衆議院

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第5号 令和4年12月8日(木曜日)

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令和四年十二月八日(木曜日)

    午前十時開議

 出席委員

   委員長 鬼木  誠君

   理事 大塚  拓君 理事 國場幸之助君

   理事 宮澤 博行君 理事 若宮 健嗣君

   理事 伊藤 俊輔君 理事 篠原  豪君

   理事 三木 圭恵君 理事 浜地 雅一君

      江渡 聡徳君    大岡 敏孝君

      木村 次郎君    小泉進次郎君

      鈴木 憲和君    武田 良太君

      渡海紀三朗君    中曽根康隆君

      長島 昭久君    藤原  崇君

      細野 豪志君    松島みどり君

      山本ともひろ君    新垣 邦男君

      玄葉光一郎君    重徳 和彦君

      渡辺  周君    浅川 義治君

      美延 映夫君    河西 宏一君

      斎藤アレックス君    赤嶺 政賢君

    …………………………………

   外務大臣         林  芳正君

   防衛大臣         浜田 靖一君

   防衛大臣政務官      木村 次郎君

   政府参考人

   (内閣官房内閣審議官)  下田 隆文君

   政府参考人

   (内閣官房内閣審議官)  小柳 誠二君

   政府参考人

   (出入国在留管理庁出入国管理部長)        丸山 秀治君

   政府参考人

   (外務省大臣官房審議官) 石月 英雄君

   政府参考人

   (外務省大臣官房審議官) 實生 泰介君

   政府参考人

   (外務省国際法局長)   御巫 智洋君

   政府参考人

   (外務省領事局長)    安藤 俊英君

   政府参考人

   (防衛省大臣官房長)   芹澤  清君

   政府参考人

   (防衛省大臣官房サイバーセキュリティ・情報化審議官)           上田 幸司君

   政府参考人

   (防衛省大臣官房審議官) 茂木  陽君

   政府参考人

   (防衛省防衛政策局長)  増田 和夫君

   政府参考人

   (防衛省整備計画局長)  川嶋 貴樹君

   政府参考人

   (防衛省統合幕僚監部総括官)           大和 太郎君

   政府参考人

   (防衛装備庁長官)    土本 英樹君

   安全保障委員会専門員   奥  克彦君

    ―――――――――――――

委員の異動

十一月十一日

 辞任         補欠選任

  齋藤  健君     大岡 敏孝君

十二月八日

 辞任         補欠選任

  大岡 敏孝君     藤原  崇君

同日

 辞任         補欠選任

  藤原  崇君     大岡 敏孝君

    ―――――――――――――

十二月五日

 日本でのオスプレイ配備撤回、訓練中止に関する請願(志位和夫君紹介)(第二三三号)

は本委員会に付託された。

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 政府参考人出頭要求に関する件

 国の安全保障に関する件


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     ――――◇―――――

鬼木委員長 これより会議を開きます。

 国の安全保障に関する件について調査を進めます。

 この際、お諮りいたします。

 本件調査のため、本日、政府参考人として内閣官房内閣審議官下田隆文君、内閣官房内閣審議官小柳誠二君、出入国在留管理庁出入国管理部長丸山秀治君、外務省大臣官房審議官石月英雄君、外務省大臣官房審議官實生泰介君、外務省国際法局長御巫智洋君、外務省領事局長安藤俊英君、防衛省大臣官房長芹澤清君、防衛省大臣官房サイバーセキュリティ・情報化審議官上田幸司君、防衛省大臣官房審議官茂木陽君、防衛省防衛政策局長増田和夫君、防衛省整備計画局長川嶋貴樹君、防衛省統合幕僚監部総括官大和太郎君、防衛装備庁長官土本英樹君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

鬼木委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

鬼木委員長 質疑の申出がありますので、順次これを許します。長島昭久君。

長島委員 おはようございます。自由民主党の長島昭久です。

 鬼木委員長、そして与野党の理事の皆さん、質問の機会を与えていただきまして、ありがとうございます。

 さて、ロシアのウクライナ侵略で世界は一変いたしました。各種世論調査を見ても、日本国民の意識も大分変わってきたというふうに思います。防衛費増額賛成、六割から七割。さすがに、中国、ロシア、北朝鮮と三つの核保有国に囲まれている、紛れもなくこれは、我が国の安全保障環境としては戦後最悪だということが言えるだろうと思います。そうであるからこそ、反撃能力、戦後七十年にわたって我が国がいわば封印をしてきた反撃能力の保有に対して、国民の過半数が支持をしてくれている。先月末の日本経済新聞の世論調査によれば、六五%の国民が支持をしている。

 昭和三十一年の政府統一見解によって既に合憲性が確認されていたにもかかわらず、反撃能力の保有というのは、周辺国への配慮とか、あるいはコストがかかり過ぎるとか、そういった理由で常に見送られてきたということであります。

 確かに、かつては中国も北朝鮮も貧しい国であった、小さい国であった、軍備もさほどではなかった。冷戦期などは、ソ連の脅威といってもアメリカ一国で抑止できた、こういう時代がずっと続いていた。日本さえおとなしくしていれば平和が保たれるというような議論が流布されていた、そんな時期がありました。

 しかし、今や、強大な軍事力を有する国がまさにこの地域に集中している。しかも、軍事活動を活発化させている。我々が脅威を与えているんじゃなくて、我々こそが脅威にさらされている、そういう状況だ。

 したがって、私は、周辺国の大軍拡が続いている中で、日本だけがこの三十年、ずっと防衛費を一%枠の中に収めてきた、アメリカも韓国も台湾も、GDP比で三%を超えて軍事力を整備してきている、つまり、この軍事バランスが不均衡になっている元凶は、実は日本の防衛努力不足だと。これによって地域の不安定が生じているとさえ私自身は思っています。

 しかも、これからの五年、十年が、極めて重要、緊迫を増していく、そういう情勢です。我々に残された時間はほとんどないと言っても過言ではないと思います。そういう中で、浜田大臣、戦略三文書、安全保障関係三文書の改定をすると。

 端的に伺います。これまでと何がこの三文書によって変わるのか、お答えください。

浜田国務大臣 委員御承知のとおり、平成二十五年に我が国の国家安全保障戦略が作成されてから、約九年が経過をしました。この間、ミサイル技術の著しい向上や、力による一方的な現状変更の試みの深刻化、軍事バランスの急速な変化があり、そしてまた、宇宙、サイバーといった新しい領域や経済安全保障上の課題が顕在化しており、我が国を取り巻く安全保障環境は一段と厳しさを増し、新たな危機の時代に突入しているとも言えます。

 こうした厳しい安全保障環境を踏まえ、新たな国家安全保障戦略等の策定に当たっては、国民を守るために何が必要か、あらゆる選択肢を排除せず現実的に検討しており、この検討は大詰めを迎えているところであります。

 防衛省としては、新たな防衛力の方向性として、スタンドオフ防衛能力や無人アセット防衛能力等、将来の防衛力の中核となる分野の抜本的強化、そしてまた、現有装備品の最大限の活用のため、可動率向上や弾薬の確保、そして、主要な防衛施設への強靱化や投資の加速を重視し、さらに、防衛生産・技術基盤や人的基盤の強化も含めて検討をしているところであります。

 先日いただいた防衛費に係る総理指示も踏まえ、防衛力の抜本的な強化を実現し、真に国民を守り抜ける体制をつくり上げるための戦略文書となるように、しっかりと仕上げてまいりたいと考えております。

長島委員 ありがとうございます。

 私が本当に画期的だというふうに思うのは、これまでの防衛予算というのは、安全保障環境にほとんど関係なく、GDP比一%という枠の中で抑え込まれてきた、今回は、まさに戦後初めて、もっと正確に言うと、昭和五十一年の三木政権でGDP比一%枠というのがつけられたわけですけれども、それ以来初めて安全保障環境に対応する形で防衛力の整備が行われることができる、これは非常に画期的なことだというふうに思います。

 もう一つ画期的だと思うのは、冒頭に触れた反撃能力の保有ということだと思うんですね。

 浜田大臣とは、去年、台湾有事のシミュレーション、御一緒させていただきました。反撃能力がないとどうなるかというと、撃たれっ放し、相手の攻撃を止めることができない。相手の痛いところをつくことができない限り相手の攻撃を止めることができないということを、本当に我々は痛感いたしました。そういう意味でいうと、反撃能力の保有というのは、まさに抑止力の要だというふうに言えると思うんですね。

 ところが、野党の一部の皆さんから、反撃能力の保有というのは大軍拡競争につながるんだとか、あるいは、専守防衛の考え方を逸脱するものだ、こういう批判や疑念が出ているわけです。

 大臣として、こういった疑念や不安を是非払拭していただきたい、国民に説明をしていただきたいと思います。

浜田国務大臣 まず、現状の認識として、安全保障環境というのは、先ほど申し上げたとおり、急速に厳しさを増しておりますが、周辺国のミサイル戦力の強化が顕著であり、北朝鮮は七百発から千発の弾道ミサイルを、そしてまた中国は地上発射型のみで約二千発に上るミサイルを保有し、ロシアは実際にウクライナ侵略で四千七百発以上のミサイル攻撃を実施したとされております。また、極超音速滑空兵器など、ミサイル技術の急速な進展や飽和攻撃などの運用能力向上が追求されております。

 このような状況の中で、我が国は、自らの防衛力の抜本的強化に真剣に取り組まざるを得ない状況に置かれております。このため、あくまで抑止力を高め、ミサイルなどによる攻撃の可能性を一層低下させるために、いわゆる反撃能力について検討しているところであります。

 その際、軍拡競争への懸念についてはしっかりと対応してまいりたいと考えます。これを防ぐ上で重要なことは、諸外国に対して防衛政策の具体的な考え方を明確にするなど、自国の安全保障政策の透明性を確保することが重要であります。これまでと同様、積極的に取り組んでまいりたいと考えております。

 そしてまた、この反撃能力は専守防衛を逸脱するものかというようなお話があるわけであります。反撃能力と専守防衛の関係について御質問を受けることがございます。

 政府は従来から、誘導弾等による攻撃が行われた場合、そのような攻撃を防ぐのに万やむを得ない必要最小限度の措置を取ることは、例えば誘導弾等による攻撃を防御するのに、他に手段がないときと認められる限り、誘導弾等の基地をたたくことは、法理的には自衛の範囲に含まれ、可能と解してきております。

 このような考え方は、相手から武力攻撃を受けたときに初めて防衛力を行使し、その態様も自衛のための必要最小限にとどめ、また保持する防衛力も自衛のための必要最小限のものに限るといった、専守防衛の考え方と整合するものであります。

 政府としては、年末までに結論を得た上で、こういった御懸念に対して丁寧に説明してまいりたいと考えております。

長島委員 ありがとうございます。先制攻撃はしない、それから、ロシアのように民間施設を攻撃対象としない、こういったところをしっかり認識をしていきたいというふうに思います。

 その反撃力の中核を担うのが、先ほど冒頭の大臣の説明にありましたスタンドオフミサイルであります。特に、南西諸島、これは補給なんかもかなり厳しいし、平地が非常に狭うございますので、こういった離島を守るためには、スタンドオフミサイルであればミサイル部隊をわざわざそちらに海上輸送する必要はないわけですから、非常に、そういう意味では、離れたところから攻撃できるという意味で、極めて有効だというふうに思います。

 そういう中で、大臣に是非お願いしたいのは、相手の能力はどんどん上がっています。したがって、従来型の、亜音速の遅い巡航ミサイルだけではなくて、高速滑空弾であるとか、あるいは極超音速誘導弾など、相手による迎撃を困難にするような高性能のスタンドオフミサイルの開発に是非尽力をしていただきたい、これは要望させていただきたいと思っています。

 その上で、スタンドオフミサイルで重要なのは、プラットフォームの多様化だというふうに思っています。

 現在は、地上発射型、艦艇発射型、あるいは航空機発射型と様々なプラットフォームが想定されて、ファミリー化することによって、重層的な対処を可能にしつつ開発コストを抑えるという利点があるというふうに認識していますけれども、その中でも、相手から見つけにくい秘匿性、したがって攻撃されにくいという生存性、こういった観点から、より優れたプラットフォームとして、潜水艦が非常に有効だと私は思っています。

 秘匿性の高さによって、思いも寄らない海域から奇襲的に攻撃される、そうなれば、相手はそれに対して構えなきゃならない。活動が制約されますね。防御も厚くしなきゃならない。まさに相手方へのコストを付加するという意味で、潜水艦発射型のスタンドオフミサイルというのは戦略的にも非常に有効な一手だというふうに思っています。

 この点、開発努力をされるかどうか、是非お答えいただけますか。

浜田国務大臣 防衛省は、相手の脅威圏の外から対処を行うためのスタンドオフ防衛能力の強化を図っているところであります。現在、一二式地対艦誘導弾能力向上型の地上発射型、そしてまた艦艇発射型、航空機発射型の開発を進めるなど、プラットフォームの多様化を進めております。

