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第7号 令和5年4月7日(金曜日)

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令和五年四月七日(金曜日)

    午前九時開議

 出席委員

   委員長 伊藤 忠彦君

   理事 谷川 とむ君 理事 藤原  崇君

   理事 牧原 秀樹君 理事 宮崎 政久君

   理事 鎌田さゆり君 理事 寺田  学君

   理事 沢田  良君 理事 大口 善徳君

      東  国幹君    五十嵐 清君

      石橋林太郎君    岩田 和親君

      奥野 信亮君    加藤 竜祥君

      熊田 裕通君    塩崎 彰久君

      鈴木 馨祐君    田所 嘉徳君

      高見 康裕君    土田  慎君

      平口  洋君    本田 太郎君

      三谷 英弘君    山口  晋君

      山下 貴司君    渡辺 孝一君

      鈴木 庸介君    中川 正春君

      山田 勝彦君    吉田はるみ君

      米山 隆一君    阿部 弘樹君

      漆間 譲司君    日下 正喜君

      平林  晃君    鈴木 義弘君

      本村 伸子君

    …………………………………

   法務大臣         齋藤  健君

   法務副大臣        門山 宏哲君

   法務大臣政務官      高見 康裕君

   厚生労働大臣政務官    本田 顕子君

   最高裁判所事務総局刑事局長            吉崎 佳弥君

   政府参考人

   (内閣府大臣官房審議官) 畠山 貴晃君

   政府参考人

   (警察庁長官官房審議官) 親家 和仁君

   政府参考人

   (法務省刑事局長)    松下 裕子君

   政府参考人

   (法務省矯正局長)    花村 博文君

   政府参考人

   (法務省保護局長)    宮田 祐良君

   政府参考人

   (外務省大臣官房参事官) 松尾 裕敬君

   政府参考人

   (外務省国際法局長)   御巫 智洋君

   政府参考人

   (国土交通省航空局安全部長)           平井 一彦君

   法務委員会専門員     白川 弘基君

    ―――――――――――――

委員の異動

四月七日

 辞任         補欠選任

  東  国幹君     塩崎 彰久君

  岩田 和親君     渡辺 孝一君

  鳩山 二郎君     三谷 英弘君

  深澤 陽一君     土田  慎君

同日

 辞任         補欠選任

  塩崎 彰久君     東  国幹君

  土田  慎君     本田 太郎君

  三谷 英弘君     鳩山 二郎君

  渡辺 孝一君     岩田 和親君

同日

 辞任         補欠選任

  本田 太郎君     山口  晋君

同日

 辞任         補欠選任

  山口  晋君     深澤 陽一君

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 政府参考人出頭要求に関する件

 刑事訴訟法等の一部を改正する法律案(内閣提出第四一号)


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     ――――◇―――――

伊藤委員長 これより会議を開きます。

 内閣提出、刑事訴訟法等の一部を改正する法律案を議題といたします。

 この際、お諮りいたします。

 本案審査のため、本日、政府参考人として内閣府大臣官房審議官畠山貴晃君、警察庁長官官房審議官親家和仁君、法務省刑事局長松下裕子君、法務省矯正局長花村博文君、法務省保護局長宮田祐良君、外務省大臣官房参事官松尾裕敬君、外務省国際法局長御巫智洋君及び国土交通省航空局安全部長平井一彦君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

伊藤委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

伊藤委員長 次に、お諮りいたします。

 本日、最高裁判所事務総局刑事局長吉崎佳弥君から出席説明の要求がありますので、これを承認するに御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

伊藤委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

伊藤委員長 これより質疑に入ります。

 質疑の申出がありますので、順次これを許します。吉田はるみ君。

吉田(は)委員 おはようございます。立憲民主党の吉田はるみです。

 今日は、法務省の方も大臣も朝から本当に早いレク、お疲れさまでございます。どうぞよろしくお願いいたします。

 では、早速始めさせていただきます。

 今回、刑訴法の法案審議なんですけれども、一つの大きな目玉というか大きな変化というのが、GPSを保釈したときに装着するということがあると思うんですけれども、そもそも何でこのGPSを装着することが今回の法改正に上ってきたのか、そのきっかけになるようなことがあったかと思うんですけれども、教えてください。

松下政府参考人 お答えいたします。

 位置測定端末装着命令制度の創設に関する検討は、特定の事件だけを直接の契機とするものではございませんけれども、保釈中の被告人が国外に逃亡した事件といたしましては、例えば、令和元年十二月、海外渡航禁止等を条件として保釈された被告人が第一審係属中に同条件に違反し、本邦から不法に出国して逃亡し、いまだ身柄拘束に至っていない事案があるものと承知をしております。

吉田(は)委員 皆さん、今のでどの事件かお分かりになると思うんですけれども、二〇一九年の、まさに何か、世界を震撼させたあの逃亡劇、日産の元社長のカルロス・ゴーンさんがレバノンの方まで逃走されたということだと思うんです。

 ちょっと私、やはり分からないんですけれども、こういう事件名を言えないというのはどういう理由なんでしょうか、ちょっと教えていただきたいんですが。名前を言えないのが、ちょっと済みません、私、普通の感覚でなぜなんだろうと思うので、教えてください。

松下政府参考人 お答えいたします。

 個人の名前でございますので、プライバシー等に配慮をして、個別の事件の被告人の名前ですとか、そういったことは基本的になるべく申し上げないということとしております。

吉田(は)委員 分かりました。大体皆さん察しがつくと思ったんですけれども。

 こういったことが大きな要因になったということなんですが、じゃ、まず早速ですけれども、これが一つの大きな要因でございますけれども、今回、このGPSを装着する可能性というか、対象になる方はどのような方々になるのか、簡単にで結構です、その基準を教えてください。

松下政府参考人 お答えいたします。

 本法律案におきまして、位置測定端末装着命令をすることができる要件としましては、被告人が国外に逃亡することを防止するため、その位置及び当該位置に係る時刻を把握する必要があると認めるときとしておりまして、具体的にどのような被告人に対してこの命令をすることになるかは、裁判所において、個別の事案ごとに、具体的な事情を踏まえて判断されるものではございますけれども、例えば、被告人が、その社会的地位や経済力などに照らして、正規の手続によらずに国外に逃亡させることができる組織を利用できるですとか、被告人の経済力や人間関係等に鑑みて、我が国から離れて生活することが困難ではないなどの事情があって、国外に逃亡してしまうおそれが相応に認められる場合には、この命令がなされ得ると考えております。

吉田(は)委員 まさに二〇一九年のこの逃亡劇のところが参考になるなと私は思ったんですけれども、あのときには、ゴーンさんは、音響機材が入るような箱の中に身を隠して関空から出たわけですね。このときにその逃亡を幇助したと言われるお二人が、もしそれが駄目でも、新幹線に乗って横浜に向かって、その後出航する予定だった貨物船三そうを特定していたというようなこともございます。

 今おっしゃっていただいたように、ただ逃げるという可能性だけではなく、経済力もあるという方も入っているんだなということが分かりました。そうなると、対象は一体どのぐらいになるのかなということを、私、考えております。

 ちなみに、イギリスの運用によると、保釈する条件としてGPS端末の義務づけがなされているわけですけれども、日本の場合、こういった保釈許可の人員全員を対象とする可能性はございますか。

松下政府参考人 お答えいたします。

 本法律案の下で位置測定端末装着命令をすることができるのは、先ほども申し上げましたように、保釈を許す場合において、国外に逃亡することを防止するため、その位置及び当該位置に係る時刻を把握する必要があると認めるときに限っておりまして、その要件に当たるときということになるわけですが、したがって、保釈される被告人の全てに命令をするということは想定されておりませんで、裁判所において、この要件を満たすかどうかを、個別の事案ごとに、具体的な事情を踏まえて判断することになると考えております。

吉田(は)委員 全ては裁判所の判断ということになるんだと思うんですけれども。

 今回、やはり、このGPSを導入するに当たって、私は司法の専門家ではございません、どちらかというと経済の面からこういった課題を考えていくんですけれども、一体何人ぐらいが対象になって、このGPSを導入するに当たって幾らぐらいの費用がかかって、それはまさに、採算が取れるというか、その支出に見合うものなのかという観点から私は検証をさせていただきたいというふうに思います。

 では、まずその対象の点、今まで聞いてきたら、それほど多くないんだろうなという感じがいたしました。特に、カルロス・ゴーンさんの場合も、様々な記事を拝見しますと、逃亡されたその大きなきっかけは奥様と会えなくなるということだったそうです。

 やはり、家族という、お金だけでは縛れない、つまり、保釈金が没収されたって構わない、でも家族と会いたいとか、こういう思いが逃亡にぐっと引き寄せるんだろうなということで、じゃGPS端末をということでもあるのかな、保釈金だけでは縛れないのかなというふうに私は理解したんです。

 じゃ、早速ですけれども、ちょっと実際の数字を見ていきたいと思います。勾留されている人の中で保釈を求めている人、全体の数字、そして、うち外国人は何人か、数字だけ教えてください。

吉崎最高裁判所長官代理者 お答え申し上げます。

 まず前提として、勾留状の発付人員について申し上げますと、手元の集計ではございますけれども、令和三年に地方裁判所において終局した事件について勾留された被告人の数は、三万三千七百九人でございます。続いて、外国人の内訳も申し上げますと、うち外国人が三千八百五十七人ということになります。

 あわせまして、保釈に関してでございますけれども、保釈が、令和三年に地方裁判所において終局した事件において保釈された人数が、一万五百九十五名でございます。その割合が三一・四%余りと承知しております。うち外国人の保釈人数が三百二十五人と承知しております。

吉田(は)委員 ありがとうございます。

 今、保釈申請そして保釈許可のところまで御回答いただきました。ちょっと、私が昨日レクでいただいていた数字と若干違いがあるので、私が出していたパーセンテージ、ごめんなさい、今すぐ計算できないのであれなんですが、要は、約三万人の方が、保釈を要請していてそのうち許可されたのが一万五百九十五ということで、三一・四%の人が保釈を認められていると。

 うち外国人の割合、これは私が昨日いただいた数字と変わっていないので、このパーセンテージは同じだと思うんですが、外国人の方の場合は、八・四%だけです、認められるのが。全体の数字の中からいくと、明らかにやはり外国人の方の保釈は認められづらいというか、大きな数字の乖離があると思うんですね。

 海外に行く、もう日本を捨ててでも海外に行って逃げたいと思う方というのは、当然、海外に拠点があったり、そこに家族がいたりという方になると思うので、やはり、ゴーンさんの件もそうですけれども、外国の方というのが対象になる確率が高いのかなというふうに推察はされると思います。

 この中で、保釈が認められたけれども、その後、取消しになる方がいらっしゃいます。その保釈取消しの要件というのが、その後裁判が続いたとかいろいろ細かいことはあるんですけれども、やはり、逃亡あるいは規則を守らなかったという形で保釈取消しになる方がいらっしゃいます。何人いらっしゃいますでしょうか。

吉崎最高裁判所長官代理者 お答え申し上げます。

 令和三年に保釈の取消しがされた被告人は、延べ九十四人でございます。

吉田(は)委員 延べで九十四人。大体ここが、逃亡の可能性がある、あるいは、保釈したけれどもちょっといろいろな規則を守っていただけなかったという方の人数になるのかなというふうに私は推測をしました。最大で多分このぐらいなんですけれども、今、先ほど刑事局長がおっしゃったように、経済的な力まで含めると、ぐっと数は減って、何か、もしかして両手で数えられるぐらいとか、ちょっと今、私、いろいろ推察しているんですけれども。

 そんな中で、そこの方々に装着するGPS、さて、幾らぐらいの価格をかけていくのかというところを伺いたいと思います。

 今回のこのGPS装置、これは新たに開発するということでよろしいでしょうか。

吉崎最高裁判所長官代理者 お答え申し上げます。

 新たに開発する予定でございます。

吉田(は)委員 その開発には何年かかりますか。

吉崎最高裁判所長官代理者 お答え申し上げます。

 本法案におきましては、公布の日から起算して五年を超えない範囲内で政令において定める日から施行されるということとされておりますので、このとおりになりました場合には、五年を超えない期間の間に開発を進めていくことになると承知しております。

吉田(は)委員 先ほどの私の、多く見積もって百人以下ぐらい、でも、きっと両手で数えられるぐらいの方にGPSを装着するのかなというところで、五年かけてGPSを開発して、幾らぐらいお金がかかるんでしょうかね。

 ちょっと伺います。

 最高裁の方でも出していますが、ちょうどこの間の三月十七日に契約が終了したと思います、企画競争、GNSS端末装着導入に係る概念実証等業務というのが行われています。ここでどんな業者さんを選定され、どんな結果が出たんでしょうか。

吉崎最高裁判所長官代理者 突然の御質問で、詳細はこの場では承知しておりませんけれども、そのような業者を選定した上で適切な開発をしていくということになると思います。

吉田(は)委員 これはもうホームページ等でも確認できる情報ではあるんですけれども、要は、法律を施行して五年以内に開発をする、その前段階として、多分、業者さんを選定されて、その中で、オーケー、五年で開発できそうかどうか、何が問題になるかというプリテスト、何かパイロットテストみたいなものをやっていらっしゃるんじゃないかなと思うんですけれども、そこにかける費用として、昨年の補正予算で四千万円ついています。これを使われて検証されたんだろうなと思うんですけれども。

 どんな業者さんにするかは、もしかして今お答えできないかもしれないので、そこはお伺いしませんが、ただ、五年間ある開発期間に幾らぐらいの費用をかけてこのGPSを開発するのか、そのアイデアはあるはずだと思いますので、その金額あるいは概算を教えていただけないでしょうか。

吉崎最高裁判所長官代理者 お答え申し上げます。

 恐縮ではございますけれども、この法案成立後にこの法案の定める機能及び構造を備えた端末等の検討を進めていくことになりますので、今後の総額についてこの場でお答えすることは困難でございます。

吉田(は)委員 そうなると、これも、私も一国民の立場から考えると、今この法案審議をしていて、この法案を通すよというときになったときに、幾らかかるか分からない、そういうようなもの、議論もできないというのは、私はちょっと情報不足だなというふうに思います。

 実際、この改正法案の第九十八条十二で、GPSは次に掲げる機能及び構造を有するものでなければならないと具体的に規定をされています。これは私の想像ですけれども、例えば、もう既にGPSを導入している外国のGPSのデバイスを参考にこういうものが出ていって、幾らかかるか、その開発に何人の人が必要か、概算を出していなかったら、ちょっと法案の審議、私は難しいんじゃないかなというふうに思うんですね。外枠だけつくって数字はこの法にのっとってというのは、ちょっと私としては納得しかねるところなんですけれども、総額、全然アイデアがないというような状況でしょうか。

吉崎最高裁判所長官代理者 お答え申し上げます。

 繰り返しで恐縮ですけれども、現時点で総額についての想定はございません。

 今御紹介いただきましたような業者の知見もかりながら、今後、予算の枠組みなども検討していくことになると承知しております。

吉田(は)委員 ということで、来年度予算案にものせるかどうか分からないということなんですかね。

 概算要求は今年の八月に出します。今四月の終わりです、八月に出さなきゃいけない。あと三か月で、通常なら、分からないです、パイロットテストで四千万かかったものであるなら、日本全国に禁止区域が設けられて、GPSの端末を開発し、私、何十億単位なんじゃないかなと、ちょっと、ぱっと思うわけです。何十億、何百億、何千億、ちょっと、ごめんなさい、私も今アイデアがあるわけではないんですけれども、というものを、じゃ、来年度予算案には上げないということでよろしいんでしょうか。

吉崎最高裁判所長官代理者 お答え申し上げます。

 確たることは申し上げられませんけれども、来年度予算に計上することはほぼ間違いないものと承知しております。

吉田(は)委員 であれば、もう十月に概算要求は出てくるはずなんですね。いやあ、教えてくださいという私は思いですね。

 やはり司法の信頼というのは、私、透明性だと思うんです。ここの国会の場で審議をする際、やはり、GPS、何件ぐらい毎年出るのか、そこにどんな開発費用をかけてやっていくのか、それを教えていただいて議論する、これが私たちの役目じゃないかなと思うんですね。

 ここまで聞いて、大臣、どんな御感想をお持ちでしょうか。

齋藤(健)国務大臣 私、警察の予算要求についてコメントする立場にはないんですけれども、この法律については喫緊の緊急性があるということで提案をさせていただいているんですが、ただ、開発には少し時間がかかるということです。

