衆議院

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第9号 平成29年4月7日(金曜日)

会議録本文へ
平成二十九年四月七日(金曜日)

    午前九時開議

 出席委員

   委員長 三ッ矢憲生君

   理事 黄川田仁志君 理事 新藤 義孝君

   理事 土屋 品子君 理事 中山 泰秀君

   理事 長尾  敬君 理事 小熊 慎司君

   理事 寺田  学君 理事 岡本 三成君

      今津  寛君    小田原 潔君

      小渕 優子君    大野敬太郎君

      鬼木  誠君    加藤 寛治君

      熊田 裕通君    佐々木 紀君

      島田 佳和君    鈴木 隼人君

      武井 俊輔君    辻  清人君

      松島みどり君    宮内 秀樹君

      山田 美樹君    石関 貴史君

      小川 淳也君    吉良 州司君

      中川 正春君    原口 一博君

      浜地 雅一君    笠井  亮君

      足立 康史君    玉城デニー君

    …………………………………

   外務大臣         岸田 文雄君

   外務副大臣        岸  信夫君

   防衛副大臣        若宮 健嗣君

   法務大臣政務官      井野 俊郎君

   外務大臣政務官      小田原 潔君

   外務大臣政務官      武井 俊輔君

   外務大臣政務官      滝沢  求君

   政府参考人

   (内閣官房内閣審議官)  横田 真二君

   政府参考人

   (内閣府大臣官房審議官) 嶋田 裕光君

   政府参考人

   (金融庁総務企画局審議官)            西田 直樹君

   政府参考人

   (消防庁国民保護・防災部長)           杉本 達治君

   政府参考人

   (公安調査庁調査第二部長)            横尾 洋一君

   政府参考人

   (外務省大臣官房審議官) 滝崎 成樹君

   政府参考人

   (外務省大臣官房審議官) 宮川  学君

   政府参考人

   (外務省大臣官房審議官) 増島  稔君

   政府参考人

   (外務省大臣官房参事官) 飯島 俊郎君

   政府参考人

   (外務省大臣官房参事官) 小野 啓一君

   政府参考人

   (外務省大臣官房参事官) 小泉  勉君

   政府参考人

   (外務省中東アフリカ局長)            上村  司君

   政府参考人

   (外務省領事局長)    能化 正樹君

   政府参考人

   (財務省大臣官房審議官) 田中 琢二君

   政府参考人

   (経済産業省大臣官房審議官)           赤石 浩一君

   政府参考人

   (防衛省大臣官房長)   豊田  硬君

   政府参考人

   (防衛省防衛政策局次長) 岡  真臣君

   外務委員会専門員     辻本 頼昭君

    ―――――――――――――

委員の異動

四月七日

 辞任         補欠選任

  熊田 裕通君     鬼木  誠君

  武井 俊輔君     加藤 寛治君

  渡辺  周君     小川 淳也君

同日

 辞任         補欠選任

  鬼木  誠君     宮内 秀樹君

  加藤 寛治君     武井 俊輔君

  小川 淳也君     渡辺  周君

同日

 辞任         補欠選任

  宮内 秀樹君     熊田 裕通君

    ―――――――――――――

四月七日

 所得に対する租税に関する二重課税の除去並びに脱税及び租税回避の防止のための日本国とスロベニア共和国との間の条約の締結について承認を求めるの件(条約第一五号)

 所得に対する租税に関する二重課税の除去並びに脱税及び租税回避の防止のための日本国とベルギー王国との間の条約の締結について承認を求めるの件(条約第一六号)

 所得に対する租税に関する二重課税の除去並びに脱税及び租税回避の防止のための日本国とラトビア共和国との間の条約の締結について承認を求めるの件(条約第一七号)

 所得に対する租税に関する二重課税の除去並びに脱税及び租税回避の防止のための日本国とオーストリア共和国との間の条約の締結について承認を求めるの件(条約第一八号)

 脱税の防止のための情報の交換及び個人の所得についての課税権の配分に関する日本国政府とバハマ国政府との間の協定を改正する議定書の締結について承認を求めるの件(条約第一九号)

は本委員会に付託された。

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 政府参考人出頭要求に関する件

 千九百九十四年の関税及び貿易に関する一般協定の譲許表第三十八表(日本国の譲許表)の修正及び訂正に関する確認書の締結について承認を求めるの件(条約第四号)

 北太平洋漁業委員会の特権及び免除に関する日本国政府と北太平洋漁業委員会との間の協定の締結について承認を求めるの件(条約第五号)

 違法な漁業、報告されていない漁業及び規制されていない漁業を防止し、抑止し、及び排除するための寄港国の措置に関する協定の締結について承認を求めるの件(条約第六号)

 生物の多様性に関する条約の遺伝資源の取得の機会及びその利用から生ずる利益の公正かつ衡平な配分に関する名古屋議定書の締結について承認を求めるの件(条約第七号)

 バイオセーフティに関するカルタヘナ議定書の責任及び救済に関する名古屋・クアラルンプール補足議定書の締結について承認を求めるの件(条約第八号)

 万国郵便連合憲章の第九追加議定書、万国郵便連合一般規則の第一追加議定書及び万国郵便条約の締結について承認を求めるの件(条約第九号)

 郵便送金業務に関する約定の締結について承認を求めるの件(条約第一〇号)

 所得に対する租税に関する二重課税の除去並びに脱税及び租税回避の防止のための日本国とスロベニア共和国との間の条約の締結について承認を求めるの件(条約第一五号)

 所得に対する租税に関する二重課税の除去並びに脱税及び租税回避の防止のための日本国とベルギー王国との間の条約の締結について承認を求めるの件(条約第一六号)

 所得に対する租税に関する二重課税の除去並びに脱税及び租税回避の防止のための日本国とラトビア共和国との間の条約の締結について承認を求めるの件(条約第一七号)

 所得に対する租税に関する二重課税の除去並びに脱税及び租税回避の防止のための日本国とオーストリア共和国との間の条約の締結について承認を求めるの件(条約第一八号)

 脱税の防止のための情報の交換及び個人の所得についての課税権の配分に関する日本国政府とバハマ国政府との間の協定を改正する議定書の締結について承認を求めるの件(条約第一九号)

 国際情勢に関する件


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     ――――◇―――――

三ッ矢委員長 これより会議を開きます。

 千九百九十四年の関税及び貿易に関する一般協定の譲許表第三十八表(日本国の譲許表)の修正及び訂正に関する確認書の締結について承認を求めるの件、北太平洋漁業委員会の特権及び免除に関する日本国政府と北太平洋漁業委員会との間の協定の締結について承認を求めるの件、違法な漁業、報告されていない漁業及び規制されていない漁業を防止し、抑止し、及び排除するための寄港国の措置に関する協定の締結について承認を求めるの件、生物の多様性に関する条約の遺伝資源の取得の機会及びその利用から生ずる利益の公正かつ衡平な配分に関する名古屋議定書の締結について承認を求めるの件、バイオセーフティに関するカルタヘナ議定書の責任及び救済に関する名古屋・クアラルンプール補足議定書の締結について承認を求めるの件、万国郵便連合憲章の第九追加議定書、万国郵便連合一般規則の第一追加議定書及び万国郵便条約の締結について承認を求めるの件及び郵便送金業務に関する約定の締結について承認を求めるの件の各件を議題といたします。

 各件に対する質疑は、去る五日に終局いたしております。

 これより各件に対する討論に入るのでありますが、その申し出がありませんので、直ちに採決に入ります。

 まず、千九百九十四年の関税及び貿易に関する一般協定の譲許表第三十八表(日本国の譲許表)の修正及び訂正に関する確認書の締結について承認を求めるの件について採決いたします。

 本件は承認すべきものと決するに賛成の諸君の起立を求めます。

    〔賛成者起立〕

三ッ矢委員長 起立総員。よって、本件は承認すべきものと決しました。

 次に、北太平洋漁業委員会の特権及び免除に関する日本国政府と北太平洋漁業委員会との間の協定の締結について承認を求めるの件について採決いたします。

 本件は承認すべきものと決するに賛成の諸君の起立を求めます。

    〔賛成者起立〕

三ッ矢委員長 起立総員。よって、本件は承認すべきものと決しました。

 次に、違法な漁業、報告されていない漁業及び規制されていない漁業を防止し、抑止し、及び排除するための寄港国の措置に関する協定の締結について承認を求めるの件について採決いたします。

 本件は承認すべきものと決するに賛成の諸君の起立を求めます。

    〔賛成者起立〕

三ッ矢委員長 起立総員。よって、本件は承認すべきものと決しました。

 次に、生物の多様性に関する条約の遺伝資源の取得の機会及びその利用から生ずる利益の公正かつ衡平な配分に関する名古屋議定書の締結について承認を求めるの件について採決いたします。

 本件は承認すべきものと決するに賛成の諸君の起立を求めます。

    〔賛成者起立〕

三ッ矢委員長 起立総員。よって、本件は承認すべきものと決しました。

 次に、バイオセーフティに関するカルタヘナ議定書の責任及び救済に関する名古屋・クアラルンプール補足議定書の締結について承認を求めるの件について採決いたします。

 本件は承認すべきものと決するに賛成の諸君の起立を求めます。

    〔賛成者起立〕

三ッ矢委員長 起立総員。よって、本件は承認すべきものと決しました。

 次に、万国郵便連合憲章の第九追加議定書、万国郵便連合一般規則の第一追加議定書及び万国郵便条約の締結について承認を求めるの件について採決いたします。

 本件は承認すべきものと決するに賛成の諸君の起立を求めます。

    〔賛成者起立〕

三ッ矢委員長 起立総員。よって、本件は承認すべきものと決しました。

 次に、郵便送金業務に関する約定の締結について承認を求めるの件について採決いたします。

 本件は承認すべきものと決するに賛成の諸君の起立を求めます。

    〔賛成者起立〕

三ッ矢委員長 起立総員。よって、本件は承認すべきものと決しました。

 お諮りいたします。

 ただいま議決いたしました各件に関する委員会報告書の作成につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

三ッ矢委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

    〔報告書は附録に掲載〕

     ――――◇―――――

三ッ矢委員長 次に、国際情勢に関する件について調査を進めます。

 この際、お諮りいたします。

 本件調査のため、本日、政府参考人として外務省大臣官房審議官滝崎成樹君、大臣官房審議官宮川学君、大臣官房審議官増島稔君、大臣官房参事官飯島俊郎君、大臣官房参事官小野啓一君、大臣官房参事官小泉勉君、中東アフリカ局長上村司君、領事局長能化正樹君、内閣官房内閣審議官横田真二君、内閣府大臣官房審議官嶋田裕光君、金融庁総務企画局審議官西田直樹君、消防庁国民保護・防災部長杉本達治君、公安調査庁調査第二部長横尾洋一君、財務省大臣官房審議官田中琢二君、経済産業省大臣官房審議官赤石浩一君、防衛省大臣官房長豊田硬君、防衛政策局次長岡真臣君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

三ッ矢委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

三ッ矢委員長 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。黄川田仁志君。

黄川田(仁)委員 自由民主党の黄川田仁志でございます。時間が限られてございますので、早速質問に入らせていただきたいと思います。

 先日、外務省のホームページで、在外公館におけるエネルギー・鉱物資源専門官が発表されました。我が国の経済発展、また安全保障を考えるに当たり、エネルギーや鉱物資源の安定確保は最重要課題であります。

 昨今のエネルギーや鉱物資源を取り巻く世界の動きは活発でありまして、エネルギー・鉱物資源外交戦略を立てる上で、日々の細やかな情報を収集していく必要があります。外務省経済局や在外公館に勤務されている職員の皆様には、そのために最大限の努力をしていただかなければならないと思っております。

 そこで、私が注目しているのが、このエネルギー・鉱物資源専門官であります。まずは、基礎的なことを教えていただきたく思います。このたび四年ぶりに見直されました、エネルギー・鉱物資源専門官とは何かを教えていただきたいと思います。該当国の選抜基準、職員の指名基準、指名されている職員数などの概要を交えて、当該専門官の具体的な働きについてお答えいただきたいと思います。

小泉政府参考人 お答えを申し上げます。

 御質問いただきましたエネルギー・鉱物資源専門官の制度でございますが、これは平成二十四年六月に策定をされました資源確保戦略を踏まえまして、我が国にとり重要な資源国との間の包括的かつ互恵的な二国間関係の構築、強化、これを目指しまして、エネルギー、そして鉱物資源の安定供給に関する在外公館の体制の強化ということを目的として、平成二十五年の二月に導入をされたものでございます。

 対象国のあり方ですとか該当する職員の専門性などなどを考慮いたしまして、今現在のところ、五十四カ国の延べ六十公館に七十九名の専門官の配置がなされているところでございます。

 この専門官でございますが、在外公館におきまして、エネルギーや戦略的鉱物資源に関する情報の収集、分析、集約、また民間企業あるいは日系の関係機関などなどとの連絡調整を行うといった活動を行っておりまして、まさにオール・ジャパンということで、エネルギー、鉱物資源の安定供給に向けた外交的な取り組みに従事しているところでございます。

 冒頭、先生から御指摘のとおり、今般、発足後四年を経過いたしております。この間、世界的な資源確保の競争の激化ですとか、国際的なエネルギーの需給構造の変化、また日本企業の進出状況等にも変化が生じてございます。こういった変化に対応いたしまして、我が国のエネルギー・資源外交を一層強化するということを目的として、今般、専門官の配置の見直しを行いまして、新たに資源外交の分野でニーズが高まっていると見られます六つの公館において、新たな国で申しますと五カ国になりますが、その専門官の追加の指名を行ったということでございます。

黄川田(仁)委員 ありがとうございます。

 資源に関する情報を集約して、日系企業も含めて日本の資源外交に役立てようというものでありますが、年に一度、その情報を持ち寄って当該専門官に東京に集まっていただき、エネルギー・鉱物資源に関する戦略会議が行われていると聞いております。しかしながら、今、五十四カ国という形で指名されているということでございますが、今回は十七カ国のみという限られた参加になっておりまして、私としては、もっとより多くの地域の専門官が集まって積極的に議論すべきであるというふうに考えております。

 また、ことし、初めて南アフリカで、アフリカ地域公館エネルギー・鉱物資源担当会議が行われたということも聞いております。これらの地域別会議も、今後、アフリカ以外の地域でも積極的に地域別の担当会議をすべきと考えております。

 そこで、それぞれの会議の成果の御報告と今後の会議のあり方について御意見をいただきたいと思います。

小泉政府参考人 会議の御報告と今後のあり方ということでございます。お答えを申し上げたいと思います。

 まず、ことしの二月に東京で開催をいたしました今年度のエネルギー・鉱物資源に関する在外公館戦略会議、これは平成二十一年度から開催をしておりまして、毎年やってきておるものでございますが、ことしの会議におきましては、エネルギー・資源問題を重要な外交戦略の一部であるということで改めて位置づけをいたしまして、その上で、資源国の多様なニーズに解決策を提示できるようなエネルギーまた資源外交の展開、またさらには、その対象となる国におきます人材育成といったものも視野に入れまして、日本らしさということを定着、浸透させようということ、また、その情報の発信、広報を強化しようということ、こういったことを柱とします我が国のエネルギー・資源外交強化のための報告書というのを取りまとめをいたしたところでございます。

 また、これに先立ちまして、ことしの一月でございますが、これは初めての試みでございましたけれども、特定の地域を対象とする担当官会議ということで、昨年度になりますが、ことし、アフリカ地域の公館のエネルギー・鉱物資源担当官会議というのを開催いたしました。

 これは、今申し上げました二月での東京での戦略会議に向けた重要なインプットとして、我が国の資源外交強化のための提言というものの取りまとめがなされたところでございます。

 こうした地域別の担当官会議の開催につきましては、冒頭申し上げましたような世界のエネルギー、鉱物資源の情勢その他いろいろな状況に鑑みまして、特に重要性が高いと考えられる地域を抽出いたしまして、今後とも積極的に進めていきたいというふうに考えているところでございます。

 また、東京での戦略会議につきましては、予算の効果的な執行という観点もございますので、そういったことも十分に踏まえながら、今後とも可能な限り多くの公館から参加をいただき、また東京におきます関係機関からも積極的な参加を募りまして、意味のあるものにしていきたいというふうに考えているところでございます。

黄川田(仁)委員 この会議の結果として、エネルギー、資源を新たにもう一度外交戦略の中で位置づけたということでありまして、四年たったとはいえ、まだまだ当該専門官がフルに活動して我が国の資源外交に積極的に役立っているというところの成果までは完全に出ていないというふうな印象を受けますが、今後とも引き続きこの専門官の情報収集をして、御活躍いただきたいというふうに思っております。

 先ほど、冒頭最初の質問で、エネルギー、資源の生産国を中心にその専門官が指定されているということでございましたが、再生エネルギーにも注目しなければならないというふうに考えております。

 五十四カ国中、ケニア一カ国が地熱発電をやっているということで、日系企業も行っているということで、指定されているというふうに聞いておりますが、この五十四カ国中を見ていると、ヨーロッパの国々は全く入っていないということでございます。

 ヨーロッパは、もちろん資源生産国、ノルウェー、イギリス等ございますが、私は、ヨーロッパにおける再生エネルギーの開発はこの日本にいては感じられないぐらい目覚ましいものがありまして、我が国はおくれをとっていると考えております。そこで、ヨーロッパ諸国におけるエネルギー戦略の情報も積極的に収集する必要があると考えております。

 外務省によると、IEAなどのエネルギーに関係する国際機関で働く人材を活用して情報収集を行っているということも考えておりますが、それぞれの国の在外公館が、より再生エネルギーの情報に敏感になっていくべきだというふうに考えております。

 そこで、北欧など、ヨーロッパ諸国の再生エネルギーの取り組みが盛んな国への当該専門官の追加指定等を行っていくことも検討していただきたいというふうに考えておりますが、いかがでしょうか。

岸田国務大臣 ヨーロッパ諸国など、再生可能エネルギーの取り組みに積極的な国の情報については、関連国際機関の分析や報告など、関連会合にて直接的に意見交換を実施するなど、幅広く積極的に情報収集を行っております。

 今後も、再生可能エネルギー等についても情報収集に努め、さらに専門官の配置が必要と判断される場合には、新たなニーズや情勢の変化に応じて配置の見直しを検討していきたいと考えます。

黄川田(仁)委員 ありがとうございます。

 私も、ヨーロッパに行ったとき、オランダ、ノルウェー、またデンマーク、再生エネルギー、特に海上風力発電の規模というものを見て非常に驚きましたし、日本も海で囲まれている島国でございますから、これらのヨーロッパの知見を積極的に活用するべきだというふうに考えております。

 また、日系企業もヨーロッパのこれらのプロジェクトに参加しておりますので、ぜひとも、ヨーロッパの在外公館は、専門官に任命されなくても、高い意識を持って積極的に情報収集をし、日本のエネルギー・資源外交戦略に役立っていただきたいと思います。

 そこで、また質問でございますが、資源外交は我が国の国益を守る上で欠かせないということは再三申し上げておりますが、この資源外交戦略をどのように考え、今どのように取り組んでいるか、そして、今後どのように取り組んでいくかということを、外務省は、収集した情報をもとに、国内外により積極的に発信をしていくということも必要なのではないかというふうに考えております。

 やはり、この日本という国は、資源がないということでいろいろな問題や苦難に遭ってきた国でございます。日本国民も、資源についていつも心配している状況であると思います。そこで、外務大臣も、積極的に国際会議など、日本の立場や今行っている資源外交について外国にも知らせるとともに、日本国民にも積極的に情報発信をしていただきたいというふうに思っております。もし具体的なお話がございましたら、お聞かせいただきたいというふうに思います。

岸田国務大臣 エネルギー・資源外交の重要性について委員の方から御指摘がありましたが、この重要性については全く同感であります。

 エネルギー・資源外交というもの、我が国の外交戦略の中でも大変重要な一翼を担っていると考えます。我が国へのエネルギー、資源の安定供給を第一命題としつつ、世界のエネルギー安全保障にも貢献する、こういったことも視野に入れながら、我が国として積極的なエネルギー・資源外交の展開そして発信、こういったものにこれまでも取り組んできましたが、ぜひこれからも一層これを発展させていかなければならない、このように考えます。

 本年二月に外務省が開催したエネルギー・鉱物資源に関する在外公館戦略会議につきましても、この成果を取りまとめた報告書、これは外務省のウエブサイトにおいて掲載をさせていただいています。

 今後も、七月に開催予定のアジア・エネルギー安全保障セミナー等の機会も活用しながら、引き続き我が国のエネルギー・資源外交を力強く推進していきたい、このように考えます。

 また、このような取り組みを私自身からも積極的に発信するべく、これはさまざまな方法を検討していきたい、このように考えます。私自身も、いろいろな機会を活用することによってこのエネルギー・資源外交の推進のために何ができるか、しっかり考えていきたいと存じます。

黄川田(仁)委員 ありがとうございます。

 私、国会議員として、このエネルギー、資源は非常に大切だと考えておりまして、特に日本のEEZ内でメタンハイドレートまた熱水鉱床、これもエネルギー安全保障の観点から日本自身も積極的に自主的な開発を行っていかなければならないと思い、日々そちらの方向に向けて努力しているつもりでございますが、しかしながら、日本の近海においてエネルギーまた鉱物資源を採取し、またコマーシャルベースに乗せていくという道のりはまだまだ長いというふうに考えております。ですので、今行っている他国からの安定供給、これの維持に日本は今後も努めていかなければならないと思っております。

 ぜひ、このエネルギー・鉱物資源専門官、さらに多くの国で指定されて御活躍されていくことをお祈り申し上げまして、私の質問とさせていただきます。

 どうもありがとうございました。

三ッ矢委員長 次に、佐々木紀君。

佐々木(紀)委員 自由民主党の佐々木紀です。

 私の方からは、サウジアラビアとの関係について少し御質問を進めていきたいというふうに思います。

 先月十二日から十五日まで、サウジアラビアのサルマン国王がサウジ国王としては四十六年ぶりに来日をされました。報道によりますと、約千五百人の大訪問団で、飛行機も約二十機に分乗して来日をされたということでございます。八十一歳の国王の年齢を考慮して、エスカレーター式のタラップとか、あるいはサウジで使用している医療器具一式を航空機に搭載して訪問してきたということでございまして、大変超豪華な、大名旅行のような感じでございました。都内の高級ホテルも約千二百室確保して、移動用の高級ハイヤーも約五百台以上準備されたということで、飲食や買い物などへの消費への期待から、サウジ特需という言葉まで生まれました。

 これだけサウジアラビアが日本において好意的に報道されて注目されたということは、大変ありがたいことだなというふうに思います。これを機会に多くの日本国民がサウジアラビアを含む中東に関心を持って、理解が進んでいくことを期待したいというふうに思います。

 私は、二〇一四年、二〇一五年と、二年連続でサウジアラビアを訪問させていただきました。昨年も計画をしていたのでありますけれども、国会が延長したということでありまして、ちょっと行けなかったわけでありますけれども、夏の閉会中に行ってこようかなと思ってはいたんですが、真夏は気温が五十度以上とか、あるいはラマダンがあるとか、渡航の制約も大変多いわけで、なかなか日程が決めにくいといった事情もございます。

 そもそも私がサウジアラビアを訪問しようと思ったきっかけは、三月十七日にお亡くなりになられました愛媛三区の白石徹代議士のおかげなんです。

 白石先生は、二〇一四年当時、サウジアラビアの駐日大使であったトルキスターニ氏と大学の学友という関係で、サウジアラビアに関心を持って、日本とサウジとのウイン・ウインな関係構築が必要だとお考えになられて、当時サウジアラビアが求めておりました中小企業同士のマッチング事業というものを発案されたんです。まさにこのたびの政府間協定の先駆けとなった取り組みでした。

 二〇一四年九月五日から十三日にかけて、日本の中小企業二十三社の経営者と、あと経産省、中企庁、外務省の職員も同行して、サウジアラビアSMEビジネスマッチングセミナーというものを実施しました。日本人女性経営者に初めてビザを発給するなど、商談会の開催のハードルはとても高かったことを覚えております。ただ、商談が成立したケースはほとんどなかったわけでございますけれども、この中小企業のマッチング事業というものを行った実績というのは、両国にとって大変大きな収穫であったというふうに思います。

 このたび、サウジアラビアとの間で協力文書、日・サウジ・ビジョン二〇三〇を締結したわけでございますけれども、この草分け的な事業を行った白石先生の功績は大変大きかったというふうに思っております。

 先生が御存命ならば、先生の築かれた人脈や知見が今後の日本とサウジの関係に大変大きく生かせたのではないかなと悔やまれるわけでございますけれども、心から先生の御冥福をお祈りするとともに、志半ばで世を去られた先生の思いが成就して、日本とサウジアラビアのウイン・ウインな関係が構築されますよう、私もしっかり取り組んでまいりたいというふうに思います。

 さて、サウジアラビアは大変親日的な国だというふうに思います。アラブの王室は日本の皇室に強い尊敬の念を抱いているというふうに聞いております。サウジ国民も、日本の文化や製品、技術に対して大変リスペクトしております。

