衆議院

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第10号 令和5年4月18日(火曜日)

会議録本文へ
令和五年四月十八日(火曜日)

    午前九時開議

 出席委員

   委員長 伊藤 忠彦君

   理事 谷川 とむ君 理事 藤原  崇君

   理事 牧原 秀樹君 理事 宮崎 政久君

   理事 鎌田さゆり君 理事 寺田  学君

   理事 沢田  良君 理事 大口 善徳君

      東  国幹君    五十嵐 清君

      石橋林太郎君    岩田 和親君

      奥野 信亮君    加藤 竜祥君

      熊田 裕通君    小森 卓郎君

      鈴木 馨祐君    田所 嘉徳君

      高見 康裕君    冨樫 博之君

      西野 太亮君    鳩山 二郎君

      平口  洋君    深澤 陽一君

      山下 貴司君    鈴木 庸介君

      中川 正春君    山田 勝彦君

      吉田はるみ君    米山 隆一君

      阿部 弘樹君    漆間 譲司君

      日下 正喜君    平林  晃君

      鈴木 義弘君    本村 伸子君

    …………………………………

   法務大臣         齋藤  健君

   法務大臣政務官      高見 康裕君

   厚生労働大臣政務官    本田 顕子君

   政府参考人

   (内閣法制局第一部長)  木村 陽一君

   政府参考人

   (警察庁長官官房審議官) 早川 智之君

   政府参考人

   (こども家庭庁長官官房審議官)          黒瀬 敏文君

   政府参考人

   (法務省人権擁護局長)  鎌田 隆志君

   政府参考人

   (出入国在留管理庁次長) 西山 卓爾君

   政府参考人

   (厚生労働省大臣官房審議官)           大坪 寛子君

   政府参考人

   (厚生労働省大臣官房審議官)           日原 知己君

   政府参考人

   (厚生労働省大臣官房審議官)           森光 敬子君

   法務委員会専門員     白川 弘基君

    ―――――――――――――

委員の異動

四月十八日

 辞任         補欠選任

  東  国幹君     西野 太亮君

  田所 嘉徳君     冨樫 博之君

  鳩山 二郎君     小森 卓郎君

同日

 辞任         補欠選任

  小森 卓郎君     鳩山 二郎君

  冨樫 博之君     田所 嘉徳君

  西野 太亮君     東  国幹君

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 政府参考人出頭要求に関する件

 参考人出頭要求に関する件

 出入国管理及び難民認定法及び日本国との平和条約に基づき日本の国籍を離脱した者等の出入国管理に関する特例法の一部を改正する法律案(内閣提出第四八号)


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     ――――◇―――――

伊藤委員長 これより会議を開きます。

 内閣提出、出入国管理及び難民認定法及び日本国との平和条約に基づき日本の国籍を離脱した者等の出入国管理に関する特例法の一部を改正する法律案を議題といたします。

 この際、参考人出頭要求に関する件についてお諮りいたします。

 本案審査のため、来る二十一日金曜日午前九時、参考人の出席を求め、意見を聴取することとし、その人選等につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

伊藤委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

 引き続き、お諮りいたします。

 本案審査のため、本日、政府参考人として内閣法制局第一部長木村陽一君、警察庁長官官房審議官早川智之君、こども家庭庁長官官房審議官黒瀬敏文君、法務省人権擁護局長鎌田隆志君、出入国在留管理庁次長西山卓爾君、厚生労働省大臣官房審議官大坪寛子君、厚生労働省大臣官房審議官日原知己君及び厚生労働省大臣官房審議官森光敬子君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

伊藤委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

伊藤委員長 これより質疑に入ります。

 質疑の申出がありますので、順次これを許します。田所嘉徳君。

田所委員 おはようございます。自民党の田所嘉徳でございます。よろしくお願いいたします。

 退去強制令書についてお伺いをしたいと思います。

 入管は外国人を送り返すことに専念しているというイメージがありますけれども、実際には、摘発されて退去強制手続の対象となる者についても、現実的には多くの者が、退去強制事由に該当していたとしても退去強制令書を発付しないで、送還していないという例があると聞いております。

 我が国の退去強制手続で退去強制令書が発付される者とはどのような者なのか、まずこの点をお聞きしたいと思います。

西山政府参考人 入管法令に違反したり罪を犯して一定の刑に処せられるなどして我が国にとって好ましくないと認められる外国人は、退去強制事由に該当することとなります。

 しかし、退去強制事由に該当する全ての外国人に対し退去強制令書が発付されるわけではございません。すなわち、退去強制手続において在留特別許可の判断が行われ、難民該当性を主張する場合には難民認定手続を経た上で、難民に該当せず、かつ在留を特別に許可する事情も認められないとして我が国からの退去が確定した場合に退去強制令書が発付されることとなります。

 このうち、退去強制手続における在留特別許可は、過去八年間の年平均が約二千五百件で、これは退去強制手続において本邦への在留を希望して法務大臣の裁決を求めた件数等の約七一%に当たる数でございます。

 退去強制令書が発付される者とは、退去強制事由があるのみならず、このような慎重な手続を経た上で我が国からの退去が確定した者でございます。

田所委員 十分な吟味をされて発付された退去強制令書でありますから、早期の送還を実現すべきということだろうというふうに思っております。

 そういう中にあって、十分な、事情をしんしゃくして判断しているということでありました。大臣に裁決を求めたうちの七一%が在留特別許可をもらっていると、私、ちょっと驚くほど多いなというふうに感じているわけであります。

 私は、厳格な出入国在留管理をする国という観点からすると、この在留特別許可というものを安易に出すということには課題があるというふうに思っております。なぜならば、それを目指して不法に滞在する者が続出するとも限らないわけでありまして、裁量に委ねることの問題、基準が明確で予見可能性があるということが私は非常に重要だというふうに思っております。

 そこで、退去強制令書が発付された後の就労も認めるべきだというような意見もあるようであります。さらには、仮放免者に生活保護をすべきなどとの主張もあります。正規滞在者のみならず、日本人でも自由に生活保護が受けられるわけではないのでありますから、過剰な保護ではないかと思いますし、不法な在留が継続するようなそういう背景になってしまっても困るというふうに思っております。

 そこで、適正な手続保障がされて発付された退去強制令書については、その結果を尊重してすぐに履行されるべきであると考えますが、その点についてどう思いますか。また、今般の法改正で退去強制令書発付後の就業を認めなかったことについてどのように考えているのか、お伺いをしたいと思います。

西山政府参考人 入管法は在留資格制度を採用しておりまして、我が国において活動する外国人は、適法に在留資格を取得し、当該在留資格に従い在留活動を行うのでなければ我が国に上陸、在留することはできないこととされ、また、就労可能な資格や就労の範囲等については法令で厳格に規定されているものでございます。それにもかかわらず、在留資格を失って我が国から速やかに退去することが確定した者に対し就労を認めることは、入管法における在留資格制度の根幹を損なうものと考えております。

 また、就労を無制限に許可すると、就労のための送還忌避を助長し、迅速な送還の実現という今回の入管法改正の趣旨を没却することとなりかねません。

 したがいまして、今回の本法案におきましては、退去強制令書発付後に監理措置に付された者については就労を許可しないこととしております。

田所委員 罰則つきの退去命令がございます。これではあたかも、帰りたくないと言っている者に、従わなければ刑罰を科するという、何とも厳しく無慈悲なことをするんだというような批判もされるわけであります。

 そこで、具体的にどのような者にその退去強制令書が発出されるのか、お伺いをしたいと思います。また、同様に罰則を設けている国があるのかについてもお伺いをしたいと思います。

西山政府参考人 現行法下におきましては、我が国からの退去が確定した場合でも、退去を拒む自国民の受取を拒む国、イランでございますが、を送還先とする場合、現に送還中の航空機内で大声を上げたり暴れたりなどの送還妨害行為に及んだ結果搭乗を拒否されたことがあり、再び同様の行為に及ぶおそれがある場合については送還を実現する現実的手段がございません。そのため、これらの者について、本人に本邦からの退去義務を課し、罰則により間接的に自ら本邦から退去することを促す手段が必要でございます。

 諸外国の制度の詳細を網羅的に把握しているわけではございませんが、例えば、アメリカ、フランス及びドイツにおいて、対象者に当該国からの退去の義務を負わせ、当該義務違反に罰則を科する制度を有しているものと承知しております。

田所委員 イラン人や、あるいは強硬に送還に抵抗する者ということであります。また、外国人の手続保障にも配慮をしているということであります。

 イラン人につきましては、本人が望まない場合には強制的な送還ができないということでありますし、強硬に抵抗する者についても、いつでも激しく抵抗すれば送還を免れるというようなことであれば、これはもう後を絶たないでこのようなことをする者が現れるだろうと思います。

 いずれにしても、罰則はしっかりとした送還の履行を促すのに不可欠なものであり、非常に限定的に、これは罰則つきの退去強制令書となるんだろうというふうに思っておりますので、その点は理解する必要があるんだろうというふうに思っております。

 そこで、我が国で犯罪を犯した者など、在留を許すべきでない外国人であっても、送還忌避さえすれば送還ができないというのでは、これは余りにも無力であるというふうに思うわけであります。ここでも罰則の強制力というものが重要だろうと私は考えております。

 そこで、送還忌避するイラン人のうちで、在留を許すべきでない、不良な、前科を有する者の人数、その前科の内容等について説明をしていただきたいと思います。

西山政府参考人 令和四年十二月末時点におきまして、送還を忌避するイラン人は三百十五人おります。そのうち、前科を有する者は二百十六人でございます。なお、いずれも速報値でございます。その前科には、特に薬物違反が多く見られるほか、強盗、性犯罪、殺人等の重大犯罪も含まれております。

田所委員 分かりました。

 非常に私も問題であるというふうに思っております。そういう人たちがどんどん残っていくということであれば、これは我が国の治安にも大きな影響がありますし、しっかりとした、これを除去するような、そういう対策というものが必要になってくるんだろうというふうに思っております。

 そういう中で、まず、考え方として大臣にお伺いをしておきたいと思うんですけれども、我が国に入国しようとする者は、いかなる在留資格によって、どれだけの期間、どのような活動ができるかということを理解して入国しているんだということを前提とする必要があると私は思っているんです。我が国は、その約束の限度において制限や保護をするという厳格な運用をする国であるべきだというふうに考えております。

 国によっては、その国に入ってしまえば何とかなってしまうようなところもあるようでありますけれども、日本は違うのであって、法に基づいた対応をきちんと過不足なく実施することを常に対外的に知らしめる努力をすべきだと思います。この点、どのように考えているのか、齋藤大臣にお伺いをいたします。

齋藤(健)国務大臣 我が国の出入国在留管理制度は、外国人の方に対して、本邦で行おうとする活動に応じて在留資格を付与し、その範囲内に限って活動することを認める在留資格制度を採用しているところでございます。

 出入国在留管理行政を適切に運営するためには、法律に基づいた対応を適切に実施することが最も重要であると考えています。その上で、我が国に入国しようとする方には、我が国でどのような活動ができるのかなど、我が国の出入国在留管理行政の仕組みを理解した上で入国いただくことが重要だろうと思います。

 そのためには、我が国の制度について対外的に広報することが必要であると考えており、効果的な広報の方法を不断に検討するとともに、適切な広報に努めてまいりたいと考えています。

田所委員 分かりました。

 私は非常に、契約責任にとどまるということが大変重要だろうというふうに思っております。例えば、技能実習生でも、入国して、期間を徒過したときに、これはもう、難民申請をして送還停止効を求めるというようなことがあってはならないわけでありますし、禁反言の法理というものがあります。今言ったように、しっかりと理解した上で来た者を途中で帰していくというのは、どうも信義誠実であるというふうには考えないわけであります。

 以前の難民審査参与員の言葉というものは、大分これは引用されていると思いますが、ここでもまた引用したいというふうに思いますけれども、法務省の難民申請の認定の漏れを何とか探してやろうと思っていたという中でこういう発言があります。難民認定率が低いというのは、分母である申請者の中に難民がほとんどいないというようなことを言っている委員がいるわけでありまして、まさにこの制度というものは、濫用されないようなものでなければ非常にいろいろな問題を生じるということの例だろうというふうに思っておりますので、しっかりと、やはり大臣には、我が国のあるべき姿を発信しながら、そういった責任に基づく、必要な外国人材が活躍できる土壌というものをつくっていただきたいというふうに思っております。

 次に、今般の改正法では、退去強制令書が発付されると原則的に収容するというこれまでのものから、収容に代わる監理措置を創設するものであります。しかし、保証金も必要的ではありません。また、監理人の監理の下で生活するといっても、逃亡等がされないという保証もないわけであります。

 そこで、監理措置に付するかどうかを慎重に判断する必要があるというふうに思うわけでありますが、これをどのように行おうとしているのか。また、逃亡等の抑止力としては、やはり罰則の整備というものが必要だろうというふうに思っております。

 同様に、仮放免につきましても、どのような基準で判断してこれを行うのか。さらに、罰則というものについてもしっかり整備をしておかなければならないというふうに思うわけでありますけれども、これについてお答えを願いたいと思います。

西山政府参考人 本法案では、監理措置は、個別の事案ごとに、逃亡等のおそれの程度のみでなく、収容により本人が受ける不利益の程度なども考慮して、監理措置か収容かを適切に選択することとなります。

 その上で、監理措置は、監理人による監理の下、逃亡等を防止するための措置として、対象者に対する罰則つきの届出義務、あるいは、必要な場合には保証金を納付させることができる保証金の納付制度といった規定を設けた上、逃亡等に対する罰則も設けております。

 他方、仮放免につきましては、健康上の理由等により収容を一時的に解除する措置ということで本法案では定めているところでございますが、仮放免された者による逃亡事案が増加していることに鑑み、法改正後の仮放免につきまして、逃亡等に対する罰則を設けて逃亡等を防止することといたしております。

田所委員 ありがとうございました。

 今般の入管法の改正は、秩序ある出入国在留管理のために大変重要なものであるというふうに思いますので、その点、よろしくお願い申し上げまして、質問を終わります。

 ありがとうございました。

伊藤委員長 次に、大口善徳君。

大口委員 公明党の大口でございます。

 今回、質問の機会を与えていただきまして、ありがとうございます。

 まず、送還忌避、長期収容問題の解決は喫緊の課題であり、また、人道上の危機に直面し真に保護すべき方々を確実に保護する制度の整備もまた重要な課題であると考えています。

 今回の法改正の趣旨について、大臣よりお伺いいたします。

齋藤(健)国務大臣 日本人と外国人が互いを尊重し、安全、安心に暮らせる共生社会を実現していくためには、外国人の人権に配慮しながら、ルールにのっとって外国人を受け入れるとともに、ルールに違反する者に対しては厳正に対応していくことが重要であります。

 その上で、現行入管法下で生じている送還忌避、長期収容問題の解決は喫緊の課題であり、人道上の危機に直面し真に庇護する方々を確実に保護する制度の整備もまた重要な課題の一つであります。

 入管制度全体を適正に機能させ、保護すべき者を確実に保護し、ルールに違反した者には厳正に対処できる制度とするためには、これらの現行法下の課題を一体的に解決する法整備を行うことが必要不可欠と考えています。

 そこで、今回の改正法案では、保護すべき者を確実に保護した上で、在留が認められない者については迅速に送還可能とする。長期収容を解消し、収容する場合であっても適正な処遇を実施する。こういう考え方の下、様々な方策を組み合わせ、パッケージで課題を一体的に解決し、外国人の方の人権を尊重しつつ、適正な出入国在留管理を実現するバランスの取れた制度にしようとするものでございます。

大口委員 今回の改正法案について、廃案となった法案とはほぼ同じ内容であるのではないか、こういう批判もございます。法務大臣としてどう考えておられるのか。

 また、ウィシュマさんの件がございます。あってはならないことであり、徹底的な再発防止が必要であります。この名古屋事案も踏まえて、前回の法案からの変更点について御説明をお願いします。

齋藤(健)国務大臣 今回の改正法案は、現行法下の課題を一体的に解決し、入管行政を取り巻く情勢にも適切に対応するため、旧法案に対する様々な御指摘も真摯に受け止め、修正すべき点は修正することとしております。

 特に、収容に関する制度につきましては、名古屋事案の発生などを受け、より適切な運用を可能とすべく、制度的な手当てを行う必要があると考え、大きく修正をしております。

 具体的には、まず、今回の法案では、必要のない収容を防止するため、全件収容が原則となっている現行法を抜本的に改め、個別事案ごとに監理措置か収容かを適切に選択することとします。その選択に当たりましては、逃亡等のおそれの程度のみではなく、収容により本人が受ける不利益の程度も考慮することを法律上明記をすることといたしております。

 次に、今回の法案では、収容の長期化を防止するため、被収容者について、三か月ごとに収容の要否を必要的に見直し、収容が必要ない者につきましては監理措置に移行することとしております。

 監理措置につきましては、ほかにも、監理人の定期的な届出義務を削除し、指定された条件の遵守の確保のために必要な場合に限り、かつ、主任審査官から求められたときに初めて報告すれば足りることとする、それから、入管庁が監理人に対する必要な情報提供などの援助を行うこととする、それから、逃亡等の防止に必要な場合に限って保証金を納付させることとするなど、適正な運用が可能となるよう、必要な修正を行っております。

 また、仮放免制度につきましては、名古屋事案の反省も踏まえ、健康上の理由による仮放免請求の判断をするに当たっては、医師の意見を聞くなど、健康状態への十分な配慮に努めることを法律上明記をいたしました。

 そのほかにも、今回の改正法案では、送還停止効の例外規定の内容などの周知、教示に関する附則を設けることといたしました。

 以上のとおり、今回の改正法案は、修正すべき点を修正して再提出するものであり、国民の皆様に幅広く御理解いただけるよう、必要な説明を尽くしてまいりたいと考えています。

大口委員 今回の法改正に当たって、難民の認定制度の運用の見直しの一環として、難民認定制度の透明性を高める、制度への信頼性を向上させるため、難民該当性に関する規範的要素を明確化することとしており、三月の二十四日、難民該当性判断の手引が策定されたわけであります。難民認定についての具体的な考え方が示されたのは今回が初めてと承知しています。

 難民該当性判断の手引では、難民認定要件の一つである迫害について考え方が整理されていますので、この点について御説明をお願いしたいと思います。

 また、性的マイノリティーやジェンダーに関する迫害についての考え方が整理され、性的マイノリティーやジェンダーに関する事情についても迫害の理由となり得る旨が明記されております。この点につきましても御説明をいただきたいと思います。

 同性愛者のウガンダ国籍の女性について難民と認めるよう国に命じた大阪地裁の判決は、国が控訴せず、確定しております。こういうことも踏まえたことであると思いますが、御説明をお願いします。

西山政府参考人 御指摘の難民該当性判断の手引におきまして、迫害とは、生命、身体又は自由の侵害又は抑圧及びその他の人権の重大な侵害を意味する、殺害や不当な拘禁などがその典型であるが、その他の人権の重大な侵害や差別的措置、例えば生活手段の剥奪や精神に対する暴力等も迫害を構成し得る、それ自体としては迫害に当たるとまでは言えない不利益等でも、それらが合わさった結果として、迫害を構成する場合があるなどと整理をしております。

 また、この手引には、性的マイノリティーであることやジェンダーに関連する迫害は、難民条約に言う特定の社会的集団の構成員を理由とする迫害に該当し得る旨を明記し、判断において考慮すべきポイントを整理しております。

 このような方々につきましては、これまで適切に難民と認定してきた実績もございますが、平成二十六年の難民認定制度に関する専門部会の提言及び同専門部会の議論の中で、いわゆる新しい形態の迫害として、女性器切除や性的指向に起因する迫害などのジェンダーに起因する迫害等について検討されるべきであるという指摘を受けたことも踏まえ、今般、手引においても明記したものでございます。

 なお、この難民該当性判断の手引の策定に当たりましては、我が国の実務上の先例等のほか、国連難民高等弁務官事務所、UNHCRが作成する諸文書や諸外国における運用等も参考にしており、国際的な難民保護の動向も踏まえた内容となっているものと認識しております。

大口委員 また、迫害主体から個別に把握されていなければ迫害を受けるおそれは認められないとする解釈を入管庁が採用している、こういう見解でありますとか、補完的保護対象者の認定制度ができてもウクライナ避難民の多くが補完的保護対象者にならないのではないか、こういう指摘もあります。

 この点につきましても、手引でどのように整理されているのか、御説明をお願いします。

西山政府参考人 我が国では、迫害を受けるおそれに関して、御指摘のような考え方に基づいて判断しておりません。

 このことは、難民該当性判断の手引におきましても、申請者が迫害主体から個別的に認知、把握されていると認められる場合には、迫害を受けるおそれを判断する積極的な事情となり得るが、そのような事情が認められないことのみをもって、直ちに申請者が迫害を受けるおそれがないと判断されるものではない旨を示して明確にしたところであり、この点は、補完的保護対象者における迫害を受けるおそれに係る判断についても同様でございます。

 すなわち、一般論として、今般のロシア連邦によるウクライナ侵略のように、戦争等に巻き込まれて命を落とすおそれがある者等は、迫害主体から個別に把握されていなくとも、補完的保護対象者として保護することを想定いたしております。

大口委員 次に、今回の改正法で、三回目以降の難民認定申請者は送還停止効の例外となりますが、難民認定や補完的保護対象者認定を行うべき相当の理由がある資料を提出すれば送還停止効の対象となります。

 相当の理由がある資料は提出時の形式に制限があるのか、また、仮に三回目以降の難民認定申請者が客観的な資料を提出できず、申請者による陳述や申請書自体の提出のみを行った場合であっても相当の理由がある資料と認められることがあるのか、もし認められる場合があるとすればどういう場合であるのか、御説明を大臣にお願いします。

齋藤(健)国務大臣 相当の理由がある資料につきましては、資料の形態や形式に制限はなく、申請者の陳述や申請書自体もこれに該当し得ると考えています。

 すなわち、三回目以降の難民認定申請者が申請に際し客観的な資料を提出できない場合であっても、そのことのみをもって一律に送還停止効の例外となるものではなく、例えば申請者の陳述が当庁が把握している出身国情報とも整合している場合などには、申請者の陳述のみをもって相当の理由がある資料を提出したものとして送還停止効の適用を受けられることもあり得ると考えています。

 法務省としては、万が一にも保護すべき者を送還することがないよう、適切な運用に努めてまいりたいと思います。

大口委員 大事な答弁でございます。しっかり適切にやっていただきたいと思います。

 また、この改正法案で、送還効の例外に該当する場合であっても、第五十三条の第三項により、迫害を受けるおそれのある領域の属する国に送還してはならないとされているわけでありますが、この五十三条三項に該当するか否かはどのように判断されるのか、お伺いしたいと思います。

西山政府参考人 送還先国は、主任審査官が退去強制令書を発付するに当たり、関係者の聴取結果等を踏まえ、違反審査部門において必要に応じて関係部門に照会するなどして検討し、第五十三条第三項の該当性を適切に検討した上で指定することとなります。

 また、退去強制令書の発付後は、そのまま当該送還先国に送還するのが原則ではございますが、本国情勢が悪化するなど送還先国を見直すべき事情変更が生じた場合には、同様に、関係部門に照会するなどして検討した上で、主任審査官が適切に送還先国を見直すこととなっております。

 さらに、本法案の下では、退去強制令書の発付後、当該外国人の意向の聴取等を行い、直ちに送還することができない原因となっている事情を把握して、退去のための計画を定めることとしており、送還先の見直しの要否は、当該計画の作成過程においても、適切に事情を把握の上で検討されることになります。

大口委員 送還停止効の例外に該当するか否かについて、行政訴訟等により争うことができる仕組みを設けるべきではないか、こういう指摘がありますが、この点について御見解をお伺いします。

