衆議院

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第6号 平成29年12月12日(火曜日)

会議録本文へ
平成二十九年十二月十二日(火曜日)

    午前十時開議

 出席委員

   委員長 伊東 良孝君

   理事 伊藤信太郎君 理事 小島 敏文君

   理事 坂本 哲志君 理事 鈴木 憲和君

   理事 福山  守君 理事 佐々木隆博君

   理事 大串 博志君 理事 佐藤 英道君

      赤澤 亮正君    井野 俊郎君

      池田 道孝君    稲田 朋美君

      上杉謙太郎君    小田原 潔君

      加藤 寛治君    金子 俊平君

      神田  裕君    木村 次郎君

      岸  信夫君    小寺 裕雄君

      斎藤 洋明君    杉田 水脈君

      西田 昭二君    藤原  崇君

      古川  康君    細田 健一君

      本田 太郎君    三浦  靖君

      宮路 拓馬君    山本  拓君

      石川 香織君    大河原雅子君

      神谷  裕君    亀井亜紀子君

      井出 庸生君    佐藤 公治君

      関 健一郎君    緑川 貴士君

      中野 洋昌君    金子 恵美君

      田村 貴昭君    串田 誠一君

    …………………………………

   農林水産大臣       齋藤  健君

   農林水産副大臣      礒崎 陽輔君

   農林水産大臣政務官    上月 良祐君

   政府参考人

   (内閣官房内閣審議官)  澁谷 和久君

   政府参考人

   (外務省大臣官房審議官) 飯田 圭哉君

   政府参考人

   (農林水産省大臣官房危機管理・政策評価審議官)  塩川 白良君

   政府参考人

   (農林水産省消費・安全局長)           池田 一樹君

   政府参考人

   (農林水産省食料産業局長)            井上 宏司君

   政府参考人

   (農林水産省生産局長)  枝元 真徹君

   政府参考人

   (農林水産省生産局畜産部長)           大野 高志君

   政府参考人

   (農林水産省政策統括官) 柄澤  彰君

   政府参考人

   (林野庁長官)      沖  修司君

   農林水産委員会専門員   室井 純子君

    ―――――――――――――

委員の異動

十二月十二日

 辞任         補欠選任

  泉田 裕彦君     神田  裕君

  金子 俊平君     本田 太郎君

  谷川 弥一君     小田原 潔君

  野中  厚君     井野 俊郎君

  古川  康君     三浦  靖君

  宮路 拓馬君     杉田 水脈君

  岸本 周平君     井出 庸生君

  江田 康幸君     中野 洋昌君

  丸山 穂高君     串田 誠一君

同日

 辞任         補欠選任

  井野 俊郎君     野中  厚君

  小田原 潔君     谷川 弥一君

  神田  裕君     泉田 裕彦君

  杉田 水脈君     宮路 拓馬君

  本田 太郎君     金子 俊平君

  三浦  靖君     古川  康君

  井出 庸生君     岸本 周平君

  中野 洋昌君     江田 康幸君

  串田 誠一君     丸山 穂高君

    ―――――――――――――

十二月八日

 一、農林水産関係の基本施策に関する件

 二、食料の安定供給に関する件

 三、農林水産業の発展に関する件

 四、農林漁業者の福祉に関する件

 五、農山漁村の振興に関する件

の閉会中審査を本委員会に付託された。

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 政府参考人出頭要求に関する件

 農林水産関係の基本施策に関する件(畜産問題等)

 平成三十年度畜産物価格等に関する件


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     ――――◇―――――

伊東委員長 これより会議を開きます。

 農林水産関係の基本施策に関する件について調査を進めます。

 この際、お諮りいたします。

 本件調査のため、本日、政府参考人として農林水産省大臣官房危機管理・政策評価審議官塩川白良君、消費・安全局長池田一樹君、食料産業局長井上宏司君、生産局長枝元真徹君、生産局畜産部長大野高志君、政策統括官柄澤彰君、林野庁長官沖修司君、内閣官房内閣審議官澁谷和久君、外務省大臣官房審議官飯田圭哉君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

伊東委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

伊東委員長 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。宮路拓馬君。

宮路委員 おはようございます。自由民主党の宮路拓馬でございます。

 質問の機会を頂戴いたしまして、まことにありがとうございます。

 本年九月に宮城で行われました全国和牛共進会、皆様のおかげをもちまして、鹿児島が総合優勝を果たしました。日本一の和牛、認定をいただきましたこと、皆様にこの場をおかりしてお礼申し上げます。ありがとうございます。

 ただ、この和牛日本一、鹿児島だけでなし遂げたわけではありません。

 実は、この和牛共進会、昭和四十一年に第一回が開催されたわけであります。当時、岡山県でございました。そのときのテーマは、「和牛は肉用牛たりうるか」、それがテーマでありました。つまり、肉用牛といえば海外産の牛肉、日本の和牛はいわば役牛として歴史上使われてきましたから、その和牛が海外産と伍してやっていけるのか、それがテーマだったわけであります。

 それから半世紀以上、和牛の改良の歴史でありました。

 当初は、岡山で全共が開催されたことからもわかるとおり、中国地方が和牛のメッカでありました。鹿児島の和牛も、もとをたどれば、鳥取の気高号、名牛だったわけでありますが、その血が入っております。あるいはまた、増体の良質な牛である但馬牛、こうした技術改良、品種改良を重ねて、今の鹿児島の黒毛和牛が誕生したわけであります。そして、宮崎、熊本あるいは北海道のみならず日本全国の生産地が切磋琢磨しながら技術の改良を進め、今、日本が世界に誇る和牛が誕生したわけであります。

 和食が世界遺産に登録をされまして、今、海外において非常に人気を博しております。消費もふえております。その中にあって、この和牛、半世紀以上かけて日本全国で築き上げてきた和牛というものを、私は、ぜひ和食のこの流れに乗って世界に打って出ていただきたい、そのように思っております。

 政府におかれましても、農産物の輸出促進に大きな力を入れて取り組んでいただいております。今、和牛で百三十億円強だったと記憶しておりますが、輸出額が伸びております。そして、平成三十一年には二百五十億円の目標を掲げているとお聞きをしております。

 ただ、鹿児島もどんどん輸出に力を入れておりますが、いまだ各国の輸入規制等もありまして、世界、全世界に自由に輸出できる環境にはなっておりません。そうした点についても、政府一丸となって輸出の窓口を、門戸をより大きく広げられるように取り組んでいく必要があると考えております。

 牛肉の輸出促進策について、あるいはそれに向けた決意について、政府の考え方をお聞きしたいと思います。

上月大臣政務官 宮路拓馬委員にお答えをいたします。

 牛肉の輸出につきましては、官民を挙げて取り組んでおりまして、平成二十八年には百三十六億円と過去最高となっております。対前年比も一二三%という状況で、順調に伸びている状況にございます。

 本年に入りましても、これまでのプロモーション活動の効果に加えまして、九月から台湾への輸出が再開したことも相まちまして、輸出量、額ともに過去最高水準で推移しているところでございます。

 さらに、十二月一日には、日本食品海外プロモーションセンター、JFOODOでございますが、の戦略が公表され、取り組みテーマの一つとして、和牛を台湾でプロモーションしていくことが位置づけられました。

 鹿児島県は、早くから輸出に対応した食肉処理施設の整備を進めていただきますなど、牛肉輸出に積極的に取り組んでいただいておりまして、大変心強く感じております。私も、かつて六年間鹿児島県庁に勤めさせていただきまして、畜産に大変力を入れていただいていることについてはよくよく存じているところであります。

 農林水産省としましては、今後とも、輸出先国の輸入規制の撤廃、緩和に向けた交渉など輸出環境の整備を進めますとともに、輸出に対応した食肉処理施設等の整備への支援、また、日本産和牛の優位性、これは味でありますとか安全性でありますとか、そういったものでありますとか、和牛のよさを生かす食べ方を伝えるためにシェフ等を日本へ招聘する、そういったことなど、ハード面、ソフト面両面の施策を総合的に展開していきますことによって、牛肉輸出を一層拡大してまいりたいと考えております。

宮路委員 当時、上月政務官が鹿児島におられたときにまいた種が、今、花を咲かせているのかもしれません。ありがとうございます。

 ただ、この牛肉の輸出促進を図っていくためには、国内の生産基盤の強化というものも必要であります。

 子牛の価格が最近高騰しておりました。一方、好調だった枝肉の販売価格、これが少し下落基調にある中で、実は、生産農家、今大変厳しい環境に置かれつつあります。特に肥育農家につきましては、高い子牛、素牛を買って、それに飼料を与え、育て、いざ販売というときに、枝肉価格がなかなかその生産費をカバーするに十分でない価格になってきつつある。

 そうした中で、経営安定対策、いわゆるマルキン、これを拡充してほしいという切なる声も届いているところであります。

 ただ、このマルキンの拡充につきましては、TPP対策ということで、その発効を条件にということでなっておりますので、財政当局との問題、あるいは将来的に真に発効したときにしっかりそれに対応するためのものだということもあり、なかなかマルキンの拡充というのは難しいというのも私は重々承知をしております。

 したがって、経営安定対策ももちろん大事ではありますが、もう一つの柱である生産基盤の強化、ここをしっかりと進めていかなければならない、私はそのように考えております。

 そうした中、畜産クラスター、これは平成二十六年から始まった事業であったと記憶しておりますが、その畜産クラスターが今こそ求められている。

 牛の枝肉価格は高くなったり安くなったりいたします。あるいは、子牛の価格も安くなったり高くなったりする。ですので、肥育農家の経営状況も、好調なときもあれば厳しいときもある。それをカバーするための経営安定対策ではありますが、一方で、その厳しいときにも生産基盤を強化し、やがて枝肉価格が高まっていく、あるいは子牛の価格が安定していく。その中で、肥育農家の経営も、いいときはいい、厳しいときは何とかそれを乗り切る。そうした中で行われていくものだと思っております。

 そのための、いわば未来に対する投資、そういう意味で、畜産クラスターは非常に有効な施策であると考えておりますし、生産農家の期待も非常に高いものがあります。

 今回、補正予算が編成されるというふうにお聞きしております。ぜひその中で、畜産クラスター、農家の期待に応えるだけの規模を確保していただきたい。それについて、政府の考え方をお聞きしたいと思います。

枝元政府参考人 お答え申し上げます。

 畜産クラスター事業でございますけれども、総合的なTPP等関連政策大綱に位置づけられました畜産、酪農の収益力、生産基盤の強化を進めていく上での中核となる事業でございます。

 例えば、御地元の鹿児島県では、これまでに全国で二番目に多い五十三の畜産クラスター協議会が設立されておりまして、積極的に取り組んでいただき、施設整備、家畜導入によりまして肉用牛繁殖経営への新規就農を支援する取り組みですとか、TMRセンターの整備によりまして、地域の繁殖農家の飼料生産業務の負担を軽減し、地域全体で飼養頭数の拡大を目指す取り組みなどが実施されまして、成果を上げております。

 今後とも、地域の連携によります収益向上という本事業の趣旨を徹底するとともに、適切な事業の実施と必要な予算の確保に全力を挙げてまいりたいと存じます。

宮路委員 なかなか、今この時点でこれだけの規模というのは言えないとは思いますが、ぜひ、その期待に応える、そしてそれがあすに希望が持てる畜産業となるように、しっかりと取り組んでいただきたいと思います。

 そして、その上でお聞きしたいことがございます。それは、畜産クラスターの採択についてであります。

 クラスターは、もちろん生産基盤の強化に地域挙げて取り組む者を応援するということであります。したがって、生産基盤の強化という意味では、いわば大規模な畜産農家が確かにその生産基盤の強化には非常に力を発揮するのであろうと思います。

 ただ、一方で、中山間地、あるいはその中での家族経営、そうした生産農家の皆さん方の取り組みが今の日本の畜産の発展を支えてきたと私は思っております。鹿児島も中山間地を多く抱える県であります。

 そしてまた、何も大規模農家だけが若い後継者が入っているわけではありません。私の地元でも、中山間地でも、じいさんの営んできたこの畜産を孫の自分が引き継いでいくんだ、その思いで農業高校に通う、あるいは農業大学校に通い、最新の畜産を学ぶ、そういう若者がおります。

 中山間地においても、新しい後継者が新しい経営方針のもとで畜産をやっていきたい、そういう若者がふえていることは、私は、日本の農業にとって、畜産業にとって非常に大事なことだと思っております。

 ぜひ、政府におかれましては、畜産クラスターの採択に当たって、そうした家族経営、中山間地で日本の畜産業をしっかり支えていこうとする、そうした声に応えていただきたいと思います。政府の考えについて、お伺いしたいと思います。

大野政府参考人 お答え申し上げます。

 畜産クラスター事業におきましては、その規模のいかんを問わず、クラスター計画に中心的な経営体として位置づけられ、地域の平均規模以上に拡大する場合には、支援対象としているところでございます。

 とりわけ、平成二十八年度補正予算からは、中山間地域優先枠を新たに設け、土地条件に制約のある中山間地域の中小規模の畜産農家が活用しやすいよう、平均規模以上に拡大しなくとも事業の対象としたところであります。

 したがいまして、中小規模の家族経営の方が事業を活用するに当たりましては、その経営が地域でどのような役割を果たしておられるか、果たすのか、その経営が継続、発展するために地域とどのように連携されるのか、こういったことにつきまして地域でよく話し合っていただき、畜産クラスター計画に位置づけていただくことが重要であります。

 今後とも、中小規模の家族経営が畜産クラスター事業により成果を上げている事例も御紹介させていただきながら、家族経営も含めた地域の畜産、酪農の収益向上の取り組みを支援してまいりたいと考えております。

宮路委員 今の政府の考えがそれこそ中山間地域まで、隅々まで届くように、ぜひ、そうした説明を政府としてもしっかりと行っていっていただきたいと思います。

 続いて、酪農についてお伺いをしたいと思います。きょうは、我が地元鹿児島からも、酪農家の皆さんが駆けつけてくださっています。頑張ります。

 今般、改正畜安法によりまして、補給金の制度が恒久化をされることになりました。これは指定団体制度の見直しの中で行われたものでありますが、その心は、やはり、これまで指定団体が担ってきた需給調整、やはり牛乳というのは腐りやすく、そしてまた需要もまた供給も年間の中でばらつきが、波があります、そうした中で、飲用乳あるいは加工原料乳、その需給調整を図ることが価格の安定に非常に重要な役割を果たしてきたところでありますし、指定団体制度は、その意味で、日本の酪農をしっかりと下支えしてきた制度だというふうに理解をしております。

 今回の畜安法の改正によりまして、補給金の交付対象が、これまでの指定団体以外にも拡大され得ることになりました。

 確かに、今まで冬場の需要減退期に全て飲用に向けていたものが、そうした制度の見直しにより加工の方に回ることにつながる。それがまた、冬場の乳価の維持あるいは向上につながり得る。そうした意味では、非常に意味のあることであろうとは思っております。

 ただ、一方で、やはりいいとこ取りを許さない、困ったときだけ加工の方に回ることがないように、やはりこれまで公平公正に運用されてきた制度でありますので、そうした点が今回の畜安法の改正後も担保されるようにしていただきたい、このように思っております。

 今回の改正によって、年間販売計画を提出して、その基準を満たす者に補給金が交付されるという制度、仕組みになりまして、来年度がその初年度となるわけでありますが、政府において、農林水産省において、その年間販売計画をしっかり確認し、いいとこ取りを許さない、引き続き公平公正な制度であるべきと考えますが、その点について、政府のお考えをお聞きしたいと思います。

礒崎副大臣 ただいま宮路委員の方から、いいとこ取りをする人が出てきては困るという御指摘を受けましたが、私も全く同じように考えておるところでございます。

 改正法におきましては、第五条の規定によりまして、事業者に対し、月別、用途別の販売予定数量等を明記した年間販売計画を農林水産大臣に提出することとなっておりまして、施行規則に定める基準に適合するものである場合に限って交付対象数量を通知するという仕組みになっているところでございます。

 その年間販売計画の具体的な基準については、施行規則第十四条において、年間を通じた用途別の需給に基づく安定取引または特定乳製品の製造であると認められること、年間販売計画に記載された販売予定数量の裏づけとなる根拠が明らかであると認められること、生産者補給金の交付の業務が適正かつ確実に行われると認められること等と定めておるところでございまして、こういうことを通じまして、きちんと判断、審査をしていきたいと思っているところでございます。

 今後、事業者から年間販売計画が提出されることとなりますが、その内容をしっかりと確認し、飲用向けと乳製品向けの調整の実効性がきちんと担保できるよう、制度の適切な運用に努めてまいります。

宮路委員 その実効性が担保されてこそ、今回の畜安法の改正、指定団体制度の見直し、それによる需給のより効率的な調整、そこにつながっていくと考えておりますので、政府におかれましては、今の考え方にのっとってしっかりと対応していただきたいと思います。

 そして、来年度の補給金の単価。

 これは、今年度液状乳製品も一本化された中で、十・五六円、十円五十六銭、これが今年度の補給金単価でありまして、生産農家、酪農家の皆さん方からも、何とかこの補給金の中で、そしてまた、乳価もここ数年上がってきておりますし、そこに加えて副産物価格の方も好調であるという中で、何とか酪農経営を、残念ながら戸数も飼養頭数も減少傾向に歯どめは打たれておりませんが、その中でも、歯を食いしばり、地域の環境を守るためにも酪農家の皆さん方は日々汗を流していただいております。

 そうした努力に報いるためにも、来年度の補給金単価、ぜひとも、また希望の持てる、これからも酪農経営を続けていこう、そしてまた後継者に引き継いでいこう、そう思っていただけるような基準に設定をしていただきたい。その点について、政府の考え方をお聞きしたいと思います。

枝元政府参考人 お答え申し上げます。

 加工原料乳生産者補給金の単価につきましては、改正畜産経営安定法第八条一項におきまして、生乳の生産費その他の生産条件、生乳及び乳製品の需給事情並びに物価その他の経済事情を考慮し、生産される生乳の相当部分が加工原料乳であると認められる地域における生乳の再生産を確保することを旨として定めることとされてございます。

 今後、改正畜産経営安定法に新たに設けられました集送乳調整金も含めまして、関係者の皆様に御議論いただき、食料・農業・農村政策審議会に諮った上で、生乳の再生産が確保されるよう、しっかりと対応してまいりたいと存じます。

