衆議院

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第7号 平成29年4月6日(木曜日)

会議録本文へ
平成二十九年四月六日(木曜日)

    午前九時開議

 出席委員

   委員長 北村 茂男君

   理事 江藤  拓君 理事 小泉進次郎君

   理事 斎藤 洋明君 理事 福田 達夫君

   理事 宮腰 光寛君 理事 岸本 周平君

   理事 小山 展弘君 理事 稲津  久君

      青山 周平君    伊東 良孝君

      伊藤信太郎君    池田 道孝君

      小里 泰弘君    加藤 寛治君

      勝沼 栄明君    神谷  昇君

      木内  均君    笹川 博義君

      新谷 正義君    助田 重義君

      瀬戸 隆一君    武部  新君

      豊田真由子君    中川 郁子君

      鳩山 二郎君    古川  康君

      細田 健一君    前川  恵君

      宮川 典子君    宮路 拓馬君

      森山  裕君    簗  和生君

      山本  拓君    渡辺 孝一君

      井坂 信彦君    岡本 充功君

      金子 恵美君    後藤 祐一君

      佐々木隆博君    重徳 和彦君

      升田世喜男君    宮崎 岳志君

      村岡 敏英君    中川 康洋君

      真山 祐一君    斉藤 和子君

      畠山 和也君    足立 康史君

      吉田 豊史君    仲里 利信君

    …………………………………

   農林水産大臣       山本 有二君

   農林水産副大臣      齋藤  健君

   農林水産大臣政務官    細田 健一君

   政府参考人

   (農林水産省大臣官房総括審議官)         山口 英彰君

   政府参考人

   (農林水産省大臣官房技術総括審議官)

   (農林水産技術会議事務局長)           西郷 正道君

   政府参考人

   (農林水産省大臣官房統計部長)          佐々木康雄君

   政府参考人

   (農林水産省食料産業局長)            井上 宏司君

   政府参考人

   (農林水産省生産局長)  枝元 真徹君

   政府参考人

   (農林水産省経営局長)  大澤  誠君

   政府参考人

   (農林水産省農村振興局長)            佐藤 速水君

   政府参考人

   (農林水産省政策統括官) 柄澤  彰君

   参考人

   (有限会社穂海農耕代表取締役)          丸田  洋君

   参考人

   (東京大学大学院教授)  鈴木 宣弘君

   参考人

   (岡山大学大学院環境生命科学研究科教授)     小松 泰信君

   参考人

   (キヤノングローバル戦略研究所・研究主幹)    山下 一仁君

   農林水産委員会専門員   石上  智君

    ―――――――――――――

委員の異動

四月六日

 辞任         補欠選任

  池田 道孝君     助田 重義君

  勝沼 栄明君     豊田真由子君

  笹川 博義君     青山 周平君

  瀬戸 隆一君     宮川 典子君

  西川 公也君     木内  均君

  宮崎 岳志君     升田世喜男君

  吉田 豊史君     足立 康史君

同日

 辞任         補欠選任

  青山 周平君     笹川 博義君

  木内  均君     鳩山 二郎君

  助田 重義君     新谷 正義君

  豊田真由子君     勝沼 栄明君

  宮川 典子君     瀬戸 隆一君

  升田世喜男君     井坂 信彦君

  足立 康史君     吉田 豊史君

同日

 辞任         補欠選任

  新谷 正義君     池田 道孝君

  鳩山 二郎君     神谷  昇君

  井坂 信彦君     後藤 祐一君

同日

 辞任         補欠選任

  神谷  昇君     西川 公也君

  後藤 祐一君     宮崎 岳志君

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 政府参考人出頭要求に関する件

 農業競争力強化支援法案(内閣提出第二一号)


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     ――――◇―――――

北村委員長 これより会議を開きます。

 内閣提出、農業競争力強化支援法案を議題といたします。

 本日は、本案審査のため、参考人として、有限会社穂海農耕代表取締役丸田洋君、東京大学大学院教授鈴木宣弘君、岡山大学大学院環境生命科学研究科教授小松泰信君、キヤノングローバル戦略研究所・研究主幹山下一仁君、以上四名の方々に御出席をいただいております。

 この際、参考人各位に一言御挨拶を申し上げます。

 本日は、御多用の中を本委員会に御出席をいただきまして、まことにありがとうございます。参考人各位におかれましては、それぞれのお立場から忌憚のない御意見をお述べいただきたいと存じますので、どうぞよろしくお願いをいたします。

 次に、議事の順序について申し上げます。

 まず、丸田参考人、鈴木参考人、小松参考人、山下参考人の順に、お一人十五分程度御意見をお述べいただき、その後、委員からの質疑に対してお答えをいただきたいと存じます。

 なお、念のため申し上げますが、御発言の際はその都度委員長の許可を得て発言していただくようお願い申し上げます。また、参考人は委員に対して質疑をすることができないことになっておりますので、あらかじめ御了承願います。

 それでは、初めに、丸田参考人、お願いをいたします。

丸田参考人 おはようございます。新潟県上越市板倉区から参りました、有限会社穂海農耕の丸田と申します。

 本日は、このような場をいただき、まことにありがとうございます。

 それでは、まず初めに、自己紹介をさせていただきたいと思います。

 私は、大学時代は工学部で航空工学を学ばせていただき、その後、重工系の会社に就職し、ガスタービンの開発を行っておりました。その後、諸事情あり、地元である新潟県上越市に戻ることになり、しばらく工業とも農業とも関係なくぷらぷらしておりましたが、平成十六年に知り合いより声をかけていただき、水稲農業を手伝ったことをきっかけに、平成十七年十二月に就農いたしました。平成十八年作より耕作を始め、今作で十二作目に入ります。

 実家は、農家でもなく、農地も全く持っておりませんので、いわゆる農外参入と呼ばれる形態になるかと思います。ゼロからのスタートとなりますが、本作、二十九年作においては百三十ヘクタールを経営するまでに規模拡大をすることができました。

 この場をおかりし、地域の皆様、バックアップしていただいた行政の皆様、お取引先の皆様、金融機関の皆様、携わっていただいている全ての皆様、そして何よりも、従業員のみんなにお礼を言いたいと思っております。

 私が就農した際は、就農自体が非常に珍しく、周囲からは驚かれたことを思い出します。今では、就農は珍しいことではなく、新農業人フェアを初めとする農業への参入の垣根も随分下がり、農外からの参入者としては、仲間がふえていくことについて非常にうれしく思っております。

 新潟県の農場ということで、コシヒカリがメーンの作付だと思われることが多いのですが、弊社のコシヒカリの作付割合は、全体の一〇%強でしかありません。それらの品種も、極わせから超晩生までと作期をずらしており、同地域の一般的な農家の方ですと九月から十月上旬までの稲刈りのところを、八月下旬から十一月上旬まで伸ばすことにより、少ない機械でより多くの面積を経営することを行っています。

 また、販売については、自社で販売会社を持ち、外食、卸、商社へ玄米で直接販売をしております。

 弊社の概要につきましては、お配りさせていただいております資料をごらんいただければと思います。

 さて、長くなりましたが、一農業者として農業競争力強化支援法についての意見を法律の構成に沿って述べさせていただきたいと思います。

 まず、第一条の「目的」についてです。

 農業者は大規模化が進んだといっても、それも全体の一部でしかありません。また、もし大規模化が進み、水稲で千ヘクタールという規模があらわれたとしても、十数億円規模の売り上げにしかなりません。農業では大規模でも、他産業で見れば中小企業の域を出ることは難しく、なかなか他産業のように買い手が力を発揮するという状態になるにはほど遠いと考えられます。

 民間事業者である農業者がその環境をドラスティックに変えることは非常にハードルが高いと考えられますので、その点からも、本法案の目的としては適切ではないかと考えています。

 続いて、第三条から五条についてです。

 まず、少し遠いところからになりますが、現場での生産者の視点から考える、今後の農業の置かれる環境についてからお話をしたいと思います。

 高齢化は、皆さんが想像されているよりも、より早く押し寄せてきています。それに伴い離農される方も多く、集約化が進み、今後はより一層大規模化が進むだろうと感じています。弊社も十年足らずで百ヘクタールを超え、今後も同じような生産法人がどんどんふえてくることと感じています。

 さらに先を考えれば、五百ヘクタール、千ヘクタールといった大規模法人も必ずやあらわれてくることになるかと思います。そして、国内のマーケットは、人口減とともにシュリンクし、一方で、海外の人口は二〇五〇年には百億人と言われているように、今後もどんどん増加していきます。

 こういった国内外の環境を考えると、流通に関しても、今までと同じ形態のまま進んでいくとも思えません。国内販売だけではなく、輸出という選択肢も大きなものとしなければなりません。

 そういったことが考えられる中で、果たして私たちだけでどうしようもない事業環境の整備はどのようになるのだろうかという不安がありました。

 しかし、この三条、四条に、国及び農業生産関連事業者について環境の整備についての努力項目が明確にされていることにより、将来へ向けて、安心し、新しい取り組みも含めた経営ができると考えています。

 そして、私たち農業者にも五条において農業経営の改善についての努力が求められていることについては、前向きに受けとめています。個人的には、当初案の、必要な情報を収集し、主体的かつ合理的に行動するよう努めるという形でもよかったのではないかと考えております。

 これは、今回の農政改革において系統組織に求められている変革からも感じています。それは、系統組織のヒエラルキーのトップであるのは、全農でも単協でもなく、私たち生産者であるからです。系統組織について変化が求められているということは、組合員としての私たち自身が変化を求められていることにほかならないからです。

 系統組織の変革を起こすためには、その組合員として一票を持つ私たち農業者が、しっかり考え、行動し、その一票を正しく行使することが非常に重要ではないかと考えています。そのためには、私たち農業者も成長すべく、さまざまな情報を集め、勉強していかなくてはなりません。

 よって、この五条があることにより、それが明確になり、私たち農業者自身がより成長し、日本の農業を担っていくことにつながっていくのではないかと考えています。

 次に、八条から十条についてです。

 さきにも述べたように、今後、輸出も一つの選択肢として大きな役割を果たすだろうと考えています。海外で求められる食味や品質を供給できるようにすることはもちろんのこと、価格競争力についても重要です。

 そのためには、農業資材、農業機械の価格も非常に重要になってくると考えています。同品質、同効力のものであれば、結局のところ、価格で選ぶ形にならざるを得ません。よって、それらの選択肢がどれだけあるのか、その情報がいかに入手できるかも重要です。

 また、農業機械に関しては、現状の性能で十分にもかかわらず、モデルチェンジがされ、新しい機能が追加されるということが多々あります。むしろ、同じモデルを長く販売し、その価格を下げてもらう方が生産者としてはプラスであると考えます。

 また、必要な機能を自分たちで選べるなど、パソコンのBTOのような形も一つの選択肢ではないかと考えています。実際、今の農業機械では、使ったことのないスイッチや機能があるということも事実です。これらを解消すれば、同じ機能で廉価なものにすることも可能なのではないでしょうか。

 さらには、耐久性の向上も重要です。

 弊社では、極わせから超晩生までの品種を作付けることにより、作期を長くしています。これにより、より少ない機械でより多くの面積を経営するということとなり、減価償却費の削減を図ることが可能となります。

 そうなると、必然的に一台の機械の使用時間が長くなり、耐久性が重要となります。トラクターは二年で一千時間を超え、田植え機に関しては、償却期限の前の六年目となることしで一千時間に届こうとしています。これらは、弊社のお取引のある農機具屋さんでも見たことがないとおっしゃっています。

 田植え機は、ことしの整備では、定額で償却した際の償却費よりも多くの整備費用がかかっています。

 今は弊社が特異的に見えるかもしれませんが、大規模化が進んでいけば、遅かれ早かれ、どの生産法人も同じ取り組みをすることでしょう。よって、耐久性という視点も非常に重要になるはずです。

 さらに、種子、種苗についてです。

 弊社では、今作では試験も含め十一品種ほどの作付を予定しています。これは、新潟県の品種だけではなく、農研機構の品種が一番多く、民間品種も栽培しています。弊社は農研機構がなければ成り立っていないとも言えるほどです。

 前述のように、極わせから超晩生までの作期分散のために、この十一の品種を探し、選んでいます。それらは現在での多収、良食味の品種を作付けていますが、原価低減のためには、より収量の増加も求められるとともに、時代とともに変わる消費者の舌にも対応していくことが必須です。

 そして、これは日本国内の視点だけではなく、海外へ輸出に対応していく上でも同様です。この品種は、弊社にとっても、そして今後、生産者にとっても生命線となるはずです。

 大規模になればなるほど、きめ細やかな管理が難しくなり、品種そのものの特性である、倒伏しにくさや病気へのかかりにくさに頼らざるを得ません。

 実は、現在も、こういった情報がまとめられている稲品種データベースが農研機構によって整備されています。弊社も、これを活用し、品種を探して選んでいます。現在は休止中ですが、本法が施行されることにより、そういったデータベースがよりきめ細やかに整備され、生産者が知りたい情報を得られるようになることは重要であると考えます。

 以上のことより、八条から十条に関しては、非常に期待が持てる項目であると感じています。

 続いて、十一条から十五条についてです。

 この流通に関しては、第三条から五条のところでも申し上げたように、今後、事業環境の大きな変化が考えられます。消費者の減少、高齢化とともに進む大規模化、輸出など、今まででは想像もしていないようなスピードで大きく変わっていくことでしょう。物流についても、ドライバー不足は今でさえ深刻になりつつあり、モーダルシフトも考えていかなくてはならないかもしれません。

 弊社が参入した十二年前には、周辺の皆様はほとんどが系統出荷でした。弊社の場合、農外参入の新規就農だったため、JAさんへお米を出荷できるということを私自身が就農後しばらくは知らなかったため、自身で商社や卸さんへの販売ルートを開拓しなければなりませんでした。現在もそのときの販路が生きており、ほとんどが外食、卸、商社などの皆様への直接の販売です。

 このことにより、前述のような多数の品種を栽培していても、実需者の皆様と非常に近い形で話ができるため、販路の確保ができるとともに、次の求められている品質、それに合う品種の提案など、常にマーケットを意識した取り組みができるようになっています。これは弊社の経営の上で非常に重要な部分になっています。

 一方で、輸出に関しては全農さんと取り組んでいます。こちらも、海外で求められる品質に基づき、栽培する品種を決定しています。

 このような取り組みができるのは、弊社の地元JAさんの考え方が進んでおり、直売できる部分は応援していただけますし、輸出のこの取り組みも応援していただいています。

 個人的には、農産物流通においてのこれからの系統組織の役割として、単協は地域の中小規模の農場の維持発展のため、そして、全農は世界へ向けての輸出の役割を大きくすべきであると考えています。

 このような形で、本質的な生産者の利益の最大化ということを考えていただけるような事業環境が整えられることにより、生産者の経営の多様性が生まれ、結果として、消費者の利益にもつながるとともに、持続的な農業経営となるのではないかと考えています。

 また、昨今、弊社のような直接販売の場合、物流手段の確保も問題になっています。

 主に、トラックの手配の難易度については、繁閑期での差が大きく、それらの平準化ができないものかと既に悩みの種となっています。

 一方で、鉄道コンテナの手配はトラックに比べ容易ですが、コストが上昇してしまいます。

 こういった問題を解決していくためには、買い手、生産者、そして物流事業者が連携し、空席情報ならぬ空き情報などが共有されれば、それに基づいた出荷計画も立てることができ、物流コストの低減にもつながるのではないかと考えています。

 よって、このような事業環境を推進していただくためにも、本条項は必要であると考えます。

 次に、十七条から三十条についてです。

 既に、ここまでで資材供給や流通に関しての条項がありますが、その競争を促進するための新たな風を吹き込むために、本項目は必要ではないかと考えます。

 何度も申し上げておりますが、大規模化が進んでいくことにより、生産現場は大きな変化が起こることでしょう。それに伴い、資材供給や流通、物流なども大きな変化を起こさなければなりません。

 私が就農してから十二年ほどですが、資材や農業機械に関し、ほとんど再編が起こったり新しい企業が参入されたということを聞いたことがありません。米価は下落傾向である一方で、常に資材価格、農業機械の価格は上昇基調でした。

 よって、競争が起こることによっても、そこに風穴があくことを本条項が設けられることにより期待したいと思います。

 そして、イノベーションは、ほとんどの場合、中からだけではなく、外から起こることが多いものです。よって、このイノベーションも受け入れるべく、環境の整備はしておくべきであると考えます。イノベーションなくして、今後の農業の大きな成長はないはずです。

 以上が、私の本法案についての意見となります。

 そして、最後になりましたが、弊社が大規模化を推し進めておりますので、ここまでは大規模化が全ての前提であるかのようにお話をしましたが、一点だけお伝えしたいことがあります。

 弊社がこのように大規模化を標榜できるのも、実は、すばらしくおいしいものをつくることができる篤農家の方々がいらっしゃるからです。昨今、水稲農業イコール大規模というだけの図式で語られることが多くなっています。しかし、それは大きな間違いです。すばらしくおいしく、そして、日本の農業という文化を支えてくださっている篤農家の方々がいてこそ、私たちのような大規模な農場が維持することができるのです。

 その逆もしかりです。やはり、フラッグシップとしての、文化を背負ったすばらしくおいしい農産物は、日本の中でも、そして世界に向けても必要なものです。その農産物は、新しい品種だけではなく、在来種のものですぐれているものも多々あります。

 つまり、大規模がいいとか農家がいいとかではなく、これらが両方そろって、車の両輪となることにより、日本の農業は強くなり、そして、世界でも戦い、勝つことができるのではないかと強く感じています。これらを実現するためにも、本法律は有意義に働くのではないかと期待しています。

 そして、このような議論により、農業者自身も、そして若者たちも、農業に携わっている産業の方々全てが、日本の農業が明るいと思っていただけるようになることを心より祈り、拙いながら、私の本法案への意見とさせていただきたいと思います。

 本日は、御清聴どうもありがとうございました。(拍手)

北村委員長 ありがとうございました。

 次に、鈴木参考人、お願いをいたします。

鈴木参考人 皆さん、おはようございます。東大の鈴木でございます。

 本日は、このような機会をいただきまして、まことにありがとうございます。

 さて、まず、ただいまの丸田さんの御意見、大変貴重な御意見で、また経営もすばらしく、こういう経営がしっかりと伸びていただくような支援をしていくということは非常に重要であること、これは私も全く異存がございません。

 ただ、私が全体として思いますのは、この法案というのは、農業競争力強化ではなく弱体化法案になりかねない要素を含んでいるというふうに思います。

 まず、法案全体の構成として、農業競争力強化の支援といいながら、具体的施策は、資材や流通産業の事業再編、参入に融資するだけに矮小化されており、包括的ビジョンがない中途半端なものとなっております。かつ、資材の引き下げ、あるいは販売価格の向上を目指すとしながら、そのために非常に重要な要素である農業者の共販、共同購入の強化という点についてはむしろ否定的な流れになっており、論理矛盾を来していると思います。これは、農業所得の向上というのは、ある意味で名目でしかないということであります。

 本法は、そもそも、農業競争力強化プログラムに基づく八法案の一つで、その底流には、民間活力の最大限の活用という表現で、規制緩和すれば全てがうまくいくという、時代に逆行した短絡的な経済理論を名目に掲げ、その裏には、既存の組織によるビジネスやお金をみずからの方に引き寄せたい、今だけ、金だけ、自分だけの人たちの三だけ主義の思惑が見え隠れしております。

 国民が求めているのは、アメリカを含む一部の企業利益の追求ではなく、自分たちの命、環境、地域、国土を守る安全な食料を確保するために国民それぞれがどう応分の負担をしていくかというビジョンと、そのための包括的な施策体系の構築です。競争は大事ですが、それに対して、共助共生的システムとその組織、農協や生協の役割、そして消費者の役割、政府によるセーフティーネットの役割などを包括するビジョンが本法にはありません。

 本法には、個々の農家が販売先や資材の購入先を多様化させて、農協を通じた共販や共同購入からむしろ離れることを意図するような、「有利な条件を提示する農業生産関連事業者との取引を通じて、農業経営の改善に取り組む」という奇妙な努力義務の文言に見てとれます。

 歴史的に見れば、個々の農家が大きな買い手と個別取引することで買いたたかれ、大きな売り手と個別取引することで資材価格がつり上げられ、苦しみました。そこから脱却し、所得を向上するために、農業協同組合による共販と共同購入が導入され、それは取引交渉力を対等にするための拮抗力として独禁法の適用除外になっているのが世界の原則です。

 つまり、農業所得の向上の重要な要素として、協同組合を通じた共販、共同購入が重要であることをしっかりと本法案にも位置づけるべきであると思います。しかし、一連の八法案のもとになっている競争力強化プログラムは、買い取り販売への移行や資材の情報提供に徹することなど、共販と共同購入をなし崩しにし、協同組合の存立要件を否定するような流れとなっております。

 しかも、最近、我が国では、農協共販に対して公取のおどし、見せしめともとれる査察が幾度も入り、独禁法の適用除外がなし崩し的に無効化されるというゆゆしき事態が進んでおり、これは違法行為であると言わざるを得ません。

 さらに、公的な育種の成果を民間に譲渡するという条項は、寡占的な多国籍GM種子産業にとってはまさにぬれ手にアワで、米などの種子が特許化され独占され、価格もつり上げられていくことになり、これは国民の命の源を握られかねない重大な問題です。

 二点目ですが、農業競争力向上にはパワーバランスの是正策が不可欠かつ正当であるということです。

 私が酪農について、農協とメーカーと小売間のパワーバランスを計算しましたら、小売対メーカー間はほぼ一対〇で小売が圧倒的に優位、農協対メーカーはよく見積もっても五分五分、弱く見積もれば一対九で、やはり生産サイドが押されている。二〇〇八年の餌危機でも酪農家が一番苦しみました。このように、資材や流通の合理化は必要ですが、それよりも、所得がふえない大きな原因は、買いたたかれる構造にあります。

 カナダの牛乳は、一リットル三百円もします。随分高いですが、消費者は不満を持っていません。うちの学生が聞きましたら、アメリカの成長ホルモン入り牛乳を飲みたくないから、これを支えますよと言いました。生産者もメーカーも小売店も十分なマージンをとって、消費者もこれでいい、幸せだと言っているんですから、こういうシステムの方がよほど持続的なシステムです。まさに三方よしの、売り手よし、買い手よし、世間よしの価格形成が実現されている。

 カナダでは、酪農の指定団体に当たるミルクマーケティングボードに酪農家が結集していますので、寡占的なメーカーや小売に対して拮抗力が生まれ、こういうことが実現できるわけです。

 それなのに、本法の関連法案では、酪農の指定団体を弱体化する規定があります。バター不足を指定団体にかかる規制のせいにして、取引を自由化すれば所得が上がるという理論は全く逆で、酪農家が個別取引で分断されていったら、イギリスでの経験のように、乳価は暴落し、消費者に飲用乳さえ提供できない混乱に陥りかねません。

 したがって、仮にもこのような法改正を行うのであれば、競争条件の悪化を是正するための政策をセットにすることが不可欠になります。アメリカでの最低飲用乳価の導入など、あるいは酪農マルキンのようなものを修正として加えることが正当かつ不可欠である。

 以上からもわかるように、一方のマーケットパワーが強い市場では、一、拮抗力を形成できる共助組織の強化、二、取引交渉力の不均衡による損失を補填する政府による下支え、これが正当化されるわけで、こういうことについて本法は全く言及もされておりません。

 それから、そもそもコストダウンだけが競争力強化であるかのような視点も間違いだと思います。

 強い農業とは何でしょうか。規模拡大してコストダウンすれば強い農業になるでしょうか。それはもちろん大事ですけれども、それだけで頑張っても、オーストラリアやアメリカに一ひねりで負けてしまいます。同じ土俵では戦えません。少々高いが徹底的に物が違う、あなたのものしか食べたくない、そういう本物を提供する生産者と理解する消費者とのネットワークこそが強いきずなの源です。

 スイスでは、一個八十円もする卵を小学生ぐらいに見える女の子が買って、これを買うことで生産者の皆さんの生活が支えられ、そのおかげで私たちの生活も成り立つんだから当たり前でしょうと、いとも簡単に答えたといいます。

 スイスでは、ミグロという生協さんが食品流通の大きなシェアを持っていて、農協さん等と連携して、消費者と生産者が納得できる本物の基準を認証して、その価値を価格に反映させることに成功しております。こういうふうな消費者サイド、生協さんからの働きかけによる取り組みなどについてもしっかりと支援するということも本法に位置づけるべきではないでしょうか。

 それでも、スイスの農業所得のほぼ一〇〇%、フランスでも九五%が補助金で賄われているというのが実態です。環境、景観、動物愛護、生物多様性など、農業の果たす多面的機能の項目ごとに、具体的にこのぐらいの応分の負担をしていこうということがしっかりと理解されておりますので、国民も納得して払えるし、農家も誇りに思って生産に臨める。このようなシステムは日本にはありません。

 さらに、アメリカでは、農家にとって最低限必要な所得は政府が補填するから、そういう水準になったら政策を発動するので安心して投資をしてくださいという予見可能なシステムを完備しております。これがまさに食料を守るということではないでしょうか。農業政策は農家保護政策ではありません。国民の命を守る安全保障政策です。こういう本質的な議論なくして、食と農と地域の持続的発展はありません。

 そういう意味で、我が国の収入保険というものは、米価が下がるたびに基準収入が下がっていく底なし沼で、セーフティーネットではないということを言わざるを得ません。

 盲目的なアメリカ追従とまで言われているのに、なぜアメリカのすぐれた農業戦略を、食料戦略をまねしないのですか。ただでさえ、全く規模の違うアメリカ農業が徹底した農業競争力強化策を行っているのに対して、我が国はセーフティーネットはなくし、コストダウンだけで競争すれば勝てるというのは、実は家族農業がほとんどなくなってもいいという議論になるのではないでしょうか。欧米のような食料戦略なく、単に競争を促進すればうまくいく、そして、それは一部の農業に参入したい大手企業等には都合がいい、そういうふうな視点になってしまっていないでしょうか。

 最後に、一連の政策決定プロセスが異常であることを言わざるを得ません。

 法的位置づけもない諮問機関に、利害の一致する仲間、しかも、この人たちはアメリカの経済界とも密接につながっております。それだけを集めて、国の方向性が私的に決められ、誰も文句が言えない、とめられないというのは異常事態です。与党の国会議員になるより、規制改革推進会議メンバーに選んでもらった方が政策が決められると与党議員は嘆いておりました。

 日本の対米外交は、対日年次改革要望書等に書いてあることに次々順番に応えていくだけの、その執行機関が例えば規制改革推進会議ですから、次に何が起こるかは予見できます。

 アメリカからは、アメリカの商社が全農を買収したいから株式会社化してくださいとか、共済と保険は対等な競争条件にしてくださいと強く求めています。郵貯マネーがめどが立ったから、必ずJAマネーを握るまでこれは終わりません。

 だから、農協改革の目的も、一連の法案の目的も、農業所得の向上であるはずはありません。信用、共済マネーを奪う、共販、共同購入を崩す、JAと既存農家が潰れたらそこに参入する、規制改革推進会議の答申はそのとおりになっております。

 本法も、それを受けたものになっております。

 もちろん、農家の不満に徹底的に改善策を出す農協組織の真の意味での自己改革は不可欠ですけれども、一部の利益のために、日本の食と農、関連組織、所管官庁までもなし崩し的に息の根をとめられてしまうという方向性は、これは終わりの始まりです。

 そういう意味で、規制改革推進会議は解散すべきであると思います。

 二〇〇八年に、前の自公政権のときに結成された農政改革特命チーム会合というのがありましたが、これはさまざまな立場の意見が総合できる会議でした。これが食料・農業・農村審議会としっかり連携し、欧米のように、自分たちの命、環境、地域、国土を守る食料、農業を、国民それぞれがどう応分の負担をしていくかというビジョンの練り直しをすべきであります。

 その特命会合では、現場の声に応えて所得のセーフティーネットを再構築する具体的提案の選択肢を示しました。その一つが、戸別所得補償制度の具体像として採用されたわけです。

 ですから、国民の食料を守るために必要な政策は、与野党を問わず、現場の農家や消費者、国民の声をしっかり踏まえて形成されるものであり、三だけ主義の、一部のための政策は、多くの国民にとって本意ではない。

 与野党を問わず、国会議員も、所管官庁にとっても、国民の食料を守るために必死に頑張る気持ちは同じはずです。なのに、今の一部の三だけ主義の利益を念頭に置いた、国民に有害な政策がまかり通って、誰もとめられない。この流れに終止符を打って、三方よしの社会を取り戻す法案をつくるべきであります。

 本法は、生産資材、食品流通にかかわる事業の再編を促しておりますが、事態の正常化のためには、それよりも政界の再編、結集の方が効果的ではないかとも思われます。

 以上で終わります。(拍手)

