衆議院

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第9号 令和5年4月14日(金曜日)

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令和五年四月十四日(金曜日)

    午前九時五分開議

 出席委員

   委員長 伊藤 忠彦君

   理事 谷川 とむ君 理事 藤原  崇君

   理事 牧原 秀樹君 理事 宮崎 政久君

   理事 鎌田さゆり君 理事 寺田  学君

   理事 沢田  良君 理事 大口 善徳君

      東  国幹君    五十嵐 清君

      石橋林太郎君    泉田 裕彦君

      岩田 和親君    奥野 信亮君

      加藤 竜祥君    川崎ひでと君

      熊田 裕通君    鈴木 馨祐君

      田所 嘉徳君    高見 康裕君

      土田  慎君    鳩山 二郎君

      平口  洋君    深澤 陽一君

      山下 貴司君    鈴木 庸介君

      中川 正春君    山田 勝彦君

      吉田はるみ君    米山 隆一君

      阿部 弘樹君    漆間 譲司君

      日下 正喜君    平林  晃君

      鈴木 義弘君    本村 伸子君

    …………………………………

   法務大臣         齋藤  健君

   法務副大臣        門山 宏哲君

   内閣府大臣政務官     鈴木 英敬君

   法務大臣政務官      高見 康裕君

   政府参考人

   (内閣官房新しい資本主義実現本部事務局次長)   松浦 克巳君

   政府参考人

   (警察庁長官官房審議官) 友井 昌宏君

   政府参考人

   (警察庁長官官房審議官) 早川 智之君

   政府参考人

   (こども家庭庁長官官房審議官)          野村 知司君

   政府参考人

   (総務省総合通信基盤局電波部長)         豊嶋 基暢君

   政府参考人

   (法務省大臣官房政策立案総括審議官)       上原  龍君

   政府参考人

   (法務省大臣官房審議官) 柴田 紀子君

   政府参考人

   (法務省大臣官房司法法制部長)          竹内  努君

   政府参考人

   (法務省民事局長)    金子  修君

   政府参考人

   (法務省刑事局長)    松下 裕子君

   政府参考人

   (法務省矯正局長)    花村 博文君

   政府参考人

   (法務省保護局長)    宮田 祐良君

   政府参考人

   (法務省人権擁護局長)  鎌田 隆志君

   政府参考人

   (出入国在留管理庁次長) 西山 卓爾君

   政府参考人

   (公安調査庁次長)    田野尻 猛君

   政府参考人

   (外務省大臣官房参事官) 松尾 裕敬君

   政府参考人

   (外務省国際法局長)   御巫 智洋君

   政府参考人

   (厚生労働省大臣官房審議官)           本多 則惠君

   政府参考人

   (厚生労働省大臣官房審議官)           原口  剛君

   政府参考人

   (厚生労働省社会・援護局障害保健福祉部長)    辺見  聡君

   政府参考人

   (防衛省大臣官房審議官) 小杉 裕一君

   法務委員会専門員     白川 弘基君

    ―――――――――――――

委員の異動

四月十四日

 辞任         補欠選任

  東  国幹君     川崎ひでと君

  岩田 和親君     泉田 裕彦君

  鳩山 二郎君     土田  慎君

同日

 辞任         補欠選任

  泉田 裕彦君     岩田 和親君

  川崎ひでと君     東  国幹君

  土田  慎君     鳩山 二郎君

    ―――――――――――――

四月十三日

 出入国管理及び難民認定法及び日本国との平和条約に基づき日本の国籍を離脱した者等の出入国管理に関する特例法の一部を改正する法律案(内閣提出第四八号)

は本委員会に付託された。

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 政府参考人出頭要求に関する件

 出入国管理及び難民認定法及び日本国との平和条約に基づき日本の国籍を離脱した者等の出入国管理に関する特例法の一部を改正する法律案(内閣提出第四八号)

 裁判所の司法行政、法務行政及び検察行政、国内治安、人権擁護に関する件


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     ――――◇―――――

伊藤委員長 これより会議を開きます。

 裁判所の司法行政、法務行政及び検察行政、国内治安、人権擁護に関する件について調査を進めます。

 この際、お諮りいたします。

 各件調査のため、本日、政府参考人として内閣官房新しい資本主義実現本部事務局次長松浦克巳君、警察庁長官官房審議官友井昌宏君、警察庁長官官房審議官早川智之君、こども家庭庁長官官房審議官野村知司君、総務省総合通信基盤局電波部長豊嶋基暢君、法務省大臣官房政策立案総括審議官上原龍君、法務省大臣官房審議官柴田紀子君、法務省大臣官房司法法制部長竹内努君、法務省民事局長金子修君、法務省刑事局長松下裕子君、法務省矯正局長花村博文君、法務省保護局長宮田祐良君、法務省人権擁護局長鎌田隆志君、出入国在留管理庁次長西山卓爾君、公安調査庁次長田野尻猛君、外務省大臣官房参事官松尾裕敬君、外務省国際法局長御巫智洋君、厚生労働省大臣官房審議官本多則惠君、厚生労働省大臣官房審議官原口剛君、厚生労働省社会・援護局障害保健福祉部長辺見聡君及び防衛省大臣官房審議官小杉裕一君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

伊藤委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

伊藤委員長 質疑の申出がありますので、順次これを許します。鈴木庸介君。

鈴木(庸)委員 立憲民主党・無所属の鈴木庸介です。今日もよろしくお願い申し上げます。

 先日、法務委員会の視察で名古屋入管に伺わせていただきました。ウィシュマさんが亡くなった部屋や監視システム等々を見せていただいたんですけれども、やはり、実際に収監されている方々の声を聞かないとちょっと全体像が見えてこないなと考えまして、先週、一般の面会者として、私は名古屋入管の方に行ってまいりました。入管の収容体制や仮放免の制度について、今日は伺わせていただきたいと思います。

 まず、昨日、いわゆる質問取りに来ていただいたんですが、残念だったのは、仮放免についてのデータというのがほとんど取られていないということなんです。例えば、仮放免の許可率とか、国別の数とか、仮放免中の人が死亡した数や要因とか、さらには仮放免中の逃走者の逃走理由とか、個々の事由については把握されているということなんですけれども、伺いたいのは、全体の数字がよく分からないのにどうやって政策をつくっているのかな、仮放免のというところなんです。

 例えば、これだけの方が仮放免をされていて、属性がどのような人が仮放免中に逃走して云々といったデータの裏づけがなければ、なかなか政策ってつくれないよなと思うんですけれども、まず、この仮放免についてのデータがここまでないのは何か特別な理由があるのかどうなのか、そこを伺えますでしょうか。

西山政府参考人 入管庁におきまして、仮放免に関しまして、統計としては、仮放免許可件数の推移、収容事由別の仮放免者数を集計しているところでございます。

 もとより、仮放免中の者について、地方入管局におきまして、定期的に出頭を求め、必要に応じて住居地に職員が出向くなどして生活状況等を確認を行うなど、個別に状況は把握しており、これを適正な出入国在留管理にも生かしているところでございます。

 その上で、今回の改正法案の検討に当たりましては、送還忌避者のうち仮放免者数、仮放免許可後の逃亡者数等を集計するなどして、仮放免に関連する実態把握に努めたところでございます。

鈴木(庸)委員 全体の数を把握するということができていないということなんですけれども、大きな政策を決めていくことについて、やはり違和感を感じてしまうんですね。できるだけ詳細なデータを集めて、それに基づいた政策判断をお願いできればと思います。

 そうした全体像を把握し切れていない中で、国連の自由権規約委員会からの指摘があります。これは十三ページから成るんですが、チャプター三十二と三十三が入管行政のことになっていました。その中で、仮放免については、労働を禁止していること、事実上収入のないこと、また、長期収容についての懸念を表明しております。

 これをやはり国際基準を満たすようにすることと、収容者が適切な医療処置を受けられるようにすること、また、仮放免の人たちが収入を得られるようにサポートすること、ノン・ルフールマン原則に基づいた難民の扱いをすること、さらに、収容期間の限度を設けることとか、入管職員の皆さんは、避難民の権利に国際基準に沿って最大限の敬意を示してほしいというようなことが明示されています。

 これはこれまでも度々言われてきたことですけれども、至極真っ当な指摘に聞こえるんですが、この指摘について、日本政府としてはどのように捉えているのでしょうか。

西山政府参考人 まず、前提として、自由権規約委員会からの勧告につきましては、法的拘束力がないものと承知はしております。ただ、趣旨につきましては、私どもも真摯に受け止めながら、引き続き適正に対応してまいりたいというふうに考えております。

鈴木(庸)委員 という、ほぼゼロ回答ということなのかもしれませんが、尊敬される日本の法務行政であっていただきたいと思いますので、この自由権規約の勧告については、是非真摯に検討をいただきたいと思います。

 この指摘の中では、やはり収入源を与えない部分についての厳しい指摘がなされております。仮放免中の人たちが働くことのできない現状について政府はどう捉えているのかというのをちょっとお伺いしたいんですね。

 私が名古屋入管で会った男性なんですけれども、この方、法務委員会で公開していいかという話を聞いたら、いいよという許可をいただいているので、あえて紹介をさせていただきます。

 彼の場合、永住権は持っているんですけれども、窃盗で二年を食らっています。永住権は、御案内のように、一年以上の懲役で取り消されてしまいますから、彼は出所後すぐに名古屋入管に収監されたんですね。仮に仮放免が出たとしても、仕事ができない、働けない。御家族は、奥さんが工場でアルバイトをしているけれども、ヘルニア持ちで余り仕事ができない、お子さんに障害がある。この障害のあるお子さんの特別児童手当で何とか生活をしているという状況なんですね。母国に家族もいないし、日本に家族がいるから帰るに帰れないと。

 こうしたリアルな現状を前に、言い方を変えれば、どうやったらこういう人たちというのは生きていけるのかなということなんです。日本のルールに即したことをやらなかったということは当然とがめられるべきだと思うんですよ。しかし、障害のあるお子さんがいて、奥様が余り働けないで、御自身も働くことができない。これは、私が、自分が同じ状況になったらと考えると、やはりこの男性と同じように精神安定剤の薬が手放せなくなるような状況になるんじゃないかなと思うんです。

 こういう人たちは本当にどうやって生きていけばいいのか。それでもやはり、家族のことは知らぬ、とにかく帰れということになってしまうのか、一般論としての対応を伺えればと思います。

西山政府参考人 退去強制事由に該当し、又は該当する疑いのある外国人は、本邦から退去すべきこととなる立場にございまして、現に就労可能な在留資格を有している場合を除き、就労を認めることができません。仮放免中の生計は、本人の資産や身元保証人や家族の支援等によって賄われることを想定しております。また、入管行政の一環として仮放免された外国人に対し国費による生計等の支援を行うことも困難と考えております。

 その上で、入管庁におきましては、仮放免中の外国人に対し定期的に出頭を求めているところでございますが、そのような中でも、通じて、適時に相談に応じ、相談内容の具体的事情に応じて、例えば自治体の相談窓口を案内するなど、人道上の配慮もしつつ、個別に適切に対応しているところでございます。

鈴木(庸)委員 個別に適切に配慮といっても、食えていけないことには変わらないと思うんですよね。まあ、悪いことは悪いんです。でも、日本に家族がいて、現地には生活の基盤が何もないといった方々が多くいるということを改めて申し上げたいと思います。

 仮放免についてもう少し伺わせてください。

 仮放免の判断基準、よく聞くのが、一回目の仮放免では通らなかったけれども、二回目、三回目の仮放免で通ったと。これについては、懲罰的な意味も込められているんじゃないかというような指摘もございます。

 このことについて、入管庁としてはどのような基準でやっていらっしゃいますでしょうか。

西山政府参考人 仮放免につきましては、入管当局におきまして、個別の事案ごとに、逃亡のおそれの有無、被収容者の健康状態、仮放免後の住居、生活費、医療費等の支弁の見通しなど、判断時における様々な事情を総合的に考慮してその許否を判断しているところでございまして、懲罰的な観点から仮放免を判断することはございません。

鈴木(庸)委員 懲罰的な観点からはないということですね。分かりました。

 仮放免については、先ほど来繰り返していますように、様々な権利が与えられておりません。例えば仮放免者の子供のお話をさせてください。

 子供も仮放免の状態になっている人が多いわけですけれども、入管庁からいただいた資料では、これはちょっと古いんですけれども、令和元年五月で、十歳未満の子供が百三十四人、十歳以上二十歳未満が百七十と、いわゆる未成年者が三百人以上いるんですね。彼らについても、当然、就労も認められておりませんし、国民健康保険への加入も認められていない。

 言い換えれば、ただでさえお金のない仮放免の人たちが、子供が病気になる、風邪だとしても重い病気だとしても、この子たちを治してあげるには、病院に行って全額自己負担で治してあげないといけないわけですよ。同じ親として身につまされるのは、やはり風邪の薬とかそれぐらいなら何とかなるかもしれないけれども、もっと大きな病気だったりけがだったりしたときに、この三百人の子供たちに何がしてあげられるんでしょうか。

西山政府参考人 医療についてのお尋ねかと存じますけれども、公的社会保障制度は法務省の所管外の事柄であり、その在り方について私どもとして言及することは差し控えたいと存じますけれども、入管庁におきましては、先ほど申し上げたとおり、仮放免中の外国人に対して適時の相談に応じ、相談内容の具体的な事情に応じて、人道上の配慮もしつつ、個別に適切に対応しているところでございます。

 また、入管庁におきましては、仮放免中の外国人について、本人が希望する場合には、その者の情報を居住する自治体に通知しており、各自治体において、その情報を基に、可能な範囲で行政サービスを提供しているものと承知しております。

鈴木(庸)委員 相談しても病気は治らないわけで、仮放免、親はまだしも、子供に関してはもう少し検討をしていただかないといけないと本当に思います。

 仮放免の運用についてもう少し教えてください。

 先日、入管に伺って支援者の皆さんにお話を聞かせてもらうと、明らかにウィシュマさん事件の前と後では入管の対応が変わったと。そこは評価するところも多いんですが、仮放免が出やすくなったとか、ハンガーストライキを取りあえずして、ケトン体が出れば仮放免が出るとか、いろいろなことが聞こえたんですけれども、実際、ウィシュマさんの事件前と事件後では、仮放免を中心とした処遇はどのように変化したのか、これについても教えてください。

西山政府参考人 仮放免の運用という意味で、事件の前後で何か特別に要件を緩和したとか、そういった対応はございませんけれども、ただ、私どもも、名古屋局における、お亡くなりになられた方の事案を受けまして、例えばですけれども、職員全員、意識の改革が必要だという報告書の指摘もございます、使命と心得というものも作成して全職員に周知をいたしましたし、そういったところで、まず、職員みんな、意識の面では、名古屋事案の反省を踏まえて、そこは意識として変わった部分はあって、そこが対応、処遇等に影響するといいますか、そこにいい意味で影響したということは考えられると思っております。

鈴木(庸)委員 収容者の皆さんも、入管の日々の生活については満足しているということだったので、そのことだけはお伝えさせていただきたいと思います。

 仮放免の人たちに収入源を確保するということは、国連から指摘されるように、日本が検討しなくてはいけないことではないかと思います。確かに、仮放免で働かせると入管行政全体の前提が崩れてしまうという考え方も分かるんですけれども、技能実習制度でも長く続いた技術移転という建前を解消することができたわけですから、この分野についても、建前を捨てて現実的な政策を取る時期に来ているのではないかと私は思います。

 特に、後ほど質問させていただくんですけれども、技能実習がなくなることによって、特定技能に更に多くの人が流れてくることは間違いないという中で、特定技能のビザを持つ人が増えてくると、当然、労働力の流動性が高まりますから、外国人全体の給料も上がってくるんですね。その賃金上昇というのは、我々日本人の給料の上昇も引き起こすことは間違いないと私は考えております。

 しかし、そうなると、これまで、三年間はやめることのなかった技能実習生の皆さんを最低賃金で働かせることを前提にしていた事業者の皆さん、大変苦しい環境になることも間違いないと思うんですね。そうなると、わらにもすがる思いで、仮放免の人たち、元々働いちゃいけないんですけれども、これは把握されていると思いますけれども、現実には皆さん、働いている方が多いです。この訳ありの人たちを雇うといった方向で、不健全な労働市場が逆に形成されていくと思うんですよね。

 こうしたことを考慮して、例えば、オーバーステイの人たちに、それ以外の刑事罰がなければ有効な労働資格を与えるとか、タブーを抜きに、本当に様々な議論をしていかなくてはいけない時期に来ていると考えているんですが、ここで伺いたいのは、こうしたオーバーステイの人たちに時効というものはあるんでしょうか。

西山政府参考人 公訴時効は、刑事訴訟法二百五十三条第一項の規定に従い、犯罪行為が終わったときから進行するものとされていると承知しております。犯罪行為の終了時点につきましては、事案に即して収集された証拠に基づいて個別に判断されるべき事柄でございますが、一般論として申し上げれば、不法入国罪は入国とともに成立するものであるため、入国した時点から公訴時効が進行し、公訴時効期間を経過することによって公訴時効が完成するということになろうかと思います。

 他方、委員が御指摘になりました不法残留罪は継続犯でございまして、在留期間経過後、我が国に在留し続ける限り、犯罪行為が終わったとは言えず、公訴時効は進行しないものと考えております。

鈴木(庸)委員 そうなんですよね、オーバーステイに時効がないんですよね。

 ただ、このオーバーステイの人たちも含めて、仮放免の制度が今の形である限り、不健全な労働市場に外国人が流れてしまうということを私は危惧しております。この人たちをいわゆる正規化することなど、本当に大胆な議論が求められていると思います。

