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第6号 令和5年4月7日(金曜日)

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令和五年四月七日(金曜日)

    午前九時開議

 出席委員

   委員長 鬼木  誠君

   理事 大塚  拓君 理事 國場幸之助君

   理事 宮澤 博行君 理事 若宮 健嗣君

   理事 伊藤 俊輔君 理事 篠原  豪君

   理事 三木 圭恵君 理事 浜地 雅一君

      江渡 聡徳君    大岡 敏孝君

      木村 次郎君    小泉進次郎君

      小寺 裕雄君    鈴木 憲和君

      渡海紀三朗君    中曽根康隆君

      長島 昭久君    穂坂  泰君

      細野 豪志君    松島みどり君

      山本ともひろ君    新垣 邦男君

      玄葉光一郎君    重徳 和彦君

      渡辺  周君    浅川 義治君

      美延 映夫君    河西 宏一君

      斎藤アレックス君    赤嶺 政賢君

    …………………………………

   外務大臣         林  芳正君

   防衛大臣         浜田 靖一君

   外務副大臣        山田 賢司君

   防衛副大臣        井野 俊郎君

   防衛大臣政務官      小野田紀美君

   防衛大臣政務官      木村 次郎君

   政府参考人

   (内閣官房内閣審議官)  青柳  肇君

   政府参考人

   (内閣官房内閣審議官)  林   学君

   政府参考人

   (消防庁国民保護・防災部長)           田辺 康彦君

   政府参考人

   (外務省大臣官房審議官) 石月 英雄君

   政府参考人

   (外務省大臣官房審議官) 岩本 桂一君

   政府参考人

   (外務省大臣官房参事官) 宮本 新吾君

   政府参考人

   (外務省大臣官房参事官) 池上 正喜君

   政府参考人

   (外務省大臣官房参事官) 西永 知史君

   政府参考人

   (防衛省大臣官房サイバーセキュリティ・情報化審議官)           上田 幸司君

   政府参考人

   (防衛省防衛政策局長)  増田 和夫君

   政府参考人

   (防衛省地方協力局長)  深澤 雅貴君

   政府参考人

   (防衛省統合幕僚監部総括官)           大和 太郎君

   政府参考人

   (防衛装備庁長官)    土本 英樹君

   安全保障委員会専門員   奥  克彦君

    ―――――――――――――

委員の異動

四月七日

 辞任         補欠選任

  武田 良太君     小寺 裕雄君

  中曽根康隆君     穂坂  泰君

同日

 辞任         補欠選任

  小寺 裕雄君     武田 良太君

  穂坂  泰君     中曽根康隆君

    ―――――――――――――

四月七日

 防衛省が調達する装備品等の開発及び生産のための基盤の強化に関する法律案(内閣提出第二〇号)

は本委員会に付託された。

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 連合審査会開会申入れに関する件

 政府参考人出頭要求に関する件

 日本国の自衛隊とオーストラリア国防軍との間における相互のアクセス及び協力の円滑化に関する日本国とオーストラリアとの間の協定の実施に関する法律案(内閣提出第三三号)

 日本国の自衛隊とグレートブリテン及び北アイルランド連合王国の軍隊との間における相互のアクセス及び協力の円滑化に関する日本国とグレートブリテン及び北アイルランド連合王国との間の協定の実施に関する法律案(内閣提出第三四号)

 国の安全保障に関する件


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     ――――◇―――――

鬼木委員長 これより会議を開きます。

 この際、浜田防衛大臣から発言を求められておりますので、これを許します。浜田防衛大臣。

浜田国務大臣 陸上自衛隊所属ヘリコプターの事故について御報告いたします。

 昨日十五時五十六分頃、陸上自衛隊第八師団第八飛行隊所属のUH60JA一機が宮古島周辺空域において飛行中のところ、航空自衛隊のレーダーから航跡が消失しました。

 本事案を踏まえ、私から、救助等の対応に全力を挙げること、情報収集を徹底し状況の把握に努めること等について指示をし、事案発生当初から、夜を徹しての現場周辺の捜索を行っていますが、機体に搭乗していた第八師団長坂本陸将ほか九名について、現在も発見に至っておりません。

 引き続き、行方不明となっている十名の人命の捜索に全力を尽くすとともに、このような事故が発生したことを重く受け止め、自衛隊の航空機の運航に当たっては、安全管理に万全を期してまいる所存であります。

 以上であります。

     ――――◇―――――

鬼木委員長 内閣提出、日本国の自衛隊とオーストラリア国防軍との間における相互のアクセス及び協力の円滑化に関する日本国とオーストラリアとの間の協定の実施に関する法律案及び日本国の自衛隊とグレートブリテン及び北アイルランド連合王国の軍隊との間における相互のアクセス及び協力の円滑化に関する日本国とグレートブリテン及び北アイルランド連合王国との間の協定の実施に関する法律案の両案を議題といたします。

 両案に対する質疑は、昨六日に終局いたしております。

 これより両案について討論に入ります。

 討論の申出がありますので、これを許します。赤嶺政賢君。

赤嶺委員 私は、日本共産党を代表して、日豪、日英部隊間円滑化協定、いわゆる訪問軍地位協定の実施法案に反対の立場から討論を行います。

 反対理由の第一は、憲法違反の安保法制を具体化するものだからです。

 日米ガイドライン、安保法制は、重要影響事態や存立危機事態、武力攻撃事態等に際して、自衛隊が米軍だけでなく第三国の軍隊に軍事支援を行うことを可能にしました。政府は質疑で、こうした事態への対応が協定に基づく協力活動の対象になる可能性を認めました。第三国の軍隊が日本列島を足場にアメリカ主導の軍事作戦を支援するための体制をつくるものであり、断じて容認できません。

 政府は、地域の緊張を高める軍事体制の強化ではなく、地域の全ての国を包摂する平和の枠組みを発展させるために、外交にこそ積極的に取り組むべきです。

 第二は、基地負担の更なる増大を招くものだからです。

 法案は、二国間、多国間の共同訓練を拡大するためのものであり、米軍や自衛隊の訓練による航空機騒音や事件、事故に苦しめられてきた住民に新たな負担を押しつけるものです。

 公務中の事件、事故に対する第一次裁判権を日米地位協定と同様に派遣国に与えるものになっていますが、米軍機の墜落や部品落下などの原因究明や再発防止は、米軍任せでうやむやにされてきたのが実態です。住民の命と安全を脅かすものであり、断じて認められません。

 さらに、公務外の死刑が科されるような重大な罪で、英豪両国は身柄引渡しの義務を負わないとしています。重大な事件ほど、日本が裁判権を行使できなくなるおそれがあり、国の主権を放棄するものと言わざるを得ません。

 以上、討論を終わります。

鬼木委員長 これにて討論は終局いたしました。

    ―――――――――――――

鬼木委員長 これより採決に入ります。

 まず、内閣提出、日本国の自衛隊とオーストラリア国防軍との間における相互のアクセス及び協力の円滑化に関する日本国とオーストラリアとの間の協定の実施に関する法律案について採決いたします。

 本案に賛成の諸君の起立を求めます。

    〔賛成者起立〕

鬼木委員長 起立多数。よって、本案は原案のとおり可決すべきものと決しました。

 次に、内閣提出、日本国の自衛隊とグレートブリテン及び北アイルランド連合王国の軍隊との間における相互のアクセス及び協力の円滑化に関する日本国とグレートブリテン及び北アイルランド連合王国との間の協定の実施に関する法律案について採決いたします。

 本案に賛成の諸君の起立を求めます。

    〔賛成者起立〕

鬼木委員長 起立多数。よって、本案は原案のとおり可決すべきものと決しました。

 お諮りいたします。

 ただいま議決いたしました両法律案に関する委員会報告書の作成につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

鬼木委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

    〔報告書は附録に掲載〕

     ――――◇―――――

鬼木委員長 この際、連合審査会開会申入れに関する件についてお諮りいたします。

 財務金融委員会に付託されております内閣提出、我が国の防衛力の抜本的な強化等のために必要な財源の確保に関する特別措置法案について、財務金融委員会に対し連合審査会の開会を申し入れたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

鬼木委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

 なお、連合審査会の開会日時等につきましては、財務金融委員長と協議の上決定いたしますので、御了承願います。

     ――――◇―――――

鬼木委員長 次に、国の安全保障に関する件について調査を進めます。

 この際、お諮りいたします。

 本件調査のため、本日、政府参考人として内閣官房内閣審議官青柳肇君、内閣官房内閣審議官林学君、消防庁国民保護・防災部長田辺康彦君、外務省大臣官房審議官石月英雄君、外務省大臣官房審議官岩本桂一君、外務省大臣官房参事官宮本新吾君、外務省大臣官房参事官池上正喜君、外務省大臣官房参事官西永知史君、防衛省大臣官房サイバーセキュリティ・情報化審議官上田幸司君、防衛省防衛政策局長増田和夫君、防衛省地方協力局長深澤雅貴君、防衛省統合幕僚監部総括官大和太郎君、防衛装備庁長官土本英樹君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

鬼木委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

鬼木委員長 質疑の申出がありますので、順次これを許します。玄葉光一郎君。

玄葉委員 浜田大臣、林大臣、よろしくお願いいたします。

 まず冒頭、浜田大臣から御報告のあった陸自第八飛行隊所属のUH60JAヘリの航跡消失でございます。

 無事を願って、一刻も早い救出に全力を挙げてもらいたいと思いますけれども、師団長を始め十名というヘリの事故、事故と断定をされておられますけれども、事故としては大変大きい事故だと言えると思います。

 その上で、人的要因なのか機体の不具合なのかということで、しっかり原因究明をするということなんだろうと思いますけれども、念のため幾つか、本当に念のためですけれども、確認をしたいと思いますが、UH60JA、これは今訓練飛行を見合わせているということですけれども、全国にこれはどのくらいあって、ごめんなさい、これはちょっと急だったので通告してないですけれども、この機体に対する評価、特段不具合があったかどうか分かりませんけれども、二つのエンジンが載っていて比較的飛行は安定しているという評価だと私は承知をしていたわけですけれども、その点が一つ。

 もう一つは、これも念のためですけれども、直前に沖縄の軍艦がいわゆる沖宮間、沖縄―宮古間を通過したということでありますけれども、関連性、念のためですが、完全にないというふうに断定してよいかどうかということでございます。

浜田国務大臣 今委員から御指摘のあった件でありますが、今、手元に資料がございませんで、ちょっと総数は分かりませんけれども、我々とすると、今、このUH60JAにおいては、様々な訓練にも参加をし、大変安定していたというふうに我々は思っております。

 その中でこういったことが起きたということに関しては、全く、今のところ手持ちで、原因、これから追求することになると思いますので、これからの捜索をしっかりやっていきたいというふうに思いますし、今、人命救助を含め、我々とすれば、可能性のあるものは全部やるということで、今懸命に捜索活動をしておりますので、今後また御報告をさせていただきたいというふうに思っております。

玄葉委員 念のためですが、先ほど私、中国と言うところを沖縄と申し上げたかもしれませんが、中国の軍艦が直前に沖宮間を通過しているということとの関連性というのは絶対にないということでよろしいですか。

浜田国務大臣 今のところ、私のところに報告の入っているところには、そういったことは今のところ入っておりませんし、ただ、機体が今いろいろな破片等々も上がってきているところでありますので、我々とすれば、またいろいろな情報を収集しながらやっていきたいと思いますが、今ここで確たるものをお話しすることはちょっと差し控えておきたいと思います。

玄葉委員 それでは、通告をさせていただいた質問に入ります。

 今日は、軍縮と不拡散と軍備管理の問題を取り上げたいというふうに思います。

 これは安保三文書に一応の記述はあります。ありますけれども、やや通り一遍ではないかというふうに思います。もちろん、この分野は今、真冬の時代だというふうに申し上げて過言ではないと思いますけれども、だからこそ、日本としてこの問題をどう導いていくのかということについて、戦略、戦術をしっかりと考えておかなくてはいけないということではないかというふうに思います。

 もちろん、私たちも、この周辺環境にあって、防衛力を強化していくという方向性について、党としても、我々は一定の理解を示しております。

 他方で、やはり軍拡一辺倒ではいけない。ある段階、あるバランスした局面において、東アジアでも軍縮、不拡散、軍備管理のレジームというものをやはりつくり上げていかなきゃいけないんじゃないか。そのときには、やはり中国も含めたレジームというものを今から考えておく必要があるというふうに思います。明らかに軍拡に突き進んでしまっている中国をどう組み込んでいくか。

 御承知のとおり、米ロはこの枠組みがございます。STARTから始まって、今、新START、プーチン氏が履行停止表明を現在しておりますけれども、しかし、この枠組みがあった、あるということは非常に大きくて、これは戦略核ですけれども、何だかんだ言って米ロの戦略核は千五百発以下になってきているということでありますので、やはりこういう、数量を削減するとか透明性を高めるとかということの枠組みを、やはり中国も含めて、この米ロの新STARTみたいな、こういう枠組みをつくるということに対して日本はどういうふうに考え、またこれからどういうふうに導いていこうとしているのか。あえて冒頭、防衛大臣にお聞きしたいと思います。

浜田国務大臣 我が国はこれまで、核兵器、化学兵器、生物兵器といった大量破壊兵器等の軍備管理・軍縮及び不拡散のための国際的な取組に積極的に参加をしており、今般の三文書においても、我が国を取り巻く安全保障環境を改善し、国際社会の平和と安定を実現するため、取組を一層強化するということとしております。

 また、政府としては、従来から、米ロとともに中国を含む関係国をしっかり巻き込んだ軍備管理・軍縮の取組が重要であると考えており、中国が核兵器国として、また地域の重要なプレーヤーとして積極的な役割を果たすことを期待するとの立場を明確にし、適切な形で中国に対する働きかけを行うなどとしてきているところであります。

 防衛省としても、この取組に積極的に協力していきたいというふうに考えております。

玄葉委員 これはなかなか、軍拡に突き進む中国をどう巻き込むかというのは、外交上も極めて難しい課題だというふうに思います。

 当然ながら米国としっかり話し合った上で進めていかなくてはいけないという課題だと思いますけれども、林外務大臣、先般、日中外相会談がございましたけれども、こういった軍縮・軍備管理あるいは不拡散のレジームについて、何らかの話合いは持たれたのでしょうか。

林国務大臣 日中外相会談におきましては、東シナ海、南シナ海、また台湾等々で現状変更をする試みについて懸念等々を申し上げたところでございますが、それ以上のことについては、外交上のやり取りでありますので、控えさせていただきたいと思います。

玄葉委員 この国家安全保障戦略、かなり通り一遍なんですけれども、安保三文書、ただ、やはり一言だけ、ここに、十三ページですけれども、中国の急速な軍事力の強化及び軍事活動の拡大に関しては、透明性等を向上させるとともに、国際的な軍備管理・軍縮等の努力に建設的な協力を行うよう強く働きかける、こう記してあるわけで、少なくとも、もちろん詳細なやり取りは明らかにできないとしても、それを強く働きかけているのかどうか、この三文書にそう書いてあるわけですから、一言おっしゃっていただけますか、そういう意思があるのかどうか。

林国務大臣 我が国といたしましては、従来から、米ロとともに中国を含む関係国、これをしっかり巻き込んだ軍備管理・軍縮の取組、これが重要である、もう今委員がおっしゃったとおりでありまして、その旨明らかにしてきております。

 昨年一月にNPTに関する日米共同声明というのを公表しておりますが、中国に関して、「透明性を高め、核軍縮を進展させるアレンジメントに貢献するよう要請する。」という呼びかけを行っておるところでございます。

 また、中国が参加しているフォーラムでもやり取りを行っておりまして、昨年の八月に開催されましたASEAN地域フォーラムの閣僚会合ですが、私から、NPTの維持強化に向けた各国の建設的な対応を呼びかけるとともに、地域における核戦略の透明性の向上に向けまして、中国が核兵器国として、また地域の重要なプレーヤーとして積極的な役割を果たす、こういうことを期待するという立場を明確に示しておるところでございまして、引き続き、適切な形でこうした働きかけを行っていきたいと考えております。

玄葉委員 確かに、すぐ何かの成果を得るというのは大変だとよく分かっております。ただ、私、中国は全く可能性がないかというと、そうではなくて、やはりグローバルサウス、インドも中国もグローバルサウスを取り込みたい、リーダーになりたい、そういう思いがあると思うんですね。グローバルサウスの立場からすれば、やはりどの核兵器保有国もしっかり削減しろよ、透明性を持てよという立場だと思うので、やはりこれはある意味、中国だって、こういった呼びかけをずっと無視するというわけにもいかなくなってくる可能性というのがかなりあると思うんですね。ですから、今、真冬の時代だから全く駄目だなんというふうに思わないで、やはりしっかり戦略、戦術を練って働きかけをしていくということが大切ではないかというふうに思います。

 そういう意味で、広島サミットなどでは、軍縮の分野、不拡散、軍備管理レジームを含めて、やはり何らかの端緒を開く一つの機会だというふうに思います。被爆地という聖地で行われるサミットでもありますので、そういう意味で、この広島サミットでこういった問題についてどのような発信を目指しておられるのか。林外務大臣、いかがでしょう。