西山政府参考人 送還停止効の例外は、難民認定申請中であっても送還可能となる類型を設けるもので、送還停止効の例外に該当するか否かにつき行政訴訟等を認めても難民と認定されることにはならず、難民認定を求める外国人にとっては根本的な問題の解決とはならないと考えます。

 退去強制令書を発付された者が難民認定を求めて入管当局の判断を争うのであれば、退去強制令書発付処分や難民不認定処分等に対する行政訴訟を提起し、あわせて、退去強制令書の送還部分の執行停止等を求めることもできます。

 そのため、御指摘のような送還停止効の例外に該当するか否かに関する行政訴訟等を可能とする仕組みを設ける必要はないと考えております。

大口委員 次に、今回の法改正では、在留特別許可制度について申請手続を創設をする、そして、不許可の場合におけるような、理由を付した書面による通知をするという手続保障、これが確保されたという点におきましては高く評価をしております。

 さらに、今回の法改正では、在留特別許可をするかどうかの判断に当たっては、考慮事情が法律上明示されることになったということであります。

 具体的には、改正入管法第五十条第五項において、当該外国人について、在留を希望する理由、家族関係、素行、本邦に入国することとなった経緯、本邦に在留している期間、その間の法的地位、退去強制の理由となった事案及び人道上の配慮の必要性を考慮するほか、内外の諸情勢及び本邦における不法滞在者に与える影響その他の事情を考慮することが規定されています。

 この考慮事情の具体的な考え方については、新たなガイドラインが策定され、法案成立後にも公表予定と伺っております。どのような方向性のものになるのか、現時点での基本的な考え方をお伺いしたいということが第一点でございます。

 先日も、幼い頃から日本に暮らしている十代のクルド人の男性が会見を開いておられました。トルコ語もクルド語も知らない、そういう方でございまして、そういう方のことも検討をしていかなきゃいけないわけでございます。

 新たなガイドラインにおいて、特に子の最善の利益や家族の分離の禁止について、積極要素として考慮されるのか確認をいたしたい。これが大臣に対してまず一点の質問でございます。

 また、現在のガイドラインでは、当該外国人が、本邦での在留期間が長期間に及び、本邦への定着性が認められることは積極的要素として考慮されていくことになっています。他方、令和三年の法案審査において、新たなガイドラインでは、我が国に不法滞在している期間が長いことが消極的に評価される旨の答弁があります。

 しかし、たとえ不法滞在であっても、在留期間が長くなった分だけ日本人の地域社会への定着性が高まっている場合や、将来の雇用主等の第三者からの支援が十分になされる場合があり、積極的要素として考慮されるべきと考えるべきではないかという点についてはどうなのか。新たなガイドラインにおける長期滞在の評価に関し、現在の運用が後退することはあってはならないと考えますが、大臣の見解をお伺いします。

齋藤(健)国務大臣 本法案では、在留特別許可の申請手続を創設するとともに、考慮事情を明確化することとしております。その上で、それぞれの考慮事情の評価に関する考え方を運用上のガイドラインとして策定し、明示することにより、退去強制事由に該当する外国人のうち、どのような方を我が国社会に受け入れるのかを明確に示すこととしております。

 新たなガイドラインの具体的な内容につきましては、現在検討を重ねているところでありますが、例えば、我が国に不法に滞在している期間が長いことにつきましては、長いほど在留管理秩序を侵害する程度が大きいと言えることから、消極的に評価をすることとしております。

 その一方で、御指摘のように、その間の生活の中で構築された日本人の地域社会との関係、本邦で家族とともに生活するという子供の利益の保護の必要性、特に未成年の日本人である子と同居して監護及び養育をしていること、将来の雇用主等の第三者による支援の内容が十分なものであること、本邦で疾病の治療を受けている者で、相当期間本邦で治療を受けなければ生命に危険が及ぶ具体的おそれがあることなどを積極的に評価をすることとする予定でありまして、これらの事情を含めて、個別事案における具体的な事情を総合的に判断することによって、人道上在留を認めるべき者については、引き続き適切に在留を認めることとなります。

 新たなガイドラインは、改正法が成立すれば、同法の施行日を踏まえた適切な時期に策定し、公表をしていきたいと考えています。

大口委員 これは、令和三年四月二十一日の法案審査、前の廃案になった法案の審査のときに、私の方でも上川当時法務大臣に確認させていただいたことで、これは確認を二、三させていただきたいと思います。

 そのときに、二年前ですが、現時点で既に退去強制令書の発付を受けている約三千人余りの送還忌避者、今は令和四年末までで四千二百三十三人の速報値が出ていますが、その送還忌避者でございますが、在留特別許可の判断におきまして、改正法案が意図する手続的な保障が与えられていなかったと言えると。今回、手続的保障は与えられることになるわけであります。そのことは、当時は八万人の不法滞在者のうち、今後、改正法施行前に摘発され、あるいは自ら出頭をしてくる者につきましても当てはまるものと考えます。そのため、これらの者につきましては、新たなガイドラインの内容を踏まえまして、あるいはその内容に基づき、改めて在留特別許可の判断をするということを検討しているところであります。なお、その場合におきましては、既に不法滞在期間が長くなっている点につきましては、特例としてマイナスとしての考慮事項に含めないことも考えているところでございます。

 こういうふうに当時の法務大臣が答弁されていますが、これにつきまして、齋藤大臣に確認の意味で質問させていただきます。

齋藤(健)国務大臣 現在検討している私の考えは先ほど申し上げたとおりでありますし、上川大臣が答弁された方向で対応できていると考えています。

大口委員 非常にこれは重要なことでございますので、しっかりこのお約束は果たしていただきたい。これは私が質問させていただいたことでございますので、よろしくお願いをしたいと思います。

 次に、昨年、民法等の一部を改正する法律案の審議の中で、国籍取得後に事実に反する認知が明らかになった場合に、当初から国籍取得が無効とされることについて大きな議論がありました。附帯決議において、帰化又は在留資格の付与に係る手続において柔軟かつ人道的な対応を行うことが求められたところであります。

 この点につきまして、新たなガイドラインはどのように対応するのか、お伺いしたいと思います。

齋藤(健)国務大臣 新たなガイドラインの内容については、現在、検討をまだ重ねているところでありますが、本邦で家族とともに生活するという子の利益の保護の必要性、それから、認知が事実に反することが明らかとなり、帰責性なく日本国籍が認められなくなった者で、本邦の初等中等教育機関で相当期間教育を受けていること、これを積極的に評価することなどについて、明確に規定する必要があると考えています。

 新たなガイドラインは、改正法が成立すれば、同法の施行日を踏まえた適切な時期に策定し、公表したいと思っています。

大口委員 附帯決議を重く受け止めていただきたい、こういうふうに考えております。

 次に、今回の法改正では、退去強制令書の発付を受けた者は在留特別許可の申請ができないこととされています。また、難民認定手続において、在留特別許可を認める旨の現行規定六十一条の二の二が削除され、難民手続と在留特別許可が分離されることになります。これによって、在留特別許可の手続を早く進めることによって、難民認定手続を経ないでできますので、そういう点での利点もございますけれども、ただ、こういうこともございます。既に退去強制令書を発付されている難民認定申請者は、在留特別許可の申請をすることができず、また、難民認定手続の中で在留特別許可を受けることができなくなりました。

 このような人について、退去強制令書の発付を受けた後であっても在留特別許可の申請を認めるべきではないかとの指摘がありますが、この点についての見解を伺います。

西山政府参考人 退去強制令書が発付された者は、慎重な手続を経て、難民に該当せず、在留を特別に許可する事情も認められないことから、我が国から退去すべきことが確定した者であって、迅速に送還されなければならないと考えます。

 退去強制令書の発付後も在留特別許可の申請を可能とすると、迅速な送還に支障を来しかねないので、御指摘のような仕組みを採用することは困難と考えております。

 もっとも、改正法下において退去強制令書の発付後に在留特別許可をすべき事情が生じた場合には、退去のための計画を策定する過程におきまして、本人の意向聴取を行うなどして当該事情を適切に把握した上で、職権で在留特別許可を行うことが可能でございます。そのため、御指摘のような仕組みを設けなくても、保護すべき者の保護に欠けることはないと考えております。

大口委員 保護すべき方をしっかり保護していくということをしっかりお願いをしたいと思います。

 今回の法改正では、五十条の一項ただし書で、無期又は一年超の実刑を受けた人であっても、本邦への在留を許可しないことが人道上の配慮に欠けると認められる特別の事情があるときに限り在留特別許可を認められることとされております。

 ここで言う特別の事情とは、具体的にどのような事情を想定しているのか、伺います。

西山政府参考人 御指摘の特別の事情とは、たとえ、原則として在留特別許可をしないこととされている一定の前科又は退去強制事由に該当する者であっても、その者に対し在留を許可しないことが人道的見地から酷に過ぎると認められる事情であり、例えば、本邦で家族とともに生活するという子供の利益の保護の必要性等積極的に評価すべき事情が消極的に評価すべき事情を明らかに上回るとき、あるいは、難病や重篤な疾患に罹患し、本国における治療が困難であり、本邦の医療機関において治療を受けることを必要とするときなどを想定しております。

大口委員 次に、令和三年の法案では、保証金の納付が監理措置を決定する上での条件とされていました。今回の法改正では、逃亡等を防止するために必要な場合に限り、保証金を納付させることができるとされています。

 ここで言う、逃亡等を防止するために必要な場合に限りという限定をつけているわけでありますが、この保証金の納付の必要性について、具体的にどのように判断していくのかをお伺いをしたいと思います。

西山政府参考人 御指摘のように、本法案における監理措置制度では、主任審査官は、監理措置に付される者の逃亡等を防止するために必要と認めるときは、保証金を納付させることができるとしております。

 あくまでも一般論として申し上げますが、保証金の納付を条件とするかについては、個々の事案におきまして、住居、資産、家族の状況、退去強制事由の内容、自ら出頭してきた者か摘発された者か、逃亡歴の有無などその者の素行、年齢、健康状態、支援者の有無、監理人の任務遂行能力などの事情を総合的に考慮し、逃亡等を防止するために保証金を納付させる必要があるか否かを判断することとなります。

大口委員 次に、今回の法改正では、監理人に対する報告要求ということで、令和三年の法案と異なっているわけであります。被監理者の生活状況や監理措置条件の遵守状況等について、令和三年の法案では定期的な届出が必要であったわけですが、今回は定期的な届出は不要とすると。主任審査官が被監理者による出頭の確保その他監理措置条件の遵守の確保の必要があるときに報告を求めたときだけ報告をすればよいとされているわけであります。定期的な届出は不要となりますが、主任審査官からの報告の求めは必要最低限とし、監理人に不要な負担を負わせないようにすべきと考えるわけでございます。

 主任審査官が監理人に対して報告を求めるのはどのような場合なのか、これを、例を挙げて考えをお伺いしたいと思います。

 それで、やはりこれが、主任審査官が裁量によって行われるわけでありますけれども、それによって監理人に過度な負担を負わせるということになりますと、今度は監理人の方が、引受手がいなくなる、こういうこともあるわけでございます。ですから、ここはしっかり明確に示していただきたいというふうに考えます。

西山政府参考人 委員御指摘のように、監理人のなり手を確保するという目的のためにも、監理人の御負担をできるだけ軽減させる必要があるというふうに考えまして、本法案におきまして、前の提出法案から改正をした部分でございます。

 その上で、お尋ねの報告を求めることができる場合ということでございますが、被監理者の逃亡や監理措置条件不遵守のおそれの高さに応じた監理を行うとする監理措置制度の趣旨に鑑みまして、例えば、被監理者からの届出内容の信憑性を吟味するために報告を求める場合、あるいは逃亡や不法就労活動の疑いが生じた場合などを想定いたしております。

大口委員 ここは分かりやすく、しっかり説明していただかないと、法改正しても変わりはないんじゃないか、こういう指摘もされるわけですよ。だから、そこをもう一度、そういう指摘についてどう思いますか。

西山政府参考人 ただいま例示を御答弁申し上げましたが、より具体的に御説明をできるように、今後もちょっと検討を進めまして、それで、監理人のなり手になっていただけるように、御説明を尽くしてまいりたいというふうに考えております。

大口委員 また、前回も質問させていただいたんですが、弁護士が監理人となる場合、弁護士としての守秘義務と監理人としての届出義務が両立しないのではないか、そしてまた、弁護士と被監理人との間で利益相反が生じるのではないか、こういう指摘があります。また、支援者との関係でも同様の指摘があるわけでございます、利益相反につきましてですね。

 この点について大臣から見解をお伺いしたいと思います。

齋藤(健)国務大臣 弁護士が監理人として届出、報告義務を履行するなどした場合に、弁護士としての守秘義務等に違反するかどうかは、個別の届出、報告の内容等を踏まえて判断されるものでありますので、一概にはお答えすることは困難でありますが、もっとも、一般に、弁護士の守秘義務等は依頼人の同意があれば解除されるということであります。

 入管庁では、既に訴訟等を受任している弁護士を含め、監理人として選定された者に対し、監理人の届出義務の内容等を教示をする、それから、監理措置決定をする際に、監理人が法律上必要な事項を報告等することについて、当該外国人から事前に書面で同意を得るなどの運用を予定をしております。

 いずれにしても、監理措置制度を円滑に運用するため、こうした監理人の役割を十分に御理解いただけるよう丁寧に説明を尽くしていきたいと考えています。

大口委員 次に、監理人の選定につきましてでありますが、外国人の家族や親族だけでなく、支援団体や弁護士等の方々に可能な限り引き受けていただける環境の整備が極めて重要だというふうに考えているところでございます。

 ただ、今回の監理人あるいは監理措置につきまして、大変、支援団体の方あるいは弁護士、弁護士会から、これに対して否定的な表明がございます。そういう点で、この監理人の選定について、やはりこれは、外国人の家族や親戚だけではなくて、本当に、これまで大変献身的に支援をされている団体あるいは弁護士の方、弁護士会の方々、こういう方々に、外国人の人権を守るという観点からも、可能な限り引き受けていただかなきゃいけないというふうに思っているところでございます。

 逆に、そういう方々が引き受けていただかなければ、例えば、貧困ビジネスではありませんけれども、そういうことになるのではないか、こういう懸念、危惧もあるわけでございます。

 ですから、大臣、ここは本当に、全件収容主義から、収容しないで、できるだけこの監理措置を講じて、そして収容しない形でやっていく、これは大きな、今回の改正の目玉になるわけであります。でありますから、本当にここの部分につきましては、どう理解を得て引き受けていただけるのか、相当な努力が必要だというふうに思っていまして、私も、そういう点では、この点については危機感さえ持っているところでございます。

 それにつきまして、大臣の思いと、今後どういうふうに取り組んでいただけるのかということについてお伺いをしたいと思います。

齋藤(健)国務大臣 大口委員御指摘のとおり、できるだけ多くの方々に監理人になっていただくことは、監理措置を適正に運用するために重要な課題であると認識しています。そのため、本法案を提出するに当たりましても、監理人のなり手の確保に資するべく、監理人の義務を緩和するなどの修正を行っております。

 法務省としては、監理措置について、これは本当に極めて重要な御指摘をいただいたと思っておりますので、この監理措置について御理解いただけるよう、支援団体や弁護士会など関連団体に対し、丁寧に説明を尽くすとともに、連携の在り方についても協議を進めていきたいと考えています。

大口委員 そういう点では、監理人に対する報告要求の件につきましても、主任審査官の裁量権が大きくて、主任審査官の対応によって負担がかなり大きくなるというような、こういう懸念もあるわけです。ですから、そういうことも含めてしっかり協議をしていただきたいというふうに強く求めるところでございます。

 今回の法改正では、監理措置制度が新たに設けられる一方で、仮放免については、健康上、人道上その他これらに準ずる理由により一時的に収容を解除する制度とされて、それで保証金の納付についても不要とされました。また、仮放免の請求の理由が健康上の理由である場合には、医師の意見を聞くなどして、被収容者の治療の必要性その他その者の健康状態に十分配慮して仮放免の判断をするよう努めなければならない旨の規定が、これは令和三年の法案から新たに追加されたということを大臣も御説明されたわけであります。

 この規定を追加することとした趣旨について改めてお伺いしたいと思いますし、また、医師の意見を聞くなどしてという点について、特に仮放免しないという判断をするときには必ず医師の意見を聞くようにすべきであると考えます。規定では努力義務になっているわけでありますし、医師の意見を聞くなどしてということで、などということであれば看護師の意見を聞く場合であってもいいということなんですが、特に仮放免しないという判断をするときには必ず医師の意見を聞くようにすべきである、こういうふうに考えますが、大臣の御見解をお伺いします。

齋藤(健)国務大臣 健康上の理由による仮放免請求の判断をするに当たりまして、医師の意見を聞くなど、健康状態への十分な配慮に努めることを法律上明記をすることといたしましたのは、名古屋事案におきまして、健康状態が悪化したウィシュマさんが収容施設内で亡くなったことから、同様の事案の再発防止のために、健康状態を的確に把握して仮放免の判断を行う必要があると考えたからであります。したがって、改正法下において、健康上の理由による仮放免請求があった場合には、基本的に医師の意見を聞くこととしたいと思います。

 ただ、被収容者の体調によっては、医師の意見聴取を待つことなく、迅速に仮放免をする必要がある場合も考えられるわけでありますことから、医師の意見を聞くことは努力義務とさせていただいたわけでありますが、疾病にかかっている疑いがある被収容者について仮放免を不許可とするときには、医師の意見を踏まえて判断すべきこととなると考えています。

大口委員 当委員会でも名古屋入管局に視察に行かせていただいたり、昨日は、五時間弱でございましたが、ウィシュマさんの状況についてのビデオも視聴させていただきまして、本当に、二度とこういうことがあってはいけない、なぜもっとしっかりウィシュマさんの状況というのを正確に把握して対応できなかったのか。特に、医療的な体制というのは非常に反省すべき点であり、また、仮放免のことにつきましても、その対応に対して大変問題が指摘されているわけであります。

 そういう点で、この点につきましては、しっかり、今も大臣から、仮放免しないという判断の場合は必ず医師の意見を聞く、こういう御答弁をいただきましたので、しっかり対応していただきたい、こういうふうに思っております。

 そして、今回の送還忌避者に関する実態の把握でございます。

 寺田委員からも、この送還忌避者については実態を明らかにすべきだ、こういう御意見もあって、また、資料請求もなされているわけであります。

 今回の退去のための計画の策定に当たっては、退去強制令書の発付を受けた者に対する意向の聴取その他の方法により、その者を直ちに送還することができない事情を把握することとされています。

 法改正後は、把握した情報の蓄積が進んでいくことになると思いますので、こうした情報を分析し、どういう方が送還忌避者となっているのか等についての統計として示す考えがないのか。これはやはり、送還忌避者あるいは不法滞在者に対する対応として、法務省としてもしっかり、統計というものによって、送還忌避者の実態について、数字的に、統計的に明らかにする必要が私はある、こういうふうに考えておりますが、その点について答弁を求めます。

西山政府参考人 退去強制令書の発付を受けた者について、退去のための計画の作成に際し、その者の意向を聴取するなどして、その者を直ちに送還することができない原因となっている事情を把握することとした趣旨は、個々の外国人が抱える事情も的確に考慮の上で適時適切に送還を実施することにございます。

 把握した事情には個々の外国人の機微な個人情報が含まれ得ることから、公表の適否やその在り方については慎重な検討が必要とは考えますが、送還忌避者に関する情報を分析し、その全体的な傾向等を把握することは、適正な出入国管理に資すると考えますので、御指摘を踏まえまして、適切に対応してまいりたいと考えております。

大口委員 時間が来ましたのでこれで終わります。

 ありがとうございました。

伊藤委員長 次に、米山隆一君。

米山委員 それでは、会派を代表して質問いたします。

 まず、収容者の処遇についてお伺いいたします。

 処遇の原則として、今回の入管改正法第五十五条の四で、「被収容者の処遇は、被収容者の人権を尊重しつつ適正に行わなければならない。」という規定が新設されたのは、これ自体は結構なことだとは思います。

 ただ、この中で気になる条文があるんですけれども、第五十五条の八で、「男子の被収容者と女子の被収容者とは、分離して収容しなければならない。ただし、入国者収容所長等が被収容者が被収容者である乳児を監護する必要がある場合その他特に必要があると認めるときは、この限りでない。」と定めるんですけれども、もちろんそれは、一室に男性と女性を入れてということをしてほしいという意味では全然ないんですが、こんな規定をわざわざ条文に入れる必要がありますか。

 何せ入管施設というのは、全然刑務所でも何でもない。何であれば、それはもちろん不法滞在の方もおられるということになるんでしょうけれども、単にそれを待っているだけの施設なわけですから、まさに、五十五条の四で示したように、人権を尊重しつつ適正に収容すべきものであって、何でわざわざこんな規定を置いたのかということは非常に疑問を感じるんですが、この趣旨、お伺いいたします。

西山政府参考人 本法案におきましては、被収容者の処遇を一層適正化するため、被収容者の人権を尊重しつつ施設内の適正な規律、秩序を維持するという観点で、刑事収容施設及び被収容者の処遇に関する法律をも参考にしつつ、被収容者の権利義務に関わるものなど法律で定めることが適切と考えられる事項を入管法で規定したものでございます。

 委員御指摘の第五十五条の八の規定につきましては、入管収容施設に収容された多数の被収容者が集団生活を送るという環境の中で、被収容者の適正な処遇を実施するために必要な規定として設けるものでございまして、現行の被収容者処遇規則第五条に同様の規定が存在いたします。

 また、御指摘の第五十五条の八第一項ただし書が定める、その他特に必要があると認めるときとは、例えば、送還直前に性別の異なる親子について同室に収容する場合などが考えられます。

米山委員 そういうふうにきっと、必要だと言うんでしょうけれども、私、これはやはり明らかに収容者の方を、まるで何か子供のように扱っている、非常に何か処罰をしているように扱っているように感じられます。

 さらに、次、五十五条の二十になりますと、入国者収容所長は、法務省令で定めるところにより、食事、就寝その他の起居動作をすべき時間帯を定め、これを収容者に告知するものとするとしているんですが、まあ、食事なら分かるんですよ、それは配膳の手間がありますから時間を決めるんでしょうというのは分かるんですが、何も就寝って、別にいつ寝たっていいわけじゃないですか。その他の起居動作って、一挙手一投足ですかということになるわけで。

 しかも、事実上、それは集団生活ですから、みんなが真夜中にどんどんどんどんと運動されても困るわけなので一定の規則はあっていいんですけれども、わざわざ法律で起居動作まで指定するというようなことを書く、これもまた極めて人権侵害的な条項だと思うんですけれども、これはどのような趣旨でこのような規定が入ったんでしょうか。

西山政府参考人 本法案におけます処遇に関する諸規定につきましての趣旨は、先ほど冒頭で御説明したとおりでございますが、委員御指摘の第五十五条の二十の規定につきましては、入管収容施設に収容された多数の被収容者が集団生活を送るという環境の中で、被収容者の適正な処遇を実施するためには、食事や就寝時間を定めることは必要であることから、これを規定したものでございます。

米山委員 再三申し上げるんですが、別に、事実上の規定として、規則としてあるのはあっていいと思うんですけれども、それはしようがない部分もありますからね、施設の特性に基づいて。しかし、法律でわざわざ起居動作をすべき時間を定めるというのは、それはもう囚人扱いであると思いますので、ちょっとこの条項はどうなんですかということは言わせていただきたいと思います。

