衆議院

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第8号 令和5年4月12日(水曜日)

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令和五年四月十二日(水曜日)

    午前九時十四分開議

 出席委員

   委員長 伊藤 忠彦君

   理事 谷川 とむ君 理事 藤原  崇君

   理事 牧原 秀樹君 理事 宮崎 政久君

   理事 鎌田さゆり君 理事 寺田  学君

   理事 沢田  良君 理事 大口 善徳君

      東  国幹君    五十嵐 清君

      石橋林太郎君    岩田 和親君

      奥野 信亮君    加藤 竜祥君

      菅家 一郎君    熊田 裕通君

      國場幸之助君    鈴木 馨祐君

      田所 嘉徳君    高見 康裕君

      鳩山 二郎君    平口  洋君

      深澤 陽一君    山下 貴司君

      鈴木 庸介君    中川 正春君

      山田 勝彦君    吉田はるみ君

      米山 隆一君    阿部 弘樹君

      漆間 譲司君    日下 正喜君

      平林  晃君    鈴木 義弘君

      本村 伸子君

    …………………………………

   法務大臣         齋藤  健君

   法務副大臣        門山 宏哲君

   法務大臣政務官      高見 康裕君

   最高裁判所事務総局刑事局長            吉崎 佳弥君

   政府参考人

   (警察庁長官官房審議官) 親家 和仁君

   政府参考人

   (法務省大臣官房政策立案総括審議官)       上原  龍君

   政府参考人

   (法務省大臣官房審議官) 柴田 紀子君

   政府参考人

   (法務省大臣官房司法法制部長)          竹内  努君

   政府参考人

   (法務省刑事局長)    松下 裕子君

   政府参考人

   (出入国在留管理庁次長) 西山 卓爾君

   政府参考人

   (文化庁審議官)     中原 裕彦君

   法務委員会専門員     白川 弘基君

    ―――――――――――――

委員の異動

四月十二日

 辞任         補欠選任

  岩田 和親君     國場幸之助君

  奥野 信亮君     菅家 一郎君

同日

 辞任         補欠選任

  菅家 一郎君     奥野 信亮君

  國場幸之助君     岩田 和親君

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 政府参考人出頭要求に関する件

 刑事訴訟法等の一部を改正する法律案(内閣提出第四一号)


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     ――――◇―――――

伊藤委員長 これより会議を開きます。

 内閣提出、刑事訴訟法等の一部を改正する法律案を議題といたします。

 この際、お諮りいたします。

 本案審査のため、本日、政府参考人として警察庁長官官房審議官親家和仁君、法務省大臣官房政策立案総括審議官上原龍君、法務省大臣官房審議官柴田紀子君、法務省大臣官房司法法制部長竹内努君、法務省刑事局長松下裕子君、出入国在留管理庁次長西山卓爾君及び文化庁審議官中原裕彦君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

伊藤委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

伊藤委員長 次に、お諮りいたします。

 本日、最高裁判所事務総局刑事局長吉崎佳弥君から出席説明の要求がありますので、これを承認するに御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

伊藤委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

伊藤委員長 質疑の申出がありますので、順次これを許します。東国幹君。

東委員 おはようございます。

 質問の機会を感謝を申し上げたいと思います。

 まず初めに、刑事訴訟法一部改正の中の被害者情報の秘匿事項に関しての質疑をさせていただきたいと思います。

 御承知のとおり、現行の手続では、逮捕状や起訴状などに被害者の氏名や年齢などが記載されて、容疑者や被告には原本が示されていたり、それらの写しである謄本が送達されたりいたしておりますけれども、そのため、被害者の情報が伝わって、例えば報復だとか再被害につながるとの懸念があったところであります。そこで、性犯罪などの被害者保護のため、刑事手続において犯罪被害者等の氏名等の情報を保護するための刑事法の整備関係の法律案が提案されているところなんです。

 ただ、現行法でも、裁判所の提案などで合意を得られれば、被害者の氏名等を秘匿することも、仮名も使用することができて、現行の運用面での、裁判所の運用面での結果として同様の効果もあったわけでありますけれども、この法案が成立するに当たって、現行の運用でやっていたものと比べるとどのような効果が期待できるのか、まずお伺いしたいと思います。

齋藤(健)国務大臣 御指摘のとおり、現行法の下でも、被害者の氏名等を起訴状等において秘匿するため、様々な表記の仕方により運用上の工夫がなされておりまして、それが裁判所に認められた例もあるものと承知をしています。

 もっとも、現在の裁判実務におきましては、このような運用上の措置は、解釈上、再被害のおそれが高い場合など、限定的な場合にしか認められないとされ、どのような場合に秘匿できるのかが法律上明確ではないため、被害者の氏名等の情報を十分に保護することができるとは言えない状況にございます。

 そこで、本法律案において所要の法整備を行うこととしており、これによりまして、被害者等の名誉等が著しく害され、あるいはその身体等に対する加害行為等がなされるおそれがある場合には、被害者の氏名等の情報を秘匿できるようになるとともに、秘匿の措置を取ることができる場合について、裁判所による個別の解釈に基づく判断に委ねるのではなく、被疑者、被告人の防御権に対する配慮も含めて法律上明確となり、安定した運用が実現するといった効果が期待できると考えております。

東委員 法律で明記することによって、その充実なり担保力が増していく、そういった効果があるということだと思います。

 ただ、令和三年度のことなんですけれども、当時の法務大臣が法制審議会に対し、被害者匿名化を含む刑事訴訟法改正案、これを諮問したわけで、そして、その年の九月には法制審議会の総会で決定した。結果、それが法務大臣への答申というふうになったわけなんですけれども、その過程で、これはほんの一部なんですけれども、氏名や住所が秘匿されると、なぜ被害を申し立てているのか調査できないとか、そして裁判での反証が不十分になるとか、冤罪につながるとか、そういった懸念を示して反対の表明があった委員もいたというふうに承知しておりますけれども、その点の懸念というのは払拭されているのかどうなのか、お伺いしたいと思います。

松下政府参考人 お答えいたします。

 本法律案におきましては、被疑者に提示する逮捕状の抄本等や勾留状の抄本等に記載される被疑事実の要旨や被告人に送達する起訴状抄本に記載される公訴事実、これは他の犯罪事実との識別ができるものでなければならないこととしておりまして、被害者の個人特定事項が知らされないとしても、被疑者、被告人にとって、どのような事実で訴追されているのかという、その防御の対象が明らかになるようにしております。

 そして、起訴状抄本等を被告人に送達する措置が取られる場合でも、被告人側に防御の準備の機会を与えるため、弁護人には、個人特定事項を被告人に知らせてはならない旨の条件を付して起訴状謄本を送達することを原則としておりますほか、起訴状抄本等を被告人に送達する措置や勾留状の抄本等を被疑者に示す措置によって防御に実質的な不利益を生ずるおそれがあると認めるときは、裁判所、裁判官は、被告人、被疑者又は弁護人の請求により、個人特定事項を被告人、被疑者に通知する旨の裁判をしなければならず、その裁判に不服があるときは準抗告や即時抗告をすることができることといたしまして、不服申立ての機会も十分に保障しているところでございます。

 以上のとおり、本法律案におきましては、被疑者、被告人の防御権に十分な配慮をしているところでございまして、これが不当に害されるということはなく、お尋ねのような懸念は払拭できていると考えております。

東委員 ということで、払拭できるということであれば、被害者情報の秘匿、これは、性犯罪だけではなくて、幅広い運用が図られる、そういったことも考えられるのではないか。

 要するに、怨嗟によって生命や財産の危険を感じることの事件、例えば、犯罪組織の内部告発であるとかDV等の家庭内暴力においての住所の秘匿であるとか、そういったことが考えられるわけなんですけれども、それらの適用についての基本的な考え方、これをお伺いしたいと思います。

松下政府参考人 お答えいたします。

 本法律案におきましては、起訴状等において被害者の個人特定事項の秘匿措置を取ることができる事件といたしまして、まず、一定の性犯罪の事件を対象としております。また、それ以外の事件として、犯行の態様、被害の状況その他の事情により、被害者の個人特定事項が被疑者、被告人に知られることにより、被害者等の名誉又は社会生活の平穏が著しく害されるおそれや、被害者若しくはその親族の身体若しくは財産に害を加え又はこれらの者を畏怖させ若しくは困惑させる行為がなされるおそれがあると認められる事件も対象としているところでございます。

 具体的にどのような事件がこれに該当するかは、個別の事案ごとに、具体的な事情を踏まえて判断されるものではございますけれども、例えば、各都道府県の迷惑防止条例違反のいわゆる痴漢事件、それから、暴力団の幹部による事件で、被害申告をした被害者を逆恨みしており、当該暴力団の構成員から被害者に対して報復等がなされるおそれがある事件などが該当し得るものと考えております。

東委員 ほかの事件でもやはり適用の可能性があるということだと思います。

 次に、刑が確定していない被告、これはもう改めて言うまでもなくて、事件の容疑者や被告になったとしても身体が自由であるという、保釈なんですけれども、逃亡あるいは証拠隠滅のある場合に限り、裁判所の判断で勾留することができるとされております。これは、身体は原則として保釈のときは自由だということでありますけれども、しかし、実際、黙秘したり否認を続けたりすると拘束が長期に及ぶ傾向にあって、いわば人質司法と呼ばれて、国内外の批判も、一方でそういう意見があるんですが、しかし、最近、裁判所の意識改革などで進んだと言われているここ十年間の中で、保釈率、これの変化はどのような推移になっているのか、お伺いしたいと思います。

吉崎最高裁判所長官代理者 お答え申し上げます。

 地方裁判所における通常第一審におきまして、勾留された被告人のうち、保釈が許可された人員の割合は、令和三年が三二・八%、十年前の平成二十四年が二二・三%となってございまして、一〇%ほど増加しているという状況にございます。

東委員 一〇%ほど増加しているということで、これは、逃亡あるいは証拠隠滅のおそれ、それらのマイナス影響というのはどのような状況になっているのか、お伺いします。

松下政府参考人 お答えいたします。

 近年、先ほど最高裁から御答弁のあったとおり、保釈率の上昇がある一方で、そのこととの因果関係は必ずしも明らかではございませんけれども、被告人の逃亡等により保釈が取り消される人員が増加傾向にございます。

 そうした状況の中、例えば、実刑判決が確定した者が、収容のため訪れた地方検察庁の職員らに対して包丁を向けて脅した上で逃走した事案ですとか、公判期日への不出頭を繰り返し、保釈を取り消された被告人が、出頭した地方検察庁の庁舎外に出た上、自動車に乗り込んで逃亡した事案、海外渡航禁止などを条件として保釈された被告人が、同条件に違反し、本邦から不法に出国して逃亡した事案、覚醒剤取締法違反等の事実で起訴された後、指定された医療機関に所在しなければならない旨の条件を付されて勾留の執行停止をされた被告人が当該医療機関から逃走した事案など、保釈中の被告人や刑が確定した者等による逃亡事案が相次いで発生しております。

 こうした事案の発生は、国民の皆様に多大な不安を抱かせ、ひいては刑事司法に対する信頼が損なわれかねない事態を生じさせるものであると認識しております。

東委員 保釈金が用意できないゆえに保釈を諦めざるを得ない被告も、かなりの数が、これはもう、数字では恐らく分からないと思うんですけれども、潜在的にいるのではないかというふうに推察するわけなんですけれども、この度、GPSを活用するに当たって、逃亡の防止また抑止の効果が期待できるというふうに考えるんです。

 そこで、先ほど申し上げましたとおり、容疑者や被告になっても身体は自由、これが原則。保釈の増加、これが今後一層見込まれるのかどうなのか、お伺いしたいと思います。

松下政府参考人 お尋ねの保釈を許可するかどうかということにつきましては、裁判所において、個別の事案ごとに、位置測定端末装着命令を発するか否かだけではなくて、逃亡のおそれの有無、程度に関わる様々な事情を含め、当該事案に係る事情を総合的に考慮して判断すべき事柄でございますので、いわゆるGPS装着命令制度の創設が保釈の判断にどのような影響を与えるかについて一概にお答えすることは困難でございますけれども、いずれにしましても、裁判所におきましては、この制度の趣旨を踏まえつつ、適切な運用がなされるものと考えております。

東委員 やはりこのGPSの活用というものが、保釈、勾留中の被疑者にとっては、身体の自由に資するということは、やはり一方で期待する声もあるんですね。

 そして、保釈金が高額であるということ、しかし、これは、GPSの今回の活用に当たって、例えば保釈金の減額、そういった効果はあるのかどうなのか、ちょっとお伺いします。

松下政府参考人 お答えいたします。

 刑事訴訟法上、保釈保証金額は、犯罪の性質、情状、証拠の証明力、被告人の性格、資産を考慮して、被告人の出頭を保証するに足りる相当な金額でなければならないとされておりまして、これに基づいて、裁判所において、個別の事案ごとに、様々な事情を含めて、当該事案に係る事情を総合的に考慮して定められることとなりますので、この制度、位置測定端末装着命令制度が創設されることによる影響というのを一概にお答えすることは困難でございますけれども、いずれにいたしましても、裁判所においては、この法律案の各制度が施行された後も、それらの趣旨とともに、保釈保証金の趣旨も踏まえて、適切な金額を定められるものと考えております。

東委員 そのGPSの機能なんですけれども、構造が重要だと思うんです。位置情報、空港、港湾施設の立入禁止、体から端末を外した違反行為を検知し通知するとか、装着が第三者には余り目立たないようにするとか、どこのレベルのものを想定しているのか、ちょっとお伺いしたいと思います。

松下政府参考人 本法律案におきましては、お尋ねの位置測定端末の機能や構造の要件といたしまして、装着された者の体から離れたことなどの事由の発生を検知するとともに、直ちに、かつ、自動的に、その命令を受けた者自身にその旨を知らせる機能を有すること、また、人の体に装着された場合において、その全部又は一部を壊すことなく当該人の身体から取り外すことを困難とする構造であることを定めておりまして、法律上の要件としてはそういうところでございます。

 具体的な仕様につきましては、その命令制度の運用主体である裁判所において、法務省も含む関係機関と協議しつつ、適切に検討がなされるものと考えておりますけれども、御指摘の課題との関係では、備えるべき機能、構造を前提といたしまして、どんな大きさ、形状、重さのものとなるか、あるいは装着していることが殊更に強調されるようなものにならないかなどの事情を考慮しつつ、適切に検討がなされるものと考えております。

東委員 ありがとうございました。終わります。

伊藤委員長 次に、鎌田さゆり君。

鎌田委員 おはようございます。立憲の鎌田でございます。今日もよろしくお願いいたします。

 まず、大臣に伺わせていただきます。

 今回の刑事訴訟法等の一部を改正する法律案、これは検察の権限が拡大しているというのは明らかです。今までここまでやれたけれども、その範囲が、権限が広がったというのは、これはこの法案の中を読めば明らかに分かります。ですので、この法案をポジティブに捉えることも私はできると思います。ですが、一方、ネガティブに捉えることも、これは当然できると思うんですね、検察の権限が拡大しているわけですから。

 ただ、法制審での議論の積み重ねを経ての刑事法の今回の改正案ですので、長年指摘されている、ただいま東委員も指摘をされていましたけれども、人質司法、これも少しでも解消に近づけていけると期待してもよい、私はそういう一面もあると捉えております。

 今回の法改正を俯瞰をして、大臣としての認識を伺いたいと思います。

齋藤(健)国務大臣 先ほどの刑事局長の御答弁にもありましたけれども、近時、保釈率が上昇傾向にありまして、この十年余りで一〇%程度上昇している一方で、被告人の逃亡等により保釈が取り消される人員もまた増加傾向にございます。

 そうした状況の中で、保釈中の被告人や刑が確定した者等による逃亡事案が相次いで発生し、国民の皆様に多大な不安を抱かせ、ひいては刑事司法に対する信頼が損なわれかねない事態が生じていると認識をしていますので、本法律案は、こうしたことを踏まえ、被告人等による逃亡を防止し、公判期日等への出頭及び裁判の執行を確保するために所要の法整備を行うというものでございます。

 これによりまして、現行法にはなかった制度を活用することで、公判期日等への出頭の確保がより図られることが期待できるようになるというふうに考えています。

鎌田委員 ありがとうございました。

 私はポジティブに捉えて、ただし、検察という組織が暴走するような、そういうことはないように、是非、ネガティブに捉えている方々に対しての、今の大臣の御答弁が安心につながるように期待をしたいと思いますので、そのことは述べておきたいと思います。

 まず一番目に、公判期日への出頭等を確保するための罰則を新設をしたことについて伺います。

 法務省として把握している、保釈等の取消しや失効があった後、検察官が被告人を勾留するために呼び出したにもかかわらず出頭がなかった事例、ちょっと御紹介いただきたいと思います。

松下政府参考人 お答えします。

 保釈を取り消された被告人が逃亡した近時の事案といたしまして、第一審の公判期日への不出頭を繰り返し、保釈を取り消された被告人であって累犯前科を有する者が、地方検察庁に出頭した後、収容される前に、庁舎外へ出た上、自動車に乗り込んで逃亡し、二日後に身柄を拘束された事案などがあるものと承知をしております。

鎌田委員 令和元年に集中して起きているのは、我々は報道を通して知るところでもありますけれども。

 次に伺います。

 保釈等をされた被告人の公判期日への不出頭罪、罰則を科す趣旨には、私はですよ、その趣旨には、私は、きちんと司法の判断を仰いで、償うべきは償って、そして再起を期す、更に罪を重ねないように、そういう意味を込めての抑止の面、東委員も指摘をされていました抑止の面を期待をしていると私は解していますけれども、いかがでしょうか。

松下政府参考人 お答えいたします。

 本法律案におきまして、保釈等をされた被告人の公判期日への不出頭罪を設けることとしておりますのは、現行法の下で、そのような行為に対して保釈等の取消しや保釈保証金の没取だけでは公判期日への出頭を確保するための抑止力として不十分である、また、保釈等をされた者は公判審理の確保等を目的とする潜在的な拘禁作用の下に置かれていると言うことができ、そのような立場にある被告人が公判期日に出頭しないという行為は、国家の潜在的な拘禁作用を侵害するものであると考えられることから、罰則を設けることによって公判期日への出頭を一層確実なものとしようとするものでございます。

 このように、罰則の新設の趣旨として、私どもが考えている抑止というのは逃亡自体の抑止のことでございまして、更に罪を犯さない、重ねないようにするための抑止という意味ではございませんけれども、ということでございます。

鎌田委員 見解の違いが若干あるのかもしれませんけれども、でも、広義の意味で考えれば、やはりこういう罰則、不出頭罪を新たにつくるわけですから、もうそれ以上に更に罪を重ねないようにという意味は、私はちゃんと周知をしていく必要性があると思うんですね。その周知の大切さを、今ちょっとここでは述べるだけにしておきますけれども、抑止の面を期待していると私は解しています。

