衆議院

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第11号 令和5年4月25日(火曜日)

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令和五年四月二十五日(火曜日)

    午前九時開議

 出席委員

   委員長 鬼木  誠君

   理事 大塚  拓君 理事 國場幸之助君

   理事 宮澤 博行君 理事 若宮 健嗣君

   理事 伊藤 俊輔君 理事 篠原  豪君

   理事 三木 圭恵君 理事 浜地 雅一君

      石橋林太郎君    岩田 和親君

      江渡 聡徳君    大岡 敏孝君

      川崎ひでと君    木村 次郎君

      鈴木 憲和君    渡海紀三朗君

      中曽根康隆君    長島 昭久君

      平沼正二郎君    細野 豪志君

      松島みどり君   山本ともひろ君

      新垣 邦男君    玄葉光一郎君

      重徳 和彦君    渡辺  周君

      浅川 義治君    美延 映夫君

      河西 宏一君  斎藤アレックス君

      赤嶺 政賢君

    …………………………………

   防衛大臣政務官      木村 次郎君

   参考人

   (元統合幕僚長)     折木 良一君

   参考人

   (三井住友海上火災保険株式会社公務第一部顧問)  深山 延暁君

   参考人

   (同志社大学名誉教授)  村山 裕三君

   参考人

   (拓殖大学教授)     佐藤 丙午君

   安全保障委員会専門員   奥  克彦君

    ―――――――――――――

委員の異動

四月二十五日

 辞任         補欠選任

  小泉進次郎君     岩田 和親君

  武田 良太君     平沼正二郎君

同日

 辞任         補欠選任

  岩田 和親君     川崎ひでと君

  平沼正二郎君     武田 良太君

同日

 辞任         補欠選任

  川崎ひでと君     石橋林太郎君

同日

 辞任         補欠選任

  石橋林太郎君     小泉進次郎君

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 防衛省が調達する装備品等の開発及び生産のための基盤の強化に関する法律案(内閣提出第二〇号)


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     ――――◇―――――

鬼木委員長 これより会議を開きます。

 内閣提出、防衛省が調達する装備品等の開発及び生産のための基盤の強化に関する法律案を議題といたします。

 本日は、本案審査のため、参考人として、元統合幕僚長折木良一君、三井住友海上火災保険株式会社公務第一部顧問深山延暁君、同志社大学名誉教授村山裕三君、拓殖大学教授佐藤丙午君、以上四名の方々に御出席をいただいております。

 この際、参考人各位に一言御挨拶を申し上げます。

 本日は、御多用中のところ本委員会に御出席をいただきまして、誠にありがとうございます。それぞれのお立場から忌憚のない御意見をお述べいただき、審査の参考にいたしたいと存じますので、よろしくお願いいたします。

 次に、議事の順序について申し上げます。

 まず、参考人各位からお一人十分以内で御意見をお述べいただき、その後、委員からの質疑にお答え願いたいと存じます。

 なお、念のため申し上げますが、御発言の際は委員長の許可を得ることとなっております。また、参考人は委員に対し質疑をすることはできないこととなっておりますので、あらかじめ御承知おき願いたいと存じます。

 それでは、まず折木参考人にお願いいたします。

折木参考人 皆さん、おはようございます。

 御指名いただきました折木でございます。

 今日は、このような貴重な機会をいただきまして、感謝申し上げます。

 早速ですけれども、この度の防衛装備品の開発、生産のための基盤強化ということで、意見を述べさせていただきます。

 昨年末、国家安全保障戦略を始めとして安保三文書が策定をされ、我が国の防衛生産・技術基盤は、防衛装備品の研究、生産、調達のため必要不可欠であり、防衛力そのものとしてその強化を求めました。また、伝統的な戦い方に加え、大規模なミサイル攻撃、ハイブリッド戦などの新しい戦い方に必要な力強い持続可能な防衛産業の構築ということで取り組んでいくことを明示されました。戦略全般を通じて、防衛産業事業というのは国の事業であり、国の防衛問題そのものであるという認識が改めて示され、大いに評価をしております。

 日本においては、自衛隊は独自の工廠を保有せず、防衛装備品の生産に限らず、研究開発、調達、補給整備等に至るまで防衛産業が関与して初めて防衛力として完結できます。例えば、可動率の向上も部品不足だけの問題ではなくて、防衛産業の高度の修理能力の確保、維持が必要です。作戦活動全般を考えた場合、自衛隊は自己完結できる組織ではなく、防衛力としての防衛産業は不可欠な存在です。

 それらの重要性にかかわらず、例えば、過去には厳しい予算編成の中で、無理を言えば聞いてもらえる産業界という官側の甘えもあり、防衛事業に取り組む企業のマインドを低下させていった側面もあったかもしれません。これからは、継続、参入したくなる防衛産業にしていく必要があります。こういうことは、決して、防衛産業を単に維持をするとか、あるいは優遇するための施策が目的ではなく、国家安全保障、防衛力の強化のためだというふうに思います。

 まず、防衛装備品の開発、生産は一朝一夕にできるものではありませんが、特に現在の技術力の進展は目覚ましく、まさに戦い方を変えています。将来の戦い方は想像もつかないほど変化することでしょう。このような時代に、過去の基盤的防衛力構想で示した、いざというときのエクスパンド的発想では全く対応できません。自衛隊が必要とする装備を保有し、そして、それを継続的に生産できる体制を維持しておくことが最小限の条件だと思います。

 今後五年間の防衛力強化の最優先課題は、現有装備品を最大限活用するための可動率の向上や弾薬の確保、そして将来の中核となる防衛能力の強化であります。それらの達成のために、防衛産業の基盤強化と前向きな取組が欠かせません。

 ロシアの不法な侵攻に始まったウクライナ戦争は一年を超えました。ウクライナは二〇一四年のロシアのクリミア侵攻以来、サイバー戦対処はもちろん、軍事力整備を積極的に進めてきましたが、再度のロシアの侵攻に対処するため、現在は、ハイテクな軍事手段を活用しつつも、火力や兵力を主体とした伝統的な戦い方が継続をしています。

 そして、この戦い方を支えているのは、国民の強い抵抗意識と、欧米の結束したウクライナへの軍事支援です。欧米からは、防空火器、火砲、無人機等に加え、戦車や戦闘機も投入、支援されようとしています。これからは、大国ロシアとの戦いのためにウクライナ一国の軍事力では対応できず、欧米の軍事支援が戦いの帰趨を握っていることも示しています。

 一方で、我が国自身としてウクライナ戦争を見た場合、最新技術の装備に加えて、火力を主体にした従来の主要装備品を保有することや、弾薬を始めとする継戦能力の重要性を学ぶべきだと思っております。

 我が国において、今回の三文書が示しますように、これから、二〇二七年度、さらには十年後まで、領域横断作戦能力等に加えて、スタンドオフ防衛能力等の防衛力の抜本的な強化を進めることになります。そのためには、官民の緊密な連携とスピーディーな取組が欠かすことはできません。

 その観点からも、本法律案で示した様々なリスク対応等を考慮して、サプライチェーン調査を軸にした基盤強化の措置等の取組については大いに評価できます。特に、助成金の交付や資金貸付け等について法的、制度的、財政的裏づけを明確にしたということは画期的な施策であるというふうに思います。

 昨年、経団連や防衛装備工業会が産業界の要望を取りまとめ、提言を行いました。防衛産業の位置づけを始めとして、助成金交付、研究開発促進等に向けて法整備を含めた新たな枠組みの構築が要望されておりますけれども、本法律案は、それらの多くの案件を受け入れた形になっているというふうに思います。

 これから法律案の実行に当たって、まず防衛省の主導性の下に防衛産業との連携が重要だと思います。数年前には、産業界も防衛省に対して、政府の一体的な取組と緊密な官民の連携なしには防衛力の強化は達成できないと要望しておりますけれども、まさにそのとおりだと思います。

 また、これから官民の取組に当たって、単なるリスク対応や過去の問題解消という捉え方ではなくて、新しい施策により防衛基盤を強化をし、更なる防衛力を高めていくということが目的であるという前向きの意識が必要だというふうに思います。今後も、よりよい実効性ある制度に、今回の審議も含めて議論をし、高めていっていただきたいというふうに思っております。

 一方で、今回の法律案は、製造、生産分野が主対象であるように思えます。防衛力の基盤強化には、そのほかに、研究開発、調達制度、民生技術の活用、セキュリティークリアランス、知財管理など多くの問題が相互に関連をしています。また、既存の防衛産業に加えて、スタートアップ企業や新規企業の育成、参入も重要です。

 防衛省では、利益率の見直しや防衛技術基盤の抜本的強化についても検討されておりますが、今回の法律案と連携をして、総合的な施策の推進を期待をします。そのためには、新しい時代における防衛生産・技術基盤戦略の取りまとめが必要であり、それは関連企業に対して中長期の目標を与えることにつながります。

 最後に、企業にとって防衛生産等に関わることは、いまだに一種のマイナスイメージがつきまとっていることも聞き及びます。防衛省では、昨年から、防衛大臣と企業トップの意見交換会も始まりました。これからの取組や、今回の法律案、そして政治サイドからの国民の理解を深めるための努力等をお願いをして、防衛産業も、国家が本当に防衛力だと理解をしてくれた、我々の責任は重いという意識になり、それが最終的には企業の誇りとなってくれることを期待をしたいと思います。さらには、国民の理解の下、国家としての制度が整えられ、関係産業と連携した取組が強化をされることを期待をしています。

 お時間をいただき、ありがとうございました。(拍手)

鬼木委員長 ありがとうございました。

 次に、深山参考人にお願いいたします。

深山参考人 おはようございます。ただいま御指名いただきました深山延暁と申します。

 意見陳述に先立ちまして、去る四月六日に発生したヘリコプター事故により殉職された坂本雄一第八師団長始め五名の方々に謹んで哀悼の誠をささげるとともに、いまだ行方不明の方々が一日も早く救助されることをお祈り申し上げます。

 私は、議題となっております防衛省が調達する装備品等の開発及び生産のための基盤強化に関する法律案について、賛成の立場から意見を述べさせていただきます。

 私は、一九八三年に当時の防衛庁に入庁して以来、公務員人生の大部分を防衛庁及び防衛省で過ごし、二〇一八年から二〇一九年までの一年間、防衛装備庁長官を務め、退職いたしました。いろいろな経験を積んだつもりでおりましたが、防衛装備庁長官に就任したとき、私の予想をはるかに超える厳しい状況に防衛産業があるということを実感いたしました。このときに私が突きつけられた課題のうち三つを、この法案との関係で御説明させていただきます。

 第一は、下請企業が事業をやめてしまうという問題でありました。

 防衛装備品は、主契約企業の下に膨大な数の下請企業が入ることが通例です。私も若いときに、戦車は千社という言葉を職場の先輩から教えてもらいました。これは、戦車、タンクのことであります。この戦車の下請は約一千社だということです。このように膨大な数の下請企業の存在は知っていましたが、かつては、下請企業のケアは主契約企業に委ねていたというのが実態でした。しかし、それでは済まなくなってきた。

 私の在任中に、モデルケースとして、政務三役の御指導もあり、潜水艦の下請企業のネットワーク、これがまさにサプライチェーンですけれども、これの調査を行いました。しかし、この調査は、企業の数も膨大で、困難を極めました。途中段階でこのネットワークを図にしてもらうと、あたかも人体の毛細血管図のようになっていました。このいわば毛細血管網を健康に保たねば、装備品は造れません。健康に保つ対策を行うには、まず実態を知る必要があります。この点で、本法案にサプライチェーン調査に関する条文が盛り込まれたのは大きな前進であると考えております。

 第二に、下請だけでなく元請企業も事業をやめてしまう、こういう問題にも直面しました。

 私が直面した問題は、ある車両メーカーの自衛隊車両新規開発事業からの撤退でした。もちろん、企業の事業見直しは常にあり得るところです。しかし、防衛省・自衛隊が撤収してほしくないと思っている企業が防衛事業をやめると言う。これはなぜか。それは防衛事業に会社から見て魅力がないからだと思います。

 防衛産業といいますと、政府と結託して暴利を貪っている、あるいは、経費のごまかしをして会計検査院に指摘されたというようなことを言われることがあります。しかし、私の見た防衛産業の実態は、このようなイメージからはほど遠いものでありました。

 最近、諸物価高騰の中で、大企業による下請いじめというようなことが報道されることがあります。材料費や製造費が高騰しても、それを製品の価格に転嫁することを許してくれない、結果として、下請企業が利潤をなくして苦しむという構造と理解しております。私が自分の経験を総括して思ったのは、防衛省が、そして私がしてきたことは、防衛省による防衛産業いじめだったのではないかということです。

 毎年十二月に政府予算案が決まります。そこに至る過程で主計局とぎりぎりの折衝をします。防衛省が要求する段階でかなり絞った予算を、更に主計局でごりごり絞られ、そして予算額が決まります。ここで決まる装備品の予算が、その後の契約額の天井になります。予算が成立すると、その範囲内で入札し、あるいは交渉をするわけです。企業がこの価格ではできませんと言っても、予算がないからそれでやってくれと言うしかありません。その結果、企業側からすると、経費を転嫁しづらく、かつ細かいことばかり注文される、魅力のない事業になっていた、これが実態ではないかと思います。

 また、多くの方が抱いているイメージとして、主契約企業となる会社は、名の通った会社ばかりで体力もある、口では困ったと言うけれども、大して困っていないんだろうというのがあるのではないでしょうか。しかし、日本の主契約企業となるような防衛産業の場合、会社全体の売上げに占める防衛部門の割合は最大で二〇%弱、多くは数%から一〇%台の前半です。そして、私の知る限り、こうした会社も部門制を取っております。すなわち、防衛部門は防衛部門でほとんど独立採算を図らなければならない。

 先ほど、経費のごまかしという話をしましたが、確かに過大請求問題は過去にありました。しかし、防衛部門独立採算制の中で契約額を絞られた結果、何とか防衛部門の中で足りない経費を捻出せざるを得ず、別の契約で過大請求を行ったという例もあったと記憶しております。もちろん、過大請求は許されません。しかし、背景事情はよくよく考えるべきだと思います。

 こうした点を改善するには、適正な契約額を確保することと、装備品の販路を拡大していくことが重要だと思います。適正な契約額については、これは法案には直接書かれてはいませんが、今年度から契約の基礎となる原価計算の算定方法を変更し、適正な利潤を認めることとされています。また、装備品の販路拡大については、装備移転を円滑に行うための措置が法案に規定されております。装備移転を進める上では様々な取組が必要ですが、法案に盛り込まれている助成金交付の措置も装備移転を進める上では大きな力になると考えます。

 第三に、防衛産業が持つ情報をいかに守るかという課題でした。

 これには大きく分けて二つの面があります。一つは、コンピューター上に存在する情報を守ること、サイバーセキュリティーの問題です。もう一つは、情報を持つ人が情報を漏えいすることをどう防ぐかです。

 防衛産業に対するサイバー上の不正アクセス事件は過去にも何度もありました。防衛省は、今年度から新たな防衛産業サイバーセキュリティ基準を導入すると聞いております。この法案には、サイバーセキュリティー強化を支援できる枠組み、特に下請企業の事業支援が可能になる枠組みが規定されております。大いに期待したいと思っております。

 また、これまで、いわゆる省秘、これは自衛隊法上の秘密という意味で、これについては、企業の方々には契約上の義務として保全することをお願いしてきましたが、この法案により、保全が法律上の義務となり、罰則もかかることになります。機微情報の取扱いがより確実なものとなるように願っております。

 以上、三点について申し上げましたが、最後に、私が防衛装備庁長官在任時に感じた、装備品の生産や開発を進める上での大きな壁について申し上げたいと思います。それは、我が国に広く存在する、装備品生産や研究に関わることへの忌避感、そんなことに関わりたくないという風潮です。

 防衛装備庁に安全保障技術研究推進制度というものがあります。これは、防衛分野での将来における研究開発に資することを期待し、先進的な民生技術の研究を公募し、採択した研究には補助金を支給しようという制度です。

 ある年に大学の先生から応募があり、採択させていただきました。ところが次年度になり、継続して補助しようと考えていたところ、学内の反対の声のために補助を辞退されたということがありました。大学が防衛に関する研究を避けるということは戦後一貫しております。もちろん、防衛省の援助を受けるのもやめるのも御本人の自由です。それは分かっていても、こうした現実を突きつけられたことは私にとってショックでありました。

 また、いわゆる防衛産業のホームページを見ると、やっていただいているはずの防衛部門にはなかなか到達できないということがございます。各社の防衛部門の方々は、仕事の重要性を感じて日々努力していただいているのは紛れもない事実です。しかし、経営のリーダーシップを取っている方々はどうなのだろう。やはり死の商人と言われるリスクを恐れているのか、私はこう感じることがありました。

