衆議院

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第12号 令和5年4月21日(金曜日)

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令和五年四月二十一日(金曜日)

    午前九時開議

 出席委員

   委員長 伊藤 忠彦君

   理事 谷川 とむ君 理事 藤原  崇君

   理事 牧原 秀樹君 理事 宮崎 政久君

   理事 鎌田さゆり君 理事 寺田  学君

   理事 沢田  良君 理事 大口 善徳君

      東  国幹君    五十嵐 清君

      石橋林太郎君    岩田 和親君

      上杉謙太郎君    奥野 信亮君

      加藤 竜祥君    熊田 裕通君

      鈴木 馨祐君    田所 嘉徳君

      高見 康裕君    土田  慎君

      鳩山 二郎君    平口  洋君

      深澤 陽一君    務台 俊介君

      山下 貴司君   山本ともひろ君

      鈴木 庸介君    中川 正春君

      山田 勝彦君    吉田はるみ君

      米山 隆一君    阿部 弘樹君

      漆間 譲司君    日下 正喜君

      平林  晃君    鈴木 義弘君

      本村 伸子君

    …………………………………

   法務大臣         齋藤  健君

   法務大臣政務官      高見 康裕君

   政府参考人

   (法務省大臣官房司法法制部長)          竹内  努君

   政府参考人

   (出入国在留管理庁次長) 西山 卓爾君

   参考人

   (慶應義塾大学名誉教授)

   (弁護士)        安冨  潔君

   参考人

   (東洋英和女学院大学名誉教授)          滝澤 三郎君

   参考人

   (一橋大学大学院社会学研究科准教授)

   (ロンドン大学難民法イニシアチブ リサーチ・アフィリエイト)       橋本 直子君

   参考人

   (元東京出入国在留管理局長)           福山  宏君

   法務委員会専門員     白川 弘基君

    ―――――――――――――

委員の異動

四月二十一日

 辞任         補欠選任

  岩田 和親君     務台 俊介君

  熊田 裕通君     山本ともひろ君

  鳩山 二郎君     土田  慎君

  深澤 陽一君     上杉謙太郎君

同日

 辞任         補欠選任

  上杉謙太郎君     深澤 陽一君

  土田  慎君     鳩山 二郎君

  務台 俊介君     岩田 和親君

  山本ともひろ君    熊田 裕通君

    ―――――――――――――

四月二十日

 外国人住民基本法と人種差別撤廃基本法の制定に関する請願(阿部知子君紹介)(第八四一号)

は本委員会に付託された。

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 政府参考人出頭要求に関する件

 出入国管理及び難民認定法及び日本国との平和条約に基づき日本の国籍を離脱した者等の出入国管理に関する特例法の一部を改正する法律案(内閣提出第四八号)


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     ――――◇―――――

伊藤委員長 これより会議を開きます。

 内閣提出、出入国管理及び難民認定法及び日本国との平和条約に基づき日本の国籍を離脱した者等の出入国管理に関する特例法の一部を改正する法律案を議題といたします。

 本日は、本案審査のため、参考人として、慶應義塾大学名誉教授、弁護士安冨潔君、東洋英和女学院大学名誉教授滝澤三郎君、一橋大学大学院社会学研究科准教授、ロンドン大学難民法イニシアチブ リサーチ・アフィリエイト橋本直子君及び元東京出入国在留管理局長福山宏君、以上四名の方々に御出席をいただいております。

 この際、参考人各位に委員会を代表して一言御挨拶を申し上げます。

 本日は、御多用の中、御出席を賜りまして、誠にありがとうございます。それぞれのお立場から是非忌憚のない御意見を賜れれば幸いと存じます。

 次に、議事の順序について申し上げます。

 まず、安冨参考人、滝澤参考人、橋本参考人、福山参考人の順に、それぞれ十五分程度御意見をお述べいただき、その後、委員の質疑に対してお答えをいただきたいと存じます。

 なお、御発言の際はその都度委員長の許可を得て発言していただくようお願いいたします。また、参考人から委員に対して質疑をすることはできないことになっておりますので、御了承願います。

 それでは、まず安冨参考人にお願いいたします。

安冨参考人 御紹介をいただきました安冨でございます。どうぞよろしくお願いいたします。

 この度は、参考人として意見を述べる機会を頂戴いたしましたこと、誠に光栄に存ずる次第でございます。

 私は、慶應義塾大学名誉教授でございますが、法務大臣の私的懇談会である第七次出入国管理政策懇談会の座長代理を務めましたときに、送還忌避、長期収容問題の解決策を検討するために令和元年十月に政策懇談会の下に設置されました収容・送還に関する専門部会の部会長を務めておりました。

 今回の入管法等改正法案は、現行入管法下で生じている送還忌避、長期収容問題の解決などを目的として、収容・送還に関する専門部会の提言を受けて立案されたものと承知しております。

 専門部会では、私のほかに、様々な分野から選ばれた有識者である九名の委員に加え、当時のUNHCR駐日事務所副代表にもオブザーバーとして御参加いただき、幅広い観点から御議論をいただいた上で、令和二年六月に、送還忌避・長期収容問題の解決に向けた提言を取りまとめました。

 専門部会では、基本的な考え方として、送還すべき者と在留を認め又は庇護すべき者を適切に判別すべきであること、送還すべき者については送還を促進すべきであること、長期収容を解消するための方策を講ずるべきであること、そして、被収容者の処遇は人権に配慮して適正に行うこと、この四点について委員の間で認識が共有されました。

 本日は、時間の関係もありまして、専門部会における議論の全てを御紹介することはかないません。主に、送還すべき者についての送還の促進と長期収容を解消するための方策に係る議論を中心に御紹介させていただきます。

 専門部会では、送還すべき者の送還促進のため、現行法下で問題となっている送還回避を目的とする難民認定申請に対処するための措置について議論がなされました。

 現行法上、難民認定申請を行った場合、申請の理由や回数を問わず一律に送還が停止されることから、送還忌避者の中には、その手段として繰り返し難民認定申請を行う者が相当数存在しており、速やかな送還を実現するに当たって重大な支障となっております。

 そこで、専門部会では、このいわゆる送還停止効に一定の例外を設けることを提言するとともに、難民条約上、送還が禁止されている国への送還を行わないことに十分配慮すべきことを併せて提言しました。

 改正法案では、専門部会の提言を踏まえ、難民認定申請中の送還停止効に例外を設けることとしています。

 具体的には、三回目以降の難民等認定申請者、無期若しくは三年以上の実刑に処せられた者、外国人テロリスト等は、難民等の認定申請中であっても送還することを可能としています。

 他方で、立法論としては、二回目の申請者についても送還停止効の例外とし、あるいは再申請自体を制限することもあり得るところではありますが、法案では、二回目の申請者については送還停止効を認めています。そして、三回目以降の申請者についても、難民等の認定を行うべき相当の理由がある資料を提出した場合には、送還を停止するということとしています。

 このような送還停止効の例外は、送還すべき者を速やかに送還する必要性と難民等認定申請者などの法的地位の安定を図る必要性のバランスを取る制度となっており、妥当なものと考えます。

 専門部会では、送還すべき者の送還促進のため、我が国から退去しない行為に対する罰則の創設についても議論いたしました。

 送還を忌避する者の送還を実施するには、送還先国の協力が必要でありますが、限られた国ではありますが、送還忌避者の受入れを拒否する国があり、また、送還忌避者が、送還に使用する民間航空機の中で大声を出すなどの送還妨害行為をすることにより搭乗を拒否され、送還の実現に至らない事例というものも存在いたします。現行法下では、そのような送還を忌避する者については、送還を遂げることが不可能又は著しく困難であります。

 そこで、専門部会では、こうした現行法下の課題を踏まえて、正当な理由なく送還を拒む者に対し、一定の期日までに我が国から退去することを義務づける命令を発し、この命令違反に対する罰則を設けることが相当である旨の意見が述べられ、多くの意見がこれを支持いたしました。

 他方で、退去が困難な事情は様々であります。命令や罰則の対象範囲を適切に定めることが困難であるなどと反対する意見や、退去しない者に一律に罰則が適用される制度は好ましくないなどとする指摘もございました。

 そこで、専門部会としては、この反対意見があったことを明記した上で、多数の委員が支持した内容として、退去の命令制度やその違反に対する罰則の創設を検討することを提言するとともに、命令や罰則の対象者を適切に限定することも提言いたしました。

 これを踏まえて、改正法案では、退去強制を受ける者を送還先に送還することが困難である場合に、その者の意見を聞いた上で、相当と認めるときは、その者に対し、我が国からの退去の命令を発して退去を義務づけることを可能とし、この命令に違反した場合の罰則が設けられています。

 加えて、改正法案では、命令や罰則の対象者を適切に限定するという提言における指摘を踏まえまして、退去の命令を発することができるのは、退去の意思がない自国民の送還に協力しない国を送還先とする者、送還を妨害したことがあり、再び同様の行為に及ぶおそれがある者のいずれかにより送還が困難な場合に限られており、命令の対象者が適切に限定されております。

 また、難民等の認定申請により送還が停止される場合や、退去強制の処分の効力に関する訴訟が係属し、かつ、当該訴訟で執行停止決定が裁判所によりなされた場合などには、命令の効力が停止するということとされています。

 このように、退去の命令制度は、専門部会の提言を踏まえ、命令や罰則の対象者が厳格に限定され、適切な制度となっていると考えます。

 なお、この退去命令違反の罪は、送還忌避罪などと、あたかも送還忌避者であればおよそ処罰されるかのような誤解を生じさせかねない形で批判が展開されているようですが、実際の命令や罰則の対象範囲は、今申し上げたとおり限定されたものとなっていますので、正しい前提に基づいて御議論をいただくことが重要であるというふうに考えます。

 次に、収容の長期化を解決するための施策について申し上げます。

 現行法では、退去強制令書の発付を受けた者は原則として送還可能のときまで収容することとされており、送還を忌避する者について収容が長期化しかねないということが問題となっております。

 収容の長期化は、被収容者の健康上に問題を生じさせたり、仮放免許可を求めて集団で拒食するなどの収容施設内において生ずる様々な問題の原因となるだけでなく、現場の職員が処遇業務を行う上でも大きな負担となっています。

 そこで、専門部会では、こうした収容をめぐる実情を踏まえて、新たな収容代替措置、例えば、第三者の支援などにより、当該外国人が違法な就労に及ぶことなく生活手段を確保することが可能となることを前提に、逃亡防止や出頭確保を図りつつ、収容施設外で生活することを認める措置の導入を検討すべきことを提言いたしました。

 改正法案では、この提言を踏まえまして、収容に代わる監理措置制度を創設するとしております。

 具体的には、逃亡等のおそれや本人が収容により受ける不利益の程度等を考慮して、監理人の監理の下で、収容せずに退去強制手続を進めるという措置になっております。

 監理措置制度では、監理措置に付される者が監理措置条件に違反して逃亡等した場合の罰則の整備や、監理人に、必要な場合に限り主任審査官の求めに応じて報告することなどとしていますが、これらは監理措置の目的に照らして必要不可欠であると考えます。

 監理措置に付される者は、強制退去事由に該当しており、基本的に我が国から退去しなければならない者であります。監理措置により収容しないで手続を進めた結果、その者が逃亡するなどし、送還ができなくなるということは、公正な出入国在留管理という入管法の目的に照らし、許容できるものではありません。

 収容の長期化を解消しつつ、収容施設外における外国人について、適切な在留管理を行い、逃亡等を防止するため、改正法案により創設される監理措置制度は必要な仕組みであると考えます。

 以上のほか、専門部会では、収容制度の在り方についても議論いたしました。一部の委員からは、外国の立法例などを踏まえ、退去強制令書による収容について、収容期間の上限を定めることを提案する意見が示されました。

 しかし、これに対しましては、長期収容を可能な限り解消するという問題意識自体は異論はありませんでしたが、上限を定めると、逃亡のおそれが否定できない者であっても収容を解かれることになり、確実な送還の実現が困難になる、必ずしも諸外国の立法例が一致を見ているわけではなく、国際標準と言える状況にはないことなどから、その提案に従って制度を導入することは困難であるという意見が多数となりました。

 また、一部の委員からは、収容の開始前又は継続中に司法審査を経ることを提案するという意見も示されました。

 しかし、これについても、現行法上、退去強制令書は行政手続として慎重な事前の手続を経て発付されるものであり、事後的にも行政訴訟制度による司法審査の機会が確保されており、事前の司法審査の導入が必要と考えることは困難であること、退去強制令書による収容は、円滑な送還の確保及び在留活動の禁止を目的としてなされるものであり、刑事手続における被疑者、被告人の身柄拘束に求められる要件がそのまま妥当するものではないこと、必ずしも諸外国の立法例が一致を見ているわけではなく、事前の司法審査などを導入することが国際標準と言える状況にはないことなどを理由に、提案に従って制度を導入することは困難であるとする意見が多数となりました。

 そこで、専門部会では、収容期間の上限や事前の司法審査の導入を提案する意見が一部の委員から示されたことを明記しつつ、多数の委員の支持があった内容として、一定期間を超えて収容を継続する場合にその要否を吟味する仕組みを設けることなど、行政手続の一層の適正確保を図るための方策を検討することを提言いたしました。

 一定期間を超えて収容を継続する場合にその要否を吟味するという仕組みは、令和三年の法案では特段規定が設けられていませんでした。しかし、今回の改正法案では、新たに、退去のための計画として三か月ごとにその進捗状況を確認して、収容の要否を必要的に見直し、監理措置に移行する仕組みが導入されており、この点は、提言を一歩前に進めていただいたものと評価しております。

 このほか、改正法案では、第六次出入国在留管理政策懇談会の下に置かれた難民認定制度に関する専門部会の提言を踏まえ、補完的保護対象者の認定制度を創設することとしています。

 補完的保護対象者の認定制度は、昨年来続くロシアによるウクライナ侵攻を受けて、いわゆる紛争避難民を保護する制度として社会的にも注目されるようになっておりますが、紛争避難民は、補完的保護対象者ではなく、そもそも難民条約上の難民として保護すべきという御主張もございます。

 この点につきましては、私は、確かに、事情によっては難民条約上の難民の定義を満たす場合があること自体は否定いたしませんが、紛争避難民は直ちに難民条約上の難民の定義を満たすとは言えないと考えており、そのため、補完的保護対象者の認定制度を創設し、この制度により紛争避難民を保護することの意義は大きいと考えております。

 改正法案は、送還停止効の例外規定や罰則つきの退去命令制度など、送還を促進するための施策が注目を集めがちですが、今御説明申し上げました補完的保護対象者の認定制度の創設や、本日は時間の都合で御紹介できませんでしたけれども、在留特別許可制度について、考慮事情を明示する、そしてまた申請手続を創設するなどの手続保障の充実も図られており、保護すべき者を確実に保護するための施策を含んでいて、全体としてバランスの取れた法案であると評価しております。

 出入国在留管理行政というのは、他の様々な行政分野と関連し、我が国の在り方に関わる重要な国家作用の一つであると言っても過言ではありません。今回の改正法案により、我が国の出入国在留管理行政がより一層よいものとなるよう、充実した御審議をお願いして、私の意見とさせていただきます。

 どうもありがとうございました。(拍手)

伊藤委員長 ありがとうございました。

 次に、滝澤参考人にお願いいたします。

滝澤参考人 この度は、参考人として意見を述べる機会をいただき、誠に光栄に存じます。

 私は、国連パレスチナ難民機関に始まり、国連難民高等弁務官事務所、UNHCRの本部財務局長、それから駐日代表を務めるなど、二十八年間にわたって国際機関で働きました。その後、大学で移民、難民問題、特に日本の難民政策について研究する傍らで、第六次と第七次の出入国在留管理政策懇談会にも関わりました。

 本日は、こういった経験に基づいて、本改正案について、やや俯瞰的なコメントをさせていただきます。

 まず、国際的な難民の状況ですが、二〇一五年から、シリア人など百万人を超える移民、難民が欧州に流入し、いわゆる欧州難民危機が起きました。二〇一七年にはロヒンギャ難民問題、二〇二一年にはミャンマー国軍のクーデター、それからアフガニスタンのタリバン制圧によってたくさんの難民が出ました。昨年にはロシアのウクライナ侵略によって七百万人以上の避難民が出ました。このほかにも、世界各地で紛争が続き、移民や難民の数が一億人を超えるという人道危機が続いております。

 他方で、難民、避難民の流入が一挙に、時として無秩序に起きる中で、国家の安全保障上の懸念が受入れ国の政府や国民の間に広がり、欧州各国では極右政党が勢力を伸ばしました。先進国では難民を受け入れる政治的意思は低下し、難民締め出しの動きが強まっています。

 例えば、難民保護の先進国とみなされてきたイギリスは、ボートでフランスから不法入国した者が昨年は四万五千人を超え、政府は先月、これらの者の難民申請を認めず、出身国又はルワンダなど第三国に送還できるとする法案を議会に提出し、現在審議中です。

 最大の難民受入れ国であるアメリカでは、昨年半ばまでの一年間で、二百三十八万人に上る中南米諸国からの不法入国者が国境で拘束されました。彼らは難民申請も許されないまま国外退去となっています。

 ウクライナ避難民を七百万人以上受け入れたポーランドですけれども、北部のベラルーシとの国境では壁を造って、中東、アフリカからの移民、難民の流入を阻止しています。

 スウェーデンは、受け入れたシリア難民を本国に送還しようとしています。

 これらは難民条約のノン・ルフルマン原則の明確な違反です。このような先進国の難民排除の流れの中で、近年の日本は逆に難民、避難民の受入れに前向きです。

 今回の改正案の難民受入れに関する部分は、第六次出入国管理政策懇談会の下に設けられた難民認定制度に関する専門部会が二〇一四年に出した提言を反映しています。私もこの専門部会の委員でしたが、同専門部会は四つの提言をしました。提言の履行状況を見ていきましょう。

 第一の提言は、補完的保護の明確化による的確な庇護であり、それは補完的保護対象者という制度で今回の法案に組み入れられています。

 補完的保護とは、難民条約上の難民には当たらないものの、紛争避難民など不特定多数に対する無差別暴力に直面した人々を保護することです。補完的保護の制度は、EU諸国、アメリカ、オーストラリア、カナダ、韓国など数十か国に広まっています。今回、法改正がなされれば、ウクライナ避難民を始めとして、紛争地域からの避難民などが救済されることになります。

 第二の提言は、難民該当性に係る判断要素の明確化です。この提案は、入管庁がUNHCRの難民認定ハンドブックや先進国の事例などを調査して先月に公表した難民該当性判断の手引によって実現されました。

 同手引は、迫害の定義に、人権の重大な侵害や差別的措置、例えば生活手段の剥奪や精神に対する暴力も迫害を構成し得ると明示されている点や、性的マイノリティーであることを理由とした迫害も明記するなど、多様化する迫害の形態に対応しており、難民認定判断の要素は先進国と並ぶようになります。

 手引は、日本の難民認定制度の基盤をなすものであり、百名を超える難民調査官の判断の一貫性、透明性、信頼性の向上に役立ちます。それは申請者による不服申立てや裁判での根拠になるほか、ホームページで英語でも閲覧が可能なため、これから日本で庇護を求めようとする人にとっては予見可能性を増し、今後、難民認定制度の濫用、誤用は減り、また、救われるべき者は救われるようになることでしょう。

 第三の提言は、手続の明確化を通した適正迅速な難民認定であり、その中心は難民制度の濫用、誤用対策です。

 そもそも難民認定制度には、ただ乗り問題、つまり難民でない者が難民制度を利用する問題があります。国際的にも、就労目的の経済移民によって難民認定制度が利用され、難民の迅速な保護が難しくなることは三十年ほど前から問題となり、UNHCRの執行委員会もこれを何度か取り上げてきました。

 この問題に対して、先進諸国は、複数回申請を制限する又は重大な前科者など公共の安全に危険がある者は送還するなどの方策を取っています。

 この点、今までの日本の手続は特異なものでした。理由がいかなるものであろうとも、前回と同じ内容であろうとも、何度でも難民申請ができました。さらに、二〇一〇年に難民認定申請から六か月後には就労を一律に認める運用が開始され、難民性が低いと思われる申請者が急増し、二〇一七年には二万人近くになりました。これは制度の運用に支障が出る結果となりました。

 その後、入管庁が就労を一律に認める運用を改めるなどした結果、濫用、誤用的申請は減り、申請総数も四千件ほどになるなど、制度の正常化が進んでいます。

 しかし、難民不認定とされても送還停止効によって送還忌避をする者は逆に増え続け、今日では四千二百人になるなど、残された課題があります。現行法の送還停止効には例外がなく、殺人などの重罪を犯した者であっても退去を強制できないといった定めは他の国に例を見ないものですし、また、遵法精神に富む多くの日本国民には納得のいかないものでしょう。

 私は、難民認定制度を申請者の人権保障と国家の安全保障のバランスを取った適正なものとするため、送還停止効に例外を設けることは必要と考えます。ただし、例外の適用は、真にやむを得ない場合にのみ、慎重になされるべきことは言うまでもありません。

 第四の提言は、認定実務に携わる者の専門性の向上です。

 制度、手続が効率的、効果的に運用できるか否かは、運用を担うスタッフの人権意識、難民認定の知識と経験、そして出身国情報の収集、分析体制にかかります。この点は、入管庁は、UNHCRの協力も得て、研修体制を年々充実しつつあると理解しています。

 このように、専門部会の四つの提言は実施されつつありますが、日本の難民受入れ数が少ない又は認定率が低いという指摘は今も続いています。これをどう考えるべきでしょうか。

 まず、日本に逃れてくる真の難民は多くありません。日本は、難民が多く発生する中東やアフリカ、中南米の国々から遠く離れており、日本までたどり着くには、航空運賃や生活費のみならず、パスポートやビザが必要で、空港でのチェックが厳しい今日、日本まで来るのは容易ではありません。

 例えば、今混乱の続くスーダンのハルツームから日本に逃げてくる又は来れる人はどのくらいいるでしょうか。さらに、内外メディアが日本は難民を受け入れない国といった報道を繰り返してきました。そのような評判を持つ日本を難民があえて選ぶ合理的理由は乏しいと考えます。難民には避難できる国が身近に幾つもあります。難民も逃げる国を選ぶのです。

 もちろん、日本にまで来ても、日本の難民認定制度の壁があります。それについては、まさに本委員会で今議論がなされているところでございます。このほか、国民の難民に対する姿勢も絡んでくるなど、難民受入れは極めて複雑な問題です。

 このような中でも、日本政府は昨年、ミャンマー、アフガニスタン、ウクライナからの難民や避難民を約一万三千五百人受け入れました、又は国内で庇護しました。これは、一九七八年から二〇〇五年までの二十八年間に受け入れられたインドシナ難民一万千三百十九人を上回ります。また、日本が二〇二一年までの四十四年間に受け入れた人々の総数が一万五千七百十七人であったことを見るならば、昨年の受入れ一万三千五百人は画期的であり、いわゆる日本の難民鎖国は終えんしたと言うべきでありましょう。

 では、難民認定率が一%以下という指摘はどうでしょうか。他国との比較のために、難民認定数を分子、その年の処理人数を分母とし、一次審査で比較しますと、二〇二二年でいえば、認定数が百八十七人、取下げを除いた処理人数が五千六百五ですので、認定率は三・三%となります。

 ただ、EU諸国では、補完的保護も分子に加えた数字を難民認定率としています。UNHCRはそれを庇護率と呼びます。昨年の日本では、本国事情などによる在留許可が千四百八十一件あり、実質的にはほとんどの者が補完的保護対象者となるので、これを入れて計算すると、庇護率は約三〇%になります。

 注意すべきは、昨年三月から受け入れられている二千二百三十八人のウクライナ避難民のほとんどや、ミャンマー特別措置によって特定活動資格で在留するミャンマー人の多くは難民認定申請をしていないため、庇護率の計算には入っていません。これらの人々を考慮するならば、昨年の庇護率は五〇%を超すでしょう。資料一を御覧ください。日本の難民認定率は一%以下というのは、今では誤りです。

 ちなみに、日本よりずっと高いと言われる欧米諸国の難民認定率については、国境で難民申請も許されないまま追放され、そういった数十万人の人々が入っていません。彼らは実質的には難民不認定とされたのであって、欧米諸国の本当の認定率は公表数字よりも低いと考えられます。

 次に、国際機関からの指摘について述べます。

 UNHCR駐日事務所は、二〇二一年に提出された入管法改正案の送還停止効の例外規定に懸念を示しました。これをもって、改正案は国際法違反、国際人権法違反であるといった意見が見られましたが、これは正しいとは言えません。

 難民条約上、加盟国がどのような難民認定手続を採用するかについては各国に委ねられています。UNHCRの役割は条約の適用を監督することであって、この監督とは、情報収集や評価をして意見を述べることです。UNHCRは難民の定義や解釈について意見を述べることはできますが、加盟国が従わなければならない最終的な解釈権限はUNHCRにはありません。自由権規約委員会は解釈権限を有していますが、その解釈に基づく勧告についても同様に拘束力はありません。

 また、いわゆる国際基準というものは曖昧なものです。各国はそれぞれの事情に応じて国内法を定めており、全ての国を拘束する統一的な国際基準はありません。また、仮にそのような国際基準があったとしても、さきに述べたように、主要先進国がそれを守っていません。日本の制度を評価するには、抽象的な国際基準だけでなく、各国の政策実行の実態も視野に入れた複眼的な評価が必要です。

 各国の難民政策は、難民の人権を中核に、国家の安全、経済的必要性、そして、重要ですが、社会の支持といった複数の事情に目を配りながら実施されます。資料二を御覧ください。

 難民政策は、具体的には、難民の受入れと、多数の難民を受け入れる途上国の負担を分担する資金協力の形を取ります。日本の資金協力について議論されることはほとんどありませんので、一言触れますと、日本は官民合わせてUNHCRに毎年二百億円近い資金協力を行い、ドナーランキングは四番前後にいます。この日本の資金によって、大ざっぱに言って三百万人近い難民や国内避難民が助けられています。資料三を御覧ください。

 このような日本の最近の難民政策は注目を集めています。日本に対して批判的だったUNHCRも、昨年十二月に来日したトリッグス副難民高等弁務官が日本の難民政策は大きく変わっていると再評価しています。資料四を御覧ください。

 また、難民研究の世界的権威であるオックスフォード大学難民研究所の所長、アレクサンダー・ベッツ博士も、先日、次のようなメッセージを私に送ってきました。日本は、今、難民政策において極めて重要な時期にある。日本国内での庇護へのアクセスを広げる一方で、海外での人道支援や開発支援を継続している。世界の難民制度が脅威にさらされ、改革を必要としている今、日本は重要な指導的役割を果たすことができると。

 最後になりますが、私がUNHCRに入って二十年、この間、日本の難民政策は非常に大きく変わりました。また、余談ですけれども、一九七六年から一年間、私は入管局にいました。四十七年前、先生方にはまだ生まれておられない方もいらっしゃると思います。その頃の入管局と今の入管庁はほとんど別の組織です。入管庁は大きく変わりました。

 今回の法改正は、日本的な、規律ある人道主義に基づくものと言えます。それは、効果的な国境管理ができず、難民や移民をめぐって政治的な分断が進む先進諸国にとって、一つの方向性を示すものと言うことができましょう。

 以上のような理由から、私は改正案に賛成いたします。

 御清聴ありがとうございました。(拍手)

伊藤委員長 ありがとうございました。

 次に、橋本参考人にお願いいたします。

橋本参考人 この度は、重要法案の参考人として招致していただき、光栄に存じております。

 私は、現在は一橋大学で教鞭を執っておりますけれども、以前は、外務省、UNHCR、IOM、国際移住機関の職員、また法務省入国者収容所等視察委員会の西日本委員、そして現在も難民審査参与員として、過去約二十五年間にわたり、国際難民法、庇護政策を中核的専門として、実務と研究の双方で研さんを積んでまいりました。

 それらを踏まえつつ、完全に個人的な見解として、今国会に再提出された入管法改正案について、具体的な修正案を時間的な制約もございますので三点に絞って提案させていただきます。配付資料も五点ございます。併せて御参照ください。

 一点目が、三回目以降の複数回申請者に対する送還停止効の解除の問題です。相当の理由がある資料を新たに提出していないと判断された三回目以降の申請者に対して直ちに送還停止効を外してしまうのではなく、代わりに迅速簡易手続を通じて難民申請を審査するのが、現時点では妥当ではないかと考えます。