 例えば自動車ですね。砂漠の高温下で粉じんの中、エアコンをがんがんきかせてぶっ飛ばしても、エンストすることなく長距離を移動できるということで、日本車は大変人気があります。また、民族衣装、男性は白色のトーブというものを着ますし、女性は黒色のアバヤというものを着ますけれども、これも高級品は日本製なんですね。汚れにくくて涼しいとか、あるいは、ちらっと風ではだけますと、裏生地がきれいな派手なプリントが施されているとか、大変機能的な生地を日本はつくっておりまして、こういったものも大変人気がございます。

 ほかにも、食品や日用雑貨、化粧品、あるいは日本のアニメですね、こういったことも人気がございますので、日本への憧れが大変強い国の一つであります。

 ただ、日本から大変遠いということもあって、また何となく怖いイメージというか、ありまして、疎遠になりがちでありますけれども、つき合いやすい国の一つだ、民族の一つだというふうに思っています。

 もちろん、日本はサウジアラビアに輸入原油の三割を依存している、エネルギー戦略上にとって最も大事な国であります。人口減少に悩む日本にとっては、中東という大きな市場という意味でも重要だと思います。

 ただ、そのサウジアラビア、近年大変困っておりまして、収入の大半を占める原油安によって財政悪化に苦しんでいる、今こそ原油収入に頼らない経済を目指さなければいけない。そういったことで、サウジ国内では、ビジョン二〇三〇というものを発表して、石油依存からの脱却をうたって今改革に取り組んでいるというところでもございます。新産業を興して石油に頼らない国づくりを目指す、長期戦略のことですけれども、国外企業の進出を通して技術移転を進め、多様な産業を振興するという構想です。

 しかし、外国企業の進出は低迷をしております。独特の規制や文化が外資の参入を阻んでいる。イスラム教の二大聖地を抱えておりまして、メッカとメジーナですけれども、厳格なイスラム教の国ということで、イスラム教の戒律が国の法律だということもあって、それ用にさまざまな環境を整えていかなければいけないという制約がございます。

 また、ビザの発給に時間がかかるとか、サウジ人を一定割合雇わなきゃいけないという義務、サウダイゼーションがあるとか、大変ビジネス環境は未整備な面が多くて、事業化へのハードルは大変高いわけであります。これまでも幾度と改革をしようと取り組まれておるんですけれども、なかなか国内産業が育たない。

 しかし、このたびのビジョン二〇三〇は、改革の本気度が感じられます。定量化できるものについては具体的な数値目標を掲げていたりとか、あるいはただ同然のガソリンや電気、水道の料金を値上げするとか、あるいは消費税や所得税、こういったものを導入するとか、国民の不人気政策も盛り込まれているということで、サウジアラビアの本気度がうかがえるわけであります。

 サウジアラビアがピンチのときに日本はしっかりと応えていかなければいけない。そういう意味では、原油輸入の三割をサウジに依存する日本が真っ先にこのたび協力表明したということは大変評価ができるというふうに思います。

 これまでは、対産油国外交というのは原油の確保ばかりが念頭に置かれておったわけでありますけれども、石油中心だった両国の関係が新たな段階に移る契機となるかが注目されているわけであります。日サ関係も、脱石油依存を目指すときが来たと言っても過言ではないかなというふうに思っております。

 そこで、今回のサルマン国王の来日に際して、幾つか御質問をしたいというふうに思います。

 脱石油依存戦略であるビジョン二〇三〇、これはサウジで発表されたものですけれども、これに対して日本が協力できる分野を盛り込んで、日・サウジ・ビジョン二〇三〇というものをこのたび締結しました。報道によりますと、両国政府は、四十三の事業で合意し、サウジでの再生可能エネルギーの普及や製造業育成の支援など、三十一事業について、先行プロジェクトとして重点的に官民挙げて取り組むというふうにありました。その内容について教えていただきたいというふうに思います。

赤石政府参考人 お答えいたします。

 御指摘のとおり、サウジアラビアは、経済の脱石油依存、それから、ふえる若年層の雇用創出等のためにサウジ・ビジョン二〇三〇に基づき経済社会改革に取り組んでおりまして、我が国はこれにも積極的に協力をしているところでございます。

 本年三月には、サルマン国王訪日という歴史的な機会を捉えまして、両国関係を戦略的パートナーシップとステップアップし、新たな日本とサウジの関係の羅針盤として、日・サウジ・ビジョン二〇三〇を策定いたしました。

 このビジョンは、サウジアラビア政府が昨年四月にまとめたサウジ・ビジョン二〇三〇、それから安倍内閣が取り組んでいる日本の成長戦略、この二つのシナジーによりまして、三本柱、経済社会の多様性、革新性、それからソフトバリュー、これを高める日本とサウジならではのビジョンとなっておりまして、九つの分野、競争力ある産業、エネルギー、エンターテインメント、健康・医療、質の高いインフラ、農業、中小企業、文化・スポーツ・教育に加えて投資・ファイナンス、こういった九つの分野につきまして広範な協力を行うこととなっております。

 その中でも四十三の分野につきまして有望と見られておりまして、その中で特に三十一の具体的な先行プロジェクト、こういったものも含めた野心的な内容となっているところでございます。

 今後は、日本とサウジの四十一省庁それから機関、こういった体制でこのビジョンを実施していく所存でございまして、これらのプロジェクトを成果につなげるべく、さらにサウジ側との連携を密にしていきたい、そのように思っております。

佐々木(紀)委員 ありがとうございます。

 大変包括的な経済協力が盛り込まれたなというふうに思います。

 これまでの経済協力というのは、どちらかというと、財政支援であったりインフラの整備とかといった、割かし単発的な支援が多かったように思うんですけれども、ハードだけではなくてソフトも含めた、まさに相手国が必要としている課題解決型の協力、これはまさに、日本の強みをパッケージにした協力とも言えるというふうに思います。

 これだけ省庁横断的で、民間も巻き込んでの大プロジェクトということになりますので、これを進めていくには、全体を俯瞰して進捗をコントロールするような司令塔機能が必要ではないかなというふうに考えます。

 昨年も、プーチン大統領が山口を訪問されたときも、ロシアとも今回と同じような包括的な経済協力の枠組みというものも発表されました。

 そこで、今回このような省庁横断的な、民間を巻き込んでの大プロジェクトの司令塔機能について、どのようにこういった今回の協定をフォローアップしていくかといったことについてお聞かせをいただきたいというふうに思います。

上村政府参考人 お答え申し上げます。

 日・サウジ関係について特にお答えを申し上げたいと思いますが、二〇一六年十月に、活性化しております日・サウジ関係を初めとしまして、中東諸国との経済交流等をさらに幅広い分野で強化するべく、関係省庁が一体となって取り組みを進めていくための枠組みといたしまして、委員御指摘の日・中東経済交流等促進会議というのが立ち上げられております。これは既に二回ほど開催しておりますけれども、今後とも、この会議におきまして、議長を務める野上副長官のもと、中東諸国との経済交流などの促進につきまして、関係省庁で連携しつつ、省庁横断的に対応していく所存でございます。

 特に、日本・サウジ・ビジョン二〇三〇に基づくサウジアラビアとの協力につきましては、閣僚級の日・サウジ二〇三〇共同グループというのが立ち上げられておりまして、それを通じまして、サウジ側のニーズ、委員御指摘のとおり、例えば人材育成とか産業多角化、あるいは文化、教育、スポーツ、娯楽、非常に幅広いものがございます、こういうニーズを吸い上げまして、関係する省庁で連携をいたしまして、協力を具体化して、そして現実に履行していく、確実に取り進めていく、そういうふうに考えております。

佐々木(紀)委員 ありがとうございます。

 野上副長官を先頭に今後フォローアップをしていくということでございますので、ぜひ期待をしていきたいというふうに思います。

 それで、これから日本企業の進出を促していかなければいけないわけでありますけれども、その際には、外資規制の撤廃、税制優遇、関税手続の簡略化、事業インフラ整備、労働環境の改善などが必要です。ただでさえ、ビジネスの許認可が遅くて人件費が高い、地政学的にも不安があるということで、サウジ側に、いかに日本企業が安心して進出できる仕組みをつくらせるかということが重要になってくると思います。

 そこで、進出する日本企業とサウジ政府のそれぞれの要望をすり合わせる調整機関、あるいは、日本企業の要望を聞きサウジ側と交渉する窓口を創設する必要があると考えますが、いかがでしょうか。現在もジェトロというものもございますけれども、その辺との関係も含めてお答えをいただきたいと思います。

赤石政府参考人 お答えさせていただきます。

 まさに先生御指摘のとおり、日本企業のサウジ進出を促していくためには、ビジネス環境の整備が極めて重要でございます。

 今回合意いたしました日・サウジ・ビジョン二〇三〇においてもその点は極めて重視しておりまして、先ほど申し上げた三十一の先行プロジェクトの中には、ビザの利便性向上であるとか投資協定の発効、こういったものと並んで、ビジネス環境の向上に向けた協力を、項目を一つ立てて盛り込んでいるところでございます。

 特に、御指摘のビジョンオフィスについては、サウジでのビジネスを促進する体制を強化するべく、日・サウジ・ビジョン二〇三〇のまさに実施拠点として、東京とリヤドの双方に、日・サウジ・ビジョンオフィスを新設することに合意しております。

 今までは、ジェトロは、情報提供やビジネスマッチング等に取り組んできたんですが、こういったジェトロと、それから中東協力センターなどの既存の現地体制、こういったものも活用しながら、先生が御指摘のようなサウジ側との調整を含め、これから具体的な検討を行ってまいりたいと思っております。

佐々木(紀)委員 ありがとうございました。

 ぜひ、サウジの厳格な規制に風穴をあけて、原油の貿易相手から事業パートナー国に発展していき、両国の関係が新時代に入るようなお取り組みを期待していきたいというふうに思います。

 そこで、このたび、民間事業者も多くこの協定の締結にかかわっているわけでございます。例えばトヨタとかJX、メガバンク、東証がカウンターパートとなり、金融や物づくり、エネルギー、都市開発、インフラ、人材育成、大変多分野にわたる協定を結んでおります。

 特に中東は、消費市場と見た場合でも大変魅力的だと思います。ヨーロッパと比べても、私は進出しやすいというふうに思います。言語が単一ですし、習俗や嗜好も大変似ております。サウジで売れるものは中東諸国全部で売れるとも言われております。これを機に、中東諸国との経済連携、FTAやEPAの交渉をして、物、人、金の流れを円滑にすべきであると思います。

 例えば、トヨタ自動車が組み立て工場をサウジに仮につくるとしたとき、やはり部品は輸入しないといけないわけですし、最終製品はやはり諸外国、周辺諸国に輸出しないといけないということもございます。

 また、今、サウジアラビアでは、ドバイに追いつき追い越せということで、二百万人の観光産業都市をつくろうと、エコノミックシティーの構想もございまして、実際に建設が進んでおります。あと、都市間高速鉄道の計画もございます。しかし、こういったインフラの整備に、中国や韓国は入り込んでいるんですけれども、日本は全くと言っていいほどかかわれておりません。

 今回、サルマン国王が日本を訪問した後、中国も訪問されて、経済協力で合意されているようです。サウジは、日本と中国を競わせて、いい条件を引き出そうとしているようにも思えます。中国は、一帯一路やAIIBの政策を進めることで、中東やアフリカを取り込もうとしております。

 今回のこのビジョンを絵に描いた餅で終わらせない、そして具現化させて加速化させる意味でも、サウジあるいは中東諸国とのFTAやEPAなどの経済連携協定を進めるべきではないかというふうに思います。

 TPPや日中韓FTA、日・ASEAN・EPA、日・EUのEPA、RCEPなど締結が進んでいくことになろうかと思いますけれども、中東、アフリカが、カバーし切れないというんですかね、残っていくのではないかなという懸念があるわけでございまして、この際、中東、特にGCC諸国との経済連携を急ぐ必要があるのではないかと思いますが、いかがでしょうか。

上村政府参考人 お答え申し上げます。

 御指摘のとおり、我が国と湾岸協力理事会、GCCとの関係は非常に重要でございまして、二〇〇六年の九月から、委員御指摘のような問題意識で交渉を開始しております。

 二〇〇九年三月までに二回の正式会合と四回の非公式会合を行いました。しかし、残念ながら、二〇〇九年七月、GCC側がFTA政策全体を見直すということで、我が国を含む全てのFTA交渉を一旦延期してございます。これが、二〇一四年三月にこの見直しが終了いたしまして、GCCは各国との交渉を再開する方針を決定しております。

 それを踏まえまして、我が国といたしましては、GCC事務局及びGCC各国に対しまして、早期の交渉再開を働きかけております。本年三月のサルマン・サウジアラビア国王の訪日に関しましても、安倍総理から、ビジネス環境整備のため、FTA交渉の再開を強く求めたところでございます。

 また、同時に、湾岸諸国との投資協定の締結も進めておりまして、クウェートとは既に発効済み、サウジアラビアとの投資協定は、きょう発効の予定となってございます。オマーンとの協定も、先方の手続を残すだけとなっているほか、現在、UAE、カタール、バーレーンとの投資協定交渉を進めてございます。

 今後とも、この方針で積極的に進めてまいりたいと思っております。

佐々木(紀)委員 どうもありがとうございました。

 時間もないようなので、最後、まとめて終わりにしたいと思いますけれども、そういった経済協力をしっかりと行っていき、また、サウジアラビアの国内の課題にも日本がしっかりと協力をしていくことによって強い信頼関係をつくっていく、そのことがやはり中東の安定に日本が貢献していくことにもつながっていくものというふうに思います。

 白石先生が抱かれた、日本とサウジアラビアのウイン・ウインな関係、これをしっかりと構築すべく、政府一丸となって取り組んでいただきたいというふうに思います。

 時間も終わりましたので、質問は以上とさせていただきたいと思います。

 ありがとうございました。

三ッ矢委員長 次に、原口一博君。

原口委員 おはようございます。民進党の原口一博でございます。

 きょうは、外務大臣に、主に国力それから国家戦略、領土ということをテーマに質問をさせていただきます。

 今、米中首脳会談が行われておると承知していますが、それに先駆けて、電話でしたけれども、日米首脳会談が行われました。内容について、言える範囲で結構ですから、外相に伺いたいと思います。

岸田国務大臣 四月六日の日米首脳電話会談についての御質問ですが、この電話会談におきましては、両首脳は、五日の北朝鮮による弾道ミサイル発射の強行は危険な挑発行為であり、我が国の安全保障上、重大な脅威であるという認識で一致をしました。安倍総理からは、米国の強いコミットメントを背景に、北朝鮮に対し、さらなる挑発行動の自制、安保理決議等の遵守を強く求めていきたいとの考えを伝達しました。

 また、米中首脳会談を控える中、安倍総理からは、北朝鮮問題に関する中国の対応を日本として注目している旨伝達し、両首脳は、中国の役割が重要であること、日米韓で緊密に連携していくこと、こういったことで一致をしました。

 それに対し、トランプ大統領からは、全ての選択肢がテーブルの上にある旨、さらには、米国は同盟国である日本を一〇〇%支える旨、力強い発言がありました。

 安倍総理からは、拉致問題の早期解決に向けてトランプ大統領の協力を求め、改めて大統領から支持をいただきました。

 先月の日米外相会談、そして今回の日米首脳電話会談での議論を踏まえて、引き続き、米国を初め国際社会と連携しながら、こうした北朝鮮問題にしっかり対応していきたい、このように考えております。

原口委員 外相、ありがとうございます。

 幾つか懸念があります。ちょっと質問の順番を変えるんですが、きょうのスターズ・アンド・ストライプスを読んでいますと、アメリカの国防総省の予算が通らない、これが通らないと、例えば、米海兵隊の戦闘機中隊は、夏ごろぐらいまでに半分を閉鎖せざるを得ない、こういう状況にある。これは大変危機的なことだと思います。

 きょうは防衛省に来てもらっていますけれども、総理が、北朝鮮の脅威は新しい段階に入ったとおっしゃっています。これは何をもって新しい段階に入ったというのか、防衛省から聞きたいと思います。

岡政府参考人 お答え申し上げます。

 新たな段階の脅威という表現との関係でございますけれども、北朝鮮は、昨年、二回の核実験を強行するとともに、年間では過去最多となる二十発以上の弾道ミサイルを発射いたしております。本年に入ってからも、今月五日を含めて、引き続き弾道ミサイルの発射を繰り返しております。

 北朝鮮による弾道ミサイル開発や運用能力の向上ということに関して何点か申し上げさせていただきますと、まず、昨年二月には人工衛星と称する長距離弾道ミサイルを発射したほか、グアムが射程に入ると言われる中距離弾道ミサイル、いわゆるムスダンを発射するなど、弾道ミサイルの長射程化を図っているものと見られます。

 そして、本年三月六日には四発の弾道ミサイルを同時に発射いたしましたけれども、昨年九月にも三発の弾道ミサイルを同時に発射し、三発ともに我が国EEZ内のほぼ同じ地点に撃ち込むなど、実戦配備済みの弾道ミサイルの技術的信頼性を向上させているものと見られます。

 また、任意の地点から発射が可能な発射台つき車両、いわゆるTELと申しますけれども、そうしたものからの発射や、潜水艦からの弾道ミサイル、SLBMの発射を繰り返すなど、打撃能力の多様化、残存性の向上を追求していると見られます。

 さらに、弾道ミサイルの固体燃料化を進めている可能性もありまして、一般的に、固体燃料のミサイルは、液体燃料に比べて即時の発射が可能であり、発射の兆候が事前に察知されにくいなど、奇襲的な攻撃能力の向上も図っているものと見られます。

 このように、核兵器開発を含め、北朝鮮による核、弾道ミサイルの開発や運用能力の向上が、昨年来、我が国を含む地域及び国際社会に対する新たな段階の脅威になっていると認識をしているところでございます。

原口委員 ありがとうございます。

 移動可能なところから発射できる、あるいは射程が延びている、それから一度にたくさんのものを発射する、本当にこれは危険そのものだと思います。

 資料の三をごらんになってください。

 これほど多くのものがあって、そして、私たちはこの脅威にさらされている。しからば、では、これをどのようにとめればいいのか。北朝鮮の核・ミサイル開発に歯どめをかけるためには、北朝鮮への資金の流れ、これを規制することが何よりも必要ではないか。

 北朝鮮のGDPはどれぐらいですか。事務方で結構です。

 通告していますけれども。

三ッ矢委員長 誰が答弁しますか。答えられますか。

 速記をとめてください。

    〔速記中止〕

三ッ矢委員長 速記を起こしてください。

 滝崎大臣官房審議官。

滝崎政府参考人 お答えいたします。

 二〇一五年現在で、三十四・五兆ウォンというふうに承知しております。

原口委員 それぐらいですね。つまり、日本でいうと小さな県の一つのGDPぐらいしかないんですよ。そこがどうしてこんなにミサイル、核を開発できるか。どこからこのお金が来ているか。この間の委員会では、外務大臣と、中国、石炭の輸出ですね、中国はとめているかどうか、三月分の推計がもうじき出てくると思いますから、それを見て、本当に実効性が上がっているかというのを僕らは検証しなきゃいけない。

 それに加えて、資料二をごらんください。

 これは、私たちは反対したんですよ。「北朝鮮系信用組合の破綻処理の概要」。

 きょう、金融庁、来てもらっていますけれども、これは朝銀ですね、拉致議連でも、こういうものに公的資金を入れていいのか、結果、我が国の税金が北朝鮮に渡り、ミサイルや核の開発に使われるんじゃないか、こういう懸念を数次にわたって表明をしてきました。

 金融庁に聞きます。

 北朝鮮信用組合の破綻処理における公的資金の投入実績、回収の状況はどうなっているのか。

 それから、これは外務大臣にも聞きますが、これは本当の日本の金融機関ですか。そうですか。朝鮮総連と一体になっているんじゃないんですか。

 北朝鮮系の信用組合から北朝鮮に送金されているという事実はないのか。

 この三点について聞きます。

西田政府参考人 お答えいたします。

 預金保険機構におきましては、預金保険法に基づきまして、日本の他の金融機関と同様に、破綻した北朝鮮系信用組合、十六組合の預金者保護のために、受け皿金融機関に対して一兆一千四百四十三億円の金銭贈与を実施しております。

 なお、この金銭贈与につきましては、破綻した金融機関の預金者を保護するために、その債務超過を解消すべく、受け皿金融機関に対して実施されているものでございまして、その後、回収を図っていくという性格のものではございません。

 また、預金保険機構から委託を受けました整理回収機構が、破綻した北朝鮮信用組合の不良債権を二千九億円で買い取っております。この買い取った不良債権につきましては、整理回収機構が預金保険機構と連携しながら厳格な回収に努めているところでございまして、二十八年三月末現在で二千五百八十七億円の回収を行っているところでございます。

岸田国務大臣 北朝鮮系の信用組合については、御指摘の経営破綻の責任追及の過程において、朝鮮総連への不正な資金の流れが明らかになったと承知をしております。これらを踏まえ、金融庁において厳格な捜査、監督を実施しており、朝鮮総連からの経営の独立性が確保されているものと承知をしています。

 また、北朝鮮系信用組合に対しては預金者保護の観点から公的支援が行われましたが、北朝鮮系信用組合を含めた全ての信用組合は、北朝鮮に送金することができないものであると承知をしています。

 現時点において、朝鮮総連が北朝鮮系信用組合の経営に関与していることや、北朝鮮信用組合から北朝鮮に資金が流れていることは確認はされていませんが、引き続き、関係省庁と連携しながら、これは適切に対応していかなければならないと認識をいたします。

原口委員 皆さん、二ページをごらんになってください。

 今、金融庁が答えましたね。公的資金を一兆一千四百四十三億円入れて、これは返ってこないですよね、返ってこないんですよ。それから、二千九億円で買い取りして、二千五百八十七億円で売っていますから、差し引き五百数十億円が国庫に入っただけ。先ほど、北朝鮮のGDPが幾らかと聞いたのは、あのGDPでミサイルや核は開発できないはずなんですよ。どこから来ているのか、もっと真剣にやるべきじゃないですか。

 旧経営陣の責任追及、それをごらんになってください。これは僕がつくった資料じゃないですよ、金融庁です。二十二件じゃないですか。いや、どんどん刑事告発しろと言っているんじゃないですよ。たった五件じゃないですか。一兆円を超える国民の税金を入れておいて、そして、このような状況で、しかも、その裁判の中で、朝鮮総連と一体であるということがわかった。当時一体となってやっていたということがわかった。私たちが懸念していたとおりじゃないですか。よく、テロを未然に防ぐとか言っている。しかし、言っていることとやっていることは違うんじゃないかということは、厳しく追及をしておきたいと思います。

 そこで、トランプ大統領、中国が為替操作をしていると言っています。マニピュレート。私たちの政権も批判をされました、おまえらが円高を放置するからいけないんだと。

 外務大臣に伺いますが、中国は為替操作をしているのか。私、限りなくしているというふうに思っていますけれども、その認識。それから、我が方は、それに対して市場に任せているという認識をしています。マニピュレートは日本はしていない。このことについて、二点、お尋ねをします。

岸田国務大臣 中国が為替操作をしているかどうかということについて、特に私、外務大臣の立場ですので、外務大臣の立場から何か申し上げるということ、市場への影響等も考えますときに、これは差し控えなければならないと考えています。

 米国については、トランプ大統領、中国の通貨安を批判したという報道は承知をしております。米国は中国について監視リストに載せていること、これは承知しておりますが、ただ、米国は中国を為替操作国には認定していないと承知をしています。引き続き注視をしていきたい、このように考えます。

原口委員 私は、報道ベースで話しているんじゃないです。トランプ大統領の本をもとにやっています。さっき、スターズ・アンド・ストライプス、米星条旗新聞ですけれども、これは、DODが直接支援している、国防総省が支援している新聞だから信頼性が高いと思ってやっているので、報道ベースで議論しているんじゃない。

 日本はマニピュレートしていませんね、財務省。

田中政府参考人 お答え申し上げます。

 我が国は、G7やG20で合意しているとおり、為替レートは市場において決定されるべきこと、通貨の競争的な切り下げを回避すること、競争力のために為替レートを目標にしないことについてコミットしておりまして、為替操作は行っておりません。

原口委員 当然だと思うんですよね。

 よく、通貨が安けりゃいいと言う人がいるけれども、私はそれはかなり一方的な、日本がかつて輸出大国であったときの考え方であって、ヨーロッパの政治家と話すと、やはり自国通貨は強い方がいいと言うんですよ。それはそうでしょう、みずからの通貨が強くて信認を受けているというのは国力そのものですから。その国力をわざわざ弱めるというようなマニピュレートをする必要は僕はないと思っている。

 きょうは、ちょっと国力についても議論したいと思います。

 外務大臣に通告をしておきましたが、皆さんのお手元の資料一をごらんになってください。これは大変深刻な、いや、しかし、見方によってはピンチをチャンスに変える数字です。生産年齢人口です。

 日本のところをごらんになってください。主要先進国の中で生産年齢人口が最低となる、しかも急激な落ち込みを示している。国力がまさに労働の生産によると仮定をすると、これは大変深刻な数字です。

