衆議院

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第16号 令和5年5月16日(火曜日)

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令和五年五月十六日(火曜日)

    午前九時開議

 出席委員

   委員長 伊藤 忠彦君

   理事 谷川 とむ君 理事 藤原  崇君

   理事 牧原 秀樹君 理事 宮崎 政久君

   理事 鎌田さゆり君 理事 寺田  学君

   理事 沢田  良君 理事 大口 善徳君

      東  国幹君    五十嵐 清君

      石橋林太郎君    岩田 和親君

      英利アルフィヤ君    奥野 信亮君

      加藤 竜祥君    熊田 裕通君

      鈴木 馨祐君    田所 嘉徳君

      高見 康裕君    平口  洋君

      平沼正二郎君    深澤 陽一君

      山口  晋君    山下 貴司君

      鈴木 庸介君    中川 正春君

      山岸 一生君    山田 勝彦君

      吉田はるみ君    米山 隆一君

      阿部 弘樹君    漆間 譲司君

      日下 正喜君    平林  晃君

      鈴木 義弘君    本村 伸子君

    …………………………………

   法務大臣政務官      高見 康裕君

   参考人

   (上智大学総合人間科学部心理学科准教授)     齋藤  梓君

   参考人

   (タレント)      SHELLY君

   参考人

   (東京大学大学院法学政治学研究科教授)      橋爪  隆君

   参考人

   (茨城県立医療大学保健医療学部看護学科助教)

   (一般社団法人Spring幹事)         山本  潤君

   法務委員会専門員     白川 弘基君

    ―――――――――――――

委員の異動

五月十六日

 辞任         補欠選任

  東  国幹君     山口  晋君

  鳩山 二郎君     平沼正二郎君

  吉田はるみ君     山岸 一生君

同日

 辞任         補欠選任

  平沼正二郎君     鳩山 二郎君

  山口  晋君     東  国幹君

  山岸 一生君     吉田はるみ君

    ―――――――――――――

五月十六日

 子供の性虐待・性搾取被害悪化の現状に鑑み子供の尊厳と人権を守るための国際的連携の強化と国内関係法規の早期改正に関する請願(石破茂君紹介)(第一〇〇〇号)

 同(大河原まさこ君紹介)(第一一〇二号)

 民法・戸籍法の差別的規定の廃止・法改正に関する請願(岡本あき子君紹介)(第一一九三号)

 同(笠井亮君紹介)(第一一九四号)

 同(野田聖子君紹介)(第一二一七号)

 同(近藤昭一君紹介)(第一二二七号)

は本委員会に付託された。

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 刑法及び刑事訴訟法の一部を改正する法律案(内閣提出第五八号)

 性的な姿態を撮影する行為等の処罰及び押収物に記録された性的な姿態の影像に係る電磁的記録の消去等に関する法律案(内閣提出第五九号)


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     ――――◇―――――

伊藤委員長 これより会議を開きます。

 内閣提出、刑法及び刑事訴訟法の一部を改正する法律案及び性的な姿態を撮影する行為等の処罰及び押収物に記録された性的な姿態の影像に係る電磁的記録の消去等に関する法律案の両案を議題といたします。

 これより質疑に入ります。

 本日は、両案審査のため、参考人として、上智大学総合人間科学部心理学科准教授齋藤梓君、タレントSHELLY君、東京大学大学院法学政治学研究科教授橋爪隆君及び茨城県立医療大学保健医療学部看護学科助教、一般社団法人Spring幹事山本潤君、以上四名の方々に御出席をいただいております。

 この際、参考人各位の皆様方に委員会を代表して一言御挨拶を申し上げます。

 本日は、御多忙の中、御出席をいただきまして、本当にありがとうございます。それぞれのお立場から忌憚のない御意見を賜れれば幸いでございます。どうぞよろしくお願いをいたします。

 次に、議事の順序について申し上げます。

 まず、齋藤参考人、SHELLY参考人、橋爪参考人、山本参考人の順に、それぞれ十五分程度御意見をお述べいただき、その後、委員の質疑に対してお答えをいただきたいと存じます。

 なお、御発言の際はその都度委員長の許可を得て発言していただくようお願いいたします。また、参考人から委員に対して質疑をすることはできないことになっておりますので、御了承願います。

 それでは、まず齋藤参考人にお願いいたします。

齋藤参考人 本日は、よろしくお願いいたします。

 私、性暴力の被害に遭われた方の心理について研究をしております、上智大学総合人間科学部心理学科の齋藤梓と申します。また、同時に、公益社団法人被害者支援都民センターにて、性暴力を含め、犯罪の被害に遭われた方の支援に携わっております公認心理師、臨床心理士でもあります。本日は、研究や臨床で得られた知見を基に、改正案に関する意見を述べさせていただきます。

 基本的に、私は、今回の改正案に賛成をしております。私はずっと、様々な事件に関わる中で、なぜ、明らかに性犯罪だと思われるのにもかかわらず、届出の不受理や不起訴や無罪が生じるのだろうと理不尽を感じていました。もちろん、証拠には様々なものがあることは存じております。しかし、いろいろな司法判断や判決に接する中で、被害者心理に関する知見と司法での社会通念を基にした判断の間に乖離があることを感じておりました。人生の危機に直面した人の心理を、なぜそうではない通常の場合の心理を基に判断するのかということに不思議に思ったことも度々ございます。

 今回の改正案は、その全てを解決するものではありませんが、それでも以前よりも格段に被害の実態に即していると期待しております。

 お手元の資料のスライド二を御覧ください。

 まず、前提として、性暴力被害は、精神的後遺症の大きな出来事であることが分かっております。本当に膨大にございます研究の一部でございます、そこに書かれておりますのは研究の一部でございますが、被害後、PTSDになるリスクも、うつ病やアルコール依存、薬物依存になるリスクも上がります。性的被害経験のある学生は、被害経験のない学生と比べて、自己報告のレベルでは、自殺企図のリスクが女性で四・七倍、男性で九・七六倍上がるという調査結果もございます。

 スライド三を御覧ください。

 日本で行われました調査でも、性暴力被害経験がある場合、自殺企図のリスクが高まったり、死にたい、消えたいという気持ちになることが分かっています。

 性暴力の被害は、その人の意思や感情をないがしろにする暴力です。性的な行為をする場合、体が触れる場所は、非常にプライベートな場所です。時には命に関わる可能性のある場所です。安全に関わる行為ですので、いつ、どこで、誰と、どんな性的な行為をするかは、自分が決めてよいことのはずです。

 しかし、性暴力では、その人の意思や感情はないがしろにされます。被害を受けた方が、人であるならば、嫌だと言ったら聞いてもらえると思った、でも、聞いてもらえず、自分が何を思っているかは相手に関係がないんだ、自分は性的なものなんだと思ったとおっしゃることがあります。

 人は、意思や感情を持つ存在のはずです。その意思や感情をないがしろにすることは、被害を受けた人の尊厳や主体性を傷つける行為です。意思や感情を持つ一人の人として生きる根幹を揺るがす行為です。

 親密な関係の中で行う性的な行為と心身に深刻な影響を与える性暴力とを分ける大切なこととして、意思や感情が尊重されているかという点があります。ですから、今回、同意しない意思の形成、表明、全うが困難な状態という文言になったことは重要なことだと考えています。

 不同意性交等罪について述べるに当たり、現在までに分かっております、被害に直面したときの人の心理について述べます。お手元の資料のスライド四を御覧ください。

 そちらに書かれておりますのは、まず、恐怖や不安を利用した場合です。人は、予期せぬ出来事や恐怖を感じる出来事、自分の身の安全を脅かされる出来事に直面すると、まず、体が凍りつくフリーズ反応が起きます。まず頭が真っ白になって、その後、逃げられるだろうか、闘えるだろうかと、意識的、無意識的に判断をする、逃走と闘争の反応と言われますが、そういったものが起きます。

 こうした場合、ふだん取らない行動を取るということはリスクが高く見積もられるので、相手を振り切って逃げる、相手に攻撃をするという選択肢は、失敗したときに更に危険が迫るため、取られにくいという傾向がございます。あるいは、ノーと言ってみるということはあるかもしれません。しかし、多くの場合、それは聞き入れられません。

 逃げることも闘うことも成功しなさそうである場合、意識はあるけれども体が動かない、意識はあるけれども声を出すことができない、強直性不動反応というものが生じることが分かっております。又は、相手に従順にしていればこれ以上ひどいことをされないと思えば従順にしますし、友好的に接することで危険が回避できるならば友好的に接します。それは、受け入れているということではなく、人も生き物ですので、命の危険を避ける、身の安全を確保するための、選択せざるを得ない方略です。そして、選択せざるを得ないような状況は、容易に生じさせることができます。

 例えば、暴力や脅迫がなくとも、分かるよねという一言などで恐怖を感じさせることも、少しドアを強めに閉める、怖い顔をするなど、そのときのちょっとした動作で恐怖を感じさせることも可能です。あるいは、予想していなかった状況に驚き、体が動かなくなることもあります。障害を有する方の場合には、その方一人一人の障害の状態にもよりますが、例えば介助者は容易に相手を危険にさらすことができるかもしれません。そのような恐怖や不安を感じる状況では、同意しない意思の表明が困難となったり、あるいは、表明はされたとしても、それが全うされることが困難になり得ます。

 あるいは、そうした、直前に恐怖や不安を与えなくとも、同意しない意思の形成や表明、全うを困難にさせることは可能です。例えば、そもそも継続的な暴力があった場合には、既に、逆らってはいけない、自分は逆らうことができないという心理状態が形成されているため、同意しない意思の形成も表明も困難となります。

 また、アルコールや薬物で酩酊状態であれば、酩酊の程度によっては、やはり意思の形成や表明は困難になります。眠っているときには、そもそも意思の形成はできず、表明もできません。

 さらに、自分の所属しているコミュニティーにおいて、相手が自分より力を持っている場合には、その人の不興を買ってしまったら、自分はそのコミュニティーにいられなくなるかもしれません。社会的に地位が上の人に明確にノーと言うことが難しいのは、ノーと言うことが自分の生活や人生を壊しかねないからです。あるいは、祖父母やきょうだい、いとこから性行為をされて、拒否をすることは、親族や家族を壊すことになるかもしれません。そんな状況で、同意しない意思の表明や全うは極めて難しいことになります。

 このように、同意しない意思の形成、表明、全うが困難な状態は、多様な方法で、その状態をつくり出すこと、その状態を利用することができます。本日は、時間の関係もございまして詳細な例を述べることができませんが、不同意性交等罪、不同意わいせつ罪が成立し、その運用が被害者心理の実情に沿った適切なものとなるよう、被害者心理に関する理解を深める研修を徹底いただきたく思います。

 次に、性交同意年齢についてです。

 これまで、十三歳、十四歳の子供たちが大人に手懐けられ、この人に嫌われたら生きていくことができないと、逆らう状態にさせられて被害に遭うということは多く存在しました。しかし、私が関わった事案では、起訴に至らなかった事案も多くございます。その子たちが、それから先の将来、進路をたがえたりですとか、思うように生きられなくなったにもかかわらず、起訴に至らなかった事案は多くございます。

 スライド五に示しましたが、性的行為に同意するためには、行為の性的な意味を認識する能力、行為が自己に及ぼす影響を理解する能力、性的行為に向けた相手方からの働きかけに的確に対処する能力の三つが必要であると法制審議会の部会で検討がされました。先述しました手懐けなどはまさに典型的ですが、中学生くらいの子供が大人からの巧妙な働きかけに自力で的確に対処することは困難です。

 また、性的な同意とは、強制力のない、対等な関係性があって初めて成り立ちます。発達途中の子供にとって、能力の差、人生経験の差、利用できる社会的資源の差は、五歳離れていたならば十分に大きく、およそ対等とは言えません。もちろん、二歳差、三歳差でも十分に大きなものです。

 性行動に関する調査では、十四歳など若年の子供が性交を経験した場合、その後、避妊をしない、アルコールを飲んでの性行動を取る、不特定多数との性行動を取るなど、ハイリスクな性行動を取るリスクが上がるという結果も見られています。それは、つまり、二の、行為が自己に及ぼす影響を理解する能力がまだ十分ではないという結果です。

 このように、同意に関する能力がまだ発達途上である対象に性的な行為を行うということは、相手を一人の人間として尊重しているとは言い難いのではないかと思います。法制審議会の部会でも、十三歳の子供と十八歳の成人の例が述べられていましたが、性的同意とは何か、どのようなときに成り立つのかの周知徹底をいただきたく思います。

 子供のことについて、公訴時効も述べさせていただきます。

 私自身が行った調査では、子供は、幼いときは、自分がされていることがどのようなことか分からず、中学生ぐらいで、ああ、これは性的な行為というものかもしれないと思い至っても、それが性暴力であるという認識はできず、人に相談すべきことだということが分かりません。この分からない、相談できない間に時効までの時間が進んでしまうことは、とてもアンフェアだと感じますし、理不尽なことだと感じます。

 私だけではなく、ほかの、性暴力被害の被害者の支援に関わる人たちは、子供の頃に被害に遭った人が、三十代、四十代になってやっと相談にいらっしゃるということに度々遭遇します。もちろん、届け出たとしても、起訴されるには証拠などが必要ですし、時間がたてばたつほど証拠が散逸する可能性が高いことは分かります。それでも、本改正により、被害に気がついたとき、やっと被害を人に言えたときには、届け出る権利さえない、そうした事態が少しでも減ることを願っております。

 しかし、一点、公訴時効の点では述べさせていただきたいこともございます。

 法制審議会刑事法部会のときにも、内閣府の調査を基に時効の延長を五年という意見がございました。しかし、その調査はそもそも、六割の人は調査時点まで誰にも相談していないというデータです。この内閣府の調査の解釈の仕方は検討する必要があるかと思います。改正の前提となる根拠が不足しているということで延長が五年にとどまるとするならば、今後、今回改正から一定期間後に見直しをするまでに、国として適切な被害開示についての調査を行い、エビデンスを積み重ねていただきたいと思います。

 調査でいうならば、司法面接の適切な運用、性的面会要求の罪、撮影罪なども、改正された際には、どのような運用がされているか、そして、法律の枠内にとどまらず、実際にどのような実態があり、どのような問題が存在しているのか、調査を重ねていただきたいと考えております。

 今回の改正で、会議に参加されていた皆様方は、被害の実態に真摯に耳を傾けてくださったと感じています。被害当事者の方々や支援者が声を上げ、社会にも性暴力被害の実態が知られるようになってきました。しかし、日々性暴力の事案に触れている私自身さえも、見えていない実態というのはまだまだたくさんございます。性的面会要求の罪や撮影罪の周辺には特にこれまで予想もしていなかった被害が発生しています。

 国が、社会が関心を持ってこなかった結果、被害の実態が把握されず、加害者に理不尽にも傷つけられた人が司法の場で理不尽な事態に直面するといったことをなくすためにも、調査を重ねて、実態を理解する研修を重ねていただきたいです。

 また、今回の法改正の適切な運用には、性的同意とは何か、性的同意の成り立つ対等な関係とは何か、人々が知っていく必要があると考えております。それはひいては、お互いを尊重する人間関係について学ぶということです。子供たちへの、対等性ということを含んだ性教育はもちろんですが、大人が性教育を知らないので、大人への啓発も力を入れていただきたく思います。

 しかし、それでもなお、残念なことに、性暴力は発生するのだろうというふうにも思っております。性暴力の被害に遭った方が、当たり前に、適切に支援を受けることができる社会になるということを切実に望んでおります。

 本日は、意見に耳を傾けていただきまして、誠にありがとうございました。これで意見を終わらせていただきます。(拍手)