 確かに、全く同じ状況、主張、証拠に基づいて何度でも申請できるというのが一般的な法原則に照らしておかしいという指摘は分かります。けれども、日本の難民認定基準が諸外国と比べて大変厳しい、だから条約上の難民が日本では保護されていない危険がある、また、複数回申請後に裁判を経て難民認定された者がいるというのも事実です。

 実は、私は、難民該当性に関する規範的要素の明確化を通じて、もし日本の難民認定基準が大幅に見直される、改善されるのであれば、複数回申請者で新たな事情が一切ない者に対しては、そもそも申請自体を受理しないこともやむを得ないのかもしれないと先月までは考えておりました。そのような可能性も視野に入れて、難民審査参与員の一人として、明確化作業には多くのコメントを提出させていただきました。

 去る三月二十四日に公表された難民該当性判断の手引を拝見したところ、確かに、入管庁による解釈が明確になった、部分的には改善されたところもあります。しかし、法務大臣がおっしゃったとおり、従来の解釈を大幅に変更、緩和するものではありません。特に、難民申請審査上、肝となる、迫害のおそれの概念について、難民条約の解釈としては不適切、不正確と私は思う点がまだ幾つかあります。

 複数回申請者の排除と難民認定基準の見直しはセットで行われなければなりません。現状においては、送還停止効を解除するのではなく、迅速簡易手続を導入するのが適切と考えます。

 なお、迅速簡易手続については、EUの手続指令でも既に十年前から導入されており、また、UNHCRが二〇二一年四月に公表した旧法案に対する見解においても、一定の条件下で許容されています。また、入管庁御自身も、二〇一八年から、難民申請書類を受理した直後の振り分け作業において、ある意味で実質的に迅速手続を既に実施しています。したがって、全く新たな手続を提案するものではありません。

 確かに、迅速簡易手続の導入では、送還停止の対象となる難民認定申請期間が短くなるだけで、必ずしも出国、帰国につながらない、根本的解決にならないという反対意見も出るでしょう。

 確かに、原則論に立ち返れば、在留資格のない外国籍者で、本国に迫害や拷問等、また強制失踪のおそれも一切なく、さらに、日本での在留を特別に認めるべき人道的事情も全くない方については、速やかに帰っていただくのが原則です。実際、入管庁の資料でも、退去強制令書が発付された方のうち約九割は自発的に自費で出国しています。

 と同時に、日本での生活が長くなり帰国後の生活が心配で帰国に踏み切れない方や、そもそも帰国費用が賄えない人もいます。

 非正規滞在者は強制送還しろと威勢よく唱えるのは簡単ですけれども、そう唱える方々は、日本政府が物理的、強制的に退去強制を執行する際の費用は、日本の納税者、外国籍を含めてですね、納税者の税金で賄われていることを御存じなのでしょうか。

 税金を使っての強制送還者や被収容者をできる限り減らすために、手前みそでございますけれども、私が国際移住機関勤務中に、当時の入国管理局警備課の方々との丁寧な協議に基づき、自主的帰国支援・社会復帰事業というのを立ち上げました。この事業も種々の批判があることは承知しておりますけれども、ヨーロッパ諸国では既に一九七〇年代から実施されており、世界では毎年約五万人以上の方々がこの形で穏便かつ比較的安価に帰国しています。

 要するに、難民認定基準がしっかりと見直されるまでは、送還停止の解除ではなく、迅速簡易手続を導入し、その間に自主的帰国支援を使って自発的に帰っていただくのが、日本政府にとっても、納税者にとっても、御本人にとっても最も合理的な方策と考えます。

 二点目が、犯罪者や入管法二十四条の幾つかの条項に該当する疑いがある方に対する送還停止効の解除です。

 この条項は、難民条約三十三条二項、つまりノン・ルフールマン原則の例外規定を国内で実施することを可能にする趣旨と理解します。難民条約三十三条二項は、実際に迫害を受けるおそれがある方、命の危険が待ち受ける者ですら送還を可能にしてしまう条文ですから、その趣旨に鑑みて極めて限定的に解釈することが重要です。配付資料二を御覧いただけると、実際、諸外国の法令でも極めて限定的な規定となっていることをお分かりいただけると思います。

 ところが、今回の法案では、無期若しくは三年以上の拘禁刑全てとしており、日本の刑法では、通貨偽造罪、詔書偽造罪、虚偽詔書作成罪、虚偽詔書行使罪なども入ってきてしまい、それらは難民条約三十三条二項に言う特に重大な犯罪とは言えません。

 よって、下段に、かつ本邦の社会にとって危険な存在となった者として法務大臣が認定する者と限定することにより、難民条約三十三条二項の趣旨を直接的に反映させるとともに、配付資料にもありますとおり、他のG7諸国などの事例を参考にすることを提案いたします。

 また、入管法二十四条四号のオ、ワ、カのうち、ワには、「密接な関係を有する」という曖昧な文言が含まれており、また、カには、単なる印刷物の頒布や展示なども入っています。

 例えば、余り日本社会に慣れていない難民がだまされて好ましくない集団の一員と友人関係になってしまうことや、日本語がまだ不自由な難民が内容を理解せずチラシ配りのアルバイトをしてしまうこともあるでしょう。そのような間接的関与や軽微な活動は、難民条約三十三条二項の趣旨にはそぐわないと世界的難民法学者も明確に否定しています。

 よって、ワとカは削除を提案いたします。

 さらに、二十四条三号の二は、公衆等脅迫目的の犯罪行為等の予備行為や実行を容易にする行為を行うおそれがあると認めるに足りる相当の理由がある者として法務大臣が認定する者を含んでおり、それ自体の範囲が広過ぎます。

 それに加えて、法案第六十一条の二の九第四項の第二号の末尾で更に、そのような者に該当すると疑うに足りる相当の理由がある者としており、要するに、二十四条と六十一条で疑いが二重にかかっています。

 その結果、究極的には全ての難民や庇護申請者の送還停止効の解除が可能となるような文言となってしまっています。

 そこで、配付資料のとおりの文言修正を提案いたします。

 なお、二及び四の末尾に法務大臣による個別認定を挿入したのは、難民の追放、送還は、場合によっては死刑執行と同じ効力を持つ行為であるため、法務大臣までお諮りすることが重要と考えるからです。

 ここで一つ基本的な事実確認ですけれども、毎年警察庁や法務省が発表している統計資料によれば、来日、在留外国人の数は、コロナ禍や東日本大震災直後を除いて、過去約七十年にわたってずっと増加しています。その一方、近年の刑法犯外国人検挙人員数は、ほぼ横ばい、ないし微減しています。要するに、難民などの外国人が増えると治安が悪くなるというのは、単なる妄想にすぎません。また、警察庁のデータに基づけば、日本国籍者よりも外国籍者の方が凶悪犯罪を起こしやすいという結論を導き出すこともできません。

 ただし、今後もし日本の安全にとって危険となるような難民が万が一出てきた場合に、重要になってくるのが送還先の問題です。既に、入管法五十三条三項において、送還可能な対象国は限られています。拷問等や強制失踪のおそれがある国にはいずれの場合でも送還できません。

 よって、法案六十一条の二の九第四項に更に新たな号を追加して、ただし、送還先については、第五十三条第三項に従って定めると再確認することを提案いたします。

 これにより、民意に基づいて日本が締約国となっている国際難民法や国際人権法に規定されている原則を、過不足なく実施することができるようになります。

 ただし、現行法五十三条三項一号の下段、括弧内にある、日本国の利益という概念は、例えば財政的利益や文化的利益なども含まれるので、広過ぎます。

 よって、括弧内については、法務大臣が第六十一条二の九第四項の第二号から第四号のとおり認める場合を除くと修正することで、全ての関連条項の内容を合致させることができます。

 三点目が、いわゆる補完的保護についてです。

 法案二条三号の二において、迫害を受けるおそれが難民条約上に規定する理由であること以外の要件を満たす者となっています。

 しかし、日本政府は迫害の定義を狭く解釈しているので、武力紛争下における無差別暴力や副次的被害を逃れた方が、現在提案されている条項によって補完的保護を受けられるようになるのか定かではありません。

 また、配付資料三にもお示ししましたとおり、G7諸国では全く違う規定を採用しています。確かに、日本は主権国家ですので外国の国内法をそのまま採用する法的義務はありませんが、ウィーン条約法条約三十一条、三十二条の趣旨にのっとり、他の当事国間の合意については考慮することが妥当と考えます。

 よって、私の提案イにおいては、EUの資格指令を参考に、日本語としての表現を整えた文言を提案しています。

 なお、入管庁が二〇一二年から毎年発行している事例集、難民申請者に対する人道配慮による在留許可の事例では、既に紛争待避機会ですとか武力衝突という言葉が使われています。よって、私の修正提案は、既に入管庁御自身が実施している実務を踏まえたものと言えます。

 また、ロは、既に日本が民意に基づいて締約国になっている拷問等禁止条約、また市民的、政治的権利に関する国際規約の条文を反映させたものです。新たな義務を創設するものではありません。

 一部には、補完的保護の導入は、特にウクライナ避難民を確実に保護するために必要という説明があります。けれども、ウクライナ避難民は、官邸主導の下、既に一年以上にわたって、一切何の法改正もなく、極めて速やかに例外的に寛大な措置がつつがなく実施されています。

 配付資料四にもお示ししましたとおり、ウクライナ避難民は条約難民よりも優遇されている面まであり、ウクライナ避難民のためであれば、入管法を急いで改正する必要はありません。

 また、去る火曜日に議論がありました、反戦派のロシア人、良心的兵役忌避者については、条約難民としての保護の検討がなされるべきで、補完的保護の対象にはなりません。補完的保護は、むしろ、ウクライナ以外の国の同じような無差別暴力状態から逃れてきた方々に、ウクライナ人と同じような支援と保護を差し伸べるためにこそ、必要と考えます。

 最後になりますが、与党又は賛成派の議員におかれましては、この法案をこのまま通すということは、最悪の場合には、無辜の人間に対して間接的に死刑執行ボタンを押してしまうことに等しいということを是非御理解ください。

 特に、自民党の委員におかれましては、御子息様がいらっしゃる前で恐縮ではございますけれども、奥野誠亮議員がこの国会の場で一九七八年二月十四日に行われたすばらしい演説を是非思い出していただきたいです。

 また、野党、反対派の議員におかれましては、現在の国会の勢力図に鑑みれば、数の論理で無修正採決という最大のリスクがあることを思い出していただきたいです。

 その上で、全ての委員に何とか修正の可能性を探っていただきたく、そのために私の拙い提案が何らかの一助になれば幸いでございます。

 御清聴ありがとうございました。(拍手)

伊藤委員長 ありがとうございました。

 次に、福山参考人にお願いいたします。

福山参考人 ただいま御紹介にあずかりました福山と申します。

 この度は、当法務委員会におきまして、参考人としてお招きいただき、貴重な機会をいただいたことを大変ありがたく思っております。

 それから、亡くなられたウィシュマ・サンダマリさん、心より御冥福をお祈り申し上げます。また、御家族の方々には心よりお悔やみ申し上げます。

 それでは、入ります。

 私自身、元職員という立場ではありますが、現在の入管法、入管行政には足りない部分もあり、より適正な出入国管理行政を実現するために改善すべき点があると考えております。これから私が述べる意見が国会議員の皆様による充実した法案審議の一助となれば幸いに存じます。

 さて、本題に入ります。

 私は、送還忌避、難民認定申請濫用、誤用、長期収容の問題は、目的、手段、結果という一連のつながりがあるものと考えております。

 まず、二〇〇四年の法改正において、難民認定申請の申請期間が、上陸日又は難民該当事由発生日から六十日以内とされていたものが無制限となりました。さらに、難民認定申請に送還停止効が加わりました。

 次に、二〇一〇年に、被収容者が難民認定申請を提起した場合には、適正手続の保障のため、できるだけ仮放免を許可すること、さらに、弁護士が仮放免許可申請の保証人である場合には柔軟な判断をすること、こういった実務上の方向性が示されました。

 加えて、難民認定申請から六か月経過した難民認定申請者に対しては、その希望により一律にフルタイムの就労が認められることになったのもこの年のことでありました。

 その結果、二〇一〇年には約千二百人であった難民認定申請者は、二〇一七年には二万人近くと、約十六倍になりました。その推移は、就労目的、仮放免目的のための手続の濫用を疑わせるものです。

 また、子供と家族の在留許可の問題の原因も、この長期化にあります。手続中に、日本で出生した、また幼児期に入国した児童が学齢期に達すると、こういった現象が起こるからです。

 翌二〇一八年一月、この就労許可を厳格化したところ、同年の難民認定申請者数は半減いたしました。難民認定申請の実態を示唆する推移ですが、その後も、借金、駆け落ち、隣人とのいさかい、こういった難民条約上の迫害とは無縁の申請、さらには、日本滞在が目的なので理由は後で考えます、こういった申請も目立ちました。依然として認定に値する申請がほとんどないとの感想は複数の難民審査参与員からも伺っております。

 このようなことから、グレーゾーンの申請というものは理論上あり得たとしても、入管行政の現場において果たして実際存在するのか、非常に疑問なところであります。

 以上に関連いたしまして、入管行政の現場において起きていることについて申し上げます。

 まず、難民認定申請濫用の入管業務への影響です。

 申請の濫用が真に認定すべき方々の見落としや手続の遅延につながることへの懸念です。また、入管には、難民認定以外にも重要な業務がたくさんあります。一定の経験を積んだ審査官を難民業務に集中的に配属せざるを得ないことに起因する、他の業務の弱体化への懸念です。私自身、担当官不足により、空港審査業務にやむなく会計担当職員を充てたことがあります。

 次に、収容です。

 収容状態を脱したいと望むのは人の常です。仮放免許可の典型例が健康上の理由であることから、収容施設においては、全快、異常なしという診断は歓迎されません。仮放免許可にとって不利に解釈されやすいからです。

 ですから、被収容者は、次々と様々な自覚症状を訴え、診察希望を繰り返します。中には、医師や看護師に暴言を吐き、診療行為を妨害し、診療時間を長引かせる被収容者もいます。本当に診療が必要な被収容者の診療がおろそかになる危険性を感じます。このような被収容者の診療をやむなく中止すると、診療拒否、人権侵害、脆弱な診療体制との批判に転化します。

 このように、情報が正確に伝わらないことはしばしばです。

 被収容者が処方薬について、この薬は嫌だ、ジェネリックは効かないと言って、様々な薬の処方を求めてくることも少なくありません。外部からは、これに応じると、薬物中毒の助長、応じないと、不十分な診療との批判になり、最終的には人権侵害だというふうに言われます。

 被収容者が発症した限局性腹膜炎も、腹膜炎併発といかにも手遅れであるかのような批判に変形されます。医師によれば、限局性腹膜炎とは、いわゆる盲腸炎、正確には虫垂炎の初期段階で腹痛など自覚症状が表れ始めたときの状態です。五年前に手術を受けたプロ野球選手がいらっしゃいます。同じ病名でした。しかし、手遅れとの報道は一切ありません。当然です。手遅れなのは汎発性腹膜炎であって、限局性腹膜炎ではないからです。

 国内で新型コロナの感染が拡大したときには、マスクを始め消毒薬など必要な物品を提供し、その使用を指導したにもかかわらず、多くの被収容者が感染防止策を取ろうとせず、入国警備官に繰り返し唾を吐きかけておりました。これが外部に伝わると、入管が感染防止を怠っている、このようになります。

 このような状況から、身の危険を感じて辞職を申し出る医師も少なくありません。そのうわさが広まった結果、収容施設での医療を引き受けてくれる医師も減少します。

 かつて、勤務先の大村センターで、常勤医師が退職したので、勤務経験がある医師全員に往診をお願いしたところ、全員から即座に拒否されました。

 また、被収容者が仮放免を求めて、ハンストと称する官給食の集団拒否をすることがあります。その結果、数日間で約五十万円相当の食料が無駄になりました。

 しかし、最大の懸念は被収容者の健康です。体重を減らした人、差し入れのジャンクフードや他の被収容者からもらった給食の食べ過ぎで体重を増やした人が半々でしたが、いずれも危険な兆候です。ですから、集団摂食拒否の防止に努めました。

 その中にあって、事情を御理解の上、摂食拒否をしないよう呼びかけてくださった国会議員の皆様、支援者の方々には深く感謝を申し上げております。

 他方、自分の豚肉入りの給食を回教徒の給食とすり替えて騒ぎを起こす被収容者もいます。これも外に出ますと、入管が回教徒に豚肉入りの食事を与えた、そういう報道になります。

 さらに、被収容者が物を投げる、蹴る、たたく、熱湯をまき散らすというのは日常的風景です。規則、入国警備官の指示を無視し、収容施設内で暴れ、他人に危害を加え、物を破壊する事案が頻繁に起こります。中には、汚物、ふん尿のことです、で施設を汚損し、暴力で毀損し、多額の被害を発生させる事例もあります。ある所長は、汚損状況の御視察においでになられた方から、おまえのせいだとどなりつけられたそうです。

 それはさておき、このような場合の対処方法は、単独室の使用と制圧です。

 単独室は、暴力を振るい、興奮状態にある本人に冷静になっていただくための部屋です。そもそも、入管に懲罰という発想はありません。単独室の中には、監視カメラが設置されている部屋もあります。この部屋は、本人の自損行為を防止するため、又は体調を継続的に観察するために使用されます。単独室のトイレが密室でないのも、自殺防止、病気で倒れてしまったときの即時対応のためです。物理的に、男女は厳格に分かれていて、女性区の室内の状況は肉眼でも動画でも男性職員が見ることは不可能になっております。それにもかかわらず、これが外部に伝わると、男性入国警備官が女性区をのぞき見た、セクハラをした、このようになります。

 それから、再三の警告、説得に応じない場合の制圧です。制圧とは、暴れている自傷他害に至る可能性のある被収容者を抑える行為のことで、被収容者を負傷させないことが大原則です。そのためには、暴れている者の動きを短時間のうちに完全に止める必要があります。そのために役割分担をします。頭を防護する、手足を抑える、本人をなだめる、全体を見て指示を出す、状況を記録するなどのために、入国警備官七、八人ぐらいは必要です。これが外部に伝わると、入国警備官が、口論の末、無抵抗の被収容者に集団で暴行を加えた、こういうことになります。過剰な制圧行為が認められるものでないことは当然ですが、暴れている者を制圧することは容易なことではないということを御理解いただければ幸いです。

 暴力行為の常習者、性犯罪、殺人、傷害、強盗、放火、薬物犯罪の前科がある者、配偶者間暴力の加害者であっても、収容の長期化や病気により、仮放免許可への圧力が高まります。しかし、仮放免中に性犯罪や殺人など新たな犯罪に手を染める例も少なくありません。引率者である支援団体の責任者は何も説明しないんでしょうか、性犯罪を繰り返していた男性被収容者との面会で自宅が近いとの話題で盛り上がったと喜んでいる女子学生の姿には驚愕いたしました。他の官署で仮放免を許可された者の妻とその母親が、身の危険を感じて保護を求めてやってきたこともありました。このようなことから、仮放免許可の決裁のときには、私自身、新たな被害者が出ないかと判こを持つ手が震えておりました。

 他の長期収容の原因として、被退去強制者の本国及びその駐日公館の非協力的な姿勢があります。自国民の引取りや自国民への帰国用の旅券の発給すら拒否する国、送還日の開示を旅券発給の条件とし、入管がそれを伝えると、大使館がそれを被収容者に伝えて、難民認定申請や訴訟により送還を免れる、逃れる機会をつくり出す国、根拠なく被収容者の在留許可を求めてくる国などがあります。経験上、自国民保護の範囲を超えていると感じます。

 しかし、ほとんどの国は、法違反をした自国民に冷淡です。自国民が収容施設を汚損、毀損し、多額の損害を発生させた場合も含めて無反応です。帰国の説得、本国の親族との連絡、帰国旅費の送金の仲介など、日本の在外公館が行っている邦人保護のせめて半分だけでもいいので、御対応いただきたいと思っております。このような非協力的姿勢が入国審査の厳格化をもたらし、最終的には円滑な人の流れを妨げることになり得るということを忘れるべきではありません。

 なお、自発的な帰国は、以上のような負担が大幅に軽減されるので、お互いにとって理想的な形です。

 しかし、入国警備官が法律に従って退去強制令書執行の一環として帰国説得を行うと、即、被収容者に対する嫌がらせ、脅し、精神的拷問との批判になります。その結果、入国警備官が被収容者と意思疎通を図ることが一段と難しくなっております。

 その他の点について申し上げます。

 まず、退去強制の決定がなされた者に、送還が不可能であるからといって就労を認めることは適切でないと考えます。たとえ送還までの生活費獲得のためであっても、就労の容認はかえって入管法違反を助長することになるからです。

 次に、収容決定の際の司法権による事前審査導入にも疑問があります。

 入管法違反者のほとんどを占める不法残留者の違反事実は、客観的証拠により既に明白です。しかし、経験上、実際に収容されるのは、不法残留状態に陥った者全体の三割から四割です。最近の公表資料によると、現在ではもう少し少なくなっているというふうに伺っております。といいますのも、当初の時点で在留を付与すべきことが明らかである者、逃亡のおそれがなく自発的な帰国が見込まれる者を、制度上、運用上、収容しない、こういうことにしているからであります。

 そもそも、入管の手続では、いわゆる三審制の下、慎重な手続を行っており、事後的な司法審査を受けることも可能です。事前の司法審査が必要なのか、司法審査になじむのか、非常に疑問を持っております。

 さらに、収容期間の上限設定も不適切と考えます。

 一律放免には、既に申し上げたような、新たな被害者の発生の問題があります。他方、実定法上、上限のない国も少なくありません。事後的であっても司法審査の対象ですので、現状でも適正手続は保障されております。

 出入国在留管理は、国家の三要素の一つである国民の構成など、国家のありように大きな影響を与える重要な業務であります。その中で、本件法案は、現在及び将来の国民及び在留外国人が平和な社会の中で暮らす共生社会の実現という目的を達する手段と、それを行使する根拠を与えようとするものです。

 「世界をつなぐ。未来をつくる。」という入管庁の新しい標語のとおり、入管庁職員が一丸となって、健全な国際交流の発展に寄与していくことを期待するものです。

 御清聴どうもありがとうございました。(拍手)

伊藤委員長 ありがとうございました。

 以上で参考人の方々の御意見の開陳は終わりました。

    ―――――――――――――

伊藤委員長 これより参考人に対する質疑に入ります。

 質疑の申出がありますので、順次これを許します。藤原崇君。

藤原委員 衆議院の藤原でございます。

 今日は、四名の参考人の先生方、大変ありがとうございました。

 それぞれのお立場、御経験から、私も大変勉強になったなと。理論のお話、実務のお話、そしてそれぞれの御経験についてということで、非常に今回の法案審議の参考になったというふうに思っております。

 そういう中で、幾つか私の方から質問をさせていただきたいと思っております。

 まず、安冨先生にお聞きをしたいんですが、難民認定の件について、参与員をお務めの経験があると思うんですが、難民認定率、これは、外国と比較して低いのであろうかどうなのか、そういう点について御見解をいただければと思っております。

安冨参考人 お答えを申し上げます。

 認定率が低いかというのは、先ほども参考人から御説明がありましたけれども、難民認定制度は、それぞれの国において、それぞれ個別に事情を判断して認定する、しないを考えていますので、一概に他の国の率がこうだ、我が国の率がこうだということで、数字だけを見れば少ないというのは、それは事実かもしれませんけれども、それ以上に何らかの評価を加えるというのは、必ずしも合理的とは言えないんじゃないかというふうに考えます。

藤原委員 ありがとうございます。

 滝澤先生からもございましたけれども、人道的配慮を含めて見てみれば、数字としては低くてもということで、遜色としてはそこまでないんだというような御趣旨のお話があったのかなというふうに思っております。

 それから、安冨先生にもう一点お聞きをしたいのは、送還停止効の例外で、三年以上の、懲役刑というか禁錮刑、拘禁刑というか、これを対象としているということ、この点についてどのように御評価なさっているかということをちょっとお聞きをしたいなと思っております。

安冨参考人 お答えを申し上げます。

 先ほどの陳述の中でお話をさせていただきましたけれども、送還停止効の例外を設けることというのは、一回目、二回目という、そのところで難民不認定という、行政処分として確定をしている人、その方が三回目の申請をされるということになった場合に、それはもう既に行政処分としては難民不認定というふうに判断されているわけなので、そういう方については我が国から退去していただくという退去強制の手続に乗せるといいますか、それはそれで合理性があるのではないかというふうに考えます。

藤原委員 ありがとうございます。

 三年以上の場合も送還停止効を外すということで、これは橋本先生からも御見解があったと思うんですが、送還停止効のことで、橋本先生の御提案のことでちょっとお伺いをしたいのは、三回目以降であったとしても簡易迅速な手続で審査をすべきであるというような改正の提案をいただいたと思うんですが、これについて、手続の詳細についてはいろいろなものを参照してくださいということで、多分、時間の関係上、そういうふうにやっていただいているんだと思うんですが、ぱっと考えてみると、仮に三回目、四回目で拾うべき人というのが、司法審査のときにもたまにある、ないわけではないので、となった場合に、普通に文言だけを聞くと、簡易迅速な手続ではなかなかそこが拾えないのではないかなというのが、ちょっと思うんですけれども、この簡易迅速な手続というのは、具体的に、もうちょっと詳細に、イメージが湧くように説明をしていただければなというのをお聞きしたいと思います。

橋本参考人 御質問ありがとうございます。

 EUでも様々に困っている部分もございまして、本当に詳細はそちらを御覧いただければと思うんですけれども、例えば、日本でいえば、現在は難民審査参与員まで必ず審査が参りますけれども、そうではなく、例えば行政不服審査法での不服申立てを、何と申しますか、その権利を認めないですとか、ただし、司法への判断を仰ぐということは確実に、EUでも可能とすべしというところは担保されているということでございます。

藤原委員 ありがとうございました。

 これは法務委員会の議論の中でもあるんですが、入管法の中の手続とは別で、不服申立てというか、取消し訴訟みたいな、行政訴訟という手続があるんですけれども、御承知のとおり。三回目以降で送還停止効が仮に外れたとしても、そこは最終的な司法審査の中での、退去強制令書を含めての効力を止めるというのも、これは私も、ちょっと昔のことなのであれなんですけれども、そういう司法審査に移行して、そこで救済をするという制度じゃなくて、三回目になったとしても送還停止効を外さないということとの違いというか、そこというのをちょっと教えていただきたいなと思うんですね。三回目になったときに送還停止効がなかったとしても、それは司法審査の中で、取消し訴訟の中で対応してやっていくという救済の方法もあるような気がするんですが、これを、送還停止効を残すということにすることというところの違いというか、そこの意義についてちょっと御教示をいただきたいなと思っております。橋本先生にお願いします。

橋本参考人 ありがとうございます。

 実は、その点はちょっと時間がなかったのではしょったところに重なるんですけれども、全ての、例えば、三回目以降の申請人が裁判に移行するとなりますと、率直に申し上げて、日本では難民認定手続において、訓練を受けた、必ずしも、裁判官ないしは独立した第三者機関というのがございませんので、そうなりますとなかなか、難民認定が司法に移ったときに、率直に申し上げて、どれだけ充実したものになるのかというのは、若干、私の中では、現在の形では不安に思っております。

 と申しますのも、難民認定というのは、刑事事件や民事事件とは全く異なりまして、過去の事実認定だけではなくて、将来の迫害のおそれの程度をある意味査定するものでございます。当然、日本の裁判官の方々は優秀でございますので、一般の刑事、民事、行政であれば当然の御専門家であるとは思いますけれども、全くふだん裁判官の方々が扱っていらっしゃる事件とは考え方が違う部分において、現在までも、どのくらい本当の難民というのが救われていたのかどうかというのは、私は、正直、若干不安に思っております。そこに、私はやはり、司法で全て救済する、もちろんかなりの人数もまた停滞することにもなると思いますし。