 これはまさに法務省の皆様には釈迦に説法なんですけれども、憲法十三条では、全て国民は、個人として尊重される、生命、自由及び幸福追求に対する国民の権利については、公共の福祉に反しない限り、立法その他の国政の上で、最大限の尊重を必要とするとあるし、二十五条でも、全て国民は、健康で文化的な最低限度の生活を営む権利があるということですけれども。

 これは国民とあるんですが、マクリーン事件判決というのが、これも釈迦に説法ですけれども、一九七八年の十月の四日ですね、最高裁の大法廷が、基本的人権の保障は、権利の性質上日本国民のみをその対象にしていると解釈されるものを除いて、我が国に在留する外国人に対しても等しく及ぶものと解するべきである、我が国の政治的決定又はその実施に影響を及ぼす活動等外国人の地位に鑑みてこれを認めることが相当でないと解されるものを除いて、その保障が及ぶものとするのが相当であるというのがあるわけですね。

 憲法解釈をなかなか法務省さんに伺うということはしないんですけれども、憲法十三条と二十五条の解釈とこの仮放免の問題というのは、全くもって矛盾をしているのではないかなと私は考えております。多方面から、是非、仮放免制度の見直しについて、法務省に強くお願いを申し上げたいと思います。

 最後、この仮放免について齋藤大臣の見解を伺えますでしょうか。

齋藤(健)国務大臣 今お話を伺っておりまして、入管法という法律に違反して退去強制が確定をしている外国人の方につきましては、やはり速やかに日本から退去をするというのが原則なんだろうと、そこは思います。仮放免中の生計は、したがって、そういう原則に従えば、本人の資産や身元保証人や家族の支援等によって賄われるということを想定をするというのも自然な流れなのではないかなと私は思っています。

 したがって、仮放免された外国人の方について、退去強制手続中という立場に鑑みれば、基本的に就労を認めてはいないわけでありまして、更に加えて、入管行政の一環として国費によって生計を維持するように御支援をするということも、それは少し困難なのではないかなと考えられる。

 ただ、個別におきましては、その方々の事情をよく踏まえて、それに適切に対応できる部署、役所、自治体においてしっかり対応していけるように努力をするということは大事なことだなというふうに思っています。

鈴木(庸)委員 ありがとうございます。

 是非、仮放免制度については、大胆な議論をこの法務委員会でもできていければなと思っております。よろしくお願い申し上げます。

 次に、名古屋入管についてお伺いをさせてください。

 先日伺ったときに、二十年近く手弁当で収監者の支援を続けていらっしゃる西山誠子さんという女性に帯同させていただいて、前回法務委員会の視察で伺った名古屋入管に面会者として行ったんですけれども、そのときに感じた仮放免についての問題意識、ずっとるる申し上げているんですけれども、施設面で一つ質問をさせてください。

 以前は、子供や家族が来たときは、アクリル板の仕切りのないところで触れ合って、抱き合えるということだったんですけれども、今、コロナの影響もあって、だっこすることができないということで、なかなかつらいというようなお話がありまして、収監者の皆さんもやはり子供と触れ合いたいという気持ちは同じなんですけれども、この辺りのところについて、先ほどの西山さんからも要望書も出ていると思うんですけれども、今後改善する御予定とかはございますでしょうか。

西山政府参考人 親子の面会等、いわゆる家族面会につきましては、従前、子供の福祉等の観点から、仕切りのない面会室等を利用して親子のスキンシップが図れるように取り扱うように指示するなど、積極的な実施に努めてきたところでございます。

 現在、新型コロナウイルス感染症拡大防止の観点から、仕切りのない面会室等を利用した家族面会の実施は全国において制限をしているところではございますが、新型コロナウイルス感染症に係る政府方針等を踏まえつつ、今後、再開する方向で検討してまいりたいと考えております。

鈴木(庸)委員 ありがとうございます。できるだけ早い再開を期待できればと思います。

 最後に、技能実習制度の後の日本についてお伺いをさせていただきたいと思います。

 先ほど来、特定技能について申し上げているんですけれども、特定技能というと、やはり特定の分野についてかなり深い知見を持っている、そんな響きがありますよね。そういう人であるべきですし、そういう人を日本に入れるということがやはり日本の国益に資するということはあると思います。

 ただ、お配りした資料を見ていただきたいんですけれども、これがテスト問題なんですね、技能実習の。これは宿泊なんですけれども、例えばですけれども、問いの十七、裏側ですね、ごみが落ちているのに気がついても、手が汚れるので拾わないで、そのままにしておく、はいかいいえか。あとは、問いの二十六、高熱などの体調不良のときでも、必ず出勤しなくてはならない、はいかいいえか。このほかにでも、コンセントのプラグの抜き方、この抜き方について、この写真の抜き方は正しいですか、はいかいいえか、そんな質問もあるんですね。

 でも、これはちょっと、特定の技能というよりも、個人的には常識の範囲なのではないかなという気がするんです。誰でも彼でも入れてしまわないような、制度にしないために、テストの質をある程度担保する必要があるのではないかと考えておりますけれども、この点について法務省さんはどのように考えていますでしょうか。

西山政府参考人 特定技能外国人に求める専門性技能は、法務省が政府基本方針に基づき定める分野横断的な試験方針、これを踏まえて、受入れ分野を所管する省庁が作成する試験等によって確保されるところでございますが、その水準は、一定の専門性、技能を要する業務に即戦力として従事するために必要な知識又は経験を測るに足る内容である必要があります。

 分野を所管する省庁が技能試験を作成するに当たっては、試験方針に基づき、有識者に相談し又は助言を求めるなどした上で、法務省による確認等を受けることとしております。

 また、分野を所管する省庁は、基本方針により、各事業年度終了後に、法務省に対し、試験実施状況報告書を提出することが定められているところ、法務省は、試験実施状況報告書を公表するとともに、必要に応じて、技能検定を所管する厚労省等に助言を求めるなどした上で、分野を所管する省庁等に指導を行うことにより、試験の適正な実施を確保しているところでございます。

鈴木(庸)委員 その手続的なところというのは分かるんですけれども、実際の問題のレベルがこういうところで特定技能と名づけてしまっているところが、この特定技能という言葉が、また技能実習と同じように、建前が先行してしまって誰でも彼でも入国できてしまうというような制度にしないように、優秀でやる気のある労働者を招いて労働力不足の解消に正面から応えるような、こうした制度として維持していくことを是非法務省の皆様にはお願いをしたいと思います。

 この特定技能については、私もこの法務委員会で度々その制度矛盾を指摘させていただいたんですが、今回、そこから大きく踏み出す判断をされたことには敬意を申し上げたいと思います。

 ただ、技能実習制度の方がこれからなくなるわけですけれども、当然、監理団体というのが存在するわけですよね。この監理団体については、今後、どのような方向性でその存在について考えていらっしゃいますでしょうか。

西山政府参考人 現在、開催されております技能実習制度及び特定技能制度の在り方に関する有識者会議におきまして、監理団体や登録支援機関の監理及び支援の在り方を論点の一つとして御議論いただいているところでございます。

 中間報告書のたたき台では、検討の方向性として、現行の技能実習制度において監理団体が担っている国際的なマッチング機能、受入れ企業等に対する適正な受入れの監理、支援の機能、外国人に対する職業生活から日常生活までの全般的な保護、支援等の機能は必要不可欠なものである、新たな制度においては、これらの機能を適切に果たすことができる優良な団体のみが認められるようにするため、監理、保護、支援に関する要件を厳格化する方向で検討すべきと示されているところでございます。

 もっとも、有識者会議においてまさに御議論いただいている段階でございますので、現時点において今後の方向性についてお答えすることは困難であることは御理解いただきたいと存じます。

鈴木(庸)委員 例えば、技能実習を特定技能の一号、二号にして、今の特定技能を三号、四号にするとか、そういった大胆な形の改革を是非期待をしたいと思います。

 最後に、もう一つ伺わせてください。

 同じように、外国人技能実習機構、これが存在して、法務省さんからもかなり職員が行っていると思うんですけれども、この団体についてはどのような方向性で考えていらっしゃいますでしょうか。

西山政府参考人 先ほども申し上げた有識者会議におきまして、外国人技能実習機構の在り方についても論点の一つとして御議論いただいております。

 先ほども紹介しました中間報告書のたたき台におきましては、検討の方向性として、「外国人技能実習機構が担ってきた法令に基づく監督指導や相談窓口などの援助は、一定の効果があり適正な受入れに不可欠であることから、体制を整備した上で引き続き活用する方向で検討すべきである。」と示されているところでございます。

 あとは、先ほど申し上げたとおり、有識者会議でまだ御議論いただいている段階でございますので、方向性につきましてはお答えは困難かと存じます。

鈴木(庸)委員 こうした団体の在り方、あるべきかも含めて、これから積極的に議論をしていかなくてはいけないのではないかなと思います。

 技能実習制度がなくなって、特定技能を軸として転籍が可能になることで、先ほど申し上げたように外国人の給料は今後上がっていくのは間違いありません。最低賃金でべたっと張りついていた人たちが四十万人近くそこから解放されるわけですから、それに伴って、サービス業を中心として、日本全体の給料もじわっと上がっていくのも間違いないかと思います。

 しかし、これまで、技能実習で最低賃金で雇うことによって何とか、企業や、農場とか工場とか、こういうところを運営してきた皆さんが、これから大変な苦境に立つということも間違いないと思います。こうした皆さんへの産業政策的な側面も含めて、法務省さん、厚生労働省さん、経産省さんなどが、様々な団体が横軸で協力して、本当にみんなが幸せになれるように取り組んでいっていただければと思います。

 終わります。

伊藤委員長 次に、吉田はるみ君。

吉田(は)委員 立憲民主党の吉田はるみです。今日もどうぞよろしくお願いいたします。

 本当に連日の質疑で大臣もお疲れさまでございます。法務省の皆様もお疲れさまでございます。

 では、早速、質問の方を始めさせていただきたいと思います。前回に引き続いてになるんですが、今日も、性別変更、手術に関して再び深掘りさせていただきたいと思います。

 今回、この件を調査して、いろいろ自分自身も勉強になったんですけれども、その中で分かって驚いたことの一つに、このような最近の判決がございました。それが、委員先生方のお手元にお配りしております資料一になるんですが、これは、二〇一九年一月二十三日、最高裁判所の小法廷で開かれた裁判の判決です。

 これは、戸籍上の性別変更を行うためには、生殖腺を永久的に取り除く手術をするという要件を課すということが、個人の尊重、法の下の平等を保障する憲法に違反するのではないかという抗告人のお訴えの裁判でした。

 しかし、私はこれを認めてほしいなと思っていたんですけれども、裁判の結果、主文、本件抗告を棄却するということで、身体的にこの要件を満たすということは合憲であるという結論が出たんですね。結論というか、そういう判断が出たんです。へえとちょっと思いました。これは、四年前、二〇一九年なので、つい最近のことではあるんです。

 ただ、私も一瞬、これを読んで、ああ、なかなか日本は難しいのかというふうにちょっと希望を捨てそうになったんですが、その後の裁判官お二人から出た補足意見の方、こちらを是非御注目いただきたいんです。ここに書いてあります、特に注目していただきたいところに下線を引かせていただきました。この二人の裁判官の補足意見です。

 「特例法により性別の取扱いの変更の審判を受けられることは、」、つまり、特例法、この法律できちんと、自分が女性あるいは男性というように戸籍上も変えられるということです、ということは、「切実ともいうべき重要な法的利益である。」。そうすることによってその方が法的利益を受けられるよということをおっしゃっています。

 次です。「生命ないし身体に対する危険を伴うとともに、」、この手術がです、「生殖機能の喪失という重大かつ不可逆的な結果をもたらす。」。これはまさに前回の御質問でも指摘させていただいたんですが、優生思想ならぬ、あの当時は当たり前に、国が不妊の手術を障害を持っていらっしゃる方々に強制したわけですけれども、ちょっと私は、やはりそれをもう一度、この判決文の補足意見を見ながら感じました。

 次が、「憲法十三条により保障されるものと解される。」。これはつまり、手術を受けなくてもいい、受けられない可能性もある方が、その手術を受けないということは憲法十三条により保障されるものと解されるというふうに書いてあると思います。それで見たところ、本件規定は、つまり手術を受けなければいけないということは、この憲法十三条の自由を制約する面があるというべきであるということまで言及されています。

 最後の方です。

 「性同一性障害者の性別に関する苦痛は、性自認の多様性を包容すべき社会の側の問題でもある。」ということで、広く議論を呼びかけるというような内容になっています。

 司法の方からもこういう判断が出たんですけれども、きちんと補足意見の方を読ませていただくと、やはり私たち立法府にも大きな問題提起がされているというふうに私は感じました。

 そこで、なるほど、じゃ、この手術って、もう一回、どのぐらいの負担のものなのかというところを確認させていただきたいんですけれども、性別適合手術、これは外見要件も、その変えた性に変えるとか、あるいは生殖腺の永続的除去、相当大手術なんだろうなと思います。実際、これを受けるかどうか迷っていらっしゃる方の中には、長生きできないよと言われたり、これは命の危険を伴う手術だと言われたりします。実際、卵巣の摘出、また精巣の摘出など、体への、身体への侵襲も非常に大きいものなんですが、私たち、医療の専門家ではありません。一般の私たちにもその大変さがイメージできるように、この手術にかかる時間あるいは回数、また命のリスクなど、具体的に教えていただけないでしょうか。

    〔委員長退席、藤原委員長代理着席〕

辺見政府参考人 お答え申し上げます。

 先日御紹介を申し上げました、日本精神神経学会が作成をしております性同一障害に関する診断と治療のガイドラインにおきまして、手術を行う上での身体条件としてということでございますが、性適合手術を行うことによって健康に重篤な明らかな影響を及ぼすような疾患が否定されていることとされており、その例として、麻酔薬に対するアレルギーといったものが記載されております。

 この麻酔薬に対するアレルギーというのは、先ほどお示しいただきました資料の「生命ないし身体に対する危険」の前に「外科手術一般に共通すること」と記載されてございますけれども、外科手術一般に共通することとして、患者に対してのリスクであるというふうに承知をしております。

 一方、性適合手術でございますけれども、御指摘いただきました精巣や卵巣の摘出の手術のほか、様々な生殖器の摘出、形成に係る手術がございまして、その選択は、医師が患者に説明をして、意思を尊重しながら決定されるというところでございます。

 それぞれの手術については、一、二時間のものから数時間にわたるものがあり、また、組合せによりまして、数回にわたる入院、手術が必要となる場合もあれば、そうでない場合もあると承知しておりまして、実際に個々に要する時間、回数は様々であり、一概には言えないところでございます。

吉田(は)委員 これは私、きちんとレクのときに、卵巣の摘出あるいは精巣の摘出、子宮の摘出、こういうふうに具体的にお伺いを申し上げています。一般的な麻酔のリスク、私、医療の専門家じゃないですけれども、そのぐらいは分かります。もう少し具体的なことをお答えいただきたかったなと思います。

 何か答えられないことでもあるんですかという感じなんですけれども、国民の皆様に、私は伝えたいんだ、この手術がどんなに大変なものかということを分かりやすくお願いしたい、だから、厚労省の方に、本当にこの法務委員会にお呼びするのなんか申し訳ないなと思いながらも来ていただいているわけです。

 是非、本当に国会の審議がもう少し、何というか、言わないことが得するような国会審議ではなくて、ちゃんと言って、審議ができるように再びお願いしたいと思います。この侵襲性が高いということは誰でも分かるところではあるんですが。厚労省の皆様、ありがとうございます。

 こんなことも言われるんですよ。こういうトランスジェンダーの方やLGBTの方、私の地元ではこの間パートナーシップ条例ができたんですけれども、それが通ると、すごい、一大キャンペーンを張られてしまったんですが、最近多いんですよ、女性トイレが危ないとか女風呂が危ないと。先生方も聞かれたことがあるようなんですけれども、これは、いや、本当かと思うんですね。LGBT理解増進法や同性婚に反対の方々の中には、これが通ったら、自分は女性だと主張する人が、体は男性でも、女性のトイレや公衆浴場、女風呂にどんどん侵入してきて、入らせないと差別だとわめき散らすぞということで、何かそんなことを拡散されたりしているんですけれども、皆さん、いかがでしょうか。

 私の知り合いやお友達のトランスジェンダーの方々は、精神的に本当にとても繊細で、引きこもりになってしまったり、本当に精神的にとても弱ってしまったり、バッシングを恐れて外にも出られない、トイレを使うとかあり得ない、女子トイレに行くとか女性のお風呂に入るなんていうのはあり得ないとおっしゃる方がいらっしゃいます。というのも、自分の体自身が本来の自分の性ではないので、それを誰かに見せるということはできないとおっしゃる方が多いんですね。

 なので、ちょっと私、こんな指摘は当たるのかなと思ったんですが、じゃ、実際そんな事件があるのか調べてみましょうよということで、ちょっと見ていきましょう。

 実際に、女子トイレや女風呂に入るということは、これは法律上は、建造物侵入罪、迷惑防止条例違反、強制わいせつ罪、軽犯罪法違反に問われる、こういうものに問われるというふうに理解しているんですが、これもレクで法務省に問い合わせたところ、こういうものに問われた事案というのがデータはないということでしたので、じゃ、それに近いようなものは何かなということでお伺いしたのが、わいせつ、盗撮目的で公衆トイレや公衆浴場に侵入する、こういう事例はあるようでした。

