衆議院

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第12号 平成29年4月28日(金曜日)

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平成二十九年四月二十八日(金曜日)

    午前九時開議

 出席委員

   委員長 三ッ矢憲生君

   理事 黄川田仁志君 理事 新藤 義孝君

   理事 土屋 品子君 理事 中山 泰秀君

   理事 長尾  敬君 理事 小熊 慎司君

   理事 寺田  学君 理事 岡本 三成君

      今津  寛君    小田原 潔君

      小渕 優子君    大野敬太郎君

      熊田 裕通君    佐々木 紀君

      島田 佳和君    鈴木 隼人君

      高木 宏壽君    武井 俊輔君

      辻  清人君    松島みどり君

      山田 美樹君    石関 貴史君

      吉良 州司君    中川 正春君

      原口 一博君    渡辺  周君

      浜地 雅一君    笠井  亮君

      足立 康史君    玉城デニー君

    …………………………………

   外務大臣政務官      小田原 潔君

   外務大臣政務官      武井 俊輔君

   参考人

   (京都大学大学院法学研究科教授)         浅田 正彦君

   参考人

   (長崎大学核兵器廃絶研究センター長・教授)    鈴木達治郎君

   参考人

   (岐阜女子大学南アジア研究センター客員教授)   福永 正明君

   外務委員会専門員     辻本 頼昭君

    ―――――――――――――

委員の異動

四月二十八日

 辞任         補欠選任

  辻  清人君     高木 宏壽君

同日

 辞任         補欠選任

  高木 宏壽君     辻  清人君

    ―――――――――――――

四月二十八日

 沖縄県民の民意尊重と、基地の押しつけ撤回に関する請願(畠山和也君紹介)(第一〇八〇号)

 同(藤野保史君紹介)(第一〇八一号)

 同(宮本岳志君紹介)(第一〇八二号)

 イスラエル入植地問題にかかわる日・イスラエル投資協定の問題点に関する請願(鷲尾英一郎君紹介)(第一一一七号)

は本委員会に付託された。

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 参考人出頭要求に関する件

 原子力の平和的利用における協力のための日本国政府とインド共和国政府との間の協定の締結について承認を求めるの件(条約第三号)


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     ――――◇―――――

三ッ矢委員長 これより会議を開きます。

 原子力の平和的利用における協力のための日本国政府とインド共和国政府との間の協定の締結について承認を求めるの件を議題といたします。

 これより質疑に入ります。

 この際、参考人出頭要求に関する件についてお諮りいたします。

 本件審査のため、本日、参考人として京都大学大学院法学研究科教授浅田正彦君、長崎大学核兵器廃絶研究センター長・教授鈴木達治郎君、岐阜女子大学南アジア研究センター客員教授福永正明君の出席を求め、意見を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

三ッ矢委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

三ッ矢委員長 この際、参考人各位に一言御挨拶申し上げます。

 本日は、御多用のところ本委員会に御出席いただきまして、ありがとうございます。参考人各位には、それぞれのお立場から忌憚のない御意見をお述べいただき、審査の参考にいたしたいと思いますので、よろしくお願いいたします。

 次に、議事の順序について申し上げます。

 まず、浅田参考人、鈴木参考人、福永参考人の順に、お一人十分程度御意見をお述べいただき、その後、委員からの質疑にお答え願いたいと存じます。

 なお、発言する際はその都度委員長の許可を受けることになっております。また、参考人は委員に対して質疑をすることができないことになっておりますので、あらかじめ御承知おき願いたいと存じます。

 それでは、最初に浅田参考人にお願いいたします。

浅田参考人 京都大学の浅田正彦でございます。

 本日はお招きをいただきまして、ありがとうございます。

 日印原子力協定の意義につきまして、考えるところを述べさせていただきたいというふうに思います。

 原子力協定というのは、原子炉あるいは核物質のような重要な原子力資機材の継続的な輸出入をする場合に、その平和利用を担保するという目的で締結されるものでありまして、日本としましてもこれまで十三の国との間で締結しておりますし、一つは、国際機関との間の協定であります。

 以前は、日本の締結する原子力協定というのは、日本が原子力資機材を輸入するということのための協定というのがその主要な性格であったわけですけれども、最近では、日本から原子力設備を輸出するという側面が強くなっているというふうに思います。インドとの関係におきましても同様でありまして、日本からの原子力設備の輸出という側面が強いというふうに思います。

 したがって、日印原子力協定というのは、一方で日本の原子力産業の国際展開という側面あるいはインドにおける地球温暖化防止という側面に加えまして、日本の原子力協力というものが核不拡散・核軍縮といった観点からマイナスに働かないようにというふうな要請という、この二つの種類の要請を満たす必要があるというふうに思っております。

 前者の要請というのは、すなわち、原子力の国際展開というもの、あるいは地球温暖化防止というものが協定によって促進されるというのは明らかでありますので、私の方からは、核不拡散・核軍縮の観点を中心に述べたいというふうに思います。

 核不拡散については、一九六八年のNPT、核不拡散条約によって、五つの国以外の国は核兵器を保有できないということになっておりますけれども、インドは、これは差別的であるということで一度も加入したことがないということでありますけれども、他方で、一九七四年と一九九八年に核実験を行って、核不拡散体制の外で核保有国の地位を得ておるということであります。

 しかし、二〇〇八年になりますと、日本もメンバーであります原子力供給国グループ、NSGといいますけれども、この紳士協定と言われる緩やかなグループにおいて、インドを例外扱いにするということがコンセンサスで決定されています。これによって、NPTに加盟しておらず核を保有しておるインドとの間で、インドに対して原子力供給を行うということが認められることになりました。

 こういった二〇〇八年の決定を受けて、アメリカ、フランス、ロシア、イギリス、カナダといった九の国がインドとの間に原子力協定を結んでおりますし、さらに三つの国が署名まで至っているというところであります。

 厳密に言いますと、既に核を保有しておるインドとの協力で、核不拡散上の問題が生ずるということにはなりません。インドが核を保有した後に、インドに対して核不拡散上の意味のある措置をとれるというわけではありません。

 したがって、日本として主として考慮すべきは、インドからのさらなる拡散の防止と、それから核実験あるいは核分裂性物質の生産についての核軍縮の側面ということになろうかと思います。

 原理原則の問題としましては、NPTに加入せず核兵器を保有するインドとの間に原子力協力を行うということについては、反対という立場もあり得るかと思います。

 他方で、先ほど述べましたように、日本の原子力産業の国際展開、あるいは地球規模の温暖化の防止という観点に加えまして、インドが核を保有しているということを前提とした場合には、インドを核不拡散のレジームのメーンストリームに取り込むというふうな側面にも注目しなければならないというふうに思います。

 先ほど言いましたように、ここでは、日本のインドに対する原子力協力が核不拡散あるいは核軍縮の観点でマイナスに働かないかという点を中心に述べたいと思います。

 第一には、原子力資材、すなわち核物質でありますけれども、かつて米印の合意の際に、アメリカがインドに提供したウラン自体は平和目的に利用されるけれども、それによってインドの国産ウランがインドの核兵器の生産に振り向けられるというふうな問題がないかというふうなことが指摘されておりました。

 しかし、日本の場合には、インドに対してウラン等の資材を提供するということはありませんので、日本については米印の場合のような問題はそもそも起こらない。それどころか、むしろ、諸外国の提供したウランが日本の提供した原子炉等で使用される場合には、日本の原子炉に対する保障措置といった規制がかかっているわけですから、各国の提供したウランに対しても平和利用、あるいはそうした保障措置の提供という効果も期待できるかと思います。

 第二が、原子力機材でありますけれども、これは原子力設備です。日本が主としてインドに対して提供するというのはこの原子力機材、原子炉等の機材であろうというふうに思います。問題は、その中でも、濃縮、再処理といった核兵器の開発に直結するような機材あるいは技術というものが提供された場合には、これは大きな問題になろうというふうに思いますけれども、この点については協定の二条四項というところで、協定が改正されなければ提供されないというふうなことになっております。

 この点に関連して、改正の可能性があるかどうかということですけれども、先ほども少し触れましたNSGというグループ、原子力供給国グループのガイドラインの中に規定がありまして、二〇一一年の改正によって入ったものですけれども、濃縮、再処理のような機微技術あるいは設備というのは、NPTに入っていない国には提供しないということになっています。

 したがって、インドがNPTに入っていない以上は、日本が協定を改正して、インドに対してこういった技術を提供するということにはならないというふうに思います。

 第三に、インドの核実験との関係でありますけれども、これが日印原子力協定の交渉では最も争われたところだというふうに理解しております。

 日本は、核実験が行われた場合には原子力協定を終了、あるいは協力を停止するというふうな立場であったのに対して、インドは、現在行っている自発的な核実験のモラトリアムが法的な義務になるというのは受け入れられないというふうな態度であったわけですけれども。その交渉の結果が、協定と同時に署名されました、やや奇妙な名称ですけれども、見解及び了解に関する公文というものに取りまとめられておるというふうに思います。

 国会では、これまで、この公文の法的性質というものが議論になっているというふうに思いますけれども、私自身は、この文書が法的にどのような地位を持っているかということを議論するのは余り生産的でないというふうに思います。

 といいますのは、協定の十四条自体において、締約国は理由のいかんを問わず一年の事前通告をもって協定を終了できるというふうに書いてあります。したがって、この公文があるかないかを問わず、日本としては、あるいはインドもそうですけれども、一年の事前通告で協定の終了はできる、あるいは協力の停止もできるということであります。

 ただ、公文は無意味かといいますとそうではありませんで、公文は政治的には極めて重要であるというふうに思います。

 公文では、簡単に言いますと、核実験が行われた場合には協定を終了しあるいは協力を停止するということが書いてあるわけですけれども、これは、日本が協定の十四条に書かれておる一方的な終了の権利を、核実験が行われた際には行使するというふうな意図を明確化したというふうな意味がありまして、この文書に日本のみならずインドも署名しているということは、それなりの政治的な意味があろうというふうに思います。

 日印協定というのは、日本の原子力産業の国際展開やあるいは地球温暖化防止の観点に加えて、さらにはインド、まあ、インドはNPTに入っていないという事実はありますので、それを前提にして、しかもインドが核兵器を持っているという事実を前提とした場合には、インドを核不拡散体制に事実上取り込む、さらには、こういった協定を結ぶことによって、核実験を行えば協定が終了するというふうなことで、事実上の核実験に対する抑止というふうな効果も見られるのではないかというふうに思っております。

 以上、簡単ではございますけれども、考えているところを述べさせていただきました。

 どうもありがとうございました。(拍手)

三ッ矢委員長 ありがとうございました。

 次に、鈴木参考人にお願いいたします。

鈴木参考人 長崎大学核兵器廃絶研究センター、センター長の鈴木でございます。

 では、早速始めたいと思います。

 お手元にパワーポイントの資料をお配りしておりますので、それに沿って説明させていただきます。

 まず第一に、最初のページは私のポイントですが、四点あります。

 そもそも、このインドとの原子力協定というのは、核不拡散条約のメンバーでない国に対して原子力協力をしないという国際的な規範、これが国際的な核不拡散体制の柱でありますが、残念ながらこれを破ることになる。これはもともとは、やはりアメリカの原子力政策、核不拡散政策の転換、それから先ほどお話がありました原子力供給国グループの例外化扱い、ここから始まっているわけですが、この点がそもそも問題であると私は考えております。

 二番目に、日本政府の対応ですが、そのNSG例外化に際して、そのときの声明として、核実験をインドがしたら協力を破棄すべきであると明確にその決意を表明されておりますので、インドとの原子力協力を交渉する場合には、これが最も重要な条件であるというふうに私は理解しておりました。

