衆議院

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第5号 平成28年12月13日(火曜日)

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平成二十八年十二月十三日(火曜日)

    午前九時開議

 出席委員

   委員長 山口  壯君

   理事 江渡 聡徳君 理事 小野寺五典君

   理事 寺田  稔君 理事 中谷 真一君

   理事 中村 裕之君 理事 後藤 祐一君

   理事 升田世喜男君 理事 浜地 雅一君

      池田 道孝君    今枝宗一郎君

      大西 宏幸君    門山 宏哲君

      金子万寿夫君    北村 誠吾君

      熊田 裕通君    小林 鷹之君

      左藤  章君    藤丸  敏君

      宮澤 博行君    和田 義明君

      青柳陽一郎君    神山 洋介君

      横路 孝弘君    佐藤 茂樹君

      赤嶺 政賢君    下地 幹郎君

      吉田 豊史君    照屋 寛徳君

      武藤 貴也君

    …………………………………

   防衛大臣政務官      小林 鷹之君

   防衛大臣政務官      宮澤 博行君

   参考人

   (東京国際大学国際戦略研究所教授)        伊豆見 元君

   参考人

   (政策研究大学院大学教授)            道下 徳成君

   安全保障委員会専門員   林山 泰彦君

    ―――――――――――――

委員の異動

十二月十三日

 辞任         補欠選任

  金子万寿夫君     池田 道孝君

同日

 辞任         補欠選任

  池田 道孝君     金子万寿夫君

    ―――――――――――――

十二月十三日

 第一線救急救命処置体制の整備に関する法律案(青柳陽一郎君外六名提出、衆法第五号)

同月八日

 安保法制(戦争法)の速やかな廃止と、南スーダンPKOより自衛隊を撤退させ、愛知を軍事拠点にさせないことに関する請願(本村伸子君紹介)(第一四七九号)

 戦争法の廃止を求めることに関する請願(本村伸子君紹介)(第一四八〇号)

 同(赤嶺政賢君紹介)(第一五三五号)

 同(赤嶺政賢君紹介)(第一五八九号)

 同(池内さおり君紹介)(第一五九〇号)

 同(梅村さえこ君紹介)(第一五九一号)

 同(大平喜信君紹介)(第一五九二号)

 同(笠井亮君紹介)(第一五九三号)

 同(穀田恵二君紹介)(第一五九四号)

 同(斉藤和子君紹介)(第一五九五号)

 同(志位和夫君紹介)(第一五九六号)

 同(清水忠史君紹介)(第一五九七号)

 同(塩川鉄也君紹介)(第一五九八号)

 同(島津幸広君紹介)(第一五九九号)

 同(田村貴昭君紹介)(第一六〇〇号)

 同(高橋千鶴子君紹介)(第一六〇一号)

 同(畑野君枝君紹介)(第一六〇二号)

 同(畠山和也君紹介)(第一六〇三号)

 同(藤野保史君紹介)(第一六〇四号)

 同(堀内照文君紹介)(第一六〇五号)

 同(真島省三君紹介)(第一六〇六号)

 同(宮本岳志君紹介)(第一六〇七号)

 同(宮本徹君紹介)(第一六〇八号)

 同(本村伸子君紹介)(第一六〇九号)

 日本を海外で戦争する国にする戦争法(安保法制)の廃止に関する請願(本村伸子君紹介)(第一四八一号)

 石垣島への自衛隊配備撤回に関する請願(赤嶺政賢君紹介)(第一五三三号)

 戦争法を廃止することに関する請願(池内さおり君紹介)(第一五三四号)

 沖縄・高江でのヘリパッド工事中止を求めることに関する請願(赤嶺政賢君紹介)(第一五三六号)

 自衛隊に駆けつけ警護など新任務を付与せず、南スーダンからの撤退を求めることに関する請願(赤嶺政賢君紹介)(第一五三七号)

は本委員会に付託された。

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 参考人出頭要求に関する件

 国の安全保障に関する件(北朝鮮の核・ミサイル問題等)


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     ――――◇―――――

山口委員長 これより会議を開きます。

 国の安全保障に関する件、特に北朝鮮の核・ミサイル問題等について調査を進めます。

 この際、参考人出頭要求に関する件についてお諮りいたします。

 本件調査のため、本日、参考人として東京国際大学国際戦略研究所教授伊豆見元君、政策研究大学院大学教授道下徳成君の出席を求め、意見を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

山口委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

山口委員長 この際、両参考人に一言御挨拶を申し上げます。

 本日は、御多用中のところ本委員会に御出席をいただきまして、まことにありがとうございます。それぞれのお立場から忌憚のない御意見をお述べいただきたいと思います。よろしくお願いいたします。

 次に、議事の順序について申し上げます。

 まず、両参考人からそれぞれ十分程度御意見をお述べいただき、その後、委員からの質疑にお答え願いたいと存じます。

 念のため申し上げますが、御発言の際は委員長の許可を得ることとなっております。御発言は着席のままで結構です。また、参考人は委員に対し質疑をすることはできないこととなっておりますので、御承知いただきたいと存じます。

 それでは、伊豆見参考人、お願いいたします。

伊豆見参考人 ありがとうございます。東京国際大学の伊豆見でございます。

 本日は、貴重な機会を与えていただきまして、大変光栄に存じております。特に、山口委員長からお声をかけていただいたということは、私にとっては非常に喜ばしいことでございますので、できるだけ、私の考えていますこと、これまでそれなりに研究をしてきましたことの一端を御披露させていただきまして、皆様との御議論をさせていただければと思います。

 御案内のように、ことし、北朝鮮は、一月六日と九月九日、二回核実験を行いまして、それ以外、弾道ミサイルということですと、短距離から中距離、準中距離を二十数発、二十四発ぐらいですか、発射をするということがございまして、十月二十日を最後にして今ちょっと静かになっております。

 しかし、一月から十月までの間、そういう挑発行為がずっと続いてきたわけでありますが、なぜ、ことし、そこまでのことをやったのか。北朝鮮側の理由といいますか要因といいますか、それについて、簡単に、私が考えていますことを申し上げさせていただきたいと思います。

 もちろん、幾つも理由があって、それの複合的な理由のもとで北朝鮮はこういう行為を行った。大きく分ければ、もちろん軍事的な要因がありますし、非軍事的な要因があるということになりますし、あとは、外向け、国際社会に向けての意味合いというものがあると同時に、国内に向けて、国内上必要なものがあって行ったということだろうと思います。

 軍事的に言いますと、もちろん、彼らの核能力及びミサイル能力の向上、強化というものを図る。基本的には、核兵器の小型化というものを進め、極めて信頼に足る、極めて安定した、十分に統制のとれた弾道ミサイルの能力を開発のみならず確認する。そして、この二つをくっつければ、御案内のように、核ミサイル、小型化されて弾頭化された核兵器を弾道ミサイルに装着、装填すれば核ミサイルとなるということでありますので、もちろんこれが大きな目標であったかと思います。

 実は、三回目の核実験を行った後は北朝鮮が核兵器の小型化に成功したと見る、これはとりわけアメリカの核の技術の専門家の見方だと思いますけれども、その中では、もう三回目で十分小型化が成ったという声が大きかったと思いますが、ただ、中国の核の専門家、すなわち核兵器製造に携わっているような人たち、そういう人たちの話は、まだ三回目では無理じゃないかと言っておりました。ただ、ことし、四回目、五回目を行いましたので、誰が見ても北朝鮮が小型化には成功したということにはなっているのであろうかと思います。ですから、まず核ミサイルを手にするということが大事。

 しかし、そのミサイルでおもしろいことは、やはり短距離、そして中距離、準中距離までを今回やった。ムスダンというものに手をつけまして、恐らく三千キロから四千キロの射程を持ちますから、グアムがその射程の中に入るというものを、今まで発射実験を一度もやったことがないものをことしは六回やりましたかね。成功したのは一回だけ、六月二十二日に一発だけ成功いたしました。そのムスダンまで手をつけたということで、韓国、日本、そしてグアム、そこの米軍基地全てを射程の中におさめるということをやった。

 しかし、もう一つ我々が注目すべきは、本来、アメリカ本土に届くような、アメリカ本土への攻撃力というものをきちっと持たないと、抑止という面からすると欠ける、不足している面があるのは当然でありますが、この長距離弾道ミサイル、ICBM、大陸間弾道弾といったものの開発については、決して北朝鮮はことし積極的でなかったということが私は大事な点だろうと思います。

 一つは、確かに、二月に衛星と称するミサイルの発射をいたしましたが、本来ですと、その後に、九月に少し大型出力のエンジンの実験をいたしまして、それは衛星の第一段目に使うんだと彼らは言っておりましたので、それに基づいて、もう一度衛星と称するミサイルの発射がある可能性というものを専門家は見ておりましたが、結果的に北朝鮮はそれを行いませんでした。

 ですから、ICBM能力を持つことについて北朝鮮が積極的だとはその点からも見られませんし、もう一つ、我々が恐らくICBMだろうと感じているKN08というコードネームで呼んでいるミサイルがありますが、これも一回も飛ばしたことがないわけですね。ですから、まだまだ、ICBM能力を持つことについて北朝鮮が非常に積極的、あるいは非常に時間を短縮してやろうとしていることではないということも我々は考えておくべきだ。

 ただし、日本からすれば、当然、日本は全て北朝鮮の核ミサイルの射程内に入ったと考えざるを得ないわけでありますので、我々にとっての脅威が相当大きく増したんだと、総理が次元の異なる脅威とおっしゃるのはまことに正しい認識をお示しだと思いますが、それほど厳しいことになっているということだと思います。恐らく北朝鮮はそこで満足している部分が私はあるんだろうと思っております。

 それはまた、短距離、中距離、準中距離までの、すなわちスカッドからノドン、そしてムスダンと至るところまでのミサイル能力を持つことは、将来、核についての、あるいはミサイルを含めての国際社会との、あるいはとりわけアメリカ、韓国との交渉、ディール、取引の際に北朝鮮がまた求めているのは、朝鮮半島及び朝鮮半島周辺からの核あるいはミサイルの脅威、彼らからする脅威の除去でありますので、そのためにも自分たちが同じような能力を持つ。

 そういうのは、かつてSS20が持ち込まれたときにパーシングを持ち込んでチャラにしたという例が八〇年代にございましたが、同じようなことを北朝鮮が考えている可能性が一つあるであろうかと思います。

 済みません、お時間がほとんどないので、もう一つ、非軍事的な要因ということでいえば、これはやはり、金正恩の権威を構築するということが一番大きな目的であろう。

 金正恩という人は、二〇一一年の十二月十七日に父親の金正日が亡くなって、突然トップの地位についたわけですが、その時点で二十代後半です。何の経験もないし、若過ぎるということもありまして、権威がほとんどない人が突然ナンバーワンになる。

 では、その権威をどうやってつけるかというときに、一番いいのは、核兵器を開発し、核兵器の能力を持ち、核ミサイルを持った、アメリカに十分対抗できる、アメリカの脅威を全て抑止できると言い、すなわちアメリカと十分渡り合えるという能力を示すことが一番速成で、一番短時間において彼の権威を固めるということに役に立ったことは間違いありませんし、そのことを北朝鮮は念頭に置いて、ことし、二回の核実験、あるいは二十数回に及ぶ弾道ミサイルの発射というものに踏み切ったのであろう、そのように考えております。

 ちょうどいただいたお時間になりましたので、あともう少し、申し上げたいことがまだたくさんございますが、それはこの後の議論の中でお話をさせていただきたいと思います。

 ありがとうございました。(拍手)

山口委員長 ありがとうございました。

 次に、道下参考人、お願いいたします。

道下参考人 皆さん、おはようございます。政策研究大学院大学の道下でございます。

 本日は、このような大変重要な場にお招きいただきまして、ありがとうございます。特に、今回の場合、山口委員長が実は私のアメリカのジョンズ・ホプキンス大学の先輩でいらっしゃいますので、山口先生に頼まれると断れないということではせ参じて、喜んで参りました。どうぞよろしくお願いいたします。

 私の方から、きょうは三点、手短にお話しします。まずは、北朝鮮の核・ミサイル能力がどのように向上してきているのかという点。二つ目は、日本がそれに対して、これは安全保障面でですけれども、どう対応しているか。そして最後に、今後どういうことをするべきかということを簡単にお話しいたします。

 まず、お手元にお配りした資料をごらんください。

 まず、北朝鮮の核実験でございますけれども、これは今まで五回行われております。二〇〇六年十月に第一回、そして、ことしの九月に一番最近の第五回を行っておりますが、ここの、下の推定される出力というところに注目していただきますと、いかに北朝鮮が着実に能力を高めてきているかというのがわかります。

 ここの二〇〇六年のところには約〇・五から一kTと書いてありますが、kTというのはキロトンの略でして、これは爆発能力のことを指します。ちなみに、広島に落とされた原爆が約十五キロトンぐらいでしたので、それを御参考にして見ていただきますと、最初はそれよりもはるかに小さい〇・五から一キロトン、それが二回目は二から三キロトン、三回目は六から七、四回目も六から七、そして一番最近のは十一から十二ということで、かなり広島のものに近い能力を持つまでに、これは十年間、ちょうどほぼぴったり十年間かけて着実に能力を向上させてきているということです。

 次のページに行ってください。

 これは、ごちゃごちゃ書いてありますが、ポイントは黄色くハイライトしているところのみでございます。これは、プルトニウムとウラニウム、北朝鮮は両方の核プログラムを持っておりますけれども、では一体どのぐらいの核兵器をつくれる状態にあるのかということで、このアメリカ・ワシントンDCにあるシンクタンクの見積もりでは、ことしの六月の時点で十三から二十一個の核兵器、その後、一回核実験をいたしましたから、現在は十二個から二十個程度の核兵器を持つための核物質を持っているという推定になっております。

 次のページに行ってください。

 次は、ミサイルの絵が載っておりますが、きょうは、もう伊豆見先生の方から、いろいろなミサイルをテストしているということのお話がございましたけれども、私の方からは、このミサイル、ノドンと言われるミサイルですが、これに絞ってお話しします。なぜかと申しますと、これはまさに対日用の、日本を攻撃するためにつくられた射程千三百キロのミサイルだからです。

 北朝鮮はこのミサイルを二百発から三百発程度持っていると言われておりまして、このミサイルは、この写真でもわかりますように、移動式発射台に載せて運用されます。この移動式発射台を北朝鮮は五十台程度持っております。この移動式発射台から発射しますので、非常に見つけるのが難しいということで、見つけてやっつけるのが難しいというのがこのミサイルの特徴でございます。

 次のページに行っていただきますと、これはアメリカの国防省の資料ですが、射程の範囲が北朝鮮から千三百キロ、一番外の丸い点線の千三百キロメートルと書いてあるのがノドンの射程でございますので、日本の本土はほぼすっぽり入るということになります。

 それから、次のページに行っていただきますと、これが、先ほど伊豆見先生の方からお話ありました、最近、非常に活発にミサイル実験をしているということ、核実験も含み、しているというものの一覧表ですが、その中で、ノドンに絞って見ますと、ことしの三月十八日、その次は七月十九日、その次は八月三日、そして一番最近が九月五日というふうに四回にわたって実験しておりますので、対日用ミサイルにも非常に重点を置いて実験をしているということが言えます。

 さらに、最も懸念されるのが九月五日の実験でございまして、次のページに行っていただきますと、二つ写真がありますけれども、左側の写真を見ていただきますと、三つ、先ほどの移動式発射台に載せられたミサイル、これはノドンですけれども、並べられて、ぼん、ぼん、ぼんと発射される様子が出てきます。これは三発のノドンミサイルをほぼ同時に発射するという実験をやっております。

 これがなぜ重要かといいますと、日本は今ミサイル防衛を持っていますけれども、一発ずつぽんと飛んでくると割合やっつけやすいわけですね。それが三発一緒にやってくると、飽和攻撃という言い方を専門用語で、サチュレーションアタックと、もう飽和されちゃってという攻撃をする練習ではなかったかと思われるという意味で非常に懸念されます。

 また、左の地図を見ていただきますと、黄州というところから発射したということになっておりますが、では、ここから主要都市の距離をはかりますとどうなるかといいますと、ちょっと英語で書いてあるんですが、東京までが千二百五十キロメートル、沖縄までが千三百五十キロメートル。ですから、沖縄はぎりぎりセーフみたいな感じなんです。そして、御参考までに、北京までが八百キロメートルです。ですから、こんな遠くから、北朝鮮の深い西の位置、日本から遠い位置、離れたところから撃っても東京に届くんだということを示したという実験であったとも言えるので、非常に懸念されるということです。

 次に、二つ目のポイントで、では、日本はそれに対してどういう措置をとっているかというのを、日本はしばしば、最近は皆さんの御尽力もあり本当に変わってきて、昔は安全保障がだめな国という印象でしたが、北朝鮮問題に関してはかなり、以前からしっかりと対応していて、この点は、日本らしからぬと言ったらもう今の日本には失礼ですが、すばらしい、きちっとした対応をしております。

 三つぐらい柱がありますが、まず一つ目の柱は弾道ミサイル防衛システムの配備でございます。

 BMD整備構想という絵にありますように、二つ重要なシステムがあるんですが、一つは、イージス艦という海上自衛隊の船に載せられますSM3のブロック1Aという名前のミサイルです。これは、ミサイルを大気圏の外で撃ち落とします。非常に高いところで撃ち落としますので、広い範囲がカバーできて非常にいいシステムです。

