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第19号 令和5年5月26日(金曜日)

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令和五年五月二十六日(金曜日)

    午前九時開議

 出席委員

   委員長 伊藤 忠彦君

   理事 谷川 とむ君 理事 藤原  崇君

   理事 牧原 秀樹君 理事 宮崎 政久君

   理事 鎌田さゆり君 理事 寺田  学君

   理事 沢田  良君 理事 大口 善徳君

      東  国幹君    五十嵐 清君

      石橋林太郎君    岩田 和親君

      英利アルフィヤ君    奥野 信亮君

      加藤 竜祥君    熊田 裕通君

      鈴木 馨祐君    田所 嘉徳君

      高見 康裕君    鳩山 二郎君

      平口  洋君    深澤 陽一君

      山下 貴司君    鈴木 庸介君

      中川 正春君    山田 勝彦君

      吉田はるみ君    米山 隆一君

      阿部 弘樹君    漆間 譲司君

      日下 正喜君    平林  晃君

      鈴木 義弘君    本村 伸子君

    …………………………………

   法務大臣         齋藤  健君

   法務大臣政務官      高見 康裕君

   法務委員会専門員     白川 弘基君

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 刑法及び刑事訴訟法の一部を改正する法律案(内閣提出第五八号)

 性的な姿態を撮影する行為等の処罰及び押収物に記録された性的な姿態の影像に係る電磁的記録の消去等に関する法律案(内閣提出第五九号)


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     ――――◇―――――

伊藤委員長 これより会議を開きます。

 内閣提出、刑法及び刑事訴訟法の一部を改正する法律案及び性的な姿態を撮影する行為等の処罰及び押収物に記録された性的な姿態の影像に係る電磁的記録の消去等に関する法律案の両案を議題といたします。

 他に質疑の申出がありませんので、これにて両案に対する質疑は終局いたしました。

    ―――――――――――――

伊藤委員長 この際、刑法及び刑事訴訟法の一部を改正する法律案に対し、宮崎政久君外四名から、自由民主党・無所属の会、立憲民主党・無所属、日本維新の会、公明党及び国民民主党・無所属クラブの共同提案による修正案、本村伸子君から、日本共産党提案による修正案がそれぞれ提出されております。

 提出者から順次趣旨の説明を聴取いたします。宮崎政久君。

    ―――――――――――――

 刑法及び刑事訴訟法の一部を改正する法律案に対する修正案

    〔本号末尾に掲載〕

    ―――――――――――――

宮崎委員 ただいま議題となりました刑法及び刑事訴訟法の一部を改正する法律案に対する修正案につきまして、提出者を代表して、その趣旨を御説明申し上げます。

 政府提出の法律案についての当委員会におけるこれまでの議論を踏まえ、与野党において真摯な修正協議を重ねた結果、今般、次のような内容の修正案を提出することで合意に至ったものであります。

 以下、この修正案の趣旨及び内容について御説明申し上げます。

 第一に、今般の法改正では、同意しない意思の形成等が困難な状態でのわいせつな行為等であることを中核の要件とする、いわゆるノー・ミーンズ・ノーの不同意わいせつ罪等を設けることとしています。これに対して、イエス・ミーンズ・イエスのような要件にまで踏み込むべきではないかとの御指摘があったことも事実です。

 今回はノー・ミーンズ・ノーにとどまったとしても、性被害に係る犯罪規定は社会の受け止め方や意識の変化に対応して定められるものでありますから、この改正法が施行された後一定期間を経過した場合には、その時点における性的同意についての意識なども踏まえた上で、性被害に係る犯罪規定の在り方が改めて検討されなければなりません。

 そこで、この改正法の施行後五年を経過した場合に、政府が、速やかに性犯罪に係る実態に即した対処を行うための施策の在り方について検討を加え、必要があると認めるときは、その結果に基づいて所要の措置を講ずる旨の検討条項を附則に設けることとしております。

 この検討に関連して、今般の法改正では、公訴時効期間を延長することとしていますが、性被害が申告できるようになるまでどれくらいの期間を必要とするのか、どれくらいの困難さを抱えているのかといった実態を踏まえ、その妥当性を判断する必要がありますし、また、この委員会での質疑において、今般の改正に当たって若年者や障害者の性被害の実態についてどれだけ把握しているのかとの御指摘があったところであります。

