金子政府参考人 御指摘のとおり、仲裁人の忌避事由の一つとしては、仲裁人の公正性又は独立性を疑うに足りる相当な理由があるときと定めております。

 この公正性又は独立性を疑うに足りる相当な理由があるときとは、一般に、仲裁人が事件又は当事者と一定の関係があるために独立、公正な判断が期待できないことや、仲裁人の具体的な行動が仲裁人の独立、公正な判断に合理的な疑いを生じさせることを意味するものと考えられております。

 この忌避事由に該当するか否かは、個別事案に即して具体的に判断されるものであるため、一概にお答えすることは困難でございますが、例えば、当事者の法定代理人や当事者の法人の代表者、役職員等は、この忌避事由に該当するとされております。

本村委員 忌避事由で申し立てる当事者が、一方の当事者と仲裁人の関係を立証するというのは困難だというふうに思うんですけれども、いかがでしょうか。

金子政府参考人 お答えいたします。

 仲裁人の忌避の申立てをするためには、その申立てをしようとする当事者が、仲裁人に忌避の原因があるということを疎明する必要があります。

 当該当事者が忌避の原因を疎明することができるかどうかにつきましては、個別具体的な事案によるため一概にお答えすることが困難ではございますが、一般論としてお答えすれば、仲裁人は、当事者に対し、自己の公正性又は独立性に疑いを生じさせるおそれがある事実を開示する義務を負っていることから、仲裁人に忌避の原因があると考える当事者は、当該開示を受けた事実を踏まえ、忌避の原因を疎明することになると考えられます。

本村委員 続きまして、先ほど大臣も答弁していただきました仲裁判断の取消しについてなんですけれども、「仲裁合意が、当事者が合意により仲裁合意に適用すべきものとして指定した法令(当該指定がないときは、日本の法令)によれば、当事者の行為能力の制限以外の事由」というふうに書いてあるんですけれども、どのような事由ということになりますでしょうか。

金子政府参考人 仲裁判断の取消し事由のうち、仲裁合意が効力を有しないこととなる事由であって、当事者の行為能力の制限以外の事由とは、例えば、日本の法令が適用される場合には、仲裁合意が詐欺や錯誤に基づくものであることを理由として当該仲裁合意が取り消されたことなどを指すものでございます。

本村委員 仲裁合意の錯誤の無効ということで取り消すことができるという範囲では、かなり限定的になるのではないかというふうに思うんですけれども、事実上、この仲裁合意を取り消すというのはなかなか困難になるのではないかと思いますけれども、いかがでしょうか。

金子政府参考人 仲裁法四十四条第一項第二号の定める取消し事由があるか否かは、仲裁合意に適用される法令により、どのような場合に仲裁合意の無効、取消し等が認められるかによって定めることとなります。

 したがいまして、仲裁合意が錯誤に基づいてされた場合以外にも、仲裁合意が効力を有しないときには、同号の定める仲裁判断の取消し事由が認められるということで、錯誤のみに限って取り消されるわけではないということで、もう少し広く取消しが認められております。

 仲裁合意が効力を有するにもかかわらず仲裁判断の取消しを認めることとしたというようなことが広く認められると、今度、これはかえって仲裁手続における紛争解決の実効性を損なうこととなり、相当でないという面があり、その辺の調整が重要ということになります。

本村委員 ありがとうございます。

 次に、仲裁人の忌避、そして仲裁判断の取消しが争われた件数、内容についてお示しをいただきたいと思います。

金子政府参考人 司法統計年報によりますと、裁判所における仲裁関係事件の新受件数は、全国の総数としまして、令和元年で十件、令和二年で十一件、令和三年で四件とされておりますが、この裁判所における仲裁関係事件としましては、仲裁人の忌避や仲裁判断の取消しのほか、仲裁判断についての執行決定等があり得るところでございまして、ただ、その内訳が不明であることから、御質問の仲裁人の忌避あるいは仲裁判断の取消しが争われた件数について、直接お答えすることができないということで御了解いただければと思います。

