衆議院

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第14号 令和5年4月28日(金曜日)

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令和五年四月二十八日(金曜日)

    午後一時七分開議

 出席委員

   委員長 伊藤 忠彦君

   理事 谷川 とむ君 理事 藤原  崇君

   理事 牧原 秀樹君 理事 宮崎 政久君

   理事 鎌田さゆり君 理事 寺田  学君

   理事 沢田  良君 理事 大口 善徳君

      東  国幹君    五十嵐 清君

      石井  拓君    石橋林太郎君

      英利アルフィヤ君    奥野 信亮君

      加藤 竜祥君    熊田 裕通君

      鈴木 馨祐君    田所 嘉徳君

      高見 康裕君    鳩山 二郎君

      平口  洋君    深澤 陽一君

      山口  晋君    山下 貴司君

      鈴木 庸介君    野間  健君

      山田 勝彦君    吉田はるみ君

      米山 隆一君    阿部 弘樹君

      漆間 譲司君    日下 正喜君

      平林  晃君    鈴木 義弘君

      本村 伸子君

    …………………………………

   法務大臣         齋藤  健君

   法務大臣政務官      高見 康裕君

   政府参考人

   (出入国在留管理庁次長) 西山 卓爾君

   政府参考人

   (外務省大臣官房参事官) 林   誠君

   政府参考人

   (外務省大臣官房参事官) 西永 知史君

   法務委員会専門員     白川 弘基君

    ―――――――――――――

委員の異動

四月二十八日

 辞任         補欠選任

  岩田 和親君     石井  拓君

  中川 正春君     野間  健君

同日

 辞任         補欠選任

  石井  拓君     山口  晋君

  野間  健君     中川 正春君

同日

 辞任         補欠選任

  山口  晋君     岩田 和親君

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 政府参考人出頭要求に関する件

 出入国管理及び難民認定法及び日本国との平和条約に基づき日本の国籍を離脱した者等の出入国管理に関する特例法の一部を改正する法律案(内閣提出第四八号)


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     ――――◇―――――

伊藤委員長 これより会議を開きます。

 内閣提出、出入国管理及び難民認定法及び日本国との平和条約に基づき日本の国籍を離脱した者等の出入国管理に関する特例法の一部を改正する法律案を議題といたします。

 この際、本案に対し、宮崎政久君外三名から、自由民主党・無所属の会、日本維新の会、公明党及び国民民主党・無所属クラブの共同提案による修正案が提出されております。

 提出者から趣旨の説明を聴取いたします。沢田良君。

    ―――――――――――――

 出入国管理及び難民認定法及び日本国との平和条約に基づき日本の国籍を離脱した者等の出入国管理に関する特例法の一部を改正する法律案に対する修正案

    〔本号末尾に掲載〕

    ―――――――――――――

沢田委員 ただいま議題となりました修正案につきまして、提出者を代表して、その趣旨を御説明申し上げます。

 第一に、難民調査官による事実の調査について、難民調査官は、難民の認定又は補完的保護対象者の認定の申請をした外国人に対し質問をするに当たっては、特に、その心身の状況、国籍又は市民権の属する国において置かれていた環境その他の状況に応じ、適切な配慮をするものとしております。

 第二に、難民の認定等を適正に行うための措置として、まず、法務大臣は、難民の認定及び補完的保護対象者の認定を専門的知識に基づき適正に行うため、国際情勢に関する情報の収集を行うとともに、難民調査官の育成に努めるものとしております。

 あわせて、難民調査官には、外国人の人権に関する理解を深めさせ、並びに難民条約の趣旨及び内容、国際情勢に関する知識その他難民の認定及び補完的保護対象者の認定に関する事務を適正に行うために必要な知識及び技能を習得させ、及び向上させるために必要な研修を行うものとしております。

 第三に、附則において、改正後の入管法に基づく収容に代わる監理措置及び仮放免の制度の運用に当たっては、容疑者等の人権に配慮し、判断の適正の確保に努めるとともに、監理措置決定をしない理由又は仮放免を不許可とした理由を書面により通知する場合において、その理由を容疑者等が的確に認識することができるように記載する等、手続の透明性の確保に努める旨規定しております。

 以上であります。

 何とぞ、御審議の上、委員各位の御賛同をお願い申し上げます。

伊藤委員長 これにて修正案の趣旨の説明は終わりました。

    ―――――――――――――

伊藤委員長 この際、お諮りいたします。

 本案及び修正案審査のため、本日、政府参考人として出入国在留管理庁次長西山卓爾君、外務省大臣官房参事官林誠君及び外務省大臣官房参事官西永知史君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

伊藤委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

伊藤委員長 これより原案及び修正案を一括して質疑を行います。

 質疑の申出がありますので、順次これを許します。牧原秀樹君。

牧原委員 自由民主党の牧原秀樹でございます。

 率直に言って、現在、ここで私は複雑な気持ちで立っております。

 日本は、人口減少が進み、経済的にも選ばれない国になりつつある。そういう中において、技能実習制度の廃止などとともに、この入管法改正は、外国の方々とどう向き合っていくかを問う極めて大切な法案でございます。

 今年度の予算採決に際し、私は、本会議の壇上におきまして、「私たち政治家は、文字どおり命を懸けて、国のため、国民のため、そして未来のために活動しています。与野党の立場や主義主張の違いこそあれ、この歴史の転換期に国権の最高機関に身を置く者として、共にその使命を果たしていこうではありませんか。このすばらしい国を、未来に胸を張って引き継げるようにしていこうではありませんか。」と呼びかけさせていただきました。

 だからこそ、この歴史的な入管法の改正に当たり、私は、野党の皆様とも真摯な協議を重ね、例えば、名古屋入管の視察、五時間のビデオ視聴、そして、予定を大幅に上回る十九時間の質疑に加えた参考人質疑という、これは、いわゆる国会の通例をはるかに超える審議。そして、度重なって採決を申し出ましたが、修正協議があるんだ、こういうことでもございまして、野党の方の日程にも配慮し、採決を度重なって見送らせていただき、そして、何よりも、各委員の、質疑の皆様には、それぞれの内容について真摯に耳を傾け、そして、修正協議に入って、参考人の皆様の意見も含めて真摯な修正協議をやるべきだ、こう私からもお願いをさせていただいて、前例のない大幅な修正すら、法務省や入管庁の皆様、そして、本当に時間のない中、法制局の皆様にもお願いをしてまいった次第でございます。

 こうした作業をお願いした関係者の皆様、そして、その思いを共有してくださった、寺田筆頭や沢田理事、鈴木オブ、そして有志の会の野党の皆様、また、こちらでは宮崎さんを含め関係者の皆様、こうした全ての皆様には感謝を申し上げる次第でございます。

 しかし、最終的には力及ばずであったということに、物すごい無念の思いを感じるわけでございます。

 私は、改めてですが、ウィシュマさんの死に関しましては、心からお悔やみを申し上げます。そして、日本人の中でその死を悼まない人は誰もいないと思います。だからこそ、二度とこのような悲しみを生んではなりません。

 大臣にお伺いをします。

 本法案の改正には、そのような思い、そして今後への覚悟が込められ、二度と悲しい死、悲しい思いを起こさせないものとなっているのでしょうか。

齋藤(健)国務大臣 まず、ウィシュマさんの件については、私は、ビデオを見たとき以来ずっと、このようなことを二度と起こしてはいけないと思い続けてこの作業に取り組んできました。そして、今でも、担当さん、担当さんと叫んでいるウィシュマさんの声は耳から離れません。

 そういう意味では、我々がやってきた努力、そしてこれからこの法改正を通じて新たに行う努力、これが極めて大事だというふうに思っています。

 入管庁では、これまで、調査報告書で示された改善策を中心に、組織、業務改革に取り組んできたところ、こうした取組により、常勤医師の確保等の医療体制の強化や職員の意識改革の促進など、改革の効果が着実に表れてきているわけであります。

 そして、加えて、今回の改正法案には、例えば、全件収容主義と批判されている現行法を改め、監理措置を創設し、収容しないで退去強制手続を進めることができる仕組みとした上で、収容した場合であっても、三か月ごとに収容の要否を見直して、不必要な収容を回避する。体調不良者の健康状態を的確に把握して、柔軟な仮放免判断を可能とするため、健康上の理由による仮放免許可申請については、医師の意見を聞くなどして判断することとする。こういった規定を設けているほか、常勤医師の確保のために、現行法における常勤医師の兼業要件を緩和するなどしているわけであります。