 もう一つのシステムが、今度は地上配備のペトリオット、PAC3というものですが、防衛省の敷地内にも今配備されていますけれども、これは上の方で撃ち漏らしたものを下で、最終的に、ゴールキーパー的にやるということで、撃ち落とせる範囲は限られておりますけれども、重要な施設あるいはある程度の都市であれば守ることができるというものでございます。

 次に、二つ目ですが、これは国民保護法に基づく、日本は国民保護法という名称を使っておりますが、多分、日本のやっていることは、諸外国では市民防衛、シビルディフェンス、あるいは民間防衛と呼ばれるものに近い内容を持っております。

 二〇〇四年に国民保護法が成立しましたが、それに基づいて、二〇〇六年と二〇〇七年に二つの警報システムを導入いたしました。これはちょうど私が実はすぐ隣の内閣官房で勤務していたころできて、サイレンもそのときつくって、サイレンを初めて聞く会というのをやったんです。

 一つは、テキストメッセージに基づくエムネット。これは、エムネットというから何でエムなんだろうとよく思われるんですが、エマージェンシーの略でエムです。ですから、緊急警報システム、エマージェンシーネットワークです。

 もう一つがJアラートという、下のちょっとオレンジの、黄色っぽい箱に入っているものですが、これは自動化された、サイレンとボイスによる警報システムでございます。

 ちょっと最後のページに行っていただきますと、どういうサイレンが鳴るか。いろいろな事態によってメッセージは変わるんですが、弾道ミサイルの場合は、まず、ウーウーという国民保護サイレンが鳴った後に、「ミサイル発射情報。ミサイル発射情報。当地域に着弾する可能性があります。屋内に避難し、テレビ・ラジオをつけて下さい。」というボイスメッセージが流れるというシステムでございます。

 そして、このシステムは、過去、北朝鮮が何回かミサイル実験をしたときに実験してみたことがあるんですけれども、そうしたら鳴らなかったことがあるんですね。幾つかの自治体では、システムがあるのに、スイッチオン、しいんということになっておりまして、困ったんですが、ただ、問題があるということがわかりましたので、すぐ修正いたしました。ということで、北朝鮮が悪いことをするのも、多少プラス面もあるということでございます。

 最後は、三つ目、これは資料はないんですが、口だけで申しますと、アメリカとの間で、拡大抑止力、つまり、日本が何か攻撃を受けた場合にアメリカがかわりに反撃してくれるという約束をすることによって日本に対する攻撃が抑止されるというものですが、このための協議を二〇一〇年から日米間で定期的に行うようになっております。

 ということで、北朝鮮に対する安全保障措置というのは極めて真面目にしっかりやっているというのが現状でございます。

 ただ、最後、一つ課題がありまして、今の対北朝鮮政策は三つの柱があると思うんですが、一つは有効な制裁、二つ目は強力な防衛措置、そして三つ目は北朝鮮を正しい方向に誘導するための対話でございます。

 制裁については、最近の国連決議によって、新しい、ちゃんと中国が実施してくれればかなり効果があるであろうと考えられる制裁措置が導入されました。そして、防衛措置も、今申し上げたとおりきちっとやっています。

 ですから、今後は、どのようにこういう圧力をうまい、いい方向に北朝鮮を持っていくための力として使えるように対話を進めていくかということが課題になっていくと考えております。

 以上でございます。(拍手)

山口委員長 ありがとうございました。

 以上で両参考人の意見の開陳は終わりました。

    ―――――――――――――

山口委員長 これより参考人に対する質疑に入ります。

 参考人に対する質疑は、理事会の協議に基づき、まず、各会派を代表する委員が順次質疑を行い、その後、各委員が自由に質疑を行うことといたします。

 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。中谷真一君。

中谷(真)委員 自由民主党の中谷真一でございます。

 伊豆見先生、道下先生、本日は御出席ありがとうございます。また、非常に示唆に富むお話をいただきました。これをもって、きょう、この場でしっかりとこの問題について議論してまいりたいというふうに思います。

 時間もありませんので、早速、両先生に質問をさせていただきたいというふうに思います。

 今、両先生からも、北朝鮮のミサイル・核開発についてお話がございました。現時点で、日本については、核兵器、核ミサイルの射程圏内に入っているだろうというお話がございました。これからも核開発をさらに進めていく可能性があるというお話でもございました。

 では、その終着点はどこにあるのか、これはやはりアメリカを射程に入れるまで続けられるのか、この終着点について両先生からお話をお伺いしたいと思います。

伊豆見参考人 ありがとうございます。

 今、中谷先生がおっしゃいましたように、終着点、アメリカに対する攻撃力をというのは当然北朝鮮は考えていると思うのでありますが、ただ、私が先ほど申し上げましたように、ICBMといいますか、大陸間弾道弾についての積極性というのは、今の北朝鮮には私は認められないというふうに思います。

 本来であれば、もっと実験を重ねなきゃいけませんし、とりわけ重要なのは、リエントリーの、大気圏外に出して大気圏内に再突入するときの耐熱の技術というものを確立することですが、それについて非常に熱心にやっている、あるいは非常に焦ってやっているという感じは全然ないものですから、ICBMを急いでいるというふうには私は思いません。

 むしろ北朝鮮が考えるとすれば、SLBMの方かもしれないですね。要するに、潜水艦発射弾道ミサイルの能力も開発しております。先ほど、それもあったということを申し上げるのを忘れていました、その実験もことしは二回、たしかやったかなと思うのでありますが。

 アメリカに対する抑止力としてアメリカ本土を攻撃し得る能力を持つ、そうすることによって、例えば、韓国や日本に対するアメリカの拡大抑止を無効にするといいますか、デカップリングの話ですが、そういうことを狙うというのは当然あり得る話だと思います。

 そのときの手段として北朝鮮が考えるのは、やはり潜水艦発射型の核ミサイルというのは本来は一番いいはずなんですね。要するに、アメリカ、ロシアを除けば、基本的には、抑止力を持つためには一番いいのはSLBMであります。それは中国でも同じですし、ましてや、イギリス、フランスならそうということになりますから、北朝鮮がそっちの道を望むということは十分ある。

 今、北朝鮮に欠けているものは潜水艦の方ですから、当面、潜水艦の開発の方に力を入れるということは大いに考えられるのではないかというふうに考えております。

道下参考人 終着点はどこか、あるいは北朝鮮がどこに向かっているかを考えるときは、北朝鮮の政策目的、そして相対的な重要性ですね、いろいろなシステムの相対的な、要は資源配分の問題です。そして、軍事的には抑止力として何が十分であるかという、三つぐらいのポイントがあると思うんですね。

 政策目的につきましては、軍事的には、もちろんアメリカに対する攻撃能力を持つというのは究極の能力ですから非常に重要だと思いますが、ただ、北朝鮮の本当の直近の政策目的というのはやはり体制の維持ということでございますので、アメリカを攻撃する能力を持って、それがもしくは例えばアメリカの先制攻撃をもたらすとか、そういうのは全く逆効果になるわけですから、それは北朝鮮としても、そこら辺は微妙なバランスをとっていると思われます。

 それから、相対的な重要性ですけれども、伊豆見先生もおっしゃいましたようにICBMは大変ですので、やはりそこに資源を投入するより、今の金正恩はかなり現実主義者だと私は思っていまして、というのは、使える実質的な能力のもの、シンボリックにそれはアメリカに届けば格好いいですけれども、その能力というのが非常に高過ぎてちょっと手が届かない、そうすると、もうちょっと現実的なものをしっかり使えるようにしましょうということをやっているように見えますので、今はそちらに重点を置いている。

 そして、十分性の問題ですが、抑止力として北朝鮮が必要なものは、やはりソウルを人質にとる。ですから、万が一アメリカが北朝鮮に先制攻撃をかけたりしても、アメリカを破壊できなくてもソウルを火の海にする、あるいは東京に対して核攻撃ができるということになると、やはりアメリカにとって韓国、日本は非常に重要な同盟国で友邦ですから、これを犠牲にして北朝鮮に手を出すようなことはできないということで、抑止力という意味ではそれで十分である可能性が高いということで判断しているのではないかと考えております。

中谷(真)委員 ありがとうございます。

 そういった、今北朝鮮がどこに向かっているかというお話もいただきました。

 この北朝鮮が今核実験やミサイル実験を繰り返していますけれども、これをやはり我々はとめていかなきゃいけないという立場であります。

 このときに、私は、イランに対しては現時点では非常にうまくいっているのかなと。イラン・ディールを実行しようというふうに、トランプが出てきてちょっとわけがわからなくなってきていますけれども、そうはいっても枠組みをつくった。

 北朝鮮に対してもあるんですけれども、これはなかなか機能しないというところであります。これを機能させて、北朝鮮のそういった開発をとめさせるという意味では、今の、どこへ向かっているかとか、どういう目的だとかということがあると思いますけれども、これについて、伊豆見先生の御意見をお伺いしたいと思います。

伊豆見参考人 ありがとうございます。

 今先生おっしゃいましたように、イランのケース、うまくいっている部分が確かにあると思います。

 ところが、問題は、イランのモデルを北朝鮮には適用できない。なぜできないのかというのは、我々に大変な不信感があるからであります。

 かつて、イラン・モデルの先駆けになるような北朝鮮との取引というもの、九〇年代には核の枠組み合意というのがありました。アグリードフレームワークというのがありましたし、二〇〇〇年代に入りましても、二〇〇五年の非核化についての共同声明を実行するための措置ということがありましたが、これが全てうまくいかないのは、やはり我々の目から見ると北朝鮮に裏切られたということであります。

 結局、北朝鮮はうそつきで約束を守らないという、これが定着をしているわけですね、このイメージというのがこちら側の骨の髄までありますから。そうすると、しょせん約束を守らず、うそつきとの間で何回取引をやって痛い目に遭わなきゃいかぬのだ、この感覚があるわけですね。ですから、できない。

 イランとの間は、まだ一回もそういう意味では痛い目に遭っていない、これから痛い目に遭う可能性は非常に高いと思いますけれども。それを繰り返すと、イランに対してだってそのうちできなくなるかもしれませんが、今の北朝鮮との間のディールができないかなり大きな要因というのは、これまでの経緯からして、我々は北朝鮮との間で取引をしたくない、してもこれは無駄だという感覚があることです。

 ただし、私はこれは間違いだと思っております。明らかに間違いで、なぜだまされたのか、なぜ約束が守られないのかというところをもう少し精緻に見ていけば、やはり彼らからすると、我々の方も、アメリカも日本も韓国も約束を守っていないじゃないかと思っている部分がある。それはそうでありまして、立場を変えればそういうことになります。

 少なくとも、北朝鮮により約束をきちっと守らせるため、あるいは北朝鮮にうそをつかせないようにするための方法というのは我々は検討できるはずなので、私は、そういう具体的な検討をしながら、イランと同じようなケース、取引というのができるかどうかを追求する必要はあると依然として信じております。

中谷(真)委員 ありがとうございます。

 非常にそれは難しいことでありますけれども、やはり追求していかなきゃいけないと私も今、先生のお話を聞いて思いました。

 最後に、先ほど道下先生おっしゃいました飽和攻撃であるとかSLBM、また移動式固体ロケット、こういったものに対して、我々はBMD構想を持っていて、これに対応していっているところでありますけれども、なかなか対応が難しいというところであります。

 私は、そろそろ、いわゆる一発撃たれた後の反撃という観点、また抑止という観点で、策源地攻撃能力について検討していかなきゃいけないんじゃないかというふうに考えています。

 時間が来ましたので、短く、道下先生、ぜひそれに対しての御見解をいただきたいと思います。

道下参考人 防御と攻撃というのは一番いいミックスがどこかにあるはずで、どちらか一方だけというのはやはり限界があると思っております。そういう意味で、反撃能力の検討というのはぜひ具体的に進めた方がいいと思っております。

 ただ、そのとき気をつけないといけないのは、これはアメリカ、そして韓国と緊密な協調をしながらやらなければ、マイナスの効果が多く、プラスは余りないという点でございます。

中谷(真)委員 終わります。ありがとうございました。

山口委員長 次に、升田世喜男君。

升田委員 民進党の升田世喜男です。

 本日は、伊豆見参考人、道下参考人、お忙しい中ありがとうございます。また、貴重な御意見を拝聴させていただきました。

 私からは、北朝鮮に対する制裁が余りこれまで、いわゆるその効果が見られなかったので、これに関することで両参考人の御意見を頂戴したい、こう思っています。

 九月の九日の北朝鮮の五回目の核実験を受けて、十一月三十日に国連安全保障理事会が制裁強化の決議をされたわけで、この中身は、これまでの中身でいきますと、非常に強いものがあるということでありますが、参考人に、この強い制裁を採択したわけでありますけれども、これまた果たして効果があるとお考えになられるかどうか、このことをまずお伺いしたいと思います。

伊豆見参考人 ありがとうございます。

 今回の制裁は六回目なのでありますが、毎回毎回、回を重ねるごとに内容はより強力な制裁案になっている、これは確かであります。問題は、それが効果があるかどうかということでありますと、基本的には余り期待はできないというのも、この過去五回と同じことが今回も言えるのであろう。

 なぜならば、ほとんどの効果のある手段というのは中国が握っているからであって、中国がどこまでそれを、我々が期待する程度までやるかどうかというと、私は、相当疑問だと思いますし、やはり中国はある一定限度以上は行わないだろうと思いますので、実は制裁として相当有効だということにはならないと思います。

 ただし、今回の十一月三十日の決議の非常に重要だったことは、初めて国連憲章の第二章第五条についての言及があったことです。

 これは何かといいますと、第二章第五条というのは、安全保障理事会が予防行動とか強制行動の対象にしている加盟国については、安全保障理事会の勧告に基づいて、総会が、その国、今これは北朝鮮を想定していますが、北朝鮮の国連加盟国としての権利及び特権の行使を停止することができる、これが第二章第五条のあれでありまして、これが初めて今回、六回目にして盛り込まれました。

 実は、こういうものは効果があるはずなんです。要するに、国際社会の中で北朝鮮を本当に孤立化させるためには、国連という組織の中で北朝鮮を孤立化させることの重要性というのは私は非常に高いと思っておりまして、今回初めてそこに手をつけることになった。これは、もし六回目の核実験を次に行った場合には、この第二章第五条は行使される可能性が極めて高いと思います。

 ただ、問題は、安保理は確実に勧告をすると思います、中国もロシアもこれについては賛成するというのは間違いないんですが、総会で三分の二の、これは重要事項指定になると思いますから、これは今までに一回も前例がないんですね、国連のメンバーに対してこんなことをやったことはないんですが、さて、ほかの国が納得してくれるかどうかなんです。もしそれができると、これは本当の意味での国際的孤立を北朝鮮に強いることになりますので、こういう新たな制裁の手段を実は今回さりげなくといいますか盛り込んでおりまして、ほとんどここは注目されていないんですが、私は極めて重要だと思います。

 どうして重要か。もう一つ、その第二章第六条というのがあります。第六条は除名があるんです。

 実は、国連憲章というのは、安保理の勧告によって総会が除名をすることができるんですね。この除名という言葉は北朝鮮に相当な効果があることは間違いないので、今、私は、安全保障理事会の制裁という面では、もちろん実質的な制裁手段を今後も強化していくべき、そして中国の役割を相当期待していくべきだと思いますが、同時に、国連全体として、北朝鮮を国連の組織から除名することもあり得るぞという、そういう本当に国際的な孤立というものをあなたたちに科せるということを示す必要があるのではないかと思っております。

道下参考人 今回の制裁はかなり効果があるのではないかと期待されておりまして、その理由は、北朝鮮の輸出収入の三分の一ぐらいが石炭の輸出なんですが、それに上限をかけている。これはもう本当に核心部分ですから、それは効果があるのではないかと思っております。

 ただ、伊豆見先生のおっしゃったとおりで、中国が結局は鍵を握っているわけですから、中国が買わないようにするということを本当にきちっとやれるかどうかというのが問題で、ある程度はやってくれると思います。ただ、北朝鮮が本当に不安定化するほどまではやらないと思います。

 なぜかといいますと、北朝鮮が不安定化して倒れたりすると、やはり韓国が統一することになりますから、アメリカと同盟している韓国が朝鮮半島を支配するのは中国としては困ります。

 あと、朝鮮半島の、中国の東北地方にはかなりの朝鮮系の少数民族がいますから、統一してしまったら、チベット、ウイグルに続いて三つ目の少数民族問題が勃発してしまうということで困ります。

 あと、近年は、意外に中国は北朝鮮の存在を好ましくというか、うまく利用しているのではないかと私は思っております。

 といいますのは、特に南シナ海の問題等で国際的にあれだけ非難を受けているんですけれども、北朝鮮がミサイル実験をする、核実験をすると国際社会の注目が北朝鮮の方に行ってしまうんですね。中国が悪いことをしているというのを実はみんな忘れてしまうということで、北朝鮮避雷針論と言っているんですけれども、一種、中国にとって北朝鮮は避雷針のような役割をしているということで、意外に中国はうまくそれを使っているのではないかと思います。

 やはり制裁には限界がある。とすると、やはり、防衛措置、そして対話というので、制裁だけ単独で何かの効果をもたらすというのではなく、合わせわざというふうにいかざるを得ないのではないかと思っております。

升田委員 ありがとうございます。

 両参考人のお話を聞くと、鍵は中国だということで、私も中国の真の狙いとか立ち位置はどうなのかなというところを気にかけておりましたが、今のお話でそのことも出てまいりまして、勉強になりました。

