衆議院

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第10号 令和5年4月21日(金曜日)

会議録本文へ
令和五年四月二十一日(金曜日)

    午前九時開議

 出席委員

   委員長 鬼木  誠君

   理事 大塚  拓君 理事 國場幸之助君

   理事 宮澤 博行君 理事 若宮 健嗣君

   理事 伊藤 俊輔君 理事 篠原  豪君

   理事 三木 圭恵君 理事 浜地 雅一君

      江渡 聡徳君    大岡 敏孝君

      木村 次郎君    小泉進次郎君

      鈴木 憲和君    渡海紀三朗君

      中曽根康隆君    中村 裕之君

      鳩山 二郎君    細野 豪志君

      松島みどり君    松本  尚君

      三谷 英弘君    盛山 正仁君

      山本ともひろ君    新垣 邦男君

      玄葉光一郎君    重徳 和彦君

      渡辺  周君    浅川 義治君

      市村浩一郎君    河西 宏一君

      斎藤アレックス君    赤嶺 政賢君

    …………………………………

   防衛大臣         浜田 靖一君

   外務副大臣        山田 賢司君

   防衛大臣政務官      木村 次郎君

   政府参考人

   (内閣官房内閣審議官)  加野 幸司君

   政府参考人

   (防衛装備庁長官)    土本 英樹君

   政府参考人

   (防衛装備庁装備政策部長)            萬浪  学君

   政府参考人

   (防衛装備庁プロジェクト管理部長)        坂本 大祐君

   政府参考人

   (防衛装備庁技術戦略部長)            堀江 和宏君

   政府参考人

   (防衛装備庁調達管理部長)            森  卓生君

   安全保障委員会専門員   奥  克彦君

    ―――――――――――――

委員の異動

四月十九日

 辞任         補欠選任

  長島 昭久君     三谷 英弘君

  赤嶺 政賢君     宮本  徹君

同日

 辞任         補欠選任

  三谷 英弘君     長島 昭久君

  宮本  徹君     赤嶺 政賢君

同月二十一日

 辞任         補欠選任

  小泉進次郎君     松本  尚君

  武田 良太君     鳩山 二郎君

  長島 昭久君     三谷 英弘君

  松島みどり君     盛山 正仁君

  美延 映夫君     市村浩一郎君

同日

 辞任         補欠選任

  鳩山 二郎君     武田 良太君

  松本  尚君     中村 裕之君

  三谷 英弘君     長島 昭久君

  盛山 正仁君     松島みどり君

  市村浩一郎君     美延 映夫君

同日

 辞任         補欠選任

  中村 裕之君     小泉進次郎君

    ―――――――――――――

四月二十日

 平和、命、暮らしを壊す大軍拡、大増税に反対することに関する請願(塩川鉄也君紹介)(第九四九号)

 同(小宮山泰子君紹介)(第九五六号)

は本委員会に付託された。

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 政府参考人出頭要求に関する件

 参考人出頭要求に関する件

 防衛省が調達する装備品等の開発及び生産のための基盤の強化に関する法律案(内閣提出第二〇号)


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     ――――◇―――――

鬼木委員長 これより会議を開きます。

 内閣提出、防衛省が調達する装備品等の開発及び生産のための基盤の強化に関する法律案を議題といたします。

 この際、お諮りいたします。

 本案審査のため、本日、政府参考人として内閣官房内閣審議官加野幸司君、防衛装備庁長官土本英樹君、防衛装備庁装備政策部長萬浪学君、防衛装備庁プロジェクト管理部長坂本大祐君、防衛装備庁技術戦略部長堀江和宏君、防衛装備庁調達管理部長森卓生君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

鬼木委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

鬼木委員長 これより質疑に入ります。

 質疑の申出がありますので、順次これを許します。宮澤博行君。

宮澤委員 おはようございます。自由民主党の宮澤博行でございます。

 もろもろの前置きを全て省略をいたしまして、早速質疑に入ってまいります。よろしくお願いいたします。

 今回は防衛装備品生産基盤強化法ということですけれども、この内容を一生懸命読んでみても、なかなか法律用語は難しいんですね。

 柱といったら三つだと思います。製造と移転の支援、二つ目は秘密の保全、三つ目は撤退の防止、もうここに尽きると思うんですよね。

 それで、その主体に関しても、装備品製造等事業者が装備品安定製造等確保計画を提出すると認定装備品安定製造等確保事業者になって財政上の措置が得られる。二点目は、装備品製造等事業者が装備移転仕様等調整計画を出すと認定装備移転事業者になる。三点目は、指定装備移転支援法人がある。

 まあ、なかなか難しい内容です。でも、内容としては、制度としては、私はこれは是認できるものだと思います。だからこそ、私たちは、器はこれでいいにしても、その中身について議論を深めていかなければなりません。その中身というのは、はっきり言って需要なわけなんですよね。

 国内の需要を見てみると、これはもう予算でやって、防衛力整備計画につながってくる。それが基になっている。もう一つは、国外の需要、これが装備移転ということなんですね。

 自民党の提言においても、政府が司令塔としての役割を果たすということと、幅広い分野の装備の移転を可能とする制度の在り方について検討する、この二つを提言させていただきました。

 そういうわけにおいて、政府の方においても、国家安全保障戦略における記載、確かに、「防衛装備移転三原則や運用指針を始めとする制度の見直しについて検討する。」と明記をされております。

 これについて、今、いかほど検討がなされているのか。そして、我々の提言を受け入れてくれたことは大変ありがたいんですけれども、政府の中での議論は一体どういうものだったのか。これについて、まずは御答弁をいただきたいと思います。

加野政府参考人 お答えを申し上げます。

 昨年末に新たに策定されました国家安全保障戦略でございますけれども、こちらにつきましては、国際秩序が重大な挑戦にさらされる中、我が国は戦後最も厳しく複雑な安全保障環境に直面しているという認識の下で策定されたものでございます。

 このような状況において我が国の国益を守っていくための取組の一つとして、防衛装備移転三原則等の見直しの検討を含めた防衛装備移転の推進が、この国家安全保障戦略に位置づけられたところでございます。

 その上で、この防衛装備移転でございますけれども、特にインド太平洋地域における平和と安定のために、我が国にとって望ましい安全保障環境の創出や、国際法に違反する侵略を受けている国への支援などのための重要な政策手段となるというふうに考えているところでございます。

 防衛装備移転三原則やその運用指針を始めとする制度の見直しにつきましては、こうした観点から今後議論を進めていく必要がある、このように考えているところでございます。

宮澤委員 中身についてはいろいろございますので、これから私も与党の一員としてきちんと議論に参加をさせていただきたいと思いますので、よろしくお願いします。

 もう一点目の論点である司令塔としての政府、これについて、いかほど内容が進んでいるのかについてお聞きしますけれども、まずは、移転担当部署、これはどういうふうに準備されているんでしょうか。進んでいるんでしょうか。

 そして、二点目は需要、海外にどういう需要があるのかについて、どういうふうに調査をしているのか。

 そして、もう一点目は、やはりこれはトップセールスでいかなければいけないと思いますよね。副大臣、大臣、できれば総理、こういったところがきちんとトップセールスをしていくことも需要創出に重要だと思いますけれども、この三点についてどう準備が進んでいるのか、お答えいただきたいと思います。

浜田国務大臣 防衛装備移転については、政府が主導し、官民一層の連携の下に推進をしていく考えであり、防衛省としても、これまでも様々な取組を行ってきたところであります。

 まず、担当部署については、装備移転の推進を組織面から強化すべく、昨年四月、防衛装備庁内において、防衛装備移転の推進に関わる企画立案機能の強化を行ったところであります。今後も引き続き、体制の強化について検討してまいりたいと思います。

 次に、需要の調査については、これまで、消費者の持つネットワークを活用し、相手国の潜在的なニーズの把握を行う事業実現可能性調査、FSなどを進めてきており、今後とも取組を推進していく考えであります。

 さらに、トップセールスについては、私を含め、各国とのハイレベル交流の機会を捉えて、装備移転の推進について議論してきており、引き続き、こうした機会を最大限活用していきたいと考えております。

宮澤委員 まあ、少しずつ進めていってください。様子を見ながら、我々も与党としてきちんと議論に参加し、プッシュをしていきたいと思います。

 ですけれども、そのときに、海外でこういう需要があるなあ、ああ、そうか、それへ対応していこうというのもいいかもしれませんけれども、重点的にこの装備だけはきちんと移転していこうじゃないか、そういう項目もあっていいと思うんですよね。他国に対して、もう既にレーダーの装備が移転されている、さらには、日本の世界最高水準の技術といたしまして飛行艇、US2なんというのがある、さらには、今、次期戦闘機の開発も進んでいる。やはり、私は、この三つはかなり重点的に推し進めていってもいいと思いますけれども、政府に、何か、これはやっていこうという重点的な品目があったら是非披瀝していただきたいんですが、いかがでしょうか。

浜田国務大臣 委員御指摘の点について、我が国は、二〇一四年の防衛装備移転三原則の策定後、民生品の製造業における高い技術水準や産業競争力等を背景といたしまして、米国のみならず、英国やオーストラリアなどの先進国を中心に、御指摘の次期戦闘機も含めて、国際共同研究を進めてきておるところであります。

 また、完成装備品の移転についても、現在、艦艇、航空機、レーダー等について、諸外国からの引き合いを受けているところであり、まずは、これら引き合いの受けている案件を一つでも多く実現できるように、しっかりと取り組んでまいりたいと考えております。

宮澤委員 ありがとうございました。

 大臣、通告外ではありますけれども、ちょっと根本的なところをお聞きしたいと思います。

 今日、私たちは靖国神社に参拝をしてまいりました。さきの大戦、八月十五日で戦闘が終わったわけではないということは、大臣も御存じですよね。いかがでしょうか。

浜田国務大臣 終わったわけではないということは、意味をちょっと私が今理解できておりませんけれども、我々、この敗戦を機に、我々として学んだこと、これをしっかりとやっていくことが、今の我々に課せられた件だというふうに思っております。

宮澤委員 通告外で大変失礼いたしました。

 内蒙古においても、八月十五日を越えてもソ連軍の侵攻があり、その内蒙古に住んでいた日本人を退避させるために、二十日過ぎまで日本軍がソ連軍の撃退のために戦っていた。南樺太においても、相当の日本人が住んでおりましたけれども、北海道に退避させるために、日本軍が十五日以降も、二十日過ぎまで一生懸命戦っていた。そして、満州においては、これは軍が、なかなか混乱の中で、いろんなことがあったでしょうけれども、うまくソ連軍を撃退することができず、結局、日本人に様々な被害が出てしまった。言ってみれば、この十五日から戦艦ミズーリの調印までの九月二日の間にいろんな出来事があったわけでございます。国内の戦争継続派もいた、ソ連軍の北海道侵攻目的もあった。

 その中で、ひとつ大臣に、お耳に入れておきたいんですが、八月十九日から二十日にかけて、降伏文書をマニラに取りに来いということがございました。陸軍の飛行機を白く塗って、緑で十字を書いて、緑十字機と呼ばれるわけなんですが、これが木更津から沖縄の伊江島に飛び、伊江島からアメリカ軍の飛行機でマニラに飛び、そこで降伏文書を受け取って、八月二十日、伊江島を出発して東京に向かったんですが、その途中、原因不明の燃料切れでもって、静岡県磐田市の遠州灘海岸に不時着をしております。地域の住民が駆けつけてそれを救出し、今の浜松基地、陸軍浜松飛行場から、実は飛行機に乗って厚木に到着し、この降伏文書を東京に届けたんです。国内の戦争継続派、そしてソ連の侵攻を防ぐために、早く降伏の日取りを決めなくちゃいけなかったという背景があります。

 こういう事例があったというのは、大臣、お耳にされたことはございますでしょうか。

浜田国務大臣 今、委員の御説明を聞いたところであります。

宮澤委員 なぜ私がこういったことを申し上げたかといいますと、先ほど申し上げた内蒙古における八月十五日以降の戦闘、そして樺太における八月十五日以降の戦闘、さらには、満州における様々な混乱、私といたしましても、武器のない世界、軍隊のない世界というものは人類の究極の目標であって、絶対その理想は捨ててはいけないと思います。しかしながら、当時のことも、そして今を見てみても、防衛力というものがきちんと整備していなければ、国民の生命財産を守り切ることができない。それを如実に表すのが、八月十五日から八月二十日過ぎまでの出来事であるというふうに思っております。

 是非、政府におかれましても、そして防衛大臣におかれましても、理想は捨てないけれども、防衛力を整備することによって安定性を保ち、平和をつくり出すことができるという基本的な考え方、理想は捨てないけれども、それが現実であるという考え方を持ち続けていただきたいと思いますが、大臣、どのようにお考えでしょうか。

浜田国務大臣 我々は、常に平和というものを考えて、今までも、これからも、対応していくことは極めて重要だと思っておりますし、今委員から御指摘のあった点についても、我々とすれば、肝に銘じて、しっかりとこの体制を取ってきたというふうに考えているところであります。

宮澤委員 そういう点からも、もう一遍、この生産基盤強化法に話を戻していかなければなりません。

 私たちが今抱えているのは、さっき言った、国内の需要と海外の需要をいかにしっかりやっていくかであります。国内の需要においては、ちゃんと予算を拡大し、防衛力をしっかりと整備していくこと、そして、海外の需要をきちんと取り込んで、防衛産業を育成していくということにあるわけでございます。

 そしてもう一つは、やはり継戦能力というものも今後高めていかなければならないわけなんですけれども、それについて、今回、この生産基盤の中において、どのようにつくられているのか。

 つまり、私はこの前、昨年、フランスに行ってまいりました。様々な在庫品はどうなっているのかについては、在庫は軍の管理であって、装備庁は、実は、生産能力の継続というものは非常に重要であるというふうに答弁があったわけでございます。やはり今回は、正面装備だけではなく、そういった継戦能力についても充実させていかなければいけません。

 この法律において、そういったところまでちゃんとケアできるかどうなのか、それについてもちょっと深掘りをしなければいけませんが、大臣、どのように考えていらっしゃいますか。

土本政府参考人 お答え申し上げます。

 この法律におきまして、委員御案内のとおり、財政上の措置という項目がございます。その中におきまして、例えば供給網の強靱化とか製造工程効率化のための措置ということで、これらにつきまして、例えば財政上の措置、予算的な支援ができるという枠組みになっております。

 これは継戦能力の分野に限ったわけではございませんが、当然、継戦能力の分野も含めてこういう措置が取れるということでございますので、この法律におきまして、そのような形でしっかり対応ができることになる分野があると考えているところでございます。

宮澤委員 しっかりとやっていただきたいと思いますし、私も、この議論、そして準備について、きちんと与党としてサポートさせていただきますので、今後ともよろしくお願い申し上げます。

 以上で質問を終わります。ありがとうございました。

鬼木委員長 次に、河西宏一君。

河西委員 おはようございます。公明党の河西宏一でございます。

 まず冒頭、この度の陸上自衛隊ヘリコプター事故、殉職をされた隊員、御家族、御関係者の皆様に心からお悔やみを申し上げる次第でございます。

 また、昨日、浜田大臣は、情勢が悪化するスーダンの邦人退避に備えまして、自衛隊機のジブチ派遣と待機を命ぜられました。いずれにしましても、最良の結果となるように祈念を申し上げまして、質疑に入らせていただきます。

 本日は、防衛産業の、また技術基盤、維持強化に資する法案の審議でございます。最初に、防衛産業の人材確保にも影響を与えます企業イメージに関連してお伺いをいたしたいと思います。

 先日、ある関連企業の方から、この企業、防衛省と一定の契約を交わす企業でありますけれども、これまでは、企業イメージが悪くなるからという理由で、この春までは部署名に防衛部門を明記してこなかったという話、これは直接お話を伺いました。

 また、人材を送り出す工業高校などでも、やはり、とかく生徒の親御さんとか教員の方、防衛産業にマイナスイメージを持たれている方も少なからずいらっしゃる、これが人材確保にも影響を及ぼしているということで伺っております。

 他方で、別の防衛関連企業の工場長から伺ったお話でありますけれども、コロナ対応で二交代制を余儀なくされた、そのときに社長から、我々防衛産業に従事する者は我が国のエッセンシャルワーカーであると断言をしてもらったことにいたく感動してコロナ禍を耐え抜くことができた、こういったお話でありました。改めて、組織のトップリーダーの言葉というのは非常に大切だと痛感をいたしたところでございます。

 そこで、まず冒頭、大臣に、この四月、入社式のシーズンでもございまして、是非、防衛省のトップである浜田大臣から、今回防衛関連企業に晴れて入社をされた新入社員の方々、今きっと理想と現実の壁にもぶつかっていらっしゃると思いますけれども、その方々へのメッセージとの意味合いも込めまして、我が国の防衛産業に対する思い入れ、できれば大臣御自身のお言葉を交えながらお聞かせいただきたいと思いますが、どうぞよろしくお願いを申し上げます。

浜田国務大臣 我が国の防衛産業は、自衛隊の任務遂行には不可欠な装備品のライフサイクルの各段階を担っており、いわば我が国の防衛力のそのものだというふうに考えます。防衛産業に携わる一人一人の努力が、我が国の平和と安全を支えているというふうに考えております。

 そのため、防衛省としては、我が国の防衛産業が、そこで働く従業員の方にとっても魅力的で、活力のある職場であることが必要であると考えております。私も、本年一月に主要プライム十五社の社長との意見交換を行うなど、様々な場でその旨を表明しているところであります。