 しかし、今回の日印協定の、今御説明がありました公文書を見ますと、核実験禁止で破棄というふうに明文化されておらず、さらに濃縮、再処理の技術も容認するという、ほかの原子力協定に比べてかなり弱い協定になっているというのが私の理解であります。

 現在の国際状況を考えますと、北朝鮮の核開発に対して我々はぜひ核開発をやめるよう要請しているわけですが、それに対して、核兵器を持っている国に対して緩い原子力協力を進めるということは非常にマイナスであり、しかも国際原子力市場の状況を考えますと、七年前、二〇一〇年に交渉を開始した時点に比べますと、現在の国際原子力市場は非常にリスクが高く、ベネフィット、利益の方も減っているということで、特に被爆国である日本がこの協定を批准することは、核軍縮・不拡散政策にとっても大きな、日本にとっても大きなマイナスになるというのが私の理解、私のポイントであります。

 それでは、二ページ目を見ていただきますと、歴史なので、これはもう既にお話がありました。ちょっと飛ばさせていただきますけれども、ポイントは、七八年の、アメリカがもともと中心になって、インドの平和利用核爆発に対して、NPTメンバー以外への原子力協力を禁止するということで、日本も参加している。それが二〇〇七年に変わった。それから、二〇〇八年にインドの例外化に合意ということですね。

 では、次の四ページ目に行っていただきたいんですが、アメリカとインドの原子力協力をちょっと見ていただきたいんです。

 アメリカは法律で、NPTのメンバー以外に原子力協力をしないという法律があったわけです。これをわざわざ改正して、インドとの原子力協力を進めた。

 この状況を見ますと、今回の日本の協力とよく似ているんですが、インドの再処理を容認し、核実験をした場合には要求する権利を持つ、破棄をする権利を持つという表現になっておりまして、中に、別の供給者を確保できるという供給保証項目がありまして、インド側はこれでも核実験はできるという解釈をしている、玉虫色の文書になっております。今回、実は、日印原子力協定もこれに近いものになっていると私は理解しております。

 次のところですが、NSGインド例外化に当たり日本政府の決意表明というのがあります、二〇〇八年ですが。非常に苦慮した結果、日本政府としてはぎりぎりの判断として加わった。その際、政府として、インドによる核実験モラトリアムが維持されない場合には、NSGとしては例外化措置を失効ないし停止すべきであること、さらに、参加各国は各国が行っている原子力協力を停止すべきであることを明確に表明しています。これが、日本政府のインドとの原子力協力を進める条件であるということですね。

 二〇一〇年に、私は原子力委員会におりましたのですが、このときに協力協定を開始したわけですけれども、このときに原子力委員会として見解を出していただいております。

 そのときも、約束と行動を守るだけでは十分ではない、核軍縮に向けて創造的で現実的な取り組みを両国が国際社会と連携協力して着実に推進する意志を共有していることを確認することを期待するという表現になっていますが、約束と行動を超えて、核軍縮や不拡散分野で大きなベネフィットがないと困るというのが、日本とインド原子力協力に対する原子力委員会の見解でありまして、これをもとにぜひ交渉していただきたい。

 単純に言えば、米国とインドの原子力協定では十分ではない、それより厳しい条件で交渉してほしいという要望を出しております。しかし、今回の協定を見ますと、残念ながら、基本的にはアメリカと似たような協定になっている。

 ポイントは、先ほど申しましたように、核実験を実施したら協定を自動的に破棄できるというふうに明文化されているかどうか、それからインドの軍事プログラムに対して間接的にでも支援することにならないかという点を私は注目しましたが、両方ともよくない。核実験条件については玉虫色であり、機微な技術移転と濃縮、再処理は基本的には容認されている。

 今、浅田参考人から御説明があった第二条、おっしゃるとおり、「改正された場合に限り、」と書いてありますが、改正されれば移転することができるわけです。しかも、十一条では二〇%以上の濃縮も可能というふうになっております。十四条で書かれている核実験禁止条約は、先ほどお話もありましたが、「協定を終了させる権利を有する。」としか書いていません。さらに、その一年間の中で協議をして、協力停止をもたらし得る状況について慎重な考慮を払うという、インド側からの要求がここに入っているということで、そう簡単にインドが合意するかどうかはわからないということで、次のページに書かれていますように、続きましては公文書についても明確でないということで、果たしてこれでインドが核実験を行ったら協定破棄できるかということは、私としては読めない。あるいは読める場合もありますが、玉虫色であるということで、これでは不十分であるというふうに私は考えます。

 次のページは、私が一番モデルとしている、いわゆる濃縮や再処理を明確に禁止した二国間協定というのは既に日本は結んでおります、これはヨルダンとの協力協定ですが、UAEとか、ほかにもこういう厳しい協定を結んでいる国があるわけですが、残念ながら、インドとの協定ではこれよりも甘いということで、私は非常に残念であると思います。

 次のページに、私はパグウォッシュ会議という、核兵器廃絶を推進する科学者団体に属しているわけですが、日本パグウォッシュ会議の有志として、やはりこの協定が出た後に声明を出しております。

 もし協定を締結するのであれば以下のような条件が必要であるということで、明らかに核実験を行った場合には協定を破棄するという明文化が必要であり、少なくともほかの核不拡散条約に参加している国よりも厳しい条件を要求すべきであるということ、再処理や濃縮についても技術移転の禁止や国内における再処理、濃縮の禁止、それから、包括的核実験禁止条約のCTBTの批准や、FMCT、兵器用核物質生産禁止条約への積極的参加といった新たな条件が加わらない限り、私は協力はすべきではないというふうに考えております。

 最後のページですが、先ほど申しましたように、今、北朝鮮との核問題、核開発が非常に大きな問題になっておりますが、このインドとの原子力協力に入るということは、核開発をした方がかえって不拡散条約の条件が緩められるというメッセージにもなりかねない。核開発を事実上容認するのみならず、技術供与も与えてしまうということで、非常に悪いメッセージを与えてしまう。

 それから、隣国の韓国や中国に対しても、インドが核、さらに再処理を進めるということに対してどういう心配をするかということで、これもメッセージとしては問題がある。

 それから、現在、東芝はウェスチングハウスで問題になっておりますが、原子力市場のリスクも非常に高くなっておりまして、七年前に比べますと原子力市場のニーズも減っているということで、現時点で日印原子力協定を批准することはリスクが大きく、メリットの方が少ないというのが私の意見であります。

 以上で発表を終わります。ありがとうございました。(拍手)

三ッ矢委員長 ありがとうございました。

 次に、福永参考人にお願いいたします。

福永参考人 おはようございます。岐阜女子大学南アジア研究センターの福永と申します。

 もうお二人の先生が詳細にお話をしていただきましたので、事実関係につきましては私はかなり省いて、ポイントのみをお話しさせていただければと思っております。

 まず、インドが一九七四年に第一回の核実験を行った際に、これはアメリカとカナダからの民生協力によって提供を受けた燃料、資機材などを秘密のうちに軍事転用して核実験を行った、核実験とは言っておりませんが、平和的爆発というふうに言っておりますけれども、七四年にはそういう、言葉は強くなりますが、前科がある。

 最近でも、二〇〇四年には、インドの原子力公社の元役員が当時制裁中であったイランに対して秘密裏に技術転用をしたのではないかというようなことが、アメリカ政府から指摘もございます。

 次に、この条約、協定を日本が、唯一の戦争被爆国として核不拡散に大変努力し、核軍縮に向けて努力してきた日本がこういう条約、協定を結ぶということは、非常に大きな影響を国際的にも及ぼすのではないかと考えます。

 インドはNPT未締約ですので、正式に言いますと核兵器国でも非核兵器国でもございません。ただ、勝手に核兵器をつくってしまったという宙ぶらりんの状態を、NPTの枠外という扱いであります。そうしますと、この条約でその枠外にあるインドに核協力、原子力協力を行うということは、あたかもこれまでのインドの核実験、核保有というのが正当であるかのように、あるいは六番目の核保有国であるかのように認めることになるのではないかということを大変危惧いたしております。

 次に、当然のことながら、国際原子力機関、IAEAとインドは議定書を結びまして、査察、保障措置が行われることとなっております。しかし、これは非常に重大な問題を含んでおりまして、インドが国内の原子力施設を軍事用と民生用に分ける。民生用については全て査察を受ける。しかしながら、インドが軍事用ですよと言った施設については査察は入らない。ということは、インドは国際的な監視のないところで、査察を受けずに原子力活動、生産活動、あるいはプルトニウム濃縮、そういったことを行うことができる。

 この条約、協定は、このIAEAの保障措置に非常に依拠している部分がございます。となりますと、保障措置が行われるのだから大丈夫だろうというよりも、むしろ、保障措置から漏れているところがあるというところは大変重要な問題なのではないかということを申し上げたいと思っております。

 次に、公文のことがございました。多分、先生方がお受け取りになられている資料には、これは参考というふうに入っております。協定本体ではないわけでございます。非常に重要な部分がここにまとめられているようなんですけれども、参考文書であると。

 それはどういうことかといいますと、二〇〇八年九月に原子力供給国グループ、NSGがインドに例外措置を認めた際、直前、九月五日、当時のムカジー外相がインドの核方針というものを表明し、それを受けてNSGでインドの例外措置を認めたという経緯がございます。

 しかしながら、これは今、鈴木先生からお話ありましたように、日本にとってはぎりぎりの選択であった、そして非常に厳しい決意表明をしていたという部分をなしにして、この声明があるから大丈夫ですよというふうに御説明があるんですけれども、むしろ核実験を行った際には即時に停止するということが協定には書かれていないという部分が非常に重要なところだろうと思います。これは多分インドが拒絶し続けたのだろうと思いますけれども、協定にありますのは、再処理は停止するという部分がございます。しかしながら、日本政府は、インドが自主的に核実験モラトリアムを表明しているから、それを翻すようなことがあれば停止しますよということを述べ、インド側もそういうことを述べたねという確認をしているのがこの公文でございます。

 すると、この九月五日の声明を絶対的に強調して、過度に強調して、将来に及ぶ政策とするということは非常に危険なのではないか。

 例えば、インドが核モラトリアムを維持しない、あるいは核政策を転換した場合には、どのような立場を日本はとっていくのか。例えば核実験を行ったときに、日本が一年後の終了の通告を行うということは決まっておりますけれども、そこにはさまざま条件がついております。安全保障の面を点検する、あるいは原子力計画を点検するなどなど、協定本文の中では考慮することに合意しております。そうしますと、NPTに入らない国にこういう形で進めていいのだろうかという大きな問題を持っております。

 日本がインドに対して再処理、しかも濃縮まで認めたことは非常に重大な問題であるということを思っております。先ほど申し上げましたが、民生用施設については査察がございます、しかし、軍事用施設については査察がございません。では、すぐ民生用施設でプルトニウムをつくってそれを軍事転用するのかということではなくて、インドは国産ウランが非常に限定されております。外国との貿易、とりわけウラン輸入が開始され、日本から資機材が、これは非常に重要な部分の日本製品が必要とされておりますので、これにインドが、民生用では原発を動かし、再処理を行い、濃縮を行う。そうすると、そこは一貫して、一つのルートとして完成するわけです。ところが、国産ウランにつきましては、軍事用施設で濃縮する、再処理する、そしてさらには、現在は高速原型炉というものを、年内に完成と言われておりますけれども、それも軍事用施設として認定されて、認定といいますか、インドが特定しております。