 しかし、これを、仮に、今十五歳から六十四歳の生産年齢人口なんですが、二十歳から七十四歳にとってみる。そうすると、点線のところをごらんになってください、日本は先進国の中でもトップに躍り出る。つまり、働ける人たちの年齢を健康で高齢な人たちにまでシフトする。そうすると、私たちは、それでも急速な減少なんですけれども、そのショックを和らげることができ、国力をある一定以上維持することができる、このように考えているんですが、外相の御所見を伺いたいと思います。

岸田国務大臣 まず、いかなる国であっても国力を支えるのは経済であり、生産年齢人口の減少は日本経済が直面する重要な課題の一つであると認識をいたします。

 御指摘のように、十五歳から六十四歳という形で生産年齢人口を考えた場合に、日本は他国に比べてかなり厳しい数字になる。一方で、七十四歳までとった場合には、他国と遜色がない、逆に有利である、こういった御指摘がありました。

 これは資料でありますので、そのとおりであると認識をいたしますが、そういったことを考えますときに、我が国として、やはり国民にとって高齢になっても生き生きと働ける、こういった環境を整備していくという政策を進めていく、こうしたことの重要性も感じるところであります。

原口委員 丁寧な御答弁、ありがとうございます。まさにそのとおりです。

 ただ、このようにするためには、かなり大きな政治力が要りますよね。年金をどうするかとか、それから働き方をどうするか。このためには、与野党共通のプラットホームをつくって、そして早目に備えなきゃいけないというふうに思っています。

 報道を見ると、やはり対立ばかりが目立つような報道ですけれども、私たちは民主党をつくったときに、安全保障で国が割れるということは弱い国なんだ、むしろ、右か左か、保守か革新かではなくて、同じテーブルをつくって危機に対応していこうとやってきたわけです。この労働についても、同じことを与党の皆様にもあるいは野党の皆様にも提案をしたいと思います。

 さて、領土問題について議論をしていきたいと思います。ロシアです。

 ロシアに入る前に、ロシアの皆さんに、先日、サンクトペテルブルクの地下鉄で起きたテロ、犠牲になられた方々に心から哀悼の誠をささげて、ロシア国民にお見舞いを申し上げたいと思います。テロは断じて許せない。

 その上で、少し外務大臣と議論をしていきたいと思います。

 プーチン大統領は、日ロはいかなる領土問題も全く抱えていない、領土問題があると考えているのは日本であると発言しています。外務大臣の御認識を伺いたいと思います。

岸田国務大臣 プーチン大統領は、昨年末の日ロ首脳会談後の記者会見においても、最も重要なのは平和条約の締結であると明確に述べております。

 そして、平和条約交渉の中核は、北方領土問題であり、領土問題そのものであると認識をしております。

原口委員 外務大臣、私の質問に答えてください。

 若いころから机を並べて一緒に勉強させていただきました。外務大臣が当選された選挙で私は五百票差でおっこちましたから、帰趨はあれですけれども。覚えておられますか、ベトナムに御一緒したとき。あのときベトナムは新しい首相にかわる、その人たちにたくさんの、あのときアメリカからも、名前は言いませんけれども、彼に何とか詣でをやっていましたね。非常に戦略的にタフにやらなきゃいけない。向こうが言っていることについてはきっちり打ち消しておかなきゃいかぬのですよ。

 今おっしゃいました平和条約ですけれども、平和条約について、昨年十二月の日ロ首脳会談の場において、プーチン大統領等から、対ロ制裁下にあって平和条約は締結できないという趣旨の発言があったんじゃないですか。事務方で結構です。

宮川政府参考人 お答えいたします。

 昨年十二月の日ロ首脳会談の場におけるプーチン大統領、対ロ制裁下にあって平和条約は締結できないという趣旨の発言があったのかという点でございます。

 安倍総理は、昨年十二月に訪日したプーチン大統領と平和条約の問題について二人だけで交渉を行い、その結果、平和条約問題を解決する両首脳の真摯な決意が声明に書き込まれました。プーチン大統領自身も記者会見で、最も重要なのは平和条約の締結であると明確に述べておりました。成果を上げたと考えております。

 首脳会談でのやりとりの詳細については、恐縮ながら、事柄の性質上、また相手との関係もございますので述べることは差し控えさせていただきますが、政府として、我が国の国益に資するように、日ロの関係を進めていく中で、北方四島の帰属の問題を解決して平和条約を締結するとの方針に変わりはございません。

原口委員 アメリカの議会でそんな答えをしたら、とまりますよ。

 交渉の中身を言ってくれとなんか一言も言っていません。向こうが言っていること、領土問題は存在しないと言っているじゃないですか。最近に至っては、日本は敗戦を受け入れてもいないんじゃないかとまで言っているじゃないですか。

 私は、こういうものに対してはきっちり打ち返しておくべきだと思っているんです。

 ここにいらっしゃる皆さんは、ずっと北方領土返還に力を尽くしてこられた方々だからおわかりになると思いますけれども、領土問題を私たちの先達が長年かけてあのロシアに認めさせたんですよ。それがイルクーツク宣言であり東京宣言でしょう。プーチン大統領は、それに署名しているわけでしょう。四島の帰属の問題を解決して平和条約にということを彼自身がサインしているわけでしょう。

 サインしている人間が、領土問題は全く抱えていないとどの口で言うんだということを言わなきゃいけないんじゃないですか。もう一回答えてください。

岸田国務大臣 先ほども申し上げたように、平和条約交渉の中核は、北方四島の帰属の問題、すなわち領土問題そのものであると考えます。

 そして、私も、外相会談の場でラブロフ外相に対しまして、北方四島について第二次世界大戦の結果あたかもロシアの領土になったというような発言等、我々として受け入れられない発言については、はっきりと、しっかりと反論をしております。大変激しい議論を、就任した直後の日ロ外相会談以降、たびたび行ってきた次第であります。

 反論は、そうした会談の場等においてしっかりと行っております。

原口委員 外相が、しっかり行っていると、きょう明言されましたから。

 事務方で結構ですから、まさにそのイルクーツク宣言、東京宣言が結ばれた以降に、ロシアの大統領が領土問題は存在しないなんということを言った事案はありますか。あったら教えてください。これはもう通告していますけれども。

三ッ矢委員長 答弁をお願いします。

 宮川大臣官房審議官。

宮川政府参考人 お答え申し上げます。

 イルクーツク声明について御指摘いただきましたが、戦後七十年を経た現在におきましても、北方四島の帰属の問題は未解決でございます。御指摘の二〇〇一年のイルクーツク声明において、九三年の日ロ関係に関する東京宣言に基づき、択捉島、国後島、色丹島、歯舞群島の帰属に関する問題を解決する旨明記し、この点はロシアと確認しております。

 また、安倍総理とプーチン大統領は、二〇一三年四月の共同声明におきまして、イルクーツク声明を含むこれまでに作成された全ての諸文書及び諸合意に基づいて平和条約の締結交渉を進めることで一致しております。

 加えて、昨年十二月の日ロ首脳会議におきまして、両首脳は、平和条約問題を解決する両首脳の真摯な決意を声明に書き込むとともに、北方四島における特別な制度のもとでの共同経済活動に関する協議を、平和条約の締結に至るプロセスの一環として行うことで合意しております。

 プーチン大統領自身、記者会見で、最も重要なのは平和条約の締結であると明確に述べていることを改めて述べさせていただきます。

原口委員 委員長、誠実に答えさせてくださいませんか。

 これは領土の問題ですよ。国家主権の問題なんです。新しいアプローチで、ロシア側から見ますと、外務大臣、領土問題の存在を認めさせられたというのは、彼らにとっては失敗なんですよ、外交の。我が方にとっては、あのロシアにこれだけ認めさせたというのは、それに物すごい長い時間がかかったんですよ、そして私たちの先輩がそこにたどり着いたんです。

 何で答えないんですか。領土問題はないと言っているじゃないですか。そこと経済協力をやるんですか。イルクーツク宣言以降、領土問題がないと言ったロシアのトップの発言を教えてくれと通告しているじゃないですか。

岸田国務大臣 御指摘のプーチン大統領の発言、領土問題はないという発言について、例えば平成二十八年十二月七日、要は、昨年末の日ロ首脳会談直前の時期ですが、日本テレビ及び読売新聞によるインタビューの中で、プーチン大統領は、我々はいかなる領土問題も全く抱えていないと考えている、ロシアとの間に領土問題があると考えているのは日本である、ただ、それに続いて、我々はそれについて話す用意がある、こういった発言があるということは承知をしております。

原口委員 外務大臣、誠実にお答えいただいてありがとうございます。

 発言しているんですよ。物すごく下がっているんですよ。私は、それは是認できないということを、この場をかりてロシアにも言っておきたいと思います。

 先般、シリアでサリンが使用されたと。百人以上の方が亡くなって、そして、そのうちの二十五人以上が小さな子供だったと。化学兵器を使っている。西側諸国はロシアが支援するアサド政権が使用したという立場で、緊急の安保理が開かれましたと認識していますけれども、ロシアはどういう立場ですか。事務方で結構です。

岸田国務大臣 四月四日、シリア北西部イドリブ県で化学兵器を使用したと疑われる攻撃が行われ、多数の市民が死亡したと承知をしております。

 御指摘のとおり、米仏はアサド政権が化学兵器を使用したと説明していますが、ロシア政府は、国防省報道官が、シリアの航空機がテロ組織の化学兵器倉庫を空爆で破壊したことが今回の原因であると説明をしていると承知をしております。

原口委員 日本はどっちの立場なんですか。

岸田国務大臣 日本は、化学兵器が使用されたという事実があるならば、これを強く非難するという発言を表明しております。関係国及び機関による事実の早急な真相究明を期待するという態度であります。

原口委員 多くの国と仲よくするのはいいですよ。

 プーチン大統領はなかなかすごい方で、今アメリカでは、ディープステートというか、リアルディープステートと言いますけれども、戦争や新保守主義と新自由主義、このディープステートが暴走をして、トランプ大統領とプーチン大統領は結束してこのディープステートに当たるんだと、そんな都市伝説みたいな話もある。

 だが、本当に戦争をなくして平和にするというんだったらいいんだけれども、本当に今みたいな答えでいいんですか。ロシアは、クリミアとロシアを結ぶ橋梁を、クリミア大橋をもう完成させているんじゃないですか。クリミアはウクライナの領土でしょう。

 日本政府の立場を教えてください。

岸田国務大臣 ウクライナ情勢等につきましても、我が国としましては、法の支配を重視する立場から、一方的な力による現状変更は認められない、こうした立場であります。

 ウクライナを初めアジアにおいても、力による一方的な現状変更は認めない、国際法に従った法の支配を重視していく、こうした方針は全く変わっておりません。

原口委員 私は、ロシアは、例えば議会を見ていても、非常にハードなことは、副が、バイスが言うんですよね。バイスが言ってアドバルーンを上げて、そして反応を見て、何も反応しなければ、さらに次はトップが言ってくる。非常に外交的にもすぐれた、したたかな国だと思います。

 それは、ロシアの国民にとっては、あの寡頭政治がいいかどうかはロシアの人が決めることなんだけれども、我が方は、しっかり言うべきことを言わなければいけない相手である。それは、外務大臣もお立場だから、直接強い言葉は言えないかもわからないけれども、少なくとも私たち国会は、この領土問題で何が起きたかということはただしておかなきゃいけないし、この場をかりて、ロシアに、第二次世界大戦の結果を受け入れていないのが日本だなんということを言われて、黙っておくわけにはいかないと思うんです。

 第二次世界大戦の結果ということで、五ページをごらんになってください。これがポツダム宣言です。八項、「「カイロ」宣言ノ条項ハ履行セラルヘク又日本国ノ主権ハ本州、北海道、九州及四国並ニ吾等ノ決定スル諸小島ニ局限セラルヘシ」と書いてあるんです。

 この諸小島の中に、北方領土は入りますか、尖閣は入りますか。事務方で結構です。外務大臣を煩わせているわけじゃないんです。

滝崎政府参考人 お答えいたします。

 まず、尖閣の方についてのみお答えいたしますけれども、そもそも、戦争の結果としての領土の処理というものは、最終的には、平和条約を初めとする国際約束に基づいて行われるというふうに理解しております。

 第二次世界大戦の場合は、同大戦後の日本の領土を法的に確定したのはサンフランシスコ平和条約であるというふうに考えており、カイロ宣言やポツダム宣言が日本の領土処理について最終的な法的効果を持ち得るものではないというふうに考えております。

 御存じのとおり、日本は、サンフランシスコ平和条約第二条の規定により、日本が日清戦争によって中国から割譲を受けた台湾及び澎湖諸島の領有権を放棄しましたけれども、尖閣諸島は、ここに言う台湾及び澎湖諸島には含まれていないということであります。

 なぜなら、尖閣諸島は、サンフランシスコ平和条約第三条に基づいて南西諸島の一部として米国が施政権を現実に行使し、また、一九七二年の沖縄返還により日本が施政権の返還を受けた区域にも明示的に含まれているからだということであります。

原口委員 北方領土はどうですか。

宮川政府参考人 お答え申し上げます。

 北方領土につきましては、一九五一年、サンフランシスコ平和条約二条の(c)項におきまして、「日本国は、千島列島並びに日本国が千九百五年九月五日のポーツマス条約の結果として主権を獲得した樺太の一部及びこれに近接する諸島に対するすべての権利、権原及び請求権を放棄する。」ということになっております。

 それに基づきまして、我々は、北方領土については放棄していないという立場でございます。

原口委員 時間が限られていますから、結論だけ言ってください。

 私は、非常にきょう不愉快なのは、事細かく通告しているのに、しかも基本的なことを、これはそらでも言えるようなことを、何でそんなに時間がかかるんですか。妨害していますか。

 尖閣も北方領土も、我が国固有の領土です。

 それでは聞きますが、サンフランシスコ講和条約、これはロシアはどういう態度ですか。

岸田国務大臣 サンフランシスコ講和条約には、ロシア、当時のソ連は参加していないと承知をしております。

原口委員 そうなんですよね。だからこそ、私たちの先達が長い時間をかけて領土の返還ということをやってきたわけです。彼らに、一歩一歩、国際法と正義に基づいて、我が国の領土を返すように、不当に占拠しているものを返すようにということをやってきたわけです。

 では、尖閣について伺いますが、この間、十二月ですか、安倍総理がトランプ大統領にお会いになったときに、トランプ大統領は、尖閣は、安保条約第五条、この五ページに書いています第五条に基づく、その範囲の中だという趣旨の発言をされたと聞いていますが、事実関係を事務方に聞きます。

滝崎政府参考人 お答えいたします。

 二月の日米首脳会談の後に日米首脳共同声明というものが出ておりまして、そこに、「日米安全保障条約第五条が尖閣諸島に適用されることを確認した。両首脳は、同諸島に対する日本の施政を損なおうとするいかなる一方的な行動にも反対する。」というふうに記述されております。

原口委員 それは日本の、ここに書いてありますね、第五条をごらんになってください。「各締約国は、日本国の施政の下にある領域における、いずれか一方に対する武力攻撃」と。つまり、これは施政権なんですね。日本の施政権が尖閣に及んでいるということを言っているにすぎず、これで日本の新聞とかは大喜びしたんですけれども、別に大喜びするような話じゃなくて、クリントンさんも言った、オバマさんも言っている、当たり前の、安保条約第五条をそのまま当てはめたにすぎず、そんな喜ぶような話じゃないんですよ。

 もっと先があって、領有権です。領有権が日本にあるということは明らかですね、尖閣について。

岸田国務大臣 尖閣諸島は我が国固有の領土であり、そもそも領有権をめぐる問題は存在しないというのが我が国の立場であります。

原口委員 失礼しました。

 つまり、領土の問題を議論するときに、施政権と領有権、この二つで議論をしなきゃいけない。

 アメリカはこのポツダム宣言の当事国であったと承知をしていますけれども、事務方で結構です、そうですよね。

滝崎政府参考人 そのように理解しております。

原口委員 とすれば、今お手元のポツダム宣言の八項、この「諸小島」、これに尖閣が入っているという認識をアメリカは表明しても何もおかしくない。日本の領土であるということを表明しても何もおかしくない、そう考えるんですが、私の方がおかしいでしょうか。

滝崎政府参考人 お答えいたします。

 先ほども申し上げましたように、戦後の領土の処理としての文書というのはサンフランシスコ平和条約というものですので、このポツダム宣言の文言をとって、これがいかなるものかというふうに御説明するのはちょっと差し控えたいというふうに思います。

原口委員 ということは、サンフランシスコ講和条約で我が国の領土というのは確定した、カイロ宣言とかポツダム宣言というのは戦勝国の我が国の領土処理の一つの手順を決めたにすぎず、確定したのはサンフランシスコ講和条約だと。

 それにしても、では聞き方を変えますが、サンフランシスコ講和条約によって尖閣諸島は我が国の領土であるということが確定した、こういう認識でいいですね。

滝崎政府参考人 お答えいたします。

 そもそも、先ほど大臣からも御答弁申し上げたように、尖閣諸島は我が国の固有の領土で、別に、サンフランシスコ平和条約の前からもう我が国の固有の領土であったということでありますけれども、先ほども申し上げましたように、サンフランシスコ平和条約の第二条(b)によって日本がその領有権を放棄した台湾及び澎湖諸島には含まれていないということですので、何ら、サンフランシスコ平和条約によって尖閣諸島が我が国固有の領土であるということに変更があったということではないということであります。

原口委員 つまり、もともと日本の領土であって、議論の余地がない、そういうことですね。

滝崎政府参考人 そのような理解で差し支えないと思います。

原口委員 ということであれば、アメリカ政府も、同盟国として、施政権のみを言うのではなくて、我が国固有の領土であるということを認めればいい。

 外務大臣、私は、東ドイツのことをよく思います。東西冷戦の時代に、ある意味、ソ連に最も忠実だった国、東ドイツ。その東ドイツが、ベルリンの壁が崩壊をし、ソ連邦が崩壊をするときに、どういうことになったのか。我が国の領土を守る、我が国の主権を守るということができるのは我が国だけである。

 先ほど申し上げたように、今、それは同盟国アメリカは大事にしなきゃいけません、しかしアメリカにもアメリカの事情がある、そして二〇〇一年からしても、十六年間戦争を継続している。日本は、日中戦争から十五年で敗戦を迎えました。十五年戦争を続けるということが、どれほど国に対して大きな負担をかけるのか。

 だから、我が同盟国がどのような状況にあるのかということはきっちり議論をしながらやっていかなきゃいかぬということを申し上げたいし、メイ首相がトランプ大統領と会見をしたときに、もう世界の警察官、そういったことについてやる時代が終わったんだと言ったことは大変大きなことだと思います。二百年続いた、英米の、彼らがルールをつくり、彼らが世界の安定を図っていた時代に大きな変革が来ている。

 だから、我が国が構想力を持って、アジアをどうするんだ、我が国が世界をどうするんだということを主体的にやるべきだということを申し上げ、委員長にお願いしますが、領土問題についてもぜひ集中的な審議をお計らいいただければということを申し上げて、質問を終わりたいと思います。

 ありがとうございました。

三ッ矢委員長 次に、中川正春君。

中川(正)委員 続いて質問をしていきたいというふうに思います。

 まず、韓国なんですが、きょうの朝刊、あるいはここ一日、二日報道されて、私も、やはりこういうことかということで非常に落胆を持って見ているんですけれども、長嶺大使が帰任をして、それで、洪容杓統一相、それから韓民求国防相、黄教安首相はもちろんのことですが、この辺に面会を希望しても会えないという状況が続いているということでありますが、大臣、どういうふうにこれを受けとめられておりますか。

岸田国務大臣 まず、報道がさまざま出ているのは承知しております。ただ、御指摘のような報道の内容、そんな事実は全くないということは申し上げておきたいと思います。

 引き続き、大統領権限代行への表敬も含めて、調整を行っていると承知をしております。

中川(正)委員 まあ、いつかは会えるんでしょう。だけれども、それこそ何のために今のタイミングで帰任させたかというのは、大統領選というのが迫ってきていて、どうも情勢からいくと日本に対して非常に厳しい政権ができてくる可能性もあるという中で、何とか日本の状況を説明していく必要があるだろう、そんなことを記者会見あるいはいろいろな機会に大臣自身も言っているということ、これを私も理解するんですよ。

 基本的に、日韓の関係というのは非常に難しい部分が指摘されるんですけれども、国内の問題、特に歴史問題とか従軍慰安婦の問題というのは国内の政治課題としてあって、それが外交を向いて反映される。逆に言えば、見方によっては、それこそ国内のそうした外交の課題を政治が利用して、国内の支持を得ていこうとするような動きもある。これは、韓国だけじゃなくて日本も、そうした意味では同じようなことを繰り返してきて、ある意味での稚拙さというか、外交問題に対するトータルな国益に向けての誘導というのが政治ができない。そういう状況が、特に日本と韓国の間のこれまでの歴史の中にあったんだというふうにつくづく思うんです。

 それだけに、前に申し上げたように、今回の大使のまず召還そのものが私は間違いであったというふうに思います。

 国内の問題としては、韓国国民の感情の反発というのを助長してしまって、韓国政府の立場をより難しいものにしてしまった。新しい政権が日韓両国政府の合意をほごにするということを候補者それぞれが言っていますけれども、それを、それこそ国内的に容易にしてしまう、日本はこういうことだからこれまでの合意そのものもほごにするんだということを国民が受け入れやすいような環境をこのタイミングでつくってしまったということでしかなかったんだと私は思います。

 そういう意味で、これからの日韓関係を進めていく上で、絶えず、特にこの歴史問題については、あるいは従軍慰安婦の問題については、国民にどう日本政府として説明をしていくのか、国民をどう納得させていくのか、韓国の国民をですよ、というところにしっかり戦略的なものを持たないと、同じようなことを繰り返していくんだろうというふうに思います。

 それが私の結論です。反省をしてください。これは間違っていたというふうに思います。

岸田国務大臣 まず、一昨年末の日韓合意については、慰安婦問題が最終的かつ不可逆的に解決される、これを両国政府の間で確認をしました。にもかかわらず、我が国の公館の前に慰安婦像が新たに設置された事態は極めて遺憾なことだと考えています。そして、そのことをしっかりと示すこと、意思表示すること、これは大変重要なことであると考えます。

 ことし一月の長嶺大使の召還については、こうした我が国の抗議の意思をしっかりと示すという意味において重要であったと思います。この合意の重要性について、両国の国民にも、さらには世界に向けて、しっかりと示していく、こういった態度は重要であると思います。

 今後も、この日韓合意の重要性、世界が評価したこの日韓合意の重要性はしっかりと訴えていかなければなりませんし、履行の重要性も訴えていかなければなりません。

 三月の十六日に行われました日米の外相会談においても、この日韓合意の重要性について私からティラソン国務長官に説明をし、その会談後の記者会見において、ティラソン国務長官も、この日韓合意を支持すると明言されました。この問題、両国の国民、そして世界に向けて、これからも重要性を訴えていくことは重要なことであると認識をいたします。

中川(正)委員 それは当然です。そんなことを否定しているんじゃないんですよ。重要性の訴え方が間違っていると言っているんですよ、訴え方が。

 だから、韓国政府もその重要性を意識して、そして撤去をさせたいということで国民に対してメッセージを発していたじゃないですか。だから、そのことを前提にしたこちらのメッセージの発し方というのを考えないといけない。ただやみくもに世界に対して我々のポジションだけを訴えるということではだめなんだ。韓国の国民の中に理解されるような手段というものを考えていかなきゃいけないんだということ、このことを指摘しておきたいというふうに思います。

 次に、ミサイルが何回も発射をされてきています、北朝鮮の話でありますが。

 大体報道されるベースというのは、私もこれは見れば見るほど不安になってくるんですが、アメリカの太平洋軍がNHKの取材に対してとか、あるいは韓国の軍の方がそれこそそれぞれのメディアを通じてとかという形で、情報源というのが日本のメディアに載ってくるのに、自衛隊がなかなか出てこないんですよね、当事者が。そのことと同時に、日本の自衛隊としてどこまで予知ができているのか。

 客観情勢の中で、北朝鮮がミサイルを発射するよということを事前に言えば、それは予知としてこちらの方も準備ができるわけでありますが、そうでないケースというのがほとんどで、それに対しては、撃ってから、それこそ着地して、もう全てが終わってから日本の国内でアラートという形で警戒態勢をとれよ、今はそういう体制になっているので。それと同時に、マスコミから出てきている情報というのは、自衛隊からではなくて、どうもアメリカ軍だあるいは韓国だというふうなことで、情報源を外に求めている。こういう客観情勢を見ていると、ここの部分について自衛隊は本当に大丈夫なのかなということを思うのは私だけじゃない、国民もそこのところは一番大事な部分として感じているんだろうと思います。

 そこを、当事者としてここに来て、制服組がちゃんと納得できるように説明しなさいよと申し上げたら、いや、制服組はここに来ないんだということなんですが、防衛省、なぜ制服組が国会で説明ができないということになっているんですか。

