衆議院

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第18号 令和5年5月24日(水曜日)

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令和五年五月二十四日(水曜日)

    午前九時開議

 出席委員

   委員長 伊藤 忠彦君

   理事 谷川 とむ君 理事 藤原  崇君

   理事 牧原 秀樹君 理事 宮崎 政久君

   理事 鎌田さゆり君 理事 寺田  学君

   理事 沢田  良君 理事 大口 善徳君

      東  国幹君    五十嵐 清君

      石橋林太郎君  英利アルフィヤ君

      奥野 信亮君    加藤 竜祥君

      神田 潤一君    熊田 裕通君

      鈴木 馨祐君    田所 嘉徳君

      高見 康裕君    平口  洋君

      深澤 陽一君    宮路 拓馬君

      山下 貴司君    渡辺 孝一君

      鈴木 庸介君    中川 正春君

      山田 勝彦君    吉田はるみ君

      米山 隆一君    阿部 弘樹君

      漆間 譲司君    日下 正喜君

      平林  晃君    鈴木 義弘君

      本村 伸子君

    …………………………………

   法務大臣         齋藤  健君

   法務大臣政務官      高見 康裕君

   政府参考人

   (内閣官房内閣参事官)  廣瀬 健司君

   政府参考人

   (内閣府大臣官房審議官) 畠山 貴晃君

   政府参考人

   (警察庁長官官房審議官) 友井 昌宏君

   政府参考人

   (法務省刑事局長)    松下 裕子君

   政府参考人

   (厚生労働省大臣官房審議官)           鳥井 陽一君

   政府参考人

   (厚生労働省大臣官房審議官)           森光 敬子君

   政府参考人

   (厚生労働省社会・援護局障害保健福祉部長)    辺見  聡君

   法務委員会専門員     白川 弘基君

    ―――――――――――――

委員の異動

五月二十四日

 辞任         補欠選任

  岩田 和親君     渡辺 孝一君

  英利アルフィヤ君   神田 潤一君

  鳩山 二郎君     宮路 拓馬君

同日

 辞任         補欠選任

  神田 潤一君     英利アルフィヤ君

  宮路 拓馬君     鳩山 二郎君

  渡辺 孝一君     岩田 和親君

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 政府参考人出頭要求に関する件

 刑法及び刑事訴訟法の一部を改正する法律案(内閣提出第五八号)

 性的な姿態を撮影する行為等の処罰及び押収物に記録された性的な姿態の影像に係る電磁的記録の消去等に関する法律案(内閣提出第五九号)


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     ――――◇―――――

伊藤委員長 これより会議を開きます。

 内閣提出、刑法及び刑事訴訟法の一部を改正する法律案及び性的な姿態を撮影する行為等の処罰及び押収物に記録された性的な姿態の影像に係る電磁的記録の消去等に関する法律案の両案を議題といたします。

 この際、お諮りいたします。

 両案審査のため、本日、政府参考人として内閣官房内閣参事官廣瀬健司君、内閣府大臣官房審議官畠山貴晃君、警察庁長官官房審議官友井昌宏君、法務省刑事局長松下裕子君、厚生労働省大臣官房審議官鳥井陽一君、厚生労働省大臣官房審議官森光敬子君及び厚生労働省社会・援護局障害保健福祉部長辺見聡君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

伊藤委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

伊藤委員長 質疑の申出がありますので、順次これを許します。藤原崇君。

藤原委員 おはようございます。自由民主党の藤原崇です。

 本日は、質問の時間をいただきまして、委員長、理事始め委員の先生方には大変感謝をしたいと思います。

 質問時間も限られておりますので、早速質問に入りたいと思います。

 まず、一つ目の質問、年齢差要件のことについてお聞きをしたいと思います。

 本法においては、五歳の年齢差ということで規定をされております。これは常々、委員会、参考人質疑等でも議論になっていますが、その結果、十四歳、十五歳と性交渉を行った十八歳については、性交同意年齢との関係では、これは問題はないということになっております。

 これは、いわゆる刑罰による威嚇というのは必要最低限に限られるべきであるという、補充性なんて言われるんですが、何でもかんでも刑法で禁欲すればいいというわけではなくという、刑事法の一つの原則、刑法の謙抑性の観点から、四歳まででは、場合によっては自由な意思に基づく場合もあるのではないかということで五歳差要件ということにしたというふうに理解をしています。

 では、次、話を少し変えて、では、十八歳が十四歳の相手方との間で、例えばいわゆる先輩、後輩関係とかそういうものを利用して性交渉を行った場合、これは提出法案ではどのような罪が成立する可能性があるのか。これは参考人にお聞きをします。

松下政府参考人 お答えいたします。

 御指摘のような場合につきましては、四歳年長の十八歳の者が、十四歳の被害者において、例えば先輩、後輩という社会的関係上の地位に基づく影響力によって受ける不利益を憂慮しており、それによって同意しない意思を形成し、表明し若しくは全うすることが困難な状態に陥ったのを利用して性交に及んだという場合、改正後の刑法第百七十七条第一項の罪が成立し得ると考えております。

藤原委員 ありがとうございます。

 年齢差要件があって、五歳以内であれば性交同意年齢の関係では問題がないということであったとしても、いわゆる不同意性交等罪、これの一から八までの要件に当たった上で、同意しない意思の形成、表明、全うすることが困難な状態に当たれば、これはまた別な問題として罪が成立する可能性があるということだというふうに思っております。

 事前にお話を聞いたところによると、核になる要件というのは、同意しない意思を形成、表明、全うすることが困難な状態、この要件が核のところであり、逆に、一から八の暴行、脅迫、心身の障害、ずらずらっとあって、経済的、社会的関係上の地位に基づく影響力による不利益の憂慮、ここはある程度広く取るんだというふうに伺っております。そうした場合、かなり広く取られて、問題としてある程度すくわれる事例というのは、刑事的に対象になる事例というのは出てくるのかなというふうに思っています。

 そこで、少し話を進めて、この同意しない意思を形成、表明、全うすることが困難な状態にさせたこと、これが不同意性交等罪の構成要件と呼ばれるものに当たっています。ここが、ストレートに被害者の同意や不同意というそのものではなく、同意しない意思を形成、表明、全うすることが難しい状態という、本人の意思と少し離れた外形的なものを構成要件として求めております。

 これは大臣にお聞きをしたいと思います。これは立法の根幹に関わる部分であります。本法の不同意性交等罪において、主観面ではなく客観面を要件として求めた、この趣旨について伺いたいと思います。

齋藤(健)国務大臣 仮に被害者の内心のみに着目した要件とした場合には、人の心理状態や意思決定の過程に様々なものがあり得る中で、人の内心の意思を直接問題にすることになる、そういうことになる結果、それに該当するかどうかの判断にばらつきが生じかねないという懸念があります。

 そこで、本法律案におきましては、内心そのものではなくて、性的行為がなされるときの状態に着目した要件として、同意しない意思を形成し、表明し若しくは全うすることが困難な状態との要件を規定することとしているわけであります。

 これによりまして、その状態に至る原因として列挙している行為、事由と相まって、被害者がそのような状態にあるかどうかを客観的、外形的に判断することが可能となるので、判断にばらつきが生じにくい、そういう規定とすることができると考えているところであります。

藤原委員 ありがとうございます。

 刑事手続においては、やはり、被告人として裁判にかけられている被告人の防御の観点というのも、これは非常に重要であろうというふうに思っています。これは何も最近出てきた概念ではなく、ヨーロッパで、フランス革命以降、人権あるいは刑事手続のデュープロセスと呼ばれているもの、しっかりと防御の機会を与えていく、そのことも、これは我々にとっては非常に大事にしなければいけないことなんだろうというふうに思っております。

 その意味で、ある意味、本人にしか究極的には分からない。もちろん、表出した言葉とか行動は分かりますけれども、じゃ、本当に内心でどう思っているかというのは、これは突き詰めれば、本当に本人にしか分からない。そういうものを犯罪の構成要件にするということが難しいのではないかという中で、外形上の、誰にでも認識ができるものから罪の成否を問うということでこういうことを条件にしたということだと思います。

 同意しない意思を形成、表明、全うすることが難しい状態という、ある意味、外形的に誰でも分かることを要件にしたというのはそういう趣旨だということで、これでめでたしめでたし、これで被告人の攻撃防御の観点でも大丈夫ですねというふうになればいいんですが、なかなかそうはならないというのも、これは事実であります。

 じゃ、どういう場合に同意しない意思を形成、表明、全うすることが難しい状態になっているのかということは、突き詰めれば、これも個人の価値観なわけであります。非常に困難がある中で乗り越えてきた人にしてみれば、これくらいの困難は別に大丈夫だよと。あるいは、なかなかそうではない人もいる中で、ちょっと、こういう状態だったらもう断れなくなるんじゃないのと。ここも、ある意味、価値観に左右をされるところであります。

 これは非常に難しい問題でありまして、恐らく刑事司法の場でも、裁判官も、一応、事件ごとにちゃんとぶれがないという建前になっております。検察官の起訴も同じ、有罪の判断はどこでやっても同じというふうになっておりますが、実際は多分そうではない。これはどうしても、人がやるものである以上、それぞれの検察官、裁判官の認識によって、今までの全人格的な、人生の経験からして、これは同意できなくてもしようがないよね、いや、これくらいだったら不同意の意思は表明できるくらいの障害だと、そこは正直、ぶれがあるというのは、これは、人間がやっている以上、仕方がないことだというふうに思っています。

 しかし、ぶれがあるので仕方ありません、それはそんなものですねというふうに言うわけにもいかないと思うんです。

 そこで参考人にお伺いをしますが、このように、難しい状態であるかどうかというのは、検事によっても、あと、決裁官によっても判断基準が異なります。そのような中で、少しでも公平な起訴運用が求められますし、被害者に対して、じゃ、なぜこれは起訴されなかったのか、そういう説明責任もあると思うんですが、この点についてどのような取組をしていくのか、お伺いしたいと思います。

松下政府参考人 お答えいたします。

 御指摘の点の改正でございますけれども、性犯罪の罰則規定をより明確で分かりやすい規定に改め、安定的な運用と適正な処罰を実現する必要があるとの指摘がなされていることなどに鑑みまして、現行刑法の強制性交等罪や準強制性交等罪の規定を改めて、より明確で判断のばらつきが生じない規定としようとするものでございます。