 これらの認識の下に、力強く魅力的で持続可能な防衛産業を構築するため、本法案を含めた各種取組を政府横断的に進めてまいりたいと考えているところであります。

河西委員 大臣、大変にありがとうございました。私も、お話を伺った関連企業の皆様にも今の大臣のお言葉をしっかりお伝えをしていきたいというふうに思っております。

 次に、サイバーセキュリティー対策について伺ってまいります。

 本法案、関連企業の皆さんは一様に大きな期待を持たれておりますけれども、一方で、サイバーセキュリティー強化に関しましては、プライム企業ならまだしも、ベンダー企業、どこまで対応していけるのかということで、一部御懸念の声も伺っているところでありますので、この点、各論になりますけれども、ここからは土本長官の方にお伺いをしたいと思っております。

 既に防衛省は、米国が適用するNIST・SP800―171、御案内のとおりでございますけれども、これを基に、従来の基準を高度化した防衛産業サイバーセキュリティ基準、この基準を今年度の契約から適用する、こういう方針をお示しになっております。

 その上で、本法案の財政措置、第七条の対象でありますけれども、自衛隊の任務遂行に不可欠な指定装備品等を製造する事業者、ここに対しましては、第一義的には、事業者がセキュリティー対策に関する計画、これ以外の計画もあり得るわけですが、この作成、提出をいたしまして、大臣の認定を受ける、手挙げ方式になっております。

 一方で、本法案で言う適確な調達に支障が生ずると認められるときは、大臣が計画の作成、提出を事業者に促せる仕組み、こういった仕組みも設けられているわけでございます。

 これは、関連企業が、安全保障上機微な情報、注意情報など、これ以上の情報を取り扱うケースなどが考えられるわけでありますけれども、いずれにしましても、促せる仕組みがある点、これは企業の皆様にもよく御認識をいただく必要があるんだろうというふうに思っております。

 加えまして、特に、間接契約のベンダー企業からすると、どこまでの対象、どこまでのレベルになってくるのか、こういうふうなことで関心が向くわけでございます。

 そこで伺いますけれども、政府は、まず今年度予算として、本法案を踏まえたサイバーセキュリティー強化に四十三億円を計上しておりますけれども、まず、この対象範囲となる企業、どこまでか、お伺いしたいというふうに思います。また、来年度以降、この新基準の遵守を求めるベンダー企業、どの程度の範囲まで及んでいくのか、御見解をいただきたいと思っております。

土本政府参考人 お答え申し上げます。

 防衛省の保護すべき情報を取り扱う企業のうち、令和五年度におきまして本措置が対象となる企業は、約百社程度を想定しているところでございます。

 委員御指摘の、来年度以降といいますか、今後の保護すべき情報を取り扱う企業数につきましては、装備品等に関する調達契約の内容等によるため、一概に予測することは困難でございますが、サイバー攻撃等のリスクが高まり、装備品等の内容も高度化していく昨今におきましては、その数は今後も増加するものと考えているところでございます。

河西委員 ありがとうございます。

 旧基準に今適用されているのが大体二百社と伺っておりますけれども、まずその半分を対応していかれるというふうに理解をいたしました。

 次に、新基準の中身についてお伺いいたします。

 一般に、国内企業が取得してきた情報セキュリティー基準の代表的な国際規格は、ISO27001があります。このISOですら、昨年九月時点の取得の企業数、七千二十七社ということでございます。全体からすれば〇・数%、恐らく、大企業は一万二千社ありますので、多くが大企業なんだろうというふうにも思っております。

 その上で、防衛関連企業と防衛省の契約におきましては、令和四年度までは、今申し上げましたISOの、それを基に定めた改正前の基準を適用しているわけでありますけれども、令和五年度からは、今ほどありました令和五年度の契約から、より高度な防衛産業サイバーセキュリティ基準が求められるわけであります。

 そこでお伺いをしますけれども、防衛省の契約で適用する改正前の旧基準と新基準、比較をいたしますと、企業側の対応、どのように異なってくるのか、認識をされているのか、長官にお伺いをいたします。

土本政府参考人 保護すべき情報を取り扱います防衛産業の企業に対し、令和五年三月まで適用していた基準では、ネットワークに外部からのサイバー攻撃の侵入を防止するといういわゆる水際措置、これを重視しておりました。

 他方、令和五年四月から適用しています防衛産業サイバーセキュリティ基準につきましては、従来の対策に加えまして、サイバー攻撃等による保護システム内部への侵入が起こり得ることを踏まえた平素からの備えや、サイバー攻撃を受けた後の対処について、より具体化しているというものでございます。

 このため、企業各社は、防衛産業サイバーセキュリティ基準に従いまして、契約を履行する際に使用する情報システムにつきまして、通信記録の分析や定期的に対処テストを行う等、強化されたセキュリティー対策を講じることになると考えておるところでございます。

河西委員 御答弁ありがとうございます。

 旧基準では、水際対策、しっかり抑止をしていくということでありますが、新基準では、事案が起きた後の対処、安全保障でいえば対処力、そういったことにもきちっと対応を取っていくということでありまして、かなり対策の中身としてはジャンプアップをしていくというふうにも思っております。

 実は、私自身も民間時代、ある法人の情報セキュリティー基準の策定ですとか、また、このセキュリティー対策は、重要なのは決まりだけではなくて、専門組織が不可欠になってまいります。その立ち上げに携わった経験があります。

 当時のことも振り返りまして、新基準の手本となりました米国の171、拝見をいたしました。

 例えば、インシデント対応には、これは和訳でありますけれども、準備、検知、分析、抑制、回復及びユーザー対応を含めて組織のシステムに運用状態のインシデント対応能力を確立をする、少し難しい表現でありますけれども、このようにあります。

 加えまして、今長官がおっしゃった、起きた後、インシデントの追跡、また文書化をして、組織内外の指定された職員又は機関に報告をするということであります。やはり、こういった起きた後の対応をしていくためには、専門部署、これは必ず不可欠になってくるんだろうというふうに思います。

 専門部署ということを考えますと、気になるのが、プライム企業はそれなりに多くの社員数がいますので、恐らく対応はできるんだろうというふうに思っております。ただ、ベンダー企業の、三次、四次とかその先に行きますと、中小企業の皆さんも多くいらっしゃいますので、人手に余力はございませんし、今、全産業、人材また人手不足、これは深刻な課題になっております。

 さらに、加えまして、今後、新規参入ですね。今、スタートアップ企業の皆様の中でも、安全保障、しっかり防衛産業で頑張っていこう、あるいはデュアルユースで頑張っていこう、そういった高い意思を持たれている方も多くいらっしゃるというふうにも伺っております。ですので、新規参入となりますと、旧基準はもちろん、ISOすら対応していない中で、この新基準に今度は対応していく、こういった場合も発生をしてくるわけであります。

 いずれにしましても、新たな附帯業務、附帯人材、そして附帯システムも発生をしてまいります。コストでいえば、イニシャルコストに加えて、ランニングコストが、もうずうっとかかってくるわけなんですね。

 そこで、やはり気になるのは、財政措置だけで足りるんだろうかということであります。特に、防衛事業のみで成り立つ会社でない場合は、財政措置があったとしても、新基準で高度なセキュリティー対策が求められることを理由に、場合によっては防衛事業から撤退するベンダー、これはまあそうであってほしくないんですけれども、あるいは新規参入をためらうベンダーが出てくるのではないか、こういった可能性もあるんじゃないかということを、私も、直接現場に伺ったときに伺いました。

 こういった御懸念につきまして、防衛省又は装備庁としてどのように認識し、また対応されていくのか、お伺いをしたいというふうに思っております。

土本政府参考人 お答え申し上げます。

 現在、防衛省、防衛装備庁におきまして、企業が自ら行っていただく対策に関しまして、様々な措置を用意させていただいているところでございます。

 まず、第一点目でございますが、第一には、その対策経費を、防衛省と当該企業との、装備品等に関する直接の調達契約の中で支払うものとして、五百二十六億円の予算措置を五年度、つくらせていただいております。

 第二番目といたしまして、例えば、防衛省と直接契約関係のない下請企業に対しましても、この法律案に基づく財政上の措置として必要な経費を支払うものとして、委員、冒頭御指摘がありました四十三億円、計上させていただいておりまして、サプライチェーン全体のサイバーセキュリティー対策を確実に措置することとしております。

 これに加えまして、第三番目の措置といたしまして、官民共用クラウドを防衛装備庁におきまして整備することで、事業者自らが多額の設備投資等を行わなくても、これを利用してサイバーセキュリティーを確保することができるようにするための経費として、約四百四十一億円を計上しているところでございます。

 このように、防衛産業の企業の態様に応じましてサイバーセキュリティー対策を進めていただけるよう、ある意味、三種類の措置を用意させていただいているというところでございます。

河西委員 今御答弁があった本法案の財政措置、契約で対応する五百二十六億円の部分ですね。三番目にあったクラウドの提供、これは非常に大事だというふうに思います。非常に重要な施策で評価をいたします。

 その上で、それでも手の届かない人材の確保、育成なんですね、ここを最後にお伺いをしたいと思います。

 ちなみに、従前のISOの認定を行うISMS認定センターの調査が、これは二〇一八年、少し前ですが、国内企業千百八十社に対して行っております。認証の取得や維持に関する主な課題は何かということで、最多が六三・六%のマンネリ化、形骸化、私もこれは経験をいたしました。二番目が五七・一%の人材確保、育成なんです、これがやはり大変である。これは多くが中堅から大企業の回答と思われますので、中小企業であれば、これは一層厳しいものになるんだろうというふうに思っております。

 また、セキュリティー対策は、御案内のとおり、常に変化し、進化が求められます。最近議論になっています生成系AI、これに対する対応も、恐らくいろいろ出てくるんだろうというふうに思っております。

 最後に伺いますが、この新基準にベンダーの中小企業が対応する際の人的支援とか実務上の支援、何らかのスキーム、これを不断に検討してはどうかということであります。また、対応する防衛装備庁の人員も、場合によっては拡充をする必要性も出てくるのではないか、このように考えますけれども、現状のお考え、お伺いをしたいと思います。

土本政府参考人 中小企業を含めました防衛産業の企業において防衛産業サイバーセキュリティ基準に対応するための支援の一つとしまして、まず、防衛装備庁におきまして、令和四年四月に相談窓口というものを設置いたしまして、企業からの御相談を受けるということをしている。これに加えまして、令和四年度、サイバーセキュリティー対策強化事業というものを予算化しまして、中小企業への脆弱性診断、教育支援、各種助言等を行ってきたというところでございます。

 本法律案のサイバーセキュリティー強化の特定取組は、人材育成を含めた事業者の取組を対象としており、中小企業におけるサイバーセキュリティー強化も確実に推進してまいる所存でございます。

 あと、装備庁といたしましては、引き続き、防衛産業の企業において、その態様に応じたサイバーセキュリティー対策を円滑に行うことができるよう、企業からの御相談などに適切に対応するために必要な体制整備というものを進めてまいる所存でございます。

河西委員 御答弁ありがとうございました。

 いずれにしましても、現場とよくコミュニケーションを取って、この法案の措置、推進をしていただきたい、そのことをお願い申し上げまして、質問を終わります。

 ありがとうございました。

鬼木委員長 次に、篠原豪君。

篠原(豪)委員 おはようございます。篠原豪でございます。

 本日も質問させていただきます。ありがとうございます。

 防衛装備品の開発、生産のための基盤強化法ということで、大事な法律でありますので、やはり充実した内容の審議というのは大事だと思っていますので、どうぞよろしくお願いします。

 冒頭、二点。宮古島のヘリの問題がございます。まだ、残念ながら消息が分からない方々もいらっしゃいますし、何よりも御家族の方々が大変な心配をされていると思っております。それに対しましては、防衛省は、あらゆる手だてと、全力でサポートをしていただきたいというふうに思っていますので、どうぞよろしくお願い申し上げます。

 そしてもう一つ、スーダンの救出についても、ハルツームの空港は今状況が非常に厳しいといったような報道もありますので、これに対しましては、我が国としては、できることは全力でやっていただきたいと思いますし、また、その法律要件等々もありますので、そこについてもしっかりと見ていただいて、万全の対応を取っていただきたいと思います。

 この二点について、済みません、通告はしていないんですけれども、一言いただければと思いますので、よろしくお願いします。

浜田国務大臣 宮古島の事故の件については、大変お心遣いいただきまして、ありがとうございます。我々とすれば、一刻も早くこれを、全員の帰還を目指して今後ともしっかりと対応していきたいと思いますし、また、御家族の皆さん方にも逐次、我々、情報提供、そしてまた、いろいろな面での支援をさせていただいているところでありますので、更に一層努力してまいりたいというふうに思います。

 そして、スーダンの件については、我々として、準備するものはしっかりと準備をして、今御指摘のあったハルツーム空港の件についても、やはり今、大変、そういう意味ではまだ安定化していないというのも事実だと思いますので、このタイミング、そしてまた、いかなる動きになっていくのかを精査して対応していきたいというふうに考えておるところであります。

篠原(豪)委員 是非よろしくお願いします。

 やはり、我々が守らなければいけないのは、我が国の国民の生命そして安全、安心というものを、これは隊員の皆さんもそうですし、海外にいらっしゃる皆さんも守っていただくということは本当に大事なことだと思いますので、どうぞしっかりとした対応をよろしくお願いします。ありがとうございます。

 それでは、法案について、中身について聞かせていただきます。

 まず、防衛産業の役割、これは製造だけではないんじゃないかということについてお伺いさせていただきます。

 防衛省によりますと、二〇〇三年以降、撤退された防衛産業に関わる企業が百社を超えるということで聞いております。防衛産業は防衛力を支えるインフラであり、そのインフラが弱体化すると防衛力も十分な能力が発揮できないということは、もう明らかだと思います。

 そのために、今回の基盤強化法では、装備品の製造企業に対して、原材料や部品の供給網、サイバーセキュリティーの強化など、先ほどもちょっとありましたけれども、経費を国が援助することにしているんだというふうに書かれています。

 この法案が意図するのは、自衛隊の任務に不可欠な装備品を製造する企業とされておりまして、防衛装備品の製造のみに特化した支援法になっているということになるんだと思います。

 防衛力を支えるインフラとしての防衛産業の役割は防衛装備品の製造に限定されていないと思っておりまして、その補修やあるいは補給の役割も担っているんだろうと考えます。

 例えば、尾道造船さんが最大株主である、スリランカに実は造船所がありまして、ソマリア沖で海賊取締り、海賊対処行動ですね、海賊取締り活動などを続ける海上自衛隊が補給拠点として使っています。艦艇修理の任務も期待されていたんですが、しかし、スーダンの話もそうでしたけれども、海外というのはいろいろと起きまして、スリランカの政情不安で、造船所の本業である船舶建造に金融機関の信用保証が下りなくなったために、廃業若しくは造船所の売却を検討せざるを得ないというふうに報じられてきているところであります。

 仮に、このとおり売却となってしまえば、実は、中国が近くに建造した大規模な港湾施設があるんです。これはすごく大事だと思っていまして、オーストラリアの問題もそうですし、港湾とかそういう重要なインフラを、中国は、国外に出ていろいろなところの整備をして、やっている。そういう施設があるので、これが売却をされてしまって後々に中国の拠点となってしまうということが十分考えられるし、それを狙ってくるんだと思っています。

 そのおそれがありますので、やはり支援は、防衛装備品の製造、物を造るということに限定されるのではなくて、今言った尾道造船さんの話は、スリランカで、我々のことを助けていただいて、いろいろやっていただいて、造船所の最大株主でありますし、我々の任務を、我が国の任務をそこで支えてくださっているというところでありまして、そういうことであれば、製造に限定されることはなく、こうした装備品の補修や補給にもしっかりと対応を拡大していくべきだと私は考えております。

 そこで、政府の御見解をお聞かせいただければと思います。

浜田国務大臣 本法律案は、自衛隊の装備品等の開発及び生産のための基盤を強化するために、我が国において力強く持続可能な防衛産業を構築するための各種取組を促進するものであります。

 本法律案では、防衛関連事業者が作成する装備品安定製造等確保計画を防衛大臣が認定をして、この計画に基づいて行われる取組や完成品である装備品等の製造等に限らず、構成品、部品の製造、修理や、これらに関する役務の提供も対象としております。

 防衛省としては、こうした取組の促進を通じて、防衛関連事業者による装備品等の安定的な製造等を確保してまいりたいと考えております。

 今委員から御指摘のあった尾道造船の話は私も存じ上げておりまして、確かに、これは安全保障の観点、そしてまたいろいろなことを鑑みますと、大変重要な点だなというのを私も感じております。この件については私もお話を伺っておるわけでありますけれども、今の委員の指摘というのは大変重要な点だなというのを実感をしております。

 そういったところにやはり目を向けて、そして先手を打っていくというのは大変必要なことだと思いますし、これを我々としてもしっかりと頭の中に入れながら、さらに、我々として何ができるのかを検討してまいりたいというふうに考えておるところであります。

篠原(豪)委員 これはちょっと事務方で結構なんですが、今大臣に御答弁いただきましたので、もし、このスリランカにおける造船所がどのような状況になっているかということを国民の皆さんに少し御説明いただけるのであれば、現状を教えていただければと思いますけれども、可能ですか。

土本政府参考人 大変申し訳ございません。尾道造船の件につきましては、ちょっと私もまだ承知しておりませんので、また別途調べて御説明させていただきます。(篠原(豪)委員「大臣がそうやっておっしゃっているんだから」と呼ぶ)済みません。

 それで、ただ、スリランカにつきましては、今まで、海上自衛隊がインド洋の補給活動等で、給油等で使用していたというところで、重要性というのはそういう観点で認識しているところでございます。

浜田国務大臣 私が聞いている範囲では、スリランカ政府の方の、いろいろな交渉はしておるようでございます。ただ、金融機関との関係で、やはりスリランカの状況がこのような状況なので、要するに、預託してくれる銀行がなく、今のところ、受注をしてくる会社が、いわゆる尾道造船に対しての、担保するものがないということで、予算というか、自分たちの資金の調達というのがなかなかできていない、受注もできないような状況にあって、大変厳しい状況にあるというお話は伺っております。

