衆議院

メインへスキップ



第11号 令和5年4月19日(水曜日)

会議録本文へ
令和五年四月十九日(水曜日)

    午前九時開議

 出席委員

   委員長 伊藤 忠彦君

   理事 谷川 とむ君 理事 藤原  崇君

   理事 牧原 秀樹君 理事 宮崎 政久君

   理事 鎌田さゆり君 理事 寺田  学君

   理事 沢田  良君 理事 大口 善徳君

      東  国幹君    五十嵐 清君

      石橋林太郎君    岩田 和親君

      加藤 竜祥君    菅家 一郎君

      熊田 裕通君    鈴木 馨祐君

      田所 嘉徳君    高見 康裕君

      西野 太亮君    鳩山 二郎君

      平口  洋君    深澤 陽一君

      山下 貴司君    若林 健太君

      鈴木 庸介君    中川 正春君

      山田 勝彦君    吉田はるみ君

      米山 隆一君    阿部 弘樹君

      漆間 譲司君    日下 正喜君

      平林  晃君    鈴木 義弘君

      本村 伸子君

    …………………………………

   法務大臣         齋藤  健君

   法務大臣政務官      高見 康裕君

   政府参考人

   (法務省大臣官房司法法制部長)          竹内  努君

   政府参考人

   (出入国在留管理庁次長) 西山 卓爾君

   政府参考人

   (外務省大臣官房参事官) 今福 孝男君

   政府参考人

   (外務省大臣官房参事官) 松尾 裕敬君

   政府参考人

   (厚生労働省大臣官房審議官)           日原 知己君

   法務委員会専門員     白川 弘基君

    ―――――――――――――

委員の異動

四月十九日

 辞任         補欠選任

  岩田 和親君     西野 太亮君

  奥野 信亮君     若林 健太君

同日

 辞任         補欠選任

  西野 太亮君     岩田 和親君

  若林 健太君     菅家 一郎君

同日

 辞任         補欠選任

  菅家 一郎君     奥野 信亮君

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 政府参考人出頭要求に関する件

 出入国管理及び難民認定法及び日本国との平和条約に基づき日本の国籍を離脱した者等の出入国管理に関する特例法の一部を改正する法律案(内閣提出第四八号)


このページのトップに戻る

     ――――◇―――――

伊藤委員長 これより会議を開きます。

 内閣提出、出入国管理及び難民認定法及び日本国との平和条約に基づき日本の国籍を離脱した者等の出入国管理に関する特例法の一部を改正する法律案を議題といたします。

 この際、お諮りいたします。

 本案審査のため、本日、政府参考人として法務省大臣官房司法法制部長竹内努君、出入国在留管理庁次長西山卓爾君、外務省大臣官房参事官今福孝男君、外務省大臣官房参事官松尾裕敬君及び厚生労働省大臣官房審議官日原知己君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

伊藤委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

伊藤委員長 質疑の申出がありますので、順次これを許します。宮崎政久君。

宮崎委員 おはようございます。自由民主党の宮崎政久です。

 今日は、質問の機会をいただきました。感謝を申し上げて、質疑に入らせていただきます。

 私、今期は自由民主党で法務部会長を務めさせていただいております。法務省提出のこの入管法改正法案を国会に送り出す際には、多くの同僚議員の皆様とともに、与党での責任者の一人として仕事をさせていただきました。

 この法案は、我が国にとって非常に重要なものであると考えております。それゆえ、自民党の法務部会においても、異例の四回にわたる法案審査を行いました。国内外からの指摘も、政府の方からどういう指摘があるのかという説明をしてもらい、それに対する答えも出し、丁寧な審査をさせていただきました。その後の党内手続とともに多くの議員と真摯に意見交換をして、党としてこの法案を了承させていただいたものであります。

 一方、この法案には様々な御意見、御批判があるということも重々承知をしております。そうであるがゆえに、私は、正しい事実認識に基づいて法案審査をして、この委員会でも議論を重ねるべきと考えています。

 そこで、本日の質疑では、まず、退去強制手続における全件収容主義の意味と、退去強制事由に該当する対象の外国人が全員、全件収容されているのではないという現実の実態について御説明いたします。

 ちなみに、全件収容主義というのは、退去強制手続は外国人の身柄を収容して行うことを原則とするということの意味で、収容前置主義とか原則収容主義などとも言われておりますが、退去強制事由に該当する外国人が全員収容されているわけではありません。

 その上で、今回の改正で新たに監理措置制度を設けることになりますが、その対象者の規模感などが現行法の仮放免制度とは異なるということになりますので、その現行法の仮放免制度の運用のイメージを前提として監理措置制度を議論するのは正しくないということをお伝えしたいと思っています。つまり、現在の仮放免制度がそのまま単純にスライドをして監理措置の制度になっていくという構築関係にはないということを順次御説明したいと思います。

 それでは、質疑に入ります。

 まず、現行の入管制度について確認をしたいと思います。

 現行法下では、退去強制事由に該当した者はどうなりますでしょうか。全員が退去強制の手続の対象となりますか。

西山政府参考人 現行法下におきましても、退去強制手続の対象となる者のほか、出国命令制度の対象となる者がおります。

宮崎委員 それでは、我が国の退去強制手続における出国命令制度では、これは収容はされますでしょうか。

西山政府参考人 現行法上の出国命令は、出国する意思を持って自ら出頭することのほか、一定の要件を満たす者について簡易な手続で出国することを可能とする制度であり、収容せずに手続を進めるものでございます。

宮崎委員 出国命令制度の対象者はどのようになりますでしょうか。

西山政府参考人 速やかに本邦から出国する意思を持って自ら入管当局に出頭した不法残留者が対象となります。ただし、不法残留以外の一定の退去強制事由がある者や刑罰法令違反者などは除外されます。

宮崎委員 現状、退去強制事由該当者のうちどれくらいの割合の人が出国命令の対象となっていますか。

西山政府参考人 平成二十九年から令和三年までの五年間の実績では、退去強制事由に該当する者の約四割が出国命令の対象となっております。

宮崎委員 資料一を御覧ください。左側の現行法の下と書いてあるところでございます。

 全件収容主義などと言われておりますが、赤い部分で示されている三六・八%、約四割は出国命令の対象となり、そもそも収容されていないというのが実態でございます。そうすると、この出国命令の対象者を増やせば収容されない方が増えるということになるわけであります。

 今回の改正法案では、出国命令制度をどのように改めるつもりでしょうか。

西山政府参考人 今回の入管法改正では、出国意思を持って自ら出頭した場合に加え、入国審査官から退去強制対象者に該当すると認定される前に自ら出国意思を表明した場合にも出国命令を発出できるよう、出国命令対象者の要件を拡大いたします。

宮崎委員 今御説明があったような出国命令の対象者を拡大することによって、退去強制事由に該当する者のうちどれくらいの割合の方が出国命令の対象になると見込んでおりますか。

西山政府参考人 退去強制手続の対象となった者の約六割が、いわゆる三審制の第一段階において、違反を争うことなく直ちに出国意思を表明していることを踏まえますと、改正法下においては、退去強制事由該当者の約七割が出国命令の対象となり得るものと考えております。

宮崎委員 次長、ありがとうございました。

 改めて、資料一を御覧いただきたいと思います。

 この資料は、入管庁の統計数値を出してもらいまして、私の事務所でグラフに作成をしたものであります。左側が現行法の下、右側が改正法下での見込みを示したものでございます。左側の図の赤色の部分が現行法の下の出国命令の対象者でありまして、退去強制事由該当者のうち三六・八%、約四割の方が出国命令を受けていることになりまして、この方々はそもそも収容されておりません。

 次に、右側の図の、赤は同じなんですが、2の黄色の部分は、法改正により新たに出国命令の対象者に加わると想定される者、すなわち、今御答弁がありましたように、自ら出頭してきた者ではないが、摘発後に早期に出国希望を表明した者であります。赤色と黄色の部分を足すと、改正法の下では七二・八%、約七割の方が出国命令の対象になると見込まれていることが分かります。

 なお、右側の図に緑の部分がございます。これは、早期に出国希望を表明したのでありますが、刑罰法令違反など、不法残留以外の退去強制事由があることによって、出国命令の要件を満たさない方を統計上の数値で拾い上げたものであります。

 この数字をお出ししたいと思ったのは、実は現行法の下では、退去強制手続の対象となった者のうち、いわゆる三審制の第一段階で、違反を争うことなく直ちに出国の意思を表明している方が大変に多くて、過去五年間の平均では、先ほど答弁にありましたとおり六三%に上っています。そのうち要件を満たさない方を除いた方は、新しい制度の下でもこの出国命令制度の対象と見込まれるのでありまして、それを計算すると今の右側にある黄色部分の三六%に相当いたします。

 このように、改正法の下では、出国命令制度の対象が拡大されることにより、逆に、退去強制事由該当者のうち、収容するか否かの検討の対象となる者が大きく減ることになります。現行法の下で青色の部分の六三・二%から、改正法の下では、青色と緑色を足した三一・二%の部分だけがこの検討の対象になるということを、まず規模感として御理解いただきたいと思っています。

 また、今回の改正法案では、出国命令の対象とはならず、退去強制手続の対象となった者についても、収容するか否かが問題となる期間を短くするための工夫をしています。

 その一つは、保護すべき者は保護するということでありまして、改正法の下では、在留特別許可の申請手続を創設することといたします。

 資料二を御覧ください。

 黒い線で示されている現行法では、在留特別許可について、三審制の違反審判手続の最終段階、法務大臣の裁決のところでこの判断がされますので、事実に争いがない場合でも、不服申立てを重ねないと在留特別許可が得られないという構図になっています。

 これに対して改正法では、赤い線で示しているように、手続中、随時在留特別許可の申請が可能となります。三審制の満了を待たずに在留特別許可を得られることになりますので、在留を認めるべき者は迅速に在留が認められるということになります。

 そのほか、改正法案では、送還停止効の例外規定によって、難民認定申請を誤用、濫用する者を速やかに送還することが可能となり、退去命令制度により、イラン人など送還忌避者を迅速に退去させることが可能となる、こういう一体的な制度改革をしたいというわけであります。

 改正法の下で退去強制手続が迅速に進むことにより、収容するか否かが問題となる期間も短くなると考えておりますが、こういう考えでよろしいでしょうか。

西山政府参考人 御指摘のとおり、在留特別許可の申請手続の創設は、手続保障を充実させるのみでなく、手続の迅速化も図るものであり、在留を認めるべき者には迅速に在留特別許可が付与されることとなります。

 また、現行法下の収容の長期化の根本的な原因は送還忌避問題にあり、送還忌避問題を解決することは、収容の長期化の解消にもつながると考えております。

宮崎委員 以上、見てきましたように、今回の改正法の下では、出国命令の対象を拡大することによって、現行法の下と比較して、退去強制事由該当者のうち、収容するか否かの検討対象者が確実に大きく減る上に、退去強制手続も迅速に進むことになり、収容するか否かの問題となる期間も短くなるわけであります。ですから、収容代替措置について議論をするに当たっても、こういう前提を持った上で議論をすることが必要であります。

 現行法の下では仮放免を柔軟に活用しておりますけれども、改正法の下で設ける監理措置は、現行法の仮放免とは、その規模感であるとか社会の中で生活する期間が大きく異なってくるわけであります。現行法の仮放免の規模感がそのままで監理措置に横スライドするようにして置き換わるというイメージで議論をするのは適切でないということを、この委員会でまず共有をしたいと思っています。

 今話をさせていただいたことを前提に議論をいたしますが、まず、新たに収容代替措置を創設することが必要となる現行法における課題をお示しください。

西山政府参考人 現行法では、退去強制手続を受ける者を原則収容することを前提としており、収容が長期化し、被収容者の健康上の問題など、様々な問題が生じかねないところでございます。

 現行法下で収容の長期化を防止するには仮放免を柔軟に活用するほかありませんが、仮放免は本来、健康上の理由がある場合などに一時的に収容を解除する措置であり、逃亡等の防止手段が十分でなく、現に、逃亡事案が多数発生しております。

 そのため、適切な逃亡等の防止手段を備えた収容代替措置が必要となります。

宮崎委員 今御指摘のとおりであります。

 そこで、資料三を御覧いただきたいと思います。これは入管庁の資料です。

 仮放免の問題、左の下の身元保証制度の運用状況という記載を御覧ください。ここに記載されているように、多数の逃亡者を出す不適切な身元保証人の例が現に把握されています。どうしてこういうことが起きるんでしょうか。

西山政府参考人 現行法下の身元保証人は、あくまで運用上付されているものであり、法的な義務を負わないことから、実際には適切に本人を監督できない又はしない方が身元保証人となっており、そのことも一因となって、御指摘のような事態が生じたものと認識しております。

宮崎委員 運用上付されている、法的な義務を負わない、これは大きな一因なんです。ですから、今回の改正においても、こういったところをしっかり改正をしていかないといけないと思っています。

 ちなみに、こういう不適切な身元保証人は改正法の下で監理人となれるんでしょうか。

西山政府参考人 監理措置制度の下では、監理人としての責務を理解し、任務遂行能力を有する者を監理人として選定することとなりますので、御指摘のような方は監理人として不適格であり、選定されないこととなると考えています。

宮崎委員 そうすると、監理人のなり手はどういう人が想定されているんでしょうか。現在の仮放免における身元保証人になっていただいているような方が典型例と考えてよろしいのでしょうか。

西山政府参考人 監理人としては、典型的には当該外国人の親戚や知人などを想定しておりますが、これに限られるものではなく、支援団体や士業の方々も候補となり得ます。特に、現行法下で仮放免の身元保証人となっているような方々は、先ほどのような不適格な方々を除き、その経験等に鑑みますと、監理人の中心的な担い手となるものと考えております。

宮崎委員 そこで、監理人のなり手がいないんだというような御批判がありましたので、私も確認をしてみました。

 資料四を御覧ください。まず一枚目、先日の質疑でも御指摘をいただいたアンケートであります。

 確かに、このタイトル「監理措置に関する意見聴取概要」によりますと、左側の「回答者の属性」という欄では、「入管庁が新設を提案する「監理措置」の担い手である、「監理人」として想定されている弁護士、外国人支援者・団体から合計百三十二件の意見を聴取しました。」と記載がされています。

 そこで、右側の方を見ますと、「九〇%」と大きく書いてあって、そこの横に「監理人になれない・なりたくない」と記載がされています。この数字だけを見れば、確かに、監理人のなり手がいないんじゃないかというふうに思うわけであります。

 しかし、先ほどの答弁にあったように、実際に監理人となるであろう、その中心となるであろうと想定される人がどれくらい回答者の中にいるのかということを確認してみました。

 資料四、一枚目の左側、下の表の部分を御覧ください。仮放免の保証人をしている人が一二%、仮放免の保証人をしたことがある人が一三%。つまり、このアンケート回答者のうち、仮放免の、候補者として中心となると現実に想定される人は二五%となります。つまり、このアンケートについては、回答者のうち現実に監理人として想定される人は四分の一であるというふうに分析をするべきであります。その上で先ほどの九〇%という数字を認識すべきと考えます。

 また、このアンケートの方法でありますけれども、アンケートを実施するに当たっては、この団体の意見を併せて示された上で、回答するように求められています。資料四、二枚目を御覧ください。四角囲みのところですが、ラインマークを引いているところです。「監理措置に関する意見聴取(二〇二三年版)補足資料(意見聴取にあたりFRJが作成しました)」ということになってこの補足資料が示された上で、資料四、三枚目を御覧ください。これがその補足資料であります。

 そこはどういうことが書いてあるかというと、この上の段、ラインマークを引いてあるところでありますけれども、二段落目、「「監理措置」に関する論点をより詳しく知っていただけるように、こちらの補足資料を用意いたしました。意見聴取のフォームと合わせて適宜ご参照ください。」とした上で、団体の意見として下の方に、またアンダーラインを引いております、「「監理措置」には多くの課題があり、難民をはじめとする外国人の基本的人権を尊重し、必要な支援を含んだ適切な制度であるとはいえないと考えます。」と記載をされた上で、意見書へのリンクもその下に張られているんです。その上で、この意見を適宜参照した上で、監理人を引き受けたいと思いますかと質問をしたのがこのアンケートであり、その結果であります。

 このように、一定の意見を参照しながら答えるという形式でアンケートを取れば、回答者に対して、そうか、ここは監理人になれない、なりたくないと答えるべきなんだなというふうな感じで、誘導が加わりかねないのでありまして、アンケートを取る際の中立性には大いに疑義がある、私は率直にこういう感想を持ちました。

 国会における法案の審議でありますから、事実に基づいて丁寧にやるべきだと思います。

 監理人がなり手がいないということになれば、もう重大事であります。

 私は、この御指摘にあったアンケートのこの数値は真摯に受け止めます。政府にも真摯に受け止めてほしいと思っています。

 ただ、一方で、このアンケートはこういう形式で行われていたということもこの法務委員会で委員の皆さんに共有をしていただきたいと思いまして、今日、資料提示とともに御説明をいたしました。一方的な批判とならないように、この団体がお作りになって示した資料も資料として委員会提出したものでありますので、是非、委員の皆さんに御理解いただきたいところだと思っています。

 そして、この資料の一枚目ですけれども、このアンケート結果の「監理人になれない・なりたくない」という欄には、主な理由として「支援者という立場で監視することは矛盾する」とありますけれども、これは本当にそうでしょうか。監理人には監視を求めているという制度になるのか、政府の説明を求めます。

西山政府参考人 監理人には、監理措置条件等の遵守の確保のため、その方と本人との間の人的関係に応じて適切な指導監督や援助などを行うことを求めているものであり、例えば四六時中本人を監視するような過度な負担を求めるものではございません。

 支援者の立場で支援することと監理人として適切に責務を果たすことは、相入れないものではなく、十分両立するものと考えております。

宮崎委員 資料四、一枚目の右側下段には、前回の法案からの変更点について、「監理人の担い手からは評価されず」と記載がされています。

 今回の法案では、前回の法案を修正して、監理人の定期的な届出義務を削除して、主任審査官から求められたときに報告をする義務に変えております。

 この点についても、入管庁の運用次第で全件報告となる可能性がある、こういう指摘もあるわけでありますが、この点についてはどのように考えていますでしょうか。

西山政府参考人 本法案では、条文上も、主任審査官が報告を求めることができる場合を監理措置条件の遵守の確保のために必要があるときに限定しており、必要なときに必要な事項についてのみ報告を求めることとなります。

 そのため、全件について必要と判断し報告を求めることは条文上もあり得ないのであって、御懸念には及ばないところでございます。

宮崎委員 そのとおりです。仮に、監理人が入管庁の報告を求める判断がおかしいと考えて報告をしなかった結果、例えば過料の制裁であるとか監理人選定が取り消されるという場合があったとしても、監理人が過料の手続の中であったり行政訴訟で争う余地もあるわけです。そうすると、争われ得る余地がある以上、入管としては不適切な運用は行えないわけでありまして、適正さはこういう意味で裏側からも担保をされていると私は考えます。

 いずれにしましても、こういう誤解がされている面も多いと思います。説明が必要なのではないかと思いますが、政府の取組について答弁を求めます。

西山政府参考人 監理措置制度を適正に運用していくためには、その担い手となる方々に対して、制度について広く御理解をいただくことが重要であり、入管庁としても、引き続き丁寧に説明を尽くしてまいりたいと考えております。

宮崎委員 このアンケート、全部読ませていただきました。入管の裁量が広い、ブラックボックスだなどとの指摘もありまして、収容だけではなくて、在特の許可など入管行政全般に対する指摘があります。

 ただ、私は、行政手続においては、個別事案で適切な結論を導くためには、一定程度裁量的な判断の余地が残されていることが必要です。行政裁量という言葉がございます。こうしないと判断が硬直化してしまって柔軟な対応ができないからです。

 ただ、恣意的な判断になってはいけない、合理的な裁量の範囲にとどめないといけないので、バランスが必要なんです。

 この点について、今回の改正法でどういう配慮をしているか、説明してください。

西山政府参考人 今回の改正法案におきましては、在留特別許可の許否判断の考慮事情を明示することによって、在留特別許可の判断の一層の透明化を図ることとしております。

 さらに、在留特別許可、監理措置及び仮放免について不許可とする場合には、その理由を告知する制度を設けるなど、判断の透明性を高めるための様々な仕組みを整備しております。

 この不許可理由の告知を義務づけることにより、合理的な理由のない不許可を抑止できることとなる上、判断に不服がある場合には行政訴訟を提起して的確に争うことが容易となるのであって、入管当局における判断の公平、適正さが一層確保される仕組みになっております。

宮崎委員 行政裁量が必要であることは論をまちません。ただ、裁量には合理的な制限があります。しっかりとした運用ができるように、更に検討を重ねていってもらいたいと思っております。

 さらに、もう一つですけれども、国際比較について触れたいと思います。

 今回の改正法については、自民党の法務部会でも、法案審査の段階から、諸外国との法制度の比較も行ってきております。

 資料五を御覧ください。これは、入管庁の資料を基に私の事務所で作って、部会で提出をした資料でございます。送還停止効の例外、退去命令違反罪、収容期間の上限、司法審査について表にいたしました。

 諸外国は送還停止効の例外や再申請の制限を設けておりまして、我が国の現行制度のように、何度でもどんな理由でも送還が停止する制度はむしろ異例だと言えます。罰則つきの退去命令制度についても、アメリカやフランスでは同じような制度を設けております。収容期間の上限や事前の司法審査を設けるべきだという議論もありますが、上限については、一部の国は導入していますが、アメリカのように幅広く例外を認めている国もあります。事前の司法審査をほとんどの国が導入しておりません。

 こうして見ると、今回の法改正は国際標準を満たさないなどと批判をされていますが、むしろ、出入国管理行政上、国際的に見て足りないところがあって、穴が空いている現行入管制度を適切に補うものであって、主権国家として当然行うべき法改正だと私は考えています。齋藤大臣の御認識を問います。

齋藤(健)国務大臣 委員御指摘のとおりでありまして、我が国のみが特異な制度を設けようとしているものではなく、国際標準を満たさない法改正であるとの御批判は当たらないと考えています。

宮崎委員 大臣、ありがとうございました。

 大臣が強い決意でこの法案のリーダーシップを取っていただいていること、党の部会の審査の段階から拝聴しておりました。

 そして、今回、この委員会でたくさんの意見が出てくることは私は大切なことだと思っています、民主主義社会でありますから。ただ、今日、私が御説明をさせていただいたとおり、私たちはこの改正法が必要だと考えています。

 今日は、これまでの法案審議では余り注目をされていなかった出国命令制度や、監理措置制度を考える際の規模感などの前提を共有させていただいたり、改正の全体の前提というか構図についても御理解をいただけるように質疑をさせていただきました。どうかこれからの議論の中で、こういった前提の共有も、委員の皆様にもお願いをしたいところであります。

 私は、冒頭申し上げましたとおり、自由民主党の法務部会長をさせていただいております。法務省提出のこの改正法案をこの国会に送り出す際には、与党の責任者として仕事をする機会をいただきました。自民党においては多くの議員の皆さんと一緒に、異例であるけれども四回部会を開催して、法案審査をしました。また、その後の党内手続もやりました。先輩議員も含めて多くの議員の皆さんとこの法案について真摯に議論を重ねて、党として法案了承というところまで来ました。

 この法案は、我が国において外国人と日本人とが安全、安心に暮らせる共生社会を実現するために必要だと自負があります。共生社会の実現のために、日本人が外国人への差別、偏見をなくし、人権を尊重することが必要であることはもちろん当然のことであります。これに努めることも大切なことであることは論をまちません。

 ただ、その一方で、必要なルールを定めること、外国の方にもルールを守っていただくべきことは当然であって、足りない部分についてのルールを補う法改正は絶対に必要です。私は今日、こういった責任感で質疑に立たせていただきました。

 最後に、ここまでのやり取りを踏まえまして、本法改正に向けての齋藤法務大臣の意気込み、お考えをお聞かせください。

齋藤(健)国務大臣 まず、宮崎委員のこれまでの御尽力に心から敬意を表したいと思います。

 本法案は、様々な施策を組み合わせ、パッケージとして現行法下の課題を一体的に解決をしようというものであります。

 本法案の全体像をお示しすることにより、外国人の人権を尊重しつつ、適正な出入国在留管理を実現するバランスの取れた法案であることが御理解いただけると私は考えています。

 法案の内容及び必要について広く国民の皆様に御理解いただけるよう引き続き丁寧に説明を尽くし、法案の成立に向けて全力で取り組んでいきたいと考えています。

宮崎委員 大臣、ありがとうございました。

 この法務委員会の議論、私は非常に大切なものだと思っております。様々なお立場から意見が交わされること、そして、政府の側からも真摯な答弁が重ねられております。この議論をしっかりと続けて、適切な時期に法案の委員会での了承、成立を期したいと決意を申し上げて、今日の質疑を終わらせていただきます。

 ありがとうございました。

伊藤委員長 次に、山下貴司君。

山下委員 自由民主党の山下貴司でございます。

 まず、ウィシュマ・サンダマリさんが亡くなられたことについて、心から哀悼の意を表したいと思います。出入国在留管理庁設置当時の法務大臣として、痛惜の念に堪えません。

 ただ、私は、今回の改正、お配りした資料一、二にありますけれども、ウィシュマさんの悲劇を繰り返さないための法改正でなければならないと考えております。

 そこで、大臣に問いますが、仮にウィシュマさん事件当時、今回の法改正後の入管法が施行されていたとすれば、ウィシュマさんの悲劇は防げていたとお考えでしょうか。その理由とともにお答えください。

齋藤(健)国務大臣 まず、改めて、ウィシュマさんの御冥福を心からお祈り申し上げたいと思います。

 入管庁では、これまで、調査報告書で示された改善策を中心に、組織、業務改革に取り組んできたところ、こうした取組により、常勤医師の確保等の医療体制の強化や職員の意識改革の促進など、改革の効果が着実に表れてきていると思います。

 加えて、今回の改正法案では、例えば、全件収容主義と批判されている現行法を改め、監理措置を創設し、収容しないで退去強制手続を進めることができる仕組みとした上で、収容した場合であっても、三か月ごとに収容の要否を見直して、不必要な収容を回避する。体調不良者の健康状態を的確に把握して、柔軟な仮放免判断を可能とするために、健康上の理由による仮放免許可申請については、医師の意見を聞くなどして、健康状態に十分配慮して仮放免に係る判断をするように努めることとする等の規定を設けているほか、常勤医師確保のため、現行法における常勤医師の兼業要件を緩和するなどしています。

 現在、入管庁が取り組んでいる組織、業務改革の進捗に加えて、本法案による監理措置及び仮放免を適切に運用し、何としても再発を防ぐ、そういう覚悟で取り組んでいきたいと思います。

山下委員 今、施行があって新たなこういった制度があれば、再発を何としても防ぐ、そういう決意である、そういうふうに伺いました。

 順番に確認していきますけれども、まず、監理制度の創設によって、ウィシュマさんの事案を防止というか、再発を防ぐという決意が実現できるということですが、どのようにウィシュマさんの事件の再発防止につながるんでしょうか。当局に聞きます。

西山政府参考人 ウィシュマさんが当庁の収容施設内で健康状態を悪くされ亡くなられたことにつきまして、改めまして、入管庁として重く受け止めているという気持ちを改めて告げさせていただきたいと存じます。

 その上で、御質問にお答えさせていただきますが、監理措置制度の創設により、退去強制手続の対象となる外国人は、手続の当初において、逃亡等のおそれの程度のみでなく、収容により受ける不利益の程度も考慮された上で、監理措置に付すか収容するのかが適切に選択されることとなります。

 また、収容した場合であっても、三か月ごとに主任審査官及び出入国在留管理庁長官が監理措置の要否を判断し、定期的に収容の要否を見直すこととなります。

 これらの規定により、不必要な収容はされないことから、ウィシュマさんのように収容施設内で健康状態が悪くなって亡くなられるといった事態を防止することができるというふうに考えております。

山下委員 現行法では全件収容主義を取っている、これは宮崎委員も指摘したとおりでありますし、一旦収容された場合は、仮放免措置しか身柄拘束を解く手段がありません。そしてまた、仮放免の基準は不明確である。

 他方、宮崎委員も指摘されましたが、資料四によれば、現行法下の仮放免措置では逃亡事案が多数生じているなど、問題がありました。

 お配りした資料四によれば、これは令和二年末の数字でありますけれども、仮放免となり逃亡した者は当時四百十五人、これは令和四年末の速報値では千四百人に激増しております。そのうち、この表にもありますけれども、自らの健康状態の悪化を理由とする仮放免の許可を受けることを目的として、拒食に及ぶという問題も生じている。そして、拒食の結果仮放免となり、逃亡中の者というのが六十七人、令和二年の末にいたということでありました。

 また、宮崎委員も指摘がありましたけれども、身元保証人の中には、例えば、この身元保証制度運用状況の弁護士Cさんのように、身元を引き受けた四割が逃亡者となっている、あるいは弁護士Aさんのように、身元引受人となった者の八十人が逃亡しているということもあります。

 そしてまた、仮放免者の犯罪事例ということで、仮放免中に犯罪行為に及んだ事例もある。その中には、強姦などの重罪もある。こうした事実関係を踏まえ、一般論として、基準のない仮放免の運用が慎重になっていたということは理解できないではありません。

 しかし、本改正のような監理措置というきちんとした制度があれば、そして、定期的な見直しもあるわけですから、ウィシュマさんのような原因不明の摂食不良、そして服薬拒否もあったようでございますけれども、そうした体力低下について、適切な身元引受人がいることを前提に監理措置を取ることができたというふうに考えられます。

 なお、今回の法改正で、本人及び監理人に法的な届出義務を課し、場合によって保証金を課すこととしているということが批判されておりますけれども、仮放免後の逃亡者は、先ほど申し上げたように、昨年末の速報値で千四百人に激増しております。既に述べたように、仮放免の身元保証を行った外国人の最大四割が逃亡している身元保証人も存在する。こうした事実に照らせば、国民のための入国行政ということを考えると、一定の担保措置を取ることもやむを得ないと考えております。

 ただ、ウィシュマさんは、資料三からも分かるように、急激に体調が悪くなったのではないでしょうか。そうだとすれば、適切な身元引受人が見当たらないうちに容体が急変するなど、監理措置が間に合わなかった場合、仮放免措置が取れるのでしょうか。

 現行法では仮放免について基準が定められていませんでしたが、改正法では、健康上の理由による仮放免請求について、医師の意見を聞くことなどの法改正によってウィシュマさんの事案を防げるということですが、どのように防止することができるのでしょうか。当局に聞きます。

西山政府参考人 健康上の理由による仮放免請求の判断をするに当たり、医師の意見を聞くなど、健康状態への十分な配慮に努めることを法律上明記することといたしましたのは、健康状態が悪化したウィシュマさんが収容施設内で亡くなったということがございましたことから、同種の事案の再発防止のために、健康状態を的確に把握して仮放免の判断を行う必要があると考えて設けたものであり、同様の事案の発生を防止するため、健康上の理由による仮放免請求があった場合には、基本的に医師の意見を聞いて判断することとなります。

 これにより、ウィシュマさんのように、健康状態が悪化して収容施設内で亡くなるといった事態を防止することができるものと考えております。

山下委員 当局に重ねて聞きますが、健康状態の推移というところで、お配りした資料三のところで、一月中旬頃以降、体調不良という記載があります。

 そして、これに対してどのような医療措置をなされたのかということも踏まえて、そういった体調不良の状況の把握についてどうであったのかということについて、重ねて当局に伺います。

西山政府参考人 当時、名古屋入管におきましては、ウィシュマさんに対し、一月二十二日以降、亡くなる二日前、三月四日までの間に、庁内で血液検査、尿検査、心電図検査等を実施し、五回にわたり庁内医師の診療を実施し、二回にわたり外部医師の診療を実施するなどの医療的対応を行ってきたところでございます。

山下委員 一月中旬以降、体調不良というふうになっておりますけれども、その段階で体調不良を認識したというのは、それ以前ということについてはどういう体調だというふうに認識していたんでしょうか。

西山政府参考人 調査報告書によりますと、ウィシュマさんは、令和三年一月中旬頃から食欲不振、吐き気等の体調不良を訴えられるようになり、その頃、看護師に対して、服薬や医師の診療は嫌であり、外部病院に行くのは更に嫌である旨述べたこともあったようでございます。

山下委員 資料三によると、収容開始時は約八十五キログラム、身長百五十八に対して約八十五キログラムで、一月二十日には七十二キログラムということであります。

 百五十八の日本人の標準体重は五十五キロであるということでありますけれども、ただ、体重が激変しているということはこれから読み取れるわけですが、一月二十日の時点で、この体重減少についてはどのように把握していたということでしょうか。報告書の記載からでも結構です。

西山政府参考人 調査報告書によりますと、体調不良を訴えられるようになった令和三年一月二十日の時点で、体重は七十二・〇キログラムであったとのことでございます。

山下委員 調査報告書によると、看護師の面談記録によれば、先ほど西山次長がおっしゃったように、医師の診察は嫌です、外の病院に行くのはもっと嫌です、私は痩せたいです、食べて痩せたいですと述べるなど、痩せ願望があったというふうな記載があります。こうした認識だったんでしょうか。

 加えて、ウィシュマさんは運動などはしていなかったんでしょうか。

西山政府参考人 ただいま委員から御指摘があった、ウィシュマさんが痩せたいというふうなことをおっしゃっておられたということ自体は調査報告書にも記載がございますが、それについての評価は特にございません。

 それから、調査報告書によりますと、委員御指摘の時期、一月二十七日にバレーボールをした旨述べたことがあったという記載がございます。

山下委員 他方で、やはり一月中旬以降、体調不良ではないかということで様々な医療の検査を実施したということですけれども、亡くなるまでに何度医療の診察を実施したわけでしょうか。

西山政府参考人 庁内、外部合わせて合計七回でございます。

山下委員 資料三によると、例えば胃カメラ、あるいは頭部CT検査なども実施されているようであります。

 このように、亡くなる四十日前から、胃カメラ、CT検査を含め七回、内外の医師の診断を受けて、亡くなる二日前も外部病院の診断を受けているということで、限られたリソースの中で入管当局としてできる限りの対応をしたかどうかということは今後の民事訴訟で明らかになるんだろうと思いますが、いずれにせよ、最悪の事態を防げなかったことは誠に遺憾であります。

 これを踏まえて常勤医師の兼業要件の緩和がなされたといいますが、これがなぜウィシュマさんの事案の防止につながるんでしょうか。

西山政府参考人 調査報告書では、医療的対応のための体制整備や運用が不十分であったことが改善点の一つとして指摘されたところでございます。

 常勤医師の兼業要件の緩和は、入管収容施設において常勤医師を確保する上で支障となっている、民間医療機関と比較した待遇面での格差を是正するものでありますことから、医師の確保を促進するもので、改善点として指摘された医療的対応のための体制整備に資するものと考えております。

山下委員 こうした常勤医師が拡充されることによって、迅速に体調の変化、そういったものが把握できたんだろうというふうに思います。

 昨日の審議でも指摘されているところですが、例えば、二月十五日、ケトン体の数値などの異常を示す尿検査結果が出たことが問題になっています。

 これに対して、名古屋入管庁の対応としては、報告書によれば、その資料を非常勤の看護師が医師に示した旨述べている、あるいは、その後の二月十六日、十八日、二十二日と三日にわたり整形外科医や内科医の診断を受けている、それでも器質性の疾患を認める診断に至らなかったということで、精神病状を疑ったという経緯であります。そして一方で、三月には、仮放免の方向で検討が進められていたという記載もございます。

