衆議院

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第7号 令和4年6月3日(金曜日)

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令和四年六月三日(金曜日)

    午前九時開議

 出席委員

   委員長 大塚  拓君

   理事 門山 宏哲君 理事 武田 良太君

   理事 星野 剛士君 理事 宮澤 博行君

   理事 篠原  豪君 理事 徳永 久志君

   理事 美延 映夫君 理事 吉田 宣弘君

      青山 周平君    江渡 聡徳君

      熊田 裕通君    國場幸之助君

      塩谷  立君    鈴木 憲和君

      高階恵美子君    中曽根康隆君

      中西 健治君    長島 昭久君

      浜田 靖一君    松島みどり君

      山本 左近君    新垣 邦男君

      伊藤 俊輔君    玄葉光一郎君

      太  栄志君    岩谷 良平君

      掘井 健智君    佐藤 茂樹君

      鈴木  敦君    赤嶺 政賢君

    …………………………………

   防衛大臣         岸  信夫君

   外務副大臣        小田原 潔君

   経済産業副大臣      石井 正弘君

   防衛大臣政務官      中曽根康隆君

   政府参考人

   (内閣官房内閣審議官)  澤田 史朗君

   政府参考人

   (内閣官房内閣審議官)  吉川 徹志君

   政府参考人

   (内閣府大臣官房審議官) 松多 秀一君

   政府参考人

   (外務省大臣官房審議官) 徳田 修一君

   政府参考人

   (外務省大臣官房審議官) 御巫 智洋君

   政府参考人

   (外務省大臣官房参事官) 實生 泰介君

   政府参考人

   (外務省大臣官房参事官) 金井 正彰君

   政府参考人

   (海上保安庁警備救難部長)            白石 昌己君

   政府参考人

   (防衛省大臣官房政策立案総括審議官)       川嶋 貴樹君

   政府参考人

   (防衛省防衛政策局長)  増田 和夫君

   政府参考人

   (防衛省整備計画局長)  土本 英樹君

   政府参考人

   (防衛省人事教育局長)  川崎 方啓君

   政府参考人

   (防衛省地方協力局長)  岡  真臣君

   政府参考人

   (防衛省統合幕僚監部総括官)           深澤 雅貴君

   政府参考人

   (防衛装備庁装備政策部長)            萬浪  学君

   政府参考人

   (防衛装備庁プロジェクト管理部長)        坂本 大祐君

   政府参考人

   (防衛装備庁調達管理部長)            内藤 正雄君

   安全保障委員会専門員   奥  克彦君

    ―――――――――――――

委員の異動

六月三日

 辞任         補欠選任

  齋藤  健君     高階恵美子君

  細野 豪志君     中西 健治君

  斎藤アレックス君   鈴木  敦君

同日

 辞任         補欠選任

  高階恵美子君     山本 左近君

  中西 健治君     細野 豪志君

  鈴木  敦君     斎藤アレックス君

同日

 辞任         補欠選任

  山本 左近君     齋藤  健君

    ―――――――――――――

五月十六日

 戦争法の廃止を求めることに関する請願(宮本徹君紹介)(第一〇六九号)

同月二十五日

 日本でのオスプレイ配備撤回、訓練中止に関する請願(志位和夫君紹介)(第一二三三号)

は本委員会に付託された。

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 政府参考人出頭要求に関する件

 国の安全保障に関する件


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     ――――◇―――――

大塚委員長 これより会議を開きます。

 国の安全保障に関する件について調査を進めます。

 この際、お諮りいたします。

 本件調査のため、本日、政府参考人として内閣官房内閣審議官澤田史朗君、内閣官房内閣審議官吉川徹志君、内閣府大臣官房審議官松多秀一君、外務省大臣官房審議官徳田修一君、外務省大臣官房審議官御巫智洋君、外務省大臣官房参事官實生泰介君、外務省大臣官房参事官金井正彰君、海上保安庁警備救難部長白石昌己君、防衛省大臣官房政策立案総括審議官川嶋貴樹君、防衛省防衛政策局長増田和夫君、防衛省整備計画局長土本英樹君、防衛省人事教育局長川崎方啓君、防衛省地方協力局長岡真臣君、防衛省統合幕僚監部総括官深澤雅貴君、防衛装備庁装備政策部長萬浪学君、防衛装備庁プロジェクト管理部長坂本大祐君、防衛装備庁調達管理部長内藤正雄君の出席を求め、説明を聴取したいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

大塚委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

大塚委員長 質疑の申出がありますので、順次これを許します。玄葉光一郎君。

玄葉委員 おはようございます。玄葉です。

 今日は、ロシアによるウクライナ侵攻について最初に取り上げて林外務大臣と議論する予定でおりましたが、やむを得ない事情で欠席をされるということでございますので、まず、日米拡大抑止のことについて、岸防衛大臣と議論をさせていただければというふうに思います。

 この拡大抑止でございますけれども、オバマ大統領が二〇〇九年に核なき世界というものを提唱をされた。そして、現にトマホークなどを廃棄するなどということがあって、とにかく米国の核の傘というものの信頼性を高めていこうということで始まったと承知をしておりますし、現に二〇一〇年からスタートして、私もその協議の報告などを受けたこともございました。

 それで、この米国の核の傘、これは日本にとっては、いわば命綱のようなものだとも思います。破れ傘にしないためにも信頼性を高めていくという努力が必要だと思いますが、まず、現状、どのレベルで、具体的にどんな協議が現在行われているのかということについて御説明をいただければと思います。

岸国務大臣 今委員の御指摘のとおり、我が国を取り巻く安全保障環境は非常に厳しいものがあると思いますが、その中で、現実に核兵器が存在していることを踏まえれば、核抑止力を含む米国の拡大抑止は我が国にとって不可欠であります。

 先月の日米首脳会談でも確認されましたとおり、その信頼性の維持強化のために、米国と緊密に協議、協力をしていくことが重要であり、日米間では、日米拡大抑止協議の場を含めて様々なやり取りを行っております。

 拡大抑止協議においては、日米同盟の抑止力を強化する方策について率直な意見交換が行われています。例えば、米国側からは、米国の抑止政策やこれを裏打ちする能力についての説明を受け、日本側からは、米国から提供する拡大抑止の信頼性が維持されることが重要であるということをるる説明をしてまいっております。双方の緊密なやり取りが行われているところでございます。

玄葉委員 御説明をいただいたんですけれども、できれば、外務、防衛当局が出席をされていると思いますけれども、どんな方々が現状は出席されているのか、教えていただけますか。

増田政府参考人 お答え申し上げます。

 二〇一〇年以降定期的に協議を実施しておりますこの日米拡大抑止協議でございますけれども、日本側の代表は、外務省の北米局参事官、そして防衛省の防衛政策局次長でございまして、米側の代表は、国防次官補代理(核・ミサイル防衛政策担当)と、それから国務省の軍備管理・検証・遵守局の次官補代理でございます。

玄葉委員 これは事務方で結構なんですけれども、外務省は北米局の参事官が責任者で出ていると。これはずっとそうですか。

増田政府参考人 お答え申し上げます。

 いわゆる局次長級でやっておりまして、外務省の方は北米局の参事官というふうに承知しております。

玄葉委員 私の記憶だと局長なども出席していたように思いますけれども、大体そういうレベルで行われているということですね。

 それで、岸防衛大臣、今お話がございましたように、日米の首脳会談で、より一層緊密に意思疎通をしていくのだ、こういうふうに首脳同士で決めたわけでありますけれども、これは、今行われている日米の拡大抑止協議をどういうレベルにしていく、具体的にどのようにして緊密な意思疎通を図っていくというお考えなのか、お聞かせをいただければと思います。

岸国務大臣 我が国を取り巻く安全保障環境が一層厳しさを増す中におきまして、米国の拡大抑止の信頼性を維持強化する一層の必要性があると考えております。

 こうした認識の下で、先月の日米首脳会談において、バイデン大統領から、核を含むあらゆる種類の能力によって裏づけられた、日米安保条約の下の対日防衛に関する米国のコミットメントが改めて表明されました。両首脳は、今後も拡大抑止が揺るぎないものであり続けることを確保するため、日米2プラス2や拡大抑止協議をも含めて、日米間で一層緊密な意思疎通を行っていくということで一致をしたところでございます。

玄葉委員 先ほど御説明がありましたけれども、これまで拡大抑止協議というのは大体事務レベルで、局長級、局次長級で行われていたということであります。例えば、この間、核抑止、拡大抑止の議論というのはなかなか、閣僚間あるいは首脳間などで議題になったということは余りないように思っていて、いわば、これからは、そういう核抑止協議、拡大抑止協議というのもしっかりと首脳同士あるいは閣僚同士で話をしますよ、あるいは2プラス2などで議題にしますよ、そういう意味なのかどうかも含めてお答えいただければと思います。

岸国務大臣 拡大抑止協議に参加しているのは外務省及び防衛省ですが、閣僚級においても、例えば首脳会談、それから2プラス2では、これまで拡大抑止についてしかるべく議論を行ってきております。本年一月の日米2プラス2においても、まさに閣僚レベルで、米国の拡大抑止が信頼でき、強靱なものであり続けることを確保する決定的な重要性を確認したというところでございます。

 いずれにしても、御指摘も踏まえつつ、引き続き、米国の拡大抑止の信頼性の維持強化に向けて、日米間でしっかりと協議をしてまいります。

玄葉委員 いわば、抑止力のレベルを上げるということを具体的にどうするかということだと思います。

 ちなみに、核共有という議論について国会でも何度か議題になっているようでございますけれども、この核共有については、岸防衛大臣はどういうお考えでありましょうか。

岸国務大臣 我が国は非核三原則を堅持しております。核共有、ニュークリアシェアリングという考え方については、非核三原則と相入れないものがあると考えております。

玄葉委員 というと、改めて確認ですけれども、非核三原則に反するので核共有については反対、こういうことでございますか。

岸国務大臣 ニュークリアシェアリングは、非核三原則を堅持していくということとの関係から認められないというふうに考えております。

玄葉委員 二〇一〇年に岡田外務大臣が、核の一時的寄港を認めないと日本の安全が守れない、そういう事態にあっては、そのときの政権が命運を懸けて決断をし、国民に説明をする、こういう答弁をしたわけでありますが、この立場についてはいかがお考えですか。

岸国務大臣 先日、予算委員会等で岸田総理からも御答弁がございましたけれども、我が国は、この非核三原則の下で、核シェアリングという考え方については議論しないということでございます。

玄葉委員 今私が申し上げたのは、核共有のことではなくて、岡田さんが、二〇一〇年当時、いわば、有事にあっては米国の核艦船の一時的な寄港を場合によっては認め得るんだ、時の政権が命運を懸けて判断するんだ、こういうことを言ったわけであります。私はそれを支持していますけれども、これはいわば非核三原則の持ち込ませずの例外を認めたということと私は解釈しているんですけれども、岸防衛大臣はこのお考えについてはいかがお考えですかということです。

岸国務大臣 核を持ち込ませずという部分につきましては、非核三原則の一部を構成している要素でありますし、このことはこれまでも我が国として堅持をしてきたことであります。よって、どのような事態が、仮定の事態が起こるかということに基づいてお話をするのは控えますが、やはり、この非核三原則については堅持すべきものと考えております。

玄葉委員 これは、防衛大臣、政府の中で一度確認をしてもらいたいと思うのですが、先ほど申し上げたように、私の立場は、当時の岡田外務大臣の、有事にあっての一時的寄港は認め得るという立場を支持しています。多分、今の日本政府もそういう立場かと思って、念のため確認で答弁を求めたのでありますが、今のお話だと、必ずしもそうではないという答弁に聞こえますが、いかがですか。

岸国務大臣 政府の立場といたしましては、岡田外務大臣の当時の答弁につきましては継承しているわけではございますが、一方で、非核三原則につきましても堅持をしているという立場であります。

玄葉委員 要は、岡田外務大臣の答弁を引き継いでいる、継承している、他方で非核三原則も堅持する、そういう意味ですね。それなら分かるといえば分かるのですが、よく整理をしておいた方がよいのではないかと思います。

 その上で、今日私が実は問題にしたかったのは、この拡大抑止というのを日米でしっかり議論をしてレベルを上げていくためにどうするかということなんです。もっと言うと、私たちの国、これは主権の問題なので、関与の仕方をどうするか、関与のレベルをどうするかということをそろそろ考えなきゃいけないんじゃないかという問題意識を私は持っています。

 これも蛇足かもしれません、ちなみにお聞きしますけれども、岡田外務大臣が答えたような、有事のときの核の一時的な寄港を認め得るということについて、そのときは、当然これは日米の事前協議の対象ということでよろしいですね。

岸国務大臣 そのような場合においては、米国との間でも事前に協議を行い、そして、日本が独立国家として主体的に判断をするということになると思います。

玄葉委員 当然そういうことだと私も思っていて、ただ、御承知のとおり、当時、核密約の話があって、それが有識者委員会で議論されて、どうやらこれまでは核密約があったので、これは広義の密約があって、いわば事前協議をしなくても核の一時的な寄港を日本政府は認めるんだという、どうも密約があったという話があの当時明らかになったわけです。

 それを今問題にしたいわけじゃないんですけれども、やはり、そういうことがきっとあったんでしょう、あったんだけれども、しっかりとここは事前協議の対象にする、アメリカの認識もそういう認識でなければならないと思いますけれども、これについてはいかがですか。

増田政府参考人 お答え申し上げます。

 本来であれば外務省の方から御答弁させていただくことが筋だと思いますけれども、今委員の御指摘の点につきましては、現状では、非核三原則を我々は堅持するということになっておりますが、当時の岡田外務大臣の答弁にございますように、国際情勢が非常に急転して、そのような議論若しくは決断をしなきゃいけないとそのときの内閣が様々なことを考慮してやっていくということでございますので、私たちが今の時点でそのような議論をしているということは、私たちは承知しておりません。

玄葉委員 それは承知していないとは思いますけれども、結局、これからあり得るわけです。核搭載の艦船の問題というのはあるんだけれども、これから、いずれにしても、有事において核が日本に入ってくるということは十分あり得るし、それによってある意味核の傘の信頼性というのが高まるという側面もあるわけです。私はそれを否定しているわけではありません。

 ただ、主権の問題として、日本がどこまでこういった問題に関与するかということを私は問題にしたいんです。

 特に、事前協議、持込みの事前協議よりも、むしろもっと一歩進んで、例えば、本当に持ち込むことを日本政府が有事のときによしという判断をする場合は、場合はあると言っているわけですから、場合は、その運用とか配備の仕方とか、そういうところまでしっかりコミットするのかしないのか、私はそこまで考えるならするべきだと思っている方ですけれども、それを政治家岸防衛大臣はどういうふうにお考えになられますか。こういうことです。

岸国務大臣 核持込みという仮定の御質問にお答えはしづらいわけですが、いずれにいたしましても、拡大抑止協議につきましては、日米間でも、行われております様々なレベルで平素からも議論がされているところでございますが、その中でしっかりと議論をすべきことであろうというふうに考えております。

玄葉委員 私は、本当にこの問題が気になっていて、例えば、アメリカとオーストラリアなどは、オーストラリアの政治家なんかと議論すると、アメリカが自分の国の基地とか領域、アセットを使う、そのときは、使ってももちろんいいんだけれども、情報は共有するということだし、どういう運用をしているのかということを聞いたらアメリカは必ず答える、こういう関係にあるというわけです。これは主権の問題なので。

 日本としても、だんだんそういう関係をしっかり築いていかないといけないんじゃないかというふうに思っていて、このことについての岸防衛大臣の決意、これは政治家としての決意というのをお聞きしたいなということです。

岸国務大臣 核の議論につきましては、様々な国で事情が異なるというふうに考えております。

 日米間においても、日米同盟の下で核抑止力をしっかり働かせるということを常に確認をしておくことは大変重要だと思いますし、そのための、拡大抑止が有効に機能し得るということの裏づけについてもしっかりと確認をしていくことが、何より抑止力を働かせることになるのではないかと思います。

玄葉委員 例えば、先ほど申し上げたように、オーストラリアなどは、アメリカと情報共有をして、運用についても協議をして、そしてその上でアメリカの判断を受け入れる、あるいは一緒に判断する、こういう関係です。やはりこれからそういうことを目指していかなきゃいけないんじゃないか。