 安定的な運用と適正な処罰を実現するためには、この改正だけでなく、御指摘のとおり、その趣旨、内容を十分に踏まえた適切な運用がなされることが重要でございまして、そのためには、実際の事件処理に当たる検察官において改正法の趣旨及び内容を十分に理解することが必要でございます。

 そこで、本法律案による改正が実現した場合には、法務当局といたしましては、検察当局に対し、国会審議の場において示された御意見を含め、改正法の趣旨、内容を適切に周知してまいります。

 また、検察権の行使は国民の信頼という基盤に支えられることが不可欠でございますが、このような信頼を得るためには、本法律案による改正後の規定が安定的に運用され、適正な処罰が積み重ねられるということだけではなく、そういった運用がなされていることについて被害者に御理解を得ることも大切であると考えております。

 実際の事件処理に当たる検察官におきましては、これまでも、被害者等に対して、捜査処理の内容及び理由について丁寧に御説明をし、御理解を得るように努めているものと承知はしておりますけれども、本法律案による改正が実現した場合には、改正法の趣旨及び内容を踏まえ、より適切に対処していくものと考えております。

藤原委員 ありがとうございます。

 頑張りますということなんだと思いますが、簡単な問題ではないんですが、やはりこれは常に問い続けていかないと、刑事に対する信頼というのが損なわれていきますので、是非頑張っていただければと思います。

 質問を終わります。ありがとうございました。

伊藤委員長 次に、日下正喜君。

日下委員 公明党の日下正喜でございます。本日もよろしくお願い申し上げます。

 先日の参考人質疑では、複数の参考人から、今回の法改正への評価とともに、適切な運用面の改善を求める声がございました。

 運用面の改善を考えた場合、被害届を受理する警察や検察官、裁判官など、それに携わる関係者の性暴力被害者に対する深い理解が欠かせないことは言うまでもないことです。

 この度の改正を受けて、より充実した研修が求められると思いますが、これまでの取組及び今後どのように研修を充実していかれようとするのか、法務省の御所見を伺います。

松下政府参考人 お答えいたします。

 法務・検察におきましては、検察官の経験年数等に応じた各種研修を行っておりますところ、その一環として、これまでも、検察官が性犯罪の被害に遭われた方の心理などを適切に踏まえた事実認定ができるよう、性犯罪に直面した被害者の心理に精通した精神科医や臨床心理士による講義を実施してきたものと承知をしております。

 御審議いただいている法案が成立した場合には、法務省としては、まず、改正の趣旨や内容について、検察当局に対して速やかに周知してまいります。その上で、検察官に対する各種研修におきましても、引き続き、性犯罪被害者の心理等についての理解を深めるための講義などを実施していくとともに、今回の法改正の趣旨、内容についても、これが十分に共有され適切に運用されるよう周知徹底に努めてまいります。

日下委員 ありがとうございます。

 また一方で、性暴力被害に遭われた方のうち、被害の相談や打ち明けることができなかった人が女性で六割もおり、警察に届けられる方は、いわゆる行きずりの犯行に遭った方など少数にとどまると伺っております。多くは、交際相手や配偶者、職場や学校、習い事など顔見知りからの被害で、被害届が出しづらく、体調を壊し、会社や学校に行けなくなるなど、大きな精神的後遺症を残すと言われております。

 では、どこに相談すればいいのかというと、各都道府県に設置されている性被害ワンストップセンターがあるのですが、取組は各都道府県でまちまちのようでございます。私は、先日、心理的サポートや医療機関との連携、警察との連携など、熱心に取り組まれている、性被害ワンストップセンターひろしまの業務委託を受けているNPO法人性暴力被害者サポートひろしまの北仲代表理事から様々な課題とお話を伺いました。

 時間がないので全部は紹介できないのですが、一つは、同センターのスタッフの雇用の問題です。三十名程度で運営しているそうですが、予算の関係で、専門職としてフルタイムで雇用されている方は現在一名、来月から二名に増員されるようです。年間二千回を超える電話相談や面接相談、専門支援、産婦人科等での証拠物の採取の立会い、冷凍保管まで、スタッフはほぼパートの方に頼っている状況で、現役を退かれた高齢の元保健師や元公務員の方などが多く、継続性や人材育成のことを考えても、若手の専門職の増員などが強く求められます。県が二分の一の費用を負担している広島県はまだいい方で、他県ではもっと厳しい状況にあるとのことでした。

 二つ目は、性暴力やDV、ストーカー被害等は警察が受け持ちますが、事情聴取を行う取調べ室は被害者が心を落ち着けて話ができるような環境とは言い難く、何時間もの聴取に耐えられず、途中で帰ってしまう被害者もいるそうです。

 こうした環境は全国的にさほど変わりはないとのことでございました。被害者のことを第一に考えるならば、話を聞いてもらえる空間は非常に大切でございます。調査官が逆にワンストップセンターに出向き事情聴取を行うなど、工夫の余地はあるのではないかと思います。

 米国やヨーロッパに設置されているファミリー・ジャスティス・センターは、DV、虐待、性暴力など、ファミリーバイオレンス被害者のためのワンストップサービスです。多機関、多職種連携で、専門家が被害者の希望やニーズに沿った形で熱心に支援を提供しています。当事者と支援者から課題を聞き取り、当事者を中心に置いたこのシステムは高く評価されているとのことです。日本においても、各府省庁の縦割りの弊害を解決するためにも、是非こうしたファミリー・ジャスティス・センター方式を採用できないかと考えます。

 先ほど申し上げました雇用、予算の問題、また被害者に寄り添った環境整備も併せて、内閣府の御所見を伺います。

畠山政府参考人 お答え申し上げます。

 性犯罪・性暴力被害者のためのワンストップ支援センターは、被害直後からの医療的支援、法的支援、相談を通じた心理的支援などを総合的に行うことができる機関であり、全ての都道府県に設置されております。

 性犯罪、性暴力は、例えば家庭内で身近な人から被害に遭うケースもあり、被害者支援に当たりましては、事案に応じて、ワンストップ支援センターのほか、DVや児童虐待などの問題に対応する機関が、それぞれの専門性を発揮しつつ、相互に連携して対応することが重要と認識しております。

 本年三月に取りまとめました性犯罪・性暴力対策の更なる強化の方針におきましては、ワンストップ支援センターが、個々の被害者の状況により、必要に応じて専門機関等による支援につなぐことができるよう、警察、婦人相談所、児童相談所、教育委員会等の関係機関との連携の強化を図ることとしております。

 また、職員の雇用についてもお尋ねをいただきました。

 ワンストップ支援センターの運営につきましては、性犯罪、性暴力被害者支援のための交付金を設けておりまして、これによりまして、職員の常勤化を含め、適切な処遇により職業として確立できるよう、都道府県を支援することとしております。

 これらの取組によりまして、ワンストップ支援センターの運営の安定化を図るとともに、センターを中心として関係機関が連携し、被害者にしっかりと寄り添った支援が行われるよう努めてまいります。

日下委員 ありがとうございます。

 大変大事なセンターでございますので、更なる充実をお願いしたいと思います。

 しあわせなみださんから、障害児者は健常者に比べて性暴力に遭うリスクが高く、カナダの調査では、性暴力に遭った女性障害者は、健常女性と比べて三倍高くなっていることを伺いました。先ほどの北仲代表理事からも、ワンストップセンターの相談者にも知的障害や発達障害と思われる人も少なくないと伺いました。

 障害児者は、特段の配慮を持って守っていくべき存在だと思いますが、いまだ日本では障害児者の性被害に関しての公的調査が行われていないとのことでございます。日本でも、まず実態を把握し、適切な対応が必要であると強く思うのですが、法務大臣の御所見をお伺いいたします。

齋藤(健)国務大臣 本法律案は、障害を有する方の性犯罪被害の実態も踏まえつつ立案したものでありまして、障害を有する方に対する性犯罪にも適切に対処し得るものとなっていると考えておりますが、御指摘のような観点も含めて、性犯罪の被害の実態を把握することは重要であると認識をしています。

 本法律案が成立した場合には、その施行状況を把握することはもとより、性犯罪被害の実態把握等について、実態調査の対象や方法なども含めまして、関係府省庁とも連携し、必要な検討を行ってまいりたいと考えています。

日下委員 この実態調査、本当に各府庁にまたがっておりまして、どこが中心になって行うかというふうな問題もあると思いますけれども、障害者に対する性犯罪の問題、やはり三倍も高いという実態、これはカナダの調査ですけれども、日本ではどういったところでどういう問題があって障害者がそういう被害に遭うのかという実態を押さえていくことがこういう犯罪を抑止するために必要になると思いますので、どうぞ実態調査の方をよろしくお願いしたいと思います。

 本日はこれで終わります。ありがとうございました。

伊藤委員長 次に、米山隆一君。

米山委員 それでは、会派を代表して御質問いたします。

 先般の委員会で私が、普通に自宅でお酒を飲んでいて、ちょっといい気分で、日常のことでもあり、別に積極的な同意なわけでもないけれども不同意とも言いづらいという状況でも、条文上は、アルコールの影響で同意しない意思を形成、表明、全うすることが困難であるということになり得ると思うのですが、これは不同意性交等罪に該当しますかという質問をしたところ、アルコールの影響があったといたしましても、お酒に酔ったことで例えば気分が開放的になったといたしましても、なって、性的行為をするという選択をしやすかったというだけであるのであれば、性的行為をするかどうかの判断、選択のきっかけや能力があり、同意しないという発想もできたのでありますから、同意しない意思を形成することが困難な状態には該当しないのかなと思いますと。

 アルコールの影響があったといたしましても、お酒に酔ったということで例えば気分が開放的になったといたしましても、なって、性的行為をするという選択をしやすかったというだけであれば、性的行為をするかどうかの判断、選択のきっかけや能力があり、同意しないという発想もできたのでありますから、同意しない意思を形成することが困難な状態に該当しないのかと思います、自らの判断でそのような意思をやめて応じるという選択をしたのでありますれば、同意しない意思を全うすることが困難な状態にも該当しないと思いますというような御回答をされました。