 こうした経過について、薬の処方や摂食障害の状況も含め、死因については、医師二名、法律家二名、この中には東京高裁の元部総括判事の経験のある方も含まれておりますが、外部有識者の見解も聴取した上で報告書が作成されたということであります。これ以上の医学的検証については、現在、民事訴訟の係属中であります。司法手続による徹底解明、これを待つべきだろうと考えております。

 ただ、報告書を子細に読むと、ウィシュマさんは、二月十六日以降一週間、官給食を食べておられなかったようであります。その後も、官給食については少量のおかゆ以外はウィシュマさん自ら手をつけることがなかったようで、OS―1や、あるいは自費購入のピーナツバターや果物、パウンドケーキなどは若干食していたとしても、栄養状態が、ケトン体の異常を示した数値よりも更に悪化していたということも考えられます。そしてまた、処方された薬も、二月末まではおおむね服用拒否状態にあったと報告書にも記載があります。こうした摂食不良や服用拒否状態に取り得る対応については、更に検討すべきであろうと思っております。

 そして、本法案にウィシュマさんの事案を防止するための措置が盛り込まれたとしても、こうした措置を講じても、それを使う職員側の問題も指摘されておるところでございます。

 報道でもありましたが、弱った様子で、病院に連れていってほしいと、ビデオでもございました、懇願するウィシュマさんに対して、例えば、私にはパワーがない、ボスに話すけれども今日行けるかどうか分からないなどと言っています。なぜこのような対応になったんでしょうか。

西山政府参考人 御指摘の職員による対応となった理由について、当該職員は、調査報告書で指摘されているとおり、救急搬送が必要な状態と思われず、既に三月四日に外部医療機関への受診が決まっていたためであった旨を述べております。

 その上で、調査報告書におきましては、こうした対応の要因について、診療の申出の結果として、二月十九日の時点で三月四日の精神科での受診が既に決定されており対応済みと認識していたことなどが原因で、看守勤務者がウィシュマさんの体調不良の訴えを深刻に受け止めていなかったことによるものと思われるとしているところでございます。

 この点について、調査報告書では、真に医療的対応が必要な状況を見落とすことなく適切に対応できるよう、職員に意識させておく必要があったとして、職員に対する教育や意識の涵養の不足を指摘しているところでございます。

山下委員 重ねて聞きますけれども、緊急な搬送が必要な状況だとの診断は指示されていなかったということですが、それはいつの診断なんですか。このビデオが撮影された日時との関係でお答えください。

西山政府参考人 ビデオの前日であります二月二十二日の診療では、栄養剤の処方があった旨報告書には記載がございます。

山下委員 その診断において、緊急な搬送が必要な状況だという指示はあったのか、なかったのかということなんですが。

西山政府参考人 報告書によりましたら、そのような事実はなかったようでございます。

山下委員 つまり、二月二十三日のビデオの撮影の前日に医師の診断を受けて、その際に、緊急搬送が必要な状況だとの診断は指示されていなかったということ、それを踏まえて、三月四日に既に病院に連れていくということが決められておったので、そういう判断はしなかったということでありました。

 ただ、そういったことで救急搬送の状況と認めなかったと言いますが、ウィシュマさんは収容中に体重が二十キロも低下している。ウィシュマさんの介助の際に、重いわという発言もあったようですが、そのほかにも、看守等、職員の不適切な発言が指摘されています。なぜそのような相手にそんな発言をしたんでしょうか。

西山政府参考人 調査報告書においては、御指摘の職員の発言について、当時、深夜、早朝を問わず、ウィシュマさんからの求めに応じて食事や着替え等の介助を行う中で、職員の気持ちを軽くするとともに、ウィシュマさん本人にもフレンドリーに接したいなどの思いからの発言であった旨調査報告書において指摘した上で、そうだとしても、明らかに人権意識に欠ける不適切な発言であった旨指摘しているとおり、不適切な発言であったと考えております。

山下委員 当時のウィシュマさんの体重、そして、それを支えようとしていた職員の体格等についてはどうでしょうか。

西山政府参考人 当時とおっしゃいますと、亡くなられた日の約二週間前ということでございますれば、同年二月二十三日の時点で体重約六十五・五キログラムでございました。

 なお、職員の体型等につきましては、報告書には記載がございません。

山下委員 報告書上は、特段の記載がない限りは、これは女子の職員だということでございます。

 女子の職員でやるということになると、そういった重さを感じる、腰に負担を感じたということに関しての記載もありましたが、これは報告書記載のとおりということでいいんですか。

西山政府参考人 委員御指摘のとおりでございます。

山下委員 また、こういった不適切な、これはやはり本当に不適切な発言だろうと思います。その言動について、しっかりと徹底した教育をしなければならないと思っております。

 次に、難民認定手続中の送還停止効について聞きます。

 本法案では、先ほど宮崎委員も指摘があったように、三回目以降の難民等認定申請者、三年以上の実刑判決を得た者、外国人テロリスト等を送還停止効の例外としております。

 確かに、資料五にお示ししたとおり、申請者の就労資格を認めて以降、難民認定申請の激増によって審査期間が著しく長期化し、本来庇護すべき者の迅速な救済が困難になっていることから、一定の範囲で限定することの合理性は認められます。

 他方、その点についてUNHCR等からも懸念が示されていると承知しておりますが、そもそもこのような制度となっていることは、難民条約その他の人権条約、これは人権憲章等も含むわけでございますが、そのような人権諸条約の違反と考えているのでしょうか。国際法の解釈を所管する外務省に問います。

今福政府参考人 お答え申し上げます。

 難民条約の第三十三条一は、難民を、いかなる方法によっても、人種、宗教、国籍若しくは特定の社会的集団の構成員であること又は政治的意見のためにその生命又は自由が脅威にさらされるおそれのある領域の国境へ追放し又は送還してはならない、いわゆるノン・ルフールマン原則を規定しております。

 今次改正法案では、委員御指摘のとおり、三回目以降の難民認定申請者、三年以上の実刑判決を受けた者、あとテロリスト等を送還停止効の例外としておりますが、送還停止効は、難民認定申請中の者の法的地位の安定を図るために設けられたものと承知しており、また、その送還先につきましては、送還停止効の例外に該当する者であっても、入管法第五十三条三項において、我が国が締約国となっている難民条約等に規定されている国への送還を禁じているため、難民条約やその他の我が国が締約国となっている人権諸条約に違反するものではないと考えられると考えております。

山下委員 様々な御指摘がありますけれども、国際法違反ではないというのが我が国の政府の解釈であるということであります。

 資料六を見ても、難民認定申請等の送還停止効の例外を定めていない国は、この表の中では日本だけであります。ほかの国は定めているんです。

 そういったことからすると、やはり適正な運用をするということが大前提でありますけれども、こうした制度を設けることが直ちにこうした国際標準違反という批判は全く当たらないということが、この表からも明らかであろうと思います。

 他方、難民該当性判断について、入管庁ではなく第三者機関で行うべきではないかとの指摘について、どのように考えておられますか。当局に問います。

西山政府参考人 難民認定手続については、その他の出入国在留管理行政上の様々な手続とは密接に関連していることから、出入国在留管理庁において行うことが適当であり、独立した第三者機関を設置するということは考えていないところでございます。

 また、行政効率等の観点からも、難民認定に関する業務を出入国管理行政から切り離すことは、必ずしも難民認定手続が適正に機能する制度につながるものではないと考えております。

 その上で、入管庁におきましては、制度と運用の両面から、難民認定手続の適正性を確保しております。

 制度面におきましては、不認定処分に対する審査請求では、外部有識者である難民審査参与員が三人一組で審理を行い、法務大臣はその意見を必ず聞いた上で判断することとされ、さらに、難民には当たらないとの判断に不服があれば、裁判所に訴えを提起し、司法判断を受けることも可能でございます。

 運用面におきましては、UNHCR等の協力も得ながら、難民調査官の能力向上、出身国情報の充実等の運用の一層の適正化に取り組んでいるところでございます。

 引き続き、国際機関と協調しながら、真に庇護を必要とする外国人の迅速かつ確実な保護に取り組んでまいりたいと考えております。

山下委員 お配りした資料六にもありますように、例えば、イギリス、ドイツ、オーストラリアなど、出入国在留管理業務と難民認定業務を同一の行政機関が担当する制度を取っているというところもございます。これは収容に当たっての司法審査がないところというところでございますけれども、そうしたことがございます。こうしたことから、今回の法改正については、人権諸条約、難民条約を含めて、条約違反、国際法違反であるという指摘は当たらないということであります。

 ところで、先日の本会議における立憲民主党の山田議員の質疑において、クルド人の難民申請が認められず、入管庁がトルコに強制送還した結果、何かしらの理由で殺されてしまったという痛ましい事件が起こっている旨の質疑が本会議場でなされました、この法案に関連して。

 事実関係として、退去強制が難民条約ほか人権条約上問題となるような、政治的迫害によって殺されたのでしょうか。当局に聞きます。

西山政府参考人 御指摘の質疑において指摘されたトルコ人の方について、我が国の裁判所における確定判決では、トルコ国内における報道に基づき、当該トルコ人は、日本で稼働して得た資金の使途をめぐって家族間で対立を生じ、息子に殺害されたものであるとして息子が逮捕されたことが報道されており、この殺害事件にトルコの捜査機関が関与していることを裏づける証拠は何ら認められないと認定されております。

 この確定判決における認定のように、親族によって殺害されたことは、一般に、難民条約上の五つの理由による迫害には当たらないと考えております。

山下委員 それが事実だとすれば、難民性の問題とは何ら関係ない、家庭的事情で殺害されたということになるわけです。そうしたことを混ぜこぜにして本改正案の問題点とすべきでないことは明らかであります。立法府としては、事実関係を正確に踏まえて、冷静に議論する必要があると考えます。

 その上で、ウィシュマさんの事件では、確かに、入管職員による不適切な言動がありました。また、四十日の間に七回も医師の診察を受けたにもかかわらず、原因不明の摂食不良状態、あるいは服用拒否状態が続き、結果として死亡したことは、痛恨の極みであります。

 しかし、本改正による監護措置や医師の診断による仮放免措置などが整備されておれば、ウィシュマさんは、あるいは支援者が監護人となって、身柄拘束が解かれていた可能性は十分高いと言えると考えます。

 今回の法改正について、入国管理庁がウィシュマさんの事件を起こしておきながらこのような法改正をすべきでないという論調があります。もちろん、ウィシュマさんの死亡という結果を踏まえ、入管当局が襟を正すことは当然でありますが、入管当局の不適切な言動が存在したがゆえに本当に必要な制度の改正すら行わないというのは、今後、新たな制度の下で本来救済されるべき外国人に対してすらその機会を奪うということにならないか、私は大いに疑問であります。

 他方、国民のための入管行政で考えると、国民、そして我が国で適法に暮らす外国人をも守るため、諸外国で採用され、人権諸条約上も国際法違反とはならない難民認定手続を採用することは、立法政策として当然許されると私は考えるところであります。

 そこで、最後に、大臣に、本改正の意義と思い、先ほど宮崎委員への答弁にもありましたけれども、私とのやり取りを聞いて、是非強い決意をお願いしたいと思います。

齋藤(健)国務大臣 まさに山下委員おっしゃるとおりでありまして、先ほど宮崎委員にも答弁させていただきましたが、私は、大いなる前進になると思っていますので、是非一刻も早い成立と、それから、厳正な運用にしっかり努めていきたいと思っています。

山下委員 今、入管の態度、言動、それが非常に問題になっています。しかし、態度を正すということ、規律を正すということと、制度を正さなくていいという問題をごっちゃにしてはならないと思います。立法府としては冷静な議論を求めて、私の質疑を終わります。

 以上です。

伊藤委員長 次に、鈴木庸介君。

鈴木(庸)委員 よろしくお願いします。

 まず申し上げたいのは、収容者や支援者の皆様から、ウィシュマさん事件以降、入管の対応はよくなったという多くの肯定的な意見を伺っております。だからこそ、今回も、何か入管は悪い改正をしているというような社会の雰囲気が醸成されていることを心から残念だと私は思います。

 ただ、国境を越えた労働者の取り合いとか、人口減少への対応とか、多文化共生社会の実装など、今求められているのは移民政策であるはずなんですが、まだ、バブル経済時代に大量に訪れた不法移民対策の名残か、いかに見せしめをしてコントロールしようとしているか、これは治安政策が主になって今回のことも組み立てられているんですね。送還停止効の例外なんというのは、その最たるものだと私は思います。

 この委員会でも重ねて重ねて申し上げているんですけれども、我々は、選ぶ国ではなく選ばれる国になるために、魅力的な入管政策を立案していただきたいと思います。そのために、この法案について、是非、我々野党の意見にも本当に耳を傾けていただきたいと思うんです。

 まず、齋藤大臣に伺わせてください。

 入管においては、裁量行政の範囲が余りにも広いという批判が常々ございます。今回においても、各改正部分について細かく見ていけば見ていくほど、裁量の幅がこれは広がっているということを強く感じるんですね。大臣、行政の透明性や客観性がこれだけ要求されている今の時代に、裁量行政の幅を広げるということについてはどのようにお考えでしょうか。

齋藤(健)国務大臣 まず、個々の事案においては、個々の事情に応じた柔軟、適切な措置を行うためには、合理的な範囲内での裁量というものは必要なんだろうと思います。

 今回の改正法案におきましては、例えば、在留特別許可につきまして、在留特別許可の判断の考慮事項を明示するとともに、これらの考慮事情の具体的な考え方をガイドラインとして公表する、こういうことによりまして、在留特別許可の判断の一層の透明化を図るということとしたいと思っています。

 さらに、在留特別許可、監理措置及び仮放免について不許可とする場合には、その理由を告知する制度を設けるなど、判断の透明性を高めるための様々な仕組みを整備をしているところであります。

 この不許可理由の告知を義務づけることによりまして、合理的な理由のない不許可を抑止できるということとなる上に加えまして、判断に不服がある場合には行政訴訟を提起して的確に争うことが容易となる、そういう効果があるのでありまして、入管当局における判断の公平、適正さが一層確保される仕組みとなっているところであります。

 このように、改正法案は、入管当局の判断の透明性を高めることにより、その公平、適正さを確保するための方策も盛り込んでおり、本法案によって入管の裁量行政が拡大するとの指摘は当たらないと考えています。

鈴木(庸)委員 拡大するとの指摘が当たらないという御答弁がありました。また後ほどその点については伺わせていただきます。

 もう一点、伺わせてください。

 国連からも度々指摘されているように、難民認定についても第三者機関が必要であるというような意見がございます。私どもも、立憲民主党もそういった法案を提出させていただいたこともございますけれども、今回、監理措置の認定について、これは司法の判断も入りませんよね。今後の入管行政について、客観的な判断を下す第三者を入れる必要自体があると思いますか、ないと思いますか。あるかないかでお答えいただければと思います。

西山政府参考人 御指摘があるところとしては、難民認定に関して、それから収容に関しても司法審査ということで御指摘がいただいていると思いますが、いずれについても必要はないというふうに考えているところでございます。

鈴木(庸)委員 大臣にお願いしたんですけれども、昨日の質問取りのときには。

齋藤(健)国務大臣 どの部分でというのがあると思うんですけれども、御指摘の点については、例えば出入国在留管理庁から独立した組織が難民認定に関する業務を行うべきであるという視点、あるいは、収容の要否に関する判断を入管庁ではなく司法機関が審査すべき、多分こういう切り口での御指摘なんだろうというふうに思うわけでありますが、難民認定手続につきましては、その他の出入国在留管理行政上の様々な手続と密接に関係をしておりまして、したがって、出入国在留管理庁において行うことが適当であるというふうに考えています。

 それからもう一つの、収容を伴う退去強制手続について申し上げれば、現行法下でもいわゆる三審制の下で慎重かつ厳格な手続を経ておりますし、不服がある場合には行政訴訟の提起等によって事後的に司法審査を受けるということができるわけであります。

 加えまして、今回の改正法案におきましては、逃亡等のおそれのみならず、収容により本人が受ける不利益の程度をも考慮した上で監理措置か収容かのいずれかを選択する仕組みになっていますし、収容した場合でも、主任審査官が三か月ごとに収容の要否を必要的に見直し、出入国在留管理庁長官においてもその判断の適正を確認するという仕組みを導入しているところでありますので、手続の適正性は十分に図られていると考えています。

鈴木(庸)委員 裁量行政の拡大ではなく、かつ、第三者はこれからも入れないというような答弁でした。大変残念なところでございますけれども、ここから、ちょっとるる質問をさせていただきます。短く答弁をお願いできればと思います。

 一点目。送還停止効の例外について、三回目以降の難民認定申請について相当の理由がある資料があれば送還停止とありますけれども、相当の理由の基準を教えてください。

西山政府参考人 お尋ねの相当の理由に該当するかどうかについて、それにつきましては、個別の事案ごとに資料の内容や申請者の本国情勢等の諸事情を考慮して判断するために、一概に申し上げることは困難ではございますが、例えば、本国情勢の変化等の前回処分後に生じた事情変更を示す資料などが考えられるところでございます。

鈴木(庸)委員 この相当の理由がある資料というのを相当の理由がある資料と判断するのは、誰になるんでしょうか。

西山政府参考人 関係部門併せて、言ってみれば、地方局全体で判断していくことになると考えております。

鈴木(庸)委員 地方局全員で判断するということなんですか。本部は関係ないんですか。

西山政府参考人 送還手続につきましては警備部門になりますけれども、それに当たっての、ここの問題になります相当の理由のある資料という関係では審査部門ということになりますので、双方が連携をしてやるという意味で、私は今、組織という意味で地方局全体という表現を使わせていただきました。

鈴木(庸)委員 となると、様々な方がその判断に加わるかということになるかと思うんですけれども、責任の所在が明確なのかどうなのか。また、あと、これは客観的な基準もなく判断されてしまうんでしょうか。その地方局の皆さんの主観で、本国情勢が云々ということで判断されてしまうんでしょうか。主観なんでしょうか、客観なんでしょうか。客観ならば、その判断基準をもう少し出していただけないでしょうか。

西山政府参考人 先ほどの答弁で例示いたしました本国情勢ということでいきますれば、難民認定の審査にも用いられます出身国情報、あるいはその他の国際情勢、それは、客観的な資料を私どもの方で、調査官の方で収集した、そういった資料を基にするということでございます。

鈴木(庸)委員 ですから、地方局でその捜査官の方々が独自に集めた資料で判断するということですよね。そうすると、客観性の担保、されていないですよね、これは。その評価についても、今のような答弁になってしまっているわけです。

 こういった状況については、再審請求じゃないですけれども、収容者側からそれを主張する資料が出ている、いわゆる入管庁としての判断とは別に収容者側から何かの資料が出ている状況については、常識的に考えると、送還停止に、できないんじゃないですかね、命が懸かっているケースもあるわけですから。

西山政府参考人 御趣旨をちょっと理解できていないかもしれませんけれども、相当な理由のある資料があれば送還が停止、送還の停止効がそのままであるということでございます。

鈴木(庸)委員 要は、その相当の理由があるものの客観的な基準もなければ、どういう形で誰が最終責任を負うのかというのも、今の答弁からだと全く見えてきていないというのが正直なところであります。

 申請者が意見を述べる機会はあるんでしょうか。

西山政府参考人 法律上は、御指摘のような機会を設ける規定はございません。

 ただ、このような取扱いをしたとしても、難民等認定申請書に自らの主張を記載して提出することが可能であり、また、提出に際して口頭で補足することなどにより、難民等認定申請者が送還停止効の例外の対象となることについて意見を述べることは可能ではあると考えております。

鈴木(庸)委員 不服申立てもできるんですか。

西山政府参考人 行政不服審査法上も入管法上も、送還停止効の例外の該当性につきまして、行政上の不服申立てをすることができる仕組みとはなってございません。

鈴木(庸)委員 じゃ、この結果について訴訟を起こすことはできますか。

西山政府参考人 退去強制令書を発付された外国人ということになりますが、その場合、難民認定を求めて入管当局の判断を争うのであれば、既に存在している退去強制令書発付処分、難民不認定処分等に対する行政訴訟を提起することができ、また、あわせて、退去強制令書の送還部分の執行停止を求め、裁判所がその旨の決定をした場合には、法律上、送還は停止されるということになってございます。

鈴木(庸)委員 というと、意見を言うことはできない、不服を申し立てることもできない、でも、どのタイミングかは別として、訴訟を起こすことはできる、そういう整理でよろしいでしょうか。

西山政府参考人 法律上の不服申立てというものが規定にはございませんと答弁を申し上げました。

 また、その前に、意見というものもまた規定にはございませんけれども、意見を述べることは手続上可能な場面があるであろうということで申し上げました。

鈴木(庸)委員 ごめんなさい、大切なところだと思うんですけれども、この場面はどこなんですか、具体的には。

西山政府参考人 要すれば、難民認定手続における審尋、審尋という言い方はしません、済みません、撤回します、そういった場面でございます。

鈴木(庸)委員 でも、三回目の申請をして、その後にこの送還停止効の例外が適用されるとなるならば、どこで言うことができるんでしょうか。

西山政府参考人 委員、送還停止効が例外になるということをお話しになりましたけれども、その送還停止効の問題と難民申請というのは別でございますので、送還停止効の例外に当たるからといって、難民申請手続自体が止まるわけではございませんので、その手続の中で、例えばですけれども、意見を言うこともできるであろうということでございます。

鈴木(庸)委員 分かりました。

 唯一、意見は、どのタイミングか、どういう形か分からないけれども、その手続上にどこかで言うことができるという理解をさせていただきます。権利はしっかりと担保をしていただきたいとお願いを申し上げます。

 次に、三年以上の実刑を受けた人は送還停止効の例外となるとあります。整合性について伺いたいと思います。三年以上の実刑を受けた人の中に、難民はいないんでしょうか。

西山政府参考人 一般論としましては、三年以上の実刑を処せられた者であっても難民認定申請を行うことはもとより可能でございますし、個別の審査を行って、定義に当てはまるということであれば、難民等に認定されるということになります。

鈴木(庸)委員 そうすると、この規定自体が独立してあるということに少し違和感を感じております。

 次に聞かせてください。この法律におけるテロリストの定義とは何でしょうか。

西山政府参考人 お尋ねの送還停止効の例外に当たる外国人テロリスト等とは、入管法第二十四条第三号の二、第三号の三、若しくは第四号のオないしカのいずれかに該当する者、若しくはこれらのいずれかに該当すると疑うに足りる相当の理由のある者をいいます。

鈴木(庸)委員 済みません、その条項なんですけれども、結局、例えば、何らかの法律でこの人テロリストだなというのが、裁判が出ているとか、要は、何を心配しているかというと、恣意的な運用がされないようにだけという確認なんです。あの人はテロリストだというのを疑う相当な理由というところで、なかなか日本でテロリストと指定されることもないと思うんですけれども、これはどうやって定義をしているのかというのをもう一度教えていただけますか。

西山政府参考人 定義のお尋ねでございますので御説明しますと、まず、二十四条三号の二は、公衆等脅迫目的の犯罪行為、その予備又はテロ行為を容易にする行為を行うおそれがあると認めるに足りる相当の理由がある者として法務大臣が認定する者でございます。

 次に、二十四条三号の三は、安保理決議等によって入国を防止すべきとされている者であり、外国人テロリストのほか、北朝鮮の核開発者、テロリストへの送金を援助した者などを含むとされております。

 また、二十四条四号オ、ワ、カは、日本国憲法又は日本国政府を暴力で破壊しようとする暴力的破壊活動者又はこのような団体の構成員、公務員という理由で公務員の殺傷を勧奨する政党その他の団体、公共施設の破壊等を勧奨する団体、いわゆる無政府主義的破壊活動団体の構成員、また、その二つに規定する政党等の目的を達するための宣伝活動を行った者をいうとされております。

鈴木(庸)委員 申し上げたいのは、一方がテロリストと言っても、他方ではテロリストじゃないというようなケースもあるので、そこについては十分御留意をいただきたいとお願いをしたいんです。ほかの国にとってはテロリストと言っていますけれども、こちらにとってはそうじゃないというケースも十分あり得ますので、そういったところに御留意をいただきたいと思います。

 最初に裁量行政の拡大の話をさせていただいたんですけれども、例の相当の理由のある資料、判決と難民認定の整合性、これは明確な基準が示されているものがない。結局、入管の裁量行政の範囲が広がっているとしかやはり思えないんですね。

 送還停止効の例外というのは、実際に迫害されている人たちにとっては命に関わるまさに致命的なことですから、悪いやつは帰れという治安政策としての発想は分かります。でも、釈迦に説法ですけれども、皆さんには、三回目以降の申請で難民認定された事実もありますし、また、帰国させられたことによって取り返しのつかない結果になったら、これは誰の責任なんだ。運用面についてはこれからというようなお話もあるんですけれども、そんな緩い話じゃないと思うんですね。詰めに詰めていただきたいとお願いを申し上げます。

 続いて、監理措置について伺わせてください。

 まず、仮放免と監理措置は何が違うんでしょうか。

西山政府参考人 まず、現行法上の仮放免というのは、収容を一時的に解くということでございまして、想定されるのは健康上の理由等でございます。ただ、実務上は、かなり長期の収容を避けるためということで柔軟に運用しているという実情がございます。

 一方、本改正法案におきます監理措置と申しますのは、監理人に監理させることによって、収容によらずに退去強制手続を進めるという制度でございまして、監理人の方に一定の届出義務等をしていただいて、また、監督義務を負っていただいて、報告をいただくなどして、きちんとそういう体制で被監理者を監理するということでございます。

鈴木(庸)委員 ありがとうございます。

 本当にそうなのか聞かせていただきます。

 一点目。収監されて、インターネットもない状態で、どうやって監理人を探すイメージでしょうか。

西山政府参考人 その前提としまして、監理人となる者として、例えば、監理措置に付される者の御親族、知人、民間の支援団体等を想定しているところでございますが、収容されている外国人の方が監理措置を希望する場合は、例えばですが、収容所の公衆電話で外部と通信をすることも可能ですし、その上で面会することももちろん可能でございます。監理人を依頼することについて、特段の支障はないと考えております。

 その上で、入管庁としては、監理措置制度を適正に運用するため、できるだけ多くの方々に監理人になっていただけるよう、支援団体や弁護士会など関係団体に対して丁寧に説明を尽くすとともに、連携の在り方について協議を進めてまいりたいと考えております。

鈴木(庸)委員 今、御答弁の中で親族とありましたね。監理人に過料することができるという改正案なんですけれども、これは、監理人が親族だった場合、御案内のように、罪の構成要件として、期待可能性の観点から、適法な行為を行うことができないような場合も考えられると思うんですが、この場合、監理人、親族は罪に問えるんですか。

西山政府参考人 委員御指摘の期待可能性がない場合というのはどういう事案を想定しているのか、ちょっと分かりかねるところもございますが、いずれにしましても、過料罰を科すのがどういう場合かにつきましては、個別の事案によるかと思います。

鈴木(庸)委員 次の質問ですけれども、監理人は、被監理者が希望した者が選定されない場合はあり得るんでしょうか。あり得るなら、欠格事項は何でしょうか。

西山政府参考人 監理人は、監理人の責務を理解していること、任務遂行の能力を考慮して適当と認められることなどの要件を満たした者の中から選定するということになっております。

 もっとも、その方が監理人としてふさわしいかどうかは、個別の事案ごとに諸般の事情を考慮して判断する必要があります。監理措置を希望する外国人が依頼した者であっても、例えば、過去に正当な理由なく監理人としての任務の放棄と認められる事情により選定を取り消されたことがある者については、特段の事情がない限り、任務遂行の能力に支障があるため、監理人として選定することは適当でないと考えております。

鈴木(庸)委員 監理人からの相談に応じ、必要な情報の提供、助言その他援助を行うものとありますけれども、まず、必要な情報とは具体的に何でしょうか。

西山政府参考人 委員御指摘ございました、必要な情報の提供、それから助言その他の援助について想定しているものを御紹介しますと、例えば、大使館、領事館の相談窓口の教示、入管当局が把握している地元の支援団体等の連絡先の教示、また、地方自治体においては、法令に従い、被退去強制者であっても提供可能な行政サービスを行っていると承知しておりますが、そのような自治体に対して、被監理者の希望に応じ、居住地の自治体への情報提供といったものを想定しております。

鈴木(庸)委員 あと、その他の援助とありますけれども、これは具体的に何ですか、援助とは。

西山政府参考人 この規定につきましては、対象者との個別の対応に応じまして、可能な必要な援助ということを想定しておりますので、今、具体的に例示をするのは困難でございます。

鈴木(庸)委員 収入は出ないんですか、国から。一切ボランティアですか。

西山政府参考人 報酬はございません。

鈴木(庸)委員 ここまででもうこれは大分破綻しているということをお分かりいただけるかと思うんですが、まず、インターネットもない状況で監理人を探せと。さらに、家族については、先ほど申し上げた期待可能性の観点から、罪に問われるかどうかも分からないような状況となっている。さらに、必要な情報がどこまで出していただけるのかも分からない。加えて、ボランティアです。自分が過料がかかるかもしれないのにボランティアです。国から一切収入も出ない。

 これは先ほど宮崎委員からの資料もあったんですけれども、私も宮崎委員と同じ意見で、先ほどの、今配らせていただいた資料について、統計的な有意性が高いとは思っておりません。しかし、これは附則みたいなものがあって、この資料の裏に、十枚ぐらい、とにかくいろいろな、アンケートに答えた方の意見をずらっと並べているのがあるんですね。その中に、これは無理だよねという方の意見が生の意見としてるる載っておりますので、是非お時間があれば見ていただきたいと思います。相当厳しいと思います、これは見つけるのが。

 これはちょっと通告していなかったんですが、昨日勉強していて思ったこと、これはお答えいただけると思います。

 法案では、五十二条の七に、主任審査官は、監理措置決定とその取消しなどのための事実の調査権がある。関係人への出頭要求、団体への照会ができる。この調査権を使って監理人の財産関係を調査することは可能ですか。つまり、監理措置に付すかどうか及びその取消しの要否の判断のために、監理人の資産、銀行預金などについて入管が調査するんでしょうか。

西山政府参考人 目的が監理措置に関わるものでないにもかかわらず、そのような財産調査をするということは想定されません。

鈴木(庸)委員 というと、目的がそれならするということですね、銀行預金。そうなんです、監理人は資産や銀行預金についても入管に調査される可能性がある、法務省に。

 更に申し上げると、五十二条の四第二項第三号には、退令発令後の監理措置は、就労をすると疑うに足りる相当の理由があるだけで取り消されるとあります。これは、監理人が自腹を切って被監理者の生活費支援をしないと、就労のおそれがあるとして監理措置を取り消される場合というのもあるんでしょうか。

西山政府参考人 今委員が挙げられた事案といいますか、それでどうすべきかというのは、ちょっとお答えが困難でございます。個別事案によると存じます。

鈴木(庸)委員 重ねてなんですが、これは誰がやりたいのなんですよ。

 なり手がいなかった場合、国選弁護人のように国が用意することも想定していますでしょうか。

西山政府参考人 国選弁護人のような仕組みで、いわば国選の監護人ということは想定はしておりません。

鈴木(庸)委員 ないんですよね。

 次に、報酬を受ける活動の許可で、主任審査官が指定する公私の機関というのは具体的に何を指すんでしょうか。

西山政府参考人 いわゆる平たく言えば、官民ということでございます。

鈴木(庸)委員 これはどういった経緯で指定が行われるんでしょうか。

西山政府参考人 これはまず、報酬を受ける活動の許可の申請をいただくことになりますけれども、その被監理者が監理人の同意を得た上で雇用契約を締結する公私の機関を特定し、申請書を提出することにより行うことになると想定をいたしております。

鈴木(庸)委員 これも全く現場が見えていないんですけれども。

 例えば、今、ウクライナの皆さん、いっぱいいらっしゃっていますよね。どんな仕事をしているか御存じですか。ほとんど飲食しかできないんですよ。言葉はしゃべれない、日本の常識は分からない、英語もいけない。飲食しかできない中で、かつ、この監理措置の話だと、退令が出てしまうとその場で辞めますよね、仕事。退令の前なら保険もあるし、仕事をすることもできるけれども、退令が出た後というのは仮放免と一緒で、仕事ができない状態になりますよね。そういう曖昧な状況の人たちを雇う会社、あると思われますか。思われますかというのは、これは僕の意見として申し上げるんですけれども、何を申し上げたいかというと、じゃ、ちょっと次の質問をさせていただいた次にお伝えさせていただきたいんですけれども。

 報酬を伴う事業運営活動を行えないとされているんですけれども、この事業運営活動というのは、具体的にはどのような業務を想定していらっしゃいますでしょうか。

西山政府参考人 いわば事業主として、営利活動として事業を行うということでございます。

鈴木(庸)委員 そうなんです。今のことと繰り返しになるんですけれども、キッチンカーのウクライナの方とかもいらっしゃいますよね、多分御存じかと思いますけれども。

 結局、こういう状況に、何か今回の法案、正直、結構できているなとぱっと見て思ったんですよ。正直、評価するところもあると思ったんですが、見ていけば見ていくほど、余りにも現場が見えていないというか。例えば、監理措置になる、まず監理措置にできるかどうかも分からない。ここまでもう監理人に対してはぐだぐだじゃないですか。監理人が見つかるかどうかも分からない、その監理人に対する責任も余りにも大き過ぎる。

 かつ、実際に働くという段階になったとしても、退令が出る前の短い期間。法務省のある方は、退令が出る前より出た後の方が期間は長くなるだろうというお話でしたので、退令が出る前のどれだけ働いてくれるかも分からないような人たちに、僕も、もう潰れそうな零細企業を経営していたので分かるんですけれども、雇えないんですよ、怖くて、そんな人たち。だから、実際に働くというところの、いわゆる仮放免の皆さんに仕事をしていただくという機会については、全くこれはまず担保されていないと思います。

 先ほど申し上げたように、例えば、もうちょっと働けたとしても、キッチンカーの話じゃないですけれども、飲食しかないんですよ。一部、掃除とか棚卸しの管理とかやっていらっしゃる方もいらっしゃいますけれども、やはり飲食に流れる人たちが極めて多いだろうと予想する中で、自分で支援者から支援いただいて事業をすることもできない、お店を開くこともできないとなると、これはほとんど意味がないと僕は思うんですね。

 かつ、先ほどおっしゃったように、まず自分で仕事先を探してこい、探してきて、それを申請して認められればそこで働く、この仕組みは分かるんですけれども、まず相当、監理人の皆さんとか支援者の皆さんとかにほぼ丸投げであるし、この人たちの善意に入管がすがっているようなこの制度は余りにもちょっとずさんだなと思っております、制度設計的に。

 生計の維持に必要な範囲とありますけれども、これは具体的に、生計の維持に必要な範囲とは何を示すんでしょうか。

西山政府参考人 お尋ねの点につきましても、個別の事案ごとに判断することになります。

 判断の基準といいますか、判断の考え方としましては、監理措置に付された者やこれと同一世帯に属する者の資産及び収支の状況のほか、監理人等の第三者による援助の見込み等の諸般の事情を考慮することになろうと考えております。

鈴木(庸)委員 監理措置決定の要否を検討する周期を三か月とした理由についても教えてください。

西山政府参考人 退令発付後三月が経過した時点において、送還の可否を含めた送還までの予定がおおむね明らかとなり、送還の支障となる事情も判明することが多いことなどを考慮し、収容から三月を経過した時点で当初の判断を見直すことが適当と考えたところでございます。

鈴木(庸)委員 ここでも司法審査を導入しない理由についてなんですけれども、監理措置手続についても行政訴訟が提起できるという前提ということでよろしいんでしょうか。

西山政府参考人 監理措置を争うというのは余り想定できないと思われるので、あるとすれば、監理措置を希望されたのにそれが取り入れられなかったこと、そういう処分についてということであれば、それは行政訴訟は可能かと存じます。

