衆議院

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第13号 令和5年4月25日(火曜日)

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令和五年四月二十五日(火曜日)

    午後一時開議

 出席委員

   委員長 伊藤 忠彦君

   理事 谷川 とむ君 理事 藤原  崇君

   理事 牧原 秀樹君 理事 宮崎 政久君

   理事 鎌田さゆり君 理事 寺田  学君

   理事 沢田  良君 理事 大口 善徳君

      東  国幹君    五十嵐 清君

      石井  拓君    石橋林太郎君

      岩田 和親君    上田 英俊君

      奥野 信亮君    加藤 竜祥君

      工藤 彰三君    熊田 裕通君

      塩崎 彰久君    鈴木 馨祐君

      田所 嘉徳君    高見 康裕君

      土田  慎君    鳩山 二郎君

      平口  洋君    平沼正二郎君

      深澤 陽一君    本田 太郎君

      山下 貴司君    鈴木 庸介君

      中川 正春君    山田 勝彦君

      吉田はるみ君    米山 隆一君

      阿部 弘樹君    漆間 譲司君

      日下 正喜君    平林  晃君

      鈴木 義弘君    本村 伸子君

    …………………………………

   法務大臣         齋藤  健君

   法務大臣政務官      高見 康裕君

   政府参考人

   (法務省大臣官房司法法制部長)          竹内  努君

   政府参考人

   (出入国在留管理庁次長) 西山 卓爾君

   政府参考人

   (外務省大臣官房審議官) 石月 英雄君

   政府参考人

   (外務省大臣官房審議官) 岩本 桂一君

   政府参考人

   (外務省大臣官房参事官) 西永 知史君

   政府参考人

   (外務省大臣官房参事官) 松尾 裕敬君

   政府参考人

   (厚生労働省大臣官房審議官)           山本  史君

   法務委員会専門員     白川 弘基君

    ―――――――――――――

委員の異動

四月二十五日

            補欠選任

             英利アルフィヤ君

同日

 辞任         補欠選任

  熊田 裕通君     石井  拓君

  鳩山 二郎君     塩崎 彰久君

  山下 貴司君     工藤 彰三君

同日

 辞任         補欠選任

  石井  拓君     土田  慎君

  工藤 彰三君     山下 貴司君

  塩崎 彰久君     平沼正二郎君

同日

 辞任         補欠選任

  土田  慎君     上田 英俊君

  平沼正二郎君     本田 太郎君

同日

 辞任         補欠選任

  上田 英俊君     熊田 裕通君

  本田 太郎君     鳩山 二郎君

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 政府参考人出頭要求に関する件

 出入国管理及び難民認定法及び日本国との平和条約に基づき日本の国籍を離脱した者等の出入国管理に関する特例法の一部を改正する法律案(内閣提出第四八号)


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     ――――◇―――――

伊藤委員長 これより会議を開きます。

 内閣提出、出入国管理及び難民認定法及び日本国との平和条約に基づき日本の国籍を離脱した者等の出入国管理に関する特例法の一部を改正する法律案を議題といたします。

 この際、お諮りいたします。

 本案審査のため、本日、政府参考人として法務省大臣官房司法法制部長竹内努君、出入国在留管理庁次長西山卓爾君、外務省大臣官房審議官石月英雄君、外務省大臣官房審議官岩本桂一君、外務省大臣官房参事官西永知史君、外務省大臣官房参事官松尾裕敬君及び厚生労働省大臣官房審議官山本史君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

伊藤委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

伊藤委員長 質疑の申出がありますので、順次これを許します。日下正喜君。

日下委員 公明党の日下正喜でございます。本日もよろしくお願い申し上げます。

 まず、難民認定率と庇護率についてお尋ねいたします。

 四月二十一日に行われた参考人質疑の中で、滝澤三郎参考人から、二〇二二年の難民認定率は三・三%であるものの、同年中に本国事情などによる在留許可が千四百八十一件あり、実質的にはこのほとんどの者が補完的保護対象者となるため、これを入れて計算すると、庇護率は約三〇%となる。また、同年に受け入れられた二千二百三十八人のウクライナ避難民のほとんどや、ミャンマー緊急避難措置による特定活動で在留するミャンマー人の多くは難民認定申請をしていないため、認定率や庇護率の計算に入っていない、これらの人々を計算に入れたとすると、庇護率は五〇%を超す旨述べられていました。

 難民認定率のみで国際比較をした場合には、日本の認定率が極端に低いとされ、私もどうしたものかと考えてまいりましたが、今後、この庇護率ということも含めて俯瞰することも必要だと感じた次第です。

 条約難民、人道配慮に基づく在留特別許可、ウクライナ避難民など、受入れ方によって、保障される権利や資格、支援内容についての差異があり、課題も残されていると思いますが、各国との比較においても、この庇護率という見方、そして今後の課題について、法務省としてどういうお考えをお持ちか、法務大臣の御所見を伺います。

齋藤(健)国務大臣 我が国におきまして、難民認定申請がなされた場合は、申請者ごとにその申請内容を審査した上で、難民条約の定義に基づき、難民と認定すべき者を適切に認定しているほか、御指摘のように、難民とは認定しない場合でありましても、出身国の情勢等に鑑みて、人道上、本邦での在留を認めるべき者については、在留を適切に認めて保護してきています。

 その上であえて申し上げれば、一次審査において難民と認定した者と難民とは認定しなかったものの人道的な配慮を理由に在留を認めた者の合計について、処分件数に占める割合を算出いたしますと、令和四年は約二九・八%となります。この二九・八%という割合は、他のG7諸国と比較しても極端に低いものではありません。

 このように、我が国におきましては、庇護、保護すべき方々に対して適切に対応しているところ、こうした状況について対外的に説明するに当たりましては、委員の御指摘を踏まえて、その適切な在り方を検討してまいりたいと考えています。

 加えて、本法案においては、難民条約上の五つの理由以外で迫害を受けるおそれがある者を補完的保護対象者として設定する制度を創設することとしています。

 補完的保護対象者の認定制度は、真に庇護すべき者を難民と同様に保護する制度であることから、難民と認定された者と同様に、より安定的な在留が可能となる上、適切に支援を行うことも検討しているところであります。

 いずれにいたしましても、法務省としては、海外から我が国に避難してきた方々について、本国情勢や個々の置かれた状況等にも配慮しながら、適時適切に対応できるよう着実に取組を進めてまいりたいと考えています。

日下委員 ありがとうございます。

 また、難民審査参与員を経験してきた安冨参考人からは、一次審の難民不認定に対し不服申立てを行った人のほとんどに難民としての蓋然性が見られなかった旨の御発言がございました。

 二年前、令和三年四月二十一日に行われた参考人質疑の議事録を読み返してみたのですが、特定非営利活動法人難民を助ける会会長で、参与員を十七年間続けてこられた柳瀬房子参考人の発言はより具体的なものでした。

 柳瀬参考人は、十七年の間に担当した案件は二千件以上、対面で話を聞いてこられました。そのときの心情としては、難民の蓋然性のある人を必ず見つけて救いたいという思いで臨まれてきたとのことでした。しかし、難民と認定すべきと判断できたものは六件、その他、人道上の配慮が必要と考え、在留特別許可を出すべきと意見書を出したのは十二件であったと。

 難民若しくは在留特別許可とすべきとした合計は二千分の十八人、一%にも満たない実態を私も驚きを持って知った次第でございます。

 この点について、柳瀬参考人が十七年間で担当された約二千件以上の案件とは、例えば難民該当性が低いと選別されていた案件ではなかったのかという声も聞かれますが、法務当局に確認させていただきます。

西山政府参考人 結論から申しますと、柳瀬参考人が言及された二千件以上の案件が難民該当性が低いとあらかじめ選別されていたような案件であったということではありません。

 その御説明の前提として、まず、難民不認定処分の二次審では、誤用、濫用的な多数の難民申請事案が難民審査参与員の通常業務を圧迫している現状に鑑み、平成二十八年以降、対面審査を実施しない予定のいわゆる難民該当性が低い可能性がある事件等を、常置されている難民審査参与員の常設班とは別に編成される臨時班にまとめて配分する運用を行っております。

 これらの案件は、例えば経済的な理由での難民認定申請等、条約上の難民に該当しないことが明らかである場合など、書面審査のみで処理することが想定されているものであり、通常、審査請求人との対面審査は実施されません。

 他方で、柳瀬参考人は、令和三年の法務委員会で、平成十七年からの十七年間で二千件以上の案件を三対一で対面審査したと述べられたものと承知しております。

 すなわち、柳瀬参考人が言及された二千件以上の案件は、全て二次審で対面審査まで実施した、いわゆる慎重な審査を行った通常の案件であり、全て難民該当性が低いとあらかじめ選別されていたような案件であったということではないと考えております。

日下委員 ありがとうございます。

 また、柳瀬参考人は、その前段階の一次審査を受け持つ難民調査官について次のように述べられています。

 難民調査官は、申請書について、時間をかけて、しっかりと話を聞き、その膨大な内容を調査し、インタビューをした調書を通訳の方を介して申請人に読み聞かせ、内容に間違いがないかを確認してもらって、サインをもらうという時間と労力をかけた丁寧な審査を行っているという印象を持っていると。一方、不認定とされた方の主張はどうかというと、一次審で言った主張と全く違う主張を繰り返したり、主張が条約上の迫害には当てはまらない借金や敷地争い等々、個人的なトラブルに類する主張が多く見られたと。

 私は、一次審査を行う調査官を始め入管の皆さんの御苦労を思うと、なぜこのようなことが起こるのかと釈然としないものを感じました。また、難民に該当しない多くの人が難民申請を繰り返すことで、真に難民申請が必要な人の扱いが後回しにされ、丁寧な審査にも支障が出ることも考えられます。

 私は、今年一月に、ロヒンギャ難民で、四年間、大変な思いをして難民認定を受けた方にお会いしました。現在、自営業を営む、しっかりした方でした。その方は、日本に身寄りもなく、ブローカーが用意したビザで来日し、入国審査で止められ、難民申請を提出、牛久の収容所に送られ、早々に難民不認定を言い渡されました。弁護士とともに異議申立てを行い、仮放免に。しかし、異議申立ても却下。裁判で争い、その判決の二週間前に入管から不認定を取り消す旨の通知を受けたとのこと。

 もし弁護士が支援してくれていなかったとしたら、果たして認定までこぎ着けられていたのか、甚だ疑問が残ります。やはり、認定要件の解釈の問題と、立証のハードルの高さにも問題があったように思われます。

 この度の法改正や難民該当性判断の手引等によって、四年間も苦しまれたこうした事案に適切に対応できるものになるとお考えか、法務省の見解を伺います。

西山政府参考人 これまでも、我が国では、申請者ごとにその申請内容を審査した上で、難民条約の定義に基づき、難民と認定すべき者を適切に認定してきたところでございます。

 今般策定した難民該当性判断の手引は、実務上の先例や裁判例等を踏まえ、難民該当性の判断において考慮すべきポイントを整理し、これを明確化したものであり、我が国の難民認定制度の透明性が高まり、その信頼性の向上につながるものと考えております。

 加えて、入管庁の職員が手引を参照することで、より適切で効率的な審査の実現につながることや、申請者の方々が難民該当性を判断する際に考慮すべきポイントを踏まえつつ申請を行うことにより迅速な難民認定につながることも期待されるところでございます。

日下委員 この度の法改正で、難民申請は三回までと制限が付されますので、九割を超える難民蓋然性のないような方の申請は徐々に減少するのではないかと思いますが、ここで大事なことは、先ほどのロヒンギャ難民の方の例もございますので、審査に臨んでは、先入観や予断を排して、これまで以上に丁寧かつ慎重な審査をしていただきたいと心から望みます。

 大臣の御所見をお聞かせいただければと思います。

齋藤(健)国務大臣 本法案によりまして、三回目以降の複数回の難民認定申請者について送還停止効を認めることとなる相当の理由がある資料については、資料の形態や形式に制限なく、申請者の陳述や申請書自体も相当の理由がある資料として該当し得るという運用をしていくつもりでありますし、そうなりますと、三回目以降の難民認定申請者が申請に際して客観的な資料を提出できない場合でありましても、そのことのみをもって一律に送還停止効の例外となるものではなくて、例えば、申請者の陳述が、当庁、入管庁が把握している出身国情報とも整合している場合などには、申請者の陳述のみをもって相当の理由がある資料を提出したものとして送還停止効の適用を受けられることもあり得ると思っています。

 法務省としては、万が一にも保護すべき者を送還することがないよう、送還停止効の例外に関する適切な運用を行ってまいる所存であります。

日下委員 これは非常に大切なポイントになろうかと思いますので、どうぞよろしくお願いします。

 あと、難民審査を進める上で、その要ともなる難民調査官等のスキルアップについて伺います。

 難民や準難民の方々の認定審査については、出身国情報、歴史であるとか、文化、経済、また治安等の切れ目のない収集や、情報へのアクセス力、さらに、聞き取る力、人権感覚など、様々な能力が必要となります。国際情勢も日々変化しております。

 今回の法改正によって補完的保護が創設され、扱う内容も多岐にわたると思います。難民調査官等の増員や研修の充実が欠かせないと考えますが、法務省の御見解をお伺いします。

西山政府参考人 これまでも、UNHCR、外務省、国際情勢に関する専門的知識を有する大学教授等に御協力いただくなどして、難民調査官等に対する研修を実施してきているところです。

 さらに、難民調査官に対し、難民認定手続における事実認定の留意事項について共有し、そのフォローアップを行いつつ、的確な事実認定に資する取組を推進するなど、審査の質の更なる向上に努めております。

 加えて、難民認定数の多い諸外国当局と難民認定審査における先例に基づいた意見交換を行うことを通じて、我が国の難民認定審査における判断の在り方が諸外国と大きく異なっていないかなどを確認し、難民調査官の能力向上に努めているところでございます。

 また、適正な難民認定審査の実現のため、難民調査官の適正な人的体制の確保は重要と認識しております。そのため、これまでも、人的体制の整備に努めるとともに、業務状況に応じて機動的な応援派遣を行うなど、適切な人員配置を行っているところです。

 入管庁におきましては、引き続き、適正な難民認定審査の実現のため、人的体制の整備を含めた必要な業務体制の確保に努めてまいりたいと考えております。

日下委員 ありがとうございます。

 最後に、今後求められるのは、運用の改善と、あと、透明性の向上であるというふうに思います。透明性のある、国内外に開かれた入管庁に向けて、法務大臣の御所見をお聞きいたしたいと思います。

齋藤(健)国務大臣 入管庁の施策や取組等につきまして、正確な情報を外国人を含め広く社会に周知することにより行政の透明性を図ることは重要であるとの認識を、もちろんしているわけであります。

 これまでも、入管庁におきましては、ホームページやSNS等を通じた周知、広報のほか、当庁のホームページについても、自動翻訳システムを導入し、百か国語以上の言語による閲覧を可能としているところであります。各国語による情報発信も含めて、取組を強化してきたところでございます。

 引き続き、効果的な広報の方法を不断に検討しながら対応していきたいと考えております。

日下委員 時間が来ましたので、これで終わらせていただきたいと思います。本当にありがとうございました。

伊藤委員長 次に、鎌田さゆり君。

鎌田委員 お疲れさまです。よろしくお願いします。

 まず、大臣に伺います。

 私たち立憲民主党・無所属会派でありますけれども、二年前から対案を出しています、今回の法案に関する。その柱と理念にあるものは、出入国管理と難民認定は別機関で行うべきだという趣旨なんですね。

 それはなぜかといえば、出入国管理は、これは国境管理の理念ですから、望ましくない外国人はどうしても排除の方向に働きます。一方、難民認定は、難民に関しては、これは保護の理念に立脚をしています。ですから、同じ一つの機関が所管すべきではないというのが私たちの主張なんです。

 難民認定は入管庁から独立した専門的な機関が行うべきだと考えておりますが、大臣のお考えをお聞かせいただきたいと思います。

齋藤(健)国務大臣 現行の出入国在留管理の業務の中におきまして、難民認定手続を経ていない場合でも、在留特別許可など人道上の配慮から在留を認める措置を取っているという現実があります。難民認定手続と同様に、保護すべき者を保護する業務を担っているということなんだろうと思います。したがって、出入国在留管理と難民認定の理念には通ずるものはあるというふうに思っています。

 その上で、難民認定手続とその他の出入国在留管理行政上の様々な手続とは、上陸時に庇護を求める者への対応ですとか、難民認定申請中の者や難民と認定された者に係る在留管理、難民不認定が確定した者に係る迅速かつ確実な送還といった点に密接に関連している、そういう業務だろうと思っていますので、難民の認定に関する業務を出入国管理庁において行うことが適当であると我々は考えているということであります。

鎌田委員 私たちはそこのところの考えが大きく違っておりまして、これは入管庁から独立したところで難民認定を、手続をすべきだということであります。

 資料の一を御覧をいただきたいんですが、入管庁に伺います。

 これは第五次出入国管理基本計画というものです。めくっていただきますと、私の方で線を幾つか引いているんですが、左側の欄のちょうど中間より下の方に、中段よりちょっと後半あたりに、「送還停止効果に一定の例外を設けること」というふうに、もう既に第五次出入国管理基本計画のところで明記されています。

 これは何年のものですか。

西山政府参考人 御指摘の第五次出入国管理基本計画は、平成二十七年のものでございます。

鎌田委員 二〇一五年でよろしいと思うんですけれども、今から八年前でよろしいですよね。

 もうこのときに既に、第五次出入国管理基本計画の中で、難民停止効の一定の例外を設けることを検討していこうとうたっているわけですよ。それでやっと、皆様方にすればやっと悲願の目を見た送還停止効の例外だと思いますけれども、私たちは、その送還停止効の例外規定というものは設けるべきではないというふうに、これまでも強く各委員が訴えているところであります。

 そこでなんですが、国連人権理事会の特別手続マンデートホルダーの三人から、四月十八日付で、日本政府に対して懸念を示す書簡が送付されています。原則収容主義は変わっていないし、監理措置の問題はあるし、司法審査は欠如しているし、送還停止効の解除の問題など、日本政府に対して、この法改定を徹底的に見直すことが強く求められています。

 これに対して、日本政府のコメント、あるいはどういうふうに協議をするかということも求められていますが、これからどのような対応を行っていくか、予定されているものをお示しください。

西山政府参考人 まず、御指摘の書簡につきましてでございますが、この点につきましては、我が国から事前に改正法案について説明する機会があれば、立案の背景、内容について正確に御理解いただけたのではないかと考えておりまして、それに対して一方的に見解を公表されたことについて抗議をいたしたいと考えておるところでございます。

 いずれにつきましても、現在、入管庁において書簡の内容を更に精査しており、今後、誤認等に基づく指摘等を明確にし、改正法案の内容やその適正性について十分理解していただけるよう、丁寧に説明を尽くしてまいりたいと考えております。

鎌田委員 次長、今、抗議ということをおっしゃいましたけれども、議事録として、公文書として残ります。抗議って、本当にこれから検討されているんですか、その予定が。

西山政府参考人 今御答弁申し上げたとおり、抗議する予定でございます。

鎌田委員 私は、非常にそのことについては懸念を表したいと思います。これは、国際基準に基づいて、国連の人権理事会特別手続の方からの日本政府に対しての正式なコメントでありまして、この方たちは、きちんと日本の政府案を熟知、熟読された上での今回の意見ですから、そこに対して抗議というところは、これから私たち、厳しく注視をしていきたいと思います。

 今回、手続が示されましたけれども、迫害から逃れてきた人間に対して高度な客観的な証拠を求めるなどが書かれてありますけれども、UNHCRの難民認定基準ハンドブックで扱う、疑わしきは申請者の利益にという、いわゆる灰色の利益については明確にうたっていません。これでは国際機関の基準に沿いません。これでよろしいんですか。私は、いかがなものか、駄目だと思いますけれども、いかがでしょうか。

西山政府参考人 我が国における難民認定審査においては、国連難民高等弁務官事務所の作成する諸文書や諸外国における運用等も参考にしているところでございます。

 また、難民該当性を判断するに当たって考慮すべきポイントを整理するなどした難民該当性判断の手引の策定に当たっても、こうした諸文書や運用を参考としているほか、UNHCRや難民審査参与員の方々からの御意見も参考にしております。

 こうした点を踏まえれば、我が国における難民該当性判断は国際的な難民保護の動向を踏まえたものとなっており、これについて厳し過ぎるということはないものと認識しております。

 入管庁としては、まずは今般策定した手引も活用しつつ、引き続き、真に庇護を必要とする外国人の確実な保護に取り組んでいく所存でございます。

 なお、委員御指摘のいわゆる灰色の利益については、UNHCRが作成する難民認定基準ハンドブックにおいて、事実認定に関する取扱いについて言及したものと承知していますところ、事実認定に係る留意事項については、難民調査官に対する研修を通じてその周知を行うなど、的確な事実認定に資する取組を進めており、今後とも、審査の質の更なる向上に努めてまいりたいと考えております。

鎌田委員 結局は、この灰色の利益についてはうたっていない。けれども、今、一生懸命釈明をしながら、長く答弁をされる。長く答弁するのはやめてください。

 次に移ります。

 難民審査参与員についてなんですけれども、先ほどの日下委員の質問にもございました、立法事実に疑念を抱かざるを得ない話が週末話題になっていました。

 そこで、我々に法案を提出をして説明する際に、難民申請者の数と、認定された方の数から割り出される日本の難民認定率の根拠、つまり、分母の数が果たして適正なのかという疑問を抱かざるを得ないような状況です。

 資料二を御覧をいただきたいんですが、ここに、先ほども日下委員が指摘されていた参与員の方の参考人としての発言が記録されています。私たちには、立法事実として、下線部を引いておりますけれども、お示しをされました。平成十七年から十七年、二千件というのは、先ほどの大臣の御答弁でもいただきましたけれども、そこでは二千件だった。そうすると、その後の更にプラス二千件、四千件を審査して六件にとどまっているというところの、その分母の数に関わるところを明確にしておきたいんです。