 取りあえず、以上でございます。

藤原委員 ありがとうございます。

 やはり、難民かどうかを判断するというのは、基本的には供述のところというのが一つ大きな柱になるというのは、ほかの裁判と比べると、おっしゃるとおり、証拠を積み重ねて客観証拠から見ていくというのとはまた違う分野があるので、そういう点では難しいのかなというのも非常に感じているので、先生のおっしゃることは、今後の裁判の在り方もやはり検討していく必要があるのかなというふうに感じております。

 そういう中で、滝澤先生にちょっとお聞きをしたいのは、UNHCR駐日事務所での御経験があるということで、そこと入管のコミュニケーション、今はしっかり覚書を交わしてやっているわけなんですが、元々、UNHCRでの御経験もございますし、法務省というか入管でも御勤務の御経験がある先生から、今後どういう形で、協力関係というか、いい関係を築いていくべきなのか、お互いに何か反省すべき点はあるのかというのは、ちょっと御所見をいただければと思います。

滝澤参考人 お答えいたします。

 UNHCR事務所と受入れ国の政府との関係というのは、基本的には緊張関係にあるんですね。UNHCRはやはり難民の人権を守る、それに対して政府の方は治安等も考えるということで、基本的には緊張関係にある。

 したがって、駐日代表又はUNHCRのカントリーダイレクターは、非常に難しい、政治的な判断といいますか、難しい交渉なんかが必要なんですね。それがうまくいっている国は難民政策もうまくいく。うまくいかない、つまりUNHCRの事務所と受入れ国政府がこうやっているところでは、UNHCRが何を言っても聞いてもらえない。したがって、UNHCRの効果が薄いということですね。

 私は、二〇〇七年の一月にこちらに来たんですけれども、これは実は志願して来たんですけれども、そのときは非常に関係が悪かったんですよ。駐日事務所と入管庁がプレスリリースでお互いに批判し合うと。つまり、クルド人の強制送還、アフガンでしたっけ、その時期があって、コミュニケーションがゼロだったんですね。お互いの不信感が物すごく強いということで、そういう中に来ました。

 やはり、一番の大切なことは、お互いの言い分を言いっ放しにしないということです。それをすると、要するに言いっ放しですから何にも変わらない。結果的には政府のものが通っちゃうんですね。ですので、UNHCRとしては、やはり政府がどういう問題を抱えているかについての理解が必要だと思うんですよ。それをしないままに、いや、難民申請者がこう言っているんだから、我々は正義の代弁をしているんだから、あなた方だって聞くべきでしょう、聞かないのはあんたが悪い、そういう姿勢を取っている限りは、これは別に日本だけではなくて、どこの国に行ってもうまくいきません。

 ですので、まずUNHCRとしては、各国の違ったいろいろな問題がありますので、それを理解して、そういう中で、私たちは、世界各国の難民状況の中で、こういう方法がありますという具体的な提案をするということですね。批判よりもまず提案する。

 実際に、一つの提案をしても、それが実行されるまでにはいろいろな問題がありますし、さらには、その提案自身が新しい問題を作るということもあるわけです。その典型としては、これはUNHCRが主導したかは分かりませんけれども、送還停止効もその一つですね。送還停止効が導入されたときに、まさかそれが濫用される、誤用されるとは誰も考えなかったと思う。善意だったんですよ。でも、結果的には濫用された。

 同じく、難民申請をして、半年後には自動的に難民が働くことができる、申請者が働くことができるという、これを導入したときも善意でやったんですよ。困っているんですよ、働けないのにどうやって生きていくの。善意なんですけれども、それが濫用された。

 ですので、ある政策を導入するときには、それがどういう結果になり得るかというのをよく考えないといけないんですね。ですから、UNHCRとしてもそれを考える必要があります。ただ、いや、これが難民条約だからやりなさい、やらないのはおかしいというアプローチは駄目です。

 他方で、政府の方は、これは、UNHCRが国際機関であって、加盟国全部の総意を表しているということですね。特に、国際人権の原則を広げようという、そういう機関であるということを鑑み、ちゃんと傾聴する、聞く必要があると思います。ともかく、いや、UNHCRが何言ったって我々は聞かないよじゃ駄目ですね。やはりUNHCRの言うこともきちんと聞いて、その中で情報を得て折り合いをつけていくということだと思います。

 今、日本では、入管庁と、それからUNHCR、プラス支援団体の間に信頼感がありません。コミュニケーションが成り立っていないというふうに私は考えています。ですので、これが一番問題です。お互い、何を言っても相手が聞いてくれないという不信感の中で、断絶があって、これを超えないことにはどんな法案を作ってもうまくいかないと思いますね。

 最後ですけれども、私が駐日代表だった頃は、ともかく、コップに水が半分あるのか、コップが半分空なのかということについて、我々としては、UNHCRとしては、コップに半分ある、これはいっぱいにできますよ、そういう評価ができますよという姿勢を取りました。それが入管庁、当時の入国管理局のトップに評価されて、第三国定住は思いがけなく非常に順調にいきました。この第三国定住は今少しずつ大きくなっていますけれども、その例を見ましても、お互いに相手の問題を理解して歩み寄るという姿勢が大切だろうと思っております。

藤原委員 ありがとうございました。

 福山参考人に御質問できなかったんですが、現場の大変貴重なお話もいただいて、インタビューの記事も読ませていただいております。四先生方、大変貴重なお話、ありがとうございました。

 終わります。

伊藤委員長 次に、大口善徳君。

大口委員 四人の参考人の皆さん、本当に貴重な御意見を賜りまして、今回の法案の審議に生かしていきたい、こういうふうに思っております。ありがとうございます。

 それでは、まず、早速なんですが、一つは、難民認定率のお話については、それこそ安冨先生、滝澤先生からもお話がございました。難民認定の基準が他国より厳格だと指摘されている立場の方もいらっしゃるわけでありますが、この点についてどうなのかということで、難民審査参与員である、長くやっておられます安冨先生にお伺いをしたいと思います。

安冨参考人 お答え申し上げます。

 先ほど申し上げたことと、繰り返したりあるいは重複するようなお話になるかもしれませんけれども、難民認定制度は、我が国は我が国、ほかの国はほかの国、それぞれの国でどのような認定制度をつくるかということは、その国ごとに決められていることだと思います。

 我が国の場合は、いわゆる難民条約の難民の定義を基に、それを誠実に判断しているということなんだと思います。それを厳格というふうに評価するのか、それとも緩いと評価するのか、それは評価の問題ですので、ここでお答えすることは難しゅうございますけれども、少なくとも、我が国の難民審査の、認定の場合もそうですけれども、難民審査の場合もそうだと思います、条約で決められた五つの要件がありますけれども、その要件に沿うかどうかということを判断しているものというふうに考えます。

 このことは、難民審査の手続だけでなく、裁判所においても同様な判断で難民該当性についての判断をされておるというふうに承知しております。

大口委員 また、難民審査参与員として橋本参考人も仕事をされておられるわけであります。同じ質問なんですが、いかがでございましょうか。

橋本参考人 御質問ありがとうございます。

 私はまだ二年でございますので、また、御存じのとおり、三名一組で、百二十名ぐらいいらっしゃいますので、ほかの先生方がどういうふうな御判断をされているのを、私が何か評価申し上げることではないというふうに思います。

 一%、何%という数字がありますけれども、実は私も安冨先生と同じく、認定率というのは、どういう庇護申請者がやってくるかに完全によりますので、試験の点ではないので、高ければ高いほどよい、高ければ高いほど正しいかというと、そこはそうではない。ただ、客観的な事実として、一%というのは、率直に申し上げて、国際学会などで発表しますと、ちょっと議場がどよめく数ではございます。

 なぜ、じゃ、こんなに認定率が低いのか。私は、先ほど厳格だということも申し上げましたけれども、やはり、この委員会でも数日前に検討がございました、今回、手引では、現実的な危険の有無という言葉が出てきました。何が現実的なのかというのが一点。この手引はできたばかりですので、今後、より精緻化されていくことを期待いたしますけれども、例えば、それが八〇%、九〇%までないと現実的ではないのか、あるいは五〇%でいいのか、ないしは、私としては、難民法を専門としている立場としては、二〇%、三〇%ぐらいでよいというのが国際難民法学者の間では一般的に言われていることでございます。そこが、日本政府としてどのぐらいに標準を定めているのかというのは、私はちょっとまだよく分からないというところがございます。

 また、よく日本政府が引用される、迫害が起こるような、まあ、人権侵害ですね、が起きているような国から遠いのではないかと。ただ、そもそも、恐らくそれは先進国の多くがそうですけれども、難民申請しそうな人にはビザを発給しない、そもそも難民申請をすること自体が難しい、他国に逃れること自体が難しいというのが一点ございますが、例えば、難民発生地、人権じゅうりん国から遠いカナダなんかでは、やはり、かなり、御案内のとおり、難民認定率は高いわけでございます。

 また、難民認定は、どこの国から来ているかだけではなくて、その個人が迫害を受けるというおそれがあるかないかですので、必ずしも、いわゆる平和的に見えるかもしれない国から来る難民、例えば北欧諸国などから来る庇護申請者、難民というのもいる、世界中に見るといるわけでございます。ですので、どこの国と近いかということだけで判断するというのも難しいかというふうに私は思っております。

 取りあえず、以上でございます。

大口委員 三月二十四日、難民該当性判断の手引、これは本当に長年求めていたことでありますが、これが発表されたわけでございます。

 この点について、滝澤参考人は高く評価をしていただいています。それこそ、UNHCRで長年難民の仕事をやってこられて、今は教えておられるわけでありますが、この難民該当性判断の手引の評価について、滝澤参考人、そしてまた、安冨参考人、橋本参考人は参与員ということでもございますので、評価についてお伺いしたいと思います。

滝澤参考人 私がこの新しいガイドラインで評価する点で、恐らく長期的に大きな影響を与えるであろうというのは、迫害の定義において明確に、かつては人命とか物理的な自由を拘束されるということが中心だったんですね、今回は、それに対して、先ほども申し上げましたけれども、例えばこんなように書いてあります。

 殺害や不当な拘束などがその典型であるが、その他の人権の重大な侵害や差別的措置、例えば生活手段の剥奪や精神に対する暴力等についても、迫害を構成し得る。さらには、それ自体としては迫害に当たるとまでは言えない措置や不利益等であっても、それらの事情が合わさった結果として、迫害を構成する場合があるというふうに明確に書いてある。

 これは、今後、いろいろな難民審査また不服申立てについてこれが参照されるわけですね。裁判でも使われるわけです。ですので、これは非常に大きな影響があるだろうと思います。これが第一点。

 第二点は、この手引の中で、例えば、指導的な立場、よく言われるのは、指導的な立場になければいけない、反政府運動のですね。それについても、指導的な立場にあれば、それは加点要素ではあるけれども、ないからといって、それが迫害の可能性を減じるものではないといったこと。その類いの、必ずしもそうではないというのが至る所にあるんですね。

 これは、私は、今までの定義なり要素よりも拡大しておる、したがって、今後、事例が積み重なるに従って認定数が増えていくんだろうと思います。

 入管庁は、いや、今回の手引は決して認定の在り方を変えるものではない、認定基準を緩めるのではないというふうにおっしゃっていますけれども、私は、実はかなり変わっているだろう、そんなふうに考えております。

安冨参考人 お答えさせていただきます。

 難民該当性判断の手引につきましては、先ほど滝澤参考人の方からもお話がございましたとおり、第六次の出入国管理政策懇談会の下でまとめられましたものを、規範的要素を明確化するということに基づいて策定されたもので、少し時間がたっておりますけれども、その間、いろいろな方からお話を伺われて整理されたものというふうに承知しているところでございます。

 この手引は、我が国の実務上の先例でありますとか、それから裁判例、こういうものを踏まえまして、条約難民で規定されている難民の定義に含まれる文言、この意義を具体的に説明するということ。それから、その際に、難民該当性の判断をする際にどういう点を考慮すべきなのかということのポイントを示しているものというふうに思っております。

 殊に、具体的なお話は、今、滝澤参考人の方からございましたけれども、記述の中に、審査時の留意点、それから判断の視点、こういうことで、かなり詳細に書かれてあります。これは必ずしも基準というものではないと思いますけれども、難民認定制度で難民かどうかを判断する上では重要な考慮事項になってくるというふうに評価しております。

橋本参考人 御質問ありがとうございます。

 私、今、割に肯定的な御意見がございましたので、あえて駄目出しをさせていただければと思います。

 先ほどの私の陳述でも述べましたとおり、これは、ある意味、前進する上で一歩だとは思います。本当に、よくなった、改善された、明確になったというところはございます。

 ただし、まず、迫害のおそれの判断のところに、通常人という概念、これは当然、民事事件、刑事事件ではよく、国内でも、また海外でも使われますけれども、やはり難民事件にはかなりなじまない概念であると私は思っております。通常人がどう思うかではなくて、本人に迫害のおそれはどの程度あるかの判断であるべき。

 それから、全体的に、迫害のおそれの判断が、申請者の主観よりは迫害者の意図が何であったかを評価するという形で書かれています。これは実は、滝澤参考人からも先ほど言及がありましたけれども、オックスフォード大学院で私が難民法を学んでおりましたときに、はっきり申し上げて、初歩的な間違いであるというふうに国際難民法の先生がおっしゃっていた点ではあります。迫害者の意図ではなくて申請者の主観であるべきだと。

 それから、現実的な危険の程度のことについては先ほど申し上げました。

 あとは、信憑性の判断という、どの程度の信憑性、例えば、ちょっとしたことで、日付が間違っていたら駄目なのか、あるいは、重要な、迫害のおそれのメインとなる主張で大体のことが合っていればいいのか。人間、私はそうですけれども、かなり記憶というのは曖昧なものでございます。特に、拷問を受けたとか、そういう究極的な状況に置かれてきっちり日付を覚えていられるかというのは、かなり厳しいのではないかというふうに思います。

 それから最後に、今回は難民条約第一条の概念の解釈についてだけが触れられておりますけれども、実は難民条約三十一条、三十二条、三十三条というのが非常に重要でございまして、そこについての解釈について一切言及がない。これはもしかしたら今後行われるものなのかもしれないと思っております。

 以上です。

大口委員 福山参考人、現場のいろいろな状況についてお伺いをさせていただきました。

 今回、入管に摘発された者であっても、自ら早期に出国する意思を表明した場合については、これは収容なしに出国するということで、収容ではなくて監理措置等で代替措置も講ずる、こういうことで、できるだけ収容者を減らしていくという取組をしておりますが、この点についてのお考えをお願いします。

福山参考人 お答え申し上げます。

 入管行政というのは、ある程度身柄の拘束をしたり強制力を行使したりということはありますけれども、それは必ずしも効率がいいことではありませんし、職員にとっても好ましいこととは考えておりません。

 という意味におきまして、仮放免をある程度柔軟に用いる、監理措置を今後活用していくというのは、一つの大きな方向性を示すものであって、好ましい方向性であるというふうに考えております。

 現場をつかさどる身にとっても、やはり今回の改正というのは、そういう意味において物すごく助かるような内容ではないかというふうに考えております。私、もう現役を退いておりますけれども、私がもし東京入管局長であるならば、大歓迎の法案でございます。

大口委員 時間が来ましたので、終了します。

 ありがとうございました。

伊藤委員長 次に、寺田学君。

寺田(学)委員 寺田です。

 まずは、参考人をお受けいただいた四名の皆様に心から感謝申し上げたいと思います。本当にありがとうございます。

 大きな話題を呼んでいる法案でもありますので、賛成のお気持ちを持たれる方、慎重なお気持ちを持たれる方、様々なところからいろいろな御意見等が寄せられる中において、御自身のお考えをしっかりと当委員会においてお話しいただいたこと、まずは本当に心から敬意を表したいというふうに思っております。

 十五分と限られておりますので、質問に移りたいと思いますが、橋本参考人にまずはお伺いしたいと思っています。

 先ほど藤原委員からも質問がありながら、なかなか示唆に富むお話をいただきましたけれども、まさしくこの難民認定ということの作業をする際においての、プレーヤーという言い方はおかしいですけれども、入管というものがあり、そしてまた裁判所というものの機能があり、そしてまた、多少言及がありましたけれども、諸外国であれば、大体、不服審のところは第三者機関が入りながらやっているというような仕組みを持っています。

 我が国においては、第三者機関というものがこの仕組みの中においては含まれておりませんけれども、橋本参考人の以前述べられたインタビュー等も含めて、第三者機関に対する期待、必要性ということをお述べになられていましたので、いわゆる第三者機関の設置の必要性、それについてのお考えをいただければと思います。

橋本参考人 御質問ありがとうございます。

 結論から申し上げれば、設置に向けた検討は速やかに開始することが重要だと私は考えております。

 難民審査参与員制度は二〇〇五年から始まっていまして、参与員の意見は、究極的には法的拘束力を持つものではございません。最終決定権限者はあくまでも法務大臣でいらっしゃいます。

 現在、参与員は大体百二十名ぐらいで、その全員が人格的に高潔で、私以外がですね、それぞれの分野で大変な御専門家であることには間違いありませんけれども、そのことと、参与員全員が難民認定手続ですとか国際難民法の専門家、十分な訓練を受けた方かというのは、ある意味別の問題でございます。

 先ほど申し上げたとおり、かなり刑事事件とも民事事件とも違う特殊な作業を行うものでございますので、公立性や中立性だけではなくて、やはり専門性こそ大事であると思います。とりわけ、人様の命をお預かりする営みでございますので、やはり十分な専門的知識と豊富な経験がある方がフルタイムで従事することが望ましいと思います。

 このようなことに鑑みて、実は、G7諸国のほとんど全部で、最終決定権限を持つ独立した第三者審査機関があります。例えばヨーロッパ、欧州評議会加盟国全四十六か国が法的に拘束される欧州人権裁判所がございます。また、イギリス、カナダ、オーストラリアに至っては、難民事件、入管事件だけを扱う第三者機関がある。アメリカも移民控訴委員会というのがありまして、ただ、こればかりはほかのG7諸国とは違って、司法長官又は連邦裁判所で最終的には覆される可能性もある。

 いずれにせよ、一定の決定権限を持つ独立した難民審査機関、司法機関が一切ないのは、G7中、日本だけです。しかも、その上、裁判官などが集まっていろいろな勉強会、国際的な勉強会、難民移民裁判官国際協会というのもあるんですけれども、そちらに日本のいわゆる最終決定権限者がお顔をお出しになったということを私は聞いておりません。

 なので、野党御提案の難民等保護法案においても第三者機関というのは設置がうたわれていて、私は方向性としては完全に同意するものなんですが、ただし、現実問題として、日本には国内の人権委員会ですらない中で、そのような第三者機関をこの数週間、数か月で設置することというのは、現実的かどうかと言われるとちょっと難しいのかもしれないと思います。

 ですので、今後、可及的速やかに、最終決定権限を持つ独立した第三者審査機関について検討を開始していただきたいというふうに強く望みます。

寺田(学)委員 簡単にお伺いしますけれども、その第三者機関自体、G7含めて多くの国は持っていますけれども、原審の部分で第三者機関が役割を果たしているのか、不服審的なところで役割を果たしているのか、そこら辺、教えていただければ。

橋本参考人 圧倒的大多数の国が、やはり、第三者機関は異議審で、初回はやはり入管庁のような方々、要するに政府のお役人の方々がやっていらっしゃるというのが一般的と言えると思います。

寺田(学)委員 今日いただいた資料の中において、ちょっと陳述の中に入っていなかった部分もあるんですが、アフガニスタンの現地協力者の退避政策についての資料を入れていただいておりますが、これを含めて御説明いただければと思います。

橋本参考人 御質問ありがとうございます。

 大きな枠組みで申しまして、本法案というのは、日本に自力で何とかたどり着いた難民、避難民、外国籍者の処遇に関するものですけれども、実は、難民の受入れには全く別のルートが幾つかあります。そのうち日本が可及的速やかに改善する必要があるのが、現地職員の退避、受入れと、あとは第三国定住の拡充です。

 まず、現地職員の退避についてですけれども、資料の五の一、五の二なんですが、日本は長年、顔の見える国際協力というのを推進、標榜して、多額、多数のODA事業を海外で展開しています。そのために多くの現地職員を世界中で雇ってきました。特にアフガニスタンでは、過去二十年、日本はずっとトップドナーの一つです。

 二〇二一年八月、タリバンの復権を受けて、日本などの外国につながる組織で働いていたアフガニスタン人は、タリバンによって裏切り者とみなされて迫害される危険が極めて高くなりました。そこで、日本以外の主要ドナー国は軒並み、直ちに現地職員とその家族を積極的に退避させて、基本的に永住前提で、どの国も数万人規模で既に受け入れています、二〇二一年の八月から起算してですね。主要ドナーの退避要件、支援内容、また実績というのは資料五の一にございますので御覧いただければと思うんですけれども。

 他方、二枚目にありますとおり、日本政府は、残念ながら、元現地職員の圧倒的大多数にビザ発給を拒みまして、要するに、長年日の丸の下で働いてくれた元同僚たちを、ある意味で見捨てている状態です。これはやはり、私は極めて非人道的だと思っています。それだけではなくて、ある意味で、今後、優秀な現地職員の方々は、日本政府のために、日本の組織、JICA、NGOも含めて、そういったところで働かない方が安全ですよと世界に向かって宣伝してしまっているようなものです。これは私は日本の国益に資さないと強く思います。それが一点。

 それから、もう一点目が、第三国定住での難民の受入れです。

 これは日本で二〇一〇年から始まったプログラムで、中川正春先生も大変な御尽力をいただきました。ただ、先ほど滝澤参考人がおっしゃったとおり、今でもたった年間六十人程度ということで、これも、私が国際学会などで発表いたしますと、若干苦笑いをされるような、残念ながらそういった数字でございます。

 もちろん、国の成り立ちが違いますので、突然、アメリカのように年間十二万五千人とかを受け入れるというのが日本として現実的ではないというのは分かりますけれども、北欧の小国ですら、年間、少なくとも数千人規模で受け入れていて、さらに、国によっては、極めて脆弱な、例えば体の不自由な方ですとか、そういった難民をわざわざ選んで積極的に受け入れているというのが世界的な現状です。

 あと、日本の第三国定住政策は量より質だとよく言われますけれども、本当に脆弱な難民を受け入れるのでなければ、やはり質という意味でも説得力にちょっと欠けるかなというふうに思っています。

 ということで、現地職員の退避にしても、第三国定住にいたしましても、やはり、他のG7諸国の規模や基準と比べて異次元に少な過ぎる、狭過ぎるというふうに私は思います。国際的に分相応の責任を果たしているとは言えない状態だと思っています。なので、今後も日本が顔の見える国際協力を推進して、積極的平和主義を標榜し、また、G7諸国と歩調を合わせるということを重視するのであれば、やはり、この現地職員の退避と第三国定住というのは異次元に拡充すべきだというふうに私は思います。

 ありがとうございます。

寺田(学)委員 今日は参考人質疑ですので、大臣を含めて不在の中でやっていますが、あそこに入管庁の課長がおりますので、しっかりとその部分は正確に伝えてください。

 余り単刀直入に聞くのははばかられるかなと思いながらも、この場において聞きたいなと思うのは、橋本参考人は非常に、今も含めていろいろ御示唆いただきましたけれども、法案自体に対する賛成、反対に関すること自体は、時間の関係も含めてですけれども、お話しになっていないかもしれませんので、その点に関して何かあればお話をいただければと思います。

橋本参考人 ありがとうございます。

 この法案は、やはり、様々な方向に手当てがされているものですので、全面的に賛成とか、全面的に反対と言うことが私は難しくなっております。

 特に、実は、収容の部分については、医療体制の問題を含めてかなり難しい課題が多々あります。ただし、入管法の条文に全て落とし込めない、落とし込み切れない部分もあるというふうに思います。

 収容施設内の処遇については、今後も実務を通して不断の改善努力が必要であるというふうに思いますけれども、その点について、実は、今までは運用や省令レベルであったものを、入管法という法律のレベルに引き上げて、転記する部分があります。今回かなりたくさんの条文が加えられましたけれども、その中には、実は私が以前、十年ほど前になりますけれども、入国者収容所等視察委員会の西日本委員を務めていた際に提案させていただいた部分も含まれていますので、それを私は、率直に申し上げて感謝している部分です。ですので、そこが含まれているので、私が法案全体に反対ですと言いますと、私が提案したことを自己否定になることになるので、そこはちょっと、そこについて反対と言うことが難しい。

 それから、今回余りお話が出ていませんけれども、五十条、在特の観点で、今までは六十一条の二の二において、難民不認定になった方については法務大臣が裁量で人道配慮に基づく在留許可を与えていた。でも、これを切り離して、ある意味、以前の五十条に戻して、大臣の裁量だけではなくて外国籍者自らが申請できるようになったというのは、これは私は一歩前進だと思っています。

 特に、難民認定との話で申しますと、今までは難民不認定となった人に在特が与えられる際に本邦事情と本国事情というのが加味されていたんですが、そもそも難民認定というのは、本邦事情、要するに日本でどうしていますかという話は全く関係なくて、本国事情一本で評価するものですので、それも今回五十条に一本化されることによって、難民認定のロジックが正しく整理されることにつながると思います。

 この点も実は私が以前から指摘させていただいていたところで、それが盛り込まれているので、私やほかの視察委員会の先生方の意見が盛り込まれている部分がありますので、私としては全面的に反対とは言い難い。ですけれども、先ほど申し上げたとおり、是非修正していただきたい点というのは幾つかございます。

寺田(学)委員 残りがちょっと少ないですので、重ねた質問になるかもしれませんが、やはり、私自身も数日前の質疑でやりましたけれども、難民の手引自体に対しては、本当に一歩前進、二年前には提示されない中で質疑をしましたので、その意味においては、二年後の今、手引というものを政府が示した上で質疑をしたということ自体は大きなものの前進があるとは思っていますが、ただ、橋本参考人が言われるとおり、その中の解釈自体が、私がすごい勝手なことを言うと、入管にも検察官の方がたくさんいらっしゃいますので、幹部の方には。そういう方々を含めて、刑事事件的な発想、従来の裁判的な、従来の御自身の職業柄的な発想がにじみ出ているものがあって、本来、難民認定として必要な要素というものは、まだ十分明らかにされていなかったり、不十分な表現であったりしているのではないかなというふうに思っております。

 そういうことを含めて、しっかりと議論がこれからも必要だと思っておりますので、我々委員としては、これからも、与野党と協議しながら、質疑の機会というものを十二分に確保しながら、質疑を重ねていきたいと思います。

 最後に、本当に、繰り返しになりますが、今日このような機会で四名の参考人の皆さんにお越しをいただいて、非常に貴重な御意見をいただいたことを心から感謝申し上げて、質疑を終わりたいと思います。

伊藤委員長 次に、沢田良君。

沢田委員 日本維新の会の沢田良と申します。

 本日は、お忙しい中、四名の参考人の皆様に来ていただきまして、本当に参考になった部分と、私自身気づけなかった部分、いろいろな御提案をしていただいたことが、しっかりと今後、党の中でも議論になるようにやっていきたいと思っております。

 十五分持ち時間をいただきましたので、先ほどとかぶるような質問をするとあれなので、ちょっとまた別の質問をさせていただきたいと思います。

 まず、参与員をされております三名の、安冨参考人と滝澤参考人と橋本参考人にお伺いをしたいんですけれども……(発言する者あり)お二人、安冨さんと橋本さんですか、申し訳ございません、やられているお二人にお伺いしたいんですけれども、今のこの参与員の制度、私は、実際に現場に入っていただける方はいろいろな多岐にわたる方が入っていると思うんですけれども、実際にやはり、運用の部分であったり、仕組みのところ、この違いも当然出てくると思うんですね。

 お二人、やってみた感じ、ここはちょっと改善していいんじゃないかとか、今後においてこの参与員の仕組みについてちょっと考えてもいいかな、又は、研修の時間があるのかちょっと私分からないんですけれども、そういうところも含めて、個人的に今のお立場上の見解をいただけたらと思います。

安冨参考人 お答えいたします。

 参与員制度、そもそも難民認定に不服があるということで審査請求がなされますよね。その審査請求がなされた案件について難民審査参与員が、行政不服審査法上の審理員として中心となって審理を進めていく、こういうたてつけになっている、そういう仕組みでございます。