鈴木(庸)委員 るる申し上げてきたんですけれども、この監理措置制度というものが、僕は、かなり成り立っていないのかなと思っております。やるなら相当更なる改善というか、まず、御自身が監理人になる、既に支援者の皆さんとかは大変な御負担をされている中で、自分の資産とか自分のお金を調べられる可能性がある、うまくいかなかったら過料される可能性もある、かつ責任の範囲は極めて重いという中で、これを引き受けるというのはなかなか相当な勇気が要ることなのかなというのを今回のことを調べていて大変思いましたし、その辺に対する配慮というものを、是非是非我々野党の意見も聞いていただきたいと思うんです。

 最後に大臣にお伺いをさせていただきたいと思います。

 これは余りにも監理人任せで、制度設計がずさんであります。見立てとして甘過ぎるんじゃないでしょうか。

齋藤(健)国務大臣 まず、今までの質疑の中でもありましたけれども、現行の仮放免の現状というものについて、やはり改善をしていかなくてはいけないという点については、多分、共通の認識をしていただけるんじゃないかと思っているんですけれども、一方で、どういう制度を代わりに導入をしていくのが適切なのかということで、今、新しい法案、法改正では提案をさせていただいているということであります。したがって、新しい監理措置というのは、監理人の監理の下で、逃亡等を防止をしながら、収容しないで退去強制手続を進める、こういう考え方、この考え方は御理解をいただけるのではないかなと思っています。

 その上で、監理人が本人の生活状況等を把握しつつ指導監督を行っていただくわけでありますけれども、その際の御負担につきましては、逃亡、証拠隠滅又は不法就労活動を疑うに足りる相当の理由がある場合には届出をしてくださいねということですとか、監理措置条件等の遵守のために必要な場合には、被監理者の生活状況のうち主任審査官から求めがあった事項を報告をしてもらうことは必要なんだろうということなんですね。

 したがって、入管当局が、監理人から必要な事項について届出、報告を受けて、平素から被監理者の生活状況、条件遵守状況を的確に把握することも必要なんだろうと思いますよね。監理に支障が生じた場合には、入管当局においても、監理人からの相談を受け、必要に応じて被監理者に適切な指導を行うことも必要なんだろうと思いますよね。

 加えて、本法案におきましては、入管庁長官が、監理人からの相談に応じ、必要な助言等の援助を行うということも規定として設けているということであります。

 基本的な考え方としては、監理措置において、このように監理人と入管当局が密接に連携を取りながら適切に本人の監理を行っていこうというものでありますので、何か一方的に監理人任せの制度にしてそれでおしまいという考えでつくられている制度ではないということは御理解いただきたいなと思います。

鈴木(庸)委員 私も、一方的な監理人任せの制度ということも思っておりませんし、今大臣のおっしゃったように、一緒に監理していこう、できるだけ監理人の皆さんに対する負担を減らそうという御趣旨も分かるんですけれども、やはり、裁量行政と最初に申し上げたところの中で、これはどこまで負担が大きいのかということが見えていないところが今回の大きな問題の一つだと思いますので、この監理措置だけでは長期収容を防止するという制度の趣旨の達成はなかなか難しいというのと、やはり私も問題意識として持っております、仮放免中の生活の糧をどうするのか、そういったことの解決についても是非御検討をいただきたいということを申し上げまして、私の質問を終わります。

 ありがとうございました。

伊藤委員長 次に、中川正春君。

中川(正)委員 ありがとうございます。

 私も、まず、ウィシュマさんのケースから入っていきたいと思います。

 基本的に、収容された状況の議論が多いんですけれども、振り返って考えてみたら、一番最初のその入口の部分、ウィシュマさんがどうして収容されなければならなかったのかということですね。これは、国際基準から見ても、あるいはウィシュマさん自身の状況から見ても、収容するということ、この判断自体が間違っていた、あるいは、それを収容しなければならないという制度的なものがあるんだとすれば、それを基本的に見直していかなければならないというふうに私は思うんですけれども。

 この収容について、どういう判断があって、新しい法律でこれを見直してみた場合に、ウィシュマさんの収容はされなくていい、非収容でいけるということになるんですか。そこのところを、まず答えてください。

西山政府参考人 まず、ウィシュマさんにつきましては、令和二年の八月に警察に出頭されまして、不法残留で警察に逮捕されております。そして、警察から入管の方に引き渡されたということで、在留資格をお持ちでないので、それで収容されたという経緯でございまして、これは法律上そのような取扱いに問題はなかったものと考えております。

中川(正)委員 だから、今回法律が変わる、これは、収容ということをまず前提に、我々の法律の体系というのを考えて、それから仮放免ということなんだと思うんだけれども、今回の法律の中でいわゆる監視措置というものが入れられて、その考え方が多少変わってきたのかな。

 私の思いから言えば、どっちにするかという判断をするんじゃなくて、まず非収容という基本原則があって、その上で例外的に収容ということ、ここまで行かないと国際標準にならないねというのが基本だと思うんですよ。

 それに対して、今回どこまでそれが近づいていったか。ウィシュマさんのケースでいけばそうした非収容という判断ができていくのかどうか、ここが大事だと思うんです。答えてください。

西山政府参考人 ウィシュマさんのときにどうだったかということで、直接にはそこに言及するのはなかなか難しゅうございますが、参考までにお聞きいただければと思うんですが。

 今回の法案におきまして、監理措置というのは、判断のときに、逃亡のおそれ、それから収容令書の段階でありましては証拠隠滅のおそれ、これがあるかどうかというのが判断基準としてございます。さらに、収容によって本人が不利益を受けるその程度についても考慮することというふうにされております。

 そういった判断基準に基づきまして、平たく言えば、収容の必要がない方は基本的には監理措置というふうに取るというのが今回の改正法案の考えているところでございます。

中川(正)委員 だから、ウィシュマさんはこの法律に基づいて判断したら、収容されないという判断になったということでいいんですか。

西山政府参考人 仮定のお話なので、なかなかお答えが難しゅうございます。(中川(正)委員「仮定じゃない、これ。あのときに出した基準を新しい法律の基準に当てはめていくだけの話ですよ」と呼ぶ)

 御説明いたしますと、先ほど申し上げたように、逃走のおそれ、逃亡のおそれ、それから証拠隠滅のおそれの判断は、それぞれ個別事案に応じて判断することになりますので、ウィシュマさんの場合にどうであったかというのは、なかなか言及が難しゅうございます。

中川(正)委員 もう一つ、非常に懸念されることがあります。私も、一部、監視カメラの映像を見ました。非常に心が締めつけられる思いがしまして、担当さん、担当さんと呼んでいく、そのことにどういう形でその担当あるいは職員が接していったかという、映像を見ていて本当に心が締めつけられる思いがしました。

 その中で、一つ印象が残ったのを改めて確かめさせていただきたいと思います。

 ウィシュマさんの病状を担当者がどこまで、まともに、心を込めて認識をして、彼女の具体的な訴えにどこまでしっかり応えていこうとしていたかというと、あの映像を見る限り、違うんですね。どこかおかしいということ、これはあれを見ていただいた皆さんに共通して感じられたことではないかというふうに思います。

 そこで、ちょっと懸念として出てきているのが、報告書にも記述はあるんですけれども、詐病ということですよね。仮放免の条件というのが健康に支障を来した人という、先ほどの話がありましたけれども。この被収容者の中には、そういう基準があることが分かっていて、仮病を使ってでも仮放免を求めるということを考えるということが、そういう人間が出てくるということはあると思うんです。現実に、現場の話を聞いていると、そういうことにも対応しているということですね。

 これは、常習化してくると、看守の心理の中にも詐病の色眼鏡がかけられて、恐らく医師もそうだと思うんですよ、まずそれを疑った上での対応ということになってしまう。これが常習化していくということが、あの組織全体の中にあったんじゃないかというふうに思うんです。まともに向き合うということ、これができなくなってきている、そういう構造的な部分というのを私は見逃してはいけないんだと思うんです。ここをどのように分析をしているのか。

 仮放免ということと詐病ということ、これは構造的なものなんですよね。病気になったら出られる、だから詐病ということなんですが。そういう構造的な、構図的な問題を解決しないと、たとえ常駐の医師を確保したとしても同じ悲劇は繰り返されていくんじゃないかというふうに思うんですが、そこについてどういうメスを入れているか、今回の対応の中で。改めて確認をしていきたいと思います。

西山政府参考人 御指摘のとおり、調査報告書におきましても、あのウィシュマさんの体調不良の訴えが仮放免に向けたアピールや誇張と疑っていた職員もいたとのことであり、その原因につき、調査報告書では、被収容者の中には仮放免に向けたアピールとして誇張して体調不良を訴える者がいたこと、それから、ウィシュマさんと支援者の間のやり取り、それから、消化器内科や整形外科での受診によっても特段異常が認められていなかったことなどの事情があったというふうに指摘されております。この点につきましては、調査報告書においても指摘されているとおり、真に医療的対応が必要な状況を見落とさないための教育や意識の涵養が不足していたと考えられるところでございます。

 本事案を踏まえまして、入管庁におきましては、人権と尊厳を尊重しつつ職務を行うための使命と心得の策定、それから、被収容者の生命と健康を守ることを最優先に考え行動することを心構えとする救急対応マニュアルの策定などを行い、職員の意識改革等を図っているところでございます。

 引き続き、外国人の方々の人権を尊重するとともに、本事案のような事案を二度と起こすことがないよう、入管庁において必要な取組を継続してまいりたいと考えております。

中川(正)委員 そうした対応だけで解決できるかというと、私は甚だ疑問に思います。恐らくそういう措置というのは、これまでも形式的にはなされていた。さっきの話だと、それが十分でないからもっとしっかりやりますよ、これだけの話なんです。

 さっき指摘したように、これは構造的なものなんですよ。制度としてそのようになっているから、人の気持ちがこうした形で色眼鏡で、そして人に向き合うということができなくなってしまっている。そこのところを解決するということなんだけれども。

 そういう意味でも、やはり基本は収容ではないんだ、これは例外なんだと。だから、この人たちは、どういう形であっても、なるべく外に出していくということを職員としても基本に思っていくという、そこがやはり一番大事な部分なんだと思うので、それがなかなか法律の中で整理がされないものだから、そこまでいかないものだから、また恐らくこれは同じことを繰り返すという可能性があるということ、これを指摘をしておきたいというふうに思います。

 次に、難民の受入れに対して総合的に話を聞いていきたいと思います。

 日本は難民の受入れに対して消極であると同時に人権配慮に欠けるというふうに批判をされてきましたが、どこにその要因があると、自己評価といいますか、それをやっていますか。

西山政府参考人 我が国は、委員が御指摘のように、他国に比べて難民の認定が厳しいという御批判をいただいているところでございます。

 ただ、私どもとしましても、申請者ごとに申請内容を審査した上で、難民条約の定義に基づき、難民と認定すべき者を適切に認定してきたところでございまして、その結果としての難民認定者数、あるいは認定率というものまでよく挙げられますけれども、こうしたものはそうした判断の結果の積み重ねであるというふうに考えております。

 その上で、我が国の難民認定をめぐっては、多くの難民が発生する地域と近接しているかや、そうした地域から渡航しやすいかといった事情に加えて、言語や文化の共通性や類似性、同じ事情により庇護されている人々のコミュニティーの規模等の観点から、庇護を求める方の最終目的地としやすいかなど、諸外国とは前提となる事情が異なっていると考えております。

 したがいまして、難民認定者数や認定率により我が国と他国とを単純に比較することは相当でないと考えております。

中川(正)委員 難民の認定基準が厳しいから、日本を求めて、日本に渡ってくるという人たちがまず少ないんですよ。そこに一つ原因がある。

 その認定率の少ない部分をどのように、これからの時代、私たちが難民という世界の課題に対して対応していくか、様々な方途があるんだと思うので、その中の幾つかを議論をしていきたいというふうに思うんです。

 まず一つは、どういう道筋で難民認定へ向いて入ってくるかというのを、その中の多くのものを見ていくと、不法滞在に至る道筋ですよね、ある意味で。これからいくと、短期滞在と技能実習や留学からの不法滞在が多数を占めているということです。

 日本で働きたいとする人が、その入口を見つけることができずに、短期滞在で訪日して、就労して、そしてオーバーステイ。それから、技能実習で入国した人が、指定された職場を離脱して、他の職に就いて、オーバーステイ。それから、留学生が学校を中退して就労、それからオーバーステイ。共通することは、皆、日本で自由に働きたいということがあります。

 以前にちょっと議論をしたところでありますが、単純労働が名目上解禁されていないということから、働く名目以外の他の目的をつけた様々な入口が用意をされているのが日本の入管制度であります。名目と実質が違うということが、よくそれぞれに批判されるところであります。自由に、かつ、ある程度の期間を日本で働いて生活したいと思い、入口の在留資格を離れて他の世界で生きる道筋を選んだ途端に、不法残留として摘発をされるという構図になっている。

 この建前と本音の違う矛盾した入管制度が解消されない限り、言い換えれば、単純労働が名目、実質共に認められない限り、不法残留はこれからも増えてくる可能性があって、そういった問題意識というのは、大臣、どうですか、共通して持っていてほしいんですけれども。いかがでしょう。

齋藤(健)国務大臣 我が国が、今、単純労働は受け入れていないという現実があります。しかし、それぞれの目的に応じて、必要性があるものにつきましては、在留資格を設けながら入ってきていただいている。その上で、資格に違反した形で摘発をされている人が出てきているというその実態をお話しになったと思うんですけれども。

 摘発されている人が多いから、じゃ、単純労働を入れればいいんだという議論になりますと、我が国における外国人と我が国の在り方という非常に大きな議論において、きちんとした結論を出していかなくちゃいけないということになりますが、そこにおいては、まだ様々な議論があって、正直踏み切れていないという現状がありますので、現行法律の下で認められた形で入ってきていただく方には、思い切ってやっていただき、共生をしていかなくてはいけないんですけれども、そうでない方に対しては、やはり、いつも申し上げているように、庇護すべき方は庇護しますが、ルールに違反した者には、それはルール違反として厳正に対処をしていくということにならざるを得ないのではないかと思っています。

中川(正)委員 ただ、単純労働として入ってきているんですよ、たくさんの人たちが。それが、いびつな制度の中で、枠でしかないから、こうした不法残留というような形で外に出てくる、あふれてくる。この構図はやはり是正をしていかなきゃいけないというふうに思います。そのことを改めて指摘をしておきたいと思います。

 次に、特定活動とウクライナ避難民の形なんですけれども。

 ウクライナの方からは避難民という形で受け入れているということだと思うんですが、外務省が在外公館でウクライナ避難民に対しUKR査証を交付をして、日本国内では特定活動の避難民として受け入れる。この先、母国が落ち着けば、帰国をするか、日本での生活を続けようと思えば、さらにどのような選択肢が可能なのかということ、これが一つですが。この法律が通れば、避難民は補完的保護ということになるんですかね、在留が許されて定住をしていくということ、それでいいのかということ。この二つについて、改めて答えてください。

西山政府参考人 もとより補完的保護対象者の該当性につきましても申請者ごとに個別に判断することではございますが、一般論として申し上げれば、ウクライナ避難民のように、戦争等に巻き込まれて命を落とすおそれがあるなど、迫害のおそれがあるものの、その理由が難民条約上の五つの理由に必ずしも該当しない者は、補完的保護対象者に当たると考えられます。

中川(正)委員 という枠組みをつくったわけでありますが。ほかに、ウクライナ以外に、シリアやアフガニスタン、トルコあるいはミャンマー、同じように、内紛があったり、あるいは民族間対立で抗争があったりという地域があるわけですから、こういう地域に対してもこの補完的保護というのは適用されて、そして、今回のウクライナと同じような形の受入れ枠というのはできていくというふうに考えていいんですか。

西山政府参考人 委員が今御指摘された地域の国籍の方々につきましても、先ほど私が申し上げた難民条約上の五つの理由以外の理由により迫害を受けるおそれがあると認められれば、補完的保護対象者として保護することになります。

中川(正)委員 ウクライナの場合は、個々の事情というよりも、ウクライナの今の国が置かれた状況の中で、いわゆる戦闘という定義の中で受け入れているわけですよね。ミャンマーなんかは、クーデターで民主化勢力が圧迫されて、あるいは少数民族と抗争があってという、その枠組みの中で逃げてきた人は受け入れる、そういう解釈でいいんですか。

 個々の事情ではなくて、その国の置かれた状況の中で判断して、それで受け入れるということになる。これは、日本としては非常に画期的な、新しい受入れ方の枠組みになってくるんだと思うんですよ。もしそうだとすれば私は評価をしたいんだけれども、ウクライナだけ特別ですよという話ではないということを、まず確認をしておきたいと思います。

西山政府参考人 補完的保護対象者と認めるに当たりましても迫害のおそれを認める必要がありますが、この迫害のおそれがあるかないかは、それぞれの個々人の事情で判断をすることになります。

 それで、ウクライナ避難民の方々の場合は、あれは政府全体として方針として決めて、避難として受け入れたという経緯はございますが、私が先ほど答弁しましたウクライナ避難民のような紛争避難民といった方々については、通常その地域におられている方が、通常であれば、ここにいると生命身体に重大な危険があるということが認められることによって、それによって迫害のおそれがあるというふうに認定できると考えられるところでございまして、それもあくまで、ここにいる人たち全員がどういう事情であれ補完的保護対象者になるということではなくて、あくまでも、補完的保護対象者としては個々人の事情で決するということでございます。

中川(正)委員 そうすると、話が違ってくることになりますね。今のウクライナの受入れの現実というのは、そこまで個々の地域は見ていない。もう一つ言えば、ウクライナの避難民が他の第三国にまず逃げて、それから日本に入ってくるというようなケースも日本は受け入れている。

 これは、非常に広い枠の中で、本来の避難民の受入れに日本が踏み出したということ。そういう意味では非常に私は評価したいし、この流れをやはり一般的なものとしてつくっていくべきだと私は思っているので、ほかの、ミャンマーや、本当に難民認定で苦労しているクルドの難民等々を含めて、そうした枠組みがあれば、日本としては国際的に紛争地域に対する貢献としては非常に大きなものになってくるという評価をしたいんだけれども、さっきの話を聞いていると、何かウクライナだけ特別ですねというような話になっていきそうですね。

西山政府参考人 ウクライナ避難民の受入れは、あくまで補完的保護対象者という制度の枠組みで入れているものではもちろんございませんけれども、ウクライナに関して言いますれば、ロシアによるウクライナ侵略という緊急事態にありまして、ウクライナは基本的にはどの地域にいてもどのような危害が及ぶか分からないというような状況にあろうかと存じます。そのような場合は、そのような地域が本国である場合、つまり、帰るべき場所がいつミサイルが飛んでくるか分からないような地域である場合は、これは恐らく迫害のおそれがあるということで、その方々は基本的には補完的保護対象者として認められるであろうということを申し上げたかったわけでございます。

中川(正)委員 実質的にはそうなっていない、みんな入ってきている、そういうような避難民としての受入れをしているということなんだと思うんですよ。

 大臣、しっかり腹を決めて、この補完的保護へ向いて持っていくのであるとすれば、一般的なルールを外に分かるように、ある意味誤解されますよ、これ。だから、外に分かるように一般的なルール化をしていく必要があるというふうに思いますし、今、紛争地域、あちこち広がっています、アフリカまで、スーダンまで今騒がれていますけれども。そういう状況の中で、日本として避難民をどういうルールで受け入れていくか。ウクライナで受け入れたものを基本にして一般化していくということ、これをやっていくべきだというふうに思うんですが、どうですか。

齋藤(健)国務大臣 原則は、やはり申請者ごとに判断をするということになるんだろうと思います。なぜなら、その人とその国の関係というものは千差万別でありますので、やはり申請者ごとに判断ということになるんだろうと思いますが。

 ただ、ウクライナ侵略のように、ウクライナの国内どこにいてもいきなりミサイルが飛んできてみたいな、そういう戦争、内戦というケースにおいては、難民条約上の難民に該当しなくても補完的保護対象者として保護していこうということで、今回、新しい道を一つつくったということなんであります。

 例えばトルコについて、じゃ、トルコから来た人がみんなそんな状態にあるかというと、それは必ずしもそうではないというふうに判断するのであれば、一人一人の事情に応じて審査をしていくということになっていくということでありますので、その国の置かれた状態とその人が置かれた状態というものを総合的に判断をしていくということ、この姿勢はやはり必要なんじゃないかなと思っています。

中川(正)委員 ウクライナの受入れの状況と、さっき大臣からの答弁を比べていくと、いかにも恣意的だな、全然ルール化されていないなということなんですよね。そこが問題なので、それを国際的に見てもしっかり分かるということにしていかないと、さっきのような大臣の答弁で国際的にアピールしても、何を言っているのか分からないね、日本はというような話だと思うんですよ。そこの課題というのをしっかり受け止めていただきたいというふうに思います。

 在留特別許可について、少し取り上げていきたいと思います。

 在留特別許可の判断というのは、ガイドラインによると、積極的な要素と消極的な要素の双方を考慮して、その比較考量で行われるというふうに理解をしています。

 しかし、消極的要素の一年を超える実刑判決というものは、明確で、法的な規則となっているんですけれども。逆に、積極姿勢の要件、在留を希望する理由、家族関係等々、あるいは、これが曖昧で、内外の諸情勢や本邦の不法滞在者に与える影響などの、これは本当に、さっき申し上げたような、恣意的な判断を可能にする要件という形で、積極的な部分は予定されているということなんですね。

 実は、私たちの党の対案というのができているんですけれども、ここでは、この点の明確化を主眼にしているんですけれども、消極的あるいは積極的の均衡がこの政府案では取れていないということ、ここが言えると思うんです。

 もっと具体的に言えば、国際人権規約の十七条、それから子ども権利条約三条一項など、こういうものを明文で規定をして、積極的要素のはっきりした形を均衡を持たせて表現をしていくということ、ここは一つのポイントだというふうに思うんです。改めて聞きたいと思います。

西山政府参考人 本法案におきましては、在留特別許可の判断の透明性を高めるため、新たに考慮事情を法律で明記することとし、法律で明示された考慮事情のうち、人道上の配慮の必要性など、るる考慮事情として挙げているところでございます。

 この考慮事情の具体的な考え方につきましては、さらに、運用上のガイドラインとして策定することにより、どのような者を我が国社会に受け入れるのかを示すことを目指しております。

 新たなガイドラインの内容につきましては現在検討中でございますが、本邦で家族とともに生活するという子の利益の保護の必要性を積極評価することなどについて明確に規定する必要があると考えているところでございます。

中川(正)委員 本来はそこのところを法律に書き込んで、さっき申し上げたように、国際人権規約十七条とか子ども権利条約三条とかというような明文化されたものもあるんだから、それを法律に明文化して、積極的な部分というのもしっかり分かるように、あるいはルール化していくようにしていくということが一般的というか普通の考え方だと思うんだけれども、片方をガイドラインに置いておいて、また恣意的にガイドラインを自分たちで作る、駄目だという方だけ法律に入れていくということ、ここが今の皆さんの心の持ち方を表しているようで、違うでしょうということを指摘をしておきたいというふうに思います。

 それから、在留特別許可の現在のやり方というのは、特に認定手続で、これを難民認定手続と連動させているということですよね。三回の審理の中で、それぞれ在留特別許可をやっている。

 この改正案では、在留特別許可の申請権が認められるということになったわけだと理解していますけれども、その申請は退去強制令書の発付前に限られるというふうに理解をしています。それでいいのかということ。さっきもちょっと指摘があったようなんですが、退去強制令書の発付後は再審請願という形になるんだと理解しているんですが、この再審はどこまで保障されているのかということですね。

西山政府参考人 今委員から御指摘がありました再審情願というものがございますが、これは法令上の手続ではございませんで、委員御指摘のように、令書の発付を受けた後、その後の事情変更等を理由に、改めて在留特別許可の職権発動を求めるという事実上の行為ということで、再審情願というのは実務上の呼称として用いているものでございます。

中川(正)委員 これもはっきり言うと、ルール化をしていくような形で、実務的なという範疇で抑えているということであってはならないというふうに指摘をしておきたいというふうに思います。

 同時に、難民認定基準でありますが、今回、難民該当性の判断の手引というのが発刊されたということなんですが、これは評価したいと思うんです。

 実務上の先例や裁判例を踏まえて、難民条約で規定されている難民に含まれる文言というのを、その意義をより具体的に説明するとともに、難民の該当性、これを判断する際に考慮すべきポイントを整理というふうにありますけれども、過去の認定基準が、国際的に見て、日本はその定義が狭く解釈されているという批判が一般的だったということなんですが、基本姿勢で見る限り、これまでの基準を踏襲をしている。

 そうであれば、国際基準のどこを、国際基準との間でどこが違うのかということ、これについて説明をしてもらいたい。

 それから、手続保障の課題として抜けていますねというのが、行政手続法の適用外になっているということ、それから、一次審査の代理人同席不可、あるいは立証責任は申請側、あるいは不服申立て手続の独立性、こういう保障がないというふうに理解しているんですけれども。

 それでは駄目なんじゃないかという意味合いで、ここの課題というのをこれからどうしていくのかということについて答えてください。

西山政府参考人 まず、手引についてのお尋ねがございました。

 委員御指摘のように、これまでの私どもの実務上の取扱い、あるいは裁判例等を踏まえたものでもございますが、同時に、UNHCRにも御協力をいただきまして、そのような御意見も参考にしつつ作ったものでございます。

 したがいまして、難民認定が、画期的に、要件が変わるように、この手引によって変わるというものではございませんけれども、いわゆる規範的要素という、迫害のおそれといったような、そのままの言葉ではなかなか明確でないものを、こういう考慮ポイントで判断していくんだということをある程度具体的に手引で示すことによって、判断の透明化がより一層高まるということと、申請者にとりましても、このような判断ポイントが明らかになることによって、より主張しやすくなる、迅速に審理が進むというようなメリットがあると考えているところでございます。

 それから、もう一つ御指摘ございました、不服申立て等々の行政手続の適用外といった点に御指摘がございました。

 国際慣習法上、外国人の入国、在留を認めるか否かは国家の主権に関わる事項であり、元来、国家の裁量に属する事項でありますことから、外国人の出入国に関する処分等につきましては、その処分の性質上、行政手続法や行政不服審査法による規律になじまず、その適用を除外されているところでございます。

中川(正)委員 こうしたものを作っていくときに、UNHCRなどの助言を得ながら、実際、一緒に作っていったという答弁がよくあるんですけれども、さっき申し上げたのは、実はUNHCRなどから指摘をされているところなんです。

 もっと言えば、難民認定に特化した独立した法律の整備、これが必要なのではないか、運用でやるんじゃなくて、やはり独立した法律が必要だということも併せて指摘されているんですけれども。それを、それぞれの国独自の判断でというふうな話で蹴ってしまったら、国際的な基準なんてのは全然頭にないねという話になる。

 そこは大臣、ここは大臣にですが、どのように受け止められていますか。

齋藤(健)国務大臣 難民認定制度の質を更に向上させていく上で、難民問題の解決に長年にわたって取り組んで、その保護に関して豊富な知見を有するUNHCRを始めとする難民問題の専門家等の有識者の御意見を聴取することが当然有益なものだと考えていますので、今回の難民該当性判断の手引の策定に当たっても、UNHCRや法律又は国際情勢に関する学識経験を有する者の中から任命された難民審査参与員の方々からも御意見をいただいて、そういった御意見を検討した上で作り上げているということであります。

 様々な御意見が出されてくるわけでありますが、それを全てそのまま受け入れなくてはいけないということには必ずしもならないということでありまして、我々は、条約に伴う義務についてはきちんと履行をしているところでありますが、そのほかのところについては国情に合わせて工夫をしているところも現に存在しているということであります。

中川(正)委員 最後にしますが、私から言わせれば全く逆でありまして、特に、出入国管理庁から、第三者委員会を見て、いわゆる難民等保護委員会みたいなものを第三者でつくって、それぞれ評価をする、あるいは、調査も独立した機関でやっていきなさいよというようなことも含めて、基本になる、キーになる部分というのは指摘されているんですね。さっき申し上げた手続の方でもそうです。これは行政手続法の適用外だということについても、これもキーになるところなんですよ。そういうものが完全に抜け落ちている。

 せっかくのアドバイスに対して、何でそこまで反発することがあるんだというぐらいの答弁が返ってきている、この間、さっきから見ていると。という現状に対して、もう一回真摯に向き合って、修正をしていくということが必要だというふうに指摘をして、私の質問を終わります。

 ありがとうございました。

伊藤委員長 次に、山田勝彦君。

山田(勝)委員 立憲民主党、山田勝彦です。よろしくお願いいたします。

 まず、午前中、自民党の山下委員から、私の本会議での質疑の内容についての御指摘がありました。クルド人の方が入管庁によって強制送還され、トルコ政府によって逮捕をされ、尋問を受け、その後、何かしらの理由で殺害されたということに対して、あくまで家族間のトラブルなので、それを強制送還が問題かのようにごちゃ混ぜにするのはいかがなものかという御指摘が午前中にあったかと思います。

 まず、その件についてなんですが、入管庁に確認します。

 この入管庁が強制送還をした方、トルコ当局に政治犯として拘束されたことは事実でしょうか。

西山政府参考人 政治犯として拘束されたという事実は確認しておりません。

山田(勝)委員 それでは、トルコ政府に逮捕され、捕まった、拘束されたというのは事実でしょうか。

西山政府参考人 先ほど触れました判決書でもその点は指摘をされております。

山田(勝)委員 私はあくまで、何かしらの理由で殺害されたという事実関係を述べています。

 そして、今大臣笑われましたが、これは私、大変問題だと思うんですが、あたかも、先ほどの議論では息子さんが殺害したかのような話になっていたかと思いますが、トルコ当局は殺害したとしていますが、息子さん自身は動機はなく、殺害を否認している状況です。確定しておりません。

 この日本の国会の場において、殺害が確定していない事案をあたかも確定事項かのように、今、入管庁と自民党の議員が議論しておりましたが、これは問題じゃないでしょうか。

 これは問題かと思うんですが、御本人は否認をしています。これは撤回すべきではないでしょうか。いいんでしょうか、このままで。

西山政府参考人 先ほどの答弁の該当部分をもう一度繰り返します。

 御指摘の質疑において指摘されたトルコ人の方について、我が国の裁判所における確定判決では、トルコ国内における報道に基づき、当該トルコ人は、日本で稼働して得た資金の使途をめぐって家族間で対立を生じ、息子に殺害されたものであるとして息子が逮捕されたことが報道されており、この殺害事件にトルコの捜査機関が関与していることを裏づける証拠は何ら認められないと認定されている。

 以上でございます。

山田(勝)委員 つまり、確定していないのに、あたかも家族間での殺害事項かのような言いっぷり、これは大変問題かと思います。

 加えて言うと、山下委員が、私が質疑の中で言った話に対して、家族間の問題だから、実際に入管庁が強制送還した方の命が事実として奪われているにもかかわらず、それが大した問題じゃないかのような言いっぷり、私は、こういったところに人権の問題があると大変懸念をさせていただきます。

 その上で、質疑に入ります。

 十七日月曜日、私も、改めてウィシュマさんの映像を見せていただきました。本日は、御遺族の方もまたお越しいただいております。改めて、入管施設の中で若くして悲運の命を遂げられてしまったウィシュマ・サンダマリさんに対し、哀悼の意をささげます。

 その上で、本当に、映像、幾つも気になった点はあるんですが、二点指摘させてください。

 二月二十三日、ウィシュマさん、病院に行きたい、点滴を打ちたい、息もできない、長い間食べていない、寝ていない。これに対し職員は、私には権力がない、ボスには言っておく。このようなやり取りがありました。

 報告書によると、ウィシュマさんのこの必死の訴えに対し、この職員は上司に報告していなかった。理由は、ウィシュマさんの詐病を疑っていたとのことでした。ちょっと、もう本当に信じられない、常軌を逸した判断だと思います。

 また、お亡くなりになる二日前の三月四日、ウィシュマさんはぐったりされていて、会話もままならない状況でした。二月二十二日からの映像を時系列で見ていれば、はっきりと、衰弱し切って、体も小さくなっている様子が誰の目にも明らかでした。

 資料一を御覧ください。

 しかし、このような状況下においてなおも、三月四日、身体化障害あるいは詐病の疑い。亡くなる二日前です。このような状況でもなお詐病が疑われているのです。あの映像で見た瀕死のウィシュマさんに対し、入管職員が、仮放免をしたいから大げさにアピールしているなどと疑っていた。とても信じられませんし、もう異様だとしか思えません。悲しいとか怒りとか、そういう感情よりも、あの光景、映像を見たとき、ただただ怖い、率直にそう感じました。

 そして、この件に関して、入管庁の調査報告書では、非常勤の医師では症状を把握できる体制に十分なかった、常勤の医師による医療体制の強化が必要だ、こういう趣旨が述べられています。今回、映像を見た上で、この指摘は全く的外れだとはっきり断言させていただきます。

 ウィシュマさんは、当時、名古屋入管の不十分な医療体制であっても、命を救う機会は何度もありました。医療体制の強化とか、ましてや職員の意識改革とかいう精神論で解決できる問題ではありません。

 入管庁に流れる異様なこの組織文化を端的に表しているのが、ウィシュマさんの仮放免を不許可とした理由です。報告書にも載っています。一度、仮放免を不許可にして立場を理解させ、強く帰国を説得する必要あり。つまり、入管庁は収容を拷問の手段に使っているのです。この異様な組織文化が、ウィシュマさんだけではなく、今なお多くの外国人の方々を苦しめ続けています。

 通告はしておりませんが、この事件の受け止めとして大変重要なことなので、齋藤大臣に伺います。イエスかノーかで構いません。

 この事件を受けて、当時の上川法務大臣は、送還することに過度にとらわれる余り、収容施設として、人一人をお預かりしているという意識が少しおろそかになっていたのではないか、このようなコメントを残されています。現在の法務大臣である齋藤大臣も同じ認識でよろしいでしょうか。

齋藤(健)国務大臣 突然の御質問なので、正確な表現にできるかどうか分かりませんが、この調査報告書でも書いてありますように、やはり職員の意識の問題があり、それから組織の上と下の関係ですとか、そういう問題があり、それが深刻であったということは私は認識をしております。

山田(勝)委員 ありがとうございます。

 確かに、入管庁の職員の皆さんは、法律に従い、強制送還するという職務を遂行する役割があられます。それは理解しています。しかし、本来は、その役割以上に、人の命や健康、そして人権を優先させるべきではないでしょうか。

 資料二を御覧ください。

 これは以前もこの法務委員会で提出させてもらった資料なんですが、安全、安心な社会の実現のための取組ということで、全国の入管庁に送られている法務省の公文書です。

 この公文書の中に、下線が引いてあるところ、我が国社会に不安を与える外国人の効率的、効果的な排除、このような文章が書かれています。

 私は、ウィシュマさんはこのような入管庁の組織文化の犠牲者の一人だと思いますが、大臣はどう思われるでしょうか。今審議しているのは、我が国の人権意識が国際社会から問われる重要法案です。私は、この公文書は本法案の改正時に即座に訂正すべきと考えます。大臣、この公文書、訂正すべきではないでしょうか。

齋藤(健)国務大臣 調査報告書で指摘をされているとおり、ウィシュマさんの体調不良の訴えにつき、職員が誇張やアピールだというふうに認識していた点については、真に医療的対応が必要な状況を見落とさないための教育や意識の涵養が不足していた、大いに不足していたというふうに私は考えています。

 本事案を踏まえ、入管庁において、人権と尊厳を尊重しつつ職務を行うための、使命と心得の策定等を通じ、職員の意識改革を行っている。

 それで、御指摘の通知は、東京二〇二〇オリンピック・パラリンピック競技大会の開催が予定されていた当時の情勢下においてまず発出されたものであるということですね。そのとき、多数の外国人を歓迎する安全、安心な社会を実現すべく、我が国の社会に不安を与える外国人を縮減するための取組の実施を指示する内容だったと私は承知をしているところであります。