 さらに、事前に伺ったところによりますと、基本的には皆さん雑居であるというふうに伺っているんですが、これも、それはもちろん施設の限界がありますから、誰も彼もにそんな、全員個室に入れろという意味ではないんですけれども、しかし、雑居というのは、基本的には非常に、多くの人にとっては余り心地よいものではないわけです。

 人権を尊重してということであるならば、プライベートな空間の確保というのは、人権の、割に、一位、二位を争うといいますか、第一、第二、優先順位は高いものだと私は思うんですけれども、この入管施設、おおむねどのぐらいのレベルで雑居がなされているのか、何人部屋ぐらいなのかということをお伺いしたいですし、また、それを解消する予定はあるのかということをお伺いさせていただきます。

西山政府参考人 現状、入管収容施設は、被収容者が生活する居室を共同室とすることを基本として設営されておりまして、共同室に収容する人数は、部屋の大きさにもより様々ではございますが、二人から十人程度が同室になる場合がございます。

 この共同室の廃止につきましては慎重な検討を要すると考えておりまして、今直ちに廃止するというところまでは考えてございません。

米山委員 これも、もちろん、施設の限界があるのは分かるんですけれども、しかし、十人雑居というのは、それはもはや、正直、そういう言い方はなんですけれども、ちょっと刑務所に近いといいますか、それは人によるでしょうけれども、私なんか、十人雑居と、いろと言われたら、大分嫌ですよね。本当に俺の人権は尊重されているのかと思うと思うんですよ。そこはやはりきちんとした施設というものを整備していただきたいと思います。

 次に、診療について伺いますけれども、第五十五条の四十二で、負傷し、若しくは疾病にかかっているとき、又はこれらの疑いがあるときは、医師等職員又は入国者収容所長等が委嘱する医師等による診療を行い、その他必要な医療上の措置をするものとしております。

 これも、このような規定が設けられたこと、それ自体は結構なことだと思うんですけれども、一方、負傷し、若しくは疾病にかかっているとき、又はこれらの疑いあるときというのを、結局、この規定というのは、入管職員が判断するということであろうと思います、規定ぶりとして。

 私も昨日、ウィシュマ・サンダマリさんのビデオ、二回目なんですけれども、見たんですが、あれはもう本当に、見ていて陰鬱な気持ちになる。それは何が陰鬱になるかというと、ウィシュマさんは、本当に、通常の感覚なら、誰がどう見たってもう瀕死の状態になっていて、しかも、助けてくれと言っていたり、もはやそれすら言えない状態になっているのに、周りの入管職員が、非常に明るく、ウィシュマさんとか言っているんですよね、元気出して、食べてとかと言っていて。どういうことなのかよく分からない。

 ちょっと、彼らが本当のところ、どう思ったのか分からないんですけれども、医療的な知識がない人が判断するというのはかくも怖いことなのかと。私が医者だからというのではないんだと思うんですけれども、かくも明らかな事態において素人というのはこういう判断をするのかというところで、もう本当に、心が寒くなるといいますか、恐ろしい思いであれを見ているんですけれども、この規定も、結局はそうなってしまう危険があるんだと思います。

 もちろん、これも、先ほどおっしゃられたように、例えば、本当に危険なときに、それはむしろ、お医者さんになんかに聞くよりも、直ちに一一九番しなさいということだと思うので、何もかにも医師がやるということではないんだとは思うんですけれども、しかし、これは、原則としては、きちんと医療的な知識がある方の診療を受けさせる、そういう規定だということでよろしいでしょうか、確認させてください。

西山政府参考人 前提といたしまして、被収容者の健康の保持と社会一般の医療水準に照らし適切な医療上の措置を行うことは、収容を行う国の責務であると考えますことから、このような国の責務として行われる被収容者に対する診療その他の医療上の措置を取る判断については、入国者収容所長等が行うことを考えてございます。

 もとより、本法案におきましては、入国者収容所長等は、被収容者が負傷し、若しくは疾病にかかっているとき、又はこれらの疑いがあるとき等には、医師等による診療を行い、その他必要な医療上の措置を取るものとしており、例えば、被収容者からの診断の求めがあった場合、医療上の措置の要否を判断するに当たっては、医師の意見を踏まえるべきこととなると考えております。

米山委員 ちなみに、ちょっと話を別の方向に、伺うんですけれども、この場合の医療費、これはどのように支弁されるでしょうか。

西山政府参考人 収容施設内において被収容者が罹病し、又は負傷したときは、医師の診療を受けさせ、病状により適当な措置を講じておりますが、その費用は国が負担しております。

米山委員 今般の改正では、第五十五条の四十三で、指名医による診療という規定が設けられました。これは、要は、収容者の方が医師を指名して、診療できるということになっておりまして、こちらは自費で支弁となっておりますので、仮放免制度や監理措置で社会生活を送っている方、この医療費は自費負担ということになろうかと思います。

 ところが、この自費の医療は、何とということで、これは、自費だから一〇〇%、我々日本人は、三割負担だったり二割負担だったりするんですけれども、その三割に対して、一〇〇%ではなく、何と日本人の二倍、三倍の医療費を請求されるケースというのが増えております。これは、手元に資料がありますので、御覧ください。一ページから六ページまであります。

 これはなぜかといいますと、自費診療だから医療機関が勝手に決めてよい。原則としては、それはそのとおりなんだとは思います。しかも、厚労省の方でメディカルツーリズムというものを非常に推進しまして、四ページ、五ページ、六ページあたりの資料では、厚労省さんが、割に、外国人旅行者に対するものとして、診療価格二倍、三倍でいいですよみたいな、絶対そうしろと言っていないのは分かるんですが、二倍、三倍でも構いません的な誘導をする資料を出されているわけなんです。

 こういうものがある中で一体何が起こっているかというと、かなり多くの病院で、保険に入っていない外国人の方は、診療点数一点に対して十円が普通なんですけれども、それを二十円、三十円にします、要は日本人の二倍、三倍にしますという規定を置いている。そこに、幾ら、決して豊かではない外国人の方が行って、いや、普通の、一〇〇%でやってください、それで別に何も困らないじゃないんですかと言っても、いやいや、病院の規定だから、絶対二倍、三倍もらいます、そうじゃなかったら帰ってくださいと言われてしまうという事態が発生しております。

 もちろん、無料低額診療事業というものがありまして、そういう方も診療を受けられるんですけれども、それは全医療機関の一%に満たないという状況になっております。

 それは制度上そうだと言われればそうかもしれないんですが、しかし、やはり、外国人の方のきちんと人権を守る、病気に対する診療を受けられるということをつくるのは、私は日本国の責務だと思うんです。それであれば、実質的な要件として、やはりちゃんと受けられるようにすべきだ。

 かつ、この問題は、せめて一〇〇%にするのは、厚労省の方で、例えば、厚労省所管の国立病院機構等がこの無料低額診療事業をやっていただくとか、若しくは、こういった国立病院機構、要は大きな病院ということですからね、大きな病院で、こういった方に対しては、決して豊かとは言えない外国人の方に関しては、ちゃんと日本人と同じ、せめて一〇〇%にしてくださいという指導をすればできることだと思うんです。そのようにする御意思があるか、厚労省にお伺いいたします。

本田大臣政務官 米山委員にお答え申し上げます。

 まず、我が国の公的医療保険に加入していない外国人の方が我が国の医療機関で受診する場合は、御指摘のとおりでございますが、保険診療ではなく自由診療による対応となります。この場合の価格につきましては、医療機関の経営は国立病院機構を含めそれぞれ自律的に行われている中で、通訳に要する費用なども踏まえて医療機関において設定をいただいているところでございます。

 その上で、厚生労働省としては、医療通訳や外国人患者受入れ医療コーディネーターの配置など、医療機関が外国人患者を円滑に受け入れるための支援をこれまで進めてきております。

 また、社会福祉法人等が社会福祉事業として生計困難者に対し無料又は低額で診療を行っている場合があり、税制上の優遇措置の対象としており、全国で七百三十二施設が行っております。

 さらに、厚労省では、公立を除く救命救急センターに対して、我が国の公的医療保険制度に加入していない外国人に救急医療を行った結果発生した未収金を補助する措置を講じているところでございます。

 引き続き、こうした取組の中で外国人患者を受け入れる医療提供体制の整備について取り組んでまいりたいと考えております。

米山委員 これは、おっしゃるとおり、ある種任意のそういう取組なんだと思うんですけれども、お配りした資料にあるように、実際問題、特にがんであるとか心臓の疾患であるとかということになると非常に高額になってしまう。それは、計算方法として、おっしゃるとおり、通訳等の費用があるのはいいんだと思うんですよ、それは全然上乗せして構わないと思うんですけれども、一律二倍、三倍というような取扱いを、特に公立の病院でもしてしまっている、それによって百万円が二百万円、三百万円になってしまうというようなことはやはり適正とは言えないと思うので、それは実質的な人権の保障ということで御対応いただければと思います。

 さらに、この問題、結局というところで、私は、これは保険に入っていただけばいいんだと思うんです。もちろん保険というのは日本人が対象だという建前はあるとして、しかし、保険制度というのは、基本的に、保険金を払って、その対価として病気のときに診療を受けられるわけですよね。もちろん、保険料は払っていただく、それは御本人が払うのか支援者が払うのか分かりませんけれども。保険料を払ってもらうなら、それは別段ただ乗りでも何でもないわけですよ、ちゃんと保険料を払っているんだから。

 そういうことをすれば相当程度に解決する問題であり、それは法務省が担当なのか、それとも厚労省が担当なのかということになりますけれども、やはりこれは、日本にいる間は、何か特別なちょっと、保険制度の中の、こういう人も対象にしますということをすればいいだけだと思うので、これは保険に加入できるようにすべきだと思うんですが、御所見を伺います。

本田大臣政務官 お答え申し上げます。

 国民健康保険に本当に加入していただければいいんですけれども、厚生労働省といたしまして、国民健康保険は、日本国内に住所を有する者に適用することとしておりまして、外国人につきましても、適正な在留資格を有し住所を有している場合には、原則として適用対象としております。

 この要件は、国民健康保険が被保険者全体の相互扶助により成り立っており、公費や保険料により支えられる仕組みであることから、保険者である都道府県、市町村、当該都道府県、市町村の区域内で安定した生活を継続的に営む蓋然性が高いことを確認するために求めているものでございます。

 そうしまして、仮放免の方や今般の改正法案により新設される監理措置対象者につきましては、適正な在留資格を有さず、住民票もないことから、その区域内で安定した生活を継続的に営む蓋然性が高いと認められるとは言えず、国民健康保険の適用対象とすることは困難であると考えております。

米山委員 建前としてそうなるのかもしれませんが、しかし、我々は立法府なわけですから、立法すればそれは解決できる問題です。

 しかも、結局、そういうふうにして病気を放置して、どうなるか。だって、収容されたら実は国費でできるわけですよ、先ほど質問したとおり。収容されてその中で医療を受けるならば国費で受けられるわけなので、さんざん放置して重くなった挙げ句に、自ら収容施設に来て、結局、国費で物すごい治療をしなければならない。実のところ、結局トータルとしての医療費は増えてしまうということが起こり得ることですので、是非そこはきちんと対応していただきたい、今後対応していただきたいというふうに言わせていただきます。

 次に、これは齋藤大臣、大変恐縮な部分もあるんですけれども、何度も言われて。しかし、取り上げざるを得ませんので、再度取り上げさせていただきます。

 先般の本村委員の質問でも出されましたけれども、大臣、四月七日の記者会見で、御指摘のビデオ映像は、国が証拠として提出し、これから裁判所において取り調べるということになっている約五時間分のビデオ映像の一部を、原告側が勝手に編集してマスコミに提供して、公開したものであるというふうに承知しております、訴訟係属中の個別案件ですので、法務大臣として所感を述べることは、司法への影響に鑑み、基本的には差し控えたいと思いますが、本件については皆さんにもよく考えていただけたらなと思いますというふうに記者会見でおっしゃられているわけなんです。

 この言葉を通常の日本語として見る限り、マスコミの方にそう言っているわけですから、マスコミ報道は望ましくない、マスコミ報道するのにはきちんと考えてくださいとおっしゃられているとしか取れないんですけれども、そういう御見解だということでよろしいですか。

齋藤(健)国務大臣 まず、ビデオのお話がありましたので、今日はウィシュマさんの御遺族の方が傍聴されているということで、改めてウィシュマさんに心から御冥福を申し上げたいと思います。

 そして、私も就任して初めてビデオを見たときに、やはり、何でこんなことが起こるんだろうか、これは二度と起こしてはいけないと強く思ったということは率直にお話をさせていただきたいと思います。

 その上で、御質問ですけれども、これも繰り返しになるんですが、私の発言は、まず、質問されたので答弁をした、記者の方から質問されたのでということ。それから、今御指摘ありましたけれども、私が述べたのは、その事実関係を述べた、その上で、訴訟係属中の話なので私はコメントできないということで、あとは、質問されたわけですから、私はコメントできないので、これはもう質問された方々に考えていただくしかないということを述べただけでありまして、特段、こう考えてほしいとか、そういう趣旨は一切含まれておりません。

米山委員 今のは本当に重要な御答弁で、要は、皆さんがそう感じて、私は感じるのが通常だと思いますけれども、感じたように、マスコミが報道してはいけないということでは全くないということを御答弁いただいたと思っております。

 ちなみになんですけれども、こんな、別に憲法クイズをしたいわけでは全然ないんですけれども、憲法八十二条第一項は裁判の公開について定めているんですが、これはどのような趣旨なのか。また、この憲法八十二条第一項の公開裁判の原則の中で証拠の公開というものはどのように考えられているのかということ、御担当者からの御答弁をちょっと伺います。

西山政府参考人 憲法の解釈でございますので、私から答弁するのはどうなのかなということはありますけれども、お尋ねですのであえてお答えいたしますと、憲法八十二条第一項は、「裁判の対審及び判決は、公開法廷でこれを行ふ。」と定めております。

 この趣旨については、最高裁判所の判決におきまして、裁判を一般に公開して裁判が公正に行われることを制度として保障し、ひいては裁判に対する国民の信頼を確保しようとすることにあると判示されており、そのため、裁判手続の中核である対審及び判決を公開の法廷で行うこととしているものと考えているところでございます。

米山委員 おっしゃるとおりなんですよ。裁判は公開でやるわけです。それは、多くの国民が監視することによって、その中身を知ることによって適正な裁判がなされる、そういう制度的保障なわけですよね。ですから、そこに出されたものを多くの方が知り得るというのは、それは当たり前なわけなんです。

 裁判記録の閲覧というものに関しては、それはもちろん、一億人の人が一斉に裁判所に行ったって見れないわけですから、いろいろな物理的な制限があり得るのは分かるんですよ。それはしようがないことだと思うんです。しかし、やはり、裁判に出てくる証拠というのは国民みんなが知って当たり前、そういう監視の下で公正な裁判がなされるんだと思います。

 ところで、大臣、四月十一日の記者会見で、ビデオ映像を広く一般に公開することになりますと、例えば監視カメラの撮影範囲や解像度、職員による巡回の体制、頻度など、そういった具体的な状況が公となり、逃走防止や施設内の秩序維持といった保安上の問題が生じかねないという懸念が一つです、また、亡くなった方とはいえ、御本人の了解もなく、食事や着替えの介助を受ける様子のほか、生活上のあらゆる様子がつまびらかにされるということは、やはりウィシュマさんの名誉、尊厳の観点から慎重であるべきと考えていますとお答えです、法務大臣が。個人じゃないですよ、法務大臣がそうお答えされているわけです。

 私は、監視カメラの撮影範囲や解像度は画像処理で幾らでも対処できますし、巡回の体制や頻度は、それこそ全画像を公開すれば分かるかもしれませんけれども、今回、二百九十五時間の中の五分の抜粋では分かりようがないことですし、仮に二百九十五時間全部公開しても、恐らく、室内に入らず巡回している場合も多いと思いますので、全部分かるわけでもないと思うんです。

 ウィシュマさんの尊厳について、私であれば、私がもしウィシュマさんであれば、このような状況になったなら、自分の死の原因を究明してもらうために、明らかに公開してほしいと思うと思うんですよ。それなのに、他人である大臣が勝手にそれを決めつけるというのは、私は、余りにも不遜である、そういった在り方こそが死者の尊厳を傷つけていると思います。

 その上で、百歩譲って、大臣が本当にウィシュマさんの尊厳を守りたいなら、裁判には閲覧制限の申立てという制度がございます。これ、国は今訴訟中ですけれども、ウィシュマさんのビデオについて、証拠で国が出したんですけれども、閲覧制限の申立てを行いましたでしょうか。

齋藤(健)国務大臣 まず、閲覧制限についてお答えをします。

 一般論として、民事訴訟法上、閲覧等制限の対象となりますのは、訴訟記録中に当事者の私生活についての重大な秘密が記載又は記録されており、かつ、第三者が秘密記載部分の閲覧等を行うことにより、その当事者が社会生活を営むのに著しい支障を生じるおそれがあること、それから、当事者が保有する営業秘密が記載又は記録されていることにつき疎明があった場合に限られているもの、こうなっておりますので、この記述には該当しないということで、閲覧等の制限の申立てをしていないということになります。

 それから、先ほどお話ありましたように、確かに尊厳のお話というのは私も分からないわけではないわけでありますが、しかし、一方で、御本人の意思が、生活上あらゆる場面が映っているものを、少なくとも御本人が公開していいということをおっしゃっていない段階のものを、我々行政が、誰でも見ていいから見てくださいというふうにすることについては、やはり行政側としては慎重にならざるを得ないところがあるのではないか。一方で、おっしゃるように、公益の観点から、それもある程度必要だということもあろうかと、それは思います。

 しかし、そこは、二つの相反する要請のバランスをどう取るかという問題だと思っておりますので、したがって、国会で要請があって審議に必要だという場合には、それは御指示に従っておりますし、裁判所でそういう判断がなされたら、それも御指示に従っているということで、バランスを取っているつもりでございます。

米山委員 制度としてはそのとおりではあるんですけれども。

 同時に、私も、名誉毀損訴訟等をやりまして、私の妻の名誉毀損訴訟というのをやりました。私の妻の本名というのは芸名とは違うわけなんですけれども、しかも、それは実はある種公開されているといいますか、知っている人は知っている、特段隠してもいないので、知っている人は知っています。ただ、それが公開されるといろいろ何か面倒もあるなということで、閲覧制限の申立てをいたしました。普通に通りました。

 閲覧制限の申立ては、別に、おっしゃるように極めて重大なものでなくても、かなり割に広い範囲で現実問題として通ります。それを国の代理人が、指定代理人が知らないわけはないです。

 ですので、どう見ても、このウィシュマさんの個人の尊厳だ、プライバシーだというお話は、私は矛盾した対応だと思いますよ。本当にそう思っていらっしゃるんだったら、駄目でも閲覧制限の申立てをしたらいいじゃないですか。それもしない。誰もができる状態で、もう公開されているものに対して、わざわざ、それはいかがなものかということを再三、法務大臣の口からおっしゃられる。そうしたら、マスコミだって萎縮するかもしれないし、それに代理人だって萎縮するかもしれないわけですよ。

 今ほど慎重であるとおっしゃられたのであれば、それこそ法務大臣として、しかも、公開することも、マスコミが報道することも、何ら法に触れないんですから、これを禁止する法は何もないんですから、それに対して、それがあたかも悪いかのように言われるのは、私は非常に正しくないと思います。

 そして、法務大臣の御発言を受けて、日経新聞で、テレビ朝日で、東京新聞で、様々な新聞で、不快感を表明した、報道陣に映像の扱いについて疑問を投げかけたというふうに報じられているわけです。法務大臣の発言というのはそのように報じられるわけなんです。

 ですので、是非、この場でもう一度、そういう趣旨ではない、それは問題のないことであると、従前の発言を撤回して、御自身が今思っていらっしゃるとおり、それは全く問題がないんだということを改めて申し上げていただきたいんですが、大臣、御所見を伺います。

齋藤(健)国務大臣 私がもう何回も答弁しているんですけれども、そういう意図はない、事実関係を述べ、その上でコメントはしないと。コメントはしないというのは、いいも悪いも言わないということでありますので、そのままどうして受け止めていただけないのかというふうに今思っております。

 それから、勝手にという表現を恐らくおっしゃっているんだと思うんですけれども、私は、あのビデオの性格は、まず、保安上の問題もあるので取扱いには注意願いたいと裁判所もおっしゃっているものであるということ、それから、あの五時間分は我々が作成をしたものであるということ、それが知らない間に編集をされているものであること、これは事実ですよね。それから、それによって我々は一切責任を負うものではない、こういうことが表現できる言葉であれば、私は、御提案いただければ、それで結構です。

米山委員 今、少なくとも修正はいただいたというふうに理解しております。

 私は、そのように、新たな報道がなされる、そしてウィシュマさんの弁護団が自由に活動できるということを祈りまして、私の質問を終わらせていただきます。

 ありがとうございます。

伊藤委員長 次に、鎌田さゆり君。

鎌田委員 鎌田です。

 まず、大臣に伺います。

 先ほど、今回の法改正、人権を真ん中に置く趣旨を答弁されていらっしゃいました。ですが、今回のこの法改正、見送りを続けてきていますよね。見送りを続けてきたその背景には、二年前に廃案になった原因の大きな一つに、やはりこれは、名古屋入管で起きた死亡事案があると私は認識をしています。

 大臣の御認識を伺います。

    〔委員長退席、藤原委員長代理着席〕

齋藤(健)国務大臣 先ほども御答弁申し上げたと思いますが、それも踏まえて改正案を検討してきたということで結構でございます。

鎌田委員 ちょっと御紹介をさせてください。

 一昨年の一月十日です。ウィシュマ・サンダマリさん、友人に対して手紙を書かれています。その手紙の一節には、私は人間に生まれてよかったです、私たち人間は深く考えることができるから、許すこと、助けることができるのですという手紙を書いています。一月十日です。その僅か二か月後の三月六日に亡くなっているんですよ。

 入管庁に伺います。

 齋藤大臣の前の前の古川法務大臣は、この法務委員会の部屋で、ウィシュマ・サンダマリさんの死に対して、申し訳なかったと答弁をされました。ここは謙虚に、真摯に受け止めて、入管庁、おわびの一言はあっていいんじゃないですか。いかがでしょうか。

西山政府参考人 この度の、名古屋局におけますウィシュマ・サンダマリさんがお亡くなりになった事案につきましては、調査報告書にもございますとおり、私どもに少なからず反省すべき点があったことは十分に重く受け止めておりますし、ウィシュマさんに対しては、改めてお悔やみを申し上げますし、御遺族の方にもお悔やみを申し上げたいと思います。(鎌田委員「おわびは」と呼ぶ)申し訳ございませんでした。

鎌田委員 次長の最後の申し訳ございませんでしたという言葉は、今日傍聴にお見えになっていらっしゃるウィシュマさんの妹さんたちお二人にも届くように祈ります。

 今回の改正案に、いわゆる視察委員会について、独立性と権限の強化、これは触れられていないんですね。実は、ウィシュマさんは一月の三十日に視察委員会宛てに手紙を書いています。その一月三十日の前の日、一月二十九日ですよ、これは、倒れている、嘔吐している、それから死ぬのが怖いということを話しているんです。最終報告書に書かれてあるんです。その更に前の日、二十八日には、嘔吐物に血が混じっていたんです。そして、一月三十日に視察委員会に手紙を投函しているんです。

 これは、今回の法改正で、視察委員会の独立性と権限の強化、これをきちんとはっきり明記しなくちゃいけないんじゃないですか。抜けているんじゃないでしょうか。伺います。

西山政府参考人 視察委員会の委員の任命につきましては法務大臣が行うこととなっており、委員が特定の者に偏らないようにするとともに、選任方法が恣意的なものにならないようにするため、公私の団体から推薦を得て、学識経験者、法曹関係者、医療関係者、NGO、国際機関関係者及び地域住民代表者を任命しているところでございます。