 そこで、アメリカの大統領がトランプさんになりまして、大変外交の姿勢についても過激的な発言を遠慮せずやっているということで、ここで、これまた両参考人にお伺いをさせていただきたいんですが、トランプ大統領になることでいわゆる北朝鮮にどんな変化が生まれるか、プラス、中国にもどんな変化が生まれるのか、この点のお二人の御見識を頂戴できれば、こう思います。

伊豆見参考人 ありがとうございます。

 大変難しい御質問をいただきまして、よくわかりませんというのが一番正直なお答えになろうかと思いますが、トランプさんの外交政策について、まだよくわからないことが多いわけでありますし、特に問題は、彼がそういう経験が全然ない人ですから、過去の彼の言動からどういう外交を行うかということが推しはかれない、ビジネスマンとしての経験しかないということがある、これが一つですね。

 それともう一つは、大統領選挙のキャンペーン中に彼がいろいろ過激な発言もしましたし、いろいろ公約をしていますけれども、普通、大統領選挙中の公約の実行率というのは五〇%を超えないのが通例でありまして、トランプという人がいろいろ変わった人だから公約はかなりたくさん守るだろうとはやはり考えられないと思いますので、彼も言ったことは半分以上はやらないというのが普通だと。

 だとしますと、基本的には、やはり十一月八日に当選した後の彼の言動だけを見ていくという必要があるだろうと思います。そこまで見ると、朝鮮半島についてはほとんど発言がないんですね。

 まず大事なことは、朴槿恵大統領との電話会談を行った、そこで米韓同盟の重要性というのを再確認した、これは一つ重要なことです。

 それと、中国に対して、北朝鮮問題についてちゃんと汗をかいていない、もっときちっと中国が行うべきだ、これは大統領選挙中も言っていましたが、当選した後もまだ繰り返して言っている。選挙戦中には実は金正恩委員長と会ってもいいというようなことを言っていましたが、当選した後は一回もそういう言及がございませんので、そうしますと、どういう形でいくのかというと、そんなにオバマ政権と変わったことをやろうとしているというのが、今の段階でいえば見えないということです。ただ、これからの話ですが。

 それに比べて、中国に関しては、御案内のように、台湾の総統、蔡英文さんと電話会談をやってみたり、一つの中国原則というのはいかがなものかという発言があったり、これは中国は本当にびっくりしているというのはもう間違いないと思うんです。

 ただ、これも具体的な行動としてこれからどうなって出てくるか、みんな、こっちはむしろ一月二十日以降を見ないといけない。すなわち、就任した後はどうなるだろうか。今は就任前の次期大統領としてのトランプさんの発言ということでありますので、これも今の段階での評価というのは難しいかと思います。

道下参考人 北朝鮮に対する政策はもう伊豆見先生がおっしゃったとおりですので、そこは割愛させていただきます。

 中国ですが、対中政策もはっきりわからないのですが、ただ、中国の出方というのはむしろある程度予測できるのではないかと思っておりまして、やはりトランプという人が経験もないし読めない相手であるということで、中国も当初はかなり慎重に対応すると思います。

 ただ、中国は、二年ぐらい待ってみて、トランプさんの力量、能力、政権の動き、政策等を見きわめて、やはり時間がたってきますとトランプ政権がレームダック化しますね、そうしてがたがたしてきたりすると、その弱みにつけ込んで、かなりまた攻勢に転じてくるということをやるのではないかと思っております。

 あと、トランプさんは自分の成果が欲しいわけですから、やはり、トランプ政権になったら中国は震え上がって柔軟に、余り悪いことをしなくなったというと彼にとっては成果になりますから、わざとそういうふうな行動をとり、トランプさんが持っている、まあ、どちらかというと孤立主義的な、アメリカは余り関与しないという立場を強める、そこで親交をつくっておいて、あと、ゆっくりと自分が料理をするという言い方は下品ですが、そうやってちょっとまた中国の影響力を強めていくというような手段をとるのではないかと考えております。

升田委員 ありがとうございました。

山口委員長 次に、浜地雅一君。

浜地委員 委員長、ありがとうございます。公明党の浜地雅一でございます。

 まずは、両参考人の先生方に感謝を申し上げます。本当にありがとうございます。

 先ほどからお話を聞いておりますと、制裁のお話も出ておりまして、私もそのお話をしようと思っておりました。しかし、当初の十分ずつの先生方の意見表明ですと、もう少し我々も聞きたいという思いがあります。

 そこで、我が国のミサイル防衛、弾道ミサイル防衛につきまして私は御質問しますが、両先生方、もしその点でお話し足りないことがあれば、たくさんお話をしていただければと思っております。

 BMD防衛で、イージス防衛と、また、ターミナル圏内に入った場合はPAC3でやるわけでございますが、今、報道ベースでございますけれども、THAADとかイージス・アショアの導入がありますけれども、北のミサイルの能力について日本のミサイル迎撃体制は十分かという観点から、今の北の能力と、それと、もう一度、現在の日本の防衛面のシステムについて、忌憚のない意見を両先生にいただければと思っております。

伊豆見参考人 もちろん、全く問題ないということには必ずならないのだろうと思いますが、常に努力を続けていくしかないということだと思います。

 でも、私は、我々が考えるべきは、北朝鮮の立場に立った場合にどういうふうに思うのかという観点が、実はミサイル防衛というのは重要だと思います。

 どういうことかというと、ミサイル防衛をやって、百発百中で落とせるなんということは、それはもちろんない。ないけれども、それは私に言わせれば必要ないことであって、極端に言えば、百発で一発しか落とせないにしても、攻撃する方からすれば、もし一発だけでも撃ち落とされた場合、それがどういう後の状況をつくるか、後の反撃態勢がどのような形でできるか、どういう報復を食らうかということを心配するわけですね。その心理的なものというのはすごく大きいわけです。

 ですから、ミサイル防衛というのは、私は、そもそも一〇〇%の迎撃率を必要とするものでは全くないと思っております。ある程度の、撃ち落とせるぞという能力がある、しかも、それがまだ足らないのであればどんどん努力をして、さらに撃ち落とせる範囲をどんどん広げていくという努力をしていると、これは明らかに北朝鮮に対して大きなプレッシャーになるわけですね。

 もし万が一、日本を攻撃した場合に、ある程度迎撃されて、その結果としてどういう反撃を日本から食らうのかということを考えると、そこでちょっとやめておこうかとちゅうちょするという話になりますから、私は、ミサイル防衛の大事なところというのは、やはり抑止の部分がある。ミサイル防衛をきちっと整備していくことで、北朝鮮に、日本に対して軽々にミサイル攻撃をする、核ミサイルを使うということへのちゅうちょといいますか、抑制、自制というものを促すことにはなると思っております。

道下参考人 私も今の点では全く伊豆見先生と同感でございまして、やはり何らかの武力攻撃を行う方は、計算ができるかどうかというのは非常に重要なわけですね。自分が何かをやったらどういう結果が出るかというのが読めなければ、怖くてできない。

 それで、ミサイル防衛は、成功するかどうかは我々だって知らないわけですね。それは、ある意味でバッドニュースというかあれなんですけれども、グッドニュースでもあり、相手もわからないわけです。ですから、攻撃したら、全然破れ傘ですごい被害が出るかもしれないけれども、ひょっとしたら結構、八〇%ぐらい撃ち落とされるかもしれないとなると、怖くて武力攻撃をするという決断ができないということで、非常に重要だと思っております。

 また、ミサイル防衛の効果を決める要素としてはいろいろありまして、まずはやはり情報、どこから、いつ、どっちの方向に撃ってくるかというのをどのぐらい探知できるか。そして、特にイージス艦に載せているものでありますと、どこにイージス艦がいるか。角度が、いい角度で発射すると撃ち落としやすいというのがありますので。

 そういう意味でも韓国との情報協力というのは非常に重要でして、やはり韓国の方にはいろいろなセンサーが、北朝鮮のすぐ近くにあるわけで、その情報がもらえるともらえないではすごく違いますので、そういう意味では、最近、日韓で締結しましたGSOMIA、包括的軍事情報保護協定、秘密保護協定、これは非常に重要で、うまく活用していけばいいと思います。

 それからあと、THAADのことですが、これは、あるにこしたことはないというのはそのとおりですけれども、やはり今、日本はTHAAD以外の二つのシステムで、一番高いところ、実はSM3が一番上、THAADがその次、PAC3が一番下なんですが、THAADをそこにもう一枚かませるというのは、要はお金の問題で、そこに三枚目を持ってくることによる効果が、投資効果が高ければやればいいと思います。

 それから、もう一つの考慮点は、THAADというのは大気圏に弾頭が再突入してくるかこないかぐらいで撃ち落としますので、デコイといいますか、うそ弾頭みたいなものが燃え尽きちゃうんですよ。ですから、そういうカウンターメジャーを持っている弾道ミサイルに対しては強いということで、では、相手がそういうのを持っているのかどうか、そういうものの見積もりとも関連してくると思います。

 それから、イージス・アショアですけれども、これはちょっと日本には余り合わないのではないか。私は余り技術は詳しくないんですが、今までちらっと聞いたところでは、THAADというのは自分の方に飛んでくるのを撃ち落とすように設計されているんですが、イージス・アショアというのは、実はSM3で日本が持っている上層のもののことですけれども、それはどっちかというと横から撃つような感じで設計されているので、日本は島国ですから、全部向こうから飛んでくるわけですよね、こっちに目がけて飛んでくるので、なかなか横から撃つという配備方式、それはできないことはないと思うんですけれども、やはりイージスに載せて当面は柔軟に運用できるようにしておいて、ただ、ある程度、相手のミサイル数もふえてくれば、アショアも考えるぐらいの感じでいいんじゃないかと考えております。

浜地委員 ありがとうございます。

 ミサイル防衛についての根本的な考え方について、やはり改めて考えさせていただくことの非常にいい御意見表明をいただいたというふうに思っております。

 ちょっと時間がございませんけれども、先ほどから制裁の効果についてお話がございました。今後、結局は、制裁をしても、最終的には対話の取り組みということで、やはり北朝鮮を国際社会の中できちっと話のできる相手にしなければいけません。それが最終目的だと思っておりますが、この制裁の後に、対話の枠組みとしてどういったものが今後有効というふうに考えられるか、なかなか難しいお話でございますが、両先生に一言ずつお話をいただければと思います。

伊豆見参考人 もう二〇〇八年、二〇〇九年からやっていないんですかね、七年ぐらいやっていませんが、六者会合というのがございまして、その六者会合は、私は、依然として使い得るいいツールといいますか、いい場だと思います。ただ、もし対話を始めるんだとしたら、一番最初に必要なのは、何といっても南北であります。南北の間の対話が進まない限り、朝鮮半島の話をうまく進めるということはできません。

 その後、これは今試していないんですけれども、私は、ぜひやるべきだとこのごろ思っているのは、アメリカと南北朝鮮の三者会談なんだろうと思います。

 これは、要するに、我々の方は核ですし、北朝鮮の言っている、北朝鮮は平和だとかいうこと、これを同時にある程度処理できる場というのは、最初のところでいうと、これはやはり韓国とアメリカ、そして北朝鮮というこの三者になるので、それを一つの柱として持って、それから、もちろん、それをカバーアップするような形での六者という枠組みも大事ですし、あるいはバイのいろいろなものも必要だと思いますが、まだ試していないものとしての、アメリカと韓国と北朝鮮という三者が実はこれから一番重要だと私は思っております。

道下参考人 私も、六者会合というのは非常に重要な枠組みだと思っております。

 それからあと、対話について、よく、対話をするたびにだまされたみたいな言い方をする人がいるんですが、それは事実と異なります。

 例えば、一九九四年の合意に基づいて、北朝鮮は、寧辺にあります黒鉛減速炉の運転を八年間停止して、その間はプルトニウムはふえていません。それから、二〇〇七年の合意の後も、六、七年間とめていますから、プルトニウムはふえていません。ですから、そういう成果は確かにありました。

 さらに、コストの面でも、九四年の合意のもとでは、日米韓が二十五億ドル支出しているんですね。だけれども、二〇〇七年の合意のもとでは、これは、北朝鮮以外の韓国、アメリカ、中国、ロシア、日本が四億ドルしか支出しておりません。それでも同じような成果が出ております。

 ですから、同じ、何となくぼんやり合意、何かぼんやり成果、コストというのではなく、やはり合意それぞれに違いがありますので、そういうのを精査して、よりよい合意とは何かというのを考えて対話に取り組めばいいのではないかと考えております。

浜地委員 終わります。ありがとうございます。

山口委員長 次に、赤嶺政賢君。

赤嶺委員 日本共産党の赤嶺政賢です。

 きょうは、お二人の先生、本当にありがとうございました。

 最初に、伊豆見参考人にお伺いをいたしますが、北朝鮮の核・ミサイル開発に対する国際社会の対応について、先ほどからるる議論になっておりますが、私の問題意識から伺いたいと思います。

 北朝鮮がNPTからの脱退を宣言したのは一九九三年でした。以来、翌年にかけての核危機とカーター元大統領の訪朝による米朝枠組み合意、その後の日米ガイドラインの見直しや六カ国協議など、北朝鮮の核開発をめぐっては、さまざまな経緯がありました。

 参考人は、マスコミのインタビューに答えて、ついにここまで来てしまったという印象を述べた上で、北朝鮮はこれまで全てをなげうって核開発をしてきたわけではなく、核開発をめぐって米国との取引を考えた時期もあった、阻止できる時間はあった、このように指摘しておられます。

 北朝鮮の核開発をめぐって、これまでの国際社会の対応に関して、どこに問題があったとお考えですか。参考人の御意見を伺えたらと思います。

伊豆見参考人 ありがとうございます。

 私は、恐らく、国際社会の大きな問題は、北朝鮮をまともな、普通の、これはちょっとおかしいですね、まともではないんですね、破綻国家でもありますし、いろいろ問題もあるんですが、ただ、やはりそこには国民がいて、普通の暮らしもしている、そしてそれを一応統治する政府がいて、それなりに機能しているという、そういう意味での普通の国家であるという観点が我々には非常にやはり不足しているんだろうと思うんですね。ですから、まともに相手にしないということですかね。

 私は、今まで国際社会がうまく北朝鮮を扱えなかった大きな要因は、まともに相手にしてこなかったからだと思いますし、まともに相手にしないというのは、今のままの北朝鮮をそのままとりあえず対象として交渉をする、取引をするということを基本的には拒んできたからだ。北朝鮮が態度を改め、姿勢を正したらまともな取引も考えられるけれども、今の北朝鮮にはそれは無理だということで、まともな扱いをしない。

 そうすると、我々の方も、実は、厳密に言うと約束をきちっと守っているとは言えないわけですけれども、北朝鮮に対して約束を守らないことに対する罪悪感というのは余りないんだろうと思うんですね、国際社会には。それはしようがない、相手が北朝鮮なんだから、そもそも北朝鮮はうそつきだし約束を守らないんだから、それはそれでいいんだというような感覚があります。これがやはり私は相当まずいんだろう、それが今までうまくいかなかったかなり大きな要因ではないか。

 ですから、一応、北朝鮮をまともに相手にして交渉をする、交渉するということは取引をするということですし、取引をするということは北朝鮮にもプラスになることを与えるということですから、それをまともな相手として扱ってやるかどうかが私は一番大事だと思うんですが、その姿勢が欠けていたと思っております。

赤嶺委員 ありがとうございました。

 次に、道下参考人にお伺いいたしますが、最近のアメリカと韓国の動きについてであります。

 韓国軍は、昨年八月、北朝鮮が核兵器などの大量破壊兵器を使用する兆候が見られた場合に、北朝鮮の指導部を除去する、いわゆる斬首作戦の概念を導入したことを明らかにいたしました。ことし三月の米韓合同軍事演習でも、この概念に沿った、北朝鮮に対する先制攻撃の演習が行われたと報じられております。

 国際社会からのたび重なる抗議と制裁措置にもかかわらず、北朝鮮が核・ミサイル開発を推し進めているもとで、アメリカや韓国の対北朝鮮政策にどのような変化が生じているのか、参考人の御意見をお聞かせください。

道下参考人 韓国あるいはアメリカ軍の戦略の変化、斬首戦略を導入したということですが、まず、これはやはり抑止力を向上させるためということと、あと人道的配慮というものがあったと思います。

 と申しますのも、相手がかなり独裁政権で何を考えているかわからない、意図が変化しやすいということもありますので、本当に何か悪いことをしたら自分がやられると思いますとやはり抑止される可能性が高まるということがありますし、斬首戦略というのは何となく残酷に聞こえるんですが、最も残酷ではない戦略でして、民間人を巻き込まない、そして相手の軍に対する被害も、軍だって一種の民間人ですから、軍人もなるべく被害を減らすということで、責任者だけをやっつける、人道的にも好ましい戦略だと思っております。

 ただ、斬首戦略の難しいところは、好ましい戦略なんですけれども、やはり北朝鮮のリーダーシップというのは最もかたく守られていますので、これを軍事的に攻撃して除去するというのは事実上難しい。これはアメリカがイラクでもやって失敗していましたし、いろいろなところでやってうまくいっていない、リビアでうまくいっていない、最終的には狩り出しましたけれども、ビンラディンに対しても、結局、当面、短期的にはうまくいっていないということで、その辺の限界はあると思っております。

 ただ、私の答えといたしましては、非常に合理的な動きである、人道的な戦略であると思います。

赤嶺委員 ありがとうございました。

 あと一点、道下参考人に伺います。

 今回のガイドラインの問題にかかわって、日米両政府が自衛隊と米軍による整合のとれた運用を円滑かつ実効的に行うためとして、共同計画を策定し、更新することが今度は明記されているわけですが、この点にかかわって、先生の著作を拝見しておりましたら、二〇〇二年に第二次ガイドラインを具体化させるための概念計画五〇五五が日米間で合意されたことに触れておられました。