 こうした防衛や軍事を忌避するという風潮は、かえって最新の安全保障環境や軍事問題に関する鈍感さを生んでしまうのではないかと思います。現在では、民生技術と防衛技術の垣根はないに等しいと申し上げられると思います。しかし、防衛や軍事をよく知らなければ、極めて機微な軍事に転用できる民生技術を、うかつにも渡してはいけない国に渡してしまうということも起こり得ます。自分は軍事に関わりたくないという方がいることはよく分かりますし、個人としてその方のお考えは尊重されるべきです。しかし、日本全体として見れば、優秀な方が大勢、防衛の事業に関わっていただく必要があります。

 この場にいらっしゃる委員の皆様は、お立場の違いはあれ、安全保障問題や防衛問題の重要性について共通の思いを持っていらっしゃると思います。防衛の事業に携わっている方々の仕事の意義を評価し、勇気づけることを是非考えていただきたいと切望いたします。そのことが日本の防衛力を支えることに大きくプラスになると考えます。

 以上で私の意見陳述を終わります。(拍手)

鬼木委員長 ありがとうございました。

 次に、村山参考人にお願いいたします。

村山参考人 村山と申します。今日はどうぞよろしくお願いいたします。

 レジュメが配られていると思うんですけれども、防衛産業の基本問題と防衛産業強化法案というタイトルで話をさせていただきます。

 私、実は過去三十年間にわたり防衛産業の調査研究をやっておりまして、それで、この三十年間、防衛産業というのはよい状態になかったんですけれども、残念ながら大きな改革というのはなされずにここまで来たんですね。それで、今回初めて政府の方でこの問題を真摯に捉えていただいて、かなり大きな解決策を出していただいたということで、この側面は非常に私は評価しております。

 その一方で、防衛産業の研究家として、若干まだ不十分なところもありますので、そういうところも含めて今日はお話をさせていただければというふうに思います。

 まず、日本の防衛産業がどういう問題を抱えているかという、レジュメの一枚目なんですけれども、私は三つの基本問題があるというふうに考えております。

 一つ目が、世界から見てみるともう二周遅れになってしまっているという問題なんですね。

 一つ目は産業再編という問題で、冷戦後に世界の防衛産業は再編されて、有力な国際防衛企業に集約されました。これはもう、巨大企業になって、量産体制が整ったということなんですね。ところが、日本では冷戦後も産業再編は起こりませんでした。大きなものは起こっていないということなんですね。これが一つ目です。

 それから、二周目が民生技術の活用ということで、世界では一九八〇年代後半から民生技術を活用した体制へ移行しました。これは、まずアメリカが軍民統合というのを始めます。その後で、中国がこれをコピーして軍民融合ということをやり始めました。それから、韓国などもこういう戦略を取っています。ところが、日本の場合は、優れた民生技術がありながらも、まだ各国並みにはこれは進んでいないということなんですね。

 私はデュアルユース技術の専門でもありますので、防衛省それから装備庁と協力して、何とか民生技術を入れるプログラムということでつくってきたんですけれども、まだまだ世界と比べると遅れている分野があるということです。

 それから、次のレジュメですけれども、これが大きな問題で、日本の防衛産業は産業ではないという話なんですね。使われない装備品の問題点と私は呼んでいるんですけれども、産業として維持できない。それから、日本が得意とする改善ベースの開発ができない状況にあるということなんですね。

 これはどういうことかといいますと、欧米の防衛産業、これは、よい、悪いということではないんですけれども、事実として、戦争、紛争があればそこで装備品が使われるということなんですね。それで在庫がなくなって、新しい生産をする。その新しい生産をするときに戦争で使ったデータが入ってくるので、それで改善をして、よりよい兵器にしてまた売るということなので、ということは、これは産業として回るわけですよね。

 ところが、残念ながら、日本の場合は、多くの兵器が演習のみで使われる場合なんですね。ということはなかなか改善サイクルが回せないという非常に大きな問題を抱えているかと思います。

 二つ目が、コストプラス利益の契約方式の問題です。

 これは、コスト削減インセンティブがなかなか働かないということがありますし、それから、競争原理が働かずに、弱小企業も温存しているという問題があるかと思います。したがって、日本の場合は、防衛市場の規模と比べてやはり企業数が多いんですね。この辺も大きな問題かというふうに思っています。

 したがって、使われない装備品、これは残念ながら国際競争力はありません。ところが、その一方で、競争力のある装備品はどういうところかというと、やはり使われる部分なんですね。

 例えば、潜水艦。これはかなりリスキーなミッションをやっておりますので、そういうところからフィードバックが入るわけですよね。それをベースにして改善していったら、潜水艦自体も非常にクオリティーの高いものができ上がってくるということです。

 それから、レーダー。これは、日本は技術力もありますし、それから、監視で常時使っているわけですから、もう改善せざるを得ないわけですよね。そのサイクルが回っていますので、なかなかいいレーダーのシステムができ上がっているということが言えるかと思います。

 それから、次が装備品の輸出なんですけれども、日本の場合は輸出戦略が作られてこなかったという問題があります。

 武器輸出三原則というのがありまして、これをいかに緩和していくかというところに政策が絞られていって、その裏にある戦略というのはなかなか正面から議論されなかったというか、できなかったかも分からないんですね。そういう側面があります。

 本来は、まずは輸出戦略を作って、そこから規制緩和をやらないと駄目なわけですよね。戦略を作って、ここは駄目だから、ここを緩和してこういうふうにやろうとして、そういう形で進めていかなきゃならないのが、日本の場合はなかなかできなかったということです。したがって、非常に場当たり的な対応になってきて、こういう要求が来たからこう緩和しようということで、そうしている間にプリンシプルがなくなってきたということなんですね。ここは非常に大きな問題かと思います。

 したがって、何のために、どのような装備品輸出をするのか、ここをはっきりしなければ駄目だというふうに私は考えております。

 それでは、今回の法案、こういう問題に対してどういう対応をしているのかというところを次に見ていきたいと思います。

 まず、防衛産業の維持強化というところで、法案では、これは基盤強化の措置、資金の貸付け、製造施設などの国による保有というところですけれども、これは防衛産業への補助ということです、端的に言えば。これは短期的には致し方はないと思います。今の安全保障環境を考えると、それから防衛産業の状況を考えると、これは致し方ないと思いますけれども、これはあくまでも緊急治療ということですので、もう少し長期的な視野を持った改革策も同時にやらなければならないというふうに考えております。

 例えばどういうところに問題があるかといいますと、装備品製造業者の認定制度というのが今回出てくるわけですよね。ところが、これをやりますと、防衛産業のメンバーを固定化してしまう可能性があって、新規参入がしにくくなる可能性がある、こういう問題があるかと思います。それから、利益率の引上げということですけれども、これは防衛企業にとってはいいんですけれども、引き上げれば、当然、国際競争力が更になくなっていくということなんですね。

 だから、ここから何とか出口を見出さなきゃならない。これはアメリカでも同じでして、アメリカも、戦後ずっとコストプラス利益でやってきて、ここからいかに抜け出すかというのですごく努力してきたわけですよね。だから、日本も、一部やっておられますけれども、これからもっと努力をしていかなきゃならないというふうに思います。

 その中で私が興味深いと思うのが、国による製造施設などの保有ですね。これは非常に重要な部分だと思います。

 どういうことかといいますと、政府が施設を所有し、運営は防衛企業、これに任せることによってインセンティブが生まれて、競争原理が働く防衛産業への転換の第一歩になるというふうに考えております。

 これは、整備新幹線の上下分離方式を考えていただくとよく分かるんですけれども、新幹線の場合は、国と地方自治体が線路部分を整備するんですね、上のオペレーションはJRがやる。JRの経営努力で幾らでも利益が出るわけですよね。だから、防衛産業も、こういう方向に持っていければ、インセンティブが働いて、産業として機能するようになるんじゃないかということです。

 したがって、こういうことにすることによって、防衛企業への援助的投資として機能させる。だから、救済のためじゃなくて、政府が、必要なところに、これが必要だから、こういうところに持っていきたい、そのために投資をする、そこに防衛企業がついてきてもらう、そういうシステムですよね。

 それで、面白いのは、私、三十一条というのは非常に面白いと思っていまして、これは装備品だけじゃなくて民生品もそこで製造してもいいですよという条項なんですよね。これをうまくやるとデュアルユース工場みたいにできるわけです。だから、民生品も軍用品も造れる工場、これは画期的ですよね。だから、こういう方向に進めていっていただきたいということです。

 それから、次が装備移転の円滑化措置です。これも必要です。ところが、残念ながら、防衛三文書を含めて、その裏にある戦略が見えてこないということなんです、先ほどもちょっと言いましたけれども。

 それは、具体的にどういう戦略が考えられるかということで、私はもう随分昔から言っている意見なんですけれども、守る装備は日本に、こういうイメージで国際市場に出たらどうかということなんです。日本の戦略的不可欠を確立できる輸出戦略ということで、日本は守る分野に特化して競争力を向上させる。向上させることによって他国から、日本はこの分野では戦略的に不可欠だということで、日本の存在感を高めていく、そういうやり方ですね。

 それから、これは使われる装備品ですので、実績、経験に基づいた改善サイクルを回せていけます。したがって、改善サイクルを回せれば国際競争力として確立できるし、ビジネスとしても成り立っていくということなんですね。

 それから、これは専守防衛の日本の基本政策にも合致しますし、人や社会を守ることは技術者の開発意欲の向上にもつながるということです。したがって、民生企業の参入促進や予見可能性を高めることにもつながるということになるかと思います。したがって、この分野を手がければ、何の障害もなく輸出もできるということなんですね。だから、こういう世界を確立することによって、企業もここに参入できるんじゃないかというふうに考えております。

 ここまで法案絡みのところで防衛産業のお話をしてきたんですけれども、最後に、最後のレジュメのところで、全体像のお話を少し触れたいと思います。

 まず、今まで、財源問題が主となり、防衛費を効果的な装備に結びつける議論が弱かったということが言えるかと思います。実は、防衛費を装備品に結びつけるというのはより難しい問題なんですよね。だから、ここをしっかり議論していかないといけないのかなというふうに思っています。

 それでは、その基盤強化のためには、防衛費増額とともにどういうことをしなきゃならないかということなんです。

 一つ目は、防衛技術基盤の形の議論。戦略的不可欠性、自律性、これをどこで確立するかということですね。私は、一つの例として守るということを言いましたけれども、ほかもあると思うんですよね。だから、ここをどう確立していくかという議論をしなきゃならない。

 それから、防衛産業を産業として機能させるための改革。一部話をしましたけれども、ほかにもいろいろな方策があります。だからこれを、いろいろなことを試していかなきゃならないということです。

 それから、民生技術活用のための戦術ということで、クボタだとか島津、これはグローバルな優良企業ですよね。こういう企業は、もう防衛はやりたくないということで退出するわけです。これは非常にシリアスな事態でして、そういう企業をもう一度防衛分野に引き入れなきゃならない。そのためには、ちゃんとした戦術をつくって引き入れなきゃならないということが言えるかと思います。

 それから、装備品輸出の戦略。これは一つ言いましたけれども、もう一つあるのは、サプライチェーンの戦略をどうするか。今、半導体のサプライチェーンを同盟国の間でつくり始めていますけれども、恐らく、これから重要になるのは、防衛装備品のサプライチェーンを同盟国の間でどうするかという問題ですよね。ここもやはり日本が戦略を作ってちゃんとやっていくべきところだと思います。それから、国際共同開発。これももう始まっていますけれども、この中で日本が存在感を持って、ちゃんとした国際共同開発をするためには、どんな戦略が必要かということも考えていかなきゃならないと思います。

 したがって、今問われているのは、日本の経済力と技術力を生かした防衛力強化をどう考えるかということかと思います。私は、経済安全保障、そこが専門でもありますので、日本の経済安全保障の要はここにあると思います。もう一度言いますと、日本の経済力、技術力を生かして、いかに防衛力強化を進めていくかということです。

 以上です。どうもありがとうございました。(拍手)

鬼木委員長 ありがとうございました。

 次に、佐藤参考人にお願いいたします。

佐藤参考人 おはようございます。拓殖大学の佐藤でございます。

 本日は、防衛産業の抱える問題について、今回の法案というのは非常に力強い一歩だと考えます。その観点から、本日は、この法案に関する問題について、参考人として意見を申し上げたく思っております。

 もう既にほかの参考人の方々が強調されましたように、日本の防衛産業は、自衛隊を運用する上で欠かすことができない存在であると思っております。この問題を議論する際には、どの方面から議論するかによって議論の組立て方が異なります。本日は、防衛産業をめぐる最近のトレンドを中心に、強化法案に係る課題を述べさせていただきたいと思います。

 まず、防衛省にとって防衛産業は、政策を実現する上で、三自衛隊に加えて四本目の柱であることは言うまでもありません。しかしながら、自由主義社会においては、防衛生産というのは主に民間企業によって担われております。技術の特許を防衛省が保有しているケースも多いと思いますが、完成品を製作、納入するのは民間企業の役割になっております。

 防衛産業には、完成品を生産、納入するプライムコントラクター、そして、比較的小規模ではありますが、防衛生産や特定の技術に特化した能力を持つ専業の社の組合せによって構成されております。これはもう既に指摘された点でありますけれども、防衛産業は極めて裾野が広い産業だというふうに形容されます。

 日本の防衛生産は国産比率が高いというふうに言われますが、自国産の兵器システムが少ないのも日本の防衛産業の大きな特徴であります。自衛隊が求める高性能な近代兵器は、主にライセンス生産やFMSなどで入手されており、基本技術から完成品までの完全国産という兵器システムは極めてまれな事例となっております。

 しかし、このような状況というのは日本固有の問題ではございません。アメリカや欧州においても、防衛技術を自国単独で担うのは困難な時代になっております。したがって、各国は、それぞれの兵器システムを完成する上で、いかに国際的に技術のアクセスを高めるのか、そして、国内で製造される技術を含めて、ある意味で国際的な技術獲得競争というのが展開されております。

 ただ、この技術獲得競争というのは、相手国、次第によっては必ずしも対立的なものではございません。実際、防衛技術を調達する際には様々な方法が検討されております。国内の技術を使う場合、国際共同開発で相互に補完する場合、必要な技術だけを入手する技術協力、又は、これが近年のトレンドだと思いますが、一般に流通している技術を最適化しながら、要は民間技術を活用しながら必要な防衛生産を行う方式も存在すると思います。

 そういう意味で、防衛生産では、技術を保有する企業や国とのパートナーシップが何よりも重要になっております。アメリカにおいても、世界最高水準の技術を単独で持っていないと認めており、パートナーシップを構築するのが重要な課題であるというふうに規定されております。

 防衛産業が直面しているもう一つの問題は、需要と供給のバランスでございます。

 この問題は、ウクライナにおける事態に象徴されるように、侵略等に対処する場合、それぞれの国が単独で軍事力を準備するのではなく、場合によっては国際的な支援を仰ぐことが一般的な形になっております。よく、単独で、自国で防衛力を全て涵養し、保存し、貯蔵し、それを使って防衛するというイメージが流布されておりますけれども、国際的にはそういうふうな事態は極めてまれな事態ということになっております。

 ただそれは、他国に余剰の軍事生産力がある場合に可能になるものでございます。同時にこれは、各国の防衛生産に緊張状態をもたらすものであることも言うまでもありません。

 米国は現在、ウクライナに対して大規模な軍事支援を行っておりますが、その軍事支援を実施する際に、国内での需要と国外における需要をどのように均衡させるのか、これがなかなか解くことができない重要な課題であるというふうに言われております。

 日本国内の事情を考えたときに、日本の防衛産業の生産能力は自衛隊による調達に大きく依存しておりますので、それを超えるような生産余力を持っておりません。したがって、量的な需要の拡大が生じた場合は、それが自衛隊のものであれ、国外に輸出するためのものであれ、生産ラインをいかに確保するのか、また、必要に応じてその生産ラインをどのような形で増加させるのかというのが重要な課題になっております。民間製品と自衛隊に関わるような防衛装備品を共に同じ技術で生産することによるコストの削減というのは、ここから出てくる議論であります。

 日本の防衛産業が直面する三つ目の問題は、次世代の兵器システムの開発であると思います。

 プライムコントラクターの現状の開発、生産体制では、ある程度フィックスされた状況が存在します。そこで新たな技術を導入し、新たな兵器システムを開発することは追加のコストになりますので、どの企業にとってもそれは難しいものになるのではないでしょうか。また、兵器開発に必要な技術をどこから調達するのか、また、その技術に対する投資をどの程度行うのかという問題は、企業の側の論理からすると、必ずしも大胆に行動できない状況があります。

 配付させていただいたペーパーの裏側に、兵器のライフサイクルの図をつけております。これは、特定通常兵器使用禁止制限条約の、無人兵器システムの政府専門家会議の資料の中で示されたものでございます。