若宮副大臣 お答え申し上げます。

 今委員の方から御指摘がございました、北朝鮮のミサイル発射にかかわる形での制服組の国会での答弁ということへの御質問かと思います。

 国政につきまして幅広い議論が交わされているのがこの国会の場であろうかとも考えておりますが、大臣あるいは私ども副大臣を初めといたします政務がまず基本的には行うとともに、政策的な見地から大臣を補佐する立場であります官房長あるいは局長等、また、改編後の統合幕僚監部におきましては、政策的な知見を有する総括官といった文官が行うということになってございます。

 統合幕僚長等につきましては、引き続き、大臣を軍事的な専門的な見地から補佐する者という位置づけとなってございまして、主に自衛隊の運用を初めとする部隊の管理ですとかその運営に専念をさせたいというふうに考えているところでございます。

 また、当然、自衛官の国会答弁の必要性につきましては、あくまでも国会におきまして御判断をされるべき事項になろうかというふうに考えているところでございます。

中川(正)委員 国会で判断しろという話ですから、これから具体的なことについてはぜひ制服組も出てきて、いわゆるクレディビリティーというか信頼性というのは、その方がしっかり国民にも発信ができる部分があるんだろうというふうに思うので、そのときには、ひとつ考慮をいただきたいというふうに思います。

 その上で、防衛省は、予知というのは、それぞれのミサイルについてどれだけできているんですか。

若宮副大臣 先ほど委員も言及をされておられましたが、北朝鮮のミサイルが、これから撃ちますよという宣告があったこともございました。しかしながら、昨今、確かに、御指摘のとおり、なかなか、いついつどこからこういう形で撃ちますよという宣言がなされずに、弾道ミサイルの発射に関しまして、いわゆるTELと言われます発射台つきの車両ですとか、あるいは潜水艦を活用することで、先方からしますと、その詳細な発射の位置や発射のタイミングというもの、個別具体的な兆候というのを事前に把握されにくくするために、私どもとしてもそれを追求しているものというふうにも考えているところでございます。

 こうした状況を踏まえまして、防衛省といたしましては、平素より、電波情報ですとかあるいは画像情報、公開情報等の収集と、それからまた分析、また、アメリカそしてまた韓国を初めといたします関係国との連携によりまして、ミサイルの発射の兆候を含みます北朝鮮の動向の把握には努めているところでもございます。

 ただ、個別の弾道ミサイルの発射の兆候をどういった形でどの程度把握をしていたか、あるいはしているのかという具体的な内容につきましては、私どもは、我が国の情報収集能力というものが明らかになりかねないということから、お答えは差し控えさせていただければというふうに考えております。

中川(正)委員 これは、ああいう答弁があれば、いや、できていないんだなということになりますよ、受けとめる方は。だから、できていないんだとすれば、どういう形でそれに対応していくか、これからの課題として何があるのか、これはやはり、我々にしっかり説明をした上で体制を整えていくべきだというふうに思います。そのことを指摘しておきたいというふうに思います。

 同時に、そういうことも相まってということなんだろうと思うんですが、最近の情勢の中で、自民党の方から、敵基地攻撃能力というのを保持すべきだというような議論が突然出てきました。これはかなり乱暴な話だと思うんですが、憲法との関係あるいは日米安保との関係等々含めて、十分に下地をつくって、その上で、いろいろな選択肢というのを国民の方も一緒に考えていくというような、そういう経緯が要るんだろうというふうに思うんです。

 そのことも含めて、防衛省はこれをどう受けとめているのかということを確認しておきたいと思います。

若宮副大臣 北朝鮮が、昨年は二回の核実験を強行したことは、委員も御承知のところだと思います。また、二十発以上にもわたります弾道ミサイルの発射をいたしております。まさにこれは、新たな段階の脅威となっているのではないかなというふうに認識をいたしておりますところでございます。

 ことしに入りましてからも、三月の六日には、四発の弾道ミサイルをほぼ同時に発射をしまして、そのうちの三発は、我が国の排他的経済水域内に、そしてまた残りの一発は、排他的水域付近に落下をしてございます。こうした北朝鮮の新たな段階の脅威であることは、これは明確であろうかというふうに考えているところでございます。

 また、直近では、四月の五日に、北朝鮮はまたもミサイルの発射を強行いたしました。これは、我が国及び地域の安全保障に明らかな挑発行為でありまして、断じて容認できるものではないというふうに認識をいたしてございます。

 こうした中、自民党の安全保障調査会の弾道ミサイル防衛に関する検討チームの皆様方から、我が国独自の敵基地反撃能力の保有の検討開始についての提言を含みます、弾道ミサイル防衛の迅速かつ抜本的な強化に関する提言の提出というものを受けました。

 いかなる事態になりましても、私ども政府といたしましては、国民の命とそしてまた平和な暮らしを守り抜くということが最も重要な責務だというふうに考えております。防衛省といたしましても、この自民党の方からの提言というものはしっかりと受けとめたいと考えております。

 いずれにいたしましても、我が国を取り巻く安全保障環境、委員も十分御承知のところだと思いますけれども、一層厳しくなっている中、やはり日本とアメリカとの間の適切な役割分担に基づきまして、日米同盟全体の抑止力を強化した上で、国民の生命と財産を守るために私ども日本としては何をすべきか、こういった観点から、常々、さまざまな検討を行っていくべきものではないかなというふうに考えているところでございます。

中川(正)委員 私は、順番は逆だというふうに思います。

 まず、これは政治的に、さっき申し上げたような憲法との関係、これの整理をやはり我々国会ですべきだと思います。それを自民党は、政府に持っていくんじゃなくて、国会の中に提議するんだったら提議をすべきだというふうに思うんです。それが一つ。

 それからもう一つは、安保ですね。アメリカとの間では役割分担がこれまであって、日本は専守防衛、盾と矛という形であるとすれば盾の方を日本はしっかり、憲法の範疇の中ということもあって、それからもう一つは、平和国家という名をもってするのであれば盾に徹するんだ、そのメッセージを含めて選択をしてきたんだと思うんですね。

 日本も攻撃能力を持つということは、日本の領土にアメリカ軍が駐留する今の状況の中で、アメリカにかわって日本が先制攻撃をする能力を持つということになれば、安保は要らないんじゃないか、駐留米軍もグアムまで引き揚げてもらっていいじゃないかというような、そんな議論にもこれは結びついていく可能性がある。

 それから、もう一つ言えば、巡航ミサイルであるとか長距離の爆撃機、攻撃用のものを持つということは、今、せっかくアメリカが、その費用負担をして、日本を守ってくれているにもかかわらず、日本もこうした武力あるいは武器をアメリカから購入して、その予算措置をして、それでやっていくんだという覚悟、そういうようなものがこれは前提になっているんだと思うんです。

 こういうのは、さっき防衛省が、もし、自民党の提言に従って検討しますよという、何となくその意思表示のような答弁があったんですけれども、その防衛省の検討の前に、やはり政治的にちゃんと整理をするということ、これが自民党に課せられたことなんだろうというふうに思います。

 そうした意味で、特に安保との関係で、大臣、この動きを大臣はどのように受けとめられていますか。

岸田国務大臣 政府として、また政治として、国民の命や暮らしを守るという課題について絶えず真剣に検討し続けることは大変重要なことであると思います。

 ただ、政府の立場からは、敵基地攻撃について、現在、能力も持っていないし計画もないということであります。

中川(正)委員 政府の立場とさっきの防衛省の答弁とは、私は違っているように思います。ここは精査をして、もう一回しっかり詰めていく必要があるというふうに指摘をしておきたいというふうに思います。

 時間的に詰まってきていますので、もう一つ、話題をかえて質問をしたいというふうに思います。

 ちょっと順番から飛んでいって、NGOなんですが、NGOに対する支援条件というのが、平成二十九年度の日本NGO連携無償資金協力の申請の手引というのがあるんですが、その中で、これまでソフトとハードを組み合わせてやってきた、特にソフト部分というのはこれから非常に重要だというふうに言われてきた支援なんですけれども、これが、ソフト中心の事業は受け付けないという形で、否定されているんですね。

 それに対して、対象になるNGOの皆さんが、ここは言っていることとやっていることが違うじゃないかと。外務省から直接出てくる無償資金協力、NGOを通じてということですが、N連というものですけれども、これはまさにソフト事業を中心にやっていくべきものであるにもかかわらず、ハードでしか使えないというのはとんでもない話だということで、言っていることとやっていることが違うという指摘がNGOの中から出てきているんですけれども、外務大臣、これはどうなっているんですか。

岸田国務大臣 まず、我が国政府の基本的な考え方ですが、開発協力大綱に明記されているとおり、我が国は、インフラなどのハード面のみならず、人づくりなどのソフト面の支援も組み合わせることで、日本の持つ強みを生かした協力を行うこととしています。また、現場の多様なニーズを把握し、きめ細かな対応ができるNGOとの連携強化、これも重視しております。要は、ハードもソフトも重要であるというのが基本的な認識です。

 そして、御指摘の日本NGO連携無償資金協力は、従来から、これはソフト面中心の事業ではなくして、施設整備や機材供与といったハード面中心のNGOの取り組みを支援する事業として実施してきました。

 一方、ソフト面中心の支援は、他のODA事業において、すなわち、JICAの草の根技術協力事業において実施をしており、御指摘の今年度の手引における記述ですが、こうした従来からの運用を変えるものではなく、事業間の重複がないことを明確にするというものであります。よって、これは後退するといったような御指摘には当たらないと認識をしております。

 今言った考え方、そして運用のあり方につきましては、これからもしっかりと丁寧に説明をしていきたいと思います。より効果的なNGOとの連携のあり方について検討を続けていきたい、このように考えます。

中川(正)委員 これは大事なところなんですが、担当者としてはその意味合いというのはわかっていたんだろうと思うんだけれども、事務方に聞いたら、財務省に分けろと言われて、分けろということは、外務省で直に行くのと、さっきお話の出たJICAの部分を性格を分けろ、片方はハードで、片方はソフトだというふうに言われて、このようになってしまったという言いわけをしていました。

 これは、使う方としては非常に困る。困るということは、普通、一つの事業、効果的にいこうと思ったら、ソフト中心にして、それにハードをつけていくとかいうような形で、組み合わせを主眼にしたものなんですね。ところが、ここで、ソフト中心の事業は対象としません、これは私、今、申請の手引というのを持っているんですが、そのようにはっきり書いてあるんですね。

 ということで、もう一回これは見直していただいて、外務省が出す直接のODAというのは、特にソフトと組み合わせて、戦略的に、いわゆる外務省の持っている課題を解決するということを含めた、戦略的なNGOの活用の仕方あるいはNGOとの連携の仕方ということが非常に重要なポジションになってくるというふうに思うんです。それだけに、ここをソフトを外すというのは私は間違っているというふうに思います。ということを一つ指摘しておきたい。

 それからもう一つは、海外に行って、日本のNGOとそれから欧米から来ているNGOの活動等々、一緒に接してやる場面というのは多いんですけれども、やはり基本的な規模と、それから戦略的な地域への入り込み方等々やろうと思ったら、それなりのベースをつくっていかないと、なかなか小さなところでは思うようにいかないというような、そういう局面に何回も私は遭いました。

 それだけに、欧米方式の、ここで評価委員会からも指摘をされていますが、ブロックグラントというんですか、グラント方式ですね、ある意味で、具体的なプロジェクト単位の支援ではなくて、そのNGOが持っている活動の目的トータルに対してグラントするというような、だから、育てるというんですね、ベースから育てるというような金の出し方というのが必要なんだろうというふうに思います。

 そのこともあわせてちょっと大臣の意識の中にしっかりとどめおいていただいて、対応をいただきたいというふうに思います。特に最初の部分については、運用のところでやりますよと言っていただければありがたいと思います。

岸田国務大臣 御指摘の点については、事業間の重複がないことを明確にするということから対応したものでありますが、先ほど申し上げたように、我が国としまして、NGOの活動、これは大変重要であると認識をしております。

 より効率的なNGOとの連携が可能になるためにはどうしたらいいのか、そういった視点から、御指摘の点についてもよく検証してみたいと思います。その上で、あるべき姿について判断をしていきたい、このように考えます。

中川(正)委員 終わります。

三ッ矢委員長 次に、小熊慎司君。

小熊委員 民進党の小熊慎司でございます。

 ちょうど、本日はアメリカにおいて米中首脳会談が行われているところでありますが、この委員会の開催中に、海外の報道でもまだ詳細は伝わっておりませんが、報道によれば、アメリカがシリアに七十発以上の巡航ミサイルを発射して攻撃をしたというニュースが飛び込んでまいりましたけれども、まずは、この点について今どのように情報を把握しておられるのか、お聞きをいたします。

岸田国務大臣 御指摘のように、米国は、ホムス近郊、シリア西部ですが、ここにあるシリア空軍基地に対してミサイル攻撃を実施したという情報、私も、先ほどメモが回ってまいりました、承知をしております。

 現在、事実関係、詳細について確認中でありますが、あわせて、CNNによりますと、トランプ米大統領がシリアへの軍事介入に関して国民向け演説を行うという報道もありました。演説が既に行われたのかどうか、ちょっと今まだ確認しておりませんが、そういった報道が流れていることを承知しておりますし、我が国としましても事実関係の確認に今全力で取り組んでいるところであります。

小熊委員 日米関係は重要な同盟関係であって、これは強固にしていかなければいけないと常日ごろ、これは党派を超えて思っているところでありますけれども。特定の軍事行動を事前に日本にお知らせすることがあるということはないとは思いますが、とにかく、アサド政権に対してトランプ大統領は一線を越えたと。この化学兵器の使用に関して。

 非常に強いメッセージを発しておられましたから、こうしたアメリカ政府の対応について、あり得る選択肢だというふうには、外務大臣、外務省として、日本政府としては想定はされていましたでしょうか。

岸田国務大臣 シリアにおける化学兵器の使用については、オバマ前政権の時代に、化学兵器の使用はレッドラインを越えるものであるというような発言をしていたと記憶しております。そして、トランプ現大統領は、オバマ政権が、化学兵器の使用はレッドラインを越えるものであると発言しておきながら、それに対して対応をしていないということについて批判をしていたということは記憶しております。

 そうした米国内でのさまざまなやりとりがあったことは、私としても認識をしているところであります。

小熊委員 そうした認識を大臣は持っておられたということであれば、一線を越えたということで、こうした軍事行動も大臣の中ではあり得るんだろうなというふうに思っていたというふうに受けとめてもよろしいですか。

岸田国務大臣 先ほどのような米国内での発言、やりとりについては承知をしておりました。そして、あわせて、平素から日米の間においてはさまざまな意思疎通は行ってきました。

 ただ、我が国として、それについてどう考えていたのか、どう対応しようとしていたのかなど、その点については明らかにするのは控えたいと思います。

小熊委員 いや、私は、攻撃をする、その認識があったかどうか、想定に入れていたのかどうか。我々が協力するとかじゃなくて。これはデッドラインを越えた、一線を越えているということでありますから、そうした行動をとるだろうというのは想像にかたくなかったと思うんです。

 アメリカもこれだけのミサイルを発射しましたから、今後のシリア情勢の変化というものはしっかりと情報を把握しなければなりませんし、今回のアメリカの軍事行動についてもこれは速やかに情報把握はしなければなりませんが、今後、シリア情勢の変化、どういったものがあるのか、現時点において想定し得る範囲内でどういった対処を日本政府としてはしていくのか、お聞きをいたします。

岸田国務大臣 現地の具体的な動きについては予断することは困難であるとは思いますが、シリアの問題については、たしか、化学兵器が使われたのではないかというこの事案が発生した後、国連の安保理におきまして、この問題は既に議論が行われていたと承知をしております。そして、これに向けての決議の採択に向けてやりとりが続いていたと承知をしております。

 まずは、こうした国連の安保理の場において、我が国も理事国の一国でありますので、国際社会の対応、議論にしっかり貢献をしていかなければならないと考えます。そうした国連の場等も通じながら、情報収集、分析に努めていきたい、このように思います。

小熊委員 これは、ぜひしっかりとした対応をこれから行っていただきたい。また、非常に緊張感を持って臨んでいただきたいというふうに思います。

 では、質問に移りますが、がらっと変えまして。

 日米同盟の重要性というのは先ほども述べさせていただきましたが、過日、この委員会においても、同僚の吉良議員が、日米同盟、日米関係についてやりました。その中で、外務大臣からも、いろいろなレベルで同盟関係を強化していかなきゃいけない、経済協力、文化交流。議員外交もその役割を果たしていくみたいな話もありました。

 当委員会の所属メンバーのみならず、与野党を超えて、さまざまな立場、委員会ごとの海外調査もあれば、党、組織、また個人、また超党派の議連等でもあります。

 また、本日は、新藤筆頭も渡米をされて、栗林中将のお孫さんとして行かれるということで、これはもう本当にすばらしいまた議員外交のことであろうかと思います。

 また、不肖私も、先月、委員長初め理事の皆さんにお認めをいただいてドイツに行ってまいりました。「硫黄島からの手紙」という映画もありましたが、私も、「バルトの楽園」という、第一次世界大戦後に鳴門の板東俘虜収容所において、第九を通じた、まさに人道的な扱いをした所長、会津出身の松江豊寿さんが主人公ということの縁で行ってきたわけであります。

 また、同じ委員の土屋委員におかれては、お父様がさまざまな議員外交を通じて、一緒に外遊した際にも行く先々で土屋先生のお嬢様かと言われて、本当に、一人の議員の努力だったかもしれませんが、それだけ波及効果というのがある。

 また、笠井先生も先日アメリカの国連本部に行ってさまざまな活動をされてきましたし、三ッ矢委員長も常日ごろ頑張っていただいております。

 そして、議員外交、これは体系的にどうするかということもあるんですけれども、まず、日米関係について大臣も先日触れていただいたので、議員外交の意味、また成果といったものをどのように捉えているか、ではお願いします。

小田原大臣政務官 お答えいたします。

 国際情勢の急激な変化そしてグローバル化の進展などにより、我が国が直面する外交上の課題そして関係者が多様化する中で、我が国の国益を引き続き増進していくためには、政府に限らず立法府を含めたオール・ジャパンの体制で外交を展開する必要があります。

 そのような中で、我が国の外交の一翼を担う議員外交が果たす役割は一層高まってきています。特に、それぞれの訪問先において、議員としてのお立場から、さまざまな形で高いレベルの意見交換や広報、交流活動に従事されていることは、我が国の外交にとって大変重要であると認識しています。

 政府としても、こうした状況を踏まえ、外交は政府が最終的に責任を持つべき点を前提としつつ、戦略的な議員外交を展開しようとする国会議員の皆様の御努力との連携を一層強化していきたいと考えているところであります。

小熊委員 議員外交に対して多大なる評価をいただいたというふうに認識をしています。

 では、外交の、さまざまな国との交渉は政府でありますけれども、日本のイメージをどうするかとか、また、今はインバウンドに政府を挙げて取り組んでいるところでありますけれども、政府が取り組む部分とまた相まって、日本のイメージ、日本人のイメージといったものは、これは政治家に限らずいろいろな人が努力をしなければなりません。

 外務省も優秀な職員もいらっしゃいますけれども、その一人の職員の、ある意味属人的なものを通じてその国のイメージが決まってしまうというのもあります。例えば青年海外協力隊で、そうした開発国の片田舎に行って一人の青年が頑張っている、真面目に頑張っている、そういう姿を通じて、日本人というのはすばらしいと現地の人が思う、これもある意味外交力の強化になっているというふうに思います。

 我々議員としても、行けば、その国においてニュースになったり、さまざまな情報発信になる。もちろん行く以上は形骸化することもなく、また我々も恥ずかしい行為をする人は誰一人いないとは思いますが、これはやはり日本を背負っていかなければなりません。

 私の地元の観光地ですけれども、観光客の人が来ても、全市民、全地域の人と触れ合うわけではなくて、やはり旅館とか食事場所とかお土産屋さんとか、また道を聞かれた市民数人であるとかという限られたところでありますけれども、全員がガイドのつもりで総ガイド運動とか、各地でも取り組まれていますけれども、そういう意味でも、日本の外交を日本全体で上げていくという意味では、さまざまなレベルで必要ですし、我々議員もしっかりやっていかなければいけない。

 そういう意味で、今御評価をいただいて、最終的にはこれは議員の側で、議会で決める話でありますけれども、多大なる政府からの評価もいただいたところですから、とりわけ外務委員会が二年に一回の海外調査というのは私はいかがなものかというふうに思いますので、ぜひ委員長の手元で、また理事会のメンバーの皆さんの後押しを受けて、これは国会全体の議論として、議員外交の向上、とりわけ外務委員会、どうすべきかという点をおまとめいただいて、御提言をいただきたいというふうに思います。

三ッ矢委員長 みんなで力を合わせて取り組んでいきたいと思います。

小熊委員 それでは次に移りますけれども、今ほどもシリアの情勢がありましたが、北朝鮮のミサイル発射、これはもう許しがたいものでありましたし、過日もありました。

 この際に、Jアラートの課題があります。

 三月の安全保障の方の委員会でも、我が党の後藤議員がさまざま質疑をしていて、ちゃんとこれが作動していないと。予告があったものだけはシステムが稼働してちゃんと鳴ったものもありますけれども、予告のないものについてはうまく今は働いていないというところがあります。これはしっかりと万全の態勢がとられるようにしなきゃいけないという提言があり、ある意味では、慎重に運用していることで時間がかかってしまうという後藤議員の指摘もあった中で、当日の委員会では、防衛大臣から、しっかり検討しますと。

 それからおよそ一カ月ぐらいたっていますけれども、その後この検討状況というのはどうなったか、お聞きをいたします。

横田政府参考人 お答え申し上げます。

 今御指摘いただきましたJアラートでございますが、これにつきましては、北朝鮮から発射されたミサイルが我が国に飛来する可能性があるというふうに政府として判断した場合には、内閣官房から、Jアラートなどによりまして国民の皆様や関係機関に直ちに情報伝達することといたしております。逆に申し上げますと、我が国に飛来する可能性がないという場合には、Jアラートは作動しないということにしておるわけでございます。

 一方で、排他的経済水域内におけます、そこに落下するおそれがある場合の警報の発出につきましては、これは各省庁から、例えば水産庁でありますとか海上保安庁でありますとかそういうところから、漁船でありますとか船舶でありますとかそういうものに対して発出するわけでございますが、これにつきましては、その発出のあり方について、今現在、全般的に見直しを行っておるところでございまして、可能な部分から実施に移してきているところでございます。

小熊委員 そういう指摘を三月十日の安全保障の委員会で後藤議員が言って、EEZ内か領海内か判断する時間すらもったいないんだ、すべからくやったらどうだ、国民の安全がかかっているということで言って、検討しますと言って、今も検討しているということでしたけれども、どのぐらい検討されるんですか、時間的に。

横田政府参考人 お答え申し上げます。

 先ほど申し上げましたように、EEZ内の情報伝達、警報につきましては、Jアラートを使うことも含めて、今、鋭意、全般的に見直しを行って、もう早急に、すぐに迅速にその警報が出せるように検討を行っているところでございます。

小熊委員 私も地元の方々とお話しすると、これはそもそも、Jアラートが鳴って、逆に、鳴って知らされたところでどうするのというのがあって、それはもっと迅速に、しっかり態勢整備をしなきゃいけない、時間は短縮をしていく、そして、日本全国にしっかりその警報が鳴るように、まだ整備が万全でない部分もありますから、やっていくといいながら、出口として、鳴って知らされてどうしますかというのが、実は国民一人一人にも徹底されていません。

 これは、防衛省の努力として、しっかり警報を発出していくということは努力をしながらも、まさに国民一人一人のレベルにおいて、それは地元の首長さんだって、全国の首長さんだって、連絡が来て鳴らしたんだけれどもどうしようというところがあると思うんですね。そこがまだ徹底されていません。そこはどうしますか。

横田政府参考人 お答え申し上げます。

 先ほど申し上げましたように、我が国に飛来する可能性があると判断した場合には、Jアラートなどによりまして、まず、ミサイルが発射されたという情報を伝達いたします。その後、ミサイルが我が国の領土、領海に落下する可能性があるという判断をした場合には、直ちに、Jアラートなどによりまして屋内避難を呼びかけるということにいたしております。

 このメッセージが伝達されたときには、直ちに、近隣のできる限り頑丈な建物、それから地下街、地下鉄の駅舎などの地下に避難していただきたいということで、今、国民の皆様に対して、いろいろな手法を使って周知をしているところでございます。

 例えば、ホームページ、国民保護ポータルサイトというのがあるんですが、そこの中にそういう趣旨のことを書きまして、国民の皆様への周知に努めているところでございます。

 また、周知が足りないではないかという御指摘でございます。そういうこともあれしまして、先月の十七日、秋田県におきまして訓練を実施したところでございまして、今後、そういうような訓練をほかの自治体でも実施ができるように、働きかけを行っていきたいというふうに考えております。

小熊委員 ここで議論をやめますが、やっとそういうのが始まって、一部でしかないし、地震とか火災については、我々、子供のころから学校で避難訓練をやるわけですよ。国会の議員会館でもそういった避難訓練、みんなが参加するかどうかして、やっていますけれども。