 経験でというお話でございますけれども、私の乏しい経験の中では、三人の参与員がそれぞれ、難民調査官の作成した記録を精査して、そして、原則として口頭意見陳述で難民審査請求をされておられる方からお話を伺って、そしてまた本国情勢等についても、場合によっては不足しているものは自分で調べたりして、そういうものを総合した上で、難民条約の第一条に定める難民に該当するかどうか、ただ、要件の中に、先ほどからお話もございましたけれども、迫害のおそれとか、価値的な、規範的な内容の部分もございますので、それをどう評価するのかというのは非常に悩む部分も多々ございます。

 ただ、逆に申し上げますと、先ほどどなたか参考人の方がおっしゃっていましたけれども、初めから、借金から逃げてきた、来てから、何か日本に難民認定申請すれば在留できるんだみたいな情報があったので、取りあえず難民認定申請してみました、これは、最初の、一次審とよく言いますけれども、難民調査官の判断で処分庁が判断する、ここで難民と認められることはまずないわけですね。

 それが難民審査請求されて私どもの方に上がってくるわけで、そこに制限はないわけです。不服を申し立てれば、全て難民審査請求ができるわけです。その上の手続の中で、参与員が、審理員として行政不服審査法のたてつけに従って審理をしていくということになりますので、前回のこの法案のときの法務委員会でも、参与員の長い経験をお持ちの方が参考人として、自分の経験としては、一生懸命調べているんだけれども、一生懸命聞くんだけれども、難民として認めるような方はほとんどいらっしゃらないというようなお話もございました。

 私のことだけで申し上げるのは大変僭越ですけれども、相当数やりましたけれども、これはと悩むケースというのは相当少ないです。どう考えてもやはり難民の定義には該当しないな、しかし、この方には、諸般の事情を考えて、人道配慮として在留特別許可なり我が国に在留をするという意見を書くということは幾つかしたことがございます。

 そのような形で、ほかの参与員の先生方がどういうふうにしていらっしゃるかということは承知しておりませんけれども、私は、全体として見れば、難民認定制度、審査請求制度、そして最後に法務大臣による裁決、この流れでつくられている現在の難民認定制度というものは合理的なものだというふうに考えております。

橋本参考人 御質問ありがとうございます。

 若干私が先ほど申し上げたところと重なる部分がありますけれども、本当に、参与員の方々は全員、それぞれの分野においては御専門家でいらっしゃいます。ただ、御質問にあった、研修があるかということですけれども、研修は、参与員になった後、参与員用の研修と銘打ったものはなく、若干のブリーフィングがあった程度でございまして、私が二十五年間必死で勉強してきたことをなかなか、皆様、ほかの方は優秀でいらっしゃるのですぐにお分かりになるのかもしれませんけれども、複数名の方は、結構難しいのよねということを、御専門家でない方においてはおっしゃっている方もいらっしゃいます。

 繰り返しになって恐縮ですけれども、やはりかなりの特殊な作業で、しかも人命をお預かりすることですので。例えば、裁判員裁判制度がございます。それは当然、民意を反映するということです。でも、その制度と、実際、例えばいろいろな御経験を持った方が参与員に入っているということは、ふさわしさという意味で申しますと、私は、民意を反映するというよりは、専門家がフルタイムで従事する、きっちり研修も受けて、その方が専権的に従事することがふさわしいのではないか。

 もちろん、二〇〇五年から、以前はこういったものは一切ございませんでした。ある意味、言葉が悪かったら恐縮でございますけれども、ブラックボックスの中でというような指摘も当時はございました。ですので、審査参与員制度も一歩前進だと思っています。

 ただ、先ほどの寺田議員からの御質問もありましたとおり、私は、行き着く先は、やはり、最終決定権限を持つ専門家がフルタイムで従事する第三者機関を他のG7諸国並みに設置するのが日本としてふさわしいだろうというふうに思っております。

沢田委員 どうもありがとうございます。

 やはり、今おっしゃられたところで、特に橋本委員が言っていた部分はすごく参考になるなと思いますし、本当に、命に、最後、携わるということなので、機微たる部分も取りこぼしてはいけないというのはもう重々分かります。その中でも、ただ、やはり、今の制度をこれからも国会としてもどういうふうに運用していくべきかというのは上げていきたいなというふうに思っております。

 続きまして、福山参考人にちょっとお伺いしたいんですけれども。

 私、今回、入管法というものを、法務委員になって一年目なんですけれども、勉強させていただくときに、やはり情報の、いろいろなものが余りにもあり過ぎて、極端な例が大変ありました。そういうところに対して自分自身が調べていけば調べていくほど、いろいろな部分で、現場の方々に対する風評被害もありますし、特にちゃんと意見を取り入れるというところもあるんですけれども、やはり、現場の声をすごく過小評価してしまうような報道であったりとか世論形成がちょっとあったんじゃないかなというふうに思ったところで。

 今回、参考人のこの対談のやつを見させていただいたんですけれども、まさに、本当に現場の声が、透明化されることでやっと見てもらえる、けれども、ちょっと記事がちっちゃかったりとか、そういうことがあると出ないかなと思うと、私は日本維新の会という党なんですけれども、できるだけ情報の公開化、透明化というのをしていきたいという政党の中で、すごく、今回の入管に対するものについては、警備上問題があるというものに関して以外はできるだけ透明化していくことが逆にやはり正当性とかを訴えるようになると思うんですけれども、メディアの報道を含めて、福山参考人、ちょっと御意見があったら教えていただきたいなと思います。

福山参考人 御質問どうもありがとうございます。また、御指摘も大変ありがたく受け止めました。

 入管行政に関する情報が少ないといいますのは、私自身もそのように考えておりました。ということで、退職十年ぐらい前から、現場の判断ということで、なるべく個別事案についても説明するようにいたしておりました。

 ただ、それで何か変わったかというと、特に報道の内容は変わったような気がいたしません。やはり以前どおり、こう言ってはなんですけれども、最初に原稿が決まっていたんでしょうね、それをそのまま書いてしまう、そういった記事が多かったように感じます。

 それから、入管行政に対する批判の強い方、こういった方々に特徴的なんですけれども、こちらが個別情報を出せば出すほど取材してこなくなってしまうんですね。本当に驚きました。それで、取材しない中でいろいろ記事を書かれるんですね。一体これはどうしたことなんだろうというふうに感じたのは事実です。

 であっても、やはり、入管の正しい姿というのを御覧いただくために、私は私なりに、同僚は同僚なりに、情報開示のために努力をしてまいりました。

沢田委員 ありがとうございます。

 やはりこの問題は二極化することが私は一番危険だと思っておりまして、しっかりと日本で、日本の文化になじんでいただいて暮らしていく、共生できるような社会を目指すときに、やはり一番駄目なのが偏見とか差別だと思うんですね。

 どうしても、極端に報道が過熱してしまうと、逆もまたしかりで、極端に守ろうとする人がそういった意見を大量に出す。ここ最近、やはり、入管法のいろいろな部分が進むと、ニュースサイトを見ると、両極端な報道ががんがんされているわけですね。この人は日本を侵略するつもりだとかという記事であったり、この人はすばらしいとかという、何かちょっとやはり、これはすごく難しいなと。特に今、情報化社会の中で広がっていくときに、余りにも偏ってしまう。

 だから、今日、正直言うと、四名の参考人がいらっしゃったときに、すごく偏ったふうになるのかなと思ったんですけれども、やはり皆さん、個々にちゃんと論点を持たれていて、私は、客観的に聞いていて、ほぼ全ての皆さんにちゃんと客観的に分かりやすく説明をいただけたなというふうに思っているんですね。なので、メディアがこういう動きをしてくれれば本当は一番いいのかなというふうになりますので、今日の参考人質疑は私はすごく勉強させてもらっています。

 続きまして、福山参考人にお伺いしたいんですけれども、やはりこれは、立法しても、実際現場で動いていくということは、いろいろな部分で制約がかかってしまったり、又は、実際にはできないとかいうこともあると思うんですね。

 対談の方に載っていたんですけれども、平成以降は新人の面倒を余り丁寧に見ることができなかったようにと。やはり教育であったり研修という部分が、入管行政自体がどんどん拡大していくことでかなり手薄になっているのかなというふうに思ってしまう部分もあるんですけれども、私自身としては、やはり今後、難民の認定申請のインタビューをする際により丁寧にやっていくことをしたりとか、あとは、しっかりと難民の国に対しての調査、ここをもっともっとより深くやらなきゃいけないとか、あとは、難民条約の趣旨、我が国が国際条約に担う役割とか国際情勢に関する理解を促進するための研修、これをやはりもっともっと頑張っていかなきゃいけないんじゃないかなと個人的に思っているんですね。

 そういうことも含めてなんですけれども、今の入管行政は結構大きくなってきているので、やはり現場としては大変なんでしょうか、どうでしょうか。

福山参考人 お答えいたします。

 仰せのとおり、やはり、組織が大きくなる中で、かなり職員の育成というのは難しくなってきて、仕事もたくさん増えてきていますので、私が入省したときと比べると大分手薄になってしまって、自分が受けた恩を後の世代に継ぐことができなかったのが非常に心残りでありますし、反省として残っております。

 その点につきましては、今の現役の、私の後輩に当たる方々なんですけれども、うまく対応していただいて、研修制度が充実し、いろいろな各界の意見、いろいろな意見を持たれている方がいらっしゃると思います、別に賛成意見だけの方を集めているわけではなくて、反対意見の方も集めて、いろいろな意見の方を集めて、それで意見を開陳していただいて、職員に対して、どんなふうにそれを評価しますか、これからどんな方向に向かっていったらいいんですかということをみんなで検討するような、そういう研修のやり方がなされていると思っております。

沢田委員 どうもありがとうございました。

 時間となったんですけれども、今日参加していただいた四名の参考人の皆様、本当にありがとうございました。

 そして、福山参考人に至っては、本当に長きにわたって国に仕えていただいて、この対談を見させていただいたことにおいて、私、このような公務員の方々がいらっしゃること、本当に切に胸が熱くなる思いがございました。

 しっかりと我々、国会を、守っていく立場として、これからやっていきたいと思いますので、本日、御参加、どうもありがとうございました。

伊藤委員長 次に、鈴木義弘君。

鈴木(義)委員 今日はお疲れさまです。

 私たち政治家というんですかね、議員は、十年先、二十年先をどう描けるかということに尽きるんだと思っています。行政は、法律を運用する方ですよね。だから、私は、役割がおのずと行政側と政治は違うんだと思ってやってきたんですけれども、今回の入管法の改正でいろいろな御意見を拝聴する機会が多いんですけれども、そんなに日本って悪い国なのかなと素朴に思うんですね。

 私は、視察と、あと、自分で観光で遊びに行った経験しかありませんけれども、十か国ぐらいしか行けていませんけれども、その国はその国のルールがあるし、大変厳しくやる国もあるし。だから、それは各々の、その国の国家の成り立ちだとか、歴史的なものとか、やはり文化的なものを考えて判断していく、難民の認定のこともそうですけれども、その国の出入国の管理に関しては、その国に、主体になって、いろいろな判断があるんだと思うんですけれども、まず最初に、簡単で結構ですから、今の日本の国というのは悪い社会なのかいい社会なのか、簡潔にお答えいただきたいです。

安冨参考人 お答え申し上げます。

 大変難しい質問にいかに答えたらよいのか、非常に困惑しているところでございますが。

 一言で申し上げれば、私は日本はいい国だというふうに思っております。更にいろいろな場面で今後一層よくしていくというためにも、国会議員の先生方、それから行政も一環となって、また司法も、さらにそれを受けて適切な判断を進めるということで、日本をよりよくしていく、これが今後の我が国が進むべき道だと思います。今は、日本はよい国だというふうに思っております。

滝澤参考人 確かに、大きな難しい問題です。これは、多分年代にもよると思うんですね。私も、若い頃、十年、二十年、三十年前には、日本ってひどい、悪いことばかり考える。でも、実は日本にはいいところがたくさんあるんですよ。

 本当に、先生方もそうでしょうけれども、日本にいて、ふだん危険を感じるというのはまずないですよね。私は外国が長いんですけれども、家から出たら何が起こるか分からぬという緊張感がどうしてもあるんですよ。もちろん、戦争中のレバノンに行ったら、これはもう本当に、安全対策で、防弾チョッキを着て、防弾車がないといられない。それは極端な例ですけれども、日本は非常に安心、安全が当然のように通用する国だと思うんですよ。したがって、そういったものを難民政策についても留意しなければいけません。

 先ほど私、四視点のものを資料につけましたけれども、ともかく、難民の人権が全てみたいな形でいくと必ずしっぺ返しが来ます。メルケル首相がシリア難民を全部受け入れると。私も拍手しました、ドイツ、すばらしい。でも、その後、何が起こりましたか。今、欧州諸国で難民を排除するということがどんどん進んでいますけれども、彼女にもその歴史的な責任があると思うんですね。ですので、ドイツ、すばらしいと思ったけれども、いや、必ずしもそうじゃない。

 逆に言うと、日本はひどい国、日本は難民を受け入れない国というのが今乱れ飛んでいますけれども、私はそれは、報道にも問題があるし、もう一つは、先ほどの中で出ましたけれども、もうちょっと入管庁は事実を発表してもらいたいんですよ。

 私、ずっと言っているんですけれども、入管庁の広報官というのはいないのかと。そういう方が毎日のようにブリーフィングをする。いいことも悪いことも言ってもらいたい。透明性を確保することで説明責任も生まれる、そういう形であれば難民政策についてもっと理解が進むと思うんですよ。

 ですので、この機会を捉まえて、是非、入管庁の方でも、政府の方でも、入管政策、また難民政策についての発信と説明を強めていただきたいと思います。それを通して日本のよさもまた広がり、そして日本自身がよくなっていく一つのきっかけになるかと思います。

橋本参考人 大変難しい御質問、ありがとうございました。

 本日、私は、難民認定制度、国際難民法の専門家としてこちらに呼ばれているというふうに思っております。私のような若輩者が日本について、いい国か悪い国かと判断するのは、そのような、何と申しますか、傲慢なことは私にはできませんので、その御質問には答えないで、御容赦いただければと思います。

 ただ、もし日本がいい国だと思っていらっしゃる方がいたとしたら、是非、その日本がいい国であるということを、たまたま悪い国に生まれた方々と分けていただきたいです。それがまさに国際法で言う、難民保護を世界の国々が共有する、それがまさに難民条約の前文でうたわれていることです。

 鈴木議員が、今、外国人の受入れというのは国それぞれでいいんだというふうな趣旨のことをおっしゃったと私は思うんですけれども、確かに、外国人の受入れ、特に移民と呼ばれる、あるいは、自民党では外国人労働者あるいは外国人材と呼んでいらっしゃると思いますけれども、そのような一般の方々を日本が受け入れなければならないという法的な義務はありません。

 他方で、その例外として存在するのが難民です。日本は、一九八一年六月にこの場で、難民条約それから難民の議定書に加入するんだと、民意を踏まえて自発的にお決めになりました。難民条約というのは、国内法ではなく国際法です。実は、いろいろな国でも、難民条約の解釈というのは、一九五一年にできてから大分変わってきています。確かに日本は主権国家ではありますけれども、国際条約を国内で実施する上では、やはり、ほかの締約国がどのようなことをやっているのか、それを一定程度加味する必要がある。そうでなければ、日本だけが、名ばかりは難民条約に入っているけれども、実際何もしていないではないか、そういう批判を受ける。今までも受けてきていますし、今後も受ける危険があるというふうに思います。

福山参考人 お答えいたします。

 私の場合は、自分で希望して、二年間ドイツに住んでおりました。それから、三年間アメリカに住んでおりました。そういう経験を踏まえまして、やはり日本が一番いい国だというふうに確信しております。

 先ほど、メルケル首相の二〇一五年の八月三十一日のシリア移民受入れの話が出ました。実は、その四か月後に、ケルンの大聖堂の前、ケルン駅の周辺で性犯罪が多発しております。その被疑者として逮捕された中に、難民、難民申請者がかなり多く交じっていたということであります。この辺の経緯につきましては、今月の、四月十日の朝日新聞の夕刊だったと思いますけれども、サンドラ・ヘフェリンさんというコラムニストの方が記事にお書きになっております。それがきっかけとなりまして、二〇一六年の春に不同意性交罪がドイツで立法化されたということになっております。その同じ年の十二月十九日には、ベルリンのクリスマス市場において、トラックで突っ込んだ人間がいた。それで十数名の方が亡くなった。これは難民認定拒否された人間でありました。

 私が言いたいのは、難民がどうこうということではなく、そのように使われてしまうんだということなんですね。ですから、ここのところはよくよく慎重に検討した方がいいのではないかと思います。

 それから、その二〇一五年のメルケル首相の決定、これは、憲法学においては非常に強い批判を受けております。憲法の教科書、こんな、一メートルぐらい、十三巻で一メートルあるドイツ語の本があるんですけれども、それの代表著者は、憲法違反だというふうに言っております。それから、元連邦憲法裁判所判事、御自身はイタリア系移民の息子さんです、ディ・ファビオという元判事、憲法学者です、この方も、メルケル首相の決定は憲法違反であった、このように述べていらっしゃいます。

 結果論かもしれませんけれども、このような議論もあるんだということをちょっと片隅に置いておいていただければありがたいというふうに感じております。

鈴木(義)委員 ありがとうございます。

 先生方に失礼な質問をしたなと。ただ、それが、私たち政治家が目指す、どういう国をつくっていけばいいのかというのがなければ、個別の法律を制定するとか改正するというところにいかないと思うんですね。立法事実はどこにあるのかということで、今回、改正に及んでいくんだと思うんですけれども、これからまだ審議すると思います。

 例えば、移民政策を取っているアメリカとかカナダ、すばらしい国だなと。私はアメリカに一回しか行っていない。でも、イミグレーションはすごい厳格だったですよ、もう二十年ちょっと前のときですけれども。そのアメリカが、日本よりも人口が二倍を超えている、三億人近い国でありながら、日本は一億二千万人のうち刑務所に収監されている人が一万五千人ぐらいしかいない国なんですよね。アメリカは何人いるのかと聞いたら、十五万人もいるんですって。人口は三倍なのに犯罪者は十倍いる、こういう国ですよね。

 これから二千百万人を超えるインバウンドで日本に遊びなり商用で来てくれる人、留学で来る人も、コロナが緩和になっていけばもっともっと増えていくと思うんですけれども、現に仮放免した人の中で千四百人の人が逃亡しちゃって所在が分からないという現状をどう捉えるかということなんだと思うんです。その中には犯罪を犯した人もいるだろうし。だから、先ほど、いい国か悪い国かといったとき、治安がいい国なんだ、それをどう維持していけばいいのかというのが、私たちが考えなくちゃいけないことなんじゃないかと思うんですね。

 いい人はどんどん来てもらえばいいと思うんです。立場上弱い立場の人も、きちっと保護措置みたいな形で、人道的支援で日本に来てもらって生活してもらうという制度がないわけじゃなくて、それもきちっとありながら、難民認定申請を濫用したり悪用しているから、じゃ、どうしましょうかというので、私は、今回の法律改正になってきたんじゃないかというような解釈は個人的にしています。

 だから、そこのところ、一点なんですけれども、最後に、もう時間がないので、簡潔に四人の先生方からお考えをお示しいただけたらありがたいなと思います。

安冨参考人 お答えを申し上げます。

 御質問の御意図とするところがやや私には明確でなかったといいましょうか、よく分からなかったところがございまして、とんちんかんといいますか、筋の違うことをお答えするかもしれませんけれども。

 難民制度は、確かにいろいろ御批判もありますけれども、また、それぞれの国でそれぞれその仕組みをつくっているわけでございまして、他国と比較するということだけで我が国の制度が適当であるかどうかという判断はできないと思います。我が国は我が国として様々な事情を考慮しながら難民制度を動かしていくことになりますし、先ほどお話のございました外国人の方の犯罪のことにつきましては、それをもって我が国の治安の評価につなげるというのも、私はどうも、それだけでは狭い判断だと思います。治安のいいか悪いかというのは、ある意味で非常に主観的な面を持っております。客観的に治安がいいか悪いかという評価は大変難しいと思います。

 そういう意味で、国民の多くの皆さんが、我が国がよりよい、住みよい国になるということを目指しておられるところで、今後の、法律を改正するなり、制度をつくるなりということをしていかなけりゃいけないんじゃないかというふうに思う次第です。

 御質問にお答えできているかどうかは、やぶさかでございません。

滝澤参考人 この質問も難しい問題ですけれども、私は、難民政策というものを、難民問題、又は認定問題、又は人道問題、人権問題だけに限ると、結果がうまくいかないことが多いと思うんですね。

 先ほどの、メルケル首相の人道心あふれる温かい心が結果的には大きな問題を引き起こしたということもありますので、やはり社会的な支持、それから経済的な求め、それから治安といったこの三つも、難民政策を策定するに当たっては考えていかなきゃいけない。そういう意味で、総合的な政策だと思いますね。これは国の形を決めることにもなるという意味で、難民問題を難民認定問題に矮小化すべきではないというふうに思っています。

 そして、先ほどちょっと資金協力の面で言いましたけれども、日本は大体三百万人近い人を救っているわけですね。ですので、そういったことをUNHCRの財務局長時代に見ている中で、日本はありがたい、日本のやっていることはありがたい。でも、日本の議論を見ていると、認定率がとか、三十人しか認定数がなかったということで、極めてローカルな議論が進んでいると思うんですよ。

 ですので、今後の日本は、世界の中の日本、その中における日本の国際的な難民保護体制に対する貢献、何がいいのか、どういう形でやるのがいいのかという、大きな、俯瞰的な視点から見ていく必要があると思います。

 先ほどの私の最初のところで言いましたように、国際的に期待は高まっているんですね。アレクサンダー・ベッツは、日本は今すごく重要な点にいる、日本がリーダーシップを取る可能性があるときにいると。こういう評価は念頭に置くべきだろうと思います。

 実際、今年の十二月には、難民グローバルコンパクトのフォローアップの第二回のミーティングがジュネーブで開催されますが、そこでは日本は副議長を務めます。副議長は六か国あるんですけれども、大きな国際機関、難民問題についての国際会議で日本が副議長を務めるということは、日本に対する評価、また日本に対する期待が表れていると思いますね。

 そういう点で、今回の法改正を通して、日本が難民政策で一歩進む、一歩突き出る、特にアジアにおいてリーダーシップを発揮してもらえるようなことになれば、それはすばらしいことだろうと思っております。

橋本参考人 御質問ありがとうございます。

 一つ重要なことを確認させていただく機会になるんですけれども、今回、難民条約を履行するための改正法案ということですけれども、難民条約は、本当に日本にとって危険な難民まで受け入れよと言っているわけでは一切ないんです。ですので、三十三条二項がある。

 ただ、先ほど申し上げたとおり、現在のままでの文言では、三十三条二項を超えるような形で送還停止効の例外になってしまっているので、それを是非修正していただきたいというのが私の主張の一つでございました。

 また、私が一番最初に申し上げた陳述とちょっと重なりますけれども、日本政府が、警察庁や法務省が発表しているデータによれば、ずっと七十年間、来日外国人、在留外国人の数は増えているのに、刑法犯外国人検挙人員数が横ばいないし微減ということですので、難民を含む外国人が増えると犯罪が増えるというのはデータには基づかない。

 ただし、安冨参考人がおっしゃったとおり、体感治安というのがもし悪くなっているとすれば、それは、実は日本人の側自体の差別や偏見に基づくものかもしれない。そうなのであれば、国民に対する、日本にいる方々に対する教育、啓発なども重要なのではないかというふうに思います。

福山参考人 お答えします。

 抽象的な言い方になりますけれども、法律というのは、一回改正してしまえば終わりということではなくて、その後もやはり議論は続いていくんだと思うんですね。ですから、その一つの案の中に、こう言っては言い方は失礼なんですけれども、次から次に何かいろいろなものを押し込んでしまうというのはちょっとどうかというふうに考えております。立法というのは一つの過程なわけですから、その大きな流れの中で、線の中で御覧いただければというふうに考えております。

鈴木(義)委員 どうもありがとうございました。終わります。

伊藤委員長 次に、本村伸子君。

本村委員 日本共産党の本村伸子でございます。どうぞよろしくお願いを申し上げます。

 四人の参考人の皆様、お話をいただき、本当にありがとうございます。

 早速お伺いをしたいというふうに思います。

 難民認定についてお伺いをしたいというふうに思うんですけれども、安冨参考人、そして橋本参考人は、先ほども御議論がありましたけれども、難民審査参与員をされておられたというふうに思います。

 そこで、ちょっと具体的にお伺いしたいんですけれども、月何件ぐらい、年何件ぐらい審査をされてきたかという点、教えていただきたいと思います。

 安冨参考人と橋本参考人、お願いしたいと思います。

安冨参考人 お答え申し上げます。

 ほぼ毎月二回、審査請求の口頭意見陳述を実施しております。

 件数は、通常、その一日にやるときには一件から二件ぐらいの口頭意見陳述。そして、口頭意見陳述を放棄するという方もいらっしゃいますので、そういう方は、いわゆる書面審理ということで参与員の中で審理を進めます。そういう案件が数件、それも書面審理だけですので、数件。ということになりますので、月に四件以上やっていますから、年でいいますと五十から、百はいかないかもしれませんけれども、五十を超える数ということでお答えをさせていただきたいと思います。

橋本参考人 御質問ありがとうございます。

 基本的に安冨参考人とほぼ同じでございます。要するに、原則的に月に二回。一回につき二ケースないし書面審査があればもう一ケース。それを単純計算で掛ける十二としていただけると大体。ただ、一ケースにおいて例えば御家族で難民申請されている方もありますので、ケースというのは、一人ということではなく、何人というのと何件というのでちょっと数字に差が出てくる場合もあるかというふうに思います。

本村委員 ありがとうございます。

 もう一つお伺いしたいんですけれども、これも安冨参考人と橋本参考人にお伺いをしたいと思います。

 難民審査参与員というのは三人で一組ということで構成されますけれども、毎回同じメンバーで審査をするのか、それとも違うのか、それと、三人一組という構成は誰が決めるのかという点、教えていただきたいと思います。

安冨参考人 お答え申し上げます。

 東京出入国在留管理局の難民審査参与員が審理を進めるという場合には、班と呼びますが、一つの班に三人で構成されています。現在の東京局の班が何班あるかはちょっと承知しておりませんけれども、その中で、三人の参与員は通常替わりません。ただ、時に、所用があるとかということでお休みになられるときに別の方に入っていただくということもあります。ということで進めているというお答えでよろしゅうございましょうか。(本村委員「構成は誰が決めるのか」と呼ぶ)失礼しました。

 構成は、法務省の方で参与員を指名するということになっておりますので、三人の参与員を法務省の方で指名してまいります。それは、先ほど申し上げたようにほぼ同じ方。三人の中で、一人は法曹関係者、一人は大学等の教員といいましょうか、それからもう一方は国際機関であるとかそういうところで御経験のある方というような、一応、それぞれの御専門を、違うところを組み合わせてそれぞれ班が構成されているというふうに承知しております。

橋本参考人 基本的に安冨参考人がおっしゃったことと同じなんですけれども、基本的にずっと三人の構成は一緒、構成は入管庁の方々がお決めになる。また、時々、私も、まだ現役のフルタイムの教員でございますので、本業の方との関係があって難しいときには、ある意味、ふだんはほかの班に所属しているほかの参与員に来ていただく、あるいは、私が助っ人のような形でお邪魔したこともございます。

 以上でお答えになっていますか。

本村委員 ありがとうございます。

 続きまして、これは安冨参考人、橋本参考人、滝澤参考人にも伺いたいというふうに思います。

 今年に入って、ウガンダの同性愛の女性が裁判で難民と認定されました。また、トルコの国籍のクルド人の方に対して、札幌高裁が二〇二二年五月、難民に該当する、申請を認めないとした国の処分を取り消すという判断をいたしました。

 先ほどの橋本参考人のお話ですと、裁判所は難民のことについて専門性があるわけではないということではありますけれども、しかし、行政の側の判断がかなり明らかに間違っていたということになるというふうに思うんです。元々、行政の方の審査で、最初の難民審査の段階でかなり間違わないようにするというのが必要だというふうに思うんですけれども、そうするためにはどうしたらいいかという点をお三人にお伺いしたいというふうに思っております。

安冨参考人 お答え申し上げます。

 まず、処分庁による難民認定ということが行われますね。その後、それに対して不服申立てがある場合に難民審査請求ということで、その審査請求に対しては、入管庁の職員じゃない難民審査参与員が三名参与して審査を進めていくということになります。