 この間、ある本で、日本の外務省でずっとこの問題に関わってきた高見沢さんが書かれていますけれども、日本がそういうことを米国に提案をするとシャープにリジェクトされるとはっきり書いちゃっているんですね。

 本当にそういうことでいいのかということがやはりあって、是非これは、我々政治家がもっとしっかりして、一歩踏み込んでいかないといけない大事なテーマなんじゃないかと思いますが、もう一度、岸防衛大臣、いかがですか。

岸国務大臣 この拡大抑止につきましては、我が国の抑止力に関わる問題ですので、大変重要な観点だと思っております。

 いずれにしても、核抑止力につきましては、そのための拡大抑止協議があるものと思いますし、その中でしっかりと議論をしていく、そして、拡大抑止が有効に機能するということをしっかり確認をしていく、そのことが大事なんだろうというふうに考えております。

玄葉委員 是非、岸防衛大臣、外務大臣と御相談いただいて、これから2プラス2などで拡大抑止の、少なくとも言葉は出てくると思うんですけれども、内容、中身について少し踏み込んで今回議論しようかとか、そういうことを外務大臣と相談されてもいいんじゃないかなというふうに思っていて、そういう時期がだんだん来ているんじゃないかというふうに思います。

 この拡大抑止、信頼性の向上というのは、私も、核共有の立場は岸防衛大臣と同じ立場なんですけれども、その代わり、やはり拡大抑止の信頼性を高めるということは大変大事なことなので、一つの提案として申し上げておきたいと思います。

 残り時間が少なくなっちゃったんですけれども、ロシアのウクライナ侵略、侵攻ですけれども、一つは、この制裁効果に対する評価を、外務省としてどう判断、評価していますか。

小田原副大臣 玄葉委員にお答え申し上げます。

 我が国はこれまで、G7の首脳声明などを踏まえまして、厳しい制裁措置を着実かつ速やかに実施しております。各国の制裁措置によって、物価の上昇や外国企業の撤退、操業停止など、ロシア経済への様々な影響が出ていると認識しています。

 ロシアによるウクライナ侵略は、国際秩序の根幹を揺るがす暴挙であります。高い代償が伴うことを示していくことが重要であります。一刻も早くロシアが侵略を止めるよう、また、そのためにも、制裁の抜け道が生じないようにして、制裁が一層効果的なものになるよう、引き続き、G7を始めとする国際社会と結束をいたしまして、強固な制裁を講じてまいります。

 参考までではありますが、二〇二二年のロシアのGDP成長率、ロシアの経済発展省の発表でマイナス七・八%成長、世銀はこれをマイナス一一・二%成長、IMFはマイナス八・五%成長というふうに予測をしております。全てが制裁の効果と言い切れるかどうかというのは議論の余地はあると思いますけれども、着実な効果が出ていると認識しております。

玄葉委員 物流を止められて物が入らないというのが大変大きいのかなというふうに私も思っているのですけれども、私も、これはお手元にお配りしましたけれども、三月の十七日の共同通信の配信記事のインタビューなのですが、実は侵攻直後に受けたインタビューだったんですが、私もロシアに代償を払わせなきゃいけないということを当時から言っていて、ですから、これは、副大臣、戦争をやめさせるだけでは駄目だと思うんですね。

 以前もこの場で申し上げたのでありますけれども、やはり相応の代償を払わせないと、何が起きるかといったら、例えばモルドバの沿ドニエストル、もうロシア系の住民がいますから、停戦になってもまた同じことが繰り返される。あるいは、類似の事案がアジアで、場合によっては違う国によって発生してしまう、そういう可能性もあるわけでありますので、これは相当の覚悟で長期間にわたって経済制裁等を続けて代償を払わせる必要があるというふうに思うのですが、この点についていかがですか。

小田原副大臣 お答え申し上げます。

 玄葉委員が三月十七日に福島民報に掲載されたそのコメントのとおり、「今後の東アジアの平和と秩序維持のためには、この戦争を止めるのみならず、今度こそロシアに相応の代償を払ってもらう必要がある。」、こういうことでありました。

 この暴挙に対して国際秩序の根幹を守り抜くためにも、こうした暴挙には高い代償を伴うこと、すなわち、国際社会が結束して厳しい対ロ制裁措置が科されることを示していく必要がございます。

 こういった考えの下、我が国は、国際社会と緊密に連携をして、迅速に厳しい措置を打ち出しているところであります。

 具体的には、ロシアの政府高官や軍事関係者等に対する制裁、ロシアの銀行に対する資産凍結などを含む金融分野での制裁、輸出入の禁止措置など、厳しい制裁措置を実施してきています。

 また、石油のほぼ全てを輸入に頼っている我が国としては大変厳しい決断でもありましたけれども、G7の結束が何よりも重要なときということもあり、G7の首脳声明も踏まえて、ロシア産石油の原則禁輸という措置を取ることにいたしました。

 引き続き、G7を始めとする国際社会と結束して強固な制裁を講じていくものであります。

玄葉委員 当時のインタビューにも私は述べておりますが、ロシアが二〇一四年にクリミアを強制編入した際、欧米が制裁措置を取ったのに対し、日本は足並みをそろえられなかった、当時のオバマ米大統領がロシアに代償を払わせると明言したにもかかわらず、結果が伴うことはなかった、そのことも今回のロシアの行動の一因になったのではないか、私は当時そう述べております。今も考えは変わりません。やはり形ばかりの制裁だったのではないかと。

 岸田さんは、国際法違反に対して高い代償を払わせる、こう言いました。このクリミア併合も国際法違反なはずだけれども形ばかりの制裁で終わったことに対しての一定の反省はやはり必要だと私は思っていますけれども、これについてはいかがですか。

小田原副大臣 お答え申し上げます。

 二〇一四年のロシアによるいわゆるクリミア併合に対しては、ウクライナの主権と領土の一体性を侵害するものであります。我が国としても対応措置を科しました。

 当時は、ロシア・ウクライナ間の紛争の更なる拡大を防止して事態を平和的に解決することを目指して、我が国を含む国際社会が懸命な外交努力を行っていました。二回にわたるミンスク合意もそうした努力の一環でありました。

 当時、ロシア、ウクライナ両国に対して様々な働きかけや協力を行うことによって、緊張緩和に努めました。その中で、ロシアとは、領土問題を解決して平和条約を締結するとの方針の下、粘り強く平和条約交渉を進めてまいりました。

 二〇一四年当時も、個人、団体の資産凍結ですとか、EBRDのロシア向けの新規案件に関するEUと協調した金融分野での対応ですとか、ロシア向けの武器及び軍事用途の汎用品の輸出に係る審査手続の厳格化など貿易措置も取っておりました。

 当時の日本政府の対応は、振り返って、適切であったと考えています。

玄葉委員 やはり私は、結果として間違えたというふうに思います。つまり、一言で言えば、当時、北方領土交渉をしていたということもあって、ロシア側の立場に配慮し過ぎていた。それがやはりプーチン氏を増長させた面というのは、私は否めないと思います。

 最後に、時間がありませんが、この北方領土交渉も、これは私、平成三十年に読売新聞のインタビューでこう書きました、「プーチンの土俵 危ない賭け」だと。プーチン大統領の土俵に乗った、従来の方針が変わった、一言で言えば、二島の最終決着にかじを切ったと。

 私も甘かったのは、二島なら、歯舞、色丹なら譲る意識はあるのではないかと私も実は当時思ったのですが、結局、四を二にして、二をゼロにした。プーチン氏、してやったりと。はっきり言えば、安倍さんも翻弄された。これはもう結果責任なので、外交は。それが結果だと思いますけれども、どう評価していますか。

小田原副大臣 お答え申し上げます。

 これまでの対ロ外交において、インド太平洋地域の戦略環境が大きく変化しつつある中で、ロシアと安定的な関係を構築することが、日本の国益のみならず、地域の安定と発展にとっても重要だという考えで取り組んでまいりました。

 具体的には、安倍政権を含め、ロシアとは、平和条約締結問題を含む政治、経済、文化など幅広い分野で日ロ関係全体を国益に資するように発展させるべく、領土問題を解決して平和条約を締結するという方針の下で、これまで粘り強く平和条約交渉を進めてまいりました。

 このような取組は適切であったと考えます。

玄葉委員 私も、もちろん、安保環境が変わって戦略環境が変わったので、日ロ関係をかなりしっかりと進めた方です、私自身も外交の立場にいたときは。

 ただ、やはり北方領土交渉の交渉の仕方として、明らかにアプローチを間違えてしまった。結果責任というのは、私はやはりあるのだろうと思っていますし、ここにも私は書きましたけれども、「リスクをかけて勝負に出た」。安倍政権は、要は賭けに出て負けたということだと思います。「いつまでも強いロシアが続くかどうかは分からない。十年後、二十年後は弱いロシアになっているかもしれない。」と。まさに今の状況がそういう状況じゃないか、いずれロシアは弱体化していく、そのときこそいわゆる交渉のチャンスだと私は思っています。

 安倍さんには厳しいかもしれないけれども、これはしようがないんです、外交は結果なので。それこそ安倍さんが好きな言葉ですよ、政治は結果だと。まさにそのとおりだと思います。

 なかなか慎重居士な元外務事務次官の竹内さんも、せんだって、メディアのインタビューに、この安倍さんの交渉を、日本の戦後外交史に残る失敗として刻まれることになるかもしれないと、かなり厳しい評価をしています。それは私もそうなんだろうなというふうに思っていて、最後に、いかがですか、このことは。岸防衛大臣、一言あれば。

大塚委員長 時間ですので、短めにお願いいたします。

岸国務大臣 私は、その立場にはございませんから責任ある回答をすることはできないと思いますが、ロシアとの間にある北方領土交渉については、我が国の国益を考えて今後ともしっかり取り組んでまいらねばならないと考えております。

玄葉委員 終わります。ありがとうございました。

大塚委員長 次に、新垣邦男君。

新垣委員 立憲民主党・無所属会派、社民党の新垣邦男です。

 また沖縄が非常に騒々しくなってまいりました。沖縄の基地から派生する問題を質問させていただきます。

 五月末から嘉手納基地への外来機の飛来が相次いでおりまして、六月二日現在で三十二機が駐留しているようであります。嘉手納基地への外来機飛来は常態化しておりまして、地元自治体や周辺住民は、騒音被害の増大や事故の可能性がまた高まるのではないかと大変心配しております。

 まず、今回の飛来目的は何なのか、そのことを教えていただきたい。そして、嘉手納基地には今約百機が常駐をしております。現在、訓練移転等で県外に出ている常駐機は何機あるのか、そのこともお答えをいただきたいと思います。

岡政府参考人 お答え申し上げます。

 まず、嘉手納に飛来してきております外来機の関係でございますけれども、この六月一日から複数の外来機が飛来してきておりますが、これに当たりまして、米側からは、日本の防衛及び自由で開かれたインド太平洋の確保のための即応性向上を目的とする任務を実施するため、嘉手納飛行場へ第五世代戦闘機を含む外来機が一時的に飛来する旨通知があったところでございます。

 防衛省といたしましては、米軍は、現下の厳しい安全保障環境を踏まえ、戦闘機部隊を遠方に迅速に展開する要領を確認するなど、日本の防衛やインド太平洋地域の平和と安定などに必要な部隊の即応性と練度の維持向上を図る上で重要な取組を行っているものと認識しているところでございます。

 なお、米側に対しましては、夜間、早朝の飛行を避けるなど、航空機騒音規制措置を遵守することを始め、周辺住民の皆様に与える影響が可能な限り少なくなるよう申入れを行っているところでございます。

 引き続き、日米間で連携をし、日米同盟の抑止力を維持しつつ、地元の皆様に与える影響を最小限にとどめるよう努めてまいりたいと考えております。

 なお、委員の方から、常駐機がどれぐらい出ていっているかという御質問がございました。これにつきましては、ちょっと現時点で把握をしていないところでございます。

新垣委員 これだけ外来機が飛来するというのは、まずないんですね。地元住民からすると、基地がこれまでにない動きをしていることに大変不安を感じているんだと。世界情勢が不安定になる中で、今後更に、この嘉手納基地の爆音、騒音の問題、そして外来機の飛来、これが常態化するんじゃないかという不安を抱えております。

 先ほど、一時的にということがあったんですが、防衛という名の下に、また沖縄で、嘉手納基地で、そこを中心に外来機が、訓練が常態化するということにならないかどうか。これはどうなんでしょうか。

岡政府参考人 お答え申し上げます。

 今般の米軍の第五世代戦闘機を含む外来機の飛来につきましては、アメリカ側から先ほど申し上げたとおりの説明があったところでございますけれども、いずれにいたしましても、私どもといたしましては、航空機騒音規制措置を遵守することを始めとして、周辺住民の皆様に与える影響が可能な限り少なくなるよう申入れを行っているところでございまして、日米同盟の抑止力の維持、他方で地元の皆様に与える影響を最小限にとどめる、そういったことで努めてまいりたいと考えているところでございます。

新垣委員 これだけ多く外来機が来ると、恐らく、爆音、悪臭、騒音は確実に多くなってきます。住民に丁寧に説明するというお話をこれまでもずっとやってきているんですが、現状は、夜間の飛行制限をする騒音防止協定すら守られていないんですよ。地元からするととんでもないという話になっていますので、どうかこの辺は、もう一度米側としっかり話し合ってもらって、常態化するようなことがないように、そして訓練が激化するようなことがないように申入れをお願いしたいと思っております。

 関連してかどうか分かりませんが、去る五月二十九日、米海軍原子力空母ロナルド・レーガン艦載機のFA18戦闘機が、沖縄近海約二十八キロの海上に、長さ五・三メートル、直径八十センチの燃料タンクを意図的に投棄したということで、地元紙が報じております。幸い、被害に関する情報は入ってきていないようですが、燃料タンクの漂着現場である北部の東村宮城の海岸ではオイル臭が確認されるなど、住民や漁業者から不安の声が上がっております。

 今回の事案は、FA18のエンジントラブルに伴うダイバート、目的地変更する前のタンク投棄とされておりますが、状況によっては大事故につながるおそれがあったにもかかわらず、米側から日本側への通報はなかった、防衛省も東村から情報を聞いたという報道がなされております。

 一九九七年に日米合同委員会で合意された事件、事故発生時の通報手続の趣旨にも反するのではないかと思っております。政府として、これは問題視をしていると思いますが、そうであれば、米側に毅然とした態度で抗議すべきだと思いますが、その辺はどうなっているんでしょうか。かなり頻繁に、ヘリや米軍機からの落下物が多過ぎる。そのことを是非、厳重に抗議をしてもらいたいと思います。

岡政府参考人 お答え申し上げます。

 委員から御指摘のございました在日米軍に係る事件・事故発生時における通報手続、これは平成九年三月に日米合同委員会で合意されたものでございますけれども、これにおきましては、日本国の施政の下にある領域において、公共の安全又は環境に影響を及ぼす可能性がある事件、事故が発生した場合には、アメリカ側から日本側へ通報されるということとされております。

 防衛省といたしまして、今回の事案につきましては、沖縄本島沖の領海外で発生した事案であり、この合同委員会合意に違反するというふうには考えておりませんけれども、他方で、アメリカ側に対しましては、地元の方々に御不安を与えるような事案については、できる限り速やかな情報提供への協力を要請をしているところでございます。

新垣委員 今、領海外だから通報がなかったということですが、領海内でも通報がない場合もあるんですね。ですから、領海外だからなかったという話は通らないだろうと。万が一、そこに漁民がいたり、漁業をなさっている皆さんがいて、事故があったらどうするんだ、これは県民にとってはとんでもない話でありまして、領海外だからしようがないだろうという話ではなくて、しっかりその辺は米側に伝えてもらいたい、そのことを強く申し入れたいと思っております。

 もう一点は、不審なのは、なぜ意図的に投棄しているのが分かりながら、簡単にヘリから何でもかんでも捨てていいという話にはならないと思うんですが、その辺は、防衛省としては把握をしているんでしょうか。

