衆議院

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第2号 令和元年10月24日(木曜日)

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令和元年十月二十四日(木曜日)

    午前九時開議

 出席委員

   委員長 吉野 正芳君

   理事 池田 道孝君 理事 齋藤  健君

   理事 武部  新君 理事 谷  公一君

   理事 細田 健一君 理事 石川 香織君

   理事 近藤 和也君 理事 濱村  進君

      泉田 裕彦君    稲田 朋美君

      今枝宗一郎君    上杉謙太郎君

      小田原 潔君    金子 俊平君

      神谷  昇君    神山 佐市君

      木村 次郎君    小寺 裕雄君

      坂本 哲志君    笹川 博義君

      新谷 正義君    高木  啓君

      永岡 桂子君    西田 昭二君

      野中  厚君    福山  守君

      古川  康君    本田 太郎君

      宮腰 光寛君    宮路 拓馬君

      務台 俊介君    簗  和生君

      青山 大人君    大串 博志君

      神谷  裕君    亀井亜紀子君

      佐々木隆博君    佐藤 公治君

      長谷川嘉一君    広田  一君

      緑川 貴士君    佐藤 英道君

      田村 貴昭君    森  夏枝君

    …………………………………

   農林水産大臣       江藤  拓君

   内閣府副大臣       宮下 一郎君

   農林水産副大臣      伊東 良孝君

   外務大臣政務官      中山 展宏君

   農林水産大臣政務官    河野 義博君

   政府参考人

   (内閣官房内閣審議官)  大角  亨君

   政府参考人

   (外務省大臣官房参事官) 曽根 健孝君

   政府参考人

   (外務省国際法局長)   岡野 正敬君

   政府参考人

   (農林水産省大臣官房長) 枝元 真徹君

   政府参考人

   (農林水産省大臣官房総括審議官)         浅川 京子君

   政府参考人

   (農林水産省大臣官房総括審議官)         光吉  一君

   政府参考人

   (農林水産省大臣官房危機管理・政策立案総括審議官)            岩濱 洋海君

   政府参考人

   (農林水産省大臣官房統計部長)          大杉 武博君

   政府参考人

   (農林水産省消費・安全局長)           新井ゆたか君

   政府参考人

   (農林水産省食料産業局長)            塩川 白良君

   政府参考人

   (農林水産省生産局長)  水田 正和君

   政府参考人

   (農林水産省経営局長)  横山  紳君

   政府参考人

   (農林水産省農村振興局長)            牧元 幸司君

   政府参考人

   (農林水産省政策統括官) 天羽  隆君

   政府参考人

   (農林水産技術会議事務局長)           菱沼 義久君

   政府参考人

   (林野庁長官)      本郷 浩二君

   政府参考人

   (水産庁長官)      山口 英彰君

   政府参考人

   (資源エネルギー庁省エネルギー・新エネルギー部長)            松山 泰浩君

   政府参考人

   (国土交通省水管理・国土保全局次長)       塩見 英之君

   政府参考人

   (海上保安庁総務部長)  宮澤 康一君

   政府参考人

   (環境省大臣官房審議官) 正林 督章君

   政府参考人

   (環境省大臣官房審議官) 松澤  裕君

   農林水産委員会専門員   梶原  武君

    ―――――――――――――

委員の異動

十月二十四日

 辞任         補欠選任

  稲田 朋美君     高木  啓君

  今枝宗一郎君     小田原 潔君

  木村 次郎君     本田 太郎君

  福山  守君     務台 俊介君

  石田 祝稔君     佐藤 英道君

同日

 辞任         補欠選任

  小田原 潔君     新谷 正義君

  高木  啓君     稲田 朋美君

  本田 太郎君     木村 次郎君

  務台 俊介君     神山 佐市君

  佐藤 英道君     石田 祝稔君

同日

 辞任         補欠選任

  神山 佐市君     福山  守君

  新谷 正義君     今枝宗一郎君

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 政府参考人出頭要求に関する件

 農林水産関係の基本施策に関する件


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     ――――◇―――――

吉野委員長 これより会議を開きます。

 農林水産関係の基本施策に関する件について調査を進めます。

 この際、お諮りいたします。

 本件調査のため、本日、政府参考人として農林水産省大臣官房長枝元真徹君、大臣官房総括審議官浅川京子君、大臣官房総括審議官光吉一君、大臣官房危機管理・政策立案総括審議官岩濱洋海君、大臣官房統計部長大杉武博君、消費・安全局長新井ゆたか君、食料産業局長塩川白良君、生産局長水田正和君、経営局長横山紳君、農村振興局長牧元幸司君、政策統括官天羽隆君、農林水産技術会議事務局長菱沼義久君、林野庁長官本郷浩二君、水産庁長官山口英彰君、内閣官房内閣審議官大角亨君、外務省大臣官房参事官曽根健孝君、国際法局長岡野正敬君、資源エネルギー庁省エネルギー・新エネルギー部長松山泰浩君、国土交通省水管理・国土保全局次長塩見英之君、海上保安庁総務部長宮澤康一君、環境省大臣官房審議官正林督章君及び大臣官房審議官松澤裕君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

吉野委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

吉野委員長 質疑の申出がありますので、順次これを許します。務台俊介君。

務台委員 ありがとうございます。自民党の務台俊介です。

 台風十九号の被災地の長野を代表して、質問の機会を与えていただきまして、まことにありがとうございます。

 まず、十九号災害で犠牲になられた皆様に心から御冥福をお祈りします。また、被災された皆様にも心からお見舞いを申し上げたいと思います。

 東日本を広く被災地とした今回の台風災害は、いまだに被害の全容が把握できない状況でございます。

 台風が首都圏を抜けた十三日の早朝、私は、NHKテレビで、千曲川が数カ所で決壊し濁流が堤内地に勢いよく流れ込んでいる情景を目にし、思わず絶句しました。特に、私の選挙区の豊野地区へも、千曲川堤防が決壊した穂保地区の決壊箇所からの浸水がひどい状況を確認し、直ちに防災服に着がえ、現地に向かいました。

 長野市豊野から見た千曲川決壊の影響は広範囲で、低地はひとしく水没し、リンゴ畑も無残に水没しておりました。地元の青木敏明市議会議員に御同行いただき、被災状況をしっかりと目に焼き付けました。そして、その日のうちに武田防災大臣が長野市に入られました。

 私も、その後、地元被災地と永田町を往復しながら、地元の現状を逐次政府に伝える役割を果たさせていただいたつもりでございます。

 二十日の日曜日には安倍総理が長野県の被災地に入られ、その場で、農家の皆さんに頑張っていこうという気持ちになるように後押ししたいと励まされました。翌二十一日には江藤農水大臣も、農業被害の実態把握に、長野市にお入りいただきました。その際には、地元のリンゴ農家の五名の方々が今抱えている不安の気持ちの心情を吐露する話、これは私の心にも突き刺さりました。

 本日の委員会では、地元の農業被害の実態を踏まえ、質問を用意させていただきました。

 二十一日に江藤大臣が長野市の被災地にお越しいただき、被災農家に真摯に対応されたことにまず心から感謝申し上げたいと思いますが、堤防決壊地域を中心に深刻な被害を目の当たりにされた大臣の率直な思いをお伺いしたいと思います。

江藤国務大臣 まずは、務台委員におかれましては、私が現場に入りましたときにお出迎えまでいただき、詳細な御説明等いただきまして、ありがとうございます。それに至るまでも、たびたび御連絡をいただいて、現場の状況をお知らせいただいたことにも重ねてお礼を言いたいと思います。

 率直な感想としましては、毎日、もちろん農政局からテレビ電話をつないで報告を受けておりましたし、リアルタイムで現場の状況は映像等でも見てはおりました。おりましたが、やはり、例えばリンゴ園に行って、指でこすってもなかなか簡単に落ちないほど泥がこびりついている状況。あれではとても、水をかけたぐらいでは、もう一度光合成ができるように樹体を回復させることは多分難しいと思います。そして、堆積した大量の土砂。そして、自分の御自宅等の片づけでまだ農地に全く入ることができない、中には、まだ農地を自分は見ていないんだという方もおられました。片づけているときはいいけれども、夫婦で二人きりになると毎晩泣いているというふうにおっしゃっている奥様もいらっしゃいました。

 よく私たち政治家は、被災者の方々の気持ちに寄り添ってという言葉を使いますけれども、今こそ、農林水産省がこれまで蓄積してきた知見であり経験であり、過去の災害の、実績とは言いませんが、そういうものも総動員をして、そしてまた総理のお言葉にも応えるように、それ以上の後押しができるような施策を真剣に考えねばならないという使命感を強く感じたところでございます。

務台委員 ありがとうございました。

 私も大臣に同行させていただきましたが、大臣がリンゴの葉っぱ、汚れている葉っぱに手を差しかけ、そしてそれを自分の手でこすって状況を調べている、本当に現地に寄り添った対応をしていただいたことに感動させていただきました。

 ところで、千曲川の長野市域には、アップルラインと言われるリンゴ畑が連なる地域が堤防の内外に広がっております。百年以上にわたっての苦心の上、形成してきた一大産地でございます。その産地が、収穫を前に、水につかりました。丹精込めてつくり上げたリンゴが一瞬の災害で台なしにされた農家の無念は想像にかたくありません。

 しかし、果実の被害はもとより、リンゴの木、樹体にも大きな被害が及んでおります。泥水につかったリンゴは、表向き、損傷がないように見えますが、実は芯が腐敗していく、そんな現状があるようでございます。青森の津島衆議院議員の話でも、今回も、リンゴの木は時間を置いて病気が発生し、同様の状態になる可能性が強いということでございました。

 この点についての、樹体の被害についての農水省の認識をお伺いしたいと思います。

新井政府参考人 お答え申し上げます。

 リンゴの園地が冠水被害を受けた際には、フィトフトラ属菌という菌が果実に侵入することによりますリンゴ疫病ということで、果実の腐乱が多く発生するというふうに承知しております。

 過去、長野県内におきましても、平成十六年、十八年、河川の氾濫におきまして、このような病気が広がったというふうに聞いているところでございます。

 加えて、果樹、木が冠水した場合におきましては、枝や幹に傷が生じるということで、リンゴ腐乱病といった病気に感染するリスクが高まるということでございます。

 このようなものを防止するために、まず殺菌剤を散布して感染を予防する、それから、枝が折れた場合に、傷口を滑らかに切り、塗布剤による傷口の保護を行うといった指導をしているところでございます。

 いずれにいたしましても、被害状況を踏まえながら、関係県と連携して効果的な防除を推進してまいりたいと考えております。

務台委員 ありがとうございます。

 被災農家に対しては、現行でもさまざまな支援策が用意されております。これを迅速に発動していただきたい、そのことを希望しておりますが、他方で、既存の支援策というのは、かかった経費に対する支援でございます。農家の直接の利潤をもたらすものではないというふうに承知しております。

 改植をしても通常七年以上は収穫がない、そういうことを考えると、年配のリンゴ農家の方は離農を考えてしまうことになると思います。若手はその間の負担に耐えかね、事業開始を場合によっては諦めかねない。リンゴ農家の中には蓄えがある農家もありますが、そういう農家ばかりではございません。地元の皆様の話では、この地域では、果樹園、後継者が結構確保できておりますが、その意欲が途切れてしまうことに対しての懸念が強い。この間の収入確保の手だてを講じつつ、果樹農家継続を促す仕組みが考えられないかと願うばかりでございますが、政府に、産地形成を継続させるような思い切った対策を検討してほしい、このように考えております。

 ぜひ、専門家の知恵を集めて、大胆な対応をお願いしたいと考えておりますが、なかなか難しい課題があるとは思いますが、現時点で方針だけでも伺わせていただければありがたいと思います。

江藤国務大臣 果樹の場合は、一度改植なり、しなければならないということになると、当然未収益期間が発生するということでありまして、リンゴでも、早く結実する、実がなるような樹体を導入したとしても、早くて三年かかるというところが一番の問題だろうと思います。

 今の現状の施策においては、今委員が御指摘いただきましたように、かかり、経費を見る、消毒とか施肥とか、そういったものを見るという縛りでありますから、四年間分一括で二十二万円というのでありますから、その逸失利益に見合う金額では当然ない。現場での意見交換会でも、家も二・五メートル冠水した、そして二町歩のリンゴ園も全部冠水した、収入の見通しが全く立たない、お先が真っ暗だというお話を伺いました。

 ですから、今回、十五号がありますから、十五号の対応との見合いも考えなきゃいけません。しかし、そちらに遡及できるかどうかも含めて考えなければなりませんが、この未収益期間の四年間一括の二十二万、これで果たして十分なのかどうか。官邸での対策本部でも議題とさせていただいて、これについて一歩踏み込みたいという農林水産省としての方針はその場で話させていただいて、事務的にも、財務との交渉においても、今鋭意努力をしたいというところでございます。確定的なことを言えないことは申しわけないと思います。

務台委員 冒頭御紹介申し上げたように、長野県庁で総理は、農家の皆様に頑張っていこうという気持ちになるように後押ししたいとおっしゃっております。そして、江藤大臣も長野市で、被災農家の皆様に、離農者が出ないようにしたい、そして、意欲と技能を持った人が地元にいることが大事なんだという力強いメッセージを発せられました。ぜひその言葉をそのまま体現するような対策、施策を期待したいというふうに思います。

 今回の災害の特徴は、農産物への被害にとどまりません。生産要素への打撃も大きいというふうに承知しております。農業用資機材も浸水により大きな被害を受けました。また、集出荷施設、そして農業用排水機場も甚大な被害を受けております。こうした被害についての支援策、これは地元から強い要請がありますので、この点についてのコミットメントもお願いしたいと思います。

横山政府参考人 御説明申し上げます。

 農作物以外の被害についての支援策というお尋ねでございます。

 今般の台風第十九号につきましては、台風第十五号の総合的な支援策、これを基本にしっかりした支援策を講じていくということで検討を進めているところでございます。

 台風第十五号の総合的な支援策の中におきましては、まず、農業用機械、これを再取得する場合につきましては、強い農業・担い手づくり総合支援交付金の被災農業者支援型、これを発動いたします。補助率は十分の三ということで支援をいたしております。

 また、集出荷施設への支援につきましては、強い農業・担い手づくり総合支援交付金のうち、被災産地施設支援対策がございます。損壊施設の撤去や再建、修繕等に要する経費を、補助率二分の一ということで支援をしておるところでございます。

 また、被災した農業用排水機場でございますが、災害復旧事業によって復旧ができ、激甚災害に指定されますと、市町村における農家一戸当たりの復旧額に応じまして補助率がかさ上げされ、近年の実績では補助率九八%ということになってございます。

務台委員 ありがとうございます。

 若手リンゴ農家の中には、矮化リンゴの導入で補助金をもらいつつ借金をしたところ、今回被災した方がいらっしゃいます。その人が再度矮化リンゴの改植を行うと、生産能力は現状ないし向上しないにもかかわらず、過去の債務と新規の債務の二重債務を行うことになります。本人の責任ではない今回の事態、これに対しての緩和策というのが考えられないか、三・一一のときの対策としては前例があると思いますが、今回はどうなのか、ここら辺のお考えを伺いたいと思います。

江藤国務大臣 委員が御指摘の三・一一の件につきましては、東日本大震災事業者再生支援機構による債権の買取りのことをおっしゃっているんだと思います。これについては、今般の十九号で同様の措置を講ずることができるかどうかは、これは政府全体で検討されるべき課題であろうというふうに、私は今のところは考えております。

 そして今、現行で何が可能かということにつきましては、まずは償還猶予の要請を農林水産省としては各金融機関にはさせていただく予定でございます。

 それから、借りかえをしていただくことが大変大事になりますので、日本政策金融公庫は〇・〇六%で借りかえができますから、普通に借りていると一から三ぐらいで大体、農家の方々は借りていらっしゃると思いますので、それに借りかえをすると大分、負債については、〇・〇六ですから、かなり軽くなるのではないかと思います。

 あとは、農林漁業セーフティネット資金の災害関連資金、これは貸付け当初の五年間が実質無利子、これも使えますし、近代化資金、これも当初の五年間免除というのがありますから、いろいろなメニューをぜひ御検討いただいて対応していただければというふうに思います。

務台委員 ぜひ、若手農業者が農業の継続意思を断念することがないような、踏み込んだ施策をお願いしたいと思います。

 地元のJAの幹部から伺った話ですが、被害農家の立場はさまざまな多様性があります。リンゴが木になったまま被災した人、収穫して自宅に保管している人、選果場に持ち込んだ人、農済に入っている人、いない人、機材の損失の程度も違います。こういう農家の立場に個々に提供できる補助金のリストがすぐ出てくるようにしてほしいという要望がございました。

 今、農水省のホームページには補助金の逆引きシステムがあり、これは非常に便利だと思いますが、このシステムをプッシュ型でその被災者の立場に応じて提供する、AIというシステムを持ち出すまでもなく、個々人の状態に応じた最適な補助メニューの提示というのはあり得る話ではないかというふうに思います。

 今、JAの長野中央会では、どのような助成制度があるのか、災害の後みんなで調べているという、そんな状況でございまして、ぜひこのシステムをおつくりいただけないか。こういう枠組みが被災者と対策のマトリックス状態で整理されると、どの制度のどこに空白があるのか、その空白が適正な空白なのか否か、こういうことも判明してくるのではないかというふうに思います。こうした要望には工夫次第で応えられると考えられますが、対応をお願いしたいと思います。

岩濱政府参考人 委員にお答えします。

 農林水産省では、農業者向けの支援施策について、対象者の属性、品目、取り組みたい内容などの条件から検索できる、委員おっしゃった逆引き事典という検索システムがウエブ上で公開されております。

 災害に関する支援対策については、この逆引き事典の活用だけでなくて、被災農家のニーズに応じて活用できる、台風や大雨等に被災された農林漁業者の皆様へという資料を、新たに台風十五号の被害から作成しております。これをウエブ上に掲載するとともに、被災地域において本省及び地方農政局等による説明会をきめ細かく開催し、支援対策の周知に今努めているところでございます。

 今後も、農業者の疑問等に的確に答えられるよう、しっかりと対応してまいりたいというふうに考えております。

務台委員 ぜひシステムの深化を図っていただきたい、このように思います。

 千曲川の堤外地、つまり河川敷のリンゴ畑は、土地自体が流されてしまったところがございます。地元の方の中には、この際、河川敷のリンゴ畑を区画整理し作付をしやすいようにすべきではないか、そうすることで若手も就農意欲が増すという意見もございます。

 防災の世界では、ビルド・バック・ベターという考え方が今主流になっておりますが、これを農業でも実現したいということでございます。こういう見解に対して、政府のお考えを伺いたいと思います。

牧元政府参考人 災害復旧に当たりまして、区画整理ができないかという御質問でございます。

 災害復旧事業につきましては原形復旧が原則とされているところではございますけれども、御指摘いただきましたような、土地が流されてしまったような場合、農地の流亡が著しくて原形復旧が困難な場合につきましては、復旧とあわせまして区画整理をすることができるところでございます。

 また、土地が流亡していないような場合でございましても、農振農用地区域内の農地でございますれば、災害復旧事業と他の土地改良事業を併用することで区画整理をすることが可能ということでございます。

 一方、区画整理を伴う場合には、権利関係の調整などに時間を要するということが予想されるところでございます。

 どのような復旧工法が適当かということにつきましては、県、市町村と、被災箇所ごとに十分調整してまいりたいと考えているところでございます。

務台委員 ぜひ、農業の分野でもビルド・バック・ベターが普通の考えになるようにお願いしたいと思います。

 被災リンゴ農家を回っていて、指摘を受けたことがございます。それは、この災害で長野のリンゴのブランド価値を下げたくないという声でございます。

 過日のNHKの報道で、あるリンゴ農家が、泥水につかったリンゴを洗い、出荷したいと言っている映像が報道されました。もったいないという気持ちのリンゴ農家、そして被災地のリンゴを買ってあげたいという善意の声も寄せられたようでございます。実は、この映像に対しては、ほかのリンゴ農家や地元のJAは真っ青になったということでございます。

 それは、先ほども御説明ありましたように、洪水被害に遭ったリンゴは、細菌が入り込み、芯が腐ってくるということで、商品としては出荷しないという方針が地元にはある。それに反するような映像が流れると、千曲川のリンゴが、毀損リンゴにもかかわらず平気で流通するといった誤ったメッセージを伝えることになりかねないという懸念がございます。早速NHKに、インターネットに残っている記事を取り消すように要請したと伺っております。善意あるいは美談が、逆に風評被害の原因になるということでございます。

 リンゴ農家では、水につかったリンゴだけでなく、樹体自体が水につかった場合には果実が水につからなかった場合でも廃棄すると申し合わせている、そんなことも伺っております。言ってみれば、ルール違反の行為を善意で取り上げ、それが地域ブランドの毀損につながる報道となったということでございます。

 地元のリンゴ農家の多くは、産地のブランド価値を保つための品質には神経を使っており、その旨改めて報道していただきたいと願うところでございますが、農水省の受けとめ方を伺いたいと思います。

枝元政府参考人 お答え申し上げます。

 被災しまして泥をかぶったリンゴの取扱いにつきまして、当初、今先生からございましたとおり、被害を受けたリンゴを購入したいという申出に応じてリンゴを洗浄している、そのような様子が報道をされました。その後、長野県が水をかぶったリンゴを出荷しないように生産者に呼びかけており、JAも水をかぶったリンゴを取り扱うことはないし流通することはない、こういう旨の報道が改めて全国ニュースでされたというふうに承知をしてございます。

 水や泥をかぶりましたリンゴはカビ毒等が発生するおそれがあり、生食用としても加工用としても利用できませんので、農林水産省といたしましても、的確な情報提供に努めてまいりたいと存じます。

務台委員 ぜひよろしくお願いしたいと思います。

 廃棄するリンゴについては埋設を想定しているというふうに聞いております。しかし、廃棄リンゴも、本来であれば、再生可能エネルギーの観点からは、バイオガスの原料となり得るというふうに思います。処理の経費を度外視すれば、北海道にバイオガスプラントがあるというふうに伺っておりますが、本来であれば、こういう農業用の原料もバイオマス原料として地元で使いこなす、そういうことがあり得るのではないかというふうに思います。

 原料の収集などがネックだというふうに思いますが、平時も被災時もこういうシステムを使っていく、これもその地域の活力を高めるための方策だと思いますが、この点についての政府の考え方を伺いたいと思います。

塩川政府参考人 お答え申し上げます。

 農業廃棄物を利用して電力や熱を発生させるエネルギー利用は、廃棄物処理費用の軽減に有効でありまして、また、農業経営の体質強化、それから農村の活性化のみならず環境負荷の軽減にもつながる大変重要な取組であるというふうに考えております。

 農林水産省では、農業廃棄物を含むバイオマスの収集から製造、利用まで、経済性が確保された一貫システムの構築に取り組む自治体をバイオマス産業都市として選定をいたしまして、バイオマス利活用にモデル的に取り組む自治体の施設整備や調査設計を支援しているところでございます。

 また、令和二年度予算要求におきまして、家畜ふん尿を活用した災害にも強い地産地消のバイオマスガスプラント整備への取組に対する支援も新たに要求しているところでございます。

 今後とも、農業廃棄物を活用する取組を更に拡大してまいりたいと考えております。

松山政府参考人 エネルギー庁の観点からお答え申し上げます。

 地域で発生します農産物とか食品の残渣等を活用いたしましてエネルギーをつくり出すバイオマス発電というものは、エネルギー基本計画の中におきましても、安定的に発電することが可能となり得る、地域活性化にも資する、そういうエネルギー源として重要なものとして位置づけておりまして、経済産業省、資源エネルギー庁としても、しっかりと導入を促進していきたいと考えてございます。

 現在、FIT制度の中でメタン発酵バイオガスという区分を設けまして、手厚い支援措置を、廃棄物をメタンガス化して行う発電に対して行っておりますとともに、農林水産省と連携いたしまして、原料の効率的な収集体制の構築というものに対するモデル事業を進めてございます。

 また、現在、再エネの主力電源化という議論の中におきましては、例えば災害時も含めて地域活用できるような電源としていくことが重要だという議論を進めてございます。

 今後も、地域の暮らしを支えることが可能となるような形で、バイオマス発電の導入促進をしっかりと検討を進めていきたいと考えてございます。

務台委員 ありがとうございました。

 今、TPPやFTA締結で、果樹を含めた農産物の競争条件が非常に厳しくなっております。こういう中で、産地が大きなダメージをこうむるというのは非常に残念と言わざるを得ません。こうした外部環境の変化の中での今回の農業災害支援だという認識で、政府には思い切った対策を講じていってほしい。

 以上申し上げて、私の質問を終わらせていただきます。ありがとうございました。

吉野委員長 次に、上杉謙太郎君。

上杉委員 おはようございます。自民党の上杉謙太郎でございます。

 私も、吉野先生と同じく福島県でありまして、相当な被害がございました。そういった中で、この質問の機会をいただきまして、委員長そして理事始め皆様に感謝を申し上げたいというふうに思います。

 台風の日は、地元でしっかりと台風を見守っていました。河川事務所長さんと朝五時まで携帯でやりとりをして、河川の氾濫等々がないかですとか、あとは、地元の役所で、また消防団の皆さんといろいろと連携をして対応させてもらいました。

 翌朝から、各自治体、被災地を回って、本当に驚くような被災状況でありました。報道で、テレビで出ているような、例えば福島県であれば、主要な河川でいうと阿武隈川、それの氾濫等々流れておりましたけれども、中山間地ですとかいろいろなところに行くと、さまざまな細かいところを含めて、土砂崩れも、用水路に土砂がたまって通れなくなって、田んぼの方に水が流れていって田んぼに土砂と、そして、今議論になっている稲わらの問題等々ありました。

 いろいろな点で、さまざまにまだまだ全容がつかめない状況でありますが、そういった中で大臣始め農水省の皆さんが一生懸命やってくださっていること、本当に感謝を申し上げたいというふうに思います。私の地元にも、農水省の方、また環境省の方、国交省の方、現地に入ってくださって、自治体の方、JAの皆さんと一生懸命やってくださっております。本当に感謝を申し上げます。

 そういった中で、特に、米どころの福島県でありますから、土地改良関係、そして米の生産者に関することを特に中心にお話をさせてもらえたらというふうに思います。

 非常に甚大な被害を及ぼした台風十九号であります。本当に福島県もたくさんの方が亡くなられました。本当に、お悔やみを申し上げたいというふうに思いますし、被災された皆様にお見舞いを申し上げたいというふうに思います。

 そこで、大臣、福島県にお入りいただいてありがとうございました。大臣のきのうの所信の方でも、万全を尽くすというお話がありましたが、この台風十九号に対するお気持ちとそれに向かう御決意をお聞かせいただけますでしょうか。

江藤国務大臣 正直な気持ちを申し上げると、人間の無力さというか、そういうものをやはりこういう被災現場に行くと感じます。

 そして、我々は政治家ですから、公助をもたらす立場にあるわけですから、できるだけのことをしたい、もう何でもしてさしあげたいという気持ちになります。しかし、それには、やはり財政民主主義上の倫理観であったり、いろいろな縛りが我々はあるじゃないですか。しかし、それがある中でも、やはり生産基盤を何としても回復して、なぜかというと、我々は新規就農とかいろいろなことをこれまでやってきましたけれども、被災された方々は、今、ついこの間まで現場で実際に営農されて、頑張って、技術も知見も経験も持っている方々じゃないですか。そういう方々がもう一度営農を再開されるということは、日本全体の農業にとって非常に意義の、意味の深いことであって、こういう言葉を使っていいかどうかはわかりませんが、非常に効率も私はいいと思うんですよ。

 ですから、できる限りのことをやらせていただきたい。ですから、財務とも思い切った交渉をしていきたい。ですから、省議メンバーを集めて、とにかくやれること、今までの十五号までの知見を全て集めた上で、その上に何ができるのか、ぜひこの際検討しようじゃないかということを、今、毎日進めさせていただいております。

上杉委員 大臣ありがとうございます。

 ぜひさまざまに検討をいただきまして、離農される方が出ないように、そしてまた、日本の農業、これからの未来は、日本を支えるのは農業だというふうに思っております。そしてまた、農業、例えば福島県であれば、お米もありますしキュウリもあります、加工品であれば日本酒もあります、いろいろないいものを世界に発信していく、そういったことを含めて日本の農業の基盤をどんどんどんどん強化していく、これが必要だというふうに思っております。災害の対応とあわせてお願いをしていただければというふうに思います。

 また、今の海外への輸出に関しては、ちょっと順番が逆になりますが、後ほど質問をさせていただきます。

 今回の台風十九号が、直近の、幾つも台風がありましたけれども、それと大きな違いは、時期だということであります。台風の規模ですとか災害の大きさ、そういう視点ではなくて、季節の、稲刈りのタイミングだったということであります。だからこそ稲わらの問題が出ているわけでありますし、今であればその稲わらのごみをどうするんだということがありますけれども、それだけではなくて、五月、ゴールデンウイーク前後に、今度、来年の田植があるわけであります。そうすると、今いろいろなものが壊れているわけであります。ため池もそうでありますし、水管橋とかもそうです。

