衆議院

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第2号 令和4年3月10日(木曜日)

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令和四年三月十日(木曜日)

    午前八時三十分開議

 出席委員

   委員長 大塚  拓君

   理事 門山 宏哲君 理事 武田 良太君

   理事 星野 剛士君 理事 宮澤 博行君

   理事 篠原  豪君 理事 徳永 久志君

   理事 美延 映夫君 理事 吉田 宣弘君

      青山 周平君    江渡 聡徳君

      熊田 裕通君    國場幸之助君

      齋藤  健君    塩谷  立君

      鈴木 憲和君    中曽根康隆君

      長島 昭久君    浜田 靖一君

      細野 豪志君    松島みどり君

      新垣 邦男君    伊藤 俊輔君

      玄葉光一郎君    太  栄志君

      岩谷 良平君    掘井 健智君

      吉田久美子君  斎藤アレックス君

      赤嶺 政賢君

    …………………………………

   外務大臣         林  芳正君

   防衛大臣         岸  信夫君

   内閣官房副長官      木原 誠二君

   防衛副大臣        鬼木  誠君

   防衛大臣政務官      岩本 剛人君

   防衛大臣政務官      中曽根康隆君

   政府参考人

   (内閣官房内閣審議官)  加野 幸司君

   政府参考人

   (内閣官房内閣審議官)  吉川 徹志君

   政府参考人

   (消防庁次長)      小宮大一郎君

   政府参考人

   (外務省大臣官房参事官) 股野 元貞君

   政府参考人

   (外務省アジア大洋州局長)            船越 健裕君

   政府参考人

   (外務省北米局長)    市川 恵一君

   政府参考人

   (外務省欧州局長)    宇山 秀樹君

   政府参考人

   (外務省中東アフリカ局長)            長岡 寛介君

   政府参考人

   (外務省領事局長)    安藤 俊英君

   政府参考人

   (海上保安庁総務部長)  勝山  潔君

   政府参考人

   (防衛省大臣官房政策立案総括審議官)       川嶋 貴樹君

   政府参考人

   (防衛省防衛政策局長)  増田 和夫君

   政府参考人

   (防衛省整備計画局長)  土本 英樹君

   政府参考人

   (防衛省人事教育局長)  川崎 方啓君

   政府参考人

   (防衛省地方協力局長)  岡  真臣君

   政府参考人

   (防衛省統合幕僚監部総括官)           深澤 雅貴君

   政府参考人

   (防衛装備庁装備政策部長)            萬浪  学君

   安全保障委員会専門員   奥  克彦君

    ―――――――――――――

委員の異動

三月十日

 辞任         補欠選任

  佐藤 茂樹君     吉田久美子君

同日

 辞任         補欠選任

  吉田久美子君     佐藤 茂樹君

    ―――――――――――――

三月八日

 防衛省設置法等の一部を改正する法律案(内閣提出第二六号)

は本委員会に付託された。

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 政府参考人出頭要求に関する件

 防衛省設置法等の一部を改正する法律案(内閣提出第二六号)

 国の安全保障に関する件


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     ――――◇―――――

大塚委員長 これより会議を開きます。

 国の安全保障に関する件について調査を進めます。

 この際、お諮りいたします。

 本件調査のため、本日、政府参考人として内閣官房内閣審議官加野幸司君、内閣官房内閣審議官吉川徹志君、消防庁次長小宮大一郎君、外務省大臣官房参事官股野元貞君、外務省アジア大洋州局長船越健裕君、外務省北米局長市川恵一君、外務省欧州局長宇山秀樹君、外務省中東アフリカ局長長岡寛介君、外務省領事局長安藤俊英君、海上保安庁総務部長勝山潔君、防衛省大臣官房政策立案総括審議官川嶋貴樹君、防衛省防衛政策局長増田和夫君、防衛省整備計画局長土本英樹君、防衛省人事教育局長川崎方啓君、防衛省地方協力局長岡真臣君、防衛省統合幕僚監部総括官深澤雅貴君、防衛装備庁装備政策部長萬浪学君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

大塚委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

大塚委員長 質疑の申出がありますので、順次これを許します。國場幸之助君。

國場委員 本日は、貴重な質問の機会をありがとうございます。自由民主党の國場幸之助です。

 まず、ウクライナ戦争から我が国が何を備えるべきか、こういう問題意識から両大臣に質問をしたいと思います。

 ロシアによるウクライナ侵略は、力による現状変更、平和を破壊する行為であり、絶対に許すことはできません。ロシアの暴挙に対し国際社会が結束をし、高い代償を払わせる、この政府の姿勢を強く支持します。

 同時に、ウクライナの事態や力による国際秩序を破壊する試みは、尖閣諸島や台湾海峡でも直面し得る我が国の危機でもあり、我が事として受け止め、安全保障戦略や外交政策を打ち出していかなければなりません。

 今回の事態から我が国は何を教訓とし、備えるべきなのか、防衛大臣と外務大臣からそれぞれ答弁をお願いします。

岸国務大臣 まさに、委員の御指摘の認識、共有するところでありますけれども、ロシアによるウクライナ侵略は、欧州のみならず、アジアを含む国際秩序の根幹を揺るがす行為でありまして、力による一方的な現状変更は決して許されるものではありません。我が国の防衛大臣として、このような現状変更をインド太平洋地域や東アジア地域で許すわけにはまいりません。

 その上で、厳しさを増す安全保障環境の下で、政府として、我が国の領土、領海、領空、また国民の生命と財産を守り抜くため、今回のウクライナ侵略をしっかりと分析をし、新たな国家安全保障戦略等を策定いたします。この中で、国民の命や暮らしを守るため、防衛力を抜本的に強化してまいります。

林国務大臣 ただいま防衛大臣からも御答弁があったとおりですが、今回のロシアによるウクライナ侵略、これは力による一方的な現状変更の試みであって、欧州のみならず、アジアを含む国際秩序の根幹を揺るがす行為だということでございます。明白な国際法違反であり、断じて許容できず、厳しく非難をいたします。また、今回のウクライナ侵略のような力による一方的な現状変更を、インド太平洋、とりわけ東アジアで許してはならないと考えております。

 我が国を取り巻く安全保障環境について申し上げますと、北朝鮮による核・ミサイル開発、また東シナ海、南シナ海における一方的な現状変更の試み、軍事バランスの変化による緊張の高まりなど、厳しさと不確実性を増しております。こうした現実に直面する中、我が国は新たな国家安保戦略を策定し、我が国自身の防衛力の抜本的強化に取り組む決意でございます。

 その上で、外務省としては、日米同盟の抑止力、対処力の強化、これをしっかり図っていくとともに、自由で開かれたインド太平洋の実現に向けた協力を、関係国や地域のパートナーとの間で一層強化してまいりたいと考えております。

國場委員 ありがとうございます。両大臣からも御発言がありましたように、国家安全保障戦略の見直し、これが今回必要だという認識だと思っております。

 ミサイル危機や、サイバー、宇宙、経済安保、またエネルギー安保、そしてウクライナに見られる力による国際秩序への挑戦といった新たな脅威が山積をしており、このことは日本の周辺にも事態が明確に表れております。

 見直しの際に大切なことは、新たな脅威に対応していくという視点も大切なんですけれども、日本の国是として変わらないもの、守るべきもの、この点に対するお考えを聞きたいと思います。変化に対応する、変化が速いからこそ変わらないといった部分が大事だと思いますので、その点に対する答弁をお願いします。

加野政府参考人 お答えを申し上げます。

 私ども政府の取組として、平成二十五年度に初めて国家安全保障戦略を策定したわけでございますけれども、これまで、この戦略あるいはその考え方に基づきまして、政府としては、例えば、新しく、自由で開かれたインド太平洋の構想を打ち出しまして、これを関係国と連携しながら推進するなど、この戦略の示す方向性に沿った主導的な取組を発展させてまいりました。

 また、同じくこの戦略に基づきまして、平和安全法制、防衛装備移転三原則など、国家安全保障政策に関わる様々な取組を着実に推進してきたところでございます。

 こうした戦略の考え方の基本的な部分については、今後とも大事にしていかなければいけないところであろうかと存じます。

 ただ、他方では、国家安全保障戦略の策定から約八年を経過して、その間に、北朝鮮のミサイルの問題、一方的な現状変更の試みの深刻化、軍事バランスの急速な変化、宇宙、サイバーといった新しい領域や経済安全保障上の課題など、我が国をめぐる安全保障環境はこれまで以上に急速に厳しさを増してきているという状況がございます。

 新しい国家安全保障戦略の策定に際しましては、委員御指摘の今回のウクライナ侵略も踏まえて、我が国の安全保障政策の在り方について政府としてしっかりと議論をしてまいりたいというふうに考えているところでございます。

國場委員 ありがとうございます。新たな脅威に対応していく、そしてまた変わらないものもしっかりと推進をしていくということであります。

 私は、日本の国是というものは、やはり海洋国家であるということだと思っております。その上で、自由と民主主義といった普遍的な価値を大事にしつつ、日本が古来持っている、和をもって貴しとしていく、武士道から始まる道義の精神、そしてまたビジネスにしても倫理や道徳といったものを大事にしていく、そういったものを推進していく日本らしい国家安全保障戦略をまた新たに見直していくことが大切だと考えております。

 海洋という部分について何点かお尋ねしたいと思いますが、不測の事態を防ぎ海洋の安全を守る海空連絡メカニズムについて質問したいと思います。

 これは、約十年の協議を経て、二〇一八年の五月の九日の首脳会談で覚書の締結をしております。あれから四年近くたちますが、ホットラインという部分はまだ開設をしておりません。本年中に運用を始める目標の確認が岸防衛大臣の昨年末のテレビ会議でなされていると思いますが、やはり、日本を取り巻く日中間の緊迫した事態がありますので、ホットラインは急務だと思っております。開設がこのように遅れている理由は何なんでしょうか。

増田政府参考人 お答え申し上げます。

 お尋ねの日中防衛当局間のホットラインは、二〇一八年六月に運用開始している日中海空連絡メカニズムの目的である防衛当局間における信頼醸成や不測事態の回避などを図る上で、極めて重要な役割を有するものだと考えております。

 防衛省といたしましては、このホットラインの安全保障上の重要性に鑑みますと、日中間での通信を確実かつ円滑に行うことが不可欠であるため、保全をどのように図っていくのか、また、回線の専門的、技術的な細部について中国側とも綿密な調整が必要でありますところ、日中間にこうした回線を構築するためには一定の時間を要するのは不可欠であると考えております。

 その中で、コロナ禍の中で、人の往来が制限されまして、調整がなかなか進まなかったという事情もあるとは思います。しかしながら、委員御指摘のとおり、ホットラインにつきましては、昨年十二月の日中防衛相会談におきまして、本年中の運用開始を目標とすることで一致しておりまして、現在、その実現に向け、日中防衛当局間で技術的な細部につきまして鋭意調整を行っているところでございます。

國場委員 日中防衛当局間の年次会合や専門会合の開催が行われているということであります。

 再度質問したいんですが、やはり、最も偶発的な衝突が懸念される場所というものは、尖閣諸島を含む海域であると思います。この点がどのようになっているのか。そして、領海や接続水域への侵入を繰り返している、中央軍事委員会の傘下にもある海警局の公船と海上保安庁の船艇こそ最前線で対峙しているので、それこそ連絡メカニズムの適用が必要なのではないかと思いますけれども、この点についての答弁をお願いします。

増田政府参考人 お答え申し上げます。

 御指摘の海空連絡メカニズムにつきましては、主に日中の艦船、航空機間での不測の衝突を回避することを目的といたしまして、防衛当局間年次会合及び専門会合の開催、自衛隊と人民解放軍の艦船、航空機間での直接連絡、日中防衛当局間のホットライン開設という三つの内容から構成されております。

 年次会合、専門会合につきまして、昨年三月に三回目となる会合が実施されておりますし、このような機会も通じまして、艦船、航空機間での直接連絡が日中間で適切に運用されていることを確認しております。

 日中防衛当局間のホットラインにつきましては、先ほど申し上げましたとおり、本年中の運用開始に向けまして鋭意調整を行ってまいります。

 なお、本メカニズムは、双方の艦船、航空機間の連絡方法等を規定するものでありまして、具体的な海空域を念頭に置いたものではなく、地理的適用範囲に関する規定は設けておりません。

勝山政府参考人 海上保安当局間の連絡につきましては、本庁レベルでは、平成二十七年一月に開催された第三回日中高級事務レベル海洋協議におきまして、中国海警局との間に対話の窓口が設置されておりまして、両機関の意思疎通の強化と相互信頼の増進を図っております。

 また、現場レベルにおきましては、尖閣諸島周辺海域において領海警備に従事している当庁巡視船には中国語を話すことができる海上保安官が乗船しており、中国海警局に所属する船舶との間で、無線通信や電光掲示板等のコミュニケーション手段により意思疎通ができてございます。

 これらに加えまして、海上保安庁が主導して開始いたしました北太平洋海上保安フォーラム、アジア海上保安機関長官級会合及び世界海上保安機関長官級会合といった多国間連携や、日中高級事務レベル海洋協議といった二国間連携の枠組みを通じて、中国海警局を含む諸外国海上保安機関との連携協力を引き続き行ってまいります。

國場委員 続きまして、海上衝突回避規範、いわゆるCUESについてお尋ねをしたいと思います。

 これは、二〇一四年の西太平洋海軍シンポジウム、いわゆるWPNSで二十一か国が合意した海上衝突回避規範でありまして、日本、中国、ロシア、韓国も入っております。

 しかし、CUESは規範であって、罰則規定や遵守義務はありません。そして、軍のみの規範であり、海保は対象ではなく、西太平洋と地域が限定されております。

 我が国は、国家安全保障戦略において、海洋国家として、航行の自由と法の支配、自由で開かれた安定した海洋という海洋安全保障も大切な価値としておりますけれども、今年の十月、日本はWPNSの議長国となっております。これを機に、規範にとどまっているCUESに法の支配を確立し、海軍船艇のみではなく公船といったものにも何らかの共通認識を持ってもらい、地域に関しましても参加国を増やして、世界中の航行の自由に拡大する取組というものは、日本らしい、世界平和に貢献する道だと思いますけれども、この点について答弁をお願いします。

増田政府参考人 お答え申し上げます。

 西太平洋海軍シンポジウム、WPNSの参加国の拡大につきまして予断を持ってお答えすることは差し控えさせていただきますが、WPNSに参加する国は、一九八八年の初開催時の十二か国から、昨年開催時にはメンバー国二十二か国、オブザーバー国八か国の合計三十か国にまで拡大してきております。

 なお、御指摘のCUESは、洋上における不測事態の発生を予防し回避するための有益な国際的枠組みであり、確かに法的拘束力を有するものではありませんが、法の支配の貫徹や信頼醸成のためには、このCUESを含めた国際ルールの徹底が極めて重要であると考えております。

 防衛省といたしましては、今後も、WPNSを含めたあらゆる機会を活用いたしまして、国際社会に対しその重要性の普及に努めてまいりたいと思っております。

國場委員 済みません、時間の都合で次の質問に移りたいんですが、台湾海峡の安定についてお尋ねをしたいと思います。

 フォーリン・アフェアーズの最新号に、台湾有事、台湾防衛についての二つの論文がありました。この中の一つに米国の共和党の下院議員の論文がありまして、その中で、台湾をめぐってはアメリカは現在は敗北の軌道にあると。そして、最も大事なことはオーストラリアと日本を含む同盟国との間で作戦計画構造をしっかりと打ち出していくことであるという提言がありました。

 我が国は、一九七二年の日中国交正常化の際、日中共同声明に従い、台湾とは非政府間の実務関係を維持し、台湾問題は両岸の当事者間の平和的解決を求めるというのが一貫した立場であると思います。

 我が国のスタンスとバイデン大統領の台湾をめぐる一連の発言とを踏まえて、日本は、台湾海峡の安全と、日米を始めとする国際社会と連携した抑止力の維持、そういったものをどのように備えているんでしょうか。

船越政府参考人 お答え申し上げます。

 委員御指摘のとおり、台湾につきましては、日中共同声明に基づきまして、非政府間の実務関係としてしっかり発展させていくということを考えております。

 また、我が国といたしましては、台湾海峡の平和と安定は、日本の安全保障はもとより、国際社会の安定にとっても極めて重要、さらに、台湾をめぐる問題が対話により平和的に解決されることを期待するということが従来からの一貫した立場でございまして、そうした立場に基づきまして、今後とも様々な対応、発信を行ってまいりたいと考えております。

國場委員 台湾の邦人保護についてもお尋ねしたいんですが、先月、石垣市の市長選挙がありました。その際に、与那国の町長の方から、台湾の軍事演習が最近活発に行われており、与那国までその音が聞こえることもある、そういう話を訴えておりました。

 台湾海峡の危機というものは日本の危機であり、その最前線は沖縄県です。邦人保護には、自治体も含めて、様々な危機意識の共有と、また情報、対策といったものの連携が大切だと思いますが、それも政府の役割だと思います。この点についての答弁をお願いします。

安藤政府参考人 お答え申し上げます。

 海外に渡航、滞在する邦人の保護は、外務省の最も重要な責務の一つでございます。平素から、在外邦人の保護や退避が必要となる様々な状況を想定し、必要な準備、検討を行っており、邦人保護の強化を図っているところでございます。

 その上で、一般論といたしまして、邦人の退避が必要となる事態が発生する場合には、まずは、極力、商用定期便が利用可能なうちに、在外邦人の出国、出境又は安全な場所への移動の確保に努めることになります。