岡政府参考人 お答え申し上げます。

 今回の事案の関係では、アメリカ側の説明は、三十一日の午後、説明を受けているところでございますけれども、具体的には、東村の海岸で発見された燃料タンクは米空母ロナルド・レーガンで運用されている米海軍第五空母航空団に所属するFA18のものであることが確認をされた、着陸の安全を確保するため、空の外部燃料タンクを沖縄本島沖十五海里の水域に投棄した、その航空機は五月二十九日に嘉手納基地に無事に着陸し、隊員に負傷者はなかった、在沖米海軍は燃料タンクの安全な回収に努める、こういった内容の説明を受けまして、その後、この燃料タンクにつきましては、六月一日の午後、アメリカ側が回収をしたものというふうに承知をしているところでございます。

 私どもとしては、今回の投棄については、米側からの説明としてそのような説明を受けているというのが現状でございます。

新垣委員 実は、米軍機による燃料タンクの投棄は、青森県の米軍の三沢基地周辺でも、二〇一八年二月、そして二〇二一年十一月と、立て続けに発生をしているんですね。地元の大きな反発を招くなど、社会問題となりました。二〇一八年二月の事故では、投棄したタンクから燃料の流出が確認をされ、当該燃料には人体に影響を与える可能性がある薬剤が含まれていたということが米軍の内部文書から明らかになっております。

 今回の事案において、漂着現場の海岸における燃料の流出の有無、当該燃料の人体や環境への安全性など、米側に確認できているのかどうなのか。

 そして、先ほど、結果は何もなかったから、米側からはそういう報告があって、いいのではないかみたいな発言ですが、ただ、米側からそういう答弁があったからそれで終わりというわけにはいかないだろうと思います。ですから、駄目なものは駄目、おかしいものはおかしいとはっきり抗議をしないと、米側は分からないんですね。そのことを強くお願いをしたいと思います。

 人体や環境への安全性など、米側に確認できているんですか。これをお願いします。

岡政府参考人 お答え申し上げます。

 米側からは先ほど申し上げたような説明を受けているところでございますが、また、今回の事案を認知したことを受けて現地に職員を派遣をいたしておりまして、燃料タンクが漂着している箇所、その近辺の確認をしたところ、油膜等はなかったという報告を受けているところでございます。

 いずれにいたしましても、防衛省といたしましては、米軍機の飛行に際しては、安全面に最大限配慮しつつ、地域の方々に与える影響を最小限にとどめるよう、引き続き米側に求めてまいりたいと考えているところでございます。

新垣委員 米側に求めても、なかなか聞いてもらえないんですね。やはりこれも、最終的には日米地位協定の弊害があるんだろうと思っております。

 今回だけじゃないんですね、ヘリからの落下物は。過去にもいろいろあります。同じような答弁をいただいているんですが、何ら解決が見えない。このことについては本当に、県民が非常に不安を持っております。更に激化していくんじゃないかという不安。ですから、その辺はしっかり政府として認識をしていただいて、米側に強く申入れをしていただきたいと思っております。

 次に、これもまた基地から派生する問題です。

 在沖米軍基地周辺地域の河川や地下水などから検出される有機フッ素化合物、PFOSの問題について伺います。

 これは、これまでも再三再四、質問やら問題提起、そして政府の対応の方法をお尋ねしてきているところですが、米海兵隊太平洋基地が昨年九月に、沖縄県内の海兵隊基地や施設で、PFOSやPFOAを高濃度で含む泡消火剤を全て代替品に交換したと発表しております。新たな消火剤は米国防総省の要求を満たし、火災時にこれまでと同等の効果を発揮するとしておりますが、その製品名や安全性について明確に説明をしておりません。

 新たな消火剤の製品名、新製品の安全性、特にPFOSを含まないのかどうか等について、防衛省は米側に確認をしているのでしょうか。まず、これが一点。

 そして、県内の海兵隊以外の施設の泡消火剤も新製品に代わっているのかを確認したいと思います。

岡政府参考人 お答え申し上げます。

 在日米軍全体として、定量可能なレベルのPFOSやPFOAを含まない、より環境に優しい代替製品への交換を進めている、そのように我々としては承知をいたしているところでございます。

 そのような中で、これは委員からもお話がございましたけれども、昨年九月、アメリカ側からは、沖縄に所在する全ての海兵隊の施設において高濃度のPFOS等を含む泡消火剤の交換作業を完了した旨の説明を受けているところでございます。また、その他の米軍施設における泡消火剤の交換計画等の詳細については、引き続き米側に確認をしているところでございます。

 その上で、現在、在日米軍全体として順次保有する泡消火剤の交換を進めているものと承知しており、引き続きこの交換プロセスを加速するよう求めてまいりたいと考えているところでございます。

 また、委員の方から製品名等についての御質問もございましたが、こういった点につきましては米側に確認中というところでございます。

新垣委員 新製品に全て泡消火剤は交換した、特に海兵隊はやりましたよということですが、ただ、普天間基地周辺では、飲み水ではないんですが、湧き水、そういうものでまだまだPFOSが検出されているんですね。そして嘉手納基地周辺でも出ております。最近では自衛隊基地からも出ているんですね。沖縄県は、七〇%の基地を抱え、全てPFOS、PFOAが検出されているという状態になっています。ですから、交換をして、交換をしたら普天間基地の海兵隊はなくなりましたというんだったらいいんですが、交換したけれどもまだまだ出てきているという現状があります。

 じゃ、ほかの基地はいつまでに交換ができるのか。要するに、聞きたいのは、交換した効果が出ているのかどうなのか。交換したけれども結果的には変わっていないよという話だったら、もう何の意味もない。

 今、地元の新聞紙上では、毎日PFOS、PFOAの問題です。非常に多くて、これは発がん性なんですね、将来、子供たち、そして県民にとって命の問題です。ですから、しっかり対応してもらいたいと思っているんですが、じゃ、いつまでに海兵隊、普天間基地以外の泡消火剤の製品を替えるということが、まあ、確認中と言っているんですが、いつまでにということを言わないと県民の不安は募るばかりなので、この辺、よろしくお願いします。

岡政府参考人 お答え申し上げます。

 先ほども申し上げましたけれども、その他、海兵隊の施設以外の米軍施設におきます泡消火剤の交換計画等の詳細については、引き続き米側に確認をしているところでございますけれども、こうした交換のプロセスというのを我々としてもしっかり加速するように求めてまいりたいというふうに考えているところでございます。

 いずれにいたしましても、防衛省といたしまして、このPFOS等をめぐる問題に関する地域住民の皆様の不安をしっかり受け止めなければならないと考えておりまして、そういった中で、関係省庁、関係自治体と、あるいは米軍ともしっかり連携しながら取組を進めてまいりたいと考えているところでございます。

新垣委員 これは待ったなしですので、県民の命に関わることですから、後でごめんなさいという話は通らないので、是非その対策を強化してもらいたいと思います。

 そして、米軍基地周辺のPFOS検出をめぐって、県内で市民団体や大学が協力をし、六市町村七地域の約三百五十人から四百人を対象に大規模な血中濃度測定を実施する動きが進んでおります。

 この血中濃度測定について、五月三十日の参議院予算委員会で、国として予算措置をし、財政支援をするよう求められた岸田総理は、検出状況について把握をし、毒性の評価など最新の科学的知見をもう一度確認しなければならない、さらに、県とともに何ができるか政府として検討したいと答弁をしております。

 岸田総理の答弁を受けて、防衛省は県と一緒に何ができるか検討を開始しているんですか。そして、沖縄県が何を求めているのかが確認できているのか。それをちょっと教えていただきたいと思います。

岡政府参考人 お答え申し上げます。

 委員から御指摘がございましたとおり、先月三十日の参議院予算委員会におきまして、米軍基地周辺からPFOS等が検出されていることにつきまして、総理の方から、まずはPFOS等の検出状況を把握し、毒性評価などの最新の科学的知見をもう一度しっかり確認した上で、政府として何ができるのか検討したいという旨御発言がございました。

 防衛省といたしましては、PFOS等をめぐる問題に関する地域住民の皆様の不安を受け止め、引き続き事実関係の把握に努めるとともに、いかなる対応ができるのか、厚労省や環境省を始めとする関係省庁、あるいは関係自治体ともしっかり連携をして検討してまいりたいと考えております。

 なお、このPFOS等をめぐる問題に関しましては、これまでも沖縄県から様々な御要望をいただいておりますが、その上で、政府全体の取組として、厚生労働省や環境省におきまして水道水や水環境中の暫定目標値の設定、また、自衛隊についても、保有する泡消火剤の速やかな交換、そして、先ほど申し上げました、在日米軍に対する、交換を加速化するように要請すること、また、防衛省によりまして、自治体が実施する水道施設整備事業等への助成などの取組を進めてきたところでございます。

 このような中で、厚生労働省は、生涯にわたり飲用しても健康被害が生じない濃度として水道水の暫定目標値を設定しているところでございますが、水道水の関係でございますけれども、現に目標値を継続して超過する事例は把握していないというふうに承知をいたしております。

 いずれにしても、今後とも、地域住民の皆様の不安や懸念を払拭することができるよう、沖縄県を含む関係自治体と連携してまいります。

新垣委員 連携はいいんですが、政府が何をやるべきかということはもう分かっているんですね。民間団体が血中濃度測定をやろうとしているわけです。これは民間に任せないで、当然国の責任として早急にやるべきだろうと思います。

 各省庁で検討し、県民、沖縄の声を聞いて何ができるかを検討しますという話になると、何もやらないという話になっているんじゃないかと思うほど心配をしております。ですから、国としてやるべきことはもう決まっているわけですから、早急にアクションを起こしてもらいたいと思っております。

 そして、沖縄県企業局は、PFOS汚染源の特定など、実態把握のためには基地内の立入検査が不可欠との立場で、繰り返し許可申請を出しております。県民は、これまでに立入調査ができていないと思っているんですね。

 そこで、お尋ねしたいんですが、PFOS関連の事案について、二〇一六年以降、県企業局からの基地の立入り申請は何件あって、そのうち実際に立入りが認められたのは何件だったのかを確認したいと思います。

岡政府参考人 お答え申し上げます。

 これまで、二〇二〇年の普天間飛行場における泡消火剤の流出事故の際に、同飛行場、普天間飛行場に五回、そして、二〇二一年の陸軍貯油施設、これも沖縄の陸軍貯油施設でございますが、ここにおきます水の流出事案の際に、同施設に二回の計七回、環境補足協定に基づき、関係自治体等とともに米軍施設への立入りが実施をされているところでございます。

 また、沖縄県からは、米軍施設への立入調査について、普天間飛行場について二回、二〇一六年と二〇二〇年でございます、そして、嘉手納飛行場については一回、これは二〇一九年でございますが、また、キャンプ・ハンセンについて一回、二〇二一年、この計四回、申請がございます。

 防衛省といたしましても、米側に対し、様々な機会を捉えて働きかけを行っているところでございます。

新垣委員 これまで、米側から通報がなくても、沖縄県企業局からの求めに応じる形で、環境補足協定に基づいて基地内立入りができた事例というのはあるんですか。

岡政府参考人 一件申し上げますと、昨年、普天間飛行場の地下の貯水槽の中にPFOSで汚染された水があるということで、これについての様々な調整が行われている中で、県、国、連携をして普天間飛行場の中に立入りを行った事例が一つの例としてはございます。

新垣委員 たった一つなんですね。

 実は、環境補足協定は、米側から通知がないと調査できないというふうになっているはずなんですね。これは非常に不公平だなと私は思っています。地元あるいは日本側から調査を依頼して調査ができるような、これが本来の協定じゃないかと思っているんですが、どうも環境補足協定、非常に、地位協定を変えたんだ、これが加わったから非常によくなったというような答弁があったんですが、一方的な米側からの通知だけでしか調査ができないということは極めて私は不平等だと思っておりますので、是非その辺は米側と、申し入れて、日本側からも調査ができる体制を是非つくってもらいたいと思っております。

 そして、日米地位協定の環境補足協定では、環境に影響を及ぼす事故、漏出が現に発生した場合は、日本の当局が米軍施設・区域への適切な立入りを行える手続を作成、維持するとあります。そして、環境補足協定の実施に関するいかなる事項についても、一方からの要請により、日米合同委員会での協議を開始するとあるんですね。

 たとえ米側から通報がない事案でも、日本側が求めれば基地内に立入りができる、そういった事例を積み重ねていくことで、外務省の言うところの法的拘束力を有する国際約束としての環境補足協定の実効性は高まっていくんだろう、また、それによって初めて県民の理解が得られていくものと私は思いますが、この件は副大臣の御所見をお聞かせください。よろしくお願いします。

小田原副大臣 新垣委員にお答え申し上げます。

 環境補足協定では、環境に影響を及ぼす事故、すなわち漏出が現に発生した場合に、米側からの通報を受けて立入り申請を行うこととなっています。実際に、二〇二〇年四月の普天間飛行場における泡消火剤の漏出事故や昨年六月の陸軍貯油施設における水の漏出事故の際には、政府、関係自治体及び米側で環境補足協定に基づき立入りを実施いたしました。

 また、米側からの通報がなくても、日本側として、米軍施設・区域に源を発する環境汚染が発生し、地域社会の福祉に影響を与えると信ずる合理的理由がある場合には、一九七三年の日米合同委員会の合意、環境に関する協力についてに従って、米側に調査要請や立入り許可申請等を行うことができます。

 政府としては、地元の方々の関心に応えられるように、こうした日米合同委員会合意や環境補足協定といった枠組みが運用されていくことが重要だと考えております。施設・区域外の環境対策が実効的なものとなるよう、引き続き取り組んでまいります。

新垣委員 今、副大臣から、日本側からも申入れすればできるということを確認できましたので。なかなかやっていないんですよね、今、一回だけだという話ですから。ただしかし、問題は山積をし、様々な問題が噴出してきている、そういう現状の中では、是非、沖縄県からの申入れ、あるいは県民の声を聞いていただいて、しっかり日本側からも調査をできるような体制をお願いしたいと思います。

 もう一点ですが、これは軍用地跡地の件ですが、実は、五月十五日の沖縄復帰五十周年の記念式典で、岸田総理が挨拶の中で、中部の北中城村と沖縄市にまたがるロウワー・プラザ地区という返還地があるんですが、これを共同使用するという発表をしたんですね。これは非常に私もびっくりをいたしました。総理自らそういう声を発すると。

 通常、こちらが、私も長く首長をやっていたので、再三再四、共同使用をお願いをしてきたんですが、なかなか聞き入れてもらえなかった。今回、総理自ら、非常にすばらしいことなんですよ。歓迎をしたいと思っているんですが、その件を少し質問したいと思います。

 米軍キャンプ瑞慶覧内のロウワー・プラザ住宅地区、二十三ヘクタールあるんですが、緑地公園として共同使用するとして日米合同委員会合意が閣議決定をされております。日米地位協定第二条に基づく一時的あるいは共同使用というのは、これまで地権者や地元自治体からの求めに応じる形で実現をしてきたのがほとんどなんですが、その意味で、今回のロウワー・プラザにおける共同使用は大変珍しく、国側から言っていただいたという意味では、地元の皆さんもとても寝耳に水だったようであります。

 大臣も御承知のとおり、沖縄本島、特に中部地域では広大な基地が、米軍基地として提供されております。そのため、共同使用を認めてもらえればまちづくりがもっと円滑に進む、そして、共同使用を認めてもらえれば道路整備、交通の利便性が高まるということで、地元自治体の首長や職員の皆さんは多くのアイデアを持っております。

 岸大臣、これから地元の皆さんの声に是非耳を傾けていただいて、今回のロウワー・プラザ地区同様、国が率先して米側と様々な共同使用の交渉を始めてもらいたい、これはお願いであります。

 さて、ロウワー・プラザ地区について、平成二十五年四月の統合計画で、二〇二四年度までに、その後の返還となっております。地権者の皆さんは、一日も早い返還と跡地利用を求めております。共同使用でお茶を濁すと言ってはなんですが、政府と防衛省においては、是非とも二〇二四年度内の返還を目指して引き続き取り組んでもらいたいと思います。