 二千件は分かりました。では、その後の二千件というのは、どのようにこの審査に当たられたんでしょうか、この柳瀬参考人、当時の参考人。

西山政府参考人 特定の難民審査参与員の年間の事件処理件数につきましては集計していないので、当方としては把握しておりません。

 その上で、一般論として申し上げますと、難民審査参与員は、あらかじめ定められた三人の難民審査参与員によって構成された常設班に所属しているところ、ほかの常設班や、口頭意見陳述を実施しないことが見込まれる事件等、迅速な審理が可能かつ相当な事件を重点的に配分している臨時班の応援に入ることに御協力いただける場合には、書面による審査を行うことが多くなることがあり、他の難民審査参与員よりも担当する事件処理件数が多くなることはあると承知しております。

鎌田委員 済みません、最初に何とおっしゃいましたか。統計を取っていないのところをもう一回教えてください。

西山政府参考人 特定の難民審査参与員の年間の事件処理件数について集計をしていないので、把握はできておりませんというお答えをいたしました。

鎌田委員 参与員の年間の審査件数を統計を取っていない。駄目じゃないですか。いや、答弁は求めていません。

 今回、その参与員のこと、常設班と臨時班のことも私は次に聞きますけれども、参与員の方々は不服申立てをした後に審査に応じているわけですよね。非常に重要な役割を担っていらっしゃる。その参与員の方々がどのくらい審査に当たっているか統計を取っていないというのは、私たちに立法事実で示す際に、欠けています、情報が。駄目です、それでは。とんでもないと私は思います。

 参与員による暴言、不適切な対応も指摘されています。不服申立ての二次審は当然なんですけれども、一次審査から、録音、録画に加えて、弁護人の代理人立会いを基本的に全てに認めるべきですが、いかがですか。

西山政府参考人 入管庁では、平成二十九年三月から、一次審査における難民認定申請者への事情聴取に際し、親を伴わない十六歳未満の年少者、重度の身体的障害を有する者、精神的障害を有する者、重篤な疾病を抱える者など、特に配慮が必要な者について、医師やカウンセラー、手続を支援する弁護士等の立会いを認める取組を既に実施しているところでございます。

 このように、難民認定申請者に、置かれた立場に配慮した取組を行っておりますが、御指摘を踏まえまして、入管庁として、更なる取組の在り方につきましては引き続き検討させていただきたいと存じます。

鎌田委員 その十六歳以下の方々、若い方々にとっては当然です。ですが、命からがら逃げてきている方々、それは年齢に関係ありません。ですので、一次審査も二次審査も、録音、録画、そして弁護人、代理人の立会いは絶対に認めるべきです。それがないこの法案は、私は到底容認できない。

 次に伺います。

 常設班と臨時班とあるんですけれども、その参与員について。臨時班には、あらかじめ入管庁の方で、これは早急に処理できるという見通しを立てた上で、申請者を仕分、分類して渡していますよね。その基準を示してください。

西山政府参考人 常設班と臨時班について、御説明は先ほど申し上げたとおりでございますが、難民不認定処分に対する不服申立てがなされた場合、基本的には常設班に順次配分していきますが、迅速かつ公正な手続を促進するため、臨時班には、審査請求人が口頭意見陳述を放棄した事件など、迅速な審理が可能かつ相当な事件を重点的に配分する運用を行っているところでございます。

鎌田委員 だから、臨時班には、迅速に、早急に処理できるということをあらかじめ入管庁の方々の方で仕分して、臨時班に、はい、これは早急にできそうなのでと渡しているんでしょうということを聞いているんです。

西山政府参考人 先ほど御答弁したとおりなんですけれども、もとより、配点に従って、臨時班に配点された事件は早期に、迅速にやらなければならないというふうになっているわけではもちろんございませんので、参与員の方において記録を見ていただいて、その上で慎重審査ということを御判断されれば、もちろん、迅速にすることなく、慎重に審査することもございますし、その場合に常設班に配分替えを行うということも間々あることでございます。

鎌田委員 昨日の質問取りの際に、臨時班にはあらかじめ入管庁の方で仕分して渡すということを私は伺っております。ですので、今、次長の答弁と若干食い違うところがありますので、後で整理してください。

 時間もないので、私の今日の大きなというか、ずっと続いている大きなテーマです。名古屋入管死亡事案の最終報告書に基づいての質問をさせていただきます。

 まず、厚労省、来ていただいています。一般論として伺います。そして資料三も併せて御覧ください。クエチアピンとニトラゼパムの処方についてです。

 厚労省に伺いますが、このクエチアピンとニトラゼパムの処方についての、高齢者ですとか体が弱っている人ですとか、そういう方に対する処方についての注意事項を教えてください。

山本政府参考人 お答え申し上げます。

 医薬品につきましては、効果、用法、用量だけではなく、例えば併用禁忌や副作用など、使用するに当たっての注意事項が添付文書というところに記載され、医療現場に提供されております。

 委員御指摘のクエチアピン錠につきましては、添付文書におきまして、例えば、著しい血糖値の上昇から、糖尿病性ケトアシドーシス、糖尿病性昏睡等の重大な副作用が発現し、死亡に至る場合があるので、本剤投与中は、血糖値の測定等の観察を十分に行うこと。また、投与に当たっては、あらかじめこれらの副作用が発現する場合があることを、患者そしてその家族に十分に説明し、口渇、多飲、多尿、頻尿等の異常に注意し、このような症状が表れた場合には、直ちに投与を中断し、医師の診察を受けるよう、患者に指導すること。

 そして、先ほど高齢者など特別のという方々への注意喚起についてお尋ねでございましたが、特定の背景を有する患者に対する注意喚起においては、例えば、高齢者では非高齢者と比べ、高い血中濃度が持続する傾向が認められていることから、少量、例えば一回二十五ミリグラム一日一回から投与を開始し、一日増量幅を二十五から五十ミリグラムにするなど患者の状態を観察しながら慎重に投与することなどが記載され、注意喚起をされております。

鎌田委員 済みません。お忙しいところ、厚労省、来ていただいてありがとうございました。御都合、お忙しければ御退席いただいて結構です。ありがとうございました。一般論として今伺いました。

 このクエチアピンは、やはり体の体調を見て一日二十五ミリグラムから始めなければいけない、そして、体調を見ながらそれを増やしたり減らしたり慎重に取り扱わなくちゃいけないということが、一般的な注意として、医療界では、お薬の業界ではうたわれているわけです。

 皆様のお手元に三でお配りしているものですけれども、これは最終報告書から抜粋したものです。クエチアピンを百ミリグラム処方されちゃっているんですね、彼女に。これは三月四日です。亡くなる日の二日前なんです。二十五ミリから始めなければならないのが、あの弱り切った、衰弱し切った被収容者の体に、夜に一気に百ミリグラム投与されているんです。

 あわせて、皆様のお手元に、今日私、パネルも御了解をいただきましたので、パネルの分の資料もお渡しをしていますので御覧をいただきたいと思います。

 文字が小さいんですけれども、最終報告書に基づいて、一月の二十八日から亡くなる日の三月六日までのものを、被収容者、あえてここでは最終報告書に忠実に従ってA氏と書いております、それから、看守勤務者が何をしたか、庁内診療若しくは外部診療が何をやったか、そして、その他として概要的なことをこの紙にまとめて、皆様にもお配りをしております。

 そこで、まず最初に申し上げておきますが、最終報告書に明らかになっているのは、二月の二十二日から三月四日までの九日間、彼女は庁内診療室又は外部医療機関での診療は行われていなかったということは最終報告書に書かれてあります。別添の三十ページ。それは申し上げておきたいと思います。

 そこで、一月二十八日、泣きながら、病院に連れていってほしい。一月二十九日、ずっと吐き気があり、死ぬのが怖い。それに対して、看守は、嘔吐物に血が混じっているのも確認しています。一月三十日、看守は、また嘔吐物に血が混ざっているのも確認しています。一月三十一日、A氏は、食べたいけど食べられない、もうすぐ死ぬ。この一月中に関しましては、パネルの資料にもありますとおり、このように弱っている部分は訴えているんですが、自ら歩いて、排せつ、入浴等も介助なしで行っていました。

 二月一日です。血尿を訴えています。息ができなくて体調不良を訴えています。看護師との面談の際には、胸の中央が痛いと訴えています。支援者からは、病院での検査を彼女は怖がっているというのも伝わっています。そして、翌二月二日、別添では十一ページ。夕方から熱が三十八度一分に上がっています。

 二月三日、名古屋の処遇部門、彼女の摂食状況から見て、健康状態の懸念というものも認識をしています。

 二月の四日です。車椅子で診療に赴いています。既に、この二月四日で車椅子を使用しています。このとき、庁内の甲医師は、外部の消化器内科の受診を指示しています。そして、器質性の疾患がなければ精神科の受診も必要だろうということを訴えています。

 二月の五日です。外部の消化器内科で受診をした際に、その外部の医師は、ここ一か月続く嘔吐、血液混入、胸焼け、食事が取れない、しびれ、歩けない、これでは、当科は消化器内科であるので、それ以外の症状は分からないと断った上でなんだけれども、内服ができないなら点滴と入院が必要だということをこの外部の医師は言っています。でも、入院は、収容中の者なんだから手続的に難しいんだろうなということも書き添えています。

 二月六日です。体調不良を訴えています。熱は三十七度八分。二月の七日です。胃の不快感、手足のしびれ、そして熱も上がっています。このような状況がずっと続いていきます。

 そして、二月九日です。二月九日を御覧をいただきますと、A氏はトイレに行くときに転倒したと訴えているんです。だけれども、看守勤務者は転倒していないというふうに言い分が食い違っています。ビデオで確認なさいましたか。

西山政府参考人 御指摘の場面は、ビデオには残ってございません。

鎌田委員 これは二月九日なんですけれども、保管しているビデオには残っていないということですか。

西山政府参考人 残って確認できたビデオは二月二十二日からでございます。

鎌田委員 上書きされて残っていないということなんだ。じゃ、この言い違いの、言い分の違いを検証することもできないと。

 彼女の尊厳に正面から向き合うなら、彼女は転んだと言っているけれども、処遇部門は、看守は転んでいないと言っている、この食い違いをこのままにしていていいはずがありません。

 パネル二に入ります。皆様のお手元ではめくっていただければと思います。

 二月の十一日から、ずっと同じように彼女は体調不良を訴えています。二月の十四、また嘔吐、おなかが痛い。二十五日も、車椅子。

 そして、二月十五日、一月二十八日の庁内診療時に再検査が必要だったということで尿検査がありました。これは、一月二十八から二十五に、何でこんなに時間が空いているんですか。伺います。

西山政府参考人 済みません。ちょっと御質問の趣旨が捉え切れませんでしたので、申し訳ございません、もう一度お尋ねいただけませんでしょうか。

鎌田委員 いや、時間がないのでいいんです。

 最終報告書で明らかになっています。一月二十八には、庁内の甲医師は再検査をした方がいいよと言っている。ところが、実際に尿検査の再検査を行ったのは二月十五なんですよ。ここで何日空いているんだということを私は言っているんです。十七日間空いているじゃないか。十七日間も空けて尿検査を再検査するなんて、どうかしている、人権意識が全くない。

 そして、十五日のこのケトン体三プラスにつながっていくわけです。このケトン体三プラスが入管本庁には報告はされていたと思うんですけれども。

 次へと進んでいきます。

 ずっと、二月十六、十七、十八、二月十九、二月二十日、二月二十一、二十二、ずっと彼女は体調不良を訴えている。

 二月の二十二日、ここでやっと次の診療が決まったんですけれども、翌日の二月二十三日、彼女は、私は死ぬ、病院に持っていって、お願い、私、病院点滴お願い、救急車呼んで、再三にわたり訴えています。これを上司に報告をどのようにやっているのかということは、後で理事会に提出していただきたいと思います。

 まとめて行きます。

 二月二十四、同じように病院に連れていってほしいということを訴えています。パネル三、皆様のお手元も資料三になります。ここでおかしいのは、看護師は、こんなに弱っている彼女に対してリハビリを開始しているんです。

 リハビリ開始決定者、誰ですか。伺います。

西山政府参考人 ウィシュマさんに対する看護師によるリハビリテーションについては、報告書に記載のとおり、ウィシュマさんの健康状態を踏まえ、意欲の向上や食欲、体力の回復を図るため、看護師が各平日、一日三十分間、マッサージや手足の曲げ伸ばしを行ったものというふうに承知しております。

 それ以上の詳細な事実関係については、係属中の訴訟の争点に関わる事項であることから、お答えを差し控えさせていただきます。

鎌田委員 違う。裁判、関係ないんですよ。最終報告書に基づいて聞いている。だったら抜けているでしょう。リハビリを開始する決定、彼女に意欲が見られるとか看護師は書いているけれども、どこに意欲が見られるの。それに対してリハビリを決定できるのは医者しかいないでしょう。看護師じゃないでしょう。だから私は再三聞いているんです。

 二月の二十五日、彼女はもう意識が何かもうろうとしている感じで、看守勤務者が入ってくると、ドクター、ドクター、医者が入ってきたのかと思って勘違いして呼んでいます。それに対して看守は、受診する病院を探しているから、私はドクターじゃないよ、返事をしている。そしてその際に、はっきりさせておきたいんです、外部の医療機関の受診が決まっていても、最終報告書に書かれてあるのは、逃走防止の観点から、本人には外部医療の受診をお知らせしないと書いてありますけれども、どこに彼女が逃走ができるような様子が見受けられますか。ここに至って、逃走防止の観点から、彼女に医療を受けられるという安心は伝えることはしないんですか。

西山政府参考人 委員が御指摘いただいた、逃走防止の観点から診療日についてあらかじめお知らせすることがないというのは、一般論としてそのような取扱いをしているということを示したものでございます。

鎌田委員 この瀕死の状態、栄養失調、飢餓状態で、どうやって一般論を当てはめるの。ビデオを見ている我々からしたって、もう脱力して、うなるしか声を上げられない状態に、逃走なんかできるわけがないのに、何で逃走の防止の観点から彼女に安心を与えられないんだ。この最終報告書は本当におかしい。

 時間ですので、最後にさせていただきます。

 三月四日です。彼女はやっと外部の医療機関に行きました。そのときに、詐病を疑われるということを前提に精神科医はクエチアピンとニトラゼパムを処方しているんですけれども、この外部の精神科医は、看守勤務者は同行していますが、薬の取扱いについて注意事項はちゃんと伝えているんでしょうか。それは聞き取りされていますでしょうか。

西山政府参考人 聞き取りは実施しております。

鎌田委員 聞き取りを実施しているなら、なぜ最終報告書に書いていないんですか。おかしいですよ。

 そして、三月の六日の、翌日は、彼女は午前の四時頃にうなって、苦しんでいる。それに対して看守勤務者は、ねえ、薬決まってる、そういう言葉を投げかけている。午後一時頃からは反応がないんです、彼女は。呼びかけても反応がない、血圧も測れない、脈拍も測れない。そしてやっと午後の二時過ぎに救急搬送が要請されるんです。

 私は、再三申し上げますけれども、この報告書には、外部の精神科医がクエチアピンとニトラゼパムを処方した際の処方箋が入っていません。薬を処方する際、処方箋を出すはずです。ですが、この報告書には処方箋が入っていません。改訂版を新たに作るべきです。そのことを強く申し上げて、質問を終わります。

 ありがとうございました。

伊藤委員長 次に、鈴木庸介君。

鈴木(庸)委員 立憲民主党・無所属、鈴木庸介です。今日もよろしくお願いを申し上げます。

 済みません、ちょっと順番を変えるんですけれども、最初、難民審査参与員制度について伺わせてください。

 参与員の皆さんというのは、具体的にどうやって選んでいるんでしょうか。

西山政府参考人 難民審査参与員は、法令上、人格が高潔であって、審査請求に関し公正な判断をすることができ、かつ、法律又は国際情勢に関する学識経験を有する者のうちから、法務大臣が任命するものとされております。具体的には、日本弁護士連合会、UNHCRなどから推薦を受けるなどしているほか、他の難民審査参与員から紹介を受けるなどした上、その方の意向等を確認し、法令上の要件を充足すると認められた場合に、法務大臣において任命を行っております。

鈴木(庸)委員 今紹介というお話があったんですけれども、紹介だと、考え方とか、一部の方に偏ってしまうこともあると思うんですけれども、その辺はどう公平性を担保されているんでしょうか。

西山政府参考人 推薦いただく団体にも、当然、難民参与員の求められる能力、資質といったものは御理解いただいた上で、公平な観点から推薦をいただいているものと承知をしております。

鈴木(庸)委員 そうすると、統一した試験とか基準がないというように感じるんですけれども、改めて伺いたいんですけれども、どうやって審査員の方の質の担保をされているんでしょうか。紹介とか、その団体それぞれで、はい、あなたのところのは全面的に信用しますよという、そんな感じなんでしょうか。

西山政府参考人 可能な場合には、その方がどのような実際の実績をお持ちかといったところについてはもとより調べた上で、任命に際しての、選定に際しての資料に資するということはやっております。

鈴木(庸)委員 公開されている参与員の皆さんの肩書を拝見すると、大変立派な肩書の人が並んでいるんですけれども、肩書がいいからといって、思想的に中立であったり見識が高いとは言い切れない部分もあると私は思っております。

 ちなみに、勤務実態と報酬はどうなっているんでしょうか。

西山政府参考人 参与員の勤務実態につきましては、それぞれの参与員の御都合によるので一概にはお答えすることは困難でございますが、おおむね二週間に一回程度、審理手続のために参集していただいているのが通例でございます。

 また、報酬についてお尋ねがありましたが、日当として二万二千三百円の報酬が支払われております。

鈴木(庸)委員 何か、今回の法案の審議を通じて、この参与員制度というものが大分クリアになってきたなという感じはしているんですけれども。

 ただ、御案内のように、二〇一七年の九月に、全国難民弁護団連絡会議から、参与員の問題発言、行動に対する申入れ書というものが法務大臣宛てに出ております。この中では、人格攻撃や侮辱、名誉侵害等の不適切発言や、難民該当性を評価する職務自体の放棄を披見する発言、威嚇、脅迫、無関心、怠惰、予断、偏見、無理解など、様々な問題が指摘されているところでございます。

 こうした指摘がされていることについて、法務省としてはどう評価されていらっしゃいますでしょうか。

西山政府参考人 難民不服申立てを行った当事者の方々や弁護士の方々等から、難民審査参与員の審理中の言動等が配慮を欠くのではないかといった御意見、御指摘をいただくことがあったことは十分承知をしております。

 不服申立て手続においては、当事者の方々の境遇や心情等に配慮した発言を行う必要があると考えておりますところ、申立人が不快な思いをされるような不適切な発言はあってはならないものと考えております。

鈴木(庸)委員 参与員の皆さんに、公平で、深い知見で、かつ思想的な背景なく判断をしていただきたいと思うんですけれども、これからに向けて、それを担保するためにどのような対策というのを取っているんでしょうか。

西山政府参考人 委員も御指摘いただいたような、参与員の審理中の言動等が配慮を欠くのではないかといった御意見、御指摘をいただいた際には、入管庁において、必要に応じて、当該難民審査参与員に直接その内容をお伝えするとともに、定期的に開催している協議会などを通じ、難民審査参与員の方々に注意喚起を行うなどしております。その際は、難民審査参与員の職務の遂行に当たって、当事者の方々の境遇や心情等に配慮していただくようお伝えしているところでございます。

鈴木(庸)委員 是非よろしくお願いします。

 また、申入れ書では、現在、申請者側において審理手続を録音することは認められていない、先ほど鎌田委員からもありましたけれども、当時の審理の状況が検証できない状態となっているのが問題点として指摘されております。

 審理の可視化が進んでいないということに対する何か背景があるんでしょうか。何で可視化できないのかということと、今後、可視化していく予定というのはあるんでしょうか。

西山政府参考人 御指摘の審査請求における審理の可視化につきましては、まず、難民認定申請者の特定につながるおそれがあること、それから、難民審査参与員が自由に意見交換をして心証を形成することができる環境を確保する必要があることなどから、困難であると考えております。

 その上で、審査請求における口頭意見陳述に際しては、弁護士等の代理人も手続に加わることが認められているほか、陳述の要旨等を記載した調書を作成しているところでございます。

鈴木(庸)委員 できるだけプロセスは分かりやすくしていただきたいとお願いを申し上げます。

 続いて、外交と難民について伺わせてください。

 まず、お配りさせていただいた紙を見ていただきたいんですけれども、私は、外務省のビザ、法務省のビザというような言い方をいつもしているんですが、外務省と法務省とがそれぞれビザを発給するときに、どのような連絡体制を取っているのかというのを説明している紙でございます。

 査証事前協議における外務省と法務省の連絡調整の流れについて御説明願えますでしょうか。

松尾政府参考人 お答え申し上げます。

 有効な査証を所持することが上陸のための条件の一つとなっております。

 査証事前協議の連絡調整の流れについては、在外公館において長期滞在又は就労の査証申請を受け付けた場合、個々の査証申請案件について、必要に応じて外務省から出入国在留管理庁に協議を行っております。出入国在留管理庁からの査証発給の適否に係る意見を踏まえ、外務本省から在外公館に対して査証発給の可否を指示しております。

鈴木(庸)委員 また、言葉だけ見ると、査証事前協議ということですから、今御説明いただいたように、当然様々な情報のやり取りを外務省と法務省としていると思うんですけれども、査証の発給に際して外交上の配慮というものはされるんでしょうか。

伊藤委員長 速記をちょっと止めてください。

    〔速記中止〕

伊藤委員長 それじゃ、速記を起こしてください。

 西山出入国在留管理庁次長。

西山政府参考人 査証発給に当たっての事前協議ということで入管庁から御説明いたしますと、そのような事前協議をいただいたときには、在留資格を付与することができるかという観点で審査を行うということになりまして、そこに外交上の配慮が入るという余地はないと考えております。

鈴木(庸)委員 ありがとうございます。

 配慮はないということなんですが、我が党の山田委員も度々指摘しているところなんですけれども、私が申し上げたいのは、いわゆるビザ、外国人が入国する際に外務省と法務省が密接に連絡を取っているという、当然そこに外交上の配慮が入ってしまうのではないかということについて危惧をしております。ここに、どうしても、難民申請の書類についても当然シェアされるわけだと思いますので、外交が難民認定の現場にも影響してくるのではないかという考え方を持っています。

