衆議院

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第15号 平成29年5月17日(水曜日)

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平成二十九年五月十七日(水曜日)

    午前九時開議

 出席委員

   委員長 三ッ矢憲生君

   理事 黄川田仁志君 理事 新藤 義孝君

   理事 土屋 品子君 理事 中山 泰秀君

   理事 長尾  敬君 理事 小熊 慎司君

   理事 寺田  学君 理事 岡本 三成君

      今津  寛君    小田原 潔君

      小渕 優子君    大岡 敏孝君

      大野敬太郎君    熊田 裕通君

      佐々木 紀君    島田 佳和君

      鈴木 隼人君    武井 俊輔君

      辻  清人君    松島みどり君

      山田 美樹君    石関 貴史君

      吉良 州司君    中川 正春君

      原口 一博君    渡辺  周君

      濱村  進君    宮本  徹君

      足立 康史君    玉城デニー君

    …………………………………

   外務大臣         岸田 文雄君

   外務副大臣        薗浦健太郎君

   外務大臣政務官      小田原 潔君

   外務大臣政務官      武井 俊輔君

   防衛大臣政務官      小林 鷹之君

   政府参考人

   (内閣官房内閣審議官)  岡田  隆君

   政府参考人

   (外務省大臣官房審議官) 滝崎 成樹君

   政府参考人

   (外務省大臣官房審議官) 宮川  学君

   政府参考人

   (外務省大臣官房審議官) 飯田 圭哉君

   政府参考人

   (外務省大臣官房審議官) 三上 正裕君

   政府参考人

   (外務省大臣官房参事官) 飯島 俊郎君

   政府参考人

   (外務省大臣官房参事官) 高橋 克彦君

   政府参考人

   (外務省中東アフリカ局長)            上村  司君

   政府参考人

   (外務省中東アフリカ局アフリカ部長)       大菅 岳史君

   政府参考人

   (財務省大臣官房審議官) 藤城  眞君

   政府参考人

   (経済産業省大臣官房審議官)           佐藤 文一君

   政府参考人

   (国土交通省大臣官房審議官)           木原亜紀生君

   政府参考人

   (防衛省大臣官房長)   豊田  硬君

   政府参考人

   (防衛省大臣官房サイバーセキュリティ・情報化審議官)           齋藤 雅一君

   政府参考人

   (防衛省大臣官房審議官) 広瀬 行成君

   政府参考人

   (防衛省整備計画局長)  高橋 憲一君

   外務委員会専門員     辻本 頼昭君

    ―――――――――――――

委員の異動

五月十七日

 辞任         補欠選任

  熊田 裕通君     大岡 敏孝君

  浜地 雅一君     濱村  進君

  笠井  亮君     宮本  徹君

同日

 辞任         補欠選任

  大岡 敏孝君     熊田 裕通君

  濱村  進君     浜地 雅一君

  宮本  徹君     笠井  亮君

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 政府参考人出頭要求に関する件

 投資の促進及び保護に関する日本国政府とケニア共和国政府との間の協定の締結について承認を求めるの件(条約第一一号)

 投資の自由化、促進及び保護に関する日本国とイスラエル国との間の協定の締結について承認を求めるの件(条約第一二号)

 社会保障に関する日本国とスロバキア共和国との間の協定の締結について承認を求めるの件(条約第一三号)

 社会保障に関する日本国とチェコ共和国との間の協定を改正する議定書の締結について承認を求めるの件(条約第一四号)


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     ――――◇―――――

三ッ矢委員長 これより会議を開きます。

 投資の促進及び保護に関する日本国政府とケニア共和国政府との間の協定の締結について承認を求めるの件、投資の自由化、促進及び保護に関する日本国とイスラエル国との間の協定の締結について承認を求めるの件、社会保障に関する日本国とスロバキア共和国との間の協定の締結について承認を求めるの件及び社会保障に関する日本国とチェコ共和国との間の協定を改正する議定書の締結について承認を求めるの件の各件を議題といたします。

 この際、お諮りいたします。

 各件審査のため、本日、政府参考人として外務省大臣官房審議官滝崎成樹君、大臣官房審議官宮川学君、大臣官房審議官飯田圭哉君、大臣官房審議官三上正裕君、大臣官房参事官飯島俊郎君、大臣官房参事官高橋克彦君、中東アフリカ局長上村司君、中東アフリカ局アフリカ部長大菅岳史君、内閣官房内閣審議官岡田隆君、財務省大臣官房審議官藤城眞君、経済産業省大臣官房審議官佐藤文一君、国土交通省大臣官房審議官木原亜紀生君、防衛省大臣官房長豊田硬君、大臣官房サイバーセキュリティ・情報化審議官齋藤雅一君、大臣官房審議官広瀬行成君、整備計画局長高橋憲一君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

三ッ矢委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

三ッ矢委員長 これより質疑に入ります。

 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。石関貴史君。

石関委員 民進党の石関貴史です。よろしくお願いします。

 まず、日本・チェコ社会保障協定改正の議定書、それからスロバキアとの社会保障協定、この二つについてお尋ねをいたします。

 まず、交渉の経緯、いつから交渉を始めて、どういう経緯できょうに至ったのかという概略を、まず御教示いただきたいと思います。お願いいたします。

宮川政府参考人 お答え申し上げます。

 まず、日・チェコ社会保障協定改正議定書につきましては、もともとの協定は二〇〇七年から二〇〇八年に交渉いたしまして、二〇〇九年六月に発効に至っております。

 次に、スロバキアの社会保障協定、新規でございますが、本件に関しましては、平成二十二年九月に第一回当局協議を実施いたしまして、平成二十八年十月、第二回の政府間交渉を実施して実質合意いたしまして、平成二十九年一月に署名しております。

石関委員 チェコは改正ということですから、今お話しのとおりだと思います。

 スロバキアでも平成二十二年から二十八年までかかっているので、かなりの時間を要しているというふうに思いますが、どんな問題があってこれだけ時間がかかったのか。双方の制度が次々改正をされていれば、なかなか、それに合わせて交渉というのは難しいのは当然のことだと思いますが、そういったことがあったのか、これだけ相当な期間が交渉にかかっているということの理由を教えてください。

宮川政府参考人 お答え申し上げます。

 まずスロバキアにつきましては、二つの大きな論点、一つは、双方の年金制度の保険料を二重に支払う問題の解決、そしてもう一つは、年金保険料の掛け捨ての問題について解決をするということで交渉を重ねてきたわけでございますが、双方の、日本とスロバキアの間の制度の違い等ございまして、申し上げたような時間をかけたやりとりになったということでございます。

石関委員 チェコの場合は改正ということなので、今回の改正に至る前にそういった問題は解決されていたということですか。

 あわせて、それぞれの国の年金、それから社会保障制度の概要を教えていただけますでしょうか。何が違って、交渉の過程で困難さがあったかどうかということであります。

宮川政府参考人 お答え申し上げます。

 まず、質問の最後にいただきました、それぞれの国の社会保障制度の概要から申し上げます。

 チェコにつきましては、被用者及び自営業者を対象とした社会保険方式の年金制度を導入しておりまして、二〇一六年時点での保険料率は、被用者について賃金の二八%、自営業者については所得の二八%、年金の支給開始年齢は、男性六十三歳、女性が六十二歳、最低加入期間が三十二年間となっております。

 スロバキアにつきましても、チェコと同様に社会保険方式の年金制度を導入しておりまして、二〇一六年時点での保険料率は、被用者については賃金の二四%、自営業者については所得の二四%でございまして、年金の支給開始年齢は六十二歳で、最低加入期間は十五年ということで、日本とそれぞれ異なった制度となっておる次第でございます。

石関委員 これは、被用者、自営業者ということで御説明いただきましたが、日本で、被用者と自営業者、基礎部分とか二階建て、三階建てというふうに言われていますけれども、同じような仕組みになっているんでしょうか。基礎部分だけで賄っているのか、あるいは、二階建て、三階建て部分というのが、日本の制度のようにそれぞれの国にも存在をするのか。特に大きな違いがあれば、そこの部分を御教示いただきたいと思います。

宮川政府参考人 お答え申し上げます。

 日本の場合は二階建てという構成はとっておりませんで、両方とも一階建てでございます。それから、大まかな率を申し上げれば、一八%強でございます。

 失礼いたしました。訂正いたします。日本の場合は二階建てになっております。

石関委員 僕が聞きたいのは、日本の制度は多分みんなわかっていると思うので、それぞれの国がどうなっているのか。今僕が説明しましたよ、基礎部分があって、二階建て、三階建てがありますが、それぞれの国はどうなっているのかというのをお尋ねしたいんです。ちょっと待ってください。まだ質問していますから、焦らなくていいですよ。僕が質問している途中ですから。

 だから、それぞれの国の制度が幾らか異なるけれども、こういう協定を結んで、何年以上住んだ人には、わざわざこっちで短い期間に加入する必要はないですよとか、そういう協定なわけですよね。だけれども、制度が幾らか違う部分をどうやって折り合いをつけているのかとか、そういうことが知りたいわけですよ。わかりますか。そういう観点でお尋ねをしているんです。

 制度がまるっきり同じじゃないわけですよね。こういう違いがあるんだけれども、ここの部分をこうやって折り合いをつけて、それぞれの国民が行き来をするときに便宜を図るというか、不都合がないようにするんだ、こういう協定だと思いますよ。その違いがこうなんだ、だけれども、そこの部分はこういうふうに折り合いをつけているんです、こういうことをお尋ねしたいんです。

宮川政府参考人 お答えをいたします。

 構造については、今訂正申し上げましたように、スロバキア、チェコとも一階建ての所得比例年金方式でございます。

 そして、私ども、日本とチェコ、スロバキアとの制度の違いの調整というのは、むしろ構造よりも期間、例えば、日本の企業の方が五年以内の赴任でチェコ、スロバキアに行かれる場合は引き続き日本の保険を適用する、しかし、五年以上になる場合はスロバキア、チェコの年金を適用するという、期間の調整によって、お互いの立場を合意に持っていくという交渉でございました。

石関委員 今、日本の邦人のお話をされましたけれども、これは協定なので、相互にという理解でよろしいんですか。今は、一定期間、日本人の方が向こうに居住をして、それでこういう協定の恩恵が受けられるということで、当然、協定ですから、日本にいるそれぞれの国の方々も、一定年限以上の居住があればこれが適用されるということだと思うんですが、いかがでしょうか。

宮川政府参考人 お答え申し上げます。

 委員御指摘のとおり、日本におられるチェコ及びスロバキアの方々に対しても、同じ内容の条項が適用されることになります。

石関委員 あと、基礎的な数字になりますが、日本からそれぞれの国に在留している方々の数、それと、今回の協定の対象になるであろう見込みの、そのうちの人数、大体で結構ですけれども。あとは、それぞれの国から逆に日本においでになっている方々、これはちょっと基礎的なデータであるんじゃないかなと思いますけれども、そのうちで対象になる方々、これを教えていただけますか。

三ッ矢委員長 わかりますか。

 宮川審議官。

宮川政府参考人 お答え申し上げます。

 まず、チェコに在住する日本人の数は、二〇一五年十月現在、千七百九十一人でございます。また、スロバキアに関しましては、二〇一五年十月現在、百九十三人でございます。

 それから、お尋ねの、その逆でございます日本に在留するスロバキアの方は、平成二十八年六月末現在、三百七十七人、在留チェコの方は、同月、七百八十九人でございます。

石関委員 お尋ねしたのは、もう一点、そのうちで今回の協定等の対象になる、見込みで結構ですけれども、だから、何年以上住んだ人が対象になるということになっていますよね、一年や二年じゃなかったというふうに理解をしておりますが、それぞれの国で、今お答えいただいた人数の中から、どの程度の方々がこの協定の対象になる、恩恵を受けられるのか教えてください。

宮川政府参考人 お答え申し上げます。

 手元にある数字といたしましては、スロバキアにいる日本人のうち、この協定の対象になる方はおおむね三十人、チェコにつきましては、済みません、手元に数字がございませんので、追って御説明いたします。

石関委員 後で細かい数字を教えてください。

 意外と少ないんだなという感じがしますが、これは一定の年数以上の方だということでそういうことになっていると思いますが。

 数字、わかりましたか。わかったら教えてください。

宮川政府参考人 失礼いたしました。

 チェコについては、約五百人の日本人の方がこの国で適用になっているということでございます。

石関委員 日本にいるそれぞれの国の方々も知りたかったところですけれども、やめておきましょう。後でまた別途教えていただければ結構です、これはなかなか進みませんので。日本にいるそれぞれの国の方々の数字、人数の見込みについてはまた別途教えてください。結構です。きょうは優しくやりたいと思いますので。

 それでは、いろいろな国のくくりやグループというのがありますが、それぞれの国が入っている、いわゆるV4という、九一年に創設をされた、グループと言っていいと思いますが、チェコ、ポーランド、スロバキア、ハンガリー、こういう国々があります。私もこの国々はそれぞれ訪問したことがあります。国情や制度はもちろん違うと思うんですが、V4というくくりで見たときに、今回はチェコとスロバキアということですが、V4のその他の国々についてこういった交渉が進んでいるのか、あるいは時間がかかったりまだなかなか交渉が進んでいないということであれば、どういった理由で進んでいないのか、こういったことについて御教示ください。

宮川政府参考人 お答え申し上げます。

 御質問いただきましたV4、チェコ、スロバキア、ハンガリー、ポーランドのうち、スロバキアにつきましては、申し上げたように、署名を終え、今御審議いただいている状況でございます。チェコにつきましては、二〇〇九年に社会保障協定を締結し、今回その改正議定書につき御審議いただいております。ハンガリーでございますが、二〇一四年に社会保障協定を締結しておりまして、これらの三カ国との間では、それぞれの国に進出する日本企業の負担軽減に貢献してきてまいります。

 ポーランドにつきましては、現時点では日本との間で社会保障協定は締結されておりませんが、ポーランドの社会保障制度上、日本に所在する事業者によりポーランドに派遣された被用者につきましては、現地法人と雇用契約を締結しない場合、そして給与の全額が日本企業から支払われている場合等におきましては、ポーランド政府に対する社会保険料の納付義務が発生しないものと認識しております。

 いずれにしましても、御指摘を踏まえまして、今後、各国におけるニーズをよく把握して、丁寧に対応してまいりたいと思います。

石関委員 これは普通に今雇用されている方々等だというふうに思いますけれども、それでは外交官の方々の扱いについて、この二国に限らず、この種の協定等の場合には、まず、外交官の方々の社会保険料の納付の仕組みとか給与に係る租税の仕組みは、一般と違うところがあるのかどうか。それから、五年以上とか十年同じ国に勤務をされる外交官の方はそんなに多くはないというふうに思いますので、民間と同じ扱いだったとしてもそれほど対象は多くないのではないかなというふうに思いますが。

 こういうことも含めて、民間の方々が外国に居住してこういった協定の対象になる場合と、そもそも外交官が何か民間の方々と社会保険料の納付の仕組みですとか租税の仕組みが違うのか違わないのか、そして外交官の方々がこういった協定の対象になるのか、扱いが違うのかどうか、このことについて教えてください。

宮川政府参考人 お答え申し上げます。

 外交関係に関するウィーン条約第三十三条におきまして、外交官に対する接受国の社会保障に関する規定の適用を免除するという条項が、チェコ、スロバキアに限らず、一般的にございます。適用されております。