篠原(豪)委員 ですので、大臣はさすがによく御存じだというふうに少し安心をさせていただきましたけれども、お願いしますね、事務方の皆さんも。

 金融機関における信用保証が下りなくなって、廃業まで余儀なくされるんじゃないかというところに来ているということを大臣はおっしゃっていて、そこに対して何らかの援助をする手だてがないと、我々は、だから、そういうことが起きてくるので、大事な、ケースとして、今回の法案もそうなんですが、だから、防衛装備品の、その物だけじゃなくて、それをやっている全体が大事だということなので、是非注目していただいて、我々にとっても大事な拠点なので、大臣がおっしゃっているように、ここに対しては手が打てるのであれば早めに打っていただいた方が我が国の国益には資すると思いますので、よろしくお願いします。ありがとうございます。

 次に、支援戦略の必要性についてお伺いしてまいります。

 日本の防衛産業は、下請まで含めますと、これは皆様御承知のように一万社近くございます。戦闘機は千百社、戦車は千三百社、護衛艦については八千三百社ということで、これは先日の連合審査の場でも大臣がおっしゃっていたかと思います。

 この中で、今回の法案で、自衛隊の任務に不可欠な装備品というふうに、製造をする企業に、特に、不可欠ということが書いてありまして、これは何を意味するのかがちょっと私には読んでいても分からないところがございます。

 心配するのは、二〇一八年四月の財政制度審議会、財政審が、防衛省が各社に製造ラインを維持するため仕事を割り振っているのではないかというふうに指摘をしているところでございます。確かに、事業撤退を防ぐことが当面の目的ですから、これは大事だということは私たちも思っているんですが、一方で、一万社近くの防衛企業をそのまま維持するということは、これは防衛生産の基盤を強化することと必ずしもイコールではないと思うことがあるんですね。なぜなら、時代は変わっていますし、今の時代に必要なものを造っていくということになっていくわけなので、そのための法案ですからね。なので、ここはやはり考えなきゃいけない。

 我が国の防衛産業が、やはり自立的な産業へと発展をしていくことが大事なので、その中で、国際競争力を備えていきましょうよということで政府はおっしゃっているわけなので、そのために、やはり戦略的な支援が必要になってくると思います。

 例えば、我が国を取り巻く安全保障環境によって必要な装備品も変わってくるということを今申し上げましたが、予算は限られているわけですね、これは限られているわけです。そうした中で、やはり、どういうふうに戦略をきちっと効果的に、日本が世界に打って出て、そしてそこでちゃんと戦っていけるということをやっていくかということは、これはやはり何を選択するかということにもなってくるんだと思うんですね。全部できないですから。

 その中で、例えば、国産にこだわらずに、輸入した方が性能もコストも今の時点では優れているものもあります。他方で、外国において代替性の高い装備品が仮に存在していても、国内での開発又は調達を優先するという選択肢も、これは国の考え方ですから、あると思うんです。その場合に、やはり判断基準を明確にする必要があると思っておりまして、この法律の運用に当たって、本法案の審議に当たって、この運用に当たっては、防衛装備開発の生産基盤を強化する戦略と言えるようなもの、まあ、方針があるとは聞いていますけれども、しっかりとやはり書いていく必要があるんじゃないかと考えております。

 そこで、こういった考え方についてどのように考えているかということをお伺いします。

浜田国務大臣 本法律案においては、装備品等の開発及び生産のための基盤の強化に関する基本的な方針を定めることとしております。

 装備品の取得に際しては、国内基盤を維持強化する観点を一層重視していくことが現に重要になっていることから、戦略の策定をとの御指摘については、本法律について策定することとなっている基本方針に、しっかりと基盤強化の、装備品等の調達の基本的な方向性を記載していくことを考えております。

 防衛省としては、こうした基本方針の下、防衛関連事業者による装備品等の安定的な製造等を確保してまいりたいと考えておるところであります。

篠原(豪)委員 これをなぜお伺いしたかといいますと、私たちは、戦略を作った方がいいということで、その方針の中に作るのか、また別に作るのかというのはやはり考えていただきたいと思いますけれども、戦略の中身が大事だと思っています。

 自衛隊の任務に不可欠な装備品を製造する企業と書いてあるんですね、中には。これは、裁量で不可欠な装備品を造るとすると、言い方は悪いですけれども、戦略がなくても、まあ、一万社ありますので取捨選択をしていかなければいけないということで、ここはやはり、しっかりと基準なりあるいは考え方というものを示していった上でやっていただいた方が将来的に日本のためになるんじゃないかということでお伺いをしました。

 もう一つ、そういう中で、やはり我々が考えなきゃいけないのが、集約をどうしていくのかという、必要性ですよね。

 御承知のように、日本は今、下請まで含めていろいろな方々が仕事をしてくださっています。他方で、海外を見れば、やはり国によって、一社であるとか、あるいはアメリカであっても四社とか、大きなところが全部それを担当しているということがあって、日本とは構造が全く違う。それはなぜそうなったかというと、時代の要請等様々な要因がありますけれども、ただ、そういった方々とやっていって、そこの中でどうするかという話になってきますので、この問題はちょっと避けては通れないんだと思いますのでお伺いします。

 今、この方針なり、あるいは我々は戦略をその中に書いていただければと思っていますけれども、防衛関連企業間の事業連携とか部門統合を促進するということも、これは要素として、どう考えていくかというのはやはり書いておかないといけないんじゃないかと思っています。

 防衛装備品のファミリー化が日本は特に遅れていますので、これは、私が今週お伺いをした元防衛省のリーダーだったOBの方もそのようにおっしゃっていまして。欧米の防衛産業は、ちょっと細かくお話ししますと、冷戦の終結以降企業合併が進んで、少数の大企業に集約されています。なので、このことについて日本はどういうふうに考えていくのか、国際競争力を強化するためにも、こういった一定の集約化をしないで果たしてできるかどうかということをいかように考えていらっしゃるかということを、今回の法律がありますのでお伺いしたいと思います。

土本政府参考人 お答え申し上げます。

 我が国の防衛産業は、欧米諸国の多くの防衛産業とは異なりまして、プライム企業につきましては、民需事業を主体とした企業が、おおむね一〇%未満の割合で防衛事業を手がけているという現状でございます。こうした事情等から、冷戦後に欧米で起きたような大規模な防衛産業の再編は、我が国においては見られていないところでございます。

 個々の企業の組織の在り方につきましては、あくまで各社の経営判断によるものであり、防衛省といたしましては、各企業の判断を尊重することが必要と考えておりますが、力強く持続可能な防衛産業を構築するためにどのような施策が効果的かにつきましては、引き続き、官と民の間でよく意見交換を重ねていきたいと思っております。

 いずれにいたしましても、力強く持続可能な防衛産業を構築する、このために本法律案を含めた各種の取組を政府横断的に進めてまいる所存でございます。

篠原(豪)委員 今の長官のお話を伺っていて、やはり大事で欠けているかなという視点があるとすれば、既存の防衛産業の保護というのと、あと、優れた技術を持っている、先端技術を持つ新興企業の参入、こちらをやはり妨げることがないようにしていかなければいけないので、その視点が今あるべきだと思っていまして、今おっしゃったことに加えて、この視点はしっかりと加えていただきたい、これは考え方として。

 方針に書き込む必要もあると私は思いますよ。ですので、この点についてどう思われるかということをお伺いしたいんですけれども。いや、書き込めばいいだけなんですよね。書き込むことが大事なんですね。

土本政府参考人 本法律案におきます基本的な方針の中に、今委員御指摘の、いわゆる新規参入の促進という観点かと思います。これにつきまして、この方針の中で規定すべきではないかという点につきましては、委員の御指摘も踏まえて検討させていただきたいと思います。

篠原(豪)委員 両方があって、大切なことになりますので、今おっしゃった答弁だと、既存は守りますよ、だけれども、その一方で大事なところもということが少し伝わりづらかったので、御指摘させていただきました。ありがとうございます。

 次に、FMSと国内調達の問題についてお伺いします。

 防衛費は十年連続で増えてきていますけれども、やはりこの大きな要因はFMSというものであると思います。というのは、国内からの調達は一八年まで横ばいが続いていましたし、二〇二三年度の予算案でもFMSの契約額は一兆四千七百六十八億円で、これは前年度の、これはこれまでの委員会でも、ほかの委員会でも、財金とか、財確法の話でも多分出てきていると思いますけれども、要は、その前が三千七百、四千億円弱ですから、一兆円以上跳ね上がっているということは、やはり大きな今までとの傾向の違いだということをいろいろな方が指摘しているかもしれません。物件費全体では、これでも前年度比二・五倍なんです、物件費だけでも。FMSは四倍近くになっている。

 政府は、極めて現実的なシミュレーションを行い、いろいろと装備品を考えるということを言っていまして、これは、米国製であれ国内製であれ、我が国の防衛に必要な装備品を個別に検討をし、必要となる防衛費の内容を積み上げましたということをおっしゃっています。様々な事態について、どの事態までを、存立危機事態とかいろいろありますけれども、集団的自衛権の行使とかいうことを含めていろいろなシミュレーションを私はされたと思っていますよ。その中で、全部じゃなくて、今回、四十三兆円は、我が国として最適な選択をした防衛計画になっているというふうに私は理解しています。今日は装備品の法律の話なので、その話はまたさせていただきたいと思っていますけれども。

 国内防衛産業は、いわば防衛力そのものであるということをさっき申し上げましたが、基盤強化もしなければいけない。したがって、防衛装備品の個別の検討も大事ですけれども、戦略的に国産装備品の調達をすることも重要だというふうに考えていまして、この基盤強化法についてもその原則を、先ほど戦略というか、方針の中にそれを定めていくか分かりませんけれどもということで、これをやはりしっかりと運用していくということも考えなきゃいけないということについてどのようにお考えか、お伺いします。

浜田国務大臣 委員御指摘のとおり、防衛産業は、いわば防衛力そのものであります。

 防衛省として、将来にわたって必要な装備品を適切に取得できるよう、国内の防衛生産・技術基盤の抜本的強化に取り組んでまいりたいと考えております。

 本法律案をお認めいただいた場合には、この考えの下、防衛省として、その施策の基本的な考え方を含む基本方針を策定して、これに基づき運用していくことと考えております。

篠原(豪)委員 私も、これは答弁があったんじゃないかと、今、ちょっとうろ覚えなんですけれども、国内産業八割、これまでも似たような話だとは思うんですけれども、国内産業を防衛大臣が八割確保するというふうに、多分考えていらっしゃるというふうに今回の中でも思っていまして、それがやはり最低条件であるということを、そういったことをちゃんと書いていくのかどうか、ある程度明示してやっていくのかということを、国会で多分御答弁を、大体どのぐらいだというふうにおっしゃっているので、この点についてはどう考えていらっしゃいますでしょうか。書いていくか。

浜田国務大臣 私は、質問に対しての答弁の中でもこの八割というのはお答えしておりますので、これを基にまた対応していくことになろうかと思います。

篠原(豪)委員 その点については、私たちも前向きな答弁というふうに今のを捉えまして考えていきたいと思っていますので、そのことについてはやっていただければというふうに思っています。

 ちょっと細かい話を伺ってまいりますけれども、その中で、やはり国内産業がどうなっているかという話をさせていただきます。

 まず、契約の仕方、契約の在り方、これまでということについてと、今後どうしたらいいかというお話をさせていただきたいと思うんです。

 事業撤退を考えている企業の皆様は、利益率が低いことで株主への説明のネックになっているということから、政府は、二一年度で平均八%とされてきた利益率を二三年度以降最大一五%に引き上げるということになっているんだと思います。これは、一見いいように聞こえるんですが、企業努力のいかんにかかわらず実はどの企業も同じ利益を得るということになりますので、そうなりますと、我が国の防衛産業の競争力というのを損なう可能性があると考えます。

 というのは、現在の原価計算方式なんですが、これは企業努力をしなくても一五%は担保されるので、定価は自分たちでつけますけれども、それを、利益は確保されるということになれば、それでいいんじゃないかという考え方を取るところも出てくるんじゃないかと思います、一万社あれば。原価が上限を超えてしまった場合には企業が赤字となり、原価が安くなった場合には支払い額も実績に応じて低減するということになっていますけれども、こうなると、コスト削減のインセンティブが働かず、企業は、考え方によっては努力しなくてもいいんじゃないかということになる。

 最低限の利益を守るために本当は必要なことは、やはり努力した企業の皆様が、応分の、企業努力に応じて利益が膨らむような契約というのをしっかりしてさしあげるというのが大事だと思うわけですね。一部で、政府はインセンティブフィー制度を導入しているというふうにも伺っていますので、だから、これを一般化するかどうかということも考えなければいけないと思っています。

 そのことについて、インセンティブフィー制度というのはどうなっていて、どういうふうになっているんですよということが、もし分かれば、事務方で結構です、教えていただければいいと思いますし、その後に、これをやはりしっかり考えて一般化していくことも大事じゃないかということについては大臣にお話をいただければと思います。よろしくお願いします。

土本政府参考人 お答え申し上げます。

 まず、インセンティブフィー制度についてでございますが、防衛省では、企業の価格低減努力を促す仕組みといたしまして、同一の装備品等を再度調達する場合、基準とする過去の契約価格よりも価格の低減が見込まれるときは、その低減額の八〇%を報奨として企業の利益に付与するインセンティブフィー制度を令和二年度から導入しており、その適用対象を拡大してきているところでございます。

 本制度は航空機用機体部品の調達などの契約で適用されているところですが、適用される契約がより広がるよう、今後も、企業に対して制度の説明、周知に努めて、適用を促進してまいるという考え方でございます。

 それで、加えて、先ほど委員からございました、新しい、令和五年度からの制度の関係でございます。

 これにつきましては、我々、まさに委員の問題意識そのものだと私は認識しておるのでございますが、企業の、それぞれ、品質管理、コスト管理、納期管理、これを我々の方で評価いたしまして、品質管理、コスト管理、納期をしっかり管理している、こういう、しっかり管理しているところにより高い利益率を与えるというような、いわゆる、我々QCD制度と呼んでいるところでございます、これを新たに導入する。これによりまして、むしろ企業の方は、例えば価格低減努力をすれば、すればしたほど利益が高くもらえるということで、ある意味、企業の努力をこういう形で評価するという制度を新たに導入させていただいたところということを御説明させていただきたいと思います。

篠原(豪)委員 今のようなことをしっかり、QCD制度も含めてやっていくことが大事だということで、令和五年度以降転換をしていくというふうに言っていますので、それをしっかりやっていただきたいです。

 要は、努力した会社が報われて、しっかりと利益が取れるようなことを当たり前にやっていきましょうよと。それをやらないで、それはいろいろな企業はあります、言い方は難しいんですけれども、ずうっと利益が上がらない中でお願いしている企業もありますので、そこのバランスも大事ですけれども、やはり、全体的によりよくするためには、そういったこともしっかり転換を、守るものは守るけれども攻めるものは攻めるということであります。

 ちゃんとできるものをうまく世界に通用するようにやっていくということだと思いますので、そのことをしっかりと頑張っていただきたいと思いますので、一言いただければということでございます。

浜田国務大臣 委員のおっしゃるとおりだというふうに思っております。これを我々やっていく中で、当然、公平性とかそういったものをしっかりと考えながら対応していくことだというふうに思っていますので、この手法を是非いい方向に向かうように努力していきたいというふうに考えております。

篠原(豪)委員 ありがとうございます。

 大臣もそうやっておっしゃっていただきましたし、装備庁長官も全力で頑張っていただけるということですので、どうぞよろしくお願いいたします。

 ちょっと細かい話になるんですけれども、契約方式の、これはどうなのかなということをもう少しお話しさせていただきます。

 さっきから、新たな企業の参入を妨げないようにして、やはりなるべく積極的にいい企業は取り入れたいということを考えていますし、既存の防衛関係産業の防衛分野における積極的な事業活動も促進していかなければいけないと。大きな会社が今やめて、余り名前は言わないですけれども、世界でいろいろ、農耕の車を造っていたり、何とか製作所とか、本当に重要なところがもうバンザイをするような状況になっているという中で、契約方式をやはり見直していかなければいけないというところも考えなきゃいけないと思っていて、独自仕様とか少量多種の発注を繰り返す調達の在り方というのは、今のやり方でそういうふうな状態になっていて、これを改める必要があるということなので、まず、そのことについて、独自仕様とか少量多種の発注の、いわゆるマイナスの部分、それをどう改善していくのかということを一つお伺いしたい。

 あと、単年度契約方式というのが今ありますので、これは改めて、やはり防衛装備品の調達開始まで、将来の各年度における予定数量も、これは今明確になっていないので、できるだけこういったものも明確にした上で、短期間の連続した年度で調達を完了するような、他方で出口も必要ですから、なかなか難しいんですけれども、いや、民間だったらそんなに難しくないんですけれども、やはり手前も出口もしっかり見せた上で発注しないといけないし、相手の利益もちゃんと守らなきゃいけないし、国民の税金ですから、我々はいい製品を手に入れなければいけないということになるんだと思います。

 それを世界で使うわけですから、装備品の移転の話もありますけれども、全部セットじゃないと、計画、ばらばらで、いろいろなところがいろいろなことを考えたり、全然違うことをやっていると、これは戦略にならないということで、戦略が必要なんじゃないですかとお話しさせていただいているのですが、このことも、やはり計画をしっかりと公表をして、その上で、確実な達成まで努める努力というのが必要だと思います。