 次に伺います。

 逃走罪の見直しについてなんですけれども、今回は、刑法の一部も改正して、九十七条の逃走罪、九十八条の加重逃走罪の主体も、法令により拘禁された者と拡張しています。

 そこでなんですが、逃走罪の法定刑は一年以下から三年以下の懲役と引き上げられています。これにより期待できることは何でしょうか。伺います。

松下政府参考人 お答えいたします。

 現行の逃走罪の法定刑は一年以下の懲役とされておりますところ、近時の情勢に鑑みますと、逃走行為を防止すべき必要性はこれまでに増して高まっているものの、その法定刑は刑法の罰則の中でも比較的軽いものとなっておりまして、一般予防効果が十分に発揮されていないと考えられます。

 本法律案におきまして、逃走罪の法定刑を三年以下の懲役に引き上げることにより、拘禁された者の逃走行為について、これまで以上に厳正に対処すべき犯罪であるとの法的評価を示すことができ、その威嚇力によって逃走行為に対する抑止力を高める効果があると考えております。

鎌田委員 確認させていただきますけれども、今回の逃走罪及び加重逃走罪が適用されるというケースが発生した場合、新たにこの件で、新たに逮捕、起訴という流れになるんですよね。それでよろしいですね。伺います。

松下政府参考人 お答えいたします。

 個別の事案において逮捕、起訴されるかどうかにつきましては、捜査機関の判断に関わるものであるためお答えを差し控えますけれども、一般論として申し上げますと、現行法の下で、逮捕されている者が更に刑法九十八条の加重逃走罪を犯した場合、あるいは勾留されている者が更に刑法九十七条の逃走罪又は加重逃走罪を犯した場合には、逮捕又は勾留されている事実に係る罪とは別に、逃走罪又は加重逃走罪によって逮捕又は起訴されることはあり得ます。

鎌田委員 あり得ますということですので、これもきちんと周知が必要だと思います。新たに罰則を設けるわけですから、新たに逮捕、起訴されるという可能性があるんだよということなので、是非これは周知に力を入れていただきたいと思います。

 先ほど、最初、逃走罪と加重逃走罪のことについて、一年以下から三年以下に引き上げられていることについて答弁いただきましたけれども、法制審では、逃走罪の法定刑を三倍に引き上げるということについては、重過ぎるんじゃないかという御意見は出ていました。この意見に対しても、相当の理由をもって応えていかなければならないと思います。

 改めて伺いますが、その重過ぎるんだということに対しての反論といいましょうか、これが適正なんだということを改めて伺います。

松下政府参考人 お答えいたします。

 御指摘のとおり、法制審議会の部会における議論では、自己逃走行為、自ら逃走する行為というのは、定型的に期待可能性が低いことなどを踏まえると、三年以下とするのは重過ぎるのではないかといった御意見がございました。

 ただ、これに対しては、逃走罪と同様に現実の拘禁作用を侵害する罪として、被拘禁者奪取罪というものが刑法九十九条にございますけれども、その法定刑は三月以上五年以下の懲役でございまして、逃走罪の法定刑を三年以下の懲役としたとしても、その期待可能性の低さを反映したものと言えるといった意見が示されたところでございます。ちょっとやや専門的でございますが。

 法制審議会の部会におきましては、このような議論を踏まえた上で、逃走罪の法定刑を三年以下の懲役とすることも内容に含む要綱骨子案につきまして、全会一致で採択されて答申されるに至ったものでございます。

鎌田委員 最終的には全会一致ということでございますので、是非この周知を、重ねて申し上げますけれども、徹底していかれることを望みたいと思います。

 次に伺います。

 保釈等をされている被告人に対する報告命令制度、これも新設をされています。被告人が出頭することについて、裁判所が指定する際、場所等ですけれども、オンラインの活用を妨げてはならないと私は考えておりますけれども、どう規定されているか、伺います。

松下政府参考人 お答えいたします。

 本法律案の報告命令制度におきましては、裁判所は、必要と認めるときに、被告人に対し、裁判所の指定する日時及び場所に出頭して報告をすることを命ずることができることとしております。

 裁判所によって現実に出頭して報告をすることを命じられた場合、その指定された日時及び場所に出頭する義務を負うことになりますので、仮に指定された場所に出頭せずにオンラインでのテレビ会議システムにより報告を行ったとしても、その義務を履行したことにはならないと考えておりますが、どのような形でその報告を求めるのかということについては、先ほど申し上げたような形で規定されておりますので、それは事案に応じて、必要に応じて、裁判所において御判断されると考えております。

鎌田委員 済みません、るる御説明いただいたんですけれども、オンラインの活用を妨げはしないということでよろしいんですね。

松下政府参考人 お答えいたします。

 出頭を命ずる場合につきましては、指定された場所に出頭するということが必要でございます。

 報告を求めるときにどういう方法で報告をさせるかにつきましては、オンラインによる報告ということを裁判所が指定されることもあり得ると考えております。

鎌田委員 今、出頭は、あくまでも指定された場所、報告はオンラインも妨げはしないということなんですけれども、出頭がどうしてもかなわないとき、それは想定されていますか。

松下政府参考人 お答えいたします。

 当然、様々な事情により出頭ができないということはあり得て、それは裁判所と適切にコミュニケーションを取っていただいて、別の場所を指定するなり、別の日時にするなりといったことが行われるのではないかと思います。それを妨げるものではございません。

鎌田委員 出頭については、今、柔軟な答弁があったというふうに聞きましたので、是非、出頭、そして報告、この命令制度についてはオンラインの活用も妨げずに柔軟に対応されることを期待をしたいと思います。

 次になんですが、被告人に出頭を命じた旨は弁護人にも連絡するのか否か、伺います。あわせて、被告人の出頭、報告に、弁護人の立会いについて法律で縛ってはいけないと考えますが、いかがでしょうか。

松下政府参考人 お答えいたします。

 裁判所が被告人に対して出頭して報告をすることを命じた場合において、そのことについて弁護人に対して通知をするか否か、また、報告するための出頭に弁護人が付き添うことを許容するか否かにつきましては、法律上特段の規律を設けているものではございません。

 したがって、裁判所におきまして、個別の事案ごとに具体的な事情を踏まえて判断することになると考えております。

鎌田委員 裁判所の判断で個別の事案ごとということで、一律に、弁護人の立会いについては、法律で駄目よとか、いいよとか、そういう規定は設けていないということでございますので、是非、それぞれのケースによっての裁判所の判断は、柔軟に、きちんと、適正に行われることを期待をしたいと思いますので、そのことは述べさせていただきます。

 そこでなんですけれども、この報告命令に関しまして、虚偽報告あるいは不出頭、これに罰則は設けていないということでよろしいでしょうか。

松下政府参考人 御指摘のとおり、それに対する罰則は設けておりません。

鎌田委員 では、その罰則を設けていない理由、根拠についてお示しください。

松下政府参考人 お答えいたします。

 本法律案の報告命令制度におきましては、先ほども申し上げたかもしれませんけれども、裁判所は被告人に対して、済みません、まだ申し上げていませんでした。失礼しました。裁判所は被告人に対し、住居、労働又は通学の状況、身分関係その他の生活上又は身分上の事項を定期的に、あるいは、それらの事項に変更が生じたときに速やかに報告することを命ずることができるというものでございますが、その上で、報告命令に違反した場合には、保釈又は勾留の執行停止を取り消すことができる、また、保釈を取り消す場合には保釈保証金の全部又は一部を没取することができることとしておりますが、先ほど申し上げたように、罰則は設けておりません。

 この法律案におきましては、保釈や勾留の執行停止をされた被告人が公判期日に出頭しない行為などについて罰則を設けることとしているところでございまして、報告命令制度において、保釈中の被告人等が公判期日を迎える前に逃亡して所在不明になり、その出頭を確保できなくなるという事態は、先ほどの罰則で抑止できると考えられることから、御指摘のような罰則を設けることとはしておりません。

鎌田委員 よく分かりました。

 私は、この点、賛成でございますので、今の説明で私は議事録に残していただけることでよろしいかと存じます。ありがとうございました。

 次に伺います。

 保釈等をされている被告人の監督者制度の創設について伺っていきます。

 先週のこの委員会でも、それぞれの委員の方々が、この監督者の制度を創設するに当たって、指摘しておかなければいけない点、心配な点などを質問されていました。

 そこで、私も改めて確認を込めて伺いますけれども、監督者として適切と認める者とはどのような方を想定しているのでしょうか。伺います。

松下政府参考人 お答えいたします。

 監督者制度は、納付した監督保証金が没取され得るということとして、監督者による監督義務の履行を確保することとともに、被告人に対して、監督者に監督保証金の没取による不利益を負わせることを忌避しようという心理を働かせることによって、監督者による監督を有効に機能させ、被告人の逃亡防止と公判期日への出頭確保を図ろうとするものでございます。

 こうした趣旨に鑑みますと、裁判所が監督者として選任する適当と認める者としては、被告人に対して実効的な監督をなし得るとともに、被告人との間の人間関係として、例えば、被告人においてその者に不利益を負わせることとなることを避けたいという心理が強く働くため、その者の監督に服することが期待できるような関係性がある者が該当し得ると考えられます。

鎌田委員 監督者の制度を創設するに当たって、今の答弁のような方を想定していらっしゃるということなんですが、ただ、全員が全員、監督者が見つかるかどうかということについては、これはもう不確かとしか言いようがありません。

 そこで、懸念点を確認をさせていただきたいんですね。

 監督者としての適任者が見つからずに、かえって保釈が許されないことが起きるのではないかという懸念も存在しています。この懸念に対してはきちんと払拭を明確にしておかなければならないと思いますので、そこの点はいかがでしょうか。

松下政府参考人 お答えいたします。

 本法律案におきましては、裁判所は、保釈を許す場合において、必要と認めるときは、適当と認める者を、その同意を得て監督者として選任することができることとしておりまして、監督者を選任しなければ保釈が許されないというものではございませんし、従来から運用で行われている身元引受人から書面を徴するといった形での保証といいますか、それも禁止されることになるわけでもございません。

 その上で、保釈を許可するか否かは、裁判所において、個別の事案ごとに、監督者の選任の有無だけではなく、逃亡のおそれの有無や程度に関わる様々な事情を含めて、当該事案に係る事情を総合的に考慮して判断すべき事柄でございまして、そのことからすれば、監督者となり得る者がいないことのみを理由として保釈を許さないとの判断がなされるものではなく、保釈を許可される場合が不当に制限されることとはならないと考えております。

鎌田委員 ありがとうございました。

 監督者が見つからずにかえって保釈が許されないことが起きるということはないというふうに今の答弁で解しましたので、そのように運用していただきたいと思います。

 大臣に、この件について総体的なところで伺いますが、この監督者なんですけれども、おのずと知ることとならないものについては、監督者が当該被告人に積極的に尋ねることをこの制度では期待されているとも読めるんですね。

 先週も我が党の山田委員から問題意識が指摘されていましたとおり、監督者の立場に立つ人に過度な負担を求めてはならないと私も考えます。ですので、監督者制度というものを、周知を丁寧に、そして徹底して行うべきだと考えます。

 大臣、改めて、この監督者制度について、このように丁寧に行っていくんだという趣旨をお述べをいただきたいと思います。

齋藤(健)国務大臣 御指摘の点はごもっともだと思いますので、適切に周知をしていきたいと思っております。

鎌田委員 絶対に監督者に過度な負担が求められることがないように、是非取り組んでいただきたいと思います。

 次に伺います。

 それぞれの委員の方々が問題意識を持っていらっしゃる、我が国で初めて制度として運用が始まろうとしている、位置測定端末による保釈されている被告人の位置情報を取得する制度について伺っていきます。

 まず、常に身につける端末によって、一般社会の町中で生活する被告人が周りから差別視をされない仕様あるいは規格にすべきだと考えます。先週、我が党の山田委員そして吉田委員、さらには、先ほど東委員からもこの点については指摘がありました。今まで聞いていますと、これから、これから、予算要求がされてから、これからという答弁が非常に多かったんですね。そうしますと、我々はこれを審議するに当たって、イメージも湧かないし、きちんと私たちが疑問点に感じていること、心配に感じていることに答えていただかないと、これは、賛成をしたいなと思っていても、なかなかそこに踏み出すことを、後ろに引っ張られるような状況になりますので。

 周りから差別視されない仕様、規格にすべきと考えますけれども、いかがでしょうか。伺います。

松下政府参考人 お答えいたします。

 本法律案におきまして、位置測定端末の機能や構造の要件としては、先ほど東委員の御質問にお答えしたとおりのことが求められておりまして、具体的な仕様についても先ほど申し上げたとおり、今先生から御指摘の、これからというようなことで申し上げているところではございますが、ただ、御指摘のとおり、位置測定端末を装着していることで、あの人はそういう人だというような、偏見ということを御指摘されていると思うんですけれども、そういうことが可能な限り少なくなるような形で、法律上の機能とかもちゃんと満たすものとしつつ、大きさ、形、重さ、それから装着していることが殊更に強調されるものとならないか、そういったことを十分に考慮しながら検討していくこととなるものと考えております。

鎌田委員 実は今の刑事局長の答弁で、裁判所によってという、今までずっと御答弁の中で必ずついていた、裁判所によって検討されるものと承知をしておりますというのが今までずっと続いてきたんですけれども、今刑事局長は、裁判所によってというものをおっしゃらなかったので、私は今の答弁は非常に前向きに捉えているんですね。今までずっと、裁判所によってそのように検討がなされるものと思いますという、ちょっと御自身たちも、法務省刑事局の方々、裁判所によってそうされると思いますという、ちょっと他人事のように聞こえていた部分もあったんですけれども、今はそうじゃなかったので、私は今の答弁で、ああ、よかったなというふうに感じました。何か訂正があるなら次の御答弁のときに訂正していただければいいんですけれども、裁判所によってそういうふうにちゃんと仕様も規格も検討されていくものと思っていますでは、それでは私は不十分だと思っていますので、今の答弁で、私は了でございます。

 次になんですが、端末装置の装着、取り外し、いずれも裁判所の書記官その他の職員が行うとされていますけれども、刑事施設職員も立ち会うということでよろしいですね。伺います。

松下政府参考人 お答えいたします。

 まず、先ほどの、裁判所においてということを入れるか入れないか問題でございますけれども、この装置を開発するのが、裁判所が開発するということになっておりまして、裁判所において開発されるものについて行政機関としていろいろ申し上げるのが適切でないということから、裁判所においてということを繰り返しておりまして、先ほどの答弁もその趣旨でございます。

 ただ、こうした御指摘がされているということは裁判所も十分に御認識の上で、裁判所において開発されることとなるというふうに私は認識をしております。

 その上で、位置測定端末の装着、取り外しの場面に刑事施設の者が立ち会うかどうかということのお尋ねでございますけれども、まず前提として、位置測定端末の装着は、裁判所の指揮によりまして裁判所の職員がすることになっており、取り外しも裁判所の職員がすることとなっております。

 もっとも、保釈の取消し等によって刑事施設に収容されて命令が効力を失った場合、位置測定端末を取り外すときは、裁判所は刑事施設職員を指揮してこれをさせることができるとされております。

 このような位置測定端末の装着や取り外しの際に刑事施設の職員など他の職員が立ち会うかどうかにつきましては本法律案においては規定しておりませんので、そうした運用に関わる事柄については、運用主体である裁判所を始めとする関係機関におきまして、位置測定端末の装着や取り外しの主体を定めた規定の趣旨や、刑事施設における管理運営上の必要性などを踏まえつつ、必要な協議を行いながら適切に定められることとなると考えております。

鎌田委員 これは先週、阿部委員からの質問だったと思います。これは刑事施設職員が立ち会う、司法警察職員が立ち会うということをきちんと運用の中で定めていっていただきたいんですね。やはりそこは心配な点です。日常こういう訓練をなされていない方が、逃亡のおそれのある方に実際に対峙をして、取り外し、装着を行うわけですから、これは刑事施設職員は立ち会うべきだと思いますので、是非そこは運用のところで期待をしたいと思います。

 次に伺います。

 保釈の執行は端末装着後とされていますが、保釈の執行は身体の自由を回復する行為ですから、装着から保釈の執行によるまでの身柄の解放手続、これは速やかに行われなければなりません。そのような運用にするというお考えをお持ちですね。よろしいですか。

松下政府参考人 本法律案におきましては、位置測定端末装着命令は、裁判所が保釈を許す場合において、被告人の国外逃亡を防止する必要があると認めるときにすることができることとしておりまして、このことに鑑みて、保釈を許す決定の執行、すなわち釈放することは、位置測定端末の装着をした後でなければできないこととしている。委員の御指摘はこの点のことだと思いますが、その上で、位置測定端末の装着は、保釈決定後できるだけ速やかに行われることが望ましいと考えております。

 そのための運用の在り方につきましては、本法律案の成立後、関係機関において必要な協議を行いながら適切に定められることになると考えております。

鎌田委員 済みません。時間も残り僅かになってきましたので、ちょっと飛ばさせていただきます。

 大臣に伺います。

 GPSの装着命令を受けた被告人の国外逃亡を防止するためには、今、はっきり我々、イメージがなかなかできていない状況の中で、国外逃亡を防止するために、所定の事由を検知した場合、速やかに勾引しなければならないという面も一方であります。

 そこでなんですけれども、しかるべき関係機関で協定を交わすですとか、シミュレーションを組んだりですとか、あるいは訓練の必要もあるかもしれません。その点について、大臣の御所見を伺いたいと思います。

齋藤(健)国務大臣 本法律案におきましては、位置測定端末装着命令を受けた者の遵守事項の違反が検知された場合、裁判所が遵守事項違反の発生等を確認することができる機能を有する電気通信設備に信号が送付をされる。そして、遵守事項違反の発生を確認した裁判所は、直ちにその旨を検察官に通知しなければならない、そういう仕組みになっているわけです。

 その上で、裁判所は、検察官の請求により、又は職権で、当該被告人を勾引することになるわけでありますが、検察官、検察事務官又は司法警察職員は、勾引状を執行するときは、裁判所の許可を受けて、当該被告人の端末位置情報を表示して閲覧することができるものとして、これが仕組みになっているわけでありますが、遵守事項の違反が検知された場合に、被告人の国外逃亡が切迫している蓋然性というのが高いということも考えられますので、身柄の拘束に向けた具体的な体制については、こういう仕組みの下で、可能な限り速やかに勾引状を執行してその身柄を確保できるということが大事になってきますので、関係機関において制度の施行までに、適切な連絡体制の構築ですとか、実施に向けた訓練等ですとか、そういう必要な連携がなされるものと考えておりますし、そうしなければいけないと思っております。

