衆議院

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第5号 平成28年10月12日(水曜日)

会議録本文へ
平成二十八年十月十二日(水曜日)

    午前八時五十八分開議

 出席委員

   委員長 浜田 靖一君

   理事 石田 真敏君 理事 菅原 一秀君

   理事 西村 康稔君 理事 葉梨 康弘君

   理事 宮下 一郎君 理事 武藤 容治君

   理事 大西 健介君 理事 長妻  昭君

   理事 赤羽 一嘉君

      伊藤 達也君    石破  茂君

      岩屋  毅君    江藤  拓君

      衛藤征士郎君    小倉 將信君

      大串 正樹君    大隈 和英君

      大西 英男君    大野敬太郎君

      奥野 信亮君    鬼木  誠君

      勝沼 栄明君    門  博文君

      門山 宏哲君    神谷  昇君

      神山 佐市君    黄川田仁志君

      工藤 彰三君    國場幸之助君

      佐々木 紀君    新谷 正義君

      鈴木 俊一君    鈴木 憲和君

      田所 嘉徳君    高橋ひなこ君

      中谷 真一君    長坂 康正君

      根本  匠君    野田  毅君

      野中  厚君    原田 義昭君

      平口  洋君    星野 剛士君

      宮崎 政久君    八木 哲也君

      保岡 興治君    山下 貴司君

      山田 賢司君    和田 義明君

      渡辺 博道君    井坂 信彦君

      井出 庸生君    小川 淳也君

      緒方林太郎君    大串 博志君

      神山 洋介君    黒岩 宇洋君

      後藤 祐一君    玉木雄一郎君

      辻元 清美君    初鹿 明博君

      福島 伸享君    前原 誠司君

      升田世喜男君    宮崎 岳志君

      村岡 敏英君    本村賢太郎君

      山尾志桜里君    伊藤  渉君

      國重  徹君    真山 祐一君

      吉田 宣弘君    赤嶺 政賢君

      高橋千鶴子君    堀内 照文君

      井上 英孝君    伊東 信久君

      浦野 靖人君

    …………………………………

   内閣総理大臣       安倍 晋三君

   財務大臣

   国務大臣

   (金融担当)       麻生 太郎君

   総務大臣         高市 早苗君

   法務大臣         金田 勝年君

   外務大臣         岸田 文雄君

   文部科学大臣       松野 博一君

   厚生労働大臣       塩崎 恭久君

   農林水産大臣       山本 有二君

   経済産業大臣       世耕 弘成君

   国土交通大臣       石井 啓一君

   防衛大臣         稲田 朋美君

   国務大臣

   (内閣官房長官)     菅  義偉君

   国務大臣

   (情報通信技術(IT)政策担当)         鶴保 庸介君

   国務大臣

   (経済財政政策担当)   石原 伸晃君

   国務大臣

   (働き方改革担当)    加藤 勝信君

   国務大臣

   (地方創生担当)     山本 幸三君

   国務大臣

   (東京オリンピック競技大会・東京パラリンピック競技大会担当)       丸川 珠代君

   財務副大臣        木原  稔君

   政府特別補佐人

   (内閣法制局長官)    横畠 裕介君

   政府特別補佐人

   (原子力規制委員会委員長)            田中 俊一君

   会計検査院長       河戸 光彦君

   政府参考人

   (内閣官房内閣審議官)  田中 勝也君

   政府参考人

   (内閣府大臣官房独立公文書管理監)        佐藤 隆文君

   政府参考人

   (内閣府政策統括官)   田和  宏君

   政府参考人

   (内閣府政策統括官)   加藤 久喜君

   政府参考人

   (総務省自治財政局長)  黒田武一郎君

   政府参考人

   (厚生労働省労働基準局長)            山越 敬一君

   政府参考人

   (原子力規制庁原子力規制部長)          櫻田 道夫君

   参考人

   (日本銀行総裁)     黒田 東彦君

   予算委員会専門員     柏  尚志君

    ―――――――――――――

委員の異動

十月十二日

 辞任         補欠選任

  石崎  徹君     門山 宏哲君

  石破  茂君     田所 嘉徳君

  岩屋  毅君     山田 賢司君

  衛藤征士郎君     大西 英男君

  門  博文君     神谷  昇君

  佐田玄一郎君     大野敬太郎君

  長坂 康正君     和田 義明君

  野中  厚君     高橋ひなこ君

  原田 義昭君     佐々木 紀君

  星野 剛士君     勝沼 栄明君

  井坂 信彦君     宮崎 岳志君

  後藤 祐一君     神山 洋介君

  辻元 清美君     本村賢太郎君

  初鹿 明博君     村岡 敏英君

  福島 伸享君     山尾志桜里君

  前原 誠司君     井出 庸生君

  真山 祐一君     吉田 宣弘君

  赤嶺 政賢君     堀内 照文君

  伊東 信久君     浦野 靖人君

同日

 辞任         補欠選任

  大西 英男君     衛藤征士郎君

  大野敬太郎君     宮崎 政久君

  勝沼 栄明君     星野 剛士君

  門山 宏哲君     神山 佐市君

  神谷  昇君     門  博文君

  佐々木 紀君     原田 義昭君

  田所 嘉徳君     石破  茂君

  高橋ひなこ君     野中  厚君

  山田 賢司君     大隈 和英君

  和田 義明君     長坂 康正君

  井出 庸生君     前原 誠司君

  神山 洋介君     升田世喜男君

  宮崎 岳志君     大串 博志君

  村岡 敏英君     黒岩 宇洋君

  本村賢太郎君     辻元 清美君

  山尾志桜里君     福島 伸享君

  吉田 宣弘君     真山 祐一君

  堀内 照文君     赤嶺 政賢君

  浦野 靖人君     伊東 信久君

同日

 辞任         補欠選任

  大隈 和英君     工藤 彰三君

  神山 佐市君     新谷 正義君

  宮崎 政久君     中谷 真一君

  大串 博志君     井坂 信彦君

  黒岩 宇洋君     初鹿 明博君

  升田世喜男君     後藤 祐一君

同日

 辞任         補欠選任

  工藤 彰三君     岩屋  毅君

  新谷 正義君     鬼木  誠君

  中谷 真一君     鈴木 憲和君

同日

 辞任         補欠選任

  鬼木  誠君     八木 哲也君

  鈴木 憲和君     佐田玄一郎君

同日

 辞任         補欠選任

  八木 哲也君     石崎  徹君

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 国政調査承認要求に関する件

 政府参考人出頭要求に関する件

 参考人出頭要求に関する件

 予算の実施状況に関する件(安倍内閣の基本姿勢)


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     ――――◇―――――

浜田委員長 これより会議を開きます。

 国政調査承認要求に関する件についてお諮りいたします。

 予算の実施状況に関する事項について、議長に対し、国政調査の承認を求めることとし、その手続につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

浜田委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

     ――――◇―――――

浜田委員長 予算の実施状況に関する件について調査を進めます。

 本日は、安倍内閣の基本姿勢についての集中審議を行います。

 この際、お諮りいたします。

 本件調査のため、本日、参考人として日本銀行総裁黒田東彦君の出席を求め、意見を聴取し、また、政府参考人として内閣官房内閣審議官田中勝也君、内閣府大臣官房独立公文書管理監佐藤隆文君、内閣府政策統括官田和宏君、内閣府政策統括官加藤久喜君、総務省自治財政局長黒田武一郎君、厚生労働省労働基準局長山越敬一君、原子力規制庁原子力規制部長櫻田道夫君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

浜田委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

浜田委員長 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。菅原一秀君。

菅原委員 おはようございます。自民党の菅原一秀です。

 二十七分という時間でありますので、早速質問に入らせていただきます。

 初めに、災害対策についてお伺いいたします。

 八日の日には、三十六年ぶりに阿蘇山が爆発的噴火をいたしました。甚大な農業被害、そこに早急な調査と支援をぜひお願いしたい、こう思います。

 また、先般の北海道、岩手の台風、大雨被害につきましては、安倍総理も現地に入られまして、早速、災害の復旧と農業の再開に向けてその支援が始まったわけであります。

 この四月の熊本の二度にわたる地震といい、ここ数年、何十年に一度とされた自然災害が、いわば全国で頻発をしております。今後も首都直下型地震あるいは南海トラフ地震が予測され、ここで国はためらうことなくハード、ソフト両面での強靱化を進めるべきと考えます。

 また、国と自治体の防災計画に基づきまして、地域においては、水、食料の備蓄、避難所の整備、あるいは自治体や町会、消防団が中心となった、いわば防災訓練の拡充が必要とされます。

 そこで、きょうは一点、身近な課題として、いわば避難所となります全国の小中学校のエアコンの設置についてお尋ねをしたいと思います。

 現在、災害対策基本法で、全国の公立の小中学校、九四・四%が避難所の指定をされております。この表にありますように、公立の小中学校、普通教室におきましては、エアコン設置率は、東京都は一〇〇%に近いんですが、全国でいうとまだ三二・八%であります。また、直接の避難所となる体育館ということで特化してみますと、東京都は四・八%、また、全国では〇・五%と皆無に近い状況があります。

 災害はいつ起こるかわかりません。直接その避難所となる体育館、ここにやはりエアコンを設置、早急に進めるべきだと思います。特に、地域においては四十度を超える、まさに酷暑日もあるわけでありますから、全国の小中学校の体育館、エアコンの設置を可及的速やかにお進めいただきたいと思いますが、松野文部科学大臣の御所見をお伺いします。

松野国務大臣 公立学校施設は、子供たちの学習、生活の場であるとともに、災害時には地域住民の避難所ともなる極めて重要な施設であり、安全性、機能性の確保が必要であります。

 文部科学省では、地方公共団体が公立学校の体育館への空調設置などを行う際、学校施設環境改善交付金として、原則三分の一の補助を行っております。また、平成二十八年度第二次補正予算において、耐震化、老朽化対策や空調設置を含めた防災対策として一千四百七億円を確保いたしております。

 今後とも、地方の声にしっかりと耳を傾けながら、空調設置を含む学校施設の防災機能の強化に取り組んでまいります。

菅原委員 三分の一の国の補助ですが、ぜひ、かさ上げも含めて、早急な対策をお願いしたいと思います。

 次に、東京オリンピック・パラリンピックについてお尋ねをします。

 この八月、九月、リオのオリンピックにおきましては、日本は過去最高の四十一のメダルを獲得し、また、パラリンピックにおきましても、障害に負けずに人間の力の極限に挑戦をする日本人選手の活躍が大いなる勇気と感動をもたらしてくれました。

 私も、自民党の東京オリンピック・パラリンピック本部の幹事長として、リオの閉会式に参りました。もちろん自費で行きました。ハンドオーバーセレモニーにおきまして、小池都知事がオリンピック旗を受け取り、そしてまた、東京のPR映像とパフォーマンス、ハローキティ、キャプテン翼、パックマン、こうした日本が誇るキャラクターを用いて、日本のソフトパワーやコンテンツ産業がクールジャパンということを世界に発信する絶好の機会となったわけであります。

 パフォーマンスのハイライトとして、スーパーマリオに扮した安倍総理が土管から出てこられた瞬間、その奇想天外な展開に、会場はもとより世界がどよめいたと思います。ただ、正直言って、総理がちょっとお面をとるのが早過ぎたかなと思ったんですが、きょうはその点は質問いたしません。

 その後のG20におきましては、総理のパフォーマンスは世界の首脳から極めて高く評価をされ、まさに土管から出てこられたその瞬間、世界は四年後の東京オリンピック・パラリンピックを体感したんだと思います。そして、新たな未来を切り開く、歴史のスタートとなったリオでもあったわけであります。

 総理は、先般の所信表明演説で、四年後の東京大会は世界一の大会にする、このように力強く表明をされました。さまざまな課題のある東京大会でありますが、その課題をいかに克服して世界一の大会にしていくのか、安倍総理の意気込みをお伺いいたします。

安倍内閣総理大臣 先週七日に行われたリオ大会のメダリストの皆さんのパレードには、約七十万人の人々が集まり祝福をしたというニュースを拝見いたしました。まさにスポーツの力によって国民は勇気を与えられ、みんなが元気になったんだろうと思います。改めて、パワー・オブ・スポーツ、スポーツの力を感じたところであります。

 同日、全閣僚を構成員とする推進本部を開催いたしまして、東日本大震災からの復興、テロ対策、サイバーセキュリティー対策、ユニバーサルデザインによる共生社会への取り組み、多様な日本文化の魅力の国内外発信などについて、各準備の加速を指示したところであります。二〇二〇年の東京大会では、私たちが感動を発信する番となるわけであります。

 一九六四年の東京オリンピック、私はまだ十歳でありましたが、敗戦から十九年、あのとき私たちが感じたのは、日本人も頑張れば世界のトップのレベルと肩を並べることができるという自信だったんだろう。その自信がその後の日本の経済成長、発展につながっていったのではないか、こう思います。

 また、あの大会から町がきれいになったんですね、町をきれいにしようと。道にごみが、まだあのときには結構落ちていたんです、東京オリンピックの前は。あれ以降は本当に道がきれいになった、こんなように記憶をしているわけであります。

 今度の大会は、東日本大震災から見事に復興した日本の姿を世界に示しつつ、文化、伝統を含めて日本のすばらしさを発信する、そして、おもてなしの心でアスリートそして世界の人々をお迎えしたい、このように思っております。

菅原委員 東京で開催するものの、まさに国家のプロジェクト、このようなお話かと思います。

 連日報道されております、この大会の三兆円の問題についてお伺いいたします。

 この資料二にありますように、東京都の都政改革本部の調査チームの中間報告によりますと、今のままでは、開催総費用が三兆円を超える可能性がある。東京都が新規に整備をする競技場の中で、連日報道されております、海の森水上競技場、オリンピックアクアティクスセンター、有明アリーナ、こうしたものの見直しが提言をされております。ワイズスペンディングというこの発想は、まさに今、時代の要請であり、国民の声でもあります。

 この東京大会、IOCと契約しているのは東京都とJOCであります。とりわけ東京都がこの経費の算出ということに関してその責を負うことになっていることは理解をしておりますが、この調査チームからボールを受け取る小池都知事のそのリーダーシップに注目が集まっているわけであります。

 しかし、現実問題、この競技場の見直しには、その競技団体あるいは国際競技団体との調整、あるいは、既に工事を着工しているようなところもあって、もし変更の場合は違約金が発生したり、新たな地元の負担をどうするのか、こうした越えなければいけない幾つかの課題があるんだと思います。

 また、新国立競技場や選手村、こうしたものを含めて既に七千六百億円の経費の算出がされていますが、東京の場合、特有の暑さ対策や、あるいは非常にロンドンのときよりも加速度的にリスクの高まったテロ、やはりこうした課題も含めてしっかりやっていかなければいけない。

 あるいは、アスリートファーストという言葉がありますが、行進で役員が前か後か、そういう話じゃなくて、やはりアスリート、パラリンピストが最高の環境で試合や競技に臨める、そうした視点からもこの大会をしっかり進めていく。

 その上において、このコスト削減について、オリパラ担当大臣の丸川大臣に御所見をお伺いしたいと思います。

丸川国務大臣 ありがとうございます。

 今、菅原委員が御指摘いただいた暑さ対策やセキュリティー対策、これは、オリンピック・パラリンピック基本方針にもございますように、国としてもしっかり責任を果たしてまいりたい、やるべきことをしっかりやってまいりたいと思っております。

 その上で、大会の開催経費につきましては、御指摘の都政改革本部の中間報告において、過去の大会を参考に調査チームが推計をした大まかな数字というものが三兆円ということで、あるいは三兆円を超える可能性ということでお示しをいただいておりますが、推計でございまして、私どもも、東京都の方に私どもの事務方がお話を伺いましたけれども、まだ何も決まっていないということ以外、特段お返事はございませんでしたので、その詳細は私どもにとっても明らかになっていないところでございます。

 今、菅原委員が御指摘いただきましたように、オリンピック競技大会、ここにオリンピック憲章というものがございますが、この第五章の一の三十二の二に、「オリンピック競技大会を開催する栄誉と責任は、オリンピック競技大会の開催都市に選定された一つの都市に対し、IOCにより委ねられる。」ということで、東京都にまさにその責任と栄誉が委ねられているわけでございまして、今後とも、私どもも、競技会場の見直しによるコスト抑制という観点のみならず、内外の関係者の理解と賛同を得た上で、小池都知事がどのような判断をされるのかというところをしっかりとこれから見守ってまいりたいと存じます。

菅原委員 そのとおりだと思うんですが、やはり、安倍総理がこの前、七日の日に、オリパラ推進本部におきまして、コストをできるだけ抑制することなどによって限られた予算と時間を効率的かつ効果的に使うことということを述べられました。これは、いわば小池都知事のワイズスペンディングや都民ファーストということと理念は合致をするものと思います。

 しかし、今さまざまな課題がある中で、本当に現実問題は、非常な、いろいろな壁がある。こういったものを乗り越えて、それでもなおこの抑制をしていくということをどうするのか。三兆円という言葉が、あるいは数字がひとり歩きしているという意味では、三兆円の検証も必要だと思うんです。

 この点も含めて、総理のリーダーシップをお示しいただきたいと思います。

安倍内閣総理大臣 まず、東京オリンピックというのは、これは当然、東京都が招致をして開催する、東京大会の準備は東京都が主導するものであります。これはまず基本であって、日本オリンピックではないわけでありますし、ブラジル・オリンピックでもなくて、リオ大会であり、東京大会であり、都市が開催する、これが基本であります。誘致についても、東京都が中心となり誘致運動を行い、私も含めて国が全面的にバックアップをしてきたということであります。

 そして、その中で、大会経費の総額については、当然、まず東京都、そして組織委員会が責任を持って検討していく、これは当たり前のことなんだろう。一番よくないのは、責任がどこにあるのかわからない、結局国がやってくれるんだろうということになれば、無責任につながっていくわけでありますから、まずは東京都、そして組織委員会がしっかりと検討を行い、そして示していくものであろうと思います。

 国民に祝福される大会とするためには、オープンなプロセスによる意思決定、これが大切ですね。そして、コストをできるだけ抑制することによって限られた予算と時間を効率的かつ効果的に使うことが不可欠であります。

 今後とも、東京都、組織委員会と連携を密にして取り組んでいきたい、このように思っております。ですから、基本的には、丸川大臣がお話をさせていただいたことが全てである。

 大切なことは、これは党派的に利用することではないんですよ。みんなでいいオリンピックをやっていこうじゃありませんか。我々も、ぜひ国としてできることは全てやっていきたい、このように考えております。

菅原委員 まさに今総理がおっしゃったように、世界一の大会にするには、さまざまな課題を乗り越えていく、そういう意味では、国も東京都もJOCも組織委員会もまさに一体となって、この課題、全力で取り組みを進めることが大事だと思います。ガバナンスの明確化や、オーバースペックの見直し、あるいは予算管理の厳格化、こういったこともしっかり注視をしていきたい、こんなふうに思っております。

 次に、国民の大切な年金の積立金を運用しているGPIFについてお尋ねをします。

 先週までの予算委員会の質疑で、民進党から、GPIFの運用に関して、ポートフォリオで株を倍増させたことによって十兆円の運用損が出て、国民の大切な年金を減らした、こういう指摘が繰り返しありました。それに対して、安倍総理や塩崎大臣は、運用は長期で見るべきである、こう繰り返したわけであります。

 この長期で見るという視点は、実は、平成十三年にGPIFによる市場運用を始めてから、民主党政権も含めて、今日までの政府のスタンスでもあります。昨今、短期で十兆円のマイナスが出たということを殊さら喧伝して国民の不安をあおるということは、まさにミスリードだと思います。

 資料三をごらんください。十月五日の日経新聞であります。「公的年金が運用益」ということで、ポートフォリオ変更後、再び黒字に戻ったという記事が出ております。

 次に、資料四を見ていただきたいんですが、十三年に積立金運用を始めて以来、御案内のとおり、四十・二兆円のプラスになっております。これは運用しなければ九十兆だったんですよ。したがって、今の百三十兆という国民の資産、運用によってプラスになった。特に、政権交代後も二十七・七兆円プラスになった。サービスして民主党も書いていますが、四・一兆円ですね。

 それはそれといたしまして、次に、資料五であります。ポートフォリオの変更後、現在までの二年間の動きを資産別に見たものであります。

 一番下を見ていただくとおわかりのとおり、ポートフォリオの変更後、半年で九・四兆円、ここは民進党さん、全然触れないんですね。確かに、その隣の十・五兆円マイナスになったところもあります。しかし、足元はプラス一・八兆円で、結果的に今、〇・七兆円のプラスに戻っているわけであります。

 予算委員会の議論でも、民進党さんは、マイナスになるときゃんきゃん言うんだけれども、プラスになると貝のように黙っちゃう、こういう傾向がありますが、それはそれといたしまして、株価のボラティリティーがあったとしても、株で損して年金を減らしたという主張は、実は、国内の株式だけ見ましても、この二年間、ポートフォリオ変更後、プラスになっているわけであります。

 短期ではどうしてもプラスマイナスが出てくるのが運用の常であって、しかも、株や債券は、もうかったから、あるいは損したから、その折々で処分しているわけではないわけであって保有しているわけでありますから、こうした自分の都合のいいところだけとって、積立金が減った、年金が減ったという主張は、私はもう厳に慎むべきではないか、こう思います。

 こうしたGPIFの運用、これについて、年金財政に支障はないんだということを塩崎大臣に確認をしておきます。お願いします。

塩崎国務大臣 今、菅原委員から御指摘のとおり、年金積立金の運用はやはり長期的に見るべきものでありまして、年金財政上必要な収益は、今御指摘のとおり確保されているわけでありますので、問題は全くないということでございます。国民の皆様方には御安心をいただきたいということでございます。

菅原委員 この一番上の国内債券のところを見てみますと、マイナス金利政策の影響で長期金利が低下をして、債券の価格が上がって、いわゆる評価益が出ているわけですね。ところがこの六月には、また長期金利が上がった結果、評価損が出てマイナスの〇・六兆円、こういう現状があります。

 民進党は、GPIFの運用で十兆円のマイナスが出たときに、国内債券が三兆円プラスになった、そこを捉えて、国内債券の比率を、今三五パー、これをまたもとの六割に戻せ、こういう主張をしているんですね。

 しかし、このところ、日銀のマイナス金利政策を、国民生活に影響が出ている、こういう批判をしている民進党が、一方では、GPIFの運用、マイナス金利政策による金利低下で一時的に評価益が出た国内債券の比率をまた六割に戻せと言うのは、これは矛盾していますよね。これは、国民の皆さんはよくわかっているんだと思います。

 長期的にデフレから脱却している局面においては、御案内のとおり、金利は上がっていくわけであります。こうした中で必要なことは、やはり、損失を出すリスクを抱える国内債券に偏った投資を行うのではなく、今のように株式、債券にバランスよく投資をしていくということが大事だと思います。

 この点、塩崎大臣、今後のポートフォリオのあり方についてお示しください。

塩崎国務大臣 今、菅原委員御指摘のように、債券も金利変動リスクは大きく影響することが十分あり得るわけで、これは銀行の国債保有が大きいということで、この金利変動リスクについて指摘が随分あったわけであります。

 そういう意味で、平成二十六年十月の基本ポートフォリオの見直しは、御指摘のとおり、デフレから脱却をして、そして長期的に見て物価が上昇していく局面では、国内債券だけでは実質的な年金給付を確保する利回りを得ることが困難だということで、国内債券に偏っていた従来のポートフォリオから株式等へ分散投資をした、こういうことでございます。

 現在のポートフォリオは引き続いて適切であって、これを変更する必要は生じていないというふうに理解をしております。

菅原委員 非常に誤解をされて喧伝されている部分もありましたから、ぜひ今のようにポートフォリオについての説明をお願いしたいと思います。

 最後に、年金の今般の制度改革についてお伺いをします。

 先週あるいはその前の予算委員会のやりとりを聞いておりまして、民進党さんの主張からすると、新しいルールが始まるとすぐにでも年金額が減ってしまうような、そういう主張がありましたが、これは全くもって国民に誤解を与えるミスリードだと思います。

 この六でありますが、まず、年金額の改定ルールの見直しに当たりましては、この一番上にあるように、受給資格の短縮、二十五年を十年、そして月上限五千円の給付、これは消費税を一〇パーに引き上げるときに始めるわけでありますが、額が下がるところばかり喧伝して。御案内のとおり、年金というのは経済の動きに合わせて、いわば物価も賃金も上昇すれば当然年金額もふえることは今もって変わらないし、こういう前提の中で、今ここにありますように六つのケースを示しているわけであります。

 例えば、この左上を見ていただきますと、物価も賃金もプラスで、しかも賃金の上昇が物価の上昇よりも大きい場合は、年金を新たに受け取る方は賃金ベースで、そして既に年金を受けている方は物価の動きに合わせて、当然、これは両方とも年金がふえるわけなんですね。

 アベノミクスの推進によってデフレから脱却をしていく、いわば賃金も物価も上げていこう、これがまさに安倍政権の基本姿勢であって、そうした中で年金のような長期にわたる制度を考えた場合には、リーマン・ショックのような、いわば海外発の不可抗力的なデフレのケース、こういったものにもやはり備えておかなきゃいけないんだと思うんです。したがって、こうした賃金が物価を下回るようなケースに対してもそういう備えをしていく。

 そうした中で、今、現行において言えば、この右下のケースでいうと、現役世代の賃金が下がっても年金は下がらない状況になりました。これを賃金と連動して、まあ、下がるときは下がっていくわけなんですが。

 何でこういうことをやっているかといろいろ考えましたら、やはり今の年金というのは、受けている方は、町でよく聞くのは、俺たちが納めた年金なんだから返ってくるのは当たり前だと言うんですけれども、実は、積立方式の時代がもう変質してしまって、百年前の平均寿命は日本は三十九歳ですよ。今、八十代ですよ。百年で平均寿命が倍になったなんという国は国連加盟国の中でもどこにもない。こうした極めて厳しい状況の中で、しかし、現役世代の、将来世代の年金もしっかり確保するという意味においては、賦課方式において、また支え合いにおいて、お互いの世代の理解というものを得なければいけない。

 この点、塩崎大臣は一生懸命おっしゃっているんですけれども、世の中に伝わっていない、こういう現状がありますが、この点について御所見をお願いしたいと思います。

塩崎国務大臣 お配りをいただいているパネル資料にも書いてあるように、今回の年金額改定ルール、つまり賃金・物価スライドの見直しというのは、消費税を引き上げて低年金者対策もやる後の平成三十三年の四月から行われるということをまず皆様方に改めて御認識をいただきたいというふうに思うわけであります。

 我が国の公的年金制度は、年金制度を支える現役世代の負担が過重なものとならないように保険料に上限を設けて、そして将来的に年金給付に使える財源を見通した上で、これは保険料、国庫負担、そして先ほどの積立金の三つでありますけれども、その限られた財源を現在と将来の年金受給世代の間で適切に配分する、つまり、いわば世代間の分かち合いをするということなんですね。

 ですから、これは、未来への責任を負っている政治が極めて大事な決断をしなければいけないということだと思いますし、これは、前にも申し上げたように、民進党も綱領の中でちゃんと、「「未来を生きる次世代への責任を果たす社会」を実現する。」こう書いてあるわけであります。

 今回の賃金に合わせた改定とする見直しにつきましては、過去に賃金がマイナスとなった際に、分かち合いの仕組みによる調整というものが行われませんでした。そのことによって年金水準が維持をされましたが、その結果、現役世代の賃金に対する年金受取額の割合であるいわゆる所得代替率、これが五九・三から六二・七に上昇してしまった。その分、マクロ経済スライドによる調整の終了が二〇二三年から二〇四〇年代半ばに長期化してしまった、そして将来世代の基礎年金の水準が低下したことを背景とするものであって、このため、支え手である現役世代の負担能力に応じた給付とすることで、将来の年金水準の確保を図るとともに、世代間の公平を確保するものだということで、先ほど申し上げたように、現在の低年金の高齢世代の方にも十分配慮して、この見直しは年金生活者支援給付金が施行された後の平成三十三年度から実施するということで、若い世代と高齢世代の双方に配慮したものであることをしっかりと説明してまいりたいと思います。

菅原委員 最後に、おっしゃるように、ぜひ、持続可能な、弾力的で筋肉質な年金制度をお願いしたいと思います。

 以上です。

浜田委員長 この際、西村康稔君から関連質疑の申し出があります。菅原君の持ち時間の範囲内でこれを許します。西村康稔君。

西村(康)委員 自民党の西村康稔でございます。

 きょうは、経済政策、アベノミクスについてぜひ議論をしたいというふうに思います。

 パネルの一枚目を見ていただきますと、もう多くの国民の皆さんも御案内のとおり、アベノミクスの政策は、そこにあります三本の矢でデフレを脱却して経済を成長軌道に乗せていこう、そしてその果実を、例えば企業収益であればそれを賃金として、賃金が引き上がっていく、それから税収が上がればそれを弱い立場にある方に分配して目配りをしていく、これが一億総活躍でもあるわけですけれども、所得の再配分、成長と、成長による果実を再配分していく、この循環をつくっていこうというものであります。

 アベノミクスで格差が拡大しているというふうに野党は批判をいたしますけれども、次のパネルを見ていただきますと、実は、安倍政権になりましてから、所得税、相続税の引き上げをやっております。二十七年から、所得税は、最高税率を四〇から四五%に引き上げ、住民税と合わせて最高税率は今五五%というふうになっておりますし、相続税も、最高税率を五五%にしっかりと引き上げをしております。つまり、所得の再配分の強化を行って、成長力の強化と同時に再配分も強化している、この好循環をつくっていくということであります。

 次のパネルも見ていただきますと、いわゆる公平度を示すジニ係数でありますけれども、これは総理がよく言及をされますが、当初の所得、いわゆる所得ベースでいうと確かに、これは数字が上になると所得格差が上がっているわけですが、下に行くと所得格差が下がっているというデータなんですけれども、再配分を行った後、つまり社会保障制度をしっかりやって再配分を行った後は所得格差はほぼ横ばいである。最新の数字は一三年までしかまだ出ておりませんけれども、安倍政権で成長力の強化と同時に再配分もしっかりやっているということであります。

 こういう前提のもとで、しかし、我々は謙虚に政策を実行していく、先ほどの成長力を強化していく面と再配分の両方ともしっかりとやっていくことが必要だというふうに思いますが、きょうは、その成長力について特にお伺いをしていきたいというふうに思います。

 きょうは、日銀の黒田総裁にお越しをいただいております。まず、第一の矢の金融政策についてお伺いをしたいと思います。

 先般の補正予算の議論を聞いておりますと、民進党は、日銀の政策を批判して、まるで金融引き締めを行うべきだと言わんばかりの議論をしていたかの印象であります。我々、デフレ脱却道半ば、景気回復も道半ばでありますので、金融緩和をしっかりと継続することが必要だというふうに考えております。

 日銀は、これまでの金融緩和政策の検証を行って、今回、新たな枠組みを導入したわけであります。

 まず、マイナス金利について総裁にお伺いをしたいと思います。

 次のパネルをお願いします。

 いわゆるイールドカーブと言われるものですけれども、これは、期間の短いものは借金をしても当然金利が安い、そして期間の長いものは金利が高くなりますので、横に年月、縦に金利をとると、国債の金利のカーブはこういうふうに右肩上がりで、期間の長いものは当然高くなるわけです。

 実は、マイナス金利を導入して、この一番上の赤い線、一月の末から七月にかけて、これだけ全体に金利が下がりました。金利引き下げの効果が非常に大きかったわけであります。

 これによって、中小企業の皆さんは金利が下がって非常に喜んでおられますし、大きな企業も安い調達金利で設備投資の資金を社債で調達するというようなことが起きておりますし、家計においても住宅ローンがふえているといったことを含めて、これは経済に大きな効果があったものというふうに思います。

 ただ、一方で、金融機関の収益を圧迫する。これは貸出金利が下がりますので、金融機関にとってみれば収益が下がるという声も上がっております。そのあたりを検証されて今回新たな枠組みをつくられたものと思いますけれども、物価が上がらずに、まだ景況感も停滞しているという中で、私は、さらなるマイナス金利の深掘りもあるべきだというふうに思います。

 先般の講演で日銀総裁は、大きな経済ショックがあればさらに深掘りを行うといった講演をされたというふうに伝わっておるんですけれども、私は、デフレ脱却のためには、必要なときにはこの深掘りもあり得ると思うんですけれども、総裁の真意をぜひお伺いしたいと思います。

黒田参考人 いわゆる長短金利操作つき量的・質的金融緩和を導入いたしました際の公表文でも明らかにしている点でございますけれども、経済、物価、金融情勢を踏まえ、二%の物価安定目標に向けたモメンタムを維持するため、必要な場合、追加緩和を行うという方針を示しております。

 具体的には、御指摘のあった短期政策金利の引き下げ、あるいは長期金利操作目標の引き下げ、さらには資産買い入れの拡大、状況に応じてマネタリーベースの拡大ペースの加速を行うといった四つの手段を挙げてございます。

 追加緩和の判断を行うに当たっては当然ベネフィットとコストを比較するということになりますけれども、経済、物価あるいは金融の状況に応じて、コストを考えた上で、日本経済全体のためにベネフィットが上回ると判断すれば、短期政策金利の引き下げも含めて追加緩和を行うということであると思います。

西村(康)委員 大きな経済ショックに限らず、経済の状況を見ながら、デフレ脱却に向けて行うというふうに理解をいたしました。

 その上で、このマイナス金利は金融機関の収益には厳しいものがあります。

 けれども、金融機関もビジネスモデルをもう変えるべきときに来ているのではないか。優良な企業に貸し出し競争をして、金利を下げる競争をしている、そういうモデルから、むしろ、ベンチャーを育てる、あるいは中堅企業にコンサル機能を働かせてさらに大きな企業になっていくところを助ける、そういった新たなビジネスモデルを模索するべきときに来ているのではないか。

 そのために、経営基盤の強化も含めた再編、こんなことも視野に入れて、金融機関の新しいビジネスモデルをつくっていくことが急務だというふうに考えますけれども、麻生金融担当大臣のお考えをお伺いしたいと思います。

麻生国務大臣 御存じのように、人口が減少いたしております。なかんずく地方においては人口が減ってきておるという状況にありましては、当然のこととして、地銀、第二地銀、信用金庫等々の地方銀行のビジネスモデルは変わっていかざるを得ないということだと思っております。

 また、企業が求めております銀行に対するいわゆるサービス等々というものを見ますと、金利が安いということを希望しているのは上から六番目ぐらいの話であって、むしろ、情報の提供とかいろいろな意味での指導とかいうことに期待する方の比率が非常に高いというのが現実であろうと存じます。