宮路委員 ぜひ、酪農家の皆さん方が希望を持てる、そうした単価設定をお願いしたいと思います。

 最後に、その中で酪農家の皆さん方の期待が非常に高まっているのが、働き方改革、その考え方を踏まえたいわゆる楽酪事業であります。

 今年度が事業開始初年度だったこともあり、なかなか各酪農家個々への周知が図られなかったということも聞いております。したがいまして、初年度の執行状況についてはなかなか思ったようにいっていない。

 ただ、一方で、ようやくその楽酪事業の内容が各酪農家に伝わってきて、よし、これならぜひ取り組んでみたい、そういう声も多く届いているところであります。

 来年度、ぜひこの楽酪事業、来年度からこそが本格的に稼働する、もちろん今年度も今後しっかりと執行していただきたいと思っておりますが、また来年度につながるものであってほしいと思っております。

 楽酪事業の今後のあり方について、農水省の考え方を最後にお聞きしたいと思います。

大野政府参考人 お答え申し上げます。

 我が国酪農経営、一人当たりの年間労働時間が約二千二百時間と他の畜種や製造業と比べて長いこと、また、毎日欠かすことのできない朝夕の搾乳等の作業があること、こういったことから、農業経営の中でも特に労働負担が多い部門であります。

 このため、本年度より、酪農経営体生産性向上緊急対策事業、委員御指摘の楽酪事業を実施し、酪農家の方々の労働負担軽減、省力化に資する機器、例えば、搾乳作業を自動化できます搾乳ロボットや、家族経営では手作業で行っておられます給餌作業を自動化できる自動給餌機及び餌寄せロボット、こういったことの導入支援を行わせていただいております。

 酪農の働き方改革、喫緊の課題でございまして、引き続き、平成三十年度においても、各種施策に必要な予算の確保に努めてまいりたいと考えております。

宮路委員 ありがとうございます。

 我が国の誇る畜産、酪農をあすの日本へ引き継いでいくために、今こそ正念場、ぜひ、政府におかれては、そうした思いで今後も取り組んでいただきたいと思います。

 ありがとうございました。

伊東委員長 次に、佐藤英道君。

佐藤(英)委員 おはようございます。公明党の佐藤英道でございます。

 きょうは、通告に従いまして、畜産物の価格について、また、食品流通構造改革について、日・EU・EPA対策について、随時伺ってまいりたいと思います。

 まず最初に、食品流通構造改革についてお伺いをさせていただきたいと思います。

 去る十二月の八日に発表された農林水産業・地域の活力創造プラン、私も読ませていただきました。その中で、特に卸売市場を含む食品流通構造改革について、タイトルも特出しされておりましたが、明記をされていたところでございます。

 この問題についてお伺いをしてまいりたいと思いますけれども、我が党としてもこの問題について随時議論を行い、また、その中で、卸売市場の直接関係者であります卸の方、仲卸の方、また生産者、量販店などからも御要望や御意見も伺ってきたところでございます。

 そうした中で、規制改革会議からは、現行の卸売市場の商慣習のほとんどを見直すべきとの意見も出たようでございますけれども、現場の方々からは、規制改革会議の考え方はかなりの部分で受け入れがたいという御意見でもございました。

 ここまで意見が分かれているものを直ちに結論づけるということはいささか性急ではないかとも感じましたけれども、今回の食品流通改革をプラン作成の重要なテーマの一つにすべきと考えている政府の考え方も重要でございますので、我が党も議論を深めてまいりました。結果として、本来あるべき方向性を指し示すことができたのではないかなと私は思っているところでございます。

 ただしかし、今回の議論の中で、最後まで我が党として検討と論議を続けたテーマが二つございます。

 一点目は、基本的な卸売市場の存在する価値をいかにして今後も定義づけておくかという点であります。それからもう一点目は、その卸売市場を開設するに当たり、現行制度上認可によると定められているものを認定とする際に、どのような違いと課題が出てくるか、またその課題をどう乗り越えていくべきかという課題でございました。

 まず、この卸売市場の存在価値について、その果たしてきた役割と、今後も果たしていくべき機能について、農林水産省ではどのように考えていらっしゃるのか、また、来年、通常国会には関連法案も出てくると思いますけれども、どのような形でそれを法の上から担保されるのか、具体的にお伺いをしたいと思います。

井上政府参考人 お答え申し上げます。

 卸売市場はこれまで、全国各地から多種大量の生鮮食料品等を集荷し、小売店等の実需者のニーズに合わせて必要な品目を必要な分量だけ分荷する役割、また、小売店等の実需者から販売代金を回収し、早期かつ確実に生産者に決済する役割、さらに、産地と消費地との間で需給を反映した価格形成を行う役割などを通じまして、生鮮食料品等の安定供給を支える調整機能を果たしてきたところでございます。

 こうした卸売市場の役割、機能は重要であり、今後も食品流通の核として堅持すべきものと考えてございます。

 他方、最近の食品流通の状況を見ますと、生鮮品のままでの需要が減少する一方、加工食品や外食での需要が拡大をしており、こうした消費者のニーズに対応していくことが求められております。

 また、需要の多様化に伴い、産直取引、直売所やインターネット通販での購入等流通チャネルも多様化をしております。

 このような食品流通の実態の変化も踏まえ、生産者、消費者双方がメリットを受けられ、卸売市場、卸売市場関係者がその役割、機能をより発揮できる食品流通構造の実現に向けて、卸売市場の役割や必要な取引ルール等を法令において定めるように検討をしてまいります。

佐藤(英)委員 今、井上局長から、卸売市場の重要性については明確に御答弁があったところでございます。

 その上で、今回の食品流通改革の議論でやはり最も懸念したことは、市場の流通機能を強化し、促進させるという目的が先行し、これまで市場流通のかなめとして価格形成や食料品の安定供給などを担ってきた卸売市場がないがしろにされないか、そうした懸念でもございました。

 食品流通の安定性を堅持する上で絶対的に不可欠な機能を担ってきたのが卸売市場であり、その卸売市場が不要であるというような捉え方を決してしてはならないと思います。

 食品流通構造の改革は必要であるし、機能の強化を促進していかなければならないとも考えているところでありますけれども、今回の議論の結果、卸売市場とその根拠法である市場法がなくなるようなことがあっては本末転倒ではないかなと考えます。農林水産省の明快な見解をお伺いしたいと思います。

井上政府参考人 十二月の八日に改定をいたしました農林水産業・地域の活力創造プランにおきまして、新たに生産者、消費者双方のメリット向上のための卸売市場を含めた食品流通構造の改革について盛り込んだところでございます。

 この中で、卸売市場につきましては、これまでの食品流通の中で卸売市場が果たしてきた集荷、分荷、価格形成、代金決済等の調整機能は重要であり、これについては今後も食品流通の核として堅持すべきであるとしております。

 また、卸売市場法につきましては、多様化している食品流通の実態を踏まえて、法規制の見直しを行うこととしておりますが、卸売市場法自体は存続をし、これを改正する法案を次期通常国会に提出する方針としております。

佐藤(英)委員 安心したところでございますけれども、ぜひ生産者の側にとっても消費者の側にとってもプラスになるような方向で議論を進めていただきたいと思います。

 次に、認可と認定について、また申請の簡略化についてお伺いしたいと思います。

 今後、食品流通改革を活力創造プランの考え方に沿って進めていくことになりますけれども、これまでは、認可によって中央卸売市場の開設を国が認めてきたわけであります。この仕組みから、誰でも自由に卸売市場を開設でき、その上で中央卸売市場と名乗りたい市場だけが認定を受けるということになるわけであります。同様に、地方卸売市場は都道府県が認定するということになると聞いております。

 しかし、これまで既に国の認可を受けて開設されている中央卸売市場が、制度改正以降に改めて認定の申請を行い、認定市場に認められなければ、中央市場の資格を失うということになると承知をしているところでございます。

 煩雑な申請事務と負担を課すことによって得られる利益があれば、改めて申請をする必要があると思います。ただ、その際でも、なるべく当事者の負担を軽くし、関係者に混乱を生じさせないような十分な配慮のもとに行わなければならないと思います。

 農林水産省としても、認可を得ている市場にも新たに認定をとり直させると決めているようでありますけれども、それはどのような理由によるものか。また、申請の負担とそれによって得られる公益についてどのように整理しているのかも伺います。また、改めて認定の申請を求めるに当たってどのような配慮が必要と考えているのか、見解を伺いたいと思います。

井上政府参考人 今般の見直しにおきましては、生鮮食料品等の公正な取引の場として卸売市場における取引の透明性を高めるよう、従来、中央卸売市場、地方卸売市場の両者に求めてきた差別的取り扱いの禁止のほか、中央卸売市場、地方卸売市場の両者に委託手数料、各種奨励金等の取引条件の公表を新たに求めるとともに、生鮮食料品等の代金が早期かつ確実に回収されるよう、従来中央卸売市場に求めてきた代金決済ルールの公表を地方卸売市場にも求めることとしております。

 したがって、現在認可を受けている中央卸売市場、許可を受けている地方卸売市場につきましても、新たなルールの遵守について確認することが不可欠であるため、改めて認定申請を求めざるを得ないと考えてございます。

 ただし、その審査等に当たりましては、無用な事務負担が生じることのないよう、手続の簡素化等を検討してまいります。

佐藤(英)委員 ぜひ前向きに御検討をお願いしたいと思います。

 次に、酪農、特に飼料価格を含む生産費の動向についてお伺いをしてまいりたいと思います。

 酪農と畜産にかかわる件でありますけれども、平成二十六年から、地元北海道の釧路において、委員長の御地元である釧路において、国際バルク戦略港湾の一つとして釧路港の整備が開始されております。これによって、釧路港は、乳用牛の飼料であるトウモロコシを積んだパナマックス船が寄港できるようになります。昨今の飼料価格の値上がりに対抗するために役立つことになると、大変に喜ばしい取り組みであります。先月にはこの釧路港の最終ジャケットとなる十一基目のジャケット据えつけが行われるなど、順調に進んでいると承知をしているところであります。

 一方で、原油高による海上運賃の上昇や円安などにより、配合飼料の価格は上昇基調であります。平成二十八年の第四・四半期以降は三期連続で配合飼料価格安定制度における通常補填が発動されていることから、これ以降も注視しなければならない状況であると認識しております。

 さらに、昨年の台風による甚大な被害、また、ことしも台風によるデントコーンの倒伏被害が発生するなど、気候変動による北海道への台風上陸が今後常態化することも考えられ、北海道の酪農を取り巻く情勢は決して楽観視できるものではありません。

 飼料価格の今後の見通しについて、農林水産省としてはどのように考えているのか、また、飼料を含めた今後の生産費の動向について、現状と見通しを伺います。

大野政府参考人 お答え申し上げます。

 配合飼料価格につきましては、飼料原料の国際相場、輸送費、為替相場等の複数の要素により変動するものでありますが、主要原料であるトウモロコシの相場につきましては、その主たる輸入先の米国のことしの単収が過去最高となっておりますことから、当面安定して推移するものと考えられる一方で、輸送費の方は委員御指摘のとおり上昇しております。また、為替相場は円安という傾向となっておりまして、その動向を慎重に注視してまいる必要がある、こう考えております。

 また、北海道におきます生産費につきましては、初妊牛価格の上昇に伴う乳牛償却費の上昇あるいは建物費の増加によりまして、平成二十八年度におきましては対前年度比二・八%増加しているところでございます。一方、収入となります主産物である生乳の価額は対前年度比〇・九%増加、また、子牛等の副産物価額は一七・一%増加しているところでございます。

 生産費の動向につきましては、その三割を占める流通飼料費を初めとしまして、労働費なども重要な要素となりますため、今後ともその動向を慎重に注視してまいりたいと考えているところでございます。

佐藤(英)委員 次に、生産者補給金の期中改定等について伺ってまいりたいと思います。

 平成二十九年度より、これまで、バター、脱脂粉乳向け、チーズ向けと用途別にミシン目を入れてきた生産者補給金を、生クリーム等向けを追加し用途別に分けないこととした、いわゆる単価一本化の制度が始まったわけであります。この単価一本化については、関係者から、需給が緩んだときに補給金が交付できなくなる用途や数量が発生せず、指定団体による用途間調整が柔軟に行えるよい制度と、大変に好評でございます。

 この一本化制度を次年度以降も維持しつつ、先ほど台風の話もさせてもらいましたけれども、そうした急激な変動要因、特に生産資材の急高騰などが生じた場合に生産者の所得低下を防ぐための措置が行えるような仕組みも検討していただきたいと考えます。

 前々からJA北海道中央会などから強い要望が寄せられている補給金の期中改定、急激な変動要因によって酪農家の収入が大きく減ってしまうときには途中でも補給金の額を見直すという制度でありますけれども、こうした期中改定について、農水省として制度化を具体的に検討したことはあるのかどうか、また、検討しているとするならば、実現の見込みなどをお伺いしたいと思います。

 また、加えて畜産について、現在の子牛の高騰に、肥育経営の過去最大の危機と、畜産農家からの悲鳴とも言える声も上がっております。牛マルキンの補填率の早期引き上げ並びに緊急対策が急務であります。万全の対応をお願いしたいと思いますが、見解を伺いたいと思います。

枝元政府参考人 お答え申し上げます。

 まず、加工原料乳生産者補給金の単価の算定でございますが、生産資材費等、直近の物価水準を織り込む仕組みとなってございます。

 また、加工原料乳生産者補給金等暫定措置法と同様に改正いたしました畜産経営安定法第八条第三項におきましても、生産事情等に著しい変動が生じる等の場合において、特に必要があると認めるときは改定することができるというふうに規定されてございます。

 過去、平成十九年ごろからの国際的な穀物価格の高騰を受けまして、平成二十年六月に補給金単価の期中改定を行った例がございます。今後とも、生産事情等の動向に応じまして、適切に対応してまいりたいと存じます。

 また、御指摘ございました牛マルキンの関係でございますけれども、去る十一月に改定されました総合的なTPP等関連政策大綱におきまして、TPPまたは日・EU・EPA発効に合わせて、法制化された牛マルキンについて補填率を引き上げるということにされているところでございます。

佐藤(英)委員 次に、集送乳調整金についてお伺いしてまいりたいと思います。

 昨年後半から始まった生乳改革、この生乳改革の議論を踏まえて、さきの通常国会では、畜産経営安定法が改正されました。これによりまして、生産者補給金が来年四月から恒久化されることになったわけであります。

 一方で、この改正によって、これまで現行の指定団体が一手に担ってきた生乳の需給調整機能を、今後もいかにして維持していくかという課題が生まれたわけであります。

 今回、新たな仕組みとして集送乳調整金の仕組みを設定することに至ったわけでありますけれども、生産者補給金の外出しで、かつ、新たな算定方法を用いて算出することになっております。山間地や半島など、集乳コストに関係なく、あまねく全ての生乳生産者から集乳を行う指定事業者に限って交付することになっております。条件不利地で酪農に励む経営者が安心して生産に取り組めるような金額設定を確実に行っていただくよう、強く望みたいと思います。

 また、北海道が加工原料乳をしっかり計画生産しているため、本州の飲用乳不足を補っていることも十分に評価し、全国的な需給に要する経費についてもしっかりと考慮すべきであると考えます。

 特に、今回は、部分委託によるかかり増し経費についても忘れてはならないと思います。いいとこ取りは許さないという姿勢を見せていくためにも、現行の指定団体が果たしてきた機能に見合った単価設定を強く望むところでございます。

 改めて、今回の、生産者補給金制度を見直し、集送乳調整金を設けることになった背景について伺うとともに、その背景も含めて、どのような単価設定に反映していかれるお考えなのか、具体的にお伺いをしてまいりたいと思います。

齋藤国務大臣 今、佐藤委員御指摘の集送乳調整金は、加工原料乳につきまして、例えば、酪農家の所在地が乳業工場から距離が遠いなどにより、相対的に集送乳経費を要する区域を含めて、指定事業者の方が平準化措置をとることを前提に、あまねく集送乳を行うことを確保するために交付をするものでございます。

 この集送乳調整金の単価につきましては、改正畜産経営安定法第十五条第二項におきまして、指定事業者が集送乳に通常要する経費の額から効率的に集送乳が行われる場合の経費の額を控除して得た額を基礎として定めることとされておりますので、具体的な算定につきましては、今後、関係者の皆様の御意見を踏まえながら、食料・農業・農村政策審議会に諮った上で、しっかり対応していきたいと思っております。

佐藤(英)委員 大臣から力強いお言葉をいただいたと思います。ぜひ、全国どこでも、不便な地域であろうが、生産が可能なことになるように取り組んでいただければと思います。

 最後に、日・EU・EPAの交渉妥結に伴う国内対策の充実についてお伺いをさせていただきたいと思います。

 この前も、大臣の所信に対する質疑の際にもお伺いをさせていただいたわけでありますけれども、この日・EU・EPAの影響について、先日の日本農業新聞、十二月の九日付に掲載された記事によりますと、二十九年度補正予算の記事では、チーズ百五十億、TPPなど三千百七十億となっておりましたが、事実のいかんを問わず、補正での措置が具体的にどのような中身で行われるか、大変に注目をしているところであります。

 生乳の品質向上対策、畜産クラスター事業による生産の施設設備の充実と、それによるコストダウン、さらにはブランド化をも進めることもやはり大変に重要であります。

 予算額を見ると、一昨年が三千百二十二億、昨年が三千四百五十三億となっておりますけれども、二〇一九年には日・EU・EPAが発効され、その先にTPPと続く中で、これから十六年後、国産チーズを取り巻く環境はどうなっていくのか。欧州から入ってくる中で、年度ごとに行っていく、打っていく国内対策の効果がどこまで発揮されていくのか。その将来像を描いている酪農家、農業者がどれほどいるかと考えると、私たちがやらねばならないこと、また農林水産省がやらなければならないことはまだまだたくさんあるのではないかと思っているところでございます。

 そこで、一つ、チーズについてでありますけれども、発効から十六年後、ソフト系が三・一万トンの関税撤廃、ハード系は全面開放されるわけでありますけれども、国内産チーズがどこまで対抗できるようになっていれば国内対策の成功と言えるのか、農水省のお考えをお伺いしたいと思います。

 また、あわせて、この日・EU・EPAで決定的な打撃を受けているのではないかと私はやはり個人的にも大変に懸念をしているのが、直交集成板、いわゆるCLTについてであります。

 所信でも伺いましたけれども、国交省とも協議しなければならないことかもしれませんけれども、このCLTの需要拡大の取り組みについてはどのように考えていらっしゃるのかもお伺いをさせていただきたいと思います。

礒崎副大臣 チーズの方についてお答えをしたいと思います。

 御承知のとおり、国産チーズは、国際コンクールで上位入賞するなど、品質面で競争力のあるチーズ工房等も育ちつつあるところではございます。一方で、EU産チーズに対抗できるようにするためには、さらに、高品質化、製造コストの低減、ブランド化等の経営努力を支援する必要があると思います。また、全体的に製造量、ロットをふやしていくことも重要であると考えているところでございます。