北村委員長 ありがとうございました。

 次に、小松参考人、お願いをいたします。

小松参考人 おはようございます。

 まず初めに、こういう貴重な場に発言の機会をいただきまして、感謝申し上げます。

 挨拶はそれぐらいにいたしまして、けさ、宿舎で新聞が置いてありまして、日本農業新聞が置いてありまして、それをとりました。そうしたら、競争力強化支援法案、きょう衆議院で採決、可決されるであろうというようなことが書かれておりまして、午前のこの参考人質疑はどうなるんだろうかなと思ったわけでありますけれども。

 しかし、食料に関しましては、この後申し上げますけれども、超長期的な話でございます。午後の部、どうなるか、これは皆さん方の御見識によるところでありますけれども、将来にわたっての問題であるということで、私は私なりの責任を全うしたいなと思っております。

 お手元に、三枚つづりのレジュメを用意しております。

 まず、私、自分自身の職歴とJAグループの関係を申し上げたいと思っております。

 私、専門は大学院の環境生命科学研究科、いろいろ長ったらしく書いてございますけれども、農学部の教員で、社会科学系、特に農業協同組合論を専門にしております。

 なぜ農業協同組合論を専門にしたかというのは、昭和五十八年、一九八三年、二十九歳数カ月のときに、長野県に設けられました、長野県の農協だけでお金を出してつくった長野県農協地域開発機構という、最近では余り使わない言葉ですけれども、シンクタンク、JA版のシンクタンクというものに就職いたしました。出身は九州の長崎でございますから、縁もゆかりもなかったんですけれども、現場でもまれたいというようなことで入りました。

 それまで農業協同組合論を専門的に勉強してきたわけではなく、耳学問で、JA批判、農業協同組合批判を学者先生方が言っているのを聞いておりましたが、私、就職して三カ月でころっと考え方が変わりまして、これだけきちっとやっている、もちろん、百点満点の組織というのはないはずでありますけれども、四十点や五十点、ちまたで言われているような組織ではないよねと。もしこれがなかりせば、なかったらどうだったんだろうかということを考えたときに、私は、その存在意義といいますか、それまでの歴史というものをもう一遍勉強し直すようにしました。

 そして、わずか六年ではありましたけれども、信州、そして可能な限りのところを見て回らせてもらって、勉強させていただいた。

 その後、平成元年から石川県の農業短期大学というところで教員の職を得て、ああ、所変わればこうも変わるものかと。いい悪いは別でございます。信州の高冷野菜、果樹、そういう地帯と稲作地帯というので、やはり農業協同組合の雰囲気も違うなという、いわばそこの風土の中で、農業協同組合もそれと一体化するような形で存在してきた。

 それが、平成九年から岡山大学に行き、果樹産地、そういったところでの農業の形態、農業協同組合の雰囲気というものを感じまして、ああ、やはり、三者三様といいますか、地域によって違うな、それもまた県内でも異なってくるなというようなことで、本当に農の世界というのは奥深いなということ、簡単に結論づけてはいけないなというのを、私自身つくづく、知れば知るほど学ぶようになりました。

 その下に、図でお示ししておりますけれども、今大切にすべきものは何なのかということで、JAの立ち位置からちょっと考えてみようというふうに思います。

 基本的には、農村社会に農業協同組合、JAは存在するわけでありますけれども、この農村社会というのは実は二つの層から成っている。表向きは、表層領域ということで、一応ビジネスというふうに書いておりますけれども、食料生産販売機能というのを担う領域がございますが、重要なのは基層領域というところでございます。

 ここは、その地域にある土地や里山や川や、そういった地域資源を管理し、そして人々のつながり、コミュニティーが形成され、伝統文化が育まれ、そして最近では防災というようなことも非常に重要な役割、信仰、神事、そういうことも担うところであります。ただ、これはもう当たり前のような世界でありますから、なくなってみないとその重要性がわからない、なくなったらもう取り戻すことはできないという世界であります。

 結論を急ぐようでありますけれども、現在のこういう競争力強化法案とか農業をめぐるさまざまな動きというのは、実はこの基層領域の重要性を御認識になっていないか、あるいはあえて目を伏せているかというようなことで、私は大変危惧しております。

 そして、農家実行組合とか農家組合とか、もう現場の人に聞けば、ああ、あれねみたいな、町内会みたいなものでありますけれども、こういうもので実は地域が支えられ、そして、そういうところの基層領域にある地域資源を活用しながら食料生産が営々と営まれてきた。

 しかしこれは、肥料、農薬は購入しなければならない、つくったものは売らなければならないということで、どうしてもビジネスの領域が必要になってくる。そこのところを、農家さんたちが出資し、地域の方々が出資して、自分たちの協同組織をつくった。

 ただ、その農業協同組合は、販売、ビジネスに関しましては、ほかの領域、いわゆる地域外、あるいは国内のほかの地域と取引をしなければならないということで、いわばそこで中央会とか連合組織というのが求められてくる。

 連合会の役員に現場の農家の方の代表が行って、レベルが低いというような意見がありますが、それは大きな間違いでありまして、中央会とか連合会が浮世離れしないために、現場の基層領域の動きをしっかりと理解してもらうためにそういう方々が代表として行っているんだ。そういう役割も非常にある。

 ただ、もちろん、全国的な視点というのは欠落している部分、弱い部分があるかもしれませんから、職員の方々、実務精通者がそれをサポートしてやっていく、こういう流れになっておるわけであります。

 この農業協同組合と異なる位置といいますか、立ち位置が違うのがグローバル企業。この図の右上に浮遊と。世界じゅうを駆けめぐる、しかし農村社会とか基層領域には責任を持たないということであります。片方で着土、地域に密着するという右下の着土という概念ですね。他方、グローバルにおいては浮遊という概念。

 我々は今どちらを特に重視しなければならないのかということ、これを私は強く申し上げたい。基本的には着土ですね。これは私の言葉ではなくて、福井県立大学の学長をやり、京都大学の名誉教授だった祖田修先生の言葉であります。意識を持って腰を据えて地域に根をおろす、着土でございます。

 次のページをお開きください。

 そういう中で、私は、協同の力といいますか、そういうものの有用性ということで、これは単純な図ではございますけれども、寿命が延びる、医療とか衛生等々の関連の進捗の中で延びる。そういう中で、実はQOL、クオリティー・オブ・ライフというのは延びているのかというと、これは皆さん方、私もそうでありますけれども、自分の、高齢者を抱えた家とか、そういうことを考えれば、QOLは決して寿命曲線と同じような角度では延びていかない。そのギャップを私は生き地獄と呼んでおります。

 組合員各位を生き地獄に落とさないために、本当なら、国家が社会保障でサポートしてくれるのが理想かもしれませんけれども、なかなかそういう状況にならない。それをきっちり、協同の力で少しでもこの寿命曲線に近づけるようにやって、生き地獄を組合員にもたらさないというようなことで、私は、農業協同組合、JAグループはやってきたんではなかろうかなというふうに思っております。

 という前提で、農業競争力強化支援法案を検討する際のポイントとして、私は、第二次産業、第三次産業の論理を第一次産業に簡単に当てはめるのはかなり問題である。

 かつてのペティの法則というのがあって、その国が経済的に成長していったら、人、金、土地、そういった生産要素が第二次産業、第三次産業に流れていく。第二次産業、第三次産業を成長させるために生産要素を供出していった産業が強くなれるわけがない。もし本当に強くなってほしいなら、これまで出した人や金を戻してから言ったらどうですかというのが本音の部分でございます。

 そして、こういう状況の中でも、一億二千七百万人を食料では困らせないという使命に立ったときに、いかなる強さが農業に求められるのか。私は、単純な第二次産業、第三次産業の論理の強さではなく、根強さ、根強い農業という言葉を使っております。それは、地域にまさに根を張った根強さ、そして国民、そして日本の食料を評価する国外の方々のまさに体、胃袋にしっかり入り込む、そういった両方における根強い農業ということを目指すべきであろうと思っております。

 そういう中で、私は、自給率が四割を切っているということは大変問題である。国民の基礎代謝、千ちょっとの熱量すら自国で供給できないということ、これは甚だ問題であろう。あえて言うなら、輸出を語る資格はない。輸出を語りたければ、食料自給率、そういうものをもっと、基礎代謝、六〇%ぐらいまで回復する、自給率を六〇%ぐらいまでに回復して後の話ではなかろうかなと思っています。

 農学部の教員といたしまして、私は、その使命ということを何なのかと考えるときに、生命の連鎖性というキーワードを持っています。これは、それぞれの生き物がつながっていくということであり、かつ、横のつながりを持っていく。そういう意味では、超長期の視点が必要だし、だからこそ、規制は岩盤でなければならない。簡単に壊されるということは、まさに国民の生命というものに危機をはらんでくるということであります。であるがゆえに、成長よりも安定、改革よりも日々の改善、改良ということが問われてきます。

 ぜひ御検討いただきたい事項といたしましては、先ほど鈴木先生もかなり強くおっしゃいましたけれども、競争力とは何ぞやということ。私は、ことしの農業の競争相手は昨年の日本の農業であった、ライバルは去年の農業である、そして、来年にとっての農業のライバルはことしの農業であった、そういう形での競争ということをやはり地道に続けていく必要があるのではないか。

 さらに、法文の中で、有利な取引相手という言葉がありますが、超長期に考えたときに何が有利なのか。極めて短期的に、どっちが得なんでしょうというようなことを法律の条文でうたうような話なのかというふうに私は思います。そして、そういう業者から買いなさいということを法律の条文で示すレベルの話なのかというふうに非常に疑問を禁じ得ません。

 次の、最後のページでございます。

 さらに、食料において卸売市場等々の流通業界がどれだけの責任を果たしてきたかということ。集荷、分荷、品ぞろえ、価格発見、代金決済、情報の提供、もう少しこの辺のところをやはり評価し、改善は必要かもしれませんけれども、どんどん民間に参入させて、あるいはなくして、そこを飛ばして直接取引をしなさいというようなところまで書き込むというのは、本当に法律としてこのレベルなのかなということで、非常に私は疑問を禁じ得ないところであります。

 時間が今、十四分ほどになりましたので、ぜひ、また後からの御質問にも答えたいと思いますけれども、結びのところで書いておりますが、やはり、我が国の食文化を守りながら、食料自給率六〇%を目指す、あるいは、人的資本への大胆な投資、農ある世界の人づくり、そして、ぜひ、多様な担い手、担い手の多様性を尊重し、そういう担い手が重層的に存在し、そして、生命の連鎖性というところをしっかりこの国が守り続けていくということを願って、こういうことを報告いたしまして、私の陳述とさせていただきます。

 どうもありがとうございました。(拍手)

北村委員長 ありがとうございました。

 次に、山下参考人、お願いをいたします。

山下参考人 山下でございます。

 きょうは、こういう機会を設けていただきまして、ありがとうございました。

 私は、前の方と違いまして、昔、役人をしていた過去官僚でございまして、若干事務的になるかもしれませんけれども、今回の法案に即して論点を整理させていただきたいというふうに思います。

 まず、最初のスライドなんですが、昨年の改革の評価なんですけれども、基本的な背景は、TPPに加入して関税が下がる、そうすると価格が下がるかもしれない、価格が下がったとしても、所得というのは価格に販売量を掛けた売上高からコストを引いたものですから、コストを下げれば所得は維持できるのではないか、そういうふうな観点が背景にあったのではないかなというふうに思います。

 そのときに、実は、これは私は数年前から言ってきたことなんですけれども、農業資材価格は物すごい内外価格差があるわけですね。その農業資材価格について初めて政策としてメスを入れたということは、大変画期的なことではないかなというふうに思います。そういう意味で、そこから農協のあり方についてその議論が発展したのではないかなというふうに思います。

 ただ、私がつき合っている農業者の人からすると、ホームセンターよりも農協の方が高い、これは前からみんな言っていたわけです。だけれども、日本で買う価格が、国際的な価格に比べて資材価格が高いということに初めて農業者も注目することになったということは画期的かなと思います。

 次に、次のスライドなんですけれども、何で柳田国男が突然出てくるんだというふうに思われるかもしれませんが、実は、柳田国男は一九〇〇年に東京大学の法学部を卒業して、当時の農商務省、今の農林省に入りました。当時、法学士がいなかったものですから、法律をつくろうとすると、内閣法制局にお願いして法律をつくっていたんですね。それでは大変だというので、商工省サイド、今の経産省サイドでは松本烝治、それから農林省サイドでは柳田国男を採用したわけでございます。

 ただし、柳田国男は農商務省で大変なひどい目に遭いまして、わずか二年足らずで法制局に出向してしまうわけです。そういう面からすると、私は農林水産省に三十年間も辛抱できましたので、そういう意味では、柳田国男よりはちょっと忍耐力があったのかなというふうに思っております。

 柳田国男の農政学なんですけれども、農業政策を考えるときに、二つの視点が必要でしょうと。消費者は安く売ってもらいたい、それから、生産者は高く買ってもらいたい。では、どうやってその二つの異なる主張を調和することができるのか。

 そうしたら、柳田国男は、農家の所得を上げようとすると、コストを下げればいいんですよと。規模を拡大してコストを下げる、あるいは資材価格を下げる、そういうふうなことによって、その両方の、消費者の利益、それから生産者の利益を調和することができるんだというふうに考えたわけでございます。

 次の四番目のスライド、五番目のスライドは、資材価格の国際比較と、トウモロコシが国内に入った価格、それから同じトウモロコシを国内市場で餌として売った価格、それから配合飼料で売った価格。

 こうした、トウモロコシが入ってきて、飼料用として売るときはその倍になります。さらに、配合飼料として売るときは輸入価格の三倍になってしまう。私は、どうしてこういうことになるのかよくわかりませんけれども、こうしたところにメスを入れてほしいなというふうに思っています。

 そこで、六番目のスライドなんですけれども、大変恐縮なんですが、羊頭狗肉の法案というふうに言わせてもらっているんですけれども、つまり、この法案の目的は何なんですかという意味です。

 うたっているのは農業の競争力の強化、これをうたっているわけですね。他方で、これは農林水産省がつくった資料だと思いますけれども、昨年十一月の文書では、「生産者の所得向上につながる生産資材価格形成の仕組みの見直し」と言っているわけですね。だけれども、競争力の強化と所得の向上というのは若干対立する概念ではあるわけです。

 つまり、所得というのは、先ほども申し上げましたように、売上高からコストを引いたものですから、所得向上のためには価格を下げては余り都合がよくないわけですね。ところが、競争力強化のためには価格を下げる必要があるわけです。価格が下がらないと価格競争力が上がりません。したがって、輸出もできないということになるわけです。

 次のスライドを見ていただきたいと思うんですが、四ページなんですけれども、これは、私の尊敬する、農業経済史を研究している暉峻衆三という方がおっしゃっていることなんですけれども、貧農層というのは、かつては、戦前は大変問題だった、これは一九六〇年代終わりには消滅したんだと。

 それから、その下のスライドは、農業の種類ごとの所得の状況なんですけれども、養豚農家の所得は一千五百万円もあります。養豚農家の所得をさらに上げるというのが本当の農政の目的なんでしょうかということです。それから、稲作農家の所得、農業所得は二十七万円しかありません。ほとんどが農外収入ですね。つまり、サラリーマンとしての収入、それから、高齢化しているので年金収入ですね。

 つまり、稲作農家の所得を上げようとすると、農業政策というよりも、トヨタとかパナソニックに一生懸命頑張ってもらう、こっちの方がはるかに所得の向上にはつながるということがあると思います。

 次のページを開いていただきたいんですが、これは、農業基本法の生みの親である小倉武一という人が、ちょうどウルグアイ・ラウンド交渉終了時ぐらいのときに言った言葉でございます。後で参考にしていただきたいと思います。

 それで、その下の十ページのスライドなんですけれども、人口減少が起こります、国内のマーケットは縮小します、そうすると、輸出をしないと、海外の市場を取り込まないと日本農業はもうやっていけないわけですね。そのときに、最初の参考人の人もおっしゃいましたように、輸出をする必要がある。

 輸出をするときにどうするんだ、価格競争力をつける必要があるわけです。輸出をするときに、相手国の価格から、関税を払わないとだめで、関税を引く必要があります。それから、輸送コストも引く必要があります。その引いた価格で日本から輸出しないと、相手国の農産物の価格と太刀打ちできないわけですね。つまり、相当価格競争力を上げる必要があるということです。その面で、今回の法案の目的は、全く正しい問題認識に立っているわけです。

 次に、次のスライドなんですけれども、経済学、余り農林水産省で経済学、経済学と言うと、私は随分嫌われたわけなんですけれども、経済学からすると、生産要素、これは農業資材ですね、農業資材の価格が何で高いのかというと、それは、農産物の価格が高いから農業資材の価格も高いんだ、こういうふうな経済学は発想をするわけでございます。

 したがって、資材価格の内外価格差がたくさんあるというのは、最も大きな原因は、農産物価格に大変な大きな内外価格差があるということに起因しているわけでございます。したがって、発想は逆になるかもしれませんけれども、資材価格を下げるためには、農産物価格を下げていく必要があるということでございます。

 そういう観点からすると、今回の法案は、良質かつ低廉な農業資材の供給をうたっています。でも、なぜ、良質かつ低廉な食料、農産物の供給をうたわないんですかということなんです。何で減反政策を維持しているんですかということなんです。減反政策というのは、農家に大変な補助金を与えて米の供給を減少させて、需給が均衡する価格よりもさらに米価を上げて、消費者に多大な負担をさせる。

 普通は、例えば薬でも医療でも、財政負担をしたら、国民に安く財・サービスを供給するわけです。ところが、この政策は、財政負担をして消費者負担をさらに引き上げているという、日本の国政上、最もスキャンダラスな政策なわけです。こうした政策をもう何十年も維持しているわけです。

 はっきり、こういう政策はいいんですかと。究極の逆進的な政策です。しかも、主食の米ですよ。ほかのものについてこうした政策をするのはまだわかります。しかし、我々が主食だと言っている米について、こういうふうな若干破廉恥な政策を何十年も続けているということでございます。

 次のスライドなんですけれども、米の内外価格差は一旦消えたんですけれども、その下にスライドがありますように、餌米の補助金を増加して、また内外価格差を開かせてしまったということでございます。

 ちょっと飛ばしてもらいまして、十六番のスライドなんですけれども、日本と異なって、アメリカやEUは、直接支払いというやり方で農業を保護する政策に移行しているということでございます。

 ちょっと長くなるので、めくっていただいて、二十というスライドに移らせていただきたいと思います。

 ここで、手段として、今回の法案の目的が果たして妥当なのかという議論をさせていただきたいと思います。

 農水省の資料では、肥料、農薬、飼料の価格が高い理由として、過剰供給構造による低生産性を挙げています。したがって、過剰供給構造ですから、つまり、業者の数が多いから、業者の数を縮小して、事業を再編する必要があるというふうに言っているわけですね。

 他方で、農業機械については、寡占による競争力が足りないので価格が高いんだと。したがって、事業者の新規参入を促進して価格を下げる、こういうふうな対策を講ずるべきだというふうに言っているんだと思います。

 しかし、論理的に考えて、供給が多いのであれば、資材価格は下がるはずなんです。もし農林省が言っているように、施設が多くて稼働率が低いのでコスト増になるというのであれば、もし、ある企業が稼働率を上げてコストを下げて価格を下げていけば、市場を独占できるわけです。でも、何でそんなことが起きないのかということなんです。つまり、問題はこんなところにあるんじゃないということなんです。

 何が問題か。つまり、次のスライドなんですけれども、企業にフルに操業させない、農業資材供給業界に特殊な事情が存在するからだろうというふうに思います。そうでなければ説明がつかないんです。少なくとも経済学の立場からすると、こういう状況というのは説明がつかないわけです。

 では、何があるのか。ある程度の独占的な要因がどこかに存在しているということでございます。特に、農協については、資材価格が高ければ高いほど、それに応じて販売手数料収入がパーセントで決まりますから、資材価格が高ければ高いほど、農協の経営にはいいわけです。

 実は、農協というのは、歴史をひもとくと、資材価格、肥料商がいて、高く肥料を売りつけられてしまった、したがって、それに対抗するためにつくったのが、農協、この前身の産業組合という組織だったわけです。ところが、年月がたつにつれて、農産物を高く売って農協の販売手数料がふえる、これはいいことです。でも、農産物の資材価格、肥料、農薬、農業機械を高く売れば売るほど農協の経営がよくなる、こういうふうなインセンティブが農協の経営を支配してしまったということでございます。

 先ほども申し上げましたように、二十二ページのスライドなんですけれども、より根本的な事情というのは、やはり農政による高価格政策が背景にあるんだというふうに思います。

 必要な対策としては、独禁法の厳正な運用による、適用による競争の向上だ。特に、農水省が出している資料によると、末端に行けば行くほど農協のシェアが拡大しているわけですね。つまり、市場独占力が高いわけです。それによって、その高い市場独占力によって、供給業界に対していろいろなアクションをとってくる、コントロールをしていくということがあるんだろうと思います。

 それから高価格政策、いつまでこの高価格政策、高い価格で消費者の利益を踏みにじりながら、農業だけが助かる、農業だけじゃなくて、農業に属するある団体のためにこういう政策をやるのか。これは早急に見直すべきだ、欧米がやっているような、価格から直接支払いというふうな対策を講ずるべきだというふうに思います。

 さらに申し上げますと、次の二十三ページのスライドですけれども、実は農協は、准組合員制度というのを持っていますから、それ自体では独禁法の適用除外の対象になりません。したがって、農協法第九条というのを設けて、独禁法の適用除外の規定の要件を満たすものとみなす規定を置いているわけです。

 だから、もしその農協法の、これは皆さんができることです。農協法九条を廃止するんです。そうすると、農協に独禁法が適用になります。そうすると、公正な市場が形成されるということでございます。それが嫌なら、農協は准組合員を外して、純粋に農業協同組合として生きる道があります。あるいは、今のJAは農業を手放して、地域協同組合として生きる道が残されています。このいずれかの道を選択させるというのが一つの道かなと思います。

 それからもう一つは、先ほど申し上げましたように、ホームセンター、HSというのはホームセンターの誤字で申しわけないんですけれども、ホームセンターより安く農協が売れば農協の手数料を上げてやる、こういうふうなインセンティブ、農協が安く資材を供給できるようなインセンティブを導入すべきだ、そういうものをビルトインすべきだというふうに私は思います。

 それから、最後に申し上げますけれども、もう国内のマーケットは、人口減少と高齢化で縮小します。日本農業が生き残る道は輸出です。輸出のためには価格競争力をつけないとだめなことは当然の話なわけです。その面で、今回の競争力強化の法案というのはそういう目的にかなうものだというふうに思います。

 それから、輸出というのは、実は金のかからない備蓄なんです。輸出をします。日本は、平時は小麦や牛肉を海外から買います。シーレーンが破壊されて、日本にそういうものを輸出されなくなっていったときに、その輸出している米を食べるんです。つまり、日本で輸出の備蓄をすると物すごく金がかかるわけですね。輸出というのは、金のかからない、ゼロの備蓄政策なんです。

 だから、先ほど自給率の話がありましたけれども、フランスの自給率はなぜ一〇〇%を超えているか。自給率というのは、国内で消費する以上のものを生産している、つまり輸出しているからなんです。自給率が一〇〇%を超えるというフランスは、輸出しているから自給率が一〇〇%を超えるんです。

 そうした事情をよく考慮していただいて、最後に申し上げたいことは、自由貿易こそが食料安全保障を達成する道であり、政策の手段としては、もういいかげん、減反みたいな誰もが喜ばない政策をやるんじゃなくて、直接支払いに行って、打って出て、農家の所得も確保する、消費者にもメリットがある、構造改革も進む、そうした政策を採用すべきだというふうに思います。

 どうも御清聴ありがとうございました。(拍手)

北村委員長 ありがとうございました。

 以上で参考人からの意見の開陳は終わりました。

    ―――――――――――――

北村委員長 これより参考人に対する質疑に入ります。

 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。武部新君。

武部委員 自由民主党の武部新でございます。

 きょうは、丸田参考人、鈴木参考人、小松参考人、山下参考人、大変貴重なお話をありがとうございました。刺激的なお話もありまして、どう質問していこうかなというのが正直ちょっと難しいところはあるんですが。

 ただ、丸田参考人も、私より五つもお若いんですけれども、大変しっかりなさって、こういった経営者をしっかりと我々も育てていくと言ったらあれですけれども、つくっていくことが非常に大事だということは共通認識だと思っています。

 それから、丸田参考人のお話の中にあって、非常に、大規模だけがもちろん道ではなくて、篤農家の皆さん方、要するに、地域の皆さん方としっかりと協力して農業をやっていくということが大事だというお話がありましたけれども、まさにそのとおりであって、経営能力の高い農業生産者を支援していくのと同時に、その支援する仕組みの中で、農協さんですとか全農さんですとか彼らもその努力をしてもらって、その支えていく一助を担っていただきたいということでこの支援法が私はあると思っております。

 そこで、丸田参考人にお聞きしたいんですけれども、経営者として、企業ですから、農業所得というよりも利益を向上していく上で、よいものをつくる、おいしいものをつくるというのはもちろんだと思うんですけれども、その努力はもちろんだと思いますけれども、経営上、生産コストをどう抑えていくか、そのバランスについてどうお考えなのか、お聞かせ願いたいと思います。

丸田参考人 それでは、まず初めに、おいしいものをつくるというところなんですが、弊社としましては、おいしいものという基準は非常に難しいとまず考えています。

 例えば、今、一般的に、皆さん、おいしいお米と聞いたときに、多分、白いお米に梅干しとめんたいことかそういうので食べることを考えられると思いますが、では、果たしてそのお米が本当におすしに合うかとかカレーに合うかというと、その時点でなかなか難しいものになります。つまり、おいしいというのは用途によって全て変わってくることになりますので、一概に、おいしいということだけで何に合うのかというのは、僕らは非常に難しいというふうに考えています。

 ですから、そうすると、まず、お客様に合ったものを提供するというところで話が進んでいって、その中で、では、そこに対するアプローチとして生産コストをどう下げるのかというふうな形の段取りになっていくのかなと思っています。

 生産コストを下げるところは、先ほど申し上げたように、僕らは作期分散をしていかに減価償却費を下げるかというところがポイントだと思っているんですが、これはすごくバランスがどうかと言われると、非常に僕らとしては、本当に五分五分みたいな形で、おいしいものを、客先に合うものを御提案させていただくと同時に、それを作期の中でどこにはまるのかということを考えて、品種を先ほど申し上げたようなデータベースから選んできてつくりますので、そういったのがもう両輪としてやはり会社の中で動くような形になっているかなというふうに思っています。

 ですから、生産コストだけを追求すればおいしいものができるわけでもないですし、おいしいものをつくるからといって生産コストが上がるわけでもなくて、それはやはり両方をちゃんと見ながら、僕らとしては本当に五分五分というような形で考えていく形になるのかなというふうに思っています。

 ただ、最後に申し上げたいのは、生産コストがどんと上がるということは僕らも絶対したくないことなので、そうすると販路は見つかりませんから、やはり生産コストを圧縮する前提の上で全てのことを考えていくというようなことになるのはもう間違いないことかなというふうには思います。

武部委員 ありがとうございます。

 手をかけて、コストをかけて、自分のやりたい農業でやっていくということも非常に大事なことでもあるんですけれども、今、丸田参考人のお話のとおり、求められるものにどうやって応えていくかという中で、それに合わせた営農で農作物をつくっていくということだと思うんです。

 丸田参考人は、自分で販路も持っていらっしゃって、最初、農協が委託してくれるのを知らなかったというお話があったんですけれども、自分で販路を持っているメリット、強みというのはすごくあると思うんですよ、先ほどもお話をされていましたけれども。

 しかし、我々は、マーケットインをした農業経営をしてもらいたいということもこの中に入っていまして、ですから、なるべくコストを抑えて、有利な販売、有利な条件というのは一体どういう条件だという先生方の話もありましたけれども、しかし、自分たちでどういったものを選んで、肥料もいろいろなものを選びながら、求められるものをつくっていくということは、すごく大事な感覚だと思うんですね、経営感覚だと思うんです。

 それは、ある意味、販路を持っていないとできないことなのか。それとも、今お話の中で、輸出については全農の協力をもらいながらなさるというお話でしたけれども、役割分担があって、全農はグローバルで、それから単協、地域農協は中小規模の農業をしっかりと支えてというお話もありました。

 このマーケットインの感覚というのは、丸田さんから見ると、全農とか農協とかに期待する部分というのはどういうところにありますか。むしろ、それは全農でないと、非常に販路も持っている組織をどう生産者が利用すべきと考えられますか、丸田参考人。