 有事におけます我が国の個々の対応につきまして、個別具体的な国、地域名を挙げてつまびらかにすることは、事柄の性質上、差し控えさせていただきますが、いずれにいたしましても、邦人の安全確保に万全を期するべく、政府として全力を尽くす考えでございます。

國場委員 特に自治体との連携といったものも大事にやっていただきたいと思いますので、よろしくお願いします。

 最後に、ウクライナ情勢を踏まえた北方領土の行方についてお尋ねをしたいと思います。

 今、ロシアに厳しい制裁を科し、侵略に伴う高い代償を払わせる時期ですから、北方領土の返還交渉というものはしばらく先行きが見えないと思います。御高齢の元島民の方々を思うに、本当に申し訳なく思っております。

 二〇三五年、この年は、ロシアが我が国固有の領土の北方領土を占拠して九十年目の年です。択捉島と得撫島との国境線が画定したのは一八五五年の二月の七日ですから、つまり、日本人が北方領土に生活をしていたのは一八五五年から一九四五年までの九十年間で、二〇三五年という年は、ロシア人が生活をして九十年目の年になります。

 領域紛争の解決を依頼された国際裁判所は、紛争当事国に、領域主権の継続的かつ平穏な行使に当たる証拠で優劣を判断しようとされておりますけれども、継続的の定義が定まっていないとはいえ、二〇三五年までの十三年間は、北方領土返還を実現する上で我が国にとって極めて重要な期間となります。ちなみに、改正大統領選挙法で、プーチンの任期は最長二〇三六年となっております。

 ロシアに厳しい制裁を科す時期で、返還交渉をできる時期ではないのは理解しておりますけれども、今後の見通し、どのように考えておりますでしょうか。

宇山政府参考人 お答え申し上げます。

 ロシアとの間では、両国間の最大の懸案である北方領土問題を解決して平和条約を締結するとの方針の下、これまで粘り強く交渉を進めてまいりました。しかし、今回のロシアによるウクライナ侵略に対しては、G7を始め国際社会と結束して毅然と行動する必要がございます。

 北方領土問題に関する我が国の立場や、御高齢になられた元島民の方々の思いに何とか応えたいという政府の考えにはいささかも変わりはございませんが、今このときの状況に鑑みれば、平和条約交渉の展望について申し上げられる状況にはないと考えます。

國場委員 ありがとうございました。

大塚委員長 次に、篠原豪君。

篠原(豪)委員 立憲民主党の篠原豪でございます。

 今日は、林外務大臣、岸防衛大臣に、お忙しい中、おいでいただきました。

 ロシアの問題、これは許せないことだと思います。今回のロシアによるウクライナ侵攻は侵略であり、明確な国際法違反であることを確認したいと思います。

 力による国際秩序の変更は許されません。特に、国連の常任理事国が、武力行使の違法化を定めた国連憲章に真っ向から反する行動を取ったことは極めて重大だと考えています。我々は、今こうした暴挙に対し勇敢にも国を守るために戦っていらっしゃる、ウクライナの国民に連帯の意を示したいと考えています。また、同時に、犠牲になられました方々に謹んで哀悼の誠をささげたいと思います。

 さて、ロシア軍がモスクワ時間の二月二十四日の午前六時にウクライナへの全面侵攻を開始してから今日で、木曜日ですから二週間になります。この間、主要都市を同時空爆したり、巡航ミサイル、弾道ミサイルで軍の防空施設を破壊したと。ロシア国防省も発表していますし、ウクライナの国境沿いに集結していた地上部隊も国境を越えて、今、キエフの近くで攻防戦を繰り広げています。

 そういった中で幾つか、今日は、林外務大臣と質疑させていただくのは初めてですので、この問題について議論をさせていただきたいと考えておりますし、政府の考え方を幾つかの観点で聞かせていただきたいと思いますので、どうぞよろしくお願いいたします。

 まず、NATOの拡大問題について伺いたいと思います。

 プーチン大統領は、NATOが冷戦後、旧ソ連陣営に属していた東欧などを受け入れ、加盟国を三十か国に倍増させたことに不満を募らせ、NATOの東方拡大停止や、NATOの兵器、部隊の配備を東方拡大前の状態に戻すことを要求し、軍事圧力を高めてきました。

 もちろんこうしたNATO脅威論は、ゴルバチョフさんも最近テレビでお話をされていましたけれども、ロシア国内では軍部だけでなく広く共有をされているようで、そういったことを言っていたことには、皆さんもそうなんだろうと納得されたんじゃないかと思います。もちろん、そんなことを言ったって、NATOがこれを拒絶するのは当たり前の話でありまして。

 加盟を申請するか否かの判断は、ウクライナのような、ロシアに隣接し、その脅威をダイレクトに感じている主権国家が自ら判断することであって、ロシアが決めることでも何でもありません。NATOも、加盟申請を拒否するといった、ウクライナを見捨てるような判断ができるわけもないわけですね。

 日本でも、ロシアの専門家と言われる学者で、NATO脅威論を欧州の安全保障の観点から肯定するかのような解説をする方もいらっしゃるようにも聞いていますけれども、政府としてこうしたロシア側の認識をどのように評価し、また、対処すべきであるということを考えているのかということをお伺いしたいと思います。

 特に、一九九四年にウクライナ、ロシア、米、英が署名したブダペスト覚書で、ウクライナがソ連崩壊時に国内にあった核兵器を放棄する代わりに同国の主権を尊重し武力行使や威嚇をしないと定め、次いで、一九九七年のNATOとロシアの基本合意で大規模な戦闘部隊の恒久的配置を控えるとしたことの意味、これも含めて政府の認識をお聞かせください。

林国務大臣 今委員からもお話がありましたように、プーチン大統領は、二〇〇七年以降、NATOの東方拡大に対する懸念を累次にわたり表明し、昨年十二月に、この点に関するロシアの要求を盛り込んだ合意文書案を米国及びNATOに対し提示した上で公表し、ロシアと米国及びNATOとの間で対話が行われておりましたが、双方の立場に大きな隔たりがあるものというふうに承知をしております。

 ロシア側のNATOに対する認識がいかなるものであっても、今回のロシアによるウクライナ侵略は力による一方的な現状変更の試みであり、国際秩序の根幹を揺るがす行為であり、いかなる理由があっても正当化することはできないと考えております。明白な国際法違反であり、断じて許容できず、厳しく非難をするところでございます。

 今こそ、この国際秩序の根幹、これを守り抜くために国際社会が結束して毅然と行動しなければならないと考えます。我が国としてこのことを示すべく断固として行動してまいって、こうした暴挙には高い代償が伴うということを示していかなければならないと思っております。

 こうした考えの下で、我が国は、G7を始めとする国際社会と緊密に連携し、迅速に厳しい措置を打ち出しております。

 そして、お尋ねのブダペスト覚書等でございますが、一九九一年の十二月に旧ソ連が崩壊した後、ウクライナが非核兵器国としてNPTに加入し、旧ソ連が配置した残存の核兵器を放棄する、その代わりに米国、英国、ロシアがウクライナの領土の一体性や政治的独立を保証し、既存の国境を尊重するということが確認され、一九九四年十二月に先生から御指摘のあったブダペスト覚書が当該四か国の間で取り交わされたわけでございまして、ロシアは当事者ということになるわけでございますが、今回のロシアによるウクライナ侵略は明白な国際法違反であり、そういった意味でこのブダペスト覚書に反するものでありまして、厳しく非難をするところでございます。

 さらに、九七年に締結されたNATO、ロシアの協力関係の基礎を定めた文書において、NATOは、本質的な戦闘部隊の追加の常駐によるというよりも、必要な補強能力等を確保することにより集団防衛を実施するという旨を明記しております。この点、ロシアは東欧のNATO加盟国への軍事インフラの配備がこの文書の内容に反していると主張しておりますが、NATOの方は、これらの配備は一時的なものであり、この文書に反しない旨を主張している、こういうふうに承知をしておるところでございます。

篠原(豪)委員 政府の認識は分かりました。

 私は、ロシアと国境を接する国にNATO軍が配備されると、軍事的な脅威を直接受けるということがあるにせよ、かつて専制主義国家であった旧ソ連邦構成国に親欧米派の政権が誕生して、民主化が進展し、それがロシア国内にも波及して、歴史的、文化的に近い欧米と健全な関係を望む世論が生まれることがやはりプーチンにとっては一番の脅威なんじゃないかというふうにも考えられるんじゃないかと思っています。

 御案内のように、二〇三六年まで憲法改正によって政権を維持することが可能になったプーチン大統領の最大の障害はロシアに民主主義が浸透するということだというふうに、それで危うくなることが問題であって軍事的手段に打って出たということも考えなきゃいけないと思っています。今回、なぜ軍事侵攻という極端な手段に打って出たのかということについて、何か、外務大臣、お答えできることはありますか。

林国務大臣 ロシアがいかなる判断で今回のウクライナ侵略を決定したか、この点については我が国としてコメントする立場にはないところでございます。

 どのような判断があったにせよ、繰り返しになりますが、今回のロシアによるウクライナ侵略は力による一方的な現状変更の試みであり、国際秩序の根幹を揺るがす行為であると先ほど申し上げたとおりでございます。

 こうした国際秩序の根幹を守り抜くために我々国際社会は結束して毅然と行動しなければならない、そういうふうに考えております。

篠原(豪)委員 NATOの拡大という点と、軍事侵攻という点で伺っているんですけれども。

 二〇二〇年の八月に、NATOとの間に最後に残ったベラルーシの独裁政権が大統領選挙を機に危機に陥ったということがありましたね。これもプーチンを追い詰めた一つの要因であったというふうにも考えていまして、今回のウクライナ危機でプーチンがかつてない情報統制を行っているというふうに聞いています。なので、国内的にもかなり追い詰められているんじゃないのかなというふうに評価をできるんじゃないかと思っているんですが。

 この点について、もし、かなり国内的に情報統制されているというのを聞いている中で何か政府として考えていること、あるいは思っていらっしゃることがあれば、教えていただければと思うんですけれども。

宇山政府参考人 お答え申し上げます。

 委員御指摘のとおり、現在、ロシアは、今回のロシアの軍事行動に関して、公式発表以外の報道等につきまして、いわゆる彼らが言うところのフェイク情報として、かなり高額の罰金を科したり、あるいは最高で十五年の自由剥奪刑を科すといった刑法典の改正をいたしまして、これによって完全な情報統制を図っているという状況で、これによりまして今現在、ロシアにおける報道の自由、言論の自由が著しく失われたものと認識しております。

 こういった情報統制の強化、これによってロシア国内の異論を完全に抑えつけようということで今のプーチン政権が動いていること、これは大変懸念しておるところでございます。

篠原(豪)委員 かつてないような情報統制を今やっているので、そう出てくると、追い詰められてきたということは分かっているんだというふうに思いますけれども。

 軍事侵攻の原因についてもうちょっとお伺いしたいんですけれども、今回、欧米側がウクライナに対するロシアの全面的な軍事侵攻をなぜ止められないのか、結局止められなかったのかということについて少し議論させていただきたいと思うんです。

 バイデン政権は、ロシアによる軍事侵攻を抑止するために、欧州と連携して強力な経済制裁を打つ姿勢を示していました。にもかかわらず、プーチン大統領はそれを無視して、制裁覚悟で軍事侵攻に踏み切りましたね。このことについて政府はどういうふうに考えているのか、分析しているのかということ。

 あと、報道によると、ロシアの軍事侵攻は一年前から計画されていたというふうに言われています。すると、この間にアフガニスタンからの米軍撤退があったわけですが、これが米国が二正面作戦で戦う力を失ったことを象徴しているというふうに受け止められたということ、また、バイデン大統領からも、そうした認識を裏づけるように、早々とウクライナには派兵しないとする宣言を出されたことがありました。こうした事態を招いた原因、こういったことに関わっているのかどうかというのを政府がどういうふうに考えているかということをお伺いします。

宇山政府参考人 お答え申し上げます。

 今回、ロシアのプーチン大統領が軍事侵攻に踏み切った判断の要因、原因についての分析という御質問であったと理解いたしますけれども、ロシアがいかなる判断で今回のウクライナ侵略を決定したかという点については、我が国としてコメントする立場にはございません。

 どのような判断があったにせよ、今回のロシアの侵略、これは力による一方的な現状変更の試みであり、国際秩序の根幹を揺るがす行為でございます。いかなる理由があれ、正当化することはできないと考えます。明白な国際法違反であり、厳しく非難するというのが日本政府の立場でございます。

篠原(豪)委員 全然聞いていることにお答えいただいていなくてですね。

 まず、私がお伺いしているのは、制裁覚悟で踏み切ったと欧米が言っているにもかかわらず、なぜそういうふうになったのかということをどう評価されているのかということが一点と、アメリカが、アフガニスタンからの撤退も含めて、この一年間の間にロシアの軍事侵攻は計画されていたわけですから、そういった中でアフガニスタンから米国が撤退するという状況をロシアはどう見ていたのかということを、政府としてはどう考えているのかという話で、二正面作戦をする力がなくなったんじゃないかという例えば仮説を立てたときに、その仮説について政府としてはどういうふうに捉えていらっしゃるのかという明確な質問をしていますので、全然違うことじゃなくてですね、教えていただければと思います。

宇山政府参考人 お答え申し上げます。

 先ほどの御質問に対して私の理解が不足しておりまして、大変失礼いたしました。

 委員御指摘の、まず、欧米が制裁するということを打ち出していたにもかかわらずプーチン大統領が今回の侵略に踏み切ったということ、これにつきましては、まさに、いかなるコストを払ってでも、制裁をかけられても、プーチン大統領としては、ウクライナをロシアの影響圏に取り戻すんだという決意の下に侵略に踏み切ったのではないかと考えております。

 そして、アメリカのアフガニスタン撤退との関係につきましては、これは、必ずしも断定的なことは申し上げられないと思いますけれども、確かに、プーチン大統領がこのタイミングでこういう侵略に踏み切ったということを考える上で、アメリカの動向も見ながら判断した可能性というのは、それはあるのではないかと思われます。

篠原(豪)委員 まあ、ちょっと私も考えてみたいと思うんですけれども。

 NATOは、二〇〇八年の四月にルーマニアのブカレストで開いた首脳会議で、旧ソ連邦の構成国のウクライナと、当時、今はジョージアですけれども、グルジアをいずれ加盟国に迎えるということで合意しました。ロシアは、その直後にジョージア付近で軍事演習を活発化させて挑発し、同じ年の八月にロシア系住民の保護を名目に軍事侵攻をしています。まずこれが一点ですね。

 さらに、二〇一四年の三月に、現地に住むロシア系住民への迫害を口実に、ロシア軍がクリミア半島を制圧し、併合しました。欧米は制裁によってロシアを封じ込めようとしましたけれども、あのときは必ずしも足並みがそろわなかったということです。結局、二〇一五年にロシアとウクライナ、ドイツ、フランスの首脳の間で、ウクライナ東部で一四年から続く、同国軍と親ロシア派武装勢力との紛争について停戦と和平への道筋を示したミンスク合意が成立しました。親ロシア派が占領する東部地域に広範な自治権を持たせる、特別な地位の付与が認められた。

 つまり、一四年のウクライナ危機は、経済制裁が発動されても欧米の結束はそう長く続かないんじゃないかというふうに多分プーチンに思わせたという経験があるんじゃないかというふうに思っています。

 また、当時ウクライナでは、親ロシア派の政権が倒された直後で、クリミアのロシア系住民を守るというプーチン政権の主張をロシア国民の圧倒的多数があのときは信じて愛国のムードが高まりましたので、プーチン政権の基盤強化にも大いに役立ったということがあったんだろうと思います。これも今回の軍事侵攻をちゅうちょさせなかった原因じゃないかというふうにも捉えられると思うんですね。ですので、今、全体的なお話を質問させていただいたり議論させていただいていますけれども、こういったことをやはり考えていかなければいけないというふうに思います。

 その中で、制裁について伺いたいと思います。

 今申し上げましたように、クリミアのときは、制裁をちゃんとできるかどうかというところで、欧米はそんなに長くやらないし、であれば、いつまで続くかも分からないから、そんなに気にする必要があるのかどうかということを考えたということでいいますと、そうすると、今回、日米欧が繰り出す制裁の成否は国際社会全体の命運を握っていると言っても過言じゃないと考えています。

 仮に、ロシアにとって、もしウクライナ侵攻が成功というか進んで、ウクライナを親ロシア派が支配する専制国家に衣替えすることができて、経済制裁もやがて打ち止めになるということになると、絶対許せない話になってきて、ルールに基づく国際秩序を力でねじ曲げることを止める手段が世界になくなってしまう、そういうところへ来ているんだと思います。力でねじ曲げる、国際秩序をルールに基づかないでねじ曲げる、そうするとプーチンの国際的な発言力がますます強くなっていくので、何としても、あらゆる手を使って食い止めなければいけない。

 いずれにせよ、二月十四日にG7の財務相共同声明で、日米欧が一致団結して集団制裁を科すという意思ができたことは、これは、過去の失敗とは言わないかもしれないけれども、余り効果がなかったことを繰り返さない第一歩にはなったというふうに評価します。

 そうした中で、SWIFTから締め出すということで合意したという声明を発表し、これは、国境をまたぐ送金がSWIFTを介せなくなれば、著しく効率が失われて取引が制限されるので強い効果が期待できますし、あれは二十六日だと思いますけれども、日本も翌日、声明への参加を表明して、米欧に歩調を合わせる姿勢を強調しました。また、ロシアの中央銀行に対しても外貨準備の利用制限措置を取り、ウクライナ危機後に急落する通貨ルーブルを為替介入で買い支える措置も取れなくしたということになります。