 ですので、ちょっとこれを参考にお伺いしたいんですけれども、公衆トイレ、公衆浴場で発生した盗撮事犯の検挙件数について、最新のものを教えてください。

友井政府参考人 お答えいたします。

 お尋ねの、公衆トイレ、公衆浴場等の通常衣服を身に着けない場所で発生した盗撮事犯の検挙件数の最新の数値として把握している令和三年中の検挙件数につきましては、一千五百四十四件であります。

吉田(は)委員 ありがとうございます。

 一千五百四十四件、いや、多いなとちょっと私は思ったんですけれども。

 再びお伺いします。

 この一千五百四十四件、この検挙されたものは検察に送っていらっしゃいますか。

友井政府参考人 お答えいたします。

 一千五百四十四件につきましては検挙件数でございますので、警察にて検挙し、検察庁に送致したものというふうに理解しております。

吉田(は)委員 このように、検挙されたものを送られているわけですけれども、それを起訴するかどうかは検察官の判断だと理解しています。

 では、この公衆トイレや公衆浴場に侵入した盗撮、千五百四十四件のうち、性自認が女性あるいは男性というトランスジェンダーを主張されたケースはどのぐらいあるのか、法務省は把握していらっしゃいますか。

松下政府参考人 お答えいたします。

 委員がお尋ねのような観点からの統計は取っておりませんので、網羅的に把握はしておりませんので、お答えすることは困難でございます。

 また、先ほど委員の方から、そういう事案は把握していないというようにレクのときに申し上げたというお話がございましたけれども、統計的に把握していないということでございまして、その事案そのものを把握していないという趣旨ではなかったと思いますので、訂正させていただきたいと思います。

吉田(は)委員 そういう事案がもちろんあるのは知っていますということなんですけれども、何か分析したりしていないということなんですね。

 それが私は答えだと思いましたよ。だって、いっぱいあるんだったら、分析していないはずがない。いっぱいこういう事案があるんだったら、問題視しますよね。問題視します。そういう事案、分析をされるはずなんです。だから、それほど、ニュースも私は検索してみたら、年に一件もありませんでしたよ。

 ということで、これほど大騒ぎして、女風呂だとか女子トイレだとか、そういうことってそんなに起きていないですね。警察の方でもそうやって分析もしていないというぐらいのものだよというふうに私は理解をしました。

 実際、これからLGBT理解増進法や同性婚、こういうことを検討し、私は通していただきたいと思っているんですけれども、その際に、御不安を持つ委員の先生方もいらっしゃると思うんですが、要は、ちゃんと真贋を見極めればいいんだと思うんです。つまり、本当かうそかというところで。

 それを可能にしていくというのが、私はやはり、戸籍上の性別変更、この要件をもっとしやすくすること。なぜなら、わいせつ目的で、こんな、女性トイレとか女性風呂に行く人、そのために戸籍上の性別を変更しますか。でも、本当に性自認が女性の人、性自認が男性の人、その方々にとって、戸籍上の性別を変更するというのは本当に重大なことなんです。重要なことなんです。

 なので、私は、この身体的条件というところを、非常に今としてはもう時代遅れというふうに思いますので、是非この観点からも考えていただきたいなというふうに思います。

 もちろん、女性の方がこういったところで危険にさらされることがあってはなりませんので、女性の権利、女性の安全は何としても守りたいという立場であることを最後につけ加えさせていただきます。

 本当はもう少し時間をかけたいところなんですが、もう一つ、これは経済界からも相当なプレッシャーが来ています。

 ちょっとこれは大臣にお伺いしたいところではあるんですが、御存じでしょうか。

 三月三十日、国会内で開かれました、G7に先駆けてのプライド7、P7サミットがありまして、そこで、イギリスのスミス首席公使、イギリスは性的指向、性自認にかかわらず差別禁止の法律を制定している、LGBTQの課題は私たち全員の問題というふうにおっしゃっています。また、在日英国大使のロングボトム大使の御長女様は、同性婚もなさっていらっしゃる。また、オランダ大使館のペータス全権公使も、同性婚を認めてからオランダでは二十年たつが、社会に悪影響は及ぼしていない、より多くの人が幸せになったと紹介しています。

 このように、G7の議長国として、もう五月、あれっ、一か月あるのという、こんな時期になってまだ議論が進んでいないということを私はとても心配をしています。

 同じように心配している声が経団連からも上がりました。経団連の十倉会長です。二月にアメリカに行ったときに、アメリカの要人から、今、日本はどうなっているの、その辺というふうに問われたときに、国会で議論されようとしているというふうに答えるのも恥ずかしかったとおっしゃっています。本当に、この点、しっかりとした取組を国会でお願いしたいというところまで踏み込んでいらっしゃいます。

 大臣、いかがでしょうか、この状況を聞いて。今、どこでこの法案が止まっているのかしら。ちょっとその辺りも分からないんですが、政府の一員として、また法務大臣として、この状況をどのように捉えていらっしゃるか、教えてください。

    〔藤原委員長代理退席、委員長着席〕

齋藤(健)国務大臣 まず、世界各国の性的マイノリティー当事者や支援者による新たな組織が立ち上げられて法整備などを求めていらっしゃるということは承知しておりますし、経団連の十倉会長が法整備の必要性に言及されたということも、もちろん承知をしているわけであります。

 この性的マイノリティーに関する法整備については、従来からもお話ししていますが、各界の御意見も踏まえながら、今議員立法として議論が続いているものでありますので、法務大臣として個別にコメントを申し上げることは現時点では差し控えたいと思っておりますが、思いは共有しているつもりでございます。

吉田(は)委員 ありがとうございます。

 議員立法をしているんですけれども、これはやる気になれば閣法を出せるんじゃないのかなと私なんかは思ったりするので、やはり岸田内閣の本気度がここは問われていると私は思います。

 こうした、LGBT差別の禁止、同性婚、そして性自認尊重、こういう法整備をできていないという日本の現状は、このような、日本の外交の大きな損失でありますし、日本経済の本当に大きな損失だと私は思っています。

 実際、私は関心のある立場なので、どんどん耳に入ってくる、目にも入ってくるんですけれども、この間、経団連のダイバーシティーの資料を読み込んで、改めて、うわあ、すごいと思ったんですけれども、例えば、世界のインベストメントバンクの中で、唯一、日本のインベストメントバンクとして認められている野村ホールディングス、ここでは、トランスジェンダーについて、トランスジェンダーの社員への対応で、性別適合手術を受ける際の対応として、休暇制度や上司や同僚への理解推進、支援体制などに関する会社の対応方針と制度を明確化したガイドブックを作成しているそうです。

 これだけやはりグローバルスタンダードの企業はやっているんですよ。経済界はもう動いているんです。動かないのは永田町だけというふうに言われないように、私はこれは本当に進めるべきだと思っています。

 実際、今から統一地方選挙後半戦が始まるわけですけれども、その投票日にもなります四月二十三日、大臣、東京レインボープライドというのは聞いたことはあるでしょうか。毎年プライドパレードというのをやっているんですけれども、それが四月二十三日です。これは、代々木公園にたくさんのブースが出まして、支援団体や、たくさんの協賛企業もあります。それで、皆さんで一緒にパレードをする。私も参加するんですけれども。

 こういうようなパレード、大臣は御参加されたこと、あるいはそのブースなどを御覧になったこととかございますか。これは、済みません、通告はしていないんですけれども、単なる興味としてお伺いします。

齋藤(健)国務大臣 参加をしていないというふうに記憶していますが。

吉田(は)委員 是非、こういうのって、全然、参加していなくても、それを何か言いたいわけではなくて、当事者の方とか、その場に行ってみると、私たちが何かわあわあ言っているぞじゃなくて、ああ、本当だ、こういうことってあるんだねとか、すごく実感していただけるんじゃないかなと思うんですね。今言った、例えば企業のところも、企業のブース、いっぱいですよ、本当に。これだけ経済界も動いているな、また、多様な人材を本当に大事にしながらやろうとしているんだなというのを実感していただけるかと思うので、大臣、ちょっとこういうのにも行ってみようかなみたいな気持ちはいかがでしょうか。

齋藤(健)国務大臣 二十三日の日程は、私、たしかもう地元になっておりましたので、物理的にちょっと行けないんですけれども、機会を探ってはいきたいと思っています。

吉田(は)委員 ありがとうございます。済みません、本当に差し出がましいんですけれども。

 でも、やはり知らないものというのは、人間、拒否感があったり、知らないものというのは、目をつぶってしまったり耳を塞いでしまったりするので、やはりまず知ってから、いろいろな御意見をそれぞれの先生方もお持ちになったらいかがかなというふうに思いました。

 では、二つ目の質問に参ります。時間も限られてまいりました。

 もう一つ今日お伺いしたいのが、生活保護の照会に関する点でございます。

 これも、何でこの扶養照会はまだあるのかなと思いながらいろいろ調べていたら、行き着いたのが民法八百七十七条です。この民法八百七十七条の一項で、直系血族及び兄弟姉妹は、互いを扶養をする義務がある、三親等内の親族間においても扶養の義務を負わせることができると書いてあるんですね。これは配付資料の二枚目になります。

 また、これも私、見ながらちょっとびっくりしちゃったんですけれども、その前のところは、「夫婦は同居し、互いに協力し扶助しなければならない。」と。何か、この辺なんかも私、ええっとか思ったんですけれども、この法律、これはいつできて、まあ、いつ以来変わっていないというふうな聞き方がよろしいんでしょうか。教えてください。

金子政府参考人 お尋ねの民法八百七十七条ですが、扶養の義務を負う者の範囲に関する規定は、元々、明治三十一年に制定されたいわゆる明治民法第九百五十四条として設けられた後、昭和二十二年の民法改正の際に見直しがされて現在に至っている、こういうものでございます。

吉田(は)委員 一九五〇年と私は把握しています。つまり、戦後五年後から変わっていないということで、七十年ぐらい変わっていない。

 やっぱりなと思いました。こんなに家族観が変わっているときに、こんなに昔の家族観で扶養を規定されるということが、本当に今の現代社会から、私、外れているなと思ったんですね。

 三親等といって、おじ、おばまでと、ただそれだけ聞くと、まあ、おじ、おばか、確かに昔はそうだったよねと思うんですけれども、改めて三親等に関して見て、びっくりしたんですけれども、おじ、おばの配偶者も入ります。孫の次のひ孫、ひ孫の配偶者も入ります。これは三親等です。ここまで扶養義務があるというふうに規定しているわけです。

 これは私、もう本当に、何か民法ってどうも時代遅れになっているなというふうに思うんですけれども、ちょっとお伺いします。

 今度は厚労省に伺いたいんですが、扶養照会、これをするのは、やはり、こういう法律がある、また、生活保護法ですか、そういう法律があるからやらなきゃいけないということでしょうか。

本多政府参考人 お答え申し上げます。

 生活保護では、生活保持義務関係にある方等を重点的扶養能力調査対象として、あと、それ以外の対象者の方に、扶養の申請があった場合に扶養照会を行わせていただいております。これは生活保護法に基づいたものでございます。

吉田(は)委員 じゃ、続けて伺います。ちょっと時間がないので、短くお願いします。

 どんなふうに扶養照会していますか。どの範囲まで郵送をし、複数回やるのか、また三親等全員に出しているのか、まとめてお答えください。

本多政府参考人 お答え申し上げます。

 扶養照会の方法は、対象者との、申請者との関係性によって若干違うんですけれども、重点的扶養能力調査対象者、これは主として夫婦や未成年の子の親の場合ですが、その方が保護の申請のあった実施機関の管内に居住する場合には原則として実地による調査、管外に居住されている場合には書面による照会を行っています。

 また、重点的扶養能力調査対象者以外の対象者に照会をする場合には、原則として書面でございますが、実施機関の判断によって電話連絡によって照会を行うこととしても差し支えないこととしております。

吉田(は)委員 相当な事務量なわけですよ。さっきお示ししたように、三親等までになると相当な事務量です。でも、それに対して実際扶養につながったのは〇・七%という結果が新聞報道でもされています。全くコストに見合わない。かつ、これを望んでいない人がいらっしゃるわけです。実際、生活保護を申請しようと思ったけれども、こういった、家族や親族に知られてしまうことを理由にためらったという人が、本来受け取るべき人が受け取れていないというのが三人に一人という、つくろい東京ファンドの結果でも出ています。

 私は、これは本当に問題だと思っているので、厚労省におかれましては、それをしっかり方針を出していただきたい。自治体によっては、もうやらないというところと、まだ八〇%やっているところがありますので、その点、我々議員はこの法律を変えるということをしなければいけないんだなということを認識をいたしました。

 最後に、これはちょっと私の思いになってしまって大変恐縮なんですけれども、私は生活保護という言葉を変えたいと思います。これは生活保障だというふうに思っています。

 憲法で保障されている健康的な最低限度の生活を営む権利、これは国民に保障された権利でありまして。委員の先生方の中には経済的な御苦労をなさったことのない方も多いと思うんです。でも、私は実家が八百屋の娘でございまして、経済的に大変苦労してきました。同じように、経済的に、頑張っても生活を維持できないという方々の気持ちを私は本当にひしひしと感じるんですけれども、これもやはり、自分とは違う人間あるいは自分とは境遇の違う方に本当に心を寄せるということが私はとても大事だというふうに思うんです。

 生活保護、これは、ネガティブな形で捉えられるのではなくて、本当にそれを享受すべき人がしっかりと享受をしていただきたいということを私は願っています。

 最後に、やはり経済的に豊かな人はこういうことは関係ないというふうに思われるかもしれないんですけれども、先ほどの経済の話でもないんですが、独り勝ちというのは私はないと思います。社会は支え合って、そして、経済もいろいろな人が支えているということがありますので、この辺り、私たちは議員として法律のところをやっていきたいと思いますし、是非、委員の先生方もこの議論に参加していただきたいということを申し上げまして、質問を終わります。

 ありがとうございました。

伊藤委員長 次に、寺田学君。

寺田(学)委員 寺田です。

 お時間いただきまして、入管法は入管法で来週からですので、それ以外の、私自身が粘着的にずっと取り組んでいる件二つをお伺いしたいと思います。

 まず一点目は、昨年の十一月に、五か月前に質疑をした内容で、商業登記における代表者住所を記載させる義務があることと、それが公開されていることについての見直しをお願いしていました。

 御承知の方は多いと思いますが、この間、私も、これの威力というか、これの弊害をすごく知ったんですが、秋田で、ちょっと知らない会社があったので、経営をやっている仲間にこの会社を知っているかと言ったところ、すぐ帝国データバンクから引いて、会社の規模や何やらは知ったんですが、それとともに、お住まいになっているアパートとお部屋の番号まで全部私に連絡が来ました。こういうところに住んでいるので結構もうかっているんじゃないんですかねみたいな推測がされていたんですが、何より、部屋番号まで出ていることに、まあ当然知っていましたけれども、改めて、実際、この今の制度の異常さというものに気づきました。

 そもそも、制度趣旨として何なのかというときには、商業登記をする際の本人確認のため住所を載せることを義務化しているんですけれども、本人確認であれば他の方法が山ほどありますし、何より、経営者の方々から聞くのは、住所を公開していることで非常に身の危険を感じると。最近では、アメリカの経営者の方も殺人の被害に遭ったりということがあるので、本当に、自分自身の住所、政治家も一時期まで、立候補するときに住所を公開されていて、怖い思いがありましたけれども、自分の住所をさらすということの現代においてのリスク、身の危険、不安というものは、男性のみならず、女性は本当に特に感じるものだなと思います。ですので、これは一刻も早く変えなきゃいけないと思って、十一月に質疑をしました。

 スタートアップに関しても、これが弊害になっていること、大いに関与していると思いますので、齋藤大臣に面接をされた鈴木英敬さんがたまたま担当の政務官でありましたので、正直なところ、冗談のように言いましたけれども、物事を動かすときには、しつこくやることと、そのときの人事によって、変わるとき、変わらないときがあると思います。経済に明るい法務大臣が誕生したということと、内閣府の中においての担当が英敬さんだということは私はいい機会だと思っていますので、一気に進めなきゃいけないと思っています。

 取り組んでいらっしゃるということは聞いていますが、鈴木政務官の方から現在の状況について御答弁いただければ。

鈴木大臣政務官 御答弁申し上げます。

 御指摘の商業登記における会社代表者住所につきましては、以前の国会質問の際にもお伝えしましたとおり、私自身、スタートアップ経営者の方々から御懸念や見直しを求める声を直接お聞きしており、重要な課題と認識をしております。

 先ほどは女性のということをおっしゃっていただきましたが、その際、私は、スタートアップの経営者が、若い経営者もいるので、小さい子供がいるケースで、その子供を守るという観点からも、住所をさらされていることの怖さを感じているということを前回の委員会でも答弁させていただきました。

 現在、法務省において、個人情報保護の観点から検討が進められていると承知をしておりますが、去年の十二月にも、デジタル臨調から、しっかり制度の見直しを行うようにという提言も出ておりますし、また、先般出されました自民党の「「スタートアップ育成五か年計画」の実現に向けた中間提言」においても本件が盛り込まれておりまして、それらの指摘等もしっかりと踏まえまして、内閣官房としましては、スタートアップ経営者の方々の御懸念に寄り添い、早期の課題解決を図れるよう法務省とも連携をしているところであり、引き続き、法務省を始めとする関係省庁と連携し、スタートアップの挑戦を全力で後押ししてまいりたいと考えております。

寺田(学)委員 大臣にせよ政務官にせよ、経済にはお詳しいと思うので。ただ、スタートアップの方々の時間感覚は物すごい速いので、やる、やらないも含めてですけれども、我々のこの国会であったり政府の考えている検討の悠長さという時間軸とははるかに違ったところで動いているので、かつ、現在においてもリスクはずっと顕在化し続けているわけで、これは直ちに検討して改善を図るべきことだと思います。