 その上でチェコとスロバキアについて申し上げれば、このウィーン条約の枠組みを尊重することとしまして、両協定は、ウィーン条約の規定の適用を妨げるものではないという規定をチェコの方は置いております。また、スロバキアの方は、同規定に影響を及ぼすものではないという規定を置いております。

 したがって、日本の外交官につきましては、チェコ、スロバキアの社会保険制度に関する法令の適用は受けておりません。日本の法令に基づきまして、年金等の日本の社会保険制度の適用を受けておりまして、保険料が給与から控除されているという状況でございます。

 それから、もう一点補足いたしますと、民間の方々との扱いの違いはあるかという点については、今申し上げた点以外におきましては違いはございません。

石関委員 今、日本の外交官ということでお答えいただきましたが、基本的に、今御答弁にあったと思いますが、この二国に限らず、条約のもとで、全部の国と同じ扱いなのか、例外があるのかどうかということが一つ、まずそれをちょっと教えてもらえますか。

宮川政府参考人 お答え申し上げます。

 例外はございません。申し上げたように、規定ぶりは少し、条約によって、国によって違っておりますが、例外はございません。

石関委員 あと、二国を含めてほかの国々、世界の各国の相手方の外交官が日本にいらっしゃる場合に、これも同じ扱いになっているのか、あるいは、例外である国があるのか、国のおつき合いの度合いによって違うとか、そういうことがあるのかないのか、一律同じなのか、それも教えてください。

宮川政府参考人 お答え申し上げます。

 ウィーン条約第三十三条につきましては、全ての国の外交官に一様に適用されております。例外はございません。

石関委員 相手国に対して、何らかの国際的あるいは我が国単独で制裁措置をとったり、そういった場合においても、外交官の特権というのは変わらないですね。

宮川政府参考人 お答え申し上げます。

 各国と日本が締結してまいりました社会保障協定に関して申し上げれば、例外はこれまではございませんです。あとは、一般的にそれ以上申し上げるのは難しいかと思います。

石関委員 これまでにはなかったということですが、今後、制裁のうちにこういうものが入るのかどうかわかりませんが、それぞれの国に対して、おつき合いの度合いが変わったりとか、経済だけではなくて外交関係においてもいろいろな種々の制裁を科する、こういう場合に、この協定の中身のようなものも対象になる可能性があるのか。外交官の扱いということになるんだと思いますが、いかがでしょうか。

三上政府参考人 お答え申し上げます。

 いろいろな事情をかなり一般的に断定することは慎重でなければいけないと思いますが、外交官につきましては、国際慣習法及びウィーン条約上、幅広い特権、免除というものが認められているわけでございます。

 そして、今話題になっております社会保障協定につきましては、先ほど来言及のあります外交関係に関するウィーン条約第三十三条におきまして、「外交官は、」「派遣国のために提供された役務について、接受国で施行されている社会保障規程の適用を免除される。」という規定がかかっておりますので、基本的には、これに従って全て免除されるということになっております。

 ただ、これ以外にも、外交官の特権、免除というのは、身体の不可侵その他いろいろな特権がございますので、それは接受国が尊重しなきゃいけませんが、何かの事情でそういうものを剥奪しなきゃいけないというような状況になったときには、ペルソナ・ノン・グラータという制度がございまして、これは、理由のいかんを問わず、その者を好ましからざる者として外交官としての接受を終了するという措置はございます。

 以上です。

石関委員 それでは、この社会保障協定、こういったものについて、全世界の中で、既に結ばれているところはもちろんなんですが、現在交渉中のところで優先順位というものがもしあるのであれば、ただ、当然、在留されている邦人が多ければ、そこは優先順位が高いということだろうというふうに私は思うんですが、こういった観点、あるいはほかの、先日の外務大臣の発言もあったと思います、幾つかの要素があって、そういうものから優先順位をつけて、それが双方の経済的な利益にもつながるとか、いろいろな要素があるんだという種の発言をされていたというふうに記憶しておりますが、いろいろな要因があって、今一生懸命頑張っているんだとか、こういう要因で国別の優先順位のようなものがあれば、交渉中のもので教えてもらいたいと思います。

岸田国務大臣 御質問は社会保障協定でよろしいでしょうか。

 社会保障協定でありますが、交渉を進めるに当たって優先順位等を考えるわけですが、まずは、相手国の社会保障制度による一般的な社会保険料の水準があります。

 国際社会を見ますと、特に途上国においてはそもそも一般的な社会保険料の水準がかなり低いですから、日本企業や在留邦人の社会保険料の負担額もかなり低いですし、それから経済界の要望も低いということになりますので、社会保険料の水準がどうしても高い国に対して要望が出てくるということはあります。

 さらには、相手国との二国間関係、そして、まさに先ほど委員の方から、どうやって調整するのかという質問がありましたが、相手国と社会保障制度を調整するに当たって、制度そのものの類似性、調整がうまくいくような類似性がなきゃいけない、こういった点もあります。

 こういったものを総合的に考慮した上で優先順位を考え、そして準備が整ったところから交渉を行っていく、これが基本的な考え方であります。

 そして、現在交渉中の国としては、スウェーデン、中国、トルコ、こういった国と現在交渉を行っているのが現状であります。

石関委員 在留邦人の数とかいうことだけではなしに、今のように、発展途上国がこうだというような御説明があってよくわかりました。

 その中で、今、要望があるというお答えがありました。これは当然企業等からの要望だというふうに思いますが、こういった要望については、どういう形で聴取をして、それで交渉をこの国は必要だというふうに、その土台になるものだというふうに思いますが、こういった場というのは、各国の大使館や領事館等で要望を受け付けているのか、あるいは日本で経済団体等からこういったものについてもいただいた要望の中から優先順位を決めているのか。いろいろなチャンネルがあるというふうに思うんですが、この要望の聴取とか、それをまた優先順位を役所の中で、外務省でつけていくという仕組みになっているんだと思うんです。

 概要というか、こういう場でこういう御要望を聞いて、これが反映されて交渉に至っていくんだとか、こういった仕組みをちょっと、もしよければ、外務大臣、教えていただけますか。

岸田国務大臣 まさに全体の状況を把握する上においては、経団連を初めとする経済団体との意見交換会、外務省としても年に何度も行っておりますが、こうした意見交換の場が基本になると思います。加えて、各国の在外公館等を通じて、現地の企業とか在留邦人の方々からの意見も聴取をする。

 この辺を両方あわせ、総合的に判断した上で優先順位を考えていく、こういったことになるんだと考えます。

石関委員 ありがとうございます。

 それでは、関連して、直接のこの協定以外のものですけれども。

 今、在留邦人に対して、またあるいは企業に対して、こういった協定ができれば皆さんハッピーな話だということだと思いますが、まず、チェコやスロバキアにいる在留邦人、先ほど人数については御紹介をいただきましたが、有事の際にこういった、特にチェコやスロバキア、ほかの国もありますが、在外公館が緊急時にこういった現地邦人保護のシミュレーションですとか、そういったものを行っているかとか、特に、今回、この協定の対象国でどんなことが行われているのか教えていただけますか。

岸田国務大臣 チェコ、そしてスロバキア、こうした国々において、在留邦人の保護のためにどんな取り組みを行っているのかということですが、基本的には、どの国であれ、我が国にとって在外邦人の保護、これは政府の重要な責務です。在外邦人の生命身体の保護、これは最優先で考えていかなければなりません。

 海外において緊急事態等が発生した場合に、まずは関連情報を収集、分析した上で、海外安全情報の発出など必要な情報提供をしっかり行い、その上で当該地域への邦人の渡航を抑制する、こういった対応を行わなければなりません。

 その上で、さらに状況が悪化した場合においては退避を考えなければいけないということで、退避について、邦人に早期の退避を促す、そして、それとともに、退避の手段のアレンジも含めて、最も安全かつ迅速な邦人の退避の支援を行っていく、こういった取り組みを進めていかなければなりません。

 国によって事情はさまざまですが、今言った基本的な考え方に基づいて、それぞれの国の事情を加味して、在外公館において、しっかりと在外邦人の方々にもこういった意識を持ってもらう、平素から情報を共有していく、こういった取り組みを行っている、これが現状であると認識をしております。

石関委員 今、在留邦人の有事の際の保護ということでお尋ねをしましたが、協定に関連して、今、特にチェコやスロバキアという観点でお尋ねしたのは、先ほど御紹介いただいたように、在留邦人の数が極めて少なくて国土もそんなに広くない国々ですから、そういった国と、非常に広大で多くの在留邦人がいて、そしてその方々が全土に散らばっているというところでは違いが随分出てくるのではないかなというふうに思います。

 もう一度お尋ねをしますが、チェコやスロバキアで、特にそういった有事の際の、在留邦人の方々に情報を伝達して、安否を確認して、そして最悪の場合には脱出を図る、こういったシミュレーションみたいなものは行っているんですか。

 ちょっと、通告をしてありますので。

宮川政府参考人 お答え申し上げます。

 チェコ、スロバキア、ともに、年間に定期的な訓練というのを、大使館員はもとより、現地の日本人企業、チェコには日本人学校がございますが、日本人学校の関係者、旅行会社の関係者等から構成される安全連絡会議というものを開催しておりまして、その席上、常に最新の連絡方法のアップデート等を含め、緊急事態も含めたシミュレーションを行っております。

石関委員 これは何か、メールとかSNSとかそういったもので在留邦人に、いろいろな段階はあると思います、取りまとめ役の方なのか、そういう仕組みになって、ばあっと緊急時には連絡が行くような仕組みになっているんでしょうか。

 比較的在留邦人が少なくて国土が小さい国であれば十分できるというふうに、今の人数であれば、この両国などは、そういったものをうまく仕組みを構築すれば、迅速に安否の確認までできるような規模ではないかなと思うんですが、いかがでしょうか。

宮川政府参考人 お答え申し上げます。

 委員御指摘のとおり、緊急時を想定いたしまして、日ごろより、領事メール、SMS等、ホームページ以外の能動的な連絡方法を通じた発信というのに努めておりますし、それから、緊急時に連絡がすぐとれるようにということで、あらゆる機会を捉えまして、在留届の提出と、それから、その国を離れられるときに、離れますという在留届の改訂のお知らせを徹底するように努めております。

石関委員 比較的連絡がとりやすい、確認がとりやすい、こういった国や、在留邦人の数にもよるというふうに思いますが、これと、韓国とか中国とか、特に中国は領土も広大で邦人の方も拡散して多くいらっしゃるというところで、今みたいな仕組みの構築や伝達とか、邦人の身柄の安全のための確保は随分違うと思いますが、こういったそれぞれ、比較的規模の小さい、在留邦人の少ない国々や、特に中国、また在留邦人の数でいえば膨大な韓国というものでは、何かこういった取り組みの違いというのはあるんでしょうか。

岸田国務大臣 おっしゃるように、在留邦人が大変数が多い、また、国の事情の違いなどによって、より在留邦人の安全確保のために努力をしなければいけない国は幾つかあります。

 そして、例えば韓国などの場合には、先ほども、在留邦人と安全についてさまざまな会議を開くスロバキア、チェコについてお話がありましたが、韓国においては、在ソウル日本人会と共催している安全会議、安全委員会という名称だったかと思いますが、たしか年に四回は開いていたと思いますし、それから安全マニュアルというものもつくって、これを在留邦人の方々に徹底させる。

 これをホームページなどを通じて徹底するだけではなくして、これも先ほど少し出ておりましたが、領事メールですとかSNSですとか、それから日本人会の緊急連絡網、こういったものを使って徹底するとか、それから、こうした在留邦人の現状をしっかり確認することも大事ですので、在留届、それから、短期滞在者にはたびレジという制度を利用してもらっていますが、これをしっかりと徹底させる。

 それから、在留届についても、正確性を期すために、届けにおいて、現地から帰国する予定日がその届け出の中にあるんですが、その届け出の期日が来たら自動的に確認の連絡が行くような制度をつくっていくなど、情報の正確さにも努めている、こういったことでありますし、そうした把握している情報の外側におられる方に対しても、旅行会社ですとか現地の日本人会ですとか、そういったものを通じて情報を徹底する、こういった取り組みを平素から行っています。

 その上で、先ほど少し申し上げました、緊急事態が発生した場合については、先ほど申し上げた基本的な考え方に基づいて、さまざまな準備、検討を行っているということであります。

 その部分については、詳細は明らかにいたしますと、まさに避難する場合の安全にかかわる話ですから、これは明らかにできませんが、そういった準備をきめ細かく行っている、こういった国も当然、存在いたします。要するに、必要な国にあっては、今申し上げたように、きめ細かく対応しているというのが現実であります。

石関委員 大臣、大変きめ細かい御答弁ありがとうございました。よくわかりました。

 最後に、在留邦人の保護という観点から、一つやはり心配なのは朝鮮半島の動向ということだと思います。

 韓国の新しい大統領、北朝鮮に対して融和的な政策を行う、もともとそういう姿勢の方だというふうに理解をされています。ミサイルの発射によって言いぶりは少し変わったりしておりますが、基本的な姿勢は変わらないというふうに思いますが、大臣、この新しい大統領について、日米韓の三カ国の連携に、北朝鮮に対する姿勢でどのような影響を及ぼす可能性があると大臣がお考えになっているか、このことについて、最後に端的にお答えいただければと思います。

岸田国務大臣 文在寅新大統領につきましては、選挙期間中、さまざまな発言をされたことについては承知をしております。ただ、新政権が発足して、これから新首相が議会の承認を得、そして、各閣僚が議会での証言を終える、こうした手続を考えますと、具体的な政策が明らかになるのはもう少し時間がかかるのではないかと考えます。

 ただ、委員の御質問の日米韓の連携ということを考えますと、これは地域の安全保障環境、北朝鮮問題のみならず、東アジアの安全保障環境全体を考えましても、これは平和や安定のために重要であるという認識、これはこれからもしっかり大事にしていかなければならない考え方であると思いますし、こうした基本的な部分は新政権との間においてもしっかり共有していかなければならないと思います。

 日韓の間において、既に首脳電話会談は行っているわけですが、ぜひ、こうしたハイレベルの意思疎通が重要だと考えます。ハイレベルの意思疎通を通じて、今言った考え方をしっかり共有するべく、これから努力を続けていきたい、このように考えます。

石関委員 ありがとうございました。

三ッ矢委員長 次に、寺田学君。

寺田(学)委員 寺田学です。

 きょうは四条約についての審議を行わせていただきます。中でも、イスラエルに対する投資協定に絞って質問をさせていただきます。そしてまた、質疑時間に多少余裕があるようであれば、最後に、AIIBについて、日中について大臣の見識をお伺いしたいというふうに思っております。

 日本・イスラエル投資協定についてです。

 党内でもいろいろ議論をさせていただきました。基本的には、イスラエルが有する技術であるとか市場、さまざまなことを考えて、非常に魅力的な市場環境を持っていますし、友好的な関係を築いていこうという方向性は同意しながらも、一方で、いわゆる入植地の問題を含め、さまざま懸念の声が党内そしてまた国会の外からも寄せられている状態にあるというのが、今のところ、我々の認識であります。

 ポジティブな部分はさまざま御説明いただいている部分もありますので、やや懸念の声が寄せられているところについて、政府の見解を確認し、賛否の方を決めていきたいというふうに思っています。