 だから、二点ですね。少量多種の発注を繰り返す調達の在り方というのがいいのかどうかということをまず、これをどう改めていくのかということと、その上で、契約というものについては単年度方式というのがありますから、今申し上げましたように、全体的に見て、民間の発注じゃないですけれども、ちゃんとやっていかなきゃ駄目なんじゃないかなということを考えていますので、そのことを考えて、発注した上で、確実な達成を努める努力が政府にあると思っていますので、そのことについて御見解をいただければと思います。

土本政府参考人 委員から、大きく二点御質問をいただきました。

 まず第一点目の、独自仕様、少量多種の発注の調達の在り方の問題でございますが、防衛省では、これまで、各自衛隊の要求性能を踏まえまして装備品の研究開発や取得を進めてきたところですが、この中で、近年では、民生品を活用するということによる独自仕様の縮減とか、少量多種発注の改善のための取組を進めております。

 ちょっと具体的な例で申し上げますと、まず、独自仕様の縮減のための民生品の活用の例といたしましては、陸自オートバイの取得とか、航空自衛隊の飛行点検機、U608Aの取得などが挙げられます。あと、少量多種発注の改善といたしましては、UH60ヘリコプターを陸海空自衛隊で調達する、対艦ミサイルの陸海空自でのファミリー化というものがございます。

 令和五年度予算においても、民生品の活用の例といたしまして、海自教育訓練機材、教材の電子化、F15運用支援器材の代替取得、少量多種発注の改善といたしましては、一二式地対艦誘導弾能力向上型、地発型、艦発型、空発型の開発などがあります。

 今後とも、これらの取組を通じまして、先ほど委員の方からも御指摘がありましたような新たな企業の参入等を促進してまいりたいと考えているところでございます。

 もう一点の調達数量の話でございますが、防衛省では、防衛力整備計画で今後五年間に整備する主要な装備品の数量を明記し、可能な限り調達予定数量を明確化しているところでございます。また、長期契約を含むまとめ買いの活用によりまして効率的な取得に努めておるところでございまして、具体的な例といたしましては、令和五年度予算では、海自護衛艦搭載用垂直発射装置VLS MK41の取得、空自救難ヘリコプターUH60Jの取得などがあります。

 今後とも、このような取組を通じまして、装備品の効率的かつ計画的な取得に努めてまいる所存でございます。

篠原(豪)委員 今日、この法案というのは、いろいろなものが実は束ねられていて、今は契約の話とか、戦略のメインのところのお話しかこの時間ではできていないんですね。

 国による企業の、いわゆる事業継続が難しくなった場合に製造施設を買い取ってやっていくという国の一時買取りの問題は、これは極めて大きな話でありますし、また、ここはちょっと、私も、国民の皆さんに誤解されているところもあると思うので、そこもしっかりと議論しないといけないというふうに思っています。いい悪いじゃなくて、ちゃんと伝わっていないです、全く、報道を見ていますと。そこはやはりやらなきゃいけないですし、なぜそうなのかという話もそうです。

 防衛装備品の販路の海外拡大をどうするかというのは、防衛装備品の移転もここに入っていますので、これも議論しなければいけない。我が国としての、前からお話ししていますけれども、平和国家として、どのような防衛装備品の移転を主眼に置いて、我が国の優位性を世界に、それも、さすが日本だねと言われるようなことで戦略を打っていくかという話もあります。

 F35の共同開発とか、あるいは重要技術の流出、経済安全保障にも関わりますけれども、そういった問題が多々含まれているのがこの法案であると考えていまして、これは、申し訳ないんですが、やはりしっかりとした議論をする必要があると思います。非常に重要な法案でありますし、四千億円程度かけてやっていくということでありますので、これは、やはり国民の皆さんに説明してやっていくことが大事だと思います。

 これは与野党そうなんですが、やはり我々国会の責務として、ちゃんとお伝えをして、一つ一つ聞いた上で、大きな方針の転換でありますので、やっていく必要があると思っていますので、しっかりとした御説明をしていただきたいと思います。

 ちょっと、最後に一問だけ、どう考えるかだけお伺いしてもよろしいですか。大臣、これはしっかりした議論が必要だと思います。よろしくお願いします。

浜田国務大臣 今委員から御指摘のあった点、大変重く受け止めたいと思いますし、また、我々もしっかりと説明をしていきたいというふうに考えます。

篠原(豪)委員 それが委員会の場であり、大事な法案審議の場でありますので、充実した審議を大臣と一緒にさせていただきたいと思っていますので、どうぞよろしくお願い申し上げて、私の質問を終わります。

 どうもありがとうございました。

鬼木委員長 次に、重徳和彦君。

重徳委員 連日お疲れさまです。立憲民主党の重徳和彦です。

 防衛装備品の基盤強化に関する法案でございますので、私から、まず最初に、個々の企業の現場にどう向き合っていくかという話から入っていきたいと思います。

 先日、私は、愛知県内の老舗の、防衛装備品を製造しているメーカーに勉強をしに行ってまいりました。小銃とかライフルをたくさん製造している、そういう会社なのでありますが、最近では、小銃の銃身の長さを短くしながらも射程距離を飛躍的に延ばす、こういう非常に高度な技術を開発し、それに基づいて製品を製造しておる、こういう優れた会社であります。

 ただ、当然、「下町ロケット」じゃありませんけれども、物を開発するに当たりましては様々紆余曲折があって、現にそこの会社は、今申し上げました小銃の開発の途中で陸上自衛隊の方から評価試験を受けて、いわば駄目出しを受けながらも、それを逆にばねとして更に士気を高めて、開発に、完成にこぎ着けた、こういうドラマチックなお話も聞かせていただきました。

 このように、やはり企業は人であり、現場でありますので、そういったところと人肌を感じながら向き合って、そして、役所は、防衛省は国内唯一の発注者であります、顧客でありますので、お客さんと製造側が一緒になっていろいろな取組をしていく、こういう距離感も非常に、間の取り方、余り癒着しちゃいけないのかもしれませんけれども、そういう取り方も大事だと思います。

 今回の法案では、やはりお金、金目の支援ということも盛り込まれておりますけれども、その大前提として、こうした企業との間合い、そして、様々な、三文書だとか法案上、こうした企業をどのように位置づけているか、こういったことについて、大臣の御答弁をお願いします。

浜田国務大臣 防衛産業に関わる方針としては、昨年末に閣議決定した戦略三文書において、防衛生産・技術基盤をいわば防衛力そのものという位置づけをさせていただいて、自衛隊の装備品を安定的に確保し、そしてまた、新しい戦い方に必要な先端技術を取り込むために不可欠な基盤であると記載をしております。

 この防衛生産・技術基盤は、工廠を持たない我が国においては民間の防衛関連事業者から成り、政府としてもこれらの事業者の皆様の防衛政策上の重要性を強調しているところであります。

 その上で、防衛省は各企業とも様々な意見交換を実施してきているところであります。私自身も主要プライム十五社の社長との意見交換を行っているほか、政務から実務レベルに至るまで、企業、団体等へ訪問し、防衛産業の現状を把握するなど、各企業と緊密に意思疎通を図ってきたところであります。このような意見交換で得られた知見も踏まえて、力強く魅力的で持続可能な防衛産業の構築をするための本法案を含めた各種取組を進めているところであります。

 今委員から御指摘のあった点、大変重要だというふうに考えております。やはり、直接お話を聞き、そしてその中で、言葉ではなく、また、肌感覚でというお話もありました、確かにそのとおりだと思いますので、今後とも、その点の感覚が鈍らないようにしっかりとやっていきたいというふうに思います。

重徳委員 ありがとうございます。

 いわば防衛力そのものであると、防衛産業が。自衛隊ではありませんが、その外の存在ではありますが、防衛力そのものであるという位置づけだという御答弁をいただきました。

 一方で、防衛産業、これはさんざん各委員からも指摘がありますが、レピュテーションリスクというものにさらされています。武器を造るということについては、様々な、投資家も含めた考え方もありますので、そういったところの目的、意義、価値といったものを、これは政府からもきちんと伝えていく必要があると思います。

 私が先日訪れた企業さんも、企業として、守るということを企業目的、パーパスとするということを明確に打ち出しておられまして、社長さんいわく、社員全員が、国防に資する事業活動をやっていくんだ、それから日本の自衛隊への後方支援を今後とも継続していきたいんだと、こういうことを言われております。

 こうしたことも踏まえまして、ここまで一生懸命やっている企業さん、あるいはその努力といったものに対して、国もしっかりと呼応して、レピュテーションリスクといったものに対して強いメッセージを発信していく必要があると思うんですけれども、大臣のお考えをお聞かせください。

浜田国務大臣 我が国の防衛産業は、先端的な防衛装備品を開発、生産するなどを通じて、幅広い分野にわたる高い技術力を保有していただいているわけであります。

 加えて、昨年末の戦略三文書に記された、防衛の抜本的強化のための様々な事業を遂行していくためには、機微な情報や技術を守るための高度なセキュリティー体制を整える必要があり、防衛産業は、その意味でも高い組織的信用度を有していると言えます。

 防衛省としても、御指摘のとおり、こうした防衛産業が優位性を保有している点を中心に、諸外国を含む各方面に対して積極的にアピールしていきたいと考えます。

 今委員から御指摘のあった点、その企業家の方のお話というのは我々とすれば大変励みになるわけでありまして、その期待に応えられるようにしっかりと施策を実行していきたい、このように思っております。

重徳委員 大臣からの力強い御答弁をいただきました。ありがとうございます。

 さて、法案の今回の中身としまして、個々の企業に対する補助金を、これはタイミング、条件、いろいろ合った上ではもちろんございますけれども、公金を各企業に拠出するということを制度化しております。

 それは時に当然必要なことなのでありましょうけれども、これは、かつてアメリカでも、国が防衛産業に対して補助金を出し過ぎて高コスト体質を招いてしまった、そこからなかなか抜けられなかった時期があるというふうに聞いております。すなわち、いっとき必要に迫られて公金を支出することはありなんでしょうけれども、そこからの出口ですよね、出口の計画がきちんとなければならないというふうに思います。

 それから、公金を私企業に入れるわけですから、私たち国会に対しましても、どのようにこのお金を使っているのか、その成果はどうなのか、そしてそろそろ出口なんじゃないか、こういったことも、きちっと、個別の具体的な事案をきちんと説明をしていただきながら、説明をしていただく必要があると思いますが、こうした出口計画についてどのようにお考えでしょうか。

浜田国務大臣 一般的に、国の支出の原因となる契約に係る情報は、財務大臣通知「公共調達の適正化について」、この通知に基づいて原則公表することとされておりますし、財政上の措置として特定取組の実施に係る契約を締結した場合には、この通知に基づき、契約の相手方や契約金額などに係る情報の公表を原則行うこととなっております。

重徳委員 原則公開していくということでありますので、きちんと防衛産業が維持発展していく姿を見える化していっていただきたいというふうに思います。

 ところで、私、愛知県の人間なものですから、自動車産業を始めとした物づくりのメッカなんですよ。そういう地元に思いを致すにつけ、先ほども篠原委員からも、フォーリン・ミリタリー・セールス、FMS、アメリカからの、時に爆買いと言われる、時にFMS依存とも言われる、こういう状況を非常に苦にしております。

 まして、後年度の予算の縛りもきつく、しかし一方で、アメリカからの契約内容あるいは明細書みたいなものが不透明だとか、いろいろな指摘があります。もうこの海外に依存しなきゃいけないという状況そのものが、私としては本当に、気持ちを含めて、気持ちとして耐え難いものがあるんですね。同じものを造るんだったら、技術力があるんだったら、やはり国内産業でちゃんと造ってほしい、こういう強い思いがございます。

 こういった、物づくり企業とか、物づくり国家ですよ、日本という物づくり国家、この矜持からして、これは気持ちの部分を含めてどのようにお考えかということをお話しいただきたいと思います。

土本政府参考人 お答えいたします。

 防衛装備品の取得に当たりまして、一般論といたしましては、まずは、必要な性能、コスト、スケジュール等の条件を満たした上で、例えば、有事の際の継戦能力の維持や平素からの運用、維持整備の観点から不可欠なもの、機密保持の観点から外国に依存すべきではないもの、外国からの最新技術の入手が困難なものなどにつきましては、国産による取得というものを追求すべきと考えております。

 その上で、国家間競争が激しさを増す中で、各国は、先端科学技術の開発に積極投資し、技術優位確保のためにその成果を自国で囲い込む傾向にございまして、我が国の自律性の確保及び不可欠性の獲得の重要性は高まっていると認識しており、装備品の取得に際しましても、国内基盤を維持強化する観点を一層重視していくことが重要になっていることから、国内の防衛生産・技術基盤の抜本的強化に取り組んでまいります。

 また、防衛力整備計画における研究開発費につきましては、三一中期防の各年度の予算の合計額と比べて約四・五倍となる約三・五兆円を確保しまして、令和五年度予算でも、契約ベースで、前年度と比べて約三・一倍となる八千九百六十八億円を計上したところでございます。

 引き続き、民生先端技術を幅広く活用し、将来にわたって技術的優位を確保し、他国に先駆け先進的な能力を実現するための研究開発を強力に推進してまいる所存でございます。

 あと一点、補足的に御説明させていただきますと、先ほど大臣からもございました、いわゆるプライム十五社との意見交換の中でもよく出たところで、研究開発の、今後の企業側としての予見可能性みたいなものを、分かるようにしてもらえればありがたいという話もございましたので、防衛装備庁といたしましては、いわゆるそういう今後の研究開発の方針的なもの、企業の皆様にとって予見可能性等、分かるようになるものを、今作成に鋭意従事しているところでございます。

重徳委員 ありがとうございます。土本長官から大変気合の入った御答弁をいただきました。

 本当に研究開発予算というのは非常に大事なものでありますので、おっしゃるとおり、予見可能性を含め、企業あるいは技術者、研究者が沸き立つような、そういう環境を是非つくっていただきたいというふうに思います。

 さて、では次に、前回、財務金融委員会との連合審査がございました。やはり、この防衛装備品のコストについては私は徹底的にこだわっていきたいと思っております。

 安易な増税は許し難いと思っております。増税前にやるべきことがある、かつてどこかの政党がよく言っていましたけれども、まさにそういう状況に今あるんじゃないかなと思っております。GDPの二%に防衛関係経費が達するように頑張るなんというのは、私はちゃんちゃらおかしな話だと思います。同じことをやるならば、予算は抑制した方がいいんです。そういう発想に立たなければ、国民負担ばかり、そして後世代へのツケ回しばかりが横行して、そんなものの上に成り立つ、特に赤字国債なんかの上に成り立つ防衛予算というのは、私は誠に脆弱な、砂上の防衛力だということを改めて申し上げたいと思います。

 さて、その上で、資料一を御覧ください。

 P1哨戒機とC2輸送機のライフサイクルコストについて、これは財政審の資料でありますので、いわば財務省側の言い分ということであります。令和元年の提出資料ですね。この資料は、左半分がP1哨戒機について、右半分はC2輸送機についてのライフサイクルコストが示されております。上半分には平成二十年度の時点での見積りが示され、下は令和元年八月の計画といったものが示されているわけであります。

 まず、P1哨戒機につきましては、左半分の右側に、一機当たりのLCC、ライフサイクルコストは、当初約三百二十六億円であったのが、下に行きますと五百二十億円、実に一・六倍に膨らんでおります。右側、C2輸送機については、同じ箇所、一機当たりのLCCは、当初四百三十二億円だったのが、下に行くと八百九十九億円、二・一倍に膨らんでいるということであります。

 このような見通しの甘さを財務省は指摘をしているということだと思いますが、この間、防衛装備庁が設置されたり、いろいろと変化はあることは承知しております。これに対する反論がございましたら、いわば適切な、防衛省としての立場を説明をいただき、また、そうはいってもコストが膨らんでいる傾向にはあると思います、これについてもきちんと説明をいただきたいと思います。

 特にこれを言うのは、アメリカなんかではナン・マッカーディー条項というものがありまして、余りに極端に当初の見立てよりも経費が、コストが膨らんでしまう場合には、議会がストップをかけるということがあるわけですね。

 日本でも似たような、防衛省の訓令というのがある。ちょっと、防衛省の中の訓令でありますので、そこは外部からの目というものが、行き届かないという、部分が足りないと私は思っておりますが、それはそれで今後改善するにして。

 こういった観点からも、こういったことも厳しく見なきゃいけないと思うんですよ。この辺りについて御説明いただきたいと思います。

坂本政府参考人 お答えを申し上げます。

 今御指摘をいただきました委員配付の資料でございますけれども、P1それからC2の全体のライフサイクルコスト、これを総取得機数で割った一機当たりの単位ライフサイクルコストの上昇についての御指摘かと思います。

 この二十年、二十一年の数字といいますのは、これは防衛装備庁が発足する前に試行的に算出をしたものでございます。対しまして、元年度の数字につきましては、二十七年度に防衛装備庁が発足した後によりプロジェクト管理というものを制度化、精緻化したもの、これに基づいて算出した数字でございます。

 その前提の下で申し上げますと、この二十年、二十一年から元年度のライフサイクルコストを比較して、上昇要因は何かということでございますが、一つは、まだ両機種開発中でございまして、運用されておりませんでしたので、補用品であるとか修理費といった維持整備費、これが必ずしも正確に見積もることができていなかったわけでございますが、元年度には、その運用の実績も一部踏まえて精緻に算定できるようになりましたので、これを反映したことによって数字が上がっているというのが一つございます。

 それから、個別に見ますと、P1につきましては試作機を基にした見積りでございます。C2につきましては、更に、研究開発段階において不具合が出ましたので、これの改善のための研究開発の経費、試験経費などが全体の経費を押し上げているといったような事情がございます。こういったようなことで経費が増加をしているところでございます。

 ほかにも、消費税が五%から一〇%に上がったでありますとか、あるいは為替の要因でありますとか、そもそも、物価上昇、特に航空機につきましてはエスカレーションが激しいといったような事情もございます。