 私どもとしては、いわゆる顧客本位のサービスというものを提供することを考えますと、企業の生産性にはその方がより貢献するということを意味しておりますので、銀行側としても、金融機関としても、みずからの経営基盤の確保というのも当然でしょうけれども、有力な持続可能なビジネスモデルというのは、従来の、金利を少し高くして、そのさやを取って何とかというものから大きく変わりつつあるという時代の流れなんだと思っております。

 私どもとしても、過日、金融仲介機能のベンチマークというものの本、雑誌をつくって、こういうぐあいにしないとというお話、指導もさせていただいておりますので、これは中小に限らず大きな銀行に対しても同じことですということは既に申し上げておるところでありますので、ぜひ、企業の価値の向上というものに関してどうやって貢献していくかというような観点からも銀行経営というのは考えていかねばならぬ時代に来つつある、さように理解しております。

西村(康)委員 ありがとうございます。

 日銀もそうした声にも応える形で、先般の新しい枠組みで実はこのイールドカーブも、十月十一日は少し上に上がってきているんですね。特に、長期金利の部分が上に上がってきております。まさに、年金の運用とか生保の運用とかにも配慮して、あるいは金融機関の経営にも配慮して、長期のものはやや高目に誘導していくということではないかと思います。

 この長期金利のコントロールというのは非常に難しいと伝統的には言われてきております。よく言われるのが、安ホテルのシャワーのように言われて、お湯を出そうと思ってすると熱いお湯がわあっと出て、今度は水の方を出すと冷たい水になって、なかなか適温のお湯が出ない。長期金利のコントロールというのはそういうものだというふうによく言われます。

 この長期金利のコントロール、非常に難しい中でやや高目に誘導するということを考えると、何か一方的に国債の買い入れ額を減額するのではないかという疑問も出されておりますけれども、総裁にぜひ、この長期金利のコントロール、特に、一方的に買い入れを減らすわけじゃないという点も含めて御説明いただければと思います。

黒田参考人 御指摘のとおり、中央銀行が行います金利操作につきましては、短期金利はほぼ完全にコントロールできるけれども、長期金利はなかなかそういうふうにコントロールできないというのが伝統的な考え方でございます。

 これに対して、リーマン・ショック以降、御承知のとおり、主要国の中央銀行は皆、短期金利のゼロ制約に直面して、長期国債等を大量に買い入れて長期金利に直接影響を与えるという行動をしておりまして、それが効果を上げて長期金利が低下しているというのが主要国の状況であります。

 したがいまして、日本銀行としても、過去三年半にわたる量的・質的金融緩和と、それから、先ほど委員の御指摘のありました、ことしの一月に決定いたしましたマイナス金利の導入の経験を踏まえますと、大規模な国債買い入れとマイナス金利の組み合わせで長期金利にかなりの程度影響を与えることができるということがわかったわけであります。

 したがいまして、今後、この二つの組み合わせ、それに加えまして日本銀行が指定する利回りによる国債買い入れ、いわゆる指し値オペなどの調節手段も加えまして、長短金利操作つき量的・質的金融緩和を導入したわけでございます。

 ただ、そのもとで、公表文にも明示しておりますとおり、八十兆円の国債買い入れの方向は続く。と申しますのは、現在のような大量の国債買い入れとマイナス金利によって現在のイールドカーブが実現しているわけでして、それを基本的に続けていくということであります。

 ただ、金融調節の方式が、マネタリーベース八十兆円、その裏側の長期国債の買い入れ八十兆円というものから、長短金利のいわゆるイールドカーブコントロールというふうに変えましたので、当然、毎年買い入れる国債額は八十兆円の上に行ったり下に行ったり変動するとは思いますけれども、基本的に、現状のイールドカーブを前提にしますと、引き続き、このマイナス金利と大量の国債買い入れの実行によって適切なイールドカーブを実現していくということになると思います。

西村(康)委員 大胆な金融緩和を継続する、そして新しい枠組みもまた新たな試みだと思いますので、ぜひうまく調整をしながら、デフレ脱却に向けてこの緩和を継続していただきたいと思います。

 ただ、この金融緩和も、あくまでも時間を買う政策だと私自身は思っております。ずっと永遠にこの緩和ができるわけじゃありませんので、その間に第三の矢である構造改革を進めることが何より大事であります。

 第三の矢について議論をしていきたいと思います。

 先般の幕張メッセでの電子情報技術産業協会主催の展示会、シーテック、総理は前夜祭に行かれたというふうに伺っておりますが、これも去年とはさま変わりで、去年は8Kテレビが中心でありましたけれども、ことしは、もはやIoT、ビッグデータ、ロボット、フィンテック、こういったものが中心となっております。時代の変化の速さ、技術の進歩の速さを感じるわけであります。

 次のパネルで、アベノミクスのさまざまな成果、国家戦略特区を中心に、観光分野、医療分野、農業分野、空港のコンセッション等々の実績を示しております。多くはもう申し上げません。

 残された分野が次のパネルで、幾つか国家戦略特区の諮問会議で指摘をされております。最も重要な多様な働き方については先般も議論がありましたので、きょうは、外国人材の受け入れについて少し議論したいと思います。

 もちろん、移民政策というふうに誤解されないように厳格な管理体制をしくなどの配慮をしていかなきゃいけませんけれども、人口減少、人手不足の中で外国人材の受け入れを必要とする分野もありますので、ぜひこれを考えていく必要があります。

 既に国家戦略特区では家事支援人材については受け入れることを決定しておりますけれども、きょうは二つお伺いいたします。一つは農業分野、もう一つがクールジャパンの分野であります。

 農業の外国人材については、秋田県の大潟村を初め、茨城県など県単位でもさまざまな提案が、外国人材を受け入れたいということで、なされております。人手不足が顕著となっている農村、農業の分野において、まずは特区で導入をして、それを検証して、全国展開に向けてどうしていくかということが大事なのではないかというふうに思います。

 クールジャパン人材については、日本のファッションやアニメや日本食が好きだということで、多くの学生が日本に学びに来ているわけでありますけれども、勉強しても就職ができない、逆に日本が嫌いになって帰っていくというようなケースも多いと聞いております。

 さきの通常国会で成立した改正国家戦略特区法でも、法施行後一年以内を目途として具体的な施策を講じる、措置するという旨が附則に書かれております。一年以内ですから、次期通常国会での法改正に向けて今作業が進んでいるものと思いますけれども、この改正に向けての総理の御認識、決意をお伺いできればというふうに思います。

安倍内閣総理大臣 ただいま西村委員から御指摘をいただいたように、国家戦略特区においては、農業もそうですが、医療や雇用や保育、教育など岩盤規制を突破してまいりましたが、残された重要課題の一つが外国人材の受け入れ促進でありまして、特に高齢化に伴う人手不足が深刻な農業分野において、産地の多様な作物の生産に対応した専門家としての外国人材を活用していきます。

 また、例として挙げられました日本のアニメ、食、デザイン、ファッションといったものに憧れて日本に学びに来た。せっかく学んだのに、まず日本で職を得たい、そしてその後、自分の経験、知識を積んで、これを本国に帰って生かしていきたいという人たちがたくさんいるのに、なかなかそれができないというのは、その人にとっても、またその国にとっても、また日本にとってもそれぞれマイナスであろうと思います。

 これらについて、次期国会への改正特区法案の提出も視野に、議論を加速してまいりたいと思います。

 せっかく手を挙げていますので、山本大臣に。

山本(幸)国務大臣 今もう総理がお答えされたとおりでございますけれども、農業人材については、おっしゃったように、秋田県大潟村とか茨城県とか長崎県とか、いろいろ要請が来ております。また、クールジャパンについても、いろいろな会社等からぜひやりたいというような話が来ております。

 これは、来年の通常国会にはぜひ改正案を出したいというふうに思っております。

西村(康)委員 ありがとうございます。ぜひ、次の国会で提出をいただいて、成立に向けて御尽力いただければと思います。

 続いて、成長戦略の一つの柱であります自由貿易協定についてお伺いしたいと思います。

 その中核であるTPPについては、この後、TPP特別委員会でも改めて議論をしたいと思いますので、きょうは、EUとのEPAについてお伺いをしたいと思います。

 世界全体を見れば、アメリカの大統領選挙での討論もそうですし、反グローバリズムの風潮が広がってきている。G7の伊勢志摩サミットでは、あらゆる形態の保護主義と闘うという決意表明がG7の首脳でなされました。我が国はその議長国でもありますし、この保護主義的な風潮に率先して立ち向かうことが大事ではないかというふうに思います。

 その意味で、この図にありますように、アメリカを含むアジア太平洋でのTPPと、EUとのEPAというのは非常に大事なものだというふうに思います。もちろん農産物などセンシティブな品目がありますので、より注意深く交渉する必要があると思いますけれども、EUとのEPAが年内にでも合意にいけば、これはアメリカのTPP議会承認にもプラスに働いていく、EUと日本も貿易がふえるということでありますので、そういう意味で、非常に大事な交渉ではないかと思います。

 来年はEUは選挙の年であります。ですので、本年、年内に妥結をしないと、来年になると漂流をしてしまう危険性もあるんだというふうに思います。

 年末までほとんど時間がないわけでありますけれども、ぜひ強力に交渉を進めていただきたいと思いますし、そのためには交渉体制の強化も必要ではないか。TPPのときは甘利大臣を司令塔に一元的に交渉を進めましたので、そのことも含めて、ぜひ、EUとの交渉体制の強化、そして年内妥結に向けた総理の御決意をお伺いしたいというふうに思います。

安倍内閣総理大臣 かつて、戦前は、植民地も含めた領土の広さが経済規模であったわけでありますが、戦後は、日本もドイツも領土を失ったにもかかわらず経済規模は大きくなってきた。これはなぜかといえば、やはり自由貿易の恩恵なんだろう。事ほどさように、極めてこの自由貿易体制というのは人々に恩恵をもたらすということではないかと思うわけであります。

 委員の御指摘のように、フランスにおいては来年が大統領選挙であり、そしてまたドイツは秋には総選挙が予定されている中において、アンチグローバリズムの動きもある中において、本年中に日・EU・EPAについて大筋合意を実現する必要があると考えております。

 ゴールデンウイークに欧州を訪問しました。また、五月の伊勢志摩サミット、そして七月のASEM等におきまして、ユンカーそしてトゥスク、EU委員長、議長ともお話をいたしました。そして、オランド大統領、メルケル首相、レンツィ・イタリア首相等とも話をした中において、本年中の日・EU・EPA大筋合意について、それを実現していこうということで確認し合ったところでございます。

 困難な交渉ではありますが、政府として、攻めるべきは攻め、守るべきは守る、国益の観点から最善の結果を追求していく考えであります。

 私の指揮のもと、関係省庁間で緊密に連携しつつ、最善の結果を得ることができるしっかりとした体制を組んで、政府一丸となって、本年中の大筋合意の実現を目指していく考えであります。

西村(康)委員 ぜひ頑張っていただきたいというふうに思います。

 その関連で、EUの情報移転の政策についてちょっとお伺いをしたいと思うんです。

 世界は今、もう言うまでもなく、デジタル化が進む中で、ビッグデータを使ってのいろいろなサービスが生まれております。この情報の自由な移転というのが何より大事でありまして、伊勢志摩サミットでも、データ移動の自由の原則が七カ国で合意をされているところであります。

 一方で、この移転の際には個人情報保護とのバランスが大事でありますが、EUは、EU委員会が独自に、その国がちゃんと個人情報の保護をしているか、十分かということを認定して、それが認められればEU内にある情報を域外に移転できるというふうになっております。この十分性の認定を受けた国は今のところスイス初め七カ国でありまして、現在は韓国が、認定国となるべくEUと協議を進めているというふうに聞いております。

 我が国も、個人情報保護法も改正いたしましたので、抜本的に体制が強化をされていると思います。ビッグデータ時代で、日本に情報を集めていろいろな新しいサービス、新しいことを生み出していく、そのためにも、EUとの交渉、EUの十分性の認定に向けた協議に入るべきだというふうに考えますけれども、これも総理にお伺いしてよろしいですか。

安倍内閣総理大臣 データが産業競争力の源泉となるこのビッグデータ時代においては、個人情報を適切に保護しつつ、国際的な移転の手続を整備することは重要な課題です。

 EU加盟国から第三国への個人データの移転については、EUのルールとして、移転先の国が十分な保護措置を講じている国であることを認定する手続を定めており、既にカナダ、ニュージーランドなど十一の国と地域がこの認定を受けています。

 日本とEUとの間のルールが整備できれば、例えば大手電機メーカーが欧州で自動車運転や鉄道等のインフラ事業を行う上で、日本と欧州でデータを共有し、すぐれた製品、サービスを提供することが可能となります。日本企業の活動に間違いなく利益をもたらすと思います。

 日本は、ことしに入り、個人情報保護委員会を設置し、EUとの対話を進めてきておりまして、私自身、五月の日・EU首脳会談において、個人情報の円滑な移転促進が重要であり、日・EU間の対話を加速していく旨先方に伝えたところでありまして、EPA交渉の機運も生かし、できるだけ早く日・EU間のルールを整備できるよう、政府全体として取り組んでいく考えであります。

西村(康)委員 ぜひ情報の自由な移転についても御尽力いただければというふうに思います。

 時間が来ましたので最後にしたいと思いますけれども、情報の関係で、ぜひ日本の国内でデジタル化の流れをつくっていくことが大事だというふうに思います。

 これまでも、税の申告とか特許の出願とか、電子化の手続が整備をされてきましたけれども、まだまだ電子化されていない分野が残されております。紙での書面交付をしている法令もたくさんあります。金商法を初めとして、たくさんあります。例えば、紙の領収証をスマートフォンで撮って、その画像を証拠書類として残すことも可能ですけれども、一方で、税との関係では、紙の書類は別途保存しなきゃいけないというふうにもなっております。

 こうしたさまざまな、申請から書類保存まで含めて、まずはデジタルでやる、デジタルファーストの社会をつくるべきだと思いますし、個別法でやっていれば時間がかかりますので、ぜひ一括法でやっていくべきだ。特に、通知なんかでやっている部分は、もうできるところから変えていって、ぜひ一括法を制定していくべきだというふうに思いますが、これはIT担当大臣にお伺いしたいと思います。

浜田委員長 鶴保担当大臣、時間が来ておりますので、簡潔にお願いいたします。

鶴保国務大臣 委員御指摘のとおり、まだ紙媒体で申請等をしておる部分も残っております。したがって、九月の規制改革推進会議におきましても、総理からも、事業者目線で規制改革、手続の簡素化を進めるとの指示もございました。

 我々としましても、今年度末をめどに、行政手続コストの削減や手法も、重点分野を決定いたしまして、原則ITのルールに変えてまいりたいというふうに思います。

 また、先ほどお話がありましたとおり、個人情報等の法整備についてもまだ検討の必要な分野もありますから、先月は、IT総合戦略本部のもとにデータ流通環境整備検討会を設置させていただきました。

 これからも精力的に取り組んでまいりたいというふうに思います。

西村(康)委員 ありがとうございました。終わります。

浜田委員長 これにて菅原君、西村君の質疑は終了いたしました。

 次に、赤羽一嘉君。

赤羽委員 おはようございます。公明党の赤羽一嘉でございます。

 きょうは、限られた三十分という時間でございますが、我が国の成長戦略、一億総活躍に資する建設的な提案をしたいと思いますので、どうかよろしくお願い申し上げたいと思います。

 まず、十月八日、熊本県の阿蘇山で大変大きな噴火災害が起こりました。いまだに噴火警戒レベル三の入山規制がとられているところでございます。まずは、この地域で被害に遭われた皆様方に心からお見舞いを申し上げる次第でございます。

 総理もよく御承知のように、この阿蘇地域は、四月の熊本地震、その前後の大雨災害、台風災害と大変大きな災害が続いているところでございまして、地震から、また台風災害からの復旧復興もまだまだ途上でございます。そうした中でのこの噴火でございますので、まず熊本地震、また台風災害からの復興を加速するとともに、今回の噴火で火山灰の農業への影響も大変大きなものだというふうに思っておりますし、観光地の風評被害の解消についても心を配らなければいけない、また被災に遭われた皆さんの生活再建、大変やることがたくさんあると思いますので、ぜひ、総理が陣頭指揮に立たれて万全の対策をとっていただきたいと、心から強くお願いをするところでございます。

 続きまして、質問に入らせていただきたいと思います。

 まず、近年我が国は、熊本地域だけではなくて、全国各地で想定を超える地震、水害、土砂災害、噴火災害と、激甚に指定されるような大変大きな災害が続いているわけでございます。

 私自身、二十一年前の阪神・淡路大震災で住む場所を失った被災経験をいたしまして、以来、この二十一年間、我が国の防災政策に対して大変深くかかわってきた一人でございますが、大きな災害が起こるたびに、初動対応についてまだまだやらなければいけないことがたくさんあるなということを痛感しているわけでございます。

 まず、きょうは、初動対応という意味では大変立派だった山形県酒田市の大火事、大火について御紹介をしたいと思います。

 この酒田の大火は、昭和五十一年の十月二十九日、夕刻の五時四十分ごろ、酒田市の繁華街の中で出火が起こりました。一晩じゅう燃え続けていて、翌日未明の五時にようやく鎮火が宣言されたところでございます。焼失面積は二十二・五ヘクタール、焼けて失った棟数は千七百七十四戸、総額四百億円を超える大変大きな被害でございましたが、驚くべきことはこの復旧のスピードでありました。

 行政のリーダーシップによって、大火の三日後に何と仮設住宅の着工が始まった。全体の三分の一の八十戸の仮設住宅が二週間後には完成をしているんですね。また、この間、八日後に復興計画の原案を被災住民の皆さんに行政は示して、仮設店舗は一カ月後に完成をしております。復興住宅は全体の半分に当たる百戸が五カ月後に完成をしておりまして、復興計画自体そのものも、住民の合意形成を経まして五十一日目に決定している。何か間違ったんじゃないかなと思うぐらい、今の感覚からいうと相当スピードが速かった。

 自然災害と大火事ということで条件は違ったとしても、この驚異的なスピードでの復旧復興をなし得た要因は、私は、当日の夜現地に入られた自衛隊と被災に遭われた行政組織の役割分担が明確になされたから、こういうすさまじい勢いの復旧復興ができたのではないか、こう思っておるわけであります。

 大災害があると、その被災地域では、被災された自治体の職員が、みずから被災者でありながら、まず被災者の皆さんの安否の確認に走り回らなければいけない。そして次に、避難所を立ち上げなければいけない。避難所には誰が入るのかという被災者の確認をしながら、全国から来る救援物資の分配をどうしようか、簡易トイレの設置はどうしようかとか。また、避難所といっても千名程度の大変大きな避難所ですから、そうしたルールをどうつくるべきかということに大変追われるわけであります。

 阪神大震災のときも学校がそうした避難所になりましたので、学校の先生たちがそこに出て、体を壊された方も数多くいらっしゃったというのが事実でございます。

 そして、その後、落ちついてきた後に、今度は罹災証明の発行であります。

 罹災証明というのは、内閣府の防災担当はよく通暁していると思いますが、被災自治体の市や町の職員というのは基本的には平時は余り詳しくないんですね。最近は地震だけではなくて水害の判定もしなければいけないので、これは大変厄介です。被災者にとっては、全壊とか大規模半壊の判定をもらうのと、半壊、一部損壊の判定では全然その後の支援策が違うという現実の中で、大変深刻な問題で、トラブルも少なくない。

 こうした震災後やらなければいけないことに忙殺をされて、本来行政組織は地元住民のこと、地域のことが一番わかっている人たちですから、この災害を受けてどのようにまちづくりを始めていくのか、どうしていくのかという本来やらなければいけない仕事になかなか着手ができないで、ただただ大変時間がかかってしまっている、これが現実だというふうに思っておるわけです。

 ですから、私は、最近の大変大きな災害に遭遇するにつけて、こうしたことをちゃんと整理するべきではないかと。震災が起こる、避難所を立ち上げる、避難物資をどう分配する。さまざまな手の打ち方というのは、どんな災害でもやらなければいけないことなんですね。これは当然専門職化するべきだ。初めての人たちがマニュアルを見ながら、被災者に怒られながら、本当は自分も被災者でありながら大変な思いをして本当に疲れ切るということが被災地に行くたびに繰り返されるというのは、どこかでリセットしなければいけない。

 やはり専門家を育てて、私は自衛隊の中にそういったグループがあってもいいと思うんです、現地に入ってハードのインフラのことをやるチームと、そうしたソフトのことをしっかりやる。行政組織はどこまでいっても一番地域を知っているわけですから、その地域の町をどうしていくかという前向きなことを分担できるようにすれば、私は日本の災害対策は相当早くなるものだと。これが二十一年間の私の確信なんですね。

 こういったことを言うと行政改革に反するということで、なかなか難しいんですけれども、しかし、それで、これだけ頻発する大災害に対してやはり国民の命と暮らしを守るという責任が政府・与党にはあるわけですから、ぜひこの専門家集団をどうつくっていくかということを具体的に検討していただきたい。

 官房長官から御答弁いただければと思います。

菅国務大臣 災害が発生をするたびに、そうしたいろいろな問題点が出てくるわけであります。

 今回も、熊本地震、終わった後に検証をいたしました。結果として、今、赤羽委員が指摘されたようなことについて、しっかり事前に対応する必要があるだろうというふうに私どもは認識をいたしております。

 そういう中で、国としては、内閣府の防災担当にそうした過去の事例に熟知している専門家を配置して、対応を迅速にできるような、そうしたことも一つだというふうに考えています。

 そして、熊本地震のことを検証する中で、例えば政府においては、災害対策業務の責任者である関係省庁の職員のほかに、熊本県に勤務経験のある、土地カンのある人をお願いしました。そしてまた、罹災証明は、これは地方自治体が専門家をお願いしました。

 こうしたことを踏まえて、やはり国の役割、地方自治体の役割、そうした中で、特に初動態勢については万全の体制ができるような、今委員御指摘の、私どもはそうしたものが必要であるというふうな認識のもとに、今、その実施、どのことが一番効率的かという形で考えているところであります。

赤羽委員 どうもありがとうございます。

 今回の熊本も、今官房長官が言っていただいたように、大変工夫がされていたと思います。各省庁から、熊本出身の方、また熊本で仕事をした経験のある方がたくさんいました。それは現状の中でできるだけの精いっぱいの手を打っていただいたと思いますが、しょせん専門家ではない、縁があるということだけで。内閣府防災も、プロパーで育っている方も出てきていると思いますが、役所から二年、三年の出向の方が多いのも事実であります。

 やり方はお任せしますので、いつあっても、こうした行政、被災自治体がやらなければいけないことに専念できる形をぜひつくっていただきたい。我々もしっかり検討していきたいと思います。よろしくお願いいたします。

 次に、福島の復興について質問させていただきたいと思います。

 福島イノベーション・コースト構想の中核プロジェクトでもあり新成長戦略の重要な案件でもあると私が考えております、福島ロボットテストフィールドについて御質問したいと思います。

 これは、東京電力福島第一原発の被災地域の夢と希望、福島の被災者の皆さんにとって夢と希望を何かつくらなければいけないということで、私が原子力災害現地対策本部長を仰せつかっていたときに、福島イノベーション・コースト構想というものを打ち上げました。絵に描いた餅でありましたが、総理の強いリーダーシップをいただきまして、この構想が着々と実現の運びとなっておりますことは被災者の皆さん、被災地の皆様に大変喜ばれていただいておりまして、今後の本格的復興に向けて大変心強く思われていることと確信をするところでございます。

 また、我が国も、アベノミクス三年半の中で全体の経済状況が改善されているということは客観的な事実であります。しかし、他方、まだまだ地方が、また中小企業が元気になり切れていない、これも客観的な事実です。

 まさにこれからやるべきことは、アベノミクスの恩恵を地方に、中小企業に、家計に届けるためにも、今予定されている新成長戦略と第四次産業革命、IoT、ビッグデータ、人工知能、ロボット、こうしたものをどう本当に国を挙げて進めていくかということに尽きる、私はそう考えております。

 完全自動走行による交通弱者へのサポートですとか、交通渋滞、交通事故、環境問題の解消、またドローンを用いた物流。医療、介護でも、ロボットの実装が進むことによる医療、介護現場の負担軽減。農業分野でも同様でございます。

 こうしたロボットやドローンの実用化を世界に先駆けて進めるためには、言わずもがなでありますが、実証実験ができる広大なフィールドと、そしてその性能の評価をする基準認定の中心拠点が必要だ。これはやはりアメリカは大変強くて、テキサスA&M大学にディザスターシティーという大変大きな実証フィールドがあり、またDARPAというロボットの技術の認定機関がある。世界の権威になっているから、やはりアメリカは強い。

 こうしたものをぜひ今回、日本がロボットだドローンだとやる大前提として、せっかく予算もつけていただいている福島ロボットテストフィールドを、世界に負けない、世界一の実証フィールドにしていただきたいと強くお願いをするわけでございますが、経済産業大臣の御決意を伺いたいと思います。

世耕国務大臣 お答えいたします。

 赤羽委員におかれましては、一年九カ月にわたって経済産業副大臣を務めていただいた際に、原子力災害現地対策本部長として、被災地にしっかりと寄り添いながら復興に向けて大変な御尽力をいただいたことを、まず改めて感謝申し上げたいと思います。

 その際、赤羽本部長を中心に取りまとめていただいた福島イノベーション・コースト構想、これは新しい産業を起こすことによって雇用を生み出すまさに未来志向の復興でありまして、これは今も福島の皆さんにとって希望であり夢であるという状況であります。

 また、福島だけではなくて我が国全体にとっても今御指摘のように第四次産業革命を進める上でも非常に重要でありますし、あるいはこういった福島での取り組みが他の地域の地方創生の一つのモデルにもなっていくというふうに考えておりまして、このイノベーション・コースト構想、赤羽本部長に取りまとめていただいたものをしっかりと発展させていかなければいけないというふうに思っています。

 その中で、御指摘の福島ロボットテストフィールド構想、ここでは、物流、インフラ点検、災害等の分野で活用が期待される、ロボットやドローンの社会実装を世界に先駆けて進めていきたいというふうに思っています。

 例えば、災害現場で活用されるロボットがどれぐらいの高温下でどれぐらい長時間稼働できるのか、あるいはドローンがさまざまな気象条件のもとでどれぐらい長距離、長時間飛行できるのかなど、求められるロボットやドローンの機体性能を示すとともに、複数のドローンが衝突することなく飛行するための管制システムや衝突防止システム、こういったことを開発していくことが必要であります。

 そのために、今回の補正予算では、福島県の浜通りにおいて、火災やガスが発生する厳しい状況下での実証が可能な災害模擬プラントや、あるいは長距離、長時間にわたって複数のドローンによる活動を実証するための無線基地局や気象観測施設等を整備する予算措置を盛り込んだところであります。

 こういった取り組みを通じまして、福島ロボットテストフィールドを、ロボット、ドローン開発、実証のために、真に求められる機能と規模を兼ね備えた、まだスタート段階ではありますが、いずれは世界に類を見ない拠点として育ててまいりたいというふうに思っております。

赤羽委員 どうもありがとうございます。

 今、隣に座っている真山議員は福島県選出でありまして、今お答えになられたようなビジョンを聞いたとき、彼は大変わくわくしておりました。福島の方がわくわくするだけではなくて、日本の企業、また世界じゅうの企業から、この福島のロボットテストフィールドに来ないとやはりやっていけないと言っていただけるような、価値のあるものにぜひしていただきたいと強くお願いするところでございます。

 次に、これから、一億総活躍のための未来への投資であります教育費用の負担軽減について質問したいと思います。

 これは、本年六月二日に閣議決定をされましたニッポン一億総活躍プラン、また八月二日に閣議決定をいたしました未来への投資を実現する経済対策、この両方に奨学金の制度の拡充ということが相当深く踏み込んで書かれております。

 現在の奨学金制度は、家庭の経済事情、本人の能力などに応じてさまざまな支援措置が講じられているが、依然として無利子奨学金を受けられない学生がいる、あるいは、社会に出た後の返還負担に不安を覚え奨学金を受けることをちゅうちょする学生がいることが指摘されている。このため、家庭の経済事情に関係なく、希望すれば誰もが大学や専修学校等に進学できるよう、安定財源を確保しつつ、奨学金制度の拡充を図る。

 これがニッポン一億総活躍プランに掲げられた文章でございます。

 これはまさに大変なことですが、他方、私は先週末に地元に帰ったときに、高校生のお子さんを持つお母さんから、赤羽さん、公明党が提案している給付型奨学金というのは本当に実現するんですかと、大変必死の形相で尋ねられました。

 お話をよく伺いますと、年齢が近いお子さんが三人いらっしゃって、大学の学費や生活費のことを考えると、とても今の家計じゃ負担できない、だから進学を諦めざるを得ない、こう言われていました。そんなことは待ってください、誰もが奨学金で大学に行ける、専修学校に行けるというのが今の政府・与党の方針ですからということでお話をいたしました。

 そうした方はまだまだたくさんいらっしゃるし、テレビを注視されていると思いますので、残りの時間はまずこの点についてやりとりをしたいと思います。

 公明党は、結党以来、学ぶ意欲のある者は誰でもが、経済的理由により学業を諦めるなんということはなくて、公平に良質な教育を受けることのできる社会を目指して、一貫して教育費負担軽減また奨学金制度の充実に努めてまいりました。

 これがパネルでございます。お手元にも資料を配付させていただいております。

 このグラフを見ておりますと、平成十年から十一年、ちょっとわかりにくいんですが、急激にグラフが伸びております。これは何があったのかというと、実は、当時野党でありました公明党と与党の自由民主党の間で、平成十一年二月十八日、きぼう21プラン奨学金という新しい奨学金制度をつくろうということが合意をされました。

 これは何かというと、学力基準というのが当然それまであったわけです、五段階の平均三・五以上。こうしたことはもうやめようじゃないか、勉学意欲がある者は、成績が少々悪くても、一生懸命勉強したい、進学したい、そうした声に応えるべきだということで我々が主張して、それを自民党が受け入れて、学力基準に勉学意欲のある者ということを入れて大変大きく緩和いたしました。家計基準も緩和した。

 その結果どうだったかというと、平成十年は、ちょっとこのグラフではわかりにくいんですが、奨学金は無利子は二十七万、有利子は十一万、計三十八万人でありました。平成十一年は実に無利子は二十八万、これは余り変わらないんですが、有利子の部分が倍以上の二十四万人になって、五十二万人になった。ここから、有利子で、財投の利用ということもありましたが、どんどんどんどんふえていって、誰もが借りられる奨学金ということで、実に平成二十四年、二十五年には百四十四万人、無利子も四十三万人、有利子は百二万人。

 全大学生のうち、今の学生支援機構の奨学金を借りている方たちは三五・八%。三人に一人が奨学金を借りる。このように、学費の支えに奨学金がなったというのも近年の実態でございます。

 しかしながら、今言われているように、問題がないかというと、そうではございません。これだけ奨学金はふやしてきたのですが、問題が顕在化されてきた部分も逆にあります。

 それは、特に低所得者世帯の子供さんにとりましては、無利子奨学金をまず借りようとすると成績要件がひっかかる。これはなかなかクリアすることが難しくて、低所得者世帯のお子さんが無利子奨学金を受給することが大変難しいという現実が一つ。二つ目は、そうした家庭は当然仕送りが少ないので、奨学金の貸与額が大きくなって、結局返還に困難を来している。

 そして、その結果、これは大変残念なことなんですけれども、学ぶ意欲があっても、しょせん奨学金を借りてもローンで返せないから、進学そのものを断念しようと、先ほど、冒頭の私の地元のお母さんのような声がある。こうしたことは何とか直さなければいけない。

 その問題を、まず無利子奨学金について、いろいろ今文科省も松野大臣のもとに検討していただいていると思いますが、幾つか具体的に申し上げると、まず、無利子奨学金を本来受けることができるのに、財政的な予算の制約上、無利子奨学金を受けられずに有利子を受けている、残存適格者と言われている方が二万四千人いる、これは総理も国会でもう既に答弁していただいていますが、直ちに解消する、これをぜひやっていただきたいというのが一点。もう一つは、低所得者の方たちが、なかなか成績要件がクリアできないので、本当は無利子を受けられなきゃいけないんだけれども現実には有利子を受けているというのは、恐らく約十四万人ぐらいいるんじゃないか。

 ですから、私は、ここの部分、どこに線を引くかというのは難しい問題かもしれませんが、まず低所得者世帯の皆さんについては無利子についても学力基準を撤廃する、勉学の意欲のある者ということにしないとこの問題はなかなか解決しない。これはいろいろな議論があると思いますが、ぜひ文科大臣の前向きな御答弁をいただきたいと思います。

松野国務大臣 無利子奨学金については、有利子から無利子への流れを加速するため、これまでも毎年度、貸与人員の増員を図ってきており、平成二十四年度の予算では三十七万八千人であったところ、平成二十八年度予算では四十七万四千人へと九万六千人の増員をしてきたところであります。

 これによって、今委員御指摘の残存適格者数は平成二十四年度の十万五千人から平成二十八年度は二万四千人まで段階的に減少してきており、平成二十九年度概算要求において、残存適格者の解消に向けて、無利子奨学金の貸与人員の増員を要求しているところであります。

 また、低所得者世帯の子供たちに係る無利子奨学金については、平成二十九年度進学者から成績基準を実質的に撤廃するための事項要求を行っているところであり、その具体的な制度内容については現在検討しているところであります。

 今後、予算編成過程において必要な予算を確保し、意欲と能力のある学生が進学等を断念することがないよう、大学等奨学金の充実に努めてまいります。

赤羽委員 公明党としても、本年四月二十二日に総理宛てに、我が党の奨学金推進プロジェクトチーム、座長が富田議員、事務局長が浮島議員、要望しております。党を挙げて応援したいと思いますので、ぜひ財務省に負けずに頑張っていただきたい。よろしくお願いしたいと思います。

 加えて、なかなか貸与では難しいという御家庭があるのも間違いないんですね。養護施設に入っていらっしゃる方とか、生活保護世帯とか非課税世帯の子弟、ここをどうするか。これは、総理は並々ならぬ意欲で、給付型奨学金を創設すると何回も御答弁いただいております。

 お手元の資料に配りましたが、世界じゅうで給付型奨学金がないのは、OECDでは日本とアイスランドだけ。ヨーロッパ、ドイツとかフランスは基本的には学費はただでありながら給付型奨学金が相当充実しているというのは、お手元の資料に配付したとおりです。ですから、給付型というとなかなか、どうするんだ、やりっ放しで切りがないじゃないかと言う人もいるかもしれませんが、この給付型奨学金で学業を修め、社会に出て納税者となる、結局は未来への投資そのものだと私は思います。