 これで分かるように、兵器システムの開発においては、コンセプト段階から、設計段階から破棄の段階まで様々なレベルが存在し、そこには多様な企業が関わることが可能になっております。無人兵器システムの議論においては、ここにどのような形で人工知能の技術開発が入ってくるのか、それをどういうふうに規制するのかという問題がここで議論されたわけですけれども、これは、防衛生産を議論する際にも参考になると思います。

 すなわち、様々な段階が存在するがゆえに、そこには様々なアクターが関わる余地があるということです。将来の兵器システムを検討する際には、いかに多様な新規参入を含めた民間企業を関与させるかというのが重要なポイントになってきております。

 今回の法案では、既存の防衛産業の強化について重点的に対処されていると思います。しかし、日本の防衛産業基盤の強靱性を維持するためには、これだけでは、非常に残念なことではありますけれども、まだ実施すべき措置が十分あるというふうに考えております。

 このような状況を踏まえて、今回の法案の特徴と課題から、幾つかの論点を挙げさせていただきたいと思います。

 まず第一に、防衛生産基盤維持を目的とした政府支援において、生産及び経営の安定性というものが強調されております。

 しかし、この安定性の定義は、防衛省・自衛隊側にとって安定的な供給が確保されるということを暗黙の前提にしており、必ずしも兵器システム開発自体の安定性というものが議論されていない、想定されていないように思います。この点について更に深く議論していく余地があるというふうに考えております。

 第二の問題として、移転に関する支援が挙げられます。

 生産の量的規模を維持する上で、防衛装備移転は不可欠であるということは言うまでもありません。法案では移転を目的とした仕様変更への対処がなされております。

 この問題においては、完成品の仕様変更だけでなく、先ほどお示ししたライフサイクルに関わる生産システム全体の中で、輸出を当初から可能にするような仕様の製品の製造も、同盟国及び友好国との対話の中で、対話を通じてそのような仕様の製品の製造も可能にするようなことを考慮するのも重要な点であるというふうに考えております。

 第三に、政府による技術維持に関する支援の問題があります。これは指定装備品製造施設の問題であります。

 これは必ずしも政府工廠を再建するということを示しているものではないと思いますけれども、防衛省・自衛隊にとって必要な死活的な技術基盤や生産基盤を維持するために欠かすことができない技術について、政府の積極的な関与が規定されているものでございます。

 ただ、このような措置は、もっと極端な言い方をすれば、政府工廠のようなものというのは、それが必要とされなくなった、若しくはそれを維持することができなくなったという事情も存在します。生産効率あるいは兵器システムの多様性を担保するためには、やはり民間企業による競争というものにいかに委ねていくかということが重要だと思います。それを促すような政府の関与も重要な点であるというふうに思います。

 第四には、今回の法案では必ずしも明確に規定されていない国際的な技術アクセスの問題と、第五に、新興技術を活用した次世代兵器システムの開発をめぐる問題を指摘させていただきたいと思います。

 これらの問題は、単純な解決策若しくは突破口があるわけではありませんけれども、将来における日本の安全保障を考察する上で極めて重要であると考えます。防衛産業は、今のシステムを維持する、若しくは製造するだけのものではありません。将来の日本の安全保障をいかに維持していくのか。国際的な技術開発、兵器システムの開発の状況に合わせて常にアップグレードしていかなければ、日本は、防衛省・自衛隊というのは、すぐに対応が遅れるものになってしまうと思います。したがって、これらの問題を今法案の先の課題として検討していただければありがたいと考えております。

 以上、見解を申し述べさせていただきました。

 どうもありがとうございます。(拍手)

鬼木委員長 ありがとうございました。

 以上で参考人各位の御意見の開陳は終わりました。

    ―――――――――――――

鬼木委員長 これより参考人に対する質疑に入ります。

 質疑の申出がありますので、順次これを許します。大岡敏孝君。

大岡委員 滋賀県の大岡でございます。

 本日は質問の機会をいただきました。まずは、参考人の皆様に、わざわざ今日は国会までお運びいただきまして、貴重な御意見をいただきましたことを感謝を申し上げたいと思います。

 それでは、早速質問に入らせていただきます。

 質問に入る前に、現在、政治が不安定化しておりますスーダンにおきまして、自衛隊が邦人の退避そして帰国作戦を展開しておりますこと、これに敬意を表すとともに、安全な作戦遂行を期待したいというふうに思っております。

 また、あわせて、今月の初めに、沖縄においてUH60の墜落事故がございました。本当に残念な事故でございまして、亡くなられた皆様の御冥福をお祈りいたします。

 一方で、現在、訓練を中止をしております。訓練中止も約三週間になろうとしておりますけれども、一つ、やはり私たちがはっきりしておかないといけないことは、訓練を中止するということが解決策につながらないということだと思っております。

 自衛隊は何かあるとすぐに訓練を中止するんですけれども、もう練度を高める以外にこの手の事故を防ぐ方法はないわけでございまして、むしろ今までの倍訓練しろと言うのであれば、私たちは分かるんですけれども、訓練を中止して、何となく世論の攻撃をかわそうとする姿勢は、私は必ず改めなければならないということを申し添えさせていただきます。

 常に私たち国民が求めていること、また自衛隊の最大の任務は、訓練をとにかく重ねることによって練度を上げていくこと、これ以外にない。これが最も我々の防衛力を高め、そして、他国から見たときの抑止力を強くするものというふうに確信をしておりますので、このことは付言をしておきたいと思っております。

 今回、皆様からは非常に貴重な御意見をいただきまして、とりわけ、識者、研究者であります村山先生、佐藤先生からは非常に有意義な御意見をいただきまして、私も意を強くしたところでございます。

 早速、法案に絡む部分について、幾つかお尋ねをしたいと思います。

 これは、まず村山先生にお尋ねをしたいと思います。

 今回の法案の中では、まず防衛産業の範囲を決めないといけないですね。はっきりと示されていない。先ほど来御指摘ありますとおり、例えば、重要なティア1の企業であっても、防衛生産比率は数%から十数%。産業として見たときには、先ほど有識者の皆様からもあるとおり、デュアルユースを前提とすると、その企業のやっている事業全てを本来は防衛産業と位置づけるべきなんですけれども、果たしてそれが防衛省の手の中に収まるのか、手に余るのかという問題もございます。

 まず、防衛産業の範囲をどのように考えればいいと考えておられるのか、教えていただきたいと思います。

 あわせて、様々なアンケート回答率、残念ながら二割程度でございます。我が国の、本来、しっかりと国と協力していただくべき防衛産業の回答率が二割程度というのは、非常に私も重要な課題だと思っておりますが、これをどうすればいいのか。

 そして、補助金を今回も規定しておりますけれども、御存じのとおり、補助金というのは大きく二種類あるんですね。現在、特に中小企業庁が、私は批判的な立場ですけれども、たくさん使っておりますのは、いわゆる救済的な補助金というか、現状維持をするためだけ、企業として救うためだけの補助金、これは私はやるべきではないと思っておりますが、補助金にはこういう補助金と、あと、政府の目標を達成するために、成長させるための補助金と、二種類ありますね。

 今回、防衛省が用意するべき補助金は、どういった種類の補助金を用意するべきだと考えておられるか、教えていただきたいと思います。

鬼木委員長 整理いたします。

 村山参考人への質問で三点ですね。防衛産業の範囲と、回答率二割ということについてどうしていくか、そして補助金についてですね。

 では、村山参考人、お願いいたします。

村山参考人 まず、一点目ですけれども、範囲なんですけれども、一番上に来るのはいわゆるシステムインテグレーターですので、ここはもう範囲として決まると思うんですよね。ここは長年のノウハウを持っているので、これはなかなか取って代われないという部分があります。その下に、それこそ二次、三次、四次というのが、傘が開いているわけですよね。その下をどう定義するかというのは結構難しい問題でして、ここにデュアルユースの民生企業もこれから入れておくべきだと私は思うんですよね。

 その入れるときに、どうしてそこの範囲に入れるかということになるんですけれども、今回の認定制度だと、システムインテグレーターは当然入ってくる。その下の部品メーカーも入ってくるようなことが書いてあるんですよね。そうすると、そこが固定化されてしまうと非常にまずいので、民生企業が入ってこれなくなるので、そこをもう少し柔軟性を持たせて、そこで取って代われるような、民生企業も入れるような枠組みにしていただきたいということなんですよね。

 実は、ここは大変なところでして、というのは、システムインテグレーターにしてみたら、今まで使った部品メーカーがあるんですよ。それで、いい民生企業が出てきて、これを使いたいといっても、こっち側を切らなきゃならないので、そのデシジョンがなかなかできないんですよ。だから、そこをスムーズにできるような、何か手だて、そういうことは必要かなと思います。そうすれば、範囲がちょっと広がってくると思うんですよね。

 それから、ヒアリングしても二〇%しか来ない、これはやはりゆゆしき問題なんですよ。ほとんどデータが入ってきていない。それで、出しているところは、恐らく問題のないところが出していると思うんですよね。だから、これはやはり強制力を持たせないと駄目です、ここは。そうでないと、機能しないと思います。

 逆に、これが七〇%、八〇%に上がっても、あとの二〇%、怪しいところは出さない可能性があるので、そういう場合でもそこに聞きに行けるようなシステムをつくるとか。だから、そこが一番重要なところなので、そういう枠組みも同時にやらなければ、本当のサプライチェーンの強靱化というのは守れないのかなという感じがいたします。

 それから、補助金なんですけれども、これは使い分けだと思います。本当に今、防衛産業はひどい状態なので、緊急的な支援をしなきゃもう駄目になってしまうところがあるんです。そこはもう補助金的にやらざるを得ないんですけれども、それだけだと経営体質が甘くなるので。

 その一方で、先ほど言いましたような、政府設備を使って、そこに投資を促すような形ですよね。だから、それはもう政府の投資です。新幹線と一緒ですよ。ここに新幹線で行きたいのだったら投資するわけですよね。それでオペレーションをやってもらうということで。防衛産業も同じで、こういう機能を持つ機器だとか装備品が必要だというふうに判断すれば、そういう施設を政府が造って投資をする、そこに民間企業をベースに乗せるという形ですよね。そうすれば、かなり前向きな補助金、補助金じゃないですけれども、投資ができるというふうに思います。

 以上です。

大岡委員 明確にお答えいただきましてありがとうございました。御指摘のとおりだと私も思っておりまして、単なる補助金ではなくて、その基本には戦略が私も必要だというふうに考えております。

 次に、佐藤参考人にお尋ねをしたいと思います。

 これは各参考人の皆様がおっしゃっているとおり、私も、産業としての防衛の魅力をしっかりと高めていかなければならない、同時に、競争によって、競争力のある我が国の企業体をつくっていかなければならない、この二つが最大のテーマだというふうに思っております。

 そうした中で、現在の、この法案が想定しているのか、少なくとも今の防衛政策の延長線上にはどうしても保護的な発想がありまして、やはり原価積み上げ方式プラス利益で予算を決定すると。残念ながら、これでは競争力はできてこないですね。

 あわせて、産業としての魅力。これも、成長するのかどうなのか、自分の努力でもって利益なり次の投資なりを生み出せるのかどうか、私はここが非常に重要なポイントだと思っておりまして、この点につきまして、佐藤参考人、現在の我が国の防衛市場をどう改造すればいいか、あるいは防衛省の姿勢をどう改善すればいいか、どう考えておられるか、教えていただきたいと思います。

佐藤参考人 ありがとうございます。

 防衛産業をいかに魅力的なものにしていくのかというのは、非常に難しい課題であることは皆さんも御存じのとおりだと思います。

 国内では、いまだに防衛生産というものに対するいわゆるアレルギーのようなものが民間企業の中にも、また大学にもありますので、そのような中で、何か決定的な政策によって魅力や競争力を高める、防衛産業に対する支持が集まるようなことというのはなかなか難しいと思います。

 諸外国の例を参考にしながら、またそれを日本に当てはめてみたときに、やはり国際的な競争力、コンペティションが、自分たちが造った製品や技術というのが国際的な競争の中である程度の優位を確保しているという姿を見ることというのが、実は一つの魅力の源泉になるのではないかなというふうに思います。やはり、魅力にしても、競争力にしても、何らかのインセンティブがないと駄目だと思います。

 これは、米国におけるDARPAなんかを見ていても、世界最高水準の技術競争の場で勝利をするということに対して、世界中から企業が集まってまいります。日本も同じでございます。

 そのような場を設けることは、そこまではできないかもしれませんけれども、そういうふうな、技術競争においていかに日本が優位に立つのか、立てるのか、自分たちの企業が立てるのかということを、そういう場を用意し、それで、そういうふうな姿、競争で優位に立てる姿を見せるというところも非常に重要な措置なのではないかなと考えております。

大岡委員 ありがとうございます。

 先ほど来御指摘されているとおり、私も、この防衛をしっかり産業化をして、我が国の競争力を高めるのは、もうポイントは三つしかないと思っています。

 一つはデュアルユース、軍事と民生、きっちり融合をしてやらせること、もう一つは海外に対して売れること、もう一つは海外から正しく調達できること、この三点だと思っています。

 とりわけ、この三点目について、深山さんにお尋ねをしたいと思います。

 今回の法案の中では、海外からの適切な調達ということには余り意識が行っていなくて、むしろいろいろな調達品を国内で維持できるかどうかということに主眼を置かれているという感じがしています。

 しかし、残念ながら、我が国はこれから少子高齢化をしていく。そして、当然人件費だって上げていく、政府も上げようとしている。そうした中で、低コストで高品質なものを全て国内調達するのは無理な時代に恐らく入りつつある。

 かつて、昭和の時代に、アメリカの防衛産業に対して我が国が果たしてきた役割というのが、極めて高品質で低コストな部材、部品、素材品を供給するという役割を果たしてきました。

 しかし、残念ながら、平成になり、令和になり、我が国も少子高齢化が進み、人件費が上がりと。我が国に最も不足しているのは、かつてのアメリカにとっての日本のような、日本にとって、信頼でき、友好的な関係を維持し、何があってもちゃんと日本を支えてくれる一方で、低コストで、労働力が豊富で、そして高品質な部品、部材を供給している国との連携こそ、我が国が、今後少子高齢化を迎え、働く人すらも少なくなってくる我が国が必ず用意しなければならない条件だと考えておりますが、この点につきまして、深山さん、どのように感じられますでしょうか。

深山参考人 お答えいたします。

 まず、今回の法案が国内産業が重点ではないかという点につきましては、おっしゃるとおりかと思います。

 ただ、それは、背景にありますのは、これまでの政策の中で我々がやってきたことの結果、国内が、正当なレベル、こうあってほしいというレベルに比べて非常に落ち込んでしまったという背景がまずあろうかと思います。

 次に、先生が御指摘になりました海外からの適切な調達ということについては、まさにおっしゃるとおりだと思っております。装備品、例えば、全くの私論ですけれども、海外に工場を造って、そこで日本の技術を使って働いてもらう、造ってもらう。実は、それは民生品では広く行われていることだと思います。そうしたチャレンジというのも今後行われていくことは私は非常に望ましいと思っております。

 ただ一点、防衛装備品の移転については、やはり、いいものを造ろうとすればするほど、その内容というものが非常に機微にわたるということがありますので、それは、物の造り方でありますけれども、どの範囲までは海外でできるのかというのはちょっと見極めなければいけないと思います。その見極めは、残念ながら、率直なところを申しますと、これまでの経験が少ないので、我が防衛省にも、企業にも。そこを見極めるということが今後肝腎になってくると思います。

大岡委員 なるほど、大変よく分かりました。

 もう御指摘のとおりでございまして、その他、我が国が競争的な立場を維持している産業は、まさにそれでもって成長してきておりますし、例えば、現在課題になっておりますモーターや電池なども、一定の技術を保護しながら海外生産をするということもチャレンジをしておりますので、今後、こうした分野、防衛にもチャレンジをしていただきたいと思っております。

 最後に、折木参考人にお尋ねをしたいと思います。

 これまでの人生を国防の、まさに現場におささげいただいたことに、私も心から敬意を表したいと思います。

 その上で、ちょっとお尋ねしにくい問題ではありますけれども、先ほど折木参考人のお話の中に、防衛産業、防衛に関しては、もう国を挙げて、官民を挙げて取り組むべき問題と。私も全く同感でございます。特に、これはもう、敵国あるいは仮想敵国に対して常に脅威と抑止力を与え続けるのが防衛の仕事でありまして、これは官民が、場合によってはしっかり密接にくっついてでも対応すべき問題だ。それこそが国民の最大の利益につながるものだと思います。