 そこでお聞きしたいのは、そもそも概念計画とはどういうものなのか、また、それとの関係で、今回のガイドラインに盛り込まれた共同計画の策定、更新という言葉、これをどのように理解すればよいのか、御意見をお聞かせいただきたいと思います。

道下参考人 まずお断りしておきたいのは、それはあくまで概念計画であり、作戦計画であり、秘密情報ですので、報道ベースで記述しております。

 それを前提にいたしまして、まずコンプランといいますか、概念計画というのは何かといいますと、大きく、軍事作戦をやるための計画には作戦計画というものと概念計画というものがありまして、作戦計画はオペレーションプラン、概念計画はコンセプトプラン、コンプランと呼びます。

 その最大の差、相手は似たようなものなんですけれども、どういう目的を達成するためにどういう軍事作戦を実施するというものですが、作戦計画の方は、実は鉄道の時刻表みたいな、実際に物をどう動かすかという細かい規定まで、情報、兵たん、作戦、全部入っております。ですから、戦争が勃発したらどこの船をどこの港からどこに持っていって、どこの道を通って移動させるかとか、そこまで入っているのが作戦計画でして、そこまで入っていないのが概念計画でございます。

 報道ベースですから、私は実際のものを見たことは当然ございませんし、どのぐらいの分量のものかも知りませんが、ただ、一般論として考えますと、当然、今、集団的自衛権が限定的とはいえ行使できるようになっておりますので、朝鮮半島の有事に自衛隊がとれる行動も幅が広がっております。ですから、それに従ってこの概念計画を改定するというのは自然なことではないかと思っております。

赤嶺委員 ありがとうございました。

山口委員長 次に、下地幹郎君。

下地委員 日本維新の会の下地です。よろしくお願いします。

 対話によって、交渉によって北朝鮮を、私たちの思う核問題の解決とか拉致問題の解決というのはできるのかということを考えてみないといかぬと思うんですね。

 一九九〇年の金丸訪朝団もありました。そして、小泉当時の総理の突然の訪朝ということもありました。これまでも、多くの制裁をやったり制裁緩和をやってきました。しかし、結果は出ていないと私は思うんですよね。

 そういう中で、我が国が主体的に制裁をやったり制裁の緩和をやったりという対話路線、二国間の対話路線がこれからも成果を及ぼすというようにお考えなのかどうか、まずそのことを一点お伺いしたいと思います。

伊豆見参考人 なかなか難しいと思います、残念ながらと言うべきだと思いますが。

 一つは、今先生が、制裁をやったりそれを緩和したりということでおっしゃいましたが、今、日本が独自に持っている制裁手段がどうしても限界があって、限られていることと、もう既にほぼ制裁はやり尽くした、まさにエグゾーストしてしまったところがあって、今後もこれを強めることができるという幅がある場合には、またそれを北朝鮮に意識させることでいろいろやりようがあるという部分があると思いますが、それももうないわけですね。

 ですから、まず制裁の手段というものがそもそも限られているところに持ってきて、既にほぼ使い尽くしていますから、これでもって北朝鮮をいろいろ動かしていくということが難しい点。

 そしてもう一つは、では、対話といいますけれども、対話のための対話はやらないという言い方がありますが、大変それは結構な話で、対話だけしていたってもちろんしようがないので、それは交渉しなきゃいけないわけですし、交渉で結果を出すためには取引をしなきゃいけないわけです。取引まで来ると、本当にギブ・アンド・テークでありますから、北朝鮮にとってプラスになることを与えない限り、一切成果が上がるということはないわけですね。

 そうすると、本当に対話を真剣に考えるならば、最後は、交渉をし、取引をし、北朝鮮にも利益があるということをやらなければいけないという、大変不愉快で非常に苦痛を伴うことを最初にまず覚悟しなきゃいかぬと私は思うんですが、その覚悟が、実は私が今見ておりまして、日本には基本的に非常に薄いと思いますので、したがって、これも期待ができないということになりますから、日本が今何かを行い得るというのは、残念ながら私はないと思っておりまして、先ほど、大事なのはまずアメリカと韓国と北朝鮮で、三者でやってもらうことだと申し上げたのは、そういう点もあっての話でございます。

道下参考人 今議員が結果が出ていないとおっしゃったんですが、結果が出ていないかどうかは本当に目的をどう設定するかにかかっていると考えておりまして、私は、実は限定的だけれども結果は出ていると思っております。

 それは、先ほど申し上げたとおり、一九九四年の合意でも二〇〇七年の合意でも北朝鮮が黒鉛減速炉の運転を停止していて、その間はプルトニウムはふえていないというのは、やはりプルトニウムがなければ核兵器はできませんから、これは重要な成果であったと考えております。

 したがいまして、私は、対話をする場合は、北朝鮮に、すぐに、数年後に核を全廃させるという非現実的な目標を掲げると、当然それは実現しませんから、やっぱりだめだったといって失望してというパターンに陥りますので、より現実的な目的を設定するというのがまず第一。それで、その目的のための現実的に最もいいやり方を考えるということが重要だと思っております。

 例えば、その意味では、経験として重要な経験は、一九九四年のアメリカと北朝鮮の枠組み合意という合意があったんですが、それには重大な欠陥がございまして、軽水炉をつくってあげるという約束だったんですが、軽水炉が完成するまでは毎年五十万トンの重油を北朝鮮に上げるという合意をしていたんです。ですから、これはモラルハザード以外の何物でもなくて、延びれば延びるほど、建設が進まなければ進まないほどもらい続けられるというモラルハザードの合意でした。ですから、こういう合意はだめ。

 ですから、今度はそういうモラルハザードにならないように、北朝鮮が合意を履行しなければ損をする、あるいは合意を履行していったら得をするというようなデザインにするとか、そういうことは考える必要がある。

 それから、そういう意味で、最近、クラッパーというアメリカの情報長官が、やはり北朝鮮政策はもうちょっと現実的にしないと無理だよねみたいなことで発言されたのは非常に参考になっておりまして、やはり、とりあえずは今の核開発を凍結させるというのを目的にするのが現実的であろう。そして、そのためにインセンティブも与えると同時に、彼はおもしろいことを言っていまして、北朝鮮に対する情報戦をやるべきだというふうに言っているんですが、それも参考になると思っております。

下地委員 私の成果の基準は、拉致問題が解決する、プルトニウムが少なくなる、それと、今のような攻撃的な北朝鮮の戦略にならない、こういうことが成果だと考えていますから、今の段階で成果があるとは私は言えないというふうに申し上げておきたいと思います。

 それで、この前ワシントンに行ってきて、下院議員の方々とかシンクタンクの方に会うと、日ロの関係においても米ロがどうなるかを見てからやった方がいいんじゃないかというような意見が物すごく強かったんですよ。だから、米ロの動きを見て、それで日ロがどこまで妥協してどういうふうにやるかを決めた方が、より現実的な話じゃないかということを言われている方が多くいました。

 そういう意味でも、今回の政権は強いアメリカをつくるというふうに言っていますから、今、伊豆見先生がおっしゃったような、ここはもうアメリカに交渉を委ねる、そういうところぐらいまで来ているんじゃないかと思うんですね。だから、二国間で交渉するというものの成果が上がらない以上は、やはりこれは、トランプ政権がどういう政権かを見定めた上で、交渉に値するような交渉を、米ロ、それから米中という関係の中で交渉をさせるということも、ある意味、これも日本の主体的な戦略じゃないかというふうに思います。

 相手に任せることを主体的じゃないと言うんじゃなくて、やはり、できる人に任せることも主体的な交渉だと私は思うんですけれども、これはいかがでしょうか。

伊豆見参考人 私は、今の先生のお考えは賛成でございまして、一つは、日本がアメリカを動かす、アメリカに交渉を北朝鮮とさせるというのは一つの選択肢であると思いますし、それは日本の主体的な判断で主体的な政策になり得るというふうに思いますが、ただ、それは非常に不人気な政策になるんだろうと思うんですね。これは非常に日本にとってプラスだ、あるいはこれも日本の主体的な政策判断なんだということは、なかなか国内では受け入れられないのではないかというふうに思います。

道下参考人 それは非常に有力な一つのアイデアであると私も思いますし、実際、一九九四年の合意はそのように実現されまして、米朝がやって、先ほど申し上げたとおり、少なくともフリーズ、凍結はされたわけですから、成果はありました。

 ただ、そのやり方の問題は、やはりコストが高くなってしまうというところがありまして、九四年のアメリカと北朝鮮が結んだ合意に基づいて、先ほど二十五億ドル支出したと申し上げましたが、その内訳を申しますと、韓国が十六億ドル負担、日本が五億ドルを負担、そしてアメリカが四億ドルを負担しております。ですから、自分が交渉しておいて、実はコストは韓国と日本の方が多かったということになりますので、そういう問題は十分手当てができる形でそのやり方をする必要があるということと、あと、やはり拉致問題がくれぐれも置き去りにならないように何らかの措置が必要であると考えております。

下地委員 ありがとうございます。

 拉致問題の解決のためにも、負担の話がありましたけれども、今回の予算でも相当なミサイルの整備の予算を組む、これは北朝鮮への対応の予算であり、一千百億円組むわけでありますから、実質的なコストを考えると、この北朝鮮の核開発が廃止になることで日本のコストは下がるというふうに私は思っていまして、そういうことをやるためには、攻撃能力のあるアメリカと攻撃能力のない日本が同じような交渉をしても、これはもう到底交渉に当たらない。やはり、アメリカという国家の強さが今私たちのカードとしては必要じゃないか、使いこなす必要があるのではないか、こういうふうに思っているということを申し上げて、質問を終わります。

 ありがとうございました。

山口委員長 次に、照屋寛徳君。

照屋委員 社会民主党の照屋寛徳です。

 両参考人には、早朝から本当にありがとうございました。

 最初に、北朝鮮のたび重なる核実験等については、核なき平和、核廃絶を目指す立場から断固容認できず、その都度、国会決議をもって抗議の意思を示したところであります。

 一方で、北朝鮮の核・ミサイル開発が進み、その脅威が現実化してまいりました。それらの状況を背景に、日本でもミサイル基地攻撃能力を持つことを検討すべきだ、いわゆる先制攻撃論が高まっております。だが、私は、北朝鮮の核、ミサイルの脅威をあおって、あるいはそれを利用し、我が国の軍備の強化、軍事費の増大を図ることには反対であります。

 日朝両国が非核化と国交正常化を見据えた交渉を続けていくことで合意した二〇〇二年日朝平壌宣言は、なぜ進展しないのか、何が問題か、冷静に議論することが大切ではないでしょうか。

 そこで、両参考人にお伺いしたいのは、軍事評論家の田岡俊次氏は、もし北朝鮮のミサイルを全てほぼ同時に破壊できるなら先制攻撃論にも軍事的合理性があるが、それはまず不可能だと述べております。両参考人は、先制攻撃論とその軍事的合理性についてどのようにお考えでしょうか。

伊豆見参考人 ありがとうございます。

 今おっしゃった先制攻撃論というのは、日本が持つべきかどうかということでのお話ではない一般的な先制攻撃論ということでよろしいんでしょうか。

 敵地攻撃論の話ですが、それは、私は、全部を破壊しなければいけないという考え方は先ほど申し上げましたように必ずしも必要ではないと。北朝鮮の立場に立てば、彼らのミサイル能力の一部だけでももし先制攻撃を食らったときに破壊されるということがあると、それは北朝鮮の攻撃的な態度を抑制する、そういう効果をもたらすということは当然あるというふうに思います。

 ただ、日本のケースで考えますと、日本が北朝鮮を攻撃する能力を持つということは、必ずしも先制攻撃だけの話ではなくて、むしろ北朝鮮から攻撃を受けたときにそれに対する反撃としての攻撃能力を持つという、それもあるわけでありまして、私は少なくとも反撃の能力を持つことは極めて重要だろうというふうに思います。

 その反撃の能力を持つことで北朝鮮が日本への攻撃をちゅうちょするということが明らかに期待できるからでありまして、それは、一つは、ミサイル防衛というのは、まさにミサイル防衛能力を持つことが北朝鮮に日本に対する攻撃をちゅうちょさせる効果が非常にあるということは先ほども申し上げましたが、同様に、もし日本が北朝鮮からミサイル攻撃を受けたときに反撃する、すなわち、反撃して北朝鮮を攻撃できる能力は今ありませんけれども、それをもし持つということになれば、当然、北朝鮮の日本に対する攻撃をちゅうちょさせる効果があると思いますので、私は、それは真剣に考慮すべきであろうと思います。

道下参考人 まず、先制攻撃という言葉は非常に混乱させる言葉でありまして、実は、よく言われる、日本がやろうとしていることは、戦略的なレベルでの先制攻撃、つまり、戦争が始まる前にこっちがまず先制攻撃するという先制攻撃ではありません。あくまで戦争がもう発生している状態で、ミサイルが発射される前にやっつけるという意味での先制攻撃ですので、これは、国際法的にも違法な行為ではございませんし、日本でもできます。

 その区別をした上で、日本は後者の戦術的な意味での先制攻撃のことを言っているという前提で、敵地攻撃をするかしないかは二つの大きな考え方がありまして、一つは、しない。つまり、もう攻撃作戦は全部アメリカと韓国に任せて、日本は防勢作戦に特化するという、分担するやり方ですね。これのメリットは、多分軍事的にはこれの方が合理的です。といいますのも、日本は北朝鮮から離れていますので、攻撃するというのは大変なんですね、攻撃作戦をやるというのは。ですから、軍事合理性はそれはかなり高い。つまり、日本は防衛だけで、米韓が攻撃をやるというのは高い。

 ただ、これを分担してしまって、日本が攻撃作戦に参加しないとなると、私は二つぐらいの問題が発生すると考えています。

 一つは、まず、攻撃作戦というのは非常に大変な作戦ですね。敵の防衛網を突破して入っていって、目標を見つけてやっつけて、相当撃ち落とされますから犠牲者も出る。ちなみに、ノドンミサイルがぼんぼん日本に飛んできているわけです。それなのに、日本を守るための作戦を血を流して韓国とアメリカだけやっていて、日本は、やってください、よろしくと言っているだけという状況になるのが、やはりかなり、戦争になった状態あるいは危機になった状態の日本の立場を弱める、同盟の団結力を弱める効果になってしまうリスクがあるというのが一つ。

 それからもう一つは、アメリカと韓国の作戦が、我々はノドンを優先してやっつけてほしいわけですけれども、アメリカと韓国は、ノドンじゃなくて、スカッドとかアメリカに届くムスダンとかを優先したいわけですね。そうすると、お願いします、お願いしますと言ってやっているだけでは、しょせんお願いなんですね。ですけれども、自分もやりますということになって、みんなでやりましょう、コストを負いますと言って初めて、では、ノドンは、誰がやってもいいんですけれども、ノドンもちゃんとそれなりの重要性を持ってターゲットとして優先的に攻撃するという政策をとってもらえるレバレッジになりますので、日本の防衛という意味で、ぜひ一定程度の攻撃性、能力は持つ方がいいと考えております。

照屋委員 次に、最後に道下参考人にお伺いをします。

 自走発射機に積載したムスダンの所在発見から発射まで何分ぐらい要するのでしょうか。ミサイルを立てているのを発見できた場合、日本から出撃して発射前に到達できるんでしょうか。お教えください。

道下参考人 発射する直前にわかって飛んでいっては、もう完全に間に合いません。ですから、先ほど申し上げたとおり、もしやるのであれば、アメリカと韓国と緊密に協力して、戦争になってミサイル攻撃作戦が必要だったら、アメリカの飛行機も韓国の飛行機も日本の飛行機も朝鮮半島上で一緒になって、多分、空域を分担して、この地域はどこがやるといって分担して、常にこうやって飛ばしている状態にして、地上で、ここにミサイルがいるぞというのを知らせてくれる人が、特殊部隊が入っていて、ここにありますと言ったらすぐ飛んでいってやっつけるということになりますので、そうしない以外、成功の見込みは極めて低いということですので、やはりアメリカと韓国と緊密な協力をした上でやる作戦ということになると考えております。

照屋委員 ありがとうございました。

山口委員長 以上で各会派を代表する委員の質疑は終了いたしました。

 これより自由質疑を行います。

 この際、委員各位に申し上げます。

 質疑のある委員は、お手元のネームプレートをお立ていただき、委員長の許可を得て発言されるようお願いいたします。発言が終わりましたら、ネームプレートをお戻しください。また、発言の際は、所属会派及び氏名をお述べいただくようお願いいたします。

 なお、理事会の協議によりまして、一回の発言時間は三分以内となっておりますので、委員各位の御協力をお願い申し上げます。

 それでは、質疑のある方はネームプレートをお立てください。

寺田(稔)委員 衆議院議員の寺田稔でございます。

 きょうは、大変貴重なお話をお伺いし、まことにありがとうございます。

 私の方からの質問でございますが、先ほど道下参考人も言われましたとおり、北朝鮮のたび重なる核実験あるいはミサイル発射、お示しの資料を見ても、毎月のように本年の一月からやっていますが、この二カ月間、十月を最後にぱったりと停止をしております。これは、何らかの情勢の変化、あるいは事情によるものなのか、あるいは単なる小休止というか、そうしたものにすぎないのか。