 余り想像したくはないですけれども、何かしらの事件が起きたときに、殺人事件とかでもそうですけれども、何をもってその人の住所を知ったのか、それが商業登記であったというときには、私は本当に大きな原因をこの制度が持っていると思いますし、それを放置し続けて、改正を遅らせている我々にも責任があると思っていますので、喫緊の課題だと思います。

 ここから大臣にお伺いしたいんですけれども、制度趣旨自体は本人確認でした。本人確認自体は、今の時代においては他の方法で幾らでもやれます。

 今もう住所を登録し、公開されている状態にありますけれども、何かしらこれから、多分引っ越しをされる方もいるでしょうし、昨日レクで聞いた限りだと、DVを既に受けた人に関しては非公開になっているということでありました。私が申し上げたいのは、検討していただくことは大いに結構で、早くやってほしいんですが、それまでの間もリスクは顕在化しているので、何かしら経過措置的なことを大臣の裁量の中でやれないかということです。

 例えば、住所の定義自体を、本人に連絡がつくかどうかというところが実務的には必要だということですので、本人に連絡がつくということがある程度確証が取れれば、住所という概念自体は広く解釈する通知を出してみるとか。

 あとは、これも相談を受けましたけれども、引っ越しの際に、結局、本当の住所を載せるか、いいことではないとは分かりながら、身の危険を感じていることですので仕方がないと思いますが、ダミーの住所、実際に違うところを借りて、そこを公開の対象にしておく、身を守るためにやっているんですが、そういう形をやっている人はいますけれども。引っ越しした際には、連絡がつく限りにおいては、届け出た住所を改正しなくてもいいというような解釈であったり。

 あとは、先ほども申し上げましたけれども、DV被害者、被害に遭っていないと駄目というのもどうかしていますけれども、身の危険を感じると思った人に関しては非公開というものを運用としてやるということも含めて、何かしら、今あるリスク、危険、身の危険というものを、解釈等を含めて、経過措置として、本格的な結論というのは今これから出ると思います、それまでの間、何とか経営者たち及びこれから経営をしていこうという人たちをケアするようなやり方、大臣、御検討いただけないでしょうか。

齋藤(健)国務大臣 まず、会社代表者等の住所の秘匿に関しては、商業登記規則の改正によって、住所が登記されている会社代表者等のうち、DV被害者等については、御指摘のように、今、申出に基づき、登記上、住所を非表示とすることができる制度を昨年の九月に創設をしたところです。

 しかしながら、このようなものに限らない会社代表者等の住所の公開の問題は、会社代表者等のプライバシーの保護の要請と、法人の代表者の情報の公開という取引上の要請、民事裁判における送達の場面での利用などの社会的役割との間でどのようにバランスを取っていくかという問題でありまして、経済界も含めて、依然として様々な意見がある問題であると認識しています。

 そうではあるんですけれども、今、様々な御指摘を寺田さんからいただきましたし、鈴木政務官がやっているからというわけではないんですが、スタートアップについても、私は、本当に今の日本にとってこれほど重要な政策はないぐらいに思っています。

 したがいまして、この問題につきましては、現在、民事局において関係団体との意見交換を行っている状況ではありますけれども、引き続き、その制度改正の在り方については検討を進めてまいりますが、その状況に応じて先立って講ずべき施策についても検討していきたいと考えています。

寺田(学)委員 大臣、ありがとうございます。

 本当に、先ほども申し上げましたけれども、やはりそれに対する理解、局長に理解がないと言っているわけではないですけれども、局長は局長の専門なところがあって、ただ、大臣には大臣という御経歴、政務官も含めて、あると思いますので。

 本当に大臣が言われたとおり、私は切実な問題だと思いますし、このことをもってスタートアップが一日でも遅れることは、日本にとっても残念なことですし、諦めるということがあるとしたら本当に残念なことだと思いますので、大臣からかなりしっかりとした御答弁をいただきました。ありがとうございます。そういう形で、是非、経過措置で何かできることを御検討し、実施していただきたいというふうに思っています。

 以上で内閣府の皆様は御退席いただいていいと思いますので、委員長、よろしくお願いします。

伊藤委員長 では、鈴木さんありがとうございました。皆さんありがとうございました。

寺田(学)委員 もう一点の方です。在留資格の興行の要件緩和について。これも、しつこいぐらいこの場でもやってきました。

 もちろん、入管としての考え方はあることは十分承知はしながらも、やはり日本のエンターテインメントを支える上で、アーティストの方々が日本に来日する際に取らなければならない在留資格の興行の部分に関して、以前は、フィリピンパブでの問題があったということで要件を厳しくしていたんですが、全く時代にそぐわなくなってきたことと、先ほど申し上げたエンターテインメントに対しても物すごい足を引っ張る仕組みになっていたことと、あわせて、入管職員の皆さんの過大な負荷になっていたということを含めて、改正をお願いしていました。

 これもいろいろ、累次、前の大臣のときからですけれども、やっていましたけれども、最終的には、大きな大臣のお力添えもありまして、要件緩和に関して、今、パブリックコメント、改正が決まってパブコメにかかっているという状態です。本当にそこに関しては、知恵を絞っていただいた皆さんを含め、感謝申し上げたいと思います。

 今パブコメに入っている中で、様々はっきりしていない部分もありますので、もちろんパブコメの後に詳細を詰めていくことになると思いますが、今回大きく緩和した新要件、三年の実績がある場合においては、今まで課されていた要件が大きく緩和されるような仕組みを設計され、今パブコメにかかっております。

 その中の、三年の実績があるという形になれば、これから大きく緩和措置を受けられる立場になると思うんですが、じゃ、その三年実績、これを何と呼べばいいか全然分からないんですけれども、そこに認定される仕組みなのか認証なのか分かりませんけれども、どのような形でそれを判断していくのかということを現段階においてどう考えているか、入管の方から御答弁いただければ。

西山政府参考人 今般の上陸基準省令の改正におきましては、外国人アーティスト等の受入れを促進し、もって国際的な文化交流の発展等に資することを目的として、適正に実施している実績がある招聘機関が外国人アーティスト等を受け入れる場合には、受入れの要件を大幅に緩和することとしております。

 適正に実施している実績がある招聘機関であること、つまり、上陸基準省令改正案の基準一号イに適合する機関かどうかについては、個別の審査の中で判断することとなりますが、この具体的な運用につきましては、今後検討、詰めていくということになります。

 いずれにしましても、今般の省令改正の趣旨を踏まえまして、申請者に過度の負担をかけることなく、効率的かつ適正な審査を行えるようにしてまいりたいと考えております。

寺田(学)委員 私の問題意識は、せっかくのこれだけ大きな要件緩和をする設計をしてもらいながらも、その新たな制度を受ける立場、三年実績の立場になる認定自体が物すごく厳しかったらほとんど意味がないので、そこら辺を、これは、実情は、大手のプロモーターやイベント会社だけではなくて、小さい会社、今まで一生懸命やっていますので、両方の実態を踏まえた上で是非ともその認証の在り方については設計をしてもらいたいと要請をしたいんですが、よろしいですか、次長。

西山政府参考人 委員御指摘いただいた問題意識というのは私どもも十分に考えておりますので、その委員の御趣旨も十分踏まえまして検討してまいりたいと考えております。

寺田(学)委員 あと、そういう意味で、これからも断続的に、是非とも、ヒアリングを重ねながら、また意見交換も私もさせていただければというふうに思います。

 もう一つ、これは新設されたものですが、いわゆる二号と言われる、今までは簡易的に行われるものだった方なんですが、これも、客席要件を変えること、今までは客席を物理的に置いた上での計算等々みたいな話だったのが変わる形になるのと、飲食物の有償提供の解釈を変える。

 これ自体、私、音楽を聞く方のクラブは物すごく大好きで、この間も、大きく、かなりインバウンドも増えて、戻ってきたこともあって、クラブ業界の方も、新しいところができたり、そして既存のところも非常に人が集まって、戻ってきたということで、ナイトシーンもかなり盛り上がってきたなというふうに思うんですが、この飲食提供自体が、非常に解釈として、もちろん、フィリピンパブのことを前提にしたのでそうなっているのは分かるんですが、普通に音楽が、DJがやっている周りで、飲食物を自分で買いに行って、取って飲むという、およそフィリピンパブとは違った環境にあっても、フィリピンパブの前提で制度設計されているせいで、この飲食物に関しては非常に厳しいものがあったというところです。

 今回、飲食物の有償提供についての解釈が変わるということですけれども、どういう形になるのか、御説明いただければ。

西山政府参考人 上陸基準省令二号のニの要件でございます、飲食物を有償で提供せずの規定につきましては、現在は、例えば、客席と一体性のある場所にバーカウンターを設けている場合は、この規定に該当せず、受入れを認めないということにしております。

 改正後の運用につきましては、検討中ではございますが、例えば、バーカウンター等で飲食物を提供する場合であっても、客が飲食物を受け取って客席で飲食するなど、接待を伴わず適切に実施されると考えられるような態様であれば、これを柔軟に認めることも含めて検討してまいりたいと考えております。

寺田(学)委員 実態にかなり近づいてきていると思うので、方向性としては歓迎したいと思うんですが。

 この場で言うことかどうかは別ですけれども、クラブ、音楽の方ですよ、正直言うと、音楽シーンは韓国にもう完全に負けていて、ミュージシャン含めて、韓国がやはり強いです。この間もちょっと音楽関係者の人たちと話したんですが、韓国に負けている、悔しいという話でした。

 それを招聘するところが、やはり、昼間のライブハウスもそうですけれども、夜のクラブというところも大きな箱があればやるんですけれども、今お話ししたとおり、お客さん自身が自分自身でバーカウンターで取って戻ってくるという仕組みを基本的に引きながら、例えば、VIPルームとかがあって、そういうところで例えば高額なシャンパンを頼んだ場合には、そのシャンパンだけはしっかり持ってくるというようなパフォーマンスというのは世界中で行われています。多分、次長は体験したことがないので想像がつかないかもしれないので、ちょっと実地検査をしに行ってみたいと思いますけれども。

 それ自体は運んでもらうわけですよ。基本ベースとしては、お客さんが自分自身として持ってきたりする営業形態をしながらも、VIPルームだったり、そのVIPルームも、自分で取りに行くかもしれないけれども、時としてはそういう形で、ショーとして運んできてもらうということもあるし、そこが結構、箱としては大きな収入源だったりするし、面白いところではあるんですが、そういうところの柔軟性も是非理解してほしいというのは私の問題意識です。御答弁あれば。

西山政府参考人 先ほどは比較的典型的なものとして例示をいたしましたが、私が先ほど答弁したところで、接待を伴わず適切に実施されるというところをきちんと柔軟に見ていきたいと思っておりますので、先ほどの例でいきますと、VIPルームにシャンパンを店員が持ってきて、置いて、店員が帰るというのは、基本的に接待は伴っていないというふうに判断されるんですが、もし持ってきた方が隣に座られると、ちょっとそこは接待を伴うことになるのかな、そういったところも含めて柔軟に検討してまいりたいと考えております。

寺田(学)委員 そのいわゆる箱自体が盛り上がっている箱かどうかというのが、アーティストを呼べるときの吸引力になったりもします。何人入るところであって、どれぐらいの集客実績があるか。その集客実績の中には、様々な形でサービスみたいなのがあると思う。もちろん法に従った形のものにしたいと思いますが、様々な形態が出てきているので、そこら辺、昔みたいにしゃくし定規にやらないでほしいというところです。今度本当に一緒に行きましょう。

 もう一つ、四号ですけれども、芸能です。テレビに出ている、映画のためにはみたいな話が文言上はあるんですけれども、今、もうユーチューブ含め、ユーチューブの中でも、自分が出ないで、擬態化した映像自体で、声だけ自分で入れてやるというVチューブみたいなのも出てきています。

 もう、およそこのものが、設計したときとは違った芸能の在り方が広がってきているときに、どのように現実に即した形で、言っちゃ悪いですけれども、入管の人たちは、僕は、入管の職員の若い人たちはみんな分かっていると思いますが、入管の上の人たち、いまだにテレビしか見ていない人たちにしてみると、インターネット社会で広がっている、ティックトックもあるでしょうけれども、ユーチューブの中での芸能の在り方というのは、物すごく拡大しているし、物すごくマネタイズもされているし、影響力もすごく大きくなっているので、そういう点に関して、四号の審査の在り方みたいなことも柔軟にしなきゃいけないと思っています。

 これは、現場の方で相談を受けながら、まだ入管全体としての意識合わせができていない状態になっているんですが、この芸能の在り方、インターネット上での活動の扱いということに対してどのようにお考えになっているか、御説明いただければ。

西山政府参考人 委員が御指摘になりました興行の上陸基準四号は、商品又は事業の宣伝に係る活動や、放送番組又は映画の製作に係る活動等の芸能活動を規定しております。

 当該基準に適合するかは、個別の審査において具体的な活動内容から判断するものであり、動画等の制作物がインターネット上で配信されることのみをもって何かしら決定されるものではないというふうに承知をしておりますが、芸能活動が多様化している現状に鑑みまして、こうした活動の実態を的確に把握し、時勢にマッチした適切な判断を速やかにできるよう、引き続き努めてまいりたいと考えております。

寺田(学)委員 本当にそこも、さっきのクラブの話ではないですけれども、実態をちゃんと、多分、意思決定権を持っている方々のところは知ることが大事だと思います。これも幾らでも紹介しますので、ちょっと実態について、是非とも現場の方々を含めて話合いができればなと思います。

 この興行の在留資格の改正自体、先ほど趣旨、私の問題意識を申し上げた最後に申し上げましたけれども、入管、特に東京入管がパンク状態です。それはもう入管の皆さんが一番御存じだと思いますが、正直かわいそうなレベルです。それは一番御存じだと思いますが。私が聞く限りにおいて、もう足の踏み場がないぐらい申請書類が積み上がって、電話も、当然ながら、何回かけても申請者はつながらないし、何回かけられても物理的に取りようがないという状態が続いています。

 なので、今回、要件改正することで、審査する側の負担も減らそうと思っているんですが、これは、私も聞く限りにおいてぐらいしか想像ができませんが、多分、見ると相当だと思うんです。

 ここはちょっと、通告しているのであれですけれども、大臣にお願いなんですが、多分、大臣が見に行くぞと言うと、違った現状を醸し出す可能性があるんですよね。ウクライナの電撃訪問でもないですけれども、極秘で、本当に興行の悲惨さ、そしてそこで働く職員たちのブラック極まりないような職務環境、これを改善するためには、多分、職員を増やすのか、処理量を減らすための要件改正をするのか、様々なやり方はあると思いますが、私も、若い人たち、入管の経験のある方々と、聞いていますが、本当に悲惨です。

 なので、ちょっと一度、大臣にここで極秘に行けというのを公開の場で言っている時点でどうか分かりませんけれども、警備員に止められるぐらいの雰囲気を醸し出して、是非、ちょっと一瞬現場を見てみると言うと、多分、現場主義の大臣であればその問題意識を強くすると思うので、どうか、結論的には、現場の負担、かわいそうな職員たちの負担を何とか減らす、問題意識を持ってほしいというところです。大臣、よろしくお願いします。

齋藤(健)国務大臣 まず、今回の上陸基準に係る省令改正で、この機会に審査の効率化も図りたいと考えていて、具体的には、適正に実施している実績のある招聘機関であると認められれば、要件が大幅に緩和されることになるので、提出資料の軽減が見込まれるわけであります。これに限らず、審査方法の見直しについては負担軽減の観点から検討していきたいとかねがね思っているところであります。

 私も、入管の現場については大変な御苦労があるんだろうなと常々思っておりましたので、御指摘を今日いただいたので、視察を行うことにつきましては、そういう業務の実態を把握する上でも重要と考えているので、前向きに検討していきたいと思っています。

寺田(学)委員 大臣御存じと思いますが、大臣が行くぞとなると、絶対違った形になるので、是非、本当の実態を見る上で、隠密に行っていただくのが一番、実態を見て、苦しいハードワークを強いられている若手職員の人たちの苦しみが伝わるんじゃないかなと思いますので、よろしくお願いします。

 以上で終わります。

伊藤委員長 次に、鈴木義弘君。

鈴木(義)委員 国民民主党の鈴木義弘です。

 短い時間なものですから、すぐに質問に入りたいと思います。

 ほかの委員会でもお尋ねがあったと思いますし、先般、林外務大臣が中国に行って、スパイ容疑で摘発された日本人を何とか連れ戻してきたいということで訪中されたんだと思うんですけれども、私は、やはり中国政府による恣意的な法運用の典型例じゃないかなというふうに推認できるんです。

 法務省にお尋ねすることはちょっとお門違いかもしれませんけれども、大臣の所信の中で、海外に法制度整備の支援活動を行っていくというのをうたっているんですね。それは、中国を対象にしているわけじゃなくて、ほかの、東南アジアも含めた、中東なのかアフリカなのか分かりませんけれども、そういったところにやはり日本の司法制度をもっとアピールすべきだろうし、ちょっとやはり、恣意的に運用されたのでは、こちらから、弁護士が行って裁判を一緒にやれるとか、そういうこともかなわないんだと思うんです。その辺について、日本がどう今対応しているのか、お尋ねしたいと思います。

柴田政府参考人 お答えいたします。

 委員御指摘のとおり、法務省は、長年にわたっていろいろな、東南アジアを中心に、法整備支援をしております。

 一方、今回の論点、邦人が摘発されているということに関しましては、法務省といたしましては、外国政府の法執行事務に関する事項ということで、法務省の所管に係る事項ではなく、お答えは難しいところでございます。