 いずれにしても、その段階においても、それぞれ本人の供述、本人というのは難民認定申請者、あるいは審査請求者から供述を聞く、それについての裏づけがあるかないかを調べる、いわゆる事実の調査ということをやります。そして、審査請求では、口頭意見陳述で御本人からお話を伺って、提出された証拠等を合わせながら、難民の該当性があるかどうかという判断をするということでございます。

 その段階において提出されたあるいは収集されたものから難民不認定という判断になった場合に、その後、その不認定処分を争うということで、難民不認定処分取消し訴訟というものが提起されるということになります。

 そうすると、時系列からいうと、行政処分としての難民不認定という段階と、それから、訴訟に移ってからの段階というのは、当然、訴訟の方が後になります。様々な証拠がその間、訴訟するにおいては、裁判所に提出する原告側、被告側の主張を含めて、資料等々が裁判に出るということにもなります。

 したがって、行政庁の処分が誤りだ、間違っているというふうに言うことは、必ずしも私は正しいとは思いません。その時点では、そこで出てきた資料、主張、それを踏まえて難民該当性を判断しているということであります。しかし、その後、訴訟になって新たな証拠等が、いろいろ主張や証拠等が出てきて、それを裁判官が、裁判所がその証拠に基づいて判断をするという、そこには違いがあっても、それは致し方がない場合というのはあります。

 ですので、逆に、行政庁の処分として難民として認定するということになりますと、訴訟になりませんから、難民不認定処分に対しての訴訟の時点での基礎となる主張や証拠というものと、それから、処分庁が処分をする段階での証拠や主張というものは、共通はしています、共通はしていますけれども、また随分違う面もあります。そういう意味では、処分庁の判断が間違っているというふうに御指摘になるのは、私としてはいささか疑問に思うという次第でございます。

 それは、裁判の場面でも、一審で有罪になったのが控訴審で無罪になることだってあるわけですし、いろいろなそういう、同じ司法の場でも違った判断もされるわけですから、それは、判断する場所が違えば違った判断になる。

 しかし、少なくとも、できる限り難民該当性についての慎重な判断を処分庁としてはやらなければいけないのは当然でありますので、そこでは、難民審査員、我々もそうですけれども、慎重にいろいろな吟味をした上で、この方は難民該当性があるかないかということを判断しているということは御理解いただきたいと思います。

滝澤参考人 女性を差しおいて申し訳ありませんけれども。

 私は、日本の難民制度で裁判に勝った場合は、国側が勝つ率が八五%ですか、かなり高いということは聞いております。

 それで、国側が負けた場合というのは当然あるんですけれども、恐らく、出身国情報の把握に弱さがあるんだろうと思います。

 これは、例えば、入管庁の職員が、ウガンダで何が起こっているか、ウガンダの、しかも山の中の村で何があったということを把握するのは非常に難しいんですね。これはどこの国においても難しいんですけれども、日本の場合、そもそもウガンダから来る人はそんなにいないですし、また、ウガンダ情勢に詳しい人がいるわけでない。失礼な言い方ですけれども、外務省の大使館員もウガンダ中を歩いているわけじゃないですよ、ほかの仕事がありますので。

 そういうことで、また、日本語の壁もあったり、入管職員がいろいろな国の言葉を知るわけじゃない、新聞を読むわけじゃないということで、情報収集能力、つまり、この人が国に帰った場合にどういう迫害の蓋然性があるかということを把握するための客観的なデータが弱いんだろうと思うんですよ。

 ですので、今後は、今、入管庁にも出身国情報担当官が三人か四人いると聞いていますけれども、これはいいことであって、これをもっと強化すべきであろうと思います。

 それで、ちなみに言っちゃいますけれども、今、難民認定室は入国管理課の下にあるんですよ。これは見た目も悪いわけでして、難民認定室を難民政策課に格上げして、その中に出身国情報のユニットをつくるというような形も考えられるべきじゃないかというふうに思っております。

橋本参考人 御質問の趣旨は、第一審の段階で認定できるものは、すぐに、素早く認定するために、要するに不認定処分という間違った処分をどう防ぐかということだと思いますけれども、やはり研修というのが最も大事であろうというふうに思います。

 いろいろな外部機関が研修に研修講師として入っていらっしゃるというふうに理解しておりますけれども、ただ、その研修も若干限界があるのかなと思いますのは、やはり国家公務員の方々でいらっしゃいますので、定期的なローテーションがある。せっかく難民認定基準などに明るくなった、訓練を受けたと思ったら、二年、三年とかで人が替わってしまうというと、そこでその専門性がどのように組織的に蓄積できるのか、そこは個々人の方の責に帰すべきではなく、もっと構造的な問題もあるのではないかというふうに思いますが、いずれにせよ、研修で専門的な知識や経験を積んでいただくというのが一番、間違った不認定処分を減らすということではいいのではないかと思います。

本村委員 ありがとうございます。

 続きまして、福山参考人にお伺いをしたいというふうに思います。

 二〇一九年三月の事件なんですけれども、福山参考人が東京入管の局長だった際に、一人で歩くことすらできない体調不良の方がおられ、それで、面会をされた方がとても心配をされたということで、そのパートナーの方が、救急車のお金は自分たちで払うので旦那を病院に行かせてくださいと懇願をし、最初に、十九時二十五分、救急車が駆けつけた。しかし、救急隊員にその方と会わせることなく、入管の職員の方が帰してしまった。それでも心配で、二十三時十三分にも救急車が到着したものの、その方は搬送されることはなかったということなんですけれども、この国会でも議論にこのことはなっているんですが、これは東京入管の局長の指示の下で救急隊員を帰らせてしまったという話がございます。

 私ども、ウィシュマさんの死亡事件で、何度も何度も、救急車を呼べば命を救うことができたというふうに思っているんですけれども、入管で、本当に心配される方が救急車で搬送されるというのはそんなに難しいことなのか、その点、お伺いしたいというふうに思いますのと、あと、福山参考人が様々、外国人の人権を軽視した発言をしているのではないかというふうに思うんですけれども、やはり、救急車を呼ぶことがそんなに困難なのかという点、外部の医療にかかることがそんなに困難なのかという点、お伺いをしたいというふうに思います。

福山参考人 お答えいたします。

 その事案については、確かに記憶はありますけれども、手元に記録を持ち合わせておりませんので、何ともお答えようがございません。そのときに国会で議論がなされたということですので、そのときになされた議論を御参考にしていただければというふうに思います。

 私が人権軽視の発言をしたということなんですけれども、具体的にどの点を言われているのか、身に覚えがないことでありまして、私としては、職業的な入国審査官として、外国人の人権は精いっぱい尊重してきましたし、外国人に対して敬意を払ってきたことは間違いありません。その点は御理解いただきたいと思います。

伊藤委員長 本村さん、時刻が来ております。

本村委員 例えば、国際人権法は、実務の感覚では、どこか遠いところで事情も知らない人が理想論を言っている意識なんでしょうかという問いに対して、まさに御指摘のとおりですというような発言を雑誌でしているということで、その点を指摘をさせていただきました。

 今日は本当にありがとうございました。

伊藤委員長 これにて参考人に対する質疑は終了いたしました。

 この際、参考人各位の皆様方に一言お礼を申し上げます。

 参考人の方々には、貴重な意見をお申し述べいただき、誠にありがとうございました。委員会を代表して厚く御礼を申し上げます。ありがとうございました。(拍手)

 この際、暫時休憩いたします。

    午前十一時四十六分休憩

     ――――◇―――――

    午後一時四十六分開議

伊藤委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。

 午前に引き続き、内閣提出、出入国管理及び難民認定法及び日本国との平和条約に基づき日本の国籍を離脱した者等の出入国管理に関する特例法の一部を改正する法律案を議題といたします。

 この際、お諮りいたします。

 本案審査のため、本日、政府参考人として法務省大臣官房司法法制部長竹内努君及び出入国在留管理庁次長西山卓爾君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

伊藤委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

伊藤委員長 質疑の申出がありますので、順次これを許します。米山隆一君。

米山委員 それでは、会派を代表して質問いたします。

 まず、おととい質問した内容と多少かぶるんですけれども、ただ、おとといの質問のときには、改正入管法第六十一条の二の九の第四項第二号の方で質問したんですけれども、これは元々、ここが引いている第二十四条第四号ワというのは、午前中の参考人の意見聴取のときにも橋本参考人からも出たところですが、この二十四条の方ということで、また重ねて御質問させていただきます。

 まず、二十四条各号は、退去強制を行う様々な要件を定めております。例えば三号の二は、公衆等脅迫目的の犯罪行為等、いわゆるテロを定めており、これはまあ、さすがにテロをする人を国内に受け入れるということはあり得ないので、それは結構ですと、それは誰もが思うところだと思います。

 また、三号の五、行使の目的で、在留カード若しくは特別永住者証明書を偽造し、若しくは変造し、又は所持すること。これも、在留カードを変造するような方にいてもらっても困るので、それはそうだということで納得がいくと思います。

 一方、何度も私も取り上げ、橋本参考人もおっしゃられたところではあるんですが、四のワ(3)「工場事業場における安全保持の施設の正常な維持又は運行を停廃し、又は妨げるような争議行為を勧奨する政党その他の団体」、ここまでは百歩譲って、いいとして、「団体を結成し、若しくはこれに加入し、」、ここまでは百歩譲って、いいとして、「又はこれと密接な関係を有する者」となりますと、しかも、通常の人、例えば鉄道会社の人なんかだって、安全施設が多少なりとも問題になるところはあるわけなので、ストどころか、組合員の家族若しくは友人ですら、条文上当たり得る。これは難民とかじゃなくて、通常、普通に在留資格のある方が強制退去に該当するということになり得てしまうわけなんです。

 更に言うと、この条文は、労働関係調整法第三十六条の「工場事業場における安全保持の施設の正常な維持又は運行を停廃し、又はこれを妨げる行為は、争議行為としてでもこれをなすことはできない。」という条文、そっくりそのまま。つまり、労働法の条文をそのまま入管法に持ってきましたという法律のたてつけなわけです。

 そうしますと、これは、要するに外国人に労働争議をさせてはいけませんよと。これは、不当労働行為である云々という話はそれでいいと思います。だから、労働関係調整法で外国人も一緒に規律するのは、それはいいと思うんですけれども、それがいきなり退去強制になるというのは極めて不適切だと私は思うのですけれども。

 特に、再三指摘しているところですけれども、単に労働組合に加入、若しくは労働組合の家族や友人すら強制退去の対象となるような条文が存在することに関して、大臣の御所見を伺います。

齋藤(健)国務大臣 入管法第二十四条四号ワは、暴力主義的破壊活動者等を退去強制事由として定めており、同号(3)は、御指摘のように、工場事業場における安全保持の施設の正常な維持又は運行を停廃し、又は妨げるような争議行為を勧奨する政党その他の団体の加入者等を対象としています。

 そして、四月十九日の法務委員会において、委員からの、ちゃんと働いていて、ストにちょっと参加した場合に、暴力的破壊活動者等に当たるかとの趣旨の御質問に対し、私は、一般論であるが、御指摘のような適法な争議行為は、通常、工場事業場における安全保持の施設の正常な維持又は運行を停廃し、又は妨げるような争議行為に該当することはないとお答えをしたところであります。

 そして、工場事業場における安全保持の施設とは、労働関係調整法第三十六条により争議行為が禁止されている工場事業場における安全保持の施設と実態的に同一の意味があると解されています。

 その上で、最高裁判例において、労働関係調整法三十六条に規定する安全保持の施設とは、炭鉱におけるガス爆発防止施設等のような、直接人命に対する危害予防のため若しくは衛生上欠くことのできない物的施設に限られる旨、最高裁で判示されているところであります。

 したがいまして、入管法二十四条第四号ワ(3)に規定する政党等とは、このような人命に関わるような限られた物的施設の正常な維持又は運行を停廃し、又は妨げるような争議行為を勧奨する政党等に限定されると考えております。

 したがいまして、あくまで一般論としてお答えしますが、委員の御指摘の、単なる労働組合に加入した者、その家族や友人に該当することをもって暴力主義的破壊活動者等に該当することは通常はないと考えています。

米山委員 今の御答弁は、それはそれで大変結構といいますか、外国人の方も聞いておられるわけですから、それは労働組合でないと、その御答弁は、それは大変ありがとうございますと言わせていただきたいと思います。

 そうしますと、さらに、印刷物、映画その他文書図画を作成し、頒布し、又は展示した、要はビラ配りをしたという人も入っているわけなんです。

 ちなみになんですけれども、再三、大臣は暴力的破壊活動団体と同等にとおっしゃられるんですけれども、条文上のたてつけとしては、今一問飛んじゃったので、そこに戻らせていただきますが、二十四条、「次の各号のいずれかに該当する外国人については、次章に規定する手続により、本邦からの退去を強制することができる。」となっていて、いきなりこれが四号のワのところに行きますので、全然、特に破壊的とかということは、条文上はそういうふうには読めないわけなんです。条文上は、これに当たればもうそうですよといって、ワの(3)に直接行きますので、全然破壊的だなんてことは書いてないんですね。

 私、再三言っているところなんですけれども、適切に運用するからいいのである、若しくは最高裁の判例があるからいいのであるというのは、それは国内の論理ではあるんですけれども、法律というのは、やはり海外に向けても、日本の顔でもあるわけです。

 午前中の参考人質疑でもありましたけれども、参考人の意見聴取でもありましたけれども、日本は難民から選ばれない国だとおっしゃられて、だからいいじゃないかというのは、それは全然違っていて、難民から選ばれる国にならなきゃいかぬわけです。

 難民から選ばれるということは、ありとあらゆる難民の方が判例まで知っているわけじゃない、国内の運用まで知っているわけじゃない、多くの人は法律を見てやるわけですから、そもそもこの条文を残すことは本当にいかがなものかと思いますというのをもう一回言わせていただいた上で、更に問題のある、ビラ配りをしたというこの条文についてはどのようにお考えになるでしょうか。

齋藤(健)国務大臣 まず、入管法第二十四条四号ワに政党等というのは規定しているわけですね。公務員という理由で公務員の殺傷を勧奨する政党ですとか、公共施設の破壊等を勧奨する政党などの、いわゆる暴力主義的破壊活動団体を言っておりまして、入管法第二十四条四号カに該当する者は、これらの団体の目的を達成するために一定の宣伝活動を行った者をいうと。

 これらの暴力主義的破壊活動団体の目的を達するために、印刷物等を作成、頒布するなどした者は、暴力主義的破壊活動団体と同程度に日本国及び日本社会にとって重大な脅威であり、反社会性が高いと考えています。

 例えば、単に頼まれて、事情も知らずにビラを配った者が、じゃ、こういう事由に該当するかということは、あり得ないと私は考えておりまして、暴力主義的破壊活動団体の目的を達するために、印刷物等を作成、頒布するなどした者を送還停止効の例外とすることが厳し過ぎるということにはならないと考えています。

米山委員 今の御答弁としては、もちろん、あり得ないという御答弁は大変結構といいますか、ありがたいことだと思います。

 ただ、これは再三申し上げますけれども、条文のたてつけとして、ワ、「次に掲げる政党その他の団体を結成し、若しくはこれに加入し、又はこれと密接な関係を有する者」とまずあって、(1)(2)(3)とありますので、条文は通常、(1)(2)を前提とせずに、(3)だけでも該当するという、それは条文ってそういうものですから、これは(3)に直接、該当したら行っちゃうわけです。

 なので、単に、別に破壊的でなくても、工場事業場における安全保持の施設の正常な維持又は運行を停廃し、又は妨げるような争議行為を勧奨する政党その他の団体は、この条文に該当するというのは、もうそれは、条文なので、この条文がそうだけれども違うんだというのは、ちょっとそれは無理があるし、条文を無視していいんだったら、一体全体法律って何なんだという話になっちゃいますので、この条文上は、単に安全装置の、特に破壊活動とかしなくても、安全装置の維持又は運行を停廃すればいい。要は、安全装置を止めるなら該当するんだということは再三指摘させていただきたいと思います。

 ですので、この条文は、明らかに暴力主義的破壊活動団体と同程度でない者を対象としております。なので、それはやはりきちんと改正しないと、幾ら何でも恥ずかしい。それは日本の国益にとっても私はプラスでないと思っております。

 ちなみに、大臣から最高裁の判例のことを言ってくださいました。これはお手元の資料にあるので、ちらっと御覧になっていただければと思うんですけれども、これは精神病院での看護師のストで、看護師が争議行為として投配薬、診療の補助、看護等の業務を放棄することが、労働関係調整法第三十六条、すなわち「工場事業場における安全保持の施設の正常な維持又は運行を停廃し、又はこれを妨げる行為は」というのに当たるか当たらないかというのが争われた裁判です。

 大臣がおっしゃられたように、確かにこれは、一審も二審も最高裁も、当たりませんという結論は出てはいます。ただし、そもそも精神病院が工場事業場に当たるかみたいな話で、この三十六条がそもそも適用されるのかということに関しては、適用になりますという判断です。

 しかも、これは単に工場じゃないから駄目とか鉱山じゃないから駄目とかじゃなくて、客観的危険が現れていないと。ストによって、それは多少なりとも抽象的危険はあるんだけれども、直接患者さんに、どの患者さんに危険とかとなっていないから違うんですよということを言ったわけです。逆に言えば、客観的危険が現れたら、この患者さんがちょっとそれで容体が悪くなったとかだったら当たりますということが含意されているわけなんです。

 しかも、最高裁まで行っているわけなので。最高裁って、余り知られていないんですけれども、そもそも受理されないわけですよ。そもそも審理すらしてもらえない。持っていったって、門前払いといいますか、こんなもの最高裁案件じゃありませんがなと言われて終わってしまうわけなんですけれども、審理されている時点で、それは一定程度の検討の余地があるといいますか、そうかもしれないと思われて、ずっと検討されたわけです。

 ちなみに、条項で、基となっている第六十一条二の九第四項二号になりますと、第二十四条第四号カに該当すると疑うに足りる相当の理由がある。相当の理由があるわけですよ。だから、これはやはり当たっちゃうんですよ、条文としては。条文としては、だって、こんな最高裁でもちゃんと争うぐらいしっかり論理立てて、そうかもしれないという、疑うには相当な理由があるでしょうという話になるわけなんです。そういう条文をひたすら置いておくというのは、私は本当によろしくないと思うんです。

 そして、午前の参考人の意見聴取でもあった話なんですけれども、先ほどもちょっと言いましたが、日本は難民から選ばれない国だというのは、全く私はよろしくないと思うんです。我々日本は人権外交を掲げて、また、FOIPとか、自由で開かれたインド太平洋と言っているわけですよ。人権や自由を掲げるならば、それはもちろん、政府・自民党さんがおっしゃっているように、安全保障の義務を一定程度シェアする、それはあると思うんですよ。でも、同時に、自由を維持するコスト、それもシェアすべきなんだと思うんです。

 それは、難民の方は、難民の方で私は犯罪が増えるとは思わないけれども、それはもちろん文化的あつれきも生じるでしょうし、もしかしたら一定程度犯罪は増えるのかもしれません。だけれども、そのコストをみんなで、自由主義社会でシェアすることによって、自由主義って世界で保たれているわけですよ。世界で自由主義が保たれなかったら、どこかの国が攻め込んできたらやはり保てない、一国でなんかできないんですよね。

 だから、難民を受け入れるということに関して、午前中のお話にもありましたけれども、それは国の、日本国の事情はあっていいんだけれども、やはり世界全体でこのコストをシェアしよう、世界全体で標準的なことをやっていこうというのが、私はあるべき姿だと思うんです。

 私、留学経験があり、齋藤大臣もほぼ同じ場所で留学されていたわけなんですけれども、私、当初はタワマンみたいなところに住んでいたんですが、お金がもったいなくなって、難民か移民か分かりませんけれども、難民や移民が多くて殺人も起こると言われている地域に移り住んだんですね。でも、楽でして、楽しかったというか、私も異邦人であり、彼らも異邦人であり、異邦人の中で誰からも差別されないといいますか。人はもちろん治安は大事だけれども、日本国の治安は大事だけれども、同時に、人にとって自由って大事、人間として認められることって大事なんですね。

 だからこそ、我々、難民条約というものを作ってみんなで受け入れようと。コストがあってもリスクがあっても、それは一定を超えたら駄目ですよ、一定を超えたら、殺人とかテロとか、それはいいと思うんです。でも、そうじゃない争議行為を、しかもビラを配ったみたいな人を。幾ら大臣が運用としてしないと言ったって、条文としてはどう見たって当たる。実際問題、争議行為で裁判になっている。そういうような条文を残すのは私はいけないと思うし、それは難民条約にも反すると思うんです。

 大臣の御所見を伺います。

齋藤(健)国務大臣 まず、私も、大臣に就任する前は、超党派の議員連盟で、人権外交を推進する議員連盟の共同代表をやっておりましたので、今、米山さんがるる述べられた御主張の根底のところは同感をしています。

 その上で、今御指摘の最高裁判例において、最高裁が上告を受理した件についてお話がありましたけれども、これは御案内だと思いますが、最高裁によって判断されるべきものなので、私からは答弁はできないわけでありますが、その上で、委員御指摘の判例は、精神病院の従業員が争議行為を行うことに関して、医療法人と労働委員会との間でその争議行為が違法であったかどうか争われた事案であると承知していますし、その判例におきましては、繰り返しになりますが、労働関係調整法第三十六条が規定する工場事業場における安全保持の施設とは、炭鉱におけるガス爆発防止施設等のような、直接人命に対する危害予防のため若しくは衛生上欠くことのできない物的施設に限られる旨判示をされているわけであります。

 条文のたてつけについては、るる御指摘をいただいておりますけれども、そこは見解の相違ということで理解をしております。

米山委員 まあ、そうなるんでしょうが、ただ、最後の見解の相違のところは、そこは私は、それは違いますと申し上げたいんですけれども。それは、さすがにそう読むというのは無理ですよ。だって、項目ごとに分かれて、一、二、三となっているときには、その各号に当たるのは、どれかに当たればいいのであって、一、二は前提とされずに三に行くわけなので、そのむちゃな解釈を押し通すのも、それもまた、日本が法治国家としていかがなものかと思われますので、大臣の御見解のとおりなら、それは修正が必要だということを指摘させていただきます。

 次に、第六十一条の二の九の四項一号、二号の審査機会の実質的確保について伺います。

 前半の二問は、これも十九日に質問したんですけれども、もう忘れている方も多いでしょうから前提として伺わせていただきますけれども、改正入管法第六十一条の二の九第四項の第一号、二号による送還停止効の例外に該当することについて、これは知らされなければ異議を申し立てられないわけでございます。

 これはどのように伝えられるか。送還停止効の例外となる者については、すべからく、送還停止効の例外となる旨と送還時期等の計画について、本人に、口頭若しくは書面、私、書面がいいと思いますけれどもね、本人に理解できる言語で伝えるということでよろしいでしょうか。再度聞かせていただきます。

西山政府参考人 本法案におきましては、退去強制令書の発付後、早期に、当該外国人を直ちに送還することができない原因となっている事情を把握した上で、退去のための計画を定めることになっております。

 この退去のための計画の作成に当たっては、当該外国人の意向の聴取等を行うこととしており、また、計画の作成後にも、計画の内容に変更がある場合などには改めて意向の聴取等を行うことを予定しております。

 こうした退去のための計画の作成等に当たっての意向聴取等の過程におきまして、必要に応じ、当該外国人に対し適時に説明を行うことにより、当該外国人は自らが送還され得る立場にあるか否かを適切に認識できることとなるため、御指摘のような告知を行うなどの仕組みを設けることは考えてございません。

米山委員 これもまた不思議なことをおっしゃられるわけなんですけれども、五十二条の八の中でちゃんとやるという、やるからいいんだという話なのかなと思いつつ、それは結局、適切にやるからみたいな話なわけですよ。

 でも、これも再三、運用でやるからいいんだという話をされているんですけれども、手続保障というのはそういうものじゃないわけですよね。ちゃんと手続として書いてあるからできるんだし、手続として書いてあるから、それがあるかないか、ないということが分かるわけですよ。

 要するに、入管庁の方で勝手に、これは知らせるか知らせないかと決められた場合には、それがないと判断されたことは分からないじゃないですか。あると判断されたことは分かるけれども、ないと判断されたことは分からないというようなことが起こるわけですよね。

 なので、それはきちんと五十二条の八でやるというのであれば、その中で、六十一条の二の九の第四項第一号、第二号に当たることは言えばいいじゃないですか。言うと書けばいいじゃないですか。若しくは、条文に書かないんだったら、規則か何かでそう定めればいいじゃないですか。それをやるおつもりはないかあるか、お答えください。

西山政府参考人 個々の事案において必要に応じて行うものであると考えておりますので、一概に申し上げることはできませんが、退去のための計画の作成、変更に当たり、意向を聴取することとなれば、例えば、送還停止効の適用等といった送還を妨げる事情がなくなった場合には、改めて意向を確認する中で、送還され得る立場にあることや、送還予定時期を認識できるような説明をすることになるというふうに考えております。

米山委員 答弁としては再三、答弁としては結構なんだと思うんですよ。その今の答弁を根拠に、それは皆さんちゃんとやってくださいねと言えるようになりますから。野党の質問としては、答弁としてはありがたいと思います。でも、それをちゃんと、やはり法律なり規則なりに是非反映すべきだと思うし、それが手続保障であり、それが人権保障というものだと思います。

 四項一号は、括弧書きの中で、「第六十一条の二第一項又は第二項の申請に際し、難民の認定又は補完的保護対象者の認定を行うべき相当の理由がある資料を提出した者を除く。」とされています。

 これは、この規定があるのはいいんだと思うんですけれども、二度の難民申請を行って認められなかった人にとっては、その瞬間に、認められないよといった瞬間に、もはや強制退去手続の対象なので、それは一刻も早く三度目の難民申請は、当然、行いたいと思うんだと思うんです。でも、一刻も早くやりたいと思うと、相当な資料は出ない。一方、相当な資料をたまってから出そうと思っていたら送還されてしまう。だからといって、慌てて出したら、そんなもの相当な資料じゃないがなと言われてしまうというジレンマに陥ると思うんです。

 ここもやはり実質的な機会が失われないように、これも、必ずしも法律でなくたって、規則だっていいと思うんですけれども、例えば二か月ぐらいの申請期間を設ける。わざわざ法律で相当の資料を出したらいいんですよと書いてあるんだから、それに対して適正な手続というものを定めるべきだ、かつ、その間は送還を停止すべきだと思うんですが、御所見を伺います。

西山政府参考人 本法案におきましては、三回目以降の難民等の申請者につきましては送還停止効の例外としておりますけれども、このような者であっても、例えば二回目の難民等不認定処分後に新規事情が発生した場合など、適正に難民等と認定しなければならない場合もあり得ることを踏まえまして、申請に際し、難民等の認定を行うべき相当の理由がある資料を提出した者については、なお送還停止効の対象とすることとしております。

 その上で、際限なく資料の提出を許すこととなりますと、その都度、相当の理由がある資料か否かを判断しなければならず、迅速な送還に支障を来し、適正手続の保障と迅速な送還とのバランスを欠くことになり、御指摘のような期間を設けることは適当ではないと考えております。

 また、相当の理由がある資料は申請者の供述であってもよく、期間を設けなくても申請者に特段の不利益は生じないと考えております。

 なお、三回目以降の難民等認定申請者にとっては、相当の理由がある資料の提出機会を十分確保されること、これは重要であると認識しておりますので、送還停止効の例外規定の内容を周知するとともに、三回目以降の難民等認定申請者に対して個別に教示する旨の附則を設けることとしており、万が一にも本来保護されるべき者が送還されることがないよう配慮しているところでございます。

米山委員 またそうなんですねと思うんですが、それは違いますよね。だって、期限があれば、一定程度、しかも合理的期限ですよ、別に長過ぎる期限を置けと言っているわけじゃないわけですよ。別に合理的期限を置いて、そのぐらいですよと言えば、それは、それに合わせて人はちゃんとやるわけですよ。だって、自分の生命も関わっているわけですからね。