 そして、このロウワー・プラザ地区ですが、返還後のまちづくりを早期に開始するために、是非、同地区内の境界整備のための測量調査を地権者の皆さんは求めております。当該測量調査が認められる見込みはあるのかどうなのか、もしあれば、立入調査はいつから可能なのか、緑地公園としての使用が始まらないとできないのか、このことをお尋ねしたいと思います。

岸国務大臣 今般のキャンプ瑞慶覧のロウワー・プラザ住宅地区の共同使用については、既存の住宅を解体し、緑地公園としての一般利用に際して必要な整備を行うことを目的として、日米間で合意をしたというものでございます。

 その上で、跡地利用のための測量調査についてですが、通常、返還後に行われるものですが、今般の緑地公園としての一般利用の合意を受けて、地権者の一部から共同使用期間中の実施について御要望があったものと承知をしております。

 共同使用期間中の測量調査の実施に当たっては、米側の同意が必要なところ、地元の皆様の声を踏まえつつ、今後、米側と調整してまいりたいと考えております。

新垣委員 最後に、この関連ですが、ロウワー・プラザ地区ですが、地区内に、アッパー・プラザ地区、米軍側の進入路があるんですね。その進入路の存在が返還後の土地活用において大きな障害になることが想定をされております。要するに、道路で分断されてしまう。そのことを、地権者からは、当該進入路の位置や形状の変更要望が出ております、恐らく防衛省も認識をしていると思うんですが。

 岸大臣、是非、円滑かつ有効な跡地利用を行うためにも、防衛省において、進入路を別の場所につけ替えるなど検討を加えていただいて、米側と交渉を始めてもらいたいと思います。

 そして、是非、地権者の声を真摯に聞いていただいて、せっかくの跡地利用ですから、地権者が満足するように、そして経済効果も図られるようなすばらしい跡地利用ができるよう、よろしくお願いをしたいと思います。

岸国務大臣 当該進入路の具体的な位置、形状につきましては、今後、米側及び地元の関係者と協議の上、決定される予定であります。

 地元の御要望も踏まえながら、米側と協議してまいります。

新垣委員 地権者は非常に大きく期待をしております。地権者の思いを酌んでいただいて、跡地利用を是非進めていきたいと思っておりますので、よろしくお願いします。

 以上、終わります。

大塚委員長 次に、伊藤俊輔君。

伊藤(俊)委員 立憲民主党の伊藤俊輔でございます。

 引き続き質問をさせていただきたいと思います。どうぞよろしくお願い申し上げます。

 いまだロシアによるウクライナの侵略は続いております。ロシアの一方的な武力をもっての侵略、暴挙、許されるものではないというふうに思いますし、また、一日も早い停戦、そして平和、安寧が訪れることを望んでおりますけれども、今回のこの侵略においては、ロシアに非があること、このことは言うまでもないというふうに思いますが、その上で、この侵攻、侵略に至った背景というものを捉えることが重要だというふうに思っております。

 ウクライナの侵略、侵攻がなぜ起こったのか、このことに関して岸防衛大臣にも質問させていただきたいというふうに思いますが、各委員会等でもこの点は議論されております。

 要因の一つとしては、二〇一四年のクリミアを占領したときにほぼ無血状態で占領することができた、また、日本も含めてですが、制裁も限定的であったということから、今回の侵略ではウクライナや諸外国の対応をある意味軽視していたのではないか、あるいは楽観的に考えていたのではないか、こういう点があります。

 そしてもう一つは、バイデン大統領が軍事力をもって共に戦うような介入はウクライナにしない、こういうスタンスが、アメリカもそしてNATOも後ろ盾にならない、こういう抑止効果が薄れていたのではないかということも言われているわけであります。

 様々な複合的な要因があると思いますけれども、改めて、この背景、大臣の認識をお伺いしたいというふうに思います。

岸国務大臣 今般のロシアによるウクライナ侵略についてですが、従来からNATOの東方拡大を脅威と位置づけて反対をしてきたロシアですが、こうした認識や、ウクライナにおける親ロ政権の崩壊と民主化、そしてプーチン大統領によるロシア、ウクライナ両民族の不可分一体論などが侵略の背景にあったとの指摘があることは承知をしております。

 他方で、こうした政治的背景のみによって、なぜロシアが本年二月に武力をもって自らが考える問題を解決しようと試みたのか、これを説明するには十分ではないと考えています。

 この点に関し、例えば、米中央情報局では、ウクライナは弱く、容易に威嚇でき、軍の近代化によりロシアは最小限のコストで勝利可能である等の前提に基づき武力行使を決断したとの評価をしています。また、英国防省も、ロシアがウクライナ側の抵抗を過小評価し、誤った想定の下に侵略を計画したと分析をしています。

 お尋ねの件について確たることを申し上げることは困難ですが、その上で、これらを踏まえれば、少なくとも、こうしたウクライナの抵抗に関する見積りの甘さや自らの能力への過信、これらがロシアが侵略を決断した直接の契機の一つであったと考えております。

 いずれにいたしましても、どのような理由や判断があったとしても、武力によって自らの主張を実現しようとするロシアのウクライナ侵略は断じて許容できるものではございません。国際法の違反の行為でもあります。正当化できるものではないというふうに考えております。

伊藤(俊)委員 ありがとうございます。

 ロシアが侵攻した背景に、NATOの東方拡大やウクライナへの軍事支援、そういう軍事力を高めるという部分が国境線に緊張を生むこと、そして、ロシアがある意味追い込まれる、挑発をされて愚かな行動へとつながったという専門的な方々の意見も言われているところであります。

 複合的な要因があるにしろ、こういったことがあえて緊張感を高めることになって侵攻の要因の一つになったとするならば、日本も慎重に考えなきゃいけないというふうに思っているわけであります。

 まさに今、日本では、軍事力を高める、防衛費を相当な増額をするとか、あるいは、憲法九条を含めた改正の議論とか専守防衛の在り方の議論があったり、あるいは、名前は反撃能力と変わりましたけれども、敵基地攻撃能力の保有、核シェアリング、様々なことが与党内でも議論になっていると承知しておりますけれども、武器を大量に入れて、そしてさらに攻撃できる能力を持つということは、軍事力を高めるということは、諸外国から見ても攻撃する能力を拡大するということでありまして、ウクライナ同様、東アジアでも緊張が更に高まる、こういうリスク、懸念につながることを念頭にしなきゃいけないというふうに思っております。

 大事な点ですので、日本におけるこういった部分の懸念、大臣の認識をお伺いしたいというふうに思います。

岸国務大臣 我が国周辺には強大な軍事力を有する国家が集中しております。更なる軍事力の強化や軍事活動の活発化の傾向が顕著になっております。例えば、中国は透明性を欠いたまま軍事力を広範かつ急速に強化しているという状況が続いております。

 その上で、大変重要なことは、我が国が防衛力を強化する中にあっても、諸外国に対して防衛政策の具体的な考え方を明確にするなど、自国の安全保障政策の透明性を確保していくことだと考えています。

 この点、我が国は、従来から一貫して、国家安保戦略、防衛大綱、中期防に基づく防衛政策について、具体的な考え方を対外的に説明してきています。

 また、防衛大綱、中期防においては、自衛隊の主要な部隊構成、主要装備の保有や調達数量を公表し、各年度の防衛関係費も、装備の調達数量を始めとして、可能な限り予算の内訳を明らかにしてきておるところであります。

 防衛省としては、引き続き、しっかりとこの透明性を確保するために取り組んでまいりたいと考えております。

伊藤(俊)委員 ありがとうございます。

 昨今、古賀誠元自民党幹事長がメディア等で今の政治のスタンスに対して苦言を呈して警鐘を鳴らしている部分があります。TBSの「報道特集」等でも発言されておりますが、一部紹介させていただきたいというふうに思います。

 戦争を繰り返してはならない。理屈で収められるような簡単なものではない。自民党の提言というものは、戦争を実体験していない世代が頭の中で考えた議論だ。どんなに名前を変えようとも、憲法そして専守防衛の逸脱だと思う。我が国の抑止力を超えていくものには間違いない、敵国を撃っていくわけですから。日本の国は物すごく大切な宝を持っている、それが九条です。九条に代わる日本の平和、やってみたらいい。とにかく、力で平和が実現することはあり得ない、絶対にあり得ない、これだけは言える。国会も、かつては戦争を経験している政治家が多く、均衡が取れていた。戦争を経験していない世代が増える、歯止めが利かなくなる。軍事力を持てば持つほど戦争の当事国になりやすいものである。軍事力を高めれば平和になるものではない。有事が起こると、自民党は更に右へ右へとかじを切りたがる。力をもって平和を維持しようとする試みは非常に危うい。こう発言されております。

 私も至極真っ当な御意見だと思います、重く受け止めておりますけれども、大臣、この古賀先生のこういった思いに対して、感想でもいいですので、お聞かせいただきたいというふうに思います。

岸国務大臣 もちろん、戦争というものはあってはならないし、我々から起こすことは、もちろん当然のことながら、国民の命や暮らしをしっかり守っていく、このことが大切なんだろうと思います。

 その上で、今やるべきことは、国民の命と暮らしを守るために何が必要なのか、何をしていかなければいけないのか、具体的に、また現実的に議論をし、積み上げていくことだと考えております。その結果として、防衛力の抜本的強化に当たって必要となるものの裏づけとなる予算をしっかり確保していくということが必要である。

 岸田総理も、日米首脳会談の中で、防衛費の相当な増額を確保する決意を表明したと承知しております。あくまでも、これは、しっかり抑止力を高めていく、我が国が戦争に巻き込まれないためにすべきことは何なのかということを突き詰めた上での決意というふうに考えております。

伊藤(俊)委員 大臣、ありがとうございます。

 自民党の中でも、かつては、いわゆるタカ派と言われる、あるいはハト派と言われる方々のバランスがありましたけれども、私の父も元々自民党でありますので、私も身近に政治を見てまいりました、感じているわけでありますけれども、昨今はその歯止めが利かなくなってきているのではないか、こういう危惧があります。

 だからこそ、まさに私たち野党第一党としての歯止めの役割もあるんだということを自覚をしながらこの質問に立っているわけでありますけれども、ロシアのウクライナ侵略など、有事の際に乗じて更に右にかじを切っていくのではなくて、こういう有事が起きたときだからこそ、冷静に、日本のこれまでの国柄や、専守防衛、あるいは憲法という法を超えない範囲の中で必要な防衛力を高めて、現実的な安全保障政策が求められているんだということを強く求めておきたいというふうに思います。

 そこで、岸田総理が五月二十三日に行われた日米首脳会談において防衛費の相当な増額を確保する決意を表明し、バイデン・アメリカ大統領がこれを支持したということで、我が国の防衛費の増額というものは、事実上、国際公約になったものとも言えるんだと思います。

 昨今の安全保障環境を鑑みると、いわゆる共食いと言われるような事態に対応する部品や装備予算等、防衛費の増額が必要になることというのは否めないというふうに思いますけれども、いわば既成事実化する形で他国に防衛費の相当な増額を表明し、これを踏まえて国内の議論を行うというのは、やはり順番が違うのではないかというふうにも思います。また、防衛費が何が足りないから相当な増額が必要なのか、こういうこともきちんと示さなければならないというふうに思います。

 武器の購入も含めて、そして昨今の予備費の在り方も含めて、余りにも丼勘定になっているのではないかということも感じております。この点、大臣の認識をお伺いしたいと思います。

岸国務大臣 岸田総理が日米首脳会談で述べられたことは、対外公約ということではなくて、我が国の防衛に対する意思を、しっかりとした決意をお示しになったものだと考えております。

 その上で、防衛力の抜本的強化が必要である、そこに当たって必要となるものの裏づけとなる予算の内容、規模等について、新たな国家安全保障戦略の策定や今後の予算編成の過程を通じて検討してまいるということであります。

 当然ながら、この議論に当たっては、憲法、国際法を遵守し、また、日米の基本的な役割分担の中で行われるものと考えております。

伊藤(俊)委員 日米同盟の深化、強化を通じてアジア太平洋地域の安定に寄与するという方向性は、追求すべき道だというふうに私も思います。バイデン氏からそのコミットメントが得られることというのは、日本にとって、また地域にとってもプラスなことだというふうに思いますし、日本として防衛力を強化していくことの必要性というものも私は認めるものだというふうに思います。

 しかし、きちんとした説明、丁寧な説明や議論を怠ってはいけないというふうに思っているわけでありまして、国会の議論では特に外交、防衛、安全保障に関しての情報が伏せられがちだというふうに言われます。私もそう感じております。答弁がなかなかできない。もちろん、公にできない部分があることは承知しておりますけれども、余りにも国会議論が深まっていないのではないか、こういう観点。国民に対しても適切な現状認識を持つことがなかなか困難だというふうにも思っております。

 与野党を含めてですが、本当に必要な我が国の軍事力あるいは防衛力、外交、安全保障の戦略、政策を確立していくためには、ある程度必要な情報共有、その新たな枠組みを含めて必要だと切に感じております。

 大臣、国会での議論が十分と感じておられるか、議論が十分深まっていないという問題認識があるか、率直にお聞かせをいただきたいというふうに思います。

岸国務大臣 我が国を取り巻く安全保障環境が大変厳しさと不確実性を増しているということは論をまたないところだと思っております。その中で、我が国の国民の命と生活をしっかり守っていく、そのためには何が必要なのか、そのことを現実的に議論してまいらねばなりません。これから年末にかけての国家安全保障戦略策定の中でそういったことをしっかりと議論していく必要があると考えております。

 今の時点でその議論の中身についてお話をするというタイミングではないと考えておりますが、いずれにいたしましても、しかるべきタイミングで、予算の内容や規模等について、国民の皆様の御理解を得られるように、しかるべきタイミングでしっかりと説明をしてまいりたいと考えております。

伊藤(俊)委員 ありがとうございます。

 大臣から立場上なかなかお答えしづらいというのもあるかと思いますけれども、日本が今、例えば、どれだけ武器や弾薬を保有して、アメリカも様々な、議会を通さなきゃいけない、こういうタイムラグもある中で、本当に有事になった際に日本が独自の力でどこまでできるのか、耐えられるのか、こういうことも含めて、そういう必要な認識が与野党間を含めて共有される中で、最低限のものは何なのかということの議論が深まらなきゃいけないというふうにも思っているわけであります。

 昨今、秘密会みたいなものも含めてですが、やり方はいろいろあるんだと思います。前例もあるというふうに聞いておりますし、アメリカ等でも頻繁に秘密会みたいなものが活用されて深い議論がされているというふうにも聞いております。これまでの国会の考え方の中では難しいことであっても、国益になる真っ当な議論ができるように、この秘密会等を含めて、情報共有の新たな枠組みを真剣に求めていかなきゃいけないんだというふうに思っております。

 大臣からのお答えは難しいと思いますので、要望、要請をして終わりたいというふうに思いますが、是非、各委員、皆さんにおいても議論が深まるためにこういったことを考えていただきたいとお願い申し上げたいというふうに思います。

 次に、情報漏えいの対策についてお聞かせをいただきたいというふうに思います。

 五月三十日のネットニュースなどでも、自衛隊に中国系のメーカーのPCが配られて唖然という記事がありましたが、率直に事実確認をしたいと思います。また、現在、防衛省あるいは自衛隊等において中国系のメーカーのパソコンが使用されているかどうか、この事実も確認をしたいと思います。

土本政府参考人 お答え申し上げます。

 まず、委員御指摘のような記事があったことにつきましては承知しているところでございます。

 防衛省・自衛隊で使用されておりますいわゆるパソコンにつきましては数が膨大でありますが、現在我々の方で把握している限りにおきまして、平成三十年十二月のIT調達に係る国の物品等又は役務の調達方針及び調達手続に関する申合せ、この申合せ以降に、中国に本社を置く、例えばファーウェイといったようなメーカーが製造したパソコンを調達したという実績はございません。

 いずれにいたしましても、防衛省の情報システムを含めたサイバーセキュリティーの一層の強化を目指し、必要な取組を行ってまいる所存でございます。

伊藤(俊)委員 ありがとうございます。

 使われていないという答弁で少し安心しましたけれども……(発言する者あり)使われていないということではないですね。

 記事には、これだけスパイ疑惑が言われているのに、職員に中国系のメーカーのノートパソコンが配られていて唖然とした、自衛隊関係者は嘆いていたというふうに書かれておりました。また、同記事には、サイバーセキュリティーの司令塔であるNISCの関係者に話を聞いたところ、各省庁の調達時に、ある特定国、特定メーカーを名指しして排除はしていないと。当時、二〇二〇年十二月の平井デジタル改革担当大臣も同様の発言をされていると承知しております。