 そうした中、現在、特に国土交通省におけるOBの天下り問題などが国会でも一つの議題にされています。私は、もう特にこの防衛に関しては天下り問題は発生し得ないという考え方を持っておりまして、その他の産業においては、当然、公正な競争、あるいは国民の負担であるコストを下げていかないといけない、様々な理由から、天下りについては一定の規制がかかっている、これは大変理解をします。ただし、防衛に関しては、これは官民挙げて行うべきものである以上は、まさに折木さんがやっておられるように、政府で熟練した方が、今度は民間に行ってこのノウハウを転用してもらう、場合によっては民間から政府に入っていただく、これをやっていかない限り、我が国の防衛産業も防衛力も強くならないと考えておりますが、この点について感じられることがあれば、教えていただきたいと思います。

折木参考人 どうもありがとうございます。

 今、先生御指摘のとおり、官民の交流、それから国を挙げてやるということは物すごく大事な、今、時代的にも大事なことだというふうに思っております。

 防衛省のOBとして私も企業に雇用していただいているわけですけれども、私の場合は、ずっと古いあれですけれども、装備行政に関わるというか、装備行政関連で装備部長も経験をいたしましたし、その時代からいろいろな、装備行政に対して、課題とかいろいろなものを理解をしていまして、その後の経験、経験というか職務等も通じながら、いろいろなそういう目で見てきたわけですけれども。

 そういう観点で、直接、ラインではなくてスタッフとして、アドバイザーとしてやっておりますので、直接的に現場の方に関与するわけじゃないんですけれども、関与すると影響を及ぼしますので、そういうことは避けるべきだというふうに思っていますが、そういう面では、知見を活用しながら、私は、現役の方を間接的に、貢献できているのかなというふうな感じをしています。

 そういう面で、いろいろな経験を持っているOBもいるわけですので、直接的なものに携わることはないんですけれども、そういうことを続けていけばいいのかなと。

 それから、官民の交流というのは物すごく今大事なことで、防衛省の方も、例えばサイバーにしても、いろいろな部署にしても、民の方を採用したり雇用したりしながらやっていますし、それから、若い人材も含めて、官の、防衛省の方からも、制服も含めて民の方に行ったりしている。いろいろな交流をやっている。その交流を深めることが、お互いの問題点を、課題を認識をして、それを解消していくという機会になると思うんです。

 だから、私の若い頃に比べれば、そういうことも考えられなかった時代ですけれども、それを是非システム的に、それからもうちょっと大がかり的にやっていただければいいのかなというふうに感じております。

 以上でございます。

大岡委員 ありがとうございます。大変いい御指摘をいただいたと思います。

 まさに、デュアルユースの人材版というか、やはり、もう少し官民、アメリカなんかはもう完全にリボルビングドアでやっていますし、例えばイスラエルなどは、どんどん防衛で雇用をして、そしてスピンアウトさせて、そこで最先端の技術を更に継続して研究させる、それを今度は防衛が調達するといったこともやっておりまして、まさに私たちもこれを参考にして、官民挙げて、物的にも研究的にも人的にも我が国の防衛力を強化する方法を考えるべきだというふうに考えております。

 あわせて、もう一点お尋ねしたいと思います。

 今回のウクライナの戦争を私も見て、様々な学びがありました。一つは、やはりゲームチェンジャーになり得る兵器を私たちも開発し、それを我が国の強みにしないといけないということだと思います。

 この点につきまして、折木参考人が御覧になって、我が国の強みとなり得る分野、なり得る兵器というのはどのようなものがあるか、考えておられるか教えていただきたいと思います。

折木参考人 ありがとうございます。

 ウクライナの戦いをずっと見ておりまして、両方あると思うんです。最新の技術を使った戦い方と、私がコメントさせていただいた在来的な戦い方というのがあると思うんですけれども、これからやはり考えていかなきゃいけないのは、最先端の技術を使ってどういう戦い方をするか。

 戦い方が変わってくるのはもう目に見えていまして、例えば、無人機、それもAIを使った無人機、攻撃、爆撃、観測、そういうことも含めて、いろいろな、世の中が変わってくるというか、だから、そういう面で考えたときに、日本の強みというのは何かというと、完成品的には、私は、装備品としての完成品というのは今のところちょっと思いつかないんですけれども、例えば、技術的に、AI技術とか無人機技術とか、本当は隠れている部分が日本の産業界の中にいっぱいあると私は思うんです。それを拾い上げていないところに課題があって、それを発見して育てていかなきゃいけないというのが大きな課題だというふうに思っています。

 私は、個別の技術的な問題、今は無人機のお話をしましたけれども、それは、空中だけの無人機の能力だけじゃなくて、ウクライナではありませんけれども、海中の技術とか、海中の無人機のお話とかいろいろなことがございますので、そういう意味で、我々は自信を持って、日本の技術というのはそれに取り組んでいける要素は持っているというふうに思っています。

大岡委員 残念ながら時間が来てしまったようですので、終わらせていただきます。

 最後に、折木参考人が、ある物の本に書いておられたトインビーの言葉を使って、人類の歴史における敗者の共通点は、変化に気づかず、気づいたとしても変化への対応を怠った者であるということをよく引用されています。これは私たち自民党にも、また国会や政府にも言えることだということを私たちの戒めにして、今後も引き続き皆様の御指導を賜りますことをお願い申し上げまして、質問を終えさせていただきます。

 どうもありがとうございました。

鬼木委員長 次に、重徳和彦君。

重徳委員 参考人の皆さん、今日はありがとうございました。

 いつも政府への質問通告は前日までにするんですけれども、参考人への質問はぶっつけなものですから、ちょっと工夫しまして、私、二十分与えられていますので、最初、三、四分かけて、まとめて質問を用意させていただきましたので、その後、皆さん四分ずつ御答弁いただくという新方式でやっていきたいと思いますので、委員長、お許しをいただければと思います。

 まず、私の基本スタンスなんですけれども、防衛産業に関しては、よく言われるFMSの爆買いとか、そういう安易な批判が行われますけれども、そんなことを言われる前に、やはり私、愛知県選出の議員でございます、物づくり基盤の、恐らく日本一しっかりした県だと自負をいたしておりますが、物づくり日本として、防衛産業基盤というものは、やはり国内産業で何よりも強化していかなきゃいけない。その努力がまだまだ、これまで足りていなかったのであろうと、この委員会におきましても、私は再三指摘をさせていただいてきたところであります。

 さて、質問ですが、大きく二点。一つは、海外移転、国際競争力についてです。それからもう一点は、国、政府と民間の関係についてでございます。

 まず、折木参考人への質問は、ウクライナを始めとした侵略を受けている国への、継戦能力を支援する、西側諸国を挙げてやっているんだという話がございました。一方で、日本は、やはり守りという、攻めと守りでいえば、どんどん攻めるということを応援するわけにはいかない国だと私は思っております。したがって、攻めと守りの線引きといったものをどう考えて、継戦能力をこれから、いわば充実した支援をしていくということが必要なんだろうかということでございます。

 深山参考人には、企業との関係についてるるお話がございましたので、これは村山参考人の御提案でもありますけれども、守るということに特化することによって、企業、投資家、あるいは国民の防衛産業に対する忌避感、防衛というものに対する忌避感というものを何らか解消していく手がかりがあるのではないかという観点からお答えいただければと。

 それから、村山参考人には、まさに日本のブランドとしての、守るということの御提案がございました。これは、実は我々の部会でも、一回私も質問させていただいたんですが、具体的に、では、装備品の種類として、どういったものが攻めで、どういったものが守り、どの辺りを線引きするべきだといった御意見をいただければと思います。

 それから、政府と民間との関係。これは、今回の政府三文書におきましても、防衛産業は自衛隊組織の外の組織、存在ではありますが、いわば防衛力そのものであるといった記述もございます。

 そこで、佐藤参考人には、最後、論点として指摘のございました、政府工廠を持たない日本において、政府は一定程度リードしていく必要がある一方で、いろんな創造性といったものは民間の活用が必要だ、これを少し掘り下げて御説明いただければと思います。

 それから、深山参考人には、日本の企業再編のトリガーというものをどう考えればいいか。企業再編が進まないので量産体制が不十分だとか、民間企業があるのに、力のある民間企業があるのに、軍民融合技術が十分ではないといったことがございます。企業再編の在り方について教えていただければと思います。

 そして、最後に村山参考人に、政府の施設保有についての御提案がありました。期待感をお示しになっておりますが、防衛省は、今のところ、基盤の維持のためだけだとそこは説明をしているんですけれども、実際、デュアルユースとか先端装備開発について、どのように政府の施設保有といったものを生かせばいいかという、これも御提案があれば、教えていただければと思います。

鬼木委員長 それでは、重徳委員より四分で質問がありましたので、参考人の皆さん方、一人四分程度での御答弁をお願いいたします。

折木参考人 先ほど御質問いただきました、海外移転、装備移転の話だというふうに理解をしております。

 装備移転の問題につきましては、これからまたいろんな面で御協議、審議をしていただけるというふうに思っていますけれども、国家安全保障戦略の策定の段階では、これから、三原則それから運用指針等について見直しをするということで記述をされているというふうに承知をしております。

 一方、これから進めていただくわけですけれども、私個人としては、これから見直しの方向性というか、そこの焦点のところは、やはり日本が、安全保障という観点で考えたときに、他国とどういうふうな関係で寄与できるかという、その付近のところが私は前提なのかなというふうに思っています。

 もう一つの考え方は、見直すんですけれども、例えば五分野あたり、救難とかなんとかも含めて、なぜ今まで五分野というのが進まなかったのかという、その問題意識というのは持つべきだというふうに、何が悪かったのか、なぜ進まなかったのかということも踏まえた上で、これから今後の取組方について議論をしていただきたいというふうに思っています。

 そういう中で、安全保障協力ということで、今までの規定の中ではそういうことがない、ないと言ったらおかしいんですが、新たなウクライナ戦争あたりのところをイメージしたものはないわけですけれども、先生おっしゃったとおり、例えば兵器というか装備品ということを考えたときに、純粋的に装備品に守りも攻めもなくて、基本的には兵器そのものなんです。ただ、実用的に見たとき、実用というか実際的に見たときに、具体的に進めれば守りしか使えなかったり、攻撃、まあ、攻撃の方は両方使えますけれども、守りは守りという装備品というのは当然あるというふうに思っているんです。

 その付近のところが、線引きということで、装備移転をやるときに何をどこまで今後展開していくのか、そこのところは大きな焦点だと思っています。例えば、私個人の、一国民として見たときに、ウクライナの戦争を見たときに、あのウクライナの荒廃の状況、それから多くの方が亡くなっている状況、あれを守りという観点で見たときに、何か寄与できないのかというふうに考えたとき、例えば防空システム、防空装備品、それは個人の携帯用もありますし、それから、町を守る、部隊を守る装備品、防空装備を持っているわけですけれども、その付近あたりは、私は守りの装備品として十分検討に値することだというふうに思っています。

 あの現状を見て、そう思わない、思わないと言ったらおかしいんですけれども、欧米あたりもやっていますけれども、どちらかというと、欧米あたりがやっているのは、本当に部隊が、軍隊が持って、戦うためのやつというのもある、もちろん国民を守るためです。ただ、日本で考える、日本の今までの趣旨の中で考えれば、守りということを考えれば、私は、一番大きなものは防空火器だというふうに、ほかにもいろいろあるかもしれません。

 現在も、防弾チョッキとかヘルメットとか、そういうことしか出てきていないんですけれども、ほかにもいっぱい、車両を応援したり、いろいろな要素をやっているわけですよ。目に見えないところをやっているわけですけれども、そういうことも含めて、守りの装備品と、それから日本が今まで続けてきた支援の部分と、トータル的に考えながら、ウクライナ、それから、将来どこかでそういうようなことがあったときに、スムーズに支援できるような体制というのを国家として考えていくべきじゃないかというふうに思っております。

 以上でございます。

深山参考人 お答え申し上げます。

 まず、私は二つ質問をいただいたと理解しております。一つは、今、折木参考人もお答えになったような守りの装備ということで、私も指摘しました、忌避感を何とか回避しつつできないかというお尋ねがあったと思います。

 それについて申し上げますと、現在、今時点の防衛装備移転の三原則の運用指針の中にも書いてあるんですが、例えばこういう条項があります。「我が国との間で安全保障面での協力関係がある国に対する救難、輸送、警戒、監視及び掃海に係る協力に関する防衛装備の海外移転」、今挙げたようなものは防衛の分野でのものでありますけれども、やはり非常に、守り、かつ人命救助、そうしたこと、あるいは、輸送、価値中立的ないろいろな機能があり得る。そうしたものについては、今も実は門戸を開いております。

 今、防空システムの話が、折木参考人からお話がございましたが、そうしたものも有力であろうと思いまして、そうした道をまず追求する。あとは、通信とか、そうしたものについても、システムも非常にあり得ると思います。

 ただ、私がウクライナを見ていて思ったことがありまして、ヘルメットと防弾チョッキを供与したという政府の決定は、元役人として痛いほどよく分かって、正しいと思います。その一方で、ウクライナに武器を供与している国が、欧州、米国もあります。彼らは不正義なのかということをふと思いまして、ウクライナを守るために、ウクライナの軍隊が戦うのに必要な弾や装備品を供与することは平和を乱す不正義な行為と日本人は見ているのか。見ていない人も多いんじゃないかと思います。ヨーロッパが支援しなかったら、ロシアにもっとひどい目に。そうなったときに、我が国はそれをできないと言うのは、我が国は正義なんだろうかというのを私は真剣に悩みました。

 私は、官僚としてやってきた間は、今の重徳先生のおっしゃったことは非常によく分かるし、そういうふうな思いも多々ありました。ただ、私がウクライナの情勢を見て、今、特に思いますのは、そうした日本人の思いというのは他国から見てどうなんだろうと。正義をやっているのか、それとも、自分だけで考える正義の中で不正義に手をかしているのか、私は、そこは非常につらい課題だと今個人的には思っております。

 もう一つは、日本企業の再編のトリガーをどうするか。

 これについては、実は、造船業界というものを見ますと、今、実質的に自衛隊の艦艇を造れる会社は二社だと記憶しております。昔は五社体制と申しまして、護衛艦、潜水艦、潜水艦は実は元々二社しかなくて、今でも二社なんですけれども、護衛艦、水上艦については五社、護衛艦を造っていてもらったという時代もありました。それが今、二社になっておりますが、そういう点では統合が進んでおります。

 こうしたことは、例えば、ほかのメーカーにおいても進むことは一定限期待できるんですけれども、造船の場合はやはり、これは率直に言いますと、防衛予算が伸び悩み、かつ艦艇が高額化して一年にたくさん船を造れなくなったということから出てきたと、これはもう随分昔の話ですが、私は理解をしています。

 この再編のトリガーは、じゃ、今後どうしたらいいか。競争力を強め、残った産業を活性化するために、官側から働きかける上でどうしたらいいかというのはなかなか難しいなと。実は、適正に、こうしたらいいんじゃないかと言うのは、なかなかできないんです。

 例えば、弾薬などにおきましても、複数のメーカーがあるんですけれども、過去においては、なぜ過去においてと申したかといいますと、今後、弾薬については、現有装備品の活用という政府方針の下で受注が、発注が伸びると思いますから、少し状況は変わるのかもしれませんけれども、弾薬などについては、零細、こう申してはメーカーに失礼なんですけれども、余り大きくない生産企業がこつこつとやっている、何社かやっている、これを統合した方が合理的なんじゃないかという水面下の動きはあったと記憶しています。ただ、それが……

鬼木委員長 恐縮ではございますが、他の参考人の答弁時間を。

深山参考人 長過ぎる、失礼しました。

 だから、そこのトリガーについて非常に今悩んでおります。ですから、申し訳ございませんが、適切な名案は今考え中というところでございます。

村山参考人 御質問どうもありがとうございます。

 私が守る方に特化して競争力を上げるべきだと言うたびに、いつも批判されます、これは。そんな、技術的に見てみたら、守るも攻めるもないということをいつも言われるわけですよね。これは確かにそうだと思います。

 しかし、明らかに守る兵器、守る装備品、例えば地雷除去のそういう機器とか、そういうことですね。それから、攻める方で、射程の長いミサイル、これは明らかに守る攻めるがあるわけですよね。それが寄ってきたところで、グレーゾーンが非常に広いので、そこでもう分からなくなってしまって、そういうコンセプトで出すべきじゃないというふうにいつも言われるんですけれども、なぜ私がこれを言い続けているかというと、海外では割と分かってくれる人がいるということなんですよね。

 あるとき、SIPRI、スウェーデンの軍縮の研究所の人と議論しているときに、私は日本の装備体系を海外と比較して全て見た、それを見た結果、やはり日本の装備体系というのは非常にディフェンシブだと言うんですよね。だから、見る人が見たら、これは非常に分かるんじゃないかと。