 私、これは結構な答弁といいますか、多くの方々が心配していることに対する回答だったと思いますので、ちょっと確認させていただきたいんですが、ちょっとしつこいかもしれませんけれども。

 お酒に酔ったことで例えば気分が開放的になったといたしましても、なって、性的行為をするという選択をしやすかったというだけであるのであれば、性的行為をするかどうかの判断、選択のきっかけや能力があり、同意しないという発想もできたので、同意しない意思を形成することが困難な状態には該当しないという御答弁から考えますと、これは、何せ、ちょっとほろ酔いで気分がいいとか、何となく深く考えるのが面倒になったとか、そういうことは入らない。同意しないという発想ができないような状態、発想すらできない状態を指すということでよろしいでしょうか。

松下政府参考人 同意しない意思というのは、前回も御答弁しましたとおり、性的行為をしない、したくないという意思でございまして、この意思を形成することが困難な状態とは、性的行為をするかどうかの判断、選択をする契機、きっかけですね、や能力が不足し、性的行為に同意しないという発想をすること自体が困難な状態を意味するものでございます。

 お尋ねのような場合に、これに該当するかどうかは、個別の事案ごとに証拠関係に照らして判断されるべき事柄ではございますが、アルコールの影響があったとしても、いわゆるほろ酔いの状態で気分がよく、深く考えるのが面倒になり、性的行為をするという選択をしやすかったというだけであれば、性的行為をするかどうかの判断、選択の契機や能力があり、同意しないという発想もできたと考えられますので、同意しない意思を形成することが困難な状態には該当しないと考えられます。

米山委員 それは解釈論として、もう御答弁としては十分とは思うんですけれども、ただ、これはやはり文言として、形成と言われますと、発想して、考慮して、検討して、決心するという一連の流れがあるわけですよね。通常、形成といったら、言葉としてはそう思うわけです。今のような御答弁の内容だというのはちょっと分かりづらい、なかなか皆さんそう取らないんじゃないかと思うので。

 かつ、それって、結局、日常の用語で言ったら、同意しない意思を形成することが著しく困難ということなのではないかと思うんですが、くどいかもしれませんが、そのようにすることに関しての大臣の御所見を伺います。

齋藤(健)国務大臣 先ほど局長が答弁したとおり、本法律案において、同意しない意思とは、性行為をしない、したくないという意思であり、同意しない意思を形成することが困難な状態とは、性的行為をするかどうかの判断、選択をする契機や能力が不足をして、性的行為に同意しないという発想をすること自体が困難な状態ということを意味するものであります。

 委員が指摘されたケースがこの要件に該当するかは、先ほども答弁をさせていただいたところであります。

 被害者が先ほど申し上げた状態にある場合に、その困難さの程度が著しくなくても、同意しない意思の形成が難しいということ自体から、当然に性的行為について同意していないことを確信できるというふうに考えられますので、したがって、著しく困難であることを要件とする必要はなく、そのような要件とすると、かえって、どの程度であれば著しいと言えるのかという点において判断にばらつきを生じさせることとなり、相当でもないと考えているところであります。

 以上です。

米山委員 ここはもうきっと、ワードというか単語の、言葉の問題なんだと思います。先ほど来の御答弁にあるような同意というのであれば、私の感覚では、その困難さというものを著しく困難というのであると思うわけですよね。だから、そこはもう、そのようにきちんと御答弁いただいて、出していただけるということであれば、それでいいのかなと思います。

 そうすると、次の回答もほぼほぼ同じになるのでまとめてお聞きしますけれども、次の、同意する意思を表明するということに関しても、これもまた、ほろ酔いでちょっと面倒だというようなことではなくて、やはり自らの意思で同意、意思を表明するということがかなり困難な状態ということであり、また、同意する意思を全うすることが困難ということに関しても、ほろ酔いでちょっと同意しないと言い続けるのも面倒だなとかいうことではなくて、やはりその同意する意思を全うすることがかなり困難、文言としてかなりを使えという意味じゃないんですけれども、要は、ちょっと面倒だとかいう話ではなく、基本的には、かなり難しいことだということを指すということでよろしいでしょうか。

松下政府参考人 お答えいたします。

 同意しない意思を表明することが困難な状態とは、性的行為をしない、したくないという意思を形成すること自体はできたものの、それを外部に表すことが困難な状態を意味するものでございます。ですので、お尋ねのような場合に、これに該当するかどうかは、繰り返しになりますが、個別の事案ごとに証拠関係に照らして判断されるべき事柄ではありますけれども、アルコールの影響があったとしても、いわゆるほろ酔い状態で気分がよく、深く考えるのが面倒になって、性的行為をするという選択をしやすかったというだけであれば、自らの判断で同意しない意思を外部に表すことをやめたにとどまるので、同意しない意思を表明することが困難な状態には該当しないと考えられます。

 全うというところについてもお尋ねでございますけれども、同意しない意思を全うすることが困難な状態とは、性的行為をしない、したくないという意思を形成したものの、あるいはその意思を表明したものの、その意思のとおりになるのが困難な状態を意味するものでございまして、お尋ねのようなケースについても、先ほどと同様でございますが、いわゆるほろ酔い状態で気分がよく、深く考えるのが面倒で、性的行為をするという選択をしやすかったというだけであれば、結局のところ、自らの判断で同意しない意思をやめて応じる選択をしたということになると思いますので、同意しない意思を全うすることが困難な状態には該当しないと考えられます。

米山委員 では、次の、またそれを著しく困難というんじゃないですかという質問は、もう割愛させていただきます。

 それは分かりました。そうだということでいいんだとは思うんですけれども、そうだということであれば。

 今度は、先ほど藤原委員からもあったんですが、とはいえというのがあって、とはいえ、この困難、もちろん、先ほど御答弁にもあって、困難な状態とあるから、それは外から分かるんだとおっしゃられるんですけれどもというのがあって、これはもちろん、刑法において、主観的要件といいますか内心の要件というのは問われることは、いろいろな目的とかというものであるんですけれども、犯人の目的、犯人の内心というものは、まずそれは検察官が、どういうつもりだったんだと聞けるわけですよね。犯人の方も、いや、そういうつもりじゃありませんでしたというふうにきちんと反論ができるわけなんです。性質的に反論できるわけです。

 ところが一方、やはり相手の、状態は外形的だといいながら、とはいえ、意思の形成過程であるとか、自分の意思で止めたか止めないかという御答弁もいただいていることですから、結局それはかなり内心の話であって、しかも、被害者は検察官の前には実はいないわけです。もちろん、被害者から聞き取りもできますけれども、犯人を取り調べるようには取り調べられないわけです。さらに、被疑者の側から見たら、それは、だって、被害者の方の内心は知りようがないから、反論をしてみようがないわけですよね。いや、それは、被害者の方はそうじゃなかったと思うよみたいなことしか言ってみようがないんだと思うんです。

 これに関して、先般の質問では、従来、心神喪失や抗拒不能という要件があったけれども、それはちゃんと認定できたから問題ないとおっしゃられたんですが、心神喪失や抗拒不能って、明らかに外形から見て分かる話なわけです。だから、やはり内心の中をちゃんと認識できるのかというのは大きな問題だと思いますので伺いたいんですが、すごい原則的なところで、それはそうだと回答が来るんだと思うんですけれども、これは刑法ですから、当然、故意が必要で、同意しない意思を形成することが困難、表明することが困難、全うすることが困難ということは、犯人はこれを認識し、それぞれ困難な状態であるということを犯人が認識し、若しくは認識すべき状況にあったことが刑を科すには必要だということでよろしいでしょうか。

松下政府参考人 お答えいたします。

 御指摘のとおりでございまして、改正後の刑法第百七十六条第一項、百七十七条第一項の罪は故意犯でございますので、その成立には、被害者が同意しない意思を形成し、表明し若しくは全うすることが困難な状態であることの故意が必要でございます。

 ですので、困難というその規範的な認識、つまり法律上の評価にわたる認識までは不要でございますが、それを基礎づける事実の認識は必要でございます。

米山委員 確かに、経過からして困難だったろうみたいな状態もきっとこの条文からは入るので、外形だけではなく経過も含めてということだとは思うんですが、やはりそこは外形的に判断できるということでいいのかと思います。

 これもまた文言の話はしませんけれども、もはや。やはり、外形的に判断できる状態のことをいうんだということに関しては、きちんと示すべきではなかろうかと思います。先ほど、これも日下委員だったか藤原委員だったかちょっと忘れてしまいましたが、よりよい運用のためには検察官にそれを徹底するということがあったんですけれども、実は、やはりそれだけじゃなくて、判断の指標というものを、ガイドラインでもホームページの記載でも何でもいいと思うんですけれども、一般の方にも分かってもらうということは非常に重要なんだと思います。

 私、前回の質疑でも申しましたが、刑事の規定というものは、単に刑事にとどまるものではなくて、民事も、また家事も規定していくわけですので、そこをきちんと分かりやすいガイドライン、若しくは広報をすべきだと思うんですが、こちらはちょっと通告から、回答がまとまってしまっていますけれども、大臣の御所見を伺います。

齋藤(健)国務大臣 今回の法案につきましては、おっしゃるように、きちんとした周知徹底をしていくことが大事だと思っていますので、これも繰り返し答弁していますが、御審議いただいている性犯罪に関する二つの法案が成立した場合には、改正等の趣旨や内容について、関係府省庁、機関や団体とも連携しながら、適切に周知、広報してまいりたいと考えていますので、その方法についてもしっかり検討していきたいと考えています。

米山委員 是非そこはお願いします。

 ちなみに、ここまで来て最後にちょっと伺いたいんですが、実は、この条文で非常に疑問だったんですけれども、百七十六条一項一号から八号の要件がない、つまり、アルコールとか睡眠とか、そういう困難条件がまるでないという状態で、最初から最後までちゃんと被害者の方は同意していませんと言い続けている、ひたすら言い続けていて、ただひたすら、相手が、暴行も脅迫も使わず、何も使わず、ただただ性交渉を止めない、ただひたすら進んでいく、そして終わってしまったというような場合、これは一体どの条文に該当して、どのように処罰されるのでしょうか。伺います。