 この点について、総理、重ねてで申しわけございませんけれども、強い御決意をいただきたいと思います。

安倍内閣総理大臣 家庭の経済事情によって子供たちの将来が左右されてはならない、これが安倍政権の基本的な考え方でございまして、希望すれば誰もが大学やあるいは専門学校、専修学校に進学できる、そういう国にしていきたいと思います。そのための奨学金の制度の充実は重要でありまして、先ほど答弁をさせていただいたように、無利子奨学金についても希望すれば誰もが受けられるようにしていきたいと思っております。

 そこで、給付型奨学金については、経済的理由により進学を断念せざるを得ない者の進学を後押しするという観点や、進学に向けた学生等の努力を促すといった観点から、文部科学省を中心に具体的な検討を進めているところであります。赤羽委員が御指摘になったように、こうやって奨学金でみんなで後押しすれば、将来その子が頑張って納税者になれば、将来へのまさに投資ではないか、私もそのとおりだと思います。

 いずれにしても、平成二十九年度予算編成過程を通じて、制度内容について結論を得て実現してまいります。

赤羽委員 公明党も全力で応援したいと思いますので、よろしくお願いしたいと思います。

 最後になりますが、奨学金の返還について困っていると。さまざまな工夫をしていただいておりますが、私、一つすごくいいことだなと思うのを今パネルで見せたいと思います。

 地方自治体がまずお金を出す、地元の企業、産業界も一緒にお金を出して基金をつくる。人口減少対策・就職支援基金。そこに、地元の地方自治体と地元の産業界が、どういう人を対象にして、どういう要件でやろうかと。各都道府県、実は百名指定することができる。その人たちが例えば山口県なら山口県で八年間仕事をすれば、返済は全部免除しますよと。これは実は、総理、山口県が先頭ランナーでやっていただいていて、製造業に限ってではありますが、大学院、また薬学部の五、六年について、県内企業に八年間従事すると全部返還してくれる、四年間ですと二分の一だ。

 こうしたことというのは、条例ができているのが、山口、鳥取、徳島、山形、福島、栃木、富山、和歌山、香川、高知、長崎。条例ができているんですね。(発言する者あり)そう、兵庫もやらなきゃいけないな。ここはぜひ全国で、この制度というのはすごくいいことで、私は、国だけが教育支援をするべきじゃない、民間だって、民間の人材を育てていくのは官民挙げてやらなきゃいけないと。

 ぜひ、このいい制度を、まだまだ周知されていないと思うので、総理みずから、山口県が一番元気にやっていただいておりますので、この山口の事例をもって、全国の地方自治体、また経済団体に、この制度をぜひ活用してほしいということを政府を挙げて言っていただきたい。

 これを最後の御質問にしたいと思いますので、どうかよろしくお願いしたいと思います。

安倍内閣総理大臣 今、委員から大変いい例を挙げていただいたと思っております。

 我が国の若者はまさに我が国の未来であり、官民が力を合わせて若者への投資を拡大して、そして奨学金の充実を図っていくことは大変重要だと思います。

 その中で、今、山口県の例を挙げていただきましたが、地方自治体もさまざまな工夫をしている。県の税金を出していく上において、その子供たちは将来地元の企業の人材として頑張っていくんだよということであれば、みんな納得するわけなんですね。

 そうしたさまざまな工夫を生かしながら、こうした民間団体の行う奨学金事業の財源は企業、一般の方々の善意に基づく寄附金であり、また政府としてもこのような寄附を促進する、奨学金事業を行う学校法人や公益法人等に対する寄附を行った場合、所得税や法人税を軽減しているところでありますが、現在、二千八百団体が年間三十万人の学生に対して奨学金を支給しているところでございます。

 また、これまでに既に十県において基金創設のための条例を制定し、その中の一つが山口県でありますが、一県においては条例制定に先立って支援候補となる学生の募集を開始しているものと承知をしております。

 政府としては、設置された基金に対する地方公共団体の出資について特別交付税による支援を行うこととしておりまして、引き続き、多くの地方自治体において事業が実施されるようしっかりと取り組んでまいりたい、このように思っております。

赤羽委員 どうもありがとうございました。

 以上で終わります。

浜田委員長 これにて赤羽君の質疑は終了いたしました。

 次に、村岡敏英君。

村岡委員 おはようございます。民進党、秋田県出身の村岡敏英でございます。

 まずもって、熊本大震災で被害に遭われたこの復興途中に阿蘇山の大噴火、これはもう本当に農業、観光、生活等、大変心配されることと思います。これは政府にはしっかりと取り組んでいただきたいですし、民進党も災害には与野党なくしっかりと応援してまいりたい、このように思っております。

 きょう、私は、農業、TPP、そしてSBS米の米価格偽装という問題について質問したい、こういうふうに思っております。

 その前に、一つ農業の認識だけ、我々も政党で持っている認識を述べたいと思います。

 まず、パネルを見ていただきたいんですが、食品流通の構造全体のイメージということで、生産で、国内消費者向けの食用農林水産物というのは十・五兆円あります。その中で、最終的に、国内の消費者に対しては七十六・三兆円。七倍ぐらいになっている。しかしながら、生産者の方々は六十五歳を超え、そして農村社会は人口減になり人手不足になっている。そして所得が上がらない。大変厳しい状況であることは同じ認識だ、こう思っております。

 その中で、資材やそれから生産材、そして肥料、さらには農業機械など、コストを考えていかなきゃいけない。しかし、コストだけではなく、流通過程もしっかり直していかなきゃいけない。この部分は指摘しながら、我々の政党も、農村、農業がしっかりと成長し、そして農村社会を守っていくために対案を持っております。それは農林水産委員会でしっかりと述べていきたいと思いますので、まずはMA米に関してお聞きいたしたい、このように思っております。

 総理が若き政治家のころ、一期目のころ、あのMA米が入るときに、国会の正門玄関で座り込みをしたMA米の件であります。MA米を入れちゃいけない、このことをしっかりと言いながら座り込んだ、ハンストまでやったということを私自身も見て記憶いたしております。

 そのときのことをお話しさせていただきますと、最終的には、国家貿易である、国家貿易だからこれは主食用米にいろいろな影響を与えないという前提の中で受け入れたはずであります。

 しかしながら、あの当時は、米の消費量は八百万トン以上ありました。しかしながら、その八%というのは、どんどん消費が下がってきている、需要が下がっている現在でも、七十七万トン、逆にふえている。その中で毎年八万トンずつ消費が下がっている。その中で七十七万トンが入っている。これは、基本的にもうルールで変えられない。

 MA米だけでこの国に対して相当な米のプレッシャーがかかっているということ自体をどう考えているのか、まずは農林大臣にお聞きいたします。

山本(有)国務大臣 委員御指摘のように、一九九五年、ガット・ウルグアイ・ラウンド、WTOの合意によりまして七十七万トンが入るようになりました。当初は四十二・六万トンでございましたが、徐々にその量はふえ、今現在七十七万トンで推移をしております。

 こうしたウルグアイ・ラウンドの貿易は、淵源を尋ねますと、第二次世界大戦の起こりましたことは貿易や各国の連帯というもの、おつき合いというものに発しているというように思いますと、受け入れざるを得なかったというようなことでございます。

 しかし、他方、我が国における農業のコスト高というものは、地形的にもあります。そして、水田という、八十八、お米をつくる、手間のかかる、そういう作業でございます。それを他方守っていくという両方のニーズに対して、ぎりぎりの交渉の結果、ここに至ったというように理解しております。

    〔委員長退席、宮下委員長代理着席〕

村岡委員 状況はそのような状況です。

 そこで、総理、お聞きします。

 自民党が、政府が決めたことですけれども、米政策の中で、農家の方々は、この政策が実行されるのか実行されないのか、まだわかっていない面があります。

 米の生産調整政策の見直しということで、米については、諸外国との生産条件格差から生じる不利はなく、構造改革にそぐわない面があることから、二十六年度米から単価を七千五百円・十アールに削減した上で、平成二十九年度産まで時限措置として実施、三十年度からは七千五百円は廃止、これはもう決定事項ですね、総理。

山本(有)国務大臣 これにつきましては、三十年で廃止ということを決定しております。

村岡委員 これはなかなか、農村地帯の自民党議員は、まだいろいろな見直しがあるようなことも言っている方がいるんですよ。やはりこれは問題なんですよ。

 それとまた、米の生産調整の見直しということの中で、生産調整は国はもうかかわらない、こういうことでよろしいですか、大臣。

山本(有)国務大臣 三十年産を目途に、行政による生産数量目標の配分に頼らずとも、生産者みずからの経営判断により、需要に応じた生産が行われるようにすることとしております。この方針に変わりはありません。

 国としましては、他方で環境整備を行わなければならない、こう考えております。全国の需要見通しに加えて、各産地における販売、在庫の状況などに関するきめ細かな情報提供や、麦、大豆、飼料用米の戦略作物の生産に対する支援等を行っているところでございます。

 また、米の直接支払交付金につきましては、全ての販売農家を対象としていることから、担い手への農地の集積等をおくらせる面があったという課題がございます。その上で、米の直接支払いは二十九年産までの措置とした上で、この間、強い農業の実現に向けて、農地集積バンクによる担い手への農地集積など、前向きな政策を強化していく所存でございます。

村岡委員 この二つはもう決定事項だということで、その上で、MA米の大変な損益が実はあります。食糧管理勘定でいくと、国内の備蓄米だけで二十六年度で五百四十八億、そして輸入米で四百十二億で九百六十億。そして、八年間の計算、これは資料をもらった八年間ですけれども、六千七百七十六億円、損益で赤字になっています。こういう状況の中、MA米の中で、SBSで十万トン輸入をいたしております。このSBSの疑惑の中で、調整金があったということが判明いたしました。

 私は、この判明した調整金が価格を下げるかどうかの前に、一番最初に聞きたいのが、この入札制度が少しおかしいんじゃないかと。

 大臣や総理がわかっているかどうかわかりませんが、通常、建設会社なんかで入札ですと、予定価格に対して、JVであっても二社で一者になって、そこしか入札に参加できません。しかし、このSBSの制度は、例えば山本大臣の山本商社、そして村岡ライス、これが、いろいろな人がAからZまで全部組んで、予定価格とそれから売り渡し価格、組んだものに全部参加できるんです。そうしたら、これは大体、予定価格とそして売り渡し価格、全てわかってしまうんじゃないですか。こういう入札はほかにはありません。

 予定価格も売り渡し価格も大体予想できる、この入札制度に関して、これまで農林大臣はこれを知っていましたか。

山本(有)国務大臣 知っていたかどうかと問われれば、大臣に就任して知りました。

村岡委員 総理、入札制度に、一つの商社が百十二者もある卸売業者と全部組んで、そして全部入札の札を入れて、そういう入札制度は普通だと思いますか。

安倍内閣総理大臣 私は入札制度全般について詳しくつまびらかに知っているわけではございませんが、いわばこの入札制度は、SBS米という仕組みをつくる、これはまさに日本がMA米として国際約束で輸入しなければならない、一方、日本の生産者を守らなければいけない、その中でどのように価格に影響を与えないようにするかという中で生み出されたものでありますから、当然、他の一般の入札制度とは違う、国が大きく管理しているものになっているんだろう、このように思います。

村岡委員 総理、その入札のところから、一般では考えられない。探りと業界の中では言っているそうですけれども、探りを入れて全ての金額を、業者同士で結びついている。それだけ密着しているから、この調整金という問題が出てきます。

 そして、今回、農林省が調査をいたしました。しかし、調査をして大変疑問なのは、調査項目の中、最終的に実需者に対して幾らで売ったかを全く聞いていないんです。それはおかしくないですか。価格に対してどんな影響があったかを調べていないで、どうして価格の低下になったのかどうかも、何にも調べたことにならないんじゃないですか。これはやはりおかしいんですよ。

 そして、調査の中で、例えば聞いた状況を聞きますと、任意だから、任意で聞いたからその人たちの言ったことを信じる。

 そして、何年前までさかのぼるのか。例えば、過去はやっていたけれども今はやっていない。実は、SBS米は三年間ぐらいはほとんど輸入実績がありません。その前の四年前、五年前は十万トンという形があります。そのときはやっていたけれども今はやっていない。しかし、その中で、どんな価格で最終的に売り渡したのかを全く調べていないというのは、調査としておかしいんじゃないでしょうか、大臣。

山本(有)国務大臣 調査についてでございますが、まず、食糧法等の法令違反があるわけではないということを前提に置きます。

 そしてさらに、この任意調査、できるだけのしっかりとした調査を行いたいと思っておりまして、公文書の保存期間五年全部を調べることといたしました。そして、SBS米を落札した、廃業者や連絡がつかない業者を除く全業者を対象にこれを行いました。客観的データをもとに分析を行っております。その上において、SBS米販売価格を決定する際、国産米価格の水準を主な考慮事項に挙げている、そういう情報をいただいたのが四十二者の中で三十一者ございます。

 また、我々といたしましては、正確に全業者に問い合わせしておりまして、売り渡した金額についても全部調査をいたしました。その上で、正確に価格を実需者が通知していただいて、かつ、これの公表を容認する、つまり、苛烈な競争の中にある実需者の経営判断の中でもあえて公表していいというところがわずか二者でございました。

 その意味において、我々はしっかりとした調査をしたけれども、公にできるものに限界がある、そして任意調査であるということを御理解いただきたいと思います。

村岡委員 二者だけと。任意でやって調べ切れないと言っているわけですから、これはもう強制的にやっていなければ、ある程度の口裏合わせがあったんじゃないかという部分の疑惑も出てきます。これは食糧法の五十二条の中でしっかりと調べるべきなんです。

 やはり、価格に影響があると思っている方々が農家の方々にも多いですし、実際に、その中で特に米に関しては、農林省の方は、全体的な、標準的な価格の中で影響がなかったという、一回ごとにやっています。しかし、米の入札というのは何回もあるわけです。その調整金は、最終的に一年間の中で払われると、どこかで安くすることはできるわけです。

 さらには、対象の米がどこかということを調べていますか。当然、MA米は、これは需要がある米で、日本の米の中で対応する米があります。その米は、我々の調べによると、やはり二割から四割下がっているようなんです。その中じゃなければ外食産業の方々が買うはずないんですよ。それは当然じゃないですか。安いからこそ買うんです。同じものだったら、同じ値段だったら、それは国産米を買いますよ。それがほとんどの意見でした。

 そう考えたときに、農林省が、これから米政策の大胆な見直しがあります、その中で、どの米がどういう価格でMA米との対抗の中で高いのか安いのか、それさえも調べなかったら、農家に対して、今稲刈りをやって、みんな収穫で喜んでいるときですよ。そのときに、これから農業政策がどうなっていくのか、しっかりとした調査をしなければ。これは、簡単に調査を考えて、この予算委員会や国会に間に合わせるためだけにこの調査をやったというふうにしか思えないような調査です、中身は。

 総理、調査の中身は見ましたか。どう思いますか。

安倍内閣総理大臣 調査書そのものを私は読んでおりませんが、大臣から報告を受けております。一日にさまざまな役所の報告を大臣から受けているわけでありまして、その中で農水大臣からも報告を受けているところでございます。その際、今大臣から答弁をさせていただいたような実情については説明を受けております。

 その上において、いわばSBSを入札して、そしてそれが市場に出ていった結果、事実、市場には影響が出ていないわけでありますから、全体で見れば出ていないという説明は受けているわけでございます。

 もう一点、いわばTPPとの議論においては、今既に出ている十万トンのSBS米と次に入ってくるTPPとの関係においては、これはまさに、TPPの七万数千トンを入れた、その同量をまさに政府が買い上げるわけでありますから、需給には影響を及ぼさないわけでありますし、今の価格と、TPPの七万七千トンですか、このプラスの分だけが影響を及ぼすわけでありますから、SBS全体がTPPの価格に、TPPとのかかわりの中で影響があるということではなくて、あくまでも、TPPについては、TPPで入ってくるこの七万数千トンに絞って考えるべきではないか。そうすれば、全体の需要の中のパーセンテージ、かつまた、七万数千トンを買って、これを隔離、断絶するわけでありますから、いわば需給においての影響がない。

 かつ、今までも大臣が説明をさせていただいておりますように、価格には影響は出ていないというのが農林大臣の説明でありまして、その説明を私は受けたところでございます。

村岡委員 総理、やはり、それは概略だけじゃなくて、調査がしっかりしているか。総理が農業の政策の見直し、変更を推進しているわけです。

 そんな中で、よく、七百七十万トンのうちパーセンテージが低い、こう言っていますけれども、SBS米は業務用なんです。二百五十万なんです、基本は。その中で十万トン、そして七万八千トン。これは、そのまま外国産の米はほとんど使われていないんですよ。ブレンドされるんですよ。ブレンドというのは、業界から聞くと一割であったり二割であったりするんですけれども、それは、一割、二割入れていけば、当然、その割合でいけば二百万トンにも相当する割合も出てくるわけです。そういう大きな影響があることは基本的な認識を持っていただかなきゃいけない。

 そしてさらには、この価格の調整の中で対応する米というのは、業界の中で言われている大体対応する米という中で、青森とか栃木とか、私の秋田なんかも対応する米があるんです。その対応するSBSの米の中で値段を調べていくと、やはり二割から四割低い状況があるんです。そういう調査をしていないんです。

 米全体で、主食用米で見たらほとんど変わっていない。主食用米のブランド米というのは、SBSと対抗する米ではないんです。その実態を調べないで、主食用米のブランド米と比較して、その部分の中で全体的な値段は変わっていないということを調べたのでは、これは手落ちですよ。

 そして、これまでそれぞれの農家が、必ずしもブランド米だけじゃなく、業務用に向けて売ったり、加工品に向けて売ったり、いろいろな種類をつくっていくことが農家の経営。そして、それに安定していくんです。ところが、それを調べないで、ただ単に米全体の七百七十万トンで調べて、値段が入札の後変わっていなかった。こんな手落ちの調査がありますか。大臣、答えてください。

    〔宮下委員長代理退席、委員長着席〕

山本(有)国務大臣 先生御指摘のように、SBS米の価格水準は、圧倒的に多く流通している国産米の価格水準を見据えて形成されております。また、国産米価格が低いときは、SBS米に対する需要が大きく減少し、SBS米の輸入、消費が減少する実態にあります。

 また、先生御指摘のように、主に業務用、特に、この流通量は二百から三百万トンでございますが、これに使用される代表的な品種銘柄の価格水準は国産米全体の価格水準とおおむねパラレルに動いているというように、私どもも業務用米についての品種ごとにこれをウオッチしているところでございます。

 当該品種銘柄の価格水準が低かった平成二十五年から二十七年は、御承知のとおり、SBS米に対する需要が大きく減少し、落札残が生じたところでございます。国産米の全体とSBS米の関係とそして業務用の関係、これはほぼ同様なグラフで推移しているというところでございます。

 しかしながら、これに対して必ずしも我々は安心しているわけではございません。特に、今回の調査におきまして実需者にお尋ねをし、中食、外食の皆様にお聞きいたしましたところ、先生御指摘の、平成二十四年米の価格高騰により国産米の製品適性のある銘柄を必要量確保できなかった、国産ではできなかった、それで平成二十四年秋から二十六年春ごろまで国産米とSBS米のブレンド米を使用した、また、二十六から二十七年の国産米の価格水準であれば、米の製品適性や品質面のリスクを考えるとSBS米を使用するメリットは少ないということで輸入しなかったというようなことでございまして、実需者のこの聞き取り調査からでもわかるように、先生御指摘のとおり、我々としまして、この業務用品種、これについて、銘柄を特定しまして調査をいたしているところでございます。

村岡委員 本当にこの調査報告書は途中経過ですよ。こんなので、農家の方々がしっかりと、よし、安心して米をつくろうという状況ではないです。農林省、これは調査をしっかりやり直してください。このMA米のSBSに関しては相当な不安を持っていますよ。そこをしっかりやっていただきたい。

 そしてさらに、もし、価格に影響がないとまず政府が言い通します。その場合、逆に今度、マークアップでお金が取れる分を調整金で、税金でこのマークアップが取れなくなっているということなんですよ。マークアップの高いところほど入札できるはずなのに、調整金まで使って、税金をこのマークアップで取れていないんです。これもおかしいでしょう。(発言する者あり)マークアップの中で、関係あるじゃないですか。調整金でやっていたらもっとやれる、そういう部分の中で、本当にそれはおかしい。

 だから、マークアップも本来は取れているんですよ。そういう認識はないですか。

山本(有)国務大臣 先生御指摘のとおり、調整金なるものは、輸入業者から買い受け業者、卸に支払われたケースがあります。その意味において、利益が移転する、その分について、可能性としてマークアップをもっと高くできたかもしれないという仮定を置けば、そのとおりでございます。

 しかし、SBS方式は、マークアップ、輸入差益が大きいものから落札される方式でございまして、これも落札するときの業者の判断に委ねられるところでございます。

 このため、輸入業者と買い受け業者との間で金銭のやりとりが行われましたとしましても、結局、入札の結果、競争により、国に対して支払われるマークアップが大きいものから落札されている以上、所要のマークアップは取れているというように考えるところでございます。

村岡委員 可能性があるんですよ。そのことの認識もあって、この調査のままでは不備ですよ。しっかり調査してもらわなきゃいけない。そして、調査したものを出してもらわなきゃいけない。こう思っております。(発言する者あり)出していないんですよ。

 そしてさらに、こういうことであれば、TPPにどのぐらいの影響があるのか。そして、農水委員会でこれを話すときに、調査報告書がなければ審議が進まないですよ。これは審議できる調査がなければならないですよ。

 そして、このSBS米の中で一番大きな問題は、TPPに参加することが決まった、十七万八千トンになったとき、さらには、MA米の中から、中粒種ですけれども、六万トンさらに来ます。全部で二十三万トン。どんどんこれは量がふえていくわけです。量がふえていった上に、先ほど言ったように、八万トンずつ需要が減っていく。これは、十年で考えれば八十万トン減るわけです。そういう中でいうと、比率はどんどん上がってくるわけです。その問題意識がどうも薄いんですよ、この調査の内容を見ると。影響がないということだけで終わってしまう。

 そして、禁止することは、調整金の廃止です。調整金を廃止して、これは済みますか。

 というのは、例えば、ペアで、一緒に入札に参加します。そのときにはダミーの会社もあるということなんです。ということは、契約者の中の調整金は禁止で、資格をなくすと言っていますが、実際に商社と売るところの卸売業者と違えば、契約上の会社には調整金はやりません、しかしながら、ほかの会社には調整金をやる。全く対策になっていません。もう水面下にどんどん潜っていくだけです。

 それからまた、さらには、同じ、子会社があれば、決算が一緒で連結ならば、別に払わなくても、もうけの中でそれは処理できる。こんな対策が、今、緊急の対策としていますけれども、この対策も不備だとは思いませんか。

山本(有)国務大臣 まず、SBS米が国別枠あるいは現在のMA米の中でさらにふえるのではないかという御指摘でございます。

 まず、六万トンについて申し上げますと、現在の七十七万トンの中で十万トン、我々は、使途、用途を限定せずに入れることによって、主食用米とされております。これと全く違う形で、中粒種、加工用のSBSの六万トンを輸入するようにいたしました。一般輸入において加工用に販売されていたものの一部ですが、加工用に限定しているところからSBS方式の輸入に置きかわるものでございまして、国産主食用米への影響はまずないというように考えております。

 次に、先生御指摘のとおり、名義貸しについての話でございます。

 これは、我々といたしましては、今回の調査を受けて、契約の書面の中に、輸入業者、卸業者両方に対しまして、きちっと、調整金を払うことはないという誓約をさせながら契約することになりました。しかし、なおかつ名義貸しが行われれば、その契約でも目的が達せられないのではないかという御指摘だというように思います。

 今般の調査結果で、民間事業者の金銭のやりとりが国産米の需給及び価格に影響を与えることを示す事実は確認できなかったものの、個々のSBS取引に係る三者契約に関連し、輸入業者と買い受け業者の間で金銭のやりとりを禁止する内容としたところでございまして、輸入業者と買い受け業者との間の金銭のやりとりの趣旨が実質的に損なわれることがないように、契約内容や制度の運用においてしっかりと目的を達するようにいたしたいと思っております。

浜田委員長 大臣、時間が来ておりますので、簡潔に願います。

山本(有)国務大臣 今検討中の内容は、買い受け業者から、直接または間接に譲り受けたものを含むというような運用をしたいと考えております。

村岡委員 もう時間が来ましたから最後になりますけれども、大臣、長々と農林省の答弁を読んでいましたけれども、農家の方々はしっかりとした調査じゃなければ信じませんよ。何でそんな、ただ読むだけなんですか。今の調査状況は誰も信じていませんよ。しっかりとこの調査をしていただくことをお願いし、総理、これは大事なことですので、農林大臣にしっかりと調査を依頼してください。これはしっかりしなければ、農業の新しい問題に関して誰も信用しない農業政策になります。そのことを述べて、質問を終わらせていただきます。

 ありがとうございました。

浜田委員長 この際、緒方林太郎君から関連質疑の申し出があります。村岡君の持ち時間の範囲内でこれを許します。緒方林太郎君。

緒方委員 民進党、緒方林太郎でございます。

 ただいまの村岡議員の質問に続きまして、SBSの問題を最初に取り上げさせていただきたいと思います。

 この件、調査書が出てまいりましたが、調査をするに際して我々が事前に聞き取りをしましたところ、ちょっと不思議なことがありまして、調査票がないんですね。こういう調査をするときというのは、何らかの調査票をつくって、それを業者の方、商社の方、卸の方、それぞれの方に送って、お答えくださいというふうにやるのが普通じゃないかと思うんですね。この調査票が存在をしていない。

 そして、聞き取りは面接であったり電話であったりということだそうでありますが、それを聞き取ったメモについては、これは個人のメモであって行政文書でないからそもそも公開の対象にも何にもならないと。さらには、その聞き取ったメモをまとめた資料については、大臣の指示により、これを外に出すことは黒塗りであったとしてもやらない、そういうお話でありました。

 まず、確認したいと思います。これでよろしいですか。

山本(有)国務大臣 まず、調査をする方法は、御指摘のとおり、電話あるいは面談というところでございます。任意で調査をいたしております。

 そのときに、千七百等々案件がございました。この調査の目的は調整金なる金銭の授受でございまして、この授受について、なしと答えた方々のさらなる……(緒方委員「聞いていないです」と呼ぶ)それでは、端的にお答えいたします。

 ヒアリングをしながら、その回答を踏まえて質問の仕方を工夫しつつ進めたため、質問票なるものはございません。また、個々のヒアリング結果を、行った者が対象ごとにメモをとっておりますけれども、公表の形での整理はしておりません。また、個々の人のメモをもとに整理して、直接調査結果として取りまとめたものでございます。

 そして、メモそのものは手書きで見づらい点もありますが、これは相手方の企業情報、そういったものが多く含まれているわけでございまして、生でこれを出すことにおきましては、調査という形、任意であるという形、相手の好意でお話しいただいたという形からしまして、このメモは、これを行政文書とはいたしておりません。

緒方委員 調査票なしですよ、皆様方。

 何を聞いたかというと、政府に聞いたところ、やりとりの有無、その活用、やりとりが生じた背景、目的、これだけしかお答えいただけないんですね。これだけをベースに調査をやっているんです。やりとりの有無、その活用、そしてそれが生じた背景、目的、これだけでずっと聞いていっている。それ等と書いていますね。

 さらには、それで聞き取ったものについてはただの個人のメモだと言っている。そして、先ほど言ったように、それをまとめたものについては、情報公開法上どういう整理になっているかわからないですけれども、黒塗りであったとしても、大臣の指示によって出さないということを事務方からお話を伺っています。

 これは、情報公開法の恣意的な運用だと思いますね。黒塗りでいいと言っているんです。情報公開法上の不開示事由に当たるのであれば、そこは黒塗りにしていただいて構わないと我々は言っているんです。それにもかかわらず、部分開示でも出せない。その理由は何ですか、大臣。(発言する者あり)

浜田委員長 静粛に願います。

山本(有)国務大臣 調査をする者が備忘録としてそれを集めた、書き込んだメモでございます。そして、そのメモの中には、企業情報あるいは秘密にわたる情報も入っております。ですから……(発言する者あり)

浜田委員長 静粛に願います。

山本(有)国務大臣 これを提出する向きは私は適切ではないと思いますが、さらにこれを集計するために必要性に応じて表を作成した等のもしこの書類が残っておれば、それは検討してみたいというように思っております。

緒方委員 それでは、まず、まとめたメモについては検討すると言われました。委員会に提出を求めたいと思います。理事会で取り計らい願いたいと思います。

浜田委員長 理事会で協議いたします。

緒方委員 さらには、個人のメモということで、個々の業者から聞き取ったものは何の文書にも起こしていない、ただ聞き取っただけだというふうに言っておりますが、農林水産省文書管理規則第九条において文書主義の原則というものが定められています。いいことを書いています。「職員は、」「農林水産省における経緯も含めた意思決定に至る過程並びに農林水産省の事務及び事業の実績を合理的に跡付け、又は検証することができるよう、処理に係る事案が軽微なものである場合を除き、文書を作成しなければならない。」と書いてあります。いいことを書いていますね。

 聞き取ったメモを行政文書として起こすこと、まさにこういうことじゃないですか。なぜ、この文書主義の原則に反して、個人のメモは個人のメモで、手で書いたものだから行政文書でない、そんな運用が可能なんですか。情報隠しじゃないですか、山本大臣。

山本(有)国務大臣 民間の取引実態の詳細が十分把握されていない中でヒアリングを行っております。また、ヒアリングをしながら、回答を踏まえて質問の仕方を工夫しつつ進めているわけでございます。

 そういうメモでございまして、また、個々のヒアリングの結果につきまして、ヒアリングを行った者が対象者ごとにメモをとったわけでございますが、このメモというものは、備忘録であったり、あるいは記憶を正確にする個人のものでございます。

 先ほどおっしゃいました文書に関する農林省の規定は、さらにきちっとした、そうしたものを起こしてきちんと内外に報告できるようにしろというものでございまして、次の段階からの規定だというように考えております。

緒方委員 全くおかしいですよ、これは。まさに、一つ一つの業者に対して聞き取ったそのデータが重要なんじゃないですか。それがないと、あと何も残らないわけですよ。今大臣が言っている行政文書というのは、それを取りまとめたものだけというふうに大臣は今言っているわけですけれども、それのベースとなるものというのは個人の備忘録ですよ。こんな話があるわけないじゃないですか。

 文書主義の原則、これは物すごくいいことを書いてあるんです、文書を作成しなきゃいけないと。一つ一つの業者のその聞き取り文書が重要だから、だからそれを文書に起こすことが義務づけられているわけですよ。

 大臣、今、大臣のようなことを言う人がいるから、だから情報公開法があり、文書管理規則があるんです。大臣のように情報を隠そう隠そうとする人がいるから、だから、そういうことがないように、情報公開法の開示の事由があるし、そして文書はきちっと作成しなきゃいけないというふうになっているんじゃないですか。大臣、おかしいですよ。

山本(有)国務大臣 非常に焦燥感に駆られておられる気持ちはよくわかるわけでございます。

 しかし、この調査自体は、公表を前提とした調査ではございません。任意でございまして、相手方が好意で説明していただいたものを記載したものでございます。企業情報そして詳細にわたる企業秘密、こうしたものが満載されている個人のメモ、これを、公表すべき文書、内外に、農林省の職員として、仕事上、各文書に上げるためのベースであるわけでございます。その意味において、しっかりとしたメモをとり、かつ、任意で、好意でお話ししていただいたことを公にするというルールは、この文書規則、農林省の規則には書いていないということでございます。

浜田委員長 速記をとめてください。

    〔速記中止〕

浜田委員長 速記を起こしてください。

 山本農林水産大臣。

山本(有)国務大臣 いずれにいたしましても、公表を前提としたヒアリングを行ったものではありません。その中身は企業情報そのものであることから、聞き取った情報の詳細については公表することはできません。

浜田委員長 緒方君、もう一度質問をお願いいたします。今二つ質問があるということでございますので、整理して質問していただければと思います。よろしくお願いします。

緒方委員 情報公開法の考え方を完全に間違っていると思うんですよね。

 別に、我々、出しちゃいけない、不開示事由に当たるものを出してくれなんて一言も言っていません。不開示事由に当たるものを黒塗りにしてでもいいから、それで出してくださいということをお願いしたら、大臣の指示で出さないと言ったということだそうです。

 まずそこがおかしいというのと、文書管理規則については、個人の好意で聞いたメモとか対外秘のものについてメモにすることが間違っているかのようなことを言われましたけれども、そんなことを言ったら、もう文書は何もつくらなくて、全部個人のメモでかわされちゃいますよ。そういう、大臣、今大臣が言ったようなことが将来言われるんじゃないかと思って、それを心配しているから、だから、文書管理規則があり、情報公開法があるとさっきから言っているんです。

 大臣、大臣の言っていることが全てまかり通るのであれば、日本の行政と国民の関係は暗黒の社会になりますよ。(発言する者あり)

浜田委員長 静粛に願います。

山本(有)国務大臣 行政情報公開法に基づいて、この基準で考えますと、公開することで法人の権利、競争上の地位その他正当な利益を害するおそれがないか、あるいは第三者がどのような意見を持っているかなどに照らして公開の可否を判断するということになっております。

 農林省としましては、こうした基準に沿ってメモを商量したところ、これは公開すべきものではない、こう判断いたしました。(発言する者あり)

浜田委員長 速記をとめてください。

    〔速記中止〕

浜田委員長 速記を起こしてください。

 緒方君、もう一度、わかりやすく、一個ずつ質問していただきたいと思いますので、よろしくお願いいたします。

緒方委員 情報公開法の不開示理由を今言われました、大臣。そのとおりだと思います。別に、そこを我々はどうにかしてほしいなんて一言も言っていないです。

 今大臣がやっていることは、例えばTPPの、甘利大臣とフロマン通商代表が交渉したときの交渉結果について、そのまとめたものということについては内閣官房の方から黒塗りのノリ弁が出てきました。農林水産大臣のやっていることはそれ以下なんですよ。ノリ弁以下なんですよ。不開示理由があるのであれば、不開示理由があっていいから、だから文書を出してくださいということを言っているんです、大臣。