 このように、協定には中止の文言が入っておりますけれども、果たして、核実験が行われたから、さあ中止だよ、あるいは終了だよということが現実として可能性があるのか、一度使われてしまった資機材をどうやって返還するのか、あるいはインド側に返還する際には国費によって賠償するということのようですけれども、果たしてそれは現実性があるのかどうかということについては非常に疑問を持っております。

 最後に、まとめて申し上げますと、この協定は枠外にいるインドを入れるということが強調されているんですけれども、むしろ日本は、これまでの戦後七十年の外交を維持するならば、やはり、NPTに入れ、核実験はもうしちゃだめなんだよということを約束させるべきであり、それが最低条件であっただろうと思われます。

 特に現状の中で、日本が、日本からの輸出の中で再処理あるいは濃縮を認めるということにつきましては、各国、今御紹介ありましたけれども、ほかの国との協力よりもより緩いものではございます。あるいは、印米の中では、現場に十人以内の現認団が入って確認できるということが書かれておりますけれども、日本の協定にはございません。

 二〇〇八年にインドは海外との原子力関係の輸入貿易が認められました。それ以後、大規模な開発計画が進んでおります。しかしながら、現在、まだ事業について本契約はございません。

 今、もう二〇〇八年と二〇一七年の原子力産業の、あるいは原発に関する認識というのは大きく変わっております。核兵器禁止に関する勢いも変わっております。

 今ここでこの協定ができ、かつ、契約がうまく進み、建築工事が順調に進みましても、十年後の電力をインドの人たちが手に入れることになる。であるならば、日本が行うべき協力というのは、送電ロス三〇%と言われているインドに対してはそういう技術を提供する、あるいは、再生可能エネルギーを提供していく、インドの人たちに、より今必要な電力を確保できるようなことを進めるということではないかと思っております。

 そのほか、本協定には、インドの原子力賠償法の問題、住民による現地での反対運動などなど、さまざま問題はございますけれども、議員皆様には、慎重な御審議の上、ぜひとも協定の問題点を御理解いただければと、重ねてお願いいたします。

 ありがとうございました。(拍手)

三ッ矢委員長 ありがとうございました。

 これにて参考人の方々の意見の開陳は終わりました。

    ―――――――――――――

三ッ矢委員長 これより参考人に対する質疑を行います。

 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。大野敬太郎君。

大野委員 おはようございます。自由民主党の大野敬太郎でございます。

 きょうは、参考人質疑ということでございまして、京都大学から浅田先生、長崎大学から鈴木先生、そして岐阜女子大学からは福永先生、大変お忙しい中、御遠方より国会にお越しを賜りましたことを、改めて、まずは感謝を申し上げたいと思います。

 いろいろな立場でありますけれども、私自身は、この協定というのは、枠外にいる人たちに対して、外から反対だと言うだけではしっかりとした体制は築けないという思いがありまして、やはり何かしらの関係、コミットをしていくことによって核へのコントロールをしなくちゃいけないんだ、こういう方向性から議論をさせていただきたいと思っております。

 まず、お伺いをさせていただきたいのは浅田先生に対してであります。国際法の専門家、あるいはNPT体制の歴史についてもお詳しいということですので、この部分についてちょっとお伺いをさせていただきたいんです。

 先ほど先生もおっしゃったように、二〇〇八年、NPTの体制、レジームですね、そのときまでは、持たざる国には民生品の協力をするということからすれば、当然、インドは、協力にては禁止ということになるはずだったのに、二〇〇八年にそれが方向性が変わったということでありますけれども、このときに一体どんなことがあったのかということをまずお尋ねをしたいと思います。

浅田参考人 どうも御質問ありがとうございました。

 二〇〇八年のNSGにおける決定というのは、それまでNSGというのは、NPTに入っていない国に対していかに核兵器の拡散を防止するかということで、細かく言いますと、国際原子力機関の包括的な保障措置を受け入れていない国に対しては原子力資機材を提供しないというルールをつくっておったわけですね。これを、インドとの関係で例外扱いしようということで、アメリカが中心となりまして議論をしておったわけですけれども、すぐには決まらなくて、何回かの会議の結果として、インドが核実験を行った場合についての議論が最も争われたところで、この点について、先ほども少し出ました公文にも書かれております、二〇〇八年の九月五日のインドのムカジー外相の声明というものが出されまして、そこでインドは、核実験に対してモラトリアムを守るというふうなことを誓約しました。

 これをベースに、では、インドに対してこれまで禁止されておった原子力資機材の提供を認めようということが、日本を含めてコンセンサスで採択されたということで、それ以降、包括的保障措置を受け入れていないけれども、インドに対しては資機材を提供できるということになって、その後、多数の国が協定を締結しているということでございます。

大野委員 ありがとうございます。

 つまり、このときに加盟していないところに対して何らかのアクションを起こさないといけないよねという流れが多分国際社会の中にあって、多分コミットしないと孤立化をさせてしまうよね、むしろ民生品も含めて全てブラックボックスの方に行ってしまうんじゃないか、こういう懸念があったという理解でよろしいですか。

浅田参考人 そもそもの経緯とは別にしまして、その議論の中で、NPT体制の外にある国に対してどのような規制を、規制といいますか、不拡散の措置を事実上守らせるかということは、確かに議論があったと思います。

 つまり、例えば日本の原子力協定のように厳しい条件のもとに提供するということになりますと、インドは、提供を受けるためには、あるいは提供を受け続けるためには、その規制に対してそれを守るようなことをしなければいけないということになりますので、事実上そういった不拡散の体制にインドは入っていく、これが重要だという認識はあったと思います。

大野委員 おっしゃるとおり、私も、やはり二〇〇八年の体制というのがしっかりと構築できたことによって、もちろん原子力あるいは核の実験のモラトリアムというのを含めて、いろいろな条件のもとにその体制を築いていくという協力があったからこそ不拡散の体制がある種強化をされたんじゃないか、こういう思いを持っているところであります。

 特に、私は、この交渉の経緯、専門家じゃないのでそんなに読んではおりません、さらっと斜め読みをさせていただきましたけれども、いろいろな議論が当時あって、やはりさっき鈴木先生がおっしゃったような話もあったようでありますが、結果的にNSGの中で一致して、最終的には、これだったらモラトリアム宣言をベースにしているとかいう条件があるならば、まあそうだよねということで、NSGの各国が合意したというふうに伺っておりますので、ある種、不拡散体制が強化できたのではないかと思うんですけれども。

 これはかなり予想的な話なのでお答えになれるかどうかわかりませんが、もし仮に、二〇〇八年、こういった流れになっていなかったとしたら、なっていなかったとしたらという仮説の問いなのでお答えにくいかもしれませんけれども、インドの原子力政策というのは一体どのようになっていたのかというのは、御想像になられることはありますか、浅田先生。

浅田参考人 仮定の話でなかなか難しいんですけれども、二〇〇八年の合意がなかった場合には、恐らくインドに対する各国の資機材の提供というものの枠組みができなかったと思います。

 先ほど申しましたけれども、もう既に九つの協定が結ばれていますし、三つの協定は署名されている状況で、インド自体としましても、恐らく資料で御存じと思いますけれども、二〇五〇年までに総電力の二五%を原子力で賄おうとしている、現在二%ないし三%のものをそれだけに拡大しようとしておるわけですけれども、こういったことは全くできない。

 ですから、私の最初の冒頭の発言でも、核軍縮あるいは核不拡散の問題を中心に申し上げましたけれども、地球温暖化という問題もかなり重要だと思っております。

 といいますのは、インドのデリーのPM二・五というのは、北京の話がよく出ますけれども、北京の一・五倍の量が出ているというふうに言われています。これはWHOの基準からすると十二倍というふうに言われています。こういった大気汚染の問題あるいは地球温暖化の問題に対して、原子力へのシフトをするということになりますと、この点でも改善が望まれるというふうに思っております。

大野委員 ありがとうございます。

 温暖化の話も重要であると思いますし、私自身は、やはり保障措置の範囲をどんどん広げていくということによってNPTのある種体制の維持強化ができているということは、非常に大切なんだと思っています。そういった上で考えれば、今回の日印の原子力協定というのは、ある種、IAEAの保障措置の範囲が減ることは絶対ないわけで、必ずふえる、必ずふえていくんだということで理解をしております。

 そういった意味で、先ほど、たしか福永先生でしたか、保障措置がない部分があるんだということを問題視するという向きも確かに理解はできるんですけれども、今後、それはやはり国際社会の中で保障措置の範囲を広げていかなければいけないんだ、そういう思いを持っております。

 そういった意味で、改めて、保障措置というのがこれからインドの中で広がっていくという理解を持っておりますけれども、その部分については、浅田先生はどのようにお思いになりますか。

浅田参考人 ありがとうございます。

 インドにおいては、当初は、民生用の原子力施設と軍事用の原子力施設の区別がなされておりませんでした。ですから、どの施設においても場合によっては軍事転用されるという可能性があったわけですけれども、二〇〇五年の米印合意、そもそもの合意がそこから始まったわけですが、この米印合意において原子力施設の軍民の分離をするということを行いまして、したがって、民の部分から軍の方に転用されるということがないという制度になったわけですね。

 ですから、そういう意味では、保障措置というものを適用して民から軍への転用がないということを確保するということはできたと思います。といいますのは、軍の部分については、これは保障措置をする意味はありませんので、重要なのは民から軍に移らないようにするというところが重要でありまして、この点が保障措置の役割であって、これが拡大していくということは、国際不拡散体制にとってはプラス、マイナスではなくてプラスであるというふうに思います。

大野委員 ありがとうございます。

 一方で、この日印協定自体についてお伺いさせていただきたいと思います。

 先ほど来御議論させていただいております二〇〇八年のNSGに基づいて、ある種、今回の協定というのは同じ流れの土俵に乗っているという理解をしておりますけれども、今回の日印協定というのは、インドが結んでいるほかの国との原子力協定、先ほど先生もお触れになられました米印原子力協定であるとかフランス、イギリス、ちょっと資料が今ないのであれですけれども、そういった国々との九カ国の協定よりも、私は条件としてはある種厳しい条件になっている、厳格な条件になっている、特に公文という、余りほかに例がないようなそういったものもとっていらっしゃる、そういったことであると理解しておりますけれども、これは正しい認識かどうかを浅田先生にお伺いさせていただきたいと思います。

浅田参考人 ありがとうございます。

 インドが締結しております他国との原子力協定との比較なんですけれども、再処理の問題について先ほどいろいろ議論はありましたけれども、これまでインドが締結した全ての原子力協定において再処理が認められておるということを申し上げておきたいと思います。したがって、日本のみが再処理を認めないということの意味というのは余りないということであります。

 違いでありますけれども、先ほどおっしゃったように、公文の存在というのが非常に大きくて、特にアメリカとの関係が最も適当だと思いますけれども、アメリカは、原子力協定を締結する場合には、核実験が行われた場合には原子力協定を終了するというふうな条項を必ず入れるというふうなことをとっております。そのアメリカでさえ、こういった核実験を行った場合の終了の問題について全く米印協定では規定されていないということになっておったわけです。

 これに対して日本の場合には、そういったアメリカでさえできなかったことを、公文という形ではありますけれども、日本の立場として核実験が行われれば終了するというふうな立場を明らかにしたというのは、しかも、先ほども申しましたけれども、これに対してインドの代表も署名しているというふうなことは、重い存在であるというふうに言わざるを得ないというふうに思います。

大野委員 ありがとうございます。

 最後に、ちょっと法律論について、法律論と言いましたけれども、難しくならないように、今回の日印協定というのはある種注目を集めている協定でもございますので、国民の皆さんにわかりやすくという意味で単純な質問をさせていただきたいと思います。