伊藤委員長 ありがとうございました。

 次に、SHELLY参考人にお願いいたします。

SHELLY参考人 皆さん、こんにちは。タレントをしておりますSHELLYと申します。よろしくお願いします。

 今日は、こんな貴重なお時間をいただきまして、ありがとうございます。

 私は、タレントのお仕事をしながら、ライフワークとして性教育をやらせていただいております。雑誌やラジオ、テレビで発信するのはもちろんなんですけれども、性教育というのは、今まさに性経験を積み始めている、また、これから積み始めようとしている世代にいち早く正しい情報を届けるのが大事と思いまして、ユーチューブという若い人たちが一番使っているだろうところに向けて、私はユーチューブのチャンネルをつくって、性教育チャンネルをつくって発信しているんですけれども、私自身も日本の義務教育、公立の小、中、そして高校を出ていまして、日本の学校で受けた性教育、とてもじゃないですけれども、今役立っているなとは思うような内容ではありませんでした。

 ということで、私は、それ以降、大人になって、いろいろな話を聞いて、セックスによるネガティブな経験をする人を一人でも減らしたいという思いでいろいろ性教育を伝えています。

 ユーチューブをやっていますと、本当に若い世代からの声が直接届いたり、メッセージ、コメントという形で届くんですけれども、実は、二年ほど前に、まさに今日のお話の議題になっている性交同意年齢についての動画を配信しました。その動画も本当に反響もとても大きかったんですが、今日は、せっかくなので、その動画にいただいたコメントを幾つか紹介させていただきたいと思います。

 十八歳のときに被害に遭いました。性的同意教育を受けていなかったので、被害だとすぐには分かりませんでした。つら過ぎて、被害だと認めたくなかったのもあります。PTSDを発症し始めて、ようやくあれは間違ったことだったのだと確信し始めましたが、それをレイプだと呼ぶのに、被害から二年かかりました。小さい頃から性的同意を習っていれば、性被害に遭ったのだとすぐに気づいただろうし、加害者との距離をすぐに取れただろうと思います。十八歳だった私が理解できなかったことを十三歳の子供が理解できるわけがない。早く法改正してほしいです。

 同意年齢が十三歳、中一なのに、文部科学省は中学生では教える必要がないって、すごく矛盾していませんか。性について何も知らない子供が自分で判断できるわけがない。お恥ずかしいですが、自分(十七歳)もそうでした。同意年齢なんて初めて聞きましたし、そのような矛盾に全く気づきませんでした。日本の性教育は遅れているということをはっきり実感できました。

 中三女子です。私は、SHELLYさんの動画を見るまでは、何か大人の方にされても、児童ポルノ法みたいなもので、男性側が一発アウトだと思っていました。でも、性同意年齢という法律があると聞いて、その瞬間、めちゃくちゃ鳥肌が立ちました。幸いに、今まで自分は男性に何かされるということはなかったからこそ、何かに守られていると思った盾がなくなってしまって、めちゃくちゃぞくぞくっとしました。

 今、自分は十八歳ですが、性的同意年齢というのがあるのをこの動画で初めて知りました。実際、自分の友人の何人かはそのような被害を受けたことがあります。友人の一人が電車で痴漢に遭遇してしまったときがありました。された直後に、私には、彼女は電話してきて、泣きながら、すごい動揺しながら、助けてと言っていました。あのときの彼女の恐怖におびえている声は忘れられません。でも、彼女は警察に被害届を出すこともなく、次の日から何事もなかったかのように過ごしています。彼女は今は何事もなかったように振る舞っていますが、やはりどこかで痴漢の被害に遭った恐怖を抑えながら苦しんでいるのではないかと思います。私はそのような被害に遭ったことがないので分かりませんが、十八歳の私でも、その友人でも分からないし、恐怖がたくさんです。なのに、十三歳の年齢なんてもっと危険だろうし、恐怖感が強くなってしまうと思います。

 被害の届出先である警察、また法律を作る人たちなど、男性ばかりなのも問題だと思います。

 そんなことないですよね。

 十代女性が力で抵抗なんて物理的に不可能ですし、著しく抵抗できるかどうかは、頭が冷静な状態の成人男性だけです。政府には、理にかなった対応が可能な法改正に取り組んでいくべきです。

 政治家たちが本気で、そういう恋愛もあるって主張しているの、本当に気持ち悪い。

 もうやめましょうかね、気持ち悪いとかね。私の言葉じゃないですからね、コメントです。

 とにかく本当にいろいろな意見をいただきました。やはり法改正を望む声、そして、この動画だけじゃなくて、いろいろな動画に必ずついてくるコメントは、性的同意をそもそも知らなかったというコメントが本当に多いんですよね。

 なので、ここで改めて、もう皆さんは御存じと思いますけれども、改めて性的同意のお話をさせていただきたいと思います。

 性的同意というのは、全ての行為に、毎回、今ここで私はあなたとこの行為がしたいという確認を取ることです。同意を取るということ自体、日本だとちょっとまだなじみがないかもしれません。もちろん、世代別で見たら、大人の世代になればなるほど、ちょっとそこの理解が少ないのかなという感覚もあります。

 夫婦だから、つき合って長いし、もう我々はツーカーだから、言葉で一々確認するなんて、そんなの粋じゃないよ、ムード壊れるじゃんって思われている方が、加害者になる可能性があるので気をつけていただきたいと思います。

 性的同意といえば、ノー・ミーンズ・ノー、皆さん聞いたことがあると思います。嫌と言ったら、そこまで。お酒を飲んでいようが、彼のおうちに遊びに行こうが、二人でホテルに入ろうが、性行為がある程度始まって二人とも裸で行為が進んでいっていたとしても、あっ、やっぱりやめよう、もうここまでにしようとどっちかが言えば、ストップ、そこまで。それ以上したら性暴行です。この理解を本当にとにかく早く進めたいと思っています。

 ただ、実はこれも、もう一昔前の話です。今はイエス・ミーンズ・イエス、イエスのみが同意という理解が進んでいます。なぜなら、ノーと言えない人がいます。ノーと言えない関係性があります。ノーと言えない状況もあります。なので、したい、しようよという積極的な同意のみが同意というふうに捉えられるというのが、今、世界的な理解になっています。

 嫌よ嫌よもという言葉も、現行の法律ができた明治時代の話ですので、そんなことを言って、いろいろな被害者を傷つけたり増やしたりするようなことはもうやめましょう。

 性犯罪の話になると、なぜか決まって、でもお酒も飲んでいたんでしょう、彼の家に行っていたんでしょう、えっ、そんな時間に出歩いていたの、どんな服着ていたの、それってレイプなのかな、それ性暴行なのと、被害者を疑うような声が上がることがあります。なぜなんでしょうか。

 実は、ロサンゼルス市警が二〇一四年に行った調査では、虚偽と証明された事件は、届出されたレイプ事件の約五%未満という数字が報告されています。これは、実は国際的な調査で出た数字と一貫性が取れているということなので、世界的に、性犯罪の虚偽申請、虚偽の届出というのは五%未満ぐらいだということなんですよね。つまり、性被害について人はうそをつかないんです。大事なことなのでもう一度言いますね。性被害について幾らでもうそはつきません。

 性被害、被害者を生まないための教育、こんなものは実は存在しないんですね。被害者を生まない教育じゃなくて、加害者を生まないための教育、こういう教育、包括的な性教育というのが本当に必要なんです。

 そして、もう一つ必要なのは、被害者をしっかり守る法律です。今のままではまだまだ被害者をしっかり守る姿勢は足りていないと私は思います。性交同意年齢を引き上げます、括弧、条件付で。条件が必要なのでしょうか。

 皆さん、思い出してください、十代の頃。少しお時間を上げますね、ちょっと昔でしたよね。中学のときの一個上って、めちゃくちゃ先輩でしたよね。もっと言うと、三月、四月の、誕生日が一か月ずれて学年がずれただけで、もう敬語を使う関係性。学校の中の縦社会。年齢差が一つ違うだけでこんなに上下関係が生じるのに、五歳離れないと対等な関係性じゃないということは証明できないというのは、ちょっと日本には本当に合わない数字だなと私は思いました。中学生ぐらいは無条件で守りましょう。そのぐらいは今日みんなで、大人たちで約束してあげましょう。

 もう一つ、今回、私が心配な点があります。それは公訴時効についてです。現状から五年引き延ばしというのは、まだまだ短いと思います。公訴の、停止を検討すべきだと思います。

 今の引き延ばしのエビデンスとされている資料を見させていただきました。無理やりに性交などをされた被害を誰かに打ち明けたり相談した人、括弧五十二人に聞きました、少ない。一億何千万人の国ですよね。百年越しのこの法改正、五十二人の意見で決めちゃうんですか。ちょっとこれは、正直、私はやる気を感じなかったですね。本気でこれに取り組もうという改正の数字ではないなというふうに感じました。本気で性暴力と向き合い、なくそうとしている数字だったら、もっともっとちゃんとしっかりしたアンケートを取れると思います。

 性的同意などの教育を受けていない子供は、そもそもその出来事が、先ほどもお話がありましたけれども、性暴力だということを認識するまでも時間もかかりますし、その相手が、例えば、親、兄弟、親戚、学校の先生、コーチ、身近な信頼する相手だったら、それを受け入れるのにも、そこに向き合うのも時間がかかりますし、それをさらに自分の家族に打ち明けるのも、もう本当に容易なことじゃないということも想像がつくと思います。それを全て乗り越えて、やっとの思いで頑張って訴えるぞと出てきた人たちに、タイムアップ、時間切れです、残念と門前払いするのだけはやめましょう。

 今の性犯罪に対する法律は余りにも甘過ぎます。そもそも、性犯罪と認められるのにハードルが高過ぎます。今回の見直しは、もちろん時間もちょっとかかりましたけれども、本当にすばらしいことだと思います。変えるために一生懸命努力してきてくださった皆さんに本当に感謝しております。せっかく百年越しでやるんですから、惜しいとならないように、しっかり被害者を守る法律を、そして、今後は性加害を生まないための包括的な性教育をしっかりと進めて、性加害を撲滅していってほしいなと思います。

 皆さん、貴重なお時間、ありがとうございました。(拍手)

伊藤委員長 ありがとうございました。

 次に、橋爪参考人にお願いいたします。

橋爪参考人 おはようございます。ただいま御紹介いただきました東京大学の橋爪と申します。専門は刑法でございます。

 本日は、このように参考人として意見を述べる機会をいただきまして、大変光栄に存じております。

 私は、法制審議会刑事法部会の委員として、今回の改正をめぐる議論に参加いたしました。本日は、部会における議論を踏まえまして、とりわけ刑法の研究者の視点から、若干の意見を申し上げたいと存じます。時間が限られておりますので、不同意性交等罪の創設、いわゆる性交同意年齢の引上げの二点に絞って意見を申し上げます。A4判で二枚の資料をお配りしておりますので、それに即して進めてまいります。よろしくお願い申し上げます。

 第一に、不同意性交等罪の新設でございます。

 先に結論から申し上げますと、今回の改正は、現行法では処罰範囲が明確ではなく、また、判断のばらつきが生ずる可能性があった点を改め、被害者の自由な意思決定が困難な状態に基づく性行為を確実に処罰することを目的としたものと評価できます。

 すなわち、現行法の強制性交等罪は暴行、脅迫を手段として要求しているところ、判例によれば、本罪の暴行、脅迫については、被害者の抗拒を著しく困難にする程度が要求されていました。これは、犯行当時の具体的状況を踏まえて、被害者が心理的又は物理的に抵抗困難な状態に陥ったかを問題にするものでありますので、暴行、脅迫の程度それ自体を問うものではありませんが、それでも、暴行が軽微な場合、犯罪の成立が否定され得る可能性が残るものでありました。また、その程度をめぐって、判断のばらつきが生じているとの指摘もありました。

 また、準強制性交等罪は、心神喪失又は抗拒不能に乗じた性行為、すなわち精神的又は物理的に抵抗困難な状況に基づく性行為を処罰しておりますが、これについても、その原因となるような事実関係が類型化されていないことから、具体的にどのような状況があればこれに該当するかが明らかではないといった問題点がございました。

 更に申しますと、国民一般に対するメッセージという観点からも、現行刑法では、意思に反する性行為が犯罪を構成するという基本的な出発点が、少なくとも条文の文言からは明確に示されていないという問題があったことも、これは否定できません。また、自由な意思決定が困難な状況における性行為が犯罪を構成するという前提からは、そもそも暴行、脅迫の有無によって強制性交等罪と準強制性交等罪を区別する必要性も乏しく、両罪は一元的に把握すべきです。

 今回の改正法案における不同意性交等罪は、このような問題意識に基づく改正と言えます。すなわち、改正法では、同意しない意思の形成、表明、全うが困難な状態に基づく性行為、すなわち自由な意思決定が困難な状態における性行為が犯罪であることを明示しています。このように、改正法では、同意しない意思の形成、表明、全うが困難な状態が処罰の可否を判断する上では決定的に重要でありますが、被害者がこの状態にあったかを判断するに際しては、被害者にどのような事情があったか、あるいは犯人からどのような働きかけがあったかを考えることが必要です。そこで、改正法は、意思決定が困難な状態の原因となり得るような行為や事由を一号から八号で具体的に列挙しています。

 このように、改正法における不同意性交等罪が成立するためには、まず、原因となる行為や事由のいずれかに該当することが必要であり、それによって、さらに、被害者が同意しない意思の形成、表明、全うが困難な状態に陥っていることが必要です。この両者を共に認定できる場合に限って本罪が成立します。例えば、三号ではアルコールの影響が挙げられておりますが、被害者がお酒を飲んで気が大きくなって性行為に応ずれば、直ちに犯罪を構成するわけではありません。あくまでもアルコールの影響で意思の形成、表明、全うが困難な状態に陥ったことを更に認定する必要があります。

 以下、個別の要件につきまして、簡単にコメントをしておきたいと存じます。

 まずは、括弧三番ですが、同意しない意思の形成、表明、全うが困難な状態です。

 これは、被害者の自由な意思決定が困難な状態に対応する概念ですが、改正法案では、意思の形成、表明、全う、いずれかの段階で困難があれば犯罪が成立することを明確にしています。例えば、継続的な虐待によって抵抗する意欲を失って性行為を受け入れた場合については、同意しない意思の形成が困難と言えます。また、相手に対する恐怖から、嫌だという意思を表明できなかった場合には、これは表明困難な事例に該当します。さらに、同意しない意思を表明しましたが、相手に押さえつけられてしまい抵抗できなかった場合には、意思の全うが困難な状態に該当します。

 このように、意思を形成、表明、実現する段階ごとに困難さが生じたかを問題にすること、これによって、被害者の明示的な拒絶や抵抗が認定できない場合であっても、意思に反する性行為であれば処罰できることが明確にされています。

 もっとも、改正法は、自由な意思決定が困難な状態か否かを問題にするものでありまして、内心において被害者の意思に反することそれ自体を要件とするものではありません。これは、行為者の内心それ自体を刑事裁判で判断することが極めて困難であること、また、そもそも性的同意の内容が一義的には明確でないことから、内心それ自体を要件とするよりも、被害者の自由な意思決定を妨げるような外部的状況があったか否かを問題にした方が、処罰すべき行為を確実かつ安定的に捕捉できるという理解に基づくものです。

 次に、困難な状態の原因となる行為、事由です。

 繰り返し申し上げますように、本罪の中心的内容は、同意しない意思の形成、表明、全うが困難な状態ですが、この状態の存否の判断を安定的に行うために、自由な性的意思決定が困難になる原因となり得るものを広く拾い上げて、具体的に列挙しています。さらに、現実の事件においては、列挙した原因行為には厳密には該当しないが、同様の影響を与える行為も想定し得ることから、改正法では更に、その他これらに類する行為も原因行為に含めています。

 このような改正法案の規定ぶりは、行為態様によって処罰を限定することはなく、処罰の隙間が生じないように、意思に反する性行為を網羅的に罰しようとする態度の表れと評価できようかと思います。また、恐怖によるフリーズ、虐待による心理的反応、地位、影響に基づく不利益の憂慮などを明示した点も、これらが性犯罪の深刻な手段たり得ることを明確に規定したという意味において、重要な意義があります。