 米欧の共同声明は、この中で、侵略をこれらによってプーチン氏にとっての戦略的失敗にさせるというふうに強調していますが、日本も、この戦略的失敗というものは、どのような結果になれば戦略的失敗と評価できると考えているかということについて、確認をさせていただきます。

林国務大臣 今委員がおっしゃっていただきましたように、ロシアの今回の力による一方的な現状変更の試み、これが達成されてしまうようなことになりますと、これはヨーロッパだけの問題ではなくて、世界の、こうしたことをやってはならないという国際秩序の根幹、これが揺るぐことになるわけでございまして、とりわけインド太平洋、東アジアといったところに我々は位置しておりますが、そういったことがここにも及ぶということを阻止しなければならないという意味で大変重要なことであるというのは認識を一にしておるところでございます。

 お尋ねの戦略的失敗というものは元々、EU及びNATO加盟国の米英独仏伊が合意した旨の声明の中に出てくるわけでございますので、そこに我々は名前を連ねておるわけではございませんので、この戦略的失敗というものがどういう状況になるかということを、我々として予断を持ってお答えすることは差し控えたいというふうに思います。

 思いますが、一刻も早くロシアの侵略を止めさせてロシア軍を撤退させるということのために、G7各国、国際社会とともにロシアに対して強い制裁を取っていくことが必要だ、こういう考えの下で、我々も日を置かずにこれに参加したということでございます。

 SWIFTについては、御案内のようにベルギーにある協会でございますが、ここが除外したことと、それから、今委員がおっしゃっていただいたように、各銀行、除外された銀行の資産凍結をする、さらには、それによって生じる為替等による影響、これを介入して何とかしようということになるところを今度は中央銀行に対する措置をやるということで、これはG7等で連携してやっていくということになるわけでございまして、そういった意味で、我々としても連携して迅速に厳しい措置を打ち出しておるところでございます。

 引き続き、今後の状況も踏まえながら、G7を始めとする国際社会と連携して、有効と考えられる取組、これを適切に検討、対応してまいりたいと考えております。

篠原(豪)委員 経済制裁について、しっかりとやっていくということなんですけれども。日本の経済制裁についてお伺いしたいと思うんですけれども、確認させていただきたいところをしっかりですね。

 今申し上げたように、二〇一四年にクリミアを併合した際には、当時の安倍政権は北方領土の問題の進展に恐らくかなり期待した余り、プーチン大統領への配慮を優先して、当初、資産凍結などの経済制裁には踏み込まなかったため、米国から厳しい措置を要求されてようやく追加措置に踏み切ったという事情があったと思います。ですので、マスコミでは、おつき合い制裁などという形容をされていたことがあったと思います。

 それに比べて、今回のウクライナ侵略では、岸田政権は侵略前から、今言ったようにG7と共同歩調を取りながら、進んで対ロ包囲網を築くとの意思が感じられますので。もちろん様子見の日本とか後追いの参加とかと報じられる一面はありますけれども、北方領土を固有の領土と答弁したという姿勢も評価できますし、きちっとやっていかなければいけないということなんだろうと思います。

 国際社会の命運の一つを大きく握るこの経済制裁というものが、実際には経済制裁というのは性格上即効性は期待できないものでもあるので、そうすると、経済制裁についてはいつまで日本政府として続ける必要があるのか、どのようにすれば出口が見えるというふうに考えているかということが大きな問題となっていくんですけれども、このことについて、どういうふうにお考えかということをお伺いしたいと思います。

林国務大臣 いつまで、また、どういう状況になるまで経済制裁を続けるのか、こういうことでございますが、恐らく私の答弁はひょっとするとロシア側にも伝わるかもしれませんので、つまびらかにここで申し上げるということはなかなか難しいところでございますが、我が国の対応については、その時々の国際情勢、これを考慮しながら、委員からもお話があったように、G7を始めとする国際社会と連携して最終的に総合的な判断をしていくということになろうかというふうに思います。

 そういった意味で、一刻も早くロシアの侵略をやめさせて、ロシア軍を撤退させるためにG7各国、国際社会とともにロシアに対して強い制裁措置を取っていく、これが必要だと考えております。

篠原(豪)委員 端的にお伺いしたいんですけれども、ちょっと時間がなくて、岸防衛大臣にもお伺いしたいことがありますので、その前に一点だけ確認させていただきたいんです。

 バイデンは、ロシア産原油の輸入を禁止すると発表しました。エネルギー制裁は、産油国である米国とロシアは海外に全面的に依存している日本とドイツとは立場が異なるので、日本の場合は経済へのダメージが大きいので、避けたいというふうに考える人たちもいるというふうに聞いています。

 ただ、短期間でも日本としてそういったことをしっかりやっていくんだということを、プーチン政権を苦境に追い込むためには避け難いと客観的に判断される状況が示されれば、こういったことはしていくんでしょうか。

林国務大臣 バイデン大統領の声明というか発表、これはそれぞれの国で考えることで、必ずしも協調を求めるものではないというような趣旨の御発言も共にあったというふうに承知しておるわけでございまして、これについては、既に総理も明らかにされておられますように、当面、我が国がこのタイミングで同様の措置を取るということは現時点ではまだ考えておらないということでございます。

篠原(豪)委員 岸防衛大臣に、最後に、時間ですので、一問お伺いしたいと思うんですけれども。

 先ほどの質疑でもあったように、既に日本海やオホーツク海でもロシア軍の動きが活発化されてきています。昨年十二月に、ロシア軍が新たな原子力潜水艦を極東に就役させたほか、千島列島の松輪島に初めて地対艦ミサイルを置くと発表しました。今年一月から二月にかけて、ロシア太平洋艦隊が日本海、オホーツク海で戦闘艦艇など二十隻を動員し、大がかりな演習に踏み切りました。

 核の話もあるんですけれども、国内でも今議論になっていますけれども、向こうの方でもなっていますけれども、実は、オホーツクの海はロシアの核ミサイル搭載原潜の拠点です。ここに、ロシアでは国家の生き残りが懸かった生命線というふうにも言われているので、ロシア軍は、原潜が脅かされないよう、今後オホーツク海とその周辺警備が更に強められるというふうに考えます。日本周辺で、ロシア軍と米軍、さらには自衛隊との緊張が高まる可能性が高いというふうに言われています。

 ですので、プーチンの今回の一連の核発言がありますが、これはウクライナに対しても欧米に対してもやっていますけれども、オホーツク海周辺の安全保障環境に今後どのような影響を及ぼすと予測しているのか、政府のお考えを伺いたいと思います。

岸国務大臣 御指摘のプーチン大統領の一連の発言については承知をしておるところでございますが、特に、国際社会の多くの国々が主に経済面での対ロ制裁措置を導入している文脈においてロシアが抑止力部隊の警戒態勢に言及したことについては、情勢の更なる不安定化につながりかねない危険な行為だと認識をしております。

 その上で、ロシア軍は、昨年十二月の松輪島への地対艦ミサイルの展開の公表や、本年二月以降、オホーツク海等における大規模海上演習、戦略抑止力演習など、オホーツク海における活動を活発化させております。こうした一連の活動は、ロシアの戦略原潜の活動領域であるオホーツク海の軍事的重要性の高まりを背景とした活動の一環であると見られます。

 このように、現下の情勢等において、我が国周辺海空域においてもロシアの活動が活発化していることは懸念すべきものであります。防衛省として、引き続き、緊張感を持って、ロシア軍の動向について情報収集、警戒監視を続けてまいりたいと考えております。

篠原(豪)委員 時間ですので終わりますけれども、核の問題もそうですが、この問題は非常に大きな問題ですので、中国との関係も含めて引き続き議論させていただきたいと思いますので、その際にはよろしくお願いします。

 今日はありがとうございました。

大塚委員長 次に、伊藤俊輔君。

伊藤(俊)委員 立憲民主党の伊藤俊輔でございます。安全保障委員会での質疑、質問は初めてだと思います。是非よろしくお願い申し上げます。

 引き続き、大臣所信に対する質問をさせていただきたいというふうに思います。

 先日、本会議でも、防衛省設置法の一部を改正する法律案、その質疑もるる質問させていただきましたが、なかなか具体的な回答がないものも多かったと思います。また改めて、そんな中身もお聞きをさせていただきたいというふうにも思っています。

 まず、サイバー領域における防衛体制について、何点かお聞かせいただきたいというふうに思います。

 もう御承知のとおりでありますが、昨今からサイバー攻撃の質も数も高まっているというふうに思います。これまでも、防衛省や自衛隊でも年間百万件近い攻撃を受けているというふうに言われております。最新の状況、件数や被害などを教えていただきたいと思います。また、攻撃元もどれくらい判明、追跡ができているのか、答弁できる範囲で教えていただきたいというふうに思います。

土本政府参考人 お答え申し上げます。

 防衛省・自衛隊の通信ネットワークはサイバー防衛隊が二十四時間体制で監視を行っているところでございますが、今委員御指摘のとおり、年間百万件以上の不審メールや不正な通信を認知しております。これらのサイバー攻撃につきましては、スパムメール、ウイルス付メール等の不審メール及び防衛省ウェブサイトに対する不正な通信等を集計したものでございます。

 また、委員から御質問がございましたサイバー攻撃の具体的な件数、傾向とか、あと被害状況及び実行者の特定等に関してでございますが、これらを明らかにすることは防衛省のサイバー攻撃検知能力等を推察されるおそれがあることから、大変恐縮でございますが、お答えを差し控えさせていただきます。

伊藤(俊)委員 防衛省・自衛隊だけでも年間百万件以上ですか。そのほかの機関も、例えば官公庁、あるいはこの衆参両院もそうだと思いますし、その他重要な施設、原子力やあるいは電力、医療等の施設等、あるいは民間の企業においても物すごい数なんだろうというふうに想像します。

 今回、中身、件数を含めて内訳もお聞きをしたいと思って、調べようと思っていたんですが、外務省あるいは内閣官房、防衛省に様々お聞きをするに当たっても、それぞれの機関で確認をしないとなかなかその件数は分かりませんという回答がありました。要は、政府機関や民間も含めてですが、横断的にサイバー攻撃の数や内容などを把握しながら戦略的に対応がし切れていないのではないかという問題意識を持っております。

 また、攻撃元の追跡、判明というのは対処の基本的な第一歩だと思いますし、そこに行き着くことができなければ対応、対処も難しいんだろうというふうに思います。詳しい内容をなかなかオープンにできない、言えないのも一定の理解はしますけれども、対応の状況によっては、どれくらい攻撃元にたどり着けているのかという状況によっては、これから更なる攻撃の数も増えていきますし、より高度になっていくんだというふうに思いますので、より深刻に対策を考えていかなきゃいけないんだというふうに思っております。さらには、本来なら、未然に防ぐということの技術を含めて対応も求められるんだというふうに思っております。

 あわせて、このような、サイバー等分野における専門的な技術革新でしたり、人材の育成、確保の問題、あるいはこの分野の予算等もそうだと思いますが、大きな課題だと思います。現状の課題の認識と、そして今後の解決における対策、対応をお聞きしたいというふうに思います。

土本政府参考人 今委員御指摘のとおり、サイバー領域における脅威は日々高度化、巧妙化しておりまして、優れた能力を有するサイバー人材の確保、育成については、防衛省・自衛隊にとっても喫緊の課題と認識しているところでございます。

 ちょっと一例を申し上げますと、そのために、部内の人材の育成を強化するだけではなくて、部外の人材を活用するなど、内外に広く優秀な人材を求めていくほか、積極的に新たな取組を行っているというところでございます。

 これも四年度予算の関係でございますが、こうした認識の下、サイバー人材の確保・育成関連事業として約九・一億円を計上しておりまして、具体的には、サイバー人材共通のスキル評価作成のための調査研究、サイバーセキュリティ統括アドバイザーの採用、サイバー分野における部外力の活用に関する調査研究等に係る事業を行うこととしているところでございます。

伊藤(俊)委員 今の現状、今のままでは、なかなか、技術革新あるいは専門的な人材を確保していくということも、また、必要な予算を確保していくのも厳しいんだというふうに思います。

 私も、国会に来るまで民間で十年間ぐらい会社経営をやっておりました。中国との国際的な物流を含めてやってまいりました。北京大学に留学した経験もありますけれども。現地で中国の政府機関関係者とも交流してきましたし、様々な企業の内情も身近に見てまいりました。かなり民間の企業が国の中枢の仕事に様々コミットしながら、技術革新も物すごいスピードでされている中で、人材もかなり流動的になっている、成長するシステムのようなものができ上がっているということを身近に感じてきました。

 あらゆる分野で米国と中国の二強の環境下の中で、この分野にかける規模というものもかなり差がついてきている、比較にならないだろうというふうに思います。民間においても、この両国を中心に、世界を動かす企業が国家にコミットしながら、技術革新も人材も流動的に育ちながら発展をしているんだというふうに感じています。

 日本も、政府機関等のみならず、民間とも横断しながら技術も人材も育てていかなきゃいけないんだというふうに問題意識を持っております。あらゆる技術革新によって、昨今、IoTの機器でしたり、あるいは、ルーターやセンサーやカメラや、様々あります、宇宙やサイバーといった新しい分野で、よりサイバー攻撃を悪用しやすい環境、状況ということがあるんだというふうに思っております。さらには、重要施設などでは、武力攻撃に当たる部分も、重大なことも想定していかなきゃいけないというふうに思っております。

 この話においては、また違う機会により深く議論させていただきたいというふうに思っておりますけれども。

 重ねて、昨年の六月の二十八日にイギリスのシンクタンクの国際戦略研究所が、各国のサイバー能力に関する報告書を発表されています。我が国においては、三段階で最も低い第三グループに位置づけられています。この評価に対しても率直な見解をお聞かせいただきたいというふうに思います。

岸国務大臣 お尋ねの報告書は、英国の民間研究機関がサイバー能力と国力への貢献について我が国を含む十五か国について分析したものであり、軍事面に係る分析も含まれていると承知をしております。我が国に関する分析においても自衛隊の能力等に触れている部分があると承知していますが、その評価について逐一コメントすることは差し控えさせていただきます。

 いずれにいたしましても、防衛省・自衛隊としては、日々高度化、巧妙化するサイバー攻撃の脅威を踏まえて、サイバー防衛隊などの体制拡充や、サイバー人材の確保、育成などの各種取組により、サイバー領域への能力強化を図っているところであります。

伊藤(俊)委員 こういう評価も、非常に残念な評価でありますけれども、この評価の内訳の中には、サイバーに対する能力が未発達だという評価や、軍事面での公式なサイバー戦略を持っていないとか、あるいは、組織の規模が小さく資金も不足している、いろいろな指摘が書かれております。しっかり分析を、こういうこともしていただきながら対応していただきたいというふうに思います。

 先日の八日の日の本会議の答弁等から、大臣の答弁でも、サイバーへの対応として、基本的には、個々のシステムを守っていくのは個々の主体がということの基本的な考えの中で、取り得る全ての有効な手段と能力、さらには断固たる対応というふうに答弁をされていたんですが、なかなか、抽象的な言葉で分かりづらいというふうに思います。なかなか具体的な中身はというふうになるんだと思いますが、大臣に少しでもその中身をお聞きができたらと思いますので、教えていただきたいと思います。

岸国務大臣 サイバー攻撃に対処するためには、標的となったシステムやネットワークのソフトウェアや構成等をあらかじめ熟知しておく必要があります。このため、サイバー攻撃を受けたシステムネットワークの管理者や関係省庁が一体となって対応することが重要であります。

 このような考え方の下、防衛省・自衛隊では、内閣サイバーセキュリティセンターに対し、平時及び事案発生時のサイバー関連情報の共有、情報セキュリティ緊急支援チーム等への要員の派遣、政府全体で行う演習への参加などを行っております。

 また、防衛省・自衛隊においては、サイバー部隊等の体制強化、サイバー人材の確保、育成、システムネットワークの充実強化といった施策により、サイバー防衛能力の抜本的強化を図っているところであります。

 防衛省として取り得る全ての有効な手段と能力を活用し断固たる対応を取るということは、サイバー攻撃の被害を局限するために、サイバー攻撃の重大性や緊急性に応じ、こうした防衛省・自衛隊の持てる能力を最大限に発揮していくことを意味しております。

伊藤(俊)委員 ありがとうございます。

 今日、内閣官房さんにも来ていただいているので、お聞きをしたいというふうに思います。

 内閣サイバーセキュリティセンター、NISCは、何らかの事案が発生したときに具体的にどのような対処ができるのか。被害に遭ったシステムに入って、例えばマルウェアなどに対応するということができるんでしょうか。また、NISCが対処できない場合は、どこが対処を担うんでしょうか。教えていただきたいと思います。

吉川政府参考人 お答え申し上げます。

 政府機関におけるサイバー攻撃への対応といたしましては、情報セキュリティ横断監視・即応調整チーム、GSOCと呼んでおりますけれども、これにより政府機関に対する脅威情報の提供や各種注意喚起を行っておりまして、平素から防護を整えているところでございます。

 また、政府横断的なサイバー攻撃等の監視を二十四時間三百六十五日体制で行うことにより、攻撃を迅速に検知する体制も整えているところでございます。

 一方で、政府機関におけるインシデント発生時には、当該機関が業務上の影響や情報の所在といった種々の要素を勘案して一義的な対応を行うべきものとされておりまして、NISCは必要な助言、情報の提供、その他の援助を行っているところでございます。