 来年度予算には、今言明されましたけれども、しっかりと計上するということでありますので、その予算審議の段階で御議論いただくということではないかなと思っています。

吉田(は)委員 ちょっとすっきりしないものが残ったので、もう一言聞きます。

齋藤(健)国務大臣 済みません、警察じゃなくて最高裁です。ごめんなさい。

吉田(は)委員 もう一つお伺いしたいのは、多分、すごいお金をかけてこのGPS開発をして、民間企業、コンサル、いろいろなところに知見をいただきながらやると思うんですけれども、これは、ただ単に保釈中の、年間百件以内、あるいは、十件、それ以下の、数える程度なんじゃないかなという方にされるのか。それだけでは、いわゆるバリュー・フォー・マネーからいうと合わないなみたいなところが、ちょっと私なんかは考えちゃうんですけれども、もしかして、例えば性犯罪あるいはDV、ストーカー、こういった、その近くに寄ってはいけない、被害者の方とか、離しておかなきゃいけないような、そのような事案にも拡大する可能性というのはございますか。

松下政府参考人 お答えします。

 本法律案におきましては、位置測定端末装着命令を発し得るのは、国外逃亡を防止するために必要があると認められるときに限ることとしておりますけれども、この趣旨でございますが、我が国の刑事手続において、人工衛星信号等による測位技術を用いる装置を被告人に装着させて位置を把握する制度というのが初めて導入するものでございますので、運用に混乱を生じないようにするべきであり、そのためには、制度の対象者の範囲は、必要性が特に高く、運用に伴う困難も少ないと考えられるものに限定することが適切であると考えられるからでございます。

 その上で、将来的な制度の在り方につきましては、今回導入する位置測定端末装着命令制度の運用状況等も踏まえまして、どのようなものを対象とすべきかも含め、必要な検討を行うことになるものと考えております。

吉田(は)委員 ありがとうございます。

 必要な検討を加えていくという中にやはり入ってくるんじゃないかなと思うんですね。何か本当はこういうところも、いろいろな情報をいただいて、これはいいんじゃないですかとか、こういう拡大はあるんですかねという、いろいろな議論を本当に私はしたいなと思います。

 ぱっと考えて、私がもし勾留中であった場合、GPSをつけてでも外に行きたいです。中にいるより、外にやはり行きたいと思う方が多くなるんじゃないかなというふうに、普通に考えると、中にいるより、GPSをつけてでも外に行きたいなと思うかなと思うんですけれども、その辺りの何か方針や予測や、現段階でございますか。

松下政府参考人 お答えいたします。

 御指摘のような御意見もあるものとは承知をしております。

 その上で、ただ、先ほど申し上げたような理由によりまして、今回の法律案におきましては、対象をある程度限定的にするという形で行っておりまして、やはり必要性とバランスを取りながら、まずはこの形で始め、そしてその運用状況を見ながら、今後、拡大の要否を検討していく、そういうことになるのではないかなと思っております。繰り返しで恐縮です。

吉田(は)委員 こういう点も是非議論させていただきたいなと思うんですね。結局、私が今検証したかった、対象が大体何人ぐらいになっていくのか、予測で構わなかったんですけれども、その辺りの明確な数字や基準、基準というんですかね、概算が出ない。かつ、この開発に幾らかかっていくのか、これも来年度予算案にはのせるけれども、現時点では分からない。でも、業者さんはもう既に選定がきっとされているんですね、契約がもう三月十七で終わっていますから。その中の中身もちょっと教えていただいていないということで、また来週もありますよね、なので、この議論は私はもう少し深掘りさせていただいた上で、この点、しっかり検討させていただきたいなというふうに思いました。

 残り時間で、少し運用面の方から御質問をさせていただきたいと思います。

 まず、今回、禁止区域となるところが、この逃亡劇でもありました空港、港湾、こういった海外に出るところの区域というふうに理解をしています。

 委員の先生方のお手元資料、ここに、皆様の先生方の御地元はありますでしょうか。飛行場、これはヘリポートも含めまして、あります。ここから海外、あるいはいろいろな拠点から、出ていけるところです。

 また、港、港はすごいですね。全部で、先生方の御地元の港もあるかと思うんですけれども、最後のページ、八ページですけれども、これが総計です。港だけでいうと、総計九百九十三の港があるんですね。うわあ、すごい。日本全国、禁止区域、外に出るところになるわけですけれども、これは、禁止区域の設定というのは、その港湾のピンポイントですか、それともこの港湾や空港から半径何キロメートルみたいな形の設定にされるんでしょうか。教えてください。

松下政府参考人 お答えします。

 まず、本法律案におきましては、裁判所が位置測定端末装着命令をするときに、飛行場又は港湾施設の周辺の区域その他の位置測定端末装着命令を受けた者が本邦から出国する際に立ち入ることとなる区域であって、当該者が所在してはならない区域という形で定めておりまして、これをいわゆる所在禁止区域と呼んでいるわけでございますけれども、これを具体的にどのように定めるかにつきましては、個別の事案ごとに、裁判所が、具体的な事実関係を踏まえて判断することとなりまして、想定される典型的な区域としては、おっしゃりますように、国外と往来ができるような飛行場や港湾施設とそれら周辺の区域が考えられますが、これ以上の具体的なところについて今申し上げることはちょっと困難でございます。

吉田(は)委員 ちょっと今の御答弁のところでひっかかったのが、個別事案ごとというと、GPSを装着した人ごとに設定されるということですか。

松下政府参考人 お答えいたします。

 基本的にそのとおりでございます。

吉田(は)委員 なるほど。そうすると、かなりシステム的には高度なものが必要になってくるんじゃないのかなというふうに予想をします。

 個別でということなので、例えば、私も予想していたんですよ、港湾で働く、労働する方、いらっしゃいますよね、私もかつて貿易をやっていたので。保安地域というか、あそこに立ち入る方もいらっしゃるでしょうし、空港に単にお見送りに行かれる方もいらっしゃるでしょうし、貿易や運輸に携わっている方はその区域内に入っていくこともあるでしょうし。これは、港はいっぱいありますけれども、この後、山田委員からもお話があるかと思いますけれども、離島に出ていく船、これは単に家族に会いに行くということもあると思うんですけれども、この辺りの管理というのは裁判所がやられるということでよろしいんでしょうか。

松下政府参考人 お答えいたします。

 基本的に、個別の事案ごとに裁判所がその必要な範囲を定めるということとなっております。

吉田(は)委員 なるほど。じゃ、裁判所の皆さんは大変だなと思ったんですけれども。

 具体的に、ちょっと頭に描きたいんです。まさかモニターを見ながら見ているわけではないと思うんですけれども、この禁止区域に入ったときに多分アラートみたいなものが鳴るようなシステムではないかと。個別ごとにプログラミングしてやるんですかね。

 アラートが鳴るのは、禁止区域に侵入するというときと、恐らく、壊したとき、そして取り外して置いてっちゃったとき、こういうことが予想されるんですけれども、個別具体的にそういうような設定の仕方ができるようなシステムを今考えていらっしゃる、かつ、誰かが二十四時間張りつきではなくて、その禁止区域に入ったときにアラートが鳴るというようなことでよろしいでしょうか。ちょっと具体的に予想ができるようにお答えいただければありがたいです。

松下政府参考人 お答えいたします。

 本法律案において、裁判所は、位置測定端末装着命令をするときは、先ほど申し上げましたように、所在禁止区域を定めることとしておりまして、その所在禁止区域は、命令の内容としてその者に対して告知をされるということになっております。そして、位置測定によってその端末が所在禁止区域内に所在することが検知されたときには、直ちに、かつ、自動的に、位置測定端末を装着された者に対して当該事由の発生が知らされるということとしております。

 こうして位置測定端末が所在禁止区域内に所在することが確認され、勾引することができる場合に該当するときでも、明らかに必要がないと裁判所が認めるときには勾引はできないということとされております。

 ですので、お尋ねは……(吉田(は)委員「二十四時間誰かが見ていたり」と呼ぶ)二十四時間誰かが閲覧して監視しているわけではなく、機械的に、自動的にその位置を把握して、所在禁止区域に入った場合には、本人と、裁判所が管理する機械の方に通知が、どのようなものかは仕組み次第ですけれども、分かるようになるということでございます。

吉田(は)委員 そういうアラートが鳴ったときに、本人にも、ああ、鳴った、まずいというのが分かる、かつ、裁判所にもそのお知らせが、アラートが行くということなんですけれども、じゃ、そこからどういう初動をされるのかをちょっと教えていただきたいんですが、鳴りました、裁判所は、あれ、これは勾留した方がいいのか、それとも間違いかな、この判断に時間がかかると思います。そこの裁判所から今度は検察に連絡が行くんでしょうか。そして、検察から警察、その禁止区域の所管の警察に行って、その警察がその方の身柄を拘束するというような形になるんでしょうか。ちょっとそのプロセスを教えてください。

松下政府参考人 お答えをいたします。

 まず、御指摘のような遵守事項の違反が検知された場合は、本法律案におきましては、まず裁判所が遵守事項の違反の発生等を確認することができる機能を有する電気通信設備に信号が送信されまして、その遵守事項違反の発生を確認した裁判所は、直ちにその旨を検察官に通知しなければならないとしております。その上で、裁判所は、検察官の請求により、又は職権で、当該被告人を勾引することができ、検察官、検察事務官又は司法警察職員は、勾引状を執行するときは、裁判所の許可を受けて、当該被告人の端末位置情報を表示して閲覧することができるものとしております。

 遵守事項違反が検知された場合には、被告人の国外逃亡が切迫している蓋然性が高いことから、身柄の確保に向けた具体的な体制については、こうした仕組みの下で、可能な限り速やかに勾引状を執行してその身柄を確保することができるよう、関係機関において制度の施行までに適切な連絡体制が構築されるものと考えております。

吉田(は)委員 ちょっとそこの連絡体制のところがいま一つ私にはよく分かっていないので、改めて教えてほしいんですけれども、ちょっと素人に分かるように教えていただきたいんですが、裁判所から検察に連絡が行くまで、このタイムラグはどのぐらいなんだろう。まさか電話で連絡とかじゃないと思うんですけれども、通常、こういうようなシステムを開発するのであれば、即時に全ての関係機関に連絡が行くような、そういうネットワークをつくらないと私は余り意味がないと思うんですよ。そこはちゃんとできますでしょうか。

松下政府参考人 お答えいたします。

 具体的にどのぐらいの時間ということをただいまお答えすることは困難でございますけれども、御指摘のように、海外逃亡のおそれが逼迫している可能性がある状況でございますので、速やかに連絡体制が取れるように、今後の機器の構築により考えていきたいと思っています。

 電話かどうかというところも含めて今の段階ではお答えできないんですけれども、今後の技術の進展等もあると思いますので、施行までの間にしっかりとした体制を構築していくこととなると考えております。

吉田(は)委員 まさか電話でと言うんじゃないよねと思ったんですけれども、ちょっと、せっかくこれだけのお金をかけてGPSをやって、こういうような、カルロス・ゴーンさんのときは十五億の保釈金を没収しましたけれども、あれは一時間半で出ているという状況なんですね。そこからやはり学ぶとしたら、そこまでちょっと詰めて教えていただきたいなというのが私の率直な感想です。

 こういった点で、ちょっと最後に、私、大変僭越ながら申し上げたいんですが、こういった議論のときに、私は、繰り返しになりますが、司法出身ではありません、専門家でもありません、そのふりをする必要もないと思っています。こういう場で国民の皆さんに分かりやすくやはり議論をし、いろいろな情報を開示し、そしてよりよい司法をつくっていくこと、透明性を高めていくこと、今までの法務委員会での、何か本当に専門的なやり取りで、見ない方がいいやみたいな、ちょっと見てもよく分からないというんじゃなくて、また新たな、司法改革もしていますけれども、是非国民に開かれた議論としていただきたいということを申し上げて、最後に、大臣、いかがでしょうか、このように考えているんですけれども、是非大臣、お一言お願いいたします。

齋藤(健)国務大臣 これは多くの人に関わる話だと思いますので、多くの人に分かるように説明をし尽くすというのは基本的だと思っていますし、先ほど、時間がどのくらいかかるかというのは、恐らく所在禁止区域を広げれば広げるほど早くアラームが鳴るということかもしれませんが、それはやはり個別の状況に応じて、実際に勾引できるような範囲の設定とかそういうことで、しっかりと勾引するということになっていくんだろうと思います。

吉田(は)委員 どうもありがとうございました。質問を終わります。

伊藤委員長 次に、山田勝彦君。

山田(勝)委員 立憲民主党の山田勝彦です。

 本日も、吉田委員に引き続き、刑事訴訟法の一部改正案についての質疑です。どうぞよろしくお願いいたします。

 今回の改正では、公判期日までの出頭及び裁判の執行を確保するための法整備がその趣旨としてあり、保釈中の被告人に出頭確保のための罰則を創設する、また、保釈等の取消しや保釈金没取の強化などを行うものであります。

 それらの中でやはり私も気になるのは、改正法九十八条の位置測定端末装着命令制度です。改正法九十八条では、裁判所は、保釈された者による国外逃亡を阻止するため、位置測定端末の装着を命ずることができるとし、その位置測定端末、いわゆるGPSが保釈中の人の体に装着されることになります。法務省の説明では、先ほどからあったように、あくまで海外逃亡のおそれがある被告人に限定されるということですが、人権の観点から、やはりこれは十分な議論が必要かと思われます。

 保釈は、刑事事件の手続上、長期間身柄を拘束されることによって社会生活の基盤を失う被告人の不利益を少しでも軽減するための制度です。GPSを装着させることはプライバシーの侵害に当たるのではないか、そこまでするのであれば、そもそも保釈自体の要件を厳格化した方がよいのではないか、様々な疑問を感じております。

 そこで、お伺いさせていただきます。

 GPSをつけなくてはいけないほどの国外逃亡のおそれがある被告人に対し、保釈を許している法的根拠についてお伺いいたします。お答えください。

松下政府参考人 お答えいたします。

 刑事訴訟法八十九条におきましては、いわゆる権利保釈と呼んでおりますけれども、といたしまして、一定の重い罪を犯したものであるときや、罪証を隠滅すると疑うに足りる相当な理由があるとき、氏名又は住居が分からないときなどを除き、保釈を許可しなければならないということとされておりますが、逃亡のおそれがあること自体は、その除外事由として規定されておりません。

 そのため、国外逃亡のおそれが認められる場合であっても、これらの除外事由に該当しないときは、保釈を許可しなければならないこととなっております。

 また、除外事由に該当する場合でありましても、刑事訴訟法九十条におきまして、裁判所は、いわゆる裁量保釈と呼んでおりますけれども、保釈された場合に被告人が逃亡し又は罪証を隠滅するおそれの程度のほか、身体の拘束の継続により被告人が受ける健康上、経済上、社会生活上又は防御の準備上の不利益の程度その他の事情を考慮し、適当と認めるときは、保釈を許可することができるとされております。

 そのため、国外逃亡のおそれがある場合においても、ほかの考慮事情との関係で、法律上は裁量保釈ができることとされております。

山田(勝)委員 ありがとうございます。

 八十九条の権利保釈、そして九十条の裁量保釈によって、被告人は保釈の権利が手厚く認められている、法的に保障されているということがよく分かりました。

 資料一にお示しのとおりなんですが、そういう、保釈率が上がってきているという状況です。最高裁の説明によれば、令和三年度の統計では、勾留されている人のうち約五五%が保釈申請をしており、そのうちの六三%の方々が保釈されています。

 八十九条の先ほど御説明があった権利保釈、九十条の裁量保釈が法的に明記されていながら、保釈申請者のうち三七%が不許可となっています。どのような理由で不許可となっているのでしょうか。お答えください。

吉崎最高裁判所長官代理者 お答え申し上げます。

 御指摘の保釈が認められない理由につきましては、個別具体的にお答えする立場にございませんけれども、その上で、一般論として申し上げますと、先ほど御紹介がありましたとおり、権利保釈に関する、刑事訴訟法には保釈の除外事由が定められております。具体的には、被告人が死刑又は無期若しくは短期一年以上の懲役若しくは禁錮に当たる罪を犯したものであるとき、被告人の氏名又は住居が分からないとき、被告人が罪証を隠滅すると疑うに足りる相当な理由があるときなどといった事由でございます。

 また、先ほど裁量保釈についても言及がございましたけれども、刑訴法九十条には、裁判所が適当と認めるときに職権で保釈を許すことができる旨定められておりますけれども、その際には、被告人が逃亡し又は罪証を隠滅するおそれの程度などを考慮することとなります。これらを踏まえまして、保釈請求を却下する場合もあるものと思われます。