 ちょうどこの写真を、資料を配らせていただきましたが、これは私、翌日からずっと地元を回らせてもらっていましたので、そこでたくさん写真を撮った中の幾つかでありますが、お手元に配付させていただいた資料の写真の一番と二番は水管橋であります。写真一は、この水管橋、壊れてしまったわけでありますね、流れてしまった。ちょっと遠くから写したのが写真の二であります。

 そうすると、これを直さないと、この水を使って田植をする農家の皆さんは来年田植ができないわけであります。

 また、例えばいろいろな水利施設がありますけれども、頭首工とかもそうでありますし、稲の生産者の方にとっては、来年のゴールデンウイーク前後までに、逆に、復旧作業をするのであれば、通水試験も必要でしょうから、なるべく四月ぐらいまでには復旧していないと、来年田植ができませんよね。

 そういう意味では、確かに今、道路の改修また河川の方の改修で地元の建設業者さんも大変かとは思うんですけれども、農水省さんがぜひ前面に立っていただいてしっかりと、例えばこういう水管橋を補修する、また、ため池を直す、頭首工を直す、そういうふうに土地改良施設を直さないと、せっかくもう一度来年も頑張ろうともし思っていたのに、物理的に来年田植ができないということはあってはならないというふうに思うわけであります。

 災害復旧事業で既に着手していただいている部分もありますし、今、調査に入って、そして査定をして、順次進んでいるものもあります。また、査定前着工制度を活用してもう既に着手してくださっているものもあると思いますが、もっともっと早く、急いでやる必要があるというふうに思いますが、お考えを、御対応をお聞かせいただければと思います。

伊東副大臣 農家の営農意欲を失わせないためには、ただいま委員お話しのとおり、被災した農地、農業用施設、これらを早急に復旧することが極めて重要である、このように私も考えております。

 私も二十一日、福島、宮城、各地域、視察をさせていただき、また、被災された農家の皆さんの声を聞いてきたところでありまして、皆さんひとしく来年の営農再開ということを切望されていたところであります。

 早期に復旧が必要な箇所の、ただいまお話しのとおり、査定前着工の活用や、災害査定における机上査定の範囲の拡大、これは、現地抜きに図面上で査定区域を、範囲を拡大させる、あるいはその図面の簡素化によりまして、災害復旧事業が迅速に進むよう努めてまいりたいと考えております。

 災害復旧事業は、各市町村における農家一戸当たりの事業費に応じて補助率がかさ上げされ、激甚災害の場合には、近年の実績では農地で九六%、農業用施設九八%となることから、これらを活用して農家の負担軽減を図ってまいりたいと考えております。

 精いっぱい頑張ります。

上杉委員 ありがとうございます。ぜひお願いをしたいというふうに思います。

 加えて、もう一点ございますが、同じ土地改良施設で、国営パイロット事業ですとかそういったもろもろの施設について、九八%でも二%残りがあるわけでありまして、受益者、生産者の方に負担がないようにぜひお願いをしたいというふうに思うんですけれども、お考えはいかがでございましょうか。

牧元政府参考人 お答え申し上げます。

 災害復旧事業の補助率でございますが、先ほど副大臣から御答弁ございましたように、激甚災ということになりますれば、補助率がかさ上げされまして、農地九六%、農業用施設九八%となるわけでございます。

 じゃ、残りの負担はどうなのかという御指摘でございますけれども、残りにつきまして、仮に地方公共団体が御負担をいただけるということであれば、これは交付税措置等も講じられるところでございますので、そのあたりも十分周知をさせていただきながら、できるだけ農家の負担がないような形で事業を進めていただければというふうに思っております。

上杉委員 ありがとうございます。

 自治体の方で負担することで、受益者、農家の皆さんの負担がない、そういう仕組みがあるということでありましたので、ぜひともそういう形でお願いをしたいというふうに思います。

 やる気のある農家さんがたくさんいらっしゃいますから、誰も別にやめたくないわけであります。しかしながら、用水路が壊れている、また、自分の田んぼに稲わらだけでなく土砂も入り込んでいて、もうじいちゃん年だし、自分一人の力では片づけることができない、じゃ、もうやめてしまおう、やはりこういうふうに、歩いていても、もうやめようかなと言っていらっしゃる後援会の方がいらっしゃったんですね、農家の方々が。やはりそうさせてはいけないというふうに思いますので、国も県も自治体も、そしてJAさんもみんなで連携をして、来年の田植にみんなが間に合うように、何とか力を尽くしていけたらありがたいなというふうに思っております。

 今回のこの災害で、一番はやはり、大きな河川が氾濫したことが原因にあります。決壊をした、越水をした。

 そこで、台風の当日から河川事務所さんとやりとりをさせていただきましたが、翌日から三日間ぐらいは、特に、私の地元の阿武隈川、あと社川の河川の決壊等々を見て回って、状況をすぐ河川事務所に報告をするということをさせてもらっていました。河川事務所さんだったり地元の方よりも早く、うちで見つけた部分もありました。

 ちょうど私の選挙区、阿武隈川は、途中までが国交省さんの直轄なんですね。その下が県の管理というふうになっていまして、そういうところも県の皆さんと連携をして改修をして、ちょうどあのとき、土曜日ぐらいにはまた雨が降るかもしれないというふうになっておりましたので、二十四時間かけて、突貫工事といいますか、応急復旧をして、金曜日までには何とか間に合うというような形をとれたというところでありました。

 きょう国交省さんにもお越しをいただいておりますけれども、この応急復旧が本当に速やかに進むことが必要だと思います。随分やってくださいましたが、現状どういうふうにやっていらっしゃるか、教えていただけますか。

塩見政府参考人 お答え申し上げます。

 今回の台風によりまして、国管理の河川、全国で十二カ所決壊をいたしました。また、県管理の河川につきましても、現在まで確認できているところで百二十七カ所で決壊をしております。

 このうち、福島県内におきましても、直轄の管理をしております須賀川市内で五十メートルの決壊がございましたし、また、県の方で管理されておられる箇所につきましても、四十八カ所ということで、大変大きな決壊が起きているところでございます。これによりまして、農地を含めまして広範囲で浸水被害が発生しております。

 国土交通省といたしましては、災害応急対策といたしまして、速やかに、この決壊をした堤防の応急復旧と、それから排水作業を最優先に対応させていただいてございます。

 特に、堤防の決壊箇所につきましては、これまでに、国が管理しているところについては、全ての箇所で、既に仮で土の堤防を築きまして、従来の堤防の高さを確保いたしております。引き続き、土でつくっておりますので、堤防を被覆するとか、あるいは鉄製の板を川側に打ち込むといった補強工事、これを二十四時間体制、昼夜分かたぬ体制ということでやらせていただいてございます。

 また、県の方で管理しておられる箇所の破堤箇所につきましても、おおむね、これまでに六割程度の箇所で同じような応急復旧が完了しているという状況でございます。

 引き続き、被災地域の皆様方が安心できますように、県の管理の部分につきましても、TEC―FORCEによる支援を行わせていただくとともに、また、高度な技術力、機械力が必要な工事につきましては、御要請があれば、国で代行することも含めて申出をさせていただきまして、被災地に寄り添った応急復旧ができますよう全力で対応させていただきたいと考えてございます。

上杉委員 ありがとうございます。

 また大きな雨が降る、台風が来る、そういうことで、せっかく復旧を進めているのにまた河川が氾濫をする、決壊をする、越水をする、それでまた田んぼがだめになるということがないように、ぜひ引き続き対応をお願いしたいというふうに思います。

 次に、一問ちょっと飛ばして、稲わらについてでありますが、先ほどから何度か言及もさせてもらっておりますが、田んぼにたくさん稲わらが散乱しております。

 お手元にお配りさせていただいた資料の裏面なんですけれども、例えば五番であれば、こんな形でたくさん積まれてしまっているわけであります。また、もとの表の方に戻ると、写真の四番ですけれども、道路が崩壊しておりますが、実は、これは道路の下に用水路があって、用水路が壊れてこういうふうになったというところなんですけれども、写真四と書いてあるところの下には木があって、ちょっと見づらいんですが、ここにもたくさん稲わらがあります。写真二の方も、一番も二番も、こうやって水管橋のところに稲わらがあったりしているわけであります。もうこれは、個人の生産者一人一人が片づけをするというようなレベルではないですよね。

 農水省さんが今取組をしてくださり始めたということでありますけれども、一度、稲わらの対応についてどのように進め始めたか、御説明いただけますか。

天羽政府参考人 お答え申し上げます。

 被災した稲わらなどの処理の問題について御質問をいただきました。

 この問題につきましては、農水省と環境省とが連携をとりまして、圃場から廃棄物処理まで切れ目のない支援スキームを構築したところでございます。

 現在、このスキームの周知を図っておるところでございまして、しっかりと現場で稼働させるべく、各県、各市町村の環境部局と農林部局、またJA等の関係団体との連携により集積所を決定し、JAなどによる広域的な収集体制の構築などにつきまして、スピーディーに対応していきたいと考えております。

上杉委員 ありがとうございます。よろしくお願いします。

 被災した稲わら等の処理についてということで御説明いただきましたけれども、しっかり自治体等に、あとJAさんに周知をしていただきたいというふうに思います。

 ただ、実際に歩いて、この写真、後援会の方々と、あと役所の方々と一緒に歩いているんですけれども、例えば、橋がかかっていて、橋に手すりがあるじゃないですか、そこにひっかかっていたりするんですよね。それは撤去しないんですかと言ったら、いや、これは川の上の橋なので、じゃ、国交省さんですかね、それとも農水省さんですかねみたいになっているんですよ。

 田んぼがあって、道路があったとしますと、そこにぶわっと稲わらがあるんですね。県の土木事務所さんが来て歩道の方には寄せてはくれたんですけれども、撤去はしてくれなかったんですよ。それで市役所の人が困っていたんですよ。そうなっているので、これは先週の話ですけれども、しっかり徹底をしてもらいたいと思います。

 道路にあるからこれは国交省さんですねとか、河川で土手にあるから、それも国交省さんか、田んぼにあるのは農水省さんで、あぜ道にあるのも農水省さんでではなくて、じゃ、これを今回、みんなで、農家の皆さんも地域の皆さんもみずから軽トラとかで運ぶ、集める、又は、JAさんが地元の建設業者に発注をして、重機を持ってきて撤去したとしても、これに書いてあるのは、集積所に持っていけば全部対応してくれるということでありますよね。

 であれば、そんな何か、道路だから国交省、田んぼだから農水省とか、そんなことはしないで、何でも全部うちで請け負います、農水省さんと環境省さんで請け負いますから大丈夫ですというふうにぜひお願いをしたいというふうに思います。ぜひよろしくお願いします。

 また、環境省さんも環境省さんで、ちゃんと連携をしてもらえるとありがたいですね。

 今、稲わらだけ燃やせばいいわけではないわけですよ。田んぼに浸水した地域というのは、同時に宅地にも浸水していますから。今、ごみ処理場はぱんぱんですよ。稼働いっぱいであります、特に可燃とかは。そうすると、環境省さんが自分で引き受けるとはいっても、どこのごみ焼却施設に持っていきますかとかとなってくるわけであります。

 今までの台風でも環境省さんは広域で協力をしてやってくださっているとは思うんですが、今回被災のなかった自治体のごみ焼却施設は稼働があいていたりするわけでありますよね。地元の市町村に任せるのではなくて、環境省さんがリーダーシップをとって県と連携をして、じゃ、どこどこ県の何々市のごみ処理場は一日十トンの余力があるのでそこに持っていきましょう、そこに運ぶやつもしっかりと運送費も手当てしますですとか、あと、民間の産廃業者が引受けをしてくれるから、そこも環境省さんが面倒を見ますと、そういうふうにちゃんとやった方がいいと思います。

 どうでしょう、ぜひ、環境省さん、御見解をお伺いさせてもらえますか。

松澤政府参考人 先生、稲わらの処理と、それから災害廃棄物の処理、二点お尋ねがあったかと思います。

 稲わらの処理につきましては、先ほど農林水産省さんから御説明ありましたとおり、両省で切れ目のない形で処理を支援してまいります。特に、環境省は、集積所からの先の処理については市町村に実施していただきますけれども、この処理費用について、環境省の方で支援をさせていただきます。

 この処理については、災害廃棄物もそうでございますけれども、その市町村内で処理をするということがほとんど難しいと思いますので、市町村の区域を超えて、処理先の確保、稲わら、災害廃棄物、それぞれについて、環境省の方で県と相談をしてやってまいりたいと思います。

 また、県内でも処理が困難だ、能力がないということも当然想定されるかと思いますので、全国的といいますか、より広域的に、処理先の確保を環境省の方で算段を整えてやってまいりたいと思っております。

 このように対応してまいりたいと思います。

上杉委員 ありがとうございます。ぜひ環境省さんに期待をしたいというふうに思います。

 放射性廃棄物等の処理でも、今までずっと環境省さんは、私どもの福島県、地元で一生懸命やってくださいました。地元の人たちの環境省さんの評価というのは高いですから、高評価でありますから、ぜひお願いを、頑張っていただきたいというふうに思います。また、すぐ、被災の後、各自治体に入ってくださって、本当にありがとうございました。ぜひよろしくお願いしたいと思います。

 時間があと一分になってしまいましたので、この台風について質問したいことが多々あるんですけれども、大臣のきのうの所信の中で一つ御質問させてもらえればと思うんですが、やはり輸出を促進すべきだというふうに思います。日本の農業を救うのは輸出だというふうに思っております。一兆円を目指して今やっております。

 また他方、日米貿易協定もありまして、例えば和牛でいえば、今まで二百トンだったのが六万五千トンの可能性が出てきているわけであります。

 今、この和牛を、これから、地元の、地域、日本国内で生産基盤の拡大、体制づくりというのが必要でありますし、と同時に、アメリカに輸出できるような体制もどんどんつくっていく必要があると思います。そのために、いつまでにこういう形でやっていこうですとか、対アメリカへの和牛の輸出額をこれだけにしよう、そういう目標設定も必要だというふうに思いますが、ひとつ御検討、お考えを伺わせてください。

江藤国務大臣 委員御指摘のように、目標設定は必要だと思います。

 しかし、例えば、私の宮崎で、日本で最新鋭の食肉処理場が完成しましたが、一日五十数頭しか実は処理する能力がない。国内の和牛生産状況を見ると十四万九千トンしかない。そして、いわゆる国産牛全体で見ても三十三万トンしかない。今回御指摘あったように、新しいWTO枠のアクセスで六万五千五トン、これは、キロ当たり四・四セントですから、ほとんど無関税に近い。しかも、今、ニカラグアはほぼほぼこの枠を使っていますけれども、ニカラグアの肉が悪いという言い方はしませんが、飼い方が放牧で、行った先のアメリカではほぼほぼひき肉にされているということであります。しかも、ニカラグアは、来年、アメリカとのFTAが発効して、牛肉の輸出については完全無関税になりますので、多分WTO枠からは出ていくのではないか、それはわかりませんが。

 となると、我々は非常にアクセスがしやすいということでありますから、じゃ、十四万九千トンの和牛しかない、国産牛で三十三万トンしかない、六万五千トン出せるということであれば、生産基盤の拡大、これは目標を持ってやっていかなきゃいけないし、それをつくったとしても、食肉処理場も、外国の衛生管理基準、そういう基準に即した施設を整備していかなきゃならないと思いますので、かなり予算的にはかかると思いますが、官房長官がこれはトップに立たれておられるので、官房長官は金がかかってもやれという御指示をいただいておりますので、しっかり取り組ませていただきたいと思っています。

上杉委員 ぜひお願いしたいというふうに思います。

 お願いをして、質問を終わります。ありがとうございました。

吉野委員長 次に、濱村進君。

濱村委員 公明党の濱村進でございます。

 質問をさせていただきますが、まず冒頭、八月の前線による大雨、そしてまた、それに引き続いての台風十五号、十七号そして十九号による被害によってお亡くなりになった皆様に御冥福をお祈りするとともに、被害に遭われた皆様にお見舞いを申し上げるものでございます。

 私も、きょう久々に委員会で質問をさせていただくわけでございますけれども、九月十三日までは政務官として農林水産省の皆様にも大変お世話になっておったわけでございますが、与党だけではなく野党の理事、委員の皆様にもさまざまな質問もいただきながら仕事をさせていただいたということもあり、この場をかりて感謝を申し上げたいなというふうに思っております。

 政務官を一年ほどやらせていただく中で、いろいろなことを経験させていただき、いろいろなことを学んだわけでございますが、ちょうど一年前を考えてみますと、その当時も災害があって、私も鳥取に出張をさせていただいて、鳥取の樹園地であったり、さまざまな被害状況を確認してきたわけでございます。そういう中にあって、日本という国は災害からなかなか逃れ切ることはできない、そういう状況にあるなということは強く感じているわけでございます。

 この政務官として過ごした中で、いろいろな経験をさせていただいたわけでございますけれども、やはりやり残しているなということもたくさんございます。そうした中の一つ、大きな一つとしては、豚コレラ対策があるんじゃないかというふうに思っております。

 ですので、きょうは、災害の前に少し豚コレラの対策についてお伺いした後に、災害対策についてもお話をさせていただければというふうに思っております。

 まず、私が政務官をさせていただいたのは去年十月でございますが、当然、去年の九月から豚コレラというものは日本で発生しておりまして、そうした中にあって政務官がスタートしたわけでございますが、豚コレラ対策、当時言っておりましたのは、何より重要なのは飼養衛生管理基準の遵守徹底、これが何よりも一番重要であるということでございました。その上で重要なことは、なかなか拡大がおさまりがつかないということもございましたので、豚舎を空にして消毒をするといった早期出荷のことをやっていく、こうした判断もさせていただいたわけでございます。

 この後という段階においては、まだ私が政務官をやっていたときにはなかったわけでございますけれども、飼養豚に対してワクチンを接種するということでございますが、その前に一つ、議員としてやれることとしてみれば、これは口蹄疫のときにも例があったわけでございますけれども、予防的殺処分があろうかと思っております。口蹄疫のときには、これは議員立法で特措法が出されて予防的殺処分が可能になるようにしたわけでございますけれども、これは、いろいろな背景がある中で議員の先生方が議員立法として提出されたということでございますので、今回はそのような状況にはありませんでしたけれども、飼養豚へのワクチンの接種ができるようにということで、防疫指針を改正するという御判断をなされたわけでございます。

 こうした流れの中にあって、今まで自分が携わってきたこと、これはどういう思考プロセスであったのか、もう一度整理をすることによって今後に生きていくんじゃないかというふうにも思いますので、少し整理をしていきたいと思います。

 まず、ことしの九月に入って、非常に豚コレラの発生状況が局面が変わったというふうに言っていいのではないかと思っております。当然、関東に拡大をしてきたわけでございますので、これまで岐阜や愛知県を中心とした地域に発生していたところから局面が変わったわけでございますが、この状況につきまして改めて確認をしたいと思います。

新井政府参考人 お答え申し上げます。

 今般の豚コレラの発生につきましては、野生イノシシでの感染がやはり飼養豚での発生に深く関与しているということでございます。

 野生イノシシにつきましては、経口ワクチンの散布、捕獲の強化等を行ってまいりました。七月の時点におきましては七県で野生イノシシの感染が確認されておりましたけれども、九月に入りまして新たに滋賀県と埼玉県、それから十月になりまして群馬県と静岡県で確認をされているところでございます。現在、計十一県で野生イノシシの陽性が確認されております。

 他方、実際の農場での発生につきましては、愛知県での発生は八月三十一日を最後に発生をしていないという状況でございまして、九月以降で申し上げますと、岐阜県で二農場、しかしながら、新たに関東地方の埼玉県で三農場、それから長野県の二農場で発生をしているということでございまして、残念ながら豚コレラの発生がまだ終息していないという状況でございます。

濱村委員 ありがとうございます。

 野生イノシシ、七県から十一県、そして飼養豚、農場においても埼玉で三件、長野においては二件あるということで、これまで、実は私、九月十三日まで政務官を務めておりましたが、九月十三日に埼玉県の秩父の農場で発生しているという状況もあり、この後、非常に大きく局面が変わったなというふうに私も認識をしております。

 そうした中で、飼養豚に対するワクチン接種ができるようにということで、さまざま検討をされたわけでございますが、これは恐らく総合的な判断であると思っております。何か一つの理由があってとか、そういうわけではなくて、例えば養豚農家の皆様から、あるいは業界団体の皆様からのお声もあって、いろいろなお声を、当時、岐阜県、愛知県で発生しているときもいただいていたわけでございますけれども、そのときはまだ、飼養衛生管理基準の遵守の徹底によって何とか頑張ろう、あるいは早期出荷で頑張ろうというようなところもありました。

 愛知県では早期出荷をなされて、また営農することを再開されたところもあるというふうに記憶をしておりますけれども、なかなかそういう中にあっても被害拡大がとどまらなかったわけでございますので、さらなる対策が必要であるということでありましょうが、そうしたことを判断するに当たって、総合的判断なわけでございますけれども、大事な判断要素の一つとしては生産額というものがあろうかと思っております。

 患畜が拡大した関東圏における各県におきましては、生産額はどの程度ございまして、日本全体に対してその生産額はどの程度の割合を占めるのか、確認をしたいと思います。

水田政府参考人 お答えいたします。

 関東地方、一都六県でございます。茨城県、栃木県、群馬県、埼玉県、千葉県、東京都、神奈川県、この一都六県におきます豚の産出額でございますが、平成二十九年で一千八百一億円となっているところでございます。これは、我が国全体の豚の産出額六千五百七十五億円の二七%を占めているところでございます。

濱村委員 ありがとうございます。

 一千八百一億円で日本全体の二七%を占めるというわけでございます。

 関東圏において言うならば、千葉県というのは実は全国の産出県の中でも第三番目のシェアを誇るというような地域でございますし、また、群馬県も茨城県もそれぞれ五位、六位という全国シェアを占める、そういう県であるということでございます。

 生産県であるということは非常に大きな要素であるなというふうにも思いつつも、鹿児島であったり宮崎であったりするところが全国シェアでいうと一番、二番ということでございますけれども、生産額が非常に大きいところにも影響が出る可能性があるということは、これは非常に危険な状況にあるなということで、局面が変わったというふうに言い切れると私は思っております。

 こうした中で、生産額は一つの判断要素としながらも、さまざまな背景を講じた上で、このたび、飼養豚に対するワクチン接種について防疫指針を改正するという御判断をなされたわけでございますけれども、この判断に至った考え方、思考のプロセスが非常に重要であるというふうに思っております。

 このような判断をなされた江藤大臣におかれては、大事な御判断をなされているというふうに私は思っておりますけれども、この判断に至ったプロセスについて、考え方について少し教えていただければというふうに思います。

江藤国務大臣 お答えさせていただきますが、なかなかそのプロセスを説明するのは難しゅうございますけれども、まず、私は、口蹄疫を経験したということでございます。自分が手塩にかけている家畜、そういったものを食に供することなく処分しなければならない、そのつらさ、それから、自分の農場にいつ、それが伝播してくるんではないかというその恐怖、そういうものを非常に体験した政治家であったということが一つの大きな原因であります。

 確かに、生産額が大きい関東地方に来たということも一つの要素ではありますが、しかしそれだけではございません。影響が大きいところに来たからということではなくて、じゃ、影響が小さかった岐阜県あたりでとどまっていたら、事はよかったのかということでは決してないということであります。

 例えば、岐阜県の農家の方でも、早期出荷等をして空舎にされた方がおられます。そういった方は、やはりもう一回再開をしたいと。再開はしたいんだけれども、今のままの、ワクチン接種も認められない状態のままじゃ怖くて再開できないという、やはり一度罹患した方がそういう悲痛な声を上げられました。それも私の胸には非常に強く響いたということであります。

 そしてまた、私がこの役職について、大変御苦労されたと思いますよ、今までのやり方が決して間違っていたとか、そういうことは私は全く思っておりません。これは最初に申し上げておきたいと思います。飼養衛生管理基準をきちっと守って、それによって周辺の農場への伝播を防ぐというのは基本中の基本で、今も変わりませんから、今も、ワクチンを打っても変わらないことですから。

 しかし、今回は、そこらじゅうを走り回るイノシシがキャリアとして存在しているという特殊な事情、そしてこの関東に入って、今入っている県、それからイノシシが発見された十一県を考えて、じゃ、ワクチンが手持ちは幾つあるんだと。私が最初に聞いたのは百万でした。その後、回転備蓄を入れたら百五十万だということにはなりましたけれども、じゃ、これ以上、感染地域が広がって、ワクチンに踏み切ったときに手持ちが足りないということでは、これはどうしようもない、手持ちで対応できるうちに何とか踏み切るべきではないかというのは私の気持ちでした。

 農水の中でもいろいろな意見がありました。簡単に農水の中がまとまったわけではありません。ですから、自分としては、消費・安全局とか畜産局とか生産局だけではなくて、林野庁も水産庁も、全ての省議メンバー、課長クラスが全員集まって、農林省全体として考えようと。我々農林省全体として受けとめて、これからワクチン接種という方向にかじを切るのであれば、大きな転換だから、いかに御理解を求めて、これまでの政策が失敗だということでは決してなくて、状況の変化に対応するということでワクチン接種に踏み切ろうではないかという議論をさせていただいて、そういうことになったわけであります。

 ですから、これから理事にも御就任をいただいて、また党におかれましても部会の部会長代理もされておられるということでありますから、まだまだこれから長い闘いになると思います。経口ワクチンも、輸入品ですから、国産に向けた取組もしなきゃなりませんし、追加のワクチンも今すぐ手に入るわけではありません。もう少し時間がかかりますので、いろいろ御意見とか御指導を賜りますように改めてお願いしたいと思います。

濱村委員 今大臣から非常に重みのある御答弁をいただいたわけでございます。

 私も、当時、政務官をやっているときに、愛知の議員であったり、あるいは岐阜の人間であったり、さまざまな方から意見を聞きました。そうした中で、現場の農家さんと接している彼らからすると、なかなかワクチン接種に踏み込んでくれないということで、農水省は非常に悪者扱いをされておったようなところもございました。

 しかしながら、そうした皆様の努力を無駄にしないためにも、しっかりと蔓延防止に努めなければいけないということで、日々、いろいろな判断をしながら、時には心を鬼にしながらやってきたわけでございますが、判断として間違っていたとかそういうわけではなくて、これは恐らく、大臣おっしゃったとおり、これからも続くというふうに思っております。

 豚コレラワクチンとの闘いはこれからも続くということでございますので、しっかりと私も党は党の立場として取り組んでまいりたいなというふうに思っておりますが、さらに、大臣におかれましては、口蹄疫のときの話も触れておられましたけれども、非常に苦しい御判断をなされたこともあるというわけでございますので、そうした苦しいときにいかに現場の生産者の皆様に寄り添えるか、こうしたところも非常に重要であるというふうに思っております。こういう感覚をあらゆる国会議員は持ちながら、この事態に対処していかなければいけないというふうに思っているところでございます。

 その上で、引き続き、飼養衛生管理基準の遵守といったところが大変重要である、アフリカ豚コレラ対策においてもこれは非常に重要であるというわけでございますので、飼養衛生管理基準、いかにして高めていくかということが重要であろうと思っております。

 その中の一つとしては、防護柵の設置については非常に大きな要素であるというふうに思っておりまして、防護柵も、海外に比較しますれば、日本の防護柵はもっともっと強化してもいいんじゃないかというようなところもございます。

 実は、現在、防護柵の設置についても、予算措置をしながら、希望する県の皆様にはしっかりと国が二分の一負担しながら、これは県も負担があるわけでございますけれども、防護柵の設置を進めてきているところでございますが、希望する県が進めているということでございますが、これは、県が安心して進めていくためにも財政的な裏づけが必要であるなというふうに思っておりますが、財源の裏づけについては特別交付税というふうに理解しておりますが、この点を確認したいと思います。

新井政府参考人 お答え申し上げます。

 アフリカ豚コレラ対策といたしまして、防護柵の設置、農場に対する侵入、農場を囲むという柵の設置は非常に重要でございまして、七月から設置の支援の予算措置を講じているところでございます。

 これらにつきましては、国が二分の一ということでございますが、都道府県及び市町村が当該費用を補助する場合には、地方負担額の八割を特別交付税で措置をするということとされております。これによりまして、各県での上乗せの補助が進んでいるところでございます。早急に整備が進むようにしてまいりたいと思っております。

 他方、これにつきましては、十月三日に家畜衛生部会を開催いたしまして、飼養衛生管理基準におきまして義務化をする方向で見直しを検討しているところでございます。

濱村委員 今、希望する県あるいは市、自治体においては五分の四の補助があるということでございましたけれども、さらに、これを義務づけしていこうということを検討されているということでございました。