山本(有)国務大臣 黒塗りで、そこを覆面したから第三者に迷惑がかかるかどうかということでございますが、SBS取引というのは、限定された輸入業者そして限定された買い受け業者間の国家貿易の一環の契約でございます。その意味におきましては、これは類推することが容易だというような意味もありまして、黒塗りになっているといって、そこのところが必ずしも情報が開示されないという結果には陥りません。つまり、黒塗りであっても、全体として、業者、実需者、あるいは卸、あるいは輸入業者に多大な迷惑がかかるというようなことも十分考えられるところでございまして、そういう意味で御理解をいただきたいというように思います。

浜田委員長 緒方君、質問を継続してください。緒方君、質疑を継続してください。(発言する者あり)

 では、農林水産大臣、もう一度答弁願います。

山本(有)国務大臣 ヒアリングを実施した個々人のメモでございます。このメモを整理し、集計しているのが今回の調査報告書でございます。個々人のプライベートも含むメモであり、かつまた企業情報も入るメモであり、そこの箇所を全部覆面すると出したことにならないというように私は思っております。

浜田委員長 緒方君、緒方林太郎君、もう一度。緒方君、継続願います。緒方君、質問を続行してください。

緒方委員 何で、農林水産省のお役人の方が業者から聞いた話がプライベートの話なんですか。

 今大臣は、その聞き取ったメモ、取りまとめたメモは全てプライバシーにかかわるところだと判断したから、だから大臣が指示を出して、情報公開法上の部分開示すらやらないということを言われたということですか、大臣。

山本(有)国務大臣 まず、任意調査であるということを十分お考えいただきたいと思います。そして、公表を前提としていない情報を得ているということでございます。そして、情報公開法の対象文書ではないということでございます。(発言する者あり)

浜田委員長 静粛に願います。

緒方委員 情報公開法における公開の対象文書ですらないと。開示しないではなくて、対象文書ですらないと言われましたね。何ですか、それは。何の文書ですか、大臣。

山本(有)国務大臣 情報公開法の基準でございますが、まず、行政機関の職員が組織的に用いている必要がございます。また、公開することで法人の権利、競争上の地位その他の正当な利益を害するおそれがないことでございます。そして、第三者に関する情報が記載されているときは、第三者がどのような意見を持っているか、こういうことを判断する必要がございます。

 この第三者に関する情報の中で、任意で、かつまた非公開ということを前提にいただいた情報を記載されている以上、これは公開すべきではないというように思っております。

緒方委員 ベースとなる聞き取りも、これは個人のメモで行政文書じゃないと。これは明らかに文書管理規則違反ですね。

 そもそも、それを取りまとめたものは情報公開法の対象でないと言われましたけれども、対象なんです。対象なんだけれども、開示できないところがあるというのが正しい解釈なんです。大臣、おかしいと思いませんか、今の答弁。もう一度。訂正されたければどうぞ。

山本(有)国務大臣 聞き取りメモ、いわば本人が記憶にとどめるためにとったメモと、そして、この調査に必要な重要な情報としての情報メモというようなものが混在しておりまして、この混在しているところの特徴がこのメモでございます。その意味で、私ども、これを直接公にするということの影響、効果というものは正しく世間に理解できるものではない、こう考えるところでございます。

緒方委員 さっきから農林水産大臣の答弁は、もう支離滅裂、意味がわからないんですね。

 TPPに関すること、さらには米のSBSに関することについては、既に我々も、例えば甘利大臣とフロマン代表の交渉の記録については、これはそもそもつくっていない、作成していないと。これは公文書管理法違反だと思いますけれども、さらには、それを取りまとめた、何かノリ弁の紙でありますけれども、取りまとめたものについては全部真っ黒だと。

 そして今、農林水産大臣は米のSBSの件について、個々の業者から聞き取ったメモについては、これは行政文書ですらない、調査票はそもそも存在しないと。さらには、それを取りまとめた文書については、初めは情報公開法の対象でないと言ったんです、今言い方を変えましたけれども。

 そうすると、TPPにかかわる、特に農業にかかわるところについては物すごく情報が隠蔽されていると思うんですよね。

 安倍総理、問題だと思いませんか。農林水産大臣に、そして石原大臣にもっと情報を出すようにというふうに指示いただけませんか、安倍総理大臣。

安倍内閣総理大臣 私は、法令にのっとって必要な情報は全て公開するように、このような指示をしているわけでありまして、その中で、今、山本大臣が答弁をしているところでございます。

緒方委員 この件はまだ続きますので、山本大臣に何度聞いてもそういう支離滅裂な答弁が返ってくるので、質問を移したいと思います。(発言する者あり)

 稲田大臣にお越しいただいておりますので……

浜田委員長 静粛に願います。

緒方委員 南スーダンPKOについてお伺いをいたしたいと思います。

 稲田大臣は何度か、駆けつけ警護、新しいミッションについて、リスクはふえないというふうにお話ししておられると思うんですけれども、これは引き続き正しいということでよろしいですか、稲田大臣。

稲田国務大臣 個々のことに対して言ったのではなくて、自衛隊のリスクに対して申し上げれば、自衛隊員の任務はこれまでも常にリスクを伴うものです。我が国有事における任務は文字どおり命がけのものであり、隊員にとって極限に近いリスクがあります。平素における災害派遣も、警察や消防だけでは手に負えなくなって自衛隊が出動するわけであり、危険をはらむものです。

 我々は、自衛隊員が負うリスクについては、従来から一貫して深刻に受けとめており、あらゆる手段でそのリスクの低減を図っているところでございます。

 駆けつけ警護を含め、平和安全法制の整備により新たに付与された任務にもこれまで同様リスクはあります。我々は、リスクを否定したことはありません。しかし、任務がふえるからといってその分だけリスクもふえるというわけではなく、自衛隊員が実際に負うリスクは、一足す一足す一イコール三といった足し算で考えるような単純な性格のものではありません。

 いずれにせよ、駆けつけ警護についても、十分な教育訓練を行った上で、現地の状況に応じた正確なリスク分析のもと、きめ細やかな準備と安全確保対策を講じ、あらゆる面でリスク低減をする取り組みを行います。

 十一日の参議院予算委員会の答弁についてお伺いだと思いますけれども、部隊が対応できる範囲で行うという駆けつけ警護の性質と、リスク低減の取り組みをしっかり行うということを強調する趣旨で述べたものでございます。

 もちろん、それでも自衛隊員のリスクは残ります。しかし、それは、国民の命と平和な暮らしを守り、国際社会の平和と安全のため、自衛隊に負ってもらっているリスクであると考えております。

浜田委員長 稲田大臣、もう一度簡潔に答弁願います。

稲田国務大臣 今申し上げたとおりですけれども、簡潔に申し上げますと、今までも自衛隊員はリスクを負って職務に邁進しており、平和安全法制の整備によって新たに付与される任務、例えば駆けつけ警護もそうでございますけれども、これまで同様にリスクがあるわけでありまして、私たちは、このようなリスクについて従来から一貫して深刻に受けとめており、あらゆる手段でリスクの低減を図っているということでございます。(発言する者あり)

浜田委員長 静粛に願います。

 緒方君、時間が来ておりますので。(発言する者あり)

 速記をとめてください。

    〔速記中止〕

浜田委員長 速記を起こしてください。

 緒方君、もう一度質疑をお願いいたします。

緒方委員 稲田大臣の言っていることは、二つの異なることを言っているように思うんですね。これまでのミッションがあって、これだけのリスクがあります。新しいミッションがつきます。そのミッションにも、自衛隊に付与されていたこれまでのミッションに伴うリスクと同等のリスクがあるということなのか。新しいミッションを付与したことによってふえる全体のリスクが全く数量として、リスクの量として変わらないということなのか。数じゃないです。量です。済みません。リスクの量がふえるのかということを聞いています、稲田大臣。(発言する者あり)

浜田委員長 静粛に願います。

稲田国務大臣 繰り返しになりますけれども、任務がふえるからといってその分だけリスクがふえる、そういう足し算のようなものではないということを申し上げている、そのような単純な性格のものではないということを申し上げているところであります。

 今回の駆けつけ警護につきましても、十分な教育訓練を行った上で、現地の実情に応じた正確なリスク分析のもとで、きめ細やかな準備と安全確保対策を講じ、あらゆる面でリスク低減をする取り組みを行います。

 十一日の答弁につきましては、部隊が対応できる範囲で行うという駆けつけ警護の性格と、リスク低減の取り組みをしっかり行うということを強調した趣旨でございます。

浜田委員長 緒方君、時間が来ておりますので、質疑願います。

緒方委員 最後に、端的に聞きます。リスクはふえるんですか、減るんですか。以上です。(発言する者あり)

浜田委員長 静粛に願います。

稲田国務大臣 新たな任務が加わるからといって単純にリスクがふえるというものではありませんということでございます。

緒方委員 新たなミッションが加わることでリスクが単純にふえるものではないという答弁でありました。おかしいと思いますけれども、これで質問を終えさせていただきます。

 ありがとうございました。

浜田委員長 この際、井出庸生君から関連質疑の申し出があります。村岡君の持ち時間の範囲内でこれを許します。井出庸生君。

井出委員 民進党、信州長野の井出庸生です。

 安倍内閣の基本姿勢ということで、きょう、私の方からは、オリンピックの問題と、ここ三年ほど取り組んでまいりました特定秘密についてお伺いをします。

 けさの議論でもオリンピックのことが出ておりましたので、まずオリンピックのことから伺いますが、丸川大臣は、ここまでの予算委員会の中で、国が頭ごなしに都や組織委に出るようなことはあってはいけない、そういうお話がありました。

 そのときのやりとりを私はこの部屋でも聞いておりましたし、私の思いとしては、大臣もおっしゃっている連携ですとかバックアップですとか、そのあたりの協力関係というところは私は非常に大切だと思っております。

 今回、東京都の小池知事があのような調査をされて三兆円というような試算をされたわけですが、その問題意識というのは、やはり、アスリートファーストですとか、オリンピックの成功のために必要なことはやっていこう、ただ、それは税金を使うものだから、できるだけ無駄のないように、透明性、説明責任を果たすために今いろいろ御苦労されていると思うんですが、まず、その知事の御苦労の部分を共有するべきではないか。これから国の方が国費を投入する部分は必ず出てくると思いますし、既に予算として執行されてきたものも、まだわずかですが、あるかと思いますが、オリンピックの成功のために必要なものをやっていく、しかし、税金を使うのであるから、透明性、説明責任を果たせるようにする。

 そこで、きょうお話をしたいのは、国の会計検査院のことでございます。

 過去のオリンピックのことを少し調べますと、オリンピックのときにも会計検査院は定時の検査というものを各省庁ごとにやってきているようですが、例えば何か基金の問題について省庁を超えて横断的な検査を会計検査院がやる、そういうことは過去のオリンピックにはなかったやに聞いております。

 この問題は大変国民の関心も高く、ぜひ、オリンピックを迎えるに当たり、よくここまで準備ができた、お金の面もいろいろ心配があったけれどもうまくいった、そういう状態でオリンピックを迎えるためには、国費の部分ですとか、まあJOCなんかも会計検査の対象になるように聞いておりますが、会計検査の果たしていく役割というものはオリンピックにとって非常に大きいものがあると私は考えますが、大臣の認識を伺います。

丸川国務大臣 井出委員におかれましては、これまでも、オリンピックの経費を含む全体像について、大変つぶさにこの議論を続けていただいておりますことに感謝申し上げたいと存じます。

 その上で、コストを抑制しなければならないという東京都知事の思いとそして努力というものは、私どもももちろん同じ思いでございまして、国の税金を使う部分においては、私どもは国の議会でございますので、御議論させていただく立場にございますので、しっかりと目をみはっていきたいと思っておりますし、今のところまだ、何を都が負担し、何を国が負担するのかというところが、東京都からどうしたいという御要望が明らかになっておりませんので議論につけない状況にございますけれども、それを東京都の意思としてお示しいただいた暁には、しっかりと我々も受けとめる準備を持って臨んでいく覚悟でございます。

 その上で、会計検査ということについてでございます。

 これについてはもちろん会計検査院というところが行政をチェックするという立場で、内閣から独立した立場で行うものでございますが、どのような事業を対象に検査を行うかということについては、会計検査院御自身が御自身の権限で判断をされる事柄であると承知をしております。

 政府としては、閣議決定をいたしましたオリパラ基本方針に書いてあるメニューに基づいて、東京都が我々に対して要求をされる部分についてはしっかり真摯に受けとめて、国としてどのように負担していくかという議論をしていくつもりでございますので、ぜひとも、オープンなプロセスにより意思決定を行う、また施策に要するコストはできる限り抑制するというところを共有しながら、会計検査院の検査が行われるということになれば、適切に対応することはもちろんでございますけれども、指摘を受けた場合にも真摯に受けとめて対応させていただきたいと思っております。

井出委員 会計検査院が、何か内閣ですとか大臣から命令を受けて検査をするものではございません。それはおっしゃるとおりなんですが、もう一度確認をしたいのは、会計検査院の果たす役割というものの大きさ、重要性というものの御認識はあるかというところを質問したので、そこだけもう一度お願いいたします。

丸川国務大臣 内閣から独立して、みずからの権限で判断をする会計検査院の検査というのは非常に重要なものであると考えております。

井出委員 総理はいかがでしょうか。国立競技場の計画を白紙撤回されて、そのことは国民の声も当然あったと思いますし、総理自身、説明責任、透明性、税金に対する意識ということで、あのような御決断をされたと思うんですが。

 オリンピックに限らないんですが、当然オリンピックも会計検査院の検査の対象にはなり得ますし、オリンピックの予算、オリンピックに係る経費の透明性、説明責任というものを果たしていく上で会計検査院というものは重要な手段の一つである、そういう御認識でよいか、伺いたいと思います。

安倍内閣総理大臣 会計検査院が、無駄な経費を省いていく、冗費を削減していくという意味におきましても、また政府がしっかりとその説明責任、透明性を果たしていくという意味においても極めて重要な役割を果たしている、このように考えております。

井出委員 今、重要であるというお話をお二方から伺いました。

 会計検査院にきょう来ていただいておりますが、これまでのオリンピックは、先ほど申し上げましたように省庁ごとに検査をしてきている。過去の東京オリンピック、長野、札幌もそうですが。しかし、会計検査院の方も、平成十年代に入って特別検査課というものができて、一つの問題を取り上げて横断的に検査する体制ができた。そこで、ぜひオリンピックのことについて。

 これは、オリンピックが終わった後にやってみたらこれだけ無駄があったと言っても後の祭りですので、もう予算組み、予算執行が始まっているものもございます。ぜひ、会計検査院の皆さんのペースでよろしいですので、しっかりと横断的、継続的に検査をしていただいて、それが次年度、その次の次の年度の予算編成につながっていく、その積み重ねとして、オリンピックを迎えるときに、経費の面もいろいろ心配があったがよかったじゃないか、そういうふうに持っていってほしいとお願いをしますが、いかがでしょうか。

河戸会計検査院長 会計検査院は、会計検査院法の規定に基づき、国や国が出資している法人の会計、国が財政援助を与えているものの会計など、法律に定める会計の検査を実施しております。

 委員お尋ねの二〇二〇年東京オリンピックにつきましては、オリンピックに関連する事業を実施する各府省及び独立行政法人日本スポーツ振興センターの会計検査を担当課においてそれぞれ実施しているところではございますが、委員御指摘の趣旨も踏まえ、今後とも適切に検査を実施してまいりたいと考えております。

井出委員 今、御指摘の趣旨を踏まえと。私のような若い一議員がお願いをしたところでなかなか難しいのかなと思うんですが、この会計検査というものは、委員会でも検査をやるようにと要請することができて、衆参の決算委員会等でNHKに対して最近そういう要請があったというふうに聞いております。

 朝のお話の中で総理が、これは党派性に関係なくみんなでやりましょうというお話をされましたが、この予算委員会でも文部科学委員会でもどこでもできるんですが、ぜひ、会計検査院の果たすべき役割、きちっとオリンピックにかかわっていっていただきたいということを、与党の皆さん、それから野党の皆さんにも胸にとめておいていただきたいと思います。

 オリンピックの話はここまでにしますので、もう結構でございます。ありがとうございます。

 次に、特定秘密の件について伺いますが、きょうは、担当大臣ということで、金田大臣にお越しをいただいております。

 特定秘密は平成二十七年末現在で四百四十三件ある。そして、特定秘密というものは、これはあくまでも、項目と申しますか、情報ごとの指定であって、その一つ一つの中に特定秘密が記録された行政文書が、これは文書といっても、紙に限らず、一目見て特定秘密ときちっと判別される記録となるものなんですが、それが四百四十三件の項目の中に二十七万二千点余りあるというふうに言われております。

 しかし、ことしの四月から八月にかけて、警察庁、外務省、それから防衛省で、平成二十七年の一年間、または平成二十七年度の一年間という期限を区切って指定していた特定秘密の中で、実際調べてみたら特定秘密と記録された文書がなかった、ゼロ件だった、そういうことが明らかになって、この五件はいずれも指定が解除されました。

 私は、四百四十三件の特定秘密という項目、そこに二十七万点の特定秘密が記録された文書があるということで、ずっとどんなふうになっているのかなというふうに考えておったんですが、まさかおおよそゼロのものがあるということは全く想定をしていなかったわけです。

 なぜそういうことが起こったのかという問題と、それから、ほかにも、特定秘密の指定をしたけれども、実際、特定秘密が記録された記録というものがない、そういう特定秘密があるのではないかという疑問を持っているんですが、その疑問について、金田大臣から答弁いただきます。

金田国務大臣 ただいま委員から御指摘のありました、平成二十七年末までに指定された特定秘密、四百四十三件と言われました。そして、その後に指定された特定秘密もございます。そして、これまで、ことし四月から八月にかけて、特定秘密の指定解除ということで公表をしたものもございます。

 そういう中で、そもそも、どうして指定の解除が行われているのかという点をまず……(井出委員「まず、ほかにもあるのかから」と呼ぶ)はい。

 ほかにもあるのかという点につきましては、該当する具体的な情報が現存しないで、今後もこれが出現する可能性がないことが確定したことによって、二十七年末の特定秘密、それから現在までの状況を踏まえて、指定を解除すべき特定秘密は現時点で承知をしておりません。(発言する者あり)答えてはいると思います、今言われたこと。

井出委員 私が伺ったのは、その五件については、平成二十七年中とか二十七年度と期限が決まっていたからゼロ、ゼロだから解除ということになったわけですね。私がそのほかにもあるのかというところをお聞きしたのは、特定秘密の中には、いつまでと、平成二十八年の三月までに入ってきた情報とか、お尻が決まっていないものもあるわけですよ。お尻が決まっていなければ、特定秘密はあっても文書はありませんというものがほかにもあるんじゃないかという疑問が今ありまして、それについて確認をされているかどうか、もう一度答弁をお願いします。

金田国務大臣 確認はしております。そして、現時点では、ありません。指定を解除すべき特定秘密は承知しておりません。(発言する者あり)

浜田委員長 静かにして。

井出委員 今、確認をされた、私が質問したような文書がゼロの状態のものはない、そして指定解除をするべきものもない、その三つをおっしゃられたかと思うんですが、どうやってその確認をされているのか、それについて伺います。

金田国務大臣 制度上、独立公文書管理監にも確認をしておりますし、そういう中で、現時点で、ないということを確認いたしております。

井出委員 ことしの五月二十日に私が法務委員会で、警察庁、外務省の空指定が明らかになったときにも同じように、ほかにもないのか、そういう趣旨のことを伺ったときに、政府の答弁としては、今大臣からお話のあった趣旨の答弁が確かにありました。現時点では承知をしていない、それは、ないという意味であろうと思いますというようなお話をいただいたんですが、しかし、その後、防衛省の二件が六月、八月と出てまいりました。

 ですから、把握の状況についてはやはりもう少し具体的に根拠を示していただきたいと思いますが、答弁を求めます。

金田国務大臣 先ほど申し上げましたが、独立公文書管理監にも確認をし、かつ、各省庁にも確認をしておる次第であります。

井出委員 独立公文書管理監の調査というものは、特定秘密を全て一から四百四十三までチェックするようなものではない。恐らく、独立公文書管理監は、ほかに今現状として記録した文書がない、そのことに特化して、ないと断言できるのかといえば、それは、あるともないともわからないとしか言えないんじゃないかと思いますが、どうでしょうか。

佐藤政府参考人 御質問の点に関しましては、いわゆる、先ほど大臣の方からも答弁がございましたけれども、指定された特定秘密に当たる情報が現存せず、今後も出現する可能性がないことが確定した、そういう指定について、そのために解除すべきということで、我々の方で意見を述べたり、あるいは是正の求めをしたりということはございまして、これはあくまで、情報が現存せず、今後も出現する可能性がないということで、そのような意見を述べたり、あるいは是正を求めたものでございます。

井出委員 現存しないものが今あるかないかというところを、ないと言い切れますか。

佐藤政府参考人 私どもは、それぞれの検証、監察事項において、それぞれの検証、監察した結果をその都度、意見なりあるいは是正の求めなり、結果として出しているということでございますけれども、先ほど申し述べたようなことが確定したということを認定した事実について意見を述べたり、あるいは是正の求めをしたりいたしましたが、これと同様の、我々がそのような判断をして、こういうものがこういうルールでこうなるということを判断したような、同じような、期間を区切って、それが出現しなかったというようなものは、我々がこれまで検証、監察した範囲ではそのような指定はございません。

井出委員 今の独立公文書管理監のお話は、御自分たちで調査をされて指定を解除したものについての説明だったと思うんですが、私がなぜこのことを聞くのかと申しますと、特定秘密というものは今四百四十三件あるんですね。この数字というのは平成二十七年末のものなので、このうち五件は既に解除されているんですが、平成二十七年末の段階では四百四十三件。そのうちの五件はゼロだったわけですね、中身の記録された文書が。

 そうしたものがほかにもある、それは、一つ二つあって、毎年毎年、やはりなかった、解除しようという話であればいいんですけれども、それが五十件、百件とかとなれば、特定秘密の件数の前提が覆ってくるんじゃないかと思っているんです。その意味において、ないということがはっきり言えるのか、そういうことを伺っているんですが、いかがでしょうか。

金田国務大臣 平成二十七年末までに指定された特定秘密、これが、該当する具体的な情報が現存せず、今後もこれが出現する可能性がないことが確定したことにより指定を解除すべき特定秘密というものは承知をしておりません。

 以上です。(発言する者あり)

浜田委員長 静かに。

井出委員 ちょっと質問と答えがかみ合っていないんですが。特定秘密が、何年までに情報として入ってきたもの、そういう指定のされ方であって、結果としてゼロだった、点検もした、そして解除したのがその五件なんですよ。そういうものはほかにもないとおっしゃっているんですね。

 私は、特定秘密というのは指定の仕方で、期限を区切らず何とかについての情報と書いてある情報はたくさんあるんですよ、その期限を区切っていないものについてもゼロ状態のものがたくさんあるのかないのか、そこを、ないんだったらないと晴らしていただければそれで済むんですけれども。

 あるかないか、その根拠を伺います。

金田国務大臣 先ほど御指摘いただいた特定秘密五件のお話がございました。そういうものは、機密情報を入手することを事前に見込んであらかじめ特定秘密を指定したものの、結果的に情報の入手に至らなかったというものなんですね。

 ことしの四月からは、独立公文書管理監から、特定秘密に当たる情報が出現する前にあらかじめ特定秘密を指定する場合には、当該情報の出現可能性については慎重に判断することという意見を出しておられるわけであります。

 したがって、今後とも、このような意見も踏まえて、特定秘密の指定、あるいは先ほど御指摘があった解除というものも、法律の適正な、円滑な施行に努めていくことになるわけであります。

 そういう中で、現時点で、先ほどおっしゃられた特定秘密四百四十三件の中で、指定を解除すべき特定秘密は承知をしていません。

井出委員 指定を解除すべき、ゼロ件と確定したものはない、それを明言されて、ただ、私はその根拠はわかりませんよ。

 それから、結局、情報の指定のお尻が区切られていなくて、ゼロの状態で放置されているものがどのぐらいあるのかというのが私の問題意識です。

 先ほど、四月に独立公文書管理監から意見をもらって、特定秘密の指定に当たっては慎重にやれ、そういう話があったというお話でしたが、金田大臣が委員長になっておられる内閣保全監視委員会。特定秘密をチェックするのは、国会の情報監視審査会、御活躍いただいている独立公文書管理監、それから内閣保全委員会なんですね。四月に問題が発覚してから、内閣保全委員会でこの問題をしっかりやろうと、開いて指示をされましたか。

 この内閣保全委員会は、これまでたったの四回しかやっていない。一回目は十五分、二回目は十分、三回目は八分、四回目は十一分なんですよ。会議をやっていても、そんな短時間で。議事要旨を見ましたよ。議事要旨を見ても、それを読み上げるのに八分以上かかるんじゃないかと思いますよ。その会議すらも今開かれていないというのが実態なんじゃないですか。

 大臣、いかがですか。

金田国務大臣 ただいまのお話でございますが、内閣保全監視委員会については、特定秘密の指定等の状況を国会に報告するに当たりまして、各行政機関からの報告を取りまとめた上、内閣総理大臣に報告するために開催をしております。

 また、特定秘密保護法の運用に関しては、政府としてやはり斉一的な運用を図るために、内閣保全監視委員会を開催することもございます。

 ただし、ある省庁で個別の問題が発見された場合に、斉一的な是正を行う必要があるという場合、そういう場合でも、内閣保全監視委員会は開催しなくとも、課長級の会議を開催したり、事務連絡等を発出する場合もあるわけであります。

 内閣保全監視委員会を開催するかどうかにつきましては、その時々の個別具体的な判断がされていくものと考えております。

 以上でございます。

井出委員 これまで、独立公文書管理監がいろいろ調べて、この指定の仕方は違うんじゃないか、別表の該当性が違う、まあいろいろな別表があるんですけれども、それをちょっと直したらいいと。そういうものはすぐ直して、修正されて、議事の中でも触れているんですよ。

 今回は空指定ですよ。特定秘密を指定したら、そこに記録されたものがない。それが、もしかしたら、まだその状態のものがほかにもあるかもしれない。それにもかかわらず、内閣保全監視委員会を開いていない。

 もう一つ言えば、この年度末に、国会の情報監視審査会、ここが報告書を出しました。報告書についても、特定秘密の四百四十三項目と、それにぶら下がっている記録された文書の関係をはっきりさせよう、そういう意見も出ております。ほかにも重要な意見が出ております。にもかかわらず、内閣保全委員会というものが開かれていない。

 早急に開いていただきたいとお願いしますが、いかがでしょうか。

金田国務大臣 ただいま、内閣保全監視委員会を開催していないという御指摘がございました。

 先般の警察庁や外務省、防衛省の五件の特定秘密の指定の解除に関しましては、四月二十七日及び八月二十五日に関係省庁課長級の会議を開催しまして、独立公文書管理監の意見や是正の求めの内容等を周知したところでございます。

 今回は、このように、内閣保全監視委員会を開催していないものの、今後とも案件によってはこの委員会を開催し、そして特定秘密保護法の政府としての斉一的な運用を図っていきたい、このように考えておりますし、私としましても、内閣保全監視委員会委員長として、法律に従って、指定と解除といった、そういった適正かつ円滑な施行も行えるように、円滑に行えるように今後も努めていきたい、このように考えております。

井出委員 特定秘密保護法は、秘密を各省庁横断的に管理していくということで、各省庁にとってもこれは新たな負担になっていると思います、試行錯誤をされていると思います。

 空指定の問題ですね。あらかじめ情報が入るだろうと思って特定秘密を指定する、でもなかなか情報が入らない、ゼロだったら解除する。なかなか情報が入らない、年度で区切って指定していないから、そのままになっているかもしれない。

 それと、もう一つあるのは、最初、特定秘密を指定したときに、そこに文書の件数がもしかしたらきちっとあるかもしれない。だけれども、文書の保存期限が来て、それを廃棄して、そこがゼロになるようなこともあるかもしれない。そういうことを各省庁は今物すごく試行錯誤して悩んでおられますよ。そのトップがもっと陣頭指揮をとれなきゃ、今みたいなお話じゃ、トップとしての認識が非常に甘いと思いますが、いかがですか。

金田国務大臣 ただいまの御指摘に対しましては、やはり内閣保全監視委員会の長として、そうした各省にも、独立公文書管理監からのお話や、あるいは斉一的なこの制度の運用のための各省のチェック、そういうことをしっかりとやっていきたい、こういうふうに思っているのは申し上げたとおりであります。

井出委員 総理、今のやりとりを聞いていただいていて、伺います。

 総理は、特定秘密保護法について、昨年二月四日、私がここで議論させていただいたときに、新しい仕組みができた、これによって秘密はまさに正しく管理されるようになる、その新しいルール、仕組みというものができたというお話をされておりました。

 しかし、内閣保全監視委員会一つとっても、会議は短いときは八分、議事要旨の方が長いんじゃないかというような状況なんですよ。この運用というものを、今、私は非常に大事なときだと思っております。

 特定秘密保護法という初めての法律ができて、国会もそれに向き合っていかなければいけない。その重要な、大げさに言えば、歴史を一ページ一ページつくっている、イギリスやアメリカやドイツや、ほかの国で先行してきたものに対して、歴史を一ページ一ページつくっているような状況だと思うんですね。そのときに、今の金田大臣のようなお話ですと、正直、本当に大丈夫なのかと。ゼロ状態のものは、やはり私はきょうの質疑では、結論としては、判然としないと言わざるを得ませんし。

 私は、特定秘密というのは、金田大臣は法務大臣もされておりますけれども、兼任じゃだめだと思うんですよ。特にこの走り出しの部分、専任の担当大臣を置くぐらいのお気持ちでやっていただかなければ、この複雑な管理の運用、説明責任、果たせないのではないかと思いますが、総理の見解を伺います。

安倍内閣総理大臣 担当する国務大臣については、任命権者たる私がさまざまな状況を総合的に判断して、金田大臣が担当することが最良であると考え任命したものであって、他の大臣や専任の大臣を置くことは考えていないわけでありまして、兼任だからできないということではなくて、実際は、まさに正しく運用していくことが求められているわけでございます。

 従来からも、新しい仕組みというのはいきなり新たな秘密が登場したということではなくて、今までも防衛機密がありました。そしてまた、特管秘も別途あったわけであります。

 しかし、そこには共通のルールもなかったし、国会の関与も明確になっていなかった。あるいは、今おっしゃったように、独立公文書管理監、そしてまた内閣保全監視委員会もなかったわけでありますし、情報保全諮問会議等もなかったわけであります。そういう中において、例えば外務省においては外交機密というのがあって、密約があってもその後の総理大臣自体が知らないということが起こり得たわけでございますが、そういうことは起こり得ない。正しいプロセスの中で、スパイ工作、テロ等から機密をしっかりと守っていくための法律ができ上がったわけであります。

 しかし、同時に、今言った仕組み、立法当初の役割を果たす上において正しい運用をしていくべく、今後ともしっかりと、内閣保全監視委員会また独立公文書管理監等がそれぞれの役割を果たしていくことによって、もちろん情報保全諮問会議もそうでありますが、正しい運用に心がけていきたい、そういう中で担当大臣としての役割を果たしていただける、このように思っております。(発言する者あり)

井出委員 総理はお忙しいでしょうから、なかなかこれを兼任というわけにはいきませんが。

 きょうの結論として、今ゼロの、記録がないものというものがあるかないかというところは私は結論としてはっきりしなかったと思いますし、担当であろうと兼任であろうと、ふさわしいというのはおっしゃるとおりでありますけれども、金田大臣は少し、専任でもちょっといかがなものか、そういうことをきょう率直に感じました。

 時間が来ましたので、終わります。どうもありがとうございました。

浜田委員長 午後一時から委員会を再開することとし、この際、休憩いたします。

    午後零時五分休憩

     ――――◇―――――

    午後一時開議

浜田委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。

 質疑を続行いたします。

 この際、山尾志桜里君から関連質疑の申し出があります。村岡君の持ち時間の範囲内でこれを許します。山尾志桜里君。

山尾委員 保育園落ちたというブログを紹介して私が総理と待機児童の問題について議論したのがことしの二月二十九日。そのとき、総理はそちらの席から、揚げ足取りだとか空振りだとか、随分言われました、私も。でも、その後の本会議などでは、改めて総理は、待機児童ゼロを必ず実現させる決意だ、こういうふうに述べておられます。でも、残念ながら、安倍政権で待機児童はふえています。

 パネルを見てください。このパネルは二〇〇六年からになっていますけれども、二〇〇三年以来五年連続減少傾向にあった待機児童数、これが、第一次安倍政権の予算執行がなされた結果の出る二〇〇八年、ここで増加に転じております。以降三年間、待機児童はふえ続けました。二〇一一年、すなわち民主党政権において待機児童は減少に転じ、三年連続減っています。そして二〇一五年、第二次安倍政権において再び増加に転じ、以降、直近二年連続ふえております。

 また、直近一年、自治体別に見てみると、待機児童が減った自治体は百九十三ありますけれども、待機児童がふえてしまった自治体は、それを大幅に上回る二百三十二自治体となっております。

 総理、待機児童ゼロをうたいながら待機児童をふやしている行政府の長として、この失敗の基本的な原因はどこにあると考えておられますか。

安倍内閣総理大臣 きょうは、本来であれば厚生労働大臣から答弁させていただくところでありますが、どういうわけか厚生労働大臣を呼んでいただいていないわけでございまして、厚生労働大臣であれば簡潔にお答えをさせていただきます。私ですとちょっと長くなりますので、御容赦をいただきたいと思います。

 まず、安倍政権では、これまで三年間で三十一・四万人分の保育の受け皿を整備してきたところであります。これは、年平均で約十一万人増と、年平均四万人増だった民主党政権時代の二・五倍のペースで実は私たちは保育所を整備してきました。安倍政権になってからは、毎年度、全国の総計で見れば、申込者の増加を上回る保育の受け皿整備が実現をしているわけでございます。

 そしてまた、政権交代直後、保育士を確保する上において、保育士等の処遇を二・八五%相当改善いたしまして、以降、毎年度改善に取り組み、これまで七%相当改善をしてきたところでございますが、民主党政権と我々の政権の比較でございますからこれも言わせていただきますと、民主党政権では、あの三年三カ月、保育士の処遇改善は何一つ行われなかったどころか、給料はマイナス一・二%引き下げているということでありまして、これらの結果、民主党政権で減少傾向にあった保育士給与は、平成二十五年を底に上昇に転じ、その後、着実に上昇しているということであります。

 本年四月の待機児童数は、全国で見ると一年前よりふえましたが、市区町村が積極的な受け皿拡大を行った結果、百九十三の市区町村では待機児童が減少し、全体の約八割、千三百五十五の市区町村では待機児童がゼロであった。