 なお、改正法案百七十六条二項は、誤信類型について特別の取扱いを規定しています。すなわち、被害者が何らかの事情について誤信して性行為に及んだ場合については、常に同意を無効として性犯罪の成立を肯定するのではなく、例えば治療のために必要であるとだますなど、わいせつなものではないとの誤信、また、相手を夫と誤信するような人違いの場合に限って、性犯罪の成立を肯定しています。

 ここでは、性行為を行う際の誤信、誤解といっても多様なものがあり得るところ、その中には性犯罪として罰すべきではないものも含まれていることから、性的意思決定をする上で重要な事実について誤信している場合に限って犯罪の成立が肯定されています。

 続きまして、二番に移りますが、いわゆる性交同意年齢の引上げについて意見を申し上げます。

 性交同意年齢とは、対象者の年齢だけを基準として、性的同意を無効とする制度です。もちろん児童の心身の発達には個人差がありますが、現行法は、少なくとも十三歳未満の者が有効な性的同意をすることはあり得ないという前提から、十三歳未満の者の性行為を一律に禁止し、処罰対象にしていると解されます。もっとも、十三歳以上十六歳未満の児童についても有効な同意がなし得るのか、むしろ、十六歳未満については有効な同意がなし得ないとして性交同意年齢を十六歳に引き上げるべきではないかということが問題とされています。

 この点に関して、法制審議会の議論では、性的行為の意味を理解する能力と、状況に応じて対処する能力の区別が重視されました。すなわち、十三歳以上十六歳未満の児童は、性的行為の意味を理解することは一応可能であるとしても、相手との関係においては、状況に応じ適切に対処し、自らの意思決定を貫徹する能力が十分ではないという理解が共有されました。つまり、およそ誰に対しても性的同意ができないとまでは言えない、しかし、相手との関係によっては、相手の言動の影響を受けやすく、また、状況に流されてしまい、十分に考えて適当な判断をすることが困難な場合があり得るということです。

 こういった理解からは、十三歳以上十六歳未満の性行為を全面的に禁止、処罰するのではなく、非対等な関係に基づく性行為に限って、児童が適切に対処することが困難であり、それゆえ有効な性的同意が肯定できないとして、処罰範囲を拡張することが可能です。十三歳以上十六歳未満の者に対しては、誰に対しても性的意思決定ができないわけではなく、相手との関係においては能力が十分に発揮できないという発想です。

 このように、非対等な関係性に基づいた性行為を罰すべきと解した場合、難しい問題は、非対等な関係性をどのような観点から法文上規定するかという点です。この点につきましては、実質的な判断をするか、形式的な判断をするか、それとも両者を併用するかという観点から、三つの選択肢があり得ました。

 すなわち、一番ですが、当事者の現実の関係性を個別具体的に評価した上で、対処能力が欠如するような非対等な関係性と言えるかを認定し、非対等な関係性が認定できる限度で処罰をするというふうな実質的な判断、これに対して、二番ですが、専ら年齢差という観点のみから処罰範囲を設定する形式的な要件、さらに、三番ですが、年齢差という形式的要件と現実的な関係性の実質的判断を共に要求する判断、これら三つの可能性があり得ました。

 本来、当事者が対等な関係を構築していたか、すなわち、お互いの意思を十分尊重し合う関係を有していたかということは、当事者ごとに個別に具体的に判断すべき問題でありますので、理想を言えば、一番あるいは三番の選択肢が適当であったのかもしれません。しかし、個別の関係性を実質的に判断することは、当然ながら判断のばらつきによる混乱が生じますし、また、当事者間の関係性や交際の状況について裁判で証明することは、被害者側に負担が生ずることも懸念されます。

 このような問題意識から、法制審の部会では、二番の方向、すなわち年齢差という専ら形式的な観点から処罰の限界づけが提案されるに至ったわけです。すなわち、実質的には、非対等であり、児童の主体的、自律的な判断が困難な関係性に基づいた性行為を処罰したいところ、それを個別に認定することが困難であるがために、非対等性の判断基準として年齢差に着目するというふうな発想です。

 この点に関して御注意いただきたい点は、年齢差の要件を満たした場合、当事者の関係性を問わず、全ての性行為が処罰対象になる点です。したがって、この年齢差であれば対等な関係に従って主体的な判断ができる場合もあればできない場合もあるという程度の年齢差では不十分であって、あくまでも、これだけの年齢差があれば、およそ対等な関係性はあり得ず、有効に自由な意思決定をすることは全く考えられないといった年齢差を設定しなければ、年齢差という観点だけで行為者を罰することは正当化できません。このような前提からは、改正法案の五歳という年齢差要件には、処罰すべきでないものを処罰対象に含めないという意味において、十分な合理性があると考えております。

 私の意見は以上でございます。御清聴、誠にありがとうございました。(拍手)

伊藤委員長 ありがとうございました。

 次に、山本参考人にお願いいたします。

山本参考人 おはようございます。

 二〇二〇年から開始された性犯罪に関する刑事法検討会、法制審議会に委員として参加しました、一般社団法人Spring幹事の山本潤と申します。

 本日は、今回の改正の私から見た意義と積み残された課題、また、今後、国として実施していただきたいことについてお話ししたいと思います。私の資料はこちらにありますので、見ていただければと思います。

 今回の、同意しない意思という言葉が文言に入ったことは、非常に評価すべきことだと思いますし、是非改正を進めていただければと思います。また、法制審議会でも、被害者が同意していない性的行為は処罰の本質であるということに関して異論はありませんでした。

 しかし、昨年十月に出された試案においては、拒絶の意思を形成し、表明し又は実現させることが困難との文言が出されていました。これを聞いたときに、なぜ、これだけの議論を重ねても、拒絶という文言が出てきて、言っても言っても伝わらないのかと非常に絶望感を覚えたことを覚えています。

 これは、被害者に拒絶の意思、抵抗の義務を課すかのように受け取られる可能性があること、また、被害者の立場からすると、拒絶の意思をあなたは形成できましたか、表明できましたか、実現できましたかというふうに言われても、私の場合もそうですけれども、自分が本当に嫌で拒絶したかったんだというふうに思い至るまでには非常に長い時間が必要なわけですね。私の場合は二十年間ぐらいかかりました。

 ですので、拒絶の意思を形成の段階で処罰することが可能ということは、ノーという意思が形成される前も処罰できる範囲なんですよということは説明されましたけれども、非常に分かりづらいということと、また、被害の実態を正しく捉えられていないということで、被害者側の委員からも反対の意見、また社会からも反対の意見が示されたと思いますけれども、それで、同意しない意思を形成し、表明し若しくは全うすることが困難というふうになったことは非常によかったなというふうに思っています。

 この意味合いについては先ほど橋爪さんが説明していただけたと思いますけれども、この八つの例示列挙で、同意がない行為、場面が明確になり、同意しない意思が文言に取り入れられることにより、同意の有無を中心に処罰対象が考えられるようになることを今後期待したいと思います。

 また、これについて、括弧二のところなんですけれども、今までは、著しく抵抗困難なほどの暴行、脅迫がなければなかなか罪に問えない、警察に行っても、あなたの暴行や脅迫の程度は激しくないから、なかなか裁判に行っても難しいと思うよというふうに言われて、諦めてしまうということが多かったわけですね。それを、法制審議会の議論において、程度は問わないということを確認しましたし、これは有形力の行使があればそれでオーケーなんだということを、是非、司法職員、警察官、検察官にも周知していただければと思いますし、私たちも認識する必要があることだと思います。

 また、そのほかの列挙されている行為や事由も、それ自体の程度を問う構造になっていないということなので、この行為があったということをまず明確に確認し、その上で、同意しない意思を評価していただければと思います。

 一方、処罰範囲については懸念しているところもあります。

 同意がなく、対等性がなく、強制性がある性的行為は性暴力です。しかし、様々な社会的な認識が異なる状況において、そして、対等性についてなかなか理解されていない現状において、この法律で正しく捉えることができるかなということは懸念しています。

 例示列挙の一つに、経済的、社会関係上の地位に基づく不利益の憂慮が挙げられました。しかし、高校生と教師、児童養護施設などに入っている入所者と施設職員という、明らかに対等でない地位、関係性を利用した性的行為が性犯罪として認められるのかということについては疑問が残ります。法制審議会においてもこの点を指摘しましたが、個別に判断すると伝えられるものでした。

 しかし、同じ学校の教師と生徒であれば、教師は生徒の個人情報を一方的に把握し、成績を評価する立場にあり、決して対等ではありません。また、児童入所施設においても、入所者の待遇や環境を左右することができるのが職員です。そのような影響力の下での被害者が同意していない性的行為が十分に処罰対象になるとは、これまでの裁判例や運用を見る限り、とても思えません。

 資料の方の、資料二にある刑法改正市民プロジェクトの附則案の、附則のところの二項にあるんですけれども、やはり、教師と生徒、施設職員と入所者など明らかに対等でない地位、関係を利用した性行為を処罰するための検討を加え、必要な措置を講じてほしい、附則に入れてほしいという要望になっております。

 ほかにも、レジュメに戻りまして、アメリカの方で、対等でない、黙示の強要がある例として挙げられているのが、医療関係者と患者、宗教関係者と信者、刑務所、矯正機関職員と受刑者、雇用者と被雇用者などの明らかに対等でない立場についてはこのような例があるということを示されているわけですから、更なる改正を地位、関係性においても検討してほしいと思います。

 また、二に移りまして、障害児者であることによって他者の援助を必要とする立場の方は、相手の意思に反する表明をできにくい立場にあります。齋藤さんからも説明されましたけれども、そのような依存的な状態にある人に対し、施設職員、援助者という立場を利用して性暴力を行うことは、被害当事者にとって性的搾取でもありますし、親や親族などと同じように信頼する立場の人から加害を加えられるわけですから、非常にダメージも大きく、心身に有害です。

 このような被害に関しても、心身の障害や、虐待に起因する心理的反応や、地位、関係性の不利益憂慮などの例示列挙で個別に対応するというふうに伝えられましたけれども、障害のレベルや反応というのは非常に様々ですし、日常的に障害者に接している施設職員であったり援助者であってもなかなか分かりにくいというところもあるわけですね。そのような人たちでも分かりにくいことを、司法職員が適切に判断できるのかなということを思います。

 しあわせなみださん、資料四の、最後のページの要望書にもありますけれども、対人援助職も含めた地位、関係性規定を要望されています。附則につけて検討していただければと思っております。

 次に、性的同意年齢についてお伝えしていきます。

 中学生でも成人と真摯な恋愛ができるというような言説がはびこっていましたので、少なくとも、五歳以上の年齢差があれば対等な意思決定ではないという認識が法制審議会で得られたのはよかったと思っています。国会答弁の中でも、例として、十五歳の高校一年生と二十一歳の大学生が性交した場合、高校生の同意があっても罪になるのはどうなのかというふうな議論がありました。

 様々な意見や、また、ちょっと誤解しているところもあるのかなというふうに思うんですけれども、法制審議会で佐藤陽子委員が、性的行為をするかどうかに関する能力、一、行為の性的な意味を認識する能力、二、行為が自己に及ぼす影響を理解する能力、三、性的行為に向けた相手方からの働きかけに的確に対処する能力が備わっている場合、性的行為をするという能力があるというふうに考えて、進めてきたというところがあります。

 私としては、やはり段階的に発達するのではないかということをお伝えしていまして、一については中学生レベルであれば理解できるようになることもあるのかなと思うんですけれども、二の自己に及ぼす影響を理解する力や、性的行為に向けた相手方からの働きかけに的確に対処する能力に関しては、それ以上の認知能力の発達や社会的経験が求められるかと思います。

 年少者が同意だというふうに思っていても、年長者からそのように手懐けられたり、仕向けられたり、思い込まされている場合もありますし、性交すれば起こる、性感染症や、妊娠したり、また、妊娠して、継続が難しいから人工妊娠中絶をしなければいけないというような、そういう影響についても理解して的確に判断する能力が備わって初めて真の同意と言えるのではないでしょうか。

 このような状況が、意思決定が必ず対等性を欠く年齢差として、先ほど五歳差になったということを説明いただいたと思うんですけれども、被害者支援側の委員からは、三歳差が妥当であるという意見も出されていました。カナダにおいては、成人、十八歳なんですけれども、これに対して十六歳未満というふうに、二歳差であるという国もあります。

 自由な意思決定、対等な意思決定ができる年齢は何歳なのかということは、今後、調査結果を踏まえて検討していただきたいと思いますし、私の意見としては、日本においても、成人、十八歳以上から中学生年齢、十六歳未満に対する性的行為は処罰の対象ではないかと思っています。そこは最低限守らなければいけないところなのではないかという理解をこの日本社会で共有できるのではないかと思っていますが、いかがでしょうか。

 次に、公訴時効について述べたいと思います。

 公訴時効は五年の延長であり、これについては非常に不満を持っています。

 海外の調査報告書で、こちらに座っております齋藤さんが法制審議会でも説明していただいていましたけれども、ドイツでは千人以上の生存者を対象とした、十八歳未満の子供に対する児童性的虐待を被害者が報告したときの平均年齢が五十二歳だった、また、アメリカの男性の児童性的虐待の生存者を対象とした調査ですと、最初の暴露まで、最初に誰かに話すまでの平均期間が平均二十一・四五年だったという調査があります。これは、五年延長でとてもカバーできるような年齢ではないと思います。

 日本の臨床現場において被害者治療を行っている委員の方たちからも、三十代はせめてカバーしてほしいというふうに伝えられていましたけれども、このままでは三十三歳ということになります。

 括弧三のところですけれども、ほかの方も言われていましたけれども、被害から五年が経過するまでの間に被害が外部に表出されているという内閣府の調査を根拠として今回の改正になりましたけれども、これは、相談できなかった約六〇%の人、この調査において、女性の五八・四%、男性だと七〇・六%が、そのときまでに誰にも相談していないわけですね。この被害に遭ってから相談までの期間についての質問は、相談した中で取った数字であって、大多数の人が五年以内に相談できたわけではないということを踏まえていただいて、しかも、それを回復してから言える、それは相談できた年代ですから、司法機関に言えるようになるまでにはすごくまた時間がかかるわけです。

 長期的な被害の影響、人生への損傷、そしてそれを回復するまでにかかる時間ということを考えていただくと、公訴時効の方は更なる検討が必要だと思います。

 スイス刑法においては、十二歳未満の児童に対しての性犯罪がなされた場合には、これは時間がたったから決して許される罪ではないということで、時効を撤廃したということです。ドイツ刑法も、三十歳まで停止して、残り二十年間訴えられるということで五十歳までになっています。フランス刑法も、強姦については、未成年者に対して行われた場合、成人に達して三十歳から時効。四十八歳までが時効ということになっています。

 そのような諸外国の例も踏まえまして、日本でも、証拠がある、DNAがある、撮影などが残っている、そういうケースにおいてきちんと加害を、罪を問うことができるようにしていただければと思います。

 性犯罪加害と治療教育についての書籍の中にありますけれども、加害者治療教育の研究では、一人の性犯罪者は生涯三百八十人の被害者を出す、これは露出やわいせつ電話を含むデータですけれども。やはり、その一人一人をきちんと対応して処罰していくということは、将来の被害を減らす意味でもすごく大事なことだと思います。

 次のページに移りまして、運用への懸念についてお伝えいたします。

 法務省の性暴力実態調査ワーキンググループの取りまとめ報告書にあるんですけれども、この中で、被害者が性交に同意していた可能性を排斥できないが百八十件あり、それが嫌疑不十分と判断されて不起訴になりました。これは、危機的状況に置かれた人間の心身反応を理解しての判断なのかということに関して、疑問が残ります。

