衆議院

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第21号 令和5年6月2日(金曜日)

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令和五年六月二日(金曜日)

    午前九時開議

 出席委員

   委員長 伊藤 忠彦君

   理事 谷川 とむ君 理事 藤原  崇君

   理事 牧原 秀樹君 理事 宮崎 政久君

   理事 鎌田さゆり君 理事 寺田  学君

   理事 沢田  良君 理事 大口 善徳君

      東  国幹君    五十嵐 清君

      石橋林太郎君    岩田 和親君

      英利アルフィヤ君    奥野 信亮君

      加藤 竜祥君    熊田 裕通君

      鈴木 馨祐君    田所 嘉徳君

      高見 康裕君    鳩山 二郎君

      平口  洋君    深澤 陽一君

      山下 貴司君    神津たけし君

      鈴木 庸介君    中川 正春君

      山田 勝彦君    吉田はるみ君

      米山 隆一君    阿部 弘樹君

      一谷勇一郎君    漆間 譲司君

      日下 正喜君    平林  晃君

      鈴木 義弘君    本村 伸子君

    …………………………………

   法務大臣         齋藤  健君

   法務大臣政務官      高見 康裕君

   最高裁判所事務総局総務局長            小野寺真也君

   最高裁判所事務総局経理局長            氏本 厚司君

   最高裁判所事務総局民事局長            門田 友昌君

   最高裁判所事務総局家庭局長            馬渡 直史君

   政府参考人

   (法務省大臣官房サイバーセキュリティ・情報化審議官)           押切 久遠君

   政府参考人

   (法務省大臣官房司法法制部長)          竹内  努君

   政府参考人

   (法務省民事局長)    金子  修君

   政府参考人

   (法務省刑事局長)    松下 裕子君

   政府参考人

   (出入国在留管理庁次長) 西山 卓爾君

   政府参考人

   (厚生労働省大臣官房審議官)           大坪 寛子君

   法務委員会専門員     白川 弘基君

    ―――――――――――――

委員の異動

六月二日

 辞任         補欠選任

  米山 隆一君     神津たけし君

  漆間 譲司君     一谷勇一郎君

同日

 辞任         補欠選任

  神津たけし君     米山 隆一君

  一谷勇一郎君     漆間 譲司君

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 政府参考人出頭要求に関する件

 民事関係手続等における情報通信技術の活用等の推進を図るための関係法律の整備に関する法律案(内閣提出第六〇号)(参議院送付)


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     ――――◇―――――

伊藤委員長 これより会議を開きます。

 内閣提出、参議院送付、民事関係手続等における情報通信技術の活用等の推進を図るための関係法律の整備に関する法律案を議題といたします。

 この際、お諮りいたします。

 本案審査のため、本日、政府参考人として法務省大臣官房サイバーセキュリティ・情報化審議官押切久遠君、法務省大臣官房司法法制部長竹内努君、法務省民事局長金子修君、法務省刑事局長松下裕子君、出入国在留管理庁次長西山卓爾君及び厚生労働省大臣官房審議官大坪寛子君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

伊藤委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

伊藤委員長 次に、お諮りいたします。

 本日、最高裁判所事務総局総務局長小野寺真也君、経理局長氏本厚司君、民事局長門田友昌君及び家庭局長馬渡直史君から出席説明の要求がありますので、これを承認するに御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

伊藤委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

伊藤委員長 これより質疑に入ります。

 質疑の申出がありますので、順次これを許します。五十嵐清君。

五十嵐委員 おはようございます。自由民主党の五十嵐清です。

 質問の機会をありがとうございます。通告に従いまして、順次質問させていただきます。

 この法律案は、昨年の民事訴訟手続をデジタル化した民事訴訟法の改正に引き続き、民事関係手続のデジタル化を内容とするものであり、これは対面と書面を前提としている現在の手続を大きく転換するものであります。

 そこで、まず、今回の改正法案の概要と手続のデジタル化の意義をどのように考えているのか、伺います。

金子政府参考人 お答えいたします。

 本法律案は、令和四年の民事訴訟法の改正を踏まえまして、民事訴訟以外の民事関係手続の一層の迅速化及び効率化等を図り、その手続を国民がより利用しやすいものとするために、その手続全般について総合的な見直しなどを行うものであり、その内容は次のとおりでございます。

 まず、民事訴訟以外の裁判手続全般につきデジタル化し、例えば、オンラインによる裁判の申立てや送達、事件記録の電子データ化及びウェブ会議を活用した期日等を実現するための所要の規定の整備、民事執行の手続などこれまで判決の証明書の提出が必要であったものにつきその提出の省略を可能とする規定の整備等の措置を講ずることとしております。また、公証役場への出頭を前提としている公正証書の作成に係る一連の手続につきましてもウェブ会議の利用を可能とするなどのデジタル化に関する規定の整備を図ることとしております。

 本法律案により創設された制度を適切に実施、運用することで民事関係手続が一層迅速化、効率化され、国民がより利用しやすいものとなるものと認識しています。

五十嵐委員 それでは、ウェブ会議による手続について伺います。

 コロナ対策の影響で、ウェブ会議は広く浸透してきております。その意味でも、裁判手続について、利用者の利便性の向上の観点から、非対面で手続を完結することを可能にすることの意義は非常に大きいものと考えます。

 そこで、今回の改正法案において、この点について具体的にどのような内容となっているのか、御説明ください。

金子政府参考人 現行法の下では、当事者が裁判所における手続に参加するには現実に裁判所に赴かなければならないことが少なくありませんが、ウェブ会議や電話会議を利用してこれに参加することができますと当事者にとって便利でございます。

 本法律案では、当事者等の利便性向上の観点から、裁判所が相当と認めるときは、ウェブ会議や電話会議を利用して当事者等が各種手続に参加することができることとしております。

 具体的には、口頭弁論の期日など民事訴訟にもある手続については、民事訴訟手続と同様にウェブ会議等を利用して期日に参加することができるようにしたり、債権調査期日など民事訴訟にはない手続につきましても、ウェブ会議等を利用して期日に参加することができるようにしております。

 また、例えば家事調停の手続の期日など、既存の制度においてもウェブ会議や電話会議を利用することができる手続について、その要件を見直し、当事者が遠隔地に居住していなくとも利用できることを明確にするなどしております。

五十嵐委員 私個人としても、ウェブ会議による手続参加は、当事者にとって利便性が大きく向上するものであり、メリットが非常に大きいというふうに考えております。

 しかしながら、一方では、裁判の利用者の中には、ウェブ会議を通じてではなく、裁判官に対して自分の言い分を直接訴えたいと考える方々も一定数存在するものと思われます。

 そこで、当事者がウェブ会議を通じてではなく裁判所に出向くことを希望する場合に、どのように判断されることになるのか、法務省の見解を伺います。

金子政府参考人 本法律案では、裁判所が相当と認めるときは、各種手続に関し、ウェブ会議や電話会議の方法によって当事者が参加することができることとしております。

 このような仕組みは、当事者が現実に裁判所に赴くことなく裁判所の手続に参加することができるということを認めるものであっても、それを超えて、当事者が期日に現実に裁判所に赴き手続に参加することを制限するというものではございません。

 本法律案の規律による場合であっても、法令等によって手続に参加することが認められているものは、希望すれば、裁判所に赴き、裁判官の面前で手続に参加するということができることになります。

五十嵐委員 一般的にウェブでできるようになるよということが広く知られるようになると、どうしてもその圧力というか、そうしなければいけないのではないかという雰囲気が出てくるかと思うんですけれども、やはり一般の方にとっては、裁判は一生においてすごく、一大事というか、大きなことだと思いますので、やはり利用者、当事者の意向に十分配慮する形で運用の方を行っていただきたいと思っております。

 次に、書面中心の手続からデータ中心の手続に転換する記録の電子化の意義、これをどのように考えているのか、また、改正法案においてどのような内容となっているのか、お伺いをいたします。

金子政府参考人 現行制度の下では、当事者から提出された申立て書等の書類や証拠となるべきものの写しなどは、その書面のまま事件記録としてつづられて保管されております。また、裁判書や調書も書面により作成され、その書面のまま保管されているところでございます。

 このように、現行制度の下では、事件記録が書面により構成されているため、当事者等がその閲覧等をする場合には、事件記録の存する裁判所に直接出向かなければなりません。

 しかし、インターネットによる申立て等を認めるのに合わせて事件記録の電子データ化が実現すれば、裁判所のサーバーにアクセスして記録の閲覧等をすることが可能になるなど、当事者の利便性が大きく向上することが見込まれます。

 また、事件記録の電子データ化が実現すれば、書面により記録を保管するのと比較して、記録を物理的に保管するスペースが不要になるなど、その管理コストが低減されるという面もございます。

 そこで、本法律案では、民事裁判手続一般につきまして、インターネットにより提出された電磁的記録はそのまま裁判所のサーバーに記録され、書面が提出された場合であっても、裁判所書記官は原則として当該書面等の内容を電子化して裁判所のサーバーに記録するとともに、裁判所は裁判書や調書を電磁的記録により作成して裁判所のサーバーに記録する、このようにしております。

五十嵐委員 ただいま電子化のメリットについて幾つか例示、幾つか挙げていただきましたけれども、その中の一つで、インターネットによる事件記録の閲覧について言及があったかと思います。

 現行法の下では、事件記録の閲覧は、当然のことながら、裁判所に行って紙の事件記録を閲覧することになっているわけであります。事件記録が電子化されることに伴って事件記録の閲覧もインターネット上でできることとなれば、先ほどのウェブ会議と併せて、裁判所に実際に行かなくても手続が完結することとなり、利用者の利便性は大きく向上するものと思われます。

 そこで、電子的に作成された事件記録の閲覧ですが、これは具体的にどのような方法によりなされることとなるのか、伺いたいと思います。

金子政府参考人 お答えいたします。

 本法律案では、電子データ化された事件記録の閲覧に関する規定を整備することとしており、電子データ化された記録の閲覧については、その記録の内容を最高裁判所規則で定める方法により表示して行うこととしております。

 電子データ化された記録の閲覧の請求やその記録の内容の表示の具体的な方法につきましては最高裁判所規則で定められることとなりますけれども、当事者及び利害関係を有する第三者は、裁判所に設置された端末を用いた閲覧のほか、裁判外端末を用いた閲覧を請求することができ、当事者等の一定の者が事件の係属中に裁判所外端末を用いた閲覧を請求する場合には、閲覧の時間を問わず、いつでも閲覧することができるという内容の規律を設けることが想定されております。

 当事者等の一定の者による裁判所外端末を用いた閲覧は、具体的には、インターネットを通じて裁判所のシステムにログインし、事件記録のデータを閲覧することができるようになるということが想定されております。

五十嵐委員 それでは、最後に、本法律案における公証人法の一部改正においてですけれども、これまで、公証役場に出頭して公証人の面前で行うこととされていた手続について、ウェブ会議の利用を可能とする措置が講じられております。公証人が作成する公正証書の半数は公正証書遺言であると承知しておりますが、公正証書遺言の作成手続をより国民によって利用しやすいものとすることは、高齢化社会においても重要と考えます。

 そこで、公正証書の作成手続におけるウェブ会議の利用について、公正証書遺言の作成の際にも利用することができるのか、その対象範囲について伺います。

金子政府参考人 お答えいたします。

 本法律案におきましては、これまで公証役場に出頭して公証人の面前で行うこととされていた手続について、近年のデジタル技術の進展を踏まえ、ウェブ会議を利用することを可能とすることとしております。

 公正証書の作成もそのようなものですけれども、このような規定の規律の見直しは、原則として全ての種類の公正証書に適用されることとなります、一部の例外を設けておりますけれども。公正証書遺言もその対象ということで、ウェブ会議の利用が可能となっております。

 公正証書のデジタル化が実現しますと、公証役場へのアクセスが困難な地域、例えば離島などの遠隔地や豪雪地帯などにお住まいの方や、病院に入院されていて感染症予防のために外部者と直接面会することが難しい方など、今まで公正証書遺言の作成が困難であった方もその作成が可能となり、利便性の向上が図られるものと考えております。

五十嵐委員 時間となりましたので終わります。

 ありがとうございました。

伊藤委員長 次に、平林晃君。

平林委員 公明党の平林晃と申します。

 本日は、質問の機会を与えていただき、ありがとうございます。早速質問に入らせていただきます。

 この度の民事整備法、昨年度の民事訴訟法の改正に続くものであり、民事裁判に関する全ての手続をデジタル化するものと認識をしております。先ほどの五十嵐先生の質問ともかぶりますが、改めまして、今回の改正案の意義を法務大臣にお伺いいたします。

齋藤(健)国務大臣 民事裁判手続のデジタル化は、裁判所に現実に赴かずに手続を進めることなどを可能としたり、書面等を利用することで生じていた管理コスト等を軽減したりするなど、民事裁判手続の在り方に変革をもたらすものであり、その手続の一層の迅速化及び効率化等を図り、民事裁判を国民がより利用しやすいものにするための重要な課題であると認識しています。

 そのため、政府におきましては、民事裁判手続のデジタル化の実現に向けて積極的に取り組んでまいりましたが、御指摘のとおり、まず、民事裁判手続の中でも典型的な手続である民事訴訟手続について先行して法改正に着手し、令和四年五月に、そのデジタル化を図る民事訴訟法等の一部を改正する法律が成立をいたしました。

 その上で、民事訴訟手続以外の、民事執行手続や家事事件手続などの民事裁判手続については、先行する民事訴訟手続のデジタル化の成果を前提としつつ、各手続の特性に応じた検討を行う必要があるため、令和四年二月に法務大臣から法制審議会に対して諮問が行われたという経緯があります。それを受けて、法制審議会においては、調査審議をし、本年二月に答申が行われ、今回、その答申を受けて、デジタル化を図る本法律案を提出したものであります。

 昨年の民事訴訟法の改正に引き続きまして本法律案による民事執行法等の改正がされることによりまして、民事裁判手続一般につきデジタル化を実現する法改正が整うということになり、改正後の法律が適切に実施、運用されることにより、民事裁判手続一般について、その一層の迅速化及び効率化等が図られ、国民がより利用しやすいものになるというふうに認識をしています。

平林委員 大臣、丁寧な御答弁ありがとうございました。非常に重要な内容と認識をさせていただいております。

 その上で、昨年度成立いたしました民事訴訟法に関しまして少し確認をさせていただければと思います。

 本改正の本格的施行はこれからでありますが、一部先行で施行されています。その中で、令和五年三月一日からは、電話による参加が可能な期日の要件緩和がなされております。すなわち、当初は、当事者が遠隔地に居住している場合のみ認められた電話会議による期日への参加を遠隔地でなくても利用できるようにするといった改正がなされております。