 例えば、うちの国は不撓不屈で、一切の外交的圧力を受けないでビザを出すという、人権国家として尊敬されるという選択肢もあれば、ビザや難民申請は外交と一体化して発給する、これはいい悪いの話ではなくて、国の方針の話だと思うんですけれども、どちらが国益に資するかという話かなと私は思っております。

 そこで、改めて伺わせてください。

 難民申請の際にも、同じようなフローで外務省と法務省の情報交換というのは行われているんでしょうか。

西山政府参考人 今の委員御指摘のようなことはございません。

鈴木(庸)委員 これは、ビザでは情報交換するけれども難民申請では情報交換しないというようなことになるんですか。済みません、ちょっとそこをもう一回確認させてください。

西山政府参考人 外務省におかれてビザを発給されますと、我が国に入国することが可能になってまいります。その際に、私どもとしては、在留資格を与えるかどうかという判断、その前に上陸を認めるかどうかがございます。

 そういった観点からしますと、ビザを発給する前に当方の方に協議をいただいて、日本に入国いただいて在留を認めることができるかというのを事前に私どもは私どもなりの判断をして、協議をして、外務省にお伝えをするという関係でございまして、難民認定とは場面が異なります。

鈴木(庸)委員 済みません、お答えとしては、難民申請では情報交換はしないと断言できるんでしょうか。それとも、した上で外交的な配慮はされていないというのか、それとも、しているし外交的配慮もされているのか、三択だと思うんですが。

西山政府参考人 難民認定の関係で、出身国情報その他国際情勢についての情報というのは当然私どもも認定に際して必要になる情報ですので、その点については当然外務省とも綿密に連絡を取り合っているところでございます。

 その上で、お尋ねの難民認定につきましては、外交上の配慮を行うことはございません。

鈴木(庸)委員 改めて、ないと断定されているんですけれども、これだけ情報交換している中で、外交上、一切配慮していないというのもちょっと無理があるのかなというのは個人的にはしております。

 実態がどういった形であっても、難民の皆さんが一度日本で申請すると、他国で再申請するのは、国によって対応も異なるということで御説明いただいたんですけれども、これは大変なことなんですね。ですから、難民申請する皆さんが、日本はこういう基準でやっているんだなというのが分かりやすくしていく指標を示していただくことをお願いしたいなと思っております。

 次に、旅券の発給の申請その他送還するために必要な行為の命令について、このことについてお伺いさせてください。

 この法案提出の背景というのは一体どういうものになりますでしょうか。

西山政府参考人 送還困難国の中には、被退去強制者本人が有効な旅券を所持していれば当該外国人の意思にかかわらず護送官付送還による受入れに応じるものの、当該外国人本人が旅券の発給を申請しなければ旅券の発給に長期間を要する国や、そもそも旅券発給に応じない国が存在しております。この場合、本人が旅券の発給の申請を拒否すると、職権により旅券が発給されるまでの間送還を行うことができず、このことが収容の長期化の要因になっております。

 そのため、職権による旅券の発給に長期間を要する国を送還先とする場合には、外国人本人に旅券発給申請等を義務づけて、罰則による間接強制の効果により自ら旅券発給申請等をさせ、迅速かつ円滑に退去強制令書の執行による送還を実施できるようにする必要があるということでございまして、旅券発給申請等の命令制度を創設することとしたところでございます。

鈴木(庸)委員 これはまあイランの話ということになると思うんですけれども、入管庁に協力的でなくて臨時旅券の職権発給に応じない大使館、領事館について、どういったケース、どのような感じであるんでしょうか。

西山政府参考人 例えばイラン政府は、送還忌避者の受入れに応じないのみならず、帰国用臨時旅券の職権発給にも応じておりません。そのほか、旅券発給申請を行ったとしても旅券の発給に長期間を要する国が存在しております。

鈴木(庸)委員 これは、イランについても、平成二十八年から対応が変わったというようなお話も聞くんですけれども、それ以外にでも、いろいろな国では、なかなかその国と話が進まないような国もあって、対応に苦慮されているというお話は伺っております。

 もう一つ確認させていただきたいんですが、旅券発給申請以外に命令の対象となる、その他送還するために必要な行為というのは、具体的にどのような行為を想定されていますでしょうか。

西山政府参考人 委員御指摘の規定、その他送還するために必要な行為としましては、入管庁職員に対し旅券の発給に必要な生年月日等の情報を提供し又は顔写真の撮影に応じること、旅券に代わる身分証明書の発給の申請をすることなどを想定しております。

鈴木(庸)委員 済みません、何か、この辺りは全然今回の質疑で皆さんやっていなかったので、一度触れさせていただければと思ったんですけれども、旅券の発給の申請その他送還するために必要な行為の命令に違反して命じられた行為をしなかった場合には刑事罰の対象とあるんですけれども、この刑事罰の効果についてはどのように考えていらっしゃいますでしょうか。

西山政府参考人 外国人本人が申請しない場合に、旅券の発給に長期間を要する国を送還先とする場合には、本人に旅券発給申請等をさせる以外に迅速な送還実施のための現実的な手段がございません。そのために、本人に旅券発給申請義務を課し、罰則によって間接的に自ら旅券の発給申請を行うことを促し、これによって迅速、円滑な送還の実施を可能としようとするものでございます。

 このような仕組みは、ほかの様々な法律に見られます間接罰の仕組みと同様、命令の遵守を担保する上での相応の効果を有するものと考えております。

鈴木(庸)委員 相応の効果というお話なんですけれども、やはり、この刑事罰を受けた後、当然、それでも帰国しない人というのも出てくると思うんですね。そうした方というのは、刑務所とまた入管施設の無限ループに陥ってしまうんじゃないかというような気もするんですが、その辺りはどのように捉えていらっしゃいますでしょうか。

西山政府参考人 この間接罰により命令に従わせるといいますか、命令に従っていただくという仕組み、これにつきましては、他の例を見ても相応の効果を有するものと考えておりまして、あえて刑罰の制裁に服する前提で命令に従わないことが通常の対応とは考え難いと考えております。

 また、運用上、旅券発給申請等の命令を発出した段階で、従わなければ罰則の対象となることを説明するとともに、命令に従い旅券発給申請等をした上で自ら帰国するように説得するなどの方策により、迅速な送還を実現することで、御指摘のような刑務所と入管収容施設のループにならないように努めてまいりたいと考えております。

鈴木(庸)委員 是非、実効性のあるというところで担保をお願いしたいと思います。

 最後は、監理措置について聞かせてください。

 前回の質疑でも、この監理措置についての問題点、指摘させていただきました。例の相当の理由がある資料の客観性とか、どうやって監理人を探すのかという方法の問題、また、自分の資産を調べられて過料まで科されるというのに無報酬であるという監理人の待遇、さらには、監理措置を継続するには持ち出しもある可能性もあるというところですよね。また、アンケートにもあったように、収容者をサポートしていらっしゃる多くの皆さんが、やはりこの制度に疑問を持っていて、かつ、やりたくないという御意見も多々あるのは御紹介させていただいたところでございます。さらに、退去強制手続が出るまでは働けるけれども、いつ働けなくなるか分からないような、そういった訳ありの外国人を雇う企業がどれだけいるのかという見通しの甘さ等々、多くを指摘させていただきました。

 結局、監理人に甘え過ぎている制度設計の緩さ、ずさんさといって、正直、この制度は、スタートしてから多くの問題を生じてしまうのではないかなと私は思っております。

 西山次長も、本当に連日の答弁、大変だと思うんですけれども、記事で拝見したのは、那覇地検の検事正までお務めになられたということで。私も、NHKに勤めていた頃にサツ回りの一年生の記者だったときに、当時、前橋地検の検事正が特捜部長だった宗像紀夫さんだったんですね。この検事正室のドアをノックするときというのは物すごく緊張したのを覚えているんですけれども。

 そんな検事正経験者の西山さんにいろいろ詰めて、今日も大変心苦しいところはあるんですけれども、心苦しいといえば、西山さんは音楽家でいらっしゃり、ベーシストだということを記事で拝見をいたしました。ベースといえば、音楽の文字どおりベースで、この法案、実は、本当にばらばらに見えて、調和が一切取れているとは思えないんですけれども、ベーシストとしてこの法案をどのように捉えられていらっしゃいますでしょうか。

西山政府参考人 政府参考人としてこの場で私ごとについてお話をするのは差し控えるべきところだと思いますけれども、ちょっと訂正をさせていただきたいのが、ベーシストという言葉は、そのようにお呼びいただくほど私は技量を持ち合わせておりませんし、精進もいたしておりませんので、そのベーシストという呼び方だけはちょっと御勘弁いただきたいなと思います。

 その上で御質問にお答えしますけれども、監理措置においては、監理人が本人の生活状況等を把握しつつ指導監督を行い、入管庁が、監理人から必要な事項について届出、報告を受けて、被監理者の生活状況、条件遵守状況を的確に把握し、監理に支障が生じた場合には、入管庁においても、監理人からの相談を受け、必要に応じて被監理者に適切な指導を行うことを想定しております。

 監理措置においては、このように監理人と入管庁が密接に連携を取ることが重要であると認識しております。そのために、入管庁としては、まずは、監理措置制度について御理解をいただけるよう、監理人になっていただける方々に丁寧に説明を尽くしてまいりたいと考えております。

鈴木(庸)委員 是非、音楽のように調和を取るために、必要なところは修正しながら、音楽として成り立たせていただきたいと私個人的には考えております。

 大変注目されている法案でございますので、引き続き与野党の真摯な協議を期待して、私の質問を終わらせていただきます。どうもありがとうございました。

伊藤委員長 次に、吉田はるみ君。

吉田(は)委員 立憲民主党・無所属の会の吉田はるみです。本日もどうぞよろしくお願いいたします。

 早速ですが、たくさんお伺いしたいことがございますので、質疑の方に入らせていただきます。

 まず最初に、令和四年に難民申請を行った者のうち、三回目以降の申請者は三百七十人であります。仮にこの法案が通過した場合、これらの人は原則として強制送還されるということでしょうか。

西山政府参考人 委員のお尋ねにつきましては、仮定の御質問であり、回答は困難かと存じます。

 その上で、本法案では、三回目以降の申請者であっても、難民等の認定を行うべき相当の理由がある資料を提出した場合は、法的地位の安定を図る必要があるため、送還を停止することとしており、万が一にも本来保護されるべき者が送還されることがないようにしているところでございます。

吉田(は)委員 やはり、今の御答弁だと、とても不安になっていらっしゃる方々が現状です。これから、三回目以降、新しい立証責任のある書類を提出しない限り、その方は自分が難民であるということが証明できないんですね。これはかなり厳しいハードルを乗り越えないと強制送還されるというふうに思うのが、私は自然な流れかと思います。

 そこで、やはり私が心配しているのは、先週金曜日の、二十一日の参考人質疑で、橋本一橋大学大学院准教授はこう述べられていました。複数回申請後に裁判を経て難民認定された者がいるというのも事実、迫害や暴力、場合によっては命まで危険にさらされる人が現にいたわけです。いたんです。この改正で、そうした方が絶対いないと言い切れるんでしょうか。

 私はまた、橋本参考人のこの意見、非常に重く受け止めました。与党又は賛成派の議員におかれましては、この法案をこのまま通すということは、最悪の場合には、無辜の人間に対して間接的に死刑執行ボタンを押してしまうことに等しいということを是非御理解くださいとも述べられました。私は、そのボタンを押すことは到底できません。

 法務大臣にお尋ねします。この橋本先生のお言葉、大臣はどのようなお受け止めをなされたか、感想で結構です、教えてください。

齋藤(健)国務大臣 私、法務大臣としての仕事は、やはり法律に基づいて、それを公平、厳正に執行していくということなんだろうと思っております。本件に限らず、死刑の問題もありますし、重く受け止めながら厳正にやっていくということに尽きると思っております。

吉田(は)委員 私、ちょっとこの後にここを話そうと思っていたんですけれども、今、大臣からそういうふうにおっしゃっていただいたので、申し上げます。

 私も、かつて法務大臣秘書官といって、短期間としてではありますが、法務省の中にいさせてもらった立場から感じますのは、法務大臣というのは、人の人生を左右する、そして生命をも左右する強大な権限が、権力があるお立場でございます。本当にそこは、人を救う、助ける、人道、人権の観点から、是非、齋藤大臣にはその点を強くお願い申し上げたいと思います。

 話をちょっと続けます。

 先ほどの三回目申請者のうちの未成年のお子様、四十九人であると判明しまして、うち、未就学児及び義務教育期間中と推察される十五歳のお子さんは、これは事前レクで聞きました、四十六人です。この四十六人のお子さんが、仮にこの法案が通過した場合、このお子様方は、親と一緒に強制送還されるか、日本で両親以外の養育者に育てられるのか、この二通りであるというような今現在理解ですが、合っていますでしょうか。

西山政府参考人 まず、本法案におきましては、三回目以降の申請者であっても、条約難民等に該当するときには在留資格を付与される場合がございます。その上で、条約難民等に該当しない場合、退去強制事由に該当する外国人は、法令に従い、本国に退去することが原則であり、当該外国人に子供がいる場合には、家族一体として帰国していただくことになります。

 一方で、我が国では、退去強制事由に該当する場合であっても、本邦への在留を希望する場合には、個々の外国人の事情を慎重に考慮し、在留を認めるべき者には適切に在留を認めております。

 したがいまして、親のほかに適切な養育者が存在する場合に、その子に在留を特別に認めることがあるほか、親に在留を特別に認める場合に、その子も含めて家族一体として在留が認められることもございます。

吉田(は)委員 こういう場合もあります、ああいう場合もありますという答弁だと、今現在不安に駆られている方々は、ああ、どうせ自分のことは切られるんだなと思って、本当に不安になっていらっしゃる方がこの国会の外にはたくさんいらっしゃるということを是非重く受け止めていただきたいです。

 私は、こう思います。一緒に強制送還されるか、子供だけ在留許可をもらってこの国にいる、これでも、この親子にとっては、どちらにしても苦難の道です。貧困、そして暴力、そういうものにさらされる危険がいずれにしてもあります。私は、子供の権利、そして人権の観点から、これでは不十分だと思っています。子供が別れ離れになること、私も一人の親として、考えるだに涙が出そうになります。親子を引き離さないでほしい。日本で一緒に暮らさせてください。

 二十一日の寺田委員の質疑に対して、大臣からは、私から一つ申し上げたいと思いますけれども、私も子供を二人育てましたし、実は非常に厳しい状況で、物すごく悩みながら育てた経験があります、私の悩みは、寺田さんが御指摘されたような方の苦しみに比べれば大したことではなかったと思いますが、子供の問題につきましては、私は人一倍真剣に考えているつもりでおりますとおっしゃってくださいました。私は、政治家として重みのあるその大臣の言葉を信じたいです。

 その上で、一つ、その後に、土曜日に明らかになった数字で、私はまた心配になる数字が出てまいりました。これは、外国籍のお子様で八千人就学せず、学校に行っていないということです。これは、二十二日土曜日、共同通信の記事なんですけれども、義務教育段階の年齢で、小学校、中学校など、外国人学校も含めて、本来なら義務教育を受けていなければいけないのに受けていない外国籍のお子さん、二〇二二年五月時点で八千百八十三人いるということが明らかになったんです。

 これは、私、すごい数字だと思いますよ。この子たち、学校に行っていないんですか。この対応をしなかったら、私は、日本という国に信頼が置けないですというふうに海外からの厳しい評価を受けると思います。義務教育を受けること、これは権利です。皆さんの権利です、この国に生きる。

 そして、大臣、これをこのままにしておくというのは、今回、こういう本当に内容が厳しい改正だと思いますけれども、何か、これは私が思っていることではないです、でも、一部言われているのは、もう日本に犯罪予備軍みたいな人は要らないとか、外国人は悪いことをするんだ、だから送り返せみたいな、そういう世論がある中で、一言申し上げます。この子たちをきちっと教育の場にちゃんと行かせてあげて、日本語も話せない、学校も行っていない、貧困の状態にある、次、何をしますか、犯罪ですよ、それをつくっちゃいけない、私は本当にそう思っています。

 その意味でも、この子供たちの調査も本当にしてほしいと思いますし、これは、日本が一体、外国の皆さんとの共生社会に対してどんな図を、どんな未来を描いているか、それが私は問われていると思うんです。

 大臣、この辺り、済みません、ちょっとこれは通告していないので、難しかったら結構なんですけれども、やはり犯罪を犯さないようにする法務省として、私はこれは注目すべき点だと思うんですが、いかがでしょうか。

齋藤(健)国務大臣 たしか、あれは文部科学省の調査でということだったと思います、この八千人以上という数字は。したがって、教育制度については法務省の所管外なので、その在り方についてコメントすることは差し控えますが。

 ただ、我々ができることで申し上げますと、入管庁において把握しているところでは、現行制度上、外国籍の子供は義務教育段階の公立学校で就学することが可能であるというふうに承知はしています。また、入管庁で、外国籍の子供の就学に関する相談等があった場合には、適切な窓口を案内するなど、個別に対応しているところであります。

 私も、この問題は、一人でも減らしていかなくちゃいけないという思いは共有しています。

吉田(は)委員 多分、ごめんなさい、私もこれは想像でしかないんですが、この中にはきっと、表に出てきたら強制送還になってしまうと思って、恐れているお子さんもいらっしゃると思うんですよ。だから、出ていけない。でも、こうやって分からないところに潜っていくというのは、私はとてもよろしくないと思うんです。

 是非、そういうことを私は起こしてほしくないなと。やはり、一人でも、この日本に生きて、そして共に共生する社会を私は目指したいなというふうに思っていますので、是非、この問題はこのままにしていただきたくないです。

 続けてお伺いします。

 この三回目申請者のうち、日本人の配偶者がいる申請者は何人いらっしゃいますか。また、仮にこの法案が通過した場合、この人たちは原則として強制送還されるということでよろしいでしょうか。つまり、配偶者がいても強制送還するよということでよろしいでしょうか。

西山政府参考人 三回目以降の申請者のうち、日本人配偶者がいる申請者の人数は把握しておりませんが、三回目以降の申請者であっても、条約難民又は補完的保護対象者に該当するときには在留資格を付与される場合がございます。その上で、条約難民等に該当しない場合、退去強制事由に該当する者は、法令に従い、本国に退去することが原則であり、このことは日本人配偶者がいる方の場合でも同じでございます。

 もっとも、退去強制手続の中で、法務大臣が例外的、恩恵的に在留特別許可を与える場合がございます。その許否判断は、個々の事案ごとに、在留を希望する理由、家族状況、素行、内外の諸情勢、人道的な配慮の必要性、さらには我が国における不法滞在者に与える影響等、諸般の事情を総合的に勘案して行っております。

吉田(は)委員 今、日本人配偶者がいた場合であっても送還されるよということが言われたと思うんです。

 でも、これも私は大変な違和感を持って感じる項目です。愛する人同士、夫婦が離れ離れにされる、私はそんな理不尽はあってはいけないと思います。もちろん、中には、この制度を利用して偽装結婚というケースもあると思います、確かにあるかもしれない。ただ、やはり、私の話した方の中にも、実際、私の友人の中にも、何年も結婚しているのに難民申請が通らない、在留許可が下りないという夫婦が大勢いらっしゃいます。これは本当に何とかしてほしいです。

 これも、こんなことをこの場で言うのは適切かどうか分かりませんが、ここの委員の中にも、あるいは今の日本社会にも、こんな考えを持っていらっしゃる方がいらっしゃいませんでしょうか。仮放免中に日本人女性と知り合い、結婚する。それは、その日本人女性が利用されていますか。日本人女性はだまされていますか。その間、子供ができたら、それは外国人仮放免者の策略ですか。もしこのように考える方がいらっしゃるとすれば、大変失礼な話だと思います。特に、外国人と結婚される日本人女性の中には、こういう差別に苦しんでいらっしゃる方がたくさんいらっしゃいます。

 大臣、私は、大臣も同じだと思います。自分が選んだパートナー、その方を誰にも何も言われたくないと思うんです。その方の愛する人を決める、これは誰にも言われたくない。それが外国人であれ、どんな方であれ、その人にとって大事な人です。私はこのような差別は絶対容認できない。

 でも、今お話のあった、配偶者でも送還されてしまうケースがあるということ、こういう、家族がばらばらになってしまうという状況で、まさに国際的、人道的な立場からいったときに、これは私は問題だと思うんですけれども、大臣、この辺りも御考慮いただきたいのですが、いかがでしょうか。

齋藤(健)国務大臣 私は海外で生活した経験もありますので、外国人の方がそれぞれ違う国の方と結婚して、そういう状況については何の違和感もなく素直に受け止めることができる人間だと思っています。

 御指摘の、未成年の子とその親ですとか、あるいは日本人と婚姻している場合ですとか、そういうケースにおいて家族の分離はすべきではないという御指摘だと思いますけれども、私としても真剣に考えているつもりであります。

 その上で申し上げますと、本法案では、在留特別許可の判断の透明性を高めるために、新たに考慮事情を法律で明示することとしておりまして、御指摘の親子関係ですとか日本人と婚姻している事情につきましても、法律で明示された考慮事情のうち、家族関係又は人道上の配慮の必要性として考慮されることになるということだと思っています。

 在留特別許可の許否判断に当たりましては、最後は個別の事案ごとの諸般の事情を考慮してということになりますが、適切に判断してまいりたいと思っています。

吉田(は)委員 何とかここは本当に、私は苦しいです。目の前で苦しんでいる人を私は見過ごすことができない。本当に、救うなんていう言葉はおこがましいですが、何とか御家族と一緒にいられるようにというふうに願っています。強制送還されて拷問や迫害、そして命の危険にさらされる人を送還してはならないんです。

 法務大臣は、このように一人の運命を左右する強大な権力をお持ちであります。本当に、ほかのどの大臣にもこのような権力はない。その権力を人を助けるために是非使っていただきたいと思います。