 これは我々もそうですが、常に情報発信というのは、ホームページに載せたから全て国民に知らしめたというのは、ほんの一部でしかなくて、まして、地下鉄の話も出ましたけれども、私の地元に地下鉄はありません。あと、もし野っ原で遊んでいたら、近くの建物といっても、建物のないところもあったりします。

 そういう意味では、学校の教育現場でやるのか、また、市全体、町全体でやるというのは、これは予算をどうするのかも含めてありますから、ぜひとも、今後早急に、これはJアラートの整備徹底をすることもやりながら、国民レベル、国民のためにやるわけですから、国民の生命財産を守るためにやるわけですから、これはしっかりとした連携がとれるように、成果が上がるように、今後関係省庁とも連絡をしながら早急な対応を望んで、次に移ります。

 昨日の本会議に上程をされました、いわゆる共謀罪についてでありますけれども、この委員会でも、条約についての解釈がどうだということでやってまいりました。

 昨日の我が党の逢坂議員の質問にもありましたとおり、テロ対策はやらなければいけません。テロの対策はやらなきゃいけないんです。それがこの共謀罪なのかどうかというのはまた議論しなければなりませんし、過日の委員会でも、テロ対策の一つとして郵便物はどうなっているんだという話もさせてもらいましたし、また、羽田と成田には新たな、あの3D探知機というのは何ていいますかね、あれが導入されましたが、国際空港はまだまだ日本にいっぱいあって、その整備もどうなるんだという話もありますし、実際のテロ対策というのはしっかりともっと議論しなければならないというふうに思うところでありますし、我が党としても、それはしっかりやらなきゃいけないというのは常日ごろ主張させていただいているところであります。今回の法案について、賛成だからどうだ、反対だからテロ対策をしないということではないということは、まずあらかじめ主張させていただいておきます。

 昨日の逢坂議員の質問の中でも、金田法務大臣が答えていますが、かつての閣議決定の中では、犯罪の内容に応じて選別することは国際組織犯罪防止条約上できないものであると考えているという答弁書を閣議決定しているという答弁がありました。

 しかしながら、一方、今回は、法文上、犯罪主体が組織的犯罪集団に限られることを明記した上で、対象犯罪についても、組織的犯罪集団が関与することが現実的に想定される重大な犯罪に限定したんだということを言っておりますが、井野法務政務官、これはつまり、条約の解釈を変えてこういう判断になったということですか。

井野大臣政務官 お尋ねの点でございますけれども、まず、条約について、条約の解釈自体については、基本的には外務省の所管であるというふうに考えておりますので、法務省としては、あくまでも、昨日本会議で外務大臣から答弁があったとおり、組織的な犯罪の共謀罪及びテロ等準備罪は、いずれも国際組織犯罪防止条約の、重大な犯罪の合意の犯罪化の義務を履行し得るものとして対象犯罪を定めたものであるというふうに考えておりまして、その上で、テロ等準備罪は、本条約が対象犯罪を組織的な犯罪集団が関与する重大な犯罪に限定することを締約国に認めていることを活用したものであって、条約の義務を履行する上では問題ないというふうに考えております。

 ということでございますので、基本的には条約の解釈の変更はないというふうに考えております。

小熊委員 以前のは選別ができない、今回、条文のオプションを活用したということでありますけれども、では、なぜ以前は活用できるという判断に至らなかったんですか。条約の解釈を変更しないのであれば、条約に沿って選別できないというのが政府答弁でした。でも、解釈は変更せず、ここを活用したと。何で、そのぐらいの知恵が前回出なかったのか。

小田原大臣政務官 お答えいたします。

 御指摘がありましたとおり、政府は、平成十七年当時、過去の法案における組織的な犯罪の共謀罪の対象犯罪について、犯罪の内容に応じて選別することは国際組織犯罪防止条約上できない旨の答弁書を閣議決定しました。

 これは、過去の法案の組織的な犯罪の共謀罪において定められていた要件を前提として、その対象犯罪を死刑または無期懲役もしくは長期四年以上の懲役もしくは禁錮の刑が定められている罪一般としていたことについて、独自の判断で対象犯罪とするか否かを選別することはできない旨を述べたものであります。そのような見解に変更はありません。

 その上で、今回の法案のテロ等準備罪においては、一般の方々が処罰の対象にならないことが明確になるよう、法文上、犯罪主体が組織的犯罪集団に限られることを明記した上で、対象犯罪についても、条約が組織的な犯罪集団が関与する重大な犯罪に限定することを締結国に認めていることを活用し、組織的な犯罪集団が関与することが現実的に想定される重大な犯罪に限定したものであります。

小熊委員 井野法務大臣政務官にお聞きします。

 今ほど小田原政務官が答えたとおり、犯罪主体が組織的犯罪集団に限られることを明記する、明記した上で、対象犯罪についても、組織的犯罪集団が関与することが現実的に想定される、この線引きはどういうふうに法文に書き込んであるんですか。どういうふうになっていますか。想定されるというのは、基準がなければいけません。何をもって想定して、これは入る、入らないというふうに判断するんですか。

井野大臣政務官 選別の基準でございますけれども、我々は、先ほどの外務省の条文解釈といいましょうか、そのオプションの部分を受けまして、選別方法としては、その犯罪の主体、客体、また、行為の態様、犯罪が成立し得る状況、現実の犯罪情勢などに照らして、組織的犯罪集団が実行を計画することが現実的に想定し得るかどうかというふうな基準で検討したところでございます。

小熊委員 今の答弁のとおりでやって、いろいろなことが今、国民の中で不安になっているわけです。普通に居酒屋でしゃべって、これはならないと言っていても、今の答弁では、国民レベルでは、どこまでがどうなのか、よく見えない。もう少しわかりやすく、この選別の基準。これは条約上のじゃないです、条約はそのとおりです、さらっとしか書いていませんから。法律上、どのようにしっかり選別されるんですか。

 それがわからないから国民は不安なんですよ。それがどうテロ防止に結びつくのかがわからないんです。国民の権利が逆に侵害されるんじゃないか、そういう不安の中で反対している人が多いんですよ。

 オリンピックのためだ、テロ防止のためだ、誰もそれは否定はしません。我々も否定はしないし、国民全体においても、テロを防止する必要はないなんという人は誰一人いません。だけれども、今回の法案に関して不安を持つのは、そうした、対象犯罪は絞り込んだ、明記しますといっても、では、想定される重大な犯罪、想定というのは属人的になるんじゃないか、そういう不安の中にいるわけですよ。

 もう一度お願いします。

井野大臣政務官 まず、先ほどの基準に従って、対象犯罪自体は、この法律案別表四という形で全部列挙させていただいております。それが二百七十七個でございますので、まず、この対象犯罪以外のことを共謀というか、そういうことをしても、今回のいわゆるテロ等準備罪の対象にはならないというふうに明確にしております。

 また、主体としても、組織的犯罪集団という形で検討しています。それは、一つの例としては、テロリスト集団という形でも明記をしておりますので、そういった意味では、一般の方々が対象になるようなことはないというふうに考えております。

小熊委員 これは所管の委員会で、しっかりまた我が党は質疑をしていきますが。

 前回、政務官と議論させていただいたホームページの件について。まあ、対処するということでありましたけれども。共謀罪をとらなきゃいけない。本当は参加罪かどちらかということでしたが、そのタイトルがおかしいと指摘をさせていただきました。それは以前の法律案に対する資料ではありましたけれども。

 今回、この百九十三回に共謀罪が提出をされたというホームページはもう出ていますが、それに付随する資料のページがまだありません。これは、この条約のもとでということを言っている以上、この条約をしっかり載せておかなきゃいけないんですよ。いつ載せて、前回とは違ったしっかりとした説明がつくのかどうか、検討していますか。載せるんですか、載せないんですか。載せなきゃだめですよ、これ。

井野大臣政務官 委員御指摘のとおり、現在の新しく提出した法案については、ホームページについては、いまだ掲載はされていないわけでございますけれども、いずれにしても、早急にというか、今後ともわかりやすく、今回の提出法案についてのホームページの掲載については今検討しているところでございます。

小熊委員 前回、検討すると言って、法律を出しましたという、法律のさらっとした概要版はもうホームページに載っているんです、法務省に。きのうの段階で載っていましたよ。

 そんな難しい工夫じゃないです。あの条文をまた同じように載せて、タイトルの部分が問題だと言ったわけでしょう。条文はそのままですもの、それは別に工夫の必要がないですよ、条文をそのまま載せるんですから。それで、共謀罪か参加罪かいずれかというふうに説明がないとおかしいんじゃないかと言って、そうですねというのがあって、検討しますと言って、また時間があるわけですよ。そんな大きな工夫じゃないんですよ。

 ほかのQアンドAでも、法務省の中を見ると、共謀罪、参加罪とありながら共謀罪の方をとるのはこういう理由ですと、QアンドAに載っていますよ。過去の資料だけれども、これは載っているわけですから、今回のにもちゃんと載せて、それは説明文をちゃんとしなきゃいけないんじゃないんですか、国民をミスリードするんじゃないんですかという指摘で前回やって、そうですね、検討しましょうと言って、まだ検討しているの、こんな簡単なこと。もう法案も審議が始まっているのに。わかっていたことじゃないですか。そう大きくいじることじゃないですよ。

 官僚の下請じゃないんだから、政務三役なんですから。政務官のリーダーシップのもとでしっかり指示を出していただけますか。

井野大臣政務官 まず初めに、前提として、過去のホームページ、過去のいわゆる共謀罪というものについてのホームページ自体については、もう過去のものとして我々は掲示しておりますので、そのまま掲示を続けていきたいというふうに思っております。

 その上で、これから、今、新しいテロ等準備罪についてのホームページの掲載方法ですけれども、これについても、わかりやすく、なるべく誤解のないような形でホームページ上にアップしていきたいというふうに思っておりますので、それは、我々もなるべく早く国民の皆様に適切な情報を提示できるように鋭意検討、努力しているところでございます。

小熊委員 簡単なことですから、しっかりやって。毎日見ますからね。ぜひよろしくお願いをいたします。

 次に移ります。

 先ほども触れましたけれども、今、米中首脳会談をやっています。北朝鮮のミサイルもあった、シリアの問題もありますが、トランプ大統領は今回の米中首脳会談においても、中国に、北朝鮮に対してしっかり圧力を強化しろと言うんだと。中国側は、米朝の対話が必要ですと言って、事前のいろいろな情報では折り合っていません。

 そういった中で、北朝鮮の問題に関しては、私も、中国に日本政府がどう働きかけるかということも大きなアプローチの一つだということも再三再四主張してきたところであります。

 ただ、トランプ政権においては、中国が何もしないのであれば、アメリカが単独行動するということの言及もあります。その単独行動が、より強い制裁なのか、それとも武力制裁なのかということは、その違いによっては大変大きく地域の安定を崩すことにもなりかねません。

 常日ごろ、日米関係は非常に重要な同盟関係ということで岸田大臣も言っておりますけれども、この件に関して、ある意味、日本はまた日本の独自の判断、またアメリカに対しての主張、中国に対しての主張といったものがありますが、このトランプ大統領の、中国が強力な圧力をかけなければ単独行動する、その中に軍事行動も含まれるのではないかと想定される件については、日本政府、日本外交としてはどう対処されていきますか。

岸田国務大臣 中国は、国連安保理常任理事国であり、六者会合の議長であり、北朝鮮の貿易の九割を占めているという状況を考えましても、大変重要な国であると認識をいたします。北朝鮮問題を解決するに当たって、中国の役割が大変重要であるということについては日米間でしっかり一致をしているところです。

 北朝鮮問題について、外交努力を通じて平和的に解決することが重要であるということは言うまでもないことですが、米国が全てのオプションが俎上にあるという発言をしていることは、抑止力という点においては、これは評価できると我々は考えております。

小熊委員 時間がないのでさらにちょっと進めますが、先ほど議員外交でも触れましたが、印象という言葉を使わせていただきました。もちろん、論理的にしっかりやっていく、また現実世界の中で外交をしっかり構築していくということは大事であるんですが、やはり人間は感情の動物でもありますから、ある意味、それは政治家だけではなくて国民も含めて、どう印象を与えていくかということは、これは国また個人レベルにおいても非常に重要なことであります。

 ただ、最近の日本の外交における、とりわけ日米間におけるさまざまな印象といったものは、残念ながら、私はいいものがないというふうに思っています。先日の吉良委員の質問の中でも、日米関係、トランプ政権としっかり両国の友好を深め、そして両国の利益を高めていくということが重要であることは何も否定していないわけでありますけれども。さはさりながら、さまざまに国内外ともに波紋を起こしているトランプ大統領。

 そしてまた、英国においては、メイ首相が、それは米英関係も強固な同盟関係であっていろいろ会談もされていますが、英国に来ていただこうと言ったら、二百万人以上の国民が署名をして反対運動が起きた。

 主張すべきことは主張していく、これは常日ごろ、主張すべきことは主張すると外務大臣はおっしゃっているんですけれども、外務大臣じゃなかったけれども安倍総理が真っ先に行って、きょうと同じような、フロリダで会談をしているというのもいいことではありましたが、ゴルフまではどうかなというのが私の個人的な感想ですし、そうしたことで日本の印象が下がってしまう。

 まして、トランプ大統領はキャンペーン中に障害者の物まねをするような方であるというのは大変残念なことですし、この件についてはアメリカ国内でもさまざま議論が起きて、それを指摘したハリウッドの女優に対してまたツイッターでかみつくといった点に関しては、人として到底許しがたい部分もあるわけです。

 日米同盟はしっかりやっていきながら、日米関係はしっかり構築しながらも、しかしながら、やはり普遍的な価値観、正義といったもので価値観外交を日本は進めているわけですから、余りにも今の印象はべったりし過ぎていて、そこは一線を引いて俯瞰してやった方がいいと思っています。しっかりと論理的に客観的に事実に基づいて関係国との同盟を深めていく、その関係性を深めていく、友好を深めていくということは何も否定はしません。しかし、必要以上にやるということの印象は、日本の、日本人のブランドの価値を下げていると思います。

 そういった点も踏まえて、これまでの大統領とはまた例のない大統領だと思っています。ですから、北朝鮮に対する対応も冷静にしなければいけない、またシリアの今回のミサイル攻撃に対してもどうするのか、しっかりと分析をして、アメリカに追従するのではなくて、連携すべきところは連携しながらもしっかり日本の立場を主張していく。

 しかし、これは論理的ではないかもしれませんが、ゴルフを総理が一緒にやったことも、そしてまた、残念ながら核兵器禁止条約の交渉不参加も、これは単にトランプに抱きつき外交と言われている、やゆされている一部の報道もあります。その印象は拭えないと思います。

 まして、この核兵器禁止条約、それは大臣においては地元広島ですよ。例えば私が地元福島で原発政策について語るところは、これは党派を超えて、またいろいろなものを超えて語らなきゃいけない、そういう思いもあります。そういう中で、より現実的に実現をしていくという強い思いがあるのもわかります。より大きな大望のために、韓信の股くぐり、もしくは忠臣蔵の神崎与五郎なのかもしれませんが、私は、日本のとるべき立場というのは、核兵器国と非核兵器国の間に立つなんということではなくて、非核兵器国の先頭に立つ。これまでも立ってきた。アドボカシーということもある。それを捨てたんですよ、今回。

 しかも、オバマ政権のときもこれはいろいろ言われていましたけれども……(発言する者あり)印象ですよ、印象を語っているんだ。トランプになったからこういうふうにへつらったんじゃないか。オバマさんが広島に来たときの大臣の発言と、その後の発言が変わっているという印象もこれは拭えませんから。

 より現実的なことと言っているけれども、日本のとるべき立場は、間に立つんじゃない、唯一の戦争被爆国としてとことん理想を追求してやっていくことが私は日本のとるべき立場だと思います。

 これは答弁は要りませんが、全般的に、そういう意味でも、トランプ政権への抱きつき外交といった印象は、これは言いがかりでありませんよ、こうした印象を、それは誤解と言うのであれば、しっかり誤解を解いていく外交努力が必要ですし、改めて言いますけれども、ゴルフまでやる必要はありません。

 今後、北朝鮮、シリアの問題に対しても、アメリカと全て一〇〇%一致する行動をとるべきかどうかということも、またしっかり議論しなければいけないところでありますから。

 大臣、では一言だけ。

岸田国務大臣 いろいろ御指摘いただきましたが、まず、日米関係は我が国の外交、安全保障の基軸であり、戦後七十一年にわたって、基本的な価値に基づいて揺るぎない関係を築いてきたものであると認識をしています。

 そして、アメリカ国民が、民主的なプロセス、選挙によって選んだのがトランプ政権です。トランプ政権については、いろいろな意見や議論があります。ただ、米国国民が民主的なプロセスで選んだ政権との間においては、引き続き関係は強化していかなければならないと思います。

 ただ、その中にあっても、主張すべきことは主張する、言うべきことは言う、これは当然のことだと思います。御指摘はそのとおりだと思います。

 そして、米国と核兵器禁止条約交渉会議との関係でいうならば、我が国は、結論から言うと、米国とは一線を画して交渉に参加をし、そして我が国の主張を会議においてしっかりと訴えました。

 引き続き、唯一の戦争被爆国としてあるべき姿はどうなのか、要は、核兵器のない世界、理想を語ることは大事ですが、結果を出すためにはどうするべきなのか、こういった観点から具体的に行動を考えていきたい、このように考えます。

小熊委員 時間が来たので終わりますけれども、そうした結果が結局は印象が悪くなって、いい結果になっていないということと、選挙で選ばれたからというのは当たり前ですよ。だけれども、言うべきことは言う。ほかの国だってやっているじゃないですか。それを、選挙で選ばれたからというのは余り枕言葉にしない方がいいと思いますし、外交が複雑になって多層化していきますので、しっかり議員外交を推進することも宣言して、質問を終わります。

 ありがとうございました。

三ッ矢委員長 次に、玉城デニー君。

玉城委員 自由党の玉城デニーです。

 国の外交施策に関する件、きょうは、昨今のテロ事件を踏まえた海外の渡航に関しての外務省などの考えをお聞きしたいと思います。

 外務省のホームページ、フロントページからのぞきますと、当然、海外渡航に出かける方々にさまざまな呼びかけをしています。

 そこで、最近のテロ情勢の変化というのがページで載っておりまして、「二〇一六年七月のバングラデシュのダッカにおける襲撃テロ事件では日本企業の七名の方が犠牲になりました。これを受け、「提言」の実施状況を点検し、」ということで、この中に「最近のテロ情勢の変化」というのがあります。

 日本人はテロに巻き込まれるだけでなくテロの標的とされ得る、在留邦人のみならず短期留学生や旅行者もテロの被害に遭う可能性がある、中東、北アフリカのみならず先進国を含む世界各地でテロが起こり得るということで、「「在外邦人の安全対策強化に係る検討チーム」の提言」の中でそのように述べられています。

 そして、大規模なテロが欧米やアジアへ拡散していること、日本企業の市場や拠点として重要性を増しつつあるアジアにおいてもテロの可能性が高まっていること、そして、ソフトターゲットを狙ったテロがふえています。ソフトターゲットとは、レストラン、公共交通施設、イベント会場など不特定多数の人が大勢集まる日常生活の場、特に国際空港や観光スポットなどです。そして、テロの実行主体が、インターネットを介してイスラム過激思想に感化された若者や、組織とは関係なく単独で動く人物である例も多数見られるということで、テロの対象が年齢、性別、国籍を問わず無差別であるとともに、殺害、破壊行為自体を目的とする傾向があるというふうに述べられています。

 そこで、きょうは、このように海外渡航、旅行や、あるいは短期留学をする方々、そして、さらには中堅・中小企業向けの海外安全対策マニュアルなどを策定しているということについて質問をさせていただきたいと思います。午前中は主にそれらに関しての質問と答弁をお願いしたいと思います。

 まず、外務省の海外安全ホームページというところに、たびレジというコーナーがあります。このたびレジについての内容の説明と運用状況についての説明をお願いしたいと思います。

能化政府参考人 お答え申し上げます。

 たびレジは、渡航先やメールアドレスなどを登録することで、現地の最新の安全情報や緊急時の連絡が受け取れるサービスであります。三カ月未満の短期間で海外渡航をする方に登録を呼びかけておりまして、二〇一四年七月のサービス開始以来、本年四月六日時点で、累計約百七十八万人が登録しておられます。

 例えば、四月三日に発生したサンクトペテルブルク市の地下鉄での爆発のように、海外で事件、事故、災害が発生したとき、なれない外国でニュースをチェックするのは大変でありますが、たびレジに登録すれば、現地の大使館、総領事館から最新の情報を日本語で受け取ることができます。また、緊急時には、登録された電話番号などをもとに現地の大使館、総領事館が安否確認を行い、必要であれば迅速に支援を行うことが可能となります。

 より多くの方にたびレジを御利用いただくため、ガイドブック、雑誌への記事掲載、成田空港におけるプロモーションイベント等、登録促進活動を行っております。

 また、大手通信キャリア三社の協力を得まして、海外到着時に携帯電話に送信されるショートメールサービスで、たびレジの登録を促しております。

 海外渡航をする方々の安全を確保するため、登録促進やサービスの改善に引き続き努めてまいります。

玉城委員 短期的に旅行をされる方は、このたびレジで登録をすれば、さまざまな情報が携帯に入ってくるということですよね。

 私も、それをちょっと試してみまして、このアプリ、海外安全アプリというのがネットにあります。それをダウンロードしますと、海外安全情報、マイ旅行情報、海外安全虎の巻など、非常にワンポーズというかワンクッションでそういう安全情報が確認できるということは、特に、これから若い世代がどんどん海外に旅行する機会がふえてくる中で、自分で安全確保するという意識を持っていく意味では非常に私は重要だと思います。

 その観点から、非常にすばらしいキャラクターを発見しましたので、きょうは委員の皆さんにも御紹介をしたいと思います。

 外務省からお借りいたしましたこのポスターをまず皆様にごらんいただきたいと思います。

 ミスター・デューク東郷です。通称ゴルゴ13でございます。(発言する者あり)ちょっと似ていますよね。デューク東郷さんが少し優しくなったという感じがいたしますが。

 さて、このように、外務省のホームページを開きますと、まず外務大臣のコーナー、副大臣、政務官のコーナー、三番目にこのゴルゴ13のコーナーがあるんです。

 そこで、このゴルゴ13の件について、特にこれは海外の中堅・中小企業向けの安全対策マニュアルだということですので、このゴルゴ13の起用について、ぜひ御説明をいただきたいと思います。

能化政府参考人 お答え申し上げます。

 昨年七月のダッカ襲撃事件を踏まえまして、在外邦人の安全対策を強化してまいっております。その中で、中堅・中小企業の安全対策強化の切り札といたしまして、中堅・中小企業向け海外安全対策マニュアルを製作いたしまして、ここにゴルゴ13を起用したということでございます。

 その狙いは、第一に、このマニュアルの主なターゲットであります中堅・中小企業の経営層に読んでいただきたいということでありまして、これらの方々が「ゴルゴ13」の読者層とおおむね一致していると考えられることに着目いたしました。

 第二に、「ゴルゴ13」が、単行本百八十四巻、発行総数二億九千万部以上と、高い知名度があること。

 第三に、ゴルゴ13が、約五十年にわたり、激動する国際情勢の第一線で活躍している、いわば危機管理のプロフェッショナルとも申せまして、彼が安全対策を指南することで説得力が増すと考えた次第であります。

 このマニュアルは、毎週金曜日に、外務省ホームページを通じまして特定のテーマごとに配信しておりまして、例えば来週は、熊本地震一周年にちなみまして、熊本の企業の海外進出を取り上げることとしております。

 今後、マニュアルを通じまして、全国の中堅・中小企業関係者が海外安全対策に理解を深め、それぞれ安全対策を強化できるようになることを期待しております。

玉城委員 私は、狙いとしては非常にいいのではないかなと思います。なぜなら、例えば「沈黙の艦隊」であるとか、いわゆるリアルな情報が、もちろんフィクションなんですけれども、そこに織り込まれている海外の情報を得たいという世代は、やはり三十代以上の男性が圧倒的に多いと思います。

 ということは、中小・中堅企業で海外で働く機会が、やはりそういう世代の方々、特に男性社員の方々には機会が多いということで、この狙いとしては、私は、漫画のコンテンツを用いて海外に展開していくということについては、非常に理解している側だというふうに認識をしています。

 ちなみに、歴代発行部数の第五位が「名探偵コナン」、第四位が「こちら亀有公園前派出所」、第三位「ドラゴンボール」、第二位が「ゴルゴ13」、そして第一位が「ワンピース」です。

 この中でも上位二位の発行部数を持っているということは、それだけ幅広い読者層や、それから、世代がどんどん若返り、そして広がっていくということが漫画の特徴ですので、そういうことを考えると、こういうキャラクターの起用については本当にいい、私は正直にそう思っています。

 さて、予算に関連することでもありますので、ここはしっかりお聞きしたいと思いますが、このゴルゴ13への依頼費用、アニメ、印刷、啓発行動等、全体の予算についてお聞かせください。

能化政府参考人 お答え申し上げます。

 予算は、マニュアルの製作業務と著作権関連経費を合わせまして二千五百万円でございます。

 これによりまして、このマニュアルは外務省ホームページ上に週一回連載し、合計十三話で完結するものですが、電子版を製作するのみならず、紙媒体のコミック版を十万部製作いたします。