 ただ、その通知において、我が国社会に不安を与える外国人の効率的、効果的な排除、この言葉遣いは不適切ではないかという御指摘は、私は真摯に受け止めて今後対応していかなくちゃいけないと考えています。

山田(勝)委員 ありがとうございます。

 真摯に受け止めていただいている大臣のお気持ちは分かるんですが、やはり公文書管理法上も国民共有の知的資源とされていますし、歴史的事実の記録であるともされています。こういったことが、まさに外国人の方の人権問題を取り扱う改正時において、まだ公文書として排除という言葉が残されていることは私は不適切だと思いますので、是非、この訂正を検討いただきたいと思っております。

 日本に好ましくない外国人をこのように排除するという入管庁の組織文化を改めていかない限り、第二、第三のウィシュマさんは今後も生まれてしまいます。現に、ウィシュマさんの死亡事件後も不幸は続いています。大村入管のネパール人男性は、入管の医師により根治治療を行わない方針が示され、適切な医療が受けられず、重い障害を患いました。東京入管では、イタリア人男性が自ら命を絶ちました。今、入管行政の制度改革が問われています。

 先週の本会議で、出入国管理と難民認定は相反する理念であり、一緒に業務を行うのはおかしいのではないかという指摘をさせてもらいました。

 資料三を御覧ください。

 ここで、本会議での私の難民認定に関する質疑、一点、訂正とおわびをさせていただきたいと思います。

 私は本会議の中で、難民認定はどの国も二審制です、しかし、日本のように一審も二審も同じ入管庁が判断している国はほかにありません、このように発言いたしました。しかし、国会図書館に正式な調査をしてもらった結果、正しくは、韓国も日本同様の制度であるということが分かりました。私の確認不足であり、不正確な情報を議場で述べてしまったことを反省しております。

 しかし、改めて、この資料で示されているとおり、韓国以外の先進諸国は皆、難民認定機関を行政府から独立させております。

 本会議で私が、諸外国のように難民認定機関を独立させるべきだという質問に対し、齋藤大臣は、難民認定手続は、その他の出入国管理行政上の様々な手続と密接に関連をしていることから、入管庁において行うことが適当であり、独立した機関を設置することは考えておりません、業務上の適切な処理のために独立した難民認定機関は考えない、このように答弁されました。

 この答弁を受けて、大臣に更にお聞きいたします。

 他の先進諸国のように我が国が独立した難民認定機関を設けた場合に、具体的に、入管行政の現状のどこがどのように支障を来してしまうのでしょうか。お答えください。

齋藤(健)国務大臣 まず、私も今までの行政経験の中で様々な国際比較というのを行ってきた経験がありますけれども、全体として見て、違っている原因の中には、それぞれ組み立ててきた制度が違うので、結果として大きく違ってしまうということは多くあるわけです。結果だけ見てどっちがいいとかいう判断をするのは危険だなという経験を山ほどしてきている、経験してきているということをまずお話をしたいと思います。

 その上で、今回は、私が申し上げたのは、入管庁において行うことが適当であるということを申し上げたわけでありますが、難民認定手続は、難民認定申請中の者や難民認定者に係る在留資格の付与、上陸時に庇護を求める者への対応、それから、退去強制手続において難民性を主張する方がいますので、そういった方への配慮など、我が国の出入国在留管理行政上、様々な手続と密接に関連をしているということがありますので、入管庁において行うことが適当であるという考えを示したものであります。

山田(勝)委員 お答えになっていただいていないんですけれども、仮に、仮にというか、私たちが提案し続けているように、独立した機関を設けたら、今の入管行政に何か支障があるということなんでしょうか。特別に支障がないということでいいんでしょうか。支障があるのかないのかだけでもいいです。

齋藤(健)国務大臣 その支障というのをどう捉えたらいいか分かりませんが、先ほど申し上げたように、難民認定手続は現在の出入国在留管理行政と非常に、三点申し上げましたけれども、関連をしているということでありますので、出入国在留管理庁において行うことが適切であろうというふうに思っています。

山田(勝)委員 このやり取りを御覧いただいている方々も分かると思うんですけれども、結局、入管庁の行政の都合なんですよね。私たちは難民の適切な認定を求めるための独立性を訴えているわけです。引き続き議論したいと思います。

 次に移ります。

 同性愛者であることを理由に迫害を受けていたウガンダ人女性を入管庁が強制送還しようとした問題、この問題、本会議場でも取り上げましたが、口頭意見陳述がなぜこの女性に与えられなかったのでしょうか。行政不服審査法で認められている当たり前の権利が、なぜ難民申請者には与えられていないのでしょうか。お答えください。

西山政府参考人 一般論で申し上げますと、審査請求手続において口頭意見陳述の申立てがあった場合、当該事件を審理する難民審査参与員が口頭意見陳述の機会を与えることが適当か否かを判断することになっております。そして、法令上、申立人の主張に係る事実が真実であっても、何らの難民となる事由を包含していないことその他の事情により当該意見を述べる機会を与えることが適当でないと認められる場合等には、口頭意見陳述の機会を与えないことができるものとされております。

 その上で、委員のお尋ねでございますが、それは個別事案に関わることでございますので、お答えを差し控えさせていただきます。

山田(勝)委員 今、次長のお答えの中にあった法令上、これが大変な問題だと思います。

 資料四を御覧ください。

 不服申立人の地位の向上と適正手続の保障を行うため、我が国は行政不服審査法の改正を二〇一六年四月に行いました。しかし、この法律では、難民認定手続については、特則として、口頭意見陳述自体を開催しないことができるなどの例外が設けられていたのです。改正当時から日弁連は強い懸念を示していました。

 なぜ入管行政にだけ、このような特別な裁量、権力が与えられているのでしょうか。

西山政府参考人 入管法第六十一条の二の九は行政不服審査法の読替規定でございまして、行政不服審査法第三十一条第一項を読み替え、口頭意見陳述を除外する場合として、意見を述べる機会を与えることが困難であると認められる場合に加えて、申述書に記載された事実その他の申立人の主張に係る事実が真実であっても、何らの難民となる事由を包含していないことその他の事情により当該意見を述べる機会を与えることが適当でないと認められる場合も除外することとしております。

 このように口頭意見陳述を除外する規定を設けた趣旨は、それまで、難民不認定処分に対する不服申立て手続におきましては、口頭意見陳述に立ち会い、審尋をするか否かは難民審査参与員の判断に委ねられていたところ、難民審査参与員が行政の外部から就任するものであることを考慮し、解釈に紛れが生じないよう、除外事由を法律上明確化したところにあり、それまでの運用を変更したものではございません。

 そして、申述書に何らの難民となる事由が記載されていなければ機械的に口頭意見陳述を付与しないこととするのではなく、審理手続を主宰する難民審査参与員が口頭意見陳述の機会を付与することが適当でないと認める場合かどうかの判断を行うものとしたものでありまして、申立人の手続保障にも欠けることにはならないと考えております。

山田(勝)委員 今の答弁を聞いていても、大変な問題だと思います。やはりこれも、先ほどの難民認定の独立機関の求めに対しても、行政上の手続論、都合と。今回の答弁も、あくまで行政上の手続の都合としか解釈できません。口頭意見陳述を求めている当事者に対して、全くその答弁は納得できる、理解できるものではありません。

 現に、この事件、同性愛者ということで難民の申請をしたけれども強制送還を命じられたウガンダ人女性は、担当の弁護士先生いわく、このタイミングで口頭意見陳述ができていれば随分違ったと。三年を要したんです。やはりここが大きな、人権的な観点からも、難民申請者にだけ法律で認められていない例外規定を設けている、しかも、これは閣法で、政府が自らこういった裁量や職権を強めている。今回、入管法の改正をうたうなら、こういう点を改正すべきではないでしょうか。

 大臣、難民申請者の人権を守るために、この例外規定をなくして、当たり前に口頭意見陳述の機会を保障すべきと考えますが、いかがでしょうか。

齋藤(健)国務大臣 るる答弁もしているわけでありますが、まず、審査請求手続において口頭意見陳述の申立てがあった場合、当該事件を審理する難民審査参与員が、口頭意見陳述の機会を与えることが適当か否かを判断することになっています。

 その判断をするに当たって、法令上、申立ての主張に係る事実が、言っていることが真実であっても、何らの難民となる事由を包含していない御主張である、そういう場合その他の事情により意見を述べる機会を与えることは適当ではないと認められる場合に、与えないこともできますよという規定になっているわけでありまして、それをもってその審査が行われなくなるというわけではなくて、審査そのものはそのまま粛々と続いていくということであります。

山田(勝)委員 難民審査員が判断するからいいとかということでは決してなくて、何回も言いますけれども、このウガンダ人女性は、この制度によって口頭意見陳述の機会を得られなかった。そして、三年かかって、結局国は負けた。この女性は難民認定されることになるんです。こういった事例が発生しているにもかかわらず、先ほど来の答弁だと、全く改善しようという意思がない。大変これは残念で仕方ありません。

 この誤った入管行政により、三年もの長きにわたり、計り知れない精神的苦痛をこの女性は受けました。他の先進国ではあり得ません。例えばカナダでは、難民認定手続の迅速審査を専門に行うタスクフォースが設置され、難民該当性が高い人が多い国やその申請理由がリスト化されており、積極的に難民認定される手続が取られています。

 一方、日本は、このような一括認定をUNHCRから求められているにもかかわらず、いまだ世界から遅れ、個別把握にこだわり続けています。そもそも、入管に収容されている外国人の方が、どうやって自らが難民である証拠を母国から集めることができるのでしょうか。お答えください。

西山政府参考人 まず最初、諸外国の点について委員の御指摘がございました。

 我が国においては、難民認定審査におきましては、申請者ごとにその申請内容を審査した上で、難民条約の定義に基づき、難民と認定すべき者かを個別に判断しているところでございますが、諸外国におきましても、出身国情報を踏まえれば、特定の人々について、客観的に迫害を受ける可能性が高いと認められる場合であっても、申請者ごとにその申立ての内容を確認する必要があることから、個別に審査した上で難民の認定の判断を行っているものと承知をいたしております。

 それから、収容中の外国人について、証拠の収集、提出が困難であるという御指摘がございました。

 難民認定申請の性質上、命からがら出身国から逃れてきた申請者の中には、自身の申立てを裏づける客観的な証拠資料を持っていない場合も少なくございません。

 そこで、難民認定審査におきましては、申請者から提出された申請書や証拠関係資料だけを参考にするのではなく、難民調査官が事実の調査として申請者の事情聴取を丁寧に行い、申請者の供述について、出身国情報を活用しつつ、その信憑性を的確に評価することが重要であると考えております。

山田(勝)委員 ありがとうございます。

 証言自体を証拠とし得るという運用が今後なされるという理解でよろしいですか。

西山政府参考人 この点は、従来から、供述のみでは認定せず補強証拠が必要だという取扱いは、従前からもしておりません。

山田(勝)委員 難民支援協会が公表している全国各地の収容されている当事者の声の中で、頭に銃を突きつけられた経験を話したら、そのときの写真が必要だ、そのように言われた。どこの世界でそんなことができると思いますか。これが現場の運営実態です。

 大臣が、今後は適正な難民認定を行う、行っていきたいと強い意思があられるのであれば、このような証拠を自己責任にしない、口頭による証言も証拠として認めるという内容を法律やガイドラインに明確に書き込むべきだと強く指摘をさせていただきます。

 これについて見解を、大臣、お願いします。

齋藤(健)国務大臣 難民認定申請の性質上、命からがら出身国から逃れてきた申請者の中には、自身の申立てを裏づける客観的な証拠資料を持っていない場合というのも少なくないと私は思います。

 そこで、難民認定審査においては、申請者から提出された申請書や証拠関係資料だけを参考にするのではなく、難民調査官が事実の調査として申請者の事情聴取を丁寧に行って、申請者の供述について、出身国情報を活用しながら、その信憑性を的確に評価することが重要であると私は考えていますので、それを徹底していきたいと思います。

山田(勝)委員 次の質問に入ります。難民審査参与員についてです。

 本会議で、審査参与員の三人一致の意見について、平成二十八年以降は全て認定したと大臣から回答をいただいております。であれば、それ以前に多数意見を法務大臣が政治判断で不認定とした件数は何件あったのでしょうか。

西山政府参考人 三人の難民審査参与員全員が、不服申立てに理由があり、難民の認定をすべきである旨の意見を提出したものの、法務大臣が難民として認定しなかったのは、平成二十五年における二件五人でございます。

 もっとも、この当該五人全員につきまして、難民とは認定されなかったものの、人道的な配慮を理由に在留を許可されております。

山田(勝)委員 三人全員が五名、そして二対一、多数意見は八名、トータル十三名の方が大臣による政治判断で不許可、不認定とされています。

 こういった運用は法律上まず問題ないのかということをお聞きしたいのと、なぜ、このように審査員が、専門家と入管庁が思っている審査員が多数意見を出しているにもかかわらず、法務大臣が独断で不認定処分とされたのか、お聞かせください。

西山政府参考人 まず最初のお尋ねですが、難民不認定処分等に対する審査請求においては、外部有識者から成る難民審査参与員が三人一組で審理を行い、法務大臣は、難民審査参与員の意見を必ず聞いた上で、その意見を尊重して裁決しておりますものの、難民審査参与員が提出した意見に法的拘束力までは認められていないものでございます。

 その審査請求の裁決に当たって個別の事案ごとに判断しているところ、平成二十八年以降、難民審査参与員の多数意見と異なる判断をした事実がないという状況は、これも個々の判断の積み重ねの結果であるため、その理由について一概に申し上げることは困難でございます。

山田(勝)委員 つまり、法的拘束力がないということなんです。ということは、今後も、現行法上、例えば三人とか多数の意見が出たとしても、大臣が覆すことはあり得るという理解でよろしいでしょうか。

西山政府参考人 先ほど答弁いたしましたように、法的拘束力は認められませんけれども、運用として、法務大臣は最大限、難民審査参与員の御意見を尊重するというふうな運用になってございます。

山田(勝)委員 つまり、今の法律上、覆しても、法的拘束力はないということなので、現行法が維持されている以上、こういう運用がまたいつ起こるか分からないという状況です。不安定だと思います。大臣、これは法改正すべきではないでしょうか。

 先ほどの口頭意見陳述の難民申請者の権利回復とともに、参与員の多数意見に法的拘束力を持たせる。外交的配慮などの政治的判断を疑われないためにも、当然のことだと考えます。大臣、いかがでしょうか。

齋藤(健)国務大臣 まず、難民不認定処分等に対する審査請求におきましては、外部有識者から成る難民審査参与員が三人一組で審理を行い、法務大臣は難民審査参与員の意見を必ず聞いた上で判断する、そういうことで判断の適正性を確保しているわけです。

 もう次長からも答弁いたしておりますが、難民審査参与員が提出した意見に法的拘束力はありませんが、平成二十八年以降、法務大臣が難民審査参与員の多数意見と異なる判断をした事例はないということであります。

 私の立場としては、引き続き、審査請求の裁決に当たりましては、難民審査参与員の意見を最大限尊重して、法令にのっとって適切に対処してまいるという以上には言えないということであります。やはり、どういう個別的事例が将来発生するかというものは予測不可能なところもありますので、最大限尊重し、法令にのっとり適切に対処してまいるというのが今の私のスタンスであります。

山田(勝)委員 難民認定の独立性というのが私たちが言い続けていることなんですが、このように政治判断の余地を残しているということも改めて問題だということを指摘させていただきます。

 それでは、この難民審査参与員、一体どのような基準で選出されているのか。難民保護に関する知識や経験、このようなことは問われているのでしょうか。

西山政府参考人 入管法上、難民審査参与員につきましては、人格高潔であって、審査請求に関し公正な判断をすることができる者、法律又は国際情勢に関する学識経験を有する者などの要件が定められております。

 これを受け、難民審査参与員については、弁護士、国連機関勤務経験者、大学教授等の難民認定に関連する知識経験を有する外部有識者から選任しており、難民審査参与員は難民審査に関して的確な意見を述べるための資質等を十分に備えているものと考えております。

山田(勝)委員 ありがとうございます。

 今いろいろ御答弁いただいたんですが、しかしながら、この参与員、必ずしも人格が高潔であると言い難いような発言が多発しているようです。

 全国難民弁護団が法務大臣宛てに出した難民審査参与員の問題発言・行動に対する申入書によると、強姦被害を主張する難民申請者に対し、男性の参与員から、美人だったから狙われたのかなどの不適切な質問があり、その発言が調書に記載されていなかった、また、別の参与員からは、あなたは難民としては元気過ぎる、本当の難民はもっと力がない、このような問題発言が全国難民弁護団には多数報告されており、このような発言をする方々には、難民認定は適正な審理からかけ離れているのではないか、法務大臣に対し、抜本的な改善がこの団体から求められております。

 そこで、お伺いします。

 現在、難民審査参与員、百十七名が任命されていますが、このうち日弁連やUNHCRからの推薦を受けた人は何名いらっしゃるんでしょうか。

西山政府参考人 難民審査参与員は、令和五年四月一日現在、百十七名任命されておりますが、このうち、日本弁護士連合会からは十一名、UNHCRからは四名の推薦を受け、任命しております。このほか、国内外において難民等の支援活動を行っている団体からは八名の推薦を受けて、任命をいたしております。

山田(勝)委員 五名と四名、圧倒的に少ないという印象です。この問題は引き続き追及させていただきたいと思います。

 ありがとうございました。

伊藤委員長 午後一時から委員会を再開することとし、この際、休憩いたします。

    午後零時一分休憩

     ――――◇―――――

    午後一時開議

伊藤委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。

 質疑を続行いたします。米山隆一君。

米山委員 それでは、会派を代表して質問いたします。

 ちょっと質問通告はない話なんですが、かつ、各委員の質問をするのはそれは自由という前提なんですけれども、同時に、この委員会、皆さんが聞いているので、私も一言それは申し上げたい、午前中の質疑から一言申し上げたいんですが。

 午前中の質疑で、ウィシュマさんの死亡の経過につきまして、拒薬があったとか食事を取らなかったとか、若しくは、いろいろ、診察を受けたくないと言ったというような御指摘があったんですけれども、私、一応医者として申し上げさせていただきますと、患者さんというのはそういうものでございまして、大学病院に入院している患者さんだって、拒薬もすれば食事を食べないこともあり、診療を受けたくないと言うこともあるわけなんです。それは全然言い訳にならなくて、要は、素人、素人という言い方は大変恐縮ですけれども、現に素人なわけですからね、素人が患者さん、それは患者さんだと思っていなかったからしようがない部分はあるんでしょうけれども、患者さんを診てしまうということの恐怖というものをもう一度考えていただきたいというふうに思います。

 その上で、今度は改正入管法といいますか、入管法改正案第六十一条の二の九第四項二号に定める送還停止効の例外要件の妥当性についてお伺いいたします。

 この条項、「無期若しくは三年以上の拘禁刑に処せられた者」というのがまずあります。

 まず、これについてお伺いしたいんですけれども、この前提として、送還停止効、この条項に該当いたしますと、難民条約第三十三条第一項の、人種、宗教、国籍若しくは特定の社会的集団の構成員であること又は政治的意見のためにその生命又は自由が脅威にさらされるおそれのある領域の国に送還されるという、ノン・ルフールマンの原則に反する事態が生じ得ますので、慎重かつ限定的であるべきだと考えております。

 ところが、この「無期若しくは三年以上の拘禁刑に処せられた者」というのは、何となく、皆さん、それは犯罪者なんだから当然だと思うかもしれないんですけれども、これはそもそもの難民条約第三十三条二項においては、締約国にいる難民であって、当該締約国の安全にとって危険であると認めるに足りる相当な理由がある者又は特に重大な犯罪について有罪の判決が確定し当該締約国の社会について危険な存在となった者について、ノン・ルフールマン原則の例外を認めるものであると思います。

 なんですが、三年以上の拘禁刑というと実は結構ありまして、例えば、記憶に新しいところでは、元通産省技官で池袋暴走事故を起こしました飯塚幸三受刑者、これは自動車運転処罰法違反で禁錮五年の実刑判決を受けております。さらに、元自民党員であられて、元法務副大臣であられて、元内閣総理大臣補佐官であられた河井克行さん、これは……(発言する者あり)法務大臣ですか、ちょうど懲役三年の実刑判決を受けておられます。

 もちろん、それをしていいというんじゃないですよ。でも、建前として、そういう犯罪を犯しても、それはきちんと刑期を終えて悔い改めたら、さすがに日本の安全にとって危険であると認めるに足りる相当な理由がある者じゃないんだと思うんですよ。

 ところが、この入管法改正案第六十一条の二の九の第四項二号によりますと、そういった実質的な判断は全くなく、この三年の実刑ということではじかれてしまう、何であれば、生命の危険がある国にも送還されてしまうということになるわけなんですけれども、この線引きは妥当であるのか、大臣の御所見を伺います。妥当であるということであれば、その理由も含めて伺いたい。

 というのは、今ほど例に言ったとおり、もしこれが妥当であるというのであれば、河井克行氏なんかは日本の安全にとって危険な存在だ、刑期を終えてもそういうことだというふうに考えるのか、御所見を伺います。

齋藤(健)国務大臣 いわゆる送還停止効は、難民認定申請中の者の法的地位の安定を図るために設けられたというものであります。

 そのため、難民等認定申請中であっても、法的地位の安定を図る必要のない者を送還停止効の例外とするということは許容され得るというふうに考えています。

 三年以上の実刑に処せられた者は、我が国の社会の安全という観点において、刑罰法令違反者の中でも相当程度刑事責任が重く、強い反社会性を示す者であるので、我が国への在留を認めるべきではない。したがいまして、難民等認定申請中でありましても、そのような者の法的地位の安定を図る必要はないと考えているところでございます。

米山委員 そうお答えになるということであるならば、飯塚幸三受刑者も河井克行氏も、刑期を終えてなお我が国の安全にとって危険な人物であるというふうに御判断されるということですかね。私は、それは、そもそも刑期というのは何なんだと、刑期を終えたら、しかも悔い改めたら、その人はもはや危険ではないといいますか、一般の人になるというのが前提なんだと思うんですよ。それを頭から否定してしまうというのはさすがにいかがなものかと。

 それはもちろん、殺人であるとか強姦であるとか、明らかなというのはあると思うんですけれども、三年というのは、今ほど言ったとおり、結構なもので起こっちゃうわけですよ。例えば、籠池さんなんかも、たしかあれは五年ぐらいですかね、五年だったと思いますし。私、ちなみに知人ではあるんですけれども、スパコンの斉藤さんとか、あれも五年ですね。ですから、その三年というのはそんなに危険ですかねと。かつ、それはもちろん人によるんでしょうけれども、もっと実質的な判断をすべきラインではないんですかと思います。

 先ほど来、大臣、法的安定性のためにとおっしゃいますけれども、もちろん、難民でない方は、それは、最終的に難民でないと分かったら帰っていただくのはそれでいいんですよ。でも、難民申請をしている以上、難民かもしれないわけですよ。それは難民の可能性があると思って考えなきゃいけないわけです。その人を、一律、何の実質的判断もせずに、三年という条項に当たっただけで、しかも刑期を終えているのに、それを完全に送還してしまうというのは、私は難民条約の第三十三条二項に反するのではないかと思います。御所見を伺います。

齋藤(健)国務大臣 まず、送還停止効は、難民認定申請中の者の法的地位の安定を図るために設けられたものであって、今御指摘の、難民条約第三十三条一項に定めるいわゆるノン・ルフールマン原則、これを担保するものではないというふうに考えています。

 先ほど申し上げたように、三年以上の実刑に処せられた者は、刑罰法令違反者の中でも相当程度刑事責任が重く、強い反社会性を示す者であるから、我が国への在留を認めるべきではないということで、申請回数にかかわらず、申請中にあることもかかわらず、送還停止効の例外としたものであります。

 なお、このような送還停止効の例外に該当する者でありましても、入管法は、第五十三条第三項におきまして、難民条約第三十三条第一項に規定する領域に属する国等への送還を禁じておりますので、同項によりノン・ルフールマン原則は担保されているというふうに考えますので、三年以上の実刑を受けた者を送還停止効の例外の対象といたしましても、難民条約第三十三条の第二項には反しないというふうに考えています。

米山委員 そういうお答えをするのは予想されたんですが、入管法の第五十三条三項第一号括弧書きにつきましては、この後で質問させていただきたいと思うんですけれども、そちらは実は、一体全体、その括弧書きに当たるかどうかを誰が検討するのか、どういうプロセスで検討するのか、その結果はどう知らせるのか、まるで決まっていないわけでして、結局、実質的にやはり、この条項によって難民であるかもしれない人が迫害を受け得る国に行ってしまい得るんだと思うんです。だから、うちの国はこういうたてつけだからといっても、実質的にやはりそういう危険があるなら、私はこれは難民条約第三十三条第二項に反すると思いますと言わせていただきます。

 次に、さらにこれは、三年以上のところを皆さんは分かりやすいから見るんですけれども、その後、参照条文みたいなのを引かないから余り注目されないんですが、第四号のワ(3)には、「工場事業場における安全保持の施設の正常な維持又は運行を停廃し、又は妨げるような争議行為を勧奨する政党その他の団体」となっておるわけなんです。

 それは確かに、工場の安全装置の施設の正常な運行を妨げてはいかぬですよ、それはいかぬですけれども、でも、工場でストをしたら、大概、安全装置の妨げぐらいにちょっとはなるわけでしょう。だって、人が足りないから安全装置見れませんとか、その程度のことは起こり得るわけですよ。

 そうすると、何か、ちゃんと働いていて、ストにちょっと参加した、そういう団体に入っていたとなったらもう駄目ということになりそうなんですけれども、こちらも厳し過ぎないでしょうか。御所見を伺います。

齋藤(健)国務大臣 入管法第二十四条四号ワ、今御指摘のところですが、暴力主義的破壊活動者等を退去強制事由と定める類型でありまして、公務員であるという理由により、公務員に暴行を加え、又は公務員を殺傷することを推奨する政党その他の団体、あるいは、公共の施設を不法に損傷し、又は破壊することを勧奨する政党その他の団体、あるいは、工場事業場における安全保持の施設の正常な維持又は運行を停廃し、又は妨げるような争議行為を勧奨する政党その他の団体等の構成要員等が対象となります。

 あくまで一般論としてお答え申し上げますが、御指摘のような適法な争議行為は、通常、工場事業場における安全保持の施設の正常な維持又は運行を停廃し、又は妨げるような争議行為に該当することはないと私は考えています。

米山委員 法務大臣が考えても、条文上はいかにも該当し得ると思われるわけですよ。

 さらに、これは実は続きがありまして、「ワに規定する政党その他の団体の目的を達するため、印刷物、映画その他の文書図画を作成し、頒布し、又は展示した者」なので、その政党にたまさか言われて、ちょっとビラを配ってくれない、それで、行った途端に、ともかく条文上は該当するんですよね、ビラを配りさえすれば。それは幾ら何でも厳し過ぎませんか。御所見を伺います。

齋藤(健)国務大臣 二十四条四号オに規定する政党等というのは、日本国の政治的基本組織を暴力で破壊しようとする暴力主義的破壊団体活動をいいます。

 同条四号ワに規定する政党等とは、公務員という理由で公務員の殺傷を勧奨する政党、公共施設の破壊等を勧奨する政党など、いわゆる無政府主義的破壊活動団体をいいます。

 入管法第二十四条四号カに該当する者は、これら暴力主義的破壊活動団体などの目的を達成するために一定の宣伝活動を行った者を指す。

 したがいまして、これら日本国の政治的基本組織を暴力で破壊しようとする団体等の目的を達するために印刷物等を作成、頒布するなどした者は、暴力主義的破壊活動団体と同程度に日本国及び日本社会にとって重大な脅威であり、反社会性が高いと考えています。

 したがいまして、これらの者の反社会性は強く、これらの者を送還停止効の例外とすることが厳し過ぎるということはないのではないかと思います。

米山委員 それは、悪いんだ、悪いんだと言えば何だって悪くなると思いますけれども、でも、目的を達するためといったって、究極的な目的を達成するためなのか、ビラを配るという目的を達成するためなのか、分からないですよね。そのときに、ひたすらその団体としては、今ビラ配りしたいと思いました、その目的を達成するためにお願いしました、その目的を達成するために協力しました、ビラを配りました、さすがにその人を危険な国に送り出すということが、ちょっと、私、正当化できるとは思えないんですよ。

 しかも、これは条文の問題ですから、別に、この条文を削除すればいいわけですよ。この条文を修正したらいいじゃないですか。百歩譲って、「工場事業場における安全保持の施設の正常な維持又は運行を停廃し、又は妨げるような争議行為を勧奨する政党その他の団体」はいいとして、さすがに、「印刷物、映画その他の文書図画を作成し、頒布し、又は展示した者」というのを入れる必要が何であるのか、条文に書いて。しかも、要するに、党員だったら前の方で入っちゃうわけですから、党員でない人でビラを配った人ということになるわけですからね。それは要らないと思うんですけれども、御所見はどうですか。伺います。

齋藤(健)国務大臣 判断しなくちゃいけないことは、ビラを配ったかどうかじゃなくて、どういう重大な目的を持って配ったかということも十分考慮されるべきだと思います。

米山委員 それはもう齋藤大臣の人治主義なわけですよ。条文としてこう書いてあるなら当たっちゃうわけです。それは、人はそれを見て判断するわけですよ。我々は法治主義なんですから、やはりそれはちゃんと、条文として書いてあるものに対して責任があるといいますか、だからこそ我々、委員会があって、この立法を審議しているわけですから、明らかに送還停止効の例外にするにはおかしな条項がある部分に関しては、私は、修正なり削除なりすべきだと思うし、しないのであれば、それは難民条約第三十三条第二項に、幾らほかがあるといったって、実質的に反すると思いますよ。

 次に、さらに、第二十四条第三号の二の公衆等脅迫目的の犯罪、テロ資金提供処罰法に該当する方についてお伺いしたいと思います。

 いわゆるこれが、テロリスト、テロ資金提供処罰法に定義されているテロリストに該当する人が、先ほど来議論に出ている、テロリストは入りませんという話なんですけれども、条文をよく見ると、これをざっとテロ等といいますけれども、テロ等の予備行為又はこの実行を容易にする行為を、おそれがあると認めるに足る相当の理由がある者として法務大臣が認定する者、条文として、公衆等脅迫目的の犯罪行為等、公衆等脅迫目的の犯罪行為等の予備行為又は公衆等脅迫目的の犯罪行為の実行を容易にする行為を行うおそれがあると認めるに足りる相当の理由がある者として法務大臣が認定する者、若しくは、これらのいずれかに該当すると疑うに足る相当の理由がある者とされております。この認定は、法務大臣が認定するということであり、しかも、相当の理由があるということになります。

 さらに、この条文を読みますと、法務大臣が認定することに対して、さらに、主任審査官が相当の理由があるものということになって、結局、法務大臣が相当の理由があると認定するに、主任捜査官が相当の理由があるものという条文になっているんです。これは二重の相当の理由になっていますので、正直、条文上は、もう何だって理由はあるだろうと。だって、もしかして齋藤さんが思うかもしれないしな、齋藤さんが機嫌が悪くてそう思うかもしれないからと、相当の理由がありましたという、条文上、そうなっちゃうわけです。二重の相当の理由になっていますから。

 そもそも相当な理由をどのように判断されるのか、そして、こういう二重の相当の理由になっていることをどう考えるのか、御所見を伺います。

齋藤(健)国務大臣 御指摘の各条項は、いずれも、我が国におけるテロ行為等の未然防止のために設けられているものでありまして、我が国の利益、公安に大きく関わる条項であります。まずそれが前提です。

 その上で、その具体的な基準につきましては、事柄の性質上お答えを差し控えたいと思いますが、規定が設けられた趣旨に鑑み、その適用については、関係機関と連携を図りながら、入手した情報を踏まえて慎重に判断すべきこととなります。

米山委員 これも同じ話なんですけれども、適切に認定するから大丈夫ですというのは、それはやはり法治主義じゃないんですよ。そんなことを言ってしまったら、法律案を審議する意味がないといいますかね。

 何せ法律は、我々が判断する大きな基準であると同時に、これは特に、入管法、難民認定法の条文なわけですから、世界に対する日本国の意思の発信なわけですよね、我々はこういう意思で難民を認定するんだと。それがこういう、非常に条文上不明確である、しかも英語に訳したら一体全体どうなるんだろうという、ちょっと分からないわけです。誰も理解できない。

 ともかく、テロと疑われると疑われたらもう送還されてしまうという条文になっているわけなので、私、これはもう、それは幾ら何でも日本国としてこんな条文の改正案を通すのは恥ずかし過ぎる、せめてこの条文は直すべきだと思うんですが、御所見を伺います。

齋藤(健)国務大臣 我が国において一たびテロ行為を許した場合、致命的な結果をもたらすことから、テロ行為を未然に防止することこそが肝要であると考えています。

 そのために、テロリストであることが明確な者のみを送還停止効の例外とするだけでは不十分であり、疑うに足りる相当の理由がある者についても送還停止効の例外とする必要があると私は思います。

 もちろん、疑うに足りる相当の理由の判断に当たりましては、関係機関と連携を図りながら、入手した情報を踏まえて慎重に判断をしていきたいと思います。

米山委員 そうすると、この疑うに足りる相当の理由があると疑うに足りる相当の理由があるという不可解な条文は、そのまま維持されるということですか。これを英語にして世界に発信するということでよろしいですか。

齋藤(健)国務大臣 英語にするかどうかはともかく、条文はこのとおり御審議いただけたらと思います。

米山委員 私は、これは是非とも、さすがに、相当の部分のどちらかを削除するなり、少なくとも修正をすべきだと思います。それは、世界の人にとって分かりやすいものでないといけませんので、こういう、分かりづらい上に、しかも極めて恣意性が高いことが条文上疑われてしまうような構造の法律を通すべきではないと言わせていただきます。

 次に、審査の機会の保持ということで、六十一条の二の九第四項によって、審査を受けることなく退去強制手続が執行され得るということについて御質問させていただきます。

 日本が批准して、改正入管法が合致していなければならない難民条約第三十三条は、一項で「締約国は、難民を、いかなる方法によつても、人種、宗教、国籍若しくは特定の社会的集団の構成員であること又は政治的意見のためにその生命又は自由が脅威にさらされるおそれのある領域の国境へ追放し又は送還してはならない。」、二項で「締約国にいる難民であつて、当該締約国の安全にとつて危険であると認めるに足りる相当な理由があるもの又は特に重大な犯罪について有罪の判決が確定し当該締約国の社会にとつて危険な存在となつたものは、一の規定による利益の享受を要求することができない。」と定めて、難民となった者についてのみノン・ルフールマンの原則の例外を適用するとしております。

 つまり、社会にとって危険な存在だから送還するというのは、それ自体はあり得るんだけれども、それは難民の方にそういう適用をするというふうに条文上書かれているわけです。また、そういう解釈だと、UNHCRもそのように規定しております。

 にもかかわらず、今般検討しております改正入管法におきましては、難民であるかどうかが分からないうちからもう送還ができるというたてつけになっているんですけれども、これは難民条約に反しませんでしょうか。御所見を伺います。

齋藤(健)国務大臣 送還停止効は、難民申請中の者の法的地位の安定を図るために設けられたものでありまして、まず、難民条約第三十三条一に定めるノン・ルフールマン原則を担保するものではない、これが前提です。そのため、難民認定申請中であっても、法的地位の安定を図る必要がない者を送還停止効の例外の対象とすることは許容され得ると考えています。