松下政府参考人 お答えいたします。

 改正後の刑法第百七十六条一項、百七十七条一項の同意しない意思を全うすることが困難な状態というのは、先ほども申し上げましたとおり、性的行為をしない、したくないという意思を形成したものの、あるいは意思を表明したものの、その意思のとおりになるのが困難な状態を意味するものでございます。

 お尋ねのように、同意しない意思を表明しているにもかかわらず、これを聞き入れてもらえず、性的行為をされてしまったという場合、ただいま申し上げた同意しない意思を全うすることが困難な状態かどうかが問題となると考えられます。

 例えば、性的行為をしたくないと言えばやめてくれると予想して、その意思を表明したものの、予想と異なってやめてくれなかったため、このような状態に直面して恐怖、驚愕したことによってこの状態に陥り、性的行為をされた場合には、処罰の対象となり得ると考えられます。

 また、御指摘のように、百七十六条一項、百七十七条一項の各号に掲げる行為、事由その他これらに類する行為、事由があり、これらによって同意しない意思を形成、表明若しくは全うすることが困難な状態に陥ったことがこの罪の成立には必要ですので、これらが認められなければ成立しないこととなりますが、先ほども申し上げたように、各号に掲げる事由は、現行法の下で、裁判例において暴行、脅迫や、心神喪失、抗拒不能に該当すると認められたもののほか、心理学的、精神学的、医学的知見を踏まえて、性的行為に関する自由な意思決定が困難な状態となる原因になり得るものを広く拾い上げて示しているものでございまして、同意しない意思を全うすることが困難な状態であると認められるにもかかわらず、各号に掲げる行為、事由又はそれらに類する行為、事由のいずれにも該当しないという事案は、実際には想定し難いのではないかと考えております。

米山委員 時間なのですぐまとめますけれども。

 まあ、そうなんですけれども、それはそうだと思うんですよ。嫌だと言っているのにずっとやっているなら、それは多少なりとも暴行、脅迫があったり驚愕があったりするんですけれども、やはりこれは観念論といいますか、刑法はやはり学問ですから、観念論としては実はちょっとそこの部分が本当は抜けているんだと思いますよ。

 全く困難がない状態で、ただノーと言っているのをただ進んでいく。それは、実は本来この法案で規定すべき最も根幹であるべきところなんですよ。ノーと言ったら駄目というその項がない。本当は、それを第一項にして、不同意にもかかわらず性交渉したら不同意性交罪です、当然でしょうというのはあった上で、二項で一号から八号までやるべきだと思うんですが、それは、法制審議会のいろいろな議論の過程でそうなくなったというのはしようがないし、そこはないからといって現実の運用には困らないと思うんですが、そこまでまたきちんと周知していただいて、ごくごく当たり前な、ノーと言ってそのままいったら駄目ですというのも、これも広報、また適切な運用に努めていただければと思います。

 質問を終わります。ありがとうございました。

伊藤委員長 次に、寺田学君。

寺田(学)委員 寺田です。

 修正協議を進めておりますので、恐らく最後の質問になると思います。

 もちろん、修正協議をやっているところはありますので、問題意識を伝えながらも、その問題意識が、交渉事ですから全てのみ込まれないということはあり得るというふうに思いながらも、あえて質疑に立ちながらまた改めて問題意識を問うこと自体は、この質疑の過程においてこういう問題が残っているのだということをしっかりと残したいという趣旨です。

 今、お手元の方に資料をお配りをしていますので、ちょっと順番を変えて性交同意年齢の引上げの話からやります。

 私も望んでこういうことをしたいわけじゃないですが、私と妻の子供の頃の写真を出しました。これは何を出したかったかというと、政府が同年代とみなす、この法制度の中で、五歳差を離れると一律対等ではないということで罰せられますが、四歳以内であれば同年代というくくりで、性的なことに関して年少者においても同意が可能なのだというみなしが入っています。

 数字だけで言うとなかなか想像がつきづらいので、私が十七歳、高校三年生のときの写真と、妻の了解を取りまして、妻が十三歳、中学校二年生、中学校二年生とありますが、生まれるタイミングによっては中学校一年生もあります。この四歳差ということは、高校三年生と中学校一年生も、政府の現状のみなしであれば同年代とされて、言い方は変ですけれども、左の私が十七歳のときの高校三年生が、右の中学校二年生の少女に対して性行為を求めた際には、この少女の方が同年代であるから相手が高校三年生の男性であろうとも適切に対処をできるのだといって、その性的な同意に対して有効と認めるというくくりになっています。

 やはり、私も親ですし、私も少年時代を過ごしてきましたけれども、実際、様々な理由で五歳差というものが決まってきたことは経緯は理解しますが、その結果として我々の前に今法制度として出されているもの自体は、この両者が同年代だとみなしていることです。私は、ここに大きな大きな実態との乖離があると思っていましたので、修正協議の中でいろいろお話をしました。

 実際のところ、五歳差という本則は堅持されましたけれども、先ほど藤原委員が第一問目でお話しされたとおり、四歳差以内の同年代においても本体の法律によって処罰され得るときがあるのだということを、附則の中と附帯の中で連結しながら問題意識を問うという形に修正協議の中ではまとまっております。

 まず、大臣に感触的なことを聞きたいんですが、これを同年代と呼ぶことに対して、もちろん、今までの法制度として、法の議論として積み上げられた結果としてでき上がっているものではあるとは十分承知していますが、やはり私は同年代と呼ぶことに対して強い違和感がありますが、大臣の御所見を。

齋藤(健)国務大臣 これはこの法律の極めて大事なところだと思いますので、しっかり答弁したいと思います。

 委員の御趣旨は、年齢差要件を五歳差とすると、中学生に対して例えば性的行為をした成人、十八歳以上が処罰されないということになることについて法務大臣はどう考えるかということなんだろうというふうに……(寺田(学)委員「これを見て」と呼ぶ)これも同じだと思うんですけれども。

 私は、いわゆる性交同意年齢の規定は、これは正式に法務大臣として答弁しますが、暴行、脅迫などといった、意思決定に影響を与える事由がなくても、性的行為をしたこと自体で性犯罪が成立するものとする規定だということでありますので、刑罰の謙抑性の観点から、双方の年齢が要件を満たすだけで例外なく対等な関係がおよそあり得ず、自由な意思決定をする前提となる能力に欠ける、それが言えるものである必要があるということが前提としてあるんだろうと思います。

 本法律案におきましては、そのような観点から、例外なく対等な関係はあり得ないと言える場合だけに限って処罰対象とするという考え方に立って五歳差を要件としているわけであります。

 したがって、年齢差が五歳差未満であれば両者が対等な関係である、こういう立場に立っているものではないし、年少者は常に自由な意思決定ができるとするものでもないというふうに考えています。

 その上で、性的行為の当事者の年齢差が四歳差以内の場合であっても、もうこれは御案内のとおりですけれども、改正後の刑法第百七十六条第一項若しくは第二項又は第百七十七条第一項若しくは第二項の要件を満たす場合には、当然、不同意わいせつ罪、不同意性交等罪が成立し得るということであります。

 今のようなケースについては、そういう考え方で一定の判断をさせていただいているということでございます。

寺田(学)委員 先ほど、藤原委員の質疑の中で局長の方から、先輩、後輩という社会的な立場を利用してと。私と妻自身、今結婚していますけれども、当時は先輩、後輩でも何でもないというか、実際的にはあれですけれども。先輩、後輩という社会的地位がなくても、この年齢差においては、やはり私は適切に対処できるというみなしが入ること自体に強い違和感があります。

 ですので、単純に先輩と後輩という縦のつながりがあるとかないとかではなくて、まさしく年少者が適切に対応できるのか、できていたのかどうかということを実態を照らし合わせながらやらなきゃいけないと思いますし、成人と中学生という関係においては、成人になった以上、様々な自由を享受しますので、そこは私は、一律対等な関係は完全に崩れると思っています。

 下の方に事例を出しましたが、二十歳と十五歳の場合の十五歳は保護して、十九歳と十五歳の場合の十五歳は保護しないという形になります。これをどう実態的に説明するのかも私は難しいと思います。結果的にこうなってしまっているということ自体でしかないと思っていて、だからこそ、この部分に対して実態に合わせた法の判断というものが私は必要だと思っています。局長の答弁は藤原さんのときにありましたので、重ねて問いません。

 修正協議の中でもう一つ、見直しの条項と、そしてまた、時効の延長の根拠となる調査。私の問題意識でいうと、この十六歳未満の方々の被害届を出された場合の取扱い、起訴、不起訴の状況、様々な実態調査というものが、この法自体がまさしく実態に合っているかどうかを問う上で非常に大事なものだと思っています。修正協議はほぼまとまりつつあります。この見直しに関しても、協議の中で異論がない状態です。

 この見直しに関して、そしてまた調査に関して、どのようなお考えなのか、大臣からでも局長からでもお答えいただければ。

松下政府参考人 お答えいたします。

 まず、本法律案の立案に先立って行われました性犯罪に関する刑事法検討会や法制審議会の部会におきましては、様々な立場の方々に委員や幹事として御参加をいただき、多角的な観点から、性犯罪被害の実態や被害者心理のほか、罰則や刑事手続法に関する規定の在り方を検討するに当たっての理論的根拠や課題、運用に当たって懸念される問題点などについて議論を重ねていただき、その結果の意見の取りまとめとして法制審議会から答申をいただいたものと受け止めておりますので、この法律案は、そのような答申を踏まえて立案されたものとして、性犯罪に適切に対処するために現時点で取り得る最も適切な施策を実現するものであるというふうに考えております。

 もっとも、この委員会におきまして、参考人質疑や法案質疑におきまして、公訴時効の延長期間の問題ですとか、いわゆる性交同意年齢に関する年齢差要件など、本法律案とは異なる御意見や御懸念が示されたことについては、重要な御指摘であるというふうに考えておりまして、私どもとして、性犯罪は悪質、重大な犯罪で、厳正に対処することが必要であり、引き続きその被害の実態を把握していくことも重要であるというふうに認識をしておりますので、本法律案が成立した場合には、委員会での御議論も踏まえまして、改正規定の施行状況も勘案し、関係府省庁とも連携して必要な検討を行ってまいりたいと考えております。