鎌田委員 ちょっと前置き、前の部分が長くて心配だったんですが、最後の段落のところで、よかったです、ありがとうございます。

 これは是非、しかるべき関係機関で事前に協定を交わしておいたり、それからシミュレーション、そして訓練なども、もしかしたら必要になるんじゃないかなと私は思います。私たちの記憶にある、あの国外逃亡事件、あれが防げなかったわけですから、今、指名手配されていても、その後、何の進展も我々知ることができませんので、ああいったことを防ぐために、是非、今の大臣の答弁に基づいて運用されていくように期待をしたいと思います。私、期待ばかり言っていますね。期待をしているんですよ。

 今日は、資料として、諸外国におけるGPSによる被告人の位置情報を取得、把握する制度の概要について配付をさせていただいております。これは質問いたしません。

 特にこのイギリスの例を御覧をいただきたいんですけれども、下の段から二段目なんですね、位置情報の取得、把握の実施主体、これは司法省から委託を受けた民間企業の電子監視サービスというところが行っているわけなんですね。

 ずっと審議と答弁の中で、その運営とか具体的なところもこれからということだったんですが、これら海外の状況も参考にしながら、これまた裁判所に過重な負担にならないように、そして情報が漏えいしないように、そして適切に、迅速にこれが動いていくように、回っていくように、こういった民間ですとか様々な第三者の機関、団体との連携というものも考慮してしかるべきだと思いますので、ここは述べさせていただくにとどめます。資料としては、皆様にも御存じいただきたいと思って配付をさせていただきました。

 残りの時間、非常に僅かでございますので、済みません、最後の質問をさせていただきます。

 今日は警察庁からもお越しをいただいております。ありがとうございます。

 刑事手続の、あっ、ごめんなさい、済みません、訂正。委員長、申し訳ございません。その前に、犯罪被害者等の情報を保護するために、弁護人に対して、個人特定事項を被告人に知らせる時期あるいは方法、これに従わなかったときに弁護士会などに措置請求ができるとされているんですが、弁護士会の自治、独立には踏み入らないことは非常に重要な点です。弁護士でもいらっしゃる門山副大臣に伺います。

門山副大臣 本法律案においては、個人特定事項を被告に知らせてはならない旨の条件を付されて起訴状謄本の送達を受けた弁護人が当該条件に違反した場合において、裁判所が、弁護士である弁護人については当該弁護士の所属する弁護士会又は日弁連に通知し、適当な措置を取るべきことを請求することができるとしております。

 ここで言う適当な措置の内容については、当該請求を受けた弁護士会又は日弁連において検討されるべきものであって、懲戒処分等を行うことを義務づけるものではなく、むしろ弁護士自治に配慮したものであると理解しております。

鎌田委員 門山副大臣、ありがとうございました。安心しました。弁護士自治には踏み込まないということをはっきりと御答弁いただきましたので。ありがとうございました。

 次の米山委員が、時間調整大丈夫ですということなので、済みません、最後の質問をさせていただきます。

 警察庁にお越しをいただいております。

 刑事手続のデジタル化についてですけれども、現在、法制審で検討が進められていると承知をしております。令和四年の六月七日の閣議決定において、令和五年度を視野に国会に法案提出ということが明記されています。

 そこでなんですけれども、刑事手続の最前線である全国の警察の捜査にもこれは影響が及ぶということは明らかなんです。でも、各地域の警察の現場、三十万人とも言われている捜査員の現場では、デジカメを使用するのに順番を待っているとか、パソコンを使うことに、必要量が足りなくて順番を待っているとか、これが現実なんですね、全国の都道府県警察の。警視庁は分かりませんけれども、地方においてはこれが現実なんですよ。

 そこでなんですけれども、デジタル化への配備がとても十分とは言えないこの状況を踏まえた上で、警察におけるデジタル機器の整備の予定を伺わせていただきます。

親家政府参考人 警察におきましては、捜査その他の業務を遂行するに当たりましてデジタルカメラやパソコン等の資機材を活用しているところでございますが、こうした資機材につきましては、都道府県警察において、業務内容に応じて必要な台数の整備に努めているものと承知しております。また、国費で整備すべき資機材につきましては、都道府県警察からの要望等を踏まえ、警察庁においてその整備に努めているところでございます。

 引き続き、情勢の変化であるとか、あるいは都道府県警察の要望等を踏まえつつ、必要な資機材の整備に努めて警察の責務を果たしてまいりたいというふうに考えております。

鎌田委員 もうちょっと前向きな御答弁がいただけるかなと思ったんですけれども。令和五年度を視野に国会に法案提出とあるわけですから、是非、また、済みません、参考人としてお呼びするかもしれません。

 今後も現場の警察職員のところで、デジカメの順番を待っているとかパソコン使えないとか、今スマホの方が性能いいんですからね、そういうことが現場の捜査員の中で行われているようじゃ、モチベーションも上がりませんよ。ここで法律を作っても、動くのは現場の警察職員なんだから、そこのところを警察庁の方々はきちっと認識をしていただいて、予算に反映をされることを期待をして、私の質問を終わります。

 ありがとうございました。

伊藤委員長 次に、米山隆一君。

米山委員 それでは、会派を代表して御質問いたします。

 三分間短くさせていただきます。

 まず、刑事訴訟法改正の、公判、控訴審の判決期日の出頭命令について御質問させていただきます。

 今般の改正刑訴法三百九十条の二において、拘禁刑以上の刑に当たる罪で起訴されている被告人であって、保釈又は勾留執行停止をなされているものについては、判決期日への出頭を命じなければならないとされております。これは、判決によって身柄を拘束されることが必要となることがあることを考えれば、ある意味、まあ、それでいいのかなと思う規定だと思います。

 また、その例外規定として、ただし書の中で、重い疾病又は傷害と書かれているのも、これも確かに、重い疾病や傷害で、出頭したら亡くなってしまうなんということがあっちゃいけませんので、それは理解できるんですけれども、その次に、その他やむを得ない事情と書いてありまして、これは何が想定されるのか余りよく分からない。

 極論すると、これは、娘の結婚式とか親の葬式とか、そういうものも入るんでしょうか。そんな非常識なと思うかもしれませんけれども、正直そこは、ある種、そんなに常識的でない方が基本的にはおられる可能性は低くないわけですから、そういったものも含むのかどうか、御見解を伺います。

松下政府参考人 お答えいたします。

 その他やむを得ない事情ということで、改正後の刑訴法の三百九十条の二のただし書のところでございますけれども、そのただし書の趣旨、出頭を命じなければならないの例外の趣旨なんですけれども、出廷のための移動をさせるのが酷であるような場合にまで被告人に出頭を命じて出頭を義務づけるというのは相当でないということから、「重い疾病又は傷害その他やむを得ない事由により被告人が当該公判期日に出頭することが困難であると認めるときは、この限りでない。」として、例外的に控訴裁判所は出頭を命じなくてもよいこととしているわけでございます。

 このただし書に該当し得る場合として、先ほど御指摘のように、例えば、重篤な病気によって入院治療が必要で、当分の間、外出できる状態にまで回復しないと見込まれる場合など、判決期日の変更では対応ができないような継続的な事由がある場合が考えられます。

 御指摘のような、娘さんの結婚式がというような場合につきましては、先ほど申し上げた趣旨に照らしますと、その事由のみによっては、通常、出廷のための移動を義務づけることが酷であるとまでは評価できませんし、一時的なものでございますので、判決期日の変更ということによって対応されるべきものと考えられますことから、一般的には、やむを得ない事由によって出頭することが困難であるとまでは認められないと考えます。

米山委員 それは常識的な判断ということかと思います。判決期日、もちろん、有罪が確定するまでは別に犯罪者じゃないわけですから、ある程度それは事情をしんしゃくするというのはあると思うんですけれども、そこはしかし、常識的な御判断をと思います。

 ちなみに、この出頭命令ですが、これは、控訴審期日の最後の期日において弁護士になされるということでいいんでしょうか。そのときに次の期日を調整するみたいな話になるんでしょうか。また、出頭命令に違反した場合どうなるかと併せて御見解を伺います。

松下政府参考人 お答えいたします。

 改正後の刑訴法三百九十条の二に基づく出頭命令は、被告人に対してなされるものでございまして、弁護人に対してなされることとはたてつけとしてはなっておりません。

 この出頭命令をいつするかでございますが、これは個別の事案ごとに裁判所において判断されるべき事柄でございまして、被告人が判決宣告の直前の期日に出頭している場合には、その期日で公判廷において被告人に対して口頭で次回の判決期日への出頭を命ずることが可能と思われますし、これに対して、判決宣告の直前の期日に被告人が出頭していない場合は、判決宣告期日までの間に、被告人に対して出頭義務があることを示した召喚状を送達するなどして、判決期日への出頭を命じることになると考えられます。(米山委員「その召喚状に反するとという質問も一緒にしたんです」と呼ぶ)

米山委員 じゃ、分かりました。

 召喚状に反すると、そこは、今回の改正で行われているところの罰則を受けるということでよろしいかと思います。あえてもう聞きません。

 次に、改正刑訴法第四百二条の二についてお伺いいたします。

 言わずもがななんですけれども、民事裁判におきましては判決期日への出頭は義務づけられておりませんで、結果が気になっている当事者の方などはその場で判決を聞きますけれども、民事訴訟の多くは、正直言って、財産上の争いで、勝っても負けても金額が違うだけで、それほど、いなきゃならぬというものでもないものも多いということで、多くは、当事者も弁護士も判決期日には出頭せず、郵送で送達された判決文で判決内容を確認しているという運用になっており、特段不都合はありません。

 刑事と民事はもちろん全然違うは違うんですけれども、しかし、被告人が判決を聞いたって聞かなくたって判決は変わらず、それに反論することもできるわけではないわけで、もちろん、出頭せいというのは当然だし、出頭するのがあるべきなんですけれども、そこで出頭しないからといって、わざわざ判決できないということをする必要はないと思うんですけれども、なぜこのような規定を置いたのか、御趣旨を伺います。

松下政府参考人 お答えいたします。

 まず前提といたしまして、本法律案におきまして、先ほども申し上げたとおり、控訴裁判所は、拘禁刑以上の刑に当たる罪で起訴されて、保釈又は勾留の執行停止をされている被告人につきまして、拘禁刑以上の実刑判決等の宣告によって保釈等が失効した場合に直ちに収容できるようにするため、判決宣告期日への出頭を命じなければならないこととしております。

 このように被告人に出頭を命じたのでありますから、これに反して出頭しなかった場合には、まずは保釈等を取り消すかどうかを判断し、その出頭を確保した上で判決を宣告するべきでありまして、被告人が不出頭のまま判決を宣告することはできないこととするのが適当であると考えられます。

 そして、実際にも、被告人が出頭していないと、拘禁刑以上の実刑判決等の宣告がありましても直ちに被告人を収容することができなくなってしまい、逃亡の機会を与えかねないということから、刑の言渡しをする判決等につきましては、被告人が出頭しない場合には宣告できないこととすべきと考えられます。

 そこで、本法律案におきましては、被告人が判決宣告期日に出頭しないときは、原則として刑の言渡しをする判決等をすることができないということとしているところでございます。

米山委員 一方で、同条の二の第二項で、公職選挙法や組織犯罪処罰法違反の場合は、被告人が逃亡していて出頭しない場合でも刑の言渡しを可能としているんですね。

 これも、ちょっと質問は飛ばさせていただきますけれども、要するに、こっちの犯罪なら別に出頭しなくたってできるというたてつけなわけですよ。にもかかわらず、いや、ほかの犯罪ではできませんというのは、自己矛盾といいますか、それは、この犯罪は大いに違うという理屈を言われるんでしょうけれども、聞くとわざわざ言うので、時間がもったいないのでもう聞きませんけれども。でも、それは別にそんなことはないわけで、正直、ほかの犯罪と一緒。

 そうしますと、正直、改正刑訴法三百九十条の二があれば、別な四百二条の規定は不要である。別に、出頭命令を出した上で、だって、公職選挙法や組織犯罪処罰法ではそうしているんだから、粛々と判決を言い渡して、粛々と刑を執行すればいい、身柄を拘束して執行すればいいと思いますけれども、こちらは法務大臣の御所見を伺います。

齋藤(健)国務大臣 本法律案においては、控訴裁判所は、拘禁刑以上の刑に当たる罪で起訴され、先ほど答弁しましたけれども、保釈又は勾留の執行停止をされている被告人について、拘禁刑以上の実刑判決等の宣告により保釈等が失効した場合に直ちに収容して刑の執行を確保するため、判決宣告期日への出頭を命じなければならないということにしていまして、もっとも、出頭命令によって被告人に判決宣告期日への出頭を法的に義務づけたとしましても、被告人が当該期日に出頭しないという事態は生じるわけであります、命令ですから。そして、仮にそのような場合には、刑の言渡しをする判決を宣告できるとすれば、直ちに収容できない場合が生じるということになりますので、結局、出頭命令によって図ろうとしている刑の執行の確保が図られないことになるわけであります。

 そのため、控訴審における判決宣告期日への出頭命令制度を設けた上で、判決宣告の制限に関する規定を設けることが必要だというふうに考えているわけであります。

米山委員 御回答になっていないんですけれども。要は、二項の方で別にいなくてもいいという規定があるんだから、大臣も分かるように、これは明らかに矛盾しているので、それは運用を見てからちょっと考えられたらいいんじゃないかと思います。

 次に、犯罪被害者等の氏名等の情報を保護するための改正についてお伺いします。

 改正刑訴法二百一条の二、二百七条の二において、二百一条の二第一項各号に定める一定の犯罪について、個人特定事項の記載がない逮捕状、勾留状の交付を求めることができるものとしております。その上で、二百七条の三第一項第二号におきまして、当該措置により被疑者の防御に実質的な不利益を生じるおそれがあるときには、当該措置に係る個人特定事項の全部又は一部を被疑者に通知する旨の裁判をするものと定めております。

 この条項を一番適用され得るといいますか、恐らく、実際やったら絶対一番多くなるのは、公共の場で見ず知らずの相手に対する強制わいせつ、いわゆる痴漢事案であろうと思われます。痴漢はもちろん許されるものではないですし、痴漢に遭った被害者からしたら、現在知られていない個人特定情報は是非秘匿してほしいと思うのだと思うんですけれども、一方、痴漢の被疑者とはいえ、それはもちろん弁護を受ける権利はあり、実際問題、弁護士としてそういう案件を受けることがあるんですけれども、その場合、特に、行為自体を認めている、やりましたと言っている被疑者及び弁護人にとっては、示談をして情状酌量を得るというのがほぼほぼ唯一の弁護活動だということになります。そうした示談交渉をするには、当然、被害者の住所、氏名を知らないと、誰も知らない人を相手には示談交渉できないということになります。

 そこで質問なんですけれども、二百七条の三第一項二号における、当該措置により被疑者の防御に実質的な不利益を生じるおそれがあるときには、これは示談の必要性というのは入りますでしょうか。というのは、示談というのは、ある種、言葉として、防御というよりも、どちらかというと情状酌量を求める要素をこれからつくっていきますというような話なので、これは防御に当たるのかということで御質問させていただきます。

松下政府参考人 お尋ねの、防御に実質的な不利益を生ずるおそれということの意味でございますけれども、これは、秘匿措置の対象者の個人特定事項を把握できないことによって、その対象者の供述の信用性の判断に資するような被疑者との利害関係の有無等の調査を行うことなどの防御の準備を十分に行うことができなくなるおそれがある場合がこれに該当し得るというふうに解しておりまして、どのような場合にそれがあるのかということについては個別の事案ごとでございますけれども、お尋ねのような被害者との示談に向けた活動をする必要性があるといたしましても、先ほど申し上げたようなものには該当しないのではないかと考えられまして、その事由が被疑者に通知すべき事由とはならないと考えております。

 もっとも、示談ということについて言いますと、現行の刑事訴訟規則上、弁護人は勾留状謄本の交付を請求することができ、これを通じて被害者等の個人特定事項を含む被疑事実の要旨を把握することができると考えられますし、起訴状等についても、原則としては弁護人の方に謄本という形で個人特定事項は知らされる、被告人に知らせてはならないというのはありますけれども、ということでありますので、実質的に示談交渉等が不当に害されるということはないのではないかと考えております。

米山委員 これは、そうしたら、二番の質問の答えをほぼほぼ言っていただいたんですけれども、実際に今の運用として、勾留中の被疑者の示談交渉においては、被害者の同意があった場合に、被害者の弁護士さんの連絡先を被疑者の弁護士に教えるというような運用がなされているので、その運用は変わらないということであれば、恐らくこの新しい法令ができても示談交渉はできるということだと思いますし、それはそれでちゃんと個人情報を守りながら示談交渉できるということかと思います。

 では、もう三番目の質問に移らせていただきます。

 起訴状については改正刑訴法二百七十一条の二以下で同様の規定が設けられておりますが、この規定には、二百七十一条の三第二項で、弁護人に対して、起訴状に記載された個人特定情報のうち起訴状抄本等に記載がないものを被告人に知らせてはならない旨の条件を付して起訴状の謄本を送達しなければならない等と定め、二百七十一条の七において、これらの規定により付した条件に弁護士が従わなかったときは、当該弁護士の所属する弁護士会又は日本弁護士連合会に通知し、適正な処置を取るべきことを請求することができると定めております。

 これは、実際に、弁護士が本当に被告人に個人特定情報を知らせないのはもう当然でしょうと思うんですけれども、実際、例えば、当初は、全く個人情報を知らない犯罪だと思われていた、本人もそう言っている、ところが、実際には元々知っていたということはあり得るんだと思うんですね。本人はまるで場当たりでやったようなことを言っているし、警察もそう思っているけれども、実は知っていて狙っていましたということは大いにあり得て、しかも、正直、犯罪者という前提で、犯罪者なわけですから、そんなことを秘匿したまま、いや、弁護士に教わりましたと言うことだってあり得るんだと思うんですね。通り魔と思われたものがそうだったということはあり得ると思うんです。

 ですので、単に個人情報を被告人が知ったというだけで、弁護士を、要はこれは懲戒請求ということだと思うんですけれども、懲戒請求してしまうと、なかなか、弁護士も萎縮してしまいますし、そもそもその手の犯罪の弁護人がつきづらくなるということが起こってしまい得るんだと思います。

 さらに、被告人がそういううそをついたということでなくても、例えば、何かの、全然被告人には漏らしていないんだけれども、必要な情報を取るためにお話をしたり示談交渉をしている中で、そこから漏れ聞いた情報から、もう被告人の中ではやはり何人か一定のリストがあって、この人だと分かってしまうということもあり得るんだと思うんですね。

 ですので、弁護士が条件に従わなかったときというものは、かなりきちんとそういう明確な証拠があってからやるべきだというふうに考えるんですけれども、実際の運用というのは、もちろん、大体、ケース・バイ・ケースと言われる答えが返ってくるんでしょうけれども、しかし、どの程度の証拠をもって、規定により付した条件に弁護士が従わなかったというふうに判断してそれを通知するのかということは一定の御所見があってしかるべきと思いますので、御所見を伺います。