 それから、私の議論が一度英語に訳されて、アメリカの新聞に載ったことがあるんですけれども、それでMITに行ったときに、ちょっと話をしているときに学生がやってきて、先生のディフェンシブウェポンの論文を読みましたと言うんですね。そうしたら、やはり日本というのは面白いという言い方をするんですよね。

 だから、やはり海外から見たらそういうイメージもあるし、日本には、そこに特化することによってやはり日本の存在感を示せるんじゃないかということで、ある程度、技術的には無理かも分からないけれども、無理してこういう議論をしているわけですよね。

 だから、ここはある程度政治判断というところがあると思うんですけれども、そこを明確化することによって、逆に民間企業もそこに入りやすくなると思うんですよね、これはディフェンシブだから会社としてもやりやすいと。だから、ある意味、CSRなんですよ、人、社会を守るというのはね。だから、そんな軍事の忌避感とは切り離したものというふうに分けてしまえるんです。そうすれば、非常に民間企業も取り組みやすくなるというのが私の視点です。これは十分議論になるところですが。

 それからもう一つは、投資をすることなんですけれども、私の頭にあるのは、これは工作機械だとか計測機械なんです。政府がそこに投資をして、最先端の工作機械をそこで造る。それを使って、軍も民も生産できるとなれば、これは非常に助かるわけです、政府が設備を持っていてね。それで、それを使って、かなりいいものが安くできることになる、それは軍民両方なので。

 だから、そういう形で、いい分野に絞れば、これは非常に面白いです。本当に、デュアルユース部品じゃなくて、デュアルユース生産、デュアルユース工場なわけですからね。これは非常にポテンシャルのある領域ですので、法案でもこういう面を重視していただければというのが私の希望です。

 以上です。

佐藤参考人 ありがとうございます。

 御質問いただいた点について明確に述べさせていただきますと、政府と民間の、今回の指定装備品製造施設等の問題について言うと、恐らくこれはストックパイルのようなものとして政府が支援するという形になっていくのではないかなというふうに思っております。

 これはやや説明が必要かもしれませんが、要は、政府がなぜこの指定装備品製造施設等を取得等、若しくは管理を委託しなければいけなくなったかという事情というのは、やはりそれは、その施設が必要とされなくなったから、若しくは維持することができなくなったから、若しくはそこで利潤を上げることができなくなったからということにほかなりません。

 施設というのは、しかしながら、保有していればしているほど減価償却が進みますので、その分だけ陳腐化していきます。維持コストにすごく大きなお金がかかると思います。しかしながら、そこにある技術についてはそれほど陳腐化しませんので、その技術をいかに守っていくのかということが極めて重要なポイントなのではないかと思っております。

 ただ、その製造施設等を使って造られる製品若しくは技術というものは、政府がそういう形で関与するようになったことから分かるように、代替性があるものだというのがあるんだと思います。すなわち、もしその製造施設が使用されなくなったとしても、それでも、ほかの手段で兵器生産というのは進むわけですし、若しくは、ほかの兵器システムに転換することによって、その技術を使わなくていいような状況というのがそこに生ずるわけでありますので、ちょっと言葉は悪いですけれども、そういう必要とされない、若しくは非効率になってしまった設備については、それを保有し続けることというのは物すごく大きなコストを政府側に委ねる形になると思います。

 そうなってくると、政府側としては、恐らくその技術なり製造施設なりが必要とされるような状況をあえてつくり出す、若しくは必要とされるような状況になるまで待つというのが恐らく正解であると思いまして、そうなってくると、必要とされるために何らかのアクションを政府が起こすというのは、防衛輸出にせよ、防衛生産にせよ、自ら、それほど効率的ではないものを生み出すということにつながりかねませんので、そこは慎重に計算しなければいけないということがあります。

 そうなってくると、一つの結論としては、政府がそういう技術を持っていて、民間、次の兵器生産において活用することができるような者が出てくるまでそれを政府が保有していて、その保有した技術というのを、できるだけ安価に、また公平に民間企業が使えるような体制をストックパイルとして政府が持っておくというのが、恐らく合理的な結論になってくるのではないかなというふうに、今の法案を見る限りにおいては、また私が知る議論においては、そういうふうな結論というのを考えてしまう次第でございます。

 以上でございます。

重徳委員 参考人の皆さん、ありがとうございました。

 質問直前通告新方式、答えやすかったかどうかも含めて検証いただいて、また理事会で御評価いただければと思います。

 どうもありがとうございました。

鬼木委員長 次に、浅川義治君。

浅川委員 日本維新の会の浅川義治と申します。

 今日は、参考人四人の先生の御意見を拝聴いたしまして、非常に参考になりまして、学生時代に大学での講義を受けていたかのような印象をちょっと持ちました。大学と違って評価されないので、今日はよかったなと思っているんですけれども。

 今日は、法律案なので、法案の論点についてはいろいろ今お伺いしたんですけれども、特に技術開発について、今後の技術開発等について重要だと思って、私もこれまでもずっと述べてきております。

 その中で、先般の当委員会でも議論をさせていただいたんですけれども、アメリカの国防総省が三年ほど前から公表、発表しているUAPの問題につきまして、いわゆる未確認空中現象という、その技術について私は究明すべきじゃないかなと思っております。実際に、アメリカの国防総省は、先ほど佐藤参考人からお話のあったDARPAで、これについても研究しているんじゃないかという文献も見たこともあるんですね。

 取りあえず、まず最初に、四人の参考人の先生に、UAP、三年ほど前から国防総省が発表しているこの件について、どのような御見解をお持ちかをお伺いしたいんですけれども。

折木参考人 非常に難しい質問で、私も専門ではないので、ちょっと、分からないと言ったらおかしいんですけれども、分からない部分が多いんですけれども、直感的にというか感覚的に申し上げると、未確認物体というのは、いろいろな要素で、技術的な要素というものが多分含まれている。

 というのは、我々が今保有している技術を超えた部分というのがあるのではないか、そこを解明しなければいけないんじゃないだろうか、そういう関心が重立ったものであるというふうに思っていますし、それを解明することによって、即今我々の技術の方に適用できないかということだというふうに思います。

 それはやはりアメリカならではの取組方で、やはりDARPAと一緒で、失敗してもいいんだよ、研究していて失敗していてもいいんだよ、その中でも、もし成功したらそれを取り入れていきましょうねという、そのスタンスじゃないのかというふうに私自身は考えています。

 そこまでしか申し上げられません。済みません。

深山参考人 アンアイデンティファイド・エアリアル・プロジェクトかと思いますけれども、大変興味深いと本気で思っています。現役のときは、余りこういうことを言うと、部下からそういうことは言わない方がいいですとたしなめられるのでやめておりましたが、やはり人知が解明していないものがもうないという方がおかしいので、もちろん、全て人工的なものということで解決できるかどうか分かりませんけれども、こうしたことをアメリカが研究するというのは意味のあることだと思います。

村山参考人 アメリカがこういうとんでもない技術を手がけるというのは、やはり予算があるからできた話だと思うんですよね。DARPAでもかなり予算がついて、かなり無駄なこともやるということなんです。

 この背景にはどういうことがあるかといいますと、無駄なことでも将来役立つことがあるという発想なんです。だから、やっていて途中で失敗しても、そこまでやったことは何かに生きるだろうという発想でやっているわけですよね。それは予算に余裕がないと、そういうことはできない。だから、日本は防衛予算が少なかったから、そんなことはできないわけです。もう絞ってこれをやるだけという世界ですね。ところが、アメリカは、だから、いろいろなことをやっておいて、その中から一ついいのを出して、あとに残ったものも基礎研究をやったから後で生きるだろうという発想でやっているわけですね。これはやはり偉いですね。

 それで、日本、ここで防衛予算が増えるわけですから、それに近いことができるようになってきたのかなと思っています。例えば、ミサイルの射程を延ばすというので、いろいろなところで延ばすわけですよね。これは我々には並行開発に近いわけですよ。だから、並行開発に近いと、今までの単発と違う開発方式なわけですよね。だから、そこではそういう発想も入れていかなきゃならないということで、その点では、アメリカからこれから学べる点は多いのかなというふうに思います。

佐藤参考人 UAPの問題については、これはオカルトであるというふうに指摘する方もおられますけれども、それは私は正しくないというふうに思っております。

 といいますのは、人間社会一般の問題で考えると、我々は、自然現象、社会現象の全てを理解して把握しているわけではありませんので、常に未知の領域というのが存在すると思います。その可能性があり、それはどういうものであるかということを探求していくというところに技術開発の基本があるのであって、そういう技術開発の可能性自体をオカルトであるという形で排除することは好ましくないというふうに考えております。

浅川委員 どうもありがとうございました。

 通常の当局への質問ですと、事前に通告をさせていただくのであれなんですけれども、今、本当に率直な御意見をいただきまして、ありがとうございます。

 このUAPについては、私自身も目撃したことがあるので、ずっとライフワーク的にしていたんですけれども、よくよく考えてみたら、これが兵器だったらというのを、もう十年以上前から考えていたんですね。

 実際に、その観点から、アメリカの国防総省が全領域異常解決局という、何十億という予算を使ってこの調査研究を始めている。その少し前から、DARPAでは、重力に対してコントロールする技術開発ができるんじゃないかという、それを中国でもやっているといううわさもあるんですね。

 今、中国も既に極超音速ミサイルを非常に高い命中精度で撃ってくる技術があるというのが分かっている、でも、日本はそれを迎撃する技術もまだない。まず目先はそこをやらなきゃいけないのは分かるんですけれども、もしその先に、UAPみたいなものが本当に兵器として、探査機だったらまだいいんですけれども、もし兵器として使われるようなことがあったときには、防衛省としては、今の段階でアメリカと情報共有をして、少しでも防衛装置、いわゆる兵器として、何らかの開発をしなければいけないんじゃないかと思うんですね。

 ただ、そこには、先ほどお話もありました、無駄な予算ということが出てくるかもしれないんですけれども、今の段階で分かっているのは、アメリカが予算をつけて調査研究している、であれば、せめて、アメリカがどこまでは情報が分かっていますよと、統計的なデータも取っていますので、それを防衛省として共有する、あるいは日本政府として共有していくことが重要じゃないかなと思っております。

 この点について、佐藤参考人がこれまでもウェブインタビュー等でお答えになっていらっしゃったので、そこら辺も少しお伺いしたいんですけれども、まず、河野防衛大臣が当時このことについて聞かれて、論点にされていたことについて、対処法について、先般、気球問題が起きたんですけれども、法律的な制度としてどういうふうに考えるかという議論が開始されるんじゃないかというふうに佐藤先生はお述べになっていらっしゃるんですけれども、その点について少し解説をしていただいてもいいでしょうか。

佐藤参考人 ありがとうございます。

 河野大臣のコメントに対する私の論点というのは、予測不可能なものに対してどのように備えるかという観点からさせていただいたものでございます。

 先ほど浅川先生の方からお話がありましたとおり、我々が見て不明確なもの若しくは分からないものが、もしかしたらそれが兵器である可能性が否定できないという状況があるときには、あらゆる可能性の中で、それにどういうふうに対処するかということを法律的にも制度的にも検討する必要があると思っております。

 中国の気球問題についても、これまで、ああいう気球を太平洋を越えて移動させるというか、動かす、持っていくということについては、かつて日本もそれを実施したことはありますけれども、それはうまくいかず、それは兵器、手段としてはそれほど有用ではないということで、案としては葬り去られてしまった一つのアイデアだったと思います。ただ、それが現実のものとして出てきた姿を我々は見て、やはり、今出てきている問題に対処するのではなくて、これから生じるであろう可能性に対して対処する、それに対する法的措置を行うということが極めて重要であるという趣旨から、インタビューでそういう話を申し述べた次第でございます。

浅川委員 ちなみに、このウェブはスプートニクというロシア国営の媒体であったんですけれども、日本でのスプートニクは、今のプーチン政権に批判的なスタンスも取っているというところもちょっと私は調べて安心しまして、佐藤参考人がスプートニクに、インタビューに、ある意味、非常に微妙なところをコメントされているというのを発見したときは、やはりこういう探求心、先ほどお話しになった探求心というのが非常に重要なんだなというふうに改めて思いました。

 ここから具体的なお話になるんですけれども、国産の調達率が実は装備品は高いということをこの間の委員会でも答弁もいただいて、今後もそういう予想であるということなんですけれども、単に数字的には国産調達率が高いといっても、先ほどまでの議論でもありましたように、技術開発を我が国ができるかどうか、自国のメーカーが技術開発ができるかどうか、あるいは防衛省の方でできるかどうかというところが重要だと思います。

 単なる組立て屋ではいけないというふうに御意見も書かれているんですけれども、もし今後、技術開発を我が国がしていくとしたら、どういったことを必要とするか。そもそも、生産力ではなくて、新技術の開発力という点では、今、日本の国内の防衛産業は、あるいは自衛隊の持っている技術というのは、世界的に言うとどれくらいの順位にあるというふうにお考えでいらっしゃいますか。それを四人の参考人の方にお願いしたいんですけれども。

折木参考人 国産と技術の関係なんですけれども、その両方を考えたときに、技術がまずあるから国産にするということと、いやいや、国産にして技術を高めるんだという、その両方のアプローチがあると思うんですね。だから、そういう面で、技術があるから国産という考え方もありますけれども、研究開発というスタンス、それから将来を見たときには、やはり無理をしてでも国産にして技術も育てていくという、そのスタンスというのはこれから追求していかなきゃいけないのかなというふうに思っています。

 今、自衛隊が持っている技術力というのがどのレベルにあるんだということは、計数的にはちょっと私も申し上げられませんけれども、比べるところが、米国とか中国とかに比べれば、それは相当劣っているというふうに思っていますし、それは研究開発費そのものから見ても、今年度予算じゃないんですけれども、従来は一千五百億から一千六百億ぐらいの防衛省の研究開発費なんですけれども、それをやはり倍々ベースで増やしていくということは必要だというふうに思っています。

 それから、今回のあれで、研究開発については、省庁を超えて、防衛省のニーズに基づいて研究開発を進めていきますよ、そういうシステムができ上がりましたので、今年度以降のその研究開発の取組というのは予算的にも大きくなってきますし、ニーズを出して、その防衛的な研究技術というのをこれから伸ばしていかなきゃいけない、それは言えると思います。

 この先端技術をどう使うかによって、本当にこれが安全保障とか防衛の決定的な要素になってしまうんですね、戦い方は当然変わってきますけれども。そういうことを、やはりもうちょっとこれは自覚をして研究開発に投資をするということは、今の流れ以上にやっていかなきゃいけないのかなというふうに感じております。

 以上でございます。

鬼木委員長 ちょっと時間の制約上、二分程度でお願いいたします。

深山参考人 各国と比べた技術は、相当な分野が数々あると思います。全体的に見たら、弱い点もあります。

 今後絶対に失ってはいけないものとして、幾つかあると思うんですけれども、宇宙、衛星、今やっていますが、戦闘機を自分で造る技術、そして、これは在来国の中でも極めて高い水準にある潜水艦技術。ほかにもありますが、この三つは少なくとも今後とも維持していく在来型技術だと思います。

 以上です。

村山参考人 防衛産業といっても、防衛産業という一つがあるわけではないです。これは、構成するのは自動車産業であって、船舶産業であって、ロケット産業であり、航空産業。だから、それぞれ非常に広いところを防衛といって一くくりにしているだけなわけですよね。だから、これは分野分野で全然違うんですよ、はっきり言って。防衛産業全般としてなかなか捉えられないですよね。

 だから、そういう調査がないというのが一つは問題でして、そもそも、どの分野のどういうところが日本は競争力があるのか、そこからまずしっかりとやらないと駄目かなという感じがいたします。

佐藤参考人 技術を持っているということと、その技術が使えるということは、大きな違いがあると思います。

 日本の防衛産業においては、国内にある先端技術を有効に防衛生産に使えているかということになると、それは十分になされていないという点がありますので、よく日本の技術は世界で有数なという言い方をしますけれども、防衛生産についてはそれがうまく活用されていないという面においては、それほど高くないのではないか。明確な順位は、申し訳ありません、分かりませんけれども、そういうふうに思います。

 あと、もう一つ重要な点は、技術というのは、我々の想像力の、人間の想像力の範囲の中で成長します。どういうふうな未来図を描くのか、どういうふうな未来社会が望ましいのかという空想力、想像力というのが技術開発の支えになりますので、そういう想像力を持つような若い人材というのを育成することが決定的に重要で、それについては日本は非常に十分な対応ができていないというふうに感じますので、そこら辺の対応をお願いできればと思います。

浅川委員 今、最後の佐藤参考人の、技術力はあるけれども十分にそれが使われていないということで、私も、委員会の中でも、大学も含めて民間のあらゆる分野の技術を集約して高めていくべきということをお話ししているんですけれども、それをしていくには、今のこの日本の防衛省とか自衛隊とか各省庁とか大学とかの関係をどのようにしたら、今ある技術を有効に使っていけるようになるというふうにお考えでしょうか。