 逆に、全くそこが恣意的になると、じゃ、しようがないから、取りあえずやっていることを出すために一枚紙を出そうと。また次に二枚紙を出そう、三枚紙を出そうといって、それは次々次々と続いていって、一体全体いつになったら終わるのか分からないという状態が起こるわけです。

 そんなことをするよりも、むしろきちんと期限を決めて、逆に期限後は受け付けなきゃいいわけですよ。それは、しようがないじゃないって。よっぽど特殊なことを言わない限りね。何か起こったら、例外はあり得るけれども、基本は期限までしか受け付けませんよと言えばいいわけじゃないですか。

 それは冷たいように見えるかもしれませんけれども、そもそも送還ってそういうことなわけでしょう。一定程度のところで、もうどうにもならなくなったら、それはありとあらゆるものにはそういう手続的なリスクがあるのはしようがないじゃないかというところだとは思うわけなので、そういう意味で、きちんと決めた方がいいじゃないですか。何かと何もかにもを適切にやります適切にやりますというのは、かえって適切でならなくなると思うんです。

 もう一度伺うんですけれども、せめて規則でいいので期限を決めるべきじゃないですか。

西山政府参考人 繰り返しになりますけれども、やはり、際限なく資料の提出を許すこととなれば、迅速な送還に支障を来すということでございます。

 ただ、具体的な運用の在り方につきましては、現在検討中ではございますけれども、いずれにしても、手続の適正を図る観点から、相当の理由のある資料について、その提出の有無は慎重に判断されること、また、対象者において自らが送還され得る立場か否かを認識し得る運用とすることということになるというふうに考えております。

米山委員 もうここで押し問答はやめますけれども、じゃ、相当の理由のある資料というのですけれども、きちんと判断されるということだったんですけれども、これは、いつまでに誰がどう判断して、この結果をどのように伝えるのかということも、また適切にやりますと言うのかもしれませんが、それもやはりさすがに決めておくべきだと思うんですよね。相当かどうかって結構大変な判断じゃありませんか。

 これは本当に、今日参考人で来られた参与員の方みたいな一定の知識のある方なのか、随分問題提起としてありましたでしょう。知識として、やはり非常に、特にこれ、二回やって、でも、また違うみたいな話なので、極めて専門的知識を要するわけじゃないですか。普通に考えたら、結構専門的な知識の人にちゃんと検討してもらうんだったら、その人をどういうふうに配置するかから始まって、やはりきちんとした決まりや制度がなければ、現実問題、できないわけですよ。だって、いきなり、何も知らない人が突然判断しますとかできないわけですからね。

 相当の理由がある資料をどう判断するのか。誰がどう、いつまでに判断するのか。現在決まっているところと、もし現在全然決まっていなくて、また適切だと言うんだったら、今後どうするつもりなのか。それをお答えください。

西山政府参考人 まず、相当の理由がある資料の提出の有無については、その送還の可否を検討するに当たりまして、地方局の送還担当部門と難民等調査部門とが連携しながら、地方局全体で判断することとなるというふうに考えております。

 また、当該判断につきましては、入管庁本庁とも協議の上、当該事案を担当する地方局全体で判断する運用とすることとしておるところでございます。

 また、どのように判断するのかにつきましてですが、これも、具体的詳細はまたこれから詰めていくところもございますけれども、迅速な送還の問題と、それと難民等認定申請者の手続保障、このバランスの問題がございます。そういった観点からすると、相当の理由がある資料に該当するか否かについては、提出された資料の内容に、外観上真実らしく、その事実によれば難民等認定をするべき事情が含まれているかどうかを個別に検討した上で判断することになろうかと考えております。

米山委員 時間が来たので終わらせていただきますけれども、まだたくさん質問通告が残っておりますし、しっかりと質疑をさせていただくとともに、今ほど申しましたとおり、今ほど御答弁もありましたとおり、正直、細部が全然決まっていないわけですよ。全体で考えるとかといったって、午前中の参考人の先生方がおられたように、そんなの無理なわけですよ。ちゃんと、専門家の人を何人配置して、どのぐらいやってどうすると決めなかったら、検討なんかできっこないので、そういうことをきちんと決めていただきたい。

 ですので、これはまた次回も言わせていただきますけれども、是非、この法案は、一度廃案にして制度設計をやり直すべきだ、少なくとも大幅に修正若しくはきちんと穴があるところを詰めなければならないということを申し上げさせていただいて、私の質問とさせていただきます。

 ありがとうございました。

伊藤委員長 次に、山田勝彦君。

山田(勝)委員 立憲民主党、山田勝彦です。今日もどうぞよろしくお願いいたします。

 まず、午前中の参考人質疑を傾聴させていただき、改めて確信いたしました。難民申請者の回数制限を行うことと難民認定の独立性や専門性を高めることは、本来セットで提案されるべきであるということです。今回の改正案が著しくバランスを欠いていることがより明確になりました。

 難民支援協会に寄せられている当事者の方の声を紹介いたします。第三者機関がつくられるべきです。難民のことに詳しい人が審査に当たって、それで結果が駄目であれば、追い出されても仕方がない。このように当事者の方もおっしゃっています。

 私たちは、難民認定機関を入管庁から切り離し、独立性や専門性、何よりも日本の難民認定の信用、信頼が高まれば、明らかな濫用や、悪用を防止するための回数制限は十分議論していくべきだと私たちも考えています。しかし、難民鎖国とまで言われている日本の難民認定、入口は限りなく狭めたままで、難民の可能性のある人たちまで強引に母国へ帰そうとする、このような改悪は絶対にあってはなりません。そのことを強く訴えさせていただき、質疑に入ります。

 まず、四月十九日、本委員会の本村委員の質疑に対する大臣の答弁に大変驚きました。入管庁のこれまでの難民認定は適正に行われているので、過去の難民認定についての検証は不要である、このような問題発言がなされております。日本の入管収容は国際法違反という、国内外から強い批判を受けている現状認識が法務大臣として余りにも欠けているのではないでしょうか。

 私たち野党の議員は、不当に収容され続け、自由や人権を奪われ続けている外国人の方々や、その支援者の皆様から、難民認定や収容の在り方について直接話を伺い、外国人の命や人権を守る入管行政へと改善を求めてこの場に立っています。私たちの声は現場の声であり、国民の皆様の声です。

 大臣、日本の難民認定には大変な課題が山積しております。この法務委員会で私たちが指摘する問題点や改善点、全く検証をする必要がないということなのでしょうか。それは余りにも国会を軽視していると言わざるを得ません。お答えください。

齋藤(健)国務大臣 ちょっと話が幾つか分かれてお話しになっていると思うんですけれども、先日の私の答弁について答弁させていただきますと、難民認定審査におきましては、難民調査官が事実の調査として申請者の事情聴取を丁寧に行い、申請者の供述について、本国の情勢等に関する情報を活用しつつ、その信憑性を的確に評価している上、難民審査参与員の意見も最大限尊重しており、その判断は公平かつ適正に行われてきたものと認識をしています。個々の申請者の方々の置かれた立場、状況等にも配慮しながら、引き続き適正に対応してまいりたい。

 前回はここについての答弁であったわけであります。

山田(勝)委員 その点についての検証の必要はないという意味において、難民認定全体におけるこれまでの日本の入管行政の在り方について検証の必要はないというわけではない、そういうことで理解してよろしいでしょうか。

齋藤(健)国務大臣 ちょっと質問が漠然としているので、なかなか答弁は難しいです。

山田(勝)委員 それでは、具体的な事例をお話しします。

 母国で迫害を受けた、そして日本に助けを求めた、そのことが事実認定されたからウガンダの女性は裁判で勝利し、入管庁は負けたんです。三年以上前から、同性愛者を理由に迫害を受けている国、これは周知の事実でした。

 これで、国が裁判で負けたその事実をもって、検証を十分すべきと思いますが、この事実関係、法務大臣として、検証の必要があるのかないのか、お聞かせください。

齋藤(健)国務大臣 この件でありますけれども、これは、ウガンダ人女性に対する難民不認定処分を取り消す旨の判決が確定をしたということであります。

 これは、従来からも申し上げているところでありますが、訴訟の段階で原告から新たに提出をされた証拠、これについて原告の供述の信用性を裏づけるものとして今般の判決がなされたものというふうに承知をしているところでございます。

山田(勝)委員 この事件で明らかになったのは、先ほど大臣も言われたんですけれども、新たな資料とか証拠とか、まさにこの点がポイントなんですね。こういうところを私は改めていくべきだというのを本会議場でも大臣に御質問をさせていただきました。

 まさに、この事件に関わった弁護士の先生たちが、本当に日本の難民認定の在り方としてやはり問題がある、こういう制度がないとちゃんと人権を守れないと。国選弁護人制度を導入すべきじゃないでしょうかと私は大臣に質問させていただきました。そして、大臣は本会議場で、国民の理解が得られないとの趣旨の答弁がありました。

 この提案は、難民申請者や、先ほど言った弁護士も含めた支援者の方々の切実な声です。なぜ国民の理解が得られないと決めつけられるのでしょうか。アンケートでも実施されたのでしょうか。お答えください。

齋藤(健)国務大臣 我が国におきましては、退去強制事由に該当する場合でありましても、本邦への在留を希望する場合には、個々の外国人の事情を慎重に考慮して、在留を認めるべき者には適切に在留を認めている。

 統計を見てみますと、退去強制手続において在留特別許可がなされた件数は、過去八年間の平均で年間約二千五百件ありまして、これは、退去強制手続において本邦への在留を希望して、判断の最終段階である法務大臣の裁決を受けるための異議申出に及んだ件数の全体の約七一%に当たる。

 退去強制令書が発付された者は、このように慎重な手続を経た上で、やはり在留は認められないということが確定をした方である以上、我が国から速やかに退去する立場にありまして、こうした立場にある方に対してのみ行政訴訟の提起に係る例えば弁護士費用等を公費で負担をするという制度を設けることについては、国民の理解を得られるところはかなり無理があるんじゃないかなというふうに考えているわけであります。

山田(勝)委員 ありがとうございました。

 確かに、大臣は本会議場で、我が国から退去すべきことが行政上確定した者等についてはと、そういう方に対しては国民の理解が得られないという前段のお話がありました。しかし、ここ、この我が国から退去すべきことが行政上確定した者、これは、明らかに誤解を招く不適切な表現ではないか、私はそう思わざるを得ません。

 これは入管庁に伺います。

 難民申請者は皆、退去強制令書を受けている、まさにそのような言いっぷりになっていますが、それでいいんでしょうか。難民申請者はみんな退去強制令書を受けているんでしょうか。お答えください。

西山政府参考人 最後のお尋ねであります難民認定申請者はみんな退去強制令書を受けているのかといえば、それは否でございます。

山田(勝)委員 そうなんです。当たり前なんです。退去強制令書を受けていない難民申請者の方々も当然いらっしゃるんです。にもかかわらず、あたかも退去強制令書が出た、行政上確定した、そういう者についてはという言い方になっております。難民申請者が皆犯罪者だと印象づけるような答弁は、明らかに印象操作であり、極めて不適切な表現だと言わざるを得ません。

 その上で、大臣にお聞きします。

 難民の庇護を目的とする難民条約の趣旨からすれば、退去が行政上確定していない者、つまり退去強制令書を受けていない難民申請者であれば、例えば来日直後の一回目の難民申請者に対しては、公費で弁護士をつけるべきだと考えますが、大臣、いかがでしょうか。

西山政府参考人 前提として、正確には入管庁の所管外ではございますけれども、もし在留資格をお持ちの外国人が難民認定申請を行うについて弁護士の援助が必要であれば、例えば民事法律扶助という制度があるというふうに承知をいたしております。

山田(勝)委員 ちょっとなかなか理解できないんですけれども、在留資格をお持ちの外国人がと言われましたか。難民申請をしている時点で在留資格がないのは、ほとんどそう、当然ですよね。

 まあ、いいです。ちょっと、この辺りの提案をしっかりとさせていただきたいんですが……

伊藤委員長 先生、ちょっと待ってください。

 西山次長。

西山政府参考人 その前の御質問で、難民認定申請者は皆、退去強制令書を受けているのか、それは否であるということでございまして、その意味の中には、当然、今現在有効な在留資格をお持ちで難民認定申請を行っている方もおられます。

山田(勝)委員 いやいや、そういうことじゃなくて。

 じゃ、そういう、在留資格がなくて難民申請を行っている、日本に来たばかりで難民申請を行っている退去強制令書が出ていない方に対して、公選の弁護制度を導入すべきじゃないかという御質問です。

西山政府参考人 まず、在留資格がないという前提でございましたら、退去強制事由に該当しますので、退去強制手続に入ることになります。

 なお、難民認定申請者で、正規、つまり在留資格をお持ちの難民認定申請者数は令和四年の速報値で三千六十九人、それに対して、非正規、つまり在留資格をお持ちでない方は七百三人というふうに数字上はなってございます。

山田(勝)委員 こうやって、今問われているのは、難民に対して余りにも厳しい制度である日本の入管庁の制度改革自体が問われています。

 これも他国との比較で、一次審査から、難民認定の面接時に弁護士の同伴ができないとか、録画、録音も許されていないとか、こういうことも大変な問題です。難民申請を求める人たちには言葉の壁があります。最初から弁護士がつくことがとても大切です。弁護士へのアクセス、弁護士をつける権利について、絶対に改善すべきです。そのことを強く申し上げて、次の質問に入ります。

 本会議で、私の質問に対し、大臣は、難民認定においてトルコへの外交的配慮はないと明確に回答をなさいました。昨年四百四十五人、一昨年五百十人ものクルド人の申請に対し、裁判に負けた一例以外は誰も、誰一人として認定していない。事実上ゼロ認定です。大臣の発言とこの実際のデータ、明らかに整合性が取れません。

 私は、数字はうそをつかないと思っています。大臣が言うように外交的配慮がないのだとすれば、他国で保護されているクルド人を、なぜ全く日本政府は、入管庁は難民認定していないのでしょうか。明確にお答えください。

西山政府参考人 難民認定は、申請者ごとにその申請内容を審査した上で、難民条約の定義に基づき、難民と認定すべき方を個別に判断するものでございます。

 この点は諸外国においても同様でありますところ、難民認定者数に顕著な差異が生じる理由としては、多くの難民が発生する地域と近接しているかや、そうした地域から渡航がしやすいかといった事情に加えて、言語や文化の共通性や類似性、同じ事情により庇護されている人々のコミュニティーの規模等の観点から、庇護を求める方の最終目的地としやすいかなど、他国とは前提となる事情が異なる点が挙げられます。

 他方、我が国においては、難民と認定すべき者を適切に認定しているほか、難民とは認定していない場合であっても、出身国の情勢等に鑑みて、人道上、本邦での在留を認めるべき者については、在留を適切に認めて保護しているところでございます。

 一次審査において難民と認定した者と難民とは認定しなかったものの人道的な配慮を理由に在留を認めた者の合計について、処分件数に占める割合を算出しますと、令和四年では約二九・八%となります。この割合は、他のG7諸国と比較しても極端に低いものではないというふうに考えております。

山田(勝)委員 聞いたことを答えてほしいんですが、私は、なぜクルド人がゼロ認定なのかと聞いているんです。全く答えになっていません。しかも、これは通告を大臣にしていますからね。していないところで出てきてもらうと困るんですよ。大臣にしっかりと、政治家としての御意思を確認したいという趣旨でございます。

 クルド人の難民認定を認めず強制送還の対象としていることは適切だと、今の答弁だと、全く問題がないかのような信じ難いお話でした。

 日本も加入している難民条約三十三条には、「その生命又は自由が脅威にさらされるおそれのある領域の国境へ追放し又は送還してはならない。」と規定されています。この難民を送還してはならないノン・ルフールマン原則、難民申請者にも同様に当てはまります。

 難民申請中のクルド人が、入管庁から強制送還された後に、トルコ政府に逮捕され、その後、何かしらの理由で殺害をされてしまった痛ましい事件があります。このような事件も含め、今多くのクルド人の方々が我が国で苦しい思いを、強制送還される恐怖と不安におびえています。日本政府は明らかにこの難民条約に違反しているのではないでしょうか。大臣、お答えください。

齋藤(健)国務大臣 まず、難民条約に違反をしていないということにつきましては、この委員会でも何度も御答弁をさせていただいているところであります。

 それから、山田委員がお話しになった個別のケースにつきましては、日本における裁判の確定判決において御主張は否定をされているということでございます。

 その上で、トルコに対してなぜ一人もというお話がありましたが、これも繰り返しになりますが、難民認定は、申請者ごとにその申請内容を審査した上で、難民条約の定義に基づいて、難民と認定すべき方を個別に判断をしているものでありまして、その結果がそうなっているということでありまして、それ以上のものでも、それ以下のものでもございません。

山田(勝)委員 今日午前中、橋本参考人から大変重要な御指摘があったと思います。迫害のある国へ強制送還することは死刑の執行と同じくらい重い決断である、これは法務大臣が最終決断すべきだ、このように述べられていました。

 まさに、このクルド人の方は、入管が強制送還を決定し、事情はどうであれ結局母国で命を奪われてしまった。そういう過去の痛ましい事件があるわけです。だからこそ、今回の改正法案において、この辺りは本当に慎重に行わなければいけない。このことを強く大臣にもお伝えしたいと思います。

 そして、このような重要な改正法案の審議をしているさなか、またしても入管庁に対して訴訟問題がニュースとなっています。

 入管に収容されたクルド人男性に対し、不当な制圧、これが違法であると判決されました。ウガンダ人女性の裁判に続き、またしてもこの訴訟で国は負けたのです。このような事例は氷山の一角にしかすぎず、全国各地の入管施設でこのような被害が散見されております。私自身も、仮放免中の友人が、実際、入管職員から制圧を受けて、気絶するぐらいまで、痛みに、本当に本当に人権侵害の悲惨な話を直接伺いました。これは明らかに、日本が加入している拷問等禁止条約、この違反に当たるのではないか。

 大臣に伺いたいと思います。

 ウィシュマさんの、今日も御遺族が来ていただいていますが、死亡事件以降、今日、参考人からもありましたが、被収容者の処遇は人権に配慮して適切に行うんだ、こういう強い意思を齋藤大臣もお示しいただいているかと思います。仮に、今回の法律、改正になったとして、このような人権を侵害する違法な制圧はなくなるのでしょうか。

齋藤(健)国務大臣 私が、ウィシュマさんのビデオを見て、こういうことの起こらないように何としてもしていかなくちゃいけないという決意をしたということは信じていただきたいなと思いますけれども。

 今御指摘の、国が負けたというケースについて少しだけお話をさせていただきたいんですけれども、御指摘の判決は、被収容者に対して戒具を使用した上で制圧を継続したことについて違法性が否定されたものの、その際の個別の制圧行為の一部について国の主張が受け入れられなかったものというふうに正確に御認識をしていただきたいなというふうに思います。その上で、今の判決の内容を十分に精査して、適切に対応していきたいと思っています。

 その上で、更に申し上げますと、本法律案におきましては、処遇の原則として、被収容者の処遇は、被収容者の人権を尊重しつつ適正に行わなければならないという旨を今回の法改正で規定をしております。人権を尊重し適切に職務を行うことに、是非法案の成立後はやっていかなくてはいけないわけであります。

 また、被収容者に対する有形力の行使につきましては、入国者収容所等の規律及び秩序を著しく害する行為等に対して、合理的に必要と判断される限度で、その行為を制止し、その被収容者を拘束し、その他その行為を抑止するため必要な措置を取ることができるなどと、要件を明確かつ厳格に定めております。

 さらに、本法律案では、入国者収容所等の職員による不適正な行為について、法務大臣や出入国在留管理庁長官に対し是正を求めることができる、そういう規定も新設をしているわけであります。

 こうした諸規定を新たに入管法に設けることによりまして、御指摘のような非人道的な制圧行為が行われないように、成立した暁には、しっかり運用していきたいと思っています。

山田(勝)委員 この制圧についても、かなり慎重な議論が必要だというふうに思っております。

 次に、難民審査参与員についてです。

 百十七名のうち、日弁連の推薦が十一名、UNHCRの推薦四名というお答えがありました。難民審査参与員には、難民申請者に口頭意見陳述の機会を与えるかどうかの判断を行うなど強い権限があり、それゆえに高い専門性が求められる職であるにしては、率直に言って少し少ないのかなという印象を持ちました。三人一組の班で考えると、UNHCRや日弁連の推薦者や支援団体関係者が一人も入らない組が多数あることも明らかです。

 そして、最終的な任命の判断は入管庁によって行われます。政府に近い考えを持つ人を選んで、一次審査の正当性を確認するための制度とされることを防ぐ仕組みは、現行制度、ありません。独立性がないからです。

 そこで、お伺いします。

 このような参与員に任命された方々全てに対し、難民認定実務に関する専門的な研修は行われているのでしょうか。

西山政府参考人 難民審査参与員は、入管法の規定にのっとり、人格が高潔であって、公正な判断をすることができ、かつ、法律又は国際情勢に関する学識経験を有する者のうちから任命しているところでございます。

 このように、難民審査参与員は、難民審査に関して的確な意見を述べるための資質を十分に備えていると考えているところでございますが、さらに、難民審査参与員の間で各々の専門分野に基づく知見を情報交換し、難民審査参与員としての知見をより深めていただく趣旨から、協議会を定期的に開催するなどしているところでございます。

山田(勝)委員 いわゆる、今日、参考人もおっしゃっていましたが、国際情勢とかそういった専門性の研修、トレーニング、全くされていないという御答弁で間違いなかったと思います。

 十八日の委員会で、鈴木委員の質問に対して入管庁は、参与員の審査に当たって、必要な情報を、参与員御自身が調査するというよりも、難民調査官がいろいろな資料を参与員に提供して、それに基づいて判断をいただく、こう答弁されました。一次審査と同じく、難民調査官が提供した資料に基づいて判断が行われるということが明確になりました。これは私、大変な問題だと思っております。

 ウガンダ人女性の裁判に関わった弁護士はこう言われていました。数多く裁判を行った中で、常に入管庁の難民調査官は、難民ではないという資料しか提出してこなかった、公平性に明らかに欠けていた。

 こういった偏りのある難民調査官が、一次審査と同じ資料を参与員に提供している。その資料で参与員が判断するとすれば、この参与員制度の独立性はどのように確保されているのでしょうか、お答えください。

西山政府参考人 難民調査官が難民審査参与員に提供する資料でございますが、難民調査官がその判断で収集した資料のみならず、難民審査参与員の求めに応じて収集した資料もありますことから、難民調査官が収集した資料を提供することによって難民審査参与員の判断の中立性、公平性を損なうことにはならないものと考えております。

山田(勝)委員 入管庁がそう考えているだけで、こういった客観的事実関係を明らかにしているわけです。どう見たって、独立性、これが必要だということは、再三言っておりますが、加えて指摘させていただきます。

 最後、残り時間僅かですが、送還忌避者についてどうしてもお尋ねしたいことがあります。

 まず、法務省が私たち国会議員に示す資料、テロリストなどを排除しないといけないんだという趣旨で強調されているんですが、テロリスト、実際、入管施設の中にいないと。これはとんでもない印象操作だと言わざるを得ません。

 また、送還忌避者がイコール前科を有する者かのような、様々、前科の種類を挙げて、資料を提示されました。これもまた印象操作です。送還忌避者の中には、前科を有する者だけではなく、むしろ、前科を有さない者の方が圧倒的に多い。

 今日、橋本参考人が明確に言われました。外国人の前科を有する者が、日本の治安を悪化しているというのは、何の根拠もなく妄想でしかない。こういった印象操作は本当に慎むべきだと思います。

 一点お聞きさせてください。

 全収容者のうち、三千二百二十四人、約半分の千六百二十九人は難民認定申請中の方々です。そのうち、前科を有する人は四百二十四人。つまり、前科もない、そして難民申請中である千二百五人の方まで、なぜ回数制限を行うんでしょうか。

西山政府参考人 まず、テロリストについて言及されましたけれども、確かに、委員おっしゃるように、令和四年末時点の送還忌避者のうち、外国人テロリスト等がいるとは把握はしておりません。

 しかしながら、外国人テロリスト等の入国を許してしまった場合を想定したとき、現行法では、理由や回数を問わず難民認定申請中は送還が一律に停止されることとなることから、この者が難民認定申請をした場合には、この者を送還することができないという重大な問題がある、そのことを指摘したものでありまして、印象操作という委員の御指摘は当たらないものと考えます。

 また、前科についても御指摘がございましたが、これも、あくまでも客観的事実に基づくものでございまして、御指摘は当たりません。

 その上で、既に二度の難民又は補完的保護対象者の不認定処分を受け、いずれの処分についても行政上確定した者は、既に二度にわたり難民及び補完的保護対象者該当性の判断がなされ、外部有識者である難民審査参与員が三人一組で審理を行い、法務大臣はその意見を必ず聞いた上で判断するなど、慎重な審査が十分に尽くされた者でございます。そのような者につきましては、基本的に、法的地位の安定を図る必要がないことから、送還停止効の例外とすることが相当と考えているところでございます。

山田(勝)委員 難民申請の回数制限よりも難民認定の独立性が優先である、このことを訴えて、終わります。

 ありがとうございました。

伊藤委員長 次に、寺田学君。

寺田(学)委員 寺田です。午前に引き続きよろしくお願いします。

 二十分切っていますので、早速入りますが、お手元の方に、今日資料を、昨日と同じですが、できませんでしたので、配っています。

 在留特別許可について質問したいです。その中でも仮放免中の子供についてです。

 新聞の資料をやっているので、与党の皆さんも是非御関心を持ってほしいと思うんです。私自身も知らなかった制度だったんですが、不法移民を生きるというドキュメンタリーを見る中でこのことを知りました。

 DACA、ダカと呼ぶ方もいるそうですけれども、アメリカの制度です。タイトルにあるとおり、不法移民の子の救済、当面継続。

 このタイトルが示していること自体は、この本文の中にありますが、子供のときから国内で育った若者、アメリカではドリーマーと呼んでいたらしいですけれども、ドリーマーに滞在資格を与えることは、米国内でも幅広い支持がある。しかし、移民問題は党派の対立が激しくて、法改正は頓挫してきて、そのために、オバマ政権として、大統領令でDACAを導入して、一定条件を満たした若者を強制送還の対象から外した。ただ、トランプ政権になって、大統領令でやっているのはおかしいといって撤回したことを、米国の最高裁がトランプ大統領のやり方を棄却した。いずれ、まだ残っているということです。

 各国ともに、在留資格のない子供に対してどのように向き合っていくのかということをとても真剣に悩んで、試行錯誤しているということだと思います。アメリカのような国であっても、まさしく、今回、最高裁、保守系の方々、保守系の裁判官がいる中においてもこの制度を維持するやり方を選んだということでした。

 やはり、このDACAは強制送還の期限を延ばすみたいな話ですのでちょっと違いますけれども、私たちのこの日本も、何かしらの仕組みや制度を検討するということは、どういう考え方、どういう党派であろうとも、私は必要なことだと思っています。

 いろいろ入管庁の方々の御苦労もいただいて、調べていただきましたが、今、この日本には、日本で生まれて、日本に連れてこられて、日本しか知らない仮放免中の子供が、統計上、少なくとも二百名以上いると。その中には、小学校に通う子供が百二十三人、中学校に通う子供は六十四人。恐らく、高校に通う子供も、未成年もいると思います。

 その子供たちが、周りにいる同級生と同じ扱いもされず、そして、病気にかかれば保険がなくて満足がいく治療も受けられていない。本当に僕はふびんでならないと思います。何とかしてあげたいというのを強く考えているんです。

 話はちょっと個人的なことに変わるんですけれども、私、今こうやって質疑に何回も立っていますけれども、一部廃案を求める方々から、内なる敵と今呼ばれて、批判をされておりました。その理由は、この法案の審議を進めることを認めたこともありますし、審議拒否もせずに審議を続けているからだというふうに言われました。

 そのような批判を私自身受けていますけれども、私は審議拒否は決してするべきではないというふうに思っています。なぜなら、このように大臣と向き合って議論ができるというのは誰しもができることではありませんし、お願いするという機会を得ることも誰しもできることではないと思っています。ですので、今、私に課せられたことというのは、こういう本当に与えられた貴重な機会を決して無駄遣いすることなく、この二百人余りの子供たちの最善の利益のために立場を利用すべきだと思っています。