 一方で、入管法は、第五十三条第三項におきまして、難民と認定された者に限らず退去強制を受ける者について、難民条約第三十三条第一項に規定する領域の属する国等への送還を禁じ、ノン・ルフールマン原則を担保しているところであります。

 送還停止効の例外に該当する者であっても、ノン・ルフールマン原則に反する送還が行われることはありませんので、送還停止効の例外の規定は難民条約第三十三条一に反さないというふうに考えています。

米山委員 まあ、そうお答えになるんでしょうけれども。

 ただ、この難民条約について、今ほど言ったような解釈というか、そもそも条文がそういうたてつけだと思いますけれども、UNHCRがそのような解釈を出しているのは、これは、難民条約第三十三条二項を適用する際には、送還が危険を消滅又は軽減させる最後の手段でなくてはならず、比例性がなくてはならない、つまり、国家や社会に対して当該難民が及ぼす将来的な危険が、当該難民が出身国に送り返された際に直面する危険を上回るときにのみ可能である、いわゆる比例性の原則というものを表明されているわけです。

 これはもっともなお話でして、何せ、私も、危険な方に余り入ってこられるのはそれは気分がよくないというのは分かります。でも、この難民の話というのは、みんながみんな、そんなお行儀のいい、すばらしい人ばかりが来るわけじゃないわけですよ。ちょっと言い方は申し訳ないかもしれませんけれども、だって、出身国で一定の迫害を受けるというのは、出身国の、何というか、多数派にはひよれなかったといいますか、それ相応に骨のある人というか、そういう人なわけですよね。いろいろな中には、多少なりとも必ずしも模範的とは言えない人だっているかもしれないわけです。

 だけれども、人道というのは、ヒューマニズムですよね、ヒューマニズムというのは、そういうものを含めてぎりぎりの判断をしていこうというのが人道だと思うんです。だから、難民認定に関しても、それは、もろ手を挙げてじゃないけれども、しかし、多少なりとも模範的とは言えない人であっても、その人の及ぼす日本国に対する危険が、その人を送還することによってその人が受ける危険よりも大きいとは言えない、少なくとも許容できるならば、それは送還しないにしようという、比例性の原則というのがやはりヒューマニズムの原則だと思うんです。それをずっと無視されたことをお話しされているというのが私は非常に残念なんです。

 先ほど来、改正入管法第五十三条第三項第一号括弧書きが難民条約第三十三条二項に該当して、ここで比例性を含めて判断するという、ここで判断するとおっしゃられているんですけれども、何せ、難民かどうか分かっていないので、難民かどうかの審査すらしていないので、恐らく比例性なんか判断できないんですよ、たてつけとして。

 百歩譲って判断するということであるならば、一体全体、その第五十三条第三項第一号の括弧書きについて、誰がどのようにどういう過程で判断するのかお示しいただきたいんですけれども、これは、一体全体、どのように判断するという趣旨なんでしょうか。

齋藤(健)国務大臣 送還先国が入管法第五十三条第三項各号に掲げる国に該当するか否かについては、いわゆる三審制で行われる退去強制手続の各段階において、容疑者を含む関係者から必要な供述を得たり、必要に応じて送還先の国内情勢等に係る情報を収集するなどした上で、最終的には退去強制令書を発付する主任審査官が適切かつ慎重にその判断をしているということであります。

米山委員 そうだとすると、もし本当にそうするのであれば、それはやはり条文の中に書くべきじゃないんでしょうか。その五十三条第三項第一号括弧書きというのは、何か、しれっとあるだけで、一体全体、この適法性について誰がどう審査するのか、本当に三審制の中で審査するのか、ちゃんと専門性のある方がやるのか、それがまるで分からないわけですよ。

 そうすると、比例性の原則という極めて重要な原則について、この法律は対処できないたてつけになっているんだと思うんです。これもきちんと書かないといけない。きちんとこれも修正しなければこんな法律を通すべきではないと思うんですけれども、御所見を伺います。

齋藤(健)国務大臣 先ほどの御答弁の繰り返しになりますけれども、入管法五十三条第三項に掲げる国に該当するか否かについては、三審制、そこで行われる退去強制手続の各段階において、容疑者を含む関係者から必要な供述を得たり、必要に応じて送還先の国内情勢等に係る情報を収集するなどした上で、最終的には退去強制令書を発付する主任審査官が適切かつ慎重にその判断をするということでありますので、入管法に規定する必要はないと考えています。

米山委員 時間なので、もう一言で終わるんですけれども、今申し上げたとおり、この法律、すばらしい、すばらしいと言う割には、難民条約の適合性に様々な点で疑問がつきますし、先ほど申し上げたとおり、条文上も、何というか、ちょっと恥ずかしいんじゃないかという条文になっている。

 是非、これはきちんと修正するなりなんなりしなければ到底認められないということを申し上げさせていただきまして、また、大臣御承知のように、通告したのが大量に余っていますので、その点もまたしっかりと御質問させていただくということを申し上げさせていただきまして、私の質問を終わらせていただきます。

 ありがとうございました。

伊藤委員長 次に、寺田学君。

寺田(学)委員 寺田です。昨日に引き続き、質疑したいと思います。

 通告の中には、昨日もそうですけれども、今日も最後にやるのは、うちの会派の委員の方々が質問された中で、答弁がもう一段欲しいなと思うことに関しては、包括的に私の方で受けて再質問しようと思っています。

 直前にはちょっと法務省の方にもお伝えしたんですが、先ほどの鈴木さんの議論の中で、いわゆる収容されている方は監理人をどのようにして見つけて連絡をするのかという質問がありました。いろいろな意見はありましたけれども、どのような方が監理人になるのかとか、お電話をしてという連絡の手段はありましたけれども、一般的に考えて、収容施設にいる方がどのようにしてその連絡先を見つけるのかということに対しての答弁がなかったです。

 監理人を御本人はどのようにして見つけるのか、認知するのか、お答えください。

西山政府参考人 例えばでございますけれども、本人から申出があった場合に、御本人から預かっています携帯電話を御本人の目の前で操作をして連絡をするなどの方法が考えられると考えております。

寺田(学)委員 様々な方が収容されている中でいらっしゃると思いますが、そもそもそのような対象の方とお知り合いになる機会がないまま収容されている方だっていらっしゃいますよね。

 一般的には日本人の方だと思いますけれども、あなた、携帯見せてみてと。ただ、本当に命からがら逃げてきた方々含めて、また、日本に関係性がないまま収容された方にとってみると、連絡先がない人はいますよ。そういう方にはどうするんですか。

西山政府参考人 そういった方々に監理人にふさわしい方をあてがうといいますか、そのためには、私どもも、そのような方々をストックといいますか、そういった連絡先を見つけておくことがこの監理措置制度をやっていく上ではやはり必要であろうと思っています。

 そのために、私どもとしても、各地方局も、支援団体であるとか、あるいは弁護士会であるとか、そういった団体にまずはこの制度の御説明を丁寧に行って、御理解をいただいた上で、監理人として御協力をいただくような連携の在り方をこれから構築していかなければならないというふうに考えているところでございます。

寺田(学)委員 実際、その運用がうまくいくかどうかまず別としながら、今御答弁いただいたとおり、何ら連絡先の当てがない方に対しては、その収容されている場所において登録をその当時している人がいるのであれば、監理人の候補者となられるような方がいるとすれば、御本人の申出があれば紹介をするというようなことも役割として考えているということでよろしいですか。

西山政府参考人 まさに委員おっしゃっていただいたとおりでございます。

寺田(学)委員 それでは、自分が通告した部分に戻りたいと思います。難民認定についてです。

 今回、法案を趣旨説明をされるときにも、認めるべき人は認めて、認められない人には帰っていただく制度だというお話をされています。様々な議論がこの入管法にあることの根源的なところは、難民認定の在り方、その評価自体が非常に厳しいということの声が多いこと、そして、実態としてそうなっているというようなことがあると思っています。だからこそ、二年前の質疑にはなかったんですが、今回、ようやく手引としてその要素というものが明らかにされました。

 今日、追加資料ということでお手元にお配りをしました。資料自体は、手引自体はかなり複数枚あるんですが、この四ページの「(三)迫害を受けるおそれがあるという十分に理由のある恐怖」、日本語としていかがなものかと思いますけれども、この項自体が全てを集約している、物語っているものだと思います。ここをどういうふうに解釈するかによって、現場においてどういう判断がなされるのかということがあるので、包括的な通告をしています、手引にある現実的な危険の有無の解釈とは何かという。この迫害を受けるおそれがある十分に理由のある恐怖という、(三)の一段落目と二段落目の部分の解釈についてです。

 まず、前提として申し上げますけれども、法務省、入管にも検事さんはいっぱいいらっしゃいますが、検事さんが取り扱うものは、実際に起こった事件をどのように判断するかという、現状起きているものに対してのお仕事なんだと思います。ただ、この難民認定自体は、まさしくこの方を帰した場合にはどのようなことが起こり得るのかという未来に対する推測を働かせながら判断する内容です。なので、刑事事件とは全く違う話だと、まず大前提として、そこは与党、野党かかわらず、共通理解だと思います。未来をどのように予測するかということに関して、どのような指針なのかというのが書かれたのがこの(三)だと思います。

 それで、皆さん、お目通しをいただくとは思うんですけれども、一段落目、まず最初に言葉の定義を聞きたいんですが、タイトルですね。まず、おそれという言葉を使う理由を、簡単ではありますけれども、説明してください。

西山政府参考人 ここで言うおそれと申しますのは、意味としては、迫害を受ける可能性というふうに言い換えてもよいかと存じます。

寺田(学)委員 まさしく未来のことですので、起きたことをどうかというよりは、可能性ですよね。その可能性があるという十分に理由のある恐怖という、訳の分からない言葉ですけれども。

 それで、つらつらと書いていますが、私も、法曹界の人間ではないですが、一般的に読んでいますけれども、一段落目の下から二番目、「通常人が申請者本人の立場に置かれたならば迫害の恐怖を抱くような客観的な事情が存在することが必要である。」、この通常人って何ですか。その後に「通常人が申請者本人の立場」、申請者本人の立場に置かれたならば迫害の恐怖を抱くかどうかというのはあると思いますが、わざわざここに通常人という、これって何なんですか、この言葉は。どこかで使うんですか、刑事事件とかで。分かりませんけれども、通常人って何ですか。

西山政府参考人 これは、裁判例などに使われた言葉も参照しながら使っている文言でございますが、普通一般の人という言い方もありますし、社会通念という言い方ですることもありますが、その個人特有の、個人的なものではなくて、やはり、一般通常の人がその人の立場に立ったとしてもというような意味合いで使っているものでございます。

寺田(学)委員 なぜ、そういうような通常人という言葉を入れたんですか。通常人の解釈を今御説明いただきましたけれども、なぜ入れたんですか。

西山政府参考人 これは、先ほど申し上げたように、過去の裁判例の考え方を引用といいますか、それを用いているんですけれども、平たい言い方をしますと、その人特有の、すごい個人的な思い込みみたいなもので迫害のおそれを認定するのはどうかと。やはりそこは、一般通常の人でもそういった迫害のおそれを感じるであろう、そういう一般的なものを求めているという意味でございます。

寺田(学)委員 分かりませんけれども、そんな一般って、どうやって測っているんですか。

西山政府参考人 おっしゃるとおり、実は一般というものが目に見えて存在するものではございません。その個人の考え方、感じ方というのは人それぞれなんですけれども、ただ、通常の人が、ここで通常と使うからあれなのかもしれないんですけれども、その人、そういう感じ方をするのかなというような特異性があるものではなくて、やはりほかの一般の人々、不特定多数の人々も同様に感じるであろうというようなぐらいの意味合いでございまして、特に今、不特定多数と申しましたけれども、人数の問題でももちろんございません。

寺田(学)委員 一般の人々というのは、我々日本人がこの場において感じることなんでしょうか。それとも、当該申請者が、その申請地において、一般の方々、多くの方々が感じる感じでしょうか。どっちですか。

西山政府参考人 これはもとより、申請者の方が迫害のおそれを感じている、それが認定できるかということですので、その申請者が置かれた立場にもし一般の方が置かれたとしたらどう感じるかという意味でございます。

寺田(学)委員 済みません、最後に一般の方がと言われましたけれども、その一般の方というのは、その当該地にいるその方以外の一般の方々という意味でいいんですか。我々がその地に行ったらそう感じるかどうかではなくて、その地域にいるその申請者以外の一般の方々が置かれた場合にはどう思うか。それは、生まれた場所とか生まれた上での育ち方によって感性は全然違いますから、そのことを問うているんです。今次長が言った一般の方々というのは、その当該地にいらっしゃる一般の方々の感覚を言っているんですか。

西山政府参考人 私の言葉遣いが余りよろしくなかったようで。一般の方々というのは、実在する一般の方という意味で申し上げているのではなくて、その当該申請者が置かれた立場に通常の人が置かれてもという意味でございますので、その申請者の例えば本国で迫害のおそれがあるという場合に、その本国の人を想像して考えるのではなくて、やはり我々も含めて、そういう意味で一般通常人ということですので、私どもはその本国にいるわけではありませんけれども、我々であっても、要は、審査する我々がその本国の立場に、申請者の立場に置かれて、その本国に行ったらやはりそういうおそれを感じるだろうといったところが迫害のおそれの認定の一つの基準といいますか、考え方ということでございます。

寺田(学)委員 今はっきりお話ししましたけれども、我々というのは、ここにいる我々ですね。我々がその場に行ったときに、おそれとして迫害を感じるかどうか。その現地にいらっしゃる現地の方々の感覚ではなくて、我々日本人がその場に一般の人々として行った場合の感覚を問うと言っているということですね。僕はまず、評価は後にしますけれども、事実だけを確定したいので、それでいいですよね。間違いがなければ手を挙げなくて結構です。いいですね、じゃ。日本人がその場に行ったときの話ということでした。

 次ですけれども、「通常人が申請者本人の立場に置かれたならば迫害の恐怖を抱くような客観的な事情が存在することが必要である。」、ここは主観じゃなくて客観になっているんですよね。この客観的な事情が存在する、そのこと自体は誰が立証するんですか。

西山政府参考人 これは、申請者の陳述内容も含まれます。客観的な事情について説明している本人の陳述、これも客観的事情の一つの資料になりますし、それから、難民調査官が把握している出身国情報、その他国際情勢、そういったもろもろの情報も客観的事情を判断する上で資料になると考えております。

寺田(学)委員 答えていないので、次答えていないなら止めてもらいますけれども、私は、何を要素でそれを判断するのかと聞いたんじゃないんです。誰が証明するのかという話をしたんです。証明するというか、誰が、その要素自体が真実で。客観的な事情が存在するって結構きついですよ、これは。

 その申請者自体は証言しか基本的にはできない場合が、先ほどの大臣の答弁もそうですけれども、着のみ着のままで逃げてきた場合があるので、証言のみしかない方がいらっしゃいますという話ではありました。当然、そういうことはあり得ると思います。

 その上で、客観的な事情が存在することが必要とまで言われていて、それを何で判断するのか。まさしくその人の陳述と、審査官の、地域事情を要素とするのは答弁で分かりました。ただ、それをもって誰が証明をする、その確度自体をどうやって証明するのか、そこはすごく難しいと思うんですよ。どういうふうに判断すればいいんですか。

西山政府参考人 この手引にありますように、客観的な事情が存在することが必要であるということでございますので、この客観的な事情について誰が立証責任を負うのかということですけれども、いわゆる訴訟で使うような立証責任、挙証責任というものとは意味合いが違いまして、もとより、その申請者から、何か事情なり、手がかりになる何かしらの情報が必要ですので、基本的には申請者から立証していただくというのが建前にはなっていますけれども、先ほど申し上げたように、申請者につきましては、例えば、具体的な陳述をいただいて、それがある程度他の情報と整合するといったことも含めて、そこで客観的事情が存在するという認定はあり得るということでございます。

寺田(学)委員 次に進めます。

 その次の段落に入るんですけれども、「そのため、申請者が実際に迫害を受けていることまでは必要ではない」。迫害を受けて逃げてきた人もいるだろうし、迫害を実際に受けていなくても、まさしくそのおそれなんだと思いますが、必要がないが、「迫害を受ける抽象的な危険があるだけでは足りず、迫害を受ける現実的な危険があることが必要である。」

 まず、この抽象的な危険というのは何を想定しているんですか。

西山政府参考人 極端な例で言えば、漠然とした不安感といったものでは足りないという意味でございます。

寺田(学)委員 あえて御自身で極端な話と言われましたけれども、極端なことは言わなくていいです。ごめんなさい、言っていただいたのはありがたいですけれども。

 極端なところというよりは、まさしくグレーのところが非常に、今次長が言われたとおり、御本人の陳述一本なわけですよ。それにもかかわらず、それに対するハードル自体が、申請者が実際に迫害を受けていなくてもいいけれども、迫害を受ける抽象的な危険では足りなくて、迫害を受ける現実的な危険があることが必要ということになっているんですよね。

 極端な話はいいですよ、もう少し違う抽象的なというものの例示はないですか。極端過ぎて、ちょっとイメージがつかないです。

西山政府参考人 これは先ほどとちょっと重なる部分がありますけれども、当事者の心理状態として不安感があるという程度では足りないというようなことでございます。

寺田(学)委員 要は、漠然とした、私は帰ったら迫害を受けるかもしれない、何が理由か分からないけれども、帰ったら迫害を受けるから怖いのだ、難民なのだ、難民申請をさせてもらっているから認めてほしいというのでは至らない。

 だとすれば、迫害を受ける現実の危険があることが必要である、あると断定している。あり得るとか、あるおそれが必要だではなくて、あることが必要だと。

 この迫害を受ける現実的な危険があるというのはどういうことを指すんでしょうか。

西山政府参考人 その現実的な危険があるというところは、やはりそこの客観的事情も含めて、現実的にそういう危険が及ぼされる可能性が具体的にあるということで、というのも、私がそのように申し上げているのは、危険に直面していることまで、直面しているというよりも、危険に直面している、このこと自体が要件ではなくて、おそれがある、おそれがあると足りる十分な恐怖を結局申請者がお持ちだというところが難民認定の要件でございますので、厳密に、今現実に危険が差し迫っていて、危険そのものが認定できなければ難民と認定できないという形の要件にはなっていないということでございます。

寺田(学)委員 迫害を受ける現実的な危険があることが必要と言いながら、実際差し迫った危険性がなければ駄目だというわけではないということですか。書かれている文言と今話されている文言、同じような文言を使いながら説明されていたので、そこら辺がちょっとはっきり理解、ここが肝なんですよ、一番の。

 迫害を受ける現実的な危険があることが必要だということは、まさしく、危険性の可能性という言葉をお使いになられましたけれども、可能性の話だと思うんですけれども、もう一度御答弁いただけますか。この迫害を受ける現実的な危険があることが必要とはどういうことですか。

西山政府参考人 先ほど委員がお読みいただきましたその前の部分から読んでいただくと、申請者が実際に迫害を受けていることは必要はないんだ、ただ、ここで言うおそれが抽象的では足りない、やはり、迫害を受けるかもしれないという気持ちで足りるんだけれども、それが現実的なおそれでないといけないということをここで書き記しているものでございます。

寺田(学)委員 与党筆頭は首をかしげていましたけれども。

 可能性という問題で、可能性はある、ないだと思いますが、可能性である以上、程度の問題だと思うんですよね。そこは、考え方でよろしいですか。

西山政府参考人 そこは程度の問題かと私も思います。

寺田(学)委員 程度の問題ですよね。どの程度、必要なんですか。

西山政府参考人 程度を示す言葉として現実的な危険といった表現を使っているのでございまして、ある意味、ちょっとトートロジーになってしまうのかもしれませんが、その程度がどの程度というのは、尺度でなかなか指し示すのは難しゅうございます。

寺田(学)委員 もう一つ聞きますけれども、その可能性が例えばある、可能性がある、迫害のおそれがある、さっき可能性と言いましたので、迫害の可能性がある場合には難民認定だと思います、現実的などうこうという、ここの前段をつけますけれども。その可能性がないとなれば、それは難民認定されないんだと思います。この言葉のとおりです。

 では、安全とは認定できない、迫害がないとは言えない、程度の問題ですからね、必ずグレーゾーンはありますよ。灰色ですよ。迫害のおそれがないとは言えない場合はどう判断するんですか。

西山政府参考人 おそれがないとなりますと、要件に該当しないということなんですけれども……(寺田(学)委員「ないとは言えない場合のことを聞いています」と呼ぶ)ないとは言えないというのは、おそれがあるということと違いますので、おそれがないとは言えないという形では要件には該当しないんだと思います。

寺田(学)委員 おそれがある、ないというよりは、その人が帰って安全か、安全ではないか。安全を脅かすものが迫害ということの前提としますけれども、その方が帰ること、帰国することが、帰国しても安全である、迫害は受けないから安全であるとなれば、それは難民認定せずに御帰国いただくということでしょう。安全ではないとなれば、難民認定。

 もちろん、今さんざんはしょって言っていますけれども、基本的に条約難民の話をしているので、条約難民の五要件に基づいた迫害がある場合は難民認定でしょうし、迫害があって、安全ではない場合には難民認定でしょうし、安全である場合には難民認定はしないという判断で帰国してもらいましょうという話なんだと思います。

 ただ、程度の問題、可能性の問題と言っていますよね。一かゼロじゃないですよ。デジタルじゃないですよ。程度の問題なんですよ、御自身言われているとおり。まさしくないとは言えない、安全だとは言えない、それは絶対ありますよ。安全だ、いや、安全ではない、ただ、そこの間のグレーは絶対にありますよ。言われているとおり、程度の問題なんですから。しかも、未来の可能性の問題なんですから。その灰色の部分をどう判断するかというのが一番大事で、その灰色の部分に対して物すごく厳しいのがうちの国だってことですよ。それに対する批判が集まっているということは認識されていると思います。

 それで、どの程度あったら、可能性と言われましたから、程度の部分を言われましたから、どの程度かということに対して、国際的な難民の、学問的な学術のところで様々言われていますよ。UNHCRは二〇%から三〇%という話をしていますし、一番低い人では一〇%のおそれでもいいという専門家もいる。私も、専門家、これは橋本さんからもいろいろ教わってはいますけれども。迫害のおそれの程度はやはりおおよそ二、三〇%、五〇%以上必要だというような文献は見当たらないのではないかと言われる方もいます。

 この辺、どの程度に我々は置くのか。それこそ、申請者の陳述一本で聞いた人間が判断するわけですから、程度の問題で考えるんでしょう。その程度の問題をどの辺に置くのかというのが物すごく大事なことだと思いますし、今回この制度において、守るべき人は守り、守る必要がない人にはお帰りいただくというのであれば、守るべき人の程度の問題というのはしっかりと答えるべきですよ。迫害のおそれがあるんだったら難民を受け入れる、それは分かっていますよ。ないんだったら受け入れない。ただ、このグレーの部分をどうするかということが一番大事ですよ。

 まず次長に説明を聞いてから、大臣に判断を聞きます。

西山政府参考人 条約上もおそれということで要件がございますけれども、先ほど来御議論させていただいていますけれども、そのおそれのパーセンテージを対比するというのは、私どもでも、実務的にもやっているものではございませんので、ちょっとなかなかお答えが、二〇パー、三〇パーというふうな御紹介もありましたけれども、それより高いのか低いのかというふうにお尋ねになられましても、なかなかお答えが難しゅうございます。

寺田(学)委員 大臣にお伺いしますけれども、ここの程度の問題をどう捉えるかだと思います。

 まさしく審査する側も、訴える側も、訴える側は基本的には供述ですから、何か証拠を持ってくるのは難しいですから、それを、審査官が、審査の方が、この人が言っていることがどれぐらいおそれがあるのかという判断を主観的に、もちろん客観的な材料を含めながらその人が判断していくわけですよね。しかも、それは未来に起こることですよ、この人は帰ったらどうなるのか。それをどのように捉えるのかというのは、まさしく様々な国によっての程度の判断だと思いますよ。

 次長が言うとおり、うちは何%かといって直ちに言うことは難しいのは分かります。ただ、その部分に関して非常に厳しくなっている、このグレーに対する対応が物すごく厳しくて、本当に悪い意味で完璧主義者になっているというところが問題点だと私は思っています。

 大臣、ここにまず問題意識を持っていただけませんか。

齋藤(健)国務大臣 実際に、申請された方と向き合って判断をされる方というのは、相当難しい判断を迫られているんだろうと思うんですね。

 もちろん抽象的なことはちょっと、私は申し上げられないんですけれども、例えば、目の前にいる人の供述がどこまで信じられるかとか、そういうところを悩みながら、多分、最終的には判断をしていくんだろうと思うんです。

 それで、もちろん、本来難民に認定する、しなくちゃいけない人をしなかったときにどうなるかということも判断する人は考えているでしょうし、そういうことをもろもろ考えながら、やはり、この人は現実的な危険があるなという心証をしっかり得た上で判断をしていくということが大事なんだと思うんです。

 それは、ある意味、一人の人が全て判断するということではなくて、プロセスも何重にも設け、そして参与員も三人で判断するという、一つは手続上で担保するということもされているんだろうなというふうに思います。

 一つ一つの判断について、抽象的な線を設けて判断するというのはなかなか現場では難しいのではないかなと思いますけれども、本当は答えになっているかどうか分かりませんが、様々悩みながら、やはりこの人は認めるべきだ、認めるべきではないということを、プロセスを通じて判断をしていくということじゃないかなと思っています。

寺田(学)委員 大臣が、多分、今まさしくおっしゃられる中で、しっかりとしたという言葉を言われたのが程度の問題だと思うんです。この人は難民じゃないような気もするけれども、難民じゃないと言い切るのも何とも難しいという中において難しさがあるというのは、まさしくそうなんです。それ自体を、そういう場合に至ったときに、どっちにも判断し得る灰色の人をどう捉えるのかが問われているという話で、その問題意識を持ってほしいということです。

 手続上の話で、様々な手続がある中で、参与員は後でやりますけれども、やっていく中で、本来認めるべき人が漏れないように手続を重ねていく、それの制度がしっかりしているかどうかというのが物すごく問われるんだと思うんです。

 参与員の話は後でやりたいんですが、米山さんが言われた部分の質疑に入りたいと思います。

 あと、ごめんなさい、手引に、最初のところに、これ自体は見直しの可能性の話をわざわざ言及しています。初めにのところだったか、何かそういうところですけれども。これは定期的に更新しましょう。それは非常に大事だと思います。それは何年にするかというのはあると思いますが、ここら辺は判断ですよ。必要になったらするではなくて、定期的に見直しをしていくんだという姿勢が、手続の正当性を言う上で一つプラスになると思っています。大臣、いかがですか。

齋藤(健)国務大臣 難民妥当性判断の手引は、難民妥当性を判断する際に考慮すべきポイントを整理したというものです。したがって、手引に記載された内容は、我が国の難民認定実務や難民を取り巻く諸外国の情勢の変化等を踏まえて、新たに整理されることも当然想定をされます。

 今後の更新の見込みや定期的にやるかどうかということについて今お答えするのは困難ですけれども、私自身は、情勢の変化も常にあるわけでありますので、更新の必要性は不断に検討していかなくちゃいけないと考えています。

寺田(学)委員 決めの問題だと思います。何年に一度やっていくということであれば、それに向けて、必要性の部分、改善点等は事務方の方で必然的に集まってくるでしょうから、そこは大臣、決めていただきたいと思います。

 三十分間、認定の話だけやりました。これは、議事録をちゃんともう一回読み直して、また再度やりますので、次長、よろしくお願いします。

 送還停止効の例外の話、米山さんがやった話です。ノン・ルフールマン原則とその例外について、これもお手元に資料をまとめて配りました。

 いわゆる難民条約三十三条一項にノン・ルフールマンがあって、難民を送り返しちゃいかぬという話をし、ただ、その後に、難民条約の中で二項として例外を設けて、この二個目の丸で囲んでいるところですけれども、締約国にいる難民であって、当該締約国の安全にとって危険であると認めるに足りる相当な理由がある者又は特に重要な犯罪について有罪判決が確定し当該締約国の社会にとって危険な存在となる人は、例外で送り返していいというふうに難民条約は決めています。

 まさしくこのノン・ルフールマン原則の例外をどのように定めるのかというのが、諸外国を含めて、いろいろ頭を悩ませて、答えを出して、その国のありようが出ていると思います。いろいろな資料をちょっと探って、アメリカであれば刑期一年以上、イギリスも一年以上、カナダは年数の制限なし、オーストラリアは実刑三年、ドイツも実刑三年とか、それ以外に包括的な条項を入れてやって、いわゆる例外をどうするのかというのを決めている。

 何を申し上げたいかというと、先ほど米山さんの議論でもいろいろありましたけれども、まさしく難民であった人、本来、国際的にも人道的にも助けなきゃいけない人を、この例外の条項、各国の判断、基準によって送り返すことになります。

 送り返す先に対して様々な制限があることはありますけれども、ただ、それ自体が必ずしも迫害を受ける国を避けることにはならないので、迫害を受ける国に戻すことだってあると思います。言ってみれば、迫害を受けることを分かった上で帰すわけですよ。その帰すのはなぜなのかといえば、難民条約の二項の中にある例外に当てはまるから。その例外とは何なのかという話をルールとして作るんだと思うんですよね。

 何を端的に申し上げたいかというと、物すごいことをするわけですよ。その人がいかに、日本の今のルールであれば実刑三年以上、相当重いものであると思いますが、そういうことを受けたとしても、迫害を受けることを分かっていながら帰すわけですから、最悪の場合、命を落とすことだってあるわけですよ。相当なことをやるわけですよ、これは。

 今回、三年以上の実刑を受けている人に対しては強制送還をすることができるようになります。するかどうかは裁量でしょうけれども、することができる以上、する可能性があるわけですから。

 私もそうですし、これはUNHCRからも強く言われていますけれども、その人自身、一度も審査を受けていないんだとしたら、まず受けさせるべきですよ。もちろん、今、審査のために二年とか三年とかかかっている部分もあるのかもしれませんが、先ほど申し上げたように、壮絶なことをするわけですから、国家として。だとすれば、まずはちゃんと一度審査を受ける。順番を飛ばすのかどうか、いろいろあると思いますが、まず真っ先に受けさせて、審査させる、それがまず第一歩じゃないですか、これほど重大なことをするのであれば。これは運用の判断ですよ。

 大臣にお伺いしたいです。これに当てはまる人に対して、まず、せめて、せめてという言い方がいいかどうか別として、一度は審査を受けさせるべきだと思いますが、いかがですか。

齋藤(健)国務大臣 まず、先ほども答弁をさせていただいたわけですが、三年以上の実刑に処せられた者は、刑罰法令違反者の中でも相当程度刑事責任が重く、強い反社会性を示す者という認識をしておりますので、そもそも在留は認めるべきではないと考えているわけです。

 ただ、その上で、このような送還停止効の例外に該当する者であっても、入管法は、第五十三条第三項において、難民条約第三十三条第一項に規定する領域に属する国等への送還は禁じているわけでありますので、そこはまず、そういう仕組みになっているということは理解をしていただきたいなというように思っています。

 その上で、いわゆる送還停止効は、難民認定申請中の者の法的地位の安定を図るために設けられたものでありまして、そのため、申請中であっても、法的地位の安定を図る必要がない者を送還停止効の例外とすることは許容され得るのではないかというふうに考えているところであります。

寺田(学)委員 送還先の話は別個でやりたかったんですけれども、時間がないので外しているので、そこの議論はしませんけれども。

 迫害を受ける可能性はあるわけでしょう。その人を帰したって迫害を受けることはあり得ないという法設計じゃないじゃないですか。西山次長でもいいですよ、事実関係ですので。

 実刑三年を受けている人で、送還停止効が外れました、改正法案が通って。その人自身が、難民申請を受けようが、難民であったかどうかまず様々あると思いますが、論理上は、その中に難民である人はいるわけですよ、実刑三年という難民該当性とは関係ないところで切るわけですから。その方が当該国に帰ったときに迫害を受けることは、法理上ありますよね。ありませんか。

西山政府参考人 委員おっしゃったように、三年以上の実刑を受けた方であっても、難民であることは当然あり得ることですので、ということは、その方の本国は迫害を受ける国ということになるので、おっしゃるとおりでございます。

寺田(学)委員 最後、言いにくいところをおっしゃるとおりにしないで、迫害を受けること自体が法理上はあり得ますよね。我々が三年以上というふうに線を切ってその人を強制送還した場合において、その人自身が実は難民に該当していて、戻された国で迫害を受けること自体は、法理上はあり得ますよね。あり得ませんか、どっちですか。

西山政府参考人 おっしゃるとおり、あり得るのはあり得ます。

寺田(学)委員 そうなんですよ、大臣、だから私は申し上げているんです。

 私が申し上げたいことは、一点目は、まずその人自身が難民であるかどうか。そんな、実刑三年以上、今回、改正法案が通った前提で話すこと自身、私は不謹慎だと思いますけれども、この法案の趣旨自体の一つに、非常に難民審査に関して時間がかかっているということがあるから、法設計を変えて、難民申請者自身を真に、今、在特の部分もありますから、難民申請の方々に絞り、かつ、それの審査自体を早めようということは分かります。実刑三年の刑を日本で受けた人なんて、ざらざらいるわけじゃないですよ。今もそうですし、これからも。

 私が申し上げたいことは、一つは、一度は審査を受けさせるべきです。その上で、それでも、このノン・ルフールマン原則の例外によって、その人が迫害を受けることを分かっている上で送還するという重大なことをするのであれば、機械的にやるんじゃなくて、大臣の判断にするべきです。言ってみれば、死刑を受けることだって、死を前提として送り返すことだってあるわけですから。

 私が申し上げているのは、一点目、実刑三年の人であっても必ず審査を受ける、そういう運用、私は法をちゃんと作るべきだと思います。それとともに、一応、難民条約上認められていることという前提に立ちますけれども、それでも難民だと分かって帰す、迫害を受けることを相当な蓋然性と思って帰すわけですから、帰すという判断は、こんな機械的にやるんじゃなくて、政治判断するべきですよ。

 この二つ、大臣、いかがですか。次長から言った上で大臣でもいいですよ。

西山政府参考人 先ほど答弁いたしました趣旨をまた御説明をさせていただきますと、三年以上の実刑を受けた者の中には難民もあり得る。ということは、難民の本国は迫害を受けるおそれのある国である、可能性はあるということで、その国に帰すと迫害を受けるおそれはあるというところはございます。

 その上で、それを禁じているのがノン・ルフールマン原則でございます。それで、そういったところには送るなというのがノン・ルフールマン原則でございまして、我が国は、同様の法律を、入管法において、迫害を受けるおそれのある国には送ってはいけないという条文を設けているということでございます。

齋藤(健)国務大臣 私の理解で申し訳ないんですけれども、もし条文上間違いがあったら訂正させますけれども、難民に認定されていない人で、送還停止効の例外に該当する者、まさに三年の方です、そういう人であっても、入管法は、第五十三条第三項において、難民条約第三十三条第一項に規定する領域に属する国等への送還を禁じているわけなので、そういう人たちは送り返されないということになっているんです。

 ただ、厳密に、先ほど米山議員とのやり取りでもありましたけれども、この三十三条第一項には括弧書きがありまして、「(法務大臣が日本国の利益又は公安を著しく害すると認める場合を除く。)」というふうに括弧書きに書いているので、次長が言ったように、そういう国に、全て、この括弧書きがある以上は、禁止はしているけれどもこの括弧書きに該当する場合もあり得るという説明をしたんだというふうに思います。