 また、ゴルゴ13の画像は海外安全対策の広報のために使用することも認められております。

玉城委員 ちなみに、ユーチューブにも能化局長がホスト役として出ていらっしゃいます。

 だんだん顔つきがゴルゴ13に近くなっていくのではないかと思っておりますが、しかし、既にもうダウンロードが一万六千回数を超えております。つまり、これだけネット環境の中でも非常に注目度が高いということを考えると、この企画そのものが、十三回、これもまた意味深な数字ですが、十三回にわたって、いろいろな事例をもとにして、中小・中堅企業の方々に、テロ対策、テロ対応という本質の部分をしっかりと伝えていくということは非常に大切だと思います。

 外務省にお願いいたします。ぜひ、外務委員会の委員、メンバーには、先ほどのポスターを初め関係資料、例えばこのようなクリアファイル、こういうものも関係資料としてぜひ議員居室の方へお配りいただきたいというふうに思います。

 さて、せっかくこういうコンテンツを整備し、予算をかけ、さまざまな呼びかけをしていこうというプランですので、これは今後さまざまな展開が必要だと思います。そこで、この啓発対策の現況と、さらには旅行関係を含めた関係業界との連携について、どのような方向性にあるかについてお聞かせください。

能化政府参考人 お答え申し上げます。

 外務省が実施しております主な啓発活動でございますけれども、まずは、外務省海外安全ホームページにおきまして、各国の危険情報を初めとした安全情報の提供を行っておりますほか、海外でのトラブル対策などについて、小冊子やホームページを通じて周知しております。

 また、安全対策に関する講演やセミナーを昨年度は百件以上実施するなど、積極的に啓発活動に取り組んでおります。

 関係業界との連携といたしまして、私的懇談会として海外安全官民協力会議を設置し、旅行業界、航空業界、メーカー、建設、商社など、海外で活躍する幅広い民間企業、団体と外務省との間で、邦人の安全について意見、情報交換を行っております。

 旅行業界関係者との連携をさらに強化するためということで、外務省トラベルエージェンシー会合を定期的に開催しております。

 さらに、昨年七月のダッカ襲撃テロ事件を受けまして、昨年九月に、企業の海外進出に関係する二十以上の組織、団体が参加する中堅・中小企業海外安全対策ネットワークを立ち上げました。このネットワークを通じまして、情報発信を強化するとともに、企業側の懸念や問題点を解決して安全対策を講ずる支援をしていくことを目指しております。

 「ゴルゴ13」のマニュアルにつきましても、この中堅・中小企業のネットワークを通じた全国展開を進めてまいりますとともに、LINEなどSNSの活用により、幅広い層への浸透を図ってまいる所存であります。

玉城委員 ありがとうございます。

 例えば、テロという範疇ではなくても、何らかの事件に遭遇する確率はやはり否定できないと思います。

 かつて私が別の仕事をしていたときに、旅行の添乗である国に行ったことがあります。その国でも非常に置き引きやひったくりなどが多いということで、気をつけてくださいねということだったんですが、皮肉なことに、日本の旅行団体を引率するガイドさんが旗を上げると、あそこに日本人がいるという、実はこれがターゲットになるという、そういう側面も聞きました。

 私は、この列の一番後ろから、当時ちょっと髪を染めていましたので、今とはかなり風貌が、もっとバター寄りになっていましたけれども、赤いフィールドコートを着て、私から後ろにいるあなたは最後尾ですから慌てて私のところに来てくださいということを、このツアー客の皆さんにはお話をしておきました。そうすると、本当に、私、一番後ろから列を見ていると、ターゲットを狙ってやってくるんですね、しかも子供たちが。日本のカップラーメンの、塩ラーメンと書いてある文字を盤のようにして見せて持ってくるわけです。それに気をとられているうちに、実はウエストポーチをナイフでやられるということがあるので、気をつけてくださいと言っているんですが、目の前に出されると、やはりうろたえてしまいます、個人個人でいると。それを、私は後ろから、さあさあ寄るな寄るなと言って、後ろからついてそれを見ていたという経験もあります。

 あるお土産品屋さんに立ち寄ったときには、持っているかばんは一カ所に置いて、一人誰か見張りについていてくださいということだったんですが、私はその場にいなかったんですけれども、見張りをしていた方がたまたますぐ隣の棚に目をやったすきに置き引きに遭ってしまったということで、被害届を出さざるを得なかったということがあります。

 ですから、外務省の領事局邦人テロ対策室でも、個人での呼びかけで、海外旅行のテロ、誘拐対策で危険な国、場所に近づかない、銃撃、爆弾テロにも予防策をとれます、身近に迫る誘惑の脅威にも気をつけてくださいなどなど、個人向けにこうやって声をかけているということもありますが、対個人ですと、その個人の中での危険度の認識というのは非常にさまざまだと思います。ですから、それを企業やグループ、団体で共有できるということが、お互いに、例えば荷物をそこに置いたときに、二人でちゃんと見ておこうねとか、そういうサポートができる心がけを行うということが旅先ではとても重要だと思いますし、旅先での解放感は、そこにつけ入るすきが生まれるという時間でもあります。

 ですから、外務省には、さらに関係機関と連携をとって、邦人が事件や事故、ましてやテロなどに遭遇することがないよう、遭遇しても、そのみずからの危険を明確に回避できるそのすべが、そのノウハウが伝わっているよう尽力をしていただきたいと思います。

 午前中の質疑はこれで終了させていただきます。

三ッ矢委員長 午後一時から委員会を再開することとし、この際、休憩いたします。

    午後零時六分休憩

     ――――◇―――――

    午後一時開議

三ッ矢委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。

 質疑を続行いたします。玉城デニー君。

玉城委員 それでは、午前中に引き続きまして、十分間の質問をさせていただきたいと思いますが、その質問の前に、冒頭、外務大臣から状況の報告をお願いしたいと思います。

 先ほど報道で、アメリカ合衆国がシリアをトマホークで攻撃をしたというニュースが報道されています。その経緯について、あるいは状況についての御説明をお願いしたいと思います。

岸田国務大臣 米国が、化学兵器による空爆に使った基地を標的としてシリアにミサイル攻撃を行ったということをトランプ大統領が演説を行って明らかにした、こうしたことを確認しております。

 事実関係、その詳細につきましては、今、引き続き調査、確認中であります。

玉城委員 折しも米中首脳会談が行われているという状況の中で、このように、また相手国といいますか、その対応、対処するために攻撃を加えるということは、非常に不安定な状況、アメリカ国内もそうですが、アメリカというその国が及ぼす影響を大きく受ける日本にとっても、我が国にとっても非常にこのような状況は憂慮すべき状況ではないかというふうに思います。

 ですから、引き続き、ぜひ、情報をできるだけ詳しく、細かく、国民へ情報発信をしていただきますようお願いを申し添えておきたいと思います。ありがとうございます。

 さて、午前中、私は、外務省のテロに関する予防対策あるいは短期渡航についての対応、それから中小、中規模企業の安全対策についてのマニュアルにおけるゴルゴ13の起用などをお話を聞かせていただきました。

 しかし、午前中も話をいたしましたが、昨今のテロが行われるその方法はさまざまあるものの、今までの組織的かつ計画的なテロ犯罪から、ローンウルフあるいはホームグローンテロという脅威が広がってきています。ローンウルフは、文字どおり一匹オオカミという意味ですが、テログループにかかわらず、単独もしくはごく少数、二人から五人以内ぐらいの少数のグループでテロを計画したり、発動したりいたします。

 かつては宗教間の紛争であったと見られているテロの動向が、現在では、個人的な社会への不満がきっかけになり、例えば、インターネットなどを通じて世界各国を映像そのものが瞬時に駆けめぐるという、ネットの利点でもあり、またそれが問題点でもあるわけですが、それらの影響を受けて過激な思想に例えば心酔して、人々に、自分に注意を向けたい、あるいは自分がやっていることは正義なんだということを振りかざすがための、そういうローンウルフあるいはホームグローンテロという行為に及んでいくということが報じられています。

 これは、日本ではかつて地下鉄サリン事件、その前の松本サリン事件などがありましたが、あくまでも組織的に、あるいは綿密な行動が練られた上で行われたテロ事件だったのですが、これからは、例えば、こういう表現をすると少し驚かれるかもしれないんですが、大都会のスクランブル交差点で、誰が渡っているのかわからない、その中に友達がいるのか親戚がいるのかもわからない人の波の流れを見ていると、非常に、この日本という国といえども、ローンウルフのテロあるいはホームグローンテロの脅威がないとは言えないと思います。

 いや、むしろますます、東京オリンピック・パラリンピックを迎える二〇二〇年まで、もしくはオリンピックが終わった後も決して平穏ではないのではないかもしれませんが、世界に、日本、ジャパン、東京という文字や言葉があふれればあふれるほど、テロへの防御はますます必要不可欠なことになってくるのではないかと思います。

 他方、今議論されていますテロ等準備罪では、テロに対応するということではなく、心象を事前に、それを監視し、あるいは行動を監視するとともに、そのことでテロを未然に防ぐというふうなことが言われておりますが、その法律案とて、この単独オオカミ、一匹オオカミ型のテロを食いとめるという手だてにはなり得ない。であれば、どうするのかということを非常に危惧するわけであります。

 だからこそ、日ごろから国民の皆さんに対して、外務省やあるいは公安調査庁が各省庁にしっかりと綿密にネットワークを張ってその情報を発信することによって、テロから自分を遠ざけることの工夫といいますか、自分の中の知識としてしっかり蓄えていただきたい。その国民への涵養こそが最も大切な啓発行動であろう、啓発効果であろうというふうに思います。

 そこで、きょうは残りの時間を、残りわずかですが、公安調査庁に、ホームグローンテロリストの脅威について、まず、公安調査庁の調査している状況についてお話を聞かせていただきたいと思います。

横尾政府参考人 まず、ホームグローンテロリストの定義につきまして、このホームグローンテロリストの定義というものは確立しているわけではございませんが、一般的に、ホームグローンテロリストというものは、欧米諸国に居住する者で、国際テロ組織等の唱える主義主張に感化されて過激化し、居住国でテロを行う者のことをいうものと承知いたしておるところでございます。

 ホームグローンテロリストの現状につきましては、三月二十二日の英国ロンドンにおける車両突入及び刃物襲撃テロ事件や、昨年七月のフランス・ニースにおけるトラック突入事件など、ホームグローンテロリストによると見られるテロ事件が多発し、大きな脅威になっているものと認識いたしているところでございます。

 公安調査庁におきましては、国際テロは重大な脅威であるとの認識のもと、鋭意調査に当たっているところでございます。

玉城委員 ありがとうございます。

 ぜひ、その国際的な状況について、では日本ではどのようなことが起こり得るのか、それを想定した関係機関の連携がどうあるべきかについては、官邸を初め各省庁でしっかり取り組んでいただきたいと思います。

 私が一つだけ憂慮するのは、日本における日本型テロの発生です。

 それは、薬品を使わない、爆弾を使わない。つまり、いわゆる海外で行われているような種類のテロではなく、例えば、最も身近なものであれば、刃物であり、さらに、日ごろ私たちが生活の足として使っている車であったりするかもしれません。ですが、刃物を持っているからといって、刃渡りの短いものまで取り締まることはできないわけです。車を持っているからといって、一々全ての国民をとめて、免許証を持っていますか、あなたの車のボンネットをあけてくださいというわけにはいきません。

 ですが、要所要所で、恐らくこれからは交通要所での検問あるいは職務質問などがふえていくのではないかと思いますが、そのテロ対策を急ぎ過ぎる余りに、今度は国民から、テロを防ぐということを官民挙げてやろうとしているその雰囲気が余りにも高まり過ぎて、国民がその協力から引いてしまうということも往々にして考えられるわけですね。

 ですから、そここそがまさに各省庁で連携をとり、官邸が中心になるとは思いますが、国民の皆さんにしっかり啓発活動をしていただき、みんなで、身の回りで何か変わったことが起きていないかな、子供たちは安心して学校へ行っているかな、通っているかな、ひとり暮らしのお年寄りは最近顔が見えないけれどもどうかなという、つまり、地域ネットワーク型の見守りが一番日本人の生活に合っているのではないかというふうに思います。

 ですから、何か事を挙げて、だからこそ、みんなそれに従えば大丈夫だということではなく、日ごろからお互いを思いやり気をつけるという、その優しさで見守る形を、ぜひまたそのことも学校や地域で啓発として広げていただければということをお願い申し上げ、質問を終わります。

 ニフェーデービタン。ありがとうございました。

三ッ矢委員長 次に、足立康史君。

足立委員 日本維新の会の足立康史でございます。

 きょうは、最近取り上げてきた北朝鮮のミサイルの問題とか、足元の問題がいろいろあるわけですが、せっかくいただいている機会ですので、委員の皆様におかれては当たり前のこととか周知のこととか繰り返しのことも含まれているかと思いますが、今後、私として三つ議論を深めていきたいと思っていまして、その取っかかりとか端緒として、慰安婦の問題、それからヤルタ密約の問題、それから東京裁判の問題、この三点について、ちょっと駆け足で確認をさせていただきたいと思います。

 まず、慰安婦の問題ですが、足元では日韓合意とそれに係るいろいろな動きがあるわけですが、きょうは足元のことではなくて、そもそもの政府の認識をちょっと確認させてください。

 まず、慰安婦問題ですが、日本が戦時に行った行為というのか行ったことは特殊なことなのか、いや、それは戦時であればいろいろな国が同じことをやっていたのか。特殊なのかどうかという点を教えてください。

滝崎政府参考人 お答えいたします。

 このような、日本だけの問題ではないんじゃないかという御指摘かと思いますけれども、外国の例につきましては歴史家がさまざまな指摘をしている、そして、旧日本軍に特有なことではなかったというふうに指摘するような歴史家の方も確かにおりますけれども、我が国政府として、こうした外国にかかわる歴史上の事実関係について御説明する立場にはないということかと思います。

 ただ、いずれにしましても、我が国政府の一般的な認識といたしましては、二〇一五年八月十四日の安倍内閣総理大臣の談話におきまして、二十世紀において、戦時下、多くの女性たちの尊厳や名誉が深く傷つけられた過去をこの胸に刻み続けるとした上で、だからこそ我が国はそうした女性たちの心に常に寄り添う国でありたい、二十一世紀こそ女性の人権が傷つけられることのない世紀とするため、世界をリードしていくとの決意が述べられております。

足立委員 やはりそこは踏み込んで発言をしていった方がいいんじゃないかというふうに私は考えています。

 というのは、ある種の誤解が世界じゅうに大変広がっている。そもそも誤解かどうかについても議論があるのかもしれませんが、いわゆる慰安婦像の問題もそうだし、そこの碑文に書かれている問題もあるわけでありまして、さらに言えば、最近は村上春樹さんの小説が結構話題になっていまして、小説だからいいかという議論もあるのかもしれませんが、私は大変心配をしています。

 もう一つ、政府の立場をちょっとまず確認したいのは、ある種の理解もあればある種の誤解も国際社会にはあると思いますが、私は、ある種の誤解が、鎮静化というか収束するどころか、拡大しているんじゃないかということを懸念しています。

 ある種の誤解がもう仮にあるとすれば、まあ、ないという御答弁かもしれませんが、ある種の誤解が国際社会にあるとすれば、それは収束していっていると見ればいいのか、今も拡大していると見ればいいのか。そこについての御見解があれば教えてください。

小田原大臣政務官 お答え申し上げます。

 まず、足立委員が御指摘されました諸外国に建てられている慰安婦の像や碑には、二十万人の女性が強制的に性奴隷にさせられたといった記述が数多く見られます。我が国政府は、以前、慰安婦問題について本格的な調査を行った経緯がありますが、こうした記述を裏づける史実に関する情報に我が国政府として接してはおりません。こうした記述を伴う慰安婦像などが近年各国に建てられていることは、我が国の政府の立場と相入れない、極めて残念なことと受けとめております。

 また、足立委員、小説について触れられました。一般的に、歴史的な事実に関する評価については専門家等により議論されるべきものと考えます。

 その上で申し上げれば、日本政府としては、旧日本軍の南京入城の後、非戦闘員の殺害または略奪行為等があったことは否定できないと考えていますが、その具体的な人数についてはさまざまな議論があり、政府としてどれが正しい数かを認定することは困難であるというものであります。

足立委員 政務官、ありがとうございます。

 そうすると、私が申し上げた、収束しているのか広がっているのか、これは評価できないということでしょうか。それか、どっちか。収束しているのか、広がっているのか、拡大しているのか。これは一定の政府の認識、評価をやはり開陳いただきたい、こう思うんですが、いかがでしょうか。

滝崎政府参考人 政府といたしましては、こういった像や碑といったものが次々と建てられるといったような状況を何とかして阻止しようとはしておりますけれども、残念ながら、今の段階でこのような動きが収束しているというふうに申し上げることは難しいかというふうに思います。

足立委員 精いっぱい言っていただいたと思います。

 私もそう思います。収束しているとはとても言えない。むしろ私は、誤解がむしろ拡大、誤解が国際社会の中で広がることを許してしまっているというふうに思いますし、大変懸念をしています。

 一つ目、最初にお伺いをした、日本は特殊なことをしたのかということについても、先ほどは諸外国のことはわからぬということを、諸外国のことがわからなければ比較もできないということかもしれませんが、それでは、やはり、史実に基づかない誤解が国際社会の中で広がることを、収束に向けて対処することは到底できないと思うんですが。

 私としては、政府に、特殊ではないんだということを何らかの形で明確にして、そのことを国際社会にしっかりと訴えていく、そういう対応が必要だと考えますが、いかがでしょうか。

岸田国務大臣 まず、歴史的な事象に関する評価については専門家等によって議論されるべきであると考えます。

 ただ、政府の立場あるいは外務省の立場としては、こうした問題を政治問題化する、あるいは外交問題化する、こういったことはあってはならないと思います。そのために、こうした研究の成果に基づく正確な認識をしっかりと訴えていく、説明をしていく、情報収集を行いながら適切な対応を考えていく、こうした努力はこれからもより一層続けていかなければならないと考えます。

足立委員 ぜひお願いをしたいと思いますし、私は、今の政府の対応は今大臣がおっしゃったことに尽きるというか、大事なことをおっしゃっているわけですが、もう一押しというか努力がまだできるんじゃないか、さらなる次の、もう少しレイヤーの異なる努力ができるのではないかなと私は思っております。

 次に、話はかわりますが、いわゆるヤルタ密約であります。

 ヤルタ密約についての日本の立場を、簡潔で結構ですので御紹介をください。

岸田国務大臣 当時の米英ソによるヤルタ協定については、樺太の南部及びこれに隣接する全ての諸島がソビエト連邦に返還されること、及び千島列島がソビエト連邦に引き渡されることなどが記されています。

 他方、このヤルタ協定は、当時の連合国の首脳者の間で戦後処理方針を述べたものにすぎないものであり、関係連合国間において領土問題の最終的処理につき決定したものではないと認識をしております。

 そもそも、ヤルタ協定は一九四六年二月まで秘密にされていました。我が国は参加しておりません。いかなる意味でもこれに拘束されることはないというのが我が国の立場です。

足立委員 ありがとうございます。

 加えて、今大臣がおっしゃったように日本は当事者じゃありませんからあれですが、その三者、三カ国、三大国ですね、米英ソ、ヤルタ協定のそれぞれの国の認識というか位置づけというかを御紹介ください。

宮川政府参考人 お答え申し上げます。

 ヤルタ協定について、まず米国政府の立場でございます。米国政府の立場は、単にその当事国の当時の首脳者が共通の目標を陳述した文書にすぎないものであり、その当事国による何らの最終的決定をなすものではなく、また、領土移転のいかなる法律的効果を持つものではないという見解でございます。

 次に、英国政府の立場でございます。英国政府の立場につきましては、英国政府との関係もあり、お答えを差し控えさせていただきたいと思いますが、我が国の認識を否定するものではございません。

 最後に、ソ連、そしてロシア政府に引き継がれている立場でございますが、ヤルタ協定によって、択捉島、国後島、色丹島、歯舞群島を含むクリル諸島のソ連邦への引き渡しの法的確認が得られたという立場を維持してきております。当然、我が国としては、そういったロシアの立場は全く受け入れられないということから、ロシア政府に対して、我が国はヤルタ協定に参加していない、いかなる意味においても拘束されることはないということを繰り返し申し入れてきております。

足立委員 ありがとうございました。

 イギリスについては、英国については、報道も最近いろいろ産経新聞とかで取り上げられていますので、また別の機会に深めていきたいと思いますが、きょうのところはそういう御答弁かと思います。

 今御紹介をいただいたように、日米英ソでそれぞれヤルタ秘密協定についての理解が当然異なっており、特に、ソ連、ロシアの認識が北方領土の問題に今影を落としている、これは言うまでもありませんが。北方領土について、安倍政権が大変大事なアプローチ、新しいアプローチ、経済的な協力を含めたアプローチをされていることについて心から敬意を持って拝見をしているところでございますが、大変難度の高い領土交渉、領土交渉という言い方がいいかわかりませんが、交渉である、こう思っています。

 ついては、本当は、北方領土の根本的な解決を狙うとすれば、理屈上は、このヤルタ協定の理解の違い、これに日本政府としてチャレンジをしていくのが本来の理屈上の、理論上の正攻法だと思うんですが、国際社会の中におけるヤルタ協定の理解というものを、国際社会の中でやはり確定をしていくというか統一をしていくというか、米英ソ、あるいは我が国の理解が異なる中でチャレンジをしていけば、先ほど審議官の方から御紹介をいただいたような中であれば、我が国の国益に即した形での解決というのが理論上できるんじゃないか、こう思いますが、そこにチャレンジする余地は日本政府は持っていないんでしょうか。

岸田国務大臣 ヤルタ協定に関する我が国の立場、これを各国に、国際社会に説明していく、これも大変重要なことだと思います。

 ただ、北方領土問題で申し上げるならば、ロシアとの間において、北方領土の歴史的な評価あるいは法的な立場、こういったものについては延々と議論を行ってきました。

 ただ、こうした議論をずっと続けていてもなかなか結論が見えてこないということで、昨年四月、それぞれの歴史的な、法的な立場はあるものの、未来に向けて、受け入れられる結論を模索していこうということになり、昨年の五月、首脳会談において、新しいアプローチに基づいて議論を進めようということになりました。

 歴史的な評価あるいは法的な立場ももちろん大切でありますが、事ロシアとの間においては、昨年、外相会談、首脳会談において、今申し上げたようなやりとりを経て議論が行われています。

 ぜひ、未来に向けて、新しいアプローチで結論を出していきたいと考えています。

足立委員 日本維新の会として、あるいは私として、政府のそうした新しいアプローチについて尊重し、また敬意を持っていることは改めて申し上げておきたいと思いますが。

 あえて更問いでもう一つお聞きをすると、もし国際社会の中でヤルタ協定の位置づけについてチャレンジをしていく、日本政府の立場を国際社会で確認していく努力をするとすれば、どういうスキームがあり得るのか。例えば国際司法裁判所みたいな場所がそういうことになり得るのか、ちょっとよく承知していませんので、理論上の話で結構ですので、日本政府として考えられる、今の国際社会の中で考えられる理論上の選択肢を教えてください。

宮川政府参考人 お答え申し上げます。

 今委員御指摘の北方領土問題でのICJへの提訴の可能性についてでございますが、本件については、結論から申し上げますと、現時点では付託を考えておりません。

 他方、理論的なという御質問もございましたので、これまでの経緯を簡単に触れさせていただきますと、まず、ロシアはICJへの強制管轄権の受諾宣言を行っておりません。このため、仮に日本が提訴をしたとしても、これに応じる義務を負っていないということで、仮に日本がこの問題をICJへ提訴して解決するためには、日ロ両国間に別途の合意が必要になります。かつて、一九七二年、大平当時外務大臣からICJへの北方領土問題の付託を示唆したことがございますが、ソ連のグロムイコ外務大臣がこれを拒絶しているという経緯がございます。

足立委員 ありがとうございました。

 もう既に、安倍政権において十分に御議論があって今のようなアプローチになっていることは承知をしていますが、私たち、野党ですので、幅広くこうした可能性も野党の間にしっかり吟味をしておきたい、こう思っております。

 残る時間、三点目の東京裁判でございます。

 極東国際軍事裁判について、日本の立場を改めて御紹介をください。立場というか認識ですね、御認識。

小田原大臣政務官 お答え申し上げます。

 極東国際軍事裁判所の裁判については、法的にはさまざまな議論があるということは承知しています。しかしながら、我が国としては、サンフランシスコ平和条約第十一条により、同裁判を受諾しています。それについて異議を唱える立場にはありません。

 歴史に関する問題は、歴史家や専門家に委ねるべきであると考えます。

足立委員 ありがとうございます。

 私も、東京裁判に関する日本政府の立場は承知しているつもりですし、いわゆるサンフランシスコ平和条約第十一条によって受諾をしているということについて、そういう前提での日本政府の立場というのは当然理解をしているし、当然である、敗戦国としてそこに異議を述べる立場にないということについて深く理解をしているつもりであります。