 ただ、法務省としましては、国際社会において法の支配や基本的人権の尊重といった普遍的価値が浸透していくことが重要と考えておりまして、今後とも、必要に応じて、外務省を始めとする関係省庁と連携をしていきたいと考えています。

鈴木(義)委員 連携するだけで終わったんじゃ、これは解決には進まないと思うんですよね。あらゆる手を使ってやらないと、北朝鮮に拉致されている人も戻ってこない現実もありますしね、だから、やはり、連携するだけじゃ弱いんじゃないかというふうに思います。そういう国が日本の周辺にあるだけじゃなくて、ほかの国もそういったことが事例として起こっているのかな、これはもう推測の域しかないんですけれども。

 じゃ、例えば、日本にはスパイ防止法というのがないんですけれども、過去に営業秘密の漏えいや技術流出した案件又は流出したであろう認知件数というのはどのぐらいあるのかというのをお尋ねしたいと思います。

早川政府参考人 お答えいたします。

 お尋ねの不正競争防止法の営業秘密侵害事犯の認知件数の統計はございませんが、海外流出事案を含めた最近の検挙事件数を申し上げますと、令和二年は二十二件、三年は二十三件、四年は二十九件となっております。

 例えば、社員が在籍当時に化学メーカーの営業秘密である技術情報を不正に領得するなどした上、SNSを介して接触してきました中国所在の企業の社員に開示した営業秘密侵害事犯を令和二年十月検挙しております。

 警察といたしましては、今後とも、我が国の国益が損なわれることのないよう、関連情報の収集、分析に努めるとともに、あらゆる法令を駆使し、違法行為に対して厳正な取締りを行ってまいりたいと考えております。

鈴木(義)委員 ありがとうございます。

 認知した件数がどこまであるのかというのは、これは、何をもって認知したかって、分かったというだけでは数を積み上げるのはなかなか難しいと思うんですけれども、私は、氷山の一角なのかなというふうな考えでおりますので、是非鋭意努力してもらえたらなと思います。

 これは、記事で目にしたんですけれども、なぜ中国の科学技術は飛躍的に向上したのかという報道なんですね。

 最も気をつけるべきは千粒の砂という戦略で、中国共産党は、かつてのように外交官を偽装する工作員を使わないで、様々なチャンネルを通じて情報を集めているというふうにこの記事は指摘しているんです。様々な理由で海外にいる中国人を、情報機関の職員でもないのに自国の情報活動に活用する、現在も、これが中国のインテリジェンス活動の大きな特徴だというふうにここで指摘されているんです。

 しかも、中国では二〇一七年に国家情報法が施行されました。この法律は、いかなる組織及び個人も、法律に従って国家の情報活動に協力し、国の情報活動の秘密を守らなければならない、国は、そのような国民、組織を保護する、第七条でこううたってあるんだそうです。つまり、外国にいる中国人であっても、国家に必要な情報を提供しなさいと命じられれば、それに従わざるを得ないという法律なんだそうです。実際、今起訴されましたという御答弁があったんですけれども、日本の大学に留学していた中国人の留学生が、サイバースパイの片棒を担がされた事件も起きているということです。

 時間がないので、なおかつ、アメリカのシンクタンクが、二〇〇〇年から二〇一九年初頭にかけてアメリカで起きた中国と関連したスパイ事件を確認したところ、百三十七件の事件報告のうち、中国の軍人又は政府職員が五七%、中国の民間人が三六%と指摘しているんです。広範囲の一般人等を情報活動に使う中国の戦法を前に、防諜側は、一体、誰を、どこまでの範囲の人間をスパイと考えて対処すればいいのかが分からなくなっている、全体で見れば大きなスパイ行為であっても、多くの人間が少しずつ関係し、しかも当人はスパイ行為を行っているという自覚がないともなれば、仮に発覚したとしても司法で裁くことができないというふうに指摘しているんですね、このシンクタンクが。

 さらに、留学生でいえば、さきのサイバー事件のように具体的な指示を受けるだけでなく、実際に留学生として米国の大学で見聞した情報を中国に持ち帰って祖国の発展に生かせという大きな方針も打ち出されているんだそうです。受け入れる欧米側の大学としては、優秀な中国人留学生や研究者であればあるほど、自国での研究開発成果を中国に持ち帰られる危険性が常に存在しているというふうに指摘しているんです。

 また、実際の研究者の立場で世界中の研究機関や催しに参加し、そこで情報を得たり、意見交換したり、各国の研究者と知己を得たりすることは、当然スパイ行為には当たらないだろう、そのため、中国は、こうした立場の人間やそれに成り済ました工作員をうまく使い、アメリカなどの科学技術情報を得て国家の技術力向上へ生かしているようだとこのシンクタンクは指摘しているわけです。

 アメリカで起こっていることは、私は、日本でも同じことが起こっているんじゃないかなと思うんですね。それについて、公安調査庁として、今までの取組を教えてもらいたいと思います。

田野尻政府参考人 お答えを申し上げます。

 公安調査庁におきましては、議員御指摘の点も含めまして、外国による情報収集活動など、我が国に対する有害活動に的確に対処するため、そのような活動に関して情報収集、分析を行っているところでございます。

 また、いわゆる経済安全保障の観点からも、先端技術、データ等の流出が懸念される事例などについて、関係機関と情報共有するとともに、官民連携や情報発信等に努めているところでございます。

鈴木(義)委員 私は、先般も申し上げたかもしれませんけれども、今経産委員会にも所属しておりまして、やはり、これから環境問題をクリアしていくのにも、ほとんど素材が中国から入っているんですね。太陽光パネルだとか、グラファイトもそうだし、いろいろなものが中国から入っています。じゃ、その元々の技術は何だったのかと尋ねていくと、元々はアメリカの技術だったり日本の技術だったのが、知らず知らずのうちに持ち出されていって、世界を席巻するような技術、生産構築をされてしまっているということなんですね。だから、どんなに日本が技術立国だというふうに声を大きくしたとしても、情報が漏えいしてしまっている。先ほど申し上げましたように、一人一人を見ていくと、その意識がない中で情報が持ち出されちゃっているということが現実起きているわけですね。

 これから、GXを推進するとか、地球温暖化に対応するように二〇五〇年に向けてやっていくといったときに、もっとやはり知を、知財を蓄積していくような形を取らなくちゃ駄目だと思うんですけれども、これは、経済産業委員会でさっきの不正競争防止法は所管しています。でも、それに基づいて検挙するとか捜査するというのは、やはり法務省の所管になってくると思うんです。それについて、今後、大臣の意気込みというんですか、考え方をお示しいただきたいと思います。

齋藤(健)国務大臣 私は、鈴木委員と全く同じ考えでありまして、我が国の先端技術、これがどんどんと流出をしていくということは何としても避けなくてはならないというふうに考えています。

 ただ、私の所掌でいえば、公安調査庁における関連情報の収集等の取組をしっかりと行って、法務省の所掌行政の範囲内で適切な対処に努めるということに尽きると思っていますが、問題意識は強く持っております。

鈴木(義)委員 所管が違うと言われちゃうと、いろいろ役所の方とやり取りしていても、これは所管が違う、これは違うと言うんです。じゃ、どこが統括してやるのかなという話なんです。

 インテリジェンスに関して言えば、いろいろな組織が情報を収集していると思うんですね。公安調査庁もその一つ、警察もそうだろうし、防衛省もあるだろうし、外務省もあると思うんです、内調もあるでしょうし。それをどこが統括してやるのかといったときに、それは官邸だと言われちゃえばそれで終わってしまうんですけれども、やはり、情報を収集してきて、その情報が機微に近ければ近いほど、誰がそれを機微として判断するのかというところが大事になってくると思うんです。

 だから、法務省、公安でもそうなんですけれども、結局、技術をある程度分かる人が調査なり情報収集しないと、それが機微かどうか、軍事目的でやろうとしているのか民生なのかは線が引けないんですよね。その辺の対応を今後もやはり少し強化していかないと、要するに、人材育成をどうするかということに尽きるんだと思うんですけれども、もう一度御答弁いただきたいと思います。

齋藤(健)国務大臣 所掌ではないんですけれども、経済安全保障に関わる技術の流出ということであれば、今、経済安全保障担当大臣がおられるということであります。

 ただ、そういう経済安全保障に関わらない技術の流出ということになりますと、これは技術の中身にもよって役所が違うんだろうと思っているところでありますので、ちょっと私からはコメントはそれ以上はできないということであります。

鈴木(義)委員 要するに、所管が違うからといったときに、公安から上がってきた情報が大臣のところに行くのか、そのまま官邸に行くのか、私は分かりません。でも、そこで働いている人が、ある程度、これが機微情報なんだと、例えば素材一つ取っても、軍事にも転用できるし民生でも使えるような、でも、それが、えっと思うような、やはり感性みたいなものが必要なんだと思うんです、情報をキャッチするときに。是非そういった人材も、外に求めるんじゃなくて、担当大臣がいるからそこに任せるよというんじゃなくて、やはり情報を集めていくところにそういう人材がいなければ分からないだろうということなんです。

 最後に、意気込みだけ聞いて、終わりにしたいと思います。

齋藤(健)国務大臣 全く問題意識は共有していますので、公安調査庁でしっかりと、分析、情報収集をするということについてはしっかりやっていきたいと思っています。

鈴木(義)委員 終わります。

伊藤委員長 次に、本村伸子君。

本村委員 日本共産党の本村伸子でございます。どうぞよろしくお願いを申し上げます。

 まず、法務省の人権擁護局の職員の方々の問題について質問をさせていただきたいと思います。

 いじめからの救済や、あらゆる差別、暴力からの救済、ヘイトスピーチやヘイトクライムをなくし、障害がある方々への差別をなくし、性別による差別をなくし、LGBTQの方々の差別をなくすという、様々な差別をなくしていく上でも、人権擁護局の皆さんの活動というのは非常に重要だというふうに思います。

 人権、個人の尊厳という普遍的な価値を担う人権擁護局の本省の職員の方の人数というのは僅か二十八人しかいないということで、問題だというふうに私は思っております。これは純増を図るべきだということで質問をさせていただきまして、そのときに当時の法務大臣は、やはり地方の法務局、本省も含めて、ちょっと見劣りする体制であることは私も認めざるを得ないと思いますので、財政当局ともよく相談をしながら、体制の充実強化、定員増、これに努めていきたいと考えていますとお答えになっております。

 そこで伺いますけれども、この質問は昨年度でございました。今年度、本省の人権擁護局そして地方の法務局の定員は何人純増になったのか、お示しをいただきたいと思います。

齋藤(健)国務大臣 令和五年度における法務省人権擁護局の定員は二十八名のままでありますけれども、法務局の人権擁護部門の定員につきましては、いじめ、虐待等の子供の人権問題などへの対応として、六人の純増となったところでございます。

本村委員 本当にまだまだ少ないというふうに思うんです。子供からの御相談、生の声を分析するためにも、多様な人々の人権を保障するためにも、本省の人権擁護局そして地方の法務局の定員を純増するということを求めたいと思いますけれども、大臣、いかがでしょうか。

齋藤(健)国務大臣 子供の人権問題を始めとする様々な課題に適切に対処し、人権が尊重される社会を実現していくため、これは非常に重要だと思っていますので、引き続き、人的体制の整備、どのようなことができるか検討していきたいと思っています。

本村委員 抜本的強化で、まだまだ日本というのは人権保障という点が世界の中でも遅れているというふうに思っておりますので、是非その点で前へ進めていただきたいというふうに思っております。

 続きまして、ウィシュマさんの死亡事件のビデオに関しまして、大臣が記者会見でおっしゃった内容についてお伺いをしたいというふうに思います。

 ウィシュマさんの死亡事件の五分間の公開されたビデオに関しまして齋藤大臣は、今日、資料を出させていただきましたけれども、資料の一で線を引かせていただきました。約五時間分のビデオ映像の一部を、原告側が勝手に編集をしてマスコミに提供して公開したものというふうに発言をされました。

 先日の委員会の中で、原告側は法的に問題はないということが明らかになっておりますけれども、勝手に編集というのは、やはり、入管庁ですとか国ですとか裁判所などに承諾を得なければいけない、きちんとした許可を取らなければいけないというような印象を与えるというふうに思いますけれども、大臣、そうではないですね。

齋藤(健)国務大臣 これはもう何度も御答弁しているんですけれども、この部分については、事実関係をきちんと申し上げたという認識で、その後で私は、係争中の個別案件ですので所感は述べないと申し上げておりますので、だから、所感を述べないということは、いいとも悪いとも言っていないということでありますので、是非セットでお考えいただければと思います。

本村委員 そのように大臣はいつもおっしゃるんですけれども、その後の大臣の発言なんですけれども、今日も記者会見でも御指摘があったようなんですけれども、本件につきましては皆さんにもよく考えていただけたらなと思いますとマスコミの皆様におっしゃっております。これは、勝手に編集、公開について、皆さんにもよく考えていただけたらなと思いますと言っているというふうに取るわけです。

 二枚目の資料を見ていただきましても、同じようなことをおっしゃっておりまして、こういう行為については皆さんにも考えていただきたいなというふうに思っているところですというふうに述べております。

 皆さんとはマスコミの方のことでしょうか。この発言の趣旨というのは何でしょうか。

齋藤(健)国務大臣 私は、所感を述べないと。質問されたので、記者の皆さんに質問されたので、記者の皆さんに考えていただきたいと申し上げただけです。

本村委員 やはりマスコミの皆さんに考えていただきたいということですね。

 そうすると、こういう行為については皆さんにも考えていただきたいなというふうに思っているところですと言うということは、マスコミの皆さんにもあの五分のビデオの公開が悪いかのような印象を与え、載せないように、忖度するように圧力をかけているというふうに取られるような言いぶりだというふうに考えますけれども、大臣、いかがでしょうか。

齋藤(健)国務大臣 そのような考えは全くございません。

本村委員 これは、マスコミにも圧力をかけているのではないかというように取られかねない内容だというふうに思っております。

 この大臣の御発言に関しまして、ウィシュマさんの御担当の弁護士のお一人の方からお話をお伺いしたことがあるわけですけれども、御遺族にとって、この発言は二次被害だというふうにおっしゃっておりました。

 しかも、資料の四ページのところですけれども、私は、大臣はですね、私は個人的に、もし自分がそういうことになれば、自分のことであれば私は公開してほしくないと思いますというふうに語っておられます。

 弁護士のお一人の方がおっしゃっていたんですけれども、国側の、加害者側が、御遺族に向かって、亡くなった被害者のお気持ちを考えろというのは、醜悪な言動だ、二次被害だ、弁護団への政治的圧力でもあるというふうにおっしゃっておりました。強く抗議をし、そして、法務大臣という地位にふさわしくないということも語っておられました。

 この言葉を大臣はどう受け止められますでしょうか。

齋藤(健)国務大臣 私の真意は先ほど申し上げたとおりでございます。それをどのように受け止めるかはそれぞれの人の自由でありますが、私にはそのような意図は全くありませんでした。

本村委員 でも、やはり、被害者の御遺族にとっては二次被害に実際になっているわけでございます。

 御遺族が、やむにやまれぬ思いで、ウィシュマさんがいかに人として尊厳を踏みにじられて亡くなったのか見てほしいと公開をされました。妹さんはこうおっしゃっております。姉がどんな救いのない環境で見殺しにされたか、日本の皆さんに知ってほしいというふうにおっしゃっておりました。

 御遺族や弁護団の皆様が頑張って、ビデオを、最初は一部だけれども、視聴ということだったんですけれども、行われました。その流れで、国会議員にも見てほしいというふうに語られ、国会でもあのビデオを二回、今までは、約七時間視聴するということにつながっております。

 私たちも視聴をさせていただき、ウィシュマさんが、もう二週間も前から足がほとんど動かず、入院や点滴が必要だったというような状態であったということを知ったわけです。何度も何度もウィシュマさんを、ウィシュマさんの命を救う機会があったということもはっきりしたわけでございます。入管のこの報告書に真実に反することが書かれていることも、ビデオを見て、報告書と照らし合わせて分かったわけです。入管が真実に反することも書いてしまうということが心底理解できたわけです。そういう体質も理解できたわけです。

 大臣は、こういうことが国会議員あるいは社会に隠されていた方がいいというふうに思うんでしょうか。

齋藤(健)国務大臣 繰り返しますけれども、まず、私の発言については、先ほど申し上げたとおりでございます。

 今委員が御指摘された点について申し上げますと、調査報告書のうち、多分、看護師との面談の状況に関する記載について、ウィシュマさんが自ら発言していない言葉を自ら発言したかのような、虚偽の記載があるのではないかという点だろうと私は思うわけでありますが、具体的には、令和三年三月三日の看護師との面談の場面において、ビデオ映像上、ウィシュマさんの症状について、ウィシュマさんではなく看護師が発言したものであるにもかかわらず、報告書には、ウィシュマさんが発言したかのように、「旨を述べた。」と記載された点について、そこがそごじゃないかという御指摘だろうと認識をしています。

 この点につきましては、令和四年六月、入管庁が本委員会理事会に提出した補足説明の書面のとおり、看護師が発言したウィシュマさんの症状は、いずれも、この日以前の面談でウィシュマさんが看護師に自ら発言して伝えていたものであり、この日の面談でも、ウィシュマさんは、看護師から症状を指摘されたのに対してうなずくなどしていること、一部の症状については、この日の面談でウィシュマさんが発言したものであることなどが確認されているものですから、その上で、御指摘の調査報告書の記載は、ウィシュマさんが看護師に訴えていた症状等を特定するため、看護師との面談においてウィシュマさんが発言し、又は看護師から指摘されて肯定した症状等を明らかにすることを主眼として、確認した内容につき「旨を述べた。」として一括して記載したものというふうに、もう既に御説明をしているところであります。(発言する者あり)