山田(勝)委員 ありがとうございます。

 海外逃亡のおそれがある人は保釈をしない理由には当たらないけれども、証拠隠滅とかそういった可能性がある方は保釈を不許可とする可能性があるというお話でした。ただ、三七%もの方が認められないというのは、数字的に、私の個人的な感想からすると、かなり多いなという印象を受けました。

 一方、勾留されている人全体の約四五%の人が保釈申請をそもそもしていないという実態があります。先ほどから御説明いただいているように、被告人には、自由を奪われる手前で、保釈という、人として、社会生活、いろいろな、大切な人としっかりとそういう時間を過ごすための権利が保障されていながら、約半分近くの人たちがその保釈申請すら、権利を行使すらしていないというデータを見たときに、大変違和感を感じました。その原因は一体何なんでしょうか。どのように分析されていらっしゃるでしょうか。お答えください。

吉崎最高裁判所長官代理者 お答え申し上げます。

 勾留中の被告人のうち約四五%の方が保釈の申請をしていない、その理由をお問い合わせというふうに承知いたしました。

 ただ、裁判所は、被告人が保釈を申請していない理由を承知する立場にございません。先ほどから御紹介しておりますとおり、刑訴法上、保釈には一定の要件が定められておりますので、被告人が保釈を申請しない場合もあるものとは考えられるというところでございます。

山田(勝)委員 今回のテーマは、海外逃亡のおそれのある、そういった被告人に対して、より厳格に、GPSをつけて管理しようという内容のものです。でも、その手前には、本来、保釈の権利を有しながら、保釈申請すらできていない人たちが四五%もいるという実態があります。

 これに対して、個人的なとかそういうことじゃなくて、しっかり分析をして、例えば保釈金が、それも問題であるのであれば保釈金の設定を改善するとか、そういった見直しが必要だと私は思います。

 ここまでの議論で、大臣、通告はしていなかったんですが、大臣の見解を、もしいただければお願いします。

齋藤(健)国務大臣 済みません、保釈に関しては、私、答弁は差し控えたいと思います。

山田(勝)委員 保釈は本来、先ほどから繰り返しになりますが、被告人の権利であります。結局、お金を準備できるかできないかによって、保釈を希望しても保釈されない人が相当数いるのではないかと思われます。こういったところの見直し、改善、是非検討いただきたいと思っております。

 次に、位置測定端末装着命令について、国外に逃亡することを防止するため、その位置及び当該位置に係る時刻を把握する必要があると認めるときと判断する要素、具体的にはどのようなことを想定しているのでしょうか。

松下政府参考人 お答えいたします。

 本法律案におきましては、位置測定端末装着命令の要件は、委員御指摘のとおり、被告人が国外に逃亡することを防止するため、その位置及び当該位置に係る時刻を把握する必要があると認めるときとしておりまして、その判断に当たりましては、例えば、国外における生活拠点を有すること、国外で継続的に生活できるだけの経済力や人的関係を有すること、また、国外に、ある意味不法にだと思いますが、出国させることができる組織との関係を有することなど、被告人が国外に逃亡するおそれの程度の判断に影響を及ぼす様々な事情を考慮することになると考えております。

山田(勝)委員 ありがとうございます。

 今回のポイントであるGPSを利用した保釈に関して、日本弁護士連合会は、人質司法の解消を求める意見書を出しています。

 諸外国では、身体拘束に代替する公判出頭確保等のための措置として多様な代替措置が用いられており、被告人を釈放した上で、GPS発信装置などを装着して動静を把握する電子監視制度や、発信装置などを装着した上で外出を禁止する在宅拘禁制度が導入されているとし、我が国においても、被告人は原則として保釈する運用を実現することを前提として、電子監視制度や在宅拘禁制度は、身体拘束より制限的でない代替措置の一種として、必要な場合に限り、最小限の制限を課すものとして検討されるべきであると言われています。

 また、法制審議会では、GPS装着命令の対象について、被害者や関係者との接触を防止する場合も対象としてはどうか、保釈保証金を用意できない場合に補完的に利用できる余地はないか、こういった意見が多数の委員からあったとされています。さらに、制度施行後、実施状況を検証して、保釈の対象拡大に向けた検討が行われることを期待する意見が、法制審議会の部会の中で多くの委員からあったということです。

 まずは法務省、政府参考人にお伺いします。GPSを活用した保釈の対象拡大について、どのように考えていらっしゃいますか。

松下政府参考人 お答えいたします。

 本法律案におきましては、位置測定端末装着命令を発し得るのは、国外逃亡を防止するため必要があると認められるときに限るということとしておりますけれども、これは、我が国の刑事手続において、そういった装置を被告人に装着させて位置を把握する制度は初めて導入するものでございますので、運用に混乱を生じないようにすべきであり、そのために、制度の対象者の範囲は、必要性が特に高く、運用に伴う困難も少ないと考えられるものに限定することが適切であると考えられるからでございまして、そういった様々な御指摘もございましたけれども、今のような考え方によって、国外逃亡を防止するために必要があると認められるときに限るということで、この法案ではそのような仕組みとしております。

 その上で、将来的な制度の在り方につきましては、今回導入する位置測定端末装着命令制度の運用状況等も踏まえながら、どのようなものを対象とすべきかも含めて、必要な検討を行うこととなるものと考えております。

山田(勝)委員 是非とも必要だと思っております。

 先ほど言ったとおり、法律上、権利で認めながらも、四五%もの人が保釈という申請すらしていない。保釈されている人というのは全体で三三%にとどまっています。保釈金が用意できないとか身元引受人が見当たらないとか様々な事情で、本来、保釈を求めている人たちが保釈を、その権利を行使できない。

 そういう被告人に、新たに今回、GPSをつけるというのは、海外への逃亡を防止するだけではなくて、そういう人たちに保釈のチャンス、選択肢を広げるという意味でも、僕は大変重要な取組だと思っていますし、可能性を感じております。

 齋藤大臣、御見解をお聞かせください。

齋藤(健)国務大臣 今局長から御答弁申し上げたとおり、まずは、この法律案では、位置測定端末装着命令を発し得るのは、国外逃亡を防止するために必要があるというときに限定をしているわけであります。

 その限定する理由については、局長が申し上げましたが、運用に混乱を生じさせないようにまずはすべきであるとか、それから、制度の対象者の範囲は、必要性が特に高く、運用に伴う困難も少ないものと考えられるものに限定することが適切であると考えたからでありますが、御指摘のような面もありますので、将来的な制度の在り方については、今回導入する新制度の運用状況等も踏まえながら、どのようなものを対象とすべきかも含めて、必要な検討を行っていくことになるというふうに考えています。

山田(勝)委員 是非とも前向きな検討をお願いしたいと思っております。

 次に、端末そのものについてお尋ねいたします。

 GPSは常に身につけることが求められるため、生活上の防水性もあり、壊れにくいものであるとともに、被告人のプライバシー保護の観点から、町じゅうで保釈中の被告人と分かるようなものであってはならないと考えられます。どのような機器を被告人の身体のどの位置に装着させることを想定されているのでしょうか。

松下政府参考人 お答えいたします。

 本法律案におきましては、位置測定端末の機能や構造の要件といたしまして、位置測定端末が装着された者の体から離れたこと等の事由の発生を検知するとともに、直ちに、かつ、自動的に、位置測定端末装着命令を受けた者にその旨を知らせる機能を有すること、また、人の体に装着された場合において、その全部又は一部を損壊することなく当該人の体から取り外すことを困難とする構造であることなどを定めておりまして、まずはこれらの法律上の要請を満たすものとすることが必要でございます。

 その上で、具体的な仕様につきましては、位置測定端末装着命令制度の運用主体である裁判所において、法務省を含む関係機関とも協議しつつ、適切に検討がなされるものと考えておりますが、その際、位置測定端末を体のどの部位にどのように装着するかにつきましても、先ほど申し上げた位置測定端末が備えるべき機能や構造を前提といたしまして、そうした要請を満たすものがどのような大きさ、形状、重さのものとなるか、位置測定端末を装着していることが殊更に強調されるようなものとならないかなど、諸般の事情を考慮しつつ、裁判所において適切に検討がなされるものと考えております。

山田(勝)委員 現時点で、GPSの装着のイメージ、ビジュアルというのが全くないということなんですね。

 今回のこの法案の審議において、私、最初に、冒頭言ったとおり、GPSをつけるということは、大変なプライバシーの問題でもあるわけです。人権的な観点からも重要な問題でもあるにもかかわらず今後検討するという内容は、この場の審議において不十分だと思います。

 なので、是非、五年以内の開発とおっしゃるんですけれども、ビジュアルのイメージ、本当にそれがその方、被告人にとっての人権をしっかり守れるものなのかどうか、それをいち早く私たち国会議員の方にも示して、情報を公開する必要があると思っておりますので、是非その辺りをお願いしたいんですが、どうでしょうか。

吉崎最高裁判所長官代理者 最高裁からお答え申し上げます。

 位置測定端末の使用に関しましては、先ほど来出ておりますとおり、五年間の開発期間がございます。現時点で法案で定められた機能等を超えて具体的にお答えすることは、恐縮ですけれども、困難でございます。

 もっとも、御指摘の点、被告人の人権保護の観点が重要であることは当然考慮しながら、検討していきたいと考えております。

山田(勝)委員 このGPSの設備、運用を裁判所自身で行うことを想定しているのかを次にお伺いしたいと思います。若しくは民間事業者に委託するのでしょうか。

松下政府参考人 お答えいたします。

 本法律案におきまして、位置測定端末装着命令は裁判所が行うこととしておりまして、位置測定端末装着命令制度の運用主体は裁判所でございます。

 その上で、位置測定端末の装着は、裁判所の指揮によって裁判所の職員がするものというふうにしておりまして、また、一定の遵守事項違反が検知されたことの検察官に対する通知は裁判所が行うものとしておりまして、法律上、重要な事項については、主体を明示的に規定をしてございます。

 それ以外の事項について、それを裁判所が自ら行うのか、民間事業者に委託するのかについて特に法律上の制限はしていないことから、この制度の運用主体である裁判所において、制度の趣旨や当該事項の性質等を踏まえつつ適切に対処されるものと承知をしております。

山田(勝)委員 ここも何か少し回答が曖昧なところがあると思うんですよね。

 GPSをつけられる当事者の身になったときに、それが公的機関なのか民間なのかによって全然違うんですよね。民間事業者の場合にちゃんとその情報が保護されるのかとか、そういった観点もあって、今の説明では裁判所が行うということなんですが、これだけの大がかりなシステムの運用を裁判所だけで行うのは到底不可能だと思いますので、その辺り、先ほど吉田委員からも予算の話もあったんですけれども、全容が全然見えてきません、重要な、システムだったり、運用だったり。こういったところを、先ほどの装着のビジュアルもそうなんですけれども、いち早くお示しいただくことが大事だと思っておりますので、是非ともそのように努めていただきたいと思います。

 本法案では、保釈の執行はGPSを装着した後でなければできないとされています。保釈の執行は身体の自由を回復する行為であることから、できるだけ速やかに行うことが望ましいと考えられますが、GPS装着から保釈の執行による身柄の解放までの手続は、具体的にどのようなことを行おうと想定しているのでしょうか。

 これに関連し、法制審議会部会では、法務省より、GPS装着の確認は、被告人が勾留されている刑事施設や留置施設の責任ある職員からの報告などによって確認することも考えられなくない、このような曖昧な発言がなされているようですが、GPS装着の確認について、刑事施設などの職員が関わることを想定されているのでしょうか。お答えください。

松下政府参考人 お答えいたします。

 位置測定端末装着命令を受けた者の身体への位置測定端末の装着を運用上どのように行うかについては、本法律案の成立後、関係機関において必要な協議を行いながら適切に定められることとなると考えておりますけれども、いずれにしましても、位置測定端末の装着そのもの、これは裁判所の指揮によって裁判所の職員がするということとしております。

 これは、位置測定端末の装着が確実に行われることを担保するとともに、位置測定端末装着命令制度の公正さを担保しようとするものでございまして、その装着を裁判所の職員以外の者が行うことは想定していません。

山田(勝)委員 ありがとうございます。

 ここまでの議論で、GPS装置の運用にはまだまだ課題がかなりあるということです。海外への逃亡を防止することが期待される一方、装着のルールやその管理体制、プライバシーがしっかり守られるのか、様々な観点も重要です。対象をどこまで広げるのか、GPS装着が多発することによって、保釈時の被告人の権利が侵害されるようなこともあってはなりません。今後、運用についてまだまだ議論が必要だというふうに思っております。

 次のテーマです。監督者制度についてです。

 改正法は、裁判所は、保釈などに際して、監督者を選任し、被告人と共に公判期日に出頭することなどを命ずることができる、また、監督者が義務に違反した場合には、監督保証金が没取され、保釈などが取り消されるとされています。監督者には非常に重い責任を負わされる内容であり、従来の身元引受人に比べればかなりハードルが上がっているように感じます。

 この新たな制度、監督人が見つからないと保釈できなくなるのでしょうか。これまでの身元引受人の制度はなくなってしまうのでしょうか。お答えください。

松下政府参考人 お答えいたします。

 委員が御指摘の身元保証人というものは、事実上の運用で行われていたものでございまして、法律上の制度ではございません。

 本法律案におきましては、裁判所は、保釈を許す場合において、必要と認めるときは、適当と認める者を、その同意を得て監督者として選任することができるということとしておりまして、できるでございますので、監督者を選任しなければ保釈が許されないということではございません。

 また、監督者制度が施行された後におきましても、実務上行われておりますいわゆる身元引受人によって、監督等を誓約する書面を求めて、事実上保証しますというふうに言っていただく運用が禁止されるということではございませんので、監督者ではなく、身元引受人となるということはあると考えられます。

山田(勝)委員 ありがとうございます。

 監督人もGPSもそうなんですけれども、最小限度の運用でとどめるべきだというふうに思っております。

 ちょっと順番を変えまして、最後に、保釈がテーマだったんですが、保釈期間を終えた後、その後の刑務所における面会について伺います。

 実は、私自身、昨年九月、沖縄の刑務所に、知人の面会を行いました。そのときに、本当に日本の面会のルール、驚かされました。当日のその場での判断でないと面会ができない、事前予約ができないんです。私の地元長崎から沖縄の知人に面会しに行く、そして、その知人を、僕は、出所後うちの会社で、農園で雇用しよう、そういう意図で、その彼は一生懸命将来に向けて頑張っているわけです。社会復帰を目指して、そういう将来的な雇用も考えている人との面会の機会を、そのような運用であって本当にいいんでしょうか。

 私は、こういう立場だったので、すぐに法務省に確認しました、おかしいじゃないかと。通常であれば、わざわざ長崎から飛行機まで予約して沖縄に行って、その日一日仕事も休んで、その日、その当日、その刑務所の判断でないと面会できるかどうか分からないと言われたら、行きませんよ。日本は余りにもおかし過ぎる。

 今日、資料をお配りしているんですけれども、海外の事例もお示ししております。このように、アメリカ、イギリス、フランス、ドイツ、カナダ、様々な国の運用を示させていただいているんですけれども、どこの国も事前予約ができるんです。オンラインで、そういうオンライン面会もできるとか、オンラインの予約もできるとか。IT化、裁判のIT化も進みましたし、先日のADRもオンライン化を推進しています。この面会のルールが余りにも時代遅れ、古いと思います。

 齋藤大臣、時間がないので、ちょっと大臣に、この面会の問題、是非とも、こういった海外の事例もしっかり研究、検討して、今の日本の面会のルール、改めるべきだと私は思いますので、大臣、しっかりこの辺りを調査検討いただけないでしょうか。

齋藤(健)国務大臣 御指摘のとおり、面会は、受刑者の改善更生と円滑な社会復帰のために、友人、知人との健全で良好な関係を維持する上で重要な手段となる場合があるともちろん認識をしています。

 一方で、受刑者との面会を許すべき、あるいは許すことができるかどうかを判断するためには、刑事施設で面会をする時点において、その面会の目的、面会を希望する方の情報、受刑者との関係性など、受刑者のそのときの状況もあります、を踏まえて検討する必要も一方であるんだろうと思います。

 その上で、大変重要な御指摘なので、私としては、矯正局からまずしっかり実情を聞いてみたいと思っています。

山田(勝)委員 ありがとうございます。

 ちなみに、その私の知人は大変喜んでいました。私が会いに行って、三十分という限られた時間だったんですけれども。

 やはり、刑務所の中にいる人たちにとって、外とのつながり、その後の社会復帰したときのイメージができるような前向きな話をするということは大変重要ですので、面会の機会を奪ってしまうような今の運用は是非とも改めていただきたいということをお願いして、私の質疑とさせていただきます。