 先ほど先生方も触れられましたけれども、今回の協定も、ほかの国に倣って、理由のいかんを問わず協定というのを停止できるんだ、どういう理由によってということじゃなくて、日本がおかしいと思うんだったら、この協定というのは、一年のあれですけれども終了できる、こういう理解でよろしいか。あと、協力の内容もとめられる、あるいは、協力した後に向こうで残った残留物、これも返還を求められる、もし返還してあるいは停止してということによって向こうに損害が発生したときに、損害賠償も向こうがもし求めたいというのならそれは留保してと、こういう理解でよろしいのかどうか、ぜひお答えをいただければと思います。

浅田参考人 お答えいたします。

 今の問題というのは、協定の十四条の規定でありますけれども、そこでは、各締約国政府は一年前に書面による通告を行うことによりこの協定を終了する権利を有すると書いてあります。理由は特に限定されていません。

 他の協定においては、こういう場合には終了できるというふうなことを、理由を限定しているものがあります。例えば、核実験を行えばというふうなことを書かれているものもありまして、例えば日米の原子力協定の場合にはそうですけれども、この日印の場合には理由が限定されておりませんので、理由を問わずということであります。

 では、理由なくして協定を終了できるかといいますと、それはそうではありませんで、終了を求める理由を示すことも定められておりますので、理由のいかんを問わず、しかし、理由がなければならないということであります。

 停止については、同じく十四条の二項で、そのようなことが規定されておるということでありますので、協定の規定から、核実験が行われた場合を含めて、理由がある場合には一年の事前通告で終了できるということは明らかであると思います。

大野委員 ありがとうございました。余り微に入り細に入りということではないと思いますけれども。

 やはり、その理由を、もちろん、何の理由もないといけないというわけじゃないと思いますけれども、示せばいい、示せばその理由いかんを問わずこれが終了できるという理解だと、今先生のお話を伺って、もちろん、理由を提示するというのは当然必要だと思いますけれども、できるんだ、こういう理解をさせていただきました。

 いずれにせよ、北朝鮮、あるいは二年前のイランの核合意、それに基づいて、今、大統領選挙が行われた後のトランプ政権のイランの核合意に対するメッセージ、こういったものを考えたときに、NPTの体制というのをしっかりと維持していかなくてはいけない、そしてそれを世界の秩序にしっかりとつなげていかなくてはいけないんだという考えからすると、やはりこの協定というのは非常に重要で、私自身は、しっかりと締約していくことが、日本のため、あるいは世界の秩序のためになっていくんだ、そういう思いを持っておりますので、ぜひともこれからもいろいろな御意見を賜れればと思いますので、よろしくお願いを申し上げまして、私からの質問とさせていただきます。

 ありがとうございました。

三ッ矢委員長 次に、小熊慎司君。

小熊委員 民進党の小熊慎司です。

 本日は、浅田参考人、鈴木参考人、福永参考人、それぞれ、お忙しい中、お時間を割いて外務委員会にお越しいただいたことを感謝申し上げる次第であります。

 それぞれの陳述も、本当はもっと時間をかけてお聞きしたい、また我々ももっと時間をかけて三人の参考人に質疑したいわけでありますけれども。

 というのは、やはりこのインドとの原子力協定は、まずは核兵器廃絶、不拡散、安全保障上の問題、また、さらには原発の電源としての課題、そしてまたインフラ輸出ということに関してのその経済性、またそのリスクといったものを多角的に議論しなければならないわけであります。

 やはりこの協定、我々も、これまでも党内でもさまざまな議論をしてまいりました。その中で、やはりこれは交渉事ですから、駆け引きの中で日本の思いが全て入っているわけではありませんし、また、さまざまな懸念する穴というか、条文も各見られる。ただ、全て完璧なものは世の中に存在はしませんから、その穴に対して、可能性、最近よく言われる可能性と蓋然性で言えば、可能性を言ってしまえば全てが危険である、問題であるというふうになってしまいますけれども。

 とりわけ、まず最初に鈴木先生にお伺いいたしますが、ヨルダンの例も出して、再処理、ウラン濃縮についてはこれは論外であるということで、これをピンどめするのであれば、これはヨルダンの例を倣うべきだったということを御指摘されましたが、その点についてもう少し詳細に御説明いただきたいと思います。

鈴木参考人 御質問ありがとうございます。

 先ほど浅田委員から、ほかの国との原子力協定、インドが結んでいるものでも再処理は容認されているということなんですが、ほかがやっているから日本がやってもいいということには私はならないと思います。日本は被爆国であり、特に、日本が結んでいるほかの国との協定の中で最も厳しい条件を課すというのが、やはり被爆国としての責務であると私は考えておりまして。

 附属資料に少しつけてありますが、現時点で、世界に五百トン以上のプルトニウムがあります。これ以上再処理をしてプルトニウムをふやすということは、単にインドだけの問題ではなくて、世界の安全保障にとって大きな脅威になるということで、これは核セキュリティーサミットの場でも、日本政府もアメリカと共同声明を出しまして、グローバルな、核兵器転用可能な核物質の在庫量を減らしていくということにコミットしております。

 そういう趣旨から考えても、どこの国であっても、これからはなるべく再処理を減らしていくという方向で、その精神に基づいて協定を合意するべきであるというふうに私は考えておりますので、ほかの国が認めているからといって、日本が認めるということはいけないと思います。

小熊委員 私、本会議場でも外務大臣と質疑をして、また党内でもやったときに外務省の見解は、NPTには入っていないんだけれども実質的にインドをそういう枠組みに組み込んでいくんだと。では実質的に何だって、何も答えとしては出ていない、我々、明確な答弁をいただいていない、見解も外務省から示されていないと思っていますが、今先生御指摘のとおり、外務省、外務大臣も、では、実質的に入れていくということには結局ならない、こういうことをしてしまえばならないという、また一つの部分であるというふうに先生は指摘しているということで理解してよろしいでしょうか。

鈴木参考人 核不拡散体制に組み込んでいくという話は、恐らく、先ほどの浅田参考人からありましたが、少しでも保障措置の施設をふやしていくという面、この面については、確かに実質的な面の一部としてメリットがあるということは私も認めます。

 問題は逆な面で、再処理を認めるということはプルトニウムをふやしていくということになりますので、これは現在の核不拡散体制においてでも、国際安全保障上望ましくない。こういう状況を考えた上で、できるだけ濃縮、再処理については限定する。例えば、先ほど例がありましたが、イランとの核合意につきましても、NPTのメンバーであり保障措置を受け入れているイランに対してでさえ、濃縮は限定し、再処理については、イランは当分、十五年間再処理をしないという決定をしております。

 これが、まさに今我々が追求すべき条件でありまして、組み込むということは、今よりもやはりよい条件にしていくということが大事でありますので、それを今の条件よりも悪くなるような方向で組み入れてもよくはないということで、私は、実質的な組み入れという意味では、そういう意味で、保障措置がふえていくという面ではメリットがありますが、再処理をしてプルトニウムをふやしていくということに対して反対であるということであります。

小熊委員 ありがとうございます。

 今、保障措置の話も出たので、福永先生にお聞きしますけれども、大野さんもちょっと指摘はされましたが、民生用と軍事用で、民生用にはしっかりとピンどめをしているということになるんですけれども、では結局アンダーグラウンドな世界ができちゃうんじゃないかという心配、懸念があるわけであります。それは性善説に立つか性悪説に立つかで変わってきますが、そんな性善説に立っても性悪説に立っても、しっかりこれは規定をしていかなければいけない、あり得ないことが起きてはならないということでなければならないと私は思います。

 福永先生は、縛りがあるのは民生用であって、軍事用の方に行ってしまう、過去も、過去のケースでインドは少しルール違反を起こしているという指摘もありますので、そういった保障措置が十分でないと、先生さっきおっしゃられました。それは民生の部分だけだからだ、軍事用の、蓋然性があるという、この点について、その問題点、もう少し深掘りしていただく指摘をいただきたいと思います。

福永参考人 ありがとうございます。

 ちょっと区別をして申し上げますと、インドがみずから民生用と軍事用に特定する。民生用というところでは、ほぼ、アメリカが現認団を出すというようなこともございますので、しっかりと見ていくことができるんだろうとは思いますけれども、計量制度などについてはやや不明確なところがございます。しかしながら、一番問題なのは、インドがみずからの意思で軍事用と民生用に分けるという部分でして、それが果たして国際的にも認められる水準であるのかどうなのかということについての、まず第一の疑問がございます。

 さらには、インドの国産のウランが使用できる原子力施設というのが全て軍事用になっている。これは、例えばウラン燃料の輸入がとまった場合であったとしても、インドは、国産ウランをもって原発を動かし、再処理し、濃縮する、プルトニウムが生成できていくということになります。

 ですから、この協定、展望として、民生用の部分については、査察、保障措置がとられていく、さらに強化されていく、二〇一五年まで第七回にわたって強化されております。しかしながら、見えない部分があって、そこでこれまで核兵器がつくられてきているという事実というのは、やはり非常に重たいというふうに私は思っております。

小熊委員 分ける手前でインドは自分で決められるということで、隠そうと思えば隠せる、わからないものも今も出ているという問題点を指摘していただきました。

 それで、浅田先生にお聞きしますが、これまでもインドがほかの国とも協定を結んでいて、しっかりと平和利用という過去例もあると言われましたけれども、先生自身も、米印の原子力協定のときに問題点として挙げられていた。平和利用しかしないんだと言っているんですけれども、もともと少ないインドの国産ウランが、各国が協力しなければ、それまでは軍事用と民生用に分けていたものが、いろいろな国と協定を結ぶ、またさらに日本と結ぶことによって、国産ウランの全てを軍事用に使えるんだ、アシストしてしまうんだという問題点を挙げていました。その考えは変わりはないですか。

浅田参考人 先ほどおっしゃった、いわゆるフリーアップというふうに言われる問題で、国産ウランしかないところで、比較的少ない量ですけれどもそれを民と軍と両方に使うというのは大変だ、外から民が入ってくれば国産を軍に全部回せる、こういう問題が米印合意のときにあったわけですけれども、そのとき私も若干書きまして、そういう問題というのは重要であるというふうに思っております。今でもそれは変わりません。

 ただ、これまでインドが国産のウランを軍と民でどのように分けているか、さらには、どのように優先度をつけているかということについては諸説ありまして、あるアメリカの出している情報ですと、基本的には軍を優先しているということであるので、外から民生用のが入ったからといって、軍がふえるということはないというふうな情報もあります。これが正しいかどうかというのは私わかりませんけれども、さまざまな情報があります。

 私の先ほどの冒頭の発言でも申しましたけれども、少なくとも日本の、米印の協力との関係でいいますと、日本からウランを提供するということはもともとありませんので、したがって、そういう問題は、少なくとも日印協定との関係ではないというふうに考えております。

小熊委員 情報が確かではないというのと、実はこれはウランだけの話ではなくて、民生を助けることによって、あらゆるいろいろな原子力にかかわる力をインドは軍事用に転換できる、アシストできるという問題があるわけでありますが、ちょっと時間がないのでこの点はこれで終わりますが、もう一度、最後に浅田先生にお聞きしたいのは、十四条の二項のところなんですね。

 これまでも、我々もいろいろ疑問点等で挙げていて、停止できるんだと言っていても、本当にできるのかという問題。一年間の中ですぐやるのか、一年かけて、その間動いたものの補償とかどうするのみたいなのがあって、では二項って何なんだと言ったら、具体的には、パキスタンでやって、こっちも対抗措置でインドがやったといったら、考慮を払うことを合意する、この点について本会議で聞いたら、外務大臣は、考慮するだけみたいな。だったら、入れることないじゃないの、何の意味があるんだ、この二項にと。