林国務大臣 まさに今委員おっしゃったように、広島でサミットを開く、各国の首脳が広島に集う。そして、いろんな、具体的な日程は調整しておりますが、我々としては、やはりあそこの現場を見ていただく、実相に触れるということがやはり一つの大きなモメンタムをつくっていくことにつながる、こういうふうに思っておるところでございまして、まさにそういったことを受けて、どういうメッセージを発信するかというのは、しっかり調整してまいりたいというふうに思っておるところでございます。

 まさに広島でサミットを行えるというこのことを、今委員がおっしゃったようなことに対する強いメッセージを発信するということは、今、それに加えて、NPTで総理がおっしゃったヒロシマ・アクション・プランというのもございます、また、賢人会議というのもこの間開いたところでございますので、こうしたモメンタムを、まさに委員がおっしゃるように、こうしたときだからこそ重要性を訴えていく。そして、私は、こうしたときだからこそ、それに対するいろんなグローバルサウスも含めた国々の呼応というのも期待していいのではないか、こういうふうに思っておりますので、そういう方向でしっかりやってまいりたいと思っております。

玄葉委員 是非、中国を含めた枠組みをつくれれば、本当にかなりの程度リスクは減らせるので、しっかりとつくるということだと思います。

 次の問題ですけれども、このNPTとの関連で、ロシアのベラルーシへの戦術核の配備決定という事案が生じました。

 これは果たして、国連でも緊急会合が開かれたようでありますけれども、私自身、ロシアの威嚇は絶対に許されないと思っておりますし、ロシアの論理をもちろん擁護する立場には全くありませんけれども、他方で、こういう機会に、NPTとの関連を含めて、よく整理をしておく必要はあるんだろうというふうに思っています。

 ロシアのベラルーシへの戦術核の、STARTは戦略核ですけれども、今回は戦術核の話ですね、戦術核の配備決定というのがございました。

 プーチン氏はよく、NATOにおける核共有との関連で、アメリカもやっているのだから自分だってやっていいんだ、こういう話を言うわけでありますけれども、この点について、NPTとの関連で少し整理をしていただけますか。

林国務大臣 まずは、唯一の戦争被爆国である日本として、ロシアによる核兵器による威嚇、ましてや使用も断じて受け入れることはできない、このことを申し上げておかなければならないと思います。

 今お話のあった、プーチン大統領によるベラルーシへの戦術核兵器配備の決定に関する発言、報じられておるわけですが、これも、ロシアがウクライナ侵略を続ける中で、情勢を更に緊迫化させるものでありまして、非難をするところでございます。

 NPTとの関係ということでございますが、配備の状況が依然として明らかではないために、このNPTの関係について断定的に申し上げられないとは思いますけれども、日本として、ロシア及びベラルーシに対して、こうした緊張を高めるような行為、これをやめるように求めるとともに、NPTとの関係を含めて、引き続き強い関心を持って事態の推移を注視していきたいと考えております。

玄葉委員 ロシアの威嚇が許されないというのは、もう私も全く同感なのでありますけれども、他方で、このNPTとの絡みは少し整理をしておきたいんですが、ちなみに、NPTの一条、二条というのがあって、一条は、各核兵器国は、いわゆる核兵器等について、管理権も含めて移譲してはならないとしています。そして第二条で、非核兵器国は、管理権も含めて受領してはいけない、こういうふうになっているわけです。

 そこで、米国もロシアもそうなんですけれども、要は、米国のNATOの核共有というのもアメリカの管理下にあるんだ、アメリカの管理下にあるから、いわゆる核兵器を共有しているわけではないので、いわばNPT上、違反じゃない、こういうふうに言っています。ロシアも、ロシアの管理下で、同じような形態で配備をベラルーシにするということになると、ロシアのベラルーシへの配備決定、配備状況も、同じ形態なら、アメリカのNATOにおける核共有と変わらないという整理でよろしいですか。

林国務大臣 今委員がおっしゃったように、NPTの第一条で、まず、「核兵器国は、核兵器その他の核爆発装置又はその管理をいかなる者に対しても直接又は間接に移譲しない」、第二条は今度は非核兵器国の方で、「核兵器その他の核爆発装置又はその管理をいかなる者からも直接又は間接に受領しない」、こう規定をしております。

 ここに言う「移譲」でございますが、所有権又は管理権の移転を指すものと考えられまして、また、「受領」というのは、そうした移譲を受けるということを指すと考えられるわけでございます。「その管理」ですが、核兵器の使用を一方的に決定する機能、つまり、自らの決定により核兵器を発射する権能を意味する、こういうふうに考えられるわけでございます。

 先ほども申し上げましたが、今の前提で申し上げますと、配備の状況が必ずしも明らかになっていないために、NPTとの関係で、一条と二条との関係を含めて、断定的には申し上げられないわけですが、まさに今、ロシアがウクライナ侵略を続ける中で、情勢を更に緊迫させるものでありまして、日本政府として非難をするということを申し上げたとおりでございます。

玄葉委員 これは、ロシアを非難するというのはいいんですけれども、どうもNPTとの関係では、結局、NATOの核共有があるものだから、なかなか、NPTの弱点というか、痛いところをロシアもついてきているというところも、正直、今回の件はあるなというふうに私は感じているんですね。

 ただ、そういう意味では、だから、例えば、この間の緊急会合の報道なんかを読んでも、最後にやはり中満さんは、事務次長ですけれども、軍縮部門トップですが、各国は緊張を高める行為を避けるべきだと述べ、NPTを遵守するよう求めた。ただ、ロシアによる配備がNPTに抵触するかについての言及はなかったと。結局、NPT違反だというふうに断言できない、こういう弱さみたいなものが残念ながら現状あるということではないかなと。これは、現実は見据えなきゃいけないので、そういうことではないかと思います。

 他方で、NATOにおける核共有というのは、たしかあれは発効前だったと思うんですね、NPTの発効前に、今百発ぐらいだと思いますけれども、ドイツとイタリアとベルギー、オランダ、トルコにあって、ちなみに、発効後に戦術核をそれらの国に配備したということはありますか。通告していないので、分からないなら分からないでいいんですけれども、私の記憶では、発効後にはしていないんじゃないかと思いますけれども。

林国務大臣 ちょっと、御通告もなかったものですから、今手元に持ち合わせておりません。

玄葉委員 多分、アメリカ、NATOと今回のロシアの違いは、やはり一つあるのは、発効前と発効後だということではないかと私は理解しています。これはなかなか、一つの現状として理解しておく必要があるのではないかと思います。

 その上で、日米でニュークリアシェアリングをすべきだ、核共有をすべきだという議論がございます。私は、議論自体したっていいとは思いますけれども、政府は議論する考えはないと。私は、核共有をすべきだという立場ではありません。ではありませんけれども、現状、ただ、政府は、議論する考えはありません、こう言っています。この理由は、どういう理由でありましょうか、防衛大臣。

浜田国務大臣 いわゆる核共有は、平素から自国の領土に米国の核兵器を置き、有事には自国の戦闘機等に核兵器を搭載、運用可能な体制を保持することによって、自国等の防衛のために米国の核抑止を共有するといった枠組みと考えられます。

 一般論として、国の安全保障の在り方については、それぞれの時代、状況、国際情勢等を踏まえた様々な国民的議論があり得ると考えておりますが、政府としては、核共有については、非核三原則や原子力基本法を始めとする法体系との関係から認められないと考えており、政府としては議論することは考えておりません。

 その上で、現下の安全保障環境を踏まえれば、核抑止力を含む米国の拡大抑止の信頼性を維持強化していくことが不可欠であると考えております。

玄葉委員 問題は、非核三原則であるとか原子力基本法であるとか、これはもちろん大事なことなんですが、一番大事なこと、本質は、いわゆる抑止力、いわゆる拡大抑止の実効性だと思うんですね。実効性に若干でも疑義があるのであれば核共有だ、こういう議論になる可能性があるわけですけれども、この拡大抑止の実効性という点で、核共有と比べて、しっかりと実効性は間違いなく大丈夫なんだ、こういう考え方に立っているということでよろしいですか。

浜田国務大臣 委員の御指摘のとおり、米国の拡大抑止は我が国の安全保障にとって不可欠であり、国家安全保障戦略においても、米国の拡大抑止の提供を含む日米同盟の抑止力と対処力を一層強化する方針を掲げております。

 拡大抑止の信頼性の維持強化のためには、米国と緊密に協議、協力していくことが重要であり、日米間では、日米拡大抑止協議の場を含め、様々なやり取りを行っております。

 私自身も、本年一月の日米防衛相会談において、核を含めた米国の拡大抑止が信頼でき、強靱なものであり続けるための取組を深化させることを、オースティン長官と確認をいたしました。

 また、日米2プラス2においても拡大抑止について議論を行ったところですが、こうした日米2プラス2や拡大抑止協議を始めとした日米間での一層緊密な意思疎通を行ってまいりたいというふうに考えております。

玄葉委員 核なき世界というのをオバマさんが言ったときに、この実効性を担保するために、私たち、政権にあったんですけれども、いわゆる日米の拡大抑止協議というのを始めたんですね。それまでなかった。それで、担当局長とかが、これは外務、防衛両省だと思いますけれども、アメリカに行って、そこからは基本的には極秘ですから中身は申し上げませんけれども、私も報告を受けてきました。

 それが、今は閣僚レベルでそういうことも行われているという認識でよろしいのか、いや、まだそこまでは行っていないということなのか。いわゆる拡大抑止協議が深化して、局長レベル、実務レベルでも行われているし、政治レベルでも行われた、この間の2プラス2で行われたのか、それともこれから行われるということなのか、その辺り、確認させてもらえますか。

林国務大臣 今お話のありました、この一月の日米の2プラス2でございますが、米国の「核態勢の見直し」、これは公表されております。また、昨年五月の日米首脳共同声明で、拡大抑止に関する日米間の協議、これを強化するということの意義を改めて確認をしておりますので、こうしたことを踏まえて、拡大抑止を議題の一つということにいたしました。まとまった時間を取って、今防衛大臣からもございましたが、突っ込んだ議論を2プラス2の閣僚レベルで行ったということでございます。

 これによって、やはり、米国の拡大抑止を支える戦略体制について、我が方の理解を含めて、また、我々の方の考え方を改めてアメリカに伝えることができたということで、米国の対日防衛コミットメントに対する信頼を確保する上で大変有意義だったと考えております。

玄葉委員 分かりました。拡大抑止の実効性が間違いないという担保があることが大事だと思います。

 もう一つは、岡田さんが外務大臣のときに答弁されていましたけれども、有事にあっては一時的な核の持込みについて時の政権が命運を懸けて判断するのだということで、いわば緊急時とか有事における核の持込みについては認め得るという立場に立っていると。多分、今の政権もそういう立場を引き継いでいるというふうに思いますけれども、そういうこと等もあって、核共有よりは拡大抑止ということなのかなというふうに思いますが、拡大抑止協議のいわゆる実効性を上げるということなのかなと思います。

 もう一つは、核共有に突き進んだときの私の懸念を一つ申し上げておくと、やはりさっき申し上げたNPTなんですね。このNPTを、いわば日本は被爆国としてリードしなきゃいけない立場です。それが、私たちが核共有した、核共有はNPTの整理上はNPT違反ではないというふうにされていたとしても、いろいろな国から批判されることにきっとなるだろうと。もちろん、配備先も含めて政治的なコストも相当高いだろうというふうに思います。

 そういうことを考えたときに、軍縮とか核不拡散をリードすべき日本がやはり、やはりというのはそういう立場、そういう立場というのは、NPTを崩壊させかねない、疑念を持たれかねないような立場に立つというのは避けるべきなのかなと私などは考えますが、防衛大臣、いかがですか。外務大臣でもいいですよ。

浜田国務大臣 我々、先ほど申し上げたとおりでありまして、国としての方針というのは、三原則を含め、いろいろな制約というか、我々が通っていく道というのはそこにあるというふうに考えておりますので、今委員からの御指摘のあったとおりだと思います。

林国務大臣 NPTの解釈については、ニュークリアシェアリング、今NATOで行われているもの、これは、領土内に配備をして、同盟の核抑止ミッションと、それに関連する政治的責任及び意思決定を共有する仕組みでありまして、核兵器そのものの共有でない、こういうふうな解釈でございます。

 岡田大臣の答弁を我々も引き継いでおりますので、しっかりとそれで対応してまいる、こういう前提で、先ほど防衛大臣からもございましたけれども、NPT、先ほど申し上げたように、いろいろな賢人会議等々、また広島サミット、これで進めていこうという立場でございますので、我々が先頭に立つ上で何が適当なのかということは、しっかり判断してまいらなければならないと思っております。

玄葉委員 是非、NPT、大変な状況ではありますけれども、やはり日本がしっかり立て直すために主導すべきだと思いますので、両大臣、頑張っていただきたいと思います。

 ありがとうございます。終わります。

鬼木委員長 次に、浅川義治君。

浅川委員 日本維新の会の浅川義治です。

 昨日の法案関連のところでも質問しました情報公開基準のところからいきます。

 その前に、まず、外務大臣、林大臣の方に、時間の関係もありますので、ちょっとお伺いします。

 せんだって総理がウクライナに訪問した際、インドからチャーター機を使用して向かわれたということなんですけれども、そのチャーター機を利用した理由についてまずお答えください。

池上政府参考人 お答え申し上げます。

 先般の岸田総理のキーウ訪問に当たりましては、戦時下にある国を訪問するという観点から、秘密保全あるいは安全対策、危機管理、そういった面等において遺漏がないよう、最適な方法を総合的に検討する必要がございました。

 そうした検討を行った結果、総理一行は、インドからポーランドまでチャーター機を用いて移動することとしたものでございます。

浅川委員 つまり、秘密上ということでいうと、政府専用機で行ってしまうとすぐにばれてしまうからということかもしれませんけれども、結構情報は漏れていたと思うので、果たしてチャーター機を利用した意義があったのかなと思うんですが、チャーター機をどのような判断で選んだのか、チャーター会社ですね、それについてお答えください。

池上政府参考人 お答え申し上げます。

 繰り返しになって恐縮でございますけれども、今次訪問は、戦時下にある国を訪問するという観点から、秘密保全、安全対策、危機管理面等において万全を期すべく、情報共有は厳に限られた者のみで行いました。今次訪問のみならず、今後の我が国要人の外国訪問に係る秘密保全や安全対策にも関係し得る事項を含みますので、これ以上の詳細につきましては説明は差し控えさせていただければと思います。

 いずれにいたしましても、安全対策それから危機管理対策、情報管理については万全を期しておりまして、今回の対応に特段の問題があったとは考えておりません。

浅川委員 これ以上は言えないということです。どこの会社を使ったかも言えないということだと思うんですけれども。

 事前のレクの段階では、外務省がこういった情報を公表するかしないかという基準は文書としてはないというふうに伺っているんですけれども、大臣、その点については御存じでしょうか。

林国務大臣 今答弁がありましたように、秘密保全、それから安全対策、危機管理面等において万全を期すべく、情報共有は限られた者のみで行いました。今後のこともありますので詳細については差し控えますが、今お話のあった点について、一般論として申し上げますと、内閣総理大臣その他の国務大臣は、国会において誠実に答弁する責任を負っているということを認識しながら、一方で、国の安全、相手国との信頼関係といった外交上の観点を踏まえまして、個別に判断をしておるということでございます。

浅川委員 つまり、情報を公表するかしないかの文書、判断基準の文書は外務省にはないということでよろしいんでしょうか。

林国務大臣 独自の基準というのはないということでございます。

浅川委員 ありがとうございます。事前の段階でもそのように伺っております。

 防衛省については、昨日の答弁でも、事務次官通達が判断基準になっているということなんですね。それについて、昨日、最後に私が大臣にお伺いしたところ、参考人からの御答弁で肝腎なところが聞けなかったんですね。時間の関係でその後も聞けなくなってしまったので、今日は大臣がお答えいただけるということで。

 昨日、最後に私がお伺いした判断基準が事務次官通達であるということは、浜田大臣は御存じでいらっしゃいましたか。

浜田国務大臣 対領空侵犯措置の中で確認した情報については、例えば、領空侵犯事案のように我が国の主権に関わる事案のほか、国民の生命財産に関わる事案については当然公表すべきものと考えております。また、周辺国の活動活発化など、我が国を取り巻く安全保障環境の表れとなる事案についても公表すべきものと考えております。これまで新型軍用機の確認事例や外国軍機の長距離飛行事例などについて公表を行ってきているところであります。

 防衛省においては、こうした公表についての考え方を事務的に文書にまとめており、例えば従来のものから変更するような場合など、必要に応じてこれを防衛大臣にも報告をすることになっております。

浅川委員 その事務次官通達という形であるということなんですけれども、事務次官通達というのは、一般的には大臣決裁は得られないで出されるというふうに考えていいのでしょうか。

大和政府参考人 お答え申し上げます。

 事務次官通達の決裁者は事務次官であります。

浅川委員 つまり、情報開示するかしないかについては、事務次官、事務方の方で決めているということで、政務の人間が携わっていない。これについては浜田大臣はどうお考えになりますでしょうか。

浜田国務大臣 防衛省においては、先ほども述べたように、公表についての考え方を事務的に文書にまとめておりますが、実際の公表については、必要に応じて私による判断を経ることも含め、個別具体的な事案ごとに適切なプロセスを踏んでいると判断しております。そして、個別の公表案件についても全て私に報告されているほか、公表案件以外についても重要性に応じ必要な報告がなされております。