伊藤委員長 静かにしてください。

齋藤(健)国務大臣 このような報告書の記載について、虚偽の記載があるとの認識を生じさせ得る表現となっているとの御指摘があることは理解いたしますが、ただ、ビデオ映像との明らかなそごと言えるものとは考えておりませんし、私としては、調査報告書は客観的な資料に基づくものであり、調査は十分に尽くされているものと考えています。

本村委員 三月三日の出来事かのように書かれている、本当はウィシュマさんが話していないのに、看護師が話しているのに、報告書にはウィシュマさんが話したように書いてある、これは明らかに虚偽でございます。真実に反しております。三月三日はこの発言をしていないわけです。

 でも、そごがないと。そのことをお認めにならずに、そごがないと。真実を軽視するというんでしょうか。法務大臣が真実を軽視するということなんでしょうか。

齋藤(健)国務大臣 補足説明の書面のとおりでございます。

本村委員 でも、これは、ビデオを見て分かったんです。

 先ほどお答えにならなかったんですけれども、大臣は、行為について皆さんにも考えていただきたいなど、圧力かのような発言をしているんですけれども、やはり、こういうウィシュマさんの問題のビデオを見て真実が明らかになるというのは、真実が明らかになり、その真実に基づいた社会的な批判の中で入管は改善されることになるのではないかというふうに私は思いますけれども、大臣は、こういうことが国会議員や社会に隠されていた方がいいと思っているんですか。

齋藤(健)国務大臣 これも繰り返しになるんですけれども、御指摘のビデオ映像については、情報公開法上の不開示情報として取り扱っているものです。したがって、これを広く一般に公開することについては、もうこれまでも何度も申し上げてきているわけでありますが、保安上の問題に加え、ウィシュマさんの名誉、尊厳の観点からも、やはり慎重に取り扱うべき問題だと思います。

 具体的に申し上げると、ビデオ映像を広く一般に公開することで、例えば、監視カメラの撮影範囲や解像度、職員による巡回の体制や頻度などの具体的な状況が公になる、これはやはり保安上の懸念を私は感じざるを得ない。また、亡くなった方とはいえ、御本人の了解もなく、食事や着替えの介助を受ける様子のほか、生活上のあらゆる様子がつまびらかになる、そういうことは、やはりウィシュマさんの名誉、尊厳の観点からも慎重であるべきであると私は思います。

 訴訟において提出した約五時間分のビデオ映像につきましても、あくまでも、裁判所における証拠調べの必要性を認めたビデオ映像につき、裁判所からの勧告を受け、訴訟上の対応として証拠提出をいたしたものでございます。

 以上です。

本村委員 ウィシュマさんの命と尊厳を奪ったのは入管であり、そうさせてきた政府の責任があります。真実を軽視する大臣はやはり法務大臣にはふさわしくないということを強く述べ、質問を終わらせていただきます。

伊藤委員長 次に、阿部弘樹君。

阿部(弘)委員 日本維新の会の阿部弘樹でございます。

 私は、今回、成層圏、大気圏の法の支配ということで、単刀直入に申し上げますと、スパイ活動、無線傍受についての取組についてお尋ねしたいと思っております。

 まず、宇宙に到達するまでには成層圏、大気圏があるわけでございますが、大気圏というのは実は法律で定義はされていなくて、国際間の、ある意味では了解のものだというふうに勉強会で初めて知りました。最近は、カーマンラインで、少し、地上百キロから九十キロというところまで、大気圏の定義は変わってきておりますが、その点につきまして、外務省、よろしいでしょうか。

御巫政府参考人 お答え申し上げます。

 国際法上の領空の範囲についての御質問ですけれども、宇宙空間の下限の問題を審議しております国連宇宙平和利用委員会ではまだ結論が得られておりませんで、国際法上の領空と宇宙空間の境界は明確になっておりません。

 一方で、航空機が通常飛行している高度までの空間を領空と呼ぶことについては、各国に異論があるとは承知しておりません。また、人工衛星が他国の上空の軌道を周回すること、これは基本的には領空侵犯とは考えられていないと承知しております。

 その上で申し上げますと、空気力学上、いわゆる浮揚力、浮く力がなくなるのは高度九十キロと言われていると承知しております。また、人工衛星軌道の一番低いところの高さは高度八十キロから百六十キロと言われていると承知しておりますので、これらの高度を下回る場合には領空に含まれる可能性が高いと考えております。

阿部(弘)委員 浮揚力の点から九十キロということを言っていただいたのは非常にいいことと思います。僕らが高校のときには百キロというふうに、それは、宇宙を飛び出す、第一宇宙速度というのがありますけれども、そういうものが定義になって。空気は薄いんでしょうけれども。

 そうすると、ジェット機や、あるいは気球、飛行船、そういったものは理論上は九十キロのところまで飛べるわけでございますが、スターリンク、非静止衛星、衛星コンステレーションというのがウクライナ侵攻のときに非常に世界の注目を浴びて、今や、この宇宙統合コンピューティングネットワークというのが世界の主流になりつつあるわけでございます。

 一方で、二十キロ、三十キロのところは成層圏と言われるところで、飛行機が飛び交う、まさに私が今回質問の中心としていきたい、気球あるいは飛行船の話になってくるわけでございます。

 今、基地局を造る以外にも、HAPSという成層圏プラットフォームが非常に注目されております。通信の主力がこのHAPSに変わってきているということでございますが、総務省の方、御説明をいただけますでしょうか。

豊嶋政府参考人 お答えをいたします。

 ただいま委員御指摘のありましたとおり、現在、地上における携帯電話等の通信に加えまして、いわゆる次世代の情報通信システムとして、今委員から御紹介いただきました衛星コンステレーションといった通信システム、それとHAPSもございました。

 HAPSにつきましては、先生御紹介いただきましたように、いわゆる高高度、大体高度二十キロ程度の成層圏で、飛行機に例えば携帯電話の基地局等の機能を搭載して、広範囲で通信のエリアを構築するものということで、現在、研究を進めているところでございまして、二〇三〇年度の次世代の情報通信基盤として、現在、研究開発を進めているところでございます。

 以上でございます。

阿部(弘)委員 もう国内の通信産業も非常に活発に行っておるところでございまして、NTT、スカパーJSATは、宇宙統合コンピューティングネットワーク構想の第一歩として、宇宙データセンター、ビヨンド5Gにおけるコミュニケーション基盤の事業サービスに取り組んで、スペースコンパスが昨年の七月から事業を開始しておるということでございます。

 そういったところで飛び込んできたのが、アメリカの気球飛来、飛翔体の話でございます。

 昨夜のテレビでは、あの飛翔体は海南島から飛び立ち、グアム、そしてハワイ、そしてカナダに行き、北米のアメリカ本土の方に到達してきたということでございます。報道によりますと、撃ち落とされた気球の中身には、多くの通信情報がその国に送られたということでございますが、その気球に関することについては、防衛省、いかがでございますか。

    〔委員長退席、宮崎委員長代理着席〕

小杉政府参考人 お答えいたします。

 外国の気球を含む無人の航空機でありましても、我が国の許可なく我が国領域に侵入しますれば、自衛隊は、自衛隊法第八十四条に規定する対領空侵犯措置を実施することになります。この際の武器の使用につきましては、政府は、従来から、同条に規定する必要な措置として、正当防衛又は緊急避難の要件に該当する場合のみ許されるとしてきたところです。

 他方で、防衛省におきましては、外国の航空機による領空侵犯対処に万全を期すため、その在り方については不断に検討してまいりましたところ、先般の米国による気球の撃墜を受けまして無人の気球に対する関心が高まる中、領空侵犯する気球を含む無人の航空機につきましては、正当防衛又は緊急避難に該当しなくても武器を使用することが許される場合があると明確化いたしました。

 その上で、例えば、そのまま気球を放置すれば他の航空機の安全な飛行を阻害する可能性があるなど、我が国領域内の人の生命及び財産、また航空路を飛行する航空機の安全の確保といった保護すべき法益のために必要と認める場合には、武器を使用して適切に対処することとなります。

 また、能力面につきましても、一般論として申し上げれば、戦闘機から空対空ミサイルを発射する等の手段によって、気球の破壊を含めた所要の措置を取ることは可能になると考えてございます。

 以上でございます。

阿部(弘)委員 そもそも、そういう気球、無人の飛翔体の撃墜は自衛隊法で行うということでございますが、マスコミの報道で、アメリカの気球を撃墜したら、いろいろなスパイ活動に通ずるような行為が行われていたということでございます。

 じゃ、日本の領空にも、私の記憶では東北地方の仙台あるいは九州にも飛翔してきたわけでございますが、そういうものに対しても、今回通告していないですけれども、スパイ防止法というのが適用できるのかどうか。その点は、どなたか。結果としてそういうことになってしまうわけですけれども。

小杉政府参考人 お答えいたします。

 防衛省の方から、済みません、スパイ法との関係で云々ということで御答弁はなかなか難しいところがございますけれども、例えば、これは防衛省の方から二月に公表させていただきましたが、二〇一九年十一月とか二〇二〇年六月、二〇二一年九月に、過去に我が国領域内で確認されていた特定の気球型の飛行物体につきまして、防衛省の方で分析を重ねた結果、当該気球は、中国から飛行された無人偵察用気球であると強く推定されるといったようなことも公表してございまして、具体的な対処はまた今後検討していくということになるということで御答弁させていただければと思います。

    〔宮崎委員長代理退席、委員長着席〕

阿部(弘)委員 この成層圏プラットフォームというのは、日本も通信業務で非常に重要な位置づけをしておるわけでございます。ソフトバンクも多くの特許を取って、そしてこの事業にもう既に取り組んでおるわけでございまして、基地局を地上に造るよりもはるかに安価でできてくる。

 しかし、その成層圏プラットフォームに国家の情報が非常に飛び交っているというところでございますが、そういう、暗号化などの仕組みについてはいかがでございますか、総務省。

豊嶋政府参考人 お答えをいたします。

 今委員御指摘ありました成層圏プラットフォーム、いわゆるHAPSにつきましては、各社、ソフトバンクあるいはNTTも含めまして、現在、通信サービスの実現に向けまして実証の研究を進めているところでございます。この点に関しましては、総務省としても研究開発の支援等を行っています。

 現在、成層圏プラットフォームを活用した具体的なサービスというのはまだ展開されておりませんが、想定されているものとしましては、やはり同じように委員御指摘のとおり、携帯電話サービスとしての提供が想定されているところでございます。

 これは地上におけるシステムとも同様になりますけれども、携帯電話通信サービスにおけます通信に関しましては、より大容量で送られるとともに、その通信の安全性というのを十分確保しながら展開するということにしていくことが必要かと思っております。

 特に、HAPSに関しましては、現在の第五世代の携帯のその次の第六世代、いわゆるビヨンド5Gと呼ばれている次世代の通信ネットワークの一翼を担うというものでございますので、これはHAPSに限らず、次世代のネットワークとしてより強固なものをつくっていく必要があるというふうに認識しております。

阿部(弘)委員 私も審議会の資料などを読んで、日本が世界をリードし得る分野の一つだなと思っております。電波を飛ばすのではなくて光を飛ばすというところも非常に優れた技術があるなと。しかし、一方で、その技術を、例えば飛行船が、あるいは飛翔体が飛来することで、全て情報を取ることができる。

 昨日のテレビの番組でも、コンテナ自体、あるいはそれをつり上げるリフトなどもほとんどがある国の製品で、非常に安価だと。そうすると、コンテナの行き先、あるいはコンテナの内容がある国に全部漏れてしまう。それが二十年前から行われていたということであるわけでございます。

 そしてまた、こういうHAPSの中で非常に重要な情報が、成層圏を、あるいは宇宙空間を始めとして飛び交っていく。技術革新とともにそれを盗み取ろうとするスパイ行為というのも当然容易に行えるわけでございます。そういう取組についても、総務省、いかがでございますか。

豊嶋政府参考人 お答えをいたします。

 先ほどの答弁の続きになるかもしれませんけれども、委員御指摘いただいたHAPS、あるいは衛星を中心とした次の世代のものにつきましては、より強固な安全性を保った通信を開発しつつある。

 一例を申し上げますと、やはり一つのアプローチとして暗号化ということをどう高めるかということで、例えば量子暗号通信という技術も並行して研究を進めているところでございまして、より安全性を高めた通信ネットワークの構築に努めてまいりたいと考えております。

阿部(弘)委員 某携帯通信会社は、地上の中継基地を造ることで不祥事が発生したわけでございます。そういうことは、HAPSの方がはるかに、飛翔体を飛ばすことの方がはるかに安価に、そして世界に普及する。これは総務委員会でも私、質問したことがあったんですけれども、砂漠地帯でも容易に通信が行えるということで、本当に次の世代ですばらしいことであるわけで。一方で、先ほどのスパイ行為、情報が第三国に漏れてしまうということ。

 そして、飛翔体を撃ち落とすのに、非常に空気が薄いものですから、ジェット機が飛べない。私が、アメリカの、飛翔体を撃ち落とすところを見たところ、ジェット機は二つのエンジンを持った最新鋭のものが飛んでいったというふうに、そして、物すごく高い、高価なロケットを発射したように思いますが、その点は、防衛省、いかがでございますか。

小杉政府参考人 委員御指摘のアメリカの撃墜のことに関しましては、ちょっとなかなかコメントしにくいところがございますけれども、御指摘の高高度を飛行する気球につきましては、気球の大きさとか付随する機材、飛行する高度や速度などによって、条件によっては大変困難になるという場合もあると考えてございますが、自衛隊の能力を十分発揮して対応していきたいというふうに考えてございます。

阿部(弘)委員 もう時間が参りましたが、最後に、昨日も早朝より北朝鮮からのロケットが発射され、Jアラートが常にテレビでは放送され続けておりました。こういう状況の中でスパイ活動も活発でございます。そういう点で、成層圏、大気圏、これも法の支配が及ぶべきだと私は思っておりますが、副大臣の御感想をお願いします。

門山副大臣 委員の質疑を拝聴いたしまして、非常に興味深い議論であると感じているところではございます。

 お尋ねについて、法務省の所管を前提とするならば、お答えすることは困難であるということは御理解いただきたいところでございますが、その上で、あえて申し上げますと、基本法制の整備、維持を担う法務省といたしましても、先ほど拝聴いたしました御議論の中には参考とすべき着眼点といったものがあるのではないかと感じたところでございます。

 国際情勢が厳しさを増す中で、政府の一員として、様々な事象に対応できるよう、引き続きアンテナを高くして諸情勢をしっかりと注視してまいります。

阿部(弘)委員 ありがとうございました。

伊藤委員長 次に、漆間譲司君。

漆間委員 日本維新の会の漆間と申します。

 通告に従って質問させていただきます。

 厳罰化による犯罪抑制の法整備の流れにつきまして、一昨日の刑事訴訟法改正の質疑では、事例の積み重なりと運用、整備状況を受けて総合的に判断という御答弁をいただいたところです。

 こういった厳罰化による犯罪抑制については、あんなひどいことをしたのにこれだけしか罪がないとか、国民から直接御要望を受けることが多いんですけれども、一般的には、こういう事件が積み重なって、審議会があって、二から三年ぐらいで法整備がなされるという流れでいいのかどうか。特に、例えばすごい短い時間で法整備がなされたとか、これは長期間かかったとか、そういった事例などあれば是非教えていただきたいなと思います。

松下政府参考人 難しいお尋ねでございますけれども、いわゆる厳罰化の意味するところは様々でございますけれども、刑法上の罪の法定刑の引上げを行う場合につきまして、一般論として申し上げますと、まず、法務省におきまして、実際の処罰の実情などを踏まえて、法定刑を引き上げないと適正な科刑が実現されないような状況にあるのかなどといったことについて検討を行いました上で、法改正を行う必要があると認められるときには、法務大臣から法制審議会に諮問を行うこととなります。

 その後の流れなんですけれども、法制審議会における調査審議を経て答申が得られた場合には、法務省において、答申の内容を踏まえて、所要の検討や立案作業を行いまして法案の提出に至るということになります。

 法案提出に至る経緯はこのようなものなんですが、法整備の内容に応じて検討すべき課題が様々でありますので、法制審議会における調査審議に要する期間ですとか答申後の立案作業に要する期間なども異なりますので、法案提出までに要する期間について一概にお答えすることは困難なんですが、その上で、これまでに行われた刑法上の罪の法定刑の引上げを内容とする法整備について、法制審議会への諮問から法案提出までの部分について、その期間の例を申し上げますと、例えば令和四年の侮辱罪の法定刑の引上げにつきましては、法制審議会への諮問から答申までに約一か月、その後、法案を国会に提出するまでに約五か月かかりました。また、平成十九年の自動車運転過失致死傷罪の法定刑の引上げにつきましては、法制審議会への諮問から答申まで約一か月、その後、法案を国会に提出するまでに約一週間という、これは短めだったと思います。また、平成十六年の凶悪重大犯罪の法定刑の引上げにつきましては、法制審議会への諮問から答申まで約七か月、その後、法案を国会に提出するまでに約一か月を要したと承知しております。

漆間委員 早ければ、印象的な事件だったりがあれば一年以内でもできるというふうに認識しました。

 ちょっと再質問なんですけれども、ひどいというふうに国民から受けて、漆間さん、何とかしてくれと言われて、例えば大臣が諮問ということであるのであれば、大臣であれば、すぐに諮問して、すぐに法制化とできるんですけれども、私が頑張って質問して短くなるということは、これまでの例であったんでしょうか。私というか、一議員が質問して短くなるということはあり得るんでしょうか。お伺いいたします。