 その上で、潜水艦発射型の長射程ミサイルについて、一般論として申し上げれば、潜水艦は高い隠密性を有しておるところで、より長射程のミサイルを用いた戦い方によってこの特徴が一層発揮されるとともに、相手方に一層複雑な対応を強いることができるといった観点で、有用なアセットであると考えております。

 委員の御指摘も踏まえつつ、引き続き、年末の国家安全保障戦略等の策定に向けた議論を加速する中で、あらゆる選択肢を排除することなく、必要な防衛力を検討してまいりたいと考えております。

長島委員 ありがとうございます。

 それでは、次はアクティブサイバーディフェンスについて伺いたいというふうに思います。

 ウクライナ侵略を見ても、ハイブリッド戦争と言われていますが、まずサイバーアタックが最初に来るというのが大体想定される、恐らくこれからの戦争、戦い方の主流になっていくんだろう、このように思います。

 我が国に対する重大なサイバー攻撃も実は相次いでいるんですね、ここ数年。企業活動や市民生活が脅かされている、そういう状況が続いています。

 今年の三月には、自動車のサプライチェーンを狙ったランサムウェア攻撃で、トヨタ自動車の工場の操業が停止されています。九月には、政府のポータルサイトや交通機関、金融機関のホームページに対する大規模なDDoS攻撃が行われました。また、十月には、大阪の急性期・総合医療センターに対するランサムウェア攻撃によって、地域の医療拠点の診療が一か月以上も停滞をする、影響を受ける。まさに市民生活が直接脅かされている、そういう状況です。

 平時だけじゃなくて、グレーゾーン、有事、全ての段階にわたるシームレスなサイバー安全保障というのが今問われているんだろうというふうに私は思っています。

 その意味で、今回、国家安全保障戦略において、重大なサイバー攻撃の連鎖を未然に防ぐために、能動的サイバー防御、アクティブサイバーディフェンスを行う法整備や権限付与を進めるということが盛り込まれると報道されておりますけれども、例えば政府から自民党に示された骨子案では、我が国へのサイバー攻撃の兆候の探知や発信元の特定を行う能動的サイバー防御に関して、必要な法整備を進め、政府機関に権限を付与するというふうにされています。

 このアクティブサイバーディフェンスは待ったなしだと私は思っていますが、この法整備、それから体制整備、これは今どういう状況になっているか是非お答えいただきたいのと、いつまでにこれを完了させるかということ、タイムスパンですね、これが一つと、それからもう一つは、どのような現行法を法整備の対象として考えているのか、是非お答えいただきたいと思います。

小柳政府参考人 お答えを申し上げます。

 昨今の様々な情勢を踏まえますと、御指摘のとおり、政府機関や重要インフラ事業者のみならず、様々なものがサイバー攻撃の標的となるなど、サイバー空間における脅威は高まっていると認識をしております。

 また、深刻化するサイバー攻撃に対処するためには、関係省庁間、官民間、国際間の情報共有の推進を始めとする連携協力体制の強化や、それらを通じた対処能力の向上により、国全体で包括的に取り組むことが重要であると考えております。

 こうしたことを踏まえまして、また、ただいま御指摘をいただきましたアクティブサイバーディフェンスについて、様々な御指摘を踏まえまして、サイバー分野につきましては、新たな国家安全保障戦略等の策定のプロセスの中で、あらゆる選択肢を排除せずに検討しているところであり、現時点で、例えば改正が必要であると想定される法律等につきまして、あるいはスケジュールにつきまして、予断を持ってお答えすることは差し控えさせていただきます。

 いずれにせよ、年末までに策定される新たな国家安全保障戦略等の内容を踏まえまして、必要な法的措置を含め、早急に国全体の包括的なサイバー防御能力の向上に取り組んでまいりたいと考えております。

長島委員 小柳さん、今みたいな答弁は、例えば自民党の中の部会で、もう去年の暮れからやっているんですよ。去年の暮れから同じことを聞いているんですよ。一年あって、まだこれから、国家安全保障戦略を見てから考えますみたいな、こんな悠長なことをやっていたら駄目でしょう。

 我々は恥をかいているんですよ。デニス・ブレアという前のアメリカの国家情報長官、四月に日本に来られましたよ。日本のサイバーセキュリティーはマイナーリーグだと。後で聞いたら、マイナーリーグにもトリプルAからシングルAまであって、どこだと言ったら、シングルAだと言うんですよ。こんなの笑い話じゃないですよ。

 政府の正当業務行為にするとか、現行法の適用除外はどこに定めるかとか、もっとやはり真剣にこの問題を捉えてもらいたいと思う。来年の通常国会に、きちっと法改正の改正案を出してください。

 最後に、これが実は一番大事なんだけれども、皆さんのお手元にポンチ絵を配らせていただきましたが、防衛費の中身の問題を大臣に伺いたいと思うんです。

 総理指示が二つあるんですね。十一月二十八日の総理指示と、十二月五日の総理指示。

 十一月二十八日の総理指示は、令和九年度において、防衛費とそれを補完する取組を合わせ、現在のGDPの二%に達するよう予算措置を講ずると。この、それを補完する取組とは何ぞやといって、今世間は騒然としているわけです。まさか水増しじゃないだろうなと。

 そう思っていたら、十二月五日、月曜日、総理はこういう指示を出されたといいます。次期五年間の中期防衛力整備計画の規模は、これは皆さんのお手元の下の青いところ、中期防衛力整備計画の規模は、防衛力の抜本的強化を進めるための必要な内容をしっかり確保するため、積み上げで約四十三兆円とすること。

 これが本当だったら画期的だと私は思うんですけれども、大臣、まさか、この赤い点線のところではなくて、本当に、防衛力を強化するという、真水の防衛予算を四十三兆円積み上げるという理解でよろしいですね。

浜田国務大臣 総理から五日に御指示いただいた、次期五年間の中期防の規模は積み上げで約四十三兆円という点は、御指摘のとおり、いわゆる真水の防衛費に当たるものであります。

 この規模は、防衛力の抜本的強化が達成でき、防衛省・自衛隊として役割をしっかり果たすことができる水準と考えており、これにより、我が国を将来にわたり守り抜くため、必要な防衛力の整備をしっかりと行っていく考えであります。

長島委員 安全保障の最終的な担保は自衛隊です。やはり、自衛隊の強化なくして防衛力の抜本的強化はなし得ないと私は思っていますので、抜本的強化の旗印にふさわしい、これまでの日本とは違うんだという、そういう防衛予算をしっかり獲得していただきますようにお願い申し上げまして、質問を終わりたいと思います。

 ありがとうございました。

鬼木委員長 次に、渡辺周君。

渡辺(周)委員 立憲民主党の渡辺でございます。

 今の長島委員の質問の確認ですけれども、総理からの指示の中期防四十三兆円は防衛省の予算ということでよいか。まずその確認をいたします。

川嶋政府参考人 お答え申し上げます。

 先生御指摘のとおりでございます。

渡辺(周)委員 後に伺いたいと思いますけれども、総合防衛費という言葉が出てきて、有識者会議の報告書でも出てくる中に、国力としての防衛力だというふうに書かれて、国土交通省予算であるとか、あるいは科学技術の研究費だとか、いろいろなものが盛り込まれて、その中に出てくるのが総合力である、国力としてと。

 さらには、気になるのは、真の防衛力とは、経済力の強化であるとか、財政基盤の強化であるとか、何か、安全保障を入口にして、将来国民負担を求めることはやむなしというふうな文章にも読めたわけですね。

 それで、大臣に伺いたいんですけれども、防衛費あるいは国防費、もっと言えば防衛関係費とか安全保障予算とか、いろいろな言葉があって、我々もつい使ってしまうんですけれども、ただ、一般的に考えると、まさに先ほど申し上げたような、防衛省の予算と、広い意味での安全保障予算、国防費というのか防衛関係費というのか、その総合防衛費に出てくるような、いろいろな、インフラ整備であるとか、科学技術の研究開発、これもひっくるめると、全て大きな安全保障の、まあ、確かにどれを取っても我が国にとっては必要なんですが、そろそろこういう言葉を整理した方がいいんじゃないかと私は思うんですね。大臣はどうお考えですか。

浜田国務大臣 私も参加しました国力としての防衛力を総合的に考える有識者会議においては、防衛力の抜本的な強化を補完する取組として、研究開発、公共インフラ、サイバー安全保障、そしてまた国際的協力といった分野の取組が、議論がされました。

 これらの取組に必要となる経費については、総合的な防衛体制の強化に資する経費として整理し、関係省庁が連携する新たな仕組みの構築とともに、具体的な在り方について検討することとなっております。

 防衛省としては、各省庁の取組に、防衛省・自衛隊のニーズを反映し、より一層の連携を図ることは有益であると考えており、総理の指示の下、関係省庁との検討にしっかりと参画してまいります。

 なお、この取組に係る経費の名称は、政府として検討中でありますが、総合防衛費との名称を用いることはないものと承知をしております。

渡辺(周)委員 かつて、私どもの政権のときに、復興予算で、日本国の経済力の回復こそが復興を後押しする、若しくは真の復興につながるというような言葉がありまして、結果、後で検証してみたら、被災地とは違うところで随分な予算が流用されていたということの苦い反省があるんですけれども、北海道であったり沖縄であったり、被災地の復興と違うところにいろいろな名目で予算が流用されていたという事実がありました。

 是非、安全保障の名の下に、無関係とは言いませんけれども、それこそ水膨れしたような、水増しされたような予算が使われていくことがないように、まさに、真に必要な部分について使われる、それこそがやはり防衛省・自衛隊の、真の意味での役割に使われるということに、やはりそこはしっかりと見届けていかなきゃいけないと思います。

 大臣にまた伺いたいんですが、今回、四十三兆円と、これまでの五か年に比べて一・六倍になったということです。初めに総額ありき。我々立憲民主党は、初めから総額を決めてそこの中に積み上げていくような話ではなくて、積み上げていく上で、結果として予算がどれぐらいになるかということについて当然議論すべきだということなんですが、先に総額が決まったということで、正直、一・六倍弱になって、この積み重ねの見積りが緩くなるんじゃないかと。つまり、本当は真に必要な防衛力に資するかどうか分からないけれども、とにかく額を合わせるためにいろいろなものを使うのではないか、そのことに対してはやはり懸念があるわけなんですけれども、大臣、そこの点についてはいかがですか。

川嶋政府参考人 お答え申し上げます。

 これまで、防衛省におきましては、防衛力を抜本的に強化するに当たりまして、スタンドオフ防衛能力、総合ミサイル防空能力、無人アセット防衛能力、領域横断作戦能力、指揮統制・情報関連機能、機動展開機能、持続性・強靱性といった分野を中心に強化するとともに、防衛生産・技術基盤、人的基盤等の要素を重視して、必要な内容をしっかりと積み上げてまいりました。

 総理からの、調整中の次期五年間の中期防の規模については積み上げで約四十三兆円とすることとの御指示は、こうした積み上げを踏まえたものであり、防衛省としては、これにより、我が国を将来にわたり守り抜くために必要な防衛力の整備をしっかりと行っていく考えでございます。

 以上でございます。

渡辺(周)委員 大臣に是非答えていただきたいんですけれども。

 総理から、防衛力の抜本的強化を進めるための必要な内容をしっかりと確保するため、積み上げでおよそ約四十三兆円とするという指示があったということが、大臣が記者のぶら下がりで答えたということがございます。そのまさに必要な内容、優先順位をどのように考えていらっしゃるのか、その点について、大臣のお言葉でいただきたいと思う。

浜田国務大臣 今、川嶋局長の方から説明がありましたとおり、これはいろいろと、スタンドオフの防衛能力とか総合ミサイルの防空能力、そしてまた無人アセット等々、御説明がありました。

 ただ、我々とすると、まず一番最初に重要なのは、今、自衛官の皆さん方の隊舎等々の老朽化というのが大変クローズアップをされておるわけでありますので、私とすれば、今川嶋局長が挙げた七つのことがあったわけでありますが、その中でも、まず隊舎、シェルターというものをしっかりと整備していくことが重要だというふうに考えております。

渡辺(周)委員 これは、かねてから大臣が記者会見等々で、インタビュー等々で、伺っていることを確認したんですけれども、まさに、全体の総額を占める中で、隊舎の整備を含めた施設整備費が非常に割合が低い、四・数%でしたかね。是非そこは、まだ四割の自衛隊の施設、基地が旧耐震基準のままだと。民間でも今、耐震強化のために建て替えをしているのに、我が国を守るべき自衛隊の、まさに担い手の隊舎が、震度六の地震が来たら耐えられない、そんなことが本当にあるのか。防衛省が発表した資料によりますと、戦時中の施設まで使われている。一体どうなっているんだというふうに思ったわけでございます。そこの、必要な内容の優先順位についても、是非またしっかりと国民に向かってお伝えいただきたいと思うんですね。