 単に、考えます、配慮します、でもとめます、安全保障上の問題があるといったって、我々は、考慮はしましたけれどもとめますといったら、もともと要らないんじゃないのという議論が党内でもありました。

 この十四条の二項の解釈はどうすればいいですか。

浅田参考人 ありがとうございます。

 二項は、協定の終了の通告を行った一年後に終了するということになっております。その一年経過するまでの間に協力自体を停止することができるということでありますけれども、その最後のあたりで、さまざまな考慮を払うということに合意がなされております。

 これは、そういうことを合意しておりますけれども、考慮するということであって、こういったことがあれば停止することができなくなるということではないわけですね。ですから、考慮する要素というのは、私、交渉に参加したわけではありませんので何とも言えませんけれども、こういうふうな、考慮するというふうな規定というのは、恐らく、ぜひとも入れてほしいというふうな主張があって、考慮するという程度であれば入れましょう、そういう合意であろうと思います。

 したがって、こういった場合には、一部停止の権利がなくなるということでない限りは可能であるというふうに思います。

 ただ、ここに書かれておりますように、終了の通告を行った場合には、両締約国が協議するということになっておりますので、そういった中でも、こういった考慮についても議論がなされるというふうに思っております。

小熊委員 外務大臣は、これは停止すると言っていますし、我が党の勉強会でも、外務省も停止するんだと、協議みたいな話は出てきませんでした。この点についても、今後、ちょっとしっかりと議論してまいりたいと思います。

 済みません、時間がないのでこれで終わりますけれども、パリ協定の締結、発効のときにも議論がありましたが、二酸化炭素の問題、これも脱炭素社会も目指さなければなりませんが、それがイコール原子力ではないということは、世界的にもこのパリ協定の議論をしていたときにありました。

 私は、インドに対しては、先ほど福永先生おっしゃったとおり、いろいろな形での、エネルギー効率をよくするとか、また再生可能エネルギーを輸出していくとかということで、インドの経済に寄与する、または、我が国のインフラ輸出に対しての利益が、そちらの方が安全かつまた世界の平和にもなるというふうに思って、質問を終わります。

 きょうは三人の参考人、本当にありがとうございました。

三ッ矢委員長 次に、浜地雅一君。

浜地委員 おはようございます。公明党の浜地雅一と申します。

 三人の参考人の先生方、きょうは、お忙しい中、貴重な御意見をいただきましたことに、まずは心から感謝を申し上げたいと思っております。

 皆様方それぞれに質問をさせていただきたいと思いますが、質問の回数につきましては、時間の関係もございまして、もし少ない質問でございましたら、御容赦いただければというふうに思っております。

 私、この日印の原子力協定を、いわゆる我が国の原子力産業の国際展開であるという点からだけではなくて、やはりインドとの間では、特にモディ首相との間で、戦略的パートナーシップということで、インドと日本とのかなり深い両国の関係の深化の中での一つの事象ではなかったかなというふうに思っております。

 特に安全保障の面でありますとかに目を向けますと、特にインド洋におけるインドの重要性というものが非常に増す中で、インドが必要としている電力需要に対する一つの日本の協力のあらわれであろうと思っています。

 だからといって、これは当然、NPTに加入をしていないインドに対する供給でございますので、それが厳しくどこまで抑制されていくのかということも当然大事だろうというふうに思っておりますし、我々公明党の中でも、この協定について部会等で協議するときでも、そのことを、その両面を深く考えて協議を行ってまいりました。

 そこで、まずは、先生方皆様、核軍縮でありますとか、または原子力等の専門家でございますけれども、先ほど私が申し上げました日本の原子力産業の国際展開は別にしまして、今インドが置かれている大気汚染の状況、これに対しては、賛成、反対にかかわらず、責任を持ってこれについて意見を述べられる上では、どのようなお考えかをお聞きしたいと思っております。

 特に、単に大気汚染といっても、インドはさらにこれから人口が多くなりますし、世界のエネルギーの安全保障も厳しさを増す、そういった展望も踏まえて、今後のインドの大気汚染等、また電力需要について、どのように展開をされるのであろうかという予測も含めて、三人の先生方にそれぞれお聞きをしたいと思っております。

浅田参考人 ありがとうございます。

 先ほど既に申し上げましたけれども、大気汚染との関係では、極めて深刻な事態でありますので、この点が原子力の導入あるいは拡大によって緩和するということは期待できるのではないかというふうに思います。

 電力の点に関しましても、先ほど申し上げたとおりでありまして、地球温暖化の問題で若干追加的に数字を申し上げますと、インドは、二〇三〇年までに二〇〇五年比で三三%から三五%削減するということを言っております。このためには、これまでの化石燃料を使った発電にかえて原子力を導入するということにかなりの期待がされるのではないかというふうに思っております。

鈴木参考人 御質問ありがとうございます。

 今、浅田先生からもありましたが、インドの政策によりますと化石燃料を用いない発電をふやしていくということなんですが、正直に申しまして、原子力についてはインドの中でも大変今厳しい状況に置かれていまして、反対運動もあります、それから安全問題もあります。必ずしも原子力が目標どおりいくかどうかわからないような状況になっております。

 一方で、電力需要を賄うための発電の拡大について日本が協力するということについては私も大賛成でありますし、日本が持っているクリーンな化石燃料の技術だとか、再生可能エネルギーとか、ほかにもいろいろ協力することがあると思います。

 もちろん、原子力についてもできる範囲で協力したいと私どもも思っておりますが、先ほど御指摘のありましたように、その条件をまさに今議論しているわけですから、原子力協力を全くやらないということでは私はないです。その条件をどう厳しくしていくかということを議論しているわけでありまして、インドの大気汚染の浄化に対して日本が積極的に協力するということは私どもは、大賛成であります。

福永参考人 ありがとうございます。

 大気汚染は、本当にデリーは非常にひどい状態であります。北京よりもひどいということで、大変な苦労をしております。

 しかしながら、翻って考えますときに、これまでのように化石エネルギーに頼っていくという、大きな発電所をつくって長い送電線を張って遠くの村々に電力を送るというところの転換ということもインドの国内ではかなり主張されておりまして、小さなコミュニティー、小さな範囲の中で、再生可能エネルギーあるいは高度な化石燃料を使った電力発電というものを行っていくことができるのではないかという議論も進んでおります。

 核軍縮の問題と大気汚染の問題、あるいは地球温暖化の問題、どれも重要なんですけれども、まずは、なぜ今踏み出すかというところのお話をさせていただきたいと思っておりました。

浜地委員 三人の先生方、ありがとうございました。

 私も、先ほどの三名の先生方の御指摘を踏まえて、実際にまた法案、協定審議のときには、そういった電力需要との兼ね合いも含めて、自分自身も研究し、また発言をしていきたいというふうに思っております。

 次に、浅田参考人にお聞かせいただきたいんですが、先ほど大野委員からもお話がありました、二〇〇八年にNSGが、インドについてはNPTに入っていなくとも例外規定を認めると決定をした、その背景を御説明されましたが、私が聞いたところによりますと、二〇〇八年にNSGが原子力協定の例外を認めたとしても、その後米印で結ばれた協定については、浅田先生自身も当初は懸念を示されていたようにお聞きをしたことがございます。

 しかし、アメリカの後にさまざまな国が、その後九カ国結んだわけでございまして、その中で、先生が当初は懸念をされたものが、現在はNSGの例外としてうまく機能していると思っていらっしゃるというふうに私は認識をしておりますが、二〇〇八年から現在の段階において、ほかの国々のインドとの原子力協定においてどういった懸念が払拭されていったのか、そういった流れについて、もし御見識があればお聞かせいただきたいと思います。

浅田参考人 御質問ありがとうございます。

 米印合意との関係で若干懸念を表明しておったのは、一つには、先ほど申しましたように、アメリカがウランを提供した結果として、インドの国産ウランが、これもそれまで軍と民、両方使っていたものが、軍に専ら使うことができるようになる、そうするとインドにおける核軍備の増強につながるんじゃないかというふうなところを指摘しておったわけであります。

 その後、二〇〇八年の合意を受けて各国が原子力協定を締結しておるわけですけれども、先ほど鈴木参考人からも御指摘あったように、濃縮、再処理について、他の協定で認めているから日本もいいんじゃないか、そういうことの指摘があったかと思いますけれども、これは若干中身を区別する必要があると思います。

 といいますのは、日本が締結しておる原子力協定の中で、濃縮、再処理を認めないというふうに明文で書かれているものは、ヨルダンとかUAEとか、そういった中東の国でありまして、そういったところにおける濃縮、再処理というのは、中東という地域の特性もありまして、望ましくないということがあって、国際的にも、例えばアメリカでは、そういった濃縮、再処理を認めないというふうなものをゴールドスタンダードというふうに呼んで、それを推進しているところであります。

 ですから、そういう部分においての濃縮、再処理を認めないということと、それから、既に核兵器を保有しておって、しかも、民生用の原子力発電によって、地球温暖化とかそういった問題にも対処しようとするインドとの間の、やはり若干区別が必要ではないかというふうに思います。

 再処理について、日本の協定でもかなり厳しい条件がつけられておりまして、新たに、IAEA、原子力機関の保障措置を受けている再処理施設でのみ再処理するとか、あるいはそういったIAEAの保障措置を受けている原子炉での燃料の生産のみのために再処理するとか、そういった限定がつけられておりますので、その点の厳しい規制というものはやはり重視すべきではないかというふうに思います。

 このあたりに、やはり、協定を結んでインドが不拡散体制に組み込まれていくというところの実際上の効果があるというふうに思います。つまり、そのようなIAEAの厳格な規制のもとでのみ再処理は行われるということであろうと思います。

浜地委員 詳しい説明、ありがとうございます。私もよく理解が深まりました。ありがとうございます。

 続いて、これも浅田先生にお聞きをしたいんですが、先ほど、この協定の二条四項のところで、濃縮、再処理関係の技術、設備の移転というのは改正がされない限り行われない、しかし、その改正については、二〇一一年、NSGのガイドラインの改正におきまして、NPT不参加の国には提供しないということがあるので大丈夫だということがございました。これは非常に重要な御指摘だろうと思います。

 では、これはまた未来の話になりますけれども、現在のNSGのモメンタムとして、これが、実際二〇〇八年は例外規定をやったわけでございます、しかし今回はこのガイドラインで、さらに設備等は移転しないということなんですが、このあたりの今後のモメンタムがどうなるのかということは私どもではわかりませんので、ぜひほかの先生にも、おわかりになればお聞かせいただきたいんですが、今後のこの改正の可能性も含めたNSGの現在の空気といいますか、モメンタムについて、御所見があればお伺いしたいと思います。

三ッ矢委員長 浜地君に確認しますが、お三方にですか。(浜地委員「済みません。うなずいていらっしゃいましたので、三人に」と呼ぶ)

 それでは、浅田参考人からお願いします。

浅田参考人 どうもありがとうございます。

 NSGの議論というのは非公開でありますので、正確なことは申し上げられませんけれども、事実としてわかっている部分から推測しますと、まず、二〇〇八年のインド例外化というものと二〇一一年のガイドラインの改正というものの関係が、細かな話になって恐縮ですけれども、ややずれておりまして、二〇〇八年の例外化においては、インドに例外化を認めたのは、IAEAの包括的保障措置を受けていないと資機材を提供しないという部分のみでありまして、NPTへの言及はありません。ですから、NPTについての例外というのはなくて、そこでもし、NPTに入っていない国であってもというふうに例外化がなされておれば、全くインドにとっては問題ないわけですけれども。