 時間も限られていますので、次の質問に移らせていただきます。

 入管施設の処遇に関して、改めて少し確認させていただきます。

 大臣は、入管施設に行ったことがありますか。また、そこで収容されている方とお話ししたことがございますでしょうか。

齋藤(健)国務大臣 名古屋入管に視察は、一月だったと思いますが行かせていただきましたが、収容されている方との面会というのはしておりません。

吉田(は)委員 大臣、是非、収容されている方の直接の声を聞いていただきたいんです。もしかしたら入管の方では、あの人たちの話を聞いてもうそを言うんだとか、法務大臣を前にあれこれ言ってくるから聞かなくていいなんて言われるかもしれないんですけれども、それでも、そこにいる方の声を是非聞いていただきたいと思います。やはり、当事者の方々と話をして、現状を認識していただくということが私はとても大事だと思います。

 そこで、先日、ウィシュマさんの映像、私、気になる点が三つありましたので、ちょっとここだけ言わせてください。

 動画番号四番でした。ベッドからウィシュマさんを起き上がらせるときです。寝ているときに上体を起こすというところで、通常、これは私も母の介護をしたことがあるから分かるんですが、必ず背中の後ろ、首ががくんとならないように押さえて起こします。しかし、この映像では、両手を引っ張って、ぐっと起こしていました。これはひどいですよ。全く、人権というか、物扱いに私には見えました。

 入管、これは問題だと思いませんか。

西山政府参考人 今委員が御指摘になられた点につきまして、外部有識者の御意見も踏まえた調査報告書においては、特段問題点として指摘されているところではございません。

吉田(は)委員 誰が見たのという感じですよ、これ。女性の人はいましたか。介護経験者はいましたか。そういう方を処遇している人はいましたか。一発で私は、うわっと、あの映像を見て思いましたよ。こんな人間扱いされていないようなのは、もうあり得ないと思いました。

 それだけじゃありません。次です。

 動画番号七番。車椅子から滑り落ちたウィシュマさんを、今度は車椅子に戻すところです。これも、私は見て驚愕しました。床にウィシュマさんがいらっしゃって、入管の職員さんが二名いらっしゃったんですね。何とか戻そうとして、でも、ちょっと重くて、車椅子に乗せられないとおっしゃりながら。車椅子、皆さん、押したことがあるでしょうか。車椅子は、座るところがこうなっているんですね、板のように。それをこう傾けて、ちり取りがすくうように、ウィシュマさんの背中に何度もぶつけていました。こんなのはあり得ないですよ。

 これは問題だと思いませんか。

西山政府参考人 今御指摘の点につきましても、報告書において指摘はございません。

吉田(は)委員 ちょっとそれはないですよ。本当に、これは人権を尊重する入管に生まれ変わるというのであれば、ここの指摘なしに、ウィシュマさんの無念を私は感じます。これは駄目だ、これは私はちょっと納得できない。

 もう一つ伺います。

 動画番号十二番。今度は、ベッドから床に滑り落ちたウィシュマさんです。夜中だったと思います。何時というのは書いてありませんでした。そのときもまた、たしか入ってくるまで五分ぐらいかかっているんですけれども、ウィシュマさんが、担当さんと呼んで。それで、持ち上げられないという理由で、我慢してと言って床にそのまま寝せているんですよ、毛布をかけて。朝まで我慢してねと。ウィシュマさんは、床が冷たいとおっしゃっていた。

 伺います。この日、この入管施設では、夜は暖房が入っていますか。その点だけ教えてください。

西山政府参考人 御指摘の日につきまして、終日暖房を使用していたものと承知しております。

吉田(は)委員 夜もですか。

西山政府参考人 終日でございます。すなわち夜も入ります。

吉田(は)委員 ウィシュマさんは、寒いとおっしゃっていました。この点、ちゃんとした、私は室温の証拠をいただきたい。

 このときの、二〇二一年二月二十六日、名古屋の最低気温は七・一度です。これはどういう気温になっていたのか分かりませんが、床に寝せられたまま朝まで毛布だけかけられているウィシュマさんの姿は、私はとても苦しい思いで見ました。

 入管の人数が限られているから難しいんだということをおっしゃるかもしれない。だったら入管の人数を増やしましょうよ。こんな扱いじゃ駄目だ。本当に私は、人権を尊重する入管に生まれ変わるというところを、これではちょっと納得できないんですよ。

 これから共生社会を目指していこうというところで、私、最後にもう一つ指摘させていただきたいんですけれども、こういうような、問題だなとか、職員さんの中にも、あれ、これはちょっとまずいんじゃないかと思う方もいらっしゃると思うんですよ。その方々が内部告発するような、そんなシステム、制度はありますか。短くお答えください。

西山政府参考人 お尋ねの、苦情等、意見を述べる仕組みとして、監察制度、処遇に関する意見の聴取の仕組み、自己の処遇に関する不服の申出制度の三つの仕組みがございます。

吉田(は)委員 でも、それは機能していないんですよ。これは事前レクで聞きました。何件ありますかといったら、件数は分からないんですよね。うなずいていただくだけで構いません。はい。

 あり得ないでしょう、それは。何件来ているかも分からない、本省の方でもそれを把握していない、そんなのは、出すだけ無駄みたいな内部告発ですよ。

 告発と言うと何かちょっと重々しく感じますけれども、それは、やはり自分たちの組織を改善していくために、内側から上がってくる声、そしてそういうことを問題だと思った職員の方々の声をすくい上げ、それで改善点にするシステムがない限りこれはよくなりません。この点を厳しく私は指摘させていただきたいと思います。

 そして、もう一つ、人権に関するところも、これは事前レクで伺いました。そういう人権教育、入職した方にもある、また、全入管職員に対して年に一回そういう研修もあるというふうに言っていました。

 ただ、研修や教育は聞き流すだけじゃ駄目なんですよ。これはテストもしないと聞きました。どうやって人権意識やそこで教えられたことが定着していると言えるんですか。どうやってそれを、皆さん、ただ聞き流していない、ああ、人権ね、ああ、うるさいから取りあえず聞いておけみたいな、そうじゃないと言えるんでしょうか。これでは完全に私は不完全だというふうに思っています。

 最後になりますけれども、大臣、これは本当に毎回、ちょっと経済通の大臣に私はここは御期待申し上げているんですけれども、こういう一連の流れというのは、やはり日本経済にとってもとても重要な点だと思っているんです。どう外国の方と共生していくか。それは、いい外国人、悪い外国人、そんな、二分しちゃいけない問題なんですよ。

 アメリカのユニコーン企業、いわゆるスタートアップですごい業績を伸ばしていく、アメリカのシリコンバレー発のユニコーン企業の八割、この経営幹部が移民の方々です。こうして、外国の方々の力も得ながら成長していっている世界経済があります。

 これは私の友人から聞いたんですけれども、二十年ほど前、ベトナムのホーチミン近郊のフーミー・ガス火力発電所の大型火力発電所の建設計画があって、その受注で日本とドイツが競っていたそうです。最終的にドイツ企業が獲得したんですけれども、その決め手になったのが、ベトナムからドイツに亡命した元難民の方がロビーイングをすごく熱心になさって、それで発注したというような事例も私は聞いています。

 これは、本当に、どう人を大事にするか、どう外国の方と共生するか、どうよい人、悪い人という二分にしないかという大変な問題だと私は思うんですが、大臣、いかがでしょうか。

齋藤(健)国務大臣 私も、これから人口が減っていく日本において、しかも高齢化が進む中で、日本の経済、社会が活力を持ってこれからもあり続けるためには、やはり外国人の方との共生をしっかりやっていくということはもう不可欠の課題だと本当に思っています。

 その上で、我々は、いい外国人、悪い外国人と分けるつもりは全くありません。ただ、お互いが、日本人と外国人が互いを尊重し、安全、安心に暮らせる共生社会を実現するためにも、外国人の人権に配慮しながらも、ルールにのっとって外国人を受け入れ、そして必要な適切な支援を行っていくということ、ルールに違反する者に対しては厳正に対応していくということは、やはり最低限必要なことなんだろうなというふうに考えております。

吉田(は)委員 再三そのルールということが持ち出されるんだなとも思うんですけれども、この先、日本はどういう社会になっていくのか、是非私は岸田総理も示していただきたいと思いますし、こうした共生社会においてやはり大事なのは、差別意識を持ってはいけないということなんです。本当にお互いを尊重できるかというところだと思うんですね。

 本当に入管は生まれ変わらなければいけないし、こうして私もこの立場で申し上げるのも甚だ僭越ではありますけれども、皆さんそれぞれの立場で改善しようとなさってくださるんだと思うんです。でも、そのときに是非、小さな視点からではなくて、大きな、世界的な人権の傾向、そして、これはひいては日本の経済にも大変大きな影響を与えるというところで、私は、齋藤大臣、司法出身者ではないからこそ、いろいろな御決断や御提案ができるお立場にあると思っています。

 私たちはもう本当にもがき苦しんでいるんです、この法案の内容で。救いたい、できるだけ多くの人を救いたい。死刑のボタンなんか押したくないです。どうか大臣、その点、是非受け止めていただいて、私たちの提案も考えていただいて、そして、この議論をもう少し深めさせてください。

 それを申し上げて、私の質問を終わります。ありがとうございました。

伊藤委員長 次に、米山隆一君。

米山委員 それでは、会派を代表して御質問させていただきます。

 まず、資料を御覧ください。これは本日報道されたものでございますので、私の通告も本日になってしまいましたが、それはもうやむを得ないこととして御容赦ください。とはいえ、一応、本日になってから通告はいたしましたので。

 お手元の資料にあるように、この記事を読みますと、現在、日本で生まれ育ったものの、在留資格のない十八歳未満の子供さんが二百一名おられるとのことです。これは先般の寺田議員の質問の中でもあったんですけれども、二百一人おられるということでございます。この報道を見ますと、立憲民主党の、我が党の要求を踏まえ、在留特別許可を与える方向で検討を始めたという報道がなされているわけでございます。

 報道ぶりから見まして、現在まさに御検討中で微妙な状況にあるということは推測される書きぶりではあるので、そこを、何というか、壊したいということでは全くないんですけれども、是非、この報道に対する御所見を伺えればと思います。

齋藤(健)国務大臣 この間の寺田さんの御質問に対してお答え申し上げましたように、子供の問題についてはこれまでも真剣に考えてきたところでありますが、寺田さんの御質問に対して、微力ではありますけれども私が何ができるかということは真剣に検討していきたいというふうに回答していますので、そのまま受け取っていただければありがたいなと思います。

米山委員 もちろんそういうことなんでしょう。その答弁から推測できるところというのは、法務大臣としての権限として在留特別許可というのは出せますので、それは大臣ができることなのであろう。それは、要は、現在の二百一人の方に対して相当の御検討をいただいてくださっていることだろうと推測いたします。なので、それ以上、これ自体についてはもう御質問はしないんですけれども。

 次に、法案をせっかくやっているわけでございます。先ほど、吉田議員への回答にもあったんですけれども、今般の改正法案第五十条第五項では、法務大臣は、在留特別許可をするかどうかの判断に当たっては、当該外国人について、在留を希望する理由、家族関係、素行、本邦に入国することとなった経緯、本邦に在留している期間、その間の法的地位、退去強制の理由となった事実及び人道上の配慮の必要性を考慮するほか、内外の諸情勢及び本邦における不法滞在に与える影響その他の事情を考慮するものというふうに、考慮事項が法定されたということでございます。

 これは私、結構なことだと思うんですよ。やはりそれは、漠然と人道みたいに言われるよりも、何かということがちゃんと書いてあれば、それに対して、それこそ例えばそういう案件を扱うことになった弁護士として、これはここに書いてあるじゃないかと言えるわけなんです。

 ただ、やはり、家族関係と言われると漠然としている。家族関係は、それは確かに、家族関係というわけですから、家族関係をさすがに保つ方向なんでしょうとは文言上思われるんですけれども、特に、今ほど来の質問や答弁の中で、家族関係の中でも、それは、配偶者というのはもちろんあるんですけれども、我々は、子供に対しては、もちろん配偶者だって大事ですけれども、お子さんはやはりそれ以上の考慮はあってしかるべき。子供というのは、基本的には自分でどうしてみようもないわけですし、そこは考えるべきだという、いろいろな質疑がなされていたんだと思います。

 そうしますと、ずっと前回から、私、いろいろ、条文の改正はどうですかと言っている立場なんですけれども、この家族関係の中に、さらに、子供の利益といいますか、子供の未来といいますか将来といいますか、具体的な文言はともかくとして、子供の未来のような文言を入れるということは考えられると思いますし、また、恐らく条文に対応するという形でもあるんだと思うんですけれども、在留特別許可に係るガイドラインというものが平成二十一年にできているんです。これは平成二十一年にできているものでございますので、この中では、「(五)当該外国人が、本邦での滞在期間が長期間に及び、本邦への定着性が認められること」「(六)その他人道的配慮を必要とするなど特別な事情があること」などと記載されているんですが、逆に、この五、六は、やはり昔の漠然とした条項のままであって、五十条第五項に、具体的になっているものには対応していないわけですよね。

 そうしますと、この条文に子供の利益ということを明記するとともに、さらに、ガイドラインにおいても、考慮すべき一要素として、本人の責任とは言えない事情で在留資格なく入国し、学校に通い日本語を母国語と認識するなど日本に定着するとともに、他に母国として生活できる国を有さない未成年の子など、これは私が今思いつきで言っただけなので、この言葉そのものという意味じゃないんですけれども、そういったことを書き込むということも考えられると思うんですけれども、大臣の御所見を伺います。

齋藤(健)国務大臣 繰り返しになりますが、御指摘の家族の問題については私としても真剣に考えています。

 本法案では、在留特別許可の判断の透明性を高めるために、新たに考慮事項を法律で明示することとし、御指摘の点についても、法律で明示された考慮事項のうち、家族関係又は人道上の配慮の必要性として考慮されることになる。

 その上で、それぞれの考慮事情の具体的考え方を運用上のガイドラインとして策定することにより、退去強制事由に該当する外国人のうち、どのような方を我が国社会に受け入れるのかを示すということを検討しているわけであります。

 新たなガイドラインの内容は現在検討中でありますが、本邦で家族とともに生活するという子の利益の保護の必要性を積極評価することなどについて明確に規定する必要があると私は考えています。

米山委員 大変御答弁としては結構といいますか、我々はもちろん法案を更に改めることを求めますけれども、御答弁としては非常にありがたい御答弁なのかなと思います。実際にそれがなされることを本当に期待するということかと思います。

 次に、四月二十一日の質問に引き続いての御質問なんですけれども、第六十一条の二の九の四項第一号及び二号の審査機会の実質的確保ということについて御質問させていただきます。

 複数回申請してこれが認められなかった外国人が強制退去を止める方法、一応これは実はあるわけですよね。方法としては、発付された退去強制令書の取消しを求める行政訴訟を提起した上で、さらに、訴訟の係属中は退去強制令書を執行しないように求める執行停止の申立てということをすれば、恐らく、少なくともその裁判の期間中は止められるということなんだと思います。

 さらに、UNHCRからの提言ということで、それ以前の問題として、改正法案第六十一条の二の九第四項の第一号、第二号による送還停止効の例外とするという入管庁の判断に、処分性、処分でないと行政処分不服法で争えませんので、処分性を持たせて、当事者に明示的に処分の告知がなされた上で、この処分が行政不服審査の対象とされるということを提言しておりますが、このUNHCRの提言についての大臣の御所見をお伺いいたします。

齋藤(健)国務大臣 送還停止効の例外は、難民認定申請中であっても送還可能となる類型を設けるもので、送還停止効の例外に該当するか否かにつき独立した不服申立てを認めても難民と認定されることにはならない。難民認定を求める外国人にとっては根本的な問題の解決とはならないものだと思っています。

 退去強制令書を発付された者が難民認定を求めて入管当局の判断を争うに当たりましては、もう委員から御指摘がありましたけれども、送還の停止を求めるのであれば、退去強制令書発付処分ですとか難民不認定処分等に対する行政訴訟を提起し、あわせて、退去強制令書の送還部分の執行停止等を求めることができるわけでありますので、御指摘のような送還停止効の例外に該当するか否かに関して独立して行政不服審査の対象とする必要はないのではないかと考えています。

米山委員 まあ、そこは、分かりましたといいますか、見解の相違みたいなところがありますので、一つの方法があること自体はそのとおりだと思いますので。

 次に、いずれにせよ、ではということで、退去強制令書の取消しを求める行政訴訟を提起する、そして執行停止の申立てをするというのにつきましても、一問飛ばしているんですけれども、つきましても、それは弁護士に依頼せざるを得ない。なかなか外国人が突然日本語でそんな訴訟をできるとは思えないわけでございまして、しかも、かつ、それはまあ、難民申請をするような方ですから、基本的には豊かではないということが通常であろうと思います。また、仮に豊かであったとしたって、弁護士に依頼することそのものが既に困難であろうというようなことが大いに想定されるわけなんです。

 日本には民事法律扶助による法律扶助制度があり、いわゆる法テラスですね、在留資格がある若しくは仮滞在許可がなされているということであればそれが利用できるということですけれども、在留資格もなく、また仮滞在の許可もない外国人は適用がないというふうに承知しております。

 ただ、一応、日弁連が難民、外国人法律援助事業としてこれを扶助しているというふうにも伺っておりますので、まず、議論の前提として、在留資格のある外国人で民事法律扶助を利用している人の年間の数と日弁連の事業で扶助している人の数、またそれぞれに要している経費の概算をお伺いいたします。

竹内政府参考人 お答えいたします。

 法テラスで行っております民事法律扶助の業務でございますが、資力が乏しい国民又は我が国に住所を有し適法に在留する者を対象としておるものでございまして、その内容といたしましては、法律相談援助として無料法律相談を行うとともに、代理援助として民事裁判等手続の準備及び追行に必要な弁護士費用等の立替えを実施しておるところでございます。

 そこで、お尋ねの内容でございますが、令和三年度において、法律相談援助について外国人による利用件数は四千五百八十三件、代理援助について外国人による利用件数は千九百八十七件でありました。外国人に対する各援助に要した経費につきましては、データが存在しないため、お答えをしかねるところでございます。

 そして、法テラスでは、こうした民事法律扶助制度を補完するものといたしまして、日本弁護士連合会から委託を受けて、難民認定に関する法律援助と外国人に対する法律援助の業務をそれぞれ実施しておりまして、適法に在留する者以外の外国人に対しても弁護士費用等の援助を行っているところでございます。

 お尋ねの点、令和三年度において、難民認定に関する法律援助の利用件数は三百十二件でありまして、これに関する費用は約三千五百万円、外国人に対する法律援助の利用件数は七百三十五件でありまして、これに関する費用は約八千万円であったと承知をしております。

米山委員 今、おおという声が漏れましたが、それは多いという声なのか少ないという声なのか、ちょっとそれは分からないんですけれども。

 これはさらっと計算しますと、三百十二件で三千五百万円、七百三十五件で八千万円ですから、おおむね一人十万円なわけですよね。ほぼほぼ法テラスの法律相談と同じ値段ということなんだろうと思います。

 それでも、三百十二件、七百三十五件が成立している分だけ、それは成立しているのは結構なことなんですけれども、私の弁護士視点で見て、よく見つかったなと。なかなか難民申請で、必ずしも難民申請と分からないということだとは思うんですが、とはいえ、在留資格がない人や仮滞在許可がない方というと、さはさりながら、そんな簡単な案件ではなかろうといいますか、在留資格系の案件であろうというところで、十万円で受ける弁護士さんがいるということだけでも、そもそも驚異である。

 さらに、この三千五百万、八千万は日弁連が払っているからそれはいいのだといえばいいのかもしれないんですけれども、そういう人権のような高度なことは弁護士がやれ、それがノーブレスオブリージュというものでしょうという理屈はあり得るとは思うんですけれども、これはやはり私は国費でやっていいんじゃないかと。

 それは、もちろん難民というのは日本の国のものじゃないんだから、そこに関心のある人がやればいいのであるみたいなことを考える方というのはおられるとは思うんですけれども、結局、この費用というのはどうなるか。それは回り回って、弁護士さんが負担するわけですから、結局、それは弁護士さんが一般の人にチャージすることになるんでしょうから、実のところ、結局、何のかんの言って日本国民が負担しているわけです。

 前回の質問でも、私、言ったんですけれども、この手の、難民の方にかかる費用というのは、一見、何か日本国民にかけていないように見えるかもしれないけれども、世界全体で自由主義社会というものを維持していく、更に言うなら人道社会というべきですよね、別に自由主義じゃなくたっていいわけなので、世界全体において人道というものを維持するコストなのであって、それは日本国民として負担したっていいものだと思うんです。それがむしろ平等といいますか、単に意識が高い人だけが負担すればいいということではなくて、日本国民として負担していいのではないかということで、日弁連がやっている扶助制度に対して国費を払うべきではないか。

 更に言うなら、さすがにもう少し高くしてあげてもいいのではないか。やはり国内案件よりはるかに難しいわけで、何も百万にしろなんという話じゃなくて、せめて二十万、三十万ぐらいにして、通常考えるコストが取れる程度にしてあげるということを考えていいと思うんですけれども、大臣の御所見を伺います。

齋藤(健)国務大臣 まず、コスト負担というものが国際社会に生きる日本にとって必要だろうという、その根底のところの考えは私も共有するところでありますが、そこからどこまでやるかというところについてはちょっと見解が違うということなんだと思います。

 法テラスの民事法律扶助制度は、資力が乏しい国民又は我が国に住所を有し適法に在留する者を対象としておりまして、在留資格がなく、仮滞在許可もない難民認定申請者等、適法に在留する者以外の外国人は対象となっていない。

 それで、在留資格のない難民認定申請者が所定の要件を満たさず、仮滞在許可が得られない場合、当該外国人については退去強制手続が停止せず、我が国から速やかに退去すべき法的立場にあるということであります。こうした立場の方に対してまで弁護士費用等を公費負担する民事法律扶助制度の対象とすることにつきましては、やはり私どもとしては国民の理解を得られにくいのではないかというふうに考えているということでございます。