 また、視察委員会は、独立した立場で、全国十七官署の各収容施設の被収容者から直接委員が意見を聞くことも可能であり、各収容施設に設置された提案箱を通じて、委員が直接被収容者の意見等を把握できるなど、国とは一線を画した第三者機関であり、専門性、第三者性は十分に担保され、権限にも不足はないものと認識をいたしております。

鎌田委員 いや、次長、そうおっしゃいますけれども、ウィシュマさん、一月三十日に視察委員会宛てに手紙を投函して、開封されたのは三月八日なんですよ。亡くなった日の二日後です。何でこんなに時間がたっているんですか。今のお話だと、視察委員会がきっちりそこを監視できるようなお話だけれども、とてもじゃないけれども、この法案に、視察委員会の機能強化、独立性、期待できません。全く改革される意思がないと断ぜざるを得ません。

 いかがですか。再度伺います。

西山政府参考人 御指摘の視察委員会宛ての手紙ですが、性質上、この視察委員会の委員が直接開封するべきものでありまして、本事案の発生当時は視察委員会の会議の機会等に提案箱を開封する扱いとなっておりまして、ウィシュマさんが亡くなられた後の三月八日に開催された視察委員会の会議の際に開封されたものでございます。

鎌田委員 ですから、視察委員会の機能、これはもう機能不全ですよ。ウィシュマさんの件で明らかになりました。視察委員会は機能不全に陥っている。だからこそ、今回の法案でこの視察委員会の改革というものをしていかなければならないのに、全く欠如している点は、強く指摘をしておきたいと思います。

 ウィシュマさんの取り返しのつかない事案を受けて、医療ケアの充実、この改革が必要だということは共通の認識を持っていらっしゃると思うんですが、今回の法案の中で、常勤医師の確保を容易にするために、五十五条で医師等職員の国家公務員法等の特例を設けているんですけれども、私も、それから、長崎・大村入管に頻繁に通っていらっしゃる山田委員も、何回も質問してきました、根治治療しない方針が入管にあるんじゃないかと。

 根治治療をしない方針を改める、根治治療を目指すということを、この法案できちんとうたうべきじゃないですか。いかがでしょうか。

西山政府参考人 これまでも申し上げてきたところではありますが、入管関連法令に、被収容者に対して根治治療を行わないとの規定は存在いたしません。被収容者処遇規則には、傷病者等に対して、病状により適当な措置を講じなければならないものと規定されており、そのような措置を講じた結果、根治に至ることは当然あり得るものと認識をいたしております。

鎌田委員 次長、根治治療を行わない規定はない、だから、根治治療できるんですよ。根治治療を行わない規定はないんだから、根治治療を目指すということを方針として打ち出せばいいじゃないですか。再度伺います。

西山政府参考人 繰り返しになりますけれども、病状により適当な措置を講じなければならないと規定されており、その措置を講じた結果として根治に至ることは当然にあり得るものと認識をいたしております。

鎌田委員 根治治療を行えないというのは、医者にとっては大変なストレスなんですよ。医者は、根治をするために使命を果たす、それが医者でしょう。それが、根治治療できないということが根底にあると、このように五十五条を設けたとしても、やはり常勤医師の確保は難しいと思いますよ。

 そして、大村入管で今、寝たきりになって、最初はサッカーの運動をしていたんだけれども、大腿骨頭壊死が発症して、今はもう寝たきりで、手術も困難な状態になって、彼は、もう二度と自分の足で歩けない状態になるかもしれないんですよ。だから私は、何度もこの委員会で根治治療しない方針を改めるべきだということを訴えてきているわけです。

 次に移っていきます。

 収容に代わる監理措置について伺います。

 監理人がいなければ監理措置は決定できないのでしょうか。

    〔藤原委員長代理退席、委員長着席〕

西山政府参考人 監理措置は、監理人による監理の下で逃亡等を防止しながら、収容しないで退去強制手続を進めることを可能とする措置でありまして、条文上も、監理人による監理に付する措置と定義されておりますので、監理人の存在を前提といたしております。

鎌田委員 済みません、丁寧に答弁いただくのは結構なんですけれども、つまり、監理人がいなければ監理措置は決定できないわけでしょう。できないんですよねと聞いているんだから、そうですでいいんですよ。短く御答弁いただきたい。

 現行法を見ますと、仮放免は、五十四条、それから規則の四十九条、身元保証人の存在は必須とはなっていないですよね。でも、今回は、監理人がいなければ監理措置は決定できない。どう整合性を取ったらいいんですか。

西山政府参考人 まず、現行法上の仮放免というのは、実際の運用はともかく、制度上は、一時的に解除をするという、収容を一時的に解くという制度でございます。それで、逃走の防止に関する諸規定が仮放免についてはございませんので、運用上、身元保証人を求めているということでございます。

 他方、この監理措置制度につきましては、御承知のとおり、監理人の監理の下で、収容せずに退去強制手続を進めるというために設けた制度でございますので、監理人が必須ということになります。

鎌田委員 では、伺いますけれども、支援団体の方々が独自にアンケートを行っていて、およそ九〇%に値する方々は、保証人になれないと回答している、この現状は御承知でしょうか。

 併せて伺いますが、入管庁として、監理人を引き受けるかもしれない、そういう支援団体の方々への聞き取りとかアンケート調査というのは行っているんでしょうか。

西山政府参考人 まず、御指摘のアンケートにつきましては、結果について承知をいたしております。

 また、こちらで独自にアンケートをしたかというお問合せでございますけれども、やっておりません。

鎌田委員 次長、これは私は問題だと思います。入管庁として、この監理人制度を設けるに当たって、実際に監理人を引き受けてくださる方々、皆様、把握していらっしゃると思いますよ。その方々に対してアンケートを取る、御意見を聞く、それは大前提じゃないですか、立法措置として。

 それをなされていないのに、監理措置を設けて、そして、もしかしたらですよ、これは私の想像だけれども、監理人をやってねと言っていらっしゃるかもしれないということを想像すると、やはり、きちんとこれ、大前提で、支援団体の方々に、法務省、入管庁がまずアンケートを取って声を聞くということ、これは大前提だと思います。これ、是非、今後やっていただけませんか。これからでいいです。大至急やってください。

西山政府参考人 まず、関連するものとして、まさにこれは名古屋事案で調査報告書にも書かれました一つに、支援団体との情報共有といいますか、そういったものをもっと密にすべきだというような趣旨のものがございます。

 それで、なかなか結果としては順調にとはいかないんですけれども、地方局におきましても、その地元の民間団体なりと何かしら協議ができないかということでアプローチをかけたりする努力はいたしております。

 その上で、例えばですけれども、日弁連との間でも協議をさせていただいたりという努力はしていますけれども、その上で、委員が今言われましたアンケート調査といったものも前向きに検討したいと思います。

鎌田委員 だから、ごめんなさい、前置きは要らないです。最後の、前向きにやっていきたい、それでいいんですよ。では、前向きにというその言葉に期待しますから、今後、大至急、スピーディーに行ってください。それをやらないと、制度をつくっても、現場でこれを担ってくださる方々は負担だけが大きくなって、引受手がいなくなったらどうするのという話になっちゃいますよ。なので、やってください。

 この規定は、はっきり申し上げますけれども、今入管が行っている仮放免中の方々の動静監視、これを、過料の制裁を、はっきり申し上げますが、脅しのようにして市民に肩代わりをさせることに等しいんですよ。反論ありますか。

西山政府参考人 先ほどから御答弁いたしております監理措置制度の趣旨からいたしますと、本人の監督等を引き受けて監理人に就任いただく方には、監督、報告等の義務を履行していただくことが当然必要となります。その上で、義務の適正な履行を担保するため、最低限のペナルティーとして、前科となる刑事罰ではなく行政罰にとどまる過料を科すことはやむを得ない、必要なことだと私どもは考えております。

鎌田委員 いや、やむを得なくない。これはおかしいと私は思います。

 監理人を頼まれたら、本当は監視はしたくないけれども、本人が収容されるよりは、仕方ないということで断りようがないということは容易に想定できますよ。皆様御優秀なんでしょう。何でそういうことが発想できませんか。

 伺いますけれども、憲法十八条との関連です。意に沿わない苦役を強いるものに等しいんじゃないですか。いかがですか。

西山政府参考人 監理人はその方の承諾を得て選定することとなりますので、監理人になることを強制することはできません。また、監理人は選定された後に辞任することも可能でございますので、御指摘は当たらないと考えます。

鎌田委員 私には、逃げ詭弁、逃げ答弁にしか聞こえません。

 憲法十八条に、意に沿わない苦役を強いるものに等しいんじゃないかと伺っているんです。だけれども、途中で辞めることもできる、自分が承諾しているんだから、その人がやるのは当然だというのが今の答弁の趣旨ですよ。

 だから、この監理人という制度を新たにつくりますけれども、絶対に負担が大きくなるようなことはあってはなりません。

 結局のところ、今回のこの新たな制度ですけれども、監理人がいないと収容される、動静監視の役割を民間人である監理人に肩代わりをしてもらう、意に沿わないことも課す、許可なく就労したら三年以下若しくは三百万円以下の罰金、逃亡したり呼出しに応じなければ一年以下の懲役若しくは二十万円以下の罰金という法律になっているんです。

 これは、今の仮放免の制度よりもはるかに監視と規制を強化するものになっていますよ。いかがですか。

西山政府参考人 監理措置制度につきましては、まず、要件が明確になっている上、期限を設けず、法律上規定された取消し事由に該当しない限り収容されない、そういう点で、被収容者、仮放免対象者にとっては立場が安定的になるということで、仮放免に比べて対象者にとって利益になる措置であると考えます。

 したがいまして、この制度のむしろ実効性を確保するために監理人による監理が必要不可欠となるというふうに考えております。

鎌田委員 次に移ります。

 資料一を御覧ください。二〇一五年九月十八日に通知をされました収容施設の移送の基準を規定した資料です。

 御覧のとおり、一枚目は地域の入国者収容所長等宛てに出されたもので黒塗りはないんですが、二枚目、三枚目、このとおり黒塗りな状態です。収容されている施設を別な施設に移送されるときの基準を書かれたものを下さいと言ったらこの黒塗りなんです。

 これでは、私たち、議論も何もできません。収容者の方の中には、突然、牛久に移送だからなと言われて、いや、嫌ですと言って抵抗したら、その場で制圧されて、無理やり、理由も言われずに、何で牛久に移送されるのか分からずに移送されている収容者もいるというのが現状なんです。

 この状態のままじゃ議論も何もできませんので、委員長にお願いがあります。

 今日配付をさせていただいたこの資料なんですが、この黒塗りの部分を、黒塗りを外した形で理事会に提出をしていただきたいと思いますので、委員長、お取り計らいのほど、よろしくお願いいたします。

伊藤委員長 理事会で検討させていただきます。

鎌田委員 では、今日の私の最後のテーマになります名古屋入管事案について、最終報告書に基づいて伺っていきます。

 死因の解明調査、継続していないというふうに伺っていますけれども、二月十五日の尿検査の結果の情報が入管として正しく認識されて共有されていたのか。この二月十五日が彼女を死に至らしめずに救えたチャンスだったんですよ。最終報告書を読んだ法務委員の方々なら、それはもうちゃんと分かっているはずです。二月十五の尿検査のケトン体三プラス、これをどのように入管庁で把握していたのか、それをまず伺います。

西山政府参考人 調査報告書にございますように、このケトン体スリープラスの検査結果につきまして、看護師によれば、令和三年二月十八日の診療の際に庁内医師に対しこの尿検査結果を伝えたとのことである一方、庁内医師は、調査チームの聴取に対し、この二月十八日の診療時に尿検査結果を把握したかどうかの記憶は定かではないというふうに述べているところでございます。

 庁内医師や看護師の双方を複数回調査した上、先ほど述べた調査結果に至ったものということでございます。

鎌田委員 複数回聞き取りしたといっても、不明のままなんでしょう。看護師は庁内医師に言った、庁内医師は聞いたかどうか覚えていない。これ、はっきりさせなきゃいけないじゃないですか。最終報告書を出したからこれで終わりということにならないじゃないですか。

 この二月十五がどれだけ重要なポイントになっているかという認識が私は希薄だと言わざるを得ませんよ。これが、このことが、このときにどういう判断をしたかということによって、三月四日の診療、これは精神科医が診療しているんですよ、おかしいじゃないですか。

 二月十五に尿検査でケトン体三プラス、脱水状態、極度の飢餓状態、栄養失調、一般の我々なら、すぐ点滴が必要な状態ですよ。昨日見たビデオでも、彼女は何回も何回も、病院に連れていってほしい、点滴をお願い、何回も訴えていたじゃないですか。

 看守はボスに報告すると言っていた、それは当然です。だから、私が言っているのは、現場の職員たちも職員なりに一生懸命やっていたけれども、入管庁の組織の体質を問うているんです。その報告を入管庁がちゃんと本庁として把握をして、ああ、この結果ならばこの医療措置を行わねばならないという判断を二月十五に行っていれば、彼女は死ぬことはなかったんだ。だから聞いているんです。

 尿検査結果、検査結果が出た二月十八日の時点、これは入管庁は承知していたんでしょうか。報告は届いているんでしょうか。

西山政府参考人 入管庁本庁は当時、把握をいたしておりません。

鎌田委員 何でですか。そういう仕組みになっているんですか。

西山政府参考人 これは調査報告書にも問題点として指摘されていたところでございますけれども、名古屋局において、上の幹部の方にそういった情報が必ずしも伝わっていなかったという体制上の問題点がございました。

鎌田委員 今回、改正案を出しているんでしょう。改正案を出している限りは、この最終報告書でもって、もうこれで終わりということはなりませんよ。まず、この最終報告書も抜けがたくさんある。ここで幕引きなんて駄目ですよ。まずは、この最終報告書をもう一度再点検して、まだ曖昧になっているところ、不明確なところを明確にした上で、それで改正案を出すなら審議の値にも資するでしょう。でも、この最終報告書で幕切れには絶対に私はするべきではないと思います。

 改めて伺いますけれども、調査チームが要求していなければ、尿検査結果は最終報告書に記載はされなかったということになりますよね。

西山政府参考人 調査チームが、尿検査結果があるのではないかということに気づいて報告を求めた結果、この尿検査の結果が発覚したといいますか、判明したということでございます。それを、その前提を、なかったらという仮定の御質問には、なかなかお答えは困難でございます。

鎌田委員 そういう答弁になるんです。だから、先ほど来申し上げているように、入管庁としてのまず基本的な基本的な体質、あるいは構造、これを改めていかないと、この改正案を出す資格はないと私は断言をしたいと思います。

 三月四日に診察したのは精神科医ということは、この最終報告書にも書いてあります。ですけれども、この精神科医に、彼女が二月十五日の段階で、尿検査、ケトン体三プラスが出ているという報告がなされていなかったから、この精神科医は、クエチアピンそれからニトラゼパム、これを処方してしまっているんです。このクエチアピンとニトラゼパムを処方してしまっていることが、最後、彼女の三月四日と三月五日のこの薬の服用で、六日の死に至らしめてしまったんです。

 再三申し上げます。入管庁には詐病を疑う文化でもあるんですか。何で精神科医に診療を委ねたんですか。誰の責任ですか。

西山政府参考人 これも調査報告書にございますが、ウィシュマさんについては、体調が非常にお悪いということは分かった上で、様々、内科医はもう当然ですけれども、いろいろなお医者さんに診ていただいた上で、なかなか、その原因といいますか、それが分からないということで、最終的には精神的な面を診断する必要があるのではないかということで診察医の診断が決まったという経緯でございます。それが三月四日というふうに決まったという状況でございます。

鎌田委員 次長、済みません、確認させてください。私たちがいただいている最終報告書では、ケトン体三プラスが出た後、今の御答弁だと、様々な内科医等、専門家、医者に診てもらって、そして三月四日の精神科につながっていると今答弁されたけれども、私たちがもらっている最終報告書には、そのケトン体三プラスが出た後、様々な内科医等の医師の診療記録はないですよ。抜けているんですか。私の見逃しですか。

西山政府参考人 私の答弁が言葉足らずでございました。申し訳ございません。

 具体的に言いますと、令和三年一月下旬以降に諸検査なり、外部医療機関も含めて診療が行われたということ、その上で、精神科医にも診せた方がいいという判断の下で三月四日に決まったという経緯でございます。

 尿検査の結果というものは、先ほど御質問にもありましたように、庁内医師が記憶にないという状況でもございましたので、この尿検査の結果を踏まえて精神科医に診察をさせたという、そういう因果関係ではございません。

鎌田委員 今の答弁、二重に聞き捨てなりませんよ。一月末の、彼女の体調に応じて相当の専門家の医師の診療を受けた、それはここに書いてある、分かります。もう一月末には彼女は嘔吐を繰り返しているし、嘔吐物に血が混じっているのも書いてありますから。

 私が聞いたのは、二月十五に尿検査をしてケトン体三プラスが出た後、何でそれに見合った診療をさせないんだ、三月四日の精神科医の診療につながっているんだということを聞いているんです。もうこれはいいです。

 とにかく、入管庁としての、皆さんたちの組織のその体質、構造を基本的に改めていただかないと。収容者に対して医療的ケア、処遇の問題です。もう二度と同じことを繰り返しちゃ駄目ですよ。

 そのためにも、今のような御答弁では、私は、今回の法案審議、とてもじゃないけれども入れない。まずその前に、この最終報告書、足りないところをきちんと検証していって、先ほども曖昧な、庁内医師は記憶がない、看護師は報告した、何回も聞いたけれども分からないのでそのままです、それじゃ駄目でしょう。最終報告書に値しませんよ。

 本人は点滴希望を何度も何度も伝えていますよ。実は、今回の彼女の、済みません、御遺族がいらっしゃいますけれども、ごめんなさい、死亡推定時刻は三月六日の昼頃であると考えられます。その際、御遺体の解剖で、血液の採取時間は、このクエチアピンとニトラゼパムを服用してから、最終服用時間から十二時間以上は経過しています。クエチアピンの半減期を御存じですか。三時間です。三時間でクエチアピンは半減する薬なんです、薬物なんです。

 ところが、その御遺体の解剖の際に、血液中のクエチアピンの濃度は三百七十六・四ナノグラム・パー・ミリリットル。マックス量を処方されて、十二時間以上たっているにもかかわらず、三百七十六・四ナノグラム・パー・ミリリットルですよ。これは明らかに、脱水で、飢餓で、栄養失調で、瀕死の状態にある彼女に投与してはならない薬だったんですよ。医療過誤の疑いだってありますよ、これは。そういうことすらも検証されていないのがこの最終報告書なんです。きょとんとしていないで。

 私は医療の専門家じゃないけれども、医師からきちんと、そして今日も手元に配付資料しています。クエチアピンの処方の注意事項、高齢者の人や何か病気を持っている人には絶対に服用は注意しなきゃならない。なのに、彼女には、精神科医が、服用しているから、向精神薬、抗うつ剤をこうやって出している。そうしたら、当然ですよ、当然、この薬によって中枢神経を抑制されて、それによって、ニトラゼパムも併用されたことで、意識障害と呼吸抑制、これ、起こしますよ。死亡する可能性は、これは医学的に検証し直す必要があるんです。

 ですから、最終報告書、これはもう一度、第三者による専門委員会を立ち上げて医学的な検証をすべきだと思います。いかがですか。

西山政府参考人 まず、前提といたしまして、御指摘のクエチアピンあるいはニトラゼパムの処方の点に関しては、調査報告書においても検討されているところですけれども、ウィシュマさんの詳細な死因等を特定することが困難であることを前提としまして、専門医である大学教授による、精神科を受診した時点で幻覚や幻聴の症状があった上、処方量も通常量であるので処方に問題はなかったとの見解や、医師である二名の外部有識者による、幻聴や不眠の症状を緩和するために抗精神病薬及び睡眠導入剤が処方されたものと思われる、医師として、薬を出してみて症状が緩和したことを踏まえて後から診断を付すこともあるとの指摘等を踏まえ、処方した医師の判断に問題があったと評価することはできないとしているところでございます。

 その上で、私どもとしましては、外部有識者を加えた調査を尽くしたというふうに考えております。

鎌田委員 いや、尽くされていない。尽くされていません。認識を改めていただきたい。

 この二つの薬がいかに彼女に最後の打撃になったかということです。しかも、それは精神科医が処方しているんだから。これが内科医だったら、この薬は絶対に処方しませんよ。こんなに衰弱し切っている彼女にこの薬を処方したら、もう意識はもうろうとなって、首はしなだれて、二本の手と二本の足もだらんとして、昨日見たビデオでも、彼女はもう最後、精神科医の診察を受けた後、自分の独居室に帰ってきたとき、何も言えず、何も体を動かせず、あんなにだらんとしているにもかかわらず、この薬を処方されて、三月六日にはそのままお亡くなりになってしまったんですよ。

 この最終報告書は最終とは呼べません。絶対に第三者の独立した委員会でもって改めて最終報告を作り直すべきです。

 最後に伺います。

 昨日、ビデオを、私たちは委員長のお取り計らいと御調整によって視聴することができました。しかし、一昨年も私はビデオを見ましたけれども、昨日のビデオを見て、こんなにビデオの違いがあるのかと正直驚きました。昨日のビデオは食事の場面が非常に多い。ですが、一昨年、私たちが視聴したビデオには食事の場面に偏っているなどということはございませんでした。

 これは、はっきり申し上げて、一切の編集を加えずに、足しもせず、引きもせず、全てのビデオの開示を私は要求するものであります。それが絶対に必要です。どんなに時間がかかろうと、この法務委員会で編集されないビデオを見るべきです。

 委員長、理事会において御協議をいただきたい。お願い申し上げます。

伊藤委員長 理事会で検討させていただきます。

鎌田委員 終わります。

伊藤委員長 次に、吉田はるみ君。

吉田(は)委員 立憲民主党の吉田はるみです。

 今、鎌田委員からもありましたけれども、昨日はウィシュマさんの映像を見ました。本当に、委員長のお取り計らい、ありがとうございます。心が重い、胸が詰まる、あのウィシュマさんの姿が私の娘だったらと思ったら、本当にいたたまれない思いになりました。感情的になりそうですが、今日は冷静に議論をさせていただきたいと思います。

 まず最初に、冷静にと言っておきながら大変恐縮なんですが、私は最初の朝の質問で、えっと思う言葉を聞きました。委員の先生方、気づいたでしょうか。大変恐縮ですが、この点、私は非常に違和感を感じましたので、最初に御指摘させていただきたいと思います。

 自民党の田所委員の言葉でございます。罪を犯した者でも送還忌避さえすれば送還できないとするのは余りに無力という話の中で、正確な議事録があるわけではないので、ちょっと私のひっかかったところだけ指摘させていただきたいと思います。かなり問題があると感じている、そのような者が残ろうとするのは我が国の治安にも大きな影響がある、しっかりとした、これを除去するような、そういう対策が必要になってくるんだろうというふうに思っていますというふうにおっしゃったんです。

 私、除去って何だろう、これって何だろうと思いました。この除去という言葉、大臣、人に使う言葉ですかね。ウイルスとか、ネズミ除去とか、害獣とか、そういうようなものは除去という言葉を使うと思うんですけれども、法務省には、罪を犯した人でも、もう一度、罪を償って、そして社会に復帰していくという、矯正局、この理念があると思うんです。私は、ここにまさに人権に対する意識の欠如をどうしても、申し訳ないです、感じてしまいましたが、大臣、これは通告していないんですけれども、大臣のお考えをお聞かせください。