 一方で、いつだったかな、NHKスペシャルで、東京裁判の何かドラマ仕立ての、私は総務委員でもありますのでNHKに聞くと、えらい力を入れてやった、各国にも協力していただいて、お金も時間もかけた、NHKの自慢の番組の一つであるというふうに承知をしていますが、大臣、これを見られたことはありますか。

 お忙しいと思うので、見られたことはないと思いますが、NHKスペシャルで、ドラマ仕立てで、東京裁判というのはどんな形で立ち上がり、どう展開していったのかという、一人一人の判事の動きを絡めて、本国とのやりとりとか、あるいはマッカーサーとのやりとりとか、そういうのを相当詳細に史実を検証しながら、NHKが各国と連携しながらつくった番組があるんですが、ごらんにはなられていないですか。

岸田国務大臣 残念ながら、その番組は見ていないと思います。

足立委員 小田原政務官はどうですか。見られていませんか。

小田原大臣政務官 残念ながら、拝見しておりません。

足立委員 滝崎官房審議官、宮川官房審議官はいかがでしょうか。一応。

滝崎政府参考人 じっくり見たというわけではありませんけれども、一部見た記憶はあります。

宮川政府参考人 私も見た覚えはありますが、詳細はちょっと自信がございません。(発言する者あり)

足立委員 新藤筆頭は見られたと。ちょっと感想を述べてほしいんですけれども。

 これは、大臣、外務省の方はちょっと一回見た方がいいと思うんですね。すばらしい番組。新藤筆頭、すばらしいですよね、あれ。うなずいていただいていますが。ちなみに外務委員の皆さんも、ごらんになった、手を挙げてというわけにはいかないか。本当にすばらしくて、NHKに批判的な人も多いんですけれども、受信料を取られて、総務委員会なんかやったら民進党の総務委員の方がもうNHK攻撃ばっかりされているんですが、やはりああいう番組はNHKしかつくれないよなということで、公共放送、NHKの役割を改めて再認識したところでありますが、とにかくすばらしいので、お忙しいと思いますが、大臣にお時間を頂戴して、審議官の皆様も、ぜひごらんになっていただきたいと思います。

 そこで、その番組を見ると何がわかるかということなんですけれども、極めて裁判ぽくないんですね。裁判というのは、私の理解ですよ、違うかもしれませんが、私の理解は、裁判というのは判事がいて、実際に判事が各国から集まっているわけですけれども、かつ判事ということで動いているわけですが、もう本国と密に連携をとりながら、裁判ですから、判事が判断すればいいので、クローズドでやればいいんです、本当は。でも、本国とあれして、また召喚されたりとか、ちょっとマッカーサーの動きがあったりとか、極めて政治的なものだったというのがそのNHKスペシャルの印象なんですが、という意味でいうと、極端なことを言えば、野党ですから適当なことを言えば、極東国際軍事裁判、いわゆる東京裁判については、裁判という名前には値しない、私が今申し上げたような意味でですよ、裁判というものには値しない、極めて政治的な、戦後処理の政治的な妥協の産物である、私はNHKスペシャルを見てそう思ったわけですが、何かそういう私の捉え方について、そうだと言ってほしいんですけれども、いかがでしょうか。見ていらっしゃらないからわからないけれども。

岸田国務大臣 先ほど申し上げたように、この番組を見ておりませんので判断する材料がありませんが、さまざまな番組についてさまざまな見方があり、そして考え方を持つということは、これは当然あってもいいことだと思います。

 ただ、政府の立場から申し上げるならば、サンフランシスコ条約十一条に基づいてこの裁判を受諾している立場でありますので、何か異議を唱える立場にはないということに尽きております。

足立委員 ぜひ、私も繰り返しになりますが、サンフランシスコ平和条約を通じてこの裁判を受諾しているということ、あるいは裁判に異議を述べる立場にないということは理解をしているし、多分我が党も、ちゃんと党内で確認していませんが、そういう日本政府の立場に異を唱えているわけでは全くありません。

 ただ、その裁判、そのいわゆる東京裁判というものをどう理解するのかということについては、一定の自由が、受諾をしている立場としても、受諾した東京裁判とは何なのかということについては、一定の幅を持って、我々は評価をしていくことが可能だと思います。

 大臣、ぜひ、次、どこか時間があるときにごらんいただいて、NHKの有料のもので見られますので、見て、また感想をこの委員会で教えていただくということは、お約束いただけますでしょうか。(発言する者あり)NHKオンデマンドですね。

岸田国務大臣 ちょっと、これから、国会のお許しをいただきましたならば、G7外相会合に出発しなければならないなど、外交日程も入っておりますので、いつまでに見られるかをお約束することはできませんが、ぜひ、気持ちとしては、見たいと思います。もし見ることができたならば、またぜひ委員と議論をしたいと考えます。

足立委員 ありがとうございます。

 ぜひ、小田原政務官も、宮川審議官も、滝崎審議官も、きょうこの場に居合わせたことを諦めていただいて、また通告をさせていただくかもしれませんので、ぜひごらんを……(発言する者あり)武井政務官も、よろしくお願いします。

 以上でありますが、時間が来ましたね。きょう申し上げた慰安婦の問題、ヤルタ秘密協定の問題、それから東京裁判は根本的な問題でありますが、ぜひ、きょうの御答弁をまた精査させていただきながら質問を続けさせていただきたいと思いますので、よろしくお願いします。

 ありがとうございました。

三ッ矢委員長 次に、笠井亮君。

笠井委員 日本共産党の笠井亮です。

 冒頭に、先ほども若干ありましたが、米国トランプ政権によるシリア攻撃について若干質問をしたいと思います。

 先ほどもありましたが、シリアの北西部で化学兵器と見られる攻撃で多くの犠牲者が出たと報じられる中で、米国のトランプ政権は、六日、日本時間で七日午前になりますが、シリアの空軍基地へ数十発のミサイル攻撃を行ったということであります。

 化学兵器の使用は、誰によるものであれ、人道と国際法に反する重大な許されない残虐行為であります。しかし、国連安保理決議もないままに、米国が一方的に攻撃を強行したことは、国連憲章と国際法に反するものであり、我が党は厳しく抗議するものであります。軍事攻撃は、シリア内戦をさらに悪化させることにしかならないというふうに思うのですが、岸田大臣、この点、いかがでしょうか。

岸田国務大臣 私も御指摘の点については、現地時間四月六日夜、これは十時ごろになると聞いていますが、米国が、化学兵器による空爆に使ったホムス近郊にあるシリア空軍基地を標的にミサイル攻撃を行ったということにつきまして、承知をしております。

 ただ、それ以上につきましては、事実関係等詳細を調査、確認中でありますので、今の段階で何か評価等を行うことは控えたいと存じます。

笠井委員 米、英、仏は、五日に提示した国連安保理決議案の中で、シリアでの化学兵器の使用について、国際的な真相究明を求めておりました。そういう中で、米国の一方的な攻撃というのは、ある意味、みずからの主張にも反するものと言わなければいけないと思います。国連を中心に、国際社会が一致協力して、化学兵器使用の真相を突きとめて、そして使用した者に厳しい対処を行って、二度と使われることのないように取り組みを抜本的に強めることこそ必要だと思うのですが、この点では、大臣、いかがですか。先ほどの、事実関係の調査、確認という話とまた同時に、国連安保理の経過があります。

岸田国務大臣 化学兵器の使用について申し上げるならば、化学兵器の使用が事実であるならば、我が国としてこれを強く非難いたします。関係国及び機関による事案の早急な真相究明を期待する、これが我が国の立場であります。

 化学兵器の使用はいかなる場合でも許されるものではなく、我が国は、全ての暴力の停止に向け国際社会と連携していく、こうした考えにあります。

笠井委員 この問題でとりわけ憂慮されるのは、米国のトランプ政権が、今回の攻撃を、米国の安全保障上の死活的な利益にかかわるということで合理化していることであります。米国第一の立場で一方的な軍事攻撃を合理化する態度というのは、私は、極めて危険であり絶対に認められないということを強く表明しておきたいと思います。

 そこで、きょうは通告をした質問テーマに沿って質問をしていきたいと思います。

 去る三月八日の当委員会で、岸田大臣と議論をさせていただきましたが、いかに北朝鮮の核・ミサイル開発をとめていくかという点で、私は、米国がトランプ政権にかわって戦略的忍耐からの政策の変更を議論していることに注目しているということを述べました。岸田大臣は、この問題に関連して今後も、来日するティラーソン国務長官等ともしっかりと意思疎通を図っていきたい、そして政策的にもすり合わせを行っていくことは大変重要ということを答弁の中で言われました。

 実際に、その後、三月十六日に日米外相会談、国務長官が来日をされて行われたわけですけれども、どのような意思疎通、すり合わせが行われたのでしょうか。

岸田国務大臣 米国は、引き続き、あらゆる選択肢がテーブルの上にあるという考えのもとに北朝鮮政策の見直しを行っております。その中で、三月十六日の日米外相会談においては、日米の間で政策のすり合わせを行った次第であります。

 我が国としては、米国があらゆる選択肢をテーブルの上に置いているということは、抑止という観点からは評価しているわけですが、いずれにしましても、外交的努力によって問題が平和的に解決されることが基本であるということは、従来から変わっておりません。

笠井委員 その外相会談、大臣自身が後で共同会見をやられましたね、その中で、米国が対北朝鮮政策の見直しを相当程度進めている中で日本としての考えを伝えしっかりと政策のすり合わせを行うことができたのは非常によいタイミングで意義あることだと言われたわけですが、その具体的なやりとりはそれ以上控えると言われたんですけれども、すり合わせという以前に、ティラーソン国務長官に伝えた日本としての考え方というのは、改めて何でしょうか。

岸田国務大臣 日本の北朝鮮問題に対する基本的な方針は従来から変わっておりません。対話と圧力、行動対行動のもとに諸懸案を包括的に解決していく、こうした方針であります。

 あわせて、外交的な努力によって平和的に問題を解決することが重要であるということ、こうした基本的な方針、考え方に基づいて、我が国の対応を説明いたしました。

 米国側の考え方もしっかり聞かせていただき、政策のすり合わせを行った、こういったことであります。

笠井委員 岸田大臣は、三月八日のやりとりの答弁の中で、米国の対北朝鮮政策の見直しについて申し上げる立場にはないというふうに答えられながら、東アジア、アジア太平洋地域における米国の抑止力は大変重要、そういった観点から米国ともしっかりと意思疎通を図っていきたいというふうに言われておりました。

 先ほどの答弁でも、抑止力の点では評価をするということを言われたわけですが、つまり、米国の抑止力、いざというときには抑止力というのは使えるということになってくるわけで、そういうものでなければ抑止力は働かないというふうに言われるわけですが、そういう点でいうと、軍事的選択肢が重要だというふうに伝えたということじゃないんですか。

岸田国務大臣 あらゆる選択肢がテーブルの上にあるということについて、抑止力の観点から評価しているということを申し上げております。外交的な努力、平和的な解決が重要だということは、全く変わっておりません。

笠井委員 あらゆる選択肢という中で、軍事的な選択肢ということもあります。それについても必要であるという中での話でしょうか、それは。

岸田国務大臣 あらゆる選択肢の中に、軍事的な行動も含めてさまざまなものが含まれていると思います。だからこそ、抑止力という意味で評価すると申し上げております。

 ただ、問題を外交的に、平和的に解決するということが重要だということは全く変わっておりません。

笠井委員 ティラーソン国務長官は、日米外相会談後の共同記者会見で、この問題で重要なことは過去二十年間に実施した外交その他の取り組みが北朝鮮の非核化に失敗したと認識することだというふうに述べて、とどまることなく増大する脅威を前にこれまでとは異なる手法が必要だというふうに言いました。そして、岸田大臣と新たな手法について胸襟を開いて非常に率直に協議したというふうに、問いに答えております。

 米国の政策の変更の方向として、先制攻撃など軍事的選択肢が取り沙汰をされているわけでありますけれども、そういうことを受けて協議したということではないんですか。

岸田国務大臣 米国の政策の見直し、先ほど委員の方から御紹介いただきましたティラーソン国務長官の発言も、米国のさまざまな取り組みにもかかわらず、今現在、北朝鮮の核開発、ミサイル開発が続いているということ、米国が北朝鮮政策を見直していくことの必要性、こういったものを述べたものであると認識をしています。そして、その際にあらゆる選択肢がテーブルの上にあるということを米国が表明しています。

 それにつきまして、両国の間においてしっかり意思疎通を図った、政策のすり合わせを行った、そういったことであります。

笠井委員 直近の北朝鮮による弾道ミサイル発射ですね、五日になりますか。これを受けて安倍総理は、四月六日午前の電話会談、トランプ大統領と行った。そして、トランプ大統領からは全ての選択肢がテーブルの上にあるとの力強い発言があったというふうに、総理自身が、終わった後の会見で言われております。

 米政権が北朝鮮への武力行使も排除しない姿勢を示していることを評価する考えを伝えたということで言われているわけでありますが、全ての選択肢ということで、軍事的選択肢をとれば、それは軍事対軍事の最悪の悪循環になる、そんな道は絶対にとるべきではないというふうに思うんですけれども、大臣はいかがお考えでしょうか。

岸田国務大臣 あらゆる選択肢がテーブルの上にあるという発言については、抑止力の観点から評価できると申し上げてきております。紹介いただきました総理の発言も、そういった趣旨であると考えています。

 ただ、外交的な努力によって平和的に問題を解決することの重要性、これは変わりはないと考えております。

笠井委員 抑止力の観点から軍事的な選択肢という話があるということなんですが、しかし、抑止力の観点というのは、先ほども申し上げましたけれども、いざというときは使う、使えるという話になってくるわけで、結局、そういう道というのは最悪の悪循環に陥る、そういうことになってくる。

 つまり、軍事的選択肢ではなくて外交的解決が重要と大臣は言われるんですけれども、重要というだけじゃなくて、軍事的選択肢ではなく外交的解決こそ選択すべきだということになってくるんだと思うんです。

 米国はこれまでの方針を転換して、北朝鮮との外交交渉の中で非核化を迫る、そして、経済制裁の圧力と一体になって、核兵器の開発、ミサイル開発の手を縛って放棄に向かわせる、この方向で今国際社会が新しい方向に進む必要があるし、日本はそういう方向でこそ働きかけるべきだと思うんですけれども、大臣、改めていかがですか。

岸田国務大臣 ティラソン国務長官は、先ほど来議論の中に出ている米国の北朝鮮問題の見直しに関しまして、北朝鮮に対話を促すための対話の努力というのも重要であるというような発言もされています。そうした環境づくりが大事だという発言もされています。これは、我が国の対話と圧力という方針にも整合的であると考えます。

 ぜひ米国ともしっかり連携しながら、北朝鮮から前向きな、建設的な言動を引き出すためにはどうするべきなのか、しっかりと検討を続けていきたいと考えます。

笠井委員 どうするべきなのかというのが極めて大事な点だと思うんですが。

 重ねて、やはり北朝鮮との外交交渉の中で非核化を迫る、経済制裁、その圧力と一体になって北朝鮮の核開発、核兵器開発、ミサイル開発の手を縛って放棄に向かわせる、そうした一致した努力こそ必要だということを重ねて強調しておきたいと思います。

 そこで、次の問題でありますけれども、先ほども若干議論がありましたけれども、いわゆる敵基地攻撃能力の保有問題について伺っていきたいと思います。

 安倍総理は、去る三月三十日、自由民主党から、弾道ミサイル防衛の迅速かつ抜本的な強化に関する提言を受けたということであります。この提言は、北朝鮮のミサイル発射基地を破壊する我が国独自の敵基地攻撃能力の保有を政府が直ちに検討するように求めております。

 岸田大臣は、先ほどのやりとりの中で、いや、そういう能力も持っていないし計画もないというお話をされたわけですが、これについて安倍総理は、その提言を受け取った翌日の参議院本会議で、装備を保有しておらず想定していない、保有の計画はないということを言われた上で、その上でというふうに答弁をして、我が国として何をすべきかという観点から常にさまざまな検討を行い、あるべき防衛力の姿について不断の検討を行うのは当然のことと、この提言を受けての答弁の中で言われているわけでありますけれども、岸田大臣も同じ認識でしょうか。

岸田国務大臣 はい、同じ認識であります。国民の命や暮らしを守るために不断の検討を続けていく、これは大変重要なことだと認識をいたします。

 ただ、政府として、今、敵基地攻撃について、装備体系を保有していない、そして保有する計画もない、これは再三申し上げているところであります。

笠井委員 保有もしていないし計画もないと言いながら、その上でということで、あらゆる検討をすると。

 菅官房長官も記者会見で、対処能力の総合的な向上のため種々の検討を行いたいと、前のめりに言われているわけであります。

 そこで、この自民党の提言は、政府に対して、イージス・アショアやTHAADといった新型迎撃システムの導入を初めとして、現在の防衛大綱や中期防、中期防衛力整備計画に基づく装備の前倒し、さらには巡航ミサイルの保有まで求めております。

 岸田大臣にもう一問伺いますが、こうした装備が、専守防衛を旨とすると言っている自衛隊が備えるべき能力と考えていらっしゃるでしょうか。

岸田国務大臣 専守防衛につきましては、憲法にのっとった我が国の基本的な防衛姿勢であると考えています。この方針は今も全く変わらないと認識をいたします。政府の政策は、その方針に基づいて進められるものであると考えます。

笠井委員 ですから、私が伺ったのは、専守防衛の考え方と言われたけれども、大臣のそういう考え方だとすれば、それから見て、自民党の提言で言っているような新型迎撃システムの導入を初めとして、それから防衛大綱や中期防に基づく装備の前倒しとか巡航ミサイルの保有まで求めているというのは、これはそういう専守防衛を旨とすると言われてきたそうした自衛隊が備えるべき能力だというふうに考えていらっしゃるかどうかということなんですよ。

岸田国務大臣 その具体的な内容については、まだ明らかになっているものではないと思いますが、いずれにせよ、憲法にのっとって我が国の安全保障を考えていく、これは当然のことであり、その憲法の精神のもと、国民の命や暮らしを守るためにしっかり検討を続けていくべきであると考えます。

笠井委員 そこで、それでは、若宮防衛副大臣にお越しいただいておりますので伺います。

 これは、自民党の弾道ミサイル防衛に関する検討チームでまとめた提言の話だということですね。その座長である小野寺元防衛大臣が、三月二十九日に巡航ミサイルについて記者団から問われて、どのような装備があるかは防衛当局と共有したというふうに答えておりますが、防衛当局としては、巡航ミサイルとしてはどんな装備を共有したんでしょうか。

若宮副大臣 お答えさせていただきます。

 今、笠井委員が御指摘になりました発言については、承知をいたしているところでございます。

 この弾道ミサイル防衛の迅速かつ抜本的な強化に関する提言につきまして、小野寺座長の発言の個別具体の内容につきましては、私ども防衛省としてはお答えする立場にはございませんので差し控えさせていただければと思っておりますが、その上で申し上げさせていただきますと、防衛省としては、これまでもさまざま部会等で求めがあった場合には、装備体系に含まれる装備品とは何か、あるいは情報提供してきたところでもございます。また、この自民党の中におきまして、弾道ミサイル防衛に関する検討チームの議論の場でも必要な情報提供というのは行わせていただいております。

 それから、装備体系の具体的なものといいますのは、これはあくまでも敵基地攻撃を目的とした装備体系でございますけれども、今まで保有については検討してきていないために、正確にこれを列挙することというのが困難であることは御理解をいただければと思うんですが、あくまで通常の一般論的なところでお話をさせていただきますと、通常想定されますのは、例えば敵と思われるところの防空用のレーダーを電波により妨害をするですとかあるいは無効化をするですとか、そういったための専用の航空機が必要ではなかろうかなというふうにも思っております。

 また、仮に何かしら攻撃をするとしますと、やはりこれは見つかりにくい戦闘機の方がいいわけでございますので、その敵と思われるところの防空網をかいくぐって進入していけるようなステルス型の爆撃機が必要になってこようかと思っております。

 また、ではどこにそれを落としていくべきなのかということを想定で考えますと、目標となる施設を正確に破壊するために必要な巡航ミサイルというのもあわせて必要になってこようかと思います。またさらに、ではその場所が正確にどこなのかということも把握していかなければいけませんので、これは偵察衛星等も必要になってくるものというふうに思われますので、全部を想定して考えていくとこれは膨大なことになってまいりますので、そういったことでは、私どもとしては、まだ特別に検討していることではないというふうに御理解いただければと思います。

笠井委員 やっていないと言われながら、一般論ということで、かなり具体的にいろいろなことを言われました。

 その中で、ちょっと伺いますが、報道によれば、自民党の提言で想定している巡航ミサイルというのはトマホークとされておりますが、そういうことなんですか。

若宮副大臣 先ほどもちょっと申し上げたんですが、自民党の方の御提言でございますので、私ども防衛省としてはお答えする立場にないということで、御理解をいただければと思います。

笠井委員 いや、小野寺さん自身が、防衛当局とどのような装備があるか共有したと言っているものですから、共有したということは、防衛当局は防衛省なので、それはもう、こうだといって共通のものがあるんだと思うんですが、答えるものではないということで、ちょっとそういうふうにはいかないんじゃないですか。

若宮副大臣 先ほどもちょっと申し上げたんですが、その共有したというのは、さまざま、こういったことであればどうであるのかということの求めに応じてそれぞれ、これはいろいろな各政党でいろいろな勉強会ですとかいろいろなものがあれば、御提示できる資料があれば御提示させていただいて、御説明申し上げるところは御説明申し上げている、そういった意味での小野寺先生の共有という認識のお言葉を使われたのではないかなというふうに思っております。

笠井委員 いろいろな政党って、与党、野党がありますが、共産党に、では、きょうそこのところを聞いたから、どこまで共有するのかという話になるのかなと思いながらも、政府・与党ですからね。政府・与党である自民党が総理大臣に提言をするという中で、その座長をやっている小野寺元防衛大臣がどのような装備があるかについては共有したと言っているわけですから、これは本当に重い話だと思うんですよ。まあ、お答えになろうとしない。

 しかし、このトマホークとされている巡航ミサイル、トマホークをめぐっては、自衛隊が二〇〇四年と二〇〇九年に導入を希望したけれども、専守防衛から逸脱するとの批判が政府・与党内からもあって頓挫した経過があるものであります。そのことは言っておきたいと思います。

 そこで、少し大きなスパンで見ますと、一九五九年の国会答弁で、当時の伊能防衛庁長官は、「仮定の事態を想定して、その危険があるからといって平生から他国を攻撃するような、攻撃的な脅威を与えるような兵器を持っているということは、憲法の趣旨とするところではない。」と明確に答えております。

 これは閣僚の答弁なわけで、岸田大臣に伺いたいんですが、この答弁からも、先ほど憲法の話を大臣もされましたが、自民党が政府に求める巡航ミサイルの保有とかそういう問題については、専守防衛という政府の建前さえも崩す暴論であるばかりか、明白な憲法違反じゃないかと思うんですが、その点はどういうふうに見ていらっしゃるでしょうか。

岸田国務大臣 まず、自民党の提言の兵器の具体的な内容について承知しておりませんので、それについて申し上げる材料はありませんが、いずれにせよ、憲法との関係において政府の立場から日本の安全保障を考える場合に、憲法の範囲内で政策を進めていかなければいけない、これは当然のことであります。

 憲法から逸脱するようなこと、専守防衛の精神に反するようなこと、こういったことはあってはならない、このように考えます。

笠井委員 いや、この提言そのものに書いてあるんですよ。巡航ミサイルを初め我が国としての敵地反撃能力を保有すべく政府において直ちに検討を開始することと、具体的に巡航ミサイルと書いてあるわけです。

 歴史的な中で、国会答弁で政府自身が言ってきたのは、「仮定の事態を想定して、その危険があるからといって平生から他国を攻撃するような、攻撃的な脅威を与えるような兵器」、巡航ミサイル、そういうようなことを「持っているということは、憲法の趣旨とするところではない。」という話を言ってきたわけですから、それとの関係が問われるんじゃないですか。

岸田国務大臣 ですから、自民党の提言の具体的な兵器の内容について承知しておりませんと申し上げております。

 いずれにせよ、憲法はしっかり重視されなければならない、こうした基本的な考え方を申し上げております。

笠井委員 いや、提言にはっきり書いてあると私も改めて今申し上げたわけで、それが、だから憲法から見て、そういう提案ということについて、提言自体がどうかということについては、政府自身の閣僚としても物が言えるはずであります。

 歴代内閣は、性能上専ら他国の壊滅的破壊のためにのみ用いられる兵器についてはいかなる場合においてもこれを保持することが許されないというふうに、はっきり国会で言ってきました。

 この政府見解に照らしても、自衛隊の巡航ミサイルの保有というのは到底許されないと、提言を受け取った政府自身が、こんなことは憲法上絶対許されませんよという話をまず言わなきゃいけないということを強く言っておきたいと思います。

 そこで、次の問題に行きますが、関連しますが、安倍総理は去る三月三十一日の参議院本会議で、敵基地攻撃の装備体系を保有する計画はないというふうに答弁をされましたが、果たしてそうかという問題であります。