 過去には、警察官が通りかかったのに助けを求めなかったから、同意の可能性を否定できないとして無罪になった裁判例もありました。しかし、今まさに被害を受けている最中に助けを求めるということがどれだけ難しいのか。そのことで、刺されるかもしれない、もっとひどい目に遭うかもしれないと思っても、思わなくても、やはり体は固まって、フリーズして、人は動けないわけです。そのような危機的状況に置かれた人間の心身反応に基づいて、同意のない意思の有無が、あったのかということを判断していただければと思います。

 次に、被疑者の誤信の問題があります。

 二〇一九年の福岡の無罪判決においては、一審で、飲酒によって意識がない状態の被害者に性交したことに対し、加害者が、被害者がうめき声を上げたから、身じろぎをしたから同意していると思ったということが裁判で認められて、無罪になりました。その後の高裁判決では、加害者の主張は認められず、有罪になっています。

 被疑者は、性暴力加害者は、向こうも望んでいた、嫌だと言わないのは同意のサインだ、嫌だと言っても言葉の上だけで本当は嫌がっていないのだという認知のゆがみを生じさせて、性加害を行っているわけです。このような加害者の思い込みを誤信というふうな形で判断していただかないでほしいと思います。

 また、加害者が持っているそのような認知のゆがみは、この社会が共有しているところでもあります。レイプ神話と事実におきまして、女性のノーはイエスという意味である、見知らぬ者がレイプをする、レイプは直ちに警察に届ける、セックスへの欲求がレイプの第一の動機であるというような誤解がやはりはびこっていて、そのことにより、そのようなものなのだということを受け取って、加害者はそれを利用しているというところがあります。

 しかし、先ほどSHELLYさんからも伝えられたように、ノーはノーなんです。だから、ノーの意味はノーで、女性の希望、被害者の希望は尊重されるということを、性暴力は同意のない性的行為であり決して許されないということを社会で共有していただければと思います。

 そのほか、性的撮影罪、また、司法面接、性的な面会についても、様々実態調査が必要ですので、改正を検討していただきたいと思います。

 最後に、今後の運用についてお伝えしたいと思います。

 ほかの方からも述べられましたけれども、包括的性教育を実施して、性的同意についての認識を社会全体で共有していただければと思います。

 また、関係機関、警察官、検察官、裁判官等の司法職員には研修と周知を行い、この新しく変わる改正が必ずその意図を実現できるようになるように取り組んでいただければと思います。

 また、括弧三の被害者支援の拡充と社会復帰支援ですけれども、このような、被害者が救われる司法運用になるためには、被害者支援機関と警察との緊密な連携が必要ですが、なかなか今それがはかどっていると言えない状況にあるのではないかなということは、私は個人的には感じています。

 もっと被害者支援機関を活用して、被害者が受けられるサービスを充実するようにしていただければと思いますし、長い間、時によっては何十年も被害の影響に被害者は苦しみます。学業を遂行することや、仕事に出ることや、生きがいのある暮らしを送ることも難しいわけですよね。そういう人に対しての支援、また経済的支援もお願いできればと思います。

 そのためにも、被害者や被害者家族、パートナーなどが御自分たちで話し合い、そして自分たちの状況を理解して前に進んでいくような自助グループについても、とても求められるところですので、そのような体制整備もお願いしたいと思います。

 以上です。ありがとうございました。(拍手)

伊藤委員長 ありがとうございました。

 以上で参考人の方々の御意見の開陳は終わりました。

    ―――――――――――――

伊藤委員長 これより参考人に対する質疑に入ります。

 質疑の申出がありますので、順次これを許します。加藤竜祥君。

加藤(竜)委員 おはようございます。長崎二区選出、自由民主党、加藤竜祥でございます。

 四名の参考人の皆様方におかれましては、それぞれのお立場で、この法案への思いや、経験から貴重な御意見を賜りまして、誠にありがとうございます。心から感謝を申し上げます。また、性犯罪被害者が救済をされる社会をつくっていくという覚悟を持って、自身の被害当事者として大変苦しい経験やリアルをお話しいただきましたことに対しまして、心から敬意と感謝を申し上げます。

 何点か参考人の皆様方に質問をさせていただきますが、時間の都合上、つながりを欠く点があるかと思いますが、御容赦いただきたいと思います。

 まず、皆様方の御意見のとおり、やはり、性犯罪の処罰規定の本質は、被害者が同意していないにもかかわらず性的行為を行うことであると思います。今回の改正案は、強制性交罪、強制わいせつ罪としてきた罪名を不同意性交罪、不同意わいせつ罪とそれぞれ変更することで、同意のない性交は処罰の対象になるという性犯罪の本質をより明確にする変更であり、評価すべきであると思います。

 齋藤先生は臨床心理士として多くの犯罪被害者の方に寄り添った経験がございます。性暴力被害の本質は何だと思われますか。人の何を侵害する暴力であるのかについて改めてお伺いをいたします。

 また、今回の改正案では、同意しない意思形成等が困難になる原因として八類型を挙げておりますが、どうしてこの八類型になっているのか、また、齋藤先生の御経験から、この八類型で同意、意思を守ることができるのかについて御見解をいただきたいと思います。

齋藤参考人 御質問をいただきありがとうございます。

 性暴力被害は何を侵害する暴力かということですが、私は、その方の主体性であるとかその方の尊厳を侵害する暴力であるというふうに思っております。

 私自身も調査を行ったところですが、そして多くの被害者の方々から聞こえる声ではありますけれども、やはり、人として扱われなかった、人は意思を持つ存在で、自分はノーと言って意思を表明したのに、それが聞き入れられることはなかった、あるいは、嫌だということは言えなかったけれども、精いっぱい抵抗したのにそれはかなわなかった、相手にとって都合のよいものだと扱われたといったような言葉、自分が人形になったような気がするといったような言葉はよく被害者の方から聞こえるものです。

 それは、人として生きる、本当に人としての尊厳というものが侵害されたということになります。だからこそ、性暴力被害というのは、その後PTSDになったりですとか、人生を通して被害の影響が継続することもあり得るということがあるのではないかと思います。

 また、八類型に関してですが、正直に申しまして、その八類型をきちんと、八類型に関して、そしてその八類型があった上で、同意しない意思の形成、表明、全うが困難であるかということを捜査関係者の皆様が適切に運用していただけるかということについては少し疑問も抱いております。

 それと申しますのは、これまで様々、例えば地位、関係性に基づく性暴力であるとか、子供たち、特に十六歳、十七歳の子供たちが大人に手懐けられて、そして同意しているかのように思わされて性行為に至り、そしてその後、人生が大きく変化させられてしまったというような事案がたくさんございまして、それらを、今まで起訴されなかったり警察に届出が受理されなかったりしたことがございますので、そうしたことが再び起きるのではないかということの危惧は抱いております。

 なので、その八類型でカバーされているのかどうか、そして適切に処罰すべき行為が処罰されているのかどうかということを継続してきちんと運用を見届けていただきたいというふうに考えております。

加藤(竜)委員 ありがとうございました。

 一方で、法制審議会の場において、この八類型では処罰範囲が広過ぎるとか、明確性に欠けるといった意見があったかと思います。

 そこで、法制審議会のメンバーである橋爪先生にお伺いをいたします。

 刑法学的に、この八類型についてどのような意見があったのか、処罰範囲や明確性について先生の御意見を御教授ください。

橋爪参考人 お答え申し上げます。

 確かに、八類型につきましては、かなり内容が広いというふうな御意見もあろうかと存じます。ただ、あくまでも本罪は、八類型に該当すれば性犯罪を構成するわけではなく、あくまでも八類型を原因とする形で、同意しない意思の形成、表明、全うが困難な状態になった場合に限って犯罪が成立します。つまり、八類型自体は犯罪の本質ではなく、あくまでも犯罪の有無を判断するときの端緒というふうに考えますと、そういった意味では、広い契機があった方がより確実な処罰ができるという意味で十分な理由があるように考えております。

加藤(竜)委員 ありがとうございました。

 恐縮ですが、齋藤参考人にはもう一問お願いをいたします。

 今回の改正、公訴時効期間延長が原則五年延長される根拠は、性犯罪被害者の大部分が被害から五年の間に相談がなされていることと証拠の散逸といった被告人の防御権とのバランスを取ったと理解をいたしております。

 先日、性犯罪被害者の団体の方と面会をいたしました。自分が性被害に遭ったことを認識するまでに時間がかかることや、人によっては記憶が一旦消え、十年経過してから突然記憶が喚起される場合もあることが分かりました。そもそも、恥ずかしさや自己嫌悪から、人に話すこともつらい心理状況に置かれているというお話を伺いました。

 性犯罪被害者になってしまった場合、被害者の心にどのような影響を及ぼすのでしょうか。被害者心理の面から考えて、今回の公訴時効期間の延長により、今まで救えなかった被害者を救済をすることができるのか、先生の御意見を伺います。

齋藤参考人 御質問いただきましてありがとうございます。

 公訴時効に関しましては、正直、私自身は、まだ足りていないのではないかということを感じております。と申しますのも、私自身のところに御相談にいらっしゃる方々も、被害から二十年、三十年たってやっと、初めて人に相談できますという方が多くいらっしゃいます。

 性暴力被害者、性犯罪被害者の大部分が五年以内にということですが、それは認識の間違いで、性暴力、性犯罪の被害者の大部分は人に相談ができないという状態です。それは一生涯相談できないのかもしれませんし、相談できるまでに二十年、三十年かかるかもしれません。

 性暴力の被害というのは、性暴力、性犯罪というのが抵抗したら防げるのではないかですとか、様々な誤った認識が社会にはびこってございます。そのため、被害を受けた方々も、自分で、自分が悪かったのではないかですとか、これを被害だと認識してしまったら自分は生きていけないのではないかという心情になり、そして、その結果、記憶を失ったりですとか、これは被害ではないというふうに思い込もうとするということが見られます。

 しかし、それでも、生活していく中で死にたい気持ちとか消えたい気持ちというのが継続いたしまして、そして、親密な関係が築けないですとか、混乱した性的な関係を自暴自棄のように取った結果、更なる性暴力に遭うですとか、本当に人生を通して様々な状況が続きます。そうした状況が続いた結果、十年、二十年、三十年とたって、ようやく、これは被害だったのかもしれない、自分は傷ついていたのかもしれないということに気がつくということがございます。

 そうしたときに、もちろん証拠の散逸ということはあるかと思いますが、警察に届け出ることもできないというような不利益を被害を受けた方が被ることがないように、これから先、再度調査を重ねて検討いただきたく思っております。

加藤(竜)委員 ありがとうございました。

 続きまして、SHELLY参考人へ質問いたします。

 SHELLYさんは、日頃から、思春期や性について悩みがある多くの方々に対して動画発信をされていらっしゃいます。先日、私も拝見をいたしましたが、どうしても他人に聞きづらい性の悩みなどについて、誰もが分かりやすい言葉で、かつ、本気に向き合っており、これをそのまま教育教材として広めていきたいとすら思いました。本来、こうした教育や発信は国が先頭になってやっていかなければいけないと思います。

 SHELLYさんは、お互いの性的同意を尊重することが大切であるということを常に発信をされていらっしゃいます。これはまさに今回の改正案の中心になる同意の有無という点であると思います。たくさんの反響もあるかと思いますが、SHELLYさんは、現状、我が国社会の性的同意への意識をどのように考えておられるのか。また、性的同意の意識を社会全体で向上させていくためにどのようにすべきであるかについて、御見識を改めてお聞かせください。

SHELLY参考人 動画を見てくださってありがとうございます。

 やはり性的同意という、まずワードがすごく硬いのでなかなか広まらないという感覚もありますし、ただ、難しい言葉って、使って使って当たり前になっていくと広まっていくとも思いますし。

 性的同意の根本って、やはり、自分の体を大事にする、相手の体を大事にする、リスペクトするというところだと思うので、リスペクトの気持ちは日本にはすごくしっかりあると思うんですけれども、それと体というところが結びつくというのは完全に教育だと思います。性的な話、セックスの話というのはやはり文化的にとてもタブー視されがちなので、おうちでも、親との会話の中でもなかなか出てこない部分ではあると思うんですけれども、ここに関しては、子供への教育だけじゃなくて、やはり大人たちの教育、大人たちの理解が進まないことには広まっていかないのではないかなと思います。

 ただ、広めるための一番大きな要素、もちろん教育もそうですけれども、もう一つ、先ほどお話しさせていただいた法整備だと思います。法律で、ルールで、駄目なんだよというのが、国で明確に示してくれれば、あっ、駄目なんだということを、もちろん加害者側もそうですけれども、被害者も、こういう法律があるから我々は守られている、やはりあれは駄目だったんだ、おかしかったんだというふうになると思うので、被害者を助けるためには、とにかくまずは法整備から。そこから、包括的な教育を、性教育をまた進めていただければなと思います。

 ありがとうございます。

加藤(竜)委員 ありがとうございました。

 最後になりましたが、山本さんにお伺いいたします。

 先日、犯罪被害者の会、Springの皆さんと面会をさせていただきました。お恥ずかしい話ですが、そのとき初めて私は、皆様が性被害当事者が生きやすい社会の実現に向けて活動をされていることを知りました。皆さんのお話を聞きますと、被害実態と社会通念が乖離をしていることや、日本社会が長い間、性被害や性的同意の尊重というものに真剣に向き合ってこなかったことを痛感をいたしました。今回の法改正は、皆様方の活動のたまものであると思います。

 改めて、今回の改正に対する率直な感想、御意見をお聞かせください。

山本参考人 御質問ありがとうございます。

 二〇一七年のときからSpringを設立し、Springの方たち、またほかの市民団体の方たちとともに改正活動を行い、この中にも私たちの話に耳を傾けていただいた議員の方たちもたくさんいるんですけれども、理解を深めていただいて、性暴力の実態を知る方々が増えてきてくださったということが本当に大事なことだと思います。

 また、検討会、法制審議会を通して、法律や司法に関わる方たちにも被害の実態が少しずつ伝わり、だからこそ今回の改正になったのではないかと思います。

 最後に、法制審議会で発言されていた方がいたのがすごく印象に残っているんですけれども、この改正を見ると、すごくとっぴというか、ここまで改正するのかと思われる方もいるかもしれないけれども、議論を積み重ねてこうなってきたこの入れ物をきちんと、この法改正ということがちゃんと運用される、中身を充実させることが大事だということを言われていて、そのことがとても印象に残りました。

 だからこそ、これを今からつくっていくのが私たちであり、国会議員の皆様方でもあり、そして国民一人一人だというふうに考えていますので、是非今後も一緒に尽力していければと思っています。

加藤(竜)委員 ありがとうございました。

 私もやはり本件改正により大きな一歩を踏み出したんだろうと思いますが、今回、参考人の皆様方からお話を伺ったとおり、性被害を受けた方の心の状況や被害を告白できないという性質を鑑みれば、ドイツやフランスの公訴時効の基準からは乖離があり、課題もまだ残っているんだろうと思います。

 どうぞ、法務省関係者の皆様におかれましては、引き続き、改正後も性犯罪の被害実態の調査研究を進め、被害者が救済される社会の実現を目指していただきますことを心からお願いを申し上げまして、私の質疑とさせていただきます。

 ありがとうございました。

伊藤委員長 次に、大口善徳君。

大口委員 公明党の大口善徳でございます。

 本日は、山本参考人、橋爪参考人、SHELLY参考人、齋藤参考人、非常に貴重な御意見を賜りまして、ありがとうございます。

 今回は、法制審議会でも一年四か月、その前にも、検討会でありますとか、非常に熱心に御議論をされました。

 齋藤参考人、橋爪参考人、また山本参考人は、法制審の委員でもありまして、非常にその議論を主導されたという印象がございます。やはり、当事者の方、支援者の方がしっかり入られて、そして、この法制審議会の議論の成果として今回の法律ができたということは、私は非常に意義のあることだ、こういうふうに思っているところでございます。