 自衛隊に配られるPC等も中国系PCを使うことがあるということなのか、ルール上は使えるようになっているけれども運用上していないということなのか、もう一度お聞かせいただきたいと思います。

土本政府参考人 先ほど私が答弁した件について補足させていただきます。

 私の方から答弁させていただきましたのは、平成三十年十二月の申合せ以降に、中国に本社を置くパソコンを調達した実績はないと申し上げたところでございまして、これもまた現在我々が把握している範囲ということでございますが、平成三十年十二月以前に調達したパソコンにつきましては、我々が承知している範囲では、二つのシステムの一部のパソコン端末が確認されているということがございますので、大変申し訳ございませんでした。

伊藤(俊)委員 ということは、あるということになるんだというふうに思いますけれども、度々、名指しで排除しているものではないということの発言、答弁がありますが、私は、調達基準や運用上の基準がやはり必要なのではないかと改めて思います。

 是非考えていただきたいというふうに思いますが、もしお答えできるようであればお願いしたいと思います。

内藤政府参考人 お答えします。

 防衛省においても、御指摘のパソコンを含むIT調達の際には、特定の国家とか特定のメーカーを名指しして排除はしておりませんけれども、先ほど説明があったように、申合せを踏まえて、重要性や運用環境等に応じて事前に安全性を確認する、そういう手続を設けておりまして、適切にサプライチェーンのリスクに対応しているところでございます。

 防衛省としては、引き続き、サプライチェーンリスクを排除して、サイバーセキュリティーの一層の確保に努めてまいりたいと思います。

伊藤(俊)委員 ありがとうございます。

 是非、調達の基準というのをもう一度厳格に考えていただきたいというふうに思います。

 そして、関連して、アメリカ等は、中国への情報漏えいを恐れて、二〇一八年成立の国防授権法により、5G移動通信システムなどで、ファーウェイなど中国企業五社の政府調達を禁止しております。また、日本以外のクアッドの三か国も同じように禁止を表明しております。今後、我が国の調達基準がこれらの国とのサイバーセキュリティーや先端技術における協力の障壁となることはないのか、お聞きをしたいというふうに思います。

内藤政府参考人 お答えいたします。

 サイバー領域における脅威は日々高度化、巧妙化しており、防衛省においても、装備品等の調達に際し、サイバーセキュリティーを確保することは重要であると認識しております。

 その上で申し上げれば、先ほど申し上げたとおり、国の申合せに基づいて、情報システムの重要性や運用環境等に応じて安全性を確認するなど、厳格な調達を行っているため、防衛省の調達基準が諸外国等との協力において障壁となることはないものと考えております。

 引き続き、サイバーセキュリティーの一層の確保に努めてまいります。

伊藤(俊)委員 ありがとうございます。

 時間がもうありませんけれども、最後に一問、サイバーセキュリティーの人材の育成についてもお伺いしたいというふうに思います。

 昨今、九月にデジタル庁が発足をいたしまして、組織内での不協和音などから民間出身者の退職が相次ぐなどの報道がなされ、優秀なデジタル人材を継続して確保することが引き続き大きな課題、問題であるということは認識をしておりますけれども、セキュリティー人材を継続的に確保するためには、人材の絶対数の増加、すなわち人材育成も大きな課題でありまして、国の機関や重要インフラ事業者等の情報システム担当者等を対象とした実践的サイバー防御演習、CYDERや、あるいはSecHack365など、様々な取組がされていることも承知をしております。

 諸外国では、専門性に磨きをかけながら数年ごとに転職して、処遇と給与を上げていくキャリアパスというのが一般的であります。特に、サイバーセキュリティーの場合、転職のサイクルが二年から三年と短い特徴があることからも、業種の垣根が低く、政府機関、軍、情報機関、警察、弁護士、AIなど、専門家などもサイバーセキュリティー業界に入ってきております。

 そして、給与面や専門性を維持するポジションを提示できるかどうかもネックになると思いますが、優秀なセキュリティー人材の継続的な確保をするために、我が国のキャリアパスで専門性と給与を高めながらステップアップしていけるような仕組みが求められているというふうに思いますけれども、現在の課題とそして取組をお聞かせいただきたいというふうに思います。

大塚委員長 時間が回っておりますので、手短にお願いいたします。

吉川政府参考人 お答え申し上げます。

 委員御指摘の処遇やキャリアパスに関する課題解決の観点から、政府機関では、適切な処遇の確保のために、手当等を活用し、一定の給与上の評価を行う取組をしております。また、これに加えまして、各省庁が策定する人材確保・育成計画の中で、出向等の機会や昇任等を含む人事ルート等を設定する取組を進めているところでございます。

 また、任期付職員制度の活用などを通じた高度人材の外部登用を進めているほか、デジタル庁を中心に、国、地方、民間、独立行政法人など、組織の垣根を越えた人材の行き来や育成が行えるような環境整備を進めているところでございます。

 これらの政府の取組と併せまして、民間分野においても、リスキリングの機会の提供などを通じて、サイバーセキュリティー人材の流動性、マッチング機会の促進を進めているところでございます。

 引き続き、各関係府省庁が連携し、官民一体となってサイバーセキュリティー人材が活躍できる環境整備に取り組んでまいりたいと考えております。

伊藤(俊)委員 ありがとうございます。大事な観点ですので、是非進めていただきたいというふうに思います。

 質問を終わります。ありがとうございました。

大塚委員長 次に、美延映夫君。

美延委員 日本維新の会の美延でございます。どうぞよろしくお願いいたします。

 まず、岸大臣にお伺いいたします。

 我が党の再三にわたる質問でも、核共有の議論さえしないというのが岸田総理を始め内閣の姿勢であります。そして、先日の予算委員会では、拡大抑止の重要性を述べられておられました。

 それであるならば、拡大抑止をどのような方法で行うのか、これをしっかり国民に示して、もし核保有国の恫喝があっても、しっかり国民に、こういうことがあるから大丈夫ということを言っていただきたいと思いますが、大臣、いかがでしょうか。

岸国務大臣 米国の拡大抑止は、我が国の安全保障にとって極めて重要であります。我が国の安全保障を全うする観点から、米国の拡大抑止の信頼性を維持強化する一層の必要性があると考えているところです。

 こうした認識に立って、日米首脳会談において、バイデン大統領から、核を含むあらゆる種類の能力によって裏づけられた、日米安保条約の下での対日防衛に関する米国のコミットメントが改めて表明されたところでありますが、両首脳は、今後も拡大抑止が揺るぎないものであり続けることを確保するため、日米2プラス2や拡大抑止協議を含めて、日米間で一層緊密な意思疎通を行っていくことで一致したと承知をしております。

 先般、日米の防衛大臣会合においても、私から、核抑止が信頼でき、強靱なものであり続けるためのあらゆるレベルでの二国間の取組が従来にも増して重要である旨を述べ、オースティン長官と認識を共有したところでございます。

 美延委員からの御指摘もありましたけれども、防衛省としては、今後も様々なレベルにおいて、いかに日米同盟の抑止力を強化していくか、これについて率直な議論を行い、日米同盟の抑止力の一層の強化をしてまいる所存であります。

美延委員 日米同盟の抑止力の強化、これはしっかりしていただきたいと思います。

 それから、次に聞きたいのは、北朝鮮が連日のようにミサイル発射を繰り返しております。そして、核実験の再開の兆候もあるというような報道もございます。こんなことは全く考えたくないことなんですが、周辺国にそういう実験を繰り返す国があるということ、もし有事の場合は、その発射台をしっかり攻撃して元を断たなければならないということは言をまたないと思います。

 それを考えれば、敵基地攻撃能力、反撃能力をしっかり議論すべきだと思いますが、大臣の御所見はいかがでしょうか。

岸国務大臣 我が国周辺において、極超音速滑空兵器や変則軌道で飛ぶミサイルなど、ミサイルに関する技術は急速なスピードで変化、進化しております。

 特に、北朝鮮は、今年に入ってから、かつてないほどの高い頻度で新たな態様でのミサイル発射を繰り返しているところです。昨今の北朝鮮による核、ミサイル関連技術の著しい発展は、我が国及び地域の安全保障にとって看過できるものではありません。

 こうした状況を踏まえて、国民の命や暮らしを守るための十分な備えができているのか、こういった問題意識の下で、ミサイル迎撃能力の向上だけでなく、いわゆる反撃力を含めたあらゆる選択肢を排除せず、具体的に検討してまいります。

美延委員 今の二件の答えは、今の時点ではそれぐらいかなと思うんですけれども、少し前に伺ったよりは前に進んだかなというところで、一定私も評価させていただきたいと思いますが、年末に改定される国家安全保障戦略に、しっかりこの後議論して、掲載すべきだと思いますが、これは質問通告をしていないのですが、大臣はどうお考えでしょうか。

岸国務大臣 この議論については現在検討中でございますので、具体的にお答えできる段階ではございませんけれども、あらゆる選択肢を排除せずに、しっかり現実的に議論を重ねていきたいと考えております。

 当然ながら、その議論は、日本国憲法、あるいは関連した国際法、この範囲で行われることを申し添えておきたいと思います。

美延委員 しっかりよろしくお願いいたします。

 質問の順番を変えさせていただきまして、先に防衛産業について少しお伺いさせていただきたいと思うんですが、一般の国民からすると、防衛産業というのは、自動車産業などとは異なり、日常生活を送る上では認知されていない言葉だと思います。

 防衛産業とは、軍隊や自衛隊が使用する戦闘機や戦車、ヘルメット、防弾チョッキ、訓練用の銃弾に至るまで、国を守るために必要な防衛装備品を製造し、提供する産業を意味しております。

 我が国においては、防衛装備品の生産から撤退する企業が相次いでおります。二〇一九年に、コマツが防弾性能などを持つ軽装甲機動車の開発を中止いたしました。また、二〇二〇年には、航空機のパイロットの緊急脱出装置を納入していたダイセルが撤退いたしました。

 このような防衛産業の撤退に関する危機意識は早くから防衛関係者には共有されてきたものだと思います。このような、複数の企業が防衛事業から撤退するなど、防衛産業基盤が厳しい現状について、政府の御見解をお伺いいたします。

萬浪政府参考人 お答え申し上げます。

 国内の防衛産業は我が国の防衛力の一部であると考えてございまして、その基盤の強化は急務でございますが、御指摘もございましたように、近年、防衛事業から撤退する企業が相次いで見られていることは御指摘のとおりでございます。

 こうした状況を踏まえまして、防衛省といたしましては、昨年以来、こういった防衛装備品を製造する企業との直接の意見交換を行う等々の措置を取りまして、防衛産業を取り巻く現状の把握に努めてまいりました。

 具体的に申し上げますと、企業より、防衛事業について、例えば、事業を維持する必要性について社内外のステークホルダーへの説明に苦慮しているといったことですとか、収益性あるいは成長性の低さなどについてのお声を企業からいただいているところでございます。

 さらに、近年ですと、国内調達を増やしている一方で、FMS、米国からの調達でございますが、これが高水準で推移するなど、防衛産業は厳しい現状にあると認識してございます。

 防衛省といたしましては、こうした現状を踏まえまして、対応策の検討を行っているところでございます。

 以上でございます。

美延委員 国家安全保障と経済安全保障というのは大きく重なるものであります。その中でも防衛産業は最も重要なものであると認識しておりますが、残念なことに、防衛産業は経済安全保障に関する取組から抜け落ちています。

 また、二〇一三年十二月十七日に閣議決定された国家安全保障戦略の中においては、防衛産業は防衛装備、技術協力の欄で僅か数行触れられているだけで、防衛産業を振興するという文言は明記されておりません。

 そんな中、来年度から、防衛省内に防衛産業の振興を担う防衛産業室が設置されること、これは大きな前進だと思います。

 総理は、昨年十月八日に行った所信表明演説で、国家安全保障戦略、防衛大綱、中期防衛力整備計画の三文書を、先ほども申しましたが、本年にも改定すると述べられました。今回の国家安全保障戦略の改定において防衛産業の振興と保護も是非入れ込んでいただきたいと思いますが、岸大臣の御所見を伺います。

岸国務大臣 今御指摘の防衛産業の振興については、先ほど答弁もございましたけれども、大変重要な課題であります。

 この分野は、まさに我が国の防衛に直結しているところであります。私自身も、防衛装備品を製造する企業十五社の社長と直接意見交換をし、現状の把握に努めてまいっているところでございます。

 防衛省としては、新たな国家安全保障戦略等の策定に際しては、防衛産業を取り巻く厳しい現状も含めて、防衛産業の生産基盤の在り方にも焦点を当てて議論し、国内の防衛生産、技術基盤の維持強化の観点から一層重視するとともに、防衛産業強化のための抜本的な対策を検討してまいりたいと考えております。

美延委員 しっかり進めていただきたいと思います。

 それから、次は、防衛装備品の海外移転の推進についてお伺いいたします。

 防衛装備品の海外移転については様々な難しい課題があることは承知しておりますが、例えば、従来から海外移転を積極的に行ってきたアメリカや欧州各国と比べ、日本は、企業の経験不足や、体制が構築されていないことが考えられます。しかし、我が国の防衛を全うするためには、防衛装備品の海外移転の推進も不可欠だと思います。

 政府は、六月上旬にもまとめられる経済財政運営と改革の基本方針に、防衛力を抜本的に強化すると明記しており、防衛装備品については、国内の防衛生産、技術基盤を強化し、海外への装備移転に関する制度の見直しを含め、より踏み込んだ検討をすることにしています。

 この防衛装備品の海外移転の今後の在り方について、政府の見解を伺います。

萬浪政府参考人 お答え申し上げます。

 防衛装備品の海外移転につきましては、諸外国との安全保障協力に資するものであるとともに、防衛産業基盤の強化にも資するものと考えてございまして、現在の防衛装備移転三原則の下で政府一体となって推進しているところでございます。

 他方で、防衛装備品の海外移転には様々な課題がございまして、例えば、先ほど御言及いただきましたように、我々は、装備移転三原則が平成二十六年に定められて以降、本格的に移転の取組を始めてございますので、欧米に比べて競争力がやはり不足しているのではないかということ、また、具体的な移転案件の協議が行われた場合であっても、相手方が求める価格や取得時期、ファイナンス、資金繰りでございますが、そういったもの、現地生産、オフセットなどの条件に適応した提案を行っていくことがなかなか容易ではないことなどが課題としてあるところでございます。

 防衛装備品の海外移転の在り方につきましては、こうした様々な議論があるところでございますけれども、防衛省といたしましては、これらの課題を踏まえまして、今後、新たな国家安全保障戦略等の策定のための議論等におきまして、関係省庁とともに検討してまいりたいと考えてございます。

 以上です。

美延委員 次に、台湾有事についてお伺いいたします。

 台湾有事に関してサイバー関係が頻繁に議論されておりますが、中国は、台湾有事に際し、バシー海峡や台湾海峡を機雷封鎖する可能性があると考えます。他方、台湾軍もそれに呼応するように中国の港湾を機雷封鎖する可能性があり得ます。掃海作業が終了して安全が確認されるまでこれらの海域は通航不能となるため、影響期間は長くなると考えられます。

 原油タンカーを例に取れば、通常のペルシャ湾、インド洋、マラッカ海峡、南シナ海、バシー海峡を通航して東京湾へ到着するルートは約一万二千キロ、期間にして二週間以上の航程となります。現在、日本と中東を往復する原油タンカーの規格は、マラッカ海峡を安全に通航できるサイズに合わせていると聞いております。

 このルートを回避して、ペルシャ湾からロンボク海峡、マカッサル海峡を通航して東京湾へ至る航行距離は、マラッカ海峡経由に比べ、約千七百キロ長くなります。原油タンカーの速力を原油満載時の最大速力に相当する時速約二十八キロと仮定すると、期間にして三日間ほどの航程延長となります。その場合、原油タンカーにおける燃料費及び用船料を一日当たり一千万円と仮定すると、往復で約六千万円が余計にかかる計算だそうです。