寺田(学)委員 直接的に私の問いには答えていないんですけれども、先ほどの次長の答弁に戻りますよ。

 法理上の話をしましたよね。実刑三年以上の人間が、それは審査を受けていないんですけれども、難民の該当性がある人が含まれることは含まれます。その人自身を送り返すことになれば、その人自身は、難民と認定されている以上、当該国で迫害を受ける可能性はありますと言っていますね。あるんでしょう。だから、今政府が出している法案自身は、その地域に戻ったら迫害を受ける、難民を送り返すわけですから、難民を送り返して迫害を受けるということが起こり得るわけじゃないですか。そのことを認めているわけでしょう。その得るという話をしているわけですよ。

 三年以上ですよね、その人自身はノン・ルフールマン原則の例外なので、強制送還できるようになりますよね。送り返される人の中に難民が混じっている場合はあり得るわけですよ、だって、審査していないですから。まあ、審査しても帰せるわけですから、それはどっちでもいいですけれども、審査の有無は。その人自身が難民と認定されてその国に帰されたら迫害されることは法理上ありますかと言ったら、ありますと言ったじゃないですか。それはまた違うんですか。

 いや、今、分かりますよ、送還先の例外の話を混ぜてきて、なので、分かりやすく先ほど法理上の話をしたんです。次長の先ほどの答弁は、その人自身を送り返したときにその人が迫害を受けることはあり得ると言ったんです。それは維持しますよね。

西山政府参考人 済みません、私、その法理上という言葉がよく分からないまま答弁をしてしまったのかもしれませんが、つまり、法理上迫害は受け得るというのがちょっとよく分からなかったものですから。

 私は、可能性として、今申し上げたように、繰り返しませんけれども、そういう難民の可能性のある者があって、それは本国で迫害を受けるおそれがある国ということになりますから、本国に送り返されれば迫害を受けるおそれはあるということですけれども、我が国の入管法上はそれはできないということになった上で、今、先ほど大臣がおっしゃいましたように、それにも括弧書きで、除外事由といいまして、その中でも送り返せる者がいるというのが法令上の正確な説明になろうかと思います。

寺田(学)委員 ちょっと残り五分なので、ちゃんと整理してから、もう一度機会を十分に得て質疑をしたいとは思います。

 通告している内容はたくさんありました。手続の、先ほど大臣が言われましたけれども、難しい認定に関しても手続上でその正確性を担保するのだという話をされていましたけれども、手続の透明化、今答弁書を後ろで用意していますけれども、弁護士の同席の話です。

 これは運用ですよ。今もう既に、未成年であったり何かしらのサポートが必要な人には、いわゆる原審ですけれども、弁護士の同席を認める形を試行的にやっています。いろいろな順序とか様々な順番とかあるかもしれませんが、先ほど申し上げたとおり、難しい判定を強いられながら手続によって何とか正確性を高めようというのであれば、弁護士の同席を認める、その方針はあってしかるべきだと思いますが、どうお考えでしょうか。

西山政府参考人 現在の運用をまず申し上げたいと思います。

 一次審査における難民認定申請者への事情聴取に際し、例えば、親を伴わない十六歳未満の年少者、重度の身体的障害を有する者、精神的障害を有する者、重篤な疾病を抱える者など、特に配慮が必要な者について、医師やカウンセラー、そのほか手続を支援する弁護士等の立会いを認める取組を既に実施しているところでございますが、この運用につきましては更に検討の余地があろうかと思います。

寺田(学)委員 時間が終わりましたので終わりますけれども、先ほどのノン・ルフールマンの話、一度審査を受けるべきだということ自体にしっかりとしたお答えはもらっていません。そのことを含めて、しっかりとこれからも続けて質疑したいと思います。

 ありがとうございます。

伊藤委員長 次に、阿部弘樹君。

阿部(弘)委員 日本維新の会の阿部弘樹です。

 入管法の目的や意義については最後にまた大臣からお聞きしますが、まず、送還忌避者の問題。これが事実上、送還忌避者を送還できないというのが現在の入管法の、現行法の問題点であるというふうに。

 では、忌避者の実態というのは、不法残留が五・八万人ということでよろしいですか。まず、不法残留者の話。

西山政府参考人 令和四年七月一日時点における不法残留者の数が五万八千二百四十一人となってございます。

阿部(弘)委員 現在は不法残留が五・八万人ということでございますが、一番多かったときというのは、九三年頃ですかね、平成五年、何万人ぐらいいらっしゃいますか。

西山政府参考人 不法残留数が過去最多であったのは、平成五年五月一日現在のもので、二十九万八千六百四十六人でございます。

阿部(弘)委員 かように、不法残留、在留期間が、ビザが切れて、日本にとどまる方々が非常に多かったということでございます。

 では、そういう不法残留でございますから、不法就労者の数というのはどのくらいの数を推計してありますか。

西山政府参考人 令和四年中に退去強制手続を取った外国人のうちで、不法就労事実が認められた者は六千三百五十五人でございます。

阿部(弘)委員 主に不法残留の目的というのは、就労をそのまま続けるなどの理由が多くあると思いますが、忌避者の中で非常に問題だと思われるのは重大な犯罪を犯して有罪となった人。忌避者の中で何人、令和三年、おられますか。

西山政府参考人 令和四年末時点の送還忌避者数が四千二百三十三人でございますが、そのうち前科を有する者は、全体の約三八%に当たる千六百二十六人でございます。

阿部(弘)委員 その中で、殺人などを犯した人が八人だったですね。

 実際は、忌避者の中で殺人を犯して有罪判決を受ける場合には、当然刑に服しているわけでありますか。どうですか。

西山政府参考人 今申し上げたのは前科を有するということでございますので、実際に刑に服された方もおられます。

阿部(弘)委員 日本で、かように不法残留が増えて、そして、五・八万人まで現在少なくすることができたのは、やはり入管庁の努力であるというふうに思っているわけでございますが、今般の問題点というのは、忌避者の問題、あるいは様々な法改正の問題が、仮釈放をしっかり運用どおりに戻すなどの方法を、あるわけでございますが、収容の長期化というのが特に重大な問題であるということでございます。

 収容の長期化の原因となったのは何が考えられますか。

西山政府参考人 現行法では、退去強制手続の対象となる外国人を収容して手続を進めることを前提としております。そして、様々な理由により送還を忌避することによって、その収容が長期化するということになってございます。

阿部(弘)委員 ざくっと言ってもらうとあれなんですけれども、実際は、逃亡などの人がいたり、送還忌避者の数が増えているわけでございますね。

 送還忌避者の数が増えている理由というのは、原因というのは、主な原因はどんなものがあるわけですか。

西山政府参考人 まず、原因として様々ございますけれども、送還先国が受入れを拒むなど非協力的な場合がございます。それから、難民認定手続中の送還停止効、これによって送還忌避者が増えるという状況がございます。

阿部(弘)委員 一つ一つお尋ねさせていただきます。

 相手国が受け入れない、我が国から帰ってくださいと言っても受け入れない国、これはイラン以外にもありますか。

西山政府参考人 現在のところはイランのみでございます。

阿部(弘)委員 委員会の定足数は足りていますか。

伊藤委員長 どうぞ。

阿部(弘)委員 一生懸命質問していますから、できるだけ参加していただきたいと思いますので、よろしくお願いします。

 次に、仮放免中の逃亡についてお伺いしたいと思いますが、どういう手段で逃亡を図っているんですかね、手段というか、どういうことで逃亡したんですかね。

西山政府参考人 逃亡をした理由につきましては、個々人それぞれ、様々でございまして、私どもとして特段の傾向等を把握できているわけではございません。

阿部(弘)委員 例えば、仮放免制度自体が本来はその趣旨じゃないのに、手段がないから仮放免制度を使っているからというふうにポンチ絵には書いてあるんですけれども、そのようなことですか。

西山政府参考人 失礼しました。

 私、逃亡の動機の点で御説明いたしましたが、確かに、現行の仮放免制度というのは、そもそもが健康上の理由等によって一時的に解除するのが本来の趣旨でございましたので、制度上、逃亡を防止する手だてが講じられていないというのが一つの原因でございます。

阿部(弘)委員 では、新しく、仮放免制度に代わって、監理措置制度が二つにわたってあるわけなんですね、出国命令が出る前と出国命令が出た後の。

 僕は条文を読んでいてちょっと不思議だったんですが、四十四条の八では退去強制令書が発付された者は監理措置は行えないというふうに書いてあって、その次の号で、五十二条の二では新たに監理措置について新法ではうたってあるんです。ちょっと分かりにくいですよね、条文をずっと読み続けていて。

西山政府参考人 収容には流れに応じて段階がございまして、まず、摘発された場合に収容令書というもので収容されるという段階がございます。そして、その後に、退去強制手続ということで、退去強制令書、これが発付された後の収容というのがございます。それで、条文上もその二つの段階に分けて監理措置についての規定が置かれております。

阿部(弘)委員 私なんか法律が所管外なものですから、四十四条の八で停止される監理措置と五十二条の二で停止される監理措置というのが同じものかと思っておりました。

 じゃ、この監理措置についてお伺いします。監理措置とはどんな制度ですか。

西山政府参考人 先ほども申し上げたとおり、現行の仮放免というものが逃亡防止のための仕組みに乏しいものでございます。ただ、実務上は、収容を解く手段がこれしかございませんので、個別の事情に応じて仮放免を柔軟に活用して、収容の長期化を回避してきたものでございます。

 これに対しまして、本法案の監理措置、これを設けましたのは、監理人による監理の下で相当期間にわたり社会内での生活を認めるものでございまして、逃亡等を防止するため、監理人による指導監督、被監理者からの届出義務の履行、主任審査官が必要と認めた場合の監理人による報告義務の履行など、監理人の監理の下、被監理者について適切な監理を行う制度でございます。

阿部(弘)委員 では、この監理人というのが置かれなければ収容を続けるわけでしょうか。

西山政府参考人 まず、監理措置を取るためには監理人が存在することが前提になります。また、監理措置を取った後に監理人がいなくなる、亡くなられた場合であるとかで監理人がいなくなった場合には収容に戻すというようなことになります。

阿部(弘)委員 ですから、監理人がそもそも見つからなかった場合や、監理人が国外退去になった場合とかということもあり得るわけですか。

西山政府参考人 監理人が外国人であることは否定はされておりませんけれども、監理人が国外退去になるという場合はちょっと想定はしておりませんが、例えばですけれども、お亡くなりになる場合とか、あるいは不適格な事情が生じまして監理人を辞めていただく、取消しをさせていただくといった場合で、その後の後任の監理人が見つからない場合といったことが考えられます。

阿部(弘)委員 それじゃ、監理措置が置かれることで、果たして送還忌避問題が回避されるというふうにお考えでしょうか。

西山政府参考人 この送還忌避の問題は、送還をされるべき方がそれを拒むという状況に基づく問題といいますか、そういったものでございますけれども、監理措置というのは、収容の長期化を回避するための制度として本法案において設けたものでございます。

阿部(弘)委員 では、この送還忌避問題、送還忌避を、妨げているものというのは実際にはどんなふうに考えてありますか。

西山政府参考人 送還忌避の解消を妨げている原因として、現行法上一つ大きなものとしてあるのが、難民認定申請を行うと送還停止効が働くという問題でございます。あとは、先ほど委員が御指摘になりました、送還を拒む者を受け入れない国、イランがございます。それからもう一つあるのが、飛行機で暴れるなどして乗機拒否を受けてしまうということで、物理的に搭乗を拒否されるという場合でございます。

阿部(弘)委員 では、送還停止効の例外規定についてお伺いします。

 現行では、何度でも、難民申請が行われれば、それを継続中は送還がされないということでございます。この停止効についての御説明をお願いします。

西山政府参考人 現行法では、理由や回数を問わず、難民認定申請中は送還が停止される、これを送還停止効と呼んでおります。そのために、重大犯罪の前科がある者やテロリストであっても、また、送還回避目的での複数回申請者であっても送還することができず、送還忌避者による濫用が疑われる事例も存在するところでございます。

 送還停止効は、難民認定申請中の者の送還を停止することにより、その法的地位の安定を図るために設けられたものでございます。

阿部(弘)委員 もう少し停止効のことをお伺いします。三年以上の実刑、前科者、先ほどの、前の議員も同様の質問をしてありましたが、実態というのはどういう実態があるわけですか。

西山政府参考人 お尋ねの趣旨が違っていたら申し訳ございませんが、例えば、送還忌避をしている中には、そういった重大犯罪を犯しながら、さらに難民認定申請を行って強制送還を免れている者もいるという状況でございます。

阿部(弘)委員 在留外国人の数、昭和五十年で七十五万人、現在は三百七万人、非常に激増してきておるわけでございます。そして一方で、このように不法残留者の数も一時期は非常に増えていた。

 これから日本というものは、こういう、外国から、技能実習生のように、外国人の労働力に頼らなきゃいけないところも発生するわけでございます、あるわけでございます。

 現在、難民申請などが行われた場合に残留特別許可というものを行うように、その制度化を今法案で作っていったということでございますが、この特別残留許可というものは以前からあったんですかね。これはないですよね。ちょっと説明をお願いします。

西山政府参考人 法務大臣の裁量で特別に在留を認める在留特別許可というものは、現行法上でもございます。

阿部(弘)委員 現在、令和三年で、ベトナムからの、ベトナム国籍の方の残留特別許可というのが七千四百五十件と突出しております。非常にこの数年で突出しているんですが、その理由というのは何ですかね。

西山政府参考人 令和二年、三年に増えているという状況がございますけれども、これは、コロナ禍の影響により飛行機が飛ばなくて帰国困難になったということで、在留特別許可を多く出しているという状況がございます。

阿部(弘)委員 じゃ、ベトナム国籍の方にだけ出していたわけですか。ベトナム人、ベトナム国籍の方が突出して増えているようでありますけれども。

西山政府参考人 今申し上げた帰国困難による在留特別許可はベトナムに限らず出していたところでございますけれども、特にベトナムの方は技能実習の方が多くて、しかも、その技能実習が終わられて本国に本来戻るところで、コロナ禍の影響で戻るに戻れないということで、在留特別許可がベトナムの方が多い、そういう状況かと思います。

阿部(弘)委員 技能実習生以外にもワークホリデーというのが国によって結ばれていると思いますが、ベトナムもそうなんですか。済みません、通告がなかったから、分かる範囲で結構です。

西山政府参考人 ないそうでございます。済みません。

阿部(弘)委員 では、補完的保護対象者認定制度についてお伺いします。この制度創設の意義などは、どういうことでございますか。

西山政府参考人 かねてより、難民条約上の難民に該当しない者でも保護の対象とすべき者を明確にし、より安定した在留上の地位を与えるべきとの意見が寄せられてきたところでございます。平成二十六年の難民認定制度に関する専門部会からも、我が国として国際的に保護の必要がある者に待避機会としての在留を許可するための新たな枠組みを設け、保護対象を明確化すべきとの提言がなされたということでございます。

 従前から、入管庁におきましては、難民条約上の難民に該当しない方であっても、本国情勢等の個別の事情を踏まえ、人道上の配慮が必要と認められる場合には、本邦への在留を認めてきたところでございます。

 近時におきましては、例えば、今般のロシアによるウクライナ侵略によりウクライナから我が国に避難してきた方々には、本国情勢等を踏まえ、個々に置かれた状況等にも配慮しながら、その希望等に応じ、特定活動一年での在留を認めているところでございます。

 そこで、難民条約上の難民に該当しないが、紛争からの避難民等の、人道上、真に庇護すべき方々をより確実かつ早期に保護すべく、補完的保護対象者の認定制度を設けることとしたものでございます。

 具体的には、難民条約上の五つの理由以外の理由で迫害を受けるおそれがある者が補完的保護対象者に当たることとしております。

阿部(弘)委員 私は前の国会から法務委員会に所属しておりましたが、法務委員会のメンバーがほとんどロシア入国禁止対象者に指定されておりました。

 じゃ、非友好国の方も、このような補完的保護対象者となり得るんでしょうか。例えば、ミサイルを何度も飛ばすような国、あるいは紛争、侵略国であるロシアなどはいかがですか。

西山政府参考人 補完的保護の要件、定義につきましては、先ほど申し上げたとおり、五つの理由以外の理由で迫害を受けるおそれがある者ということでございまして、いかなる国籍においても、その要件に該当すれば認定するということになります。

阿部(弘)委員 統計には明記はなかったんですが、韓国、朝鮮の方々の難民申請というのは、現在、何件ぐらいあるんでしょうか。

西山政府参考人 申し訳ございません。今、手元に数字を持ち合わせません。

阿部(弘)委員 資料が多分、少し時間をかければあると思いますよ。ただ、ロケットを発射する国というのでは統計はないと思いますけれども。半島出身者の方もあるんじゃないかなと思いますけれども。まあ、いいです。

 要は、非友好国の方が難民申請してきた場合にもそのような手続を取るということですと、区別なく行われるということですから、それはそれで結構でございます。

 次に、あちこち飛んで申し訳ないですね、送還忌避問題で、罰則付退去命令が行われたり、あるいは自発的な帰国を促す措置というのは、どういうことを考えてありますか。

西山政府参考人 本法案でも設けます退去の命令につきましてでございますが、まず、対象者は、退去強制令書の発付を受けた者のうち、退去を拒む自国民の受取を拒む国、すなわちイランを送還先とする者、それと、現に送還中の航空機内で大声を上げたり暴れるなどの送還妨害行為に及んだ結果搭乗を拒否されたことがあり、再び同様の行為に及ぶおそれがある者といった、送還を実現する現実的手段がない者に限定をしております。

 これら退去の命令の対象となる者につきましては、あらかじめ本人から意見を聴取するなどし、相当と認めるときは、相当の期間を定めて、本人に本邦からの退去義務を課し、罰則により間接的に自ら本邦から退去することを促す手段として規定したものでございます。

阿部(弘)委員 罰則をつけたら、この退去に従っていきますかね、どうでしょうか。

西山政府参考人 何かしらのペナルティーをかけませんと、ただ命令をかけただけでは言うことは聞かないのではないかということで、罰則によって間接的に自らの出国を促すということでございます。

阿部(弘)委員 では、この罰則というのは、実際はどのような罰則になりますか。

西山政府参考人 一年以下と、あるいは併せて、二十万の罰金というふうな法定刑になっております。

阿部(弘)委員 お金がない場合には、刑に服すことができますか。

西山政府参考人 罰金刑が確定しまして、罰金を払えない、納付できない場合には、手続的には労役場留置というものがございます。

阿部(弘)委員 その間は、その期間はまた日本にいて、そして飛行機に乗って暴れたらまた日本に戻ってきて、そういうことは繰り返せますか。

西山政府参考人 仮定の御質問ではございますけれども、一般的なといいますか、実務的な感覚からいたしますと、罰金刑で最初収まっていたものが、それも納付しないで再犯を繰り返していきますと、いずれ体刑の、実刑というところまでに行くのではないかと考えております。

阿部(弘)委員 実刑して、出てくるわけでしょう。そしてまた、飛行機に乗ろうとしたら、飛行機で暴れる。

 特定の国籍の方が、そういう暴れることを、マニュアルとして取り入れている国があったりするのではないですか。

西山政府参考人 これも仮定のことではございますけれども、そういった方につきましては到底その収容を解くことはできませんので、矯正施設と入管の収容施設を繰り返し行ったり来たりするという形になるのではないかと思いまして、そのようなことを進んで、望んで、そこまでして出国を拒むことは、想定を基本的にはしておりません。

阿部(弘)委員 強制送還された者の入国を拒む国がイランということですが、そのほかの国はありますか。

西山政府参考人 現在のところ、イラン一国でございます。

阿部(弘)委員 かつてはトルコも、そのようなことが行われていたんじゃないですか。

西山政府参考人 かつてそのような扱いをしていた国につきまして、ここでお答えをすることは差し控えさせていただきたいと存じます。

阿部(弘)委員 他国の事情ですから、いろいろな事情があるわけなんでしょう。

 ですが、入国を拒み続ける国があるとすれば、そこから入国される方はずっとずっと日本に滞在することができる、理論上できてくるわけでございますが。

 そういう国に対する、入国の方での制限というのは考えられますか。

西山政府参考人 先ほど申し上げた、拒む者の入国を拒否するということによって、こちらの入国を制裁的に止めるというような施策は今取っておりません。

阿部(弘)委員 例えばですよ、イランの方を強制送還する。でも、自らの意思で、帰る意思がないということを本国側に、イラン側にそれを伝えたら、受取を拒否するということでございますから、その方を送還する手段がなくなってしまうじゃないですか。

西山政府参考人 イランが受け取りませんので、こちらとしては、その方を送還することができない状態になるということでございます。

阿部(弘)委員 では、これからイランの方々をどんどんどんどん引き受けていったら、イランの方がどんどんどんどん日本に滞在し続けるということになりませんか。

西山政府参考人 もとより、在留資格を取っていただいて適法に日本にいていただくのであれば、それは特に問題はないというふうに考えておりますが、私どもが問題視しているのは、在留資格がなくて、我が国から出国しなければならない、退去しなければならない方が、イランが受取を拒むために送還できないという状況なのでございます。

阿部(弘)委員 最初の問題に戻ってきますよ。

 在留外国人の方が令和四年で三百七万人、非常に増えてきております。これからも、技能実習生など、外国人の数はどんどん増えてくることが予想されてくるわけです。

 そういう中で、入国も日本が魅力的な国であり続けるなら増え続けるわけでございますが、一方で、母国に帰れない、日本にい続けたいと言い張れば母国が受け取らない。これはやはり、外務省は今日来ていましたか、外交努力もやはりしなきゃいけないんじゃないですかね。あるいは、外務省を通じて努力もしていかなきゃいけないんじゃないですかね。

今福政府参考人 お答え申し上げます。

 御指摘いただきましたような事項につきましても、関係省庁、特に入管ともよく相談しつつ、検討していきたいと思います。

阿部(弘)委員 私の問題意識は、これから在留外国人、許可を取られた在留外国人の数もどんどん増えてくる。一方で、許可を取らない方もどんどんどんどん、入国されて不法滞在者になった方も増えてくる可能性もありますので、しっかりその点を、行っていただきたいと思います。

 外務省が来ておりますので、ちょっと難民条約、僕は不勉強であれですから、教えてください。

今福政府参考人 お答え申し上げます。

 難民条約につきまして、難民の定義についてお答え申し上げますと、第一条において、難民を、「人種、宗教、国籍若しくは特定の社会的集団の構成員であること又は政治的意見を理由に迫害を受けるおそれがあるという十分に理由のある恐怖を有するために、国籍国の外にいる者であつて、その国籍国の保護を受けることができないもの又はそのような恐怖を有するためにその国籍国の保護を受けることを望まないもの」として定義しております。

 この条約は、一九五四年四月二十二日に発効しておりまして、難民のまさに保護、それを定めた条約でございます。日本につきましては一九八一年十月三日に発効しております。

阿部(弘)委員 インドシナ難民がたくさん日本に来られたときには、まだ難民条約に入っていなかったということでございます。現在は難民条約に入っている。

 じゃ、これから半島有事や台湾有事などが起きた場合には大量の難民が押し寄せてくる、あるいは避難民が来られる、そういうことについて準備は、この制度で対応できますか。

西山政府参考人 いわゆる台湾有事も含めて、そういった有事で大量に避難する方が日本に来られるといった場合の想定につきましては、想定として政府内でも検討をいたしておりますけれども、その子細につきましては、事柄の性質上、お答えは差し控えさせていただきたいと思います。

 その上で、入管庁としましても、スクリーニングであるとか、そういった対応については検討をしているところでございます。

阿部(弘)委員 大量に来られる際には、必ずしも友好国からの入国者ではなくて、非友好国の方も自動的に入国されることもありますので、是非とも入管庁、法務省挙げて頑張っていただきたいと思っております。

 もう時間が迫っておりますので、大臣、この法改正についての意義、意気込みについてお聞かせ願えますでしょうか。

齋藤(健)国務大臣 入管行政におきまして、退去強制令書の発付を受けた外国人による送還忌避や、これに伴う長期収容の問題が生じており、早期に解決すべき喫緊の課題であります。他方で、人道上の危機に直面し真に庇護すべき方々を確実に保護する制度の整備もまた重要な課題の一つです。

 入管制度全体を適正に機能させ、保護すべき者を確実に保護しつつ、ルールに違反した者には厳正に対処できる制度とするためには、こうした現行入管法下の課題を一体的に解決する法整備を行うことが必要不可欠でございます。

 そこで、今回の改正法案におきましては、保護すべき者を確実に保護した上で、在留が認められない者については迅速に送還可能とする。長期収容を解消し、収容する場合であっても適正な処遇を実施する。こういう考え方の下に、様々な方策を組み合わせ、パッケージで課題を一体的に解決し、外国人の人権を尊重しつつ、適正な出入国在留管理を実現するバランスの取れた制度にしようというものでございます。

 本法案の内容及び必要性につきまして広く国民の皆様に御理解いただけるよう、引き続き、丁寧に説明を尽くし、法案成立に向けて取り組んでまいりたいと考えております。

阿部(弘)委員 ありがとうございます。終わります。

伊藤委員長 次に、漆間譲司君。

漆間委員 まず、入管庁が収容などについて広く裁量を持つということに関して、広く裁量を持つ以上、判断の透明性を高め、適切に裁量を行使していることを国民に伝えていく努力が必要ではないかと思いますが、そのような透明性を高める仕組みは今改正法案にあるのか、法務当局にお伺いいたします。

西山政府参考人 本法案においては、在留特別許可や仮放免の判断について理由の告知を必要とはしない現行法を改め、在留特別許可、監理措置及び仮放免について不許可とする場合には、その理由を告知する制度を設けるなど、判断の透明性を高めるための様々な仕組みを整備しております。

 この不許可理由の告知を義務づけることにより、合理的な理由のない不許可を抑止することとなる上、判断に不服がある場合には行政訴訟を提起して的確に争うことが容易となるのであって、入管当局における判断の公平、適正さが一層確保される仕組みとなっております。

 このように、本法案は、御指摘のような広範な裁量を認めようとするものではなく、透明性を高める仕組みになっていると考えております。

漆間委員 ちょっとまた、仮放免の判断については後ほど詳細にお聞きさせていただきたいと思います。

 ちょっと話題が飛んで済みませんが、次に、国際機関からの勧告についてお聞きしたいと思います。

 昨年受けました自由規約委員会の勧告のうち、ノン・ルフールマン原則を尊重すべきとの勧告があったと思います。ノン・ルフールマン原則は、これまでもたくさん御説明あったところですが、帰国した場合に生命や自由が脅かされる人々が送還されることを禁止する国際法上の重要な原則であると理解しております。

 日本の入管制度において、難民条約のノン・ルフールマン原則はどのように担保されているのか、お伺いいたします。

西山政府参考人 入管法第五十三条第三項は、難民条約等が定めるノン・ルフールマン原則を担保しております。その上で、我が国は、送還の運用におきましても、我が国が締結する条約が定めるノン・ルフールマン原則を遵守しており、これに反する送還をすることはございません。

漆間委員 では、改めて、日本はノン・ルフールマン原則を尊重せよという勧告に対しては十分に応えているという考えか、お伺いいたします。

西山政府参考人 そのように認識しております。

漆間委員 今法案の送還停止効の例外の規定がノン・ルフールマン原則に違反するという指摘もあるが、分かる範囲で構わないので、諸外国は自由権規約委員会からどのような勧告を受けているのか、お伺いいたします。

西山政府参考人 詳細を把握できているわけではございませんが、アメリカ、イギリス、フランス、ドイツ、オーストラリアは、自由権規約委員会からノン・ルフールマン原則を尊重するようにとの趣旨の勧告を受けていると承知しています。

 例えば、フランスは、一定の出身国の者については、難民認定申請中であっても送還をすることができるとする送還停止効の例外の規定を設けていますところ、この点について、ノン・ルフールマンのリスクを高めると指摘をされていると承知しています。

漆間委員 御答弁のとおり、主要国でも、ノン・ルフールマン原則、送還停止効の例外規定等について、自由権規約委員会から勧告を受けているということが分かりましたが、また一方で、日本は自由権規約委員会から、一定の評価をされた点もあるとお聞きしておりますが、どのような点について一定の評価があったのか、お伺いいたします。

西山政府参考人 収容施設での処遇改善計画の進展に関する情報があったこと、長期収容を回避するための措置を検討していることなど、我が国の入管行政における対応について、自由権規約委員会から一定の評価を受けているものと承知しています。

漆間委員 勧告を受けたり、評価される部分があったりというところであるというのが分かりました。

 日本は、またさらに、自由権規約委員会から、適切な医療支援へのアクセスを含め、収容施設における処遇の改善を進めることの勧告も受けましたけれども、この勧告にはどう対応しているのか、お伺いいたします。

西山政府参考人 入管庁では、名古屋事案の調査報告書で示された改善策を中心に、組織、業務改革に取り組み、常勤医師の確保等の医療体制の強化を進めてまいりました。

 また、新規入所者全員に対する健康診断の実施など、収容施設において、被収容者の体調等を確実に把握して、適切な対応を行うための取組も進めてまいりました。

 今回の改正法案では、被収容者に対してより適正な処遇を行うことができるよう、被収容者に対し、社会一般の医療水準等に照らして適切な医療上の措置等を講じることを規定することとしております。

 これらの取組により、適切な医療支援へのアクセスを含め、収容施設における被収容者の処遇の改善を適切に進めているところでございます。

漆間委員 勧告を受けて改善も進めている部分があるということで理解いたしました。

 自由権規約委員会の勧告には、日本が軽視せずにしっかりと応えていくんだということを、もっと広報だったり、国際社会にしっかり発信していくべきだと思います。

 これは、沢田良委員も昨日言っておりましたが、入管庁として積極的な制度の広報がまだまだ足りていないのかと思いますので、是非そこはよろしくお願いいたします。

 次に、昨日もちょっと申し上げさせていただきましたが、仮放免後に逃亡した人の人数が、令和四年度末の速報値で約千四百人となり、令和三年度末の六百人から倍以上に増加した理由についてお伺いしたいと思います。

 新型コロナウイルス感染症の感染拡大に伴い、収容施設の密を避けるため仮放免制度を積極活用したことも影響したのかと思いますが、お伺いいたします。

西山政府参考人 仮放免中の逃亡の原因については個別の事案ごとに様々であると考えられ、逃亡者の増加原因について一概にお答えすることは困難であると考えております。

 現行法上、被収容者の収容を解く手段は仮放免しかないため、実務上、個別の事情に応じて仮放免を柔軟に活用し、収容の長期化等を回避してきたものでございます。しかし、現行の仮放免制度は、本来は一時的に収容を解除する制度であり、逃亡等を防止する手段が十分でなく、相当数の逃亡事案等が発生しているところでございます。

 こうした現行仮放免制度自体の問題に加えまして、委員も御指摘ございましたが、令和二年以降、新型コロナウイルス感染症対策の一環として、仮放免制度を積極的に活用して被仮放免者数が増加したという事情が、仮放免中に逃亡した者の増加の一因と考えております。

漆間委員 そういう御答弁であるとするのであれば、今後、新型コロナウイルスやそれに匹敵する感染症が発生した場合においては、収容施設の密の回避と逃亡防止は両立していくべきだと考えます。

 今後、監理措置や仮放免制度を活用しつつ、どのような対策を取っていくのか、お伺いいたします。

西山政府参考人 本法案において新設いたします監理措置は、監理人の監理の下で、逃亡等を防止しながら、収容しないで退去強制手続を進める措置であり、逃亡等を防止するための措置として、監理人による指導監督等々の規定を設け、相当期間にわたり社会内での生活を認めるものでございます。そのため、御指摘のような場合におきまして、収容施設の密の回避と逃亡等の防止を両立する観点からは、基本的に監理措置を活用することになるのではないかと考えております。

 もっとも、適正な監理人が直ちに選定できない場合において収容施設内における感染症が発生した場合には、健康上の理由等により仮放免を許可して、一時的に収容を解くことが相当な場合も生じ得るものと考えております。

漆間委員 次に、昨日もお聞きしたんですけれども、令和三年度に提出された前回の改正入管法案、今回ではなくて、前回の改正入管法案が成立していればという話をちょっとお聞きしたいと思います。

 これは、前回、日本維新の会は最後まで成立させようとしていたという経緯から、ちょっともう一回、しつこくお伺いさせていただきたいんですけれども、前回の改正入管法案が成立していれば、昨日のお話ですと、ウクライナ難民やコロナ禍で爆増した仮放免中の逃亡者の事案などで、様々なところが実は対応できていたという御答弁をいただいたと思っております。

 それ以外にも、もしありましたら教えていただきたいんですが、令和三年に提出された前回の改正入管法案が成立していれば対応できていたような問題があるのか、お伺いしたいと思います。

 例えば、現入管法の課題という入管庁が作っている資料なんですけれども、ここには様々な事例が載っておるんですけれども、この事例の、例えば犯罪が起こって逃亡しただとか、そういった事例があるんですけれども、その事例の時期が書いていないんですね。

 もし時期が書いていれば、いつこの人が例えば強姦致傷罪を行ったとか、いつ逃亡しただとか、そういった時期が書いていれば、もし令和三年に前法案が成立していれば、本当なら被害に遭わなくて済んだ人が遭っているだとか、防げた犯罪事例が実はあっただとか、そういったことが分かると思うんですけれども、そういった事例は法務省の方で、入管庁の方で確認しているんでしょうか。もしありましたら、是非、その具体例も教えていただきたいと思うんですが、いかがでしょうか。

西山政府参考人 今委員が御指摘いただきました問題意識に基づいて事例を洗って時期を確認したということは、今現在ではございませんので、ちょっと御紹介は困難ではございます。

 その上で、仮定の話ではございますけれども、よく言われていますウクライナ避難民の問題につきましては、補完的保護対象者の制度によって保護できたのではないか、あるいは、先ほど申し上げたコロナ感染症による仮放免者の増加、それに伴った逃亡者の増加、これにつきましても、監理措置制度によった、逃亡を防止しつつ収容によらない対応ができたのではないかといったことなどが考えられます。

漆間委員 具体の事例はまだ、まだといいますか、お調べされていないということであるのであれば、ちょっと、これから私自身も、もしあるのであれば是非調べさせていただいて、本来、令和三年に成立していれば、こういった被害者が防げただとか、こういった犯罪が防げたということを、是非これは具体的に挙げていくべきかなと思っております。

 続きましての質問に移らせていただきます。

 仮放免制度、またちょっと詳細についてお伺いしたいんですけれども、今回の法改正では、監理措置制度が新設される一方、仮放免制度についても見直しが行われ、健康上、人道上その他これらに準ずる理由により一時的に収容を解除する制度とすることとされました。

 今般、仮放免制度を見直すこととした趣旨についてお伺いいたします。

西山政府参考人 現行法下の仮放免というのは、本来、容疑者等を収容して退去強制手続を進めることを原則とする現行入管法下において、健康上の理由等による一時的な収容の解除を想定した制度でございます。先ほど御紹介したように、ただ、収容を解く手段が仮放免しかなかった、ないという状況でございましたので、この制度を弾力的に運用して収容の長期化を回避してきたというところでございまして、その影響もございまして相当数の逃亡事案も発生したという関係にございます。

 そこで、本法案において、収容代替措置として監理措置制度を創設して、監理人による監理の下で、逃亡等を防止しつつ、相当期間にわたり社会内での生活を認めながら退去強制手続を進めるということを可能にしたところでございまして、その一方で、仮放免につきましては、健康上、人道上その他これらに準ずる理由により収容を一時的に解除する制度というふうに整理をしたところでございます。

漆間委員 現在の仮放免制度では、理由の教示については法律上の規定はありませんが、運用上はどうなっているのか、西山さんにお伺いいたします。

西山政府参考人 御指摘のとおり、現行法において、仮放免を不許可にした場合に、その理由を告知する仕組みにはなってございません。かつ、運用上も理由の告知はいたしておりません。