 内閣府が、今回、性犯罪・性暴力対策強化のための関係府省会議で、更なる強化方針という中で、性犯罪や性暴力は、被害者の尊厳を著しく踏みにじる行為であり、決して許されないものである、相手の同意のない性的な行為は性暴力である、こういうふうに決定をしているわけであります。

 今回も、山本参考人もおっしゃっていましたけれども、本人の同意のない性的行為が性犯罪の処罰対象であるということは繰り返し共有された、その一つの表れとして、罪名として、不同意わいせつ罪、不同意性交罪という罪名になったというふうに考えております。

 そこで、まず、今回、八つの行為、事由によって、同意しない意思の形成、表明、全うが困難な状態で性交等が行われた、こういう構成要件を、構造を変えたということについて、これまでの、現行法と違ってどのような効果が期待できるのかということを、橋爪参考人、山本参考人、そして齋藤参考人からお伺いしたいと思います。

橋爪参考人 お答え申し上げます。

 現行法は、暴行、脅迫、あるいは抗拒不能、心神喪失という要件に該当しなければ性犯罪を構成しません。そういった意味で、何が抗拒不能かについて、具体的な外延と申しますか、イメージが十分に共有されてはいないという問題がございました。そういった意味で、判断者によっては判断がばらつくという問題があったと思うんですね。

 それに対しまして、改正法案におきましては、まずは、実行行為の類型を八つ挙げる、さらに、あくまでも、内心につきましても、同意しない意思の形成、表明、全うの段階において困難があったかというふうに、いわば抗拒不能の内容を具体化しています。

 そういった意味で、内容を具体化するような法改正によりまして、今後は、願わくば、判断のばらつきが生じず、明確な処罰範囲が十分に担保できるということを願っております。

山本参考人 御質問ありがとうございます。

 被害者側としては、同意しない意思になった方が、多分、自分は同意していなかったというふうに思いやすいのではないかということを思います。また、同意するかどうかも、虐待とかがあったりとかDVとかで、もう自分はするものだみたいな、そういうのも、形成の意思もなかったんだということを、やはり気づきやすくなるのではないかということをまず一つ思います。

 法律家ではないので、司法の運用でどういうふうになるのかということはちょっと想像が難しいところもあるんですけれども、元裁判官の方の発言において、拒絶の意思よりも同意しない意思の方が、困難だったかどうかを示す、有罪に向けた立証ハードルが下がるのではないかというふうに言われておりまして、やはりこれが、自分の行為が性犯罪であったということを、まずは話を聞いてもらいたいということと、そして、それをきちんと性犯罪として認めてほしい、できるならば、やはり二度と、こういうことが再び起きないように加害者に罪を問うてほしいということを望んでいるわけですから、それが現実のものになりやすくなるのではないかなと思って、賛成はしています。これが本当にそうなるのかということについて検討していただきたいと思っています。

齋藤参考人 御質問いただきましてありがとうございます。

 私自身も、様々な支援に携わる中で、やはり判断のぶれというのがとても大きいなということは感じておりましたので、こうした八類型が設定されましたこと、また、同意しない意思の形成、実現、全うが困難という文言がつきましたことで、判断のぶれがなくなることを願っております。

 また同時に、広く国民の皆様が、そういった八類型がきちんと示されることで、そうした中では、相手の意思が、同意しない意思が形成されない可能性があるとか、表明されたけれどもそれが全うされない可能性があるとか、表明されない可能性があるんだということに気がつくことができる、認識することができるというのは大変大事だと思っております。

 大学で講義をする中で、学生たちから、自分は大事な人を深く傷つけたのかもしれないということに、講義を聞いて非常に苦しい思いをしたというような感想をもらうことがございます。そうした悲しい出来事が少なくなっていくのではないかということを期待しております。

大口委員 そういう中で、やはり加害者の意識というのが非常に大事だ、こういうふうに思っております。そういう点で、やはり性教育というのが非常に大事であり、また、SHELLYさんからも、加害者になる可能性のあることに対しての教育が大事だ、こういうお話がございました。

 そこで、性的同意というものをしっかり、どういうものなのかと。そして、一番進んでいるのはスウェーデンなわけでありますけれども、しっかり性的同意を、例えば行為の最中においてもノーと言われたらそれはストップするというようなこと等、それがもう当たり前なんだという社会的な認識、人々の認識に変えていかなきゃいけない、こう思っています。

 そういう点で、私もSHELLYさんの動画を見させていただきました。昨日も、夜も見させていただいたので寝不足になっておるんですが、非常に分かりやすくて、若い人たちに対するアピールというのは非常に大事だということであります。

 そういう点で、今回の件におきましては、性的同意をどう社会のコンセンサスとして進めていく、そこから、ノー・ミーンズ・ノー、そしてイエス・ミーンズ・イエスという方向に持っていけると思うんですが、その点、お伺いしたいということでございます。

SHELLY参考人 ありがとうございます。

 先ほども、大人への教育が大切というお話をさせていただいたんですけれども、よく、私、例え話で使わせていただくのが、性的同意、ノー・ミーンズ・ノーという、ノーを、とにかく子供たちのノーを大切にしなければいけない、尊重しなければいけないという話をさせていただくんです。もしかしたら皆さんも経験があるかもしれないんですけれども、例えば子供と遊んでいて、こちょこちょこちょこちょとくすぐって、嫌だ嫌だ、やめてよやめてよと言っても、こちょこちょこちょこちょと、笑っているから、どんどんどんどん、こちょこちょこちょこちょと、楽しんで遊んでいるつもり。でも、嫌だというふうに子供が言っているので、本当はそのときに一回やめてあげる。

 これこそ、性的同意の一番、第一歩というか、子供のときにしっかり、あなたのノーには力があるんだよ、あなたの体のことを、大人の、親の私が、親戚の私が、友達の私はしっかり尊重してあげますよということを子供に教えることによって、子供はノーが言いやすくなる。自分のノーにはパワーがあるんだ、ノーと言うと大人でもやめてくれるんだという自信もつくと思いますし、大人もちゃんと、どんな子供に対しても、あなたの体はあなたのものであって、私は、笑っているからということで同意をもらえているというふうに勘違いはしていないよ、あなたのノーという言葉を信じますよということを双方で理解をすることによって、そういう、家庭の中から、おうちの中で、学校の中で、どんどんどんどん性的同意というものが形成されていくのではないかなと思っています。

 こういう本当にちょっとした遊びだったり、ちょっとしたことが、将来的に、性的同意という、性的なことをするときの相手を尊重するということにつながると思いますので、みんなでちょっとずつそういう意識を持っていただけたらなと思っています。

 ありがとうございます。

大口委員 齋藤参考人から、性的被害における、後の影響についての詳細な御説明がありました。それから、脅威にさらされたときの反応についても細かく説明をしていただきました。

 こういうことの、被害者の支援をされている、また公認心理師としても仕事をされる、そういう認識が、今回の法改正がもし成立したときの、実施に当たって、警察又は検察、又は裁判官、あるいは子供たちや障害をお持ちの方を取り巻く関係者の方がしっかり認識する必要があると思うんですね。そこら辺について、今の政府の取組がどうなのかということをお伺いしたいと思います。

齋藤参考人 御質問いただきましてありがとうございます。

 二〇一七年の改正で附帯決議がついた成果だと思うんですけれども、検察ですとか警察、裁判所などが積極的に性暴力被害に関する研修を取り入れるようになったというふうには感じております。

 しかし、やはり知見は日々更新されていきますし、一時間、二時間の研修だと、やはりなかなか、そのとき限りで終わってしまいますので、これから更に研修の時間が増え、さらに、性暴力の研究の成果だけではなくて、ジェンダーバイアスであるとか、それが発生する背景まで含めた研修が行われるようになると徹底されていくのではないかなということを感じております。

大口委員 公訴時効についてでありますが、それこそ山本参考人始め皆さんから、今の改正案でも不十分だと。それは内閣府の調査を根拠にしているけれども、実際は、実態は、やはり三十代はカバーすべきだということもおっしゃっているわけであります。

 この公訴時効に関して、やはり実態調査をする必要があるということもお話をいただきました。その点について山本参考人にお伺いするとともに、この法律を、今国会での成立ということに対しての期待といいますか、そこについてもお伺いしたいと思います。

山本参考人 御質問ありがとうございます。

 今国会での成立をどう思うかということでしょうか。(大口委員「はい」と呼ぶ)

 公訴時効に関しては、やはり諸外国のようにしっかりとした実態調査をしていただき、本人が相談できたときだけではなくて、いつ頃に司法に届出ができたのかというところも非常に、ハードルとして、その間にどのくらいの年月があるのかということも判断材料になってきますので、それを進めていただきたいということと、あと、子供と大人で、やはり言えるようになるまで発達するまで時間も変わりますので、きちんと先行研究に基づいた分析をしていただければと思います。

 今回の改正については、様々御意見を申し上げたとおり、まだまだ不足しているところはあるということも感じていますけれども、最初にお伝えしたように、不同意性交等罪として、同意しない意思という文言が入ったのは非常に画期的なことだと思っていますし、前回の改正でもそうでしたけれども、やはりステップ・バイ・ステップだと思うんですね。この認識をまず社会で共有して、そして、更に実態に近づける改正を目指していくというところを今後進めていただけると大変ありがたいと思っております。

大口委員 まだまだお伺いしたいことがたくさんありますけれども、時間となりましたので、これで終わりたいと思います。

 本当に皆様、貴重な御意見ありがとうございました。

伊藤委員長 次に、寺田学君。

寺田(学)委員 立憲民主党の寺田です。

 まずは、参考人の四名の皆様、本当にお忙しい中、このように国会に足を運んでいただき、貴重な御意見をいただきましたこと、心から感謝申し上げたいと思います。

 それとともに、今回、改正案として国会に提出をされておりますが、それに至るまでの間、法制審、その前段階も含めて、多くの専門家の皆さんが御意見を交わし合ってこのような成案に結びつけていただいたことに関しても心から感謝申し上げたいというふうに思っています。

 まさしく今、専門的な議論を経た上で国会に付託をされました。審議をされましたので、今度は、専門家の議論から、ある意味、国民の代表者たる国会議員たちが国民的な感覚でこの法案というものの在り方というものを、是非を問う機会になったと思っています。

 言い方を変えると、ある種、我々の議論、我々の感覚というものが国民感覚からずれていないかどうかということが、まさしくこの法務委員会の議論で問われるんだと思っております。そういう意味で非常に大きな役割を与野党共に与えられていると思いますので、真摯に向き合って議論していきたいというふうに思っています。

 質問したいことは、まず、性的同意に関して、同意年齢、また、五歳差という、今回大きな一つの課題がありますけれども、これを全員にちょっとお伺いをしたいなと思っています。

 るる参考人の皆さんから御説明ありましたので、改めて性的同意のことをお話しするようなことは必要ないとは思いますけれども、橋爪参考人がまとめていただいた部分もありますので、まさしく、今回の新たな部分が、十三歳以上十六歳未満の児童に性的同意能力が認められるかという問いの中で、性的同意の意味を理解することは一応可能であっても、相手との関係によって、これは年齢差要件が出てきた要因だと思いますが、よっては、状況に応じて適切に対処し、自らの意思決定を貫徹する能力が十分ではないのではないか。その上で、どのように仕組みを組み立てていくのかという話でした。

 齋藤参考人からも出していただいた資料、一番最後のページの五ページ目に、法制審資料として、性的行為をするかどうかの能力に関して、一が、行為の性的な意味を認識する能力、二が、行為が自己に及ぼす影響を理解する能力、三が、私はここがすごく大事なことだと思っているんですが、性的行為に向けた相手方からの働きかけに的確に対処する能力というものがあります。

 今回、五歳差というような形で法務省として提案をされていますが、この五歳差要件を設けることによってどのような具体的な事象が起こり得るかということになると、まさしくそのルールに当てはめると、十八歳になった成人と中学校二年生の十四歳の性行為に対しては、この要件、五歳差要件、五歳差以上離れていませんので、様々なことを論理的に整理すると、非対等とは言えない関係だということを法的には示しているものだと思います。十八歳の成人と十四歳の中学校二年生、十九歳の成人と十五歳の中学校三年生が一律非対等とは言えない。言い換えると、対等であることを前提にしたような設計になっている。これ自体が、先ほど申し上げましたけれども、国民的な感覚からずれてはいないかということがしっかりと問われることだと思います。まさしく専門的な議論の中で、様々な形で成案として出されたことには、物すごく尊重したいと思いますけれども、我々は国民の代表ですから、国民的な感覚で本当にそれが大丈夫なのかというふうに思います。

 先ほど申し上げたとおり、性的行為に向けた相手側からの働きかけに的確に対処する能力。法務省からも説明を聞くんですが、この的確に対処する能力、能力という部分が、ある種、難しいですけれども、生物としてという言い方がいいのか、脳の発達としてという意味において、年齢差が開いていたとしても対等と思えるような成熟した年少者がいるということ自体は一律否定するものではないんですけれども、私が申し上げたいことは、先ほど申し上げたとおり、十八歳と十四歳、成人と中学校二年生が対等であって、この規定の中から外れることになるんですけれども、御存じのとおり、十八歳は成人になります。たばこやお酒は飲めませんけれども、基本的に自らの進路を自ら決められますし、契約当事者にもなれますし、まさしく責任を持った大人になります。ただ、一方、中学生、一般的に言うと、一例ではめていくと、女子中学生というふうにはめますけれども、中学生は、国の仕組みによって、働く自由はありません。ですので、経済的に自ら稼ぐ能力はありません。かつ、移動の自由も、当然ながら十八歳になっていないので、ありません。

 何を申し上げたいかというと、個々人としての能力、脳の発達、成熟度というものはばらばらではあると思うんですけれども、法で定められた立場においては、まさしく自由に全てができる成人と、ありとあらゆることというのがふさわしいかどうか分かりませんが、働く自由も移動する自由も、もっと言うと、働く自由がない以上、経済的な自由がないですから、女性の立場に立ってみると、自ら避妊をする、そういうことをする能力も、立場的に、自分自身で決めることはできません。コンドームを着ける着けないというのは、私はまず、性感染症を防ぐものであって、あれは避妊道具ではないと思いますが、男性に依存していますし、まさしく女性側の方で自ら避妊をするということを能力として発露するためには、ピルを自ら手に入れてそれを服用するということがまず一義的にはあるんだと思います。

 こういう意味で、個々別の脳の成熟度という意味ではなくて、法的な立場において成人と中学生は余りにも立場が違い過ぎるのを、我々国会議員として、国民の代表として、対等であるというふうに言っていいのかどうかというのが今回問われているんだと思います。

 るる自分の意見を申し上げた後、皆さんに聞くのは大変申し訳ないんですけれども、皆さんからお一言ずつ、もちろん個々別の脳の発達度合いは個々別にあると思いますが、法的に成人と様々な自由を奪われている中学生が果たして対等と言えるのかということについて、お考えがあれば是非とも一言いただきたいと思います。

齋藤参考人 御質問いただきましてありがとうございます。

 私自身は、法制審議会の部会で、最終的に賛成はいたしましたけれども、元々は三歳差ぐらいが適当ではないかという主張をしていた者です。

 おっしゃるとおり、社会的に選択できる選択肢が全く違う成人と未成年という中で、対等性を確認するというのは非常に難しいことではないかというふうに思っております。

 もし仮にこの五歳差ということで成立してしまったとしましても、そこに対等性が本当にあるのかどうかということをきちんと警察、検察が判断していただけることを願っております。

SHELLY参考人 御質問ありがとうございます。

 脳のことについてはちょっと分からないですけれども、海外でいうと、例えば十八歳でぴしっと線引きをして、その中で、法律で守る部分を増やすことによって、飲酒運転みたいに、君、何歳なんだ何歳なんだといって取り締まっていくわけではないので、被害に遭ったという人を守るというためなので、じゃ、十八歳と十五歳、十四歳が恋愛できなくなるかというと、そういうことではないですし、大前提、恋愛と性行為というのはイコールではないので、この辺もしっかり皆さん考えていただいた上で、守る部分を広げるということを考えていただきたいなと思います。