佐藤参考人 御存じのとおり、日本社会の中には、特に大学を含めて、防衛に関わることについての抵抗がある人々は多いと思います。もちろん、それらの方々の抵抗感というのは十分理解できますし、歴史的な経緯を踏まえたものであることは十分承知しております。

 しかしながら、事防衛、安全保障問題においては、どういうふうな戦争がしたいのか、これは戦争を避けるという意味において、どういうふうな戦争をしたいのか、どういうふうな人道性を我々は発揮したいのか、そういう哲学的な分野から議論を進めて、その中でどういう兵器が望ましいのか、必要なのかということを考えていくことが、実は戦争を防止し、軍事による被害を最小限にとどめる唯一の道ではないかというふうに考えております。

浅川委員 そうなんです。

 確かに、防衛力の増強、今差し迫っているのは中国等の問題があるからであって、もし他国の状況がなければ、あえて国防力を増強する必要はない。あくまでバランスを取って、向こうからの進出を抑えるという、抑止力としての防衛力ということで当委員会でも議論させていただいていると思っております。その中でも、やはり技術的なところが国内で大きく発展していけば、より抑止力として成り立つのではないかと私は考えております。

 時間が参りましたので、以上で終わりにしたいと思いますけれども、本当に今日はどうもありがとうございました。

鬼木委員長 次に、河西宏一君。

河西委員 おはようございます。公明党の河西でございます。本日はどうぞよろしくお願い申し上げます。

 本日は、四人の先生方、大変お忙しい中、国会まで足をお運びいただきまして、また、先ほど来は貴重な御意見、また御示唆、御指導をいただきました。本日は、短い時間でございますけれども、どうぞよろしくお願いを申し上げます。

 まず初めに、深山参考人と佐藤参考人、お二人にお伺いをしたいと思っております。

 今回、我が国の防衛生産また技術基盤、国家安全保障戦略にも、防衛力そのものであるということを初めて明言をしました。しっかり示されたわけであります。

 そうした中において、先ほど、緊急治療であるというような御指摘もあったところではありますけれども、まず、今般の防衛力整備計画で必要な財源が示され、そして本法案、今回の基盤強化法、様々な措置、財政措置、また融資の配慮、また国有化。これは法案外ではありますけれども、QCD評価ですとか様々なコストの変動の調整率、こういった手段が講じられようとしております。

 その上で、こうした当面の手段に加えまして、この防衛産業また技術基盤、持続可能なものにしていかなければならない、サステーナブルなものにしていかなければならない、このように思っております。

 そういう意味で、先ほど来るる御指導はいただいておりますけれども、今後の戦略、いかにあるべきというふうにお考えになるか。これは、企業の統合再編ですとか、あるいは国産、またライセンス生産、またFMSなどの輸入のバランスといった観点もあると思いますし、また、防衛装備移転の在り方、こういった様々な論点が考えられるというふうに思っております。

 こういった中長期的ビジョンをどういうふうに示していく必要があるのか、まず佐藤参考人の方から、これはアカデミアの立場からいただきたいと思いますし、また深山元長官から、行政出身の長官でもありますので、そういった立場から是非御示唆をいただければと、このように思っております。

佐藤参考人 ありがとうございます。

 防衛生産基盤を維持するという面においては、持続可能性が重要であることは先生御指摘されるとおりでございます。

 ただ、御存じのとおり、輸入等を含めたバランスを取るというやり方も、また、予算を増加することによって防衛産業を支えるというやり方も、これは短期的な措置としては重要ですけれども、中長期的には、これを維持していくというインセンティブ、若しくは、そういう戦略を保つということには極めて難しい問題があることは御存じのとおりだと思います。

 では、問題は、中長期的にそういう体制を取れるかどうかということになると、これは、やはり防衛というのは、それぞれの安全保障環境、戦略環境の中で、必要とされるものが短期的に大きく異なる現象ですので、中長期的に防衛産業をこういう形で強化するというふうな決定的な方法があるわけではないと思います。

 しかしながら、防衛産業をいかに維持していくのか、それがどういうふうな形で維持していくのが好ましいのか、そういう戦略を考える知的基盤を日本国内に用意しておくことが極めて重要だと思います。

 そのような知的基盤というのは大学によってのみ提供されるものでもありませんし、防衛省だけがそれを担当するものでもないと思いますので、防衛省、これはよく軍産官学と言いますけれども、それらがお互いの緊張関係を持ちながら対話を積み重ねていく基盤があれば、それが実は、将来の戦略、中長期的な戦略を構想する際の大きなプラットフォームになると思いますし、それは、今既に存在するシンクタンクも含めて、安全保障コミュニティーの輪を広げていくことが極めて重要だというふうに思っております。

深山参考人 御指摘の点について、二つ大事なことがあるかと思います。

 一つは、我が国自身の防衛力の近代化、キャッチアップ。必要な防衛力を、技術水準を維持するという試みを絶えずすることによって、我が国国内における技術というものを高めていくことは非常に必要だと思っています。

 もう一つは、OSAという制度が創設されたと承知しています。政府安全保障援助とでも訳すのでしょうか。こうしたものと装備品の考えとをよく一致させて、私が言うのも口幅ったいのですが、どの国に対して、政府全体でこう取り組もう、それはだから、経済援助もあるでしょうし、安全保障上の援助、装備品を援助してあげるということもあるでしょうし、その中で、日本の防衛産業が造っているものを購入してもらうようにするという取組も要るでしょう。

 それは、その国に対して日本がどういう姿勢で臨んで、どういう関係を、軍事上、装備品を提供したり買ってもらうというのは非常に強い関係になりますので、どう関係を築くかということをデザインしていくということは、実は、長期的には防衛産業の予見性を高めて、産業としてそれに取り組む意義も与えることになると思いますから、非常に大事なことではないかと思っております。

河西委員 ありがとうございます。

 今、深山参考人からOSAのお話、国家安保戦略で、非ODAということで外務省の方から立案をされまして、今、様々な具体的な部分が報道されているところで、私も、非常に大事なんだろうということで、党の会合などでも発言をさせていただいております。

 今まさに、同志国に対する様々な、我が国の安全保障のアセットでありますとか技術、こういったことの提供、移転というお話がありました。

 次に、村山参考人にお伺いをしたいと思います。

 まさに、ここに関連して、防衛装備移転ということで、先ほど来、守る装備は日本にというような言葉がございました。

 今回、御存じのとおり、移転三原則また運用指針、こういった制度、見直しについて検討していく、ここの書きぶりは様々な議論があったというふうに伺っておりますけれども、これは先ほども御発言ありました、いわゆる五類型、救護、輸送、警戒、監視、掃海、こういったものの見直しですとか、あるいは海外と共同開発した装備品の第三国移転をどういうふうに進めていくのか、こういった論点が想定をされます。

 その上で、今日は、防衛産業また技術基盤の基盤強化法の参考人質疑ということですので、防衛産業ということが今クローズアップされているわけですが、この装備移転、誤解を恐れずに申し上げるならば、防衛産業の維持のためだけではない。そもそも、目的というのは、あくまで国際社会の平和と安定、また我が国の国益に資するものであると。その結果として、防衛産業の役割がしっかり見え出していく、その中でサステーナブルになっていく、こういった順序が非常に重要だと思いますし、我々も、そういった説明をどういうふうにしていくかということにおいては非常に大事な視点だというふうに思っております。

 したがいまして、どういった国際社会のニーズがあって、我が国としてどういう戦略の下でそれにお応えをしていくのか、丁寧に国民に説明しながら進めるべき議論なんだろうというふうに思っておるんですが、こういった観点、改めまして、この装備移転、日本の役割、先生から御所見を賜りたいと思っております。

村山参考人 防衛装備品が普通の商品と違うのは、やはり政治的な部分なんですよね。それで、国益を実現させるとか、そういう側面があるということなんですよね。でも、政治的側面もあるけれども、一方で産業である、ビジネスである、ここが一番難しいところなんです。

 政治的役割だけだと、もう国営化してしまえばいいんです、極端な話。ところが、それをビジネスでやらないと効率的にできないという面があるので、そこの折り合いをどうつけるかというのは、実は非常に、この産業を考える上の大きなポイントなんですよね。

 だから、例えばOSAにしても、非常に重要だと思います。そのOSAの意義をどう、コストとベネフィットをどう考えるかというのをしっかり押さえておかなきゃならないと思うんですよね。

 ただで移転するということは、ただで移転してしまったら、ほかで売れなくなる可能性もあるわけですよね。だから、それのバランスをどう取るかとか、その一方で、今まで使ってもらえなかったわけだから、それを使えば、政治的な影響も与えられるし、そこからビジネスが発展していく可能性もあるし、そこで使えばデータが入ってくる可能性もあるわけですよね。

 だから、そういうコスト・ベネフィットというのがあるので、そこを国ごとに慎重に見極めてやっていくということが重要ですよね。そこで政治的な目的とビジネスの利害とをうまくバランスさせる、そこがポイントだというふうに考えております。

河西委員 ありがとうございました。

 ちょっとここから少し色合いが変わりまして、次に、折木参考人の方にお伺いをしたいというふうに思っております。

 先ほど御開陳の中で、この防衛産業、高度な処理能力が求められていく、また、継続的に生産できる、こういった環境整備が大事であるというようなお話がございました。いわゆる自衛隊だけでは完結しないということであります。

 まさに、こういった問題意識で、先日、私は質疑の中で、有事の継戦能力、兵たんとか生産の問題、こういった部分における防衛産業の役割について質疑をさせていただきました。具体的には、もうこれはわざわざ今申し上げることでもないんですが、いわゆる有事に、自衛隊に防衛出動が下る、そういった場合において、我が国は工廠を持ちませんので、アセットの修理ですとか補給ですとか、いろいろなことをやっていく必要があるわけであります。そうしますと、当然、防衛関連企業の皆様にもお力を多大にいただくことになるわけでありますが、戦争に休日はございませんので、労働基準法をどうするのか、こういった問題も具体に出てくるわけであります。

 厚労省に聞くと、今回のコロナ対応でも、労基法の三十三条で労働時間の上限を撤廃できます、これは今回かなり適用されたので、こういったこともできますと。

 他方で、まさに、幕僚監部出身の方々から御意見を伺いますと、いわゆる百三条の二項の業務従事命令、この対象は、医療と土木建築と輸送、この三種に限られていて七十年近く変わっていない、災害救助法に模したものになっているということで、ここに防衛産業をしっかり位置づけて、きちっと法的にもいわばシームレスにしていくべきなんじゃないか、こういった御意見も伺うわけであります。

 この問題意識を踏まえまして、先日、浜田大臣に御答弁いただいたのは、まさに、今般の基盤強化法を踏まえまして、いわゆる契約ベースでやっていく防衛産業のお仕事はたくさんあるんだ、その見直しも踏まえて今後きちっと対応していきたいという御答弁があったわけでありますけれども、この御答弁、また、今の政府のお考えに対して、御評価ですとか御認識、また、何か今後の御示唆などがあれば、是非御開陳をいただきたいと思っております。どうぞよろしくお願いいたします。

折木参考人 ありがとうございます。

 先生の御指摘のとおりで、大きな問題点で、防衛産業が防衛力そのものであるという中で、今、目に見える形で、生産とか調達とかそういう話は出てくるんですけれども、その百三条の問題も含めて防衛力というので私はコメントしたつもりなんですけれども。

 やはり、いざとなったときに、修理とか整備とか、その付近のところを、本当にどういうふうにしてやってもらえるのか。高度な修理というのはできないのですね。もちろん、船とか飛行機もそうですし、それから、もっと高度な装備品も持っている。

 そういうことを考えたときに、先ほどの百三条の三種類だけじゃなくて、労働基準法の問題でもなくて、現場の、隊法的に言うと行動地域というのが設定されるわけですけれども、いざとなったら日本全体が行動地域かもしれませんが、そういう中で従事をするということは、そういう人たちは制限されるわけですよね。

 だから、そういう面を考えたときに物すごくジレンマがあって、それを整々とやっていく、本当の防衛力になっていくためには、やはり防衛産業のそういうところに従事している人たちにも理解をしてもらわなきゃいけないし、法的な面とか、それから補償の問題、そういうことも含めて、きちんと整備をしますからやってくださいというふうにしてやらないと、前線は、継戦能力も何も、もたないわけです、後ろに、後送してしまうと、とてもじゃないですけれども、第一線はそのまま停滞してしまう形になりますから。

 だから、一番その付近のところは問題で、従前からそこは問題意識で、いろいろな提案をしているんですけれども、そこのところを、今度は防衛生産とかそういうことに含めて、ソフトと言ったらおかしいんですけれども、ソフトの部分というのを含めて検討していただきたいなと。

 この法案も、五年程度をめどにしてまた検討し直しますとありますけれども、五年たたなくてもいいんですけれども、急いでやらなきゃいけない部分がありますから、これは装備庁の問題じゃないかもしれませんけれども、そこのところは、全体として防衛力が発揮できるような形にしていただきたい。御指摘されている部分は非常に重要なことだというふうに思っています。

河西委員 ありがとうございました。

 まさに、私はこの話を防衛産業の関係の方にされましたら、組合がありますので、よく相談しなきゃいけませんと。まさに、先ほど参考人は、ジレンマというお話がございました。確かに、制約の問題、補償の問題、まさに今回、こういった形で立法措置も行いますので、また、いろいろな調査も行われていくということでございますので、官民のコミュニケーションがしっかり進んでいくように私としてもしっかり後押しをさせていただきたいと思っております。ありがとうございます。

 今、まさに官民という部分で、ちょっと先日の法案の質疑でも、防衛産業サイバーセキュリティ基準について議論をさせていただきました。

 そこで、深山参考人にお伺いをいたします。

 先ほど、まさに御開陳の中で触れていただきましたけれども、これは既に御案内のとおりでございますが、今回は米国のあの171を基に新基準を防衛産業サイバーセキュリティ基準ということで適用いたします。

 私も以前、ちょっと情報セキュリティー関係の仕事をある一定期間したことがありまして、この171の、原本の方ですけれども、お手本になった部分を少し読ませていただいたんですが、結構手の込んだ対策が様々必要だなと。特に、やはりセキュリティー対策というのは専門の部署あるいは人材が必要でありますので、関連企業の皆様からは、我々はできてもベンダーができるかな、三次、四次、五次、この辺りはどうかなというようなお話をいただいております。

 その上で、今回は、財政措置ですとか、あるいは調達契約ですとか、あるいは官民の共用クラウド、これもしっかり設けていくということでかなり考えていただいてはいるんですが、やはり人材の育成、これもサポートしていかれることなんですが、私が今日、深山元長官にお伺いしたいのは、人材の確保の部分なんですね。

 人材の育成と人材の確保は言葉が似ているようで非なるものでありまして、経営者からすれば、新しい人材を採ってくるというのは大きな決断でもありますし、それは大企業ならまだすぱっと決断できるかもしれないんですが、中小企業であれば、それは当然ベネフィットとともにリスクも伴うことになります、新人の雇用というのは。

 そういう意味で、今我が国はどこへ行っても人材不足というお声がありますけれども、こうした中で、今後どのように官民でコミュニケーションを取って、特にベンダー、中小企業、どういうふうにサポートをしていくべきか、様々御経験を積まれた上で、今お考えがあれば、是非お聞かせいただきたいというふうに思っております。

深山参考人 御指摘のあったことは、幾つも課題のある中の、防衛産業全体の最大の課題じゃないかと実は私は思っております。

 おっしゃるとおり人がいないので、今のこの法案、そして今後やろうとしていることの中でも、例えば五月から、企業を相手に新たな基準に基づいた講習会をある法人に委託して始めるということも既に、これはほんの取っかかりなんですが、やっております。まず理解をしていただいて、この重要性を分かっていただく。

 今のこの法案にあるのは、そういうサイバーを強化する計画を作ってくれたら補助ができますということをやっています。制度としてはそこまで、私はこれは非常に大きな前進だと思っておりますけれども、人の問題は実は、そうした中で、まず会社にいる人で理解を深めてもらう。経営者の方に、言葉は悪いんですけれども、これは総務課の誰かが担当していればいいという問題じゃないんですよと。分かっている人がいないと、総務課の人が、お前、コンピューター見ていろよだけじゃ済まないんですよということをまず分かってもらう。そういうことから始めていく必要があると思います。

 問題は、先生も思っていらっしゃると思いますけれども、それでスピードが間に合うかということだと思うんですけれども、この分野はちょっと遅れています。防衛省で対策に取り組むサイバー要員については大増員計画を持っておりますけれども、今後、産業に関しましても、そこまで手が回っていけば、やはり予算を上げるだけじゃなくて、予算で雇える人もいますよということも示していくようなことが望ましいと個人的には思っております。