 現在、入管庁が取り組んでいる組織、業務改革の進捗に加えて、本法案による監理措置及び仮放免を適正に運用し、何としても再発を防ぐ、そういう覚悟で取り組んでいきたいと考えています。

牧原委員 お願いします。

 私も海外でしばらく時間を過ごしたことがありますが、外国人と一くくりにされる違和感と反発を感じました。しかし、現実には、日本人が何かをすれば、やはり日本人はだね、外人はだねと言われる現状が海外でもあります。ですから、日本でも、例えば仮放免中の方が一人でも重大犯罪を犯せば、その国民だけではなくて、外国人全体の皆様への悪印象がつくられ、その不安感から共生が困難になる、こういう非常に不幸な事態が起きることになります。

 私は、今改正案というのは、こうした犯罪を減らす、できればなくすということにつながるのかどうか、この点についても大臣にお伺いします。

齋藤(健)国務大臣 本法案において創設する監理措置制度では、監理人が本人の生活状況等を把握しつつ指導監督を行い、逃亡、証拠隠滅又は不法就労活動を疑うに足りる相当の理由がある場合等の届出義務ですとか、それから、監理措置条件等の遵守のために必要な場合に、被監理者の生活状況等のうち、主任審査官の求めのあった事項を報告する義務を履行することによりまして、入管当局が、監理人から必要な事項について届出、報告を受け、平素から被監理者の生活状況、条件遵守状況等を的確に把握し、監理に支障が生じた場合には、入管当局においても、監理人からの相談を受け、必要に応じて被監理者に適切な指導を行うということを想定をしています。

 したがいまして、こうした監理措置制度の適正な運用は、逃亡事案の発生や犯罪行為の抑止にも資するものであると認識しています。

牧原委員 次に、難民の認定率が低いという話がありましたが、この批判は、実際には、例えばウクライナの皆さんを入れたときの数字とかを考えて、つまり、数字の見方によって随分違うし、各国にも相当な違いがあって、それ自体には何らの意味がない、こういうふうに参考人質疑で専門家の方もおっしゃっていたところでございます。

 しかし、大切なのは、保護すべき方をきちんと保護できるかどうか、ここに懸かっているわけでございます。日本が本改正案を通じてそのような我が国の保護すべき人をきちんと保護するという責任を果たす、こういうものになっているのでしょうか。

齋藤(健)国務大臣 これまでも我が国では、申請者ごとにその申請内容を審査した上で、難民条約の定義に基づき、難民と認定すべき者を適切に認定をしてきたわけであります。

 その上で、本法案では、難民条約上の難民には該当しないものの、これと同様に保護すべき者を保護するために、補完的保護対象者の認定制度を創設し、補完的保護対象者と認定された者に対して、制度的かつ安定的に保護、支援を行うことを可能とする、そういう制度になっています。

 また、在留特別許可の申請手続というものを創設するとともに、在留特別許可の考慮事情等を明示することにより、在留特別許可制度を一層適正化することとしております。

 このように、本法案の下で、真に庇護すべき方々の一層確実な保護が可能になっているというものでございます。

牧原委員 今、三点だけ確認をさせていただきましたが、やはりウィシュマさんの件も含めて、これまでの入管の在り方、難民申請のあるいは認定の在り方等について何らか問題があるということは、今回の質疑で与野党の共通の認識になったわけであります。

 それを廃案にして、また先送りにするということは、私は国会の責務の放棄だ、こう思っております。少なくとも、私たちはこの法案を成立させて、そして、共に日本人と外国の方が幸せに生きることができるような、そういう社会をつくらなければならない、私もそのために全力を尽くすとの決意を申し上げて、質疑を終わらせていただきます。

 ありがとうございました。

伊藤委員長 次に、大口善徳君。

大口委員 公明党の大口でございます。

 まず、ウィシュマさんの悲しい出来事、これはもう二度と繰り返してはいけない。本当に、これはもう法務省、そしてまた入管局も肝に銘じて、再発防止につきましても真剣に取り組んできたわけでございます。

 そして、そのためにも、確実にこの改正を、改善をしていかなきゃいけない、そういう決意でございます。(発言する者あり)

伊藤委員長 静かになさい。

大口委員 そういう中にありまして、それこそ、今、牧原筆頭からもありましたように、この法案審議、与野党を超えて、もう二度と起こしちゃいけないということの共通認識の中で、誠実に、真摯に取り組んできたわけでございます。

 また、法務大臣におきましても、一つ一つの、与野党の質疑者に対して丁寧にまた真摯に答弁をしてきた姿勢に対して、私は評価をしたい、こういうふうに思っているところでございます。

 そういう中で、今回の修正が五会派で調いました。この修正を行った上で本法案が成立した場合は、保護すべき外国人を確実に保護する観点から大いなる前進がある、こういうふうに認識をしておるわけでございます。

 それにつきまして、国会の審議を通じて内外に理解をしてもらう必要がございます。そういう点で、大臣には、より分かりやすく、この修正案を含めた本案について説明をいただきたいと思います。

齋藤(健)国務大臣 本法案におきましては、保護すべき者を確実に保護するという観点から、難民条約上の難民ではないものの、難民と同様に保護すべき者を補完的保護対象者として認定し、制度的、安定的な保護を可能とする制度を創設をするというものになっています。

 在留特別許可制度については、申請手続を新たに設けるとともに、考慮事情を明示することで、より的確に申請を行い、在留を認めることができるような仕組みとなっています。

 また、自由民主党、公明党、日本維新の会、国民民主党からの、提案されております修正案につきましては、難民等の認定に当たり、出身国情報の充実、難民調査官の知識、技能の向上が義務化され、難民認定手続に関して入管職員の一層の専門性が向上することが期待でき、入管庁において適正な難民等の認定が可能になるものと考えております。

 加えて、送還停止効の例外等を整備し、難民認定申請を誤用、濫用している者の送還により、難民認定申請手続が適正化され、真に保護すべき者を迅速に保護することが可能にもなります。

 外国人の人権に配慮するという観点からは、そのほかにも、出国命令の対象の拡大によって収容か否かの検討対象となる外国人を減らすとともに、収容代替措置である監理措置を創設することによって収容せずに送還まで社会内で生活することが可能となるほか、医療上の措置を含む処遇に関する規定を新たに法律で整備し、より一層外国人の人権に配慮した退去強制手続となるものであります。

 このように、本法案は、難民該当性判断の手引といった運用とも相まって、保護すべき者を確実に保護することを可能とし、より人権に配慮した入管法上の取扱いも可能となるものであって、繰り返し申し上げているとおり、外国人の人権を尊重しつつ、適正な出入国在留管理を実現するバランスの取れた制度とし、日本人と外国人が安全、安心に暮らせる共生社会の実現のための基盤の整備につながるものと考えています。

大口委員 今回の法改正においては、在留特別許可制度について申請手続を創設するとともに、申請が適正になされるよう、判断に当たっての考慮事情が法律上明示されることになりました。

 考慮事情の具体的な考え方については、法案成立後に公表予定の新たなガイドラインで示される予定と聞いております。

 この点について、私、四月十八日の質疑におきましても、令和三年当時の上川法務大臣の答弁を読み上げて、一つ、本法案施行までに退去強制令書が発付された者について、新たなガイドラインに基づいて在留特別許可を受ける機会が保障されておらず、法施行後に新たなガイドラインに基づいて在留特別許可の判断をすることになること、そして、二として、その場合においては、既に不法滞在が長くなっていたとしても、特例としてマイナス評価はしないということでよいのかと質問をさせていただきました。その際、齋藤大臣から、上川大臣が答弁された方向で対応できていると考えていますとの答弁をいただきました。

 これまでの退去強制令書が発付されていた外国人にも在留特別許可がなされる可能性があるという点で重要な答弁でありますので、改めてその詳細について御答弁をお願いします。

齋藤(健)国務大臣 本法案では、在留特別許可の申請手続を創設するとともに、考慮事情を法律上明示するということとしています。

 その上で、それぞれの考慮事情の評価に関する考え方を運用上のガイドラインとして策定し明示することによりまして、退去強制事由に該当する外国人のうち、どのような者を我が国社会に受け入れるかを明確に示すこととしています。

 当時の上川法務大臣も御答弁しているとおり、本法案施行前に退去強制令書が発付された者については、本法案による手続的な保障が与えられていないこととなることから、本法案施行後において、新たなガイドラインに基づき、改めて職権で在留特別許可の判断をすること。そして、その場合においては、既に不法滞在期間が長くなっている点については、特例として消極事情として評価しないこととする方針で今検討しているところです。