 まだ三か月しかたっていない状況ではありますけれども、電話会議システムの利用状況やそれに伴う利用者の声などを掌握しておられましたら、最高裁判所に伺います。

門田最高裁判所長官代理者 お答えいたします。

 ウェブ会議の関係についてお答えさせていただければと存じます。

 民事訴訟につきましては、民事訴訟法の改正前の令和二年二月に、一部の庁でウェブ会議等を用いた争点整理手続の運用を開始した後、順次運用庁を拡大しまして、令和四年十一月からは、支部も含めた全ての地方裁判所及び高等裁判所で運用されるに至っておるところでございます。そして、今委員御指摘のとおり、今年の三月に改正法が一部施行されたことによりまして、和解の期日ですとか、あるいは、当事者のいずれもが出頭しない弁論準備手続の期日でも、ウェブ会議を利用することが可能になったところでございます。

 そういったこともございまして、一か月当たりのウェブ会議の実施件数でございますが、最近の数値では、本年三月が全国で約三万二千件、四月が全国で約二万九千件ということでございまして、いずれも前年の同月の数値を約一万件上回るものとなっておりまして、月ごとの増減というのはございますけれども、全体としては増加していると言えるかと存じます。

 利用者の反応ということでございますが、ウェブ会議を用いることによりまして、裁判所に実際に出頭することなく、裁判官や相手方当事者の表情を見ながら協議することができるということで、おおむね好評を得ているところと認識しておりますので、引き続き安定的な運用を心がけてまいりたいと思います。

平林委員 プラス一万件ということで、非常に利用ニーズの大きさをうかがうというふうに感じます。また、内容も好評を得ているということでありまして、しっかりと進めていくべき内容と認識をいたします。

 その上で、この度の民事整備法が成立することにより、デジタル化に向けて法整備がなされて、それに基づいてシステムが構築されることになると存じます。そのシステム構築によって、情報通信技術の利活用による処理の迅速化や人員の削減などが達成されることは重要であります。ただし、それだけではなくて、例えば、識者から、本来あるべき当事者参加の手続をいかに実現するかという方向で施行すべきというような意見があるとも伺っております。

 表現が余り適切ではないかもしれませんが、下手なシステムを構築してしまいますと、それが鋳型となって業務や制度の改善がより困難になってしまいます。それを避けるためにも、その構築前の今こそ、システムの目指すものを明確にする必要があると考えております。

 システム構築に向けてどのような検討が行われているのか、最高裁判所に伺います。

門田最高裁判所長官代理者 お答えいたします。

 裁判所としましても、委員御指摘のとおり、民事裁判手続のデジタル化を契機としまして裁判の質の更なる向上を目指し、それにより当事者の納得感や満足感を高めていくことが重要であると考えておるところでございます。

 改正法の施行後は、当事者はインターネットを通じて裁判所外から電子化された事件記録にアクセスすることが可能となる予定でございますので、手続の進捗状況をリアルタイムで把握することができるようになりまして、審理の過程の一層の透明化につながっていくことも期待されるところでございます。

 そのような意味でも、裁判所としては、今後構築していくシステムが一般の方々にも簡単で分かりやすく、そして利用しやすいものとなることが重要であると考えておりまして、それを目指して鋭意取り組んでいるところでございます。

平林委員 ありがとうございます。

 今、大きな転換点だからこそ、民事司法の原点に立ち返って、理想的なシステムの検討をよろしくお願いできればと思っております。

 続いて、システムに懸念される事項について伺います。

 例えば、IT化で先行する海外では、裁判所がランサムウェアの標的となり、裁判日程などの保存データを参照できなくなる事例が発生したと伺っております。また、ウェブ会議のシステムでも、利用中に通信が途絶することも起こり得ます。

 また、これはシステムそのものではありませんが、利用者が拡大するに従って、経済的に困窮している方の利用があるかもしれません。前職における経験でございますが、コロナ禍でウェブ講義が始まったときに、全ての学生が受講できる環境を整えるために、モバイルルーターの貸出しも実施するなど、様々の手配を行ってまいりました。

 こうした経済的困窮者への情報機器や通信料負担に関する配慮や助言なども必要と考えております。最高裁判所の見解を伺います。

門田最高裁判所長官代理者 お答えいたします。

 まず、広い意味でのセキュリティーに関するお尋ねについてですけれども、民事裁判手続のデジタル化を進めるに当たりまして、セキュリティー対策は裁判所としても重要なことであると認識しておりまして、政府の方で定めておられます、政府機関の遵守すべきセキュリティーに関する各基準の内容等を十分に踏まえて、必要かつ適切なセキュリティー対策を講じるとともに、万が一にもデータが消失するなどして裁判手続に支障が生じることのないよう、必要なバックアップ体制も講じることとしております。

 次に、ウェブ会議中の通信が途絶した場合の対応という点につきましては、現在、民事訴訟で実施しているウェブ会議においては、マイクロソフト社のチームズというアプリケーションを利用しておりますけれども、チームズ自体の一時的な不具合により影響が生じたことは実際にございますし、利用者の方の接続環境によっては接続が不安定になるということもございます。このような事態が生じた場合には、電話会議に切り替えて手続を進めるなどの対策が講じられているところでございます。

 最後に、ウェブ会議の実施に伴う利用者の負担の点につきましては、まず、ウェブ会議の利用に当たって特殊な機器等を御用意いただく必要はございませんで、インターネットに接続された、一般に利用されているようなパソコンがあれば対応可能であるというところでございますが、デジタル機器の利用になじみのない方等もいらっしゃるわけでございまして、その方々への対応をどうするかという観点からの御指摘だったかと存じます。

 この点につきましても、今委員の方から御指摘があった点もよく参考にさせていただきながら、適切な運用の在り方について検討していかなければならないと考えております。

平林委員 もう時間になりましたので、最後の成り済ましに関する質問は省略をさせていただきます。

 以上、国民が利用しやすい民事手続のデジタル化が行われることをお願いしまして、私の質問を終わります。

 ありがとうございました。

伊藤委員長 次に、鎌田さゆり君。

鎌田委員 おはようございます。立憲民主党の鎌田でございます。よろしくお願いいたします。

 まず、五月三十日、大臣の会見での御発言について伺いたいと思います。

 大臣、今、SNS上で、大臣可能か不可能かどっちなんだいというフレーズがハッシュタグつきで連投されるほど多くの方が問題視をされています。そのことについて御存じですか。それが一つ。

 あわせて、会見での御発言動画を私も数回拝聴いたしました。柳瀬参与員の件で、一年半で五百件の審査は可能だと、はっきりその旨をおっしゃっているのは聞き取れます。可能との御認識でよろしいですか。伺います。

齋藤(健)国務大臣 まず、様々ウェブ上で流れているのは、もちろん承知をいたしております。

 その上で、令和五年五月三十日の記者会見における私の発言についてですけれども、このときは、突然、本当にいろいろな数字がばっと、御覧になったと思いますけれども、述べられまして、そして、手元にある資料もとっ散らかった状態で、その場でお答えをしなければならないということでありました。

 私、そこで、本来は不可能であろうと発言すべきところを可能であろうと、勘違いをして言い間違ってしまった。これが事実なんです。

 それで、はっきり申し上げておきたいのは、今回の誤りは、事務方の準備に問題があったわけではなくて、これは、そういう状況の中で私が言い間違えたということでありまして、全て私自身のミスでありまして、言い訳をするつもりは一切なく、率直におわびを申し上げたいと思います。

鎌田委員 法務大臣御自身のミスであったということ。でも、手元にある、とっ散らかっている資料であったとしても、これは絶対言い間違いはあってはならなかったミスなんですね。それを率直にお認めをいただいたんですけれども。

 そうすると、気づかれたのは大臣御自身ですか。二十一時三十分頃に訂正の連絡が各報道機関になされていますけれども、気づかれたのは大臣御自身ですか。

齋藤(健)国務大臣 まず、本当に、言い訳っぽく聞こえるのは私の美学に反するんですけれども、その日は、記者会見の後直ちに、参議院法務委員会でずっと質問をされ続け、さらに、その委員会を途中で抜けて、衆議院の本会議にまた行かなくちゃいけないということでありましたので、全く事務方と国会の対応以外でやり取りをする時間は、しばらくなかったんですね。

 それで、気づいたのは確かに記事を見てからなんですけれども、その後も、じゃ、事実確認、どうだったんだ、私がもらっていた資料はどうだったのかとか、そういう確認に少し時間がかかったということであります。

鎌田委員 公にされているのは、次回の記者会見で訂正するということなんですが、これも事実でよろしいか、確認させてください。

 あわせてなんですけれども、これは五月三十日の会見だったんですね。翌日の三十一日、ここで衆議院の法務委員会が開かれていました。一般質疑の場面です。私は実は心の中で、大臣から、昨日の会見でとんでもない言い間違えをしてしまいましたと、御説明なり御釈明なり、何かあるのかと実は期待していたんですね。ところが、それはなかったんです。そして、参議院の法務委員会の方ではこのことについて厳しく追及がされているわけですが。

 大臣に伺いたいのは、次の会見で訂正するということが事実かどうかということと、私は、大臣が次の会見で説明するという、その心の背景には、もう衆議院は通過したからいいんだというものがあって、三十一日、この場所で訂正の説明がなかったのか。なぜ、今日、私、この質問をしなくちゃいけないかということを知りたいんです。伺います。

齋藤(健)国務大臣 まず、当日、さっき申し上げたような状況の中で、その日のうちに、記者会見に参加をしてくださっていたマスコミの方には訂正の御連絡を全部させていただきました、その日のうちにですね。それで、そのときに、次の記者会見で、次の記者会見でも行いますということで、本日朝の記者会見でその訂正とおわびをさせていただきました。

 それから、国会に関しては、私、その後の参議院の法務委員会で御質問があったのでお答えをさせていただきました。そして、もし衆議院の方で御質問があれば、当然、そこで隠したりするつもりは全くなかったので、誠実にお答えをしたと思います。

 ただ、そういう指摘がなくてもここで一言あってしかるべきではないかということにつきましては、確かにそういう面もあったかもしれないなと。私の心の中では、法案が通ったからもういいんだという気持ちは全くありませんでしたから。ただ、今言われれば、そういう誤解を招きかねないので、一言言ってもよかったかなというふうには今反省しています。

鎌田委員 是非、私が大臣に反省を促すというのは不遜かもしれませんけれども、私は、三十一日、翌日、この場所で一言あるべき、しかるべきだったと思っています。

 結局のところ、これは不可能だと大臣御自身がお認めになられて、そして訂正の連絡を報道各位にされているわけです。

 私たちは、もう参議院に送りましたけれども、柳瀬参与員の事件処理数、一年半で五百件というのが可能だということの、立法事実の大事な部分として、私たちはここで審議をして、採決に反対の声があったけれども、採決をして参議院に送ったわけですよ。その衆議院の法務委員会の我々にとって、参議院に送った者にとって、立法事実の大事な部分が、結局、大臣は、最初可能と言ったけれども不可能だというふうに、柳瀬さんのその立法事実のところを否定されたわけです。そうすると、私たち、ここで審議したことも、どういう責任を取ったらいいんだと、私は自分の胸に手を当てて、自戒しても自戒し切れないほどです。

 この立法事実が今崩れている状態を、大臣、どのようにお考えになっていらっしゃるか、改めて伺います。

齋藤(健)国務大臣 まず、柳瀬さん自身が一年半で五百件という言い方はしていないんですね。御本人がそういう発言はまずしていないということは御理解いただきたい。様々な場面で様々な言い方をされているので、それで計算するとということはあったと思います。

 それから、一年半で五百件について、私の記憶が正しければですけれども、衆議院の法務委員会で御質問を受けた記憶は、私、今、正式にはまた調べなきゃいけないですけれども、私の記憶の範囲では、なかったんじゃないかと思います。

 その上で、立法事実につきましては、これは重ねて何度も申し上げているんですけれども、この柳瀬さんの発言のみをもって我々は今回の改正が必要だということではなくて、様々いろいろなことを申し上げているわけでありますし、それから、柳瀬さんの発言自身の信憑性ということにつきましても、彼女が長年にわたって熱心に取り組んできておられて、そして、どうしても、認めようと思っても認められないという現実があるという、このことについては私は重く受け止めなくちゃいけないと思っています。ここで見解の相違があっても仕方がないんですけれども。

 その上で、大事な話ですので、じゃ、国が不認定としたものについて、裁判が行われて、やはり国がおかしいとどんどんどんどん言われているかというと、平成三十年から令和四年までの五年間、不認定について、納得がいかないということで行政訴訟を起こされた案件が百九件ありまして、そのうち百四件は国が勝っているということもあります。五件負け。百四件勝っているからいいじゃないかと言うつもりは全然ありませんよ、だけれども、総体としてそういうことになっているということでありますので、ですから、これをもって立法事実が崩壊をしたとか、そういうことではないんじゃないかなというふうに思います。

鎌田委員 立法事実の、私は大事な部分が崩れたと申し上げているんですね。立法事実全部が崩壊したとは言っていません。立法事実の大切な部分です。

 私は、この衆議院の法務委員会で入管庁の次長に、それぞれの参与員の統計を取っていますかということを聞いたら、取っていませんというお答えがありました。統計を取っていないんだけれども、柳瀬さんはいろいろなところで御発言をされている。それで、会見であのような流れになって、可能と言ったけれども不可能と言い間違いになっているんですね。

 ですので、今、入管法を参議院で審議されていますけれども、法案を提出をする行政府の長として、長としてですよ、私はこのような一連の流れを見ていますと、不誠実であると断じざるを得ないんです。看過できません。私たちの責任、どうするんですか。衆議院の法務委員会、これは与野党関係なく。ですので、ここのところは、これからも参議院で、これから動きがありますけれども、そのところは是非、大臣におかれましても肝に銘じていただいて臨んでいただきたいと思います。そこは指摘をさせていただきます。

 続きましてなんですが、大阪入管で、酒に酔った医師、これが入管収容施設内で診察をされていました。大臣、入管庁は今年の一月にこの事実を認識して把握をしています。大臣への報告はいつでしたでしょうか。あわせて、どう対処するよう指示なさいましたでしょうか。

齋藤(健)国務大臣 まず、私の報告ですけれども、本年二月下旬頃であったというふうに記憶をしておりますし、そのときには、きちんとした必要な事実確認、これをしっかり行うようにという指示をした記憶がございます。

鎌田委員 大臣の元には二月下旬頃報告があって、そのとき、きちんとした事実確認をするようにという御指示があったと。

 ところが、入管庁からも大臣からも、この法務委員会に、国民に、この大阪入管での酒に酔った医師、この医師なんですけれども、日常から、飲み終えたお酒の入った空き缶が転がっていたり、酩酊状態だったりということは常に情報として出ていましたが、入管庁も法務省も大臣からもこの御説明はありませんでした。私は非常に遺憾に思います。入管法を審議している最中ですよ、これ。一月に認識、把握して、二月には大臣に報告しているのに、なのに法務委員会には、医療制度の充実等をうたっておきながら、これを報告していないじゃないですか。とても不誠実だと思います。