 そこで、政府は、この検討がより実証的なものとなるよう、性被害を申告することの困難さその他性被害の実態について、必要な調査を行うものとしております。

 第二に、今般の法改正では、性交同意年齢を引き上げる一方で、その処罰範囲を適切に画するため、十三歳以上十六歳未満の者を相手に性的行為をする場合のいわゆる五歳差要件を設けております。

 しかし、委員会質疑や与野党の修正協議でも、五歳差未満であれば行為者が十八歳以上の成人であっても全部許されることになるのか、中学生が守られないことになるのではないかといった強い御懸念が示されたところです。

 このような御懸念も踏まえ、附則に、政府は、この法律による改正後の刑法等の規定が、性被害の実態及びこれに対する社会の意識の変化に対応して、刑罰を伴う新たな行為規範を定めるものであることに鑑み、今般の法改正は、五歳差未満であれば十八歳以上の成人が何をしても許されるというものでは決してなく、また、中学生をしっかり守るという意図に基づくものであるということを含め、その趣旨及び内容について国民に周知を図るものとする旨の規定を追加することとしております。

 以上であります。

 何とぞ、御審議の上、委員各位の御賛同を賜りますように心からお願いを申し上げます。

伊藤委員長 次に、本村伸子君。

    ―――――――――――――

 刑法及び刑事訴訟法の一部を改正する法律案に対する修正案

    〔本号末尾に掲載〕

    ―――――――――――――

本村委員 ただいま議題となりました刑法及び刑事訴訟法の一部を改正する法律案に対する修正案につきまして、提案者として、その趣旨及び内容の概要を御説明申し上げます。

 これまで、強制わいせつ罪や強制性交等罪については、被害者の意思に反して性交等をするに足りる暴行や脅迫があったのかという立証の壁があり、犯罪としての成立が困難な場合があることが長年の課題でした。被害当事者が検討会や法制審議会の部会に入り、今回の法案で、同意をしないことを中核の要件とする不同意性交等罪が創設されることとなったのは、一歩前進であると評価をしております。

 しかしながら、この法案にはいまだ足らざる点が多々あると言わざるを得ません。

 例えば、今回の法案は、いわゆるノー・ミーンズ・ノーですが、いわゆるイエス・ミーンズ・イエス、すなわち、行為者が相手の自発的参加を確認しない性行為を処罰対象とするべきではないか、また、公訴時効の延長等が不十分ではないか、十三歳から十五歳の人に五歳以上の年長者の人が性交をした場合に処罰対象とする五歳差要件では中学生を守ることができないのではないか、障害がある人の特性を十分踏まえていないのではないかなどといった問題点が、参考人質疑を始め議論の中で明らかになりました。

 また、この法案では、刑事訴訟法に被害者等の聴取結果を記録した録音、録画記録媒体に係る証拠能力の特則を追加しようとしておりますが、刑事訴訟法では、いわゆる伝聞証拠には原則として証拠能力が認められないこととされており、特則の適用範囲は限定的であるべきです。

 さらに、冤罪の危険性を減らすためにも、特則に係る聴取の主体は、中立的な専門家が行うべきです。

 以上のような問題に対応するため、本修正案を提出することとした次第です。

 次に、修正案の内容について御説明を申し上げます。

 第一に、刑事訴訟法に追加される、被害者等の聴取結果を記録した録音、録画記録媒体に係る証拠能力の特則について、一つ、対象者の範囲を、刑法又は児童福祉法等の性犯罪の被害者であって、十八歳未満の人又は障害がある人に限定すること、二つ、検察官、検察事務官及び司法警察職員以外の中立的な専門家が被害者の聴取を行うことを明記することの二点の修正を行うこととしております。

 第二に、附則に検討条項を設け、政府は、この法律の施行後三年以内に、心理的外傷その他性暴力の被害者が性暴力により心身に受ける影響、性暴力の被害者が子供又は障害者である場合の特性、性暴力の被害者の心身の健康を回復させるための方法その他の性暴力における被害の実情に関する調査研究を行うことといたします。

 そして、その結果を踏まえ、改正後の刑法及び刑事訴訟法の施行の状況等を勘案しつつ、一つ、いわゆるイエス・ミーンズ・イエス規定の創設、二つ、いわゆる五歳差要件の見直し、三つ、経済的又は社会的関係上の地位に基づく影響力があることに乗じたわいせつな行為又は性交等の罪の新設、四つ、性犯罪について公訴時効の停止期間を更に延長すること又は公訴時効の対象から除外することその他性犯罪に係る公訴時効の在り方について検討を加え、必要があると認めるときは所要の措置を講ずるものとしております。