 このため、今回改定されました総合的なTPP等関連政策大綱に基づきまして、本年度の補正予算も含みまして必要な対策にしっかりと取り組み、国産チーズが今後も増加が見込まれる国内のチーズ需要に応えられるようになり、かつ、国際競争力がある国産チーズが将来にわたり安定的に生産できるようになることを目指して努力してまいりたいと思います。

沖政府参考人 お答えいたします。

 日・EU・EPAでは、構造用集成材、直交集成板、いわゆるCLT等のセンシティビティーの高い林産物は、即時関税撤廃を回避し、七年の段階的削減を経て、八年目に撤廃で大枠合意したところでございます。

 これにより、当面輸入の急増は見込みがたいものの、木材製品等の輸入量のうち約四割をEUが占めている状況であり、国産品はこれら輸入品と競合関係にあることから、長期的には関税の引き下げの影響が懸念されると考えております。

 このため、十一月二十四日に決定されました総合的なTPP等関連政策大綱を踏まえまして、これまでの実績の検証等を踏まえた所要の見直しを行った上で、木材加工施設の生産性向上支援、競争力のある品目への転換支援、効率的な林業経営が実現できる地域への路網整備、高性能林業機械の導入等の集中的な実施のほか、木材製品の国内外での消費拡大対策などの措置を、平成二十九年度補正予算の検討においてしっかり対応してまいりたいと考えております。

 特に、消費拡大対策につきましては、この補正予算におきまして、CLTを含む木材製品の需要開拓に資するような対策を講ずる方向で検討してまいりたいと考えております。

佐藤(英)委員 ありがとうございます。

 質問を終わります。

伊東委員長 次に、佐々木隆博君。

佐々木(隆)委員 立憲民主党の佐々木隆博でございます。

 しばらくぶりに質問をさせていただく機会を与えていただきました。限られた時間でありますので、丁寧に、かつ、短時間でお答えをいただければというふうに思いますので、よろしくお願いを申し上げます。

 最初に、経済連携関係について一問だけお伺いをさせていただきたいというふうに思います。

 一つは、CPTPPと言うんだそうでありますが、これが大筋合意。日欧EPAが大枠合意を七月にしていたわけでありますが、ここに来て、急展開ともいうべき、妥結ということになったわけでありますが、このプロセスがどうもよくわかりませんということを含めてお伺いをしたいというふうに思います。

 日欧のEPAがこのたびの交渉妥結に至ったそのいきさつ等、あるいはまた内容も含めてお伺いをいたします。

 ISDSなどルールよりも関税を優先させたというような感が否めないわけであります。それと、イギリスがEUを離脱したら再交渉することになるのかということもあります。それから、WTOの閣僚会議前にどうしても何か急いで妥結をしなければならなかったのではないかなどなど、幾つかの疑問があるわけであります。

 こうした状況の中で、いろいろ文書管理や情報公開が言われているときに、交渉過程がまずきちっと国民に公開をされるということが一つと、もう一つは、影響評価が出る前に政策大綱が出てくるというのも極めて不自然な話でありますので、影響評価というのは一体いつになったら出てくるんだということになるわけでありますが、内閣、外務両方に、この点についてそれぞれお伺いをいたします。

飯田政府参考人 お答えいたします。

 委員お尋ねの日・EU・EPA交渉でございますが、ことし七月の状況で、交渉の基本的な要素につき双方の間で一致したところでございまして、そのとき我々は大枠合意ということで呼んでおったわけでございます。

 その後の交渉の過程でございますが、その合意後は、先生御指摘の投資の扱いについて継続的に議論してきたほか、大枠合意の内容を協定テキストにどのように反映していくかという作業を行ってきたところでございます。

 その結果、現在の状況は、法的精査とか翻訳作業、このようなリーガルとかトランスレーション、そのようなことを除いて、内容面で全て合意をしている今般の状況に至ったわけでございまして、それを交渉妥結に至ったということでEU側と認識を共有しているところでございます。

 なお、引き続き、情報公開については、節目節目で国民の方々、いろいろな方々に御説明をしていくように真摯に努力をしていくつもりでございます。

 以上でございます。

澁谷政府参考人 経済効果分析につきまして、私の方からお答えを申し上げます。

 日・EU・EPAの経済効果分析につきましては、二年前のいわゆるTPP12のときと同様に、関税の削減、撤廃の効果だけではなく、貿易・投資が拡大することによる経済効果なども含めまして、総合的な観点から現在検討しているところでございます。

 農林水産物への影響試算につきましても、これまでと同様、農林水産省におきまして、国内対策の効果も踏まえて行っているところでございます。農水省の試算も含めまして、日・EUの経済効果分析につきましては、年内にお示しをしたいということで現在作業中のところでございます。

佐々木(隆)委員 時間がありませんので、この点については後ほど神谷委員からまた追加で質問をさせていただくことになるというふうに思いますが、申し上げたいのは、今、影響評価を年内にということでありますので、ぜひ早急に出していただきたいというふうに思うんですが、TPPについても、当初出した影響評価というのは十二カ国で出しているわけで、それが今度のCPになったときに、三分の一程度ではないか、効果も影響もというふうに言われているんですから、これも本当は改めて出していただかなければならない。

 それから、EPAについては、イギリスが今入っている状態で多分これは影響試算が出てくるわけですよね。イギリスは離脱すると言っているわけですから、そのときはもう一回やり直さなきゃいけないということになるのではないか。

 そうした丁寧な国民への情報公開というのをぜひやっていただかないと、そのままでずっと流れてくるというのはやはり対策そのものに大きく影響してまいりますので、その点を申し上げて、内閣と外務についてはお引き取りをいただいても結構でございます。

 時間がありませんので、きょう、私は北海道ですので、主に酪農について、幾つか疑問点について質問させていただきたいというふうに思います。

 資料を配付させていただいてございます。

 ここでなぜこの資料を配付させていただいたかというと、EUとそれから日本の酪農において、飼養頭数とそれから単価について比較をさせていただきました。

 この前のTPPのときに、日本の大綱の中では、TPPの加盟国に比べると日本はブランド力があるから大丈夫だというようなことを言っていたわけでありますが、EUはブランド力がありますから、同じ論法は通じないというふうに思います。

 その上で、飼養頭数を見ても、都府県とほぼ同じ、北海道よりはむしろ小さいくらいな飼養頭数になっておりますし、それから、生乳の生産者価格ですが、これも日本の方がむしろ高いという状況であります。

 政府の方は政策大綱で、体質強化だ、あるいはまた競争力強化だと言っているんですが、これを見る限り、飼養頭数は少ないのに乳価は安い、こういう状況が出てくるわけでありまして、これらを交渉プロセスの中で日本だって当然分析をしながら交渉してきたというふうに思うのでありますが、これらのEUの状況をどのように捉えているのかについてお伺いをいたします。

大野政府参考人 お答え申し上げます。

 EUの酪農につきましては、家族経営が主体で一戸当たりの飼養頭数が日本と同レベルのフランス、ドイツ及びイタリア、それから、集約化、大型化によります生産効率の高い酪農経営が主体のデンマーク、さらに、放牧による低コスト生産を主体とするアイルランドなど、加盟国によりさまざまであると承知しております。

 また、フランスやイタリアはカマンベールやモッツァレラといったような付加価値の高い乳製品を製造する一方で、デンマークやドイツは生産効率を高めて低価格での量販品あるいは原料用の乳製品を製造しますなど、国際市場での競争においても多様性が見られるところでございます。

 こうした中で、日本とEUの酪農をコスト面で比較しますと、為替相場によって変動いたしますが、生乳の生産コストでは、生産コストに占める飼料費の割合が日本では約五割を占める一方で、EU加盟国平均では三割、こういう数字にとどまっておりまして、また、生産コストに占める労働費もEUは日本の約六割、こういったことから乳価に差が生じていると考えております。

 乳製品の製造、販売におきましても、日本の方が工場の規模が小さく稼働率が低いといったようなこともございまして、日本の製造販売コストが高くなっていると分析しているところでございます。

佐々木(隆)委員 今の説明ですと、むしろ、家族経営で小さくて、工場も旧式で、それでコストが安くなるというのは、何か説明に余りなっていないような気がするんですが、話として結びついていないような気がいたします。

 飼料が自給飼料が多いというのは、それはヨーロッパの場合にそういう傾向にあるというふうに思います。

 家族経営が主体だというところ、さまざまだというのはわかるんですが、ここに掲げたフランス、ドイツなどはまず家族経営が主体だという状況の中で、ここはぜひ大臣にお伺いをしたいんですが、こういうEUと比べて競争力がないということにはならないと思うんですね、どう考えたって、ほぼほぼ同じ、あるいはむしろ日本が優位なぐらいな状況にあるわけですから。その中で、政策大綱は、私は基本的に、旧来型をちょっと焼き直したような大綱になっているんですが、ここはやはり見直す必要があるのではないかというふうに思っております。

 酪農家はこの十年間で約一万戸減少してございます。規模拡大というのは、私は正直言って限界に来ている、北海道を見ていると特にそうなんですが。限界に来ているというのはどういうことかというと、大きくしていく、そして隣の離農の跡地を丸ごと土地も牛も引き受けていたという時代では今なくなっていて、もう土地も引き受けられない、牛も、本当にいい牛二、三頭なら引き受けますけれどもあとは引き受けられないということになって、規模を拡大していくと乳牛がどんどん減っていくんですよ。規模拡大することによって乳量が減っていくという理屈になっていくんですね、これ以上やっていくと。

 そういう中で、今までどおりの政策では、私は、とりわけ酪農、畜産については限界に来ているというふうに思っておりまして、政策そのものの大きな転換が必要なのではないかというふうに思っているんですが、大臣のお考えを伺います。

齋藤国務大臣 私どもといたしましては、目の前にある日本の酪農の現実を直視して、何をすべきかということを考えて対策に移していくことが大事だというふうに考えておりまして、そういう意味では、今般改定されました総合的なTPP等関連政策大綱におきましては、体質強化対策については、これまでの実績の検証等を踏まえて所要の見直しを行った上で、必要な施策を実施しようということになっております。

 そして、新たな環境変化として、日・EU・EPA、これが新たな環境変化としてございますので、それを踏まえて、必要となるチーズを中心とする乳製品対策もあわせてやっていかなくちゃいけないだろうということで、国産チーズ等の競争力を高めるとともに、その需要も確保していきたい。将来にわたって安定的に国産チーズ等の生産に取り組めるようにすること、それから、原料面でも原料乳の低コスト、高品質化の取り組みの強化ですとか、製造面でコストの低減と品質向上、ブランド化等を推進することというふうにこの大綱で方向が決まっているわけでございます。

 具体的にもう少し言えば、チーズ向け生乳の新たな品質向上促進特別対策及び生産性の向上対策ですとか生産拡大対策ですとか、それから、製造設備の生産性向上ですとか、技術研修、国際コンテストへの参加支援ですとか、乳製品の国内外での消費拡大対策を講ずるということになっておりまして、この大綱に基づいて、平成二十九年度補正予算を含めまして、酪農分野の必要な対策、現実をしっかり見た上での必要な対策にしっかりと取り組んで、体質の強化を図っていきたいというふうに考えております。

佐々木(隆)委員 今大臣からお答えをいただきました。体質強化も競争力も私は否定するものではありませんけれども、そこの、今大臣もお答えいただきましたように、検証するに当たって何をどのように検証するかということをやはりもう一度、EUというところが加わったことによって、検証の項目というか対象をもっとしっかり絞り込んでいただきたいというふうに思いますので、補正予算までに間に合うのかどうかわかりませんが、もうちょっと長期的なところも含めて、ぜひそこはお願いを申し上げておきたいというふうに思います。

 そこで、幾つか具体的なことについてお伺いをしていきたいというふうに思います。

 先ほども佐藤委員からもございましたが、一つは、補給金の暫定措置法廃止に伴って、これからどう販売計画や集送乳調整金について公正性を担保していくかというテーマについてであります。

 結局、暫定措置法が廃止された結果ではないんですが、ことの理由の中に、対象事業者が拡大をするということが出てまいります。これは、今までは指定団体があって一元集荷をしているから年間の計画というのは極めてうまくいっていたわけでありますが、新たな対象事業者がふえることによって、年間の販売計画というのはきちっとどうやって担保するのか、そして指定団体の役割というのは一体どうなるのか、調整は農水省が今度はやることになるのか、この辺も含めて一つお伺いしたい。

 もう一つは、先ほど出ておりました、指定事業者と言われる人がやっていた集送乳調整金でありますが、新たな参入があった場合に、指定事業者じゃないわけですから、この人が指定事業者をとるのか、あるいは指定事業者からの、先ほども話が出ていました、委託という仕組みをとるのか、これも、一体誰がどのように担っていくのかというのは酪農家にとっては大変大きなテーマであります。

 あわせて、そうなることによって、今まではブロック単位ぐらいにやっていたものが今度は全国プールになるのかとか、さまざまな課題というか不安が今酪農家の中に広がっておりますので、これらについてあわせてお伺いをさせていただきます。

大野政府参考人 お答え申し上げます。

 まず、年間販売計画のところでございますが、改正畜産経営安定法におきましては、第五条によりまして、加工品の事業者に対し、月別、用途別の販売予定数量等を明記した年間販売計画の農林水産大臣への提出を義務づけ、施行規則に定めます基準に適合するものであると認められる場合には、交付対象数量を通知することとしております。

 また、年間販売計画の具体的な基準につきましては、施行規則第十四条におきまして、年間を通じた用途別の需給に基づく安定取引または特定乳製品の製造であると認められること、また、年間販売計画に記載された販売予定数量の裏づけとなる根拠が明らかであると認められますこと、それから、生産者補給金の交付の業務が適正かつ確実に行われると認められることなどを定めているところでございます。

 今後、対象の事業者から年間販売計画が提出されることとなりますが、その内容をしっかりと確認し、飲用向けと乳製品向けの需給の調整の実効性を担保できるよう、制度の適切な運用に努めてまいりたいというふうに考えます。

 また、指定事業者の指定の考え方でございますけれども、同様に、改正畜産経営安定法におきまして、第十四条でございますが、都道府県知事または農林水産大臣の指定を受けた事業者は集送乳調整金の交付を受けることができるとしております。

 このときの指定の要件でございますが、これは第十条第一項に規定しておりまして、具体的には、定款等で、正当な理由なく一または二以上の都道府県の区域において生乳の委託または売り渡しの申し出を拒んではならない旨が定められていること、また、業務規程におきまして、集送乳に係る経費につきましては委託または売り渡しを行った者間の平準化の措置をとることとしていることなど、業務規程が基準に基づき定められていること、こういったことを要件としております。

 今後、事業者からの指定申請に当たりましては、その内容をしっかりと確認して指定してまいりたいと考えているところでございます。

佐々木(隆)委員 行政マンとしては正しいお答えをいただいたんだと思うんですが、今の、集送乳調整金というのは、要するに、指定団体にならなければこれは対象にならないということですよね。ですから、新たな参入があった場合には、その人は指定団体になっていただかなければこれの対象にはならないということになるんだというふうに解釈をいたしましたが、それでよろしいですか。

枝元政府参考人 お答え申し上げます。

 法律上、指定事業者に指定をするということでございまして、これから申請いただくわけでございますけれども、今の例えば指定団体ですとかそれ以外の方とか、この要件に仮に合致するとすれば、指定事業者ということでございます。

 ただ、法律上、指定団体の中でも、農協連合会等の場合は指定団体という言葉を使ってございます。

佐々木(隆)委員 今は指定事業者の話をしているので、その場合に団体もその中へ入るというのは、それはそれでよくわかりました。

 要するに、そこのところを徹底すると同時に、酪農家の皆さん方にアピールをちゃんとしていただきたいということもお願いを申し上げておきたいと思います。

 次に、乳価にかかわってですが、二十九年度、今年度の単価設定に当たって、副産物の算入という部分に変更があったというふうに言われてございます。これは余り議論されていないままに変更になっているんですが、何か子牛価格が急騰したから変更したのではないかというような誤解も、あるいは不安も生まれてございます。この計算式を変更したのは、どういう理由で変更して、どういうふうに変更したのかということについて一点。

 もう一つは、これは先ほど大臣からもお考えがありましたので、一つ提案をさせていただきたいと思うんですが、チーズを中心にこれから対策をしっかりつくっていくんだという中で、ぜひ、競争力強化の一つとして、高品質な生産をした、生乳がですね、高品質である場合の奨励の対策みたいなものを私はチーズ対策の一環としてもやるべきではないかというふうに思っております。いわゆる体細胞や乳たんぱくなどに着目して、いいものをつくってくれた人にはよりグレードを上げていくというような仕組みも必要ではないかというふうに思っておりますので、この二点、計算式のことと高品質奨励の対策についてお伺いをいたします。

枝元政府参考人 お答え申し上げます。

 まず、平成二十九年度の加工原料乳生産者補給金単価の算定に当たりまして、子牛等の価格が急激に高騰していること等を踏まえまして、経費から差し引かれます副次的な収入である副産物価格の一時的な高騰が及ぼす影響を抑えるために、子牛及び乳牛償却費に係ります廃用牛の価格を直近七年平均ということで、キャトルサイクルを踏まえた比較的長期間の値に置きかえて算定したということでございます。

 このことにつきましては、昨年度の食料・農業・農村政策審議会畜産部会におきまして、三十年度以降も直近七年平均の値に置きかえる旨決定されてございますので、引き続き考慮して算定してまいりたいと存じます。

 また、御指摘ございました品質の関係でございますけれども、御指摘のように、生乳の体細胞数ですとかたんぱく質などの乳質は、乳製品を製造する上で製品の歩どまりまた品質に大きく影響するというふうに承知をしてございます。

 例えば、生乳一キログラム当たりのたんぱく質や脂肪分が高いほど、より多くの乳製品が製造でき、歩どまりがよくなるということでございますし、また、細菌数が低いものは腐敗をしにくく、体細胞数の少ないものは風味もよくてチーズに適しているというふうにも言われてございます。

 改定されました総合的なTPP等関連政策大綱におきましては、チーズ向け生乳等の新たな品質向上促進特別対策を講ずるというふうにされてございまして、こうしたことも踏まえまして、平成二十九年度予算を含め、しっかりと具体化してまいりたいと存じます。