 この検討をしっかりと速やかに検討していただいた上で、適切に防護柵を設置することによってこれ以上の豚コレラの蔓延を防いでいく、これが重要であるというふうに思っております。今後とも、私もしっかりと支援をしてまいりたいというふうに思っております。

 さて、最後に、災害対策についてお伺いをしたいと思います。

 我が党におきましても、台風十九号が発生して、山口代表が長野県に入りまして現地調査をし、そしてまた、谷合農林部会長を始めとして農林部会としても長野県に入り、状況を確認してまいったところでございます。

 そうした中におきまして、長野県においては、非常に千曲川の河川敷等での被害が多く出ているわけでございます。こうした状況の中で、少し申し上げるならば、河川敷、今までは、どちらかというと、こういう樹園地の被害といっても、樹園地全体に対しての一部分だけが被害を受けるということが多うございました。ですので、逆に言いますと、残された農地で収穫が見込めるということでございますので、そこで幾ばくかの収益を上げられるという状況でございました。

 しかしながら、今回は、流域全体が、持っている農地面積全体が被害を受けるということで、収益源が全くないというような状況も発生しているというふうに伺っております。こうした農家さんにおかれては、当然、収入が確保できない、そういう期間が発生するわけでございますので、こうした未収益の期間に対しての収入確保、これについてもしっかりと支援を行っていかなければいけないというふうに思っております。

 そしてまた、果樹に対して農薬散布するときに、SS、スピードスプレーヤーというものを使うわけでございますけれども、これらが水没をしてしまって使えなくなってしまった。こうした使えなくなった、これは農機でございますけれども、農機具に対しての支援についてはどのような支援ができるのかといったことを、相談を受けてまいりました。

 これまでの、台風十七号までのさまざまな被害、それに対しての支援対策も多く講じていただいているわけでございますけれども、当然、台風十九号は非常に大きな被害があったわけでございます。これまでの支援対策につけ加えて、ぜひとも十九号の支援対策を行っていっていただきたいというふうに思っておりますが、どのような形で、どのような方向性で検討されていかれるのか、十七号までの支援対策も踏まえて御答弁願えればというふうに思います。

河野大臣政務官 今回の台風災害によりまして、長野県では千曲川の氾濫、リンゴなどの樹体そのものや、委員御指摘のとおりスピードスプレーヤー等の農薬機械の浸水被害が広範囲で発生しておるところでございます。

 これまで、果樹の災害被害に関しましては、被害を受けた果樹の植えかえや、果実が実るまでの未収益期間に係る肥料代や農薬代への支援を行ってきたところでございます。

 しかしながら、今回の災害では、広範囲で浸水被害が発生しておるため、経営面積の大部分を植えかえざるを得ないという状況が発生しておりまして、その場合、長期にわたり収入が途絶えてしまうといった従来にない事態が発生しております。

 こういった内容を踏まえまして、今回の災害被害の特性や現場の声を踏まえ、果樹農家の早期の営農再開そして営農継続に向けてどのような支援が可能か、農業機械に関する支援も含めまして、速やかに検討してまいりたいというふうに思っております。

濱村委員 ぜひともあらゆる可能な支援策を講じていただき、生産者の皆様が再生産可能な状況にぜひとも環境をつくっていただきたい、このようにお願いを申し上げます。

 台風十九号に関する被害につきましては、我々公明党からも、昨日、農林水産省に緊急要請をさせていただいたところでございます。こうした緊急要請も踏まえながら、万全の対策を講じていただくことをお願い申し上げて、質問を終わります。

 ありがとうございました。

吉野委員長 次に、石川香織君。

石川(香)委員 おはようございます。立憲民主党の石川香織です。

 江藤大臣、伊東副大臣、そして河野政務官、どうぞよろしくお願い申し上げます。

 さきの台風十九号では本当に大きな被害があったというお話がこれまでも出てまいりました。多くのとうとい人命が失われて、そして家屋も失われて、農産物にも大きな被害が出たということで、復興に向けて農水省の役割というものも大きいと思いますので、どうか引き続き御尽力をよろしくお願い申し上げます。

 近年の災害だけではなくて、日米の貿易協定なども含む大型の貿易協定についても農家の方々は非常に不安に感じられているのではないかということで、まず初めに、日米貿易協定についてお伺いをさせていただきたいと思います。

 今、農水省は、今回の日米貿易協定について説明に全国を回られているところだと思います。私の地元の帯広にも説明に来ていただきました。十月の一日に、この説明会に出たいという方の希望をとる公募がありまして、三日の午前中に開催という日程だったそうです。

 このタイトなスケジュールの中で全国を回られるということで、非常に大変だということは理解するんですけれども、やはり参加者の方々からは、余りにもスケジュールがタイトな中で、やっつけ仕事としか思えないんだよなというようなお話も伺いました。

 というのも、今、収穫真っ最中の時期でありますし、畜産農家は、やはり午前中の時間帯というのはなかなか参加が難しい時間帯だったのではないのかと思います。

 この日時の設定自体が、誰に向けての説明会だったのかということを考えますと、適切であったのかということに、まず疑問を感じております。

 この説明会の中で、帯広は十月三日ということで、この時点では影響額の試算が公表されておりませんでした。この内容が余りにも不透明というか、質問しても答えられないことも非常に多かったということで、となると質問もなかなかできないということで、皆非常に関心は高いんですけれども、質問時間が二十分余ってしまったというのが非常に残念だったというお話を参加者の方から聞きました。

 そして、今月の十八日に、この貿易協定の与える影響の試算というものを政府が出されたと思います。この日米貿易協定で農林水産物の生産額が六百億から千百億円減少するという内容で、TPP11と合わせた減少額は最大で二千億円にも上るのではないかということでありました。

 ただ、この試算は、これまでの大型通商協定と同様に、国内対策によって生産量への影響はないということで、生産量への影響はゼロと説明しておりますけれども、この対策の前提になる政策大綱も決まっておりません。

 このような説明では当然納得できないのではないかと思いますけれども、大臣、いかがでしょうか。

江藤国務大臣 今までの、大綱ができてからそれから国会にかかるとか、いろいろな今までのやり方と比べると順序が違うという御指摘であろうと思いますし、この説明会についても、私にきちっと報告をしていただけなかったのはちょっと農水省としても残念ですが、説明するのであれば、やはり相手様の御都合に合わせることはとても大切なことだと私は思います。

 しかし、今回の試算について申し上げれば、私の地元の、私はまだ一日しか地元に帰っていないので、しっかり地元の声を聞いておりませんが、電話等で聞くところによると、自由化率も、TPPのときに比べて、八二に比べて三七%。しかも、牛肉についても、確かに二十四・二という数字は、過去、実績に比べれば低いけれども、でも、SGの設定は、評価はするが、11については発動しないじゃないか、それについてはおかしいじゃないかというような御指摘もありますが、しかし、そういうことを全部踏まえた上でも、余り私の地元の方では、今回の日米の結果について、これではもう営農を続けていけないとか、畜産をやめたいとかいう声は余り私のところでは聞かれないというのが現状でございます。

 それから、私のところには、大臣にならせていただいたのでいろいろな方がたくさんお越しになりますけれども、大体の方は、例えば豚肉でいうと、差額関税制度を守っていただいたので何とかやっていけるだろうという声もいただきますし、牛肉についても、SGのラインについては言いたいことはあるが、しかしWTO枠の六万五千五トンとか、いろいろなことを考えると、かえってこれからの和牛生産には夢が持てるねというような言葉もいただいておりますので、私は、国内生産が減少するということは、これは先のことですから私が断定的には申し上げられません、断定的には申し上げられませんが、しかし、減少しないという予想が現実的ではないということではないのではないかというふうに受けとめております。

石川(香)委員 その根拠がなかなか納得できるものではないのではないかな、国内対策を講じているから大丈夫という言い方はよくこれまでされておりましたけれども、やはりこれではなかなか安心できないのではないかなと。

 今、大臣、地元の皆様の意見というお話をされておりました。九月二十七日の記者会見の中でも、地元に帰ったときに、特にセーフガードに対する不安というものがあるので説明をしたいということをおっしゃられておりましたけれども、先ほどお話しされた以外で何かありましたでしょうか、セーフガードについて。今の御答弁でよろしいでしょうか。

江藤国務大臣 交渉の過程のことについては、私は、最終盤では大臣としてかかわりました。農林省の国際部も毎日徹夜をして、私も農林省にベッドを持ち込んで、昼夜逆ですから、交渉の過程については、詳細に、リアルタイムでつかみながら、交渉されるのはあくまで茂木大臣ですから、直接タッチできないので、言いたいことをばすばす言わせてもらったつもりでございます。

 それは、やはり、二〇二〇年を考えたときに、TPP11の実績の数字と、二十四・二に決まりましたけれども、それを足し算をしてSGの水準を超えてしまうということであれば、なかなかこれは説明が難しいですよということは、私が補佐官の時代から総理にも申し上げてきたことです。幸い、茂木大臣が頑張っていただいて、二十四・二であれば、二〇二〇年の水準で考えると八千トンの枠がありますので、数字的にも説明ができる。

 先ほど正直に申し上げましたように、アメリカにはSGが発動されても、11に対しては発動されない。これについては、早く私は協議をすべきだ、そして合意に到達する努力をしなきゃならないと強く思っております。

 しかし、私の地元は、新しい食肉工場も完成したこともあり、アメリカに対する対米輸出もどんどん伸びていることもあり、今までできなかった対EU輸出も可能になり、総理が大変頑張っていただいて、そう遠くない将来に中国のマーケットもあくのではないかという期待感も高まっておりまして、生産に対する意欲は非常に高いというのが、こういう答弁だから言っているんじゃなくて。怒られることは、私、たくさん怒られてきましたから、これまで。嫌なこともたくさん言われてきたので、今回は、今までの経験から比べると、ちょっとみんな大変優しいなと。大臣になったからかもしれませんけれども、温かく受けとめてくれているなという感触でございます。正直な気持ちでございます。

石川(香)委員 今、二十四・二万トンの話もありましたので、ちょっと質問の順番を変えますけれども、このセーフガードの発動基準、二〇二〇年はTPP11枠で六十一・四万トン、アメリカ単独のセーフガードの発動基準が二十四・二万トンという御説明がありました。

 農産品セーフガード措置の運用に関する日本国政府とアメリカ合衆国政府との間の交換公文というものには、こう記載をされております。アメリカ合衆国及び日本国は、農産品セーフガード措置がとられた場合には、当該農産品セーフガード措置に適用のある発動水準を一層高いものに調整をするため協議を開始するということが記載をされていると思います。

 つまり、セーフガードが発動したら、この発動基準を一層高める話合いをするということをもう既に決めているということですけれども、なぜそのようなことが決まっているんでしょうか。

大角政府参考人 お答え申し上げます。

 今回の交換公文におきましては、牛肉のセーフガード措置がとられた場合には発動水準を一層高いものに修正するため協議を開始するとされているところでございます。これは、二〇二〇年度の発動水準が二十四万二千トンと、直近の輸入実績を下回る量で設定されていることが背景にあるものと考えております。

 今回の交換公文は、協議の開始を約束しているだけのものでございまして、協議の結果を予断しているものではございません。

 いずれにいたしましても、我が国として国益に反するような合意を行うつもりはございません。

石川(香)委員 国益に反するような合意はしないということですけれども、それは当然のことでありまして、ただ、こういうものが書かれているということで、やはり日本の市場が荒らされるのではないかという懸念は当然起こりますし、今、外国産の牛肉が在庫があって、そしてだぶついている状態でもある、かつ、冷凍庫のあきも少ないから、輸入は急に急増しないんだろうというような読みもあるのかもしれませんけれども、この不安感は市場価格にもあらわれておりまして、私の地元の市場では、初妊牛百万という相場だったものが、六十万に下がっているということで、やはりこの不安感というものは拭い切れていないんだと思います。

 このTPP11の牛肉の輸入枠について引き続きお伺いしますが、そもそもオーストラリアがこのセーフガードの修正協議に乗るというふうに見ているのかということを聞きたいと思います。

 八月にオーストラリアのブリジット・マッケンジー農水大臣が来日した際には、日本農業新聞のインタビューに対して、我々側から再協議を求めることはないと消極的な発言をされております。

 既に発効したTPPの加盟国が見直しに応じるのかどうなのか、その可能性について教えていただきたいと思います。

大角政府参考人 今回の日米貿易協定の合意内容につきましては、今月七日から九日までニュージーランドで開催されました第二回のTPP委員会の場で、豪州等TPP参加国に我が国から説明したところでございます。

 本件につきましては、いずれかの時点でTPP関係国と協議を開始する必要があるものと考えておりますけれども、TPP11も発効から間もないこともございまして、日米貿易協定の発効後の実際の輸入状況などを見きわめつつ、適切なタイミングで関係国と相談を行うこととしていきたいと考えております。また、その旨も関係国に伝えているところでございます。

石川(香)委員 オーストラリアからすれば輸入枠を目いっぱい使えるわけでありまして、しかもアメリカは勝手に出ていったということがあれば、既に発効したTPPの見直しに応じるかというのは甚だ疑問であります。

 今、この日米貿易協定とTPPのセーフガードが併存しているという状況が続くということになれば、これは事実上、TPPを超える内容になっているということだと思います。

 ちょっと話をさかのぼりますが、五月にトランプ大統領が来日された際に、安倍総理とゴルフをした後にツイートしました、参議院選挙に待っている報告という意味深なツイートがありましたけれども、結局これは何のことだったのかということをお伺いしたいと思います。

大角政府参考人 トランプ大統領のツイートや発言の一つ一つにつきまして、その真意を解釈する立場にはございませんけれども、御指摘のツイートは、日米交渉が双方にとって利益となるようできるだけ迅速に進めたいとの当時の期待感を述べられたものと理解しているところでございます。

石川(香)委員 これはあくまで私の考えではありますけれども、私は、これは突如降って湧いたトウモロコシのことの可能性もあるのではないかなと思っているんです。前倒しでおよそ二百七十五万トン、これが年間輸入量の三カ月分に当たるということでありますけれども、このトウモロコシを買うという話が突如出てまいりました。

 そもそも、ツマジロクサヨトウという病気の影響でということでありましたが、九州の方でこの病気の影響というものはどれぐらい深刻なのか。それから、営農活動に影響が出ているレベルなのかということで、被害状況について確認をさせてください。

水田政府参考人 お答えいたします。

 非常に強い食害性と伝播力を持つ害虫でございますツマジロクサヨトウでございます。本年七月、我が国で初めてその発生が確認されたわけでございますが、十月十日時点で、九州、沖縄から東北までの十九府県の百四市町村に発生地域が拡大をしているところでございます。

 防除対策の一環として生育途上の飼料用トウモロコシをすき込んでいる圃場では、収穫ができなくなっているというところもございますし、こういった中で、現在、その防除や蔓延対策に全力を挙げている段階でございます。被害の総量というものを見通すことは困難であるというふうに考えております。

石川(香)委員 被害の総量としては把握をされていないという御答弁がありましたけれども、前倒しだからどうせ使う分だということであっても、被害の状況が明らかになっていないのに年間輸入量三カ月分という量が適切なのか、全く理解できません。

 加えて、備蓄する分のトウモロコシの増加分を保管する倉庫代でありましたり、購入代金の金利を補助する制度もできたということでありますけれども、これは、購入を無理にふやすために、結果、多額の補助金を使うことになるわけじゃないでしょうか。トウモロコシを結局買うのは民間の飼料会社ですよね。

 現時点で、飼料メーカーに、追加若しくは前倒しで購入するかということを聞くアンケートをしたところ、追加又は前倒しで購入するという回答をした会社はゼロだったということであります。どう考えても、この輸入の前倒しの判断が早過ぎたのではないでしょうか。押しつけられたのではないかと思いますけれども、もう一度、答弁よろしくお願いします。

水田政府参考人 お答えいたします。

 この飼料用トウモロコシの前倒し購入への支援でございますが、先ほど申し上げましたツマジロクサヨトウの発生地域が拡大する中で、飼料の安定供給を確保いたしまして、農家の不安を解消するため実施することとしたものでございます。

 二百七十五万トンというお話がございますが、これは、飼料用トウモロコシの購入は三カ月単位での購入契約を締結する例があることを踏まえまして、最大で、年間需要の三カ月分に相当する二百七十五万トンの前倒し購入の保管料等を支援することができるという形にしたというものでございまして、委員御指摘のとおり、飼料用トウモロコシの購入契約、民間企業が実施するものでございますので、今後の気象状況、国際市況に影響を受けるということでございます。現在、各配合飼料メーカーにおきまして、海上運賃、為替相場、こういった動向を見通しながら、最適な購入の時期を検討していると承知しております。

石川(香)委員 今回のこのツマジロクサヨトウの害虫被害は草とか葉を砕いて飼料にするトウモロコシで発生しておりまして、そもそも、追加購入をする、実を用いるトウモロコシとは栄養価も当然違うわけであります。牛の体調に合った飼料が当然決まっているわけであります。

 二百七十五万トンという数字がありましたが、害虫の被害は、仮に国内の青刈りトウモロコシが全て被害に遭っても、必要な輸入量は百万トンにすぎないという試算もあります。被害の影響も明らかになっていない段階でトウモロコシを先に買う、こういったような前例をつくってしまうと、これから何でも買わされてしまうんじゃないかと私は思っております。

 今回のトウモロコシに関しましても、理由を正当化しようということで、病害の被害も実際はあるんでしょうけれども、その全体像がまだわからない中でこういった行動に踏み切ったということで、その理由はやはりちょっと無理があるのではないかなと思っております。

 釈然としませんけれども、この後の委員もこのあたりについても質問をさせていただきますので、ここで質問をかえまして、水産業の質問をさせていただきたいと思っております。

 水産業の現状ですとか今後の対策などについて、ここからはお伺いをさせていただきます。

 先日、スーパーで生のサンマを、今シーズン初めて食べました。一匹二百二十円という価格でありました。私はこれを全く高いとは思いませんでした。まさに命がけでサンマをとってくれている方がいるからこそ、食卓でこうしてサンマを食べることができる。今まで以上にこのありがたみが身にしみるのも、先日起きた事故があったからだと私は感じております。

 九月、納沙布岬で、第六十五慶栄丸の転覆事故というものがありました。一名が亡くなり、七名が今も行方不明という状況になっています。

 船長さんはとてもベテランの方で、そして船主さんも乗っていたんですけれども、船主さんはふだん余り船に乗らない方でしたけれども、急遽、人が足りなくなったということでこの船に乗っていたと。そして、もう一人、行方不明の方の中には、漁師に憧れて、仕事をやめて、今回初めての漁だったという方もいらっしゃいました。何とかサンマをたくさんとりたいということで、納沙布岬沖東約六百四十キロの遠くまで来て、漁に出て、何とかとれないかということで粘って作業をされていたところ、このような事故が起こってしまったということで、本当に私も心を痛めております。

 なぜこんなに遠くまで行ってしまったかといえば、それは近年のサンマの不漁が背景にあります。とにかく今、サンマがとれない状況が続いています。現に、第六十五慶栄丸の最大積載量は二十五トンから三十トンでありましたけれども、事故前に積んでいたサンマの量は八百キロでありました。燃料も少なくなっていたということもありまして、上が重たくなって、下が軽い状態で、バランスが悪くなって横波を受けてしまったということで、まだ、さまざまな原因については今も究明しているところだ、追求しているところだということであります。

 不漁で漁場が遠くなってしまって転覆のリスクが高まってしまったということでこの事件が起きてしまったわけでありますけれども、まず、漁師の皆さんの命を守るというのは大前提であります。

 こういった事故が起きないよう、海上保安庁を始め、ライフジャケットの着用などを呼びかけたり、道内の港を巡回されていると思いますけれども、水産庁にお伺いをしますけれども、転覆事故など海の事故を防ぐために水産庁でも行っている取組があれば、お答えをいただきたいと思います。

山口政府参考人 お答えいたします。

 北海道沖のサンマ漁船の転覆事故で八名の死者・行方不明者が発生したことは、まことに残念でございます。心からお見舞いを申し上げたいと思います。

 事故原因につきましては、先生から今お話がございましたように、国交省の運輸安全委員会で今調査中でございますが、一般論といたしまして、転覆を防止するためには、気象情報の確認や、重心を安定させて船の復原性を確保することなどが重要でございます。

 このような対策を行うことは、漁業者の安全意識の向上を図ることが重要でございまして、水産庁といたしましては、安全対策講習会を開催いたしまして、重量物の固定やドアハッチなど開口部の閉鎖など、漁船事故を未然に防止する行動の再確認を行っております。また、全国漁船安全操業推進月間などには、ライフジャケットの着用など、安全操業の徹底を呼びかけているところでございます。

 また、今般の転覆事故を受けまして、北海道漁業調整事務所が海上保安庁や道庁、サンマ団体と連携いたしまして、サンマ漁業者に対しまして、操業前の天候確認や荒天時の早期避難などの安全操業について、一つ一つ漁船を巡回して指導を行っているところでございます。

 今後とも、漁業者の安全意識の向上を図り、漁船の海難事故の未然防止にしっかり取り組んでまいりたいと考えております。

石川(香)委員 こういった事故がありましたけれども、安全第一で漁に出るということは漁師の皆さんも重々わかっていらっしゃると思います。ただ、余りにもとれないと生活が成り立たないということで、どうしたら今この不漁が終わるか、大漁になるかという、そこの追求はあらゆる方向でしていかなくてはいけないと思いますけれども、この不漁の原因について、さまざまな分析があるかと思います。

 今期のサンマ漁は、最漁期の九月を迎えましても累計水揚げが前年同期のわずか一割ということで、衝撃的な数字が発表されました。このサンマの不漁の原因というものについて、どんな分析をされているか、御答弁をいただきたいと思います。

山口政府参考人 お答えいたします。

 本年のサンマ漁業は、サンマの発生量自体が少なく、さらに、例年より漁場が遠くにあったということで、漁獲量が過去最低と低迷しているところでございます。

 例年ですと、漁場はまず公海域に形成されまして、夏にかけてロシア水域へ移動し、その後、日本付近を南下するということでございますが、近年の漁場形成が公海では早まるとともに、日本付近への来遊が減少して、沖合を南下してしまうというような状況となっているところでございます。その原因といたしましては、水温、海流などの海洋環境の変化が挙げられるところでございます。

 ただ、漁獲量の減少の一端といたしましては、北太平洋公海での中国、台湾での外国漁船の漁獲も影響があるというふうに考えております。

石川(香)委員 さまざまな、地球の気候の変化でありましたり水温の変化、サンマの動きの変化などの御説明もありました。

 少し触れていただきました外国船の存在について、次に触れたいと思います。

 このサンマの不漁の原因というものに、地元の漁師の方々がよく口にするのは、やはり外国船の先取り、乱獲ではないかということであります。日本の排他的経済水域、EEZの外であります公海上で、外国船、主に台湾ですとか中国などの大型漁船が、サンマが日本に近づく前にとってしまう、魚をとってしまうということがあるのではないかということであります。

 近年は、資源が枯渇をしておりまして、どの国も不漁だということでありますけれども、参考までに、二〇一四年の国、地域別の公海でのサンマの漁獲量というものが、日本が約六千トンに対しまして、台湾はおよそ二十一万トン、中国は約七万六千トンという数字だったそうであります。

 そこで、北太平洋漁業委員会、NPFCが、二〇二〇年に北太平洋全体で、日本、中国、台湾などの加盟国八カ国・地域におよそ五十五万トンの漁獲枠を導入するということで合意をしました。このうち、中国、台湾の大型漁船が操業する公海に割り当てられる漁獲枠は三十三万トンという決定がなされました。

 この会議の決定で漁獲量それから資源回復の効果というものはどれぐらい見込まれるのかということをお考えでしょうか。

山口政府参考人 お答えいたします。

 先生御指摘のございましたように、本年七月に東京で開催されました北太平洋漁業委員会、いわゆるNPFCの年次会合におきまして、次のことが決定されております。二〇二〇年のサンマの分布域全体の漁獲可能量を五十五万六千トンとするということ、また、公海での漁獲割当て量、TACを三十三万トンに制限する、また、来年の年次会合ではTACの国別の割当てを検討する、こういったことが合意されているところでございます。

 今回の会合でサンマの漁獲数量規制が初めて導入されたということでございまして、外国漁船による漁獲増加を抑制し、今後のサンマの国際的な資源管理を進めていく上で重要な一歩が刻まれたというふうに考えております。

 ことしのこの深刻なサンマの不漁の状況を踏まえまして、サンマの資源管理の強化に向けて引き続き努力してまいりたいと考えております。

石川(香)委員 重要な一歩であるというお話がありました。引き続き努力をしていっていただきたいと思っております。

 このサンマの漁場におきまして、他国の乱獲それから無登録操業というものも問題になっていると思います。日本のEEZに隣接する海域で、数年前から中国を中心とした外国漁船がふえているそうであります。

 水産庁では、二〇一五年に、中国、台湾、ロシア、カナダに呼びかけまして、この北太平洋漁業委員会、先ほどもお話ししましたけれども、創設をしました。そして、操業する漁船の登録制度を始め監視を行ってきたということであります。

 視認をされたうち、どのくらいの割合がこの委員会には未登録の違反船であったのか、教えていただきたいと思います。

山口政府参考人 お答えいたします。

 NPFCでは、サンマ等の資源管理措置の効果を確保する観点から、このNPFCの規則に反する操業を行う漁船を特定いたしまして、加盟国等での入港や水揚げ等の禁止を講ずる、いわゆるIUU漁船対策を実施しておるところでございます。

 我が国では、漁業取締り船を派遣いたしまして、外国漁船の操業状況の監視、情報収集を行っておるところでございまして、このような視認情報をもとに、NPFCではIUU漁船リストを作成しているところでございます。これまでに、三十三隻の外国漁船が違法漁船としてリストアップされたところでございます。

 今後とも、関係国とも連携をしながら、北太平洋公海におけるIUU漁業対策を強化してまいりたいと考えております。

石川(香)委員 三十三隻ということでありました。

 当然、未登録の違反船は水揚げ量を報告する義務はないわけでありまして、資源管理の観点からも、しっかり各国でこういったルール違反がないように連携をとって徹底をしていただきたいと思います。

 サンマはとれないということでありますけれども、一方でマイワシがとれているという状況もあります。ここで、マイワシとサンマの関係性というものについてお伺いをしたいと思います。

山口政府参考人 お答えいたします。

 マイワシやサンマにつきましては、数十年周期の地球規模の海洋環境変動、いわゆるレジームシフトと言っておりますが、これに合わせて大きく資源量が変動することが知られております。

 マイワシにつきましては、寒冷レジームにおいて資源が増大するということが学術論文でも発表されておりまして、マイワシが豊漁の時期にはサンマが不漁となる傾向があると言われております。

 現在、水産研究・教育機構では、仔稚魚の分析や海洋環境等の調査を関係都道府県の協力を得ながら行っているところでございまして、今後も、こういった海洋環境と水産資源の変動との因果関係の解明に向けて、引き続き調査研究を進めていきたいと思っております。

石川(香)委員 ありがとうございました。

 不漁という時期が長いと、当然、漁業関係者の生活も圧迫をされるわけであります。

 ロシア二百海里内のサケ・マス流し網漁が禁止をされました。それを受けまして、サケ・マスの代替漁法とイワシ、サバの代替漁業が行われておりますけれども、この取組状況はどんなぐあいでしょうか。

山口政府参考人 お答えいたします。

 ロシア二百海里水域におけるサケ・マス流し網漁法が禁止されたことを受けまして、平成二十八年から、代替漁法として、ひき網漁法の可能性を探るため、ロシア水域で技術開発及び試験操業を実施してきておるところでございますが、採算水準には届いていない状況でございます。

 今後とも、専門家の意見を聞きながら、採算確保に向けた検討を行ってまいりたいと考えております。

 一方、サケ・マス流し網漁業を行っていた漁業者が、代替漁業として、公海におけるサンマ棒受け網漁業と我が国二百海里水域内でのサバ、イワシ棒受け網漁業の実証化を、もうかる漁業創設支援事業を活用して、今、行っていらっしゃるところでございます。

 サンマ棒受け網漁業につきましては、平成二十八年から昨年までの三年間実施したところ、ほぼ目標を達成いたしましたので、今期の操業からは本格的に公海サンマ操業を実施しているところでございます。

 本年五月から七月の漁獲状況は、ことしのサンマ全体の不調を反映いたしまして、漁獲量は五千三トン、水揚げ金額は三・五億円でございました。

 一方、サバ、イワシ棒受け網漁業につきましては、漁獲量は一万五百九十九トンと昨年の二倍に伸びておりますが、単価が昨年より若干下がりましたので、水揚げ金額は四〇%増の約三億九千万となったところでございます。