 ライフサイクルコストの抑制につきましても、委員御指摘のとおり、我々にとって非常に重要な課題であると思っております。

 これまで具体的に行っていることとしましては、P1につきましては、二十七年度に長期契約で二十機まとめて調達をしてございます。これによって一機当たりの価格を抑制する。それから、C2につきましては、その派生機も含めまして、機体構成品のまとめ買いでありますとか、あるいはエンジンにつきましても将来の分まで一括調達をするといったようなこと、それから維持整備費の低減の努力といったような努力も継続をしているところでございます。

 その上で、装備庁発足後、二十七年度からのライフサイクルコストの比較でございますけれども、二十七年度と四年度、最新のものを比べますと、現行の基準での見積りでは、それぞれ、計画を見直すような、一五%以上あるいは二五%以上といったような価格の上昇には達していないというところでございます。

 いずれにしましても、ライフサイクルコストの抑制は非常に重要でございますので、防衛省といたしましては、必要な装備品を適正な価格で取得し、運用、維持できるように、今後とも不断の努力をしてまいりたいと考えてございます。

重徳委員 坂本部長にちょっと確認だけしたいんですけれども、今の資料は財務省の財政審の資料なんですね。いわば分かりやすい資料なんですよ。こういう資料というのは防衛省として、今おっしゃったような、一五%、三〇%上げにはなっていませんというような内容は、どこか、公表資料とかネットで見るとこの辺が分かるとか、そういう工夫はされていますか。

坂本政府参考人 お答えを申し上げます。

 これは毎年度毎年度のことになりますけれども、毎年毎年、大体概算要求の時期でございますが、プロジェクト管理の対象装備品につきまして、最新の取得価格でありますとか維持整備の実績の価格などを反映いたしまして、このライフサイクルコストの金額、数値の見直しを行ってございます。

 この見直した結果、それから過去のライフサイクルコスト、当初算出したもの、あるいは昨年のものからの上昇幅といったようなものを比較したものを公表をさせていただきまして、防衛装備庁のホームページでも公表させていただいております。

 さらに、これが、閾値であります計画見直し基準の数値を超えていたり、あるいは計画を存続するか否かの基準を超えている場合には、その検討をした結果についても結果が出次第公表させていただいているところでございます。

重徳委員 是非、我々国会はもちろんですけれども、国民的といいましょうか、オープンにその辺りは示していただかないと、やはり、何でこんなにお金がかかるんだというか、こんなに膨らむんだというようなことは、非常に国民的理解をされ難いことだと思うんですよね。

 最初小さく見積もっておいて、予算をつけて、契約をして、そうしたら後で膨らみました、引き返せませんと。これははめられたという感じに見えちゃいますので、その辺りの透明性は極めて重要なことだと思いますので、よろしくお願いいたします。

 次、資料二を御覧ください。これは、FFOS、FFRSといいまして、特科部隊の弾着観測用回転翼型ドローン。弾着ですが、砲弾が飛んだその先の状況を把握するためのドローンだということでございます。FFOSというのが当初開発されたもので、もうちょっと飛ぶ範囲を、距離を延ばした改良型がFFRS。

 これらに対しまして、同じ話で、同じ金をかけるんだったら、ちゃんと使われる、使われる頻度も高い、こういうものを造るべきだ、購入するべきだ。こういう観点からして、FFOS、FFRSと言われるドローンについて、これはかつて研究開発にも随分お金を投じ、また、この図の下を見ていただきますと、一式当たりの、セットが、いろいろなものが必要なんですよね、非常に大がかりだと。無人機そのものは一式当たり二機だと聞いておりますが、そこに対して、機体運搬装置、作業車、簡易追随装置、追随装置、整備支援装置、発進・回収装置、統制装置。いろいろなものをつけて、これで一式だと。

 それぞれ理屈はあるのかもしれませんけれども、いかにも大がかりで、一式購入するというのは大変なことだと。FFOSについては二式配備され、FFRSについては三式整備されたと聞いておりますが、ちょっと、余り使われないからやめちゃおうとか、そういう状況にあるとも聞いております。この辺り、事実関係を御説明ください。

土本政府参考人 まず、FFOSの方から御説明いたします。

 陸上自衛隊FFOS、遠隔操縦観測システムにつきましては、特科部隊の遠方射撃について、敵情把握や着弾観測等を行う観測ヘリコプターの機能を一部補完するため、昭和六十三年度から平成八年度にかけて開発されたものでございます。

 その上で、平成十三年度から取得を開始し、これまで、西部方面特科隊に四機、富士教導団に三機を配備いたしました。現状でございますが、一機は既に用途廃止済みでございまして、残りの六機につきましても用途廃止のための準備を行っているところでございます。

 もう一つのFFRSの方でございますが、無人偵察機システムでございます。これにつきましては、一六大綱において、ゲリラや特殊部隊による攻撃等への対応が重視され、航空偵察による情報収集能力の強化が必要とされたことを受け、平成十九年度から、FFOSに所要の改善を加えたものとして取得を開始いたしました。

 これまで合計で十二機を取得しており、現在、北部方面無人偵察機隊、中部方面無人偵察機隊及び西部方面無人偵察機隊にそれぞれ四機を配備しております。

 運用実績でございますが、これまで、FFOS及びFFRSの運用実績といたしましては、配備部隊の隊員に対する教育に加え、飛行訓練や展開訓練において使用してきているところでございます。

重徳委員 どの程度使われているかということについて、もう少し具体的に御説明いただけますか。余り使われていないという批判があります。

土本政府参考人 お答え申し上げます。

 FFOSにつきましては、地上装置とのデータリンクが途絶した場合、直ちにエンジンを停止し、降着する構造となっておりまして、災害が起こったときにおける被災地における情報収集には不向きというものであり、FFRSにつきましては、災害関係でございますが、東日本大震災の関係でございますが、震災発生当時、納入後一年で、十分な飛行実績がなく、両システムとも二次被害防止の観点から東日本大震災では使用されなかったところでございます。

 FFOS、FFRSにつきましては、過去五年間の災害派遣での運用実績は確認できませんでした。

重徳委員 出動機会が多いことは災害が多いことということになってしまって、いいこととは限りませんが、しかし、余りに、東日本のときにも実動しなかったということがかつても安全保障委員会で指摘を受けていた記憶があります。

 そういったことで、要するに、言いたいのは、かなりのお金をかけて開発から調達までしたものである以上は、これはこれでしっかりと使っていくというつもりで調達しなきゃおかしいだろう、こういう話なんですね。反省すべき点があると思います。そして、繰り返してはならないこともあると思います。

 大臣にお聞きしますけれども、今後こうした何か新しいもの、当時は新しかったと思うんですね、このドローンというのは。だけれども、それを自前で、コストをかけて、どういうスペックで開発をし、かつ、もう一つ大事なのは、これからは国際競争力といった観点も必要だと思うんです。ですので、このFFOS、FFRSはちょっと過去の話になってしまっておりますが、これを、いわばこれからいろいろな装備品を調達するに当たっての必要な視点というものをお述べいただきたいというふうに思います。

 それから、ドローンについては、武器移転三原則、そして今の防衛装備移転三原則もまだまだ厳しい部分がありますので、どんどん出していけるという状態ではないのかもしれませんが、その辺りの実情もお聞かせいただければと思います。

浜田国務大臣 防衛省ではこれまで、各自衛隊の要求性能を踏まえて装備品の研究開発や調達を進めてきたところでありますが、装備移転を行うに当たっては、相手国のニーズを柔軟に取り入れることや機微情報の保全が大変重要です。そのため、研究開発時点から、外国のニーズを柔軟に取り込めるオープンアーキテクチャー化や、国外での幅広い運用環境を考慮に入れた仕様等にすることで、将来的な装備移転につながるものと考えております。

 FFOSやFFRSを含む無人航空機については武器輸出三原則等の下で例外化措置が取られたことはありませんし、また、現在の防衛装備移転三原則等の下においては、国際共同開発、生産による場合以外に完成品の移転を認め得るのは、基本的に救難、輸送、警戒、監視、掃海に限定されており、FFOSやFFRSを含む個別の移転に当たっては、相手国による装備品の使用目的がこれらに該当するかどうか個別に判断していくこととなると考えます。

 そしてまた、御指摘の点について、今、民間の方の技術が大変進んできているわけでありますので、そういった観点も含め、今後とも検討していきたいというふうに考えます。

重徳委員 今大臣から、防衛装備移転三原則の運用指針、五類型という発言がございました。

 私、防衛産業の振興のためには、同じお金をかけるのであれば、国家のブランドや価値を高めるとか、それから得意分野の技術をもっと伸ばすとか。結果、多く売れる、海外にも売れる。これは企業にとっては大きなことだと思います。

 一方で、日本というのは、あくまで平和国家であって、特に当事国のどちらに加担するとか、何かに使われるということが決してあってはならない。ここには細心の注意が必要であります。特に、日本ですから、先ほどの企業さんじゃないけれども、攻めるということはあってはならない。守るというブランド、国家としてのブランドも必要だと思います。

 そうした意味で、折しも移転三原則の見直しの議論が特に与党の中で始まりつつあるという報に接するにつけ、これから、そうした攻めと守りの線引きといったことは非常に日本の政治として大事なところだと思うんですね。ここの線引きについてどう考えていくのかということについてお答えください。

浜田国務大臣 委員御指摘のとおり、我が国の装備品については、国民の命と暮らしを守り抜くために整備を進めてきているところでございます。

 また、装備移転については、過去、武器輸出三原則等で、平和国家としての我が国の立場から、国際競争等を助長することを回避するため慎重に対処することを基本としておりまして、新たな安全保障環境に適合するよう二〇一四年に防衛装備移転三原則を策定しましたが、その中でも平和国家としての基本理念は引き続き堅持していくこととしておるところでございます。

 その上で、昨年末の国家安全保障戦略において、装備移転は、我が国にとって望ましい安全保障環境の創出や、国際法に違反する侵略を受けている国への支援などのための重要な政策的手段と位置づけられたところであります。

 このような認識の下、我が国の平和国家としての基本理念を引き続き堅持しつつ、装備移転を推進するための取組を進めていく考えであります。

重徳委員 まだ、政府というよりは与党の中での議論が始まるという段階でありますが、様々な報道では、殺傷力のあるものを輸出することを容認するかどうかが焦点だとか、かなり前のめりな議論もございます。こういったところに踏み込み過ぎると、これは本当に、日本が八十年近く営々と築いてきました平和国家というブランド、国家としての価値というものを毀損すると私は思いますので、その点は、政府においても大臣においても、しっかりと我々の意見を受け止めていただきたいと思います。

 最後に、日本学術会議、これも何か、今回、今国会で法改正を行う予定が法案提出を見送ったなんというニュースも聞きましたけれども、元々、防衛省が始めました安全保障技術推進制度について懸念の声明が二〇一七年に学術会議から出された経緯がありますが、一方で、二〇二二年、昨年の七月には、デュアルユースというのは線引きが難しいから事実上容認する、こういうことも、学術会議の方から書面でその考え方が政府に提出されたというふうにも聞きます。

 これをどう評価するかということは、立ち入ったことを説明できるかどうか分かりませんが、御見解があれば。そして、現状、デュアルユースを含むそうした防衛省の安全保障技術推進制度に対する大学側からの申請ですか、この推移なんかについて御報告をいただければと思います。

土本政府参考人 日本学術会議による声明が、防衛省の所管するいわゆるファンディング制度への大学の応募に影響を与えているのではないかとの御指摘の関係でございますが、応募するか否かはあくまで大学当局の御判断に基づくものであること等から、防衛省として確たることを申し上げるのは困難である点は御理解いただきたいと思います。

 その上で、ファンディングへの応募状況でございますが、ファンディング制度への大学による応募状況に関しましては、過去六年間で延べ五十九大学七十五件、全体の応募数五百九十一件に対し約一三%であり、年単位で見れば、毎年おおむね十件、全体応募数の一三%程度を占めているところでございます。

 あと、ちょっと最後、今後の取組を一言言わせていただきたいと思います。

 ファンディング制度は、ほかの競争的研究費制度と同様に、防衛省が研究に介入することはなく、研究成果の公表を制限することもございません。また、防衛省がこれまで採択した研究課題の中に、大量破壊兵器や国際人道法に違反する武器の開発につながるものはなく、これからも防衛省が採択することはないということでございます。

 こうした制度のたてつけにつきましては、防衛省といたしまして、累次の機会に大学当局の皆様を始め広く御説明してきたところでございますが、各大学との個別面談のほか、例えば防衛装備庁が出展した展示会の機会を捉え、関心を持っていただいた研究者に対する御説明の機会を通じ、制度の内容や実績について正しく理解を得て積極的に応募していただけるよう、引き続きしっかり取り組んでまいりたいと考えている所存でございます。

重徳委員 以上で質問を終わります。ありがとうございました。

 山田副大臣、質問できなくて済みません。

鬼木委員長 次に、市村浩一郎君。

市村委員 日本維新の会、市村でございます。

 本日、三十八分いただきまして、質疑をさせていただきたいと存じます。

 今日は特に装備移転について後ほど議論をさせていただきたいんですが、冒頭に、我が党の主張をずっとやっております旧文通費のことにつきまして、ちょっと大臣の御見解をお伺いしたいなと思っておるんですね。

 と申しますのも、今、国民負担率が四八・六%まで上がってきました。三十年前は三〇%台だったんですが、ほぼ五〇%に近い。もろもろ含めると、もう五三・九というぐらいになっているんじゃないかという説もあるということであります。

 その中で、今回、防衛費については、我が党は、維新は、防衛費の、二%までのことは賛成です。ただ、問題は、その財源として国民に負担を求めるのはいかがなものか。令和九年度から一兆円の負担を求めたいというようなこともおっしゃっていますし、また、少子化対策では社会保険料を上げようとか、そういう話も出てきている。

 ところが、一方で、我々政治家については、旧文通費、今回、調査研究広報滞在費というふうになっています。これについては、昨年の通常国会で、まずは文通費の在り方について議論し、名称を変えましょうということで、変えました。その後、実は与党の皆さんも合意して、じゃ、中身について、名称を変えただけじゃなくて、例えば、今、私ども維新が、その使途については公開をさせていただいております。もしそれが使い切れなかった場合は党に渡して、党が寄附等に回すというようなことも今させていただいておるんですね。

 そうやって、やはり改革を求める、つまり、国民の負担をもし求めるのならば、まず政治家自らが身を正すといいますか、そういう身を律するような流れが必要ではないかということで我が党は主張をしているわけです。ただ、残念ながら、合意があったにもかかわらず、その合意がまだ現実化していないということが今あります。

 そこで、お尋ねしたいんですが、今回の防衛費の増について国民負担を求めようという流れがある中で、また、かつ、今与党の一員である大臣として、こうしたもの、状況を放置したままでいいのかどうかについての大臣の御見解をちょっとお聞かせいただければと思います。

浜田国務大臣 御指摘の調査研究広報滞在費につきましては、議会政治や議員活動の在り方に関わる重要な課題であるというふうに考えております。各党会派において御議論いただく事柄であると認識をしております。是非、国民の皆様から御理解いただける合意に至るように議論が進むことを期待しておりますという答弁でございます。

 これは、当然のごとく、今合意をされているということでありますので、更にその中身についても議論が進むことが重要だと思いますので、期待をしております。

市村委員 ありがとうございます。

 それでは、本題に入ってまいりたいと思いますが、この度の法律は、防衛産業を強化しよう、こういう思い、それは何かというと、我が国の防衛力を高めよう、こういう大きな目的があるんだと思います。そこで、もちろん自衛隊の調達している装備についてもしっかりと予算をつけて、もっと充実し、また、させていく、特に質の充実ですね、もちろん量もありますけれども、質の充実も図っていこうというのがあると思います。

 一方で、そのためには、それをサプライするサプライヤーたち、やはり防衛産業の皆さんが、今、私もかれこれもう二十年以上、地元の大阪や兵庫の防衛協会にも属させていただいたりしまして、時々には防衛産業の皆様とも意見交換をする機会をいただいておりますが、これまでの防衛産業の皆様は、どちらかというと、もうけ度外視の志でやってこられたんじゃないかと思うんですね、やはり国に貢献したいと。だから、利益が上がっている間は、多少そこで得を取れなくてもいい、国のために貢献して、必要なものを研究開発していこうというような、本当にそういう思いに頼ってきたのではないかなと思うんですね。

 ところが、日本の国力が、どんどんどんどん相対的国力がこの三十年で落ちていく。失われた三十年と言われていますが、最近は、いや、失われたなんという客観的な話じゃなくて、失った三十年だ、そう思うべきなんだ、こういう議論もあるぐらいに、この間、先ほどちょっと少子化の話もしましたが、結局、経済成長というのは、子供が増えるか、人口が増えるか、一人当たりの生産性が増えるか、どっちかしか究極的にはないわけでありまして、結局、日本は人口増を怠ってきたがために、それは当然、経済成長するはずもない。

 その中で、防衛産業も、防衛産業というか、防衛に携わってきていただいた企業たち、企業群も疲弊して、もう駄目ですということで、特に中小企業とかは、さっきから議論もありますが、サプライチェーンからもう抜けていって、いざ、欲しい、国産でやりましょうといったところで、結局、では探してみると、いや、もう無理です、うちはと。もうこれ以上無理ですよということになる。だから、そこをもっと根本的な強化をしようというのが今回の目的だろうと思います。

 まず、自衛隊を含む国内市場というのは、強化していくというのは当然ですが、諸外国がそうであるように、やはりいい技術は諸外国に使ってもらいたい、もらおうと。そうすると、装備移転という話になってくるわけであります。今回は、特にこの法案、結構、装備移転についてもかなり、九条から二十五条までぐらいは装備移転のことを書いているわけでありまして、そこをしっかりとやっていこうということなんです。