 一方、大規模なマンション開発に伴う若年層の人口増などのため、保育需要の増加に整備量が追いつかなかった二百三十二の市区町村では待機児童数が増加をしているわけでありまして、このような状況を受けて各自治体が保育ニーズを再度見直した結果、平成二十九年度末までの五年間の受け皿拡大量は、昨年度時点での計画より三万人分ふえたわけであります。

 そこで、御指摘のなぜそういう結果になったかということでございますが、御指摘の二〇一〇年四月から二〇一三年四月までの三年間、これは民主党政権下でありますが、受け皿が十三万人分ふえたのに対して、申込者は十四万人分ふえたわけであります。これは受け皿よりも申込者の方が一万人多かったんですが、しかし、受け皿より申込者が一万人ほど多いのに待機児童が減った理由は、これまで比較的空きがある保育所が定員いっぱいになるなどのミスマッチの解消が背景にある、こう思われるわけであります。

 これに対しまして、二〇一三年四月から二〇一六年四月まで、これは安倍政権になってからでありますが、この三年間においては、受け皿が約三十一万人分ふえた、これは三十一万人ふやしたんです。それに対しまして申込者数は二十七万人ふえたわけでありまして、民主党政権下の三年間に比べ、安倍政権の三年間の受け皿は二・五倍ふえたわけでありますが、実は、申込者が二倍にふえたわけであります。今、その理由を聞かれたので詳細にお答えをしているわけであります。

 そこで、ではなぜ二倍にふえたかということも説明しなければいけないわけでありますが、そこで、子供の年齢別に就業者の動向を把握できるようになった二〇一一年以降の統計で見ると……(発言する者あり)ここは大切なところですから。二〇一一年以降の統計で見ると、六歳以下のお子さんがいるお母さんたちの年代と大きく重なり合う二十五歳から四十四歳の方々の就業が着実にふえていることが確認されるわけであります。ゼロ―六歳の子がいる二十五歳―四十四歳女性就業者は、保育所等の利用申し込みがなされる十月―十二月期平均で見ると、直近の平成二十七年では、前年同期と比べて十八万人増加をしているわけであります。

 一方、民主党政権下の待機児童数が減少している時期を見ると、ゼロ歳から六歳の子がいる二十五歳から四十四歳女性就業者数……(発言する者あり)これは大切なところじゃないですか。

浜田委員長 総理、簡潔に願います。

安倍内閣総理大臣 二十五歳から四十四歳女性就業者数は、平成二十四年十月―十二月期平均で、前年同期と比べて三万人しかふえていないんですよ。

 三万人と十八万人を比較していただければ、働く女性がふえた結果、申し込みがふえて、結果として、二・五倍のスピードで保育所を整備しても、残念ながら追いつかなかった。

 いずれにいたしましても、待機児童ゼロに向かってさらに努力を重ねていきたい、このように思っております。

山尾委員 総理、百の言葉より一の結果であります。これは総理自身の答弁です。(発言する者あり)

浜田委員長 静粛に願います。

山尾委員 ちょっと静かにしていただけますか。

浜田委員長 静粛に願います。

山尾委員 自分の声が聞こえません。静かにしてください。

 第一次安倍政権でも、第二次安倍政権でも、総理が編成した予算を執行した結果、待機児童がふえた、これが結果です。第一次安倍政権と第二次安倍政権の間、総理がお休みされていたときですね、待機児童を減らしたのが民主党政権時代、これが結果です。

 総理は幾つかのことをおっしゃいました。受け皿加速二・五倍。これはいつも自慢されますけれども、第一次安倍政権から麻生政権、福田政権、この三年間の受け皿確保、これを二・五倍に初めて加速したのは民主党政権です。同じ加速度で安倍政権でも受け皿拡大を続けていただいているのは悪いことではありませんけれども、同じ加速度でも、民主党政権で減らしていた待機児童をふやしているのは今の安倍政権です。

 もう一つ、処遇改善のことをいろいろとおっしゃいました。図らずも総理自身が、政権交代直後二・八五ふやした、こうおっしゃいましたけれども、直後ですよ、それは。民主党政権の社会保障と税の一体改革で決めたことですから。財源も意思決定も私たちがやったんです。

 その後、この二・八五から三のさらに上乗せ、合わせて七%、こんなことをおっしゃいますけれども、これは人事院勧告の話ですよね。確かに、民主党政権で人事院勧告で一・二%減らしています。その前の麻生政権では二・一%下がっています。これは麻生さんの責任なんですか。そもそも、民間給与との差額十一万円を縮めて保育士さんがほかの職種に流れてしまうことを防止しよう、こういう話をしているときに、民間給与との連動で政治判断とは別に細かく上下することを威張ったり、けなしたりしても、政策の議論にならないと思うんです。

 そして、もう一つ、その次、さらに来年度から二%ふやすんだと。これは政治決定だと思います。これは私が春の国会で随分申し上げました、やってくれと。そのとき総理は、財源が見つかったらやる、こんな話をしていたわけですけれども、これは見つかっていないけれどもやると断言されています。これはあの議論も無駄じゃなかったなと思いますが、ここから。

 でも、私も反省があるんです。民主党政権のときに、確かに、保育士処遇の改善をやろうと意思決定した。財源は、消費増税を使おうということも決めた。最初は三%、二%。でも、それじゃとてもとても保育士さんは保育士の仕事に戻れない、あるいは保育士の資格を取っても保育士の仕事につけない、この深刻さが私たちもわかっていなかったんです。だから、私たちは改めて、この平均給与との十一万の差額、これをせめて五万円上げようじゃないですか、こういう法案を提出しています。いまだに審議に応じていただけません。

 総理、蓮舫代表もこの五万円給与アップについて質問をされていますけれども、改めてお伺いします。この提案、総理はどんなふうにお考えになっていますか、どこに問題がありますか。

安倍内閣総理大臣 威張ったり非難したりする、それはお互いにやめるべきであって、いきなり山尾さんが、安倍政権が何もやっていないかのごときの議論をされるから。

 その中で、私も、安倍政権で七%上げたということはずっと言わなかったですよ。民主党政権で人勧とはいえ下がったことも言わなかった。ずっとそれを、議論を続けられたから、誤解を与えてしまうので、私はとうとう、やはりこのままでは誤解を与えるということで、七%相当上げてきましたよと。

 人勧の結果ではありますが、確かに麻生政権のときも下がりました。これはリーマン・ショックがありました。これは社会情勢。そうではない社会情勢をつくっていくことは、麻生さんも我々も努力をしていかなければいけない。安倍政権においては、しかし、人勧の勧告においてもプラスの勧告ができるという社会情勢、経済情勢をつくり出すことができたのは事実であります。

 その中において女性が働き始めたのは事実であって、この結果についても……(山尾委員「早く質問に答えてください」と呼ぶ)いや、先ほど山尾さんが質問する前に、事実上、私たちの政策について論評を述べたから、それについての反論ぐらいさせていただきたい、このように思うわけであります。

 それについては、厚労大臣を呼んでいただければ、もっとつまびらかに証明、お話ができますが、私は担当大臣ではありませんから……(発言する者あり)

浜田委員長 静粛に願います。

安倍内閣総理大臣 一応全部についてお話をさせていただかないと、これは完結をしないんですよ。

 そこで、大切なことは、もう一度言いますが、女性の就業者がふえたことは事実であって、そして申込者がそれによってふえた、二・五倍のペースでふやしたけれども追いつかなかったのは事実だということを申し上げたわけであります。

 そこで、今、御質問についてでございますが、高い使命感と希望を持って保育の道を選んだ方々に仕事を続けていただくためには、処遇を改善するだけではなくて、保育士資格を持つ方の就職支援や事務負担の軽減などに総合的に取り組んでいく必要があります。我々もそのように考えています。

 ここから端的にまいりますが、御指摘の法案については、恒久的な財源の確保策が明らかになっていない点、人材確保のために必要な総合的な対策となっていない点が問題がある、このように考えているわけであります。

 これは繰り返しになりますが、社会保障の議論をするときには、大切なことについては、やはり財源を確保するということが一番の難関であって、私たちだってふやしたい。恐らく皆さんだってそうだと思いますよ。そこで、どうやって将来にツケとならない、これは恒久的な財源ですから、その財源を見つけていくかということが課題である。

 二%については、我々は二%上げていくという判断をする中においては、しっかりと恒久的な財源をつくってそういう措置をしていくということは申し上げておきたい、このように思う次第でございます。

山尾委員 総理、前置きが長過ぎて自民党の側からも笑いが起きているじゃないですか。私の質問も忘れてしまったのではないですか。(発言する者あり)

浜田委員長 静粛に願います。

山尾委員 私が改めて申し上げますけれども……(発言する者あり)端的な質問をしていると思いますけれどもね。

 私たちがずっと繰り返し申し上げている、保育士さんの給与を五万円上げようじゃありませんか、保育士不足による待機児童の増加という抜本的な問題解決につなげようじゃありませんか、こういう提案をしているわけです。

 今、総合的な対策が必要だ、こういうお話をされましたけれども、抜本的な解決から逃げるときに、総合的に対策するという言葉が使われるんですよ。でも、これは別に役所の皆さんが悪いわけじゃないと思いますよ、そういうふうに総理のメモに書いてあると思うけれども。抜本的な解決が必要なら、総理が、政治家が予算をつけなければできないじゃないですか。

 私たちは改めて、恒久的な財源とおっしゃるけれども、例えば私たちのこの五万円アップ、大体二千八百億財源があればできます。そして、例えば金融所得課税、今、二〇%ですけれども、これを二五%まで上げさせていただければ大体見合いの財源ができます。アベノミクスによる株高だと胸を張っておられます。そういう中で、確かに元手があってゆとりをふやした方もいらっしゃるんです。そういった方に一部、子供への投資、未来への投資、こういうことで少し負担をふやしてもらう。これは、アベノミクスの果実なんという、どこからどう見ても恒久財源とは言えないものを引き合いに出すよりもずっと現実的な我々の提案だと思います。

 総理、これをだめだと言うなら、あと一年半で九万人の保育士不足を解消して、安倍政権でふえてしまった現在二万三千五百三十三人の待機児童をあと一年半でゼロにするという目標を達成する対案を出してください。

安倍内閣総理大臣 金融課税強化をおっしゃったわけでございますが、この金融課税強化については財務大臣から答弁をさせていただきたい、このように思います、その検討等についてはですね。

 同時に、我々の政権としては、先ほどもう既にお話をさせていただいたように、民主党政権時代は保育のこれはふえなかったわけですよね。人勧の結果マイナスになっているところを、我々はプラス七%という実績があります。これは認めていただきたいと思いますよ。皆さん、三年三カ月マイナスだったんですから。我々は結果を出していますよ、プラス七%という。そして、プラス、さらに二%引き上げていきます。

 プラス、保育士として技能や経験を積んだ職員について四万円程度の追加的な処遇改善を実施することとしておりまして、そして、継続して実施できるよう、予算編成過程でしっかりと検討してまいりたい、こう思うところであります。(発言する者あり)四万円については、今私は初めて申し上げたわけでございます。先ほどは二%としか言っていなかったわけでありますから、二%に、今さらに四万円ということを追加させていただいた次第で、その辺のところは御努力をいただきたい。

 これは、お互いにどう財源を見つけていくか。確かに、それは金融に課税を強化していくという方法も一つ考えられるかもしれませんが、それについての考え方については財務大臣から答弁をさせていただきます。

山尾委員 財務大臣に金融課税の強化を検討すると今言っていただいたと受けとめました、財務大臣に。

 申し上げますけれども、保育士処遇の改善は、政策目標を達成する手段です。そして、目標は待機児童の解消です。処遇が上がった上がっていないと、その手段のところでるるおっしゃいますけれども、政策目標は待機児童の解消です。そして、この目標において、安倍政権でふえている、私たちが減らしてきたものをふやしている、これが結果です。だから、これを何とかするために抜本的な改善に取り組みませんか、こういう提案を申し上げているわけです。

 ちなみに、四万円という話をされますけれども、これはもう伺いません。ただ、担当者に聞きました。四万円アップ……(発言する者あり)ありがたいとおっしゃいますけれども、今保育士さんとして働いている方のうち何%がこの四万円アップの対象になるんですかと担当者に伺いました。一%よりは多いのか少ないのかと伺いました。それもわからない、そういう答弁でした。それを、四万円、あたかも多くの人に当たるかのごとくおっしゃって、本当にやるべき政策から逃げるというのはやめていただきたいと私は思います。

 なお、この待機児童の問題ですけれども、これは、全ての子供が安全で豊かな育ちを享受できるのか、本当に女性が自分の生き方を選べるのか、この国の人口減少に歯どめをかけられるのか、こういう大事な問題ですから、引き続き、私たちが議論の先頭に立って進めていきたいと思います。

 なお、総理、配付資料ですけれども、このグラフをもう一枚めくっていただくと、二枚目、三枚目、ことし五月二十八日の毎日新聞です。私と総理の議論を引きながら、総理の答弁態度、政治姿勢が分析されています。

 多くは読みませんけれども、例えば、「野党の質問の核心的な問題については、正面から答えようとしない。」「議論の論点をずらして、自説を繰り返し強調する。」るる書いてありますので、こういう見方もあるんだということで、参考になさってください。

 次に、憲法改正、このことについてお話をしたいと思います。

 この国会、とても饒舌な総理が突然貝のように答弁をしなくなる場面が何回かありました。自民党改憲草案について質問されたときです。例えば、この国会で総理は、十月五日、蓮舫代表から改憲草案について質問されたとき、政府の統一的な見解について、自民党の草案について述べることはできないと繰り返しおっしゃって、答弁を拒否しています。できないとおっしゃっていますね。

 この日、同じ日です、自民党の高村副総裁もこのようにおっしゃっています。内閣には憲法改正について何の権能もなく、政府の統一見解はそもそも存在しない。権能がない、答弁できないんだ、こうおっしゃっています。

 総理は憲法改正について答弁する権能がない、これは、総理もおっしゃっているんですけれども、いつ、誰が決めた論理ですか。

安倍内閣総理大臣 私は、権能がないということは申し上げておりません。

 私が申し上げているのは、内閣を代表して、つまり、政府が出している法律案あるいはまた予算、そうした議案について政府を代表して述べなければいけないわけであります。それ以外のことについても論評する場合はありますが、しかし、ここに出てきて、憲法上義務を負っているのは、まさに政府を代表して私が述べられることであろう、このように思うわけであります。

 権能ということについては、政府が憲法改正の発議ができるかどうかというのは議論があるところであろう、こう思うわけでありまして、私どもは権能ということは申し上げておりませんが、私は、政府を代表する立場としての総理大臣としては、まさに議案について政府を代表しての考え方を述べる立場であるということではないかと思います。

山尾委員 では、お尋ねします。

 この国会に入って、総理は、憲法改正草案について私は述べる立場にないと繰り返しおっしゃるようになりました、突然。

 翻って、例えば平成二十五年二月二十六日参議院、総理は、自民党改憲草案九条、国防軍の意義を問われて答弁されています。「自衛隊は、国内では軍隊とは呼ばれていない、軍隊ではないという位置付けでありますが、国際法上は軍隊として扱われているわけであります。私たちは、このような矛盾を実態に合わせて解消することが必要であると、こう考えております。」「他方、憲法の改正については党派ごとに異なる意見がございますので、まずは、多くの党派が主張している憲法九十六条の改正から取り組んでいきたいと、こう考えております。」

 九条という逐条についての改憲案の考え方、そして、聞かれてもいないのに九十六条から変えたいんだと、誰の願望かわかりませんけれども、どういう立場でお答えになったのかわかりませんが、答弁されています。

 今、政府を代表して述べる立場にあるとおっしゃいました。これは政府の統一見解ではないですよね、公明党は全く違う考えでありましょうから。そうすると、これは総理はどういう立場でお話しになっているんですか。

安倍内閣総理大臣 先ほどの私の答弁をよく聞いていただければ御理解をいただけると思います。

 ここで私が内閣を代表して答弁をしなければいけないことは、いわば議案について政府を代表して意見を述べる場合は答弁をしなければいけないわけでありますが、しかし、憲法について私が論評してはいけないという立場ではないわけでありまして、これは論評はできます。ですから、私は自民党の案について論評したわけであります。しかし、当時はまだ十分に、いよいよ憲法審査会において議論をしっかりと盛り上げていくというムードが必ずしも醸成されていなかった中においては、そう申し上げさせていただいたわけでございます。

 今、いよいよ憲法改正がよりリアリティーを帯びてきている中においては憲法審査会においてやっていただきたいという中において、ここにいるんだからあなたが答えろと言われましたが、答える義務は私はないわけであります。義務はないんですよ。義務がなくても答える場合はありますよ。義務じゃなくても答える。それは、義務と答えることはできますが、しかし、義務として答えなければいけないことは、まさに山尾さんがおっしゃったように、私は内閣を代表して答えなければいけないという立場としては、これは義務であります。

 そこで、おっしゃったように公明党さんもおられますから、連立内閣でありますから、そこで、内閣を代表して総理大臣として答えるということはそもそもできないわけでございまして、ですから、そのように申し上げてきているとおりでありまして、内閣総理大臣としての答弁はまさに義務であります。

 そこで、あなたは自民党総裁として答えろと言われましたから、そのように私はお答えをしたわけでありますが、いよいよ憲法審査会において御議論をいただくという段階になり、ここは私は自民党総裁として発言することは控えた方がいいという判断をしたわけでございまして、これは今まで御説明をしてきているとおりでございます。

山尾委員 今の総理のお話を聞くと、憲法改正というこの国そして国民にとって最も大切なテーマの一つ、するかしないかも含めて。このことについて答弁をするかどうかは自分の判断だ、そういうことですか。自分次第ですか。この国権の最高機関たる立法府で、行政府の長であるあなたに、一国の総理であるあなたに、憲法改正についてどう考えているのか、それを我々は聞かせてもらいたいと思っても、聞かせてもらえるかどうかは総理の気分次第だ、こういうことですか。判断は自分にある、そういうことですか。

 もう一つ申し上げますけれども、総理の論理はやはり破綻していると思いますよ。いよいよ憲法改正が近づいてきたかきていないか、議論が盛り上がっているか盛り上がっていないか、それによって答弁するしないが変わってくるんですか。おかしいんじゃありませんか。(安倍内閣総理大臣「今のは質問」と呼ぶ)まだ質問しておりません。論評しております。

 私は、論理が破綻している理由は自分なりにこう考えています。

 やはり、行政府の長たるあなたには、答弁するのは自由だとおっしゃっていますけれども、答弁する義務が基本的にあると思います。この義務から無理くり逃げようとするから、場当たり的に言いわけをするから、おかしいことになっていると思います。

 まず、総理、九十九条で総理大臣は憲法尊重擁護義務を負っております。そうですね。そして、憲法は前文で、この憲法の普遍の原理に反する一切の憲法を許しておりません。法律だけじゃないんです。この今の憲法に反する一切の憲法を排除する、こううたっております。そして、今大きな与党である第一党自民党から提案されている改憲草案は、普遍の原理に挑戦する、大変疑義のある草案です。この改憲草案が現行憲法の普遍の原理に反していないかどうか、憲法尊重擁護義務のあるあなたは答弁をする義務があると思いますけれども、いかがですか。

安倍内閣総理大臣 ですから、私は、先ほど申し上げましたように、私の内閣総理大臣としての所掌事務について、所管する事柄について述べる義務はございます。それは内閣総理大臣としての義務でございます。

 ですが、内閣総理大臣としての義務と自民党総裁、これは別でございまして、これは御了解いただけると思いますよ。ここは内閣総理大臣としての立場であって。そこで、では、あなたは自民党綱領についてここで説明してくださいと言われても、これは普通は説明できないわけでありますが、例えば、自民党総裁として綱領を説明しろと。それは自民党総裁として説明することはできますが、内閣総理大臣としては基本的に答弁……(発言する者あり)済みません、ちょっと辻元さん、冷静に。

 先ほど山尾さんもおっしゃったように……(発言する者あり)

浜田委員長 不規則発言は控えてください。

安倍内閣総理大臣 不規則発言が多いと、私のしゃべっている言葉がよく聞こえなくて、しゃべりにくいんです、すごく。だから、少し静かにしていただくと、私もしゃべりやすくなって、時間の無駄がなくなるんですよ。時間の無駄がなくなるので、ちょっと要請をさせていただきたいと思います。

 そこで、ちょっと最初に戻りますが、要するに、内閣総理大臣として私が所管する事柄については、これは述べなければいけないわけでございます。しかし、例えばあなたの個人的感想とか、さまざまなことを聞かれますね。それについては、義務としてはないんですよ。でもしかし、それは、答える場合もありますし、答えられない場合もあります。

 そこで、自民党草案についても、まさに内閣として提出する場合はそうでございます。確かに、私が自民党総裁として既に逐条解説に解説されていることをここで御紹介したことはありました。でも、その中ではまだ、憲法審査会が、先ほど、いよいよ動くという前の段階でありましたから、私は、他方、自民党総裁の立場として、機運を盛り上げるために御紹介をさせていただきましたが、これ以上は、憲法審査会においてしっかりと議論が進んでいこうという中において、私が総理大臣としての立場にあって総裁として述べるということは、まさに与党においてもこれはまとまっていないことでありますから、議論が進んでいくことに支障を来すという判断を私はしたわけであります。

 その判断について山尾さんがどのような認識を持たれたかどうかは別でありますが、私はそのように判断をした、こういうことでございます。

山尾委員 憲法と綱領は全く違うので、的外れな例え話はやめてください。そしてまた、機運を盛り上げるためとか、そういう法的な根拠にならない謎の答弁もやめていただきたいというふうに思います。

 そして、行政府の長が、国権の最高機関であるこの立法府において、総理の気分で答弁したりしなかったりするシーンを現行憲法は許していないと私は思います。

 六十三条を見てください。国権の最高機関であって内閣を監督する権能を有するここ国会には、内閣総理大臣の出席を求めて、その説明や答弁を直接聞く機会が保障されています。でも、右を見てください。自民党の憲法草案、この六十三条も変えようとしています。下の赤い文字を見てください。「ただし、職務の遂行上特に必要がある場合は、この限りでない。」これが万が一にも成立したら、答弁拒否どころか、出席拒否までできることになっています。

 これは、総理の思うがまま、総理の政治姿勢そのものではないですか。全国民の代表である私たち立法府は、総理に国民の声を届けて、そして総理の独断をただす、そういう役割が、こんな改憲草案が通ったら立法府の役割が果たせなくなるじゃないですか。これは、国民主権というまさに普遍の原理に反する改憲案だと私は思います。

 したがって、総理、私も、憲法の議論、改正の是非も含めて、総理の言葉をかりれば、はつらつとした議論をしたいんですよ。でも、そのはつらつとした議論の障害が二つあります。一つは、破綻した論理を盾にして憲法の議論から逃げ続ける総理の姿勢です。もう一つは、現行憲法のこの普遍の原理に反しているがゆえに憲法の名に値しない自民党改憲草案です。この二つの障害が除去されれば、私たちはしっかり、それこそ総理が求めている生き生きとした憲法議論ができると思いますので、ぜひこの二つの障害、総理であれば二つとも取り払うことができます。やっていただきたいというふうに思います。

 あと一分。一つお伺いします。

 法務大臣、平成十九年の司法試験、ある肢があります、選択肢。憲法九条について、政府の解釈によれば、同条によって集団的自衛権の行使が禁じられている、こういうマル・バツ式の選択肢です。法務大臣、これはマルですか、バツですか。

金田国務大臣 ただいま御指摘のございました司法試験の問題、これは、試験を実施した平成十九年当時として、当時の司法試験の考査委員が示したところに従って、御指摘のある、たしかウという、憲法九条についての政府の解釈によれば、同条によって集団的自衛権の行使が禁じられているということについては、正しい旨を公表している、このように受けとめております。

山尾委員 時間が来ているので、問題提起にします。

 平成十九年時点では、この肢はマルです、大臣おっしゃったとおり。憲法九条について、政府の解釈によれば、同条によって集団的自衛権の行使が禁じられている、これはマルです。

 では、これが、同じ選択肢が来年出たらどうなるんでしょう。

 安保法制の議論を踏まえれば、総理も外務大臣も法制局長官も、新三要件を満たして武力行使を行う際の一部が、国際法上、集団的自衛権として説明される、こう口をそろえています。マルだったものが、もし来年出たらバツになるんじゃないですか、法務大臣。

金田国務大臣 お答えします。

 司法試験の問題作成と採点につきましては、司法試験考査委員に委ねられております。

 法務大臣としては、公表されている問題及び正解の範囲を超えて、司法試験の個々の問題や内容等について言及することは差し控えさせていただきたい。

 以上であります。

山尾委員 少し法務大臣らしく、同じ答弁でもしていただきたいなと思うわけですけれども。

 私は、これは残念ながら、もしかしたら答えがバツに変わっているんじゃないか、こういう気がいたします。

 私は、司法試験に六回落ちて、七回目に受かっています。本当に合格したいという気持ちを知っています。でも、多くの法律家が今現時点においても、憲法九条に大変疑義がある、今回の安保法制、集団的自衛権、問題があると思っている中で、もし、幾ら法曹になりたくても、学問的な信条を捨てて政権に迎合しなければ法曹になれないような環境が今後できていくんだとしたら、この罪は非常に重いと思います。

 この問題、引き続き法務委員会等でしっかりと議論していきたいと思います。

 ありがとうございました。

浜田委員長 金田法務大臣。(発言する者あり)

金田国務大臣 ただいまの指摘に対しては、私から答弁を求めましたところ、委員長から指摘をいただきました。したがって、答弁をいたします。

 司法試験の独立性、中立性を確保する見地から、司法試験の問題作成と採点は学識経験を有する司法試験考査委員に委ねられているところは先ほど申し上げました。

 仮に、法務大臣において司法試験の個々の問題、内容等について所見を述べることになれば、司法試験の考査委員が独立性あるいは中立性の立場で問題作成を行うことが、趣旨を損なうおそれがあるので、答弁は差し控えさせていただきます。

浜田委員長 この際、玉木雄一郎君から関連質疑の申し出があります。村岡君の持ち時間の範囲内でこれを許します。玉木雄一郎君。

玉木委員 玉木雄一郎です。

 前回に引き続き、年金の給付を抑制する法案について、いわゆる年金カット法案について質問いたします。

 冒頭、総理の前回の私に対する発言及び同僚議員の井坂議員とのやりとりの中での発言について、まずお伺いしたいと思います。

 この年金カット法案、よほど都合が悪いんでしょう、せっかく私、建設的な提案を申し上げたと思っているんですが、どうもそれを都合よく曲解し、しかも、衆議院だけではなくて参議院でもけなすような発言をされているのは大変残念であります。

 国民の生活に大きな影響を与える議論ですから、それぞれ立場、考えはあると思いますが、冷静に議論を建設的に積み重ねていくことが私は大切だと思って提案をさせていただいたのを、私、特に気になったのは、十月四日の井坂委員とのやりとりの中でこう総理はおっしゃっています。

 これは私のことを指しているんですが、平成三十三年施行だということを御存じないから言われたんだけれどもと。当然知っています、総理。(発言する者あり)

浜田委員長 静粛に願います。静粛に願います。

玉木委員 委員長、静かにさせてください。

浜田委員長 静かにと注意しております。静粛に願います。

玉木委員 総理、平成三十三年の施行だと知らないと断言された理由を教えてください。私の頭の中が総理はのぞけるんでしょうか。

 二つの部分で成り立っていて、賃金スライドの下落については平成三十三年からの施行、マクロ経済スライドの強化については平成三十年からの施行、この二つがセットになって世代間のバランスをとる年金の抑制を行っていく、こういう法案になっていることは当然知った上で質問しました。

 加えて、先ほどやじが飛びましたが、それでも来年四月から低所得の年金者に対する対策は行うべきだと私が申し上げたのは、まさにこの年金カット法案の閣議決定をした三月、この時点では消費税の先送りは決まっていませんでした。平成三十三年の施行を前提に、安倍内閣、政府自身が、低所得者対策として来年四月から年金の加算、福祉的給付をするとまさに安倍政権も考えていたから、私は、約束したとおり、国民の期待もあるから、来年四月から低所得年金者に対する対策は行ってはどうかということを極めて建設的に提案させていただいたわけであります。

 それを何か揚げ足をとって、平成三十一年十月から消費税が上がるから平成三十三年には間に合う、そんなこそくな議論はしていません。

 特に、マクロ経済スライドが長く特例水準で発動されなかったので、調整がきかなかった時代が長く続きました。それがようやく、三年間の時を経てことしからマクロ経済スライドが適用されるようになって、マクロ経済スライドというと難しいんですけれども、要は、年金を引き下げることが可能になることがことしから動き始めたんですね。

 だから、来年四月から低所得者に対する対策もやらなければいけない。これはまさに、この三月に年金カット法案を安倍政権が閣議決定したときに、皆さん自身が平成三十三年からの施行を前提に来年四月から低所得年金者の対策をすると決めたんじゃないんですか。お答えください。

安倍内閣総理大臣 冷静に議論されるとおっしゃったんだから、余り声を荒げない方がいいと思いますし、冷静に年金の議論をするのであれば、やはり厚生労働大臣を呼ぶ……(玉木委員「いや、総理の発言について聞いているんです」と呼ぶ)いや、厚生労働大臣を呼ぶべきなんですよ。やはりそうやらないと。もちろん今、私の議論については、私が申し上げたことについては私はここで述べますよ。でも、年金について深い議論をするのであれば、通常はやはり厚生労働大臣を呼ぶべきなんですよ。

 午前中も、村岡さんは農林大臣を呼んでいましたよ。正々堂々と、SBSの話をするのも、村岡さんは呼びましたよ。村岡さんは、呼ばずに、全部私に質問もできますよ。でも、村岡さんは呼んで、堂々と議論したじゃないですか。見解は違いますよ。でも、農水大臣とともに議論していた。それを、今回、厚労大臣を呼ばずにというのは、私はおかしいと。

 そこで、今、玉木さんのこういうレッテル張り、例えば年金カット法案とかああいうこと自体が……(発言する者あり)いや、済みません、これは厚労大臣を呼んでいただければ簡潔に答弁しますが……(発言する者あり)

浜田委員長 不規則発言は控えてください。

安倍内閣総理大臣 私は総理大臣です。全体を見て全体をお話ししますから、ちょっと長くならざるを得ないんですよ。

 つまり、年金カット法案とかいうこのレッテル張り自体は、この年金に対して冷静な議論を封じ込めてしまうんですよ。そういう議論はお互いにやめるべきだろうと思いますよ。

 その中において、玉木さんはこうおっしゃっているんですよ。

 総理に質問、提案したいと思いますと。年金カット法案をやるんだったら、消費税一〇%の引き上げの際に予定されていた低所得者に対する年金の加算、月額五千円、年間最大六万円、これを予定どおりやるべきではないですか、こう言っているんですね。そして、消費税増税先送りを決めた後の自民党の参議院公約にもこう書いています、年金対策として、福祉的給付金などの対策を実施しますと明言していますと。

 何とか財源を見つけてきて、こういう、年金を減らす、物価が上がっているときでも年金カットする法案を通すのであれば、低所得者に対するしっかりとした税財源を手当てして、安定財源を充てた年金加算、福祉的給付、これは予定どおり四月からやるべきではないですか、こうおっしゃっているわけであります。

 つまり、セットで四月という、実際にまさにそれはセットでやるということは、これが施行されたということととるのは当然じゃないですか。

 その後、井坂さんのときに塩崎厚労大臣が立って、それは三十三年ですよと言ったら、やや印象としては、ちょっと調子が狂った感じはあったんですよ。我々はそう思いましたよ。ここにいる皆さんもそれで静かになったじゃないですか。静かになったのは事実ですよ。

 つまり、そこで、玉木さんの理論であれば、まさにそれを施行した以降でなければ、だって、これはいわば物価がプラスだったときに賃金がマイナスになったときにダメージが確かにありますから、そのときにまさにこの給付金が行くということに意味があるわけでありまして、それをやっていない前から行くというのは論理としては少しおかしいのではないか、私はこう言わざるを得ないわけであります。我々はそう思ったから、それはおかしいのではないかと。あそこの場にいた人たちは大体私と同じ心証を得たのではないのかな、こう思いますよ。

 こちらにおられた民主党の方々も、その瞬間、塩崎大臣がこれは平成三十三年ですよというお答えをしたときには静かになったのは事実なんですよ。そのときの映像を見ていただければこれは明らかなんだろう、こう思いますよ。

玉木委員 いや、総理、ちょっと情けないですよ。

 私は、別に隠すことなく、施行期日は当然知っている、だから来年四月からと言ったんです。私は、時期のセット論は全く言っていません。全く言っていません。

 もっと言うなら、総理がおっしゃるとおり、物価がどんどん上がっていく、賃金がどんどん上がっていくんだったら、賃金スライドの徹底の方よりも、多分抑制できいてくるのはマクロ経済スライドのキャリーオーバーの強化の方です。これは平成三十年の施行ですから、三十一年の十月に消費税を上げたのでは間に合いません。そういうことも全部セットでわかった上で、私は、来年四月から低所得者対策は予定どおりやるべきではないですかと申し上げた、提案したんです。

 それを何かつまみ食いでいいところだけとって、玉木は知らないとか、平成三十三年施行だということを御存じないと断言されているのは、総理、申しわけありません、私の名誉にかかわります、発言を取り消してください。

安倍内閣総理大臣 我々はそうとったわけですよ。だって、平成三十三年から施行するんだったら、何で来年四月から六万円の給付をするんですか。

 あのときの議論は、いわば次の世代との中において不公平を解消しなければいけない、そこはわかりますよと玉木さんはおっしゃったんです。それだったらやはり低所得者に対する配慮をすべきだ、インフレで物価が上がっているのに賃金が下がっていたらそれが下がるというのは年金受給者にとっては厳しいじゃないか、こうおっしゃった。厳しいじゃないかという中において、それを補填するために六万円を出す。これは論理的にそうなんじゃないですか。その前からやっているのであれば、約五年も前からそれはやるということになってしまうわけですよ。

 ですから、それはまさに、文脈からいって、我々は、消費税を引き上げなかったからこの六万円が給付できなかった、給付ができない中でやるのはおかしいというのが、誰が聞いたって、六万円給付ができなかった、つまり、消費税の引き上げを延期したからできない中においてこれをやるのはおかしい、やるんだったらセットでやろうとなれば、施行と給付を合わせるというふうに考える。ですから、来年四月からやるのであれば四月から給付しよう、我々はそうとったんです。大体みんなそうとりましたよ。