佐々木(隆)委員 酪農家の皆さん方の励みにもなりますので、ぜひこの対策については実現をしていただきたいというふうに思います。

 乳価の計算式はわかりづら過ぎます。要するに、生産費ですから、前の年の副産物の価格が次の年に反映されるという仕組みでは乱高下が多いので、それで七年間のプールで算入するようにしたということですよね。酪農家の皆さん方も役員さん以外は皆そのことを理解していませんので、ちゃんと丁寧な説明をしてください。

 次に、もう一つ、対策にかかわってお伺いをします。

 私は、家族型の酪農というものを中心に据えるべきだという考え方を持っています。それは、先ほどのEUの事例からも家族型で十分に成り立っているわけですから、そういうものに重点を移していくという中で、幾つか質問させていただきたいと思うのでありますが、たくさん聞きたいことはあるんですけれども、二つだけお伺いします。

 一つは、ヘルパー事業であります。ヘルパー事業は酪農地帯にとっては欠かせない事業でございます。今、ALICの事業として、三カ年事業として行われているわけでありますが、ぜひこれは継続をするようにお願いを申し上げたいのと、ただ、ただただ事業を継続するだけではなくて、少し中身をグレードを上げていただきたい。

 それは、雇用環境をどうやってそのことによって整備していくのか、働き方改革という視点もありますが、それが一つと、ヘルパーというものを職業としてちゃんと認知度を向上させるような制度にしていただきたい。そうしなければ、せっかくヘルパーを養成しても、またすぐどこかに行ってしまうというようなことを繰り返していますので、ぜひこれは、国がしっかりそこを、関与するというか、国が制度をつくることによって安定をさせていただきたいということが一つ。

 もう一つは、先ほどクラスター事業についても議論がありましたが、これが畜酪の目玉だというところもあるんですが、中山間についても昨年一部対象にしましたけれども、これ以上の規模拡大は、実は必ずしも畜酪経営にとってプラスにならない状態に今来ている。そのときに、また規模拡大を促進させるような仕組み一辺倒でこれを解決するというのは、私は限界に来ているというふうに思います。

 むしろ、私は、TMRなどによって、それを中心にして協業化をするとか、国産飼料をさらにふやしていくとか、そういう仕組みにした方がはるかに効率的で有効な手段だというふうに思うんですが、この二点について伺います。

礒崎副大臣 ヘルパー事業について、私からお答え申し上げたいと思います。

 委員御指摘のように、今後、ヘルパーの職業としてのレベルアップを図っていくというのは、重要な御指摘だと考えております。特に、酪農家の休日の確保や傷病時の経営継続に貢献するとともに、ヘルパー業務を通じた酪農後継者や新規就農者の育成といった役割も担っておりまして、今後の酪農生産基盤の維持にとっても重要だと考えております。

 委員御指摘のとおり、二十九年度から新たに三年間の継続事業として行っているわけでありますが、これにあわせまして、学生インターンシップを創設し、地域人材にとどまらず、都市部からも要員を確保できるよう、人材の募集を裾野を広げるとともに、ヘルパー要員の育成についても、非農家出身者の増加や、多様化、高度化する飼養形態に対応できるよう、研修支援期間の延長、これは一年から二年、それから、補助の上限単価も六千五百円から八千円に拡充するというようなことをやってまいったところでございます。

 また、ヘルパー要員の定着に向けては、技術にすぐれた酪農ヘルパーの表彰、酪農ヘルパー利用組合における優良事例の発表の機会を開催するなど、酪農ヘルパーの魅力の発信に努めているところでございます。

 農林水産省といたしましては、こうした酪農ヘルパーの人材確保と定着を図り、かつ、今言いましたように、職業としてのレベルアップが図れるように、努力を努めてまいりたいと思います。

齋藤国務大臣 佐々木委員御指摘のように、酪農におきまして、現在、家族経営の割合は九五%ということになっております。このような家族経営が重要であることは、幾ら強調しても強調し過ぎることはないと思っております。

 私の地元千葉県野田市でも酪農をやっておりまして、みんな家族経営でやられております。そして、委員御指摘のように、その家族経営の人たちがこれからどんどんどんどん規模を家族でやりながら拡大できるかというと、なかなかそこは難しいものもあるのではないかなと、私も現場を見ながら思っております。

 したがいまして、いかに協業を進めていくか、省力化を進めていくかということが家族経営において重要なんだろうなと思っております。

 御地元の北海道におきましても、後継者がいない家族経営同士が協業化して大規模な法人経営を立ち上げようとか、そういう動きがありますし、あるいは家族経営が今、委員御指摘のように、TMRセンター等の外部支援組織を活用して、省力化した労働力で規模拡大を図っていくといった試みも行われていると承知しておりまして、やはり、地域の課題や実態に応じていろいろな取り組みを家族経営の皆さんは行われておりますので、きめ細かく私ども支援をしていくことが大事かなと思っております。

佐々木(隆)委員 時間が参りましたので終わらせていただきます。それぞれ前向きな御答弁もいただきましたので、ぜひ前進をしていただきますようにお願いを申し上げたいというふうに思います。

 実は、産業動物獣医師についても質問したいと思っていたんですが、残念ながら時間が参りましたので、一つだけ申し上げておきたいのは、五十二年ぶりに学校を開いたとか、岩盤をどうしたとかという話ではないんですね、基本的にこの獣医師の問題は。偏在をしている今の獣医師をどうするのかということが大変大きな課題であって、特に行政獣医師は不足をしているというふうに言われておりまして、そうした偏在の対策だとか、それから資質の向上とか、そうしたことは学園と関係のない話としてしっかり農水省として対応していただきたいということを申し上げて、質問を終わらせていただきます。

 ありがとうございました。

伊東委員長 次に、神谷裕君。

神谷(裕)委員 立憲民主党の神谷裕でございます。

 質問の機会をいただきまして、ありがとうございます。

 それでは、まず、私もこの補給金制度改革について若干質問をさせていただきたいと思います。

 平成三十年度から改正畜安法が施行されます。これまでの指定生産者団体制度についてはさまざまな評価があると思いますけれども、生乳という比較的足の速い食品を需要に基づいて適材適所へと仕向ける、加工するということについては大変大きな役割を果たしてきたと私も思っております。

 三十年度からはいわば変わっていくわけでございまして、さまざまな加工品に仕向けるに当たり、適材適所に適量をきちんと振り向けることができるのか、全体のバランスはきちんととれるのか、大変気になるところでございます。

 今後も、多くの生乳を扱っていただくであろう全国の指定団体の皆さんが、需給についてもこれまで同様に大きな責任を負われることになることは間違いないと思うところでありますけれども、であるとするならば、やはり今回の集送乳調整金については、今後も需給に関してしっかりと貢献をしてくださいという国のメッセージを込めた単価設定とするべきであると考えますけれども、いかがでございましょうか。

    〔委員長退席、坂本委員長代理着席〕

枝元政府参考人 お答え申し上げます。

 集送乳調整金は、加工原料乳につきまして、例えば、酪農家の所在地が乳業工場から距離が遠い等によりまして相対的に高い集送乳経費を要する区域を含めまして、指定事業者が平準化措置をとることを前提に、あまねく集送乳を行うことを確保するために交付するものでございます。

 この集送乳調整金の単価につきましては、改正畜産経営安定法第十五条第二項におきまして、「指定事業者が集送乳に通常要する経費の額から効率的に集送乳が行われる場合の経費の額を控除して得た額を基礎として定める」というふうにされてございます。

 今後、加工原料乳生産者補給金も含めまして、食料・農業・農村政策審議会に諮った上でしっかりと対応してまいりたいと存じます。

神谷(裕)委員 わかりました。

 ただ、やはりここの部分は非常に重要な問題になっている、キーになっていると私も思います。そういった意味で、やはりしっかりと国としてメッセージを込めた、そういう単価にしていただくように改めてお願いをしたいと思います。

 次に、ちょうど、日欧EPAが大枠合意をされたということでございまして、またTPP11も大筋合意を見ているというタイミングでもございますので、私の方からは、こちらの方についてちょっと聞かせていただきたいなと思っております。

 現に、チーズなどを中心に、やはり生産者の方に大変不安の声が上がっておると思います。そういった皆さんの不安にもしっかりと応えるための今回の酪農、畜産政策の決定であるとの思いも込めまして、以下質問をさせていただきたいと思っております。

 まず、先般、日欧EPAの合意について報道もございましたけれども、確認の意味を込めまして、改めて、日欧EPAにおけるチーズ関連の合意内容についてお聞かせをいただきたいと思います。

    〔坂本委員長代理退席、委員長着席〕

枝元政府参考人 お答え申し上げます。

 日・EU・EPAのチーズの合意内容でございますけれども、モッツァレラ、カマンベール等のソフト系チーズにつきましては、例えばTPPで関税撤廃、関税削減となったようなものも含めまして一括して関税割り当てにとどめまして、枠数量は国産の生産拡大と両立できる範囲にとどめてございます。また、主に原料として使われるゴーダ、チェダー等のハード系チーズにつきましては、関税撤廃するものの、長い撤廃期間を確保いたしました。また、現行のプロセスチーズ原料用の国産抱き合わせ無税の関税割り当て制度は維持することとしたところでございます。

神谷(裕)委員 関連してなんですけれども、日豪EPAにおけるチーズ分野の合意内容はいかがでございましょうか。

枝元政府参考人 お答え申し上げます。

 日豪EPAのチーズの合意内容につきましては、プロセスチーズ及びシュレッドチーズ原料用ナチュラルチーズにつきまして、一定量の国産品の使用を条件とした関税割り当てを設定したところでございます。

神谷(裕)委員 さらに関連してなんですが、TPP11についてはいかがでございましょうか。

枝元政府参考人 お答え申し上げます。

 TPP11のチーズの合意内容でございますが、TPP12から変更はございません。

 まず、モッツァレラ、カマンベール等のソフト系チーズは関税を維持、主に原料として使われるゴーダ、チェダー等のハード系チーズは関税撤廃するものの長い撤廃期間を確保、現行のプロセスチーズ原料用の国産抱き合わせ無税の関税割り当て制度は維持することとしたところでございます。

神谷(裕)委員 その三つの協定を踏まえた上で、次に、我が国へのチーズの輸入先、シェアはどうなっているのか、確認をしたいと思います。お願いいたします。

大野政府参考人 お答え申し上げます。

 我が国は、近年、約二十五万トン前後のチーズを輸入しておりますけれども、年によって変動はございますが、平成二十八年度の国、地域別のシェアは、豪州が八万五千トンで全輸入量の三三%、EUが七万八千トンで三一%、ニュージーランドが六万一千トンで二四%、米国が二万七千トンの一一%、こういう状況になっております。

神谷(裕)委員 今御説明いただいたとおりでございまして、上位三つ、オーストラリア、それからEU、ニュージー、この辺が我が国の大きな輸入先でございます。日本の輸入量のうちEUと豪州だけでもおよそ六割、ニュージーランドを加えればおよそ八五%という大変大きな数字が、今後大きな影響を受けるんじゃないかと考えられるところなんでございますけれども、では、この三つがこぞって日本市場に向けて動いてくるということは、いわば全面的な開放とまでは言わないですけれども、相当なインパクトがあるというふうに考えることが自然だと思います。

 そういった意味で、今回のこの合意について考えると、農水省にもやはりチーズをしっかりと支えていくんだという相当な覚悟が必要なのではないかなというふうに思います。

 影響試算を日欧に関してはやられているというふうに聞いておりますけれども、この三つの連携協定、日豪あるいはTPP11も含めた横断的な、あるいは総合的に勘案したものがこのチーズに関しては必要なんじゃないかなと思うわけでございますけれども、いかがでございましょうか。

枝元政府参考人 お答え申し上げます。

 先ほど、合意の内容、それぞれの内容、また輸入量等を御説明いたしました。

 このように、日・EU・EPA及びTPP11によりとられました措置は異なりますので、チーズの影響につきましても、それぞれの協定ごとに乳製品の中で試算を実施することが必要ではないかというふうに考えてございます。

 いずれにいたしましても、日・EU・EPA及びTPP11につきましては、どのような形で影響試算を行うかについては、内閣官房とも相談しながら進めてまいりたいと存じます。

 なお、平成二十六年に合意されました日豪EPAにつきましては影響試算を行ってございませんけれども、いずれにしても、豪州はTPP参加国でございますので、TPP11の影響の範囲内であるというふうに考えてございます。

神谷(裕)委員 ぜひ、この三つ、先ほど申し上げたように、実は、八五%、大きな大きな量が入ってまいります。個別に見ることも大事なんですけれども、全体として影響をはかるということもやはり重要だと思います。そういった意味において、ぜひ影響をしっかりと見ていただきたい。

 また、農業者の方も非常に不安に感じているところだと私は思います。そういった不安にしっかりと応えていくためには、実態をしっかりと捉える、ファクトを捉える、そして、その上で万全な対策を講じていただく、そのことが何より必要だと思います。ぜひ、そういった観点から、今後お進めをいただきたいと思っております。

 その上で、ちょっと日・EUについて細かく見ていきたいなと思うんですけれども、例えば、ソフト系チーズへの関税割り当ての設定が、今、三万一千トンというふうに聞いております。中には、二万トンから一万一千トンふえるだけという話もあるのでございますけれども、現行の二万一千トン部分についても関税がかかった状況で入ってくるわけでありますので、今後の関税削減の影響を考えると、やはり最終的には三万一千トン丸々、これが競合してくるんじゃないかということも考えられるわけでございます。

 実際、この三万一千トンというのは、生乳換算しますと三十九万トンにも及ぶわけでございまして、北海道で生産された生乳のうち、チーズに仕向けている生乳量に匹敵するほどの大きさであるということでございます。

 とするならば、やはり生乳生産に対しても多少、多少というか、影響が懸念されるんじゃないかなと思うのでございますけれども、こういったことについてどのように考えるか、お知らせいただけたらと思います。

大野政府参考人 お答え申し上げます。

 日・EU・EPAで新たに設定いたしますソフト系チーズの関税割り当ての枠数量は、委員御指摘のように、初年度二万トン、チーズ全体では年間二十四、五万トン輸入しているところでございますが、ソフト系チーズにつきましては、現行輸入実績量の二万一千トン、これが二万トンは下回るものでございまして、また、協定発効後十六年目におきましても三万一千トン、これは、初年度の枠の数量二万トンを、ソフト系チーズのこれまでの輸入だけではなく総消費量の伸び率で伸ばしたものでございますことから、これらはいずれも、ソフト系チーズの国内生産を阻害しない範囲にとどまっていると考えております。

神谷(裕)委員 このほかにも、例えば抱き合わせの部分があると思います。

 プロセスチーズ用については、今回の合意の結果、国産の抱き合わせの必要がなくなってしまうんじゃないかなというようなことも見られるわけでございますけれども、こういった抱き合わせが必要なくなることによって国産需要が減少するんじゃないか、そのことがまた国産の価格の引き下げ圧力にならないか、そのことも懸念されるんですけれども、いかがでございましょうか。

大野政府参考人 お答え申し上げます。

 プロセスチーズ原料用チーズにつきましては、国産ナチュラルチーズの使用を条件に一定量の原料用ナチュラルチーズの無税輸入を認める制度、いわゆる抱き合わせ制度が設けられておりまして、主として、チェダー、ゴーダ等ハード系チーズで活用されております。

 チェダー、ゴーダ等ハード系チーズにつきまして、日・EU・EPA協定発効後十六年目までに段階的に関税が撤廃されることになっておりますが、一定の品質を保ちながら国産プロセスチーズの安定的な製造を行っていくためには、やはり国産の原料用チーズの存在が重要である、こういうふうに承知しておりまして、引き続き、プロセスチーズ原料用国産抱き合わせ制度の一定程度の活用が見込まれるものと見ているところでございます。

神谷(裕)委員 本当に、抱き合わせ制度の結果、一定程度はこれまで間違いなく国産のものが使われているというような、一種、担保になっていたのかなとも思います。そういった意味において、この部分が壊れていくというのは、やはり影響も多少は出てくるんじゃないかなということが十分に懸念されるところでございます。

 また、先ほど見たように、関税の方の問題もございまして、今後、国産チーズの価格の引き下げ圧力というのはやはりあるんじゃないかな、そういうことが想像にかたくないところでございます。

 そうすると、チーズ価格の下落がいわゆる原料乳価格の下落圧力になるんじゃないか、川下から川上へと広がっていく可能性というのはやはりあるんじゃないかなと私は懸念するんですけれども、生乳生産者に影響を与える、これはやはり大きな問題なんだろうなと思いますので、特に農業者にお話を聞きますと、一番経営にとってやはり重要なのは、乳代をしっかり確保させてくれということでございました。

 ということでございますので、乳代をしっかりと確保するという意味において、農水省さんからのそういったお話が聞けたらと思うんですけれども、いかがでございましょうか。

礒崎副大臣 お答え申し上げます。

 委員御指摘のように、やはり安定した国内でのチーズの生産がとりもなおさず安定した生乳の利用につながるわけでありますから、まず今回はしっかりとチーズ対策をやっていきたいと考えております。

 その中で、今回改定されました総合的なTPP等関連政策において、体質強化対策について、これまでの実績の検証等を踏まえた所要の見直しを行った上で、必要な施策を実施するとともに、日・EU・EPAにより必要となるチーズを中心とする乳製品対策については、国産チーズ等の競争力を高めるとともに、その需要を確保し、将来にわたって安定的に国産チーズ等の生産に取り組めるようにすること、原料面で原料乳の低コスト、高品質化の取り組みの強化等を推進することとされているところでございます。

 具体的には、チーズ向け生乳の新たな品質向上促進特別対策や生産性向上対策、生産性拡大対策を講ずることといたしております。

 こうした大綱に基づきまして、現在、本年度の補正予算、今、編成作業に取り組んでいるところでございますので、ここでしっかりと酪農家に対する施策の実施の予算も確保いたしまして、酪農経営の安定を図っていくことが重要であると考えております。

神谷(裕)委員 ぜひ補正予算においても万全を期していただきたいと思います。

 また、私は、チーズについて影響を考えるときには、当然、生乳を生産する農業者の方というアプローチと、もう一つ、やはり販売者あるいは加工者という二つの側面があるんだろうと思っています。

 これまで農水省さんの方でも六次産業化といった形でさまざま後押しをしていただいたと思いますけれども、地域の小さなチーズ工房、そういったものがまだ萌芽期にあるような、よちよち歩きの段階だろうと思うわけでございます。

 そういった意味で、しっかりと、例えば中小零細企業向けの施策であったり、いわゆる農水省的な施策以外の部分も重要になってくるんじゃないかと思うわけでございます。あるいは、地域を形成していく、産地形成の支援であったり、あるいはブランド化の取り組みであったり、チーズ向けの対策としてはソフト面での対策なんというのも重要だと思うわけでございます。