 現在と同量の原油を確保するにはタンカーを増やす必要があり、有事となれば当然のことながら保険料も増額されるのは必至です。そして、これらの支出は全て、ロシアのウクライナ侵攻で更に高騰している原油価格に上乗せされることになります。

 この原油タンカーの件だけでも台湾有事が日本の経済に大きく影響することは言うまでもありませんが、台湾有事における日本経済への影響について、政府の御見解をお伺いいたします。

松多政府参考人 お答え申し上げます。

 私ども内閣府の経済財政分析担当では、景気の総括的判断や経済財政政策に係る調査及び分析等を行っており、月例経済報告では、世界経済や金融資本市場の動向など、様々なリスクを考慮して景気判断をしているところでございます。

 こうした分野を所掌している立場で申し上げますと、日本経済への影響を含め、台湾有事という仮定の質問について予断を持ってお答えすることは差し控えさせていただきます。

 いずれにいたしましても、引き続き、適時適切に様々なリスクを勘案して我が国経済の動向について分析し、適切な景気判断に努めてまいりたいと考えております。

美延委員 答えられないというお答えなんですけれども、そこはしっかり検討してもらわないといけないと思いますので、よろしくお願いいたします。

 次に、台湾有事における離島の島民避難についてお伺いいたします。

 早期に島民を避難させるということは台湾有事が起きたときに言うまでもないことなんですが、他方、輸送力には限界があることだと思います。各島の港湾そして空港の規模が小さ過ぎるという問題点もあります。何らかの理由により島を離れない住民の保護を含めた国民保護体制の充実は不可欠であります。

 二〇〇四年に、有事法制の制定に併せて国民保護法が策定されました。この国民保護法は有事や大規模テロの際に国民の生命財産を守るための法律で、その責務は国と各自治体が担います。

 しかし、この国民保護法は、武力攻撃予測事態や武力攻撃事態、テロを対象とした緊急対処事態時においてしか適用できないと聞いております。平時から早期に避難してもらうためには、災害対策法による避難活動を促すしかないというのが現状であります。

 仮に島民が避難することになっても、現状の輸送力では、有事の状況によっては島民全員の避難が間に合わないことも予想されます。また、輸送と同時に受入れ体制の強化もセットで考えなければならない問題だと思います。

 離島の国民保護の観点から、輸送力の増強や受入れ体制の強化、各島の空港や港湾の拡大、整備は重要かと思いますが、政府の見解をお聞かせください。

澤田政府参考人 お答えいたします。

 住民の避難が必要な状況とは、まさに我が国に対する武力攻撃が予測、切迫、あるいは発生している事態と評価される状況にほかならず、このような状況におきましては、武力攻撃予測事態等と認定いたしまして、国民保護法に基づく措置を実施することとなると考えております。

 その上で、沖縄県における国民保護、とりわけ離島住民の避難につきましては、輸送手段に制約があるという特有の困難さがございますので、運送を始めとした避難の適切な実施のための体制づくりに資するよう、輸送手段の確保などにつきまして関係省庁が連携して必要な検討を行ってきているところでございます。

 また、地方公共団体におきましても、平素からの備えとして、避難実施要領のパターンを作成していただくことが重要でございます。政府としましては、沖縄県の地方公共団体に対しまして、パターン作成の支援をきめ細やかに実施をしているところでございます。

 さらに、国民保護訓練におきましても、今後、沖縄県と連携して実施することを予定しておりまして、政府といたしましては、沖縄県とよく話をしながら、訓練の実施に向けて準備に着実に取り組んでまいりたいと存じます。

 これらの取組を通じまして、離島地域におけます国民保護の更なる体制整備にしっかりと努めてまいりたいと存じます。

美延委員 次に、台湾における在留邦人の救出についても伺います。

 台湾有事において、在台湾の邦人保護に向けた準備が急務となっていることは言うまでもありません。台湾には約二万五千人もの日本人の方が移住しております。やはり、邦人の救出において、平時から台湾との連携や有事の場合の救出体制の構築が必要不可欠だと思われます。

 また、タイミング的には、先ほど言いました離島からの島民避難と邦人救出の時期が重なることも十分に予想され、自衛隊の輸送機の事前の調整も必要だと思います。

 平時から、邦人の救出に関しては、台湾との連携という観点から計画を策定しなければならないと思いますが、台湾は、中国からの防衛策を練ることで、日本人の避難支援どころではないかもしれません。こうした問題の解決も国家安全保障戦略において検討すべき問題であると思います。

 現時点での台湾有事における在留邦人の救出について、政府の見解をお伺いさせていただきます。

増田政府参考人 お答え申し上げます。

 台湾をめぐる問題につきまして、我が国としましては、対話により平和的に解決されることを期待するとの立場でございます。

 その上で、一般論として申し上げますと、防衛省・自衛隊としては、あらゆる事態において適切に対応できるよう不断に検討しているところでございますが、事柄の性質上、その内容について申し上げることは困難であることを御理解いただきたいと思います。

 なお、在外邦人等の保護は政府にとって極めて重要な責務だと思っております。

 昨年八月にアフガニスタンでの事案がございましたが、これに対する教訓の一つとして、自衛隊法を改正しまして今国会に出させていただき、成立させていただきました。また、アフガニスタンの事案の後、エチオピア、それからスーダン、そしてウクライナといろいろな事案がありましたけれども、政府の中で緊密に連携して迅速に対応できるように措置してきております。

 防衛省・自衛隊にとりまして、在外邦人等の保護に係る能力の維持向上を図るために、様々な訓練等も継続的にやっていきたいと思っております。

 以上でございます。

美延委員 是非しっかりよろしくお願いいたします。

 時間が参りましたので、終わります。ありがとうございました。

大塚委員長 次に、岩谷良平君。

岩谷委員 日本維新の会の岩谷良平です。よろしくお願いいたします。

 政府は今、外交・安全保障戦略の根幹となりますいわゆる防衛三文書、戦略三文書の改定作業を行われておられますけれども、今、ロシアによりますウクライナ侵略等を受けまして世界の安保環境が激変する中で、今回の防衛三文書の改定というのは、今後、日本の安全保障にとって五年、十年先、あるいは二十年先を決定づける大変重要なものであると認識しております。

 この防衛三文書についてお伺いしますが、まず、現行の、今の防衛三文書についてのお答えで結構ですが、これは、財政上の制約を横に置いて、必要な防衛力を積み上げて示したものなのか、それとも、財政上の制約の中で、その中で必要な防衛力として示したものなのか、これはどちらかということをお答えいただきたいと思います。

土本政府参考人 お答え申し上げます。

 現行の防衛計画の大綱は、国家安全保障戦略を踏まえ、格段に速度を増す安全保障環境の変化に対応し、真に実効的な防衛力を構築するため、防衛力の質と量を必要かつ十分に確保することとしております。

 その上で、真に実効的な防衛力として、多次元統合防衛力の構築に向け、防衛力の大幅な強化のために必要となる経費として、現在の中期防におきましては、おおむね二十七兆四千七百億円程度をめどとすることを明記し、五年間の防衛力整備を進めていくこととなっております。

 その上で、一層の効率化、合理化を徹底することなどによって実質的な財源の確保を図り、おおむね二十五兆五千億をめどに各年度の予算編成を行う、こういうことになっております。

 これは、厳しい財政事情を踏まえ、効率化、合理化を徹底するという前提の上で、安全保障環境に対応できる防衛力の強化を図っている、こういう考え方でございます。

岩谷委員 財政事情を踏まえということなので、何かしら基準、目安を用いているんだと思うんですが、我が国の防衛費はこの間大体五兆円ぐらいで推移しているということで、よく言われるGDP比の一%ということで、このGDPの一%というのが基準、目安になっているのかどうか、お聞きしたいと思います。

土本政府参考人 お答え申し上げます。

 まず、政府といたしましては、防衛力整備の計画の基本といたしまして中期防を定めておりますが、これは財政的な基準、目安等を具体的に考慮して策定したものではないということでございます。

 委員御指摘のGDP一%の関係でございますが、我が国の防衛関係費のGDP比につきましては、一%以内に抑えるという考え方は取っておらず、厳しさを増す安全保障環境の下で、防衛力を強化するために必要な予算をしっかり確保しているということでございます。

岩谷委員 我々日本維新の会は、防衛費について、GDP比の二%を目安に積極防衛能力を整備すべきと主張してまいりましたし、昨日発表しました参議院選挙公約においてもこれを明記させていただきました。この指標に対して、数字ありきで防衛費は決めるものではないとか、あるいは根拠が不明だというような、そういった御批判をいただくことがあります。

 よく、根拠として、NATO加盟国が二%程度だとか、そういうことが今まで言われてきたわけですが、ちょうど今週火曜日、防衛省のシンクタンクであります防衛研究所が東アジア戦略概観二〇二二を発表されました。この中で防衛費についての記述がございまして、攻者三倍の法則、攻める側が守る側に対して三倍の兵力が必要だという法則を引用した上で、中国を想定した場合、中国の今後の防衛費の伸びも考慮すると、日本の防衛費としては大体十兆円ぐらい必要になる、すなわちGDP比の二%程度になるという考え方もあり得るんじゃないかと示されているわけです。

 この防衛省のシンクタンクの本に書かれていることですが、この見解についてどうお考えになりますか。

岸国務大臣 東アジア戦略概観二〇二二において御指摘の旨の記述があることは承知をしておるところでございます。

 本記述を含めて、戦略概観は、防衛研究所の研究者が、公刊資料に基づいて、研究者の立場から学術的な分析を行ったものであります。冊子に明記されているとおり、防衛省としての公式見解を示すものではございません。こうした趣旨の文書であることをまず御理解をいただければと思います。

 その上で、防衛省として、国民の命や暮らしを守るために何が必要なのか、具体的かつ現実的に議論し、積み上げていき、その結果、防衛力の抜本的強化に当たって必要となるものの裏づけとなる予算をしっかり確保していく考えであります。

 いずれにせよ、防衛費の内容や規模等については、新たな国家安全保障戦略策定や今後の予算編成過程を通じて検討してまいります。

岩谷委員 三十一日に政府が取りまとめられたいわゆる骨太の方針の原案に、焦点となりました防衛費の増額幅は明示をされませんでしたが、私は、先ほどの防衛研究所の記述も踏まえて、今策定中の新しい防衛三文書、やはりここには防衛費についてGDP二%ということをしっかり書き込むべきだと考えますが、もう一度大臣にお伺いできればと思います。

岸国務大臣 防衛力の抜本的強化に当たりまして必要になるものの裏づけとなる予算、これをしっかり確保していく考えでございますが、こうした観点から、総理は先日の日米首脳会談で、防衛費の相当な増額を確保する旨、決意を表明されたものと承知をしております。

 こうした考えの下で、防衛費の内容や規模等について、新たな国家安全保障戦略等の策定や今後の予算編成を通じて検討してまいりたいと考えております。

岩谷委員 引き続き防衛三文書についてお伺いしますけれども、本委員会において、武力攻撃を受けた際の国民の避難等のいわゆる国民保護について様々議論をさせていただきました。その中で、武力攻撃を受けた際にいかに住民の皆さんに避難していただくか、そのために、あらかじめ地方自治体が避難実施要領のパターンを作成するということで努力義務が課されておりますけれども、質疑を通して、この武力攻撃を受けた際の避難実施要領のパターンが約半数の自治体で作成されていないという事実が明らかになりました。

 それから、国民保護法に基づく国民保護共同訓練、これについても、約二十年間で二百三十七回行われている中で、武力攻撃を想定した訓練がこれまでたった四回しか行われてこなかったという事実も明らかになりました。私は、これは極めて不十分ではないかと指摘したところであります。

 現行の防衛三文書を見ますと、例えば、国家安全保障戦略には、三十二ページ中、国民保護というワードが出てくるのは一か所、防衛計画の大綱には三十ページ中二か所、中期防には二十九ページ中一か所、これは見落としているところもあるかもしれませんけれども、ワードとしてもこれだけしか出てきていなくて、まとまった記述というのはないんですね。

 防衛省・自衛隊からすれば、国民保護については、各自治体とか消防庁が主体となってやるものであるとか、あるいは、別途、国民保護計画に基づいてやるんだというお考えなのかもしれませんが、私は、当然、防衛省・自衛隊の究極の目的は有事の際に国民の命を守ることであると思いますが、有事の際に国民の命を守るためには、武力攻撃を、侵害を排除するということと同時に、いかに国民の皆さんを避難等で命を守っていくか、この二つを両輪としてやっていかなければ実現できないことだと思っています。

 そういう意味では、この国民保護と武力攻撃の排除というのは一体で考えていくべきものだと思っておりまして、新しい防衛三文書に国民保護についてしっかりと、一つの章立てをするぐらい盛り込むべきだと思うんです。

 なかなか今お答えできないと言われるかもしれませんが、せめて検討だけでもしていただきたいと思うんですが、いかがでしょうか。

岸国務大臣 何よりも大切なこと、これは、今委員からも御指摘がありましたけれども、国民の命や暮らしを守っていくということです。そのために必要なものは何なのか、こうした現実的な議論をしっかりと突き詰めていくことが必要でありますが、その観点からも、国民保護の重要性については委員御指摘のとおりでございますので、新たな国家安全保障戦略等の策定に当たっても、こうした点について、防衛大臣として、様々な場において関係省庁と協力しながらしっかりと議論してまいりたいと考えております。

岩谷委員 ありがとうございます。しっかりと議論をお願いしたいと思います。

 テーマを変えまして、攻撃型ドローンの導入についてお伺いしたいと思います。

 今回のウクライナにおける戦争におきまして、ウクライナ軍が、トルコ製の攻撃型ドローン、TB2とか、アメリカから供与されたスイッチブレードと言われるような攻撃型ドローンを使って相当な戦果を上げているんじゃないかというように言われております。

 また、ナゴルノ・カラバフの軍事衝突では、アゼルバイジャンが攻撃型ドローンを使用して、最初の三日間でアルメニア側に死傷者二千三百人、戦車等装甲車二百両、軍用車両百十両、りゅう弾砲、ロケット砲二百二十八門、防空システム三百基、無人機十八機、その他、弾薬庫、指揮所等、多数の損害をドローン攻撃によって与えたというふうに言われております。

 まず、これらのウクライナとかナゴルノ・カラバフの攻撃型ドローンの使用についてどのように評価、分析されているか、お伺いしたいと思います。

増田政府参考人 お答え申し上げます。

 委員御指摘の二〇二〇年ナゴルノ・カラバフにおける軍事衝突におきましては、アゼルバイジャン側が自爆型の無人機、そして攻撃型の無人機を効果的に組み合わせて投入しまして、アルメニア側の防空システムや地上兵力を破壊したと見られております。

 また、今般のロシアによるウクライナ侵略に対し、ウクライナ軍は、バイラクタルTB2などを使用し、ロシア軍の野外指揮所や兵たん車両などの後方部隊を攻撃するとともに、無人機による航空偵察と地上部隊の火砲や多連装ロケットを組み合わせ、ロシア軍を攻撃していると見られております。

 攻撃型無人機は、使用側にリスクが低く、比較的安価であることなどによりまして、各国において急速に普及しておりまして、無人機の効果的な活用は将来の戦闘様相を一変させ得るゲームチェンジャーであることが指摘されるとともに、無人機を駆使した新たな戦い方への対応が認識されてきております。

 防衛省といたしましても、こうした無人機を使用した新たな戦い方について、引き続き高い関心を持って注視する必要があると考えております。

岩谷委員 今年、自衛隊の方では、無人偵察機のグローバルホークを導入して偵察航空隊を新編されるということですが、これはもちろん必要ですし、早急に進めていただきたいと思うんですが、一方で、今申し上げたように、これだけ世界各国が、攻撃型のドローン、偵察ではなくて攻撃型のドローンをどんどん開発して配備して、そして実戦でも使用されている中で、ようやく偵察用のドローンを配備するというだけでは余りに遅過ぎるんじゃないかと思います。