松下政府参考人 お答えいたします。

 先ほど申し上げたように、法改正の必要があるかどうかということについては、様々な御指摘をいろいろなところから受ける中で、法務省として慎重に検討を行った上で、必要性があるというふうに判断したときに、法制審議会に法務大臣から諮問をするということになりますので、特定のどなたかの議員から御質問を受けたことで、急ぐと申しますか、法務大臣のスケジュールが縮められるというようなことは、これまであったかどうかについては、ちょっと私承知しておりませんけれども、一般的には、やはり刑罰ですので、慎重な検討を経てということになるんだろうと思います。

漆間委員 済みません、難しい質問を答えていただきありがとうございます。またこういう要望を受けたときにはしっかりここで質問していきたいと思いますので、よろしく御審議をお願いいたします。

 続きまして、二〇二五年大阪・関西万博アクションプランにおける法務省の関わりについてお伺いいたします。

 先日、仲裁法の質疑で、国際仲裁活性化に向けたG7での発信について、齋藤大臣から積極的な御答弁があったところです。また、齋藤大臣からは、国際仲裁の私の質疑の中でも、国際仲裁活性化に向けては、今後は人材育成、広報、意識啓発、施設の整備を着実に進めるとの御答弁もいただいたところでございます。

 そこで、開催を二年後に控えた二〇二五年大阪・関西万博でありますが、万博では各国の要人が集まりまして、世界における日本のプレゼンス向上を目指した様々な交流がなされます。特に、万博期間中は、会場のみならず、日本全国でテーマウィークの展開や国際会議の誘致促進などによるビジネス、学術交流会議も盛んに行われる予定です。国際仲裁活性化に向けて発信ができる絶好の機会だと思いますが、いかがでしょうか。

柴田政府参考人 お答えいたします。

 我が国における国際仲裁の活性化のためには、様々な機会を捉えて、関係者に対して広報、意識啓発活動を行っていくことが重要だと考えております。

 委員の御指摘につきましては、大阪・関西万博という国際的な注目度の高い機会を活用した国際仲裁の広報、意識啓発活動の具体策として、一つのよいアイデアを御提案いただいたものと受け止めております。

 法務省といたしましては、委員からの御指摘の趣旨を受け止めまして、引き続き、様々な機会を捉えて広報、意識啓発活動をしてまいりたいと考えております。

漆間委員 是非よろしくお願いします。

 国際仲裁の質疑では、国際仲裁活性化に向けて、法務省より、これまで五年間調査してきたということで、この調査をめどに、今後、活性化に向けた方策を示すという御答弁もいただいたところであります。

 是非、開催を二年後に控えた二〇二五年大阪・関西万博に向けて、人材育成だったり、広報だったり、意識啓発だったり、施設の整備などに関して一定の目標を示して、それを、万博を契機に取組を加速化させ発信させれば、レガシーとして国際仲裁活性化が大きく前進すると思いますが、いかがでしょうか。

柴田政府参考人 お答えいたします。

 法務省は、令和元年六月から令和五年度末までの五年間の事業として、一般社団法人日本国際紛争解決センター、JIDRCに国際仲裁の活性化に向けた基盤整備に関する調査等業務を委託しています。この調査等業務の中では、人材育成、広報、意識啓発、施設の整備等の各施策を包括的に行いながら、国際仲裁の活性化に向けた有効な施策の在り方について調査分析することとしております。

 お尋ねの今後の整備目標の設定についてですが、本調査等業務終了後も国際仲裁の活性化に向けた施策を継続していくに当たりましては、何らかの形で新たな目標を示すことが重要であると認識しております。この目標をどこに定めるのが相当かといったことについても、本調査等業務の中で検討しているところでございます。

 法務省といたしましては、この調査等業務の終了時までに得られる調査分析の結果等を踏まえ、今後どのようにして我が国の国際仲裁件数の増加を図るか等について検討していく予定でありますが、広報、意識啓発活動の立案に当たっては、多様な機会を捉えて戦略的に実施していくべきではないかとの委員からの御指摘、御提案の趣旨を踏まえて検討してまいりたいと考えております。

漆間委員 是非よろしくお願いいたします。

 ここからちょっと議論を広げるんですけれども、昨年、前大臣に、万博アクションプランにおける法務省の取組についてお聞きしたところでありますが、この国際仲裁の活性化を始め、アクションプランに組み入れるべき法務省の取組はまだまだあるように思います。

 万博は、文字どおり万国の博覧会でありまして、多様性の祭典であります。共生社会の実現を第一に掲げる法務省こそが、むしろ中心になって、アクションプランに参画し、取り組むべきものであるとさえ思います。

 ほかにも、デジタル技術を駆使した展示、発信の分野については、国際仲裁を始め、大臣所信でも掲げていたデジタル化、IT化の推進、例えばオンライン民事訴訟手続のデジタル化など、法務省の取組を発信できるものはたくさんあるのではないかと思いますが、門山法務副大臣の御所見をお伺いいたします。

門山副大臣 大阪・関西万博においては、未来社会の実験場をコンセプトとして掲げ、その具体化に向けた取組について、例えば、最先端のモビリティー技術の社会実装、カーボンニュートラルに資するエネルギー・環境関連技術の実証などの分野に整理し、アクションプランとしておられることを承知しております。

 御指摘のデジタル技術を駆使した展示、発信もアクションプランの分野の一つであると承知しております。そして、この分野については、デジタル関連技術の先端的研究開発及び社会実装を加速的に推進していく必要があるという観点から、多言語翻訳技術や次世代移動通信システムの早期実現といった施策が掲げられているものと承知しております。

 御指摘のものも含む法務省における取組が、このようなアクションプランの各分野の趣旨に沿うものか、慎重な検討を要するものと思われるものでございますが、大阪・関西万博のコンセプトは我が国の未来を見据えたものであるという点で、共生社会の実現等に向けた法務省の取組の理念と通じるところがあると思います。

 法務省としては、引き続き、必要に応じ検討を行っていくとともに、いずれにせよ、大阪・関西万博の開催に向けて、できる限りの協力をしてまいります。

漆間委員 積極的な御答弁だと解釈をいたしました。ありがとうございます。

 特に、万博そのものの目的が、地球規模の課題の解決に向けて英知を持ち寄る課題解決型にシフトする中、直前のドバイ万博では、主催者が課題解決に向けたテーマ設定をし、双方向型の対話プログラムや国際ビジネス交流を行うテーマウィークが実施され、高い評価を得たところであります。それを受けて、大阪・関西万博においても、テーマウィークの実施に向け、具体的なテーマや実施期間等の詳細について、今早急に検討を進めているところです。

 持続可能な包摂社会や共生社会の実現など、法務省の取組をテーマウィークで是非取り上げるべく、法務省が主体的に働きかけるべきだと思いますが、いかがでしょうか。こちらも門山副大臣にお伺いしたいと思います。

門山副大臣 御指摘のテーマウィークは、世界が半年間の長きにわたり同じ場所に集う万博の特性を生かし、地球的規模の課題の解決に向けて英知を持ち寄り、対話による解決策を探る取組であると承知しております。

 大阪・関西万博のテーマウィークにおける具体的なテーマ等につきましては、現在、関係府省庁等において検討中であると認識しております。

 当省の取組をテーマウィークにおいて取り上げるべきか否かにつきましては、そのテーマ等に関する検討結果を踏まえ、適切に判断してまいります。

漆間委員 このテーマウィークについても、是非、法務省が主体的に取り組んでいただきますよう、関わっていただきますよう、よろしくお願いいたします。

 万博を契機に通常の取組を加速化させるというのが、本当にこれは大きな意義だと思っております。法務省がアクションプランにしっかりと関わっていただいて、万博に主体的に関わっていただいて、法務省の取組を加速化させるとともに、日本だけでなく世界の直面する課題解決に是非貢献していただきたいと思います。

 時間があと二分となりましたが、次に、少子化に対して、少子化における法務省の関連する取組について、幾つかお伺いしたいと思います。

 少子化対策についての婚姻制度の緩和についてお伺いしたいと思います。

 少子化対策で、ヨーロッパ各国の比較の議論として、同じだけの財政的子育て支援をしていても、それが効果に表れる国とそうでない国があり、その違いは、家の制度であったり、がちがちの婚姻制度であったりするという指摘がございます。

 そういった中で、過去、国会でも、二〇一二年なんですけれども、当時、野田聖子議員から、フランスのPACSという、婚姻制度の緩和の紹介がございまして、少子化対策においては今までの生き方と違うことを認めてブレークスルーすることが必要だと、婚姻制度の緩和に対して非常に前向きな提案があり、当時大臣でありました中川正春さんからも、今おりませんけれども、積極的に議論の場が必要だという答弁もあったところでございます。

 我が党も、選挙のマニフェストで、自治体による同性パートナーシップの制度を促進するとともに、同性に限らず使えるパートナーシップ、日本版PACSの導入を目指しますというところで訴えているところであります。

 そこで、婚姻制度の緩和について、法務省の認識をお伺いいたします。

金子政府参考人 お答えいたします。

 現在ない制度の導入ということですので答弁が難しいところもございますが、一般的に、新たな制度を導入するという場合には、どのような要件の下でどのような効果を認めるか、それから、同種の既存の制度との関係をどのように整理するかということが問題になります。

 委員御指摘の日本版PACSの内容が、現在、婚姻が認められている異性間にも認められ、婚姻に類するような法的効力を与えるような制度であるとすると、現在の婚姻制度を前提としましても、異性間で認められる法律婚と、それからPACSというものの関係が問題になってきます。

 こういったことを考えていきますと、いずれにしても、これもなかなか、我が国の家族の在り方の根幹に関わる問題であって、国民的な議論、コンセンサスと理解がなければなかなか進められない問題であるなというふうに考えているところでございます。

漆間委員 もう時間が参りましたので、またの機会に是非議論させていただきたいと思います。

 ありがとうございました。

伊藤委員長 次に、五十嵐清君。

五十嵐委員 自由民主党の五十嵐清でございます。

 本日は質問の機会、ありがとうございます。

 所定の時間の中で、犯罪被害者支援を中心に伺ってまいります。

 犯罪被害者等基本法が制定されましてから二十年を迎えようとしております。国では、四次にわたる犯罪被害者等基本計画などによりまして、取組を着実に進めていただいて、犯罪被害者等における施策、しっかりと進展してきたと私は承知をしております。

 私も、一昨年、国政に転じる前に、地元の栃木県で議員提案による犯罪被害者支援の条例を制定をさせていただきました。これを受けて、この四月までには、栃木県内の全ての市、町でも同様の条例ができまして、これら全てに二次被害の対応や見舞金制度の導入が含まれておりまして、このようなことからも、地方自治体や地方議会でも理解が進んでいると私は感じているところであります。

 しかしながら、それでもなお、一部には、その置かれている状況に応じた必要な支援を受けられずにいる犯罪被害者等の方々が存在するのも事実でありますので、そこで幾つか質問をさせていただきたいと思います。

 まず初めに、法務省におきます犯罪被害者等施策の取組状況をお聞かせいただきたいと思います。

上原政府参考人 お答えいたします。

 犯罪の被害に遭われた方やその御家族、御遺族が被害から回復するまでの間、平穏な生活を取り戻せるようきめ細やかな支援をすることは大変重要であると考えております。

 法務省では、第四次犯罪被害者等基本計画に基づき、法テラスにおける法律相談援助等の利用促進、あるいは、全国の地方検察庁に犯罪被害者等の方々への支援に携わる被害者支援員を配置するなどしております。

 また、第四次犯罪被害者等基本計画で盛り込まれた施策でございます、矯正施設における犯罪被害者等の心情等の聴取、伝達制度、犯罪被害者等の視点に立った保護観察処遇の充実につきまして、昨年六月の刑法等の一部を改正する法律の成立により法整備が図られ、現在、具体的な運用等の検討を進めているところでございます。

 今後も、第四次犯罪被害者等基本計画に沿って、関係府省庁とも連携しながら、犯罪被害者等を支援する取組の更なる推進、充実に努めてまいりたいと考えております。

 以上でございます。

五十嵐委員 ただいま、取組について網羅的に、概要ということで御説明をいただきましたので、少し具体のところを伺っていきたいと思います。

 まず、法テラスによります犯罪被害者支援の取組状況、これを最初にお聞かせいただきたいと思います。

竹内政府参考人 お答えいたします。

 法テラスにおきましては、犯罪被害者等の置かれている状況に応じまして、損害の回復や苦痛の軽減につながる法制度や相談窓口を紹介するとともに、犯罪被害者等支援の経験や理解のある弁護士を紹介しているところでございます。

 また、資力の乏しい犯罪被害者の方等が損害賠償請求をする場合の支援といたしまして、無料法律相談や弁護士費用等の立替え等を実施しておりますほか、DV、ストーカー、児童虐待の被害者の方に対しましては、資力を問わない法律相談を実施しているところでございます。

 法テラスでは、今後も、犯罪被害者等に寄り添った支援を提供できるよう、関係機関、団体等との連携を図りつつ、犯罪被害者等支援の経験や理解のある弁護士の確保ですとか、法テラス職員の知識、スキルの向上等に努めていくものと承知をしておるところでございます。

 法務省におきましては、犯罪被害者等の声に耳を傾けまして、犯罪被害者等に対する支援を切れ目なく提供することを目指し、法テラスや日本弁護士連合会等とも協議をしながら支援の在り方等について検討を行っているところでありまして、引き続き、犯罪被害者等の実態に即した支援となりますようしっかりと取り組んでまいりたいと考えております。

五十嵐委員 いろいろ取り組んでいただいているのがよく分かるんですけれども、ただ、取組が、やはり様々な実施主体による多様な支援があるがゆえに、その全容を把握することが難しかったりするのではないかなというふうに思っています。

 現在、我が党でも、犯罪被害者等に対する継続的かつ包括的な支援の観点で提言を準備しているところであります。先ほど、支援の在り方について検討いただいているということでございますので、是非、法務省としても、基本理念に立ち返りまして、必要な支援を適時適切に享受することができますように、支援の拡充や体制の整備に向けて積極的に取り組んでいただきたいと思います。

 次に、先月、三月の二十八日に、法務省におきまして、刑の執行段階等における被害者等の心情等の聴取・伝達制度に関する検討会の結果報告書を公表されております。同検討会での議論を踏まえまして、本制度をどのように運用していくのか、お伺いいたします。

花村政府参考人 お答えします。

 昨年六月に成立した刑法等の一部を改正する法律により、刑事施設及び少年院において、申出のあった被害者等からその心情等を聴取し、矯正処遇、矯正教育に生かすほか、被害者等の心情等を受刑者や在院者に伝達するという制度が新たに導入され、本年十二月までの施行が予定されております。

 本制度は、これまで矯正職員において直接接する機会の余りなかった被害者等の方々への対応を要するものであり、被害者等の方々の心情等に十分に配慮した運用とする必要があるものと承知しております。

 このため、当局では、本制度の具体的な運用を検討する上で、矯正行政実務はもとより犯罪被害者等施策に精通した有識者を招聘し、意見の聴取及び意見交換を実施することが適当と考えられたことから、本検討会を開催することといたしました。

 本検討会では、今後策定する規則等の内容に関わる事項や、円滑な導入に当たり必要となる職員研修及び制度周知の在り方についても御意見をいただいておりまして、大変有意義であったと考えております。

 今後は、こうした御意見等を踏まえ、本制度が、被害者等の方々の心情等に十分に配慮した上で、受刑者や在院者の改善更生に資する実効性のあるものとなるよう、実務的な視点からの更なる検討を進めてまいりたいと考えております。

五十嵐委員 私も報告書を読ませていただきましたけれども、本当に幅広の意見が挙げられていて、有意義だったんだろうなというふうに思います。被害者等の心情を話しやすい環境をどう整えるかとか、加害者の状況を考慮する観点であったり、職員研修や制度の周知の在り方についても言及があったということですので、これらを踏まえて、十二月までに是非、実務的に詳細を詰めて、いい形で運用が始められるように御努力をいただきたいなというふうに思っています。

 それでは、具体的に、被害者等の心情等の聴取、伝達をした上で、どのように矯正処遇や矯正教育を行っていくつもりなのか、お伺いをさせていただきます。

花村政府参考人 お答えします。

 具体的な運用の詳細については現在検討中でありますが、刑事施設におきましては、達成すべき矯正処遇の目標に被害者等の心情等の理解や被害弁償に関する内容を盛り込んだ上で、指導場面といたしましては、被害者の視点を取り入れた教育のプログラムを改定し、入所後早期から出所まで、受刑期間全体を通じて継続的な働きかけを行うこと、個別面接を通じて、被害者等から聴取等した心情等を受刑者に伝え、被害者等の心情等を考えさせ、理解を深める時間を設けることなどを想定しております。

 少年院におきましても、同様に、被害者等の心情等を考慮して個人別矯正教育計画を策定した上で、被害者等の視点を取り入れた指導などの充実により、自己の非行の責任を考え、慰謝の気持ちを高め、より具体的に償いを考えさせることなどを検討しております。

 こうしたことを通じまして、受刑者等ごとに被害者等の心情等を具体的に理解させ、謝罪や被害弁償等の具体的な行動を促す指導等を実施することにより、受刑者等が自身の責任を自覚し、被害者に対する慰謝の念を深めさせるようにしていくことを考えております。

 いずれにいたしましても、受刑者等が自身の犯した行為と真摯に向き合い、真の反省につながるよう、引き続きその在り方等について検討してまいります。

五十嵐委員 刑務所の受刑者、少年院の在院者がしっかりと改善更生するために実効性のあるものにしていくこと、ここがまさに重要なんだと思うんですけれども、そのためには、やはり職員の皆様の意識改革と指導力の向上、これが必要不可欠だと思っていますので、そのための人的そして物的体制の整備、これを法務省としてしっかりと取り組んでいただくようにお願いをしたいと思っております。