 今日は厚労省さんにも来ていただいていますので伺いますが、昨年の、二〇二二年七月、茨城県立中央病院の医師が、宿直勤務中にもかかわらず、六時間にわたって酒を飲み、その後、医療行為を行っていたとして、茨城県は十月四日付でこの医師を戒告の懲戒処分にしました。医師法においては、飲酒、酒気帯びの医師の診察は可とされているんでしょうか。伺います。

大坪政府参考人 お答え申し上げます。

 医師法におきましては、罰金以上の刑に処せられた者等に該当する者につきまして、医道審議会の意見を聞いて、医業の停止や免許の取消しなどの処分をすることができるというふうにされておりますが、医師の勤務態度などにつきましてはそれぞれの現場において適切に対処いただいているものでありまして、本事案のように飲酒の有無のみをもって一概に医師法において処分できるということではないというふうに承知をしております。

 ただ、一方で、理念的ではございますけれども、医師法第一条におきまして、医師は、医療等を行うことにより公衆衛生の向上や増進に寄与し、国民の健康な生活を確保することとされているとともに、医療法の第一条の四におきましても、医師等は、医療を受ける者に対し、良質かつ適切な医療を行うよう努めなければならないというふうに規定をされております。

 私どもといたしましては、医師はこうした適切な医療の提供に努めるべきものであるというふうに考えております。

鎌田委員 ありがとうございました。

 次長、お聞きになったと思いますけれども、一月に入管庁で認識、把握をして、二月に大臣に報告を上げて、それからもう今日は六月の二日ですね。事実関係の確認にこんなに時間がかかっているんですか。何にも明らかにすることはないんでしょうか。それを一つ伺います。

 あわせてなんですけれども、入管収容施設内で、常勤医師、非常勤医師にかかわらず、医師の健康状態とか、飲酒しているんじゃないの、酒気帯びどうなのというチェックをする体制、システムというのは存在していないんですか。このお医者さんは、そのかいわいでは、酒を飲みながら診察していると結構多くの人が知っている話ですよ。何でそんな状況を放置され続けているんですか。伺います。

西山政府参考人 まず、事実確認に関してのお尋ねですけれども、ちょっとこれは御理解いただきたいんですが、片や、対象となっている常勤医のお医者さんの個人的なプライバシーの問題、これは非常に関わっています。それと、もちろん今報道されているような状況、これは私どもとしてもしっかり確認をしなければならないのですが、その確認に非常に時間がかかる状況にあります。それをまず御理解いただきたい。つまり、途中経過を説明できるような今状況にないということを是非御理解いただきたいと思います。

 それと、後者の方ですけれども、私どもも、さすがに医師が酒を飲んで診察に当たるということは想定していませんので、常時、医師に、例えばチェッカーで点検するとか、そういった体制にはもちろんなってございません。

鎌田委員 御理解いただきたいと言われても、一月に把握して、二月に大臣に報告して、もう今、六月なんです。そして、入管法の審議をして、参議院に我々送ったんです。これは、事実の確認を急ぎやり、もちろんその当該医師の方、もしかしたらいろいろな事情をお持ちかもしれない、それで時間がかかっているのかもしれないと拝察しますが。

 大臣、これですね、今、入管法の審議をやっているんですよ。この事実関係の確認を、きちんと調査をして、ウィシュマさんのときも、もう二度とこういうことが起きないように、そしてイタリア人の方が自死されたときも、二度とこういうことが起きないように、毎回二度とこういうことが起きないようにと言って、そして、この大阪の入管の、お酒を飲んだ医者が酩酊状態で診察しているということ、私も、実は、これは報道になる前に知っていたんです。でも、法務省から何の報告もない、公開もない。

 ですから、今ここで、大臣、めどとして、いつまでにきちんとこの事実関係を調査し、報告をするということを明らかにしていただけませんか。

齋藤(健)国務大臣 私は、この手の話は、人並み以上に、早く、途中段階でもいいから公開をすべきだという考えを持っていて、私なりに取り組んできたつもりなんですね。

 本件につきましては、実は、訴訟を前提に対応をする必要があるというふうに判断をしているんです。そのためには、事実の確認というものを慎重の上にも慎重にやっていかなくてはいけないということが片やございまして、それで少し時間がかかっているということは是非御理解をいただきたいなというふうに思っています。

 それで、今後のめどにつきましても、それ次第ということでありますが、私としては、できるだけ早く決着をつけたいというふうには思っています。

鎌田委員 済みません。お答えできる範囲で結構です。訴訟というのは、国がその医師に対してということですね。

齋藤(健)国務大臣 ちょっとこれ以上は勘弁していただきたいんですけれども。

鎌田委員 分かりました。

 いずれにしても、全国にある入管収容施設内の、一部、大阪でこういうことが起きていたということでございますので、入管法を審査し、参議院に送った我々としては、こういう事実もあったんだということでございますので、入管法、可能だった、不可能に、言い間違えた、朝令暮改も甚だしいし、不誠実だなと思いますし、こちらの委員会でも御報告もなかったし、私は、参議院に送りましたけれども、これは議事録に、私の意見として、一からやり直しをすべきだと、そういう、一からやり直しにすべきに値する入管法の今回の改定案だということは議事録に残したいと思います。大臣にお伝えをしたいと思います。

 それでは、インターネットを利用する、民事関係手続のIT化に関する法案の質疑に入らせていただきます。

 裁判所に訴えて、提起申立て、フォーマット方式をお考えのようなんですが、どのような手続についてフォーマット方式を想定されているのでしょうか。伺います。

門田最高裁判所長官代理者 お答えいたします。

 本法案の成立後に開発を開始するシステムに関する御質問ということになりますので、具体的な内容についてお答えすることは難しいところではございますけれども、法制審議会の部会でも御示唆があったところでございまして、PDFファイルの提出といった方法のほかに、システム上に入力フォーマットを設けて、そこに必要なデータを入力することにより申立て等ができるようにするシステムなどを検討しているところでございます。

 具体的にどのような手続かということになりますと、これも検討ということになりますが、本法案が対象とする民事関係手続には、フォーマット入力方式が比較的なじむと言われております倒産とかあるいは執行等の手続が含まれますので、裁判所としましては、今後、それぞれの手続の特性を踏まえて、利用しやすいフォーマットの方式とすることも含めて、利用者にとって利便性の高いシステムを構築するように努めてまいりたいと考えております。

鎌田委員 つまり、様々な手続がありますから、手続によってフォーマットは違う、違いが生じるということでよろしいですね。

門田最高裁判所長官代理者 現段階ではそのようになろうかと考えております。

鎌田委員 できればフォーマットも、手続によって違うフォーマットですから、法案成立後に明らかになるんじゃなくて、できればこの法案を審議中に皆さんで審議ができるようになればいいなと思って伺ったんですけれども、利用者にとっての利便性というところは答弁いただきましたので、そこに御注意をいただいて、お願いしたいと思います。

 次に、破産手続について伺います。

 この破産手続なんですけれども、破産公告の在り方について特に伺います。

 今回の法改正では、破産公告に関する法制審の議論ですとか、あるいは司法書士の方々からの御要望、多く出ていますよね。それは、今回の改正案にどこか反映されているところはありますか。

金子政府参考人 破産公告の在り方の見直しについての御質問です。

 前提として、破産手続においては、破産手続開始の決定や免責についての意見申述期間の決定等をされたときは一定の事項を公告しなければならないというふうにされておりまして、現行の破産法におきましては、その規定による公告は官報に掲載してするということになっております。

 このような破産手続における公告の在り方につきましては、破産手続のデジタル化の観点や破産者のプライバシー保護の観点から様々な意見がございまして、法制審議会民事執行・民事保全・倒産及び家事事件等に関する手続(IT化関係)部会において、パブリックコメントにおいて寄せられた意見も踏まえて議論がされました。

 具体的には、破産手続がデジタル化されることを踏まえて、公告の方式として、民事訴訟手続における公示送達と同様、裁判所のウェブサイトに掲載する方法を導入すべきとの意見がありました。しかし、そのような意見に対しても、現在でもインターネットにおいて官報を見ることができるなどとして反対する意見もありました。また、それとは別に、個人破産者のプライバシー保護の観点から、公告の在り方を見直し、官報公告を廃止して、裁判所外において破産の事実を公示しないものとすべきとの意見もございました。しかし、これに対しては、官報による公告には相応の意義や機能があり、破産債権者の財産権を保障するためのツールであるとして、そのような見直しに反対又は慎重な意見もございました。

 こうした状況から、同部会におきましては、破産手続等における官報による公告による規律を見直すとの意見は採用しないこととされて、本法律案においても破産手続等における官報における公告に関する規律の見直しをすることとはしていないところでございます。

鎌田委員 済みません、端的にお願いします、御答弁。分かりました。

 局長、二〇一九年の、インターネット上で起きた、グーグルマップ上に、破産、再生手続をした人の住所の上に、ピンですね、目印、これを刺して可視化させるサイトの事件がありました。いわゆる破産者マップ事件なんですけれども、これは局長、御存じですか。これが一つ。

 それから、この事件は非常に社会的に問題になって、そのサイトは閉鎖されたんですけれども、今年に入って再び、今度は新破産者マップというものがウェブサイトに流用されました。これも全て官報を利用する破産公告の在り方から起因しているんですね。

 もうネット社会です。官報で破産公告がなされますと、よからぬというか、そういうお気持ちを抱いた人は、こうやってネット上でさらすんですよ。そして、そこで個人情報、破産した人、住所、それが全部明らかになっちゃうんですね。

 新破産者マップ、今日現在ではサイトは閉じられていますが、今年の二月二十八日時点ではこれがまだ閉鎖されていなかったんです。このことを御存じですか。

 それを踏まえた上でも、官報を利用する破産公告の在り方について、これは今回の法改正どおりにいくというお考えなのかが三つ目。

 四つ目に伺います。

 私は、破産法を改正しなくても、債務者の住所を掲載しないとか掲載期間を制限するとか、そのような手だてをすれば、そういった個人情報、住所ですとか名前ですとか、そういったものがネット上にさらされることは避けられると思うんですが、四つ目。

 いかがでしょうか。四つ続けてお答えください。

金子政府参考人 ちょっと全部にカバーできるか分かりませんが、破産者マップあるいは新破産者マップについては存じ上げています。名前とともに地図情報が併せて掲載されているようなものということで、私も見ております。

 それから、いつまでそれが閉鎖されずにいたのかという具体的な日時までは、ちょっと今、私の記憶の中では正確に把握しておりません。

 それから、官報公告の在り方については、確かにいろいろな議論があってしかるべきだと思います。ただ、この問題は、破産手続が始まりますと、債権者がその破産手続の外で債権回収をするということが禁じられて、破産手続の中で破産の届出をするということになりますので、債権者にとっては、債務者にとって、破産手続が始まっているということを知ることが非常に重要です。かつ、それが通常、複数の債権者について同時に進行する手続になりますので、多数の人に同時に知らせるというこの手段はどうしても確保しなきゃいけないということになります。

 その上で、別の方法があるのではないかというようなことではございますけれども、その点につきましても、破産その他いろいろなところで官報の利用というのがある程度信頼性の高いものとして今まで利用されていた問題があり、この破産法一つだけの問題として解決するというのがなかなか難しいという状況にあるということは御理解いただきたいというふうに思います。

 今回の改正は、確かにそこには踏み込まずに現行どおりということになっております。

鎌田委員 是非これは、議論がありましたから、引き続き議論していただきたいと思います。

 昨年の民訴法の改正も、今回の手続法の改正も、やはり大きな問題はプライバシーをどう守るか、外に情報を漏えいさせないようにセキュリティーをどうするか、サイバー攻撃に対応するにはどうするか、そういったところが大きな問題として背景にあるんですね。ですので、私は、そこのところは引き続き議論していただきたいと思います。

 残りの時間で二問いけるかどうか分かりませんが、期日におけるウェブ会議なんですけれども、大臣も御存じだと思いますが、もう日進月歩でAIの技術が進んでおります。

 やはり、成り済ましというものは昨年の法案審議でも議論になりましたけれども、ここにタブレットを、私、今日は御許可をいただいて持っています。素人のような私のような者でも、目の前にパソコンがあると、例えば、私が今、部屋の中を映し出して、誰もいませんと言っても、それはどこまで担保できるかなんて分からないですね。それから、別人に成り済ますことも、今の生成AIの技術をもってすればいとも簡単にできるんです。私がしゃべっているんだけれども、いつの間にか齋藤法務大臣の顔と声の質に、声色に変わってしゃべることができる。簡単にできちゃうんですね。

 ですから、もう質問を終わりますので、二つ続けて終わりますが、この成り済ましに対してきっちり、最高裁におかれましては対応を、防止策を検討すること、それから、最後に、大臣におかれましては、今回の法律を成立させるに当たって、日弁連ですとか司法書士の方々、総合的にサポート体制をきちんと構築すべきではないかということを伺って終わりにしたいと思います。

門田最高裁判所長官代理者 お答えいたします。

 裁判所がウェブ会議の方法で手続を実施する場合は、各裁判所がそれぞれの事件に応じた適切な方法で、通話者の確認や、録音、録画が禁止されていることの教示を行っているところと承知しております。

 今委員から御指摘がございましたように、悪意のある者がウェブ会議を用いた手続に関して最新の技術を用いて不正な行為を行おうとする場合を想定して万全の対策を講じるというのはなかなか容易ではない面もございますけれども、そもそも、そのような不正行為が懸念されるような事案においては、ウェブ会議によって手続を行うことは相当でないとして対面による手続が選択されることになるものと考えられるところでございます。

 いずれにしましても、裁判所としましては、ウェブ会議を利用した手続が適切に運用されるよう、引き続き努めてまいりたいと考えております。

齋藤(健)国務大臣 民事訴訟等のデジタル化を推進するためには、最高裁判所、法テラス、日弁連、日本司法書士会連合会等が連携をして、IT機器の操作に不慣れな方々もおられますので、総合的なサポート体制を構築していくということが大事だと思っています。

 法務省では、こうしたサポート体制の構築に向けた検討を重ねて、法テラスにおいて、裁判所のシステム等に関する情報提供や、電子化される裁判所提出書類の作成援助などを行うこととしています。

 こうした法テラスにおける取組について、裁判所が新たに構築するシステム、これからありますよね、それや、あるいは、日弁連、日本司法書士会連合会等における取組の内容等を十分に踏まえたものとすることが総合的なサポート体制を構築する上で重要でありますので、このため、これらの関係機関、団体と意見交換しながら、法テラスによる効果的な情報提供や実質的サポート等の具体的内容について、今もう検討を進めているところであります。