齋藤(健)国務大臣 田所委員がどういう趣旨で御発言されたかはちょっと私は分からないのでコメントできないんですけれども、人を除去するというふうにおっしゃったのか、そういう事態をなくすという趣旨でおっしゃったのか、ちょっとよく分からないので、コメントは差し控えたいと思います。

吉田(は)委員 まず、今回、この法案の大前提になります、私はやはり人権に関して真剣に考えたいと思っています。

 まず一つ目ですけれども、この質問も、そんなのは分かり切ったことだろうと委員の先生に怒られそうなんですが、改めて伺いたいと思います。

 憲法十四条、これは、「すべて国民は、法の下に平等であつて、人種、信条、性別、社会的身分又は門地により、政治的、経済的又は社会的関係において、差別されない。」とあります。これは、この文言どおりですと、国民とありますので、日本国籍を有する者というふうに解されますけれども、この中に日本で暮らす外国人は入りますか。

木村政府参考人 お尋ねにつきましては、最高裁判所の判例におきまして、我が憲法十四条の趣旨は、特段の事情の認められない限り、外国人に対しても類推さるものと解するのが相当であると判示されているものと承知をしております。

吉田(は)委員 ありがとうございます。

 そうなんです。昭和三十七年、最高裁の大法廷での判決、憲法はこの国に暮らす外国の方もきちんと包括しているというところなんですけれども、この質問をすると、昨日、私がツイッターで告知しましたら、ばかかというコメントが出ました。これは日本国民だけであって外国人なんか入らないんだというようなコメントもあって、私はちょっと驚いたんですけれども、でも、きっと、こういう考えでいらっしゃる方はほかにも大勢いらっしゃるのではないかなというふうに思います。

 改めて、人権に関して、少し深掘りをしていきたいと思います。

 では、一九四八年十二月十日、第三回国連総会において採択された世界人権宣言、これは、大臣、うなずくだけでもいいんですけれども、このことは大臣は御存じでいらっしゃいますよね、当然。はい、ありがとうございます。

 これは先生方のお手元資料にも配らせていただきましたけれども、改めて、この人権宣言、私は法務委員会の委員の皆様には絶対に全文を読んでいただきたい。その上でなければこの法案の審議はできません。その意味で配らせていただきました。

 私は、これからすると、ウィシュマさんの事件は、明らかに人権、人道の面から入管に大きな問題があったと言わざるを得ないと思うんですけれども、私、こういう人権の話をすると、よくこう言われるんですよ。人権、人権って、何か、左派思想だとか、そういうレッテル貼りをされることがあるんですけれども、私は、人権は、イデオロギーの対立ではなくて、人間の本質だと思っています。

 齋藤大臣は、この辺り、人権に関して、私は、日本は人権を大切にする国という国際評価を受けるべきだというふうに思いますけれども、大臣、ちょっと併せて、私はイデオロギーの対立でないと大臣に言ってほしいんですが、その点と、国際的に日本は人権を大事にする国だということが国益にかなうというふうに私は思っていますが、法務大臣の見解をお伺いします。

齋藤(健)国務大臣 まず、国連総会で採択された世界人権宣言は、その前文に述べられているとおり、全ての人民と全ての国が達成すべき共通の基準ということで宣言をされています。同宣言は法的拘束力を有するものではないのですが、人権を所掌する法務省の外局である入管庁も、当然、その趣旨を尊重して業務を行っていかなくてはならないというふうに考えています。

 また、国際評価を受けるべきということでありますが、国際的な評価というのはいろいろな見方があると思うんですけれども、私どもは、人権は我が国が重視する普遍的価値の大変重要なもののうちの一つだというふうに考えておりますし、基本的人権の保障は我が国憲法の基本原則でもございます。当然のことながら、人権の擁護は我が国の基本的な責務であるとも考えているところであります。

吉田(は)委員 まさに本当にそうあってほしいんですけれども、ただ、国際的にはその状況に今ないというのが私は現状だと思います。

 ちょっと質問の順番を変えます。済みません。時間がなくなるといけないので、ちょっと難民申請の方に今の話から移っていきたいと思います。

 今回の改正法案の中で、一つ大きな問題点として日弁連始め各所から指摘をされているのが、三回目以降の難民申請者への強制送還停止の効力についてというところですけれども、これは、三回目以降、もう国に帰すよということをしてしまえば、その中には、帰国したら、死刑にされたり、生命の危険があったり、生きていけないような状況にある方々も含まれるわけですが、これはいわゆる、難民条約の第三十三条のノン・ルフールマン原則に反するものではないかと私は考えるのですが、法務大臣の見解を伺います。

齋藤(健)国務大臣 我が国では、難民認定手続におきまして、外部有識者である難民審査参与員が三人一組で審理を行い、法務大臣はその意見を必ず聞いた上で判断するなど、慎重な審査が十分尽くされており、制度と運用の両面から適正性を確保しているところであります。

 その上で、送還停止効は、難民認定申請中の者の法的地位の安定、これを図るために設けられたものでありまして、法的地位の安定を図る必要がない三回目以降の難民等認定申請者をその例外としているところであります。

 もっとも、難民等と認定すべき相当の理由がある資料を提出すれば、なお送還は停止されることとし、万が一にも本来保護されるべき者が送還されることがないようにしており、ノン・ルフールマン原則に反した送還が行われることはない制度となっております。

吉田(は)委員 大臣、それ、言い切れますか。本当に、三回目以降で強制送還してしまった方々の中に絶対に含まれないと言い切れるでしょうか。

 もし、この法案が通って、そしてそのような、お亡くなりになるような事案が生じたら、私はもう本当にいたたまれません。私たちがそんな法律を通すということに、私は加担することはできないなというふうに思うんですね。

 これは絶対に言い切れるでしょうか。

齋藤(健)国務大臣 そういうことがないようにしっかりと運用していくということです。

吉田(は)委員 そのためにはまだまだ検証すべき点がたくさんあるかなというふうに私は思っています。

 こういった国際的な評価を、私は今、外交の面、そして経済の面からちょっと検証させていただきました。

 まず、今、今回の改正に対して、UNHCR、国連難民高等弁務官事務所、こちらも懸念を表明しています。また、二〇二二年のアメリカ国務省人権報告、こちらでも、ウィシュマさんの死亡事件が報告され、日本の入管行政そして人権に対する非常に厳しい目が注がれています。

 私は、これまでも、政府が今言う送還忌避者に当たる方や仮放免中の方、また不法滞在の外国人の方々とお会いしました。この方々の中には、本当に、出身国に送還されてしまったら殺害される、迫害されるおそれのある方々がいらっしゃる。本当に深刻な状況であるということを私自身、お話を聞いて感じているところなんです。

 こういう、人権のこと、しっかり受け止めています、三回目以降送還して、そういうことがないように確実にしますというふうにおっしゃるんですけれども、恐らく世論的には、まだその点、納得いかないというのが私は現状だと思います。また、国際的にも、その点まだ納得いかないぞというのが現状だと思うんですが。

 これは、齋藤法務大臣、経済通でもいらっしゃるので、ちょっと経済の面から発言させていただきたいんですが、今、世界では、ESG投資、これが金融業界では注目されています。言うまでもありませんが、環境、社会、ガバナンス、こういった面から持続可能な社会を目指す、責任ある投資のコンセプトです。そういう世界のトレンド、これまでの、環境や労働者を後回しにしても利潤を生み出す利益追求型ではなくて、ここからは、社会的責任を負う責任経営に確実に今転換しています。

 ほかのトレンドとしても、もう御存じの方も多いかもしれませんけれども、例えばフェアトレード、これは、児童労働に非常に厳しい目が向けられています。また、最近のファッション業界では、いわゆるファストファッションの、皆様よく御存じのところでいうとH&Mやユニクロ、こういったところが、アンゴラヤギの毛であるモヘア、この使用中止を表明しているんですね。

 これはなぜかというと、動物愛護団体の告発で、ヤギの毛を切るときの、ちょっと血を流しているヤギがいたり、非常に問題のある、虐待の採取工場のことが明るみになって、全世界のファストファッションの方々はもうモヘアを使わないと言っています。

 こういったように、世界はいろいろな目で、社会的責任というものに大変厳しい目を向けるようになっている。日本でも、労働者の、一つよくなるきっかけとして、上場企業には人的資本の情報開示、これが有価証券報告書で義務づけされるというような時代になってきているときに、私は、この十年で確実に世界経済の流れが変わってきていると思うんですよ。

 大臣、この人権というものを尊重した国であるかどうか、これは私は次の大変重要な経済的な指標にもなると感じるんですが、法務大臣のお考えを伺います。

齋藤(健)国務大臣 私も長らく経済政策に携わってきた人間でありますので、そういう方向に今あるということは認識しています。

吉田(は)委員 是非、齋藤大臣の方で、この点を政府に伝えていただきたいんです。今のこのままの入管行政、また法案であると、日本は選ばれない国になります。人権を軽んじるところが本当に今指摘されているわけですから、国際的評価。また、今政府の方では、外国人の研修、ごめんなさい、ちょっと今、正式な名前があれですけれども、研修生制度、この見直しも始まっているところだと思うんですけれども、本当にこの点を私は申し上げたいです。日本は選ばれない国になる、このままでは。これは絶対に国益にかなわない、本当に人権をしっかりと守る国でなければいけないということを強調させていただきたいと思います。

 そこで、その一つとしても大変重要なところなんですけれども、具体的な数字を伺います。三回以上の難民申請をしている申請者は何名いますか。また、そのうち未成年者は何名いるか教えてください。

西山政府参考人 令和四年に難民認定申請を行った者のうち、三回目以降の申請者は三百七十名でございます。これら三百七十名のうち、申請日時点で十八歳未満の者は四十九名ございます。

吉田(は)委員 三回目以上が三百七十人、そして、そのうち未成年、その内数ですか、四十九名。済みません。

西山政府参考人 十八歳未満の者は三百七十の内数でございます。

吉田(は)委員 内数で四十九名という、未成年のお子様もいらっしゃる。

 先ほど大臣、絶対にそういうことはないというふうにおっしゃったんですけれども、三百七十人いらっしゃるんですよね、今回、三回以上という形の対応になると。

 そして、未成年のお子様の中には、日本で生まれ育った、あるいは日本の教育を受けて、この国で育って日本語しか話せないお子さんもいらっしゃいますし、そういう方々を強制送還するというのは私は余りにも酷だと思うんです。これがやはり人権を大事にする日本であるならば、私はこれはまずいと思うんですけれども、大臣、いかがでしょうか。

齋藤(健)国務大臣 我が国では、退去強制事由に該当する場合でありましても、本邦への在留を希望する場合には、個々の外国人の事情を慎重に考慮し、在留を認めるべき者には適切に在留を認めています。

 このうち、退去強制手続における在留特別許可は、過去八年間の年平均が約二千五百件で、これは退去強制手続において本邦への在留を希望して異議申出に及んだ件数の約七一%に達しておりまして、在留を認めるべき者には適切に対応しています。したがって、このような手続を経て我が国から退去が確定した被退去強制者は、逆に言うと迅速に送還をされなければならないということになるわけであります。

 その上で、今御指摘の点でありますけれども、例えば、当該未成年の子が幼くて、親による監護、養育が必要な場合において、親に在留資格がなく、在留特別許可も認められないようなとき、こういうときには、人道上の観点から当該未成年の子のみを在留特別許可とすることは適切ではないわけでありますので、これらの事情を考慮してもなお当該子のみに在留を認めるべき特段の事情がない限り、家族一体として帰国をしていただくということになります。

 他方、当該未成年の子が本邦において出生し、相当期間本邦の初等中等教育機関で教育を受けているなどの事情がある場合において、例えば、親のほかにも適切な養育者が存在しているとか、自活するめどが立っているですとか、そういう事情も総合的に勘案して、当該未成年の子について在留特別許可を認めているという運用をしているところであります。

吉田(は)委員 私、正確に理解したでしょうか。間違っていたら指摘をしてください。親と子を離すのはよくないから、その場合にはお子さんも一緒に帰国させるんですよね。強制送還するんですよね。私はこれは違うと思うな。一緒にしなきゃいけないから日本に在留許可をする、これが人道上の配慮だと思います。ちょっと今のは私、びっくりしました。こういうところが、大臣、国際的な批判にさらされるところなんですよ。ちょっと申し訳ない、それはとても私には納得できないところでございます。

 それで、じゃ、今のお話だと、親は強制送還して、子供だけ誰か保護者がいれば残すケースはあるというようなことでしたよね。

 実は私も、法務大臣秘書官をしていた当時、こういった案件も見ることがあったんですけれども、これはやはり未成年のお子様からの訴えの手紙でした。自分は、ずっと日本人だということで生活してきたと。大学に入るところのお子様でしたけれども、もう親が帰ってしまうかもしれない、家族がばらばらになってしまう、どうにかしてくれないかという本当に悲痛な訴えだったんですけれども、やはり人なんですよね。外国人も、私たちも、人なので、家族を大事に思う、自分たちの家族を大事に思う、これは私、もう本当に共通のことだと思うので、是非ここは本当に御理解いただきたいなというふうに思います。

 時間が限られている中、警察庁の方からも来ていただいていますので、ちょっと早めに進めさせていただきます。

 こういった点、今の一体として帰国させるというところもそうだったんですけれども、いろいろな面で私は国益を考えたとき、G7を前に、このままこの法律を通過させるというのは大変リスクがあるというふうに思っています。G7議長国として、本当に外交上のマイナスだなというふうに私は思っているんですね。

 もう今、G7各国からも指摘をされていますけれども、LGBT差別禁止法、同性婚の法整備、こういうことが進んでいない、また、先進国としての責任とも言える難民保護、これもしっかりとまだ整備されていないというような国際的な批判、私はこれを免れないというふうに思います。是非、ここの点は委員の各位にも御検討いただきたいと思うんですけれども。

 ちょっと自分の思いで書いたメモがどこかに行ってしまったので、今頭に思い浮かぶままに申し上げますけれども、こういうことを言うと、例えば、三回申請して帰される方、また、犯罪を犯した外国の方、この方々というのはこの国には必要ない、そんな人たちを国のお金で食わせる義務があるかというように思う方もいらっしゃるかと思います。実際、そういうようなこともツイッター上でも発言されています。でも、私は、そういうことの判断ではなくて、国としてきちんと向き合い、これは国の人権を大事にするコストだというふうに思います。何か、一人一人を捕まえて潰していくような、そんなやり方ではなくて、一体、日本という国はどういう国なのか、そして、どういう国を目指していくのか、これが私は本当に今問われている今回の法案提出だと思います。

 齋藤大臣も海外の御経験も豊富でいらっしゃいますので、もしかしたらその思いは共有するところもあるのかもしれませんけれども、私は、シンガポール、そしてイギリスで、自分自身が就労ビザを取って移民として暮らしてきた経験があります。ですから、みんな仲よしとか、みんないい人、こんなきれいごとじゃないというのはもちろん分かっています。自分自身も差別をされた経験もありますし、マイノリティーの経験をしたからこそ、それを繰り返してはいけないと。自分が感じたことを、やはり日本は逆に生かしていかなければいけない、それを力にしていく国にしていかなければいけないというふうに私は感じるということを申し上げたいと思います。

 齋藤大臣、是非この辺り柔軟に、今回の法案は結論ありきではなく考えていただきたいのですが、改めて、大臣、お願いいたします。

齋藤(健)国務大臣 今回の法改正の趣旨、意義についてはもう何回も御説明しておりますので繰り返しませんが、恐らく委員御指摘の中には、正式な在留資格を取って日本の社会で仕事をしたり生活している人たちとの、今度は共生をしっかりやっていかなくちゃならないという部分も多分御指摘の中には含まれているんだろうと思っております。

 その点については、政府は計画も作って、着実に地方公共団体なんかとも協力しながら前進をさせていこうということでありますので、そこは吉田委員と一緒に頑張っていきたいなと思っています。

吉田(は)委員 外国人であっても、日本人であっても、人です。これから、いろいろな外国の労働者の方々がこの国にもいらっしゃると思いますが、労働力が来ると思わないでいただきたい。人が来るということです。本当にこのことだけは私は強調させていただきたいと思います。

 最後、せっかく警察庁に来ていただいたので、伺います。

 一般的に、不法滞在の外国人、これを言うと、不法滞在者なんだからしようがないよという声が聞こえてきそうですけれども、またこれも私は人権の観点から伺います。

 不法滞在の外国人がDV被害等を訴えた場合、警察に助けを求めてきたとします。そのとき、この方は不法滞在として逮捕されますか、それとも保護が受けられますか。

早川政府参考人 お答えいたします。

 お尋ねにつきましては、個別具体の事案ごとに判断する必要があり、一概にお答えすることは困難であります。その上で、一般論を申し上げますと、逮捕につきましては、被疑者の境遇や犯罪の態様その他諸般の事情に照らし、逃亡のおそれや罪証隠滅のおそれなどの逮捕の必要性等につきまして慎重に検討することとなります。

 警察といたしましては、事案に応じ、地方出入国在留管理局などの関係機関と連携するとともに、法と証拠に基づき適切に対応することとなります。

吉田(は)委員 分かりにくいな。これが、大臣、答えなんですよ。人権国家だったら、まず命最優先で保護しますとはっきりと言っていただくのが私は本当に人権を大事にする国だと思いますし、あの国は絶対そこは大丈夫という自信につながるところではないかなと思うんですけれども。

 要は、逮捕するかもしれないし、しないかもしれない。そんな状況で、例えば今回のウィシュマさんの場合も、御遺族の方にも、済みません、ありがとうございます、出頭したらそのまま逮捕されて、名古屋入管に収容されたわけです。

 これは、私も一女性の立場からいうと、本当に、自分が不法滞在していると分かっていて、でも、身の危険を感じて、怖いと思って、思い切って行ったら、逮捕されて、収容されて、そして無念の死を遂げられる。私は、こんな罰を受けるいわれはないと思いますよ。これは余りにもやはりひどいと思います。あらゆることに私は命が最優先になるべきだと思いますので、この点の指摘も是非受け入れていただいて、そして、本当に人権を大事にする国、これはイデオロギーを超えた議論にしていただきたいということを申し上げまして、私の質問を終わります。

 ありがとうございました。

伊藤委員長 次に、寺田学君。

寺田(学)委員 立憲民主党の寺田です。

 いよいよ入管法、二年前も質疑の場にも立ちましたけれども、改めて質疑する機会となりました。二年前もいろいろ議論をしながら、今回、筆頭として臨んでいるわけですけれども、私自身としては、できる限り具体的に、できる限り知り得る数字も含めて明らかにした上で、かつ国民に価値観をしっかりと問う審議であらねばならないと思っています。

 先ほど、鎌田さんの根治治療の是非というのがありました、収容の中で。これも恐らく、私自身の価値観は持っていますけれども、国民の皆さんの中においては、いや、助けてあげるべきだろう、根治治療をしてあげるべきだろうというお声もあるでしょうし、一方では、もちろん国民でもない、そして納税者でもない、一般国民の皆さんが全員、根治治療に無料でアクセスできているかどうかということも鑑みた上で、認めるべきということに慎重な方もいらっしゃるかもしれません。

 犯罪者、犯罪の経歴を持つ方、今回の法案の中で随所に出てくる一つの基準になりますけれども、実刑三年、実刑一年、犯罪を犯した方に対してどのように向き合うのかということも、入管が答えを持っているわけでもなく、ここは、国民の理解がどのような状態になっているのかということがやはり一番我々としては大事ではないかなと思っています。

 その中において、しっかりと温かい社会というものをつくれるように、我々としても、具体的な数字を列挙しながら、価値観を併せて伝えていきたいというのがこの入管法に臨む上での私自身としての考え方だと思っています。

 今日は、できる限り、立憲の質疑者の皆さんには、収容、及び監理措置含めた代替措置についての質問を集中的に行ってもらいました。今までの中で質疑が出るだろうと思っていたんですけれども、基礎的な情報をちゃんとまず一回確認しておきたいと思っています。

 まず、令和四年末の段階で、いわゆる送還忌避者という方が何人いるか、これは出していただいたデータにもありましたけれども、送還忌避者数、それと、その中において収容されている方の人数、その割合、そして、仮放免されている方の人数、そして、仮放免されながらも、いわゆる、政府の資料によると逃亡者と言われていますけれども、逃亡することによって仮放免資格のなくなっている方、それぞれの数字をデータとして御答弁いただければと思います。

西山政府参考人 お尋ねの数字につきまして、いわば母数となります送還忌避者、令和四年末時点で四千二百三十三人ございます。そのうち、まず、被収容者は八十七人、パーセンテージとしては約二%。次に、被仮放免者が二千七百三十六人、パーセンテージで約六五%。それから、仮放免中で逃亡し手配者となった者、これが一千四百十人、パーセンテージで約三三%となってございます。

寺田(学)委員 私自身も、向き合う上で数字は大事だと思っていて、想像とその実態というものも考えなきゃいけないと思っています。

 送還忌避者は、これも年々上下するものだと思いますが、四千二百三十三人。その中で収容されている方の数、送還忌避者内で収容されている数が八十七名で、それ以外の方は基本的に、仮放免をされているか、仮放免された後に連絡がつかず逃亡者としてカウントされている者が、二千七百三十六人と千四百十人の合算ということだと思います。

 私自身、これは、収監されている方はその月、その年によって大きく変わるものだと思いますので、この瞬間だけをもって評価はしづらいと思いますが、恐らく、一般的にイメージされているものとかなり乖離があるのではないかなと思っています。実際、私自身も、数字を示されたとき、私は令和三年の数字を最初に見せられましたけれども、実感としては乖離がありました。それとともに、今回であれば四千二百三十三人中八十七人、二%ですけれども、想像よりも大分少ないと思っています。

 ただ、その一方で、これだけの人数にもかかわらずウィシュマさんのような件が起きてしまったということは、非常に問題だと思っています。もちろん、人数が多いから手が回らなくてそのようなことが起きたということで許されることではないと思いますが、これほど、そのときそのときで違うのであれですけれども、私の想像よりもはるかに少ない方の収容者数の中においてあのようなことが起きたということは、大いに問題があることだと私は思っています。

 それ自体は、今、鎌田理事も含めてかなり厳しく御追及いただいたと思いますし、裁判で今争われていることだと思いますが、あの場に常勤の医師がいらっしゃったらまた違ったのかというような疑問点というものも思い浮かびます。

 これもデータで知りたいんですが、現在において、常勤の医師が配置できている施設の割合、又は、常勤がいなくても常時医師がいる形になっている施設、数等、割合等あれば、データでお示しください。

西山政府参考人 現在、収容施設が常時開設され診療所が置かれている主要六官署のうち、五官署においてそれぞれ一名の常勤医師を配置している状況にあります。一局、東京局横浜支局には配置できておりませんで、非常勤医師や外部病院受診により対応しているところでございます。

 なお、これら六官署以外にも収容場を有する十一官署がございますが、これらにつきましては、長期的な収容等を行うことを想定していないため、診療所がなく、診療が必要な場合には、外部病院受診により対応しているところでございます。

寺田(学)委員 どのように外部受診をさせるかどうかの判断をどうするかというのは、大きな論点だと思います。まず、現状として、今伺ったことは受け止めておきますが。

 今回、質疑に際して、常勤の医師を集めることを苦労しているということ自体は様々なところから聞きました。確かに、言われるとおり、いわゆる医師としての使命感だけで常勤医師として勤めることの難しさは、僻地医療のことも含めて、あると思います。特に、この入管施設の場合でいうと、一般的な医師としての給与が下がるということも含め、今回、それで、兼業可能にするということ自体を解決策の一つと挙げているんですけれども、果たしてそれだけでしっかりとした医療体制、常勤の医師を置くことができるのかということは、私は甚だ不十分じゃないかなというふうに思っています。