本村委員 そういうことも、利用者を含めて声を聞いていただきたいというふうに思うんです。

 仲裁法の制度が十分機能しているかという点で不明である点が多々あるわけですけれども、別途、仲裁人の公正性、独立性を担保する、そうした対策を取るべきだというふうに考えますけれども、これは大臣にお願いしたいと思います。

齋藤(健)国務大臣 現行仲裁法は、仲裁人の忌避、仲裁判断の取消し及び仲裁判断の執行拒否事由及び罰則の制度を設けておりまして、これにより、仲裁人の公正性、独立性は十分担保されているものと認識をしております。

 そこで、今般の仲裁法改正に当たり、現行仲裁法が設けている制度に加え、仲裁人の公正性、独立性を担保するための更なる対策を取るべきであるとは考えておりません。

本村委員 世界の中では、上訴仲裁制度を採用している国がある、イギリスですとかオランダ、スペイン、そして香港、米国の仲裁協会などがあるそうでございます。国連の国際商取引法委員会のワーキンググループでも、この上訴仲裁制度については議論を進めているそうです。

 それは、なぜこういうふうに上訴仲裁制度を取っているかといえば、やはり、今メリットとかいろいろ言われている中でも、でも、不満があったりですとか疑問があったり、そういうものが存在するからこそ、上訴仲裁制度という形を取っているのだというふうに思っております。当然ながら、いいことばかりではないというふうに思うわけです。

 先ほども民事局長さんが答弁してくださったんですけれども、仲裁に関するいろいろな実態が把握できていないわけでございまして、より制度を公正なものにしていくためにも、是非、利用者の方々の声を集めていただく、利用に至る経緯ですとか満足度ですとか、検証していただいたり、事例研究をしていただいたり、そうしたことをするべきだというふうに考えますけれども、いかがでしょうか。これは大臣にお願いしたいのですけれども。

金子政府参考人 お答えいたします。

 この委員会でのやり取りでもいろいろ出ていたと思いますが、仲裁には仲裁のメリットというのもございまして、その中では、やはり簡易な、特に一回的に解決できるということもございます。また、紛争になっているということ自体が公開されていないということで、いわばレピュテーションリスクも非常に少ないということも、国際的な紛争解決でよく利用されていることの一つとして掲げられています。そういうようなメリットを享受していただくために、広くこの制度を知っていただく必要があります。

 御指摘いただいたように、利用者の方からのいろいろなヒアリングということも一つの方策だろうとは思いますが、他方で、仲裁を利用したということ自体がかなり外に出ないような仕組みになっているものですから、ちょっとその辺の限界はあろうかなというふうに感じております。

齋藤(健)国務大臣 一般論になりますけれども、法律が施行されて運用が始まりましたら、それにつきましては、しっかりと実態を見ながら様々考えていきたいと思っています。

伊藤委員長 時間が参りました。

本村委員 フェアなものになるように是非御努力いただきたいと思います。よろしくお願いします。

 ありがとうございました。

伊藤委員長 これにて各案に対する質疑は終局いたしました。

    ―――――――――――――

伊藤委員長 これより討論に入るのでありますが、その申出がありませんので、直ちに採決に入ります。

 まず、内閣提出、仲裁法の一部を改正する法律案について採決いたします。

 本案に賛成の諸君の起立を求めます。

    〔賛成者起立〕

伊藤委員長 起立総員。よって、本案は原案のとおり可決すべきものと決しました。

 次に、内閣提出、調停による国際的な和解合意に関する国際連合条約の実施に関する法律案について採決いたします。

 本案に賛成の諸君の起立を求めます。

    〔賛成者起立〕

伊藤委員長 起立総員。よって、本案は原案のとおり可決すべきものと決しました。

 次に、内閣提出、裁判外紛争解決手続の利用の促進に関する法律の一部を改正する法律案について採決いたします。

 本案に賛成の諸君の起立を求めます。

    〔賛成者起立〕

伊藤委員長 起立総員。よって、本案は原案のとおり可決すべきものと決しました。

 お諮りいたします。

 ただいま議決いたしました各法律案に関する委員会報告書の作成につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

伊藤委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

    〔報告書は附録に掲載〕

    ―――――――――――――

伊藤委員長 次回は、明五日水曜日午前八時五十分理事会、午前九時委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。

    午後四時六分散会


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