寺田(学)委員 いわゆる見直しのタイミングは修正協議の中で五年後と、そこも私は十分じゃないというふうに思いはありますが、歩み寄りはその形になりました。そこは十分承知しているところですが。

 調査自体は五年を待たずして始められるわけです。もちろん、時効の調査もあるでしょうし、私が申し上げた十六歳未満の被害の状況の取扱いの状況もあると思います。調査に関してはしっかりと、施行後直ちに、もちろんどのような調査を行うのかということを含めて、国会と連携しながら進めていただきたいと思いますが、局長、いかがですか。

松下政府参考人 お答えいたします。

 本法律案が成立して施行された後、その運用状況がどのようであるかということにつきましては、それは速やかにというか、適時に行っていく必要があると思っておりまして、何年経過した場合においてということになったときに、その経過後から調査をするということではなく、成立した後の施行状況を見ていくということになると思います。

寺田(学)委員 施行状況はそうだと思います。

 もう一つ大きな問題となっていた、時効の問題に関わる、結局のところ、被害を申し出ることがなかなか困難な方々がいらっしゃった。そういう方々の実態を捉えるということ自体、諸外国も含め、日本のシンクタンクも含めて、やられていると思います。そのこと自体は、いわゆる運用の調査とはまた別個のものになりますが、そのこと自体も是非とも可及的速やかに調査を始めてほしいと思いますが、局長、いかがですか。

松下政府参考人 お答えいたします。

 時効の点につきましては、本法律案におきまして、ほかの犯罪と比較して類型的に被害が潜在化しやすいという性犯罪の特性を踏まえて、公訴時効期間をそれぞれ延長するということとしております。

 そして、延長する期間については、これまでも御答弁申し上げたとおり、可能な限り実証的な根拠に基づいて定めるという観点から、内閣府の調査等を基に五年としているところでございますが、本委員会の参考人の意見陳述や委員からの質疑におきましても、先ほど申し上げた内閣府の調査では、調査時まで被害について誰にも相談していない人が多くいる、あるいは、性犯罪の被害については、誰かに相談してから捜査機関に被害を申告するまでに更に時間がかかることがあるといった実態が十分に踏まえられていないのではないか、更なる調査が必要であるという御意見が示されたところでございます。

 性犯罪について今のような御指摘を受けているというところにつきましては、性犯罪の被害実態を把握するということが重要であるという認識の下に、御指摘の点につきましても、実態調査の対象や方法なども含めまして、関係府省庁とも連携して必要な検討を行ってまいります。

寺田(学)委員 調査を早く始めてください。それが遅れれば遅れるほど、やはり潜在的に、被害に遭った方々の気持ちの部分もありますし、その被害を起こした加害者というものがずっと野放しになっている部分もあります。

 大臣にせよ局長にせよ十分御承知と思いますが、この性犯罪自体は表に出ることがなかなか難しいものです。ですので、本当にその方々に寄り添いながら、その実態をしっかりと調べて、それに適応した法律を絶えず作り変えていくことが必要だと思いますので、局長にはその点はしっかりとやっていただきたいと思います。

 修正協議もやりながら議論していますので、問題意識はその場の中でもお話をしておりますし、修正協議の中でできたこと自体を、また参議院の方でもしっかりと問うていただくことになると思います。ですので、衆議院が終わったからそれで全て終わりということではなくて、絶えず続いていくものと思いますが、私自身として長年取り組んできたこの刑法の質疑の最後となると思いますので、自分自身として考えることをしっかりと述べ、議事録に残したいというふうに思っています。

 私自身考えていることを申し上げますと、今回の法改正の中核的な要素というもの自体は、性的同意というものを初めて本質的に理解し、法案に落とし込んだことだと私は思っています。

 その意味を踏まえて、過去、自分自身の性行為に関して、特に若いときに、その相手との性的同意がどういうものであったかということを改めて振り返りました。

 相手の同意を得ずにしたことはないと私自身は確信しているんですが、同意と思っていたそれ自体は、相手が嫌がらなかった、又は拒否しなかったというもので、それ自体を、いや、本心は嫌がっていないはずだ、恥ずかしがっているだけなのだと自分にとって都合のいいことを考えていたのではないかと、正直、戸惑いが今もあります。

 この性的同意に対する未熟な理解を基にした性行為というものは、一方の勝手な思い込みと過信でしかなくて、今落ち着いてそのときの相手の気持ちに立てば、拒否できない、怖い、嫌われたくない、言い出しにくい、そのような気持ちをただ表面化できていなかったのではないかなと想像がついて、私は反省が募ります。いずれ、私を含めて多くの成人が過去を振り返って、その在り方を、今回の法律を基に振り返るべきだと私は思います。

 逆に、性的同意の在り方を振り返ることもなく、従来どおり、これは法務省の担当記者からお話をされたことなんですが、大人同士の性的同意はあうんの呼吸なのだというようなことをその方には言われたんですけれども、そういう認識でとどまっている人は、自分自身のコミュニケーション能力が乏しいということを今回の法律をもって気づくべきだと私は思います。

 今回の改正は、日常に暮らす方々に特段大きな負担を課すものではないと私は思っています。ただ単に、相手との性行為に臨むに当たり、地位や相手との関係性を利用することもなく、酒の力もかりず、年齢差も利用せず、当然、お金で買うこともなく、相手の気持ちと立場を尊重して、丁寧に相手の同意を取って臨むことを求めているものにすぎないと思います。この要件に不安を覚える人は、性行為に及ぶこと自体を思いとどまるよう説くものでしかこの法律はないと思っています。

 ある友人女性から言われたことが印象に残っておりますので申し上げます。女性は圧倒的な力の差から深層心理では常に男性から脅かされている存在だ、だからこそ、一対一の状態で男性に対して自由に断れるということはまずないという前提に立つべきだ、だからこそ、イエス・ミーンズ・イエスなのだと、女性から私は二年前に言われました。

 力の強い側から見るとおよそ対等だと思える環境であっても、力の弱い側から見ると対等ではないということは事実なんだと思います。

 このこと自体は、私は裁判所の中でも起きていることだと思いまして、ある一例を申し上げますが、強制性交等の被害を受けた女性が、被害の翌日、友人から強く勧められて救急外来に行きました。過呼吸になって、おえつしながら、診断の結果、陰部に負傷があり、被害者が妊娠を心配したことから緊急避妊薬が処方された。警察に被害を通報したけれども、涙を流して震えるばかりであった。

 そのような中で、様々な形でその被害を申告し、裁判になったんですが、結果として、裁判所は、被告人と被害者の間に性交があったとは認められないし、被害者が性行為に同意していなかったとも認められない、被告人を無罪とした。

 その判示中には、被害者が、声を出せる状態であったのに、性交されるかもしれないという段階に至ったにもかかわらず、大声で助けを求めるような行動にも出なかったというのは不自然、逃げられるタイミングがあったのに部屋からも逃げようとせず、目を覚ましたとき、被告人と部屋に二人きりになったことに気づいた時点で部屋を出なかったことも、初対面の異性の被告人を信頼し過ぎであり、被告人に全く男性としての好意を持っていなかったのか疑問というふうに公判中で裁判官は述べたそうです。

 抗拒不能の判断というのがいかにぽんこつであって、内心の判断というものがいかに、現実、こういう形でなされているのかということを私はこの判例を見ながら思いました。

 夫婦間における性暴力に関しても、今回明文化することに疑問を持つ人が少なからずいるようです。とはいえ、幾ら夫婦であっても、自分の体ではないですから、除外することは私はできないと思っていますし、従来からこのことは組み込まれていたものだと思います。現に、私の友人でも、夫の性行為の誘いを断ったがためにクレジットカードを止められたという人がおります。たとえ夫婦であっても、結局、立場の強弱は生まれていると思います。

 そもそも、私はここを強く思うんですが、男性と女性で性行為への向き合い方が全く違うと思っています。ある男性からは、このようなことを言われました、最近ですけれども。性交同意年齢を引き上げることに関して、少年少女の恋愛が性愛に結びつくのは、純真と性の目覚めと好奇心等様々で、思春期の少年少女たちの行為、行動を一律に法的悪とすべきではないというふうに男性から言われました。一見ごもっとものように聞こえるような立派な発言ですけれども、少年少女というもの、男性と女性の性行為の向き合い方を同列に語ること自体、大きな誤解があると私は思います。

 国会という場で言うべきかどうか分かりませんけれども、言ってみれば、セックスにおいて、単に精子を出すだけで、その後に起き得ることに関して究極的に何ら責任を負わない男性と、セックスの先には妊娠、出産という命懸けの行為が控え、体の変化はもとより、それからの人生が大きく変わってしまう女性とでは、当然ながら、性行為に対する捉え方が天と地ほど違うというのは当然のことだと私は思います。

 したがって、女性にしてみれば、一部例外の人は除いて、性行為というものはかなり限定的に、消極的に行う行為であって、それにもかかわらず、中学生だって恋愛したら性行為をしたくなるはずなのだ、中学生と成人の間には真摯な性的同意はあり得るのだという、女性にしてみれば顎が外れるような勝手な思い込みが男性側からもっともらしく発せられているのが、悲しいかな、現状だと思います。

 強者と弱者、男性と女性で性的同意の認識が大きく異なるにもかかわらず、今まで、その違いが共有されることもなくここに至り、その結果として、一方が望まない性行為が往々にして発生し、多くの弱者や女性は深く傷つき、そして、本来であれば罰せられるケースですら、先ほどのようなケースですけれども、本人の同意があったのであろうとして、処罰されずに来ました。

 今回の法律は、その意味において、ようやくそのような現状に対して重い腰を上げて、弱者を守るために、弱者の声なき声を拾い上げるために審議された法律だと私は思っています。

 もちろん、人を処罰する刑罰ですから、謙抑性は踏まえなければなりません。そして、明確でなければならない。そのようなことは当然踏まえながらも、この法律は、性暴力に遭っても声も上げられず、その暴力によって汚れたと自分を責め、その苦しみを乗り越えられずいる多くの人たちの声なき声を代弁する法律であって、年長者や力や立場が強い者の自己中心的な同意や思い込みに基づいて語られては断じてならない法律だと私は強く確信しています。