米山委員 そこはもう見解の相違になってしまうんだと思うんですけれども、本当に確定して確実に退去しなければならないなら、それはある種、その方にさすがに法律扶助をするのはそもそも語義矛盾みたいな話になってしまうと思うんですよね。だから、それはそうなんだと思うんですけれども、本当にそうであるかどうかを争うのが法的プロセスというものですから、分からないうちは、確定しないうちは、争っているうちは、それは分からないんだ、だからこそ支援も意味があるんだということを私は申し上げさせていただきたいと思います。

 また、退去強制令書発付の取消し訴訟を行う場合にですけれども、行っている場合は、それは執行停止を求めているわけですから、その間には、基本的には送還されたら意味がないといいますか、裁判を受ける権利がなくなってしまいますので、それはもう執行停止ということが当然だと思うんですけれども、それと同時に、そこは法律というよりは運用だと思うんですが、さすがに、提訴の意思があると本人が言っている場合、準備期間を含めて一定期間送還を行わないというような、これを法律に書けるかというとまた違うのかもしれないんですけれども、ガイドラインなりなんなり、規則なりなんなりで、やはり一定期間送還を行わないということで実質的な裁判の権利と法的プロセスの権利というものを認めるべきだ、確保すべきだと思うんですけれども、大臣の御所見を伺います。

齋藤(健)国務大臣 米山委員の御意見は、一定の御意見として私はあり得るんじゃないかと思っていますが、入管法上、入国警備官は、退去強制令書が発付された者を速やかに送還する法律上の義務を負っています。かつ、行政事件訴訟法上、行政訴訟を提起したとしても、裁判所が別途執行停止決定をしない限りは行政処分の効力は停止しないわけであります。

 御指摘のように、出訴期間中に一律に送還を停止する旨の規定を設けることは、円滑な送還に支障を生じるということになりますので、採用は困難だなと思うんですが、他方、送還停止効の例外となる三回目以降の難民認定申請者は、既に二度にわたり難民妥当性につき審査を受けておりますし、その過程において、一度目の難民不認定処分及び退去強制令書発付処分について、いずれも取消しを求めて訴訟を提起するとともに、執行停止の申立てをする機会は十分に存在をしているという法律的な手当てもされているということであります。その上で、裁判所が退去強制令書の送還部分の執行を停止する旨を決定した場合には送還することはできないこととなるのでありまして、ですから、保護に欠けるということはないと思っています。

米山委員 ここも見解の相違みたいなところがありますので、私としては、それは保護すべきだということを申し上げさせていただきたいと思います。

 次に、補完的保護についてお聞きいたします。

 補完的保護につきましては、入管法改正案第三の二で補完的保護対象者として定義されております。難民以外の者であって、難民条約の適用を受ける難民の要件のうち迫害を受けるおそれがある理由が難民条約第一条Aの(2)に規定する理由であること以外の要件を満たすものとしております。

 入管庁は、令和五年三月、直近ですね、難民該当性の判断の手引という文書を作成し、この中で、これは結局、迫害だけが唯一の要件みたいなことになっていますので、迫害について国際法上確立した定義は存在しないが、難民条約における迫害とは、生命、身体又は自由の侵害又は抑圧及びその他の人権の重大な侵害を意味し、主に、通常人において受忍し得ない苦痛をもたらす攻撃ないし圧迫であって、生命又は身体の自由の侵害又は抑圧をいうとされておりまして、法の定める手続によって行われる訴追や処罰は、通常、迫害には当たらないが、恣意的、差別的な訴追や処罰又は不当に重い処罰は迫害に当たり得るなどと例示されております。

 一方、この補完的保護対象者の条項は他国にもあり、欧州、ヨーロッパでは、対象者を重大な危害にさらされる者として、これを出身国における申請者への拷問若しくは非人道的な若しくは品位を傷つける取扱い、又は刑罰、さらには、国際又は国内武力紛争の状況における無差別暴力による文民の生命又は身体に対する重大かつ個別の脅威としておりますし、また、UNHCRは、必ずしも一九五一年条約上の難民でない可能性があるものの、国際的保護を必要とする者で、そこには、自国外にいる者であって、武力紛争又は重大な治安攪乱の結果として、出身国における生命、自由又は身体の安全を深刻に脅かされている者も含むとしております。

 長々と言って恐縮なんですが、要は、今回の改正案における補完的保護対象者の要件というのは余り正直はっきりしない。迫害でしかなく、迫害の内容に関しての手引というのも何か漠然としたことしか書いていない。ただ、逆に、この迫害というのは、全部、ヨーロッパでの規定ぶりやUNHCRでの規定ぶりを含んでいるんですと大臣がおっしゃってくれるなら、それはまあ、単なる答弁ですけれども、それはそれで価値あることだと思うんです。

 なので、ここで言っている、手引で言っている、若しくはこの条文で言外に条文の解釈として想定されている迫害というのは、この欧州における規定やUNHCRにおける規定を含んでいるものでしょうか。大臣の御所見を伺います。

齋藤(健)国務大臣 補完的保護対象者の認定制度は、難民条約の適用を受ける難民には該当しないものの、これと同様に人道上の配慮を要する者を保護するための制度である、御案内のとおりです。

 本法案においては、補完的保護対象者を、難民条約上の難民以外の者で、難民の要件のうち迫害を受けるおそれがある理由が人種、宗教、国籍若しくは特定の社会的集団の構成員であること又は政治的意見という難民条約上の五つの理由であること以外の要件を全て満たすものと定義をしているわけであります。

 補完的保護対象者の該当性はあくまでも個別の事情を考慮して判断されることになりますが、一般論としては、本国が内戦状態にあるなど本国に帰国すれば紛争に巻き込まれ命を落とすおそれがある者など、あるいは帰国した場合に死刑に処されることが恣意的、差別的な処罰又は不当に重い処罰に当たる場合、あるいは拷問又は残虐な若しくは非人道的な刑罰を受けるおそれがある場合などは迫害を受けるおそれがあると認められ、その理由が難民条約上の五つの理由以外であれば補完的保護対象者と認定することになると考えています。

 加えて、あえて申し上げますと、諸外国における補完的保護対象者の例で、品位を傷つける取扱いとして整理している例につきましても、我が国における個別の審査の結果、迫害に当たれば、法務大臣は補完的保護対象者として認定することになるということであります。

米山委員 これも御答弁としては結構なことといいますか、品位をというのは、品位の線引きが難しいことは前提として、しかし、考慮に入るというのは結構なことなんだろうとは思いますが。

 一方、我々立憲民主党は、やはりそんな曖昧なものではなく、昨年提出した難民保護法案に定めるように、出入国管理法第五十三条第三項に掲げる各国から本邦に入った者を1として、2国際連合、国際連合難民高等弁務官事務所その他の国際機関の見解を踏まえ、送還されることによりその生命、身体、身体の自由又はその他難民条約第一条A若しくは市民的及び政治的権利に関する国際規約第七条の規定により保護された権利利益を害されるおそれのある領域から本邦に入った者であって保護されるべきものとして難民保護委員会規則で定めるもの、3国際連合、国際連合難民高等弁務官事務所その他の国際機関の見解を踏まえ、難民条約第一条Aに規定する理由に準ずる理由又は戦争、内乱、暴動、大規模な人権侵害若しくは公の秩序を著しく乱すその他の事情によりその生命、身体、身体の自由又はその他難民条約第一条A若しくは市民的及び政治的権利に関する国際規約第七条の規定により保護された権利利益を害するおそれのある領域から本邦に入った者で保護されるべきものとして難民保護委員会規則で定めるものとしておりますが、こちらの方がいいと思うんですけれども、大臣の御所見を伺います。

齋藤(健)国務大臣 補完的保護対象者の認定制度は、難民条約の適用を受ける難民には該当しないものの、これと同様に人道上の配慮を要する者を保護するための制度です。

 そして、本法案における補完的保護対象者は、難民条約上の難民以外の者で、難民の要件のうち迫害を受けるおそれがある理由が人種、宗教、国籍若しくは特定の社会的集団の構成員であること又は政治的意見という難民条約上の五つの理由であること以外の要件を全て満たすものと定義をしておりまして、この点は、定義が法文上明記をされているものと考えています。

米山委員 立憲の方がいいですとはさすがに言われないと思うんですが、そういう官僚御答弁になるのは、それはやむを得ないところと思います。

 その上で、先ほどの御答弁で、武力的な、国内武力紛争の状況における無差別暴力などについて、それは入りますという御答弁だったかと思うんです。

 そうしますと、ちょっと具体的なお話としてお聞きしたいんですけれども、幾つか質問を飛ばしてお聞きしたいんですけれども、その武力的紛争による無差別暴力ってどの程度だというのがあると思うんです。

 一番最も分かりやすい例というのが、例にしてしまって大変恐縮ではあるんですけれども、ウクライナから避難されている方かなというところはあると思うんです。

 といいますのは、ウクライナは今大変な状況にはありますけれども、それはもちろん、東部戦線の、もう今にも、たった今にも砲弾が飛び交っているところから、ポーランド国境に至る、さはさりながら、たった今砲弾が直ちに来るという状況ではないというところまであって、そうしますと、今のようなウクライナの状況で、一体全体、全ての方は補完的保護対象者に当たるのであるのか、それとも、そこはやはり、たった今砲弾が飛び交っているようなところだけであって、ポーランド国境に近いようなところの方は違うのか、それについて、どのような線引きになるのか、御回答をいただければと思います。

西山政府参考人 補完的保護対象者に該当するか否かは、申請者ごとにその申請内容を審査した上で個別に認定すべきものであって、一概にお答えすることは困難と考えております。

 ただ、一般論として、ウクライナ避難民のように、戦争等に巻き込まれて命を落とすおそれがあるなど、迫害のおそれがあるものの、その理由が難民条約上の五つの理由に必ずしも該当しない者は、補完的保護対象者に当たると考えております。

米山委員 これも答弁としてはそうなるんだと思いますけれども、その答弁は、基本的には、ウクライナのポーランド国境ぐらいなところであってもそれは当たるという御答弁なんだろうな、そうははっきり言えませんがという御趣旨なのかなというふうに私としては捉えております。時間がないので念押しはしませんけれども。

 ちなみに、次の話題として、補完的保護対象者のプロセスというのは、基本的には現在の難民認定と同じプロセスしか、一応考えづらいので、現在の難民認定と同じく、一次審査では難民調査官が、不服申立てでは難民審査参与員が審査して、最終的には法務大臣が判断するということでいいのか。また、その手続を踏むということになりますと、基本的に、現在、難民認定手続は、一次審査が三十三・三か月、二次審査が十三・三か月かかるということですので、やはり同じぐらいの時間がかかってしまうということになろうかと思うんですが、これはそういう理解でよろしいんでしょうか。

西山政府参考人 御指摘のとおり、難民認定手続と補完的保護対象者認定手続の判断手続に大きな違いはなく、判断主体は同様でございます。

 あくまで、補完的保護対象者に当たるか否かは、申請者ごとにその申請内容を審査した上で個別に判断することとなりますが、迫害のおそれの理由が条約難民の条件である五つの理由以外でもよいことから、客観的な本国情勢等により補完的保護対象者の要件を満たすことが明らかで、速やかな判断、認定が可能な事案もあると考えられます。

米山委員 これも御答弁としては結構といいますか、先ほどのウクライナの例みたいな形である程度類型的に判断できるので、ある程度早くなるということなんだろうと思います。

 そうしますと、ちょっとお伺いしたいんですけれども、ちょっと質問、通告から戻って済みませんが、通告の番号では四番になるんですけれども、そうしますと、補完的保護要件が新設された、それはそれで、広がったんだから悪くはないということになるんですけれども、同時に、そうすると、今まで実は補完的保護要件のところは特別在留許可でカバーしていたという、事実上ですよ、事実上特別在留許可でカバーしていた部分はなくはないんだと思うんですが、それはなかなかそうだとは言ってくださらないとは思うんですけれども。

 ちなみに、この補完的保護要件ができたことによって特別在留許可が狭くなるという懸念も出ているんですけれども、そのようなことはあるのかないのか、齋藤大臣の御所見を伺います。

齋藤(健)国務大臣 本法案では、紛争避難民等の、人道上、真に庇護すべき方々をより確実かつ早期に保護すべく、難民条約上の難民に該当しない場合であっても、難民条約上の五つの理由以外の理由により迫害を受けるおそれのある者を補完的保護対象者として認定する制度を創設。これによりまして、現行法下で人道的配慮による在留特別許可を受けていた者に対して、補完的保護対象者と認定されれば、制度的かつ安定的に保護、支援を行うことが可能となる。

 また、改正法下では、補完的保護対象者と認められない者であっても、退去強制手続において、申請により在留特別許可の判断を受けることが可能になっているということでありますので、したがって、現行法下で人道配慮による在留特別許可を行って保護されていたものに比べて範囲が狭くなるということはないということであります。

米山委員 時間が参りましたので、あと一分ぐらいで二つの質問をまとめて質問させていただきます。

 先ほど鎌田委員からの質問で、特に第一次審査から弁護士を立ち会わせるべきだということに対して、特に配慮が要る者に対してやっています、今後検討しますというお話だったんですけれども、これは是非、私、最初、全員が受けていいじゃないですか、それが文明国というものですよと。ありとあらゆる、こんな自分の命に関わるような決断について、一人だけで決めろなんというのはそれはむちゃな話で、それをきちんとサポートするのが弁護士であって、それをつけることは何も悪いことじゃない。それを是非一次審査からつけるべきだ、それも、補完的保護対象者も含め、つけるべきだということで御所見を伺うのが一つ。じゃ、それをまず伺わせていただきます。

西山政府参考人 御指摘の点も踏まえまして、入管庁としては、更なる取組の在り方については引き続きしっかり検討してまいりたいと思います。

米山委員 検討いただけるという御答弁はいいんですが、是非それはすべきだと思います。

 最後に、今までいろいろ指摘してまいりましたが、この法案、特に六十一条の二の九第四項第一号、第二号は、運用の幅が非常に大きく、難民条約とも合致しません。また、補完的保護要件については、いろいろ御答弁はいただいたところではあるんですけれども、しかし、やはり曖昧だと思います。

 是非一度、やはりきちんと制度設計をやり直すべきだということを最後に申し上げさせていただきまして、私の質疑を終わらせていただきます。

 ありがとうございました。

伊藤委員長 次に、寺田学君。

寺田(学)委員 寺田です。

 九分の質疑時間ですので、今回のこの質問の趣旨自体は、大臣に問題意識を持っていただきたいというのがまず一義的な問題です。

 お手元の方に資料をお配りしました。これ自身は、先日の参考人質疑の中で橋本参考人が出していただいたものが分かりやすかったので、皆さんにお出ししたものです。

 タリバンに制圧されたときのアフガニスタンに関してですけれども、いかに日本の対応がひどかったかということです。

 参考人もお話ししていましたけれども、今、この後説明しますけれども、あのような対応をしたこと、そしてまた、それに対する真摯な反省が表れていないこと自体は、今後、諸外国において、日本政府のために働こう、そう思って協力してくださる方の潜在的な数を猛烈に落としているんだと私は危惧をしています。

 お手元にありますけれども、二度目の資料ですけれども、是非見てほしいんです。アメリカ、ドイツ、英国、カナダ、オーストラリアを表にしています。まず、そこの様子を見てみると、タリバンに制圧された後ですけれども、基本的に、要件を定めながら、米国政府に一年以上勤務した者であったり、英国は英国で、英国政府機関に直接雇用されていた者とその家族とか、カナダは、カナダ政府と相当又は継続的な雇用関係にあった者、かつ、下の方にはNPOの話だったりも出ているんですが。

 対応自体はどうか。上から四つ目の箱ですね、在留資格と入国後の定住支援。アメリカは、まず一に即時永住資格、英国とかも短期で入りながら永住権に切替え、カナダも永住査証で入国という話になって、人数に関しては、アメリカであれば八万六千人、ドイツ二万三千人、英国一万一千人、カナダも九千五百人ですか、オーストラリアも一万六千人。

 裏を返してください。我々日本です。政府退避組、民間招聘組、政府と民間がありますが、今まで一生懸命日本政府のために頑張ってくださった方々に関しては、直接雇用を、日本大使、JICAと持っていた現地職員とその配偶者と子。在留資格は何か。九十日間の短期滞在での入国です。民間に至っては、そのためにいろいろ申請しなきゃいけなくて、括弧三に、日本との関係による迫害のおそれがあるという供述書、日本語か英語。命からがら、タリバンに制圧された後に、今まで、政府ではないですよ、民間として協力した方々に対して、おまえがそこで迫害のおそれがあるというのを供述書を出せというのを要件にしていたというのが実態だと思います。

 いろいろな実例をお伺いしました。一点ちょっとこの場で紹介しますけれども、JICAのアフガニスタンのマザリシャリフ事務所で十年、実質的な現地所長として勤務していた方が、八月十四日、タリバンが掌握する前日になって、何とか家族もろとも自力でイランに逃げて、在テヘランの日本大使館に助けを求めたのに、彼の雇用契約は既に二〇一八年で切れていたので外務省がビザ発給を拒んだ。

 NGO職員の話です。日本のNGOの現地職員で、二〇二一年八月の時点で有効な直接雇用を持っていた女性、直接雇用をされていた女性で、乳飲み子を持っていた職員、そういう職員に対して外務省は、NGOの場合は御本人しか退避させられないのでお子さんは置いてきてくださいと言い放ったと。

 もちろん伝聞なこともありますし、ただ、確実なところから聞いています。ここは法務委員会なので入管ですが、いろいろなところに聞くと、入管というよりも外務省の問題だと。外務省が、日本に来たアフガニスタンの協力者に対しても、いろいろな記事にも載っていますが、帰るように促したというような話も聞いています。

 何なんですかね、うちの国。今まで一生懸命日本政府のために様々な努力をしてきた人間が、いざ本当に身の危険を感じたときに、諸外国が永住権を前提に必死にその人たちの安全を確保しているときに、九十日間の短期ビザだと。しかも、民間の人間に対しては、ルールで家族を連れてこれないから子供を置いてきてというような発想で臨んでいたということは、もう本当にゆゆしき問題だと思います。

 外務省、言い訳があるなら、是非答弁してください。

西永政府参考人 お答え申し上げます。

 二〇二一年八月のアフガニスタンの情勢悪化後、政府といたしましては、事態が刻一刻と変化していく当時の状況下におきまして、法人及び大使館の現地職員等の退避のために可能な限りの対応を行ったと認識しておるところでございます。

 具体的には、八月十五日にカブールが陥落しまして、カブール国際空港の民間機が運航を停止して以降、関係国と連携し輸送の安全を確保した上で、迅速に自衛隊機の派遣を行い、最終的に、退避を希望する邦人一名及びアフガニスタン人十四名を自衛隊機で輸送することができたところでございます。

 また、自衛隊によるオペレーション終了後も政府としていろいろな外交努力を継続し、政府として把握する限り、我が国の支援を受けて八百名以上の日本関係のアフガニスタン人が本邦に到着したところでございます。この中には、大使館関係者、JICA関係者が含まれるところでございます。

 日本に入国したアフガン人のうち、例えば、大使館やJICA事務所の現地職員につきましては、それぞれ、日本政府及びJICAといたしまして、住居や食事、日本語教育の機会の提供等を行い、適切に支援を行ったところでございます。

 あと、今委員の方から御指摘がございましたけれども、一度日本に避難してきた大使館等の関係者について、本人の意に反してアフガニスタンに帰国させたという事実はございません。日本に退避した大使館現地職員及びその家族の一部につきましては、自ら希望してアフガニスタンに帰国した、そういう認識でございます。

寺田(学)委員 国会に呼んで答弁するとそうせざるを得ないのかもしれませんけれども、その一言一言自身がより一層日本政府に対する信頼を失っていると僕は思います。可能な限り、適切な、その結果自体が今ここの表にあるやつですよ。

 表の方に、アメリカ、ドイツ、英国、カナダ、オーストラリアとありますが、カナダの例ですけれども、カナダ政府は結構広範に要件を決め、永住権査証で入国をさせています。そのカナダですら、ひどいじゃないか、大失敗であった、反省をせねばならぬということで、既に、カナダの国会が設置した特別検証委員会が、二〇二二年六月に検証結果報告書を公表している。

 うちのざまを、まあ、何度も言うつもりはないですけれども、我々から見たらはるかに努力したカナダですら、大失敗であったとして、国会が第三者委員会をつくって調査報告書を出している。現地の方に聞くと、余りに退避がひど過ぎたからということで行政訴訟まで考えているという人たちが出ている。

 この認識の差をしっかりと埋めない限り、我々の日本というものに対する外国の方々の協力というものは日に日に落ちていくと私は思います。大臣、問題意識を持ってください。それだけです、質問は。

齋藤(健)国務大臣 実は、本件が起こったときに、私はまだ大臣になっていませんでしたので、人権外交を推進する議員連盟の超党派の共同代表として、実はこの問題を議論しておりまして、当時、外務省を呼んで、日本人だけじゃなくて、職員を自衛隊機で避難させろということを強く主張していた人間であります。

 その後、自衛隊機が出されましたので、よかったなと思っておりますが、問題意識は強く持っております。

寺田(学)委員 以上で終わります。

伊藤委員長 次に、谷川とむ君。

谷川(と)委員 自由民主党の谷川とむです。

 本日は、入管法等の一部を改正する法律案の質問の機会をいただきまして、ありがとうございます。

 質問に入る前に、改めて、ウィシュマ・サンダマリさんに謹んで哀悼の誠をささげますとともに、御遺族の皆様に心からお悔やみを申し上げます。

 今回、私も法務委員会理事として、約五時間のビデオを拝見をいたしました。ビデオを見る前、入管の職員が、もっと、ウィシュマさんに対する扱いというか、邪険にしているのではないかなというふうに正直思っていました。しかし、映像に映る入管職員の対応を見聞きすると、よく声をかけたり、又は、よく話を聞いたり、介助や身の回りの世話を献身的に行っていたと率直に私は感じました。(発言する者あり)