 ありがとうございました。

伊藤委員長 次に、阿部弘樹君。

阿部(弘)委員 日本維新の会の阿部弘樹でございます。

 早速質問に移らせていただきます。

 裁判中に逃走している被疑者、この数についてまずお尋ねさせていただきます。被告と言った方がいいんですかね。

 法制審の資料をいただいております。通常一審終局前の保釈取消し人数に係る保釈事由、この中に、逃走ということが理由で取消しになっている事例というのが見られます。実際の数字としては、統計学的にはどうなのかなと思って、年数も併せてお願いします。

松下政府参考人 お答えいたします。

 法務省におきまして、保釈中に逃亡した被告人の人数を網羅的には把握しておりませんけれども、関連する統計について把握している限りで申し上げますと、令和元年から令和三年までの間に、通常第一審終結前に保釈が取り消された被告人のうち、逃亡し又は逃亡すると疑うに足りる相当な理由があるとして保釈を取り消された件数は百十五件、また、逃げ隠れをしてはならないとの条件に違反したとして保釈が取り消された件数は六十二件であったと承知をしております。

阿部(弘)委員 そのような理由で今回のGPS、法改正が行われたと思っております。

 実際に、逃げた被告、あるいは被疑者と言っていいのか、その方を、身柄を拘束するのは誰の責任なんでしょうか。

松下政府参考人 お答えいたします。

 保釈された被告人が逃亡した場合、まずは、検察官の請求等によりまして裁判所が保釈を取り消すことができるとされておりまして、そして、保釈を取り消す決定があったときは、検察官の指揮により、検察事務官、司法警察職員等が被告人を刑事施設に収容することとされております。これは刑事訴訟法に規定をされております。

 被告人を収容する業務につきましては、個別の事案ごとに、対象となる被告人の属性や当該事案の性質等の様々な事情を踏まえて対処することとなっております。

阿部(弘)委員 よく分かりました。

 それでは、逮捕に向かうのは検察事務官の方々なんですね。

 よくニュース映像で、刃物を振り回している人を捕まえようとする、あるいは車で逃走する人をボンネットに乗って抑えようとする。検察事務官の方が行う本来の業務じゃないような気がして、逮捕技術もそれほどたけてはいないと思いますし、武術の日頃の訓練もないと思いますが、そういう点は、今後、法改正にかかわらず逃走する方はいらっしゃるわけでございますから、どのように対処していかれますか。従前どおり、裁判事務に、あるいは法務事務に携わる事務官の方々に逮捕させ続けるんですか。

松下政府参考人 お答えいたします。

 先ほど申し上げた、被告人を保釈の取消しがあったときに収容するときの規定におきましても、検察事務官、司法警察職員等ということで先ほど申し上げたところでございまして、収容業務につきまして、個別の事案ごとに、対象となる被告人の属性ですとかその事案の性質等の様々な事情を踏まえて対処することとなるわけでございますけれども、検察事務官が収容する場合にも、司法警察職員の協力を得ることもできるとされておりまして、実際に司法警察職員の協力を求めた場合もあると承知をしております。

阿部(弘)委員 私は、以前この委員会でもお話ししたかと思いますが、精神科病院の中で覚醒剤、薬物乱用者の治療も行っておりまして、時にフラッシュバックが起きて、非常に、ちょっと乱暴な行動を起こされる方もありますし、妄想などを抱かれる方もいらっしゃいますので、是非とも、司法関係、警察など、その方々に応じて協力をされた方が僕はいいと思いますので。

 ニュースでああいう姿を見て、何かいたたまれずに、日本の司法は大丈夫か、まず、そもそも逃走を許したことが大丈夫かということと、捕まえに行く人たちが、非常に立派な方ではありますけれども、逮捕技術が全くないんじゃないかというふうに想像できるような方々が一生懸命やられることに痛々しさを感じるものですから、是非ともよろしくお願いします。

 それでは、次の質問に移ります。

 GPS装着についてちょっとお尋ねします。

 これは以前、私もお聞きしたことがあります。韓国で先進例、もう既にGPS装着を行っているということでございますが、それでよろしいんでしょうか。

松下政府参考人 お答えいたします。

 御指摘のとおり、大韓民国におきまして、法律上、裁判所が保釈の条件として位置追跡電子装置の付着を命じることができまして、その際、外出制限や住居制限等の遵守事項が定められて、その遵守事項違反があった場合には、保釈条件が変更されたり、保釈が取り消され得るということとされております。

 実務上、手首に装着する電子装置が用いられ、電子装置の位置情報の取得、把握は、法務部所属の保護観察所と位置追跡管制センターが実施するというような制度となっているものと承知をしております。

阿部(弘)委員 恐らく法務省は、この法改正に当たって、フランスやアメリカ、イギリス、韓国などのそういうGPSを装着する国の事例を調査して、そして日本に導入するということでございます。

 やはり、海外から日本にお越しになって、そして犯罪を起こすということは、法務省の白書からも、数が増えてきているんじゃないかという話もありますし、海外逃亡のおそれもあるわけでございます。

 その装置がどのような装置で、では、海外ではどんなトラブルが起きているか。分かりましたら、分かる範囲で結構でございます。お願いします。

松下政府参考人 お答えいたします。

 まず、海外の制度がどんなものかということでいいですか。

 まず、我々は必ずしも全て把握しているわけではございませんけれども、把握しているところで言いますと、アメリカでは、法律上、裁判所が保釈の条件としてGPS機器の装着を定めることができ、その際、一定の区域に立ち入ったり、一定の区域から出てはならないことなどの遵守事項が定められ、その違反があった場合には、保釈が取り消されたり、保釈条件が変更されたりするほか、保釈条件違反として法廷侮辱罪が成立し得ることとされておりまして、装置としては、防水加工が施された足首に装着するGPS端末が用いられ、GPS端末の位置情報の監視は、連邦裁判所の職員である公判前事務担当官が行っているものと承知しております。

 問題点については、これもまた必ずしも網羅的に把握しているものではございませんけれども、例えば、韓国における電子監視制度におきまして、その監視に服さない例として、法務省として把握している限りで申し上げると、大韓民国の電子監視制度におきましては、電子装置の損壊事例としてベルト部分の切断が最も多くて、制度導入当初から複数回によりベルトの強化を行われたというものと承知をしております。

阿部(弘)委員 私は、ウクライナ侵攻に伴ってロシア国内でそのことを批判したアナウンサーだったですかね、ロシア当局からGPSをつけられたという事案をニュースで知っております。そうしたら、その後にその方が、海外に助けを得て、海外に行かれた、身の安全を確保された。それは私どもにとっては非常にうれしい話でございますが、一方、そういうことが可能なのかということも、この法案審議の中では不安に思うわけでございますが、そういう点はいかがでございましょうか。

松下政府参考人 お答えいたします。

 本法律案におきましては、位置測定端末の機能や構造の要件についていろいろ規定をしておりますけれども、その中で、人の身体に装着された場合において、その全部又は一部を損壊することなく取り外すことを困難とする構造であることなどを定めておりまして、そういった法律上の要請を満たすものを位置測定端末として開発をして運用していくということを予定しております。

 具体的に、どういう形の、どこに装着するものかというところにつきましては、先ほど申し上げたように、今後、本人に負担の少ないものとしていろいろ開発をしていくわけでございますけれども、委員が御指摘のように、容易に取り外したり損壊したりすることができないようなものとするということで開発をしていくものと承知をしております。

阿部(弘)委員 恐らく、私の想像では、よく、皆さん、医療機関でレントゲンを撮るときに、鉛のプロテクターを着けたりしますね。あれを、GPSの周りに鉛を置くと、恐らく電磁波異常、電波はそこから発せられないんじゃないかということも考えられるわけですから、その瞬間からGPSの位置情報が途絶するようなことも考えられるわけですが、いかがでしょうか。ちょっと済みません、事前に通告もしていなかったんですけれども、いかがでしょうか。

松下政府参考人 お答えいたします。

 済みません、委員の御指摘は、位置測定端末が外れた場合などに適切に対応できるのかという御趣旨でしょうか。鉛などで電波が来なかったときに適切に対応できるのかというような。

阿部(弘)委員 外さなくても、ベルトを切らなくても、鉛のプロテクターを巻くだけでも電波は途絶してしまいますよと。

松下政府参考人 お答えいたします。

 被告人が装着している位置測定端末から信号が送信されなくなるということは、御指摘のようなことで生じ得るのかもしれませんけれども、技術的に、その場合につきましては、信号が途絶したということもアラートが立つようになっておりますので、それで、先ほど申し上げたような、本法律案に規定されておりますように、途絶されたということが裁判所にも通知され、そして検察官に通知されというような、その後の手続につながっていくということでございます。

阿部(弘)委員 様々なことも想定されるわけでございますし、外して他人に装着したり、あるいは猫などの愛玩動物にくっつけたりすると、家には帰ってきますけれども、それが人間なのか猫なのかが分からないような、様々なことが考えられますので、是非ともこれからも研究をされていただきたいと思います。

 そして、次に質問させていただきます。

 お隣の韓国では、性犯罪を繰り返す方あるいは児童性愛者へ装着などを行っておるやに伺っておりますが、その点はいかがでございますか。

松下政府参考人 お答えいたします。

 法務省において把握している限りで申し上げますと、大韓民国の電子監視制度は、刑に処せられた者に対する再犯抑制施策として導入され、その対象犯罪は、当初、性犯罪事犯のみとされており、その後、殺人罪等がその対象犯罪に追加されていったものと承知をしております。

阿部(弘)委員 今回の私どもの刑事訴訟法の改正には直接は関係ない話でございますが、そういう活用、研究を法務省でもなさってあるということは法務委員会でも御発言がありましたが、海外のGPSの活用ということは研究はなさってあるんでしょうか。いかがでしょうか。

松下政府参考人 お答えいたします。

 法務省におきましても、必ずしも網羅的ではございませんけれども、諸外国における位置測定端末装着命令制度と似たような法制度については調査をしております。

阿部(弘)委員 私は、精神科の病院で依存症を中心に治療を行っております。ですから、性犯罪の方も、刑務所からうちの病院に来られる方も数多くおられます。特に、児童性愛の方もいらっしゃいまして、児童性愛の方の治療というのは非常に難しくて、信念に近いようなものがありまして、なかなか精神療法でも薬物療法でも治療が難しいということは、私以外のベテランの先生もおっしゃってあるわけでございます。

 何とか、そういう治療方法やあるいは再発防止についても、今後研究、一つの研究としてそれが取り組まれることを願っております。

 では、次の質問に移ります。

 海外逃亡についてお話しさせていただきます。

 個別の事案についてお聞きするのは大変恐縮なんですが、カルロス・ゴーン被告が大阪、国際空港から逃走されました。非常に巧みな方法で海外逃亡をなされたわけですが、レバノンに今おられるというふうに聞いています。

 国交省にお伺いしたいんですが、出入国管理の強化というのはその後どのようになさったのか。あるいは、そのときはどうやって出国されたのか。お願いします。

平井政府参考人 お答えいたします。

 ビジネスジェット旅客に対する保安検査でございますけれども、国際ルール上明確な基準はなく、従来、我が国では、諸外国に倣い、機長が判断した場合に限り検査を実施するというふうな方法で行っておりました。このため、事案発生当時は、保安検査の実施は機長の判断に委ねられている状況でございまして、したがいまして、大型の手荷物などに関しては保安検査の義務づけはされていない状況でございました。

 しかしながら、当該事案を受け、令和二年一月以降、国際ビジネスジェット機に搭乗する者であっても大型手荷物に関する保安検査を徹底するとともに、令和四年三月の改正航空法の施行に合わせて、この保安検査の受検を義務づけたところでございます。

阿部(弘)委員 義務づけで少しは改善されてきたというふうに承知してよろしいんでしょうか。

平井政府参考人 大型手荷物に関する保安検査の義務づけにより、こういった、中に不法に侵入して出国するということは防止できると考えてございます。

阿部(弘)委員 今後、GPS装着、この法案が通れば逃走を防げるというふうに信じておりますので、是非とも、政府を挙げて、海外逃亡などが起きないように、よろしくお願いいたします。

 それでは、海外逃亡ではありませんが、海外にいる方に逮捕状が出た場合、国会の参議院議員、除名処分になりましたから元国会議員と言うのがいいのかもしれませんが、海外に滞在し続けております。そういう方を、日本に帰国していただいて裁判を受けていただく方策というのはあるわけなんでしょうか。

 最近は、そういう元参議院議員の話、あるいはフィリピンでの方々の話、そして、今日のネットでは、カンボジアで十九人の方に逮捕状が出たというお話もありますので、海外に、逮捕状が出た方々をどのように日本に連れ戻す方策があるのかをお聞かせ願えればと思います。

親家政府参考人 個別の事件から離れて一般的に申し上げますと、警察におきましては、被疑者が国外に所在すると推定される場合は、まずはICPO等を通じた捜査協力や国際手配の要請等を行いまして、被疑者の所在を確認しているところであります。また、被疑者の所在国が確認された場合は、その国の当局と身柄の確実な確保に向けた調整を行っているところでございます。

 引き続き、国外に所在する被疑者の身柄確保や引渡しに係る調整が円滑に進むよう、外国捜査機関等との連携を一層深めてまいりたいというふうに考えているところでございます。

阿部(弘)委員 先ほどの参議院議員の話では、ユーチューブのサイトを閉じるように、閉鎖するように依頼を警視庁がされたというニュースを聞き及んでおります。

 あるいは、経済詐欺事件に関わった場合には、口座の凍結なども是非とも行っていただきたいというようなこともありますが、そういう特殊詐欺などでは、日本にある口座を凍結するなどの方策はお取りになるんでしょうか。

親家政府参考人 お答えいたします。

 個別の事案ごとに様々な、そういった口座の凍結等についてはこれまでも行ってきているところでありまして、これにつきましては、海外に被疑者がいる、いないにかかわらず、必要な対応を取っていきたいというふうに考えております。

阿部(弘)委員 様々勉強させていただきますと、パスポートも、海外で、お金さえ払えば正式なパスポートが手に入る国があるやに聞き及んでおります。そうすると、パスポートを無効にしても滞在が続けられたりする。しかし、口座が凍結されると、お金がなくなると、そこにいることもなかなかできなくなってしまう。そういうあらゆる手段を使って、是非とも、逮捕状が出た方は日本に帰国していただいて裁判を受けていただくというのが私はいいというふうに思っておるわけでございます。

 よく、日本に帰ってくるときの、飛行機で帰ってくることが多いんですが、飛行機代、航空費というのは、そういう逮捕状が出た方はどのようにしてあるんでしょうか。

親家政府参考人 一般的に申し上げますと、警察が捜査している事件で被疑者の身柄を外国から引き受ける場合におきましては、通常、捜査員が当該被疑者の所在国に赴いて身柄を引き受けることとなりますが、この場合における被疑者の帰国に係る移送費につきましては、警察庁の予算により措置しているところでございます。

阿部(弘)委員 私は以前、総務委員会に所属しておりまして、ネット社会で、海外を拠点にネットを使った国内犯罪というものが数多く発生しているということを聞き及んでおります。そのために電気通信法の改正などを一部行ったところでございますが、まだまだフランスや他国に比べて抜け道が多いというふうに印象を持っておるところでございます。

 ですから、国際犯罪も、日本国内でわざわざインターネットを使った犯罪をする人というのは余りいないかもしれません。でも、海外で、カジノあるいは特殊詐欺、様々な日本人を狙った詐欺行為というのは、これからも私は増えてくるというふうに考えるわけでございます。

 ですから、その際は、当該の治安機関との協力、特に、警察庁のみならず外務省も、あるいは法務省も挙げて、その被疑者を日本に送っていただくような努力を続けていただきたいと思っております。

 では、次の質問に移らせていただきます。

 では、日本にいて、海外から犯罪人引渡しの請求が出ている人数というのは分かりますか。

松下政府参考人 お答えいたします。

 過去十年においてということでお答えをさせていただきたいと思いますが、平成二十四年から令和三年までの十年間のことで申しますと、我が国から外国に引き渡した逃亡犯罪人の人数は合計十二名でございます。

阿部(弘)委員 十二名。私はもう六十ぐらいになりますが、ロス疑惑というのをよく存じ上げているわけでございます。その方は、カリフォルニアで奥さんと一緒のときに、奥さんが殺されたわけであります。そして、最初の裁判では無罪になって、そして、その後帰国され、グアムに行ったときに身柄をアメリカによって拘束されたということでございます。