松下政府参考人 お答えいたします。

 お尋ねの、弁護人が被告人に知らせてはならないという条件に違反した場合について、裁判所が改正後の二百七十一条の七第一項に基づいて処置を請求するということにつきまして、どんな資料に基づいてどんな心証が得られた場合に処置請求を行うかということについては、お察しのとおり、裁判所において個別の事案ごとに判断されるべきものでございますけれども、裁判所においては、処置請求ができることとされている趣旨を踏まえつつ、適切に運用されるものと考えております。

 いずれにいたしましても、処置請求に基づいて取る適当な処置の内容につきましては、その請求を受けた弁護士会又は日本弁護士連合会において適切に御判断されることになると考えております。

米山委員 まあ、そういう答えになるんだとは思うんです。それはもちろん、弁護士会がきっちりやるというのも重要なことだとは思うので、全てが行政というわけでもないと思うんですけれども、同時に、やはり弁護士にとって、懲戒請求されること自体が、ある種、傷になってしまうところはあるので、たとえ全然そんなことをしていなくても、そこは適切な運用を心がけていただければと思います。

 では次に、ウィシュマ・サンダマリさんが名古屋入管で収容中に死亡した事件におきまして、四月六日、弁護団が、証拠として提出された防犯ビデオのうち五分をマスコミに公開したことについて、齋藤法務大臣、お手元の資料一ページ目ですけれども、閣議後の記者会見で、国が証拠提出し、裁判所で取り調べる映像の一部を、原告側が勝手に編集してマスコミに提供したと不快感を示したと報道されております。

 そこで、質問させていただきますけれども、この防犯カメラの映像は、著作権法第二条第一項第一号に定める著作物の定義、すなわち、思想又は感情を創作的に表現したものであって、文芸、学術、美術又は音楽の範疇に属するものに該当しますでしょうか。

中原政府参考人 個々の映像が著作物に当たるか否かといいますのは、思想、感情を表現したものか、あるいは創作性があるかといったものの要件により判断されるものでありまして、最終的には司法の場で個別に判断されるものでありますことから、一概にお答えすることは難しいものとは存じます。

 なお、一般論としては、固定カメラなど設置された撮影機によって自動的に撮影されたものであれば、撮られた写真、動画、映像などは、機械的に撮影されたものと考えられまして、創作性は認められないと判断される可能性が高いものというふうに考えております。

米山委員 これは著作物じゃないんです。ですので、編集をしていけないという理屈はないと私は思います。

 齋藤大臣、これは勝手に編集したとおっしゃられているんですけれども、ということは、勝手じゃない編集があるということだと思うんですよね。

 ちなみに、全二百九十五時間のうち国がそもそも五時間抽出しているんですけれども、映像を。そこから更に五分を抜粋して、そのうちの、最初の五時間抽出のところは問題なく、五時間から五分を抜粋するのは勝手に編集したとおっしゃられているんですけれども、であれば、一体全体誰に許可を取るべきだと思っていたのか、その法的根拠とともに御回答ください。

齋藤(健)国務大臣 まず、冷静に聞いていただければと思うんですが、私の発言は、記者からの質問があったのでお答えをしたということであります。

 その上で、私がそのとき申し上げたのは、御指摘のビデオ映像は、国が証拠として提出をし、これから裁判所において取り調べることになっている約五時間分のビデオ映像の一部を、原告側が勝手に編集しマスコミに提供して、公開したものであると承知しているというものでありますので、これは事実関係を述べただけでございます。

 その上で、私は、そのときも申し上げているんですが、今般の、訴訟係属中の事柄でもありますので、法務大臣としてはコメントしないというふうに申し上げているので、繰り返しますが、質問に対して答えたもの、事実関係を申し上げたもの、そして私はコメントしないというふうに答えているわけです。

米山委員 つまり、今の御趣旨でいいますと、勝手にというところにネガティブな意味は全くなくて、要するに、原告弁護団が任意にやったということを勝手にという言葉で表現されたという趣旨でよろしいでしょうかね。それであれば、私、ここで押し問答しませんけれども、それは、勝手にじゃなくて任意にという意味だと改めて撤回すべきだと思いますよ。

 せっかくですから御見解を伺いますが、それは任意にという意味だったということでよろしいですか。

齋藤(健)国務大臣 どのように捉えていただいても構いません。

米山委員 そこは大きく違うんですよ。やはり、法務大臣ですから、勝手にと言ったら、それはネガティブに聞こえるわけですよ。ほかに、じゃ、承諾を取らなきゃいけなかったのかと思われるわけです。でも、承諾を取る相手なんかいないわけですよね、実のところ。

 原告弁護団に伺ったところ、本件の証拠提出は裁判所に促されてではあるものの国が任意に提出したもので、提出に際して国は、原告に対して、公開しない旨の誓約書の提出を求めたけれども、原告団はこれを拒否し、裁判所も全く誓約書の提出を促したりしていない、進行協議の場で、原告弁護団長から被告国に、公開しないという誓約を求める根拠はないですよねと問うと、被告指定代理人は、要望ですと回答したというふうに伺っております。

 齋藤大臣、この経緯を指定代理人若しくは担当部署から聞いておりましたでしょうか。

齋藤(健)国務大臣 繰り返しますけれども、本件は、私、事実関係を述べたものというふうに理解をしておりますので、そのように理解していただければありがたいなと思います。

米山委員 そうしますと、つまり、要するに、五時間の映像を五分に抜粋することも、裁判所に行けばもとより公開されており誰でも閲覧できる映像をマスコミに提供することも、何ら法的に問題はないということでよろしいですね。

齋藤(健)国務大臣 繰り返しますが、この私の発言は事実関係を述べたもので、そして、それ以上のことは、訴訟係属中ですのでコメントはしないということですので、コメントはしません。

米山委員 それはそれで、そうおっしゃられるんですけれども、大臣の発言ってやはり物すごく影響があるんです。

 ちょっと次の私の質問が、それはいろいろな御意見があるのは承知した上で、あえて質問させていただきますけれども、大臣への質問を基にして、御党の、そしてこの委員会の委員の方が、このようなツイートをされております。法務委員会でも問題視しました、ウィシュマさんも御自身の弱られた様子を週刊誌を通じて公開されることを望むでしょうか、編集も無断であり裁判所も証拠開示に慎重にならざるを得ません。これは、大臣の先ほどの記事を引用してこういうことが言われているわけです。

 これは、今ほどお話あったように、そもそも、編集も何の問題もない、公開も法的に何の問題もない、それをあたかも悪いことかのように言っている。しかも、次のツイートでは、そもそも弁護士は受託案件での任務遂行に全力を挙げるべきです、それを、入管法改正反対という政治的意図を持っている皆様、しかもある一定の政治信条を共有している方々が政治利用しようとしていないのか、懲戒請求対象になってもおかしくないと思います、そういうことを言われるわけですよ。

 もちろん、言論の自由があります。それは好きにしたらいいです。ですけれども、大臣の発言を基にこういうことを言われたら、それは弁護士は萎縮しますよ。(発言する者あり)ちゃんと二十分は質問しましたので。それは萎縮しますよ。

 ちなみに、私、さきの法務委員会でも質問しましたけれども、私、障害児の医療過誤訴訟を扱っております。この訴訟において、これは是非私は直したいと思いますから、立法の実現という目的に政治利用するつもりです、この案件。この案件で、相手側から提供されたカルテ、膨大なカルテですから、抜粋を提出します。それは記者会見もするつもりです。

 全くやっていることは同じなんですよね。今のウィシュマさんの場合と同じじゃないですか。ウィシュマさんのものが悪いというのであれば、私のそういう、障害児の話なんか、自分の訴訟経験に基づいてそれを立法に生かすということ自体も悪いことになってしまうんです。

 さらに、懲戒ってやはり軽く考えてはいけなくて、実際に不当懲戒事案というのがありましたよね。誰かが懲戒をあおったら、次々次々と懲戒請求が来て、もう本当に弁護士は大変です、それに一々応えなきゃいけませんからね。

 ですので、これは別に個人を何かあげつらいたいんじゃなくて、大臣の御発言、それは大臣はそういうつもりじゃなかったとおっしゃられたのは、私はそうだと思いますよ。それは単に任意だという趣旨で言ったということはそうなのかもしれませんけれども、やはり、大臣が、勝手に編集して出されたものだという、あたかも悪いかのように言ってしまったことがこういうことに至ったんだと私は思うんです。

 ですので、私は、先ほど来申し上げているように、きちんと大臣から、それは悪くないですと。それはもちろん、被告ですから、被告国ですから、被告国として、相手、原告の弁護団のやり方に苦々しい思いを思うことはあると思いますよ、だって原告と被告ってそういうものですから。相手は自分を責めてくるんだから、それは相手のやることは苦々しいに決まっています。ですけれども、法務大臣として、そこは、公正中立な立場で、相手の弁護団のやることに対して、それこそネガティブなことを言うべきじゃないんですよ。

 先ほど来、大臣、個別の案件に対してはコメントしないと言っているじゃないですか。まあ、私はそれに文句をつけていますけれども、言ってくれと言いますけれども。でも、一方、それは分かるんですよ。だって、大臣が言うことはすごい影響があって、それが訴訟に影響しちゃいけないんです。そうだと思うんです。にもかかわらず、そう言っていらっしゃる。それは、もう一度私は撤回を求めたいと思うんです。きちんと、抜粋して公開したことは問題ないと一言言っていただけませんでしょうか。これだけ、最後です。

齋藤(健)国務大臣 私は、繰り返しますけれども、事実関係を述べただけであって、あれがいいとか悪いとかいうコメントは一切していませんので、そのように受け止めていただければありがたいなと思います。

伊藤委員長 米山隆一君、時刻が参りました。

米山委員 あと十秒あるはずです。

 それでは、あれは悪くなかったということで私は受け止めますし、そうおっしゃったということだと思います。

 ありがとうございます。

伊藤委員長 次に、沢田良君。

沢田委員 日本維新の会、埼玉の沢田良です。

 本日、先週金曜日に引き続きまして、刑事訴訟法改正について質問をいたします。

 伊藤委員長を始め理事、委員の皆様、委員部の皆様、齋藤大臣始め法務省の皆様、今日もよろしくお願いいたします。

 それでは、早速質疑に参ります。

 今回の刑事訴訟法改正の議論におきましては、位置測定端末の装着命令制度、いわゆるGPSの装着が、結構、前回の刑事訴訟法の議論の中でもちょっと曖昧になっているようなところがあるというふうに個人的に感じた部分もあるんですけれども、本日、私は、それ以外にも様々な制度が整備、新設されることとなっておりますので、今回、そちらを中心に質問させていただきたいと思います。

 今日は、前半、いろいろな委員の質問があったんですけれども、ちょっと話の流れ上かぶってしまうものが何点かございまして、質問がかぶっているところがございましたら、御容赦ください。申し訳ございません。

 まず、今回の改正案では、裁判所が、保釈された被告人による住居や労働等の状況についての報告を命じることのできる制度が導入されます。法制審議会の部会におきましては、被告人が裁判所と接触する機会を増やすことで逃走の抑止になるという観点から、メールや電話による報告については、その効果に疑問が呈されているとも伺っておりますが、この報告の手段としてはどのようなものを想定なさっているんでしょうか。教えてください。

松下政府参考人 お答えいたします。

 本法律案において創設することとしている報告命令制度の下では、裁判所は被告人に対し、住居、労働又は通学の状況、身分関係その他の生活上又は身分上の事項を裁判所の指定する時期に、あるいは、それらの事項に変更が生じたときに速やかに報告することを命ずることができることとしております。

 どのような方法で報告をさせるかにつきましては、本法律案において特定のものに限定をしておらず、個別の事案ごとに裁判所が適切な方法を定めることとなりますが、出頭させることが必要と認めるときは、裁判所の指定する日時及び場所に出頭して報告することを命ずることもできることとしております。

沢田委員 どうもありがとうございます。

 手段に制限は設けられていないというお話も伺ったんですけれども、ちなみに、オンラインでの報告も法律上妨げられるものではないということで大丈夫でしょうか。

松下政府参考人 お答えいたします。

 先ほども申し上げたとおり、報告の方法については、この法律案において特定のものに限定しておりませんので、御指摘のオンラインでの、テレビ会議のようなことでしょうか、の方法による報告を命ずることもできますけれども、実際にその方法によって報告を命ずるかどうかは、個別の事案ごとに、裁判所におきまして、被告人の生活状況やそれまでの言動、公判手続の進捗状況などを踏まえまして、被告人の逃亡防止や公判期日への出頭確保に資するかどうかという観点から、報告を求める事項の内容も踏まえまして、その方法が適切かどうかが判断されることになると考えております。

沢田委員 本当に、コロナの弊害というものもたくさんあるんですけれども、私、こんなにオンラインというものがコロナの中で浸透すると正直思っていなかったです。私も、余りネットとかに強いというわけではないんですけれども、今ではZoomで、友達とぱっと電話をするときも安易にZoomを使って話したりということもあるので、何か本当に当たり前に我々の生活になったなというふうに感じるんです。

 こういったデジタル技術を様々な場面でどんどん活用すべきだと思う一方、一般的な感覚として、保釈された人の現状確認であったり、また、逃走を抑止するという意味合いからは、裁判所等に実際に足を運んでもらう方がいいのではという意見も当然いろいろな方から出るというふうにも思っております。

 ちなみに、現に出頭しての報告を命じることができるようにした趣旨をここで改めて伺いたいと思います。また、裁判所が必要があると認めるときというのは、具体的にどのような場合が想定されるでしょうか。教えてください。

松下政府参考人 お答えいたします。

 報告命令制度におきまして、裁判所が必要と認めるときに、被告人に対し、裁判所の指定する日時及び場所に出頭して報告をすることを命ずることができるということとしておりますのは、出頭して報告をさせることが、被告人の逃亡防止と公判期日への出頭の確保を図るという報告命令制度の目的を実現する上で有益かつ必要な場合があるからでございます。

 お尋ねの、必要と認めるときに該当し得る場合といたしましては、例えば、裁判所等の所定の場所に定期的に出頭して報告させることによって逃亡や出頭拒否をしようという意欲が生じにくくする必要がある場合、また、被告人が虚偽の報告に及ぶことを防止するため、報告の内容の真実性を面前で吟味する必要がある場合などが考えられると思います。

沢田委員 御丁寧にありがとうございます。

 被告人が出頭して報告を行う場合、その場所は、裁判所の指定する場所とされております。これは、一般的には、裁判所が指定されることがほとんどなのではないかと推察しますが、具体的にはどのような場所を想定していますでしょうか。法制審議会等でも、裁判所以外の場所が指定される場合についての議論があったと伺っておりますので、具体的にどのような場所が挙がったのかも教えていただければと思います。

松下政府参考人 お答えいたします。

 お尋ねの出頭させる場所でございますけれども、本法律案においては、出頭させる場所を特定の場所には限定しておらず、どのような場所を指定するかは、個別の事案ごとに、裁判所において、被告人の生活状況やそれまでの言動、繰り返しになりますが、公判手続の進捗状況を踏まえて、被告人の逃亡防止や公判期日への出頭確保に資するかという観点から、報告に適した場所を適切に指定することとなると考えておりますけれども、法制審議会において、裁判所以外に出頭場所として想定できる場所として議論で挙がった箇所につきましては、例えば検察庁とか警察署とか、あるいは弁護人の事務所などが議論に挙がったところでございます。

 いずれにしましても、どこに出頭させて報告させるかにつきましては、個別の事案ごとに裁判所において適切に指定をすることとなると考えております。

沢田委員 ありがとうございます。

 私も、本当に、裁判をしたこととかということが個人的にやはりなくて、この条文をいろいろ支援者の方に説明しようと思ったときに、ああ、こういうこともきっちりと一つずつ聞いていかないと、意外に想像ができないんだなということがありましたので、確認させていただきました。

 続きまして、保釈等をされている被告人の監督者制度の創設について伺わせていただきます。

 監督者には法律上の義務が課せられ、裁判所から命令があれば被告人と共に公判期日に出頭することもあるそうです。また、これらの義務に違反した場合には、監督保証金が没収され、保釈等の取消しになる可能性もあります。

 まず、この監督者として適当と認める者というのはどのような方を想定していらっしゃるのか、教えてください。

松下政府参考人 お答えします。

 監督者制度は、納付した監督保証金が没取され得るということとして、監督者による監督義務の履行を確保するとともに、被告人に対して、その監督者にそういう不利益を負わせることを避けようという心理を働かせることによって、監督者による監督を有効に機能させ、被告人の逃亡防止と公判期日への出頭の確保を図ろうとするものでございます。

 こうした趣旨に鑑みますと、裁判所が監督者として選任する適当と認める者としては、被告人に対して実効的な監督をなし得るとともに、被告人との間の人間関係として、例えば、被告人において、先ほど申し上げたような、その人に不利益を負わせることはできないというような心理が強く働くために、その人の監督に服することが期待できるような関係性がある方が該当し得るものと考えています。

沢田委員 やはり、それを判断していただくという場合に、当然いろいろな情報が必要になってくると思います。

 では、この適当と認める者を選任する際、裁判所はどのような情報を基に判断を下すのかも具体的に教えてください。

松下政府参考人 お答えいたします。

 監督者を選任する主体は保釈等を許す決定をする裁判所でございますけれども、どのような資料にということでございますが、まずもって、その保釈の申請をする者が提出する資料ということがございますし、そのほかに、保釈等をするかどうかという判断に当たりましては、裁判所は検察官に意見を聞くということになっておりますので、保釈等の請求者が提出する資料のほかに検察官の意見を判断資料としておりますので、監督者についてもこれと同様であると考えられます。

 また、現行の刑事訴訟法におきまして、裁判所は、決定又は命令をするについて必要がある場合には、事実の取調べをすることができるというふうにされておりまして、裁判所は、監督者の選任についても、保釈等の判断に当たって必要があれば、事実の取調べとして保釈等の請求者や監督者となろうとする者から話を聞くなどして資料とすることも可能でございます。

沢田委員 どうもありがとうございます。しっかりいろいろなところから情報が入っているということで、ちょっと安心できる部分でもありますけれども。

 例えば、今、海外から日本に来るときにどうやってその人間の過去を保証するかみたいなのを、NFTとかブロックチェーンといった技術を使って、どんどんどんどん日本で働く人をあっせんするというような話をこの前聞いたときに、やはりちょっと、いろいろな技術を使ってその人その人を認証していく作業というのがこれからの時代は必要になってくるのかなと思いましたので、是非デジタルを本当にいろいろ考えていただければと思います。

 そして、この監督者制度ですが、最初に御説明を聞いたときにふと思い浮かんだのが、身元引受人、これは正直、素人感覚ですが、身元引受人という名前と監督者、この違いについて分かりやすく教えていただけますか。