 まず、一般的なところですけれども、政府が考える今回の日本・イスラエル投資協定の意義をまずはお聞かせいただければと思います。どちらでもいいですから。

三ッ矢委員長 誰が答えますか。

 上村中東アフリカ局長。

上村政府参考人 お答え申し上げます。

 お尋ねのイスラエルとの投資協定の意義でございますが、先ほど委員の方から御指摘がございましたとおり、イスラエルは、例えば対GDP比で世界トップクラスの研究開発費を長期にわたって拠出をし続けるなど、例えば、情報技術、医療などの分野においては、世界でもトップクラス、最先端技術を有する技術大国ではございます。

 また、国内には、多国籍企業の研究開発拠点などが集積しておりまして、特に、サイバーセキュリティー、物のインターネットに関する技術の分野で、日本企業による投資額も大変急増しておるところでございます。

 イスラエルは、日本企業の今後さらなる進出が見込まれる国でございます。我が国経済界からも投資環境の整備について強い要望がございまして、今般、この協定を締結することによりまして、投資の法的安定性の向上など、投資家にとりまして良好な投資環境の整備を促して、我が国とイスラエルとの間の投資及び経済関係をさらに緊密にすることが期待されております。

 これが基本的な認識でございます。

寺田(学)委員 これから質問する懸念点の部分の通告のみでしたので、物すごく一般的なところはちゃんと順番的にはお伝えしていなかったかもしれませんが。

 まさしく先ほど私も申し上げましたが、いわゆる入植地問題を含めて懸念の声、国際的にも声が上がっております。

 まず、基本的なところから質問させていただきますが、日本政府としては、イスラエルのこの入植地に対してどのような見解をまず持っているのかということを確認したいと思います。

岸田国務大臣 まず、我が国としましては、一九六七年戦争、いわゆる第三次中東戦争の全占領地及びこれら占領地における入植地を、イスラエルの領域としては認めてはおりません。

 そして、我が国は、中東和平問題の最終的な解決を予断するような一方的な変更、これは、いずれの当事者であっても承認できないという立場に立っています。

 東エルサレムを含むヨルダン川西岸におけるイスラエルの入植活動は国際法違反であり、即時かつ完全に凍結されるべきである、こういった立場につきましては、あらゆる公の場において明らかにしている、これが我が国の立場であります。

寺田(学)委員 その上で、今のこの条約に落とし込んで質問したいんですが、イスラエル国の領域は、そしてまた、この条約が規定しているその領域というものは、今お話がありました入植地というものはこの条約の中に含まれているのか、除外されているのか、そこの考え方の御説明をお願いします。

小田原大臣政務官 お答え申し上げます。

 この協定におけるイスラエルの領域は、イスラエルが国際法及びイスラエル国の法令に従って主権、主権的権利または管轄権を行使する範囲に限定されております。

 一九六七年戦争による占領地は、国際法上、イスラエルの領土と認められておらず、入植地は、これらの占領地内に所在するため、本協定上の領域には含まれません。

寺田(学)委員 イスラエルとのさまざまな条約、約束事を結ぶ中において、この領域の概念というものがいろいろ議論されてきたと思いますが、党内で議論する中において、租税条約、イスラエルと結んでいますけれども、租税条約における領域の考え方と今回の領域の考え方が違うのではないかという声も寄せられております。

 その点に関して御説明できるところがあれば、よろしくお願いします。

上村政府参考人 お答え申し上げます。

 日本・イスラエル租税条約第三条で定義されていますイスラエルの地理的範囲及び日本・イスラエル投資協定第一条で定義されておりますイスラエルの領域というのは、いずれも、イスラエルが国際法及び国内法令に従って主権等を行使する範囲に限定することが確保されております。

 したがいまして、その対象とする範囲に相違はなく、いずれも、同じイスラエルの領域、排他的経済水域及び大陸棚を意味しているものでございます。

寺田(学)委員 それでは、もう一問、この点に関してですが。

 入植地に関してはこの条約の領域外であるということを先ほど政務官の方からお話がありました。よろしいですよね。そのことに関して、イスラエル政府はしっかりと承知をされているのでしょうか。どういう認識なのか、お答えください。

小田原大臣政務官 お答え申し上げます。

 この協定の交渉において、我が国は、入植地を含む第三次中東戦争の全占領地について、国際法、及び、国連安保理決議第二百四十二号及び第三百三十八号等に違反しており、イスラエルの領域と認めていない点について明確に述べております。

 イスラエルは、かかる我が国の立場が国連安保理及び世界の大多数の国と同じ立場であることについて十分承知しております。

寺田(学)委員 この日本とイスラエルの投資協定を結ぶに当たり、そしてまた、これが国会で承認され、実質的な意味を持つ場合において、その上でのプレーヤーは、いわゆる民間企業の方々が主になると思うんです。

 そういう方々が入植地のビジネスというものに対して細心の注意を払いながら、この今の政府の解釈、両政府の解釈、そういうことを踏まえてしっかりとビジネスができるのかどうかということをしっかり担保しなければならないと思っているんですけれども、その点に関して、日本政府として努力しているところ、注意しているところがあれば、お話しいただければと思います。

上村政府参考人 お答え申し上げます。

 委員御指摘の点につきましては、政府といたしましても、イスラエル企業との関係構築を検討する日系企業と面談する機会などを捉えまして、あるいは外務省のホームページ、それから在イスラエル日本大使館のホームページ上などを通じまして、占領地あるいは入植地における活動を含むビジネスにおきましては、金融上、風評上、あるいは法的なリスクにつきまして、十分留意する必要がある旨、情報提供を既に行いつつございます。

 占領地及び入植地に関する我が国の立場にも鑑みまして、引き続き、日本企業関係者への情報提供に適切に努めていく考えでございます。

寺田(学)委員 加えてですけれども、今度、入植地でビジネスを行うイスラエル企業もこの協定の恩恵を受けることになるのではないかという懸念の声もありますが、その点に対して、どのようなお考えをお持ちですか。

上村政府参考人 繰り返しの御答弁になりますが、イスラエルの入植活動は国際法違反であります。我が国がこれに支援を与えるべきでないことは明らかでございます。

 委員御指摘の、入植地でビジネスを行うイスラエル企業あるいは入植地で設立をされたイスラエル企業への具体的対応についてのお尋ねでございます。

 これは、個々の事例に即して今後検討する必要があると思いますけれども、本協定の解釈、適用に当たりましても、我が国の対応が国際法違反の活動を促進することがないように対処する、そのために適切に日本政府として対応していくという考えでございます。

寺田(学)委員 もう一点ですけれども、ことしの二月二十一日ですか、イスラエルで差別禁止法というものの改正が行われて、投資が占領地でのビジネスに直結する可能性がある、そういうことをある意味促すような流れができてきているのではないかと。その点に関して、今まで御質問させていただいた同じような懸念点が再び惹起されているというところがあります。

 二月二十一日にイスラエルで可決された差別禁止法の改正によって、日本企業のその当該法令による罰金等のリスクが高まっているのではないかという声も寄せられていますが、この点に関しての政府の周知徹底等はどのように行われているのか、御説明いただければと思います。

上村政府参考人 お答え申し上げます。

 委員御指摘のとおり、本年の二月、産品、サービス、娯楽及び公共の場への入場差別禁止法を改正する法案がイスラエル国会で可決されたものと我々も承知をしております。

 これは、我々も大変注意深く情報収集を続けておりますが、非常に新しい導入の法律でありまして、この法律にかかわります具体的な施行の態様につきましては、いまだイスラエルにおいて検討が行われておりまして、明らかになっておりません。引き続きまして、この問題につきましては十分注視して情報収集をしてまいります。

 いずれにいたしましても、政府といたしましては、日本企業の活動に影響が見込まれるイスラエルの国内政策につきましては、引き続き注視をしまして、我が国投資家に対しまして、当省ホームページの内容を適時に更新することなどを通じまして、適切に情報提供をしていきたいと考えております。

寺田(学)委員 もちろんイスラエルでビジネスをする以上、他の国という比較もいかがかもしれませんけれども、非常にさまざま難しい部分があったり、事情の変更があったりすることに注意しながらビジネスはしなければならないと思っていると思いますので、その点に関しては、「ゴルゴ13」を使うのかどうかわかりませんけれども、しっかりと外務省としても注意喚起という努力を怠らずにやっていただきたいと思います。

 ずっと大臣以外の方にお答えいただきましたが、総括的に、今まで御質問させていただきましたけれども、御答弁を大臣からも一言いただきたいと思います。

岸田国務大臣 今回の日・イスラエル投資協定については、まず冒頭、意義について御質問をいただきました。そこで申し上げたように、イスラエルが世界トップクラスの技術大国であることなど、こういった国との投資環境の透明性、法的安定性、予見可能性、これを向上させたいという経済界の要望等に応え、協議を行い、そして今、国会に御承認をいただいているわけですが、その中にあって、委員の方から御指摘がありました、イスラエルの入植地等をめぐって国際的に厳しい声があります。

 こういったイスラエルとの関係をどう考えていくか、こういった点については、日本国としましても、国際社会の動向をしっかり見ながら、慎重に進めていかなければならない、こういった観点から御質問をいただいたと受けとめております。

 ぜひ、そういった点もしっかり念頭に置きながら、この協定、もし御承認をいただいたとしたならば、運用におきましても、しっかりと注視をしながら進めていかなければならない、このように考えます。

寺田(学)委員 先般議論した日印の原子力協定もそうですし、今回の日本、イスラエルの投資協定もそうですが、もちろん外交ですから、お互いの国の利益を高めていく努力をする一方、インドの場合であれば核不拡散の問題がありましたし、今回のイスラエルであれば、この入植地の問題にあるような、人権の問題を含めてあると思います。

 もちろん、そこのバランスをとりながら、利益を最大化させていく活動があり、そういう中において、両方の立場を重要にしながら物事を進めていくのは大事だと思います。日印でも私は感じましたけれども、やはり、ビジネス的なもの、利益を得ることに対する傾倒が強く、しっかりと相手国との立場が違う部分に対してこちら側も主張していく、その姿勢というのは私は若干弱いような気がします。

 今回、日本、イスラエルにおいてもるる御説明いただきましたが、入植地の問題を含め、意見が合わないところがあると思いますので、そういう点に関しては、日本政府としてのもう一面の主張というものをしっかり行っていただきたいというふうに思っております。

 残り時間、日本と中国の件に関してお話ししたいと思います。

 一帯一路ということで、自民党の中からは二階幹事長がお出になられて、一帯一路の会議でさまざまな御発言がありました。その中で、非常にトピックとして扱われたのは、AIIBに対しての姿勢です。

 この委員会の中でも、AIIBに対して日本は参加するのかしないのかということを、外務省並びに財務省の方々を交えて議論をしておりましたが、日本の情報収集能力を非常に疑われるような展開がさきには行われたというような印象が私は残っております。

 かなり多くの国がAIIBに加わり、そしてまた、私も聞くところによると、AIIBのある種運営に関しては、当初の想像以上にしっかりとした体制で行われているというビジネス界の方々からの評価というのもありました。

 その中において、二階幹事長が、もうこれはAIIBに入るものを大きな前提としながら、どのタイミングで入るべきなのかどうか、一刻も早く入るべきだというような発言をされ、意外だったんですが、安倍総理が、テレビ番組の中で、公正なガバナンスが確立できるかどうかなどの疑問点という、従来のポジション、従来の懸念点を表明しながらも、解消されれば前向きに考えるというような言い方をされました。

 今までは、今述べたような懸念点があるからこそ慎重に考えたいという政府の向き合い方だったと思うんですが、この一帯一路が原因なのか、それとも、はたまた米中関係がトランプ大統領の誕生によって変化をしていることの影響なのかわかりませんけれども、懸念点は懸念点で同じながら、それに対して挑む全体的な方針が、慎重姿勢からやや前向き姿勢の方向性が見えてきたと思っています。

 私の主観的な意見をまず除いたとして、フラットな質問をしたいと思うんですが、AIIBへの加入、加わることに関して、今大臣はどのようにお考えですか。

岸田国務大臣 まず、膨大なアジアのインフラ需要、そしてどんどんと大きくなってくるアジアのインフラ需要に対してしっかり応えていかなければならない、これは国際社会として取り組まなければならない大変重要な課題であるとは認識をいたします。そのために、それぞれの国が努力をしていく、関係者で協力をしていく、これは大変重要な取り組みであります。

 我が国もADBを中心とする体制を通じて貢献をしっかり考えているわけですが、その中にあってAIIBというものが登場をしてきた、これについてどう考えるかということですが、これについては、従来から、AIIBというものが国際的なスタンダードに合致したものであるか、あるいはアジア、地域の持続的な成長に資するものであるのか、こういった点について注視をしていくということ、我が国の立場を説明してきました。基本的には、これは現状も変わっていないと思っています。

 総理の発言についても御指摘ありましたが、総理のあの発言、BSテレビでのあの発言ですが、あれも、事前に、今申し上げた国際的なスタンダードあるいは持続的な可能性に資するか、こういった問題点を指摘しつつ、こうした問題点が解消されたならばという発言でありました。基本的には、今申し上げました我が国のスタンスと違いはないと考えております。

 いずれにしましても、今後とも、AIIBについては、公正なガバナンスが確立できているのか、あるいは借入国の債務の持続可能性、あるいは環境、社会に対する影響、こうしたものへの配慮が確保されているのかどうか、実際の運用をぜひ注視していきたい、このように考えます。

寺田(学)委員 もう少し端的に聞きますが、AIIBがつくられるときに同じような議論をし、同じような御答弁がありましたが、それ以降、AIIBがさまざま運営される中において、実態が以前よりは当然見えるような形になっております。

 このAIIBに対する評価というものは、従来といささかも変更はないんでしょうか。

岸田国務大臣 AIIBの動向については、先ほど申しました国際的なスタンダードとの関係、そして持続的な成長に資するものであるのかという点、こうした点について注視をしていく、この点については変わっていないと思います。

 具体的なものが少しずつ見えてきている、そのとおりかと思いますが、その中にあって、実際の運用面もしっかり確認した上で我が国の評価を考えていかなければならないと思います。

 引き続き注視をしていくという基本的な立場は変わっていないと考えます。

寺田(学)委員 総理もお話しになられたのだと思いますが、アメリカとの足並みをしっかりとそろえていくというお話がありました。このAIIBが出た初めのころは、ほかの先進諸国との足並みをそろえながらと言いながら思いっ切りヨーロッパに出し抜かれて、正直、国会内で見てみても、日本のそういう部分での情報収集能力というのはどうだったんだろうという疑問符がいろいろなところからつけられたと思います。

 米国は、トランプ政権に新たになりました。政権が誕生すること自体予測していなかった方々は多いとは思うんですけれども、このAIIBに対する向き合い方、もちろん中国に対する向き合い方も、前オバマ政権に比べてかなり我々の予想どおりではない展開ということもあり得ると思っているんですが、これは大臣なのか参考人なのかわかりませんけれども、アメリカのAIIBに対する向き合い方に関しては、どのように日本政府として考えておるんでしょうか。

岸田国務大臣 トランプ政権になって、AIIBについて何か具体的な発言あるいは方針が示されたということについては承知はしておりません。

 そして、米中においては、先日、御案内のとおり、米中首脳会談が二日間にわたって行われました。それに基づいて、米中関係について議論が続いていると承知をしております。

 もしAIIBについて何らかの方針が示されるとしたら、その議論の中で、その議論の延長線上で示されることもあるかとは存じますが、今のところ、AIIBについてトランプ新政権が何か発言したということについて、少なくとも私は承知していないということであります。