 一つ、ちょっとシンボリックなことが、核なき世界を目指す核兵器禁止条約の交渉入りに対し、北朝鮮は賛成票を投じたというのが、これもちょっと意外といえば意外であったわけでございますが、この二カ月間の動きというのが、これまでの一月から十月中旬までの動きと若干異なるように見受けられるわけでございます。

 また、今回の制裁強化に対する反応も、若干、これまでの北朝鮮の反応と比べますと違いが見られるかというふうに思うのですが、先生の御所見をお伺いしたいと思います。

道下参考人 最近ミサイル実験が余りないということの原因ですが、これは、国内政治的な理由については伊豆見先生に聞いていただくといいと思うんですが、まず、外交的には二つぐらい理由があるのではないかと思っております。

 一つは、やはりトランプ政権というか、大統領選ではないか。私、これはもうあくまで疑問なんですけれども、ひょっとすると、北朝鮮はアメリカに対する対話というのを真剣に考えている可能性があるというふうに思っておりまして、それを見ると、この一年間で多数ミサイル発射をして、しかも非常に現実的。特に、ムスダンとそれからテポドンといいます長距離のロケットは、対米、アメリカを攻撃するためのミサイルですので、それを非常にたくさん撃っているということからしても、アメリカへのメッセージ性が高いのではないかと思っております。

 もう一つは、おっしゃられたとおり、制裁の議論があるときに、余りやるよりは多少静かにした方がいいかなと。それで、やはりそこも中国からの何らかのシグナルがあったのかなと、この辺は全く想像ですけれども、考えております。

青柳委員 民進党の青柳陽一郎でございます。

 本日は、貴重なお話、ありがとうございました。

 私は、特に伊豆見参考人の方にお伺いしたいんですけれども、きょうのお話の中で、北朝鮮への制裁決議、今回の決議は、国連の権利を停止するとか除名ができるということで、国際社会から孤立させるということについては結構意味がある、北朝鮮も、さすがに国際社会から孤立するのはこたえるんじゃないかというようなお話がありました。

 だとすれば、私は、一つ御意見をお伺いしたいのは、その制裁以外にも、北朝鮮の人権決議というのを毎年採択しているということもあります。国連総会では、間もなく、ことし、年内に決議されれば十二年連続ということもありますし、また、人権理事会においても、二〇〇八年以降九年連続で採択されているということです。しかし、これもそれで終わってしまっているので、私は、そこから一つ進んで、ICCへも付託していく、この北朝鮮の人権問題についてICCにも付託することをチャレンジする、そういうフェーズに来ているんじゃないかと私は考えていますけれども、伊豆見先生の御所見をお伺いしたいと思います。

伊豆見参考人 私は、残念ながら、ICCに持っていくことはできないと思います。これは、中国が決して賛成するということにはならない。やはり、人権問題の難しいところは、北朝鮮を締め上げることに限定することが難しくて、難しいといいますか、それを非常に中国が気にするということがありますので、ある意味では中国も似たようなところが当然あるわけですから、どうしてもそういう話になると、中国は慎重といいますか、反対に回るということですね。

 私は、先ほど申し上げました今度の決議案に入った国連憲章の第二章五条、そして、いずれは六条に行くかというような話も、決して簡単ではないと申し上げましたように、総会マターですから、総会のこれは重要事項指定というと、総会の三分の二以上の賛成がないと通らないので、そうなると、国連で権利を停止されるなんということになったら困るなと考える国とか、下手すると国連から除名されると嫌だなと考える国はほかにもいるわけでありまして、そういうところがみんなで結集して反対に回るかもしれないということで、決して総会でうまくいくかどうかわかりません。

 ただ、問題は、安全保障理事会の勧告があるかどうかということでいうと、そこはもういけそうな感じなんですね。今、中国が、少なくとも今回、北朝鮮がこの次の実験をやった場合に国連における特権と権利の行使を停止するというのに賛成する可能性が非常に出てきたということは大きな意味があることだと思います。

 ただ、中国にしても、北朝鮮を国連から除名するということで賛成してくれるかどうかはもちろんわからないわけでありますが、いずれにせよ、中国というのが一つ鍵でありまして、中国がどこまで協力するか、どこまでそれを受け入れるかによって、北朝鮮に対する効果的な措置というものがあるとすると、残念ながら、人権の問題については私は余り期待できないというふうに思っております。

佐藤(茂)委員 公明党の佐藤茂樹でございます。

 きょうは両先生、貴重な御意見をありがとうございました。

 時間も限られておりますので、一問ずつ、それぞれの先生にお聞きしたいと思うんです。

 一つは、共通したものでコメントをいただければありがたいのは、日本時間では十二月の九日だったと思います、米軍の高官の意見として、北朝鮮は核兵器運搬能力を持っている、こういう認識を示されました。しかしながら、伊豆見先生もおっしゃいましたが、大気圏への再突入の能力は得ていない。こういうコメントに対してのお二人の評価と、一つずつちょっと改めてお聞きしたい。

 まず道下参考人にお聞きしたいのは、ことしの北朝鮮のミサイル実験の中で、九月の飽和攻撃の話をされましたが、私は、もう一つ、六月にムスダンをロフテッド軌道で飛ばしたというのも、これは極めて日本にとっては脅威だなと。要するに、射程距離が長いものを、高度を高くとって、高仰角で落下させるということをやったわけですが、こういうものに対して、今ミサイル防衛では、これからSM3のブロック2Aが具体的に配備されていくと思うんですが、さらに加えて日本の弾道ミサイルの防衛措置としてやらなければいけないことはどういうことなのかという御認識がもしあれば教えていただきたい。

 伊豆見先生の方にお聞きしたいのは、さまざまに、取引の必要性とかいろいろなことを言われましたが、十月の中旬まで北朝鮮は静かだったんですが、昨日ぐらいでしたかね、要するに、韓国の大統領府の襲撃訓練の様子というものをあえて公開をいたしました。こういうことをやる今の北朝鮮の金正恩政権の意図というんですかね、こういうものを伊豆見参考人はどのように分析されているのか、お聞かせいただければありがたいと思います。

伊豆見参考人 ありがとうございます。

 きのう確かに報道がございまして、韓国を攻撃するための演習というものを改めてやったということであります。

 これは、この時期にというのはどういうことなのかというと、韓国は今、非常に大もめにもめておりますので、そういうときに少し動揺させてやろうかという意図があったかもしれません。しかし、北朝鮮がああいう形で演習を時々やって、それを韓国に示すというのは、特に異例ではございませんで、そういう能力があるぞ、そういう準備があるぞということをある程度定期的に示している、その一環であろうと考えるのがまずいいかというふうに思います。

 そして、北朝鮮の言い方の非常におもしろいことは、先制攻撃は、今、韓国が先制攻撃をすると言ったので、自分たちも先制攻撃をするかもしれないと言い出しました。ですから、これが常に受け身なんです。もう一つは、本格的な戦争についておもしろいことを言っているのは、韓国が北朝鮮にほんの少しでも侵略的な行為をとるのであれば、そこから祖国統一大戦というような大戦争を始めて、すぐ統一してやると言うんですね。

 ですから、北朝鮮は、軍事力で韓国を打ち負かして統一できるとこのごろ明言するんですが、それだったら最初にやればいいじゃないかという話になりますが、そういうことはやらないで、韓国から攻められたら、我々は韓国を打ち破って統一するんだと、これでずっと一貫した言い方なんですね。

 ですから、この受け身の姿勢を常に韓国に対しても、あるいは国際社会に対してもアピールしているし、同時に、国内に向けてもアピールしているわけです。自分たちは先に手を出さない、やられたときにそれは必ずやり返すということだけがあるんだ、そういう文脈の中での韓国・ソウル攻撃能力の演習を示した、そういうことだと思います。

道下参考人 まず、アメリカの高官の言葉ということなんですが、結構、アメリカの高官の分析、そういう言葉は、ぼんやりとしてしか言ってくれていませんで、あるいはそういう言い方はレポートにも出てきたりしたんですけれども、やはりどのミサイルについて言っているのかはっきり言っておりません。

 ただ、実態としては、準中距離のノドン級から中距離ミサイルであるムスダン程度までのことを言っているんだと想像されます。なぜかといいますと、北朝鮮もICBM級の本当に長距離のものは実験していませんから、アメリカがどう言おうと、北朝鮮のリーダーでさえ自分が持っているかどうかわかっていないわけですから、それはぼんやりさせているんだと思います。

 それから、ムスダンをロフテッド軌道で飛ばしたりというのは、確かにロフテッド軌道で飛ばされるとかなり鋭角に、真上から飛んでくるということで非常に撃ち落としにくいですし、スピードも速くなる。ただ、幸いムスダンは余り信頼性が高くないので、基本的にはノドンで、日本を攻撃する場合はノドンを使うと思いますが、ムスダンの信頼性が上がれば、重要な兵器を搭載して飛ばすときは、確かにそういうムスダンでロフテッドで撃つということもあり得るかもしれません。

 SM3のブロック2A後のミサイル防衛ですが、SM3のブロック2Aも非常に高価な、一発何十億円もしますので、これ以上やるというのは、ミサイル防衛につぎ込むお金として、ちょっと私も、そこまでいった後はそろそろ限界効用が下がりつつあるのかなと思いまして、そういう意味では、やはりその後は、より情報能力の強化、特に韓国との協力、そして運用上の改善、これがどういうことができるかというのはあれですが、運用能力を高める。

 それから、最終的には攻撃作戦とのパッケージングですね。やはり、牽制して、攻撃されると思っていますと、なかなか自由にぱっと出してきて撃てませんから、当然、攪乱してなるべく一遍にたくさん飛んでこないようにしながら防御するというのがベストですから、攻撃作戦と、どうやって一番相手が動きにくいようにするかというのがその次の段階に来るのではないかと思っております。

大西(宏)委員 両先生、御意見の御披瀝、どうもありがとうございました。

 私は、自民党、大西宏幸でございます。

 各先生方の御質問と少し重なってくることもあることを御容赦いただきますようにお願いします。

 まず、基本的に、北朝鮮の金正恩政権が、私の目から見たら、例えばアメリカに交渉させるためにいろいろなことをやってくるということはあるんでしょうけれども、実際、真剣にやっていないように思えるんですよね。例えば、ICBMは実際の能力がない、SLBM、潜水艦からの攻撃の技術というのは確実なものは絶対できているわけじゃないということですよね。

 それと、実際に核開発が行われたときの選択枠というのがいろいろあると思うんです。例えば、韓国の国境近く、三十八度線で核爆弾を自爆させるぞと言っても、風下に韓国と日本があるのですからこれは脅迫にも使えますし、ダーティーボム、一個百円程度でつくれる爆弾で放射能をばらまくこともできるでしょう。

 そういうことを選択枠として出してこないというのは、今の状況的にはどういうことなのかというと、一つに、国内政治向けに基本的に考えられているということと、もう一つは、国際社会でぎりぎりのラインで孤立をしないという、このぎりぎりのところでやっていっているように思えるんでしょうけれども、そこの、今の金正恩の頭の中というのはどこに向いているのかというのが我々余りわかっていない部分がありますので、もしよろしければ御所見をいただけたらありがたいなと思っております。両先生、どうぞ。

伊豆見参考人 ありがとうございます。

 私は、まず金正恩という個人が、今独裁権力を振るって、いろいろなことを考えてその政策を実行しているというふうには全く考えておりません。金正恩という人はまだそれだけの知見が備わっているとは思わないので、もちろん、あと何十年か彼が今のままとどまっていると、最終的にはそうなるかもしれませんが、現時点では、やはり一種の集団指導的な体制なんだろうと思います、いろいろなところからいろいろな議論が出て、それを決めてと。

 最終的に誰が決めているんだというのもよくわからないんですが、ただ、金正恩という人が必要なことは必要なんですね。そうしないと中で権力闘争が起きると思いますけれども、権力闘争を防止するキャップとしてああいう金正恩という人は絶対に北朝鮮には必要、すなわち、金日成から金正日、今の金正恩と来るあれが必要だということだと思います。

 それで、一体、金正恩が何を考えているかというようなことを考えるのは、私は、そういうふうには思っておりませんということをまず申し上げたい。

 周りからすると、この四年間、一番何が大変だったかというと、金正恩体制というのをつくることだったと思うんです。安定したキャップをきちっとつくらないといけない。そのためには、それが最優先されると、ほかのものが犠牲になるという感覚。国際関係、もちろん北朝鮮にはいろいろな意味で大事ですし、それがあって初めて生きていけるというところもあるわけですけれども、でも、それを最優先していたとは私は考えておりません。

 この四年間、彼らがやってきたことは、ともかく核兵器、ミサイルということについて相当、我々の予想を超える範囲で表に出して、しかも、かなり頻度があって、間隔的には短い形で進めるということをやりましたが、その結果として、よかったことは、先ほど最初にちょっと申し上げましたけれども、アメリカと渡り合える能力を持った金正恩というイメージを国内でつくることができたということです。これで初めて金正恩の権威というものがついたということだと思います。

 しかし、その結果、犠牲も大きかったわけで、ほとんど国際関係をめちゃくちゃにしちゃったわけですね。めちゃくちゃにしたんですが、あるいは、いい方向に持っていけないんですけれども、ただ、中国に関しては、最終的には中国が生命線だという意識は当然北朝鮮は持っていると思いますので、最低の関係というものは維持しつつ、これからもちろん中国との関係を回復させていこうという意思は当然ある。

 その上で、次に考えるのは、やはりアメリカとの関係をどうするかということですし、それに付随して、韓国があり日本がありと。

 結局のところ、北朝鮮の外交にとってといいますか、外の関係で重要なのは、確かに、中国と、そしてアメリカと韓国と日本、基本的には四カ国しかないわけですね。この四カ国との関係をどうするかということで彼らの政策が決まっていくとするならば、これからようやく、金正恩の最低限の権威をつけた、それは自信を持っているだろうと思うのは、ことし五月に党大会を開いたからです。

 だから、党大会を開けたということで、ある程度、金正恩体制を固めたという自信を周りは持ったと思いますので、そうすると、これから、この四カ国との関係をどうやってちゃんとやるかということを来年から必死になって考えなきゃいけないということだろうというふうに思っております。

道下参考人 まず、北朝鮮が余り真剣にやっていないのではないかということですが、私は結構真面目にやっているというふうに思っている方でして、といいますのも、やはり先ほどお話ししたとおり、核実験で十年かけてこつこつとやってきていますし、実はあれは一回目の実験は失敗しておりまして、実験する前は四キロトンぐらいの実験をしますというふうに中国に通報していたんですけれども、結局、一キロトンいかなかったので、失敗しているんですよ。それなのに、くじけず、頑張ってやってきた。

 それから、ミサイルも、先ほどのこの資料のリストを見ていただきますと、一番右の飛翔距離というところに不明と書いてあるところがあると思うんですが、これは実は、ほぼ失敗しているという話で、結構失敗しているんですね。

 これだけ失敗しているのにまだ頑張るということで、それからあと、今、ノドンミサイルはかなり、もう三発連射もできて成功しているので、同じところに落としてとできるようになっているんですけれども、最初はやはりノドンだってふぐあいがあって、パキスタンにも輸出しているんですけれども、パキスタンの方も何かいろいろふぐあいがあったというのをパキスタン人が書いていますし、そういうのをやはり克服してきているというのは非常に真面目にやってきたというふうに私は印象を持っております。

 それから、三十八度線近くで核爆弾を爆発させたり、ダーティーボムというのは当然考えていると思いますし、これは有事の場合はそういうことで、アメリカや日本を牽制して介入できないようにする、あるいは、部分的に韓国側を破壊しておいて、核でおどしてそこでストップさせる。そうすると、本格的な戦争をしなくても、一部やられていると韓国は相当ダメージが大きいですから、やはり国際経済にもインテグレートされていますし、そういうやり方というのを非常に私は懸念しております。

神山(洋)委員 伊豆見先生、道下先生、両先生にお伺いをさせていただきます。

 先ほどから少し議論がありましたが、THAAD導入についての御所見をいただきたいというふうに思っています。

 安全保障をめぐる議論全般そうかもしれませんし、特に北朝鮮のミサイル問題に関連をしていつも思うんですが、何か事があると反射的に、ああしたらいい、こうしたらいいというのがぽんぽん出てくるという傾向が私は実はあると思っていまして、現状に柔軟に対応することは大事だと思っているんですが、やはりそれは大きな方針に基づいてきっちりとやっていくべきであって、反射は余りよくないんじゃないかなというふうに思っています。

 例えば、ミサイルの探知がうまくいかないと、SEWを我が国で持つべきじゃないかという話がぽんと出てきたりするというのも一例かと思っています。

 THAAD導入に関してでいえば、今二つのシステムでやっているわけです。もう一個入れましょうかという話で、それは二つでやるよりは三つでやる方がいいという理屈はわかるわけですが、では、果たしてそこにどれだけの合理性があるのだろうということをやはり厳しく検証されるべきだというふうに私は思っていまして、まあ、言い出せばこれは切りがありませんけれども。

 先ほど、伊豆見先生からは、小型化はある程度なされているというお話もありました。同時に、例えば、多弾頭型の個別の誘導弾だって開発をしているでしょうと。では、それができたときにどの程度対応できるんでしょうという話もあろうかと思いますし、一方で、これは後段で申し上げますが、予算面とも関連しますが、充足率はずっと八割ぐらいこの十年間来ているわけであって、現場負荷を考えたときに、もう一個新たなシステム投入をして、では、それを果たして回せるんでしょうかという話もあろうかと思います。そういう意味で、軍事的にどうなんだという話が一点。