 まさに今おっしゃったように、日本では、例えばピルも、金額もすごく高いですし、若い子たちは本当に手に入れづらいです。緊急避妊薬のOTC化も、もう何年も話はずうっと続いていますけれども、全くこれを、じゃ、進めるということも決定されていません。この月曜日にもまだまだその話は続いていましたけれども、またまた、じゃ、部分的に部分的にと。

 女の子たちを、ごめんなさいね、やはりセックスの話になると、リスクは圧倒的に女の子の体の負担が大きいので、その人たちを守るということを、法律と、あと、いろいろな整備で見せていってもらえないと、今回の五歳差案件というのは、納得できるという国民は少ないと私は思います。

    〔委員長退席、藤原委員長代理着席〕

橋爪参考人 お答え申し上げます。

 確かに、議員おっしゃるとおり、十四歳の中学生から見れば、十七歳、十八歳はもう大人であって、容易には多分抵抗できないと思うんですね。

 ただ、ここで言いたいことは、十四歳、十八歳に関係があれば、対等か否かではなくて、仮にですよ、仮に全国の中に、九九%の関係は非対等であるとしましても、日本中に一%でも対等な関係が仮にあった場合、それを刑法を使って罰せるかという問題だと思うんです。

 つまり、年齢差要件は、例外なく全部の性行為を罰します。ということは、極論しますと、日本中に年齢差が三歳、四歳で対等な関係性が一件もないということが明らかにならなければ、三歳、四歳の年齢差だけで処罰をすることは困難だろうというふうに考えています。

 そういった意味では、もちろん議論はあり得ますが、五歳違う場合には、恐らく対等な関係性はおよそあり得ない、そう言えるからこそ、個別の関係性は一切考えなくて、年齢差の観点だけで処罰が正当化できるというふうに考えています。

山本参考人 御質問ありがとうございます。

 法制審でもお伝えしたとおり、三歳差があれば、場合によっては二歳差でも対等ではないこともあるかなということを思います。

 私は、様々被害者の方のお話を聞くんですけれども、例えば、中学生、十四歳で、相手が大学生の家庭教師で、自分はそのとき、対等というか、同意があるというふうに思っていたけれども、いつも相手が優位で、いつも相手にいろいろ決められる、そして、何かお試しのようにいろいろなことを性行為の中でもされたりということもそうだし、自分がまだそういう状況に至っていないときでも相手の望みに合わせないといけない。好きだ、大事だというふうに言われても、だから、そういうふうに思って、恋愛だというふうに思い込もうとさせてきたけれども、自分は愛玩動物のようだったと最終的には言われていたんですけれども、ペットのように、言うことを聞く関係だからそういうことになったんだということは言われていたんですけれども。

 やはり年齢差によって生じる影響力というのをしっかり理解していただきたいというふうに思いますし、百件に一件、対等な関係があるかもしれない、例えば社長の子供と従業員の子供で五歳差以上みたいなのがあるかもしれないんですけれども、その場合においても、年少者が利用できる資源というのもかなり限られるのではないかというふうに思うんですね。社会的な意思を示すという意味では、やはり三歳差、というか、成人が中学生にしてはいけないということをはっきり示すべきではないかと思います。

 以上です。

寺田(学)委員 四名の方から、それぞれのお考えをありがとうございました。橋爪委員からお話しされたこと、かみしめながら今ちょっとお伺いしていました。

 まさしく僕は、問題意識というか、前提というのは一緒で、まあ、一緒というか、一件でも一%でも対等なものがある場合であればという話がありましたけれども、私個人の捉え方というか、今、設問の立て方としては、中学生として経済的な自由を持っている者とか移動の自由を持っている人は基本的には一%もいませんですし、十八歳になって成人にならない人も、一%もいないと。もちろん、様々な法的な例外はあるのかもしれませんけれども、我々が課しているルール上でいうと、中学生はすべからく経済的な自由と移動の自由がないですし、十八歳になればすべからく成人としての責任を負って、経済的な自由も、もちろんその前からもありますけれども、責任を持つというような法体系になっているので、まさしくこれの方が非常に分かりやすいというか、明確なルールであって、規範的にも、私自身としては、成人になった十八歳が中学生を性交渉の対象にするということは可罰性も非常に高いんではないかというふうに私は思っております。

 時間が限られていますので、もう一点だけ、ちょっと山本さんにお話をしたいんですが、警察の対応というのが、私、物すごく、この法案を可決、成立した後に大事だと思っていて、お話があったとおり、私自身、この性犯罪の問題をライフワークとしてやるきっかけは警察の対応からです。

 私自身の親友の十歳の娘さんが泊まりに行っていたおうちのお父さんに寝ている間に性的な犯罪を受けることになった。本人自身としては恐らく、親が見る限りにおいて、全く犯罪を受けている、被害を受けている認知、認識がないようだけれども、それを警察に届け出たときには、本人の聴取がない限り被害届は受け取らないというところで、親として悶絶をして、子供に何か傷を改めて与えるのも嫌だし、とはいえ加害者を放置するのも嫌だということで、了解を得てこの場でお話をしたのが二年前で、その中で、結果として、聴取なしで被害届を、当然受けて、起訴されて、裁判としても確定して、二年以上の実刑が出ました。

 ですので、裁判になったときに法解釈としてどうするのかというのはまさしく今回の法改正の中身だとは思いますが、警察の段階で門前払いを受けることが大いに予想できるので、その点に関してしっかりと対処しなきゃいけないと思っています。

 ちょっと時間が来ちゃいましたけれども、山本さんの方で警察の対応に対して思われることがあれば、また一言いただければ、それで終わりたいと思います。

    〔藤原委員長代理退席、委員長着席〕

山本参考人 御質問ありがとうございます。

 警察の対応につきましては、警察の方とは、講演とかで呼ばれることがあるので、本当に様々、性犯罪について熱い思いを持って御尽力されている方がいるというのも知っています。一方、被害者の側からは、行ったけれどもやはり取り扱ってくれなかったとか、かえって、あなたがそのときそんなふうにしたのがいけないんじゃないのというふうに言われてしまったりというような二次被害が生じているということも知っています。

 これはやはり、警察の、捜査をする、きちんと証拠を取らないと犯罪を処罰することはできませんから、そういう能力と、そして被害者支援というところがやはり対立せざるを得ないというところから起こる問題だと思うんですね。

 被害者支援も、すごく心ある警察官の人が一生懸命取り組んで、それこそ寝食惜しんでやっていただいていることも知ってはいるんですけれども、それを、捜査を旨とする司法職員の方にそこまでさせるのも酷なのかなというところを思いまして、例えば、イギリスにおいては、性暴力独立アドバイザーという、どの機関からも独立して被害者を支援するという専門職の方がおりまして、その方が被害者に徹頭徹尾、最初から最後まで支援をして、警察や裁判とか、あとほかの、医療につなぐとか、そういうところにおいても要となってつないで、そして被害者のサポートをする。そういう人がいるから警察は捜査に集中できるというふうな支援システムが整えられているというところがあるんですね。

 やはり日本でも、被害者支援センターと警察との連携というのをより進めるというのもそうですし、支援センターの機能分化もそうなんですけれども、中長期的支援と急性期の支援というところもそうなんですけれども、その支援の専門職を予算を投じて養成して、そして、被害者が行くとサポートされるというふうに思ってもらえないと、やはり届出というのは非常にしにくいんです。行くと二次被害を受けるとか、警察ではこんなことを言われたみたいな、ネットでもすごく、すぐに今、情報を取ることができますので。そうではなくて、きちんと支えられるんだというようなシステムを整えていただければと思いますし、警察と被害者機関と、支援の連携をより進めて、サポートしていただければと思います。

寺田(学)委員 時間になりましたので終わりますが、私も息子がいる者として、あと、隣の与党筆頭の牧原さんもお子さんがいる者として、しっかりとして議論に臨みたいと思います。

 今日はありがとうございました。

伊藤委員長 次に、漆間譲司君。

漆間委員 日本維新の会の漆間と申します。

 本日は、お忙しい中、ありがとうございます。

 今回の法案の審議に当たりまして、改めて、性被害として認められるべきなのに認められていないものが物すごく多くて、本当に、認められているものが氷山の一角であるといったことが私は認識できたんですけれども、今回の法改正がなされて、これが運用されることで、今認められているものが氷山の一角なんですけれども、法改正がされることによって、ちょっと難しい質問なんですが、体感で、どれぐらいのこの底に埋まっている認められなかった部分が認められると思うかという、もし具体的な数とか、感覚でいいので、ありましたら、是非言っていただければと。

 恐らく、この法で氷山自体が小さくなるという効果もあると思うんですけれども、そういったことも含めて、そういった体感的な数を、これでどれぐらいの今認められていない人たちが救われていくのかということ、あと、この法が仮に施行されたとしても、まだまだ助けられない人がたくさんいるんだといったようなことを、是非、体感でおっしゃっていただければと思います。

齋藤参考人 御質問をいただきましてありがとうございました。

 大変難しい御質問だなというふうに思うんですけれども、例えば、体感として、本当にちゃんときちんと運用されたのであれば、今まで、例えば警察に届け出られてというのが一割未満であったというようなことが言われているのを考えますと、残りの三分の一とか半分ぐらいはきちんと性犯罪と認定されるようになるのではないかというような期待はしておりますが、そもそも届け出られるまでがすごく難しいので、性犯罪、性暴力を安心して届け出られるようになる、今回の法律改正以外の部分というのも非常に大きいというふうに感じております。

SHELLY参考人 完全に個人的な感覚にはなってしまうんですけれども、実は、数年前にパートナーとの会話から感じた男女差をちょっとお話しさせていただいていいですか。

 夜二人で歩いているときに、こういうところを何か音楽を聞きながら一人で歩くと気持ちいいよねなんて話をしたときに、私が、いや、女子がそんなことするわけないじゃんと言ったときに、えっ、何でと彼がなったんです。そこからいろいろ会話を進める中で、女性の中では当たり前にされている会話というのは男性の耳に意外と届いていないんだなというのをこの年齢になって初めて知ったんですけれども。

 例えば、夜道を歩くときに、電話をしているふりをしたことが、多分、女性はみんな、何となくしたことがある。あと、耳にイヤホンみたいなものを入れて一人で歩くということは、基本、絶対しない。何かここは茂みがあるから、何かされたときに誰にも見られないから、あっち側の見通しのいい側に渡っておこうとか、何かこの鍵、指に挟んだら武器になるかもみたいな、こういうことは本当に女性の中ではもうあるあるなんですよね。

 小さいときから、気をつけなさい、気をつけなさい、そんな服を着ていたらみたいなことを言われ続けて育っているこっちの人種と、そういうことを言われていない人種とだと、やはり恐怖感みたいなものが全然違うんですけれども。

 それと同時に、男性となぜそういう会話をしないかといったときに、やはりまず、法律でこういうことが犯罪と認められていないというところで、言っても仕方がないという諦めが本当に日本の場合は大きいと思うんですね。なので、言っても、まあ、それは気のせいだよ、気にし過ぎだよ、男がみんなそういう性犯罪者と思うなよみたいなことを言われた経験から、この人に言っても多分伝わらないから言うのはやめようという多くの女性たちの感覚だと思うんですね。

 なので、そんなことをずっと抱えながら生きた人が本当に犯罪に遭ったときに、えっ、そんなと思うんじゃなくて、やっぱりと思うと思うんですよ。やっぱりこういうことがあるのか、じゃ、これを誰かに言おう、でも疑われるかも、どうしようと思って、そのままのみ込んで、さっきのコメントにもありましたけれども、何もなかったように、誰にも言わずにそのまま生きていくという人が本当に多いと思うんです。

 法律が変わることによって、海外でのミー・トゥー運動と同じように、あっ、こんなにいるんだ、そして、その声がみんな届いて、みんなに聞かれている、みんなが聞いてくれている、疑わずに、そうかそうかと、言うことを聞いて受け入れてくれているという社会の動きがあれば、本当に、今まで痴漢なんてあるあるだよねといって諦めていた人たちが、声を上げて、こんなのは許さないというふうにもっと言いやすくなると思うので、ごめんなさい、数では全然ないですけれども、女性はみんな何かしら、自分自身も経験していたり、友達の話を聞いていたりするので、そんなことは今まで一回も聞いたことがないという女性は少なくとも一人も私の周りにはいませんでした。

橋爪参考人 お答え申し上げます。

 今回の改正法におきまして、構成要件の内容が具体化されております。そういった意味でも、願わくば氷山がもう溶けて解消することを期待しておりますが、多分、そのためには二つ大きなポイントがあると思うんですね。

 一つは、まずは、法律家全般に関する意識の改革です。

 つまり、やはり、私も含めてなんですが、法律の専門家ではあるんですけれども性被害の専門家ではないんです。ですから、被害者の方の心理状態というものを十分に把握できないんですね。そういった意味で、やはり今後、改正法の、同意しない意思の形成、表明、全うが困難かどうかを判断する際には、十分に被害者の心理や認識の問題について法律家が勉強した上で、そこをきちんと判断できるような取組といったものが必要だろうと。

 もう一点、やはり、意思に反する性行為は犯罪であるという意識を国民全般が共有した上で、被害を受けた方が自分の被害をちゅうちょなく申告できるような、そういった社会といったものをつくっていくということが性犯罪の対策においては重要であるというふうに考えております。

山本参考人 まさしく、届出が増えるというか、あなたも対象だということを思ってもらえる方が増えるというのがこの改正の目指すところではないかなというふうに思っています。

 ただ、一方、その意識の違いというか、今まで著しい暴行、脅迫がなければと言われてきたことから、被害を受けた方でも、自分はそういう見知らぬ人に夜道で押し倒されていないからレイプじゃないと思っていたみたいな人もいます。そうではないんだということ、意識を変えるということをきちんと伝えるということがすごく大事なことだというふうに思います。

 法制審議会の過程においても、処罰の範囲を拡大するものではないということは一致したわけですね。だけれども、この処罰の範囲というのは割と広いのではないかなと思っていて、例えば過去にも、押し倒してから、それを有形力の行使、暴行と認めて強姦罪になったというような、そういうケースもあります。

 だから、あなたが同意していない行為は性暴力だということ、性犯罪になるんだということを正しく皆さんが認識できるように、それは本人だけじゃなくて、周りの人たちもです。大体、多くの人が友人に相談しているような状態ですので、周りの人たちも含めてこの法律の広報啓発を行って、メッセージを発信することが、やはり、その対象となる人に届いて、きちんと明るみに出るということが大事だと思います。

 具体的な数については、増えるのではないかとは期待しています。

漆間委員 難しい質問にお答えいただきまして、ありがとうございます。

 皆様の御意見を聞いていますと、改めて、社会の皆さんの意識の変化がすごく重要だということが分かったというか、私はそのように感じました。

 その中で、具体的に、社会の皆さんの意識を変えるために、どういう、例えば教育だったり研修だったり、これまでも様々におっしゃっていただきましたが、例えば先ほどのSHELLYさんの、私もちょうど二歳の子供が今いまして、よくこちょこちょやっているのでちょっと衝撃を受けたんですけれども、そういった具体的な何か、意識を変えるためにこういったものが必要だみたいなものだとかがありましたら、是非、全ての委員の皆様にお伺いしたいと思います。

 よろしくお願いいたします。

齋藤参考人 御質問いただきましてありがとうございます。

 様々な研究から、社会の人々の意識を変える一番大きなものはやはり法整備であるということが言われておりますので、法整備というのは本当に大事なことだというふうに思っております。

 それと同時に、やはり教育が大事ではあるんですが、教育だと、子供であって、今最も知らないのは多分大人たちなので、大人たちへの啓発というのは非常に大事だと思っております。