寺田(学)委員 時間ですので、ちょっと最後、総括的なことをお伺いしたいと思います。

 安倍政権、第二次安倍政権ですが、誕生して四年以上が過ぎ、大臣もずっと、本当に歴代類を見ないほど長期の外務大臣をやられていることは、外交的な意味で私は評価したいと思います。その意味で、さまざまなところでの外交的な成果、前進ということもあることも、野党ですけれども、素直に認めたいと思います。

 ただ、日中の関係に関しては、やはり長い時間をかけながら、外交的な意味での前進、戦略的な仕掛け等々がこの間にあったというふうには私は余り見受けられないなというふうに思っています。もちろん、中国に対してさまざまな思いが国民感情として、そして国会の中であることはわかるんですが、北朝鮮の問題を含めて、中国というのは本当に大事なパートナーであるというふうに私は認識しております。

 日中の関係、AIIBに限らずですけれども、二階さんが議員外交としてやられている部分はありますけれども、中国とのつき合い方ということに関して、今まで以上の前進の仕方、ドライブのかけ方をするタイミングに、私はもっと早くてもいいと思っていたんですけれども、来ているタイミングだと思うんですが、中国とのつき合い方の御答弁をいただいて、きょうの質疑を終わりたいと思います。

岸田国務大臣 日中の間においては、昨年九月、杭州で行われましたG20の際、さらには十一月、ペルーで行われましたAPECの際に日中首脳会談を行っており、安倍総理と習近平国家主席の間においては、戦略的互恵関係に基づいて、肯定的な面を拡大し、そして懸念に対しては適切に処理を行う、こういった関係改善を進めていくことで一致をしています。私も、ことしの二月、そして四月、ことしに入りましてからも二回、日中外相会談を行いまして、意思疎通を図っています。

 そして、日中は、ことし、日中国交正常化四十五周年、来年、日中平和友好条約四十周年という大きな節目を迎えます。ぜひ、この機会を捉えて、さまざまな分野で関係を拡大し、特にハイレベルの交流を進めることによって、関係改善に向けて努力をしていきたいと考えます。ぜひ、この大きな節目の年を活用することを考えていかなければならない、このように認識をしております。

寺田(学)委員 時間が来ました。終わりますけれども、そういう調子でやっていると何も変わらないような気がします。ニュー岸田文雄で頑張ってください。

 以上です。

三ッ矢委員長 次に、宮本徹君。

宮本(徹)委員 日本共産党の宮本徹です。

 我が党は、日・ケニア、日・イスラエル投資協定については、いずれも反対の立場です。

 その上で、日・チェコ社会保障協定改正議定書についてお伺いします。

 日本・チェコ社会保障協定は二〇〇九年に締結されております。そして発効もしておりますが、一時的に派遣されている被用者で、チェコの現地法人で雇用関係を締結されている方について、一部、社会保険料の免除が認められない事態が生じ、今回の改正ということです。

 なぜこうした事態が生じたのか。ほかに日本と社会保障協定を締結、発効している国でこのような事態になっている国はあるんでしょうか。

岸田国務大臣 今回、日・チェコ社会保障協定の改正を御審議いただいているわけですが、改正する前、要は、現行の日・チェコ社会保障協定ですが、これは二〇〇九年に発効いたしました。そして、その後、二〇一〇年にEUの指針というものが作成されましたが、その中で、派遣先国の企業と雇用契約を締結した者は派遣被用者として取り扱わない、こういった旨が明示的に定められました。

 そこで、チェコは、EU域外国との協定について、これに別段の明示的な定めがある場合を除き、EU指針などのEU法体系の考え方を用いて解釈するとの立場をとっています。

 このため、チェコにおいては、現行の協定を維持した場合、日本からチェコに所在する日系企業等に派遣される際に、同企業と雇用契約を締結した者について、チェコの社会保険料が免除されないとの最終的な結論に至りました。そして、かかる者については、現行協定上の適用法令に関する例外規定、協定第十条に基づいて、両国の実施機関における個別の審査、協議を経て、チェコ側の保険料の免除を行うことで暫定的に対処してきた、こういったことであります。

 今回の改正の御指摘の点については、こうした経緯を踏まえて、改正案において、正式に条文の中に対応を書き込んだということであります。

 なお、ほかの国はどうかということですが、我が国が社会保障協定を締結済みの他国において、同様の状況は生じていないというのが現状であります。

宮本(徹)委員 EU指針の作成が二〇一〇年ということですけれども、では、EU指針の解釈が国によって違うという対応を各国でやられているということなのかなと思いましたけれども。

 二〇〇九年、そのEU指針が作成される前の段階でチェコとの社会保障協定は結んでいるわけですけれども、この二〇〇九年の交渉をしている段階では、EUのこうした指針が出てくるということは全然想定されていなかったわけですか、当時は。

岸田国務大臣 現行協定は二〇〇九年に発効していますが、まさに交渉段階は二〇〇七年から二〇〇八年であったと承知をしています。その二〇〇七年から八年当時、両国は、一時派遣被用者が派遣元企業のために派遣される限り、当該者に対し派遣元国の法令のみが適用されているという認識で一致をしており、派遣先企業との雇用契約の有無、これは問題となっていなかったと承知をしています。その後、二〇一〇年のEU指針が示されました。先ほど申し上げたような事情が生じたわけですが、こういった事情の中で円滑に実施するために、今回、改正を御審議いただいている次第であります。

 いずれにしましても、先ほど申し上げましたように、当時、二〇〇七年、二〇〇八年の時点において、我が国として予見し得るものではなかったと考えております。

宮本(徹)委員 二〇一〇年のEU指針がEU各国に方針としては出ているわけですから、これから、逆に、解釈が変わる国というのが絶対ないとは言い切れないのかなという気もしますので、そういう点も注意深く見ていっていただければと思います。

 その上で、ちょっとテーマをかえまして。

 先週、私、決算委員会でスノーデン・ファイルの問題について取り上げさせていただきましたが、ちょっと時間切れで尻切れトンボになりました。この問題についてお伺いしたいと思います。

 四月下旬に、日本にかかわるNSAの機密文書十三本が公表されました。その中で、アメリカのNSAが日本政府も監視の対象にしていた、盗聴で情報を収集していた、国際捕鯨委員会での日本政府のロビー活動についても盗聴されていたということが書かれております。

 先週の決算委員会、ここの委員会とぶつかっていて大臣には来ていただけませんでした。副大臣に来ていただきましたが、副大臣は、出所不明の文書だからコメントしないと答弁されました。

 これはそんないいかげんな文書じゃないんですよ。私、決算委員会で、その十三本の書類のうち、横田基地の記述の問題について防衛省に確認しました。スノーデン・ファイルには、横田基地内に日本が提供した監視用アンテナの工場の記述があるわけですが、防衛省の答弁では、その大きさも、日本が出した金額も、時期も、いずれも符合するという答弁もあったわけですよね。だからこそ、その日、NHKも注目してすぐニュースにしたということだと思います。出所不明の文書だという対応では済まされないと思うんですよね。私たちの国の主権にかかわる問題だと思いますが。

 改めて伺いますが、アメリカに対して抗議すべきなんじゃないですか。

岸田国務大臣 御指摘のスノーデン・ファイルがインターセプトのホームページに掲載されているということで報じられたということですが。この問題につきましては、政府としましては、さまざまな場で質問を受けていますが、これはもう一貫して、こうしたインターセプトのホームページ上に掲載されている文書、これは出所不明でありコメントすることは差し控えたい、こうしたお答えをさせていただいております。この問題については、答弁は一貫している次第であります。

 一般論として、政府として、各種の情報収集活動が行われるおそれがあることを念頭に、職員に対して当該活動に対する危機意識を持つことを指導する、これは大変重要なことだと思います。情報の保全に万全を期していく、このことについてはこれからもしっかり努力をしていきたい、このように考えます。

宮本(徹)委員 差し控えるという答弁は一貫しているというお話でしたけれども、確かに、二年前、ウィキリークスが同じような問題を報じたときに、総理も、出所不明の文書についてはコメントは差し控えたいと思います、そう言った上で、続いて総理は答弁しているんですよね。仮に事実であれば同盟国としては極めて遺憾であります、本件については米国家情報長官と連絡をとっているところであり事実関係の確認を強く求めていきたい、二年前、総理はこういうふうに答弁されているんですよ。

 ところが、この間決算委員会で取り上げたら、副大臣は、アメリカと逐一確認を求めるという考えは持っていないと答弁されたんですね。これは二年前の総理の姿勢よりもはるかに後退していると言わなきゃいけないと思いますが、アメリカに確認すらもしないということなんですか。

岸田国務大臣 出所不明の文書に基づいて国として何か確認をするということは難しいと思っています。この出所不明の文書についてコメントすることを控えさせていただいている次第です。

宮本(徹)委員 おかしいじゃないですか。二年前、ここに私、議事録を持ってきましたけれども、総理は、出所不明の文書についてはコメントは差し控えたいが、本件については米国家情報長官と連絡をとっているところであり引き続き米側に事実関係の確認を強く求めていきたいと言っていますよ。出所不明でも事実関係の確認を求めていますよ、総理の答弁では。なぜ今回はしないんですか。

岸田国務大臣 米国との間においてはさまざまな意思疎通は行っております。そして、出所不明の文書についても、さまざまな文書があります。御指摘のスノーデン・ファイル、インターセプトのホームページについては、確認することは考えていないと申し上げております。

宮本(徹)委員 だから、二年前、ウィキリークスが、内閣だとか日銀だとか財務省の幹部の皆さんを盗聴していた、NSAがやっていたというのを出したときは、確認を求めているわけですよ。政府はそうやって答弁をしているわけですよ、総理が。今回はインターセプトのは確認を求めない。この差はどこから来るんですか。

岸田国務大臣 基本的には、報道の一々について何か確認をするということはしないということであります。そして、今回のこの件については確認は行わない、このように申し上げております。

宮本(徹)委員 だから、差は何なのかということを聞いているわけですよ、私は。

 二年前は、別件ですけれども、日本政府が盗聴されたことについて、総理は、アメリカに確認を求めているところだというふうに答弁しております。真偽について確認を求めるのが重要だということも言われているわけですよね。なぜ今回はしないのか。しちゃいけないような中身の文書が含まれているからというふうに理解していいですか。

岸田国務大臣 この出所不明の文書についての考え方等についてコメントをしないということを申し上げております。違いは何なのか等々、これはまさにコメントすることになります。コメントは控えます。

宮本(徹)委員 ひどい話ですね。国家主権に係る重大な問題だという認識がやはり大臣に欠けているんじゃないですか。この問題、いろいろなところで国会でこれまでこういう問題が出るたびに議論されてきましたけれども、他国は抗議しているわけですよ、こういう問題が出ると。それは抗議できないというのでは、本当に日本の外交がまともなものとして扱われないということになっていきますよ。

 続いてお伺いしますが、このスノーデン・ファイルを見ていますと、DFSという単語が頻繁に出てきます。今回話題になっているXキースコアもDFSに提供されたというふうになっているわけです。

 防衛省にきょう来ていただいておりますが、防衛省の中で英語に訳した際に、DFSと訳すことがある組織というのはどこなんでしょうか。

広瀬政府参考人 防衛省におきましてDFSと訳されることがある組織といたしましては、情報本部電波部、ディレクトレート・フォー・シギントがございます。

宮本(徹)委員 つまり、二〇一三年四月のスノーデン・ファイルによると、日本のDFSにシギントの能力向上のためのトレーニングを提供するという記述があります。そして、この支援の中には、Xキースコアなど、DFSに既に提供したシギントのためのシステムの使用が含まれるというふうに記述されております。

 つまり、このXキースコアが提供されたというのは防衛省情報本部の電波部ということでよろしいわけですね。

広瀬政府参考人 スノーデン元CIA職員が不法に持ち出したとされます出所不明の文書の内容を前提といたしました質問については、コメントすることは差し控えさせていただきます。

 我が国と米国は、日米安全保障体制のもと、平素から必要な情報交換を行っていますが、その具体的な内容については、相手国たる米国との関係もあることからお答えを差し控えさせていただきます。

宮本(徹)委員 もう文書が出ているんですから、正直に認めればいいんじゃないかと思いますよ。

 もう一つ伺いますけれども、では、防衛省情報本部の電波部ですけれども、歴代の電波部長というのは何人いて、そのうち、警察出身者は何人ですか。そして、そのうち、電波部長を務めた後、警察に戻った方は何人ですか。あと、現在、防衛省情報本部の電波部には何人警察出身者がいらっしゃるでしょうか。

豊田政府参考人 お答え申し上げます。

 情報本部の電波部長は、平成九年の情報本部発足以降、現職を含め八名おりますが、これらの者はいずれも警察庁出身者であり、電波部長を務めた後、七名は警察庁に異動しております。

 現在、情報本部において電波情報に関連する業務に従事する職員は約一千七百名おりますが、このうち、二名が警察庁からの出向者でございます。

宮本(徹)委員 なぜ、代々、警察出身者が電波部長を務めているんですか。

豊田政府参考人 お答え申し上げます。

 情報本部電波部は大規模な情報組織であることから、電波部長には、一定の情報業務の経験、すぐれた指揮運用能力や行政手腕が求められるところでございます。歴代の電波部長はこのような資質を有する適任者としてその職に充てられてきたものでございまして、警察庁出身であるがゆえに充てられたものではないと理解しております。(発言する者あり)

宮本(徹)委員 防衛省にはそういう方はいないのかという声が今ここから上がっていましたけれども、そういうことなんですか、そういう理解でいいわけですね。

豊田政府参考人 繰り返しになりますが、歴代の電波部長につきましては、先ほど申し上げましたように、一定の情報業務の経験、すぐれた指揮運用能力、行政手腕等が求められるところでございまして、このような資質を有する適任者をその職に充ててきたということでございます。

宮本(徹)委員 ほかの理由があるんじゃないですか、実際は。警察の出身者を毎回毎回ずっと充て続けている。これ、電波部の情報というのは警察と共有すること、あるいは電波部というのが警察と活動をすることというのはあるんですか。

広瀬政府参考人 防衛省におきましては、我が国の防衛に必要な情報を得るため、電波情報も含めまして、数々の情報を収集、整理、分析しております。この結果につきましては、関係省庁と共有されているところでございます。

宮本(徹)委員 関係省庁と共有している、そこまで言っていただくと、なぜ警察の方が代々責任者をしているかというと、この電波部が収集した情報というのは主に警察と共有しているということなのではないかというふうに思います。

 それで、この防衛省情報本部の電波部というのは、電波部というから電波の傍受をアンテナでするのかなと思ったわけですけれども、今回、Xキースコアも提供されたという話であります。そうすると、この電波部は、国内外のインターネット上のさまざまな電子情報、これについても収集を行っているということでよろしいわけですね。

広瀬政府参考人 スノーデン元CIA職員が不法に持ち出したとされる出所不明の文書の内容を前提とした質問につきましては、コメントすることは差し控えさせていただきますが、その上で、一般論として申し上げれば、防衛省におきましては、我が国の防衛に必要な情報を得るため、我が国上空に飛来する軍事通信電波や電子兵器の発する電波などを全国各地の通信所などで収集し、整理、分析しております。

 電波情報業務の具体的内容につきましては、将来の効果的な情報活動の支障となるおそれがありますことから、お答えを差し控えさせていただきますが、防衛省・自衛隊におきます情報収集活動は、我が国の防衛に必要な情報を得るために行っているものでありまして、インターネット上のメールの傍受を含め、一般市民の監視を行っているものでは全くありません。