 また、公表の考え方自体も、従来のものから変更するような場合など、必要に応じて防衛大臣まで報告されているものであります。

 このため、私の意図に反して公表が行われたり、また逆に公表が行われなかったりといったことはなく、問題はあるとは考えておりません。

浅川委員 多分、それは今、浜田大臣だからうまく回っているんだと思うんですけれども、もし大臣が替わったときに組織が暴走しかねない。そのために、やはり、大臣決裁、政務の人間が決裁しておいて確認しておくということは私は大事じゃないかなと思うんですが。

 そもそも外務省ではそういう判断基準の文書がないということなんですけれども、それはどうしてそういう文書を作られていないんでしょうか、外務省の方では。

池上政府参考人 外務省におきましては、必要に応じまして、事案の内容、性質、それから各国との関係等を踏まえまして、個別具体的に検討して判断しているというところでございます。

浅川委員 必要に応じた判断をするという基準はどこかに書かれているんですか、そうしましたら。

池上政府参考人 お答えいたします。

 外務省において、網羅的に、公表の判断基準というものを文書の形で整理したものはございません。

浅川委員 つまり、必要であるかどうかを判断するのは誰になるんですか、そうしますと。

池上政府参考人 お答え申し上げます。

 繰り返しになって恐縮ですけれども、事案ごとの性質、相手国との関係等々ございますので、事案の性質に応じて、必要に応じて必要なところまでの決裁を取って判断をしているということでございます。

浅川委員 必要なところまでの決裁、決裁者が誰であるかというのを決めるのは誰なんですか、そうしたら。

池上政府参考人 お答え申し上げます。

 そこは、事案の性質に応じて、必要と判断されれば大臣の判断まで仰いで判断をするということでございますが、軽微な案件についてはそれ以下で判断されることもございます。

浅川委員 だから、事の内容が軽微であるかどうかというのはどういうふうな基準で判断するかなんですよ。

 私、昔銀行に勤めていたときに、例えば融資の決裁で、金額で支店長の決裁とか本部の決裁とか、明確になっているわけですよ。事務マニュアルがもう机の両端に行くぐらいまであって、それを銀行員というのはよく読み込んで判断を下すんですね、分からないときは上司に聞くとか。

 外務省の場合には、その必要かどうかというのは、そのセクションの担当者が決めるんですか、それとも係長が決めるんですか、課長が決めるんですか。必要に応じてと、誰が決めるかというのが書かれたものがないんですよね。

池上政府参考人 お答え申し上げます。

 繰り返しになって恐縮でございますけれども、外務省の業務、非常に幅広く、いろいろな国との関係、考慮すべきいろいろな要素がございますので、そういったことを総合的に勘案して事案ごとに判断いたしております。

 その際、上に判断を更に仰ぐ必要があるかどうかということは、個別具体的な事案ごとに判断されているところでございます。

浅川委員 つまり、起案者が上席に上げて、その上席が、私の判断でいいと思ったら、例えば係長なり課長の判断でできるということなんですか。

池上政府参考人 お答え申し上げます。

 もちろん、事案の軽重等ございますので、どんな案件でも下のレベルで全て判断できるということではございません。あくまで案件ごとに判断されるということでございます。

浅川委員 防衛省の場合には、今回の、スクランブル事案ではあるんですけれども、一応、事務次官通達という、形上あるわけですよ。それに照らし合わせて担当者が、担当者というか課長かもしれませんけれども、やっているわけですよね。

 でも、防衛省の場合には、そういう公表するかしないかの判断の、事務次官通達みたいな指針とか、そういうのは本当にないんですか。

鬼木委員長 外務省ですね。

浅川委員 あっ、外務省、ごめんなさい。

林国務大臣 今は欧州局の人間が答えておりますが、実際には、御通告をいただいたのはチャーター機に関することでございましたので、必ずしも手元に詳細にあるわけではございませんが、当然、官房長等が答弁すべきことだと思いますけれども。

 私も幾つかの役所におりましたけれども、やはり専決規程というのはそれぞれあって、そこで、そもそも外務大臣の権限だけれども軽重に応じてこちらに落とす、こういうルールを決めておるわけでございまして、それはたしか、私も就任当初に確認をした記憶がありますので、そういうものが全くないということではないというふうに思っております。

 ただ、今答弁がありましたように、事案に応じて、基準にどう当てはめるかということになりますと、なかなか日常的にいろいろなことが起こっておりますので、恐らく、予算に関わることですとか条約に直接関わること、こういうことはもちろんでありますけれども、それよりもかなり詳細にわたるものでも、今までも私のところに常に、事前事後を問わず、事前が多いと思いますが、報告があり、相談があるというのが実情であるというふうに考えております。

浅川委員 外務省も林大臣であれば大丈夫だとは思っております。

 林大臣はここでもうお時間。大丈夫です。

鬼木委員長 それでは、林外務大臣には御退室いただいて結構です。

浅川委員 外務省のチャーター機の件について、限られた範囲での公表ということだったので、それは、では判断基準はどうなのかというところがちょうど今回のスクランブルの件と一致していたのでちょっとお伺いしたんですけれども。

 私は、確かに、政治的な判断が必要なものは当然決裁に上がっていると思うんですね。ただ、政治的な判断が必要とされるべきものが政務官とか副大臣とか大臣に上がっていなくて、後から事が問題になるというようなことは絶対避けるべきだと思っております。

 事この事実関係が、あったにもかかわらずなかったとか、なかったにもかかわらずあったとかということになると、後々また時間を取ることになりますので、そこの点については、防衛省さんも外務省さんも、是非気をつけていただきたいなと思います。

 ちょっと戻りますけれども、昨日の大和参考人の答弁の中で、「防衛省・自衛隊としては、警戒監視あるいは対領空侵犯措置から得られた情報を含め様々な情報を取得して、それをほかのいろいろな情報と突き合わせることなどによって様々な分析を行っています。」というところがあったんですけれども、そのほかのいろいろな情報と突き合わせるというのは、どういうような情報と突き合わせ、例えば、何らかの物体があった、それを公表するかしないかといったときに、それをほかのいろいろな情報と突き合わせるというのは、具体的にはどういうものがあるんでしょうか。

大和政府参考人 これは一般論になりますけれども、私どもが集めている情報源にはいろいろなものがあります。警戒監視によって、例えば艦艇、航空機のレーダーなど、あるいはいろいろなセンサーで得られたものとか。あるいは、いわゆる公刊情報ですね、パブリックといいますか公刊物などで得られる情報もありますし、それから、一般的には画像だとか電波とか、いろいろなものがございます。そういった様々なソースの情報を総合して、いろいろな分析をするということであります。

 ですから、これとこれとこれを必ず組み合わせるんだということはなかなか申し上げにくいところではありますが。

浅川委員 その後に、こういった分析をされた後に、国民の皆様にお知らせすべき事実が判明した場合には公表するということなんですけれども、国民の皆様にお知らせすべき事実かどうかの判断は、これは、大臣、大臣のところまで上がってきて、大臣が判断されるんでしょうか。

大和政府参考人 昨日私が申し上げたのは、いろいろ分析をやった結果、国民の皆様に新たにお知らせすべき事実が判明した場合などには、我が方の情報収集能力などが明らかにならない範囲で公表を行うこともあり得るということです。

 その公表の判断というのは、いろいろなレベルで行われる可能性がございますけれども、当然、大臣まできちっとお諮りして公表を決定するということもあろうかと思います。

浅川委員 あと、事務次官通達ですけれども、これを変更する場合には大臣にも報告するということなんですけれども、そもそも、この事務次官通達、資料でお願いはしているんですけれども、一番最初に発せられたのはいつなんでしょうか、この公表基準について。

大和政府参考人 今存在するものについては、平成二十七年に作られたものであります。

浅川委員 そうしますと、最初に聞いた、令和二年の河野防衛大臣、当時大臣の指示より前のは、特定できないような物体があったかなかったかというところについては、そもそも記録があったとしても公表できないという話もあったんですけれども、平成二十七年より前というのは、公表するかどうかというのは、そのときの官僚がどこかの段階で決めていたということでよろしいのでしょうか。

増田政府参考人 お答え申し上げます。

 事実関係は正確に確認してお答えしたいと思いますけれども、先ほど大和総括官からお答えしました平成二十七年といいますのは、統合幕僚監部ができまして、いわゆる内局にありました運用企画局が廃止されて一元化された後、そういう通達を統合幕僚監部の方で一元化したと。

 それ以前につきましても、公表基準というのがございまして、その当時は、確認いたしますけれども、いわゆる防衛政策局の方でそういう基準なりを作ってやっていったんじゃないかと思いますが、細部は確認させていただきますけれども、その以前からもありました。

浅川委員 事務的なことでちょっと厳しく質問させていただきましたけれども、基本的には、私たちは、当然、国防力維持どころか今の状況に合わせなければいけない、外交力も向上させなければいけない、そういったときに一番大事なのは国民からの信頼だと思うんですね。信頼とか信用というのが維持できなければいけない。そのためには可能な限り情報公開していかなければいけないと思いますので、今後もその点についてよろしくお願いしたいと思います。

 以上で終わります。

鬼木委員長 次に、三木圭恵君。

三木委員 日本維新の会の三木圭恵です。

 質問の機会をいただき、ありがとうございます。

 陸自第八飛行隊所属UH60JAヘリが墜落したということで、坂本陸将ほか九名の皆様の御無事を心からお祈り申し上げるとともに、捜索に全力で当たっていただきますよう、どうぞよろしくお願い申し上げます。

 それでは、質問に入らせていただきます。

 今日は、有事の際の国民保護への対応について質問をいたします。

 安保三文書の中で、国家安全保障戦略には国民保護体制の強化が記され、国家防衛戦略は、防衛力の抜本的強化に当たって重視する能力の六番目に機動展開能力・国民保護を挙げました。そのために、空自は輸送機、海自は輸送艦、陸自は小型、中型船舶を確保し、陸自は、沖縄における国民保護をも目的として、部隊強化を含む体制強化を図るとしています。

 これらの記述を見ると、自衛隊が国民保護の所管組織のように受け取られますが、実際には、政府の国民保護の主な担当省庁は総務省消防庁と内閣官房の事態対処・危機管理担当です。

 しかし、安保三文書改定を受け、具体的な予算がついたのは、自衛隊の輸送機材などハード面のみなんですね。国民保護の訓練、啓発を所管する部署の取組はどのようになっているのでしょうか、質問させてください。

鬼木委員長 ちょっと、もう一度質問。

三木委員 ハード面のみ予算がつきましたけれども、国民保護の訓練、啓発を所管する部署の取組はどうなっているかという。

田辺政府参考人 有事の際に住民の避難等をできるだけ早く実現するためには、平素から関係機関が連携し、必要な訓練、検討を進めることが重要であると認識しています。

 そのため、消防庁と内閣官房が連携し、弾道ミサイルを想定した住民避難訓練など、国と地方公共団体が共同で実施する訓練を令和四年度は全国で四十七回行ってきたところです。

 また、先般、三月十七日には、国、沖縄県、先島諸島の五市町村とが協力して武力攻撃予測事態を想定した図上訓練を実施し、避難の手順を確認、具体化したところでございます。

 消防庁においては、令和五年度においても、地方公共団体に対し、訓練の必要性を丁寧に説明の上、訓練実施に向けた働きかけを行い、全国でより効果的、実践的な訓練が実施されるよう取り組んでまいります。

三木委員 様々な事態を想定して、実際に、現実的に詳細な計画というのが必要になってくると思いますので、ソフト面とハード面が両方合わさってこそ国民保護がしっかりとしたものになってくると思いますので、どうぞよろしくお願いいたします。

 それでは、今の答弁の中にもありました、台湾に近い先島諸島の住民約十二万人の避難対策なんですけれども、現状、沖縄県としての国民保護計画はあるものの、国としての広域避難計画というのはないというふうに聞いております。

 三月十七日に政府が主催した沖縄県と先島諸島五市町村による初の図上訓練、つまり住民を県外に避難させる訓練が実施されましたが、全住民を避難させるのに最低一週間はかかるというふうに見積もられ、輸送力の確保が最大のネックとして浮かび上がりました。輸送力の確保をどのように解決していく方針なのか。

 また、この訓練では、避難に手助けが必要な要介護者らの支援体制、避難先の宿泊場所の確保などは提示されておりません。積み残しにされたと伝えられていますが、現状をどう受け止めておられ、そして、政府としていかに課題を整理し、その解決に取り組んでいくお考えでしょうか。国民保護対策を万全にするためのロードマップのようなものは作成されているのでしょうか。御質問させてください。

林政府参考人 お答えいたします。

 先月十七日に、国、沖縄県、先島諸島の五市町村等が協力をして、武力攻撃予測事態を想定した図上訓練を実施いたしました。

 国民保護法上、住民の輸送手段の確保は県が、住民の避難誘導は市町村が主として担うものとされておりますが、国民保護基本指針におきまして、沖縄県の住民避難に関して国が特段の配慮をするとされていることも踏まえまして、この訓練の準備、検討段階から、国としても、運送事業者に対して輸送手段の確保を働きかけるなど、訓練当日を含めて積極的に参画し、支援を行いました。

 今回の訓練の成果について申し上げますと、避難のための輸送手段の確保や先島諸島の五市町村における避難の手順等について一定程度具体化が図られたところであります。他方で、船舶利用が困難な荒天時等を想定した別パターンの検討や要配慮者の態様に応じた避難の検討、避難先の地方公共団体との連携の在り方の検討が必要といった課題も明らかになりましたところであり、これらの課題につきましては、今年度以降も関係機関が連携をし、継続して検討及び訓練に取り組んでいく予定であります。

 今後のこうした検討、訓練等に当たりましては、それぞれの主体の意向を踏まえる必要などもあるため、ロードマップのようなものは作成しておりませんが、今年度の訓練に向けて事務的な調整は既に開始をしており、関係機関と相談しながら、練度の向上や課題の改善を図り、引き続き、離島からの住民避難の実効性向上に努めてまいります。

 以上でございます。

三木委員 ロードマップみたいなものは作成していないけれども順次取り組んでいくということだと思うんですけれども、きっちり問題点などを把握して、初回の図上訓練でしたので、課題が浮かび上がったということで、この課題解決に向けて是非全力で取り組んでいただきますよう、よろしくお願いいたします。

 次の質問なんですけれども、国民保護体制は有事になってからでないと適用できません。国が武力攻撃予測事態を努めて早期に認定し、早い段階で国民保護法制を適用できるようにすべきだと考えますが、いかがでしょうか。

青柳政府参考人 住民の避難等の国民保護措置が必要となる状況とは、少なくとも我が国に対する武力攻撃が予測される事態と評価される状況であると考えております。このような状況におきましては、武力攻撃予測事態等の認定を適切かつ迅速に行い、国民保護法の下、国、地方公共団体、指定公共機関等が連携して国民保護に当たることが重要であると認識しております。

 加えまして、政府といたしましては、平素より、様々な事態への対応を想定し、各種の検討、訓練等を実施しているところであり、今後とも、不断に検討、訓練等を行い、対処に万全を期してまいりたいと考えております。

三木委員 お役所のお答えはそうだと思うんですけれども、先島諸島、十二万人、人が住んでおりますので、それを避難させるのに早くて一週間ということだと思うんですよ。だから、なるべく早く武力攻撃事態というのは認定する必要があると私は思いますので、よろしくお願いいたします。

 次に、国民保護法百五十条は、「政府は、武力攻撃災害から人の生命及び身体を保護するために必要な機能を備えた避難施設に関する調査及び研究を行うとともに、その整備の促進に努めなければならない。」としておりますが、こうした調査や研究はどのように行われていますか。

林政府参考人 お答えいたします。

 武力攻撃を想定した避難施設につきましては、まず、弾道ミサイル攻撃による爆風等からの直接の被害を軽減するためにはコンクリート造りの堅牢な建物や地下施設に避難することが有効であり、これらの施設を緊急一時避難施設として指定の促進に取り組んでおり、着実に指定が進んでいるところであります。

 その上で、政府におきましては、武力攻撃を想定した避難施設の在り方に関し、より過酷な攻撃を想定し、一定期間滞在可能な施設とする場合に必要な機能や課題等につきまして、諸外国の調査も行うなどして、検討を進めてきているところであります。

 今後につきましては、こうした施設に求められる仕様や設備に要求される性能等につきまして様々な視点から調査及び検討を行うことを考えており、引き続き、しっかりと取り組んでまいります。

 以上でございます。

三木委員 コンクリートで、堅牢で、地下の施設なんかを着実に増やしていくということなんですけれども、ウクライナが国内戦になってもこれだけ抗戦ができているというのは、もちろん、陸続きの国ですから、日本はやはり海洋国家ですので、陸続きではないので、余り内地に侵攻されてきたということが想定されにくい国であると思います。でも、ウクライナの場合は、やはり北にあるということもあって地下街がすごく充実していて、そこに国民が避難して耐え忍んでいたということもあると思うんですね。だから、そういったところもやはり日本は今後参考にしてやっていかないといけないと思うんですね。

 実際に、既存の施設を緊急一時避難施設に指定しているわけでございますけれども、東京や大阪は地下鉄駅構内なんかを指定しているんです。先ほどおっしゃったみたいに、コンクリートで、堅牢で、地下施設というと、まあ地下鉄の駅なんかがそういうふうに当たるのかなと思うんですが、指定しただけで施設が強靱になるということはないと思いますので、早急に対処する必要性があるというふうに思うんですけれども、見解の方をお伺いします。