伊藤委員長 静かにしてください。

谷川(と)委員 自分たちにできることはできるだけ行っていたというふうに私は思いました。

 ただ、日に日に弱っていくウィシュマさんの姿を見ると、医療の専門家ではないもののもう少し違った対応や、また、入管施設の運用の在り方や医療体制の強化が図られていたらもう少し違った結果になっていたのではないかなというふうにも思いました。改めて、入管施設の運用の在り方や医療体制を強化しなければならないと強く感じた次第でございます。

 一方で、難民申請は何度もできて、収容が長期化している問題もあります。ウィシュマさんのような不幸な事案が二度と起こらないようにしなければならない、そのように私も強い思いで、今回の法改正に臨み、一日も早い成立に向け、本日質問に立たせていただいております。

 そこで、まず、入管施設の運用の在り方や医療体制の強化等について、既に対策が講じられていると思いますけれども、あらゆる事態をこれからも想定して、引き続き気を引き締めて取組を進めていただきたいというふうに強く要望しますが、齋藤大臣、どうでしょうか。

齋藤(健)国務大臣 御指摘の事案については、調査報告書に基づく組織、業務改革に取り組み、各官署の常勤医師の確保等の医療体制の強化、職員の意識改革などが実際に進んできているところであります。

 こうした組織、業務改革を更に進めるとともに、本法案で講じる監理措置や健康上の理由による仮放免、常勤医師の兼業要件の緩和等の措置を適正に運用することによって、何としても同様の事案を二度と起こさない、そういう覚悟で取り組んでいきたいと考えています。

 いかなる制度をつくりましても、その制度を運用する人間の意識が弱ければ制度の意味はありませんので、制度ができ上がった暁におきましても、その意識については、常に意識するようにそれこそ取り組んでいきたいと思っています。

谷川(と)委員 よろしくお願いいたします。

 続きまして、送還停止効の例外について質問させていただきます。

 現行法の下では、理由を問わず、何回不認定となっても難民認定申請が可能なために、我が国で重大な罪を犯した者も送還できない状況にあります。

 そこで、まず、現状、我が国で重大な罪を犯したにもかかわらず送還できない外国人の数はどうなっているのか。また、三年以上の実刑を受けた送還忌避者の具体的な事例を紹介いただきたいと思います。

西山政府参考人 お尋ねの数値につきましては、いずれも速報値で、令和四年末時点の送還忌避者四千二百三十三人中、刑事裁判で有罪判決を受けた者が千六百二十六人、うち、三年以上の実刑判決を受けた者は三百三十二人ございます。なお、その三百三十二人中、さらに、七年以上の実刑判決を受けた者は百一人おられます。この中には、殺人、強盗致傷、強姦致傷、覚醒剤の密輸といった前科のある者などが含まれております。

谷川(と)委員 ありがとうございます。

 我が国の治安を守り、安全、安心な社会を実現、維持することは、我が国で暮らす国民はもとより、ルールを守って暮らしていただいている外国人のためにも大切なことであります。やはり送還停止効の例外を設けることは重要であると私は考えます。

 しかし、これまでの質疑の中で、三年以上の実刑判決を受けた者とするのでは、社会にとって危険性のない者も対象となり、難民条約三十三条のノン・ルフールマン原則に反するといった指摘や、その者が社会に及ぼす危険性の程度と送還された場合の迫害のおそれなどを比較して判断すべきであるとか、また、法務大臣が社会にとって危険な存在となったかどうかを判断するべきであるとか、そうした指摘があったと思われますけれども、それらの指摘についての考え方をお示しください。

西山政府参考人 御指摘の難民条約第三十三条二において、難民であっても、特に重大な犯罪について有罪の判決が確定し締約国の社会にとって危険な存在となった者は、ノン・ルフールマン原則が適用されない旨規定されております。

 この、特に重大な犯罪について有罪の判決が確定し締約国の社会にとって危険な存在となった者とは、当該犯罪を犯した者を社会にとって危険な存在と言い得るような犯罪、すなわち、無期又は一年を超える懲役又は禁錮の実刑に処せられた者など、現行入管法第二十四条四号ト、チ、リに該当する者を念頭に置いているものと承知しております。

 したがいまして、三年以上の実刑に処せられた者は、難民条約に言う特に重大な犯罪について有罪の判決が確定し締約国の社会にとって危険な存在となった者に該当すると考えられ、これを送還したとしても難民条約上のノン・ルフールマン原則に反しないと考えています。

 本法案におきまして、送還停止効の例外対象を一年以上の実刑に処せられた者とすることも考えられましたが、迅速な送還と人権保障のバランスを図る観点からより慎重に決することとして、三年以上の実刑に処せられた者を送還停止効の例外といたしました。

 これは、三年以上の実刑に処せられた者は、刑法において、三年以上十年未満の拘禁刑の言渡しを受けた者と三年未満の拘禁刑の言渡しを受けた者とで刑の時効期間を区分しているなど、三年以上の実刑判決を受けた者は我が国の法制度上例外的な取扱いを行う基準と言い得ること、また、三年を超える実刑判決を受ける者は第一審における処理件数の約六%であることなどから、刑罰法令違反の中でも相当程度刑事責任が重く、強い反社会性を示す者であると言えるためでございます。

 このように対象範囲を限定しており、これに加えて社会への危険性の有無などの要件を追加する必要はないと考えております。

谷川(と)委員 ありがとうございます。

 三年以上の実刑判決を受けた者を送還停止効の例外とすることは、難民条約に違反するものでもなく、また、社会にとって危険性の高い類型を慎重に見極めた上で設けられたものであるということがよく理解をすることができました。

 ところで、特に三回目以降の難民認定申請者を念頭に、日本の難民認定の現状を踏まえると、送還停止効の例外を設けるべきではないとの指摘が質疑の中でもあったと思いますけれども、こうした日本の難民認定が適正に行われていないのではないかという指摘についてのお答えを下さい。

西山政府参考人 我が国においては、申請者ごとにその申請内容を審査した上で、難民条約の定義に基づき、難民と認定すべき者を適切に認定し、難民とは認定しない場合であっても、出身国の情勢に鑑みて、人道上、本邦での在留を認めるべき者については、在留を適切に認めて保護しております。

 これにより、一次審査において難民と認定した者と難民と認定しなかったものの人道的な配慮を理由に在留を認めた者の合計について、処分件数に占める割合を算出しますと、令和四年は約二九・八%となり、これは他のG7諸国と比較しても極端に低いものではないと考えております。

 そのほかにも、例えば、本国の情勢不安を理由に本邦での在留の継続を希望する方々については、在留資格の変更などによって在留を認めるなどして、保護すべき者については適切に保護しているところでございます。

谷川(と)委員 ありがとうございます。

 今の説明でも、日本では、昨年、難民や人道上の配慮によって庇護した比率では約三割を保護しており、これは、この間、参考人で来ていただきました滝澤参考人が配付してくださった資料を見れば、例えば、アメリカの庇護率が約二八・八%、フランスの庇護率が約二五・九%となっておりましたので、遜色がないことをよく理解しました。

 他方、昨年、三回目以降の難民認定申請により難民と認められたケースがあることや、ウガンダ人女性のケースを挙げて、日本の難民認定がそもそも間違っているのではないかという指摘もあるところですが、こうした指摘について御答弁をいただきたいと思います。

西山政府参考人 まず、お尋ねのウガンダ人女性の事例につきましては、先日、ウガンダ人女性に対する難民不認定処分を取り消す旨の判決が確定いたしましたが、訴訟の段階で原告から新たに提出された証拠が原告の供述の信用性を裏づけるものであるとして当該判決がなされたものと承知しております。よって、難民不認定処分時における資料に基づく判断自体が誤っていたとは考えてはおりません。

 次に、三回目以降の難民認定手続により難民と認定された者は令和三年までは存在しませんでしたが、三回目の申請で認定された者が令和四年中に三件ございます。なお、四回目以降の申請により認定された者はおりません。

 詳細は差し控えますが、これら令和四年の三件ですが、これらの事例はいずれも、前回までの難民不認定処分後に、本国情勢の変化その他の新たな事情が生じ、それらについての主張もなされたことも踏まえ、難民と認定されたものでございます。

 この点、本法案では、三回目以降の申請であっても、難民等の認定を行う相当の理由がある資料を提出すれば、なお送還は停止することとし、万が一にも保護すべき事情のある者を送還しない仕組みとしており、御指摘のような事案にも適切に対応できると考えております。

谷川(と)委員 ありがとうございます。

 ここまで、本法案における送還停止効の例外を中心に議論してきましたけれども、先日、滝澤参考人が述べられていたとおり、諸外国でも本法案と同様に送還停止効の例外を設けているのではないかというふうに思いますけれども、入管庁において把握しているところを答えていただきたいと思います。

西山政府参考人 まず、主要国においては、ほとんどの国において、難民認定申請について再申請に制限を設けている上、送還停止効の例外規定を設けているものと承知をいたしております。

 また、一定の犯罪歴を有する者などによる難民認定申請を制限する例もあると承知しております。例えば、アメリカでは、暴力犯罪や窃盗罪などで一年以上の刑に処せられた者、米国の安全にとって危険であるとみなす合理的な理由がある者は難民認定申請できない、フランスでは、三回目の難民認定申請については送還停止効を認めない旨の規定を設けているものと承知をいたしております。

谷川(と)委員 ありがとうございます。

 我が国では、現状も他の国と遜色ないレベルで難民又は人道上の配慮によって保護すべき者を保護しているし、送還停止効の例外を設けたとしても、保護しなければならない者は適切に保護できることもよく分かりました。安全、安心な社会の実現のためにも、本法案をしっかりと成立すべきであると考えます。

 最後に、本法案を成立するための大臣の最後の御決意をお伺いしたいと思います。

齋藤(健)国務大臣 本法案は、保護すべき者を確実に保護した上で、在留が認められない者については迅速に送還可能とする、長期収容を解消し、収容する場合であっても適正な処遇を実施する、こういう考え方の下に様々な方策を組み合わせ、パッケージで課題を一体的に解決し、外国人の人権を尊重しつつ、適正な出入国在留管理を実現するバランスの取れた制度にしようとするものであり、日本人と外国人が互いを尊重し、安全、安心に暮らせる共生社会を実現していくためにも、この法案による諸施策の実現は極めて重要であると考えておりまして、何としても成立させていただきたく、今後とも努力を尽くしていきたいと思っています。

谷川(と)委員 ありがとうございました。

 時間が来ましたので、質問を終わります。

伊藤委員長 次に、漆間譲司君。

漆間委員 日本維新の会の漆間と申します。

 我が日本維新の会は、令和三年の、今回の法案の前の改正案、入管法改正案について、採決が見送られたんですけれども、最後までその成立に向けて動いた政党として、やはり、その法案が令和三年に成立していればどうなっていたかということについて、この前も質問させていただいたんですけれども、引き続きこれについては質問させていただきたいと思います。

 前回質問したときは、二点、大きく、お答えをいただいたと思います。例えば、一点目は、ウクライナだったり紛争避難民の方を補完的保護対象という仕組みで迅速に、そのルールの下で受け入れることができたであろうということを一点目、言われておりました。もう一点目、言われていたお話が、千四百人、逃亡者がいたと。仮放免中の逃亡者が、コロナの影響もあって、千四百人逃亡者がいた。その千四百人の逃亡者も、こんなに多くはなかっただろうというお答えの、この二点をいただきました。

 その後に私が聞かせていただいたことは、その逃亡者とも関連するんですけれども、その法案が成立していれば、逃亡して犯罪が起こったかもしれない、これまで起こってきただろうその犯罪だったり、その犯罪による被害者が防げたのではないだろうかということをお聞きさせていただいたところ、それについては分からないということを答弁としていただきまして、その後、私の方も引き続き調べさせていただくということを申し上げさせていただきました。

 お調べしたところ、すぐに報道が見つかりました。四月の五日の報道によれば、入管庁が令和三年と令和四年中に逮捕された仮放免者の数を初めて集計し、令和三年は三百三十七人、令和四年は三百六十一人であったとされていると。

 その記事の中には、具体的に、仮放免中の外国人が逮捕、起訴された主な例が記事の中にございます。被害者の腹などを刃物で刺したとして逮捕、起訴。無免許運転で信号無視をして人身事故を起こした上、覚醒剤などを所持し、懲役三年二月の実刑判決。営利目的で覚醒剤の入った液体五キロを密輸したなどとして逮捕、起訴。自動車三台などを盗んだなどとして逮捕、起訴。

 こういった主な例が表示されておるんですけれども、この報道については法務省は認識しているのか、事実なのかということについてまずお伺いさせていただきたいと思います。どう把握しているかについてお伺いさせていただきたいと思います。

西山政府参考人 今委員から御紹介ありました報道に、逮捕された仮放免者数につきまして、令和三年は三百三十七人、令和四年は三百六十一人ということでございましたが、これは事実でございます。

 仮放免の許可を受けていた者が刑事事件を起こして逮捕される事案が相当数発生していることは把握してございまして、重く受け止めております。

漆間委員 今、私が幾つか例を申し上げましたけれども、これ以外にももっと重い犯罪、殺人など重大な犯罪などはあったのか、入管庁は把握しているのかお伺いいたします。

西山政府参考人 逮捕事案の詳細につきまして網羅的に把握しているものではございませんが、仮放免の許可を受けていた者が令和三年又は令和四年に逮捕された事案として、殺人未遂、覚醒剤の密輸、覚醒剤の密売、詐欺などがあったものと承知しております。

漆間委員 ちょっと、ごめんなさい、答弁をしっかり聞いていなかったんですけれども、こういう重大な犯罪は、結局、殺人だったりというのはなかったということですかね。

西山政府参考人 この令和三年又は令和四年に逮捕された事案として当方で把握しているものとしては、殺人未遂、覚醒剤の密輸、覚醒剤の密売、詐欺などでございます。

漆間委員 把握しているものとしてはその程度だったということでありますけれども、またちょっと同じ質問になってしまうんですけれども、令和三年に入管法改正案が成立していれば、先ほど私が申し上げた事例というのは防げたものだと思うか、起こるはずのなかった犯罪であるか、被害に遭うはずのなかった被害者がいたかということについて、改めてお聞きさせていただきます。

西山政府参考人 御指摘の令和三年に入管法改正法案が成立していれば防ぐことができたか否かにつきましては、仮定の質問でございますので、やはりなかなかお答えは困難でございますが、その上で、本法案において創設する監理措置制度においては、監理人が本人の生活状況等を把握しつつ指導監督を行い、逃亡、証拠隠滅又は不法就労活動を疑うに足りる相当の理由がある場合等の届出義務、監理措置条件等の遵守のために必要な場合に被監理者の生活状況等のうち主任審査官から求めのあった事項を報告する義務を履行することにより、入管当局が、監理人から必要な事項について届出、報告をいただき、平素から被監理者の生活状況、条件遵守状況を的確に把握し、監理に支障が生じた場合には、入管当局におきましても、監理人からの相談を受け、必要に応じて被監理者に適切な指導を行うことを想定しております。

 このような監理措置制度の適正な運用は、逃亡事案の発生や犯罪行為の抑止に資するものであると認識しております。

漆間委員 監理人制度で防げたのではなかろうかという御答弁だと解釈いたします。

 もう一つ令和三年に成立していればという話なんですけれども、当時の別の報道を見ますと、近々の選挙への影響も踏まえて、政治的要因から採決を見送ったという報道もございます。これは、本来であれば、採決していれば防げた犯罪であったり被害者がいたにもかかわらず、政治的要因から選挙のことも考えて見送ったというのは非常に問題なのかなと思うんですけれども、最後に、このことについて齋藤大臣に所感をお伺いいたします。

齋藤(健)国務大臣 御指摘の令和三年の通常国会に提出した旧法案につきましては、当時、衆議院法務委員会において審議中でありましたが、与野党協議において、会期中にこれ以上の審議を進めないとの合意があって、政府としてもこれを尊重したというふうに理解をしております。

漆間委員 与野党で合意したんだからもうしようがないだろうという大臣のお考えということでありますけれども、やはりこれは、被害に遭うはずのなかった被害者だったり、そういったものが存在するということもしっかり認識しながら、法案の採決については進めていくことが重要だと思います。

 次の質問に移らせていただきます。

 監理人制度についてお伺いさせていただきます。

 先ほども、監理人がいればもっと防げただろうというお話ではありますけれども、この監理人制度については、全然しっかりしていないじゃないかというお話がこれまでもたくさんあったところであります。その上で、議論の中でいろいろと、しっかりしていなくはない、これからいろいろとやっていきますよということで、答弁がどんどんどんどん発達といいますか、いい方向に向かっているのかなと思っているんですけれども、そこについて改めて確認させていただきたいと思います。

 今回の法改正では、第四十四条の三第八項で、出入国管理庁長官は、監理措置の適正な実施のため、監理人からの相談に応じ、必要な情報の提供、助言その他の援助を行うとされているが、具体的にはどのようなものを想定しているのか、改めてお伺いいたします。

西山政府参考人 入管庁長官による必要な情報の提供、助言その他の援助につきましては、地方官署に配置する監理措置担当職員を通じて、大使館、領事館の相談窓口の教示、入管当局が把握している地元の支援団体等の連絡先の教示、地方自治体においては、法令に従い、被退去強制者であっても提供可能な行政サービスを行っていると承知していますが、そのような点につきまして、被監理者の希望に応じ、居住地の自治体への情報提供などを行うことを想定しております。

漆間委員 その後、監理人の確保に関しまして、四月十九日の審議では、国選弁護人のような仕組みは想定していないという御答弁があった一方、鈴木委員からも、しっかりリストとかを作るべきじゃないかという話もあったんですけれども、それで、その後、監理人にふさわしい方の連絡先をストックしておく必要性についても答弁があって、これは答弁、発達したかな、いい方向に行ったのかなと思うんですけれども、四月十八日の審議では、支援団体や弁護士の方に引き受けていただかないと、これは本村委員の質問であったんですけれども、貧困ビジネスになるとの懸念も指摘されたところです。

 国において監理人を引き受けてもらえる候補者のリストを作るのかということについて、もう一度しっかりお伺いしたいと思います。その場合は、そういったことにならないようなしっかりとしたものを作る必要があるかと思うんですけれども、御見解、お伺いいたします。

西山政府参考人 監理措置に付される外国人が自ら監理人となる者を見つけられない場合に備え、入管庁においても、日頃から監理人にふさわしい方々をできるだけ多く把握しておくことが重要と考えております。そのためにも、支援団体や弁護士会など関係団体に対し、監理措置制度について丁寧に説明を尽くすとともに、連携の在り方等について協議を進めてまいりたいと考えているところです。

 他方、御指摘のような貧困ビジネスなどの被害を防ぐため、監理人の選定に当たっては、入管庁が把握し又は関係機関から入手する情報等により、監理人としての任務の遂行能力を厳格に審査し、適切な監理人を選定することが必要であると考えています。

 さらに、入管庁において、新たに監理措置担当職員を配置し、監理措置中の外国人から相談等があれば個別に適切に対応することとし、監理人に任務を継続させることが適当でない場合には、監理人の選定を取り消すなどの対応をすることになると考えています。

漆間委員 ちょっと次の質問もお答えいただいた形になっておると思うんですけれども、重要なことは、監理人を選ばれた方が、監理人がふさわしくないと思ったときにすぐ替えられるように、しっかりこれも制度として担保しておくことが必要かなと思うんです。

 先ほど、そのようにするという御答弁だったんですけれども、もう一度、じゃ、お伺いさせていただいていいですか。同じ答えになりますかね。

西山政府参考人 委員の今御指摘いただいた問題意識を踏まえてお答えを申し上げますと、先ほど申し上げたとおり、監理人としての任務の遂行能力を厳格に審査し、適切な監理人を選定することといたしますが、その上で、本法案においては、監理人が辞任することは可能ではございますが、被監理者から監理人の変更を申し出る手続は設けておりません。例えば、監理人の監理が厳しいからといって変更を申し出ることを許容することは相当でもないと考えております。

 もっとも、あくまで個別の事案における判断ではございますが、御指摘のような諸般の事情を総合的に考慮して、監理人の選定の取消し事由である、監理人が任務を遂行することが困難になった、あるいは、その他監理人にその任務を継続させることが相当でないに該当すると認めるときには、選定の取消しにより、適切に対応することも可能であると考えております。

漆間委員 監理人の立場よりも、監理人を雇う方の立場に立った運用でお願いしたいと思います。

 次の質問をさせていただきます。

 この問題の大きな本質は、中川正春委員もおっしゃっていただいたように、詐病の問題だと思っております、私も。詐病が疑われる被収容者の問題について、まさに中川正春委員の質疑では、被収容者の中には、健康に支障を来した人というところの基準があることを分かっていて、仮病を使ってでも仮放免を求めることを考えるということが、そういう人間が出てくるであろうということは思うんですということをおっしゃっていただいた上で、詐病の色眼鏡がかけられて、まずは詐病を疑った上で対応することが組織内で常習化していたのではないかとの御指摘もございました。

 入管庁としては、被収容者の体調不良の訴えが仮放免に向けたアピールや誇張と疑っていた職員もいたとの事実に対し、今回、使命と心得の策定や救急対応マニュアルの策定などを行い、職員の意識改革等を図っているとのことであり、職員に対してはそのような対応は不可欠と思われますけれども、それとともに、そもそも被収容者に詐病させないような対策も必要でないかと考えられますが、今回の法改正ではそのような規定は設けられているのか、また、今後、この詐病への対応は改善していくのかということについてお伺いしたいと思います。

西山政府参考人 まず、現行法下におきましても、入管庁においては、体調不良を訴える被収容者に対しては、訴える体調不良の内容や症状等に応じ、必要な診察、治療を適時適切に受けさせているところではございます。

 ただ、名古屋事案の調査報告書におきまして、真に医療的対応が必要な状況を見落とさないための職員への教育や意識の涵養が不足していたと指摘されたことへの反省を踏まえ、体調不良を訴える被収容者に対しては、診療、治療を適時適切に受けさせることを徹底しているところでございます。

 その上で、本法案におきましては、入国者収容所長等は、被収容者が負傷し、若しくは疾病にかかっているとき、又はこれらの疑いがあるとき等には、医師等による診療を行い、その他必要な医療上の措置を取るものとしており、被収容者からの診断の求めがあった場合、医療上の措置の要否を判断するに当たっては、医師の意見を踏まえるべきこととなります。