 二つ目ですが、先ほど伊豆見先生から、MDはそもそも一〇〇%を求めるものではないのだというお話もありまして、私もそれはそうかなというふうに思っています。その抑止ということを考えたときに、では、その抑止効果が、もう一つ、THAADを導入することによって飛躍的に高まるのだということであれば、それはやはり政策的な効果を考えると導入すべきなんでしょうが、果たしてその程度がどうなのかということも検証されるべきかなと。

 三点目ですが、先ほど申し上げた予算面からしたときに、ここもいっぱいありますが、南西諸島の防衛もやらなければいけません、艦船もふやさなきゃいけません、大型船をふやすので、そこには当然人数がかかります、でも、予算は限られている、充足率は上がりません、人員はふやせませんという中で、では、これまでMDに恐らく一兆円ぐらい予算を投じてきたかと思いますが、さらにTHAADのシステムを導入して、当然そこには数千億、ロットのお金がかかる、その後、経常経費もかかっていくという中で、まあその三つ以外もあるかもしれませんが、総合的に考えたときに、このTHAADを導入することがどの程度有用であるのかというあたりの先生方の御所見をぜひいただければと思います。よろしくお願いします。

伊豆見参考人 ありがとうございます。

 私は、日本がTHAADを導入するメリットというのは基本的にはないと考えておりまして、まず、予算面というのもございますし、あと、先生おっしゃいましたように、まず抑止効果の面でどうか。

 今持っているMDにTHAADを加えた場合に、北朝鮮に対してどれだけの意味があるんだということになると、余り、北朝鮮に対して、それが厳しい警告にはならないなと思います。ですから、むしろ私は攻撃力を持った方がいいだろうと思います。それだったら、トマホークを導入することを考える方が、はるかに北朝鮮に対する抑止効果ということでいえば、あるのではなかろうかと。

 軍事的に見ても、先ほど申し上げましたが、私は別に、一〇〇%撃ち落とさねばならないというのがMDだとは思っておりませんが、それでもその精度というものをより上げていく必要があるというふうには言えるとは思いますけれども、でも、ある一定の精度があれば、やはり北朝鮮は、心理的には、日本がMDを持っている、そのMDで何発か撃ち落とされるかもしれないと考えることが、彼らの日本に対する攻撃をちゅうちょさせるというのは、これはもう明らかにそういう面があると思います。

 そうであれば、また別の要素で、彼らの日本に対する攻撃を抑制する方法を考えるとすれば、私は、ここは防衛よりも攻撃力ではないかというふうに思っております。

道下参考人 私は、今の状態でTHAADを導入した方がいいかどうかと判断するに足る情報をちょっと持っていませんので、結論はまだ自分の中では出していないんですが、先生のおっしゃるとおりの項目を私も同じように多分検討して、それぞれがイエスという答えだったら導入するのがいいですし、ノーだったらしない方がいいという評価をすると思います。

 ただ、一般論として申しますと、確かに、ミサイル防衛にどれだけ、そこだけに突っ込むのかというのはやはりありまして、特に私は、広い意味で心配しているのが、やはり自衛隊の人的構成ですね。かなり年齢が高くなったり、階級がインフレートして、ちょっと高過ぎるみたいな、頭でっかちの組織になっているということにかなり懸念を持っております。

 あるいは、そういう正面装備にお金をとられて、十分な訓練、演習ができない、油が足りないですとか、そういうふうになっている方が実は心配しておりまして、装備はある程度あって、冷戦期とやはり違うのが、冷戦期は、いろいろ正面装備はきれいにそろえているけれども、まあ実際は戦争はないだろうというのがあったわけですから、もう見かけで、格好よければ何となく抑止が働いてオーケーという時代だったのが、今は、実際のいろいろな事態が発生するという世界ですので、そこではやはり訓練、演習にもっと十分お金をつぎ込むということは重要ではないかと思っております。

門山委員 伊豆見先生、道下先生、どうもありがとうございます。

 北朝鮮のたび重なる核実験、あるいはミサイルの発射というのが非常に緊張すべき問題なのでございますが、そういう中で、来年誕生するトランプ大統領が同盟国の軍事コストについて言及されていたり、あるいはお隣の韓国では今政権が大変不安定になっている。

 あるいは、ナショナリズムの高まりなどを背景として、アメリカの同盟国である韓国が、仮にですけれども、抑止力を高めるために核開発をしようということを決意したというような状況が起こり得るかもしれないんですけれども、そういうような状況があったとき、日本としてはどのように対応すべきなのか。また、実際、お隣の韓国が核保有をした、そういう場合には日本はどう対応すべきか。

 あるいはまた、今、中国と韓国は非常に経済的な影響が大きくなっていますが、その影響のもとで朝鮮半島全体が非核化せずに統一されたような場合、その場合、日本は、これは安全保障の観点ですけれども、どのように対応すべきかについて、もしあれば教えてください。

 またあわせて、第二、第三のケースでございますけれども、朝鮮半島、この地域全体が核保有している状況というのが現出する可能性というか、起こり得る可能性というのはどの程度あるのか、それについて、これは非常に難しいかもしれませんが、もしわかれば御見識を御教示いただきたいと思います。

伊豆見参考人 ありがとうございます。

 私は、今後、韓国で核武装論というのが相当出てくる、今もあるんですが、もっと出てくる、あるいは国民世論の中でもそれが相当な賛同を得るような時期が来るというのは当然あり得ると考えた方がいいと思うんですが、ただ、実際、韓国が核武装に踏み切る可能性というのは基本的にはないと思います。

 どうしてかというと、結局、それはまずアメリカが許さないということがあるんですが、というよりも、米韓同盟がこれでほぼ終止符を打たれるかもしれないというような、そういう大きな局面に彼らは直面しますし、同時に、韓国の核武装を中国が歓迎するわけでもないという、そこが問題なわけですね。

 ですから、もしアメリカとの関係を断ち切って、中国が核武装に賛成するならば、韓国の中でも随分揺れるかもしれませんが、しかし、実際やろうとすると、アメリカも反対だし中国も反対だし、あるいは核武装した韓国というのは国際的に孤立するかもしれないということをぎりぎりのところで真剣に考えたときに、韓国がその選択をするということは私はあり得ないというふうに思います。

 ただ、今先生がおっしゃった中でもう一つの問題は、北朝鮮が核兵器を持ったままいつか南北の統一という話になる、これはやはりあり得る話でして、それか、北朝鮮の体制が崩れたときに、そして韓国がそれを吸収するときにという。

 そのときにやるべきこと、もちろん、今そうなっているとも言うんですけれども、改めてやらなきゃいけないのは、やはり、北朝鮮の核を解体する、それを捕獲して解体するという役割は韓国には絶対やらせちゃいけないというふうに思います。

 韓国は今やらないとも言っていますが、でも、やりたがるのは間違いないので、統一すれば、これはうちの話だ、国内の話なんだから、うちが核兵器のあれも処理すると。それは絶対にやらせてはいけない。仮に、本当に正直に韓国がそれをきちっと解体して放棄したとしても、そこでノウハウを手に入れるわけですから、それはいつでも今度は韓国も核兵器をつくり得る状況になる。これは非常によろしくない、核兵器を保有したことと余り変わらないような状況になりますので。

 ですから、もし北朝鮮の核というものを処理できない前に統一というものがあるとすれば、北朝鮮に残る核兵器の捕獲であり、その管理であり、その解体でありといったような作業は全部核保有国だけがやって、韓国は一切そこにタッチさせないようにするということが一番大事だと思います。

道下参考人 まず、日米同盟のコストの話ですが、ややもすると思いやり予算の話になってしまうんですけれども、やはりそうではなくて、いかに日米同盟というのが地域の平和と安定に資しているかということをもう少し、これはある意味で、トランプさんが出てきたというのはこちらにとっては頭が痛い話なんですけれども、逆手にとって、やはり、日本はこんなに重要な役割を果たしているんだということを主張するべきだと思うんですね。

 例えば、やはり朝鮮半島に関して言えば、日本は守られる方ではなくて、明らかに守る方でありまして、朝鮮半島の安全を守るために、日本とアメリカがスクラムを組んで後ろから支えているというのが実態で、日本が守ってもらっているというのは全くありません。しかも、日本は、北朝鮮の核、ミサイルの脅威を受けながらも韓国防衛にコミットしているわけですから、これは物すごいことなんです。

 ただ、こういう議論をなぜ余りしないかというと、そういうことを余り強く言うと、ああ、やはり日米同盟は日本防衛のためじゃないんだという話になるので余り強調していないんですけれども、やはりもう少しここはきちんと強調して、世界の、特にアメリカのリーダーたちにはそこを理解してもらう必要がありますし、日本国民に対しても、むしろ、こんなに日本は立派な国なんだよというふうに説明してはどうかと私は思っております。

 次に、韓国国内の核武装の議論ですが、ちょっとこれは、私は本当に懸念しておりまして、なぜかというと、何となく国民感情の部分だけではなくて、専門家がグループをつくって、かなり本格的な議論をしております。その中で、実はある意味で合理的な議論をしていまして、韓国が中級国として長期的に国際社会における地位を維持するために核保有をするという議論がかなりあるようです。

 ですから、北朝鮮の核を持ったというのはある意味で口実で、より長期的な韓国の国家戦略として核を持つべきかどうかという議論がなされている部分もあるようでして、そういう意味では、おもしろい議論ですけれども、これは持ってもらうと非常にまた状況がややこしくなるので、日本としてはなるべくディスカレッジしたい。

 それからあと、ただ、核を持つというのは容易ではありませんで、よくフランスの専門家と話しますと、もうコストがかかる、何かマネーイーターといいますか、金食い虫が二匹いて困るんだという話をするんですね。

 その二匹は何かというと、一つはラファールという、空戦、ドッグファイト用の冷戦期につくった戦闘機。これをいろいろ売りつけるつもりでつくったけれども、余り売れずに、結構マネーイーター。独自でつくっているのでコストがかさむ。それから、もう一つが独自核戦力です。これもやはり独自につくっていますので、フランスの国防費の八、九%、ちょっとこれは古い数字ですけれども、相当の部分を核に突っ込んでいる。

 イギリスなんかはアメリカのを買っていますから、三%、四%ぐらいでアフォーダブルなんですけれども、そのイギリスでさえ、数年前、もう核をやめようかと結構真剣に議論したということがあるわけです。

 ですから、そういう意味でも、コストがかかり、結局は使えないし、地域の安定に資するものではないというようないろいろな側面から説得して議論して、なるべく核が広がらない世界をつくる努力を日本としても主導していくべきだと思っております。

 そのときに、単に感情論ではなく、やはりお金の問題、戦略的な問題、国際関係の問題を含めて、きちんと説得できる、議論ができる日本になっていただければと思っております。

後藤(祐)委員 民進党の後藤祐一でございます。

 きょうは本当にありがとうございます。

 幾つかお聞きしたいと思いますが、まず、ノドンが一発だけ発射された場合は、比較的、今のSM3とPAC3で何とかなるかもしれないけれども、三発という場合には違ってくるというお話がありました。

 それ以上、すなわち、三発どころか、先ほど五十台ほど移動式発射台を持っているというお話もありましたが、もっとたくさんのミサイルを同時に発射する能力を現に既に持っているとお思いか、あるいは、少なくとも近未来にその可能性があると見ていいのかどうかというのが一つ目です。

 二つ目は、いずれにせよ三発は打てるわけですから、これに対しての対応として、SM3ブロック2AとPAC3のMSEまでいったとしてもやはり守り切れないという場合には、敵基地攻撃能力、先ほどTHAADの話もありましたが、神山さんが詳しくやりましたのでちょっと飛ばしますけれども、敵基地攻撃能力の議論をせざるを得ないと私も思っておりますが、これは九条との関係というのが出てきますよね。

 従来、屹立して燃料を充填していれば九条とは整合的なんだという答弁がございますが、他に手段がない場合という解釈との関係において、例えば、SM3ブロック2AとPAC3MSEが整ったといっても、たくさん一遍に撃たれると守り切れないというような理由から敵基地攻撃能力を持つということは、他に手段がないというふうに解釈し得るのかどうか。これはちょっと法律論になってしまうのかもしれませんが、そこについての御見解をいただきたいと思います。

 また、この敵基地攻撃能力についてもう一つは、先ほど道下先生から、さまざまな地上の諜報の情報をよく見ながら日米韓でそれぞれ地域分担してという大変リアルなお話がございました。

 これは、TEL、すなわち移動式発射台でたくさん撃つというようなときに実際に有効なんでしょうか。すなわち、どのぐらいの時間でTELが出てきて、捕捉できて、それに対してどの程度のところに待機していて、何分ぐらいで撃ちに行けるのかというような時間との関係で、どの程度の現実味があるのか。これは、日本がやる場合だけではなくて、現に今米軍が持っている能力において、TELの場合有効性を持っているのかということをお聞きしたいと思います。

 これも、有意義でなければ、時間をかけて、お金をかけてやる意味は何なんだという話になってくると思うので、特にTELの場合はトマホークでは無理ですよね。これは多分そういうことなんだと思いますが、やはりトマホークよりもむしろ戦闘機で行って、電子戦の飛行機なんかもついていってというようなことをイメージされているのかどうかもあわせていただきたいと思います。

 それと、先ほどの朝鮮半島有事のときの、日本が米軍に対して基地を提供する、後方支援するというのは大変重要な、我々はむしろ日韓の関係においてこのことをきちっとお互い理解を深めていく。そのかわりと言うとなんですけれども、GSOMIAも締結されましたし、先ほどのようなケースの場合に、韓国の諜報を含めた情報をきちっといただくということをお互いがっちりと握る、大統領がかわろうが、がっちり握るということは日韓の関係において大変重要なことだと。もちろん、これは日米韓で三国でやった方がいいと思いますが、これについての、これから我々政治家がやるべきことの一歩目、あるいはその先何を目指していくべきなのかといったことをお聞きしたいと思います。

 ちょっと長くなりましたが、お願いいたします。

道下参考人 ありがとうございます。

 まず、ノドンが、たくさんのミサイルを撃ってきたらということなんですが、理論的には、五十両あるわけですから、五十両並べて五十発一遍に撃つということは可能です。

 ただ、実際そういう攻撃をしてくるというのは、ほぼ、多分戦争が起こっている状態しかあり得ませんので、そうすると、当然攻撃作戦も始まっているはずなんですね。そうすると、向こうは逃げ隠れして、見つからないように逃げながら、やられないようにぎりぎりのタイミングで撃つということをやっているはずなんです。そうすると、そんなに、五十台ばっと出てきてというのは非常に無理ですね。

 ですから、こっちでこちょこちょ、あっちでこちょこちょ、出てきては撃つということが多分現実的で、その情報が事前に、どこにどのぐらい配備してあって、TELという移動式発射台の運用がどういうふうになっているかというのをこちらがよく知っていれば、ああ、いつものこのパターンだなとわかっていれば、その辺をやって、がんとやっつければかなり破壊できるわけですから、そこは本当に、その細かいところは私は情報を持っていないので評価はわかりませんが、そういうせめぎ合いになる。

 そういう意味で、よく何か敵基地攻撃の能力を持っても破壊できないんじゃないか、だから意味がないというのは、これも意味が余り実は、ないわけではないんですけれども、それだけでは評価は無理で、撃たせなければいいんですよ、要は。相手が、出ていったらやられるかもしれないから隠れていないといけないという状態をつくれば、別に破壊できなくてもかなり有利にできるんですね。

 ですから、相手のミサイル攻撃作戦をディスラプトするというか混乱させるというのが実は攻撃能力を持つ重要なポイントで、それも含めて評価しないと、やっつけられるかどうかだけというのは、それはちょっと、余りいい基準ではないと思います。

 かといって、とはいえ、撃ってくる発数がふえたら、こっちもひたすらミサイル防衛だけで対応するんだったら、どんどんふやしていくということになるんですが、それは、私も先ほど申し上げましたように、ミサイル防衛はコストも高いですし、限界効用も下がるところが出てくると思いますので、そこら辺は、いろいろほかの情報手段とか攻撃能力との組み合わせ。

 あとは、やはり市民防衛というか国民保護、そちらをさらに現実的なものにして、ミサイルが絶対落ちてきますから、ちょっとしたことで、かたい建物、頑丈な建物に入るだけでも全然被害が違う。これは原爆に対してだってそうですし、地下の部屋に入っていたら、相当生き残るわけですね。ですから、そういうことをもう少し現実的に準備するということです。

 それから、他に手段がない場合というのは、鳩山答弁のときはそうだったんですが、今回の安保法案の議論を通じてここは修正されていたというのが私の認識で、今は、日本に対して甚大な被害を与えるような脅威があった場合には敵基地攻撃ができるというふうに立場が変わっていると私は認識しております。

 それからあと、TELをやっつける、移動式発射台をやっつける作戦というのはやはりなかなか難しくて、もう古い話なんですけれども、一九九一年の湾岸戦争のときは、ほぼやっつけられずに終わりました。ただ、そのときよりも、センサーはよくなっていたり、いろいろな能力がふえているので、あそこまで悪くはないと思うんですが、やはり全部捉まえてやっつけるというのは難しいので、やっつけないまでも、相手がうまく攻撃作戦をできないようにするというのも含めて、全体像で考えていく必要があると思います。

 そして、トマホークではなかったら何かというと、戦闘爆撃機を中心とした、日本でいうとF2ですし、今度F35が入ればF35を中心としたストライクパッケージをつくるということです。