 ところが、いろいろ現場の皆さんのお話をまたこれも伺っていますと、主体が、やはりこれは政府、国主導でやってもらわないと、一民間に、あっちは、実は相手国は、相手は国が出てくるわけです、政府が出てくるわけです。GツーGなんですね。ガバメント・トゥー・ガバメントなんですね。それでやっておるわけです、いろいろ交渉を。ところが、こっちは民間が行って、例えば米国防省に行って、これは是非とも、いいですよと言ったところで、おたく何ですか、こういう話になるわけですね。一体どういうあれで来ているんですか、ここにと。

 それはやはり在外公館とかが主導して、また、あとはジェトロさんとかがあるわけです。そういうところが主導して、いろいろ、いわゆる向こうの政府関係者とつなぐというようなことをやはりしていかないと、民間に任せてやるというところまでやったら、今日、後で議論しますが、基金をつくるから少し支援してあげるよでは、なかなかそれはそこまでいかないというのが今現状のようでありますが、大臣、この辺の状況、やはり国が主導するという、政府が主導するというところを明確に、やはりここは、この法律ではちょっとそこが弱いような気がするんですが、それを補強するがための大臣の志をちょっとお聞かせいただきたいと思います。

浜田国務大臣 今委員がおっしゃった点については、私どもも常日頃から、企業の皆さん方の思いというのは、なかなか収益が上がらない、となると、企業としての役目はやはり収益を上げることであるわけでありますので、当然、そことの乖離した部分というのをどのように埋めるかという、そしてまた、お気持ちの中では、国のために貢献したいというお気持ちがあることは十二分に承知をしておりますし、また、そのことによって、今まで、ここまで来ているところがあるわけでありますので、今回の法律というのは、これは我々とすれば本当に第一歩にすぎないというふうに思っていますし、今後、どういった方法で、また、使っていただくことによってどれだけの効果があるのかも含めて、考えながらやっていかなければならないというふうに思っておるところであります。

 いずれにしても、今の委員の御指摘を、理解を私どももしているということを御理解をいただいた上で、今後また議論を深めさせていただければというふうに思っております。

市村委員 ありがとうございます。

 もう少しちょっと、もっと具体的に、やはり政府主導でやるんだということと、去年の十二月の三文書の改定といいますか、これをまとめたときに、やはり政府主導とか官民一体となってというのがあったと思うんですが、その辺、ちょっともう一度、大臣から、思いをここでぐっと込めて言っていただけないでしょうか。

浜田国務大臣 今委員御指摘のように、我々が、政府が前に出て、そして官民と一体となって進めていかなければ、これはなかなか解決する問題ではないというふうに思っていますので、政府としての思いというのは今回の三文書においてもしっかりと書かせていただいたわけでありますので、その方向に、しっかりと我々もその任務が果たせるように、今後とも仕事をしていきたいというふうに思っております。

市村委員 ありがとうございます。まずこれが大前提でありますね。

 その上で、今回の法案について結構細かく、ちょっと少し細かく聞かせていただきたいんですが、今回、この法案の装備移転の中で、いわゆる仕様及び性能の調整という文言が出てきます。これはちょっと大臣ではなくて政府参考人の方から、この仕様とか性能とか、またそれを調整するというのは具体的にどういうことなのか。どういうことを具体的には想定しながら、余り具体的には言わなくていいんですけれども、何を頭の中に浮かべながら、この仕様及び性能の調整をというふうにおっしゃっているのか。ちょっとここを具体的に、余り具体的でなくていいんですけれども、少し教えてください。

土本政府参考人 お答え申し上げます。

 本法律案において定義しているものではございませんが、一般的に、まず仕様でございますが、仕様とは、装備品において満たす必要のある形状とか構造、品質等の事項を定めたものということでございます。もう一つの、性能の方でございますが、性能は、装備品の能力そのもの、一例でございますが、例えば輸送機であれば搭載量といったようなもの、こういうものを一般的には指すと考えております。

 本法律案において、仕様及び性能の調整とは、いわゆる自衛隊仕様となっている装備品の仕様等を防衛大臣の求めに応じ変更、調整する、そういうことでございます。

市村委員 つまり、この法律で、後で議論しますが、これは基金法人をつくるということになるわけですね。だから、その基金法人の役割というのは、この法律を見ると仕様及び性能の調整をするわけでありますね。

 ですから、私は最初、この法律、ちょっと質問させていただきたいと思ったときは、もっと積極的にこの基金を使って装備移転を進める役割を担うのかな、こう思っていたんですが、そうではなくて、何か、さっき冒頭に、大臣の志は、政府主導で、官民一体となって、こういうことなんですけれども、この基金は、何か余り、その大きな志の中の本当にごく一部の、つまり、いわゆる仕様及び性能の調整、そのために基金をつくって、そして頑張りましょう、民間の努力を多少といいますか、支援しましょうかというような話になっているのかなと思うんですが、その辺はどうですか。やはり、大きな志をもっと支援するためのものじゃなくて、仕様及び性能の調整をやるということなんでしょうか。よろしくお願いします。

土本政府参考人 お答え申し上げます。

 委員の御質問は、事業者が実施する装備移転に必要な費用のうち、どういう費用に対して助成することになるのかということでございますが、本法案におきましては、装備移転に当たりまして、これを安全保障上の観点から適切なものとするため、防衛大臣の求めに応じ、企業が自衛隊の装備品等の、先ほど申しました仕様等を調整したり設計を変更したりする場合がございます。このために、今般その基金を造設しまして、こういう仕様等の調整に必要な資金を企業に対して助成するというのが、この法律のたてつけになっているということでございます。

市村委員 そのために基金を今回つくりますということでありまして、今回、この基金に今年度は一体幾ら予算の計上がされているのか、お聞かせください。

土本政府参考人 まず、計上額でございますが、令和五年度予算におきましては四百億円を計上しているところでございます。

 あの、内訳は……(市村委員「いや、いいですよ」と呼ぶ)よろしいですか。

市村委員 これは、この四百億は今年度でおしまいなのでしょうか。今後の展望はあるんでしょうか。

土本政府参考人 お答え申し上げます。

 まず、この四百億円の積算根拠のちょっと具体的内容につきましては、相手国の今後の防衛力整備の詳細に関わる部分であるなど、相手国との関係もあることから、お答えできないことは御理解いただきたいと考えます。

 まず、ちょっと、積算の関係でございますが、積算に当たりましては、現在、我が国が諸外国から引き合いを受けている艦艇、航空機、レーダー等、装備移転の具体的な案件を積み上げた上で、先ほど申しましたように、令和五年度予算においては四百億円を計上しているものでございます。

 今後の話でございますが、令和六年度以降の残りの四か年度においても、諸外国から同等の引き合いが継続して見込まれると想定いたしまして、今年度から五年間で予算額〇・二兆円を積算しているところでございます。

市村委員 〇・二兆円、つまり二千億円ということで、毎年四百億掛ける五年で二千億ということです。

 では、例えば令和五年度は使い切るという発想なのか、それともどうなのか、教えていただけますでしょうか。

萬浪政府参考人 お答え申し上げます。

 御指摘いただきました基金につきましては、移転の関係の支援法人の中につくるものでございますけれども、五年度内に基金の方に私どもの方から振り込みまして、基金の方で年度を越えてお使いいただけるということで、五年度内に使い切らなければいけないというものではございません。

市村委員 そういうことですね。使い切らなくてもいい、そのために基金の形を取る。予算など、単年度主義になりますから、そういうことだというふうに理解はしたいと思います。

 結局、私としては、この基金が、せっかくつくるのであれば、やはり実質的に防衛産業の強化につながるようにしなければならないわけでありまして、私ちょっと、少し嫌ごとを言うようですけれども、大体、この法律に、結局、「全国を通じて一個に限り、指定装備移転支援法人として指定することができる。」ということに文言があるんですね、「一個に限り、」と。でも、かつて三十年前、私も日本新党という政党で政策スタッフをやっているときに、官僚の先輩から、いや市村君、我々はこういうとき、法律を作るときは、財団法人何々をつくりますと入れ込むんだよ、こうして天下り先をつくるんだよと、こういう話を三十年前ぐらいに聞いたことがありまして、何かそれを私の頭の中にほうふつとさせるような、この「一個に限り、」と、こういうのが出てくるんですよね。

 だから、まあ、いいんですよ、もちろん、防衛産業のためにやるというならそれでいいんだけれども、まさかですよねと。まさか、防衛省もなかなか自由に使える財布もないから、ちょっとここで二千億ぐらいの基金をつくってやろうかというような、よもやそんな発想ではないと信じていますが、いかがですか。

 私は、だから、もし本当にやるとしたら、四百億というのは桁が違うんじゃないかと思うんですね。本来、四百億で済むんでしょうか、本当にやろうとしたら。何かの、例えば我々がアメリカからいろんな、買いますというときに、プログラム変更一つ、ちょっとしたプログラム変更、これは日本仕様にしましょう、日本側は、こっちでも、それでいいですよ、使えます、いや、駄目駄目と。あんたのところにしてあげるからといって、そのちょっとしたプログラム変更でも五十億取られるとか、こういう世界なんですよね、ちょっとしたプログラム変更でも。

 だから、本当に四百億で、本当にやろうとしたときに四百億で足りるのかという話でありまして、だから、単年度じゃなくて、長年にわたることもあるでしょうから、予算でやるといかぬということであれば、だから基金も、ちょっと何か桁が違うような気がするんですが、いかがでございますかね。

土本政府参考人 お答え申し上げます。

 ちょっと繰り返しの答弁になって恐縮でございますが、先ほど申しました令和五年度予算において四百億円を計上している。これは、現在、我が国が諸外国から引き合いを受けている艦艇、航空機、レーダー等の具体的案件を積み上げた。ただ、これ以上の細部につきましては、相手国との関係もあるので、大変申し訳ありませんが、御説明できませんが、具体的な案件を積み上げた上での額ということで御理解いただきたいと思います。

市村委員 大臣、日本は結局、二〇一四年からこうやって装備移転というのをやり始めたということで、やはりそれまで経験がない。遡ると、何か、日本の明治維新、戊辰戦争で使われた兵器は、アメリカの南北戦争で造られた銃とかをイギリス経由か何かで輸入して、それを使ったとかいうことで、日本は装備品の輸入はずっとしてきているんだと思うんですけれども、ある意味で、装備品の輸出というか、それを移転というのは慣れていないということもあって、結局、二〇一四年からこれまで、今年まで、私が把握しているだけで七件あって、そのうち一件が、フィリピンへの防空レーダーの移転だけはうまくいっているということで、結局、ほかは全部、全滅状態ということで、それは一つの、いろんな原因があるんですけれども、やはりそれは、さっきのことで、さっき大臣にも高らかにおっしゃっていただいたように、例えば韓国なんか、もう国主導ですよ。ガバメント主導、政府主導でやっている。

 日本はそうじゃない。民間が出ていって、何しに来たんですかという話から始まってしまうというところで、かつ、いろいろ防衛移転については、いろいろな取決めがあるようなこともあるやに聞いておりまして、そうすると、民間ができないんですよね。

 これは民間が出ていっても、そんな、いや、おたくの国、ではどうしてくれるのと言われたって、一民間が答えられるはずもないわけでありまして、だから、そうなると、やはりさっきも申し上げましたが、出先の在外公館とか、ジェトロとか、本当に政府を挙げて、力を合わせてやらないと、これはなかなか、やろうといったって、向こうは政府総出で出てきて、こっちは民間が行ってやっても、それはもうとても無理なわけでありまして、大臣、どう思われますか、この辺りは。

浜田国務大臣 防衛装備品、装備移転の推進については、防衛省としてこれまでも様々な取組を行ってきております。

 委員御指摘のトップセールスについては、私も含め、各国とのハイレベル交流の機会を捉えて、装備移転の推進について議論してきております。引き続き、こうした機会を最大限活用してまいりたいと思います。

 また、在外公館職員は、防衛駐在官も含めて、従来より業務の一環として、防衛装備品の移転可能性がある国において、その円滑な実施のための支援を実施してきておりますし、引き続き、必要な支援を得ていきたいと考えております。

 防衛装備移転については、防衛力整備計画にあるとおり、政府が主導し、官民の一層の連携の下に推進をしてまいりたいと考えております。

市村委員 そうですね。本当に官民一体となってというか、もう政府が先に出ていってやるべきだ。

 さっきからの議論もありますけれども、やはり今回、これまでのサプライチェーンを、今大変毀損されてきているということで、サプライチェーンをまたとにかく維持するために、先ほどから話がありますように、大変防衛費も増やす。具体的にここに幾ら、五百億だ、四十億だとか、セキュリティーの関係も四百億だとか、こういう話でやってきているわけであります。

 だから、政府がやはり表に出て、先に立って、民間が頑張っているからそれを俺たちも支援してあげようじゃなくて、もう特にこの防衛については政府が先に立って、むしろ民間に対して、先ほども言いましたが、これまでない技術についても、これは防衛とかに資するというものがあれば、これまでのサプライチェーンのトップたちとのつき合いだけじゃなくて、これはこれで、これまで一生懸命、防衛産業のサプライチェーンをつくってきてくださった方たちに対しては敬意を表しながら、そこはもちろん頑張るんでしょうけれども、しかし、今のところまだサプライチェーンには入っていないけれども非常に重要であるということは、これはやはり、防衛装備の観点から、防衛省としても当然考えておられるはずなんですね。

 現場の、今日はちょっと残念ながら統幕長には来ていただくことはできなかったわけですけれども、将来的には、是非とも現場のトップである統幕長にもこういう場に来ていただいて、シビリアンコントロールの観点からいろいろ議論があるのは分かりますが、是非とも現場の声もこの委員会でも聞かせていただけたらありがたいんですが、そういう現場で、やはり実際に日々の訓練の中で御苦労されている、あとは、米軍との共同訓練とか、韓国軍との共同訓練とか、共同訓練の中で、今、いろいろ課題が出てきているはずなんです。

 だから、そういうところの現場の声を吸い上げていただいて、じゃ、どれをどう改善すればいいかということを、既存のサプライチェーンじゃなくて、防衛省が防衛省として考えて、これは使えるんじゃないかとかいうところに関して、まあ、やっていらっしゃるとは思うんですけれども、そこにもっと心を致していただいて、新しい防衛産業を、何というか、パラダイムシフトが必要だと思うんですね。

 これまで、戦後の、結局、新憲法の九条の下で、専守防衛に努めましょうとか、武器輸出に関しては殺傷能力のあるやつは駄目でしょうとかやってきている中で、しかし、ウクライナの侵攻等、あとは台湾有事も想定されるような状況の中で、もうそんなことを言っている場合じゃないわけでありまして、集団安全保障という観点からも考えて、日本も、先ほどからもありますように、やはり自立した防衛力を持たなくちゃいけない、こういう大前提の中でやはり物事を考えるということが必要だと思うんですね。

 いろいろな制約が今まであったとは思うんですけれども、これから与党さんの方でも、また今月末あたりから大分その辺の議論はされるというふうに伺っておりますし、我が党、日本維新の会の方も、去年にいろいろ提案させていただいています、提言させていただいております。だから、そういう党派を超えて、本当、国の守りでありますから、やらなくちゃいけないということであります。

 そのときに、やはり防衛省がもっと主導していく。民間、君たちは頑張っているから少し手伝ってあげようかという発想じゃなくて、防衛省が主体となって動く。そして民間についても、よし、一緒にやろうよと。もちろん、民間は利益を取らないと生きていけませんので、それは先ほどから、これを八パーから一五パーに上げるとかいう発想、もちろん、いろいろ、さっき御指摘があったことも大切だと思います、競争力をかえってそがないかというのももちろんあります。それはしっかり工夫もされているという話もありました。

 だから、そういうところで、とにかく真剣に、今までいろいろな制約があったにせよ、これからはもうパラダイムシフトで、持続可能な防衛産業、大臣おっしゃった、これを育成することが必要だと思うんですが、大臣、いかがでございますか。

浜田国務大臣 確かに我々、今回、三文書でしっかりと書かせていただいたものを実行するべく、装備庁を中心にこういった法案を出させていただいたわけであります。

 当然のごとく、我々、今後政府が中心になってやっていくべきだという御意見は、確かにそのとおりだと思いますし、我々とすれば、今までいろいろなことは考えてきたわけでありますが、今回、その第一歩としてこの法案を出し、そして、三文書とこの法案と、そしてまた、我々の思いは、あらゆる民間の先端技術等々も頭の中に入れつつ、我々がどれだけこの産業を育てていくことができるかということを真摯に考えながら今後ともやっていきたいというふうに思いますし、御指摘の点を十二分に考慮しながらやっていきたいというふうに思います。

市村委員 それで、今回の装備移転については、指定装備移転支援法人なんですね。法人の名前が支援なんです。けれども、本当は、これは修正協議とかはもちろんできないのでありますけれども、これは支援法人ではなくて、本来であれば指定装備移転推進法人とすべきではなかったかなと思うんですが、大臣、いかがですかね。支援ではなくて、支援というと、結局、民間が頑張っているから支援してあげようということなんですけれども、いや違うんだ、国が主導して推進するんだという発想じゃなかったかなと思うんですが、いかがでしょうか。大臣の率直なお考えを聞きたい。

浜田国務大臣 今の御指摘の点については、しかし、我々とすれば、この法案の内容については、我々として考えて、しっくりくるものを選んだということだと思いますし、ただ、思いは、これは同じであります。

市村委員 それで、あと、この移転の適正性を確保するために、防衛省か又は防衛装備庁に外部有識者委員会を設置するということは、いかがですかね。これは大臣、どうお考えになりますでしょうか。外部有識者会議というようなものをつくった方がいいんじゃないかという意見があるんですが。まあ、大臣じゃなくても。