 最後に、犯罪被害者等への支援と並行して、当然のことですけれども、加害者の改善更生や再犯防止が重要であると思っております。

 加害者の改善更生や再犯防止のためには、本人が犯罪の責任を十分に自覚をし、被害者等の心情や置かれている状況を理解するよう促すことが重要だと考えております。

 第四次犯罪被害者等基本計画におきましても、犯罪被害者等の視点に立った保護観察処遇の充実が盛り込まれておりまして、保護観察における被害者等に対する謝罪や被害弁償に向けた指導を強化すべきと考えますが、どのように取り組んでいくのか、お伺いをいたします。

宮田政府参考人 お答えを申し上げます。

 加害者の改善更生や再犯防止というのは、新たな被害者を生まないということにおいても大変重要と考えます。

 保護観察におきましては、従来から、被害者を生む重大な犯罪をした保護観察対象者に対しまして、贖罪指導プログラムを実施するなどして、犯した罪の責任を自覚させ、被害者等の心情や置かれている状況等への理解を促すことなどを内容とする指導を行ってまいりました。昨年の十月からは、このプログラムの内容を充実させるとともに、実施の対象を拡大して取り組んでいるところでございます。

 また、昨年の六月に成立いたしました刑法等の一部を改正する法律によります改正後の更生保護法では、運用の基準、いわば処遇の原則としまして、保護観察等において措置を取るに当たりましては、被害者等の被害に関する心情及び被害者等の置かれている状況を十分に考慮すべきことが明記をされ、さらに、保護観察における指導監督の方法としまして、保護観察対象者が被害者等の被害の回復又は軽減に誠実に努めるよう、必要な指示等を行うことが定められております。

 これらの規定は、今年の十二月までに施行するということになりますけれども、改正法施行後は、従来の取組に加えまして、これらの規定を適切に運用することにより、犯罪被害者等の思いに応える保護観察処遇の充実に取り組んでまいりたいと考えております。

五十嵐委員 今御説明のあった保護観察、新しい取組には大いに期待をしているところなんですが、支援団体の生の声を聞きますと、やはり保護司だけの対応、取組では限界だということで、保護観察官の強い関与を期待されていたわけなんですけれども、そういう意味でも、被害者等の生の声を聞く研修を保護観察官にしていただいて、今まで以上に意識を高めていただくとともに、そのための必要な体制整備にも是非御尽力をいただきたいと思っております。

 これら新しい制度運用が始まって、是非、一定期間がたちましたらしっかりと検証、分析をしていただいて、その結果も公表していただくことで、次のよりよい環境づくりに、被害者支援のための環境づくりに結びつけていただきますようにお願いをして、私の全ての質問を終わります。

 ありがとうございました。

伊藤委員長 次に、日下正喜君。

日下委員 公明党の日下正喜でございます。本日もよろしくお願い申し上げます。

 先日、技能実習制度の見直しに向けての中間報告書のたたき台が出てまいりまして、新聞報道でも大きく取り上げられておりました。これまでの問題点について改善される方向性がしっかり示されていると思いました。やはり、人材確保の観点を正面に据えることが大切だという点と、外国人への人権の配慮、日本社会の中でいかに共生していけるかという点が重要であると思います。

 有識者会議では、ある委員から、技能実習制度を廃止した上で、国内産業にとって人材確保の制度として再出発することが必要、それにより、日本のどの産業にどれくらいの人数の受入れが必要かという議論や検証ができるようになり、特定技能制度との整合性の取れた、キャリアパスを見通すことができる制度になるとの指摘もございましたが、そのとおりだと思います。

 さらに、つけ加えるとするならば、受入れ見込み数の設定等の在り方です。産業界にとっての人材確保は、都道府県によっても、各自治体によっても、分野ごとにまちまちでございます。各産業分野や所管省庁の声を聞き取るのと併せて、各都道府県においても、農林水産業で何人、建設業で、製造業で、また介護で、外食業で最低限これだけの人材の確保が必要だという計画を立て、突き合わせを行うことで、より具体的に地域のニーズを捉えることができるのではないかと思います。

 都道府県単位で考えていくメリットとしては、日本語教育機関の整備にしましても、また地域社会との共生という面についても、また転籍を考える際においても、都道府県や自治体が産業界とも協力して外国人材を呼び込み、またその地域に定着していただく独自の工夫やサービスを生み出していけるのではないかとも思います。

 地方自治体や地域の商工会などが参画することによって、よりきめ細かく外国人材が大切にされる環境が整えられ、いい意味での競争になるのではないかと考えますが、法務大臣の御見解を伺いたいと思います。

齋藤(健)国務大臣 今委員御指摘の点につきましては、現在開催されている技能実習制度及び特定技能制度の在り方に関する有識者会議において、受入れ見込み数の設定等の在り方を論点の一つとして御議論をいただいております。

 本論点について、有識者会議では、地域における共生のための体制設備や受入れ準備がどの程度できているかも大事な考慮要素である、それから、政策形成の透明性という観点からも、労使双方、有識者、自治体、NGOが入った恒常的な第三者機関が必要であるなどの意見がございました。

 こうした御意見を受けて、中間報告書のたたき台では、検討の方向性として、人手不足状況の確認や受入れ見込み数の設定については、様々な関係者の意見やエビデンスを踏まえつつ判断がされる仕組みとするなど、透明性や予見可能性を高める方向で検討すべきと示されているところであります。

 もっとも、まだ会議で議論いただいている段階でありますので、現時点でお答えを明確にすることは困難でありますが、この有識者会議での御議論を見据えつつ、関係省庁とも連携しながら、しっかりと検討を行ってまいりたいと考えています。

日下委員 息の長い取組になると思いますし、大きな取組でもございますので、しっかり地域の協力を得られるような、そういう取組にしていただきたいというふうに思います。

 次に、外国人のキャリアパスの構築について質問いたします。

 現在も、技能実習と特定技能一号と二号の職種が一致せず、キャリアパスを描くには大きな障壁となっています。たたき台には、職種は特定技能の分野にそろえるという方向性が示されています。

 有識者会議においても、外国人材が日本社会が期待する方向で生活、就労するようになるには、ある程度長期で自分の人生設計をする資質を持つ人材に来てもらえるかどうかが重要なポイントである、その上で、日本でスキルアップするのは、受入れ企業にとってもメリットがあり、本人にとってもインセンティブになるとの意見もあり、全くそのとおりだと思います。

 大きな企業ばかりではありません。建設業の基盤を担っている大工や左官、とび職など、これまでは、技術の移転と言われても、三年で帰ってしまう実習生に高度な技術を教え込んでいくには時間的にも意欲的にもかなりの無理があると聞いてきました。これが、要件を満たしながら五年、十年、更に長期にわたり在留できるとなると、雇用主も俄然、大切に育てたい、ほかに行ってもらいたくないというふうになると思います。

 高度な技能を要する仕事と単純労働、これは適材適所であって、どちらがいい悪いではないと思いますが、日本人、外国人の区別なく、要は、伸びたい人、意欲のある人は、その能力が発揮されるよう、様々な障壁を取り除き、サポートしていくことこそ重要だと思います。

 スキルアップの習熟度を客観的に認証する制度も大事です。

 特定技能の家族の帯同についても、監理団体の皆さんから御要望を受けたことがございましたが、自分が他国で生きていこうとする場合、スキル等の要件にもよると思いますけれども、もし家族の帯同が許されないとすると、これも大きな障壁になってくると思います。

 キャリアパス形成に資する環境整備に向けて、法務大臣の所見を伺いたいと思います。

齋藤(健)国務大臣 御指摘の点につきましても、今開催されている有識者会議におきまして、外国人が成長しつつ、中長期に活躍できる制度、キャリアパスの構築を論点の一つとして御議論をいただいています。

 有識者会議では、先ほど委員が御紹介いただいた御意見と同様の問題意識の下で、仕事の経験を積むにつれて上がる技能や能力、これを見える化することが重要だなどの意見がございました。

 こうした御意見を受けて、中間報告書のたたき台では、検討の方向性として、人材育成の観点から、外国人が修得する主たる技能等について、育成、評価を行うことによりスキルアップを見える化すべき、それから、外国人や雇用主のニーズに応じて、我が国で修得した技能等を更に生かすことができる仕組みとする方向で検討すべきと示されているところであります。

 ここから先は先ほどの答弁と同じなんですが、今御議論いただいている段階でありますので、私の立場でお答えは差し控えますが、有識者会議での御議論を見据えつつ、関係省庁とも連携しながらしっかり検討していきたいと考えています。

日下委員 次に、日本の技能実習制度が国際的に批判されている一つに、債務奴隷になっているのではないかという問題点が指摘されています。国内の失踪事案もこのことが大きな要因になっていると考えられます。

 これは、送出国の送り出し機関やブローカーへの法外な手数料の支払いに起因するものと思われますが、有識者会議でも、送出国に対して、送り出しの仕組みづくりや送出機関の規制の在り方に係るキャパシティービルディング支援を、二国間協定とセットで提案、提供することが考えられるとの意見が述べられています。

 これから外国人材の受入れを適正に進め、拡大するに当たり、送り出しと受入れ基盤整備、この観点は非常に重要だと思いますが、法務大臣の所見を伺います。

齋藤(健)国務大臣 御指摘の点につきましても、今開催している有識者会議において、国際労働市場の実態及びメカニズムを踏まえた送り出し機関や送り出しの在り方を論点の一つとして御議論をいただいております。

 有識者会議では、委員御紹介の意見のほか、渡航前費用の適正化、借金に依存させない仕組みをつくることが大事である、また、二国間協定で各国の事情に合わせた手数料の上限を設定し、法外な手数料支払いと借金を防止する措置を盛り込むのがいいなどの御意見があったところであります。

 こうした御意見を受けて、中間報告書のたたき台では、検討の方向性として、悪質な送り出し機関の排除等に向けた実効的な二国間取決めなどの取組を強化することが示されております。

 ここから先は先ほどと同様でありますが、同会議における議論の段階でありますので、現時点では私としてはお答えは差し控えますが、有識者会議での御議論を見据えつつ、関係省庁と連携しながらしっかり検討していきたいと考えています。

日下委員 特に、この仕組みづくり、送り出しの仕組み、また受入れ、二国間協定、これはやはり政府の力でしっかり、法務省も核になって進めていただきたい。非常にこれは核になる、肝になる部分だと思いますので、どうぞよろしくお願いしたいと思います。

 次に、管理監督や支援体制の在り方について質問します。

 現在、監理団体や技能実習機構の指導監督や支援の体制面で不十分な面があり、新たな制度でも、監理団体や登録支援機関は存続した上で要件を厳格化するなどして、監理、支援能力の向上を図るとあります。

 存続されるべき優良な監理団体とは、国際的なマッチング機能や、受入れ企業等や外国人に対する支援等の機能を適切に果たすことができる団体であり、そうしたノウハウが蓄積されていることが求められていると思いますが、そうした理解でよろしいでしょうか。他の要件として考えられることがあれば、お示しいただきたいと思います。

齋藤(健)国務大臣 この点につきましても、現在開催されている有識者会議において、監理団体や登録支援機関の監理及び支援の在り方を論点の一つとして御議論をいただいているところであります。

 中間報告書のたたき台では、委員の御指摘のとおり、検討の方向性として、現行の技能実習制度において監理団体が担っている国際的なマッチング機能、受入れ企業等に対する適正な受入れの監理、支援の機能、外国人に対する職業生活から日常生活までの全般的な保護、支援等の機能は必要不可欠なものである、それから、新たな制度においては、これらの機能を適切に果たすことができる優良な団体のみが認められるようにするため、監理、保護、支援に関する要件を厳格化する方向で検討すべきと示されているところであります。

 その具体的な要件につきましては、有識者会議において今後御議論いただくため、現時点で私はお答えすることが困難でありますが、有識者会議での御議論を踏まえつつ、関係省庁と連携しながらしっかり取り組んでいきたいと思います。

日下委員 ありがとうございます。

 次に、国際労働機関、ILOでは、日本の技能実習制度の評価が低いというふうに聞かれます。それは、送り出し機関への手数料や転職の禁止が要因だとされておりますけれども、他の国は、その辺り、どうなっているのか。そもそも、国際貢献のための技能実習制度というのは日本特有の制度であって、単純に比較が難しいのかもしれませんけれども、他の国は、その辺り、どこが評価されているのかというか、これから日本が選ばれる国になるために何が必要なのかという観点も含めて、法務大臣にお聞きしたいと思います。

齋藤(健)国務大臣 諸外国における非専門的、非技術的分野の外国人労働者受入れ制度について申し上げますと、網羅的に把握しているわけではないんですけれども、入管庁の調査によれば、例えば転職については、台湾及びシンガポールにおいては原則認められていない一方で、欧米各国では転職が認められる場合があるようでございます。

 また、国際機関が各国の制度をどのように評価しているのかについても、詳細は承知しておりませんが、有識者会議において、ILOやOECDにヒアリングを実施をいたしました。そうしましたところ、送り出しに係る高額な費用は排除する必要がある、それから、転籍が制限されている根拠を考えることが重要である、転籍制限が即人権の制限となるわけではないなどの御意見をいただいているところであります。

 いずれにいたしましても、私としては、今後、技能実習制度の在り方を検討するに当たりまして、国際的にもよりよい評価をいただけるよう、有識者会議において更に御議論いただきたいと考えております。

日下委員 時間も参りましたので、以上で終わります。大変にありがとうございました。

     ――――◇―――――

伊藤委員長 次に、内閣提出、出入国管理及び難民認定法及び日本国との平和条約に基づき日本の国籍を離脱した者等の出入国管理に関する特例法の一部を改正する法律案を議題といたします。

 趣旨の説明を聴取いたします。齋藤法務大臣。

    ―――――――――――――

 出入国管理及び難民認定法及び日本国との平和条約に基づき日本の国籍を離脱した者等の出入国管理に関する特例法の一部を改正する法律案

    〔本号末尾に掲載〕

    ―――――――――――――

齋藤(健)国務大臣 出入国管理及び難民認定法及び日本国との平和条約に基づき日本の国籍を離脱した者等の出入国管理に関する特例法の一部を改正する法律案につきまして、その趣旨を御説明いたします。

 近年、退去強制令書の発付を受けたにもかかわらず、様々な理由で送還を忌避する者が後を絶たず、迅速な送還の実施に支障が生じているのみならず、退去強制を受ける者の収容が長期化する要因ともなっています。また、昨年来続くロシア連邦による侵略を受け、ウクライナから避難してきた方々のような、人道上の危機に直面し真に庇護を必要とする方々を確実に保護する制度を設ける必要も一層高まっています。

 こうした状況に対応するため、保護すべき者を確実に保護しつつ、退去強制手続を一層適切かつ実効的なものとすることは、適正な出入国在留管理を確保する上で喫緊の課題であり、これらの課題を一体的に解決する法整備を行うことが必要不可欠です。

 この法律案は、以上に述べた情勢に鑑み、所要の法整備を図るため、出入国管理及び難民認定法及び日本国との平和条約に基づき日本の国籍を離脱した者等の出入国管理に関する特例法の一部を改正するものであります。

 この法律案の要点を申し上げます。

 第一は、難民に準じて保護すべき方々を補完的保護対象者として認定する手続を設け、これを適切に保護するための規定を整備するものです。

 第二は、在留特別許可制度について、退去強制令書が発付されるまでの間に申請を行うことを可能とするとともに、在留特別許可を行うか否かの判断に際して考慮すべき事情を明示するものです。

 第三は、退去強制を受ける者のうち、退去強制令書の円滑な執行に協力しない国が送還先である者及び送還を積極的に妨害する行為を行ったことがある者に対し、一定の要件の下で自ら本邦から退去することを義務づける命令制度を創設し、命令に違反した場合の罰則を整備するものです。

 第四は、難民認定手続中は法律上一律に送還が停止されるといういわゆる送還停止効に例外を設け、同手続中であっても一定の場合には送還を可能とするものです。

 第五は、退去強制令書の発付を受けた者の自発的な出国を促すため、素行等を考慮して相当と認められる者について、その申請により、速やかに自費出国をした場合には上陸拒否期間を短縮することができることとする制度を設けるものです。

 第六は、退去強制手続における収容に代わる選択肢として監理措置の制度を創設し、当該外国人の逃亡のおそれの程度、収容により受ける不利益の程度等を考慮して相当な場合には、監理人による監理に付し、収容せずに手続を進めることとするとともに、収容する場合であっても、三か月ごとに、監理措置に付すか否かを必要的に見直すことにより、収容の長期化の防止を図るものです。あわせて、仮放免制度について、健康上、人道上その他これらに準ずる理由により収容を一時的に解除する制度と改めた上、健康上の理由により仮放免請求に係る判断をするに当たっては、医師の意見を聞くなどして、その者の健康状態に十分配慮することなどを法律上明記するものです。

 第七は、入国者収容所等における被収容者の処遇について、保健衛生及び医療、外部交通等に関する事項を明確化するため、具体的な規定を整備するものです。

 このほか、十六歳未満の外国人が所持する在留カード及び特別永住者証明書の有効期間を見直すことなど、所要の規定の整備を行うこととしております。

 以上が、この法律案の趣旨であります。

 何とぞ、慎重に御審議の上、速やかに御可決くださいますようお願いいたします。

伊藤委員長 これにて趣旨の説明は終わりました。

 次回は、来る十八日火曜日午前八時五十分理事会、午前九時委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。

    午後零時十四分散会


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