 さらに、複数の省庁にまたがるインシデント等の発生時には、各省庁から推薦されたサイバーセキュリティーに技能、知見を有する職員等から成る情報セキュリティ緊急支援チーム、CYMATと呼んでおりますけれども、これにより、被害拡大防止、復旧、再発防止のための技術的支援等を行うとともに、NISCとしても原因究明のための調査等を行うこととしております。

伊藤(俊)委員 実際に、サイバー防衛の実務というのは行っているんでしょうか。もう一度聞いていいですか。

吉川政府参考人 先ほど申しましたように、政府機関におけるインシデント発生時には当該機関が一義的な対応を行うというところでございますけれども、これに対して、実際の対応に当たっての必要な助言また情報の提供を行っているところでございますし、また、またがる案件につきましては知見を有するチームが被害拡大防止、再発を止めるための技術的な支援を行っておりまして、まさに実務を含めて対応しているところでございます。

伊藤(俊)委員 ありがとうございます。どこまで高度な実務を担うのかというのがなかなか、具体的なことを聞かないとあれですけれども。

 現在の体制で、これからの高度化する、そしてまた訓練された国家機関や情報機関によるサイバー攻撃に対して対処ができるのかどうか。各省庁の事案をまたがるような脅威等にも対応ができるように、横断的なサイバーセキュリティー全体の体制や組織というものが必要なのではないかなという問題意識もあります。

 重ねて見解をお伺いしたいと思います。

吉川政府参考人 お答え申し上げます。

 複雑化、巧妙化するサイバー攻撃の対策の強化を図って、自由、公正、安全なサイバー空間を確保することは非常に重要な課題でございます。

 このため、サイバーセキュリティ基本法に基づきまして、官房長官を本部長とし、関係省庁の大臣を本部員とするサイバーセキュリティ戦略本部を設置し、政府一体となった推進体制を確保しているところでございます。

 政府といたしましては、こうした体制を整備することにより、我が国全体のサイバーセキュリティーの確保に万全を期してまいりたいと考えております。

伊藤(俊)委員 ありがとうございます。またいろいろ、実務あるいは広域なことの議論を深めていきたいというふうに思いますので、よろしくお願いします。

 次に、二〇一三年のアルジェリアの事案を含めて、アフガニスタンの在外邦人の輸送事案についてお聞きをしたいと思います。

 今日、木原副長官にも来ていただきました。ありがとうございます。

 二〇一三年のアルジェリアの事案では、検証組織をつくって検証いたしました。今回、アフガニスタンの事案では検証組織をつくって検証しないという、この理由をお聞かせいただきたいというふうに思います。

木原内閣官房副長官 お答え申し上げます。

 邦人退避等の事案が生じた際、まず、全ての事案に関していわゆる検証委員会の立ち上げあるいは検証報告書の作成を行ってきているものではないということでございます。

 一般論として申し上げますと、事案の検証については、その事案の性質等を総合的に勘案して実施するか否かを決定してきているところでございます。

 昨年の八月のアフガニスタンに関する政府の対応につきましては、その経験等も踏まえ、政府として不断の検討を行う中で、政府内の更なる連携強化、そして意思決定の迅速化等に努めてきてございます。

 引き続き、有事の際の邦人等の退避支援を含む政府の対応について、平素から様々な状況を想定しながら適切に対応していきたい、このように考えてございます。

伊藤(俊)委員 毎回は検証報告をつくっていないという答弁でありました。内閣官房で対応する場合、あるいは外務省で対応する場合、様々、事案によってということなんだろうというふうに思いますが。アルジェリアの場合には内閣官房で対応されたというふうに承知をしております。

 今回のアフガニスタンの事案というのは、なかなか結果的にも厳しいものであったというふうに承知をしております。検証をすることは、これからの大事な教訓ということにもなりますし、そしてまた、防衛省設置法の問題はこれからまた質疑もあると思いますけれども、検証あっての法改正だということも改めて求めたいというふうに思っています。

 アフガニスタンの事案では、約五百人の輸送という計画の中でほとんどの方を取り残してしまったという、厳しい言葉で言えば大失態だというふうにも感じているわけであります。

 答弁においては、検証につながるような、そういった回答をいただいておりませんけれども、改めて、アフガニスタンの事案、この失態に対して、結果に対して副長官の言及をいただいて、さらには前向きに検証というものを考えていただけないか。もう一度答弁をいただきたいと思います。

木原内閣官房副長官 まず、アフガニスタンの事案についての評価ということであろうかというふうに思います。

 委員も御案内のとおり、八月十五日にカブールが陥落し、そしてカブール国際空港の民間機が運航を停止して以降は、関係国と連携しつつ、輸送の安全を確認した上で迅速に自衛隊機の派遣を行い、退避について準備を整えていたということでありますが、その直後にカブール空港で大規模な爆弾テロが発生し、輸送対象者の安全を第一に考えた結果、市内の輸送を一時中断することを余儀なくされた、こういうことでございます。

 今申し上げたように、事態が刻一刻と変化していく当時の状況下において、自衛隊機による退避オペレーションに関し、政府としては可能な限りの対応を行った、このように認識をしております。

 そして、最終的に、退避を希望される邦人一名及びアフガニスタン人十四名を自衛隊機で輸送することができたということに加えまして、自衛機によるオペレーション終了後も政府として様々な外交努力を継続してきております。現在までに、我が国の支援を受けて、約五百七十名の日本関係のアフガニスタン人が本邦に到着をしているということでございます。

 先ほど申し上げましたが、検証をしないということではございませんで、今回の件につきましても不断に検討をさせていただいている、こういうことでございます。御理解いただければと思います。

伊藤(俊)委員 先日の本会議でも官房長官の方から、この事案においても、政府として不断の検討を行う上で政府部内の更なる連携強化や意思決定の迅速化に努めていますとの答弁もありました。これは一般論も含めての回答なんだろうというふうに承知をしておりますけれども、不断の検討という言葉も入っております。

 不断の検討というのは何を意味するんでしょうか。いわゆるこの検証というものも、当然、不断の検討には入るのではないかなというふうにも思います。この不断の検討、その結果を内容を含めて出していただくことができるかどうか、それもお聞きしたいと思います。

木原内閣官房副長官 先ほども御答弁申し上げましたとおり、昨年八月のアフガニスタンに関する政府の対応につきましては、その経験等も踏まえ、政府として不断の検討を行う中で政府部内の更なる連携強化や意思決定の迅速化等に努めてきた、こういうことでございます。

 その検討の結果を文書等にして公表するということは現時点で考えてはございませんが、既に実際に、エチオピアやウクライナなど、海外における治安情勢が悪化する兆候が見られる際には、より機動的に関係省庁間で会議を開催する等、結果に反映させていただいているところでございます。

 引き続き、有事の際の邦人等の退避支援を含む政府の対応について、様々な状況を想定し、適切に対応していきたい、このように考えてございます。

伊藤(俊)委員 対応が決してうまくいかなかったときにこそ、検証が必要なんだというふうに思います。引き続き、検証を含めて対応を求めたいというふうに思います。

 お忙しい中、ありがとうございます。木原副長官、ここで退室して大丈夫です。ありがとうございます。

大塚委員長 木原副長官、退席して結構です。

伊藤(俊)委員 次に、台湾有事のことをよく最近、昨今議論もありますけれども、非戦闘員の退避作戦、これについてお聞きをしたいというふうに思います。

 まさに、台湾有事も含めてですが、有事にならないように、外交努力を含めて、現在のウクライナの環境がここまで悪化した、こういったことも考えながら、今後の我が国の対応も考えていかなきゃいけないというふうに危機感を高めておりますけれども、これも、八日の本会議では官房長官から、様々な事態を想定して各種訓練の実施を含む体制の整備に努めているとの答弁をされています。

 実際の活動の規模を台湾有事を含めて考えると、行政の職員や自衛隊員に限らず、そこにいる住民等への一定の情報共有やあるいは認識の共有ということも必要になるというふうに思いますけれども、現状、訓練を含めた見解をお聞かせいただきたいというふうに思います。

増田政府参考人 お答え申し上げます。

 様々な事態におきまして実際に邦人をどのように退避させるのかということにつきましては、防衛省としても、日頃から不断に様々検討し、訓練をしているところでございます。

 その上で、一般論として申し上げれば、防衛省・自衛隊としては、あらゆる事態において適切に対応できるように不断に検討しているところでございますけれども、個別の緊急時の対応につきましては、事柄の性質上、その内容について申し上げることは差し控えさせていただきたいと思っております。

 その上で、防衛省・自衛隊におきましては、在外邦人等の保護措置及び輸送という任務がございますので、それに関する能力の維持向上を図ることが必要だと考えておりまして、そのための訓練を継続的に実施しております。

 例えば、国内におきましては、毎年のように、関係省庁等の協力を得ながら、在外邦人等の保護措置そして輸送の訓練を実施しておりますし、また、タイで多国間演習コブラゴールドというものも行われておりまして、継続的に在外邦人等の保護措置に係る実動訓練なども行ってきております。

 以上でございます。

伊藤(俊)委員 ありがとうございます。様々なことを想定したオペレーションのシナリオというものを考えていかなきゃいけないんだというふうに思っております。

 時間が来ましたので、最後に一問やりたかったんですが、また次回にさせていただきたいというふうに思います。ありがとうございます。

大塚委員長 次に、新垣邦男君。

新垣委員 立憲民主党・無所属会派、社民党の新垣邦男です。

 昨年の総選挙で、沖縄県第二選挙区から初当選をさせていただきました。沖縄二区は、嘉手納基地、普天間基地を抱え、本当にこの国の安全保障の負担と犠牲の縮図と呼んでも過言ではないのかなと私は思っております。安保委員会における質疑は今回が初めてとなりますが、基地周辺住民や基地所在市町村の切実な訴えを、そして現場の声に寄り添った質問を行ってまいりますので、どうかよろしくお願いいたします。

 まず初めに、基地から発生する騒音問題なんですが、沖縄では、離発着する米軍機から発せられる騒音は、殺人的な爆音と形容されるほどにすさまじいものがございます。それほど非常にうるさい環境になっております。エンジン調整による地上騒音や排気ガスの悪臭も、本当にひどいものがございます。

 そこで、防衛大臣、外務大臣、両大臣にお伺いしたいのですが、お二人は、百デシベルを超えた航空機騒音や、大型機のエンジン調整による轟音、航空機の悪臭がどのようなものか御存じだろうとは思いますが、そして体験されたこともあると思いますが、もし体験なさって感想があれば、よろしくお願いしたいと思います。

岸国務大臣 普天間飛行場や嘉手納飛行場周辺における航空機の運用に係る問題について、周辺の皆様から要請や苦情が寄せられており、防衛省としても、その軽減を図ることが重要な課題であるというふうに認識をしております。

 私自身、就任直後に沖縄を訪問いたしまして、普天間飛行場や嘉手納飛行場を視察し、現地の状況を確認するとともに、宜野湾の松川市長、嘉手納の當山町長から、航空機の騒音や悪臭を始めとする諸問題について直接お話を伺いました。また、私も地元に岩国基地を抱えております。

 そうしたこともありまして、航空機のエンジン音については様々な現場で体験、体感したこともございます。耳をつんざくような音とか、あるいは至近距離の会話でさえもかき消されてしまうような騒音、また地響きにも似たような音というのも肌で感じたものでございます。

 また、嘉手納飛行場における航空機の悪臭問題については、當山嘉手納町長から、周辺住民の、悪臭がひどくて目が開けられないとか、気分も悪い、コロナの対策で換気がしたい、けれども悪臭で窓を開けることができないといった、実感が湧くお話も伺ったところであります。

林国務大臣 私は、防衛大臣在任中の二〇〇八年八月でございますが、辺野古と普天間飛行場の現場を視察をさせていただきました。

 この普天間飛行場の周辺の土地、実際に歩きながら視察をさせていただいて、米軍機による騒音は周辺地域住民の皆様にとって大変深刻な問題であると認識を強めたところでございます。

 同時に、すぐ近くに幼稚園がございまして、幼稚園か小学校だったか、ございまして、小学校ですね、そのときに臭いがやはりいたしました。私は臭いがちょっと気になったのでございますが、学校の生徒さん方は余り気にならないようで、もう慣れてしまっておられるのかな、こういう率直な感触を持ったところでございまして、地元の皆様の御理解を得る努力を続けながら、沖縄の負担軽減、そして普天間飛行場の一日も早い全面返還に向けて取り組まなければならないと感じたところでございます。

 また、今お話のありました嘉手納飛行場周辺での悪臭についても、周辺地域住民の皆様からこれまでも要請や苦情が寄せられていると承知をしておりまして、外務省としても重要な問題であると認識をしております。

 今、外務大臣として、本年一月の日米2プラス2において、岸防衛大臣とともに、在日米軍による地元への影響に最大限配慮した安全な運用、これを求めたところでございますが、今後とも米側に対して、航空機の運用に当たって、周辺地域住民の皆様に与える影響を最小限にとどめるように申し入れてまいりたいと思っております。

新垣委員 岸防衛大臣、そして林外務大臣、お二人の大臣が直接、そういう騒音問題そして悪臭の問題をしっかり把握しているということで、安心をしております。

 当然、地元の自治体からは、首長さんからは再三再四、そういう要請が行っていると思います。ただ、住民の皆さんにとってはこれは毎日のような出来事なんですね。ですから、耐えられないという、本当に深刻なる声が届いております。

 先日も地元紙に、第四次嘉手納爆音訴訟、人数が三万五千五百六十六人の提訴ということがありました。第一回目の提訴が一九八二年。あれから四十年であります。四十年たっても、戦後七十七年、沖縄は今年復帰五十年ですが、五十年たっても、この問題が解決するどころか、一歩でも二歩でも前進してもらいたいという切実な思いがなかなか届かない。昨今では、非常に訓練が激化をし、更に騒音が激しくなっております。

 どうか、両大臣におかれましては、是非とも今後とも、せめて騒音問題が、これは住民の生活に直結するものですから、是非お力添えをいただいて、一歩でも二歩でも前進するようにお力添えをいただきたいと思っております。

 次に、先ほど出ました嘉手納基地の騒音問題なんですが、これは防衛省にお尋ねしたいと思います。

 嘉手納基地におけるエンジン調整音や悪臭の問題は、住民居住地域の、特に屋良地区といっているんですが、隣接している元駐機場、パパループに起因して集中しております。パパループというのは、しばらく使われていない駐機場だったんですが、今使われている駐機場が修繕しないといかぬということで、ここに移したんですね。

 パパループというこのエリアは、住民が住んでいる屋良地域の道路のすぐ向かいなんですよ。ですから、非常に騒音と悪臭がひどい。特に、早朝からエンジン調整を一時間ぐらいやると、物すごい轟音です。そこから発生する悪臭も大変ひどいものがあるということで、先ほどお話があったように、この運用改善を求めて国や米軍に対して再三要請を行っているんですが、一向に改善をされない。

 嘉手納基地所属の場合、悪臭の発生源は、E3早期警戒管制機が大きな原因だと言われております。この戦闘機、機器の整備はしたんですが、エンジンがそのままじゃないかと。全然変わっていないような感じなんですね。エンジン調整音は、MC130J特殊作戦機というものが、物すごい爆音が発生しております。

 機種ごとに原因は特定できているにもかかわらず実効性ある対策が講じられていないのはどういう訳なんだろうかということで、その要因等についてもお聞きをしたいと思います。

岡政府参考人 お答え申し上げます。

 ただいま委員から御質問のございましたいわゆるパパループ、嘉手納飛行場の駐機場でございますけれども、ここにおきます航空機の地上音、あるいは同飛行場周辺におきます大型機が原因と考えられる悪臭の問題については、地元の皆様から要請や苦情が寄せられておりまして、防衛省としても、その軽減を図ることは重要な課題であると認識しているところでございます。

 このうち、騒音の関係の問題でございますけれども、第三五三特殊作戦航空団エリアの改修工事に伴い、平成三十一年二月から米軍機がこの駐機場を一時的に使用していると承知しているところでございます。その間、一時的な使用の間、同駐機場におきます航空機のエンジン調整と考えられる騒音が周辺住民の皆様に影響を与えているものと認識しているところでございます。

 この件につきましては私どもといたしましてもアメリカ側といろいろやり取りをしておりますけれども、これまでの間、米側からは、新たな駐機場は完成したんだけれども米軍の予算不足により整備格納庫が完成していない状況であり、新たな整備格納庫が完成するまでの間、一時的にパパループを使用する必要がある、速やかに予算を確保し、できるだけ早期に整備格納庫を整備する、一時的な使用の間も駐機場の工事が始まる以前の状態に近づける努力を続け、騒音が生じないよう最大限の措置を講じるという旨の説明を受けているところでございます。

 また、悪臭につきましては、これまでも周辺住民の皆様から、米空軍の大型機、E3ではないかと言われておりますが、これが原因である可能性が高いということで要請や苦情が寄せられておるところでございまして、防衛省といたしましても重要かつ深刻な問題であると認識をしているところでございます。

 防衛省といたしましては、これまで、この飛行場周辺におきます悪臭の実態等を把握するための調査、そして対策の検討の業務を行いまして、例えば、駐機場の近辺に壁を設置する、その他構造物を追加するといったことであるとか、航空機の駐機する向きを逆にするとか、あるいは吸着するための装置を使うといったような、対策案の効果検証を行ってきたところでございます。