 もちろん、それ以外に何をするべきなのかということ、妙案が今この場であるわけじゃないですが、あのような出来事が今後起きないようにするために、医師が常時いること自体は非常に大事なことだと思っています。

 これは考え方にもよると思うんですが、いろいろな方に聞いたときに言われた、なるほどなと思ったのは、常勤医師を置くことと常時医師がいることは当然ながら違うことですが、常勤医師を確保すること自体は非常に難しいんじゃないか、それより、ならば、常時その場に医師がいること、もちろん医師が日によって替わること自体の問題点は生まれるかもしれませんが、常時医師がいることをまずは目標として、もしかしたら常勤の医師よりもそれの方がいいこともあるかもしれません。

 常勤の医師を確保するということだけではなくて、常時その場に医師がいる、ローテーションでも何でもいいです。地域の医師会の方々の相当な御尽力が必要かもしれませんけれども、そういうやり方で、とにかく医療体制、不十分な部分は補っていく、そういうやり方があるんじゃないかなと思うんですが、大臣、お考えがあれば。

齋藤(健)国務大臣 今、常勤医師が配置されない官署では、常時医師がいる、そういう状況にはなっていないんですけれども、例えば、東京局横浜支局においては、現在、非常勤医師十名が輪番で診療を行ったりして、週二回の庁内診療の機会をということで、工夫しながらやっているわけであります。

 御指摘のように、常勤医師がいれば、じゃ、完璧かということではないと思っていますし、常時医師がいる状況をつくるということはかなり対応ができるんだろうと思っておりますので、その医師がどういう協力をいただけるかという現実に向き合いながら、ベストな方法を考えていくことなんだろうと思っています。

寺田(学)委員 私自身としては、常時医師がいるということを、もしかしたらベスト、常勤医師よりももしかしたらいいことがあるのかも、総合的に勘案するとあるのかもしれないと思っています。常勤の医師にこだわらず、常時医師がいる、日中はいるという体制をまず早急に整えていただきたいというのがまず一つの要望であり、その努力を促したいというふうに思います。

 収容の上限設定についてです。

 これは、二年前の質疑を経て協議をした中において、私が聞くところにおいては、六か月の上限を設定するということで与野党が合意をしたと。もちろん、理由がある場合には延長は可能だというような合意だったというふうには聞いておりますけれども。

 私自身は、まずは、国際的にも言われていることですけれども、この収容に上限を設けるということは非常に大きな必要性を持っていると思っています。今回、三か月に一度の定期的なチェックというものは制度的に入れているようですけれども、それと上限とはまた違う話ですので。三か月に一回、その人が収容されるべきかされないべきかを判断するということと、上限を、二年前に遡って言えば、六か月として定める、原則六か月として定めるということは、両方、両立することだと思っています。

 今回、上限設定、二年前に、まあ、合意されたこと自体は与野党の中での合意だと思いますので、政府としてどういうふうな立場になるかというのはありますけれども、上限を設定しなかったことについて説明をしてください。

西山政府参考人 収容期間に上限を設けた場合、その上限まで送還を忌避し続ければ、逃亡のおそれが多い者も含め全員の収容を解かざるを得ず、確実、迅速な送還の実施が不可能となるため、収容期間に上限を設けることは相当ではないと判断したところでございます。

寺田(学)委員 いや、私は、両立し得ると言ったんです。

 だって、三か月に一回、それをチェックしているわけでしょう。三か月に一回、逃亡のおそれがあるかどうか、詳しい文言上はまず今省きますけれども、そういうチェックをしているわけで。

 もちろん、様々な価値観はありますよ。様々な価値観はありますけれども、あえて今の改正案にのっとった上での意見を申し上げると、三か月に一回、そのおそれがあるかどうかチェックしているわけですから、おそれがあるのであれば、上限があったとしても原則と例外の関係になるはずですよ。

 それでも、原則として六か月という上限を設けない理由は何かと聞いているんです。だって、三か月に一回、全部チェックするんでしょう。

西山政府参考人 まず、前提としまして、退去強制手続の対象となる外国人は、逃亡等のおそれの程度のみでなく、収容により本人が受ける不利益の程度等も考慮されて、監理措置に付するか収容するかを適切に選択する仕組みとなっておりますので、そもそも収容が必要でない者は、手続の当初から収容されずに監理措置に付されることになります。

 その上で、例えば、収容上限を設けても、一定の場合に延長できるとした上で、その要件を監理措置の要件と同じとする場合には、収容期間の上限として機能せず、適当でないと考えます。

 他方、延長できる要件を監理措置の要件とは別の要件とした場合において、延長できる要件を厳格なものとすれば、収容の必要性がある場合であっても収容を解かざるを得ず、先ほどお答えしたような、逃亡のおそれが多い者も含めた全員の収容を解かざるを得ないこととなりかねない。他方、延長できる要件を緩やかなものにすれば、不必要な収容継続のおそれがあるということで、御指摘のような仕組みを取ることは相当でないと考えたところでございます。

寺田(学)委員 もう今、論点を整理しているじゃないですか。その中で、今の監理措置の在り方と、上限を設けた場合の、その間の部分を何かしら考えるべきだと思いますよ。是非検討してくださいよ。

 それと、三か月ごとに収容の要否を見直すというんですけれども、引き続き収容が必要ですといった場合の理由の告知の在り方、そこら辺はどう考えているんですか。

西山政府参考人 御指摘の仕組みにつきましては、本人から請求がない場合であっても、主任審査官が、三か月ごとに職権で収容の要否を検討し、監理措置に付さない場合には、その旨及び理由を出入国在留管理庁長官に報告し、長官が更に収容の要否を吟味するというものでございますけれども、対象者につきまして、長官又は主任審査官が職権により要否を検討するものでありますので、決定をしない場合に、その旨を本人に告知する仕組みは取ってございません。

 これに対しまして、被収容者から自己を監理措置決定に付する旨の請求があった場合には、監理措置の決定をしないときには、理由を付した書面をもってその旨を通知することとしており、本人がその決定しない理由を認知できるということになってございます。

寺田(学)委員 あくまでも、この改正案に沿った上での質問をしているわけで、それを認めているというわけではありませんけれども、しっかりと、本人としてはその理由を知ることになるでしょうし、それ自体が、本人に知らせる以上は、名前を伏せる形なのかどうなのか、様々な形で、どういう形でそれが拒否されたのか、認められなかったことが統計的には出てくるものだとは我々としては考えております。

 済みません、時間がないので最後の一問ですけれども、先ほど大口委員の方からお話をされている中で、それこそ仮放免の要件として、健康状態への配慮ということが五十五条八項にある中において、今までは、医師のアドバイス、そういうものに努めるということでありましたけれども、大口委員と質疑をされ、答弁される中においては、必ずその人、医師の判断を受けるという話になりました。実質的な、法文で定められているところよりも踏み込んだような答弁だとは思ったんですが。

 改めて確認しますけれども、仮放免を認めない場合において、必ずその場合には医師の判断を仰ぐという仕組みにするということでよろしいんでしょうか。

西山政府参考人 先ほど大臣が答弁をされたとおりでございます。(寺田(学)委員「その答弁を忘れたから言ってください」と呼ぶ)失礼しました。

 仮放免の決定をしない判断をする場合においては医師の判断を仰ぐことになると考えております。

寺田(学)委員 私が聞いているのは、必ず仰ぐかと聞いているんです。大口先生もそんなことを聞いていました。必ず仰ぐんですか。

西山政府参考人 改めて申し上げますと、疾病にかかっている疑いがある被収容者について仮放免を不許可とするときには医師の意見を踏まえて判断すべきこととなる、すべきこととなると考えております。

寺田(学)委員 役所としての答弁の限界があると思っています。

 大臣、いかがですか。

齋藤(健)国務大臣 今、次長が答弁したとおりなんですけれども、現実面において、必要性のあるときには必ずやるということだろうと思います。

寺田(学)委員 その必要性自体が、しっかりと要件が明記されていない限り、その必要性の部分で必ず受けることができなくなることがあると思いますので、ちゃんとそこを整理してほしいです。大口先生から御指摘いただいた上で、先ほど大臣として踏み込んで御答弁されているんだと思います。

 疾病を理由とする中において仮放免をしないというような判断をするときには必ず医師の判断を仰ぐ運用をするのか否かということは、後で理事会に出してください。

伊藤委員長 それでは、理事会の方で受け止めさせていただきます。

寺田(学)委員 時間となりましたのであれですけれども、あしたも質疑をします。あしたは難民の認定のことを含めて、補完的保護を含めて議論をすることになると思いますが、政府としても、できる限りはっきりと、そして出し得るデータはしっかりと出した上で質疑をし、冒頭申し上げたとおり、この質疑を通しながら国民の皆さんも一緒になって考える、価値観として判断していくことができる質疑にしたいと思っておりますので、よろしくお願いします。

 以上で終わります。

伊藤委員長 午後三時三十分から委員会を再開することとし、この際、休憩いたします。

    午後零時二分休憩

     ――――◇―――――

    午後三時三十分開議

伊藤委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。

 質疑を続行いたします。沢田良君。

沢田委員 日本維新の会、埼玉の沢田良です。

 質問に先立ちまして、おととし三月に名古屋出入国在留管理局に収容中にお亡くなりになったウィシュマ・サンダマリさんに対して、改めて哀悼の意を表するものです。

 私は、法務委員会に所属してから初めての視察が、この前連れていっていただきました名古屋入管の収容施設でした。実際の現場の雰囲気は資料や動画で見るものとは全く違うものであると改めて痛感した視察でして、大変勉強にもなり、私自身、不安な部分も、やはり安心感の持てる部分、両面においてすごく自分自身で参考になりました。

 また、先日、ウィシュマさんのビデオの視聴をさせていただきました。ユーチューブなどでも動画がもう今拡散されておりますが、日本維新の会だけではなく、自民党、公明党、立憲民主党、国民民主党、共産党の理事、また委員の皆様が、本当にその動画の中で、真剣なまなざしでこれを視聴されている姿を見て、いろいろな政党があっても、人の命の重みに真剣に向き合うこの法務委員会の理事、委員の一人一人の皆様に対して、一国民として心強く感じた部分と、また敬意を持たせていただきたいなというふうに思いました。本当に最後の最後まで、委員長はずっと、委員長代理と代わる代わるで残っておられたということも含めて、本当にこういうことを法務委員会として丁寧に向き合って動いているということを、私はやはり国民の皆様に是非知っていただきたいなというふうに思っております。

 ウィシュマさんの事案については、現在、遺族と国との間で訴訟となっていますが、早期の解決を願うものです。同時に、今回の入管法改正が、この前も本会議でも言わせていただいたんですけれども、この不幸な事案を理由に今日まで先延ばしにされてきたとするならば、私はやはり残念なことだというふうに感じております。

 不法残留や不法就労の増大や収容の長期化など、現行法上の多くの課題が以前から指摘されていたにもかかわらず、必要な改正ができなかったことで、改正をしておけば防げた、また、守れたものが、見て見ぬふりをしなければならないこの二年間だったと考えると、当然、立法した当時の関係者、また法務省の職員の皆さん、こういった方々が、本当にこの二年の間に、自分たちがやらなければいけないことがみすみすずっと放置されてきているということに不安や、又は、あれができなかったことでこんなことが起こっているという責任を感じた方は、私は多分にいるんじゃないかなというふうに思っております。

 今回のこの質疑を通しまして、私は、やはり冷静に今回の法改正の必要性をまとめて、そして与野党大いに意見を出し合い、丁寧かつ本質的な議論を尽くしていくことが一番大事だというふうに考えております。

 現在は、我々、政治家は全体的にそうなんですけれども、全国、地域で統一地方選挙が行われておることもありまして、大臣を含めて、委員の皆様、特に期数の長い皆様は土日も休みなしということで、こういう委員会の質疑においても、体力的にも精神的にも大変おつらいタイミングだとは思うんですけれども、是非、何日かにわたるこの委員会の質疑は、本当に我々が気を抜かない状況で、何とか、より一歩でも二歩でも議論が先に進めばと思っております。

 本日も、伊藤委員長を始め、齋藤法務大臣、関係省庁の皆様、委員部の皆様、どうぞよろしくお願いいたします。

 最初に伺わせていただきたいのが、難民認定の少なさや難民保護についてです。

 二〇二二年の統計によりますと、世界の難民のうち、日本の難民認定申請者数は三千七百七十二人でした。二〇二二年中に実際に日本で難民認定を受けることができた人は二百二人となっております。

 日本の難民認定数が少ないのは、そもそも本当に難民認定が必要な人の申請数が少ないためであると考えておりますが、認定をされないケース、いわゆる不認定処分をする中で、難民審査参与員制度という制度があると知りました。制度は知っているんですけれども、どのような制度か理解をしている方は、私は一般の国民の方々の中ではほとんどいらっしゃらないと思います。ここを最初に質問させていただきます。

 この難民審査参与員制度について、簡単に御説明いただけますでしょうか。

西山政府参考人 お尋ねの難民審査参与員制度は、難民認定手続の公正性、中立性を高めるため、平成十七年五月に導入された制度であり、法律又は国際情勢に関する学識経験を有する者の中から任命された難民審査参与員が、一次審査とは異なる、外部有識者としての知見に基づき難民認定に関して意見を述べていただくことによって、不服申立て手続の公正性や客観性をより高めることにこの制度の意義がございます。

 難民不認定処分に対する審査請求においては、難民審査参与員が公正中立な立場から三人一組で審理を行い、法務大臣は、少数意見を含む全ての難民審査参与員の意見を必ず聞いた上で、その意見を尊重して裁決しているところでございます。

沢田委員 分かりやすい説明、どうもありがとうございます。

 このまま続いて質問しちゃうんですけれども、ちなみに、三人一組でやられる参与員というのは、どのような人が選ばれているのか、続いて御質問します。

西山政府参考人 難民審査参与員は、入管法の規定にのっとり、人格が高潔であって、公正な判断をすることができ、かつ、法律又は国際情勢に関する学識経験を有する者のうちから任命されます。具体的には、日本弁護士連合会、UNHCRなどから幅広く推薦を受けるなどしつつ、事実認定の経験豊富な法曹実務家、それと、地域情勢や国際問題に明るい元外交官や国連関係機関勤務経験者等、それから、国際法、外国法、行政法の分野の法律専門家等の中から選任しているところでございます。

沢田委員 ありがとうございます。

 私もちょっと調べさせていただいたら、四月一日の時点で、現在百十七名が選ばれているんですが、私が見た感じだと、弁護士の方であったり、元外国の大使の方、大学教授、JICAの職員だった方など、国際情勢にも精通しているようにも見受けられます。

 やはり、今答弁いただいたときに少し安心をしたというか、というのも、今回の入管法改正において、いろいろな団体、そしていろいろな不安の声を、私、沢田良としても伺わせていただきました。

 一番最初に出た、特にUNHCRとか弁護士の団体ですね、今回、やはり人権という配慮の中で、今回の入管法改正についてちょっと不安があるという声があるというのも、私も何度もお伺いしたところですけれども、こういった方も、推薦の方が入っているというのは、すごく公平性に、私は担保されているのかなというふうに感じます。やはり大事なのは、難民審査において、この人選、もちろん経歴とかいろいろなものはあるんですけれども、公正性が私は一番大事だというふうに感じております。

 齋藤大臣にお伺いいたします。

 出入国管理及び難民認定法第六十一条の二の十には、難民審査参与員の任命は、これは法務大臣となっております。この公正性、中立性について、任命権者である大臣はどのように考えているのか教えてください。

齋藤(健)国務大臣 難民不認定処分に対する審査請求におきましては、外部有識者から成る難民審査参与員が法務大臣からの指揮を受けることなく自ら審理を行い、その結果を意見書として法務大臣に提出する役割を担わせることで、その中立性、公平性を担保しています。

 その上で、法務大臣は、少数意見を含む全ての難民審査参与員の意見を必ず聞いた上で、その意見を尊重して裁決しており、平成二十八年以降、難民審査参与員の多数意見と異なる判断をした事案はございません。

沢田委員 ありがとうございます。

 この前の答弁でも、二十八年以降、しっかりと難民参与員の方の声が入ってきたと。過去にはちょっとそれとは違った結果も出たということはあるんですけれども、もう大臣のタイミングですので、これは改めてなんですけれども、今後も、今の大臣がお答えになった答弁の方向で、参与員の意見を尊重して、審査請求に対して裁決を行うか、答弁だけいただいていいですか。

齋藤(健)国務大臣 そのつもりであります。

沢田委員 ありがとうございます。本当に心強いお言葉、ありがとうございます。

 申請者にとっては、公正性、中立性が守られるということは極めて重要な部分だと思いますので、私は今の質問をもって、しっかりと大臣がやっていただける間は、公正性をより磨いていっていただけるんじゃないかなというふうに感じます。

 引き続き、難民の審査についてお伺いいたします。

 難民認定手続では、難民の認定は、申請者から提出された資料に基づいて行われます。したがって、申請者は、難民であることの証拠又は関係者の証言により自ら立証することが求められています。

 難民であることの証拠を求めることなんですが、必要以上に根掘り葉掘り聞くということは、難民認定申請者によっては心に深いダメージを負ってしまうということも当然考えられます。

 かといって、御本人、申請者の言い分だけを認定してしまうと、我が国の社会にとって不利益、好ましくない事案が起こってしまうことも当然考えなければいけません。例えば、偽装難民を受け入れてしまうケースは一つの例だと思います。

 ここで質問させていただきます。

 この聞き取り、証言を得るという点については、入管庁側もいろいろな御配慮、御苦労があると思いますが、この難民認定実務において、入管庁としてどのように取り組んでいるのか、是非教えてください。

西山政府参考人 難民認定申請者に対する事実の調査に当たりましては、本人にインタビューを行い、本人の主張を十分に確認するとともに、供述に合理性はあるか、供述に不自然さはないか、供述が出身国に係る諸情報と整合するかなどの観点からその信憑性を評価した上で、条約難民の定義に該当するか否かを慎重に審査しているところでございます。

沢田委員 ありがとうございます。

 申請者の申し立てる事実の有無について調査をして、難民の認定が適正に行われるように取り組んでいらっしゃるということだと思うんですけれども、やはり難民認定申請者にとっては、このやり取りそのものが、今後の人生又は生命を左右するものとなります。入管庁の担当者につきましては、細心の注意を払っていただき、細やかな配慮とともに、しっかりと申請者に寄り添って、確かな情報を聞き出していただきたいというふうにお願い申し上げます。

 難民認定の問題では、新たな課題も浮上しています。

 先日の本会議での質疑でも取り上げましたが、去る三月十五日、大阪地裁の判決で、LGBTが難民認定の理由たり得るという、全国初の画期的な司法判断が下りました。新たに難民認定をされたのは、ウガンダから逃れてきた女性です。この女性は、レズビアンであることを理由にウガンダの警察に逮捕、勾留され、拷問を受けたことなどから、日本に対し難民と認めるよう求めていましたが、入管庁は当初、難民申請を不認定としていました。

 これは、審査の過程でこの女性の主張をしっかりと理解できなかった、受け止められていなかったと言わざるを得ません。

 しかし、本人がLGBTであるかどうかは、現状では本人の自主申告しかありませんが、これでは、先ほども懸念をしました、偽装して入国をすることも可能と危惧をしています。しかし一方で、客観的な証拠提出を求めれば、プライバシー保護や人権上の問題となり、新たな差別を生むことにもなりかねません。

 LGBTの権利の問題は我が国でも議論の途上にあり、その結論まで至っておりませんが、難民認定の問題としては、議論に時間をかける猶予は余りありません。

 今後は、今回の判決をきっかけとして、これらの国々から日本に難民認定を求めるLGBTの人々が増えることが予想されるというふうに考えております。

 入管庁にお伺いいたします。

 このような心情に配慮する必要がある難民認定申請者についてどのように取り組んでいるか、具体的な例もありましたら併せて教えてください。

西山政府参考人 入管庁では、様々な事情を抱えた申請者に応じた適切な聴取ができるように努めておりまして、その一環として、UNHCRと結んだ協力覚書の下、難民調査官の調査の在り方についてUNHCRとケーススタディーを実施しております。このような取組を踏まえ、入管庁では、申請者に対する面接の際に配慮すべき事項について改めて整理し、地方官署に対して文書で周知を行っております。

 具体的に例を挙げますと、例えば、難民調査官及び通訳人の性別等に係る申請者の希望に可能な限り沿うように対応すること、面接冒頭だけでなく、面接中にも申請者の健康状態や体調を確認すること、申請者の心理的負担となる可能性のある質問をする際は、声のトーンや表情、言い回しに配慮することなどについて、具体例も交えつつ周知しているところでございます。

 入管庁としては、今後とも、UNHCR等の協力も得ながら、申請者の置かれた立場に十分配慮した、より適切な事情聴取等の在り方について不断に検討してまいりたいと考えております。

沢田委員 ありがとうございます。

 やはり、一般的に、難民認定申請をされる方というのは、何らかの事情により本国を離れざるを得ない、又は、大変強い追い込みをかけられて、どうしても逃げなければいけない、そういった方が本来となっていると思います。その心情に配慮した対応を常に心がけているような体制づくりが、まさにこの国の信頼、信用そのものになっていくと思いますので、是非、やれることを今徹底的に見直していただいて、対応していただければと思います。

 先ほど申し上げた事例のウガンダでは、実は、二〇一三年に既に同性愛禁止法が制定されておりましたが、最近になって事態が更に悪化して、同性愛者であることを自認しただけで犯罪者になり、最悪の場合は死刑もあり得るという、世界最悪との呼び声高い法案が、本年の三月ですね、つい最近、三月にウガンダの国会で可決されているんですね。

 このように、慣習的に行われてきた迫害が先鋭化し、より厳しい制度がつくられるといった事態は実際に起こり得ると考えます。ロシアによるウクライナ侵略のように、トップニュースで扱われる話題だけが世界で起きているわけではございません。私は、世界情勢をつぶさに把握することは我が国の安全を考える上でも必要不可欠と考えております。

 それぞれの事情がある中で、救いを求めて日本にやってきた方に対し、適切に難民認定を行うためには、日々変わっていく、その方々その方々の本国の情勢を確実に捉えていく必要があるというふうに考えております。

 入管庁として、常に最新の、これはまた単なる外形的なトピックだけでなくて、真に迫る情報を入手するためにどのような情報収集を行っているか、お答えください。

西山政府参考人 入管庁におきましては、出身国情報や国際情勢に関する情報の収集及び分析を専門に行う職員を入管庁内に配置し、現在も、外務省、UNHCR等の関係機関と適切に連携しながら、最新の情報を積極的に収集しております。

 加えまして、諸外国当局とも出身国情報に関する情報交換等を積極的に行い、我が国においても諸外国と同等に出身国情報が充実しているかを確認しているところでございます。

 今後とも、UNHCRや関係省庁等との緊密な連携を通じて、難民認定制度運用の一層の適正化を図ってまいりたいと考えております。

沢田委員 どうもありがとうございます。

 外務省のみならず、様々な機関等とも連携して適切な情報把握に努めておられるということもあるんですけれども、本当に、法務省は公安調査庁が入っていたりと、情報を扱うような部署もございますので、いろいろな連携を是非取っていただければというふうに思っております。

 入管庁を所管する法務省は、人権擁護や共生社会を柱に掲げる省庁であります。今後とも積極的な情報収集を行っていただき、難民認定の判断ができる限り時勢を捉えたものになるよう、不断の努力を是非ともよろしくお願いいたします。

 ここまでは入管庁による難民認定制度の適正な運用に向けた取組を個人的に伺ってまいりました。先ほど、申請者の心情に配慮した聴取について地方局に指示を出しているといった御答弁もありましたが、ただ、ルールを作って周知するだけではなく、難民認定制度の運用が実際に行われる地方局に、その取組や背景となる理念を深く浸透させることが私は重要だというふうに考えております。