 以上が、本修正案の趣旨及びその内容の概要です。

 何とぞ委員各位の皆様の御賛同をお願い申し上げます。

伊藤委員長 これにて両修正案の趣旨の説明は終わりました。

    ―――――――――――――

伊藤委員長 これより両案及び両修正案を一括して討論に入るのでありますが、その申出がありませんので、直ちに採決に入ります。

 初めに、内閣提出、刑法及び刑事訴訟法の一部を改正する法律案及びこれに対する両修正案について採決いたします。

 まず、本村伸子君提出の修正案について採決いたします。

 本修正案に賛成の諸君の起立を求めます。

    〔賛成者起立〕

伊藤委員長 起立少数。よって、本修正案は否決されました。

 次に、宮崎政久君外四名提出の修正案について採決いたします。

 本修正案に賛成の諸君の起立を求めます。

    〔賛成者起立〕

伊藤委員長 起立総員。よって、本修正案は可決いたしました。

 次に、ただいま可決いたしました修正部分を除く原案について採決いたします。

 これに賛成の諸君の起立を求めます。

    〔賛成者起立〕

伊藤委員長 起立総員。よって、本案は修正議決すべきものと決しました。

    ―――――――――――――

伊藤委員長 この際、ただいま議決いたしました本案に対し、宮崎政久君外五名から、自由民主党・無所属の会、立憲民主党・無所属、日本維新の会、公明党、国民民主党・無所属クラブ及び日本共産党の共同提案による附帯決議を付すべしとの動議が提出されております。

 提出者から趣旨の説明を聴取いたします。鎌田さゆり君。

鎌田委員 ただいま議題となりました附帯決議案につきまして、提出者を代表して、その趣旨を御説明申し上げます。

 案文の朗読により趣旨の説明に代えさせていただきます。

    刑法及び刑事訴訟法の一部を改正する法律案に対する附帯決議(案)

  政府及び最高裁判所は、本法の施行に当たり、次の事項について格段の配慮をすべきである。

 一 第一条の規定による改正後の刑法第百七十六条第三項及び第百七十七条第三項の規定において、十三歳以上十六歳未満の者に対する五歳以上年長の者の性的行為を処罰することとしているのは、両者の間におよそ「対等な関係」があり得ないと考えられることによるものであって、両者の年齢差が五歳差未満であれば「対等な関係」であるとするものではないのであるから、第一条の規定による改正後の刑法第百七十六条第一項及び第二項並びに第百七十七条第一項及び第二項の規定の適用に当たっては、とりわけ、これらの規定に定める行為をする者が十八歳以上であり、かつ、その相手方が十六歳未満である場合には、むしろ、十六歳未満の者にとっては年齢差がその意思決定に及ぼす影響が大きいことに鑑みると、両者の間でなされた性的行為は、「経済的又は社会的関係上の地位に基づく影響力によって受ける不利益を憂慮させること又はそれを憂慮していること」等により「同意しない意思を形成し、表明し若しくは全うすることが困難な状態にさせ又はその状態にあることに乗じて」の要件や「行為がわいせつなものではないとの誤信をさせ」の要件に該当し得ることに留意すること。また、附則第二十一条の規定による周知に当たっては、この点についても、併せて周知すること。

 二 不同意わいせつ罪及び不同意性交等罪における同意の位置付け及び意義、年齢差要件及び地位・関係性要件等並びに面会要求等罪の改正法の趣旨及び構成要件について、若年層をはじめとする国民に対する普及啓発を推し進め、十分に周知徹底を図るよう努めること。とりわけ、子どもに対する性被害の深刻性及び性に関する教育等の重要性に鑑み、初等教育から高等教育に至る全ての学校段階において、子どもの心身の発達段階に応じ、十分な教育等を行うこと。また、普及啓発のために必要な予算を確保するとともに、司法警察職員等の関係者に対しても、法改正の趣旨を周知徹底し、十分な研修等を行うこと。

 三 性犯罪が重大かつ深刻な被害を生じさせる上、その被害の性質上、性犯罪被害者が支援を受けるまでに様々な心理的・社会的障壁があることを踏まえ、捜査から公判等における各段階において被害者の心身の状態に十分配慮するよう努めるとともに、被害者支援のための関係省庁の連携体制の構築、被害直後から継続的な性犯罪被害者への支援やワンストップ支援センターを通じた支援の充実等の多面的な支援を行うよう努めること。