 こうした検討業務の結果も踏まえつつ、防衛省から具体的な提案を行いながらアメリカ側と調整してきておりますけれども、この調整に当たっても、米軍の運用への影響を始め米側の意見も考慮しつつ進める必要がございまして、引き続き粘り強く調整を行っているところでございます。

 今後とも、嘉手納飛行場周辺におきます悪臭問題の解決に向け、全力で取り組んでまいりたいと考えているところでございます。

新垣委員 今答弁があったとおりなんですが、是非とも、ここの格納庫が予算がないからできない、だから移せない、その辺を早めに、いつ頃にできるのかということも確認をしていただきたいなと思っておりますし、この悪臭は、やはり、古いエンジンがそのまま搭載されているというのが大きな原因だろうと思っております。その辺は、強く米側に訴えていただきたいと思っております。屋良地区の皆さんは本当に大変な思いをなさっているので、是非とも早急な対策をお願いしたいと思っております。

 そして、嘉手納基地や普天間基地から離発着する米軍機による騒音というのは外来機の訓練飛来によって当然激化をしておりますが、外来機は常駐機と違って飛行経路を逸脱する場合があるためか、ふだんよりも騒音が増しているのではないかと。これは町の担当の声なんですが、基地負担軽減の名目で所属機が県外やグアムなどに訓練移転で出かけていっても、空いたところに外来機が入ってきて、常駐機以上の爆音をまき散らしているんですね。それでは本末転倒だなと思っております。

 そこで、お伺いしますが、防衛省は、嘉手納、普天間両基地に飛来する外来機の運用実態、具体的には、騒音状況や騒音の発生回数、そして飛行経路などについて把握をなされているのかどうか。よろしくお願いします。

岡政府参考人 お答え申し上げます。

 防衛省におきましては、嘉手納、普天間の両飛行場におきます航空機の実態を把握することを目的といたしまして、全機種の離着陸等の回数を目視調査によって確認しているところでございます。また、航空機騒音につきましても、嘉手納、普天間飛行場周辺に航空機騒音自動測定装置を設置し、常時、騒音状況の把握に努めているところでございます。

 さらに、普天間飛行場におきましては、同飛行場の飛行状況調査、航跡調査と言っておりますが、これを実施しておりまして、場周経路に沿った飛行が行われているのか、大まかな傾向を把握することとしているところでございます。

 これらの調査につきましては外来機も対象になっておりまして、嘉手納、普天間の両飛行場におきます外来機を含む航空機の飛行の実態把握に努めているところでございます。

新垣委員 具体的な騒音状況や騒音の発生回数等々は把握はされていないんでしょうか。

岡政府参考人 お答え申し上げます。

 例えば、騒音状況につきましては、先ほど申し上げましたように、航空機騒音の自動測定装置を設置いたしまして騒音状況の把握に努めておりますし、また、把握した状況につきましては定期的に公表させていただいているところでございます。

 また、場周経路のようなもの、これは普天間飛行場の航跡調査について申し上げましたけれども、これにつきましても、状況については説明をさせていただいているところでございます。

新垣委員 質問を少し飛ばしてしまいますが、済みません、関連しますので。

 米軍機による爆音被害というのは、基地所在市町村はもとより、基地のない市町村においても住民の皆さんから苦情が寄せられております。

 この中部地域、沖縄第二選挙区は八市町村ございますが、六市町村が基地を抱え、二つの町村が、基地はないんですが、普天間基地から派生する騒音で大変苦しい現状を抱えております。そういう意味では、ほぼ全域が、普天間基地や嘉手納基地から飛び立ち北部訓練場や訓練空域などに向かう米軍機の飛行経路の下にあるような状況であります。

 そこで、お伺いしますが、現在、米軍機を対象とした騒音測定器が沖縄県内にどのぐらい設置されているのか、把握をなされているんでしょうか。そして、国、県、基地所在市町村、そして、基地はないんですが、それ以外の市町村にも設置をされているのかどうなのか。そして、これらの設置費用、維持費用は、国が負担をしているのか、市町村が負担をしているのか、県が負担をしているのか。その辺が把握できていれば、よろしくお願いします。

岡政府参考人 お答え申し上げます。

 まず、騒音測定装置の設置状況でございます。

 まず、防衛省におきましては、嘉手納飛行場を含めた沖縄県内六施設周辺の合計三十三か所に航空機騒音自動測定装置を設置しているところでございます。

 また、県や市町村についての御質問もございましたが、沖縄県が取りまとめております令和二年度航空機騒音測定結果、ここにおきましては、沖縄県及び県内市町村が、嘉手納飛行場、普天間飛行場及び那覇空港周辺の合計四十二か所に航空機騒音の監視測定のための騒音測定装置を設置していることが公表されているところでございます。

 また、設置費用、維持費用についての御質問でございます。

 騒音測定装置の設置費用、維持費用でございますが、防衛省が設置したものについては、これは防衛省が負担をしているところでございます。沖縄県や市町村が設置したものについては、各自治体で負担をされているのではないかというふうに考えておりますが。なお、自治体によっては、防衛省が所管いたします特定防衛施設周辺整備調整交付金あるいは再編交付金を騒音測定装置の設置費用に充当している場合もあると承知いたしております。

新垣委員 先ほど申し上げたんですが、当然、大きい基地を抱えている周辺は防衛省さんが設置しているということもあるんですが、実は、基地はないんだけれども、基地から派生する騒音が、自治体を飛び回っているというときに、これは各自治体でやらなきゃいけないんですね。国にお願いしてもなかなか、いや、基地がないから駄目ですよと言われる。

 そういう意味では、基地がなくてもこの騒音というのは非常に大変な問題があるので、是非、その辺は、要請があった場合は少し検討ができるのかどうなのか。よろしくお願いします。

岡政府参考人 先ほど申し上げましたように、現状といたしましては、防衛省としては、沖縄県内では六つの防衛施設の周辺に航空機騒音自動測定装置を設置しているところでございます。

 このうち、普天間飛行場、嘉手納飛行場の周辺については、防衛施設周辺の生活環境の整備等に関する法律に基づきまして第一種区域に指定されているということを踏まえて測定装置を設置しているところでございますが、その他の四施設の周辺については、地元の御要望や騒音の状況を踏まえて測定装置を設置したものでございまして、いずれにいたしましても、防衛省といたしましては、航空機の騒音は重要な問題であると認識をしておりまして、今後とも、防衛省による騒音測定装置の設置について御要望があれば、必要に応じて適切に対応してまいりたいと考えております。

新垣委員 是非よろしくお願いしたいと思います。

 基地はないんだけれども騒音が大変だということで、基地がないから移転してきたのに何で騒音がひどいのという声もあるわけですから、是非、市町村から、そして県から、地元から声があれば、耳をかしていただいて、対応をお願いしたいと思っております。

 そして、騒音問題ですが、嘉手納基地や普天間基地における深夜、早朝の飛行制限を取り決めた航空機騒音規制措置、いわゆる騒音防止協定が形骸化されているのだと私は思っております。騒音防止協定は、米軍が運用上必要とすれば規制時間内でも離着陸やエンジン調整ができるようになっておりまして、基地周辺住民や関係自治体からすれば、これはもう、空証文だろうと。何の効力も持たない、日米間の約束という認識でしかありません。

 外務大臣は、先日、三日の沖縄北方特別委員会で、日米地位協定の改定提起を求めた私の質問に対して、環境補足協定や軍属補足協定は国際約束という形式で締結しており、日米地位協定の改定は考えていないという趣旨の答弁をなされました。

 そこで、外務省にお尋ねしますが、嘉手納基地や普天間基地における騒音防止協定は国際約束に該当するのでしょうか。

市川政府参考人 お答え申し上げます。

 委員ただいま御指摘のとおり、一九九六年に日米両政府は、地位協定に基づきまして設置されている日米合同委員会におきまして、嘉手納飛行場及び普天間飛行場における航空機の騒音を規制する航空機騒音規制措置について合意してございます。この合意は、地位協定の補足協定である環境補足協定及び軍属補足協定と形式は異なりますが、日米合同委員会合意の形式で両政府間で合意したものであり、両政府はこれに沿った実施、運用、解釈を行うことが当然に想定されているところでございます。

 政府としましては、米側に対し、航空機の運用に当たっては安全な飛行の確保に努めるとともに、航空機騒音規制措置に係る日米合同委員会合意の遵守を徹底するよう要請してきており、引き続き、防衛省と連携しつつ、米側に対して、地元の皆様に与える影響を最小限にとどめるよう配慮を求めていく所存でございます。

新垣委員 日米合同委員会で取り決めたんだということで、米側にお願いをしているということなんですが、一向にこれが守られていないんですね。現在も、早朝から深夜まで、非常に多く飛行訓練をやっている現状であります。ですから、もし地位協定が難しいというのであれば国際約束ということにしてもらえないかという思いで質問をしているんですが。

 日米地位協定に関する二つの補足協定について、法的拘束力を有する国際約束だから従来の運用改善とは質的に異なるものだとの締結の意義を強調しておりますが、ここで言う法的拘束力というのはどのようなものなんですかね。そして、米側は法的にどのように拘束されているのか、それが守られなかった場合はどうなのか、具体的に分かっていれば教えていただきたいと思います。

市川政府参考人 国際的に、国と国との約束につきましては、条約等を始め、様々な形式がございます。

 その上で、国際約束と申しますのは、条約等、国際法上の主体の間において締結され、国際法によって規律される国際的な合意をいいまして、ただいまお話にありました日米地位協定並びに同協定の環境補足協定、軍属補足協定は、いずれも日米間で締結された国際約束ということでございます。

 このほかにも国と国との間の合意には様々な形式がございまして、また、日米合同委員会合意も、国際約束とは異なる形式でありますけれども、両政府間で合意したものということで、両政府はこれに沿った実施、運用、解釈を行うということが想定されているところでございます。

新垣委員 日米間で、合同委員会でいろいろ決めているんだとおっしゃっているんですが、決めたはいいものの、守られていないという現実があるわけですね。

 ですから、我々としては、地元の住民としては、どういう形でこれが解決できるのとよく問われます。なかなか日米地位協定の改定ができないということで、だったら具体的に改定できる方法はないのかということをよく提案されるんですが、現状は厳しいですねという話しかできません。

 先日も言ったんですが、住民の皆様の声は直接自治体に来ます。自治体の窓口にいる職員に非常に怒りを強くして訴えているんですが、我々はなかなか返答ができない、国にお願いしていますよと言っても、何もやっていないんじゃないかという問われ方をします。

 ですから、是非とも、実効性のあるというんですかね、守っていただけるものは守ってもらいたいということをお願いをしたい。もうお願いするしかないんですけれども、是非とも県民や住民の声を聞いていただいて、騒音、そして爆音だけは何とかしてもらいたいという切実な声ですから、よろしくお願いしたいと思います。

 最後に、国として日米地位協定の改定を考えていかなければ本来はならないと思っているんですが、私は、騒音防止協定についても、先ほど言ったんですけれども、是非、法的拘束力を有する国際約束の形で締結し直してもらえないかと考えておりますが、あえて最後に両大臣に所見をお伺いしたいと思います。

岸国務大臣 現在の航空機騒音規制措置は、飛行場周辺の住民の方々の負担をできるだけ軽減するという課題と、日米安保条約の目的を達成するために米側の運用上必要な活動を確保するという課題と、この間でどのような方策が取り得るかにつき日米間で協議を重ねた結果、合意したものであります。

 この合意は、日米合同委員会合意としてこれに沿った運用を行うことは当然に想定されておるところでございますが、防衛省としても、飛行場周辺の騒音軽減は大変重要な課題の一つであります、このように認識しておりますので、引き続き、米軍機の運用から生じる住民の方々への影響が最小限となるように、外務省とも連携をしつつ取り組んでまいります。

林国務大臣 合意については、今防衛大臣からお話があったとおりでございます。

 外務省としても、アメリカ側に対して、航空機の運用に当たっては安全な飛行の確保に努めるとともに、航空機騒音規制措置に係る日米合同委員会合意の遵守を徹底するよう要請してきておりまして、引き続き、防衛省とも連携しながら、米側に対して、地元の皆様に与える影響を最小限にとどめるよう配慮を求めていきたいと考えております。

新垣委員 是非、沖縄は国の七〇%以上の米軍基地を抱えているわけですから、訓練がやはり優先されているんじゃないかという県民の思いがあるわけですね。その辺は、政府も頑張っていらっしゃると思うんですが、実効性のある、そして県民の思いが、本当に、一歩でも二歩でも改善できて、せめて早朝から深夜の、夜間の訓練だけはやめてくれということを強く訴えていただきたいなと思います。

 そのことをお願いして、質問を終わらせていただきます。ありがとうございました。

大塚委員長 次に、岩谷良平君。

岩谷委員 日本維新の会の岩谷良平です。どうぞよろしくお願いいたします。

 さて、本日もウクライナでは戦争が続いております。犠牲になられました皆様に心から哀悼の誠をささげるとともに、被害に遭われた皆様にはお見舞いを申し上げたいと思います。

 ロシアによるウクライナへの侵略を受けまして、我が党では、今月三日に林外務大臣宛てに緊急提言を提出をさせていただきました。この中で、防衛省に関する部分につきまして、防衛大臣に御見解をお伺いしたいと思います。

 二点ありまして、一点は、外交防衛インテリジェンスの抜本的な強化というところでございます。読み上げたいと思います。

 軍事と非軍事の垣根を越えたハイブリッド戦が常態化してきていることを踏まえ、我が国の外交防衛インテリジェンスを抜本的に強化し、同盟国、パートナー国間で共有する枠組みを構築することで、どの国にとっても武力行使のしにくい国際環境を整備していただきたいという提言です。

 外交防衛インテリジェンスの抜本的な強化、この点、大臣の御見解をお伺いしたいと思います。

岸国務大臣 いわゆるハイブリッド戦は、軍事と非軍事の手段を複合的に用いた現状変更の手法であります。

 例えばロシアは、二〇一四年のクリミア併合に際して、偽情報やプロパガンダの流布、サイバー・電子戦による攻撃等を行ったとの指摘がなされているほか、今般のウクライナへの侵略においても、いわゆる偽旗作戦と呼ばれるような行為も含め、様々な非軍事手段と軍事手段を組み合わせたいわゆるハイブリッド戦の手法を取っていると見られます。

 防衛省においては、中央情報機関である情報本部を中心に、平素から様々な情報を収集し、国際軍事情勢の分析を行ってきているところでございますが、ハイブリッド戦をめぐる動向も踏まえつつ、情報収集・分析力を更に強化するとともに、同盟国である米国を始め、様々な有志国との情報交換を行い、連携を強化していく所存であります。

岩谷委員 もう一点、この提言からお伺いしたいと思います。防衛費の増額についてです。読み上げたいと思います。

 有事の際に同盟国及びパートナー国による軍事協力が得られるのは独自の防衛力が一定程度機能した後である、現在の国際情勢下でも核保有国による侵略のリスクが現実に存在するといったウクライナ危機の教訓を踏まえ、従来の枠組みにとらわれない防衛費の増額(当面の目標GDP比二%)を図り、自衛力を抜本的に見直すべきではないかという提言でございますが、この点、大臣の御見解はいかがでしょうか。

岸国務大臣 周辺各国が軍事費の大幅な増額等により軍事力の強化を図り、我が国周辺での軍事活動を急速に活発化させるなど、我が国を取り巻く安全保障環境がこれまでにない速度で厳しさを増す中、必要な防衛力を抜本的に強化していく考えであります。

 こうした中で、国民の命や暮らしを守るために必要となる予算をしっかりと確保してまいります。

 また、新たな国家安全保障戦略、防衛大綱、中期防を策定することとしており、厳しさを増す安全保障環境の中で、防衛力の強化には一刻の猶予も許されないとの認識の下で、スピード感を持って検討してまいります。

岩谷委員 ありがとうございます。

 今出ましたとおり、国家安全保障戦略ですね、二〇一三年制定以来初となる国家保障戦略の改定が行われるということですが、当然、今の状況を踏まえまして経済安保等も盛り込まれていくと思われますけれども、例えば、中国では超限戦なる考え方が行われているのではないかというふうに言われているわけです。

 超限戦、御存じかとは思いますけれども、軍事、軍事を超える超軍事、さらには非軍事、これらを全て戦いとみなして戦略をつくっているのではないかと。当然、軍事では核戦争から通常戦争、生物化学戦等がございますけれども、超軍事として外交戦であるとかサイバー戦、情報戦、心理戦等々、さらに、非軍事としましては金融戦であるとか貿易戦、資源戦、法律戦、制裁戦等、あらゆる手段を戦いと捉えて戦略をつくってきているのではないかと言われるこの超限戦ですね。

 我が国においても、国家安全保障戦略をこれから改定するに当たりまして、こういった超限戦などに対応していくような考えが盛り込まれるべきではないかと思いますが、この点はいかがでしょうか。

加野政府参考人 お答えを申し上げます。

 平成二十五年に我が国初の国家安全保障戦略が策定されましてから既に八年が経過をしているわけでございますけれども、その間、世界のパワーバランスが変化するなど、我が国をめぐる安全保障環境はこれまで以上に急速に厳しさを増しているところでございます。

 こうした中、何よりも大事なことというのは、国民の命や暮らしを守るために必要なものは何なのか、こうした現実的な議論をしっかりと突き詰めていくことということでございます。

 近年、委員御指摘ございましたとおり、経済安全保障や、軍事と非軍事の手段が複合的に用いられるような戦いの在り方、こうした新しい課題が国家安全保障上の課題として広く認識されるようになってきているというふうに承知をいたしてございます。