 そしてまた、この報告書にもありますけれども、国民に対する丁寧な説明と理解を、何度か触れられております。

 なぜこの一・六倍もの巨額の防衛費が必要なのかということについては、私はやはり客観的なデータを示して、我が国を取り巻く安全保障環境は厳しくなっているとよく枕言葉を使われます、と言うんですけれども、じゃ、具体的にデータを示して、どの国が本当に脅威であり、今、中国は懸念と言われていますが、私、与党時代にシャングリラ会議に出たときに、中国は脅威だと。それは、たしか海上の法の支配をテーマに各国の代表がスピーチするんですけれども、私がスピーチしたときには、後で、中国は脅威と言わないでくださいと秘書官から怒られました。何と言ったらいいんだ、懸念ですと。いや、だけれども、懸念だったら、なぜ世界会議を、こんなところでシャングリラ会議をやって。なぜここまで防衛費を増やさなければいけないのかということは、やはりはっきりと説明すべきだと思うんですね。

 つまり、よく、法律を作るときには立法事実というのがありますけれども、巨額な防衛予算がなぜ今必要かということについて、そのことについて報告書で、必要な措置はどのようなものか、そのためにどれぐらいの負担が必要となるのかについて国民理解の努力と丁寧な説明と言っている。なかなかこれは、外交的な配慮もあるんでしょうけれども、脅威という言葉を使いたくないから懸念と言っている。しかし、やはり中国の様々なデータを出して、私は、安全保障上警戒すべき国ぐらいのことははっきり言わないと、何でこんなに巨額の予算が必要なのかということについて説明はすべきだと思うんです。

 大臣、いかがですか、その点について。

浜田国務大臣 委員御指摘のとおり、我々も同じ考え方という面と、やはり軍事の面においての、強大な中国にとって、今現在では脅威と位置づけをしているわけではございませんけれども、中国の軍事動向は、日本を含む地域と国際社会の安全保障上の強い懸念となっていることは事実でありますので、今後も強い関心を持って注視していく必要があると思いますし、また、その文言については更に議論が必要かというふうに考えます。

渡辺(周)委員 なかなか、そこまでしかお答えできないということは承知で伺っているんですが、防衛省・自衛隊は、歴史的な背景もあって、なかなか、事柄の性質上詳細な答弁は差し控えるとか、仮定の質問にはお答えできないと、もしかしたら、私もかつて答弁でそんなことを使ったことがあるかもしれませんけれども。やはりそこを、現状の予算では安全保障環境の変化に、我が国はなぜこのままでは対応できないのかということについて語るべきだと思うんですね。その点についてもやはり考えていかなきゃいけない。

 もう一つ御提案したいんですけれども、事柄の中身については、もちろん手のうちをさらして、全部が全部つまびらかにできないことは百も承知です。

 ですから、例えば、国会の中で公聴会のようなものをやるときに秘密会にして、口外したら懲罰にかけられるというような何かものをして、本当に、制服組の方も含めて何らかの情報共有をしないと、事柄の性質上詳細な答弁は差し控えるとか、仮定の話にはお答えできませんなんて言っていると、全然理解が深まらない。防衛省・自衛隊に対して、味方になろうとしても、何か全然、そんなことばかり繰り返されると、味方しようとしている人たちもだんだん離れていくんじゃないか、そんな懸念を持つんですけれども。

 大臣、例えばそういう、国会の中で情報を共有する、まさにこれはシビリアンコントロールの一環として、やはり必要な防衛情報については何らかの形で共有するということは考えるべきだと思うんですけれども、これだけの巨額の予算をこれからもし本当に使っていくということになれば。その点についてはどうお考えですか。

浜田国務大臣 今御指摘の秘密会については、国会法において、「委員会は、その決議により秘密会とすることができる。」と規定をされております。このように、国会における秘密会の開催などの具体的な国会運営に関することについては国会において決めていただくべきものと承知をしております。

 しかし、その中で、我々、このような国際状況の中において、我々のそういった情報提供のありようというのはこれからやはり考えていかなければならないという意識は持っておるところであります。

渡辺(周)委員 是非、その点については本当に、政府と、与党と、もう野党では、残念ながら持っている情報の量というのは格段に差があります。その点について、我々は別に赤裸々に、私は安全保障上言えないことがあるのは百も承知で、ただ、もう既に、例えば海外のシンクタンクが発表しているとか、日本で報道されているとか、いろいろな、あるいは識者が論文を書いているとかの中で、ある程度認めてもいいじゃないということまで、尋ねても、報道は承知しているけれどもお答えできないとか、そんなことばかり我々も聞かされることがあるんですね。

 是非そこは、繰り返しになりますけれども、この大きな安全保障戦略を転換する三文書が出されて、どのような内容になるかはこれからつまびらかになっていくと思いますけれども、だからこそ、やはり議会の場でも共有できるような仕組みを考えていただきたいと思います。

 大臣に伺いたい次の点は、この報告書に、例えば縦割りを打破するという言葉が出てくるんですが、大臣が考える縦割りというのは、何かございますか。

浜田国務大臣 一般論として、これまでも、複数の省庁が関係する共通の課題については、関係省庁間で適切に連携を図り、対応するように努めてきたところであります。

 他方、今般の有識者会議において議論があったとおり、深刻化する安全保障環境の中にあって、国民を守り抜くために、防衛力の抜本的強化が中核となるものの、幅広い課題であるがゆえに、防衛力以外の国力の活用も不可欠であります。

 このため、研究開発、公共インフラ、サイバー安全保障、国際的協力といった分野において、関係省庁の取組に防衛省・自衛隊のニーズを反映し、より一層の連携を図ることは有意義と考えており、総理の指示の下、関係省庁が連携する新たな仕組み等の検討にしっかりと参画してまいりたいと思います。

 以上です。

渡辺(周)委員 縦割りというか、各省庁にまたがっているものの一つ、代表的なことにサイバー対応がありますね。

 報道によりますと、サイバーの部隊を、今年三月にサイバー防衛隊が発足をして、今、現状五百四十人、陸海空の専門要員合わせて八百九十人。これから、二三年度から四千人まで拡充していく方針だというふうにある。

 例えば、いわゆる警察庁であったり、内閣府であったり、総務省だったり、それから経済産業省だったり、いろいろなことがあるとは思うんです、役所をまたがるんですが、先ほど長島委員も触れられた、能動的な対処等を含むサイバー安全保障の取組、総合調整を行うという、報告書にもあります。

 防衛省として、サイバー部隊は今、防衛省・自衛隊のシステム以外も防衛することを考えているのかどうか、その際、防衛省はどのような役割を担うのか、そしてその際は、四千人の定員となると陸海空の定員の見直しはどうなるのか。その点について、このサイバーについてはどうお考えか。

 簡潔に、もう時間がありません。

上田政府参考人 お答え申し上げます。

 御指摘の防衛省・自衛隊の運用を支える情報通信ネットワークに対するサイバー攻撃につきましては、防衛省・自衛隊の組織的な活動に重大な支障が生じる事態を防止しつつ、情報通信ネットワークのより安定的な利用を確保することが死活的に重要と考えてございます。このため、自衛隊サイバー防衛隊を始めとする関連の部隊は、防衛省・自衛隊の情報通信ネットワークの二十四時間体制での監視やサイバー攻撃への対処を任務として行っているところでございます。

 また、同時に、防衛省・自衛隊といたしましては、社会全般におけるサイバー空間の安定的利用の確保は極めて重要であると認識しておりまして、例えば、NISC、内閣サイバーセキュリティセンターへの要員の派遣ですとか、あるいは、実績といたしまして、東京オリンピックへのサイバーセキュリティー対策に対する協力などを行ってきたところでございます。

 引き続き、政府全体としての総合的な取組に積極的に貢献していく所存でございます。

渡辺(周)委員 具体的に、いや、ですから、防衛省・自衛隊のシステムを守ることは当たり前なんですけれども、この報告書には、例えば、一元化するべきだと書いてあるんですね。

 ちょっともう時間がないから、例を挙げますと、アメリカのサイバー部隊は、二〇一〇年にサイバー軍が成立して、まあ、これはアメリカ独自なんですけれども、選挙インフラ、大統領選挙や中間選挙に対して干渉が行われていたということで、重要インフラの一つとして選挙インフラも、選挙もインフラの一つと指定したことで、これは実は、軍が守るというちょっと世界でも例のないことが起きています。

 例えばなんですけれども、この場合、アメリカの場合ですけれども、干渉の拠点だったロシアのネットワークを遮断して、介入を意図する工作員に直接メッセージを送っているんですね、もうあんたたちのやっていることはお見通しだぜと。そういう意味で、まさに能動的な防衛義務を既に果たしているんですが、ここに、報告書にもあります能動的な対処ということはこういうことなんですよ。つまり、相手方のサイバーへの侵入に対して、もう既にお見通しだ、これ以上やるなということをすることなんです。

 つまり、能動的な対処ということを防衛省はどうお考えか。それから、さっきちょっとお答えいただけなかったんですけれども、防衛省・自衛隊以外のインフラに対しても、将来守るということについての役割を担うのかどうなのか。その点についてはいかがですか。

上田政府参考人 お答え申し上げます。

 サイバー分野におけます今後の我が国の方針等につきましては、現在、新たな国家安全保障戦略等の策定のプロセスの中で、政府としてあらゆる選択肢を排除せずに検討しているところでございます。防衛省といたしましても、防衛省・自衛隊のサイバー体制の強化に向けた要員の育成、拡充を始め、様々検討をしてまいっているところでございます。

 また、先ほどお答えいたしましたとおり、防衛省・自衛隊の部隊の任務といたしましては、自衛隊の通信ネットワークの監視、これとサイバー攻撃への対処を任務としております。その上で、社会全般におけるサイバー空間の安定的利用の確保につきましても、NISC等への協力の形で貢献をしているところでございますし、そういった貢献を拡大していきたいと考えておるところでございます。

渡辺(周)委員 このサイバー部隊の増強に対して、陸海空の定員は変わらないんですか、それとも見直しがあるんですか。大臣、いかがですか。

上田政府参考人 先ほど御指摘ありました報道につきましては承知しておりますが、現在、防衛力の抜本的な強化の中で、このサイバーの体制につきましての詰めの検討を行っておるところでございます。しっかりと検討を進めてまいりたいと思っております。

渡辺(周)委員 是非精鋭を育てていただきたいと思うんですね。その点について、これはやはり、サイバーが非常に遅れている。我々の時代も、十年前もそうだったんですけれども、陸海空とそして宇宙・サイバー空間が新たな戦場だと言っておきながら、本当になかなか、残念ながら進んでいないこの現状を非常に憂いております。

 先ほど長島委員も質問されましたのでこれ以上言いませんけれども、改めて、その場合に、これはちょっと大臣に聞きたいんですけれども、サイバー空間は自衛権の対象なのか、その点について、そこをクリアしなければ、いわゆる能動的な対処というところで非常に整合性が問われると思うので、その点についての見解は、まとめられるお考えはありますでしょうか。

増田政府参考人 お答え申し上げます。

 一般論として申し上げれば、サイバー攻撃のみでありましても、例えば、物理的手段による攻撃と同様の極めて深刻な被害が発生し、これが相手方により組織的、計画的に行われている場合には武力攻撃に当たり得ると考えられ、こうした場合には、憲法上、自衛のための必要最小限度の範囲での武力の行使が許される、こういうふうに考えているところでございます。

渡辺(周)委員 武力の行使というか、サイバー空間上の能動的対処によって、相手のシステムに対して何らかの、当然、遮断であるとか物理的な影響を、それも含まれるということで、確認ですけれども、よろしいですか。

増田政府参考人 お答え申し上げます。

 先ほど申し上げましたように、サイバー攻撃のみであっても武力攻撃に当たり得ると考えられる、こうした場合には、憲法上、自衛のための必要最小限度の範囲での武力の行使が許される、こういうことでありますので、サイバー空間の中で必要な措置が取れる、必要最小限度の措置が取れるということでございます。

渡辺(周)委員 ちょっと時間がなくなりました。

 海保との関係については前も取り上げました。

 十一月十六日に海上保安庁の長官が、統制要領の策定に積極的に参画すると会見で述べられました。この統制要領の策定について、今どのように進んでいるのか、どのようなやり取りが行われているのか。あわせて、ここでも指摘しました海上保安庁法二十五条と自衛隊法八十条の整合性についてはっきりすべきではないかと思いますけれども、いかがですか。

増田政府参考人 お答え申し上げます。

 海上自衛隊と海上保安庁は平素から緊密な連携に努めておりますけれども、委員御指摘の武力攻撃事態における対応、これも極めて重要だと思っております。

 武力攻撃事態における防衛大臣による海上保安庁の統制要領につきましては、海上保安庁も交えた形で具体化のための作業を現在実施しておりますが、その内容や進捗状況等については、現時点で予断を持ってお答えすることはできません。お答えをちょっと現時点では差し控えさせていただきたいと思いますが、議論をきっちり今進めているところでございます。

 その上で、海上保安庁法二十五条と八十条との関係でございますけれども、結論から申し上げれば、その八十条と海上保安庁法二十五条とは矛盾するものではないと考えております。