 そういう、海外からの引渡し依頼というのは来るものなんでしょうか。国家間でそのような話はありますでしょうか。

松下政府参考人 個別事案につきましてはコメントは差し控えさせていただきたいと存じますが、一般論として、海外の当局から犯罪人の引渡しを求められるということはございます。

阿部(弘)委員 恐らく、その引渡しの人が日本国籍の方かどうかは私は存じ上げませんが、日本国籍以外の方もこの日本に滞在されて、引渡しの請求がされることも今後増えてくることも予想されるわけでございます。

 その方がどこにいるのか、所在不明の場合も当然あるわけでございますから、そういう国際化に備えた犯罪人引渡しというものは今後も重要になってくると思いますが、いかがでございますか。

松下政府参考人 お答えいたします。

 引渡しを求められる者は、日本人である場合もあれば、外国籍の方である場合もありますけれども、いずれにいたしましても、そういった引渡しを求められた場合におきましては、様々な要件がございますので、それに該当するかどうかいろいろ審査をした上ででございますが、所在が分からない場合でも、その所在を適切に調べるなどして、適切に事案に応じて対処していくこととなるものと考えております。

阿部(弘)委員 犯罪人引渡条約というものが、日本が加盟しているというふうに存じ上げますが、この条約について、また、締結国、相手国というのはどのような国がありますか。

御巫政府参考人 お答え申し上げます。

 一般に、犯罪人引渡条約と申しますのは、相手国との間での犯罪人の引渡しに関する要件、手続等を定め、一定の場合を除き、犯罪人の引渡しを相互に義務づける条約でございます。

 我が国は、犯罪人引渡条約を締結していない国との間でも、逃亡犯罪人引渡法の規定に従って、相互主義の保証がなされること等を条件として犯罪人の引渡しを実施することができますが、その上で、この条約を締結することは、一般に、一方の締約国の請求により他方の締約国に所在する犯罪人を引き渡すことが、条約上の拒否事由に該当しない限り、条約上の義務となります。したがって、引渡しの確実性、法的安定性が高まるといった意義がございます。

 現時点での我が国が犯罪人引渡条約を締結している相手国は、米国と韓国になります。

 以上です。

阿部(弘)委員 レクを受けて、締結国が米国と韓国だけ、二か国ということです。ちょっと勉強すると、ほかの国はもっともっと多くの国と締結をしておるんですが、この二か国にとどまっている理由というのは何かありますか。

御巫政府参考人 お答え申し上げます。

 どのような国とこの条約を締結するかということにつきましては、一般に、相手国との犯罪人引渡しの具体的必要性があるかないか、あるいは相手国の国内法制、刑事司法制度等を総合的に勘案するということでございます。

 もう少し詳しく申し上げますと、例えば、人の往来や犯罪の発生状況に照らしまして現実に犯罪人の引渡しの要請が多いかどうか、それから具体的な必要性があるかどうか、さらには、相手国の刑事司法制度が我が国と同様に基本的人権を十分に保障しているか、民主的かつ文化的で一般的に安定したものであるかどうか等々を検討して、その上で必要性について判断するということにしておりまして、現時点ではこの二か国にとどまっているということでございます。

阿部(弘)委員 その説明を受けて思ったんですね。

 日本人が海外に逃亡している場合に、日本国籍を有する者が日本に帰国して裁判を受けることが、そんなに著しく潜伏先の国にとって問題なのか。日本国籍を有する者が日本国内で裁判を受けるというのは、別に普通のことじゃないかなというふうに思いますが、いかがですか。

御巫政府参考人 申し上げます。

 この条約を締結する場合には、双方向の義務が発生するということでございます。

 海外に逃亡した方を日本に引き渡す義務と、日本にいる方を外国に引き渡す義務の両方を伴う条約でございますので、先ほど申し上げた、適切に運用されることによって、我が国から引き渡された者が不当な扱いを受けることがないかどうかといった要件は、逆の方向の、日本から引き渡す場合についても考慮した上で判断をしなければいけないというところがございまして、その辺りも総合的に判断して、今この状況にあるということでございます。

阿部(弘)委員 先ほどお話ししましたように、ネットの普及で、海外での犯罪行為というのが非常に増えている傾向にありますので、是非ともその点、外務省も御努力をいただきたいと思います。

 最後に、法の支配を守る観点から、この法改正、特にGPSや、海外逃亡を防ぐという観点から、大臣の決意をお聞かせ願えればと思います。

齋藤(健)国務大臣 本法律案は、保釈中の被告人や刑が確定した者等による逃亡事案という刑事訴訟法に反する事象が相次いで発生し、国民の皆様に多大な不安を抱かせ、ひいては刑事司法に対する信頼が損なわれかねない事態が生じたことを踏まえまして、所要の法整備を行うものでありますので、大変重要な意義を有すると考えていますので、早期成立をお願いしながら、成立した暁には、しっかりと運用していきたいと考えています。

阿部(弘)委員 ありがとうございました。

伊藤委員長 次に、本村伸子君。

本村委員 日本共産党の本村伸子でございます。どうぞよろしくお願い申し上げます。

 刑事訴訟法の法案の性暴力被害者の方々の個人情報保護に関連し、質問をさせていただきたいというふうに思います。

 まず最初に、強制性交等罪、準強制性交等罪の起訴、不起訴の割合について、二〇〇〇年と直近の数字、お示しをいただきたいと思います。

松下政府参考人 お答えいたします。

 検察統計上、起訴率につきましては、一年間の起訴人員数をその年の起訴人員数と不起訴人員数の合計数で割る方法によって算出しておりますところ、これによりますと、御指摘の二〇〇〇年、平成十二年の強姦の起訴率は六八・四%、不起訴率は三一・六%、そして、直近ですと令和三年でございますが、令和三年の強制性交等罪の起訴率は三二・四%、不起訴率は六七・六%となっております。

本村委員 二〇〇〇年には強姦の起訴率が六八・四%、そして直近では、二〇二一年では三二・四%と、かなり起訴率が減っているわけですけれども、その理由についてお示しをいただきたいと思います。

松下政府参考人 お答えいたします。

 起訴率は、個別具体の事案に即した起訴又は不起訴の判断の集積でございまして、その低下の原因や評価を一概に述べることは困難でございます。

本村委員 起訴になれば被害者の方々の個人情報が被疑者、被告に行ってしまうということが、そもそも示談で済ませる、諦めるという状況、理由にもなっているかというふうに思います。

 そこでお伺いしたいんですけれども、性暴力事件の示談になる割合はどのくらいありますでしょうか。

松下政府参考人 お答えいたします。

 お尋ねの性暴力事案は、強制性交等罪ですとか準強制性交等罪などの性犯罪を意味しているものと理解しておりますけれども、その上で、法務当局としてはお尋ねのような観点から統計を取っておりませんで、網羅的に把握していないことから、お尋ねにお答えすることは困難であることを御理解いただきたいと思います。

本村委員 性暴力事件の示談が多い理由についても、それでは、分からないということでしょうか。

松下政府参考人 お答えいたします。

 法務当局として、性犯罪を含む様々な犯罪におきまして示談が成立した理由については網羅的に把握をしておりませんことから、その理由について、どういう理由で示談をしたかということについてもなかなかお答えすることは難しいのですが、もっとも、性犯罪被害者にとりまして、その個人情報が保護されることは重要なことであると考えておりますところ、法務省が実施した性犯罪被害者からのヒアリングにおきましては、示談との関連までは明らかではございませんけれども、相手方に氏名が知られるのであれば被害申告はしなかったとか、あるいは、実名を知られたらSNSなどで特定され報復されるのが怖かった、犯人に名前を知られることを恐れて被害を訴えずに泣き寝入りしている人がいるといった指摘がなされていることも承知をしております。

本村委員 今も局長がおっしゃられたように、もし起訴になってしまうと、被害者の方の名前、住所、個人が特定できる個人情報が加害者側にも知られてしまうというリスクがあるという中で、泣く泣く示談となるケースもございます。

 性暴力事件の不本意な示談ということになりますと、加害者に対する適正な処罰がなされず、そして性被害が再び発生してしまうという問題も生ずるというふうに考えますけれども、見解を伺いたいと思います。

松下政府参考人 お答えいたします。

 大変恐縮ですが、法務当局として、性犯罪において示談が成立した理由については網羅的に把握しておりませんし、また、それによってまた被害が生じるかどうかというところについてもお答えをすることはなかなか難しいんですけれども、あくまでも一般論として申し上げますと、示談するかしないかといったことについては、事実の終局処分を決めるための一つの要素でございまして、検察当局においては、それらの事情も含めて、個別具体の事案に即して、法と証拠に基づいて適切に起訴又は不起訴の判断をしているものと承知をしております。

本村委員 起訴状などの性暴力被害者の住所、氏名など個人情報が加害をしたとされる被告側、被疑者側に漏れたことによって被害者が危険にさらされるという事件はどのくらい起きているのか、つかんでおられますでしょうか。

松下政府参考人 お答えいたします。

 どのくらいという、その件数ということでお尋ねをいただきましたが、その件数につきましては、事柄の性質上、ちょっと網羅的に把握することは大変難しいことでございまして、そのような形では把握していないんですが、報道されたところでは、例えば、強制性交等未遂の事案におきまして、被害女性の氏名が記載された起訴状が被告人に送達されておりましたところ、被告人が、公開の法廷における被害者特定事項の秘匿決定がなされていたにもかかわらず、公判期日において、被害女性の名前などを叫んだり、被害女性を侮辱する発言を繰り返すなどした事例があるものと承知しております。

本村委員 全体は把握をしていないということなんですけれども。

 資料を出させていただきました。この資料は、性暴力被害者支援情報プラットフォーム、タイムさんの資料を出させていただきました。ちょっと順番があれなんですけれども、十二ページ目を見ていただきたいんですけれども、下の資料なんですけれども、起訴状などによって被害者の情報が加害者に渡って脅されてしまった、そういう事例でございます。被害に遭われたのは、仮名ですけれども、卜田素代香さんという方です。脅されたことによって、大変、心身へのダメージが相当なものでございました。

 実際に加害者から届いた手紙の文面、一部抜粋でございますけれども、載っております。一通目のところに、卜田さんが何々大学出身ということで、大学名も知られてしまったと。二通目ですけれども、卜田さんは漫画やアニメ関係に携わっていたこと、何々県出身と。妹は何々という名前で、何歳だと。彼氏は何々という名前で、何歳だということも分かって、身長が百七十センチ前後、爽やか系で、何々在住ということも分かってしまった。名前はまだ分からないけれども、同じ大学でショートヘアの仲のいい友達がいることなどが判明していて、情報が回っていますと。そういった方々も敵対関係になったり巻き込まれたりして大変な将来に影響が及ぶのではないか、相手にしているのはそういう組織だと理解しておいてくださいという手紙が来て、卜田さんの恐怖は本当に深刻なもので、相当なもので、心身、本当にダメージを受けておられました。こういう事例があるわけです。

 やはり、こうした被害者の個人情報が加害者に渡り再被害が起きた実態調査をするべきだというふうに思いますし、また、それぞれの事案に対して、どの段階で被害者の個人情報が漏れたのか、被害者保護、どこに問題があったのかなど、しっかりと検討し、原因分析をするべきだというふうに思います。

 今回の法改定でも完璧に守るということにはなっていないというふうに思いますので、是非そうしたことをやっていただきたいと思いますけれども、いかがでしょうか。

松下政府参考人 お答えいたします。

 実態調査というところでございますけれども、御指摘のような調査をするということは、事柄の性質上、極めて難しいというところでございます。

 再被害につながる個人情報を被告人が知る経緯は事案によって様々であると思われますが、その難しい理由でございますけれども、まず、性犯罪の被害者が被疑者、被告人による再被害に遭った事件のうち、その最初の被害の時点では被疑者、被告人が被害者の住所や氏名等の個人情報を把握していなかったかどうか、また、その後、起訴状送達等の手続を通じて初めて知ったのかということを把握することが前提となると考えられますけれども、しかしながら、被告人が被害者の個人情報を把握したきっかけや理由がどのようなものかといったことは必ず正確に把握できるとは限らないことから、先ほど申し上げたような、件数を網羅的に把握することは困難であると言わざるを得ないのでございますけれども、そういった事案を承知した場合には適切に対処していかなければならないと思っております。

本村委員 この卜田さんの事例でも、少し検察の方の問題があったのではないかということも言われておりますので、また個別にも検証していかなければいけないというふうに思っております。

 性暴力、性犯罪に対して適正な処罰を行うためには、今度は、証拠保全の問題についてお伺いをしたいというふうに思います。

 加害者に対する適正な処罰をするためにも、証拠保全の体制は強化が必要だというふうに考えております。被害者の方のお声を伺いますと、気持ちの整理ができずに、まだ警察には被害届、申告を出すことができない、でも証拠保全はしておきたいということで、やはり、警察を通さなくても証拠保全をすることができる、そうした体制を全国につくる必要があるというふうに考えております。

 四十七都道府県でもばらばらでございまして、警察を通さなくても証拠保全ができる都道府県、そしてできない都道府県はどこか、具体的にお示しをいただきたいと思います。

畠山政府参考人 お答え申し上げます。

 性犯罪、性暴力は、被害者の尊厳を著しく踏みにじる行為であり、心身に深刻な影響を与えます。そのような中で、警察への届出をちゅうちょしたり、大きな負担を感じる方もおられるものと認識しております。

 どこで被害を受けた場合であっても、後日、警察への届出意思を有するに至った場合に備え、性犯罪・性暴力被害者のためのワンストップ支援センター等の関係機関が連携し、被害者の希望に応じて証拠資料の採取、保管ができる体制を整備することが必要と考えております。内閣府としても、都道府県等への交付金を通じ、ワンストップ支援センターへの証拠資料の採取や保管を支援してまいります。

 その上で、先生の方から具体的にどの都道府県かというお問合せがありました。通告いただいてから調べておりますけれども、まだ必ずしも全て調べ切っておりませんが、過半のところでは対応できているということでありますけれども、内閣府としても、この状況の把握については引き続きしっかり努めてまいりたいと思います。

本村委員 ありがとうございます。

 タイムさんが独自に調べてくださった資料が一から七の資料になってまいります。ここでは、全国五十二のワンストップ支援センター、ワンストップ支援事業のやっているところにアンケートを行い、そして、二十七のワンストップ支援センターから回答があったということで、警察を通さずに証拠保全ができるところが十七あった、そして、できないのが九つあったということで、まだできていない自治体もあるわけです。

 資料の九を御覧いただきたいんですけれども、被害から証拠保全までの実体験ということで、卜田さんの事例が書かれております。

 なぜ卜田さんが警察に直接行けなかったかということなんですけれども、被害時に加害者に脅されて、そして、報復を恐れて、直後は絶対に警察には言わない、言ったら身が危ないという気持ちで行けなかった、警察にはすぐ行けなかったということでございます。

 そういう状況は多々あるわけでございまして、ですから、やはり警察を通さなくてもできる体制が必要なのだというふうに思います。

 このアンケートの中でも、医療機関で採取しても裁判で証拠として使えるか分からないということを言っているセンターもあるそうなんです。

 そこでお伺いしたいんですけれども、体液などの証拠を冷凍保存したものは、当然ながら証拠能力があるというふうに考えますけれども、法務省、お答えをいただきたいと思います。

松下政府参考人 お答えいたします。

 様々な証拠品、証拠物があるわけでございますけれども、それぞれの証拠能力の有無というのは、最終的には、裁判所におきまして、個々の具体的な証拠ごとに、個別に判断されるものでございまして、お尋ねの冷凍保存されている体液などの証拠物の証拠能力の有無について一般的に申し上げるということは困難でございますが、あくまでも一般論として申し上げますと、その体液などの証拠物について、逆に申しますと、捜査機関以外のものが採取した場合であったとしても、そのこと自体から直ちに証拠能力が否定されるということにはなりませんで、個々の証拠ごとに諸事情を考慮して、個別に証拠能力が判断されることとなると考えております。

本村委員 是非そのことも各都道府県に徹底していただいて、警察を通さなくても証拠保全できるように全国でしていただきたいというふうに思います。

 最近、被害に遭われた方の親御さんから伺いましたけれども、病院にレイプキットが、証拠保全のキットがなかったと。親御さんが証拠を残さなければいけないということで意識がしっかりとあったので証拠が取れたんですけれども、そうでなかったら取れなかったのではないかというふうに思われます。