大口委員 私も、四月の二十一日から三日間にわたり、計五回にわたって、修正協議について実務者として、立憲民主党、日本維新の会との協議に取り組まさせていただきまして、そして、政府・与党は、立憲民主党の多岐にわたる要望に対し、真摯かつ精いっぱいお応えをし、本則、附則修正、附帯決議、運用等の様々な修正事項を提示し、誠意に対応してまいったわけであります。

 修正協議の結果については、政府案に批判的な意見を述べておられる方の中でも、修正案については高く評価する、こういう意見も表明していただいているところでございます。

 残念ながら、立憲民主党との法案修正の合意に至りませんでしたが、日本維新の会、国民民主党、そして有志の会、五会派で、今回、修正案について合意に至ったわけでございます。

 この修正協議の経緯及び結果について、宮崎委員から、どのようにお考えなのか、御見解をお伺いしたいと思います。

宮崎委員 この修正協議につきましては、今、大口委員から御指摘ございましたとおり、修正を求める理事会派である立憲民主党、日本維新の会からお話があり、これを受ける与党側として、自由民主党、公明党、この四会派で協議をさせていただきました。四月の二十一日から、早朝も、また、夜にわたるときもあり、合計五回にわたりまして協議をさせていただいたものでございます。

 その中で、立憲民主党からは、対案という名前の下で修正の御提案を頂戴したところであります。これは、現行法や改正法案の思想とは離れている点もございました。また、多岐にわたる御提案でもありました。さらには、この委員会での質疑を踏まえた具体的な御提案も更にいただいたというところでございます。

 こういった多くの御提案を修正協議としてまとめたいと考えまして、与党としては私と大口委員が実務担当者となり、また、野党側からは寺田委員と沢田委員が実務担当者となり、精力的に協議をさせていただいたと考えております。

 与党としては、真摯に対応して、柔軟かつ詳細に検討してまいりました。なかなかないぐらいのところで、お受けできる事項をとにかく探そうということで、本則で対応するもの、附則で修正をしていくもの、附帯決議で対応するもの、運用に委ねてこれも対応していくものと、考え得る方策を考えて、とにかく多数の回答をしようということで、誠実に対応して協議を継続させていただいたところでございます。

 特に、立憲民主党さんからの御要望も受けて、検討条項において、難民認定に関する第三者機関の設置について検討をする、在留特別許可の考慮事項として子供の利益を考慮すべきことを条文上明示するという条項も盛り込もうと対応させていただきました。委員会質疑で御質問のあった子供に関する在留特別許可についても、これまでの運用では在留に様々な困難があるものについても、御要望に応えようということで対応を検討してまいりました。

 結局、立憲民主党からは、修正には合意できないとの御回答があり、これまで述べてきたような詳細な検討に基づく修正案が実現しなかったことは、作業の実務を担当した者としては大変残念に思っているところでございます。

 しかしながら、日本維新の会による修正提案は、改正法案の趣旨を踏まえた現実的なものであったことから、合意に至ることができました。最終的には、今、大口委員から御指摘がありましたとおり、自由民主党、公明党、日本維新の会、国民民主党、さらには有志の会の皆様にも加わっていただくということで、五会派で修正の合意をいたしました。

 これにより、難民認定手続や監理措置、仮放免において一層の適正化が図られることになった、これは大きな前進であると認識しております。

大口委員 以上で終わります。ありがとうございました。

伊藤委員長 次に、寺田学君。

寺田(学)委員 寺田です。

 何度もこの場に立たせていただきました。本当にありがとうございます。

 まず最初に、本日の採決が職権で行われること自体については、強く強く抗議したいと思います。

 一方で、修正協議に関して、我々に歩み寄ろうとしてくれた与党の皆さん、維新の党の皆さん、そして、法務大臣始め、土日を返上して作業に当たってくれた入管、法務省の皆様、ここにいる方のみならず、本庁からこの審議を見ている皆さんにも心から感謝申し上げたいと思います。

 修正合意には至りませんでした。今日、朝日新聞の社説では、この修正案は僅かな修正と評されておりましたけれども、それは不勉強極まりないとも思います。それでも、百歩譲って僅かな修正であったとしても、その僅かな修正によって、在留資格が与えられたり、将来、入管の裁量を逃れて助けられる人が生じ得るのは事実だと思っています。

 私自身は、今後、今回の修正を我々が見送ったことによって、助けられた人が助からないことへの思いと、入管に過大な裁量を残してしまったことによって生まれ得る、無辜の人が迫害を受ける苦しみがあるとしたら、その責任もしっかり背負っていきたいというふうに思っています。

 二年前にも、私自身は、この質疑の場に立って、入管法の審議に臨んでおりました。素直に申し上げて、振り返ってみれば、その姿に実に反省をしております。法案への知識も乏しいことはさることながら、何より、何かを改善しようという気持ちよりも、入管をたたき、戦うということを目的にしたことを私は反省をしています。話を伺う相手も、一方的なままでありました。

 先日、我が党の部会で、この場にいるある方がこのような発言をしておりました。入管の体質には大きな大きな問題や課題がたくさん残っている、それでも、それを改善するためには、批判だけをしているのでは駄目なんだというような御意見でした。私はそのとおりと思います。

 罵っても何も変わりません。戦うこと自体も目的ではありません。変えるべきところを着実に変えていくために、相手の話を聞き、その問題意識と、体質の根源的なところを素直に見詰めていくべきだと私は思います。

 今回、従来のヒアリング先に加えて、私自身は徹底的に入管の事情を伺いました。その中にはおよそ納得できないような理屈もありましたが、やはり働く者、与えられた職責の中でもがき苦しむ姿も十分理解することはできました。家族にも入管施設で働いていることを言えない職員がいることも、大変ふびんに思いました。

 確かに、組織には大変な問題があると思います。課題があることも事実だと思います。ただ、そこで働く方々を尊重せずして、対話は決して生まれませんし、理解は育めません。当然、改善も進まないと私は思います。

 今回、質疑に当たって、仮放免中の日本で生まれた子供の数をお聞きしました。大変な作業が要るということで当初は断られたんですが、何度か話し合ううちに、一生懸命、お時間をください、やってみますということで、全国から原簿を一枚一枚調べて、その数字を調べて、二百一人という実態が浮かび上がりました。

 このようなことを一つ一つ重ねて、今ある問題の実態をしっかりと把握して、審議をし、議論をし、そして改善すべきところを改善していくのが国会の役割だと私は思っています。私自身は、この仕事に関わる限りにおいて、日々必要な改善をしていくために入管の皆さんと向き合っていきたいと私は思っておりますので、是非そこは分かってほしいと思います。

 参考人に来ていただいた滝澤先生が話していたことが大変私は印象に残っております。少し読ませていただきます。

 UNHCR事務所と受入れ国の政府の関係というのは、基本的に緊張関係にあるんですね、UNHCRはやはり難民の人権を守る、それに対して政府の方は治安等も考えるということで、基本的には緊張関係にある。そのようなことをるるお話ししていただいた末尾に、今、日本では、入管庁と、それからUNHCR、プラス支援団体の間に信頼関係がありません、コミュニケーションが成り立っていないというふうに私は考えています、ですので、これが一番の問題です、お互い、何を言っても相手が聞いてくれないという不信感の中で、断絶があって、これを超えないことにはどのような法律を作ってもうまくいかないと思います。非常に御示唆に富んだお話だと思います。

 ある入管のOBの方から言われた言葉も、私は非常に印象に残っておりますので御紹介したいと思います。

 私が立憲民主党の人間ですので、私に対してお話しいただいたんですが、確かに国民の中には立憲民主党のお考えに近い方も一割から二割いらっしゃると思います、一方、自由民主党の保守系の方々のような考え方の人も一割か二割いらっしゃると思います、ただ、それ以外の残りの八割近くの国民がこの議論から取り残されていることだけは何とかしてほしいということでした。

 外国人との共生を図る上で、国民の全体の理解というものは、どのような制度をつくろうとも、私は大事だと思っています。今回の法案の中で、犯罪者、犯罪を犯した方をどのように受け入れるのか、受け入れないのかという議論を、制度の中でありました。私自身も、審議に臨むに当たり、自分の秘書や自分の知人に、多くの方にどのように考えるか聞いてみたところ、本当に様々な意見がありました。