 本法案を踏まえた医療体制の強化及び運用に努めることにより、詐病が疑われる者も含め、継続的な経過の観察や治療を要する被収容者に対して、社会一般の医療等の水準に照らし適切な医療上の措置が講じられることとなると考えております。

漆間委員 いろいろと対応をしているという御答弁をいただきましたけれども。

 これまた、本当にこの法案、賛成されようと思っておられる方々も恐らく思っていることは、ここで法案を作って、ルール化をして、対策を取っても、また同じような、詐病だったり制度の濫用が起こって、また同じ問題が起こるのではないかというふうに思っている方も多くおるんじゃないかな、私はそう思います。

 詐病への本質的な対応をしていくためには、やはり、ひどい制度の濫用であったり、ひどいシミュレーションを行うような人には、ある程度のペナルティーをやっていくことも検討していくべきなのかなと思います。そうでないと、この詐病であったり制度の濫用の問題は解決しないのではないのかなと思うんですけれども、こちらは通告はありませんが、大臣は何か御所見、求めてもよろしいでしょうか。

齋藤(健)国務大臣 ウィシュマさんの件、それから、今回の法改正が実現しますと、医療体制が抜本的に強化をされることになりますので、その医療の中でそういったものが区別されていくということになるのではないかと思っています。

漆間委員 そういうシミュレーションだとかに対してのペナルティーは基本的には余り考えていないというようなお答えであったかと思います。

 そういったこともしていかないと、やはり、本当にイタチごっこのように、時間がたてば、また三年後、四年後、体質がそうなってしまうのかなというちょっと懸念を申し上げさせていただきました。

 次の質問に移らせていただきます。

 留学生の問題について、これも鈴木庸介委員からちょっと質問があったところなんですけれども、私からも質問させていただきたいと思います。

 留学の在留資格は、本来、日本の学校で学ぶための在留資格でありますが、資格外活動の許可により、週二十八時間は就労可能となっております。しかし、就労がメインとなってしまい、本来の目的である学業がおろそかになっている留学生もいます。

 先日の質疑においては、今国会に提出されている日本語学校の認定制度を定める法律案に関連し、入管庁より、日本語学校が就労目的の留学生を受け入れることのないよう実地検査や指導を行う旨の答弁があったところですけれども、入管庁におかれては、この後どのように厳格に対応していくのか、改めてお伺いさせていただきます。

西山政府参考人 留学生の資格外活動許可については、留学生本来の活動である学業を阻害しない範囲で、アルバイトを通じて留学中の学費及び生活費を補うことにより学業の遂行に資するという観点から、申請に基づき、資格外活動許可として条件を付して一定の範囲内で就労活動を認めていますところ、許可条件に違反していると疑われる者も少なからず存在いたします。

 このため、入管庁では、厚生労働省から提供される外国人雇用状況届出情報によって、雇用主、雇用開始時期等を把握し、これを基に、必要に応じて雇用主に稼働状況を照会するなどして、留学生の資格外活動の状況把握に努めております。

 その上で、条件違反が明確になったときは、学校を通じて本人を強く指導し、さらに、悪質な場合は資格外活動許可を取り消したり、在留期間の更新を認めないといった厳正な対処をしているところでございます。

 入管庁としましては、教育機関の理解と協力を得ながら、所属学生に対する指導を更に徹底するとともに、関係省庁と連携し、引き続き留学生の資格外活動の適正化に努めてまいりたいと考えております。

漆間委員 続いて、実態と大義の乖離についてお伺いしたいと思います。

 他方、令和四年度末現在の我が国の外国人労働者数は約百八十二万人で、そのうち、資格外活動の留学生が二十六万人弱となっております。日本経済が外国人留学生の労働力を当てにしている側面があるのではないかということについてお伺いさせていただきます。

 技能実習生の問題では、国際貢献という建前と人手不足解消のための低賃金を前提とした労働力確保となっているという実態の乖離が指摘されていますが、留学生についても、学業目的という名目と労働力確保という実態が乖離している面があるのではないかと思いますが、法務省の見解をお伺いいたします。

西山政府参考人 先ほども答弁いたしましたとおり、留学生の資格外活動許可については、留学生本来の活動である学業を阻害しない範囲で就労活動を認めていますところ、許可条件違反が疑われる者が少なからず存在いたします。したがって、留学生の資格外活動許可の趣旨を没却した対応が拡散しないよう、厳正に対処していく必要があると考えております。

 具体的には、先ほども答弁いたしましたように、留学生に対しては、厳しくは在留期間の更新を認めないなどの厳正対応がございますし、また、悪質な雇用主側に対する対処としては、資格外活動許可違反を助長しているものとして、不法就労助長罪での告発等も行うこととなります。

漆間委員 これは鈴木庸介委員もおっしゃっておったんですけれども、やはり、技能実習生にしても学生のビザにしても、人手不足の低賃金を前提とした海外からの労働力の受入れというのは、日本経済にいろいろな、生産性上昇の機会を奪い、将来にわたっての持続的な賃金上昇の機会を失わせていると思っております。これがひいては、私は、少子化の原因にもつながっているのではないのかと思います。若者がやはり結婚して家庭を持とうと思うためには、将来にわたっての持続的な賃金上昇の見込みがなければ、ないと思っております。それを阻害しているのが、こういう低賃金を前提とした海外からの労働力の移動だと思っております。やはりここは、低賃金を前提としない受入れでやっていくべきかなと思っております。これはまたの機会に聞かせていただきたいと思います。

 続きまして、別の質問に移らせていただきます。

 先週、私の法案質疑では、難民受入れについて、国際機関と様々にやり取りをしながら法務省は誠実に対応しているんだということを言っておりましたけれども、私からは、そういったことを法務省としてもっと積極的に広報していくべきではないかと提言させていただきました。

 ここまでも様々に議論があるのが、大きくはやはり、国家主権と、難民は広く広く国家主権を超えて受け入れていくべきだというノン・ルフールマン原則、このバランスのお話だと主に思っております。これは、今各国でもいろいろ模索されているところであります。まさにこういったことを、世界各国の人々が集まる、世界から最も注目を浴びる機会であります二〇二五年の大阪・関西万博で、オープンに、世界の人々に、目の前で分かるように議論していくことが本当に重要なのではないかと思います。

 万博にも、テーマウィークという、世界課題をしっかりみんなで話し合いましょうという仕組みもございます。この前の一般質疑では、門山副大臣から、このテーマウィークについて、外国人との共生社会に向けた取組だとか、そういったことも含めて、積極的に検討していくという答弁がありました。まさに今回の外国人との共生の問題、万博のテーマは「いのち輝く未来社会のデザイン」であります。まさに、この共生社会の実現を世界に分かるように、しっかりとテーマウィークで話し合っていくことが必要かと思います。

 このテーマウィークで話し合うことを目標に、しっかりと日本が国際的に認められる難民の受入れをやっているんだという、今の御答弁でもたくさん言われておりますけれども、この取組をしっかり加速させていくことにもなると思うんですけれども、大臣、いかがでしょうか。お伺いいたします。

齋藤(健)国務大臣 我が国における難民の受入れの在り方について対外的に発信することにより国内外に理解を求めていくことは重要であると認識しておりまして、適切に検討し、対応してまいりたいと考えています。

 御指摘のテーマウィークは、世界が半年間の長きにわたり同じ場所に集う万博の特性を生かし、地球的規模の課題の解決に向けて英知を持ち寄り、対話による解決策を探る取組であるというふうに承知をしています。

 大阪・関西万博のテーマウィークにおける具体的なテーマ等については、現在、関係府省庁等において検討中であると認識をしております。

 当省の取組をテーマウィークにおいて取り上げるべきか否かについては、そのテーマ等に関する検討結果を踏まえて、適切に判断をしていきたいと考えています。

漆間委員 そのテーマ、要は万博を所管している省庁の方針と併せて適切に検討ということでありますので、そこの所管している省庁は恐らく内閣府ですかね、どこかちょっと分からないですけれども、今ぱっと思い浮かばないですけれども、待ちではなく、法務省からも是非積極的にお願いいたしたいと思います。

 大臣、御答弁ありがとうございました。

 これにて私の質疑、終わらせていただきます。ありがとうございました。

伊藤委員長 次に、鈴木義弘君。

鈴木(義)委員 先週に引き続きまして、国民民主党の鈴木ですが、質問に入りたいと思います。

 通告いたしました質問の残りの部分、順次質問させていただきたいと思います。

 一つは、仮放免の現状をもう一度確認したいなということで、仮放免後に逃亡している送還忌避者が令和四年末現在で既に一千四百人ぐらいいらっしゃる。仮放免後に逃亡した時点で出入国管理法違反にならないのか、まず確認したいと思います。

西山政府参考人 現行法下では、仮放免後に逃亡しても出入国管理法違反にはなりません。

鈴木(義)委員 私が理解度が低いんだと思うんですけれども、オーバーステイしちゃっていて、入管に収容されている人が難民申請したいと、何らかの事情で仮放免しました、もうその時点でオーバーステイになっちゃっていると、出入国管理法違反にはなるんですよね。

 だから、難民認定はするんだけれども、オーバーステイしたんですよ、オーバーステイして、何らかの事情で、じゃ、あなたは仮放免でいいですよといって、施設の外に出て、そこから逃亡しちゃったという人は出入国管理法違反になるのかならないのかというお尋ねなんですけれども。

西山政府参考人 今の答弁の趣旨は、仮放免後に逃亡したこと、それ自体について違反を問うことにはなっていないということでございまして、仮放免中でありましても、不法残留罪で言う継続犯の不法残留という状態が続いておりますので、その意味では出入国管理法違反ではございます。

鈴木(義)委員 では、次にもう一つ。この一千四百人の逃亡者に対してどのような対応をしているのかということですね。

西山政府参考人 仮放免中に逃亡し、所在不明になった者については、仮放免を取り消し、各地方入管において手配を行っております。

 その上で、独自の調査や関係機関への各種事実関係の照会を行うなどして、その所在の把握に努め、対象者を摘発して再度収容するなどの対応を行っているところでございます。

鈴木(義)委員 そういう対応を関係省庁としていながら、この千四百人の方が今もどこかにいらっしゃるということなんでしょうね。

 では、こういった、逃亡した先で罪を犯していて、逮捕されれば、それで起訴されたりなんなりと次の手続になっていくと思うんですけれども、その対策は関係方面と連携を取ってやっていますよというだけじゃなくて、もう少し、一歩踏み込んだ具体的な方策をお持ちであればお示しいただきたいと思います。

西山政府参考人 逃亡した場合には、すぐに、まずは仮放免を取り消した上で摘発に努めるということで、関係機関と連携して発見に努めるということに入管庁としては尽きるのかなと思っております。

鈴木(義)委員 例えば、逃亡罪のところでもお尋ねしたんですけれども、飛行機に乗って堂々と逃げる人というのはなかなかこれは難しいんだと思うんですけれども、飛行場だとか国際港みたいなところに全部それは瞬時に行くということでよろしいんですか。

 あとは、幾つあるか、ちょっと私も数字は頭の中にないんですけれども、埼玉県でいえば所轄が三十八ぐらいたしかあったと思うんですけれども、そういった所轄のところにもすっと行くということでよろしいんですか。

西山政府参考人 基本的には、入管の関係各所に情報が共有されることになります。

鈴木(義)委員 だって、入管って全国に六か所しかないんでしょう。違うの。

 前にも質問で、地元で相談を受けた韓国籍の方がいて、オーバーステイして、職質されて、免許証を出してくださいといって初めて、免許証ありません。それで結局、入管に通報が行って、そのお二人は施設の方に連れていかれるわけですよね。だから、そういう情報を入管だけで持っていても、この千四百人の方は見つからないだろうということなんです。

 警察なら警察、飛行場だとかイミグレのところにきちっと情報が行っていなければ、どなたかどうか分からないでしょう。だから、前の質問のときにも、偽造のパスポートで日本に入ってきて、一回帰って、また入国するときに、指紋と顔認証と、実際名前とか出自が違っていたといったら、それを入れるんですかというお尋ねもしていると思うんですね。

 だから、前にも一般質疑のときに、本人確認というのはどこまでできるのかというふうにお尋ねしたと思うんです、入管の次長がいらっしゃらないときに。だから、そこにつながっていくんですけれども、答弁、今時間がかかるようだったら次の質問に移りますけれども、大丈夫ですか。

西山政府参考人 入管は、官署は、出張所を含めますと多数ございます。今ちょっと数を尋ねさせていたんですけれども、済みません、にわかに答えられなくて申し訳ございません。

 また、出入国をする海港、空港にはもちろん入管の施設がございますので、そういったところには、そういった仮放免の逃亡者についての情報というのは速やかに共有をされるということになりますので、その時点で必要な本人確認を行う中で、仮放免逃亡者というのを摘発するということにも、端緒にもなるということでございます。

鈴木(義)委員 では、例えの話ですね、例えの話は答えられないと言われるとそれで終わっちゃうんですけれども、仮放免者をどんどんどんどん出していったときに、これも過去の質問の中にも入れさせてもらったんですけれども、仮放免者をどんどん認めていった場合に、今千四百人逃亡しているという実数をいただいているのは入管庁の方からもらっているんですけれども、逃亡者も増加することが懸念されるんじゃないかと思うんですね、仮放免者をどんどん増やしていった場合に。そうなったときにどういう対応をしていくのか。同じ答弁になっちゃうかもしれませんけれども、確認したいと思います。

西山政府参考人 まず、千四百というふうに仮放免者が逃げた数が増えた背景として、仮放免をたくさん出してしまった、出してしまったという表現もあれですけれども、というものがございます。それはやはりコロナ禍の影響で、感染防止対策として収容所から放したという事情がございます。

 それで、現在のところ、感染状況を踏まえながらですけれども、収容に切り替えつつあるというふうなところは、一方で努力はしているところでございます。

 その上で、逃亡者につきましては、繰り返しになりますけれども、関係機関と協力して摘発に努めるということになると思います。

鈴木(義)委員 では、次の質問で、現行の身元保証制度の運用状況を見ると、多数の逃亡者を発生させている身元保証人という方が、これは入管の方から資料をもらった中で一つの例示で挙がっていると思うんですけれども、弁護士Aという人は二百八十人中八十人逃亡している、弁護士Bという人は百九十人中四十人逃亡している、弁護士Cという方は五十人中二十人逃亡と掲げられているんですね。

 これらの逃亡した者が罪を犯しても、身元保証人になっているこの弁護士は何の罪にも問われることはないのか、入管として弁護士会に処分を下すような要望をしているとかという事実があるのか、確認をしたいんですけれども。

西山政府参考人 前提として、現行法下における身元保証人は、仮放免取扱要領において請求による仮放免の場合に運用上求めているものでありまして、法令に基づくものではございません。

 弁護士会との協議会において仮放免の在り方等を議題とし、適正な身元保証を求めることはございますけれども、罪に問うことができないのはもとより、処分を求めることまではいたしておりません。

 他方、本法案では、監理人の監理の下で、逃亡等を防止しながら、収容せずに退去強制手続を進める監理措置を創設いたしております。これによりまして、監理人による監理の下でそのような逃亡は一定程度防げるものというふうに考えております。

鈴木(義)委員 では、確認したいんですけれども、次の質問で、身元保証制度の方々が法律の改正で法的な位置づけがされるのかといったら監理人制度を取り入れてと。そうしますと、この弁護士AさんとかBとかCとかという方は監理人として選定されるのかされないのかといったら、どうなんでしょうか。

西山政府参考人 個別に判断されることでございますので、今のA、B等がどうなるかというのはちょっとお答えは困難ではございますが、監理人は、監理人の責務を理解していること、任務遂行の能力を考慮して適当と認められることなどの要件を満たした者から選定することといたしております。なので、一般論で申し上げますと、例えば身元保証人であったときに多数の逃亡者を出しておられるような方はこのような能力があるとは認めないのが通常になるかと思います。

鈴木(義)委員 逃亡罪のときもそうでしたよね。たしか管理監督、ちょっと正式な名前は忘れたんですけれども、その制度はつくるんだけれども、実際、身元引受人制度はそのまま残しますというのが、たしか逃亡罪のときの制度だったかなというふうに思います。そうすると、同じように、監理人制度は法的な位置づけはするけれども、身元引受人の制度というのは残すんですか。

西山政府参考人 本法案の下で収容に代わる監理措置が制度として成りましたときにも、健康上の理由等による一時的解除としての仮放免は残ります。その仮放免の運用の在り方については更に検討を進めるべきところではございますけれども、今のところ、本法案における新たな仮放免につきまして、身元保証人を廃止するというところまでは議論はしておりません。

鈴木(義)委員 今までの制度は残しつつ、監理人制度も入れていくという形でよろしいんですかね。

 それと、あと、今日も質問があったんですけれども、難民審査参与員についての問題で、よく専門家という声が、すごく聞こえがいいんですけれども、例えばそこの国に住んだことがある、それは住むのも、半年でいいのか、三か月がいいのか、十年がいいのかというのはあるんですけれども、住んだことがないのに、その国の、難民申請した人の、二次審査というんですかね、それでできるのかなと思うんです。

 毎回毎回同じような質問をしているんですけれども、前任の方も、外務省と連携を取っているんですか、取っていないんですかと。だって、外務省と連携を取らないで、その国の状況をどうやって把握するのか、私、不思議でしようがないんですよね。必ず、どうやっているんですかと聞けば、関係機関と連携を取っていますと言うんですよ。じゃ、関係機関と連携するのは、日本の警察なんですか、国交省なんですか、文科省なんですかといったら、違うと思うんですよね。

 だから、どこで情報を入手して、それが適正な情報なのか、本人が供述していることが本当に正しいことを言っているのか、どこで合わせるのかというのを、最終的に、専門家というふうに言われる人がいらっしゃるんでしょうけれども、結局、その国の状況が分からなければ判断がつかないんじゃないかと思うんですけれども、その辺について、今の現行制度と、この法律が改正になったときにどう対応していこうとするのか、お尋ねしたいと思います。

西山政府参考人 お尋ねのその情報につきましてですけれども、入管庁におきましては、出身国情報や国際情勢に関する情報の収集及び分析を専門に行う職員を入管庁内に配置し、現在も、外務省、UNHCR等の関係機関と適切に連携しながら、最新の情報を積極的に収集しているところです。

 加えて、諸外国当局とも出身国情報に関する情報交換等を積極的に行い、我が国においても諸外国と同様に出身国情報が充実しているかなどを確認しているところです。

鈴木(義)委員 役所の場合は、どうしても異動というのが、二年とか三年で替わっていきますよね。出入国管理庁も同じだと思うんです。法務省に出向に来る人もいれば、出先の管理局に配属になる人もいると思うんですね。

 そうなってくると、やはり専門的といったときに、どこまでを専門的というのかがキーになってくるんじゃないかなと思うんです。外交もある程度分からなければいけないし、その国の内情も分からなくちゃいけないし、そうなってくると、やはり第三者機関みたいな意味での専門職というのをつくっていかざるを得ない時代に来ているかなと思うんですけれども、現状で結構ですから、それをどう今後検討していくのか、お尋ねしたいと思います。

西山政府参考人 まず、難民認定手続とその他の出入国在留管理行政上の様々な手続とは、上陸時に庇護を求める者への対応、難民認定申請中の者や難民と認定された者に係る在留管理、難民不認定が確定した者に係る迅速かつ確実な送還といった点で密接に関連していますことから、難民の認定に関する業務を出入国在留管理庁において行うことが適切であると考えております。

 他方、難民認定に関しては、難民審査参与員を置いているところですけれども、これは、日弁連やUNHCR等から幅広く推薦を受けるなどしつつ、事実認定の経験豊富な法曹実務家、地域情勢や国際問題に明るい元外交官や国連関係機関勤務経験者、それから、国際法、外国法、行政法の分野の法律専門家等の中から選任をしているところでございまして、難民審査参与員は難民審査に関して的確な意見を述べるための資質を十分に備えているものと考えております。

 また、難民審査参与員は、このように、難民認定手続に必要な専門的知見を有する専門家が三人一組で審理を行い、法務大臣は必ずその意見を聞く仕組みとなっており、難民認定に必要な専門家の意見が手続に反映されているものと認識をいたしております。

 したがいまして、このように、入管庁においては、制度と運用の両面から、難民認定手続の適正性を確保していると考えておりまして、第三者機関の設置について検討することは現在のところ考えてございません。

鈴木(義)委員 これは有事と平時で取扱いが違うと思うんですけれども、例えば、日本に来てから難民申請をして審議してもらうというのも一つのやり方なんでしょう。今、それでやっています。でも、先ほどの質問の中で、外務省の大使館だとか領事館に行ってビザの申請をする人がいるわけですね。その時点で、私は難民として申請したいんだというのを、届出を出すような制度があってしかるべきだと思うんです。

 日本に来たから、難民申請したら帰せないんだという今の現行制度、だから法律を変えるというんだけれども、そもそもビザを申請するときに難民として申請したいんだというのを受け付けたって、その人は難民としては日本は入れませんよときちっとやはり言ってもいいんじゃないかと思うんです。どうぞ来て、来たら難民申請しました、だから保護をしてください、何してください。そうじゃなくて、これは有事のときと平時のときと違っちゃうんですけれども、平時のときだったらなおさら、迫害を受けているんだったら大使館なり領事館できちっと受け付けるようなことを、連携するというのはそういうことだと思うんですよ。

 出入国管理庁は、日本に来て、在留というより上陸許可を出すか出さないかなんだけれども、それ以前に、その国にビザ申請に来たときに、うちはこういう理由じゃないと難民申請は受けられませんよというのを、きちっと情報を相手方に伝えてやるというのも一つの方法じゃないかと思うんですけれども、そういう意味での連携というのは私は必要じゃないかと思うんですけれども、いかがでしょうか。

西山政府参考人 委員の御指摘はごもっともなところがあると思います。現に、ウクライナ避難民を受け入れる際には、政府全体でスキームを考えて、それこそ外務省、それから入管庁、ほかに様々に、受け入れる機関も含めて関係省庁で連携をして、受け入れる、ポーランドのところから日本国政府として関わってきた、こういう実績がございますし、私が知る限りでは、このようなスキームを取り組んだというのは初めてではなかろうかと思います。