 これは、自衛隊法八十条、重大な緊急事態におきましては、通常の自衛隊と海上保安庁との協力関係ではなかなか効果的な対処が困難な場合に、防衛大臣が海上保安庁を統一的、一元的に指揮運用することを可能とするものでありまして、その場合、海上保安庁が実施し得る任務や権限に変更を加えるものではございません。

 統制下に入った海上保安庁は、海上保安庁法に規定された所掌事務の範囲内で任務に従事するということでございまして、自衛隊の出動目的を効果的に達成するために適切な役割分担を確保した上で、海上における人命の保護等を実施することになります。

 よって、自衛隊法八十条と海上保安庁法第二十五条とは矛盾するものではない、こういうふうに従来より政府は考えております。

渡辺(周)委員 ということは、確認ですけれども、海上保安庁法の二十五条を改正なり、何らかの改定の検討はしていないということでよろしいですか。

増田政府参考人 お答え申し上げます。

 防衛省の立場で海上保安庁法二十五条の改正について何らかのコメントというかをすることは差し控えさせていただきたいと思いますが、いずれにせよ、私たちとしては、自衛隊法八十条の下におきます海上保安庁と自衛隊の連携の強化の観点から、統制要領、この策定に向けて海上保安庁との議論を進めていきたいと思っております。

渡辺(周)委員 是非、この二十五条は、軍隊として訓練してはならないとあるんですが、しかし、統制要領の中には、恐らく、我が国の有事でありますとか、あるいは武力攻撃予測事態のような形、あるいは中国の、ペロシ訪台後に台湾を取り囲むような大変大きな演習が行われたときに、我が国のEEZの、南西諸島のEEZ内までミサイルが着弾したことがございました。当然、国民保護の観点から、何らかの形で、武力攻撃でも予測事態でもないけれども重要な影響が予見される事態の場合に、国民保護のメカニズムをやはりつくるべきであります。

 そのために、海保との訓練を行うべきだと思うんですが、その点についての連携、それから、設備の互換性、例えば、給油口の大きさが違うとかは前も指摘しました、あるいは何らかの情報リンクの機能の共通性、こういうことについて、海上保安庁の能力の強化ということがこの報告書にもあるわけなんですけれども、その点についてはしっかりとやっていただきたいですけれども、大臣、いかがお考えでしょうか。

浜田国務大臣 我が国の防衛上、多様な港湾等からの運用は重要であります。日頃からそのための訓練を重ね、平素から柔軟に利用できることが必要だと考えます。

 国力としての防衛力を総合的に考える有識者会議における御議論なども踏まえつつ、公共インフラの整備や利活用に係る防衛省のニーズを反映できるよう、関係省庁と積極的に議論していきたいと考えております。

 海上保安庁との連携について、施設の整備や互換性の観点からも更なる連携強化を図ってまいりたいと考えております。

渡辺(周)委員 時間が来たので終わりますけれども、最後に、いわゆる反撃能力、敵基地攻撃能力については、やはり専守防衛を堅持していただいて、保有すれども行使はしない、反撃はするけれども侵略はしない、やはりそのことを、しっかりと歯止めをかけていただいて、それは政府としてその立場を堅持していただきますように要請をして、また改めてこの議論をさせていただくことを申し上げまして、質問を終わらせていただきます。

 ありがとうございました。

鬼木委員長 次に、篠原豪君。

篠原(豪)委員 篠原豪でございます。

 今日も質疑をさせていただきます。どうぞよろしくお願いいたします。

 また、会期末の前の非常に忙しいという中で、両大臣にもおいでいただいて、やらせていただきますが、今も議論になっておりますように、三文書の閣議決定が来週にもなされるのではないかというふうに言われていますし、自公さんの、十二月三日付の各新聞紙がばあっと報じたように、敵基地攻撃能力の保有を認めることを正式に合意をしていまして、それに対して、専守防衛を掲げてきた日本の抑制的な防衛政策の大転換になるんじゃないのかというふうにも報じられていますし、世論も、国民的な議論も起きてきているのかなと思います。ですので、そういった中で私もこの件について聞かせていただきたいと思いますので、よろしくお願いします。

 政府・与党は、これまで、安倍さんが首相退任を前にした二〇二〇年の九月十一日の談話で、他国からの攻撃に対する迎撃能力を向上させるだけでは日本の安全を守るために不十分ではないかとして、打撃力の必要を示唆したことがあると思います。この発言は、イージス・アショアの配備が断念されたことを踏まえて、こういうふうに理解していますけれども、自民党さんの政調会に設置されたミサイル防衛に関する検討チーム、座長は小野寺さんだということですが、まとめた、同年の、安倍首相に提出をした「国民を守るための抑止力向上に関する提言」を踏まえていると思います。

 問題は、その提言に、「わが国への武力攻撃の一環として行われる、国民に深刻な被害をもたらしうる弾道ミサイル等による攻撃を防ぐため、憲法の範囲内で、国際法を遵守しつつ、専守防衛の考え方の下、相手領域内でも弾道ミサイル等を阻止する能力の保有を含めて、抑止力を向上させるための新たな取組が必要である。」と述べられています。

 そこで、防衛大臣にお伺いします。

 政府も、相手領域内でも弾道ミサイル等を阻止する能力の保有が、憲法、国際法、そして専守防衛に矛盾しないと考えているのか、まず最初に確認させてください。

浜田国務大臣 自民党の提言の内容について政府の立場から論評することはいたしませんが、政府は、従来から、誘導弾等による攻撃が行われた場合、そのような攻撃を防ぐのに万やむを得ない必要最小限度の措置を取ること、例えば、誘導弾等による攻撃を防御するのに、他に手段がないと認められる限り、誘導弾等の基地をたたくことは、法理的には自衛の範囲内に含まれ、可能であると解しております。

 また、このような考え方は、相手から武力攻撃を受けたときに初めて防衛力を行使し、その態様も自衛のための必要最小限にとどめ、また、保持する防衛力も自衛のための必要最小限のものに限るといった専守防衛の考え方と整合するものであります。

 その上で、我が国周辺において相当数の弾道ミサイルが開発、配備されており、また、極超音速滑空兵器など、ミサイルに関する技術が急速なスピードで変化、進化している中にあって、我が国はこれらに対応しなければならない状況に置かれております。

 こうした中で、外交努力の必要性は言うまでもありませんが、同時に、国民の命や暮らしを守るために十分な備えができているかとの問題意識の下、あくまで抑止力を高め、ミサイルなどによる攻撃の可能性を一層低下させるため、いわゆる反撃能力について検討しているところであります。この検討は、憲法、国際法の範囲内で、専守防衛の考え方を堅持しつつ進めているところでありますが、与党間の協議も踏まえながら、まずは政府として年末までに結論を出してまいりたいと考えております。

篠原(豪)委員 今のお話は、先ほどの委員の質問からもありましたけれども、一九五六年の政府見解をお話をされているというふうに思いまして。その中で、ちょっと細かくお話をさせていただきたいと思うのは、今、抑止力ということでありましたけれども、その内容についてお伺いさせていただきたいと思います。

 敵基地攻撃を合憲とした政府見解は、ミサイルが我が国に向かって発射されることが明白であるならば、そのミサイル発射を阻止するため、その発射拠点を相手国の領土内であってもミサイル等で攻撃することを憲法は禁止していないということを今おっしゃいました。

 多くの論者が指摘しているように、今、移動式の発射台など、現在のミサイル発射方式や技術を考えれば、相手側のミサイル発射拠点をたたくということは事実上不可能だというふうに言われてきて、じゃ、どうするかという話になっているんだと思います。

 この事実を踏まえて、移動式ランチャー等を攻撃するのを諦める代わりに、動かない固定目標である相手国の指揮統制機能等を攻撃することが議論されているというふうに思います。これは、弾道ミサイル等を阻止するというより、報復的な抑止を目的とした攻撃とも考えられます。その場合に、政府は、こうしたミサイルの発射阻止を直接的な目的としない攻撃、つまり、抑止の中でも、報復的抑止も専守防衛、戦略守勢に矛盾しないと考えているのでしょうか。考えているとすれば、その理由もお願いいたします。

浜田国務大臣 委員御指摘の報復的抑止について必ずしも正確に理解しているわけではございませんが、政府としては、いわゆる反撃能力について、あくまで、抑止力を高め、ミサイルなどによる攻撃の可能性を一層低下させるために何が必要かという観点で検討しているところであります。

 我が国は、これまで迎撃能力を構築、強化することで対応してきたところでありますが、仮に我が国が有効な反撃を相手に加える能力を持てば、現状に比して相手国の戦略的、戦術的な計算を複雑化させ、日本にミサイルを撃ち込もうとしている相手に、目的を達成することは容易ではない、攻撃はやめた方がいいと思わせる、そのような抑止効果を得られるのではないかと検討しているところであります。

 いわゆる反撃能力に期待する抑止力が懲罰的抑止や拒否的抑止のいずれかといった観点から分類することは困難でありますが、いずれにせよ、この検討は、憲法及び国際法の範囲内で、専守防衛の考え方を堅持しつつ行っているところであります。

篠原(豪)委員 今のお話で、これまで、ミサイルが来たら迎撃をやっていくというのは、もう拒否的抑止です。ですよね。

 報復的抑止というのは、先ほど懲罰的抑止という言葉を使いましたけれども、極論で言えば、もし来たら、相手に壊滅的な打撃を、もう本当に都市もなくなってしまうようなえらいことになりますよという、懲罰的な抑止ということですので、同じ抑止力という中でも、日本がこれまで取ってきた立場は拒否的抑止ですから、そこはそのお話をさせていただいているということなので、まず御理解いただきたいと思っています。

 その中で、もし今、一概に言えないという話だったんですが、やはり基本的には拒否的抑止だというふうに思います。これは過去ずっとそういうふうに我が国は来ていますので。それを報復的抑止だと、同じだと、一概に言えない、どこまでが抑止力と言えないというのは、やはりきちっと分けないといけないんだと思います。

 なぜならば、報復的抑止が認められるなら、そうした報復攻撃の対象はどういうふうになっているかというと、国際法違反となる非軍事施設を除いて全ての軍事施設が含まれると考えられます。おとといでしたか、参議院でも、ミサイルを撃つときの対象というのは我が国はどう考えるかといったら、軍事的な施設だけだということを浜田大臣は答弁されているので、民間施設とかそういうことは全くないということも言っています、そのとおりだと思いますが。

 その中で、じゃ、軍事施設ということであるとすれば、その対象を、あるいは攻撃対象について、どのような範囲が妥当であるというふうに考えているのか、この点についてお願いいたします。

浜田国務大臣 いわゆる反撃能力の検討については、憲法及び国際法の範囲内で行っているところであります。その対象は軍事目標に限定されますが、大変申し訳ありません、これ以上の詳細については現在検討中でありますので、具体的にお答えできる段階にないことを御理解いただければと思います。

篠原(豪)委員 じゃ、私から申し上げさせていただきますが、やはりある程度、ある程度というか、しっかり拒否的抑止を考えて、それを大きく逸脱をするということになりますと、これは憲法にも反するというところが出てくると考えられますので、そのことを考えたときには、せめて限定的にやっていくべきだというぐらいの御答弁はされた方がいいかと思うんですけれども。

増田政府参考人 お答え申し上げます。

 先生より、先ほどより専守防衛との関係、るる御指摘いただいておりますけれども、昭和三十一年の政府見解が申し述べておりますのは、ミサイル攻撃、これを防ぐためにやむを得ない必要最小限度の措置にとどまるということが一番大切なことだと思っておりまして、そういう観点から、今、反撃能力の選択肢につきましてもあらゆる観点から検討しているということでございます。

篠原(豪)委員 だから、その見解でいいますと、ミサイル発射拠点を攻撃できるのは、ミサイル攻撃の準備段階じゃなくてあくまでも攻撃の着手段階であるということで、武力攻撃のおそれがあると推量される時点で攻撃すれば国際法上禁止された予防攻撃になってしまうんじゃないかということになります。

 かつては、ミサイルは人工衛星の打ち上げと同じように液体燃料を注入していましたので、これは何回か申し上げていますけれども、ミサイルを起立させた時点で当時は分かりましたけれども、今は固形燃料なので、奇襲攻撃能力を持つ移動式ランチャーとか潜水艦から発射されるということになれば、これを実際に把握することはほぼ不可能だと。したがって、発射直前あるいは発射直後のブースト段階のミサイルを捕捉してこれをミサイルで破壊することも事実上不可能であるということなので、だから、実際には、じゃ、どうできるのかという話になっていくと思うんです。

 ですから、我が国が、発射直前であるとして攻撃に踏み切った場合でも、相手は、日本軍が国際法違反の予防攻撃を犯したとして国際社会にアピールをして、対日攻撃事態における先制自衛は、対日攻撃への正当な反撃であるとして堂々と行うことになります。結果的に、着手事態における先制自衛は事実上できないと考えます。