 そして、卜田さんもワンストップ支援センターで、最初、両親がお電話してくださったそうなんですけれども、証拠保全のことは何も話がなかったそうです。病院に行って、病院からは話がなく、自ら証拠採取をということを言わないと駄目だったと。警察を通してくださいとそのときに言われたそうなんですけれども、それまでに入浴しないでくださいですとか、服は袋に入れてくださいとか、そういうことも言われなかったそうで、卜田さんは知識があったので証拠保全ができたわけなんですけれども、そういう不徹底があるわけです。

 やはり、証拠が残らなければ、結局、泣き寝入りになってしまうというふうに思います。ワンストップ支援センターや連携医療機関に証拠保全のレイプキットがしっかりとある、これを広げていただくということや、証拠保全までのきめ細かなサポート、これも必要だというふうに思います。

 この点は内閣府に御答弁いただきたいと思います。

 そして、産婦人科、泌尿器科に証拠保全のレイプキットがどこでもあるような状況を是非つくっていただきたいということを厚生労働大臣政務官にお願いしたいと思います。

畠山政府参考人 お答え申し上げます。

 内閣府では、都道府県等への交付金により、性犯罪・性暴力被害者のためのワンストップ支援センターの運営等を支援しておりまして、その中で、ワンストップ支援センターやワンストップ支援センターが連携する医療機関において採取した資料を冷凍保管するために必要となる経費についても支援しております。

 また、性犯罪・性暴力対策につきましては、去る三月三十日、関係府省会議におきまして、今後三年間の関係府省の取組の方針を示す性犯罪・性暴力対策の更なる強化の方針を取りまとめております。この更なる強化の方針において、内閣府、警察庁、厚生労働省の取組として、証拠採取、保管体制の整備を進めることとしております。

 具体的には、当初は警察への届出をちゅうちょした被害者が、後日警察への届出意思を有するに至った場合に備え、全ての都道府県において、警察、ワンストップ支援センターや医療機関が連携し、被害者の希望に応じ、証拠の採取、保管を行うことができる体制を整備することとしております。

 内閣府としても、警察庁及び厚生労働省と連携して、証拠採取、保管体制の整備に取り組んでまいります。

本田大臣政務官 本村委員にお答え申し上げます。

 ワンストップ支援センターにつきましては今ほど内閣府の方から御説明をさせていただきましたけれども、厚生労働省としても、こうした支援体制の中で、救急医療や証拠採取など、医療機関の果たす役割は大変重要であると認識をしております。

 このため、厚生労働省では、犯罪被害者団体から国、内閣府に対してワンストップ支援センターの開設に向けた相談があった場合には、国、これは厚労省から都道府県に支援センターの開設に協力可能な医療機関についての情報提供をお願いしたり、また、医療機関から支援センターの開設についての相談があれば都道府県を紹介するなど、内閣府と都道府県と連携した対応を進めております。

 保全キットの設置についてのところでございますけれども、証拠保全キットにつきましては、医療的側面というよりも被害者支援の一環として、現在厚労省ではワンストップ支援センターに対する支援を行っているところで、必ずしも医療機関が全て担うものとはならないため、全ての医療機関に証拠保全キットによる対応を求めることは難しいと考えております。

 いずれにしても、被害を受けられた方がまずは医療機関を受診することが考えられるため、厚生労働省といたしましては、内閣府や都道府県と連携し、まずは周知や情報提供に努めてまいりたいと考えております。

本村委員 身近なところで、あるいは本人が希望すればですけれども、しっかりと証拠保全ができるようにということで、是非厚生労働省としても努力をしていただきたいというふうに思っております。

 今回の被害者の個人情報秘匿措置なんですけれども、どのような犯罪で適用されるのかという点、具体的な、強制性交等罪や強制わいせつ罪、児童福祉法違反、あるいは児童買春、児童ポルノ法違反以外の罪名、教えていただきたいと思います。

松下政府参考人 お答えいたします。

 本法律案におきましては、起訴状等における被害者の個人特定事項の秘匿措置を取ることができる事件としましては、今御指摘の一定の性犯罪の事件のほかに、犯行の態様、被害の状況その他の事情により、被害者の個人特定事項が被疑者、被告人に知られることによって、被害者の名誉又は社会生活の平穏が著しく害されるおそれや、被害者若しくはその親族の身体若しくは財産に害を加え又はこれらの者を畏怖させ若しくは困惑させる行為がなされるおそれがあると認められる事件も対象としております。

 具体的にどのような事件がこれに該当するかは、今申し上げたような要素に当たるかどうかということを、個別の事案ごとに、具体的な事情を踏まえて判断されるものではございますけれども、例えば、各都道府県の迷惑防止条例違反のいわゆる痴漢の事件ですとか、あるいは、暴力団の幹部による事件で、被害申告した被害者を逆恨みしており、当該暴力団の構成員から被害者に対して報復等がなされるおそれがある事件などが該当し得ると考えております。

本村委員 冤罪はあってはならないのは当然なんですけれども、刑事手続において被害者とされる人の氏名、住所が特定されないということで、被告人の防御権の侵害にならないかという点も懸念の声が出されていますけれども、その点、いかがでしょうか。

松下政府参考人 お答えいたします。

 本法律案におきましては、起訴状における個人特定事項の秘匿措置につきまして、起訴状抄本等に記載される公訴事実はほかの犯罪事実との識別ができるものでなければならないということを条文上要求しておりまして、被害者等の個人特定事項が知らされないとしても、被告人にとって、どのような事実が起訴されているのか、訴追の対象となっているかという、防御の対象が明らかになるようにしております。

 そして、起訴状抄本等を被告人に送達する措置が取られる場合でございましても、被告人側に防御の準備の機会を与えるために、弁護人には、個人特定事項を被告人に知らせてはいけませんという、知らせてはならない旨の条件を付して起訴状謄本を送達することを原則としております。

 秘匿措置によって防御に実質的な不利益を生ずるおそれがあると認めるときには、裁判所は、被告人又は弁護人の請求により、個人特定事項を被告人に通知する旨の決定をしなければならず、裁判所の決定に不服があるときは即時抗告をすることができるという制度も用意いたしまして、不服申立ての機会も十分に保障しているところでございます。

 以上のとおり、被告人の防御権に十分な配慮をしているところでございまして、それが不当に害されるということはないものと考えております。

本村委員 最後に、申し訳ないんですけれども、大臣に一問お願いしたいというふうに思います。

 やはり、捜査機関の公正性が問われているというふうに思います。足利事件、布川事件、滋賀呼吸器事件など……

伊藤委員長 手短にお願いします。

本村委員 冤罪が確定した事件を第三者委員会で検証を是非していただきたいと思いますけれども、大臣、いかがでしょうか。

齋藤(健)国務大臣 今、恐らく、個別の事件についていわゆる第三者機関を設置して検証を行うということの御指摘だと思いますが、その件につきましては、憲法上認められた裁判権の、職権行使の独立性の観点から問題が生じ得ることに加えまして、関係者のプライバシー情報を始めとした秘匿性の高い刑事事件に関する情報について広く第三者に開示することになるため、関係者の名誉、プライバシーを侵害するおそれもあることなどから、御指摘のような機関を設置してという対応をすることについては慎重な検討を要するものと考えております。

本村委員 実際に起こった冤罪事件を、やはり第三者委員会をつくって検証してこそ、信頼は回復できるというふうに思いますので、是非、その点、進めていただきたいと思います。

 ありがとうございました。

伊藤委員長 次に、鈴木義弘君。

鈴木(義)委員 国民民主党の鈴木義弘です。

 早速質問に入りたいと思います。

 昨日資料をもらって、へえと思ったんですが、法制審議会の刑事法部会の第二回の会議配付資料というのを頂戴して、遁刑者という言葉が、昔私たちも学生の頃、トンズラしたという言葉を使ったなというふうに思うんですが、トンズラしちゃった人が結構いる。

 いただいた資料の中で、五十二人ぐらいの方が、過去分かっているだけで、所在不明とか出国、海外に出ちゃった。こういう事例を見させてもらって、中には、刑期が終わって、その後時効になってしまってもう罪に問えない人もいるから、今回の法律の改正で逃走罪を設置するとか、あとは、GPSというんですか、位置測定端末、今日もこの装置の装着について、予算だとか取扱いとかいろいろ質問があったんですけれども。

 このいただいた資料の中には、外国籍の人もいるんですね。海外に出ちゃっているんです。一つは、カルロス・ゴーンさんの話も出たと思うんですけれども。

 結局、善良な人というのは犯罪は起こさないし、大半の犯罪者はいい人じゃないんだと思うんですよね。だから、逆に言えば、性善説で何か法律を作っても対処し切れないだろうという考え方。それに基づいて、何点か質問させていただきたいと思います。

 まず初めに、位置測定システム構築には、今日も、どのぐらい、五年以内とかという答弁があったんですけれども、これは現実、もう逃亡しちゃっている人が五十二人ぐらい、データではもらったんですけれども、やはり一日でも早く対応しなくちゃしようがないんだと思うんですよね。

 五年とか三年とかと悠長なことを言っているんじゃなくて、装置の精度のこともあるんだと思いますし、機能的に今の限界というのがあるんでしょうから、一回やり始めて少しずつバージョンアップしていくしかないのかなと思うんですけれども、これを実際、法律が成立して、どのぐらいで実行に移していこうというふうに目測しているのか、お尋ねしたいと思います。

松下政府参考人 お答えいたします。

 まず、前提といたしまして、遁刑者につきましては、罰金以上の刑に処せられた者のうちその刑の執行を受け終わっていないものでありまして、その所在が不明となっているものでございますので、今回、位置測定端末装着命令制度で対象としようとしているのは刑事被告人でございますので、ちょっと対象が違うということを申し上げさせていただきたいと思います。済みません。

 その上で、どのぐらいの時間でということでございますけれども、本法律案におきましては、位置測定端末装着命令制度は、公布の日から起算して五年を超えない範囲内において政令で定める日から施行することとしております。施行までの間に、法律で様々な各種の機能を要求することとしておりますので、法律によって求められている各種の機能を備え、円滑に運用することができるように、位置測定端末等の位置測定に用いる機器やシステムの仕様などの検討、開発といった運用に向けた様々な準備が進められることとなっておりまして、それには、公布の日から起算して五年を超えない範囲内においてということで、期間のめどということは予定されているわけでございます。

 お尋ねのシステムの構築は、そうした運用に向けた様々な準備の一環として行われるものでございまして、システムの構築だけに要する期間について現時点で一概にお答えすることは難しいのですけれども、いずれにしても、裁判所において、制度の趣旨を踏まえつつ、適切に検討を進められるものと考えております。

鈴木(義)委員 今御答弁いただいて、国外に逃亡するため、その位置及び当該位置に係る時刻を把握する必要があると認めたときにこれを装着するんだというような定義づけになっているんですけれども、では具体的にどういうことを想定しているのかといったときに、お答えを簡潔にお願いします。

松下政府参考人 お答えいたします。

 具体的にどのような場合に位置測定端末装着命令をすることになるかというのは、裁判所において、個別の事案ごとに、具体的な事情を踏まえて判断されるものではございますけれども、例えば、被告人が、その社会的地位や経済力などに照らして、正規の手続によらずに国外に逃亡させることのできる組織を利用できるですとか、被告人の経済力や人間関係などに鑑みて、我が国から離れて生活をすることが困難ではないなどの事情があって、国外に逃亡してしまうおそれが相応に認められる場合には、位置測定端末装着命令がなされ得ると考えております。

鈴木(義)委員 ありがとうございます。

 では、もう一点確認したいんですけれども、被告人が海外逃亡を図る場合は、あらゆる手段を講じると思うんですね。日本の国内にお住まいというのかな、いらっしゃる中で、外国籍の人もたくさんいらっしゃるわけですね。今でも、三百万まではいかなくても、結局、外国人登録している人だけで三百万人近い方、オーバーステイも含めて、正規で入ってこない人も中にはいらっしゃる。その人たちが何か国内で悪さをして、海外に出ようといったら、日本は島国ですから、飛行機に乗るか、船に乗るかしかないんですよね。

 これはドラマチックな話になっちゃうんですけれども、何で日本でこんなにまだ麻薬がいっぱい蔓延しちゃっているのというのは、飛行機で持ってくる人はいないと思うんですよ。あとはどうするかといったら、やはり船で持ってくるんだと思うんですね。今日も前任の方がお尋ねしたときに、九百、千件近いぐらいの港があるという話になったときに、海外逃亡する人が人目につくようなところから外に出るかといったら、普通は考えないよね。小さな船で、人目のつかないところで乗って、それから先、沖合か何かで、見えないところで大きな船に乗り換えるとか、私だったらそのぐらいのことを考えますよね。そうすると、区域を指定したからといっても、全然意味をなさないんじゃないか。空港はいいとしてもですね。

 だって、これだけ国土が広い島国で、すごい数の島も、七千近くたしかあったと思うんですけれども、それで本当に指定したから大丈夫なのか。では、そこにGPSで電波をキャッチする装置を全部くまなく装着できるかという物理的な問題も出てくると思うんです。その辺の考えをお示しいただきたいんですが。

松下政府参考人 お答えいたします。

 本法律案におきましては、飛行場ですとか港湾施設の周辺の区域だけではなく、位置測定端末装着命令を受けた人が本邦から出国する際に立ち入ることとなる区域を所在禁止区域として定めることができるということとしておりまして、個別の事案ごとに、国外逃亡のおそれの程度や想定される逃亡経路などの様々な事情を考慮して、所在禁止区域を柔軟に設定することは可能でございます。

 もっとも、仮に所在禁止区域をどのように定めたとしても国外逃亡を防止できないと認められる場合があるといたしますと、その場合には、そもそもその人について保釈が適当でないということになるのかなと思っております。

 いずれにしましても、保釈の判断に当たりましては、対象を適切に見極めて、適切な運用がなされることが重要であると考えております。

鈴木(義)委員 今回、法律の改正に当たる前段として、人質司法が問題だろうということで、なるべくだったら保釈をして身柄を自由にした方がいいというのが一つあったと思うんですね。そうしたら、それから今度、保釈したらどこかへ行っちゃった。所在不明もいるし、外国に出たと。不思議に思ったんですけれども、何でこれは保釈されて海外に出られちゃうのと。

 だから、所管で、裁判所なり法務省が、検察なら検察で、なぜその情報を、飛行機に乗るところとか港のところに情報がきちっと行っていれば、それは外に出すことはないよね。出国と書いてこの資料箋をもらっているわけですから、堂々と自分のパスポートで帰っていっているんでしょうね。出ちゃっているわけですよね。それをやはり止めるために、今回、法律の改正と、GPSをつけましょうという話になるんでしょうけれども。

 では、そもそも、新たな出国制限制度を設けることになっているんですが、現状で出国してしまっている人が、どのぐらいの人数が今現にいるのか、実数が分かればお知らせいただきたいんですが。

松下政府参考人 お答えいたします。

 有罪判決を受けた後、出国したことによって刑の執行を免れている人の人数でございますけれども、出国には正規ではない不正出国等もあり得るので、逃亡した先が国内か国外かを網羅的に把握することは難しいのでございますが、把握している限りで申し上げますと、罰金以上の刑に処せられた者のうちその刑の執行を受け終わっていないものであって、その所在が不明な、先ほど御指摘いただきましたいわゆる遁刑者の人数は、令和四年十二月末時点におきまして、懲役、禁錮については二十八人、罰金については百二十人でございます。

鈴木(義)委員 ありがとうございます。

 もう一つ、この出国制限の制度について、ここの条文の中に一時許可というふうなものが出てくるんですね。出国することを許すべき特別の事情があると認めるときというのは、どういう場合を想定しているのか。

松下政府参考人 お答えします。

 ちょっと制度の内容から、前提を御説明させていただきたいんですが、本法律案におきましては、拘禁刑以上の実刑判決の宣告を受けた場合には、国外逃亡を防止するために、裁判所の許可を受けなければ本邦から出国してはならないこととした上で、裁判所は、本邦から出国することを許すべき特別の事情があると認めるときに限り、期間を指定して当該許可をすることができることとしております。

 このことをおっしゃっていると思うんですけれども、その特別の事情の有無につきましては、一時出国が許可された場合に、拘禁刑以上の刑に処する判決の宣告を受けた者が指定された期間内に本邦に帰国せず又は上陸しないこととなるおそれの程度のほか、本邦から出国することができないことによってその人が受ける不利益の程度その他の事情を考慮して判断するということです。