 それから、最後の点は、まさに私、それはきょうお話ししたかった点でございまして、韓国を守っているということをやはりもうちょっと正直に話すべきだと思っておりまして、韓国の方々に、日本がどれだけ犠牲を覚悟して韓国の安全保障に貢献しているかということはちゃんとお話しして理解していただいて、ああ、それだったら当然日本に対してももっと協力しないといけないなと思っていただけるように、政治家の皆さんも、先生方にも、ぜひいろいろなところでそういうお話をしていただきたいと考えております。

小野寺委員 済みません、ありがとうございます。きょうは、両先生、ありがとうございます。

 先ほど来、いわゆる策源地攻撃能力、反撃力についてのお話がございました。

 この検討というのは今の防衛大綱の中にも位置づけております。法的にも可能だということでありますが、やはり今まで政策的にはなかなかこの方に踏み込めなかったということは現実にあると思っております。

 ただ、最近のミサイル防衛の問題、そして北朝鮮を含めたさまざまな国の弾道ミサイル能力の向上ということを考えると、例えば、ミサイル防衛で防ぎ切る能力を向上させていくそのスピードよりも、むしろ攻撃をする方の弾頭の多弾頭化やあるいはダミー弾を含めて、これを防ぐのは大変難しくなってくる、そういう状況が続いていると思いますし、先ほど来御指摘がありましたように、コスト的にも大変難しいということになります。

 そうしますと、これは、相手のミサイル向上を意識して、弾道ミサイル防衛を相当のお金を使って、能力を使ってやっていても間に合うかどうかということ、そのスピードからすると、やはりなかなか防ぎ切れないということがあるんだと思います。ただ、全部防がなくても、防ぐ能力があるということだけでも相当相手には優位性を持つ、これも確かに正しいことなんだと思います。

 その中で、では、ミサイル防衛についての反撃力を日本は持たなくていいのかという議論の中で、両先生のお考えの中で、持つ検討が必要だということ、これは共通しているんだと思っております。

 私はこの問題について考える中で、一つは、例えば米韓を含めた国に北朝鮮への反撃力を全て頼っていいのかということ。当然、先ほど来お話がありますが、この能力の発揮にはそれなりのリスクが伴います。そうしますと、日本の防衛について、一番危険なところにフロントランナーとして出ていく役割を米国、韓国が負い、日本はそれを負わないということは、恐らく、現実問題としては想定しにくいとすれば、いざというときは日本もそれなりの覚悟を持って自国のためにこの対応をするということが現実かと思っております。

 それからもう一つ。実は、今回のアメリカ大統領の出現の中で、一部、瞬間ではありますが、日本の防衛に関する間違った見方というのがアメリカ国内で出たこともございます。万が一、アメリカの政権がかわるたびに、日本として日米の盾と矛の関係を見直すことが必要ということになった場合に、実は、反撃力を持つというのは、相当の能力向上の時間が必要になります。そうしますと、政策の決定というのは一瞬に変わりますが、逆に、そのための対応をする能力の向上というのは相当時間がかかるということを考えれば、責任ある立場の中では、やはり私どもとして、しっかりとした反撃力を検討する必要があるのではないか。

 加えて、日本が反撃力の検討をするということになりますと、当然、これが対北朝鮮ということに関しては、周辺国に大きなインパクトを与えます。中国はさらに真剣に北朝鮮に関しての抑止を働かせなければ、日本はさらに能力を向上せざるを得ないという、この中での一定の政策的なカードを持つということにもなります。

 そこでお伺いしたいのですが、二点ございます。

 一つは、北朝鮮が既に核保有国という形で、これはもう認めざるを得ないのか、そして、今開発をしております弾道ミサイルへの、小型化、弾頭としての能力搭載が既に行われていると見るべきなのかという状況についての確認。

 二点目は、先ほど来、反撃力のお話がありますが、反撃力としてどのようなものが具体的に考えられるのか。例えばクルーズミサイルもありますし、あるいは、日本は既にF2を含めて対地攻撃能力を持っておりますが、これをさらに進化させるべきなのか、あるいは北朝鮮が保有するような弾道ミサイルについての検討も必要なのか。

 その御所見を両先生にお伺いしたいと思います。

伊豆見参考人 ありがとうございます。

 多くの点で先生と私は意見を同じくさせていただいていると思いますが、まず、御質問の一番目のことにつきましては、私は、北朝鮮は、核兵器の小型化、すなわち弾頭化に既に成功していて、それを少なくともノドンに装填するということはもちろんできる、すなわち、日本を射程の中におさめている核ミサイルを北朝鮮は既に持っていて、それを実戦配備していると考えるべきだと思います。

 時期からいえば、相当たっているはずなんです。私は、小型化でいうなら、二〇一三年の三回目の後はもう小型化できていると考えた方がいいと思っていた人間でありますので、ことしの二回の核実験及び弾道ミサイルのさまざまな形での発射実験というものを見ていると、十分な核ミサイル能力、しかも、日本を射程におさめているものは既に北朝鮮は手にしているというふうに考えた方がいいと思います。

 ただ、北朝鮮がどういう形で日本に対して使うのかという議論がそういえば一つ欠けているなと私は思ったんですけれども、単独で何かのときに日本だけを考えて北朝鮮が核ミサイルを日本に撃ち込んでくるということは、まずほとんど考えられないですね。これはやはり、そのときは韓国との戦争が起きている。韓国と戦争がある中で、日本の米軍の参戦というものを少し、ですから、日本の米軍基地を狙うというのも一つありますし、あるいは、韓国との戦争の中での日本の支援体制というものをくじくという面で日本に対する核ミサイルの攻撃をするかもしれない、そういうのは考えられる。

 ですが、日本だけを単独のターゲットにして、しかも相当大量の核ミサイルを一挙に日本に対して撃ち込むみたいなことは基本的には余り私は想定されないと思いますので、今北朝鮮が核ミサイルを持ったという前提に立つならば、どういう形で北朝鮮が日本に対して核ミサイルを行使することがあるかという、そのケースについてもう少し具体的に我々は検討を始める必要があるだろうと思います。

 二番目の御質問に関しては、これもまず今の段階では議論の段階でしかないと思うのでありますが、やはり、反撃能力というものを全く持たないということになると、例えば韓国との戦争の中で日本に対して攻撃をするときに、アメリカがすぐそこに対して報復をしないというようなことを想定する、そういうケースが想定されることというのは十分あり得るわけですので、そういう空白ができちゃうということを避けるためにも、日本が反撃の手段を持つということは絶対に私は必要なんだろうと思います。

 その際、何を持つべきかということでは、確かに、先生おっしゃいますように、それぞれに一長一短もある、コストの問題がある、あるいはどの時点でそれが手にできるかという問題もあるということですが、一つは、やはり目立つものがいいというところはあると思うんですね。そうすると、目立って、心理的な効果があるものというと、やはり日本がミサイルを持つということは相当な心理的効果があると思います。そのミサイルをのっけから弾道ミサイルにいくかというとちょっと刺激が強過ぎるからというので、クルーズミサイルあたりが妥当かしらという感じではあります。

道下参考人 まず、北朝鮮を核保有国と認めざるを得ないかといいますと、核保有国になったという客観的な事実はあると思います。ただ、核保有国ですと認めてあげる必要はなくて、別に持っているけれども無視しておけばいいし、それは、自分は核保有国になりましたと言っても、そうですねと言わないでほっておけばいいと思っております。

 あと、弾頭を搭載しているかどうかなんですが、当然、弾頭のモデルなり実際にあるものに取りつけるということはやってみていると思いますし、パキスタンとミサイル協力、核協力も行っておりましたので、一九九八年にパキスタンが核実験をしたときも、北朝鮮も協力というか一緒に関与があったのではないかというような情報もありますので、パキスタンとの情報もあり、そういう能力もそれなりにあるのではないかというふうに想像いたします。

 次に、攻撃能力の種類ですが、私はやはり戦闘機プラス空中給油機というのが一番スタンダードだと思っておりまして、これはもう実際既に持っていますし、それからF35も導入することになっていますし、空中給油機はありますので、既存の能力、それからいろいろな、JDAMとか、限定的ではありますけれども爆撃能力もあるわけですから、それを活用して発展させる。

 それから、やはり巡航ミサイル。弾道ミサイルになりますと基本的に固定サイトの破壊ということになりますが、これは、誰でもできると言ったら変ですけれども、韓国やアメリカが、近くにいる人がやればいい話で、韓国も、実はもう今、弾道ミサイルもロシアから技術をぱくってきてつくったものとか、結構頑張って、弾道ミサイルも二種類ぐらいかなりいいものをつくっていますし、巡航ミサイルもいろいろつくってもう三種類以上ある。

 いろいろつくっていますので、そういうのは韓国とアメリカに任せて、より難しいターゲットを、F2であれF35であれハイエンドの能力なわけですから、それは一番難しいターゲット、つまり動くターゲットということで、その部分を日本が協力するということができれば韓国とアメリカも非常に高く評価してくれると思いますので、その部分で貢献をするというのが合理的だと考えております。

宮澤委員 先生、本当にきょうはお忙しいところありがとうございます。

 先ほどから対北朝鮮への課題として三つの課題が出ていますね。一点目、制裁、二点目、防衛について、そして対話について、この三点を先ほどから先生方は繰り返しお話しになっていらっしゃいます。

 そして、有効な制裁というものはなかなかもうネタ切れだという話もありました。

 二点目の防衛に関しては、今、敵基地攻撃の話がいっぱい出ております。私もこの点についてお聞きしたかったのですけれども、移動式発射台に対しての話が今出ておりました。ミサイルにするのか飛行機にするのかという点でさまざま御意見をいただきましたが、結局のところ、北朝鮮が日本を狙ってくるということはもう大規模な南北朝鮮戦争の状態にあるということであって、ということは、日米韓の共同の航空作戦と見ればよいということでしょうが、その体制づくりというものもこれからやっていかなくちゃいけないわけですが、そこにおける課題というものは一体何かということ。

 それから、これについての二点目は、今はTELに話が集中しておりますが、潜水艦についてもこれはもう考えていかなくちゃいけません。我が方については相当海上防衛能力が高いと考えておりますけれども、この潜水艦に対しての敵基地攻撃、策源地攻撃、これに対してはどのように考えていらっしゃるかということです。

 大きい二点目について、対話についてお聞きしたいと思います。

 先ほど、交渉をする、取引をする、多分不愉快な交渉になるだろう、そういう御見解がございました。かつての米朝の対話の中においては、軽水炉、そして重油、さらには食糧支援もたしかあったと記憶しておりますが、エネルギーと食糧という点についての取引だったと考えております。

 今時代が変わって、この取引内容を向こうがどういうものを主張してくるのか、予想はどのようにされているのか。こちらが譲歩することを今から考えてはいけないかもしれませんが、手のうちをさらすことにならないような感じで、ぜひ、その予想というものがついたら、一般的な話としてお話しいただけるとありがたいなと思います。

 以上、防衛についてと対話についての質問とさせていただきます。よろしくお願いします。

伊豆見参考人 ありがとうございます。

 二番目の方のお話でありますと、北が何を欲しがっているかというのは、エネルギー面であるのが一番だというのは変わらないと思います。まだ依然として、基本的には全般的なエネルギー不足に彼らは悩んでいるわけですから、その辺の関連のもの。食糧に関しては、前に比べるとそこそこよくなっているかもしれませんので、それほど食糧支援というものを強く要求してくるかどうかはわかりませんが、いずれにせよ、エネルギー、それに加えて食糧といったところが彼らが欲しがるものであるというのには変わりはないというふうに思います。

 ただ、そういうものが非常にカードとしてどれだけ有効かというようなことになると、有効ではあっても、北朝鮮の目から見ると、日本ということを考えたら、一番魅力的なのはやはり国交正常化のはずなんですね。

 国交正常化をすると、いわゆる処理の問題が出てきて、それなりの大規模な経済協力というものが補償という形で北朝鮮になされるかもしれない。それだけの大規模なもの、一種の投資に当たるようなものが出るかもしれないというのは日本しかないわけですね。世界でこれを提供できるのは日本だけです。韓国も中国も無理なわけですから。

 ということは、北朝鮮の目から見れば、一番魅力的なものは、そういう正常化に伴う日本からの補償ということになると思いますので、本来それが我々にとっての一番大きなカードだと思いますし、私は日本はもっとここを積極的に使うべきだと。

 要するに、ニンジンのケースでいえば、今、日本はニンジンをポケットの中にしまっているような段階ですから、それは、あるかないかもわからないようなことでは馬を動かすことはできない。やはりそれは見せた方がいいわけですし、においを嗅がせた方がいいかもしれないし、できればなめるぐらいのことはさせた方がいいのかもしれない。そうやって引っ張っていくということが恐らく、これは今比喩で申し上げましたけれども、そういう交渉のやり方が実は一番有効だろうとは考えております。だけれども、なかなか、日本の場合は、そういうのを、ニンジンを見せると、何もないままに北朝鮮に食われちゃうんじゃないかという心配があってできないのかと思いますが、少しそこは考えた方がいいんだろうと思います。

 済みません、今、チンと鳴ったので、一番目は道下さんに。

道下参考人 ありがとうございます。

 まず、日米韓の共同対応の体制づくりなんですが、これはやはり、日韓でGSOMIAができて、あと、日本も集団的自衛権の行使ができるようになりましたので、ターゲティング情報の交換とか、それから共同作戦をつくるとかいうのも可能になっているはずですので、やればいいと思います。

 それで、過去は、それができなかった。日本が集団的自衛権がなかったので、米韓同盟と日米同盟を連接させられなかったので、仕方なく、米韓の方は作戦計画五〇二七というものを使って、こっちは五〇五五とまた別のものを使っていたんですが、これも、本当であれば一体のものであるはずで、そういうのをより一体化して、ちゃんときれいに連接するようにしつつ、新しい要素も入れるということになると思います。

 それから、潜水艦の対処が重要になってきているというのは、本当に頭の痛い、おっしゃるとおりのところで、これを一体どういうふうに役割分担するかというのはちょっと私も想像もできないんですが、当然、一義的には、韓国、アメリカが対応するということだと思うんです。やはり、潜水艦、海の中の世界では、今、中国をめぐって各国がせめぎ合いをして、日本もそっちに非常に勢力をとられている状況で、さらに北朝鮮、そういう意味でも、北朝鮮避雷針論がまたあれなんですが、北朝鮮を放置していた結果、どんどん中国は楽になっていくというのが私は非常に残念なところです。

 それから、二つ目の北朝鮮との取引内容ですが、やはり基本的には、まず第一段階目としては、北朝鮮の核計画を凍結させる、そのかわりにエネルギーや食糧の支援を行う。そしてもう一つ、やったらいい、あるいは北朝鮮も多分持ちかけてくるのが、核の平和利用と、それから共同宇宙開発です。

 といいますのも、実は、北朝鮮は、最近はちょっと言い方が変わってきているんですけれども、ウランのプログラムは、わざわざ軽水炉を自分でつくったりして、あくまでウラン濃縮は軽水炉の燃料をつくるためですというフィクションをつくっているんですね。それからあと、ロケット発射についても、長距離ロケットについては、これは宇宙開発のためにやっている、あくまで衛星打ち上げロケットですという言い方をして、ここは一ミリたりともずれていないんですよ。

 ですから、これだけのフィクションを何年もかかって一生懸命つくってきているということは、やはり、交渉事が出たときに、これは平和利用プログラムですといって何らかのディールをしようということを考えているのではないかと私は思っておりますので、それをある意味でうまく利用して、今持っているものを廃棄させるというのはなかなか難しいですけれども、それをより平和的な利用の方向に引きつけていく。そうすると、彼らもそれでお金もうけにもなれば、そっちの軍事の方に向かわないインセンティブにもなる。

 そして最後に、体制。これは伊豆見先生がおっしゃったことと同じで、体制認定、国交正常化が一番最後にあると思うんです。

 ただ、国交正常化にいきなり飛ぶというのは、なかなか一回には、二〇〇二年に日本も失敗して懲りていますので、私は、やってみればいいんじゃないかなと思っているのが米中関係正常化方式でして、一九七二年に関係正常化しましたけれども、あれは国交正常化していなくて、結局、八〇年でしたか、国交正常化するまでは、関係を正常化していろいろな交流をして、それは、軍事もあるし、政治もあるし、経済も、いろいろな交流を積み重ねていって、最後に国交正常化に行く、そういうロードマップをつくって、それもインセンティブにすると向こうも受け入れやすいのではないかと考えております。

左藤委員 自由民主党の左藤章と申します。

 両先生、どうもありがとうございます。今、宮澤先生から大分聞かれて、ちょっとダブってしまいますことは配慮させていただきたいと思います。

 先ほど、ICBM、KN08、KN14については、開発は余りやっていないのではないかということでございますけれども、一応、二〇一五年の十月に観兵式で出ていましたね。その後の開発は本当にないんだろうかというのが一点。それのために、私は逆にSLBMの開発、先生方がおっしゃったとおりであると思いますが、これ級の潜水艦に、二回この前やって、ある程度めどが立ったようなイメージがあります。

 それのこれからの開発のスピードと、それから我々が一番怖いのは、やはり潜水艦、海から、いつ、どこから飛んでくるかわからないという、こっちの対応というのはこれからの日本の防衛として一番頭が痛いところだと思います。

 それ以外に、これは本当かうそかわかりませんが、ロシアから、原子力潜水艦の開発のためにいろいろやっている、そういうロシアの技術を使ってという話がございます。そうすると、原子力潜水艦になりますと、変な話、七十日とか八十日は潜りっ放しにできるわけですから、アメリカの大陸本土まで脅かすということになるわけであります。