 今後とも、代替漁業による漁業経営の安定に向けて、関係業界、北海道庁と連携しながら取り組んでまいりたいと考えております。

石川(香)委員 今、水産業界は転換期なんだと思います。漁法とか漁業を変えるという時期に来ているのではないかと思います。

 ただ、物がとれないと、加工業者も当然、経営的に大変疲弊をしているわけでありまして、漁業者、関連業者の廃業が相次いで漁村地域の崩壊を招きかねない、非常に危機的状況だと思います。

 さきの事故で亡くなった方の中には、御夫婦で酪農のアルバイトをふだんされているという状況だった人もいたそうであります。

 今、共済ですとか積立ぷらすという、加入割合も非常に高まっておりますけれども、ここ数年の不漁で共済は財源がかなり少なくなっているという問題もあります。概算要求ではこのあたりの予算もかなり多く要求されていると思いますけれども、ぜひ国として積極的な支援をする必要があるということを申し述べたいと思います。

 最後の質問にさせていただきます。

 今、国際的な喫緊の問題であります、プラスチック問題を始めとした海ごみ問題についてお伺いをさせていただきます。

 G20でも、海洋プラスチックごみは二〇五〇年までにゼロにするという目標を導入したということで一致をいたしました。今、非常に海ごみを回収していこうという機運が高まっている時期ではないかなと思っております。

 環境団体等も含めて取り組んでいるこの海ごみの回収でありますけれども、海底に堆積した海ごみを回収する手段といたしましては、漁業者の漁業活動での回収作業というものがかなりウエートを占めているのではないかと思います。海の中をこうやってとるわけでありますから、魚と一緒にとる際に、ごみもとれるというわけであります。しかし、陸から流出をいたしまして堆積した海ごみまでも漁業者が水揚げをしてしまいますと、そこの処分の責任まで漁業者が負わされるという実態が散見をされているということであります。

 ここは国がしっかり指導いたしまして、市町村が中心になって、漁業者が回収した海ごみを処分するシステムを構築する必要があるのではないかと思いますけれども、いかがでしょうか。

正林政府参考人 お答えします。

 本年五月に決定した海洋プラスチックごみ対策アクションプランにおいて、漁業者が回収した漂流ごみや海底ごみの処理を促進するため、当省の海岸漂着物等地域対策推進事業や市町村の処理施設の活用等が盛り込まれました。

 六月には、環境省と水産庁で各都道府県宛てに通知を発出し、その旨を改めて周知し、漂着ごみ等の処理体制の構築の推進を検討するよう依頼したところであります。

 今後も、地域の実情に応じて、地方自治体、漁業関係者などの主体が協力して、効果的に漂流ごみ等を回収、処理する体制の構築を後押ししてまいりたいと考えております。

石川(香)委員 政府に対しましては、自治体でかなりばらつきがあるということでありますので、ばらつきが出ないように、全国一律で広げていけるという後押しと、漁業者の方がやる気が出るというような仕組みの後押しをお願いしたいと思います。

 質問を終わります。ありがとうございました。

吉野委員長 次に、緑川貴士君。

緑川委員 皆様、午前中の審議、大変お疲れさまでございます。

 立憲民主・国民・社保・無所属フォーラムの緑川貴士です。

 まずは、このたびの夏の大雨、そして、たび重なる台風の被害によって被災をされた地域の皆様へ心よりお見舞いを申し上げますとともに、家屋の修理そして再建、また、決壊された、あるいは氾濫した河川の改修、そして寸断された道路の復旧や、電気、水道、こうしたライフラインの復旧、さらには避難所の開設、運営、日ごろ、本当に不眠不休で取り組まれてきた御関係の皆様方、そして、今もなお懸命な復旧復興作業に取り組まれているその御活動に対しまして、心よりの御慰労を申し上げます。

 一日も早く平穏な日常を取り戻されることを切に願いながら、そのために必要な、行き届いた、着実に行き届くような支援のあり方、また防災対策のあり方について、本委員会においても真摯に議論を深めていくことをお誓いを申し上げまして、質疑に入らせていただきます。

 この農業被害においては、大雨、また川の氾濫による果樹や野菜、また稲の農地への浸水、さらには、暴風や水流による農業用ハウス、農業施設の破損、倒壊、また農業用のため池や水路の決壊、こうした農業用のインフラを中心に被害も相次ぎました。

 私からは、こうした農業インフラ、今月一日に発動した強い農業・担い手づくり総合支援交付金の被災農業者支援型についてお尋ねをしたいというふうに思います。

 この交付金自体、本来の役割は、産地や担い手の育成、又は発展の状況に応じて、必要な農業機械、また農業施設の導入を支援をしていくというものですが、今回発動することによって、ことし八月の大雨、また台風十号、十三号、十五号、十七号によって農業用ハウスや施設、農業用機械などを被災された方々が、今回この支援の対象になる。

 これらの自然災害による農林水産関係被害額、まず教えていただきたいと思いますが、できれば、水産業、林業を除いた農業被害について教えていただきたいというふうに思います。いかがでしょうか。

岩濱政府参考人 お答えいたします。

 今般の台風第十五号を含めました八月から九月の前線に伴う大雨による被害について、まず、農業用ハウス等の被害については三百二十一億円という数字になっております。激甚指定に向けた被害額ということになりますと、ちょっと手元には水産を含めた数字しか持っておりませんので、また後ほどお知らせしたいと思いますが、全体で八百一億円となっております。

 今後も、農林水産関係被害については、各県の被害報告が進めば更に積み上がっていくものと考えております。

緑川委員 御答弁ありがとうございます。

 農業用ハウスが三百二十一億円ということでございました。

 このトータルの額は、比べますと、やはり今回、報道でも発表されているような、柱となる被災農業者支援型、この活用する交付金の今年度予算額は二百三十億円になっております。この被災農業者支援型だけで、しかも、その予算を全て使えるというわけではありません。先進的農業経営確立支援タイプとかあるいは産地基幹施設等支援タイプなど、既に交付されているものがございます。この被災農業者支援型だけに予算を割けないと思います。

 この支援型だけで使うことができる予算は一体どの程度なのか、交付が内定しているものなども含めて、今の執行状況を教えてください。

横山政府参考人 お答え申し上げます。

 強い農業・担い手づくり総合支援交付金の当初予算、約二百三十億でございますけれども、ごく一部、災害時に備えるということで留保している部分はございますけれども、大宗につきましては、当初要望のあった事業に対して既に執行しているところでございます。

緑川委員 その額を教えていただきたいと思います。

横山政府参考人 まさに災害向けということで留保している予算額は、九億円でございます。

緑川委員 二百三十億円のうち、限られた予算の中で、もちろん、今月から発動された被災農業者支援型、この活用に向けて、やはりこれから、今、現地の被災された農家の皆様からの御報告を待っているところだというふうに思いますけれども、現時点で九億円という数字でございました。

 これは、どこまで執行を見込んでいるんでしょうか。二百三十億円を超えていくのか、あるいはもっと少ない額におさまってしまいそうなのか、今の御認識を伺います。

横山政府参考人 今申し上げましたとおり、災害時用に留保していた九億円というのがございますが、これも含めまして、今回の被災に伴う被災農業者支援型の所要額、これはまさにこれから要望をとって積み上げていくわけでございますけれども、それのために十分な予算額、九億だけで足りるのかという御質問かと思いますけれども、その部分については、我々としては、被災農業者の一日も早いなりわいの再開に向けまして、しっかりと予算を確保していく必要がある、このように認識をしているところでございます。

緑川委員 農業被害額の中で、農業用ハウスの被害額が三百二十一億円というお答えをいただきました。具体的には、その内訳として、台風十五号の被害、農業用ハウスの、私が調べた被害によれば、台風十五号のハウス被害は二百七十一億円です。この内訳を更に見れば、被害件数は、本当に細かいんですが、二万二千件以上に上っております。

 そうなれば、これからたくさんの被害状況の報告ということがやはり想定をされますし、ほかの十五号以外の台風、また大雨のハウス被害額も合わせれば、今の三百二十一億円になるわけです。それに比べて、やはりそれを補助する今の被災農業者支援型、この予算はやはり少ない規模、相当限られた予算になるのではないか。やりくりがかなり厳しいように感じるんですけれども、これで被災された農家全てを支援することができるとお考えでしょうか。

横山政府参考人 二百三十億、これはまさに当初予算でございます。このお金を使って全ての被災された方に対して支援ができるとは考えておりません。

緑川委員 今後、足りなくなった場合に、どのような対応をとっていくと現状ではお考えでしょうか。

横山政府参考人 委員の御指摘は、予算、財源ということかと思います。我々としては、一日も早くなりわいを再開していただく、誰も離農しないようにしていく、そのためのしっかりした支援をしていくということでございますので、それに必要な予算についてはしっかりと確保していくというのが基本的な考え方でございます。

緑川委員 予算の確保、今お言葉をいただきましたので、支援を切れ目なく、長期にわたる復興になりますので、ぜひ御対応をお願いしたいと思います。

 被災農業者支援型の中身、引き続きお尋ねをしたいと思うんですが、活用する場合には、活用を希望する農家に対しては、各市町村の担当課へ今月の二十五日までに被害状況を報告せい、つまり、あすまでにその状況を届け出なければならないというふうに、農水省は出先の農政局を通じて現場に説明をしています。

 この間、台風十九号による相次ぐ被害がありました。混乱が広がっている中で、当然、対応がおくれている地域が出てきています。いまだ被害の全てが明らかになっていないという現状で、本当に、被災された農家、台風十五号だけでもハウスは二万二千件以上です、こうした方々が全て担当課へ被害状況を報告することができるとお考えでしょうか。

横山政府参考人 御説明申し上げます。

 台風十五号等に係る強い農業・担い手づくり総合支援交付金の被災農業者支援型、これについては、委員御指摘のとおり、現在、要望調査を行っております。

 その要望調査の期間につきましては、十月十一日から十二月の二十日までの期間ということで調査を行っております。その調査状況につきましては、何回かに分けて報告を上げてくるという仕組みになっておりまして、その一回目の報告が十月三十日、これは農政局を経て我々に上がってくるのが十月三十日。そこから若干逆算して、そういうことで市町村の方に言っているということかと思います。

 ただ、今申し上げましたとおり、それが何らかの最終的な期限で、それを超えるともはや申請できないとか、そういった性格のものではなくて、その時点までで、じゃ、どれぐらい被害があって要望が上がってくるのかというのを確認するという意味で上げていただくということでやっているところでございます。

 その点について、現地、地元市町村あるいは農業者の方々に誤解のないように、我々としても改めて周知をしっかりしてまいりたいと思います。

緑川委員 その改めてというのが、実は初めて聞きましたというような現場の農家さんもいらっしゃるんですね。締切りを過ぎたらどうなるのかというお問合せを、私自身、いただきました。こういう現場の声があります。

 農水省も、今年度中、現場の要望調査を続けるということですし、来月以降も被害状況を届け出るタイミングがあるということについても、被災された農家へ、ぜひわかりやすい形で周知をお願いをしたいというふうに思います。

 この周知が足りなかったために、結局は報告を急がせる格好になって、それを今回だけだというふうに誤解をされて、本来適用されるべき被害の状況に漏れが出て、結局活用金の交付がなされなかったというようなことがあってはならないというふうに思いますので、ぜひ、来月以降に対する周知も丁寧に御報告をお願いをしたいというふうに思います。

 また、この活用の中身、引き続きなんですが、農業用ハウス又は施設、また機械、こういう再建に当たっての一歩目が、やはり壊れてしまったものの片づけや解体、また撤去作業です。こういう一連の負担を軽くするのが被災農業者支援型の活用なんですが、活用した場合の事業についてもお尋ねをしたいと思います。

 今年度中に工事を完了しなければならないというふうに、農水省、現地で説明をしているというふうに私は聞いておるんですが、これは必ずそうしなければならないんでしょうか。

江藤国務大臣 お答えをさせていただきます。

 本事業は単年度主義でありますから、基本としては、御指摘のように年度内に完了させるというのが原則ですけれども、もう昨今は非常に大きな災害が頻発しておりまして、熊本とか西日本豪雨とか、私の地元でも台風二十四号でハウスが随分やられました。そうなると、なかなか資材等が調達できないとかいろいろな事情があって、年度内に終了できないという事情は各所で頻発をいたしております。

 そういうことでありますから、繰越制度はありますので、これを活用していただくということで、実施期限を延長することも、これまた可能でございます。

 ですから、どうも我々の周知が十分でなくて現場には御理解がいただけていないということでありますから、反省を込めて、もう一度、皆様方に御説明をしっかりさせていただきたいと思います。

緑川委員 査定前の着工がもちろん可能であるというふうにいっても、やはりハウスの大小、規模もございます。修復も難しいほどに壊れたハウス、これは解体業者が、これだけ相次げば、やはり対応に追われています。人手が足りない、だから発注をかけても順番待ちで片づけが進まない、だから撤去も進んでいかない。また、その先の再建についても、再建の工事をお願いするにしても、やはり再建業者、施工業者が手いっぱいで、こちらも順番待ちの状況。

 こういう、業者の人手が追いついていない、そもそもの費用の見積りさえもとれていないという状況がある中で、施工のスタートがやはりおくれてしまう、そうしたところが多いと思います。

 今年度中の施工を終えることができないところが現実にやはり私は出てくるんじゃないかなというふうに思いますが、大臣からは心強いお言葉をいただきました。今年度中に工事を終えられない場合の何か、デメリットではないですけれども、現場にとってどういう影響があるのか、確認をさせていただきたいと思うんですが、いかがでしょうか。

江藤国務大臣 現場にとっての影響と言われると、ちょっとなかなかお答えが難しいんですが。

 正直、十五号が起こったときに、我々が最初に取り組んだのは、再建のための資材をメーカーの皆さん方にお願いをして、しっかり確保してくれというお願いをしました。

 資材については比較的、十分対応できますという、各メーカーさんからお返事をいただきましたが、御指摘のとおり、撤去する人手、いわゆる働く人ですね、それから再建するときの施工業者、そして、特に十五号のときは茨城、千葉でしたけれども、非常に基礎が、ねじ込み式の基礎になっていまして、私のところなんかは台風銀座ですから、コンクリートの基礎を必ず打っているんですよ。ですから、コンクリートの基礎を打つようなハウスの再建ということになれば、また少し手間も余計にかかりますし、ですから、資材が手に入ってもなかなか査定が追いつかない、施工に及ばない。

 それは熊本地震でもそうでした。最初に行ったときに御陳情いただいて、それから数カ月後に行っても、まだ全く、いつから再建されるかめどが立たないというハウスがたくさんありましたので、なるべく、これは物理的な問題で難しいですけれども、しっかりいろいろな方々に働きかけをして、少しでも早く農家の方々が、ああ、再建に向けて一歩踏み出せたんだなと思えるような体制を築いていきたいと考えております。

緑川委員 大臣おっしゃるように、施工のやはり品質、質をどこまで求めていくのか、現場の被災された農家の要望もあると思います。相次ぐ災害の中で、もっと強靱な強いハウスが必要であるというふうに思えば施工にも時間がかかりますし、資材調達もやはりそれだけ難しくなる面も出てくると思います。

 確かに、生産現場は営農を続けたいが計画が今のところ成り立ちにくい、また、来年の作付が間に合っていかないという御不安の声を受けて、行政がスピード感のある支援をしていくことは非常に大切であると思います。

 一方で、施工をやはり前倒しで進めていきたい業者もいると思います。人手が追いつかない、失礼な言い方をするかもしれませんが、ちょっと手荒な施工になってしまうようなケースというのは防いでいかなければならないと思います。施工の品質が低下をするようなことがあっては、やはりならない。

 単年度事業であるので、積極的な繰越しというのを避けたいというのはもちろん思いとしてあると思いますけれども、着実な再建のために、事業を完了する期限を、事業者あるいは被災された農家が安心できるように、やはり柔軟に対応していくことができるというふうに発信をしていくことも必要であるというふうに考えておりますが、このあたり、大臣はいかがでしょうか。

江藤国務大臣 長年農政にかかわってきた人間として、非常に農林水産省としても政策的にもすばらしいことをやっているという自負と自覚があっても、現場にそれが十分に伝わっていない場面というのはたくさん、これまで経験してまいりました。

 特に、今回のような被災における場合においては、非常に将来の営農に対する不安を抱えておられるわけですから、先ほど午前中の、今も午前中ですね、与党の質疑の中でも、逆引きというような話も出ました。

 ですから、いろいろなチャンネルを使って、自分はこういう不遇な目に遭っているんだけれども、国の施策としてどういうものが利用できるのか、そういうものにアクセスしやすいようにするように。そして、総理から言われているのはプッシュ型の支援ですから。プッシュ型というのはこっちから押していくということでありますから、農家のところに行って、このような、このようなメニューがあります、これをお使いになったらいかがですかというような丁寧な説明を心がけるように、指導してまいりたいと思います。

緑川委員 ぜひ、与野党を超えて、そうしたプッシュ型、しっかりと、月並みな言葉になってしまいますけれども、やはり地域に寄り添う支援を常に意識しながら取り組んでいくことが大切であるというふうに思います。

 この被災農業者支援型の事業とあわせて、組み合わせる形の環境省の災害廃棄物処理事業についても触れさせていただきたいと思います。

 これは、被災した農業用ハウスの処分の流れの中でこの二つの事業が組み合わさっていますが、もう一つの災害廃棄物処理事業、これは補助の対象として、どのような今、認定の状況なのか。認定はどこまで進んでいるんでしょうか。

松澤政府参考人 お尋ねいただきました被災した農業用ハウスの処理でございますけれども、環境省と農林水産省の事業連携で応援をしていこうということで、具体的には、被災した農業用ハウスを集積所まで運搬するために農家の方が業者へ発注した費用について農林水産省の方で、集積所から後の処理を市町村が実施いたしまして、この処理費用について環境省が応援をさせていただきます。

 この補助事業のスキーム全体につきまして、農林水産省さんと私どもで全国六都県、九カ所で説明会を実施させていただきまして、自治体の職員、農協の皆様に御説明させていただきました。現在、千葉県や茨城県の複数の市町村で、こういった応援スキームも活用して処理が始まっているところ、進んでいるところというふうに認識しております。

 引き続き、この事業を活用して応援をしていきたいと考えております。

緑川委員 六都県、九カ所での説明会、また、さらなるやはり周知が必要であるというふうに思いますが、この災害廃棄物処理事業、国が費用の半分を持ち、残りは特別交付税、四割ほどで賄う。その更に残りとなる面については自治体が負担をする。つまり、現場の農家の負担はゼロになる、こういう仕組み、現場にとってはありがたい仕組みでありますけれども、それが機能するのかどうかというところを少しお尋ねをしたいと思います。

 例えば、ハウスの廃プラスチック。被災面積が非常に大きくなっています。そして、量も多い。こういう中で、これが、災害廃棄物として置き場所が足りないために、自治体として受け入れられないというようなお話も聞いています。自治体として物理的に容量を超えて処理が難しくなるような、こういう災害ごみ。

 仮に、この定義のように、生活環境を保全する観点で問題があるとすれば、それは災害廃棄物の処理の対象になるはずなんですが、容量が不足しているために、置き場所がないために自治体が災害廃棄物として受け入れることができないというような場合には、補助の対象にならないんでしょうか。どうなんでしょう。

松澤政府参考人 お答え申し上げます。

 災害廃棄物処理事業補助金、これはもともと、家の家財道具が水につかって汚れたり壊れてしまって使えない、こういう形で被害に遭われた住民の方々が災害廃棄物を片づけて出されると、これは極めて大量になりますので、この処理事業費を国として補助させていただく、こういうスキームでございます。

 今回は、農家の農業用ハウス、かなり被災をされていますので、これを長期間放置されますと、また新たな災害が来れば被害も拡大します。長期間放置されると周辺環境に問題が出てまいりますので、私どもは、ここは市町村でぜひ、住民から出てくる災害廃棄物と同じように処理をしていただけるように、この補助金の活用をお願いをして、説明会も行っております。

 こういう形でやっておりますけれども、先生御指摘のように、仮置場が家財道具でいっぱいだということもございます。したがいまして、農水省さんとも相談をして、農業用ハウスについては、例えば地元のJAの方々、生産農家の皆様で相談をしていただいて、別の集積所を設けていただく、こういうようなこともアイデアとして出しまして、家財道具でいっぱいの仮置場、ここになかなか持ち込むというのは難しゅうございますので、別の集積所を確保していただくとか、そういう形で、いろいろな知恵を出しながらやっていきたい。

 その処理先についても、県内とかで処理ができない場合は、そういう場合もございますので、私どもまた、農業用ハウスも含めまして、全国的に広域的に処理できるよう、処理先の確保については努力してまいりたいと思います。

緑川委員 やはり、自治体として、もう物理的な処理の容量を超えているところがございます。そういうところに対して処理先を確保してもらうように、政府として何かイニシアチブ、措置をとるというようなことはお考えでしょうか。

松澤政府参考人 農業用ハウスにつきましては、ふだんは市町村のごみ処理施設で処理は行われていないことがほとんどだと思います。

 今回の農業用ハウスについて、全国の民間の廃棄物処理業者の力を活用していただく必要があるかと思っておりますので、例えば千葉県さんとも御相談しながら、県内で処理できるものは県内で、それが処理できない場合には全国の、これを処理することのできる廃棄物処理業者の処理施設、こういったものを国としても算段をしまして、県あるいは被災市町にお伝えをしていきたい、農家の方々にお伝わりするようにしてまいりたいと思っております。

緑川委員 本当に、どんどん災害ごみというものは膨らんでいきます。生活環境への影響は、やはり量が大きくなれば多いほど影響は甚大になると思いますし、敷地がやはり限られているという状況を国として打破をしていかなければならないというふうに思います。特に台風十九号では、堤防の決壊、瓦れき、こういう災害ごみも出てきていますから。たび重なる被害で発生したこういうごみ、その置場がやはり足りなくなることへの対応を、先を見越した対応をお願いをしたいというふうに思います。

 台風十七号の被害までについて伺っていましたが、台風十九号による農林水産関係の被害額、きのうの時点で八百七十億円、全国三十七の都府県。この八百七十億円は更にふえていく見込みになります。

 この台風十九号は、激甚災害に指定された自治体の数だけで見れば、東日本大震災の規模を超えております。こういう台風十九号の被災された農家に対しては、今回の、ちょっと環境省の事業と、また少し戻るんですが、被災農業者支援型の活用というのは考えているんでしょうか。

横山政府参考人 今回の十九号で被災をいたしました農業用機械でありますとかあるいは農業用ハウスに対する支援につきましては、十五号等で行いました支援策、その中には委員御指摘の被災農業者支援型の総合支援交付金も含まれるわけですが、それを基本として、しっかりした対策を講じるよう検討を進めているところでございます。

緑川委員 先ほどから、るる、台風のこうした被害の予算確保についてのお話もさせていただきましたが、こういう農業被害に対して、活用の検討についてはやはり早々に結論を出していただきたいというふうに思いますし、環境省始め省庁横断的な対応で、被災された農家の負担を最小限に減らしていくことをぜひ求めていきたいというふうに思います。

 今後の防災対策の一つにもなると思いますが、被災したハウス、やはり非常に多いです。全国には、耐候性が十分でない、つまり、自然環境に長く耐え得ることが十分でないような、耐候性が不十分な農業用ハウスがたくさんあると聞いております。

 農水省で、全国で一体どこまで把握をされているのか、お尋ねをします。

水田政府参考人 農林水産省では、昨年の豪雨、台風などにより農業用ハウスに甚大な被害が発生したことを踏まえまして、ハウスは野菜の安定供給のための重要なインフラであるという認識に立ちまして、委員御指摘の、十分な耐候性のない可能性があるハウスの緊急点検というものを行ったところでございます。

 その結果、全国のハウスのうち、耐候性が十分でなく補強などが必要なハウスは約九千ヘクタールあることが判明をしたところでございます。

緑川委員 その九千ヘクタール、全体の割合のうち、どのぐらいなんでしょうか。

水田政府参考人 お答えいたします。

 日本における農業用ハウスの設置面積でございます。農業用ハウス全体で四万三千二百二十ヘクタールございまして、そのうち鉄骨のハウスが九千七百三ヘクタールというものでございます。パイプハウスが三万三千五百十八ヘクタールというものでございます。

 全体として、先ほど申し上げました、四万三千二百二十というのが全体のハウスの数量ということになっております。

緑川委員 少なくとも、こうした耐候性が十分でない、まだまだ全容はわかりませんが、いずれにしても、今の数字、お答えをいただくと、二割以上のハウスについて強度が不十分であるというふうに受けとめております。

 こういうハウス、これから、いつどこでも起こり得る大きな災害に対応していくために、現場で補強をしていくことがやはり求められます。その農家負担については、国で、農業用ハウスの補強については、持続的生産強化対策事業とか農業用ハウス強靱化緊急対策事業などがあるということなんですが、いずれにしても、自己負担が求められます。

 例えば、この持続的生産強化対策事業は、自力施工で再建をする場合ですが、壊れたハウスの撤去費用は半分は、新しいハウスの資材購入費は半分は国が出しますけれども、残りの半分は自己負担であります。

 この数年の間に、激しさを増している災害に備えて、既に補強してローンを組んだ農家がいますが、今回被災されています。ローンを組んで補強した、そういう施設さえも今回のすさまじい台風によってやはり壊されてしまって、それを建て直すには、また更に多額の費用がかかります。

 自分の後継者も今は一緒に頑張っていて、後には引くことができない。ローンをもう一度組む、再び組む、多重に債務を組む、こういう方がやはりふえています。

 日本の農業生産を意欲的に支えている農家がこれからも営農を続けていくために多重に債務を抱えるというようなケースがふえているということに対して、最後に、政府の御認識、御対応について伺いたいと思います。

江藤国務大臣 先ほどもお答えを一度させていただきましたが、非常に、二重債務に陥ることは大変なことだと思います。しかし、意欲を持って再建に取り組まれるということであれば、今借りているところのいわゆる返済を猶予していただくように、こちらの、農林省の方から当該金融機関に要請をする、それから、負債の借りかえ、先ほど申し上げた政策金融公庫の〇・〇六%の低い金利のものに借りかえていただく、そういったことを通じて支援をさせていただければと思っております。

緑川委員 時間が来てしまいましたので締めますけれども、やはり現場の費用負担を軽くしていく、金融面からも。そして、ハウスの建造費用についても、このところは資材を、コストを抑える、部材を減らすことで、しかも頑強な素材を選ぶことでコストを二、三割抑えて開発されているハウスもございますけれども、いずれにしても、非常に大きな、数十万から百万単位のお金がかかる。こうしたことをぜひ念頭に置いた支援を行っていただきたいということを求めて、質問を終わります。

吉野委員長 次に、亀井亜紀子君。

亀井委員 立憲民主・国民・社保・無所属フォーラムの亀井亜紀子でございます。

 内閣改造後、初めての質問になります。よろしくお願いいたします。

 質問に先立ちまして、このたびの台風十九号で被災された地域の皆様に心よりお見舞いを申し上げます。

 特に東北、例えば福島ですとか宮城県の方は東日本大震災も経験されていて、まだ復興半ばでまた被災されたということで、大変、私も心を痛めております。一日も早い復興、そしてそれに政府が全面協力することをお願いいたしまして、質問を始めさせていただきます。

 それでは、初めに、日米貿易協定について質問をいたします。

 今、私は日米貿易協定とさらっと言いましたが、この言葉を聞いたのは、つい先日の日米合意があった、そこからです。

 報道では、日米貿易交渉は続けられているということですけれども、いきなり、日米物品貿易協定という言葉にかわって、日米貿易協定とデジタル貿易協定という二つが出てまいりました。そのことにまず違和感を覚えた、それが私の今回の第一印象です。

 昨年のこの委員会で、日米物品貿易協定というのはおかしいのではないかというのを、私は原文を、和文と英文とお配りして、この委員会でかなり突っ込んで質問をいたしました。そのおさらいも含めて、きょうは配付資料を皆様に用意いたしました。

 そこで、私の質問なんですけれども、昨年は、日米物品貿易協定ではないんじゃないですかと言ったんです。つまり、日本語の文章では、きょうお配りした文章、一枚目の三番ですけれども、「日米物品貿易協定(TAG)について、また、他の重要な分野(サービスを含む)で」というふうに「また、」で前後が分かれているけれども、英語の方の文章では、二枚目の三番、これは去年もこうやって線を引いたわけですけれども、「ジャパン ユナイテッド ステーツ トレード アグリーメント オン グッズ」、その後、「アズ ウエル アズ」、ここが同格ですから、それでその後、「オン アザー キー エリアズ インクルーディング サービシーズ」なので、全て一つの交渉ですよということを申し上げたんです。それに対して、いやいや、物品貿易協定ですと政府側は言い張ったんですけれども、今回は逆ですよね。