 政府の見解をこの点について伺いたいと思いますし、できると考えているのであれば、どのような状況だと考えているかも御例示いただければと思います。

増田政府参考人 お答え申し上げます。

 一般論として、我が国が自衛権を行使できますのは他国が武力攻撃に着手した時点でありまして、いわゆる先制攻撃、こんなことは許されないとの考えに一切変更はございませんが、いわゆる反撃能力については現在検討中でございまして、具体的な内容等をお答えできる段階にないことを御理解いただければと思います。

 いずれにしましても、与党間の協議も踏まえながら、まずは政府として年末までに結論を出してまいりたいと思っております。

篠原(豪)委員 敵基地攻撃を合憲とした一九五六年の政府見解は着手事態における先制自衛を認めているということでありますので、先制の自衛についてということを認めているという中で、ちょっと議論が、よく整理をしなきゃいけないなと思っているところがありまして、それが先制攻撃と予防攻撃についてなので、ちょっと確認させていただきたいと思います。

 先制攻撃と予防攻撃の概念を整理させていただきたいということで、敵基地攻撃の議論で、よく、先制攻撃だから国際法違反であるとした言説を聞きます。しかし、国際法で明確に違反とされるのは予防攻撃でありまして、先制攻撃は、幾つかの法解釈があるにせよ、必ずしも国際法違反ではないと言えるのではないかと思いますが、政府の見解を外務大臣にお伺いします。

林国務大臣 二〇〇五年の国連の世界サミットに向けた議論におきまして、武力攻撃が差し迫っていれば、発生していなくても自衛権を行使できるという考え方が示唆をされたことがございます。が、各国から反対がありまして、最終的な成果文書には盛り込まれなかったということでございます。

 こうした経緯も踏まえまして、武力攻撃が発生していなくても差し迫っていれば自衛権を行使できるという考え方、これが国際的に確立されているということは認識をしておらないところでございます。

篠原(豪)委員 例えば、敵基地攻撃は、専守防衛を旨とする日本特有の言い回しなので、国際常識では、その呼称も実態も、主権国家の権利である自衛権として国際法上認められた先制攻撃ではないのか。そして、国際法上の先制攻撃の定義は、敵の差し迫った攻撃の証拠が明白であることにより実施される攻撃、これに対し、予防攻撃は、差し迫った脅威でない、放置すれば将来受け入れ難い脅威をもたらす可能性のある相手に対し、その脅威が顕在化する前にこれを攻撃すると説明されていますが、敵基地攻撃、先制攻撃、予防攻撃の関係に関する政府のもうちょっと詳しい見解をお聞かせいただきたいと思います。

林国務大臣 国際法の学説上、武力攻撃が発生する前の自衛権につきまして、国際的に様々な用語が用いられているわけでございますが、確立された用語法というのはございませんで、それらの、また日本語に訳したときの確立というのもないわけでございます。

 その中でございますが、武力攻撃が差し迫っているが発生していない場合の自衛権について、英語でプリエンプティブ・セルフ・ディフェンスと呼ぶ例がございます。これは、日本語にしますと先制的自衛、こういうふうに訳されることがあるわけでございます。

 また、武力攻撃が差し迫っていない場合も含む自衛権、これはそれより以前の段階ということになりますが、プリベンティブ・セルフ・ディフェンス、こう呼ぶ例がございまして、これは予防的自衛、こう訳されていることがございます。

 なお、敵基地攻撃というのは、時点の、攻撃のタイミングに関する概念とは違いまして、攻撃の対象ということでございますので、これらを先ほど申し上げました先制的自衛とか予防的自衛ということと同列に議論することはできないと考えております。

篠原(豪)委員 今の理解は我々もしているところなんですが、一般的に、国会の答弁で、予防攻撃と先制攻撃と、また質問も混同されていて、先制攻撃が国際法違反と断定されるとかいろいろな議論があるので、ここのところは、本当に混乱をもたらす可能性がありますので、しっかりと、どの時点で、どこまでがどういうふうで、今回の防衛三文書も含めて対応していくのかということを国民の皆さんに分かりやすく説明していただきたいと思いますので、その点は、外務大臣もそうですが、防衛大臣にもお願いをさせていただきたいと思いますので、よろしくお願いします。

 次は、専守防衛と日米同盟の関係についてお伺いします。

 我が国の防衛の基本方針は、一九七〇年十月の防衛白書において、専守防衛であると初めて明記されています。そこには、「わが国に対する侵略があつた場合に、国の固有の権利である自衛権の発動により、戦略守勢に徹し」、そして、「憲法を守り、国土防衛に徹するという考え方である。」というふうに説明されていますが、これは日米同盟による役割分担と一体のものとしても理解されてきていると思います。つまり、侵略を阻止するためには、自国領域で迎え撃つだけでは十分ではなくて、場合によっては敵基地を攻撃することが必要になりますが、そうした敵基地攻撃は米軍が引き受けることで自衛隊は専守防衛の役割に徹することができるということです。

 したがって、今後、敵基地攻撃を自衛隊が行うことを認めるとすれば、日米の役割分担がどうなるかをきっちりと説明していかないと、自衛隊の新たな役割が専守防衛であると言えるのかどうかということになっていくんだと思います。政軍関係でもこの辺をちゃんとやらないといけないということはやはりありますので、全然そういうことじゃないんですよと言ったけれども、実際に作戦がそういうふうになっていて、じゃ、そこに行く自衛隊の方々は何なんですかという話になりますので、政軍関係をしっかりと守るためにも必要だと思っていまして。

 安倍元首相や自民党のミサイル防衛に関するチームは、北朝鮮や中国のミサイル技術の進歩を考えると、弾道ミサイル防衛による迎撃能力の強化だけでは対処できないので打撃力で補完すべきということをしていまして、それが今議論になっていますけれども、これで即自衛隊が打撃力を整備する根拠には当然ならないわけでありまして、なぜなら、日本の専守防衛は、米軍と、打撃力と一体であって、両者の総合力で抑止が成り立っているからであります。

 たしか二〇〇三年だったと思いますけれども、当時の石破防衛大臣も、これは敵基地じゃない、敵地ですよ、敵地攻撃能力ということであれば、これは我が方はそのような能力を保有いたしておりません、それはなぜかといえば、日米安全保障条約によって盾と矛という関係があります、私どもは、あくまでも盾として日米安全保障条約を理解してまいりました、それは、敵地攻撃、そのようなものは米国、安全保障条約によってその能力、私どもは専守防衛という観点からこれを守るということが日米安全保障条約の趣旨でありますことは、委員御案内のとおりでございますということになっています。

 とすれば、我が国自身が攻撃能力を持つのはどのような理由があってのことなのかということ、この石破さんの考え方、これを踏襲しているものかということについてもお伺いいたします。

浜田国務大臣 我が国周辺において相当数の弾道ミサイルが開発、配備されており、先ほども申し上げましたけれども、極超音速滑空兵器など、ミサイルに関する技術が急速なスピードで変化、進化している中にあって、我が国はこれらに対応しなければならない状況に置かれております。

 ミサイル攻撃の脅威に対するための日米同盟の共同の能力を向上させていく必要性を日米が共に強く認識している中で、日米同盟の一層の強化を図るという観点から、我が国が何をすべきなのか、不断に検討しているところであります。

 いずれにせよ、いわゆる反撃能力については、与党間の協議も踏まえながら、まずは政府として年末までに結論を出してまいりたいというふうに考えております。

篠原(豪)委員 私は、二〇〇三年の石破防衛大臣が、矛と盾の関係で、日本はそういう能力を持たないというふうにしていて、そこに今変更があるのかということと、あるのであれば、その新しい日米の役割分担というのは国民の皆さんにどう説明をされていくんですかという話をちょっと聞かせていただきたいと思っています。

 なので、その答弁にもあるように、専守防衛が日米同盟による役割分担と一体のものとして理解されてきていますし、今後、矛に相当する敵基地攻撃を自衛隊が行うことを認めるとすれば、日米の役割分担が今後どうなるかをちゃんときちんと説明していないと説明が尽くされたことになりませんので、国民の皆さんも分かりませんし、政軍関係でも、自衛隊の皆さんも困ります、現場の方も。

 なので、政府は専守防衛の範囲内と言っていますが、日米の役割分担と専守防衛がセットである以上、自衛隊がどこまで米軍を代替することになる、そして専守防衛の範囲を超えるかを明示しないといけないということで、本当に言葉遊びになってはいけないということでありますので。

 そこで伺いますが、政府が考える専守防衛の範囲内の反撃力の保有あるいは行使とはどこまでを限度とするのか、その場合の日米の役割分担はどのようなものになるかというのをどう説明していくおつもりなのかを伺います。

浜田国務大臣 いわゆる反撃能力については、先ほども申し上げましたが、現在検討中であり、具体的な内容をお答えする段階にはございません。

 その上で、一般論として申し上げれば、我が国に対する武力攻撃が発生し、これを排除するために他に適当な手段がない場合に認められる必要最小限度の実力行使の具体的限度は、当該武力攻撃の規模、態様に応ずるものであり、一概に述べることは困難であります。

 いずれにせよ、この検討は、憲法及び国際法の範囲内で、日米の基本的な役割分担を維持しつつ進めているところでありますが、与党間の協議も踏まえながら、まずは政府として年末までに結論を出してまいりたいと考えます。

篠原(豪)委員 時間ですので終わりにさせていただきますけれども、やはり、拒否的抑止の範囲内に収まっているのかあるいは報復的抑止になるかが専守防衛の範囲内であるか否かの判断基準であると考えますので、そのことについてしっかりと御説明いただきたいということを思っていますので、そこについてはしっかり御説明いただけるかどうか、端的に、もし委員長が許していただければ、理事が許していただければ、イエスかノーかだけでも教えていただいて、質問を終わらせていただきたいと思います。

鬼木委員長 では、質問の時間を過ぎていますので、簡潔に。

浜田国務大臣 いずれにしても、今御指摘のあった点についても今検討中でございますので、またその点については別の機会にということでお願いしたいと思います。

篠原(豪)委員 もう来週あたりに発表されますので、しっかりとその辺の説明を尽くしていただくようにお願いをいたしまして、両大臣、今日はありがとうございました。また引き続きよろしくお願いします。

鬼木委員長 次に、美延映夫君。

美延委員 日本維新の会の美延でございます。本日はどうぞよろしくお願いいたします。

 この夏、委員会で北海道の駐屯地を視察させていただきました際に、現地の幹部の方から、演習で撃つ弾が足りないというお話をされておられました。演習用についても実戦に備えた備蓄についても弾がないという話はあちらこちらで聞いております。

 しかし、過去の国会における議論を見てみましたが、弾薬の量については政府は情報を全く提供してきておりません。過去の質疑の中で、国会に対する情報提供の質としては、これはちょっと、さすがにどうかなと思うのを一つ紹介させていただきます。

 資料一を御覧ください。

 平成二十六年四月二十二日、参議院外交防衛委員会で、この十月に惜しくも御逝去されたアントニオ猪木元参議院議員、私たちの子供の頃のヒーローで、そして議員でも大先輩であるアントニオ猪木元参議院議員の質疑の例なんですけれども、陸上自衛官一人が年間で訓練で消費する実弾の数について問われ、防衛省は、陸上自衛隊の隊員の射撃能力や部隊の練度といったことが推察されかねないということで答弁を拒否されております。

 しかし、この程度の答弁をしないというのはさすがにいかがなものかなと思います。

 訓練用の弾薬の不足により現場がどの程度困っているのか、防衛省は今後その改善にどの程度の期間とお金をかけるつもりなのか、さらには、将来において予算が増えたことによってどの程度改善されるのか、こういうことをしっかりチェックして動くのが我々国会議員の役目だと思います。

 網羅的にお答えしていただくのは無理だと理解しておりますので、陸上自衛隊の普通科に質問の対象を特定させていただきます。その上で、三つお聞かせください。

 先ほど特定した自衛官の内部の射撃基準で、年間に訓練で射撃することになっている小銃の実弾の数を教えてください。そして、自衛隊との比較のために、米陸軍や海兵隊、そしてさらに、過去一年以内に陸上自衛隊と合同訓練をしたことがある外国陸軍について、先ほど私が例に挙げた陸上自衛官に相当する歩兵が年間に訓練で撃つ実弾数の基準、あるいは実際に撃つ数を把握しているのかをお聞きします。

 仮に、今お聞きした外国軍の情報を把握しているのならば、その内容も併せて教えていただけますでしょうか。

増田政府参考人 お答えを申し上げます。

 自衛隊若しくは自衛官の練度や技量につきまして並々ならぬ御関心をいただきましたことには感謝申し上げたいと思います。

 他方、御質問の、自衛官が内部の射撃基準により一年間で射撃することとされている小銃の実弾の数につきましては、これを明らかにすることにより隊員の練度が推察されるおそれがありますことからお答えできないということを御理解いただきたいと思います。

 また、米軍を含む他国の軍隊の兵士が年間を通じて射撃することとされている実弾数の基準や、実際に射撃する実弾の数については、防衛省としてお答えする立場にないことを御理解いただきたいと思います。