 そういった今の小さな萌芽期をしっかりと支えていく、そういったことを最後にお聞かせをいただきたいと思います。

齋藤国務大臣 今般改定されました総合的なTPP等関連政策大綱におきましては、先ほど来申し上げていますように、日・EU・EPA、これを踏まえて、チーズを中心とする乳製品対策、これをしっかりやっていこうということになっています。

 私は、チーズ工房が、それぞれの特色を生かしてブランドを構築して、そして攻めていくというような展開になることが極めて重要だと思っておりまして、この対策の中でも、チーズ工房とか中小企業などのチーズ製造設備の生産性向上ですとか、それから、委員おっしゃったようにソフト面では、技術研修ですとか、国際コンテストへの参加支援ですとか、それから乳製品の国内外での消費拡大とか、そういうものを講ずるということにしておりますので、この大綱に基づきまして、平成二十九年度補正予算も含めまして、チーズ工房にも必要な対策というものをしっかりと取り組んでまいりたいなと思っております。

神谷(裕)委員 大臣、ありがとうございます。

 今回のことが国産チーズの発展にとって一番いいスタートになるように、今後もぜひ支援をお願いしたいと思います。

 以上で終わります。ありがとうございました。

伊東委員長 次に、佐藤公治君。

佐藤(公)委員 佐藤公治でございます。

 きょうは、二つの点を政府に投げかけ、そしてお聞きし、お願いをしたい、そういうふうに思っております。時間がない中なので、余り深掘りはできませんが、御答弁を願えればありがたいと思います。

 一つ目は、アニマルウエルフェアということに関してでございます。

 この言葉は、なかなかちょっと聞きなれないというか、使いなれていない言葉でもありますが、参考人の方にこの言葉の意味をちょっと後で説明していただきますので、二分後に御質問しますので、準備をしておいてくださいませ。

 私は、畜産といっても幅広うございます、畜産、酪農の立場、生産者の立場を応援したいという思いでここに立たせていただき、そして、議員になる前から、鶏卵、養鶏関係にいろいろな思い入れを持ち、今日まで来させていただきました。

 この鶏卵ということに関して、私は、もう一つ、牛乳ということもあるかと思いますが、まさに空気のような存在、まさに我々の生活においては、安全、安心、安定といった、また低価格といった、なくてはならない存在、しかし、なぜか当たり前のようになってしまっている。ここの部分に非常に関心を持ち、そして、だからこそ、いろいろと、空気のような存在であるべきものを大事にしておく、将来的にも計画的にきちっと混乱がないように考えて対策をとっていくべきという考えでございます。

 そこで、アニマルウエルフェア、これは、これからのまさに国際化、FTA、EPA、TPP、そして、東京においては、日本においては、オリンピックという国際化において大きな波になり得る可能性がある、いろいろな心配事があるかと思っております。

 これについてお聞きいたしますが、まず、アニマルウエルフェア、これに関して、定義というか御説明を簡単にお願い申し上げたいと思います。

枝元政府参考人 お答え申し上げます。

 アニマルウエルフェアにつきましては、国際的な基準と申しますか、そこは、国際獣疫事務局、いわゆるOIEがいろいろ指針を定めてございますが、その指針のアニマルウエルフェアに関するOIEの勧告の序論で、動物がその生活している環境にうまく対応している態様というふうにアニマルウエルフェアを定義してございます。

 そこのアニマルウエルフェアの状況を把握する上で、OIEは五つの自由というものを役立つ指針ということで示してございまして、一つは、飢餓と渇きからの自由、二つ目が、苦痛、傷害または疾病からの自由、三つ目が、恐怖及び苦悩からの自由、四つ目が、物理的、熱の不快さからの自由、五つ目が、正常な行動ができる自由、これを状況把握する上で役立つ指針という形でOIEが示しているところでございます。

佐藤(公)委員 今お話、御説明があったように、これはまさに人権と同じような、動物権の問題でもあるようにも思え、動物愛護法においてもとても大事な一つの指針となっているかと思います。

 私は、このアニマルウエルフェアを否定するものではなく、やはり、自然界においてお互いが共存共栄していくためには大事なことだと思っておりますが、そういう中で、畜産のいろいろと議論の中で、私は、養鶏という立場でこのアニマルウエルフェアを考えたときに、やはり、将来にわたって不安が多く想像できる、こういったことに関して考えているところでもございます。

 この問題は、まさしく、よくも悪くも生活や経済を大きく変えるきっかけになる可能性があるとも思って、それは、まさに先ほどもお話ししたように、人権と同じような動物権の確立にもなる可能性がある。自然とともに共生理念において、よいこともありますが、現実社会や経済、生活においては、生産者、消費者においては、安全、安心、安定、低価格等々においても、多くの変化、問題点が生じる可能性があるかと思っております。

 それに伴う環境整備、皆さんの意識改革ということがとても大事なんですが、そこで、現在、欧米を中心として、家畜の感受性を理解し、その生態や欲求を妨げないように動物愛護に配慮した、まさにアニマルウエルフェアの家畜の飼養管理が求められてきており、欧米の鶏卵生産者においては経営上の大問題になり得る状態、可能性があるというふうに聞いております。

 日本国内においても、最近、スーパーマーケット等の量販店から鶏卵生産者に対し、平飼い卵を要求されるケースも出てきているとも聞いております。しかし、現在の大規模化している日本の飼養方式では、平飼いは、国土、気候、風土上、まさに安全、安心、低価格な卵を供給する体制からすると、欧米等とは異なり、生産者は、養鶏経営者は、不安を大変抱いているようにも感じるところがあります。

 したがって、この日本型アニマルウエルフェアを求められておりますけれども、どういった現状認識で、またどういう方向性に持っていこうとしているのか、生産者、そして消費者の立場もございますが、ぜひともお考えをお聞かせ願えればありがたいと思います。

大野政府参考人 お答え申し上げます。

 アニマルウエルフェアにつきましては、家畜を快適な環境下で飼養することによりまして、家畜のストレスや疾病を減らすとともに、生産性の向上や安全な畜産物の生産にもつながりますことから、我が国の畜産にとって重要な課題、こういうふうに考えております。

 我が国におきましても、平成二十一年三月に、畜産技術協会という公益社団がございますが、ここにおきまして、採卵鶏のアニマルウエルフェアの考え方に対応した飼養管理指針、こういうものを作成しているところでございます。

 ただ、委員御指摘のとおり、アニマルウエルフェアに関するルールが大きく変化した場合の飼養管理の急激な変更、これに伴う施設改修ですとか、生産量の減少により生産コストが増加するといった、生産者の経営に大きな影響を及ぼす可能性がある、こういうふうに考えているところでございます。

 このため、今後策定されることになっておりますOIE、国際獣疫事務局によります採卵鶏の勧告、この動向も注視しながら、生産者の方々に情報を提供しながら、アニマルウエルフェアについての生産者の理解、また消費者の方々の理解を図っていくことが重要であると考えているところでございます。

佐藤(公)委員 この問題について、大臣、一応今のようなお話、説明がございましたけれども、ぜひ、将来を考えたときに、私は、そんな遠くない将来、こういった大きな波が一気にこの日本に押し寄せてくる可能性がある、生産者及び消費者の立場も含めてしっかりとした対策をとり、みんなが不安がないような状況を準備していくことが必要だと思いますが、一言その決意をお願いしたいと思います。

齋藤国務大臣 アニマルウエルフェアにつきましては、今答弁させていただきましたけれども、もうGAPの中にも組み込まれるという形になってきておりまして、委員御指摘のように、世界的にはこれを進めていくという方向、これは今後ともそうなるんだろうと思っております。

 一方で、このアニマルウエルフェアに関するルールが急激に変化をして、そして生産者がついてこれないというのでもこれはいけないというふうに思っておりますので、現実的にしっかり取り組みが進むように、生産者の理解を得ながら推進をしていくことが重要だろうなと思っております。

佐藤(公)委員 大臣、よろしくお願いしたいと思います。

 特に養鶏関係においては、歴史的ないろいろなことはもう大臣御存じのとおりだと思いますが、本当に業界全体、ここ近年においては、行政、これは与党、野党を問わず、みんなの努力で少しずつ改善してきていると思うことには、私は敬意を表し、感謝を正直言って申したい。でも、まだまだ状況としては、私は、失礼な言い方かもしれませんが、市民権を得ているような状況ではないと思っております。その意味では、より力を入れていただけたらありがたい。

 そして、二つ目に入ります。養鶏に関する経営安定対策なんですけれども、本日の議論の中からは少しそれるようで、とても大事な話かもしれませんが。

 酪農、肉用牛、豚肉は、畜産経営の安定に関する法律において事業が実施されていますが、養鶏については法的な裏づけがなく、他の畜種と同様、法的な裏づけのもとで事業を実施していくことの方が、これからの安全、安心、安定そして低価格であるべき鶏卵に関して、私は、制度、体制だというふうに思っております。

 これに関しては非常に、ちょっと議論が長くなるのでまたの機会にしますが、そういったことも踏まえて、養鶏に関する現在の経営安定対策となりますが、養鶏にかかわる畜産経営者の安定対策事業のさらなる拡充をきちっとしていただきたい、そんな思いでございますが、これに関して、今の現状とともに、これからの方向性、力を入れてやっていただけることを望みながら、御答弁をお願い申し上げたいと思います。

枝元政府参考人 お答え申し上げます。

 鶏卵は、安価で良質なたんぱく源として国民生活に欠かせないものでございますが、わずかな需給の変化が大きな価格の変動につながりやすい、そういう特性を持ってございます。このため、鶏卵の価格下落に備えましたセーフティーネットといたしまして、鶏卵生産者経営安定対策事業を措置いたしまして、鶏卵生産者の経営の安定を図っているところでございます。

 本事業、鶏卵生産者の経営の安定と鶏卵の需給安定を図るために重要な役割を果たしていると認識してございますので、平成三十年度予算におきましても、必要な予算の確保に努めてまいりたいというふうに考えてございます。

 また、平成二十九年度には、需給改善機能をさらに有効に発揮できるように、事業メニューの一つであり、大幅な価格下落時に需給改善に向けた取り組みを促す成鶏更新・空舎延長事業につきまして、より多くの生産者が需給改善に足並みをそろえて参加するように促すような内容に見直すとともに、経営体力に乏しい小規模な経営者層、十万羽未満の経営者層について、事業に参加した場合の奨励金単価を二百十円から二百七十円、一羽当たりに引き上げる改正もしたところでございます。

 これらも含めて、引き続き生産者の経営の安定に努めてまいりたいと存じます。

佐藤(公)委員 この鶏卵に関しては、鳥インフルエンザ含めて、非常に不安材料がまだまだございます。どうか、それに対して政府の対応をより拡充、拡大させていただきますことをお願い申し上げ、そして、不安をできるだけなくした、生産者そして消費者の安全、安心、安定、低価格の卵を供給していただきたい、そう思っております。

 最後に、大臣の、今のお話の養鶏、鶏卵に関しての決意だけを簡単に聞かせていただいて、終わらせていただきたいかと思います。

齋藤国務大臣 鶏卵は、本当に安価で良質なたんぱく源ということで国民生活に欠かせないものでありますので、その生産基盤を確保することと、それから、わずかな需給の変化が大きな価格の変動につながっていくという特性を踏まえまして、しっかりした経営安定対策を講じていくことが大事だなと思っていますので、しっかり取り組んでいきたいと思っております。

佐藤(公)委員 ありがとうございます。よろしくお願いいたします。

 以上でございます。

伊東委員長 次に、関健一郎君。

関(健)委員 希望の党の関健一郎でございます。

 質問の機会、時間をいただきまして、改めて御礼を申し上げます。ありがとうございます。

 NHKの記者として、農林水産省の取材をさせていただきました。そして、立場をかえて今質問をさせていただきますが、消費者の皆さん、生産者の皆さんの暮らしに資するよう、真摯な議論をさせていただきます。浅学非才の身ではございますが、御指導、御鞭撻をよろしくお願い申し上げます。

 私は、愛知十五区、豊橋、渥美半島の選挙区よりここに来させていただいております。先ほど鶏の卵の話がありましたけれども、ウズラの卵についてお話をさせていただきます。

 豊橋は全国で一位のウズラの卵の生産量を誇っています。

 そして、現状、実は、大手食品メーカーが、このたび十二月一日よりウズラの卵の値段を九年ぶりに、家庭用に向けては九年ぶりに一〇%の値上げを実施しました。

 現状のウズラの生産量、そして生産者の数、推移などについて、現状の認識をお尋ねします。

大野政府参考人 お答え申し上げます。

 平成二十八年二月一日現在におきまして、全国におけるウズラの飼養戸数五十戸、飼養羽数は四百十六万五千羽でございまして、十年前の平成十九年と比較いたしますと、加工品の輸入量増加等によりまして、飼養戸数は半分以下、飼養羽数は四割程度に減少してきているような状況でございます。

 また、愛知県が全国に占める割合、飼養戸数は二十四戸で四八%のシェア、飼養羽数は二百三十二万羽で五六%になっておりまして、全国一のウズラの飼養地となっております。

関(健)委員 ありがとうございます。

 改めてお尋ねしますけれども、生産者は減ってウズラの羽数が減る一方で、価格の推移というのはどうなっていますでしょうか。

大野政府参考人 お答え申し上げます。

 ウズラの卵の価格につきましては、先ほども委員から少し御紹介がございましたけれども、一定の需要がある中、飼養羽数の減少等によりまして、近年上昇基調で推移しております。

 直近の価格ですと、東京で三十個二百十九円ということでございますが、さかのぼっていきますと、二十九年の一月が二百四円、二十八年、二百一円、二十七年、百九十五円ということですので、上昇傾向にある、こういうことでございます。

関(健)委員 ありがとうございます。

 そもそも論なんですけれども、価格は上がって、そうすると、もうかって、さらに就農者がふえるんじゃないか、こういうふうに素人考えでは私なんかは思うんですけれども、価格は上がっているにもかかわらずもうかっていない、就農者がふえているかというと、後継ぎもいなくなっちゃうし、高齢化が進んでいる。

 豊橋でも、かつて六十一軒あった戸数は今七軒になってしまいました。私、この質問をさせていただく前に、直接生産者の皆さんと会ってきたんですけれども、価格転嫁ができていないということが最も大きな課題だと思うんですけれども、価格転嫁ができていない背景にはどういうことが挙げられますでしょうか、教えてください。お願いします。

大野政府参考人 お答え申し上げます。

 ウズラに限らず、畜産物、生産コストの三割から七割が餌の費用でございます。多分、鶏、ウズラは七割近くが餌の費用だと思います。そういった餌の高騰をなぜ転嫁できないかということでございますが、これはもうまさに、輸入の加工品がある中で、事業者の方と生産される方の相対というか力関係、こういうもので決まっているというふうに考えております。

関(健)委員 ありがとうございます。

 まさにおっしゃったところなんですけれども、豊橋の卸売市場の価格でも、今、過去最高の価格水準になっています。

 そうした中で、いざ、いろいろ話を聞いてみると、まさに価格転嫁ができないという状況が今ある。今おっしゃっていただきましたけれども、飼料が、鶏に比べてウズラは高価な餌を使っています。魚粉、トウモロコシ、あと大豆、そういうものを使って、高価な餌になっています。そして、御案内のとおりですが、飼料の価格が上がって、この季節寒いのでウズラのために暖房をかけなきゃいけないので、その油の燃料も上がっている。そして、輸送コスト、これもはね上がっている。企業努力だけでは何ともならないという状況まで来ているのが現在だ。

 では、価格転嫁を、価格を川下に向けてという議論になるんですけれども、なかなかできない。今おっしゃったように、メーカーの皆さんも、買いたたきというのをしているわけではなくて、安価な輸入のウズラの卵との戦い、競争の中で、ぎりぎりの価格で買い入れをしているという状況があるようです。

 そこで、私は、本質的な問題というか構造的な問題なのかなと思うんですけれども、いいものは高いといいますか、適切なコストを転嫁することができていないというのが本質的な課題だと思います。例えば、経済産業省の縄張りであれば、中小企業に買いたたきをされないような仕組みというのがあると思いますけれども、今、価格決定力が加工メーカーや食品メーカーの方が強いという現状において、なかなか価格転嫁ができないという状況がありますが、価格転嫁を促すというか、買いたたきではないですけれども、促すための具体的な施策というのはどのようなことが考えられますでしょうか。お願いいたします。

枝元政府参考人 お答え申し上げます。

 農産物全般についてそういう課題がございまして、もちろん中小企業も同様でございますが、公正取引委員会と連携をして、そのような情報があれば提供する、また、場合によっては調査をする等々の連携をしているところでございます。

 特に、畜産の関係で申しますと、今、牛乳についてそういう価格上の問題があるのではないかということで、農林省の方で調査をしている状況でございます。

関(健)委員 ありがとうございます。

 ウズラの話に戻るんですけれども、今、価格転嫁ができない中でも、何とかして生き延びようと必死で自分たちの商機を見出そうとする方々がたくさんいますけれども、その中で、やはり六次産業化というのが当然言葉として出てくるんです。

 まずは、六次産業化というのを単純に言ってしまうとそこで付加価値をつけるということだと思うんですけれども、ある生産者の例なんですけれども、ウズラの卵、これがどうやってももうからないということで、その生産者の方はウズラの肉に特化することにしたそうです。そして、ウズラ、実はちょっとちっちゃい骨がいっぱいあってなかなか食べにくいところがあったんですけれども、それを改良して今結構売り上げが伸びていて、この前も帝国ホテルかなんかでウズラスペシャルというのをやっていたそうなんですけれども、そういう新しく商機を見出して付加価値をつけるという取り組みが進んでいます。

 六次産業化ということで改めて質問をさせていただきたいんですけれども、そういう生産者が、例えばウズラの肉とかウズラの加工した卵をその場で食べてもらいたいということを考えた場合に、ひっかかってくるのが、実は、その養鶏の生産のところでは売れないという問題があるわけです。すぐその場で売っちゃいけない。

 これは、いろいろな法律やら規制やらがあるからだということなんですけれども、そもそも、原点として、すぐそこにあったその場所でウズラの卵なりウズラの肉なりをすぐ食べられるというのは、これは六次産業化の、そこを訪れた人にしてみれば大きな魅力だと思うんですが、その六次産業化の加速ということについてお尋ねをします。