 特に、先ほども申しましたが、私、大学生に講義をしていて、性的同意に関すること、あるいは、境界線という心理学の概念があるんですけれども、境界線に関することを学生たちにお話しすると、何でこんな大事なことを自分たちは大学生になるまで教えてもらわなかったんですかというふうに、学生たちから、がっかりされるというか、お叱りの言葉を受けることがあります。

 そうしたことを大人も子供も知る必要がありますし、先ほどからお話がたくさん出ていますが、あなたの意思はあなたのもので、自分の境界線も相手の境界線も大事にするというのがお互いを尊重し合う人間関係なんだというところから、しっかりと教育が行われる必要があるというふうに思っております。

SHELLY参考人 もう同じくで、法整備からということだと思うんですけれども、具体的なことで言うと、やはり大人たちの教育というのが本当に大事だなと思っています。

 学校の先生たち、もっと言うと、幼稚園、保育園の先生たちにも、保育士たちにも、何らかの、性的同意だったりとか、今おっしゃっていたような、バウンダリー、自分の境界線を、ちゃんと、子供だからということでないがしろにせずに、あなたの体とあなたの心はあなただけのものであって、それは誰かが侵害できるものではないというのを、小さいときから、本人に教えるのも大事ですし、大人たちがそれをちゃんとリスペクトするということがとにかく大切だと思うので、子供に直接携わるお仕事の人にそういう教育をするというのは大切かなと思います。

橋爪参考人 私も、今回の法改正ができましたら、是非、意思に反する性行為は犯罪である、たとえパートナー間あるいは夫婦間であるとしても意思に反する性行為は犯罪を構成するということについて十分な周知によって、教育といいますか、社会全体の意識といったものの強化が必要と考えております。

山本参考人 今まで言われてきたことにつけ加えまして、社会のトップにいる人たちから強いメッセージが発せられるということが非常に重要だと思います。昨日の民間法人の謝罪メッセージに合わせまして、松野官房長官が性暴力は決して許されないということを発言いただきました。これもすごく大事で、とても伝わるメッセージだと思うんですね。

 例えば、今のバイデン大統領が副大統領であったときに、ホワイトハウスがワン・イズ・トゥー・メニーという、性暴力は、被害者は一人でもいたら多過ぎるんだという、そういうメッセージ動画を出して、バイデン大統領、そのとき副大統領でしたけれども、出演されていましたけれども、そのほかにも、男性が性暴力を止めるんだという強いメッセージを打ち出すような動画もホワイトハウスは作成されていて、そこには、男性アスリートとか企業の経営者とか様々な方たちが、性暴力は許されないという、そういうメッセージを出したんですね。そういうふうなトップの強いメッセージを出していただくことも非常に有効だというふうに思います。

 加えて、広報啓発と、ちょっと草の根からの研修というのも大事でして、今、バイスタンダーワークショップという、第三者、周りにいる人たちが、性的同意がないような状況でどういうふうに介入するかというのを広めるような研修を、海外を中心に行われているところでもありますので、それを日本でも実施することで、セクハラとか、何か不適切な発言とか、あっ、これは痴漢に遭っているのかもというふうに思ったときにどうすればいいのか、普通の人は余り分からないと思うんですね。しかも、自分も巻き込まれたら怖いというふうに思うし。

 だけれども、そういうときにも適切に、介入したり、あるいは後で駅員さんに知らせたりというふうな具体的な行動を身につけることで、社会全体が安全な環境になります。そのことが、やはり性暴力を抑止するという意味でもすごく大事なことになるかなと思います。

 以上です。

漆間委員 時間になりましたので、本当はちょっと、性被害に遭ったときの支援体制もおっしゃっていたので、お聞きしたかったんですけれども、これはまた質疑の中で聞いていこうと思います。

 ありがとうございました。

伊藤委員長 次に、鈴木義弘君。

鈴木(義)委員 国民民主党の鈴木義弘です。

 本日は、大変貴重なお話をいただいて、胸にぐさっと刺さったんですけれども、私も孫が三人いて、みんな女の子なんです。私は、何か子供の頃から人の耳を触るのが大好きで、孫の耳を触ったら、嫌だと言うんですね。だから、SHELLYさんがおっしゃったように、まずいのかなと。最近はすぐこうやるんです。そう言いながら、子供は私の耳を触るんだよね。

 性癖というのは、腕を触るとか、タオルの、何というんですか、ちょこっとしたものを触るのが、それは意外と大人になっても何となく無意識のうちに出るときがあると思うんですね。これからはちょっとやらない方がいいかなと思うんですが。

 でも、学校で教えなければ、私は、性教育は、やはり大人である家族がきちっと、自分のことを大事にするということは、恋愛はいいとしても、教えていかなくちゃいけないんじゃないかなというふうに思い、つまされました。

 それで、いろいろな資料をいただいた中で、今回法律を改正していくんですけれども、実態調査をしてほしいというコメントもいただいていると思うんです。実際、今いただいているそのデータを見ても、六割の人がどこにも相談していないし、できなかったんですね。

 こういう実態がありながら、法務省でやるのか、どこでやるのか、警察でやるのかは別として、実態調査をしてほしいとSpringの団体の方もよくおっしゃられるんですけれども、じゃ、どうやれば実態調査できるのか、心を開いてくれるのかというのが一番難しい問題だなというふうに思うんですね。

 どのぐらいの方が国内で被害に遭っているだろう、それを、法律の体系をきちっとしたから、それに照らし合わせて、あなたが受けたことは被害に当たるんだというふうにやはり調査をしなくちゃいけないんですけれども、どういう方法でやっていけば、被害に遭ったと言っていいのかな、それは何とも言えないところもあるんですけれども、実数がちゃんと積み上がってくるのかというのをもし御示唆いただけたらなと思うんですが。

齋藤参考人 御質問いただきましてありがとうございます。

 性暴力被害の実態調査に関しましてよく言われますのは、調査にも回答ができない層がいる。それは、例えば、調査の文言を見ただけでフラッシュバックをしてしまう、苦しい思いをしてしまうという方もいらっしゃいます。しかし、調査であるならば、そしてそれが社会の役に立つならば、頑張って回答したいという方もいらっしゃいます。

 私は、日本で行われました、NHKが行った調査ですとか、日本財団が行った調査ですとか、内閣府が行った調査ですとか、様々なものに関わらせていただきましたが、その調査が行われる目的が何なのかがはっきりしていて、それがきちんと活用されるんだと思うと、被害を受けた方は、本当に苦しい、死ぬかもしれないような思いをしてでも調査に御協力くださるんだなということを感じております。

 ただ、諸外国でも性暴力に関する調査というのは様々行われておりまして、手法というのが積み重なっています。

 例えば、レイプをされたことがありますかと聞きますと、ほとんどの方はないと回答します。それは、自分に起きたことがレイプだというふうに考えられないからです。なので、性暴力の被害、あるいは、そのほか、暴力の被害について尋ねるときは、行動レベルで、こういった行動がありましたかどうですかということを尋ねるのがよいと言われていますし、回答するときに、もちろん人の前で回答するというのは大変難しいので、その人の秘密が守られるような環境の中で回答を求めることがよいということも言われております。

 そうした、諸外国でこれまで積み重なってきました性暴力被害の調査に関する知見を是非生かしていただければというふうに考えております。

 ありがとうございます。

SHELLY参考人 ここに関しては、ちょっと専門知識が全然ないので難しいんですけれども、個人的にいつも、性教育ユーチューブのために、とにかく数字があると伝わると思うので、いろいろな、確率論だったりとか数字を探すんですけれども、本当に日本語では出てこないんですよね。英語で検索すると、いろいろな国のは、レイプの犯罪率ですとか検挙率ですとか、そういうものが出てくるんですけれども。

 そういった意味では、とにかくやってほしい。今回の、私、ごめんなさい、難癖をつけてしまいましたけれども、五十二人というのはどういうことだと言いましたけれども、やらないよりは、五十二人の意見が聞けたというのは大事だと思うので、いろいろな方法で、この情報は決して誰にも、あなたが答えたというのは分からないですよという、しっかり機密が守られた状態で学校でやるですとか、それこそSNSみたいなところで、ぽちっと押せるような本当に簡易的なアンケートみたいなものもあるので、いろいろな形でやってみて、いろいろな数字が、何か似てきているねというのが分かるだけでもすごく見えてくると思うので、とにかくやってほしいという感情です。

橋爪参考人 お答え申し上げます。

 専門家でないものですからなかなか回答は難しいんですけれども、二点だけ申し上げますと、まずは、性被害を被害と実感していない方についても、それを被害として回答してもらえるような十分な回答項目を設けることが必要だろうと。もう一点は、できるだけサンプルを多くする形で、回答のばらつきとか偏りがないような形で統計を取ることが重要というふうに考えております。

山本参考人 御質問ありがとうございます。

 被害の実態だけではなく、司法の運用調査というのも是非していただきたいと思っています。

 どうしてかというと、諸外国はいろいろあるかもしれないけれども我が国ではこうですというふうに説明されることも非常に多いんですね。ただ、やはりそれは、諸外国との比較検討をして、何が違って何が一緒なのか、そして、この日本という国にどういうことをすればいいのかというような、改正案とかも示していただきたいというふうに思っています。

 なので、司法の運用調査と被害の実態調査と、そして、どのようなサポートがあれば回復するのかというところも是非実態を調査していただいて、今後の改善、アップデートをしていただくことが調査の目的であり、それがやはり、被害者が苦しいことを思い出しながら答えていただくことに返していけることになるのかなと思います。

鈴木(義)委員 ありがとうございます。

 日本社会って、私、過去にも文部科学委員会で質問したときにも、一年先輩はエベレストのごとく高くて、一年後輩はマリアナ海溝ぐらい深い、それで同期。この一年の差というのは大きいんだね。それで、五歳の差がどうだという話になっていくんですけれども。やはり、ずっと日本社会で積み上がってきたその年齢差というのが、一級先輩、一級後輩、同期と、大学、高校でも中学でもそうですけれども、同じ学年、一級先輩、部活動に入れば、一級先輩は、先輩、先輩と呼ぶ。ずっとそれでトレーニングされてきて社会に出てくる。あなた、年は幾つと必ず聞きます。何年生まれ、えとは何、血液型は何。それで、確かに、同族性というんですかね、共感を呼んで安心感を持たせられるところと、逆に、優劣を知らず知らずのうちに醸成してきちゃっているんだと思うんです。

 これをなかなか、払拭するというのは、今回の性犯罪ばかりじゃなくて、社会全体の仕組みというのかな、価値観を変えていかないと、今の。卒業すると、何年度卒、あなたは何年度卒、私は何年度入省、それで区分けしていく。そういう社会の価値観を変えない限り、やはり年齢差というのは、何歳までいいとか何歳が悪いとかという話に私はならないんじゃないかと思うんですけれども、短めで結構ですから、その基本的なところをちょっと、四人の方にコメントをいただければと思うんですが。

齋藤参考人 私自身は、例えば二十歳と二十一歳とか、五十歳と五十一歳ではなく、十三歳と十四歳は本当に大きいと思いますし、ましてや、中学生と中学を卒業した人というのは本当に大きな力関係があるんじゃないかというふうには思っております。

 また、同時に、同期、同学年であったとしても、クラスの中心人物と周辺にいる人ではやはり教室に及ぼすパワーというのが違い、その学校で生活していけるかどうかということが関わってくるものですし、デートDVなど、同年代同士でも、比較的容易に上下関係をつくることができます。

 そうしたことをきちんと御理解いただいた上で運用をしていっていただけるといいかなというふうに思っています。

SHELLY参考人 私も同意見で、やはり一つ先輩だとエベレストというのも同意見、マリアナ海溝はちょっと分からないですけれども。そういうふうにやはり大きな差があるというふうに感じるので、五歳差要件は必要ないというふうな私は考えです。

橋爪参考人 お答えを申し上げます。

 確かに、中高生から見ますと、一歳、二歳違うと、本当に、先輩、後輩であって、関係は大きいと思うんですね。そのように、具体的な関係性に従って抵抗できない場合については、そもそも抵抗困難であって、不同意性交罪の本体で十分これは対応できます。

 そういった意味では、個別の関係性に従って、同意しない意思の形成、表明、全うが困難な状態を認定すれば、犯罪の成立をここでできますので、そういった意味では、年齢差だけで全ての問題を解決する必要はないように考えておりました。

山本参考人 年齢差に関しては、認識のこともありますけれども、生物学的な発達のこともありますので、やはり年齢をきちんと評価していくということは大事ではないかなということを思います。その上で、一歳、二歳、三歳、四歳、五歳、それをどういうふうに考えるのかというところは今後の議論になると思います。

 もう一つは、認識の点でいえば、まず、上の人の言うことを聞かなければいけない、それも結構無条件で、社会的地位が上だから、そして男の人だから、この人だからというふうな形になっているところも非常に問題で、上の人であるとはいえ、その人の感情や意思を無視していいわけではないということ、一人一人の人間としてお互いを尊重するという認識を共有することも大事ではないかなと思います。

鈴木(義)委員 そういったことも社会の中でやはり変えていかないと、三歳がいいのか、五歳差がいいのか、十歳がいいのかという話にはやはり収れんされていかないんじゃないかと私なんかは思うんですけれども。

 それと、もう一つ、これは一番難しいなと思うのは、同意と不同意。SHELLYさんが、意見陳述のときにも、そのたびごとに同意を取りなさいよというふうにおっしゃられたんですけれども、同意をもらっているんだと、まあ、私がそういうふうに自分でやっちゃったらまずいんですけれども、同意を取っているんだろうというふうに思ったり、相手がそれを錯覚するような行為をしたときに、男が、女かというのはちょっと難しいんですけれども、結局、誤認させるとか錯覚させるようなことが起きたときに、後から、いや、私は同意していなかったんだと言われると、こっち側は分からないんですよね。

 だから、同意と不同意の認識の違いというのが、これは法律で不同意性交罪というのを創設して、法律が成立すればスタートしていくんですけれども、必ずそこのところが問題に、やはり、今までもなっていたけれども、これからも、法律で刑罰はつくったとしても、そこのところの判別というのがなかなか難しいんじゃないかなというふうに思います。

 そうすると、警察に被害届を出したときに、供述以外の証拠が何かありますかという話になったときに、どうしても供述以外の証拠を出した方がはっきりするし、そういうことも含めて、やはり社会に、この法律ができたときに周知していくことが大事なのかなと思う。それは結局、自分のことを守るということに私はつながるんじゃないかと思うんですけれども、短めで結構ですから、四人の参考人の方にコメントいただきたいんですが。

齋藤参考人 御質問ありがとうございます。

 私も、この今回の法改正の成立がなされましたら、それと同時に、性的同意とは何かということがきちんと広く知られることが大事だというふうに思います。

 そして、例えば、私は大学の教員ですけれども、学生にとって自分がどういう存在に見えるのかということには常に意識を払うようにというふうには考えております。そこに強制力は発生していないだろうか、私たちは本当に対等なんだろうか、学生との間に対等性はないんですけれども、ただ、ほかの人たちとの間に対等性はないんだろうか、そして、自分の発言というのは相手にプレッシャーになっていないだろうか、相手が今示している表情というのはどういう文脈の中での表情なんだろうかということを想像するようにしております。

 それは、同意とか不同意、性的同意とはどういうことかということや対等な人間関係とはどういうことかということを研究や様々な書籍で学んできた成果かなというふうに思っておりまして、学べば、いろいろな人がそういうことに想像ができるようになるかと思いますので、きちんと広報啓発が行われることを願っております。

SHELLY参考人 よくこの質問を私は性教育の話をしていると受けることが多いんですけれども、同意が取れているかどうか自信がないときは、同意が取れていないと思ってほしいなと。そこで、イエス・ミーンズ・イエス、積極的な同意のみが同意、したいよ、しようというのだけが同意ということです。ああ、いいよというのは同意じゃないんです。