 だから、次の井坂さんのときに塩崎さんが、これは平成三十三年の施行ですよと反論したら、あのとき何か一瞬静かになったじゃないですか。そのときからいえば、当然それは、我々がそうとるのは当たり前なんじゃないですか。

 あのときに、だから私も……(発言する者あり)言いわけというか説明ですね。その後私も、やはりそう思うのは当然だ、こう思ったわけであります。

浜田委員長 速記をとめてください。

    〔速記中止〕

浜田委員長 速記を起こしてください。

 内閣総理大臣、よろしくお願いいたします。

安倍内閣総理大臣 翌日の衆議院において、そのとき、もしかしたら、この施行は平成三十三年だということを失念しておられたか御存じなかったかもしれませんが、これは平成三十三年にスタートするわけでありますから、御承知のように、消費税一〇%への引き上げは三十一年に行いますから、それを行っていけば、それは既にセットされているんですよ、提案どおりなんですよ、平成三十三年ということを恐らく御存じなかったからこういう御提案をされたのではないかというふうに思うわけでありますというふうに答えているわけでございます。

 これは衆議院においての議論でございます。ここは衆議院でありますから、このように申し上げたわけであります。

玉木委員 総理、そこは結構です。まさに断定されずに、かもしれませんが、恐らくという言葉を使っておられますが、そのしばらく後に出てくるところを私は問題にしています。平成三十三年施行だということを御存じないから言われたんだけれどもと。断定しているところは取り消してください。

安倍内閣総理大臣 ここのところは、断定したのは確かにこれは言い過ぎかもしれませんので。しかし、そう思ったというところはそのとおりでございます。

玉木委員 年金は、国民にとって本当に大切な話です。私もできるだけ建設的な提案をしているので、とにかく、事実の確認もせずに思いつきで他人を批判するのはやめてください。(発言する者あり)

浜田委員長 静粛に願います。不規則発言は控えてください。

玉木委員 次に、前回の少し復習にもなりますが、生活保護、特に高齢者の生活保護世帯がふえています。

 全生活保護の中で高齢者世帯の割合が非常にふえておりまして、これは調べましたら、厚生労働省に資料をいただきました、特に、今は生活保護の半分が医療扶助になっていますが、医療扶助、住宅扶助を含んだ生活保護の事業費ベース、これを一人当たりで割りますと、今、平均額が十四・一万円なのに対して、国民年金の平均支給額は五万四千円、厚生年金が十四万八千円となっています。

 私は、こういう状況で単に年金をカット、カットしていくと、結局、生活保護、特に高齢の生活保護世帯がふえるだけになるのではないのかということを非常に心配するわけであります。

 それで、ちょっと時間がなくなったので質問を飛ばしますけれども、そういう中で、パネルの三を見てください。

 今回も復習になりますけれども、今までは、物価が上がって賃金が下がるというときには、いわゆる名目下限のような考えでこれを据え置いて、さすがにめり込んで、既に今年金をもらっている高齢者の年金を下げることはしませんでした。しかし、今回は、物価が上がっても賃金が下がったときには年金をカットしていくということが新たに入るわけです。

 こういうことは大きな影響があるから、どんな影響があるんですかということをこの間ずっと聞いてきたわけでありまして、それで、同僚議員の井坂議員から、過去の十年間に仮に新しいルールが当てはめられていたとして、では実際に給付されたものとして比べてみたらどうなるんだということで一つの仮定を置いて、十年間で五・二%年金が減るという話をさせていただきました。

 これは五・二%ということなんですが、これを、同じ仮定の中で、財政検証をやった二〇一四年のモデルケースの国民年金と厚生年金の具体的な額に当てはめてみました。それが次のパネルです。

 私もこれは少しびっくりしましたけれども、国民年金でいうと、年間約四万円、月額三千三百円減ることになります。厚生年金は、年間で十四・二万円減って、月々一万一千八百円減るということになります。

 これはもちろん、今の新しい計算の中でいくと、賃金がずっと上がり続けるのでこれが機能しない、下がらないということだと思いますけれども、実際当てはめてみるとこういったかなり大きな金額になってしまうということについて、非常に心配をしております。

 この点について、やはり今後の経済動向にはよりますけれども、年金が大きく減る可能性があるのであれば、きちんとした試算を出して国民に真摯に理解を求めることが必要だと思いますけれども、総理、いかがでしょうか。試算を政府としても出されるべきではないでしょうか。

安倍内閣総理大臣 まさに、試算を出すかどうかというのは、これは厚労大臣に聞いていただきたいと思いますよ。だから、何で厚労大臣を呼ばないのか本当に私は理解できなくて。先ほどの村岡さんは立派だったじゃないですか、農林大臣としっかりと御議論をされて。

 御指摘の数字は、現在の老齢基礎年金の満額やモデル世帯の標準的な年金額について、御党が御主張している五・二%を単純に掛けて算出したものと思われますが、これは十年ですから。十年で五・二になっていくということですからね。十年でなっていくということですから。十年間でということですよ。

 それで、あたかも五%カットが決まっているかのような印象を与えるのは……(玉木委員「いや、それは言っていません」と呼ぶ)いや、今の文脈では多くの方々が、五%切られるんじゃないか、こう思ってしまうわけでありますが、これはまさに不安をあおるものでありまして、我々は、しっかりと……(発言する者あり)

浜田委員長 静粛に願います。

安倍内閣総理大臣 しっかりと、賃金が上がっていく、そういう状況をこれからもつくり出していきたい、こう考えているわけであります。

 いずれにいたしましても、今回なぜやったかというのは、前も議論いたしましたよね。これはまさに、先ほどワニの口を示されたけれども、デフレ下にあったわけですよ。デフレ下に、本来であればスライドするところをやらなかった。

 マクロ経済スライド、これはなかなかわかりにくい言葉でありまして、これは、平均寿命と年金の保険料の対象者の数とをマクロ的に数字にして、今は〇・九なんでしょうか、そういうものを引いていくということでやります。最新の数字が必要であれば、これは厚労大臣を呼んでいただかないとわからないんですが、こういうものを……(玉木委員「いや、要りません。知っていますから」と呼ぶ)いや、これは、玉木さんが知っているかどうかではなくて、国民の皆さんに御理解をいただく必要がありますから。

 このマクロ経済スライドをさせていくことによって世代間の不公平を是正していくということになって、この調整の期間をなるべく短くしていくことが求められているわけであります。そして、将来世代の基礎年金の所得代替率が、延びていけば下がってしまうんですよ。ですから、今もらっている人との差が出てくるから、それを埋めることをちゃんとやらなければいけないという中において、試算はどうなるかということについては、それはまさにこの前厚労大臣がお答えをさせていただいたわけであります。

 私は厚労大臣じゃありませんから、これは厚労大臣が所掌しておりますから、私は指揮はしますが。しかし、こういう議論をするという真面目な態度というのは、厚労大臣を呼んで深掘りした議論をするべきだろう、もっと深い議論をするのであれば。私は全体的な話はしますよ。

 そこで、それは、十月三日の予算委員会で厚生労働大臣から、いろいろな前提を置く必要があるが、何ができるかは考えていきたいという答弁があったとおりでありまして、その中でどうなっているかということを聞きたいのであれば、まさに厚労大臣をここに呼んでいただければ、今厚労大臣がどう考えているかということはお答えできたんだろう、このように思う次第でございます。

玉木委員 先ほどこれを示したときに、自民党の席からこれは十年間の数字だということのやじが出ましたが、私も正直びっくりしたんですが、これは一年間の数字です。単純に掛けたものが十年間。十年間の累積の年金額に〇・〇五二掛けて、これは一年間の数字です、それを年に落としたものですね。

 それで、今、総理が重要な答弁をされました。(発言する者あり)

浜田委員長 静粛に願います。

玉木委員 スライド調整期間を短くしていく。

 将来の負担、年金額が減ることを抑えていくということは、このスライド調整の仕組みというのは、一つのようかんをどっちかで押し出すとどっちかが減っていくような関係になるので、現役世代のものを押し出せば向こう、将来世代が上がっていく、こういう仕組みになっています。

 私も、スライド調整を短くしたらいいと思うし、将来世代のことも考えなければいけないということはイコール現役世代が一定程度減ることがその財源にならざるを得ないので、ではどれぐらいの効果があるのかということを、年金の給付の抑制をすることがこの法案の本質的な中身でありますから、しかも機械的にではありますが当てはめると、これだけの大きな減額の可能性が理論上あり得るということであれば、きちんとした試算を示すべき。

 一つ例を挙げます。私、民主党政権時代に特例水準の解消をやったときに、こういうものを財務省にもつくってもらったし、出してもらいました。麻生大臣にも聞いてもらいたいと思います。

 特例水準は、平成十二、十三、十四で本来なら下げるべきところを下げなかったので、そのままかさが上がったものがずっと続いてしまって、累計七兆円あるいは八兆円の払い過ぎがあったので、このことが将来の給付をむしろ縮めてしまうので解消しなければいけませんよということ、こういったものも実は示しながら、これは財政制度審議会なんかでもきちんと示しながらやっています。しかし、今回、同じような議論をやっているにもかかわらず、全く影響の試算がない。こういうことをやりながら給付を抑制していくことをやるのは、私は誠実ではないと思うんです。

 私はきょう、細かいことを総理には聞いていません。こういう国民の、例えば増税で負担を求める場合、あるいは給付を削るような、どちらかというと国民にとってつらいことをお願いするようなことをする際には、きちんと、こういったことになり得るんですよということを正直に真摯に示していくのが政治家の姿ではないかということを私は申し上げているんです。

 総理に伺います。細かいことは聞きません。厚生労働大臣に試算を出すように指導していただけますか。

安倍内閣総理大臣 見ている皆さんが誤解されるといけないんですが、このまさに口が開いているのは、決まったことをやらなかったことによって開いたわけであります。(玉木委員「違う、違う、全く間違っている」と呼ぶ)いやいや、プラス……(発言する者あり)今ちょっと答弁の途中ですから。

 つまり、このとき、ずっとデフレ下にあったわけなんですよ。デフレ下にあった中においてこの特例水準を出していた、維持させたわけですよ。この特例をやめて、特例水準をベースにしておられるから、特例水準から下がっていくということになっていく。

 つまり、これは特例水準ですから、この上のものは、まさに特例水準を維持して、かつ、この間、非常にデフレが進んでいたというのも事実であります。このデフレが進んでいたというところをベースにしているわけでありますから、それが直ちにそうなるんだ、五・二%減るんだということがあらかじめ決まっているかのごとくに説明されるのは間違っているんだろう、このように思うわけであります。

 先般、厚労大臣もここで、それは特例水準をベースとしておられるからそうなっていくというふうに、比べるとというふうに指摘をさせていただいたわけであります。

玉木委員 安倍総理大臣が年金制度についての理解が余りないということはよくわかりました。

 この表は、特例水準は実は全く関係ありません。実はデフレも、物価におけるデフレスライドは一部反映しています。

 上のこの差は……(安倍内閣総理大臣「それはわからない、これはやってみなきゃ」と呼ぶ)いや、だから、これは特例水準は全く関係ないですよ。特例水準があるから上にあるのではなくて、今適用されているルールと、これから、物価が上がっても賃金が下がる、あるいは賃金の下がりと物価の下がりを比べたときに、賃金の下がりまで既裁定も含めて下げるというルールを適用したら下がるという話で、特例水準があるから高くとまっているものでは全くありません。

 総理、訂正してください。これは作成された井坂委員の名誉にもかかわりますから、そこはちょっと、特例水準は関係ないということをぜひ答えてください。

安倍内閣総理大臣 だから、私が言ったのは、あのときに塩崎大臣が指摘したのと同じように、この時期は特例水準だったということを申し上げたわけでありまして、後で見ていただければそうなんですが、あの時期は特例水準だったということであります。

 ですから、あのときは特例水準だったということと、だから、そこに問題点が出てきたのは事実であります。そこをやはり見なきゃいけないのであって、特例水準を続けてきた結果、マクロ経済スライドの調整期間は延びざるを得なかったのは事実でありますから。

 また、我々がやろうとしている改正をやらなければさらにそれは延びていくという話をさせていただいているわけでありまして、これはまさにそこをちゃんと議論しなければいけないわけであって、みんながそう簡単に、現役世代にとってもうまくいくし、今の受給世代にとってもうまくいくというのはなかなかないんですよ。大切なことは、持続可能性をしっかりと維持していくということと、なるべく将来世代と現在の受給世代とのバランスをやはり考えていくということでしか答えが出ないわけであります。

 そこで、玉木委員、では、私が年金制度に詳しくないと言うのであれば、厚労大臣を呼んでくださいよ、詳しくないというまさに批判をされるのであれば。だって、私は厚労大臣ではないんですから。多少年金のことは、それはそれなりに私も社会部会長をやっていましたから知っていますけれども、そういうちゃんとした議論をするのであれば、そういうことを言うのであれば、まさに厚労大臣を呼んでいただきたい。どうして呼ばないのかなと私は思いますよね。専門家だと反論されるのが嫌なのかと思いますよ。それか、ひたすら総理大臣に答弁させて疲れさせようというのか。

 ですから、そこはやはりちゃんと考えていただきたいし、我々も、野党のときだって、深い議論をしようとすれば、みんな大臣をちゃんと呼んでいましたよ。

玉木委員 総理は、いや、特例水準があったから下がらないと言う。特例水準を苦しい中で下げることを決めたのは我々民主党政権です。だから私は、あの表もつくったし、国民の皆さんに年金を引き下げるのかといろいろな批判もいただきながら、でも、将来世代に対する責任を果たさなきゃいけないといって、特例水準の解消を死に物狂いでやったんですよ。それを全部自分の手柄のように言うのはやめていただきたい。

 もう一つ、私、今、厚労大臣に聞いたらいいという答弁を聞いてびっくりしましたよ。国民年金で四万円も減ります、厚生年金で十四万円も減りますというような話をしているのに、自分はよくわからないから厚生労働大臣に聞いてくれと言うのは、総理、余りにも無責任じゃないですか。我々は、だから、こういう影響があるかもしれないからという試算の対案を出していますよ。総理、批判ばかりじゃなくて、政府の試算の対案を出してくださいよ。

安倍内閣総理大臣 私は一回も、特例水準を出したのは私の手柄だと今一言でも言いましたか。全く言いませんよ。(玉木委員「もうそんなつまらない議論はやめてください」と呼ぶ)いや、つまらない議論って、あなたはそうやって批判したじゃないですか、今私を。した以上、私はそれを取り消せなんて子供じみたことは言いませんよ。そんな子供じみたことは言いませんけれども、でも、私は今一言も言っていませんよ。我々の政権の手柄だと一言でも言いましたか。

 それを事実として、私は特例水準だったということを言っているだけじゃないですか。特例水準をいつ解消したかとも言っていないでしょう。特例水準を、確かに解消を決めたのは皆さんですが、実施したのは私たちですよ。ここで言わせていただければ、実施するというのも大変ですよ、そのときに高齢者はみんな自分の年金のあれを見るわけですから。

 さんざん私に対しての誹謗中傷をしているんですから、少し反論もさせていただきたいと思いますよ。言っていないことを言ったと言うのはおかしいということは言わせていただきたいと思いますよ。

 それと、やはり年金というのは冷静に議論するべきなんです。そこで……(発言する者あり)私は大体答えているじゃないですか。大体答えていますが、深掘りをしていくのであれば厚生労働大臣を呼んでくれと言うのは当たり前ですよ。だって、ほかの質問者は、維新の方だって共産党だって呼んでいますよ、担当大臣。玉木さん、あと山尾さんぐらいなものですよ、呼ばないのは。大串さんも呼ばないのかな。

浜田委員長 総理、時間が来ておりますので、手短に願います。

安倍内閣総理大臣 だから、私はそこがわからなくて、本来であれば……(発言する者あり)

浜田委員長 静粛に願います。不規則発言はやめてください。

安倍内閣総理大臣 私だって、私が質問者だったら、大臣とやって、大臣にしっかりと答弁していただきたいと思います。

 そこで、試算については、試算について聞きたいのであれば、前回お答えをしたのは厚労大臣ですから、厚労大臣に聞いていただきたいというふうに思います。

玉木委員 もう少し、国民生活に大きな影響がある話ですから、丁寧に、試算も出して、冷静に議論を深めていただくことをお願い申し上げまして、質問を終わります。

浜田委員長 この際、大串博志君から関連質疑の申し出があります。村岡君の持ち時間の範囲内でこれを許します。大串博志君。

大串(博)委員 民進党の大串博志でございます。

 私も、先ほどの審議に引き続いて、年金の問題を行わせていただきたいと思います。私は厚労大臣は呼んでおりません。ぜひ総理大臣に答弁をいただきたいというふうに思います。

 ほかの方がどうこうと言われましたけれども、私はほかの質疑者と違いますから、私は私なりの考えで質疑させていただきたいと思いますし、かつ、年金をなぜ総理に聞くかというと、総理に聞いてほしいという声が多いからですよ。非常に多いんです。安倍総理は私たちの大切な年金を一体どこに持っていこうとしているんだろうかという声が非常に多いんです。

 くしくも、安倍総理のもと、あるいは安倍総理が自民党内でリーダーシップをとられているもとでは、年金の問題がこれまでも非常に大きな課題となって、選挙の期間を迎えたこともありました。そういったことも国民の皆さんの脳裏にあるのか、安倍総理は年金をどう考えていらっしゃるんだろうかと聞かれることが極めて多いんです。

 かつ、安倍総理自身、年金に関しては、先ほどおっしゃいました、社会部会長もやられていたということで、積極的な発言もされていらっしゃいます。こういったことも踏まえると、かつ、年金の問題は非常に国家財政にも大きな影響を与えるし、国民の生活にも大きな影響を与える。やはり、総理が大きな指針をどう考えているか、国民の皆さんが気にするのは当然だと思いますよ。

 そういった意味で、年金制度の根幹に当たる問題、これは厚労大臣だけではなかなか判断のいかない問題だと思います。こういった問題を中心に問わせていただきますので、総理、どうぞよろしくお願い申し上げます。

 まず、現行の年金のフレームワークを確認させていただきたいと思います。

 現在の年金のフレームワークは二〇〇四年にでき上がっています。二〇〇四年の年金改革法、私たちは反対しました。強行採決でこれは決められました。

 ここにあるのは、当時の、二〇〇四年の春の自民党さんのパンフレットです。ここに、当時の小泉総理と安倍幹事長ですよね、写られています。この三というところで、「実行三 年金制度改革 百年先まで持続する年金改革法案を提出しています。」というふうにここに書かれていて、この後、これは強行採決されました。その後、参議院選があって、幸い私たちはその参議院選に勝つことができました。

 百年先まで持続する年金改革法によって、これは、どういうふうな内容で、どういう意味で百年先まで持続するものであったのか。総理、骨格を教えてください。

安倍内閣総理大臣 繰り返しになりますが、年金等について、今の御質問は大きなところですから私は当然お答えをいたしますが、基本的には、深掘りしていくのであれば、担当大臣をみんな呼ばないということになれば、集中審議でほとんど私が全部答えるということは、これはやはり能力を超えますよね。そうすると、誠実な答弁というか、正確な答弁もできなくなっていくわけでありますし、確かに私も社会部会長をやっていましたが、これは十七年ぐらい前の話でございますし、現在の事実関係等を一番把握しているのは厚労大臣ですから、それは厚労大臣にやはりしっかりと聞いていただきたいと思います。

 でも、この御質問は平成十六年の改革でありますから、これは私もよく覚えておりますので、お答えをさせていただきます。

 日本の年金制度は、平成十六年改正において、これは大変な議論になりましたが、若い世代の負担が重くなり過ぎないように、将来の保険料の上限を固定し、その範囲内で年金の給付水準を調整するマクロ経済スライドを導入したわけであります。これも随分議論になりました。

 このマクロ経済スライドについては、御党が政権をとっている間も維持をされたわけでございますが、五年ごとの再計算において、いつも出生率が、上位推計、中位推計、低位推計で、大抵これが低位推計に外れるということが繰り返された中において、年金に対する信頼性も随分毀損されてきたのではないかという議論のある中に、先ほども申し上げましたが、新たに平均寿命といわば年金の保険料を払っている人口とを加味したマクロ経済スライドを入れて、給付の調整を行うことによって安定性を維持したわけでございます。

 このマクロ経済スライドを着実に実施するなどにより将来にわたっての給付水準を確保する仕組みとしたわけでありますが、制度を持続可能なものとしていると考えます。その上で、少なくとも五年に一度、人口や経済の長期の前提に基づき、おおむね百年間という長期的な給付と負担の均衡を図るための財政検証を行っているわけでありまして、平成二十六年の財政検証においては、日本経済が再生し、高齢者や女性の労働参加が進めば将来の所得代替率は五〇%を上回ることが確認されているわけであります。

 したがって、経済再生や働き方改革に全力で取り組むとともに、今般の年金改革法案のように、将来の給付水準の確保のため必要な不断の見直しを行っていくのが責任ある対応である、このように考えております。

大串(博)委員 今、百年先まで持続するという意味はこういう意味だということをお述べいただきました。すなわち、保険料の上限は固定する、そしてマクロ経済スライドという制度を入れて給付を調整する、五年に一度財政の検証を行いますと。

 さらに、触れられはしませんでしたけれども、必要な給付は確保するという意味、それは所得代替率を五割確保するということですね。百年間という期間で安定する、これは百年後に積立金が給付の一年分残っているということですね。そういう仕組みだということを今述べられました。そういう意味で百年先まで続く。つまり、マクロ経済スライドもかけて給付をずっと調整していった結果、百年後には積立金が一年分残っているという意味での安定ですね。

 かつ、私が質問する先のことも答えていただきましたけれども、現在も百年先まで確実に持続するという形になっているんですかということを次に問おうと思っていたんですが、それもあわせて今お答えいただきました。

 財政検証がこの後二回行われています。ここにあるように、財政検証が、一番最初の財政再計算が法律改正時、そして二回目、三回目、こういうふうに行われている。この一番直近、一番下にあります平成二十六年の財政検証を通じても、百年先まで持続する制度であることが確認されているということを言われました。

 つまり、ここに書かれているのが、先ほど総理が一番最後に言われた経済がうまくいっているケース、つまり経済再生ケースのケースEというものをここにとっています。先ほど総理が答弁されたケースです。その場合でも所得代替率が五〇%、つまり現役世代の所得の五割を確保するようなレベルを維持できますよという意味で百年間安心の制度となっております、そういう答弁でありました。

 ちょっとフリップをかえまして、今回政府が提案しているいわゆる年金カット法案ですけれども、今回何がどう変わるかといいますと、これまでの法律に比べて、四番と五番のところが新しくつけ加わるんですね。すなわち、物価の伸びと賃金の伸び。

 御案内のように、年金を受け取るとき、裁定のときといいますね、六十歳から六十五歳、これから年金を受け取りますよというときの年金の基本的な額は賃金スライド、賃金の額で決まってくる。年金を受け取ることが決まった御高齢の皆様は、毎年毎年の年金の更改は物価によって決めていく、つまり物価によって決まっていくことによって購買力が維持される、こういった考え方でなっていた。これは根幹です。

 総理、今回の審議の中で私はあれっと思ったんですけれども、物価にスライドする、賃金にスライドする、このスライド制は実は年金制度の根幹なんですね。全く小さい話じゃないんです。だから総理に答弁を求めているんです。

 今回、その根幹をさわります。四と五、賃金がマイナスの場合。これまでは、賃金がマイナスである場合には、そこまでは下げない、物価程度までしか下げない、あるいはプラス・マイナス・ゼロのところまでしか下げないという程度にとどめておった。それを、今回、四と五、賃金がマイナスの場合には、マイナスの賃金のボトムのところまで下げるという提案になっているわけですね。

 私はこれを見て、あれっと思ったんです。年金は百年安心になったんじゃなかったっけかな。二年前の財政検証の際、年金は百年安心となったんじゃなかったっけかなと私は思ったんです。

 ちょっと先ほどのフリップに戻ってみますと、これが過去三回の年金財政再計算、財政検証です。一番直近は一番下にあります。

 御案内のように、二〇一四年から始まってずっと数字がありますが、名目賃金上昇率のところを見てください。毎年、二〇一四年から始まって、一・〇、二・五、二・五、三・六、三・七、三・八、三・九、三・九、四・二、四・一、二・五、二・五、二・五。どれもきれいにプラスの領域なんです。しかも、極めて高いプラスの領域なんです。

 名目賃金上昇率というのは、年金財政の安定に対しては極めて重要な指標です。すなわち、名目賃金上昇率が高ければ年金財政は安定します。しかし、これが低かったりマイナスになったりすると年金財政は極めて厳しく傷みます。そういう意味で、高い数字が並んでいる、これは将来年金は大丈夫なんだなと思わせるシグナルです。これをベースに、二年前の財政検証のときには、所得代替率、現役世代の所得五割を守れる、百年後には安定している、そういうものだというふうな説明がなされました。

 しかし、今回提案されている法律は、先ほど言いましたように、賃金がマイナスになるということを前提としている法律です。明らかに矛盾しているんです。

 年金が百年安心だということで二年前に出されたこの数字、全て名目賃金の上昇率はプラスの領域。しかも、極めて高いプラスの領域です。これが守れなかったら、年金財政は百年安心とは言えないんです。にもかかわらず、今回、賃金がマイナスのことが起こることを前提とした法律が出てきている。これは明らかに矛盾しているんじゃないかというふうに思われますが、総理、ここについての御説明をいただきたいと思います。

    〔委員長退席、葉梨委員長代理着席〕

安倍内閣総理大臣 財政検証の前提について説明しろという、そういう細部にわたるのであれば、これは繰り返しになりますが、本来であれば厚労大臣に聞いていただきたいと言って私も下がりたいところでありますが、審議がとまりますから私がお答えいたしますが、賃金が下がることを前提にしているわけではありません。

 その上で、先ほど来、長いという御批判もございましたから、そこで端的に申し上げれば、非常に長期にわたって運営される公的年金制度は、持続可能なものであることを確実にするためにも、支え手である現役世代の負担能力に応じた給付を行う仕組みにしておくことが必要でありまして、これは大串委員も玉木委員も賛成していただけると思いますよ、これによって世代間の公平性が確保され、年金制度に対する若い世代の信頼を得ることができるということであります。

 今回の改正法案では、改正を行う年金額改定ルールの見直しについても、現役世代の負担能力に応じた給付を行うことで将来世代の給付水準の確保を行うものであり、若い世代が安心できる年金制度を構築することにつながるものでありまして、もちろん、もとより、私たちとしてはデフレ脱却をして賃金を上昇させていくということで政策を進めていくわけでありますし、我々はそうなっていくものと期待をしているわけであります。

 しかし、経済においてはさまざまな出来事が起こるわけでありまして、そういう出来事が起こった中においても、今私がるる御説明したこの大枠が崩れないようにするためにはさまざまなケースにおいて前提をしっかりと置いておく必要があるわけでありまして、私たちだってこんな前提ということにはもちろんしたくないし、したくはないわけですよ。それは皆さんと基本的に同じなんですね。

 これは今、それは、皆さんが年金カット法案というようなレッテルを張るものですから御批判を浴びます。ですから、我々だって批判を受けたくなければ目をつぶってそんな改正をしなければいいわけでありますが、それはまさに持続可能性を毀損することにつながってしまうわけでありますから、我々はまさに逃げずに、正面から向き合いながら、今回、国民の皆様にこの法案を提出させていただいているところでございます。

 ですから、いわばEのケースでもそうなっていないとおっしゃっておられますが、しかし、まさに予測どおりには経済というのはそう簡単にはならないわけでありまして、世界経済の影響も受けるわけでありますから、そこのところの中において、一応そういうケースにおいても年金の持続可能性をしっかりと維持したということで御理解をいただきたい、このように思います。

大串(博)委員 財政検証は、そんなにいいかげんなものであっては私はいけないと思うんです。

 ケースEのケース、一番下ですね、このケースは経済がうまくいっている、労働参加率は低い。労働参加率が低い見通しの上でも、所得代替率は平成五十五年には五割を確保し、百年間維持できるというのが、ぎりぎりのところの、ある意味年金財政が百年もちますというところの二年前の結論だったわけですよ。この前提が崩れると、いいですか、所得代替率が五割を維持できるという前提とか、百年後に積立金が一年分残っているとかの前提が崩れちゃうわけです。

 これは、しかも、総理、法律に書かれていますからね。まさに総理が先ほど胸を張って、幹事長時代に改正をした、あの法律の中に、政府は所得代替率五割を確保しなければならないと。法律に書かれていますからね。しかも、百年間で均衡しなければならないと法律で書かれていますからね。そんなに生易しいものじゃないんです。

 だから、私は総理の認識をきちっと確認したいんです。本当にこのような賃金上昇率できちんといくことによって年金は百年安心ですよと私たちは思っていていいのか、それとも、新しい法案に書かれているように、賃金上昇率がマイナスになるという状況があるのか。その認識はきちんと聞いておかないと、どっちを総理が考えていらっしゃるのかわからないから。

 端的に聞きます。賃金上昇率がマイナスになる、これから直近で、あるんですか、ないんですか。

    〔葉梨委員長代理退席、委員長着席〕

安倍内閣総理大臣 まさに百年安心というのは、長い百年というスパンで見て、平成十六年の改正でマクロ経済スライドを入れましたね。そこで、五年ごとの年金再計算において予測の出生率が中位推計ではなくて低位推計に外れていくという中で、これで大丈夫かという大きな不安があったんですね。果たして持続可能なのか、若い世代は将来年金がもらえるのか、もらえないものを保険料を払うのはばからしいねという雰囲気があったのは事実なんですよ。そこで、マクロ経済スライドを導入した。

 このマクロ経済スライドも、これは一%物価が上がっても〇・一%しか年金が上がらないという結構厳しい仕組みではありました。これは野党に反対をされましたが、それを入れました。そして、積立金を少しずつ崩していってという説明を大串さんはされたわけでありますが、これについては変わらないわけでありますし、今回の改正によってより世代間の公平性も確保されていくわけでありますから、公平性を確保していくということは、年金の保険料もしっかりと、では自分たちも払おうという気持ちにもつながっていくわけでありまして、年金の安定性には寄与する。

 そこで、賃金上昇率等々については、今のさまざまな所与の条件においてはまさにお示しをしているとおりでありますが、当然それは、財政検証のさまざまな前提を置いてお示しをしているとおりであります。しかし、経済においては、リーマン・ショックのようなこともありますし、単年度においてそういうことが発生しないと私は言い切れる自信はないわけであります。

 そうなったときにまた、年金において、本来ある程度調整しておかなければいけないことを調整しなくて、それは調整しなかったことによって結局また将来世代にはね返るわけでありまして、先ほど申し上げましたけれども、基礎年金においては将来世代の所得代替率は低くなっていくわけでありますから、それはそのときに備えて、さまざまなケースに一応備えておくというのは、これは結局、今皆さんが年金カットとか言っている、そうならないように我々は力を入れていくわけでありますし、前提ではそうなっておりますから、多くの方々には御安心をいただきたい、こう思う次第でございます。

大串(博)委員 つまり、自分の力の及ばないところで賃金上昇率がマイナスになることはあり得るということですか、総理。

安倍内閣総理大臣 年金の制度というのは、それは当然そういう仕組みにしていて、御安心をいただきたい。

 年金の制度というのは、これは大串さんも御承知のように、徴収した保険料と、入れる税金と、あと積立金がありますから、それでお支払いをするしかないわけでありまして、それ以外には魔法のつえはない中において、さまざまな事態において調整できるようにしておかなければいけないというのが、今度の……(大串(博)委員「賃金上昇率がマイナスになることがあるか」と呼ぶ)ちょっと、今私がしゃべっているんですから、まずしゃべり終わらせていただいて、また質問していただきたいと思いますが。そこで、そういう制度にしていく。

 賃金上昇率については、これはまさに、お示しをしているところにおいては、前提条件がどうだったかというのは、細かいことについては担当大臣を呼んでいただかなければいけないと思いますが、しかし、経済というのは、世界経済でさまざまな出来事が起こりますからね。ですから、そうなったときに、そのときにまた年金法を改正するということでは追いつかない場合もあるわけでありますから、今のうちにこれはつくっておく。しかし、そうならなければそれは発動されないだけの話であって、その前提というのはこれらが絶対起こるということでつくっているわけではなくて、万々が一そういうことが起こったときにはそうやろうということであります。

 我々は、物価が上がって名目賃金が下がっていくということを前提に経済政策を考えているわけではなくて、デフレから脱却しつつあり、今、名目賃金が重要だとおっしゃったですよね。名目賃金というのは、まさにこれはデフレから脱却をしていくということが名目賃金を上げていく上においても大切ではないか。今やっとデフレではないという状況をつくり出しましたから、後はしっかりとこの名目賃金が力強く上昇していく状況をつくっていきたい、こう思っております。

大串(博)委員 今、総理、万々が一、賃金がマイナスになった場合とおっしゃいました。もしそういう認識であられるのであれば、今回、法律として、賃金上昇率がマイナスのときに年金を切るような法案を万々が一のために本当に出す必要があるんでしょうか。

 だって、先ほど玉木さんが示されましたように、国民の皆さんにとって年金が何万円と減らされるような内容ですよ。国民年金で年間約四万円、厚生年金で十四・二万円、これだけ減るかもしれないということが言われているような、国民生活にとっては極めて大きな影響を持ち得る年金カット法案ですよ。

 それを、賃金上昇率がマイナスになることが万々が一あるかもしれないから、それに向けて今用意しておく必要というのは本当にあるんでしょうか。万々が一の準備が本当に必要なのかどうか、そこが私はよくわからないんです。万々が一ということであれば、まさにそういうことが本当に起こることがより確実になってきてから考えたらいいんじゃないかと私は思いますけれども、いかがでしょうか。

安倍内閣総理大臣 先ほど来、ワニの口のようなものをお示しいただいたのは、リーマン・ショックを含むああいう大きなショックがあり、かつ、厳しいデフレの中にあったあの十年間の状況をお示しいただいたわけでありますが、今はデフレではないという状況、名目GDPと実質GDPがとうとう名実逆転したのは事実でありまして、名目もそして実質も順調に上がっているのは事実でございます。

 ですから、我々はそれをしっかりと維持していきたいと思いますし、維持していかなければならない。そのための政策を総動員して、また補正予算もそのための補正予算でありますが、しかし、我々が進めている経済政策がそうだったら、年金において、さまざまなケースで、では、このケースは国民の皆様から御批判もあるし、高齢者の皆さんから批判があるから考えるのをやめておこうというのは、やはりこれは責任ある態度とは言えないと思うわけであります。