 中身を見ると、自動車と自動車部品ですか、関税はアメリカは下げていませんけれども、自動車と農産品のことしか書かれていない。それについて日米貿易協定と名づけること自体、おかしくないですか。日米貿易協定といったらFTAですよね。包括的、さまざまな分野が入っていなきゃいけない。去年も、二十二項目、アメリカ側は交渉目的を発表していますよという質問をしたんですけれども、その中で、いやいや、物品ですと言い張った。

 今回、日米物品貿易協定じゃないとおかしいんじゃないですか。なぜ物品を取ってしまったのか。まず、そのことを内閣府にお尋ねいたします。

中山大臣政務官 済みません、外務省の方でお答えさせていただきたいと思います。

 昨年九月の日米共同声明では、工業品と農産品について対象にし、そのほか、早期に結果を生じ得るものを対象にする、その旨で合意をいたしました。当該共同声明に沿って工業品と農産品の交渉を行い、本協定の名称を日米貿易協定とすることとなったものでございます。いずれにせよ、本協定は日米の物品貿易に関する協定でございます。

 また、そのほか、早期に結果を生じ得るものとして、今回、日米デジタル貿易協定に合意しております。

 本年九月二十五日の首脳共同声明では、今後どの分野を交渉するのか、その対象をまず協議することとしており、また、協定を結ぶか否かも含めた交渉の結果は何ら予断しておりません。よって、今回の共同声明のパラグラフスリーでは、包括的FTAに向けた交渉を約束したものではございません。

亀井委員 済みません、外務省と内閣府の担当部署がどういうふうに分担しているのか、私も詳細はわかりませんので、それは状況に応じて御答弁していただければと思います。

 今の御回答ですけれども、では、次の質問ですが、なぜ、デジタル貿易協定、これを別の協定にしたんでしょうか。

 つまり、日米貿易協定の中に含まれてしかるべきなんですよね。そして、今回結ぶものは、先ほど申しましたとおり、日米物品貿易協定なんですけれども、この論理でいきますと、今後、例えば日米投資協定だったり、日米知的財産協定、労働協定、為替協定というように、分野別に全部個別の協定ができてしまう、そういうことになるんですけれども、なぜデジタルだけ切り出して、また物品だけ切り出して、さらに、日米協定という名前なのか、今後の交渉のプロセスはどう考えておられるのかということについて、では、もう一度、外務省に伺います。

中山大臣政務官 お答えします。

 日米デジタル貿易協定は、円滑で信頼性の高い自由なデジタル貿易を促進するためのルールの整備を目的とする協定でございます。物品関税の撤廃、削減を規定する日米貿易協定とは性格が異なることから、別途の協定といたしました。

 また、本協定はデジタルデータの取扱いなどのルールの面の整備を目的としたものであり、サービス貿易の自由化を規定するものではありません。

亀井委員 いわゆるFTAに含まれる分野の一つであって、他のケースと異ならないと私は思います。そして、それは、米国通商代表部、USTRが発表している二十二の交渉目的の一つですよね。電子商取引・国境間データ流通、ここの部分が切り出されて今回のデジタル貿易協定になっていると感じています。

 そして、今回の合意文書で、また次の交渉の可能性が記されております。それは、きょうのお配りした資料では四枚目になりますが、この三番のところで、なぜかまた関税と書いてありますし、他の貿易上の制約、サービス貿易、投資に係る障壁と、ここに頭出ししてあるので、この分野が次に入ってくるのではないか、そう読めるわけですけれども、じゃ、もう一度、外務省に伺います。いかがでしょうか。

中山大臣政務官 お答えします。

 今後、どの分野を交渉するのか、その対象をまず日米間で協議することとしております。その後の交渉では、協定発効後に行われる協議において日米双方が合意したものについてのみ交渉することになっています。

 次の段階の交渉が日米双方の利益にかなうものとなるよう、まずしっかりと協議、コンサルテーションを行う考えでございます。更に交渉するとしても、我が国の国益に反するような合意を行う考えはございません。

亀井委員 私は、この文章を見て、まだ交渉途中であろう、その交渉途中のFTAを部分的に、まだ分野別に一部合意しただけなのに、それを協定という名前をつけて切り出してしまった、そういうふうにしか見えません。

 それで、きょうお配りしている最初の、去年の日米共同声明ですけれども、その四番で、「日米両国はまた、上記の協定の議論の完了の後に、」と、議論の完了と言っているだけなんですよね。議論の完了ですから、これは協定である必要はないわけなんです。

 二枚目の、これの対訳に当たる部分ですけれども、四番、対訳というか原文ですね。これも、「フォローイング ザ コンプリーション オブ ザ ディスカッションズ」なので、これも議論の完了なので、別に、そこの部分の議論が完了したということだけを指すものであって、協定である必要はないです。

 なので、本当にこれは、今回協定にして、一体この後どうするんだろうかと、全く意味がわかりません。

 外務省、今後の方針についてもう一度、御説明いただけますか。

中山大臣政務官 今回の共同声明では、今後どの分野を交渉するのか、その対象をまず協議することとしており、その後の交渉では、協定発効後に行われる協議において日米双方が合意したものについてのみ交渉することになっています、繰り返しで恐縮ですが。

 いずれにせよ、次の段階の交渉が日米双方の利益にかなうものとなるよう、まずしっかりと協議を行う考えであり、交渉するとしても、我が国の国益に反するような合意を行う考えはございません。

亀井委員 なかなか、内閣改造でかわられたばかりで、いろいろと大変かと思いますし、これは突っ込むとかなり時間がかかりますので、次の質問に行きたいと思います。

 と申しますのは、ほかにもたくさん質問したいことがあります。この協定に関してです。

 昨年の議事録を持ってまいりました。今の関連なんですが、これは私が、農産物の関税の先行引下げなんていうことはないですよね、やらないでくださいねということを申し上げて、当時の内閣府と農水省、両方に伺いました。

 田中副大臣は、「農産品だけが先に、先行して関税をということではない。これはやはりTAG、日米の物品貿易協定の中で、全体としてのパッケージとして締結する、こういうものと確認をしているところであります。」、そうお答えになって、その後、吉川国務大臣が、「ただいま内閣府の田中副大臣からお答えをされたとおりであろうと私も承知をいたしておりますが、この交渉はどこか特定の分野を先にやるわけではないと思っておりまして、パッケージで決められるものと承知もいたしております。」、これが、ことしですよ、ことし、令和元年五月八日の御答弁でありました。

 今大臣がかわられたわけですけれども、大臣はこの御答弁を継承されますでしょうか。

江藤国務大臣 農産物のみ、例えばSGの設定とかですね、そういうものがされているのであれば、それは違うと思いますけれども、自動車部品とか自動車関税とか、最終的な、先送りになったという御指摘の部分もあるということであるから、包括的な合意には至っていないんではないかという御指摘だと思いますが、しかし、鉱工業製品の中にも最終的な合意に至った部分もあるわけでありまして、それをもってして、私は、前大臣の御答弁を継承する立場にあると考えています。

亀井委員 私は、前大臣がおっしゃっていたこととは違うんじゃないだろうかと。

 そして、私が想像していたのは、農水省としては、パッケージで交渉してほしい、切り出さないでほしいと思っていたけれども、全体の交渉の中で切り出されてしまった、ふたをあけてみたらこうなっていたということなのではないかと思っていたんですが、ただ、先ほど、ほかの方への御答弁でも、農水省にベッドを持ち込んで、交渉に日本からいろいろ参加しておられたということだったので、交渉に参加しておられたんだなという認識で私は、それではまた御答弁いただければいいと思うんですけれども、そういうふうに私は感じました。

 そこで、今の関連で伺いますけれども、結果として、自動車と自動車部品の関税撤廃は約束をされていないわけです。ですから、日本側としてはとれていない。それに対して、日本は農産物の関税の引下げをTPPレベルまで約束したわけで、農水省としては何か得られたものがあったんでしょうか。

江藤国務大臣 私とこのTPPとのつき合いはすごく長くて、もともとは聖域なき関税撤廃から始まって、私は強烈な反対運動をいたしました。その後、いろいろあって、私が……(発言する者あり)与党はやじらないように。その後、私が副大臣になったときに、安倍総理がオバマ大統領と何か聖域があるんだという合意をされて、ワシントンからお電話いただきましたけれども、そのときは本当にびっくりして、正直な感想としては、それじゃTPPじゃないじゃんと思いました、最初聞いていた話と違うので。で、その後、結構やさぐれまして、地元に帰って、これはもう自分としてはちょっと立っていけないということであれば、もう副大臣もやめよう、必要であれば自民党をもう一回離党しようかという話を後援会の幹部としたことも、まあ、こういう話はもうやめますね。

 やめますが、しかし、今回の内容については、とれたものもあるんですよ、日本として。日本としてとれたものもあります。

 例えば、農産品についても、長芋とかいろいろありますし、しょうゆとかいろいろありますし、全然とれていないわけではない。それから、先ほどからお話ししていますように、六万五千五トン、WTO枠についてアクセスできる部分については非常に夢が持てるというふうに思っています。今まで四・四セントの枠というのは二百トンしかなかったわけですから、それが六万五千五トンまで広がれば、日本の畜産にとっては非常にいいことでありますので。

 確かに、SGについてはいろいろ御意見もあるだろうと思います。しかし、米についても大変強い交渉力を持って、調製品についても頑張っていただけましたし、私は、全体として、農林水産省の合意内容も、政治家としても、農水大臣としても、受けとめられる内容にとどまったと思っています。

亀井委員 自民党の中でTPPに強く反対しておられて、今、意見が、見方が変わった方の御意見というのを初めて伺いました。

 私もTPPの交渉の話が出たときに超党派の議連で反対の方に入っておりまして、当時、自民党は、加藤紘一先生、お亡くなりになりましたけれども、加藤先生がトップでされていたときからの話ですので、なぜ自民党の皆さんが変わったのかというのがよく私はわからなかったんですね。本当にこのテーマはかなり、議論し出せば私も長くなりますし、いろいろ質問したいこともございますけれども、初めて、なぜ見方が変わったのかということを伺いました。

 それで、済みません、全然予定どおりにいっておりませんで、時間が尽きないんですけれども、この交渉についてですが、日米貿易協定なるもの、これはWTO違反ではないかと私は思います。

 といいますのは、例えば、二〇一八年度の日本から米国への輸出総額は十五兆四千七百二億円だったんですが、そのうち、二九%が自動車、六%が自動車部品、六%が原動機です。つまり、自動車と部品を除いた関税撤廃率は五九%です。そうすると、WTOが求める約九〇%にはほど遠いので、もうこの時点で、日米貿易協定というのは、実際には物品貿易協定ですけれども、WTO違反ですよね。

 このことについて、外務省は一体どう説明するんでしょうか。

中山大臣政務官 お答えします。

 ガット第二十四条、実質上全ての貿易の具体的な判断基準は確立されておりませんが、我が国としては、貿易額のおおむね九割の関税撤廃を一つの目安としております。

 日米貿易協定における関税撤廃率は、本協定で新たに譲許される品目に、WTO協定の枠組みのもとで無税としているものを含めれば、貿易額ベースで、日米それぞれ、約八四%と九二%となっております。

 したがって、本協定はWTO協定と整合的であると考えております。

亀井委員 先ほど具体的に私、申し上げましたけれども、八二%、九二%というのは、全然、もう架空の数字であって、実際には、去年の数字で見ると五九%なんです。

 ですので、仮にこの場でほかの数字を出せたとしても、国際的にはこれは通用しないんですよね。なので、各国に対してどう説明するんですかということなんです。

 それで、TPP11、CPTPPの方にも行きますけれども、もともと、TPP11、アメリカが離脱した後でこれを、それこそ日本が主導して、呼びかけてまで締結したのは、あくまでも多国間の枠組みで貿易のルールを決めるんだということで各国に呼びかけたはずなんです。ところが、一方で、日米の二国間の協定を始めてしまった。これだけでも、CPTPPの参加国は恐らくおもしろくないだろうと思いますよね。

 アメリカが抜けた後のTPPで大分魅力がなくなった、わざわざ締結する必要があるんだろうかと思っていたところに、日本が率先して国際的な枠組みでいきましょうと言ったのに、締結した後で、日米で直接に交渉を始めた。でもまだ交渉でしたけれども、これをいよいよ締結をします、それはWTO違反ですとなったときに、他のTPP11参加国にどう説明をされるんですか。

 そして、先ほどから、TPP12協定の時点で決められたセーフガードの日本の発動枠、それの再交渉の申入れをいつするのかという質問は、この委員会でも何度も出ているんですけれども、その申入れはされるんでしょうか、伺います。

 済みません、WTOの方は外務省にまず伺います。

中山大臣政務官 もう一度繰り返しますが、日米貿易協定の関税撤廃率は、本協定で新たに譲許される品目に、WTO協定の枠組みのもとで無税としているものを含めれば、貿易額ベース、二〇一八年で、日米でそれぞれ、約八四%と約九二%となっております。

 したがって、本協定はWTO協定と整合的であると考えております。

 さらに、自動車・自動車部品について、単なる交渉の継続ではなく、さらなる交渉による関税撤廃を明記しております。

 すなわち、さらなる協議は、関税撤廃がなされることを前提に具体的な撤廃期間等について交渉を行うものであり、関税撤廃率に加えることは何ら問題ないと考えております。

亀井委員 まだ交渉で決まっていないことを数字に含めてしまうというのは間違いだと思いますし、アメリカは、自動車部品、自動車の関税撤廃、約束していません、明記していません。今、明記しているとおっしゃいましたけれども、原文は、サブジェクト・ツーと書いてあるので、サブジェクト・ツー・ネゴシエーションズなので、交渉によると書いてあるのであって、約束はしていません。そこは正確に伝えていただきたいと思います。

 いかがですか。そう書かれていますよね。

中山大臣政務官 お答えします。

 今般の日米貿易協定では、米国の自動車・自動車部品について、さらなる交渉による関税撤廃を協定に明記したと考えております。

 すなわち、本協定においては、第五条1が各締約国は附属書1又は附属書2の規定に従って市場アクセスを改善するとの両締約国の義務を規定した上で、それぞれの締約国の附属書において市場アクセスの改善に関する具体的な仕方を記載をしております。

 そして、米国の附属書においては、自動車・自動車部品について、関税の撤廃に関して更に交渉すると規定をしており、米国が第五条1の規定に基づく市場アクセスの改善を行うに当たって、この規定が具体的な仕方の一つとなっています。

 したがって、自動車・自動車部品については、関税撤廃がなされることを前提に、市場アクセスの改善策として、その具体的な撤廃期間等について今後交渉が行われると考えております。

亀井委員 政務官、英語の原文をごらんになった方がいいかと思います。そう書いてないです。

 次は農水大臣に質問させていただきますが、先ほどのTPP11のセーフガードの再交渉の申入れについてなんですけれども。

 私が申しましたとおり、そもそも、TPP11の参加国は、自分たちに多国間の枠組みでやろうよというふうに誘っておいて、その後、日米が直接に協定を結ぶということ自体、快く思っていないだろう。私がオーストラリアであったらそう思いますよね。何だ、日本、言っていたことと違うじゃないかときっと思うので。ただでさえ気分を害しているところに、セーフガードを見直してもらえませんかといって、更に相手にとっては損をする話であるのに、交渉に乗ってくるとはとてもとても思えないんですけれども、そのあたりはどのようにお考えでしょうか。

 また、もう一つ、先ほど石川委員の質問のときに、セーフガードを発動した後、交渉で発動基準を上げる方に交渉するというような御答弁があったんですけれども、本来、セーフガードというのは国内産業を守るために発動するので、そこまで輸入が急増したのであったらば、守るという意味でいったら下げるか、あるいはそのままでもいいんですけれども、上げるというのは守ることになっていない、国内産業を守ることになっていないので、そもそもセーフガードの考え方としておかしいんじゃないかなとさっき感じたんですけれども、御質問いたします。

江藤国務大臣 まず、11がどのように感じるかについては、それは、こうじゃないかなと私も思うところはありますが、こうだろうということはきょうは避けさせていただきます。ただ、御指摘のとおり、なかなか簡単なことではないだろうと思いますが、しかし、やらなければならないと思っています。

 これは内閣官房がやることにはなりますけれども、我々農水省としても、他人事ではありませんので、あらゆる窓口とかタイミングをつかまえて、私としても、農林省を挙げてしっかりサポートしていきたいと思っております。

 それから、もう一つの、TPP11の方も、12を合意した時点でSGの水準は毎年上げていくという内容になっているわけですよ、SGの発動水準は。それに倣わなければ仕方がなかったということだと御理解いただきたいと思います。

 私の気持ちとしては、それは、おっしゃるように、更にSGを下げられればいいと思いますよ。思いますが、ただでさえ二〇一八年現在で二十五万五千トンの輸出実績が日本にあって、それを茂木大臣が二十四万二千まで下げてくれたというのは、かなり私はスーパーゴールだと思っているんです。それに五千トンを足しても、まだ二十五万五千の二〇一八年の水準に届いていないじゃないですか。

 ですから、正直、SGの発動水準が毎年五千トンずつ上がっていくことはよしとはいたしませんが、ただ、その一方で、日本からも、繰り返しになって恐縮ですけれども、EUとか中国とか、アメリカのWTO六万五千五トン枠とか、いろいろなものにアクセスしていけば、何が肝心かというと、国内の畜産経営に対して影響が出るか出ないか、これが一番私が関心のあることであって、例えば、具体的に言うと、枝肉の値段が暴落をする、子牛の値段が暴落をする、そういったことが起こらないようにすることが私の責務ですので、その範囲内においては何とか許容範囲におさまっているというふうに考えております。

亀井委員 江藤大臣はもともとTPPに強硬に反対しておられて、農家の気持ちも代弁しておられると思うので、せっかく農水大臣になられたんですから、ぜひこれは頑張って闘っていただきたいと思いますので、よろしくお願いいたします。

 次の質問に移らせていただきます。

 私がどうしてこんなに国際交渉に突っ込んだ質問をするかといいますと、食料自給率を上げることがやはり国の農政として大事だと思っているからです。

 そこで、最近気になっておりますのが、食料自給率だけではなくて、食料自給力という言葉も聞こえてくるようになりました。これはまだ耳なれないんですけれども、食料自給力という言葉を使い出したのはいつからですか。

 そして、その自給力の定義、そして食料自給率と自給力の違いというのは、これは、自給率は出ていますけれども、昨年度は三七%ですけれども、自給力というのも数字で出ているようなものなのか、単にイメージであるのか、御説明いただけますか。

江藤国務大臣 平成二十七年の基本計画から使われ始めたというふうに、済みません、今教えてもらいました。

 農地とそれから担い手、人ですね、それから技術、この三要素によって構成されているということでございます。

亀井委員 では、数字的にはないということですよね。

 食料自給率は三七%で、よく言われるのは、食料自給力は潜在的な食料をつくる力なんだと言われるんですけれども、そして自給力があるから大丈夫というような説明を受けることもあるんですが、かねてから何がどう違うんだろうと思っておりましたが、御説明はいただけますでしょうか。

江藤国務大臣 うまく説明できるか、ちょっと若干自信がないんですが、国民に対する説明としては、今、日本にある耕作可能な農地面積、これにおいて全て芋を植え付けた場合に国民は飢えることはありませんということが、一応、食料安全保障上のエクスキューズになっております。

 しかし、芋ばっかり食べるわけにはいかないので、そして、農地があってもそこで営農する人が技術者としていなければ生産基盤として機能しませんので、人と技術と農地ということだと考えています。

亀井委員 芋の話が出ましたけれども、この話も以前、この委員会でしたことがございます。

 私が農水委員会に入ったころに、カロリーベースの食料自給率四〇%ってどういうことだろうと調べました。そのときに、日ごろ私たちが生きていく上で必要なエネルギーの中の四〇%は国産の食べ物で構成されていますよということだと理解したので、それ自体は、例えば非常時に、輸入が途絶えたときに国産のもので一〇〇%になるんだったら、その四〇%自体はそれほど大きな問題じゃないというふうに私は捉えたんですね。ただ、ふだん四〇%で、それがいきなり一〇〇%にはなかなかならないから上げていきましょうというふうに、論理的には考えました。

 ただ、当時から、その四〇%というのは、その基準が、私は、輸入が途絶えたら米と海の幸、山の幸ぐらいは食べられるのかと思ったら、そうではなくて、今の人口全員を食べさせるためには農地が足りないから、田んぼは全て芋になりますと。芋換算で出ていた数字なので、びっくりしたんですよね。それじゃだめだろうということをずっと言ってきているんですけれども。

 そうであるにもかかわらず、関税の撤廃に向かって段階的引下げが始まり、そして自給力という言葉が出てきて、じゃ、ただでさえ芋換算なのに、それに自給力というのは一体何がどう違うんだろうと。一部で、農地だけじゃなくて学校の校庭にも全部芋を植えたらもうちょっと上がるからというような話だというふうにも聞こえてきたんですけれども、どうなんだろう、そう思ったところでございます。

 時間が来てしまいましたけれども、大臣、何かコメントありますでしょうか。

江藤国務大臣 食料自給率については、大変大事な課題だと思いましたから、所信でも述べさせていただきました。

 そして、芋だけ食うわけにはいかないということでありますが、米については一応自給ができている。

 そして、日本で生産されている、例えば牛なんか、豚なんかは特にそうですけれども、飼料自体を輸入に頼っているということがあって、食料自給率に換算されないものもあります。

 そして、今回の日米の貿易交渉も、日・EUの貿易交渉も、例えば野菜とかそういったものについては余り関係がないということでありますから、食料自給率を直接、ダイレクトにどかんと下げるインパクトが今回の一連の経済連携協定とか合意の中に含まれているとは、私自身は余り考えておりません。

亀井委員 時間が来ました。

 国産飼料の率が低いところにトウモロコシをまた輸入するというのはどういうことかというふうに思っておりますが、時間が来たので終わりにしたいと思います。

 きょう、写真を一枚つけさせていただいて、この委員会で行かせていただいた視察に関しての、豚コレラの質問をする予定でしたけれども、次回に回したいと思います。

 きょうはありがとうございました。

吉野委員長 この際、暫時休憩いたします。

    午後零時六分休憩

     ――――◇―――――

    午後二時三十五分開議

吉野委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。

 質疑を続行いたします。大串博志君。

大串(博)委員 共同会派の大串でございます。

 早速質疑をさせていただきたいと思いますが、まず、吉野委員長、農林水産委員会の委員長としては初めてということでお話をお伺いしましたが、ぜひ円滑、円満な運営でよろしくお願い申し上げたいと思います。

 私も長くこの委員会におりますけれども、江藤大臣もしかり、宮腰先生が久しぶりに戻られて、宮腰先生らとは理事として私たち一緒に長年やってきましたけれども、長年、円滑、円満な委員会運営というのが主目的でございます。ぜひよろしくお願い申し上げます。

 与党の理事の皆様にも、谷先生を始め、私たちも新しいラインナップになりまして、近藤理事、石川理事、頑張っておりますので、谷理事との話の内容は逐一私は報告を受けておりますので、私の耳から聞いても、円満に、理事、やっていただいているなと思えるように、しっかり見ておりますので、よろしくお願い申し上げたいというふうに思います。

 まず冒頭、災害のことでございますけれども、佐賀県も北部九州も、八月末の大雨災害で大変な被害を負いました。工場の油が流出して、農地にそれが定着してしまい、農作物が非常にダメージを受ける。あるいは、施設それから農地も大変なダメージを受けるということもございました。

 農林水産省の皆様にも大変な御努力をいただいて、今、復旧復興させていただいております。ぜひ、これからも、農林水産省を始め関係の皆様には全力を賜りたいというふうに思います。

 また、十五号、十九号の台風、その後も日本を襲いました。相当広範囲で農業被害があるということでございまして、私がこういう災害のときに一番恐れるのは、全体として今、高齢化し、頑張ろうという気持ちがなえてしまいそうになりがちな農業に関して、この台風被害、大雨被害が来ると、更にそれに追い打ちをかけてしまうんじゃないかという心配感があります。すなわち、これを機会にやめてしまおうかなというふうに、営農を断念される人が多く出てきたら嫌だなというふうに思うんです。

 そういう方々にもう一回頑張ろうというふうに思っていただくためにも、一つ一つの災害事例に関しては、ぜひ全力を挙げていただき、日本全国の希望の光として、むしろしていただきたいなというふうに思うものですから、大臣には、これは言及させていただきますけれども、改めて、しっかりとした対応をお願いしたいというふうに思います。

 それでは質疑に入らせていただきますけれども、まず、日米貿易協定に入らせていただきます。

 車の問題をまず取り上げさせていただきたいと思いますけれども、端的に申し上げます。車の関税撤廃はとれているのかどうかということであります。

 政府が合意後、出した紙には、車の関税撤廃に関しては、さらなる交渉による関税撤廃というふうに書かれています。しかし、いわゆる解説書、貿易協定の説明書の中には、関税の撤廃に関してはこれから交渉を行うということが書かれているだけです。

 同じ英文の訳として、この二つは全然違います。最初に政府が説明していたさらなる交渉による関税の撤廃という言葉と、自動車の関税撤廃に関してはこれから交渉を行う、によるという言葉とは、日本語訳として全然違います。

 担当者の人にお尋ねしますけれども、どっちの訳が政府の訳なんでしょうか。

曽根政府参考人 お答えさせていただきます。

 日米貿易協定の自動車・自動車部品につきまして、今までお話しさせていただいていますけれども、単なる交渉の継続ではなく、さらなる交渉による関税撤廃を明記してやるということでございまして、それは、すなわち、関税撤廃がなされることを前提に、具体的な撤廃の期限等について更に交渉を行っていくということ、今まで御説明させていただいているとおりでございます。

 御指摘の、説明書における記述でございます。これは、米国の附属書、一般注釈七の記述につきまして、自動車及び自動車部品の関税については関税の撤廃に関して更に交渉すると規定している、その規定の内容を記載したものでございます。

 これらについては、基本的に、我々として、これまでの説明とそごはない、いずれにいたしましても、関税撤廃がなされることを前提に、具体的な撤廃の期限等について更に交渉していくということでございます。

大串(博)委員 いろいろ枝葉はいいので、端的に答えてください。委員長も、端的に答えるように言ってください。

 英語の訳として、さらなる交渉による関税撤廃という言葉と、政府の説明書、公式の説明書にある、自動車及び自動車部品の関税については関税の撤廃に関して更に交渉する、ピリオド、終わりとは、全然、日本語として違います。ニュアンスも違うし、内容も違う。

 どっちが日本政府としての公のポジション、正式な訳なのか、この一点に関して端的に答えてください。

曽根政府参考人 訳という意味では、米国の附属書に規定してあります文言につきましては、自動車及び自動車物品の関税については関税の撤廃に関して更に交渉するということでございますが、いずれにしましても、この中身も含めまして、我々としては、関税の撤廃がなされることが前提ということで、今後、交渉については、関税の撤廃の期間等について更に交渉を行っていくということでございます。

大串(博)委員 関税撤廃が前提ということ、これはどこで約束されたんですか。どこに書かれていますか。端的に答えてください。

曽根政府参考人 少々詳しく御説明させていただきます。

 協定の本文におきまして、第五条の1というところに、各締約国は附属書1又は附属書2の規定に従って市場アクセスを改善すると、両国の、日本とアメリカの間の義務を規定しております。それぞれの締約国の附属書において、市場アクセスの改善に関する具体的なやり方というのが記載されているということでございます。

 その中で、アメリカの附属書におきまして、先ほども申し上げたとおり、自動車・自動車部品に関しては、関税の撤廃に関して更に交渉すると規定されております。

 米国が第五条の1の規定に基づく市場アクセスの改善を行うに当たっての、この規定が具体的なやり方の一つということでございまして、自動車・自動車物品については、関税撤廃がなされることを前提に、市場アクセスの改善として、その具体的な撤廃の期間等について交渉が行われるということでございます。

大串(博)委員 アメリカの附属書がアメリカの義務を書いていることは当たり前です。

 当たり前のことを言われただけですので、委員長、ここでお願いしたいんですけれども、明らかに、このアメリカの附属書に書かれている自動車の関税撤廃に関する訳が、日本の政府の資料、二つ、異なります。どちらが日本の政府の公式的立場なのか、政府の統一見解をこの委員会に出してもらうように理事会でお取り計らいください。お願いします。

吉野委員長 はい。理事会で協議をいたします。

大串(博)委員 なぜこういうことを問うているかというと、農業にも大きな影響を与えると思っているからなんです。

 大臣、先ほど農業に関して、今回のこれでよかった、よかったというか、これでまあまあだなというふうに地元の人からも言っていただいているというふうに言われましたけれども、私は、これは今回、政府の説明が十分じゃない、十分じゃないどころか、事実を隠す、あるいは事実を曲げている、まあ、虚偽という言葉は言い過ぎかもしれませんけれども、非常によろしくない情報発信、あるいは情報を出さない、こういったことをやっているがゆえに、世論の皆さんも、十分な情報がないまま判断されちゃっているから不満の声が、あるいは不安の声が上がってきていないだけじゃないかというふうに思うんですね。