松下政府参考人 お答えいたします。

 裁判の実務におきましては、御指摘のとおり、保釈等の許可などをする裁判所が、いわゆる身元引受人として、雇用者や親族などから、被告人を監督し公判に出頭させることを誓約する旨の書面を提出していただいたりすることがあると承知をしております。

 ただ、この身元引受人という者につきましては、何らの法的義務をも負わない事実上のものにとどまるということと、また、被告人がその監督に服することを期待できる人が選ばれているとは限らないことなどから、被告人の逃亡を防止し、その出頭を確保する上で必ずしも十分なものとは言い難いというものでございます。

 そこで、この法律案におきましては、監督者制度というものをつくっているんですが、これは、監督者に対して、被告人と共に出頭することや所要の報告をすることを命じてその義務を負わせるということになっておりまして、これに違反したときには監督者が納付した監督保証金、保証金を納付してもらうんですけれども、それに違反すると没取し得るということにすることによって、監督者による義務の履行を確保するということ、また、その被告人との人間関係として、例えば、被告人においてその人に不利益を負わせることとなることを避けようという心理が強く働くために、その者の監督に服することを期待し得る関係性がある者など、裁判所が適当と認める者を裁判所において監督者として選任するということとしているわけでございます。

 このように、身元引受人との違いといたしましては、例えば、監督者は、被告人と共に出頭することなどについて、監督保証金の没取などという制裁の下で法的義務を負うのに対し、身元引受人は何らの法的義務も負っていないというなどの点で異なるものでございます。

沢田委員 分かりやすく御説明ありがとうございます。何か、多分、僕らが普通に思っていたものは、元々、今回新設されたものの方が近いのかなというふうに感じました。

 監督者の新設によって、法的根拠のある立場で被告人を監督させることができるようになりますが、法律上の義務等が発生するということで、その責任や負担は単なる身元引受人よりも当然重くなるということが予想されます。

 例えば、自分の親族が被告人となった場合に、こうした負担を責任を持って引き受けることができるかと考えると、少しやはり悩まなければいけないなというふうにも感じてしまいます。

 法制審議会の部会においても、責任や負担が重いために監督者を引き受ける人がおらず、それによって保釈が許されないといったことが起こり得るのではないかと懸念する意見があったと聞いておりますが、この点、法務省としてはどのようにお考えでしょうか。

松下政府参考人 お答えいたします。

 なり手が限られるのではないかという問題意識だと理解いたしましたけれども、現在の裁判実務において身元引受人というのが付されることがありますけれども、そういう人たちが、そのまま監督者として名のりを上げるかということになりますと、自分の監督能力では被告人の逃亡等の抑止を保証するには不十分だなというふうに自ら認識されている場合、あるいは、裁判所の命令による義務を履行し得ない可能性があると考えていらっしゃるような場合には、監督保証金の納付や監督義務の履行といった負担を負ってまで監督者になろうとしないと考えられますので、今身元引受人になっていらっしゃる方のうち、限られた方が監督者になるんだろうということは想定されます。

 もっとも、こうした負担を嫌だなと忌避される方に監督者としての適格性があると言えるかというと、それは疑問でございまして、こうした者が監督者になろうとしないとしても、そのことは問題とは言えない一方で、実効的な監督を真摯に行うとともにこうした負担を引き受けることもいとわないというような方を監督者として選任し、その監督を有効に機能させることとする方が、被告人の逃亡防止と公判期日への出頭確保という目的を果たす上では有益であると考えられますので、監督者のなり手が限られるとしても、監督者制度を創設する意義は十分にあると考えております。

沢田委員 ありがとうございます。

 続きまして、この監督者が何らかの理由で解任又は死亡してしまうといったことが起こった場合の手続の流れについて御説明お願いいたします。

松下政府参考人 監督者が選任されることによって逃亡を防止することができるため保釈等が適当というふうに判断されたにもかかわらず、監督者が解任されたり、又は亡くなった場合には、本法律案において保釈等の前提を欠くこととなってしまいますので、裁判所において保釈等を取り消す、あるいは従前の監督者による監督に代わる新たな措置として新たに適当と認める者を監督者として選任する、あるいは被告人が保釈されている場合には保釈保証金を増額するのいずれかの措置を取らなければならないこととしております。

 なお、その前提として、心身の故障その他の事由によって監督者が個別的に命じられた事項をすることができない状態になった、あるいは監督者が死亡したことを被告人が知ったときは、速やかにその旨を裁判所に届け出なければならないということとして、裁判所が監督者に係る事情の変更を速やかに把握できるようにしております。

沢田委員 ありがとうございます。

 続きまして、犯罪被害者等の情報を保護するための規定の整備について伺います。

 犯罪被害に遭われた方が不安に思っていることの一つに、被告人に個人を特定されるのではないか、個人情報が漏れてしまうのではないかということがあります。

 今改正案とは直接の関係はありませんが、とある市で、二〇二〇年、札幌市では、DV被害者の個人情報が記載された書類を誤って加害者に送付してしまい、被害者の連絡先などの個人情報が流出するといった事件や、昨年も、DV被害者の転居先などの個人情報が、加害者の依頼を受けて弁護士が申請した証明書に記載されたまま発行されたということもあったそうです。役所側が被害者に、引っ越し費用や慰謝料など計約五十三万円の損害賠償金を支払い、和解したそうなんですけれども、このように普通ではあり得ないケースも、当然、人為的なミスとしても起こることは想定されます。

 本法案にも、被害者の個人情報を守ることになれば、被害者は氏名や住所が被告人に知られることはないことを安心して被害を申告しやすくなり、裁判に協力していただけるということが想定されますが、先ほどの事例のように、信頼度の高い市役所でも人的ミスは起こり得ます。検察官が弁護人に当該氏名等を開示した上で、これを被告に知らせてはならないと刑事訴訟法第二百九十九条の四に明記されていますが、例えば弁護人が被告人に間違えて知らせてしまうケースもあり得るのではないかと考えます。

 質問です。

 その場合の弁護人に対する罰則はどのようなものになるのでしょうか。

松下政府参考人 お答えいたします。

 弁護人が被告人に知らせてはならないという被害者の個人特定情報を知らせてしまった場合につきましては、罰則ということではございませんけれども、その弁護人が弁護士である場合につきましては、その弁護士の所属する単位弁護士会あるいは日本弁護士連合会に対して、裁判所において処置を求めることができるという制度を設けております。

沢田委員 どうもありがとうございます。

 ちょっと質問は、時間が来ましたのでここで切らせていただきます。引き続きまたこれは議論させていただきたいと思いますので、御準備いただいた皆様、本当に申し訳ございませんでした。

 今日は、ありがとうございます。

伊藤委員長 次に、漆間譲司君。

漆間委員 日本維新の会の漆間と申します。

 論点、もうたくさん出ておりまして、ちょっとかぶるところもたくさんありますが、どうかお許しください。

 まず、逃走罪の見直しについてお伺いいたします。

 逃走罪の法定刑について、現行の規定、刑法第九十七条で一年以下の懲役とされたのはそれなりの理由があったはずであると思いますので、その理由と、それを三倍の三年以下と今回することの理由について伺いたいと思います。単に厳罰化により抑制するという趣旨でありましたら、これは逃走罪に限定されないんじゃないだろうかということを主にお聞きしたいなと思っております。よろしくお願いいたします。

松下政府参考人 お答えいたします。

 現行の逃走罪の法定刑は一年以下の懲役とされておりますところ、これは一般に逃走しないことへの期待可能性が低い、逃げたい気持ちが、本人なのでというところで、逃げないことへの期待可能性が低いとされ、刑法の罰則の中でも比較的軽い法定刑が定められているものと承知をしております。

 もっとも、近時の情勢に鑑みますと、逃走行為を防止すべき必要性というのはこれまでにも増して高まっておりますところ、ただいま申し上げたように、現行の逃走罪の法定刑では十分な一般予防効果を発揮できていないと考えております。

 そこで、本法律案におきましては、拘禁された者の逃走行為につきまして、これまで以上に厳正に対処すべき犯罪だという法的な評価を示し、また、逃走行為に対する抑止力を高めてこれを防止するという観点から、逃走罪の法定刑を一年以下の懲役から三年以下の懲役に引き上げることとしたものでございます。

漆間委員 これまでもたくさん議論がありまして、先ほどの御答弁以外にも、保釈率が上がっている中で逃走が増えていると。先ほど、期待可能性の話もありましたけれども、その中で、やはり厳罰化により抑制というのが必要だろうというのが答弁の御趣旨だったと思います。

 厳罰化による抑制が主な理由だということでありましたら、ほかに、現在の社会情勢に応じて新たに多く発生している犯罪だったり、今喫緊に厳罰化による抑制が求められている犯罪もほかにもたくさんあると思います。

 報道でも被害者の方が、罪が軽過ぎるということもよく聞いている中で、ほかにも、もしそういう厳罰化による抑制が求められているものがあるのであれば、具体的に教えていただけないでしょうかと思います。それらも、厳罰化に向けた動きに、今、もしかしたらもう既になっているのか、これからなるのであるか、なるのであればどんなスケジュールでなっていくのかということも含めてお伺いしたいと思います。

松下政府参考人 お答えいたします。

 いわゆる厳罰化という言葉の意味するところは様々であると思われますけれども、例えば法定刑を引き上げるという意味で申し上げますと、これまでの国会審議におきまして、例えばですが、集団で行われた窃盗について、加重処罰をすべきだといったような御指摘がなされていることもございます。

 もっとも、そのような御指摘については、例えば、実際の処罰の実情ということを踏まえて、法定刑を引き上げないと適正な科刑が実現されないような状況にあるのかですとか、例えば、集団の窃盗ということが一例としてあるわけですけれども、そのうち重く処罰すべき態様というのを過不足なく明確に定めることができるかといった様々な検討課題がありまして、このように、厳罰化の意味するところが難しい、様々であります上、法定刑の引上げについても、実際の刑罰の科刑状況ですとか、あるいは適切にいわゆる厳罰化すべきものというものの範囲を定められるのかですとか、そういった個々の検討課題がありますので、現段階において、お尋ねの見通しなどについて一概にお答えすることは難しいのでございますが、いずれにしても、刑法の罰則の在り方については不断の検討を続けてまいりたいと考えております。

漆間委員 答えることは難しいというところで、総合的に判断するということであると思うんですけれども、今回は、これまでの議論でもたくさんあるように、一つの事件がきっかけになったということだと思うんですけれども、またこれからも、何か事件がきっかけになったりして、世論がぱあっとなれば厳罰化になるということもあるということなんでしょうか。総合的に、難しい、お答えは難しいと思いますけれども、再質問として質問させていただきます。

松下政府参考人 お答えいたします。

 今御指摘のあった今回の法律案でございますけれども、これも一つの事件を契機としてということではございませんで、逃走ということがいろいろな場面で行われているということで、これまでの御審議の中でも幾つか例を御紹介したと思いますが、そうした様々な、身柄を拘束されて、一時的に保釈なり勾留の執行停止なりによって身柄の拘束を解かれている方が逃げてしまう、あるいは、実刑判決が確定したけれども、収容しようとしたら逃げてしまう、そういう様々なことがあったことなども踏まえて今回の法律案を御提案させていただいているところでございます。

漆間委員 そうでありました。たくさんの事件ということでありました。承知しましたというところで、次、GPSについてお伺いしたいと思います。

 GPSについて、位置測定端末装置命令についてなんですけれども、国外に逃亡することを防止するため、その位置及び当該位置に係る時刻を把握する必要があると認めるときと、改正後の刑事訴訟法第九十八条の十二第一項とありますけれども、そもそも国外逃亡に限定する趣旨となっております。

 想定される案件が限定的過ぎまして、これは、議論としては、先ほど鎌田委員のお話にもありましたように、人質司法だとか、そういったことの解消のためにGPSをつけて、身体の自由を拘禁してやることよりも、GPSの方がもっと人権に配慮しているんじゃないかという大きな流れの中でのこのGPS装着という今回だと思うんですけれども、余りにも限定的過ぎて、今後議論が広がっていかないんじゃないんだろうかと思うんですけれども、いかがでしょうか。

松下政府参考人 本法律案におきまして、位置測定端末装着命令を発し得る場合を委員御指摘のような形で限定的としておりますのは、我が国の刑事手続におきまして、人工衛星信号等による測位技術を用いる装置を被告人に装着させて位置を把握するという制度を初めて導入するものでございまして、運用に混乱を生じないようにするべきであり、また、そのためには、制度の対象者の範囲は、必要性が特に高く、運用に伴う困難も少ないと考えられるものに限定することが適切であるという考えからでございます。

 実際にその装着命令が発せられる件数がどの程度になるのかということにつきましては、個別の事案ごとの裁判所の判断の集積でございますので、現時点でお答えすることは困難ではありますけれども、先ほど申し上げた理由から、位置測定端末装着命令制度の円滑な運用がなされる範囲の被告人を対象とするべきものと考えております。

 その上で、今後の制度の在り方につきましては、今回の制度の運用状況を踏まえて、どのようなものを対象とするかも含め、更に検討することが必要であると考えておりまして、本法律案で想定している国外逃亡のおそれがある人に対してこの制度が運用されるということは、事案によるので一概には申し上げられないし、人数も予測も軽々に申し上げられないんですけれども、幾つかあるであろう実績等を踏まえて判断していくべきものかなと考えております。

漆間委員 今後の運用状況を踏まえて検討ということで、数も申し上げにくいと御答弁、おっしゃっていただきましたが、先日の委員会でも吉田はるみ委員様から、両手で数えるほどじゃないかみたいなことは、件数ですね、言われておったんですけれども、これはゼロの可能性もあるんじゃないかと思うんですが、もし運用実績が全然、法律を施行したにもかかわらずゼロだった場合は、次、どこに広げていこうだとか、そういったお考えはあるのか、ちょっと再質問でお伺いさせていただきたいと思います。

松下政府参考人 お答えいたします。

 ゼロであった場合ということについては、ゼロであることは想定はしていないんですけれども、どんどん増やしていかなければいけないということとも思っておりませんし、粛々と、この要件に当たる者に対してこういう命令が発せられることになって、それがどのぐらいの人数になるのかということの予測を申し上げることは非常に難しいものでございます。

 今後、様々な運用上の知見ということが蓄積されていくと思いますので、そうしたことも踏まえつつ、それから、今後開発していく装置とかそれの運用、使い勝手とか、そういったことも踏まえながら、対象者の範囲については引き続き検討していくものと思いますけれども、現時点でお尋ねすることは、困難であることを御理解いただければと存じます。

漆間委員 次に、ちょっと運用についてお伺いいたします。

 禁止区域に入ったり、取り外しなど禁止行為を行った際の対応などは、誰がどのように監督し、運用を行うのか。日本におけるシステム運用の在り方や関係各所の連携方法などがなかなか、これは鎌田委員と私も同じ感想でして、イメージが全然できない、これからという答弁が多くてですね。

 諸外国の運用面、特に運用面の例について詳細をどう把握しているのか。課題点や日本での導入において特に気をつけなければならない点など、あれば教えてほしいと思います。

 また、裁判所や刑務所の職員が一部行おうとする場合の人員体制、裁判所や刑務所の職員の人員体制や教育などの方針についてもお伺いしたいなと思います。

 鎌田委員の話にもありましたように、ちょっとこれからという答弁が多過ぎて、なかなかイメージできないというところでありますので、是非よろしくお願いいたします。

松下政府参考人 お答えいたします。

 本法律案におきましては、位置測定端末装着命令を受けた者が所在禁止区域内に所在した場合、裁判所が遵守事項の違反等を確認できる機能を有する電気通信設備に信号が送信され、その発生を確認した裁判所は、直ちにその旨を検察官に通知する。そして、裁判所は、検察官の請求により、又は職権で、被告人を勾引することができ、検察官、検察事務官又は司法警察職員は、勾引状を執行するときは、当該被告人の端末位置情報を表示して閲覧することができるとされております。

 その位置情報を基に捜しに行って勾引するということになるわけですが、こうした対応を含む諸外国の類似の制度の運用につきまして、網羅的に把握しているものではございませんけれども、把握しているところで例を申し上げると、アメリカにおいては、実務上、GPS端末の位置情報の監視は、連邦裁判所の職員である公判前事務担当官が行っております。また、大韓民国におきましては、実務上、電子装置の位置情報の取得、把握は法務部所属の保護観察所と位置追跡管制センターが実施しておりまして、イギリスにおきましては、実務上、GPS端末の位置情報の監視は司法省から委託を受けた民間企業が実施し、遵守事項違反があった場合には警察に通報する取扱いがなされているものと承知をしております。

 位置測定端末装着命令を受けた者が所在禁止区域内に所在した場合には、被告人の国外逃亡が切迫している蓋然性が高いということから、御指摘のとおり、身柄の確保に向けた具体的な体制をしっかりと整えていく必要がございます。本法律案における仕組みの下で、可能な限り速やかに勾引状を執行してその身柄を確保することができるように、関係機関において制度の施行までに、適切な連絡体制の構築のほか、運用に関わる職員の人員配置や訓練等の準備が適切に行われるものと考えております。

漆間委員 総じて、ゼロの、白紙から始めるから、本当に慎重に慎重にやっていくんだというのは分かりましたので、よろしくお願いいたします。

 続きまして、犯罪被害者等の情報を保護するための規定の整備についてお伺いしたいと思います。

 被告の防御方法に必要な場合は、被告等の請求により個人特定情報を通知する仕組みを想定しているようでありますが、実質的に通知される余地があるのであれば、規制する意義が乏しいようにも思われます。特に、性犯罪などでは、加害者と被害者の関係性が裁判において重要事項でありまして、防御に不可欠であると被告等に主張されたら否定できないのではないかと思いますが、どのような場合を想定しているのか、お伺いいたします。

松下政府参考人 お答えいたします。

 本法律案における防御に実質的な不利益を生ずるおそれにつきましては、刑事訴訟法二百九十九条の四におきまして、証拠開示の際に既に導入されている制度ですけれども、証人の氏名等を秘匿する措置の要件で用いられている防御に実質的な不利益を生ずるおそれと同様でございまして、具体的には、秘匿措置の対象者の個人特定事項を把握できないことによって、その対象者の供述の信用性の判断に資するような被疑者、被告人との利害関係の有無等の調査を行うなどの防御の準備を十分に行うことができなくなるおそれがある場合がこれに該当し得ると考えられるところでございます。

 個人特定事項を被疑者、被告人に通知するということに関しましては、裁判所がその判断をすることとなるのは、こうした防御に実質的な不利益を生ずるおそれがあると認めた場合であることがまず要件とされておりまして、裁判所がその裁判を行うに当たりましては、検察官から意見を聞かなければなりません。その意見や検察官が提出する資料も踏まえて判断をされることになりますし、その裁判所の判断、通知するという判断をされたときに、その判断に誤りがあると考えられるときには検察官が不服申立てをすることができるというふうなたてつけになっておりまして、そうしたことから、防御に不利益を生ずるおそれがあるんだと言えば通知されるということでなく、今のような仕組みになっておりまして、被疑者、被告人又は弁護人による請求さえあれば通知がなされるということになるものではございません。