 我々としてもそれはなかなかつらい話なんですよ、正直申し上げて。ここで説明をするのも、これは世代間の不公平さをなくしていかなければいけないというお話をして理解を求めているわけですから。それは、カットしなくていいんですよと言えば一言で済みますからね、皆さんが言っているようなことは。でも、それによってまさに年金の安定性が損なわれるわけでありますから、我々は真面目に責任感を持って議論をさせていただきたい、このように思う次第でございます。

大串(博)委員 今、賃金上昇率がマイナスになることが万々が一あるかもしれないからこの年金カット法案を出させていただきましたという説明ですけれども、国民にとってみると、万々が一のために、いつ自分たちの年金が予想以上に切られるかもしれない、何万円と切られるかもしれない、そんな法律を出されたらたまらないですよ。

 さらに申しますと、総理、万々が一、賃金上昇率がマイナスになる可能性があるかもしれないからと言われましたが、本当にそうですか。足元を見てみると、万々が一、賃金上昇率がマイナスになるなんという状況ではとてもないじゃないですか。

 厚生労働省からもらった資料によりますと、賃金上昇率がマイナスになっているケース、近年めちゃくちゃ多くありますよ。十二年前の年金法改正以降の、十二年間の資料を出してもらいました。十二年間あるうちの七回は賃金上昇率がマイナスじゃないですか。まさにことしもマイナス〇・二。マイナスじゃないですか。

 すなわち、先ほど総理は、万々が一、将来、賃金がマイナスになっちゃうこともあるからそれに備える、責任ある態度だなんて格好いいことを言われましたが、本当の事実のところは、この年金法改正以降ずっと、想定された賃金の上昇が達成できなくて、ゼロもしくはマイナスの連続連続、年金財政はもう計算外の破綻状態、これはいかぬということで、極めてその場しのぎ、小手先、場当たり的な対応で、国民の年金を四万円も切るような年金カット法案を出したんじゃないですか。違いますか。

安倍内閣総理大臣 二十六年、二十七年についてはプラスになっているわけでありますが、今おっしゃった期間は、先ほど申し上げましたリーマン・ショックも含めて、民主党政権時代も含めて、ずっとデフレの中に沈んでいた時代を申し上げているわけであります。

 デフレが続いていく中において、マクロ政策としてしっかりとデフレから脱却しようという強い意思を残念ながら持っていなかったわけでありまして、ここで我々は、まさに政策を、三本の矢でもって、デフレからまだ脱却はしていませんが、デフレではないという状況をとうとうつくり出すことができたのは事実であります。名目GDPと実質GDP、まさにこの名実が逆転していた状況を相当久しぶりに正常に戻すことができたのは事実で、それは事実ですから、これはお認めいただけると思います。

 確かに、平成二十八年度は賃金変動率がマイナス〇・二%であるのは事実でございますが、ちょっとここから聞いていただきたいんですが、しかし、平成二十八年度の賃金変動率には、厚生年金の保険料の上昇による可処分所得の減少分、マイナス〇・二%が加味されております。この影響を除けばゼロとなるわけでありまして、今回の賃金の動向に応じた年金額改定ルールの見直しが施行される平成三十三年以降は、保険料引き上げの影響は生じないわけでございます。この影響を除くと、物価プラス、賃金マイナスのケースは平成十七年度以降は存在をしていないわけでございまして、これは申し上げておきたいと思います。

 ですから、この影響を除けば平成十七年度以降は存在をしていない。かつ、平成三十三年度以降は保険料引き上げの影響は生じないわけであります。加えて、物価変動率がゼロで賃金変動率がマイナスの年度は、平成二十年度と平成二十五年度の二度のみでございます。

 我々もこういう状況が生じないように経済運営に全力を傾けていきたい、こう思っている次第でございますが、いずれにいたしましても、我々もそういう状況にしたくないというのは、私たちがそう思っているのは大串さんも同意される、しかし、万が一そういう事態が起こっても年金制度の持続性が毀損されないようにしていくというのが私たちの責任であろう、こう考えているところでございます。

大串(博)委員 年金に関する国民への説明というのは正直であるべきだと私は思うんです。

 今回の年金を減らす法案、万々が一のためと言われましたけれども、私はとてもそうは思えません。今、数字を言われましたけれども、微々たる変化のみであって、賃金上昇率がゼロ近傍であることは変わりないんですよね。

 かつ、この資料を見ていただきますと、よくわかることが一つあるんです。一番上の平成十六年の財政再計算を見てください。賃金上昇率、左から見ていただくと、〇・六、一・三、二・〇、二・三、二・七、これも高い数字をずっと続けている、二・一、二・一です。ちなみに、実績は悲惨なものです。マイナス、ゼロ近傍、こんなものばかりですよ。つい最近に至るまで、ほとんどこの名目賃金上昇率は達成されたことがないんです。

 五年後の財政検証を見てください。何でこれで財政検証が成り立つのかなと、私は不思議に思っていた。でも、この五年後の財政検証の際にも、年金はもちますという答えになった。何でかなと思っていたら、よく見てみたら、名目賃金上昇率、三・四、二・七、二・八、二・六、二・七、二・五と蹴上げているんですよ、水増ししているんです。ずっと実績値としては達成できていないにもかかわらず、名目賃金上昇率はもっと高くなりますよと織り込むことによって、やっと百年安心になる絵姿をつくっているだけの話なんですよ。

 さらに、一番下、二年前の財政検証を見ていただくと、名目賃金上昇率はもっと高くなります。二・五、二・五、三・六、三・七、三・八、三・九、三・九、四・二、四・一。こんな高い数字を財政検証ごとに蹴上げてつくって、それによって百年安心だとうそぶいてきただけの話なんです。これは、私に言わせると粉飾みたいな話ですよ。

 先ほど言われました、総理は非常に胸を張って、若者世代へ将来ツケを回さないためにこの年金カット法案をやっているんだ、私だってやりたくありませんよなんということをおっしゃいました。本当に将来世代に向けて年金に関して責任を持つのであれば、こんな粉飾みたいな財政検証はやめて、真の名目賃金上昇率、ゼロに近いですよ、この正直な名目賃金上昇率でもう一回引き直して、財政検証をやり直して、その上で本当に年金カット法案が必要かどうか考えればいいじゃないですか。いかがですか。

安倍内閣総理大臣 まさに、財政計算について、この前提について御議論がしたければ、詳細について、これは当たり前じゃないですか、厚労大臣を呼んできていただいて、そこで議論していただきたいと思いますよ。それは当たり前じゃないですか。

 その上において、では、なぜ必要かといえば、これは、どちらにしろ、いずれにいたしましても、年金の安定性を確保する上において、平成十六年の改正のときもそうですが、大変な反対をいただきました。しかし、あのときだって、皆さんだって反対したけれども、その後、政権をとったらマクロ経済スライドはそのままにしておられたわけでありますから、それは結局必要だったわけなんですよね。

 あのときも、マクロ経済スライドが随分批判の対象になっていたわけであります。あれもまさに、物価が一%上がったって年金は〇・一%しかふえないというもので調整をしていたわけでありまして、そこでいわば調整をしていくということであったわけであります。

 確かに、その後、特例水準を維持して調整できなかったことが、結果としてマクロ経済スライドの調整期間が延びてしまって、基礎年金をもらっている皆さんの所得代替率が下がるということになった。これをもう一度繰り返してはいけないという中において、我々が今回この改正案を出しているわけでございまして、それはどうか御理解をいただきたいと思います。

 年金については、特例水準を皆さんがもとに戻すという判断をされて、しかし、実際に戻したのは我々の、これは事実を言っていて、我々の政権のときであって、そのときも随分、やはりそれは御批判をいただくんですよ、実際。年金額が減るわけですから。

 年金額が減る、実質の年金額が減るということはほとんどないわけでございまして、ですから、介護保険料が天引きをされるということのときも相当の衝撃があったわけでありますが、実際の年金額が減ってきたというのは、マクロ経済スライドの特例水準の解消で初めてマイナスをやったわけでありますから、あのときは、まさにデフレを解消しつつある、物価が上がっている中において行ったわけでありまして、いろいろな御批判もあったわけであります。これは我々と皆さんがともに責任を負いながら実行した、こう思うわけでありまして、ここは大切なことであって、では、どうしていこうかということであります。

 それは、まさにこれを実際に行うのは、平成三十三年に行う、まだ五年先の話でございまして、そこで、先ほどの議論の蒸し返しになりますが、平成三十一年に一〇%へ引き上げたことによって、低年金者の皆さん、低所得の皆さんには六万円の給付が行くことに鑑みましてそれを補っていく、それはセットでやるべきだというのはまさに御党の御主張でありますが、実際に実施するときにはセットで行うということで御理解をいただきたい、このように思う次第でございます。

大串(博)委員 総理、私、今必要な年金改革は、一厚労大臣に任せれば済むような問題じゃないと思っているんです。年金は既に破綻しています。

 見てください。一番重要な指標である賃金上昇率が、毎回毎回数字を蹴上げる、水増しすることによって、粉飾されるかのごとく、大丈夫だ大丈夫だと言われてきているんです。いろいろな調査がありますけれども、国民の皆さんの年金に関する不安は、どの調査を見ても八割。八割の皆さんが年金は不安だとおっしゃいます。全く年金の不安というのは解消されていないんですよ。なぜか。政府が極めて正直じゃない形で、粉飾に近い形で年金は大丈夫だ大丈夫だと言っているから、そうなってしまっているんです。

 私たちは提案したいと思います。

 やはり年金に関しては、考え方を定めて、基本的には正直に、それによって信頼を得る。そして、きょう話が及びませんでしたけれども、先般来話が出ていました、一番苦しい、年金をもらっていらっしゃる方々には最低保障機能を強化する。さらに、世代間の公平。受給者世代の皆さん、今後の受給者世代の皆さんの公平を保っていく。そして、働き方に中立。働き方が社会保障によって変わってしまってはいけない。さらに、GPIFの安全な運用。こういった視点から、年金のあり方に関して抜本的な改革をすべきだと私は思うんです。

 総理、今こそ、今回みたいな、小手先でいきなり年金を切るみたいな、場当たり的に年金を切るみたいな、そんな政策はやめて、抜本的な骨太の改革を、それこそ与野党でやっていこうではありませんか。いかがですか、総理。

安倍内閣総理大臣 先ほどの内閣府の中長期試算については、これはまさに内閣府で出している中長期試算であります。前提条件等については担当の大臣を呼んでよく聞いていただきたいと思いますが、二四年度以降は機械的に置いているということでありまして、内閣府の中長期試算によって予測をしているということであります。その予測の上において、いわば年金についての代替率等もはじき出しているわけでございます。

 モデル世帯の代替率、これは全ての世帯ということではなくてモデル世帯でありますが、モデル世帯の所得代替率の五割というのはまさに十六年の改正の一つの柱でありますから、これは何とか我々も維持をしていきたい、我々もそのための経済状況をつくっていきたいと思うわけでありまして、大切なことは、粉飾とか、そういう言葉を投げ合うのではなくて、そういう言葉を投げ合うからやはり年金に対する不安が広がっていくわけでありますから、冷静に議論していこうということであります。

 最低保障機能強化。これだけだと、どのように評価していいかというのがわからない。正直、信頼。正直、信頼というのは賛成ですね。確実な生活の支えも。あと、最低保障機能を強化していくという意味においては、例えば我々は基礎年金の国庫負担を引き上げてきて、三分の一から半分にしていくということで強化し続けてきているわけであります。また、世代間の公平。まさにこのために今回の改正を行ったわけでございます。働き方に中立、また安全な運用、それぞれ書いてありますが、しかし、実際は具体的にどういう制度をつくっていくかということが大切だろう、こう思うわけでございます。

 いずれにいたしましても、我々は、しっかりと持続可能な年金制度を持続していく上において今回の改正が必要である、このように思っております。今後もやはり建設的な議論を大串さんとも行っていきたい。これは、だから、こういう考え方を出されるのは建設的だと……(発言する者あり)いや、我々はそもそも、年金の考え方はもう既にお示しをしているわけでありまして、ですから、カット法案とか、そういうレッテル張りはお互いに、御党においてもやめていただきたい。これは非常に誤解をさせるわけでありますから、やはり冷静な議論をお互いにしていきたい、こう思うわけであります。

 これは、まさに三十年後、四十年後に年金を受け取る方々との公平性を考えて、その皆さんの基礎年金における所得代替率がこれ以上落ちることがないようにしなければいけないという改革であることも御理解をいただきたい、このように思います。

大串(博)委員 終わりますけれども、抜本改革が必要だということを認めない限り、年金に対する国民の信頼は戻ってこないと思います。

 今の年金がもうほぼ破綻状態だということ、これを認めない限りは国民の信頼は戻ってこないと私は思いますし、それをしない中での場当たり的、小手先の今回の年金カット法案は絶対に反対ですし、しかも、それを、年金受給資格期間を二十五年から十年に短くする、非常に重要な改革です、これと一本抱き合わせにして、国民の議論が深まらないような形にして議論することは絶対に反対であるということをお伝え申し上げて、私からの質疑にかえさせていただきます。

 ありがとうございます。

浜田委員長 この際、長妻昭君から関連質疑の申し出があります。村岡君の持ち時間の範囲内でこれを許します。長妻昭君。

長妻委員 長妻昭でございます。

 引き続き、年金の基本的なことについて、総理の見解をお尋ねいたします。

 まず、総理、年金の役割というのは、総理はどういうふうにお考えになっておられますか。

安倍内閣総理大臣 これは確かに大きな話だと思います。

 年金の役割は、これはまさに老後の安心でございます。人はいつか年をとって、仕事から退いていくわけであります。その中において、生計が立つようにしていく上において大切な年金だろう、こう思っているわけでございます。

長妻委員 今総理は、老後の安心というのが役割の一つとおっしゃいました。

 確かに、国民年金法には目的が書いてございまして、国民生活の安定が損なわれることを防止する、あるいは、厚生年金保険法は、老後の生活の安定ということが書いてあります。総理は、老後の安心。同じような趣旨だと思います。

 私は、きょう議論したいのは、本当に日本の年金が老後の生活の安定あるいは老後の安心を支えているのか、この大きな役割を本当に果たしているのかどうかという総理の認識を聞いて、やはり共通認識をぜひ持っていただきたいと思っているんですね。

 総理、今の年金制度は、老後の安心を担保する、確保するというような役割を果たしているというふうにお考えでございますか。

安倍内閣総理大臣 老後の安心という意味において、これは厚生年金ですが、モデル世帯の所得代替率五割を維持しつつ、持続可能にしたのが平成十六年の改正であった、このように思っております。

 基本的に、長妻委員は国民年金ということをおっしゃっておられる……(長妻委員「両方です」と呼ぶ)両方ですね。もちろん、これがあれば十分ということではないわけでありますが、厚生年金においては、ある程度必要な生活費を賄うものである、こう考えるところでございます。

 国民年金については、必要なもの全てを賄えるかどうかというと、それは必ずしも万全ではないかもしれませんが、国民年金と同時にある程度、それまでの間の貯蓄、蓄えも含めて万全な老後が可能となるように我々も努力をしていきたい、こう思っているところでございます。

長妻委員 万全な老後が可能となるように努力するということは、今、老後の安心が本当に担保できない、なかなか老後の安心を確保できない年金になっているんじゃないかと私は思うんですね。

 今現在の実態を申し上げますと、年金受給者、今受給されている方は約四千万人おられますけれども、一人当たりにすると、半数近くが月額十万円以下なんですね、受給額が。

 例えば、これは、厚生年金、国民年金、全部合わせた平均を調べていただきますと、夫婦高齢世帯では、平均が一カ月二十二万円。そして、単身高齢者世帯では、男性の平均が月十三万円、女性の平均が月十一万円。

 そして、単身者ですね。さっきモデル世帯の話をいただきましたけれども、モデル世帯、モデル世帯とよくおっしゃるんですけれども、これは、御主人が働いていて奥様が専業主婦、こういう世帯がモデル世帯なので、単身ではないんです。単身世帯は、相当困窮、大変な年金の状況でして、単身高齢世帯でいうと、例えば、一カ月八万三千円以下の女性が累計で四二%おられる。半分弱おられる。男性でいうと三割おられる。果たしてこれは生活できるのかということなんです。

 政府に調べていただくと、老後の生活費は、御夫婦で大体一カ月二十四万円ぐらい必要ではないかという試算もありますから、ひとり暮らし、御夫婦含めて、到底及ばない。

 そして、もう一つ注目されるのが、この単身世帯がどんどんどんどん今ふえています。

 今現在、六十五歳以上のひとり暮らしが六人に一人、東京に至っては三人に一人がひとり暮らしなんですね、六十五歳以上。今、離婚がふえておりまして、三組に一組が離婚されておられる。どんどんどんどん単身高齢者がふえる。生涯未婚もふえておりまして、今、男性の五人に一人が一生結婚しません、日本では。二十年後には、このままいくと三人に一人が一生結婚しないということになる。

 そして、総務省が調べた家計調査というのがあります。これは、二人以上の高齢無職世帯、世帯主が六十五歳以上、これを調べますと、家計が毎月六万円赤字になっているということなんです。毎月毎月六万円。そうすると、一千万円老後に貯金があっても十四年間で消えちゃう、その赤字を埋めるのが。

 これは平均のデータで六万円赤字ということなので、総理、年金は老後の安心をもう確保できていないんじゃないのか、そういう認識をぜひ持っていただきたい。何とかしなければいけないという認識を共有していただきたいんですが、いかがでございますか。

安倍内閣総理大臣 年金については、先ほども申し上げましたが、国民年金については、年金で全てを補うことはできないわけでございまして、ある程度の蓄えはお願いせざるを得ない、これはかねてから私も厚労大臣も申し上げているところでございますが、他方、厚生年金については、現役時代に被用者であった人の生活を賄うことができる額を確保していきたい、こう考えているわけであります。

 そのためにも、将来にわたって給付水準を確保し、制度を持続可能なものにするために平成十六年にマクロ経済スライドを導入したのでありますが、確実にこれを実施していくことが必要であろう、こう思っているわけでございます。

 その上で、マクロ経済スライドの調整期間の長期化を防ぎ、将来世代の基礎年金の給付水準を確保するため、現在国会に提出をしている、年金額改定の見直し等を内容とする制度改革が必要と考えているわけであります。

 低所得や低年金の高齢者への対策としては、社会保障・税一体改革において、年金の受給資格期間の短縮、年金生活者支援給付金の創設、そして医療、介護の保険料の負担の軽減などを総合的に講じることとしているところでございます。

 いずれにいたしましても、必要な額を確保していくために努力を重ねていきたい。

 先ほども御説明をいたしましたが、消費税八%から一〇%に引き上げた際には、低年金者に対して一年間六万円の給付を行うことにしているところでございます。

長妻委員 いろいろ微修正だと思うんですが、そういうお話を今いただきましたけれども、いろいろな微修正の話はわかります。今回出ているいわゆる年金カット法案は、微修正どころかマイナスになるわけであります。

 総理にお伺いしたいのは、では、今の制度の範囲内での改革、微修正だと思うんですが、それを続けていって本当に老後の安心が確保できるのかどうか。今の年金を何とかしなきゃいけないんじゃないのか、そういう思いはお持ちではないんですか。

安倍内閣総理大臣 例えば、先ほども質問の中でありましたが、抜本改革という言葉はありますが、一見、抜本改革というのは何か全部がよくなるような印象を与えるわけでありますが、では改革をして保険料が下がっていくのか、給付が上がっていくのか。

 先ほど申し上げましたように、年金については、保険料、そして税金、あと積立金もありますが、これでお支払いをしていく以外、道はないわけでありまして、打ち出の小づち、何か改革したらお金が出てくるということでは残念ながら全くない中において、少子高齢化の中においていかに給付を確保していくかということが求められているわけでございます。その中で、改革ということにおいては、どうしても、ある程度の、先ほど申し上げましたけれども、世代間の公平性を維持していくことによって信頼性を確保していく、こういう改革を積み重ねていくしかないんだろう、こう思う次第でございます。

長妻委員 総理、いろいろな抜本改革について、今、お金はどこから出るんだというような話がありましたけれども、そういうことも含めて、私は今の年金の制度のままで本当にいいんだろうかという強い問題意識を持っているわけで、総理、本当に今の年金がこのままで老後の生活の安定、安心を確保できるのかという質問に答えておられないんですね。

 さっき、国民年金はそれだけで生活がなかなかできにくいというような趣旨のお話もありました。しかし、今ゆゆしき問題は、国民年金、基礎年金とイコールなんですけれども、これが相当傷んでいる。マクロ経済スライドが予想外に長引きました、基礎年金部分に。三十年かけて所得代替率三割、つまり三割カットされる、こういう非常に基礎部分が大変な事態に今なっていて、年金全体の本当に老後の安心を確保する機能が著しく損なわれているのではないのかというふうに私は強く思うわけであります。

 しかも、高齢者の状況は大変厳しいわけでございまして、例えば認知症、今、六十五歳以上の方の七人に一人が認知症です。軽度も入れると四人に一人。これは介護の自己負担も大変なわけでございまして、どんどんどんどん大変な事態に見舞われていく。

 そして、制度の改革ということについて、ちょっと今、消極的な御発言のようにお見受けいたしましたけれども、では、このままいくとどうなるかというと、先ほど玉木議員もお示しいただきましたが、このグラフを見ていただきますと、すさまじい勢いで生活保護の六十五歳以上の受給者が、この赤線ですが、急激にふえている、ほかの世代は減少傾向にあるわけでございますが。そして、ことし三月、初めて、生活保護に占める高齢者世帯が半数を超えた、過半数になった。初めてです。

 そういう意味では、年金の改革、抜本改革をためらっていると、どんどんどんどん生活保護が年金のかわりになりつつあって、生活保護は医療も全部丸抱えでありますから本当に財政も大変ですし、その方々も大変だ、こういうことになるというふうに私は危惧するんですけれども、何とか今の枠を超えたそういう改革をしないといけない、そういう御認識は持たないんですか。

安倍内閣総理大臣 年金改革にはいろいろな提案があったと思います。御党もかつては、最低保障年金ですか、七万円か何かの給付を行う、全部税金でいくというお話をされておられました。

 しかし、そうなると、既に今まで年金制度はずっと運用してきて存在するわけでありまして、その中で、保険料を払っている人たちと、保険料を払わなくてそれがもらえる人たちとの公平性をどう担保していくんだという中において、そうすると移行期間が物すごく長くなるということもあり、結局、御党はこの考え方をやめられたというふうに承知をしているわけでございますが、既に年金制度が長い間運用されてきている中において、新たに、根本的に変えるというのは、これは公平性を担保する段階でなかなか難しい点もあるわけでございます。

 同時に、では今の年金制度が大丈夫かということでありますが、私は、年金制度、先ほど、破綻という非常に過激なお話があったんですが、では破綻とは何かといえば、それは年金の受給者にお金を払えないという状況には全くなっていないわけでありまして、現在も百四十兆円の積立金はあるわけでございます。そして、所得代替率も、モデル世帯で五割はしっかりと、五割以上いって、今、五八、九%ぐらいですか、これは厚労大臣に聞いてもらいたいと思いますが、確保しているわけでありまして、そういう意味においては、年金がにわかに破綻するというのは、これはとても考えられないわけでございます。

 我々の行っている修正というのは、先ほど、物価が上がって、しかし賃金が下がった場合下がるというのは受給者にとっては確かに不安だろうと思いますが、しかし、今まさに長妻議員がおっしゃった、国民年金受給者の所得代替率がこれ以上落ちないようにするためにはこの方法しかないということであります。と同時に、もしこういう事態が起きたとしても、この新しい改正を行っていけば所得代替率は落ちないということになっているわけであります。

 つまり、特例水準を維持した結果のツケがあの所得代替率の低下でありますから、我々は、これを繰り返したくないと思っております。同時に、それをやっていくことによって持続可能性は高まっている、こう考えております。

長妻委員 いやいや、今の枠の中でお考えを今おっしゃいましたけれども、今の枠の中で幾ら微修正を重ねても、どんどんどんどん年金の役割が果たせなくなってくる。年金の役割は老後の安定なんですけれども、それを、役割を担えない年金にどんどんどんどんなっていて、生活保護がふえている。こういう実態を本当にどうするんだということなんですね。

 今、高齢者の相対的貧困率も一九%、五人に一人が相対的貧困という状況になっておりまして、「老後破産」とか「下流老人」とか、そういう書籍もベストセラーになっているということであります。

 三党合意の話をいただきました。まさにそこをちょっと私も申し上げたいんです。

 これは、記憶をたどりますと、三党合意、自民、公明、民主でかつていたしました。そのときに社会保障制度改革推進法という法律をつくりまして、この法律の中に何て書いてあるかといいますと、今後の公的年金制度については、財政の現況及び見通し等を踏まえ、社会保障制度改革国民会議において議論し、結論を得ることにする、こういうことになったわけですね、総理、御存じだと思いますけれども。

 その国民会議を我が政権のときに設置して、議論して、そして今の安倍政権までかかって、今の安倍政権になった八月に報告書が出ました。その報告書にはどういうふうに書いてあるかというと、「将来の制度体系については引き続き議論する」こういうふうに書いてあるわけです。

 これは私もよく記憶しておりますけれども、抜本改革の議論が相当、委員の先生からも出て、結局、まずは微修正をして課題の解決を進めよう、そして抜本改革については引き続き議論しよう、こういう結論が出たわけです、これは法律に基づいて。

 ところが、安倍内閣に今回なって、ほぼもう四年になろうとしておりますけれども、この抜本改革の議論をサボってきたんじゃないのか、私はこういうふうに思うんですね。ほとんど議論が、ほとんどというか全くと言っていいほど抜本改革の議論がない、このときの国民会議の答申に出ているような。

 ぜひ、抜本改革の案を取りまとめて、有識者の会議でもいいんですけれども、そこでもんでもらって、国民的議論をぜひしていただきたいというふうに思うんですが、いかがでございますか。

安倍内閣総理大臣 これまでも申し上げてまいりましたが、老後の生活の柱としての役割を持つ年金制度については、将来にわたって給付水準を維持して、持続可能なものにしていく必要があります。このために、今回の法案も含めて、不断の改革に取り組んでいきます。

 とりわけ、低所得や低年金の高齢者への対策については、社会保障・税一体改革において、年金の受給資格期間の短縮、年金生活者支援給付金の創設、そして介護、医療の保険料の負担の軽減など、社会保障制度全体で総合的に講じることとしておりまして、まずこれらにしっかりと取り組んでいきたいと思います。特に無年金の問題は喫緊の課題でありまして、できるだけ早期に実施すべきと判断し、今国会に関連法案を提出したところであります。

 その上で、社会保障と税の一体改革以降の将来の制度体系のあり方については、国民の前で議論する場である国会においても、御党の考え方を明らかにしていただき、議論なされるべきだろう、このように考えているわけでございます。

長妻委員 いやいや、総理、では、先ほどの話じゃないですけれども、今の制度でこれから本当に百年間いくんですか、百年安心で。本当にこれは安心じゃないですよ。

 いわゆる微修正、今るるおっしゃいましたけれども、今回出ている年金カット法案にしても、木を見て森を見ないで、どんどんどんどん財政だけのことを考えてどっといくと、年金としての役割が果たせなくなる。一旦この法案は取り下げて、やはり抜本改革の議論をぜひしましょうよ。国民会議の報告書は三年前に出ているわけですよ、議論しなさいというのが。それが三年間ほったらかしになっているわけです、安倍内閣で。ぜひ制度の抜本改革の案を出していただきたいと思うんです。

 ちょっと我々の取り組みを申し上げますと、これまで我々が取り組んでまいりましたのは、初めから申し上げますと、まず一番初め、相当不祥事が多い分野でありましたので、不祥事を追及して是正させる。

 一つは、消えた年金問題。これが、今現在では一千四百四十八万人の人の記録が戻りました。これは一人二記録戻った方もおられます。回復額は生涯額で二・六兆円。これは、我々が本当に国会で徹底追及しなかったら、ふたをされていましたよ。安倍総理は、不安をあおるなと言って調査する気がなかった。そして、紙台帳を全部照合してくれと国会で申し上げましたら、そんなことはできないと。我々の政権のときに、六億枚、七千九百万人分、コンピューターの記録照合を準備いたしまして、そして段取りをして、完了いたしました。完了したのは我々の政権が終わった後の安倍内閣の初頭でありましたけれども、完了しました。できるんですよ。

 そして、年金の保険料の流用をストップした。グリーンピア初め、保険料がもうめちゃくちゃに使われていた。とんでもないと。これをストップさせた。

 そして、制度改革について我々が法律を成立させたものもございます。

 先ほど安倍総理がおっしゃった、基礎年金の半額部分を国庫負担にする、これは財源をきちっと見つけたのも我々の政権のときでありましたけれども。

 その中で、法案の成立、公務員の年金と厚生年金を一元化いたしました。公務員の特権の問題も言われていましたので、これを一元化して、昨年の十月に実現をした。

 そして、パートの皆さんなどなど非正規雇用の方々の厚生年金の適用を拡大する。これによって、やはり厚生年金であるから国民年金よりも老後の受給額がふえるということで、これがことしの十月に実施された。

 そして、低年金の受給者等七百万人への年金上乗せ、最大年額六万円。さっき総理がおっしゃいましたけれども、これも法律を成立させて。ただ、これは消費増税一〇%のときに実施するということで、今は先送りをされている。

 無年金対策についても、民主党政権のときに法律を成立させ、今は二十五年払わなければ一円も年金が受給できないけれども、これからは十年以上年金を払っておられれば受給権が発生する。ですから、今七十歳の方でも、自分は十一年しか払っていなかった、無年金だという方も、来年からもらえる予定だというようなことにもなっております。

 そして、我々は、政権のときに、制度の抜本改革の案を出しまして、財源の試算も出しまして、最低保障年金、四つのパターンを示しました。例えば、最低保障年金を全体の財源でいうと、六五%支給するパターンでは、四十年後に消費税換算すると一・四%ぐらい財源が必要である、こういうようなこともお示しをして、そして三党協議に臨んで、そして国民会議で議論をしなさいというのが三年前に出ているわけであります。

 ですから、ぜひ、総理も、政府も、案を、今の制度のままでなくて抜本改革の案を、総理、出していただきたいということを強く要請しますが、いかがでございますか。

安倍内閣総理大臣 社会保障制度改革国民会議の報告書においては、どのような制度体系を目指そうとも必要となる課題として、短時間労働者に対する被用者保険の適用拡大や、国民年金の保険料の多段階免除の積極活用や、滞納者に対する徴収強化を挙げているわけであります。

 また、この報告書を踏まえて平成二十五年に制定した社会保障改革プログラム法では、公的年金制度の持続可能性を高め、所得保障機能を強化し、そして世代間及び世代内の公平性を確保する観点から、被用者保険の適用拡大に加えて、マクロ経済スライドの仕組みのあり方、高齢期の就労と年金受給のあり方、高所得者の年金給付のあり方及び公的年金等控除を含めた年金課税のあり方の見直しを検討することとしたわけでありまして、これらの課題について検討を加えて法制化したものが現在提出をしている法案であります。

 したがって、将来のあり方についてもきちんと議論されていないわけではなくて、まさに議論した結果、今回の法案を出したわけであります。

 その上で、社会保障と税の一体改革以降の将来の制度体系のあり方については、国民の前で議論する場である国会において、御党の考え方を明らかにしていただき、議論されるべきものではないか、こう思うわけでありますが、あえて申し上げれば、国民会議の報告書をまとめるに当たって、三党合意に基づく与野党の実務者協議において、平成二十五年の八月に、協議に応じないと皆さんは出ていってしまったんですね、当時の民主党の皆さんは出ていってしまったということは一応申し上げておきたい、これは事実関係でありますから申し上げておきたい、このように思います。

 そして、将来の制度体系については、引き続き議論するという二段階のアプローチをとっていくことが必要ではないか、このように考えている次第でございます。

 いずれにいたしましても、今、長妻さんがおっしゃっているように、抜本改革について議論するのは必要だと私は思います。でも、その改革案をやはり示していただかないと、では、所得代替率がどうなっていくのか、現役の保険料負担は一体どうなっていくのか、現役は将来どれぐらいの年金を手にとることができるのかどうか、税はその中でどういう役割を示していくのかどうかということを、これは体系を示さなきゃいけないし、新しい体系に現行の年金制度からどのように移行していくかということもあるわけでありまして、もう今まで既に払っている皆さんがいるわけでありまして、その人たちとの公平性の観点もありますから、そういうものを含めて具体的な案をお示しいただきながら、議論をしていくことが求められているのではないか。

 私も、抜本改革はだめだとか、そんなことは全然考えていないということでは全くないわけであります。ですから、それはお示しをいただいて。でも、それも、自民党の中でも随分議論してきた結果なんですね。なかなか、抜本改革というのは言うは易しいんですが、それはそう簡単ではないということは私も十分に承知をしているところでございます。

長妻委員 随分及び腰だと思うんですね。

 我々は政権のときにちゃんと出しているわけです、分厚いものを。自民党や今の政府というのはちゃんと検討しているんですか、これ。そもそも国民会議、三年前に、議論しよう、議論してください、こういうふうに出ているんですけれども、議論はしたんですか、形跡として、抜本改革。

安倍内閣総理大臣 今まさに、二段階のアプローチをとるということで我々はやっているわけでございまして、国民会議で言いましたさまざまな課題、申し上げましたよね、マクロ経済スライドのあり方等についても。それはやはり、特例水準ではなくて、しっかりと実施をしなければいけないということで、これは皆さんがお決めになって、我々が実施をしたわけでありますが。

 と同時に、世代間の不公平ということを解消するために、今回、皆さんからいろいろな御批判をいただいておりますが、さまざまな状況に対応できるように、そして、それによって世代間の不公平が増幅されないようにしなければいけないという手当てをしたところでございます。

長妻委員 そうしましたら、ちょっと確認なんですが、政府として抜本改革の議論は今後進めていく、こういうことでよろしいですか。

安倍内閣総理大臣 抜本改革の議論ということについては、私は議論をしないということは申し上げていないわけでありますが、しかし、これは具体的な案を考えていかなければいけないわけであります。我々はまさに、現在の制度について、これをしっかりと確かなものにしていくという責任を負っているわけでありますから、その責任を果たしていく上において、今回法案を出させていただいているところでございます。

長妻委員 そうしましたら、政府としても、抜本改革の案をこれから作成していくという理解でよろしいですか。

安倍内閣総理大臣 我々は、まず、この法案を提出させていただいておりまして、この法案を御審議いただき、成立させていただきたい、こう思っているわけでありまして、今回のこの法案も、年金の持続可能性を高めていく上においての、また無年金者等のことも見据えながら、我々はさまざまな、財源を得て改革を行っていきたい、こう考えているところでございます。