 法務省としては、引き続き、関係機関、団体と緊密な連携を図りながら、IT機器の操作に不慣れな方々に寄り添って、そのニーズに応えられる総合的なサポートを提供できるように、その体制構築に向けて必要な検討を進めてまいりたいと考えています。

鎌田委員 終わります。ありがとうございました。

伊藤委員長 次に、山田勝彦君。

山田(勝)委員 立憲民主党、山田勝彦です。どうぞよろしくお願いいたします。

 裁判IT化についてです。

 離婚調停や破産などの民事手続がIT化されることで、これまでかかっていた時間やお金が削減されるようになります。国民の多くの皆様にとって、利便性が向上し、司法にアクセスしやすくなるという大きな利点があります。

 しかし、一方で、個人情報の流出といった懸念点、これに対しては慎重な対策が必要であろうということで、御質問をさせていただきます。

 ちょっとお時間の関係で、通告ナンバー三から行かせていただきます。

 官報についてです。

 資料を御覧ください。鎌田委員からも御指摘がありました。現状、この資料一にあるとおり、官報にはこのように破産者情報が掲載されています。公開されている。まず、この理由を教えてください。

金子政府参考人 理由ですが、破産法によると、裁判所は、破産手続開始の決定をしたときは直ちに破産手続開始の決定の主文、破産債権の届出期間等を公告しなければならないとされておりまして、そして、今申し上げた破産手続開始の決定の主文には、誰について破産手続が開始したのか、すなわち、破産者についての情報が含まれるということになります。

 この趣旨は、破産債権者等の関係人に対し、破産者について破産手続開始の決定がされた事実を知らせ権利行使の機会を与えること等によって、これらの関係人が不測の損害を受けることを防止するということにあります。

 そして、破産法によれば、この公告の方法は、官報に掲載してするということにされております。官報が選ばれているのは、法律等の公布を始め、国の機関としての様々な報告や資料を掲載する国の機関紙であり、行政機関の休日を除いて毎日発行される、こういうものであるからでございます。

山田(勝)委員 この官報に掲載されている破産者情報をきっかけに、資料二を御覧いただきたいんですけれども、先ほどもあったとおり、破産者マップ、これが事件化されています。このように、全国でどの地域に、まず何人ぐらいいるかと。これをクリックしていくと、具体的に、住所、名前、こういった個人情報がネット上で流出されている。大変ゆゆしき状態ではないかと思われます。

 この破産者マップ、まず、違法なのかどうなのか、教えてください。

金子政府参考人 お尋ねの事案について違法かどうかは、個別の事案における具体的な事件関係を踏まえて判断されるべきものであるため、一概にお答えすることは差し控えたいと思います。

 その上で、一般論として申し上げますと、破産法に基づき公告された個人の情報に関して、その情報を取得した者がこれをどのように扱うべきかについては、個人情報の保護に関する法律の規律するところによるものと考えております。

 この点に関し、個人情報保護委員会が、破産者等の個人情報を個人情報保護法に反して違法に取り扱っている事業者について、同法が定める罰則に抵触していることを理由に、関係捜査機関への刑事告発を行ったなどの例があるということは承知しております。

山田(勝)委員 はっきり答えていただいていないんですが、極めて違法性が高いと思われます。

 そして、この問題のある破産者マップ、どのような対策を政府は講じているのでしょうか。

金子政府参考人 お尋ねの防止策は、官報に関わるインターネット上のサービスにおける個人情報保護のための措置に関するものと考えられますが、このサービスは、独立行政法人国立印刷局が提供しておりまして、法務省において的確にお答えすることが困難だということは御理解いただきたいと思います。

 その上で、私どもの方で承知している限度で申し上げますと、有料の官報情報検索サービスに関する対応につきましては、利用規約において、個人的な使用の範囲を超えた利用や、第三者のプライバシーを侵害する行為又は侵害するおそれのある行為等を禁止しているものと承知しています。

 他方で、無料で利用できるインターネット版官報につきましては、主要な検索エンジンの検索対象とならないよう設定されていること、個人情報を含むおそれのある記事に対して画像化処理を行い、機械的に文字抽出を行うことができるようにされていることなど、破産者を含め個人情報保護のための技術的な措置が講じられていると承知しております。

山田(勝)委員 この新破産者マップ、一度、停止命令も出されているようなんですが、鎌田委員から指摘があったように、新破産者マップというものでなお公開が続いている状況です。

 そして、許し難いのが、このマップ上のピンに付随する破産者の個人情報を非表示にするためには六万円かかる、さらに、ピンごと非表示にするためには十二万円を手数料としてビットコインで支払う必要があると、悪意ある第三者から金銭を要求されるといった詐欺事件が発生しているんです。これは大変な問題ではないでしょうか、大臣。

 ネット上でも記事があるんですけれども、こういった事件をきっかけに、公開されていることに対して、この問題に取り組んでいる弁護士、自分が破産者であることを近所の人がみんな知っているのではないかという恐怖心から家から一歩も出られない、そしてまた、会社に把握されているのではないかと思って出社できない、こういった精神的に脅かされている方々が多数いる状況です。

 先ほど局長からもお話があったんですが、確かに、法律上、官報の公告が義務づけられているかもしれません。しかし、時代背景が全く違います。当時、法律ができたときは、紙ベースです。今、ネット上で、PDFで、しかも、有料化であれば過去何十年も遡ってこの破産者情報が公開され続けている。自分の子や孫の代まで続くんです。これはまさに令和の時代のさらし首のような状況で、本当に問題だと思っているんですが、政府は全くその危機感がないのか、明確な対応をする気がないような御答弁でした。

 まずは、この官報インターネットによる破産者情報を掲載する今のシステム、これはすぐに、大臣、止めるべきではないでしょうか。

齋藤(健)国務大臣 まず、個々の案件としてお聞きいただくと困るんですけれども、官報による公告によって、破産債権者等の関係人に対しまして、破産手続に関する権利行使の機会を与えること、これは必要となるわけです。この場合に、破産者のプライバシーにどのように配慮すべきか、これはなかなか難しい問題であると認識しています。

 破産手続における公告の在り方につきましては、先ほども答弁を事務的にしていますが、法制審議会民事執行・民事保全・倒産及び家事事件等に関する手続部会においてやはり議論がされていて、個人破産者のプライバシー保護の観点から、公告の在り方を見直し、官報公告を廃止し、裁判所外において破産の事実を公示しないものとすべきとの意見もありました。しかし、これに対しても、官報による公告には相応の意義や機能があり、破産債権者の財産権を保障するためのツールであるとして、そのような見直しには反対又は慎重な意見もあったんですね。

 このような状況から、同部会では、破産手続における官報による公告に関する規律を見直すという意見を採用しないこととされて、本法律案においてもこの規律の見直しをすることとはしていないという、こういう経緯があります。

 このような様々な意見があるということはよく分かっていますので、法務省としては、引き続き状況の推移を注視してまいりたいと考えています。

山田(勝)委員 これは、まず、官報の破産者情報を一体誰が見ているのかというと、一般の人はまず見ていないんですよね。金融機関とか不動産とか、そういう特定の業者さんだけなんですよ。それなのにネット上で公開されているというのは、余りに現実的な対応ができていない。必要性は分かります、官報に公告するという。それは、あくまで、例えば紙ベースだけにとどめるとか、若しくは裁判所のホームページで期間限定に公開するとか、いろいろな対策、配慮は絶対にできるはずです。

 大臣、検討いただけないでしょうか。

齋藤(健)国務大臣 先ほども申し上げましたように、法制審議会においてかなり議論を積み上げてきました。委員のような御指摘もあれば、そうではないという御指摘もある中で積み上げてきて、結論が出てきたものでありますので、その結論が出た直後に、私の方でそれはおかしいということを申し上げるだけの材料は正直持っていないわけでありますので、まずは、御指摘のような指摘もあるということを重く受け止めながら、状況の推移を見守っていきたいというふうに思っています。

金子政府参考人 済みません。

 破産者マップの防止策について、先ほど、個人情報を含むおそれのある記事に対して画像化処理を行い、機械的に文字抽出を行うことができるようにされていると申し上げたようなんですが、機械的に文字抽出を行うことができないようにされていると改めさせていただきたいと思います。済みませんでした。

山田(勝)委員 次に、裁判IT化に伴うシステム、これは大変重要でございます。

 令和五年度、裁判所の予算が三千二百二十二億一千七百万円のうち、デジタル関連経費として六十七億三千八百万円計上されているということなんですが、本当にこのシステム、万全を期す必要があるので、しっかりとした予算を確保して、本当に国民の皆さんが安心できるような、今、政府が強引に進めるマイナ保険証、これは個人情報が流出し、多くの国民の皆さんが不安を感じているところです。今回のIT化で、裁判で使用される証拠の資料までもデジタル管理されるということは、大変重たいことです。裁判資料が万が一にでも流出したり改ざんされたり、こういうリスクは本当にないのか、このような事態は絶対にあってはなりません。

 国民のプライバシーを保護するため、サイバー攻撃に対し万全の対策が求められています。大臣、セキュリティー、本当に大丈夫なのでしょうか。

齋藤(健)国務大臣 民事裁判手続では、当事者のプライバシーですとか営業秘密などに係る事項が取り扱われます。仮にシステムのセキュリティーが十分でない場合には、このような情報が漏えいするおそれがあり、ひいては国民が裁判手続を安心して利用することができなくなってしまうことになりかねません。

 そのため、システムの構築に当たりましては十分なセキュリティー水準を確保すること、これはもう前提条件みたいなものだろうと私は思っています。

 具体的なシステムの設計は、必要な法改正がなされた後に最高裁判所において行われることになると承知しますが、十分なセキュリティーを確保したシステムとなるように必要な検討がされるものと考えています。

山田(勝)委員 是非とも慎重に、万全の対策を期していただきたいと思っております。

 そして、オンライン化でもう一つやはり国民の皆さんにとって大事なポイントというのは、僕もよく地元でいろいろな、法律的な相談はあるんですけれども、皆さん、裁判に費用がかかるということで、やはり困っている人たちというのはどうしても経済的にもゆとりがなかったりして、断念されるケースが多々あります。

 今回、オンライン化による恩恵というところで、より司法へのアクセスをしやすくする、ハードルを下げるというところで、経費も重要なのではないか。かなりこれまでの書類でのいろいろなやり取りに比べコストが削減されるわけですから、手数料、これがオンライン化によってどう変わっていくのか。

 一例を挙げると、債権の差止め命令の申立て、七千三百円かかっているところが、電子処理に協力してくれた方に対しては七千二百円と、僅か百円程度なんですよね。これでは、本当の意味で広くIT化の恩恵というのを享受できないと思います。

 この辺りの費用面、大臣、是非、もっとオンライン化に協力している国民の皆さんに安く提供できるというシステムに変更していただけないでしょうか。

齋藤(健)国務大臣 まず、御意見はよく私も分かります。

 ただ、今回の法改正におきまして、オンラインによる申立てというのは、当事者にとってまず利便性が高まるということもありますし、手続の運営コスト全体の低減にも資するということにもなりますので、その利用促進を図るため、オンラインによる申立てのインセンティブを高めていくということが私は大事だと思っています。

 今般の改正法案は、申立てのみならず、書類の授受ですとか、事件記録の閲覧ですとか、手数料の納付ですとか、これらをいずれもオンラインでできるようにするとともに、ウェブ会議の利用も拡充するなどしておりまして、こうした制度が一体として利用され、その利便性が国民に浸透することで、オンラインによる申立てのインセンティブにもなりますし、恐らく全体としてのコストも下がっていくんだろうと思います。

 その上で、本改正法案の成立、施行後も、引き続き、その利用状況等を踏まえ、関係機関、団体の意見聴取にも努めるなどしながら、申立て手数料の見直しの要否も含めて、更にインセンティブを高めるための検討は行っていきたいと考えています。

山田(勝)委員 是非ともよろしくお願い申し上げます。

 続いて、私もどうしても取り上げざるを得ません、鎌田委員も指摘がありました、大臣の記者会見での発言についてです。

 私、この衆議院の法務委員会でも、柳瀬元参考人の発言について取り上げさせていただきました。そのときに、二年間で約二千件処理するのは、通常、物理的に不可能なんです、是非とも大臣に実態調査をお願いしたい、これは重要な話ですからお願いしたいというふうに、僕は五月十日の委員会で質問しました。

 大臣に聞いているんですが、その後、西山次長が答えられて、このように答えています。御指摘の柳瀬参与員におかれては、令和三年の法務委員会において、対面審査を行って、慎重な審査を行った案件を前提として、難民認定申請者の中に難民と認められる人がほとんどいないということを答弁されたと承知している、この方の御経験等に照らして、我が国の難民認定制度の現状を的確に表している、こう答えているんですよ、衆議院の法務委員会で。

 大臣、今なお、この答弁は法務省の見解としてよろしいんですか。

齋藤(健)国務大臣 まず、前提として、その背景には、私、前々から答弁申し上げておりますように、平成三十年から令和四年までの五年間の裁判での結果等ですとか、それから、同じように、参考人として、柳瀬さん以外の方、元の参考人の方も含めまして、その方々も、どんどん難民認定が、表現はちょっと正確に覚えていませんけれども、見つけるのは率が低いという趣旨の御発言をされていますので、そういうものを全部トータルで背景として持ちながら、そういう答弁になっているんだろうと私は理解をしています。

山田(勝)委員 全く、衆議院の法務委員会で答えられた、柳瀬参考人が対面審査を前提にしていたとか、しかし一方で、五百件は現実的に無理な数字であるということをお認めになっているわけです。

 やはり、これはいろいろなところで指摘されていますが、どうしてもこのまま強行採決なんてあってはいけないと思います。もう一度、審議を止めて、この辺りの事実関係をやはりしっかり整理して、それこそ齋藤法務大臣の、誠実なお方だということは重々分かるんですけれども、だからこそ、こういう状況で進めるというのは大変問題が後々あると思うので、是非これは一旦止めていただくことが賢明だと思っております。

 その上で、大臣、最近、裁判で、そうはいっても百九件のうち百四件勝訴があっているんだというお話があっています。しかし、五件は、迫害のおそれのある母国に強制送還される可能性のある人たちなんですよ。これは、袴田事件でも、一件であっても、そういった司法の誤りがないことで安堵する人は大勢いますよね。この五件を軽視しては決していけないと思っております。

 勝率でいうと、四・六%に当たるんです、百九件のうち五件というのは。柳瀬参考人が、四千人から六人しか認定できなかったとおっしゃっているんですが、これは、四・六%の勝率で計算すれば、百八十四人、二桁違うんですよ。

 本当に、これまでの入管行政の難民認定の在り方が、そもそも書類ベースで、そんな、人の人生に関わるような難民申請を書類ベースでどんどんどんどん事務的に処理していくような在り方自体が、これは問われている問題だと思っております。