 四 いわゆる司法面接的手法による聴取結果等を記録した録音・録画記録媒体に関する証拠能力の特則が刑事訴訟法の根幹である伝聞法則の例外であることに鑑み、聴取の実施に当たっては、国際的な実証的研究に基づき開発された司法面接の手順に留意しつつ実施し、当該聴取の実施の妥当性を録音・録画等により事後的に検証することができる手法の措置を講じるなど、適切な運用に努めるよう留意すること。

 五 子どもが被害者である性犯罪等においては、子どもの負担を軽減し、かつ信用性の高い供述を聴取することが重要であることに鑑み、子どもからの聴取を適切に行うことができるよう、子どもの認知発達能力・心理・法律の知識に関する知見や技術の向上を図るとともに、子どもが安心して話せる環境を整えるため、海外の取組等を参考にし、民間団体や医療団体等の知見も生かしながら、聴取の場所や方法について更なる検討を進めること。あわせて、障害者が被害者である性犯罪等においては、障害者からの聴取を適切に行うことができるよう、障害者の特性に十分配慮すること。

 六 子どもが証人として公判廷に出廷する際、証人の認知発達能力を踏まえず不相当な尋問や困惑させる尋問を行うことは、証人に重篤な心的負担を与えるのみならず、真実発見も遠のくことを踏まえ、適切な子どもの証人尋問の実施に向けて、訴訟関係者がそうした子どもの特性に配意する必要性の周知に努めること。あわせて、障害者が証人として公判廷に出廷する際には、障害者の特性を踏まえ、適切な証人尋問となるよう配慮すべきことを周知すること。

 七 附則第二十条第一項の検討を行うに当たっては、子どもが被害者である性犯罪等における被害の実情、被害開示後の被害聴取方法、被害聴取結果の証拠能力及び公判廷での尋問の在り方等、この法律による改正後の規定の施行の状況等を勘案して、子どもが被害者である性犯罪等についての施策の在り方について検討を加えること。

 八 性犯罪の捜査、司法手続に当たって、被害者の心理及び心的外傷、被害者と相手方の関係性をより一層適切に踏まえてなされる必要性に鑑み、これらに関連する心理学的・精神医学的知見等について調査研究を推進するとともに、調査研究を踏まえた研修を行うこと。

 九 性犯罪及び性暴力に関する実情及び海外の制度等について引き続き調査を行うとともに、附則第二十条第一項の検討を行うに当たっては、不同意性交等罪における同意の位置付け、生徒と教員及び障害者と保護・監督者等との間の地位に基づく影響力に関する要件、いわゆる性交同意年齢の年齢差要件、公訴時効期間等の在り方についても検討を行うこと。

以上であります。

 何とぞ委員各位の御賛同をお願い申し上げます。

伊藤委員長 これにて趣旨の説明は終わりました。

 採決いたします。

 本動議に賛成の諸君の起立を求めます。

    〔賛成者起立〕

伊藤委員長 起立総員。よって、本動議のとおり附帯決議を付することに決しました。

    ―――――――――――――

伊藤委員長 次に、内閣提出、性的な姿態を撮影する行為等の処罰及び押収物に記録された性的な姿態の影像に係る電磁的記録の消去等に関する法律案について採決いたします。

 本案に賛成の諸君の起立を求めます。

    〔賛成者起立〕

伊藤委員長 起立総員。よって、本案は原案のとおり可決すべきものと決しました。

    ―――――――――――――

伊藤委員長 この際、ただいま議決いたしました本案に対し、宮崎政久君外五名から、自由民主党・無所属の会、立憲民主党・無所属、日本維新の会、公明党、国民民主党・無所属クラブ及び日本共産党の共同提案による附帯決議を付すべしとの動議が提出されております。

 提出者から趣旨の説明を聴取いたします。鎌田さゆり君。

鎌田委員 ただいま議題となりました附帯決議案につきまして、提出者を代表して、その趣旨を御説明申し上げます。

 案文の朗読により趣旨の説明に代えさせていただきます。

    性的な姿態を撮影する行為等の処罰及び押収物に記録された性的な姿態の影像に係る電磁的記録の消去等に関する法律案に対する附帯決議(案)