 新しい国家安全保障戦略等の策定に際しましては、委員御指摘の経済安全保障、あるいは軍事、非軍事等の手段を複合的に用いた戦術などの、伝統的な安全保障領域にとどまらない動きへの対応等についても、政府としてしっかりと議論してまいりたいというふうに考えております。

岩谷委員 是非、しっかりとお願いしたいと思います。

 次に、武力攻撃時の住民の避難についてお伺いしたいと思います。

 今回のウクライナ侵攻では、侵攻が始まってたった二日で、まずは空港や軍事施設等が攻撃また侵略されまして、周辺住民の方々が避難をされたと。日本で同じように武力攻撃を受けた場合、やはり、空港あるいは軍事施設が真っ先に狙われるということが容易に想像できるわけです。

 日本全国、当然、各地に空港もあります、自衛隊施設もあります。例えば、私は大阪ですけれども、関西でいいますと、伊丹空港もあれば伊丹駐屯地もある、あるいは、関空もあれば八尾空港等もある。こういった空港とか自衛隊施設の近隣の市町村、大阪でいいますと、豊中市や八尾市や、あるいは私の地元の東大阪市等がありますけれども。こういった空港とか自衛隊施設が狙われるというときに、当然、自治体レベルで備えが必要だと思うんですが、この自治体レベルでの備えをどのようになされているか、お伺いしたいと思います。

小宮政府参考人 お答えいたします。

 市町村におきましては、武力攻撃事態などに対する平素からの備えとして、複数の避難実施要領のパターンをあらかじめ作成しておくよう努めるものとされております。

 また、国民保護に関します各種の訓練の実施を通じまして、事案対処能力の向上を図っているところでございます。

岩谷委員 今御答弁いただきました国民保護法に基づく避難実施要領のパターン、基本指針においてあらかじめ作成するよう努めるということで、市町村に努力義務が課されておりますけれども、この避難実施要領のパターン、日本全国の市町村で、一体どれほどの数の市町村が作成をされているか、お伺いしたいと思います。

小宮政府参考人 お答えいたします。

 全国の千七百四十一市区町村のうち千百五十二、六六%が作成をしております。

岩谷委員 六六%ということで、非常に不十分であるというふうに思うんですね。

 国民保護法に基づいて、武力攻撃を受けた、そして総理が避難指示等を出したときに、市町村が避難実施要領をそこからつくり始めるということになりますけれども、当然、有事の中で突然、避難実施要領をいきなりつくるといっても大変無理があるわけで、事前にパターンというものをつくっておいてくださいという努力義務かと思うんですが、それが僅か六六%の市町村でしかつくられていないということで、非常に重要な、ゆゆしき問題だと思います。

 これらの避難実施要領のパターンの作成、これが自治体任せで本当に大丈夫なのかなというふうに非常に不安を覚えます。このパターン作成などを自治体に義務づけたり、あるいは、義務までいかなくても、直ちに強く推奨するような働きかけというのを行うべきではないでしょうか。

小宮政府参考人 お答えいたします。

 避難実施要領のパターンにつきましては、国民保護法第三十二条第一項に基づき政府が定めております国民の保護に関する基本指針において、市町村は、消防庁が作成するマニュアルを参考に、複数の避難実施要領のパターンをあらかじめ作成しておくよう努めるものとするとされております。

 これを踏まえまして、消防庁では、「「避難実施要領のパターン」作成の手引き」や、そのエッセンスをまとめました「避難実施要領パターンのつくり方」、さらには「避難実施要領のパターン事例集」などを作成いたしまして、市町村に提供しております。

 また、避難実施要領のパターンの作成に関する研修会、これを令和元年度から令和三年度までに三十四回開催いたしました。さらに、各市町村の課題に即した個別の相談も行っているところでございます。

 今後は、研修会において避難実施要領のパターンを実際に作成してみる演習を行うに当たっての事案のシナリオを市町村のニーズを踏まえて変更するなど、内容をより充実させていくこととしておりまして、現時点におきまして、委員御指摘のような、避難実施要領のパターンの作成の義務づけや、これを強く推奨することは考えておりませんが、市町村のパターンの作成につきまして、引き続きしっかりと支援をしてまいりたいと考えております。

岩谷委員 住民の命を守るための避難実施要領、そしてその備えとしてのパターンの作成、これが僅か六六%の市町村でしか作成されていないというところ、大変ゆゆしき事態であるということを強く指摘させていただき、また、要望させていただきたいと思います。

 それと、国民保護法には、市町村や都道府県に協議会を設けるという規定がありますが、この協議会の委員に自衛隊の方が入れるようになっています。自衛隊員の皆さんに是非この協議会の委員に入っていただくということを積極的に進めるべきだと思いますが、御見解はいかがでしょうか。

増田政府参考人 お答え申し上げます。

 武力攻撃事態等におきまして国民保護措置を円滑に行うためには、平素から国と地方公共団体間での連携を十分に図っておくことが重要だと考えております。

 国民保護法におきましては、自衛隊と地方公共団体等の連携について様々な制度的手当てがなされておりますが、今委員御指摘のように、都道府県協議会や市町村協議会に自衛隊員が任命されることは密接な連携のために極めて有意義だと考えております。防衛省といたしましては、地方公共団体から任命の要請があった際には積極的に協力しておりますとともに、地方公共団体に対しましても自衛隊員を任命していただくようにお願いしているところでございます。

 また、仮に、武力攻撃事態が発生した場合は、自衛隊は速やかに武力攻撃を排除し、国民への被害を局限化することがその主たる任務でありまして、当該任務に支障のない範囲内で、可能な限り、国民保護措置を行うということになっております。

 したがいまして、地方公共団体におきましては、国民保護法上、その役割とされている国民保護措置を主体的に行っていただくことが重要であり、そのための体制を迅速に整えていただく必要があると考えております。防衛省・自衛隊としましても、このような地方公共団体の体制整備に全面的に協力してまいりたいと考えております。

 いずれにせよ、防衛省・自衛隊といたしましては、国民保護措置を始め武力攻撃事態等における各種の対応につきましては、地方公共団体等との連携を一層強化してまいりたいと思っております。

岩谷委員 ありがとうございます。やはり、基礎自治体等にとっては、なかなか武力攻撃に対応するといっても、避難一つを取っても、専門性がないわけですから、この点、是非、おっしゃるとおり、自衛隊の方から積極的に御協力をお願いしたいと思います。

 次に、外国における緊急事態発生時に際しての邦人等の輸送についてお伺いをしたいと思います。

 昨年のアフガニスタンでの有事に際しまして、日本が国外退避を行う在外邦人の輸送について遅きに失したのではないかとか、あるいは現地スタッフ等を置き去りにしたのではないかという批判の声が上がったわけです。今国会では、この批判を受けまして自衛隊法の改正案が議論されているわけですけれども。

 その中で、現地に邦人がいない場合でも輸送できる対象者として、新たに、邦人の配偶者及び子、在外公館、独立行政法人の現地職員等を加えるとされています。また、対象者ではなくて同乗者としては、従来どおり、その他の外国人の方々も乗せることができるとされています。

 アフガンで、飛行機に多くの市民の皆さんがしがみついている、動く飛行機にしがみついて必死に逃げようとされているあの映像は本当に衝撃だったと思いますけれども、今後、自衛隊機が有事の際に輸送のために向かったときに、同じような状況が起こることも可能性としては当然あるわけです。

 今回対象とはならなかった外国人の方々は、あくまでも同乗者として乗せることができるということなんですけれども、輸送機に、輸送能力にまだ余裕があって、かつ安全にも支障がないという状況のときに、こういった対象外の方々、同乗者とされている方々も是非積極的に輸送機等に乗せて、戦火を逃れたいと必死になっている現地の方々を一人でも多くお救いするべきではないかと思いますが、いかがでしょうか。

岸国務大臣 今回の法改正は、自衛隊法第八十四条の四の規定に基づく在外邦人等の輸送について、我が国の国籍を有しない者のうち、邦人の配偶者又は子など、我が国国民と同視できるものは、我が国国民と同様に、その生命又は身体の保護を行うために自衛隊を派遣し輸送を行うことが適当であるものとの考えの下で行うものであります。その他の外国人についても、これまでどおり、主たる輸送対象者の同乗者として輸送することが可能であります。

 御指摘のような状況においても、同乗者として輸送を予定していた外国人の輸送を行うことは可能であります。

岩谷委員 確認も含めて、具体的な事例でお伺いしたいと思います。

 例えばですけれども、邦人等の、今回対象者とされている方の救出に向かうために自衛隊機が日本を飛び立った、現地に到着してみたら対象者が国外に既に退避していた場合、対象者は既にいないけれども、いわゆるその他の外国人の方々で、何とか逃れたいと思っている方々がいらっしゃった場合、この方々は、対象者がいないわけですから、同乗者として輸送機に乗れないということになったら、そのまま、せっかく行っても空で飛行機が帰ってくる、そういうことになるという理解でよろしいでしょうか。

増田政府参考人 お答え申し上げます。

 今回の法改正によりまして、輸送対象者を一定の外国人にも拡大いたしました。これは、自衛隊を派遣するときの判断として、一定の範囲の外国人を対象にするというものでございます。

 そして、今委員御指摘のとおり、現地に行きました、状況が非常に急速に動いて、対象となる邦人や、対象となる、例えば今回の法案が成立した後、一定の外国人という方々が、他の手段で、他の国の支援だとかもありまして既に出ていた場合、そういったときには、我々としては、現地に着きまして、必要があれば、これは外務大臣等の要請、各国からの要請、外務省を通じての要請となると思いますけれども、そういうものがありましたらば、必要に応じて、人道的な観点も踏まえまして、輸送ができるというところでございます。

岩谷委員 今の御答弁、大変安心いたしました。是非、人道的な観点から、積極的な輸送というものを行っていただきたいと思います。

 時間が来てしまいました。いろいろ質問を残してしまいましたが、次の機会に必ず質問させていただきたいと思います。御用意いただいた皆さん、大変申し訳ございませんでした。

 ありがとうございました。

大塚委員長 次に、美延映夫君。

美延委員 日本維新の会の美延でございます。どうぞよろしくお願いいたします。

 まずは、航空自衛官二名の方が殉職された件でお伺いさせていただきたいと思います。

 御存じのように、一月三十一日、石川県小松基地所属のF15戦闘機一機が小松沖に墜落し、搭乗されていた航空自衛隊員二人がお亡くなりになりました。殉職されたお二人の自衛隊員の御遺族に心からお悔やみを申し上げます。

 この件、防衛大臣は所信の冒頭でもF15戦闘機の墜落事故について述べられておられましたが、改めて、今回の事件について、岸防衛大臣の御所見をお聞かせいただけますでしょうか。

岸国務大臣 一月三十一日に発生した航空自衛隊小松基地所属のF15戦闘機が墜落した事故につきましては、事故を受け、事故発生直後から関係者の御協力をいただきながら、陸海空全自衛隊を挙げて二名の操縦者の捜索活動を懸命に行ってまいりました。二名の隊員が亡くなる残念な結果となりました。

 我が国防衛のために尽くしてきた最精鋭の操縦者であるお二人の貴重な命が失われたことは、防衛大臣として痛恨の極みであり、謹んで哀悼の意を表するとともに、御家族の皆様に心よりお悔やみを申し上げたいと思います。

 また、今般の事故において、地元の皆様には御心配、御不安をおかけしているところ、二人の命を失ったという重大な結果を防衛省として重く受け止めています。

 今般の事故を踏まえ、私から、事故発生後、全ての自衛隊の航空機に対して飛行前後の点検を入念に実施するとともに、全ての操縦者に対して安全確認、安全管理や緊急時の手順について教育を行うように指示し、飛行の安全には万全を期しております。

 また、引き続き、事故原因究明と再発防止策に全力を挙げるとともに、今後の自衛隊機の教育訓練及び任務体制の維持に万全を尽くしてまいりたいと考えております。

美延委員 そこはしっかり、よろしくお願いいたします。

 さて、松野官房長官が二月十四日の記者会見で、我が国の防衛のために尽くしてきた最精鋭の操縦者であるお二人の貴重な命が失われたことは痛恨の極みであり、御家族の皆様に心からお悔やみを申し上げます、事件の原因究明については航空幕僚監部に設置された事故調査委員会による調査が引き続き行われていると承知していると述べられておられます。

 今後、このような痛ましい事故が起こらないよう、先ほど岸大臣も言われていましたように、原因究明、そして、機体の回収はどの程度進んでおるのか、しっかり調査していただきたいと思います。松野大臣の記者会見から一か月近く経過しておりますが、現在調査はどの程度進んでいるのか、進捗状況を教えていただけますでしょうか。

増田政府参考人 お答え申し上げます。

 今般の事故につきましては、委員御指摘のとおり、航空幕僚監部に設置されました事故調査委員会で調査を今も行っております。

 調査状況の一つ一つにつきましては、調査に支障を及ぼすおそれがありますので、お答えすることは大変恐縮ですが差し控えさせていただきたいと思いますが、引き続き、事故の調査を鋭意進めていき、原因の究明に努めていきたいと考えております。

 そして、機体の回収につきましては、陸海空全自衛隊の捜索とともに、民間業者によるサルベージ作業に着手しまして、現在までに、垂直尾翼、エンジン、座席等の一部、計器類等を含む機体の全部、そして左の主翼を回収しております。特に、事故原因の究明に大きく寄与するのではないかと思われますフライトレコーダーにつきましても、二月二十五日に回収がされました。

 現在、その回収されましたフライトレコーダーにつきまして、中に収納されていますデータ、これを基に事故の原因について解析しておるのでございますが、この解析には技術的、専門的に一定の時間がかかるということが見込まれておりまして、解析がいつまでに終わるのかという見通しにつきましては、現時点で予断を持ってお答えすることは差し控えたいと思っております。

 いずれにせよ、今申し上げましたフライトレコーダーの解析等も含めまして、しっかりとした事故原因を究明いたしまして、再発防止、これに努めていきたいと思っております。

美延委員 しっかり調査の方をよろしくお願いいたします。

 さて、私が聞き及んだ話によりますと、堵列がしきたりとなり、階級の職務により弔砲の数が決まると聞いております。また、基地司令、中部航空方面隊司令官、総隊司令官等の参加により、部隊葬の規模が左右されるとも聞いております。私自身は、殉職自衛官への政府の扱いも、これは大事な、大切な我が国における安全保障と認識しております。我が国の防衛のために殉職された自衛官には、御遺族のお気持ちを酌んだ上で、政府としても最高の弔いをしていただきたいと思います。

 自衛隊員は、入隊時に、強い責任感を持って専心職務の遂行に当たり、事に臨んでは危険を顧みず、身をもって責務の完遂に努め、国民の負託に応えることを誓うという服務の宣言をされています。私は、残された御遺族のためにも殉職された自衛官には叙位叙勲をお渡しすべきだと思いますが、岸防衛大臣の御所見をお聞かせください。

岸国務大臣 自衛官に対する栄典は、任務に精励した功績をたたえ、改めて自衛官であったことの誇りと名誉を抱かせ、また、自衛官に対する国民からの尊敬を得る上でも重要であると考えています。

 自衛官が自らの危険を顧みることなく職務を遂行し、そして殉職した場合には、殉職時の状況により、生命の危険を伴う公共の業務に従事し、その職に殉じた者などを対象とする叙勲が行われ、また、叙位についても、国家に対しての勲功、功績のあった自衛官に対して行われることとなっています。

 今般の墜落事故で殉職された二名の自衛官についても栄典である叙位叙勲が行われるよう、現在、殉職時の状況を確認するとともに、内閣府と鋭意調整を行っているところであります。

 防衛省として、我が国の防衛のため身命を賭して任務を完遂している自衛官が、その個人の功績にふさわしい栄典を受けられるように、引き続き関係機関と協議してまいります。

美延委員 岸防衛大臣、是非よろしくお願いいたします。

 さて、事故当日の状況を私が調べさせていただきましたところ、当日、一月三十一日の訓練飛行当時の天候は雨と雪、そして気温は十七時現在で三・四度、十八時現在で一・八度と発表されています。安全とは言えない気象条件の中でなぜ訓練飛行が実施されたのか、疑問が残ります。悪天候の中での訓練飛行が事故を誘発させた可能性もあると思いますが、防衛省の御所見をお聞かせください。

増田政府参考人 お答え申し上げます。

 先ほども申し上げましたように、事故原因につきましては、今、事故調査委員会において調査が行われておりまして、現時点において特定のことについて予断を持ってお答えすることは差し控えさせていただきたいと思います。

 その上で、飛行の安全の確保は何よりも重要でございまして、最新の気象情報などを基に訓練飛行の可否を判断するほか、状況によっては見合わせるなど、飛行の安全に万全を期して飛行訓練を実施していく考えでございます。

 その上で、委員の方からも御指摘のありました事故発生当時の状況でございますが、小松飛行場周辺はみぞれであったと承知しておりますが、視程は三キロ程度あり、訓練飛行を行うに当たって支障のない天候であったと聞いております。

 その上で、当日の訓練は四機編成で、四機の戦闘機が飛び立ったということでございますが、事故機は最後でございまして、その四機のうちの三機は飛び立っていったということでございます。

 これが事実でございます。

美延委員 しっかり調査していただきたいと思います。

 今回の事件は、数ある事件の一つと片づけるのでは非常に私は問題があると考えております。連日報道にもありますように、中国軍機やロシア軍機の領空侵犯が常態化している中で、安全保障の拡充は喫緊の課題であります。