 そういう観点から議論させていただきますけれども、まず、牛肉のセーフガードです。

 先ほど、大臣、TPP11の規定の見直しに関して、なかなか簡単なことではないというふうにおっしゃいました。その認識は変わりませんか。

江藤国務大臣 先方にも議会がありますから、なかなか、そう、はいというわけにはいかないのではないかと思いますが、しかし、それにも果敢に挑戦しなきゃいけないと思っております。

大串(博)委員 私、これは重要な発言だと思うんですよ。セーフガードは極めて重要な貿易交渉上の一要素ですよ。関税を撤廃するときに、社会を破壊してしまうような流入があってはならないということでセーフガードが入るわけです。

 今、セーフガードはどういうふうになっているかというと、先ほど来議論になっていますけれども、六十数万トンのTPP11あるいはTPP12時代からのセーフガードのレベルに対して、アメリカに対して二十数万トンの新たなセーフガードのレベルを与えてしまっている。

 日本の牛肉の生産量は毎年三十数万トンですよ。ここに対して、六十数万トンのTPP11、TPP12に対するセーフガード措置がそのままにされた上で、アメリカへの二十数万トンが乗っかっちゃっているわけですよ。巨大な枠になっちゃっている。ほとんどセーフガードとして意味をなさなくなっているのではないかと思うんです。

 つまり、TPPの枠内かどうかという話が常にありますけれども、TPPの枠内かという次元の話ではなくなったような結果になっちゃっているのが今回じゃないですか。それを直すために、TPP11の皆さんに六十数万トンのセーフガードレベルは下げてくださいと言わなきゃならない。それを大臣自身がなかなか難しいと言っているような状況、これは、みずから、大臣、TPPを超えちゃったということを言っているに私は等しいんだというふうに思うんですね。その意味で、私は今回、非常に重要な状況になっていると思います。

 さらに、加えて言わせていただきますと、アメリカのこの二十四万トンの一九年のセーフガード、これは前々年のアメリカからの輸入量を下回っているのでいいじゃないかという話がありました。

 しかし、先ほど来話がありましたように、今回のセーフガード措置に関しては、このセーフガード措置に抵触した瞬間にこの見直しをしなければならないという協定の議論になっている。しかも、十日後に議論を始めて、九十日後には結論を出さなきゃならない、こういった見直し規定が織り込まれている。これは、二十四万トンというアメリカへのセーフガードの天井が、私、ほぼないに等しいという状況になっていると思うんですよ。

 大臣、これでもTPPの枠内だというふうに強弁されますか。

江藤国務大臣 私は、強弁しているつもりはなくて、実際に何が起こるかという現場主義に基づいて物事を判断いたしております。

 今までは、三八・五%という一本の関税しかありませんでしたから、アメリカは、高い関税がかかっていても、二十五万五千トンという大きな数字を日本に入れてきていました。

 今度は、二十四・二という数量の枠内では、まあジャンプインについては御批判があるでしょうけれども、低い関税枠が与えられたわけでありますから、当然、この年度末に向かって、これは業者さんのやることですから私には確定的なことは言えませんけれども、年を越えたな、大体二十万トンぐらいになったな、二十二万トンになったな、二十三万トンになったな、これを超えるとまたSGがかかっちゃうな、ちょっと抑えようかなという抑制効果は私は確実にあるというふうに思っています。

 ですから、このことについては、国内のセーフガードとしての意義は私は維持されているというふうに考えています。

 それから、十日以内に協議を開始して、九十日以内に協議を終了させることが規定されているというお話ですけれども、これも、サイドレターの中にある文章ではありますけれども、十日以内に協議を開始して、九十日以内に終了させるといっても、これは必ず結論を得なければならないという義務を負っているとは私は全く理解しておりません。アメリカの方からむちゃなことを言ってきたら、九十以内には当然まとまらないというのは当たり前の話であって、サイドレターにそう書いてあるかもしれませんけれども、十日以内に開始して、向こうがむちゃなことを言ってきた場合は、九十日を超えても合意に至らないということが起こるんじゃないか。

 先々のことですから断定的なことは言えませんけれども、そういうふうに理解しております。

大串(博)委員 確認しますけれども、九十日以内にまとまらないということを今是認されたという答弁ですか。

江藤国務大臣 大国アメリカですから、そもそもこの二国間が始まったときに、自分としては、下手をすればSGをまずのむかのまないかというところから私の頭の体操は始まりました。SGをのむにしても、二十五万五千トンという二〇一八年の実績を下回る数字をのませるのは、これは至難のわざだなと思いました。ですから、アメリカは野心的な国ですから、下手をすると議論の最初は三十万トンじゃないかというところから始まりました。

 私が言っているのは、アメリカはああいう国ですから、私もTPP12のときからずっと、多少は裏舞台を見させていただきましたけれども、交渉妥結のぎりぎりの瞬間まで結構むちゃを言ってくる国ですよ。もうその話は済んだじゃないかというようなことまで、ところであれはどうだったのということを普通に言ってくる国なので、この事態が起こったときには、例えば、SGをいきなり三十万に上げてくれとか、そういうことを言ってくるかもしれません。その場合は、私は、農林水産省として、そういう協議には応じないし、徹底的に抵抗する覚悟だということを申し上げているわけであります。

大串(博)委員 TPP以内かどうかというところが論点になっている、それは決まり事がどうかということですよ。決まり事に関しては、明らかに、セーフガードのレベルに関しては、抵触した瞬間に、十日以内に協議を開始し、九十日以内にコンクルードするものとする、こういうふうになっているわけですね。

 資料を配りました。TPP12ではどうなっているかということなんです、セーフガードの決まり方が。

 一枚目、星印のところを見てもらうとわかりますけれども、「オーストラリア、カナダ、チリ、ニュージーランド又はアメリカ合衆国の要請に基づき、日本国」云々かんぬんとあります。つまり、ここに書かれているのは、「この表における関税、関税割当て及びセーフガードの適用に関するもの」、これら、つまり関税だけじゃなくてセーフガードとかも含めて検討するため、「この協定が日本国及び当該要請を行った締約国について効力を生ずる日の後七年を経過する日以後に協議する。」ですよ。つまり、TPP12においては、七年間はセーフガードはフィックスされているんですよ。

 ところが、どうですか、この日米合意は。セーフガードに当たった瞬間に、十日後には話合いを始めて、九十日後には結論を出す。すなわち、セーフガードはないんですよ、これ。セーフガードがないに等しい。そういう問題です。

 江藤大臣、お尋ねしますけれども、九十日以内に結論を得られなかったら協定違反だというふうにアメリカ側から言われて、トランプ氏から自動車の追加関税を課すぞと言われない根拠が何かありますか。

江藤国務大臣 私は農林水産大臣でございますので、自動車のことに関して予見を持って物事を申し上げるつもりはありませんが、英文によれば、ウイズ・ア・ビュー・ツーという単語というか、これがついておりますので、これは私は、どう読んでも、十日以内に協議を開始する旨は規定されてはいるけれども、九十日以内に当該協議を終了させる観点、ウイズ・ア・ビュー・ツー。観点ですから。ですよね。

 ということでありますから、私は、そんなに英語力はありませんけれども、普通に英文を読んで、ああ、そういう観点なのかと。しかし、こっちが納得がいかなきゃ蹴ればいい、そう思っております。

大串(博)委員 私は昔、役人時代は英語の通訳もやっておりましたので、英語はそれなりに自信を持っておりますけれども、そういう目から見ると、実は、このウイズ・ア・ビュー・ツーというのは、かなり方向性は出ているんですよ。ウイズ・ア・ビュー・ツー、多分、英語を皆さん勉強されて、わかると思うんですけれども。

 ところが、さっきの車は、車に関してはウイズ・リスペクト・ツー・エリミネーションなんですよ。ウイズ・リスペクト・ツーというのは何とかに関してで、方向性はないんですよ。

 一方で日本政府は、ウイズ・リスペクト・ツー・エリミネーション、これは前提だというところまで読み込んでいて、一方でウイズ・ア・ビュー・ツーという方向性のあるものに関しては、方向性はない、このいわゆるいいかげんな情報発信が私はよくないというふうに申し上げているわけです。

 もう一点、聞かせていただきます。

 この協定の中に、協定本文の中に、農業に関して、イン・フューチャー・ネゴシエーションということで、アメリカは更に農業に関して特恵的な待遇を追求するというのがあります。このような条文が入った、包括的、一般的な条文が入った協定というのは、例えばTPP11、TPP12、過去にありますか。

光吉政府参考人 お答えいたします。

 一般的に、協定につきまして日本と締約国が再協議を行う規定というのは、よく、多く見られるところでございます。さらに、先ほどございましたけれども、再協議を行う時期も書いているものもございます。

 今回も広い意味でその類似のものの一つというふうに思っておりますけれども、今回の書き方は、それら両国が再協議を行うということではなくて、アメリカ合衆国は、将来の交渉において、農産品に関する特恵的な待遇を追求するというような規定になっているところでございます。

大串(博)委員 過去あった規定というのは、この協定の本文にあるような、いわゆる付表の中にそれぞれのグッズがあって、そのグッズに関して、それぞれマークがついていて、これに関しては更に交渉していくんだ、こういったことが、再協議規定という、それぞれの欄に入っている例は確かにこれまでもあります。

 しかし、こういうふうに、アグリカルチュラル・グッズというふうにかなり一般的に特定された上で、一般的にされた上で、特恵的待遇をシークする、探していく、追い求める、追求するというふうに書かれた条文なんて過去の条約ではありません。よくこういうふうな条文をのんだものだなというふうに私は思います。

 これも、私は、TPPの枠を超えちゃった大きな論点じゃないかなというふうに思うんですね。

 なぜなら、一つちょっとお尋ねしますけれども、イン・フューチャー・ネゴシエーションズとありますけれども、これからまたさらなる協議を続けるということでした。四カ月以内に対象分野をまとめて、更にまとめていくことになっていますけれども、今後四カ月の協議の中、茂木大臣は、この四カ月のさらなる協議の中には自動車の関税撤廃の話はするんだというふうに言われている。自動車の関税撤廃の話がされるのであれば、農業に関するイン・フューチャー・ネゴシエーションズ、アメリカはさらなる特恵的待遇を農業に関して求めるというネゴシエーションを、アメリカから求めてこられることが排除されていないんじゃないですか。

曽根政府参考人 お答えいたします。

 委員御指摘のとおり、自動車に関しては、さらなる交渉、関税撤廃を前提として交渉するということで、それは、関税に関する事項については更に交渉する、撤廃を目指して交渉するということでございますが、農産品を含め、それ以外については想定していないところでございます。

 先生御指摘のアメリカの農業についての表現といいますのは、附属書1の、アメリカの附属書のB節第一款5に、「アメリカ合衆国は、将来の交渉において、農産品に関する特恵的な待遇を追求する。」という、アメリカのそのような意図があることを規定したものでございます。

大串(博)委員 審議官、先ほどから何回もちょっと言っていますけれども、端的に答えてください。関係ないことを言われると困ります。

 私が言っているのは、茂木大臣は、これから四カ月、さらなる交渉において、車の関税撤廃に関してはネゴシエーションに上せるんだ、上げるんだ、こういうふうに言っています。であれば、この農業に関するイン・フューチャー・ネゴシエーションズでアメリカが農業に関してさらなる特恵的待遇を追求する、この交渉は協定のどこかで排除されているんですかということなんです、これからの数カ月の交渉の中で。

 今、外務省は、想定されていないと言いました。想定されていないのはこっちの勝手な判断であって、条文を示して、どこかで、これによって、アメリカからネゴシエーションズの中で農業の特恵的待遇を求めるということはできませんよというような協定の文章がどこかにありますかという、この点だけ端的に答えてください。

曽根政府参考人 お答えいたします。

 協議の中では、日米双方が自分たちの立場を主張して協議をするということでございますけれども、最終的に、交渉を行うことに関しましては、双方が合意したものについて交渉を行うということでございます。

大串(博)委員 注意してください。聞かれたことに答弁してくださいと、私、申し上げているんです。協議の対象がどうなるかは聞いていません。

 いいですか。私が聞いているのは、イン・フューチャー・ネゴシエーションズの中で、農業のグッズに関してアメリカは特恵的待遇を追求するということが言われているんで、このネゴシエーションズの中に、これから数カ月、入る、車のことをこれからネゴシエーションしていくんだと言っている、この数カ月の中で、アメリカのアグリカルチュラル・グッズに対する特恵的待遇の追求、これがだめですよということが書かれた条文が、一行でも、一文でも、一節でもこの中にありますかということを聞いているんです。この事実だけをお答えください。

曽根政府参考人 そのような規定はございません。

大串(博)委員 そういうことなんです。

 すなわち、これから日本が車の関税撤廃を求めて交渉すると茂木さんは言っていますよ。大臣もとりますと言っています。その傍ら、アメリカの方も、農業に関するネゴシエーションだということで、特恵的待遇を求めることができるようになっています。

 一方で、どうですか、トランプさんとの共同宣言の中で、今回、この協定が遵守されている間においては、この協定及びその精神に反することはしないということで、自動車の追加関税に関してはかけられないということを総理大臣が口頭で約束してきたというふうになっています。

 協定の中で、アメリカがネゴシエーションの中で、協定に基づくネゴシエーションの中で、アメリカが特恵的な農業に関する取扱いを求めてくることができることになっている。言ってくるんじゃないですか、アメリカはこれから。

 これ、協定をよく私は読みました、全文。そうしたら、どういう協定か非常によくわかりましたよ。

 とにかく、オーストラリアとの間で差がついてしまった。牛肉を始めとした部分に対して、とにかく急いで手当てをしなきゃいけない。そこまでは、オーストラリア等々と、TPP11対象国と同じところまでは、とにかくとるところ、とにかく牛肉を中心にとらなきゃいけない。そこだけはとった。確かに、牛肉の関税率に関しては、一気に二十数%まで落ちることになっています。しかし、それ以外に関しては時間がなかった。よって、そこは、とりあえずの合意でおさめておいて、今後いかようにも議論できるようにしている。それが今回のこの協定全文じゃないですか。

 セーフガードしかり。セーフガードも、一旦、二十四万トンと認めておくよと。日本はそれでよかったなと思っているかもしれない。しかし、過去なかったような、過去は七年間も塩漬けした、絶対動かさないようなセーフガードのレベルも、九十日後には見直さなきゃならなくなってしまっているような、ふわふわふわふわした、セーフガードとは言えない規定になっちゃっている。

 一方、農産品に関しては、米は譲りませんでした、枠も、輸入関税枠も与えませんでしたと言っているけれども、一般的規定として、更に交渉をしますというふうにアメリカから言われてしまっている。

 すなわち、牛肉に関してアメリカがとりたいところだけとられてしまっている。そのほかは何にも、農業に関してこれ以上とられないという保証もない。そんな協定になっちゃっているんじゃないですか。

 一方で、車に関しては、政府統一見解を求めていますけれども、自動車関税は約束されず、追加関税に関しては口頭約束、議事録すら出ない。そういう状況になっているということが、私、非常にこの協定に関しては問題が大きいと思っています。

 委員長、二つお願いします。

 この協定に関して、大変問題が大きいので、まず、本会議場でも議論になりましたけれども、トランプ大統領と安倍総理、そして少人数閣僚間の議事録、これに関しては、この農業にも関係しますので、ぜひこの委員会に提出をしていただくように理事会でお取り計らいをいただきたいというのが一つ。

 もう一つは、この問題は、農業、そして外務委員会でこれは議論されていますけれども、農林水産委員会、大きく絡まなきゃいけません。また、車の問題がありますから経産委員会、菅原大臣にも来ていただいて、ぜひ議論をさせていただかなきゃならない。

 そういった意味で、最低でも外務委員会、農林水産委員会そして経産委員会の連合審査、これは必須です。これをしっかりとした時間をとって行わなければならないと思います。

 この二点に関して理事会で協議していただけないでしょうか。

吉野委員長 理事会で協議をいたします。

大串(博)委員 試算に関してお尋ねします。

 大臣、先ほど、農林水産物の生産量は減らないというふうにおっしゃいました。先ほどの答弁は、その前振りのところは、これまでの経験があっていろいろと言われたところは聞きました。ただ、私には、とても客観的な分析に基づく、生産量は減らないという言葉には聞こえませんでした。

 この試算を見ると、どうも、試算をやって、何とかTPP12のときの試算、千三百億から二千百億、この枠内に日米プラスTPP11がおさまっていますよということを言うためだけの、あらあらの試算のような気がしてならないんです。

 そこで、事務方にお尋ねしますけれども、日米とTPP11と影響がダブった分に関しては相殺した上で、その全体を合わせた、日米貿易協定とTPP11を合わせた影響額、千二百億から二千億と出していらっしゃると思います。ダブった分というのは客観的にどういうふうに計算したんですか。

浅川政府参考人 お答え申し上げます。

 日米とTPP11を合わせた影響試算ですが、アメリカとTPP11参加国からの輸入品の双方の関税が下がり、実際は競合するということになりますので、アメリカとTPP11参加国双方の平均的な輸入品価格の影響を受け、競合する国産品の価格も関税削減相当分下がるという想定で試算を行っております。

大串(博)委員 非常に重要な論点ですね。そこのところに関しては、この協定がこれから、まあきょうは一般質疑ですけれども、協定が議論されることになるでしょう、連合審査をやってくださいと私は申し上げました。そういった中で、必ず私たち見ないと判断できないと思うんです。

 今、審議官から答弁のあった、こういうふうに日米貿易とTPP11が重なった分のダブりを排除していますという部分を含めて、この農業に関する影響分析の根拠の詳細をこの委員会に示してもらわないと審議になりません。ぜひ、この試算の前提をこの委員会に提出してもらうように理事会でお取り計らいいただけませんか。

吉野委員長 理事会で協議します。

大串(博)委員 かくのごとく、この日米貿易協定は非常に問題が多い、かつ心配です。ですから、この問題は委員会でみっちり議論させていただきたいとこれからも思います。

 そして、大きな論点として一つ、食料・農業・農村基本計画なんですけれども、見直しの議論が進んでいますね。ぜひしっかりやっていただきたいと思います。

 ただ、私がちょっと心配しているのは、かなり駆け足になっちゃうんじゃないかなと。いつもは一年ぐらいをかけてじっくり議論されていました。しかし、やっとこの間諮問されて、これからばたばたと議論される。

 そういう中で、先ほど亀井さんからも話がありました食料自給率、これがどういうふうな書かれ方になっていくのか、私たちは非常に気にします。と同時に、大きな考え方の違い、私たちとの。どうも、やはり今の安倍政権の農政を見ていると、競争政策の方がどうしても先に行っちゃって、農村を守る、地域を守るという地域政策の視点が非常に私は少ないと思います。

 恐縮ですけれども、写真を私、添付させていただきました。これ、大臣、私は何をしているところだと思いますか。

江藤国務大臣 水路に堆積した泥をかき出されていらっしゃると思います。

大串(博)委員 私が住んでいるところは佐賀県小城市三日月町初田という地区で、百二、三十戸ですよ。もともと農村地帯です。三十八ヘクタール、もともとあります。二十ヘクタール台に今なっちゃっているんですけれども、もともとは米づくり日本一にもなった町、三日月町なんですね。

 これは実は農林水産省の補助事業です。多面的機能維持支払い、農地、水ですね。毎春秋、私も出てやっています。これは先週の日曜日です。私、半日間やってきました。これは非農家の皆さんも、もちろんやっているんですね。非農家の皆さんもやって初めて農業のクリークも維持できる、そして生活環境も維持できる、地域を守るために非常によくできた多面的機能支払いですよ。私、いいと思います。

 一方で、これだけで足りるかというと足りないんですよ。今や、米づくり日本一だった私たちの地域三日月町も、非常に厳しい状況、農家も減っています。地域がなかなか守れない。そういった意味において、私たちは戸別所得補償制度を言っているんです。戸別所得補償制度というのは、競争政策の観点からだけで農業を考えてはだめである。こうやって、米をつくっている中だけじゃなくて、あぜ、クリーク、こういったところも含めて、地域全体をみんなで守る、それをつくっていく、ベースをつくっていくために戸別所得補償制度で地域全体を支えていくんだ、こういう考え方なんですね。

 ぜひ、今回の食料・農業・農村基本計画の見直しの中においては、地域を守るという考え方を、競争政策ではなくて全体に押し出していただきたいと思いますが、大臣の御所見をいただきたいと思います。

江藤国務大臣 私のところも大変な田舎が多いところでございますので、やはり、そこにも若い担い手が少しずつですが育ちつつある。そして、非農家の方々も地域を守るために協力をしてくれているということもありますので、今回の食料・農業・農村基本計画の見直しにおいては、食料自給率のこともしっかり触れていきたいと思っておりますし、産業政策だけではなくて、地域をいかに守っていくかという観点もしっかりと織り込んだものにしていきたいと考えております。

大串(博)委員 質問を終わります。ありがとうございました。

吉野委員長 次に、近藤和也君。

近藤(和)委員 立憲民主・国民・社保・無所属フォーラム、石川県能登半島の近藤和也でございます。

 引き続き、農林水産委員として、そして理事として、この委員会に携わらせていただくことを感謝を申し上げます。

 そして、今回の委員会、大臣所信ということでございますが、豚コレラも含めて、幾分か時間を御配慮いただきましたことに感謝を申し上げたいというふうに思います。

 きょうは、一番最初ということでございますので、各委員、私も含めて、入り口の幅広い議論と、大臣所信に対しての幅広い議論ということで、それぞれ役割を分担して、きょうは質問をさせていただきました。

 とはいいながらも、実際には、特に日米通商交渉の部分においては、まだまだ時間が足りないなということは、本当にきょうが入り口の入り口だというふうにも感じましたので、連合審査、先ほど大串委員からもございましたが、こちらの方の御検討をよろしくお願いをいたします。

 委員長、連合審査、どうかよろしくお願いいたします。

吉野委員長 後日、理事会で協議したいと思います。

近藤(和)委員 ありがとうございます。

 改めて、江藤大臣、御就任おめでとうございます。

 私が与党だったころ、二〇〇九年、一〇年、一一年、一二年の議員だったころに、私は、農林水産委員としてあのあたりに座らせていただいておりました。そして、当時は、江藤議員、三期目ということで、悲しい、つらい、切実な、魂のこもった、そして頼もしい質疑をされておられた。口蹄疫のころでございます。あのときの質疑というのは、本当に魂を揺さぶるものがございました。難しい言葉を並べ立てるよりは、実際には現場の方々の声が一番大事なんだ、それを何とかしろというようなあの姿勢というのは、私は政治家としての一つのかがみだというふうに思っています。

 そして、今回くしくも大臣になられたときに、ワクチン接種、今回、豚コレラが蔓延してしまっている状況で、こういう余りよくないめぐり合わせかもしれないです。ただ、大臣が私の部屋に挨拶に来ていただいたときに、豚コレラをお願いしますと言ったときに、大臣が少し複雑そうな顔をされて、もしかすると、ワクチン接種も、今までの動きも変わっていくのかなと少し期待をいたしました。そして、そのような形で動いていただいていることは本当にありがたいなというふうに思います。

 改めて、私は、江藤大臣、先ほどから日米の交渉の件もありますが、ほかの大臣、例えば経産大臣ですとか外務大臣ですとか、それぞれ大臣としての役割というのは、心構え、そして足を置くところというのは私は違うというふうに思っていますが、大臣の考えられる、農林水産大臣としての資質とはどういったものが必要かということを御教示ください。

江藤国務大臣 私は、余り学生のころ優秀な学生でもありませんでしたし、真面目な人生も余り送ってきていない部分もありまして、余り立派な人間だとは自分のことを思っておりません、何と言ったらいいかですね。しかし、私には地元も含めてたくさんの仲間がいて、農業、林業、水産業、林業だったら山で台風の後に倒木の処理に入って死んでしまった仲間もいますし、海で死んでしまった仲間もいるし、口蹄疫のときには本当に毎晩のように泣いていた仲間もいます。

 農林水産業というのは、とても消費者の方々とか国民に対しても大きな責任を負っているとは思いますが、その片方で、やはり日本のような資源のない国で、いろいろなものをつくって売って、車のようなものを売ってもうけてきた国ですけれども、それでも農林水産業というものは、なくなってしまったら絶対にこの国の未来はない。そして、やはり、食物をつくる、山を守る、海を守っていくということは本当にとうとくて、本当によく皆さん方には御苦労いただいて、ありがたいなと思っております。

 ですから、私に資質があるかどうかはよくわかりませんけれども、ただ、常に自分として心がけていることは、いろいろな現場で、農林水産業の現場で頑張っている人の、私は米一俵つくったことはありませんけれども、そういう気持ちを理解する努力を日々することぐらいしかないのかなと。お答えになりませんが、そんなふうに思っております。

近藤(和)委員 ありがとうございます。

 現場をまずは知らなければいけない、気持ちに寄り添うということは、きょうの午前中の、長野県に視察に、被災地の現場に行かれた、そのときにさわられて、このままでは難しいな、そういったお話も伺いまして、なるほどなというふうにも感じました。

 そこでなんですけれども、今回、内閣がかわってもう一カ月以上たちましたが、豚コレラに関して、現場というのは、直接、大臣を含めて政府の方々は行かれていますでしょうか。

江藤国務大臣 口蹄疫のときもそうですけれども、やはり、そういう農場とかそういうところについては、基本的に、関係のない人は遠慮をして立ち入らないということが基本でありますので、いろいろな方に、営農されている、いわゆる養豚家の方々とは農場以外のところではお会いをいたしましたけれども、農場の中に入って物を見たりはいたしておりません。

近藤(和)委員 ありがとうございます。

 私も、渥美半島ですとか、私自身は能登半島ですが、養豚家の方々からお話は伺いました。実際には、殺処分等をされている方々のお話というのは直接は聞いていません。

 ただ、大臣には、口蹄疫のときに、やはり当時の大臣に対して、現場に入るべきだということは、常々強く言われていたということは御記憶に新しいかと、御記憶は十分あると思いますが、私、改めて、このときの質問というのはすばらしいなと思うんです。

 私は、農林水産大臣の資質というものは、農民、農村、農家、畜産家、林業家、水産業、何でもそうですけれども、この業界で働く人のために一緒に涙を流す、その気持ちを持ってくれないと、みんな救われませんよ、あなたが来てくれるのを待っていたんですよ、川南町の人たちは、私なんかよりも、大臣が来てくれて、そして、御苦労だね、大変だね、だけれども国はあらゆる対策、万全の対策を講じるから、くじけずに頑張ってくれと、私はこの間の委員会で言いましたよ、心のケアが一番必要なんだと、一番の心のケアができるのはあなたなんですよ、私なんかじゃないんです、大臣がお越しをいただいて、直接生産者の方々の声を聞いてくださって、肩をたたいて、一言、しっかり頑張れと言ってくださったら、今みんなの心はここまでは折れていない、川南町の人たちは今ももう希望を失いつつありますよ、本当に、悲しくて悲しくてたまりません。

 これは、大臣の約十年前のお話でございます。

 確かに、現状では、部外者の人間が行って、そして感染を若しくは広げてしまう存在になるかもしれないということは十分わかりますけれども、やはり東京で皆さんで集まって会議をするということだけではなくて、現在、災害と言ってもいいと思いますが、いろいろなところが、もう各地に広がってしまっております。ですから、もう既に殺処分が済んでしまって、そしてそこから次へスタートされたところもあります。そして今、ワクチンを早く打ってくれという地域もあります。感染イノシシが発見された地域もありますし、まだそのエリアもあります。

 いろいろな、今、以前のように、口蹄疫のときのように、宮崎県一県ということではなくて、各県それぞれ状況が変わってきていますので、大丈夫なところはしっかりと足を運んでいただきたいと思いますし、ぜひとも現場の声というのを大事にしていただきたいなというふうに感じます。

 そして、改めてでございますが、今回の豚コレラに関して、今なぜここまで蔓延してしまったのか、大臣の所感を教えてください。

江藤国務大臣 豚コレラに関しては、まず、基本的に誰も悪くないということだと思っています。

 ウイルスですから、たまたま岐阜県に入りましたけれども、別にほかのところで発生しても全くおかしくないわけであって、そしてやはり飼養衛生管理基準をしっかり守ってほしいということで、一生懸命、農林水産省としては、各農政局も含めて、県の方々も、いろいろな方々が現場に入って指導はいたしましたけれども、ちょっと言いづらい部分はあるんですが、なかなか、施設によっても、近代的な養豚農家もあれば、非常に昔の古い養豚場もこれあり、それぞれ衛生管理を守るにしてもレベルの差というのは出てしまった。そして、やはり意識の違いも、申しわけないけれども、あったことも事実だろうと思います。