 最後の質疑になるこの場において、こう長々とこの法律が持つ意味を語り続けるのは、国会においては、あなたが味わった苦しみを少しでも理解しようとする者が集い、その犯罪による被害者を一人でも減らすよう、そして、もし不幸にも起きてしまっても、確実に加害者が処罰されるよう、そのことによって受けた苦しみが少しでも減じられ、回復につながるよう、知恵を絞り、問題点を改善すべく議論をしていた事実があることが、苦しみを抱え、一人で苦しむ人に伝わるときが来るよう、永遠に残るこの議事録に、しっかりとその形跡とその意味を残しておきたいと思うからです。

 今回の改正も、まだまだ第一歩だと思います。改善点は多々あります。これからも歩みは続くと思いますけれども、それでも、この一歩が社会にとって大きな役割を果たすことを立法者の一人として強く望みます。

 与野党の皆さん、この国会で必ず成立をさせるべきだと思いますし、そのための最後までの努力をしなければならないと思います。どのような理由があっても、この改正案の成立が遅れることは新たに地獄の苦しみを味わう被害者を生むのだということを心に留めて、頑張りたいと思います。

 そして、法務省を始め関係する警察や裁判所、行政府の皆さんには、この法律が成立した暁には、是非、弱き者の立場に立って、この法律の趣旨とするところを全うしていただきたいと心から望みます。

 そして、最後に、被害に遭いながらも声を上げてくださった皆さん、そして、その被害者たちを寝食を忘れて懸命に支えられた弁護士や支援者、研究者、執筆家の皆様、中には、流れ星のたびに刑法改正、刑法改正と願いを込められた方もあると聞いています。様々な壁に拒まれながらも歩みを進めていただいたことに心から感謝申し上げたいと思いますし、本当にありがとうございました。ここまでたどり着くことができたのも、そういう方々の努力だと思っています。

 いずれにせよ、時間になりますのであれですが、今後、自分がどのような立場になろうとも、この問題には、ライフワークとしてやってきましたので、しっかりと取り組んでいくということをお誓い申し上げて、時間となりましたので、私の最後の質疑を終わりたいと思います。

 以上です。

伊藤委員長 次に、阿部弘樹君。

阿部(弘)委員 日本維新の会の阿部弘樹でございます。

 この法務委員会の審議では、いつもペドフィリア、小児性愛のことについて常にお伺いしておりますが、今日は、小児性愛はもちろんのこと、大きくパラフィリアという性的嗜好のことについてお伺いしていきたいと思います。

 パラフィリアという性的嗜好の障害、なかなか聞き慣れない話ではございますが、人前で性器を露出してしまう、そして性的興奮を覚える、あるいは、サディズム、マゾヒズムで性的興奮を覚える、そしてのぞき見、盗写などでも、やはりそのときも、スリルを味わうこと、あるいは後にその画像を見ることで性的興奮を覚えるということ。あるいは、こういう法務委員会で話していいかどうかちょっと考えましたが、尿を、放尿を、顔にかけてもらうことで性的興奮を覚える、浣腸をする、あるいは便を食べてしまう、そういうことで性的な興奮を覚えるという方もいらっしゃいます。全てが罪になるというわけではありませんが、公の場で、あるいは他者に害を及ぼすことになれば、当然罪になっていくわけでございます。

 精神医学の立場からすると、そういう方々がいらっしゃって、その中の一部の方々が外来にお見えになるということは、現実であるわけでございます。

 では、そういう公然わいせつ、あるいは盗写の件数というのは、警察庁にお聞きいたしますが、現在どのようになって、どのような傾向があるんでしょうか。

友井政府参考人 お答えをいたします。

 公然わいせつ罪の過去三年間の検挙件数は、令和二年は千七百八十四件、令和三年は千八百四十六件、令和四年は千五百八十七件であります。

 この公然わいせつ罪の令和四年の検挙件数を発生場所別で見ますと、道路上で発生したものが最も多く、五百七十二件となっており、その次に、都市公園とコンビニエンスストアがそれぞれ百三十七件、デパート等の商業施設が百二十六件となっております。

 次に、公衆トイレや公衆浴場等、通常衣服を着けない場所で発生した盗撮事犯の過去三年間の検挙件数は、令和二年は千百八十九件、令和三年は千五百四十四件、令和四年は千八百七件であります。

 令和四年中に検挙した盗撮事犯の発生場所につきましては、先ほど申し上げた、通常衣服を着けない場所が最も多く、その次に、駅構内が千三百二十八件、商業施設内が千二百八件となっております。

阿部(弘)委員 特に盗写、これは窃視症というんですね、のぞき見をする。繰り返す性癖でございます。これが今、増えている、携帯電話のカメラ機能のせいでそういうふうに増えているということもお聞きしておりますので。答弁はいいです、もう時間が余りありませんので。

 そういった方々の、じゃ、治療という点では、厚労省、何か取組はありますか。

辺見政府参考人 性嗜好障害、パラフィリアにつきましては、ICD10において、精神疾患の一つとして位置づけられているものと承知をしておりますけれども、その制御や治療が困難であって、効果的な対処方法は確立されていないと承知をしております。

 一方で、欧米の一部の国においては、性衝動の制御等を目的として、認知行動療法等の治療のほか、抗男性ホルモン製剤といった薬物療法の治療が行われている例があると承知をしているところでございます。

阿部(弘)委員 この法務委員会で、三回目の質問で初めてホルモン療法のことを厚労省がお話しいただいた。非常にありがたい。

 これは、矯正施設でも、その重症度に応じて、ホルモン療法の使用ということも、人権に配慮しながら行うことも可能でございますので、是非とも、認知行動療法、集団、精神もありますし、認知のゆがみがこういうことを起こすということは学問的に理解されておりますので、是非とも、ホルモン療法や、そして、メーガン法の、出所後に、GPSのことについても、法務省として是非御検討願いたいなということを切に願うわけでございます。

 では次に、パラフィリアは、性倒錯症ということで、性的嗜好障害の中で位置づけられておるわけでございますが、この中に、クロスドレッサー、女性の服を着て性的に興奮を覚える、男性がですよ。ある会社の責任ある立場の方が、夜になると、女性の服、ロリータとはちょっと違うんですね、性的興奮というのがキーワードなんですね、女性の服を着て町中を歩く。困ったものだ、自分でも違和感があるんだと。病識があるというんですね、我々。それで、治療をしてほしいという方もいらっしゃいます。

 認知行動療法などの精神療法と、治療薬、精神病薬を、ストレスが非常に高まるとこういうことをしたくなるとおっしゃる方もいらっしゃいます。そういう性的な興奮を、あるいは、スリルがあって面白くてやめられないということでございます。

 このクロスドレッサーの方と性自認とは全く別な疾患でございます。性同一性障害とは違うものだと。少なくとも精神科の診断、外来をお見えになられると、明らかに違うものでございます。

 では、このクロスドレッサーの男性の方が、女性用浴場へ入って、裸で入浴した場合には、公然わいせつ罪又は建造物侵入に該当するわけですか。

松下政府参考人 犯罪の成否は、捜査機関により収集された証拠に基づいて個別に判断されるべき事柄でございますので、お答えは差し控えたいと思います。

 なお、あくまで一般論として申し上げますと、刑法百七十四条の公然わいせつ罪は、公然とわいせつな行為をした場合に成立し得るもの、また、あくまで一般論として申し上げればですが、刑法百三十条前段の住居侵入罪は、正当な理由がないのに、人の住居若しくは人の看守する邸宅、建造物若しくは艦船に侵入した場合に成立し得るものと承知をしております。

阿部(弘)委員 公衆浴場を所管する厚労省の方にお聞きしたいと思いますが、公衆浴場は、このように、クロスドレッサーの、服装倒錯の方、医学的な診断では服装倒錯の方が女性のお風呂に入ることはどのようになっていますか。

鳥井政府参考人 お答えいたします。

 公衆浴場については、公衆浴場における衛生等管理要領におきまして、おおむね七歳以上の男女を混浴させないことなどと定めております。

 この要領で言います男女といいますのは、風紀の観点から混浴禁止を定めている趣旨から、クロスドレッサーの方も含めて、身体的な特徴の性をもって判断するものでございまして、公衆浴場の営業者は、体は男性の方が女湯に入らないようにする必要があると考えております。

 実際の公衆浴場への適用につきましては、都道府県等において、条例により、基本的にこの要領と同様に、男女の浴室を区別し、混浴を禁止しているものと承知をいたしております。

阿部(弘)委員 精神医学では、性同一性障害という病名はまだ残っております。しかし、分類として、WHOが採用するICD11では、性別不合ということで、精神疾患から外れておるわけでございます。あるいはアメリカも、アメリカは、精神医学、大きく言って精神医学には心理学と医学という二つの分野がありまして、先に心理学の方が精神疾患から外そうということを決めまして、DSM―5では、性同一性障害という名前は消えまして、ジェンダーディスフォリアということで、やはり性別不適合といいますか、不合という分類に変わっておるわけでございます。

 今、国会でも議論されるLGBTQ法案についてでございますが、ネットでは、性自認と性同一性という言葉が、同じように使うんだというふうに、政府の、あるいは政府に近い方々からお話ししてありますが、性自認と性同一性というものが同じなんですか。内閣の方、お答えください。

廣瀬政府参考人 お答えいたします。

 政府として、議員立法の内容についてコメントは差し控えたいということでございますが、その上で、用語の意味は、それぞれ用いられている文書等に応じて定まってくるものと考えています。

 一般的には、性自認、性同一性という言葉は、いずれも自己の性をどのように認識しているのかを示す概念として用いられているものと理解をしています。また、性同一性障害につきましては、性同一性障害者の性別の取扱いの特例に関する法律におきまして、性同一性障害者という用語が定義されているものと承知しております。

阿部(弘)委員 私は、もう二十数年前、厚労省の課長補佐のときに、性同一性障害の性転換手術の第一号の方の担当をさせていただきました。性同一性障害、診断基準は、もちろんアメリカの精神医学会の、度々出てくるDSM―5、4にも出てきますが、その中にも診断基準というのはきっちり出てきておりまして、最初には精神療法、そして薬物療法、そして、元に戻らないと、他の精神疾患と分けて診断をつけながら、性転換手術を認めて、精神医学会のガイドラインに従うということを決定いたしまして、第一号が無事行われまして、そして、その後、第二号、第三号というふうに進んでいったんだと思われます。