 そういう意味で、この立場をかりて大臣にお願いがあります。このふびんな、二百名を超える、苦しい立場にある仮放免中の子供を何とか救ってほしいと思います。彼らには帰る国もふるさともないです。自分も九歳の子供がいるんですけれども、生まれた場所が違っただけでこんなに苦しい思いをしているんだなと思うと、何ともできません。

 いろいろ調べる中で、確かに大人には在留特別許可を与えるにはちょっと戸惑うような、ためらう人がいることも事実ですし、自己責任で苦しい環境を招いた人もいるなと思いますけれども、ただ、この二百名を超える子供たちについては何ら一切責任がないと思います。ただ突如として与えられた運命の中で苦しくもがいているんだなと思います。

 朝日新聞でありまして、記事の中で、日本で生まれた十五歳の子供が、普通の人生を送りたいというコメントを出していました。川口に住むクルド人の男性、高校生でしたけれども、仲間から上野の動物園に行こうぜと言われたら、許可がないと県外に出られないものですから、ごめん、俺は無理だと言って断ったと。

 その人が言っているのは、普通の人生を送りたいと。多分、この子たちはそんなにぜいたくな望みをしているんじゃないなとは思うんです。単純に、普通の生活を送れるようにしてほしいということを願っていると思います。

 大臣、本当に繰り返しになりますけれども、何とぞ、こういう子供たちに普通の生活が送れるようにお力をかしてほしいです。法律改正も要らないです。国会の承認も要らないです。大臣が持っている権限ですることはできると思います。判断一つでその子らを助けられるという貴重な権限を大臣はお持ちになっていると思います。どうか、いろいろ事情はあると思います、いろいろな新たに生まれる問題もあると思うんですけれども、子供たちが望むのであれば、在留特別許可をその子らに与えてほしい。このせっかくいただいた機会をもってお願いしたいと思います。本当にこのとおりです。何とか助けてやってください。

 答弁を御用意されていると思いますけれども、恐らく望ましい答弁はないと思っていますので、この法案がいつか採決をされるときが来るのかもしれません。その最後の瞬間まで、大臣の良心を信じたいと私は思っています。

 次に進みます。

 参与員制度について、さんざん今御議論ありましたけれども、午前中の参考人質疑でもありました。我が党の中で、第三者委員会をつくるべきだという話を提案していますけれども、橋本参考人によれば、第三者委員会を諸外国でつくっている場合は、いわゆる原審ではなくていわゆる不服審のところに第三者機関が設置されて、政府とは違った形でやっていると。

 先ほど、人選をどのようにしているのか、るる出ていますので、細かくいきませんが、私、まず第一歩として、この参与員制度の専門性を高めるべきだと思っています。

 専門性は皆さんお持ちなんだと思います。地域の専門性、法律の専門性、企業経営の専門性、様々な専門性がありながら、やはり、今日の参考人からも教えていただきましたけれども、難民認定の専門性を持った方々で専従で組成して、専門的に難民認定を行っていく機関をつくるというのが一番大事ではないかなというふうに思っています。

 ここは大臣にお伺いしますけれども、個々の専門家ではなくて、難民認定の専門家をよりしっかり増やして、権限を、今、実質的には、そこで難民認定された場合には認めている運用になっているそうですけれども、専門家をより増やして権限を持たせるべきじゃないかと思いますが、いかがでしょうか。

齋藤(健)国務大臣 まず、この質問に入る前に寺田委員がるる述べられたことにつきまして、私から一つ申し上げたいと思いますけれども、私も子供を二人育てましたし、実は非常に厳しい状況で、物すごく悩みながら育てた経験があります。この私の悩みは、寺田さんが御指摘されたような方の苦しみに比べれば大したことではなかったと思いますが、子供の問題につきましては、私は人一倍真剣に考えているつもりであります。

 さはさりながら、現行法上では様々な問題がある、御両親を簡単にこういう人だと言い切れない方もたくさんおられるのも現実としてあるわけでありますが、私は、今の寺田さんの思いは重く受け止めて、微力ではありますけれども、私が何ができるかということは真剣に検討していきたいというふうに思っています。

 その上で、参与員について、専門家を増やすというお話がありましたが、現行法の下では、難民審査参与員は、日本弁護士連合会、UNHCR等から幅広く推薦を受けながら、事実認定の経験豊富な法曹実務家、地域情勢や国際問題に明るい元外交官や国連関係機関勤務経験者、国際法、外国法、行政法の分野の法律専門家等の中から選定をしているわけであります、もう釈迦に説法かもしれませんが。

 こういった難民認定手続は、出身国の情勢を適切に評価し、申請人の供述その他の証拠から的確に事実認定を行い、条約難民の定義に当てはまるかどうかを適切に判断するというプロセスを経なくてはいけません。証拠が海外にあって収集が難しく、限られた証拠を的確に評価して適正な事実認定を実現しなければならない。海外情勢を審査、判断に正確に反映させることも必要だし、国際法等の関係法令に関する知識、素養も求められていることから、それぞれ各分野の専門家を選任しているというのが現状であります。これら全てを理解し、判断できる方を見つけるのもなかなか難しいんだろうと思っています。

 したがって、難民審査参与員は、難民認定手続の各プロセスに必要な専門的知見を有する専門家が、だから三人一組で審理を行うということにしておりまして、さらに、法務大臣は必ずその意見を聞く仕組みになっていて、難民認定に必要な専門家の意見が手続に反映されているように最大限の工夫をしているというところは御理解をいただきたいなというふうに思います。

寺田(学)委員 UNHCRの方とお話をしている中で、難民の参与をやられていたんですかね、難民審査に関わっていたという話を聞いたときに、しゃべっていることを聞いたんだけれども、恐らく、誰かにそう言えと言われて言って、話しているから、何か怪しいな、ううんと悩んでいたんだけれども、ちょっと違う視点でいろいろ話をし始めたら、そのUNHCRの方は専門ですから、あれっ、これは難民該当性が高いんじゃないかなということに気づき始めたと。その部分を難民参与員として専門的に聞き出していったところ、いわゆる条約難民として該当するような地域であったり、そういうところで迫害を受けていたということが分かって、ちょっと間違っていたらあれですけれども、難民認定がされたんだという話がありました。

 山田さんも言いましたし、この間私も言いましたけれども、問題意識としては、その申請者自身が何を話したらいいのかということが分からないからこそ、てんでずれている、ずれているというのはその人にとって失礼ですけれども、求められているものに応え切れていない。そのためにサポートとして弁護士の同席が必要じゃないかというのは、一案でもありますし、まあ、私は強く推していますけれども、考え方でもありますし、まさしく受け取る側が専門家であったからこそ、あれっと、今話している少しの端緒自身から難民該当性がある供述を引き出していって難民認定ができたということはあるので。

 私自身、それぞれの専門家がいらっしゃることは多角的な見地が高まっていいとは思うんですが、やはり、それを不服審として、参与員としてやる以上は、難民認定の専門家が大宗を占めるような仕組みであること自体が本当の参与員としての役割を十二分に発揮していけるのではないかなというふうに思っています。

 もちろん、それ自身が、大臣に伝えられたときにどう運用するかということの問題点、そこを権限づけたいというのはまさしく第三者委員会に近くなりますけれども、ありますけれども、まず、本当に第一歩として、今いらっしゃる方が悪いとかじゃなくて、本当に、今日の参考人も言っていましたけれども、物すごい時間も取られるし労力も取られるとすれば、専従の人間が、かなり充実した難民認定の専門的な経験と知識を持った人間が中核的に、専門的にやっていくということが必要だと思います。その歩みを是非進めてほしいというのが問題意識です。大臣から御答弁があれば。

齋藤(健)国務大臣 審査に当たって、参与員の方々の専門性というものは極めて重要なんだろうと思っています。

 でも、先ほどもちょっと申し上げましたけれども、あらゆる知識を全て持った専門家というのはなかなか難しいと思いますので、どういう組合せで事実解明に当たるかということが極めて大事なんだろうなというふうに思っています。

 それと同時に、お話を伺っていて、やはり、専門性だけではなくて、その申請者の気持ちに寄り添ってうまく話を引き出していくという、人間力みたいなものも併せて恐らく必要になってくるんだろうと思っていますので、そういう目で参与員というものを選定していく必要があるんだろうなと思います。

寺田(学)委員 その意味で、やはり、皆さん、ほとんど兼業でやられています。今日の参考人の方々も言われていましたけれども、自分の授業を持ちながら月に二回やると。皆さん、百二十人、ほとんどそんな形だとは思います。大臣が言われるその御趣旨は十分踏まえながらも、中核的には専従で行う専門的な人間が担っていくという方向性は必ず必要だと思いますので、是非ともやっていただきたい。

 それとともに、先ほどの例示があったとおり、何を申請者が話していいのかということを導くような、そこから何かを見つけ出せるようなことができるように、サポートの人間の同席というものも認めるべきだと思います。

 それとともに、もう一個、最後、難民認定基準をちょっと参考人にも聞きますけれども、この間、次長と話していて、迫害のおそれがある人、それは難民でしょうね、ない人は難民じゃないでしょうね、ないとは言えない人はどうですかと言ったら、結構あっさり、それはあるわけじゃないからバツですと言ったんですけれども、そこまで言うと余りにも辛過ぎます。まさしくおそれで判断している以上は、ある程度、次長そのものが言っていたとおり、程度の問題です。

 今日、橋本参考人も言われていましたけれども、その程度自身が、国によってある程度のばらつきはあるけれども、大体二〇ぐらいから五〇ぐらいのやつで、七〇、八〇を求めるのは余りにも酷で、そんなことを言っている学者はどこにもいないという話でした。

 もう一度お伺いしますけれども、この間の答弁は、これからの運用にとって、私も質問して、しまったと思いましたけれども、運用に対して過度な正確性、確度を求めることになりかねないと思いますので、迫害のおそれがないとは言えない人の判断に対してどのように判断するか、改めて御答弁をお願いします。

西山政府参考人 私も、さきの答弁で言葉足らずであったと思います。再質問いただいてありがたいと思っております。

 先日の答弁において私がそのように申し上げたのは、前提として、難民該当性を判断する際には、条約難民の要件である迫害を受けるおそれがあるという十分に理由のある恐怖の有無を判断する必要があるため、その恐怖の有無の判断に当たっては、十分に理由のある恐怖があるかないかのどちらかに当てはまるのかを決めなければならず、その結果、十分に理由のある恐怖があるとされた者以外は条約難民の要件には該当しないことになるということを申し上げる趣旨でございました。

 したがって、御指摘の、おそれがないとは言えないと考えられるケースにおきましても、十分に理由のある恐怖があるか否かを判断し、これが認められる場合には適切に難民と認定することと考えております。

 なお、迫害を受けるおそれがあるという十分に理由のある恐怖の有無を判断する際には、申請者の供述や提出資料のみならず、外国政府機関の報告、UNHCRが保有する情報、本国における一般情勢に関する報道やその他の情報など、客観的情報の収集に努め、的確に行うことになると考えております。

寺田(学)委員 時間が来ましたので、終わります。

伊藤委員長 次に、阿部弘樹君。

阿部(弘)委員 日本維新の会の阿部でございます。

 この委員会でもう何度も質問に立たせていただいております。

 今回は、入管施設における医療の提供ということでお話しさせていただきたいと思います。

 いろいろ資料をお読みすると、もう、通告を余りしていないのでお聞きいただければいいと思いますが、大村入国管理センター被収容者死亡事案に関する調査結果というのがここにございます。

 国籍はナイジェリア人、当時四十歳代、入管法二十四条の四号ロで不法残留、及びリ、刑事処罰違反、一年を超える懲役刑の実刑に処せられた者に該当。刑務所を仮釈放後、平成二十七年十一月に大阪入管に収容されて、二十八年七月以降、大村入管、管理センター収容ということで、最終的にはお亡くなりになられるわけですが、拒食、摂食を行わないということでございます。

 精神科領域には、神経因性拒食症、摂食障害というカテゴリーがあるわけでございます。どうもこの症状を見ていると、薬物を御使用になった形跡があるやにも思われます。しかし、精神科的な視点というものが非常に、記載としてはない。最初は拒食であっても、やがて物を食べられなくなるという、拒食症という精神科の病気、これは主に、解剖学的に言いますと、食欲をつかさどるところの機能が失われてしまう病気であると思います。

 では、この事案をずっと見ていて、そういう診断を、どなたか精神科医の医者が診断をつけていたらどういう治療になっていたかということになると、これは、向精神薬という精神科の治療を開始して、そして食欲を増進させる治療を行うということだったのかなと。

 でも、主に思春期の女性なんかが発症することが多い。それはやせ願望などで、食事後に指で奥をつっついて食べ物を吐く、そのことを繰り返す。大学病院なんかでも若い女性の患者さんがたくさんおられるわけで、御承知いただきたいのは、なかなか治療がうまくいかない、神経症の分類ですが。そしてお亡くなりになる方もかなりいるということでございまして。

 これを、結果的に、大学病院で治療しても入管施設で治療しても同じじゃないかと言われるかもしれませんが、少なくともその診断がやはり必要で、そういう治療を行うべきであるというふうな、私、詳細は分かりませんけれども、印象を持ったわけですね。

 私は今、精神科医でございますけれども、以前は白血病の治療など全身管理をしておりました。ですから、私も病院の中ではしっかりレントゲンも見ますし、尿の所見や血液学的な所見も見るわけでございます。

 今般、名古屋入管の事案が発生しまして、私も非常に残念でいたたまれない気持ちではおりますが、本来、入管施設というのは、治療を目的にする施設を持つというのを想定していなかったんじゃないか。入院治療を行うということを想定していない。つまり、病気になれば、例えはちょっとよくないかもしれませんが、学校でいえば、保健室に行けば保健の先生がいらっしゃる、そこで治療を行うというような、施設を利用する人の数が少ないときにはそういうこともあったんだというふうに思うわけでございます。

 しかし、私が述べたいのは、やはり、このように施設を利用する方が増えてくる、国籍も非常に多岐にわたってくる、そうすると、日頃の健診などを受ける方は余りいないんじゃないかということが想像できるわけです。そうすると、今般の名古屋入管の事案を経験して医療体制の整備を行うということで、これは、一人の医者がその方の病状把握を責任を持ってマネジメントをするということは大切なことなんですよ。病気について、A医師、B医師、四人も五人も専門家がいても、誰かがマネジメントしなければいけない、そのことを取り組んでいく、そのためには常勤医が必要になってくるわけでございます。

 改善策の取組状況、今、入管施設が幾つあるんですかね、そういうところで、常勤医の数については、次長、いかがでございますか。

西山政府参考人 令和三年三月以降で、新たに名古屋局など四官署において常勤医師が確保され、また、医師以外でも、常勤看護師や常勤薬剤師が多くの官署で増員されるなどしているところでございます。

阿部(弘)委員 常勤医師が、東日本、大村、東京、以前は横浜もゼロ、名古屋もゼロで、大阪も一だったわけですが、それの、横浜も名古屋も補充されましたですか。

西山政府参考人 名古屋局につきましては、本年の四月に常勤医師の確保が相なりまして、あと、東京局横浜支局につきましてはいまだにゼロ人でございますが、その代わりに非常勤医師などによって体制を整えているというような状況でございます。

阿部(弘)委員 先ほどもお話ししましたように、少なくとも医師が、主治医という言い方が適切かどうか分かりませんが、一人の医師が医療サービスを行うべき人のカルテの管理を行うことが大切なんですね。ですから、名古屋は常勤医が確保できたということですが、横浜支所はまだできていないということ。

 それと、もう一つは、常勤医というのはやはり昼間働かれます。ですから、今般、病気というのは夜間もあります。夕方五時から朝の九時まで、あるいは土日も医療体制が不足するわけでございますが、そういった点ではいかがですかね。

西山政府参考人 夜間対応についてお尋ねがございましたが、常勤医を配置している、配置することができたところにおきましては、常勤医師にお願いをして、夜間においても適宜対応できるような体制を取っていただいているというところでございます。

 また、常勤医がいない横浜支局につきましては、外部病院と連携を取るという形で、そういった夜間、休日にも対応できるようにしているところでございます。

阿部(弘)委員 今答弁いただいたことが、主に入管施設というのは都会にあることが多いわけです。へんぴなところにあるというのは、そういうところも、場合によっては支所であるかもしれませんが、主に都会にあるわけですから、救急病院が、そういう都会であれば、二十四時間体制で治療を行えるところがある。ですから、九時から五時の急変やあるいは休日の対応など、よく私も、保健所におりましたら、保健所で連絡会議が時折あります。ある目的の連絡会議じゃなくても、各役所間のいろいろな相談事を連絡する会議でございます。そういう、入管施設を取り巻く、国の出先であったり県の出先であったり、連絡会議の開催というのは、この医療体制に関してはいかがですか。

西山政府参考人 医療体制の強化に関わる有識者会議を開催しまして、その提言に基づきまして、今御指摘の、連絡会議といいますか、連絡協議会といったものも設置するような取組が進められております。

阿部(弘)委員 是非とも、そういう連絡会議があれば、夜間、土日などの救急医療体制、その中に是非とも精神科病院の参加もお願いした方がいいなと思っております。

 午前中の先生からの説明の中にも、非常に暴れてしまう、困ったという事案があるわけです。私は、それはもう精神科だというふうにすぐに感じておるわけでございます。一方、自傷行為、これは精神保健福祉法の措置入院の対象でもあります。

 ですから、そういった方々を抑圧するための方法というのは、精神科領域でも特段の技術があるわけです、人権に配慮したですね。そういうことを利用することの方がお互いの利益にかなうんじゃないかということでありますが、いかがでございますか。

西山政府参考人 精神科医の重要性については、私どもも十分認識しておりまして、各局における非常勤医師の配置の中に精神科医は入れるようにはいたしておりますし、また、具体的に各局でどこまでというのは今つまびらかではございませんけれども、委員から今御紹介がございましたような連絡協議といった場にも精神科医が参加できるような形は進めてまいりたいと考えております。

阿部(弘)委員 私も三十代前後にオーストリアのウィーンに、ウィーン大学に二年留学しておりました。そうすると、医者ですと、日本人会が、新しい医者が来たということで、日本人会の様々な方々が名刺交換や、あるいは子供の病気のときにお願いするようなこともあります。そういう日本人会には来られませんけれども、高齢の退職した女性が精神疾患を患ったよということで、異国の地で、非常に慣れなく、言葉も不自由だ、ストレスで何かおかしな言動をするようになって、精神科の治療が必要なんだけれどもということも、一人じゃなくて複数名聞くわけなんですね。

 ですから、日本人がそうであるように、外国にお見えの、日本に来られる方々も、やはり異国の地で言葉も通じないということで、非常に精神疾患を患ってしまうということも多いわけですから、当然、入管施設に入ってくるときにも、精神科の診断というものがその方にとっても非常に有用になってくるというふうに感じるわけでございます。

 精神科というのは、一人でやるわけじゃなくて、やはりチームでやりますので、スタッフの方、監視の方、あるいは薬剤師さん、そしてその他のみんなで治療をやっていきますが、そういう人たちが、今の入管の施設ではなかなか、病院と違いまして、日頃、医療レベルを何かしら学び続けるというのは、これからスタートしたら非常に難しいんですけれども、そういう研修体制みたいなものはお考えでいらっしゃいますか。

西山政府参考人 お尋ねでございますけれども、私どもの方で医師の研修を何かしら主催するという取組は行っておりません。

 ただ、一つあるとすれば、常勤医師がなかなか確保できない問題として兼業の制約があって、兼業の制約が、ないために、自ら自分のスキルを上げることができないといった、そこが入管に協力し難いといった隘路になっているという御指摘がありました。

 そこで、今回の改正法案では、この常勤医師の兼業禁止、国家公務員である以上は兼業できないのが原則になりますが、それを緩和する規定を設けまして、常勤医師についても、外部の医療機関に兼業して、そちらの方で更にスキルアップをしていただきつつ、入管にもお力をいただくような体制になるのではないかと考えております。

阿部(弘)委員 医師にしても、薬剤師にしても、あるいはスタッフにしても、研修し、そして、場合によっては、そこの、研修先の病院が、入管の日頃の業務のお手伝いがスムーズにいくようなことも考えられるわけでございます。

 私は、もちろん入管というのは、働いている医師は存じ上げませんけれども、医療刑務所で働いてある方、精神科医というのはよくお話をさせていただきます。そういう方々ともいろいろなコミュニケーションを取ることで、その先生方もスキルアップになりますし、私たちもそういう法務医療という点でいろいろ学ばせていただくことが多々あるわけでございます。

 では、外部との連携は、先ほどの連携を図るような会議を開いていくということを行うわけでございますが、職員の皆さんに対しては研修などを行っていかれますか。

西山政府参考人 まず、今回の名古屋局の反省の下に、救急対応について非常に職員の知識などが不十分であったということでございまして、至急、救急対応マニュアルというのを作成して、それで各職員にそれを周知するような取組をやったほか、先ほどの有識者会議の提言にありまして取り組んでいることとして、職員、これは幹部も含めて、あるいは現場の職員も、それと医師、入管庁で御協力いただく医師あるいは常勤医師との間でカンファレンスを行いまして、医療に関する知識の共有であるとか、あるいは職員にとってはそれが知識の向上にもつながるわけですが、そういった取組を各局でやっているところでございます。

阿部(弘)委員 最近は往診サービスの団体というものがかなり普及してまいりました。二十四時間体制で、夜間でもあるいは土日でも往診に来てくれる。県によっては、高知県などは往診サービスをする会社と契約をするというところもあるわけでございます。具体名は申し上げませんが、そういう、時代も、リモートで診察する、あるいは夜間往診をリモートでしながらサービスを提供するということもありますので、是非ともそういう取組も、研究、すぐにやるというのはなかなかいろいろな、でも、違法じゃないですね、違法じゃない。そういうサービスがコロナ以降非常に盛んになってきましたから、そういうことはやはり収容者やあるいは入国管理の皆様方の双方の利益になるんじゃないかなと思いますが、そういった点はいかがでございますか。

西山政府参考人 現在までのところ、民間運営の、例えばオンライン診療であるとか往診等のサービス、そういったものの利用実績はございませんけれども、一部の官署におきましては、他官署の庁内医師によるオンライン診療の実施体制、それ自体は整えられているところでございます。

阿部(弘)委員 時代は少しずつ進んできておりますので、是非ともよろしくお願いします。

 では、医療のところはここまでで終わりますけれども、大臣、入管の医療を整えることの大切さということで、大臣から御答弁をお願いします。

齋藤(健)国務大臣 被収容者の健康を保持するために必要な診療その他の措置を講ずることは、私は出入国在留管理行政の極めて重大な責務であると認識をしています。

 入管庁においては、名古屋局における死亡事案の発生後、調査報告書における指摘や医療体制強化に係る有識者会議の提言も踏まえて、各官署における医療体制の強化に取り組んできています。

 このような取組によって、御答弁もありましたけれども、名古屋局を含む四官署で新たに常勤医の確保に至ったこと、常勤看護師や常勤薬剤師の増員等がなされたことなどの成果を得られており、各官署の医療体制は着実に強化をされてきているんだろうと認識しています。

 それらに加えまして、本法案では、入管収容施設において常勤医師を継続的かつ安定的に確保するため、常勤医師の兼業の要件を緩和しており、常勤医師の安定した確保に資するものとなっているところです。

 これで終わりということではなく、今後も引き続き入管各官署における医療体制の強化に向けて必要な取組をしっかり行っていきたいと考えています。

阿部(弘)委員 今後も着実な実現のためのフォローアップ体制というのができていくものだと思いますので、是非ともよろしくお願いいたします。

 ちなみに、私は、ニトラゼパムやクエチアピン、日頃、日常的に使っております。決して危険な薬ではないことを申し添えておきます。

 次に、仮放免を認める基準というものはいかがでございましょうか、医療に限ってくるということで。

西山政府参考人 今回の改正法案における仮放免は、監理措置制度を創設したことに伴いまして、本来の制度趣旨に合致するよう、健康上、人道上その他これらに準ずる理由により収容を一時的に解除する制度としております。

 仮放免許可の理由の例として、健康上の理由の場合は、被収容者が心身の健康を害し、収容の継続が相当でなくなった場合、人道上その他これらに準ずる理由は、実父母の葬式に参列する場合など、収容を解く必要性が高い場合ということを想定をいたしております。

阿部(弘)委員 そこで出てくる健康上の理由というのは、治療を目的とする仮放免制度、何か例がございますでしょうか。

西山政府参考人 これは現在の、現行法下の仮放免におきましても、入管施設、収容施設での診療では十分でないということで、外部の病院にかかる必要がある、特に入院が必要になるといった場合に仮放免を許可するということをやっておりましたが、この改正法案の下でもそういった形の利用は考えているところでございます。

阿部(弘)委員 本来の目的に沿って仮放免が運用されるということでありますね。

 それでは、ちょっと聞きそびれたこと、医療とは関係ないところなんですけれども、自発的な帰国を促すための措置というところについて御説明をいただけますでしょうか。

西山政府参考人 まず、現行法上につきましては、出国命令というのがございまして、これは、出国する意思を持って自ら出頭した者で、一定の重大な前科がないなどの要件を満たす者について、収容せずに簡易な手続で出国することを可能とし、退去強制された場合と比較して、その際の上陸拒否期間を短縮する制度でございます。

 今回の改正法案におきましては、出国意思を持って自ら出頭したという先ほどの現行法下の場合に加えまして、入国審査官から退去強制対象者に該当すると認定される前に自ら出国意思を表明した場合にも出国命令を発出できるよう、出国命令対象者の要件を拡大するということにしております。

 これによりまして、摘発等をされた者であっても、早期に出国意思を表明した場合には出国命令の対象となり、上陸拒否期間が短縮されるという利益を受け得ることから、自発的な出国を一層強く促すことができるものと考えております。

阿部(弘)委員 ありがとうございました。

 次に、ちょっとこれも聞きそびれておったことですが、特別永住証明書等の取扱い、十六歳未満の方の取扱いをどのように見直してきたか、御説明をお願いします。

西山政府参考人 現行法上、十六歳未満の者の在留カード及び特別永住者証明書の有効期間は、十六歳の誕生日又は在留期間の満了の日若しくは十六歳の誕生日のいずれか早い日となっております。十六歳未満の者の場合、それらの有効期間の更新申請を父母などの代理人が本人に代わって行わなければならず、本人自らがそれを申請できるのは十六歳の誕生日当日のみということになります。

 代理人が十六歳の誕生日までに申請を行わず、本人も十六歳の誕生日当日に申請を行わなかった場合、本人には有効期間更新申請義務違反罪が成立いたします。申請が可能な期間の大半で申請義務を負うのは代理人であり、本人が申請を行い得るのが十六歳の誕生日一日しかないにもかかわらず、申請義務が果たされない場合には本人が罰せられる可能性があることは不合理であるということは、かねてより指摘をいただいたところでございました。

 そこで、本法案では、十六歳未満の者の在留カード及び特別永住者証明書の有効期間を、それぞれ十六歳の誕生日の前日又は在留期間の満了日若しくは十六歳の誕生日の前日のいずれか早い日に改めます。

 この改正を行うことで、有効期間更新申請については代理人のみが申請義務を負うこととなり、本人の申請義務が生じず、本人に有効期間更新申請義務違反罪が成立しないということとなります。

阿部(弘)委員 どういう刑罰かはあえて聞きませんが、十六歳未満のお子さんが代理人を通じて申請を行えるというふうに改正されるということで、非常にいいことだというふうに考えております。

 少し時間を残しますが、これで終わります。ありがとうございます。

伊藤委員長 次に、鈴木義弘君。

鈴木(義)委員 お疲れさまです。

 おとといの質問に続きまして、少し細かい話を、もう一回確認をしたいところが出てくるし、午前中の参考人質疑のところでも、参考人の方からも意見開陳があった中でも述べられていたことを、再度になるんですけれども、確認をさせてもらいたいと思います。

 まず、収容に当たっての司法審査について、海外の幾つかの国の事例を見ていきますと、ドイツはやはり司法審査を取り入れているんですよね。片やアメリカとか豪州とか英国だとかフランスでは、その制度を取り入れていないんですね。

 今回の法改正において、我が国において司法審査を導入しなかった理由はなぜかを聞きたいと思います。

西山政府参考人 諸外国の例を網羅的に把握しているものではございませんが、委員御指摘のように、諸外国においては収容の要否を司法機関が事前に審査する立法例が存在することは承知しております。