 これから大きな大きな時代の転換点の中で外国籍の方々としっかりと共生していくためには、今まである感情というものをひとつ脇に置いて、しっかりと事実を見詰めて、国民総出で外国籍の方々との共生というものをどのように成し遂げていくのかを考える必要が私はあると思っています。

 ここからが私が大臣に最後に伺うことです。

 外国人に関する諸問題に関して、将来の日本社会の在り方をビジョンと併せてしっかり政治の世界の中で与野党で継続的に議論するということが私は必要だと思っておりますが、大臣の御所見を伺います。

齋藤(健)国務大臣 まず、寺田委員の真摯な御発言に私は感銘を受けました。

 その上で、私、従来から申し上げておりますように、今後、日本が人口減少社会を迎え、そして高齢化を迎え、そういう日本が活力ある社会であり続けるためには、やはり外国人の方といかに共生をしていくかということが今まで以上に重要になってくるし、ある意味、死活的な問題になるかもしれないぐらいに私は思っています。

 したがいまして、そういう社会というのは、恐らくいろいろな意見の方がおられる中でどう構築をしていくかという議論になってくるんだろうと思っていますので、今の御指摘の点につきましては将来の日本の社会の在り方にも関わってくる問題だと思っていますので、そういった課題については政治の場で建設的な議論がなされること、これが必要不可欠だと思っていますが、これ以上政府が踏み込んで答弁することはちょっと御容赦いただきたいと思います。

寺田(学)委員 様々な御意見をお持ちの方がいらっしゃると思います。その部分に関してしっかりと向き合って、議論して、理解を深めていくことがまず第一歩だと思います。

 そしてまた、政治の場において、どの党であっても、この課題は避けられない問題だと思いますので、この場にいらっしゃる委員の皆様、それに加えて多くの議員の皆様を巻き込んで、しっかりと共生の在り方というものを議論していくことをお誓い申し上げて、最後の質問としたいと思います。

伊藤委員長 次に、沢田良君。

沢田委員 日本維新の会、埼玉の沢田良です。

 本日は、本案そして修正案に対して質疑をさせていただきます。

 伊藤委員長、齋藤大臣、委員部の皆様、関係省庁の皆様、宮崎議員、本日もよろしくお願いいたします。

 私は、難民認定手続で重要なことは、庇護すべき者を確実に保護しなければならないことであると考えております。

 日本維新の会では、難民認定手続について、現在の難民調査官による審査制度を維持する上で、専門性や能力を高めるなどして、難民認定申請手続をより一層適正に行っていく必要があると考えております。

 まず、難民認定を適切に行う上で、様々な情勢を把握すること、つまり客観的な情報に基づく判断をすること、また、難民認定手続に当たる個々の難民調査官を育成することが重要であると考えております。

 そして、専門的知識を有する職員の育成について、更に具体的に検討を行うと、難民、補完的保護対象者の認定を担当する職員には、申請者となる外国人の人権を尊重することはもとより、難民条約の内容のほか、国際情勢に関する理解を促進するための研修を行い、その能力向上に不断に努める必要があると考えます。

 さらに、難民認定申請者の中には、母国で迫害に遭い、様々な事情を抱えた方がいらっしゃいます。申請者の身上の保護のため、また、特殊な状況を抱える方からも正確な情報を適切に聴取して正しい認定を行うため、難民調査官は、申請者のそれぞれの特性、申請者が本国で置かれた境遇やトラウマ等の心身の状況に配慮して、適切なインタビューを行う必要があると考えます。

 提出者の宮崎議員にお伺いいたします。

 私たち日本維新の会は、これらの点について政府提出法案を修正すべきとの提案を与党に対して行いましたが、これらの点は修正案にどのように反映されていますでしょうか。

宮崎委員 日本維新の会から御提案をいただきました修正の内容につきましては、いずれも、現行制度の在り方、改正法案の趣旨を踏まえた現実的なものでありましたことから、与党から更に修文の御提案もさせていただき、また、担当者も意見を交わし合い、議論をし、最終的に合意に至ることができて、修正案として反映することができたものでございます。

 まず、沢田委員御指摘の、客観的な情報の収集と職員の育成が重要であるという点につきましては、第六十一条の二の十八第一項を新設いたしまして、難民及び補完的保護対象者の認定を専門的知識に基づき適正に行うため、国際情勢に関する情報の収集とともに、難民調査官の育成を法務大臣の責務とする内容の規定を設けております。

 次に、職員に対する研修を行い、能力向上に努める必要があるという点につきましては、第六十一条の二の十八第二項を新設いたしまして、難民調査官には、外国人の人権に関する理解を深めさせるとともに、難民条約の趣旨及び内容、国際情勢に関する知識その他難民等の認定に関する事務を適正に行うために必要な知識などを習得させ、及び向上させるために必要な研修を行うものとするとの内容の規定を設ける修正を行ったものでございます。

 最後に、申請者の心身の状況などに配慮して、適正なインタビューを行う必要があるという点につきましては、難民調査官による事実の調査に関する六十一条の二の十七に新たに第四項を加えまして、難民等の認定の申請をした外国人に対して質問をするに当たっては、特に、その心身の状況、国籍国等において置かれていた環境その他の状況に応じて、適切な配慮をするものとするとの内容の規定を設けることとしたものでございます。

沢田委員 ありがとうございます。

 続いて、収容に関する問題についてお伺いいたします。

 現行法下の入管施設における収容は、全件収容主義とも呼ばれ、今回の審議に当たっても、この点を不安に思っていらっしゃる方からの御意見をいただきました。

 ただ、実際には、約四割の方が出国命令制度の対象となり、収容されることなく手続を進められていることがこの法務委員会の中でも確認されました。さらに、今回の改正で出国命令制度の対象者を拡大することによって、約七割が出国命令の対象となるのではないかという御答弁もありました。

 また、今回の改正では、収容をめぐる諸問題を改善すべく、監理措置制度の創設や仮放免制度の運用見直しが規定されています。長期収容や不必要な収容をできる限りなくしていくことはまさに喫緊の課題であり、一日も早い法改正が必要と考えております。

 その上で指摘をさせていただきたいのは、収容に関する入管の判断について、その適正性を担保し、判断の透明性を確保することが何より重要であるということです。

 そこで、日本維新の会といたしまして、監理措置等の判断については、合理的な理由のない不許可を許さず、事後的な司法的手続を取る場合にも的確に争うことができるような仕組みが必要であると考え、この点を明確にする規定を附則に設けることを提案しました。この提案は修正案にどのように反映されたでしょうか。

宮崎委員 日本維新の会からは、今し方、沢田委員から御指摘がありましたとおり、監理措置等の判断の適正性、透明性を確保するという観点からの修正提案をいただきました。また、修正協議の場におきましては、今、沢田委員から御指摘がありましたような、委員会での質疑を踏まえた御意見を熱心に沢田委員から提示をしていただいて、その協議を重ねさせていただき、意見交換をし、協議を続けてきたところでございます。

 その結果といたしまして、今般、附則第一条の二を新設し、監理措置及び仮放免の制度の運用に当たっては、容疑者又は退去強制を受ける者の人権に配慮し、判断の適正の確保に努めるとともに、請求に対する不許可の通知をする場合において、理由を容疑者又は退去強制を受ける者が的確に認識することができるよう書面に記載するなど、手続の透明性の確保に努めるとの内容を条文に記載する形での修正を実現したところでございます。

沢田委員 どうもありがとうございます。

 本日の質疑で、我々日本維新の会が提案した修正案が的確に反映され、一層適切な出入国在留管理行政と難民認定手続が行われることが確認できました。

 今回、正しい入管行政の現状認識と法律解釈に基づいて、我が党が主体となって取りまとめて提案した内容が修正案に適切に反映されたことを、高く評価したいと思います。また、政府に対しましては、この修正案を基に、一層適切な運用に努めることを期待させていただきます。

 最後になりますが、本法案の審議に当たり、大臣をサポートし、さらには、我々委員の質問に対し、部会やレクそして本委員会でも真摯に御対応いただいている法務省の職員の皆様、出入国在留管理庁の職員の皆様の御尽力なければ、ここまでの議論はできませんでした。この場をおかりしまして、この国のために粉骨砕身の姿勢を貫かれ、職務に邁進される皆様に、敬意と感謝を申し上げます。

 先日の参考人質疑の際、福山宏元東京出入国在留管理局長にお話を伺った際も、世論に流されることなく、退職をされるまで、国を愛し、信じ、国民のために四十年近く法務省の人間として御自分の職務を全うしたという公務員としての矜持を私は感じることができました。