 その上で、今、防衛力の抜本的な強化の議論をしておりますが、その中でも、継戦能力、弾薬、ミサイルの保有数や部品の保有数に基づく可動率など、大変重要な課題となっておりますし、また、自衛官の射撃の練度も含めました練度の向上というのが大変重要だと思っております。

 そういうことも含めまして、今後ともしっかりと対応していきたいと思っております。

美延委員 多分そういう答えなんだろうと思っていました。

 私が非常に思うのは、例えば、今継戦能力のお話が出ましたけれども、継戦能力が今のままだったら二か月ぐらいしかもたないとか、これは明らかに、いわゆる防衛省とか、それから防衛省に近いところからのリークだと思うんです。これこそ、こんなの絶対表に出てはいけない話じゃないですか。こういうのが出ているのに、どういうことをしているかということすらもお答えできない。非常に私は矛盾を感じています。

 私は、浜田大臣にリーダーシップを取っていただいて、そういうところをしっかり改善していただきたいと思うんですけれども、大臣の御所見をお伺いいたします。

浜田国務大臣 御指摘の報道は承知をしております。

 他方、防衛省では、特定の期間戦い続ける能力を見定めるというやり方は取っておらず、様々な事態において自衛隊が我が国防衛において求められる役割を十分に果たし得るか検証することを通じて、十分な装備品や弾薬、誘導弾等の所要量を見定めております。

 いずれにせよ、現在の自衛隊の継戦能力は、平成三十年以前の安全保障環境を前提として作成された防衛力整備計画により構築してきているものであり、安全保障環境が急速に厳しさを増す中、必ずしも十分ではないと考えております。年末の新たな国家安全保障戦略等の策定に向けて検討を加速する中で、この点についてもしっかりと取り組んでまいりたいと思います。

 委員からの御指摘、重く受け止めたいと思います。

美延委員 大臣今言われたように、これはやはり十分ではないということは大臣自身もお認めになっておられます。私たち維新の会もそう考えております。そこをしっかり詰めていっていただきたい、そこは強く要望しておきます。

 次に、今、弾薬について取り上げさせていただいたんですけれども、今度は小銃の調達について質問をさせていただきます。

 二〇二〇年から、自衛隊の新たな制式小銃である二〇式小銃の調達が始まりました。政府は二〇二〇年度から二〇二二年度まで年間九億円ないし八億円でそれぞれ調達をしています。令和五年度の予算の概算要求では、二千九百五十四丁プラス事項要求と聞いております。この一代前の八九式小銃は、総計で十四万数千丁を約三十年かけて調達したようです。しかし、小銃の調達に三十年も四十年もかけるというのはおかしな話だと思います。

 諸外国が小銃の更新にかけている期間、これは外国政府の公式な情報ではないのですが、ある記事では七年から八年、もう一つの記事では六年から八年ということでした。

 それを前提に伺いたいんですけれども、八九式小銃の二〇式小銃への更新には何年ぐらいかける予定でしょうか。海外では小銃の調達が八年ぐらいに対して、八九式小銃の調達には三十年かかった、この理由についても併せて教えていただけますでしょうか。

川嶋政府参考人 お答え申し上げます。

 陸上自衛隊は、これまでの八九式五・五六ミリ小銃の後継といたしまして、二〇式五・五六ミリ小銃を令和二年度より調達を開始し、順次更新を行ってございます。

 装備品の整備計画につきましては、情勢の変化による防衛所要数の変化、製造企業の生産能力、ライフサイクルコスト等に加え、各年度の予算における優先順位等を総合的に勘案いたしまして調達数を決定するということになります。したがいまして、現時点でこの二〇式五・五六ミリ小銃の更新完了時期をお答えすることは困難でございます。

 いずれにいたしましても、小銃は主に普通科部隊等に配備されておりますほか、その他の部隊においても広く配備してございます。陸上自衛隊においては基本的な装備品の一つでございます。こうした基本的な装備品の整備につきましても、今後は取得ペースを加速させていきたいと考えてございます。年末の国家安全保障戦略等の策定に向けて検討が加速される中で、防衛省としてもしっかりと取り組んでまいりたいと考えてございます。

 以上でございます。

美延委員 しかし、今答弁ができないということなんですけれども、前の八九式みたいに三十年かかっていたら、これはもう話になっていないと思うんですよね、今の日本の安全保障環境を考えれば。それに対してしっかり対処してもらわなあかんと思うんですけれども。それと、国会で質問しなければならないということがいかがなものかと。

 調達の数量や期間、そして必要となる予算の全体像も、政府の国会、国民への説明責任を果たす観点から、調達開始前にしっかり説明すべきであると思います。

 私が計画の公開をもっと必要と考えているのは、別にも理由があります。実は、私は、防衛省の装備品調達についてどこまで計画的な管理が行き届いているのか、これも疑問に思っております。

 資料二を御覧ください。昨年十一月に、財政制度等審議会財政制度分科会に提出された資料であります。

 国産のP1対潜哨戒機は、量産開始後十三年で、部品枯渇対策のため、約三百三十四億円、機体二機分に相当する再設計費等の費用を計上されたそうです。「部品枯渇が判明し次第、都度対処。」とありますが、計画的に見てプロジェクトを管理することができていない証左だと思います。

 更に言うと、こんな計画管理ができていない状況では、国産の装備品を輸出して、海外の顧客に信頼を得ることができるのか、これはもう甚だ疑問であります。

 従来の大綱や中期防の別表にも記載され、あるいは防衛装備庁のプロジェクト管理の対象となっているより広範な防衛装備品について、調達年度とトータルの調達数量の計画、計画時点で想定している将来の調達価格からライフサイクルコスト全体の経費の見積りをあらかじめ公開してはいかがと思うんですが、御所見をお伺いいたします。

土本政府参考人 お答え申し上げます。

 プロジェクト管理対象装備品は、防衛省といたしまして取得を検討している装備品等でありまして、かつ、ライフサイクルコストの見積りが一定の基準を満たすものの中から選定しております。

 これまで、プロジェクト管理の対象として選定された装備品につきましては、計画時点で想定している全体の調達数量や平均量産単価、ライフサイクルコストの見積り等の概要を公表しているところでございます。

 このほか、大綱、中期防の別表への記載の有無にかかわらず、装備品等の選定に係る手続の明確化、透明化のため、新たに研究開発や量産取得を行う装備品等につきまして、ライフサイクルコスト等を、令和元年度以降、「新たな重要装備品等の選定結果について」というような枠組みというか形で公表いたしているところでございます。

 いずれにいたしましても、防衛省といたしましては、装備品の調達につきまして透明性を高めてまいりたいと考えている所存でございます。

美延委員 最後に大臣にお伺いしたいんですけれども、調達分についてなかなかお答えしにくいとか、それから、今の八九式小銃のこともそうですし、防衛装備庁のライフサイクルコストについてもそうなんですけれども、まあお答えしにくいというところもあるしというのはあるんですけれども、先ほど私、申し上げましたように、やはり議会でしっかり答えられるべきは答えて、そして、もうこれは、今の安全保障を考えていると、与党とか野党とかいうことではなくて、しっかり国で、やはり守っていかなあかんということが一番の大命題と思うんですけれども、何か今の答えを聞いていると、ううんというような気がするんですけれども、大臣、最後に御所見を伺えますでしょうか。

鬼木委員長 申合せの時間が経過しておりますので、簡潔にお願いします。

浜田国務大臣 我々も、常日頃からこの説明というものの難しさ、そしてまた公表ということについては常に努力をしているところでありますけれども、足らざるところがあるのは事実でありますので、今後努力してまいりたいというふうに思います。

美延委員 ありがとうございました。終わります。

鬼木委員長 次に、三木圭恵君。

三木委員 今日も、質問の機会を与えていただき、ありがとうございます。

 浜田大臣、昨日、日本維新の会の馬場代表が、岸田総理の方に、国家安全保障戦略等の改定に対する提言書というのを申入れで手渡しに行きました。岸田総理の方は、事前に読んでいただいて、防衛三文書の方にも参考にして生かしていただくというふうにお話しいただいたんですけれども、ちょっと通告にはないんですけれども、浜田大臣も既に日本維新の会の提言書についてはお読みいただけたでしょうか。

浜田国務大臣 今お話にあった点ですけれども、御党の提言の内容については私も確認をさせていただきました。大変積極的な提言をされたというふうに私自身は感じております。

 総理がそのように評価をされておると思いますので、我々もしっかりとまた検討させていただきたいというふうに思います。

三木委員 ありがとうございます。

 私たちはやはり、与党の中で協議されたり有識者の御意見を聞いて防衛三文書を作っていく、閣議決定をされていくということで、この委員会では、質問をして、要望をして、提言をするということしかできないわけでございます。そういった委員会の在り方にも、私はこの安全保障委員会に質問に立たせていただくようになって、やはり疑問を感じざるを得ないというふうに思っています。

 やはりこの委員会の中で、けんけんがくがく、もっと情報を出していただいて、国家の安全に対して、日本の国民の安全と国土を守っていくために、この安全保障委員会の委員で、与野党超えて、日本の安全というものについて議論をしていきたいなというふうに私自身は考えておりますので、是非とも、閣議決定だけで終わるのではなく、やはり法案として出していただくとか、そういったことを。

 予算の中できっちりと審議していくことも必要ですけれども、この委員会の在り方、皆さんおっしゃっておりますけれども、何か答弁が、秘密だから、これは公開できないからお答えできないというようなことが非常に私もこの委員会にいて多いなと思うので、国会法で秘密会ということもありましたけれども、そういったことも私たちの方からも申入れをさせていただいて、もっと深めた議論をこの委員会の場でしていきたいなというふうに考えております。

 それで、昨日報道にありました、これはもう、やはり報道の方が先に出てしまうんですよね、防衛費の増額に対して、不足分は、来年度は増税しないけれども、その次からは増税も致し方ないんじゃないかというようなことが与党の中で話し合われたというふうなことが報道ベースで出ておりました。これも質問通告ができなかったわけです、昨日の報道を見てのことですから。浜田大臣にお答えをいただくことは難しいと思うのですけれども。

 我が党は、明確に増税には反対なんですね。やはり、歳出削減や決算剰余金や、また、例えばコロナ対策費が三年間で九十五兆円積まれた、それを、コロナが収束に向かったら、それのお金を取りあえずは、まずは防衛費に充てるべきだと思っているし、四十三兆円の真水で、先ほど防衛大臣の方からもお答えいただきました、長島委員のお答えで四十三兆円真水だというふうにお答えいただきましたけれども、そういった防衛費を今後どのように捻出していくかということに関しては、馬場代表の方からも予算委員会の中で、六十年償還ルールを九十年償還にしたら一%の分は出るんじゃないかというようなこともお話をさせていただいておりますので、是非ともそれを、提言書の中にも書いておりますので、是非とも検討していただきたいと思いますが、いかがでしょうか。

浜田国務大臣 今御指摘のありました件に対して、私からお答えするのは大変難しゅうございますけれども、防衛省として、総理の指示は、先ほどもお話をしましたけれども、調整中の次期五年間の中期防の規模について、抜本的強化を進めるための必要な内容をしっかりと確保するため、与党と協議しつつ、積み上げで四十三兆円にすること、そしてまた、令和九年度以降、防衛力を安定的に維持するための財源及び五年から九年度の中期防を賄う財源の確保について、歳出改革、剰余金や税外収入の活用、税制措置など、歳出歳入両面の具体的措置について、年末までに一体的に決定する調整を進めることとの指示をいただいたところであります。

 今御質問のあった点について、今後、総理の指示に沿って、引き続き調整を進めてまいりたいと考えております。

三木委員 ありがとうございます。是非よろしくお願いをいたします。

 それでは、通告に基づいて質問させていただきます。

 まず、これは防衛三文書に全く関係ないんですけれども、中国の海外警察サービスセンターについてお伺いいたします。

 林外務大臣は、十一月二十九日の会見で、仮に我が国の主権を侵害するような活動が行われていることであれば、断じて認められない旨の申入れを行ったそうですけれども、こういう申入れを行っているということは、当然、調査をしていると思うのですけれども、その後、調査はされているのか、調査をされているのであれば、どういった調査をされているのか、お伺いいたします。

實生政府参考人 御指摘のような事象について、いろいろ関連報道等ございます。外務省の方から申し上げられることは、実態把握の現状についてお答えするということについては、ちょっと差し控えたいと思います。

 本件について、先ほど委員の方からも御指摘があったように、中国側に対し、外交ルートを通じて、仮に我が国の主権を侵害するような活動が行われているのであれば、断じて認められないという旨の申入れを行ったところでございまして、引き続き国内の関係省庁とも連携して対応していく所存でございます。