  政府は、本法の施行に当たり、次の事項について格段の配慮をすべきである。

 一 刑法及び刑事訴訟法の一部を改正する法律附則第二十条第一項の検討を行うに当たっては、アスリートや客室乗務員に対する盗撮が社会問題となっていることを踏まえ、正当な理由がないのに、性的姿態等以外の人の姿態又は部位(衣服により覆われているものを含む。)を性的な意図をもって撮影する行為等を規制することについて検討を行うこと。

 二 刑法及び刑事訴訟法の一部を改正する法律附則第二十条第一項の検討を行うに当たっては、本法及び今般の改正後の刑法の運用状況を踏まえ、十三歳以上十六歳未満の者を対象としてその性的姿態等を撮影する行為等の年齢差要件について検討を行うこと。

 三 第四章に規定する電磁的記録の消去等が速やかに実施されるよう、検察官に対し必要な研修を行い、法曹関係者に周知すること。

 四 本法第二条第一項第四号において十三歳以上十六歳未満の者に対する五歳以上年長の者の性的姿態等の撮影行為を処罰することとしているのは、両者の間におよそ「対等な関係」があり得ないと考えられることによるものであって、両者の年齢差が五歳差未満であれば「対等な関係」であるとするものではないのであるから、同項第二号及び第三号の規定の適用に当たっては、とりわけ、これらの規定に定める撮影行為をする者が十八歳以上であり、かつ、その相手方が十六歳未満である場合には、むしろ、十六歳未満の者にとっては年齢差がその意思決定に及ぼす影響が大きいことに鑑みると、十八歳以上の者が十六歳未満の者の対象性的姿態等を撮影する行為は、同項第二号で定める改正後の刑法第百七十六条第一項各号に掲げる行為又は事由の「経済的又は社会的関係上の地位に基づく影響力によって受ける不利益を憂慮させること又はそれを憂慮していること」等により「同意しない意思を形成し、表明し若しくは全うすることが困難な状態にさせ又はその状態にあることに乗じて」の要件や、本法第二条第一項第三号の「行為の性質が性的なものではないとの誤信をさせ」の要件に該当し得ることに留意すること。

 五 子どもに対する撮影行為の被害がとりわけ深刻であることに鑑み、子ども、学校関係者及び保護者に対して本法の趣旨について効果的な啓発を行うこと。また、啓発のために必要な予算を確保するとともに、司法警察職員等の関係者に対しても、本法の趣旨を周知徹底し、十分な研修等を行うこと。

 六 刑法及び刑事訴訟法の一部を改正する法律附則第二十条第一項の検討を行うに当たっては、本法により新設された性的姿態等撮影罪等について、その発生状況、政府における対応の状況、被害の実態等を継続的に把握し、被害者救済の観点から検証を行うとともに、性的姿態等の撮影の同意後にこれを撤回したにもかかわらず撮影した影像を記録した物を所持し続ける場合及び国外で日本国民以外の者が行った場合の罰則の新設について検討を行うこと。

 七 性的姿態等撮影罪等の被害者が実効性のある支援を受けられるよう、警察、ワンストップ支援センター、日本司法支援センター、民間の支援団体その他の関係機関・団体相互間の連携の強化を図るなどして、相談体制や支援環境の整備に努めること。

以上であります。

 何とぞ委員各位の御賛同をお願い申し上げます。

伊藤委員長 これにて趣旨の説明は終わりました。

 採決いたします。

 本動議に賛成の諸君の起立を求めます。

    〔賛成者起立〕

伊藤委員長 起立総員。よって、本動議のとおり附帯決議を付することに決しました。

 この際、両附帯決議につきまして、法務大臣から発言を求められておりますので、これを許します。齋藤法務大臣。

齋藤(健)国務大臣 ただいま可決されました刑法及び刑事訴訟法の一部を改正する法律案及び性的な姿態を撮影する行為等の処罰及び押収物に記録された性的な姿態の影像に係る電磁的記録の消去等に関する法律案に対する附帯決議につきましては、その趣旨を踏まえ、適切に対処してまいりたいと存じます。

 また、最高裁判所に係る附帯決議につきましては、最高裁判所にその趣旨を伝えたいと存じます。

    ―――――――――――――

伊藤委員長 お諮りいたします。

 ただいま議決いたしました両法律案に関する委員会報告書の作成につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

伊藤委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

    〔報告書は附録に掲載〕

    ―――――――――――――

伊藤委員長 次回は、来る三十一日水曜日午前八時五十分理事会、午前九時委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。

    午前九時二十八分散会


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