 一部報道でも出ていたように記憶しているんですが、今後、攻撃型ドローンを配備することを検討する考えがあるかどうか、大臣にお伺いしたいと思います。

岸国務大臣 この無人機は、将来の戦闘様相を一変させるような、まさにゲームチェンジャーになるとの指摘もあるわけでございます。

 こうした中で、陸上自衛隊においても小型の攻撃型のいわゆるUAVの導入について検討するための経費を令和四年度予算に計上しているところです。具体的には、小型の攻撃型UAVを複数機種リースし、実際に飛行させ、飛行、遊よく、攻撃の一連の動作を確認するほか、操縦者による攻撃中止動作も確認することとしています。

 防衛省・自衛隊として、必要な無人機の着実な整備と積極的な活用を進めていく考えであります。

 攻撃型無人機については、先ほどの小型の攻撃型UAVの運用に係る研究の結果により陸上自衛隊の運用における有用性を確認した上で、速やかに導入することも考えております。

岩谷委員 ありがとうございます。是非早急に進めていただきたいというふうに思います。

 次に、またテーマを変えまして、自衛官の定数維持についてもいろいろと議論をさせていただきましたが、ちょっと残っていた質疑をさせていただきたいと思います。

 自衛隊員の定数維持について、職域別定年延長制度の更なる定年年齢の延長、これについてお伺いしたいと思います。

 今、一般職の国家公務員の定年年齢が現在の六十歳から段階的に六十五歳に引き上げられるということになっておりますけれども、自衛官の方は、いわゆる精強性を維持するために、将の階級の方を除いて五十四歳から五十七歳が定年年齢となっております。

 一方で、医師とか歯科医師とか薬剤師の自衛官とか、通信情報の職務に従事する自衛官等は、いわゆる職域別定年延長ということで、定年年齢六十歳ということになっております。こういう専門職の方は自衛隊の精強性とは必ずしもリンクしないので、非常に理にかなっていることだと思うんですね。

 しかし、であるならば、一方で一般の国家公務員が六十五歳に定年が引き上げられていこうとしている中で、この職域別定年延長も六十五歳まで引き上げるべきじゃないかというふうに思いますが、大臣、いかがでしょうか。

岸国務大臣 自衛官におきましては、今御指摘のとおり、若年の定年制というものが定められているわけですが、他方で、厳しい募集環境を背景として、より一層の人材の有効活用を図る観点から、一部の職域の自衛官については、階級を問わず、その定年を六十歳としているところであります。

 これら職域の自衛官の定年年齢の引上げについては、知識や技能の有効活用の観点や精強性の維持の観点からも、このほかにも、将来の社会情勢等も踏まえながら、検討を行ってまいりたいと考えております。

岩谷委員 本当に、いつまでも検討していてもなかなか変わりませんから、進めていただきたいというふうに思います。

 時間があと五分なので、進めたいと思います。

 次に、自己都合で早期に中途退職されるパイロットの自衛官の方々への教育訓練費用等の償還制度についてお伺いしたいと思います。

 二〇二〇年の財政制度等審議会の資料によりますと、自己都合による自衛官の中途退職者はこの十年間で約四割増えて年間五千人、これは新規採用者数の三分の一に当たる、このうちパイロットや医官、看護官、整備士等が約三割を占めるというふうに言われております。

 それで、特に、ジェット機の操縦者、パイロットの教育訓練費等は、約五年間で一人当たり五億円かかるとも言われているわけなんですね。その方々が任官して早期に自己都合で退職されると極めて大きな損失となるわけなんです。

 この点、防衛医科大学校を卒業した医官、医師ですね、医官については、勤務開始から九年以内の退職の場合、最大四千三百五万円の教育訓練費用を償還していただくという制度が取られております。一方で、今申し上げた五年間で一人当たり五億円かかると言われているジェット機のパイロット等には償還制度がないということになっております。

 まず、どうして医官にはあってパイロットには償還制度がないのか、お伺いしたいと思います。

川崎政府参考人 お答えいたします。

 防衛医科大学校卒業生の償還金制度は、医師国家試験及び保健師、看護師国家試験の受験資格を国費によって取得した者が早期に辞職することは好ましくない、そういう考え方から、国費による受益の公平を図るために設けられた制度となっております。

 一方、今委員御指摘の自衛隊の操縦士につきましては、自衛隊で訓練を受けることによって得られる資格は民間の航空機を操縦するために必要な各種資格の一部に限られているというような状況でございますので、こういったことから償還金の制度は設けていないということでございます。

岩谷委員 一部ということなんですけれども、それでも、先ほど来申し上げているとおり、一人当たり五億円かかるとも言われる教育訓練を施しているわけであります。

 実際、財務省作成の財政制度等審議会の資料でも、この費用の償還制度の導入を検討すべきではないかというふうに記されているわけでして、大臣、償還制度を検討するお考えはありませんか。

岸国務大臣 パイロットの流出防止ということについては、防衛省としても重要な課題と認識をしております。

 様々な対策を講じているところでありますが、具体的には、航空自衛隊において、若手操縦士に対しキャリア形成に関する教育を行うほか、女性の操縦士のための相談員制度を設けるなど、操縦士が現在の勤務やあるいは将来のキャリアに対して持っている不安を払拭し、自衛隊での勤務を継続するように意欲を高められるよう、必要な支援体制を整備しているところであります。

 まずはこのような取組を通じ航空機の操縦士の流出防止に努めることとしており、現時点で償還金制度を導入することは考えておりません。

岩谷委員 この中途退職の問題はやはり深刻だと思いますので、これも本当に、検討、その他の方策でと言っている間にどんどん中途退職者が増えているわけですから、早急にこういった抜本的な制度というものの導入を検討していただきたいと思います。

 時間になりましたので、以上で終わりたいと思います。ありがとうございました。

大塚委員長 次に、鈴木敦君。

鈴木(敦)委員 お疲れさまでございます。国民民主党の鈴木でございます。

 本来は斎藤委員が委員でしたけれども、今日は委員変更で私に替わっていただきましたので、よろしくお願いします。

 今日も委員の皆さんから様々な領域の安全保障についてお話がありました。今年は経済安全保障という言葉が出ましたので、安全保障というのは様々な議論があるということを皆さんもよく分かっていただいた、国民の皆さんも御理解いただいたと思います。

 今日いろいろと議論がありましたが、これは、我が国が侵略を受けた場合ですとか、あるいは相手の国に対してどう対処するかとか、そういった領域のお話が多かったと思いますけれども、私はその中間地点のお話を今日はさせていただきたいと思います。

 中間地点といいますのは、言わずもがな、我が国は四面を海に囲まれておりますから、安全保障、特に国を守るというもののメインのフィールドは、海洋、空中、そして宇宙とサイバーになります。宇宙とサイバーまでやっている時間がありませんので、今日は海洋の話をメインにさせていただきたいと思います。

 我が国の周辺海域には、排他的経済水域、大変大きな地域がございます。特に、海洋資源はたくさんあるというふうに言われてもおります。まだ商業化の実証をしているところですけれども、これからこれをやっていこうと。そして、これは、これから我が国が生き残っていく上で非常に重要な資源が埋まっているとされている部分ですが、これを採掘したりあるいは探査をしたりするときには鉱業法という法律があります。これは海洋資源だけに限りませんけれども、掘ったり探査したりする場合には、この鉱業法という法律で整理をする。

 平成二十三年にこの鉱業法が改正をされまして、罰則規定、そして取締りの方法がいろいろと国会でも議論されました。そのとき国会で議論されたのは何かといえば、本当に取り締まれますかということです。何をやっているか分かりますか、本当に止められますか、こういう議論が与野党の間でもたくさんありました。そのとき、今、副議長になっちゃった方もいらっしゃいますし、防衛庁の長官だった方も発言されていますし、ワクチン大臣だった方もいらっしゃいました。

 こういう方々が発言されていますが、まず経済産業省にお伺いしますが、この際国会で明らかになった鉱業法の取締りについてのフローチャートは今まで変更はございませんか。

石井副大臣 御指摘ございました平成二十三年の鉱業法改正によりまして、日本の排他的経済水域、EEZ内において、経済産業大臣の事前許可を得ずに鉱物の探査を行うことはできないこととされておりまして、これ以降、外国による海洋資源探査に対します対処方針に変更はございません。

 この方針に基づきまして、日本のEEZ内において違法な探査行為を実施している可能性のある船舶が発見された場合におきましては、関係省庁と連携をしながら情報収集を行い、法律に基づきまして厳正に対処してまいる所存であります。

 仮に具体的な違反行為が明らかとなった場合におきましては、立入検査、中止命令等を法律に基づき実施することとなっております。

鈴木(敦)委員 ありがとうございます。

 今、探査という言葉がありました。先ほど言えばよかったんですが、ここではっきり申し上げておきますが、天然資源の探査ということと海洋の科学的調査という言葉は違います。法律上、探査を行うというものと海洋の調査をすることとは天と地ほど意味が分かれますから、ここでは言い分けをしっかりさせていただきたいと思います。

 資料を配らせていただきました。新聞報道でもありましたし、各党の会合の中でも議論になったと思いますが、韓国がノルウェー船籍の船を使って海洋調査をしながら我が国の排他的経済水域に侵入したという際の、これはAISという自動位置確認システムのデータになります。

 我が国の排他的経済水域を二周する形でこの船舶は我が国に入ってきている。そして、国会の議論でもありましたけれども、ケーブルのようなものを垂らして航海している。どんなものをケーブルというか。

 二ページ目を御覧ください。

 二ページ目の左下にある画像は、船舶の後ろから白いケーブルが出ていますけれども、こういう形でケーブルを曳航している。このケーブルの先にセンサーがついていまして、船から大きな音を出して海底に反射させて、どういう地形であるか、あるいは、この船が何を探っているかというものを調べるというもの、これを曳航しながら我が国の排他的経済水域を二周したということですが、民間船を使ってこれをやったということであれば、鉱業法上、これは地震探査に当たりますから、罰則に当たると思いますが、経済産業省、どうでしょうか。

石井副大臣 御指摘ございましたとおり、今の法律に基づきまして対処してまいる所存でございますが、鉱業法の違法な探査行為ということ、それに該当することが明白に認知されることになれば厳正に対処してまいる、そういう所存でございます。

鈴木(敦)委員 この船ははえ縄漁船ではありません。ケーブルを曳航する理由はたった一つしかない。そして、これは会社のホームページでプレスリリースが出ていますけれども、この船が韓国政府から貯留層を探査するための契約を取ったとプレスリリースで出ているんですから、この船は明らかに海洋の探査を行っていた、鉱物資源の探査を行っていたわけです。だから、この船が曳航しながら、しかも三ノットという低速で動いていることもAISのデータで分かっているわけですから、どう考えても疑わしい。

 これは警察官だったら職務質問するところですけれども、無線で何をしていますかと聞いて、何もしていませんと答えたから何もしなかった。これだけ大切な判断を経済産業省だけでされたんですか。

石井副大臣 今回のこの事案につきましては、海上保安庁から経済産業省に対しまして情報共有が行われました。それは、日本のEEZ内において違法な探査行為を実施している可能性のある調査船が発見された、このような内容でございました。

 経済産業省の担当部局でこの情報を分析をいたしましたところ、探査活動に特有の行動は確認できなかったということでありまして、当該調査船が鉱業法に違反しているとの確認には至らなかったところでございます。

鈴木(敦)委員 ですから、これは要するに、デパートの中でバールを持ち歩いている人に対して、何をしているんですか、何もしていませんと言っているのと同じですよ。それで結局こじ開けられちゃいましたでは話が違うじゃないですか。接舷して取締りをしなければならなかったと思います。そして、それをする権限があったはずです、民間船なので。

 それ以外に、韓国は海洋調査院の公船を使ったりして、あるいは中国は軍艦を使ったりしてやっていますけれども、それは取締りができない、国連海洋法条約上。

 しかし、この船は民間船なんですから、何をしているんですか、我が国の管轄下で何をやっているんですかと聞かなければならなかった。でも、それをしなかったというのは経済産業省だけで判断されたんですか。

 これは副大臣にお答えいただきたいと思いますが、本当にこれは経済産業省だけなんですか。昔は、平成二十三年の鉱業法改正のときには、政府全体として検討する、こう言っていましたけれども、どうなんでしょうか。

石井副大臣 この件に関しましては、現場におられます海上保安庁の様々な情報の収集、それが経済産業省の担当部局に情報共有という形で連絡を受ける、そして、経済産業省ではこのことを分析をして判断をするということでございまして、現場におられます海上保安庁の情報収集活動、これと緊密に連携をしておりまして、そういったことで、今後とも適切な対応に努めてまいりたいというふうに考えております。

鈴木(敦)委員 我が国の排他的経済水域の中で外国の船舶は探査をしてはならないとたくさんの法律に書いていますよね。鉱業法では罰則も設けてありますよね。

 これは、領海じゃないから何もしないじゃないんです。排他的経済水域というのは主権ではないけれども、主権的権利を有しているわけですから、この権益を守るためだったら何でもやらなきゃいけない。これは海上自衛隊にはできないんです。軍隊がやったら大変なことになる。海上保安庁があって、そして、それと連携をする経済産業省もあって、知見もあるわけです。ただ、この国でそれが執行できる組織も判断できる組織もあなた方しかいなかったのに、何もしなかった。これは誤ったメッセージになると思います。

 韓国だけではないですよ。調査船を持っている国はたくさんあります。そして、民間船ですら何もしなかった。公船に対して退去命令も出さなかった。こういう国家であるという誤ったメッセージになるから、しっかり取締りはやらなきゃいけない。

 これが天然資源の探査ではなくて海洋調査だったら、これは法律上認めることができるかもしれない。でも、この船は探査をするために造られた船で、我が国のEEZの周辺に来る前はオーストラリアで同じことをやっていました。そして、そのとき、オーストラリアの活動家に出航を停止させられました。なぜだと思いますか。この船が海洋探査をするときに大きな音を出すから鯨やイルカといった海洋生物に悪影響があるということで、向こうの活動家は出航を停止させたんです。

 それだけの船だということは国際的にも分かっていて、経済産業省さんも分かっていたはずです。現場の話を見ても、私はこの場で出さないと約束しましたから出していませんが、その写真の中でもケーブルは垂らしていた。

 疑わしきは検査するべきだったと思いますが、そう思いませんか、副大臣。

石井副大臣 先ほど御答弁させていただいた探査活動に特有の行動、これについて該当するかどうかを我々も分析するわけでございますが、この詳細、今回についての詳細はお答えすることは差し控えさせていただきたいと思います。

 ただ、一般論として申し上げれば、調査船が用いている機材などの運用の形態、これを外形的に観察をした上で総合的に判断をするということで、探査を行っているか、このことを判断することといたしております。

 いずれにいたしましても、関係省庁、海上保安庁を始めといたしまして、しっかりと連携をして今後の適切な対応に努めてまいりたい、このように考えております。

鈴木(敦)委員 排他的経済水域でこういうことを許していれば、その次に来るのはどこですか。接続水域です。接続水域の先は領海なんです。一番最初に私が申し上げたとおり、我が国を武力で守ろうと思ったら、海洋、空中、宇宙、サイバーしかないんです。その四つの領域のうちの海洋の部分をこれでは守れない。民間船がこうやって探査をする、我が国の法律が及ぶ場所で公然と法律に違反している可能性があった。これを放置したのであれば我が国を守ることもできない。

 そして、防衛のことに話を戻せば、様々、防衛費の話も議論がいろいろありますけれども、F35とかF15とか、高い飛行機もたくさんあります。でも、私は予備自衛官を十四年間やっていて分かったことがありますが、領空侵犯をしたとしても、航空自衛隊の戦闘機が武器の使用をする規定はありませんね。弾道ミサイルについては破壊するために武器を使用することができると書いていますが、航空自衛隊は必要な措置を取ることができるとしか書いていない。だから、威嚇射撃ぐらいしかできないということもあるわけです。

 まず法整備をしなくちゃいけない。やれることは何でもやるべきだと私も思いますが、法律上もやらなきゃいけないと思いますし、今回の海洋の話をすれば、こういうこと一つ一つを許していけば安全保障上大きなリスクになるんです。

 防衛大臣に伺いたいんですが、これは政府全体として考えなければならない問題だったはずです。今回は経済産業省でやったかもしれない。でも、外国の政府が絡んでいるんだったら政府として対応されなきゃいけなかったはずです。その政府の一員として防衛大臣はこの件をどうお考えですか。