 なので、コミュニケーション能力がとにかく必要なので、自分のコミュニケーション能力に自信がない、これってもしかして本当はノーって言いたいのかな、言えていないのかなという想像力が働かない人は、毎回必ず言葉でしっかりと同意を取る。言葉で同意を取るときに、相手に断れる空気をつくってあげる。いいんだよ、全然無理しなくていいからね、今度でもいいし、今日はやめておこうよという空気、関係性をつくるということが同意を取る上ではとても大切なことなので、本当に同じように、法整備もすごく大事ですけれども、性的同意の理解が進むことが本当に大事だと思います。これが進めば、ここの不安はなくなると思います。

橋爪参考人 私も全く同感でして、法改正だけではこれは不十分ですので、あくまでも性行為に際しては同意が要るんだ、あくまでも同意の上で性交するということについての国民一般の周知というか啓蒙といったものが重要と考えております。

山本参考人 私たちがこういう刑法改正の活動を始めてからも、男性の方から特に、後から訴えられるのではないかというふうな心配の声を非常によく聞きます。

 やはりそのときに、今SHELLYさんが言われたように、ちゃんと同意を取りましょう、あとは、齋藤さんが言われたように、対等な関係なのか確認しましょう、イエス・ミーンズ・イエスが必要なんですけれども、やはりそのときに、自分を守るということと一緒に、相手を守るという関係性なのかどうかなということはすごく思うわけですね。

 性交の相手というのは大事な人じゃないんですかね。それとも、鬱憤晴らしとかストレス発散とか、何か、その人を大事にしなくてもいいような、そういう関係なのかもしれないけれども、そういうことも考えていただきたいというふうには思います。大事にするということは、相手を物扱いしないということですし、そういう関係性であるのかというのが一つ。

 あとは、虚偽の訴えですね。やはり何%かは、後から、自分の身を守るためにとか、あとは、腹いせのために訴えるようなケースも、海外でも残念ながらあります。

 でも、だからこそ、そのときに、きちんと司法機関が機能して、証拠採取を被害者が安全な形できちんとできるとか、被害者聴取のことも今回の法改正でありますけれども、二次被害を受けないような被害の聞き取りができる、きちんとした早期の捜査と証拠確保が大事ですので、それらをきちんと踏まえていくということが私としては大事なことではないかなと思います。

 以上です。

鈴木(義)委員 どうも、貴重な御意見をいただきまして、ありがとうございました。

 終わります。

伊藤委員長 次に、本村伸子君。

本村委員 日本共産党の本村伸子でございます。どうぞよろしくお願いを申し上げます。

 四人の参考人の皆様、今日は貴重な御意見、本当にありがとうございます。

 二〇一七年のこの性犯罪に関わる刑法の改正の際には、衆議院では参考人質疑はできなかったわけです。今回、こういう大事な参考人質疑ができたということは、日本の社会にとってもかなりプラスになるというふうに思いますし、法の運用にとってもかなりプラスになるというふうに思っております。皆様からいただいた御意見を、是非審議にも生かしていきたいと思っております。

 まず、法制審議会や検討会に参加をされました齋藤参考人、橋爪参考人、山本参考人にお伺いをしたいというふうに思っております。

 本当に、その審議の際には本当に御尽力をいただいた、今回、不同意性交等罪というところまで持っていっていただいたことに、心から敬意と感謝を申し上げたいというふうに思います。

 公訴時効について伺いたいというふうに思うんですけれども、五月九日の本会議で、私、公訴時効の撤廃、そして時効停止の大幅延長ということの質問をさせていただいたんですけれども、そのときに、この公訴時効の五年の延長の根拠となった内閣府の調査は、相談に五年以上かかった方ですとか、あるいは、先ほど来御議論がありますように、そもそも相談に多くの人が行けていないじゃないか、なぜ五年にしたのか、そして、なぜ相談できなかったケースを切り捨てたのかということも質問させていただきました。

 また、Springの皆様の実態調査では、挿入を伴う性被害を認識するまで二十六年以上かかったというのは三十五件、そして、三十一年以上かかったというのは十九件ございます。そして、長期にわたって被害の記憶を喪失した被害当事者の方々もいらっしゃいます。幼少期から性虐待を受けてきた被害当事者の方々の実態調査をなぜしてこなかったのかという質問をさせていただきました。

 そのときに、大臣の答弁なんですけれども、内閣府が実施した調査の結果を踏まえて公訴時効期間を延長することとしていますが、この調査の回答者には、被害に遭った当時に若年であった方も含むものと承知していますという回答と、法律案の作成に先立って行われた性犯罪に関する刑事法検討会や法制審議会の部会においては、幼少期における性的虐待の実情について知見を有する有識者が委員として参画していたほか、若年時に被害に遭った性犯罪の被害当事者の方や性犯罪被害者に関する知見を有する専門家等からヒアリングを実施したものと承知しています、本法案は、それらを通じて得られた知見を十分に踏まえつつ立案したものというふうに答弁がありました。

 私は非常に納得できない答弁だったんですけれども、検討会や審議会で、この幼少期からの性虐待を受けてきた方々の実態を十分に酌み尽くされたというふうにお考えかという点を、お三人にお伺いしたいと思います。

齋藤参考人 御質問いただきましてありがとうございます。

 性暴力被害は本当に多様でして、声は本当にたくさんあります。被害に遭われた方がたくさんいらっしゃいます。そうした声が十分に反映されたかといいますと、反映し切れていないのではないかというふうには考えております。

 そして、法制審議会部会に参加しておりました私も、同席しておりました性暴力被害の支援に携わってきた精神科医の先生も、やはり三十代はカバーすべきではないか、やはり三十年、四十年たって初めて被害を言える人がいるんだということはお話しいたしましたが、会議の中で、それは法律の問題として、なかなかそれ以上の延長が難しいというようなお話があったのではないかというふうに記憶しております。

 そうした意味では、その被害の実情が十分に反映されているとは、この点はなかなかちょっと言い難いのではないかというふうに考えております。

橋爪参考人 お答え申し上げます。

 公訴時効は私は専門外なんですが、あえて申し上げますと、あくまでも、一般の犯罪については時効があるんですよね。そのように、一般の犯罪について公訴時効という制度がある中で、性犯罪特有の事情をどこまでしんしゃくできるかという観点からの議論がされたというふうに考えております。

山本参考人 御質問ありがとうございます。

 様々、諸外国の調査実態なども齋藤委員がすごく示していただいたんですけれども、なかなかそれは採用されず、日本の、エビデンス的にはどうかなというふうな調査でしたので、そこを余り反映されていなかったのかなとは思っています。

本村委員 是非、次に向けての審議に生かしていきたいというふうに思っております。

 SHELLY参考人に伺いたいというふうに思います。

 日々本当に伝わりやすい動画を発信していただいていることに、心から敬意と感謝を申し上げたいと思います。

 日本の性教育、ジェンダー平等の教育というのは世界の中でも遅れているというふうに私も認識しているんですけれども、国際人権基準に関しての研究をされておりますイギリスのエセックス大学の藤田早苗先生という方がいらっしゃるんですけれども、その方が、人権教育という点で、本来の人権教育は、自らの権利を知り、自分たちが権利の主体として人権の実現のために行動するための知識を学ぶというふうにおっしゃっておりました。

 これを拝読させていただいたときに、国連のユネスコなどが発表しております国際セクシュアリティ教育ガイダンスも、まさに人権を実現するために行動する知識を学ぶというところがしっかりと位置づいているというふうに思いまして、世界ではそういうことなんだなということを痛感したわけですけれども。

 例えば、この国際セクシュアリティ教育ガイダンスの中では、メディアリテラシーですとかセクシュアリティーの部分なんですけれども、学習者ができるようになることとして、メディアにおけるセクシュアリティーや性的関係に関するジェンダーステレオタイプや誤った描写に対抗する様々な方法を実際にやってみるということまでありまして、性教育の在り方の違いというのをすごく感じたわけです。

 SHELLY参考人が思う、日本の性教育の在り方と世界の包括的な性教育の在り方との違いについて、少し時間を長く取っていただいてもいいのですけれども、是非御意見を伺えたらというふうに思っております。

SHELLY参考人 御質問ありがとうございます。

 まず、日本の性教育の在り方ですけれども、日本の性教育はありません。皆さんも受けられたと思うんですけれども、私の時代はまだ生理の話は男女別々で、女の子は生理の話、男の子はサッカーをしてこいみたいなことだったんですけれども、そういうところから実は始まっているんですよね、私たちのジェンダーバイアス。生理は女性の問題。生理用品というのは、汚物入れと書かれていたりするんですよね、トイレに。トイレットペーパーの話はできるけれども、生理用品を例えばコンビニで買うと、何か袋で隠されて、ほら、早く持って帰りなさいみたいな。

 何か、こういうところから、女性であることに対して誇りを持つ、生理があって子供が産めるこの体ってすばらしいみたいな教育がまずされていないというところと、あと、セックスに関して、体に関しての話がやはりすごくタブー視されがち。

 そうなってくると、当然なんですけれども、メディアで性犯罪、性被害の話はすごくしづらいですよね。やはり、何となくもやもやして気持ち悪い、答えが出ない、そして救われない話が本当に多いので、そうなると、日本の、臭い物には蓋を文化で、じゃ、今回は取り上げるのをやめておこうか。今回の法案もまさにそうだと思います。テレビで大きく取り上げられることはなかなかないのは、そこだと思うんですよね。

 この話を取り上げるには、やはり蓋をした部分をしっかり開いて、臭いにおいをしっかり嗅いで、こういうことがあるということを、今日の皆さんも本当に初めて知ったというふうにおっしゃっている方もいらっしゃいましたけれども、こういう会話をどんどんしていくことがすごく大事であって、こういう会話を海外ではされているんだなというのを、私はいろいろリサーチする中で本当に感じることが多いです。先ほどからお伝えしているように、いろいろな数字が出てくる。確率論ですとか統計みたいなものが本当にたくさんあるので、比べやすい、そして、そこに被害があるという実態がすごく目に見えて分かりやすい。

 日本は何となく、すごく安全で、性犯罪とかは海外に比べると少ないよねというふうに思われている方、特に、ごめんなさい、また男性の方に多いと思うんですけれども、これはやはり、女性のいろいろな抑圧ですとか、そういう、被害に遭った人たちがそれを言えない空気。ミー・トゥーが世界的に広がったときも、日本だけは全くミー・トゥーが広がらなかった。これは実はBBCでも取材を受けているんですけれども、なぜ日本でミー・トゥーが広がらないか。まだまだ、ツイッター上で匿名でも、ミー・トゥーということが言えない空気が日本にはあるんですよね。

 こういう空気を払拭するためには、まずはやはり大人たち、政治家たち、先生たち、警察官たち、人に何かしら影響を与える人たちが、包括的な性教育を理解して、性的同意を理解して、そして、ジェンダーかかわらず、全員平等と、そしてリスペクトというものを進めていかないと、性教育というと、やはりどうしてもセックスとか体の話というふうに思われることが多いんですけれども、全部根底でつながっていると思うので、文化を変えるためには、まずはやはり大人たちがもっともっと、これはいけないということを話をすること、こういう会話がされること、そういうことが起きていくと、どんどんテレビでもメディアでも取り上げられやすくなると思いますし、皆さんもおうちにこういう会話を持って帰って、家庭の中でもこういう話をしやすくなるのかなと思います。

 ちょっとお答えになっていたか分からないんですけれども、正直、ちょっと、スタートラインにもまだ立てていないという私の個人的な感覚です。

本村委員 ありがとうございます。

 この点でも、日本を前に進めていかなければいけないというふうに痛感しております。

 山本参考人に伺いたいというふうに思います。

 Springの皆様の要望書の中に、イエス・ミーンズ・イエス型にするための調査、研究、検討を行うことという御要望がありますけれども、どのような調査、研究、検討が必要だというふうにお考えか、伺いたいと思います。

 また、齋藤参考人にもお伺いしたいんですけれども、齋藤先生の、当事者にとっての性交同意とはという共同研究があるんですけれども、その中で、暴行、脅迫のない典型的な不同意性交とは、日常的な上下関係、力関係の圧力から、抵抗できない、逃げられない、拒否を伝えられない状況に陥れられ、追い込まれる形で発生する性交であることが示されたというふうに書かれていますけれども、今回の法案で全てをカバーできているのか、足りない点があれば是非お伺いしたいというふうに思います。

 お二方にお願いしたいと思います。

山本参考人 御質問ありがとうございます。

 やはり、今後更なる改正を目指す到達点は、イエス・ミーンズ・イエス、相手がイエスと言っていないことに関して、同意のない性的行為が行われたことに関して処罰ができるというふうな規定が必要だと思います。

 どういう調査が必要かということに関してなんですけれども、前回、法務省が実態調査ワーキンググループでされていましたように、どのような事件が通って、どのような事件が落とされているのかということが非常に重要だというふうに思います。

 例えば、先ほどの質問でもありましたけれども、同意だと思った、しかしノーと言っている、だけれども相手はそのノーを聞かなかった、嫌だというふうに言っているんだけれども、それは嫌よ嫌よもいいよのうちだというふうに自分の中で勝手に読み替えて、性行為を継続し、その結果、被害者は抵抗するのも難しくなって諦めてしまったというようなケースであったりとか、あるいは、スウェーデンの刑法改正の後の事件ですけれども、女性の部屋に男性が泊まりに来て、そして、女性は、別にその男性に恋愛感情もなく性交するつもりもなかった、しかし、男性は、泊まらせてくれたんだから性交すると思った、そしてそれを強制したということに関して、たしか過失レイプ罪で有罪になっていたかと思います。

 そういう法のはざまに落ちるようなケースが何なのか、そして、これが今回の刑法改正で、きちんと拾えて罪に問うことができるのか、それともできないのかということに関する実態調査が必要かなと思います。

齋藤参考人 御質問いただきましてありがとうございます。

 性的な同意とはいいますけれども、私たちの調査では、同意というのは、性行為が行われるその瞬間のことで決まるのではなくて、従前の関係性というものが非常に大事だということがありました。

 例えば、どういったときに性交に対する同意ができるのかといえば、もう常日頃から、日常生活、今日は何を食べるとか、どこに行くとか、今日は何をしようといったところから、ノーと言ってもお互いに不機嫌にならないし、不利益にならないし、快くお互いの意思を尊重し合える関係であれば、性的な行為のときもノーと言うことができるし、イエスと言うことができるというようなことが調査の中でございました。

 なので、一番典型的に起こるものというのは、元々の関係性、あるいは元々の言葉のやり取りで上下関係がつくられていて、そして、いざ性的な行為が迫られたときには、もう既に抵抗するとかノーを言うことができない状況に追いやられているというようなものがございます。

 今回、八類型の中に、関係性による不利益の憂慮というものが入りましたり、あるいは、予想しなかったことが入りました。その中である程度カバーされるのではないかというふうにも考えているんですが、例えば、一見対等に見えるような関係、明確な地位の上下関係がない中でも、従前の言葉のやり取りで、この人に逆らってはいけないとか、自分はこの人より下なんだというようなことを思わされていくということは、種々生じております。

 そうした、一見対等に見えるけれども上下関係をつくられたものであるとか、そうした今回の八類型でカバーされるのかどうかというのがすごく難しい事案というのも確かに存在しておりまして、そうしたものがどのように捉えられていくのか、そして、どのように捉えられずに、また検討が必要になるのかということをきちんと調査し、追っていっていただけるといいなというふうに思っております。

本村委員 本当に貴重な御意見、ありがとうございました。

 これで終わります。

伊藤委員長 これにて参考人に対する質疑は終了いたしました。

 この際、参考人の各位に一言申し上げます。

 参考人の皆様方には、貴重な御意見を述べていただき、誠にありがとうございました。委員会を代表して厚く御礼を申し上げます。ありがとうございました。(拍手)

 次回は、明十七日水曜日午前八時五十分理事会、午前九時委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。

    午前十一時四十二分散会


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