土本政府参考人 お答え申し上げます。

 移転の関係で外部有識者会議を設置したらどうだと、装備庁にという御指摘でございます。

 この御指摘、今日初めてお伺いした御指摘でございますので、大臣の御指導も得ながら、委員の御指摘、検討させていただきたいと思っております。

市村委員 結局、有識者会議を、なぜ言うかというと、まず、やはりいろいろな多様な意見を、特に民間の現場で苦労されている方の意見をもっと公で聞いていただいた方がいいかなと思うんですね。やはり皆さん、言うに言えないんですね。だから我々が代弁するわけですけれども、言うに言えないというところで苦しんでおられるというところもあります。だから、そういったところで、そういった委員会をつくったらいかがかなというのもあります。

 あと、民間が例えば売り込みに行くと、では行って、はい買ってください、はい買いますなんということは絶対ないわけであって、どんなものか見せろよ、こうなるわけですね。どんなものか見せろよと。じゃ、今度、例えば、うちの国でこういう展示会をやるから、防衛装備の展示会をやるから出せばいいじゃないか、こういう形で言われたとしても、その民間企業には余力がないんですよね。物がないんです。全部、自衛隊に納めていますから。自衛隊に納めているんです。じゃ、それを貸してくれと言っても、それは自衛隊からすると、いやいや、ちゃんとこれはもうローテーションに入っているんだから、そんなもの貸せるわけないじゃないかという話に今のところなっているんですが、かといって、ではそれがずっと使われているかというと、なかなか使われていないものもあるということで、そうすると、海外で展示会とかあった場合、こういうものなんですということで、その展示会の中に、いわゆるプロモーション支援というか、マーケティング支援というものを政府もやった方がいいかなという気がするんですが、これは大臣、いかがですか。じゃ、まずは政府委員にお願いします。

土本政府参考人 まず先に、ちょっと事実関係の方から、私の方から御答弁させていただきます。

 いろいろ、諸外国で、おっしゃるように、防衛装備の展示会が開かれておるところでございますが、そこに我々、ATLAブース、ATLAというのは防衛装備庁のことでございますが、そういうところは、しっかりそういうブースを設けまして、我々防衛省、装備庁の職員と民間企業の方とタイアップして、一緒になって、いろいろな諸外国の関心を持っておられる方に御説明をするというような形で対応させていただいておりまして、これが最近、非常に増えているところでございます。

市村委員 もちろん、全然やっていないなんて思って話をしておりません。ただ、なかなか、やっておられるところもある一方で、多分、いわゆるこれまでの、サプライチェーンのトップの方たちとのおつき合いの中ではやっておられると思うんですけれども、これまでの中で余りおつき合いがないようなところ、また、これから生まれようとしているところについては、なかなかまだ厳しい状況にはあるかもしれません。

 ですから、今度、防衛大臣が装備移転支援実施基準というのを作られるはずなんですね、今後。まだできていないと聞いていますが、その中に、是非とも、マーケティング支援というものも附帯業務に含まれることを明確にしていただくということについて、これは大臣、ちょっとお気持ちを聞かせていただけませんでしょうか。

浜田国務大臣 我々、今御指摘の点、頭に入れておきたいというふうに思います。

市村委員 今、ありがとうございます、前向きな御答弁をいただいて。

 これも、別に誰かのためにやっているわけじゃなくて、国の守りですので、これは本当に与野党を超えてやらないと、この状況の中で、非常に、みんなどうしたらいいかということを考えているわけですね。特に日本は、何かお花畑とか平和ぼけとかいろいろ言われていますが、これはもう本当に早急にやらなくちゃいけない。

 先ほど申し上げたように、この基金ですね、基金法人ですけれども、これが是非ともワークするように。ですから、今回はいわゆる性能とか仕様の調整ということでの基金なんですけれども、必ずしも仕様調整が必要でないものもあるかもしれない。あるんですね。それに対しては対象になっていないわけでありまして、けれども、そういうものも、少なくとも非殺傷の装備については、もう仕様とか性能の調整というのが必要でない場合は、ないものも助成するような、そういう仕組みがやはり私は必要だと思うんですね、この法人以外に。今回の法人に入れていただいてもいいんですけれども、今のところ入っていないんですね、これは調整のための法人、基金法人なので。

 是非とも、調整が必要のないものへの支援も私はやるべきだと思うんですが、これは非殺傷の装備ですけれども、大臣、いかがでしょうか。

浜田国務大臣 我々も、しっかり検討しながら、慎重に進めていきたいというふうに思います。

市村委員 本当に、長い時間をいただきまして、感謝いたします。是非とも、今後、与党の方でも今後の防衛力の強化についていろいろ議論されると聞いておりますので、しっかりと、これは与野党を超えて力を合わせて、国の守りのために頑張っていきたいと思いますので、またよろしくお願いします。

 以上で質問を終わります。ありがとうございました。

鬼木委員長 次に、斎藤アレックス君。

斎藤(ア)委員 国民民主党の斎藤アレックスでございます。

 では、議題となっています本法案について質問させていただきたいと思います。

 まず、防衛産業の競争力強化に関してお伺いをしたいと思います。

 昨年から、安保三文書などを通じて、まあ、それ以前から防衛予算が大幅に増強されるということは一般に報じられていまして、また、安保三文書が示された後、又は概算要求などでもそのことが広く認知されている中であるのにもかかわらず、その後も撤退する大企業が防衛産業から出てしまっている状況ですけれども、その原因に関してどう認識されているのか、伺いたいと思います。

浜田国務大臣 我が国の防衛産業は防衛装備品のライフサイクルの各段階を担っております。防衛装備品と防衛産業は一体不可分でありますが、防衛生産・技術基盤の現状は、複数の企業が防衛事業から撤退するなど、非常に厳しい状況にあることは御指摘のとおりであります。

 昨今の企業経営において、キャッシュフローが重視されたり、高い利益率が求められる傾向にありますが、防衛事業は高度な要求性能や保全措置への対応に多大な経営資源の投入を必要とする一方で、収益性が低いと言われております。現状では、販路が自衛隊に限られ成長が期待されないなど事業としての魅力が乏しく、サイバー攻撃や、事業撤退等といったサプライチェーン上の様々な供給途絶リスクが現実化しているといった多様な課題があるとともに、それらがより顕著になってきているというふうに考えております。

斎藤(ア)委員 ありがとうございます。

 まさに、今言っていただいたところをどう解決するかという話をこれからしていきたいと思っているんですが、その前に、やはりこういった撤退が生まれてしまう原因の一つとして、今後、自衛隊・防衛省の調達自体が予算規模として維持できるのかという疑念も私はあると思っています。

 今後五年間にわたって大幅に予算が増強された状態が示されていますけれども、その五年間の予算は本当に確保できるのか、そして、その五年後の予算はどうなっていくのか、そういったところ。そもそも、今財政が極めて厳しい中でございますので、そういった中で、企業が、本当に産業を維持できるのか、そういった不安を持っていることもあると思うんです。

 この部分は、今、財源確保法の方で議論をさせていただいていますので、本日は割愛をさせていただきたいと思っていまして、今大臣からもおっしゃっていただいた、日本の防衛産業が抱える課題、問題をどう解決していくかということをちょっとお話をしていきたいと思います。

 今言っていただいたように、利益率が低い、コアのビジネスではない、そういったことがありまして、それをどういうふうに解決をしていくかということだと思います。

 また、本日は余り議論ができませんけれども、防衛産業自体が消費者にネガティブなイメージを持たれてしまうのではないかということを、こういった日本の大企業、主契約企業はほとんどが民生部門が主体の企業でございますので、消費者へのネガティブイメージということを懸念していたり、あるいは、こういった主契約企業は中国とかそういった国でもビジネスをしていますので、自分たちのビジネスが、日本の防衛力とか、緊張関係がある中で、それの増強に使われるということが中国でのビジネスにマイナスになるのではないか、そういったことを懸念される可能性もあるかもしれません。

 そういったときに、今の提案されている法案というのは、利益率を改善するとか、入口部分での対策としてはあるべきだとは思うんですけれども、本来的に企業の競争力を強化をする、こういったコアビジネスでないところで企業にもどう投資をしてもらうのか、どう経営資源を割いていただくのか、こういったところへの解としては、私は不十分ではないのかなというふうに考えております。ちょっと時間が限られているので、質問は割愛させていただきますけれども。

 今回、利益率の確保、財政支援などが前提となっていますけれども、こういったことに支援が終始をしてしまうと、結局は国際競争力を失って、日本の防衛産業が破壊をされることにつながらないかなということをちょっと質問させていただきたいと思います。

 最終的にはFMSや国外からの調達にどんどん装備品を頼るようになってしまうのではないかという状況が懸念をされます。

 防衛省は、九六式装輪装甲車の後継として、三菱重工が提案した試作車ではなくて、フィンランドの総合防衛企業のパトリアの車両を調達することを決めました。装備は、要求仕様に応じて最も適切なもの、望ましいものを導入していただくことがもちろん大前提でございますし、また、パトリアに関しても国内でライセンス生産をされるということでございますので、雇用の確保やノウハウの維持にはつながることはあるんだとは思います。

 もちろん、この一件だけで国内の防衛産業の開発力、競争力が低下をしているということを申し上げたいわけではないですけれども、こういったふうに、国内の防衛産業であっても既に国際市場との競争にさらされている中で、国内の防衛産業が国際競争力を得ないと、どんどん海外の企業に調達を頼ってしまうことになりかねないのではないかということを懸念されています。

 まず、防衛大臣に伺いたいのですけれども、こういった防衛産業政策は、保障された利益率や財政的な支援、また、最終的には工場の買取りといったことも今回含まれていますけれども、こういった支援サイドの政策に終始してしまうと、結局競争力を失うということにつながると思うんですけれども、その懸念は共有していただいているということでよろしいでしょうか。

浜田国務大臣 防衛省は、これまで防衛産業に対して調達契約に係る様々な施策を講じ、必要な対価の支払いや企業のインセンティブ向上に努めてまいりました。しかしながら、防衛産業、技術基盤の現状は、高度な要求性能や保全措置に対応することによる負担、これに係る対価が十二分に行き渡っていないことなどから、複数の企業が防衛事業から撤退するなど非常に厳しい状況にございました。

 今般法律案に規定している措置や、企業が適正な利益を確保する仕組みの導入などの施策は、力強く持続可能な防衛産業の構築に不可欠であるとの考えから策定されたものでありまして、今御指摘のあった点について、これは当たらないというふうに考えております。

斎藤(ア)委員 ちょっとそこは、やはり問題だと思っています。

 国内の防衛製造企業の基盤を強化したいなら、とにかく国際市場で受注をかち取れるような競争力を国内企業が持っていただくことが必要だと考えておりますので、そこを主体に、もちろん、入口で支援をしていくということは現状必要なのかもしれませんけれども、最終的なゴールは、国際競争力を国内企業に持っていただく、そのことが必要だと思うんですけれども、その点に関してはいかがでしょうか。

浜田国務大臣 確かに、御指摘のとおりだというふうに考えます。当然のごとく、これは、仕事をしていく上では、かなり競争はこれからも激しくなってくるというふうに思いますので、御指摘の点はしっかりと考慮していきたいというふうに思います。

斎藤(ア)委員 この競争力強化に関してちょっと質問させていただきたいと思いますけれども、防衛産業の国際競争力を強化をする上で、国による研究開発への投資であったり、民生部門との連携を深めていただいたり、国際共同開発への参画、先ほども少し議論がありましたけれども、大学といった外部研究機関との連携、協働などがあると思いますけれども、最もシンプルで、そして根本的な必要な取組というのは、私は、企業再編、合併、統合、こういうことが必要ではないかなというふうに考えております。

 まず、いろいろ申し上げる前に大臣のお考えをお伺いしたいんですけれども、規模の経済を発揮してもらう、大きな企業になっていただいて競争力を持っていただく、こういった方向性についてのお考えはいかがでしょうか。

浜田国務大臣 我が国の防衛産業は、欧米諸国の多くの防衛産業と異なり、プライム企業については、民需事業を主体とした企業が、おおむね一〇%未満の割合で防衛事業を手がけております。こうした事情等から、冷戦後に欧米で起きたような大規模な防衛産業の再編は、我が国においては見られていないところであります。

 個々の企業の組織の在り方は、あくまでも各社の経営判断によるものでありますが、防衛省としては、各企業の判断を尊重することが必要と考えておりますが、力強く持続可能な防衛産業を構築するためにはどのような施策が効果的かについては、引き続き、官民間でよく意見交換を重ねていきたいと思っておりますが、今委員の御指摘というのは、その方法論の一つだとは考えております。

斎藤(ア)委員 今大臣にちょっとお話をいただいた、欧米と日本の違いのところを少し私もお話をさせていただきたいと思うんです。

 欧米では、冷戦の終結に伴う防衛予算の削減で、防衛産業は大規模に再編が行われましたけれども、日本では、一方で、高度経済成長以降の右肩上がりの時代に、非軍事が主力の製造業の企業が、これは愛国的な義務感があるというふうにおっしゃる方もいますけれども、とにかく、利益をある程度度外視した中で防衛産業を支えていただいていましたけれども、その状態が今も温存されてしまっている。

 競争が激しい今の時代に、日本も人口減少が急激に進んでいますので国内市場が縮小している中で、そういった民生部門の企業に関しても、業績が大変厳しい、大変厳しい競争環境下にある。そういった状況下でこれまでのようなことを企業に求めることはやはり酷だし、間違っているし、そして持続可能ではないというふうに考えています。だからこそ撤退する企業が出ているんだと思います。

 欧米では、再編に対するインセンティブを与えたり行政指導を行ったりして再編を実現した、統合を実現したということがありました。今大臣おっしゃっていただいたように、欧米では、防衛が主体の企業が複数、たくさんあったのを統合したということですけれども、日本では、民需が、民生品が主体の企業がちょっとずつ防衛をしているということなので、同じ方法、手法を取るということはやはりできないんですけれども、しかし、この複数社にまたがっている日本の防衛産業を再編すると、様々な効果が期待できると思います。

 コア事業が防衛産業になると、投資に関しても、経営判断に関しても、この防衛産業をどう拡大しようか、どう利益を稼いでいこうかということに経営陣というのは集中できるようになると思いますし、ブランドイメージというものを、民生部門への影響というのは考えなくていいようになりますし、また、海外でのセールスに関しても、どんどんとその会社は経営ノウハウを積んでいく、経験を積んでいくことになりますので、日本の防衛産業の国際競争力を強化をしていくためには、この統合再編というのはやはり極めて重要なツールになるというふうに考えております。

 こういったふうに、国際競争力のある国内防衛産業があれば、自衛隊が買うときにコストが過大になってしまっているんじゃないかとか、本当にこの利益率は透明性があって適切なものなのかということをある程度考えなくてもいいようになる。国際企業と国内企業を同一に考えて、別に、いいものがあったら国際企業からも買うし、いいものを造ってくるんだったら国内の防衛産業から買うということで、こういったフェアな競争環境ができることで、過大なコストという問題も解決できるようになるというふうに思っています。

 今の日本の状況からすると夢物語みたいな話かもしれませんけれども、時間がたてばたつほど、統合された企業というのは競争力を持つことが難しくなってしまうと思っています。半導体とかディスプレーとか、日本では、経営が厳しくなった企業が統合をして、結局、更に倒産をしてしまうということが今起きてしまっていますけれども、防衛産業の統合再編というものは余り時間がない、やるんだったら早くしなければならないということを是非とも考えていただきたいと思います。

 今、一つの考え方として受け止めていただいていると思いますけれども、改めて、再編に関する利点というのは様々あるんだということを大臣もお認めになっていただけますでしょうか。

浜田国務大臣 これは、今委員の御指摘のあったとおりでありまして、統合することによるメリットというのは大きなものがあるというふうに思います。

 ただ、今そこにすぐ着手できるかというと、これは各民間の企業の経営ということになりますので。ただ、一つ一つの企業において、やはりその能力というのは高いものがあるわけでありますので、一つの考え方とすれば、そういったものを抽出して合併が行われるとかというのは、大変これは有益なことなのかなというのは、一般論として私自身は感じております。

斎藤(ア)委員 今の日本の防衛産業の体制であれば、民間の競争力のある部門と防衛部門がそれぞれの会社で連携ができる、そういった利点もあると思いますので、そういった利点を残しつつ、日本の形で、いい形で、防衛産業の再編とか規模拡大をつなげて、実現していければと思いますので、是非早急に検討していただければと思います。

 それぞれの企業の経営判断、もちろんそれはそうなんですけれども、やはり世界中、どの資本主義の国でもそうですけれども、完全に自由に任せて、やらせているわけではありません。この日本だって、補助金を与えたりだとか支援をしたりとかといったことである程度手は加えているわけですので、防衛産業であったり、あるいはそこで働く人たちの雇用を守っていく、そういった上で必要な施策については、ほかの欧米の国でもやっていましたので、是非ともやっていただければと思います。

 特に、ここはコメントだけにしますけれども、今、主契約企業になるような大企業のお話をさせていただきましたけれども、防衛産業に関わっていただいている中小企業においても、再編というのはやはり極めて重要だと思っています。極めて多くの、小さなベンダーさんがたくさんいらっしゃって、防衛装備庁の方でも、実際問題、管理というのは非常に大変だというふうに思います。

 日本の中小企業は、ほかの先進国と比べて、やはり一般的に規模がすごく小さくなってしまっているので、経営が適切にできないとか、投資ができないとか、賃上げができないといった問題が起きていて、それは防衛関連産業にも起こっていると思いますので、そういった観点でも、MアンドA、再編の手法については、是非とも一つのツールとして積極的に活用していただきたいというふうに考えております。