漆間委員 承知しました。裁判所において適切にやられるということで、承知しました。

 ありがとうございました。終わります。

伊藤委員長 次に、鈴木義弘君。

鈴木(義)委員 国民民主党、鈴木義弘です。

 先週に引き続き、法案の質疑に入りたいと思います。

 まず一つ目、保釈中の被告人や保釈を取り消された被告人、刑が確定した者などが逃亡している事案に対して、現在は、国内ではどのように対処し、身柄を確保しているんでしょうか。また、海外に逃亡した事案では、他国に対してどのように働きかけをしているのか。これまでなされてきた取組について、実効性が上がっているのか、まあ、上がっていないから法律の改正になるんでしょうけれども、考えているのか、伺いたいと思います。

門山副大臣 被告人が逃亡した場合、一般論として申し上げるならば、検察官が検察事務官や司法警察職員を指揮して、逃走した者の所在を調査し、発見した場合にはその者を収容しているものと承知しております。

 また、検察当局においては、収容に困難を来した事案の発生を受け、令和元年八月に、適切な収容の在り方についての検証結果報告を取りまとめましたが、そこでも示されているとおり、十分な事前打合せの実施、警察に協力を求める場合における十分な連携、収容業務を担当する職員の適切な配置及び応援体制の確保、マニュアルの整備などの対策を講じているものと承知しております。このように、検察当局においては、必要に応じて関係機関と連携しながら適切な収容業務の実施に努めているものと承知しております。

 また、被告人が海外に逃亡した場合には、一般論として申し上げますと、まずは捜査当局において、ICPO等を通じた捜査協力や国際手配の要請等をするなどして被告人の所在国を把握するように努めているものと承知しております。

 その上で、被告人の所在国が明らかになった場合には、関係国、関係機関等とも連携し、犯罪人の引渡しを要請するなど、我が国においてその身柄を確保できるようできる限りの措置を講じているところでございます。

鈴木(義)委員 例えばアメリカでも、日本人がオーバーステイしている人がすごい数がいるという話も昔聞いたことがあるんですけれども、事件とか事故に巻き込まれない限り分からないという話も聞きました。そこで初めて、事件に巻き込まれたからというので、あなたオーバーステイねという話になるんですけれども。

 今副大臣から御答弁いただいたんですけれども、関係機関と連携して身柄を確保するように努力しているんだといいながら、先週お示しした、法制審で出した、逃走中という事案が海外も国内も五十件近くあるわけですね。その中で、時効を迎えてしまって、確保できたとしてももう刑に服せないという人が一人か二人いたように記憶しているんです。

 今回の改正で逃亡者が激減するというふうにお考えなんだと思うんですね。その辺はどう考えているのか、御答弁いただきたいと思います。

松下政府参考人 お答えいたします。

 検察当局におきましては、これまでも保釈を取り消された被告人等の逃亡を防止するために様々な取組をしているものと承知しておりまして、それらにも相応の実効性はあるものとは考えておりますけれども、そして、今後ともこうした取組を続けていくことは重要でございますけれども、ただ、やはり、これまでも御紹介申し上げているような、保釈中の被告人や刑が確定した者などによる逃亡事案が相次いで発生し、それによって国民の皆様に多大な不安を抱かせ、ひいては刑事司法に対する信頼が損なわれかねない事態が生じているということを踏まえますと、そうした運用上の取組だけではなく、逃亡防止の観点から不十分と考えられる現行法について所要の改正を行うことが必要であるというふうに考えて本法律案について御提案させていただいているところでございまして、本法律案による各制度は逃亡防止に十分な効果を有するものと期待をしているところでございます。

鈴木(義)委員 先週見させてもらった資料を見る限り、外国籍の人が出国するわけですね。ということは、出国したかどうかの確認ができちゃうということは、イミグレーションを通って結局外に出るわけですよね。だから、海外に出国したというふうに記録が残って、それが資料箋で出てくるわけですから。例えば保釈しましたといったときに、空港だとか港湾、客船なんでしょうね、そうじゃないところで逃げようとしたら、これはどうにもならないと思うんですけれども、そういったところにきちっと情報が行っていないんじゃないかと思うんです、この法律の改正をする以前で。だから堂々と外に出られちゃうんだと思うんですね。

 だから、今回の法律の改正をしたとしても、厳罰を処すとか逃走罪だとかと新しく刑事罰をプラス、付加するんですけれども、それ以前に、情報がきちっとそういったところに、出入国管理事務所というんですか、そこにきちっと情報が伝達しない限り、同じことが起きるんじゃないかと思うんです。だって、逃げちゃったら、三年ですよ、二年ですよといって、プラスアルファであなたは逃走罪だというふうに言ったって、もうそれは話にならない。

 その辺のところをどうこれからやろうとしているのか、お尋ねしたいと思います。

松下政府参考人 お答えいたします。

 国外に出るときに、出入国管理をするところと適切に連携するべきではないかという御指摘であると理解をしております。

 今回の法律案におきましても、拘禁刑以上の実刑判決の宣告があった者につきましては、国外逃亡ということを防止するために、拘禁刑以上の実刑判決の宣告を受けた、その実刑判決の法的効果として、裁判所の許可を受けなければ本邦から出国してはならないということとした上で、許可を受けないで本邦から出国しようとした場合については、検察官の請求により、又は職権で、勾留等をすることができることとするなどの法整備を行うこととしております。

 出入国の管理をするところと、それからこうした制度と、きちんと連携を取ってやっていくようにしていきたいと考えております。

鈴木(義)委員 それこそデジタルの時代ですから、ぱっとメールでやるのがいいか、何でやるか分かりませんけれども、情報を共有させないと、結局そこで止められないだろうという考え方ですね。是非しっかり対応してもらいたいと思います。

 次に、位置測定端末装着命令制度についてで、よく被告人のプライバシーという話が出るんですね。被告人のプライバシーをどこまで配慮すべきというふうに考えるのか、まずお尋ねしたいと思います。

松下政府参考人 この位置測定端末装着命令制度に関連する被告人のプライバシーとしましては、どこにいるのかということが把握されるという意味でのプライバシーだと思いますけれども、プライバシーへの配慮ということは一定の範囲必要であると考えておりまして、この法律案におきましては、位置測定自体は機械的、自動的に行われることになるんですが、裁判所、検察官等の者が位置情報を常時閲覧して把握できるということではなく、閲覧が許される場合を限定しております。それは、所在禁止区域内にいるということですとか、位置測定端末が体から離れたなどの遵守事項違反が検知された場合ですとか、勾引状や収容状の執行によって身柄を確保する場合にしか閲覧できないというふうにすることによって、プライバシー情報というものの把握について配慮をしているところでございます。

 その上で、この法律案におきましては、位置情報が対象者のプライバシーに関わるということを踏まえた上で、保釈中の被告人の国外逃亡を防止するという必要性が高く、そのための手段として有効性が高いということに鑑みて、必要最小限度の範囲内で位置情報を把握するということとしておりまして、その権利制約は必要最小限のものとなっていると考えております。

鈴木(義)委員 プライバシーって、どこまでがプライバシーかという問題に関わってくるんですけれども、例えばイギリスでテロが起きて、イギリスは監視カメラがいっぱいついているんだそうですね。これは十年じゃ利かない、もうちょっと前の話なんですけれども。そうすると、犯人を特定するのに、防犯カメラというのかな、監視カメラで特定して逮捕に、検挙していくんですけれども、逆に、アメリカなんかは、人間の目で抑止するという。監視カメラを使う、使わない。じゃ、日本はどうなっているのって、これは九年ぐらい前のときに警察庁の人に来てもらってレクを受けたんですけれども、日本は、監視カメラも、運用上の規約も何もない。マンションに入って、エレベーターにもあるし、玄関先にもあるし、金融機関は当たり前ですね、コンビニにもある。

 確かに、捜査の、任意でビデオを見せてくださいといって検挙につながっていくんですけれども、プライバシーがあるのかといったら、プライバシーはあってないようなものだ、今の社会。誰も疑問に思わない。

 そこのところをやはりきちっと整理しないと、どこまでがプライバシーで、ここからは公共の、公共財というのかな、そういったものをやはり議論すべきだと思うんです。

 やみくもにプライバシーと言ったら、全部がプライバシーと言われちゃえば、でも、実際、社会で運用している、プライバシーになるかどうか分からないのに、コンビニの前で犯人の車が通りました、この車で間違いないだろう、それで検挙につながっていくんですよ。だったら、なぜ運用をきちっと、どういう使い方をすればいいのか、そのデータは誰が管理するのかというのをやはり制度化した方がいいんじゃないかと思うんですけれども、その点についてどうでしょう。三役でお答えになる方はいらっしゃいますかね。

松下政府参考人 お答えいたします。

 御指摘のとおり、先ほどもちょっと申し上げたんですけれども、まず、コンビニとか社会における様々な監視カメラについては、ちょっと私どもそこまで言及できる立場ではないんですけれども、今回の法律案で御提案している位置測定端末装着命令制度におきましては、どういった情報を、公的な機関として裁判所が取得できるのか、また、それをいつ見られるのか、どういった場合に見られるのかという、主体ですとか時期ですとか、そういったところをしっかりとルールを作って運用していくということを考えているわけでございます。

鈴木(義)委員 要するに、GPSをつけるというのは逃げられないようにしようという、単純に言えばですよね。

 次に、もう一つこの件について。

 では、どのような形態とするのかとか、さんざん今まで様々な質問があったと思うんですけれども、大きさや性能を含めた、今後検討されていくという、前回の委員会での質疑でも答弁があったんです。

 被告人は起訴された後、捜査の対象ではなく、当事者としての位置を有することからすれば、被告人のプライバシーが侵害されないように配慮すべきでしょう。まあ、繰り返しは質問しません。

 いわゆるGPS装置を装着することで、移動するプライバシー侵害や、また、装着するGPS端末が大きく目立つものとなれば、周囲の人から差別が起こるんじゃないかということですね。端末を装着する側面や運用面において、被告人のプライバシー権が侵害される事態が生じるおそれがあると思うんですけれども、かかる事態にどう対処するかという。

松下政府参考人 お答えいたします。

 繰り返しになりますけれども、どんなものになるかということについては、今明確に申し上げることは困難なんですが、被告人が、おっしゃるとおりまだ刑事裁判を受けている段階の方で、より、プライバシーといいますか、他人に好奇の目にさらされないようにするということが必要な立場の方であるということはおっしゃるとおりでございますので、極力、外から見て、ああ、あれをつけている、これは位置測定端末装着命令を受けた人であるということが分からないような形状のものになるように努めますとともに、仮にそういうことで、どういうものになるかということについては、そういう方向で装置の開発に努めていく、裁判所において努めていくこととなるものと考えておりますし、それによって差別が生じるというのが、具体的にどういうケースで、あの人は刑事被告人だというような形での差別なのか、いろいろケースは考えられると思うんですけれども、そういうことのないように、そういうお立場の方は無罪推定の及んでいる方ということでございますので、そういう刑事司法制度の在り方についての広報も含めまして、しっかりとやっていきたいと考えております。

鈴木(義)委員 では、次に確認をしたいんですけれども、逃走罪の主体拡張、法定刑引上げに関してなんです。これで、逃走罪、刑法の九十七条によって、法令により拘禁された者に拡張した趣旨についてお伺いしたいと思います。

 では、もう一つ、時間がないので。

 また、この改正により、出入国管理庁の施設に収容されている者が逃走した場合も逃走罪の適用となるんでしょうか。併せてお尋ねしたいと思います。

松下政府参考人 お答えいたします。

 まず、逃走罪の主体の拡張について、その趣旨を申し上げますと、現行の刑法九十七条におきましては、逃走罪の主体は、裁判の執行により拘禁された既決又は未決の者と規定されておりますため、例えば逮捕されて引致中の者や刑事施設に留置されている者は裁判の執行により拘禁された者には当たらず、逃走罪の主体にはなっておりません。

 しかし、法令の根拠に基づいて適法に拘禁された者がその拘禁から不法に離脱し、国家による拘禁作用が継続できない事態となれば、その法令の趣旨、目的を達成することが不可能又は著しく困難となりかねないのでありまして、その拘禁を侵害することとなる逃走行為については同様に処罰の対象とすべきであると考えられます。

 そこで、逃走罪の主体を、法令により拘禁された者ということに拡張いたしまして、その加重処罰をする刑法九十八条の加重逃走罪につきましても同様に主体を拡張することとしているところでございます。

 お尋ねの出入国管理及び難民認定法により収容されている者につきましては、従来から、刑法九十九条等の法令により拘禁された者に当たると解されておりまして、改正後の刑法九十七条の法令により拘禁された者に含まれると考えております。

鈴木(義)委員 では、もう一つ確認したいんですけれども、逃走罪の適用が、この法律ができると該当するということなんですけれども、仮放免という形で施設から外に出た人が逃走してしまった場合は、やはりこの逃走罪が適用になるのかどうか、確認したいんですけれども。

松下政府参考人 お答えいたします。

 改正後の刑法九十七条の逃走罪の主体となるのは法令により拘禁された者でございます。出入国管理及び難民認定法五十四条二項に基づいて仮放免された者は、一時的に収容を停止され、仮に身柄の拘束を解かれた者でございますので、法令により拘禁された者には当たらないので、改正後の刑法九十七条の適用対象とはならないと考えられます。

鈴木(義)委員 そこのところはまた違う法律のときにお尋ねしたいと思います。

 逃走罪のところで法定刑を引き上げる一方で、加重逃走罪の法定刑についてはなぜ引き上げなかったのか、そこのところをお尋ねしたいと思います。

松下政府参考人 まず、逃走罪の法定刑を引き上げる理由でございますけれども、一年以下から三年以下に上げるという理由でございますが、近時の情勢に鑑みますと、逃走行為を禁圧すべき必要性はこれまでに増して高まっているものの、その法定刑は刑法の罰則の中でも比較的軽いものとなっておりまして、一般予防効果が十分に発揮はされていないんじゃないかと考えられるところでございます。

 そこで、この法律案におきましては、拘禁された人の逃走行為について、これまで以上に厳正に対処すべき犯罪であるという法的評価を示し、逃走行為に対する抑止力を高めてこれを防止するという観点から、三年以下の懲役に引き上げることとしております。

 他方、加重逃走罪の法定刑は三月以上五年以下の懲役という相応に重いものとされておりますところ、近時の情勢等に照らしても、これが軽いため一般予防効果が不十分であるとまでは言い難いことから、現行のものを維持することとしているところでございます。

鈴木(義)委員 では、次に質問を変えたいと思います。

 犯罪被害者等の氏名等の情報を保護するための刑事法の整備について、先ほども質問にあったと思うんですけれども、結局、裁判になるときに、私がもし被告人だったときに、自分のつき合いのある弁護士さんに頼んで、何とか減刑してもらうように働きかけてくれ、自分はすごく反省しているから、示談をするとか、何かいろいろ働きかけると思うんですけれども、先ほども答弁いただいているんですが、被疑者が被害者を特定できないことによって、当事者である私が、まあ、不利益という言い方もちょっとおかしいんですね、悪いことをしているわけですから。でも、それが情状酌量があるものなのか、そうじゃないのか、故意なのか過失で大分違うと思うんですよね。

 だから、故意だったら、これは致し方ないんですけれども、過失の場合に、示談をしたいとか、そういうことを相手方に伝えたいときにきちっと開示できるものなのかどうか、もう一回確認したいんですけれども。

松下政府参考人 お答えいたします。

 示談をしたいということがいわゆる通知を受ける要件として認められるかというと、それは難しいのではないかということを、先ほどほかの委員の御質問に対して御答弁申し上げたところでございますけれども、一方で、現行刑事訴訟規則上、弁護人の方は、勾留状謄本の交付を請求することができます、勾留段階ですけれども、できまして、これを通じて被害者等の個人特定事項を含む被疑事実の要旨を現在把握することができるわけですけれども。

 本法律案における法整備に併せて刑事訴訟規則の改正も行われることが考えられるわけですが、その際、本法律案と同様の考え方に立って規則を改正するとすれば、被害者等の個人特定事項が記載されていない勾留状の抄本等を被疑者に示す措置を取った場合においては、弁護人がその勾留状謄本の交付請求をしたときは、起訴状のときと同じように、原則として、弁護人に対し、個人特定事項を被疑者に知らせてはならない旨の条件を付して勾留状謄本を交付することになりますので、弁護人は、原則として、個人特定事項を含む被疑事実の要旨を把握し得ることとなると考えられます。

 ですので、被疑者には伝えられないですけれども、弁護人は把握することが可能、原則としては可能となりますので、御指摘の点、示談等につきましては、これによって対処し得るものと考えております。

鈴木(義)委員 例えば示談したかどうかで刑が若干変わってくるという話も聞きますし、やはりそこのところは残しておいてもらわないと。今、交通事故を起こしても、自分のところで取引のある保険屋さんにお願いして、もう謝罪に行く必要もないというんですね。相手方に謝罪に、昔は菓子折りを持って、申し訳なかったという形は、今はそういうことをしなくていいんだと。

 それがいい方向に行くんだったらいいけれども、これだけ年間何十万件じゃ利かないぐらい交通事故が起きていると、判例が出ちゃっているから、判例が変わることはまずないから、あとは過失割合でしょうと、こういう話になるから、謝罪するしないは全然関係ないんだというんですね。

 ただ、交通事故はそれで済むかもしれないけれども、刑事事件になったときに、やはり自分が心から反省しているというのを意思表示をするというのも、認めてあげると言ったら変な言い方なんですけれども、ある程度加味してもらえればなというふうに思います。

 最後に、もう一つだけ確認をしたいんです。

 個人特定事項の秘匿制度が設けられているんですけれども、弁護人が被告人に情報を流した場合、被害者保護が図れないように思えるんです。

 流れちゃった時点でもう、また犯罪に巻き込まれる可能性が、逆恨みされるとかですね、反社の人たちだとか、ちょっと性癖がある方なんかは、相手が特定されてしまったら、またつけ回ししたりなんなり、また犯罪に巻き込まれる可能性があるんですけれども。

 今日も、弁護士の場合は罰則があるのかといえば、弁護士会等に対する処置請求ということで、懲戒処分するのかどうか分かりませんけれども、今までの中で、そういう形を取ってどれだけの方に処置請求をされたものなのか、それと、じゃ、請求した後、結果としてどうなったかというのを最後にお尋ねして終わりにしたいと思います。

松下政府参考人 お尋ねの点でございますけれども、現行制度であるのは、証拠開示の際に、証人の氏名等について被告人に知らせてはならないという条件を付して開示を受けた弁護人がその条件に違反したときには検察官が処置請求をするという制度がございます。