林政府参考人 お答えいたします。

 現在、指定促進に取り組んでおります緊急一時避難施設につきましては、弾道ミサイル攻撃による爆風等からの直接の被害を軽減するために、既存の堅牢な施設や地下施設を指定するものでございます。

 その上で、より過酷な攻撃を想定した施設につきましては、必要な機能や課題の検討を進めているところでありますが、その検討の結果、既存施設に防爆扉を取り付けることなどにより、より低いコストで求められる効果が得られる場合もあり得るところであります。そういった視点も持ちつつ検討を進めてまいります。

 以上でございます。

三木委員 今まで、国民保護というのがなかなか議題に上がることもなかったですし、今から真剣に取り組んでいくということで、地下の施設なんかも強靱化を図っていくということで今御答弁いただいたんですけれども、やはりこれはしっかりやっていただかないと、東京や大阪なんかは地下鉄がありますから避難する先はございますけれども、そういった地下鉄がない地域も日本の中にはたくさんございます。日本海側であるとかそういったところの方が攻められてきたら最前線になっていくわけですから、そういったところの住民の避難というものもやはりきっちり考えていかないといけないと思いますので、どうぞよろしくお願いをいたします。これはもう要望としてとどめさせていただきます。

 一方、国民保護の特殊標章についてお伺いします。

 今日、資料の方で配らせていただきました。

 これは、どれだけ国民が御存じなのか、ちょっと疑問なんですね。特殊標章は、国民保護措置を行う団体とその要員、建物及び物品の保護並びに避難所を識別するために使用するもので、ジュネーブ諸条約追加議定書1で定められている国際的な標章でございます。これは、日本は一九五三年に加入しております。

 政府は、この標章を国民にあまねく周知徹底する義務があると思うんですけれども、どのようなことをされているのか、ちょっとお伺いしてよろしいでしょうか。

田辺政府参考人 議員御指摘の国民保護法に定める特殊標章については、国民の保護に関する基本指針において、国は、地方公共団体等と協力しつつ、様々な機会を通じてその啓発に努めるものとされています。

 地方公共団体においては、この特殊標章についてホームページで紹介している事例もあると承知していますが、昨今の国際情勢の緊迫化等を踏まえ、国民保護に対する国民の関心も高まる中にあって、国としても同様に普及啓発に努めていくことが重要と認識しています。

 今後、内閣官房を始めとする関係省庁と連携の上、国民保護施策全般について国民の理解が一層深まるよう努めてまいります。

三木委員 今御答弁の中にあったように、地方公共団体の中にはホームページでこの特殊標章が記載されている例がたくさんあるので、やはり国としても、国民の皆様にどうやってこの標章を知っていただくのかというのはちょっと課題になっていると思うんですね。かなり以前からこの特殊標章というのは日本では使えるわけですから、やはりきっちりと周知していくことが大切だと思います。

 国際条約で定められた民間防衛マークをつけた組織、この特殊標章なんですけれども、これは、戦闘など害敵行動を取ってはいけないとされております。戦わないから保護される対象となり、敵軍もこれを考慮しなければならないとされている標章なんですね。

 ですから、国民保護、誘導する際に、消防署員又は自衛隊員が腕章にこのマークをつけて国民を誘導するということが、国際条約の中で、この標章がついていれば攻撃されないんですよというのが一応決まっておりますので、やはり国民の皆様もこれを知っていないと、どこの誰についていったらいいのかとか、どこの施設に避難したらいいのかとかということが、はっきり分からないと思うんですね。ですから、これはやはりとても大事なことだと私は考えております。

 国際法を遵守する国ばかりではありませんので、だから万全というわけでももちろんありませんけれども、余りにも国民の認知度が低いんじゃないかなというふうに思います。是非、しっかり広報するようにお願いをしたいと思います。

 ちょっと通告にはこれはないのですけれども、学校で子供とかに教える必要もあるんじゃないかなというふうに考えるんですけれども、これはどなたか答弁していただけますか。

田辺政府参考人 先ほど御答弁させていただきましたけれども、今後、内閣官房を始めとする関係省庁と連携の上、その中には、文部科学省とも相談させていただきながら、国民保護施策全般について国民の理解が一層深まるよう努めてまいります。

三木委員 是非学校で、子供たちの教育の中で、こういった特殊標章とか、日本にはそういう組織はございませんが、諸外国の民間防衛というものがどういうものなのかということを、小学校の授業の中で教えていっていただきたいなと思いますので、どうぞよろしくお願いをいたします。

 最後に、国民保護のことについて浜田大臣にお伺いします。

 国民保護について、安保三文書にも国民保護が記載されたわけですけれども、国民を有事の際に危険から安全に避難させる決意をお聞かせください。

浜田国務大臣 自衛隊は、武力攻撃事態には、主たる任務である武力攻撃の排除をする必要があるところであります。武力攻撃より十分に先立って住民の迅速な避難を実施することが何よりも重要であると考えます。

 そのため、政府全体として、円滑な避難に関する計画の速やかな策定、官民の輸送手段の確保、空港、港湾等の公共インフラの整備と利用調整、様々な種類の避難施設の確保等を行っていくとともに、国民保護措置の重要性について、平素から、様々な機会を通じて広く啓発に努めていくこととされております。

 防衛省・自衛隊としては、こうした政府全体の取組にしっかりと協力しつつ、民間の船舶、航空機に加え、自衛隊の各種輸送アセットも利用した国民保護措置を計画的に行えるよう調整、協力していくとともに、国民保護に関する訓練の場を通じ、地方自治体を含め、関係機関と連携向上を図ってまいりたいと考えているところであります。

三木委員 国の守りをされる防衛大臣ですから、どうぞよろしくお願いを申し上げます。

 それでは、次の質問に移らせていただきます。

 中国の海外警察サービスセンターについて、私は十二月の八日に質問させていただきました。私が前回この問題について質問してからちょうど四か月がたちましたが、その後、調査など進んでいるのでしょうか。経過をお伺いします。

山田(賢)副大臣 お答え申し上げます。

 御指摘の件につきましては、中国側に対し、外交ルートを通じて、我が国の主権を侵害するような活動が行われているのであれば、断じて認められない旨申入れを行っておりますが、先般の日中外相会談におきましても林大臣から提起をさせていただきました。また、外務省といたしましては、関係国とも適切な形で情報共有を行ってきているところであります。

 引き続き、国内関係省庁や関係国とも連携して適切に対応していくとともに、我が国における活動の実態解明の結果に応じて、適切な措置をしっかりと講じてまいりたいと考えております。

三木委員 我が国からそういう抗議を行ったというのは、本当に、林外務大臣からも聞いておりますし、ただ、昨年十一月二日に北京で行われた記者会見で、中国外務省の趙立堅報道官は在外警察署の存在を明確に否定されているんですね。

 記者会見の中では、同郷会などの組織は、運転免許証更新のためにオンラインサービスへのアクセスが必要な人たちへの支援を提供しているだけだというふうに述べているんですけれども、これに対しては外務省は、そういうふうに述べられたということに対しては、外務省はどのような見解をお持ちなんですか。

岩本政府参考人 今委員御指摘の中国側の反応、これについては私どもも承知をいたしております。

 その上で、先ほど御答弁あったとおり、我々としては、我が国の主権を侵害するような活動が行われているのであれば、これは断じて認められない、こういった申入れを先般の日中外相会談も含めて行ってきているところでございます。

三木委員 我が国の主権を侵害するようなことがあればというようにおっしゃったんですけれども、前回の質問でも私は申し述べさせていただいたんですけれども、反体制の活動家が海外で住まわれている場合、帰国の説得をした後、中国に帰国をさせて、その中で司法を受けさせる。

 犯罪人、言ったら、中国からいったら犯罪人ということになるのかもしれませんが、犯罪人引渡しというのは、条約を締結している国だったら、条約に基づいてできるわけですよね。でも、条約を締結していない国でも、外交交渉によって相互に合意が得られれば引渡しが行われるということだと思うんですけれども、この手続を全部すっ飛ばして、海外にいる中国人に、中国にいる家族とか友人とか、そういった人たちを人質に取って、帰れというふうに言っているということなんですね。

 これは明らかに、中国の人権問題であると同時に、我が国の主権を脅かしていると私は思うんですけれども、もっと厳正な対処というのが必要なんじゃないでしょうか。

岩本政府参考人 今委員御指摘のあった事例でございますが、この点については、我が国において同様の行為が行われたかどうか、今この時点では断定的に申し上げることはできないと考えております。

 その上で、我々としましては、中国側にしっかりとした説明を求めつつ、また、私ども自体も、関係省庁と連携をして、必要な情報収集、分析を行っているところでございます。

 その上で、先ほど申し上げましたとおり、我が国の主権を侵すような行為が行われているとすれば、これは断じて受け入れることはできませんので、その際にはしっかりとした対応を行うということになろうかと思います。

三木委員 質疑時間が終了しましたので、最後は要望にとどめさせていただきますけれども、やはり四か月もたっているわけでございます。ですので、調べれば、どのような方が中国に帰っていったかというのは分かると思いますので、活動家としてマークされている方というのも日本でもある程度把握されていると思いますので、こういった委員会の場で調査内容を発表するということはできないと思いますけれども、やはりこれはきっちりと、厳しく厳正に対処していただきますことを要望といたしまして、私の質問を終わらせていただきます。

 ありがとうございました。

鬼木委員長 次に、篠原豪君。

篠原(豪)委員 篠原豪でございます。

 質疑の機会をいただきまして、ありがとうございます。

 冒頭、昨日、陸上自衛隊のヘリコプターUH60が宮古島付近の海上で消息を絶ったことについて、昨日、与党の筆頭に申し上げさせていただきまして、防衛大臣に御説明をいただいたということで、ありがとうございました。機体には師団長を含む十名が乗っておられたとされていますが、私からも改めて、一刻も早い、乗員全員が無事救助されるようお祈りを心からしたいと思います。

 それでは、質問に移らせていただきます。

 まず、安保関連新三文書について、先日総理に本会議の報告を聞かせていただきまして、どうもその中で、一部メディアもそうですけれども、正確に理解されていないのじゃないかなという懸念を持っております。ですので、今日は先日の総理答弁を踏まえて深掘りをさせていただきたいと思いますので、どうぞよろしくお願い申し上げます。

 さて、まず、先制攻撃に関する認識の確認をさせていただきたいと思うんですけれども、その本会議では、着手事態において、ミサイル発射阻止のために敵基地を攻撃することは、事実上、先制攻撃となるおそれがあると多くの論者が指摘していることについて、政府も基本的な認識は変わらないのではないかと私の方から質問させていただきました。総理も、反撃能力の行使に関し、現実の問題として、相手側のミサイル発射、特に第一撃を事前に察知し、その攻撃を阻止することは難しくなってきていることは事実です、こうした状況も踏まえ、国家安全保障戦略等においても、ミサイル防衛網により、飛来するミサイルを防ぎつつ、相手からの更なる攻撃を防ぐために、我が国から有効な反撃を相手に加える能力を保有すると記載したところですと答弁されました。これは、事実上、政府と我々は同じ認識でして、現実の対応も変わらないということです。

 そこで、確認のため防衛大臣にお伺いさせていただきますが、政府は、まず順番として、相手からの第一撃については先制攻撃の危険性を避けるために迎撃ミサイルで撃ち落とすことを原則とすること、その上で、既に攻撃を受けた後の更なる攻撃については、反撃能力の行使を含め対処するとの考え方を取っているのかどうか、改めてお伺いいたします。

浜田国務大臣 繰り返し御説明をしているとおり、現実の問題として、相手側のミサイルの発射、特に、第一撃を事前に察知し、その攻撃を阻止することは難しくなってきていることは事実であります。

 こうした状況も踏まえ、国家安全保障戦略においても、ミサイル防衛網により、飛来するミサイルを防ぎつつ、相手から更なる攻撃を防ぐために、我が国から有効な反撃を相手に加える能力を保有すると記載したところであります。

 その上で、このような記載について、必ずしも対処における時系列上の関係を表しているものではありません。ミサイル防衛システムによる迎撃を追求するものの、それだけでは相手の攻撃を防ぐことが困難であり、やむを得ないと考えられる場合において、必要最小限度の自衛の措置として反撃能力を行使するという政策上の基本的考え方を記載したものであります。

 政府としては、ミサイル防衛と反撃能力という二つの能力を組み合わせながら適切に対応してまいります。

 いずれにせよ、武力攻撃が発生していない段階で自ら先に攻撃する先制攻撃は許されず、それを行うことはないことは言うまでもありません。

 我が国の武力の行使については、事態対処法の手続にのっとり、対処基本方針を閣議決定し、国会の承認を求めるなど、国会の関与を得て運用されるものですが、こうした手続なども含め、反撃能力を含む我が国の武力行使については、慎重に判断するものと考えております。

篠原(豪)委員 ちょっと聞き方を変えさせていただきますが、第一撃について、迎撃ミサイルによる防御を基本とする考えは、相手から武力攻撃を受けたとき初めて防衛力を行使するという専守防衛の考え方そのものだと思います。

 我が国が専守防衛に徹していることは世界中に理解されているんだと思うんですよ。その中で、それが国際的な正当性を獲得をし、これまでも世界的に評価されてきたと思うのですが、浜田防衛大臣もそうお考えでしょうか。そして、専守防衛について、この立場を堅持されるのかどうか。いわば同じような質問なんですけれども。

増田政府参考人 お答え申し上げます。

 専守防衛の考え方、先生御承知のとおり、憲法の精神にのっとった受動的な防衛戦略の姿勢をいうものであり、我が国の防衛の基本的な方針でございます。

 そして、反撃能力は、「我が国に対する武力攻撃が発生し、その手段として弾道ミサイル等による攻撃が行われた場合、武力の行使の三要件に基づき、そのような攻撃を防ぐのにやむを得ない必要最小限度の自衛の措置として、相手の領域において、我が国が有効な反撃を加えることを可能とする、スタンド・オフ防衛能力等を活用した自衛隊の能力」というふうに国家安保戦略等で明記しているところでございます。

 当然ながら、どちらも、相手から武力攻撃を受けた場合の必要最小限度の自衛の措置という観点で整合していると考えております。

 政府としては、我が国の防衛の基本的な方針として専守防衛を堅持していく考えでございます。

浜田国務大臣 今局長から説明をさせていただきました。我々も、専守防衛というものは極めて重要だというふうに考えております。

篠原(豪)委員 専守防衛が日本における国際的な正当性を獲得しているというふうに私はもう既に考えていまして、これは政府も一緒だというふうに思っております。世界的に評価されてきていると思いますので、これは評価されているかどうか、今、専守防衛という日本に対しての考え方について、どう思われているかということを一言お願いします。

浜田国務大臣 我々、憲法にのっとってこういった活動についてはいろいろ取決めをしているところでありますので、このことは明確に世界にも伝わっているというふうに考えております。

篠原(豪)委員 日本が非常に世界から正当性を持って評価されているのは、この専守防衛ということでありますので。後ろの方の方もうなずかれていると思いますので。済みません、是非、大臣、これは大事なことなので、これからも日本はそういうことなんだよということをしっかりと広めていただきたいと思います。

 反撃能力の定義とか、必要最小限とか、新三要件については今おっしゃっていましたので、ちょっと深くこの後聞いていきますので、よろしくお願い申し上げます。

 この先制攻撃の議論は、一九五六年の二月の政府統一見解に、敵基地攻撃が合憲であることを前提にしたものであって、四月五日の新聞記事に、立憲民主党は反撃能力の保有には賛同できないという立場を解説しているところがありまして、今の話で、そういう趣旨ではなくて、そういうことを言っていることは、とても考えられないことなんです。「反撃能力について、「保有することで、専守防衛が事実上、形骸化してしまう危険性がある」」と書いていますけれども、専守防衛が守られるなら保有を認めるという質問でありますので、そもそも。これは逆に捉えられているので、このことはまた皆さんも誤解のないようにしていただきたいと思いますので、そのことをお話しさせていただきます。

 次、存立危機事態における反撃能力の行使の問題について伺います。

 反撃能力の定義についてです。四月四日の本会議では、存立危機事態における反撃能力の行使の問題についても総理にお聞きしました。個々、質問にはお答えされなかったところもありますので、改めて防衛大臣にお伺いしたいと思います。

 まず、今回の国家防衛戦略には、「反撃能力とは、我が国に対する武力攻撃が発生し、その手段として弾道ミサイル等による攻撃が行われた場合、武力の行使の三要件に基づき、そのような攻撃を防ぐのにやむを得ない必要最小限度の自衛の措置として、相手の領域において、我が国が有効な反撃を加えることを可能とする、スタンド・オフ防衛能力等を活用した自衛隊の能力」と定義されています。このことを指摘させていただきました。そして、その中の、「我が国に対する武力攻撃が発生し、その手段として弾道ミサイル等による攻撃が行われた場合、」とは、武力攻撃事態に該当するのではないかということをお伺いいたしました。

 これに対しまして、総理からは、国家安全保障戦略に言う、我が国に対する武力攻撃が発生し、その手段として弾道ミサイル等による攻撃が行われた場合とは、武力攻撃事態に該当するものであるという明確な回答をいただきました。