 ただ、そのような方が、参考人質疑の際に、私から長年の公務へのねぎらいをお伝えしましたら、涙を流されておりました。後日、メッセージをいただきました。内容全てはお伝えできませんが、一部御紹介させていただきます。

 最後のねぎらいのお言葉は誰からも受けたことのないもので、それどころか、最終日は罵声を浴びながらの退庁でした。それはそれで、いかにも自分らしいと思っておりましたが、やはり、お言葉をいただき、不覚にも涙してしまいました。これからも、どうか後輩たちのことを何とぞよろしくお願い申し上げます。

 私は、この内容を大臣にだけはお伝えしなければならないと思っていました。

 ここまで本委員会で入管法改正案が滞りなく審議をされていることに対し、私は、法務省、出入国在留管理庁の皆さんに心から感謝をしています。けれども、今回のように、四十年近くにわたって公務を全うされた方が、やはり、いろいろな意味で、我々政治の判断が鈍ること、遅れることで、表明することがないことで、全うできない、又は報われることがない、こういう状況を我々政治家はしっかりと把握をしていかなければいけないというふうに思っております。

 我々日本維新の会は、一部ではやはり公務員の方々に厳しい政党だというような御指摘も受けますが、私は、公務員の皆様が、政治と両輪で、しっかりとやりがいと、その環境において責任と誇りを持って動いていただくことこそが、我々政治家が本当の意味でのリーダーシップを発揮できる、全ての両輪となっていると感じております。

 齋藤大臣、大臣からの答弁はなかなか難しいと思いますが、今回のこの改正案に当たって、多くの職員の方々、いろいろな意味で、大臣を支えるために、そしてこの国を守るために、多くのいろいろな意見を受けながら生活なさっています。その全ての皆様に、大臣から一言いただけないでしょうか。

齋藤(健)国務大臣 まず、私は、官僚の世界に二十三年おりまして、それで、国会議員になってから十三年ぐらいたちます。両方経験をしてまいりました。そのOBの方のメッセージは本当によく分かります。私自身も同じ思いを、経験をしてきて、そして今、逆の立場に立っているということです。

 私の思いは、官僚も政治家もそれぞれ違った持ち味を持っていますので、その持ち味をお互い生かしながら、協力しながら、いい日本をつくっていくというのが理想の姿だなと思っています。もちろん、そこにはまだ至っていないというのが私の認識でありますが。

 その上で、御質問ですので、現在審議中の入管法改正法案につきまして、その立案段階から、よりよい入管行政を実現すべく懸命に取り組むとともに、連日の法案審議におきましては、答弁作成、質疑対応等、文字どおり昼夜なく、全職員が一丸となって全力で職務に邁進している姿を私はずっと見てまいりました。

 法務行政を預かる法務大臣といたしましては、こうした職員の姿を大変心強く思うとともに、この法案を一日も早く成立させることが今度は私の務めかなというふうに思っておりまして、職員とともに努力をしていきたいと思います。

沢田委員 どうもありがとうございました。

 以上となります。

 最後の最後ではございますが、野党筆頭理事の寺田理事が、全てにおいて野党を引っ張って、ここまで議論が深化できたこと、私は同じ野党の一員として誇りに思います。そして、最後の最後まで、修正において、党の対案を示して、体を張って動かれたこと、私は、この最後の最後で、日本維新の会の人間としても、尊敬に値する動きだったと思っております。

 以上で質疑とさせていただきます。どうもありがとうございました。

伊藤委員長 次に、鈴木義弘君。

鈴木(義)委員 国民民主党の鈴木義弘です。

 十五年前に、私、県議会議員のときにブラジルに行く機会がありまして、たまたま、三郷の出身で、約六十年ぐらい前にブラジルに渡って、向こうで商売して家族を養っている人と偶然会えたんですね。サンパウロという都市だったんですけれども、日系人が百五十万住んでいる都市。

 ブラジルは、聞きますと、七十か国の移民で成り立っている国だ。その中で、ブラジル社会において、日本人、日系人がどういうふうに評価されているのかと尋ねたんです。そうしましたら、勤勉で真面目だと。それはどういうことを指しているのかと尋ね返したら、例えば、日本で二百万円ぐらいの車が、ブラジルで四百万で売っているんだそうです。お金がない人はローンを組みます。ローンを組むんだけれども、日系人だと、出す書類が何枚もなくて済むんだ。ほかの国の人たちはたくさんの資料を出さないとローンを認めてくれない。これは、自分一人じゃなくて、百年以上も続いた、日本人がその国でどう評価されたか。一年、二年の話じゃないと思うんです。それが積み上がっていって、日本人は真面目だから、正直者だからということで、ローンの審査をするときに、ペーパーが何枚かなくて、それで審査が通る。私は、そういう国を目指すべきだと思うんですね。

 世界中にいろいろな形で散っている日本人、日系人の人がいます。でも、日本人は島国根性なんでしょうね。この島から出ていった人は、例えば、明治の二十年代から三十年代に移民政策を取った時期がありました。ハワイを始め北米、中南米、そこの移民政策を取ったときに、少しばかりのお金を持たせて、行ったんですね。夢破れて戻ってこようとした日本人に対して何を当時の日本政府はやったか。好きで行ったんだろうと。ブラジルでも同じです。一番最初に入植した一世の人、二世の人は、もう本当に血のにじみ出る思いで、開墾したりなんなりして、三世、四世、五世、今六世、つながっているという話は聞くんですけれども。

 だから、そういった国を、私は、もう一回、正直で勤勉だという日本人をやはりつくっていくべきだと思うんです。そのためには、やはり法治国家というふうに言うんだったら、法律をきちっと整備して、今までは、私も何年も衆議院議員はお世話になっていませんけれども、ほとんど性善説に基づいた法律の立て方をしています。その間を抜いてうまくやろうとか、ちょっと悪さをしようという人は、その法律の網をくぐっていく。

 だから、法律を全部ぴしっと作るのがいいかというんですけれども、先般の質問の中で、運用を変えたというふうに答弁されたときがあったんです。平成二十二年の四月から、難民申請して六か月以上たてば就労を認める。それは法律を改正したんじゃない、運用を変えたんです。それから難民の申請数が格段に上がっていった。それまではこういう話は余り出てきていないんですよ。

 だから、入管庁の職員だとか入管庁の責任ばかり問いかけるのは私はおかしいと思う。政治の側の私たちが不作為だったということなんですよ。確かに、行儀が悪いとかいいとかというのはあるんでしょうけれども、それは行政側の責任ばかりじゃなくて政治側の私たちにも責任があるというのを今回の法案でやはり忘れちゃいけないことだと思うんですけれども、その辺の考えを大臣にお尋ねしたいと思います。

齋藤(健)国務大臣 運用でやるのか立法でやるのかということでありますけれども、私は、基本的な考え方というのは、運用でやるにせよ法律でやるにせよ、やはり国民の代表である国会の皆さん、政治家の皆さんとともにつくり上げていくということが大事だというふうに思っています。

鈴木(義)委員 今回の法律の改正が、ベストでこの国会に提出されたと思うんです。ベストだと思ったけれども、実際は修正案が出るということは、そこでよりベターなものを作っていこうということなんだと思うんですが。

 私は、政権が替わったからといっても、運用を変えていいのかといったら、違うと思うんです。これから先、この法律を運用していくんですけれども、またもしかしたら政権が替わるかもしれない。その時々で、今までの入管がやってきたいろいろなことは、私は何人かの外国籍の人の話を聞きましたけれども、変えるんですよ、その都度。

 外国籍の人は、運用を変えたというだけでも法律が変わったという認識なんだ。だから逆に、法律というより運用を変えて、大丈夫なところにみんなターゲットを向けて、何とかしよう、何とかしたい、そういうふうに変わるんです。

 だから、これから先、運用をまた、恣意的とは言わなくても、その時々で変えてしまったら、結局また外国籍の人を翻弄することになるんじゃないかと思うんですが、その点について、大臣の御見解をいただきたいと思います。

齋藤(健)国務大臣 運用で対応すべきだということもあると思うんですね。やはり流れが速い行政の中で、一回一回立法をしているのでは間に合わないというものもあると思いますので、ですから、何を法律でつくり、何を運用でやるかというのは、非常に実態に応じていろいろあると思うんです。

 ただ、いずれにしても、さっき申し上げましたように、運用も含めて適正にやっていくためには、やはり国会あるいは政治の世界での御理解が必要になってくるということだろうと思っています。