宮本(徹)委員 インターネット上の情報の収集はやっていない、電波部は一切やっていない、そう断言するわけですか。

広瀬政府参考人 電波情報業務の具体的内容につきましては、将来の効果的な情報活動の支障となるおそれがあることから、お答えを差し控えさせていただきますが、防衛省・自衛隊における情報収集活動は、我が国の防衛に必要な情報を得るために行っているものでありまして、インターネット上のメールの傍受を含め、一般市民の監視を行っているものでは全くありません。

宮本(徹)委員 ですから、一般市民の監視云々という話を今まず聞いているわけじゃないんですよ。インターネット上の電子情報の収集はやっているのか、やっていないのかという、ここだけに限って聞いています。

広瀬政府参考人 防衛省・自衛隊におきます情報活動は、我が国の防衛に必要な情報を得るために行っているものでありまして、インターネット上のメールの傍受を含め、一般市民の監視を行っているものでは全くありません。

 業務の具体的な内容につきましては、将来の効果的な情報収集活動の支障となるおそれがあることから、お答えを差し控えますが、防衛省・自衛隊による情報収集活動は、法令を遵守して適正に行っているところでございます。

宮本(徹)委員 これだけ聞いてお答えしないということは、否定しないわけですから、インターネット上の情報も収集していると事実上言っているに等しいと思いますが、そういう理解でよろしいんだというふうに思います。ですから、このXキースコアを使って、防衛名目ということでインターネット上の情報も収集しているということだと思います。

 先ほど、一般市民の監視を自衛隊はやっていないということを言いましたけれども、それはまた違いますよね。一般市民のいろいろな点での監視は、防衛省はやっていますよね。裁判でも問題になりましたけれども、自衛隊の情報保全隊がイラク派遣反対の市民運動を監視していた。これは裁判でも確定しておりますので、その点は間違いだという点は、修正していただいていいですか。

広瀬政府参考人 今御指摘のございました情報保全隊でございますけれども、情報保全隊は、特定の個人や団体の影響を受けて自衛隊員が情報保全に関する規律違反を行ったりすることがないよう、インターネットや公刊物、公開された場等を活用し、必要な資料及び情報の収集、整理を行っているところでございます。このような情報保全隊の任務、役割は、防衛省・自衛隊が国防という重要な任務を効果的に果たしていく上で不可欠なものと考えております。

 なお、先ほど申し上げましたように、防衛省・自衛隊による情報収集活動は、我が国の防衛に必要な情報を得るために行っているものでございまして、インターネット上のメールの傍受を含め、一般市民の監視を行っているものでは全くございません。

宮本(徹)委員 ですから、裁判で、皆さんも高裁段階で一人については上告しなかったわけでしょう。違法な市民の監視活動をやっていたというのは政府も認めているということですよね。その点、何かいろいろ言われて、ちゃんとはっきりさせてもらわないと困るんですけれども、それは間違いないですよね。

広瀬政府参考人 御指摘の判決につきまして、防衛省としましては、国の主張につきまして一部裁判所の理解が得られず遺憾でありますが、司法における判断を厳粛に受けとめ、今後とも、情報保全隊が、防衛省・自衛隊の所掌事務、任務の範囲内で、関係法令に従って適切な方法で情報収集に努めるよう徹底していく考えでございます。

宮本(徹)委員 つまり、自衛隊は今までも市民の監視をやってきているわけですよ。

 先ほど、Xキースコアを手に入れても、一般の人のメールの傍受だとかはやっていないというお話をされていますが、このXキースコア、この間報道でいろいろ出ていますが、スパイのグーグルと言われている。キーワードを入れて検索すれば、メールやチャットなど非公開のものも含めて世界じゅうの人々の通信を対象に検索ができるというふうになっているわけですよ。アクセス履歴まで把握できる。例えば、日本政府が、総理を批判する発言を洗い出して個人を特定することだって、このXキースコアを使えばできるわけですよ。こういうものを手に入れているということが報道されたわけですよね。

 こういうXキースコアのようなものを国家が隠れて運用するなどというのは断じて許されない、憲法違反だというふうに私は考えますが、きょうは防衛省政務官に来ていただいていますけれども、いかがですか。

小林大臣政務官 お答えいたします。

 スノーデン元CIA職員が不法に持ち出したとされます出所不明の文書の内容を前提とした質問につきましては、コメントすることは差し控えさせていただきたいと思います。

 その上で、一般論として申し上げますと、防衛省・自衛隊におきましては、我が国の防衛に必要な情報を得るために、平素から電波情報、画像情報あるいは公開情報などの収集、分析に努めているところであります。

 情報業務の具体的な内容につきましては、将来の効果的な情報収集活動の支障となるおそれがありますことからお答えを差し控えさせていただきますけれども、防衛省・自衛隊による情報収集活動は法令を遵守して適正に行われておりまして、憲法違反との指摘は全く当たらないと考えます。

宮本(徹)委員 先ほど、情報保全隊の話もしたじゃないですか。法令を遵守していたら皆さんが裁判に負けることはないんですよ。司法が、皆さんは違法な活動をしていた、プライバシーを侵害していたということを断じているわけじゃないですか。

 その防衛省が、Xキースコアの提供を受けている。そのXキースコアの提供を受けていることを明らかにしない。そして、国民に隠れてこれを使っている。とんでもない話ですよ。

 しかも、電波部のトップは警察出身者が代々務めていて、先ほどのお話では、この情報は関係省庁とも共有している、警察とも共有している。今、共謀罪の問題、大問題になっていますけれども、こういうものにこのXキースコアというのが使われていく危険が極めて大きいんじゃないですか。大変重大な問題だと思いますよ。

 ちょっと時間が迫ってまいりました。

 このスノーデン・ファイルは、DFSがNSAからシギントの能力向上の支援を受けるに当たって、内閣情報調査室が役割を果たしたということが書いてあります。二〇一二年九月十日に、内閣情報調査室のヘッド、恐らく北村滋氏だと思われますが、NSAを訪問したと書いてあります。

 この内閣情報調査室は、二〇一二年九月に、アメリカにいつからいつまで、誰が何の目的で行かれたんでしょうか。

岡田政府参考人 お答え申し上げます。

 いわゆるスノーデン文書につきましては、出所不明のものでございますので、コメントをすることは差し控えさせていただきたいと存じます。

 その上で、一般論として申し上げますと、内閣情報調査室におきましては、平素から関係各国との間で必要な情報交換を実施しているところでございますが、その具体的な内容や時期等を明らかにすることは、他国との信頼関係を害することにもなりかねず、今後の事務の適正な遂行に支障を及ぼすおそれがあることから、お答えは差し控えたいというふうに存じます。

宮本(徹)委員 国民の税金を使って出張しておきながら、行ったとも行っていないとも何も明かせない。そんな秘密組織なんですか、内閣情報調査室は。その内閣情報調査室が音頭をとって、Xキースコアを手に入れて、防衛省、警察、一緒になって、個人の情報を監視できる体制をつくっていっている。とんでもない話ですよ。

 もうちょっとたくさん通告はあったんですけれども、時間が来ちゃいましたので、またどこかの委員会で続きをやりたいと思いますので、よろしくお願いいたします。

 終わります。

三ッ矢委員長 次に、足立康史君。

足立委員 日本維新の会の足立康史でございます。

 きょうは、投資協定、社会保障協定の審議ということであります。これは、投資分野であれ社会保障分野であれ、バイ協定なわけですが、事務方で結構ですが、これはマルチでどんとやってしまおう、こういう努力は今まであったんでしょうか。

飯田政府参考人 お答えいたします。

 マルチでやった方が、確かに多くの国を一つの協定でカバーできるというメリットはございますが、経済連携協定の場合は、アジア太平洋地域におきましていろいろなサプライチェーン等が発達しておりますので、面的に捉えて、TPP協定のように複数国間でやるイニシアチブがございます。そういう場合は、包括的な投資ルールもあわせて策定することによって、より効果的、効率的にルールを策定するように努めているところでございます。

 ただ、二国間投資協定の方は、カバレッジも少ないこともあり、国ごとの個別の事情を踏まえ、二国間でやった方がより迅速に策定できるというメリットがございます。

 そういう意味で、この二つのアプローチをうまく組み合わせて、そのメリットを考慮の上、適切なルールの構築に努めてきたという背景がございます。

足立委員 総じて、私が申し上げたいのは、このテーマは余り国会質問したいと思うことがありませんで、では、立つなよと言われるかもしれませんが、各委員、いろいろな関係外の質問もされていますので、私もそういうことで別のテーマをやりたいと思います。

 その前に申し上げたいのは、この投資協定、社会保障協定というのは、私、もう極めて事務的な、要は、事務方がしっかりと、ちゃんとやっている話だと思うんですよ。だからこそ、我々は国会でこんなものを別にチェックしなくても、何でこんなもの国会承認が要るんだ、こう思っているわけです。大平三原則があるんですとか、大平三原則じゃなくて足立三原則というのをまた、私がもうちょっと力を持ったらつくって、政治が強く関与しなくても済むこういうテーマは国会承認は不要というふうにしていきたいなと、個人的には思っているわけでありますが。

 大臣、きょうかかっている、テーブルにのっているこの協定、大臣が事務方から、ここが難しいんです、悩んでいるんです、これは事務方では決められません、大臣御判断をということで判断を求められた事項というのはありますか。

岸田国務大臣 御指摘のように、投資協定あるいは社会保障協定交渉に当たっては、当然のことながら、外務大臣の指揮監督のもとにはありますが、それぞれの分野において専門的な知見、経験を有する外務省の事務方の交渉官が、関係省庁と連携しつつ各国と交渉に当たってきている、これは御指摘のとおりであります。

 その中で、外務大臣として判断を求められたことがあったのかということでありますが、具体的な中身については、これは交渉過程にかかわりますので控えますが、幾つか判断を求められたことはあります。

 その上で、例えば、日・チェコ社会保障協定改正議定書については、両政府が企業活動の環境整備に力を入れていくことが重要な課題である、こういった観点から、本年一月、両国の外相会談を行った際に議題として取り上げて、そして締結に向け速やかに必要な作業を進めるよう事務方に指示を出す、こういったやりとりも存在はいたしました。

足立委員 バイ会談で、会談のテーマとしてそういう話が入るのは当然であります、トップでありますから。ただ、こうした協定に政治判断を求められる事項はない、すなわち官僚の皆様に、役所にしっかりお任せしておけば問題ない分野の最たるものだと私は思っていまして。

 その政治の果たす役割と、行政官に任しておけば済む話、この線引きを全く真逆に取り扱って失敗したのが民主党政権であった、こういうふうに私は総括を、勝手な総括でありますが、させていただいているところであります。

 そういう意味で、国会の取り扱いについても、そういうラインでこれからも考えていったらいいんじゃないかということで、きょうはいただいている時間、残りの時間、辻元清美議員と北朝鮮ということで、ちょっと。

 北朝鮮、大変問題になっていますので、しっかり解明すべきは解明をしていく。ただ、大変奥深いものがございまして、大変これは難度の高い仕事であります。したがって、きょう何かおもしろいことがわかるということではありませんが、外堀からしっかり確認をさせていただきたい、こう思っています。

 まず、日本と北朝鮮の貿易関係の全体像、これはちょっと割愛します、時間がもったいないので。

 経産省、来ていただいていますね。生コンというのは、簡単に言うと、どうやってできるんですか。

佐藤政府参考人 お答えいたします。

 コンクリートの原料と、それから砂や砂利、そして水を工場でまぜてつくるというのが、生コンクリートの基本的なつくり方でございます。

足立委員 いろいろ、経産省、しっかりこういう、生コンリートについてという紙をわざわざつくってくれて、ありがとうございます。歴史とか。

 細かいことは割愛しますが、要すれば、セメントと骨材と水をまぜてつくるわけですね。昔は現場でこうやっていましたけれども、今は生コン業界というのが形成されていて、したがって、生コン業界が骨材を手に入れるものですから、実は余りよくその先がわからないというような議論もあるようでありますが、大体骨材は年間一億トン使われています。そのうち半分が砂で、半分が砂利ということであります。

 これ、輸入もしていますね。どっちに聞いたらいいか、何で輸入がある。こんな重たいもので、重たいというのも変ですけれども、重たくてもあれか、船で運んできたらいいのか、何で輸入しているんですかね。

佐藤政府参考人 御指摘のとおり、骨材には砂、砂利、それから砕石といったものがありまして、砂、砂利、砕石の用途は、一般的に言いますと、その多くはやはりコンクリート、それから砂利、砕石については、コンクリートやあるいは道路に使うといったようなものになっております。これは輸入に限らずということでございます。

 では、輸入品はどんなものに使われているかというと、これはなかなか分けることが難しくて詳細に把握ができておりませんが、例えばということで申し上げると、ゴルフ場向けの白い砂とか、あるいは装飾品向けの着色された砂利とか、こういったものは輸入の事例があるということは伺ってございます。

足立委員 もう時間があれなのでこっちから申し上げますが、直近の砂と砂利の輸入、大体それぞれ、丸めると十万トンぐらい輸入があるわけです。

 ところが、これは財務省でもいいんですが、一九九〇年代は、例えば一九九〇年代前半を取り上げると、これは資料をいただいていますが、砂が大体年間三百万トンぐらい輸入していまして、砂利も三百万トンぐらい輸入しています。ところが、直近は、全世界からの日本の輸入が十万トンずつぐらいに、財務省、大体そうですね。

 なぜ減っているんですかね。まず、事実関係として、大きく輸入が減っていますね。それがまず事実かどうか、それから、なぜか、教えてください。

藤城政府参考人 お答えを申し上げます。

 まず、数字の観点でございますが、一九九〇年代前半ということで、九〇年から九五年の合計の数字を先生今おっしゃったんだと思います。したがいまして、三百万トンというのは五、六年間合わせたものでございますので、平均をしますと、一年間分で大体五十万トン程度かというふうに思います。

 他方で、二〇一六年につきましては十三万トンということで、御指摘のとおり、確かにこれは減っております。

 この輸入が減っている理由でございますが、これは私ども財務省の方ではちょっと把握ができておりませんので、お答えを差し控えさせていただきたいと思います。

足立委員 経産省はわかりますか。要すれば、輸入が減っているわけですよ。

 そもそも、先ほど、輸入されている砂、砂利は何に使われているかということですけれども、これだけの量があって、大分減っているわけですけれども、当時何に使われていたか、今何に使われているか、いずれにせよ、そういうものを経産省は把握をしていますか。

佐藤政府参考人 詳細には把握はしてございません。先ほど申し上げたとおり、この砂、砂利あるいは砕石というのはほとんどがコンクリート及び道路用という、これもほとんどでございますので、そういう需要動向というのは一つの要因の可能性はあるということかなと思っております。

足立委員 きょう、国交省も来ていただいていますね。何か御知見ありますか。

木原政府参考人 お答えいたします。

 国土交通省におきましては、輸入されている砂、砂利及び砕石の用途については把握をしておりません。

足立委員 結局、私も大分これは時間かけて調べたんですけれども、国内で大きな石を砕いて砂利にしたり、あるいは砂にしたりということで、先ほどあったように、その業界としては一億トンの骨材を使って国内のさまざまな、先ほどありましたように、多くはコンクリート、それから、幾らかは道路、それがもうほとんどですね。建設業界なわけですけれども、国交省もそれは知らないと。