枝元政府参考人 お答え申し上げます。

 六次産業化、さまざまな取り組みがございますけれども、生産の段階と加工の段階が結びついて、特に生産の方から加工まで取り組んでいく、また、直売等も含めてできるだけ付加価値をつけて売っていく、それらについては、さまざまな支援をさせていただいているところでございます。もちろん、ウズラの生産者の方々についてもそういう支援の対象にはなろうかと思います。

 ちょっと申しわけございません、その場で肉等を売るということについては、さまざまな、多分衛生上の検査があろうかと思います。ちょっとそこまで詳しく承知してございません。申しわけございません。

関(健)委員 済みません。ありがとうございました。

 先ほどのお話に戻るんですけれども、その六次産業化など新しい取り組みを手がけている皆さんは、私と同じ世代の若き生産者の方々が多くいます。何とか父上から引き継いだ養鶉をさらに発展させたいとか、いろいろな思いでいます。

 それは、このウズラに限らず、あらゆる農産品でもあるんですけれども、私が肌で感じている問題意識としては、規模拡大や新しい付加価値をつけて、農業をビジネスとしてというか、農業に参入しようとする人たちがいつも直面する課題が、さまざまな規制であったりするんですけれども、思うようにできないということが多くあります。

 例えば、私がこの前調査をさせていただいた生産者の方は、小麦を生産しているという方なんですけれども、どんどん自分で拡大をしていきたい、ところが、拡大が結局できなくなっちゃった、取得に問題があって。そのときに、彼はどこに行ったかというと、自由にやらせてくれると言って、海外に行ってしまいました。今、好き放題、自由にやって、最初の五年かなんかは税金を払わなくていいから好きなだけつくりなさいというような制度があるんだそうです。

 意識ある、そして志高き若い生産者の皆さんが日本でせっかくやろうとしても、どんどん海外に流出したり、そういう残念なことというのが相次いでいるのがまさに今の現状だと思います。後継者の育成また担い手の新たな育成について、改めて政府の御所見をお伺いします。

枝元政府参考人 お答え申し上げます。

 畜産業についてお答え申し上げますけれども、当然ながら、畜産業を維持発展していくためには、後継者、新規参入、こういう方々を確保していくことが必要でございますので、特に畜産業の場合には、初期の設備投資の負担ですとか、また過重な労働負担、これを軽減していかないと、後継者、新規参入者にとってなかなか魅力あるものにならないという現状がございます。

 こういうことから、畜産クラスター事業ですとかいわゆる楽酪事業によりまして、離農農場等の既存施設を補改修した上で新規参入者に貸し付けることによりまして、整備投資の資金負担を軽減する取り組みですとか、搾乳ロボットですとか自動給餌機などの省力化機械の導入ですとか、外部の支援組織、TMRセンター等の支援組織の活用による労働負担の軽減を図る取り組みなどを支援しているところでございます。

 また、酪農、肉用牛について、農家にかわって飼養管理作業等を行います酪農ヘルパー及び肉用牛ヘルパーの確保を図るとともに、疾病時利用の負担軽減等に対する支援も行っているところでございます。

 今後とも、意欲ある後継者や新規参入者の確保に向けまして、地域の関係者の協力も得ながら必要な支援を実施してまいりたいと存じます。

関(健)委員 ありがとうございました。

 初めての質問で少し言葉も上ずってしまいましたが、ありがとうございました。農政の大きな転換点にこの農林水産施策に携わらせていただくことに感謝をしつつ、質問を終わらせていただきます。

 ありがとうございました。

伊東委員長 次に、緑川貴士君。

緑川委員 皆様、お疲れさまでございます。

 希望の党・無所属クラブの新人議員、緑川貴士と申します。秋田県に暮らす三十二歳でございます。

 秋田県との境、青森県との境には世界遺産である白神山地、そして岩手県との境には脊梁山脈である奥羽山脈、そして山形県との境には鳥海山がそびえ立っております。三方を山々に囲まれ、そして西側は日本海が広がっております。ハタハタなどの海の幸、山の幸、そして豊かな米どころでございます。一次産業の生産者のお声をしっかり切実に受けとめて、与野党を超えて、農山漁村の発展のために思いを同じくして取り組んでまいりたいと思います。

 きょうは、初めて質問の場に立たせていただきます。よろしくお願いいたします。

 初めに、牛肉について、委員からも質問はありますが、私からは別の形から、セーフガードについて質問させていただきます。

 ことしの四月から六月の冷凍牛肉の輸入量が発動基準量を超えたため、ことしの八月からアメリカ産などの冷凍牛肉に対してセーフガードが発動しておりますけれども、関税引き上げの措置にもかかわらず、輸入の冷凍牛肉、冷蔵牛肉が逆にふえております。輸入業者は、セーフガードが発動したことで高くなったアメリカ産冷凍牛肉を避けて、オーストラリア産に切りかえ、また、アメリカ産冷蔵品については、八月―十月は前の年の同じ月と比べておよそ五割もふえております。

 つまり、これはセーフガードの輸入抑制機能が働いていないことになりますけれども、この現状をどのように捉えていらっしゃいますでしょうか。

枝元政府参考人 お答え申し上げます。

 関税緊急措置が発動いたしました八月から十月の冷凍牛肉の合計輸入数量は七万七千九百四十四トンで、前年度同期と比べて一一八・一%というふうになってございますが、緊急措置の対象の大部分を占めます米国産の冷凍牛肉だけで見ますと、本年八月から十月の合計は二万二千二百十二トンということで、前年度同期と比べまして一〇一・七%と微増にとどまっているところでございます。

 牛肉の輸入量、関税率だけではなく国内の需要ですとか為替相場等にも左右されますし、また、冷凍牛肉につきましては、焼き肉等の需要が堅調なこともありまして、関税引き上げによる調達コストが増加する中でも、全体としては輸入量の増加につながったものではないかというふうに考えているところでございます。

緑川委員 いずれにしても、輸入量がふえているということで、価格の高い国産品、競争力も今つけなければならないという中で、枝肉の価格がやはり近年特に高くなっている中で、国産品が輸入品の代替にはなっていないのが現状でございます。輸入品の代替がやはり輸入品という現状です。

 国産を守るためにあるはずのセーフガードです。これでは、骨抜きになってしまっていると言われても仕方がないのではないでしょうか。実質機能させるための実効性のある取り組みについて、大臣、意気込みをひとつよろしくお願いいたします。

齋藤国務大臣 今、現状は局長から御説明をさせましたけれども、今回の関税緊急措置の発動がなかった場合、私は、今以上に米国産等の冷凍牛肉の輸入量が増加したと考えております。

 したがって、本措置は有効に機能しているものと考えておりますけれども、ただ、我が省といたしましては、引き続き、牛肉の輸入動向等はきちんと継続的に注視をしていきたいと考えております。

緑川委員 ありがとうございました。

 本当に、畜産農家、高齢化が進んで、担い手不足も深刻となる中で、一人当たりが抱える牛の量も大変ふえております。この激務をしっかりとお支えできるような、まず、畜産農業の振興を何とかお支えできるようにお願いをしたいと思っております。

 二つ目ですけれども、秋田県にも関連しますが、畜産の一つで、養蜂業が盛んでございます。全国の生産量は三位、二百十トンを生産している秋田県です。国産蜂蜜を支えて、また、イチゴ、メロンなどの園芸作物の花粉交配にも不可欠なミツバチを養蜂家が飼育しております。

 これが何らかの原因で死ぬというミツバチ被害が起きている近年ですけれども、この被害件数についてお伺いをします。

池田政府参考人 お答えします。

 ミツバチの減少の原因といたしましては、ダニなどの寄生虫や害虫、病気、栄養不足、農薬などがございます。

 農林水産省は、ミツバチが減少する事例の発生と農薬の関係把握などを目的といたしまして、平成二十五年度から三年間、農薬が原因と疑われるミツバチの被害事例について調査いたしました。

 全国のミツバチの飼養戸数は約九千戸でございますが、この調査では、平成二十五年度には六十九件、二十六年度には七十九件、二十七年度には五十件の被害の報告がございまして、多くは水稲のカメムシ防除の時期に発生しており、殺虫剤の散布時または散布後に水田の周辺に飛来したためと考えております。

 このため、農林水産省といたしましては、農薬によるミツバチの被害の軽減を図るために、毒性に応じて、ミツバチの巣箱やその周辺にかからないようにするなどの使用に当たっての注意事項を農薬のラベルに表示することとしているほか、農家と養蜂家の皆さんとの情報の共有を徹底していただきまして、農薬の散布時期には巣箱を退避していただくなどの対応を進めてきたところでございます。

 これらの対策が有効であることは調査でも明らかになっておりまして、さらに対策の強化を図ってまいりたいと考えております。

緑川委員 ありがとうございました。

 とりわけ、薬剤の散布、ネオニコチノイド系の薬剤がミツバチに影響を与えているというお話だと思います。

 岩手県では、平成十七年にミツバチ被害が起きております。ミツバチの死骸からカメムシ防除に使用した殺虫剤が検出され、因果関係は否定できないということで、養蜂組合に補償が行われていたところでございます。

 御答弁をいただいた対策の中の注意事項、これを守ることはもちろん必要だと思います。予防のためには大切なことです。しかし、そもそも薬剤散布ありきのミツバチ被害対策では、これは根本的な解決とはならないというふうに私は考えております。

 千葉工業大学の研究グループが行った調査でも、東北から沖縄の九都県で集めた七十三のサンプルからネオニコチノイド系農薬が検出され、蜂蜜では、六割を超える蜂蜜が国の暫定基準を上回っているという調査結果が出ております。この蜂蜜が、これは人の口にも入っているわけです。昆虫だけではないんです、人間を含めた生き物に影響を及ぼしている現状です。

 また、海外では、神経毒を含んでいるこのネオニコチノイド系の薬剤、ミツバチの大量死、群れの消滅との関連が指摘されております。薬剤の使用の規制が海外では進んでいるところです。

 このネオニコチノイド系薬剤を散布しなければならないのは、御答弁にあったように、カメムシが稲について米を食べるということを防ぐため、黒くなったお米を出さないようにするという取り組みだと思いますけれども、黒くなったお米、いわゆる着色粒というふうに呼ばれていますが、これを認めないという米の出荷に当たっての検査基準が私は大変厳しいと思うんですね。

 着色粒の混入限度が、一等米であれば〇・一%。一方で、小石などの異物の混入限度は一等米当たり〇・二%。着色粒よりも基準が緩いんですね、小石が入っている方が。健康上問題のある異物の混入限度よりも基準が厳しい着色粒の、まず混入限度の基準について、私は疑問に感じております。

 この厳しい混入限度を緩和することで防除に使う殺虫剤を減らすことができた場合、ミツバチ被害も減らすことができる可能性があると思います。着色粒の混入限度の規定、農産物検査制度の見直しはお考えでしょうか。

柄澤政府参考人 お答えいたします。

 今御指摘ございましたカメムシなどによりますいわゆる着色粒につきましては、その混入が消費者からのクレームの要因になるということから、生産者、流通業者、消費者など関係者の御意見をお聞きしまして、米の農産物規格に着色粒の最高限度を設けているという実態でございます。

 この着色粒の農産物規格につきましては、カメムシなどが大量に発生しまして着色粒の混入割合が多くなれば、収穫後の色彩選別機などによる除去では歩どまりが大きく低下する、あるいは、実需者のサイドからは、流通段階で色彩選別機による除去を行う際には搗精時間が長くなってコストがかかるため、生産段階での対策が必要だという御意見があること、一方、生産者からは、着色粒の農産物規格を満たすためには追加的な農薬の使用が必要になってしまうというような御意見、いろいろなお立場からいろいろな御意見がございますので、こういった御意見などを十分勘案する必要があると存じます。

 いずれにしましても、消費者からのクレームを踏まえれば、着色粒につきましては生産段階か流通段階のいずれかで除去をするという必要がございますので、どこでそのコストを負担するのが適切かということを考えた場合に、農薬の使用実態ですとか色彩選別機の導入実態なども踏まえまして、関係者の御意見をよくよくお伺いし、適切に判断する必要があると考えているところでございます。

緑川委員 ありがとうございました。

 いろいろな根拠がそれぞれのお立場から理由として上がってくるでしょうけれども、仮に防除をしなかった場合、十アール当たり三千円のコストが浮きます。

 一方で、防除しなかった場合の混入限度といいますか、黒くなるお米の割合ですけれども、秋田県の農業試験場のデータによれば、十年間防除しなかった場合でも〇・五%ほどの米しか黒くならないということになっています。これは防除した場合とさして大きな違いはないんじゃないでしょうか。おまけに、コストも、先ほどお話ししたように十アール当たり三千円かかる。これはどう見ても経済的ではないというふうに私は考えます。

 一度散布したとしても一週間ほどの効果しか持続しない。防除の効果が果たしてどれくらいカメムシの食害を抑えているかはやはり疑問に感じているところでございます。

 また、お配りした資料にちょっと目を通していただきたいと思うんですが、見直しを求める現場の声は大変強いものがございます。お配りした資料は、市民団体が弁護士を通じて農水省に行政文書の開示請求をした結果、届いた行政文書の不開示通知書になります。

 平成二十七年に農産物検査アンケート、お米に関するアンケート調査とありますが、これは農水省が平成二十七年の十月から平成二十八年二月にかけて、都道府県の担当課に向けてアンケートを行っておりました。各県に問い合わせて調べたところ、このアンケートの中で、着色粒の混入限度の基準を緩和するべきだと回答した県が青森、岩手、秋田、神奈川、福井、岐阜、三重、兵庫、岡山、香川、長崎、そして匿名のA県、合わせて十二の県が緩和するべきだと答えているんですね。

 実需者、いろいろなサイドからの要請があると思いますが、この十二県が、多くが、たくさんの県がこれは緩和するべきだというふうに要望しています。

 アンケート調査結果は、これは行政文書であって、機密文書でもなく個人情報でもないですね。不開示にした理由をお尋ねしても、この紙に書いてあることをなぞるようなお答えになってしまうと思いますのであえて問いませんけれども、不開示の理由、この2をごらんください。はっきり書いてあるんです。農産物検査に関する施策を検討している途中段階というふうに書いてあります。

 アンケートは、平成二十七年の十月に始まって、もう二年以上たっているわけです。しかしながら、待てど暮らせど何のリアクションもない。市民から問い合わせが来ても不開示という結果です。答えを待っているのは市民だけではありません。アンケートに答えた県も、これはずっと待っているんですよ。

 開示をしたら回答者の信頼を損ねるというふうにここに書いてありますけれども、いや、それどころか、むしろ、何もなかったかのように不開示にして、これまで対応してこなかったことの方がよほど信頼を損ねることになると思いますが、いかがでしょうか。何らかの対応が求められていると私は思います。

 不開示通知書には大臣のお名前がございます。時間が来てしまいましたので、農水省の長としての御見解をお尋ねいたします。

柄澤政府参考人 今御指摘の規格の問題でございますが、農産物検査全体といたしまして、平成二十八年十一月に決定されました農業競争力強化プログラムにおきまして、「農産物の規格についてそれぞれの流通ルートや消費者ニーズに即した合理的なものに見直す。」というふうにされております。

 また、このプログラムを踏まえました、本年八月の農業競争力強化支援法の施行がされているわけでございますが、同法十一条第一項第二号におきまして、「国は、」「農産物流通等に係る規格について、農産物流通等の現状及び消費者の需要に即応して、農産物の公正かつ円滑な取引に資するため、国が定めた当該規格の見直しを行う」と規定されております。

 これらを踏まえまして、米の流通の現状などに応じて、公正かつ円滑な取引に資するよう、必要な見直しの検討を行っているところでございます。

緑川委員 大臣のお答えを求めます。

齋藤国務大臣 不開示の理由についてはそこに書いてあるとおりでありますが、今後どうするかについては、先ほど答弁させていただいたように、プログラムに従って今検討しているということでございます。

緑川委員 検討中というお答えをいただきました。

 地域としてしっかり待っていきたいと思います。不作為という形にならないことを御希望申し上げながら、行政の信頼が根幹から揺らぐことにならないこともあわせて願います。

 養蜂家も命がけです。ミツバチ被害を抜本的に減らすための取り組みをどうかお支えいただきたいと思います。

 ありがとうございました。

伊東委員長 次に、金子恵美君。

金子(恵)委員 無所属の会の金子恵美でございます。よろしくお願いいたします。

 齋藤大臣は、就任後、八月二十一日だったと思いますが、福島入りをされて、福島市内にある復興牧場、株式会社フェリスラテを視察されました。

 そのときに牛乳も試飲されたというふうに伺っております。お味の方はいかがだったですか。

齋藤国務大臣 そのときも申し上げたと思うんですけれども、非常に濃厚で、非常においしかったです。

金子(恵)委員 ありがとうございます。

 本当に頑張っています。

 原発事故で避難休業していた酪農家五戸による共同経営方式での牧場運営がなされています。当然、国の予算、東日本大震災農業生産対策交付金を活用して施設整備をしたということでありまして、畜産経営の再開、そして、本当に畜産の復興に向けた取り組みの一つの事例となっています。

 そしてまた、肉用牛では、東白川郡の塙町の株式会社JA東西しらかわグリーンファーム、これも取り組みとして挙げられているということでありまして、こちらの方も平成二十七年度の東日本大震災農業生産対策交付金を活用しているということです。

 このような交付金をしっかりと活用していただいて、そして畜産の本当の意味での復興というものがなされることを心から願ってやまないわけでございます。

 しかし、一方では、やはりことし避難指示が解除されている自治体、そして地域においてもまだまだたくさんの課題があって、畜産経営の本当のゴールにはたどり着かないということであります。道のりは本当に長いというふうに思います。

 そういった中で、そろそろもう一年もたつところでありますが、福島県酪農業協同組合「県酪だより」一月号に掲載された宗像代表理事組合長の年頭の御挨拶の一つ一つの言葉というのは、本当に重要なものだというふうに私は感じています。

 まずは、組合の四十九戸の酪農家はいまだに避難休業を強いられておりますということです。そして、そろそろ一年がたつということですけれども、いまだに四十九戸、やはりこの戸数は変わらない、避難休業中であるということです。

 そしてまた、宗像組合長はこの御挨拶の中で次のように述べられています。朗読させていただきますが、「県内すべての酪農家におかれましても、生乳の放射性物質検査や自給飼料生産の制限などが継続されており、カリ過剰による乳牛の健康被害も発生するなど、酪農家の精神的・経済的負担は軽減することなく、酪農生産基盤に甚大な被害をもたらしています。」課題が多いということです。

 そこで、カリ過剰牧草の影響についてでありますけれども、牧草地で牧草生産のためにカリ施肥による放射性物質の吸収抑制対策を行うと、牧草中のカリウム濃度が高くなって、そして、それを給与された乳牛にカリ過剰による健康被害が発生する可能性があると農水省は言っています。