岸国務大臣 海上における人命若しくは財産の保護、治安の維持につきましては、海上保安庁が第一義的な対応の責任を有しております。

 自衛隊も、我が国周辺の警戒監視の際に、我が国のEEZにおける海洋調査等を発見した場合には、迅速に海上保安庁に通報するなど、協力を行っております。

 お尋ねのような活動に対する自衛隊の対応について一概に申し上げることは困難でございますが、一般論として申し上げますと、海上保安庁によっては対応が不可能又は著しく困難な場合に、海上警備行動等の発令をして対応することも排除されない、このように考えております。

鈴木(敦)委員 そうなる前の戦なんです。

 今日この部屋には外務委員会で御一緒している委員の方がたくさんいらっしゃいますけれども、私はいつも言っていますが、外交というのは武器の使用に至る前の戦争なんです。交渉もそうです。だから、防衛大臣がそうやっておっしゃるのはもちろんそうなんですけれども、その前の段階で阻止しなければならなかったんじゃないんですかと私は申し上げているんです。是非この件は御検討いただきたいと思います。

 時間になりましたので、終わります。ありがとうございました。

大塚委員長 次に、赤嶺政賢君。

赤嶺委員 日本共産党の赤嶺政賢です。

 先ほど来、離島における国民保護、住民避難の話もありましたが、一番大事なことは、南西諸島、沖縄本島で軍事的な緊張をもたらさない外交政策だと思います。

 石垣島の住民は、去った戦争で日本軍によってマラリア生息地に強制避難され、マラリアの悲劇を起こしました。宮古島では、島に残った兵隊は、海も空も全部連合軍に制圧をされ、餓死状態で命を失う者が次々に出てきました。沖縄本島の戦争では、住民混在の戦場になって、人間が人間でなくなる悲劇が、戦う兵隊よりも住民の方の犠牲が多くなる。

 いや、こんなことは繰り返すことはないと言っても、それは詭弁であります。やはり、沖縄に、南西諸島に絶対に軍事的な緊張を激化させない、そういう責任があの沖縄戦の悲劇を生んだ日本政府には求められているんだということを強く申し上げて、それで質問に移りたいと思います。

 敵基地攻撃能力の保有について質問をします。

 岸田政権は、敵基地攻撃能力の保有を検討する理由として、極超音速兵器などのミサイル技術の進化を挙げています。では、なぜこうした兵器が開発されるようになったのかという点については、アメリカが国内外で配備を進めてきたミサイル防衛網の存在が指摘をされております。

 アメリカの議会調査局が今年の六月に公表した極超音速兵器に関する報告書によると、ロシアは、アメリカとヨーロッパへのミサイル防衛の配備と、二〇〇一年のアメリカの弾道弾迎撃ミサイル制限条約、ABM条約からの離脱に対応して極超音速技術に関する研究を加速させてきた、このように指摘しております。さらに、中国についても、アメリカのミサイル防衛を始めとする高度な軍事技術の進展からの安全保障上の脅威に対抗する必要性から、極超音速技術の開発に優先的に取り組んでいると述べております。

 昨年の防衛白書を見てみましたが、やはり同様の認識を示しております。

 防衛大臣は、極超音速兵器などの開発、配備が進められるようになった背景、原因についてどのように認識しておられますか。

岸国務大臣 極超音速兵器は、マッハ五を超える極超音速で飛翔するとともに、通常の弾道ミサイルと比べまして、低い軌道や、長時間飛翔する、高い機動性を有することなどから、探知や迎撃がより困難になるとの指摘がございます。こうした点も踏まえて、米国や中国、ロシアなどが開発を行っていると承知をしております。

 極超音速兵器について、ロシアのプーチン大統領は、二〇一八年三月に行った演説の中で、米国を始めとするミサイル防衛システム配備への対抗手段の一つとして紹介したと承知をしております。また、中国も、ミサイル防衛の突破が可能な打撃力を獲得するため、その開発を急速に進めていると見られます。

 こうした動きについて、米国は、ミサイル防衛見直しの中で、既存のミサイル防衛システムへ挑むもの、このように認識を示しています。また、米軍の高官は、中国の極超音速兵器に関する急速な能力向上に危機感を表明していると承知をしています。

 極超音速兵器は、将来の戦闘様相を一変させる、いわゆるゲームチェンジャー技術の一つであると認識をしており、防衛省としても、こうした最新兵器の動向を注視してまいるところでございます。

赤嶺委員 今の答弁にもありましたように、ロシアも中国も、アメリカが同盟国を巻き込んで配備を進めてきたミサイル防衛網へのいわば対抗策として極超音速兵器などの開発、配備を進めてきたということであります。しかし、こうした対策が取られることは、計画当初から広く指摘されていたことであります。

 私は、二〇〇一年のこの安保委員会で、アメリカが圧倒的な核戦力を保有し、核の先制使用政策も放棄していない下で、圧倒的な盾まで持つことになれば、周辺諸国に多大な懸念と不安を与え、ミサイル防衛を打ち破ることのできる新たな兵器を開発しようという誘惑に駆られ、軍拡競争が再燃する、このように指摘をいたしました。当時は中谷防衛庁長官でしたが、中谷防衛庁長官は、ミサイル防衛が成功すれば、相手の持っているミサイルが無用化され、軍縮につながることもある、このように答弁をいたしました。

 現状を見れば、軍縮につながるどころか、私たちが指摘していたとおり、新たな兵器の開発を誘発し、軍拡競争が再燃しています。当時の政府の対応は、あるいは説明は誤りだったということではありませんか。

増田政府参考人 お答え申し上げます。

 委員るる御指摘をいただきましたけれども、弾道ミサイル防衛システムにつきましては、これは、弾道ミサイル等の拡散が世界的に進む中で、国民の命と暮らしを守るための純粋に防御的なシステムでございます。そういう観点から、政府はその研究開発や導入を進めてきたところでございます。

 確かに、委員御指摘のように極超音速兵器の開発等が進んでおりますけれども、我々がなさなきゃいけないのは、国民の命と暮らしを断固として守り抜くという観点から必要な施策を取っていくということでございます。

 そのためには、純粋な防御的なシステムであるこの弾道防衛システムにつきましては、更なる迎撃能力の向上等も図りつつ、総理や防衛大臣等も述べておりますように、あらゆる選択肢を排除することなく、国民の命と暮らしを守り抜くための施策の検討を進めてまいりたいと思っております。

赤嶺委員 当時、中谷長官は、弾道ミサイルの導入は軍縮につながる、このように言っておられたんですよ。中谷長官だけじゃないですよ。ミサイル防衛関連の自衛隊法改正を議論した二〇〇五年の衆議院本会議でも、当時民主党の本多議員の質問に対して、当時の大野防衛庁長官は、BMDシステムは、純粋に防御的、他に代替手段のない唯一の手段であり、相手国が我が国に対し弾道ミサイルを発射しない限り、実際に活用されることはない、軍拡競争を招くとは考えられない、このように言い切っているわけですね。

 ところが、現実は、当時の政府の説明と全く異なる方向に進んだことは明らかだと思います。間違っていた、軍拡に結びつかないと言っていた説明は間違いだったということは明白ではありませんか。

増田政府参考人 お答え申し上げます。

 当時、中谷防衛庁長官、そして防衛省側、政府側からはそのような御説明をしておりました。

 軍備管理・軍縮と申しますのはなかなか難しい道のりではございますけれども、弾道ミサイルの脅威が世界的に拡散する中で、それに対する防御システムを持つということは、攻撃側の攻撃能力をそぐという意味では意味があるということは間違いないと思っております。

 そういう意味で、道のりは長いかもしれませんけれども、そういう弾道ミサイル、それから巡航ミサイル、そして今般出てきております極超音速兵器等について、そのような世界的な拡散や能力向上等をどのように抑止していくのかということについては、不断に検討してまいりたいと思っております。

赤嶺委員 最初の、確信を持って軍拡にはつながらないと言っていたのは、これまでの経過を見れば間違いであったということははっきりしております。

 ミサイル防衛に関する経費については、政府は、導入決定当時、八千億円から一兆円程度を要するとの見通しを示していました。政府がこれまでに投じてきた予算額はどれだけになるんですか。また、その中で米国政府と米国企業に対して幾ら支払ってきましたか。

土本政府参考人 経費の関係でございますので、私の方から答弁させていただきます。

 先ほど防衛政策局長からも答弁がございましたように、弾道ミサイルは、一たび発射されれば極めて短時間で我が国に到達し、国民の生命財産に甚大な被害を与えるおそれがあることから、弾道ミサイル防衛能力は非常に重要なものであると考えているところでございます。

 このため、BMDに特化した事業の関連経費といたしまして、二〇〇四年、平成十六年度予算から、二〇二二年、令和四年度予算までの累計で約二兆七千八百二十九億円を計上してきております。

 続いて、委員御指摘の関係で、現時点で集計しております、二〇一六年度から二〇二二年度の、五年間のFMS及び一般輸入の主な契約額につきまして、合計は約五千四百八十三億円となっており、その内訳につきましては、FMSによるものが約五千百三十三億円、一般輸入によるものが約三百五十億円となっているところでございます。

赤嶺委員 今の数字は、導入決定前に進めていた日米共同技術研究などの経費、これは約百六十億円、そこは含まれていないわけです。いずれにしても、政府が当初示していた額の三倍、三兆円近い予算を費やし、ミサイル防衛だけで、国民の貴重な税金を毎年一千億円以上、湯水のようにアメリカに支払い続けております。

 その上、今度は、使い物にならなくなってきたから、敵基地攻撃能力だ、軍事費は増額だ、このように言っています。これは余りにも無責任だと思いますよ。

 まず、これまでの政府の取組を検証して、国民に謝罪することから始めるべきだと思いますが、いかがですか。

土本政府参考人 お答え申し上げます。

 先ほど冒頭申しましたように、我々は弾道ミサイルから国民の生命財産をしっかり守るという重要な任務というものを遂行する必要があることから、予算措置を各年度やらせていただいているところでございます。

 先ほど総額を申しましたが、具体的に少し申し上げれば、イージス艦の能力向上とか、SM3ミサイルの取得、整備等、ペトリオットシステムの能力向上、PAC3ミサイルの取得、探知レーダーのFPS5の整備、あと、自動警戒管制システムへの弾道ミサイル対処機能の付加等、これらの経費等をしっかり措置して、我々としては、我が国の平和と独立を守り、国民の生命と財産を守るという自衛隊の任務をしっかり遂行していくということでございます。

赤嶺委員 我々が聞かされるのは、ミサイル技術が進展しているから今度は敵基地攻撃能力の保有を検討する、こう言っているわけです。

 圧倒的なアメリカの核戦力に加えて日本もそうした兵器を持てば、相手もそれに対抗して軍備を拡大し、更なる軍拡競争の深みにはまっていくだけだ、これは二〇〇一年に私たちが指摘していたことです。軍拡競争の深みにはまっていく、大臣はそうならないという見通しを示せますか。

岸国務大臣 昨今のミサイル発射技術の急速な発展、これを見ましても、これを阻止するためのBMD技術に更に高めていかなければならないのは当然のことだと考えております。

 その上で、そのミサイルに対して、ミサイルを撃ち落とすだけでいいのかという問題意識の下で、反撃能力を含めた、またあらゆるオプションを含めた議論をこれから国家安全保障戦略策定に向けて行っていく、このように考えております。

赤嶺委員 やはり、私たちがかねてから指摘していたように、今の政府の取っている方向は、果てしない軍拡競争、抑止力のジレンマ、そこにつながっていくということを強く指摘しておきたいと思います。

 ウクライナ情勢に乗じて、敵基地攻撃能力を持つべきだとか、軍事費を増額すべきだとか、憲法九条を変えるべきだという議論が振りまかれております。しかし、ロシアによるウクライナ侵略に至る経緯を冷静に見れば、そのような結論にはならないと思います。

 昨年の防衛白書はこう述べています。「一九九九年以降、NATOへの東欧諸国の加盟、いわゆる「NATOの東方拡大」が進められるとともに、米国が国内外でミサイル防衛システムの構築を進めていることに対してロシアは警戒感を強めている。」このように述べています。

 NATOの東方拡大に警戒感を強めているというのは、具体的にこれはどういうことですか。NATOの東方拡大をめぐるこれまでの経緯を説明していただけますか。

増田政府参考人 お答え申し上げます。

 NATOのいわゆる東方拡大とは、冷戦終結後、旧ソ連圏であった中東欧諸国がNATOに加盟することが実現してきた一連の過程を指すものと理解しております。

 この点、これまでロシアはNATOのいわゆる東方拡大に反対の立場を示してきましたけれども、その一方で、旧ソ連圏であったバルト三国が二〇〇四年にNATOに加盟した際など、個々の加盟事例においては必ずしもウクライナをめぐるような明確な反対はしておりませんで、現在のような状況は生起していないことに留意する必要があると考えております。

 また、NATO・ロシア間においては、両者が平等な立場で協議等を行う場としてNATO・ロシア理事会が設置されるなど、信頼醸成のための制度も整備されてきたと承知しております。

 このように、NATOのいわゆる東方拡大は、ロシアへの配慮が示されつつ進展し、ロシアもそれを事実上受容してきたことや、NATO・ロシア間の協力が停止する契機になったのは、二〇一四年のロシアによる違法なクリミア併合であったことを想起すべきであると考えております。

 さらに、二〇一四年のロシアによるいわゆるクリミア併合等を契機といたしまして、ウクライナはそれまでロシアに一定程度配慮していた安保政策を転換いたしまして、NATOとの関係強化にかじを切っております。昨年二〇二一年にウクライナ周辺に多数の兵力を集結させた事例を含め、そもそも地域の緊張を高めたのはロシア側であったと考えております。

 いずれにせよ、どのような理由や判断があったといたしましても、武力によって自らの主張を実現するという今般のロシアによるウクライナ侵略は、断じて認められない国際法違反の行為であり、何ら正当化できるものではないと考えております。

赤嶺委員 ロシアのウクライナ侵略は、国連憲章に真っ向から違反するものであり、断じて認められない、直ちに撤退せよというのは私たちも強く主張しているところであります。

 ただ、戦後の米ソ対決の時代が終わろうとしていた三十年前、私たちは、ヨーロッパの安全保障体制の在り方として、NATOとワルシャワ条約機構の双方を解体し、ヨーロッパの全ての国が参加する集団安全保障体制を確立することを日本共産党として提唱しておりました。しかし、その動きは私たちが提唱した方向には進みませんでした。

 ロシアを含むこの地域の全ての国が参加する欧州安全保障協力機構、OSCEを発展させて、紛争の平和的解決のための主要な機関と位置づけるなどの動きも起こりましたが、アメリカはあくまでNATOに固執し、ロシアの反対を押し切って東方への拡大を推し進めました。

 ロシアも、当初は欧州共通の家などの構想を打ち出しました。しかし、NATOの東方拡大が推し進められる下で、それに対抗して旧ソ連時代の権益に固執し、チェチェンやジョージア、二〇一四年以降はウクライナへの軍事介入を繰り返してきました。

 アメリカとロシアが、米ソ対決の終えんというチャンスを生かせず、軍事同盟的な発想で勢力圏を拡大しようとする下で起こったのが今回の事態だと思います。

 今回の侵略の責任はロシアにあります。ただ、今回の事態から酌み取るべき教訓は、軍事力の強化ではなく、全ての国が参加し、あらゆる問題を話合いで解決していくための集団安全保障の枠組みをこの東アジアで構築していくということではないかと思います。

 大臣、いかがですか。

大塚委員長 時間が過ぎておりますので、手短にお願いいたします。

岸国務大臣 今般の事態についての背景の分析は必要でございますが、いずれにせよ、圧倒的な軍事力を持つ国が他の主権国を一方的に侵略し、罪のない人々に犠牲が出ているということは、ロシアが責任を負うべきものであり、ウクライナによる抵抗及び我が国や世界各国による制裁と支援は当然のことと考えます。

 しっかり連帯を示していくことが必要であるというふうに思います。

赤嶺委員 終わります。

大塚委員長 次回は、公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。

    午後零時五分散会


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