 そして、もう一つ言わせていただきたいのが、この裁判ですら、多くの人たちは声を上げられていないんです。ここでも何度も取り上げましたウガンダ人女性、この方は、たまたま善意ある弁護士がついたから裁判ができた。口頭意見陳述すら、本来できていなかったんです。

 こういったことを重く受け止めると、難民認定制度、これが、今回の法改正では、大臣が強調されている保護すべき者を保護するという理念に全くそぐわない制度設計になっているということを改めて御指摘させていただきます。

 この件、何か御見解はないでしょうか。

齋藤(健)国務大臣 我々、難民に認定するということだけで保護しようということを申し上げていることはありません。ですから、補完的保護ですとか、それから、様々な判断によりまして、従来答弁していますように、ウクライナとかを入れますと、七〇%ぐらいの方は難民認定以外の手段で保護させていただいているということもあります。

 それから、これは是非誤解していただきたくないんですけれども、私は、百四件あるからいいとか、五件しかないとか、そういうことは一切言っていませんので。私は、一件でもあってはならないというふうに考えていますし、この五件については、なぜそういうことになったかというのを真摯に検証しながら、次につなげていかなくちゃいけないと思っていますので、そこは誤解をしていただきたくないと思います。

 その上で、国会のことにつきましては、ちょっとコメントは差し控えたいと思います。

山田(勝)委員 現行の難民認定、大きな問題が山積しているということを強く指摘いたします。

 そして、もう一つ確認しないといけないことがあります。

 四月二十一日、衆議院法務委員会における私の質問に対する西山次長の答弁、在留資格をお持ちの外国人が難民認定申請を行うについて弁護士の援助が必要であれば、例えば民事法律扶助という制度があるというふうに承知していると回答がありました。

 実際、総合法律支援法三十条一項二号に定められた民事法律扶助の業務の範囲にある、難民認定手続及び審査請求手続、これは含まれているのでしょうか。

竹内政府参考人 お答えいたします。

 民事法律扶助制度でございますが、資力が乏しい国民又は我が国に住所を有し適法に在留する方に対しまして、法律相談援助として無料法律相談、それから、代理援助として民事裁判等手続の準備及び追行に必要な弁護士費用等の立替えをする制度でございます。

 難民認定申請につきましては、このような外国の方に対して、難民認定申請手続に関する無料法律相談ですとか、難民不認定処分に対する行政訴訟を提起する場合における必要な弁護士費用等の立替えを受けることができます。

 また、こうした民事法律扶助制度を補完するものといたしまして、法テラスでは、日本弁護士連合会から委託を受けて、難民認定に関する法律援助、あるいは外国人に対する法律援助の業務を実施しておりまして、適法に在留する方以外の外国人に対しても弁護士費用等の援助を行っているところであります。

山田(勝)委員 では、難民認定に対しても適用されるという御答弁であったと理解しますが、それでは、これまでに、難民認定手続及び審査請求手続にこの民事法律扶助が適用された事例はあるのでしょうか。

竹内政府参考人 お答えいたします。

 民事法律扶助制度を利用した事案の中に難民認定申請に関するものはあるかという御質問でございますが、これは統計的に把握しているわけではございませんが、令和三年度における外国人による民事法律扶助制度の利用件数は、法律相談援助について四千五百八十三件、代理援助について千九百八十七件でありました。また、令和三年度における日本弁護士連合会から委託を受けた援助の利用件数につきましては、難民認定に関する法律援助につきまして三百十二件、外国人に対する法律援助について七百三十五件であったと承知をしております。

山田(勝)委員 しっかり把握できていないということなんですが、現場の弁護士の先生方からすると、難民認定手続に実際に活用された事例はないということです。しかし、このやり取りの中で、適用できるという答弁をいただいたと思っております。

 もう時間になってまいりましたが、最後にこれだけはお伝えしたいことがございます。

 参議院の法務委員会の理事会の場で、自民党の方から、機は熟した、そういう発言があったと報道ベースであっています。これは、大臣のこの可能、不可能の発言を受けて、本当に、そんな認識で法案審議していること自体、私は、大変な問題、国民的感覚が余りにも欠如しているんじゃないかと。審議すればするほど、疑念は深まるばかりです。審議を止めるべきであるということを強く御指摘させていただいて、私の質問を終わります。

 ありがとうございました。

伊藤委員長 次に、阿部弘樹君。

阿部(弘)委員 日本維新の会の阿部弘樹でございます。

 質問をさせていただきます。

 今回は、この資料が、分冊一、分冊二と、非常に重たい。これは、この法律の改正が多くの分野、法律に及ぶということだと私は理解しておりまして、多分、これに関わった法務省あるいは最高裁の皆さん方の労力たるや、本当に大変だったんだろうなと思うわけでございます。

 でも、そのことを裏返せば、このIT化というのは物すごく労力が必要な改正だと。実際に成し遂げれば、かなりITの恩恵を受けるものだというふうに考えております。

 さきの民法改正、令和四年の民法改正と、刑法のIT化、そしてこの手続法のIT化ということですが、ちょっと気になる新聞記事がありましたので、これは六月一日の産経新聞、木曜日の新聞の記事をちょっと読みます。

  チャットGPT 実在しない判例

  米メディアによると、ニューヨークの連邦裁判所で審理中の民事訴訟で、弁護士が対話型人工知能(AI)「チャットGPT」を使って作成した準備書面に、実在しない六件の判例が含まれていた。弁護士は「チャットGPTが虚偽内容を示す可能性に気づいていなかった」と述べている。弁護士は、二〇一九年にニューヨーク行き航空機内で配膳カートがひざに当たり負傷したとして南米の航空会社を訴える男性の代理人。裁判所へ提出した書面で引用した「航空会社が被告となった訴訟の判例」が実在していなかった。裁判所は弁護士の処分の可否を検討する。

ということで、ニューヨークの平田雄介記者のレポートでございます。

 さて、さきのG7でも、チャットGPTについての先進国の規制の在り方、これは政府の代表者だったわけですが、一方で、司法においてもこのことは例外ではないわけでございます。三権分立でございますから、最高裁も、あるいは法務省も、このことについては真剣に検討の段階に入らなきゃいけないんじゃないかということでございます。

 今般は裁判のことでございますから、最高裁の方にお聞きしたいと思いますが、このことについての規制あるいは考え方について、お考えを聞きたいと思います。

門田最高裁判所長官代理者 お答えいたします。

 今委員が御指摘になりましたような報道につきましては、私も新聞等で見たところでございます。

 我が国で同じようなことが起きるかという御懸念かと思うんですけれども、一般論ということにはなりますので、そういう前提でお聞きいただければと思うんですけれども、我が国の民事訴訟は当事者主義ということになっておりますので、まずは当事者の方で必要な主張、立証を尽くすということになりますので、今回のように一方の当事者が出した書面については、相手方当事者がそれを精査して、必要な反論を行うということになりますので、通常はその段階で架空の裁判例であることが発覚することになるのではないかと思っているところでございます。

 仮に相手方当事者の方でそのような指摘をされなかったとしましても、事件を担当する裁判官としては、その事件における具体的な事実だとか証拠関係に基づいて判断を行うということになりますし、拘束力のある判例等の存否については自らも慎重に調査検討を行うことになると考えられるところですので、実際の裁判実務という面で申しますと、一般的には、当事者が提出した架空の裁判例が判断に影響を及ぼすといった事態は想定し難いというふうには考えているところです。

 ただ、いずれにしても、技術は日進月歩ということでございますので、今後とも、最新の技術が裁判手続にもたらす影響については注視していく必要があると考えております。

阿部(弘)委員 いや、聞いているのはそういうことじゃないんですよ。例えば、裁判、判例を書くときに、ちょっと難しいからチャットGPTと、裁判官がそれを利用した場合に、利用がないとも限りませんから、そういったことも含めて、今はないから大丈夫だなんて、そんなこと、大丈夫ならG7で議論になんかなりませんよ。いかがですか。

小野寺最高裁判所長官代理者 お答えいたします。

 いわゆる生成AIを裁判所においてどういうふうに利用していくのかということ、あるいは利用についてどういうふうに考えていくのかということについての御質問というふうに承りました。

 現在、生成AIの利用に関する検討につきましては、政府において検討が進められているものというふうに承知しております。裁判所といたしましても、このような政府の検討状況も踏まえながら生成AIの利用についての検討を進めていく必要はあろうかというふうに考えておりますが、裁判手続における利用という面で考えますと、裁判作用の本質は裁判官による判断作用でございます。この点について、少なくとも現時点においてはAIによって代替することはできないのではないかというふうに考えているところでございます。

 裁判所におきましても、生成AIの利用によって効率化、迅速化を図っていくことが考えられる事務もあるものと考えてはおりますけれども、そのような事務に関する生成AIの活用を考えるに当たっては、政府における検討が参考になるところが多いのではないかというふうに考えております。

 裁判所といたしましては、現在政府において進められている生成AIの利用に関する検討状況等を踏まえつつ、裁判作用の本質に対する国民の信頼を損なうことのないように、生成AIの利用について慎重に検討してまいりたいと考えております。

阿部(弘)委員 最後の一文の、慎重に検討しなきゃいけないんですよ。だから、G7も検討して。

 そして、次にサイバー攻撃の話をしますけれども、サイバー攻撃があるなら、乗っ取りもあるんですよ、政府も、最高裁も。乗っ取られた相手が対話型人工知能、AIであったりすれば、いろいろな支障が生ずることも容易に想像できる。世界の賢人百人が、AIの登場は非常に人類にとっても危機的なものであるということを提言してある。

 しっかり検討していただきたいんですが、検討されますか。

小野寺最高裁判所長官代理者 お答えいたします。

 裁判手続におけるAI利用の活用、あるいは裁判所全体における活用、いずれにしましても、いろいろ難しい問題がある、あるいは考えなければいけない問題があるというふうに認識しているところでございます。

 先ほど申し上げましたように、政府の方での検討も進められているというふうに承知しております。慎重に検討してまいりたいというふうに考えております。

阿部(弘)委員 是非とも、慎重にじゃなくて深刻に検討していただきたいと思いますので、よろしくお願いします。

 次に、家事事件の一部に、提出された紙媒体のまま保管することが例外として認められていますが、家事事件手続法の、別表一に掲げる、ちょっと細かい話ですけれども、要するに、こういうオンライン化に適さないものがあるんだということを、例外をうたってありますが、どういうものがありますか。あるいは、そうされた理由は何でしょうか。お願いします。

馬渡最高裁判所長官代理者 お答えいたします。

 本法案中の家事事件手続法の規定によりますと、原則として、家事事件手続におきましても提出された書面はファイルに記録して電子化することになりますが、例外として、先ほどおっしゃった、別表第一に掲げる事項についての審判事件等であって最高裁判所規則で定めるものについては、ファイルに記録して電子化しなくてもよいということとされています。

 今の最高裁判所規則で具体的にどのような事件類型を事件記録の電子化の例外として定めるかについては、この法改正後に検討すべきものと考えておるところでございますが、この点につきましては、法制審議会民事執行・民事保全・倒産及び家事事件等に関する手続(IT化関係)部会におきましては、申立人と裁判所との間の書面審理を中心とするもののうち、事件件数や戸籍謄本等の提出の分量の多さ、また迅速処理の必要性の高さといった観点から検討することが考えられ、例えば相続放棄の申述受理事件などの事件を対象として想定することが考えられるといった議論がされたものと承知しております。

 本法案が成立した後に、そのような法制審議会での議論を踏まえて、最高裁としても検討していくことになろうかと考えているところでございます。

阿部(弘)委員 法制審議会では、相続放棄などの書面についてはオンライン化が適さないということで意見があったのも承知しておりますので、いろいろ大変でございましょうが、よろしくお願いいたしたいと思います。

 次に、これをずっと読み続けていたら、施行期日が、令和の四年改正とともに、段階的に、四段階ぐらい分かれているんですね。何でこんな四段階も分かれておるんですか、施行期日が。

金子政府参考人 お答えいたします。

 一言で言えば、今回の法律案の改正内容に、同じデジタル化といいましてもいろいろな種類が含まれておりまして、それぞれに対応するための準備期間に違いがあって、いたずらに全部が準備が整うまでは一切施行しないというのではなく、できるところから、準備が整ったところから速やかに施行していくのがいいんだろうという考え方の下で、段階的に施行ということになっているわけでございます。

 最終的には公布後五年以内ということになっておりますけれども、これも、本格的な施行に当たっては、民事裁判手続が利用者の権利義務に影響を与えるもので、デジタル化による裁判手続の利用に支障が生ずることがないように適切に準備することが必要でありますし、利用者側の準備のためにも相当の期間を要するというふうに認識しております。

 他方で、本格的な施行には最高裁判所におけるシステムの構築も必要ということになりまして、そのシステムの構築につきましては、先行して実施される民事訴訟のシステムの構築を踏まえるということによって合理的に行うことが可能になるというふうに承知しております。

 そういうことから、段階的施行、最終的には五年以内ということにさせていただいているものでございます。

阿部(弘)委員 金子局長は本当に真面目で、最後に言っていただいた、令和四年の改正をしっかりやらないと、ほかの手続の方もしっかり進んでいかないということなんですけれども。

 じゃ、もう時間も迫っておりますので、裁判所の書記官の負担がこのIT化で一時的に増大するんじゃないかということも、あるいは法務省の皆さんの負担が一時的に増大する。そもそも、このIT人材の確保とか組織体制の整備というのは、十分対応できてくるんですか。それぞれ最高裁と法務省にお聞きします。

小野寺最高裁判所長官代理者 お答えいたします。

 委員から御指摘をいただきました裁判所の体制、人的体制につきましてでございますけれども、これまでも、事務官の増員等もいただいてきたところでございまして、検討体制を拡充してきているところでございます。

 また、デジタルという観点から申し上げますと、デジタルの知見を有する職員を育成していくという必要性はあるというふうに考えておりまして、デジタルに関する専門的な知見や経験を裁判所の内部に取り入れるべく、令和四年度までに合計六人のデジタルに関する専門的な知見を有する方を職員として採用しております。令和五年度につきましても、更なる人材確保について募集を行っているというところでございます。

 この方々には、現在も、裁判所のデジタル化に向けた検討において、その知見を大いに発揮してもらっているところでございまして、他の裁判所職員においても、このような方々の専門的な知見やデジタル化に向けた検討姿勢に触れることで、デジタル化に関する知見や経験が深まってきているというところでございます。

 今後とも、検討は加速していくことになります。裁判所といたしましては、しっかりと職員を確保し、デジタル化に関する専門的な知見を有する職員を確保し、そして、他の職員についてもデジタル化に関する知見の向上に努めてまいりたいというふうに考えております。