 知らないというのは、どういう形で輸入して、砂や砂利を何のために誰が輸入して、どこに行っているんだということを余り把握されていないんですね。

 もう一回、ちょっと両省、経産省、国交省、具体的な把握はしていないということでいいですね。ああ、もううなずいていらっしゃるからいいと思います。

 これは、ちょっと調べてくれますか。

 私は経産省にいたから、例えば自動車産業とか、何といいますか、自動車産業、電機産業、いろいろな産業がありますが、普通、業界団体が全部わかっているものですよ。財務省も、いや、これは数字は全部とっていますけれども中身のことは他省に聞いてくださいということになるので、政府がこれを掌握していないということですが、私の常識からいうと、こんなものがわからないというのはどういう世界だ、こう思うわけですね。

 経産省に伺うと、生コンについては、戦後、あのスカイツリーが建っているあたりで初めて日本初の生コン工場ができて、ちょうど私が生まれたころからずっと組織化をされていって、さまざまな、中小企業近代化促進法等の支援も受けながら、構造改善をずっと進めてきたということで、業界自体はちゃんとやっているわけです。

 こういう業界に聞けば。何か聞きにくいとかいうことがあるんですかね。特に輸入です。国内はわかっているでしょう。特に、輸入をされている砂と砂利、これがどういう形で輸入され、何に使われているかということを調査いただけますか。

三ッ矢委員長 どちらが答えますか。

 経済産業省佐藤大臣官房審議官。

佐藤政府参考人 実は、業界団体には、きょうの御質問があったので聞いてみたんですけれども、把握していなくて、大変把握するのが難しいということでございました。

 幾つか理由があるんですけれども、まず、その砂、砂利が輸入品なのか輸入品でないのかということが例えば生コン業界ではわからないということであったり、あるいは生コン業界、御案内のとおり、三千企業、三千工場以上ありまして、大変数が多いということで、これを詳細に調べるのが団体としてもなかなか難しいといったようなことで、大変難しいということでございまして、今私どもが持っている情報は以上でございます。

足立委員 たまたま、これはある月刊誌に、「全アジアを蝕む「砂」の乱採取」という記事がありまして、「傍若無人のサンド・マフィア」とか「底知れぬ東南アジア市場の需要」と。お持ちですね。読まれましたか、この記事。これ、日本について一切書いていないんですよ。いろいろ書いてあるんです、インドがどうとか、中国がどうとか。大変奥深い世界らしいです、世界じゅうで、特にアジアで。

 ただ、この記事は、これは誰が書いたのかな、誰が書いたか書いてないんですが、なぜか日本には一切触れていないんですね、この記事。

 だから、日本国内に、世界の、アジアの国々から砂と砂利が入ってきているが、誰が、どう入れ、どう使われているかわからない。

 大臣、気楽に、気楽にというか、通告していないんですけれども、今聞いていただいたように、普通の産業というのは全部わかっているんですけれども、どうもここだけわからない。経産省は、いや、聞いても教えてくれないと。

 しかし、今申し上げたように、これを、大臣、またごらんいただきたいと思うんですが、こういう、「全アジアを蝕む「砂」の乱採取」ということで、さまざまな資源が、いろいろ新興国の勃興とかもあって、水とか、いろいろなものも課題になっています。だから、私は、外務省としても、これはちゃんと掌握していった方がいいと。外務省がやるということでもないな。

 ちょっと、経産省にちゃんと調べろと言っていただけませんか。

三ッ矢委員長 誰が答えますか。

 岸田外務大臣。

岸田国務大臣 御指摘の業界の事情あるいは御指摘の週刊誌の記事等も承知しておりませんので、ちょっと、いろいろな事情があるのかどうかもわかりませんが、いずれにせよ、一般論として、さまざまな業界あるいは実情について、政府として把握をし、政府の方針や政策の参考にしていく、こういったことは大事なのではないかと思います。

 政府として、必要な情報把握については努めるべきではないかと考えます。

足立委員 ごめんなさい、もう時間がちょっと過ぎましたが、終わりますが、経産省、国交省はちょっと協力して、この、今私が伺ったことを調べてください。

 あわせて、辻元清美議員の関与についても調べていただくようお願いして、質問を終わります。

 ありがとうございます。

三ッ矢委員長 大臣は参議院本会議に出られますので、しばらく退席されます。

 次に、岡本三成君。

岡本(三)委員 公明党の岡本三成です。

 質問の機会をいただきまして、ありがとうございます。

 本日、議案の投資協定二本、社会保障協定二本を質問させていただきます。

 国際ビジネスのフロントランナーとして日本はここまで成長してきたわけですから、投資協定の本数をふやして企業の裾野を拡大することは非常に重要だと思いますし、また、その中で、さまざまな日本人の方がいろいろな国で働いていらっしゃるわけですから、その方々の利益をしっかり確保していく社会保障協定も重要だと思います。

 まず、投資協定につきまして、全体像を確認させていただきたいんですが、昨年の六月二日に閣議決定をされている「日本再興戦略二〇一六 第四次産業革命に向けて」というものがございまして、この中で、二〇二〇年までに、投資協定につきまして、百の国と地域を対象に署名、発効を目指すというふうに書いてあります。

 私、これが九十九だから失敗で、百だから大成功なんという、そんな話ではないと思いますけれども、政府が数字を示して目標を立てている以上は、しっかりとそれにコミットする必要、責任があると思うんです。あともう三年ぐらいになってしまいましたが、現在交渉中のものも含めまして、まだ八十二だというふうに理解していますが、二〇二〇年までの百カ国との協定の署名というものは実現可能かどうかということについて、現状をお聞かせいただければと思います。

薗浦副大臣 先生御指摘のとおり、ただいま交渉中も含めますと、計八十二の国、地域との投資関連協定というものがございますけれども、目標達成に向けて、現在、交渉官を増員いたしました。また、投資政策室という室を設置いたしまして、体制を拡充し、締結交渉の加速をしております。

 例えば、ことしに入ってからは、コートジボワールそしてバーレーンとの投資協定交渉を開始いたしました。また、先月、岸田大臣が中央アジアを訪問した際には、トルクメニスタンの投資協定交渉の開始について合意をいたしました。さらに、今、三カ国と投資協定の交渉開始に向けて予備協議を実施中でございますので、いずれにしても、目標達成に向けて、さらに交渉の加速化に取り組んでまいりたいと考えております。

岡本(三)委員 閣議決定されたその中に数字が盛り込まれているわけですから、ここにしっかりとコミットをした活動をお願いできればと思います。

 続きまして、キューバとの投資協定について質問させてください。

 オバマ大統領がアメリカとキューバの国交を回復された後、世界じゅうの企業からキューバに対して熱い視線が注がれております。我が国は、実は一九七〇年代は、キューバから見て、西側諸国で最大の貿易相手国が日本でした。そういう歴史的な経緯もありますので、アメリカとキューバの関係が厳しい状況のときも、日本とキューバというのは非常にいい関係を保つことができたわけですけれども、新たにキューバとのビジネスを拡大していけるということで、産業界からは、キューバとの投資協定、非常に強い要望が寄せられているわけですけれども、現在、キューバとの交渉をどのように進められているのかということについて御答弁をいただければと思います。

小田原大臣政務官 お答え申し上げます。

 委員御指摘のとおり、我が方産業界の要望も踏まえまして、キューバ側との間で投資協定に関する意見交換を行うことについて調整しています。

 キューバ側は、新たな投資協定のモデルを作成中であって、その作業が終了しない限り、交渉の準備が整わないという立場であります。

 他方で、昨年十一月の第二回日・キューバ官民合同会議において、マルミエルカ外国貿易・外国投資大臣は、投資協定の交渉を二〇一七年におくれることなく開始するべきと発言をされています。ことし三月にも、改めてその立場を確認したところであります。

 我が方としては、条件が整い次第、速やかに交渉を開始したいと考えています。

岡本(三)委員 これは、日本のお家芸とも言える自動車産業を初めといたしまして、大変大きな期待がありますので、ぜひ、着実にスピーディーに進めていただければと思います。

 続きまして、社会保障協定について質問させていただきたいと思います。

 いわゆる二重負担や掛け捨てみたいなことが起こらないようにして、企業の競争力も維持をしながら個人の利益もしっかりと確保するという協定だと理解していますけれども、現在までに、我が国として二十カ国と締結または署名していますけれども、日本の企業数、特に海外展開をしている、海外におけるその企業数を数えたときに、最大の企業数というのは、実は中国に進出をしておりまして、日本海外展開のうち、四七%が中国の中で法人として活動しております。

 にもかかわらず、まだ残念ながら、日本と中国、社会保障協定が結ばれておりません。中国は、諸外国と比べますと、その保険料の料率も高いですし、実際、その社会保障協定の枠の中で利益を受給するには十五年間必要ということで、大変高いハードルとなっています。

 昨年の日本貿易会の統計によりますと、試算によりますと、昨年一年間、日本の企業が中国の中で払いました社会保険料、ほとんど掛け捨てになる可能性が高いわけですが、年間四百九十億円だそうです。大変な金額が、価値のないような投資として中国の中におさめられてしまっているわけですけれども、このことを解消しようということで、政府も交渉を二〇一一年十月に開始されていまして、ことしの四月までに七回会合が持たれたというふうに伺っていますけれども、他の社会保障の協定と比べまして、大変時間もかかっておりますし、ゴールも見えていないという状況だと伺っております。

 実は、中国は、こういう社会保障協定に後ろ向きかというと決してそういうことはなくて、例えば、日本と同じような産業構造を持っていますドイツとは既に社会保障協定を結んでいます。韓国や北欧の国々、カナダとも結んでいるわけですけれども、なぜ日本がこういうふうに交渉でスローな状況になってしまっているか。

 いろいろな外交の問題があることもよくわかっていますけれども、そのことも含めまして、今後の見通し、どれぐらいをターゲットに社会保障協定を結ぶことができるかということも、見通しをお伺いできればと思います。

小田原大臣政務官 お答え申し上げます。

 委員御指摘のとおり、社会保障協定の締結により、社会保障の二重払いなどの問題を解決し、個人及び企業の負担を軽減することで、両国間の人的交流及び経済交流を促進させるべく、中国とは、平成二十三年の十月以降、七回の政府間交渉を行っております。直近では、ことしの四月中旬に北京において第七回の政府間交渉を開催いたしました。

 思いどおりに進んでいないように見える理由ということでありますが、中国とは、平成二十三年の十月から平成二十四年三月までの半年間に三回の交渉を行っておりますが、その後、平成二十七年十一月まで、いろいろな事情によりまして三年以上にわたり交渉が行われなかったという経緯がございます。

 一般的に、他国との社会保障協定の締結に当たっては、それぞれの国の固有の社会保障制度の違いを踏まえつつ、お互いの制度について理解した上で交渉、調整を行っていく必要があります。きめ細やかな対応が必要なわけで、締結までには一定の期間を要し、また、その長短は相手国によるところもあり、どの程度の期間を要するかを一概に述べることは困難であります。

 まず、第八回の政府間の交渉の日程につきましても、具体的な日程については外交ルートを通じて調整していくこととなっております。

岡本(三)委員 昨日、報道で、自民党の二階幹事長が習近平国家主席と面談をされ、さまざまな関係の改善をともに取り組んでいこうという話ができたというふうな報道がありました。

 国と国は、その時々で、さまざまな問題でうまく関係がいかないことも、将来もあると思うんです。であるがゆえに、民間の関係が強ければ強いほど、国の関係がしっくりといかないときでも、将来に向けた話し合いができるような環境が整うわけですから、社会保障協定というのは、より日本の企業が、そして中国の企業が、それぞれの国で、お互いの国で活動しやすくなるための地盤を整えることですので、何にも増して優先順位を高くお取り組みをいただければと思います。

 残りの時間、この四協定、四本とはちょっと違う安全保障のことを防衛省の方にお伺いしたいと思います。

 十四日に北朝鮮が新型ミサイルの試験を行いました。とんでもないことで、到底容認できませんし、昨日は国連安保理でも非難の声明が発表されております。

 ミサイルの実験等に関しても、毎日テレビでも報道されているので、国民の方々も非常に心配されているわけです。一般的な国民の方はどういうふうに思っているかというと、私も同じように一般的な国民の感覚で思っているんですが、ミサイルは絶対に撃たせないでほしいというのが最大の期待なんだと思うんですね。その上で、万々が一、日本に向かってミサイルを撃ってくるようなことがあったら、全て空中で迎撃をして、日本の国土に一発も着弾することがないようにしてほしいというのが、一般的な日本の国民の方々の政府に対する期待だと思います。

 前者の、ミサイルを撃たせないでほしいということに関しましては、今、圧力と対話で、アメリカ、中国、韓国その他いろいろな国々とやっておりますので、私の中では、やれることは全て日本政府は取り組んでもらっているというふうに理解をしていますし、そう期待したいと思います。

 その上で、万々が一、国際社会や日本、そして他国との北朝鮮に対するプレッシャーに北朝鮮がしっかりと取り組まず、日本に向けてミサイルのボタンを押してしまったときに、しっかりと迎撃できる体制ができているかどうかということについて聞きたいんですね。

 今考え得るさまざまなミサイル防衛システムということを考えたときに、万が一ミサイルが飛んできたら、日本は、完全に空中で迎撃できるようなミサイルの迎撃のシステムになっているんでしょうか。教えてください。

齋藤政府参考人 お答え申し上げます。

 我が国の弾道ミサイルシステムにつきまして御質問がございました。

 我が国の弾道ミサイルシステムといたしまして、海上自衛隊のSM3ミサイル搭載のイージス艦四隻による上層での迎撃と、航空自衛隊のPAC3ミサイルによる下層での迎撃を組み合わせた、多層防衛によって我が国全域を防護するシステムになっております。

 また、仕組みでございますけれども、我が国に武力攻撃として弾道ミサイルが飛来した場合には、武力攻撃事態における防衛出動により対処いたしますし、他方、武力攻撃事態が認定されていないときには、我が国に弾道ミサイルが飛来する場合には、防衛大臣は、自衛隊法第八十二条の三の規定により、破壊措置命令を発出して対処することになります。

 いずれにいたしましても、こうしたもの、我が国自身の弾道ミサイル防衛システムの整備とともに、日米安保体制による抑止力、対処力の向上に努めることによりまして適切に対応することといたしております。

岡本(三)委員 環境は変わってきているわけです。十四日のミサイルの性能というのは残念ながら著しく向上していて、加えて、かなり、射程も射高も今までの二倍ぐらいのものだというふうに分析をされております。

 環境が変われば、こちら側の守る体制も向上させていかなければいけないんですけれども、次の質問は、今の北朝鮮のミサイルの精度、残念ながら向上しているわけですけれども、それを考えたときに、今持っている日本のミサイル迎撃のシステムで十分なのかどうかということを確認させていただきたいんですね。

 例えば、今、イージス艦でSM3で一番高いところで撃ち落とすか、または、残念ながらそこで迎撃できなかったときには、地上に近づいてきてPAC3で撃ち落とすことになっていますけれども、この間のテストみたいにロフテッドという、あんな高いところを行ってしまったら迎撃がすごく難しくなってくるわけですから、今米国と共同開発しているようなSM3を進化させたようなもので射高を二倍にしていくとか、または韓国が配備をしておりますTHAADのようなもので、この中間の高さでも迎撃が、要は、万々が一どんなミサイルでも飛んできたら、必ずいろいろな手段を講じて日本に着弾しないような、そういう体制に常に向上させていけているかどうかということを確認したいんですね。