漆間委員 もう時間が迫ってまいりましたので、最後の質問だけ、もう一点、一番最後の質問をさせていただきたいと思います。

 監理措置制度についてなんですけれども、一番最後ですね、監理措置制度においても、監理措置の請求が認められなかった場合に理由の通知は行われるのか、お伺いいたします。

西山政府参考人 本法案では、主任審査官は、監理措置請求があった場合において監理措置決定をしないときは、当該請求をした者に対し、理由を付した書面をもってその旨を通知することとされております。

漆間委員 仮放免制度でも書面なんですけれども、その書面の通知に関してはどの程度詳細な理由が通知されるのか、お伺いいたします。

西山政府参考人 仮放免の不許可に際して通知すべき理由の程度は、個別の請求内容によるため一概にお答えすることは困難ではございますが、一般論で申し上げますと、入管の判断の透明性を高めるという理由告知の趣旨に鑑みまして、当局の不許可処分の合理性を判断できる程度には具体的である必要があると考えております。

漆間委員 これは是非具体的にやるべきだと思いますので、よろしくお願いいたします。これをもって不服申立てだとかもできるわけですから、是非よろしくお願いいたします。

 以上で、私の質問を終わらせていただきます。ありがとうございました。

伊藤委員長 次に、沢田良君。

沢田委員 日本維新の会、埼玉の沢田良です。

 本日も、昨日に引き続きまして、入管法に関する質疑をさせていただきます。

 齋藤大臣を始め法務省、入管庁の皆様におかれましては、連日の審議対応に敬意を表しますとともに、入管行政がよりよいものとなるよう、最後まで全力を尽くしていただきたいとお願いを申し上げます。

 伊藤委員長を始め理事、委員の皆様、委員部の皆様にも是非本日もよろしくお願い申し上げまして、質疑に入らせていただきます。

 昨日は、難民認定の運用について幾つか質問をさせていただきました。申請者御本人の主張を丁寧に、また心情に配慮した形で確認するとともに、本国の情報を適時適切に把握できるよう努めておられるということが説明としてたくさんいただきましたので、私自身、少し納得いく部分がありました。大臣からも不断に見直していくという強い御決意をいただきましたので、引き続き、よりよい制度に変えていっていただきたいというのはもちろんのこと、私は法務委員の一人として、しっかりと今後の動きを注視し、指摘すべきところは逐次指摘をしていきたいと思っております。

 さて、本日は少し視点を変えさせていただきます。入管法と国際法との関係についてお尋ねをしたいと思います。

 私も、この入管法審議に当たり、賛否の分かれる注目の法案ということもありましたので、入管法についていろいろなお考えを持つ方々とお会いをさせていただき、お話を伺ってまいりました。その中で、この法案に御不安を持つ方からよく耳にしましたのが入管法は国際法違反であるという御意見でした。こうした主張が正しいようであれば、国際法に違反するような法律を通すことには私としても正直抵抗がありますし、きちんとこの委員会の中で議論し、明らかにしていかなければならない点だと感じましたので、まずこの点について確認をさせていただきます。

 入管法は国際法違反であると主張される方のお話をよくよく聞いていきますと、ここで言う国際法とは国際人権規約のいわゆるB規約、自由権規約の九条に違反しているのではないかということでした。

 国際人権規約とは、世界人権宣言の内容を基礎として、これを条約化したものであり、人権に関する諸条約の中でも最も基本的かつ包括的なものとなります。A規約と呼ばれる社会権規約では経済的、社会的及び文化的権利について定めており、B規約と呼ばれる自由権規約では市民的及び政治的権利についての定めがございます。

 今話題にさせていただきました自由権規約の九条といいますのは、身体の自由と安全についての規定で、第一項では、全ての者は、身体の自由及び安全についての権利を有する、何人も、恣意的に逮捕され又は勾留されない、何人も、法律で定める理由及び手続によらない限り、その自由を奪われないとされています。

 また、第四項においては、逮捕又は勾留によって自由を奪われた者は、裁判所がその勾留が合法的であるかどうかを遅滞なく決定すること及びその勾留が合法的でない場合にはその釈放を命ずることができるように、裁判所において手続を取る権利を有する、こういった規定がございます。

 この部分について、事前の司法審査が必要との指摘もあると伺っております。

 こちらは国際条約の関係になりますので、本日は外務省にもお越しいただいております。

 まず、自由権規約について基本的なことをお伺いしたいと思いますが、いわゆるB規約においては、どのような権利が規定され、どのような行為を禁じているのでしょうか。また、九条の一項、四項は何を定めていて、事前の司法審査についても規定されているのかどうか、御説明お願いいたします。

今福政府参考人 お答え申し上げます。

 自由権規約第九条一及び四の規定につきましては、今委員から御紹介あったとおりでございまして、身体の自由及び安全についての権利並びに逮捕又は抑留の手続について規定されております。

 特にその中の第九条の四、ここは先ほど御紹介ありましたとおり、逮捕又は抑留によって自由を奪われた者について、裁判所がその抑留が合法的であるかどうかを遅滞なく決定すること及びその抑留が合法的でない場合にはその釈放を命ずることができるようにと規定されていることから、ここで申します裁判所の決定というのは、抑留後の審査を指すものと考えられますので、委員御指摘の事前の審査には該当しないものと考えております。

沢田委員 ありがとうございます。今外務省より御説明いただきました。

 これは、B規約が事前の司法審査を義務づけているものではないとすると、我が国の入管法による収容はB規約九条に違反するということなんでしょうか。当局のお考えを教えてください。

西山政府参考人 我が国におきましては、収容が違法であると考える被収容者は、行政事件訴訟法等により収容の適法性について裁判所の判断を求めることが可能になっております。したがいまして、入管法第五章に定める収容手続は、自由権規約第九条に違反するものではないと考えております。

 なお、このような考え方は、我が国の裁判例においても是認されているところでございます。

沢田委員 どうもありがとうございます。入管法による規約では違反するものではないという御答弁をいただきました。

 特に、第一項や第四項について私も条文を読ませていただいたんですけれども、法律にのっとった手続であり、司法の判断を求めることも妨げられないのであれば、国際法違反ではないという法務省の主張は、私、客観的に見て理屈は通っているというふうに感じます。

 それでは、次に、自由権規約委員会の総括所見についてお伺いさせていただきます。

 本会議においては、この国連自由権規約委員会による勧告についての指摘に対し、齋藤大臣から、政府報告審査は対話のプロセスである、こういった旨の御答弁をなされました。これは、勧告を受けたことが直ちに国際法違反ということにはならないという意味だと私は理解しておりますが、念のため、外務省に今日確認をさせていただきたいと思います。

 この自由権規約委員会の勧告は、自由権規約の公式の条約解釈ということになるんでしょうか。また、法的拘束力があり、国が勧告に従う義務があるということなんでしょうか。教えてください。

今福政府参考人 お答え申し上げます。

 自由権規約に基づき設置された委員会は、同規約の第四十条に基づき、締約国の提出する報告を検討し、一般的な性格を有する意見を締約国に送付しなければならないと規定されております。

 委員会の勧告は法的拘束力を有するものではございませんが、関係省庁において内容を十分に検討していきたいと考えております。

沢田委員 ありがとうございます。この勧告は、公式な条約解釈ということではなく、また、法的拘束力がないものであるとのことです。

 もちろん、自由権規約委員会の意見は真摯に受け止めて尊重すべきではございますが、勧告を受けたことのみをもって国際法違反であると断ずるのは、かえってミスリードにもなってしまう危険があるのではないかなというふうに個人的には感じております。

 この自由権規約委員会による勧告では、収容期間に上限がないことが指摘をされております。これについても少し調べてみたのですが、日本以外にも、法律上収容期間の上限がない国があるそうで、普通に考えれば、こうした収容期間の上限がない国々にも同様に勧告がなされているのではないかというふうに思います。

 こうした諸外国の例につきまして、どのような国が自由権規約委員会からの指摘を受けて、また、その指摘に対してどのように対応しているのか、御説明をお願いします。

西山政府参考人 例えば、イギリス、オーストラリアなどは、法律上収容上限の規定がなく、この点について、いずれも自由権規約委員会から指摘を受けているものと承知しております。

 イギリスは、自由権規約委員会からの事前質問に対し、法律上収容上限を設けていなくとも、運用では収容を短期とするように努めており、重大犯罪が関連する事案や収容中に難民認定申請したなどの一部の事案のみで長期収容を行っている旨、回答しているものと承知しております。

沢田委員 ありがとうございます。同様の勧告を受けている国も存在するといったことですね。

 これは、法的拘束力がないといっても、やはり、日本の入管制度が自由権規約委員会から勧告を受けているということ、これ自体は事実でありますので、我が国の入管においても、そのような方向で改善を図っていく必要はあると思いますので、是非、御対応よろしくお願いいたします。

 ただいま収容期間についてのお話もありましたが、我が国においても、長期収容の問題が度々指摘をされてきました。今回の法案では、収容代替措置の創設や仮放免の見直しによって収容が必要な場合を限定して、収容の長期化を防止するとされております。

 一部報道などでは、日本における収容期間、入管収容の平均が五百日を超えるなどといった指摘があり、他国と比べても著しく長期間にわたる収容を行っているとの主張も見受けられますが、実際のところはどうなっているのか、入管庁にお伺いします。

西山政府参考人 令和三年に退去強制手続の対象となった者、すなわち、令和二年末時点で収容令書又は退去強制令書が発付され、かつ退去していなかった者、それから、令和三年に新たに退去強制事由に該当すると判明した者の令和三年末時点での平均収容期間、これを算出してみたところ、その平均日数は約六十五日でございまして、全体の約八八%が収容期間が一月未満でございました。

沢田委員 ありがとうございます。

 こういった報道を見ると本当に不安になってしまう、やはり情報の扱いというのがすごく大事だなというふうなところを感じております。

 特に、何か最近はいろいろな政党があって、ちょっとした情報があたかもツイッターやSNSで一気に拡散をされて、全て事実であるかのように流れることもございます。

 今御答弁いただいた部分でいえば、これは八八%の方が収容期間一月未満であった、こういうのを伺わせていただいた上で、私は少し安堵いたしましたと同時に、こういった正しい情報をしっかり政府の側から発信していただけるよう、よろしくお願いいたします。

 収容されている方々には様々な事情がありますが、何らかの理由で一度収容された方については、収容を解く際にもそれなりの理由が必要かと思います。

 長期収容の問題を改善していくのは前提として、一律に収容期間の上限を設けることには、私は慎重に議論していかなければならないというふうに感じております。

 続きまして、先日もこれはお伺いさせていただきました、入管施設のコストについてお伺いをさせていただきます。

 本会議の答弁では、食糧費、被服費及び医療費の合計で、一人当たり約百九万円であると大臣から御答弁いただきました。

 私としては、先日、この委員会で刑務所における一人当たりのコストをお伺いしたときのように、対応する人件費なども全て含めた額をお聞きしたかったのですが、いろいろレクをしている上で、かなりやはり、例えば入管自体で、一つの施設で、そこに入って収容される方と、普通に一般的にトイレを使われる方とか、全部一緒になってしまって、そういったお答えは難しいというふうに言われたので、ちょっとそこで的を絞って質問させていただきたいと思うんです。

 今、入管庁では、募集、採用されております入国警備官という方々がいらっしゃいます。外国人に対する違反調査や摘発、本国への送還などの職務に就かれておりますが、入管施設の収容中の処遇に当たるのも、この入国警備官です。

 入管庁、この入管業務に関わる入国警備官の人件費、お伺いできますでしょうか。

西山政府参考人 委員御指摘の、収容業務に従事する入国警備官に係る人件費につきましては、入管庁全体の人件費の中から正確に切り出すことが困難でございます。

 このため、令和五年度における入国警備官を含む当庁の常勤職員全体の職員基本給、職員諸手当、超過勤務手当の予算額の合計をお答えさせていただきますと、約三百八十九億七千万でございます。

沢田委員 どうもありがとうございます。

 私、なぜこういう質問をさせていただいたかというと、やはり、前に、海外の、スウェーデンの方の教科書を見させていただいたときに、子供の頃から、何にどれだけの税金がかかるのか、例えば刑務所にどれだけのお金がかかるのかということを教えながら、子供たちがどうやって自分たちの安全が税金で守られているのかということを考えていく。しっかり税金を納めないと逆にどんどんどんどん治安が悪くなるんだよ、自分たちが払える分しか、それは自分たちの暮らしに返ってこないんだよということを、小学校四年生、五年生、六年生で教えるというのを見たとき、すごいなと思って、その本をいろいろな人に読んでくださいと紹介しているんです。

 やはり我々政治家は、あるものでしかどうしてもお配りできない、そしてあることでしかできないと考えると、無制限にいろいろなことをやり続けていく、無制限に何かやれると言うというのは、これはやはり無責任でもあり、今、国民の皆様の暮らしも、正直かなり厳しいところにまで私は来ているなというところを感じるんですね。

 こういった議論は、確かに命をお金に換算するのかというところで出てしまうところでもあるんですけれども、逆を言えば、我々政治家の限界もまた国民の皆様の税金であるということを我々も信じてやらないと、これはどうしても議論が、できないことをどんどん大きな話に持っていくということになってしまったり、また、現場の職員の皆さんに大幅に御負担をお願いしてしまう、又は、やれないことをやれと言う、又は、ルールがどう考えてもできないレベルの話になってくる。こういうふうになってしまうことは、これはやはり私は不幸につながっていくのではないのかなと。

 やはり、現場で働かれている皆さんが現実的にやれる範囲、そして、我々も人間としてやれる範囲の指示を出して、そして、それは当然、国民の皆様がやはり必要としているものをできる限りの税金でやっていくということを、これはやはりどこかの争点ではいつも考えていかなければいけないというふうに思っております。

 ちょっと、ここから私がお話しさせていただく内容はこの入管に関わらない話ですので、それは重々承知しているんですけれども。

 我々日本維新の会は、以前から主張させていただいております、国民の皆様からお預かりした税金で運営する行政は、その全てをできる限り透明化して検証可能にしていくべきというふうに考えております。今、実際に数字がなくてお答えいただけないという、仕方ないことかと思いますが、この入管収容施設にしても、やはり、どれだけのお金がかかっているのかというのは事前に国民の皆様にお伝えしていく、実はこれだけのコストがかかっているんだよということは分かりやすくするべきだと思うんですね。

 同じ施設を共有するにしても、やはり切り分けて、どこまでが使えるのか、そしてどこまでが実際に費用負担をしているのかということは、やはり大臣が最後の最後で、これはどうしようといったときに判断する大きい材料になっていくと思いますので、是非とも、一つ一つの経費を切り分けて、コスト意識を持って運営に当たっていただきたいと思っております。そして、我々としても、税金の使い方をこれからも注視していきたいと思っております。

 そして、先ほどもお伝えしましたが、ちょっとこの法案とは関係ないんですけれども、そういった部分も含めて、今回、日本維新の会の所属の一議員として、調査研究広報滞在費、旧文通費の使途公開等の問題について、齋藤法務大臣に御見解を伺いたいと思っております。

 財務省の資料によりますと、令和五年度の国民負担率は四六・八%となりました。さらには、国民負担に財政赤字を加えた潜在的な国民負担率は五三・九%となる見通しです。国民の皆様は、正直、必死に稼いだ収入の半分以上を国そして社会保険料を含めて持っていかれてしまう、このような状況にあります。

 そのような中、今の政権が打ち出す政策は、足りない財源を増税や借金など更なる国民負担として求めているのは、私は、先ほどの私が述べたところとは違うところにあるのではないのかというふうに考えております。

 例えば、防衛費の財源は増税、少子化対策の財源は保険料値上げが予定されています。歳出削減や経済成長、やはり、そういった部分も含めて見直す部分をしっかりやっていく、そういったことを含めた規制改革など、そして、我々も含めた、政治家を含めた痛みを伴う改革が全く足りていないというふうに考えております。財源が必要になったら取りやすいところから取って、自分たちの身や既得権は守るというふうに見えている現状を、我々政治家はこれは恥ずべきことだというふうに思っております。

 国会議員の既得権益と化している調査研究広報滞在費、これは見えないからそういうふうに言われてしまう、私はそういうふうに感じております。旧文通費の使途公開等の問題についても同様と思っております。

 これほどに高まる国民負担率の中、更に国民に負担を強いるならば、それを決める国会議員がまず自らの身分の在り方を見直すことから始めるべきと私は考えております。

 旧文通費問題は、昨年の国会中に既に案がまとまっていましたが、昨年の国会で結論を得るとの与野党の約束を自民党が一方的にほごにしたということが我々の考えていることです。既に約束している調査研究広報滞在費の改革すらできない政治家が、国民に更なる御負担をお願いする資格などないと私は感じます。

 これは正直、先ほどから何度も言っています、所管外の質問をしていることは重々理解しております。

 ただ、今回の入管法を含めて、やはり齋藤法務大臣は、岸田政権の中で国民負担をお願いしている大臣のお一人でもあり、かつ、与党に属する責任のある政治家のお一人でもございます。大臣は、この問題を放置したままでよいと考えますでしょうか。御答弁お願いします。

齋藤(健)国務大臣 お尋ねは、政党間の協議に関わる事柄であるとともに、国会議員への手当の在り方に関わる事柄であり、法務大臣として所感を述べることは適当ではないと考えています。

沢田委員 個人的には、今、私自身が、旧文通費の公開等全部やっているんですけれども、意外にやれるものだなというところは感じておりますので、是非、御興味ございましたら、我々日本維新の会のホームページに各議員がどういう文通費の使い方をしているかというのも載っていますので、恐れずに全員で一歩踏み出せるように、御協力いただければと思います。

 以上で質疑とさせていただきます。どうもありがとうございました。

伊藤委員長 次に、鈴木義弘君。

鈴木(義)委員 お疲れさまです。連日対応に当たっている職員の皆さん方に、労をねぎらいたいというふうに思います。

 昨日に引き続きまして、積み残しの質問から入らせていただきたいと思います。

 まず初めに、難民認定について、昨日もお尋ねしたんですけれども、例えばの話、難民申請がなされた場合で、パスポートを所持している国に、その方が難民申請しているんだという照会をかけることがあり得るのかどうか。昨日も、調査をどこまでしているのかといったときに、概念的な話だとか一般論的な話で、本当にその人が該当しているのかどうかというのをどこで判断するのかというところに行き着くわけですね。

 だから、パスポートを持っておられる方はどういう確認をするのかというのを、今の対応を教えてもらいたいと思います。

西山政府参考人 まず、一般論として、難民認定手続中の方について、出身国に対し、難民認定申請に係る事実を明らかにするようなことはいたしておりません。

 なお、実務におきましては、外国人が旅券等を有していない場合、本人の供述、旅券以外の身分関係書類で身分事項の確認を行うことになります。

鈴木(義)委員 そうしましたら、パスポートを持っている人はいいんですけれども、一つ問題になるのは、国会議員だった人も、途中でパスポートを返してくださいといったら、どこかにしまい忘れちゃいましたとか、日本に入国した人がパスポートをどこかで落としちゃったとか。故意か過失かは分かりません、第三者が見たとき、故意か過失かは分からない。そのときに、どこで確認するのか、その人個人を。パスポートを持っていないんです。必ず、虚偽かどうかを聞き取り調査して、そういう、もし故意にパスポートを、不所持というんですかね、持っていない人からすれば。

 私も海外に何回か出て、ツアーで行くときと個人で行くとき、本当はやっていいのかどうか分かりませんけれども、パスポートを預からせてくださいと。本来は預けちゃいけないんでしょうね、個人が持っていなくちゃいけない。うなずいてくれているから、そう。ただ、ツアーで団体行動するときに、いろいろな手続をするときにパスポートがないと、ホテルにもチェックインできないとか何かできないということがあるから、ちょっとお預かりさせてと、それで手続を取ったりするわけです。

 では、パスポートがありませんと言った人が、正直に自分のことを述べるものなのかということなんです。そこに疑念は生じないのか。では、何が正しくて何が正しくないのかというのを、いや、長年やっているんだから、この方は虚偽を言っているわけじゃないなというふうに感ずるのかどうか、そこのところもよく分からないんですけれども。

 正直に話さなかったときに、どういう確認をするのか。難しいですよね。

西山政府参考人 委員もおっしゃったように、なかなか難しいところではございますけれども、難民認定手続におきましては、難民調査官による事実の調査として、申請者に対する事情聴取を丁寧に行っているところでございまして、その際に、本人の供述や提出資料について、合理性はあるか、不自然な点はないか、出身国に係る諸情報と整合するか否かなどの観点から、申請者の申立ての信憑性を判断しているところでございます。

鈴木(義)委員 なぜ今みたいなことをお尋ねするかというと、次の質問に、迫害という言葉が出てくるんです。

 難民申請するときの一番の問題になるのは、迫害を受けているか受けていないか。それが五つの項目に分かれて、迫害を受けているんだということを自分が述べて初めて申請するわけですね。紙を書くのか、そこの証拠の書類を出していくのか分かりませんけれども。

 では、迫害を受けるおそれのある者のうち、これは一つの例示です、特定の社会的集団の構成員というふうにうたっているんですけれども、よく分からないんです。宗教だとか人種だとか幾つかの、五つの項目のうち四つは分かるんですけれども、特定の社会的集団の構成員というのは具体的にどういった方のことを指すのか、者をいうのか。それをお尋ねしたいと思います。

西山政府参考人 ある特定の人々の集団が特定の社会的集団に該当すると言うためには、当該集団に属する者らが一定の特性を共有しており、かつ、これによって一つの集団として認識されている、又はその他の人々から区別されている必要があるとされております。

 これまで特定の社会的集団の構成員の該当性が認められた例として、出身国の政権と敵対する有力な一族に属している者、それから同性愛行為に対する処罰法令が存在する国における同性愛者などが挙げられますが、これに限られるものではなく、個別の申請の内容に応じて該当性を判断することになります。

鈴木(義)委員 では、例えば、夫婦仲が悪くて、その国においては、男尊女卑の国であって、女性は従わなくちゃいけないような価値観の国であったら、これ以上夫婦生活ができないからとか親子関係がうまくいかないから、日本に来て難民申請をするといったときには、ここに該当してくるんですかね、してこないんですかね。

西山政府参考人 難民の該当性につきましては、個別の事案に応じて個別に判断するところではございますが、先ほど申し上げたように、特定の社会的集団と言えるためには、一定の特性を共有しているということ、かつ、これによって一つの集団として認識されている、又はその他の人々から区別されているということが必要とされております。

鈴木(義)委員 例えば、日本では反社会的団体というのかな、反社というんですけれども、外国でいえばマフィアみたいな組織で、何だかよく原因は分かりませんけれども、そういった人が日本に逃げてきて難民申請したときに、この特定の社会的集団の構成員というふうにみなすのかみなさないのかですね。でも、本国に帰せば、もしかしたら殺される可能性が予見されなくはないんですね、日本と価値観が違う。日本の中でもそれが起こっている。そういう人たちも、この特定の社会的集団の構成員というふうに該当するのかしないのか、お尋ねしたいと思います。

西山政府参考人 繰り返しになりますけれども、個別の事案によって個別に判断するということではございます。

 ただ、今委員が御紹介をされた例で考えますと、まず、特定の社会的集団に該当するか否かという問題もさることながら、迫害のおそれがあるかどうかということがございます。また、その迫害のおそれということについて、本国でそれを保護することができない状況にある、国がそういった状況にあるといったような、様々な要件を検討する必要があろうかと思います。

鈴木(義)委員 入管庁の方からいただいた難民該当性判断の手引というのを、たしか二月か三月にお出しになって、初めてこの手引をお作りになったんだというふうに。自分のところで入手して、先ほどから言っている迫害の判断の視点というところが、項目にずっと並べられるんですね。

 例えばの話です。申請者に起因する事象が迫害につながった場合も、通常人がそのような場に置かれた場合を前提として判断を行うとしているところなんですけれども、個人の感覚によるところが大きい場合、苦痛が受忍し得ない場合は、人によって違うのではないかと考えるんですね。次長が感じる、ここまでは我慢できるけれどもこれ以上は我慢できない、私の我慢できるその度合いというのは、次長と私では違うはずなんです。

 それを客観的に迫害だというふうに認定するに当たって、もう誰が見てもこれは我慢できないだろうなというのか、その度合いというのは、個人によって捉え方が、自分の出自だとか自分の置かれている立場、その国の歴史によって全然違ってきちゃうと思うんですけれども、その辺はどういう見解をお持ちなのか、お尋ねしたいと思います。

西山政府参考人 先ほども議論がございました、一般の通常人で考える部分と、特に迫害のおそれ、十分な恐怖を抱くかどうかといった点につきましては、個々人によって様々であります上に、例えばですけれども、社会的に脆弱な立場に置かれた方というのは、そうでない通常の方に比べると、おそれの感じ方というのはまた違うであろう、そういったところは十分に考慮しなければならないというような考え方も取ってございます。

鈴木(義)委員 なかなか日本語というのは難しいと思うんですね、アバウトな書き方をするときもあるし、ストレートに物を言うときもあるし。

 断定した書き方もすれば、例えば、何とかすることができる、やるかやらないかはこっちサイドの考えということもあると思うんですけれども、なるべく今までの経験を積み上げながら、迫害をしているというところの、手引を含めて、やはり国民に広く知ってもらうというのは必要なんじゃないかと思うんですね。

 どこそこの国でこういうことが起きている、ここの国ではこういうことが差別されている、そういう認識を私たちも共有しないと、何でこれが迫害なの、私たちの価値観からすれば同じでしょうと考えちゃう。それは当たり前のことでしょうと思う人もいるし、いや、その国にとっては耐え難い苦痛なんだというふうに。物理的に拘束するとかむち打つとかというふうになれば、もう誰が見てもこれはおかしいじゃないかという話になるんですけれども、そこのところが文章からは読み取れないからお尋ねしたんです。

 例えば、迫害があると認められないとして退去強制とされた場合は、国籍国に戻って実際に迫害を受けた事例は今までにあるのかどうかです。日本では迫害として認定されないんですけれども、では、分かりました、自分は帰りますといって帰った人も、数字は資料で見せてもらったんですけれども、その人が本当にその国に帰ったときに、日本では認定しなかったんだけれども、迫害を受けたという情報を知り得ていたかいないか、今まで何件あったのか。分かるところで結構ですから、教えてください。

西山政府参考人 御指摘のような事例は、入管庁としては把握をしておりません。

鈴木(義)委員 何度も何度も同じ難民認定についてなんですけれども、やはり個人の情報をどこまでキャッチできるかということに尽きるんでしょうね。

 その方がもし日本で難民認定を受けなくて、私は難民なんだといって申請されて、いや、あなたは客観的に見て難民じゃないんだからお帰りください、それで、その国に帰ったら迫害を受けたという事実もやはりキャッチできなかったら、次の申請をした人に、実際、ではどうなるかというのが、予見可能性とよく言うんですけれども、そこぐらいはやはりやらないと。追跡調査していいかどうかというのはあるんですけれども、何かあったらアンケートでも何でも連絡をくださいぐらいなことをやらないと、本当に迫害を受けた人なのかどうかというのは確認できないんじゃないかという考え方です。

 昨日もお尋ねしたんですけれども、難民認定を受けた者は半永久的に日本に滞在できるのかということなんですね。昨日もお尋ねしたんですけれども、ビザを申請したって、なおかつ難民申請する人もいれば、オーバーステイして、入管に来てもらって、そこから難民申請する人もいるんだと思うんですね。

 昨日も、更新の回数はありませんよということは、最終的には日本にずっとい続けることができるんです。その際、就労をするのは、条件、今日も午前中で御質問があった中で、結局飲食店にしか勤められないじゃないかというような質問をされた方もいらっしゃったと思うんですけれども、では、就労に条件をつけて働いてもらうのか。いや、条件がなくて、自分の特質性があって合致するものがあれば、それで働いてもらう。例えば、日本語が分からなくても、半年、一年、二年かかるかもしれないんですけれども、日本語学校に通ってもらって、日本語もほかの国の言葉もしゃべれるようになったら、またそれを、通訳とは言わなくても、違う仕事に就くことも可能性は出てくるんじゃないかと思うんです。

 やはりそういうトレーニングする期間も認めてあげるような形をしないと、難民認定しました、でも、ではどうやって働いていくのという話につながるんですけれども、その就労の条件はあるのか。

 それと、例えば、外国人登録をしたら、国民健康保険に加入することができるんだとお聞きしたんです。では、そういった健康保険や、若しくは働けない状態のときに日本人と同じように生活保護の対象になり得るのかどうか、そこのところを確認したいと思います。

西山政府参考人 難民認定をされた方ということでございましたら、原則として定住者の在留資格になりますので、就労に制限はございません。

 それから、国民健康保険と生活保護といった点につきましては、私ども所管ではございませんので、お答えすることは困難でございます。

日原政府参考人 国民健康保険、それから生活保護の関係につきましてお答えをさせていただきます。

 まず、国民健康保険についてでございますけれども、国民健康保険法上、日本国内に住所を有する者に適用することとされてございまして、外国人の方につきましても、適正な在留資格を有し、住所を有している場合には原則として適用対象としてございます。入管法上の認定を受けた難民の方につきましては、適法な在留資格が付与され、住民登録されて、国民健康保険の適用の対象となるものでございます。

 また、入管法上の認定を受けた難民の方につきましては、行政措置として、生活保護法に準じて実施する生活保護の対象となるものでございます。

鈴木(義)委員 ありがとうございます。

 では、そうしましたら、限られた時間でありますので、そもそも、退去強制の意義というのはどこに見出して国外に出ていってほしいというふうにやるのか、そこのところをもう一度確認したいんですけれども。

西山政府参考人 そもそも、退去強制とは、我が国にとって好ましくないと認める外国人を行政手続により国外に退去させることをいいます。

 この好ましくないかどうかということでございますけれども、我が国は、日本に在留していただく前提として、在留資格制度というのを設けて、在留資格とそれに応じた活動をする、それが前提として、日本での在留を認める。

 逆に言いますと、そういった資格を失う、あるいはそういうことが認められないという方は、国外に退去すべき好ましくないと認められる外国人ということで、退去強制の対象となります。

鈴木(義)委員 もう一度読み返したときに、入国を認めるか認めないかはその国の主体的な判断でいいので、アメリカは認める認めない、韓国は認める認めない、中国も認める認めない、ロシアも同じですね。日本は認めるか認めないか、それは国際ルール上は独自な判断でいいという話になっているわけですね。

 それで、次に、質問に移っていくんですけれども、令和元年の七月から、羽田空港を皮切りに、順次、顔認証ゲートの外国人出国手続の運用が開始されたと聞くんです。その制度がスタートする前に偽造パスポートで日本に入国したことがある者が日本に再入国する際に、日本の空港に着いて直ちに難民申請をすることができるのかどうか、退去強制となるのか。

 もう一つ、今回の法改正により結論が違ってきちゃうのか、法律の改正前と改正した後ですね。偽造パスポートで日本に入ってきちゃって、今は顔認証とか指紋でやりますよね。そうすると、本人と違うじゃないかといったときに、もう入れませんという話になるのか。今の現状を教えてもらいたいと思います。

西山政府参考人 難民認定申請は、本邦にある外国人であれば可能であるため、偽造パスポートでかつて入国したことがある者であっても、本邦の空港到着後に直ちに難民認定申請をすることは可能でございます。

 その上で、一般論として申し上げれば、本邦の空港などに到着した外国人が直ちに難民性を主張した場合には、一時庇護のための上陸許可手続を行い、要件を満たせば上陸が許可されることになります。

 他方、一時庇護上陸許可申請が不許可となった場合は我が国からの退去を命ぜられることとなり、その場合に、当該申請者が速やかに出国しない場合には、退去強制事由に該当し、退去強制手続を取ることになります。

 これらの手続は、本法案による改正の前後において、結論に違いはございません。

鈴木(義)委員 そうすると、必ず日本は法治国家の国だと言うんだよね。法律に基づいて、自分たちもそれをルールとして守っていきましょうというふうによく声高に言うので、法律を守りましょうと。

 では、元々偽造パスポートで一回入ってきて、自分の母国に帰って、今度は違う正規の手続で来たときに、なぜそれを止められないのか。だって、法治国家なんでしょう、日本は。法に基づいてやっているのに、なぜそれを、飛行機に乗って上陸した途端に難民申請といったら、そこで。だって、本来は虚偽の申請で来ちゃっている人なんでしょう。どっちが本当のその人なのかというのは確認のしようがないじゃない。

 だから、前段でも、私、一般質疑のときに、本人確認というのはどこまでできるのかという話に戻っちゃうんですね。私が鈴木義弘かどうかは、私も分からないんです。親からずっと、おまえは鈴木義弘、おまえは鈴木義弘といって育てられたから鈴木義弘なのかもしれないし、どこで本人確認をするのかというのが、今回みたいな、外国から来る、こっちから外国に行くといったときに問題になってくるんだと思うんですね。

 だから、そこのところが、この法律の改正も、今の御答弁でいくと変わらないよという御答弁だったんですけれども、実際、変わらないんですか。

 要するに、今、前段で次長が、日本の国家に、お帰りいただきたいという方がいらっしゃったときには退去強制をするんですよと答弁をされているわけじゃないですか。では、そういう人に該当しているかどうかというのを判断して出入国管理をされていくわけじゃないですか。そうすると、偽造のパスポートで一回入ってきた人が、帰って、また来ますよといったときに、そこで、成田とか羽田でもいいですよ、関空でもどこでもいい、そこに降り立った途端に難民申請するよといったら受理しちゃうというのは、法の趣旨からいくと、それでいいのかなと思うんですけれども、もう一回御答弁いただきたいんですが。

西山政府参考人 先ほども答弁したとおり、日本に来られてしまったら、本邦にある外国人ということで、難民認定申請が可能になるということでございます。

 その上で、我が国にとって好ましくない外国人に対して、そもそも日本に来る前に搭乗を拒否するような仕組みができないのかということでございますれば、まず、航空機を利用する旅客につきましては、海外の空港での航空機搭乗前に、本邦に渡航予定の外国人の情報を航空会社と出入国在留管理庁の間で交換することで、航空機搭乗前の事前スクリーニングを可能とする相互事前旅客情報システム、iAPIの令和六年度中の試行導入に向けて今準備を進めているところでございます。

 これによりまして、我が国にとって好ましくない外国人の搭乗を航空会社が拒否することが可能となる予定でございます。

鈴木(義)委員 何か質問する前に答弁されちゃったので。

 一点だけ、もう一つ確認したいんですけれども、法務省からいただいた資料を読み返していくと、送還忌避者の国籍別の一覧表があるんですね。どこそこの国、どこそこの国と、人数が入っています。その送還忌避者のうち、それらの国に対して、我が国に入国する際に制限をかけるなど、各国に働きかけをしてきたのかどうかですね。お見えいただくんですけれども、いや、あなたはお帰りくださいと言った国の人数がわっと出ていますよ。

 では、その国に対して、大使館でも領事館でも何でもいいんですけれども、いや、こういう方はちょっと困るんですよねというのを言ってきたのかどうかです。答えられますか。

松尾政府参考人 お答え申し上げます。

 外務省としては、一般論として、在外公館での査証申請において、不法残留や不法就労を未然に防止するため、訪日目的や渡航費用の支弁能力などについて厳格に審査をしております。

 その上で、各国への働きかけについては、二国間協議の際に、必要に応じ、送還忌避問題の状況の改善に向けた協力を相手国に対して要請しております。

鈴木(義)委員 先ほど入管の次長から御答弁いただいたんですけれども、飛行機に乗るときには令和六年からいろいろ情報のやり取りを瞬時にしていくというんですけれども、日本に来るといったら、日本は島国ですから、国際港というんですかね、港湾が、外国船が来る場合、貨物船が来る場合、そういった港があると思うんですけれども、船の場合はどうなんですかね。そういう仕組みをつくることができるのかどうか、飛行機と同じように。