 こういった経験を踏まえまして、委員の御指摘も踏まえて、今後、在り方については政府全体で検討していくべきことかなというふうに考えております。

鈴木(義)委員 以上で終わります。

伊藤委員長 次に、本村伸子君。

本村委員 日本共産党の本村伸子でございます。どうぞよろしくお願いを申し上げます。

 今回の法案は、難民認定がほかの先進国と比べても狭過ぎる問題を改善しないまま、命や人権、尊厳が脅かされる方々も含め、送還は促進するという非人道的な内容になっているというふうに思います。

 昨日も国会に子供たちが来られました。二歳の子供さんでさえ、特別在留資格はなく、医療が受けられない現状がございます。この現状を変えていくのか、そのことさえも明確ではない、こういう問題を抱えております。

 今日は、難民審査が公正に行われているかという点についてお伺いをしたいというふうに思います。

 まずお伺いをしたいんですけれども、先ほども御議論ありましたように、難民審査参与員のお一人当たりの事件件数、四月二十一日の参考人質疑の中で参考人が述べられましたように、年間五十件程度だということで、そういう理解でよろしいかという点をまず確認をさせていただきたいと思います。

西山政府参考人 まず、参考人質疑におきまして、安冨参考人は年間に五十件から百件にいかない程度、橋本参考人もほぼ同じである旨述べられていたものと承知をいたしております。

 その上で、難民審査参与員の一人当たりの年間の事件処理件数は各難民審査参与員によって大きく異なっており、これについて一概にお答えすることは困難でございます。

本村委員 それで、四月十四日の朝日新聞の方に、難民審査参与員の柳瀬房子さんの見解として、難民認定すべきだとの意見書が出せたのは約四千件のうち六件にとどまるという記事が載っておりました。

 この参与員の方は、二〇二一年四月の段階で、この法務委員会で参考人として意見を述べられた際に、十七年間の難民審査参与員としての経験で二千件以上扱ってきた、二千件扱ってきたと。二〇二二年六月になりますと、ジャパン・フォワードというものに書かれているんですけれども、二〇二二年六月には、三千人以上のケースを審査してきたというふうにおっしゃっております。そして、先ほど御紹介をいたしました、二〇二三年四月十四日の朝日新聞では四千件ということになっておりますけれども、そうしますと、大体年間一千件審査をしているということになってまいります。

 先ほど、二十一日の参考人の方々は五十から百件だというふうにおっしゃったのに、なぜ柳瀬さんは年間千件もやっているということになっているんでしょうか。

西山政府参考人 まず、前提として、特定の難民審査参与員の年間の事件処理件数について集計していないので、把握はしておりません。

 その上で、一般論として申し上げますと、難民審査参与員は、あらかじめ定められた三人の難民審査参与員によって構成された常設班に所属していますところ、他の常設班への応援や、口頭意見陳述を実施しないことが見込まれる事件等、迅速な審理が可能かつ相当な事件を重点的に配分している臨時班にかけ持ちで入ることに御協力いただける場合には、書面による審査を行うことが多くなることもあり、ほかの難民審査参与員よりも担当する事件処理件数が多くなることがあります。

本村委員 先ほどインタビューのお話もされたんですけれども、年間千件の難民審査ではインタビューもちゃんとやっているんでしょうか。

西山政府参考人 審査に要する期間につきましては、そもそも申請者の主張内容、提出した資料の内容、出身国の情報が充実しているかどうかなどによって大きく異なるものであり、年間の事件処理件数の多寡をもって審理が適切に行われているかどうかを判断するのは適切でないと考えております。

本村委員 それで、安冨参考人、橋本参考人は年間五十件なのに、柳瀬さんは年間千件審査している。

 一方で、難民審査参与員なのに一件も回ってこないという参考人の方もいらっしゃいます。ある参与員の方は、私は最初の二年間は一件もなかった、その理由としては、空いている班がないというふうに言われたと。別の方は少なくとも二年間は一度も連絡はなかったというふうにおっしゃっていますけれども、そういうことがあるんでしょうか。

西山政府参考人 個々の事例についてつまびらかではございませんが、件数に参与員の中で差があるということにつきましては、難民審査参与員の中でも、ほかの班における審理の応援に入ることに協力をしていただける方などは週に複数回の審理を行うこともありますし、審査請求人との対面審理を実施しても月に十件以上の処理をされている場合もございます。

 そういう意味で処理件数、事件件数が多くなることもあるという反面、大学教授の難民審査参与員が、大学の講義等の都合など、難民審査参与員としての職務以外の職務の都合、それから、御本人の体調や御家族、御家庭などの事情、異なる専門分野の難民審査参与員によって班が構成されるよう配慮するなどの事情から、審理をすることができる日数が少なくなり、事件件数、処理件数が少ない難民審査参与員もいるものと承知しております。

本村委員 先ほど申し上げましたように、空いている班がないと言われて一件も回ってこなかったという方がいるわけです。

 参与員の方にお話をお聞きをいたしますと、入管庁には、どの班にどの案件が振られるかの裁量と、臨時要員の誰に声をかけるかの裁量があるというふうにおっしゃっておりました。やはり、こういう点で恣意的な運用があるということになるんじゃないですか。

西山政府参考人 どのような班に配置をするか等につきましては、もとより中立公正に御判断をいただくということ、それから、自由に意見交換をして心証を形成する環境を確保するという観点から配慮しながらやっているところでございますが、詳細についてはお答えを差し控えさせていただきます。

本村委員 恣意的な運用がないとは言わないわけですね。

 難民審査は、申請者にとってフェアでなければならないというふうに思います。それが今実現できているかということが疑われているわけです。

 同じく朝日新聞の四月十四日付では、全国難民弁護団連絡会議の代表の渡辺彰悟弁護士が、何回も難民申請するのは、濫用ではなく、適正な認定実務がなされていないからだというふうにおっしゃっておりました。この点も重く受け止めていただきたいというふうに思います。

 難民審査に関わって具体的な問題で再びお伺いをしたいというふうに思うんですけれども、裁判で難民と認められたウガンダの同性愛の方は、意見陳述の機会もなく、国の難民認定審査では難民と認められなかったということですけれども、なぜ、意見陳述、インタビューを行わなかったのか、お示しをいただきたいというふうに思います。

 また、インタビューは、するかどうかは、申請からいつの段階で誰が判断するのか、その点もお示しをいただきたいと思います。

西山政府参考人 個別の事案の詳細につきましては、答弁を差し控えさせていただきます。

 その上で、審査請求手続において口頭意見陳述の申立てがあった場合、口頭意見陳述の機会を与えることが適当か否かは、当該事件を審理する難民審査参与員が判断しております。

 また、かかる判断の時期について、法令上特段の規定はございませんで、難民審査参与員に委ねられているところでございます。

本村委員 インタビュー、意見陳述を希望したのに、三人の参与員の総意で意見陳述もなされなかったということだというふうに思います。その結果、国の審査ではウガンダの方は難民として認められず、難民審査を私はたがえてしまったというふうに考えております。

 その参与員の三人の方は誰だったのか、難民申請された方には伝えられないのか、ブラックボックスなのか、その点、お示しをいただきたいと思います。

西山政府参考人 お尋ねの点は明らかにされないこととなっております。

本村委員 この意見陳述でさえ、フェアにやられているのかという点が疑われるわけでございます。

 インタビューの、意見陳述の機会を放棄していないにもかかわらず実施されなかった人数についてお示しをいただきたいと思います。

西山政府参考人 令和四年に不服申立てに対して裁決をした人数は四千七百四十人でありますところ、そのうち、口頭意見陳述の機会を放棄していないにもかかわらず口頭意見陳述が実施されなかった人数は千二百九十八人でございます。

本村委員 意見陳述、インタビューを希望していたのにもかかわらず、千二百九十八人の方がインタビューもされなかったということだというふうに思います。その国別の人数をお示しいただきたいと思います。

 そして、もう一つなんですけれども、行政不服審査法の、そのインタビューしなかった理由なんですけれども、難民となる事由がないからなのか、その他の事情からなのか、お示しも、その点いただきたいと思います。

西山政府参考人 まず、お尋ねの国籍別の人数につきましては、統計を取っておらず、お答えをすることが困難であります。

 また、意見陳述を実施しなかった理由については、難民審査参与員の御判断でございます。その内容につきましてはお答えを差し控えさせていただきたいと思います。

本村委員 この意見陳述でさえ、フェアにやられているかどうかということが今分からないわけです。ですから、今申し上げました国別の人数、あるいはどういう理由でインタビューされなかったのか、この点を調べて国会に提出をしていただきたいと思います。

西山政府参考人 先ほど申し上げましたように、国籍別の人数については、現状、統計を取っておりませんので、お出しするものは手元にございません。

 ただ、これまでと同様、国会にお求めがあれば真摯に対応はしたいと存じます。

本村委員 委員長にお願い申し上げます。

 今、要求をいたしました資料を国会に提出をするようにお取り計らいをお願いを申し上げます。

伊藤委員長 理事会で協議します。

本村委員 お願いいたします。

 難民不認定に対する異議申立て制度において認められた口頭意見陳述権を、出入国管理政策懇談会でも、専門的かつ多様な知見に基づく意見を踏まえず奪う法改定があったときに、日弁連の皆様も、やはりこの点は撤回するべきだというふうに意見を述べておられました。実際に、この意見を陳述する権利が奪われているわけです。そして、難民認定が間違う事態にもなっているというふうに思っております。

 このインタビュー、意見陳述というものは、希望があれば必ず行うというふうなことが必要だと思いますけれども、大臣、いかがでしょうか。

齋藤(健)国務大臣 先ほど政府参考人も申し上げましたけれども、審査請求手続において口頭意見陳述の申立てがあった場合、当該事件を審理する難民審査参与員が口頭意見陳述の機会を与えることが適当か否かを判断するという制度になっている。そして、法令上、申立人の主張に係る事実が仮に真実であったとしても、何らの難民となる事由を包含していないことその他の事情により当該意見を述べる機会を与えることが適当でないと認められる場合等には口頭意見陳述の機会を与えないことができるもの、こういう制度になっているわけであります。

 したがって、口頭意見陳述の希望があったとしても、難民審査参与員が法令上の要件に該当するような場合に口頭意見陳述の機会を与えないと判断することがあり得る、そういったことを否定する理由はないものと考えています。

本村委員 そういうふうにおっしゃるんですけれども、では、ウガンダの同性愛の方の意見陳述が行われなかった理由など、参与員の方々の対応が適切だったのか、ちゃんと検証していただきたいと思いますけれども、大臣、お願いします。

齋藤(健)国務大臣 繰り返しになりますけれども、口頭意見陳述の申立てがあった場合に機会を与えるかどうか、適当か否かは参与員が判断をしている。

 それから、ウガンダの件につきましては、これも何回も答弁させていただいておりますが、不認定の判断をした後に、新たな事情によって、裁判によって認定が認められたということでありますのを申し添えたいと思います。

本村委員 インタビューに関する参与員の判断について適切だったかどうかを検証していただきたいと申し上げているんですけれども、大臣。

齋藤(健)国務大臣 私ども、明確に不適切であったというようなことがあるならば検証しますけれども、そのような状態にはないというふうに考えております。

本村委員 御本人が希望をされているにもかかわらず意見陳述が行われていない、そのこと自体が不適切だと私は考えております。やはり、保護すべき人を保護していない、保護できていないということですので、改善することを日本政府に求めたいというふうに思います。

 それで、先週の金曜日の質疑なんですけれども、齋藤大臣に、国連人権理事会特別報告者及び作業部会の方々の共同書簡について紹介をいたしました。

 今日は資料も、先日は、その日に日本語訳も出ましたので出すことができませんでしたけれども、今日は日本語訳の資料を出させていただいております。

 まず外務省に確認ですけれども、特別報告者の手続は、国連人権理事会で二〇〇七年六月に承認された行動綱領に基づいたものと認識をしていますが、間違いがないかという点。そして、そのときに、日本は理事会の理事国としての、この行動綱領を承認していたというふうに認識しておりますけれども、外務省、お答えをいただきたいと思います。

石月政府参考人 お答え申し上げます。

 特別報告者は、人権理事会の決議に基づき任命された、独立した専門家でございます。

 行動規範、コード・オブ・コンダクトについてお尋ねがございましたが、二〇〇七年六月の第五回人権理事会においてコンセンサス採択された決議に附属する特別手続マンデートホルダーのための行動規範、これは、特別報告者等が活動する際の基準の一つであると認識しております。また、日本は、同決議に、コンセンサス採択に参加してございます。

 いずれにせよ、特別報告者は、個人の資格で任命された独立の専門家でございます。その見解は、国連や、その機関である人権理事会の見解ではなく、我が国に対して法的拘束力を有するものではないと認識しております。

本村委員 特別報告者について、日本政府は、二〇一六年の人権理事会の理事国選挙のときに、その役割を重視し、特別報告者との有意義かつ建設的な対話の実現のため、今後もしっかりと協力していくと宣言をし、二〇一九年にも繰り返していたとの証言がございますけれども、これは事実でしょうか。

石月政府参考人 お答え申し上げます。

 我が国は、二〇一六年国連人権理事会理事国選挙に立候補した際、国連人権高等弁務官事務所及び特別手続との有意義かつ建設的な対話を重視している旨表明いたしました。また、二〇一九年、同選挙に立候補した際にも同様の見解を表明しております。

 これまでも、我が国としては、特別報告者を含む特別手続による報告が、客観的で正確な情報に基づき正しい理解の下になされるよう協力してきており、引き続き、関係省庁と連携して、特別報告者等に対して、日本政府の立場、考えをしっかり説明していく考えでございます。

本村委員 先日も、大臣は、抗議をするというようなお話がありましたけれども、建設的な対話こそ必要なのだというふうに思います。

 二〇二一年にも、この入管法に関しまして、国連の特別報告者の皆様などから共同書簡が送られていますけれども、今回とどのように違いがあるのかという点、これも外務省にお伺いしたいと思います。

石月政府参考人 お答え申し上げます。

 二〇二一年に、入管法改正案に関して、特別報告者等が共同書簡を発出したと承知しております。

 当該書簡において、特別報告者等は、監理措置を見直すべきこと、収容命令書の発付に関し事前の司法による審査が法律で規定されていないこと、収容上限が法律で規定されていないこと、児童の収容を法律で禁止していないこと、送還停止効の制限とノン・ルフールマン原則との関係性等について指摘していると承知しております。

 今般発出された共同書簡においても類似の指摘がなされているものと承知しております。

本村委員 今回の書簡というのは、突然出されたものではなく、前回、二〇二一年も出されているもので、そこに誠実に、建設的に対話をしてきたか、人権の立場から対話をしてきたかということが日本政府に求められているというふうに思います。

 今回の共同書簡と同様な指摘がされた国連機関の勧告なども御紹介をいただきたいと思います。

石月政府参考人 お答え申し上げます。

 これまで、入管法に関しては様々な指摘があったところですけれども、例えば二〇二〇年以降について申し上げれば、二〇二二年十一月に、自由権規約委員会から、我が国が提出した政府報告に対する総括所見が発出されているところでございます。

本村委員 大臣は、一方的に見解を公表されたことについては抗議すると答弁をされましたけれども、突然の指摘ではないわけです。勧告でも再三いろいろ言われてきた。国連の人権に関わる機関から再三指摘されてきたことが共同書簡に書いてあります。

 二〇二一年の共同書簡でも情報提供、対話を求められていたというふうに思いますけれども、どのような情報提供、対話をしたのか、お示しをいただきたいと思います。

西山政府参考人 令和三年の通常国会に提出した入管法改正法案についても、日本政府の意見を聞くことなく、特別報告者から、令和三年三月三十一日付で、懸念を表明する共同書簡が送付されたと承知しています。これに対し、我が国は、同年四月六日、特別報告者らが一方的に見解を公表したことなどについて申入れを行いました。

 また、我が国は、同年六月十七日、日本人と外国人が互いを尊重し、ルールを守って、安心して安全に暮らせる共生社会の実現を目指しており、そのため、改正法案が必要である旨の回答を行いました。

 さらに、我が国は、同年九月二十七日、ジュネーブの国連人権高等弁務官事務所に対し、意見表明のやり方について意見を述べるとともに、入管制度の問題や在り方について説明を行い、意見交換を行いました。

本村委員 二〇二一年の回答で、日本政府は、今日、資料の二で、一番最後のページにお示しをしているんですけれども、日本政府の回答でございます。

 その一番下の部分に、「国際社会や市民団体等とも対話をしつつ、不断の検討を行い、現行制度における運用の改善を含めて適切に対応してまいりたい。」と回答していますけれども、どのような対話、検討、運用の改善を行ったのか。とりわけ市民団体などについてお示しをいただきたいと思います。これは大臣に通告をしております。

齋藤(健)国務大臣 まず、前回書簡をいただいて以降、我々、一方的に見解を公表したことについて申入れを行ったり、今次長が答弁したような様々なことを行ってきたわけであるにもかかわらず、今回、また一方的に書簡が公表されたということにつきましては、建設的なやり取りをする上でなかなか難しいものがあるんじゃないかと正直思います。

 ですから抗議をし、今後、建設的なやり取りができればいいなという思いで抗議をしていくということであります。

 それから、御指摘の件でありますが、我が国は、締結している人権諸条約の義務に従って、数年ごとに各種人権条約委員会に条約の実施報告を提出し、その意見を受け取るなどの対話のプロセスを行っています。

 この対話のプロセスを通じて、我が国は、国内の法制度や取組について、合理的な理由とともに説明し、条約の義務を誠実に履行していることを示してきています。

 例えば、令和四年十月、自由権規約委員会の対日審査において我が国の考え方も説明をしております。

 また、入管庁は、前回法案提出以降、UNHCR本部及び駐日事務所と複数回意見交換を行って、我が国の法制度の在り方や入管庁の考え方を説明してきているということでございます。

本村委員 日本政府が受け入れてきた国連のシステムの下に、こうした共同書簡が出されておりますので、誠実に対応していただきたいというふうに思っております。

 そして、最後にお伺いをしたいんですけれども、昨日も、仮放免の子供たちが国会議員に生の声を届けてくれました。大臣にも是非、直接、仮放免の子供たち、その声を聞いてほしい、生の声を聞いてほしいというふうに痛切に思いました。是非そういう機会を持っていただけないかという点、そして、さんざん指摘をされてきた子供の権利の問題、この点、どう改善するつもりなのかという点、お示しをいただきたいと思います。

齋藤(健)国務大臣 四月の二十四日ですか、院内集会が開催されて、仮放免中の子供たちが参加したことは承知をしております。

 私、この問題は、従来からずっと答弁をさせてきていただいておりますので、真剣に取り組んでいきたいというふうに思っていますが、子供たちに面会するかどうかは、私のスケジュールもありますので、ここで確答することはちょっと控えたいと思います。

本村委員 先回も指摘をさせていただきました子供の権利に関わる改善はどうするのか、在留資格の点、お示しをいただきたいと思います。

齋藤(健)国務大臣 別の委員の御質問にも答弁をさせていただいておりますが、私自身、これは非常に重要な問題だと認識しておりますので、しっかり検討していきたいと考えています。

本村委員 今日は、この子供たちの問題も含めて、情報収集の能力も低いのではないかという点も先日の参考人質疑で指摘をされました。滝澤参考人は、情報収集能力、つまり、この人が国に帰った場合にどういう迫害の蓋然性があるかということを把握するための客観的なデータが弱いんだろうというふうに思うんですよと。これはウガンダの方の例で私は申し上げたんですけれども。

 今、入管庁にもこの出身国情報担当官が三人か四人いると聞いていますけれども、もっと強化するべきであろうと思いますと。また、難民認定室は入国管理課の下にあるんですよ、これは見た目も悪いわけでありまして、難民認定室を難民政策課に格上げして、その中に出身国情報のユニットをつくるような形も考えられるんじゃないかという点。

 もちろん私どもも第三者の難民認定の仕組みが必要だというふうに思っておりますけれども、こういう御指摘について真摯に受け止めていくべきだというふうに思いますけれども、大臣、いかがでしょうか。

齋藤(健)国務大臣 命からがら出身国から逃れてきた申請者が自身の申立てを裏づける資料を提出できるとは限らないわけでありまして、難民認定手続においては、様々な客観的な情報を活用しながら審査を行うということが重要になってくるわけであります。

 そこで、入管庁では、難民認定審査の際に参照するため、政府機関の報告ですとか、出身国に関する報道ですとか、国連難民高等弁務官事務所が保有する情報ですとか、申請者の出身国情報や国際情勢に関する情報を幅広く収集をしてきています。

 入管庁においては、出身国情報の収集等を専従して行う係が設置をされておりまして、同係において収集した情報は地方局の難民調査官に対しても随時提供され、難民認定審査の実務において活用されているほか、地方局の各難民調査官においても、本庁の専従職員と連携しながら、随時事案に即した最新の出身国情報の収集に努めておるところであります。

 委員御指摘のとおり、出身国情報の収集強化に基づいた適正な難民認定の実現のためには、難民調査官の人的体制の整備は重要だというふうに認識をしています。そのため、これまでも、適正な人的体制の整備に努めるとともに、業務状況に応じて機動的な応援派遣、こういったことなど、適切な人員配置を行っているところであります。

 さらに、難民調査官の能力向上のために、UNHCR、外務省、国際情勢に関する専門的知識を有する大学教授等に御協力いただくなどして、難民調査官等に対する研修を実施しているところ。更に加えて、難民調査官に対し、難民認定手続における事実認定の留意事項について共有し、そのフォローアップを行うといった的確な事実認定に関する研修を行うなど、審査の質の更なる向上に努めていきたいと考えています。

 本件の判断は非常に重要な判断だと思っていますので、万全の体制を組んでいきたいというふうに考えています。

伊藤委員長 本村伸子君、時刻が参りましたので。

本村委員 はい。

 これまで出身国情報の収集能力が低かったという点、やはり適正な認定ができる仕組みに変えるべきだということを求めて、質問を終わらせていただきます。

伊藤委員長 次回は、公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。

    午後五時五分散会


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