 そういう目的と見通し、開発を本当にやっているのか、その辺はどうなのか、わかる範囲で先生方の御所見を賜れればと思いますので、ひとつよろしくお願いを申し上げます。

道下参考人 潜水艦は脅威ですが、私も非常に頭が痛いと申し上げまして、そのとおりなんです。

 ただ、北朝鮮の潜水艦は相当多分雑音が大きいので、見つけられないということはないんですね。ですから、北朝鮮の潜水艦の脅威は、突然撃ってこられて脅威になるというよりも、これがあるために、正直ぼろ船ですよね、ぼろ船があるために我々が非常に貴重な高性能な潜水艦部隊をそっちに振り分けないといけない、これが一番頭が痛い問題だと思うんですね。かといって、余り手を抜いてやっていて取り逃がしたら大変なことになりますから、コストインポージングという言い方をするんですけれども、我々の方に過大なコストがかかる非対称なアセットだという言い方ができると思いまして、そういう意味で頭が痛い。

 ただ、これで本当にアメリカまで、それが原子力化されても見つからずに行くということはないので、軍事的脅威というより資源配分上の負担という認識を私はしております。

伊豆見参考人 私は、北朝鮮がアメリカ本土を攻撃する能力を本当にかなり近い時間のうちに持とうとしているかどうか、かなり疑問だと思っております。アメリカでは五年ぐらいのうちに持つかもしれないという警戒心がある、これはアメリカの立場に立てば当然そう思うべきであります。しかし、北朝鮮はそれを本気で開発するかどうかは私は相当疑問だと。

 なぜならば、既に彼らはアメリカの本土を攻撃できる能力を持ったことにしちゃったんですね。それは正しくないと思いますけれども、国内向けには既に持ったということを明確に言って、ムスダンを飛ばすのにかなり固執したのは、ムスダンが飛んだらあれを中長距離弾道ミサイルという呼び方を今している。中距離だけじゃなくて、長距離がいつの間にかそこに紛れ込んでおりまして、あんなのは、ムスダンを飛ばしただけでもってアメリカの本土が攻撃できるような、そういうフィクションを既に北朝鮮はつくっておりますので、こういうやり方を見ていると、本気でアメリカ本土を攻撃する能力を持とうとするかどうか。

 もちろんその方が抑止の観点からすると必要だとも言えなくはないと思いますが、ただ、既に能力的には、韓国、日本そしてグアムまでは攻撃できるという能力を持ったことでの抑止力ということで北朝鮮は満足していることもあり得ると思います。

 ただ、それを前提にしていても、いつかアメリカ本土をやはり攻撃できるといいなという夢を持ち続けるということは当然あると思いますし、その範囲で考えると潜水艦も、原子力潜水艦に関心を持つというのも当然あり得る話だと思います。ただ、そこも最後はコストパフォーマンスの話になりますので、それだけのお金をつぎ込んでやれるかどうか。

 今、北朝鮮にとって大事なのは、対米抑止力、核抑止力を確立したというフィクションをつくりました。このフィクションは基本的にはことしで完成したと思います。そのフィクションができていると、アメリカの脅威におびえなくて済むという、またこれもフィクションですけれども、おびえなくて済むから経済建設に集中できる、こういう論理になるんですね。

 逆に言うと、対米抑止力を確立したと宣伝しちゃうと、経済建設を一生懸命やらなきゃいけない、経済建設でそれなりの成果を出さなきゃいけないという今大変な課題を自分で北朝鮮は背負っているような状況ですから、来年からはそこに相当集中せざるを得ないんじゃないかというふうに思っております。

小林(鷹)委員 自民党の小林鷹之でございます。

 北朝鮮の核、ミサイルの開発につきまして、冒頭より両先生から、この趣旨は金正恩氏の権威を高めて体制の維持を図るというお話がありました。

 その上で、仮に、今後何らかの理由でその体制の維持が困難になってしまった場合、先ほど核の捕獲の話がありましたけれども、北朝鮮の核管理のあり方について、裏を返して申し上げれば、核の拡散の可能性やシナリオにつきまして両先生がどのような考え方あるいは印象を持っておられるのか、お聞かせいただければと思います。

伊豆見参考人 私は、両方危ないと思っているんです、拡散という意味、実際に使用するという意味。追い詰められた段階になったら、北朝鮮は核兵器なり核技術なりを外に売っ払う、あるいはそれを韓国に対して使用する、あるいは日本に対して使用することも考えるということも、追い詰められたときにはあり得るんじゃないかというふうに思っております。

 しかし、二番目に我々は考えておかないといけないのは、それを一番世の中で、この世界で懸念しているのは、やはり中国だと思うんですね。中国は、その点、非常にそこを恐れている。

 私は、中国の人たちと議論していてこの二十年間で一番そこを強く感じるのは、やはり、北朝鮮はどこかで追い詰められるとそういうことをやりかねないという感覚を中国は相当強く持っていると思いますので、ということは、中国が必死になってとめにかかるということです。売ろうとするならそれを売らせないようにする、使おうとするならそれを使わせないようにする、方法はいろいろな形があると思いますが、私は、北朝鮮が追い詰められるとそういう行為に出る可能性があると思います。しかし、その行為、そういう可能性について中国が必死になってあらゆる手段を行使してとめようとするであろうということも、相当強い可能性があると思っております。

道下参考人 簡単に一言だけ。

 北朝鮮は、拡散というのは、もし不安定化したらということでしたのでちょっとシナリオにもよると思うんですが、とはいえ、不安定化したときに拡散してしまったら、それを口実にばんとやられる可能性が高まりますから、やはり、それを下の者が勝手に拡散させたら上のリーダーシップがアウトになる可能性が高いわけですから、それは相当かっちり管理していると思います。

 ですから、私は、管理とか拡散という意味ではそれほど心配しておりませんで、多分、いざというときに使えないぐらいがちがちに管理しているのではないかと、想像ですけれども、想像しておりまして、そういう意味では、そこは、実は意図的に拡散させない限り、事故的に拡散するという可能性は比較的、統制社会ですから逆に低いのではないかと考えております。

藤丸委員 きょうはありがとうございます。

 私は一点、貿易について。前、伊豆見先生がどこかで発言されておりまして、北朝鮮の中国との国境沿いでどれだけの貿易というか、体制から経済に入っていきますから、これが相当盛んになってくればそれだけ時間が稼げるといいますか、この貿易は大体どんな感じになっているのか。あと、ロシアから技術を入れているということなんですが、どういう感じで入れているのか。もう一点、最後に、金正日さんが中国に頼みに行きましたね、亡くなる前に。大体どの辺のチャンネルを、習近平さんとはそんなにはないと思うんですよね。だから、どの辺なんだろうかという感じがしていまして、まあ、一番は貿易なんですけれども、どうでしょうか。

伊豆見参考人 よくわからないですね。量は多いと思います。しかも、正規の貿易といわゆる国境貿易で統計にも出てこないような貿易と両方あるというのも、それも間違いないところだと思います。

 これはもう一つ考えなきゃいけないのは、北朝鮮にとって、中国との国境、いわば国境貿易的なものが大変、利益といいますか、むしろ生命線みたいにもなっていますから重要だということがありますが、同時に、北朝鮮の貿易がかなり、中国の東北三省のとりわけ延辺、ああいう朝鮮自治区のところは彼らにとっても相当なメリットがあるんですね。ですから、これは北朝鮮だけに得があるという話じゃなくて、中国側もそれでもうけているというのがあるものですから、中朝間の貿易というのはなかなか減らない、あるいは規制ができないということがあるんだろうと思います。その状況は今も基本的には余り変わっていないと思います。

 ですから、ずっと二〇一三年以降これで三回制裁決議をやって厳しい制裁をかけ始めていますけれども、基本的に貿易は減らないですよね。中朝間の貿易というのは減らない。ましてや、統計に出てこない数字というのは相当たくさん、相当たくさんあるというんじゃないですけれども、中国というのは時々操作しますから、統計から外したりして北朝鮮との間の貿易というのをやったりしますので、そういう点もございますので、実は貿易は相当なものだろうと思います。

 ロシアとの点につきましては、ロシアから技術を入れると言ったのは、今ロシアは、北朝鮮に何か支援するといいますか、物をやるというようなこと、援助するということはもう基本的にない。要するに、お金を払わない限り、何もロシアからは手に入らないという状況ですね。それが中国と随分違うところです。中国はまだ北朝鮮に対する援助、支援の部分というのはあると言っていいと思いますが、もうロシアにはないわけですから。お金がないと何もロシアから得られないということを考えると、そんなにロシアからいろいろなものが流れるという構造にはなっていないということだと思います。

 三番目の点は、またこれもよくわからない、難しいところでありますが、今現在はどうなっているんだろうかと考えた場合には、よく言われるのは、北朝鮮では、張成沢という、粛清されて処刑された、金正恩のおばさんの旦那が対中窓口だったんじゃないかと言われていますが、そういうことを言うんだったら、中国側は周永康だったんですけれども、周永康ももう粛清されていますから。

 よく、中朝のコンタクトポイントみたいなことを話すとき、北ばっかりから見るという癖は物すごくまずいんですね。中国がどうかというのが一つ大事で、中国に誰がいるかでどうなるかというのがありますし、逆に言うと、両方消えちゃったわけですね。北朝鮮からも中国からも経済関係を担当する重要な人物が消えちゃったけれども、その結果として、中朝間の経済関係が相当縮小したかというと、全然そんなことはないわけですね。しかも、制裁をこの三年間より厳しくしているにもかかわらず、うんと縮小しているということはないということを考えますと、誰と誰の関係がということは余り重要じゃないかもしれない。

 あるいは、御案内のように、習近平と金正恩というのはまだ全然会ったこともないということで、いや、会ったことはあるんですね、前のとき。失礼しました。本当はあるんですけれども、まあ、ないことになっていますから。少なくとも、両方が指導者になって会ったことは一度もない。なくても、別段、中朝間の経済関係が物すごく縮小するわけではないというのが現実だと思います。

和田委員 自民党の和田義明でございます。

 きょうは、貴重なお話をいただきまして、本当にありがとうございました。

 半島有事の際のワーストケースシナリオをいろいろお話を伺いながら想像するに、やはりこんなことはあってはいけないですし、未然に防ぐ必要の重要性というものを改めて痛感させていただいた次第でございます。

 先ほど、三点の政策があるというふうなことで、制裁は、残念ながら、中国がいる限りだだ漏れであるというようなことで余り期待できないと。そして、防衛のところですけれども、反撃の能力をしっかりと持つこと、そして、迎撃の能力を持つこと、これが非常に重要だというふうなことで、この点を共有させていただきました。

 先ほど来お話が出ておりますので、これも関連にはなってしまうんですけれども、やはり対話のところの重要性というのがかなり重要になってくるのかなというふうに思います。

 特に日本としては、拉致被害者の問題という、日本固有の、大事な、プライオリティーの高い問題がありまして、これは日本が対話のイニシアチブをとっていく口実といいますか理由にもしっかりとなるのかなというふうに思います。決しておもしろくない話でありますので、なかなか政府としても踏み切りにくいところではあるとは思いますけれども、仮に対話でもって北朝鮮の脅威というものを、たとえテンポラリーでも取り除くことができましたら、今回、ロシアとの関係がどんどん良好な方向に進んでいるということで、かなり日本を取り巻く安全保障環境というのも変わってくるのかなというふうに思ったりもいたします。

 さらに、これは本当に仮に、仮でございますけれども、北朝鮮が日本との対話をある程度のんでくれて、それで、日本との国交もある程度、国交といいますか関係がある程度正常化に近づきますと、今度は、中国に対しても、中国の包囲網と言うとちょっと語弊があるのかもしれないですけれども、さらに強い圧力をかけられるのかなというふうに思いまして、そういう意味では、対話の重要性というのを痛感した次第でございます。質問というかコメントでございます。

伊豆見参考人 今大変重要なことをおっしゃられたと思います。中国を意識したときに、北朝鮮との関係を改善するというのは実は大事だと思います。

 北朝鮮というのは、アメリカに対して何回か、自分たちは中国に対するカウンターウエートになるという、要するに、アメリカの側に立って、中国を牽制するときのちゃんと役割が果たせるぞというのを持ちかけたことが何回かあって、持ちかけるたびにアメリカ側は大笑いしてそれを蹴っ飛ばすものですから、真面目な話になったことは実はないんですけれども、ただ、実際、それは真剣に北朝鮮側からアメリカ側に持ちかけられたことがあるというのは事実であります。

 ですから、同じことで、ともかく、北朝鮮と例えば日本が関係を深めていくことが、中国に対する北朝鮮がカウンターウエートとしての役割を果たす可能性というのも、もちろんないとは言えないということだと思います。

 それと、もう一点、今先生のお話を伺っていて、もちろん拉致問題の話が本当に大事だからあれなんですが、これは北朝鮮の立場に立って考えると、拉致問題を解決しても北朝鮮にとって恐らくメリットがないと彼らは考えていると思います。

 どうしてかといいますと、彼らにとって大事なのはやはり国交正常化なんですね。国交正常化があると、先ほど申し上げましたように、日本からの大規模な経済支援というのが期待できる。ところが、日本は明確に、国交正常化の条件としては、拉致、核、ミサイル、これを包括的に解決して、それで初めて国交正常化というのは考えられる。これは全然ぶれていない、日本の政府の一貫した政策である。

 そうすると、そのうちの、三つ日本が出しているうちの拉致問題だけ解決しても、実は、国交正常化に近づくことは近づきますけれども、国交正常化が見えてくるわけではないので、やはり北朝鮮にとってみると余りインセンティブはない。だとすると、まさに拉致、核、ミサイルという三つを包括的に解決するということを日本は考えて北に迫らないと、北朝鮮は余り動いてこないだろうと思われます。

 そこで極めて重要な問題は、ぜひ、ここは安全保障委員会でございますので、先生方の皆さんにお考えいただくとありがたいと思っていますのは、拉致、核、ミサイルといいますけれども、ミサイル問題の解決というのは何だか全然わからないです。日本政府が示したことがないんですね。日本にとってのミサイル問題の解決が何を意味するのか、何が脅威であって、何をなくさなきゃいけない、何を解決しなきゃいけないのか、日本政府が示したことがないですね。これが問題になったことがないですが、不思議なことだなと私は思っています。

 少なくとも、拉致問題について何が解決かというのは明確になっている。そして、核問題についても、これは六カ国協議の、六者会合での共同声明がありますから、それもはっきりしている。だけれども、ミサイル問題で何をもって解決と呼べるのか、何をもって日本が国交正常化に向かい得るのかというのを示していない。

 これは非常にまずいと私は思っておりまして、北朝鮮にそれを示してやる必要がある。北朝鮮に対して、何をしなければいけない、ミサイル問題について何を彼らがしなければ国交正常化には近づけないんだということを示していただくことが私は重要だと思います。

山口委員長 その他、ありますでしょうか。

 最後に、私自身、きょうはずっといろいろと皆さんに御質問をいただいたんですけれども、先ほど、拉致、核、ミサイル、それから対話の話も出てきて、結局密接に関連していると思うんですね。

 二〇一二年に金正恩に移ったときに、私は当時副大臣という立場だったんですけれども、ローンウルフ的なことで、要するに、拉致は自分のおやじがやったので、自分がやったんじゃないからわからない、再調査に合意してくれと。これは中国側の自分のラインを通じて、北朝鮮につなげたんです。正直にやったら受け取ろうじゃないか、ここは勝手に言ったと。受け取ったら、国交正常化交渉を含む経済協力だと。そこは、拉致、核、ミサイルはあえてぼやかして言ったんです。

 ところが、二〇一二年の四月十三日にミサイルが上がりましたので、あれっと思ったんですけれども、失敗したんです。失敗したから、今度は、また別のラインで、北朝鮮にも頭のいい人がいるはずだ、ミサイルを撃っても核実験をしなければ、まだあの提案は生きているぞと流したんです。そうしたら、本当に核実験、あの年はなかったんですね。六年、九年はあったけれども、一二年は抜けて、次は一三年になっているんですね。政権がもう一回自民党に移ってから。

 その中で、八月に外務省同士で話をしているんです。ところが、九月十一日の尖閣の国有化で、やはり中国がとめたんだと思うんです。九月十七日に今度は局長級でやることになっていて、拉致、核、ミサイルのうち、拉致はかなりぐっといくかなと思ったんですけれども、結局そのままになっている。そのままずっと来ているんですね。

 だから、その意味では、今再調査まで一応いっているけれども、向こうから答えは出てきていない。だから、ここら辺をぐっと、どういうふうにというのが、きょうの多分先生方あるいは同僚の議員の皆さんから提起があった部分に非常に関係があるのかなと。

 その中で、最後に、核、ミサイルについて、これは、日本は余り、そっちの方はどっちかというと当事者的な要素が少ないから、アメリカ、中国、ロシア、その辺が入らないと、六者協議でないとなかなかできないと思うんです。

 だから、そういう意味できょうは、まだやり残した宿題みたいなものも大分、すごく浮き彫りになってきたので、本当に実りある意見交換ができたのかなというふうに思う次第です。

 本当にありがとうございます。

 以上をもちまして参考人に対する質疑は終了いたしました。

 この際、一言御挨拶を申し上げます。

 両参考人におかれましては、貴重な御意見をお述べいただき、本当にありがとうございました。委員会を代表して厚く御礼を申し上げます。

 次回は、明十四日水曜日午前十時十分理事会、午前十時二十分委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。

    午後零時三分散会


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