 もっとも、そもそも出入国在留管理は行政権に分類される作用であって、国家の主権に関わる問題であることもあって、そこにどのような形で司法を関わらせるのかについては、各国の法体系や出入国在留管理制度全体の在り方を踏まえて、それぞれの国において政策決定すべき事項であると考えられます。

 我が国では、退去強制処分は、いわゆる三審制の下、慎重かつ厳格な手続を経ており、不服がある場合には行政訴訟の提起等によって事後的に司法審査を受けることができることとなっております。

 加えて、今回の法案におきましては、逃亡等のおそれのみならず、収容により本人が受ける不利益の程度をも考慮した上で監理措置か収容かのいずれかを選択する仕組み、収容した場合でも、主任審査官が三か月ごとに収容の要否を必要的に見直し、出入国在留管理庁長官においてもその収容判断の適正をチェックする仕組みを導入しております。

 このような事前、事後の仕組みにより、裁判所による事前の司法審査によらずとも手続の適正は十分に図られていると考えており、本法案でも事前の司法審査の仕組みは設けなかったものでございます。

鈴木(義)委員 おととし、四年ぶりに衆議院にお世話になったんですけれども、そのときに入管法の法案のことを説明いただいたときに、他国の状況はどうなっているんですかとお尋ねしたら、そういう知見は持ち合わせていない、こういう話だったんですけれども、そもそもそれが私は違うんじゃないかと思うんですね。

 そういうふうに、日本は日本、ほかの国はほかの国、それでいいんですけれども、そうすると、繰り返し同じような質問になっちゃうんですけれども、難民申請した人、その人の母国においてどういう状況だったのかといったときに、誰がちゃんと調べているのかというところに行き着いちゃうわけですね。

 そこの国の入管の仕組みがよく分かっていないんだという話になると、じゃ、その国の状況がどうなっているか、外部から見たときに、こうなんじゃないか、ああなんじゃないかなのか、例えば、そこの国に日本の大使館があったり領事館があれば、最低でもそこからニュースソースをやはり取る、地域性を見るとか、どういう宗教観があるとか、差別があるかと。こっちの日本国にいて判断するんじゃなくて、そこの地域にある情報をきちっと捉えることによって、難民として認定すべき方なのか、そうじゃないのかという判断がそこで出てくるような気がするんですよね。だから、それはやはり今後の、まあ、運用でいいかどうかは私は何とも言えませんけれども、そこがやはり足らないんじゃないかな。

 例えば、いただいた資料を見ると、日本は入管施設は独立していますけれども、アメリカとかほかの国を見ると、刑務所を一部利用しているんですよね。見たことないですか。そうですか。じゃ、余計なことは言わないようにした方がいいな。

 そういうことすらも分からないで、日本がすごく劣悪なというようなことになっているのか、じゃ、ほかの国はどうなのかといったときに、刑務所も代用しているような国があったときに、刑務所とはやはりちょっと違うのかなと思うんですね、犯罪を犯したわけじゃないんですから。そこら辺の取扱いがやはりもう少し、国際基準がどこにあるのかというのはなかなか難しい議論になると思うんですけれども、リサーチして対応を考えていった方がいいかな。

 そのうちの一つ、今日か先般でも議題になったんですけれども、アメリカやフランスでは収容期間の上限が九十日と設けられているんですね。今回の法改正でも日本で上限を設けなかった理由はなぜなのかということと、外国の制度の中で、九十日上限を設けている国は、その九十日を過ぎたとき、どういう扱いになるのかというのが一番問題になるんだと思うんですね。日本は上限を設けていないということですから、百日でも百二十日でも、今でも難民申請された方が最終的なジャッジを受けるのに二十三か月とか二十四か月、二年もかかっているというのがあるわけですね、上限がないから。

 今回も法律の改正で上限を設けない、でも、外国では九十日というふうにうたっている国もあるということは、それをどう日本が捉えるのかと、その国がその後どういう運用の仕方をしているのか、お尋ねしたいと思います。

西山政府参考人 まず、本法案につきまして御説明しますと、収容期間に上限を設けた場合、その上限まで送還を忌避し続ければ、逃亡のおそれが大きい者も含め全員の収容を解かざるを得ず、確実、迅速な送還の実施が不可能となるため、収容期間に上限を設けることは相当でないと考えたところです。

 そこで、送還忌避者の長期収容の解消、防止は、収容が長期化する前に迅速、確実に退去等をさせるとともに、収容しないで退去強制手続を進める監理措置によって実現することといたしました。

 加えて、今回の改正法案では、より実効的に長期収容を防止する観点から、新たに三か月ごとに収容の要否を見直す仕組みを導入しております。

 これらの仕組みによりまして、不必要な収容の回避、収容の長期化の防止は達成できると考えております。

 海外についてお尋ねがございました。

 米国では、退去命令発出後の収容期間の上限が九十日と規定されていると承知していますが、司法長官が退去命令に従わないと判断した者、社会に危険であると判断された者、一定の前科を有する者など、収容期間を延長して九十日を超えて収容が可能な場合を広く規定しているものと承知しています。

 また、フランスでは、最長合計期間は九十日、テロ行為等を行った者については最長合計が二百十日であると承知しているところ、収容期間を経過した場合、放免することになるも、再収容は禁じられていないものと承知をしています。

鈴木(義)委員 ありがとうございます。

 じゃ、次に、これも議題になったんですけれども、送還忌避者による送還妨害行為が発生しているんだ、例えば、飛行機に乗ったら大声を発したとか中で暴れたとかといって送還ができなかった人は、どのような対応をしているのか。また、今回の法改正で、そういった方を送り返せるのか返せないのか。そこのところをお尋ねしたいと思います。

西山政府参考人 現行法下におきましては、送還される者が、現に送還中の航空機内で大声を上げたり暴れるなどの送還妨害行為に及んだ結果搭乗を拒否されたことがあり、再び同様の行為に及ぶおそれがある場合について送還を実現する現実的手段がないのが現状でございます。そのため、これらの者を送還するには、本人に本邦からの退去義務を課し、罰則により間接的に自ら本邦から退去することを促すほかないということでございます。

 そこで、本法案におきましては、罰則つきの退去の命令制度を設けているものでございます。

鈴木(義)委員 それともう一つ、これも、時代が変わったときに相手国の対応が変わったというふうに説明を受けたんですけれども、例えば、退去を拒む自国民の受取を拒否する国に対して、日本が一生懸命今まで外交ルートを介して受け取ってくださいというふうに働きかけたんでしょうけれども、じゃ、今、前段で御説明いただいた米国やフランス、ドイツ、韓国などの国はどのような対応を取っているんですか。こういう送還忌避、拒否者というんですかね、暴れたり騒いだりした人に対して。自分は帰りたくないんだって、無理くり連れていくことはできない。そういう人はうちの国は戻しませんという国に対して、ほかの国の対応はどうなっているのかなんですね。それもリサーチできていなければ、そこの国と一緒になって、やはりこの人はうちにふさわしくない人だから帰ってもらいたいんだといっても、帰せないんじゃないかと思うんですね。

 幾ら、法律で罰則を作ったときに、刑務所に行ったって、刑務所に入っていた人が、殺人だとか麻薬で何年も刑務所に入って、出てきても日本にいようとする人がいるから、今回の法改正になっていくわけじゃないですか。その人方をやはり帰せない、戻せないということになったら、結局同じことを繰り返すだけかなと思うんですけれども、その辺はどう対応されるのか。

西山政府参考人 諸外国の例につきまして網羅的に確認できているものではございませんが、例えば、米国は、自国民の受入れに協力しない国についてビザの発給を停止するなどの措置を取っているものと承知しています。また、送還を妨害するような行為があった場合、米国、フランス及びドイツは、対象者に当該国からの退去の義務を負わせ、当該義務違反に罰則を科する制度を有しているものと承知しております。

 一方、我が国、これまでの取組、講じてきた方策でございますが、送還を拒否する自国民の受入れを拒否する国に対しては、関係省庁とも連携しつつ、当該国当局との交渉を通じ、我が国の退去強制手続への協力を求めてきたところでございます。

 また、送還を妨害するような行為があった者については、送還できるよう、護送官付送還、チャーター機を利用した集団送還、国際移住機関、IOMによる帰国支援プログラムなどの利用に取り組んできたところでございます。

 今回の法案で罰則つきの退去の命令制度を入れることにつきましては先ほど答弁をしたとおりですけれども、今申し上げました取組は、改正後も引き続き取り組んでまいりたいと考えております。

鈴木(義)委員 今話題に上げた国の出身の方が私の旧の選挙区でいらっしゃって、日本に来て二十五年とか、三十年までいかないと言っていたかな、日本人の奥様と一緒になって子供も一人もうけて、日本で働いて生活している。そういうちゃんとした人もいるんですよね。

 だから、日本語も流暢にしゃべるし、仕事もきちっとやっていて、生計も立てているという人もいらっしゃるので、全員が全員、外国籍の人が悪いとかということを言っているわけじゃなくて、やはりちょっとこの方はお帰りいただいた方が、日本の国とすれば、犯罪を起こすということは、被害者がいるということですね。被害者のことを誰も言わない、加害者の話ばっかりになっちゃう。被害を受けるのは誰なのかという話なんです。そのリスクをなるべく少なくしようとして、お帰りいただいた方がいいというのが、今回の私は法改正かなというふうに思うんです。ルールはルールでちゃんと守りましょうということです。

 先般もお尋ねしたときに、難民申請していても、ビザの申請をし直すこともできるし、もう一回、例えば働きたいといったとき、技能実習生の中のこのジャンルだったら可能だったら、難民申請をしているときでもビザを出せばいいだけの話じゃないですか。技能実習生に対応する仕事ができるというんだったらですね。

 だから、日本に来る目的が何なのかということを、いつも私、同じことを何回も繰り返していますけれども、観光で来るのか、勉強したくて来るのか、働きたくて来るのか、家族に会いたいという人もいるでしょう、知人に会いたいという人もいるんだと思うんですけれども、日本に来る目的がやはりあるんだと思うんですよね。そこのところをやはりきちっと精査した方がいいんじゃないかな。人でなしというふうな言い方はちょっと過ぎた言い方かもしれないですけれども、第三者からそういうことを言われないようにするにはどうすればいいかというのが知恵の出しどころかなというふうに思います。

 それともう一点、送還忌避者のうち、実刑を受けた者を母国に送還できない理由はなぜなのかということですね。

 同じ話の内容になっていくと思うんですけれども、例えば、刑法の改正のときに、実名を出しちゃえばカルロス・ゴーンさんの海外逃亡を手助けしたアメリカ国籍の親子がいて、日本の刑務所に収監されていたら、アメリカに移送するんですというので、認めているわけじゃないですか。その制度があるんでしょう。自分が自発的に、自分の国に帰りたい、そこで刑務所に入ってもいいというふうに申請して、逃亡罪のときにそういう措置を取っているじゃないですか。

 じゃ、もし日本で犯罪を犯して、刑務所に収監されている人が、刑務所から出てくる前に、その国に送り返すことができないのかということです。だって、逃亡罪のときに、カルロス・ゴーンさんの手助けをした人が、アメリカで逮捕されて、日本で裁判を受けて、日本の刑務所に収監して、日本の刑務所からアメリカの刑務所に移送されているわけですよ。日本でそれはできないのかということですね。できない理由がもしあれば教えてもらいたいんですけれども、分かる範囲で結構ですから。

西山政府参考人 お尋ねの点につきましては、所管外でございますので、お答えは困難でございます。申し訳ございません。

鈴木(義)委員 例えば、犯人というんですかね、もう刑が確定している方ですから、その方を移送する条約がなければ送り返せないとか移すことができないということであれば、それは条約を結ぶように努力をしていけばいいと思うんですよね。

 だから、そういうことも一つの方策だということですね。刑期が終わったから、日本に出て、もうそのときはオーバーステイになっちゃっているわけじゃないですか。それでまた難民申請しましたという話で。刑務所にいるときに、そこの国の国籍の方だったら、そこの国の刑務所に移ってもらうような働きかけを、所管が違うと言われればそれで終わりなんですけれども、是非、法務省の刑事局なのか、ほかの局とよく相談して対応してもらった方がいいかなと思います。

 それと、時間がないので、もう一点だけ確認したいんですけれども、仮放免の期間が十年以上の方が二百五十八人いるという、まあ、データをいただいた中でピックアップしているだけの話です。これらの方はどの資格で国内にい続けられるんですか。この方々は、働いているのか、就業しているのか、生活費はどうされているのかということです。分かる範囲で結構です。

西山政府参考人 お尋ねの仮放免中の外国人、これにつきましては、退去強制令書が発付されていることから、既に我が国に在留する資格はございません。在留資格を有しない仮放免者について、就労についてお尋ねでございますけれども、就労を認めることは、在留資格制度を採用しております現行入管法の下では困難でございます。

 また、退去強制令書が発付された者は我が国から速やかに退去すべき立場にあり、入管行政の一環として国費による支援を行うこともまた困難でございます。

 そのため、仮放免者は、基本的には自らの資力又は親族等の援助により生計を維持すべきものと考えております。

鈴木(義)委員 建前の話なんだと思うんですけれども、かすみを食って生きているわけじゃないんでしょうから、どこかで食べるためのサラリーを得ているんだと思うんですよね。でも、十年以上の方、十年以上も仮放免でいらっしゃる、どこかで働いていない限り、誰かに御飯を食べさせてもらわなければ生活できないと思うんですよね。この方が二百五十八人もいるという現実があるわけですけれども、今回の法改正でこういう方は出てこないということで理解すればいいんでしょうかね。

西山政府参考人 一つは、仮放免が現行法下で長くなっている原因が、送還がなかなかできないにもかかわらずそれを実現する手段がなかなかないということでございまして、今回の法改正におきまして、送還停止効の例外を設けるなどの措置で、まずは迅速に送還をするということが現行法よりも促進されるということが一点。それと、収容をせずに退去強制手続を進める監理措置の制度によりまして、監理人の監理の下できちんと監理しながら社会生活を送っていただく、そういう制度もつくっているということでございます。

鈴木(義)委員 終わります。ありがとうございました。

伊藤委員長 次に、本村伸子君。

本村委員 日本共産党の本村伸子でございます。どうぞよろしくお願いを申し上げます。

 まず大臣、ちょっと通告をしていないんですけれども、今日届いたものがございまして、それについて少し議論をさせていただきたいというふうに思っております。

 全国難民弁護団連絡会議の方から届いたわけですけれども、四月十八日ですけれども、国連の人権理事会の特別手続である恣意的拘禁作業部会、そして移住者の人権に関する特別報告者、そして宗教又は信条の自由に関する特別報告者が、この入管法の改定案に関しまして、国際人権法に違反するという共同書簡が日本政府に送られております。

 これ、大臣のお手元に届いておりますでしょうか。

齋藤(健)国務大臣 そういう書簡が公表されているということについては聞いております。

本村委員 この共同書簡の中身なんですけれども、骨子を申し上げますと、一つ目は、原則収容主義が維持されているということの問題だと。監理措置が適用されない限り常に収容が優先する点、監理措置を適用するか収容するかは入管主任審査官の裁量によるという点について、身体の自由を原則とし、収容は最後の手段でなければならないとする自由権規約九条、世界人権宣言九条に違反し得ることを指摘しております。これが一つ目です。二つ目、監理措置制度の問題、三つ目が司法審査の欠如の問題、四つ目が無期限の収容の問題、五つ目が子供の収容に関する問題、そして六つ目が送還停止効の解除の関係の問題でございます。

 先ほども寺田議員からお話がありましたけれども、私も前々回、クルド人の十三歳の子供さんのお声を紹介させていただきました。二歳の子供さんが医療保険がなくて治療することができないというお話をさせていただきましたけれども、特にこの子供の部分について御紹介をさせていただきたいというふうに思っております。

 この共同書簡の中では、子供の収容を禁止する規定が依然として盛り込まれていないことを遺憾に思いますというふうに書かれております。そして、全ての移民の子供は、まず何よりも子供として考慮されるべきであることを改めて強調しています。全ての移民の子供は、日本が一九九四年から締約国としている子どもの権利条約にうたわれている全ての権利を、法律上も実質的にも享受するべきですという指摘があります。

 そして、私たちは、同伴者のいない子供と庇護申請中の子供は、国民の子供と同様の主要な子供のケアシステムにアクセスをすることができ、子供の保護に関する全ての保護措置を享受するべきであるということを強調されております。

 そして、ノン・ルフールマン原則の文脈においては、子供に対して特に配慮がなされなければならず、国家の行動は子供の最善の利益にかなうようになされなければなりません、特に、子供の基本的人権の侵害を引き起こすような送還はなされるべきではありませんというふうに書かれております。

 こうした指摘は非常に重いというふうに思っております。

 そして、総括といたしまして、二〇二一年の旧法案に若干の修正が加えられているにもかかわらず、前回の書簡において提案された事項については基本的に変更されておりません、すなわち、今回の法案は依然として国際人権基準を下回っています、私たちは、貴殿の政府に対し、国内法を国際人権法の下での日本の義務に沿うものにするため、改正案を徹底的に見直すことを強く求めますという指摘でございます。

 これは、大臣、重く受け止めていただきまして、情報提供も求められておりますので、真摯に、誠実に対応していただきたいと思いますけれども、大臣、いかがでしょうか。

齋藤(健)国務大臣 私はかねがね、本村委員が本当にこの問題を真剣に考えて質問されているということに関しては敬意を表しているんですが、この質問のように、事前に通告をしないでかなり詳細に私に意見を求められても、このやり方はフェアではないと私は思います。

 その上で、私が今答えられる範囲においてお答えをしたいと思っております。

 特別報告者や恣意的拘禁作業部会の見解は、当該個人や同作業部会としての資格で述べられたものであり、まず、国際連合又はその機関である人権理事会としての見解ではないと認識しています。また、我が国に対して法的拘束力を有するものでもありません。まず、こういう事実です。

 このような共同書簡は前回改正法案提出時にも受け取りましたが、前回と同様、今回も一方的に見解を公表されております。我が国から事前に改正法案について説明する機会があれば、立案の背景、内容やその適正性について正確に理解いただけたと考えており、一方的に見解を公表されたことについては抗議をする予定であります。

 現在、出入国在留管理庁において、書簡の内容を更に精査しており、今後、誤認等に基づく指摘等を明確にし、改正法案の内容は、その適正性について十分理解していただけるよう、丁寧に説明を尽くしていきたいと考えています。

本村委員 法的拘束力がないなど、よく政府は国連の人権機関、関係者からの御指摘に対してそういうふうに言うわけですけれども、私は大変恥ずかしい思いをしております。

 国際社会、先進国の中では、この特別報告者の方々の御意見というのはかなり尊重され、まず、いろいろな場面でそうした方の意見を聞くということを政府自身がやっている。でも、日本は、そうしたこと、御指摘を軽視している。そのこと自体が私は大変恥ずかしいというふうに思っておりますし、政府自身の対応を是正するべきだというふうに考えております。是非、この指摘に対して真剣に、誠実に対応していただきたいというふうに思っております。

 続きまして、四月二十日、昨日ですけれども、東京地裁で、被収容者の方への暴行事件、国賠訴訟の判決で、入管職員の制圧時の喉突き、そして後ろ手に手錠をして腕を引き上げる行為は違法であると認定をし、国に対して、その方に対して賠償するように命じた、そういう判決が出されました。

 入管の職員が違法な喉突きですとか手錠を後ろにして腕を引き上げるような行為を行った、そう認定されていることに対して、大臣の見解を伺いたいと思います。

齋藤(健)国務大臣 本件は事前に伺っておりますので、きちんと責任を持った答弁ができると思いますが。

 御指摘の判決は、被収容者に対し戒具を使用した上で制圧を継続したことについて違法性が否定されたものの、その際の個別の制圧行為の一部について国の主張が受け入れられなかったものであると承知をしています。

 判決の内容を十分に精査し、これから適切に対応することとしているわけでありますが、その上で、本法案において、処遇の原則として、被収容者の処遇は、被収容者の人権を尊重しつつ適正に行わなければならない旨の規定、本法案においてそれが盛り込まれておりますので、この規定に従って、法案が成立すれば、人権を尊重し適正に職務を行うことになりますし、より一層行うことになると思います。

 また、被収容者に対する有形力の行使につきましては、入国者収容所等の規律及び秩序を著しく害する行為等に対しては、合理的に必要と判断される限度で、その行為を制止し、その被収容者を拘束し、その他その行為を抑止するため必要な措置を取ることができるなどと、要件を明確かつ厳格に定めているところであります。

 更に言えば、この改正法案では、入国者収容所等の職員による不適正な行為につきまして、法務大臣や出入国在留管理庁長官に対して是正を求めることができる規定も新設をしているところであります。

 こうした諸規定を入管法に設けることによりまして、職員による被収容者への制圧行為がより一層適切に行われることになると考えています。

本村委員 暴力的な行為を行った職員への厳正な対応を求めますけれども、大臣、いかがでしょうか。

齋藤(健)国務大臣 御指摘は、まだ係争中の訴訟の事案に係るものであり、事実認定もまだできていない段階でありますので、また、個別の職員に対する処分についてはお答えを差し控えますが、なお、一般論として申し上げれば、入管庁には、事案に応じて人事上の対応は適切に対応させていただいているということでございます。

本村委員 やはり、今日の参考人質疑でも、元入管の局長の方がいらっしゃったわけですけれども、その人権感覚について私は非常に疑問に思った点が、いろいろな御著書を読んでも思うわけでございます。

 やはり全職員に対する国際人権基準の研修が必要だというふうに考えますし、今回の事件を検証し、改めて再発防止策を取る必要があるというふうに考えますけれども、大臣、いかがでしょうか。

齋藤(健)国務大臣 入管庁職員に対する研修におきましては、従来から、大学教授等、人権問題の専門家を招いて、人権諸条約等の人権に関する講義を行っていただいております。

 このような講義は、名古屋事案後の令和三年以降実施している、入国者収容所及び地方出入国在留管理官署を含む入管庁全職員を対象とした人権研修においても行っているところであります。

 引き続き、研修の一層の充実に努めて、職員の人権意識の涵養を更に強化をしていきたいと思っています。

本村委員 続きまして、難民認定についてお伺いをしたいというふうに思います。

 難民認定申請中でも三回目以降は送還可能となっている問題なんですけれども、先ほども御議論ありましたけれども、三回目以降の申請者でも、相当な理由があるときは送還されない判断がなされるということなんですけれども、一体誰が相当な理由があると判断するのかというのは大問題だというふうに思いますけれども、大臣、いかがでしょうか。

齋藤(健)国務大臣 改正法案では、三回目以降の難民等の申請者については送還停止効の例外としていますが、このような者でありましても、例えば新規事情が発生した場合など、適正に難民等と認定しなければならない場合もあり得ることを踏まえて、申請に際し難民等の認定を行うべき相当の理由がある資料を提出した者については、なお送還停止効の対象とするということであります。

 この手続の適正を確保する観点から、相当の理由の提出の有無については、入管庁本庁とも協議の上、当該事案を担当する地方局全体で判断をしていくということになります。

本村委員 今のお答えですと、やはり、結局、入管庁だけで決めるということになってまいります。相当な理由があると判断されるかどうかというのは、その人の命や自由にとって大変重い意味があるものでございまして、やはり第三者の有識者の方の意見ですとか、UNHCRの方ですとか、日弁連さん、国際人権の専門家などの判断を尊重する仕組みに、その判断を、ほぼ従うというような仕組みにするべきだというふうに考えますけれども、大臣、いかがでしょうか。

齋藤(健)国務大臣 送還停止効の例外となる三回目以降の難民等認定申請者は、二度にわたり難民及び補完的保護対象者該当性の判断がされ、外部有識者である難民審査参与員が三人一組で審査を行い、法務大臣はその意見を必ず聞いた上で判断するなど、慎重な審査が十分尽くされた後の話であります。

 また、二度にわたる手続の過程で、自らの難民等該当性について十分に主張、立証の機会があったわけでありまして、それにもかかわらず、広く相当の理由がある資料、そういう、何でもいいですよということを認めれば、なかなか、蒸し返しが容易となってしまうということもありますし、他方で、真に難民等と認定し得ることや難民等の認定を行うべき高度の蓋然性が必要であるとまでしてしまうと、相当の理由がある資料の範囲が狭くなり過ぎてしまうという問題があるわけであります。

 何が言いたいかというと、迅速な送還の実現と手続保障のバランスを図りながら、相当の理由がある資料をきちんと判断をしていくということに尽きるということであります。

本村委員 やはりここは、入管庁の恣意的な判断を防がなければいけないというふうに思うんです。非常に重要な判断になりますので、やはり第三者の有識者の方の、国際人権の専門家の方の判断を是非取り入れるというふうにしていただきたいと思うんです。

 それまでが慎重だと大臣はおっしゃったんですけれども、前回の質疑で、私、三回目の申請で難民に認められた方三名、そして、三回目の申請中で二回目の申請が認められるという事例をお示しをさせていただきました。そういう点からすれば、法務大臣、出入国在留管理庁の判断だけではやはり判断を誤るリスクがあると私は思いますけれども、大臣、いかがでしょうか。

西山政府参考人 今委員から御指摘がございました、三回目以降で、三回目で難民認定がなされたという事例を御紹介いただきましたが、その事案は、内容の詳細は差し控えますけれども、前回、つまり二回目の不認定処分後に新たな事情が分かって、それに基づいて難民認定がなされたというふうに承知をしております。

 まさに、先ほど大臣も答弁がありましたように、そのように、二回目、例えば、二回目に限らず、前回の難民不認定処分後に新たな事情が生じて、難民と認定すべき者については適切に保護をするために、だからこそ、相当の理由のある資料を提出した者については送還停止効が例外にならないというふうに定めているところでございます。

本村委員 今のやり取りで、やはり入管庁の恣意的な判断があり得るということになるというふうに思います。

 そして、三人の参与の組合せについてなんですけれども、先ほどの参考人の質疑の中でも、入管庁が決めるというふうにおっしゃっておりました。この点も、恣意的な運用になるのではないかという懸念がありますけれども、そうならない仕組みにするべきじゃないかと思いますけれども、大臣、いかがでしょうか。

西山政府参考人 そもそも、難民審査参与員につきましては、そのような中立公正に判断をいただける方を選任するということでございます。元々そういう方々の中から三人一組を選定するわけでございますから、恣意的に中立性、公平性が失われるような構成を取ること自体が困難かと存じます。

本村委員 参考人質疑の中では、参与員の方であっても、全員が全員この難民の問題を熟知しているかといえば、そうではないということがございました。その発言も重く受け止めるべきだというふうに思っております。

 次に、監理措置制度について議論を進めていきたいと思いますが、前回の続きでございます。

 監理人は非営利の人しかなれないのかという点、確認をさせていただきたいと思います。

西山政府参考人 監理人は、監理人の責務を理解していること、任務遂行の能力を考慮して適当と認められることなどの要件を満たした者の中から選定することとしておりまして、非営利であることは条件とはいたしておりません。

本村委員 ということは、営利の方でもいいということだと思うんですけれども。

 監理人と対象の外国人の方は、支配、被支配の関係になりやすい。監理人がいなければ収容となることがありまして、支配、被支配の関係になる。そういうときに、性的搾取などの暴力を事前にどう防ぐ仕組みになっているのかという点、伺いたいと思います。

伊藤委員長 時刻が参りましたので、手短に。

西山政府参考人 監理人になる方として、例えば同居する家族や親族であるなど身近な人を基本的に想定しているほか、入管実務上、相談等の対応をされている行政書士あるいは民間の支援団体等、さらには弁護士などとなることが考えられております。

 もっとも、監理人を選定することができない場合もあり得ることから、悪質な監理人を選定しないことが重要であると考えておりまして、そのために、監理人の選定に当たっては、入管庁が把握し又は関係機関から入手する情報等により、監理人としての任務遂行能力を厳格に審査をいたしております。

 また、一般論として申し上げれば、不当に高額な報酬等を要求している者を把握した場合、そのような者を監理人として選定することはないということでございます。

本村委員 厳格な審査の仕組みがこの法案には、法文には入っていないわけです。その点でも欠陥であるということで、引き続き議論をさせていただきたいと思います。

 ありがとうございました。

伊藤委員長 次回は、公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。

    午後四時十八分散会


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