 ですから、そういうことに加えて、今回は特にイノシシが、一日に下手すりゃ二十キロから三十キロぐらい平気で移動するイノシシですから、それが媒介する。しかも、イノシシが排せつしたふんとかそういうものを踏んだ車とか、例えばそういうものを食べたネズミとか、もしかしたら虫とか鳥とかそういうものまでウイルスを媒介する可能性があるということで、パンデミックのようにどどどんとは広がりませんでしたけれども、少し時間をかけて広がってしまったというのが今の現状だと思っています。

近藤(和)委員 誰も悪くないといえばそうかもしれませんが、ただ、それで片づけてしまうと、この反省、そして次なる対策というところは、私は進まないのではないかなと思います。

 この言葉はくしくも、これも江藤大臣の以前の言葉ですけれども、「反省なくして、新たな対策、そういったことを打てるんですか。まず反省に立って、そして対策を見直す、これが基本だと私は思います。」このようにおっしゃっているんです。

 改めて、いかがでしょうか。

江藤国務大臣 私が誰も悪くないと言ったのは、ちょっと意味合いが違いまして、私の住んでいる日向市の隣の東郷というところで鳥インフルエンザが起こったことがありました。

 そのときに、山の中の養鶏農家なんですけれども、御夫婦が私の後援会の方だったんですけれども、とにかく周りに迷惑をかけて申しわけないから、もう自分は死んでわびるとおっしゃったんでした。私、慌てて行って、夫婦は泣き崩れておられたんですけれども、死んで済む話じゃないでしょう、あなたが最初の一件目の発生かもしれない、宮崎県で、だけれども、あなたが悪いんじゃない、これは天から降ってきたものだから。

 だから、農林水産省が悪くないと言っているんじゃないです。我々は反省しなきゃいけないことは山のようにあります、山のように。しかし、この一年間の農林省がとってきた政策について、その時々において、例えば経口ワクチンの散布であるとか、山に柵をつくるとか、それぞれの農場についてイノシシとの直接の感染が、接触が起こらないように柵を設けるとか、その時々でいろいろできるだけのことはしてきたと思いますが、しかし、これだけの、六県それから十一県という範囲に、イノシシ、それから発生農場が広がってしまったことについては、農林水産大臣として、農林水産省としても反省をし、大変責任を感じています。

近藤(和)委員 山のように反省があるという言葉をいただきましたが、そこを受けての大臣所信の中で、飼養衛生管理基準の改定、そして家畜伝染病予防法を検証し、必要な改正という言葉につながるのかなというふうには思うんですが、具体的にどの程度といったところまでは、恐らく専門家というお話もされるとは思うんですが、大臣の今の受けとめのところで、こういったところまでは踏み込むべきだといったところを教えていただければと思います。

江藤国務大臣 まず、都道府県の皆様方にワクチン接種を認めるためには、防疫指針の改定をしなければなりません。これも一応大臣の権限ということに、最初なったときにはそういうことだという説明を受けたんですが、しかし、小委員会にちゃんと諮って、パブコメ等もやらなければいけない等、いろいろ手続があって、少し時間がかかりましたけれども、それについてもしっかりやらせていただいたつもりです。ですから、まず都道府県知事の判断で、自治事務ではありますけれども、ワクチン接種が可能になるように防疫指針の改定をまずさせていただいたということです。

 それから、家畜伝染予防法の改定については、これだけの状況でありまして、今回はいわゆる殺処分はしていないんで……(近藤(和)委員「はい、予防的には」と呼ぶ)殺処分はしていないんで、しかし、今後、非常に私が心配しているのは、アフリカ豚コレラが入ってきた場合には、これはワクチン自体がありませんので、もうこれについては、専門家の意見もまた求める必要はありますが、私は早く殺処分をして埋めなければ蔓延を防ぐことはできないと思います。今の家伝法ではそれができません。前に御指摘があったように、口蹄疫のときには特措法でやりましたので、今回はきちっともとの法律をいじる必要があるので、今省内で検討に入っているところでございます。

近藤(和)委員 ありがとうございます。

 実際には、私も以前委員会で確認をしたんですけれども、豚コレラもそしてアフリカ豚コレラも、現状では予防的殺処分ができない。そこは当然踏み込んでいくんだろうなと思いますが、もう少し幅広いお答えがいただければと思っていたんですけれども、少し残念でございます。

 一方で、その以前の問題として、防疫指針の改定、こちらが先日公表されました。ただ、私は改めてこの防疫指針を拝見させていただきましたが、本当に反省というところが、今までの一年間、結果として広がりに広がってしまったといったところが少し感じられないのかなというふうには正直思いました。

 飼養衛生管理基準を徹底していく、そして高位平準化していくということも以前から何度も何度も伺っていて、それをまずやるのが先で、ワクチンはもっともっと状況が変わってからなんだ、そういった答弁を何度も何度も繰り返されてきて、大臣にかわるまで、新しい体制にかわるまでワクチン接種というところに行かなかったんですが、今回の新しい改定された防疫指針の中でも、やはり飼養衛生管理基準の徹底というところ、それでどうしようもなくなったらという部分、そこが余りにも強調され過ぎているなと。

 ちなみに、私が今手元に持っているのは、この改定された防疫指針の部分ですが、予防的ワクチン接種に対する基本的考え方の部分は、結果的に、緊急ワクチンの部分と丸々文章が一緒なんですよね。

 こういったことも含めて、事態は変わってきたということと、そして、以前のままのやり方では抑えることができなかったんだという反省が私は足りないというふうに思いました。この部分についてはいかがでしょうか。

江藤国務大臣 しっかり読み込まれた上でそのような御指摘をいただいたことは非常に耳が痛いと思いますが、やはり、それを新しく読んだ人が、方針が変わったことについて、担当の、いわゆる所管の役所として反省というかそういう部分が読み込めるような文章になっていないという部分については、私ももう一回ちゃんと読ませていただきたいと思います。

 ただ、申し上げたいのは、ワクチンを打っても、必ず抗体ができるわけではないということです。例えば、私の農場に百頭豚がいて、ワクチン接種をしても、確率的には大体二十頭ぐらいは接種のかいなく抗体ができない。ということは、外のイノシシと接触すれば、その二十頭は外から入ってきた豚コレラに罹患してしまうわけですね。

 その場合は、残りの八十頭もこれはアウトというふうに今回しておりますので、やはり飼養衛生管理基準をしっかり守っていただくということは、野球でいうところの走り込みみたいなものでして、基本中の基本で、そして、さっき申し上げたアフリカ豚コレラのことも考えると、なおさら飼養衛生管理基準については、ワクチンを打ったから安心はしないでくださいという意味合いも含めて、そういう書きぶりになっているんではないかと。

 反省が足りないということについては、おわびを申し上げたいと思います。

近藤(和)委員 実際には、ワクチンを打たない理由というのは、もうこの一年近く随分伺ってきましたので、そういったことも含めて、その考え方が結果としてブレーキをかけてきたかもしれないということも含めて、私も早くこの豚コレラを完全になくしていきたい、そのためには何ができるのかなというふうには思いますので、協力すべきところはしっかりと協力していきたいというふうに思っています。

 そこでなんですけれども、今回の防疫指針の中で、ワクチン接種推奨地域の設定という部分に関してなんですが、こちらはあくまでも、豚コレラウイルスに感染した野生イノシシから豚等への豚コレラ感染のリスクが高い地域をワクチン接種推奨地域に設定する、そして、既に豚コレラが発生した地域、その両方ということだと思うんですが、この部分についてもやはり私は、考え方が、動きが遅い、結果として遅きに失してしまう可能性があるんじゃないかというふうに思っています。

 配付させていただいた資料をごらんいただきたいんですけれども、資料の一です。予防的ワクチン接種推奨地域というのが、この資料一の上段です。

 西は滋賀県、三重県から、東は長野、群馬そして埼玉。先日、とうとう静岡まで発生をしてしまいましたが、実際には、例えばイノシシの動き、豚舎の豚が感染したかどうかというのはリアルタイムでわかりますよね、ほぼ。ただ、イノシシというのは、発見するまでは相当時間がかかります。

 今までもお話を聞いていると、捕獲したイノシシから豚コレラウイルスが見つかったということよりは、死亡していたイノシシが、結果として、それを調べたら豚コレラウイルスに感染していたという例、どちらが多いかというのはわからないですが、そちらも結構あると思うんですよね。ということは、豚は確認できても、イノシシの発見、感染してしまったイノシシの発見というのはどうしてもおくれてしまいます。

 そのことも考えて、この予防的ワクチン、イノシシ、これは考え方を変えていかなくてはいけないですけれども、あくまでも幅広に、現在、豚、そして野生イノシシ、両方の発見されているエリアの外側にむしろ接種推奨地域を設定することが、私は、むしろ、火を防ぐ防火といいますか、燃えるものを既になくしてしまうことも含めて必要だと思うんですが、こちらはいかがでしょうか。

新井政府参考人 お答え申し上げます。

 この指針におきますワクチンの接種の推奨地域といいますものは、今お話がありましたとおり、イノシシのリスク、それから農場等の条件を鑑みまして、野生イノシシから豚等への豚コレラ感染リスクが高い地域について、小委員会の委員等の専門家の意見を踏まえて設定をするということにしているところでございます。

 委員御指摘のように、幅広くとって予防的ワクチンを打つという考え方もございますけれども、そもそもワクチンにつきましては、国際的にも抑制的にやっていくということ、ワクチンはウイルスの撲滅ではなくウイルスコントロールになるという性格のものであるということに鑑みますと、やはりこれはできるだけ抑制的にという趣旨から、小委員会の意見を聞きまして、野生イノシシの陽性が発見された地域を推奨地域としてワクチン接種を可能にするという考え方で現在進んでいるところでございます。

近藤(和)委員 その抑制的ということそのものが、私は反省がなっていないと思うんですね。

 感染した野生イノシシが発見されて、そして新たにワクチン接種推奨地域を設定する、そして、そこから都道府県が動いて、ワクチンも準備して、ということであれば、タイムラグが相当発生するじゃないですか。ですよね。以前から、その外の周りでやっておけばいいわけですから。

 そして、事ここに至って、この地図を見ていただければ、もう日本の三分の一、来ているわけですよ、本州の。もう抑制的にだとか言っている場合じゃなくて、まずは、この菌をしっかりと抑えてしまうということの方が優先なんじゃないでしょうか。大臣、いかがですか。

江藤国務大臣 お気持ちはわかります。予算委員会でも、後藤先生だったですかね、同様の御質問をいただきました。

 ただ、私もまだ大臣になってそんなに時間たちませんが、例えば、岐阜の養豚農家の中で、一回空舎にして、もう一回再開をするという意欲を持っている方が、江藤さん、せめてワクチンを打たせてもらわないと怖くて再開できないという声は、それはもうたくさんあるんですよ、早い段階から発生した県の中で。周りだけ打って、何と言うんですかね、防火帯という言葉を使われましたけれども、となると、中は焼け野原ということじゃないですか。(近藤(和)委員「中もしっかり打った上で」と呼ぶ)中も全部打って、ええ。

 しかし、正直に、私は正直だけが取り柄ですから申し上げますけれども、私が閣僚になったときに最初に受けたレクが百万ドーズ、百万頭分ですね、百万匹分。安全基準とか有効性を確認して回転備蓄をしている分の五十万は、向こう二カ月間ちょっとぐらいはちゃんと使えるということで、今、百五十万ドーズなんです。

 ですから、例えば、これはちょっと役所と考え方が合わないかもしれないんだけれども、私に合わせてもらわないと困るんだけれども、これはやはり、我々が推奨しましたよね、専門家の意見を聞いた上でですよ。推奨はしたけれども、推奨して、自治事務でワクチン接種の準備ができました、しかし国から貸与するワクチン自体がありませんということは、これはとてもできないので、ですから、もうかなり早い段階で、今ワクチンの増産体制に入っております。

 国内、かつては六社ぐらいあったらしいんですが、今、二社しか生産できないので、それが、増産が進むにつれて、推奨地域の見直しも逐次やらせていただきたいと思っています。

近藤(和)委員 前向きなお答え、ありがとうございます。

 私も、今は二社で、過去はもっと、全国で打っていたわけですから、過去はもっと会社があったはずで、今、本当にこの生産体制が追いつくのかなということは心配しておりました。大臣がしっかりと意識されておられる、動いておられるということについて、少しありがたいなというふうに思いました。

 そして、今回に関してなんですけれども、全体の被害の総額のイメージといいますか、こういったものはどのように捉えていただいていますか。現時点で。わからないという答えはやめてください。

新井政府参考人 お答え申し上げます。

 被害ということで申しますと、現在までに殺処分いたしました豚は十四万六千頭ということでございます。

 それに対しまして、国といたしましては手当金を全額支払うということにしております。また、手当金につきましては具体的に市場の評価を経て決めるということでございますが、それらにつきましてざっと私どもが概算をいたしますと大体四十五億円ぐらいというふうに、豚の価額でございまして、十四万六千頭の評価額については四十五億円ぐらいということで計算をしているところでございます。

近藤(和)委員 済みません、改めて、ちょっとこの全体の被害額であったり、あと対策費として幾らぐらいかということも今後もう少し詳しく進めていきたいと思うんですが、対策費としても含めてですね、総額。

新井政府参考人 お答え申し上げます。

 まず、今お話を申しました発生農家への手当金が大体四十五億円ぐらいというふうに今考えているところでございます。

 それに加えまして、対策費ということで、防疫対策の費用でございます早期出荷促進対策でありますとか防護柵の設置費用、それらにつきましては、昨年度の執行額と今年度の予算額でございます、まだ実績額はございませんで、予算額ベースでお話をさせていただきますと、約二百十億円の枠ということでございます。これらにつきましては国が全額ということではございませんで、二分の一というものもございますので、都道府県それから市町村が当該費用を補助する場合には、特別交付税による措置も行っているということでございます。

 これに加えまして、野生イノシシに対する経口ワクチンの購入、散布費用というものがございます。これも昨年度の三月から実施をしておりますので、昨年度の執行額と今年度の予算額を合わせますと約十八億円、これは全額国が助成をしているところでございます。

 これらを合わせますと、手当金を除きまして約二百二十八億円、ですから、手当金の四十五億円を加えますと二百七十五億円ぐらい、現在のところ、予算額ベースではそうなっているということでございます。

近藤(和)委員 ありがとうございます。

 どんどんどんどんこれからも金額は膨らんでいくと思います。お金のことについては、国がお金がないからちゃんと対策を打ってくれないかもしれないという、そういう不安の気持ちが広がらないように万全の準備をしていただけたらというふうに思います。

 それでは、豚コレラ、ちょっとまだまだやりたかったんですけれども、大和堆の話に行きたいと思います。

 済みません、ちょっとこの大臣所信の中で、日本海、違法操業という言葉が入っていなかったのは、私は本当に残念でございました。わざとなのかどういうことなのかわかりませんけれども、日本海側に住む人間にとってみれば、ちゃんと守ってよ、何とかしてくれというのは、やはりこの中に入れていただくべきだったというふうに思います。大臣、頭を下げていただきまして、ありがとうございます。その姿勢だけで本当に感謝いたします。

 そして、改めてですけれども、今回はやはり、なぜ取調べもせずにそのまま帰してしまったのか、怒りの声が渦巻いています。

 そして、このような状況であれば、私も季節が来るたびにこの委員会の中で大和堆における違法操業問題を取り上げてきていますけれども、本当にある意味むなしいといいますか、この場でほえて、ほえて、ほえて、結果として一向に減らないという状況です。水産庁の方も、そして海上保安庁の方も一生懸命頑張っていただいている、そして、今回のように衝突もされて、本当にひどい目に遭っているということはわかるんですが、この状態を改善していかなければいけないなと。そして、たびたびもう大臣も要望を受けられていると思いますが、立入検査、拿捕、取調べも含めて、なぜできないのかということについて、今後、きょうは時間がありませんので、後でもっと詳しくやりたいとは思うんですけれども、状況が変わっていない、むしろ悪化してきているんじゃないかということは、意識を強く持っていただきたいと思います。

 日本海側に出ていらっしゃる漁師さんのその痛々しい気持ち、実は、私の連絡をいただいていた船長さんは先日亡くなりました。本当に何とかしてくれ、守ってくれ、俺らは上にもミサイルも来るし、そして北朝鮮とかほかの国の船も来るし、おまえら何をやっているんやというのは言われていたんです。私は、その方の声を聞くことはもうできません。

 このことについて、大臣、ぜひとも今お気持ちをお聞かせいただければと思います。

江藤国務大臣 私自身が、宮崎県の門川町という港で育ちまして、漁師に囲まれて育った。おやじはタコ漁とかやっていた時期もあって、漁師の方々の思いは多少はわかるつもりですけれども。

 取締り船の皆さん方も、年間五千余りの違法操業の船がEEZ内に押し寄せてくる、その中で、持てる装備の中で必死でやっていることはわかりますが、しかし、漁師の方々にしてみれば、また来て、ひどいやつになると、集魚灯が日本の船の方が立派だから、日本の漁船に接舷するぐらい近づいてきて、いけしゃあしゃあとイカを釣っていくようなやつまでいるというお話も、現場の方が大臣室にお越しになって聞かせていただきました。

 この事件が起こった後に国交大臣と話をする機会を実は設けまして、これからやはり、もうちょっと、水産庁と海上保安庁と、今までとは違うレベルでの連携というのを考えないとこれはとてもやれないなということで、話を今始めさせていただいております。

 我々も強化をする必要がありますが、持てるものをいかに有効に、お互い補完し合って、少しでも漁民の皆様方のお気持ちに応えられることができるか考えさせていただきたいと思います。

近藤(和)委員 時間が参りました。

 きょうは済みません、海上保安庁そして外務省からもお越しいただきましたが、きょうは質問できなくて申しわけございませんでした。

 無念のうちに亡くなっている方もいらっしゃるんだということはぜひとも重く受けとめていただいて、今後委員会でもう少し深掘りしていきたいと思いますので、どうかよろしくお願いいたします。

 きょうはありがとうございました。

吉野委員長 次に、田村貴昭君。

田村(貴)委員 日本共産党の田村貴昭です。

 一連の大雨、台風災害によって犠牲になられた方々に謹んでお悔やみを申し上げるとともに、全ての被災者、そして被災農家の方々にお見舞いを申し上げます。

 最初に、農業被害対策について質問します。

 台風十九号では、三十八の都府県で農業被害が発生しました。ことし八月以降の一連の大雨、台風で、農業被害は実に一千七百一億円にも今上っています。既に営農を断念した方も出られています。

 ここで大事なことは、大臣が所信で述べられたように、離農者を出さないことであります。そのためには、農家の収入を途絶えさせてはならないということであります。稲作なら来年の田植に間に合わせる、もし営農が再開できないというのであれば収入ゼロ期間をつくらない、そうした収入対策をとることが求められると思いますけれども、江藤大臣の決意をまず最初にお伺いしたいと思います。

江藤国務大臣 私も長野に行かせていただいて、もう完全に、二町歩までリンゴ園を拡張したのに全部やられてしまった、これで改植したって数年は収入がないというようなお話も聞かせていただきました。

 確かに、この間の収入を全部補償することができれば、得られるであろう収入を補償することができれば、これ以上のことはないと私自身も思います。思いますが、例えば、いろいろ省内で議論しますと、農家一軒一軒を検討すると、ある人間は共済に入っている、ある方は入っていない。そして、数は少ないですけれども、中には収入保険にもう加入していらっしゃる方もいる。下手をすると、収入保険に入ろうと思っていたから米のナラシをことしやめちゃった、ことしだけ端境期で、米のナラシもないし収入保険もないんだよというような方もおられました。

 ですから、こういう対策をするときには、不公平感って、やはり先生、あるじゃないですか。自分で保険を掛けている人、それから共済に入っている人、そういう方々と、全く何もしていない方が同等というのは、財政規律上なかなか難しいと思います。

 しかし、例えば果樹園なんかについては、改植する期間について四年間、二十二万円の、いわゆる畑の手入れをする、農薬とか施肥をやるとか、そういう、四年間に二十二万だけですから、お金はありますけれども、それではとても営農意欲を維持できないというふうに強く感じています。

 ですから、そこからもう一歩、二歩踏み込んで、何ができるのか、やろうということで、今、省内で検討しておりますが、正直なところ、財務としっかり協議もしなければなりませんので、今、具体的なことがお答えできないことはお許しをいただきたいと思います。

田村(貴)委員 一昨日、長野県に行ってまいりました。千曲市、長野市でリンゴの被害を見ました。果実被害の九八%ぐらいをリンゴが占めるということであります。

 生産者からは、新矮化栽培用の苗木を急いで確保してほしいという要望等々、いろいろな被災地でいろいろな要望が上がっているというふうに思います。

 農水省の皆さんにぜひ、被災者に寄り添うことは当然です、被災者に寄り添うとともに、被災自治体、被災者、それから農業関係者からの切実な要望を聞き、それを実現すべく全力で当たっていただきたいと要求しておきたいというふうに思います。

 それから、大臣、共済に入っている方、入っていない方の均衡性というのもありました。共済なんですけれども、やはり未曽有の災害を予期することは難しかった、それから、共済掛金が高くて払うことができなかったという現実もあることは御承知おきいただきたい。

 その意味で、やはりハウスの再建に、共済未加入者は相当の自己負担、これは三割ですよね。千葉県のトマト農家でも聞いたんですけれども、三割の、負担が発生するところもあるということであるならば、負担の引下げにやはりここは支援策を打つべきではないかと思いますけれども、農水省、いかがですか。

横山政府参考人 お答え申し上げます。

 まず、農業用ハウスの再建、修繕ということにつきましては、強い農業・担い手づくり総合支援交付金の被災農業者支援型を発動いたしまして、共済未加入の方にあっては事業費の十分の三ということで支援をしているということでございます。それに加えて、各県によりまして、地方でもまた幾らかそれぞれ負担をされているということでございます。

 ただ、その部分について、共済に加入している方と加入していない方、これを同等に扱うというのは、やはりモラルハザードの問題もあって難しいということであります。

 他方で、園芸施設共済の掛金が高いんじゃないか、こういう御指摘がございました。その部分については我々としても、いろいろな選択肢、カバーを大きくして掛金が高いものとか、カバーが少し低くなるんだけれどもそのかわり掛金が安いオプションといったものも新たに導入しまして、なるべく多くの方がそれぞれの経営戦略に基づいて選択をしていただけるようにということでやっているところでございます。

 加入者の掛金の負担軽減を図りつつ、産地で集団的な加入、これをぜひ進めてまいりたい、このように考えているところでございます。

田村(貴)委員 離農者を生まない、この視点から、対策を前に進めていただきたいと思います。

 いろいろな問題があるんですけれども、丹精込めてつくられたお米が収穫後に農家の倉庫で水につかってしまった、こういう光景をテレビ等で見たときに、本当に胸が締めつけられる思いをいたすところであります。もみとか玄米に対する支援を行うことはできないのでしょうか。端的にお答えいただきたいと思います。

天羽政府参考人 お答え申し上げます。

 収穫後に農家の倉庫などで保管されていたお米、もみ、玄米の浸水被害につきましては、任意共済の特約、さらには民間の保険で対応することが基本ではございます。が、被災した方々の声、先生方の御指摘も踏まえながら、保管中のお米が被害に遭った農家の営農再開に向けてどのような支援が可能か、現在、省内、政府内で検討している最中でございます。

 なお、収入保険に加入している方につきましては、保管していたお米が浸水被害を受けて販売収入が減少した場合につきましても補償の対象となることになります。

 以上です。

田村(貴)委員 まさか川が決壊するというふうに思っていなかった方はいっぱいおられると思うんですね。

 河川が氾濫して水田に稲わらなどの漂流物が大量に堆積している問題、きょうの委員会でも議論がありました。営農再開の大きな障害となっています。

 この対策として、集積所まで撤去する費用は農水省が支援し、そして集積所から先の処理は自治体が行う災害廃棄物処理事業で対応するというふうに整理されているというふうに伺っております。これ自体は前進であります。

 もう一つは、自己負担を伴う問題です。

 稲わらの処理の新対策案にしても、それからハウス撤去の被災農業者向け強農であっても、それから瓦れきまじりの土砂、ガラス片が混入した場合の災害復旧事業にしても、いずれにしても除去は行えるんだが、農家負担が発生する場合がありますよね。

 営農再開にはかなりの費用を要します。農家の負担が発生します。せめて、やはり目の前の農地にある災害ごみや土砂の撤去ぐらいは農家負担でないようにすべきではないかと考えるんですけれども、いかがでしょうか。

天羽政府参考人 お答え申し上げます。

 これまで、災害ごみや土砂の撤去につきまして、強い農業・担い手づくり総合支援交付金、これは国、地方公共団体合わせて補助率は十分の六以上ということでございます。また、災害復旧事業、これは、激甚災害指定による国庫補助率の近年実績は農地で九六%などをそれぞれ実施してきたところでございます。

 さらに、先生御指摘のとおり、今般の稲わらの堆積に対応するため、環境省と連携し、圃場から廃棄物処理まで切れ目のない支援スキームを構築しているところでございます。

 引き続き、農家負担を少しでも軽減できるよう、被災された方々に寄り添って必要な支援を実施できるよう検討していきたいと考えております。

田村(貴)委員 農水省の方から、支援について、検討の発言が続いたんですけれども、大臣、もう一点だけ。

 やはり、離農者を生まない、そのために、営農を断念する人が出ないためには、今の制度を前に進めないと解決できないと思います。制度を前に進めて、離農者を生まないように頑張っていただけますか。

江藤国務大臣 先ほどもちょっと申し上げましたけれども、未収益期間を含めて二十二万円にプラスアルファ何かできないこととか、そういうことも含めて、まず、今あるものでどういう対応が可能なのかということを被災された方々にしっかり御理解をいただいて、今あるものをちゃんと利用していただいた上で、それの上に乗せるものが何があるのか、何ができるのか、しっかり省内で検討を進めてまいりたいと考えています。

田村(貴)委員 続いて、日米貿易協定について質問します。

 時事通信が今月十一日から十四日に実施した世論調査で、日米両政府が合意した貿易協定について聞いたところ、評価しないが三〇・九%で、評価する二九・三%を上回っています。

 日本農業新聞のモニター調査では、日米双方に有利と答えた方は八%に対して、アメリカが有利と答えた方は六六%にも上っています。生産者はとても、安倍総理が言われるようにウイン・ウインなどというふうには考えていないわけであります。TPP11、日欧EPAに続いて悪影響が強まると答えた方が七九%まで達しているわけであります。

 大臣にお伺いします。

 国民や生産者の多くが日米貿易協定を評価しない、あるいは不安に思っている現状を、どのように受けとめておられますか。

江藤国務大臣 どのような理由があれ、農家の方々が不安な気持ちになっているということについては極めて申しわけないと思っています。

 しかし、その合意内容につきましては、もう私の方から重ねて申し上げませんが、例えば、私のところは和牛生産のメッカでありますけれども、これによって、日米の合意によって枝肉の値段が下がるとは私は正直思っておりませんし、それから子牛の値段が下がるとも思っておりませんし、TPPワイドについても、酪農製品を含めてしっかり、アメリカ枠は設けませんでしたし、そういったことをもっとちゃんと説明しなきゃいけないと思います。

 午前中の御質疑の中でも、地方で農林省が説明していると言っているが、酪農で一番忙しい時間帯に説明会を開いたって、人は行きたくても行きはせぬよと。ごもっともな御意見だと思いますので、もう一度、どのような説明をすることが必要か、考えさせていただきたいと思います。

田村(貴)委員 先ほどの時事通信の世論調査で、どちらとも言えない、わからないという方が一番多くて、三九・八%なんですよね。中身を知ったら、これは大ごとやなと思われますよ。そして、これはやはりおかしいよと思う方はふえてくると思いますよ。

 大臣今言われた牛肉の話、ちょっとしたいと思います。

 日米協定で今のところ最も影響を受けるのは牛肉であります。

 政府の試算では、牛肉は二百三十七億円から四百七十四億円の生産減少にあるとしています。この数字自体の信憑性の問題もあるんですけれども、これは影響が出ること自体が大問題であります。

 現在でも、国産の肩、ばら肉などの食用の肉は、百グラム当たり三百八十一円から三百八十三円であります。一方、同品質の輸入肉は、二百五十一円から二百八十五円となっております。今でさえ、国産牛よりも低いわけであります。

 これが関税引下げでどうなるかといいますと、百九十八円から二百二十四円まで、輸入肉の値段が下がってまいります。国産が三百八十円台に対して輸入肉は百九十八円。これでは、畜産農家はやっていけないのではありませんか。いかがですか。

江藤国務大臣 どのような計算をされたのか、ちょっとまた教えていただきたいと思いますが、単純に、我々の試算もそうですから、責める気持ちは当然ありませんけれども、関税が下がった分を係数として掛けて値段を出されているんじゃないかと思いますが、実際に店頭価格というのは、例えば、通関手続の費用や倉敷料やそれからシッピング、いわゆる輸送にかかる費用などは全く変化がいたしませんので、そんなにドラスチックには下がらないのではないかと思います。ちょっと私も、自身で検証させていただきます。