 それで、こういうミサイルの迎撃システムをつくるときは、まず中期防にのせて、そしてその中期防の体制をしっかりと実現するために毎年の予算をとっていくわけですけれども、現状の中期防は平成三十年まで、次は三十一年から五年間ということですので、それに合わせようと思ったら、北朝鮮側のミサイルの開発のスピードとそごが出てしまいます。

 ですから、こういう現在の脅威を考えたときには、中期防のプランにとらわれず、以前は中期防五年を四年間にして、一年前倒しで新しい中期防を考えて実行されたこともありますし、または、平成三十一年以降の中期防に本当は掲げるものを、今の中期防の中で一年前倒しで予算をとって、平成三十年ぐらいから準備するようなこともテクニカルにはできるはずです。

 今、北朝鮮の脅威がさらに大きな脅威となっているときに、今の迎撃システムにさらにプラスアルファをすることによって、今の中期防の中ではうたっていないけれども、次の中期防ではぜひうたいたいと思っているようなことで、より日本人の安心や安全を確保できるようなそういうものがあれば、中期防や単年度予算にとらわれず、しっかりと検討していただき、配備を進めていただきたいというふうに思っているんですけれども、いかがでしょうか。

高橋(憲)政府参考人 お答えいたします。

 先ほどの委員御指摘なされました体制でございますけれども、防衛省としては、我が国全域を防護し得る能力を強化するという観点から、イージス・アショア、THAADといった新規装備品を含めた将来の弾道ミサイル迎撃体制の調査研究を行うなど、種々の取り組みを行っているところでございます。

 現時点でこれらの装備品を導入する具体的な計画はまだございませんが、これまでも、弾道ミサイル防衛を含め、我が国の防衛に必要不可欠な装備品については、費用対効果の観点も踏まえつつ、必要な経費を確保しているところでございます。

 また、御指摘の中期防について、見直しを直ちに行う考えは現在ございませんが、我が国を取り巻く安全保障環境が一層厳しさを増す中、我が国の防衛力のあり方については不断に検討を行っていくことが必要であるというふうに考えてございます。

 いずれにせよ、我が国を取り巻く安全保障環境は一層厳しさを増しておる状況でございますので、防衛省といたしましては、国民の命と平和な暮らしを守り抜くため、大綱及び中期防に基づき、即応態勢、同時対処能力の向上、継続的に対処できる能力を強化するため、弾道ミサイル対処能力の向上にさらに取り組んでまいる所存でございます。

 以上でございます。

岡本(三)委員 ミサイルの迎撃システムの能力を向上するというのは専守防衛そのものでありますので、憲法の趣旨にも沿えますし、国民の方々の安心感を増していくようなこともあります。

 二年前に安全保障法制を議論するときに、ある政党の党首の方が、北朝鮮は日本にとってリアルな脅威ではないと発言をされて、笑ってしまいましたけれども、現在、二年たった今、北朝鮮こそがリアルな脅威として、勢いを増して日本に押し寄せてきていますので、国民の方が安心できるような体制をとっていただければと思います。

 以上で質問を終わらせていただきます。

三ッ矢委員長 次に、熊田裕通君。

熊田委員 自民党の熊田でございます。

 質問をさせていただく機会をいただきましたこと、理事初め皆様に感謝を申し上げさせていただきたいと思います。

 四協定の質問をさせていただく前に、一つだけちょっと感想を、感想というか、述べさせていただきたいと思いますが、先ほど岡本委員からお話がありましたように、北朝鮮のミサイルの問題であります。

 世界から多くの非難がされている中、再度ミサイルを発射したということは、もうまさにゆゆしきことだと思います。私も、昨年八月まで防衛大臣政務官を務めさせていただく中で非常に感じたことでありますが、特定秘密保護法を審議しているとき、これは、本当に国民の皆さんが誤解をするような批判を受けながらの成立でありました。暗黒の世界がやってくるなんという、非常な報道もされておりました。平和安全法制についても、さまざまな議論がある中で成立をいたしましたが、今思うと、まさにこういった危機的な状況、安全保障がこれだけ緊迫する中で、やはり一番信頼関係を持たなきゃいけないアメリカから、この特定秘密保護法ができたおかげで、かなり精度の高い情報が入ってくるようになった、これは、まさに国民の皆さんにまず理解をしていただかなきゃならないということだけ申し上げておきます。

 今、特定秘密のことを話題にされる方は誰もおられません。ですから、こういったことの誤解がさまざまあるということだけ国民の皆様にぜひ申し上げておきたいなと思っております。

 それでは、四協定について質問をさせていただきたいと思いますが、何分、基本的な考え方をお聞かせいただきたいと思っておりますので、さまざま質問が重複することもあろうかと思いますが、お許しをいただきたいと思います。

 まず、投資協定の二協定についてお聞かせいただきたいと思います。

 今国会、租税条約、投資協定、社会保障協定等、たくさんの経済条約が審議をされ、活発に議論されておるところでございますが、こういったことは、やはり日本人、日本及び日本企業の海外での経済活動をより活発にして、相手国との健全な投資、経済協力を一層促進することに資することということで、私は大変重要なことだと思っております。

 日本経済における企業の投資活動の役割は大変増大していく中において、投資の自由化や保護に関するルールを定める投資協定は、日本企業の海外での活動や、海外からの日本国内への投資を活性化する上でも重要であると考えております。

 今回の二協定のうち、ケニアにつきましては、昨年八月に行われた第六回アフリカ開発会議で、安倍総理が現地を訪問された折に署名をされたと伺っておりますし、イスラエルにおきましても、安倍総理と首相との一連の首脳外交の結果として締結がなされたものと承知をしております。

 まず、基本的なことでありますが、このそれぞれの協定の意義、そしてアフリカ、中東といった、投資協定の締結が少しおくれていると思われる地域との今後の投資協定の締結の見通しをお聞かせいただきたいと思います。

小田原大臣政務官 お答え申し上げます。

 まず、ケニアは、サブサハラ・アフリカ地域の経済大国であります。東アフリカ地域の玄関口であるモンバサ港を有する交通の要路であることから、日本企業の進出数も伸びています。今後も、経済特区開発やエネルギー分野を含むインフラ事業の推進が期待されます。

 また、イスラエルは、対GDP比で世界トップクラスの研究開発費を長期にわたって拠出し続けています。情報技術、医療等の分野において、最先端技術を有する技術大国であります。国内には多国籍企業の研究開発拠点が集積しています。特に、サイバーセキュリティーや物のインターネットに関する技術の分野で、日本企業による投資額も急増しているところであります。

 両国とも、今後、日本企業のさらなる進出が見込まれ、我が国経済界からも、投資環境の整備について強い要望が寄せられてきたところであります。今般、両協定を締結することにより、法的安定性の向上、投資家にとって良好な投資環境の整備を促し、我が国と両国との投資及び経済関係をさらに緊密にすると期待されるところであります。

 見通しでありますが、政府としては、投資関連協定の締結促進等投資環境整備に向けたアクションプランも踏まえ、アフリカ、中東地域の諸国との間でも積極的に投資関連協定の締結を検討していく考えであります。現在、アラブ首長国連邦やタンザニアなど、計九カ国との間で二国間投資協定の交渉を進めているところでありまして、引き続き、対象国の拡大に向け努力をしていく所存であります。

熊田委員 ありがとうございました。

 この二協定の中にISDS条項について入っておりますが、これについてちょっとお聞かせいただきたいと思うんです。

 昨年のTPP協定の条約の審議に当たっても、このISDS条項については多くの議論がなされたと承知しております。今回提出している投資協定にも含まれるこのISDS条項も、我が国の国益を損なわれるようなものではなくて、海外投資を行う上で日本企業を保護するために必要な規定である、そういうものであると認識をしておりますが、その中身についてお聞かせをいただきたいと思います。

大菅政府参考人 お答え申し上げます。

 御指摘のISDS条項、投資家と国の間の紛争解決に関する条項でございますが、これは、投資受け入れ国が投資協定に違反したことによって当該国で事業展開する日本企業が不利益を受けた際に、その国の政府を訴えることができるようにする、そういった条項でございます。協定上の投資保護を実効的なものとする上で有効であり、我が国経済界も重視しております。

 今国会にお諮りしている二条約を含めまして、投資協定は締約国が正当な目的のために必要かつ合理的な規制を差別的でない態様で行うことを妨げるものではございませんし、また、交渉に当たって、必要な例外規定や留保を置くことなどにより国内法との整合性を図り、必要な政策判断の裁量を確保しております。

 このため、外国企業がISDS手続をとることによって、我が国の国内法令が協定違反とされることや、我が国にとって必要な政策を行うことが妨げられるということは想定されません。

 したがいまして、ISDS条項によって我が国の国益が損なわれるということはございませんし、むしろ、我が国企業が海外で投資活動を行う上での予見可能性や法的安定性の向上に資する規定であると考えております。

熊田委員 国益を損なうものではないということであります。

 先ほど岡本委員からもお話がありましたけれども、今後、投資協定をどう進めていくかということをお聞かせいただきたいと思うんです。

 中国でありました、現代版シルクロードですか、一帯一路経済圏構想、百三十カ国が集まられて話をされたと。中国がやるからよくないということを申し上げるつもりはありませんが、さまざまな経済活動が中国を中心に回っていくということで、やはりこれは日本も乗りおくれるわけにもいきませんので、それに入れというわけじゃありません、こういう投資協定等、やはり日本もさまざま結びながら、経済だけじゃなく、やはり経済の結びつきというのは安全保障にもかかわるものだと思いますので、今後、このアクションプランに基づいて、先ほど岡本委員からもお話があったアクションプランに基づいて、投資協定、さまざまに促進して進めていくということでありますけれども、先ほど投資政策室等をつくってということもお話を伺いましたが、これは今後どういう体制、もう今やっていく中でさまざまな手をとられると思いますが、体制につきまして、いま一度お聞かせをいただきたいと思います。

薗浦副大臣 御指摘をいただきましたアクションプランに基づきまして、二〇二〇年までに百の国、地域を対象に署名、発効することを目標にして現在交渉を進めておりますけれども、御指摘いただきました投資政策室ですけれども、これはおととい正式に設置をいたしました。従来、省内に七人の交渉官がおりましたけれども、これを十二人までふやしております。今後、この投資政策室で、どこの国とやるかという対象地域の選定とか、それから、当然、その投資交渉、いろいろな交渉というのはいろいろな省庁がかかわるものですから、そこの省庁とのさまざまな調整というものを、ここを司令塔にしてやっていって交渉を促進していきたいというのが基本戦略でございます。

熊田委員 それはやはり、体制を整えながら、本当に前へ進めるためにさまざままた知恵を使っていただきまして、やっていただきたいと思います。

 時間が一分、二分、まだあるようでございます。社会保障協定の締結についてお聞かせをいただきたいと思います。

 大変おくれておるようでございますが、最後に、政府として、社会保障協定の締結、早く前へ進めていただきたいと思いますけれども、今後、いかなる方針に基づいて各国と社会保障協定の締結を進められていくのか、お考えをお聞かせいただきたいと思います。

宮川政府参考人 お答え申し上げます。

 社会保障協定の締結の交渉を始めるに当たっては、五つほどの基準、一つには、相手国の社会保障制度における一般的な社会保険料の水準、二つ目に、相手国における在留邦人及び進出日系企業の具体的な社会保険料の負担額、三つ目として、日本の経済界からの具体的な要望、四つ目として、日本と相手国との二国間関係、五つ目として、日本と相手国との社会保障制度の類似性等の諸点を総合的に考慮した上で、優先度が高いと判断される国から順次交渉を行ってきております。

 御指摘いただきましたように、今後一層ペースを上げて取り組んでいくべしという点を念頭に置きまして、アジア諸国等も含め相手国のニーズを踏まえた上で、優先度が高いと判断される国から順次交渉を行っていければと考えております。

熊田委員 終わります。ありがとうございました。

三ッ矢委員長 次に、玉城デニー君。

玉城委員 自由党の玉城デニーです。

 本日は、日・ケニア投資協定、日・イスラエル投資協定、それから日・スロバキア社会保障協定、日・チェコ社会保障協定の改正議定書の質疑ですが、協定の質疑ですので質問も重複する点もあるかと思いますが、どうぞ御答弁の方をよろしくお願いしたいと思います。

 さて、早速質問に入らせていただきます。

 まず、投資協定についての質問をさせていただきます。

 これは少し前の資料なんですが、経産省が平成十九年四月に産業構造審議会第五回通商政策部会用の資料として提出した「投資協定の進め方」というところを少し私は拾ってみました。

 投資協定の基本的枠組みは、伝統的投資保護協定とNAFTA型の投資自由化協定ということが挙げられています。投資家の待遇を確保する目的で締結されてきたいわゆる投資保護協定と呼ばれる伝統的な協定、それに対して、投資後に加え投資許可段階を含めた内国民待遇、最恵国待遇や、投資を歪曲する効果があるとされるパフォーマンス要求禁止の規定を盛り込んだ投資協定、いわゆるこれはFTAの一部分、すなわち投資章として規定され、代表的な協定としてNAFTAの投資章があるということで、これを投資保護・自由化協定というふうに説明を挙げています。

 そこで、質問いたします。

 投資財産の内国民待遇、最恵国待遇適用について、日・ケニアの投資協定が投資財産設立後の保護型、イスラエルが設立後に加えて設立段階にも適用の範囲とする自由化型となった、それぞれの経緯についての御説明をお願いしたいと思います。

大菅政府参考人 お答えいたします。

 委員御指摘のとおり、ケニアとの投資協定はいわゆる保護型、イスラエルとの投資協定はいわゆる自由型の協定でございます。

 自由型とするか保護型とするかにつきましては、我が国経済界のニーズ、それから相手国側の事情、こういったことを勘案しつつ、相手国との交渉を通じて決まってまいるということでございます。

 ケニアにつきましては、これまでに自由化型の協定を締結した経験がございませんで、自由化型の協定の締結は困難であるという主張をしておりました。他方で、我が国としましては、既に進出しておる日本企業に速やかに法的保護を与える、こういった必要性がございましたので、こうした事情を踏まえて、先方主張のとおり保護型の協定とすることを受け入れたという経緯でございます。

 イスラエルにつきましても、自由化型の投資協定を締結した経験はございませんでしたが、我が国との協定交渉が、イスラエルがより先進的な新しい投資協定の締結を模索している時期と重なりましたことから、自由化型の協定を締結するという経緯となった次第でございます。

玉城委員 今御説明にありましたとおり、イスラエルはこれまでは三十カ国以上と投資協定を締結済みなんですが、我が国以外との投資協定は全て保護型、自由化型は今回が初ということで、いわゆるこの自由化型の締結をこれからも日本としては目指していきたいという方向での第一歩かなというふうに思います。

 さて、平成二十八年五月、外務省を含む七省庁間で策定した投資関連協定の締結促進等投資環境整備に向けたアクションプラン、先ほどから各委員の質問にも上がっておりますこのアクションプランにおいて、背景、意義や、それから現状や今後の指針等々がここで記されておりますが、そのアクションプランにおいて、現状把握という点について、投資関連協定について、OECDやWTOにおいて、多国間議論が進められてきたものの、その枠組みは成就していないと記されています。

 その内容からしますと、今後は、より二国間による、いわゆるBIT、二国間による投資等の協定締結、投資環境の整備に集中していくということの方向性なのかを大臣にお伺いしたいと思います。

岸田国務大臣 御指摘になった記述にあるように、この多国間における投資に関するルールの策定、これは必ずしも円滑に進んでいるわけではないということは事実であると考えます。