伊藤委員長 金子民事局長、手短にお願いします。時間が来ました。

金子政府参考人 裁判手続のデジタル化に伴う人材の点につきましては、今、裁判所の方で御答弁されたとおりで、法務省としても必要な協力をしてまいるということになるかと思います。

阿部(弘)委員 これで終わります。また大臣に質問せずに、申し訳ありません。

伊藤委員長 次に、沢田良君。

沢田委員 日本維新の会、埼玉の沢田良です。

 伊藤委員長始め、委員部の皆様、齋藤法務大臣、法務省の皆様、本日もよろしくお願いいたします。

 本法案につきましては、参議院で先に審議が始まり、衆議院に送られてきました。私は、積極的なデジタル活用は重要視しているだけに、是非この動きを進めていってほしいと願う一人でもあり、日本維新の会としても参議院法務委員会では賛成をさせていただいております。

 ただ、メディアの報道であったり、政府の対応も含めて、又は、今回の法案のレクも含めて、やはり考えることというと、デジタル化のその先、まさにデジタルトランスフォーメーションというようなものにメッセージをもっと強く打ち出してほしいなというのが、私はいつも感じているところで、不満というか、まさに先へ進んでいきたいというところを思うんです。

 今提案にもデジタルトランスフォーメーションの提案はあるのですが、施行期日の長さを考えると、物事を、常に正しい中で間違いを犯しちゃいけないというような、役所の当たり前、こういうところが強過ぎて、遅れてもしようがない、でももっと大事なものがあるというような雰囲気が優先されてしまっているということが、私は本当にもったいないなというふうに感じております。

 そんな中、私もですけれども、民間ではもう当たり前になっているものが役所からは受けられないという国民の違和感というものは徐々に強くなっているようにも感じますし、特に、私、携帯電話の機種変更をしたりすると、ほとんど、印鑑も要らなきゃ、ペンも要らなきゃ、タブレットで全部完結して、電話もかけると、AIですか、自動音声が私の名前まで言ってくれるという、一体どうなっているのかなというふうに思いながらも、それをもう受け入れてしまうような自分がいて、ああ、こういうふうにやっていくと、もっともっと役所の人たちも、言い方は悪いですけれども、無駄な仕事というか、皆さんでなくてもいい仕事を代用できるというものが自然に受け入れられると考えると、やはりこれはすごく、追求していくことは大事だなというふうに感じます。

 当然、ユーザー目線で考えたときも、受けられるはずの時代に合ったサービスを受けられない、これはやはりストレスを感じます。また、コストが削減できることも多分にあると思うんですね。こういったところができること、まさに新しい場所に予算の移動ができる機会も失ってしまうというふうに考えると、我々に期待してくださる国民の皆様のためにやれることをやり切っているのだろうかということは、私は感じています。

 例えば、今までのデジタル化というと、技術革新の中で、やはりやれていた幅というのが劇的に変わっていくんですけれども、昔は、業務コストの削減であったり、又は膨大なデータの保存とか、あとは人海戦術で賄い切れないものを技術的に乗り越える手段とか、こういったふうなイメージがあったんですけれども、正直、今、いろいろなデバイスやAIも含めて、技術革新がどんどん広がっていって、まさに、情報を収集するというデバイスであったり、蓄積したデータを分析して、これをまたAIに判断をさせて、新しい提案であったり、これを意思決定をするというような、いわゆるデータドリブンというんですけれども、こういったものを行って、新たな付加価値を一気通貫でばんと生み出してしまうというような、こういうイノベーションが民間では当たり前のように挑戦として始まっています。

 今まで捨てられてしまっていた、棚に眠っていたデータから新たな可能性や未来を予見して、より時代に合った、機微たる提案を生み出すことが、私、是非とも今後の役所に求められている大きな能力ではないかなというふうに思っています。

 最高裁判所の廃棄の問題についても、いろいろな中、反省していただき、次に生かすというところまで御提案いただいたので、私は続けていただきたいなと思うんですけれども、そもそも論として、やはり貴重な情報でもあり、得られる情報を生かすという視点と技術があれば、これは今までなかったと思うんですけれども、生かされない、保存や廃棄ということすら考える必要もなかったんじゃないかなというふうに思います。

 そう考えると、やはり私たち国会では、国民の皆様から税金をお預かりして、そしてそれを分配していくという面では、財務省さんなんかが花形なんてよく言われるんですけれども、法治国家の中で、法務省が蓄積させるデータ、まさに情報であったりデータというものは、私は、もし政治判断がどこかで切り替わった瞬間に膨大な価値を生むと思うんですね。そのときに、まさに法務省が主役になる、国民生活に新しい希望であったり可能性を見出す大きな可能性があるんじゃないかなというふうに感じています。

 ただ、それをするためにも、当然、政治がどこかでゴーを出していかなきゃいけないというふうに思っております。齋藤法務大臣も、就任の際に訓示で、萎縮するなという言葉があったと思います。そういった中、やはり政治側だけではなくて、法務省の職員の皆さんにも、まさに下から突き上げて政治を動かしていくんだ、まさに法務省がこの国のイニシアチブ、省庁のイニシアチブを取っていくんだというような、こういうことが起こると、やはりまた省庁間での切磋琢磨が起こったり、新しい変化が生まれるんじゃないかなと個人的には思っています。

 これは釈迦に説法になりますけれども、よく言われるデジタルトランスフォーメーションというのも、古いシステムや企業風土をデジタル技術により変革することを意味する用語であり、データドリブンというのは、まさに情報を蓄積して、さらにそれをつなげていくということにある、切り離せない関係にあると私は考えております。

 ほかの省庁でもデータドリブンについて検討しているというのをいろいろ、経産省でもデータドリブンイノベーション創出戦略協議会というのを立ち上げているという話を伺ったんですけれども、ちょっと時間がないのでここは割愛させていただいて。

 大臣にお伺いしたいんですけれども、まさにこのデータドリブンの活用であったりDXの推進、これについての大臣の御関心や問題意識と、また、まさに大臣が職員の皆様に萎縮するなと言って、やはり現場から積極的に、リスクを承知で、当然それをフォローするという体制もあるという前提になると思うんですけれども、DXであったりデータドリブンの採用を大臣に強く求める声が集まった場合、大臣はどういうふうに動かれるのかなというのを教えていただけないでしょうか。

齋藤(健)国務大臣 なかなか一般論でお答えするのは難しいんですけれども、おっしゃるように、どちらかというと日本の企業はITを活用して業務の効率化を図ろうとするんですけれども、もちろん業務の効率化は大事なんですが、むしろ、仕事の仕方、意思決定の仕組みを根底からITを利用して変えていく、システムを変えていくということにITを利用して、それがデジタルトランスフォーメーションで、一般論としては日本のビジネス界はアメリカに比べて遅れている、そういう認識なんだろうと思うんです。

 私は、そういう意味では、このITの時代、データドリブン、それからDXの時代は、単に業務の効率化だけではなくて、まさにそれによって、新たな意思決定の在り方ですとか、経済界でいえば新たな付加価値の創出といいますか、そういうものにつなげていかなければ意味がないし、国際競争においては負けていくということだと思うんです。

 私は、そういう意味でいうと、民間で進むデータドリブンのような、データを総合的に分析し、企画立案、意思決定につなげていけるようなことに法務行政においてもしていかなくちゃいけないというふうには思っています。

 こうした取組を法務行政に導入すれば、法務行政に係る情報のデータ化とその利活用が進んで、行政機能の向上だけではなくて、それがまた民間によって利用されるということになって、新たな付加価値を生んでいくことにもなると思っていますので、一般論でなかなか言いにくい話はあるんですけれども、そういう方向で、やれるべきことはやっていきたいというふうに思っています。

沢田委員 ありがとうございます。

 まさに齋藤法務大臣の時代に進めていっていただきたいなと。やはり、大臣、いろいろな、国の公務員としても、そして地方にも出られたり、あとはやはり立場も、法務省だけじゃなくて、いろいろな省庁の中枢としてリーダーシップを発揮してきたという御経験がある中で、私もいろいろな方にDXの話とかさせていただいたときに、以前ちょっと大臣と質問させていただいたとき、DXのときの反応がすごくよいというか、ああ、大臣すごいなというのを、レクのときにも省庁の皆さんに、大臣、DXのとき、きらきらしていましたよという話をしたら、いや、そうなんですかというところでやり取りがあったんですけれども。

 私はやはり、大臣の姿勢、職員の皆さんに、萎縮するな、受けて立つというような、こういうやり方はすばらしいなと思っていて、それによって、本当に法務省がこれから、自分たちの持てる情報を使って今までになかったものを生み出すんだというような動きを加速化させていただきたいなというふうに思っています。それが結果として、やはり、国民生活においての幸福であったり、治安の安定とかそういったものに全部つながってくるんじゃないかなというふうに思っております。

 時間がないので質問をかなり飛ばしていただくんですけれども、まずは、法務省の方でも、このDX、今回ちょっと飛ばさせていただいて申し訳ないんですけれども、進めていただいて、今までの仕事とちょっと違う業務の部分をやっていただいたのを簡単に説明していただくことはできますか。この部分、DXができましたというところ、法務省の方で。

押切政府参考人 お答えいたします。

 法務省においては、これまで、デジタル社会の実現に向けた重点計画や法務省デジタル・ガバメント中長期計画等に基づき、デジタル社会の実現に向けた取組を推進してきたところでございます。

 令和四年の民事訴訟法の改正に続いて本法律案が成立すれば、民事裁判手続全般につき、一層の迅速化、効率化が図られ、国民がより利用しやすいものになると考えております。

 また、法務行政に係る情報は国民生活の基盤を成す重要なものが多いため、行政機関間の情報連携体制が整備され、データの利活用が進むことにより、国民生活や事業者活動の利便性が向上すると考えております。

 例えば、現在、デジタル庁において整備が進められているベースレジストリーとして、商業・法人登記情報及び不動産登記情報を活用していくことで、行政機関間や国民の負担の軽減や民間事業者の業務の効率化にもつながると考えております。

 このような形でDXを進め、関係省庁等と緊密に連携しつつ、安心、安全なデジタル社会の実現に向けた取組を進めてまいりたいと存じます。

沢田委員 どうもありがとうございます。

 最後になるんですけれども、今回、五年ぐらい施行期間がかかるということで、これはちょっと早くできないかなと。レクで意見交換した際にも、もう少し早く進めるとか、システムを一度世に出してみてから、それからトライ・アンド・エラーでやっておくことができないんですかといった問題提起をさせていただきましたけれども、やはり一番最初に関わるんですけれども、人の権利にまつわる社会基盤たる裁判に関わることであるので、慎重で確実なシステム構築を追求すべきこの期間を設定されているという御説明を理解しました。

 ただ、やはりそういった部分も含めて、先ほど、国民側が失われていくものもあるというところで考えたらば、少し状況を変えていかなきゃいけないのかなと。

 行政改革推進会議の下に設置されたアジャイル型政策形成・評価の在り方に関するワーキンググループが昨年取りまとめた提言では、日本の行政に長年存在してきた無謬性神話に行政職員がとらわれることにより、前例踏襲や縦割りへの固執といった消極的な姿勢に陥り、問題が先送りされて国民の不利益となることにつながりかねないというような指摘がされました。

 齋藤大臣は、先ほど何度もお伝えしているんですけれども、萎縮するなというメッセージを出せる、私、本当に数少ない大臣だというふうに考えております。こういった中で、法務行政は特に慎重で確実な仕事が求められていくということは前提ではありますが、無謬性神話、大臣も官僚という立場があったと思いますので、御見解がありましたら教えていただければと思います。

齋藤(健)国務大臣 私も人事を長くやっていまして、若い人の教育というものにも携わってきていて、そういう経験の中で、今の官僚、法務省も含めて、一番大事なのは萎縮するなということなんだろうと、一言で言えば、思っているんですね。

 ただし、萎縮するなと言われて、それを実行する上で一番重要なことは、上の人たちが向こう傷は問わないという姿勢がないと、なかなか萎縮するなと言われても、頑張ってやったらみんなに袋だたきに遭ったみたいなのでは駄目なので、ですから、向こう傷は問わないというその前提がやはり非常に重要なんだろうというふうに思っていますが、さはさりながら、だから何でもいいということにはならないので、そこはうまく上の人たちがマネージをしていかなくちゃいけないと思っている。そういう意味で萎縮するなというふうに申し上げているわけであります。

沢田委員 どうもありがとうございます。

 最後になりますけれども、やはり、役所の皆さんが萎縮する一つの要因として、私、政治のメッセージの間違いもあると思っていまして、特に、間違いが起こったり、ミスが起こったり、我々、行政の監視機能というものも当然ありますけれども、だからといって、過去を掘り返してひたすらに役所の方々を追及するようなことをしていたら、やはり物事を隠すという方向に動くのは当たり前だと思っております。

 私も事業をやっていた上で大事にしてきたことは、問題があったりミスがあった場合には、その事実を、次に生かさないために、未来に対して提案をしていくということになっていくと思います。私も一国会議員として、質問のたびに、いろいろな追及よりも、できる限り皆さんが前向きに、次につながるような質問であったり提起をしていきたいなと思っておりますので、引き続きよろしくお願いいたします。

 どうもありがとうございました。

伊藤委員長 次に、鈴木義弘君。

鈴木(義)委員 国民民主党の鈴木義弘です。

 今日も、法律の改正案で、前任の方が、かぶった質問を幾つもいただいていますので。

 技術がどんどんどんどん進んでいく世の中で、確かに私たち、楽もできるし、豊かさを享受できるんだと思うんですけれども、AIを使うとかITを使うことによって、どんどんブラックボックスをつくっていっているにしかすぎないんじゃないかと。

 今回の民事裁判をやる手続も、ITを使って利便性を上げていくんですけれども、今までは紙で送致をするとか、裁判所に出てくるとか、そういうことで、相手の顔が見える形でいろいろなことを進めてきたんだと思うんですね。それをがらっと変えて、相手の顔が見えなくても、仕事が、行政を推進することができるといったときに、いろいろな懸念材料が出てきているから、それは対応できるのかということに私は尽きるかな。

 これは法務省だけじゃなくて、経産でも同じような質問をさせてもらったんですけれども、今言われているチャットGPTも同じなんですが、弱いAIというのと強いAIというのが、これは六年か七年ぐらい前の経産委員会で質問に使ったんですけれども、今、私たちがデータを入れてリターンキーを押して初めて計算をするとか相手に通信をするとかと、必ずスマホでもパソコンでもそういうふうになって、あくまでも主体が人間なんですね。でも、それは弱いAIと言われています。

 でも、これから強いAIというのが出てきたときに、簡単に言えば、コンピューター自身が自分で物を考えて、自分の不具合も直せて、そういったものが、二〇四五年問題というのが、ITの中で、AIの中で言われているんですけれども、もしかしたらもっと早く前倒しになって、私たち人間の能力を超えてしまう時代が来るんじゃないかというふうに世界的には、だからG7の中でも、じゃ、どうしましょうかという話になっていくわけですね。