丸田参考人 やはり系統組織というのは量がありますので、そういった面では、求められるものをつくるというのは非常にあるのかなと思います。

 ですから、僕らは、ある程度もう規模が大きくなっていて販売会社も持っていますので、数万俵というお米を取り扱わせていただくので、そういった面では、考え方としては、いわゆる系統組織と僕らというのはそんなに大きく多分変わらないのではなかろうかというふうには思っています。

 ですから、僕らがいいとか系統がいいとかというのではなくて、結局は、やはり求められているものをどのようにしてつくっていくのか、それを生産者がつくるのか。結局、幾ら系統さんがこういうのをつくってほしいと言っても、生産者がちゃんとつくるということを判断しない限りはふえませんので、そういったことを考えると、系統もやはりそういった手段だと思いますし、僕らみたいな商系も一つの手段であるというふうには思います。

武部委員 ありがとうございます。

 数日前にちょっとある監査法人さんとお話ししたことがありまして、アグリビジネスを展開されています。農協さんに行かれたり、あるいは中央会さんともおつき合いをされているんですけれども、何をされているかというと、監査法人なので、農協改革の中で会計士監査の部分なのかなと思ったら、そこではなくて、内部管理の強化ですとか、あるいは販路の拡大ですとか、さらに言うと、地域営農の強化までコンサルをしているという話を聞いたんです。

 これは僕はいいことだと思います。私の地元北海道は、非常に営農指導もしっかりやっているし、購買事業も販売事業もすごく一生懸命やっているんですけれども、いわゆる農協改革の中で、第三者の意見を取り入れながら、地域の営農指導まで、少し足りなかった部分を第三者の目を入れていろいろと話をしようということを各地でやり始めているんです。そういう話を聞きました。それには、もちろん地域と農協としっかりと一緒になってやるということも大事だし、中央会組織、県中央会組織ともしっかり連絡をとり合ってやっているという話がありました。

 鈴木先生にお聞きしたいんですけれども、農協改革についてはかなり厳しい御意見をお持ちのところがあると思うんですが、そういったような動き、農協が自主改革で進めていこうというような動きについて、お考えがあれば教えていただきたいと思います。

鈴木参考人 貴重な御指摘ありがとうございます。

 農協組織が自己改革として営農指導にさらに積極的に取り組む、そのほか、農家組合員あるいは地域の皆さんから農協に寄せられているいろいろな御不満、御批判に対して、しっかりと真摯に受けとめて徹底的に改善していくという必要性は非常に高い。そのために、たくさんの農協はもう既に一生懸命努力している。そういう意味での自己改革を徹底することは、今、間違いなく不可欠であり、求められており、一生懸命みんなもやっておるというふうに私も理解しております。

 その一方で、そういうふうな農協の取り組みを強化するんだというふうな名目、あるいは農業所得を向上するんだという名目のもとで、農協の一番の重要な役割である、個々の農家の力が弱い者を結集し、共販し、あるいは資材を共同購入する、これは、ある意味、独占を許容するものなわけですよね。一方の大きな買い手や売り手に対して、農家の皆さんが力が弱いから、農協というものに結集して、独占を許可し、それによって拮抗力を持つということが世界の原則なわけです。

 そのことに対して、それが不当な競争条件を招いているから農協を解体すべきであるというふうな議論は、全くこれは農業所得の向上とか農業の振興には逆行することであって、そういうふうな形での改革というものは、これはやはりおかしいということをしっかりと一方では主張していく、こういう二面性があるというふうに私は思っております。

武部委員 丸田参考人が、今、鈴木先生の前にお話しされたとおりでありますし、鈴木先生のおっしゃっているとおりでもあるんですけれども、農協にも、やはり選ばれる農協になってもらわなきゃいけないんだと思います。農協の持っているパワーもありますから、バイイングパワーもありますから、それを使えるところは丸田参考人も使っていくべきであるし、お話の中にもありましたけれども、中小規模の、まさに鈴木先生がおっしゃっているような、弱い立場の皆さん方をちゃんとフォローしていくということの機能というのは重要でありますし、その上で、今回の法律の中でも、選んでもらえるようにその努力をしてくれということを、我々は全農さんにもプログラムの中でもお話をして、了解をとって、改革を進めましょうというような話をしています。

 そういった意味では、まさに、農家の皆さん方が届かないところの構造改革ですとか、経営努力だけではできないところをしっかりと、構造改革もそうですし新規参入もそうなんですけれども、そういうことができる環境をつくっていくというのが今回の法律でして、それに対して丸田さんも大変期待をしているということを表明していただきました。

 もう一つ大事なことが、ちょっとなるほどなと思って聞いていたんですけれども、丸田参考人が、品種、しっかりと農作業を分散させて、平準化させて、そしてうまく農地を、今でも百町歩以上やっているんですから大規模ですけれども、その限られた農地の中をうまく使って所得を上げていくというお話。これは僕の地元もそうでして、基本、畑作三品なんですけれども、あいている時間というのは必ずあるんですよね。そのあいている時間に何を植えてもうけるかということは、それぞれ農家のすごい工夫をしているところだと思うんですよ。

 いろいろな意味で単一じゃなくて複合的な経営を進めていくというのは、米作農家もそうだと思うんですけれども、米の中でもいろいろな、早い遅いというのも入れてやるということは非常に大事なことであって、こういうことについて、たしか山下先生も、工業にはならないけれども、しかし平準化をどんどん進めていくことが大事だというようなお話を私は読んだことがあるんですけれども、その点について、もうちょっと詳しく、実際やっていらっしゃる丸田参考人と、そして山下参考人も御意見があればちょっとお伺いしたいと思います。

丸田参考人 やはり作期分散をしていかないと機械の稼働率が全然上がりませんので、そういった面では、非常に僕らとしてはもったいないと思っています。

 例えばコンバイン一台、僕らが使用するような六条の百二十馬力、キャビン付の機械になると、定価で一千七百万とかします。普通の農家さんが、では、二週間ぐらい使います、七年償却で、七年掛けますと、約百日使うと考えた場合、単純に一日当たり十七万円になります。一日十七万円を使う作業機械ってほかにあるのかと言われると、多分ないんですよね。なので僕らは、そんな投資、農外参入、新規就農だったので、まず現金が用意できないですから、いかにそれを圧縮するかということを考えました。

 そうすると、僕らは、八月末から九月、十月というところで、実際には約八十日間の稲刈り期間を設けて、晴天率が七割とすると六十日ぐらいです。六十日を七年で考えれば、四百二十日で一千七百万を割ればいいわけですから、約四万二千円から三千円ぐらいまで下がる。ということを考えれば、単純に四分の一ぐらいにコストが下がるわけですよね。僕らとしては、いかにそれをするかということを考えていかないといかぬのだろうと思います。

 ただ、これは単純に、では農業機械を下げないでいいじゃないかということになると思うんですが、それでもやはり減価償却費はすごく重い負担になるので、僕らはさらに圧縮しなきゃいけないですし、こういったことをすると、今度は一年当たりに使う期間がどんどん長くなるので、今の農業機械の耐久性だと全然足らなくなる場合が出てくる。

 そうすると、より耐久性があってということをやはり僕らとしてはより求めなければいけなくなってくるので、そこはぜひメーカーさんにも考えていただきたいですし、僕らがいかにそれを一農家として言ったところで、先ほど申し上げたような、バイイングパワーがあるわけではありませんので、こういった構造が変えられるような形での法案の中でそこを環境整備していただければ、より早く、生産者の大規模化が起きていくのはもう明確なので、そういったことにではメーカーさん変わってくださいと僕らが言い続けるよりもねじを巻くことができると思いますので、そういった面で、非常にこういった法案というのは僕らは必要なんだろうというふうに思っています。

山下参考人 どうも、私の本を読んでいただきまして、ありがとうございます。

 農業と工業の違いは、農業の場合は、自然それから動植物を相手にするということですね。だから、稲作でいえば、田植えの期間それから稲刈りの期間、これに物すごく労働が集中するわけですね。

 例えば北海道でいえば、十ヘクタール規模の、都府県でいえば大規模な経営があるんですけれども、冬が迫りますから、どうしても田植えの期間を十日間とか二週間ぐらいしかとれないわけですね。したがって、夫婦二人でやろうとすると十ヘクタールぐらいが限度で、人を雇って、パートを雇ってやっと二十ヘクタールぐらいが今の北海道の稲作経営の実態だと思うんです。

 ところが、中国地方の中山間地域、山間地域で、夫婦二人で二十ヘクタールやっている経営があるんです。それはなぜかというと、標高差がありますから、段々に田植えをしていくわけです。しかもいろいろな、わせ、なかて、おくてというのを組み合わせていけば、もうほとんど、三月ぐらいから十二月まで田んぼにいることができるわけです。つまり、作業を平準化する、そういうことによって、夫婦二人で二十ヘクタールの規模をできるわけですね。

 冬場は何をしているかというと、それぐらいの大きな規模であると、ミニ農協ぐらいの米の生産があるわけですね。それを、冬場はマーケティングをやっているわけです。スーパーに直接やっている。

 それから、丸田さんの例なんですけれども、大分とか山口とか、そういう農家と連携して、機械なんかも一緒に使おうという運動があります。実は、ドールという会社が、九州から北海道まで七つの農場で農業を展開しています。ブロッコリーをつくっているんですけれども、作期がずれますから、どんどんどんどん人を移動させることによって労働者も活用して、機械も物すごく償却コストも下げる、こういうふうな経営があるので、そういう意味では、日本は極めて恵まれた国だと、コストをもっともっと下げられるというふうな条件があるんだろうというふうに思います。

武部委員 ありがとうございます。

 山下参考人も、家族経営でもいろいろと知恵や工夫をすれば十分コストを下げてやっていけるというお話だったと聞きました。

 それで、もう時間が来るんですけれども、最後に、丸田参考人、GAP、団体の取得第一号で、今指導員もやられていらっしゃるんですね。今、我々も規格・認証の議論をしています。簡単で結構なので、GAP取得のメリットを、感じたところがあればお話ししていただきたいと思いますし、恐らく社員さんなんかに、GAPの生産工程管理なんかをする上で、社員教育なんかにもメリットがあるんじゃないかなと思うんですけれども。

丸田参考人 まさかGAPの話が出るとは思っていなかったので、全然答えを用意していなかったんですが。

 実は、かれこれ十年近くやっておりますので、そういった中で、弊社にとってはGAPというのは社内のルールをつくるための道具というような位置づけになっています。ですから、うちの従業員さんにGAPのことを聞いても彼らは答えられないと思います。というのも、社内でもマニュアルがあったりルールづくりがされていたり、そこのための道具としてGAPを活用しているからという形なので、会社のルールに従っていれば、いつの間にかもうGAPができているというような形になると思います。

 僕らは、やはり農場にとってGAPというものは農産物の安全性を担保するものとして最低限の重要なものであるというふうに考えています。例えば、自動車メーカーさんが車を売るときに一番重要なのは多分その安全であって、ブレーキがきくということによって乗る方々の安全を守ることが最優先だと思うんですが、僕ら農産物、食べ物をつくっている者として一番重要なのは、その農産物の安全という部分です。ですから、もし、そこのところを、GAPが面倒くさいとかというような農業者の人たちがいるのであれば、彼らは経営者としてその農産物の安全を担保する気があるのかないのかというところを、まず彼らは自分自身に問うべきだというふうに僕は強く感じています。

 ですから、そこのところができて初めて、本当はその上でマーケティングがあって、おいしいものをつくるというところになるはずなのであるので、なので、そこのところで、先ほど、本法案でもある努力項目というものが農業者にもし求められるのであれば、そういったところも含めた形で、農業者自身がより成長しなければ、考え方自身も成長しなければいけないんだろうというふうに思っています。

 ですから、僕らはその安全性が担保できるような仕組みを持っていることで、例えば外食の方であったり商社の方であったりという方たちとお話しさせていただけるようになりますので、結果として、僕らとしては販路を得るような形になる。

 今回の場合は、オリンピックとかがあれば、よりそれが明確に見えているのであれば、生産者の方々は、自社の中でもプラスになるし販路でもプラスになるというふうに、もうそれが明確でありますので、これは取り組む以外のものは僕はないんじゃないかなというふうには思っています。

武部委員 ありがとうございました。

 小松参考人、質問ができなくて申しわけございませんでした。

 以上で質問を終わります。ありがとうございました。

北村委員長 次に、中川康洋君。

中川(康)委員 おはようございます。公明党の中川康洋でございます。

 きょうは、参考人の質疑ということで、参考人の先生方、本当に貴重な時間をいただきまして、大変にありがとうございます。主に、現場の思い、感覚からのところを中心に御質問をさせていただければと思いますので、どうぞよろしくお願いを申し上げます。

 初めに、人材の育成について、丸田参考人にお伺いをしたいと思います。

 丸田参考人は、二〇一五年の四月に開催された産業競争力会議の場で、御社を紹介しているパワーポイントの資料などにおいて、人材育成の仕組みの必要性について何度か触れられております。拝見をさせていただきました。

 例えば、御社を紹介するパワポの中で、継続して取り組むべき課題の一つに、「人財」育成と。このジンザイのザイは、いわゆる財産の財という字をお書きいただいていますけれども、具体的には、「経営者がほとんどいない今、人財育成がされていることはまれ。」である、このため、農業生産法人の従業員を対象に、社会人基礎力をベースとした育成の仕組みを行政が提供し、次世代のミドルマネジメント層、そしてトップマネジメント層を育成することが将来的にも短期的にも急務と考えるというふうにお書きをいただいております。

 実は、今回、政府が決定した農業競争力強化プログラム、この中にも人材力の強化というところがございまして、具体的には、農業教育システムの推進とか、就職先としての農業法人などの育成、さらには次世代人材への投資、こういったものが掲げられているわけですが、これらの取り組みは、基本的には、丸田参考人の人材育成のお考えと私は軌を一にするのではないかなというふうにも思っております。

 それで、今回改めてお伺いをしたいのは、これからの農政における人材育成の必要性、さらには、今回、この農業競争力強化プログラムに人材力強化というものが入っているところに対しての感想などをまずお聞かせ願いたいと思いますので、よろしくお願いをいたします。

丸田参考人 一言で言ってしまえば、非常に期待をしているというところだと思います。

 先ほどから申し上げているように、大規模化が進んでいくと、やはり経営の仕方ということをきちんと考えていかないと非常に難しくなってくるだろうというふうに思っています。

 大体、例えば四十ヘクタール、六十ヘクタールぐらいまでだとある程度勢いでいける部分はあると思うんですが、自身、百ヘクタールをやってみたときに、全く違うマネジメントがやはり必要になってきます。それは、やはり金融機関に対してもそうですし、事業計画をつくるとかというところに関してもそうです。

 そういったところを自分自身が経験していく中で、やはりそういったことを学ぶ場があるということは非常に今後も重要だろうと思いますし、そういった人材を、今後、一つの企業という組織の中で考えていった場合に、一般企業であれば、二十年、三十年のスパンの中で、きちんとした育成プランがあった中で普通は一般的にはやられていきますが、農業の場では余りそういったことが今まで語られることがなかったので、どうしても、今後そういった企業的な部分が出てくるのであれば、それに対する何らかの準備ということは必要だろうと思いますし、そういった面で、この人材力の強化ということがあることには非常に期待をしているというふうに申し上げます。

中川(康)委員 ありがとうございました。

 資料を読ませていただいて、人材力とか人材の育成という部分で、現場の人材力だけをおっしゃる方というのは結構今までいたと思うんですけれども、しかし、丸田参考人の場合は、基礎力は当然育成しながら、その後のミドルマネジメント層、さらにはトップマネジメント層という、こういった認識までお持ちになりながら、そこをやはり行政も一緒になって育成をしていってもらいたいと。これは今回のプログラムの中のいわゆる人材力の育成に私は非常に合致しているんじゃないかなというふうに感じたものですから、現場の思いというか課題も含めて、いろいろな思いをお持ちになっていると思いましたので、そのところをお伺いさせていただいたわけでございます。

 次に、二点目に、既に御意見の中にも出ていましたが、今後の米の輸出の可能性について、丸田参考人並びに山下参考人にも御意見をお伺いしたいと思います。

 現在、政府は、平成二十八年五月に決めました農林水産業の輸出力強化戦略、これに従いまして、二〇一九年までに一兆円の目標で輸出額を伸ばしていこうということを頑張っているわけであります。この品目の中には当然米も入っておりまして、その輸出の目標額は、米の加工品も合わせてではありますけれども、六百億円ということを掲げているわけでございます。

 丸田参考人は、先ほども申し上げましたこの産業競争力会議の場で、米の輸出について、将来的には輸出を考えている、しかし私はコシヒカリを輸出するのが一番だとは全く思っていない、現地の方々が食べたいものをつくる、要はマーケットインの体制をつくる、このことが大事なんだということをおっしゃっていただいておりまして、現在、先ほどもお話がありましたが、JA全農と組んで、東南アジアなどへの輸出、これを始めているというお話をいただいております。

 また、山下参考人も、先ほどもお話がありましたが、私、読ませていただいた資料の、昨年十二月の商工ジャーナルへの寄稿、「農業改革の新展開」の中で、輸出可能性のある国産農産物は何か、それは米なのだと明言をされているわけであります。

 ですから、ここでは両参考人に、今後の我が国における米の輸出の可能性並びにその戦略、既に一部お答えいただいたところもありますが、改めてここのところをお聞かせ願いたいと思います。

丸田参考人 やはり、米の輸出の可能性というのは、先ほど申し上げられているとおり、僕もあるんだろうと思っています。

 ただ、やはり、海外で求められる米って何なのかということを知ることが非常に重要だろうと思っています。例えば、すごく変な例えなんですが、スパゲッティ、今はパスタと言いますね、パスタが日本に入ってきて、日本の今食べているパスタというものの中で、昔、ナポリタンという、むしろ伸びているような麺のものの方が日本人はおいしいと感じる、そういったものは海外の人と日本の人というのは嗜好がやはり違う部分が必ずあると思うんです。

 ですので、米も、輸出する先のところで、日本人がおいしいと思うコシヒカリが果たして海外の人もおいしいかと言われると、それに対する確信はやはりないわけで、そういった中で、海外の方々がおいしいというお米に対して僕らはアプローチをしていくべきなんだろうというふうに思っています。

 ですから、そこに対する育種が今後されていったりという、そこもバックアップがしていただけるのであれば、非常に輸出の未来も明るいだろうというふうに思っています。

山下参考人 私は、日本で最高の輸出品目というのは米だと思います。なぜかというと、こんなに減反しているんです。四〇%も減反しているわけです。一番生産余力があるのは米なわけですね。ただし価格が高い。

 私のスライドの十三ページにあるんですけれども、一旦、二〇一四年度に内外価格差が逆転したわけですね。これはSBS米の資料なんですけれども。でも、この一万二千円とか一万四千円とか、今の六十キログラム当たりの米価の水準というのは、減反政策によって維持されている政策なんです。もし減反政策をやめれば、私の計算では、七千円とか八千円ぐらいに落ちます。

 では、七千円、八千円に米価が落ちたときに何が起こるかというと、商社が七千円、八千円で買い付けます。それで輸出するんです。そうすると、実は輸出価格まで価格は戻るわけです。そうすると、例えばそれが一万一千円の水準だとしますと、多分、日本の米の生産量は今は七百五十万トンぐらい、七百五十万トンを切るような状況ですけれども、一千二百万トンぐらいには私はいくんだと思います。そうすると、単純に計算するだけで、米の輸出額は八千億円になります。

 その輸出の可能性、どういう市場があるかというと、実は中国は、昔は全部インディカ米しかつくっていなかったんです。インディカ米の生産、消費だったわけです。ところが、日本の炊飯器が普及したことによって、ジャポニカ米の方が炊飯器で炊くとおいしいというのがわかり始めて、十五年前にはゼロ%だったジャポニカ米の生産が、今は三割まで拡大しているわけですね。中国でジャポニカ米の需要が物すごくふえてきている。

 それから、カリフォルニアでも、実は私、昨年調査に行ったんですけれども、日本米は現地のカリフォルニア米の二倍、三倍の価格で売られている。

 こういう状況を目にしますと、やはり、世界に冠たる品質の米を、もっと価格競争力をつければ、つまり、ベンツをある程度安い価格で売れば必ず売れるわけです。日本でレクサスが売れているのと同じような状況が世界市場で起こってくるのではないかなというふうに期待しています。

中川(康)委員 ありがとうございました。

 両先生とも、非常にここに可能性を見出されているお話をいただきましたし、いわゆる価格の競争力が出てくれば市場は海外にも拡大していくというお話をいただいたのかなと思っています。

 特に、丸田参考人からは、いわゆるマーケットインの体制ですね、コシヒカリが我々としてはいいものを、それを向こうに売ればいいんだという感覚ではなくて、いわゆる現地の需要というか、その思いに沿ったところでどう出していくのかという、このところのお話をいただくことができたのかなというふうにも思っております。

 さらには、山下参考人からは、非常に戦略的な部分もありましたけれども、減反との兼ね合わせのお話もありましたが、しかし、これからの可能性があるところは米であると。現状、輸出戦略で二〇一九年一兆円というふうには言っているものの、米のウエートというのは非常に、まだまだないんですね。しかし、最も可能性があるのはここなんだというところ、今までの議論の中で余りなかった視点ではなかったのかなというふうに思いましたので、先生の原稿を読ませていただいて、そのところの思いをいま一度確認させていただいたわけでございます。大変にありがとうございました。

 次に、少し観点を変えまして、丸田参考人にお伺いしたいんですが、今回の競争力プログラムの中には、全農の自己改革を進めるための外部からの人材登用という、そういった項目が入っておるわけでございます。

 丸田参考人は、実はもともとエンジニアということを今お話しいただいて、農業については農外参入からの新規就農者であるというふうに今御自身でおっしゃっていただいておりました。

 少し失礼な発言になるかもしれませんが、私は、丸田参考人がもともとは全く畑違いのエンジニアであって、御社を立ち上げるまでにも幾つかの仕事を経験されているというところ、いわゆる非農家出身の新規参入者だったからこそ、現在取り組まれている米農業に対して、例えば、おもしろいかもしれないという新たな可能性とかイノベーション、これを見出すことができたのではないかな、こんなふうに思っています。これからの農政もイノベーションがなければだめだというお話も今いただいたわけです。

 そこで、一つお伺いしたいんですが、今回政府が取りまとめた農業競争力強化プログラムには、特に全農の取り組みについて書いてありまして、その最後にこのように書かれています。全農は、自己改革を進めるため、役職員の意識改革、さらには外部からの人材登用、また組織体制の整備などを行うというふうに示されておるんです。

 私は、この中の特に外部からの人材登用というのは、これまでの組織にはなかった新しい風というか新たな風を内部に入れるという意味において、やはりある意味必要なんじゃないかなというふうに感じている一人なわけですが、当初全く違った分野から農業という分野に可能性を見出して新規参入された丸田参考人として、この外部からの人材登用の必要性とか、さらにはその効果、こういったものがどう出てくるのかというのを、御自身の経験からも含めてお話をちょっと賜れればというふうに思っております。

丸田参考人 基本的には、私、エンジニアから農業に入ったんですが、物事の考え方としては多分変わらないと思っています。

 それは例えば、情報を集めてそれに対する判断をするとかというのは、考え方のスキームとしては、それが農業だろうと工業だろうと変わらないだろうと思っています。ただ、情報の集め方だったり最後の判断をするというところに対して、やはり工業とかと農業というところは違うんだろうというふうには感じます。

 ですから、やはり、新たな風を吹き込むということであれば、改革をする目標があるのであれば、外からの人材が入るということはある一定程度の効果はあるだろうというふうに思っています。

 ただ、私自身も農業に入ったときに、では農業の考え方が全て悪なのかと言われると、それはもう全くなくて、むしろそこのところがあって、それで外からの新しい考え方があって初めてそこで融合して新しいものが生まれるというふうには思いますので、そういった面では非常にいい効果が生まれるのではないかというふうに思っています。

 ただ、先ほども申し上げたように、イノベーションというものに関しては、「イノベーションのジレンマ」という著書があるように、やはりそこの、自分たちの中で起こすということは非常に、利益があるところに対してどうしても依存せざるを得なくなるので難しい。ですので、切り離すことによって初めて、そこのところからイノベーションを起こしやすくなるということになるかと思いますので、そういった面で考えても、やはり何らかのそういった外からの風等というのはあるのかなというふうには思っています。

 ただ、私自身、農業に入ったときに、やはり農業のよさもすごくあって、工業にはないよさもありますし、工業のいい部分ももちろんありますので、そこのところだけは、どっちがいい、悪いというものではないということだけは最後にお伝えしておきたいと思います。

中川(康)委員 ありがとうございました。非常にいい御指摘をいただいたかなと思っています。

 というのは、自己改革を進めなさいよというふうに書いてあるんですが、それは下手すると全否定するような、そういう感覚にも捉えられる場合があるんですね。しかし、今参考人がお話しいただいた部分で、既にある考え方から、ある意味一つプラスするんだ、オンするんだ、そういったところの観点をいただいたのかなというふうに思っています。

 私は、全農が担っている役割とか特性とか、全農しかできないものというのも当然あると思うんですね。しかし、自己改革の必要性があると。そこには、やはり新たな風を入れる中で、一つオンしていく、プラスしていく。それを今参考人の御経験からいただくことができたのかなと。

 そして、加えてイノベーションですね。このイノベーションは、特に私も、自分の経験から、やはり内部からのイノベーションというのはなかなか難しいものがあって、外部からの力によって、最初はいろいろな、あつれきと言ったらちょっと言い過ぎになるかもしれませんが、状況があるかもしれませんが、しかし、それによっていい方向に変わっていく、そういったところがあるのではないかなというふうにも思っておりましたので、ちょっと予期せぬ質問をしてしまったかもしれませんが、御経験から含めてお伺いをさせていただいたところでございます。

 次に、この部分も丸田参考人にお伺いする部分で、思ったままでお答えをいただければと思うんですが、今回の支援法には事業再編とか事業参入ということが書かれておるわけなんです。今回は特に、良質かつ低廉な農業資材の供給とか農産物の流通などの合理化、ここに向かって事業再編とか事業参入を促進すると。私、これが全てで、これで全部うまくいくというふうにはまだまだ思い切れていないところもあるんですが、しかし、今回の法案は、ある意味、具体的には最もここがエンジンになっているのかなというふうに思っていまして、そこに対しても支援措置というのが入っているわけなんです。

 それで、本当に、思いの中から入っていわゆる物事をおつくりになってきたお立場として、やはり、今回のこの再編とか参入というのはある意味一つの御興味でもあると思いますし、それが実際にどう起こっていくのかというところも、現場で今事業を拡大されている中で、弊害も感じているだろうし、可能性も感じているというふうに思います。

 そういった意味において、今回の法律案に書かれている事業再編とか事業参入、これが大きく進んでいくのかどうか、どれぐらいの可能性があるのかというところ、御自身の経験からで結構ですので、その辺のところの御感想をちょっとお聞かせ願いたいというふうに思います。

丸田参考人 可能性は、多分、農業者自身がつくる問題だと思います。ですから、やはり、そういった、変わっていくということは、私たち自身が求めていかないと変わらないでしょうし、僕自身は変えるべきだというふうに思います。変わらないということが停滞であれば、停滞は僕の中では、会社経営の中では衰退でしかないと思っているので、そこの中で常に新たな変化を起こして次のステップに行くということが今後の新陳代謝も含めた中で必要だと思いますので、やはりその改革というのは必要だろうと思っています。

 ただ、やはり、本来もっと早くから起こらなければいけなかったんだろうというふうには、そこは強く感じていますので、そこを、では今から急激に、どうしても、私たち農業者自身の再編が先に起きてしまうようなことになったときに、環境的に追いついてこないということがやはり問題になると思いますので、そういった面で、やはり環境をもっと、先ほどから何回か言っているみたいに、ねじを巻いていただいて、そこを推し進める中で、生産者サイドもどんどん大規模化をしていくというような形で、ここが両方の、一緒の中で動いていくのかなというふうには思っています。

中川(康)委員 ありがとうございます。

 今回の再編とか参入というのは、ある種一つの強制性を持ってされるのではないかという、こんな懸念なんかも聞かれる中で、私はやはり自主的に進められるべきだという思いを持っているわけなんです。

 しかし、それだけではなかなか進まないものがあって、そこに対してのやはりインセンティブというのが当然必要になってくるだろう。それから、やはり迫られるべき状況というのもあるだろうというふうにも思っておりまして、ですから、意図せぬところで再編とか参入が起きてはいけないだろうし、しかし、あるべき方向の中でこれは進んでいく、そういった形でうまく進んでいくことの必要性、ここが大事なのではないかなというふうに思っておるものですので、今まさしくその渦中で、そういったことも含めて前に進もうとされている参考人にちょっとこの点についてお伺いをしたわけでございます。