 しかし、近年は、著しく自衛隊退官者が増加し、逆に入隊志願者が減少している傾向にあります。このままでは、安全保障の拡充どころか現状維持すら難しいのではないかと容易に想像ができます。このように、未解決な上に、十分な弔いもされない事故がもし起これば、この傾向を助長する可能性もあるのではないでしょうか。

 去る人が多く、入る人が少ない自衛隊の現状と、それをつくり出すいわゆる労働環境や組織文化についてどのようにお考えなのか、防衛省の御所見をお聞かせいただけますでしょうか。

川崎政府参考人 お答えいたします。

 自衛官等の採用状況につきましては、平成二十七年度から三十年度にかけましては入隊者が採用計画数を下回っておりましたけれども、令和元年度及び二年度におきましては採用計画数を上回る入隊者を確保しております。

 ただ、少子化による採用対象人口の減少といった事情がございますので、自衛官の採用について、基本的には厳しい状況が続いているというふうに認識をしております。

 また、中途退職者につきましては、近年は年間約四千名以上の自衛官が中途退職をしておりますので、防衛力の中核である自衛官の人材流出の防止に向けて、これまで以上に取組を推進する必要があると認識しております。

 こういったことを踏まえまして、防衛省といたしましては、人材の確保を着実に行うべく、隊員の生活や勤務環境の改善、女性自衛官の活躍推進、ワーク・ライフ・バランスの推進、処遇の改善、それからハラスメントの防止、あるいはメンタルヘルス施策といった各種の施策を推進して、自衛隊の魅力の向上を図っているところでございます。

 引き続き、全ての隊員が高い士気を維持して自らの能力を十分発揮できるような環境の整備に向けて、こういった取組を不断に検討してまいります。

美延委員 今日はこれ以上聞きませんが、またいずれかの機会にもう少し聞かせていただきたいと思います。

 次に、ウクライナの情勢について伺わせていただきます。

 欧州各国は、ウクライナへの兵器支援の枠組みを広げております。スウェーデンやドイツは、長年紛争地域に武器を送らないとしてきた原則を転換して、武器の支援に乗り出しています。ドイツはこれまで、過去の戦争の反省から、武器管理法や武器輸出の政策原則などに基づいた武器の輸出国を厳格に区別し、紛争地には送らないことを原則としてきました。ウクライナへの軍事支援も、当初はヘルメットにとどまっていました。しかし、ショルツ首相は方針変換をして、対戦車砲千本、そして携帯可能な地対空ミサイルのスティンガーを五百届けることを決定しております。

 スウェーデンやフィンランドといった、NATOに加盟していない中立国も紛争中の国に武器を提供しない原則を撤回し、加盟国でありながらロシアと関係が近いトルコも、民間企業がウクライナに軍事用のドローンの販売を容認したようです。

 そんな中、政府は一昨日の八日に防衛装備品の輸出ルールを定めた防衛装備移転三原則の運用指針を改定し、ウクライナに防衛装備品である防弾チョッキなどを積んだ自衛隊輸送機を出発させたという報道がございました。

 防衛装備移転三原則は、そもそも、安倍政権時代の二〇一四年に、武器の輸出を原則禁止してきた武器輸出三原則に代わって閣議決定されたもので、平和貢献の推進や我が国の安全保障に資する場合は一定の条件を満たせば武器を含む防衛装備品の輸出を認めているものですが、防衛装備移転三原則の運用指針の改定内容について教えていただけますでしょうか。

萬浪政府参考人 お答え申し上げます。

 お尋ねがございましたように、今般、ウクライナ政府からの要請を踏まえまして、自衛隊法に基づきまして、非殺傷の装備品等を防衛装備移転三原則の範囲内で提供することとしました。具体的には、防弾チョッキ、ヘルメット等でございます。

 このうち、三原則上の防衛装備に該当する防弾チョッキにつきましては、これまでの運用指針に掲げられておりました移転を認める案件、ここには直接該当するものがございませんでしたので、今般、運用指針のうち、防衛装備の海外移転を認め得る案件という項に幾つか限定列挙されてございますけれども、そこに、国際法違反の侵略を受けているウクライナに対して自衛隊法第百十六条の三の規定に基づき防衛大臣が譲渡する装備品等に含まれる防衛装備の海外移転という文言を追記する改定をいたしまして提供を可能とし、御指摘のように、一昨晩、自衛隊機でそのものを目的地に向けまして輸送を始めているという状況でございます。

美延委員 この件についても、もう少し突っ込んだ議論をいずれさせていただきたいと思っております。よろしくお願いします。

 先日、林外務大臣に私は本会議でロシア機の飛行禁止の件を質問させていただきましたが、改めて、もう一度質問させていただこうと思っています。

 ロシアの原発攻撃など緊迫度が増しているウクライナ情勢の中で、去る四日のG7の緊急会合ではロシアの今後の出方次第では更に厳しい制裁を科すということになったと聞いておりますが、こうした中、ヨーロッパ各国やアメリカでは、自国の領空内でのロシア機の飛行を禁止するという制裁を科す動きが急速に広まってきております。

 昨今のウクライナ情勢をめぐり、我が国も同盟国アメリカと歩調を合わせてロシア機の日本の領空内の飛行を禁止する制裁措置を講じるべきという意見が、いろいろなところで聞かれております。また、私がマスコミの報道で読ませていただきましたら、日本国内の日本航空さんとか全日空さんも、ロシアの上空を通過しなくて、例えばアラスカ上空であるとか、そういうところで行くことを検討しているというような報道も目にしました。

 そういった意味も考えて、もう一度、先日の本会議に続いて林大臣に同じ質問をさせていただきます。私は禁止すべきだと思いますが、いかがでしょうか。

林国務大臣 今回のロシアによるウクライナ侵略は、国際秩序の根幹を揺るがす行為であります。明白な国際法違反であり、厳しく非難をいたします。

 この国際秩序の根幹を守り抜くために、国際社会が結束して毅然と行動しなければならないと思います。このことを示すべく断固として行動していき、こうした暴挙には高い代償が伴うこと、これを示していかなければならないと思っております。

 そうした考えの下で、我が国は、G7を始めとする国際社会と緊密に連携し、これまで迅速に厳しい措置を打ち出してきております。

 今お尋ねのございましたロシア航空機の領空内飛行を禁止する措置、これを含む更なる措置については、今後の状況を踏まえつつ、G7を始めとする国際社会と連携して適切に取り組んでまいりたいと考えております。

美延委員 林外務大臣、しっかり取り組んでいただきますよう、よろしくお願いいたします。

 ほかの質問もあったんですが、時間が参りましたので、また次回にさせていただきます。

 本日はこれで終了させていただきます。ありがとうございました。

大塚委員長 次に、赤嶺政賢君。

赤嶺委員 日本共産党の赤嶺政賢です。

 先ほどもありましたが、初めに、ウクライナへの装備品等の提供について質問をいたします。

 政府は、八日の国家安全保障会議で、自衛隊の防弾チョッキなどをウクライナに譲与することを決めました。まず、防衛大臣に、提供に至る経緯やあるいは事実関係について説明をいただきたいと思います。

岸国務大臣 今般のロシアによるウクライナへの侵略は、断じて認められない、力による一方的な現状変更であり、国際秩序の根幹を揺るがすものであります。

 我が国は、二月末のウクライナ政府からの要請を踏まえて、自衛隊法第百十六条の三に基づき、非殺傷の装備品等を防衛装備移転三原則の範囲内で提供するべく、三月八日に開催された国家安全保障会議において、防弾チョッキ、鉄帽、防寒服、天幕、カメラのほか、衛生資材、非常用糧食、発電機等を自衛隊機等により提供することにつき調整、検討することとなりました。

 三月八日、国家安全保障会議において、防衛装備移転三原則運用指針を改定するとともに、ウクライナ政府との間の国際約束を閣議決定の上で締結し、それらの装備品等を自衛隊機によって輸送し、ウクライナ政府に提供することとなりました。これらの装備品等は、自衛隊法第百十六条の三に基づき無償で譲渡されることとなります。

 提供手段については、第一便として、三月八日夜、自衛隊機KC767が提供物資の輸送のために出発しています。これ以上の詳細については、ウクライナ等との具体的な調整を行っているところでありますし、お答えは差し控えさせていただきます。

 また、具体的な数量や今後の輸送計画については、現在調整中であることから、支援する数量については現時点でお答えは差し控えますが、最終的に調整が済んだ段階でお示しいたします。

 防衛省としては、装備品等を一日でも早く提供できるように全力で取り組んでまいります。

赤嶺委員 今の説明ですと、防衛装備移転三原則の運用指針を改定し、そして、国際法違反の侵略を受けているウクライナに対して、自衛隊法第百十六条の三の規定に基づいて防衛装備を供与できるようにやっているわけですね。

 従前の武器輸出三原則は、一九八一年の国会決議で日本国憲法の理念である平和国家としての立場を踏まえたものと宣言し、確立したものであります。紛争当事国だけでなく、そのおそれのある国への武器輸出も全面禁止したものです。まさに憲法の平和主義に立脚する国是であり、本来、内閣の一存で変更することは許されないものであります。

 政府が一遍の閣議決定でこれを撤廃し、現在の三原則を決定したときに、私たちは、憲法に反し、武器輸出を推進するものだと批判しました。それに対して政府は、国際協力や我が国の安全保障に資する場合に限定し、厳格に審査し、例外化は認めない、このように説明しておりました。

 ところが、今回、また新たな規定を作ってウクライナへの提供を可能にしたわけです。例外化は認めないという当時の説明と違うのではありませんか。

萬浪政府参考人 お答え申し上げます。

 今回の措置につきましては、運用指針を改定いたしておりますが、防衛装備移転三原則につきましては、その範囲内といたしてございます。

 防衛装備移転三原則の中には、安全保障上関係のある国に対する協力と書いてございまして、この範囲内であり、かつ紛争当事国、これは、国連決議により措置の対象となっている国を指していると移転三原則そのものには書いてございますが、これにも当たらないということで今回提供いたしておるものでございます。

 ただし、大臣からも御答弁がございましたし、先ほども御答弁いたしましたように、今回、運用指針につきましては、この限定列挙の中に該当するものがなかったということで、三原則の下の手続では運用指針は追加しなければいけないということでこれを、閣議決定ではございません、九大臣国家安保会議決定でございますが、これを行いまして、運用指針について、移転し得るものというのを一つ追加したというものでございます。

赤嶺委員 例外化は認めないという当時の説明とは全く違うわけですね。これでは指針を改定しさえすればどこまでも広げることが可能ということになると思いますが、大臣、いかがですか。

岸国務大臣 今答弁がありましたとおり、今回の供与については、防衛装備移転三原則の範囲内で行われるものでございます。ウクライナについても、先ほどもありましたけれども、国連決議による紛争当事国ということではございません。その趣旨にも合致するものであります。

 今回の運用指針の改正によって、防衛装備移転三原則が例外を認める、あるいは形骸化するものであるということは考えておりません。

赤嶺委員 政府は、提供の根拠として自衛隊法百十六条三の規定をさっき挙げておられました。しかし、この規定も、あくまでも災害対応や情報収集、教育訓練などの活動のために、開発途上地域の政府に対し不用になった自衛隊の装備品を譲渡できるようにするものです。財政法の特例として、あくまで、不用になって、使わなくなった装備品を提供できるという規定です。

 今回譲渡する装備品は不用なものなのか。自衛隊で必要なものとして保管なり使用なりしていたものではないですか。

萬浪政府参考人 お答え申し上げます。

 防衛省・自衛隊では、損耗更新、あるいは予備として部隊等で使用する以外にも、一定数の装備品等を貯蔵してございます。

 今回ウクライナに供与いたしますものは、自衛隊法百十六条の三に基づきまして、自衛隊の任務の遂行に支障のない限度におきまして、例えば、損耗更新をされたもの、あるいは、以前に取得したものであって直ちには用に供しないものでございます。

 部隊の円滑な運用のためには、装備品等の一定の在庫は必要です。そのため、防衛省・自衛隊において装備品等を貯蔵することが不必要な装備品を平素から購入するということでもございませんし、繰り返しになりますけれども、今回のものは以前に取得したもの等でございまして、直ちに用に供しないものを提供することとしたというものでございます。

赤嶺委員 直ちに使用するかどうかは別にして、不用なものではないわけですね。自衛隊法の規定からも外れております。

 自衛隊法の中にあります対象は、開発途上地域ということになっています。これはどんな基準で決めているのか。ウクライナはその開発途上地域に該当するんですか。

萬浪政府参考人 お答え申し上げます。

 まず、ウクライナは開発途上地域に該当いたすと考えてございます。理由を述べますと、開発途上にある海外の地域と条文上書いてございますのは、一般には、経済協力開発機構、OECDの開発援助委員会、DACでございますけれども、これが作成する開発途上国リストに掲載される国等を指すものと承知しておりますので、その意味で、繰り返しになりますが、ウクライナは該当すると考えてございます。

赤嶺委員 二〇一七年の自衛隊法改正で、この規定を盛り込むときに、紛争当事国に提供できるというような説明は一切行っていませんでした。なぜ、この規定で交戦中のウクライナへの譲渡ができるんですか。

萬浪政府参考人 お答え申し上げます。

 御質問の点でございますけれども、御指摘の百十六条の三、自衛隊法でございますけれども、これにつきましては、防衛装備協力の一環として譲渡を行うことが適当と考えられる活動を、先ほど御指摘もありましたが、具体的に規定することにより、その協力を分かりやすく例示はしておりますが、この条文にもございますように、国連憲章の目的と両立しない活動を除きまして法律上あらかじめ使用目的を限定するという書き方にはなってございません。

 現在、ウクライナが侵略を受けているという状況におきまして、ウクライナが国連憲章の目的と両立しない活動を行っていないことは明白でございます。また、このような状況の中で我が国が協力を行うことは、国際的な平和及び安全の維持に資するものでございます。そのため、今回私どもが行います支援といいますのは、この条文の趣旨に合致したものであると考えてございます。

赤嶺委員 今回のものは、自衛隊法にある災害対応や教育訓練、交戦中の国への譲渡ということでは全く質が異なっております。無理に、強引に、従来の武器輸出三原則ではあり得なかったやり方で、憲法にも関わる行為を今の自衛隊法の規定で読み込めるというのはちょっと乱暴じゃないか、脱法的な解釈ではないかということを指摘しておきたいと思います。

 今回の決定については、報道によると、担当者が、法の空白をついたぎりぎりの判断だったと報じられているわけですね。法律の趣旨を飛び越える決定で、法治国家にもとるものだと言わなければなりません。

 今回のロシア政府による軍事攻撃は、ウクライナの主権と領土保全を侵害し、国連憲章を真っ向から踏みにじる侵略行為そのものであり、断じて容認できません。ロシア政府は直ちに違法な武力行使を停止し、軍を撤退させるべきであります。

 先日の国連総会では、圧倒的多数の賛成で非難決議が採択をされました。日本政府は、こうした国際的な共同を広げるための外交努力、そして連日深刻な状況が報告されているウクライナの避難民支援など、非軍事の支援で積極的な役割を果たすべきであります。

 しかし、交戦状態にあるウクライナに武器を提供することは、事の性格からいって、日本がこの紛争の当事者の立場に身を置くことになりかねないと思います。政府は、その点、どのように認識しておりますか。

林国務大臣 今回のロシアによるウクライナ侵略は、力による一方的な現状変更の試みであり、国際秩序の根幹を揺るがす行為でございます。明白な国際法違反であり、断じて許容できず、厳しく非難をいたします。

 この国際秩序の根幹を守り抜くために、国際社会が結束して毅然と行動しなければならないと考えます。我が国としてこのことを示すべく、断固として行動してまいります。

 我が国は、主権と領土、そして祖国と家族を守ろうと懸命に行動するウクライナの国民とともにあります。国際社会は、ロシアのウクライナ侵略により、ロシアとの関係をこれまでどおりにしていくことはもはやできないと考えております。

 今、この状況に鑑みれば、本件供与の日ロ関係への影響については申し上げる状況にはないと考えております。

赤嶺委員 外務大臣の前段の答弁はそれでいいんですけれども、最後のところは、紛争の当事者になるのではないかという私の質問には答えておりません。

 ウクライナへの旧ソ連製の戦闘機の提供をめぐって、アメリカとポーランドの間で駆け引きが続いています。

 当初、アメリカは、ポーランドが保有するミグ29をウクライナに提供し、その代わりに別の戦闘機をポーランドに提供するとしていました。ところが、一方のポーランドは、ミグ29をドイツの米軍基地に移送して、アメリカが自由に使用できるようにする用意があると発表をいたしました。

 アメリカは、支持できないと、反対の立場を表明しております。戦闘機を提供することで紛争の直接の当事者になり、紛争の拡大を招きかねないからです。戦闘機と防弾チョッキの違いはありますが、紛争の当事者になりかねないという意味では同じだろうと思います。

 私は、ウクライナへの支援は非軍事の支援に徹底してやるべきで、こういう紛争当事者になりかねないような装備品の提供はやるべきではない、脱法的な行為だということを申し上げて、質問を終わります。