西山政府参考人 船舶を利用する旅客につきましては、現在、本邦の港に到着する前に船長等から乗客情報の提供を受け、その情報を基に事前スクリーニングを行っており、我が国にとって上陸を認めることが好ましくない外国人に対しては上陸防止措置を取るよう船長等に指示しているところでございます。

 一方で、海外の海港において乗船前の事前スクリーニングを行うことで乗船を拒否できるようにすることは、今後の課題として認識をしておりますけれども、船舶につきましては航空機におけるiAPIのような国際標準が確立されておらず、私どもとしてもその動向を注視しているところでございます。

 船舶における国際標準が確立された場合には、海外の海港における事前スクリーニングの導入についても検討してまいりたいと考えております。

鈴木(義)委員 私も、先日の質問のときに、昨年の暮れ、韓国に行きましたと言ったら、もう写真を撮られているんですよね。五本指、指紋も取られているし、それを了解しないと入れませんよというルールになっているわけですね。だから、顔認証するか指紋でやるか、どっちかなんですけれども。

 例えば、これも先般も御質問したんですけれども、九・一一から、アメリカとかカナダを始め、韓国でも遅ればせながら電子認証制度を導入して、米国では、犯罪歴や逮捕歴の、電子申請の段階で入国を認めない制度をスタートさせているんですね。

 案件があったので、外務省を介して、ちょっと確認してくれと言ったら、逮捕されただけで、有罪、無罪関係なく、逮捕されたらもう駄目だという場合があるというふうに聞いたんです、逮捕されただけで。なおかつ、では時効はあるんですかと聞いたら、逮捕されて十年で時効とか二十年で時効と。

 では、子供の頃ちょっと悪さをして逮捕されました、三十歳になって、四十歳になってアメリカに行きたいと言ったら、あなたは逮捕歴があるだろうと言われただけで、入国を拒否する。その場合は、一般に、ビザ申請をして、特別な事情があるときは入国を認める場合もあるから、そちらを申請してほしいと。このぐらい厳しく九・一一以降アメリカではやっていて、それに準じた国が幾つも出ているということが世の中で起きているわけですね。

 だから、我が国でもそういう、入国する際に同じように事前に申請をさせて、国家にとって好ましくない人を入国させない措置を取る制度を、もう一段階、まだちょっとこの辺なんでしょうね、もう一段階上げるようなことを今後考えていくのか、お尋ねしたいと思います。

西山政府参考人 アメリカなどに代表されます電子渡航認証制度の導入により、本邦渡航前の事前スクリーニングを強化することで、我が国にとって好ましくない外国人の入国を未然に防ぐことは重要な課題であると認識しております。

 電子渡航認証制度の導入に当たりましては、航空機への搭乗前に渡航認証取得の有無を含めた事前スクリーニングを行うことにより、認証を受けていない外国人の渡航を阻止する仕組みが必要であることから、まずは、先ほど申し上げました航空機搭乗前の事前スクリーニングを可能とする相互事前旅客情報システム、iAPIの導入、運用を着実に進めてまいりたいと考えております。

 入管庁としましても、今後も、電子渡航認証制度を含む事前スクリーニングの強化のための施策については引き続き検討してまいりたいと考えております。

鈴木(義)委員 是非、早めに制度を整備してもらいたいなと思います。

 昨日だったと記憶しているんですけれども、文化庁で、日本語学校の認定制度が法案として提出されたんだと記憶しているんですけれども、日本語を習得するために留学生として入国した留学生が在留資格外のことを行った場合や逃亡した場合に、入管は学校運営側に対してどこまで厳格に、指導したり、勧告や、罰則があるんだったら罰則を適用した行政指導を取ってきたのか、まずお尋ねしたいと思います。

西山政府参考人 入管庁におきましては、日本語教育機関が就労目的の留学生を受け入れることがないよう、必要に応じて実地検査を行い、適正な入学選考及び在籍管理の徹底等の指導を行うなどしております。

 また、日本語教育機関の告示基準を設けて、日本語教育機関に対して、留学生の資格外活動許可の有無及び内容を把握し、留学生に出入国管理法令に違反しないよう適切な助言及び指導を行うこと、稼働先の名称の届出を求めることなどを求めているところでございます。

 加えて、留学生に係る入国在留審査を適切かつ円滑に行う観点から、毎年、教育機関の選定を行っており、教育機関ごとに不法残留者や修学状況の不良等による在留期間更新不許可者等の問題在籍者を把握し、そのような留学生の発生割合や入管法上の届出義務の履行状況等に応じて、適正校を選定しております。適正校と選定されなかった教育機関については、在留資格認定証明書交付申請等において慎重審査の対象としております。

 入管庁としましては、引き続き、関係省庁とも連携し、留学生の適正な受入れに努めてまいりたいと考えております。

鈴木(義)委員 資料をいただいた中で、退去強制だとかお帰りいただく外国籍の方がいらっしゃる中で一番事象が多いのは、やはり短期ビザ。観光ビザで来るか、留学生ビザで来ている。就業が目的で来ている人は、日本のルール、ジャンル分けのところで、一号だ、二号だ、三号だ、研修制度だということで、そこでビザを取得して働いているわけですね。

 一番問題が起きちゃうのが、観光ビザで入ってきました、留学ビザで入ってきました、これも、留学ビザの中でも、大学なのか、大学院なのか、一般の日本語学校なのかで、大体把握できているはずなんだと思うんですね。だから、そこのところの、やはり経営者側になるところもきちっとそこは厳格にやっていくような形を取らないと、ルールがルールじゃなくなっちゃうような気がするんです。だから法律の改正をして認定をしていきましょうということにつながったんだと思うんですけれども、その辺のことは今後も、経営者側というんですか、運営側にきちっと報告を求めていくことも大事なのかなというふうに思います。

 それと、次に、難民認定手続中であることを理由に送還が停止される、現行制度の濫用とか誤用という言い方をしているんですけれども、疑われる事案が発生していると、幾つもの事例を挙げて資料としていただいているんです。

 これは行政側から見たときに濫用だとか誤用という言い方をされると思うんですけれども、本人にとっては大きなお世話だと思うんですけれども、今回の法改正で、そこの誤用とか濫用というところは変わるんでしょうか。お尋ねしたいと思います。

西山政府参考人 現行法では、理由や回数を問わず、難民認定申請中は送還が停止されることから、重大犯罪の前科がある者やテロリストであっても、また、送還回避目的での複数回申請者であっても、難民認定申請中は送還することができず、送還忌避目的の濫用が疑われる事例が存在いたします。

 送還停止効は、難民認定申請中の者の法的地位の安定を図るために設けられたものでございます。そのため、難民認定申請中であっても、法的地位の安定を図る必要がない者を送還停止効の例外とすることは許容され得ると考えております。

 そこで、本法案におきましても、既に二度にわたり外部有識者である難民審査参与員の三人一組での審理を含む慎重な審査を十分に尽くして、難民等の該当性について判断された三回目以降の難民認定申請者、それから、刑罰法令違反者の中でも相当程度刑事責任が重く、強い反社会性を示すことから我が国への在留を認めるべきではない、三年以上の実刑に処せられた者、そして、外国人テロリストや暴力主義的破壊活動者等、暴力的手段を用いて我が国の政府等を破壊しようとする者といった、難民認定申請中であっても法的地位の安定を図る必要がない者について、送還停止効の例外としているところでございます。

 これにより、重大犯罪の前科があり難民認定申請を繰り返す者や、送還回避目的での複数回申請者を送還することができ、現行入管法の課題にもお示ししておりますような、濫用が疑われる難民認定申請事案を減少させることができるものと考えております。

鈴木(義)委員 昨日も質問に立ったとき申し上げたんですけれども、その国に行く目的というのがあるんだと思うんですね。最初から難民認定しようと思ってその国に行く場合もあるんでしょうけれども、結局、短期ビザなのか、留学ビザなのか、就業ビザなのか、興行ビザなのか、学術ビザなのか分かりませんけれども、ビザを取ってその国に行きます。

 では、難民認定は二回とか、三回以上は認めないよという形を今回の法改正で取るんですけれども、私が難民認定したいといったときに、最初からその書類を持って来るんですか、この国に。私、不思議でしようがないんです。

 くどく言うんですけれども、留学したくて日本に来ました、働きたくて日本に来ました、観光で日本に来ましたといったときに、難民認定をするような書類を一緒にかばんに詰めて持ってくるものなのかどうかなんですよね。

 そうすると、その資料が正しいか正しくないかというのはどうやって確認するのかということに行き着いちゃうんですけれども、時間が来たので、最後、答弁だけもらって、終わりにしたいと思います。

西山政府参考人 委員御指摘の点で、送還停止効の例外に該当する相当な理由のある資料を提出すれば、送還停止効がなお例外ではなくなる、要は送還停止効が働き続けるということになってございますが、その資料につきましては、本人の申述でも構わないというふうに捉えております。

 したがって、難民認定申請書の記載によっても、相当な理由、例えばですが、当方で把握している本国の、出身国情報、これと整合して一応の外見上の真実らしさなどが認められるようでありましたら、それは申述のみであっても相当な理由のある資料ということで、送還停止効はなお停止されないというふうに考えております。

鈴木(義)委員 終わります。ありがとうございました。

伊藤委員長 次に、本村伸子君。

本村委員 日本共産党の本村伸子でございます。どうぞよろしくお願いを申し上げます。

 今日は、難民認定申請中でも三回目以降は、申請中にもかかわらず送還が可能となっている部分について、まず質問をさせていただきたいというふうに思います。

 この問題について、本当に壮絶な苦しみでこの法案を捉えておられる方々がいらっしゃいます。私も直接そうした方々にお話をお伺いしました。日本人パートナーの方ですとか、学生さんのお話を聞いてまいりました。少し御紹介をさせていただきたいというふうに思います。

 トルコ国籍のクルド人の夫を持つ日本人の方です。その夫の方は、政府によるクルド人への激しい弾圧がある。兵役義務があり、軍隊に入れば自分と同じクルド民族への攻撃に加担させられるおそれから、兵役を避けるためにトルコを出国し、そして、日本に住むおじ様を頼って来日されたそうです。

 そういう状況だったわけですけれども、上陸を拒否され、そして帰国を拒み続けたところ、収容されてしまった。収容中に難民認定申請をしましたけれども、その後に退去強制令書が発付をされた。成田から牛久の収容所に移送されてしまった。

 五か月後に仮放免をされ、そして、二〇一四年に共通の知人を通じて、それをきっかけに徐々に交際をスタートされて、二〇一五年一月に結婚をされたというお話をお伺いをいたしました。

 二〇一七年十一月、仮放免の出頭日に、総合的判断によりということで、特に具体的な理由もなく、仮放免は不許可となり、突然収容され、そして八か月後に仮放免になったというお話でした。裁判にも、この在留特別許可をしない処分の取消しの裁判をやったそうですけれども、地裁、高裁、口頭弁論もなく、いずれも認められなかったということでございます。

 このクルド人パートナーが日本に来て十五年、そして結婚をして八年、難民申請は現在四回目です。在留資格を得られないまま、ずっと仮放免で、入管法改定案が決定をしてしまえば、まさに送還の対象者になってしまう。具体的にそうやって壮絶な不安の中でお過ごしになっておられる方がおられます。

 その方は、そのパートナーの方がたった一人の家族なんだと。御両親が亡くなり、たった一人の家族なんだと。本来なら難民として認定されるのが望ましいけれども、結婚を機に事情が大きく変わったので、日本人の配偶者との在留資格をいただきたいという思いを持っておられます。

 また、クルド人、大学生の方ですけれども、その方は小学校三年生のときに来日をされました。来日をした理由についておっしゃっていたんですけれども、お父さんと一緒に生活するためであって、決して日本の治安を悪くするために日本に来たわけではありませんとおっしゃっておりました。

 私は来日してからずっと仮放免です。県外移動や就労が禁止されていて、保険証や住民票なども発行できません。私が日本に来たときは全く日本語が話せずに、日本語が読めないし話せない状態で学校に通うことになった。最初は友達ができずに困っていた。しかし、サッカーと出会って、日本語が分からない中で、ジェスチャーでクラスメートがパスとかシュートとか教えてくれて、それで日本語も教えてくれた。それで、サッカーに感謝をしていて、サッカー選手になるというのが将来の夢でした。

 そういう状況だったんですけれども、小学校四年生のときにお父さんが入管に収容をされてしまった。お父さんが収容されたときは、状況が理解できない状況の中で、転校をしたんだけれども、転校先のクラスメートは、お父さんが犯罪者だというふうに思われ、それで仲間外れが始まって、給食のときも席は一人だけ違うところ、話しかけても挨拶をしても誰も返事をしてくれない状況が続いた。結構ストレスを感じて学校を休むようになってしまった。そうしたら今度は、外国人はよく仮病を使うというような、そういうことを言われてしまったという中で、本当につらい生活をされてこられたというお話でございました。

 トルコにいるときに小学校に通っていたと。その方が通っていた小学校はクルド語が禁止であった。クルド語を話してしまうと先生から暴力を振るわれるということがあった。みんなの前で暴力を振るわれる。クルド語を話したら、その学生さんも何度も何度も暴力を振るわれたということでございました。文化的なジェノサイドではないかというふうにもおっしゃっておりました。それ以外にも、クルド語を話すと暴力を振るわれることがあった。これは難民の条件を満たしているというふうにおっしゃっておられました。

 その方は、やはり、今回の入管法の改定案が通ってしまえば、強制送還の対象になってしまうというふうにおっしゃっておりました。

 元々サッカーの選手になりたいという夢は持っていたんですけれども、高校一年生のときに入管局に出頭したときに、一回のインタビューで学校のこととか生活のこととか将来の夢について話したときに、日本にいても、どんなに頑張っても、お金と時間の無駄だから国に帰ってと言われた。

 当時、高校一年生の一学期だったので、三学期まで頑張って成績を上げて、いい成績を持ってくれば認めてくれるかという気持ちがあって、勉強とサッカーを両立しながら、睡眠不足で二回ほど倒れたそうなんですけれども、それでもよい成績を取るために頑張って、実際によい成績を取ることができた。

 三学期に成績を入管に持っていったら、また同じことを言われて、今度は、サッカー選手にはなれないというふうに説明をされました。サッカークラブに入ること自体が就職になってしまって、私はそれが禁止されているので、もうどんなに頑張っても、スカウトされたとしても、君はサッカー選手にはなれないよというふうに言われてしまったということです。本当にショックで、一週間ぐらいずっと御飯が食べられなかった。そして、サッカーをやめた。サッカー選手になる夢を諦めてしまいました。

 今は、授業料をおじさんに払ってもらって、大学へ行って、難民についての勉強をしている。今の夢は、国連で働いて、難民がどこでも人権が保障されるような社会になるように貢献したいという思いを持っておられます。

 こういう方が、入管法が採決されてしまったら送還の対象になってしまう。在留資格を得られるチャンスがなくなってしまう。二つ目の夢も奪われることになる。是非、廃案にしてほしいというふうにおっしゃっておりました。

 このトルコ出身のクルド人の問題ですけれども、日本は異常に難民の認定率が低いわけです。例えば、二〇一九年の調査なんですけれども、ドイツでは五千二百三十二人、難民認定されております。そして難民認定率は三四%。カナダは二千一人、七四%。アメリカは千四百人、四一%。でも、日本はほとんど認定されないわけです。

 ですから、三回以降ということはありますけれども、元々の難民認定というところがおかしいものですから、何回やっても認められない現状があるわけです。だから、大本をやはり変えないといけないというふうに思っております。

 その上で、この三回目というのも私は根拠もないというふうに思っております。入管庁は、難民認定申請等の誤用、濫用を防止し、真に保護すべき者の迅速な保護につながるというふうに言っているわけですけれども。

 今日資料でお示しをしております、二の資料を見ていただきたいんですけれども、これは入管庁が提出をしております我が国における難民認定者数の推移ですけれども、これは何年間分、あるわけですけれども、二〇二二年、見ていただきたいんですが、三回目の難民認定手続において難民認定した者の数が三人というふうになっております。

 その上で、もう一人、三回目の難民認定申請を行っていたけれども、二回目の申請に対して難民と認定されたために、三回目の申請については取り下げられていますということで、本当は四名、三回目申請中に認められたという人が四名あるというふうに思うんですけれども。

 それぞれ四人の方、どういう状況だったのか、難民認定した事情について説明をしていただきたいと思います、大臣。

西山政府参考人 私どもの把握では、三回目以降の難民認定申請により難民と認定された方は令和三年までは存在しなかったが、三回目の申請で認定された方が令和四年中に三件存在すると把握しております。なお、四回目以降の申請により認定された方はおられません。

 個別事案の内容はお答えを差し控えますが、いずれの事案につきましても、前回までの難民不認定処分後に、本国情勢の変化その他の新規事情が生じ、それらについての主張もなされたことを踏まえ、難民と認定されたものであると承知しております。

本村委員 保護すべき人が三回目以降の難民認定申請者にもいるということが明らかになったと思いますけれども、大臣、いかがでしょうか。

齋藤(健)国務大臣 今御説明をさせていただいたと思いますけれども、三回目以降の難民認定申請により難民と認定された者は令和三年までは存在していなかった、三回目の申請で認定された者が令和四年中に三件存在する、そして四回目以降の申請により認定された者は存在しない。この三回目の申請で認定された者の三件というものも、今申し上げましたとおり、本国情勢の変化その他の新規事情が生じて、それらの主張もなされたことを踏まえ、三回目で難民と認定されたものと。

 それ以上の詳細は、個別案件ですので、控えたいと思います。

本村委員 三件と言っていますけれども、本当は四件なわけでございます。

 今まで三回目はなかった、でも、二〇二二年、認定されたということなんですけれども、そういうことがあるわけですよ。三回目以降の難民認定申請者の中においても保護するべき方々がいらっしゃるということははっきりしております。

 三回目以降の難民認定者を送還可能にしてしまうということは、保護すべき外国人の方の命の危険を生じさせてしまうというふうに思いますけれども、大臣、いかがでしょうか。

齋藤(健)国務大臣 御案内だと思いますけれども、難民認定手続においては、外部有識者である難民審査参与員が三人一組で審査を行って、法務大臣はその意見を必ず聞いた上で判断するなど、慎重な審査が十分尽くされておりまして、制度と運用の両面から適正性を確保しています。

 その上で、送還停止効は、難民認定申請中の者の法的地位の安定を図るために設けられたものでありまして、法的地位の安定を図る必要がない三回目以降の難民等認定申請者をその例外としているのが今回の法改正であります。

 もっとも、難民等と認定すべき相当の理由がある資料を提出すれば、資料の意味は、必ずしも資料でなくても構いませんが、その事情が分かれば、なお送還は停止されることとし、本来保護されるべき者が送還されないような制度となっているところでございます。

本村委員 大臣はそうおっしゃいますけれども、私はとても大丈夫だというふうには思わないわけです。法務大臣あるいは出入国在留管理庁が難民と認めていない例で、裁判で、あるいは何回かの難民認定申請で認められるケースがあるからです。

 そこで伺いますけれども、ウガンダの同性愛の方の難民認定申請について、裁判所が難民と認め、そして国は控訴しませんでしたけれども、最初の法務大臣、出入国在留管理庁の判断が間違っていたということになってまいります。ウガンダの同性愛の方に対する法律あるいは制度、何年から、どのような方法でつかんでいたのか、お示しをいただきたいと思います。

西山政府参考人 入管庁におきましては、適正な難民認定のため、外国政府機関の報告、出身国に関する報道、国連難民高等弁務官事務所が保有する情報等、申請者の出身国情報や国際情勢に関する情報を幅広く収集し、難民認定審査の際に参照しているところでございます。

 特定の国における事情に関する情報収集の状況については、お答えすることが困難でございます。

 その上で申し上げれば、これまでも、性的マイノリティーに起因する迫害をもって難民として認定した事例は複数存在するところでございます。このような迫害に係る審査に当たりましては、出身国の性的マイノリティーに関する法制度を含む最新の出身国情報を収集し、かかる出身国情報に照らし、難民に該当するか否かを判断しております。

 いずれにいたしましても、入管庁におきましては、UNHCR等の関係機関の協力も得つつ、的確に出身国情報を収集、分析した上で、庇護、在留を認めるべき方々の一層確実な保護に努めてまいりたいと考えております。

本村委員 お答えになっていないんですけれども、ウガンダの同性愛の方の制度、法律、どういうふうにつかんできたかを教えていただきたいんですけれども。

西山政府参考人 先ほど申し上げたように、お答えすることが困難でございます。

 その理由を御説明いたしますと、まず、出身国情報は個別の事案ごとに必要な範囲で最新の情報を収集するものでありまして、特定の国における特定の情報の収集時期について都度都度記録しているものではないという事情がございます。

 また、情報によりましては、これを明らかにすることにより情報源との円滑な情報共有を阻害するおそれもございますので、お答えをすることが困難でございます。

本村委員 このウガンダのレズビアンの方の難民認定申請で、最初、なぜ認定しなかったのか、伺いたいと思います。

西山政府参考人 個別の事案につきまして、お答えは差し控えさせていただきます。

 その上で、あえて本件について申し上げれば、訴訟の段階で原告から新たに提出された証拠について、原告の供述の信用性を裏づけるものとして難民不認定処分を取り消す判決がなされたものと承知をいたしております。

本村委員 元々この難民認定の最初の段階で正確な判断ができるようにすることが必要だというふうに思うんですけれども、それができていなかったということですね。

西山政府参考人 繰り返しになりますが、訴訟の段階で原告から新たに提出された証拠について、原告の供述の信用性を裏づけるものとして判決がなされたものと承知しておりまして、私どもが処分した当時につきまして、その処分が間違っていたとは考えておりません。

本村委員 難民認定のこの仕組み自体が全く不十分だということはもう明らかだというふうに思います。一人もこれは間違ってはいけないんです。帰国させてしまったら、殺されてしまったり、投獄されてしまうから、一人も間違ってはいけないんです。でも、入管庁のこの難民認定、誤ったということでございます。

 これは一人も間違ってはいけないわけですけれども、難民条約第三十三条第一項の原則は守るというふうに言いますけれども、その国、地域の状況の調査の仕組み上、その保証はどこにあるのか、お示しをいただきたいと思います。

西山政府参考人 出身国情報等に関する情報に関しましては、収集及び分析を専門に行う職員を入管庁内に配置し、外務省、国連難民高等弁務官事務所等の関係機関と適切に連携しながら、その充実を図っており、保護すべき者を適切に保護できるよう、最新の情報を積極的に収集いたしております。

 その上で、難民認定手続においては、これらの情報を十分踏まえて、申請者ごとに審査を行い、認定すべき者を適切に判断している上、難民と認定しない場合であっても、本国情勢等を踏まえ、人道上保護すべき者には在留を認めております。

 このように、保護すべき者を確実に保護していることに加えて、現行の入管法第五十三条第三項一号は難民条約第三十三条第一項に規定する領域の属する国への送還を禁止する規定も盛り込んでおり、ノン・ルフールマン原則に反する送還は行われないように担保されているところでございます。

本村委員 先ほどトルコのクルド人の方のお話をさせていただきましたけれども、なぜ、ドイツ、カナダ、アメリカと比べて、これだけ難民認定率、そして難民の数、違うんでしょうか。国連に問い合わせているとかいろいろ言いますけれども、何でこんなに違うんでしょうか。

西山政府参考人 難民認定は、そもそも申請者ごとにその申請内容を審査した上で、難民条約の定義に基づき、難民と認定すべき方を個別に判断するものであり、難民認定者数は、このように個別に判断された結果の積み重ねでありますことから、難民認定率によりまして我が国と他国とを単純に比較することは相当でないと考えております。

 その上で、我が国と他国で難民認定率が異なる理由として、多くの難民が発生する地域と近接しているかや、そうした地域から渡航がしやすいかといった事情に加えて、言語や文化の共通性や類似性、同じ事情により庇護されている人々のコミュニティーの規模等の観点から、庇護を求める方の最終目的地としやすいかなど、他国とは前提となる事情が異なっている点にあると考えております。

本村委員 お伺いしますけれども、クルド語を話すと暴力を振るわれる。こういう状況は、これは難民として認められないんでしょうか。安全に暮らすことができない、自分のアイデンティティーを認められない。それを保護する十分な制度などがない場合、これは何らかの救済を図るべきじゃないですか。

西山政府参考人 先ほども申し上げましたが、難民の認定は、申請者ごとにその申請内容を審査した上で、難民条約の定義に基づき、難民と認定すべき者かを個別に判断するものであるため、お尋ねの場合に迫害に該当するかについて、一概にお答えすることは困難でございます。

 その上で、今般、入管庁において策定した難民該当性判断の手引において、迫害について、殺害や不当な拘禁などがその典型であるが、その他の人権の重大な侵害や差別的措置、例えば生活手段の剥奪や精神に対する暴力等も迫害を構成し得るとしているほか、それ自体としては迫害に当たるとまでは言えない不利益等でも、それらが合わさった結果として迫害を構成する場合があるなどと整理しており、こうした考え方に基づき、個別に申請者の事情を踏まえながら判断しているところでございます。

本村委員 事情があるにもかかわらず、例えばトルコ出身のクルド人の方は認められていないわけですよ、ほとんど。やはり、この日本の難民認定の仕組み自体が本当におかしい、概念自体がおかしい、捉え方が狭過ぎるというふうに思っております。

 入管法の五十三条三項についてですけれども、先ほど来御議論がありました、この入管法第五十三条三項は送還先について書かれているわけですけれども、退去強制を受ける人の送還先として指定される国に、難民条約三十三条第一項に規定される迫害を受けるおそれのある国などを含めてはならないというふうに規定をしております。

 これも先ほど来御議論があるわけですけれども、特に、法案の第六十一条の二の九第四項二号の新設のところなんですけれども、一回目の難民申請中の一次審査中の結果を待たずに結局送還が可能ということになっているわけです。結局、その方が本当に迫害を受けるおそれがある国などを含めて送還されないかどうか、これは審査される根拠が五十三条の三項のみというふうになってしまうというふうに思います。

 UNHCR、難民高等弁務官事務所は、この法案によって送還停止効の解除がなされるのであれば、なおさら第五十三条三項の適用の可否の審査をする又は再審査をする明確な手続を設置するほか、そのほかの措置を求めております。

 しかし、この現行入管法にも、入管法第五十三条三項の審査を、誰が、退去強制手続のいつの段階で審査をするのかという条文は見当たらない、法案にも見当たらない。退去強制令書が、送還先が入管法の五十三条三項の各号に該当するかどうかについての審査は、誰によって、いつ、どのように行われるのか。答弁では、大口議員に対して、退去強制手続において主任審査官が審査するというふうにおっしゃっておりました。

 送還停止効が外される場合に最後のとりでとなるのが、この入管法の五十三条三項の部分ということになってまいります。そうしますと、最後のとりででございますから、通常の手続ではなく、主任審査官だけではなく、ウガンダのあの弁護士さんですね、ああいう方ですとか、日弁連の方とか、UNHCRさんですとか、あるいは難民の方々を支援する団体の方ですとか、そういう特別な手続が必要だというふうに、そういう方々の意見を聞く特別な手続が必要だというふうに思いますけれども、答弁を、これは大臣に通告をしてありますので、大臣、お願いしたいと思います。

齋藤(健)国務大臣 御指摘は、送還停止効の例外に該当する者は、難民等認定申請中であってもその法的地位の安定を図る必要がない者であるから、その該当性については速やかに判断した上で迅速な送還を実現することが必要なため、第三者が関与する形にはなっていないということであります。

 他方、送還停止効の例外に該当する者であっても、既になされた退去強制令書発付処分に対する行政訴訟を提起し、あわせて、退去強制令書の送還部分の執行停止を求め、裁判所が決定すれば、法律上、送還は停止するため、保護に欠けるところはありません。

本村委員 だから主任審査官でいいというんですか。だけでいいと、その判断だけでいいということですか。

齋藤(健)国務大臣 よく私の答弁を聞いていただきたいと思うんですけれども。他方、そういう送還停止効の例外に該当する者であっても、既になされた退去強制令書発付処分に対する行政訴訟を提起し、あわせて、退去強制令書の送還部分の執行停止を求め、裁判所が決定すれば、法律上、送還は停止されることになると。

 その上で、こういう人がどういう人かというと、難民認定申請中であってもその法的地位の安定を図る必要がない者であるから、その該当性については速やかに判断した上で迅速な送還を実現することが必要である、そういう判断をしているということであります。

本村委員 最後のとりでがこの五十三条三項になってまいります。やはり、特別な手続で、絶対に一人も間違った判断をすることがないようにするべきだというふうに思います。だから、一人も間違えないような体制にしていただきたいというふうに思っております。

 それで、難民認定申請後の手続についてなんですけれども、裁判で認定されるケースがあるというのは先ほど申し上げました。先ほど来、野党の、立憲民主党の皆さんからも様々御議論ありますけれども、難民審査参与員の判断がどうなのかということや、難民調査官の調査はどうだったのかということも含めて、一回目の申請からインタビュー、あるいは、審査が行政手続として公平かつ適切に行われているのか、現在の難民の認定率に問題がないのか、そのほか人道上配慮するべき事由がないのか、含めて、十分にこうしたケースを検証するべきだというふうに考えますけれども、大臣、いかがでしょうか。

齋藤(健)国務大臣 難民認定申請の性質上、命からがら出身国から逃れてきた申請者の中には、自身の申立てを裏づける客観的な証拠資料を持っていない場合も少なくない、そう思っています。

 そこで、難民認定審査におきましては、申請者から提出された申請書や証拠関係資料だけを参考にするのではなく、難民調査官が事実の調査として申請者の事情聴取を丁寧に行い、申請者の供述について、本国の一般情勢に関する情報を活用しつつ、その信憑性を的確に評価することが公平な判断につながるものと考えていますので、何もその一枚の資料だけで判断をしているわけではありません。

 また、通訳人の性別や申請者の健康状態に留意するなど、申請者に対して配慮しながら適切にインタビューを行っているところであります。

 また、出身国情報等に関する情報に関しましては、収集及び分析を専門に行う職員を入管庁内に配置し、外務省、国連難民高等弁務官事務所等の関係機関と適切に連携しながら、その充実化を図ってきておりまして、保護すべき者を適切に保護できるよう、最新の情報を積極的に収集しているところでもございます。

 このように、難民認定手続におきましては、これらの情報を十分踏まえて、申請者ごとに審査を行った上、認定すべき者を適切に判断している上、難民と認定しない場合であっても、本国情勢等を踏まえ、人道上保護すべき者には在留を認めているところであります。

 難民とは認定しなかったものの人道上の配慮を理由に在留を認めた者の合計につきましては、令和四年は約二九・八%ということになっているところでございます。

本村委員 多分違うところを読んでみえるのかなというふうに思うんですけれども、今まで間違った判断をしてきたことがあると、法務大臣、出入国在留管理庁の難民認定の審査が。それを、間違った部分を十分検証するべきだという質問なんですけれども。

齋藤(健)国務大臣 私が今申し上げたのは、公平かつ適正に審査をしているので、検証は不要であるということであります。

本村委員 間違っていたにもかかわらず、物すごく傲慢な対応だというふうに思います。それで信用しろと。信用できるはずがないじゃないですか。

 やはり、今まで間違ってきたことはしっかりと検証をして、絶対に一人も間違った判断をさせないという立場で、大臣、やっていただきたいと思いますけれども。

齋藤(健)国務大臣 その点は、間違った判断をしないように全力を尽くすということは当然のことであります。

本村委員 是非検証していただきたいと思います。

 次に、監理措置制度についてお伺いをしたいというふうに思います。

 収監か、あるいは監理措置なのかという点で、資料も一のところで全体像をお示ししたつもりなんですけれども、資料を出させていただきました。収容か監理措置か、これを決めるのが主任審査官だと。それは、入管の局長ですとか次長ですとか、そういうレベルの方だというふうに思います。

 先ほど来議論がありましたように、支援者の方々が出しておられます、監理措置を評価しないが九二%、そして、約九〇%の方が監理人になれない、なりたくないと。私は、この数字は、やはり、これまでずっと困難を抱えた外国の方々を支援をされている方々の数字として、重く受け止めなければいけないというふうに思っております。そういう方々が、約九〇%、監理人になれない、なりたくないと回答しているということは、重い重い数字だというふうに思っております。

 国際人権基準をよく理解した監理人をどう確保するつもりなんでしょうか。今まで頑張ってこられた方がなかなか受けることが困難だというふうに言っている中で、どういうふうに確保をしていくつもりなんでしょうか。

西山政府参考人 監理措置制度を適切に運用していくためには、その担い手となる方々に対して、制度について広く御理解をいただくことが重要であり、引き続き、丁寧に説明を尽くすとともに、運用上の取組も含め、適切に対処してまいりたいと考えております。

本村委員 監理人がいなければ、結局収容ということになってまいります。

 それで、監理人になる要件についてお示しをいただきたいんですけれども、入国警備官が作る退去計画がセットでついてくるのではないかと。監理人は、非正規滞在の方の退去計画が分かった上で監理人になるのか、退去とセットなのか、その点も伺いたいと思います、要件について。

西山政府参考人 監理人につきましては、監理人の責務を理解していること、任務遂行の能力を考慮して適当と認められることなどの要件を満たした者の中から選定することとしております。

 なお、委員から先ほど計画に関しての御説明がありましたが、そのような事実はございません。

本村委員 この退去計画については、その遂行がどうなのかというのを三か月ごとにチェックをされるということなんですけれども、そのことに関しまして、監理人は情報提供をしなければいけないということになるんでしょうか。

西山政府参考人 規定上も運用上も、そのようなことは想定されておりません。

本村委員 この監理人制度なんですけれども、入口規制が余りないものですから、悪いことを考える人が監理人になってしまうのではないかというおそれもあります。監理人がいなければ収容ということになってしまうため、監理人と対象外国人の方は、精神的、経済的、身体的、心理的に支配と被支配の関係になりやすいのではないかというふうに考えますけれども、その点、これは大臣に通告をしております。

西山政府参考人 監理人になる方として、例えば、当該外国人と同居する家族や親族、当該外国人と緊密な関係にある友人や知人、適法に就労していたときの元雇用主など、当該外国人にとって身近な人を基本的に想定しております。

 このほか、場合によっては、入管実務上、様々な手続について相談等の対応をされている行政書士や民間の支援団体関係者、さらには弁護士などが監理人となることも考えられるところでございます。

 もっとも、そのような監理人を選定することができない場合もあり得ることから、監理措置制度の円滑かつ適切な運用のためには、悪質なブローカー等を監理人に選定しないことが重要でございます。

 監理人の選定に当たりましては、入管庁が把握し又は関係機関から入手する情報等により、監理人としての任務の遂行能力を厳格に審査することといたしております。

 一般論として言えば、例えば、監理人になるに当たり不当に高額な報酬等を要求している者を把握した場合には、そのような者を監理人として選定することはございません。

 また、監理人に任務を継続させることが適当でない場合には、監理人の選定の取消しが可能でございます。

 こうした厳格な審査等により、適切な監理人を選定してまいりたいというふうに考えております。

伊藤委員長 本村さん、時刻が参りました。

本村委員 はい。

 監理人がいなければ収容となってしまうために、やはり何か人権侵害があったときも声を上げづらい状況にあると思います。この法案の中には分厚い相談機関ですとか分厚い救済機関がございません。欠陥だというふうに思います。その点も含めて、改めてまた質疑をさせていただきたいと思います。

 ありがとうございました。

伊藤委員長 次回は、来る二十一日金曜日午前八時五十分理事会、午前九時委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。

    午後五時二分散会


このページのトップに戻る
衆議院
〒100-0014 東京都千代田区永田町1-7-1
電話(代表)03-3581-5111
案内図

Copyright © Shugiin All Rights Reserved.