 現在の手術件数というのはいかがでございますか。

森光政府参考人 議員御質問いただきました性同一性障害に対する手術の件数でございますけれども、国内で保険適用されます性別適合手術につきましては、精巣摘出術や子宮全摘術などの複数の種類がございます。これをNDBオープンデータに基づいて集計しますと、令和二年度における年間の算定回数は、それぞれ十件未満又はゼロ件という状況でございます。

 なお、このほか、国内の自由診療での手術や海外における日本人の性別適合手術の実績については把握していないという状況でございます。

阿部(弘)委員 この性転換手術というのは、国によって件数の違いが数多くあります。アジアでいえば、タイという国では件数は如実に、著しく多いんだというふうに推計されます。ですから、各国によっても、その診断基準が、厳密にDSM―5の診断基準にはよらず、恣意的にもう手術が行われているのかなと思ったりするわけでございます。そうすると、性自認と性同一性というのが同一のものであるというのは、なかなか医学的には難しいなと思うわけでございます。

 また、性自認の中に、性倒錯、一般の国民の中には服装の倒錯についても同じではないかというような誤解もあるわけでございまして、まだまだ国民の理解を得るためには、特に一般女性のこういう不安というものを取り除かないとなかなか難しいのかなというふうに思うわけでございます。

 時間が迫ってきましたが、児童性愛の、十六歳以下の場合の五歳差というところについてお尋ねします。

 一九五二年のDSM―1、ペドフィリアの疾患名がこの中にも載っております。でも、バージョンツー、バージョンスリー、二版、三版でも、診断基準はないんですが、初めて出てくるのがバージョンスリーです、ごめんなさい。これが出てきて、二百七十一ページ目に診断ガイドラインが初めて出てくる。当時から、第二次性徴の年齢が徐々に低くなっていく。一八八〇年では性交年齢が十八歳だったアメリカでは、このときには十二・五歳と非常に低くなってくる。しかし、性交不同意年齢は十六歳というふうに、子供を守るために、年齢はやっと日本と同じぐらいになってきた。

 五歳違いというのは、私は、国際学会で、そして小児性愛のこういうガイドライン検討委員会で、統計と診断というグループがこの診断基準を作ったんだと、私も国際学会に何度も出席し、発表し、そういうセッションにも出席しましたが、そこで決まったのではないかと。ケンブリッジの論文もいろいろありますが、そこの支配的な立場が大切だと。

 五歳以上というのは、その年齢における支配的立場を確保する統計的な有意差があるというふうに想像するわけでございますが、局長、いかがでございますか。

松下政府参考人 お答えいたします。

 本法律案の立案に先立って行われました性犯罪に関する刑事法検討会や法制審議会刑事法部会におきましては、精神医学の専門家が委員として参画してくださいまして意見を述べていただきました。

 それらの御意見は、御指摘のように、DSM―5において小児性愛障害に関する基準の一つとして、少なくとも十六歳で、性的衝動等の対象である子供より少なくとも五歳は年上で、年長であることというものが設けられていることを明示的に理由とするものではございませんでしたけれども、本法律案におきましては、精神医学の専門家である委員による意見などを通じて得られた精神医学的知見をも踏まえまして、十三歳以上十六歳未満の者に対する性的行為について処罰対象となり得る者を、その者が生まれた日より五年以上前の日に生まれた者としたものでございます。

阿部(弘)委員 ありがとうございます。

 済みません、大臣に答弁なくて申し訳ないですけれども。

 私、子供の頃、手塚治虫先生が描いた漫画、メルモちゃんというのを見た記憶があります。赤いキャンディー、男性から女性に、青いキャンディーは成長していく、大人になっていくわけなんですね。あれは、まさに小学生の低学年か幼稚園児ぐらいの子供たちの話でございます。まさにフロイト先生が言うところの男根期の話でございます。そういうものもふんだんに、あのメルモちゃんという漫画の中には、性についての知識がありながら、そして子供たちに分かりやすく性について理解させる漫画だったと思っております。今、私は六十を超えてそのように感じるわけでございまして、これをもって質問を終わらせていただきます。

 ありがとうございました。

伊藤委員長 次に、鈴木義弘君。

鈴木(義)委員 国民民主党の鈴木義弘です。

 視点を少し変えさせていただいて、私はずっと前から疑問に思っていたんですけれども、たまに漫画本を読むんです、子供の頃も読んだんですけれども、大人になってからも、漫画本があれば、ラーメン屋さんに行ったりそば屋に行ったときに、置いてある漫画本を見るんですね。誰の目でも、お店で見れば止めることはまずないでしょうから、こんな漫画、一般に目に触れちゃっていいのと思うような模写があるんですね。例えば、性交をやっているところ、虐待をしているようなところ、そういったものも漫画の中に模写されているんです。まあ刺激的ですよ。人を殺してみたり、腕を切ってみたり、そういったものまで漫画の中に描かれているんです。

 青少年の健全な育成ということで、有害な図書について都道府県の条例で規制がされているというのは承知しているんですけれども、有害といったときに、年齢差が必ずあるはずなんですね。自分が自覚をする、自分が自分だというふうに自我の目覚めが出てくるのは、やはりそんなに、一歳、二歳、三歳ではなかなか、表現の仕方も変わってくるし。性に対して興味を持つのも、誰からか教わったわけでも何でもない、人間の本能の中から出てくるものだと思うんですね。男性と女性を意識するようなのも個人差があると思うんです。

 にもかかわらず、ちまたにエロ本だとか有害図書というのが、誰の目にも見ようと思えば見れるところに陳列されちゃっている。性に関して十分な理解や判断能力に乏しい子供に対しても、漫画ですらそういった描き方がされているのを誰でも見れちゃう。

 私は、十八なら十八までの子供たちに関して、やはり目に触れさせない方がいいんじゃないかと思っているんですね。片や性被害を救済しようということもあるんですけれども、欲情をかき立てるようなものを、やはり十八歳を基準にするんだったら、コンビニみたいなところには置かないで、きちっと成人誌の扱いで、隔離するような中で、それを見たい人は見る、買うなら買うというふうな形を取った方がいいんじゃないかと思うんですけれども、なぜ今までそういうことを放置しているのかということなんですね。

 やはりそれは、見れば、十二歳、十三歳でも、何となく興味が湧くから、何となく興奮しますよね。そういったものがちまたにあふれていく中で、性欲を抑えろとか、人の尊厳をと、大事なことなんですけれども、それをきちっと教える場所もないし、学校でもなかなかそこのところは難しくて教え切れていないと思うんです。

 だったら、大人社会が、この中であるんだったら、有害というふうに言われる書物というんですかね、そういったものはやはりちょっと目の届かないところに私は置いておいた方がいいんじゃないかと思うんですけれども、現行の考え方をお示しいただきたいと思います。

松下政府参考人 お答えいたします。

 御指摘のとおり、有害図書類の陳列方法などの規制は、都道府県のいわゆる青少年育成条例などにより行われていると承知をしております。また、法律上の罰則につきましては、青少年に有害な図書類を陳列する行為が、例えば刑法のわいせつ図画陳列罪や児童ポルノ法違反に該当する場合には、それらの罪により処罰することが可能でございます。

 他方で、条例の規制や既存の罰則を超えて、より強い規制を国として行うこととする場合には、表現の自由との関係をどのように考えるか、また規制対象とすべき有害図書や規制対象行為の範囲をどのように考えるかなど、難しい課題があるものと認識をしております。

 いずれにしても、御指摘の問題は、罰則だけで対処できるものでも、法務省だけで対処できるものでもございませんで、社会全体で考えていくべきものであるというふうにも考えておりまして、関係府省庁が連携し、地方公共団体や関係業界団体等の民間の方とも連携しながら、社会の御理解も得つつ取組を進めていくべきものなのかなというふうに考えているところでございます。

鈴木(義)委員 局長の年齢で漫画ってお読みにならないんだと思うんですけれども、読んだことありますか。すごい、これはちょっと子供に見せるのはえげつないよなというような漫画を見たことはありますか。だから、描いちゃいけないとか売っちゃいけないと言っているわけじゃないんです。子供たちの目に触れないようなところに陳列してくれ、きちっと仕切りをしてくれと言っているだけの話なんです。

 だから、表現の自由がどうだとか言論の自由がどうだとか、そんなことを問いかけているわけじゃない。ゼロ歳、まあ、ゼロ歳というのはちょっと語弊のある言い方なんですけれども、子供たちの目の届かないところで商売にしてくれと言っているだけの話なんです。

 今、ネットの配信も幾らでもできる、規制をかけられない時代になっちゃっている。それを見れば、やはり興奮しますよ。だって、よく分からないから。でも、見ると興奮する。そういったものも、やはりきちっとルール化をしていった方がいいんじゃないかという考え。誰もそれを、表現の自由を駄目だと言っているわけじゃない。目に見えるところに、なるべく十八歳までは目の届かないところに物は置いておいた方がいいんじゃない、映像は置いておいた方がいいんじゃないかという考え方なんです。

 だから、くどく言いたくないんですけれども、これはちょっと自分の子供には見せたくないよなというのがちまたにあふれているという、その自覚がないと、じゃ、どうしましょうということにならない。

 手前みそな言い方ですけれども、次男坊が小学生のときに、ゲームで人をどんどんどんどん殺していくゲームがある、今ちまたで受けているんでしょうけれども、私は、小学校五年生か六年生ぐらいだったと思うんです、取り上げて、使わせなかったんですよ。それは、自分が、自分の子供だと思っているから。人をあやめるのが当たり前の社会はおかしいと思うんだよね。だったら、そういうのは、でも、子供は持っていた。どこから買ってきたのか、友達から譲ってもらったのか分かりませんけれども、仲間同士でやっていると、もう全然規制の対象にもならないよね。

 そういったものは、やはり十八歳までは駄目というんだったら駄目でいいんですよ。そういうものを私はやってもらいたいなと思うんですけれども、もう一度見解を簡潔に御答弁いただきたいと思います。