 一方で、我が国は、TPP協定を初め投資章を含む複数国間の経済連携協定を通じて、包括的な投資に関するルールの策定に努めてきています。

 これに対しまして、二国間投資協定は、国ごとの個別の事情を踏まえ、投資国の状況に即した投資ルールをより迅速に策定できる、こういったメリットがあります。

 よって、我が国としましては、複数国間の経済連携協定と二国間の投資協定、それぞれのメリットを考慮した上で適切に対応し、そして全体として適切なルールを構築していく、こうした方針で臨んでいきたいと存じます。

 それぞれのメリットを生かしながら、我が国として最適な環境をつくっていくべく努力をしていきたい、このように思います。

玉城委員 この二国間の交渉の戦略的な活用ということで、外務省の「二国間投資協定(BIT)の戦略的活用について ニーズに応えた積極的推進のために」ということで、二〇〇八年六月に、抜粋の資料があります。

 この中にも、今後、BIT、二国間の協定をこれまで以上に戦略的に活用し積極的に推進していくために、実際のニーズを踏まえつつ、BIT締結相手国・地域をより戦略的な優先順位をもって検討していくと記されていますので、まさにこのような形で進められているのだろうというふうに思料いたします。

 さて、外務省提出の資料で、先ほども委員から質問がありました、現在の交渉状況では、発効済み三十八本、未発効だが署名済み四本、交渉中十六本のものを含めると八十二の国、地域をカバーするとあります。

 この平成二十八年五月のアクションプランの記述では、二〇二〇年までに百の国、地域を目指すとする目標値が掲げられています。

 今後の実現性について、大臣からお聞かせいただければと思います。

岸田国務大臣 まず、御指摘のように、現在、署名、発効済みの投資関連協定によって、四十四の国、地域がカバーされており、交渉中の協定を含めると、その数、計八十二に上ります。

 御指摘の目標を達成するために、外務省として交渉体制も強化しなければならないということで、従来七名であった交渉官を現在十二名まで増員し、そして、これは一昨日ですが、外務省の経済局内に投資政策室を設置した次第であります。こうした中で、これまで以上に締結交渉を加速していきたいと考えています。

 ことしに入りましても、コートジボワール及びバーレーンとの投資協定交渉を開始いたしました。そして先月、私は中央アジアを訪問いたしましたが、トルクメニスタンとの投資協定交渉の開始について合意をしてきました。また、ほかにも、アゼルバイジャン、ナイジェリア、ヨルダン、こうした国との間でも投資協定の交渉を開始する方向に向け予備協議を実施している、こういった状況にあります。

 ぜひ、今後とも、目標達成に向けて交渉を加速していきたい、このように考えます。

玉城委員 投資関連協定の現状という外務省からの資料に、色塗りの、発効済み、それから署名済み・未発効、それから交渉中そのほかということで実質・大筋合意等を含むということで、色分けがされています。北米は確かに、アメリカ、カナダを含め、未発効のところが懸念をされるものの、一方で、アジア全体からすると、非常に広い範囲で交渉も進められているというふうに思います。

 そこで、今回の日・ケニアの投資協定は、アフリカにおけるこれからの将来に向けての投資協定ということで、非常に期待するものというふうに思われます。

 さて、この日・ケニア、日・イスラエル両投資協定とも、投資家と国との投資紛争解決手続としてISDS条項が盛り込まれています。先ほどの紹介しましたアクションプランにもある、高いレベルの質の確保についても同様にこの条項を挿入するとありますが、高いレベルの質の確保におけるISDS条項との関連性や必要性について、御説明をいただきたいと思います。

飯田政府参考人 お答えいたします。

 委員御指摘のISDS条項でございますけれども、これは、投資受け入れ国が投資関連協定に違反したことによって当該国で事業を展開する日本企業が不利益を受けた際に、当該国の政府を訴えることができるようにする制度でございます。そういう意味では、日本企業が海外で投資活動を行う上での予見可能性や法的安定性の向上に役立つというふうに考えているところでございます。

 経済界も、協定上の投資家の保護を実効的なものとし、協定全体の質の向上、高いレベルにつながるものとして、ISDS条項を非常に重視しているところでございます。

 この必要性の観点から、我が国は、投資関連協定の締結交渉に際しては、このISDS条項が含まれるように取り組んできてまいりまして、その結果として、ほとんどの投資協定にこの条項が含まれるということになっておるところでございます。

玉城委員 ありがとうございます。

 それから、アクションプランの日本政府としての投資関連協定締結促進のための体制強化については、先ほど来ありますように、政府横断的な交渉体制の整備、強化、交渉官数の増加、それから民間出身の人材の交渉チームへの参加の一層の促進など体制の強化と、それからもう一点は、投資関連協定の締結の意義や成果は我が国企業による評価が必要不可欠、政府は我が国企業との意見交換を継続的に行い、投資関連協定の締結や活用のあり方について不断の見直しを行っていくというふうにあります。

 そこで、お伺いいたします。

 この日・ケニア、日・イスラエルの投資協定、両協定に関しては、一方の締約当事国が他方の締約国の投資家の投資財産及び投資活動に関して義務を負うことになった場合の遵守規定、いわゆるアンブレラ条項については規定で盛り込まれていないようですが、盛り込むことができなかった特段の理由がありますでしょうか、お聞かせください。

大菅政府参考人 我が国としましては、契約の違反をISDSの対象とするいわゆるアンブレラ条項を盛り込むことを初め、我が国の経済活動に資する協定とすべく、投資協定の交渉に臨んでおります。

 一方、個別の条項につきましては、相手国が難色を示す場合には、全体的なバランスを考慮しつつ総合的に判断するという方針でございます。今回のケニア、イスラエル両協定につきましても、交渉における相手国側の主張も踏まえまして、総合的なバランスを考慮した結果、最終的に、アンブレラ条項を盛り込まないことでそれぞれ合意したものでございます。

玉城委員 では、少し更問いをさせていただきますが、その場合の、条項が盛り込まれなかったということについての投資家の不安というものについては、どのように対応される考えでしょうか。

大菅政府参考人 今回の両協定におきましてはアンブレラ条項は盛り込まれませんでしたが、この条項がない場合でございましても、例えば、契約に違反する政府の措置が投資家の正当な期待を害し、公正衡平待遇義務、それから補償を伴わない収用の禁止、こういった規定の違反を構成する場合には、協定の違反としてISDSを提起することは可能でございます。

 それでもなお我が国の投資家が十分に救済を受けられない場合には、協定に基づく締約国間の協議や合同委員会等を通じて、投資環境改善のための働きかけを行うことが可能でございます。

玉城委員 ありがとうございます。

 いわゆる公正衡平待遇が適用されるということで、従来のこの協定のように、しっかりと投資に対するインセンティブを持たせることができるというふうに考える次第です。ありがとうございます。

 では、続いて社会保障協定について伺います。

 日・チェコの社会保障協定改正議定書では、保険料の二重払いの解消強化のため、一時派遣被用者の範囲を明確化して、チェコの法令の適用が免除される規定を置くとしています。

 協定締結当初、つまり、この改正の、今回ではなく当初の、協定締結当初からこのような課題があったことの背景についての御説明をお願いしたいと思います。

宮川政府参考人 現行協定の交渉は、二〇〇七年六月から行われておりまして、二〇〇八年二月に署名に至っております。

 当時、日本・チェコ両国は、一時派遣の被用者が派遣元企業のために派遣される限り、当該者に対して派遣元国の法令のみが適用されるという共通の認識で一致しておりまして、派遣先企業との雇用契約の有無は問題となっておりませんでした。

 しかしながら、この協定が発効いたしました二〇〇九年六月以降、派遣先国の企業と雇用契約を締結した者を派遣被用者として取り扱わないという旨を明示的に定めたEUの指針が二〇一〇年に作成されたところでございます。

 チェコ政府は、EU域外国、日本等との協定についても、これに別段の明示的な定めがある場合を除いて、EUの指針などのEU法体系を用いて解釈するという立場をとっております。

 このため、チェコといたしましては、日本について、EU指針と異なる取り扱いを行うためには、派遣先国の企業と雇用契約を締結した者も、協定上、派遣被用者として扱われ得る旨を明記する協定の改正が必要となったという経緯がございます。

 したがいまして、今般の改正は、あくまで、協定発効の後に作成されましたEU指針等を受けたチェコ側の事情によりまして、協定発効後、チェコ側の要請を受けて行うものでございます。

 したがって、御指摘いただいた当初の交渉時点において、こうした規定を含めるということはできなかったという経緯でございます。

玉城委員 ありがとうございます。

 この両社会保障協定の締結並びに改正によって、お互いの国の事情から、前向きに取り組んでいくという改正があれば、非常に双方にとっても有益であろうということは想像されるわけです。

 さて、この締結や改正によって、どのようなさらなる人的及び経済的な促進が図られるものと期待できるでしょうか。ここは大臣にお聞きしたいと思います。

岸田国務大臣 日・スロバキア社会保障協定そして日・チェコ社会保障協定改正議定書、これは、両方とも、これまでに我が国が他国と締結した社会保障協定と同様に、保険料の二重払い及び掛け捨て問題の解消を通じて、両国に進出する日系企業等の負担軽減に貢献するものです。このため、両協定の締結については、経団連、日系企業からも強い要望が寄せられてきました。

 現在、チェコには百七十五社、スロバキアには五十三社、日系企業が進出をしています。自動車及び自動車部品等の製造業を初めとして多くの企業が進出しているわけですが、今回の協定及び改正議定書の締結をすることによって、日系企業の活動を中心とした両国間の人的交流が円滑化され、ひいては経済交流を含む両国間関係がより一層緊密化する、こういったことが期待されると考えております。

玉城委員 では、最後にまた大臣にお伺いしたいと思います。

 いわゆる、企業は社会保険料を労働者と分担して負担しているために、社会保障協定の締結によって保険料の二重負担の問題が解消されると保険料の支払いが一本化され、企業の負担は大幅に軽減、その結果、企業は、人件費コストが抑制される協定締結相手国への企業進出がしやすくなるというふうに資料にございます。

 今後、このようにさらに日系企業が進出する意欲を示す国、地域については、本邦と同等の社会保障制度等が整備されていることが前提となるわけですが、投資協定、社会保障協定等のさらなる締結に向けた政府の取り組み、特に大臣のお気持ちについて最後にお聞かせいただければと思います。

岸田国務大臣 投資協定そして社会保障協定、これを進めるに当たっては、例えば投資関連協定締結交渉に当たっては、我が国から相手国への投資実績あるいは投資拡大の見通し、産業界からの要望、そして我が国の外交方針との整合性、そして相手国のニーズ、こういったものを総合的に考慮した上で、優先度が高いと判断され、かつ準備が整った国から順次交渉を行う、こうした方針で取り組んでいます。

 また、社会保障協定の方は、相手国の社会保障制度における一般的な社会保険料の水準、具体的な我が国企業等の社会保険料の負担、そして経済界からの要望、二国間関係、そして社会保障制度の類似性、こうしたものを総合的に考慮して優先順位を決め、準備が整った国から順次交渉を行う、こうした方針で臨んでおります。

 こうした取り組み、中小企業を含む我が国企業の海外展開を後押しする観点からも重要でありますが、加えて、二国間関係全体の底上げにもつながります。

 ぜひ、優先順位を十分配慮しつつ、具体的な交渉を加速するべく、今後とも努力を続けていきたい、このように考えます。

玉城委員 ありがとうございます。経済外交が平和外交の先駆となりますようにお祈り申し上げ、質問を終わります。

 ニフェーデービタン。ありがとうございました。

三ッ矢委員長 これにて各件に対する質疑は終局いたしました。

    ―――――――――――――

三ッ矢委員長 ただいま議題となっております各件中、まず、投資の促進及び保護に関する日本国政府とケニア共和国政府との間の協定の締結について承認を求めるの件及び投資の自由化、促進及び保護に関する日本国とイスラエル国との間の協定の締結について承認を求めるの件の両件について議事を進めます。

 これより両件に対する討論に入ります。

 討論の申し出がありますので、これを許します。宮本徹君。

宮本(徹)委員 日本共産党の宮本徹です。

 私は、日本共産党を代表して、日・ケニア投資協定及び日・イスラエル投資協定について、反対の立場から討論を行います。

 二つの投資協定は、相手国への投資を促進するために、投資設立後の投資家の権利の保護や環境整備に関するルールを定めるものであり、日本の多国籍企業が海外で最大限の収益を上げる投資促進のために締結されるものであります。

 日本の財界は、国内では法人税減税や労働法制の改悪を、国外では日本の多国籍企業が多額の収益を上げられるような条件整備、投資協定や租税条約の締結を強く求めています。

 政府は、こうした財界の強い要請と一体となり、二〇一六年五月策定のアクションプランでは投資関連協定の締結促進に集中的に取り組み、二〇二〇年までに百の国、地域を対象に署名、発効することを決定しています。今回の二つの投資協定はこの一環であります。

 二つの投資協定には、TPP協定と同じく、ISDS条項が盛り込まれております。ISDS条項は、一企業が国家を訴え、国の主権を脅かすことにつながる仕組みにほかならず、看過することはできません。

 加えて、イスラエルは国際法違反の入植地の拡大を行っています。日本は、イスラエルによる入植地の拡大に懸念を示す立場から、昨年十二月の国連安保理のイスラエル非難決議に賛成しました。日本がイスラエルと投資協定を結ぶことは、入植地におけるイスラエルの主権を認めることにつながりかねず、入植地の拡大に懸念を示してきた立場と矛盾します。

 以上を指摘し、二つの投資協定に対する反対討論とします。

三ッ矢委員長 これにて討論は終局いたしました。

    ―――――――――――――

三ッ矢委員長 これより採決に入ります。

 まず、投資の促進及び保護に関する日本国政府とケニア共和国政府との間の協定の締結について承認を求めるの件について採決いたします。

 本件は承認すべきものと決するに賛成の諸君の起立を求めます。

    〔賛成者起立〕

三ッ矢委員長 起立多数。よって、本件は承認すべきものと決しました。

 次に、投資の自由化、促進及び保護に関する日本国とイスラエル国との間の協定の締結について承認を求めるの件について採決いたします。

 本件は承認すべきものと決するに賛成の諸君の起立を求めます。

    〔賛成者起立〕

三ッ矢委員長 起立多数。よって、本件は承認すべきものと決しました。

 次に、社会保障に関する日本国とスロバキア共和国との間の協定の締結について承認を求めるの件及び社会保障に関する日本国とチェコ共和国との間の協定を改正する議定書の締結について承認を求めるの件の両件について議事を進めます。

 これより両件に対する討論に入るのでありますが、その申し出がありませんので、直ちに採決に入ります。

 まず、社会保障に関する日本国とスロバキア共和国との間の協定の締結について承認を求めるの件について採決いたします。

 本件は承認すべきものと決するに賛成の諸君の起立を求めます。

    〔賛成者起立〕

三ッ矢委員長 起立総員。よって、本件は承認すべきものと決しました。

 次に、社会保障に関する日本国とチェコ共和国との間の協定を改正する議定書の締結について承認を求めるの件について採決いたします。

 本件は承認すべきものと決するに賛成の諸君の起立を求めます。

    〔賛成者起立〕

三ッ矢委員長 起立総員。よって、本件は承認すべきものと決しました。

 お諮りいたします。

 ただいま議決いたしました各件に関する委員会報告書の作成につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

三ッ矢委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

    〔報告書は附録に掲載〕

    ―――――――――――――

三ッ矢委員長 次回は、公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。

    午後零時二分散会


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