 私もそれが当然だと考えています。なぜなら、反撃能力の定義は、一九五六年の政府統一見解、我が国に誘導弾等による攻撃が行われた場合に、どのような攻撃を防ぐのに万にやむを得ない必要最小限度の措置を取ること、例えば誘導弾等による攻撃を防御するのに、他に手段がないと認められる限り、誘導弾等の基地をたたくことは、法理的に自衛の範囲に含まれ、可能であるに示された敵基地攻撃合憲論を踏まえて、今回も正確に書かれているからです。これはまさに、武力攻撃事態に該当する事態でありますという御答弁でした。この新三文書においてもですね。

 そこで、改めて、今回、国家防衛戦略に示された反撃能力の定義ですが、実は、ここが議論しなきゃいけないところだと、今回、新しいところで思っていまして、存立危機事態の言及がありません。

 一九五六年二月二十九日の政府統一見解に示された定義の中の話、敵基地攻撃合憲論が武力攻撃事態に該当するという事態ですから当然なんですけれども、政府が存立危機事態においても反撃能力の行使が可能であると主張するのであれば、この反撃能力の定義に存立危機事態を含める必要があるのではないかと考えます。

 そうした手続がないままに、存立危機事態においても反撃能力の行使が可能であるというふうに御主張されるのは正しいのじゃないのじゃないかというふうに思っていまして、このことについて防衛大臣の見解をお伺いいたします。

浜田国務大臣 今般、政府としては、我が国に対する弾道ミサイル等による攻撃を防ぐため、やむを得ない必要最小限度の自衛の措置として誘導弾等の基地をたたくことは、法理的には自衛の範囲に含まれ、可能とした一九五六年の政府見解を踏まえ、我が国として反撃能力を保有することとしたところであります。

 この一九五六年の政府見解のような考え方は、御指摘の二〇一五年の平和安全法制によって規定された存立危機事態に対処する場合も含め、武力行使の三要件の下で行われる自衛の措置としての武力の行使にもそのまま当てはまるものと考えられ、この旨を説明してきているところであります。

 国家安全保障戦略等においてもこの旨を記載し、必要な説明を行っているところであり、記載内容に問題があるとは考えておりません。

篠原(豪)委員 ちょっと角度を変えますけれども、反撃能力の行使を専らスタンドオフミサイルに限定しているのは、ミサイル発射阻止のためにスタンドオフミサイルで対処することが必要最小限の対応にふさわしいと判断されて、今回こういうふうになっているんだと思います。

 しかし、平和国家である日本が、スタンドオフミサイルを、我が国に対するミサイル発射阻止のためでない目的のために敵基地を攻撃することが、存立危機事態で本当にあり得るのかどうか、どのようなケースであり得るのかということを、であるならば、お考えを聞かせていただきたいと思います。今のお話です。

増田政府参考人 お答え申し上げます。

 先ほど大臣も御答弁させていただきましたように、まず、先生おっしゃるとおり、正確に御理解いただいているように、一九五六年の政府見解、これは我が国に対する武力攻撃事態を念頭に置いた記述でございまして、この見解を踏まえて我が国として反撃能力を保有するということを決めた。これまで政策判断で持たないとしてきたものを持つことにした。

 その上で、先生御案内のとおり、二〇一五年に平和安全法制で新しく武力行使の三要件を定めた、存立危機事態とも読めるような解釈の変更をしたということがございましたので、その存立危機事態に対処する場合にはどうなのかということを、これは国家防衛戦略等でもはっきりその旨を書かせていただいております。武力行使にもそのまま当てはまるんだということを書かせていただいているところでございます。

 その上で、存立危機事態の場合にどうなのかということにつきましては、そのまま当てはまるというのは、これまで我が国に対する武力攻撃が発生し、これを排除するために、やむを得ない必要最小限の自衛の措置として、他国の領域における武力行動で自衛権発動の三要件に該当するものがあるとすれば、憲法上許されないわけではない。これは今までの考え方でありまして、と考えてきたところ、存立危機武力攻撃への対処についても同じような考え方に立っているという意味でございます。

 では、その存立危機武力攻撃とは何なのかということにつきましては、これは武力攻撃事態法の中に書かれておりまして、我が国と密接な関係にある他国に対する武力攻撃がありますが、その中で、この武力攻撃によって我が国の存立が脅かされ、国民の生命、自由及び幸福追求の権利が根底から覆される明白な危険があるもの、すなわち存立危機武力攻撃を排除するためのやむを得ない必要最小限度の武力の行使というものが二〇一五年のときに定まったということでございます。このような武力行使というのは、我が国に対する武力攻撃を排除するためのやむを得ない必要最小限度の武力の行使と同様の考え方に立っているという意味でございます。

篠原(豪)委員 私も、今のお話を伺って、ちょっとまた考えさせていただきたいと思うんですけれども、今指摘させていただいたように、国家防衛戦略に示された反撃能力の定義は、まさに今おっしゃっていただいたように、そのまま一九五六年の政府統一見解を踏まえたものです。ですから、この見解を踏まえた敵基地攻撃は私も合憲と考えます。

 ですが、この見解は存立危機事態における反撃能力の行使の合憲性までを保証しているのかどうか、今回、このケースについてというのはですね。ここのところは、これは保証されたものでは、今までこの国会の議論でもないと思うんですよ。

 なので、ここのところ、つまり、存立危機事態における反撃能力と一九五六年の政府統一見解を踏まえた敵基地攻撃は、理論的に、今、合わせたと言っていますが、別物と考えられますので。だから、そこまで想定していなかった、存立危機事態というものを。なので、そのことにおける、この存立危機事態における反撃能力がなぜ合憲であるのかというのはやはりしっかりと示していく必要があるんだと思うんです。

 総理は、今、増田局長がおっしゃっていましたけれども、一九五六年の政府見解は二〇一五年の平和安全法制に示された武力の行使の三要件の下で行われる自衛の措置にもそのまま当てはまると述べられましたが、なぜこれがそのまま当てはまるのか。ここのところの、存立危機事態における反撃能力はなぜ合憲であるのかというところの議論がないので、これをどういうふうに考えていらっしゃるのかということを伺いたいと思います。

増田政府参考人 お答え申し上げます。

 存立危機事態自身についての憲法解釈の議論というのは、先生御案内のとおり、平和安全法制のときに衆参で二百時間以上にわたって御議論いただいたと思っております。

 存立危機事態の根本といいますのは、他国に対する武力攻撃が発生した場合で、そのままでは、すなわち、その状況の下、我が国が武力を用いた対処をしなければ、国民に我が国が武力攻撃を受けた場合と同様な深刻、重大な被害が及ぶことが明らかな状況であると。これがそのような事態に該当するかという判断は、様々な要素を総合的に考慮しながら、我が国に戦禍が及ぶ蓋然性、国民が被ることになる犠牲の深刻性、重大性などから客観的、合理的に判断して、存立危機事態に認定されるかどうかを判断するということでございます。

 その上で、この反撃能力は、武力攻撃事態でもそうでございますけれども、存立危機事態におきましても、この存立危機事態であるという事態が認定された後、この反撃能力を使うという、その運用に関わるものでございますけれども、事態が認定された後にこの反撃能力をどう使うかということにつきましては、実際に発生した状況に即して、弾道ミサイル等による攻撃を防ぐためにほかに手段がなく、やむを得ない必要最小限度の措置なのかどうかと、いかなる措置を取るのかという観点から、個別具体的に判断するということでございます。存立危機事態が認定された後の、個別のいわば作戦の領域に入ってくるものだと思っております。

篠原(豪)委員 それじゃ、くどいようですけれども、いろいろな角度で聞かせていただきたいと思うんですけれども。済みません。

 これは多分、国会というのは大事なことでして、議事録にちゃんと残して、歴史的に、今までどう変わってきて、どういうふうになってきたかと残すのがやはり国会質疑だと思っていまして、ちゃんと、しっかりと。ですので、よろしくお願いします。

 武力行使の三要件について確認します。

 政府答弁で、最近、武力行使の三要件、今もそうなんですけれども、三要件を満たせば合憲とする答弁がずっと繰り返されています。これを言えば大体いいんじゃないかみたいな感じで、最近、答弁がみんなそういうふうになって、そこで止まっていたりもするところがあって、先日の本会議でも、総理は、反撃能力は、武力行使の三要件を満たす場合に行使し得るとする答弁を述べています。

 また、最近の予算委員会の質疑でも、例えば海外派兵については、他国の領域における武力行動での武力の行使の三要件に該当するものがあるとすれば、憲法上の論理としては、そのような行動を取ることが許されないわけではないという答弁を行っています。

 他国の領域における武力行動で武力の行使の三要件に該当するものがあれば、これは、海外派兵についても、憲法上の理論としては、行動を取ることが許されないわけではないということをおっしゃられていまして、じゃ、ここも確認させていただきたいんですが、どのような武力行動であればこれは三要件に該当するのかということをお示しいただきたいと思います。

増田政府参考人 お答え申し上げます。

 先生御指摘の、従来から、政府としては、武力行使の目的を持って武装した部隊を他国の領土、領海、領空へ派遣するいわゆる海外派兵は、一般に、憲法上許されませんけれども、他国の領域においての武力行動であっていわゆる自衛権発動の三要件に該当するものがあるとすれば、憲法上の理論としては、そのような行動を取ることが許されないわけではないと考えてきている、この趣旨は、一九五六年の衆議院の内閣委員会で示した政府の統一見解によって既に明らかにされているところでございます。

 今回保有することとした反撃能力は、この政府見解において、憲法上、誘導弾等による攻撃を防御するのに、ほかに手段がないと認められる限り、誘導弾等の基地をたたくことは、法理的には自衛の範囲に含まれ、可能であるとしたものの、これまで政策判断として保有することとしてこなかった能力に当たるものでございます。

篠原(豪)委員 それはそうだと思う、そういうふうに御答弁されるのであろうかなと思っていますが、もう少し具体的なケースというものを、例えば、前はホルムズ海峡でどうとかいろいろあって、やはり国民の皆さんにお示しをして、こういうことがあればこういうふうに当たるんですよということをやったから、あの二百何十時間で、九月まで及んだ大変な法案、私もそこにいたとき、質疑をやらせていただいたり、対案を出させていただいたりもして、両方ともつるしを下げてやっていただいたりしたことを本当に思い出しますけれども。

 もう少しだから具体的に、いかなるケースで我が国がいかなる対応を取れるのかということを、これをやはり明らかにすることが議論が深まるということになるので。最近、国会審議を形骸化させちゃっているところがあって、あのときですら、これは閣議決定ですけれども、法律でしっかりと議論するときですらやっていますので、是非、そういった具体的なケースを、やはり国会審議の形骸化を避けるためにも、前から他の委員もおっしゃっていますけれども、やっていく必要があると思っていますので、ちょっと防衛大臣、これはもう大臣、このことについて、国会の議論が形骸化しますので、もう少しあのときみたいに具体的なケースを明示して、存立危機事態って、どれができるのかとか、海外でできるのかというのはやはりやるべきだと思うんですが、いかがでしょうか。

浜田国務大臣 平和安全法制の際の議論は、我が国の憲法上、いかなる状況で武力行使の三要件が満たされ得るかという議論であったため、事例を含めて議論されたものであると思います。

 しかしながら、反撃能力の行使は、事態対処法の手続に従い武力攻撃事態等の認定がなされ、武力の行使の三要件に基づき、自衛権が発動される状況において、我が国が必要最小限度の自衛の措置としていかなる対応を取るかという対応措置の態様の議論であり、性質が異なるものであると考えておりますが、我々とすれば、今回の案件に関しましても我々のシミュレーションの図を示したりをしておりますので、我々とすれば、可能な限りのものは出しておるというふうに思っております。

篠原(豪)委員 私としてはまだ十分ではないというふうに思っていまして、やはり具体的なイメージが湧かないですし。

 じゃ、例えば、今回、私の四月四日の質疑をさせていただいたことによってメディアの方がどういうふうに見出しを打ったかというと、存立危機事態でも反撃能力を発動と打つわけですよ。それまでそういう見出しはないんですよ。

 だから、そのぐらいまだこのことが、これから安保三文書の報告、質疑もあっていますけれども、やはりこれはしっかり後世に、これだけの大政策の転換であります、これまで憲法の範囲内で極めて抑制的に日本は安全保障政策を取ってきている、それはもう間違いないことで、そこをこういうふうに変えていくんですよということであれば、やはり後世に我々はしっかり残して、あのときはどういうことだったんだということをやっていかなければいけないので。

 そのときに、議論の内容が生煮えで通り過ぎてしまうと、立法府としての我々の立場としては、しっかり議論していかなくては、責務がありますので、やっていきたいと思っていますので、また今度、来週以降も聞かせていただきますので、また御相談させていただいて、検討いただければと思います。

 必要最小限度とかも含めまして今議論がありましたので、次は、武力行使の三要件の意味について少し伺いたいと思います。

 この武力行使の三要件が生まれたのは、一九四九年の十一月九日に、当時の外務省の西村条約局長が、衆議院の外務委員会で行われた答弁です。これは九条と言っていないですけれども、九条の二項で一切の軍備と国の交戦権を認めておりません結果、自衛のためにも戦争を放棄したものと了解いたします、自衛権の行使が戦争又は武力の行使、こういう形を取る場合、我が国は原因のいかんを問わず、全ての戦争を又は武力行使を放棄しておりますから、そういう形式を取る自衛権はないものと解します、しかし急迫した不正の危害が現に起こっている場合、かような火急の場合、やむを得ずこれを実力をもって排除することをも否定したものとは考えませんと述べ、数日後、西村局長が、その根拠として、国際法上の自衛権の根拠とされている、あの有名な一八三七年のカロライン号事件の例を例示しました。そして、このカロライン号事件を示し、この答弁を契機として、その当時の米国務長官から提示された武力行使の三要件、すなわちウェブスター・フォーミュラですね。このウェブスター・フォーミュラの三要件が、やがて、自衛権の行使の日本の三要件にも定着することになっていったんだと思います。比例性、均衡性、緊急性。

 すなわち、一九五四年四月六日に佐藤法制局長官が、「急迫不正の侵害、すなわち現実的な侵害があること、それを排除するために他に手段がないということと、しかして必要最小限度それを防禦するために必要な方法をとるという、三つの原則を厳格なる自衛権の行使の条件と考えておるわけであります。」と衆議院の内閣委員会で答弁したことで、実力組織としての自衛隊による自衛権行使が憲法に位置づけられることになりました。

 したがって、自衛権行使の三要件の要点は、急迫不正の侵害を避けるために自衛隊が実力行使に及びながらも、その真意は、戦争にならないように行動することで、つまり緊急避難的要素だということであります。

 ですので、二〇一四年七月一日の閣議で決められた新三要件の第一項は、密接な関係にある他国への武力攻撃が発生し、日本の存立が脅かされ、国民の生命、自由及び幸福追求の権利が根底から覆される明白な危険があるとされています。しかし、日本の存立危機事態が、密接な関係にある他国への武力攻撃から間髪入れず起きるとは限りません。先ほど話しましたけれども、ホルムズ海峡閉鎖によるエネルギー危機を考えても、半年以上空いてもこれはおかしくないというふうに、本当に存立危機になるということは、備蓄もありますし、保管もありますし、ということになりますというと難しい、そういう議論もあったんだと思います。

 したがって、一九五六年の政府見解が、やはり、二〇一五年の平和安全法制に際して示された武力行使の三要件の下で行われる自衛の措置にもそのまま当てはまるとすることも、これはできるのかできないのかということも、今の話を踏まえて、防衛大臣の見解を伺います。

浜田国務大臣 存立危機事態は、我が国と密接な関係にある他国に対する武力攻撃が発生したからといって無条件で認定されるものではなく、個別具体的な状況に即して、主に攻撃国の意思、能力、事態の規模、態様などの要素を総合的に考慮し、客観的、合理的に判断するものであります。

 その上で、事態認定後の反撃能力の運用については、実際に発生した状況に即して、武力行使の三要件に基づき、弾道ミサイル等による攻撃を防ぐために他に手段がなく、やむを得ない必要最小限度の措置としていかなる措置を取るかという観点から、個別具体的に判断します。

 このため、我が国と密接な関係にある他国に対する武力攻撃が発生してからの時間の長短で判断するものではないと考えております。

篠原(豪)委員 時間がもうすぐ、終わりに近づいていますので、ちょっと今日はコメントにとどめますが。

 武力攻撃の危険性がないことを本質とする存立危機事態であるにもかかわらず、我が国の武力攻撃事態そのものじゃないのに、あえて問題解決のために武力行使をすることがやむを得ないケースがあるとしても、憲法は国際紛争解決のために戦争に訴えることを認めていないわけで、ですから、相手国の領土内にミサイルを撃ち込むことが平和国家である日本に可能であるかどうかというのはしっかり考えないといけない。なぜなら、もう一回申し上げますが、憲法は国際紛争解決のための戦争に訴えることを認めていないんですということですね。そこのところを考えたいと思います。

 それで、最後に、もう時間なので、外務副大臣に来ていただいていますので、ちょっと話を変えさせていただきますが、今、日本と、昨日もそうでしたけれども、オーストラリアの関係が緊密化していますので、一問だけ質問させていただきます。有事のときの協力についてです。

 去年の十月に署名された日豪の安保共同宣言にも、我々は、日豪の主権及び地域の安保上の利益に影響を及ぼし得る緊急事態に関し、相互に協議をし、対応を検討するとあり、緊急事態に共同で対処することが示されています。