 難民認定や人道的な配慮が認められるかどうかでその人の人生が大きく変わる可能性を考えれば、実際の現場で難民認定の実務に携わる職員お一人お一人が、専門的知識と人権に関する高い倫理観を持ち、真摯に職務に当たることが当然必要となってきます。

 そこで、入管庁にお伺いします。

 現場で難民認定実務に携わる個々の職員が、制度の適正な運用に当たり、必要な知識や能力を備えていることが重要と考えますが、そのためにどのように取り組まれているのか、御説明ください。

西山政府参考人 難民調査官の能力を向上させるため、これまでも、UNHCR、外務省、国際情勢に関する専門的知識を有する大学教授などに御協力いただくなどして、担当職員に対する研修を実施してきたところでございます。今後とも、特に的確な事実認定に資する研修を行うなどして、審査の質の更なる向上に努めてまいりたいと考えております。

 また、本年三月に難民該当性判断の手引を公表したところでございますが、これは、我が国の実務上の先例や裁判例等を踏まえ、難民該当性を判断する際に考慮すべきポイント等を整理するなどしたものでございまして、入管当局としましては、今般作成したこの手引を活用しつつ、これを踏まえた実務運用を行うことにより、難民調査官の更なる能力向上につなげてまいりたいと考えております。

沢田委員 ありがとうございます。

 ルールや理念を徹底することはもちろん、それが実際に適正に行われているかというところまでしっかり担保するような運用をお願いしたいと思います。

 と同時に、いろいろな物事が起こるたびに、やはり現場にいる職員の皆様は仕事がどんどん増えていくわけですね。そのときに、それでいいのだろうか、それだけでいいのだろうかといったときには、いろいろなところで、トップダウンで見直していただいたり、職場の方々が働きやすい、又は、働いて前向きに動けるような仕組みであったり、そういったところにも御配慮いただけるということも是非お願いできればと思います。

 ここまで難民認定制度の運用について細かい部分を確認してきましたが、今回、大きな議論を呼んでおりますのが送還停止効の例外規定です。このような規定を新たに設けるのであれば、当然、難民や紛争避難民、その他、本国で迫害や暴力を受ける可能性のある方々を確実かつ適切に保護していくことが前提として必要となります。これまでも入管庁や法務大臣の答弁において、真に庇護すべき者を確実に保護するといった言葉は繰り返し使われてきました。

 本日の御答弁にもありましたように、入管庁としては様々な運用上の取組をなさっていますが、私も最近まで知らなかったことが正直多くありました。国民の皆様にこうした取組が伝わっていなかったり、入管法に関心を持っている国民の皆様や諸外国の方々に対して正しい情報が届けられていないといった背景が、日本の入管制度に対する国内外の批判にもつながっているのではないかと感じています。

 運用上、既に取り組まれている点やこれまでに改善してきた点は、入管庁にとっては当たり前のことかもしれませんが、法律にきちんと明記して着実に制度化するとともに、それを対外的にアピールしていくということも重要なのではないでしょうか。

 最後に、齋藤大臣にお伺いさせていただきます。

 我が国の難民認定制度が、保護すべき者を保護する適正なものであり、その運用も適切に行っていることを対外的にアピールしていくことが必要と考えますが、御見解を教えてください。

齋藤(健)国務大臣 入管庁では、制度と運用の両面から難民認定手続の適正性を確保しているところでありますが、今後も、保護すべき者を確実に保護するため、不断に一層の適正化に向けた取組を続けることが重要であると考えています。

 委員御指摘のとおり、対外発信も重要でありまして、その在り方も含め、適切に検討し、対応してまいりたいと考えています。

沢田委員 ありがとうございます。

 私が所属する日本維新の会は、マニフェストに外国籍住民との共生を掲げております。日本人と外国人が共に安全、安心して暮らせる、真に世界に開かれた日本社会の実現を求めていくために、激変する世界の中、常に完璧であることを目指すということよりは、ミスがあっても柔軟にサポートできる、セーフティーネットとなる仕組みの充実が私は大事だというふうに考えております。

 今回の法案も、私が一番最後にちょっと提起させていただいた、まさに、今、どういった運用がなされていて、それがどういった事実として動いているのかという細かい部分が国民の皆様に届かない部分でして、問題とは違った話題やメディアの報道が広がることで、私は、やはりこの問題というのがすごく複雑化して、国民の皆様には、事実が何個もあるにしても、それについて、正しい法案改正の知識というよりかは、どちらかというと違った問題提起が広がって、乗っかってしまったなと。そういうふうなところで、やはり国民の皆様が、正しく、どのようにして考えなきゃいけないのかということを、我々の側も積極的に発信をしていかないと、情報化社会の中で、こうやって混乱がずっと続くんじゃないのかなということは思いました。

 特にこの二年間、法務省の担当者の方からも、この二年間の中で、やはり法改正をしておけばかなりのことができた、そして逆に、やらなかったことで、もちろん、新しい法改正、よりいいものになっていくという御答弁もたくさんいただいているんですけれども、この二年間で、国民の安全と、真に庇護すべき者を守るというところの点においては、私はやはり、反省すべきところ、そして進めていかなければいけなかったことがあるというふうに考えております。

 やはり党利党略と、又は、こういった状況もあると思うんですけれども、しっかりと我々国会議員が、特に国民の皆様の安心、安全と、あと、やはり国をこれ以上よくしていくために何ができるのかということを真剣に考える、そういう大きな機会にできればというふうに考えております。

 私は、この中で感じたことの中で、特に、私自身が、前回、二年前というのが当選していなかったときでもありますので、何とか、国会というものは本当に国民のために全員が議論をして動くというものに、夢を持っていたところであった部分も含めて、今回の法改正においては、正直言うとすごく並々ならぬ思いを持って参加をさせていただいております。

 しっかり国民の皆様を守っていくんだ、地域の方々を守っていくんだ、これは多分みんな同じだと思うんですけれども、それがどうやったら前に進んでいけるのかということは、私は、与党を批判するとか野党を批判するとかそういうことではなく、特に、前を向いて、未来に向かって提案をしていきたいなと。

 過去にいろいろなミスや、いろいろなことがあったり、訂正すべき部分が仮にあったとしても、私はやはり大事なことはこれからだと思っていて、これからをどうやって尊重して動かしていけるのかというのは、まさに未来をつくる我々の一番の役割だというふうに考えております。

 本日、三十分の持ち時間をいただいたんですけれども、ちょっと質問がかなり早口で進んでしまいましたので、少し早く終わってしまうんですけれども、今日、大臣、一日、朝からずっとやっていただいて、お休みもないのかなと思いながらも、我々も全力でこれからの審議、集中してやっていきたいと思いますので、是非とも、委員部の皆様も、委員の皆様も、昨日のビデオ視聴を含めて、本当に皆様が真剣に、この法案に対して個々の価値観の中で真剣に議論をしているこの法務委員会が私は大好きですし、こういった議論が進むものを国民の皆様に是非知っていただいて、こういう、真面目に政治をやっているんだということを知っていただければと思いますので、今後とも引き続き深い議論をさせていただければと思います。

 時間を余らせてしまって申し訳ございません。またよろしくお願いいたします。

伊藤委員長 次に、漆間譲司君。

漆間委員 日本維新の会の漆間と申します。

 通告の順番をちょっと変えさせていただきまして、通告の一番最後の医療体制についてのところから質問させていただきたいと思います。

 収容施設の医療体制についてなんですけれども、今回、常勤医師の兼業禁止の緩和が盛り込まれておりますが、これによって医療体制は充実するのか、まずお伺いいたします。

西山政府参考人 収容を行う場合には、被収容者の人権に配慮した、より適正な処遇の実施が求められており、入管収容施設内における医療体制の一層の充実を図ることは重要であると考えております。

 そこで、本法案におきましては、入管収容施設において常勤医師を継続的かつ安定的に確保するため、常勤医師の兼業の要件を緩和したところでございます。

 これにより、入管収容施設において常勤医師を確保する上で支障となっています民間医療機関と比較した待遇面での格差が是正され、常勤医師の安定した確保、ひいては医療体制の強化に資するものと考えております。

漆間委員 そもそも、兼業禁止であったことについて、ちょっと再質問なんですけれども、理由があったと思うんですけれども、兼業禁止を、兼業を可とすることで、例えば、もし医療体制が弱くなったりするということがあるのであれば、それをカバーできるようにしなければならないと思うんですが、これはカバーはできるんでしょうかということをちょっとお伺いしたいと思います。

西山政府参考人 今回の常勤医師の兼業要件の緩和ということで想定していますのが、むしろ、ほかの民間医療機関と兼業することによって、医師自身のスキルアップにも資するということでございます。

漆間委員 ちょっとお答えが、医師自身のスキルアップに資するから兼業をオーケーにしたということだというお答えだったんですけれども、そもそも、兼業を禁止にしているということは、専従というんですかね、兼業と反対の言葉、専業じゃないといけない、その確たる理由があったかと思うんですけれども。

西山政府参考人 失礼いたしました。

 常勤医師は国家公務員になりますので、国家公務員法の適用を受けるため、原則として兼業は禁止されるということでございます。

漆間委員 そういうことであれば安心しました。やはりコロナ禍で、高齢者施設だとか、たくさん兼業しているだったり、嘱託医が、高齢者施設との連携不足で死者が多かったとか、そういう事例の、コロナ禍の反省もありますので、そういったところにならないのかなというところをちょっと懸念していたものですから、そういうことでちょっと質問させていただきました。

 あと、先ほど寺田委員の方から、常時お医者さんがいたらいいんじゃないかというお話もありましたけれども、特に、これもコロナ禍の反省なんですけれども、オンライン診療、これを是非この法改正と併せてしっかり進めていくべきではないのかなと思っておるんですけれども、オンライン診療の取組についてお伺いしたいと思います。

 オンライン診療が普及すれば、まず、医療情報の共有もしやすくなりますし、あと、記録もしやすくなりますし、これまで様々に議論されておりました検証ですね、検証もたくさん不備があるということもこれまでたくさん議論があったので、オンライン診療は是非取り入れるべきかなと思うんですが、現状と今後の取組についてお伺いいたします。

西山政府参考人 入管庁といたしましては、まずは常勤医師を確実に確保するということを目指しているところでございまして、現在、五官署について常勤医師を配置している。その配置に至っていない官署、横浜支局でございますが、そこにおいても、非常勤医師による診療、地方自治体の救急相談センターの活用等々、外部病院受診などの対応をしているところでございます。

 委員御指摘のオンライン診療についてでございますが、一部の官署におきまして実施体制を整えておりますが、現在の収容人員等の下におきましては、現在のところ、外部病院受診等によって対応できており、実施の実績はございません。

 ただ、引き続き、御指摘のオンライン診療等も含め、適切な医療的対応の在り方については不断の検討を進めてまいりたいと考えております。

漆間委員 検討を進めるということで、積極的な御答弁と理解させていただきました。

 通告にないんですが、齋藤大臣にも、このオンライン診療を進めることについては是非積極的にやっていただきたいなと思うんですが、何か御見解などございましたら、よろしくお願いいたします。

齋藤(健)国務大臣 DXの技術進歩も極めて速いものがありますので、御指摘のオンライン診療等も含めて、適切な医療的対応の在り方については不断の検討が必要だと思っていますので、一生懸命やっていきたいと思います。

漆間委員 積極的な御答弁、ありがとうございます。是非よろしくお願いしたいと思います。

 続きまして、通告、これは最後から二番目なんですけれども、沢田良委員からもたくさんございました前回の提出法案について、前回提出された法案が仮に令和三年に成立していた場合、様々なことが本当はできたのになということが、先ほど沢田良委員の方からもございましたけれども、こちら、実は私が、昨年の十月、法務委員会に所属したときにもお聞きさせていただいたんですけれども、ウクライナ避難民など紛争避難民への対応は、もし成立した場合はどう違っていたのか、お伺いいたします。

西山政府参考人 ウクライナ避難民を始めとして、人道上の配慮を要する方々を一層確実に保護する制度を設けることは重要な課題でございます。そこで、本法案では、前回提出法案と同様に、真に庇護を必要とする方々を確実に保護するため、補完的保護対象者認定制度を盛り込んだところでございます。

 補完的保護対象者に該当するか否かは、申請者ごとにその申請内容を審査した上で個別に認定すべきものであって、一概にお答えすることは困難でございますが、一般論として、ウクライナ避難民のように、戦争等に巻き込まれて命を落とすおそれがあるなど、迫害のおそれがあるものの、その理由が難民条約上の五つの理由に必ずしも該当しない者は、この補完的保護対象者に当たると考えております。

漆間委員 成立していれば、補完的保護対象者制度でしっかりと、一層確実に保護できたということでよろしいんでしょうか。これは、数としてもたくさんのウクライナの避難民の方を受け入れることが、成立していれば、もっとたくさん受け入れることができたということか、それとも、迅速にもっとできたということか、どういうニュアンスで捉えればいいでしょうか。

西山政府参考人 今回のウクライナ避難民については、制度的な受入れの枠組みがございませんでしたので、これは、政府全体として検討して、今のスキームでウクライナ避難民を積極的に受け入れたという経緯がございます。

 これにつきまして、仮定の話をするのはいかがなものかと思いつつお話をしますと、補完的保護対象者としての制度がありますれば、制度の枠組みがまずございますので、この認定手続に従って、ウクライナ避難民のような方については安定的な立場を保障することができるようになるということでございます。

漆間委員 御答弁いただいたとおり、今回、ウクライナ避難民の方は、これに合わせてスキームをつくった、その手間が省けたということで理解させていただきました。

 これも昨年の十一月に私から質問させていただいたことなんですけれども、例えば、ロシアでは、今もやっているかどうか、私、ちょっと勉強不足で申し訳ないんですけれども、ロシアではたくさんの若者が徴兵をされて、そしていきなり前線に送られる。徴兵逃れの方がヨーロッパだとかいろいろなところに避難してきた。これが、もし日本に例えば避難してきたりだったり、あと、例えば、今、日本で留学されているロシアの若者の方々が、留学期間が終わって帰らなければならないとなったときに、帰ると、徴兵されて最前線の厳しいところに送られてすぐに死んでしまうのが嫌だからということで、残りたいといった場合の、そういったロシアから徴兵逃れで来られた方々を受け入れることに関しても、この補完的制度、補完的保護対象者認定制度があった場合の方が受け入れやすいと思っていてよろしいんでしょうか。

西山政府参考人 委員から具体的な事例について御質問がございましたけれども、個別事案、個別に判断する枠組みでございますので、なかなか御説明は難しいところはございますが、個々の申請者の事情に応じて、また本国情勢に基づいて、適切に認定するということになろうかと思います。

漆間委員 そうしますと、これが、法律が成立してもしなくてもそんなに変わらないという認識でよろしいんですかね、先ほどのお答えですと。済みません、ちょっと通告外ですけれども。

西山政府参考人 条約難民に比べて、補完的保護の場合には、五つの理由でなくても、迫害のおそれがあれば認定できるということでございますので、一般論ではございますが、可能性としては該当し得るということでございます。

漆間委員 そういうことであれば、この法律が成立した方が受け入れやすいということで私は認識いたしました。もちろん、個々の事情があるのは承知しております。個々の事情をちゃんと考えてということは承知しておりますけれども、この補完的保護対象者制度があった方が、そういうロシアの徴兵逃れの方々のような場合であっても、受入れのスキームがもう既にできているということで、このスキームにのっとって受け入れることができるんだということで理解させていただきました。

 それでは、もう一点、この法案が成立していた場合、令和四年度末時点における仮放免後の逃亡者は約千四百人、速報値となっておりますが、監理措置制度があれば逃亡者を減らすことができたのではないかということについてお伺いさせていただきます。

西山政府参考人 これもまた仮定の御質問でございますので、なかなかお答えは困難ではございますが、本法案では、前回提出法案と同様、監理人の監理の下で、逃亡等を防止しながら、収容せずに退去強制手続を進める監理措置を創設し、監理人による指導監督等の監理の仕組みなどを規定するとともに、監理措置又は仮放免中の逃亡等の行為に対する罰則を設けることにより、退去強制手続中に収容されていない者の逃亡等を防止することとしております。

 したがいまして、この制度の下では、御指摘の現状を改善することができるというふうに考えております。

漆間委員 こちらも改善できるということで、お伺いさせていただきました。

 ちょっとこのことに関連して、前回の刑法の改正のところでGPSのお話がありました。個人を収容したりして自由を奪うよりも、GPSをつけて自由にした方が人権上いいんじゃないかということで、弁護士会からもたくさん要望が来ていると。人質司法を解消するために、GPSはいいんじゃないかということもありました。

 そういう観点からちょっとお伺いしたいんですけれども、収容・送還に関する専門部会におきましては、逃亡を防止する手段としてGPSの装着を検討すべきという意見も示されていたところでありますが、今回の法改正では見送りとなっておりますけれども、この見送りとなった理由と、今後の導入の可能性についてお伺いしたいと思います。

西山政府参考人 御指摘の専門部会の検討すべきとの意見でございますが、これは、そもそもが、仮放免された者の逃亡事案が増加しているという、そこの防止をする必要性に鑑みてそのような御意見をいただいたものと承知しております。

 他方、我が方として、本法案を検討するに当たりましては、同じ問題意識の下で、新たに設ける監理措置における逃亡等を防止する措置を検討いたしまして、監理人による監理の仕組み、対象者に対する罰則つきの届出義務、監理人に対して報告を求める権限、逃亡等のおそれの程度に応じて、必要な場合には保証金を納付させることができる保証金の納付制度、それから逃亡した場合の罰則、これらの規定を設けることで逃亡防止に対応することとしたところでございます。

 まずは、監理措置の創設及びこの適正な運用によって逃亡防止の措置を講じることとした上で、その実績にも基づきまして、更なる逃亡防止の要否等も含めて検討してまいりたいと考えております。

漆間委員 直近では難しくて、いろいろと状況を踏まえてということで御答弁いただいたと理解しております。

 続きまして、通告の一番初めに戻らせていただきます。難民等認定申請中の方の送還停止効の例外についてお伺いいたします。

 本法案では、難民等認定を行うべき相当の理由がある資料を提出した者については、送還停止効の例外規定の対象外となります。

 三回目以降、例えば四回目だったり五回目だったりの申請をされる方については、この規定について適切に教示、教えないといけないのではないかと思うんです。適切に教示し、資料提出の最後の機会をしっかりと与えるべきではないかと思うんですけれども、これまで四回、五回やられていた人が、この規定を知らずに、また何度も申請したらいいやと思って申請してしまわないように、適切に教示するそういった仕組みについて、どういうふうに取り組んでいくのかについてお伺いいたします。

西山政府参考人 本法案におきましては、委員まさに今御指摘いただいた問題意識の下に、まず、当該規定や制度の周知に努める、それから当該規定の対象となる外国人に対しては、同規定の内容その他必要な事項を個別に教示する旨を附則で設けており、万が一にも本来保護されるべき者が送還されることがないよう配慮しているところでございます。

漆間委員 最後に、これも通告にないんですけれども、齋藤大臣にお伺いしたいんですけれども、やはり、今回、法律以前の問題といたしまして、入管施設でこの二十年ぐらいで死者数が多いというこの事実がございます。やはり、こういう、法律を幾ら改正しても、それと同時に運用がすごく重要であるかということは思うんですけれども、その運用をしっかりやっていくということについて、最後にちょっと決意と意気込みをお伺いしたいと思います。

齋藤(健)国務大臣 当然、法改正の効果がしっかり出るためには、その制度を運用していくということが極めて重要だと思っていますので、入管の職員始め、私も含めて、その運用についてはしっかり取り組んでいきたいと思っています。

漆間委員 時間となりましたので、これで私の質問を終わらせていただきます。

 ありがとうございました。

伊藤委員長 次に、鈴木義弘君。

鈴木(義)委員 お疲れさまです。早速質問に入りたいと思います。

 今日は、難民の認定制度について何点かお尋ねしたいと思います。

 今回の法律の改正に基づくいろいろな資料をいただいたんですけれども、何でかなというのが素朴な疑問で思ったんですけれども、例えば、難民の認定の申請者数というのがグラフで年度ごとに掲示されているんですね。そうすると、その中で、平成二十二年の四月から、難民認定者数が極端にとんとんとんとんと上がっていって、最後は一万九千を超えたところからまた緩やかに落ちてきているんですけれども、キャプションがついていて、難民認定申請から六か月経過後に一律に就労を認める運用開始がされたので急激に認定者数が増加しているんだ、こういうふうに説明書きが書いてあったんですね。

 じゃ、何でこれは、法律の改正だったのか、私はこのときに衆議院でも何でもなかったものですから、一律に就労を認める運用になったという、その理由をまずお聞かせいただきたいんですけれども。

西山政府参考人 平成二十二年四月以降、難民認定手続中の生活の安定に配慮する観点から、正規在留者から難民認定申請があった場合に、難民認定申請から六か月経過後、難民認定手続が完了するまでの間、原則として我が国での就労を認める運用を開始したと承知しております。

 なお、平成二十七年九月及び平成三十年一月に難民認定制度の運用を見直し、誤用、濫用的な申請に対して就労制限や在留制限を取っており、御指摘いただきました運用は現在は行っていないところでございます。

鈴木(義)委員 昔、県会議員のときに相談を受けたんですけれども、オーバーステイをしていて、警察に逮捕されて、入管に身柄を持っていかれたと。御夫婦で、子供さんが二人いらっしゃって、小学校に上がっていたんですね。PTA活動を一生懸命やっている方だったんですが、そのときに、お母さんになる人が一生懸命PTA活動をやっていて、同僚のお母さんたちから何とかなりませんかという相談を、人を介して来たんですが、結果的には何ともならなくて、お父さん、お母さんは母国にお帰りいただく。子供さんはどうしたのかと聞いたら、おばさんになる人が面倒を見るということで、特別に認めてくれた。そのときに、韓国の方だったんですけれども、民団の方に、人を介して、やはり、何とか助けてもらえないだろうかというふうに問いかけたんですが、国籍がないから駄目だ、助けられない、こういうふうに言われたんですね。日本で生まれているので。日本籍は持てないんですね、御両親とも韓国籍だったものですから。

 そういった方が世の中にいらっしゃるのは承知しているんですけれども、オーバーステイをして、十年以上も日本で働いちゃっているわけじゃないですか、生活して、子供が小学校へ上がっているわけですから。

 だから、今御答弁いただいたんですけれども、例えば、申請したら六か月、一律に、生活の安定のために働いていいんですよといったら、元々その方が、就労ビザを持っていて日本に入国しているのか、観光ビザで来ているのか、日本に来るときに、何らかの目的があるから日本に来ているんだと思うんですね。それを一律に、働いて結構ですよといったら、目的外のことを日本でやろうとしているのは、ちょっと先の、日本に入国するときの目的が違っちゃっているんじゃないかと私は思うんですね。

 それで、日本で十何年も住んでいて、子供が生まれました。今は、WHOに加盟している国であれば、日本は、義務教育である小学校、中学校は国籍関係なく入学を認めちゃうんですね。まあ、高校以上はどうするかというのはこれは別の話になるんですけれども。

 そういった事例が過去にもあって、今回、二十二年の四月から、六か月たてばみんな生活の安定のために働いていいんですよといったら、それを目的に来る人もたくさん増えちゃったのがこの結果なのかなと思うんですけれども、その辺、肌感覚で結構ですから、御答弁いただきたいと思います。

西山政府参考人 委員御指摘のとおり、先ほど御紹介した六か月経過後に就労を認めるという運用を開始してから急激に難民認定申請者が増えましたという、そういうことでございますので、そこには因果関係があるというふうに私どもも認識しております。