 それについて、法務省において、検察官のした処置請求について網羅的、統計的に把握しているものではございませんけれども、日本弁護士連合会によって公告がなされた弁護士に対する懲戒処分につきまして、令和四年一月から令和五年三月までのものを確認いたしましたところ、処置請求の対象とされている条件違反を理由として懲戒処分に至ったものは見当たりませんでした。

 このように、弁護人が条件に違反したときには、弁護士会等に適切な処置を取るべきことを請求できるという現行法の仕組みの下では、適切な運用がなされているものと承知をしております。

 また、先ほど私が答弁申し上げた中で、示談について、弁護人が被害者の個人特定事項を知らないということで示談ができなくなったりするのではないかということに関して、弁護人は分かりますのでというようなことを申し上げたんですけれども、弁護人に、その際、弁護人が知ることとなるのは勾留状等に記載されている個人特定事項ということになりますので、直ちに、住所ですとか電話番号ですとか、そういった連絡先が分かることとなるものではございませんし、示談に応じたくないという意向を持っておられる方もいらっしゃるので、そこのところの運用は現在と変わらないということになるんだろうと思います。

鈴木(義)委員 時間が来たのでもうやめますけれども、処置請求しても、誰も該当者がいなかったという話になったときに、プライバシーというより……

伊藤委員長 時間が参っております。

鈴木(義)委員 終わります。またよろしくお願いします。

伊藤委員長 次に、本村伸子君。

本村委員 日本共産党の本村伸子でございます。どうぞよろしくお願いを申し上げます。

 刑事訴訟法の改定案について質問させていただきたいというふうに思います。

 位置測定端末によって保釈された被告人を監視する問題について、まず確認をさせていただきたいというふうに思います。

 保釈許可人数と保釈条件違反による保釈取消し人数ですけれども、先日の法務委員会で、吉田はるみ議員に対して最高裁がお答えになりました。二〇二一年、地方裁判所において終局した事件において保釈された人数は一万五百九十五人、そして、二〇二一年に保釈の取消しがなされた被告人は延べ九十四人と答弁がありました。

 その直近の数字で、保釈取消し事由ごとの人数をお示しをいただきたいというふうに思います。

松下政府参考人 お答えいたします。

 直近の保釈取消し事由ごとの保釈取消し人数についてというお尋ねと理解いたしましたけれども、法務省において把握しているところを申し上げますと、令和三年中の通常第一審終結前に保釈を取り消された被告人のうち、召喚を受け正当な理由がなく出頭しないとして、九十六条一項一号として保釈を取り消された件数は二十二件、逃亡し又は逃亡すると疑うに足りる相当な理由があるとして保釈を取り消された件数は二十七件、罪証を隠滅し又は罪証を隠滅すると疑うに足りる相当な理由があるとして保釈を取り消された件数は十一件、被害者その他事件の審判に必要な知識を有すると認められる者若しくはその親族の身体若しくは財産に害を加え若しくは加えようとし、又はこれらの者を畏怖させる行為をしたとして保釈を取り消された件数は五件、住居の制限その他裁判所の定めた条件に違反したとして保釈を取り消された件数は四十五件であったと承知をしております。

本村委員 ありがとうございます。

 法務省がこの法案の背景、経緯の一つとして挙げております保釈取消し人数の増加についてですけれども、確認ですけれども、二〇一九年よりは減っている、直近で減っているということでよろしいでしょうか。

松下政府参考人 そのように承知しております。

本村委員 減っているということなんですけれども、保釈取消しの理由ですとか背景を詳細に分析をする必要があるというふうに考えますけれども、これは大臣にお伺いをしたいと思います。

齋藤(健)国務大臣 御指摘の保釈の取消し理由等の分析につきましては、本法律案の立案過程で必要な調査を行ったところであります。また、法制審議会の部会においても、保釈の取消し事由の内訳についての調査結果や保釈の取消し人数の動向等に関する資料を配付し、それらを踏まえて御議論をいただいてきたところでございます。

本村委員 逃亡なんですけれども、逃亡を実際にしたという方あるいは疑いがある方ということですけれども、更に詳細な分析があればお示しをいただきたいと思います。

松下政府参考人 お答えいたします。

 様々な事案があるところではございますけれども、逃亡事案について、更に全ての逃亡事案についてそれぞれの事情等について調査をするということにつきましては、まず、逃げたままになっている人については調査が困難であるということは御理解いただけると思うんですけれども、過去に逃亡したことがある人から遡って事情聴取するということになりますが、逃亡に至った事実経過等を、例えば既に裁判が終わっている方とか、そういう方についてお尋ねして特定していくという作業はなかなか困難でございますし、実際そこまでの作業は難しいと考えておりますので、そこまでのことは行っておりませんけれども、先ほど申し上げたような保釈取消し事由の内訳等も踏まえて、あと、その人数も踏まえて、こういった問題が起きているということを御理解いただくには十分な調査が行われたと言っていいのではないかなと思っております。

本村委員 法務省が挙げている近時の主な逃亡事案についてなんですけれども、詳細に検証をし、出国手続ですとか被告人などの収容に関する課題を明確にする必要があるというふうに思いますけれども、明確になっているんだったらお示しいただきたいですし、今後やるのであればやるということでお願いしたいと思います。

松下政府参考人 お答えいたします。

 御指摘のような観点からの検討といたしまして、本法律案の立案過程で、例えば、海外渡航禁止等を条件として保釈された被告人が、第一審係属中に当該条件に違反して本邦から不法に出国し、いまだ身柄拘束に至っていない事案ですとか、実刑判決が確定した者が、収容のため来訪した検察庁の職員らに対して包丁を向けて脅した上で逃亡した事案といったことがございました。

 こうした逃走事案の中で、本人の身柄が確保されていない事件もあるわけではございますけれども、どうした経緯で、どんなふうな方法でというようなことについて可能な範囲で調べた上で、そういったことなども踏まえまして現行の制度における課題を分析いたしますとともに、法制審議会の部会におきまして、現行法での対応に限界があるということや実務上の問題点、それらを踏まえて必要と考えられる法整備の内容について御議論をいただいたところでございます。

本村委員 もう少し具体的に言っていただくとありがたいんですけれども、言えますでしょうか、もう少し具体的に、課題について。出国手続ですとか収容に関して。

松下政府参考人 お答えをいたします。

 お尋ねについて申し上げようとしますと、今回の法律案の、改正案を提出した趣旨ということになってしまうんですけれども、例えば、保釈中の被告人が公判期日に出頭しないということに対して罰則がないということが問題であるということで、罰則という形で出頭を確保するというような必要性でありますとか、あと、保釈中の被告人等に対する監督というのが、結局事実上の身元引受人によってでは足りない、また、保釈保証金の金額を高くしただけでは、それなりの資産があって逃亡する動機の高い人には十分な抑止力にならないですとか、そういった実際の事件からの様々な教訓等を経て、きちんと国家の刑事司法作用を機能させるためには、やはり裁判にきちんと出頭していただかなくてはいけないし、それから、出頭していただいて、きちんと刑事司法において審理がなされる必要がございますし、手続において身柄を確保されるべきという人がきちんと確保されるようにして、国民の皆様の安全、安心に資するようにしなければならない、そういった様々な教訓を得て本法律案を提案させていただいているということでございます。

本村委員 そういうことなんですけれども、問題は幾つもございまして、この問題について、日弁連の皆様方が、電子監視制度や在宅拘禁制度は、被告人のプライバシーを侵害し、行動の自由を制限するものである、したがって、現在の制度下でも保釈されているような被告人に対しこれらを適用することは、人権制限を拡大することにほかならない、我が国においてそのような人権制限の拡大を正当化するような立法事実は極めて乏しいというべきであるというふうに述べておられます。

 法案の制度ではなくて原則としてお伺いしたいんですけれども、位置測定端末によって保釈された被告人を監視することは重大な人権侵害に当たるという認識が大臣にはありますでしょうか。

齋藤(健)国務大臣 御指摘の本法律案における位置測定端末装着命令制度、これは、その命令を受けた者の位置情報を裁判所、検察官、司法警察職員等が把握できるようにするものでありますので、対象者のプライバシーに関わるものであるというふうには認識しています。

 その上で、本法律案におきましては、保釈中の被告人の国外逃亡を防止するという目的の達成に必要な最小限度の範囲で端末位置情報を取得する上、その位置情報を閲覧して把握することが許される場合を遵守事項違反が検知された場合等の一定の場合に限ることとしておりまして、その権利制約が必要最小限度のものとなるように配慮しているところでございます。

本村委員 最小限度というお話がありました。

 そこで、ちょっと確認をさせていただきたいんですけれども、現在の制度の下でも保釈されているような被告人には位置測定端末はつけないということでよろしいでしょうか。

松下政府参考人 お答えいたします。

 保釈の許可をするかしないかというのは、個々の被告人の状況等、事情によって異なるものでございますので、今保釈をされている人に必ずしないとか、するとか、そういったことをここではっきりと申し上げることは困難でございます。

 ただ、位置測定端末装着命令制度の対象となるのは、あくまでも国外に逃亡するおそれがある方に限定しておりますので、現在の保釈の運用でいきますと、海外逃亡のおそれがすごく高い方についてはなかなか保釈が認め難いようなことになっているのではないかなと思われますけれども、それも、保釈保証金を高額にすることによって保釈されている場合もあると思いますし、ちょっとそこは、一概に申し上げることができないことを御理解いただければと存じます。

本村委員 もう一つ確認をさせていただきたいんですけれども、同じく日本弁護士連合会の皆様の意見書なんですけれども、包括的に自由を奪う身体拘束と比較すれば、電子監視や在宅拘禁がより制限的ではない措置であることは否定できない、身体拘束されている被告人が電子監視や在宅拘禁を適用することにより解放されることは望ましいということができる、人権制限は必要最小限度でなければならないことからすれば、このような代替措置を整備することが要請されるというふうに書かれております。

 法案なんですけれども、位置測定端末により保釈された人の位置情報を取得する制度は、これは、人権制限に関しては必要最小限度と言えるというふうに大臣はお考えかという点を改めてお伺いしたいと思います。

齋藤(健)国務大臣 本法律案におきましては、位置測定端末装着命令を受けた者の位置測定自体は、これは機械的、自動的に行われるわけでありますが、裁判所、検察官、司法警察職員等がその位置情報を常時閲覧すること、これは許されないものとしております。

 裁判所、検察官、司法警察職員等がその位置情報を閲覧して把握することが逆に許されるのは、所在禁止区域内への所在や位置測定端末が身体から離れたこと等の遵守事項違反が検知された場合や、勾引状、収容状の執行により身柄を確保する場合などに限定をしているところであります。

 このように、本法律案においては、位置情報が対象者のプライバシーに関わるものであることを踏まえた上で、保釈中の被告人の国外逃亡を防止するという必要性が高く、そのための手段として有効性が高いことに鑑み、必要最小限度の範囲内で位置情報を把握できることとしており、その権利制約は必要最小限度のものになっていると考えております。

本村委員 そこで、お伺いしたいと思うんですけれども、裁判所は、保釈された人による国外逃亡を防止するために位置測定端末の装着を命じることができると法案ではなっておりまして、飛行場の周辺等の所在禁止区域内への所在や位置測定端末の取り外し等が確認された場合には、原則として、位置測定端末装置命令を受けた者を勾引することができるとなっており、所在禁止区域内への所在、位置測定端末の取り外し等は、刑事罰そして保釈取消しの対象となっております。

 刑事罰の適用は、権利制限という意味で必要最小限度を超えるのではないかという御意見があるんですけれども、その点、どのようにお考えでしょうか。

松下政府参考人 お答えします。

 本法律案におきましては、位置測定端末装着命令を受けた者が、裁判所の許可を受けないで、正当な理由がなく、所在禁止区域内に所在したとき、あるいは、裁判所の許可を受けないで、正当な理由がなく、位置測定端末を自己の身体から取り外したときなどには、裁判所は保釈を取り消すことができ、その場合には保釈保証金を没取することができることとしております。

 もっとも、この保釈の取消しというのは、いわば被告人を保釈される前の状態に戻すものにすぎませんし、保釈保証金の没取につきましても、被告人の中には納付した保釈保証金を放棄してでも逃亡する者もあるということなどからいたしますと、こうした行為が行われた場合に保釈の取消しや保釈保証金の没取をすることができるということだけでは国外逃亡に対する抑止力として十分ではないと考えております。

 したがいまして、国外に逃亡することを抑止し、公判期日への出頭等をより一層確実なものとするために、位置測定端末装着命令制度を設けるに当たりましては、先ほど申し上げたような違反行為に対しては厳正に対処すべきものであるということを示して、強力に抑止をするというために罰則を設けることが不可欠であると考えております。

本村委員 これに関しましては、人権制限、必要最小限度と言えないのではないかという意見は重く受け止めないといけないというふうに思っております。

 保釈監督者制度についてもお伺いをしたいと思うんですけれども、裁判所は、保釈などに際しまして、監督者を選任し、被告人と共に公判期日に出頭することや、被告人の住居、労働又は通学の状況、身分関係その他変更などについて報告を求めることなど、命ずることができるようになります。また、監督者が義務に違反した場合には監督保証金が没取され、保釈などが取り消され得るというふうになっております。そして、従来の身柄引受人制度と違って、報告義務や逃亡防止、出頭確保の法的義務を負うことになります。

 法務省は、監督者に迷惑をかけてはいけないという心理状態になるような関係が被告人と監督者の間にある場合というふうに説明をしております。従来は、同居の家族ですとか、親族、会社の上司、同僚、友人、知人などを身柄引受人として運用されてきたというふうに思うんですけれども、これまでの身柄引受人では不十分で、監督者制度であれば保釈が認められるケースというのはどういうケースになりますでしょうか。

松下政府参考人 お答えします。

 本法律案の監督者制度の下で保釈を許可するか否かということにつきましては、個別の事案ごとに、裁判所において、監督者の選任の有無だけではなく、逃亡のおそれの有無や程度に関わる様々な事情を含めて、当該事案に係る事情を総合的に考慮して判断される事柄でございますので、お尋ねのような事例としてどのようなものが想定されるかについて一概にお答えすることは困難でございますけれども、いずれにしても、裁判所においては、監督者制度の趣旨を踏まえつつ、適切な運用がなされるものと考えております。

本村委員 この点についてはちょっとまだ分からないということだというふうに思います。

 それで、大前提の一般論についてお伺いをしたいんですけれども、刑法の謙抑性からすれば、単に威嚇効果があるというだけで罰則を科すということは許されず、実際に法益侵害の結果が生じた場合に処罰をする侵害犯を原則とするべきだというふうに考えております。危険犯については、侵害される法益の重大性と法益侵害が現実化する危険性とを考慮して、刑罰を科すのは必要最低限でとどめるべきだというふうに思いますし、法益侵害を回避するために有効なほかの代替手段がある場合は刑罰を科すことは許されないというふうに、一般論ですけれども、思いますけれども、この点については、法務省のお考え、いかがでしょうか。

松下政府参考人 お答えいたします。

 前提といたしまして、講学上の概念としての侵害犯は、犯罪の成立に法益侵害の現実の侵害が必要とされている犯罪をいい、危険犯というのは、犯罪の成立に保護法益の侵害の危険が必要とされている犯罪をいうと解されているものと承知をしております。

 この前提で、この分類なんですが、保護法益や、実行行為として規定されている行為の性質などに鑑み、犯罪の成立に実際に法益が侵害されたことを要するか、あるいは法益に対する危険の発生を要するかの違いがあることによる分類でございまして、侵害犯の処罰が原則であって危険犯の処罰はできるだけ避けるべきとの御指摘は必ずしも当たらないのではないかと考えておりまして、現行法においても必要に応じて様々な危険犯が設けられていると考えております。

本村委員 じゃ、具体的にお伺いしたいんですけれども、公判期日不出頭や制限住居からの離脱が生じただけでは逃亡の危険性が高まっているとは言えない場合もあるというふうに思います。例えば、仕事が忙しいですとか、転勤を理由とする場合ですとか、刑事裁判への不安感などもあるかというふうに思います。

 保護法益としては国家の拘禁作用、この侵害の危険性は低いというふうに思うわけですけれども、この時点で罰則を制定するというのは行き過ぎではないかという意見がありますけれども、その点はどのようにお考えでしょうか。

松下政府参考人 お答えいたします。

 現行法上、保釈や勾留の執行停止をされた者が召喚を受けた公判期日に正当な理由がなく出頭しない場合、裁判所の裁量で保釈が取り消されて刑事施設に収容され得るほか、保釈されている場合には、裁判所の裁量で保釈保証金が没取され得ることとされております。

 しかしながら、その刑事施設への収容につきましては、いわば被告人を保釈等される前の状態に戻すものにすぎず、また、被告人の中には納付した保釈保証金を放棄してでも逃亡する者もあり得ることに鑑みますと、これらは抑止力として十分ではございません。

 そもそも、保釈等された被告人は、公判審理の確保などを目的とする潜在的な拘禁作用の下に置かれていて、召喚を受けた公判期日に出頭しない行為は、国家の潜在的な拘禁作用を侵害するものであると考えられます。

 そこで、本法律案におきましては、保釈等された被告人が召喚を受け正当な理由がなく公判期日に出頭しない行為について、二年以下の拘禁刑に処することとしているものでございます。

 また、本法律案におきまして、公判期日不出頭罪のほか、保釈の取消し、失効後に出頭命令に違反する行為を処罰対象とする罰則を設けることとしておりますけれども、いずれの場合も、召喚や出頭命令をまず受けている、それでそれに違反しているということが要件になるために、それ以前の逃亡を防止するための罰則が必要でございます。

 そして、指定された期間を超えて制限住居から離脱するという行為は、逃亡の客観的な表れというべきものでございまして、国家の潜在的な拘禁作用を害すると考えられます。

 そこで、本法律案におきましては、裁判所が指定する期間を超えて住居を離れ、帰着しない行為について、二年以下の拘禁刑に処することとしているものでございます。

本村委員 正当な理由によって処罰を制限しているという話なんですけれども、そもそも、正当な理由がいかなる場合に認められるかというのが不明瞭でございます。予測可能性が害されているというふうに思います。公判に出頭することが急に不安になった、いろいろな、精神的な状況もあるというふうに思うんですけれども、不安になったとして出頭せず制限住居にこもっているような場合は正当な理由だというふうに言えるのかという点、お伺いしたい。

 この処罰の制限は、先ほど申し上げました謙抑性ということについて、疑念を払拭させるものではないのではないかというふうに思いますけれども、その二点、お伺いしたいと思います。

松下政府参考人 お答えいたします。

 まず、正当な理由がなくという点でございますけれども、一般に、刑事訴訟法上、正当な理由がなくというのは、その者の責めに帰すべき事由があることを意味するものと解されておりまして、本改正法における正当な理由がなくという言葉もそのような意味で用いられることと考えております。