 実際に、実害として病死した牛があるというような報告もありましたが、いろいろな調査を昨年されて、それで、何件かの中では、因果関係がやはりわからない、実際にこのようなカリ濃度が高いことによっての病死なのかどうかということが立証できないというようなケースもあったということであります。

 ただ、私、ここで言えるのは、そうはいっても、立証できなかったとしても、やはりこのような方策をとらなくてはいけなかった。農水省の資料でもこのように書かれているんです。カリの施肥後に生産される牧草はカリウム濃度が高くなり、牛の病気である周産期病、これは乳熱、ダウナー症候群等や、グラステタニーの原因となる可能性があることから、牧草中のミネラル濃度の確認や、給与量の調整、飼料の急激な切りかえを行わない等の対応が必要である、これは農水省の資料であります。ですので、しっかりと対応をしていかなくてはいけないんです。

 このような中、実際に、酪農家の方々、皆さん畜産、酪農を再開しようと頑張っていらっしゃるけれども、このような課題があるということで、やはり精神的にも苦痛であろうかというふうにも思います。

 実際に、牛がカリウム過剰の影響等を受けないように、病気の原因となる可能性等をしっかりと周知する必要があった。それは、私は、なされてきたというふうには理解しているところではありますけれども、なかなかそれが、本当に機能してきたかということが懸念されるところでありまして、予防的な措置をしっかりと進めていく、これに尽きるというふうにも思っています。

 福島県の農林水産部も、農業技術情報第五十四号で、ことしの三月の十三日に発出されていますけれども、二十九年産牧草の放射性セシウム吸収抑制対策というものを出しておりまして、その中で、このことについて注意喚起をしているんです。

 しかし、注意喚起をしていても、実際に、本当に予防がなされているのか、このことについても私たちは、福島県民としては、あるいは畜産、酪農にかかわる人たちにとっては大変大きな大きな問題だというふうに思っております。

 大臣の御所見をお伺いします。

齋藤国務大臣 被災地の皆さんが酪農の再開にかけて本当に取り組んでいる姿を私も拝見いたしまして、むしろこちらが勇気づけられるぐらい、皆さんが頑張っておられる姿に私も感銘を受けて帰ってきたわけであります。

 今の件でありますけれども、牧草の放射性物質の吸収抑制対策としては、除染後の牧草地においてカリウムを施肥するということは有効であるわけでありますが、一方で、御指摘のように、カリウムの施肥後に生産される牧草、これは一般的にカリウム濃度が高くなるものですから、牛の体内でカルシウム等の吸収を阻害することから、低カルシウム血症等の原因となる可能性があるということを認識しているわけであります。

 委員御指摘の、除染後の牧草地の放射性セシウムの吸収抑制対策としてカリウムを施肥し、その牧草を食べた牛が死亡したというお話がありまして、これは福島県が直ちに調査を行ったわけでありますが、福島県からは、調査の結果、牛の死亡の原因をカリウム濃度の高い牧草を給与したことによるものと特定する事実は確認されなかったとの報告は受けているところであります。

 ただ、私ども農林水産省といたしましては、県や関係機関と連携をいたしまして、除染後の牧草給与に当たっての留意事項の周知徹底、これは、徹底がなされていないということであれば、なお指導していきたいと思っておりますけれども、それから、カリウム濃度の高い牧草の利用技術の周知ですとか、あるいは、東日本農業生産対策交付金等を活用した土壌分析や牧草分析の推進を行っているところでありますけれども、一番重要なことは、委員御指摘のように、ちゃんと末端までこういうことが伝わるかどうかということでありますので、なお意を用いていきたいと思います。

金子(恵)委員 ぜひよろしくお願いいたします。

 私は、先ほども申し上げましたように、精神的な負担というのがいかに大きいかということを御理解いただきたいというふうに思っております。

 情報はしっかりと酪農家の皆様方にも届けていかなくてはいけないということではありますけれども、それ以上に、実際にこのような形でいろいろな対策を考えていかなくてはいけないことによる精神的な負担を理解いただき、そしてまた、私は、もっと農水省を中心としてしっかりと専門家による相談の窓口等をつくっていくということも必要なのではないかというふうに思っております。

 さらに、次の課題でありますけれども、放射性セシウムに汚染された稲わら、牧草、牛ふん堆肥についてであります。

 こちらは、放射性物質汚染対処特措法に基づいて、八千ベクレルを超えたものについては指定廃棄物として国が処分する、そして、八千ベクレル以下は一般廃棄物として市町村等が処理するというふうになっているわけなんですけれども、農水省としては、中間処理、最終処分までの間、営農上の支障が生じないように、また風評被害の原因とならないように、汚染稲わら等の隔離や一時保管を推進しているということです。

 実際に、とにかく中間貯蔵施設等も含めまして、あるいは最終処分ができるように早く進めるということは、環境省と連携してやっていかなくてはいけないことであるというふうに思いますけれども、その中で、特に牧草と堆肥について言いますと、岩手、宮城、福島、栃木、群馬、茨城、千葉、新潟で、汚染牧草は約十二万トン、堆肥は十三万トン発生したということでした。そのほとんどが八千ベクレル以下であります。これまで、汚染牧草が約八万トン、堆肥が七万トン処分されています。残りは、汚染牧草約四万トン、そして堆肥が約六万トンということで、これも今現在農家等で一時保管されているという現状です。

 先ほども申し上げましたけれども、一時保管というのは風評被害にどのようにつながっていくのか、これもしっかりと考えていかなくてはいけないというふうに思っているんです。風評被害の原因とならないように汚染稲わら等の隔離や一時保管を推進した、農水省はそう言っている。そういうことであれば、今、農家等で一時保管されている、この現状をどうお考えいただくかということだと思うんです。

 農家の近くに、畜産、酪農家の方々の近くに一時保管されている現状をどういうふうに捉えていらっしゃって、そしてまた、どのようにしっかりとした処理を推進していくお考えなのか、お聞かせいただきたいと思います。

齋藤国務大臣 御指摘の、放射性物質に汚染された牧草それから牛ふん堆肥については、御案内のように、放射性物質汚染対策特別措置法に基づいて、八千ベクレル・パー・キログラムを超えるものは指定廃棄物になりますが、それ以下の濃度のものは一般廃棄物等として市町村等がそれぞれ処理するということになっているわけであります。

 御指摘のように、今現在約十万トンが未処理になっているということで、これが、私も現場へ行って見ましたけれども、ビニールに包まれて置いてあるわけであります。ただ、今、一般廃棄物で、市町村の責任において処理するということになっているわけでありますけれども、これはもう一刻も早く私どもも解消をしていきたいというふうに当然思っているわけであります。

 それで、それなりに進んできて、今約十万トン残っているということでありますけれども、今年度、放射性セシウム濃度の再測定結果を踏まえて、また、処理方法や集中保管場所への移動の仕方、今あるものをどう移動させていくかということも含めて、それぞれ、地元の方々が検討するための事業というものをまた新たに措置したところであります。

 また、こういうものを踏まえながら、環境省、県、市町村と連携を密にしながら、一刻も早く、この目に見えるものが解消できるように努力をしていきたいと思っております。

金子(恵)委員 実証実験としては、汚染牧草のすき込みというのがあるというふうにも聞いているんですが、また、これをやることによっていろいろな影響が出てくる可能性もあるわけです。それが風評被害に広がらないかどうかということも含めて、もしこれをやるのであれば、本当に明確に安全性というものを発信していかなくてはいけないというふうに思います。実証実験の段階だというふうには聞いておりますけれども、ぜひしっかりと御検討いただきたいと思います。

 時間が余りございませんので最後の質問になると思いますが、我が国の酪農の現状について改めてお伺いしたいと思います。

 乳用牛の飼養戸数は毎年年率四%程度の減少傾向で推移しているということです。飼養頭数は年率二%程度の減少傾向で推移していますが、一方、一戸当たりの経産牛飼養頭数は増加傾向で推移していて、それは大規模化が進展していると言えるということです。

 しかし、乳用牛の飼養戸数の減少による飼養頭数の減少を飼養規模の拡大では補い切れないという状況で、乳用牛の飼養頭数が実際には減少しているということです。その背景としては、飼養規模の拡大に伴う大型施設の投資負担に加えて、やはり労働力が確保できないということがあるというふうに思います。

 このことについての御認識をお伺いしたいと思います。

齋藤国務大臣 人材をいかに確保していくかというのは、これから酪農を継続していく上で極めて重要な課題であろうと思っております。

 このために、もう委員御案内だと思いますが、さまざまな施設の導入なんかにも支援をさせていただくこととしておりますし、また、重要なのは、酪農ヘルパーさんにお願いできるような体制というものがやはりこれから継続していく上では重要だなというふうに思っているわけであります。

 現在、大変過酷な労働環境にあることは十分認識をしているところであります。

 したがって、我々も、省力化機械の導入とあわせて、飼養管理作業の外部化というものを支援してきているわけであります。

 特に、申し上げたヘルパーさんは、酪農家の休日確保や傷病時の経営継続だけでなくて、ヘルパー業務を通じて新規就農につながっていかないかなという、そういった役割も担っていることですので、その人材確保はすごく大事なものと考えております。

 目の覚めるような対策というのがあるわけじゃないんですが、そういうハード、ソフトの対策を積み重ねることによって、何とか人材を確保していきたいと考えております。

金子(恵)委員 労働力を何とか補うということで、あるいはその労働力不足の抜本的な部分、大変厳しい過酷な仕事だからこそ、今酪農ヘルパーの必要性について大臣はお答えいただいたんだというふうにも思います。

 この酪農ヘルパーさん、残念ながらどうも減ってきている方向だというふうに思いますので、そうであれば、酪農ヘルパーさん、人材をしっかり育成していくということを国を挙げてやっていただきたいということをお願いさせていただきまして、質問を終わらせていただきます。

 ありがとうございます。

伊東委員長 次に、田村貴昭君。

田村(貴)委員 日本共産党の田村貴昭です。

 最初に、林野庁にお伺いしたいことがあります。人や国や自治体の森林を無断で伐採する、盗伐の問題について伺いたいと思います。

 宮崎県で盗伐の被害が相次いでいます。県警によれば、二〇一二年からことし十月末までの相談件数は百二十六件にも上っていますが、ほとんどが被害届の受理がされていません。大規模な違法伐採による荒れた山肌、そして無数のわだち、この姿を見て、私も驚いて、胸を痛めております。

 無断伐採を放置すれば、森林資源の枯渇を生みます。そして、放置された盗木は、災害等の被害を発生させてまいります。

 そもそも、盗伐の被害そのものが特定されていません。宮崎市では、被害者の会が結成されました。三十世帯を超えていると伺っております。犯人を逮捕してほしい、そして、被害が怖くて植林するのにちゅうちょがある等々の声も伺っております。

 そこで、林野庁に伺います。

 盗伐、盗木と被害の実態について掌握されているでしょうか。

    〔委員長退席、坂本委員長代理着席〕

沖政府参考人 お答えいたします。

 宮崎県内におきまして、仲介業者が伐採届の偽造を行った上で無断で伐採を行い、十月五日、有印私文書偽造及び行使、それから森林法違反の疑いで宮崎市の仲介業者が逮捕されたという報告を宮崎県から受けているところでございます。

 この事態を受けまして、農林水産省におきましては、十月から十一月の都道府県担当者の会議でこうした事案を周知するとともに、森林の管理の観点から、類似の事案の有無の確認依頼をしているところでございます。

田村(貴)委員 そこで、ぜひ動いていただきたいんですけれども、十月二十六日、宮崎市の山林から杉の木を盗んだという疑いで三人が逮捕されました。しかし、これは摘発の一例にすぎないわけなんです。被害者が幾ら被害届を出しても受理されない、泣き寝入りをせざるを得ないような状況に遭っています。

 悪質ブローカーの手口、聞いてびっくりしたんですけれども、伐採届を出した、そこを伐採して、それ以外のところも伐採する。過って切ったというふうに言い逃れをする。つまり、過失で済まされているという現状があるわけなんです。こんな理不尽なことはないと思います。

 盗伐というのは、これは犯罪であります。地籍調査が進まない、境界がわからないという問題もあります。また、自治体の職員の手が足らずに、伐採届を十分に審査ができないという問題も上がっております。盗伐は全国各地で問題となっておりますけれども、犯罪と森林破壊を放置してはならない、この立場に立って国に動いていただきたいと思います。

 まず、実態把握に国が直接乗り出していただきたい。そして、被害届の速やかな受理と盗伐犯の摘発へ今対策が求められると思いますけれども、齋藤大臣、御所見いかがでしょうか。

齋藤国務大臣 いろいろなケースがあろうかと思いますが、宮崎県における盗伐は、虚偽の届け出を出して、森林所有者に無断で伐採する、こういう悪質な行為、こういうものは許しがたいと思っております。

 本件についても、警察、市町村等と連携して当該事案に対応するとともに、県内の市町村に対して、届け出の際にしっかりその所有者を確認するということを徹底するというのが農水省がやらなくちゃいけないことだろうと思っていますので、これはきちんと徹底させたいというふうに思っております。

 あと、個々の事案については、それは違法性のあるものについてはきちんと対応していくということに尽きるのではないかと思っております。

    〔坂本委員長代理退席、委員長着席〕

田村(貴)委員 実態把握に努めていただきたいし、そして、自治体の職員が伐採届に対して数百担っているという状況があるので、やはりここはフォローしていただきたいということを重ねて要求させていただきたいと思います。

 きのう、日本共産党国会議員団として、酪農、畜産に関する申し入れを農水相に対して行いました。齋藤大臣、受け入れていただきまして本当にありがとうございました。

 全国の肉用牛の飼育戸数は、二〇〇八年から十年間で、八万四百戸から五万百戸まで、三万三百戸も減っております。畜産の盛んな宮崎県の都城市、ここをちょっと調べてみますと、二〇一三年から二〇一七年の五カ年間に、農家は、一千七百五十五戸から二百二十五戸も減ってしまいました。飼育頭数は、肉用牛全体で六万二千五百頭あったんですけれども、この間、四千七百九十頭も減少してしまいました。

 一方で、牛枝肉卸売価格は上昇傾向にもあります。消費が減っているわけでもありません。生産すれば売れる状況にあるにもかかわらず、なぜ畜産業を営む人がこんなにも減っているのか、御説明いただきたいと思います。

枝元政府参考人 お答え申し上げます。

 最近の肉用牛経営の動向でございますけれども、御指摘のように、高齢化等に伴いまして飼養戸数は減少傾向にございますが、一戸当たりの飼養頭数は増加しておりまして、平成二十九年におきましては、飼養頭数は前年を上回ったところでございます。

 また、肉用牛の繁殖基盤の方で申し上げますと、昨年、繁殖雌牛が六年ぶりに増加に転じまして、ことしも前年から八千頭増の五十九万七千頭と増加傾向が継続するなど、回復の傾向にある、そんな状況でございます。

田村(貴)委員 微増ですよね。全体から見たらそうじゃないですね。

 酪農でも同じことが起きています。生乳生産量は、ここ数年は微増傾向であります。微増なんですよ。しかし、一九九六年の八百六十五万七千トンから二〇一六年の七百三十九万四千トンに、一五%、百万トン以上も減少しているのであります。戸数は、この十年間で八千戸も減少した。もう残るは一万六千四百戸しかありません。

 生産基盤の危機的な状況等によって、乳製品の不足が頻発しています。乳価は上向き、子牛の販売価格も上昇しているにもかかわらず、家族経営の酪農家が次々廃業をしている。なぜ廃業が後を絶たないのか、御説明いただけますか。

枝元政府参考人 お答え申し上げます。

 最近の酪農経営の動向でございますが、飼養戸数、また乳用牛の飼養頭数及び生乳生産量とも若干減少傾向、特に生乳生産量は若干の減少傾向というふうに承知をしてございます。

 これは、高齢化、また後継者不足等によりまして、離農した酪農家の方々が持っていらっしゃった乳牛の頭数を、昔は残った酪農家でカバーできておりましたが、そういうカバーができなくなったこと、また、交雑種生産の増加等によりまして、乳用後継牛の生産が減少していることなどが主な要因ではないかというふうに考えてございます。

田村(貴)委員 なぜ担い手が不足しているのか、高齢化に伴ってこれが深刻に陥っているのか、やはりその根本的な要因をよく知らないと、検討を進めていかなければならない、ここが一番大事なところだというふうに私は思うわけであります。

 都城市の畜産農家の声を聞きました。牛は確かに今高いんだけれども、子供にはこの家業を引き継がせたくない、農機具の負担が余りにも重過ぎる、国保税と消費税を納めるために何か牛を売っているようなものであると。また、もし農協がなくなったら俺たちは一体どうしたらいいのかといったような声も出てまいります。

 そして、底辺に重くのしかかっているのが自由貿易協定、経済連携協定なんですよね。TPPなんかどうなっていくのか、今度は欧州かという声がやはり基本にあるわけなんです。

 酪農でも都城と同じであります。中央酪農会議が行った全国酪農基礎調査、生乳生産増加に向けた阻害要因として、北海道の酪農経営者の二八%がこう言っています、酪農政策が今後不透明。政策上の問題で先行きが見えないから、やはり生乳生産増加に阻害の要因があっている、こういうことも明らかになっているわけであります。肉牛でも酪農でも高額の投資が必要になってきているし、これからもそういう傾向にあるわけなんです。

 私、先月、北海道の帯広の酪農家を調査させていただきました。老朽化した牛舎の改築だけで一億円、それから給餌、餌をやる機械の投資に一億円投じて、合計二億円。今後は、また日欧のEPAの脅威がやってくるので、さらに乳量を引き上げるための効率化、機械化が叫ばれていくだろうという話であります。

 日欧EPAで、ハード系のチーズ、それから脱脂粉乳、バターというのはどういうふうな合意になったんでしょうか。端的にお答えください。

枝元政府参考人 お答え申し上げます。

 日・EU・EPAの乳製品の合意内容のうち、お尋ねございました、まずハード系チーズにつきましては、関税撤廃はするものの、十六年目での撤廃という長期の撤廃期間を確保いたしました。あと、脱脂粉乳、バターでございますけれども、国家貿易制度を維持した上で、最近の追加輸入数量を大きく下回る一・五万トン、これは最終年度の六年目ベースの数字でございますが、の関税割り当てを設定し、枠外の二次税率は現行の高水準を維持したところでございます。