 だから、一番困るのは、人間が最終的に判断するんだというところを残せるかどうかだと思うんです。いろいろな材料を、効率化するとか速度を速くするとかというのはもうやればいいだけの話なんですけれども、最終的にそれを、正しいものか、相手がありますから、正しいか正しくないか、だから裁判をやるので、そこで人間が最終的に判断を下せるかどうか、それをどうしていくかということに尽きるんじゃないかと思うんですね。

 それが、ちょっと今日は刑法の話じゃありませんけれども、損害賠償だとか財産分与だとか離婚だとか、いろいろな案件が持ち込まれてきますから、民事訴訟の関係でいけば、結局、最終的に人が人を判断するしかないというところだけは絶対動かしちゃいけないと考えるのか。いや、それもまあ、高度になって、逆に、一般の感情論が入らない方がいいジャッジができるんだという考え方になれば、全部AIでやってもらえばいいと思うんです。

 人間のいろいろな感情、幾ら司法試験に受かったって、その人の生い立ちだとか今までの経験値の中で、自分の思考回路と価値基準があるはずなんです。法律にもあるし、いろいろな判例から基づいて、そこで判断していくと思うんですけれども、これは私も先輩の大学の先生に教えてもらったんですけれども、物心ついたときから、あんた変わってないんだって言われたんですね。本の価値観というのは、物心ついた頃、人によって年齢差はあると思います、だから、それが、二十になっても、三十になっても、五十になっても、基本のところは変わらない。ただ、自分が勉強するとか知識を得る、人と会うことによって、それを少しカムフラージュして、人とどう接すればいいかというのを自分の中でバランス取っているだけだ、本質は全然変わらないというふうに教えてもらったんです。

 だから、そこのところを今回の、去年に引き続いてIT化をどんどん進めていこうと法務省は考えておられるんですけれども、これは大臣に細かい通告をしてしまっているんですけれども、その辺の基本的な考え方だけお聞かせいただきたいと思うんですけれども、いかがですか。ちょっとこれ、全部含んじゃっている一番最初の、上段なので。では、局長に答弁いただいたら、ちょっとゆっくりまとめてもらって。

金子政府参考人 お答えいたします。

 的確にお答えできるかどうか分からないんですけれども、最終的な裁判官の判断、この判断作用、これはもちろん人がやるということは、そう簡単には代替できないというふうに思っています。ただ、その判断の基となる資料、この提出の仕方とかいうものについては十分合理化ができるんじゃないかというふうに思っています。

 それから、過去に似たような事例についてはどのように裁判官が判断してきたのかという、いわば先例の検索といった面でも、これから十分デジタル化によって容易になってくる。その先例は、別に裁判官だけが使うんじゃなくて、国民一般が利用できるような形になれば、それはそれで、いわば予測可能性といいますか、の高い社会というものにつながっていくようなものだと思っています。

 それから、今回の改正でも、多くはデジタル化を、最新の通信技術を利用するようなことを考えていますけれども、いや、対面でやはり裁判官に訴えたいという人の希望まで制限するというつもりはないので、いわば選択肢を広げるという。

 いずれにしても、まず紙を提出して裁判官に読んでもらうという場面では、それは裁判所に実際持ち込んでも、インターネットで送信しても、これは変わりがないという場面もあります。いわば、そういう技術を使った使い分けの問題なのではないかなと思います。

 常に何でもかんでも全部IT化が正しいという考え方にのっとっているわけでもないということは御理解いただきたいと思います。

齋藤(健)国務大臣 お答えになっているかどうか分からないんですけれども、私は、今回も含めまして、IT化というのは、人間が判断をするそのサポートをするために、例えば迅速に判断できるですとか、効率的に判断できるですとか、人間の判断をサポートするために積極的に活用していくということなんだろうと思うんですが、その上で、その判断そのものに取って代わるような技術が今生まれ始めているというところをどうしていくかというのは、さっき委員も、人間の能力を超えるという趣旨の話をされていましたが、これは大変難しい問題だと思っています。

 私は、現時点では、やはり人間の判断をサポートするものとして当面活用していくべきなんだろうというふうに思っています。

鈴木(義)委員 私が使っているパソコンも、おなかすいたとか酒飲みたいとか眠いって一言も言わないんですね。それが機械です。だから、機械に全部を委ねてしまうというのを最初からやめるという決意でプログラムしていくのかどうかで、そこを超越させてもいいんだというふうに考えたらそういう方向に向いていくと思います。そこは駄目なんだ、人間社会なんだから、人間が最終的にはジャッジするんだというのだけは動かさないという決意に基づいていろいろな制度を構築していくのと、いや、それももしかしたらありだなといったら、同じ、両方、二股かかるような話になってきます。だって、そうじゃなかったらおかしいでしょう。だから、そうならないようにどうするかと。

 例えば、IT人材が、デジタル人材がどのぐらい必要なのか、必要じゃないか。今、質問でいけば、何人いらっしゃって、体制はできているのかという話なんですけれども、例えば、私たちが一般に使っているウィンドウズ、アップルを使っている人もいるでしょう。でも、大概の人はどっちかのOSを使っているはずなんです。じゃ、OSまで自分たちで作っていくのかということですね。日本社会の中で、法務省だけじゃなくて、日本独自のOSを作っていこうというんだったら、デジタル人材を育成するのは価値が出てくると思うんです。それを、だから、法務省の中で作っていく。

 ウィンドウズが五年に一回ずつバージョンアップしていくと、それに基づいて、また上乗せしたシステムを変えていかなくちゃいけない。これが今の社会です。だから、GAFAと言われているところにいろいろな意味で支配されちゃっている。だから、支配されないような形で日本がIT化を進めていくんだったら、OSも日本で作らざるを得ないんです。そういう意味で、デジタル人材がそろっているのか、育っているのかという話になってくる。

 それと、あともう一つは、時間がないのではしょって今話をしているんです、アクセスした人間がどなたなのか、それをきちっと確認できるシステムがないと駄目だということです。

 例えば、私もネットでお店の予約をします。物を買います。そうすると、リアルタイムで完了しましたというメールが来ます。ただ、その時点では予約は取れていません、商品は、お売りするかどうかは、お店から確認のメールが、少しタイムラグがあるから、来ますというぐらいなシステムでやっています。それで、誤信をしないとか、来なかったという苦情に対応する。

 やはり、民間でそういうことをやっているんだったら、法務省も学ぶべきだと思うんですね。私も、うちのスタッフにメールを送って、何だよ全く、半日もたっても一日たってもまだメールの返事が来ない。送りましたと、来ないときがあるんだよ。それが確認ができないんです、ITの場合は。だから、どうするかということをやはり仕組みの中でつくってもらいたいなということなんです。送りました、でも、届いていないときがまれにあるんです。

 私が使っているスマホ、余り酒を飲ませたことないから言うことを聞いてくれないのかなと思うんですけれども、でも、機械なんです。あくまでも機械。大臣がおっしゃられたように、ツールの一つとして使うのか。そこに寄りかかり過ぎちゃっても私はうまくいかないんじゃないかと。両方でチェック・アンド・バランスをしていかないと、必ず何年か先に、せっかくつくったシステムが機能しない。だって、コロナの、一番最初に厚労省が作った濃厚接触者云々というアプリがあったけれども、結局誰も使わないで終わっちゃったじゃないですか。そういうことが起こってくるということを前提にして仕組みをつくった方がいいという考えなんです。

 御答弁、まとめていただける方、いらっしゃいますかね。

押切政府参考人 お答えいたします。

 先生の御指摘のとおり、デジタル化に向けてはいろいろなことを、課題があり、それを一つ一つ解決していかなければならないというふうに思っております。

 特に、本人確認が重要であるというお話をいただきましたけれども、法務省においては、デジタル社会の実現に向けてデジタル化の取組を推進しているところでございますが、その推進に当たっては、本人確認が必要な場面において適切な措置が取られることが重要であるというふうに考えております。

 具体的にどのような確認を行えば本人を特定するに足りるかについては、本人確認が求められる場面に応じて異なり得ると考えられますが、いずれにしても、対面とは異なる方法で本人確認が必要となることが想定されます。

 今後も、このデジタル化を進めるに当たっては、委員御指摘のような成り済まし等が横行しないよう、その場面に応じて本人の確認方法について十分検討し、適切に対応してまいりたいというふうに存じます。

鈴木(義)委員 それと、三十年ぐらい前ですかね、e―Japanと声高々に国会で、これからインターネットを、埼玉県の出身なものですから、埼玉県はIT県庁といって、二十年ちょっと前ぐらいは、IT県庁をやるんだ、日本はe―Japanだといって騒いだんですね。

 それでも、まあ、少しずつ出てきたかなと思うんですけれども、IT弱者というのを当時言われていました。IT弱者を何とか救わなくちゃいけない。高齢者だったり障害者だったり未成年者、今は未成年者の方が私よりたけているんだと思うんですけれども。

 でも、ハードの部分が全然変わってきていないんですね。いまだにこれをやるか、これをやるか。だから、デジタルをどんどん進めていこうとしたときに、社会の中である一定数の方が、IT弱者と言われている人がいながらも、この三十年間ずっとそれは言われてきたけれども、対応しているのかしていないのかなんですね。

 私たちより上の世代の、私の親の世代なんかは、携帯を使ったりなんなりしますけれども、余りこれをやっているのを見たことないですよね。そういう世代の人たちにどういうサポートをしていくのかというのが、三十年たってきて、もっとハードが進化したものが出てくるのかなと思ったら、余り出てきていないんですよね。

 そこのところが、日進月歩、変わっているといいながら、ある一部のところでは全然まだ遅れている。そこのところを、法務省で刺激するというのは難しいかもしれませんけれども、弱者の方を含めてどういう対応を取っていくのか、お尋ねして終わりにしたいと思います。

竹内政府参考人 お答えいたします。

 民事訴訟等のデジタル化を推進するためには、委員御指摘のとおり、IT機器の操作に不慣れな方々に対する総合的なサポートの体制を構築することが重要になってくると考えております。

 法務省では、最高裁判所や法テラス、それから日本弁護士連合会、日本司法書士会連合会等と協力をいたしまして、こうしたサポート体制の構築に向けた検討を重ねてきたところでありますが、法テラスにおきまして、デジタル化された民事裁判手続等に関する法制度や裁判所のシステム、日弁連や日司連等が設置予定のITサポートの窓口等に関する情報の提供ですとか、これらに関するFAQの作成、公開、あるいは、書類作成援助といたしまして、電子化される裁判所提出書類の作成援助等を行うこととしておるところでございます。

 法務省としましては、引き続き、関係機関等と連携をしながら、IT機器の操作に不慣れな方々に寄り添って、そのニーズに応えられる総合的なサポート体制を提供できるよう、体制構築に向けて必要な検討を進めてまいりたいと考えております。

鈴木(義)委員 終わります。ありがとうございました。

伊藤委員長 次に、本村伸子君。

本村委員 日本共産党の本村伸子でございます。

 まず、冒頭、同性カップルの婚姻の平等について質問をさせていただきたいというふうに思います。

 五月三十日、名古屋地方裁判所の判決で、今の状況は憲法違反との判断が下されました。判決では、同性カップルに対しては、その関係を国の制度として公証することなく、その関係を保護するのにふさわしい効果を付与するための枠組みすら与えないことは、国会の立法の裁量の範囲を超えるものと見ざるを得ず、その限度で、憲法二十四条二項、十四条一項に違反するとの判断がなされております。

 婚姻に関する法制度、法制定、これは、個人の尊厳に基づくことを求めた憲法二十四条二項、そして、法の下の平等を求めた憲法十四条一項に違反をすると指摘をした、非常に重い判決だというふうに思います。国会に対して立法を明確に求めております。

 名古屋地方裁判所のこの判決に関しまして、原告の皆さんあるいは弁護士の方々の評価ですけれども、侵害されている利益の重大性を丁寧に指摘をしている判決である、そして、国の主張には、原告を始めとする性的マイノリティーの当事者の方々を傷つける不合理かつ不誠実な要素が多分に含まれていた、そうした国の主張を否定するエッセンスがちりばめられている判決である、そして、原告がこの訴訟の中で何に傷ついてきたのかという現実に真摯に向き合ってもらえたというふうに評価をされておられます。そして、立法をめぐる議論において散見される誤解ですとか反対論に対する反論に相当する内容も含まれており、立法をめぐる議論で十分参照していただきたいというふうに言われています。

 この判決文の中で御紹介したいことは幾つもあるわけですけれども、この国会の議論の中でも、やはり誤解に基づいたものがあるのではないかというふうに私も感じております。

 判決の中では、例えば、同性間に対して現行の法律婚制度を及ぼすことが憲法二十四条一項の趣旨に照らして禁止されているとは言えないし、国民の意識が同性婚を肯定する方向に変化しつつあるというふうにも書かれています。また、同性カップルが国の制度によって公証されたとしても、国民が被る具体的な不利益は想定し難いというふうにも書いてあります。そして、伝統的な家族観を重視する国民が一定数存在しており、その立場も尊重されるべきものではあるものの、同性カップルを国の制度として公証したとしても、そのような伝統的家族観を直ちに否定することにはならず、共存する道を探ることはできるはずであるというふうに書かれています。累計的には膨大な数になる同性カップルが現在に至るまで長期間にわたってこうした重大な人格的利益の享受を妨げられているにもかかわらず、このような全面的に否定する状態を正当化するだけの具体的な反対利益が十分に観念し難いなど、書かれています。

 立法を明確に求めた判決です。伝統的な家族観と、そして同性カップルの法律婚を認めること、これを共存する方向に歩みを進めるべきだというふうに思います。

 判決、この裁判の中の国側の主張によって当事者の方々が深く傷つけられている、こういうことはもう一刻も早くやめるべきだというふうに思います。そのためには、やはり結婚平等の法制を作るしか道はないというふうに思いますけれども、大臣の御見解をいただきたいと思います。

齋藤(健)国務大臣 まず、同訴訟は、同性のパートナーとの婚姻を希望する原告らが、日本で同性同士の婚姻が認められていないのは憲法に反するとして国に損害賠償を求めた事案であります。

 御指摘の判決においては、原告らの国に対する請求は棄却されたものの、その理由中において、婚姻に関する民法等の諸規定が憲法に違反するとの判断が示されたということを承知しています。

 法務省としては、婚姻に関する民法等の諸規定が憲法に反するものとは考えておりません。この点に関する国の主張が受け入れられなかったものと承知をしています。

 裁判そのものは国が勝訴をしたため控訴することができませんが、現段階では確定前の判決であり、また、他の裁判所に同種訴訟が係属していることもありますので、その判断も注視をしていきたいと思っています。