 具体的に、ではどんな場合か、どのような場合に特別の事情が認められるのかということにつきましては、これも恐縮ですが、個別の事案ごとに、裁判所において、具体的な事情を踏まえて判断されるべき事柄ではございますけれども、あえて例えばということで申し上げると、特定の外国でしか受けられない手術であり、それを受けないと生命に危険が及ぶおそれがある一方、手術終了後は我が国に戻ることが確実であると認められるときなどにおいては、特別の事情が認められ得るものと考えております。

鈴木(義)委員 日本は先進国だから、医療は日本で受けた方がいいんじゃないかと思いますけれども、個別の事例はお答えできませんと言われちゃうと、それ以上お尋ねしても同じ答弁になると思います。

 先ほどもカルロス・ゴーンさんの話が出たんですけれども、被告人のレバノン逃亡を手助けしたとして、犯人隠避の罪で実刑判決が確定した二人、アメリカ籍の方なんでしょうね、昨年の二〇二二年に米国に移送されたと聞きました。

 これに関連して、以下の項目。

 先ほども、我が国が受刑者移送条約を締結しているのは、グルーピングしているものとそうじゃないものとある話は聞いたんですけれども、それがどのぐらいの国があるかというのが一つ。

 それと、今後、締結国を増やしていく考えがあるのか。例えば中国とか、北朝鮮は国交がありませんから難しいと思うんですけれども。では、カルロス・ゴーン被告人が逃亡した先のレバノンに働きかけるとか、そういう国を増やしていく考えはあるのか。

 それともう一つ、外国人受刑者が日本の刑務所に収監された場合、本人の申出があったら移送できるのか。それとも、その国の、自分の、国籍を持っている国のしかるべきところから申出があった場合には移送が可能なのか、引き渡せということですね。だから、その辺を三点目に。

 もう一つ、例えば、海外に移送された受刑者の残りの刑、分かりやすく言えば、一年懲役で刑務所に入っていました、半年で私は自分の国に戻りたいんですといったときに、日本では一年の判決を出して刑務所に収監するんですけれども、相手の国に行ったときに、では、もうそこで無罪放免では話にならないと思うんですよね。

 日本は日本の法律に基づいて裁判を受けて刑期が確定するわけですから、そこのところの整合性がないと、幾らその国に戻してくれよといっても、それを認めちゃったのでは、では、相手の国がこのぐらいの、日本では一年だけれども、向こうは例えば六か月の刑期しか判決を出さないようなところだったら、向こうの国に行ったらもうそのまま無罪放免になっちゃうと思うんですね、単純に考えれば。その辺のところの整合性はどう捉えようとしているのか、お尋ねしたいと思います。

松尾政府参考人 御質問の一点目と二点目につきまして、外務省からお答え申し上げます。

 まず、我が国と受刑者移送条約を締結している国でございますけれども、我が国を除いて米、英、仏、独、伊などの六十七か国が締結している多数国間条約である、刑を言い渡された者の移送に関する条約、並びに、タイ、ブラジル、イラン及びベトナムの四か国との間で二国間の受刑者移送条約を締結しております。

 今後締結国を増やす考えがあるのかという御質問でございますけれども、国際受刑者移送に関する条約は、受刑者に本国のしかるべき環境において刑に服する機会を与え、執行国、裁判国双方に資するものでありますことから、刑を言い渡された者の移送に関する条約未締約国に対し、我が国として引き続き条約加入を働きかけるとともに、二国間条約についても、締結の意義、必要性、実施可能性などを総合的に勘案の上、適切に検討していく考えでございます。

花村政府参考人 お答えいたします。

 国際受刑者移送制度は、国際的な協力の下、外国において自由刑の確定判決を受けて受刑している者につきまして、その改善更生と円滑な社会復帰を目的として、その受刑者を本国に移送し、当該確定判決を執行するものでございます。

 我が国が締結している受刑者移送に関する条約におきましては、受刑者本人、裁判国及び執行国のいずれもが移送に同意していることなどが移送の条件とされております。また、送り出し移送の場合には、その者の改善更生や社会復帰の促進という目的と同時に、我が国の裁判所が言い渡した刑罰の持つ応報機能や抑止効果が損なわれないよう留意が必要であります。

 このような観点から、送り出し移送の実施が相当であるか否かについては、受刑者移送の目的や我が国の刑罰の機能等がよりよく発揮されるよう、関係する諸事情を総合的に勘案し、個々具体的事案ごとに判断することとなり、受刑者本人の申出のみをもって移送が認められるものではございません。

 なお、移送の申出につきましては、条約におきまして、受刑者本人のみ行う旨が規定されております。

 二点目、残りの刑期の関係でございますけれども、送り出し移送は、我が国が締結している受刑者移送に関する条約に基づき、日本国において懲役又は禁錮の確定判決を受けその執行として拘禁されている締約国の国民等を日本国から当該締約国に引き渡して、当該確定裁判の執行の共助を嘱託するものでありますところ、相互主義の観点から、いずれの条約においても、刑の執行につきましては執行国の法令により規律される旨規定されており、移送後の刑の執行期間についても、執行国の法令に基づき決定されることとなります。

 この点、我が国と執行国の法制度の違いなどから、執行国における刑期が具体的にどの程度の期間となるかにつきましては、一概に申し上げることは困難でございます。

 いずれにいたしましても、著しく刑の執行期間が短縮されるような送り出し移送を実施することは、我が国の刑罰執行責任の観点から適当ではございませんので、送り出し移送の相当性判断に当たっては十分配慮しておるところでございます。

 以上です。

鈴木(義)委員 では、具体的な事例でちょっともう一度確認したいんですけれども、例えば、日本では無期懲役という刑があって、三十年を超えると仮釈みたいな形で、その一覧表をもらったこともあったんですけれども、例えば日本では無期懲役という刑期があって、でも、アメリカは無期懲役というのはなくて、二百年とか三百年の刑といったら、減軽が基本的にないんだと思うんですね。そういう国に戻しますよといったら、日本は無期懲役ですよという刑であって、相手方は二百年、三百年出しませんよという国だと、物が違っちゃうと思うんです。そういった場合にどう扱うのか。もう一回だけ、短めでひとつ。

花村政府参考人 送り出し移送における無期懲役受刑者の刑期の扱いというふうなことでお答えいたしたいと思います。

 送り出し移送は、我が国が締結する受刑者移送に関する条約におきまして、刑の執行については執行国の法令により規律される旨規定されておりまして、無期懲役受刑者が送り出し移送された場合につきましても、執行国の法令に基づき刑が執行されることとなりますが、条約におきましては、刑罰の期間について、我が国において命ぜられた制裁より重いものとしてはならない旨が規定されております。

 この点、我が国と執行国の法制度の違いなどから、執行国における刑期が具体的にどの程度の期間となるかについては、繰り返しで申し訳ございません、一概に申し上げることは困難でございます。

 いずれにいたしましても、著しく刑の執行期間が短縮されるような送り出し移送を実施することは、我が国の刑罰執行責任の観点から適当ではございませんので、送り出し移送の相当性判断に当たっては十分配慮しておるところでございます。

 以上でございます。

鈴木(義)委員 分かりました。ありがとうございます。

 では、次の質問に移りたいと思います。

 監督者制度、今までも、現行上、身元引受人という方を選任する。自分が、保釈してその人に引き取られるんだと思うんですけれども、あえて監督者制度というのを創設する趣旨というのはどういう意味なのかということですね。

 時間がないので続けて言うんですけれども、では、今までの身元引受人と監督者制度と何がどのぐらい違うのかというのを、簡潔にお尋ねしたいと思います。

門山副大臣 裁判実務においては、保釈の許可等をする裁判所が、いわゆる身元引受人として、雇用者や親族などから、被告人を監督して公判に出頭させることを誓約する旨の書面を徴することがあるということは承知しております。

 もっとも、この身元引受人は何らの法的義務をも負わない事実上のものにとどまる上、被告人がその監督に服することを期待できる者が選ばれているとは限らないなどから、被告人の逃亡防止、その出頭確保ということで必ずしも十分なものとは言い難いところがあります。

 そこで、本法律案におきましては、監督者制度を新設し、監督者に対し、被告人と共に出頭することや所要の報告をすることを命じて義務を負わせ、これに違反したときは監督者が納付した監督保証金を没取し得ることとすることにより、監督者による義務の履行を確保すること、被告人との人的関係として、例えば、被告人においてその者に不利益を負わせることとなることを忌避しようとする心理が強く働くため、その者の監督に服することを期待し得る関係性がある者など、裁判所が適当と認める者を裁判所において監督者として選任することとしております。

 このように、監督者と身元引受人の違いとしては、例えば、監督者は、被告人と共に出頭することなどについて、監督保証金を没取するという制度の下で法的義務を負うのに対し、身元引受人は何ら義務を負わないなどの違いがございます。

鈴木(義)委員 今長々と御説明いただいたんですけれども、そこまで厳しくやって、監督者になる人というのはいるんですかね。

 最後にもう一回お尋ねして、監督者になる人が、今副大臣がお述べになったようなことで、では、裁判所であなたがやってくれと言っても、いや、私はそこまではできませんよという人ばかりになったら、監督者制度をつくっても意味を成さないんじゃないかと思うんですけれども、いかがでしょうか。

松下政府参考人 お答えいたします。

 監督者制度は今申し上げたような趣旨で創設するものでございますけれども、監督者の制度ができたといたしましても、これまでの事実上の身元引受人は依然としてそういう運用をすることができるとされておりまして、あえて監督者にならない、なりたくないという方に無理になっていただくということもございませんし、そういう責任を負ってでも自分が監督をして保釈していただきたいという気持ちのある方、雇用主さんであるとかあるいはその親族であるとか、そういった方が進んで監督者になっていただけるということもあると期待をしております。

鈴木(義)委員 また来週も機会がありますので、終わります。

 ありがとうございました。

伊藤委員長 次に、日下正喜君。

日下委員 公明党の日下正喜でございます。よろしくお願いいたします。

 まず初めに、公判期日への出頭等を確保するための罰則の新設について質問いたします。

 近年、刑法犯認知件数が減少し、勾留状が発付された被告人の人員も減少傾向にある一方、保釈率はこの十年で二倍以上に増加、また、逃走などを理由にした保釈の取消しは三倍以上に増加しております。

 今回の法改正の意義について確認したいのですが、これからも保釈率が上がっていく方向性は維持しつつ、一方で、保釈された者の逃亡等を防ぎ裁判の執行を確保する、そういう理解でいいでしょうか。また、保釈が増加している理由についても御説明いただきたいと思います。

門山副大臣 近時、保釈率が上昇傾向にあり、この十年余りで一〇%程度上昇している一方で、被告人の逃亡等により保釈が取り消される人員が増加傾向にあります。

 そうした状況の中で、保釈中の被告人や刑が確定した者等による逃亡事案が相次いで発生し、国民の皆様に多大な不安を抱かせ、ひいては刑事司法に対する信頼が損なわれかねない事態が生じております。

 本法律案は、こうしたことを踏まえ、被告人等による逃亡を防止し、公判期日等への出頭及び裁判の執行を確保するため、所要の法整備を行おうとするものでございます。

 保釈率が上昇傾向にある理由については、保釈率は個々の事案における裁判所の判断の集積であり、近時における保釈率の上昇の要因について分析し、あるいは保釈率の動向を予測することは困難でございますが、いずれにしましても、本法律案は、保釈率の動向自体に影響を与えることを意図するものではございません。

日下委員 ありがとうございます。

 犯罪者の社会復帰を目指す、そういう観点もあろうかと思いまして、そういった意味においては、仕事や家族、また本人の病気等もございまして、社会内処遇というか、保釈もやはり増えていく。増やしていくという意味ではないんですけれども、そういう配慮もしっかり考えていっていただければというふうに思います。

 次に、逃走罪の見直しについてでございますが、近年、被拘禁者自身が逃走する事案が報道等でも散見されています。被疑者の犯罪事案にもよりますが、その地域では小学生は集団登下校になるなど、一種騒然とした状態になります。身柄を拘束しなければならない場合は確実に拘束する、そのためには、この度のように、逃亡防止を、刑罰の創設や厳罰化によって防ぐとともに、そもそも逃走されないような運用改善も重要であると思います。

 厳罰化と運用改善、この点の意味合いについて分かりやすく御説明いただきたいと思います。

松下政府参考人 お答えいたします。

 御指摘のとおり、拘禁された者の逃走を防止するためには、刑事施設等における運用面での取組も重要でございます。

 その上で、近時の刑事施設等からの逃走事案の情勢に鑑みますと、そのような取組とともに、逃走罪を始めとする罰則による抑止効果が十分なものであることが必要でございますが、現行の刑法九十七条の逃走罪につきましては、次のような問題があると考えております。

 すなわち、逃走罪の主体が裁判の執行により拘禁された既決又は未決の者ということになっておりまして限定されておりまして、国家の拘禁作用の下に置かれている者でありましても、同条に規定する主体に該当しない者については、逃走を企てて結果的に身柄を確保されたとしてもいわば元の状態に戻るだけということで、逃走を企てる動機が残ってしまうということ。

 また、その法定刑が一年以下の懲役ということで、刑法の罰則の中でも比較的軽いものとされておりまして、逃走を断念させるには不十分であるとともに、一たび逃走事案が生じると、関係する地域社会に大きな不安を生じさせ、刑事司法に対する信頼を大きく損なうことに対する評価としても、その法定刑としては不十分であるといった問題があると考えられます。

 そこで、本法律案におきましては、その逃走罪の主体を法令により拘禁された者に拡張するとともに、厳正な対処が必要な犯罪であるということを示すため、法定刑を三年以下の懲役に引き上げることとしているものでございます。

日下委員 ありがとうございます。

 厳罰化というのは抑止力になるものだというふうに改めて思いましたし、護送中に逃げられるということがないように、運用面、やはり逃走を図る人はそういう厳罰化とかということについても余り認識がなかったり理解がない場合もありますので、やはり運用面で、しっかり取り逃がさないという形の強化をお願いしたいと思います。

 あと、一般的に、法定刑を引き上げる改正を行う場合、法定刑が軽いために上限に張りついているような科刑状況にあることが理由となる場合が多いと言われていますが、逃走罪の科刑状況はどのようなものとなっているのか。また、科刑状況が根拠でないとすれば、逃走罪の法定刑を現行の一年以下の懲役から三年以下に引き上げる理由について、御説明をいただきたいと思います。

松下政府参考人 お答えいたします。

 逃走罪で起訴がなされる場合には、逃走罪よりも法定刑が重い罪が併せて起訴されることが多いものですから、逃走罪のみの量刑の傾向というのを見出すことは困難でございます。

 一般に、法定刑の引上げにつきましては、いわゆる上限に張りついているような現象が生じている場合だけに限られるものではございませんで、本法律案における逃走罪の法定刑の引上げもそのような理由によるものではございません。

 その上で、本法律案におきましては、先ほどもちょっと申し上げましたけれども、現行の逃走罪の法定刑が刑法の罰則の中でも比較的軽いものとされておりまして、逃走を断念させるには不十分であるということと、それから、一たび逃走事案が生じると、関係する地域社会に多大なる不安を生じさせて、刑事司法に対する信頼を大きく損なうことに対する評価としても不十分であるということから、厳正な対処が必要な犯罪であるということを示すために逃走罪の法定刑を引き上げることとし、逃走行為には自己を蔵匿、隠避する行為としての側面が認められるところ、刑法百三条の犯人蔵匿・隠避罪におきましては、犯人自身が他人を教唆して自己を蔵匿し隠避させた場合に、ほかの加重事由や減軽事由がない限りは三年以下の懲役となることとの均衡などを踏まえまして、法定刑を一年以下の懲役から三年以下の懲役に引き上げることとしているものでございます。

日下委員 ありがとうございます。

 次に、保釈等の取消し及び保証金の没取に関する規定の整備についてお尋ねします。

 実刑判決の宣告を受けた後に、保釈等がされている被告人の保釈等の取消し及び保釈保証金の没取について、現在は、刑訴法第九十六条第一項の保釈等を取り消すことができるとの規定により保釈等の取消しを行っており、現行の規定でも運用上問題ないとの意見がある中、本法案において、実刑判決を受けた者が逃亡した場合、必要的に保釈等を取り消し、保釈保証金を没取するものとするとされた趣旨はどこにあるのか、御説明いただきたいと思います。

松下政府参考人 お答えいたします。

 現行法上、保釈や勾留の執行停止をされた被告人が逃亡した場合にこれを取り消すかどうかということは、被告人の事件が刑事手続のいずれの段階にあるかにかかわらず、全て裁判所の裁量に委ねられております。