松下政府参考人 御指摘の趣旨は十分理解できるところではございますけれども、先ほど申し上げましたように、置く場所の制限だということだとしても、やはり表現の自由との関係をどのように考えるかですとか、また、そもそも規制対象とすべき有害図書の範囲というところについても、今御指摘のあったような描写というのは、かなりの漫画に含まれているようにも思えまして、規制対象行為の範囲ですとか有害図書の範囲をどのように考えるかなど、なかなか難しい問題があるのかなというふうに認識をしているところでございます。

鈴木(義)委員 それこそ法制審できちっと審議してもらった方がいいと思いますよ。

 では、もう一点。性的な姿態を撮影する行為云々で、二つ目の法律なんですけれども、これも、私、提案させてもらったんですけれども、両罰規定というのを設けた方がいいんじゃないか。個人だけなんだ、罰金と拘禁刑。五歳以上の開きがあって、十三歳から十六歳未満で性交したときにはもう黙って五年ですよというのが今回の法律なんだけれども、結局、盗撮だとか、個人が趣味みたいな形で持っている分にはいいんですけれども、それを、営業行為、お金の、対価としてもらうようなものを法人としてやっていた場合に、法人の罰則が全然ない。確かに、刑法の理論立てからいったら両罰規定というのはなじまないというのは承知しているんです。でも、世の中にある特別法、別の法律では両罰規定を設けている。だったら、なぜ今回の、盗撮罪みたいなものをきちっと作ってやるんだったら、両罰規定も取り入れないのかという考え方です。

 最後に答弁いただいて終わりにしたいと思います。

松下政府参考人 お答えいたします。

 両罰規定は、事業主の業務遂行の過程で行われることが通常の形態である犯罪について設けられるのが一般的でございますが、お尋ねの罪が、現段階においてはですが、事業主の業務遂行の過程で行われることが通常の形態であると言えるかどうかが明らかとは言えないと考えておりまして、そのため、現時点では両罰規定を設けることとはしていないところでございます。

 いずれにしても、性的姿態撮影等処罰法の法律案が成立した場合には、各罪の施行状況や被害の実態などを踏まえつつ、関係府省庁とも連携して必要な検討を行ってまいりたいと考えております。

鈴木(義)委員 終わります。

 ありがとうございました。

伊藤委員長 次に、本村伸子君。

本村委員 日本共産党の本村伸子でございます。どうぞよろしくお願いを申し上げます。

 五月十七日のこの法務委員会で、不同意性交等罪の八号の部分、経済的又は社会的関係上の地位に基づく影響力によって受ける不利益を憂慮させること又は憂慮していることについて、行為者が、憂慮させるまでの地位とは思わなかった、憂慮しているとは知らなかったなどと、処罰されないことになるのではないかという質問をさせていただきました。そのときに、法務大臣は、行為者が憂慮という評価にわたる認識がなくても、それを基礎づける事実の認識があれば故意は認められ得ると考えていますというふうに答弁をされました。

 その点なんですけれども、基礎づける事実の認識とは何かという点、伺いたいと思います。

齋藤(健)国務大臣 改正後の刑法第百七十六条第一項第八号の行為、事由の認識につきまして、経済的又は社会的関係上の地位に基づく影響力によって受ける不利益を憂慮させること又はそれを憂慮していることが客観的に存在した上で、行為者がそのことを認識していること、これが必要でありますが、規範的な認識は不要、すなわち法律上の評価にわたる認識は不要であり、それを基礎づける事実の認識があれば足りる、こういう答弁をしたわけであります。

 具体的にどのような事実を認識していれば足りるかは、当然のことながら、個別の事案ごとに証拠関係に照らして判断されるべき事柄でありますが、例えば、会社の上司である行為者が部下である被害者に対して、性交等に応じなければ人事に影響するとして性交等に応じるよう求め、被害者においてこれに応じなければ人事上不利に取り扱われると不安に思ったときなどには、行為者においてそのような事実を認識していれば足りていて、それ以上に、被害者との関係が社会的関係に該当するとか、被害者が不安に思ったことが憂慮に該当するかといった規範的な認識までは不要であるというふうに考えています。

本村委員 要するに、上司と部下、教師と生徒、生活上不可欠な障害者施設の職員と障害当事者という関係が事実であればよいということでしょうか。

松下政府参考人 お答えいたします。

 改正後の刑法第百七十六条一項八号の行為、事由に対する認識についてお尋ねかと思いますけれども、どのような事実を認識していれば足りるかは、今大臣が答弁されたことでございますけれども、その例に沿ってお答えいたしますと、社会関係上の地位に対応するものとしては、行為者と被害者が同じ会社に勤めていて、行為者が上司であること、また、影響力としては、そのように上司であることにより人事に影響を及ぼし得ること、その不利益としては、そのような影響力ゆえに被害者の人事を降格させたり希望しない部署に配置換えさせることなど、憂慮としては、そのような不利益を受けることについて不安に思っていることなどがそれぞれそれらを基礎づける事実でございまして、こうした事実を認識していれば故意が認められるということでございます。

本村委員 是非、この点、経済的又は社会的関係上の地位に基づく影響力のある立場にあること、そして、行為者の地位に基づく判断が相手方の経済的又は社会的関係に利益又は不利益をもたらすことのできる地位であること、客観的にそれが分かればいいということで運用していただきたいと思うんですけれども、いかがでしょうか。

松下政府参考人 お答えいたします。

 御指摘のとおりでございます。

本村委員 ありがとうございます。是非適切な処罰をしていただきたいというふうに思っております。

 内閣府にお伺いをしたいというふうに思いますけれども、先日来、公訴時効の関係で、なかなか相談できない、そういう方々が調査上切り捨てられ、この立法がなされているということで、議論をしてきたわけですけれども、先日の御答弁の中で、男女間における暴力に関する調査の、無理やりに性交等をされた被害経験について、調査結果では、小学校入学前が十二件、小学生のときが十六件、中学生のときが七件という御答弁がございました。

 それぞれ被害に遭ってからどのくらいの期間で相談されたのか、あるいは、相談されていない方々がどのくらいおられるのかという点、お答えをいただきたいと思います。

畠山政府参考人 お答え申し上げます。

 内閣府において令和二年度に実施した男女間における暴力に関する調査におきましては、複数回答可として、被害に遭ってから相談までの期間について尋ねておりますところ、御指摘の被害に遭った時期が中学生以下である三十五件について見てみますと、まず、小学校入学前に被害に遭ったとの回答十二件につきましては、相談までの期間が、一か月から一年未満が三件、十年以上が二件。それから、小学生のときに被害に遭ったとの回答十六件につきましては、相談までの期間が、その日のうちが一件、一か月から一年未満が二件。中学生のときに被害に遭ったとの回答七件につきましては、相談までの期間が、一か月から一年未満が一件となってございます。

 ただいま申し上げた件数に含まれない二十六件については、被害の相談経験として、どこにも、誰にも相談しなかった、若しくは無回答の回答者によるものとなります。

本村委員 就学前でいいますと、約六割相談できていない、そして、相談できた場合でも、十年以上という方が一六%おられます。そして、小学生は八一・二五%相談できていない、中学生は八五・七一%相談できていないということでございます。しかも、警察に相談できたというケースは相談全体で五・六%ということで、更にこうした実態を、この間も大臣にお願いしたんですけれども、被害当事者の方々の声を聞いて、是非、実態調査を早急にやっていただきたいというふうに思っております。

 強制性交等罪の起訴率、現在の起訴率なんですけれども、ずっと下がっております。二〇〇〇年の強姦の起訴率は六八・四%、不起訴率は三一・六%。直近ですと、二〇二一年の強制性交等罪の起訴率は三二・四%、不起訴率は六七・六%となっておりまして、起訴率、不起訴率はこの二十年間で逆転しております。起訴率がかなり下がっております。

 元々、相談するのにもハードルがある、警察に届出をするのにもハードルがある、そして検察においてもなかなか起訴をされない、そして裁判においても、例えば、岡崎支部の判決でいえば、実の父親から性暴力を受けても、同意をしていないということが認定され、そして過去に抵抗して暴力を受けたということも認定され、経済的な支配も強まっていたということを認定されても、抗拒不能とは言えないと無罪判決が出る。そうした、余りにもハードルが高いということですけれども、今回の不同意性交等罪となれば、この検察の運用というのはしっかりと変わるというふうに言っていただけるんでしょうか、大臣。

齋藤(健)国務大臣 今御指摘の起訴率、すなわち起訴人員数と不起訴人員数の合計に占める起訴人員数の割合、これは、個別具体の事案に即した起訴又は不起訴の判断の集積でありますので、そもそもその低下の原因ですとか評価を一概に述べるというのはなかなか難しいと思います。

 そして、検察官による起訴、不起訴の判断は、捜査機関により収集された証拠に基づき個別に判断される事柄でありまして、本法律案による改正が起訴率に与える影響等についても、これはなかなか一概にお答えするのは難しいなと思います。

 その上で、本法律案は、現行刑法の強制性交等罪や準強制性交等罪などについて、暴行又は脅迫、心神喪失、抗拒不能という要件の下で、その解釈によって犯罪の成否が決せられるのを改めて、より明確で判断のばらつきが生じない規定とするものであります。

 したがいまして、これによって、現行法の下でも本来なら処罰されるべき同意していない性的行為がより的確に処罰されるようになると考えています。

 大事なことは、このような改正の趣旨及び内容についてしっかりと周知が徹底されることでありますので、法務省としては、検察当局に対して適切に周知をしてまいりたいと考えています。

本村委員 性暴力の被害に遭ったのに刑法では認められない、被害当事者に寄り添った、そして被害実態に見合った、刑法を改正してほしいと、被害当事者の方々がずうっと国会でも何度も何度もロビー活動をされ、私たちに伝えてくださいました。そして、検討会でも、法制審の部会でも、本当に被害実態に見合った刑法の改正を求めて御努力をされてこられたということは、議事録を見ても本当につぶさに分かるわけでございます。

 そうした皆さんの思いに寄り添った、更なるこの法改正、ブラッシュアップをしていただきたいということを強く求めまして、質問を終わらせていただきます。

 ありがとうございました。

伊藤委員長 次回は、公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。

    午前十時四十二分散会


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