 残り時間がもう迫ってまいりました。

 最後に、非常に具体的なところ、現場の感覚からお聞かせください。

 丸田参考人は、いわゆるトラクター等の機械の中で、最終的にはこの耐久性が重要になってくる部分もあると。そして、スイッチ等、使ったこともないものなんかも並んでいて、安価なものが入ってくることも必要である、こういったお話をいただきました。私もごもっともであるというふうにも思っています。

 しかし、トラクター等、農業機械のベンチャーを含めた企業の新規参入については、この新規参入によってコストが下がる、さらには使いやすくなるという、こういった喜ばしい面もある反面、私も実は兼業農家の一人でございますので、現場の感覚として出てくるのが、トラクターなどの農業機械のメンテナンス、アフターサービス、これをやはりしっかりと担保していくことが必要であるというところの話を伺うときがあります。まさしく耐久性をどう持たせていくのかというのは、このメンテナンス、アフターサービスと表裏一体だというふうに思います。

 そうなってくると、ベンチャー等の新規参入の中で、例えば海外メーカーが入ってきた、ベンチャーが入ってきたという中で、機械の納入はできたとしても、アフターサービスまでしっかりと担保されるのかどうか、こういった心配の声を私は現場から少し聞くところがあるわけですが、既にそういったところに非常に注力され、思案されている参考人として、この辺のところについてのお考えを最後にお聞きして終わりたいと思います。

丸田参考人 そこはもうまさにおっしゃるとおりだと思います。やはり農業機械、どうしても壊れるものですので、そこのサービスがいかにあるかということがやはり重要だと思います。

 ベンチャーであるならば、逆に求めるのは、僕らが整備しやすいものを考えてくるという可能性もありますので、一概に心配だけをしていては進まないわけですので、逆にそういった、整備しやすいというところも、それこそ先ほど出ているイノベーションということを起こしてくださるようなことを期待しつつ、心配のところはやはりその整備であるというふうにお伝えします。

中川(康)委員 ありがとうございました。

 非常に示唆に富むお答え等をいただきました。この内容を本当に参考にさせていただきまして、採決等に反映させていただきたいというふうにも思っております。大変にありがとうございました。

北村委員長 次に、岸本周平君。

岸本委員 民進党の岸本周平でございます。

 きょうは、丸田参考人、鈴木参考人、小松参考人、そして山下参考人、本当にお忙しい中、ありがとうございます。

 きょうは、聞かせていただいておりまして、本当に重層的な、四人の参考人の方のそれぞれの御発言が深く絡み合って、大変参考になっております。そのことをまず感謝申し上げたいと思います。

 それで、この農水委員会で去年から農協改革の議論をずっとしているんですけれども、なかなか意見がかみ合わないわけです。与野党でかみ合わないんですけれども、与党の中でも大議論をされているわけですから、なかなかかみ合わないんです。

 私はたくさん要因があると思うんですけれども、一つは、農協という協同組合、協同組合については鈴木参考人からも陳述があったわけですけれども、協同組合なんですけれども、恐らく、これはまた小松参考人にも聞きたいんですが、農協の協同組合の組合員である農業者が、実は長年のプロセスを経て組合員であるという意識を持ってこられなくなったんじゃないか。

 むしろ、農協の組合員でありながら、お客様ですね、農協という事業体に対してのお客様になっていたのではないか。そこのギャップが、先生方がそれぞれ言う意見の違いとか、あるいは我々が議員同士で議論する中の論点のすれ違いに何か結びついているのではないかなという気がしてたまらないんですね。

 そういう意味では、例えば山下参考人が最後におっしゃったように、信用、共済事業は地域協同組合、我々も地域協同組合としての生き方があるというのは再々申し上げているんです。一方で、農業のところ、経済事業のところは専門農協でやるという、この専門農協という山下参考人のときの意識は、恐らく鈴木先生がおっしゃる協同組合としてのものと全く多分中身は一緒なのではないかと思っていて、多分、お二人の中で、そういう意味では協同組合というものに対する意識、考え方の違いはないと思うんです。

 丸田参考人は最初から自主独立でやっておられるので、農協というのはちょっと横から見ているだけかもしれないんですけれども、四人の方にお伺いしたいのは、私が思っていますように、農協問題の一つは、農協の組合員である農業者がお客様になってしまっているのではないか、自主性がない、農業者の方に自主的なものがないからかなという感じを持っているんですが、四人の参考人の方に御意見を伺いたいと思います。

 順番にお願い申し上げます。

丸田参考人 一応うちも組合員ですし、お取引もしっかり、地域で一番大きいぐらいありますので、そこはお伝えしておきたいと思いますが、私自身も、やはりおっしゃられることと全く同じだと思っておりますので、先ほど陳述の中で申し上げさせていただいたような、ヒエラルキーのトップは農業者である、そこがやはり変わっていかなければいけないのじゃないかというところで表現させていただいているつもりでございます。

鈴木参考人 貴重な御指摘ありがとうございます。

 農協のあり方につきましては、今先生から御指摘のあった点について私も同感する部分もあります。このことを考える上で、やはり農協が地域にあってどういう役割を果たしているのかについて、もう一度みんなできちんと整理する必要があると思います。

 農協が農業に対する営農指導を強化すべきであるということがございますが、それはもちろん重要でございます。そこがおろそかになってはいけません。ただ、営農指導というのはそもそもサービス的な事業、つまり、そもそも赤字のものでございます。そこをしっかりとやるためには、信用、共済等ほかの事業から利益が出る分、黒字が出る分、それを還元することで地域農業を振興することができる。

 つまり、地域の農業振興をし、農家の皆さんが食料をつくり、それで地域の皆さんの命、生活を守る。そして、農家の皆さんや地域の皆さんがまた農協の信用、共済事業も利用することで、そこから上がってくるお金の一部をまた農業振興に回す。こういうふうな循環がしっかり回っているのが今の農業、地域における農協の役割であるわけですから、そのことについて、もう一度組合員も、地域の皆さんも、農協の職員の皆さんも確認することが私は重要であるというふうに考えております。

小松参考人 結論から申し上げます。

 御指摘のとおり、当事者意識を欠如した組合員がふえてきているということは事実でございます。

 ただし、本当の部分で全く赤の他人のような意識、我々が普通の業界に対するような、パーフェクトな顧客かというと必ずしもそうではない、その辺のところが非常にデリケートな部分だと思っております。

 以上です。

山下参考人 私は、若干異なるニュアンスなんですけれども、おっしゃるとおりだと思います。

 それは、組合員がお客になっているという意識よりも、農協が組合員を、組合員が主人のはずなのに、主人じゃなくて資材を高く売りつけるお客だというふうに思うようになってきた、これが大きな問題だと思います。

 それから、総合農協なんですけれども、金融もやる、実はこれは、最初はそもそも信用組合とそれ以外の組合というのを分けちゃったわけですね。それを、いろいろな経緯があって、金融もできるし、生保もできるし、損保もできるし、何でもかんでもできる法人にしてしまった。これは私からすると、戦後農政の大きな失敗だというふうに思います。

 何でもかんでもできるようになってしまう。専門農協からすれば信用事業なんかの援助がないというふうなことを言われるかもしれませんけれども、実はオランダなんかは、例えば普及事業なんかはもう全部廃止したんですね。全部コンサル会社がやっています。コンサル会社にして、そのコンサル会社に手数料を払うということによって、ちゃんと農協もどきの組織が生き残っているわけですね。そういうふうな組織が日本にもあったらいいなというふうに思っています。

 私は、農協自体を否定しているんじゃなくて、農協制というのは極めていい制度だと思います。柳田国男も言ったように、小農をして大農の利益を得さしむる、これが産業組合、農協の趣旨だったわけです。ただ、残念なことに、今のJAという農協は、その目的とか趣旨から相当大きく離れた存在になってしまったのじゃないかなというのが私の認識でございます。

岸本委員 ありがとうございます。

 それでは、この法案の中身について、二点お聞きをしたいと思います。四人の参考人の方にそれぞれお答えをいただきたいと思います。

 まず、第五条のところであります。

 既に触れられた方もあるんですけれども、これは、私も役人をやっておりましたし法律も書いてきたんですけれども、物すごく違和感のある条文であります。こういう条文が自由主義経済のこの我が国で法案として成立するというのはもう私には信じられないことでありまして、この辺は過去官僚の山下参考人にもぜひお聞きしたいんですが、「有利な条件を提示する農業生産関連事業者との取引を通じて、農業経営の改善に取り組むよう」という努力規定を農業者に与えているんですね。ここの文章を読むと、青信号は渡ってもいいですよ、赤信号は渡っちゃだめですよとしか書いていないわけですね。こんなことを努力規定として書くという先進国は、私はないと思いますね。

 しかも、丸田参考人もおっしゃったように、最初の役所がつくった条文では、客観的な判断をするとかあるいは主体的に判断とか、まだそれでもぎりぎり農業者の自主的な視点を認めていましたから、ぎりぎり法制局的にもあり得るのかなと思いますけれども、「有利な条件を提示する」、これはよく法制局を通ったなと思いますけれども、法制局を通らないですよ、一昔前なら。官僚出身の方は笑っていらっしゃるけれども、法制局を通りませんよ、こんな「有利な条件を提示する」なんて。何ですか、有利な条件ってことなんです。

 これだけ農業者を上から目線で見おろすような条文を法律として書くことは、私は大変違和感があります。丸田参考人は、逆に、すごく謙虚なお立場から、農業者としてもこういうことはすべきだという謙虚なお立場からおっしゃられましたけれども、これは、もう一度お答えいただいて結構なんですが、私には非常に違和感のある条文になっておりますが、四人の参考人の方の御意見を承りたいと思います。

丸田参考人 それだけ私たち農業者が何もしていなかったのではないかというところの裏返しではないかなというふうに思っています。

 例えば、安いものの情報が提示されました、でも、私たちが知る努力をしなければそれを知ることはできないわけで、今まではもう目の前のところだけの、例えばJAさんから来たものだけを買ってしまうということになってしまえば、せっかく環境が整えられているところに対して僕らはそれを享受できないということになりますので、そういったことであれば、このように、私たちが努力をしなさい、いろいろな情報をちゃんと提示するような環境を資材関係者の方々にはもう努力させているんだから、私たちもそういった情報を得るような努力をするということがあってもいいのではなかろうかなというふうに一生産者としては思います。

鈴木参考人 私は、この条項につきましては、一連の農業競争力強化プログラムの中で、農協改革、実質的な農協解体の方向性が出されていることと連動している。わざわざこのような奇妙な条項を入れておるのは、要するに、農協を通じた共販や共同購入からできるだけ離脱して、そこを中抜きして、有利な条件を提示するほかの業者と直接取引をしてください、こういう意図が読み取れるというのが自然な解釈ではないかというふうに思います。

小松参考人 私も、今回、こういう場で初めて法律の文章というのを隅から隅まで読ませていただきまして、このレベルなんですか、この国の立法というか法律というのは、はあっという感じが正直なところでございます。ですから、今議員から質問されて、ああ、やっぱりそうだったんだ、私が、はあっというのがど素人の発想ではなかった、これが普通の話なんだなと思いました。

 そして、有利なところ、これは先ほども私は陳述で申し上げましたけれども、どうやって判断するのかというところが全然はっきりしない。要は、結論は、あなた方は農業協同組合で高いものを買わされています、もっと安いものがありますからそこを使いなさいよと言っているような話で、そもそも、そういうことを法律の条文で書くべきかどうか、甚だ疑問であります。

山下参考人 今、農協との話が出たんですけれども、現場の実態はもうこうなっているんだと思うんですね。

 私は、三重県に、トマトのハウス栽培の業者のところに、県庁と農協の人に案内してもらって行ったんです。そのときに農協の課長さんがいたんですね。でも、そのトマトの、実はウナギの養殖業者から転換した人なんですけれども、その人に、あなたはどうやってこのトマトを売っていますか、農協を通じて売っていますか、それとも商人系のところを通じて売っていますかと言ったら、それは農協を通じて売るに決まっているじゃないですかと。

 つまり、そのトマトの農家は大きいんですけれども、名古屋の卸売市場に売れるほどのロットはそろわないですね。だから、したがって、農協のブランドを使って売っているわけです。

 では、わかりました、あなたは、資材、肥料、農薬はどこから買っていますか、農協から買っていますか、そうじゃないですかと言ったら、横に農協の課長がいるんですよ、そんなの農協から買うわけないでしょうと言ったわけです。つまり、安いところから買う。

 つまり、今の経営者は、販売で有利なところ、それから、資材で有利なところから実際は買ってきているという実態にあるんだと思います。

 それから、確かに、こうした義務を課すというのは普通の企業ではあり得ない話なんですけれども、ただ、それは、全て国から全く補助を受けていない、保護もされていないというんなら、言う資格はあると思います。でも、国からこれだけ補助を受けて、高い農産物の関税で保護されて、やはり、こういうことを言われてもある程度しようがないなという感じも私はしないでもない。

 そういう意味で、これはそれほど、私は個人的には目くじらを立てる必要はないんじゃないか。むしろ逆に、農業者にもっと責任を、食料安全保障で農地は必要なわけですね。でも、その農地資源をどんどんどんどん壊廃して転用してもうけたのは誰なのかというふうなところを、根本的なことをこの農林水産委員会で議論していただきたいなというふうに思います。

岸本委員 どうもありがとうございます。

 四方とも、それぞれ参考になりました。やはり丸田さんは大変謙虚な方だと思います。成功されるだけのことはあるなと改めて敬意を表したいと思います。

 その関連で最後の問いなんですけれども、これもまた私には物すごく違和感があるんですが、良質かつ低廉な農業資材の供給を実現するために、事業再編や事業参入をさせるというので、寄ってたかって国がげたを履かせて甘やかして、やってくれと。要するに、甘い水がないと来ないわけですね。

 そういう法律事項になっているわけですが、この農業資材のマーケットに参入障壁があったのかという点が、私は一番の問題だと思うんですね。参入障壁はなかったはずです。参入障壁があれば、それを正すのは国の責務かもしれません。しかし、参入障壁がない自由なマーケットなのに、再編も起きなければ参入も起きない。

 丸田さんは、いろいろ私も資料を見ましたけれども、本当に御苦労されて、失敗もなさりながら経験を積んで、今なさっているわけですよね。新しくマーケットに入る人というのは、そういうことなんですよ。ともかく志を持って、いろいろな困難を乗り越えながら頑張っていく、それで、ベンチャーもそうですけれども、新規参入をして成功していく、それがマーケットの活力になり、経済成長を促すわけです。

 寄ってたかってげたを履かせないと来ないような弱い人に入ってもらう必要はないし、これはもう自由主義経済を真っ向から否定するわけであります。と私は思っておりまして、非常に違和感があるんですけれども、非常にマーケットメカニズムを無視し、かつ政府がともかく過剰介入するわけですね。これを私ども、小さな親切大きなお世話と呼んでいるわけでありますけれども、この点について四人の参考人の方に御意見を承って質問を終わりたいと思います。お願いします。

丸田参考人 農業の現場にいると、果たして参入障壁があったのかないのかと言われると、正直わからないです、僕らは。

 ただ、実態を見ていたときに、そういった新しい再編だとか参入がなかったんではなかろうかということは、僕らがやってきた中では気づくわけです。例えば、これは海外とのやりとりを考えていったときに、日本の国としてはこんな参入障壁はないよと言っておきながら、海外の人たちが入ろうと思ったときには参入障壁はありますよという議論というのはよくありますよね。多分、それと同じような形で、僕らは中にいるので参入障壁がないように見えていますけれども、実は外から見るとあったんではなかろうかというようなところは少し感じたりはします。

 以上です。

鈴木参考人 貴重な御指摘ありがとうございます。

 この件につきましては、先生のおっしゃるとおり、国がこういうことについていろいろな関与をして導入、誘導するということについて、どれほどの意義があるかという点は問われるかと思います。

 いろいろな業界はそれぞれ競争をし、あるいは協調をして、また機械の産業の方につきましてはかなり寡占的な構造もあるということの方がむしろ問題になっておるわけでございますけれども、そういう点で一番重要な点は、個々の農家の皆さんが取引をする上で、生産資材の産業、機械や肥料、農薬の産業と取引する上での双方の取引交渉力の垂直的な競争関係の方が問題になるというふうに私は思っております。

 つまり、そこの点で農家の皆さんが弱いということがあるから、そういう場合にはそれを是正する、対等なパワーバランスにしていくのが、それが正当化される、それがまさに協同組合、農協の共販や共同購入の役割でありますから、そういう視点で、競争政策的に何か政策をする必要があるという場合には、その垂直的なパワーバランスをどう是正するか、こういう部分の方が重要なのではないかというふうに考えております。

小松参考人 正直なところ、私も、参入障壁というのは具体的に制度的にあるのかどうかというのは正直わかりません。

 ただし、他業態から見たときに、精神的なバリア、心理的なバリア、これは、やっちゃうと全農さんとのほかの取引がちょっとしんどいかもしれないねとか、そういうことはそんたくするみたいな、ことしの流行語大賞でしょうけれども、そういったことはあるかもしれない。

 それをどこまで問題にするのかということと、実は隣の芝生はという話になってきまして、経済が右肩上がりのときには、さして隣の芝生は気にならない、自分のファミリーが成長しているときには。だけれども、右肩下がり、縮小均衡するときに、やけに、隣はそれなりに生活しているね、隣の芝生はよく見えるね、あそこは協同組合としてみんなでがっちりスクラムを組んで、自分たちのところでいろいろな事業や活動をやっているよねと。

 その利権と言ってはなんですけれども、そこがマーケットとして大変おいしいと思う人が何らかの力を使って、参入障壁があって入りにくいよと。それはあなたの心理的バリアでしょう、やるならやったらいいじゃないというような、突きはねるぐらいのことが本当は必要ではないか。それを法律の条文で書き込んで、さあ、やりましょうというのはやはり問題である。

 以上。

山下参考人 おっしゃるとおり、肥料メーカー、肥料業界とか機械業界とか農薬業界の中では、それ自体としては参入障壁はないのかもしれません。ただし、農協という物すごい巨大な買い手の、買い手であるし、農家に対しては売り手でもあるわけですね。なかなか農協以外のところから普通の農家は買えないという心理が働いているわけですね。そういうふうな巨大な、独占的な組織が川下にあることによって、農協が注文を出す、そのときに、注文を出すだけじゃなくて、肥料の場合は、海外からの原料の供給も全部全農がやっているわけですね、農協がやっているわけですね。だから、原料の供給から販売まで全部コントロールしている。こういう存在が実は肥料業界とか農機具業界とかそういうところにある意味での市場のゆがみを生じさせてきているというふうに思います。

 それから、北海道のある農家で私が聞いたんですけれども、米の農家なんですけれども、実は韓国から肥料を輸入しているんです。個人で輸入しているんです。そうすると、ホクレンから買うよりも三割安く買えると。こういうことがあるんですけれども、ほとんどの人は知らないわけですね。

 かつて、北海道で広域農協というのをつくって、実は韓国から船で輸入したんです。最初の船は沈没して、二番目の船はやって、それでも肥料を三割安く供給できたわけですね。しかし、その農協はいつの間にか消えてしまったというふうなこともあるわけですね。

 そういう意味で、何らかの形のゆがみがこの資材供給業界には存在している。個々のマーケット、市場では、業界ではそういう新規参入を阻害するようなものはないんだけれども、全体としてはある程度の独占的な仕組みがあるんだろうというふうに私は認識しています。

岸本委員 どうもありがとうございました。これで終わります。

北村委員長 次に、斉藤和子君。

斉藤(和)委員 日本共産党の斉藤和子です。

 本日は、参考人の皆様、貴重なお時間をいただきまして、また御意見をいただきまして、ありがとうございます。

 早速質問をさせていただきたいと思います。

 まず最初に、所得にかかわって、四名の参考人の皆様からそれぞれ御意見をいただきたいというふうに思っております。

 本法案が出される過程の中で、TPPなどの協議もあり、農産物の価格が下がるということが見込まれる中で、いかに農業者の所得を維持し、上げていくかというような競争力強化プランなどがつくられる中で本法案がまとめられてきた経過があります。

 その上で、この法律によって農家の所得が上がるというふうにお考えになられていらっしゃるかどうかということと、あわせて、農家の所得を上げていこうというふうに考えたら何が必要だとお考えなのか、この点について四名の方からお聞きしたいと思います。お願いいたします。

丸田参考人 まず一つ目の所得は上がるかというところに関しては、僕は上がると思います。

 二つ目、所得を上げるためにはというのは、高く売るか原価を下げるか、この二つしかないと思いますので、高く売れる環境に今ありますかと言われると、ノーだと思います。そういった面では、やはり原価を下げるというところが必要だと思いますので、そういった面の後押しがもしあるのであれば、本法案はその方向ですので、僕としては、非常にいいんじゃなかろうかというふうに思います。

鈴木参考人 私は、農業所得は上がらない可能性の方が高いというふうに考えます。

 それは、今、丸田さんがおっしゃられたように、所得を上げるにはコストを下げるか価格を上げるかですが、この法案が目指すところは、むしろコストも上がり、それから販売価格は下がるということが考えられる。つまり、逆に言えば、農業所得をしっかり上げるためには、ここで、全体の流れの中で否定されている農協の共販、共同購入をむしろ強化する。それによって、しっかりと、生産資材が安く供給され、そして農産物の販売価格が上がるという状況を支援する必要がある。その部分が欠けている点が大変な問題だ。

 それから、農協が生協さん等と一緒になって、生産者と消費者を結んで、そして本物の価値に適正な価格形成をするというようなスイスでのような取り組み、こういうものについても、さらに政策的にも支援する方向性も打ち出す必要があるのではないか。

 それから、欧米の農業所得がいかにして形成されているかという点は、もう一度しっかり検証しないといけないと思います。

 私の資料の五ページにもつけさせていただいておりますように、日本で農業所得に占める補助金の割合は三〇%台でございますが、スイスでは一〇〇%、イギリスで九一%、フランスで九五%、ほとんど農業所得の全部が補助金で賄われている。このことを我々はどう考えるのか。

 命を守り、環境を守り、国土、国境、地域を守る産業は国民みんなで支える、これが当たり前であるという感覚が欧米の常識なわけです。それに対して、日本は今、ただコストを下げて、強い人が残ればいいんだと。

 確かに、丸田さんのような立派な経営がしっかりと発展することは重要でございます。ただ、この法案のもとになっている流れを見ますと、丸田さんのような頑張っている農家も含めて、既存の農家は全てある意味潰れてもいいんだ、その後に、優良な農地だけ、大手流通産業等で今農業に参入したいと言っている何とか会議のメンバーのような方々が、利益相反で、国家戦略特区で自分が入ってくるとか、そういうことばかりやっているわけですよね。こういう方々の経営がただ残ればいい、こういうふうな形になっては、農業所得の向上も食料自給率もあったものではございません。

 ですから、農業所得の向上というのであれば、もっと全体の、家族農業も含めた経営が、地域が、環境が、国土が守られるような、そういうふうな、しっかりとした欧米のような直接支払いの仕組みを本質的に議論すべきである、そういうふうに考えております。

小松参考人 そもそも、この法律は農業者の所得を増大させる目的を持っているのでしょうかという話です。

 だって、書いてないんですもん、目的のところにも、理由のところにも。一カ所だけあったのが、第五条の農業者等の努力のところの三に、農業者の組織する団体云々で第一項のいわゆる農業者の有利な取引ですかを行うに当たっては、農業者の農業所得の増大に最大限の配慮をしろと。つまり、全農であるとかJAグループは配慮しろと、ここに出てくるだけでありますから、本当にこの法律が、御質問のように、そもそも農業所得の増大を、向上を目標にしているとは思えない。

 目標にしているならば、目的のところに書き込むべきであります。書いてないということは重大な瑕疵でありますということです。

 次に、素直に質問を受け取りまして、上がるのか下がるのかといったときに、今一つ、農産物価格に対して、消費が冷え込む、何でなんですかね、苦しくなるとやはり食費を削ろうというんですか、そこにしわ寄せがどうしてもやってくるという実情。

 非常にその辺のところがあるということと、やはり片方で、フードバンクであるとか子供食堂という取り組みが、本当なら脚光を浴びるということが、注目されるということが悲しい出来事ではあるんですけれども、そういうところの動きが出てくる。子供の貧困が六分の一である。そういうようなことを考えたときに、やはり農産物価格が上昇する方向には動かないだろう。

 次に、では、費用、コスト削減。

 産業というのは、釈迦に説法かもしれませんけれども、つながっているわけですよ。ですから、農業者に対して、おい、政府・与党のおかげで段ボールが安くなったよ、誰々君と言われて、褒められて喜ばれている先生もいるようでございますが、そうするとどうなるかというと、ああ、コストが安くなったなということで、値下げ要求が来る可能性は必ずある。

 そういうことで、私は、なかなかそういう望ましいことにはいかないだろうというふうに思っております。

 以上でございます。

山下参考人 私の意見はここにいるほとんどの人の意見とは違うと思うんですけれども、スライドの七ページと八ページを見ていただくとわかるんですけれども、これは暉峻衆三という極めて私の尊敬する、農業経済学者の中でごく限られた先生なんですけれども、もう貧農というのは消えたんですね。

 この折れ線グラフというのは、農業所得を勤労者世帯の収入で割ったものです。一九六五年ぐらいから、農家所得は勤労者世帯の収入を上回って推移するようになったわけですね。だから、下のグラフにあるように、もう稲作農家の所得というのは、農業所得はごくわずかしかないわけです。そういうものを一生懸命倍にしたって、三倍にしたって、四倍にしたって、十倍にしたってふえないわけですね。

 そうすると、農政の目的として農家所得の向上を掲げるというのは、もう今や完璧な時代錯誤だと。農政の目的として、食料の安定供給とか食料安全保障とか、それを掲げるのは私はわかります。だけれども、農家の所得の向上を挙げるというのはとんでもない話だと思います。

 だから、さすがに、政府・与党の中では、強化プログラムの中では所得の向上と書いていて、今回、法案には所得の向上という文言が落ちたということは、私は大変評価しているところでございます。

斉藤(和)委員 貴重な御意見をいただきまして、ありがとうございます。

 ちょっとまた角度を変えまして、第八条の四のところで、衆議院ではもう通過をしたんですが、種子法の廃止が議論をされました。今参議院に行っています。

 レジュメの方で鈴木参考人と小松参考人がそれぞれ種子について書かれていますので、この種子のところで、小松参考人は質問があればというところで触れられていませんので、ぜひ、民間参入を促進することや、今まで都道府県が有していた種苗の生産に関する知見の民間への提供を促進するというふうに書かれているこの中身について、御意見を伺えればというふうに思います。鈴木参考人と小松参考人にお願いいたします。

小松参考人 私も、恥ずかしながら、農学部の教員ではありましたけれども、種子、種苗の重要性というのは、まあ皮膚感覚といいますか、当たり前として理解しておりましたけれども、こういう動きが来ているということについては、不勉強のそしりは免れないんですけれども、恥ずかしながら、今回、ここ数カ月、驚きながらフォローしてきたわけであります。

 種苗ビジネスとか種子戦争とか種子戦略とかと言われるぐらい、やはり我々の食料というのは、Aという車とBという車からCという車は生まれないわけであります。例えばの話、雄しべと雌しべ、そういう種子の存在があってこそ生まれてくる、まさにそこが生命の連鎖性である。そこのところを、公的な責任を放棄してよいのかどうか。

 それから、民間にそういう知見を渡しなさいと。そういう基本的に重要な、例えばの話、米の品種改良でも八年、九年でやっと日の目を見る、だけれども、そのときにはもう国民の食味が変わっていたりすると売り物にならないという、ある面では絶望的なこともあったりする。それでも、そういうことを公的な負担においてやっていく、責任を持っていくという、一種の食料に対する公的な責任を負うという意味で、種子に関する、あるいは種苗に関する責任を単純に民間へみたいな形で渡すことはいかがなものかというふうに、非常に責任の放棄であるというふうに私は思っております。

 以上です。

鈴木参考人 私も同様の意見で、公共性の高い種子という食料のまさに源、要するに人間の命の根源にかかわる米などの主要食糧の種子であるからこそ、これは、国が、県が責任を持って開発し、安く普及するということをとってきたわけです。

 この一連のプログラム、法案に流れている思想というのは、基本的には、何でも民間活力を活用すればうまくいくんだという考え方がありますが、それによって自分たちが利益を得たいという企業もたくさんおるわけです。

 そういう人たちにとっては、こういうふうな形での規制緩和というものが非常に役に立つわけでございますが、特に米の種子などが、今までの成果がそのまま譲渡されるということは、まさに多国籍な遺伝子組み換えのバイオメジャーにとってはぬれ手にアワで、こういうものを活用して、少しだけ自分たちで手を加えて、それを特許化して、それで自分たちのものだと主張して独占し、種をコントロールする。こういうことがどんどん行われたら、私たちは国民の命を守ることができません。これは大変重大な問題だ。こういうことがもう既に種子法が廃止されて進んでいるということは、本当に重大な禍根を残しているということを考えないといけない。