田村(貴)委員 関税撤廃なんてとんでもないことですよ。

 既に、日本とスイスの間のEPAそれから日豪EPAでは畜産に大きな影響を与えてきましたけれども、日欧EPAはそれをはるかに上回ります。こういう将来不安があるから廃業が相次いでいるんじゃありませんか。その不安を導いているのはまさに政府の責任だと私は思うわけであります。

 伺います。

 乳製品の輸入がふえていけば、追い詰められた北海道の酪農家は、共販外販売を通じて、都府県に無秩序に飲用向け牛乳を出すようになっていくのではありませんか。その懸念があるのではありませんか。それは生産基盤を変えてしまうことになるんですけれども、そうした可能性を農水省として想定はされていますか。

枝元政府参考人 お答え申し上げます。

 今御指摘のとおり、我が国の酪農は、北海道が乳製品向け中心、都府県が飲用向け中心である生産構造となっております。

 委員御指摘のような御懸念、声はあるかもしれませんけれども、そのような事態となりませんよう、総合的なTPP等関連政策大綱に基づきまして、生産コスト削減等の体質強化対策を進めますとともに、生乳につきましては、加工原料乳生産者補給金制度につきまして、その対象に生クリーム等を追加し、単価を一本化するなど、経営対策を講じているところでございます。

 さらに、日・EU・EPAにより必要となるチーズを中心とする乳製品対策につきましては、チーズ向け生乳の新たな品質向上促進特別対策及び生産性の向上対策等を講ずることで、北海道を中心とした乳製品向けの生乳生産の国際競争力の強化を図ることとしているところでございます。

田村(貴)委員 そんなにうまいこといくんでしょうかね。

 今でも、例えばオランダ産のゴーダチーズは、国産物、日本物と価格は同程度であります。関税ゼロになったら完全に勝ってしまいますよ。これがすごい規模で今からふえていく。年間計画があるから、補給金があるから、まあ対策は打っていきますということになるのでありますけれども、実際の需給というのは計画を超えていくだろう、こういう指摘をする識者の方もおられるわけであります。

 そして、これを可能とするのが畜産経営安定法の改正でありました。農家の方は、大変、将来不安に今陥っています。

 十勝の酪農経営の方が言っておられました。頭数をふやして機械を導入しないと補助が出ない、確かに一頭当たりの乳量はふえた、しかし、牛に無理ばかりさせている、本当は牛は牛らしく飼いたいんだけれどもと。そういう言葉が、私、耳を離れません。

 将来にわたって安心して生産ができるように、自由貿易、経済連携協定とは決別すべきであるというふうに強く申したいと思います。

 そして、所得を安定させ、後継者が育つ政策転換を速やかに行うことを求めるものでありますけれども、今、酪農でも畜産でも、農家の方の将来不安の根底には、外国産がいっぱい入ってきて、自分は国内の供給に頑張っていきたいんだけれども、そういうところで頑張れと言われても、それはわからないし先行き不安だという声はやはり受けとめるべきじゃないかと思うんですけれども、大臣、どうでしょうか。

齋藤国務大臣 TPPもございますし、日・EUもございますし、酪農家あるいは肉用牛の皆さんが不安になるのもよくわかります。

 だけれども、私どもも、関連政策大綱でその一つ一つにしっかり応えられるように対策を講じていきたいと考えておりますし、それから、合意内容それから対策の内容について皆さん方にしっかりと理解していただく、そういう努力も積み重ねていきたいと思っていますし、それでもなお足りない部分があればまた考えるということで、しっかり日本の酪農、畜産の基盤を守っていきたいと思っております。

田村(貴)委員 種子法の廃止に伴う運用規則、これが十一月十五日付の事務次官通知で出てまいりました。このことをしたかったんですけれども、きょうは時間がございません。

 この事務次官通達の中に、これまで実施してきた稲、麦、大豆の種子に関する業務の全てを直ちに取りやめることを求めるものではないと。種子法を廃止して、直ちに取りやめるものではない、これは自治体と関係者に対して惑わすものではありませんか。

 こうした問題は、きょうは時間がないので残念ですけれども、次の通常国会でまた論議をさせていただきたいというふうに思います。

 きょうの質問は以上で終わります。

伊東委員長 次に、串田誠一君。

串田委員 私は、加工原料乳生産者についてお伺いいたします。

 この生産者が生産をする品物というのは、生クリーム、脱脂粉乳やチーズ、バター、いろいろあるわけでございます。この需給が変わるということの原因と最近の傾向についてお伺いいたします。

枝元政府参考人 お答え申し上げます。

 生乳がどの乳製品に仕向けられるかは、乳製品の需要の動向に左右されます。

 例えば、ヨーグルトの需要が伸びれば、原材料でございます脱脂粉乳、脱脂濃縮乳の需要量が増加いたしますし、コンビニエンスストアでスイーツの売れ行きがよくなれば、原材料となる生クリームの需要量が増加するということとなります。

 最近の傾向といたしましては、機能性を特徴としたヨーグルトですとかナチュラルチーズの需要が拡大し、それに伴う原料の増加になっているということだと思っております。

串田委員 いろいろな需給の変化があると思うんですが、二十九年度から生クリームに対しても補給金が対象になったということでございます。これについて、生クリームを追加した目的についてお伺いいたします。

枝元政府参考人 お答え申し上げます。

 加工原料乳生産者補給金につきましては、平成二十九年度から、生クリーム等の液状乳製品を対象に追加するとともに、補給金単価を一本化いたしました。

 この見直しは、乳製品向けの生乳の中で将来的な需要の伸びが期待できる生クリーム等の供給の確保、また、単価を一本化することで、乳製品ごとの需要に応じた柔軟な生乳供給の促進と酪農家の収益性の向上を図ることを目的としたものでございます。

串田委員 先ほどからいろいろな委員からの御質問もありましたように、チーズなども、TPP11だとか日・EU、かなり影響を受けるということもありまして、弾力的な、生産者が選択できるというようなことでは大変好ましいとは思うんですが、流行に左右されて一つのものに偏っていくということになって、各家庭の材料が枯渇するというようなことがないよう、十分配慮をしていただきたいと思います。

 次に、乳牛の後継牛生産に当たって御質問させていただきます。

 当然ながら、ホルスタインの乳牛というのは、雌牛しかできないわけでございます。そういう点では、雌牛の生産が多ければいいわけですが、通常、自然の摂理によりますと、雄と雌が一対一ということになるわけですが、性判別精液を使うと、雌牛の生産が、非常に効率的に生まれるということでございます。

 この性判別精液の現状と課題についてお伺いいたします。

大野政府参考人 お答え申し上げます。

 性判別精液は、乳牛の雌子牛を効率的に生産できますことから、乳用後継牛の確保に有用な技術であると考えているところでございます。

 性判別精液の普及率につきましては、平成二十七年度の八%から、平成二十九年度には約一二%になるなど、増加傾向にございます。

 これまで、性判別精液は、課題といたしまして、一般的な精液と比べて受胎率が低い傾向にございましたが、近年、栄養液を添加いたしました性判別精液が開発されまして、一般的な精液と同等の受胎率まで改善されているところでございます。

 今後は、この新たな手法によります性判別精液の普及拡大を推進して、乳用後継牛の生産拡大に努めてまいりたいと考えているところでございます。

串田委員 余り聞きなれない言葉でありますし、自然界の、変更を加えるということについては少し怖い面もあるのかなとは思いつつ、それが安全であれば、ますますの研究をして、安全な活用をしていただきたいと思っているわけでございます。

 次に、肉用牛の繁殖雌牛についてお伺いいたします。

 これまでも委員の方からいろいろな御質問がありましたが、現在では戸数が減っているという面と、一方では頭数が増加しているという非常に矛盾しているようなお答えもあったわけですが、その理由と今後の見通しについてお伺いしたいと思います。

上月大臣政務官 お答え申し上げます。

 肉用牛の繁殖雌牛飼養農家数は、高齢化の進展等もあって、近年、減少いたしております。これに伴い、飼養頭数も減少してきてまいりましたが、平成二十八年には六年ぶりに増加に転じ、平成二十九年にはさらに増加するなど、回復傾向にございます。

 これは、繁殖雌牛の増頭に必要な畜舎等の整備や、子牛の育成部門を外部化するキャトルステーションの整備に対する支援、あるいは、優良な繁殖雌牛の増頭や導入に対します奨励金の交付など、各種の施策を実施してきた成果があらわれてきたものと考えております。

 また、生産しました子牛を肉用ではなく繁殖用に仕向ける割合も上昇傾向にありますことから、引き続き、繁殖雌牛の頭数は増加していくものと見込まれております。

 農林水産省としましては、このような動きが確固たるものとなりますように、これまでの支援に加えまして、繁殖基盤の強化に資する繁殖肥育一貫経営等を育成する事業を新規に予算要求、要求の段階ではありますが、予算要求もいたしているところでありまして、さまざまな施策を総合的に展開して、肉用牛生産基盤の強化に努めてまいりたいと考えております。

串田委員 時間の関係で、次が最後の質問とさせていただきたいと思います。

 牛の種類には、黒毛和種、混合種、乳用種、大きく分けて三つのカテゴリーがあるわけでございまして、黒毛和牛は最も価格が高いわけでございます。乳用種と比べますと約二・四倍。先ほどから高齢化という話とともに、後継者が少ないということでありまして、後継者としては、私などは、一番単価の高い黒毛和牛を生産した方がより利益率が高いということで、この三つのカテゴリーの中で黒毛和牛の方に勢い動いていくのではないかというような気もするわけでございますが、飼育農家が転換をしないというのはなぜなのか、お聞きしたいと思います。

大野政府参考人 お答え申し上げます。

 肥育牛生産には、品種ごとに、飼養形態あるいは肥育の技術、生産物の販売価格、生産コストが異なる、こういう特徴がございます。

 例えば、黒毛和種は、枝肉卸売価格は高いんですが、子牛の導入価格も高い、また、高い肉質を狙うためには高度な技術が必要となる一方で、乳用種、乳雄の方につきましては、枝肉卸売価格は黒毛和種ほど高くはないですが、多頭数の飼育になじむ、また、肥育期間も短く、子牛は酪農経営の副産物であるために黒毛和種に比べれば安価に入手できる、こういうことから生産コストを低く抑えることが可能である、こういうふうに考えております。

 肥育経営が飼養する品種の違いは、もともと、それぞれの品種の子牛が入手しやすい地域で発生してきた側面もございますけれども、経営体がどの品種を選択して肥育するかということにつきましては、需要の動向も踏まえながら、それぞれの特徴を踏まえて経営体ごとに御判断されているもの、こういうふうに考えているところでございます。

串田委員 先ほど、アニマルウエルフェアというのもありました。ますます転換も難しくなってくるのだと思います。ぜひ、後継者がふえるような、安心した生産ができるような環境整備をしていただきたいと思います。

 冒頭、鹿児島黒牛が日本一になったということで、大変おめでとうございます。正月ぐらいはぜいたくをして食べたいと思います。

 終わりにしたいと思います。ありがとうございました。

     ――――◇―――――

伊東委員長 この際、鈴木憲和君外六名から、自由民主党、立憲民主党・市民クラブ、希望の党・無所属クラブ、公明党、無所属の会、日本共産党及び日本維新の会の七派共同提案による平成三十年度畜産物価格等に関する件について決議すべしとの動議が提出されております。

 提出者から趣旨の説明を聴取いたします。石川香織君。

石川(香)委員 ただいま議題になりました決議案につきまして、提出者を代表いたしまして、その趣旨を御説明いたします。

 案文の朗読により趣旨の説明にかえさせていただきたいと存じます。

    平成三十年度畜産物価格等に関する件(案)

  我が国畜産・酪農経営は、高齢化、後継者不足などにより、飼養戸数、飼養頭数が減少するなど生産基盤の弱体化が懸念されており、畜産クラスターの取組等による生産基盤の強化を通じた経営の安定と競争力の強化、労働負担の軽減が喫緊の課題となっている。また、日EU経済連携協定及び包括的及び先進的な環太平洋パートナーシップ協定(CPTPP)については、畜産物の輸出国との間で厳しい競争を余儀なくされる生産者には、将来への懸念と不安が広がっている。

  よって政府は、こうした情勢を踏まえ、平成三十年度の畜産物価格及び関連対策の決定に当たり、左記事項の実現に万全を期すべきである。

      記

 一 地域農業・地域社会を支える家族経営や法人経営といった多様な畜産・酪農の生産基盤の維持・拡大を図るため、組織的な生産体制の整備、畜産物の付加価値の向上、良質かつ低廉な飼料等の供給等の取組を通じて、魅力ある持続可能な経営が実現できるよう、十分な所得を確保し得る実効性のある施策を実施すること。

 二 政府が公表した本年七月の日EU経済連携協定の大枠合意、本年十一月の包括的及び先進的な環太平洋パートナーシップ協定(CPTPP)の大筋合意についてその詳細を検証し、国民に情報を開示するとともに、適切な定量的影響評価を行うこと。

 三 各般の経営安定・安定供給のための備えを通じて、関税削減等に対する生産者の不安と懸念を払拭し、確実な経営安定を図るとともに、体質強化対策を着実に実施することを通じて、収益力・生産基盤を強化し、我が国の高品質な畜産物の新市場開拓を推し進め、畜産・酪農の国際競争力の強化を図ること。その際、実施した対策の効果を検証し、適宜必要な見直しを行うこと。

   特に、国産チーズ等については、その競争力を高めるとともに需要を確保するための措置を講ずることにより、生産者が将来にわたって安定的に生産に取り組める環境を整備すること。

 四 加工原料乳生産者補給金制度については、平成三十年四月一日からの新制度における年間販売計画の審査等を適正に実施し、生産者間の不公平が生じない公正な補給金制度の確立を図るとともに、生産現場等に対しては新制度の周知徹底を図ることはもとより、生産者等が行う各種事務手続の変更については、現場に混乱が生じないよう、相談、指導を適切に行い、円滑かつ迅速に事務処理が進むよう指導すること。

 五 加工原料乳生産者補給金の単価、総交付対象数量については、酪農家の経営努力が報われ、営農意欲が喚起されるよう、再生産の確保を図ることを旨として適切に決定すること。また、集送乳調整金の単価の決定については、条件不利地域における集送乳が、安定的かつ確実に行われるよう十分留意すること。

 六 酪農家の労働負担の軽減のため、搾乳ロボット、ミルキングパーラー、哺乳ロボットをはじめとする省力化等に資する機械・装置の導入をはじめ、乳用後継牛預託施設、集合搾乳施設、家畜排せつ物処理施設の整備等を図ること。また、酪農ヘルパーの人材確保・育成、利用拡大に対して支援を行うこと。

 七 牛肉・豚肉の安定価格及び肉用子牛の保証基準価格等については、需給動向、価格の推移、子牛価格の高騰等を十分勘案し、畜産農家の経営安定に資するよう、再生産の確保を図ることを旨として適切に決定すること。

 八 肉用牛肥育経営安定特別対策事業(牛マルキン)・養豚経営安定対策事業(豚マルキン)の補填率の引上げ、豚マルキンの肉用牛並みの国庫負担水準引上げ及び肉用子牛の保証基準価格の算定方式の見直しについては、畜産農家の経営状況等を踏まえ検討を加え、その結果に基づく所要の措置を早期に実施すること。

 九 畜産・酪農の生産基盤の強化、とりわけ肉用子牛の繁殖基盤の強化と乳用後継牛の確保を図るため、地域の関係者が連携・協力し、地域全体で畜産の収益性を向上させる畜産クラスター等について地域の実情に合わせた多様な展開を強力に推進すること。また、高能力な家畜を生産するための家畜改良や、牛の個体識別情報活用の効率化・高度化の推進、肉用牛の繁殖肥育一貫経営や地域内一貫生産への支援を更に強化すること。

   また、生産基盤の脆弱化が懸念される都府県における酪農については、需要に応じた生乳生産が確保されるよう地域性を踏まえた生産基盤の強化措置等を講ずること。

 十 配合飼料価格安定制度については、畜産・酪農経営の安定に資するよう、同制度に係る補填財源の確保及び借入金の計画的な返済を促すことにより、制度の安定的な運営を図ること。

 十一 輸入飼料への過度な依存から脱却し、国産飼料生産基盤に立脚した力強い畜産・酪農経営の確立を図るため、飼料用米・稲発酵粗飼料を活用した耕畜連携、草地改良の推進、TMRセンター・コントラクターの機能高度化、放牧の推進、子実用とうもろこし等の生産・利用の推進、エコフィードの利用の拡大等へ財源を十分に確保し、支援を更に強化すること。

 十二 国産畜産物の輸出に当たっては、オールジャパンでの戦略的で一貫性のあるプロモーションの企画・実行等による海外需要の創出に取り組むとともに、輸出先国・地域の衛生条件を満たす食肉処理施設の整備促進や畜産GAPの取得の推進、輸出先国・地域の多角化のために動物検疫協議等を戦略的に実施すること。特に、原発事故等を要因とする各国・地域による輸入規制については、その撤廃・緩和を強く申し入れること。

 十三 原発事故に伴う放射性物質に汚染された稲わら、牧草及び牛ふん堆肥等の処理を強力に推進するとともに、牧草地の除染対策、原発事故に係る風評被害対策に徹底して取り組むこと。

 十四 畜産経営に大きな被害を及ぼす口蹄疫や高病原性鳥インフルエンザ等の家畜の伝染性疾病等については、飼養衛生管理基準の遵守に向けた指導、迅速かつ正確な診断体制の整備、野生動物における伝染性疾病の監視、水際での防疫措置等による発生予防・まん延防止対策を徹底すること。また、獣医師の職域・地域偏在を解消するため、産業動物獣医師の処遇改善方策の導入支援や臨床研修の充実等により、その確保及び資質の向上を図るとともに、家畜の伝染性疾病等に係る風評被害防止等の観点から、国民に対して正確な情報を迅速に伝えること。

  右決議する。

以上です。

 何とぞ委員各位の御賛同を賜りますようお願い申し上げます。

伊東委員長 これにて趣旨の説明は終わりました。

 採決いたします。

 本動議に賛成の諸君の起立を求めます。

    〔賛成者起立〕

伊東委員長 起立総員。よって、本件は本委員会の決議とするに決しました。

 この際、ただいまの決議につきまして農林水産大臣から発言を求められておりますので、これを許します。農林水産大臣齋藤健君。

齋藤国務大臣 ただいまの御決議につきましては、その趣旨を踏まえ、適切に対処してまいりたいと存じます。

伊東委員長 お諮りいたします。

 ただいまの決議の議長に対する報告及び関係当局への参考送付の手続につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

伊東委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

 本日は、これにて散会いたします。

    午後一時二十九分散会


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