 これは、日本有事にオーストラリア軍が日本に駆けつけて武力を行使することは憲法上問題はないと思いますけれども、我が国の自衛隊がオーストラリア有事においてオーストラリアに駆けつけることは、集団的自衛権の全面的な行使になりますので、憲法上許されません。日米安保条約ではそのような片務的な日米の関係が明確に定められていますが、残念ながら日豪円滑化協定はそういった定めがありませんでした。

 このことについて、両国とも自国憲法に基づいて行動することが前提ですので、これを、日本が全面的な集団的自衛権に踏み込まないための保証はどのように確保されるのかということを最後にお伺いします。

山田(賢)副大臣 お答え申し上げます。

 まず、この日豪円滑化協定というのは有事の想定をしたものではございませんが、まず基本的に、基本的価値と戦略的利益を共有する豪州との間で、二〇〇七年三月の安全保障協力に関する日豪共同宣言の発出以降、これまでACSA、物品役務相互提供協定、情報保護協定、防衛装備品・技術移転協定といった枠組みや、外務・防衛閣僚会議、2プラス2といった対話を通じて、安全保障、防衛協力を強化してまいりました。

 我が国の国家防衛戦略におきましても、日米防衛協力に次ぐ緊密な協力関係を構築し、本協定等の整備も踏まえて、豪州における訓練の実施やローテーション展開等を図り、日米豪の協力も念頭に連携していくものでございます。

 昨年十月には、長期的な安全保障協力の方向性を明確に示す羅針盤となる、新たな安全保障協力に関する日豪共同宣言を発出しており、引き続き、日豪の安全保障、防衛協力を拡大、拡充すべく取り組んでまいります。

篠原(豪)委員 集団的自衛権にどう踏み込まないのかという質問だったんですけれども、時間ですので終わらせていただきますが、またお伺いします。

 ありがとうございます。

鬼木委員長 次に、斎藤アレックス君。

斎藤(ア)委員 ありがとうございます。国民民主党の斎藤アレックスでございます。

 ちょっと通告の順番を変えさせていただいて、まず、今、篠原野党筆頭からも議論、そして依頼をされていた、集団的自衛権による反撃能力の行使の点について、まず質問させていただきたいと思います。

 これはもう本当に、今の篠原野党筆頭のお話と完全に同じになってしまうんですけれども、我々も、具体的な例示をしながら分かりやすく国民に説明をするということが、この件についてはとても重要だと考えておりまして、改めてお願いをさせていただきたいと思います。

 本会議の方でも、私も申し上げましたけれども、これはやはり防衛政策の大きな転換であると思います。それで、反撃能力で抑止能力を向上させる、国民民主党は賛成でございますし、防衛費の増額、国民民主党は賛成でございます。しかし、その大きな変更に関しては、国民にはしっかりと理解をしていただく必要があると思っています。

 都度都度の外交政策や防衛政策、これを子細に国民に理解していただくのはやはり難しいとは思いますけれども、大きな転換のときにはしっかりと理解をしていただく、そのことが重要だと思っております。

 二〇一五年の安保法制の際、浜田大臣は特別委員会の委員長で、もみくちゃにされながら新たな原稿を取り出して、最後、採決をされていた様子を私もニュースで拝見していましたけれども、そのときでさえと言ったら変ですけれども、岸田総理大臣も浜田防衛大臣も、そして林外務大臣も非常に丁寧で親切な答弁をしていただける一方で、中身がやはり私は不十分だと考えておりまして、その安保法制の当時でさえ例示をしていただいていたわけですから、どういった際に集団的自衛権の行使として反撃能力を使うことがあるのかということは、今、増田政策局長、時間を使って説明いただきましたけれども、やはりこれでは国民は分からないし、夜のNHKのニュースで、武力行使の三要件に合致する場合は反撃能力を行使することがあると報道されても、一般の国民からすれば、それは、何じゃそりゃとなって、流れていっちゃうわけですよね。

 皆さん、仕事をしていて、家事をしていて、子育てをしていて、地域の自治会の活動とかしていて、こんな専門的な話を把握、理解する時間、余裕はないわけでございますので、分かりやすく、特にこういった大転換のときには例示をしていただくことが必要だと思っているんですけれども、防衛大臣、いかがでしょうか。改めてお願いいたします。

浜田国務大臣 先ほども篠原委員に御答弁したところでありますけれども、事態認定後の反撃能力の運用については、実際に発生した状況に即して、武力攻撃の三要件に基づき、弾道ミサイル等による攻撃を防ぐために他に手段がなく、やむを得ない必要最小限度の措置としていかなる措置を取るかという観点から、個別具体的に判断するものであります。

 このように、反撃能力の行使は、事態認定がなされた後の武力の行使という個別の作戦に関わるものであります。このため、これまでも答弁してきたとおり、反撃能力の行使について、具体的に、いかなるケースでいかなる対応を取るかを明らかにすることは、対抗措置を取られることになるなどにより国の安全を害するおそれがあることから、安全保障上控えるべきだと考えており、事例として言う形で議論することは困難であることを御理解をいただきたいと思いますが、しかし、我々とすれば、国民の皆様方に説明をするという努力を欠かすわけにはまいりませんので、御指摘の点についても、我々とすれば、何ができるのかも含めて検討したいというふうに思います。

斎藤(ア)委員 ありがとうございます。

 具体的にどういった方法で反撃するのかは、もちろん御説明いただく必要は全くないと思っておりますので、まずは、反撃する可能性があるのかないのか、具体的な説明ができるのかというところを是非御検討いただきたいと思っていまして、是非よろしくお願いいたします。

 それに関連してなんですけれども、具体的にどういった方法で反撃をするのかということを示すのは、もちろん、手のうちを明かすことになるのでやるべきではないと思いますが、反撃する可能性があるのかないのか、あるいは、反撃する可能性があると言うことは、私は必ずしも日本の抑止力にはマイナスだと思っていなくて、こういったことをすれば自衛隊は反撃に出れるんだ、まあ、その事態によって、その状況によって反撃しないことはもちろんありますから、可能性があるというお話なんですけれども、そういったことを示していくというのは、逆に、日本の抑止力というか、日本の抑止力というのは変ですけれども、地域の平和、安定を守ることにつながる。攻撃をしかけるとか武力紛争をしかけてくるという動機をそぐことになると思うので、抑止にはプラスだという面もあると思うんですけれども、その点については、防衛大臣、いかがお受け止めでしょうか。

浜田国務大臣 反撃能力行使の事例について、これを示すべきとの御意見もあるというふうに思いますし、示すべきではないとの御意見も、様々な御意見があるものと承知をしております。

 抑止力の観点から申し上げれば、政府としては、相手からのミサイル攻撃に対し、ミサイル防衛網により、飛来するミサイルを防ぎつつ、我が国から有効な反撃を加える能力を保有する、この二つの能力を保有すること自体により、現状に比して、相手の戦略的、戦術的な計算を複雑化させ、日本にミサイルを撃ち込もうとしている相手に、目的を達成することは容易ではない、攻撃はやめた方がいいと思わせることができると考えております。

 このように、我が国として有効な反撃を加える能力を保有し、やむを得ない場合にはこれを行使するという意思を示すことが抑止力につながると考えております。

 その上で、反撃能力の行使については、具体的に、いかなるケースでいかなる対応を取るか明らかにすることは、対抗措置を取られることなどによって国の安全を害するおそれもあることから、安全保障上控えるべきと考えており、事例をお示しすることは困難であることを御理解をいただきたいと考えておりますが、先ほど申し上げたとおり、我々も不断に検討していきたいというふうに考えております。

斎藤(ア)委員 ありがとうございます。

 そうですね、いかなる方法でということは、繰り返しになりますけれども、そこはお示しいただく必要はないと思いますが、そして、日本の周辺国、緊張関係にあるような国は、もちろん反撃される可能性があると考えて計算するわけでございますので、そういったことを前提とすれば、手のうちを明かすから国民向けの説明が少し大ざっぱになるとか抽象的になるというのは、私はあってはならないことだと思いますので、しっかりと、今、検討いただくと言っていただきましたので、是非お願いをしたいと思います。

 外相、戻ってきていただき、ありがとうございました。

 では次に、中台関係に関してお伺いをさせていただきたいと思います。

 少し本日の委員会でも触れられていましたけれども、四月二日、日中の外相会談、お疲れさまでございました。

 まず、本日は中台関係に関して伺いたいので、この外相会談で台湾海峡に関してやり取りがあったのかなかったのか。もし可能であれば可能な範囲で、どのようなやり取りがあったのか、教えていただければと思います。

林国務大臣 参議院本会議の関係で少し遅れて参りまして、恐縮でございました。

 四月一日と二日、私は、外務大臣として約三年ぶりでございますが、中国を訪問いたしました。滞在中、秦剛国務委員兼外交部長、それから王毅外事工作委員会弁公室主任との間で会談を実施いたしまして、また、李強国務院総理への表敬を行いました。特に、秦剛部長との初の対面での日中外相会談において、諸懸案を含めて、長時間にわたって率直な議論を行ったことは有意義だったと考えております。

 秦剛部長に対して、今御指摘のありました台湾海峡についてですが、私から、台湾海峡の平和と安定の重要性について改めて述べたところでございます。

斎藤(ア)委員 ありがとうございます。

 台湾海峡の安定は、かねてから政府からも発信があるとおり、日本のみならず、また東アジアのみならず、世界全体にとって極めて重要な問題でありまして、ここをどう紛争を回避していくのかということが世界で最も重要な平和安全上の問題であるというふうに考えてもいいと考えているんです。

 そのときに、今、米中間の緊張が大変高まっている中で、紛争の可能性というのが今後数年以内にもあるんじゃないかということが、米側からも大変様々な専門家、様々なチャネルで発信をされていて、本当に緊張が高まっている状況だと思うんですけれども、改めて、紛争を招かないようにするというゴールに向かって何が大事かということを関係各国が確認をしておくことが重要だと思っていまして、もちろん、日本政府そして米国政府、十分把握を、認識をされた上で行動に出ていると思うんですけれども、改めて、そういった点、何が重要なのか、何が最終目標なのか、外相からお答えいただければと思いますけれども、いかがでしょうか。

林国務大臣 今、斎藤委員からお話がありましたように、台湾海峡の平和と安定、これは、我が国の安全保障はもとより、国際社会全体の安定にとっても重要だと考えております。

 我が国の従来からの一貫した立場でございますが、これは、台湾をめぐる問題が対話により平和的に解決されることを期待する、こういうものでございます。この点、これまでも、一月の日米首脳会談を含め、米国、そしてG7との間でも、台湾海峡の平和と安定の重要性について一致してきているところでございます。

 台湾海峡の平和と安定の重要性について秦剛部長に述べたというのは、先ほど申し上げたとおりでございます。

 台湾海峡の平和と安定を確保するために、我が国として、こうした立場、これを中国側に首脳レベルを含めて直接やはりしっかりと伝える、そして、米国を始めとする同盟国、同志国と緊密に連携しながら、各国の共通の立場として明確に発信していく、これが重要だと考えておりまして、今後ともこうした外交努力を続けてまいりたいと考えております。

斎藤(ア)委員 改めてなんですけれども、日本、米国のと言ってもいいかもしれませんけれども、中台問題における基本的な立場というものはどういうものなんでしょうか。

林国務大臣 先ほども少し申し上げさせていただきましたが、例えば日米首脳会談、それからG7の各国との間で、台湾海峡の平和と安定の重要性ということで一致をしておるところでございます。

斎藤(ア)委員 ありがとうございます。

 かつて、九〇年代、またあるいは二〇〇〇年代の頃までは、米軍の、米国の圧倒的な力の下で、紛争の起きる可能性というのは相当に低かったんだろうと思いますけれども、特に、この台湾海峡周辺において、アジア太平洋地域における中国軍の軍備増強と、特にまた核兵器の配備数の増加などがあってパワーバランスが崩れている中で、大変、緊張関係が紛争に発展をする危険性があるということが認識をされている中での日本の防衛力の強化だと思いますので、抑止をしっかりと行っていく、その一環として日本も防衛力を強化をしていく、そのことは極めて重要な取組でございますので、浜田防衛大臣を先頭に、防衛省の方でも引き続き取り組んでいただきたいと思う一方で、軍事的な抑止、あるいは、端的に言ってしまえば、台湾を米軍が守るというところばかりが、それは重要なんですけれども、そこばかりが強調されてしまうと、中国が追いやられて、焦燥感に駆られて、もう早く今のうちに侵攻してしまおうと思わないかという危険性もありますし、逆に、中国がやり過ぎると、米国が今のうちに台湾を守るために行動に出ようと思う可能性もあるということですので、そういった緊張が、両国にとって、時間がたてばたつほど状況が悪くなると思わせるようなシチュエーションになるということを防いでいくということが極めて重要だと考えております。米国にとっては、時間がたてばたつほど安定が増していくと思っていただく必要があるし、中国にとっては、時間がたてばたつほど統一に向けて、平和的な統一に向けて歩みが進めていけるんだということを思っていただくことが重要だと思っています。

 これは、だからどうですかということで政府に伺えることではないですけれども、いずれにしましても、米中、中国・台湾間の武力紛争を回避する、平和で、対話をもって解決をしていただくことが重要だということでございますけれども、その点に関して、G7のサミットもありますが、日本としてはどういった役割を果たしていくことになるのか。外相、よろしくお願いいたします。

林国務大臣 やはり今委員がおっしゃっていただきましたように、外交の役割というのが大変重要になってくるのではないかというふうに思っております。

 先般、訪中した際も、秦剛部長との日中外相会談の中で、日中のハイレベル経済対話、それから日中のハイレベル人的・文化交流対話を含めまして、引き続き、首脳、外相レベルを含むあらゆるレベルで緊密に意思疎通を行っていくということで一致をいたしたところでございます。

 また、李強国務院総理への表敬においても、首脳間を含めたあらゆるレベルで緊密に意思疎通を継続すること、このことの重要性で一致をしたところでございます。

 今、具体的に何か決まっているということではございませんが、昨年十一月に、日中の首脳会談がございました。ここで得られた前向きなモメンタムを維持しながら、主張すべきは主張し、責任ある行動を強く求めつつ、諸懸案を含めて対話をしっかりと重ね、共通の課題については協力する建設的かつ安定的な関係、これを日中双方の努力で構築していくことが大事だと考えております。

 こうした考え方を基に、G7外相会合等にも臨んでまいりたいと思っております。

斎藤(ア)委員 ありがとうございます。

 先日、台湾総統が米国を訪問された際も、米側の対応というのも非常に興味深くて、下院議長の地元で総統を迎え入れるということで、やはり米側も、日本側も、この台湾の状況を紛争に発展させないための様々な配慮というか、バランスを取りながら行動されているところだと思います。そこは日米間一致をして、そして中国もある種一致をして、台湾まで一致をして取り組んでいけるところだと思いますので、引き続き、紛争に至らないための努力、様々なハイレベルの交流を含めて、これが最も日本の平和を守る上で大切でございますので、林外相を中心に頑張っていただきたいと思いますので、よろしくお願いいたします。

 では最後に、ちょっと話は全く飛びますけれども、自衛隊におけるドローンの活用と電波法の関係に関して、最後にお伺いをさせていただきたいと思います。

 昨日も美延委員から質問がされていまして、改めての確認になるんですけれども、私も、様々な方からお話を聞いていると、日本では電波法の関係によってドローンの性能が十分に発揮できない。具体的に言えば、操作できる範囲が大変狭まってしまって、それだったら歩いて自分で見に行った方がましだというぐらいの、そういうぐらいのことになってしまっていて、ドローンの活用というのが電波法との兼ね合いで制限されてしまっているんだということがあるし、純粋なホビー用であったらそれでもいいかもしれませんが、防災とか、そして防衛用であったら、そこはドローンの能力を遺憾なく発揮してもらっていくということが重要だと思うんです。

 まず、防衛省の問題認識を伺いたいんですけれども、自衛隊におけるドローンの活用というものが電波法によって何かしらの制限を受けているのか、その事実をまず教えていただきたいと思います。

上田政府参考人 お答え申し上げます。

 委員御指摘の、自衛隊におけるドローンの使用でございますけれども、こういったドローンなど電波を使う装備品を新たに導入する際には、自衛隊法百十二条に基づきまして、総務省に周波数の申請を行い、承認を得ているところでございます。

 こうした承認を得ている範囲で平素行われる訓練等で周波数を使用する場合、訓練の都度ですとか飛行の都度に改めて承認を得ることは必要ございません。

 また、災害派遣など緊急時に使用する可能性がある周波数につきましても、あらかじめ総務省と共有して承認をいただいておりますので、これもその都度承認を得るというようなことはございません。

 さらに、有事におきましては、特定公共施設等利用法に基づき定められる電波の利用指針により、自衛隊による電波の優先利用が可能となってございますので、このように、現状、防衛省・自衛隊は必要な周波数を確保できていると考えてございます。

斎藤(ア)委員 今日は具体的な通告をしていないので御紹介だけにとどめますけれども、そういった関係の専門家のお話を聞いていると、自衛隊で試験なりをしようとしたときに、申請をして、それが時間がかかり過ぎて試験ができなかったとかいう、何かそういった例も聞いていますが、ちょっとまた様々な場面で、レクなどを通じて確認をさせていただきたいと思っています。