鈴木(義)委員 それともう一つ、今回の法案の質疑を聞いていた中で、入管庁の次長から、去年の、ウクライナから避難民の方が来られたとき、初めて外務省とタイアップしたというふうに答弁されたと思うんです。

 何かあると入管庁のせいにするんですけれども、政府全体でどういう、外国人また難民の人と向き合えばいいのかという方針が示されていない中で、入管庁、入管庁と責任をそっちに押しつけているようにしか私は聞こえなかったんです。

 だから、法務省だけなのか分かりませんけれども、やはり政府としてどういう方針で臨むかというのが、今回の法改正は、入管だけの話じゃなくて、日本国政府がどう向き合うのかというのを、是非大臣から、総理大臣に言って、はい、分かりましたとはならないでしょうから、そこのところをやはり決意を聞かせてもらって、終わりにしたいと思います。

齋藤(健)国務大臣 私、さっきも申し上げたんですけれども、これからの日本のありようを考えたときには、外国人といかに共生をして、お互いの力をこの国の発展のために生かしていくということが必要不可欠だろうと思っています。

 その上で、一つ一つの法律をその考え方に基づいて作っていって、その法律の枠内で入管庁は仕事をしていく、そういう流れだと思っていますので、そういう心構えで私はやっていきたいと思っています。

鈴木(義)委員 冒頭私が申し上げた、ブラジル社会で日本人がどう評価されているかといったときに、勤勉で真面目だという評価をされているわけです。

 そういう国の国民が日本人だということであれば、この国に来てもらう人も、勤勉で真面目になってもらうという人が私は大前提じゃないかと思っています。是非そういった国を一緒につくっていかれればなというふうに思います。

 終わります。

伊藤委員長 次に、本村伸子君。

本村委員 日本共産党の本村伸子でございます。

 まず冒頭、この法案に際しまして、まず、難民認定が狭過ぎるにもかかわらず、難民認定申請中にもかかわらず送還が可能として、そのことで壮絶な不安を抱える方々の悲鳴のような声を聞こうとしない政府の姿勢、絶対に許すことはできないというふうに思っております。

 法案審議の在り方についても、委員長に申し上げたいと思います。

 この委員会の審議の中で、参考人質疑も、やはり、当事者の声や、家族の声や、あるいは弁護士、支援者の方々の声を聞く機会が必要だったというふうに思います。

 参考人質疑を是非やっていただいて、採決をすることをまず考え直していただいて、そして参考人質疑をやるべきだというふうに思います。そして、特別報告者の方からのヒアリングも行うべきだというふうに考えますけれども、委員長、お答えをいただきたいと思います。

伊藤委員長 私の立場からは、進みませんので、質疑を続けてください。

本村委員 理事会の中で諮っていただきたいと思います。

伊藤委員長 では、理事会のときにやらせていただきます。

本村委員 やはり、本当に、送還の危険性があると壮絶な思いをされている当事者の方や、家族の方や、弁護士の方や、支援者の方の声は、当然聞くことが前提だというふうに思います。そうしたことをせずに採決ということは絶対にあってはならないというふうに考えております。

 今日は、多くの方々が御心配をされている、子供と家族の問題についても伺いたいというふうに思います。

 国連人権規約委員会は、難民申請者であったインドネシア人の方と妻、子供に在留資格をオーストラリアの政府が認めないのは人権規約違反であるという決定を出しております。オーストラリア政府は、子供が成長し、同国の国籍を取得したから、子供だけをオーストラリアの在留を認め、そして両親をインドネシアに送還し、子供を一人だけ生育する環境に置くことが人権規約に反するという内容です。

 この決定は、国連が編集をしました人権規約委員会重要決定集にも挙げられております。まず、パラグラフ七・二と七・三、読み上げていただきたいと思います。

西山政府参考人 御指摘の決定につきましては、仮訳がございませんため読み上げることがかないませんが、当庁の把握している限りでは、当該事案は、インドネシア出身の両親が、オーストラリアで不法滞在後、子が生まれ、当該子がオーストラリア国籍を取得した後、両親を退去させる旨のオーストラリア政府の決定が、自由権規約の諸規定に違反しているとの指摘がなされた事案であると承知しております。

本村委員 この決定のエッセンスを是非この国の在り方にも生かしていただきたいというふうに思います。大事なのは、出国に関する、国は裁量はあるけれども、その裁量は何の制約も受けないということではないというふうに言っている点が重要だというふうに思います。

 十三年前に生まれてからオーストラリアで成長し、普通の子供と同じようにオーストラリアの学校に通い、それに固有の社会的関係を築いてきた、そのことが重要だというふうに指摘をしています。そして、オーストラリアの学校に通い、そこに固有の社会的関係を築いてきた十三歳の未成年に、一人きりで締約国にとどまるか、それとも両親とともに締約国を去るかの選択を迫ることは、恣意的な干渉だというふうに言っています。もしも退去強制が実施された場合は、自由権規約二十三条、十七条第一項に違反する、その子供さんとの関係においては二十四条一項違反を構成するというふうに考えられるというふうに述べられております。

 このエッセンスを是非酌み取っていただきたいと思いますけれども、大臣、いかがでしょうか。

齋藤(健)国務大臣 御指摘の件は、インドネシア出身の御両親がという件であります。我が国は、締結している人権諸条約が定める義務を誠実に履行をしているということであります。

 そして、今後も、個別の事案ごとに諸般の事情を総合的に勘案する中で、未成年の子が置かれた状況に寄り添って在留特別許可制度を適切に運用してまいりたいと考えています。

本村委員 是非このエッセンスを酌み取っていただきたいというふうに思うんです。

 もう一つなんですけれども、子どもの権利条約第九条は、締約国は、児童がその父母の意思に反してその父母から分離されないことを確保すると定めております。この例外となりますのは、虐待など、分離することが子供の最善の利益であるという場合のみです。

 両親に在留資格がない子供の中には、両親が帰国すれば子供に在留資格を与えるという教示を受けた家族もいるというふうに聞いていますけれども、これは事実でしょうか。

西山政府参考人 入管庁では、御指摘のような、両親が帰国することを条件に子供に在留特別許可をするような運用は行っておりません。

 なお、在留特別許可の判断は、個々の事案ごとに諸般の事情を総合的に勘案して適切に行っているところで、御指摘のような未成年の子につきましては、例えば、当該未成年の子の親による監護、養育の必要性や、我が国への定着性、親の在留資格の有無、親以外の人物による監護の可能性等の諸事情を個別の事案ごとに考慮しているところでございます。

本村委員 両親が帰国すれば子供の在留資格を与えるという教示は、子どもの権利条約や自由権規約違反だというふうに考えますけれども、大臣、いかがでしょうか。

齋藤(健)国務大臣 今、入管庁から答弁させたように、入管庁では、御指摘のような、両親が帰国することを条件に子供に在留特別許可をするような運用は行っていないということでございます。

本村委員 是非そういったことは絶対にやらないようにしていただきたいというふうに思います。子供と家族に在留資格を与えて、安心して住み続けられるようにするべきだということを強く求めたいと思います。

 次に、出身国情報について伺いたいと思います。

 ロヒンギャの男性の難民認定を退ける名古屋地裁判決がありました。しかし、ジャーナリストの方の情報では、ヤンゴンでもロヒンギャの方々が殺され、死体が積み重なって放置されているということです。

 ヤンゴンでロヒンギャの方々が殺されるということは一切ないのか、伺いたいというふうに思います。これは外務省にお願いしたいと思います。

林政府参考人 お答え申し上げます。

 委員より御指摘のあった報道は、昨年十二月五日、ヤンゴン地域フレーグー地区においてロヒンギャの方々十三人の遺体が発見された事案のことと理解いたします。

 当該事案につきましては、ミャンマー当局も、国営メディアを通じまして、十三人の遺体が発見された事実を認めている一方で、犠牲になった方々の詳細な情報について明らかにしていないということと承知しております。

 二〇二一年のクーデター以降、ミャンマー各地において痛ましい事案が相次いでいる中で、政府として、個別の事案について具体的な情報を網羅的に把握することは困難でございますが、お尋ねのような、ヤンゴンにおいてロヒンギャの方々が殺害される事案があったかどうかについても、直接的かつ確定的にお答えすることはできないことを御理解いただければと思います。

 その上で、クーデター以降、ミャンマー情勢が悪化の一途をたどる中で、ロヒンギャの方々が多く居住しているラカイン州の情勢を含めまして、現地情勢の把握に継続的に努めているところでございます。また、言うまでもなく、引き続き、ミャンマー国軍に対しまして暴力の即時停止を求めていく考えでございます。