大塚委員長 次に、斎藤アレックス君。

斎藤(ア)委員 国民民主党の斎藤アレックスでございます。

 私からも、冒頭、ウクライナの情勢に関連して質問させていただきたいと思います。

 侵略が始まって二週間がたちますけれども、連日、惨状がウクライナから伝えられてきます。今朝も、小児病棟が爆撃を受けて妊婦さんであったり子供たちが生き埋めになっている、犠牲になっているという、とてつもない報道も入ってきています。また、チェルノブイリ原発では冷却施設の、冷却が続いているにもかかわらず電源が喪失されているといった、そういった報道もありまして、ロシアの今回の侵略、その手法を含めて断じて許されるべきものではないと私も思いますし、また、日本政府が外務大臣始め一貫としてそういった姿勢を取っていただいていることは極めて重要なことだと考えております。

 今の質問にもありましたけれども、ウクライナの方々に対する支援、またウクライナ政府に対する支援、できる範囲で日本政府としても全力で続けていただきたいと思いますし、また、今回のロシアの侵略、野望、行動をくじくための経済制裁、国際社会との連携した取組、これもしっかりと、引き続き全力で日本政府としても取り組んでいただきたいというふうに思います。

 今回のロシアの侵略は、安保理常任理事国また核兵器保有国が隣国を侵略するという意味で、第二次世界大戦を経た今の国際秩序が大きく変わってしまったという、そういった認識を持たれている方もたくさんいらっしゃると思います。私もそのように考えております。国際秩序に基づいた法と自由主義が尊重される、そういった秩序が一国の意思によって、そして特に安保理の常任理事国によって踏みにじられるということは、極めて日本の安全保障環境にも影響があることだと考えております。

 日本は、ロシアはもちろんですけれども、お隣には中国というもう一つの安保理常任理事国、核兵器保有国があるわけでございますけれども、今回のこのロシアの行動を経て、日本の安全保障環境にどういった変化があるというふうに御認識をされているのか、政府の御所見を伺いたいというふうに思います。

岸国務大臣 ありがとうございます。

 我が国周辺において強大な軍事力を有する国家が集中し、軍事力の更なる強化、軍事活動の活発化の傾向が顕著になってきております。

 例えば、中国による東シナ海を始めとする海空域における力を背景とした一方的な現状変更の試み、中ロによる我が国周辺の海空域における我が国への示威行動を意図したと考えられるような軍事演習、北朝鮮による新型ミサイルを含む弾道ミサイル開発や極めて高い頻度でのミサイル発射、極東ロシア軍による活発な軍事活動など、我が国を取り巻く安全保障環境は非常に厳しさを増しています。

 今般のロシアによるウクライナ侵略は、欧州のみならず、国際秩序の根幹を揺るがす行為であって、厳しさを増す安全保障環境にあって、我が国の防衛大臣としては、インド太平洋や東アジアにおいてこのような力による一方的な現状変更を許すわけにはまいりません。防衛省として、我が国の領土、領海、領空、また国民の生命と財産を守り抜くため、今回のウクライナ侵略が我が国を取り巻く安全保障環境に及ぼし得る影響も含めて、関連動向を一層の緊張感を持って注視してまいりたいと考えております。

斎藤(ア)委員 大臣、ありがとうございます。

 今回のロシアによる侵略は、様々な国際政治に対する影響があると思っております。本日の質問でも、立憲民主党の筆頭理事の委員の御質問からもありましたけれども、ウクライナが核兵器を放棄した際にはロシア、アメリカ、イギリスがウクライナの領土の一体性を守る、そういった協定に、文書にサインしていたのにもかかわらず、今回、その当事国のロシアが侵略をするということで、これを見て北朝鮮がどう思うかといえば、絶対に核兵器は放棄しない、そう思うと考えた方がいいと思いますし、極めて大きな影響が日本国の周辺でも起こるというふうに考えるべきだというふうに思います。

 かねてから日本の安全保障環境は極めて厳しいという認識が共有されていますけれども、これによってより一層、特に偶発的な事態が起きて日本周辺で紛争が起きるということをより現実味を持って認識しなければ、もちろん防衛関係者の皆様ではそういったことが起こり得るという想定の下で御準備をいただいていると思いますけれども、より一層こういった危機が、事象が日本国の周辺でも起きるという想定を持たなければならないというふうに考えております。

 考えられる日本有事のシナリオとして、どういったことを今防衛省としては特に注視しているのか、そしてどういった準備をされているのかということを伺えればと思います。よろしくお願いします。

岸国務大臣 防衛省においては、国家国民を守り抜くため、様々な状況を想定して、平素から各種の検討を行っております。

 その詳細については、事柄の性質上、お答えを差し控えますが、その上で申し上げれば、日米同盟は、我が国自身の防衛体制と相まって、我が国の安全保障の基軸であり、インド太平洋地域の平和と安全及び繁栄の礎です。我が国を取り巻く安全保障環境が一層厳しさを増す中で、その重要性はこれまでになく高まっています。

 日米間では、平素から緊急事態までのいかなる状況においても切れ目のない形で日本の平和及び安全を確保するための措置を取ることとしており、自衛隊と米軍との間でも緊密に連携し、万全の対応を取ってきております。

 各種事態における自衛隊と米軍の具体的な連携は個々の状況に応じて決定されるため、一概にお答えすることは困難ですが、日米安保条約の下で、自衛隊、米軍による対処の基本的な考え方は日米防衛協力のための指針においてお示ししております。加えて、日米間では、同盟調整メカニズムを通じて、平時から緊急事態までのあらゆる段階において、自衛隊及び米軍の活動に係る政策面及び運用面の調整等を行うこととしています。

 こうした日米による対処の実効性を高めるためにも、防衛省としては、我が国自身の防衛力を抜本的に強化するとともに、宇宙、サイバーを含む様々な分野での日米防衛協力の強化や、各種の共同訓練の着実な実施など、様々な取組を通じて、引き続き日米同盟の抑止力、対処力を不断に強化してまいります。

斎藤(ア)委員 ありがとうございます。

 個別具体的に、どういった有事のシナリオが想定されるということはなかなかおっしゃっていただけないかと思いますけれども、私から何点か例示をさせていただくと、やはり尖閣とそして台湾。台湾に関しては、昨年来、米国の議会でも米軍の司令官クラスの方が、今後数年以内に侵攻される危険性があるということを委員会で明言されるなど、極めて緊張感が、特にウクライナ侵攻によっても更に緊張感が高まっているというふうに思います。

 中国がどういった行動を取るかというのは知り得ませんし、今回のウクライナに対する侵略のようなことを行う、クリミア半島で行ったようなことを行う、あるいは、そういったことではないけれども偶発的に衝突が起きて戦闘になってしまう、様々なケースが考えられて、いつ、どういったタイミングでそういったことが起きるのかが本当に読めないというか、もちろん読めないんですけれども、今回のウクライナの状況を見てみますと、いつ起きてもおかしくないということを、改めて日本国としてもしっかりと持っていかなければならないというふうに考えております。

 だからこそ、今大臣からも答弁をいただきましたけれども、日本だけでは対処できない、それぐらい強大な隣国が日本の周りにありますから、しっかりと日米同盟を維持、堅持して強化していく、その中で役割分担を行って、日本と極東地域、アジア地域をしっかりと平和と安定の状態にしていくといった取組が重要になるというふうに私も考えております。

 しかし、それと同時に、だからこそ、日米同盟が重要だと思うからこそ、私たち国民民主党としましては、日米地位協定に関しては、しっかりと国内の、国民の皆様、有権者の皆様の御理解が得られる形に改定をしていく、少なくとも日本国政府としては改定を目指していくということをしっかりと主張していくことが必要なのではないかなというふうに考えております。

 私の今の質問で御理解いただいていると思いますけれども、私はあくまで日米同盟が極めて重要だと考えております。

 林外務大臣も、大学院を卒業された後、アメリカ議会で勤務をされていた御経験をお持ちですけれども、私も、松下政経塾時代にアメリカの下院議員の事務所で勤務をさせていただきました。それは、私も、日米関係が日本にとって最も重要な二国間関係であるという認識に基づいて、しっかりとアメリカのことを理解しようといった思いで勉強させていただいておりましたので、日米関係は極めて重要である、日米同盟がとても日本の防衛、極東の防衛にとって重要であるという認識の下でお伺いをしたいんですけれども、まず、日米地位協定に対する考え方、改定の必要性について、何回も答弁いただいていますけれども、改めて外務大臣からお伺いしたいというふうに思います。

林国務大臣 御指名ありがとうございます。

 政府としては、地元の負担軽減に全力で取り組んできておりまして、在日米軍再編、米軍の運用や日米地位協定をめぐる課題について、米側と連携して一つ一つ前に進めてきております。

 日米地位協定、これは大きな法的枠組みでありまして、政府としては、事案に応じて、効果的に、かつ機敏に対応できる最も適切な取組を通じ、一つ一つの具体的な問題に対応してきております。

 すなわち、政府としては、これまで、日米合同委員会合意による日米地位協定の運用の改善にとどまらず、例えば、二〇一五年には環境補足協定、二〇一七年には軍属補足協定を締結をしたところでございます。国際約束の形式で得たこれらの成果は、日米地位協定の締結から半世紀を経て初めてのものでございます。

 日米地位協定自体の見直し、これは考えておりませんが、こうした取組を積み上げることによって、日米地位協定のあるべき姿を不断に追求してまいりたいと考えております。

斎藤(ア)委員 ありがとうございます。

 これから日本の周辺の安全保障環境が更に厳しくなって、そして、ウクライナの状況を見ていますと、最後、その国を守るのはその国の国民である、そうでなければならないということが改めて認識をされます。

 テレビのコメンテーターの中には、降伏してしまって命を守る方が重要ではないかとおっしゃる方もいますけれども、人間というのは、ただ生命がある、生きているだけでは生きているとは言えない、しっかりと自分たちの意思に基づいて自分たちの生き方を決められる、それが人間の生き方でございますから、そういった意味でも、自分たちの国を守るという役割は、最終的には国民である我々が果たしていかなければならないというふうに考えておりますので。

 これから、先ほど、一番最初の質問でも防衛大臣からありましたけれども、日本の防衛力を抜本的に強化していく、そういった取組は非常に重要だと思いますし、日本の国を日本で守るという取組をこれからも進めていくことになると思いますが、だからこそ、主権国家として、私たちは自分たちの国をしっかりと守るんだ、アメリカとも協力をしていくけれども、主権国家として、日本の国土、これは自分たちで管理をさせてほしい、そう言っていくのが主権国家として当たり前の立場だと思いますし、そういったことを実現できてこそ、そういったことと日本独自の防衛力を強化するということは一緒に進めていかなければならないというふうなことだと考えております。

 そういったことをしっかりと政府でも行っていけば、国民の間にも、日本の国は自分たちで守らなければならないんだという意識が更に広がっていくことになるというふうに考えておりますので、日米地位協定の改定、これに取り組まない、必要性を感じないという今の政府の立場、これまでもずっと自民党政権ではそうでしたけれども、そういった立場というのは変えていただかなければならないと思いますし、それを変えていくためにも、私たち国民民主党は引き続き努力を続けていきたいと思っております。

 改正が必要ないということに関してもう少しお聞きをしたいんですけれども、少しずつ状況を改善している、様々な取組を行っている、米国との信頼関係も高まっているし、様々な改善を行っているということでございますけれども、横田空域は残っている、日本の首都の上空は自分たちで管理できずに米軍の管理下に置かれている、事故が何か起こった際には米軍の管理下でそれが処理をされる。

 もちろん、機密情報などもありますので、米軍がそういった事故機などを回収することは当然認めていかなければならないですけれども、少なくとも、事故現場に入れないような状況、そういったことを改善していく必要があると思いますし、また、何らかの事件が起きた際には、やはり日本が主体的にそういった問題を解決できるようにならなければならない。あくまで、日米地位協定があるからそういった日本の主権が侵害をされているという状況を、放置されている今の状況を抜本的に改善していく必要がないというふうに考えるのは、私は主権国家としてあるまじきことだと思うんですけれども。

 こういったことは、自民党の先生方も政権入りする前はよくそういったことをおっしゃって、日米地位協定を改定しようということをおっしゃるんだけれども、政権入りして大臣になられると、今の林外務大臣のような答弁になってしまうということがあって。多分、問題意識は共有していただいていると思うんですけれども。

 改めて、大臣のお立場ですので、これでも、こういった日本の主権が十分に担保されていないというような状況でも、本当に日米地位協定の改定は必要ないのでしょうか。

林国務大臣 繰り返しになって恐縮でございますが、先ほど申し上げましたように、地位協定そのものは大変大きな法的枠組みでございまして、政府としては、事案に応じて、効果的に、かつ機敏に対応できる最も適切な取組、これを通じて、一つ一つの具体的な問題に対応してきておるところでございます。

 そういったことで、協定自体の見直しというのは考えておらないわけですが、先ほども申し上げましたような取組、これを積み上げることによって、日米地位協定のあるべき姿を不断に追求してまいりたいと考えております。

斎藤(ア)委員 米国での御経験もあって、私もアメリカ議会にいるとき関係者の方に、そのときは林農林水産大臣であられましたけれども、知っているかというふうに聞かれて、彼は非常にいいやつなんだと言って、関係者からもそういった話を聞いてですね。そういったふうに、いろいろな人間関係を持たれている、信頼関係も更に高めていけるような林外務大臣だと思いますので、表のこういった場面では言えない中でも、是非とも、日米地位協定に課題、問題がまだあるというふうに、こういった問題意識を我々と共有していただけるのであれば、こういった改定に向けた取組は不断に是非とも続けていただきたいというふうに考えております。

 繰り返しになりますし、また他の委員からもありましたけれども、特に沖縄では、在日米軍基地による負担というものが相変わらず極めて重いものになってしまっています。戦後の最終期に激しい地上戦が行われて、大変多くの沖縄県民の皆様が命を落とされて、そして、平和になったら少しでもやはりそういった傷を癒やせるよう、また、そういった先人たちの苦労に報いられるような平和な沖縄の環境をつくりたいと思っていながらも、そういったことがなかなか実現できていない状況でございます。

 もちろん、日本国に在日米軍があること、米軍基地があることは、日本の防衛に私はとても寄与することだと思っていますので、円滑な状況で在日米軍が活動できる状況というのは守っていかなければならないと思っております。

 だからこそ、日本国民の間で在日米軍に対する理解が更に広まって、防衛体制を強化していくためにも、日本の主権下でしっかりと管理を行っていく。日本の主権が侵害をされている、日本が守ってもらっているから言うことを聞かなきゃいけないんだという、そういった感覚が続いてしまえば、日本国民の、自分たちの防衛意識というものもなかなか高まらないと思いますので、これから先、更に安全保障環境が厳しくなる中で、日本の防衛力を高めていくということにこの日米地位協定の改定は私は沿ったものだと思いますので、是非ともそういったことを念頭に置いていただければと思います。

 日米地位協定の様々な課題、問題、これは自民党の先生方においても御共有をいただいていると思いますので、是非とも一体となった取組を与野党関係なくしていければというふうに考えております。

 では、時間が来ましたので、質問を終わらせていただきます。ありがとうございました。

大塚委員長 外務大臣は御退席いただいて結構でございます。

     ――――◇―――――

大塚委員長 次に、内閣提出、防衛省設置法等の一部を改正する法律案を議題といたします。

 趣旨の説明を聴取いたします。岸防衛大臣。

    ―――――――――――――

 防衛省設置法等の一部を改正する法律案

    〔本号末尾に掲載〕

    ―――――――――――――

岸国務大臣 ただいま議題となりました防衛省設置法等の一部を改正する法律案について、その提案理由及び内容の概要を御説明いたします。

 自衛隊の任務の円滑な遂行を図るため、自衛官定数の変更、外国における緊急事態に際し防衛大臣が行う在外邦人等の輸送の要件等の見直し、麻薬等の譲渡に係る特例規定の整備及び保険医療機関等から診療を受けようとする自衛官等に係る電子資格確認の導入等の措置を講ずる必要があります。

 以上が、この法律案の提案理由であります。

 次に、この法律案の内容について、その概要を御説明いたします。

 まず、防衛省設置法の一部改正について御説明いたします。

 これは、宇宙・サイバー領域における優位性の獲得に必要な部隊の新編や拡充を始めとする防衛省・自衛隊の体制の整備のため、航空自衛隊の自衛官の定数を六十六人増加し、陸海空の共同の部隊に所属する自衛官の定数を三十六人増加し、統合幕僚監部に所属する自衛官の定数を一人増加し、防衛装備庁に所属する自衛官の定数を一人増加する一方、陸上自衛隊の自衛官の定数を九十人、海上自衛隊の自衛官の定数を十四人、各々削減するものであります。なお、自衛官の定数の総計二十四万七千百五十四人に変更はありません。

 次に、自衛隊法の一部改正について御説明いたします。

 第一に、外国における緊急事態に際して防衛大臣が行う在外邦人等の輸送について、輸送手段を原則として政府専用機とする制限の廃止、実施に当たっての安全に係る要件の見直し及び主たる輸送対象者の拡大を行うこととしています。

 第二に、麻薬及び向精神薬取締法に規定する麻薬及び向精神薬の譲渡に係る規制について、自衛隊法又は他の法律の規定により自衛隊が外国軍隊に提供する場合は適用しないこととしています。

 最後に、防衛省の職員の給与に関する法律の一部改正について御説明いたします。

 これは、国家公務員共済組合員の例に準じて、保険医療機関等から診療を受けようとする自衛官等に係る電子資格確認の導入等をするものであります。

 以上が、この法律案の提案理由及びその内容の概要であります。

 何とぞ、慎重御審議の上、速やかに御賛同あらんことをお願いいたします。

大塚委員長 これにて趣旨の説明は終わりました。

 次回は、公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。

    午前十一時五十六分散会


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