 少し飛ばさせていただきまして、こういったふうに、国際競争力を日本の国内の防衛産業に持っていただくために、やはり乗り越えていかなければならないのが、海外への装備品の移転を円滑化していくことだというふうに思っています。装備移転に関しても、欧米の自由主義国、民主主義国と同等の水準のレベルまで規制を緩和をしていくことは、私は必要なのではないかなということを考えています。

 もちろん、注意すべきなのは、どの国に移転するかということだと思います。しっかりとした民主主義国、自由主義国、法治主義国であって、他国に侵略をしたりとか、自分たちの国民を武器を使って圧迫したりだとか、そういったことをしない国に限定して、極めてそこの部分は慎重に精査をした上で、移転する内容に関しては緩和をしていく、こういったことをしていく必要があると思います。

 また、移転した先で第三国に流れるということもしっかりとチェックをしていくような協定とか手続を取っていくべきだと思います。

 こういったことが必要だと思っているんですけれども、ちょっと通告、二つまとめてになりますけれども、海外移転の今後の政府の方針と、装備品の内容を拡充するためには、運用指針での五類型の限定の部分を広げていく、取り外す、こういったところが必要だと思うんですけれども、できればそういったところも含めて、方針に関してお伺いできればと思います。

浜田国務大臣 国家安全保障戦略に記載しているとおり、防衛装備品の海外への移転は、我が国にとって望ましい安全保障環境の創出や、国際法に違反する侵略を受けている国への支援などのための重要な政策手段となります。

 このような認識の下に、政府としては、政府一体となって、官民一層の連携の下に装備移転を推進していく考えでございます。

 そして、今、その次に、今後の対応というか、五類型のお話でございますけれども、現在、防衛装備移転三原則の運用指針では、国際共同開発・生産による場合を除いて、完成装備品の移転を認め得るのは、基本的に救難、輸送、警戒、監視及び掃海に該当する場合に限定をされております。

 この点について、二〇一四年に、防衛装備移転三原則や運用指針が策定されて以降、約九年間の間に、完成装備品の移転の実績としては、フィリピンへの警戒管制レーダーの移転一件にとどまっていることは事実でございます。

 また、国際共同開発・生産に関して、例えば、共同開発のパートナー国から第三国への円滑な装備移転の実施に際して課題があると認識をしております。

 その上で、国家安全保障戦略に記載しているとおり、防衛装備品の海外への移転は、我が国にとって望ましい安全保障環境の創出や、国際法に違反する侵略を受けている国への支援などのための必要な政策手段となります。

 防衛装備移転三原則や運用指針を始めとする制度の見直しについては、こうした観点から、関係省庁とともにしっかりと議論を進めてまいりたいと考えております。

斎藤(ア)委員 ありがとうございます。

 これから与党、自公さんの方で議論も進められるということでございますので、また状況については教えていただきたいと思います。

 最後に、先週質問した際に、ちょっと答弁と質問がかみ合わなくて、武器を海外移転できるようにするために自衛隊法の改正は必要なのか、防衛三原則あるいは指針だけの改正でいいのかというところでちょっとかみ合っていなかったので、最後、そこだけ確認をさせていただきたいんです。

 先週、私はウクライナのことも言っていたので、そこで趣旨が混乱してしまったと思うんですけれども、改めて確認ですけれども、自衛隊が持っているものを海外に移転する場合で、そこに武器が含まれる場合であれば、これは自衛隊法の改正が必要だという趣旨の答弁を先週されたということで、防衛関連企業が直接売る場合に、武器を輸出するんだったら、それは自衛隊法ではなくて武器輸出三原則、指針を変えることで足りるという基本的な認識でいいのか、教えていただきたいと思います。

土本政府参考人 まず、前提といたしまして、装備移転三原則及び運用指針を始めとする制度の見直しの具体的な内容については決まっていないことから、見直しの具体的内容に関する御質問にお答えすることは困難であることを御理解いただければと思います。

 その上で、まず委員御指摘の、企業からの移転のケースでございますが、我が国の企業が外国政府と契約し完成装備品を移転する場合につきましては、防衛装備移転三原則等に従って判断することになります。

 この点、現在の運用指針では、国際共同開発・生産による場合以外に完成品の移転を認め得るのは、ウクライナへの自衛隊からの防衛装備品の譲渡を除けば、基本的に救難、輸送、警戒、監視、掃海、いわゆる五類型に該当する場合に限定されておりまして、直接人を殺傷することを目的とする防衛装備の移転がこれらに該当することは基本的には想定されていないということでございます。

 続きまして、自衛隊の装備品の譲渡の関係でございます。

 委員御指摘の自衛隊の防衛装備を譲渡する場合についても、防衛装備の海外移転の管理という観点から、防衛装備移転三原則等に従って判断されます。この点、昨年三月、運用指針の移転を認め得る案件といたしまして防弾チョッキが該当するものがなかったことから、移転を認め得る案件としてウクライナへの自衛隊の防衛装備の譲渡が追加されました。

 防衛装備移転三原則等の下での判断に加え、自衛隊の装備品等を無償で譲渡するという点においては、財政法の特例である自衛隊法第百十六条の三の要件を満たして実施することとなります。したがいまして、自衛隊法第百十六条の三における譲渡対象に該当する必要があるところ、同条の対象からは武器弾薬が除かれていることから、防衛装備移転三原則等の内容いかんにかかわらず、同条により自衛隊の武器弾薬を他国軍隊に無償譲渡することはできず、そのため、直接人を殺傷することを目的とする防衛装備を譲渡することはできないということでございます。

斎藤(ア)委員 時間が来ましたので、また、ちょっと議事録を確認させていただいて、伺いたいと思います。

 ありがとうございました。

鬼木委員長 次に、赤嶺政賢君。

赤嶺委員 日本共産党の赤嶺政賢です。

 法案について質問をします。

 今回の法案は、武器を輸出する企業に対し、防衛大臣が求める仕様変更を行うのに必要な経費を国が助成する仕組みを盛り込んでおります。安保三文書は、「防衛装備移転を円滑に進めるための各種支援を行うこと等により、官民一体となって防衛装備移転を進める。」としております。今回の措置はこれを具体化するものであります。

 大臣に伺いますが、安倍元首相は二〇一六年一月七日の参議院本会議で、「武器輸出を国家戦略として推進するといったことは全く考えておりません。」と、このように答弁をしております。二〇一七年には当時の稲田防衛大臣が同様の見解を表明しています。

 ところが、今回、まさに国家戦略である国家安全保障戦略で、官民一体となって武器輸出を進める方針を明記いたしました。これまでの方針を変えたということですか。

浜田国務大臣 御指摘の平成二十八年一月七日の参議院本会議における安倍元総理の答弁は、井上議員から、経団連は、提言を発表し、安保関連法の成立で自衛隊の国際的な役割の拡大が見込まれる下、武器輸出を国家戦略として推進すべきと強調しています、総理はこの答弁に基づき武器輸出を国家戦略として推進するつもりですかとの質問に対し、安倍元総理からは、「御指摘のように、武器輸出を国家戦略として推進するといったことは全く考えておりません。」と答弁したものです。

 これは、経団連の提言における、安保関連法の成立で自衛隊の国際的な役割の拡大が見込まれる下という部分も含めて、ただいま申し上げた井上議員の質問全体に対して「御指摘のように、」と答弁したものであり、防衛装備移転推進そのものを否定した答弁ではないと考えております。

 なお、平成三十年十二月に閣議決定された防衛計画の大綱においても、「防衛装備移転三原則の下、装備品の適切な海外移転を政府一体となって推進する」旨を記載しているところであります。

赤嶺委員 いやいや、当時の安倍総理の答弁は、もしそれを正確に言うなら、経団連の御提案のように国家戦略とすることはできないという、経団連の提案全体に対する答弁にはなっていないんですよ、私も読み返してみましたけれども。やはり、武器移転を国家戦略にすることはないと。

 国家安全保障戦略は、武器輸出を、我が国にとって望ましい安全保障環境の創出や、国際法に違反する侵略などを受けている国への支援のための必要な政策手段だと位置づけております。まさに、国家戦略として、望ましい安全保障環境をつくるために武器輸出を進める、そういうことではありませんか。安倍首相の答弁の趣旨とは全く違うと思います。いかがですか。

萬浪政府参考人 御指摘の答弁の中で、安倍総理の答弁のところ、先ほど大臣からも御答弁申し上げましたが、すぐ前のところで、「防衛装備の海外移転についてお尋ねがありました。」とありまして、防衛装備の海外移転につきましては、我が国としては、国連憲章を遵守するとの平和国家の基本理念と、これまでの平和国家としての歩みを引き続き堅持してまいりますと。その後に「防衛装備移転三原則の下、海外移転が許されるのは、」とありまして、これが「平和貢献・国際協力の積極的な推進又は我が国の安全保障の観点から積極的意義がある場合に限定されています。」という言い方でございまして、御指摘の武器輸出という言葉と、防衛装備移転三原則の下の海外移転というのは、違う段でというか、違う言い方をしておりまして、私どもが、防衛装備移転三原則、平成二十六年以降のものでございますが、これで海外移転をしていくということを否定しているというものでは全くないということでございます。

赤嶺委員 こんなふうに説明をつけ加えないと理解できないような答弁を、意識的に答弁書を書いているとしか思えません。今度の場合、国家戦略としては武器輸出は位置づけないと言ったものを、国家安全保障戦略で明確に位置づけているわけですよ。過去の答弁とは違うということを強く申し上げておきたいと思います。

 三文書は、軍需産業を防衛力そのものと位置づけ、その強化のために政府が企業の販路拡大に取り組むとしています。

 政府が三文書の策定に向けて設置した有識者会議、その有識者会議でも、出席した委員から、軍事企業の成長のために政府が海外に市場を広げる方策を議論すべきだとか、日本は武器輸出を制約してきたことが軍事企業の成長を妨げてきたなど、武器輸出の拡大で軍需産業を成長産業にすべきだという発言が相次ぎました。

 三文書の方針は、この有識者会議の議論と同じ立場に立って、軍需産業を成長産業にしていこうというものであると思いますが、いかがですか。

浜田国務大臣 有識者会議に参加いただいた有識者の皆様は、それぞれの経験と知識に基づいて御意見を述べていただいたものと承知をしておりますので、これを尊重し、拝聴したところであります。

 その上で、防衛装備品の海外への移転は、国家安全保障戦略に記載のとおり、我が国にとって望ましい安全保障環境の創出や、国際法に違反する侵略を受けている国への支援などのための重要な政策的な手段であると考えております。

 また、防衛力整備計画にあるとおり、防衛装備移転はあくまで防衛産業の成長性の確保にも効果的ということであり、防衛産業を成長産業にするために防衛装備移転を促進するというものではございません。

赤嶺委員 アメリカの巨大軍事企業であるロッキード・マーチン社やレイセオン社は、イラク侵略戦争で米軍が使用したトマホークや戦闘機を製造し、莫大な利益を得ました。この二社は今、アメリカがウクライナに提供しているスティンガーやジャベリンも製造しております。ウクライナ戦争が始まって以降、株価は過去最高水準になっております。

 武器輸出拡大の行き着く先、これは、戦争や紛争を企業の利潤拡大のために利用する、こういう道に突き進むことになる、このように懸念をしております。いかがですか。

浜田国務大臣 我々は、あくまでも先ほども申し上げたとおりでございまして、常に、防衛産業というものを考えるに当たっては、先ほども申し上げたとおり、防衛産業を成長産業とするために防衛装備移転を促進するということは考えておりません。

赤嶺委員 政府は、イエメンの内戦に軍事介入したUAEに対しC2輸送機を輸出することを検討していると報じられております。これは、武器輸出で利益を出そうとすれば、軍事紛争に群がって、企業のもうけの種にしていくことにならざるを得ません。移転三原則にも反するものであります。

 安保三文書は、さらに、装備移転三原則や運用指針の見直しを検討すると明記しております。政府・与党は殺傷能力のある兵器の輸出を可能にするよう検討していると報じられておりますが、大臣はどのように考えておりますか。私は、地域の緊張を高め、紛争を助長するだけだと思いますが、いかがですか。

浜田国務大臣 防衛装備移転三原則や運用指針を始めとする制度の見直しに関わる具体的な内容については決まっておらず、具体的な内容に関わる御質問にお答えすることは困難であることを御理解いただきたいと思いますが、政府としては、平和国家としての基本理念を堅持することに変わりはございません。

赤嶺委員 今答えるのは困難だ、これまでの立場に変わりはないということをおっしゃっていらっしゃいますが、大臣は、昨年十二月九日の記者会見で、イギリスやイタリアと共同開発する次期戦闘機について、両国を通じた第三国への輸出や日本が直接輸出することにも言及をしております。殺傷能力のある兵器の輸出を解禁し、それを企業のもうけにしようなど、日本国憲法の平和原則に真っ向から反するものであります。断じて許されないと厳しく指摘しておきたいと思います。

 次に、軍事企業への財政支援についてであります。

 法案は、防衛大臣が指定する兵器を製造する企業が行う供給網の強靱化、サイバーセキュリティーの強化、製造工程の効率化、事業承継の費用を政府が支払うとしております。この製造工程の効率化には具体的にどのような取組が含まれるのですか。そして、製造ラインの増設、これも財政支援の対象になるのですか。

土本政府参考人 お答え申し上げます。

 本法律案は、いわば防衛力そのものである防衛生産・技術基盤を強化することを目的としておりまして、自衛隊の任務遂行に不可欠な装備品等の適確な調達を行うため、財政上の措置等を行うことを想定しております。

 そのような考え方の下、本法律案にある指定装備品等の製造等の効率化に関する取組におきましては、既存の製造工程等を効率化するための設備投資等に財政上の措置を行うこととしております。

 具体例といたしましては、製造工程において、老朽化した工作機械を最新の工作機械に変更するといったことや、ベテランの従業員が実施している作業などについて例えば人工知能を活用して自動化を図るといったこと、こういったことを想定しているところでございます。

 委員御指摘の、製造ラインの増設等はこの財政措置の対象になるのかという点でございますが、お尋ねのその製造ラインの増設等がどのような設備投資等を想定されているか定かでないため、現時点でお答えすることは困難でございますが、いずれにいたしましても、個別案件ごとに、認定要件を満たすか適切に判断してまいる所存でございます。

赤嶺委員 否定はされないという具合に受け止めたんですが、財政支援を受けるには、企業が防衛大臣に計画を提出して認定を受けることになっていますが、どのような場合に認定をされるかについては、これは何も書かれておりません。

 どのような要件があるんですか。そして、政府が支払うことのできる額に上限があるんですか。

土本政府参考人 お答え申し上げます。

 本法律案におきましては、防衛大臣から認定を受けた装備品安定製造等確保計画に係る特定取組が着実に実施されるよう財政上の措置を講ずることとしております。

 また、この財政上の措置に関しましては、予算の範囲内で行うこととしております。リスクや、装備品等の安定的な製造等に寄与する程度などを踏まえた上で、適切に措置してまいる所存でございます。

赤嶺委員 そうすると、上限はないということですか。予算が増えればまた増えていくということですか。

土本政府参考人 繰り返しの答弁になって恐縮でございますが、予算の範囲内で行うということでございます。

赤嶺委員 いろいろおっしゃっておりますが、企業の言い値で国が費用を負担していくことになりかねません。私は、今度の法案は余りにも軍事企業優遇の法案だと思います。

 さらに、法案は武器製造施設の国有化を可能にしています。国が製造施設や設備を買い取り、企業に管理を委託する仕組みをつくるものであります。

 法案は、製造工程の効率化などの措置を取った上でも適確な調達を図ることができないと認める場合としておりますが、これはどのような状況を指すんですか。

土本政府参考人 お答え申し上げます。

 装備品等のうち、自衛隊の任務遂行に不可欠であり、かつ、その製造等を行う特定の防衛関連事業者が製造等を停止すると調達に支障を生じるおそれがあるものであって、法律案第二章で規定する防衛産業への措置等を講じてもなお他に企業が安定的な製造等を図る手段がない場合には、当該装備品等を製造する施設である指定装備品製造施設等を防衛省が取得することができることになっております。

 防衛省としては、指定装備品製造施設等を取得する場合として、例えば、装備品等の製造等からの事業撤退に際し、自ら指定装備品製造施設等を所有するリスクを負わないのであれば装備品等の製造等の事業を行える防衛産業が存在する場合、次に、事業承継先の防衛産業は存在するものの、撤退に係る現在の指定装備品製造施設等が耐用年数を経過し老朽化しており、承継先の事業者がこれを新規取得することが困難なため、国が新規に建設する場合、このほか、指定装備品製造施設等が事故や災害で滅失し、防衛産業による復旧のめどが立たない場合に、国が新規に建設するといった場合などが考えられるところでございます。

 いずれにいたしましても、本制度の適用に際しましては、装備品等の適確な調達を図る観点から、個別具体的に検討していくことが必要と考えているところでございます。

赤嶺委員 具体的に伺いますが、防衛省が施設や土地を取得した後に、国の予算で製造ラインを増設することも可能なんですか。

鬼木委員長 質疑時間が、申合せの時間が。簡潔に御答弁願います。

萬浪政府参考人 お答え申し上げます。

 先ほどの答弁がございましたように、この制度の趣旨に合うという範囲内でございますと、対象となります指定装備品の製造施設等が増設の場合もあり得るということでございます。

赤嶺委員 この続きは、次回またやります。どうぞよろしくお願いします。

    ―――――――――――――

鬼木委員長 この際、参考人出頭要求に関する件についてお諮りいたします。

 本案審査のため、来る二十五日火曜日午前九時、参考人の出席を求め、意見を聴取することとし、その人選等につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

鬼木委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

 次回は、来る二十五日火曜日午前八時五十分理事会、午前九時委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。

    午後零時六分散会


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