 しかし、その後、二〇一一年に、濃縮、再処理の機材、技術の提供については、NPTに入っていない国には提供しないということが合意されました。ですから、機微技術と言われます濃縮、再処理の技術をNPTに入っていない国には提供しないという部分は、二〇〇八年の例外化ではカバーされないんですね。したがって、インドは後に、だまされたというふうなことを言っておるやに聞いております。

 しかし、インドがどのように考えているかというのは別にしまして、二〇一一年にそのように、NPTに入っていない国には濃縮、再処理技術を提供しないという合意がなされて、既に数年たっております。その間、そういった、二〇一一年の改正について、インドを再度例外化するという議論というのは、私は聞いておりませんし、二〇〇八年の例外化のときの大変な状況を考えますと、再度それを例外化するということは考えられないんじゃないかというふうに、少なくとも当面は思っております。

鈴木参考人 私もNSGの議論はちょっとわからないんですが、国際的な今の濃縮、再処理技術の移転についての動向を簡単に申しますと、基本は、できるだけもちろん移転しないというのが原則であると思います。一方で、NPTに属している国については、奪えない権利というのがありますので、他の条件を満たしている限り、再処理や濃縮の権利というのは当然認められるべきだということになります。

 今回の問題は、今、浅田委員からもありましたが、保障措置を受けることになるという面で、技術を移転しても結果的にむしろ核不拡散上プラスになるというお話だったんですが、それを認めてしまいますと、ほかにNPTに入っていない国に対しても同じようなことを要求される可能性があって、これが結局技術の拡散に結びつくということで、私は好ましくない。

 それから、NPTに入っていて保障措置を受けている国に対してでも、これからはできるだけ一国ではなくて多国間で再処理や濃縮をやりましょうという方向で動いておりますので、そういう方向で考えても、技術の移転というのはできるだけ厳しく制限するというのが望ましいんじゃないかと思います。

福永参考人 御質問ありがとうございます。

 二〇〇八年の例外化のところについて一言つけ加えさせていただきます。

 紳士協定で密室の中での議論でして、なかなか情報は出ていないんですけれども、どうもあのときに、最終的に、全会一致制であったNSGを崩壊させないために、とにかくここは認めるけれども、協力するかしないかはそれぞれの国が認めましょうというところでの合意であったというのが流れてきておりまして、そのため、それがあるからこそ、先ほど鈴木先生から御紹介ありました、日本政府は非常に厳しい決意表明というのを出されたんだろうと思っております。

 それから、濃縮あるいは再処理につきましては、先ほどからお話ありますけれども、これまでの日本が結んだ原子力協定では二段階、協定には、認めるか認めないか、認める場合には次の段階でもう一度同意するということがあったわけですけれども、この日印協定では、協定本体で認めてしまっている。

 ということは、今後、原子力協定を新しく結ぶようなところ、あるいは改定するようなところには、NPTに入っていないインドにああいう条件をしたんだから同じ条件にしてくれということを言われたときには、これはなかなか日本としては立場が弱くなるのではないかというふうに考えております。

三ッ矢委員長 浅田参考人から追加発言があるようですので。

浅田参考人 先ほど、インドはだまされたというふうに言いましたけれども、不正確でして、裏切られたというふうに言っていました。

浜地委員 済みません、時間が過ぎまして申しわけございません。終わります。ありがとうございます。

三ッ矢委員長 次に、笠井亮君。

笠井委員 日本共産党の笠井亮です。

 きょうは、浅田参考人、鈴木参考人、福永参考人、お忙しいところ、貴重な御意見、本当にありがとうございました。

 端的に伺っていきたいと思うんですが、まず、福永参考人に伺います。

 先ほど来議論もありますが、本協定に、核実験の際に協力停止という明文規定がないなど、ほかの原子力協定と比べても曖昧な点、緩い点が多いということが言われているわけですが、その背景といいますか、インド政府が拒絶したというふうなんじゃないかというお話もあったんですけれども、その辺のところで、もしおわかりのことがあれば。

 そして、なぜインド側が、それは困るよというふうに言ったのか。そこにインド・パキスタン関係というのが本協定に影響しているんだろうか、そのあたりがおわかりになれば伺いたいことと、それから、あわせて、そこの点でいいますと、先ほどの十四条二項のことで、インド側が、そういう背景もありながら、安全保障上必要という核実験、核爆発であったというふうに主張した場合にどうなっていくかということも含めて、御見解を伺えないでしょうか。

福永参考人 ありがとうございます。

 二〇一〇年にこの協定の交渉というのは始まりまして、六年間経過したわけですけれども、経過する中での最大の問題点といいますか、両国の対立点というのは、核実験を行った場合にどのように対応するのかという、日本側が厳しい態度を続けてきたということは、都度の首脳会談などでの声明で明らかでございます。

 これは、九八年に核実験をインドが行いまして、制裁を加えました。その後、インドとアメリカの間の中でかなり細かい、深い外交交渉が行われ、二〇〇五年以降、原子力協力が行われるようになっていった。そして、二〇〇八年になって国際的に認められた。二〇〇八年ということは、まだ十年にも満たないというところでして、まだまだ、これに基づく原発プロジェクトというのもできておりません。

 ですから、まだ非常に新しいところで、インドに対する対応を変えた、それが果たしてよかったのかどうなのかということに関しては、まだこれについての原発ができておりませんので、はっきりと明確にすることはできないのではないかというふうに思っております。

 長くなりまして恐縮ですが、印パ関係につきましては、既にパキスタンが核実験を先にやり、インドが後追いをしたときに、どうするのかということでございますけれども、公文が保障するようなモラトリアムというのがありますけれども、現インド人民党モディ政権は、一四年の選挙マニフェストの中で、核開発に関する、あるいは核政策に関する再検討、改訂ということをマニフェストに載せております。ですから、絶対的に二〇〇八年九月五日のムカジー声明が将来的にもずっと続くものなのかどうなのかということについては疑問がございます。

 それから、パキスタンに関しましては、やはり印パ関係、去年非常に悪化しておりまして、こういう中で、核開発競争を激化させるようなことというのは大変危ない。南アジア地域協力連合の首脳会議が昨年パキスタンで行われるはずでしたけれども、これは延期されております。印パ対立というのが影響して延期されておりまして、非常に緊張した状態にあるという中で、あえてこういう協定を結ぶことの疑問というものは持っております。

笠井委員 もう一問伺いたいんですが、これまでの原子力協定審議の中でも、政府に相手国の国民世論状況をただしても、調印した相手が政府ですので、政府を通じての情報ということで、なかなかわからない面も多かったということがありました。

 そこで、福永参考人に、インドの国内の本協定に関する議論の状況、特に国民レベルでどんな意見が出ているのか。それから、東京電力の福島第一原発事故、衝撃的な事故ということで、本当に大変な被害があったわけですけれども、それへのインド国民の受けとめ、住民からの反対運動や訴え、あるいは自治体、議会からの意見というのは、この協定に関してどんなものがあるでしょうか。

福永参考人 ありがとうございます。

 インドは、平和な国という、あるいはガンジー、非暴力というイメージがあるんですけれども、二〇〇〇年代に入りまして、ようやく国際社会の中で原子力開発が認められるようになっていった。

 そこで、国民の感情としますと、まずは電気が、何でもいいから電気が欲しいというのは、大都市中流層には強くございます。しかしながら、これは日本と同じような例でございますけれども、原発建設予定地というのは、遠く離れた海岸寄り、あるいは田舎、漁村、その人たちは、非常に強い反対運動を続けております。

 私たちも、日本国内で活動するグループも連携をとっておりますけれども、現に、東芝子会社でありましたウェスチングハウスが、モディ首相の地元グジャラート州で建設を予定していた六基の原発につきましては、住民の反対が強く、これは今凍結されているということになっております。

 国民あるいは議会の中におきましても懸念の声というのはございますが、これは、なかなか一つの大きなうねりとして出てきてはおりませんけれども、各地の原発予定地の中では、非常に激しい、断食、あるいはデモ行進、さまざまな形での行動というものが行われております。非常に強い住民の反対があるということは申し添えたいと思います。

笠井委員 鈴木参考人に伺いたいと思うんですが、本協定に関してはさまざま議論がある、賛否もいろいろあったりしますが、国内でも懸念の声あるいは反対、異論ということで、広島市長もそうですし長崎市長もそうで、田上長崎市長も、「核物質や原子力関連技術・資機材の核兵器開発への転用やNPT体制の空洞化への危惧がある」ということで、「被爆地として極めて遺憾」とする談話を出されております。

 そこで、唯一の戦争被爆国が本協定を結ぶということについての意味なんですけれども、先ほどからも御議論でおっしゃっていたこともあるんですが、ある意味、インドの核保有国としてのステータスを逆に強めることになりはしないか、そして、世界の核軍縮、核兵器廃絶の流れに逆らうことにつながっていかないかということは思うんですけれども、その辺はどのようにお考えでしょうか。

鈴木参考人 御質問ありがとうございます。

 被爆地で今研究をさせていただいている立場から申しますと、全く御指摘のとおり、被爆市民、被爆されている方々からのこの原子力協定に対する反対の声は非常に強いです。

 一つは、核兵器を開発してしまった国に対して、それを容認した上で、さらに、ほかの国よりも緩い条件で協力をするということに対する反対の声は非常に強い。

 それから、御指摘のとおり、インドに認めてしまうと、ほかの国にもまた認めてしまうのではないか。特に、先ほどお話がありましたように、既にNSGの例外化の決定をした段階から、被爆国としての、核軍縮・不拡散でリーダーシップを示していくという日本政府の政策とも一致しないのではないかという指摘が既に市長からなされております。

 我々としても、私は、研究者としてもそうですが、今現在は長崎市民なんですけれども、被爆地の方々の、被爆民の方々の、被爆者の方々の思いを考えた政府の政策というふうに考えますと、全く不十分であるというふうに思います。

笠井委員 もう一点、鈴木参考人に伺いたいんですが、この三月末に国連で開かれました、核兵器全面廃絶につながる核兵器禁止条約づくりの国連会議ということで、PNND、核軍縮・不拡散議連の会合の中で鈴木参考人からもお話を伺ったことがあって、私自身も、実際、会議に出席をしてきたんですが、そこで、ホワイト議長が閉会挨拶の中で、第二会期が終わることし七月七日には核兵器禁止条約を採択するという決意を語ったりもしております。この動きをどう見ていらっしゃるか。

 そして、インドが未署名のCTBT、包括的核実験禁止条約にしても、採択からもう二十年以上が経過している現在なお発効していないということがあります。

 今回の協定ともかかわるとは思うんですけれども、このCTBT発効の上でも、核兵器禁止条約を実現するということは極めて重要になってくるのではないか、日本政府の役割も大事なのではないかと思うんですが、いかがでしょうか。

鈴木参考人 ありがとうございます。

 核兵器禁止条約の交渉に対して日本が参加しないということについては、私も残念だと思っております。

 外務大臣みずからが交渉に参加したいというお話をされたというふうに私は記憶しておりますが、もともと、日本政府の施策として、核兵器国と非核兵器国の橋渡しをする、そういう政策をとっておられるわけですが、参加しないことによってその役割も放棄してしまうことになるということで、ぜひ、これからもまだチャンスはあると思いますので、橋渡しをするためにも禁止条約の交渉に参加していただきたい。

 それから、CTBTについては御指摘のとおりでありまして、私も先ほども申しましたが、原子力協定の交渉の中でもぜひともこのCTBTに早くインドが批准するという方向で交渉を進めていただきたいということは、原子力委員会のときからも申しておりましたし、現在でもそれは同じ思いであります。