本村委員 婚姻の自由と平等の実現は、誰もが尊重され、大切にされる社会の実現に必要不可欠なのだということを弁護団の皆様の声明でも語られております。私もそのとおりだというふうに思います。婚姻の平等法、是非、齋藤大臣の時代に決断をしていただきたいということを心から求めたいというふうに思います。

 続きまして、今回の法律、民事関係手続IT化法案について伺いたいというふうに思います。

 今回の法案では、受任を受けた代理人、弁護士に、インターネットを利用した申立て等を義務づけることになります。また、事件記録は、原則として電子データを保管するというふうになっておりまして、その閲覧は電子データにアクセスをするというふうになっています。そして、送達対象データを裁判所のサーバーに記録し、送達を受ける者が閲覧、ダウンロードをすることが可能な状態にした上で、送達を受ける者が届け出た連絡先、メールアドレスなどに通知をする方法により送達を可能にするというふうになっております。

 そこで、まず、大前提のお話ですけれども、このシステムの開発、運営を行っている責任者、実際の開発、運営者、そして受注した企業、そして契約額をお示しをいただきたい。

 そして、今裁判所で使っているNAVIUSというものとルーツというもの、そして、これから公正証書の電子データ化のシステムをつくるわけですけれども、今回のシステム以外の三つですね、その責任者と実際の開発者、運営者、受注者、契約額、改修している場合は、何回改修し、そして当初の発注額に幾らプラスをされたのか、この点について最高裁と法務省に伺いたいと思います。

氏本最高裁判所長官代理者 お答え申し上げます。

 NAVIUS、裁判事務支援システムでございますが、その開発費用につきましては、最高裁判所を発注者、富士通株式会社、株式会社日立社会情報サービスを受注者といたしまして、総額四億八千八百万円程度の契約を行っております。また、その改修につきましては、令和二年以降合計三回実施しておりまして、総額六千五百万円程度の契約を行っております。

 続きまして、ルーツ、民事訴訟手続のIT化に係るe事件管理システムでございますが、その開発費用につきましては、最高裁判所を発注者、株式会社日立社会情報サービス、デロイトトーマツコンサルティング合同会社、日本IBM株式会社を受注者といたしまして、令和二年以降、総額十六億三千五百万円程度の契約を行っております。なお、改修は行っておりません。

 民事非訟や家事の分野に関するシステムにつきましては、令和五年度から、どのような機能を有するシステムを開発していくべきかといった検討、要件定義を進めることとしておりまして、本法案が成立しました暁には、本年度の検討結果も踏まえまして、本格的にシステム開発を進めていくことにしております。

 裁判所といたしましては、本法案が成立いたしました暁には、その施行日までにシステムの利用が可能となりますよう、今後、システム開発を適切に進めてまいりたいと考えております。

金子政府参考人 公正証書の関係について法務省からお答えをいたします。

 公正証書のデジタル化に係るシステムにつきましては、公証人の全国組織である日本公証人連合会において整備することを想定しておりますけれども、システムの開発につきましては、本法律案が成立した後に契約を締結し、その内容を具体化していくことを想定しております。

 したがいまして、システム開発の責任者は日本公証人連合会ということになりますが、日本公証人連合会から委託を受けて実際にシステム開発を行う業者や、その契約額などにつきましては、現在は未定の状況にございます。

本村委員 この日本公証人連合会の情報というのは情報公開の対象でしょうか。

金子政府参考人 日本公証人連合会は、行政機関の保有する情報の公開に関する法律第二条第一項で定義されている行政機関には該当しないことから、同連合会が保有する情報につきましては情報公開の対象とはならないものと承知しております。

 もっとも、法務省としては、日本公証人連合会が整備するシステムが本法律案による改正後の公証人法及びその委任を受けた下位法令に沿ったものとなるよう、当該システムにおいて備えるべきデジタル技術の具体的基準の策定などを行う予定であり、これを通じて、システム整備にも適切に関与していく所存です。

 また、国民の皆様に安心して公証制度を利用していただく観点から、日本公証人連合会において整備したシステムのセキュリティーに関する必要な情報発信をすることも重要であると考えております。

 法務省としましては、公正証書には利用者の重要なプライバシーに関する情報が含まれることを踏まえ、制度の信頼性が維持されるよう、日本公証人連合会と緊密に連携しつつ、システム整備等について必要な対応をしっかりと進めてまいりたいと考えております。

本村委員 この公証人役場の関係のシステムに関しましては情報開示の対象ではないということで、貸金ですとか、遺言ですとか、あるいは消費者契約などの公正証書が作られることになります。そのときに、画面外に当事者以外、脅迫する者が隠れていたりですとか、あるいは、先ほども議論がありました成り済ましの問題、当事者の真意によらない公正証書が作成されてしまうなど、そういう、例えば高齢者の方々の被害が起きてしまうのではないかということを大変懸念をしております。

 ウェブ上でこうしたことがないようにするためにも、遺言状の作成はやめるべきだというふうに考えますけれども、見解を伺いたいと思います。これは法務大臣にお願いをしていると思います。

齋藤(健)国務大臣 現行法の下では、公正証書の作成に当たっては公証人の面前でのやり取りを行うことが必須とされているため、公証役場へのアクセスが困難な地域に居住している方や、感染症の予防のために外部者の立入りが許されない入院施設等に入居している方などは、公正証書を利用することが困難であったという事情がありました。しかし、ウェブ会議を利用することで、このような方々も、公正証書遺言を始めとする公正証書を作成することができるようになるものであり、公正証書遺言について一律にウェブ会議の利用を認めない、これは相当ではないなと考えています。

 他方で、嘱託人の真意に沿った公正証書遺言が作成されるようにすることは極めて重要であるというふうに認識をしています。このため、改正法案におきましては、ウェブ会議の利用は、あくまでも嘱託人が希望し、かつ、公証人が相当と認めたときに限って許容をするというふうにしています。

 その上で、第三者が成り済ましを図っているおそれがある場合はもとより、第三者が嘱託人の周囲にいるとか、不当な働きかけを受けて嘱託人が真意を述べることができていないことを理由に、公証人においてウェブ会議の利用は相当でないと判断した場合には、従来どおり嘱託人に公証役場への出頭を求めることになる、そういう仕組みになっています。

 改正法の施行に向けては、ウェブ会議を利用した場合においてもしっかりと嘱託人の真意を確認することが可能になるよう、関係団体と連携しつつ、効果的と考えられる対策を重ねて講ずるなどの具体的な実務上の対策を講ずるべく、検討を進めています。

本村委員 是非、真意に基づかないものが作成されることがないようにしていただきたいと思います。

 そして、裁判所の職員の方々からお話を伺いますと、この間、下級裁から最高裁に人員がシフトされたり、産休、育休、病休の方々がいる職場への十分な配慮がないこと、超過勤務ですとか、事件数には表れない業務量など、そもそも人員が足りない、その上に、こういう声がありました。デジタル化というが、ノウハウもなく仕様書を書かなければいけない。専門性のある人材、人の育成ですとか採用を進める必要性があります。そして、参考資料も見ながら裁判資料などを作るためにも、複数のモニターを一人の方が使えるように、そして、機能がちゃんとしているヘッドセットを用意していただくことなど、裁判所に来てITを申立てする個人の方々への機材、設備が伴っていないなどなど、様々お声を聞いております。

 人的、物的体制整備、そのための予算確保こそ必要だというふうに思いますけれども、これは最高裁の方にお願いをしたいと思います。

伊藤委員長 時間が来ましたので、手短にお願いします。

小野寺最高裁判所長官代理者 お答えいたします。

 裁判手続のデジタル化は、裁判所の喫緊の課題であり、これを実現するために必要な人的、物的体制を整備していくことは重要であるというふうに考えております。また、適切かつ迅速な事件処理を安定的に行うためにも、必要な予算を確保している必要があるというふうに考えております。

 裁判所といたしましては、今後の裁判手続のデジタル化の進捗状況も踏まえつつ、事件数の動向や事件処理状況等をきめ細かく把握しながら、必要な人的、物的体制の整備、予算の確保に努めてまいりたいと考えております。

本村委員 引き続き、様々なテーマがございますので、この法務委員会で、この国会で更に審議を続けていただくということを求めて、質問を終わらせていただきたいと思います。

伊藤委員長 これにて本案に対する質疑は終局いたしました。

    ―――――――――――――

伊藤委員長 これより討論に入ります。

 討論の申出がありますので、これを許します。本村伸子君。

本村委員 私は、日本共産党を代表して、民事関係手続のデジタル化法案に反対の討論を行います。

 本法案は、民事訴訟法の規定を準用し、民事関係手続の裁判所へのインターネット申立て、裁判期日のウェブ会議開催などを可能とするものです。デジタル化によって一定の利便性の向上が図られることを否定するものではありません。

 しかし、本法案は、国民、住民の裁判を受ける権利を侵害するおそれがあります。昨年の民事訴訟法改定で、日本共産党は、直接主義、口頭主義、公開主義という訴訟制度の大原則に反し、国民、住民の裁判を受ける権利を侵害するおそれがあることから反対いたしました。

 ウェブ会議での裁判官の心証形成に影響が出るのではないか、原告が納得いく裁判ができるのかなど懸念があります。今回の民事手続全般の改定に当たっても、その懸念は消えたとは言えません。

 デジタル化システムは、サーバーを一元的に管理するもので、情報流出の危険性があります。全国共通の仕様として、セキュリティーも含めて最高裁判所が開発中です。裁判の情報は極めてデリケートでセンシティブな個人情報、企業情報を含んでおり、流出を絶対に防がなければなりません。デジタル化に向けた、裁判所の人的、物的体制の整備も不十分です。マイナンバーカード、マイナンバーに関わる個人情報流出や事件も相次いでおり、プライバシーの侵害を起こさないための見直しを検討するべきです。

 さらに、真意に基づかない公正証書が作成されるリスクが高まります。公正証書は、これまで公証人役場に出向いて作成しなければならなかったものをウェブ上で行うことが可能となります。貸金、遺言、消費者契約などの公正証書をめぐって、これまでもその信憑性が深刻な争いになることも多々ありました。今回のウェブ会議で、画面外に隠れた者が脅迫をすることや、成り済ましなど、当事者の真意によらない公正証書が作成されることを防ぐことがより困難になってしまいます。民間で、情報公開の対象でもない日本公証人連合会が、システムも電子データ管理も一元化し、セキュリティー対策も行います。情報漏えいの懸念も払拭できません。

 以上を申し上げ、反対の討論とさせていただきます。

伊藤委員長 これにて討論は終局いたしました。

    ―――――――――――――

伊藤委員長 これより採決に入ります。

 内閣提出、参議院送付、民事関係手続等における情報通信技術の活用等の推進を図るための関係法律の整備に関する法律案について採決いたします。

 本案に賛成の諸君の起立を求めます。

    〔賛成者起立〕

伊藤委員長 起立多数。よって、本案は原案のとおり可決すべきものと決しました。

    ―――――――――――――

伊藤委員長 この際、ただいま議決いたしました本案に対し、宮崎政久君外五名から、自由民主党・無所属の会、立憲民主党・無所属、日本維新の会、公明党、国民民主党・無所属クラブ及び日本共産党の共同提案による附帯決議を付すべしとの動議が提出されております。

 提出者から趣旨の説明を聴取いたします。鎌田さゆり君。

鎌田委員 ただいま議題となりました附帯決議案につきまして、提出者を代表して、その趣旨を御説明申し上げます。

 案文の朗読により趣旨の説明に代えさせていただきます。

    民事関係手続等における情報通信技術の活用等の推進を図るための関係法律の整備に関する法律案に対する附帯決議(案)

  政府及び最高裁判所は、本法の施行に当たり、次の事項について格段の配慮をすべきである。

 一 近年における情報通信技術の進展等の社会経済情勢の変化への対応を図るとともに、時代に即した民事関係手続等の一層の迅速化及び効率化を可能な限り早期に実現するため、本法の全面施行については、慎重かつ丁寧な審理の妨げとならないよう、また裁判所職員及び当事者等に対し過度な負担とならないよう配慮しつつも速やかに適切な時期の施行に向けた検討を進めるよう努めること。

 二 民事関係手続等のみならず、刑事事件及び少年事件の手続においても、被告人等の人権保障に十分配慮した上で、情報通信技術の活用が迅速に実現されるよう、より一層の検討に努めること。

 三 裁判所の電子情報処理組織を構築するに当たっては、サイバー攻撃などで事件記録が流出して事件関係者のプライバシー侵害が起こらないよう、適切なセキュリティ水準を確保するとともに、代理人等に委任しない者が電子情報処理組織による申立てを容易に利用できるよう、日本弁護士連合会・日本司法書士会連合会等の意見を聞き、利便性を高めるよう努めること。

 四 情報通信技術が進展する中、ウェブ会議におけるなりすましや第三者による不当な介入、デジタル証拠の漏洩や改ざん防止に向けて不断の検討及び対応に努めること。

 五 代理人等に委任しない者が電子情報処理組織による申立て等を容易に利用できるよう、関係機関及び日本弁護士連合会・日本司法書士会連合会等と連携し、必要に応じて弁護士・司法書士等による支援を受けられる環境整備に努めること。

 六 民事関係手続の電子化を速やかに実現させるため、裁判所の必要な人的体制の整備及び予算の確保に努めること。

 七 民事関係手続を利用する障害者に対する手続上の配慮の在り方について、本法施行後の制度の運用状況及び障害者の意見も踏まえて、障害者のアクセスの向上に資する法整備の要否も含めて検討し、必要な措置を講じること。

 八 第三百八十九条の規定による検討については、本法の施行状況、施行後の情報通信技術の進展やプライバシーに関する規範意識の動向等を踏まえて、適時に行うこと。

以上であります。

 何とぞ委員各位の御賛同をお願い申し上げます。

伊藤委員長 これにて趣旨の説明は終わりました。

 採決いたします。

 本動議に賛成の諸君の起立を求めます。

    〔賛成者起立〕

伊藤委員長 起立総員。よって、本動議のとおり附帯決議を付することに決しました。

 この際、ただいまの附帯決議につきまして、法務大臣から発言を求められておりますので、これを許します。齋藤法務大臣。

齋藤(健)国務大臣 ただいま可決されました民事関係手続等における情報通信技術の活用等の推進を図るための関係法律の整備に関する法律案に対する附帯決議につきましては、その趣旨を踏まえ、適切に対処してまいりたいと存じます。

 また、最高裁判所に係る附帯決議につきましては、最高裁判所にその趣旨を伝えたいと存じます。

    ―――――――――――――

伊藤委員長 お諮りいたします。

 ただいま議決いたしました法律案に関する委員会報告書の作成につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

伊藤委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

    〔報告書は附録に掲載〕

    ―――――――――――――

伊藤委員長 次回は、公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。

    午前十一時三十九分散会


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