河西委員 ありがとうございます。

 関連して、引き続き深山参考人に、最後一点だけお伺いをしたいというふうに思っております。

 今、国会でも、委員会によっては議論になっております生成AIというものがあります。いわゆる文章を、人間かAIか、ほぼ区別のつかないようなものを出してくる。そういった中で、様々、例えば、人間とAIの境界が曖昧化していくことでありますとか、あるいは人間とAIの主従関係が逆転するんじゃないか。そもそも、SNSなど、今までは、中の人というのは生身の人間ということが前提としてあったわけでありますけれども、これも崩れてくると。海外の、例えばアメリカのコーネル大学などでも、ほとんど州議会議員は、七千人、区別がつかなかった、こういった研究も出てきているわけであります。そうした中において、さらに、マルウェアなども素人であってもその場で作れていってしまう、こういった検証もなされているところであります。

 最後、お伺いしたいのは、こういった中において、今セキュリティークリアランスの付与、これは既に防衛産業に対して付与を行っておりますけれども、ここへの影響ですとか、今御開陳のあったセキュリティー基準、こういったものへの影響、何か及ぼし得るものがあるかどうか。もし何か御示唆があれば、ちょっと今々のことですので少しあれかもしれませんが、いただきたいと思っております。よろしくお願いいたします。

深山参考人 生成AIにつきましては、今いろいろな議論があって、実はどういう影響が出るか、よく分かりません。成り済まし問題というのは、これは情報戦の分野では非常に大きな課題になるし、既に、実は今おっしゃったように、チャットの世界なんかでは、商業目的でそういうことは多く使われているのかもしれません。実は分からないんですけれども。

 セキュリティーの問題に関して言いますと、今回の法案で整備させていただく分野、人的な面についても法律の義務を課させていただくというのはございます。それとともに、今後一年かけて議論されると聞いております、より一般的な、国としての、民間の方も含めた、いわば資格的なセキュリティークリアランスの議論もあると承知しています。

 私は、セキュリティークリアランス全般というのは、なかなかこれについても厳しい議論があるけれども、是非必要なので、よく理解をしていただいて、考えていただくべきものと思っています。ただ、それと生成AIの問題というのはなかなか難しいと思っております。生成AIを使えば、サイバー上の問題としては、より巧みな侵入手段が苦労しないでつくれるということになるのは非常に課題だと思っております。それは対策を積み重ねることで対抗するしかないかなと個人的には思っております。

河西委員 大変にありがとうございました。

 今日は、大切な御指導を参考人の皆様からいただきましたので、しっかり政策を前に進めてまいりたいというふうに思っております。

 以上で終わります。ありがとうございました。

鬼木委員長 次に、斎藤アレックス君。

斎藤(ア)委員 国民民主党の斎藤アレックスと申します。

 本日は、皆様、登院いただきまして、そして様々御説明いただきまして、ありがとうございます。

 まず、折木元統合幕僚長にお伺いをしたいと思います。

 二点お伺いしたいと思うんですけれども、まず、かなり全体のお話になると思うんですが、これまで長年、日本の防衛に携わられてこられた中で、新しい安保三文書と、そして防衛費の増額というのは、一種の大きな防衛政策の転換というか歴史の転換点でもあると思いますけれども、折木様のお立場から見られて、今回の防衛政策の転換が日本の戦後の歴史上にどういった立ち位置を占めるのかとか、あるいは、こういった転換点を経て日本の防衛政策というのはこういうふうに変わっていく必要があるんだという御示唆があれば、ちょっと大きな話になりますけれども、いただければと思います。

 もう一つ、ちょっと細かい話になるんですが、元統合幕僚長は陸上自衛隊の御出身ということで、今様々な面で、弾薬が足りないとかミサイルが足りないというところ、あと、可動率を回復させるというところ、議論されていますけれども、一つお伺いしてみたいのが、個々人の自衛官の、特に前線に立つような普通科連隊の方々の装備の更新というのが遅れてしまっていたりとか、あるいは国際水準から遅れてしまっている部分がないのか。後回しになっていたりとかして、それぞれの隊員のギアが、昔のものを使っているとか規格が古いだとか、今の新たな、ほかの一級の軍隊に比べて何だか遅れてしまっている部分があって改善が必要な部分があれば、是非教えていただければと思うんですけれども、いきなり二点、失礼ですけれども、いかがでしょうか。

折木参考人 ありがとうございます。

 三文書、それから今回の強化法案等につきましては、先生おっしゃったとおり、歴史的な転換だというふうに思っています。

 私自身は、三木政権のときの、一九七六年のときの基盤的構想とか一%枠とか、それから実質的な武器輸出禁止とか、大きな政策が三つあったと思いますけれども、それが、実質的にいろいろな変化があって改正はされてきましたけれども、今回、三文書という形で見たときに、それが大きく変化をし、時代に合った、それから、相手を見た、脅威を見た所要防衛力という観点から、軍事的にも、それから政策的にも見直しがされたんじゃないのかなというふうに思っています。

 これからどういうふうな防衛政策というか、そちらの方向性に進むかというと、現実をしっかり見るという、現実の安全保障環境をしっかり見る。それで、安全保障環境だけじゃなくていろいろな要素が絡んできていますから、防衛的にも、制服で見た場合でも、外交とか経済とかいろいろな要素を考えなきゃいけないんですけれども、トータル的に考えなきゃいけないんですけれども、やはり、相手をしっかり見て、主体性を持って、主体性を持った政策にしていくということが一番大事だというふうに思っています。

 日米同盟にしましても、本当に基軸で、しっかり日米同盟を支えていかなきゃいけないんですけれども、その根本のところは日本が主体でありまして、日本が基軸でないと実際としてその条約は機能していかないわけですから。そういう観点で、今回が転換期でもあるし、それを踏まえた上で、これから更に現実を踏まえた政策ということを進めていただきたいな、見直しを引き続きやっていただきたいなというふうに思っています。

 それから、現場の方の装備ですけれども、確かに、おっしゃったとおり、今、この五年間で現場で遅れている部分というのを取り戻さなきゃいけないんですけれども、それは、弾薬とかそういう継戦能力のことも言われていますが、そもそも、個人装備とか、それから部隊が持っておくべき火器というのは、時代的に遅れている部分もあるし、充足も欠けている部分があると思うんですね。だから、そういう面で、この五年間という中で、現業のところの不足部分というのはしっかりカバーしてやる。

 それから、これからのいろいろな紛争の、戦い方という表現をしているとあれかもしれませんけれども、戦い方というのは、部隊によるところも大きいんですけれども、個人によるところも大きいんですね。だから、現場現場の力というのが全体に及ぼす影響というのは、戦闘の場面というのは非常に大きな、要所になってくる、この近代戦では、というふうに思っていますので、個人装備も含めてしっかり面倒を見てやるということが大事だというふうに思っています。

 大きくは、今までどちらかというと、自衛隊の場合は、損耗更新という形で、使えるだけ使って更新していきますよと。例えば戦車も一緒ですけれども、十年開発して、十年装備化して、更に十年使って、要するに三十年か四十年ぐらいずっと使うわけですけれども、それは何で替えるかというと、そういう戦略環境とか技術が進んだから替えますという話じゃなくて、三十年、二十年使って古くなったから替えますよというのが基準なんです。とてもじゃないですけれども、技術が進んでいく中で、戦い方も変わっていく中で、それでは対応できないでしょう。

 だから、全部の装備品を替えろというわけじゃないんですけれども、必要な装備品というのは、そういう損耗更新という基準じゃなくて、必要な時期が来たら必要な部分で、改修をするなり、改善をするなり、全部取っ替えるなりしていかないと、しっかりした防衛力にはならないというふうに思っています。

 以上でございます。

斎藤(ア)委員 ありがとうございます。

 大変貴重な御意見をいただき、また、個人の装備が後回しになるようなことがないよう、また、損耗更新の部分についてもしっかりと考えさせていただいた上で取り組んでいきたいと思います。

 次に、深山様にお伺いしたいと思いますけれども、防衛装備庁長官をされていたときからもそうですし、今でもやはり大企業で撤退をする防衛関連の事業者が出てしまっていると。

 これは私も、質問の方でも政府に伺ったんですけれども、防衛費を大幅に増額する、それで、これから五年間、これぐらいの総額を示して、その後も維持しますということを、政府が方針を示しているのにもかかわらず、そのタイミングで撤退する大企業も出てしまっているということなんですけれども、改めて、ちょっともう繰り返しになるかもしれませんけれども、その原因をどう捉えているのかということ。

 もう一つ、これは私の視点なんですけれども、今、日本の財政状況、大変厳しい中で、本当にその増額された財源規模を維持できるのかということを防衛関連企業は疑っているのではないかというところも懸念されるんですけれども、その点については、先生、どうお考えでしょうか。

深山参考人 お答え申し上げます。

 プライムに、主契約企業になれない企業の撤退の理由として考えられるのは、一つには、大企業なんですが、防衛部門だけを見ればその一部分であって、防衛部分の利潤がなかなか上がらないという経済的な理由がまず会社内としては大きいのではないかと思います。そしてもう一つは、それについてはもう申し上げました、予算も厳しく、私自身もとにかく削らざるを得なかったことを申しました。

 もう一つは、私の陳述でも申しましたが、やはり、防衛に対する忌避感というのがあって、これは逆説的なんですけれども、どうも、目立たないで持っている分には、まあ持っていようかと、ただ、脚光を浴びて、この部分は大事だということになると、会社全体の経営にプラスじゃなくてマイナスになるんじゃないかという判断から、やめるとかあるいは売却するとかいうこともあるのではないかと思います。

 あと、財源規模につきましては、これは実は、防衛省から見ましても、今回の防衛力整備、OBとして見ましても、今回の財源、今回の計画の規模、これは、五年間だけ投資すれば防衛力がすばらしくなるというものではないと考えております。

 今後も防衛関係費としての投資をしていただく必要が非常にあるという点では、やはり、これは私ではなくてある現役が私とこの春に意見を交わしたときに言っていたことですが、実は、本当に防衛力を強めていくと、富国、国を富ませてほしい、国が富むことによって初めて税収も上がって、そうすれば予算も確保できていけるんじゃないかと。だから、これは防衛省の人間が言っているんですが、そういうことをしていかないとなかなか、今後とも投資を続けて必要な防衛力をつくるのが難しくなるんじゃないかという懸念をしている者がおりました。

 ですから、やはり、財政のためには経済全体が活性化するということが非常に必要で、そうすれば先生のおっしゃった防衛企業の疑いというのもなくなるのではないかと思っております。

斎藤(ア)委員 ありがとうございます。

 まさしく、戦前の日本でもそうでしょうけれども、経済力、産業力が防衛力の土台になっているということでございますので、その点については改めて政治の方が認識をして取り組んでいかなければならないと思います。ありがとうございました。

 次に、村山先生にお伺いをしたいと思います。

 先ほど御挨拶させていただきましたけれども、私も同志社大学の経済学部出身で、先生と同門でございます。先輩、どうぞよろしくお願いいたします。

 先生の資料も事前に拝見をさせていただいておりまして、私、大学を出た後にMアンドAの仕事をしていましたので、今回のこの防衛産業の話、本当にMアンドA、再編というものが大きな鍵になっていると、私がその仕事をしていたからではないですけれども、そういったふうに思いながらこの審議に取り組んでおります。

 先ほど深山先生がお答えになっていた点を今度は村山先生にお尋ねするという感じなんですけれども、やはり、まずちょっと主契約企業の方、大企業の方をテーマにお話ししたいと思うんです。

 こういったところでも、防衛産業再編をして、BAEシステムズだとか、アメリカの防衛産業みたいに専業で、忌避感とかを持っていただくことを懸念することなく、そして海外にも売り込みを主体的にがんがんとできる、それで国際競争の中で勝っていく、利益を上げていく、こういった企業をつくっていかなければ、結局、国の支援に頼る状態が生まれてしまうのではないかというふうに懸念をしていて、この再編というものが、難しいけれども大切だと私は思っているんですけれども、先生がおっしゃっていた、一周目の、再編ができていないというところの、これは日本では望めないのか、できるとしたらどういった方法があるのか、ちょっとお考えをお伺いできればと思います。

村山参考人 これは非常に重要な問題でして、まず、投資家が防衛産業をどう見ているかという話をしなきゃならないと思うんですけれども、一度、私、外資系の証券会社に呼ばれて、日本の防衛産業の話をしてくれと言われたんですよね。それで話をしたんですけれども、何か雰囲気が違うんです。それで、後で聞いてみたら、投資家にとって企業が防衛部門を持つということはリスクである、そのリスクをアセスしたいと言うんです。だから、防衛スキャンダルが起こったら、株価がぼおんと落ちるわけです。それで、そういう日本の忌避感で、何かそういうことが起こったら株価が落ちるというので、それがもうリスクファクターなんです。

 だから、これを聞いていて、やはり、最終的に日本もやはり専業メーカーをつくらないと駄目かなというふうに思いました。というのは、専業メーカーをつくれば、そこの投資家というのは、それを分かって、防衛産業をやっているから投資しているわけですよね。そうしたら、このねじれはなくなるんですよね。それと、やはり、競争力の面でもそういう大きな、ちゃんとした企業をつくらなきゃならない。

 問題は、そこにどうして持っていくかということなんですよね。当然、MアンドAはありなんですけれども、今の状態でMアンドAをやっても、ちょっと駄目だと思います。

 というのは、競争力のないところ同士を併せても魅力ないですよ、それは。だから、まずどこかで競争力をつくって、そこを中心に再編していくという、競争力のあるところだけを集めて再編していくような、そういう道筋へ持っていかないと駄目だと思うので、そこはちょっと知恵の絞りどころだと思うんですけれども。

 私も、それをどうするかというのはまだ妙案はないんですけれども、先ほど言いました、政府が投資をしてそれで、そこに賛同するような企業はそこに集まってもらって新しいフレームワークをつくっていくみたいな、そういうことがきっかけになるのかなという感じを持っていますけれども、まだちゃんとしたロードマップのようなものを持っているわけではありません。

 以上です。

斎藤(ア)委員 ありがとうございます。

 民間の方でも、日本はかつて半導体で競争力があって、競争力を失ったときに統合して、それでも更に厳しくなっているという状況もあって、ディスプレーでも同じ状態になっていますので、やはりおっしゃったように、競争力のある統合体をつくり出していくということが大前提でなければならないと思っていますので、これは本当に難しい問題だと思います。今後とも、是非教えていただきながら取り組んでいきたいと思うんです。

 次に、ちょっと中小企業の再編のところで御知見を伺えればと思います。

 先ほど、日本の防衛産業は小さな企業が大変多くてというお話があったんですけれども、防衛産業に限らず、日本の中小企業の企業規模というのは小さい、ドイツとかアメリカに比べて中小企業の企業規模は大変小さくて、競争力が失われているのではないかという分析はよくあるんです。

 そういう観点でいいますと、防衛産業に限らず、防衛産業でもそうですけれども、再編をしていただく中小企業でもそれぞれある程度の規模を持っていただくというのが、情報管理の面でも人材の獲得の面でもこれは必要なことだと考えているんですけれども、その点に関しましてはどういった取組、これは防衛産業に限った取組ではないのかもしれませんけれども、中小企業の企業規模を拡大する必要性、また、もしその必要があるとしたらどういった方法を取ることができるのか、その点について、村山先生、何か御知見があればお願いいたします。

村山参考人 中小企業で防衛に使える技術力を持っているところは非常に多いんです。一度、私、京都で現代の名工選考委員というのをやっていまして、すごい企業が出てくるんですよ。それで、私なんか、防衛の目で見たら、これは絶対防衛で使えるし、面白いというのが出てくるわけですよね。ところが、そういう意識は全くないということが一つありますよね。

 それで、もちろんシステムインテグレーターも大変なんですけれども、部品メーカー、下請も今大変な状況にある。実はこれは、日本だけじゃなくて、アメリカでも大変なんです。下請が抜けている、そこがぼろぼろぼろぼろ抜けているんですよね。

 ただ、逆に私、それがビジネスチャンスだと思うんです。だから、日本がそういう中小企業を取り込んで防衛向けに生産させて、それを、アメリカは抜けているわけですから、そこにも供給すれば、一気にグローバルマーケットが取れるんですよ、これは。ところがそういう意識がないから動いていないだけで、そういう方向で中小企業を生かしていくべきだというふうに思います。

 それともう一つは、大企業ほど中小企業は防衛に対する忌避感を持っていないということです。私、中小企業の社長さんとよく話をするんですけれども、結構日本の防衛に燃えている人がいるわけですよね。そういう人なんか、もう喜んでやってくれますよ。だから、そういう人を早く見つけ出して、その場に取り込んで、海外展開もやっていく。そうすれば、かなり規模感も出てくるし、競争力のある防衛産業につながると思うんですね。