 じゃ、今の御答弁を聞いていると、ドローンの活用を今後進めていく上で、今後、無人アセットに一兆円を投資していくというお話でありましたけれども、そういったときに、こういった電波法の改正とか特例措置を設けるとか、そういった取組は、防衛省の方では現状必要だとは認識していないということでよろしいでしょうか。

上田政府参考人 お答え申し上げます。

 今申し上げましたように、今現在、防衛省・自衛隊、必要な周波数を電波法の下で確保できていると考えてございますが、まさに委員御指摘のとおり、無人アセット能力、これも強化をいたしたい、かなり各種の無人機やドローンを整備してまいりたいと考えていますので、まさに電波使用というのは確かに増えてまいります。

 これもありまして、国家防衛戦略におきましては、「自衛隊が安定的かつ柔軟な電波利用を確保できるよう、関係省庁と緊密に連携する。」と改めて記載しておりまして、現在、総務省とも、この連携を強化する様々な調整を行っております。

 必要な周波数を引き続き確保してまいりたいと考えております。

斎藤(ア)委員 では、引き続きよろしくお願いいたします。

 以上で終わります。ありがとうございました。

鬼木委員長 次に、渡辺周君。

渡辺(周)委員 立憲民主党の渡辺でございます。

 先ほど大臣から、宮古島においてのUH60JAの墜落事故事案につきまして報告がございましたけれども、あれから二時間ほどたちました。現状、どのようになっているか、最新の状況について教えていただけますでしょうか。

浜田国務大臣 先ほどから、私のところには、まだ新しい情報は今のところ入っておりません。

渡辺(周)委員 昨日の午後、夕方から、もう相当な時間がたっております。陸上自衛隊の幹部が、坂本陸将が乗っている、十人。いろいろ、油が漂流していることが目撃されたり、あるいは当該機の部品が発見されてと。私も宮古島に行ったことがありますし、上空から見ても大変透明度の高いところでもありまして、比較的発見しやすいのじゃないかなとは思うんですけれども、それだけに、今見つからないということは、私は、精強な隊員たちが皆さんそれぞれ独自で泳いで、どこかの島に独自にたどり着いて、今救助を待っているのかな、そう信じて、とにかく一日も早い救出を願うばかりでございます。

 それで、いわゆる多用途のヘリコプターでありまして、陸上自衛隊で四十機、航空自衛隊で四十機、海上自衛隊十二機と。空自と海自では救難ヘリとして、また、陸上自衛隊は多用途という形で、相当な高運動性と飛行安定性を兼ね備えていると。いわゆる救難ヘリということで、悪天候でも運用が可能であることで、相当な能力を持っているヘリだとは思うんですけれども。

 それだけに、このヘリが事故を起こしたのが、これが人為的なものによるのか。ただ、やはり幹部が乗っていらっしゃる、師団長が乗っているということで、相当、当然、操縦するパイロットも、慎重を期して、それなりの経験のある人間が操縦していたのではないかと思いますし、また当然、整備だって、相当な整備をしたのではないかと思うと、一体原因は、全く分かりませんけれども、どうなんだろうということを考えたときに、ちょっと伺いたいのは、例えば何らかの交信はあったのか。つまりヘリと、当該機と、例えば宮古島の分屯基地とで何らかのやり取りがあったのか。あるいはブラックボックス、回収されるようなもの、今後捜索が進めば、何らかの、いわゆるブラックボックスが積んであって、そこに事故の原因特定につながるような何かしらの情報が入手できるのかどうか。そこについてはどうなっているんでしょうか。

浜田国務大臣 今おっしゃったようなことで、今後の捜索活動というのを経て、当然、ブラックボックス等の回収も含めて目指していくこととなるわけでありますけれども、離陸から十分間、管制との交信については確認をしているということでございますが、内容については、まだ私の方にも話が来ておりませんので、ここでお答えすることは困難でございますので、よろしくお願いします。

渡辺(周)委員 当然、これだけの方が乗っているという、やはり、これは自衛隊史上、陸上自衛隊の運用史上でも前代未聞の出来事である。本当に、どこかで皆さん方が、離島のどこかに、岩礁に、あるいはたどり着いて今救助を待っている、やはりさすが自衛隊だ、自分で泳ぎ切ってどこかの陸にちゃんと避難をしていたというような吉報が届くように、本当に皆さんとともにお祈りをして、朗報を待ちたいというふうに思っております。

 続いてOSAについて伺いたいと思うんです。

 先般、フィリピン政府が、台湾に近いルソン島や、南シナ海、スプラトリー島に対峙するパラワン島の一部をアメリカ軍が利用可能な基地として公表するということで、今までの五か所に加えて四か所、九か所が米軍が利用可能な、施設として使えるんだということを公表しています。

 台湾で何かあったときに、台湾に近い、北部の、ルソン島のエリア、百キロ。台湾から与那国島が大体百十キロ、台湾の南部からフィリピンの北部までがおよそ百キロでありますから、何かあった際には当然影響も及ぶけれども、避難や、あるいは何らかの形で、物資の輸送であるとか、当然、避難民の一時的な退避をする場合に、フィリピンという国の存在は、大変に重要な存在を占めるだろうというふうに思うんですね。

 私も実は、与党時代に、パシフィック・パートナーシップという事業でフィリピンを訪問したことがあります。太平洋と東南アジアで交互に毎年行われていて、私が行ったときはフィリピンのサマール諸島という、フィリピンの東側のところに、大変、正直インフラもないような、お医者さんも一人もいないような、ちょっと貧困な地域があります。そこに自衛隊の医官でありますとか、本当にひどい人たちは、そこから「おおすみ」の積んでいるLCACに乗って「おおすみ」に行って、あるいはマーシー、米軍の病院船マーシーに運んで治療をするというような、いわゆるパシフィック・パートナーシップがありまして、激励に行って、地域の方々、軍の関係者と「おおすみ」の中でちょっとした交流会なんかも。

 行ったわけなんですけれども、正直言って、フィリピンはまだまだ、様々な、インフラを含めてまだまだこれからだなという印象を受けます。

 いわゆるコラソン・アキノ、あのフィリピンのコリー革命、コラソン・アキノ革命が起きたときに革命の舞台となった軍司令部も行きまして、そこには当時の映像が、ラウレル、参謀総長とか、そうしたクーデターの中心になった方々の大きな写真が今も司令部に残っていて、そこで現地の司令官の方といろいろな意見交換を行ったんです。一つには、航空戦力が非常に、極めて脆弱で、そこに部隊の、一応航空機はあるんだけれども、当時、実は本当に飛んでいるかどうか分からないぐらいのものでありました。

 非常に日本の援助ということを、相当、その時点でも言われたんですけれども、今回、フィリピンに対して、日本がいわゆるOSA、新たな、非軍事でのODAに代わって、OSAという形で日本の防衛装備品の支援をしようということで、既に報道されているのが、フィリピンとバングラデシュとフィジー、それからマレーシア、こういう国々が対象となるということで。

 既にフィリピンに対しては、日本は、二月にフィリピンのマルコス大統領が来日した際に、六千億円の民間も含めた支援、あるいは軍資機材の無償供与というのを約束している。これまでも、UH1の部品であるとか、海自練習機のTC90を供与した実績があります。そして、三菱電機製の警戒管制レーダーを供与するということを約束をしているんですけれども。

 ただ、問題は、フィリピンとは情報保護協定がなかったり、昨日、日豪と日英のときにちょっと私も提起しましたけれども、やはりそういう防衛協定があって、その上で、ACSAであるとか、あるいは防衛装備品の移転に関することだとか、情報保護協定があって、そのいわゆる必要十分条件を満たした国から円滑化協定なんかは結ばれていくわけなんですけれども、残念ながらフィリピンとは、まだこれから円滑化協定だとかACSAを検討するという段階、情報保護協定もないと。

 報道によれば、実現すればアジアで初だというんですけれども、さっき申し上げたように、まだまだフィリピンのスキルといいましょうか、インフラも含めて軍事的なスキルは、今現状、十年前の話で今どうなんだろうかという中で、なぜフィリピンがまず供与ということで対象に選ばれたのか。あるいは、フィジーもバングラデシュもマレーシアもそうですけれども、なぜこの国がまず第一弾に選ばれたのかということについては、どういうことで決まったのか。その辺のプロセスについて是非教えていただきたいと思います。

石月政府参考人 お答え申し上げます。

 このOSAは、我が国が戦後最も厳しくかつ複雑な安全保障環境に置かれる中、同志国の安全保障能力や抑止力の強化に貢献することにより、我が国との安全保障協力関係の強化、我が国にとって望ましい安全保障環境の創出及び国際の平和及び安全の維持強化に寄与することを目的として創設されたものでございます。

 対象国の案件や詳細については、相手国のニーズ等を踏まえてこれから政府部内で検討を進めていくことにしておりまして、現時点では決まっておりませんけれども、先ほど委員から御指摘のありましたとおり、今後、フィリピン、マレーシア、バングラデシュ及びフィジーを対象として、警戒監視等の海上安全保障分野の能力向上に資する機材供与を想定した専門的な調査を外部事業者に委託して行うということを考えているところでございます。

 まずは、これら調査結果を踏まえた上で、具体的な協力案件を形成していくところでございます。

渡辺(周)委員 先般、この委員会で、私は、同志国という言葉についての定義を何回も聞いたんですけれども、すっと落ちるような同志国の定義というのはなかなかはっきりしなかった。

 一つには、当然、アメリカであったり、当然のことながら、昨日の円滑化協定、オーストラリアやイギリス、やはりそれは、長い時間をかけた中で安全保障の様々な協定を結んできた国があって、その上で価値観を共有して、いわゆる同志国というのは、それはよく分かるんですね。ところが、残念ながら、今のところこの国々とは、安全保障の覚書を交わしたり、協定は、何らかの形で友好的な関係にはあると思いますが、じゃ、先ほど来申し上げているように、情報保護協定があるのか、円滑化協定以前に、ACSAだとか、防衛装備品の移転に対する何らかの協定を結ぶことがあるのか。

 これは、供与といいながら、防衛装備品の海外移転ですから、それについては、やはり私は、何らかの形の、その支援対象国の軍事能力であるとか、あるいは経済力であるとか、あるいは中国からの支援の度合いについてとか、いろいろな基準を作るべきじゃないかと思うんですね。

 その意味において、今回の決定でいきますと、地政学的な戦略性、もっと言うと政治性の上に立って、対中国を考えれば、そうした防衛、安全保障に関する協定がなくとも、とにかく政治的な判断が優先するということになって、どんどんどんどんOSAの対象になっていくんじゃないかと思うんですけれども、そこのところは明確に、やはり、情報保護協定なり、あるいは、相手国のスキルによってどこまでできるのかと。

 大変悪い言い方ですけれども、大切な国であっても、防衛力のスキルの成熟度が低い国に余り立派な防衛装備品を渡しても、本当に使いこなせるのか。もっと言えば、日本やアメリカが要求する能力というものに応えてくれるのかどうかということに対して、フィリピン、それからバングラデシュも、マレーシアも、フィジーも、そこのところは、大変矢継ぎ早に決まった気がするんですけれども、そこは大臣、どうなんですか。この国々に対して、なぜこの国々が必要かというのは、どちらかというと、防衛協定の有無よりも、何か政治的な判断、地政学的な戦略性が優先したんじゃないかと思うんですけれども、そこは大臣、いかがですか、戦略性について。

石月政府参考人 お答え申し上げます。

 先ほど申し上げたとおり、このOSAの支援というのは、同志国の安全保障上の能力や抑止力の強化に貢献することにより、我が国との安全保障協力関係の強化、我が国にとって望ましい安全保障環境の創出及び国際の平和及び安全の維持強化に寄与することを目的とするものでございます。

 OSAの実施に際しては、実施方針に定めた事項が遵守されるよう、支援実施の際に締結する国際約束において、目的外使用、第三者移転に係る適正管理を始めとする必要な事項につき支援対象国に義務づけた上で、適切なモニタリングを行っていく考えでございます。

 その上で、御指摘の協定を含めて、その特定の協定等の締結はOSAを通じた支援を実施する前提条件とはしておりませんが、支援の具体的な対象国、内容の選定に際しては、防衛装備移転三原則及び同運用指針の枠内で行うことを前提として、先ほど申し上げました本支援の目的に照らし、当該国の状況、ニーズ、我が国にとっての安全保障上の意義、そういった個々の事情を総合的に考慮し、個別に判断していくこととなります。

渡辺(周)委員 実は、たまたま具体的にちょっと例を出していますけれども、別に私はフィリピンのことだけをどうこう言うつもりはないんです。ただ、今年二月にフィリピンのマルコス大統領が来日をして、岸田大臣と会った際に、その直前、一か月ほど前、中国に行っているんですよね。これは六千億円以上の、中国からも当然、支援をするという約束を取り付けているんですね。

 ですから、小国といいますか、なかなか経済基盤もまだ安定していない中で、やはり日本から支援も欲しいけれども、供与も欲しいけれども、当然、中国からも欲しい。結局、あちらこちらの国からいろいろなものを上手にもらって、何とか国が、そこのところはある意味では非常にしたたかに外交をしているとなると、例えば、防衛協定もないし、何らかの取決めもないんだけれども、結果として、中国にもし万が一、対中国、スプラトリー諸島の向かいにあるパラワン島に、米軍が利用可能な基地として、何らかの形で使う、当然そこには日本の様々な管制機能を持った装備品なんかも何らか組み入れられるとしていけば、だけれども、それが中国に万が一漏れてしまった場合は一体どうするのかというような懸念がとてもあるわけなんです。

 ですから、そこは大臣、何らかの形でやはりフィリピンとは、情報保護協定であったり、あるいは何らかの防衛装備品の移転に関する協定は結ぶべきだと思うんですけれども、供与の大前提として。今、必要十分条件ではない、特に必要な条件じゃないと言いましたけれども、その点についてはどうなんですか。

 そこのところは大臣に、いや、大臣に是非聞きたいと思うんです。やはりやるべきじゃないかと思う、締結すべきじゃないかと思いますが、いかがですか。

林国務大臣 OSAは、我が省が予算を要求して、この間認められたところでございますので、私の方からお答えをしたいと思います。

 先ほど来答弁しておりますように、やはり同志国の安全保障上の能力、抑止力の強化に貢献する、そのことによって我が国との安全保障協力関係の強化をする、こういうことでございます。そのことによって我が国にとって望ましい安全保障環境をつくっていくということでございます。

 したがって、今委員がおっしゃられたようなことも当然頭に入れながら、逆に言うと、我々が何もしないでどんどん先方が進むというようなことをどう考えるかとか、いろいろなことも考えながらやってまいらなければならないと思いますし、まさに今委員がおっしゃったように、相手の能力等々をよく見極めた上で、どういうものをこの段階でやればいいのかということも含めて考えていくということは当然のことだと思っております。

 私も、大統領の就任式に行った際に海上保安の視察をしてまいりまして、日本からの、船もそうですし、また人を派遣して、このマネジメントもしっかりと、いろいろなやり方を伝授していく、こういう現場も視察させていただいたところでございまして、そういった今までのことや、フィリピンとの間では2プラス2もやっておるところでございますので、こうしたことをしっかり踏まえながら、今、渡辺委員の御懸念のことにならないように、ちゃんとしっかりとやってまいりたいと思っております。

浜田国務大臣 フィリピンとの間では、これまで、防衛装備品・技術移転協定や細目取極による十分な管理を確保することができていると考えております。

 その上で、今後、それ以上の措置が必要な場合には適切な対応を検討してまいりたいと考えております。

渡辺(周)委員 フィリピンは、頻繁に政権が替わります。例えば、アキノ大統領の時代、国際紛争裁判で、いわゆる領土問題を提訴した。勝利したときに、中国の主張を認めなかった、ところが、そのときにはもう大統領はいなかったんですよね。その後、ドゥテルテ大統領になったり今の大統領になったり、非常に、こういうことを言ったら、ユニークな大統領が誕生して、そのたびに、対外的な政策もそうですけれども、いろいろと、安定性という意味で非常に心配になるところであります。

 この間の、ちょうど、まさに今のマルコス大統領が来日する際に、フィリピンにいる日本人の犯罪者の引渡しをめぐって、実は大変に、違法な形で、実際、その収監されている施設の中から携帯電話でやり取りできたとか、お金があったら何でもできるみたいな意味で、本当に、法の支配とか、いわゆる我々が考えるような社会とちょっと違うのではないだろうかという思いはやはりする。

 ですから、安全保障という大変重要な取決めをしていく中で、ましてや防衛装備品を提供していくという中で、この国の法の支配だとか政治の安定性だとか、そうしたものは本当に大丈夫なのだろうかと。それはやはり懸念をするところがないと言ったらうそになるわけですから、是非、その点について、これは両省を挙げてしっかりと進めていただきたいというふうに思います。

 もう時間がなくなりまして、この点についてはまた改めてやりたいと思います。

 外務大臣に伺いたいのですが、先般、習近平国家主席がロシアを訪問しました。ちょうど、日本の外務省にしてみると、岸田総理のウクライナ訪問と同じ時期でしたから、ひょっとしたら、そのことで頭がいっぱいでそれどころじゃなかったのかもしれませんけれども、習近平主席のロシア訪問を日本の外務省はどう分析しているのか。イラン、サウジの国交回復の仲介役をしたと。もちろん、そこに至るまでにはいろいろな国のいろいろな努力があったと思うんですけれども、仲介国家中国として世界に存在感を見せつけたと。