本村委員 名古屋地裁の判決は誤判である可能性が高いわけでございます。そういった中で、難民不認定だったからといって帰国をさせるということは絶対にあってはならないというふうに思っております。

 そして、二〇二一年の八月に、資料を出させていただいておりますけれども、アフガニスタンでイスラム主義組織タリバンが復権した後、日本政府が、日本に退避された在カブール日本大使館の現地職員と家族の一部が、二〇二二年に帰国をしてから危機を感じ、再び来日していたことが取材で分かったということ、これは信濃毎日新聞の記事でございます。そのときに、外務省から、日本での生活は大変だと、帰国するよう促されて帰ったが、安全ではなかったというふうな証言がございます。迫害のおそれのある母国に追い返された形で、日本の難民保護の不十分さが改めて浮き彫りになっているわけでございます。

 外務省職員が命の危険にさらすこうした行為をやっていたのかという点、お尋ねをしたいと思います。

西永政府参考人 お答え申し上げます。

 二〇二一年八月にアフガニスタンでタリバーンが復権した後、日本に退避してこられた大使館の現地職員及びその家族の一部でございますけれども、彼らは自ら希望してアフガニスタンに帰国したものでございまして、本人の意に反してアフガニスタンに帰国させたという事実はございません。

 帰国の理由は個別の事情によって異なるため一概にはお答えできませんが、現地の情勢を踏まえ、現地の日本大使館の業務に従事したいと希望する等を理由に帰国したものでございます。

 なお、日本に退避した後にカブールに帰還した大使館現地職員らは、大使館においてそれぞれ関連業務に従事しているところでございます。

伊藤委員長 本村さん、質疑時間が終了しました。

本村委員 はい。

 解雇もちらつかせながら帰国をさせたという証言もございます。

伊藤委員長 質疑時間が終わりましたので。

本村委員 こうした不十分な難民認定の下、送還は絶対に許されないということを求め、質問を終わらせていただきます。

伊藤委員長 これにて原案及び修正案に対する質疑は終局いたしました。

    ―――――――――――――

伊藤委員長 これより原案及び修正案を一括して討論に入ります。

 討論の申出がありますので、順次これを許します。藤原崇君。

藤原委員 自由民主党の藤原崇です。

 会派を代表して、本法律案及びその修正案について、賛成の立場から討論いたします。

 現行法下における出入国在留管理行政には、喫緊に解決をすべき三つの課題があります。

 第一の課題は、送還忌避問題です。

 すなわち、我が国から退去すべきことが確定した外国人であっても、難民認定申請を行えば無制限に送還が停止されます。

 第二の課題は、収容の長期化です。

 収容の長期化を回避するには、現行法上、逃亡等防止手段が十分ではない仮放免制度を用いるしかありません。その結果、仮放免中の逃亡者が発生をしております。

 第三に、現行法下では、ウクライナ避難民のような紛争避難民などを保護する制度が不十分です。

 現在我が国が行っているウクライナ避難民支援の枠組みは、何らの制度的担保がないものであり、どの程度の期間、どのような支援が行われるかという予測可能性が不十分であり、制度的担保が必要であります。

 こうした課題を解決するため、本法律案では、補完的保護対象者認定制度を設けております。これにより、紛争避難民などに対して、より安定的な在留と制度的に担保された支援が可能となります。

 次に、送還忌避問題への対応のため、難民認定申請を誤用、濫用して送還を忌避する者や三年以上の実刑前科を有する者などの送還を可能とする仕組みが用意されております。一方で、例外的に送還停止効が発動される余地や、司法による救済の道も開かれております。

 長期収容問題については、本法案の下での新たな出国命令制度により、退去強制事由に該当する者の約七割が、そもそも収容を受けることなく出国することが可能となります。また、監理措置制度の創設により、逃亡を防止しつつ、収容せずに手続を進めることもできるようになります。

 この点、監理人に一定の義務履行が求められることから、制度創設に反対をする意見もあります。しかし、さきに述べたとおり、現行法上唯一の身柄解放手段である仮放免制度は、逃亡等防止措置が不十分です。仮放免中の逃亡者は、令和二年末に四百十五人、令和三年末には五百九十九人、令和四年末には約千四百人と急増を続けています。さらに、特定の身元保証人が多数の逃亡者を発生させている実態があります。このような事情を踏まえると、現行制度による運用を漫然と続けることは看過できず、立法で対応を行うことは妥当です。

 本法律案は、ほかにも、在留特別許可申請手続の創設や、収容施設に勤務する常勤医師の兼業要件の緩和等が盛り込まれており、適切な出入国在留管理の一助となるものです。

 審議においては、難民認定手続をより適正にすべきであるとの観点からの質疑もありました。この点については、与野党間での修正協議が行われ、難民認定手続の一層の適正化に資する修正案が提出されました。

 以上のとおり、本法律案及び修正案は、様々な方策を講じることによって一体的に現行法下の課題解決に取り組むものであり、その必要性は明らかです。

 委員各位の賛同をお願い申し上げ、私の賛成討論とさせていただきます。(拍手)

伊藤委員長 次に、米山隆一君。

米山委員 会派を代表して、ただいま議題となっている法律案につきまして、反対の討論を行います。

 まずもって、この法案は、二回難民認定申請をして認められなかった人、そして、第六十一条の二の九第四項第二号に該当する人は、難民認定申請中でも直ちに送還される危険があるものです。もちろん、時に強制送還がやむを得ない方がおられることは否定しません。しかし、現実に母国で迫害を受けるおそれがある人にとって、その国に強制送還されることは、時に死刑執行と等しい意味を持ちます。

 難民認定は、実質的な審査の機会を十分に確保し、慎重の上にも慎重を期し、公正中立に行われなければいけません。また、その基準は、自由主義社会の維持に責任を持つ国家として、世界の先進国と同じ水準でなければいけません。

 しかし、この法案では、そのいずれも満たされません。母国から命からがら逃げてきて、二度の申請時には十分な証拠が集まらず、三度目の申請の証拠の提出が間に合わなかった、ただそれだけの理由で強制送還されてしまうかもしれません。条文上、労働組合のビラを配っただけで、テロ犯と認めるに足りる相当の理由がある者として法務大臣が認定すると疑うに足る相当な理由があるという極めて漠然とした不可解な要件で、一度も難民認定審査を受けることなく、拷問や死刑が待ち受けている国に強制送還されてしまうかもしれません。そして、その審査は常に出入国行政を担う入管庁によって行われ、我々立憲民主党が再三求めてきた第三者機関による公正中立な審査を受けることはできません。国連人権理事会の特別報告者も、今月、本法案が国際人権基準を満たしていないとする書簡を日本政府に送っています。

 そもそも、現在の日本の難民認定はその基準が厳し過ぎ、二〇二一年の難民認定数は七十四人、認定率は〇・七%で、ドイツの三万九千人、二五%、カナダの三万四千人、六二%に遠く及ばず、全く国際的標準に達していません。これでは、我が国は自由主義社会の一員として当然果たすべき義務を果たしているとは言えません。そして、今般の改正案でそれを補うはずの補完的保護も、要件の定義が不明確で、本当に救うべき人を救えるのか明らかでありません。本日提出された修正案も、この瑕疵を治癒するものではありません。

 何より、今、日本には、日本で生まれ育ち、母国と言える国が日本しかないのに、在留資格を持たない子供たちが二百一人いますが、その子供たちとその家族に特別在留許可を与える仕組みが明確でありません。日本は、日本を母国として育ち、日本を母国と思ってくれる子供たちの未来を摘み、見捨てる国であってはいけません。

 だから、私はこの法案には反対です。この法案は廃案にし、制度設計を根幹からやり直して、公正な判断をする第三者機関をつくり、条文の穴を埋め、基準を明確化し、迫害に苦しむ全ての人に公正で明確で十分な審査が制度的に保障され、必要な保護が与えられる制度にすべきです。そして、日本が、自由主義社会のリーダーとして、迫害に苦しむ世界中の人にとって最も頼れる国の一つになる、そういう法律を作るべきです。

 最後に、この委員会を見ている難民、外国人、そして日本人の方々に申し上げます。

 アメリカ三十五代大統領ジョン・F・ケネディの言葉があります。「イフ ア フリー ソサエティー キャント ヘルプ ザ メニー フー アー プア イット キャント セーブ ザ フュー フー アー リッチ」。