斎藤(ア)委員 ありがとうございます。

 中小企業の競争力を強化をするというのは、日本の経済競争力を強化をするということのダイレクトな問題だと思っています。賃上げにも最も重要な問題だと思っていますので。

 また、防衛産業にかかわらず、いい方に経営をしていただいて、そういったやる気のある方に経営をしていただける中小企業がどんどん発展していくことが重要だと考えておりますので、またその点についてもしっかりと取り組んでいければというふうに考えております。

 次に、佐藤先生にお伺いをしたいんですけれども、今、様々私から質問させていただいた部分で、民間企業の競争力を強化をしていくという部分がなくてはならないんだろうと私も思っているんですけれども、かなりざっくりした質問になってしまう、ちょっと繰り返しになってしまうかもしれませんけれども、民間企業の競争力を強化をしていく方策としてどういったことが考えられるのか。今まであった議論の補強でも構いませんけれども、新しい視点があれば、是非そういったものもお聞かせいただければと思うんですけれども、いかがでしょうか。

佐藤参考人 ありがとうございます。

 斎藤先生がおっしゃったように、中小企業若しくは民間企業の競争力を強化していくということは非常に重要だと思っております。

 これは簡単に答えが出る問題ではないと思いますし、民間企業の競争力を高める決定打があれば、多分、ほかでビジネスをやれば大もうけができるんじゃないかと思うぐらい非常に重要なポイントになってくると思いますが、私もいろいろ考えてはいるんですけれども、やはりこれはひとつ、国際競争力を彼らにつけてもらうしかないというのが一つの答えだと思います。

 ただ、民間企業、特に中小企業になってみますと、国際競争力をつけるために、海外進出をするためのコストがかかります。若しくは、展示会を含めて、そういうところに参加することに関する、日程的にもマンパワー的にも非常に大きなコストを彼らはかけなければいけないと思いますので、そこの面における支援というのを政府の方で制度として設けることができれば、これは、政府全体としてやるというよりは、恐らく都道府県レベルで、若しくは市町村単位でやるのが好ましいのかもしれませんけれども、そういうきめ細やかな支援体制を構築することが一つの方法なのではないかというふうに考えます。

斎藤(ア)委員 最後にちょっと簡単に、深山様に難しい質問をしていきたいと思うんです。

 やはり、国際競争力をつけてもらうためには、フラットな競争環境を日本国内の企業にも用意しないといけないので、防衛移転三原則については見直すことが必要になると思うんですけれども、先生はOBでいらっしゃいますので、防衛装備移転三原則、指針も含めて、こういった部分を見直していくべきだとか、こういった視点が必要だということがあれば御示唆をいただければと思うんですけれども、いかがでしょうか。

深山参考人 先ほど、私が疑問に感じたことはちょっと申しましたが、範囲についてもう少し柔軟な対応を考える必要が、考えた方がいいと思います。一方で、それは多くの方の中で論争になるということも十分承知しておりますが、やはりそういう議論を絶えずしていくことが装備移転三原則では非常に大事だと思っております。

斎藤(ア)委員 先生方、本日はありがとうございました。

 以上で終わります。

鬼木委員長 次に、赤嶺政賢君。

赤嶺委員 日本共産党の赤嶺政賢です。

 今日は、四人の参考人の先生方、大変ありがとうございます。

 今回の法案について、岸田政権が昨年末に閣議決定した安保三文書を具体化するものでありますが、三文書は、今後五年間で防衛力を抜本的に強化するとして、敵基地攻撃に用いる長射程ミサイルの量産や自衛隊施設の強靱化を打ち出しています。そして、自衛隊の装備品を製造する軍需産業を防衛力そのものとして位置づけ、先ほどから折木参考人もおっしゃっておられましたが、その強化は必要不可欠だ、こう述べております。

 まず、折木参考人にお伺いをいたしますが、政府は今回の安保三文書について、アメリカの戦略文書と整合したものだ、このように説明しておりますが、今アメリカは、同盟国を巻き込みながら、敵基地攻撃とミサイル防衛を一体化させた統合防空ミサイル防衛、いわゆるIAMD、これを構築しようとしております。日本政府も、三文書で統合防空ミサイル防衛を打ち出し、敵基地攻撃能力の運用に当たって日米が連携することが重要だと述べております。

 現在でも、日米のイージス艦は、データリンクを経由し、一体的に運用しておりますが、敵基地攻撃能力も同様で、米軍と一体で運用されることになると思います。

 今回の安保三文書はアメリカの戦略を補完する形で具体化されていくことになるのではないかと思いますが、折木参考人はどのようにお考えでしょうか。

折木参考人 どうもありがとうございます。

 戦略三文書を踏まえながら先生御指摘されたと思いますけれども、今回の防衛力の抜本的強化の中で、特に防衛戦略の方を見ますと、まず何がうたわれているかというと、日本が主体的にまずやるんだということを明確に表現していると思うんです。だから、それを踏まえた上で、情勢を、我が国を取り巻く安全保障環境情勢とか、それから経済も含んだ世界の大きな動きとか、それを分析した結果、アメリカと協議しながら吻合しましたということで、アメリカに決して合わせたわけではないというふうに私は思っています。

 それと、態様について申し上げれば、それは、先ほど言った主体的という中で、補完するということではなくて、日本がまずやらなければいけないのは、こんなに安全保障環境が変わってきてしまったんだから、まず抑止しなきゃいけないよねと。抑止しなきゃいけない手段として何だというふうにして考えたときに、反撃能力とか、ウクライナを見れば分かるように防空能力とか、それから、北朝鮮を考えたときにBMDはどうするんだとか、国民を守るためにはどうすればいいんだということを考えた結果が、私は、今回の安全保障戦略であり、防衛戦略だというふうに考えています。

 それと、アメリカとの関係が、じゃ、全く切り離していいかというとそうでもなくて、これはやはり、日米同盟でしっかりした体制を整えるということは、これも抑止につながりますし、何かあったときに、まずは日本が主体的にやるんですけれども、米軍と一緒にその後でもやることによって、きちんと日本を防衛できる、国民の命を守れる。

 そういうことを狙いにした、アメリカの戦略との吻合、それから日本独自の三文書の策定というふうに私自身は理解をしております。

赤嶺委員 どうもありがとうございました。

 ちょっともう一問、折木参考人にお伺いをいたしますけれども、今度の国家防衛戦略は、陸海空自衛隊の一元的な指揮を行う常設の統合司令部を創設することを明記しております。

 今年一月の日米2プラス2の共同声明は、日本による常設の統合司令部設置の決定を歓迎し、同盟におけるより効果的な指揮統制関係を検討する、このようにしております。

 この統合司令部の設置によって日米の調整機能がどのようになると考えていらっしゃいますか。参考人の御意見を伺いたいと思います。

折木参考人 ありがとうございます。

 日本の統合司令部につきましては、私の個人的な念願でございまして、十年余りかかったんですけれども。

 東日本大震災のときに統合幕僚長をやらせていただいて、それでいろいろ対応させていただいたんですけれども、その中の反省事項で、本当に、部隊を指揮する部分と、それから大臣を補佐する部分という、要するに昔でいえば軍令、軍政的な分野というのは、一人でやるのはこれは厳しいよねということを前提にずっと考えていましたし、それから、そういうことを考えたときには、それを区分をして、きちんとした日本の統合司令部というのが必要だよねというふうに思っていました。それをいろいろ議論していただいて、今回、統合司令部ということで設置をするということで方向性をつけていただきました。

 これによって、いろいろなことがあるんですけれども、国内的には陸海空、それから宇宙とかサイバーとかいろいろな要素がありますので、これをきちんとした統合関係、統合をした中で、指揮という関係できちんとした組織というのがつくれて、日本の自衛隊というのがそれで運用できますよねというのが一つ。

 それからもう一つは、アメリカとの関係で、先生御指摘いただいたように、連携というか協議ですね。例えばインド太平洋軍司令部とやる上で、統幕長が、二股、二股という表現はよくないですけれども、両方、指揮と補佐という断ち割りじゃなくて、ちゃんと、指揮同士、組織同士がきちんと調整をする、それから訓練をやっていく、それからいろいろな戦略的な協議もやっていく、そういう関係がきちんと整理をされたというふうに思っています。

 その中で、日米の指揮統制関係をどうするかということを、これから深めていきますということなんですけれども、それは要するに、私の感覚、私の理解では、お互いに共同で作戦を日米はやるわけですから、それを踏まえた中で、日米の指揮関係、調整関係というのをどちらに、指揮関係に、上下関係になるということではなくて、共同の中でそれを、どういうふうにして調整関係とかなんとかというのを深めていくかということがその趣旨だというふうに私は理解していますし、それで間違いないと思っております。

 以上でございます。

赤嶺委員 どうもありがとうございました。

 次に、深山参考人にお伺いをいたします。

 深山参考人、政府のときは大変お世話になりました。今日はもう参考人としておいでいただいているんですが。

 安倍政権以降、アメリカからの対外有償援助、FMS調達額が急増し、国内産業を圧迫していると言われているわけです。今年度のFMS予算は一兆四千億円以上と、昨年度の四倍以上、これまでで高額だった一九年度の二倍に上っております。

 経団連は、三文書の策定に向けた提言書で、近年、防衛産業にとって厳しい環境変化が続いている、このようにしております。その理由として、海外からの装備品調達が増加しており、二〇一九年度は米国からのFMSによる装備品調達額は約七千億円となった、こうした傾向が続けば、製造の空白期間や、年度ごとの調達量の増減が生じ、防衛産業は安定的な操業ができなくなり、人員規模を縮小せざるを得ない、このように述べております。

 このようなFMS調達の増額は国内産業にどのような影響を及ぼしているのか、参考人が把握しているところを教えていただきたい、このように思います。

深山参考人 赤嶺先生には、現役のときは大変お世話になりまして、感謝をいたしております。

 今のお尋ねですが、FMS契約が増加した時期、私が装備庁長官を務めた時期もそこに重なっておりますが、これが結果として国内調達額を当時押し下げてしまったというのは事実であります。私も、一方でそれを米国と交渉して導入しなきゃいけない、それとともに国内防衛産業にも頑張ってもらわなきゃいけないんですが、予算の目減りで国内産業は苦しいんだという、陳情といいますか訴えも何度も聞きました。

 ただ、FMSは、FMSでしかやはり買えない装備があります。これは実はジレンマなんですけれども、本来は国内で、率直に言えば、米国から導入しなくても、日本で造れる装備品がもっと優れていれば買う必要はないので。ただ、それが達成できていなくて、それで、日本を守るために最新の装備品を持つためにはそういう道を選ばざるを得なかったという、大変なジレンマでありました。

 今おっしゃいましたように、今年度も、FMS、手元の、調査室の作られた資料を拝見しますと伸びておりますけれども、今年はそれとともに国内調達額も増えております。もちろん、私は増えることを歓迎いたします、そこはお立場の違いがあるかもしれませんけれども。でも、国内産業に対する影響は軽減され、今年は少なくとも軽減されていると思います。

 必要なものはFMSで調達しますが、我々、我々と言うのはもうおかしいんですけれども、政府も、必要なものは適正な額で調達する、そういう努力は常に続けていくことになろうと思います。

赤嶺委員 FMS、現職の時代からいろんな意見を聞かれてきたことと思いますが、納期や価格はアメリカ政府の見積りで、原則前払いであること、米国側の都合で契約解除できるなど、余りにもアメリカに都合のいい契約方法、これが問題となってまいりました。また、FMSで調達した装備品が故障したときや不具合があったときも、アメリカが機微な技術などを秘匿するため、日本側が十分に調査や点検ができないと言われております。

 この辺りの実態、この辺はいかがでしょうか。今、現職を離れられて、また発言の機会、そのFMSについてどういうお考えなのか。深山参考人、お願いします。

深山参考人 FMS契約の実施につきましては大変苦労いたしました。それは、やはり米国側の要請によっていろいろなものが変わってくるということは実際にありました。そして、今、FMSでなければ調達できない装備品があると申しましたが、そうした装備品であるがゆえに、特に最近は、FMSで調達したものについては、非常に装備品の秘密の壁が厚くて、日本側がマニュアルどおりにしか触れないということがあったのも事実です。それについては政府が、私も問題意識を持っておりましたし、今も持ち続けていると思います。

 私の知る限り、やはりこれについては、他国は、他国もFMSで導入している国はありますが、ある国は、非常に多くのスタッフを、FMSオフィスをワシントンにつくって、非常に人的規模を、多くの人間を割いてアメリカ政府と交渉して、我々が悩む不都合ができるだけ起きないように交渉して、あるいは早く情報を収集して対処しているということもその間に学びました。

 私の現役時代にはそうしたシステムを日本もつくることはできませんでしたが、今聞いておりますところによれば、防衛装備庁はそうしたものに少しでも近づけるべくFMSの交渉体制も拡充しているというふうに承知しておりますので、これはまだ、そうしたFMS交渉については先進的な国と肩を並べられるとは言えないかもしれませんが、今先生から御指摘のあったようなことが、日本側から見て不都合なことはできるだけ減らしていくということでやっていってくれると思っております。

赤嶺委員 どうもありがとうございました。

 ちょっと時間が迫っていますので、村山参考人と佐藤参考人にお伺いします。

 日本政府は、我が国にとって望ましい安全保障環境を創出するための重要な政策手段として武器輸出を挙げていますが、その輸出先はアジア太平洋地域が中心になっています。防衛省の防衛装備移転の実現可能性調査はこの地域の国々を対象としていますし、先日外務省が公表した、発展途上国に武器提供などの軍事支援をする新たな枠組み、先ほども出ましたが、OSA、これもフィリピン、バングラデシュ、マレーシア、フィジーが対象となっています。

 日本の武器輸出は、この地域からの中国の切離しを進めるためのもので、アメリカの対中戦略を補完するものだと私は考えております。こうしたブロック化の動きは、この地域の対立と分断を拡大し、緊張を一層高めることにつながると思いますが、両先生のお考えを伺いたいと思います。

村山参考人 御指摘のあった武器輸出の件ですけれども、結局、完成品を今まで輸出したのはフィリピンへのレーダーだけなんですよね。だから、八年間で一件だけなんです。これは、ある意味、私の立場からすると、何なんだということですよね。緩和して、オープンにしているのに、できない。だから、まずその辺りを解決すべきですよね。だから、そこを解決して、それから、どういう国に、どういう形でやっていくか。これはかなり時間がかかります。というのは、それほど競争力のないところをやっていくわけですから。

 それよりも、私、先にしなきゃならないのは、同盟国、友好国の間の防衛のサプライチェーンの整備だと思います。そちらの方が日本の役割は大きいと思うんですよね。やはり、今の安全保障環境からして、中国とどう対峙するかというのは重要ですので、サプライチェーンの勝負になるという部分もあるので、できるだけアメリカそれから同盟国で防衛分野のサプライチェーンをつくって、それで抑止していくというのが、より重要度が高い、武器輸出よりもそちらの方が重要度が高いというふうに私は考えております。

佐藤参考人 ありがとうございます。

 今先生の方から、OSAを含めて、防衛装備移転に関する様々な御指摘をいただいたと思います。

 OSAの制度については、一つ問題があるとすれば、これは、受け取った側は日本の対中政策の一部になるんですかという疑念をどうしても抱いてしまう、若しくは周辺国に抱かせてしまうというのが大きな問題だと思っております。そもそもそういう目的で移転されるものではないにもかかわらず、日本から受け取ることによる分断というのを結果として招いてしまう可能性があるというところに大きな問題があると思います。

 そうなってくると、日本からの防衛装備移転というのは、できるだけそういう政治的な戦略とは切り離して、経済的なとは言いませんけれども、相手国の実情に合った形での戦略性、政治性というのを持たせて移転させるのも一つの方法だと思います。今回、ウクライナに関して韓国が非常にスキルフルな装備移転を行っておりますけれども、ああいうやり方というのも、まねること、勉強することも一つの方法なのかなというふうに思っております。

 我々は、装備移転によって世界を分断の世界に導いてはいけないわけでありまして、そうではない方法を模索し続けていくことが装備移転においては極めて重要なポイントだというふうに思っております。

赤嶺委員 大変ありがとうございました。立場が違う意見ではありましたが、これからも参考にしていきたいと思います。

 今日はありがとうございました。

鬼木委員長 以上で参考人に対する質疑は終了いたしました。

 この際、一言御挨拶を申し上げます。

 参考人各位におかれましては、貴重な御意見をお述べいただき、誠にありがとうございました。おかげで大変有意義な質疑が行えたと思っております。また、時間の制約等、失礼がありましたこともお許しください。本当にありがとうございました。委員会を代表して厚く御礼を申し上げます。(拍手)

 次回は、公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。

    午前十一時五十四分散会


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