 その上で、どのような場合に具体的に正当な理由があると言えるかにつきましては、個別の事案ごとに、収集された証拠に基づいて判断されるべき事柄でございますけれども、先ほどの、委員御指摘のように、裁判を受けるのが怖いので出頭できないという、家にこもってしまうというようなことが、それを果たして正当な理由と言えるのかどうかということにつきましては、それぞれの事案ごとに判断されることになるのかなというふうに思いまして、私がここで当たる当たらないということをちょっと申し上げることが難しいということを御理解いただければと存じます。

伊藤委員長 本村伸子君、時刻になりました。

本村委員 はい。

 基本法であるこの刑事訴訟法の審議では、やはり、参考人質疑などをやっていただき、有識者の方から十分な意見表明をしていただくという慎重な審議が必要だったというふうに思っております。

 やはり短時間での採決というのは認めることはできないということを強く申し上げ、質問を終わらせていただきます。ありがとうございました。

伊藤委員長 次に、石橋林太郎君。

石橋委員 お疲れさまです。自由民主党の石橋林太郎です。

 質問の機会をいただきまして、ありがとうございます。

 時間も限られておりますので、早速質問に入らせていただきたいと思います。どうぞよろしくお願いいたします。

 今回の刑事訴訟法等の一部を改正する法律案の中で、公判期日等への出頭及び裁判の執行を確保するための刑事法の整備というものが提案をされているところであります。

 何度も重ねて御説明いただいていて恐縮ではありますけれども、改めまして、この改正案を提案をしていらっしゃる背景を分かりやすく、簡潔に御答弁いただければと思います。

松下政府参考人 お答えします。

 近時、保釈率が上昇傾向にあり、この十年余りで一〇%程度上昇している一方で、被告人の逃亡等により保釈が取り消される人員が増加傾向にございます。

 そうした状況の中、保釈中の被告人や刑が確定した者等による逃亡事案が相次いで発生し、国民の皆様に多大な不安を抱かせ、ひいては刑事司法に対する信頼が損なわれかねない事態が生じております。

 本法律案は、こうしたことを踏まえまして、被告人等による逃走、逃亡を防止し、公判期日等への出頭及び裁判の執行を確保するため、所要の法整備を行うこととするものでございます。

石橋委員 今、この十年余りで約一〇%ほど保釈率が伸びているという御答弁をいただきましたけれども、この保釈率が伸びている理由についても少し教えていただけますか。

吉崎最高裁判所長官代理者 裁判所の方からお答え申し上げます。

 個々の事件における保釈の判断につきましては、各裁判官の判断事項ではございますけれども、保釈の判断については裁判官の間でも議論が重ねられてきておりまして、罪証隠滅のおそれなどの保釈の要件について、抽象的にではなく、個々の事件の事情に基づいて、具体的にかつ丁寧に判断すべきであるという議論がされているものと承知してございます。

 保釈率につきましては、その時々の事件の動向など様々な要因の影響を受けるため、その推移の理由について一概に言えるものではございませんけれども、先ほど申し上げた点についても背景の一つになっている可能性があると考えてございます。

石橋委員 ありがとうございました。

 裁判官の方は個々で判断が違うということで、一概に理由があるというわけではないということでありましたけれども、いろいろ新聞記事等を拝見していますと、どうも近年は、基本的に保釈をしていこうというような風潮もあるやに聞いております。

 先般来この質疑の中でも名前が挙がりますけれども、カルロス・ゴーン被告が二〇一九年に逃亡した際に、我が国の制度に対して人質司法という批判があったということを記憶をしているところであります。

 様々議論もありますけれども、被疑者、被告人の人権やプライバシーに配慮をすることはとても重要なことであると私も考えておりますし、また同時に、法治国家として我が国の司法制度がしっかりと正しく機能していくように担保していくこと、これもまたとても大切なことであるというふうに思っておりますし、また、被害者のある事件であれば、被害者の方の権利保護をしていくということもとても大切だというふうに思っているところであります。

 こういった様々な関係する方々の利害を調整しつつも、社会正義をしっかりと実現し、社会の秩序を保っていくというのは本当に大変なことなんだな、簡単なことではないなということを、この法務委員会に所属をさせていただいて、様々な議論を通じて感じさせていただいているところであります。

 そうした中で、権利と権利のぶつかり合い、権利と権利のせめぎ合い、また権利と制度の関係性というものをしっかりと考えながら、我が国の中で、私たち国民の心情に合う形でバランスを取っていくことが必要なのだろうというふうにも思うわけでありますが、今回、この刑事訴訟法についてレクを受ける中で私がちょっと驚いたのは、被疑者や被告人の、言葉が悪かったら申し訳ないんですけれども、逃げ得といいますか、罰則規定が余りないんだなということを初めて私は知りまして、そうなりますと、非常にバランスが悪い、バランスを欠いている状態なのかなというふうに思っているところであります。

 公判期日に出頭しなくても特におとがめがないということでありますとか、それから、逃亡しても、特段、元々のものに加えて更にのおとがめというのはないというものを聞くに当たりまして、率直に、ああ、そういうことになっているんだと驚いたようなところであります。

 法律とか刑罰というものは、その時代その時代の私たち国民の意識を反映するもの、反映する側面があるのかと思いますので、今の規定が定められた当時には、その当時の国民の皆さんの多くの常識に照らしてそれが妥当だと考えられていたということだと思いますが、時代が変わり、私たちの意識も変わってくる中で、そういった中において、今回の改正案は、今を生きる私たちの常識に照らしたときに妥当なものになっているというふうに私自身は思っておりますし、多くの国民の方の理解を得られるのではないかなというふうに思っているところであります。

 ということで、公判期日の出頭を確保するために新設をされる罰則が五項目ほどあるんですけれども、ちょっとまどろっこしいかもしれませんけれども、国民の方にしっかり理解をしていただきたいという思いもありまして、一つずつちょっとお伺いしていきたいと思います。

 まず初めに、保釈等をされた被告人の公判期日への不出頭罪というものがありますけれども、これを科す趣旨について御説明をお願いします。

松下政府参考人 お答えいたします。

 現行法上、保釈等をされた被告人の公判期日への不出頭に関しましては、不出頭、正当な理由がなく出頭しないという場合には、裁判所の裁量で保釈等が取り消されて刑事施設に収容され得る、また、保釈されている場合には、裁判所の裁量で保釈保証金が没取され得るということとされております。

 もっとも、刑事施設に収容されるという点に関しましては、いわば保釈等される前の状態に戻すものにすぎず、保釈保証金の没取についても、被告人の中には納付した保釈保証金を放棄してでも逃亡する者もあり得るということに鑑みますと、これらは保釈等された被告人の公判期日への出頭を確保するための抑止力としては十分ではなく、新たに罰則を設けることにより、公判期日への出頭を一層確実なものとする必要があるというふうに考えられたところでございます。

 そもそも、保釈等された被告人は、公判審理の確保などを目的とする潜在的な拘禁作用の下に置かれていると言うことができ、そのような立場にある被告人が召喚を受けた公判期日に出頭しない行為は、国家の潜在的な拘禁作用を侵害するものであると考えられます。

 そこで、本法律案におきましては、保釈等された被告人が召喚を受けて正当な理由がなく公判期日に出頭しない行為について、二年以下の拘禁刑に処することとしているものでございます。

石橋委員 ありがとうございます。

 続きましてですけれども、保釈等の取消し、失効後の被告人の出頭命令違反の罪、これを科す趣旨について教えてください。

松下政府参考人 お答えいたします。

 現行刑事訴訟法上、保釈や勾留の執行停止が取り消されたり、実刑判決の宣告により失効したりした場合には、検察官の指揮によりその者を刑事施設に収容することとされておりまして、実務上、検察庁に呼び出した上で収容するのが一般的でございます。

 もっとも、勾留の執行停止をされていた被告人については、保釈とは異なり、保証金を納付することとされておらず、呼出しに応じない場合の制裁がございません。また、保釈されていた被告人についても、納付した保釈保証金を放棄してでも逃亡するということがあり得ることは先ほど申し上げたとおりでございまして、また、保釈が取り消された者に関して言いますと、保釈保証金が没取された場合には保釈保証金による抑止力ももはや失われているということから、本来は直ちに勾留されるべきであるのに、罰則がないために、勾留されないことに対する抑止力が十分とは言えません。

 そもそも、保釈等された被告人については、先ほども申し上げましたとおり、公判審理の確保等を目的とする潜在的な拘禁作用の下に置かれているというふうに理解しておりまして、そのような立場にある被告人が保釈等を取り消されるなどしたにもかかわらず検察官から収容のために指定された日時、場所に出頭しない行為は、国家の潜在的な拘禁作用を侵害するものであると考えられます。

 そこで、本法律案におきましては、保釈等が取り消され、又は拘禁刑以上の刑に処する判決の宣告により失効した場合には、検察官が被告人等に対して日時及び場所を指定して出頭することを命ずることができることとし、被告人が正当な理由なく指定された日時及び場所に出頭しない行為について、二年以下の拘禁刑に処することとするものでございます。

石橋委員 ごめんなさい、何か答弁が長くて大変恐縮しているんですけれども。

 保釈等をされた被告人の制限住居離脱罪についても、その罪を科す趣旨について御説明をいただけますか。済みません。

松下政府参考人 お答えいたします。

 制限住居離脱罪を創設する趣旨についてでございますけれども、保釈や勾留執行の停止をされるに当たって、指定された場所、住居等に、制限された住居に居住するようにというふうに指定されるわけでございますけれども、そのような立場にある被告人が指定された期間を超えて制限住居から離脱するという行為は、国家の潜在的な拘禁作用を侵害するものであると考えられるところでございます。したがいまして、制限住居から離脱する行為を処罰することとしたものでございます。

石橋委員 済みません、あと二つ、同じように聞こうと思っていますので、併せてお伺いしますけれども、勾留の執行停止の期間満了後の被告人の不出頭罪並びに刑の執行のための呼出しを受けた者の不出頭罪、それぞれについて、同様に、この刑罰を科す趣旨を教えてください。

松下政府参考人 まず、勾留執行停止の期間満了後の被告人の不出頭罪に関してでございます。

 現在の実務上、執行停止については、その期間を指定するとともに、その終期は日時をもって指定するのが通例でございまして、これが満了したときは被告人を出頭させた上で収容するのが一般的でございますけれども、勾留の執行停止については、保証金を納めるということとされておりませんし、終期に出頭しなかったとしても何らの制裁もないということで、逃亡を防止するための抑止力が十分でないということから、執行停止の期間満了後の被告人の不出頭罪を創設するということとしたものでございます。

 また、刑の執行のために呼出しを受けた者の不出頭罪でございます。

 現在の刑事訴訟法上、死刑、懲役、禁錮等の言渡しを受けた、身柄拘束が必要となる刑の言渡しを受けた者が拘禁されていないときは、検察官は、執行のためその者を呼び出さなければならず、呼出しに応じないときは収容状を発しなければならないこととされていますけれども、収容状によって収容する前に逃亡されてしまいますと収容が困難となりますが、罰則が設けられていないので、収容に服さないことに対する抑止力が十分ではないということでございます。そのような立場にある者が出頭しないという行為は国家の潜在的な拘禁作用を侵害するものであると考えておりますので、不出頭罪を創設しようとするものでございます。

石橋委員 御答弁、本当にありがとうございました。

 今様々お伺いしましたけれども、公判期日等への出頭、そして裁判の執行を確保するというのは、私は実は、法曹出身でも何でもないものですから、当然にこういったことはされているんだというふうに思っていたところがありましたけれども、今回そこの穴をしっかり埋めていただくということで、我が国の司法がしっかりと機能をして、そしてまた、先ほども申し上げましたとおり、いわゆる逃げ得と一般常識に照らして思えるようなケースがなくなっていくということを非常に期待をしているところであります。

 続きまして、裁判の執行に関する調査権限の整備について一点お伺いをさせてください。

 今般、裁判の執行に関する調査について、これまでにあった照会規定に加えて、裁判官の発する令状によって強制の処分ができるようにする改正案が提出されておりますけれども、その趣旨をお伺いします。

松下政府参考人 お答えします。

 現行法の下では、懲役等の執行に当たって、所在不明となった場合にその所在を調査したり、罰金の執行に当たって、その人の資産があるかどうかなどといったことを調査することについての手段が任意の照会に限られていますために、これらの調査が困難となっておりまして、刑を確定した者の収容業務等に支障を来す場合や、罰金の徴収、労役場留置の執行の可否の判断などに関わる資料の収集に困難を生じる例も少なくございません。

 そこで、裁判の執行を円滑かつ確実に行えるようにするために、裁判の執行に関して必要があると認めるときは、裁判官が発する令状によって捜索、差押え等の強制調査をすることができるようにするとともに、任意の調査に係る規定を整備するなどの法整備を行うこととしているものでございます。

石橋委員 ありがとうございました。

 しっかりと制度が整備され、ますます社会正義が実現されることを願いまして、質問を終わらせていただきます。

 ありがとうございました。

伊藤委員長 これにて本案に対する質疑は終局いたしました。

    ―――――――――――――

伊藤委員長 これより討論に入ります。

 討論の申出がありますので、これを許します。本村伸子君。

本村委員 私は、日本共産党を代表し、刑事訴訟法等改定案に対して、反対の討論を行います。

 保釈中の位置測定端末による位置情報の把握は、刑が確定していない被告のプライバシーを侵害し、行動の自由を制限し、かつ抑止的効果にも疑問があり、認められません。

 逃亡防止のためといいますが、現に、保釈事例の九九%において被告人の逃亡は行われていません。

 位置測定端末装着措置の立法事実として挙げられる海外逃亡は、カルロス・ゴーン氏の密出国事件のみであり、かつ、逃亡の意思の固い者であれば、端末に充電することなくバッテリー切れを待って逃亡するなど、抑止的効果にも疑問が投げかけられており、立法事実があるとは到底言えません。

 本法案では、海外逃亡のおそれがある場合に限って認め、一定の限定がなされていますが、検察官や検察事務官は、裁判所の許可を得れば位置情報を把握することができます。

 また、国際線、国際航路を利用可能な港湾や空港は全国各地に存在するため、立入禁止とする区域は非常に広範な範囲に及びます。具体的にどのくらい空港や港湾に近づいたら保釈条件違反となるのか、施行後五年で整備する位置測定端末の性能によることとなり、具体的な権利侵害の危険性が不明のままです。

 次に、起訴状等における被害者の氏名等の秘匿制度についてです。

 性犯罪被害当事者にとっては、個人情報が逮捕状や起訴状などの刑事手続によって加害者や悪意の第三者に伝わり、重大な人権侵害を伴う報復、誹謗中傷などの二次被害を受ける危険性があり、未然に防ぐためには、性犯罪やストーカー規制法違反、児童福祉法違反などの事件について一定の措置を取ることが必要です。

 しかし、本法案では、強制性交等罪、強制わいせつ罪、児童福祉法違反、児童買春、児童ポルノ法違反だけではなく、ほかの事件も対象となります。個別事案ごとの具体的な事情を踏まえて判断すると答弁がありましたが、氏名等秘匿が不必要な事件における被告人の防御権を侵害する懸念が払拭できません。

 基本法である刑事訴訟法改定については、参考人など有識者から意見聴取をし、慎重な審議をすることが必要です。にもかかわらず、参考人質疑も行わず、短時間の審議で採決するなど許されません。

 審議の継続を求めて、討論といたします。

伊藤委員長 これにて討論は終局いたしました。

    ―――――――――――――

伊藤委員長 これより採決に入ります。

 内閣提出、刑事訴訟法等の一部を改正する法律案について採決いたします。

 本案に賛成の諸君の起立を求めます。

    〔賛成者起立〕

伊藤委員長 起立多数。よって、本案は原案のとおり可決すべきものと決しました。

    ―――――――――――――

伊藤委員長 この際、ただいま議決いたしました本案に対し、宮崎政久君外四名から、自由民主党・無所属の会、立憲民主党・無所属、日本維新の会、公明党及び国民民主党・無所属クラブの共同提案による附帯決議を付すべしとの動議が提出されております。

 提出者から趣旨の説明を聴取いたします。鎌田さゆり君。

鎌田委員 ただいま議題となりました附帯決議案につきまして、提出者を代表して、その趣旨を御説明申し上げます。

 案文の朗読により趣旨の説明に代えさせていただきます。

    刑事訴訟法等の一部を改正する法律案に対する附帯決議(案)

  政府及び最高裁判所は、本法の施行に当たり、次の事項について格段の配慮をすべきである。

 一 位置測定端末の規格の設定等に当たっては、位置測定端末を装着していることができるだけ外部から目立たず、身体の動きを極力妨げないものとする等、保釈中の被告人のプライバシーの保護及び行動の自由等に十分に配慮したものとすること。

 二 位置測定端末を装着した被告人の所在禁止区域への立ち入り等が発生した場合に、迅速に状況を確認し、勾引をすることができるよう、十分な訓練の実施や関係機関との連携体制の確立等に努めること。

 三 保釈中の被告人に係る端末位置情報を表示して閲覧することができる者及び閲覧することができる場合を限定した趣旨に鑑み、閲覧設備の運用に当たっては、端末位置情報が漏出することがないよう適切な措置を講ずること。

 四 監督者を選任して行う保釈については、監督者として選任される者にとって過度の負担にならないよう留意するとともに、監督者を得られないことを理由として保釈される場合が限定されることがないよう、制度の趣旨を周知すること。

 五 本改正における逃亡防止措置の新設の趣旨を踏まえ、被告人や刑が確定した者等の身柄の確保及び護送等の場における逃亡防止に万全を期すとともに、必要な体制の整備に努めること。

 六 犯罪被害者等の氏名等の情報秘匿制度の運用に当たっては、性犯罪の被害者等の権利の保護という目的の実現を図るとともに、公判における被告人の防御に実質的な不利益が生ずることがないよう、被害者側及び被告人側の双方の権利に十分に配慮するよう努めること。

以上であります。

 何とぞ委員各位の御賛同をお願い申し上げます。

伊藤委員長 これにて趣旨の説明は終わりました。

 採決いたします。

 本動議に賛成の諸君の起立を求めます。

    〔賛成者起立〕

伊藤委員長 起立多数。よって、本動議のとおり附帯決議を付することに決しました。

 この際、ただいまの附帯決議につきまして、法務大臣から発言を求められておりますので、これを許します。齋藤法務大臣。

齋藤(健)国務大臣 ただいま可決されました刑事訴訟法等の一部を改正する法律案に対する附帯決議につきましては、その趣旨を踏まえ、適切に対処してまいりたいと存じます。

 また、最高裁判所に係る附帯決議につきましては、最高裁判所にその趣旨を伝えたいと存じます。

    ―――――――――――――

伊藤委員長 お諮りいたします。

 ただいま議決いたしました法律案に関する委員会報告書の作成につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

伊藤委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

    〔報告書は附録に掲載〕

    ―――――――――――――

伊藤委員長 次回は、公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。

    午後零時二十九分散会


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