三木委員 何かよく分からない答弁だったんですけれども。調査しているのか調査していないのかも外務省の方からはお答えできかねるということだったと思うんですけれども。

 中国の人権問題を監視する非政府組織、セーフガード・ディフェンダーズが九月に発表した報告書で、こちらの報告書によって、様々、全世界が動いているわけでございますけれども、海外にいる反体制派の監視任務だと指摘している。脅迫、嫌がらせ、監禁などの手段で圧力をかけ、自発的に帰国するよう説得をする役目を担うとされている。この説得に応じなければ、母国の子供たちから教育の機会を奪うとか、連座制の名目で家族や親族を処罰するなどと告げて、家族側から本人に帰国を説得するよう誘導している。

 つまり、中国当局が標的にした在外中国人が帰国の説得に応じたという体制をつくって、帰国をして、その後、司法で裁判にかけて、その裁判にかけられた後どうなっているのかというのは、私はちょっと分かりませんけれども、要するに、反体制の活動家が海外で住まわれている場合、こういった説得を行って中国に帰国をさせて、その中で司法を受けさせる。

 犯罪人引渡しというのは、やはり、条約を締結している国だったら、条約に基づいてできるわけです。条約を締結していない国でも、外交交渉によって相互に合意が得られれば引渡しが行われるということなんですね。この手続を全部すっ飛ばして、海外にいる中国人に、家族とかを人質に取って帰れと言っているということは、明らかにこれは、中国の人権問題であると同時に、我が国の主権を脅かしていると私は思います。

 こういったことを行っているのが今のサービスセンターなので、これは是非ともちゃんと調査をしていただいて、厳正に、閉鎖をするよう申入れをしていただきたいなと思います、この調査が事実であれば。オランダとかアイルランドとかは閉鎖を要求しておりますので、やはり日本もこれは厳正に対処すべきだと思います。

 あと、国防動員法、これは、昨年の十月に中国の全人代で、法的手続がなく動員できるように変わっているんですね。だから、こういうセンターが中心になってテロ活動を行うこととかもあり得ると思うので、そういったことに対処するのはどういうふうに考えていらっしゃるのか、最後に浜田防衛大臣にお伺いしたいと思います。

浜田国務大臣 仮定の状況を前提にした質問にお答えすることは適切ではないと考えます。

 その上で、武力攻撃事態におけるテロ攻撃等への対応について、一般論でお答えすれば、自衛隊は、防衛出動時において、外部からの武力攻撃の排除のほか、公共の秩序を維持するためにも行動することが可能であります。このため、こうした場合には、必要に応じ、警察機関と緊密に連携しながら、公共の秩序の維持のために、権限に基づいて適切に対応することになります。

 防衛省・自衛隊としては、あらゆる事態に対応できるよう、不断に検討を行い、万全を期してまいりたいと考えます。

三木委員 ありがとうございます。

 質疑時間が終わりましたので、質問を終わりますけれども、我が国の主権を守ること、そして我が国の国民の安全を守ること、是非ともお願いをいたしまして、私の質問を終わらせていただきます。

 ありがとうございました。

鬼木委員長 次に、斎藤アレックス君。

斎藤(ア)委員 国民民主党の斎藤アレックスでございます。

 本日は、恐らく年内最後の質疑になるかと思います。本年は、浜田大臣にも、また林外務大臣にも、様々な面で答弁に答えていただきまして、ありがとうございました。

 私たち国民民主党が取りまとめを行った安全保障政策、昨日取りまとめを行いまして、明日、総理大臣に手交させていただく、提言を渡させていただく予定になっております。

 今年の国会でも、先日の予算委員会では、防衛大臣に対して、イージス・アショア、ミサイル防衛の件についてお尋ねをさせていただいたり、また、隊内でのセクハラの問題に関しても質問させていただいたりしました。こういったことについても盛り込みをさせていただいていますし、当然、反撃能力の部分であったり防衛強化の部分であったり、そしてアクティブサイバーディフェンスのところであったりとか、様々な面、専門家の意見を聞きながら、特に、自衛隊に所属していた方でもある専門家の方々から、現場の状況も勘案しながらの意見を伺ってまとめさせていただいておりますので、是非そちらも御参考にしていただいて、年末の防衛三文書の取りまとめに当たっていただきたいというふうに考えております。

 その中で、私たち、様々な論点の中で、一つ今日は取り上げさせていただきたいんですけれども、まず、在外邦人の保護に関して、避難に関してお伺いをさせていただきたいと思っております。こちらはもう、今年の国会でも様々な野党の議員から、この委員会でも、外務委員会でも、また本会議でも質問があったところでございます。

 私は、今、台湾有事というものを想定して質問します。台湾有事という仮定を置いての回答は恐らくできないと思いますので、その部分については、御答弁はもうぼやかしていただいて構わないんですけれども。

 やはり、台湾有事のことを想定して、台湾にいらっしゃる二万四千人の邦人を保護すること、このことについてしっかりと計画を立てていく。これまでは、中国、台湾の海峡の緊迫度合いが高まる前までは、朝鮮半島でどういった有事が起きたときにどういった対処をするのかというところがメインだったと思うんですけれども、今は、それに加えて、台湾有事に対してどのように国民保護を行っていくのかというところが極めて重要な段階に来ている。

 先日は、中国共産党の党大会が行われて、習近平政権が三期目に入った。台湾の武力統一も辞さないという姿勢を改めて明らかにした。こういった中で、私の選挙区の子女であったり、また、選挙区出身の方も、台湾に住んでいる方はもちろんいらっしゃると思います。そういった方々に、年末、日本としてはしっかりと対応を行っている、準備をしているというところを自信を持って答えられるような状態では、残念ながら、今のところないと思います。

 何回野党の議員から質問をしても、判を押したような同じような回答が外務大臣であったりとか担当事務官から返ってくるということで、それでは、アフガン情勢、アフガンで起きたことも勘案すれば、なかなか、ちゃんと日本政府はやっていますということは、私としては自信を持って言えない状況でございます。

 つまびらかに説明することはもちろん求めませんけれども、外務大臣としても、邦人保護の重責を担っているというところを認識した上で、検討を行っている、対策を行っている、そういったところなのか、しっかりとやっているのか、お答えいただきたいというふうに思います。

林国務大臣 海外に渡航、滞在する邦人の保護、これは政府の最も重要な責務の一つでございまして、平素から、在外邦人の保護や退避が必要となる様々な状況を想定して、必要な準備、検討を行っております。

 在外邦人の保護や退避を含めて、有事における我が国の個々の対応や計画について個別具体的にお答えすることは差し控えますけれども、日本を取り巻く安全保障環境が一層厳しさを増す中で、我が国国民の安全を確保するため、政府として、いかなる事態に対しても対応できるように、平素から体制の整備を含めて万全を期していくということは当然であると考えております。

斎藤(ア)委員 我々野党としては、なかなか議論の中身、準備の中身が確認できないところでございまして、大変やきもきするところではあるんですけれども、改めて、本年最後の安全保障委員会での質疑の場で強く、この邦人保護に当たっては、特に、今まで想定できなかったぐらいに台湾の状況は緊迫しておりますので、その準備、訓練、また法整備にはしっかりと当たってほしい、しかも、これは五年、十年といったスパンが許されるような状況ではなくなっていると個人的には思いますので、そのことを改めてお願いしておきたいと思います。

 そういったものに加えて、台湾有事の際には、これもこの委員会でもかねてから質問があることですけれども、国際社会から、台湾有事といった事態に際しては、邦人だけではなくて外国人の避難もやってくれ、日本、何とかしてくれ、日本、アメリカに対してだと思いますけれども、そういった期待があるんだと思います。

 仮に、そういったところに対応できなければ、あるいは、法制度上無理なんだ、邦人しか保護できないということであれば、それは、日本の国際社会における立場も大変毀損してしまいますし、日本の安全を守る上でも決してあってはならないことだと思いますけれども、台湾有事の際、台湾からの避難に際して、外国政府から協力要請があり、それに応えなければならないという認識を、今、政府としてお持ちなのか、外務大臣にお伺いしたいと思います。

林国務大臣 いわゆる台湾有事におけます邦人、また外国人による避難といった仮定の質問へのお答えは差し控えたいと思います。

 我々としては、やはり台湾海峡の平和と安定は、我が国の安全保障はもとより、国際社会全体の安定にとっても重要でありまして、台湾をめぐる問題が対話によって平和的に解決されることを期待するというのが従来からの一貫した立場であります。これまでも、日米、G7各国との間で、台湾海峡の平和と安定の重要性について一致しております。

 その上で、あくまで一般論でございますが、日本を取り巻く安全保障環境が一層厳しさを増す中で、政府として、いかなる事態に対しても対応できるように、平素からの体制の整備を含めて万全を期していくということは当然であると考えております。

斎藤(ア)委員 台湾とは国交がないわけでございますし、その台湾との事前調整においては、様々な困難、韓国との調整とは比べ物にならないぐらいの困難が予想されます。外務省には、一段の踏み込みをしていただいて、そういった調整にも当たっていただく必要があると思っておりますので、改めてそのことについても要請をさせていただきたいと思います。

 これに関連してでございますけれども、退避をこういった有事の際に行う際には、やはり事前に、できるだけ民間機を使って安全なうちに避難をしてもらうということが必要でございますので、様々な情報収集能力を高めていただいて、そういった指示、勧告などを出せるようにしていただくことがまずは重要だと思いますけれども、それが間に合わなかった際には、やはり最終的には、アフガニスタンであったように、自衛隊機を使用したりとか、政府専用機を使ったりとか、そういったことで避難をするということも、もちろん考えなければならないというわけでございます。

 この委員会で今年の通常国会で審議をされた自衛隊法の改正によって、日本人の同乗者だけではなくて、日本政府と関係のある、例えば名誉総領事若しくは名誉領事とか、在外公館や独立行政法人の現地職員に採用された者、あるいはその同乗者といった感じで、そういったふうに、自衛隊機で避難をさせられる対象が増えたわけでございます。

 それに加えて、これはもう既に質問がなされていることでございますけれども、積み残しとして、全くそういったふうに日本政府とは関係がないけれども避難をさせる必要があるというか、例えば外国政府から、この人たちを避難させてくれと、これまで日本が海外政府に頼んで避難をさせてもらったこともあると思いますけれども、外国政府からお願いされて、日本政府とは全く無関係だけれども避難をさせる必要が出てくる場合があると思うんです。

 外国人のみの退避を目的とした自衛隊機の派遣あるいは自衛隊の派遣についての法整備について、検討状況はどうなっているのか、また、そういったことを含めて、そもそもやるつもりがあるのかも含めてなんですけれども、防衛大臣にお聞きをしたいと思います。

浜田国務大臣 本年四月に自衛隊法第八十四条の四を一部改正し、我が国の国籍を有しない者のうち、邦人の配偶者又は子など、我が国国民と同視できる外国人についても、我が国国民と同様に、その生命又は身体の保護を行うために、現地に邦人がいない場合であっても自衛隊を派遣し、主たる輸送対象者として輸送を行うことが可能となりました。

 また、その他の外国人についても、これまでどおり、主たる輸送対象者の同乗者として輸送することが可能であります。

 いずれにせよ、避難民の輸送の在り方について、政府としては、商用便やチャーター便も含め、その時々の状況に応じて最も適切な手段を選択することとなることを踏まえつつ、今後とも不断の検討を行っていく考えであります。

斎藤(ア)委員 ちょっと、今、御質問に答えていただいていないんですけれども。

 この拡大した類型に該当しない方であっても、その同乗者であれば避難させられるということなんですけれども、拡大した類型に当たる人は全くいない、全くいない場合は同乗者というのは存在しなくなってしまいますので、その拡大した類型に該当しない方々を避難させる、全く日本政府とはそういった関係がない方々を避難させるようにできる法改正を検討しているのか。

 今言っていただいた法改正の審議の中の本会議の質問で、当時の岸防衛大臣は、そういった類型の方を避難させる事態は今のところ想定されないとお答えになったんですけれども、それは、そんなはずはないはずでございます。

 先ほど外務大臣に私から質問したように、外国人のみの避難を目的として任務に当たらなければならない事態というのも想定しなければならないと思います、全く日本政府と関係ない外国人ですね。そういったことを今検討を進められているのか。想定していないというお答えが今年の春の通常国会で当時の岸防衛大臣からあったんですけれども、想定しなければならないと思うんですね。そういった想定の下に、全くこの類型に属さない、そして、類型に属する同乗者でもない、全く関係ない外国人の方を避難させる、そういった任務を追加する考えがあるのか、検討をしているのか、ちょっとお答えいただきたいと思います。

増田政府参考人 お答え申し上げます。

 本年四月の自衛隊法第八十四条の四の一部改正に際しましては、衆議院、参議院の方で活発な御議論をいただきまして改正案が成立いたしました。それによりまして、御案内のとおり、一定の外国人の方についても対象になってくるという、日本国民と同視できる外国人についても輸送できることになりました。

 その運用の中で、一度、邦人若しくは国民と同視できる外国人のために派遣した航空機につきましては、現地に行きましたら外国人だけということで輸送することは可能なんですが、そういう運用だけで大丈夫なのか、こういう御指摘を既にその法案の成立時に附帯決議でいただいておりまして、「在外邦人等の輸送要件における輸送対象者となる外国人の範囲の拡大について、引き続き検討を行うこと。」こういただいておりますので、防衛省としても引き続き不断の検討を行っているというところでございます。