 全ての問題、民間活力の活用ということで規制緩和して、そして、人の命や安全性、そういうものにかかわる懸念があるのに、ただ民間を活用すればいいということがどんどん進められている。

 これは世界的にも、こういうことをやったらいろいろな問題が生じる。格差の是正、それから人の命、安全性、環境、地域、いろいろな問題を含めて、こういうふうな流れというのは、世界的には今否定されつつあるわけですよ。なぜ日本だけがいまだにこういうふうな形で、規制緩和一辺倒で、そして、実はそれは一部の巨大企業の利益につながっている、こういうことを続けるんでしょうか。

 この点について、必ず見直しをしないといけない。その非常に大きな問題が、この種子法の廃止と民間活力の活用、譲渡の問題だというふうに考えます。

斉藤(和)委員 ありがとうございました。

 次に、丸田参考人にお聞きしたいんですけれども、新規就農をされて、最後の発言のくだりに、大規模だけではなくて、地域の篤農家の方々と両輪になってこそという御発言があったと思うんですが、どんな経験の中で、大規模だけではなくて、地域の農家、篤農家の方とも連携しというか両輪でというふうにお感じになったか。経験というか、最初からそうだったのか、経験の中で変わってきたのか、その辺をお聞かせいただければと思うんですが。

丸田参考人 最初は何も考えていなかったので、経験からという形になると思うんですが、結局、では果たして、私どものつくっている同じコシヒカリで考えた場合に、弊社のつくるコシヒカリがおいしいかと言われると、必ずしもそうではないわけですね。篤農家の方々で、何十年も経験を積まれてきてつくられている方々の方がやはりおいしいお米をつくられるということが多々あるわけです。

 僕らは、それに追いつこうと思ったら、数十年たたないと追いついていけないわけで、そういった方々がブランド価値を高めて、その地域のブランドも維持して、次の世代に伝えていくということがやはり起こり得るわけですね。

 例えば新潟県だと、南魚沼の関さんというすごく若い生産者がいるんですが、全国でのそういった品評会とかでもトップの賞をとるような方々がいらっしゃるわけです。そういった方がいる新潟で、一方、僕らみたいなこういう大規模な生産者が出ていくことによって、多分、皆さんの中で、新潟というものの多様性とブランド価値というのは維持できるのではないかというふうな議論をそういった若者の中でもしていく中で、やはり僕らは、それはどっちがいい悪いではないよねと。では、例えば、全部おいしいものだけつくってくださいというと、彼らは百町歩でおいしいものを今度はつくられないわけですから、手間がかかるわけで。では、農地を守らなくていいんですかと言われると、そこはやはりノーなわけですよね。

 そういうふうに考えていったときに、やはりそれは僕らとしては両輪であって、それがあることによって、初めは新潟県という視点で考えていましたが、もうちょっと大きな視点で考えていけば、輸出というところだったり、ほかのブランディングということでも考えていくと、やはりその両輪がそろって初めて成り立つのであろうというような考えに至ったということになります。

斉藤(和)委員 やはり私も、非常に多様な農業のあり方が求められているだろうなということを感じています。

 最後に、今、農水省は必要ないと言わんばかりの論調が一方であるわけですけれども、今後の農政というか、農のあり方、その全般についてぜひ御意見を、今度は山下参考人の方から一言ずつ、今後の農政についてどのように、何が今求められているのか、お考えなのか、ぜひお聞かせいただければと思います。

山下参考人 一九〇〇年に、その前ですかね、農商務省という役所ができて、もう随分長い時間がかかるんですけれども、戦前の農林省の一番の狙いは、小作人の解放、つまり貧農の救済、それから零細な農業構造の改善、これだったわけです。

 小作人は農地解放で、その農林省の夢はかなったわけです。それから、所得の向上、貧農の解消というのも、農外所得がふえるという形で、つまり、農業政策がよかったんじゃなくて、産業政策が地域に分散してくれたおかげで、兼業農家ができて農家所得が向上した、こういうことで解消されたわけですね。

 残念ながら、零細農業構造の改善というのはまだ実現していません。丸田さんのような人たちもどんどんどんどんふえています。だけれども、まだたくさんの米の零細な兼業農家が、高米価政策、減反政策のおかげで、農業に、米産業に滞留しているわけですね。そこの改善が必要だと思います。

 究極の目的は、国民にいかに安く安定的に食料、農産物を供給するか、これに尽きるわけです。この目的を達成できない役所なら、私はもう要らないと思います。

小松参考人 きょうの日本農業新聞ですけれども、昨日のこの委員会での一問一答のところで、村岡議員が農水省の、名前が書いてありますから読みますよ、奥原次官が、農業が産業化し、農水省が要らなくなるのが理想だと言っているが、大臣も同じ考えかというような質問をされて、そんな話は聞いていない、彼は小規模な家族農業については大事にしようという意見を頂戴している、この記事が真意を伝えているかどうか疑問に思っているという答弁といいますか、されています。どっちもだなというのが正直なところです。

 もしも奥原さんが言っていないとすれば、それはそれで結構です。私は言っていると思っています。彼のこれまでのことを、ただし、これは私が想定しているだけの話です。言っていないとしましょう。

 だけれども、第一次産業、きょう私が最初の陳述で申し上げましたように、第二次産業、第三次産業へそういう生産要素を移転させていくということを何とかブロックをかけ、そして、さまざまな役割、地域政策であり産業政策、両方を一体化して進めなければならない省庁として十分存在する意義はある、あるいは存在しなければならない、ねばならないと私は思っています。

 そのためには、やはり基本的には国民を飢えさせないために、そして、さらには健康で文化的に、適切な食料を持続的に供給できる、そういう産業ということをリードしていく象徴としての持続的な存在を私は願っております。

 以上です。

鈴木参考人 私は、産業化、産業化ということで、農業が他産業と一緒のように扱われて、農水省が要らなくなる状態が理想であるという考えには大変驚いております。

 食料、農業というのは、何度も申し上げておりますように、国民の命、安全、環境、地域、国土、文化を守るために大変重要なものとして公共性があります。それを総合的に判断し、国民の一人一人がどうやって自分の食料を支えていくのかということについて、明確なビジョンをもう一度練り直すことが必要だと思います。

 そのためには、今のような、私的な諮問機関に利益相反のような皆さんが集まって、勝手に、私益を高めるためにこれがいいじゃないかと言ったことが法案化されて、どんどんそれに従わざるを得ないような状況を即刻やめていただいて、農林水産省が、食料・農業・農村審議会等を通じて、各界の意見を全体として反映して、これが我々の国民を守る政策だというものをしっかり出してもらう、こういうことをもう一度やり直さないと、とんでもないことになるというふうに考えております。

 以上です。

丸田参考人 僕は生産者ですので余り詳しいところは正直わからないんですが、僕が非常に感じるのは、やはり農業の未来が明るいということを見せてもらうことが非常に重要ではないかと思います。

 例えば、ここ一年間ぐらいの日経さんとか日農さんとか地方紙とかを見た中で、農業の未来が明るいような記事が果たしてどれぐらいメディアの中であったのか。例えばトヨタ、史上最高益とかそういうのが出るように、農業のどこどこが、生産者が史上最高益でとか、それを見て若者たちが、四大卒業の人たちが行きたいなんて思うような記事が果たしてあっただろうか。多分ないですよね。

 そんなことを、そんなふうな暗い報道しかされていないところに対して、若者たち、四大卒業の人たちは就職したいと思いますか。絶対思わないですよ。なので、そういうような人たちを、人不足で云々ということよりも、明るい、そこで入りたいと思わせるようなことをまず僕はやるべきなのではなかろうかなというふうには思います。

 それは農政だけじゃなくて、きっとこういった場もそうで、なので、そういったところでぜひ明るいということを伝えて、メディアの方々にも出していただくようにして、それで若者たちが入ってくれば、新しい風も吹き込んで、きっとイノベーションも起こって、いろいろな考えが出て、新しい農業経営が出てくるような形に僕はなるのではなかろうかなというふうには思います。

 ですから、農政にと言われるとちょっとあれですが、ちょっと薄っぺらい言葉かもしれないですけれども、明るい、そういったようなことを、未来をつくってもらえるようなことになればいいなというふうに思います。

斉藤(和)委員 ありがとうございました。

 やはり食料をどう安く安定的に供給していくのか、ここがやはり肝ですし、農業の持っている多面的機能、こうした包括的な、未来が明るくなる、そういうビジョンが求められているなということを痛感いたしました。

 ありがとうございました。

北村委員長 次に、吉田豊史君。

吉田(豊)委員 日本維新の会の吉田です。どうぞよろしくお願いいたします。

 きょうは四人の参考人の先生方、本当にありがとうございます。

 私の方は、まず自己紹介しなくちゃいけないなと思うんですね。何者がしゃべって、質問しているのかわからないということではおもしろくないと思いますので。

 私は、富山県富山市の方に住まいをしております。日本維新の会に入りましてから、いきなりこの農林水産委員会の方に所属になったので、本当にこの委員会の中で一番の若輩者でございます。

 富山県といえば米どころだから、よく農業のことはわかっているんだろう、そういう思いで多分ここに配属されたんですが、実は何も農業のことがわかっていないということが、この委員会が始まってから、委員の先生方が一番よくお感じだと思うんです。

 逆に、そういう素人の目で見て、この日本の農業、私はいつも、農業というのは農産業のことでしょうというふうに言っているんですけれども、農業というのがどういう重要性があるのかということを素人の目としてお聞きしていく、それが政策に反映されるということの重要性を勝手ながら感じておるところでございます。

 国会に来まして、安倍総理大臣の所信表明のところにいつも出てくるんですけれども、農は国の基という言葉があるんですね。これは、農は国の基と言われれば、それはそうなのかなと思うけれども、実際、どういう意味でこの言葉が使われているのかというところ、これは非常に深いんじゃないかなと私は思います。

 きょうの参考人の先生方のお話をお聞きしていましても、改めて、きょうは、農業競争力強化支援法ということで、この法案についてのお考えをお聞きしたいということで来ていただいているはずですけれども、結局のところ、やはり農業というものが何であって、そして、この法案がどのように役に立つのか立たないのかというところの話になっていく。これは当たり前のことだと思います。

 実際に、農業といって、私なんかは、富山におりますと、富山県というのは水田率それから兼業率、全て日本一のところなんです。そうすると、私が抱く、イメージする農業というのはそういう農業なんですね。でも、日本というところにもさまざま、例えば視察とかで静岡とか熊本とか長野とかに行きますと、米だけじゃなくて、逆にそれ以外のものが農業の主流であったり、あるいは北海道へ行くと、また違う農業がある。それと、規模の問題一つとっても、日本の中でも、大きいことをやっている、あるいは本当に小さい、零細、兼業のところ。

 そうすると、どこにその焦点を当てて法案というものができていくのかという、これが実は本当は一番難しくて、きょうの先生方のお話を聞いていても、一つ一つはそうだなと思うんです。けれども、法案としたときには、それがきちっとはまっているか、はまっていないかなというところの難しさを感じるわけです。

 最初に、鈴木先生の方にお聞きしたいと思うんですけれども、この農業競争力強化支援法案というところで、先生のきょういただいた資料の中には、強化でなくて弱体化じゃないかという厳しいお言葉が入っておるんですね。それとあわせて、先生の資料の中の五ページのところに「主要国の農業所得に占める補助金の割合」という貴重な資料もあります。

 こういうことを考えたときに、この弱体化というのは何について弱体化ということになって、それは実際にこの法案が役に立つ場所もあるのかどうか、そういうことのお考えをお聞きしたいと思います。

鈴木参考人 御指摘ありがとうございます。

 私も、この法案によって資材価格が少しでも下がり、そして、農家の所得部分がふえるような形でこの法案が機能するならば、それは大変ありがたい、望ましいことであるというふうに考えております。

 そういう要素が完全にないと言っているわけではなくて、一方の側面で、こういうことを進める、つまり、農業所得の向上につなげるためには、非常に重要な要素として、農産物が買いたたかれる構造、それから農業生産資材が高くつり上げられる構造というものが問題である。

 そこを是正するのが農業所得の向上には非常に重要であって、それを担っているのが農協の共販、共同購入でありますから、そこを中抜きして直接取引すれば、農業所得が短期的にふえる可能性もあるけれども、長期的、総合的に見たら、全体として、これは農家の皆さんにとって、こんなはずじゃなかったということになりかねない要素がある。

 その点の協同組合の役割、競争を促進するということはいろいろな産業で重要ですが、産業間において、取引間において、個々の農家の皆さんが農産物を売ったり資材を買ったりするときに、それの交渉力が不十分である。

 だったらそこに、それを是正して、しっかりと安定的な資材価格で供給できるように、そして、安定的な農産物価格で売れるようにする組織の存在が必要なわけです。その点をしっかり位置づけないと、これは農業競争力の弱体化につながりかねない、そういう趣旨でございます。

吉田(豊)委員 鈴木先生、ありがとうございます。

 続いて、小松先生の方にお聞きしたいと思います。

 私は、今、この先生の資料の中から、着土と浮遊というこの言葉と発想、本当にすばらしいなと思いますし、これは農業のみならず、さまざまなものについて、実際、本当は着土と浮遊という考え方だと思うんです。

 それにあわせて、私は、全ての我が国の産業が、グローバリズムという波あるいはその流れの中での物事を考えていかなくちゃいけないという状況にあって、改めてこの着土ということの重要性、そしてそれは、最初に私が申し上げた農は国の基という、山下先生もおっしゃっていますけれども、やはり農というものは普通の産業とは違う一つの特殊性を持っているということは間違いないと思うんですね。

 こういうことの関連性を、着土ということ、それが、強化していくという、そこにどうつなげていくのかというお考えをお聞きしたいと思います。

小松参考人 ありがとうございます。

 この着土という言葉と農は国の基なりという、この農は国の基なりというのはよく使われるんですよね。本当に耳ざわりのいい言葉で、ああ、よく考えているねと思わせそうな言葉なんですけれども、私は、食料をつくっているから国民の生命を維持する産業だ、だから大事だよという、それはおいておきます。

 それよりも、私の一枚目の図に書いておりました基層領域、農業という生産行為をやることによって、まさに国家の土台中の土台、そこのところと深くかかわっている、そこでの人間関係があったり文化があったり、いろいろなことがあってなかなか形容しがたい、そういう意味合いで、実は国家全体のもとになっているよと。

 ですから、例えばの話、グローバル企業に就職したような方々も、実は、そういうところで育ち、自分を育てた、産んだ親もそこで生活している、そこでいろいろな助け合いがあったり相互扶助があったりしている。だから自分たちはグローバル企業で世界に羽ばたいていますなんてできるのであって、その辺のところを謙虚に地域というものをやはり認識しないと、逆転現象といいますか、はっきり言いますと、国家の土台が、砂上の楼閣といいますか、そういうことになっていくのではなかろうかな。

 強さというものについては、私も申し上げましたけれども、単に大規模化であるとか効率性であるとか生産性という、いわゆる第二次産業、第三次産業の論理ではなくて、地味なんだけれどもすごい、そして必要であるし、しぶとく持続していく。

 実は、若干話があれですけれども、孫の手に銃はとらせぬじいの意地という、じいちゃんが自分の孫に絶対に鉄砲を持たせないぞというようなことの川柳が東京新聞に載っていた、それは安保法制のころであります。私は、それをいたく自分も孫がいる立場で思いました。

 こういう、この場において、食料においても、まして平和なときにはずっと、基本的には一日三回、人は食うんですよ。食い続けるんです。そういうものの持続性というのを保障するような法律なのかどうか。

 残り続けることが強さであるということで、私は強さということを考えています。

 以上です。

吉田(豊)委員 小松先生、ありがとうございます。

 私自身、今回の農業競争力強化支援法案というこの法案の名前のことだけでいいますと、なかなか大層な名前をつけたなというふうには思っておるんです。実際、競争力、それから強化していく、あるいは農業という、一つ一つの定義、そして、それはどういうふうな方向に進むべきかということからすれば、これは農業だからあえて出てきた法案であって、これがさまざまな、何とか業というような全てにこの強化何とかというふうにはいかないんですね。それが私は、本来、農は国の基という話につながっていくだろう、こう理解しているんです。

 今ほどの小松先生のお話しいただいた中にも、実際に、法案というのは対象者がおるわけですわ。その法案の対象者たり得る相手が、この我が国の農業については非常に難しくなっているという現実があるんじゃないかなということを私はきょうの四先生方のお話を聞いて感じているところなんです。

 改めて、先生のお言葉で言えば基層領域、そしてその農村社会と着土という、これにふさわしい対象者というところについてのお考えをもう少しお聞きしたいなと思います。

小松参考人 もちろんでありますけれども、丸田さんのような方々が出てくることを基本的に私は否定はしないし、頑張っていただきたいなと思っております。

 ただ、彼らだけを大前提に考えるのではなくて、先ほどおっしゃったように、私も石川県に八年おりましたから、富山にも数回お邪魔したりとか、いろいろなことで、兼業との中で、土日なんかに農業をやったり、ゴールデンウイークに田植えをしたりとか、いろいろなことをやって、すごいなと思って、私はもうリスペクトします、自分にはできないことですから。

 そういうような多様な方々で国土が守られたり、我々の食料が供給されている。そういう多面性というか、多様性ということをやはり我々は謙虚に評価し、そしてこれからも残っていくことを考えていくべきではないかな。

 もちろん、全て今のままでいいというわけではない。あとは何事でもそうですよ。だからといって、余りにも拙速なことをやっていくと、先ほどの、農村社会そのものが非常に混乱を来してくる。いわゆる国家そのものの不安定性というものを危惧するところでございます。

 以上です。

吉田(豊)委員 ありがとうございます。

 そして、山下参考人にお聞きしたいと思うんですけれども、きょうの先生のお言葉の中で一番私が気になったのが、破廉恥な政策というようなきつい言葉が出たと思うんですね、減反にかかわるところですけれども。でも、よく考えてみると、私もそうなんだなと思うんです。

 これは何かというと、平生、富山におりましても、農業にかかわる方々、富山の場合は特に兼業ですから、今ほど小松先生は、土日を使って頑張っているということにリスペクトというお言葉もいただきました。それは一方はそうだと思うんですね。

 けれども、私からすると、農業というのは、やはり国民の財産である土地を預かって、そして物を生産して、そして国家の食料安全保障にかかわるという、そこの本当に重要な基幹のことをなりわいとしてやっているはずなんですよね、大前提からすると。

 だから、そこからすると、それが減反政策というものによって守られている、あるいは、これが本当に破廉恥な政策という言葉であらわせる中身が出ていくとしたときに、それは政策が破廉恥なのではなくて、それを甘受しているそういう状況が実は恥ずかしいことなんじゃないかなというふうに私は思うわけです。

 改めて、農業というものが、何をきちっと守っていかなくちゃいけなくて、そこに何を競争させて、何に応援をしなくてはいけないのかという大きな考え方を山下先生にお聞きしたいと思います。

山下参考人 私のスライドの十八ページに柳田国男の構造改革論というのがありますけれども、これはまさに、日本の農業、農村が貧困にあえいできたときの柳田国男の主張なんですね。

 そのときに、彼が言うには、アメリカの農業と競争できないというのはよく耳にすることだと。これを書いたのはもう百年以上前です。つまり、日本の農業界は百年間ずうっと同じ主張をやっているわけです。でも、これに対して、関税の保護のほか何も対策がないのかと考えるのは誤りだというわけです。何が重要かというと、ここに書いてある農事の改良だというわけです。つまり、規模を拡大して生産性を向上しよう、コストダウンをして農家の所得を上げようというのが柳田国男の主張だったわけです。したがって、わずか三反、四反の細農の目には、世界の市場とか貿易とかは見えない。

 だから、その次のページをめくっていただくと、十九ページにあります。これは、中農養成策という彼の代表的な小論の中の一節なんですけれども、「「日本は農国なり」という語をして農業の繁栄する国という意味ならしめよ。困窮する過小農の充満する国といふ意味ならしむるなかれ。ただかくのごときのみ。」つまり、規模を拡大してコストを下げて、それで消費者に迷惑かけないで生きていくような、そういう持続的な農業が必要だというわけです。

 現に今でも、ある会議で、秋田県の市町村はほぼ壊滅するという報告が出されたわけです。でも、一つだけ、村です、壊滅しない、生き残る村があるんです。それは大潟村なんです。全戸農家です。全戸農家の大潟村だけが、秋田市はなくなっても大潟村だけは残るんです。なぜかというと、みんな二十ヘクタール以上の農業経営をやっているからなんです。農業所得は一千四百万円です。だから、大潟村の子供は東京の大学に出ます。でも、東京なんかで就職しません。大潟村に帰って家を継ぐわけです。したがって、農家は後継者がいますから高齢化しないわけです。

 だからこういうふうに、大きな農家に農地を集めて、小さな農家、所得ゼロの農家が一生懸命頑張るんじゃなくて、その人たちは、大きな農家に農地を集積して、そのかわりに地代をもらうわけです。地代をもらって何もしないかというと、そうじゃないわけですね。農地の維持管理、水路、農道の維持管理は、これは大家みたいな人の、地主の仕事なわけです。だから、零細な農家が仕事がなくなるわけじゃないわけですね。そういう新しい農村のイメージをつくっていかないと、もう日本の農村は守れないんだというふうに私は思っております。

 それから、スキャンダルな政策、破廉恥な政策と申し上げたのは、米農家の所得を上げようとして米価をじゃんすかじゃんすか上げたわけですね。これに対して麦の値段はどうか。輸入外麦の値段はほとんど、この数十年間横ばいです。米の値段は四倍ぐらいになっています。つまり、日本の主食である米を徹底的にいじめて、外麦を奨励した政策をやったわけです。

 したがって、今は何をやっているか。五百万トンの米を減産して七百万トンの麦を輸入しているわけです。こんな破廉恥な政策というのは本当にあるんでしょうか。多分それはないんだと思います。食料の安定供給、食料安全保障の観点からも、全く意に沿わない政策をずっと農林省は続けてきた、これはそろそろ見直す必要があるんだろうというふうに思います。

吉田(豊)委員 おっしゃる流れに従って言えば、今外からも大きな風が吹いていて、そして今、この法案一つをとっても、農業という関係者に対して内側からもいろいろな競争力という、まあ、競争するということは必ず勝つ者と負ける者が出てくるという当たり前の話ですから、それをどう受けとめていくのかということ、それが、最初、鈴木先生がおっしゃったように、それによってやはり影響を受ける者が当然いるんだというところ。

 ただ、私は、最終的には、きちっと自分たちがこの法案の対象者なんだよということをまずは自覚してもらわないことには、これがいいも悪いも、結局は受け身で、口をあけて待っていたという、この国の政策と変わらないんじゃないかなというふうには思っていますので、非常に法案とすれば取っかかりの部分かなという気もしますし、また改めて、実際どのような影響があるのかと、本質的なところに切り込んでいく可能性を持っているのかどうなのかというところは見ていかなくちゃいけないことなんだろうというふうには感じております。

 丸田参考人には、私、いつも帰り道に通っていますので、今度は上越妙高でおりて、会社の見学をさせていただきたいと思いますので、今後とも御指導いただきたいと思います。

 ありがとうございました。終わります。

北村委員長 これにて参考人に対する質疑は終了いたしました。

 この際、参考人各位に一言御挨拶を申し上げます。

 本日は、貴重な御意見をお述べいただきまして、まことにありがとうございました。委員会を代表いたしまして厚く御礼を申し上げます。ありがとうございました。

 この際、休憩いたします。

    午前十一時五十六分休憩

     ――――◇―――――

    午後三時十三分開議

北村委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。

 午前に引き続き、内閣提出、農業競争力強化支援法案を議題といたします。

 この際、お諮りいたします。

 本案審査のため、本日、政府参考人として農林水産省大臣官房総括審議官山口英彰君、大臣官房技術総括審議官・農林水産技術会議事務局長西郷正道君、大臣官房統計部長佐々木康雄君、食料産業局長井上宏司君、生産局長枝元真徹君、経営局長大澤誠君、農村振興局長佐藤速水君、政策統括官柄澤彰君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

北村委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

北村委員長 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。岡本充功君。

岡本(充)委員 民進党の岡本でございます。

 きょうは法案審議でありますが、その前に、やはり一言触れておかなければいけないことがあると思っています。

 昨日の新聞各紙に、農林水産省OBが発注工事、震災復興事業などで談合を繰り返してきた、こういう報道がありました。私の資料の十三ページです。

 ここの資料を読むと、東北土地改良建設協会・北杜会という一室があって、そして、そこは東北土地改良建設協会の中に北杜会が間借りをしている形でスペースがあり、テレビと囲碁が置かれ、日中は複数のOBが集まっていたという。

 これは実際、事実なのかどうか、これを聞きましたところ、返事がきょうまでに農林水産省からありませんでした。

 また、私へのレクでは、東北農政局以外の各地の農政局でも、同様にOBの親睦会がこうした土地改良建設協会の中に置かれているのかと聞きましたところ、恐らくそうだと思う、こういうお話がありましたが、実態を調べて連絡をするように要請をしましたが、きょう、この時点に至っても連絡がありません。

 大臣、実態はどうなっていたんですか。

山本(有)国務大臣 農林省OBの関与の有無にかかわらず、公共工事の談合はあってはならないことでございます。

 御指導の北杜会につきまして、組織、内容、構成員、活動内容など、具体的なことにつきましては承知をしておりません。

岡本(充)委員 いや、聞いた職員は、各農政局の中に入っている、こう言ったんですよ。各農政局のOB会がこうした協会の中に入っていると、そのときはぽろっと私の前で口にしましたよ。知っているんじゃないですか、農林水産省の役人は。

 待ってください、大臣、そんなに先走らずに、私の質問をちゃんと聞いてください。

 各農政局のOB会がこうした各地の土地改良建設協会の中に間借り、もしくは便宜供与を受ける形で存在しているのかどうか、調査をする必要があると思います。そういった意味で、きちっと調査をした資料を出していただきたいんですが、大臣、出せますよね。

山本(有)国務大臣 現在、こうした報道やあるいはそのほかの情報によりまして、三月二十四日に東北農政局に公正入札等調査委員会を設置し、ここにおいて本件調査を着手したところでございます。

 そして、公正取引委員会の調査に積極的に協力してまいるところでございますが、その意味におきまして、公正取引委員会の調査と相矛盾しない、そして調査に対して円滑に運ばれるような意味での協力、そういったことをしつつ、推移を見て、適切に開示できる資料は開示していきたいというように思っております。

岡本(充)委員 これは開示できないということですか。当然調べる、だって、ありますと返事しているんだから、それはあるんでしょう。だから、ちゃんと調べて示していただきたい。

 もう一つ、今重要なことを言われました。これは公取が四日に入ったと新聞報道していますが、それより前に農政局の中でそうした組織を立ち上げるに至った何かの経緯、端緒があったんですか、それを答えてください。

山本(有)国務大臣 この三月二十四日以前の段階で、既に農政局当局に取材がございましたし、また、報道もございました。その意味において、早急にこうした被疑事実がないかという調査の必要性がありましたので、着手をしたわけでございます。

 そして、この公取の調査に相矛盾しない観点で開示できること、そして御迷惑にならない点で開示できる、そういう情報がありますれば開示をしていきたいというように思っております。(岡本(充)委員「ちょっと待って。それでは答弁になっていない。私の言った資料が出るかどうか、ちゃんとはっきり言ってください」と呼ぶ)

 公取が調査している段階でございまして、その意味におきましては、捜査というような観点の調査でございます。そうした意味におきまして、開示できるものと開示できないものというものがあるということは御理解いただきたいと思います。

岡本(充)委員 各農政局OBの親睦会がこうした事務所に置かれているのかどうか、協会の事務所に置かれているのかどうか、それだけですよ、そこのところを聞いているんです。

 それが開示できない理由が公正取引委員会との間であるならば、例えば、東海農政局のOB、近畿でもやっているということですか。関係ないところなんだから、それがあるかどうか教えてくれと言っているんですから、それが出せない理由があるのなら、なぜ今回の事案と関係があるのか、ここで説明してください。そうでなければ出さなきゃおかしいでしょう。出せますと言うしかないですよ。

山本(有)国務大臣 民間の親睦団体でございます。そして……(発言する者あり)OBであろうと民間でございます。その意味において、調査をどこまでできるか、まだこれからでございますし、その意味において、公取とも打ち合わせをしながら、開示できるものは開示するという姿勢で臨みたいと思っております。(発言する者あり)

北村委員長 速記をとめてください。

    〔速記中止〕

北村委員長 速記を起こしてください。

 それでは、改めて山本大臣から答弁をいたします。山本大臣。

山本(有)国務大臣 他の農政局OBの親睦団体につきまして、その有無等は現時点では把握しておりません。しかしながら、公正取引委員会の調査の推移を見守りつつ、適切に対処して、開示できるものは開示していきたいというように思います。