笠井委員 最後に、お三方に一言ずつ伺いたいんです。

 きょうも話を伺いながら、また議論もありましたが、今回の協定というのは、いずれにしても、被爆国日本が、インドという、核保有国であり、NPTに未加盟で、CTBT未署名国と結んだ初の協定ということになると思います。

 それから、やはり、福島第一原発事故から六年になりますけれども、その惨害。そして、収束もできておらず、原因究明もまだ。しかも、事故処理に莫大な費用がかかるということが世界にも明らかになった、国内でも明らかになって、そういうところとこういう協定を結んでいいのかということも含めて、さらには、御指摘もそれぞれありましたけれども、今日、生きた情勢との関係で影響やリスクがどうなのか。いずれにしても、立場はそれぞれとしても、重要な検討事項といいますか、重大な検討事項が多々あると思うんですね。

 ついては、国会への期待ということになってのコメントをいただければと思うんですが、いずれにしても、慎重に徹底した国会審議をやるということが必要だと私自身は非常に考えているんです。その点についてそれぞれ一言ずつ伺えればと思うんですが、いかがでしょうか。

三ッ矢委員長 浅田参考人。

 それぞれの参考人、簡潔にコメントをお願いします。

浅田参考人 ありがとうございます。

 私も、この協定について国会の方でしっかりと審議をしていただければというふうに思っております。

鈴木参考人 全く賛成であります。

 ぜひ慎重に審議していただいて、批准反対の方向で議論していただければと思います。

福永参考人 ありがとうございます。

 私からもお願いいたしましたけれども、どうぞ資料を公開して、慎重な御審議をお願いしたいと思っております。

 私からは、ぜひ、インドの人々の、原発を売るな、事故を輸出するなという声に耳を傾けていただければと思っております。

 よろしくお願いいたします。

笠井委員 きょう、質疑の中で私も話を伺いながら、やはり今回の協定というのは極めて重大な問題があるということで、しっかりとした審議が必要だし、私自身は、我が党として本協定は承認すべきではないということで、きょうの審議、参考人質疑を通じても改めて確信を深めたところでありますので、これからきっちりと時間をとって審議をしていくように理事会でも求めたいと思いますし、私自身もそういう立場で審議に臨んでいきたいと思います。協定を承認させないということで頑張ります。

 ありがとうございました。

三ッ矢委員長 次に、足立康史君。

足立委員 日本維新の会の足立康史でございます。

 先生方、きょうは本当にありがとうございます。

 私は、今質問させていただいた自民党、民進党、公明党、共産党の先生方とはちょっと別の角度から申し上げたいと思います。

 というのは、核不拡散の問題は、これは大変重要な問題でありますが、まさに今、北朝鮮の問題で激動しております。だからこそという議論ももちろんありますが、これは本当にもう北朝鮮は核兵器を持っているわけですから、事実上、NPT体制であれ何であれ、激動していて、それを米国がたたくかどうか。たたけば、大変なおびただしい被害がソウルや日本に起こるということはもう避けられません。

 では、北朝鮮の核保有を認めるのかという議論に実はなると思っていまして、国会でまた、この場ではございませんが、この場も含めて、外務委員会も含めて、そういう核の、NPTレジームのあり方については改めて検討せないかぬと思っているし、もし北朝鮮が本当に核保有を続けるということになれば、本当に日本はいつまでもアメリカに頼っているだけでいいのかという議論が必ず必要になってくると思います。

 きょうの議論は、総じて過去のレジームのもとでの議論ですので、ただ、では、次なるレジーム、あるいは過去のレジームをどうやって維持するのか、あるいはもしレジームが変わるとすれば、それはどういうレジームなのか。これは、またぜひ先生方に別の機会にいろいろ御指導いただきたい、こう思っています。

 では、きょう、限られた時間ですが、ぜひ伺いたいと思いますのは、冒頭、浅田先生が、原子力協定の目的として二つの柱があって、一つは核の不拡散云々、そういう議論、もう一つは原発輸出、あるいは国際展開、温暖化の問題、こういう御紹介をいただき、当然でありますが、大変大事な整理だと思っています。

 国会では、総じて、前者というか、核不拡散の問題にきょうも光が当たっていますが、私は、実は関心があるのが原発輸出の問題です。

 先生方は御専門ではないかもしれませんが、この日印原子力協定にずっと着目をいただいてきた、注目をいただいてきた中で、日本政府がこの協定に踏み込んでいったその背景について、それは一体何が本当に目的だったのか。先ほど自民党の大野先生からちょっと言及があったような、私はちょっと違うんじゃないかなと思うんですが、いわゆる核の不拡散の問題にコミットをしていくためにあえてインドに手を突っ込んでいっているんだという議論もあるかもしれませんが、私はどうかなと思います。それから、原発をとにかく輸出したいんだ、東芝、日立、三菱重工等の原子力技術者が飯が食えませんから、そういう問題なのか。あるいは、いやいや、新幹線を売りたかったんだ、その取引だという議論さえあります。

 先生方は御専門ではないかもしれませんが、どのようにごらんになられているか、個人的御意見でも結構ですから、御紹介をいただければ幸いです。

浅田参考人 日本政府がどのような動機かというのは、私は知る由もないわけですけれども、外から見ている者としましては、先ほど御紹介のありました、核不拡散の側面とそれから国際展開の側面と、二つ分けてお話しになったわけですけれども、この二つは別物ではないというふうに私は思っております。

 といいますのは、原子力ルネサンスと言われた二〇〇〇年初めの時期に、いろいろな国が原子力を他国に展開しようというふうな動きを見せておったわけですけれども、その中にはアメリカとか日本は当然入りますけれども、フランスも入りますけれども、それ以外にも中国とかロシアとかといった国も入っております。

 総じて言いますと、中国やロシアの原子力輸出というのはかなり緩い条件のもとで輸出しておるということがありますので、そういったものに対して、日本などの厳しい条件のもとで輸出するということになりますと、それは輸出先の国における核不拡散に資するということにもなるわけでして、原子力展開と不拡散というのは別物ではなくて、日本による原子力展開は国際的な核不拡散体制の維持あるいは改善に役立つというふうに思っております。

鈴木参考人 私の理解は、二〇〇八年のNSGの例外化までは日本は原子力輸出はインドに対しては非常に消極的だった。それだからこそ、あの二〇〇八年のぎりぎりの判断ということになったと思います。

 一方、二〇一〇年、交渉を開始したときは民主党政権で、私も原子力委員におったんですが、そのときの理解は、原子力が経済成長戦略の一つとして輸出に励むということで、原子力委員会も成長戦略の一環として原子力の国際展開ということを報告書で出しております。ただし、そのときの条件として、先ほど私が御紹介させていただいた厳しい条件をインドには課すべきだということでありました。当時は、原子力ルネサンスという状況、先ほど浅田委員からもありましたが、国際的な原子力市場の拡大、逆に、日本国内の原子力市場は縮小の傾向にありましたので、そういう意味でも、原子力産業の発展という意味では意味があったんじゃないかというふうに理解しております。

 一方、もう一つ大事なことはアメリカとの関係でありまして、アメリカが原子力協定を結んで輸出するというときに、日本はパートナーとしてついていかなきゃいけないということもありまして、日米関係という面からも日印原子力協定が、協力が必要であるという認識があった。

 ただ、現在は、原子力ルネサンスの動きもかなり変わってきましたし、先ほど申しましたように、日米の原子力産業の提携の問題についてもかなり変わってきておりますので、そういう意味でのもう一度見直しというのは、原子力産業の展開という観点からも見直し、当然、福島の事故の教訓もありますので、見直しする時期ではないかというふうに考えております。

福永参考人 ありがとうございます。

 二〇〇八年に、国際的に輸出入が許された。そして、二〇一〇年から日本はこの交渉に入ったわけですけれども、それはやはりいわゆる新経済戦略ということで、インフラ輸出というところから入っていったんだろうと思います。

 しかしながら、その後の二〇一一年の三月十一日の事故、そして、国際的な原子力業界の低迷ということからしますと、その始まりと今の時点での環境の違いということにつきましてはかなり大きなものがあるのではないか。さらに、オバマ大統領が広島を訪問するというようなこともあり、核廃絶へ向けての勢いも変わってきていますし、脱原発という勢いも変わってきておりますので、やはり、ここは少し慎重に、急ぐことはないのではないかというふうに考えております。

足立委員 ありがとうございます。大変参考になる御意見をありがとうございます。

 その関連で、私が今、原発輸出ということについて幾つか御意見を賜ったわけですが、実際にメーカーがあって、それで輸出をするわけです。確かに大規模な技術者の方々が雇用されているわけですね。それで仕事をしっかり確保せないかぬと。

 ただ、私がこの議論にやはり違和感を持つとすれば、持っている部分があるわけですが、国内の議論が余りに適当というかうやむやで、原子力賠償の仕組みも、結局、無限責任のまま、何か本当に国の事業なのか民間の事業なのかよくわからない。原子力をめぐる、原子力発電をめぐる責任の主体は国なのか民間なのかさえ、日本国内はいまだに決着がついていないんですね。それから、福島の汚染水の問題。私は、希釈して、海洋投棄というのかな、したらいいと思いますが、風評被害で、しません。

 だから、やはり日本の今の安倍政権、政府の原子力に関するスタンスは本当に中途半端だと思っていまして、そういう中で、外に活路を求めるというのは本当にけしからぬな、こう私は思っているわけであります。

 本当にやるのであれば、再生エネルギー等がまだ十分でない中で、やはり最新鋭の原発の方が安全なんだから、国内のリプレースも含めてしっかりやっていくべきだし、そういう意味で、政府の、ちょっとまた御専門から離れますが、ちょっと外に活路を見出すのはよこしまじゃないか、言葉は悪いですが、こう思いますが、いかがでしょうか。また三先生にお願いできればと思います。

浅田参考人 外に活路をというお話であったわけですけれども、国内がこういう状況であるときに、日本が原子力技術の水準を維持するためには何ができるかということを考えなければいけないというふうに思います。

 原子力発電を今後どのようにするにしても、最低限、使用済み燃料の問題とか備蓄されておるプルトニウムの問題とかいろいろなものがありまして、しかし、逆に原子力の人材を見ますとどんどん減っておるというふうな状況がありますので、国内がこういう状況にあるときには、原子力産業を国際展開して日本の国内の技術力を維持するというのは一つ重要なことじゃないかというふうに思っております。

鈴木参考人 実は私は原子力政策が専門なので、この件については長い回答があるんですが。

 一言で申しますと、御指摘のとおり、現在のエネルギー基本計画に書かれている原子力政策というのはきちんと整理されていないということで、福島事故の教訓を踏まえて、もう一度エネルギー政策の中で原子力政策の議論をすべきだと私も思っております。

 技術力の維持については浅田先生と私は同意見で、技術を維持しないと、国内の廃棄物問題、福島廃炉問題を考えても、今後三十年、四十年、技術力が必要なわけですね。ただ、それが輸出で本当に維持できるかどうか、あるいは、だからといってどこにでも輸出していいというわけではありません。その意味では、技術力の維持を理由にインドに原子力を輸出するということは私は反対であります。

福永参考人 ありがとうございます。

 二点のみ申し上げますと、一つは、もう今、今後日本の国内に新規の原発をつくるということはほぼ不可能であろう、国民感情ということからしてもですね。その上に立った上で、果たして日本が外に向けてどういうことができるのかといえば、それはもう確実に、福島事故の経験、そして失敗、その対策、何が必要であったのかというようなことをきちんと正確に伝えていく。

 その上で、さらには日本は、新しい原発をつくることよりも、むしろ廃炉の方に日本の技術者なり技術を向けていき、世界の原発、老朽化している原発が多くなっておりますので、そちらの廃炉というところに協力していくというのも一つの道だろうなと考えております。