斎藤(ア)委員 ありがとうございます。

 今日、今まで質問した一点目、二点目、三点目、全て関連するというか、同時に検討を進めていかなければならない問題だと思いますので、迅速な検討と、そして、法整備が必要であれば早急に来年の国会に是非提出していただいて、審議をさせていただきたいと思っております。

 次に、時間もなくなってきたんですけれども、台湾有事の際に、私、あえて台湾有事と申し上げますけれども、避難民の方を日本で受け入れる必要が出てくると考えております。

 通告をちょっと飛ばさせていただきますけれども、有事の際に避難先として日本が選ばれたり、あるいは避難先に行くための経由地として日本が使われるということはとてもたくさん発生すると思うんです。

 まず、この通告をした際に、私、二日前に通告したんですけれども、今朝まで答弁者がころころ替わって、一体どこが担当になっているのか分からない。こういった大規模な避難民の受入れ、そういったことについて、どこの省庁が担当されているのか、今日、誰が答弁していただけるのか。どこが担当か、まず教えていただきたいと思います。

下田政府参考人 お答えいたします。内閣官房でございます。

 台湾有事の仮定の質問に答えることは差し控えたいと存じますけれども、一般論といたしまして、政府におきましては、我が国に多数の避難民が流入してくる場合を想定いたしまして、平素より関係省庁が連携して必要な準備、検討を行っているところでございます。

 基本的な手順をちょっと御説明させていただきますけれども、避難民が流入した場合の基本的な手順といたしましては、まず避難民を保護する、応急物資を支給する。第二に、入管、税関といった上陸手続をしっかり行う。それから第三に、上陸した避難民を宿泊させる施設の設置及び運営を行う。そして、我が国が庇護すべき者に当たるかどうかについてスクリーニングを行うという対応を取ることを想定しているところでございます。

 今後とも、事態に応じて関係機関が連携して的確な対応ができるよう、引き続き検討してまいりたいと考えてございます。

斎藤(ア)委員 国民民主党の安全保障調査会の調査の中で、今年、先島諸島を訪問し、様々な意見を伺ってきましたが、やはり不安が大きかったです。

 台湾有事の際には漁船などに乗って大量の避難民が来るかもしれない、もちろん保護をするんだけれども、キャパシティーに大変問題がある、限界がある。そういった中で、県であったりとか国との連携がもっと進まなければならないという問題意識を共有していただいていますので、国交省であったり防衛省であったり外務省であったり、様々な省庁の連携が必要だと思いますけれども、やはり司令塔をしっかりと設けていただき、そういった調整が進むようにしていかなければならないと思います。

 そういったことも提言案の中に盛り込んでいますので、是非見ていただいて、また今後とも連携をしながら体制強化につなげていきたいと思います。

 以上で終わります。ありがとうございます。

鬼木委員長 次に、赤嶺政賢君。

赤嶺委員 日本共産党の赤嶺政賢です。

 今日は、民間空港、港湾の軍事利用の拡大について質問をいたします。

 政府が年末の安保関連三文書の改定に向けた検討を本格化させる下で、県民の間では、かつての沖縄戦のような悲劇が繰り返されることへの不安が広がっております。台湾有事は日本有事などという政治家の発言が繰り返され、南西諸島への長距離ミサイルの配備、弾薬庫の増設、陸上自衛隊第一五旅団の大幅な増強など、まるで戦争前夜を思わせるような報道が連日続いております。

 こうした下で、浜田防衛大臣は、十月二十日の有識者会議で、民間空港、港湾の軍事利用を拡大する意向を示しました。運航や使用に制限が課されている空港、港湾があるとして関係省庁や関係団体に協力を求めるとともに、先島諸島を名指しして、部隊運用の有用性が高いものもあるとして、空港、港湾の整備、機能強化を進める考えを示しました。

 防衛大臣に伺いますが、運航や使用に制限がある空港、港湾、また、部隊運用上の有用性が高い先島諸島の空港、港湾とはそれぞれどこを想定したのですか、説明してください。

浜田国務大臣 我が国の防衛上、自衛隊が多様な空港、港湾を使用できるようにしておくことは重要であり、また、日頃から当該空港、港湾を使用した訓練を重ねておく必要がある一方、自衛隊による使用に様々な制約、制限が課されている空港、港湾もあります。

 具体的な事例として、例えば下地島空港については、いわゆる屋良覚書等により自衛隊機による使用が制限されているほか、成田空港については、一九七二年の取決めにおいて、軍事的に利用することは絶対に認めないとされております。

 また、相手方の関係で具体的にお示しすることはできませんが、事実上、災害派遣や防災訓練等でしか利用できていない空港や、空港の使用も断られた事例も複数ございます。

 こうした状況を踏まえ、自衛隊が既存施設を平素から柔軟に利用できるよう、関係省庁や関係団体等から御協力をいただきたい旨、私から発言をしたところであります。

 そして、個別の空港、港湾の名称をお答えすることは差し控えますが、一般論としては、滑走路や岸壁長が長い空港、港湾は部隊運用上の有用性が高いと考えております。

 以上です。

赤嶺委員 先島諸島、先島諸島とよく言われるんですが、私が学校を卒業して、初めて社会人生活、新婚生活を送ったのも石垣島であります。宮古島や石垣島、大変私にとっては懐かしい、懐かしいというか心のふるさとの地域でもありますが、ここの軍事利用を繰り返されることについて、非常に胸が痛い、そういう気持ちで聞いていることを防衛大臣はしかと受け止めていただきたいと思うんです。

 下地島空港については、一九七一年八月、当時の琉球政府と日本政府との間で、自衛隊や米軍などが軍事目的で使用しないことを確認した公文書、いわゆる屋良覚書があります。この見直しを求めるということですか。

増田政府参考人 お答え申し上げます。

 我が国の防衛上、多様な空港等からの運用は重要でありまして、日頃からそのための訓練を重ねて、平素から柔軟に利用できることが必要でございます。国力としての防衛力を総合的に考える有識者会議における御議論なども踏まえながら、自衛隊が既存施設を平素から柔軟に利用できるよう、関係省庁や地方自治体、関係団体などから御協力をいただけるよう努めてまいりたいと考えております。

 下地島空港の自衛隊機による利用につきましては、地元住民の御意向といった地域の個別事情を踏まえる必要があると考えております。

赤嶺委員 つまりは、屋良覚書の見直しを求めていきたいということですね、大臣。

浜田国務大臣 今お答えしたとおりでありますが、我々とすれば、地方自治体に対して御説明をしていきたいというふうに考えております。

赤嶺委員 武力紛争時に紛争当事者が最低限守るべき原則を規定した国際人道法、これは、民用物への攻撃を原則禁止する一方で、たとえ民用物であっても軍事活動に効果的に資する物については軍事目標として取り扱うことになっていると思いますが、防衛省、その点は間違いないですね。

増田政府参考人 お答え申し上げます。

 まず、自衛隊が武力の行使を行うに当たりましては、自衛隊法第八十八条に規定するとおり、国際人道法を含む国際法を遵守することとなります。

 その上で、ジュネーブ諸条約第一追加議定書第五十二条の二におきましては、物について、軍事目標は、その性質、位置、用途又は使用が軍事活動に効果的に資する物であってその全面的又は部分的な破壊、奪取又は無効化がその時点における状況において明確な軍事的利益をもたらすものに限ると規定されております。

 自衛隊が使用する空港、港湾が同条に規定される軍事目標に当たるかにつきましては、実際に武力紛争が生じた場合において、その時点における状況下で判断する必要があるものであり、一概にお答えできないものだと認識しております。

 以上でございます。

赤嶺委員 だって、大臣は、先島諸島の空港や港湾は軍事的な利益をもたらすものとして、その効果的な活用を、日頃から訓練もし、そして武力攻撃事態になったら使うんだというわけでしょう。そうしたら、ジュネーブ条約で言ういわば軍事的利益をもたらすもの、こういうことになってしまうんじゃないですか。それはそのときになってみないと分からないというものではないでしょう。いかがですか。

増田政府参考人 お答え申し上げます。

 防衛省といたしましては、南西諸島を含む日本各地の空港、港湾といいますのは、有事に限らず、災害などの各種事態における住民、南西諸島の場合では離島の住民の方々の避難を含む人員や物資の輸送の観点においても大変重要な役割を担うものだ、こう認識しておりまして、これらを平素から柔軟に利用できることが重要と考えております。

 いずれにせよ、自衛隊が使用する空港、港湾がジュネーブ諸条約第一追加議定書第五十二条の二に規定される軍事目標に当たるかにつきましては、実際に武力紛争が生じた場合において、その時点における状況下で判断する必要があると考えておりまして、一概にお答えできないものだと考えておりまして、その点、御理解いただければと思います。

赤嶺委員 一概に言えないとか、そのときになってみないと分からないとか、私は、そういう態度はかつての沖縄戦から何も学んでいないということになると思うことを指摘したいと思います。

 かつて沖縄戦のときに、一九四四年十月十日、南西諸島全域が米軍による大規模な空襲を受けました。いわゆる一〇・一〇空襲です。五次にわたる波状的な爆撃が行われ、那覇市の九割が焼失をしました。真っ先に攻撃を受けたのは、当時の海軍小禄飛行場、現在の那覇空港。小禄飛行場と那覇港でした。那覇港は、軍事物資の主要な積み揚げ港となっていたために、真っ先に攻撃の対象とされました。ですから、伝統的に那覇市では、親泊市政の頃から那覇港の軍事利用は認めない方針を取っているわけです。

 同じ一九四四年の八月に、疎開学童らを乗せた対馬丸が米軍の潜水艦に撃沈をされました。当時、対馬丸は、軍に徴用され、中国戦線から沖縄に部隊を輸送する役割も果たしました。

 沖縄戦でのおびただしい住民の犠牲は、軍隊と民間が混在することで起こったわけであります。

 軍民を混在させない、離島住民の避難に必要不可欠な民間空港、港湾、ここは民生利用に限る、こういう具合にしないと。このことが沖縄戦から酌み取るべき教訓だと思いますよ。

 また再び民間施設を軍事利用して、そして爆撃の対象になる、撃沈の対象になる。こういうのは、去った沖縄戦から何の教訓も学んでいないで、気軽に、台湾有事だとか、あるいは軍事的に利用ができるとか、こういう態度はやめていただきたいと思います。

 最後に一点伺いますが、米軍は今、固定した基地に大規模な部隊を集中させるのではなく、小規模の部隊を一時的に分散展開させる考え方に移行してきています。相手のミサイル攻撃に脆弱だからであります。こうした考え方の下に、海兵隊は、ミサイル部隊などを一時的に島々に展開させるEABOという構想を推し進めています。

 防衛省に伺いますが、米軍が南西諸島の島々に展開するとき、どうやって展開するんですか。民間空港、港湾を使うことになるのではありませんか。

増田政府参考人 お答え申し上げます。

 委員御指摘の、米海兵隊の機動展開前進基地作戦構想、EABO構想といいますのは、海軍の海洋アセットに加えまして、海兵隊が陸上ベースの選択肢を提供することによりまして、決定的な攻撃力を更に分散するための取組と承知しております。

 EABO構想では、地上発射ミサイルを含む多様な機能を持つ臨時拠点を前方に一時的に設置するものとされており、危機前の状況から展開することにより既成事実化の取組に対応するとの考え方が示されていると承知しておりますが、本構想に基づく米軍の具体的な運用の内容につきましては、個別具体的な状況に応じて判断されるものと承知しておりまして、一概に申し上げることは困難でございます。

赤嶺委員 米軍の運用について、それは知らないと。無責任じゃないですか。離島の空港や港湾を整備して米軍に使わせようとする。

 米軍は、インド太平洋軍が太平洋抑止イニシアチブという構想を打ち出していますが、二〇二〇年に議会に提出した予算要望書では、前進配備された部隊が空港、港湾に分散できるようにすることが必要だという認識が示されております。

 米軍は、南西諸島の空港、港湾を利用するという要望を持っているんじゃないですか。大臣、いかがですか。

鬼木委員長 申合せの時間が経過しておりますので、答弁は簡潔にお願いいたします。

増田政府参考人 米軍の艦船や航空機は、日米地位協定に基づき、日本国の港又は飛行場に出入りすることが認められております。

 その上で、緊急時における民間空港、港湾などの公共施設の米軍の利用につきましては、その緊急事態の規模、態様等に応じて個別に判断することになります。

 既存の法制度におきましても、米軍による民間空港、港湾などの公共施設の利用は想定されており、例えば武力攻撃事態等における特定公共施設等の利用に関する法律などにおきまして、必要な規定を整備しているところでございます。

赤嶺委員 非常に軽々に、沖縄戦を体験した沖縄県民をまた戦場に巻き込むような無責任な議論、明らかにせよと言ったらそれはできないとする態度、これを改めることを強く求めて、質問を終わります。

鬼木委員長 次回は、公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。

    午後零時十五分散会


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