岡本(充)委員 それでは調査すらしないと言っているんですよ。調査すらしない。

 調査はするのか、しないのか、それだけでも答えてください。

山本(有)国務大臣 登記があるとか各農政局管内に事務所があるとかという事実であれば把握できると思いますが、囲碁、将棋、ゴルフ、マージャン、そうした親睦団体の一々を我々は調査する権限もありませんし、もしわかったとしましても、その民間親睦団体の了解が必要でございます。

 そんな意味におきまして、私ども調査する権限、根拠がございませんので、その意味におきまして、我々としましては、なかなか確認すら難しい問題であるという認識のもとに、正確性を欠いたものをいたずらにこの権威ある衆議院の農水委員会に提出し、また、混乱を招くということがあってはならないという意味で、慎重に対応したいというように思っております。

岡本(充)委員 大臣、権威ある農林水産委員会と言いますけれども、委員会の質疑の中で質問されたことが調べる根拠ですよ、それは。委員に指摘をされたから、それについてどうなっているかと。職員はすぐ言ったよ、各農政局ごとにあるんでしょうと言ったら、ああ、ありますと、即答でしたよ。みんな知っているんじゃないですか。それを知らない顔をして、ありませんなんて、事ここに至って言うのは、悪いけれども、権威ある衆議院農林水産委員会の答弁としては大変失礼だと思いますよ。しっかり調べて出さなければ、これはうみを出し切らないですよ。

 委員長、こうした農林水産省の姿勢を改めない限り、土地改良法なんか審議できませんよ。理事会での協議をお願いします。

北村委員長 はい。後日の理事会で協議をいたします。

岡本(充)委員 もう一つお願いしておきたいものがあります。

 この新聞資料の中で、記事の二段落目の真ん中、「OBがいる会社が受注するような比較的規模が大きい工事には入れない。」こう語る建設会社役員がいるそうです。

 建設会社への農林水産省のいわゆる室長級以上の管理職の再就職はどうなっているか、平成二十年十二月以降公開されているでしょう、これを集めて見せてくださいと言ったら、衆議院の本会議中に私の事務所へ持ってきました。きのうからずっと言っているのに持ってこない。最後の最後に、間に合わないように、だから皆さんに配れなかった。

 これを見ると、満遍なく大手の建設会社に就職をしているようです。こうした就職が工事の受注につながっているのかどうか確認するためにも、金額は例えば予定落札価格一億円でもいいと思います、これを超える落札についてどういう企業が落札をしているのか、きちっとデータをいただきたいと思いますが、それについても、大臣、調べていただけますか。

山本(有)国務大臣 それにつきましても、公正取引委員会の調査の推移を見守りつつ、適切に対処をしてまいりたいし、出せるものは出したいというように思います。

岡本(充)委員 大臣、これでは自分たちで浄化する気がない組織のトップだと言わざるを得ない。余りに姿勢として組織の防御に走り過ぎですよ。

 これも理事会で協議をお願いします。

北村委員長 はい。理事会で協議をいたします。

岡本(充)委員 こうした談合の体質があるのであれば、ぜひこれは正さなきゃいけないと私は思いますよ。

 大臣、本当にそんな役人がつくってきたペーパーを一生懸命読んでいいんですか、組織のトップとして。私は、大臣のリーダーシップを発揮する絶好の機会だと思いますよ。そういう意味で、役人の用意したペーパーを一生懸命読むのではなく、本当にそれが国民のためになるという道を選んでいただきたい。お願いします。

 それでは、質問に入ります。

 私は、前回の農林水産委員会、三月二十九日ですか、大臣と議論しました。ちょっと確認だけさせてください。

 このとき大臣が、一番目のペーパーです、最初の線を引いているところ、意欲と能力のある農業者であれば、経営規模の大小、あるいは法人、家族経営の別、こういったものにかかわらず地域の農業の担い手に含まれていくというように考えています、こう答えていましたけれども、いろいろるる調べてみると、経営支援のための施策についてポイント制を採択していて、そのポイントは、調べていけばいくほど、やはり法人化していたり、規模が大きかったりするものに有利になっています。

 規模拡大をするのが間違っていると言っているつもりはないけれども、しかし、規模拡大をしなければ経営体としての支援が得られないという仕組みはまずいと思っています。

 今のポイント制のあり方は、規模がでかければ一回で五ポイント、法人化をすれば一回で二ポイント、小さな家族経営だと一ポイントずつしか得られないポイント制。きのうもこれはレクで話したんですけれども、クイズ番組じゃありませんよ。クイズ番組は、最後に一番ポイントのでかいものが待っていて、一気に、そこまで積み上げてきたものをどんと変えるというのが一つの趣向としてありますけれども、これは経営ですから、経営にかかわることでこんな形で簡単にひっくり返されたんじゃ、やってられないという気持ちもあると思うんです。

 一つ一つ丁寧に積み上げていっている、こうした小さな経営体にもちゃんと支援の手を伸べられるように、ポイント制のあり方をちょっと見直してほしいと思います。これは大臣の答弁ですから、それに沿えば当然だと思います。

山本(有)国務大臣 先日の答弁で、経営規模の大小、法人、家族経営の別にかかわらず、意欲と能力のある者を分け隔てなく支援していくというようにお答えをさせていただきました。

 全ての事業でこうした理想が貫かれるかといいますと、それはその事業事業で多少の違いはございます。したがいまして、その意味において誤解のないように、ぜひ運用の面でお願いをしたいと思っております。

 そして、先ほどのポイント制の、成果目標の御質問でございます。

 経営体育成支援事業、これは、地域での話し合いに基づいて、担い手に農地の集積、集約化を図るための人・農地プランを推進することを目的とする事業でございまして、経営規模の拡大や法人化に一定の配分ポイントを与えて、採択上、配慮していることは御理解をしていただきたいと思います。

 しかしながら、地域の実情に即した多様な担い手を育成、確保できるように、新規就農や雇用、経営の複合化、農産物の高付加価値化、六次産業化など、多様な取り組み等につきましても一定の配分ポイントの対象としておるわけでございます。

 この結果、二十八年度の都道府県別配分では、助成対象者の四分の三が家族経営の方々、四分の一が法人経営の方々というような割合になっております。

 今後も、地域の実情を踏まえまして、適切に事業の運用を行ってまいりたいというように思っております。

岡本(充)委員 それは家族経営で切っているけれども、家族経営でも比較的大きいところに行っているんじゃないですかときのう聞いたら、その先はわからないというのが役所の答弁でしたよ。それではやはりいけなくて、本当にどういうところに行っているのか。

 繰り返しになりますけれども、先ほど言われた大臣のポイントは全部一ポイントですよ。最後に五ポイントどんと入るものがあって、それは、規模拡大の中でも特に大きな規模を持っていたら、どんと入るんですね。だから、それが、クイズ番組の趣向じゃあるまいに、最後にひっくり返るなんということは、一つ一つ積み上げてきたものが全部一気にひっくり返るんですから、それはさすがにどうかと思う。

 手元にあるでしょう、そのポイント制度。五ポイントというのがあるでしょう、一つで。やはりそれはポイント制度のあり方を見直すべきだと言っているんです。

 ちょっと、検討はしていただけるんですよね。検討はしていただける。

山本(有)国務大臣 今、各地域の皆さんから、このポイントについての要請とか、あるいは御不満や、運用についての、進め方についての意見を聞いているところでございまして、先ほどの委員の意見も踏まえて検討をさせていただきたいと思っております。

岡本(充)委員 ぜひ、非常に人気の事業のようですから、より納得の得られる制度にしていただきたいと思います。

 さて、これまた先月の二十九日の質問、二ページ目ですけれども、山本大臣は、今回の法案、生産資材価格の引き下げの必要性が如実にわかるようなそういう資料を用意できれば、できるだけ努力をしたいというように思っております、こういう答弁をいただきました。

 それで、三ページの資料が出てきました。酪農で、配合飼料の価格が下がっても、乳量が上がったんだ、こういう資料を持ってこられました。

 しかし、これは一部の例を挙げているにすぎないし、もっと言えば、この先に乳価の単価がなければこれは意味がないわけです。たくさんとれるようになったけれども、単価は下がっていますという話では、話にならない。午前の参考人の質疑の中でも、残念ながら、資材の引き下げが農家の所得増大につながると明確に述べた参考人はみえなかったわけであります。

 そういう意味で、資材の引き下げで収量はふえた、もしくは必要経費は下がったけれども、一方で、安売り合戦になったり、単価が下がったりした結果、農家の所得が減るんじゃないか、こういう懸念は残っていると思います。

 現に、TPPの試算の中でも、例えば乳価は下がっていくという予想を農林水産省はされましたよね。

 そういう意味で、これは、例えば乳価だけをとっても、これで農家の皆さんの所得がふえる、こういう絵にはなっていませんし、同様に、肉用牛、そしてまたいわゆる肥料に至っては、四ページ目、これでは本当に農家の所得がふえたのかどうかわからない資料を持ってこられています。現実に農家の所得がふえるのかふえないのかきちっと評価をして私はこの制度改正をしていくべきだと指摘をしましたが、事ここに至ってそうしたエビデンスは示されていない、この現状であります。

 もう一度しっかり調査をして、資料をつくり直して、これから必要な政策を考えるべきだと思いますが、いかがですか、大臣。

山本(有)国務大臣 農業資材価格の引き下げによりまして収益増加を実現した事例、こういう事例については散見されるところでございますし、今後、御指摘のように、各地の生産現場におきましてそのような取り組みが始まり、実証されれば、随時御提供できるものと考えているところでございます。

 また、今後、幅広く優良事例を収集するということにおいて間違いないわけでございますが、単に定性的な形だけではなくて、資材価格の引き下げや収益の増加につながった要因等について分析ができれば、さらに精緻な分析をし、農業者によりわかりやすくお示しするということをしていきたいと思っております。どのような経営を実現できるか、より農業者が参考となり、また実践に役立つ情報を随時御提供していく覚悟でございます。

岡本(充)委員 好事例を出すのもいいけれども、本当に何が経営に最もプラスとなるのか、これをきちっと検証できる統計的なデータを出すべきだと言っているんです。そうしたデータなしに、好事例だけ、学校でいえば成績のいい子だけ、この子は成績がよかったよということだけ言ったって、みんなの成績はよくならないんですよ。どういうふうにしてその子の成績がよくなったかということをやはり示していかなきゃ、それはだめでしょう。

 そういう意味で、きちっと検証しろということ、統計的にちゃんと調査、検証しろと言っているんです。していただけますか。はっきり答えてください。

山本(有)国務大臣 事例についての分析というのは統計部でも今後も努力していきますけれども、ぜひまた委員からの御指摘や御示唆もいただきながら、そうした分析、検討した結果、明らかになるデータがあれば、しっかりそれを開示していくということをさせていただきたいと思っています。

岡本(充)委員 その中で、統計部からいただいた資料をもとに、六ページ以降を見ていただくと、例えば水田作経営や酪農経営にとって何が大きなウエートを占めているのか。肥育牛の経営でも同様でありますが、やはり餌や、また最初に導入する動物の価格も大きいわけですが、その前後して大きいのが農機具、また水田作では農機具が最も大きなウエートを占めています。

 先日も委員会で質問がありました。農機具メーカーのいわゆる寡占の問題です。新しいメーカーが入ってくる可能性がある、こんな答弁もされていますけれども、現実において、メーカーの価格、メーカーのつくるいわゆる農機具の価格の内外価格差や規格の問題、こうしたものがあると思います。メーカーの参入を促して適切な競争を求めていくことや、やはり今お話をした価格の適正化を見ていく必要があると思うんです。

 この法案が出て、大変だという声を確かに農協さんは上げました。一方で、農機具メーカーからは大変だという声が上がっていない。それはなぜかというと、自分たちはこれでは切り込まれないということがわかっているからですよ。本当に農機具メーカーが、価格を見直していかなきゃいけない、この法律で資材の低廉化もしくは優良なものを求めていく、こういう声が出てくると思ったら、農機具メーカーだって騒ぎますよ。騒いでいないということが、まさにこの法案がこうした分野に切り込めていないということの証拠ですよ。

 大臣、やはりこうした分野にもしっかり対策をとるべきだというふうに思いますので、それについてお答えをいただきたいと思います。

山本(有)国務大臣 農林省としては、少しでも安い農業機械の調達、これを図るように努力をしております。

 具体的には、農業機械価格引き下げにつなげていくために、異なる分野メーカーの新規参入等による競争の促進、部品や仕様の共通化あるいはメーカー間での互換性の確保の促進、さらには最低限必要な機能、装備のみを備えたシンプルな農機や高耐久な農機の製造、販売、あるいは農業機械を初めとする生産資材価格の見える化等を推進していきたいと思っております。

 そういうことによって、農業機械メーカーに対して、関係団体に設置されております部会に農林水産省も参画させていただいて検討を行ったり、あるいは農業機械の価格引き下げの環境を整えたりというような努力を重ねていきたいと思っております。必ずや農業機械の価格が下がるまで、しっかり見詰めていきたいと思っております。

岡本(充)委員 九ページにありますように、主要三機種の国内における企業別シェアは、三社で九割を超えているんですよ。こんな業界ないですよ、こんな三社で九割超えている業界。やはりこれは、農林水産省として適正化に努めていかなきゃいけないと思いますよ。

 また、今回の法律で、最終的に農業者の皆さん方が所得向上をしていくためには、一つは、海外でも販路をつくっていくということが必要です。

 一つは、海外で大変人気があるのが、やはり有機です。日本と相互認証している、JAS法でまた指摘ができるかもしれませんが、相互認証している話もありますが、現に日本からお茶以外でほとんど有機農産物が出ていないでしょう。きのうも確認しました。この現状は一体どこにあるのかという分析をしていかなきゃいけない。

 また、同様に、販路も拡大ができていない。皆さんのお手元にお配りをしておりますページでいうと十二ページ。輸出総合サポートプロジェクト。

 予算は、その前につけておるとおりでありまして、十六億円の予算がついていますが、これだけの商談会をやって、一件五十万円未満の契約をとって、その後どうなったか、これを追いかけていないんですよ。

 例えば、二十六年、二十五年も、海外見本市や商談会をやってきている。しかし、やったけれども、その後、最初の端緒をどうやってつかんだのかわかりませんが、この見本市や商談会で得られたとしても、その後、その取引が続いているかどうかは、農林水産省は一切把握していない。これでは、その場で売れたものだけを見ているかもしれない。

 きちっと調査をして、何が課題で、どうやればビジネスに結びつくのか、きちっと評価をするべきだと思いますが、答弁を求めたいと思います。

井上政府参考人 輸出に向けました見本市あるいは国内外での商談会につきましては、商談会、見本市の終了直後だけではなく、その後につきましてもフォローアップをしてまいりたいと考えております。

岡本(充)委員 有機の話について、何が輸出の障害になっているか、きちっと調査をすることについてはどうですか。

枝元政府参考人 お答え申し上げます。

 有機栽培の輸出は、確かに今、お茶だけでございます。現在、有機農産物の生産は非常に少ない状況で、国内の需要も満たせていないという状況でございます。

 この生産拡大に向けて、さまざまな課題がございますので、そういうことも含めて、経営的なモデルも含めていろいろ検討してまいりたいと存じます。

岡本(充)委員 ぜひ、しっかり調べて、報告を求めたいと思います。

 その上で、最後に、もう一つ聞きたいと思います。

 農協に、これから先、農林水産省は何を求めていくのか。

 農協法も変わって、これからエリアが競合して農協が入っていくこともある。新規に協同組合をつくるのも、もちろん自由です。そういう意味では、農協同士がある意味殴り合いというか、お互いにライバルとなって競争し合う環境ができるかもしれない。その場合、組合員が入る農協を選ぶとはいえ、その淘汰されていく農協に入っている組合員はデメリットを受けることになります。

 そういう意味で、淘汰をされる組合が出てきた場合、その組合員に対するフォロー策が今ないと思いますが、こうしたいわゆるフォロー策がない状況は、ある意味やむなし、もしくは自己責任と捉えているのか、大臣の見解を問います。

山本(有)国務大臣 まずは、地区が重複する農協の設立自体は、平成十三年の農協法の改正でできることになっております。

 したがいまして、競争は農協同士でされる例もございますし、十数年間に百五件の地区重複が認可されているところでございます。

 そうした中で、農業者へのサービス向上が図られるというメリットはありますが、御指摘のように過当競争の弊害が生じるというようなこともございます。そんな意味では、しっかりと経営についても見させていただきたいと思っております。

 ちなみに、システムリスクという意味におきまして申し上げますと、特に農協系統金融機関、JAバンク法に基づきまして、農協系統が自主的に決定したルールがございます。それは、自己資本比率八%を下回った場合、農林中金が資金運用制限、あるいは経営改善というようなことの手段によりまして、健全性の回復が見込めるわけでございます。

 そんな意味で、さまざまな手法を用いて、経営展開に対して、安全な、健全な、そういう運営ができるようにフォローしてまいりたいというように思っております。(岡本(充)委員「答えていないじゃない。だから、やむなし、自己責任と考えているのかということです」と呼ぶ)

 御指摘のように、過当競争において敗北した農協が、経営に行き詰まって、それで破綻するというようなことは予定していないというのが正確な今の表現でございます。

岡本(充)委員 これについては、では今後また詰めさせていただきます。

 しっかり資料を出してください。お待ちしています。

北村委員長 次に、小山展弘君。

小山委員 民進党の小山展弘です。

 まず最初に、昨日の重徳議員の質問につきまして、理事会でペーパーを配るとか、ペーパーにて、重徳議員が指摘をした大臣と局長の答弁に違いがあるんじゃないかということがございましたが、ぜひこの場で、きょう、おまとめをいただいたと思いますので、まず冒頭、大臣から、きのうの重徳議員の質問について答弁をお願いしたいと思います。

山本(有)国務大臣 昨日は、重徳議員に正確にお伝えできなかったこと、恐縮に存じます。

 本法案第四条及び第五条、そして農業生産関連事業者である全農と単位農協に対しまして、努力規定として一定の行為を行うことを求めているわけでございますが、行為そのものを強制したり義務づけたりするものではないということを、まず御認識をお願いしたいと思います。したがいまして、本条を根拠に、全農や農協に対してフォローアップを行うということは考えておりません。

 また、本法案の十六条、第八条以下に規定されている事業環境の整備などの国が講じた施策についての調査、そしてこれを踏まえた国の施策のあり方を検討するということを今ここで規定しておりまして、個別の農業関連事業者の行為を検討の対象としているものではありません。したがいまして、本条を根拠に、全農や農協に対してフォローアップをすることを考えているわけではありません。

 一方、農業競争力強化プログラムにおける全農の生産資材の買い方や農産物の売り方の改革につきましては、全農の自己改革として政府と合意の上で取りまとめられたものでございますので、このため、進捗状況のフォローアップは、合意の実現という観点から、本法案の枠外で、全農及び政府により行われるものと考えておる次第でございます。

小山委員 それでは、今ちょうど全農のお話があったので、続きというわけではないんですけれども、ある意味これも受ける側からするとフォローアップの一つなのかなというふうにもちょっと感じたんですが、四月五日の質問と、あるいは三月二十九日の質問でもちょっと伺った全農の自己改革プランに対する山本大臣の評価、感想についてというところで、全農の役職員の意識改革が必要だというお話がございました。

 意識改革が必要だということは、今何か意識の部分で問題があるというようなことがあるから、改革が必要だということかなというふうにも、ちょっとあの後、その場では思い浮かばなかったんですけれども、大臣の答弁や、あるいは、きのうもそういう質疑がある中で、私もいろいろじっくり考えてみまして、何かそういうものがあるのかなというふうに感じたんですけれども、何か今の全農の役職員の意識に問題があるとお考えなんですか。

山本(有)国務大臣 全農の現在の役職員に問題があるという意味ではございません。いわば、今の農業が置かれている大変厳しい状況の中で、日本の農業の成長を考えていくために、お互いそうした意識を一致させていきたいという希望的な意味で意識改革という言葉を使わせていただきました。

 特に、農業競争力プログラムあるいは年次計画、この実現に向けては、法案にありますように、生産資材の買い方については、品質、価格面で最もすぐれた生産資材の調達に向けて、内外の情報の不断の収集や生産資材メーカーとの的確な交渉をやっていただきたい。また、農産物の売り方につきましては、取引先の確保を通じた買い取り販売への転換をそれぞれ行っていただきたい。

 こういう、いずれも全農にとって今までと違う試みでございますので、その意味において、真に農業者の立場に立って頑張ってもらいたいという意味を込めて、意識改革という表現を使わせていただきました。

小山委員 あえてお触れいただかなくてもよかったんではないかなという気もしないでもないんですけれども、特に現時点で問題がないということであれば。

 ちょっと別の角度からもう一つ、外部人材の登用が望ましいということもお話しになっていらっしゃるんですが、どういう人材を、どのぐらいの人数でこれはお考えになられたんですか。

山本(有)国務大臣 今後全農におかれまして、年次計画実現に向けて、先ほど申し上げました、農業者にとって有利な生産資材の調達実現、あるいは農産物の買い取り販売への転換、こういうことをやっていただく上において、あくまで自己改革でございますが、特にこうしたことに精通した人材を全農内部で力を発揮できるような形にしていただけないかな、そういう希望でございます。

 そして、このことにおいては、既に全農がイトーヨーカ堂の元社長さんを採用されるというようなことも承知しておりますので、これから外部人材がさまざま起用されるだろうというように期待をかけておるわけでございまして、そんな意味で、全農はそういう方向に今向いていただいているものであろうというように思っております。

小山委員 今の意識改革の点でも、外部人材のところでも、非常に一点御留意をいただきたいなと思いますのが、イトーヨーカ堂の方、確かに、少人数というか、アドバイザー的に入っていただくのはいいと思うんですね。

 だけれども、一般のイトーヨーカ堂とか大手のこういったスーパーであれば、安く仕入れて高く売って、そしていかに利益を出すか、その利益を原理的に言えば株主に配当する、こういう論理だと思うんですね、株式会社の論理は。ところが、協同組合の場合には、出資者イコール利用者ですから、いかに高く買って、その高く買ったものを高く売るかということですし、それにプラス、高くたくさん売れれば出資配当をするということですから、やはり組織論理というものが違うと思うんですね。

 ですから、余りこの株式会社の出身の外部の方がいっぱい入ってきたり株式会社の意識ということになり過ぎてしまうと、逆に、安く仕入れて高く売って、出資配当で組合員に還元するということを経営のやり方として根幹に置くということになると、これはちょっとやはり違うのではないかなと思いますので、ぜひこの点は御留意をいただければというふうに思っております。

 それと、ちょっと順番を入れかえさせていただいて、大臣にまたお尋ねをしたいんですけれども、去年、規制改革推進会議が十一月に提言を出して、実現には至らなかったんですけれども、政府機関が民間の事業体に対して、事業の縮小とか、当時、購買事業をやめてしまえとかいろいろありましたけれども、あるいは改廃等の制約を求めることは、憲法二十二条に違反をする、職業選択の自由に違反をする。これで、この職業選択の自由の中に営業の自由も含まれるんだという最高裁の判例もあるんですが、こう指摘する識者もいるんですけれども、これについての解釈をお尋ねしたいと思います。

山本(有)国務大臣 申すまでもありませんが、この競争力プログラム、全農改革と申しますのは、自己改革であるというように全農と合意をいたしております。そして、行政指導としてフォローアップを行うというように考えております。

 行政手続法三十二条で、まず、行政指導の内容は、あくまでも相手方の任意の協力によってのみ実現されるものである、そして、その相手方が行政指導に従わなかったことを理由として不利益な扱いをしてはならないというように、しっかりと明記をされております。

 その上で、憲法第二十二条との関係で問題が生じるということは、行政指導である限り、それはないということを、今回、法制局ともすり合わせをした上で御答弁させていただきたいと思います。

 そして、いずれにしましても、全農と、自己改革であるという意味においての情報交換や情報共有をしていくつもりでございますので、職業選択の自由を侵すなどというそんな場面は、私ども、想起もしていないところでございます。

小山委員 特に、これは実現には至らなかったんですが、規制改革会議が、例えばこれに従わなければ第二全農をつくるとか、あるいはこういう意見を出したこと自体が、これは受ける側からすると、やはり政府の方針だということで受けとめるわけですから、相当な、最近、そんたくという言葉がやけにはやっていますけれども、そういうものも含めれば、この意見を出したこと自体、これはかなり大きな影響を及ぼしたのではないかというような指摘もあります。

 また、これは行政事件訴訟の対象になって、敗訴するのではないかと。これは実は、日本農業新聞に、かつて林野庁の長官でもあられた入沢肇先生、これは自民党の参議院議員を務められた先生の御指摘なんですけれども、こういった指摘もあるんですが、もう一度、規制改革会議が意見を出したこと自体もどんなふうにお考えか、御答弁いただければと思います。

山本(有)国務大臣 行政訴訟において、行政庁の処分その他の公権力の行使に当たる行為というものが、処分の取り消しの訴えの対象になるというように理解しております。

 今回の農業競争力プログラムに基づいてフォローアップを行う場合、あくまで、全農と合意した内容について、それを行政指導というような形でフォローさせていただくわけでございますので、行政事件訴訟の対象ではない、行政庁の処分その他公権力の行使、これに当たらないし、処分の取り消しの訴えになるとは考えておりません。

 その意味において、最高裁判所の判例とも比較検討いたしましたけれども、今回のフォローアップというのは、少し、この行政訴訟の対象にはなり得ないものであるというように考えるところでございます。

小山委員 それでは、法案について伺っていきたいと思います。

 これは参考人さんで構いませんが、法案の中で農水大臣の定める実施方針というものが出てきますけれども、これはどういうもので、対象となる業界には何を求めていくんでしょうか。

山口政府参考人 お答えいたします。

 法案第十七条に定める実施指針についてのお尋ねでございますが、事業再編または事業参入に当たっての実施指針、これを主務大臣が定めるということになっております。これは、本法案第十七条第二項におきまして、対象事業の将来のあり方、また事業再編等の目標の設定、事業再編等の実施方法など、再編計画または参入計画の策定に当たって参考になることを定めることとしております。

 具体的な内容といたしましては、将来のあり方につきましては、その事業の現状や将来展望に関すること、目標の設定につきましては、良質で低廉な農業資材の供給または農産物流通等の合理化の実現に資する指標や、稼働率など事業者の生産性の向上を示す指標に関すること、また、実施方法につきましては、雇用の安定に配慮することや他の事業者との適正な競争を阻害しないこと、こういったことについて定めることを検討しているところでございます。

小山委員 検討しているということなので、まだできていないということですよね。うんとうなずいていただきました。

 ですので、いろいろ業界の話とか、これからA―FIVE、公庫の話もしたいと思うんですけれども、まだ、具体的なものはこれから法律が決まってからやられるということで、ですから、今回の法律にはそういう具体的なものが余り感じられないんですね。

 それと、国の講じる措置について、規制、規格の見直し、農業資材の開発促進とか、あるいは農業資材、農産物の取引条件の見える化ということが出てきますけれども、これはどういうことを実際に行うことを今お考えでしょうか。現時点で具体的なものがあれば、お示しください。

齋藤副大臣 規制、規格の見直しについてですけれども、農業生産資材では、農薬取締法に基づきまして農薬の登録、それから飼料安全法に基づく成分規格の設定等について、本法案の趣旨に基づいて一つ一つ点検を行っていって、資材の安定性の確保や国際的な標準との調和を図りながら、最新の科学的な知見を踏まえた見直しを行うことによって合理化、効率化を図っていきたいとしているところでありまして、この結果を見ないと、何がどう変わるかというのはまだ申し上げられる段階ではありません。

 また、農産物流通等におきましても、農産物自体の規格を、流通実態や実需者、消費者のニーズに即して合理的なものとなるように、この法律が施行されましたらきちんと見直しをして実行していきたいということでございます。

 また、農業資材の開発促進についてもお尋ねがありましたが、例えば農業機械につきましては、農業者の高齢化や労働力不足等に対応するため、もうこれは委員は重々御承知だと思いますけれども、ロボットですとかICT等の新技術が非常に有効だということでありますので、民間企業、研究機関、農業者等と連携をしながら、この法律の趣旨に即して開発を一層推進していきたいと思っております。

 また、農業生産資材や農産物流通の取引条件等の見える化についてもお尋ねがありましたが、これも委員は重々御承知だと思いますけれども、価格やサービスを含めまして、より有利な条件を提示する農業生産資材販売業者を比較、そして選択ができるような環境を整備するということと、あるいは、市場流通やネット販売等、今や多様な流通形態のサービスがございますので、そういった内容や取引条件を比較検討できる環境をぜひ整備していきたいなと思っております。