 例えば、豚肉なんかについては四・三%の従価税がいずれゼロになるわけでありますけれども、私がちゃんと事務方の方に店頭価格でどれぐらい下がるのかということを調べさせたら、大体、店頭価格でいうと二円ぐらいの影響しかない、四・三%で。

 ですから、今回下がる分、三八・五%から、二六を掛けると、三倍ぐらいになりますかということであると、そんなに先生御指摘のような、すさまじい影響があるとは、私は実は考えておりません。

田村(貴)委員 ドラスチックという言葉を使われたんですけれども、大臣自身がそういうことを発言されているわけなんですよ。これは、価格はやはり暴落に近いような形で変化していきますよ。

 大臣は、かつて、TPPの参加に断固反対する立場でおられました。きょうの委員会でも言明がありました。そして、牛肉の関税引下げに強く反対しましたと。

 二〇一一年二月の二月号の「財界にっぽん」に、大臣はこのようにお話しになっておられます。今、国産の牛肉の肩、もも、ばら肉が百グラム当たり約三百五十円であるのに対して、同等の品質の輸入牛肉は大体二百四十円ぐらいです。それが、TPPに加盟し三八・五%の関税がなくなると、百六十八円ぐらいになります。三百五十円対百六十八円、これは畜産農家にとって厳しいですよ、このようにおっしゃっておられます。

 私が今言ったのと同じ考え方なんですよ。大臣は極めて正確なことを言われている。そして正しいことを言われているわけです。三百五十円対百六十八円、畜産農家は厳しいですよと言ったんです。私は今、三百八十円台が国産で、輸入が百九十八円まで下がると。三八・五%の関税が九%まで下がるという前提での計算です。大臣もこれで発言されていたわけですよ、こうなってしまったら大変だと。こうした事態がTPPで強行されて、今からアメリカとの関係で同じことをやるんですよね。

 大臣がもともとおっしゃっていた、関税が下がると私たちの食用の牛肉の値段というのは国産では大変な影響を受けるんだ、だからこの協定は大問題だと私は思うんですけれども、大臣の過去の考え方に即しても、この協定は認められないんじゃないですか。

江藤国務大臣 二〇一一年というタイミングは、総理とオバマさんの話がある前ですよね。あのときは、もう完全に聖域なき関税撤廃で、関税は全て取っ払ってしまうのだというのが私はTPPだというふうに自覚をしておりました。

 しかし、私は、過去に自分で言ったことを翻すつもりはありません。政治家は自分の口から出たことには責任を持たなきゃいけませんから。

 ですから、私の地元でも、おまえは随分反対の論陣を張ったじゃないかと。それで、県会議員の方々にも、私と一緒にみんなで自民党を出ましょうと言ったこともあります、会派の方々に。そういう過去の自分の言動を振り返ると、いろいろ、恥ずかしく思うこともあり、じくじたる思いはたくさんあります。

 しかし、日本は、これまでの経済連携、いろいろなことがありましたけれども、関連対策で一兆三千億、お金をつぎ込んで、畜産クラスター事業、産地パワーアップ事業、そういったものが着実に現場での競争力を強めています。私の地元でも、繁殖母牛の数は今上昇しています。数がふえています。

 ですから、そういった対策をきちっとやれば、私がいつも地元で言っていたのは、経済連携協定をやれば無傷では済みませんと。しかし、しっかり手当てをして、そして、その穴については責任を持って埋めさせていただくことでお許しをいただきたいというふうに申し上げてきたところでありますので、先生の御指摘はしっかり受けとめて、今後、国内対策、関連対策等も立てなきゃなりませんので、やらせていただければと思います。

田村(貴)委員 対策を講じていく、それから大綱を改定していくという話だったんですけれども、その対策大綱は、これまでもTPP対策で四年やってきているわけなんですよね。四年やってきて、この間どうなったかということです。

 国産牛、例えば乳用種、ホルスタインの雄ですね、肉用の国産牛の肥育農家はどうなっているか。二〇一四年には五千九百五十戸あったものが、今、二〇一九年は四千六百七十戸、八百十戸も減りました。飼育頭数はどうか。過去最大百十万頭だったのが、年々年々減って、今八十万頭を大幅に割る事態となっています。対策になっていないじゃないですか。輸出枠がふえるという話と、国産牛肉、肉用種の問題は、全然違うんですよね。

 大綱を見直して、アメリカ産牛肉増加に対する対策となり得るのか。こうしたやり方で畜産農家は納得すると本気でお考えになっておられるんですか。肥育農家は減少している、そして飼育頭数は減少している、これは事実ですよね。これ以上、対策を打つといっても、もう限界に来ているんじゃないですか。いかがですか。

江藤国務大臣 先生に御指摘いただいたのは、それはホルスの肉用種のお話ですね。(田村(貴)委員「そうです」と呼ぶ)

 まず、酪農家の経営状況においては、ホルスタインは乳を出させるということが一番の目的ですから、基本的に、妊娠してくれればそれで乳は出るということで、ホルスを産ませるよりも、後継牛をつくるという意味では、性判別精液というのを使って、なるべく雌をつくるようにしています。

 しかし、多くの酪農家は、妊娠を目的とするということであれば、F1をつける、黒の種をつけるという行為をやっている、F1の値段が非常にいいわけですから。ですから、一概に、対策が不十分だったからホルスの肉専用種が減ってしまったというのはちょっと、若干先生とは議論がかみ合わないかなと思います。

 私としては、例えばマルキンがございますけれども、マルキンは常に乳用種には発動しているような現状もあって、農家も後継牛を確保したい、そういう切実な思いもあって、判別精液の導入、それについては二分の一の支援を行っておりますし、あとは、加えてF1に、農家の自主的な御判断で種つけをされているというふうに理解しております。

田村(貴)委員 これは統計として、事実として、飼養頭数が減っている、それから肥育農家が減少している。対策を四年間打つ中でこういう現実であるということは事実なんですよね。これを踏まえて、今から対策大綱といっても、もう私は効果がない。生産基盤が台風によって、大雨によってこれだけ危機的状況に遭っているのに、これからまた輸入農産物をふやしていくといったら、これはもうモチベーションどころか、将来を悲観する農家がどんどん出てくるんじゃないですか。世論調査にもあらわれています。

 食料自給率だってそうじゃないですか。三七%まで下がった食料自給率、今後、アメリカとの貿易協定のもとで、これが上がるという保証はあるんですか。

 カロリーベースで三七%。耕地面積は今十七・三万ヘクタール、販売農家戸数は四十六・七万戸、この十年間で減りました。基幹的農業従事者は六十万人も減少しているわけですよね。この上、アメリカとの自由貿易協定を交わして、食料自給率は上がる見込みがあるんですか。二〇二五年に四五%、この目標に到達するという確たる方策はどこに持ち合わせていますか。あわせてお伺いしたいと思います。いかがですか。

江藤国務大臣 非常に高い目標であることは、まず最初に認めておきたいと思います。

 というのは、耕作放棄地がふえているという御指摘をたびたび受けますが、私の地元だけではなくて、いろいろな全国を見渡しますと、いわゆる生産効率のいい、生産性の高い農地については逆に奪い合いになっているような現状も逆にあります。

 中山間地域も含めて、耕作が極めて厳しいところについてはやはり、農地として今分類されているものが耕作放棄されるという部分もあって、なかなか三七%から四五%に上げていくのは難しいかもしれませんが、今、都会の若い人たちの中にも随分、田舎で頑張っていこうと思っている人がいます。私の地元にも、横浜から、農業の経験は全くないけれどもトマト経営をやってみたいと。私の仲間のJAのトマト部会の連中がみんなで周りを囲んで、手とり足とり教えて、それでトマトを生産して、今じゃもう何年目になったかちょっとわかりませんが、しっかりとした農家に生まれ変わった人もたくさんいます。それから、中山間地域でも、女性一人で就農して頑張っている女性もいます。

 ですから、あらゆる施策を、政策はパッケージですから、総動員をしてやらせていただければいいのではないか。そして、何といっても、生産基盤を生産性の高いものに変えていく。土地改良であるとか基盤整備であるとか、そういったものについてはもっと積極的にやっていかないと、汗を流して力を打ち込んでもなかなかいい実りが得られないようなところでは、なかなか就農してくださいというのは難しいので、いろいろな政策をパッケージであわせて、高い目標ではありますが、努力していきたいと考えています。

田村(貴)委員 大臣が言われたことはいいことなんですよ、周りで起こっていることは。しかし、もう一現象にすぎないんですよね。

 そして、これ以上に農家の大規模化、コスト削減を押しつけることについて、どれだけのきつい思いに遭っていくかといったことを考えなければいけないと思います。

 今回の台風を含めて、災害によって、日本の農業県に大きな被害を与えて、生産基盤が脅かされています。こんな中で、一番影響のあるメガ協定、アメリカとの自由貿易協定を結ぶなんというのはやめるべきです。

 食と農業を脅かす協定案が農水委員会に諮られていない、外務委員会で審議されるのは、これはよくないので、私としても農水委員会を含む連合審査を強く求めて、きょうの質問を終わりたいというふうに思います。

 終わります。(発言する者あり)ああ、連合審査、委員長、いいですね、理事会。

吉野委員長 理事会で協議します。

田村(貴)委員 済みません。ありがとうございました。

吉野委員長 次に、森夏枝君。

森(夏)委員 日本維新の会の森夏枝です。

 今国会も、農林水産委員会でお世話になります。よろしくお願いいたします。

 冒頭、本年八月の大雨や台風十五号、十九号などによりお亡くなりになられた方々に心からお悔やみを申し上げますとともに、被災された皆様にお見舞いを申し上げます。

 多くの農家の方々も被災をされ、収穫直前の農作物や農業用ハウスの被害などに加え、御自宅も被災された方々にとっては、避難所での生活や片づけなどに追われ、日常を取り戻すまでにまだまだ時間がかかる中で、離農を考えている方々がいらっしゃるというお話もお聞きをしました。

 江藤大臣も、昨日の大臣所信でも、被災者の方々の気持ちに寄り添い、全力で取り組まれるとお話をされました。本日午前中の委員会の中でも、大臣は、被災地に入られ、無力さを感じたとおっしゃられておりました。余りにも甚大な被害で、率直にそのように思われたのだと思います。

 私自身も、国会議員を目指す大きなきっかけとなったのが東日本大震災で、ボランティアに行った際の自分の無力さを感じたということが大きなきっかけとなりました。

 災害の前に人は無力だと感じることがありますが、被災者の皆様の声を聞き、一日でも早く被災者の方々が日常の生活に戻ることができるように、私も微力ではありますが努力してまいりたいと思っております。

 台風十五号による農林水産関係の被害額が四百億円を超え、十九号による被害額は八百七十億円を超え、今後更に被害額がふえる見込みとのことですが、ことしのこの大規模な農林水産被害に対しての支援策について、江藤大臣はどのようにお考えでしょうか。

江藤国務大臣 もう、やれることは何でもやりたいと思っています。

 長野に行ってぶら下がりの取材を受けたときに、どうされるんですかと言われたので、やれることは何でもやりたい、とにかく一生懸命やらせていただきます、やってあげるというのではなくて、やらせていただくと。そして、やはり、どういうことを望んでおられるのかというのをしっかり酌み取ることから始めなければならないと思っています。

 各農政局の職員ともほぼ毎日、テレビ会議を開いて報告を受けておりますけれども、職員のみんなも、働き方改革にひっかからない程度、みんなほとんど休みなしに頑張ってくれています。

 そしてまた、福島あたりは、お話もお聞きしましたけれども、東日本大震災で完全に農地をやられて八年以上たって、そして、もう一回やろうといった二年目でまた全部やられてしまったというようなお話も聞いて、そういう方の気持ちが本当に、もう今のところは折れてしまっていますよ、正直なところ。

 それをやはり、私のような者が頑張れと言ったってなかなかかもしれませんが、それにはやはり、国が、ここまで自分たちのことを理解してくれて、そして、やれることは、正直限界はあります、限界はありますが、一生懸命考えてやってくれているんだと、そして、こういう施策も具体的に、少しずつだけれども形になって出てきたというものを出すことによって、被災された方々のお気持ちに沿うような努力をしていきたいというふうに考えております。

森(夏)委員 ありがとうございます。

 やれることは何でもやると言っていただきました。職員の方々も本当に休みなく作業に当たってくださっていると思います。先ほども大臣からありましたけれども、限界はあると思いますけれども、本当に被災地の皆さんのお気持ちに寄り添った支援をお願いしたいと思っております。

 今後、リンゴ等の傷ついた果樹の病気の感染なども心配をされております。時間がたつにつれて、今後も、被害状況が報告されるたびに、また被害額がふえていくものと思います。余りにも甚大な被害のために、被災農家全てを助ける予算というのは足りないと思いますけれども、今後もしっかり予算を確保して、これまで日本の農業を守ってきてくださった方々を、離農しなくてもいいように、しっかりと支えていただきたいと思っております。

 近年、台風による農林水産被害額が一千億円を超える年が続いております。台風は、発生時期も八月から十月と大体予想もできますし、台風発生後の進路も数日前から予測ができます。少しでも被害を未然に防ぐことができればと考えておりますが、台風等による農林水産被害を最小限にするために、今後、農林水産省として取り組まれることがあれば教えてください。

岩濱政府参考人 お答えいたします。

 先生御指摘のとおり、昨年は台風第二十一号、第二十四号、ことしは台風十五号、十九号が、絶大な勢力を保ったまま本州を直撃いたしました。農林水産業に甚大な被害をもたらすと同時に、農業者の方にも、いわゆる気持ちを落とすような状況になっております。

 このような中で、農水省では、今後の災害に備えまして、防災・減災、国土強靱化のための三か年緊急対策に基づきまして、ため池の緊急対策や農業用ハウスの補強への支援等を行うほか、耐候性ハウスの導入、また、収入保険及び農業共済への加入促進などの取組を行っているところでございます。

 農林水産省といたしまして、このような取組を今後ともしっかり農業者の方に伝えていく中で、台風等による農業被害を最小限にしてまいりたいというふうに考えております。

森(夏)委員 ありがとうございます。

 来年も再来年も、ことしのような、また台風が来る可能性もありますので、農家の方々が離農しなくてもいいようにしっかりと支援もしていただきたいですし、この被害を最小限に抑える取組というのをしっかりお願いしたいと思います。防災、減災への取組、これまでの災害を教訓にしっかりと生かしていただきたいと思っております。

 東日本大震災から八年半がたちました。福島県の農水産品の輸入規制が五十四カ国から二十二カ国になったことは、福島の農家の方々、漁業者の方々、そして国としても御努力をされてきたのだと思います。しかしながら、八年半がたった今でも二十二カ国もの国で輸入規制が行われていることについては、さらなる努力、そして、これまでと違うアプローチが必要だと思っております。

 今後、輸出促進をしていかれると思いますが、福島県の農水産品の輸入規制解除に向けて新たな取組等あれば、お聞かせ願います。

江藤国務大臣 一生懸命、あらゆる機会をつかまえて、今回もたくさんの外国からの賓客が天皇陛下のためにお越しになりましたが、内閣を挙げて、残った国については、科学的見地に基づいているんです、本当に厳しい基準をクリアしたものしか出ていないので、どうぞ安心してくださいというお願い、それから説明、これは尽くしております。しかし、これは、これまでもやってきた地道な努力の延長でしかないと言われれば、先生のおっしゃるとおりかもしれません。

 しかし、正直なところ、それしかないんですよね。向こうのお立場じゃないですか。こっちから押しつけることはできない。こちらからは、やはり、いかに論理的に、科学的におかしな御判断ですよと言っても、最終的にその決断をされるのは相手のお国でありますから、こちらはやはり、平身低頭と申しますか、丁寧に何度でも頭を下げて、根気強くやらせていただくしかないと思います。

 また、先生御指摘があったように、今度、国会には、農林水産省に輸出の本部をつくる法案を提出いたします。そういうことになると、かなり省庁横断的にいろいろなことを、私が本部長になりますので、お願いすることが可能になってきますので、縦割りを排して、あらゆるチャンネルを使ってやっていきたいというふうに思っております。

森(夏)委員 ありがとうございます。

 本当にこれまでも粘り強く交渉もしていただき、説明もしっかりとしていただいていると思います。それは私自身も理解をしているつもりですけれども、ですけれども、八年半、同じような状況が続いているということで、また、農林水産省さんとしても新たな何か対策がないのか、考えていただければと思います。

 福島の方々、本当にこの風評被害の払拭のために大変な御苦労をされております。厳しい安全基準もしっかり満たしたものしか出していないのに、それでも外国が受け入れてくれない。それもやはり、そのニュースは日本国内の方も知ることとなりますので、やはり不安に思われる方はまだまだいらっしゃいますので、これ以上ないほど交渉、説明していただいているかもしれませんけれども、今後も対策を考えていただきたいと思います。

 福島の方々、本当に今回の台風でも被害を受けられておりますので、何とか、東日本からの復興という意味では、農林水産省挙げて取り組んでいただきたいと思います。よろしくお願いいたします。

 昨年九月に豚コレラが確認されてから一年以上が経過し、いまだに終息ができておりません。発生のニュースを見るたびに、殺処分を余儀なくされた養豚農家さんや、いつ自分の農場に感染するか不安に思われている農家の方々の顔が浮かびます。

 埼玉県で感染が確認をされました。埼玉での豚コレラの発生原因についてお聞かせ願います。

新井政府参考人 お答え申し上げます。

 埼玉県におきます豚コレラの発生状況でございます。

 まず、飼養豚、いわゆる農場におきましては、九月十三日に発生をいたしまして、その後、九月十七日、十月十一日ということで、三件、今、発生しているところでございます。

 また、野生イノシシにつきましては、九月二十四日に新たに感染が確認されまして、これまで計九頭の発生が確認をされております。

 今般の豚コレラは、疫学調査の中間報告におきましても、豚コレラに感染した野生イノシシ由来のウイルスを、人、車両及び野生動物等が農場内に持ち込んだ事例が多いとされているところでございます。

 埼玉県におきましても、発生の順序はございますけれども、これら三つの農場は、結果的には、野生イノシシの感染が確認された半径十キロ圏内の農場だということでございます。このような状況を鑑みますと、埼玉県におきましても、野生イノシシの感染が確認されておりますので、野生イノシシ由来のウイルスが何らかの形で農場に持ち込まれた可能性は否定できないというふうに考えているところでございます。

森(夏)委員 なぜ埼玉の野生イノシシに感染してしまったのかというところについてもしっかりと原因究明していただきたいと思います。これ以上感染が拡大しないようにお願いしたいと思います。

 この豚コレラも発生から一年以上が経過し、終息できない中で、埼玉県に飛んでしまったというのは、大変多くの方々が不安に思われていると思います。この豚コレラを封じ込めるためにワクチン接種に踏み切るというのは、さまざまな声があった中でも、決断としては間違っていない、もうこれはワクチン接種すべきだと私も思っております。

 今回使われるワクチンは、三十年以上前から使われている日本製のワクチンとお聞きをしました。このワクチンによって終息することを願っておりますが、豚コレラワクチンについて、米国製のマーカーワクチンの接種も検討されているとお聞きもしましたが、この米国製の、遺伝子組み換えのワクチンとお聞きをしましたが、安全性について、農林水産省としてどのような認識でしょうか。

新井政府参考人 マーカーワクチンを接種した豚に由来する食品の安全性につきましては、食品安全委員会におきまして調査をしていただくことになっております。

 具体的には、食品安全基本法に基づきまして、本年九月十七日付で食品安全委員会に食品健康影響評価を要請したところでございます。

 食品安全委員会は、審議をしていただきまして、現在、その評価案がパブリックコメントにかけられているところでございます。このパブリックコメントの中におきましては、「本製剤が適切に使用される限りにおいては、本製剤を接種した豚に由来する食品を通じてヒトの健康に影響を与える可能性は無視できる程度と考えた。」というふうにされているというふうに承知をしておりまして、この結果を見たいというふうに考えております。(発言する者あり)

森(夏)委員 ありがとうございます。

 私も、その「無視できる程度」というのは少しひっかかります。影響はないと言い切れないのだと思っております。特に、女性やお母さんは、遺伝子組み換えという言葉だけでも反応をします。もしそのマーカーワクチンを接種することになれば、不安に思われる方はたくさんいらっしゃると思います。これがまた風評被害につながると思いますので、いま一度、安全性をしっかりと御検討いただきたいと思っております。

 次に、アフリカ豚コレラ対策について伺います。

 豚コレラが発生してから、いまだに封じ込めができていない中で、ワクチンのないアフリカ豚コレラが東南アジアで大変蔓延している中、日本に絶対持ち込ませてはならないと思っております。

 水際対策を今後強化されると思いますけれども、水際対策ももちろん必要だと思っておりますが、このアフリカ豚コレラが万が一国内に持ち込まれた場合の対策というのはスピード感を持ってすべきだと思っておりますが、どのように対応されるのでしょうか。

伊東副大臣 アフリカ豚コレラにつきましては、今、森委員お話しのとおり、極めて重大な影響を持つ病原体だ、このように思っております。豚コレラとはもう全く、名前は似ていますけれども、全く別物でありまして、ワクチンも何もありません。

 まず、水際における防疫対策を強化するために、関係省庁一体となって対策を講じているところであります。

 具体的には、家畜防疫検査官の大幅な増員や、あるいは検疫探知犬、犬でありますけれども、この探知犬を三年間で倍増させることをしてきております。平成二十八年度は二十六頭でありましたこの探知犬を、令和元年、今年度は五十三頭に増頭しておるところであります。

 また、違法な持込みに対しまして、税関と連携し、違反者のデータベース管理や、家畜伝染病予防法に基づきまして警察への通報や告発を行うなど、対応を厳格化しているところであります。

 こうした体制整備や制度の運用厳格化により、水際での抑止力が確保できているものと考えておりますが、今後も、国内への侵入を防ぐために万全の対応をとってまいりたいと思います。

 また、万が一国内に侵入してしまった場合ということでございますが、まず、農場への侵入防止対策といたしまして、各地での農場防護柵設置に対する支援、これとあわせて、飼養衛生管理基準の見直しによります野生動物侵入防止対策の義務化等を実施するとともに、自然公園やキャンプ場におきまして、野生動物による食品残渣を通じた感染拡大を防止するためのごみ箱対策等の措置も関係省庁と連携して実施しているところであります。

 もう韓国まで来ているところでありますので、十分危機感を持って当たりたいと思います。

森(夏)委員 ありがとうございます。

 危機感を持ってやってくださるということで、今後ともよろしくお願いします。

 水際対策も、検査官を増員したり探知犬をふやしたりということで努力をされていると思いますので、侵入をしないようにお願いいたしたいと思います。

 次に、農福連携について質問させていただきます。

 京都府京田辺市にさんさん山城という障害者就労支援事業所があり、京都府の農福連携の南サテライト拠点に認定をされています。主に地域の特産品や加工をされており、イベントに出品して売るだけでは限界があるということで、二年前にカフェを開設され、事業所で生産した野菜などを使ってランチを提供されています。このさんさん山城さんでは、今後、ノウフクJASの取得を目指し、挑戦を続けられております。

 よい物をつくって売る、人に喜んでもらうというのは、障害者の方々の生きがいづくりとして、今後、全国の事業所でも広まっていけばと思っております。

 昨日の大臣のお話の中にもありましたけれども、今後、農林水産省として農福連携を推進していかれると思いますが、具体的な取組等について教えてください。

江藤国務大臣 私の地元でも随分、体に障害をお持ちの方が農業生産法人等で働いておられます。そして、非常に一心に打ち込んで仕事をされる、脇目も振らずに、サボることもなく。ですから、結果的には生産性も結構高いということで、雇用をしている側にとっても非常に利益があるということでございます。

 そして、そこに参加している方々も、やはり集まって、家にこもるのではなくて、会話をしたり、仲間ができたり、そして、何といっても、自分が手がけたものが農産物として世の中に出て、それが評価されてお金になっているということに対する、社会参加ができていることに対する実感が、いろいろな方々に笑顔というか生きがいを与えるという結果になっていくことはすごくすばらしいと思って、ですから、農林水産省としても、農山漁村の振興交付金で、これから、今、先ほど私が申し上げましたように、農業生産法人が、障害がある方は、例えば手すりがないとなかなかうまく作業ができないとか、いろいろな事情があるじゃないですか。そういった設備投資をする場合にはこの交付金が使えるようにさせていただくとか、そういう方々が、ちょっと休憩所が欲しい、時々やはり休み休みやりたい、そういう休憩所についても対象に、普通はしないんですけれども、農林省の施策的には、今回させていただこうというふうに思っています。

 それからやはり、技術もこの際身につけていただくことも可能だ、十分できることだと思っていますので、そういったことの研修もさせていただいたり、先生が今お話しされたような取組とか、セミナーとかシンポジウムとか、そういうのもやらせていただこうと思っています。

 また、これは若干、官邸の話にはなりますけれども、官房長官が座長になられて、農福連携等の推進会議というのを今やっておりまして、私もメンバーで入っておりますので、しっかり農林省として取り組めと。そして、農業版のジョブコーチとか、今申し上げましたように、障害のある方とそういう働き手を求めている農業生産法人なり農家とのマッチングとか、そういうことも丁寧にさせていただければというふうに思っております。

森(夏)委員 ありがとうございます。

 農福連携について力を入れていただけるということで、大変ありがたく思っております。障害者の皆さんの笑顔をふやす、生きがいづくりの場をふやしていく、大切なことだと思いますので、今後とも取組をよろしくお願いいたします。

 私は、WFP、国連世界食糧計画議連に所属をしております。WFPで食料支援をしている、この二倍の量を、日本が毎年、食料を廃棄している現状があります。私は、食品ロス削減には大変関心を持っております。

 以前、委員会でも、規格外野菜の活用であったり、ジビエの利活用なども取り上げさせていただきました。今国会では肥料に関する審議も行われますが、食品リサイクルによる肥飼料の利用率は二四%と低く、今後活用の余地があるということで、ぜひ積極的に行っていただきたいと思っております。

 食品ロス削減とあわせて、食品廃棄削減も、農水省としても積極的に取り組んでいただきたいと思っております。コストの面の問題もあると思いますが、バイオマスの発電などにも利用し、農業廃棄物も利用量をふやしていく取組もお願いします。

 食品リサイクルによる肥飼料の利用や、食品ロス削減、食品廃棄の削減等の重要性等について、大臣の御認識をお聞かせ願います。

江藤国務大臣 きょう、随分、アメリカとの経済連携についてお話が大分ありましたけれども、日本は大変、三七%しか自給率がないということですから、輸入にたくさん頼っているにもかかわらず、六百四十三万トンも食品ロスを出しているということは、世界に対しても非常に恥ずかしいことだと私も思います。そして、普通の食品ロスだけじゃなくて、一般のお母さんが買物をして、冷蔵庫の中で手をつけられずに、そのまま賞味期限等を過ぎてしまったり腐ってしまったり、そういうものも多分にあるということも、若干問題意識は持っております。

 ですから、この食品廃棄物の量の削減については、納品期限、これは小売に対してですけれども、これがなかなか厳しいというのがあって、これの見直しを今、農水省としては働きかけをいたしております。

 それから、未利用食品、ヨーロッパ等では非常に、生活に困っている方々にフードバンク的なものでNPOの方々がお届けしたり、いろいろな取組がなされておりますけれども、そういったことも、なかなか、賞味期限切れのものを出すことについては倫理上もいろいろな問題があるかもしれませんが、しっかりと対話と議論を重ねた上で、そういったことにも協力していければと思っております。

 先ほど先生、再利用率二四%とおっしゃいましたか。一応、最近、二八ぐらいまでには上がってきておりますが、これもなかなか、食品残渣もちゃんと利用できる方向は、例えば肥料であるとか、いろいろな取組はたくさんありますので、分別の方法とか、分別をちゃんとしないと利用できませんので、そういった指導も外食向けにはさせていただきたいというふうに考えております。

森(夏)委員 ありがとうございます。

 大臣も大変重要だと御認識いただいているようで、今後も取組をお願いしたいと思います。

 先ほど大臣からお話ありましたけれども、フードバンクなども、私も地元の方から、何かないですか、一カ月前の賞味期限のものを何か、パスタだったり缶詰だったり、あれば出してくださいと言われるんですけれども、政治家なのでなかなか、寄附になってしまうので出せないというところで、ちょっともどかしい思いもしておりますが。

 先ほど大臣からお話ありましたが、教育というのも大変大事だと思っております。賞味期限が切れたらもう捨てるという若いお母さんというのはたくさんいらっしゃると思います。賞味期限が切れても食べられるかどうかというのは、自分の目で、舌で確認することができるので、そういった教育も、賞味期限が来たら食べられないというふうな認識を持った若い世代がふえているのは事実ですので、こういった教育もしっかり必要なのだと思っております。

 以上で終わります。ありがとうございました。

吉野委員長 次回は、公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。

    午後四時四十二分散会


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