 そこで、ゼレンスキー大統領は、習近平主席と会う約束をしている、会う用意はある、ロシアにだけ行かないで我々とも話をしてほしいと言ったけれども、今のところはまるで進展がないわけなんですけれども。

 日本の外務省として、今回の習近平国家主席のロシア訪問、どう分析して、また、中国はロシアとウクライナの仲介役となるのかどうか、その点について外務省はどう見ているのか、それを大臣是非、ちょっと教えていただきたいと思います。

林国務大臣 今お話がありましたように、習近平国家主席は、訪ロ中の三月二十日にプーチン大統領とのテタテの会談及び夕食会、それから二十一日に首脳会談等を実施しております。

 特にウクライナ情勢について、プーチン大統領は、共同記者発表において、中国によって提示された和平案の条項の多くがロシアのアプローチと一致しており、西側及びキーウが平和的解決の準備ができたときその土台となり得る、こう発言をしたわけでございます。他方、両首脳から、ロシアのウクライナ領土からの即時撤兵等についての言及はなかったわけでございます。

 今お話のあったロシアとウクライナの間の仲介の可能性でございますが、ロシアの方がまだ攻撃を続けている状況でございます。そして、プーチン大統領自身が、併合したウクライナの一部地域は交渉対象でない、こういうふうに述べておりまして、和平に向けて歩み寄ろうという兆しが見られないわけでございまして、まずはここをしっかり見ていくべきだろうと思っております。

 いずれにしても、我々として、ウクライナ情勢をめぐるものを含むロシアと中国の動向、これは引き続きしっかりと注視していかなければならないと思っておりますし、中国に対しては、様々な機会を通じて責任ある対応を強く求めてまいります。私が訪中したときも、しっかりとそういうことを求めてまいりました。

 それから、冒頭お話のあったサウジアラビアとイランの外交正常化ですが、まさに渡辺委員からお話があったように、これまでもいろいろな国がいろいろな努力をしてきたわけでございます。中国がどういう意図でこういうことになったかというのはこちらから申し上げることは差し控えたいと思いますが、いろいろな国の外交努力があって、その国際社会の外交努力の積み重ねの結果合意が実現したこと自体は評価をしておるところでございます。

 近年、中国は、中東・アフリカ地域でも、二国間、そして多国間、双方で幅広い分野で活発な活動を展開しておりまして、我々も高い関心を持って注視をしてまいりたいと思っております。

渡辺(周)委員 やはり中国とロシアが今後どのような関係でいくのかというのは、我が国にとっても大変な問題、強い関心を持たざるを得ない。といいますのは、ボストーク二〇二二という、ロシアの東部で演習が行われまして、中国は陸海空三軍を初めて同時派遣して、中国の海軍艦艇は日本海方面で合同演習に初めて派遣をされた。

 ロシアは、ウクライナ侵攻後、中国頼みを強めていきますけれども、我々が心配するのは、台湾海峡が非常に緊張した、切迫した、そして、当然派生した中で、東シナ海、特に尖閣諸島に突然一触即発の状況が起きた。

 ただ、そのとき、三千キロ離れた北方領土でロシアが演習を始めて、そこで、同時多発的に、三千キロ離れた尖閣諸島と北方領土で、オホーツク海の一部で、例えば、ロシアが中国に対して助太刀をするため、日本やアメリカを分散させるために、分断するために、例えばの話ですが、操業禁止だとか接近禁止の行動、要は、オホーツク近海の漁船を締め出したり、航行禁止だとなった場合、さらには、そのときに北朝鮮が弾道ミサイルを撃ってきたと。

 つまり、日本の北でも尖閣でも、あるいは北朝鮮のミサイルだとか、三方面から何らかの危機が起きた場合に、我が国はどう対応するのだろうか、これは非常に考えておかなければいけないことだと思うんですね。実際、そうやってボストークで合同演習していた、北方領土で初めて演習を行った。そのときに日本は、やはり、その三つの国から同時に脅威が与えられた場合に、我が国は同盟国と一緒にどう対応するか、その点については、防衛大臣、何らかの形でアメリカを始めとする国々と、そういう可能性も含めて、その場合どう対応するか、どういう役割分担でこれは検討されているんでしょうか。

浜田国務大臣 ロシアの軍事動向については、これは我々も頭に残っておるわけでありますが、ロシアが我が国周辺において軍事活動を活発化させる傾向にあって、近年は、中国軍と爆撃機の共同飛行や艦艇の共同航行を実施するなど、中国と軍事面での連携を強化しているのは事実でありまして、こうしたロシアの軍事動向は、我が国を含むインド太平洋地域において、中国との戦略的な連携と相まって、防衛上の強い懸念となっていると認識をしておるところであります。

 いずれにしても、我々とすれば、こういったあらゆる事態に対して対処できるように今後とも努力をしてまいりたいというふうに思います。

渡辺(周)委員 まだちょっとだけ時間がありますので、併せて、インドですね。ウクライナに行くときに岸田さんがインドに行かれた。インドも実は、大変、グローバルサウス、巨大な一国として存在感をますます示している。我々としても、当然様々なグローバル協定を結んで、この国とはやはり戦略的なパートナーシップを結んでいく。

 ただしかし、ボストーク二〇二二に、中国とともにインドも参加しているんですね。ロシアから石油が、ウクライナ侵攻前には五倍の輸入量になり、当然武器もロシアから買っている。対中国を考えたときには、インドはパートナーとしてやはり位置づけたいのだけれども、対ロシアを考えたときに、インドという立場はどうなんだろう。その点については、両大臣はどう見ていますか。

 だから、私たちはできるだけインドをそこから引き離す形で、こちら側陣営として、一緒にパートナーとして考えていくべきだと思いますが、対ロシアを考えたときに、インドという国とどうつき合っていくか、その点については外務大臣、いかがですか。

林国務大臣 インドは、やはり自由で開かれたインド太平洋実現に向けた重要なパートナーであります。

 今お話のあった総理の三月のインド訪問の際にも、モディ首相との間で、安全保障、経済、人的交流等の幅広い分野において、特別戦略的グローバルパートナーシップとしての日印関係を更に強化することを確認しております。その場合に、やはり、今お話があったロ印関係、これはいろいろな歴史的な背景もございます。

 したがって、このロ印関係の動向もしっかり注視しながら、様々な機会を捉えてインドと意思疎通を密に行っていく、これが非常に大事なことだと思いまして、そういった意味でも、クアッド等の枠組みを活用しながら適切にやってまいりたいと思っております。

渡辺(周)委員 終わります。

鬼木委員長 次に、赤嶺政賢君。

赤嶺委員 日本共産党の赤嶺政賢です。

 私の方からも、質問に入る前に、宮古島海域で起きた自衛隊の事故について、政府として、また防衛大臣としても、全力を挙げた捜索、そして救助に全力を挙げていただきますように心からお願いをしたいと思います。

 それでは、質問に移ります。

 アメリカによる中国の気球撃墜について質問をします。

 三月九日の当委員会で、この件に関する日本政府の公式な見解を確認しました。外務大臣からは、「各種の情報収集、分析を踏まえて、米国の立場を支持するに至った」との説明がありました。いかなる国によるものであれ、他国の領空を侵犯することが許されないことは、これはもう当然でありますが、今回の支持表明には様々な問題があるのではないかと思っております。

 初めに、国際法規、慣習の関係についてであります。

 大臣に確認しますが、米国防総省のライダー報道官は、二月三日の記者会見で、今回の気球が操縦可能なものであること、進路を変更しながら飛行してきたことを明らかにしています。

 アメリカ政府は、撃墜という判断を下す前に、中国政府に対し、進路の変更や退去を求める、あるいは安全な場所に着陸、着水させるなどの対応、これはどうだったのでしょうか。

岩本政府参考人 今委員から御指摘のありましたアメリカ政府の立場でございますが、その点、アメリカ側が対外的にも説明していることは承知をいたしております。

 その上で、アメリカ側が中国側とどのようなやり取りをしたのかということについては、我が国政府としてコメントすることは差し控えさせていただきたいと思います。

赤嶺委員 私が聞いたのは、今回の日本政府の支持表明、それとの関係で、アメリカ政府は撃墜する前に、進路の変更や着陸、着水させるなどの対応を取ったのか、この点を確認したいと思います。

岩本政府参考人 本件につきましては、アメリカ政府は、中国側によって容認し難い主権侵害が行われた、そうした上で、自国の主権や国民の安全を守るため、慎重かつ合法的に対処した旨説明しておると承知しております。

 我が国としましては、こうした説明を受けて、我が国として米国の立場を支持する、こういった立場を表明させていただいたところでございます。

赤嶺委員 非常に曖昧な説明なんですが、政府はこれまで、領空侵犯への対応は国際法規、慣習を踏まえて行われるべきものと説明してきました。具体的には、領空侵犯機に対し、領域外に退去するか最寄りの飛行場に着陸するよう警告、誘導を行い、侵犯機がこれに従わず、実力をもって抵抗してきた場合に初めて武器を使用できる、このようにしてきました。

 佐藤栄作首相は、一九六九年四月の衆議院本会議で、「まず警告し、退去を促すのが国際的慣行であると思います。いきなり撃墜する、かようなことはございません。」こういう答弁をしております。

 ところが、今回、アメリカ政府から中国政府に対し、進路の変更や着陸、着水をさせるなどの対応を要請したとの説明は行われておりません。

 それどころか、バイデン大統領は、気球について初めて説明を受けた二月一日に、できるだけ早く撃墜するよう命じた、このように明かしております。破片の飛散で被害が発生するおそれがあったことから、陸地上空では行いませんでしたが、海上上空に到達するや否や撃墜に踏み切りました。

 今回のアメリカ政府の対応は国際法規、慣習を踏まえたものとは言えないのではないかと思いますが、いかがですか。

岩本政府参考人 アメリカ政府は、中国政府が米国の許可なく米国の領空においてこの無人偵察用気球を使用して米国本土の戦略的拠点の監視を行ったとしております。

 これは米国の主権を侵害する違法な領空侵犯に当たりまして、また、そのような無人偵察用気球を破壊することは、アメリカが主権や国民の安全などを守るために必要かつ均衡の取れた措置であったと理解しておりまして、国際法上、十分正当化できると考えております。

赤嶺委員 今まで説明してきたことと違うわけですね。

 確かに、領空侵犯というのは、起こったときには主権を行使するわけですよ。その場合も、非常に慎重に、求めてきたわけですね。進路の変更だとか着陸、着水、こういう要請を国際社会は行ってきたわけですよ。当初から撃墜を命じ、実行した経緯から、今回のアメリカ政府の対応は国際法規あるいは慣習を踏まえたものとは言えないということをまず指摘しておきたいと思います。

 次に、これまでのアメリカ政府自身の行動との関係についてであります。

 戦後、アメリカは、他国の軍事施設の偵察を目的に、領空侵犯を繰り返してきました。

 皆さんのお手元に資料をお配りしていますが、「領空侵犯の国際法」という一九九〇年に発刊された書籍があります。これに基づいて、戦後の各国による偵察目的の領空侵犯の件数を集計したものであります。最も多いのはアメリカで四十九件、次が旧ソ連で三十五件、あとは一から二件となっております。これは一九九〇年当時の数字でありますが、外務大臣、戦後アメリカが偵察目的の領空侵犯を繰り返してきた事実は、これはお認めになりますか。

林国務大臣 今お話のありました米軍航空機等の飛行の逐一が他国に対する領空侵犯であったかどうか等については、外務省としてお答えする立場にはないということでございます。

赤嶺委員 曖昧ですけれどもね。アメリカ政府自身も認めている二つの事例があります。一つが、ゲネトリクス計画です。一九五六年にアイゼンハワー政権が四百四十八機の偵察気球をヨーロッパからソ連や中国の上空に飛ばし、そのうち四十機を回収したというものです。アメリカ空軍が空軍の歴史をまとめた一九九七年の文書などでも飛行の事実は記載をされております。

 もう一つは、一九六〇年に、これはもう有名な事件ですが、ソ連上空を偵察飛行中のU2の偵察機が撃墜された事案であります。アメリカ政府は当初、気象観測用の航空機が行方不明になっていると説明をしましたが、ソ連が領空侵犯をした米軍機を撃墜したと公表し、生き残った米軍兵士の供述も明らかにされたことから、アメリカ政府はその事実を認めました。

 こうした歴史的な経緯がありながら、今回の撃墜に対して、理解にとどまらず、日本政府が支持まで表明するというのは、アメリカのダブルスタンダードを追認してしまうことになるのではないかと危惧いたしますが、いかがですか。

宮本政府参考人 お答え申し上げます。

 今言及のございました幾つかの例に関しましても、我が国は当事国ではございませんので、個々の具体的な事案について詳細に確認することができませんことから、外務省としてお答えすることは差し控えたいと思います。

 いずれにしましても、今議論されております気球の事案に関しましては、事柄の性質上、詳細についてお答えすることは差し控えたいと思いますけれども、各種の情報収集、分析を踏まえて、我が国として米国の立場を支持するに至ったものでございます。

赤嶺委員 今私が紹介した二つの事例というのは、アメリカ自身も認めていることなんですね。アメリカ自身が領空侵犯を繰り返してきた事実を脇に置いて、支持まで表明するというのは、私は妥当な対応ではないと思います。日本は当事国ではないのでと言いますが、この事件で指摘しておかなければいけないのは、こうした米軍による領空侵犯行為と日本は無関係ではありません。

 ゲネトリクス計画で気球の回収に当たったのは在日米軍と指摘をされております。U2偵察機は、撃墜される前の年の一九五九年、神奈川県の藤沢飛行場、当時の藤沢飛行場に燃料切れで不時着したのと同一の機体でした。国籍不明の黒いジェット機と言われ、国会でも問題になりました。米軍基地を提供することで、こうした国際法違反の領空侵犯行為に手をかしてきた事実に目をつむることは私は許されないということを指摘しておきたいと思います。当事国ではないからという言い分は通用しません。

 もう一点伺いたいのは、撃墜という行為が問題の解決に資するのかということです。

 中国政府は当初、民間の気象研究用の飛行船だと主張し、偵察目的自体は認めませんでしたが、それでも、遺憾を表明し、米側と意思疎通を保ち、適切に対処すると述べていました。ところが、アメリカ政府が撃墜に踏み切って以降、国際慣例に反するとして強い不満と抗議を表明し、事実の究明と再発防止どころか、米中間の話合い自体が成り立たない事態になりました。

 撃墜という行為を選択したことが問題の解決を逆に遠ざける結果になっているのではないかと思いますが、外務大臣、いかがでしょうか。

林国務大臣 本件につきましては、米国は引き続き調査を行っておると承知をしておりまして、今のお話、御指摘のあったことについて予断を持ってお答えするということは差し控えたいと思います。

 その上で、本件につきましては、米国政府は、米国の許可なく米国の領空に侵入した本件無人偵察用気球、これは、中国政府が米国領空において米国本土の戦略的拠点を監視する目的で使用したものでありまして、自国の主権や国民の安全を守るため慎重かつ合法的に対処したと説明をしておると承知をしておりまして、こうしたアメリカの立場を我が国として支持をしておるということでございます。

赤嶺委員 どの国が行おうとも、領空侵犯はその国の主権を侵すもので、許されるものではありません。ただ、それの解決の仕方、そこは今までの国際法や慣例とも違うやり方を取っている、それが問題の解決を複雑にしているということを申し上げているわけであります。

 幾つかの点からただしてきましたが、今回の支持表明は、私はどこから見ても妥当性を欠くものだったと思います。日本政府は、アメリカの行動を支持するという対応に終始するのではなくて、これまでの歴史的経緯も踏まえて、いかなる国もお互いに国際法に反するようなことはやらないということを共通の認識にしていくための外交的な後押しこそやるべきであります。それが日本に対して同様の行為を繰り返させないことにもつながっていくと思います。いかがですか、大臣。

林国務大臣 先ほど申し上げたとおり、米国はまだ調査を行っておる段階でございます。

 我が国の立場、なぜ支持したかということは先ほど申し上げたとおりでございます。その申し上げた立場にのっとって、しっかり対応してまいりたいと思っております。

赤嶺委員 最後に防衛大臣に伺います。

 防衛省は、今回の撃墜を反面教師にするどころか、自衛隊も同様の行為が可能とする見解をまとめました。対領空侵犯措置の一環として防衛省が今回取った措置は、従来の正当防衛、緊急避難に該当しなくても、無人の気球や飛行船に対して武器を使用できるというものです。

 そもそも、領空侵犯措置における武器使用は、法律に明文化されたものではありません。政府の解釈で「必要な措置」という規定の中で読み込んでいるだけにすぎません。

 なぜ、政府の一方的な解釈変更で自衛隊の武器使用を拡大できるんですか。

浜田国務大臣 従来から政府は、国会での議論に際し、小型無人機を含めた外国の航空機による我が国の領空への侵犯に対する対処に万全を期すため、その在り方について不断の検討を行っている旨答弁しているところであります。

 今般検討を行った結果として、領空侵犯をする気球を含む無人の航空機についての整理を示したものであり、政府見解を変更するものではありません。そのため、必ずしも国会での議論を経て決めるべきものとは考えておりませんが、今後とも、国会の場を含め、丁寧に説明してまいりたいと考えておるところであります。

赤嶺委員 終わります。

鬼木委員長 次回は、公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。

    午後零時十一分散会


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