足立委員 ありがとうございます。

 時間が限られていますが、可能であれば浅田先生に一言頂戴したいんですが、福永先生の方から、協力停止は実質不可能だ、こういう御指摘をいただいております。可能でしょうかというのが質問ですが、どうでしょう。原子力協定は幾つかありますが、協力停止の前例はありません。実質可能かどうか、ちょっと一言いただければと思います。

浅田参考人 可能かどうかと言われますと可能というふうに答えるしかないわけですけれども、これまでの国会の審議の中でも、核実験を行った場合には協定を終了し、そして協力を停止するというふうにおっしゃっていますので、可能だというふうに思わざるを得ないと思います。

足立委員 ありがとうございました。

三ッ矢委員長 次に、玉城デニー君。

玉城委員 自由党の玉城デニーです。

 きょうの参考人への質問の最後のバッターになります。この間、本当に貴重な御意見をありがとうございます。質問も重複することもあるかと思いますので、ぜひそこは御容赦をいただきたいと思いますが、また、つけ加えたいことあるいはさらに踏み込んで発言をしていただきたいことは、どうぞ忌憚のない御意見を賜ればというふうに思いますので、よろしくお願いいたします。

 では、全体的な問題をまず私個人として改めて確認しておきたいと思いますので、浅田参考人、鈴木参考人、福永参考人、お三方に簡潔に順にお答えいただきたいと思います。

 まず一点目は、NPT、核拡散防止条約に未加盟、それから包括的核実験禁止条約、CTBTには署名をしていないというインドなんですが、このインドの、実際に核兵器を保有しているという、この核兵器の保有をしてきた経緯と、それから、問題になっております北朝鮮の核保有、二〇一一年に金正恩体制になり、二〇一二年に憲法によって核兵器保有を認めるという経緯のその状況を照らし合わせて、インド・パキスタン関係それから南北朝鮮問題との比較等において、保有を認めさせる根拠になるのかというそもそも論を、この条約において、保有を認めた上で協定を進めるということが、簡単に言いますと北朝鮮の核保有も認めるということになりかねないのではないかという疑問があります。

 その点についてお三方からの御意見を伺いたいと思います。

浅田参考人 ありがとうございます。

 原子力協定を結ぶということと、NPT上の核兵器を保有するということの権利を認めるということとは、やはり別問題だと思います。事実上は何らかの影響があるということはあり得るかもしれませんけれども、原子力協定を結んだからといって、それがインドによる核保有の権利、NPT上のそういった権利を認めるということにはならない。

 NPTにおいては、一九六七年以前に核爆発を行っている国以外は核兵器を持てないということになっておりまして、その点は個々の協定の締結によって変わることはないと思います。

鈴木参考人 あくまでも現時点でもインドは例外化という言葉で使っておりまして、ほかの国にはまだ認めない、そういうことが果たして今後できるかどうかと、私は疑問なんですね。例外で認めてしまうことの難しさ、これがあると思います。

 私は、北朝鮮に対して悪いメッセージを送るのではないかというのが私の認識であります。

福永参考人 ありがとうございます。

 インドはNPTに対して非常に厳しい態度を持っておりまして、インドの首相が訪米した際にテレビインタビューで、六番目の核保有国、兵器国として認めるならばNPTに入ってもいいと。実質、もう将来入る気はないということは明確でして、そういうことがわかっていながら、枠の中に入れるというところの論議というのはずっと続いておりますけれども、やはりあるものをまずはどうしてしっかり守れないのという部分は担保するべきではないかなというふうに思っています。

 そして、こういう例が今後どこか、大きくなくても小さな国でも、原発を持ちたい、つくりたいというようなところに、非常によくない例としてなっていくのではないかというふうに思っております。

玉城委員 次にお伺いいたします。

 やはりインドに関しては、いわばNPTやCTBTに加わっていないということ、先ほどの意見の中では六番目の核保有国として認めよという強気な態度をとっているということもありますが、いわば核軍縮の義務を負わないインドに対して、では、この協定で濃縮や再処理を認めた場合、他の国がそれを求めてきた場合、日本はどのように対応するか、あるいは条約上拒否できるのかというふうなことについて、お三方からまた伺いたいと思います。

浅田参考人 ありがとうございます。

 他の協定の締結に際してどのような態度をとるかというのは、それぞれの国との関係とか、その国がどのような原子力政策をとっているかとか、そういったさまざまな状況を勘案した上で検討すべきではないかというふうに思っておりまして、この協定の締結によって将来何か縛られるということはないのではないかと思います。

鈴木参考人 日本は、法律で残念ながら濃縮、再処理の移転を禁止していないんですね。したがって、今、浅田委員が御指摘のとおり、各国との状況に応じて政策を変えてきているわけですが、私が先ほど申しましたように、世界の核不拡散、核軍縮を考えた場合に、濃縮、再処理の拡散はできるだけ防ぐという方針で、実は日本はそれに合意しているわけですね。ただし、各国別には違う方向をとるということは、端的に言えば二枚舌になる可能性があるわけですから、特に核軍縮・不拡散のリーダーシップをとるという国の政策を考えますと、今回の協定はいい前例にはならない、悪い前例になるというふうに懸念しております。

福永参考人 ありがとうございます。

 先ほども少し申し上げましたけれども、今回、インドに特例のように格段に緩い形で濃縮、再処理を認めたということにつきましては、将来、やはり日本の立場を弱くする、同じような要求があったときに、NPTの非加盟国であるインドに認めたのになぜ認めないんだという要求を突きつけられたときには弱い立場になっていくのではないかというふうに思っております。

玉城委員 ありがとうございます。

 やはり、それぞれの条約において国と関係を取り決めている日本が、何か一つ、核不拡散あるいは核軍縮に対して積極的な姿勢を示すということの方向性が、この協定で非常に不安定な要素を非常に多くはらんでいるのではないかというのが私の個人的な見解でもあります。それは、この委員会でまた後日、改めて政府の考えをただしていきたいというふうに思います。

 この協定の十四条によって、例えば、インドが核実験を何らかの影響によって、外的な要因、影響によって核実験を行い、そしてその結果、協力を停止する、あるいはこの協定を終了するなどとなった場合、一度、例えばその協定ができて原発が建設、完成し、稼働しているという現状において、もしその協力を停止あるいは終了した場合に、当然ですが、その完成した原発、あるいはそれを引き取るということも考えられるわけです。

 そうすると、汚染された機材の回収と、日本国内への移転、それから収用、核燃料の保管、取り扱いについて、日本の現在の技術、福島第一原発の収束においての技術を勘案した上、さらには国民の原発再稼働に対する反対意見、それから、原発の新増設反対という民意をどのようにはかることができるのか。つまり、回収や、あるいはそれについての日本からの何らかの申し出や、あるいは回収などは不可能ではないかというふうに思うんですが、その点についてお三方の御意見を伺えればと思います。

浅田参考人 十四条の四項の返還請求権、要求権についてのお話だと思うんですけれども、これは返還を要求することができるということであって、必ずしなければならないというわけではないということが一つであります。

 今おっしゃったように、どのような形で返還を求めるかというのはかなり技術的にも困難な問題がありまして、日本のみの関係している機材ということはおよそ考えにくいのでありまして、日本の機材の中で他国の提供したウランを燃やすとか、そういうこともあり得るわけで、そのような場合には、当然、他国との間の協議とかということも必要になりますし、先ほどおっしゃったように技術的な問題、あるいは汚染の問題とか、さまざまな問題がありますけれども、そういった問題を考えた上で検討するということになるんじゃないかというふうに思います。

鈴木参考人 なかなか仮定の質問で難しいんですけれども、協定を読む限りは、まずは、自動的に破棄できるわけじゃないので、交渉になります。

 その中で、今、浅田委員が御指摘のように、もし協定を破棄することになった場合に、どういうものを返還し、どういうものを返還しないとか、あるいは、協定、今の合意文書の中にもありますが、インドの安全保障を考慮するということは、エネルギー安定供給についても考慮しなきゃいけないかもしれないです。ということで、中の協議が非常に難しいものになるというふうに私は予想しております。

 したがって、御懸念の、日本が引き受けられるかどうかの前に、インドとの交渉でかなりの苦労をするというふうに私は予想しております。

福永参考人 ありがとうございます。

 既に、例えばパキスタンが核実験を行って、後追いで行ったときはどうするんだという御質問、本会議、委員会などでもあったかと思うんですけれども、それに対しては、核実験が行われたら終了しますという答弁があるんですけれども、それは協定上には明記がないわけですね。

 そうしますと、それが、今政府が答弁されていることがずっと長い間、今後二十年後、三十年後、もしかしたら、いつかそういうときが来たときに、インド側から、いや、書いてあるのはこれでしょうというふうに言われたとすれば、やはり、今、禁止します、停止します、終了しますという言葉が協定本文の中にない、あるいはそれにくっついている文章の中にも入っていないということに関しましては、私は非常に心配しているところでございます。

玉城委員 総理の答弁あるいは外務大臣の答弁等々と、この協定に書いてある条文との不整合が生じた場合どうするのかというふうなことが、非常に今の参考人の御意見の中にもにじんでいるのではないかと思います。

 恐らく時間的にはお三方への合同の質問が最後になるかと思いますが、もし仮にインドが核実験を行い、協力の停止等により、そうすると、先ほど話にありました、インド側に損害賠償請求権が発生いたします。そうすると、損害賠償請求権が発生し、原子力事業者がメーカーに損害賠償請求を行おうとした場合に、では、日本から輸出するそのメーカーは、福島第一を例にとっても、その賠償費用も巨額なものであることはもう明白であります。そうなった場合に、賠償責任を負えるかどうかという現実的な問題について、お三方からの御意見を伺いたいと思います。

浅田参考人 難しい問題だと思いますけれども、仮にそういうふうなことになった場合には、協定上は、やはり、公正な市場価額及び移動費用について補償するというふうに書かれていますので、補償することになると思います。

 ただ、企業との関係でどうかという問題ですけれども、日本がインドに対してそういう原子力資機材を提供する場合に、企業としては、この協定に基づいて提供するということは前提となっているわけでありまして、しかも、この協定というのは、再三取り上げられておりますように、インドが核実験を行った場合には停止あるいは終了するというふうになっておりますので、企業としても、そういったものを前提とした上で契約を結ぶということになると思います。

 ですから、そのように考えざるを得ないというふうに思います。

鈴木参考人 まさに今、その御質問が、原子力市場のリスクということになるわけでありまして、メーカーは当然リスクを考えて踏み込むことになるわけですね。それが、今回の協定の中身を見た上で、私の個人的な解釈は、リスクは非常に大きい、今御指摘のとおり。したがって、原子力産業の発展というもともとの目的から見ても、リスクは大きいのではないかというふうに考えております。

福永参考人 ありがとうございます。

 その点は、終了した場合の返還に関する賠償ということでありますと、私が外務省から聞いておる話では、これは国費で賠償を行うということを聞いております。

玉城委員 時間ですので質問を終わりますが、やはりこの原発、日印協定の責任は国民が負う、最終的にはそういうことになるわけですから、私たちはそのことをしっかりこの委員会での質問でさらに問題点を明らかにしていきたいと思います。きょうはどうもありがとうございました。

 ニフェーデービタン。終わります。

三ッ矢委員長 これにて参考人に対する質疑は終了いたしました。

 この際、参考人各位に一言御挨拶を申し上げます。

 参考人各位におかれましては、貴重な御意見をお述べいただきまして、まことにありがとうございました。委員会を代表いたしまして厚く御礼を申し上げます。ありがとうございました。(拍手)

 次回は、公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。

    午前十一時四分散会


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