 二〇一六年度の第三次補正予算、ことしに入ってから成立をいたしましたが、その中では、弾道ミサイル攻撃への対応ということで、合わせて三百三十一億円が計上されておりますが、若宮副大臣、その内容は何でしょうか。

若宮副大臣 今委員が御指摘になりました件でございますけれども、本年一月に成立をいたしました平成二十八年度の第三次補正予算、この中では、PAC3のMSE弾の導入としてPAC3MSEミサイルを搭載、運用するためのペトリオットシステムのさらなる能力向上の改修、それから、イージスシステム搭載護衛艦の能力の向上として護衛艦の「あしがら」にBMD対処能力を付加するための改修、それから、将来の弾道ミサイル迎撃体制につきましての調査研究といたしまして、ミサイル迎撃能力向上策のシミュレーションによります調査の研究等に必要な経費を計上いたしています。

 こういった形によりまして、我が国の弾道ミサイルに対する迎撃体制というのはより一層強化されるもの、このように考えているところでございます。

笠井委員 今ありましたけれども、能力向上型迎撃ミサイル、それからイージス艦の能力向上というのは、さっき触れました自民党の提言でも着実な進捗などを求めているものであります。

 そこで、今の答弁に関連して伺いますが、将来の弾道ミサイル迎撃体制についての調査研究ということを最後に言われました。この調査研究というのは、具体的にどのような調査研究を行うということになるんでしょうか。

若宮副大臣 将来の弾道ミサイル迎撃体制についての調査研究につきましては、もう委員も十分御承知のとおりの昨今の北朝鮮の弾道ミサイルの発射、また弾道ミサイル開発のさらなる進展等を踏まえまして、我が国日本全域を防護し得る能力を強化するために、将来我が国に飛来する可能性のある弾道ミサイルに対しまして現有のBMDシステムの対処能力を改めて検証しました上で、例えばTHAADですとか、それからまたイージス・アショアですとかそういった新規の装備品を組み合わせるなど、いろいろな場合の対処能力について分析あるいは評価を行うものでございまして、そういったことを調査研究ということで考えてございます。

笠井委員 その調査研究には、敵基地攻撃能力に関する調査研究というのは含まれていますか、いませんか。

若宮副大臣 敵基地の攻撃能力についての調査研究というものは含まれてございません。

笠井委員 報道によりますと、自民党の提言で想定しているのは、トマホークのほか、F35戦闘機による空対地攻撃があるということでありますが、二〇一七年度予算、今年度始まりましたこの予算では、F35のA戦闘機六機の取得を計上いたしました。

 F35のAというのは、レーダーに探知されがたいステルス性能を持つ第五世代戦闘機で、自衛隊は二〇二四年までに計四十二機を配備する計画とされております。

 このF35については、若宮副大臣御自身もかなり詳しく御存じだと思うので教えていただきたいこともあるんですが、昨年九月に米ロッキード・マーチン社のフォートワース工場で行われた航空自衛隊向けの初号機のロールアウト式典、つまり、F35が完成した後、製造工場から出るという式典があって、それに副大臣御自身が出席をされた、したがって詳しいんだというふうに思うんですけれども、この式典への日本側、米側の出席者、主な方はどなたか。どうでしょうか。

若宮副大臣 今委員から、式典に出席をしたのでF35について非常に詳しいというお言葉をいただいたんですが、私は、お祝いの式典でございますので出席をさせていただいたんですが、もちろん委員も相当お詳しいと思いますので、私よりももしかするとお詳しいのではないかなというふうに思っているところでもございます。

 その式典の出席者でございますが、日本側からは、私のほか、杉山航空幕僚長、それから渡辺防衛装備庁長官、それから関係する日本企業の幹部の皆様方、米国側からは、ケンドール国防次官、それからオショーネシー太平洋空軍司令官、それからメーカーの大もとでありますロッキード・マーチン社のヒューソン会長、それからロッキード・マーチン・エアロ社のカルバルホ上級副社長などが御出席をなさいました。

笠井委員 日本側で、日本企業の幹部というふうに言われましたが、個人名でなくて結構ですが、どの企業が出席したんですかね。

若宮副大臣 今ちょっと急な御質問でございまして、個別の企業のお名前全てはちょっと記憶が定かではないんですが、三菱重工さんですとか、あるいはIHSさんですとか、防衛産業にかかわるいろいろな企業の方々がおられたように記憶をいたしてございます。

笠井委員 防衛省も、ホームページによれば、若宮副大臣御自身が式典でスピーチをされております。そこで、F35Aの導入は日米同盟強化の象徴であるというふうに述べられておりますが、F35Aの導入が日米同盟強化の象徴というのはどういう意味でしょうか。

三ッ矢委員長 答弁できますか。

 若宮防衛副大臣。

若宮副大臣 委員ももう御存じのとおり、このF35というのはさまざまな国が共同開発をしてございます。日本でもF35を導入することで、私はその第一機目の、初号機のロールアウト式典ということでお伺いをさせていただきまして、アメリカでもこのF35というのは運用することになってございます。

 そういった意味からも、日本の航空自衛隊でも活用され、アメリカ空軍でも使うということで、さまざまな意味で、日本とアメリカのベースには日米同盟がございますので、その意味からも、その象徴的なプロジェクトとなる式典となった、初号機の導入の受け取りとなったというような趣旨でスピーチをさせていただいた次第でございます。

笠井委員 このロッキード・マーチン社が作成したF35のパンフレットで、日本語訳のものが出されておりますが、これを見ますと、「新たなレベルで実現する日米間の相互運用性」ということが書いてありまして、米軍が所有するF35と日本が導入するF35Aの共通の戦闘機性能によって、日米共同訓練、演習の機会拡大と質的向上などが図られるというふうに記されております。

 つまり、そういうことを通じて日米軍事一体化が新たなレベルに向かうということをもって、副大臣御自身も日米同盟強化の象徴ということを言われたんじゃないですか。

若宮副大臣 今委員が御指摘になった観点とはまたちょっと違ったふうに私自身は感じておりまして、確かに、申し上げたF35のロールアウトの式典が象徴的な意味を持つというのが、例えば、アジア太平洋地域におきますF35の整備拠点というのが日本に設置されることとなってございます、それからまた日本を取り巻きます安全保障環境は非常に厳しい状況をさらに増してきておりますので、非常にすぐれた能力を有するF35の取得というものが我が国の防空、航空、空域を確保するということの意味で重要な意味がある、そういった意味で申し上げたところでございます。

笠井委員 いや、私はもっと深い意味があるのかなと思って読んだのですけれども。

 政府は、我が国は敵基地攻撃能力を米国に依存しているというふうに言うけれども、旧ガイドラインの敵基地攻撃をする打撃力の記述が見直されて、新ガイドラインでは、能力を保有する米軍が作戦を行うという箇所は同じになっていますけれども、自衛隊が必要に応じて支援を行うことができるという記述が追加されたわけですよね。今、ガイドラインのもとでそういう状況になってきている。

 そうすると、今紹介したロッキード・マーチン社のパンフレットにあるような「新たなレベルで実現する日米間の相互運用性」ということで、米軍が所有するF35と日本が導入するF35Aの共通の戦闘機性能によって日米共同訓練や演習の機会拡大と質的向上が図られてくるという流れと、ごおっと符節が合ってくるんじゃないですか。そういう問題として見られるというふうに思うんですが、いかがですか。

若宮副大臣 委員の御指摘も、確かに共同で同じ機種を使えばいろいろな演習、訓練なんかも同じ形でできるということも考え得るかと思うんですが、昨年の秋には、実は、英国からタイフーンが参りまして、このタイフーンとも航空自衛隊は共同の訓練をいたしてございます。

 そういった意味から、共同訓練というのは、別にアメリカに限らず今後さまざまな国々といろいろやっていく、これは、先ほど申しましたように、今、安全保障環境は非常に厳しい状況でございますので、いろいろな国々といろいろな形での連携、あるいは能力構築支援等々含めて仲よくしていくということは非常に重要なことでなかろうかというふうに思っております。

笠井委員 いや、二〇一三年の二月二十八日の衆議院予算委員会、安倍総理が次のように述べております。「我が国を防衛するためにはF35が絶対的に必要であります。この世代の戦闘機を持たなければ、残念ながら日本の国を守ることができない。」「そして、敵基地攻撃について言えば、私の問題意識としては、それをずっとアメリカに頼り続けていいのだろうかということなんだろうと思います。ですから、F35を導入するのであれば、F35の能力もあります、そういうものも生かしていくことができるかどうかということについての検討はしなければならない。」と。

 まさに、F35が持つ能力を敵基地攻撃に生かすための導入である、そして、日米一体になってそういうことをやっていくんだということは明らかなんじゃないですか。もう既に安倍総理がそうやって答弁されている。

若宮副大臣 このF35の導入につきましては、やはり何よりも、私どものこの日本の国の航空優勢というのを維持して、各種作戦等を持続的に遂行できる、あくまでもこの防衛が主体でございます。

 特に、昨今の南西地域におきましては、非常にいろいろ難しい問題も起こりつつありますので、このF35というのは、確かに委員が御指摘のとおり、いろいろな、さまざまの能力が向上した機材でございます。ステルス性ですとか、あるいはネットワーク戦闘能力にもすぐれていて、あるいは多機能機でもある、いろいろな、さまざまな能力を有していると。

 このいろいろな能力を有しているからこそ、いろいろな国々がやはり導入をかなり検討されておられるやにも聞いておりますので、そういった意味での総理の御発言じゃないかなというふうに認識いたしております。

笠井委員 いや、副大臣、総理のあの答弁というのは、敵基地攻撃について言えばと言って、私の問題意識としてF35の能力を生かしていくかどうか検討したいと言っているんですよ。敵基地攻撃との関係でそう言及しているでしょう。勝手な解釈をしてもだめなんじゃないですか。

若宮副大臣 これは、敵基地攻撃能力を獲得ということを意図するものではございませんで、一般論として申し上げますと、先ほどもちょっと機材は申し上げましたけれども、では、いわゆる敵基地攻撃というのをしようと思ったときには、やはりその敵の基地のまず正確な位置が把握できなければどこへ攻撃していいかわかりませんし、それからまた、その敵の方の地上のレーダーサイトというのがあれば、自分の飛行機が捕捉されてしまえば意味がありませんので、敵のレーダーサイトを無力化する能力というのもこれは必要になってまいりますし、それからまた、精密に誘導されるミサイルというのも持っていないといけない。

 また、こうしたものが全部統合されてこの一連のオペレーションができないとだめでございますので、そうした装備体系がなければこれはどだいできないことでございますので、今現在では全くそういった状況にはまずないということは申し上げたいと思いますし、それから、このF35Aを導入したからといいまして、装備体系は有しておりませんので、こういったことが全く今までと変わるものではないということを申し上げたいと思います。

 また、ちょっと先ほど、私、メーカーの名前を言い間違いまして、IHIさんのことをIHSさんとちょっと言ったような気がいたします。失礼いたしました。IHIさんでございます。訂正させていただきます。

笠井委員 私はIHIと聞きましたので、そういうことで直してください。

 総理の問題意識自身について余り勝手に解釈しない方がいいと私は思いますが。

 トランプ米大統領が二月十八日にフロリダ州のメルボルンでの支持者向けの集会で、F35が自身による交渉を経て値下がりをして、日本の調達分も含めたために日本の安倍晋三首相から感謝されたというエピソードを紹介しておりまして、これは有名になりましたけれども、訪米した安倍総理がありがとうと言ったためにトランプ氏が何のことと尋ねて、安倍総理はあなたのおかげでF35の購入費を数百万ドル下げることができたという話までしていると。総理も相当入れ込んでいる話だなと思って聞きました。

 そこで、装備の話も出ましたので伺いますが、F35が持つ能力というのは一体どのようなものか。ロッキード社のパンフレットを見ますと、ファーストルック、ファーストショット、ファーストキルという能力を有するのはF35のみというふうにありますが、副大臣は、このキャッチコピーをよく御存じだと思うんですが、いかがですか。

若宮副大臣 今委員がおっしゃられたキーワードといいますか、その言葉自体は存じ上げておりますが、防空任務においては極めて重要な要素だと思っております。

笠井委員 報道によれば、ファーストルック、ファーストショット、ファーストキルという意味は、敵機を先に発見し、先制攻撃をしかけて、敵機がこちらの存在に気づかぬうちに撃墜することだということであります。

 F35は、ステルス性能だけでなくて、高感度のセンサーが捉えた情報を統合して攻撃に生かす最新のアビオニクス、航空機搭載用の電子機器を備えていて、これらを組み合わせることで、キャッチコピーどおりの戦闘能力を発揮するということであります。

 そこで、伺いますが、F35の戦闘行動半径というのはどれぐらいあるでしょうか。

若宮副大臣 F35Aの戦闘行動半径につきましては、およそ一千百キロメートルであるというふうに承知をいたしております。

笠井委員 このロッキードのパンフレットによれば、空中給油を必要としない無給油での戦闘半径として、朝鮮半島はもとより、ロシア、中国、東シナ海まで戦闘行動が可能というふうにあります。

 見過ごせないのは、F35が搭載できる兵器能力であります。

 例えば、GPS誘導爆弾にJDAMというのがありますが、これはどんな兵器でしょうか。

若宮副大臣 今委員が御指摘になりましたJDAMでございますけれども、これは、五百ポンドまたは二千ポンドの通常爆弾にGPSの誘導装置を装着することによりまして精密誘導を可能といたします空対地の爆弾となります。

 ただ、このJDAMは推進力は有しておりませんので、戦闘機から投下をされますと自由落下によって目標に到達をするものとなります。ですから、射程は短いということが言えるかと思います。

笠井委員 JDAMといえば、アフガニスタン戦争で米軍のF18が国際赤十字病院に投下をして二十五人を殺りくしたとされる爆弾であります。

 もう一つ伺いたいと思いますが、同じく空対地爆弾としてSDB1という兵器がありますけれども、これは何ですか。

若宮副大臣 今委員がおっしゃいましたSDB1につきましては、二百五十ポンドの通常爆弾にGPS誘導装置及び滑空のための翼が装着をされました精密誘導の高い、これも空対地の爆弾となります。

 SDB1は、先ほどのJDAMに比べますと、翼がついてございますので、射程は少々長いかな、そういうような形でございます。

笠井委員 このSDB1の射程というのは約七十五キロというふうに聞いておりますが、自衛隊が導入するF35には、今幾つか聞きましたが、そうした兵器が何種類そして何機搭載されるということになりますか。

三ッ矢委員長 答弁できますか。

 若宮防衛副大臣。

若宮副大臣 これは、全体でこのF35Aは四十二機導入をする予定でございますが、個別具体の、どの弾薬をどの飛行機にとか、あるいは何発とか、そういったものにつきましては、ちょっと答弁は差し控えさせていただければと思っております。

笠井委員 ここに、防衛省の経理装備局航空機課ということで作成した「F―35の搭載兵装について」という文書があります。

 この資料を見ますと、F35の兵装搭載能力について、F35はF22等の他のステルス戦闘機と同様に、兵装類を搭載してもステルス性を損なわないようにするため胴体中央下部にウエポンベイを有している、また任務に応じてより多くの兵装を搭載するため主翼の下などにもウエポンステーションを有しているとあります。

 日本に導入開始時の搭載可能兵装として、F35の機体の正面図に振られた一番から十一番目までの箇所ごとに六つの兵器を搭載するということで、こうやって一覧表になっております。

 表に記されておりますが、例えば固定武装とある二十五ミリ機関砲の場合は百八十一発、先ほどのGPSの誘導爆弾のJDAMは二機、それから滑空型の爆弾、SDBの1というのが八機が搭載できるというふうにありますけれども、そういうことなんじゃないんですか。

若宮副大臣 今委員がお手元にあるお示しの資料というのは、ちょっと詳細が不明でございまして、この場で即座に即答ということは確認が困難でございますので、また改めて確認をさせていただきたいと思っております。

笠井委員 詳細が不明というか、「F―35の搭載兵装について」ということで、経理装備局の航空機課のものとして出したものであって、そこに具体的にこういうふうに、F35の兵装搭載能力についてということで書いてあるんですね。

 今申し上げたもののほかでいいますと、空対空ミサイルであるAIMの120C、AMRAAMが四機、それからAIMの9Xサイドワインダーが二機、レーザー誘導弾であるペーブウエー2が六機、合わせて最大で一万八千ポンド以上の兵器が搭載できるというふうにある。まさに驚くべきことになっております。

 岸田大臣に伺いたいんですが、一九七二年から開始されたF4戦闘機の導入に際しては、戦闘行動半径の長さが他国に侵略的、攻撃的脅威を与えかねないということで、爆撃装置を外して、そして空中給油装置を地上給油用に改修した経過さえありました。それさえ無視して、安倍総理の答弁にあるように、敵基地攻撃ということのかかわりで、そういう問題意識を持ってF35Aを大量に導入するということになると、これは決して許されないことになると思うんですけれども、いかがでしょうか。

岸田国務大臣 F4の際には他国に脅威を与えることになりかねないというような議論が行われたということでありますが、安全保障環境は絶えず変化をしております。さまざまな技術も絶えず進歩しております。その技術の水準と環境との関係において、その兵器の意味は変わってくるのではないかと考えます。そのような観点から物事は考えるべきではないかと思います。

笠井委員 ちょっと、私は、これは非常に驚いたんですが、安全保障環境が変化すると、憲法上許されないと言っていたことが許されちゃう、こういうことになるということでしょうか。

岸田国務大臣 兵器の影響について申し上げておりますが、いずれにせよ、憲法との関係で申し上げるならば、憲法のもと、さまざまな政策は決定されていかなければなりません。憲法を超えるような対応は許されないと考えます。

笠井委員 大臣に最後に伺いますが、政府は、敵基地攻撃の装備体系を保有する計画はないと言いながら、今ただしてまいりましたが、具体的な装備を進めている、あるいは検討したり購入したりということになってきているというのが現実だと思うんです。

 北朝鮮の脅威が新たな段階に入ったからだといって、他国の基地を攻撃する能力を備えることが本当に日本の安全に資するのかどうか。軍事対軍事の対立、逆に軍拡競争をエスカレートさせて、かえって北東アジアの緊張を高めるだけではないかと思うんですけれども、外務大臣として、その点、どのようにお考えでしょうか。

岸田国務大臣 我が国の安全保障に関しましては、我が国自身の防衛力を強化し、あわせて、日米同盟の抑止力を初めとする環境整備をしっかり整えていかなければなりません。

 いずれにせよ、外交が我が国の国家安全保障政策の要諦であり、しっかりとした環境整備を行った上で、我が国の防衛力をしっかりと整えていく。こうした基本的な考え方、これは我が国の国家安全保障戦略の中にも明記をされています。その方針に基づいて我が国の安全保障を考えていくべきであると考えます。

笠井委員 時間が来たので終わりますが、日本国憲法施行七十年の今こそ、九条を持つ国として、平和外交の大道を歩む。外交が要諦と言われましたが、まさに、そういう点で、大道を歩んで、北東アジアに存在する紛争と緊張を平和的、外交的手段によって解決するときだ、ここに本当に力を注ぐべきだということを述べて、きょうは終わります。

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三ッ矢委員長 次に、本日付託になりました所得に対する租税に関する二重課税の除去並びに脱税及び租税回避の防止のための日本国とスロベニア共和国との間の条約の締結について承認を求めるの件、所得に対する租税に関する二重課税の除去並びに脱税及び租税回避の防止のための日本国とベルギー王国との間の条約の締結について承認を求めるの件、所得に対する租税に関する二重課税の除去並びに脱税及び租税回避の防止のための日本国とラトビア共和国との間の条約の締結について承認を求めるの件、所得に対する租税に関する二重課税の除去並びに脱税及び租税回避の防止のための日本国とオーストリア共和国との間の条約の締結について承認を求めるの件及び脱税の防止のための情報の交換及び個人の所得についての課税権の配分に関する日本国政府とバハマ国政府との間の協定を改正する議定書の締結について承認を求めるの件の各件を議題といたします。

 これより順次趣旨の説明を聴取いたします。外務大臣岸田文雄君。

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 所得に対する租税に関する二重課税の除去並びに脱税及び租税回避の防止のための日本国とスロベニア共和国との間の条約の締結について承認を求めるの件

 所得に対する租税に関する二重課税の除去並びに脱税及び租税回避の防止のための日本国とベルギー王国との間の条約の締結について承認を求めるの件

 所得に対する租税に関する二重課税の除去並びに脱税及び租税回避の防止のための日本国とラトビア共和国との間の条約の締結について承認を求めるの件

 所得に対する租税に関する二重課税の除去並びに脱税及び租税回避の防止のための日本国とオーストリア共和国との間の条約の締結について承認を求めるの件

 脱税の防止のための情報の交換及び個人の所得についての課税権の配分に関する日本国政府とバハマ国政府との間の協定を改正する議定書の締結について承認を求めるの件

    〔本号末尾に掲載〕

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岸田国務大臣 ただいま議題となりました所得に対する租税に関する二重課税の除去並びに脱税及び租税回避の防止のための日本国とスロベニア共和国との間の条約の締結について承認を求めるの件につきまして、提案理由を御説明いたします。

 政府は、平成二十八年一月以来、スロベニア政府との間でこの条約の交渉を行った結果、平成二十八年九月三十日に署名が行われた次第であります。

 この条約は、日・スロベニア間で二重課税の除去を目的とした課税権の調整を行うとともに、両国における配当、利子及び使用料に対する源泉地国課税の限度税率等を定めるものであります。

 この条約の締結により、脱税及び租税回避行為を防止しつつ、両国間の人的交流及び経済的交流が一層促進されることが期待されます。

 よって、ここに、この条約の締結について御承認を求める次第であります。

 次に、所得に対する租税に関する二重課税の除去並びに脱税及び租税回避の防止のための日本国とベルギー王国との間の条約の締結について承認を求めるの件につきまして、提案理由を御説明いたします。

 政府は、平成二十八年三月以来、ベルギー政府との間でこの条約の交渉を行った結果、平成二十八年十月十二日に署名が行われた次第であります。

 この条約は、現行の租税条約を全面的に改正するものであり、投資所得に対する源泉地国課税のさらなる減免、税務当局間の徴収共助の手続の整備等の措置を講ずるための規定等を盛り込んでおります。

 この条約の締結により、脱税及び租税回避行為を防止しつつ、我が国とベルギーとの間での課税権の調整がより効果的に行われることになり、両国間の人的交流及び経済的交流が一層促進されることが期待されます。

 よって、ここに、この条約の締結について御承認を求める次第であります。

 次に、所得に対する租税に関する二重課税の除去並びに脱税及び租税回避の防止のための日本国とラトビア共和国との間の条約の締結について承認を求めるの件につきまして、提案理由を御説明いたします。

 政府は、平成二十八年六月以来、ラトビア政府との間でこの条約の交渉を行った結果、平成二十九年一月十八日に署名が行われた次第であります。

 この条約は、日・ラトビア間で二重課税の除去を目的とした課税権の調整を行うとともに、両国における配当、利子及び使用料に対する源泉地国課税の限度税率等を定めるものであります。

 この条約の締結により、脱税及び租税回避行為を防止しつつ、両国間の人的交流及び経済的交流が一層促進されることが期待されます。

 よって、ここに、この条約の締結について御承認を求める次第であります。

 次に、所得に対する租税に関する二重課税の除去並びに脱税及び租税回避の防止のための日本国とオーストリア共和国との間の条約の締結について承認を求めるの件につきまして、提案理由を御説明いたします。

 政府は、平成二十八年十月以来、オーストリア政府との間でこの条約の交渉を行った結果、平成二十九年一月三十日に署名が行われた次第であります。

 この条約は、現行の租税条約を全面的に改正するものであり、投資所得に対する源泉地国課税のさらなる減免、税務当局間の徴収共助の手続の整備等の措置を講ずるための規定等を盛り込んでおります。

 この条約の締結により、脱税及び租税回避行為を防止しつつ、我が国とオーストリアとの間での課税権の調整がより効果的に行われることになり、両国間の人的交流及び経済的交流が一層促進されることが期待されます。

 よって、ここに、この条約の締結について御承認を求める次第であります。

 最後に、脱税の防止のための情報の交換及び個人の所得についての課税権の配分に関する日本国政府とバハマ国政府との間の協定を改正する議定書の締結について承認を求めるの件につきまして、提案理由を御説明いたします。

 政府は、平成二十八年十二月以来、バハマ政府との間で現行の協定を改正する議定書の交渉を行った結果、平成二十九年二月九日に署名が行われた次第であります。

 この議定書は、現行の協定の内容を部分的に改正するものであり、OECDが策定した国際基準に基づく金融口座の情報交換に必要な自動的な情報の交換に関する規定を新たに導入するものであります。

 この議定書の締結により、国際的な脱税及び租税回避行為の防止に資することが期待されます。

 よって、ここに、この議定書の締結について御承認を求める次第であります。

 以上五件につき、何とぞ御審議の上、速やかに御承認いただきますようお願いいたします。

三ッ矢委員長 これにて趣旨の説明は終わりました。

 次回は、公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。

    午後二時四十九分散会


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