 私は同じだと思います。

 イフ ジャパン キャント ヘルプ ユー レフュジーズ イット キャント セーブ アス ジャパニーズ。 ソー イット ハス トゥー イット シュアリー ハス トゥー ヘルプ ユー トゥー セーブ アス。 ウィー シャル メイク イット。

 私たちが難民の方々に手を差し伸べられなければ、日本人も救えません。私たちは、私たちを救うためにこそ、皆さんに手を差し伸べなければいけません。私たちはそんな社会をきっとつくります。

 ありがとうございました。(拍手)

伊藤委員長 次に、沢田良君。

沢田委員 日本維新の会、埼玉の沢田良です。

 私は、日本維新の会を代表して、原案及び修正案について、賛成の立場から討論を行います。

 本法案は、二〇二一年に廃案になった際、問題になっていた部分について、出入国在留管理庁が中心となり、組織、業務改善に取り組んでいることに対し、一定の評価をさせていただきます。

 また、本法案の審議時間については、本日まで、参考人質疑を含むと二十一時間を超え、廃案となった際の十五時間より更なる議論ができ、気づけば直近五年の衆議院の法務委員会の審議時間でも最長の審議時間を使った丁寧な議論となりました。

 そして、名古屋出入国在留管理局への現場視察や、長時間にわたるビデオ視聴など、委員会の機能の中でやれることをやろうとした前向きな姿勢もまた一委員として大きく評価をさせていただいております。

 とはいえ、多くの委員からも御指摘があったように、難民認定の適正化や申請者への配慮等、まだ不十分な点も多々見受けられます。

 その上で、前回の法案審議の際も最後まで前へ進めるために努力をした我が党としては、本原案では不十分な点について修正案を御提示させていただきました。

 以上のことから、日本維新の会が提案した修正案が的確に反映され、一層適切な出入国在留管理行政と難民認定手続が行われることを期待して、賛成討論とさせていただきます。

 最後になりますが、本法案審議に当たり、伊藤委員長、委員部の皆様、法務省、出入国在留庁の職員の皆様に、大変な御尽力、心より感謝を申し上げ、終了させていただきます。

 どうもありがとうございました。(拍手)

伊藤委員長 次に、日下正喜君。

日下委員 私は、公明党を代表して、出入国管理及び難民認定法及び日本国との平和条約に基づき日本の国籍を離脱した者等の出入国管理に関する特例法の一部を改正する法律案及び修正案につきまして、賛成の立場から討論を行います。

 まず、討論に入る前に、二〇二一年三月六日にお亡くなりになったウィシュマ・サンダマリさんの御冥福を心からお祈り申し上げます。

 新型コロナウイルス感染症が感染法上の五類に引き下げられることに伴い、海外からのインバウンドの回復、そして外国人材の受入れ等も本格化され、ますます、日本に入国、滞在する外国人の増加が予想されます。それと同時に、不法残留の増加も懸念され、現行入管法下で生じている送還忌避、長期収容問題は、早期に解決すべき喫緊の課題であります。

 現行法では、難民認定手続中に、外国人は申請の回数や理由を問わず、日本にとどまることができます。一部の外国人は、これに着目し、難民申請を繰り返すことで送還を回避し、その結果、長期収容問題が生じてまいりました。

 こうしたことを踏まえ、今回の法改正では、認定すべき相当の資料が提出されなければ、三回目以降の申請者について送還停止効の例外とすることとしています。長期収容による様々な弊害や、前科を有する仮放免者の逃亡事案などの現状を踏まえると、妥当な措置であると考えます。

 また、全件収容主義が改められ、監理措置が創設されるとともに、収容施設における常勤医師の確保のための措置など、収容者に対する健康上、人道上の配慮もより適切なものになっています。

 一方、ウクライナ避難民のような人道上の危機に直面する方々を難民に準じた形で保護する補完的保護制度の創設を始め、難民認定手続の透明性、信頼性を高める難民該当性判断の手引の策定、在留特別許可の申請手続の創設及び考慮事情の明示、そして難民の出身国情報の充実など、運用面においても保護すべき者を確実に保護するための措置になっていると評価するものでございます。

 また、修正案におきましても、難民調査官の人権に対する理解の深化や調査能力の向上を図ること等を定めるとしており、妥当なものと評価しております。

 公明党はこれからも、日本人と外国人が安全、安心に暮らせる社会の実現に全力を尽くしてまいることをお誓いし、私の賛成討論とします。

 ありがとうございました。(拍手)

伊藤委員長 次に、本村伸子君。

本村委員 私は、日本共産党を代表して、入管法改悪法案及び修正案に反対の討論を行います。

 本法案は、二〇二一年に廃案となった法案とほぼ同じ内容で、壮絶な不安を抱える方々の悲鳴のような声を聞こうとしない政府の姿勢は絶対に許されません。そして、法案審議において、送還の危険性のある当事者、家族、弁護士、支援者の参考人質疑が行われなかったことにも強く抗議をいたします。人権はそんなに軽いものであっていいはずがありません。

 そもそも難民認定がほかの先進諸国と比べても狭過ぎるのです。それゆえに何回難民申請を行っても難民と認められません。にもかかわらず、法案は、難民認定申請中でも送還が可能となっています。余りにも理不尽です。

 参考人から、出身国情報を把握する能力が弱いことが指摘されました。生命や自由が脅かされるおそれがある国への追放、送還を禁じた難民条約第三十三条第一項、ノン・ルフールマン原則に関わる特別な審査体制もありません。

 難民不認定だったウガンダのレズビアンの方について、裁判所が難民と認めました。三回目の申請で難民と認定された人々もいます。法務大臣、難民審査参与員の難民の判断が間違うこともあるのに、検証する姿勢もなく、審議の前提の資料も出さず、一体どこを信用しろというのでしょうか。

 参考人から、難民の追放、送還は、場合によっては死刑執行と同じ効力を持つと述べられましたが、その重い責任に応える真摯な姿勢がないではありませんか。まずは、難民認定の専門性のある第三者機関をつくることを最優先にするべきです。

 さらに、国連人権理事会特別報告者などからの国際人権法に違反するとの厳しい指摘に真摯に向き合うべきです。

 一部公開されたウィシュマさんの映像記録は、報告書が真実を隠蔽していることを明らかにし、出入国在留管理庁の命と尊厳を軽視する体質が本当に変わったのかを疑わせるものとなっています。全ての映像記録と資料を国会に提出し、死因を始め真相究明をすることは、入管の権限を強める法案審議の大前提です。

 これまで、全件収容主義の下、まともな医療すら受けられない長期収容が常態化し、ウィシュマさん始め死亡事件も相次いでいます。にもかかわらず、監理措置が適用されない限り常に収容が優先する原則収容主義が維持されており、収容に当たっての司法審査もなく、収容期間の上限もないことが国際人権基準の観点から批判されているのです。

 さらに、仮放免や在留資格のない子供を送還すること、医療を受けさせないことなどは、今でも子どもの権利条約違反です。在留特別許可申請手続は、定着性、家族統合、子供の最善の利益などについて考慮が尽くされる保証がありません。人道的立場から、子供と家族に今すぐ在留特別許可を出し、日本で安心して住み続けられるようにするべきです。

 なお、修正案は、難民認定申請に対する配慮、監理措置の適正の確保は、違反しても刑事罰もなく、不認定処分が手続違反で取り消されることもなく、実効性は全くありません。

 政府は、本法案を撤回し、国際人権基準に沿った人権尊重の制度に徹底的に見直すことを強く求め、反対討論といたします。(拍手)

伊藤委員長 これにて討論は終局いたしました。

    ―――――――――――――

伊藤委員長 これより採決に入ります。

 内閣提出、出入国管理及び難民認定法及び日本国との平和条約に基づき日本の国籍を離脱した者等の出入国管理に関する特例法の一部を改正する法律案及びこれに対する修正案について採決いたします。

 まず、宮崎政久君外三名提出の修正案について採決いたします。

 本修正案に賛成の諸君の起立を求めます。

    〔賛成者起立〕

伊藤委員長 起立多数。よって、本修正案は可決いたしました。

 次に、ただいま可決いたしました修正部分を除く原案について採決いたします。

 これに賛成の諸君の起立を求めます。

    〔賛成者起立〕

伊藤委員長 起立多数。(発言する者あり)お静かに。よって、本案は修正議決すべきものと決しました。

 お諮りいたします。

 ただいま議決いたしました法律案に関する委員会報告書の作成につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

伊藤委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

    〔報告書は附録に掲載〕

    ―――――――――――――

伊藤委員長 次回は、公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。

    午後二時三十分散会


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