 いずれにいたしましても、法律が、お認めいただき、施行に移った段階で精力的に検討していきたいと思っております。

小山委員 幾つか、後で質問をしようと思って、きょうは時間がないのでできないかなというような部分の答弁もちょっといただいたところもあるんですけれども、その前にちょっと一個伺いたいんですが、韓国における日本製農機のシェアというのは何%ぐらいでしょうか。それで、結構売れていると思うんですが、売れている理由は何でしょうか。

枝元政府参考人 お答え申し上げます。

 近年の韓国国内におきますトラクター、田植え機、コンバインの総販売台数のシェアですけれども、韓国製が約七五%、韓国の輸入製品としては日本製がほとんどでございますが、日本製が約二五%でございます。また、出荷額ベースでは、韓国製が約六〇%、日本製が約四〇%となっております。

 韓国におきます輸入農業機械のほとんどは日本製でございますけれども、韓国のメーカー等から聞き取ったところによりますと、日本製の農業機械の性能がすぐれていることなど、日本の農業機械メーカーの技術力の高さが評価されているために、日本の農業機械が買われているというふうに聞いてございます。

小山委員 今もお話がありましたとおりで、日本製の方が壊れないんですね。

 実は、私どもの党でも農機新聞の方や農機業界の方にヒアリングをさせていただきました。させていただいたというか、伺ったんですけれども、そうしたら、韓国で何で売れているか。一・二倍でも、一・五倍ぐらいでも、壊れない、ですから長い目で見ると日本製の方が安い、それとアフターケアのサービスがしっかりしている、部品が何かちょっと壊れたといっても、すぐ部品を調達してくれる、そういうところがすぐれているんだと。ですから、それも含めての価格だと思うんですね。

 ここで、とにかく、価格が低い、そして機能がついていない農機ということばかりを求めることに、これは僕はどちらかというと政府というよりもマスコミの責任だと思っていますけれども、ばかり言っていいんだろうか。先ほど齋藤副大臣から答弁の中にもありましたが、私はむしろ、自動化とか無人化、こういったものを進めていかなきゃいけないんじゃないだろうか。これから人口が高齢化していって、そして、働きたくても働く人口そのものが、就農者が減っていくわけですから、いかに少ない人数で耕作地を耕作するかということで、非常に機械の果たす役割というのは大きくなってくると思うんですね。

 だけれども、その中で、余り過当競争のような、今でさえも農機業界はマーケットがちっちゃくなっていますから、そういう中で、結構経営は寡占だと言われながら、決して楽ではないはずです。収益の七割は海外から持ってきているという状況の中で、変に、収益が余りにも持てなくて研究開発がおくれるということになると、無人化や自動化の部分がさらにおくれる。

 結果として、さっきの鈴木宣弘先生じゃないですけれども、農業の弱体化ということにつながっていかないように、ちょっと岡本議員の質問と真逆かもしれないですけれども、私は、ここのところはぜひ、今、民間の競争の中で特別参入があって農機業界がこういう状態になっているわけではないと思うんですね。ですから、やはりここに余り新規参入で、しかも、具体名を出していいのか、コマツさんとか、あるいはもっとでっかい、日本で一番大きな自動車メーカーなんかに、新規参入してトラクターをつくってくれといって、それで価格が下がる。確かに、きのうの篠原さんの話じゃないですけれども、それはほかから見れば高い高いと言われますよ、我々議員の給料も高い高いとか。だけれども、そういう中で、やはりちゃんと研究開発ができて、そして、将来の機械化、高度化を進めていけるような体制というものを考えていくことも強化ではないだろうかということも指摘させていただきたいと思います。

 それと、ちなみに、これは今度は大臣に伺いたいんですが、今度、この強化法の中で、農林公庫の新規資金とかA―FIVEの出資、こういったものが、つまるところ、これは、計画を出して、計画が認定されたところに公庫の融資とかA―FIVEの出資をするということだと思うんですけれども、これについて、金融機関、金融業界にヒアリングを行われたんでしょうか。ともすると、もちろん、そのことで倒れる金融機関があるとは思いませんけれども、民業圧迫にもなりかねないと思いますが、そういう懸念もあるかと思いますが、いかがでしょうか。

山本(有)国務大臣 農業生産関連事業者の事業再編についてと金融でございますが、信用力が十分でない中小企業が多いのが事業者の方でございまして、民間金融機関から必要な金融サービスを受けることが難しい場合も想定されるわけでございます。また、長期にわたって運転資金や人件費等を含む多様な資金需要が発生する、そして収益を上げるまでに一定のリスクが存在するというのが、いわば農業の当然のリスクでございます。そうした意味で、民間金融機関だけで十分に資金需要を満たすということは困難な現状の金融情勢でございます。

 そのために、こうしたリスクを補完するという意味で、民間の出資の呼び水というような意味で、株式会社日本政策金融公庫、あるいは株式会社農林漁業成長産業化支援機構、A―FIVEによる公的支援を段取りする必要があるというように思っております。

 公庫につきましては、政策金融改革の基本設計を踏まえて、融資の対象を中小企業に限定しておりますし、A―FIVEも、民業補完の観点から、農業生産関連事業者への出資比率を原則五〇%以下というように抑えております。

 御指摘の、金融業界からヒアリングを行ったかということでございますが、これは、各業界の事業者から事業再編に当たって後押しとなる国の支援も必要であるという意見は頂戴しておるわけでございますが、直接金融業界からヒアリングしたわけではございません。しかしながら、こうした状況にあるというように考えまして、国としての支援措置を用意したというところでございます。

小山委員 民間金融機関が出せない先と。これは、赤字であるとか、山本大臣は金融担当大臣もされていたので十分御存じで、釈迦に説法ですけれども、要注意先とか破綻懸念先に対する融資は、これはできないと思うんです。

 要注意先とか破綻懸念先のところがこれから計画をつくって、事業認定を受けて、それで、将来黒字を出せる収益力のある企業になります。ここに民間金融機関が出せないから、だからA―FIVEや公庫が融資をしたり出資をする、これはわかるんです。

 だけれども、実際には正常先に対する出資や融資も含まれていると思うんですね。ここもなかなか、その中でもいろいろ一般的には格付があったりしますからわかるんですけれども、ただ、これは十分民業圧迫になる可能性があると思っております。

 というのは、ちょっとだけエピソードを紹介しますと、私、実は、とある肥料メーカーの担当者でした。その企業が、当時、そのグループの中で収益力が悪いということで肩身の狭い思いをしていたんです。そこで、少しでも金利を安くしてくれないかという要請がありまして、ただ、そうはいっても、我々も営業でやっているところですから、そうはいかない。

 いろいろ考えて、売り掛け債権をオフバラして、当時、リーマン前でしたから、これをSPCに売っ払って、SPCが市場から資金を調達してくる。それも、その企業ではなくて、売り掛け債権を持っているそのもとのところで、信用力で調達をしてくる。それで、短期プライムレートから市場運用はスプレッドになりましたので、これは一%ぐらい金利が下がったんですね。そのかわり、私どもも利益が下がるわけにはいかないですから、その債権は全部こっちに持ってきてくれと。ちょうどその会社の親会社のメーンバンクが、当時の竹中平蔵担当大臣のもとで、貸し剥がしと言うと言葉は悪いんですけれども、エクスポージャーが多過ぎるということでやっていたので、渡りに船だったようです。ここはよくわかりません。

 その結果かどうかわからないですけれども、その肥料メーカーは、多分グループの方針だったんでしょう、別のある商事系の企業に五一%の株を取得していただきました。買収と言っていいのかもしれない。

 その後、私も転勤になって、どうなったかなと思っていますけれども、この話で、向こうのメーンさんも渡りに船だったみたいだし、よかったかなと思ったら、一個怒られたんです。これは言っていいかと思うんですけれども、当時の信農連から怒られたんですね、おまえら農林中金のところで全部貸出金を持っていきやがってと。こういうことが起こり得ないとも限らないと思うんです。

 しかも、このJAの信農連さんなんかは、かなりこれは肥料業界、小さいところが今あるということで貸しています。きのう、質疑の事前の打ち合わせの中で、農水省の方が、設備資金なんかはリースも多いと。実は、リースでも大体子会社系のリースを持っていまして、工場を、もし古いラインと古いラインがあって、これを廃止して新しいラインをつくります、その設備資金といったら、これはやはり正常先でも、ぴかぴかじゃないところほど金利は高いですからね。ですから、その方が収益力があるんですね。

 だから、こういうことがないように、ぜひここは御留意をいただきたいということが一点と、ここまで話したので、ついでにお話ししますけれども、では、その企業はその後どうなったのか。その後、別の肥料会社さんと統合しました。最初、絶対私どもは生き残ってみせる、肩身の狭い思いじゃなくて、グループに収益を貢献するんだということを言っていて、そうではなくて、買収されてしまったんですけれども、まだ残っていたんです。どことは具体名は、これは信用情報になりますから言いませんけれども、今、国内有数のメーカーになっておられます。

 そこに、私もこういう仕事で聞いてみたんです、今回の法案はどうですかということで。そうしたら、誰が言ったかということももちろんこれは言えませんけれども、もし合併をある程度、強制ではないですけれども、強く指導されるんだったら、合併というのは本当に、企業文化も違うし、それぞれの会社の強みも違うし、それで、紙の上ではいいだろうと思って合併しても大変なんだ、だからこれがもし合併を強要されるような話になれば、大きなお世話になってしまうと。

 だから、ぜひそこは慎重に、十六社の企業が四社まで減りました。ですから、こういった民間の努力や、あるいは金融機関でも、工夫をすれば、資金調達をしたり再編をある程度後押しすることはできると思いますので、そういったところも十分に見ていただきたいなということを思います。ちょっとしゃべり過ぎましたが。

 銘柄の統一のことでちょっとお話を伺いたいんですけれども、銘柄の統一の中で、例えば今、中身の肥料は同じ肥料だ、ただ、それこそ今の系統向けと商系で袋だけ違っているよというものがある、こういったものも含めて、肥料の銘柄集約で業界全体でどのぐらいのコスト削減効果というのを見込んでいらっしゃるのか、あるいは農家一経営体当たりどのぐらいのコスト削減効果を見込んでいらっしゃるのか、お答えいただければと思います。

細田大臣政務官 御質問ありがとうございました。

 今先生から御指摘があったとおり、肥料については、肥料成分が同一であるにもかかわらずJAごとに銘柄が異なっている単独銘柄が多数存在するというふうに認識をしております。

 このように、同一の成分であるにもかかわらず別銘柄として製造することにより生産効率を悪くしている状況にあることから、産地の声もよく聞きながら、そのような銘柄は可能な限り集約する等の取り組みを促進してまいりたい、こういうふうに考えております。

 先般、全農が公表した年次計画におきましても、全農が取り扱う高度化成肥料の銘柄を大幅に集約するという記載がなされまして、これは先生もよく御存じでいらっしゃると思います。

 銘柄集約の効果についてでございますが、これはまず、個々の産地やメーカーの自主的な取り組みであるということ、私どもが強制的に行うというものではないということと、肥料はそもそも原材料を外国から輸入いたしますが、為替の影響あるいは原材料の価格の変動の影響を受けるということから、一般的に予見をすることは困難であるということをぜひ御理解いただきたいと思いますが、私どもとしては、一円でも安い資材を農業者に供給できるように、この法律の成立後、頑張ってまいりたい、こういうふうに考えているところでございます。

小山委員 きのうの質疑の打ち合わせでは、袋だけかえるのはすぐできるんだと。だけれども、すぐできることといったら、コスト削減効果もそれほど大きくはないわけですね。

 それと、袋が違うというのは、やはり意味があるんですね。ですから、このあたりも、ただ数だけ減らしたということで、名目や数字に余りとらわれないでいただきたいということ。

 あと、先ほどの信用事業の話に戻るわけじゃないですが、JAの信用事業は今後収支の見通しが厳しいということも前回の質疑の中でありましたけれども、この肥料業界というのは非常に関連度も高くて、JA系統にとっては有力な貸出先にもなっております。ですので、ここのところは、ぜひ、民業圧迫にならないように御留意をいただきたいと思います。

 以上で終わります。

北村委員長 次に、宮崎岳志君。

宮崎(岳)委員 民進党、宮崎岳志でございます。

 昨日は国交と文科で質問しておりまして、今週三つ目ということで、ちょっと頭の中がとっ散らかっておりまして、わかりにくいところがあったらお許しいただきたいと思うんですが、農業競争力強化法案についてお伺いをまずしたいと思います。

 質問で役所の皆さんからレクチャーを受けて、そのときに、この農業競争力強化支援法案と農業競争力強化プログラムとの関係についてお伺いをいたしました。そのときに、つまり、生産資材価格の引き下げの部分と流通改革の部分があるわけでありますが、プログラムでいうと、「1 生産者の所得向上につながる生産資材価格形成の仕組みの見直し」というのがありまして、この(1)の「生産資材価格の引下げ」というところを法案にプログラム法として盛り込み、そして(2)の全農にかかわる部分は今回の法案には入れていません。

 そして、2の「生産者が有利な条件で安定取引を行うことができる流通・加工の業界構造の確立」という部分のうち、「(1)生産者に有利な流通・加工構造の確立」というところを法案に入れまして、(2)のこれに関する全農の農産物の売り方というところは入れませんでした。

 そして、最後にフォローアップですね、全農は自己改革を進めるため、役職員の意識改革云々がありまして、それについて、与党・政府が進捗状況について定期的なフォローアップを行う、この全農の改革に関するフォローアップの部分も法案には入っていない。

 つまり、ちょっとわかりにくくて恐縮ですが、1の(1)と2の(1)というところは法案化し、1の(2)、2の(2)の、この(2)のところは全農にかかわる部分なので法案に入れず、最後のフォローアップ、自己改革のフォローアップについても法案には入れないということでありますが、これはこういうことでよろしいんでしょうか。確認でございます。

山本(有)国務大臣 そのとおりでございまして、大変整理されて御理解いただけてありがたいというように思っております。

 政府と全農が合意の上で行われたこの全農の自己改革、これにつきましては、くどいようでございますが、行政指導でフォローアップするつもりでございます。

宮崎(岳)委員 そうしますと、この(2)の部分は今後においても法制化はせず、先ほどの小山議員の質問でもありましたけれども、行政指導によってこれは対応するのだという方針を農水省として決定をしておる、こういう御理解でよろしいんでしょうか。

山本(有)国務大臣 全農の皆さんが年次計画をつくっていただき、また数値目標も公表していただくわけでございまして、その意味においては、法律で何らかこの件に対して対処するというつもりはございません。

宮崎(岳)委員 わかりました。

 ということで、当然国の取り組み等についてはこの法律の中に入れました、しかし、全農については、これは民間の団体であるので法制化はしない、法制化はしないけれども、御本人方々が自己改革をすると言っているので、そういう意味で、国と全農との間で合意があるので、この合意に基づいて、行政指導という権限に基づいてフォローアップも行っていく、こういうことだと理解をいたしました。

 プログラム法でありますので、これ自体が強制力を持つものではない。さはさりながら、今後予算を含めたさまざまな施策を打つ場合の根拠となる法律だということだと思いますが、将来にわたって、一応、フィックスした今のような枠組み、法制化部分と行政指導部分を分ける、こういう取り組みがあるということだと思います。

 ちょっと時間が二十分で短いので、一旦談合問題に話を移させていただいて、時間があればまたもとのところに戻りたいと思うんですが、大変恐縮です、私も政策が大好きなものですから、そういう質問もしたいんですけれども。

 先ほどちょっと、東北農政局にかかわる談合事件について岡本委員からも質問がありましたが、この談合の舞台といいますか、本体となったのは、東北土地改良建設協会の中に入っている東北農政局のOBの親睦団体、北杜会であるというふうに報道されております。

 この北杜会というグループが存在するということについては、農水省は把握をされていますでしょうか。

佐藤政府参考人 お答え申し上げます。

 御指摘の北杜会についてでございますが、存在するということは承知をしておりますが、組織内容、構成員、活動内容など具体的なことにつきましては承知をいたしておりません。

宮崎(岳)委員 存在するということは、いつ把握をしていましたか。ずっと前から知っていたということでよろしいでしょうか。

佐藤政府参考人 今回の報道を受けまして確認する中で、この存在を知るに至ったところでございます。

宮崎(岳)委員 では、今回の報道がなければ知るところではなかった、そういうOBがつくっている親睦団体の存在すら知ることがなかったということでよろしいですね、断言をして。

 例えば、このグループが東北農政局のやっているイベントとか、そういったことに協力していたということが過去にあったとかということになれば、今のは完全な虚偽答弁になりますけれども、そういうことも含めて断言できますか。

佐藤政府参考人 お答え申し上げます。

 個々の職員の中には、こういう北杜会といったような親睦団体があるということを知っていた職員もあろうかと思います。

 ただ、今回、記事に北杜会という名称が出て、それを確認したという意味で、今回改めてその存在を確認したということでございます。

宮崎(岳)委員 この北杜会が東北農政局の中に、このメンバーである農政局OBが頻繁に出入りしていたのではないかという報道もありますけれども、そういったことはこれまでの調査でありますか。

佐藤政府参考人 お答え申し上げます。

 繰り返しになって恐縮でございますが、この北杜会の組織の内容ですとか、どういう方がメンバーになっているか、あるいはどういう活動、日々の活動をおやりになっているのか、この辺につきまして、具体的なことにつきましては承知をいたしてございません。

宮崎(岳)委員 この北杜会の、OBが在籍をしていたとされる会社の名前が幾つか既に今報道をされています。これは立入検査を受けた会社ということでありますが、調査を既に、先ほどの話によると、事前にそういう取材等もあったので、調査を始めていたということでございますが、そういったところにいわば天下ったOBの方がいわゆる東北農政局に出入りをしていたということはありますか。

 報道によると、ほかの業者の人が来てもお茶は出さなくてもいい、OBが来たときはお茶を出せという指示が内部で回っていたというのも、本日の、これは朝日新聞でしたかね、書かれておりますが、そういうことでよろしいですか。

佐藤政府参考人 お答え申し上げます。

 そのような報道があったことにつきましては承知をいたしております。

 それで、先ほども大臣から御答弁いたしましたとおり、農政局に公正入札等調査委員会というのが常設をされております。今回の朝日新聞の取材等を受けまして、この公正入札等調査委員会を開催いたしまして、農政局としてもしっかりと調査をしていく、こういうことで現在調査を行っているところでございます。

 その調査の対象といたしましては、OBが再就職をしている会社にとどまらずに、入札に参加した企業を代表する方から調査をしているところでございますので、その調査の中で、いろいろお聞きする中でわかってくることもあるかと思いますけれども、私の方の手元には、どういう調査結果かということについてはまだ報告が来ておりません。

宮崎(岳)委員 この東北農政局、仙台東地区というところにかかわる復興関係の事業、これが約二百五十件ぐらいあるというふうに昨日お伺いをいたしました。

 この二百五十件、私は、あっちの立入検査を受けて突如のことなのかなと思ったんですが、今聞いてみると、ある程度事前に情報を得て調査もやっていたということのようですので、このそれぞれの事業、例えば落札率について、あるいは入札参加の会社数について、それぞれどのような状況であるかお示し願えますか。

佐藤政府参考人 お答え申し上げます。

 今先生御指摘のとおり、入札に参加した会社数としては二百五十社以上、件数としては一千百件という膨大な数になります。

 落札率ですとか入札件数といいますものは、落札のたびにホームページで公表しておりますので、そういった意味では、一件一件自体は公表資料でございます。それをまとめるとなりますと、もちろん物理的に作業できるわけではございますけれども、ちょっとお時間をいただくことが必要なのかなというふうに思っております。

宮崎(岳)委員 ちょっと待ってくださいよ。

 私きのう、この仙台東地区の事業について、ある程度の件数、きのう伺ったものでいうと、例えば本年度に入ってのものということで一覧表を出してもらって、入札参加社数と、それから落札率、金額等について、これを一覧表にして本日の昼までにいただきたいということで、通告のときに申し上げました。

 そのようにできるということでお持ち帰りいただきましたが、立入調査があって資料が押収されているのでできないということで出せないということになったんですけれども、それはうそだったということでいいですね。

佐藤政府参考人 お答え申し上げます。

 昨日うちの担当者が申し上げましたのは、委員から資料の御要望があった時点で、まだ公正取引委員会が農政局の方に立入検査の最中でございました。公正取引委員会の捜査の最中であるということで、パソコンを操作することができない、資料を持ち出すことができないという状況でございました。そういった意味で、なかなかすぐには御提出ができないというようなことを申し上げたというふうに理解をしております。

宮崎(岳)委員 だってホームページに載っているんでしょう。本省で見ればいいだけじゃないですか。東北農政局に一々これをおろしてまとめさせるんですか、現場で立ち入りになっている状況で。そんなことないでしょう。我々は、確かにホームページに載っていると言われても、載っているかなと思うけれども、その膨大なホームページの中のどこにあるかわからないわけですから。

 それは当然、持ち帰った時点で本省の方が、そういう本省に届いている情報があるのであれば、その中でまとめるんじゃないんですか。違うんですか。

佐藤政府参考人 お答え申し上げます。

 本省でできる作業もございますれば、入札率の計算に当たりましては農政局の方のデータも使わなければならない、そういった作業もあるというふうに聞いておりますので、そういった意味では、本省だけでできるものと本省だけではできないものと、両方ございます。

宮崎(岳)委員 何か言っている意味が全然わからないですよね。だってホームページに載っていると言ったじゃないですか、金額とか落札率とか、それを見ればわかると。今の話は全然つじつまが合っていないです。

 大臣、これはきちんと、先ほど岡本委員からもありましたけれども、金額一億円以上の工事ですかを全て、今のような情報を、件名とか金額、落札率、入札参加社数、ランク、これは公開情報だと思いますので、速やかに提出をいただくということでよろしいですね。(山本(有)国務大臣「ちょっととめてくれません、ちょっと打ち合わせするので」と呼ぶ)

北村委員長 速記をとめてください。

    〔速記中止〕

北村委員長 速記を起こしてください。

 大臣から答えます。山本大臣。

山本(有)国務大臣 先ほどの御要望の資料につきまして、現在、ホームページで閲覧できるものを取りまとめて、早急に御提出させていただきたい、委員長の方に御提出させていただきたいというように思っております。

宮崎(岳)委員 もう一点確認です。

 先ほどの話にあった、ホームページと本省にある資料でわからないものというのは、どの部分がわからないんですか、どのデータの部分が。

佐藤政府参考人 情報についてはホームページに掲載をしておるんですが、ホームページの掲載期限、期間というものがございまして、その掲載期間を過ぎたものにつきましては、東北農政局の方にしかデータがないものですから、そこに当たらないといけない、そういう趣旨でございます。

宮崎(岳)委員 いや、本年度ということできのうお願いしているので、五十件程度ということで伺っていますけれども、ちょっと今のような言いわけでは、余りに言いわけとしても稚拙じゃないかと思います。

 大臣、一点、今話されたこと、ちょっと確認を大臣の口からもしたいんですが、北杜会というものの存在は、まあまあ、個々の職員はそれぞれ東北農政局において知っていたんだと。それが改めて、こういう名称であり、もうちょっと具体的なことを今回の報道を受けて知ったので、この実態について、公取はもちろん調べているけれども、農水省としても解明を進める、こういうことでよろしいんですね。確認です。

山本(有)国務大臣 現在、公正入札等調査委員会を開催しております。そして、その開催をするに当たっての調査内容は、入札参加者等からの事情聴取も含まれております。その意味では、北杜会のことも明らかにするべき時期が必ず来るだろうとは思います。

 ただ、これは公正取引委員会及び警察庁と連絡調整しながらやっているところでございますので、その方々の調査あるいは捜査、こういったことに支障がある場合がございますので、確認をしながら、出せるものは出すというような考え方のもとにおるわけでございます。

宮崎(岳)委員 もう一点、二点とも確認いただきます。

 もう一度、ちょっと大臣の口から聞きたいんですけれども、この北杜会については、具体的なことはわからなかったかもしれないけれども、存在そのものは、東北農政局において今回の事案の取材や調査が始まる前に既に把握をされていたということが一点、これを大臣の口からきちんとまた言っていただきたい。

 もう一点は、文科省の問題で天下りの調査が行われてきましたが、そのときに、東北農政局についても調査はいろいろしていると思います。時期の問題とか、本人の職位の問題とか、そういうこともあるので、全員かどうかわかりませんが、そのときに、ある程度東北農政局からゼネコンへの天下りについてもお調べになって、手元で、そのときの調査に基づいて、今やっている全省調査です、これに基づいて把握しているのであれば、その概要をお伝えいただきたいと思います。

 この二点です。

山本(有)国務大臣 まず、前段の北杜会について、今回の、四月に入ってからの報道以前に知り得たものかどうかということでございますが、三月二十四日、東北農政局に設置されている公正入札等調査委員会を開催した時点で既にその所在は明らかになっておりまして、そうした事実を把握、北杜会の事実は把握しておりました。

 そして、次に、もう一つ、後段は、もう一回お願いします。

宮崎(岳)委員 済みません、文科省の天下りの調査との関係です。

山本(有)国務大臣 文科省の天下りと、その相似形の形についての調査でございますが、これは、東北農政局の公正入札等調査委員会の開催に向けまして、この委員会でも調査をしているところでございますけれども、内閣府が第三者機関を使いながら、農林省本省で、いわば同じ省内で調査する以上の機能、調査機能を持っているというように私ども思っておりまして、そのことにおいて、私及び農村振興局長をもって、内閣府に特にこうした疑いがある者について重点的に調査をお願いしたところでございます。

宮崎(岳)委員 時間となりましたので終わりますが、最後、一点だけ確認させてもらいますけれども、一点目は、取材以前に北杜会について把握していたかどうか、あるいは職員が知っていたかどうかについてお答えくださいという趣旨ですので、それについてお答えください。

 二点目は、それは今回の問題が発覚したのでその重点調査をしろというふうに申し上げたという趣旨なんですね。それ以前はやっていないということですね。

 この二点だけ確認させてください。

山本(有)国務大臣 内閣府の人事に関する調査につきましては、三月に入りまして、報道機関から疑いの取材があった時点でそれをお願いしたところでございます。

 そして、この北杜会につきまして知り得た事実につきましては、報道機関の取材の段階で既に、そうした親睦会があるということについては知り得た事実でございます。

宮崎(岳)委員 時間となりましたので終わります。

 以上です。

北村委員長 次に、畠山和也君。

畠山委員 日本共産党の畠山和也です。

 きょうは、参考人質疑が午前中に行われ、貴重な意見もたくさんいただきました。この参考人質疑をセレモニー化することなく、意見を踏まえて審議を深めてこそ、真摯な国会審議のあり方だと思います。遠くから来られている参考人に対する本委員会としての務めでもあります。

 そのことを改めて確認した上で、本法案にかかわって、二十分ですので、私からきょうは、法案第五条、農業者等の努力と、事業再編、事業参入にかかわって質問を行います。これは、きょうの参考人質疑でも意見が集中していた点ですので、改めて確認をしたいと思います。

 まず、法案第五条、農業者等の努力についてです。

 私は本会議で、言われなくても農家は努力を行っているじゃないかとして、なぜ農家の自主的選択を束縛しようとするのですかと質問しました。そのことに対して大臣は、本法案の目的を実現するために必要だと述べて、もって農業者に強制しようとするものではないと答弁されました。

 ですが、その前の部分を通して改めて議事録も読んでみても、束縛しているようにしか聞こえないんですね。いわゆる良質で低廉な資材の供給などを農業生産関連事業者が行うから、その取引相手である農業者がこのような努力を行う事業者を利用しなければ、その実現につながってまいりませんという答弁を聞けば、やはりこれは選択の幅を一定の中へ閉じ込めているように聞こえるわけです。強制はしていなくても、客観的に束縛しているのではないのでしょうか。

 そこで、確認したいことがあります。

 食料・農業・農村基本法にも農業者等の努力という項目があります。中身は時間がないので述べませんが、その基本法の理念に基づくように農業者の努力があると抑制的に書かれていて、これは先日、細田政務官が、第九条に類似的規定があるという答弁もされました。

 ただ、この本法案にある、今私が述べた農業者等の努力に盛り込まれている内容は、基本法からしても逸脱しているように思います。類似ではなく、整合性が問われるのが法律ではありませんか。その整合性について、まず答弁してください。

山口政府参考人 お答えいたします。

 本法案第五条は、良質かつ低廉な農業資材の供給や農産物流通等の合理化の実現を図るため、農業者は、有利な条件を提示する農業生産関連事業者との取引を通じて農業経営の改善に努める旨を規定したものでございます。

 他方、先生から御指摘のございました食料・農業・農村基本法第九条では、農業者は、農業及びこれに関連する活動を行うに当たって、基本理念の実現に主体的に取り組むよう努めるものとするという規定になってございます。ここで言う基本理念といいますのは、基本法の中に規定されております、食料の安定供給の確保、多面的機能の発揮、また農業の持続的発展、農村の振興、こういう四つの理念の実現を図るということで規定したものでございます。