 そして、保釈保証金の没取につきましても、保釈を取り消す場合における没取は裁判所の裁量に委ねられておりまして、また、御指摘のような、実刑判決の宣告により保釈が失効した者が判決確定後において逃亡するなどした場合には没取は必ずしなければならないとされているものの、実刑判決の宣告後に逃亡して確定前に収容されてしまいますと、文言上没取ができないこととされているところでございます。

 しかしながら、実刑判決の宣告を受けた者については、逃亡のおそれがそれ以前と比べれば類型的に高まるということに鑑みますと、そのような段階でもなお任意的な取消しや没取としているのでは逃亡に対する抑止力として不十分であり、また、仮に逃亡したとしても保釈保証金を没取できないとなりますと、威嚇力が働かないことになってしまうといった問題点があると考えられます。

 そこで、保釈等の取消し、それから保釈保証金の没取によって逃亡の抑止力をより強化するという観点から、実刑判決後は、保釈等されている被告人が逃亡した場合には必ず保釈等を取り消し保釈保証金を没取するということとし、また、実刑判決の宣告により保釈が失効した者が逃亡した場合には必要的に保釈保証金を没取することとするなどの法整備を行うこととしているものでございます。

日下委員 次に、保釈等されている被告人に対する報告命令制度の創設について質問します。

 まず、報告の手段として、電話、メール、書面など、どのようなものを想定しているのか伺います。また、報告内容として、改正後の刑訴法には、住居、労働又は通学の状況、身分関係その他その変更が被告人が逃亡すると疑うに足りる相当な理由の有無の判断に影響を及ぼす生活上又は身分上の事項として裁判所の定めるものとございますが、具体的にどのようなものを想定しているのか。また、報告すべき事項や時期、どの程度の間隔で報告するのかは、裁判所が保釈等の決定の際に報告命令の内容としてあらかじめ指定するのか、あるいは随時指定するのか、お尋ねします。

松下政府参考人 お答えいたします。

 本法律案において創設することとしている報告命令制度の下では、裁判所は被告人に対して、住居、労働又は通学の状況、身分関係その他の生活上又は身分上の事項を裁判所の指定する時期に、あるいは、それらの事項に変更が生じたときに速やかに報告することを命ずることができることとしております。

 お尋ねの報告の手段につきましては、個々の事案ごとに裁判所が適切な方法を定めることとなりますけれども、その方法について、出頭させることが必要と認めるときは、裁判所が指定する日時及び場所に出頭してすることを命ずることもできることとしております。

 また、報告対象となる、その変更が被告人が逃亡すると疑うに足りる相当な理由の有無の判断に影響を及ぼす生活上又は身分上の事項につきましては、法律案において例示している、住居、労働又は通学の状況及び身分関係のほかにも、例えば、交友関係や身柄引受人や監督者との関係などが考えられ、報告命令を発する裁判所が適当と認めるものを定めることになります。

 また、報告すべき時期につきましても、報告命令を発する裁判所が適当と認める時期を指定することとなりますが、報告命令の際に一括して定期的なものとして指定することもあり得ますし、随時、その都度指定するということも、いずれもあり得ると考えております。

日下委員 ありがとうございます。

 次に、保釈等されている被告人の監督者制度の創設についてお尋ねします。

 まず、これまでは親族や雇用主が身元引受人として機能していたものが監督者に改まるわけですが、改正案の監督者として適当と認める者とはどのような者を想定しているのか、お聞きします。

松下政府参考人 お答えいたします。

 監督者制度は、納付した監督保証金が没取され得るということとして、監督者による監督義務の履行を確保するとともに、被告人等に対して、監督者に監督保証金の没取による不利益を負わせることを忌避しようという心理を働かせることによって、監督者による監督を有効に機能させ、被告人等の逃亡防止と公判期日への出頭確保を図ろうとするものでございます。

 こうした趣旨に鑑みますと、監督者として適当と認める者としては、被告人等に対して実効的な監督をなし得る人であること、また、被告人との間の人的関係として、例えば、被告人等においてその者に不利益を負わせることとなるのを避けたいという心理が強く働くために、その人の監督に服することを期待し得るような関係性がある者が該当し得ると考えられます。

 また、監督者制度を創設するといたしましても、従来の事実上の制度である身元引受人ということを排除するものではございません。

日下委員 法制審では、現行実務で行われている身元引受人が新設される監督者に事実上置き換わってしまい、今までであれば身元引受人で十分であった被告人について、監督者の責任や負担が重いために適任者が見つからずにかえって保釈が許されないこととなってしまうのではないかと懸念する意見があり、その一方で、これまでは身元引受人をつけても保釈を許されなかったような被告人や、保釈保証金を十分に用意できずに保釈されなかった被告人も、監督者制度を利用することで保釈できるようになることが期待できるとの意見もあったようです。

 監督者制度の創設は、保釈や勾留の執行停止の許可に対してどのような影響を与えることになると評価しているのか、お尋ねいたします。

松下政府参考人 お答えいたします。

 先ほど御説明したような監督者制度を活用することで、何らかの法的義務を負わない身柄引受人の場合と比較をすれば、公判期日等への出頭の確保がより図られることが期待できることとなると考えております。

 その上で、保釈を許可したり、あるいは勾留の執行停止をするかどうかということにつきましては、裁判所において、個別の事案ごとに、監督者の選任の有無だけではなくて、逃亡のおそれの有無や程度などに関わる様々な事情を含め、その事案に係る事情を総合的に考慮して判断されるべき事柄でありますことから、監督者制度が創設されたことで保釈や勾留の執行停止の判断にどのような影響があるか、与えるかということについて一概にお答えすることは困難でございますけれども、いずれにしても、裁判所においては、監督者制度の趣旨を踏まえつつ適切な運用がなされるものと考えております。

日下委員 次に、位置測定端末、GPSにより保釈されている被告人の位置情報を取得する制度の創設について質問します。

 位置測定端末装着命令について、国外に逃亡することを防止するため、その位置及び当該位置に係る時刻を把握する必要があると認めるときとされておりますが、それを判断する要素について、具体的にどのようなものを想定しているのか。また、この十年間で保釈中に国外逃亡した事案は何件あったのか、そのうち身柄を拘束できた件数についてもお尋ねします。

松下政府参考人 お答えいたします。

 位置測定端末装着命令の判断に当たっての考慮要素というお尋ねでございますが、その判断に当たりましては、例えば、国外における生活拠点を有すること、また、国外で継続的に生活できるだけの経済力や人的関係を有すること、あるいは、国外に不法に出国させることができる組織との関係を有することなど、被告人が国外に逃亡するおそれの程度の判断に影響を及ぼす様々な事情を考慮することになると考えております。

 保釈中に国外に逃亡した事案の件数等につきましては、不法出国等もあり得ることから、逃亡した被告人の逃亡先が国内か国外かを網羅的に把握することは、事柄の性質上、困難でございますけれども、国外かどうかにかかわらず、保釈中の被告人の逃亡に関する統計について、私どもが把握している限りで申し上げますと、令和元年から令和三年までの間に、通常第一審終結前に保釈が取り消された被告人のうち、逃亡し又は逃亡すると疑うに足りる相当な理由があるとして保釈が取り消された件数は百十五件、逃げ隠れをしてはならないとの条件に違反したとして保釈が取り消された件数は六十二件であったと承知しております。

日下委員 ありがとうございます。

 逃亡しているのでありますから、国外なのか国内なのか分からないということであろうかと思いますけれども、国外は非常に少ないのではないのかなという印象がございます。しっかり、今回、費用対効果も考えて検討していただければというふうに思います。

 あと、位置測定端末を装着した被告人の国外逃亡を防止するために、裁判所が定める所在禁止区域はどのような範囲を想定しているのか。また、我が国から出国する際に利用することとなる飛行場や港湾施設を所在禁止区域に定めるだけでは足りず、海外逃亡に利用し得る貨物港や漁港なども含める必要が出てくるのではないかと思うのですが、どう考えておられるのか。先ほども、そういう被告に対して個別に設定をするという話もございましたけれども、GPSの設定、操作のみで柔軟に所在禁止区域を設定できるのかについてもお尋ねしたいと思います。

松下政府参考人 お答えいたします。

 所在禁止区域の設定に関しましては、これまでの御答弁で申し上げておりますとおり、飛行場や港湾施設等、国外に移動する際に通常立ち入ることとなるところが通常想定されますけれども、それ以外にも事案に応じて裁判所において設定することができまして、それら以外にどのような区域が所在禁止区域として定められるかにつきましては一概にお答えすることは困難ですけれども、事案によっては、御指摘のような漁港ですとかその周辺区域が定められることもあり得ると考えております。

 裁判所がそういった区域の設定や変更をした場合における位置測定端末の設定等につきましては、位置測定に用いられる機器等の具体的な仕様等にも関わるものでございますので、現時点で一概にお答えすることは難しいのですが、今後の仕様の策定に当たっては、施行までの間に、制度の趣旨を踏まえつつ、御指摘の点も含めまして、円滑な運用に向けた検討が行われるべきものだと思っております。

日下委員 次に、被告人が空港などの禁止区域に近づいた場合、若しくは端末を外した際に、アラームか何かで通知することになると思います。これは具体的にどこに通知されるのか。空港の場合は航空警察が駆けつければいいと思うのですが、どこかで端末を外した後、漁港からボートで沖まで出て貨物船に乗り換える、密航するということもあり得るかと思います。

 被告人が位置測定端末を外して逃走した場合、相当短い時間に身柄を拘束できなければ、行方を追うのは困難になると思うのですが、身柄拘束までの時間をどれくらいに想定されているのか。また、立入禁止区域に近づいた場合にのみ通知されると、GPSによる監視、追跡が制限されています。これはプライバシーへの配慮ということだと思いますが、万が一、逃走された場合は、GPS機能を使って、それまでの足取り、経路などを遡って検証するということはあるのか。御説明いただければと思います。

松下政府参考人 お答えいたします。

 まず、御指摘のような遵守事項の違反が検知された場合には誰に通知されるかというところで、まず装着している本人にもその旨を知らせますし、あとは、裁判所が遵守事項違反の発生等を確認することができる機能を有する電気通信設備を管理することになるわけですけれども、そこに信号が送信されて、その発生を確認した裁判所は直ちにその旨を検察官に通知するということとなっております。

 遵守事項の違反が検知されてから被告人の身柄を確保するまでに要する時間につきましては、その検知がなされた時点における被告人がどこにいるか、その所在とか位置関係、その後の被告人の行動の事情によるため、一概にお答えすることは困難でございますけれども、遵守事項の違反が検知された場合には、被告人の国外逃亡が切迫している蓋然性が高いわけでございますので、可能な限り速やかにその身柄を確保することができるように、関係機関において適切な運用がなされるべきだと考えております。

 また、所在を追跡するための端末位置情報の閲覧に関しましては、本法律案においては、御指摘のように、閲覧できる場合は制限されておりますけれども、勾引状や収容状の執行によって身柄を確保する場合には、裁判所の許可を受けて検察官等が端末位置情報を閲覧することができることとしておりますので、それを活用して所在を探すということになると考えております。

日下委員 ありがとうございます。

 ちょっと質問の順番を変えたいと思います。二つほど飛ばしまして、次に、犯罪被害者等の情報を保護するための規定の整備について質問します。

 この規定の整備は、犯罪被害者のその後の不安や危険からその身を守り、自らの被害を申告し、裁判にも協力しやすくなるものとして大変重要な法整備だと思います。

 主に行きずりの性犯罪などが典型的な事例になると思いますが、その他どのような犯罪被害が想定されるのか。法案にある、個人特定事項を秘匿できる場合とされる、犯行の様態、被害の状況その他の事情により、被害者の個人特定事項が、被疑者等に知らせることにより、被害者等の名誉又は社会生活の平穏が著しく害されるおそれや、被害者若しくはその親族の身体若しくは財産に害を加え又はこれらの者を畏怖させ若しくは困惑させる行為がなされるおそれがあると認められる事件とは、具体的にどのようなものを想定しているのか。また、個人特定事項として規定する、氏名及び住所以外のその他の個人を特定させることとなる事項とは、具体的にどのようなものを考えておられるのか、伺います。

門山副大臣 本法律案においては、いわゆる性犯罪の事件のほか、犯行の態様、被害の状況等に鑑みて、被害者の個人特定事項が被疑者、被告人に知られることにより、被害者等の名誉等が著しく害するおそれ、被害者又はその親族の身体等に対する加害行為等がなされるおそれがあると認められる事件の被害者も秘匿事項の対象としているところでございます。

 具体的にどのような事件がこれに該当するかは、個別の事案ごとに、具体的な事情を踏まえて判断されるものでございますが、例えば、各都道府県の迷惑防止条例違反のいわゆる痴漢事件や、暴力団の幹部による事件で、被害申告をした被害者を逆恨みしており、当該暴力団の構成員から被害者に対して報復等がなされるおそれがある事件などが該当し得るところでございます。

 次に、本法律案において、個人特定事項とは氏名及び住所その他個人を特定させることとなる事情をいうところ、氏名、住所以外に具体的にどのような事項が該当するかは、これも個別の事案ごとに、具体的な事情を踏まえて判断されるものではございますが、例えば被害者の勤務先や通学先、配偶者や父母の氏名などもこれに該当し得ると考えられます。

日下委員 ありがとうございました。

 一方、被告人、被疑者の防御権、冤罪などについての観点も重要だと思います。

 被害者の方などの個人特定事項を秘匿するに際して、被告人の防御に実質的な不利益を生じるおそれがある場合を除きと条件が付されています。被告人、被疑者の防御に実質的な不利益を生ずるおそれがあるときとは具体的にどのような場合を想定しているのか、分かりやすくお答えいただければと思います。

松下政府参考人 お答えいたします。

 本法律案における防御に実質的な不利益を生じるおそれにつきましては、刑事訴訟法二百九十九条の四という既存の規定がございまして、証拠開示の際に証人の氏名等を秘匿する措置の要件で用いられている防御に実質的な不利益を生ずるおそれと同様に、秘匿措置の対象者の個人特定事項を把握できないことによって、その対象者の供述の信用性の判断に資するような被疑者、被告人との利害関係の有無などの調査を行うなどの防御の準備を十分に行うことができなくなるおそれがある場合がこれに該当し得ると考えられます。

 具体的にどのような場合にそのおそれがあるのかということは、個別の事案ごとに、具体的な事実関係を踏まえて判断されるものでありますけれども、例えば起訴状抄本等が被告に送達された場合において、弁護人には起訴状の謄本が送達されているというときでございましたら、弁護人は個人特定事項を把握しているということになりますので、それが前提になりますので、この場合における被告人の防御に実質的な不利益を生ずるおそれにつきましては、その趣旨から、先ほど申し上げた防御の準備をする必要があって、そして被告人自身が個人特定事項を把握できないとその準備が十分にできなくなるおそれがある場合がこれに該当し得ると考えております。

日下委員 ありがとうございます。

 次に、被告人の弁護人にのみ個人特定事項を伝える場合に、その弁護人が個人特定事項を被告人に知らせてはならない旨の条件に違反し、被害者の氏名や住所などを被告人に知らせてしまえば、その回復は図れず、被害者への影響、そしてこの法律自体への信頼も大きく揺らぎかねません。そのような弁護人に対して、刑事罰を科すのではなく、弁護士会等に対する処置請求にとどめている理由は何か、お尋ねいたします。

松下政府参考人 お答えいたします。

 本法律案におきましては、御指摘のとおり、個人特定事項を被告人に知らせてはならないという条件に違反した場合について罰則はございませんが、裁判所が、弁護士である弁護人については当該弁護士の所属する弁護士会又は日本弁護士連合会に通知をし、適当な処置を取るべきことを請求することができることとしております。

 これは、現行法の下でも、証拠開示に際して証人の氏名等について被告人には知らせてはならない旨の条件を付されて開示を受けた弁護人がその条件に違反した場合に罰則が設けられておらず、検察官が弁護士会等に通知をして適当な処置を取るべきことを請求できることとされておりまして、これを前提に適切な運用がなされているものと承知をしております。

 そこで、本法律案におきましても、これと同様の規律を設けることとしたものでございます。

日下委員 ありがとうございます。

 現行の形で機能しているということでございますね。分かりました。ありがとうございます。

 時間が参りましたので、以上で終わりたいと思います。ありがとうございました。

伊藤委員長 次回は、来る十二日水曜日午前八時五十分理事会、午前九時委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。

    午後零時三分散会


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