鈴木(義)委員 この認定数が、コロナの影響が大きかったと思うんですけれども、まあ、コロナ前の話だな、平成二十九年をピークに減少している理由をどのように捉えているのか、まず確認をしたいと思います。

西山政府参考人 この点は、平成三十年一月に難民認定制度の運用の更なる見直しを行ったことにより、誤用、濫用的な申請者については、初回申請であっても、在留制限又は就労制限の対象として従前より厳格に対応したというところがございます。平成三十年の申請者数が前年の平成二十九年の申請者数に比べてほぼ半減したのは、このような対応により、誤用、濫用的な申請が抑制されたことによるものであるというふうに考えております。

鈴木(義)委員 去年、国会が終わった後に、私、韓国に友人と一緒に、これは私的な旅行で行ってきて、電子申請して、日本に帰ってきたときも、今、電子申請みたいな、ちょっと名前は正確じゃないんですけれども、行って、三泊四日で日本に帰ってきた。それは観光が目的だから、そのまま帰ってきて、どうぞお帰りください、日本も、お帰りなさいといって入れてくれたんですね。

 日本に留学を目的に来た人が、一応ルールがあって、週たしか二十八か二十九時間までは働いていいですよと。ルールに基づいて日本に入ってきます。観光で入ってくる方もどうぞ来てください。働くのが目的であれば、例えば、興行ビザで来れば、歌を歌うかダンスをするか、特殊技能を持っている方は興行ビザでも来るし、技能実習生だとか、幾つかのジャンルがあって、それを目的に入ってこられると思うんですよね。

 だから、結局、最初の目的が途中から変わっちゃうというのは、ビザを取り直すのか、もう一回違うビザを取るのかというのもやはりやらなくちゃいけないのに、なぜそれが、すぐいきなり難民認定申請というふうになっちゃうのか不思議でしようがないんですよね。

 じゃ、難民認定申請を受けたときに、例えば、留学ビザで来ました、日本語の勉強をしたいとか、日本の大学に来ました、でも、そのビザじゃなくて、これから日本でちょっと働いてみたいとなったときに、該当するジャンルがあるかどうかは別ですよ、難民認定を申請しているときにビザの受け直しというのはできるものなのか。現行制度で結構ですから。

西山政府参考人 難民認定申請中に、その時点において有効に在留資格をお持ちの方であって、その資格の変更は、要件に該当すれば可能でございます。

鈴木(義)委員 そういうことであれば、難民申請をされている、現行制度であっても、ビザがきちっと発給されて日本に来られている人がいたら、きちっと取り直すとか、ビザの変更をきちっと審査して受けてもらえれば、難民認定でそのままずっと拘束する必要もないし、仮放免で逃げられちゃうということもないんじゃないかと思うんですね。だから、これは運用の話になってしまうんでしょうけれども、やはり法律の改正をして、その運用をきちっとやらないと、同じことが起きてしまうのかなというふうに思います。

 それで、必ず、保護すべき者は保護しているというふうに大臣も答弁でおっしゃるんですけれども、簡潔で結構ですから、どのような方が保護の対象になっているのか、お尋ねしたいと思います。

西山政府参考人 まず、現行法下におきましても、条約難民の定義に該当すれば、難民として認定するということで保護ができます。また、条約難民で言う五つの理由による迫害のおそれまでは認定できないにしても、五つの理由以外で迫害のおそれがある方については、今回の本法案におきまして、補完的保護対象者ということで、条約難民に準じた安定的な保護を行うことができるようになります。

 それに加えて、難民又は補完的保護対象者と認められない方にあっても、例えばですけれども、本国情勢や、日本人の実子の監護、養育など本邦での特別な事情がおありのような方、そういった場合に、人道上の配慮が必要であると認められた方については、更に在留特別許可という形で在留を認めることも可能でございます。

鈴木(義)委員 もう一つ確認をしたいんですけれども、難民申請のところなんですけれども、在留特別許可を出した人を含めて、三年なり五年なり一年なのか、ケース・バイ・ケースなんだと思うんですけれども、更新をし続ければずっと日本にいられるものなのかということなんですね、例えば亡くなるまで。

 それは、在留、い続けられるのかといったときに、例えば新たな、五年なら五年でいいと思うんです、分かりやすく言えば、五年の在留特別許可を出しました。五年になる前に再申請、更新の申請をしたときに、五年間、特別に何か事件を起こしたとか何かがなければ、通常は五年間更新させるんだと思うんですね。日本の法律というのは、三年許可とか五年許可というと、よっぽどじゃない限りは短くするということはまずないと思うんです。それをずっと連続的にやっていけば、二十年でも三十年でも、だって、五年で十回やれば五十年いられるというふうに計算上はなるんですけれども、そういった特異な事例というのは今まであったんでしょうか。

西山政府参考人 一般論ではございますが、在留期間の更新の申請があった場合には、申請人の活動内容等が在留資格に該当することや在留状況等を総合的に勘案し、在留期間の更新を適当と認めるに足りる相当の理由があるときに限り更新を許可することとなります。

鈴木(義)委員 ここで押し問答する話じゃないんですけれども、だから、結局、更新、更新、更新をしていけば、何回でも大丈夫だということでいいんですかね。

西山政府参考人 更新の上限は一部の在留資格にはございますが、更新の上限、何年までしか更新できないという上限は基本的にはございません。

鈴木(義)委員 そうしますと、大臣、今認めていないんですけれども、政策として、これは移民政策になっちゃうんじゃないかと思うんですね。日本は移民政策は取り入れていないということで現行政府はやっているんですけれども、今の御答弁をいただくと、ずっと更新、更新で、上限がないんだから、亡くなるまでというふうになれば、ずっと日本にいられるわけです。

 まさしくこれは移民政策というふうに、俯瞰的に見ればそう捉えられてもおかしくないと思うんですけれども、いかがでしょうか。

齋藤(健)国務大臣 移民という言葉は人によってかなり意味合いが違っていたりしておりまして、明確に定義することは困難なんですけれども、その上で、政府としては、国民の人口に比して一定程度の規模の外国人及びその家族を期限を設けることなく受け入れることによって国家を維持していこう、こういう政策は取る考えはないということであります。

 それで、次長も述べましたとおり、在留特別許可や在留諸申請の許可を受けて在留資格を有している方の在留許可の判断につきましては、それぞれの許可の条件に応じて、あくまでも事案ごとに個別具体的に判断をしているということであります。

鈴木(義)委員 ちょっと質問を時間がないので飛ばさせてもらって、先ほども一つ議題になったんですけれども、難民認定をするときに、まず、第一次的には難民調査官による事実の調査をする、ここで当該者、申請者の聞き取りをするんだと思うんです。

 それと、何をもって迫害を受けているかというのを、その国の状況を調査するなり地域性を見たりして判断するんでしょうけれども、例えば、こちらから、入管庁の職員さんが、外交ルートを使うのか本人が行って調べるのか分かりませんけれども、客観的にというんじゃなくて、主体的に、その人が個人的にどう迫害を受けているのかという調査をどこまでしているのかなと思うんです。

 今日の本会議で孤立、孤独の法案が提出されたんですけれども、私、この法務委員会で一人しかいないから孤独ですよね。捉え方なんです。だから、そういうふうに申請をしてきた人がいたときに、事実関係をどこまで調査できているのかというのが一番キーになるような気がするんですけれども、この法律を改正する前の今の状態で結構ですから、どこまで何を調べているのか、教えていただきたいと思います。

西山政府参考人 これはまさに、難民認定自体が個別判断ということもございます。なので、個別、個々の事案に応じてどこまで調べられるのかといった点も千差万別ではあろうかと思いますが、申請書あるいは本人の陳述というものが基本になるのかと思います。その本人の供述が合理的か信憑性があるのかといった判断がまずございます。それから、御本人が自ら、自分の言い分を立証するための資料をお持ちの方もございます。

 それから、そういうものがなくとも、御本人の供述がある程度信憑性があるという前提ですけれども、それが、今度は、私どもが把握している出身国情報、あるいは国際情勢に関する情報、これに符合するかどうかというのも調査の中心になるのではないかというふうに思っています。

 その情報につきましては、これを専門に扱う職員を入管庁に配置しておりまして、その充実化を図っておりまして、これまでも、外務省、UNHCR等の関係機関と適切に連携しながら最新の情報を積極的に収集しているところでございます。

鈴木(義)委員 そこのところが個別で判断しますと言われちゃうから、何が基準なのかよく分からない、何でこっちは認めてこっちは認めないのか、そういう話になるわけですね。だから、やはりそこの、国情なら国情なり、宗教なのか人種なのか、五つのテーマがあるんですけれども、それがどういう状況になっているかというのは、日本国内でみんなが情報共有していなければ、助けてあげなくちゃという話にはならないと思うんですね。個別の事案だというふうに言っていったら、みんなが個別の事案になっちゃう。そこのところが、制度を、法律を改正したときに、運用のところできちっとやらないと駄目なんじゃないかなというふうに思うんです。

 先ほど参与員の話で、三人、先週だったと思うんですけれども、大臣の答弁で、三人の方がいいですよと言えば、法務省の方、大臣として認定を認めているというし、今まで多数決だ何だといろいろやり方をしてきたんでしょうけれども。じゃ、この方々の名簿を、百何人、リストを見ると、ほとんど法務省の関係者、検事をやっているか判事さんか、大学の教授といいながら元は検事さんなのか判事さんなのか、そこまでは分かりませんけれども、大体関係者なんです。

 じゃ、その方々が日本にいながら、海外に行って情報収集しているわけじゃないにもかかわらず、最終の二次審査をジャッジするというのがいいのかどうか、最後に答弁いただいて、終わりにしたいと思います。

西山政府参考人 もとより、参与員に御意見を伺うに際して、参与員御自身が調査するというよりも、難民調査官がいろいろな資料を参与員に提供して、それに基づいて判断をいただくということでございますし、参与員の皆さん自らでインタビューをすることも可能な形になってございます。

鈴木(義)委員 以上で終わります。

伊藤委員長 次に、本村伸子君。

本村委員 日本共産党の本村伸子でございます。どうぞよろしくお願いを申し上げます。

 私も、昨日、名古屋入管で亡くなられたウィシュマ・サンダマリさんのビデオを視聴させていただきました。心から哀悼の意を申し上げたいと思います。

 この法務委員会の皆様と、私は三回視聴させていただきました。もちろん、全体からすればごくごく僅か、短時間の視聴でございます。そして、名古屋地裁でも視聴させていただきましたけれども、ビデオが残っている最初の二月二十二日の段階からウィシュマさんは入院や点滴など適切な医療が必要であったということを見るたびに思いますし、ウィシュマさんが昨日のビデオの中でも、病院へ行きたい、お願いというふうに言っていたときや、ずっと苦しい声を出されているとき、そして三月六日、亡くなられる朝の段階で職員の方が声をかけても何も反応していない、こういう段階で救急車を呼んでいれば命を守ることができたのにと思うシーンが何度も何度もございました。本当に入管の責任は重大だというふうに思います。命と尊厳を軽視したこれまでの入管行政が本気になって変えていけるのかどうかということが今問われているというふうに思います。

 今回の入管法の問題に関わって、今日は私は、子供たちの命と尊厳、暮らしのことを質問させていただきたいと思います。

 日本には、在留資格を持たない未成年の子供たちが約三百人ほどおられるというふうに言われております。ある方は、二歳のとき来日したトルコ国籍のクルド人の方で十三歳の方、二〇二二年、昨年の八月に在留許可の更新が打ち切られ、そして非正規滞在となってしまったそうです。その十三歳の方は、二歳の妹が三十九度の高熱を出したが、健康保険がないので病院に行けなかった、子供の在留資格を奪うのは本当に意味が分からないというふうに語っておられます。ウィシュマさんと同じように、これは命と尊厳を軽視されている状況ではないかというふうに私は思うわけです。

 そして、別の方でいいますと、スリランカ人の子供さん、Tさん、仮放免者である両親の子供として日本でお生まれになりました。そして、二〇〇六年、保護を求めて来日したスリランカ人の御両親は難民申請が認められず、収容所で収容されてしまった。その後、仮放免者という立場でTさんを出産されました。幸い周りの方々に恵まれたと。支援者の方や理解ある地域の人たち、学校の友達や先生方など、Tさんの周りの多くの方たちの協力もあって、Tさんは、この春、高校に合格されたそうです。しかし、仮放免という立場にある御両親の蓄えがあるはずもなく、望みをつないだ高校等就学支援金は、二〇二〇年の七月に、オーバーステイの子供たちへの支援金は出さないとの政令が出ている。

 生まれてからずっと仮放免者という立場に置かれているため、医療保険などの行政サービスを享受することもできず、職業選択の自由や移動の自由もありません。出入国在留管理局から、帰りなさいと一か月の仮放免の更新のたびに言われ続けてきたそうです。日本で生まれ育ったTさんに一体どこへ帰れというのかということでございます。

 子供の権利を保障するために、日本も一九九四年に子どもの権利条約を批准をいたしました。条約の基本的な考え方は四つの原則で表されております。この四つの、条文に書かれている権利そのものを保障するということと同時に、あらゆる子供の権利の実現を考えるときに、いつもこのことを併せて考えることが大切だと。この子どもの権利条約の四つの原則というのは、この四月から施行されましたこども基本法の中にも取り入れられております。

 四つの原則を申し上げたいと思います。

 一つが、差別の禁止、差別がないこと。全ての子供さんは、子供自身や親の人種や国籍、性、意見、障害、経済状況などどんな理由でも差別をされず、条約の定める全ての権利が保障される。

 二つ目、子供の最善の利益、子供にとって最もよいこと。子供に関することが決められ、行われるときは、その子供にとって最もよいことは何かを第一に考える。

 三つ目、生命、生存及び発達に対する権利、命を守られ成長できること。全ての子供の命が守られ、持って生まれた能力を十分に伸ばして成長できるよう、医療、教育、生活への支援などを受けることが保障される。

 四つ目、子供の意見の尊重、意見を表明し参加できること。子供は自分に関係のある事柄について自由に意見を表すことができ、大人はその意見を子供の発達に応じて十分に考慮する。

 仮放免の子供たちに関してもこの四原則を貫くことが必要だというふうに私は考えております。

 そこで、まず確認をさせていただきたいんですけれども、日本は、未成年の仮放免の方、十八歳から二十九歳までの仮放免の方は何人いるのかということを、まず出入国在留管理庁に確認をさせていただきたいと思います。

西山政府参考人 お尋ねの未成年者の被仮放免者、十八歳から二十九歳までの被仮放免者の人数でございますけれども、これにつきましては、通常の業務で統計を作成していないことから、現時点におけるこれらの人数をお答えすることが困難でございます。

 なお、収容・送還に関する専門部会における参考資料とするために特別に集計したものがございますが、それを御紹介しますと、いずれも速報値でございますが、令和元年六月末時点における二十歳未満の被退令仮放免者数は三百四人であり、二十歳以上三十歳未満の被退令仮放免者数は二百十五人というふうになってございます。

本村委員 最新の数字は取っていないということなんですけれども、子供たちがどういう状況にあるのかということに関心がないのかと大変悲しい思いをしているわけですけれども、是非今後しっかりと取っていただきたいと思うんです。

 そこでお伺いをしたいんですけれども、仮放免者の子供は、一九九四年に批准した子どもの権利条約に言う子供に該当しないのでしょうか。また、仮放免の子供は、四月一日に発足したこども家庭庁の言う子供と家庭には該当しないんでしょうか。こども家庭庁に伺いたいと思います。

黒瀬政府参考人 お答え申し上げます。

 こども家庭庁におきましては、こども家庭庁設置法において、心身の発達の過程にある者を子供と定義をしておりまして、また、こども家庭庁の任務も、子供の健やかな成長及び子供のある家庭の子育てに対する支援を行うこと等としておるところでございます。

 このため、仮放免者の子供やその家庭についても、こども家庭庁が行う施策の対象に含まれると認識をしております。

西山政府参考人 児童の権利に関する条約についてお尋ねがございました。

 御指摘の条約においては、「児童とは、十八歳未満のすべての者をいう。」とされており、これに該当する子供であれば、被仮放免者の子供であっても同条約の児童に該当するものと承知しております。

本村委員 ありがとうございます。確認させていただきました。

 仮放免の子供さんの子供の権利について、それぞれの権利を保障する責務は誰が負うのかという点、教育、社会保障などなど、仮放免の未成年の方はこれらの保障を差別なく享受できるようにするべきだというふうに思いますけれども、この点もお答えをいただきたいと思います。

西山政府参考人 お尋ねの子供の教育あるいは公的社会保障制度は、もとより法務省の所管外ではございますが、その上で申し上げますと、入管庁では、仮放免中の外国人に対し定期的に出頭を求めており、適時相談に応じ、相談内容の具体的事情に応じて、例えば自治体の相談窓口を案内するなど、人道上の配慮もしつつ、個別に適切に対応しているところでございます。

 また、仮放免中の外国人について、本人が希望する場合には、その者の情報を居住する自治体に通知しており、各自治体において、その情報を基に、可能な範囲で行政サービスを提供しているものと承知しております。

本村委員 こども家庭庁はないですかね。今のがまとめての回答ということ。

黒瀬政府参考人 お答え申し上げます。

 被仮放免者の子供の教育ですとか社会保障制度の担当省庁については、こども家庭庁はお答えする立場にはございませんけれども、その上で、仮放免中の外国人からの御相談については、出入国在留管理庁において個別に適切に対応されているものと承知をしております。

本村委員 適切に対応されているというふうにおっしゃったんですけれども、先ほど私が申し上げましたトルコ国籍のクルド人の十三歳の方の妹さん、二歳、保険がないので病院に行けなかった、これが適切な対応なんでしょうか。

西山政府参考人 繰り返しますが、子供の教育、公的社会保障制度は、入管庁におきましても所管外でございます。その上で、私どもの所管内で、可能な限り人道的な配慮もしつつ、個別に対応しているところでございます。

本村委員 まず、入管庁が在留資格を奪ったわけでございます。この点は重く受け止めていただいて、後からまた大臣にもお伺いしたいので、質問を続けさせていただきたいと思います。

 政府は、生まれながら仮放免者として生存権を奪われている子供たちについてどういうふうに考えているのか。

 先ほどもお話をさせていただきましたように、在留資格がないために、希望する進学を諦めるということもあります。社会保障から排除をされているために医療費は全額負担、就労ができないのでアルバイトもできない、居住の都道府県外への移動の自由もないため、友達と遊びに行けないですとか部活動の遠征に行けなかったこともある。様々な深刻な不利益が既に起こっているわけです。親しい友人にすら自分が仮放免という身分であることを打ち明けられない子供さんもいます。この子供たちは、保護をされ、将来を期待されるべき子供さんであるにもかかわらず、保護からはじき出され、将来を奪われているというふうに思います。

 未成年仮放免者を送還忌避者として扱って仮放免状態を放置することは、子どもの権利条約の違反に該当するのではないかと私は考えております。国籍や、どんな社会的身分であっても、差別をなくすためには、在留特別許可を出し、在留資格を認めるべきだというふうに思います。そのことを日本政府が方針として明確にし、責任を負うべきだと考えますけれども、答弁をお願いしたいと思います。

西山政府参考人 在留特別許可の判断は、個々の事案ごとに諸般の事情を総合的に勘案して適切に行っているところ、御指摘のような未成年の子については、例えば、当該未成年の子の親による監護、養育の必要性や、我が国への定着性、親の在留資格の有無、親以外の人物による監護の可能性等の諸事情を個別の事案ごとに考慮しているところでございます。

 具体的には、当該未成年の子が幼く、親による監護、養育が必要な場合において、親に在留資格がなく、在留特別許可も認められないようなときには、人道上の観点から当該未成年の子のみを在留特別許可にすることは適切でなく、これらの事情を考慮してもなお当該子のみに在留を認めるべき特別な事情がない限り、家族一体として帰国いただくことになるところでございます。

 他方、当該未成年の子が本邦において出生し、相当期間本邦の初等中等教育機関で教育を受けているなどの事情がある場合において、例えば、親のほかに適切な養育者が存在している、自活するめどが立っているなどの事情も総合的に勘案して、当該未成年の子について在留特別許可を認めているところでございます。

本村委員 本人に何の責任もない仮放免の未成年の子供たちに在留特別許可を出して救済をするべきだというふうに思いますけれども、大臣、いかがでしょうか。

齋藤(健)国務大臣 今次長が答弁をしたとおりだと思うんですが、やはり、ケースに応じて考慮していくということが必要なんだろうと思っています。

 繰り返しになって恐縮なんですけれども、当該未成年の子が幼くて、親による監護、養育が必要な場合において、親に在留資格がなく、在留特別許可も認められないようなケース、こういうケースにおいては、むしろ人道上の観点から当該未成年の子のみを在留特別許可にすることは適切ではないし、これらの事情を考慮してもなお当該子のみに在留を認めるべき特段の事情がない限り、やはり家族一体として帰国をしていただくことになるわけであります。

 一方で、当該未成年の子が本邦において出生し、相当期間本邦の初等中等教育機関で教育を受けているなどの事情がある場合において、例えば、親のほかに適切な養育者が存在しているとか、自活するめどが立っている等の事情もあれば、そういったものを総合的に勘案をして、当該未成年の子について在留特別許可を認めているわけでありまして、個別の事案ごとにきちんと判断していくことが大事かなというふうに思っています。

本村委員 子供が小さいなら親と一緒に帰れと政府は言っている。でも、その親に帰ることができない事情がある。その間は子供の権利は停止ということなんでしょうか。

西山政府参考人 委員、未成年の子の保護について御指摘をされていると思いますけれども、その御両親が、在留資格を認めるべきか否かというのは、もとより幼い子供がおられるという事情も考慮されるべき事項ではありますけれども、その他、積極事情、消極事情を総合的に勘案した上で、御両親について在留を認めるかどうかは判断されることになると考えています。

本村委員 こういう対応は、新法になったら変わるんでしょうか、大臣。

齋藤(健)国務大臣 今、次長が答弁を申し上げたとおりであります。

 要するに、お子さんのことも考えた上で在留特別許可を出すということを検討した結果、それでも出すことはできないという御両親がいる場合においては、それは帰国していただくということにならざるを得ないわけでありまして、そのとき、お子さんが小さいお子さんである場合は、御一緒に帰国していただくことがいいのではないか。

 繰り返しになりますが、そういうことを個別に判断をしていくということが大事なんだろうと思っておりまして、これは法律が成立した場合でありましても、基本的にはそういう考え方で一つ一つ丁寧に判断をしていくということになろうかと思いますが。

本村委員 先ほど申し上げました、二歳の妹さんが三十九度の高熱を出したけれども、健康保険がないので病院に行けなかった、これは明らかに子どもの権利条約に違反をしているというふうに思いますけれども、大臣、いかがでしょうか。

西山政府参考人 我が国は、締結している人権諸条約が定める義務を誠実に履行しており、我が国の入管制度がこれに違反するものとは考えておりません。

本村委員 だって、明らかに、生命、生存、発達に対する権利、保障されていないと思うんですけれども。

西山政府参考人 先ほど来申し上げているとおり、個別の事案ごとに、未成年の子が置かれた状況を十分配慮の上、在留を認めるかどうかについて判断しているところでございまして、御指摘は当たらないと考えております。

本村委員 そういう対応がやはりウィシュマさんの死亡事件を起こしたのだというふうに思います。命や尊厳を守る法律に抜本的に変えて、法案……

伊藤委員長 時間が参りました。手短に。

本村委員 出し直すべきだということを強く求め、質問を終わらせていただきます。

伊藤委員長 次回は、明十九日水曜日午前八時五十分理事会、午前九時委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。

    午後四時五十七分散会


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