 その両方の規定につきましては、農業者に対して、それぞれの法律の目的の実現のため、一定の行為を行うよう努めるべきことを定めるという点で共通性があると考えておるところでございます。

 さらに申し上げれば、法案の五条により農業者が努めることとされている行為は、この食料・農業・農村基本法に定める基本理念のうち、農業の持続的な発展のために主体的に取り組むべき行為に入るものでございまして、基本法と農業者の今回の努力規定、これとは整合性がとれているというふうに考えております。

畠山委員 そうですかね。

 ちょっと時間が少ないので指摘だけにとどめておきますけれども、ただ、今回の、きょう午前中も、かなりこの農業者等の努力で出てきたんですけれども、そもそも、法律で、有利な条件で取引しろというふうに入っているわけですよね。それで、きのうから、有利な条件というのは何かと。きょうも、さまざまな陳述人からも、そんなこと、そもそもなぜ法律に書き込む必要があるのかという意見が相次ぎました。有利な条件というのは、安いことなのか、品質がいいことなのか、持続して契約することなのか。それで、先ほど、民進の小山議員ですか、一定の価格があっても、その後長もちするのであるならば、それはそれで選択に値するわけであります。

 そこで、きのうの委員会でも、これは細田政務官も、総合的に勘案して各農家で判断してほしい旨の答弁をされました。でも、よくよく考えれば、どんなときでも総合的な勘案はしているはずです。では、一体何のためにこの項目を置いたのか。有利な条件というのは何で、なぜこんな項目を置く必要があるのか、改めて問いたいと思います。

山口政府参考人 第五条に規定をしております有利な条件でございますが、農業生産関連事業者が提示する有利な条件、これにつきましては、価格のみを指すのではございませんで、農業資材の場合ですと、品質や性能、さらに、資材の配送条件や、機械等についてはメンテナンス、こういったサービスの面、こういったものも勘案することになりますし、農産物流通等の場合については、取引期間や決済サイト、また、気象条件等で不作で欠品が出たときの対応、こういったことも総合的に勘案して有利性を判断することを考えているところでございます。

 なお、この規定については、個々の農業者が有利な条件かどうかを判断することを前提としたものでございまして、判断基準も各農業者ごとに異なってくるというふうに考えております。

畠山委員 個々の農業者の判断が違うのはそれは当たり前でありまして、だからこの条項を何で置くのかということになるわけですよ。存在意義が問われる条項ではありませんか。

 なぜここにそんなにこだわっているかといえば、本法案の中心的目的の一つにかかわってくるからだと私は考えています。農業の市場化を早く進めていくためには、農協等はもちろん、農家へもその方向づけをしていかないとできないからであります。農家の経営に口出しするようなこんな失礼なやり方だという問題もありますけれども、大きな構造改革の一環としてこの規定を置かざるを得なかったというふうに思うんですね。

 そこで、かかわっていきますので、事業再編、事業参入についても聞いておきたいと思います。

 私は、本会議でこの点についても質問しました。大臣は、実施指針について、第十七条二項の項目を挙げて答弁されました。いわく、合理化の目標や事業再編の目標、実施期間などなどです。別の言い方をすれば、それ以外の要素は考慮されないのかということです。

 例えば、本会議で私は国籍要件がないじゃないかということを質問したのに対し、大臣は、外資が参入することも、これを活用することも可能であると答弁をいたしました。

 では、それ以外にも、株式会社、社団法人、NPO法人、いろいろありますけれども、さまざまな経営形態やあるいは財務状況の健全性などが問われないでいいのか、実施指針を満たせばどのような者でも可となるのかどうか、その点を確認したいと思います。

山口政府参考人 お答えいたします。

 先生から今、事業者の経営状況や財務内容の健全性、こういったものを考慮しないのかというお問い合わせでございますが、事業者の財務内容の健全性につきましては、事業再編計画の記載事項でございます事業再編の目標の中で記載させることを今検討しているところでございます。具体的には、工場等の稼働率やその営業利益、こういったものを改善していく上で重要な要素でございますそういう財務内容の健全性の目標を記載させることを求めることで今検討しているところでございます。

 また、事業者の経営状況や財務内容の健全性を確認するために、その事業者の事業報告書や財務諸表等を事業再編計画の認定申請の添付書類として提出すること、これも検討しているところでございます。

畠山委員 それらの検討は、省令などに入れ込むということですか。

山口政府参考人 実施指針につきましては、これは大臣が定めるということになってございまして、告示という形で公表したいというふうに思っております。

畠山委員 ひとまずその点だけは確認しておきます。

 第十七条三項についても確認しておきたいことがあります。実施指針の変更について書かれているところです。経済事情の変動により生じたときに変更すると書かれています。ただ、これは幅のある表現でして、定義がなければ、恣意的に指針を変更できることも可能となるのではないか。

 この経済事情の変動というのは何を指すのか、具体的に答弁願えますか。

山口政府参考人 十七条第三項の経済事情の変動により必要が生じたときの見直しの規定の趣旨でございます。

 これは、例えば国内の規制の改正が行われたり、また貿易ルールの変更など農業生産関連事業を取り巻く経営環境が大きく変わったと認められるような場合、これを想定しております。また、実施指針につきましては、パブリックコメントをかけて制定することを考えておりまして、変更の際にもそういった手続をとりたいと思っております。

畠山委員 では、パブリックコメントなどで一定の反映を公的にしていくということの理解で確認しておきます。

 それで、つまり、この実施指針に基づいて進めていくということになれば、私、先ほど述べましたけれども、恣意的な状況にならないのかという懸念を持ったわけでした。

 それで、今回、事業再編や事業参入を促進する法案ですから、これから質問しますけれども、それが進んでいるかどうかということをチェックしていくということに法案上はなっています。不断のチェックが必要になるわけであって、そのような性格を持って調査がされることになるかと思います。

 そこで、今農水省がどのような調査を統計的に行っているのかを事実の上で確認しておきたいと思います。農水省として、毎月々、実施指針に関連するような分野での統計調査というのは何がありますか。

佐々木政府参考人 お答えいたします。

 農林水産省が現在公表している統計の中におきまして資材と流通に関係しているものといたしましては、農産物の生産者販売価格や生産資材の価格の動向を把握するための調査、青果物等の生産者段階から小売段階までの各流通段階別の経費を把握するための調査、青果物や食肉等の卸売数量や価格を把握するための調査などを実施しているところでございます。

畠山委員 その上で、本法案は附則において、法施行から一年以内に調査をするというふうにしています。これら今答弁あった調査だけでなく、新しい調査をするということになるのでしょう。しかも、国外の調査もするとされています。ということは、国内はそうですが、国外とも比較するということになるわけです。

 しかし、韓国の資材などについてもさんざん議論もしてきたですし、ただ安さだけを調査して並べてもだめなわけで、経営体もそれぞれの国で違うし、自然条件も違うし、流通条件も違うし、根本的に各国の農政が違うわけですから、一体どんな調査をしてどのように生かすのかということは問われなければいけない、今のうちに確認しなければいけないことだと思います。

 毎月々やっているような調査と別に、どのような新しい調査をするのですか。

山口政府参考人 お答えいたします。

 法案第十六条で国内外の調査を行うという規定を入れております。この調査を実施するに当たりましては、国内及び海外における農業資材や農産物流通等に関する実態を詳細に把握することを考えております。

 具体的な調査内容については、これも今後検討していくことになってはおりますが、現時点で考えているところで申しますと、市場規模や主要企業のシェア等の業界構造、また生産、流通、販売のそれぞれのフロー、法規制の運用状況、こういった情報を収集することを考えているところでございます。それに当たりまして、既存の統計等により把握できるものについてはこれを最大限活用することにいたしますが、既存の統計等ではわからないようなもの、これについては、新たに調査を行うこととなると考えているところでございます。

畠山委員 今挙げられたような調査の内容というのは、別に法律にするまでもなくできるものですよ。しかもそれは、挙げたものというのは、本来、この法案をつくる前提となる中身ではないんですか。農水省設置法でさまざまな所掌業務はありますけれども、調査などは妨げられていないはずです。

 今述べたような調査というのは、そもそもこの法案を出すために前提となるような中身なのではないんですか。何で今挙げたようなものは設置法でできないんですか。

山口政府参考人 十六条の調査と申しますのは、十六条のところに規定しておりますように、八条以降の国の施策の実施状況を踏まえまして、どういった状況に現在の業界等があるかということを調査するものでございます。その調査を踏まえて、十六条第二項では、施策のあり方について検討を加えるというふうに規定しておりまして、この検討の前提となるものでございます。

 そういった観点で、検討を国としてこの法律に基づいて実施していくということが規定されておりますので、あわせて、施策の検討に資する調査についても規定しているものでございます。

畠山委員 でも、先ほど、その調査項目はこれから検討すると答弁していたじゃないですか。一体、何のための項目なんですか。最初から調査ありきで、それをてこにして何か動かしていくというふうな捉え方をされても仕方ありませんよ。

 つまり、法施行から一年以内に調査するとして、二年以内に検討というのが附則にあります。情勢や動向の調査だけなら今でもできます。一年たって変化をたどるための調査というんだったら、その項目を今からきちんと検討しておかなければ、もうつくっておかなきゃならないのに、いまだ検討中。しかも、一年で資材価格や事業参入が一気に進むものなんでしょうか。一体何のために一年や二年というふうにやったのか、全然わかりません。

 きのうから、その年限についてはPDCAサイクルに基づくものという、一般論としての答弁はありましたが、実態として、この法案が目指す道筋と一年後に出る結果というものは、そう簡単に出るものではないでしょう。

 そう考えると、調査が目的ではなくて、誘導が目的として作用することになりませんか。そのための調査とならないでしょうか。これは大臣に見解を伺いたい。

山本(有)国務大臣 御指摘のとおり、十六条の五年と申しますのは、国が講ずる施策についてのPDCAサイクルというところは御理解をいただいたわけでございます。

 そして、一年以内というこの特例、法施行の日からおおむね一年以内という条項を設けておりますのは、国の緊張感、国のいわば努力義務としての一年というように御理解をいただきたいと思っておりますし、私は、この間御質問にお答えしたように、一年以内に調査を行うと正確性が担保できるというようにもお答えしておりますが、その真意は、調査を法施行後おおむね一年以内に行うことによって法施行直後の状況を正確に把握できて、それを基点として、法の施行による効果をしっかりと把握していきたいという、国に対する責務を課したというつもりの条文であるというように御理解いただきたいと思います。

畠山委員 国としての責務と言いますが、調査をされる方としてはたまったものじゃありませんよ。だって、一年で結果が出ないようなことを求められて、それで、その出てきた調査で一年後にまた検討して、すぐ改革を迫られていくというスキームじゃないですか。

 思い出すのは農協法の審議です。あのときも、上からの改革ではないかと議論し、私も、当選間もないころでしたが、必死に質問しました。当時問題になったのは、農協の性格を変えることになりはしないかということです。

 最後に一問お聞きします。

 本法案で第五条に定められている、「農業者の農業所得の増大に最大限の配慮をするよう努めるものとする。」努力規定がありますが、しかし、農協法は第七条で義務規定として同じようなことで書かれています。

 結局は、このような調査などもてことして、義務的に、いわゆる上からの改革となりはしませんか。大臣、最後に伺います。

山本(有)国務大臣 御指摘のように、本法案の五条三項は、農業生産関連事業を行う農業者の組織する団体、これは農協も入るわけでございますが、その皆さんが努力いただく、「最大限の配慮をするよう努める」努力義務規定でございます。

 御指摘の農協法の七条二項、ここには、「組合は、その事業を行うに当たつては、農業所得の増大に最大限の配慮をしなければならない。」という書き方でございまして、こちらは義務規定というように解釈をするところでございます。

畠山委員 時間なので終わりますが、今、なぞっただけの答弁だったと思います。

 終わります。

北村委員長 次に、足立康史君。

足立委員 日本維新の会の足立康史でございます。

 また出張させていただきまして、ありがとうございます。同僚の吉田委員からは、農水委は非常に仲がいいので余り変なことは言わないようにという、ちょっと注意をいただいていますので、丁寧にさせていただきたいと思います。

 きょうは井上食料産業局長を中心に質問させていただきますので、大臣、副大臣、政務官におかれましては、のんびりと聞いていただければと思います。

 さて、法律案の関連ということで、ちょっと豊洲の話をさせていただきたいんですが、今、東京で、豊洲市場移転の問題で、築地再整備を含めて都知事が議論されている、こういう議論がありますが、もし築地再整備となった場合は、いわゆる整備計画、中央卸売市場の整備計画の見直しが必要になると考えますが、いかがでしょうか。

井上政府参考人 お答え申し上げます。

 農林水産大臣が定めます現行の中央卸売市場整備計画におきましては、築地市場の豊洲地区への移転を前提にした記載がなされておりますので、もし仮に、委員御指摘のとおり、東京都が豊洲市場への移転を中止して築地市場を再整備するというようなことになった場合には、この整備計画の変更が必要となります。

足立委員 まさに、今御答弁いただいたように、今の中央卸売市場整備計画は、豊洲移転が基本的に前提になっているというか、そう書いてあるわけですね。

 局長、今知事は、報道で見ているだけですけれども、もうほとんどニュートラルになっていて、今の時点で、今の東京都の状況でももう中立になっているわけですから、国として中央卸売市場整備計画の検討というか、必要になるような気がするんですが、今はまだ、東京都は中央卸売市場整備計画の上で活動しているというか運営している、そういう理解ですか。

井上政府参考人 現在、東京都におきましては、豊洲市場への移転につきまして、専門家会議、市場問題プロジェクトチーム、さらに市場のあり方戦略本部においてさまざまな角度から議論、検証されている状況でございますけれども、豊洲市場への移転につきまして見直しを行うといった判断をされている状況にはないというふうに承知をしております。

足立委員 わかりました。

 ちなみに、あと二つほどこの関連で伺いたいのは、一つは、では、知事が築地再整備という判断をされた場合、何をもって国が動き出すのかという議論もあるだろうし、それから、国が動き出す場合、どういう手続を、どれぐらいの時間がかかるのか、こういうことが、関心が出てくるわけであります。

 知事が例えば会見で再整備にかじを切るということをおっしゃったらもうそうなるのか、手続上は何が国のアクションのスタートになるのかということと、それから、スタートした後どれぐらい時間をかけて、どういう手続でそれを国がオーソライズしていくのか、ちょっとその二点、お願いします。

井上政府参考人 中央卸売市場整備計画の策定または変更につきましては、卸売市場法ができた当初段階、まだ日本国内に卸売市場がほとんどないような状況の中では国の発意で検討がスタートするということもございましたけれども、現在のようにかなり整備がされているという状況の中で、既にある市場を、例えば場所を移転してといったような場合には、開設者の意向というのを全く踏まえずに計画変更の検討がスタートするということは実際上は考えられないということでございます。

 まずは、開設者の東京都の意向というのが正式に国に伝えられたところで、国としてこの中央卸売市場整備計画を変更することが適当かどうかという判断を行った上で、その後の手続としましては、これは法定をされておりますけれども、食料・農業・農村政策審議会の意見を聞くという手続が必要でありますとともに、関係地方公共団体への協議を行う。この場合には東京都のみでございますけれども、こういった手続を経た上で計画の変更を行う必要がございます。

 国として計画変更の発意をして、審議会の意見を聞く、あるいは自治体への協議をする、これに要する期間としては、おおむね一カ月から二カ月程度というふうに認識をしております。

足立委員 ありがとうございます。

 次に、費用というか予算の話なんですが、既に今でも、移転の延期、本来昨年の十一月に移転する予定だったものが先延ばしになっているわけでありまして、その間、豊洲新市場の維持費が相当かかっています。私の地元の大阪府とかだととても耐えられないような毎日の負担、毎月の負担を、東京都は本当にお金持ちでいいな、こう思うわけであります。

 そういう維持費は今かかっているわけですけれども、実際に築地再整備になった場合、今まで豊洲市場に投じられた国の補助金等、これは、私の方で確認しているところでは二百八億円と承知していますが、この補助金は返還が必要になると考えますが、いかがでしょうか。

井上政府参考人 委員御指摘のとおり、豊洲市場の整備につきましては、卸売市場法の規定に基づきまして、平成二十三年度から二十六年度にかけて、卸売場施設等の建設費の一部として約二百八億円の交付金の交付を国から行っているところでございます。

 現在、東京都におきましては、先ほども申し上げましたようなさまざまな組織において議論、検証している状況でございますので、豊洲市場に移転しない場合という仮定の御質問につきましては、お答えを差し控えさせていただきたいと存じます。

足立委員 まさに仮定の話になるわけですが、ただ、国の補助金ですからね。だから、一般論としては、今もうお答えになったかもしれませんが、もう一度ちょっと確認ですが、要すれば、国費が投じられているわけです、二百八億円。東京都がかじを戻すというか、築地再整備にかじを切った場合のように、そもそも補助金が目指していた目的を実現しない、まあ、森友学園の話がすぐ思い浮かびますが、余り一緒にしない方がいいですね、ここはやめておいて。

 一般論としては、このような場合には返還が必要になると思うので、ちょっと、一般論としてもう一度お願いします。

井上政府参考人 あくまで一般論として申し上げさせていただきますと、補助金あるいは交付金の交付の目的の用にその施設等が供されなくなったような場合、この場合には、補助金等に係る予算の執行の適正化に関する法律等に基づきまして補助金等の相当額を国庫納付することがございますが、この豊洲につきまして、現時点でそうした点の検討を行うような状況には至っていないと考えております。

足立委員 ありがとうございました。

 以上が、基本的な仮定の話であります。

 さて、日本維新の会は、既に、三月の第一週に、東京都に、馬場幹事長、柳ヶ瀬都議、私の三人で小池都知事を訪問しまして、豊洲移転をすべきだという提言書を手交しています。小池百合子都知事は、そのときはどうも都庁内にいらっしゃったようでありますが、会ってくれませんで、卸売市場長が対応されまして、何かビデオで我々の記者会見を見ていらっしゃったといううわさもありますが。

 いずれにせよ、我々は、特に我々は国会ですから、国の法律、条例まで視野に入れていますが、国の法令、それから東京都の条例を踏まえれば、移転をちゅうちょする理由は一つもない、こう思っていますし、加えて、豊洲市場に適用されている整備方針は極めて二重基準、豊洲市場には適用するが、築地市場を初めほかの市場には適用しない二重基準になっているということを指摘申し上げているところであります。

 そうした観点からいうと、私は、そろそろ、早く、これはもう大分時間がたっていますから、国が卸売市場法に基づいて、もう早く決めろということを勧告する余地があるのではないかと思って、卸売市場法を読んでみました。ちょっと微妙ですが、少なくとも、国が開設者に勧告をする規定が十二条と五十一条に、二カ所出てまいります。

 こういう条項を使う余地が、可能性でいいわけですが、法律の規定上、東京都が豊洲移転に係る方針決定を余りに先延ばしして、それが大変問題になる場合、卸売市場法の十二条あるいは五十一条に基づいて、国が東京都に対応を急ぐべき等と勧告する余地があるのではないかと思いますが、いかがですか。

井上政府参考人 卸売市場法に基づきまして農林水産大臣が行い得る勧告といたしましては、ただいま委員から御指摘がありましたように、二つのものがございます。一つは、第十二条に基づきまして、地方公共団体に対し、中央卸売市場の開設を促進すべき等の勧告を行う場合でございます。また、もう一点は、第五十一条に基づきまして、開設者に対し、中央卸売市場の施設の改善等の勧告を行う場合がございます。

 最初に申し上げました第十二条でございますけれども、この中央卸売市場の開設を促進すべき旨の勧告につきましては、この中には移転は当たらないということでございますので、この条項の対象にはならないということでございます。

 他方、第五十一条に基づきます勧告ですけれども、これは、中央卸売市場の業務の適正かつ健全な運営を確保するため必要があると認めるときに勧告することができるということになっておりまして、これに該当するケースというのは幅広くあり得るわけでございますけれども、築地、豊洲につきましては、現状でこの適正かつ健全な運営が確保されていないとは言いがたい状況と考えております。

足立委員 私は、これはまた局長、きょうの質疑を受けてというか、ぜひ考えていただきたいのは、いろいろな報道がありますが、築地はすばらしい市場だと思いますよ、すばらしい市場だと思いますが、昨年の十一月に移転する前提で来ていたんですね。だから、もう正直、私も現地に行きましたけれども、限界だと思います。だから、よく、つぶさに東京都の、特に築地市場の現状、あるいは、豊洲市場で維持費が、ほかの道府県であれば耐えられないようなコストが日々かかっているという現実をよく吟味、検討をいただいて、本当にその五十一条の勧告の対象になり得ないのか、もちろん、きょうのところは、局長は基本的にはまだそうだとは認識していないということでありますが、私は、まず、結果はともかくとして、検討はすべきだ、こう思いますね。

 局長、これは、判断はいいと思うんですよ、判断は。まだこの五十一条の勧告、できる規定ですから、するには至らないという判断はあっていいと思いますが、現在の築地市場の現状、これについて、この五十一条の勧告について検討はしていただいた方がいいんじゃないでしょうか。いかがでしょうか。

井上政府参考人 現状におきましては、築地市場につきましても、先ほど申し上げましたように、適正かつ健全な運営が確保されていないとは言いがたい状況と考えてございますけれども、築地市場、豊洲市場ともに、引き続き、その状況につきましては注視をしてまいりたいと考えております。

足立委員 ちなみに、もし……(発言する者あり)うるせえな、本当。突然やじるなよ。ゆっくり、やじるにしても、ちょっと前振りを入れようよ。

 ちなみに、この細則とかはありますか。すなわち、どういう場合に勧告する対象になるか、この法律以下の規定はありますか。

井上政府参考人 さまざまなケースというのがありますので、法律の下に政令、省令等で規定をしたものはございません。

足立委員 この法律の条文に基づいていろいろな検討がなされるということですが、今、民進党の変な委員が、変なことを言っている委員が、人物について変だと言うと何か懲罰動議が出ますので、変なやじを飛ばした委員と申し上げますが。

 大体、民進党はひどい党ですよね。この間、驚きました。重要広範で、重要広範ですよ、重要広範の本会議の十五分の質問で、十二分が森友学園ですよ。ひどいですよね。それも、その重要広範って何か知っていますか、ACSAですよ。ACSAってわかりますか、私、外務委員もやっていますから。これだけ北朝鮮の弾道ミサイルが緊迫している状況において、日米同盟の基盤を支える、日米、日英、日豪ACSAの重要広範、総理が座っているんですよ、そのところで、十五分の質問時間の十二分を森友問題に使ったんですよ、民進党は。

 その民進党の……(発言する者あり)本当、ひどい話だな。きょう質問させていただいているのは、まさに日本の農業の競争力に関する話なんですよ。きょう私がしている質問と法案の関係がわからないなんというのは、本当に、よく農水委員をやっているなと国民の皆様に言われても仕方ないような委員ですよ、本当に。まあいいや。

 あと二、三分ですから、最後、その民進党、本当にひどい政権でしたよね。平成二十二年の第百七十四国会、二月二十五日の予算委員会第六分科会、赤松国務大臣がひどい答弁をしています。えっ、時間来た。これはまた時間をとって、民主党政権がいかにひどい行政をしていたかを改めて追及することをお誓い申し上げて、終わります。

 ありがとうございます。

北村委員長 これにて本案に対する質疑は終局いたしました。

    ―――――――――――――

北村委員長 これより討論に入ります。

 討論の申し出がありますので、順次これを許します。岸本周平君。

岸本委員 民進党・無所属クラブを代表して、ただいま議題となりました農業競争力強化支援法案につきまして、反対の立場から討論をさせていただきます。

 反対の理由の第一は、農業者等の努力についての規定であります。

 本法案は、農業者について、「有利な条件を提示する農業生産関連事業者との取引を通じて、農業経営の改善に取り組むよう努めるものとする。」としています。

 農業者はこれまで経営改善の努力をしてこなかったとでもいうのでしょうか。政府は、農業者を主体性のない存在と見ているのでしょうか。現政権の上から目線の姿勢をよくあらわしている規定であります。

 また、本法案は、農業者団体の努力についても定めています。

 これらの規定を根拠に、政府が民間の経済活動に対する干渉をさらに強めようとしていることに大きな危惧を覚えます。

 理由の第二は、事業再編、事業参入の支援措置であります。

 本法案は、農業資材及び農産物流通等の事業再編、事業参入に対する支援措置を講じようとしています。

 そもそも、農業生産関連事業の分野で参入障壁があったのでしょうか。あるなら、それを改めることが先決です。適切な競争がなされている市場に国の支援で上げ底をさせて、異業種の企業を無理やり農業生産関連事業に引きずり込もうとすることは、市場をゆがめることになります。

 農業生産関連事業は、各地域の農業の特色に合わせ、工夫して必要な生産資材の提供や流通、加工に取り組んでいます。農業生産関連事業の参入も再編も、民間の自律的な経済活動に任せるべきだと考えます。

 理由の第三は、生産資材の銘柄集約についてであります。

 政府は、肥料の銘柄数の多さを問題視していますが、これは肥料業者がユーザーである農業者の地域によって異なるニーズを取り込んだ結果であります。銘柄数の多さが在庫管理等のコストに反映されると考えているようですが、業界には、銘柄数削減による製造コスト削減効果は単に固定費の範囲内であるという意見もあります。

 政府は、農業競争力強化プログラムの取りまとめ、本法案の提出に当たって、関連事業者の意見をよく聞いているのでしょうか。政府の取り組みがユーザーのニーズに応えようとする関連事業者の意欲や努力を抑制し、ひいては農業者が真に必要とする良質かつ低廉な農業資材が農業者の手元に届かなくなってしまう事態に陥ることを懸念します。

 本法案は、農村地域における地場中小の農業生産関連事業を衰退させ、農業や地方の活力を弱体化させ、地方を切り捨てるものであります。農業所得の向上や農業の競争力強化という美名のもと、民間の経済活動に干渉し、日本の農業をいたずらに混乱させようとするもので、到底容認できるものではありません。

 以上の理由から、本法案に反対することを表明して、私の討論を終わります。(拍手)

北村委員長 次に、斉藤和子君。

斉藤(和)委員 日本共産党を代表して、農業競争力強化支援法案の反対討論を行います。

 反対の第一に、本法案が、農協、全農に介入する根拠法になり得るものであり、認められません。

 本法案は、第四条、第五条で農業者や農業団体に努力義務を課し、第十六条で五年ごとの状況調査と必要な施策の検討を明記し、政府によるチェックの仕組みを盛り込みました。さらに、附則で、施行後一年以内に調査し、二年以内に施策を検討するとしています。これは、規制改革推進会議が農協改革案で二〇一九年五月までとした農協改革集中期間と重なり、農協改革とリンクするものです。

 仮に全農の年次計画の進捗が予定どおり進まない場合、本法案の検討規定に基づき、全農に対する調査等を進めることが可能となります。自主性が尊重されるべき協同組合である農協、全農に対して権力的に介入することになり得るものであり、認められません。

 反対の第二は、TPP協定など農産物輸入自由化を前提とし、政府の直接的な介入によって農業生産関連事業者を再編するものだからです。

 農業資材価格の引き下げは、農業者の所得確保にとって不可欠の課題であり、我が党は一貫して資材価格の引き下げを求めてきました。しかし、農水省は、独占価格にメスを入れませんでした。

 本法案は、主務大臣による指針の策定と事業参入計画の認定が規定され、国による農業資材事業の再編を進めるものとなっています。地域営農を支えてきた中小の農薬、肥料メーカーは、再編、淘汰されることになり、雇用や関連企業、地域営農に打撃を与えることは必至であり、認められません。

 反対の第三は、農業競争力強化の方向性が食料自給率向上や地域農政の拡充に反し、日本農業の発展につながらない点です。

 本法案は、アベノミクスにおける農業の構造改革路線である攻めの農政の名のもとに、TPPのような広範囲な農産物の関税撤廃を前提とし、輸入農産物の流入による価格下落のもとでも経営を維持できる農業経営体を育成することを目的とし、それを支援するものです。

 農業の多面的機能を支えている家族農業を含めた多様な農業を支援するものではなく、地域営農と雇用を壊し、食料自給率の向上にも結びつかないことを指摘し、反対討論を終わります。(拍手)

北村委員長 これにて討論は終局いたしました。

    ―――――――――――――

北村委員長 これより採決に入ります。

 内閣提出、農業競争力強化支援法案について採決いたします。

 本案に賛成の諸君の起立を求めます。

    〔賛成者起立〕

北村委員長 起立多数。よって、本案は原案のとおり可決すべきものと決しました。

 お諮りいたします。

 ただいま議決いたしました法律案に関する委員会報告書の作成につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

北村委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

    〔報告書は附録に掲載〕

    ―――――――――――――

北村委員長 次回は、公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。

    午後五時三十五分散会


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