長妻委員 これは重要なのでちょっとお伺いします。

 ですから、いろいろな問題があって、生活保護がどんどんどんどんこれから年金のかわりになっていく、こういう現状について、やはり抜本改革を、まあ、いろいろなアプローチはあると思います、我々の考えるアプローチもありますし、政府が考える、安倍総理が考えるアプローチもありますけれども、そういう意味では、政府として抜本改革の案をこれから検討していくというような認識でよろしいのでございますか。ぜひそうしていただきたいと思う。

安倍内閣総理大臣 政府としては、まずは、今回提出をさせていただいているこの改革法案を御審議いただき、議論をしっかりと行っていただきたい、こう思う次第でございます。

 年金ということについては、やはり持続性と安定性と信頼であろう、こう思っているわけでございまして、簡単に抜本改革、抜本改革という言葉ありきでは私は意味がないと思うわけでありまして、年金については不断の議論が必要だということを申し上げておきたいと思います。

長妻委員 今のままではだめですよね、年金制度。今の年金制度を、今の枠、今の議論というか、微修正の枠から大きく変えていく、こういう御決意はないんですか。

安倍内閣総理大臣 我々は、まさに今のままではだめですから今回法案を出させていただいているわけであります。我々は、この法案によって、世代間の不公平感が広がっていくことを是正し、かつ国民年金受給者の所得代替率が落ちていくことを防ぎ、まさに持続可能なものにするわけでございまして、これによって年金制度の持続可能性は強化された、こう考えている次第でございます。

 同時に、無年金者の対策についてもしっかりと取り組んでいくわけでございますし、かつ低年金者に対しては、一〇%に引き上げた時点において六万円の給付を行っていきたい、こう考えている次第でございます。

 それと、根本的にどうなのかという不規則発言も今ございましたが、先ほど申し上げましたように、では、根本的に変えれば給付をふやすことができるのか、あるいは保険料を下げることができるのかということでありますが、それはそうではないわけでありまして、ただ抜本改革をすれば夢のような話にはこれはならないわけであります。いずれにせよ、これは少子高齢化という中においてどう対応していくかということであるわけであります。

 それと、生活保護との関係においては、生活保護、それは、長妻さんよく御承知のようにこれはミーンズテストもあるわけでありまして、資産等、あるいは親族がこれを保障できないかどうかということも、これを越えていかなければいけないわけでございます。そこは生活保護と年金が根本的に違うところであろう、こう思います。その中においてどういう対応をしていくかということについては、不断の議論はしていかなければいけない、こう思うわけでございます。

長妻委員 どうも何か総理、今のままの微修正で、しかも、微修正といっても、今回、いわゆる年金カット法案はマイナスになるんですからね。ですから、やはり全体のグランドビジョンを示していかないと、これは国民会議の結論での約束でもありますし。

 総理、今後相当大変になるのは、団塊ジュニアと言われる方々が退職されることになります。彼らは、やはり非正規比率も高いし、そして持ち家がない方が非常に多い。家賃が発生する途端、相当、今でも脆弱な年金がその後脆弱になって、家計を直撃して、そして家計が破綻してしまうという方が続発するんじゃないのか。

 年金のいわゆるカット法案についても、総理は将来世代とおっしゃいますけれども、今の受給世代が本当にバラ色の年金をもらっているんだったら、ちょっと我慢して将来世代に回せという議論はわかりますが、今の受給者の皆さんも、そしてこれからすぐ受給される方々も、相当大変な状況なんですよ。ですから、待ったなしでここから議論しないといけないというふうに考えているところでございます。

 総理、議論はいたしますか、抜本改革の議論は。

 そのときに、私が……(発言する者あり)

浜田委員長 静粛に願います。

長妻委員 抜本改革というのは、実現するのは将来になると思うんですが、総理にちょっと一点だけお伺いするんですけれども、消費増税が八%から一〇%に上げるのが結局は四年先送りになったんですね、四年間。この間、消費増税一〇%の後の社会保障と税の一体改革、ポスト社会保障・税の一体改革をどうするかという議論が停滞をしております。仮に、消費増税、二〇一九年の十月に一〇%になった後、その税率で、あるいは所得税率も変えずに社会保障がずっと持続可能なのか、年金も持続可能なのか。どういうふうに社会保障と税の一体改革をお考えになっていますか、将来の。

浜田委員長 時間が来ておりますので、簡潔に願います。

安倍内閣総理大臣 抜本改革という言葉ありきでは意味がないわけでありますから、その財源も含めて、具体的な制度設計も含めてそれを出していただかなければいけないわけであります。

 我が党、これはもう二十年ぐらい前から、私が社会部会の部会長とか代理をやっているころからいろいろな案が出てきました。それは確かに、例えば基礎年金を全部税方式にしようという案もございました。これは一見さっぱりはするんですが、しかし、これは移行期間を物すごく長くしなければいけないわけでありますし、不公平感も残るということで、結局この案は消えていくわけであります。しかし、この間もさまざまな改革を行ってきたのは事実でございます。

 その上において、消費税を三十一年には引き上げるわけでありますから、このとき、お約束をしている低年金者、低所得者に対する六万円の給付はしっかりと行っていく。しかし、年金の加入資格の期間の問題による無年金者については、前倒しして我々はこれを解消していくということを行っているわけでございますし、そしてまた、低所得者、低年金者に対しては、かつてはアベノミクスの果実で、六万円ではありませんでしたが、三万円という給付を行いました。こういうことをできる限り行っていきたい。

 いずれにいたしましても、我々は、年金というのはまさに給付と負担の中で成り立っているわけでありまして、その中で持続可能なものにするための今回の改正案であるということは御理解をいただきたい、このように思っております。

長妻委員 これで質問を終わりますが、それでは年金の役割は果たせないと思っておりますので、ぜひよろしくお願いをいたします。

浜田委員長 これにて村岡君、緒方君、井出君、山尾君、玉木君、大串君、長妻君の質疑は終了いたしました。

 次に、高橋千鶴子君。

高橋(千)委員 日本共産党の高橋千鶴子です。

 初めに、総理に一問、午前中の緒方林太郎議員の質問に関連して伺いたいと思います。

 南スーダンに派遣される自衛隊の新たな任務について、リスクが高まるのではないか、こういう問いに対して稲田防衛大臣は、新たな任務がふえるからといって足し算のように単純にリスクがふえるわけではないとお答えになりました。本当にそれでいいんでしょうか。

 ここに二〇一六年の防衛白書を持ってきました。この中に「自衛隊員のリスクについて」というコラムがあります。「新たな任務に伴う新たなリスクが生じる可能性はあります」こう書いています。当然じゃないですか。

 南スーダンでは、十日、首都ジュバと南部イエイとを結ぶ幹線道路で民間人を乗せた車両が八日に襲撃され、少なくとも二十一人が死亡、二十数人が負傷したと発表しました。一昨日も、TBSのNEWS23が七月の襲撃現場を生々しく映像で伝え、同僚を目の前で殺された国連NGO職員の声を報じました。

 総理、新たなリスクの可能性、お認めになるべきではありませんか。

安倍内閣総理大臣 もちろん南スーダンは、例えば我々が今いるこの永田町と比べればはるかに危険な場所であって、危険な場所であるからこそ、自衛隊が任務を負って、武器も携行して現地でPKO活動を行っているところでございます。

 そこで、我々は、自衛隊員が負うリスクについては、従来から一貫して深刻に受けとめております。あらゆる手段でリスクの低減を図っているわけでありまして、駆けつけ警護を含め、平和安全法制の整備によって新たに付与された任務にもこれまで同様リスクがあるわけでありまして、我々はこのリスクを否定したことは全くないわけであります。本日午前の審議の中で稲田大臣は、このリスクについては、リスクはないというふうには申し上げていないわけであります。

 南スーダンは、独立から間もない世界で最も新しい国家でありまして、当然、日本のような国と比較すれば、治安情勢は比較にならないほど厳しいのは事実であります。だからこそ、国連は南スーダンPKOを設立いたしまして、自衛隊を含め、各国はリスクを負いながら、南スーダンの平和と安全のため平和維持活動を行っているわけであります。

 現地に派遣している自衛隊は、七月の衝突発生後も、安全を確保しながら避難民のための施設を整備するなど、意義ある活動を続けているのは事実であります。

 今後とも、現地情勢については緊張感を持って注視しながら、要員の安全確保には万全を期していきたいと思います。

 自衛隊員のリスクについて改めて申し上げれば、自衛隊の任務はこれまでも常にリスクを伴うものでありまして、我が国有事における任務は文字どおり命がけのものとなるわけでありまして、隊員にとっては極限に近いリスクがあると言ってもいいんだろうと思います。平素における災害派遣も、警察や消防だけでは手に負えなくなったから自衛隊が出動するわけでありまして、危険をはらむものであります。

 しかし、任務がふえるからといってその分だけリスクもふえるというわけではないわけでありまして、自衛隊員が実際に負うリスクは、一足す一足す一は三といった足し算で考えるような単純な性格のものではないわけであります。

 いずれにせよ、十分な教育訓練を行った上で、現地の実情に応じた正確なリスク分析のもと、きめ細やかな準備と安全確保対策を講じ、あらゆる面でリスクを低減する取り組みを行っていく考えでございます。

高橋(千)委員 今の、永田町と比べれば、この発言は断じて許せないと思います。そんな問題じゃないでしょう。今だって、三百五十名もの部隊の方がいらっしゃる。そのこと自体が大変なリスクなんですよ。それを、安定している、PKOの原則を維持できている、落ちついている、だから派遣できると皆さんおっしゃっている。おかしいじゃないですか。

 新たな任務、足し算だなんて一言も言っていません。私たちが言う戦争法が発動されて初めての駆けつけ警護や宿営地の防衛だ、そのことについて足し算じゃないという議論をするわけないでしょうが。そこに対して誠実なお答えがなかった。このことは強く指摘をしたいと思うし、また、防衛白書でさえも認めていることをなぜお認めにならないのか。非常に残念だと思います。

 私、これは本当は予定していなかったんですが、一問これを質問させていただいたのは、私の地元が青森市なわけです。陸自第九師団第五連隊が最初の部隊となります。諸団体や共産党の組織も署名などに取り組んでいますが、自衛隊員を家族に持つ方々の不安の声が寄せられています。

 息子から自衛隊のことは一切聞かせてもらえない、災害救助のときでさえ、それを聞いてどうするんだと言われ、親は小さくなっている、お孫さんが十一月からアフリカに行く、道路の補修をやると聞いていた、新任務とは言っていません、武器を持っていくのか、あんな苦しい戦争の思いを孫たちにさせたくないと訴えている、そういう声がたくさん寄せられました。

 だったら、そういう方たちにちゃんと説明ができますか。十分な情報も説明もないまま新しい任務を付与することは絶対許せません。安定していると言うのなら、今すぐ現在の三百五十名の派遣部隊を撤退させるべきです。このことを強く指摘して、次に進みます。

 きょうは、働き方改革について質問していきたいと思います。

 超党派で過労死等防止対策推進法を成立させたのは二〇一四年六月でした。日本の法律に過労死という言葉が初めて書き込まれたこと自体が画期的でした。第十四条には、「政府は、過労死等に関する調査研究等の結果を踏まえ、必要があると認めるときは、過労死等の防止のために必要な法制上又は財政上の措置その他の措置を講ずる」と定めたのです。

 今月、法律に基づく過労死白書が初めて発表されました。明らかになった一つは、過労死の背景にある長時間労働の実態です。

 見ていただきたいと思います。二〇一一年からの五年間で、脳・心臓疾患、過労死ラインと言われる月八十時間以上の時間外労働をしていた方、これは決定した方だけですからもっと本当はいるんです、千二百五十三名。倍の百六十時間以上働いていたという人さえ百二十四名もおります。

 厚労大臣、初めての過労死白書をどう受けとめますか。当然、法律が定めた具体的措置が必要な事態ではないでしょうか。見解を伺います。

塩崎国務大臣 先般、初めて過労死等防止対策白書が出されたわけであります。

 まず、我が国における過労死等の概要と、政府が過労死等の防止のために講じた施策の状況を報告するものでございまして、施策の中には、長時間労働が疑われる事業場に対する監督とか働く方々からの相談対応など逐次実施をしていくものと、それから、過労死の実態解明のための調査研究のように長期にわたり継続的に取り組んでいるものがございます。

 御指摘の過労死等防止対策推進法の第十四条の規定は「過労死等に関する調査研究等の結果を踏まえ、必要があると認めるときは、過労死等の防止のために必要な法制上又は財政上の措置その他の措置を講ずるものとする。」とされているところでございまして、法制上の措置については、今回の白書の内容のみをもって直ちに判断するものではないと考えておりまして、しっかりとした調査研究を今やりつつあるわけでありますので、そういうものを踏まえて考えていくべきものと思っております。

 厚労省としては、過労死をゼロとして、健康で充実して働き続けることのできる社会の実現を当然目指すわけで、過労死等の防止の重要性の周知あるいは相談体制の整備などにこれまで以上にしっかりと取り組んでまいりたいというふうに思います。

高橋(千)委員 のみをもってとおっしゃいましたけれども、ようやっと白書ができたんです。これまでの実態がここまで明らかになって、これのみをもってとおっしゃらないで、せっかく厚労省がまとめたものを直ちに生かしていく、その決意を本当は聞かせていただきたかったなと思います。

 この法律を成立させるまでには、全国過労死を考える家族の会の皆さんの長きにわたる奮闘がありました。忘れられないのは、法律が通ったからといって夫や息子が帰ってくるわけではない、でも、自分と同じ思いをする人が二度とないようにという訴えでした。

 最初は、与野党が全部一致できたわけではありません。でも、その壁を乗り越えることができたのは、働いて死ぬなんておかしいね、このことで一致できたからであります。それは、与野党の別なく、雇用主から見ても同じはずだと思えたからでした。寺西笑子代表らは、私たちは、過労死を減らすのではなく、なくす、ゼロにすることが目標なのですとおっしゃっています。

 総理に伺います。働き方改革は過労死をなくすことができるのですか。

塩崎国務大臣 超党派でつくられた過労死等防止対策推進法であることはそのとおりでございまして、当然のことながら、働き過ぎから命を落とすことは御本人そしてまた御家族にとってもうはかり知れない苦痛であることは言うまでもないわけで、社会にとっても大きな損失だ、過労死はあってはならないというのが共通認識で議員立法ができたと思います。

 厚労省としては、当事者である御遺族の方々にも参画をいただいております過労死等防止対策推進協議会、ここで昨年七月に過労死等の防止のための対策に関する大綱というのがまとめられました。それに基づいて、私どもとして、将来的に過労死等をゼロとするということを目指して、調査研究、啓発、相談体制の整備、民間団体の活動等に取り組んでいるわけでございます。

 私どもとしても、長時間労働の是正に向けて働き方改革実現会議における時間外労働のあり方の議論にしっかりと参画をして、健康で充実して働き続けることのできる社会の実現に向けて全力で取り組んでまいりたいというふうに思っております。

安倍内閣総理大臣 ただいま厚労大臣が答弁させていただいたとおりでございますが、まさに私たちの目的は、長時間労働の是正に向けてしっかりと取り組んでいきたい、あくまでも働く人の立場、視点に立ってきちんと議論を進めていきたい、このように考えております。

高橋(千)委員 質問したのは、過労死をなくすことですかと聞きました。

安倍内閣総理大臣 この働き方改革によって長時間労働が是正されていくわけでありますから、当然それは過労死を防ぐことにつながっていく、このように考えております。

高橋(千)委員 初めての過労死白書が発表された十月七日、大手広告代理店の電通の新入社員、高橋まつりさん二十四歳の過労自殺が認定されたと公表されました。

 高橋まつりさんは、昨年四月に入社し、インターネット広告を担当していたそうですが、試用期間が過ぎ、昨年の十月からは月約百五時間も残業していたといいます。昨年のクリスマスにみずから命を絶ったまつりさんがSNSに残した書き込みには、眠りたい以外の感情を失った、土日も出勤しなければならないことがまた決定し、本気で死んでしまいたいなどつづられていました。会見した母親の幸美さんは、もっと早く、娘が生きているうちに対策をしてくれなかったのかと訴えました。

 しかし、そのきっかけは実は十六年前にあったはずです。もっと言えば二十五年前。私自身、二〇〇七年の予算委員会で取り上げたわけですが、自殺が過労自殺として同等に労災認定されるようになったきっかけは二〇〇〇年三月の最高裁判決であり、それは電通の新入社員の青年の自殺でした。亡くなったのは一九九一年なのです。つまり、あれから十六年、二十五年たっても電通は変わっていないということじゃありませんか。

 塩崎大臣、名立たる大企業が率先して改善しなければなりません。また、若い入社したばかりの労働者がみずから命を絶ってしまったことを防げなかったことをどう思うのか。厚労省は電通に対しどんな指導をしてきましたか。

    〔委員長退席、菅原委員長代理着席〕

塩崎国務大臣 まず第一に、今回お亡くなりになられた新入社員の方の御冥福を心からお祈り申し上げますとともに、御家族にお見舞いを申し上げたいと思います。

 今お話しのとおり、平成三年にやはり二十四歳の男性社員の方が過労自殺をされました。私どもはそれをよく認識しているわけでありまして、今御指摘のとおり、平成三年の、業務によって発病した精神障害を原因とする自殺事案でございました。これに対して企業の責任が争われた民事訴訟が最高裁まで争われていたわけでありまして、この企業において今回こうして再び自殺事案が発生したということは、本当に遺憾の至りだというふうに私どもも思っているわけであります。

 これまでの監督指導の状況については、詳細は明らかにすることはできませんが、今回発生した事案を受けて、昨日、十月の十一日、東京労働局長が企業の幹部を呼び出しました上で、こうしたことが再び起こることのないように、労働時間管理の適正化、あるいは実効のある過重労働対策をしっかりと講ずるように厳しく指導を行ったところでございます。

 厚生労働省においては、これまでも過重な労働による過労死等に係る労災請求が行われた事業場に対する監督指導を行ってきているわけでありますので、今後ともこうしたことを徹底してまいりたいというふうに思います。

高橋(千)委員 遅かったと言わなければならないと思います。御遺族の皆さんは、今の案件ではなくて、これまでもずっと過労死の問題を取り上げてきた家族の皆さんやあるいは応援している皆さん、私自身も質問で言ったことがありますが、やはり、こうした事案が起こったときに、ずっと争って結論が出てから初めてわかるのではなくて、企業名を公表するべきだということを指摘してきたんです。今やっと、重点監督などといって、一社この間公表したという話をしましたが、やはりそういう態度が問題なんだと指摘をしたい。絶対繰り返さないように頑張っていただきたいし、私たちも頑張っていきたいと思います。

 そこで、総理に伺いますけれども、先ほど、過労死をなくすことは当然だとおっしゃっていただいたと思います。では、やはり、働き方改革を言うのであれば、残業時間に明確な上限規制を設けること、裁量労働制は時間に裁量がきくからいいんだなんといって長時間労働を助長することは絶対にやめるべきだと思います。いかがでしょうか。

安倍内閣総理大臣 長時間労働の是正は働き方改革の核となるものでありまして、働き方改革実現会議において、労使のトップや有識者に集まっていただきまして、時間外労働の上限規制の労働基準法のあり方を含め、長時間労働の是正について、働く人の立場、視点に立って議論を進め、年度内に具体的な働き方改革実行計画を取りまとめ、関連の法案を提出する考えであります。

 いかに効率的に働いているか、家庭と両立させているか、それを自慢できるような社会にしていきたいと思っておりますが、働き方改革に私も先頭に立って取り組んでいきたい、こう考えております。

高橋(千)委員 働く人の立場とおっしゃいましたけれども、なぜこれだけのことがはっきりとお答えできないのかなと、とても残念に思います。

 パネルを見ていただきたいんですが、これは、長時間労働規制、日本共産党の提案。もちろん一部ではありますけれども。今や与党からも、労働時間に上限規制を設けるべきだという質問が出てきます。この委員会でも議論がされました。やはり本気度を聞きたいと思うんですね。

 憲法二十七条には、勤労の権利及び義務、第二項、賃金、就業時間、休息その他の勤労条件に関する基準は法律で定めると書いています。残業時間もきちんと限度を書くべきです。

 私たちは、この提案は実はまだ世に出ておりませんけれども、野党共闘で共同提案をするに当たって、私たちの考え方を骨子案として提出したものであります。参議院にはブラック企業規制法案を提出しております。

 結局、シンプルな中身なんですね。労働基準法第三十六条第一項の協定による労働時間の延長は、いわゆる三六協定と呼ばれるもの、一定の場合を除き、一カ月四十五時間、三カ月百二十時間、一年間について三百六十時間を超えてはならない、これはもともと厚労省が定めている大臣告示なんです、これを法定するという極めてシンプルなもの。

 上限規制を検討するというのなら、最低でもこれはやるべきではないでしょうか。

加藤国務大臣 今総理からお話がございましたけれども、長時間労働の是正はまさに働き方改革の核であるというふうに認識をしておりますし、また、長時間労働の上限規制の労働基準法のあり方を含む長時間労働の是正については、今回の会議には労使のトップにも出てきていただいておりますので、しっかりとした議論をしていただいて、年度内に働き方改革実行計画を取りまとめたいと思います。

 これからの議論ではありますけれども、当然、その計画においては、実効性のある、そうした内容のものにしていきたい、こういうように考えております。

    〔菅原委員長代理退席、委員長着席〕

高橋(千)委員 結局、今私は本気度を聞きたいと言いましたけれども、具体的に規制を法定するということさえお答えにならない。今基準としてあるものを法律にしたらどうかと言っているだけなんです。私たちはこれでいいとは思っていませんけれども、最低これはやるべきじゃないかということさえもお答えにならない。非常にやはり働き方改革の中身が透けて見えたかな、このように思っております。

 そこで、事実関係だけ厚労大臣に伺いますけれども、三六協定は、やはり事実上、長時間労働を青天井に許している格好になっていると思います。

 昨年の予算委員会で我が党の志位委員長が、経団連の役員に名を連ねている大企業がそろって月八十時間以上の残業、労使協定を結んでいるじゃないかと指摘したときに、総理がそのときお答えになったんですが、実際にはそんなにしょっちゅう残業しているわけじゃないとお答えになったんです。

 これはどういう意味かというと、保険なんですね。百時間とかうんと長く結んでおけば、例えば八十時間とか九十時間でもその範囲内なので、違法じゃないんですよね。違法じゃない。でも、そういう協定が残ってしまって規制がなければ、結果として長時間労働を助長することになるのではありませんか。

塩崎国務大臣 御存じの、労働基準法第三十六条に基づいて労使で三六協定を締結すれば、一週四十時間または一日八時間を超えて時間外労働が可能となっているわけでありますけれども、本来、時間外労働は必要最小限にとどめられるというのが当然のことだというふうに思っております。

 こうした観点から、今御指摘のありましたように、大臣告示で一カ月に四十五時間、一年で三百六十時間などの時間外労働の限度基準というのを定めて、三六協定が限度基準の範囲内におさまるように労働基準監督署による指導を徹底しているわけでありますが、今お話があったのはいわゆる特別条項と呼ばれているもので、三六協定の中で特別条項を結べば限度基準を超えて時間外労働が可能となるわけであります。これはあくまで臨時的な場合に限ること、それから臨時的な延長時間は可能な限り短くするように努めなければならないこと、これを大臣告示で明確にしているわけでありますが、これによって指導も行っているわけであります。

 ただ、今、加藤大臣からもお話があったように、実効性が問われているところも事実だろうというふうに思いますので、こうしたことで、時間外労働の上限規制のあり方を含めて、先ほどお話がありましたが、長時間労働の是正については、働き方改革実現会議でしっかりと働く人の立場、視点に立って議論を進めて、実効性のある対策を取りまとめてまいれればというふうに思っているところでございます。

高橋(千)委員 今、実効性が問われているとおっしゃったんですが、まさにそうなんですよ。実態は、守っていない。

 厚労省の時間外労働規制に関する検討会の中でも、特別条項つき三六協定で定める特別延長時間が長いほど、時間外労働の実績、実際に労働時間が長くなっている、長く結べば長くなっている。私が言ったこと、ちゃんと私は厚労省の資料を見て実は質問しているわけなんですね、だからそこをちゃんと認めて、そこにメスを入れなければだめなんだということです。

 逆に、上限をかけるのは仮に仕方ないという議論になったとして、でもうちの事業所は適用除外にしてくれとなったら意味がありません。そういう声が今企業の中から随分出ているようなんですね。

 塩崎大臣にもう一度伺いますが、労働基準法における残業時間の限度基準において適用除外としているものはどんなものがありますか。

塩崎国務大臣 時間外の労働の上限規制につきましては、今お話があったようにこれから議論するわけでありますけれども、御指摘の大臣告示において三六協定の基準として定めている月四十五時間、年三百六十時間等の限度基準を適用除外としている業務は、まず第一に工作物の建設等の事業、それから自動車の運転の業務、それから三番目は新技術、新商品等の研究開発の業務、四番目に季節的要因等により事業活動もしくは業務量の変動が激しい事業もしくは業務または公益上の必要により集中的な作業が必要とされる業務として厚生労働省労働基準局長が指定するものでございます、これは通達でございますが。

高橋(千)委員 今読んでいただいたところは、お手元の資料の四枚目にございます。三のところを今読んでいただきました。

 そこで、基準局長に実務的に伺いますが、今大臣が答えたうち対象者数がわかるものについて、その人数と、それが全雇用者から見てどのくらいあるのか、お答えください。

山越政府参考人 お答えいたします。

 時間外労働限度基準告示において適用除外とされているもののうちおおよその対象者数がわかるものは、工作物の建設等の事業と自動車の運転の業務でございます。

 このうち、まず建設業の雇用者数でございますけれども、これにつきましては、総務省の平成二十七年労働力調査によりますと雇用者数が四百七万人でございまして、これは全雇用者数の七・二%となっております。

 また、自動車運転従事者につきましては、総務省の平成二十四年就業構造基本調査によりますと雇用者が百五十八万人でございまして、これは全雇用者数の二・八%となっているところでございます。

高橋(千)委員 四つのうち二つしかわからないというのが実態なんですけれども、今読んでいただいた建設業四百七万人と自動車運転従事者百五十八万人、足しただけでも五百六十五万人で、働く人の一割を超えているんです。基準の除外とされているところがそれだけいるということ。

 そして、これを見ていただきたい、過労死等の請求件数の多い職種。トップが、今言った自動車運転従事者。これはもう皆さん想像にかたくないと思うんですね。高速バスの問題ですとか、この間もずっと事故が続いてきた。さもありなんと思うのではないでしょうか。そして三番目に、今一番多いと言われた建設従事者が四十件という形でありますけれども、ある。

 そして、実は、ちょっと時間の関係でこれは言い切りにしますけれども、この二番目の営業のところですね。五十四件もあります。今回の、我々が残業代ゼロ法案と呼んでいる労働基準法改正案の中に営業の分野を裁量労働という形で拡大することが入っているわけですから、労働時間が明確に把握されない、そして、こうした過労死につながるような働き方がさらにふえるということがわかるのではないかと思います。ここは指摘をしておきたいと思います。

 それで、時間外労働の上限を決めようといいながら、今言ったように規制の対象の外にある業種や職種をふやそうとしている。そうしたら、やはり私は、長時間労働規制と叫んでいることの看板に偽りあり、そう思うわけです。

 そうした中できょう取り上げたいのは、その看板に偽りありの象徴的な問題と思うのが、原発の再稼働を目指して残業規制を外したという問題です。

 九日、東京新聞や幾つかの地方紙で一斉に取り上げられました。二〇一三年の厚労省の通達で、原発再稼働に向けた審査に対応する業務は、先ほど述べた残業時間の限度基準から除外される公益性のある業務、四つ目のものとして認めたというものなんです。

 記事によると、審査担当の電力社員には過労死ラインと言われる月百時間を超す残業が続き、三カ月で四百時間を上回るなど、年間の上限を大幅に超えていたケースもある、審査対応は長時間の残業で非常に過酷、体調を崩す人もおり、厚労省の通達が背景にあるとすれば残念だという電力関係者の声を紹介しています。

 塩崎厚労大臣は、一言で答えてください、この事実を承知していたのか。だとすれば、知ったのはいつか。

塩崎国務大臣 御指摘の通知は、平成二十五年時点において、原子力規制委員会に対して申請が出されております原発の再稼働に向けた適合性審査に関する業務に限定をして、当時の労働基準局長が、公益事業の安全な遂行を確保する上で集中的な作業が必要になると判断して発出したというふうに理解をしております。

 その経緯につきましては、けさほど事務方から説明を受け、把握をしたものでございます。

高橋(千)委員 けさということでございました。

 今紹介した通達を、お手元の資料六と七、平成二十五年十一月十八日というのと十二月五日、これは十年保存の通達でございます、つけてあります。

 アンダーラインを引いておりますから見ていただきたいんですが、二〇一三年七月八日に東電福島第一原発事故を受けての新規制基準が示されたこと、全国の原発において設置変更許可、工事計画の認可、保安規定の認可という三段階の適合性審査が行われているということを書いた上で、申請のあった新規制基準適合性に関する業務については、公益事業における業務であって、当該事業の安全な遂行を確保する上で集中的な作業が必要とされるとして、除外する旨の通達なんです。驚きました。

 世耕経済産業大臣に伺います。原発について所管する経産大臣には厚労省から相談があったのか。あったとすればいつか。

世耕国務大臣 お答えいたします。

 事務方に省内確認をさせましたが、厚生労働省からそのような相談を受けたという事実はないということでありました。

高橋(千)委員 これだけのことを全く相談もしていなかった、そのこと自体が驚く話です。

 同じ質問を原子力規制委員長に伺います。

田中政府特別補佐人 厚生労働省より御指摘のような相談を受けた事実はございません。

高橋(千)委員 規制の側にも推進の側にも、まして大臣にも全く相談なく、基準局の部局だけでこの通達を出した、こういうことが判明したと思います。非常に重大だと言わなければなりません。

 規制委員会にさらに伺います。残業時間制限を外したいというのは、多分、それだけ再稼働を急いでいるという意味だと思うんですね。審査には、申請してからいついつまでに終わるという期限があるんでしょうか。

田中政府特別補佐人 お答え申し上げます。

 期限はございません。

高橋(千)委員 期限はございませんという大変シンプルなお答えをいただきました。

 例えば、十月六日の福井新聞では、関西電力美浜原発三号機の再稼働審査について、三つのうち一つ目の合格証を規制委員会が出したと紹介しています。

 関電が全ての耐震評価の資料を規制委員会に提出したのが八月二十六日、九月六日の審査会合では、規制庁の山形浩史総括官が、当初考えていた予定より一カ月おくれているというふうなことは共有できているのかと指摘、早く一〇〇%のものを出さないと間に合わない、夏前から何となく関電がのんびりしていると詰め寄ったと。

 なぜ規制庁が審査を早く早くと催促するんですか。ここで言う間に合わないとは、どういう意味ですか。

田中政府特別補佐人 今御質問の美浜三号機については、原子炉規制法で定められた四十年の運転期間が本年十一月三十日に満了するため、時間切れで審査が中途半端に終わることは望ましくないとの考えから、規制委員会としても、厳正かつ迅速に審査を行うべく最大限の努力をしてまいりました。その一方で、審査ですから、まず申請者である事業者が最大の努力を払っていただいて、きちっとした申請をしていただくということが必要であります。

 結果として、設置変更許可については、許可するとの結論になっておりますけれども、現在の時点ではまだ工事計画認可と運転期間延長認可については審査中であり、引き続き、期限までにしっかりとした結論が出せるよう、厳正に、かつ迅速に審査を進めていきたいと考えております。

高橋(千)委員 今の御答弁、本当に大変な中身だと思うんですね。

 十一月三十日で四十年の期限が来てしまうんですね。それまでに審査を全部終わらなければ、結局再稼働できない。逆に、間に合えば、あと最大で二十年延長するということが間に合う、そういう説明を受けました。

 これは全く本末転倒じゃありませんか。大体にして、規制する側が早く早く。あり得ますか。

田中政府特別補佐人 私ども規制委員会が適合性審査で期限を設定するということはございません。原則としてございません。

 ただし、先ほど申し上げましたように、美浜三号機については、法律上、来月になりますけれども、十一月三十日で四十年の満期、満了するということであります。

 この点について、審査を始めるに当たっては、関西電力の社長においでいただいて、どういうふうに審査を進めたらいいのかということについて会社の意向もお聞きして、こういったものについて、美浜三号機については優先的に審査を進めていただきたいというような御意見があったので、こういう対応をさせていただいております。

高橋(千)委員 本当にとんでもない話だと思うんですね。そんなことを規制の側が心配する必要がありますか。四十年を、間に合わないんだったら、それで諦めるべきなんですよ。まして二十年延長するなんて、とんでもない話じゃありませんか。そのために審査を早く早くと。安全をないがしろにしては絶対ならないんです。

 実は今回、美浜はこの中に入っていないんですけれども、見ていただきたいと思うんですが、残業時間限度基準の除外となった原発。見ていただくとすぐわかると思うんです。二〇一三年七月八日が並んでおります。これは、規制委員会の新規制基準が始まった日にばっと出したところが一斉に除外となったということであります。北海道電力泊原発一、二号炉、泊原発三号炉、関西電力大飯原発三、四号炉、あと四国電力、九州電力、東京電力の柏崎刈羽原発というふうに続くわけなんです。

 それでは、厚労省に伺います。では、美浜原発三号機のような、ここにない原発も今後認めていくつもりなんですか。

山越政府参考人 お答えいたします。

 御指摘いただいております新規制基準適合性審査に関する業務についての三六協定の取り扱いでございますけれども、これは、平成二十五年に、当時、労働基準局におきまして、こういった事業が、公益事業の安全な遂行を確保する上で集中的な作業が必要になると認められた業務だということで、こういった業務を対象としたものでございます。

 このように限定的に認められた業務を拡大することについては、現時点では考えていないところでございます。

高橋(千)委員 集中的な業務で公益的な事業、それ自体信じられない評価ですけれども、しかし、これだけだというのもまた、言っていることが矛盾しているような気がいたします。そうじゃないでしょうかね。本当に公益的だというのであれば、なぜこれだけに絞るのか。何か特別な意味があるんでしょうか。

 この中のどこか、電事連の代表でいえば関電でありますけれども、どこかから要望されて誰が決めたんでしょうか、明らかにしてください。

塩崎国務大臣 発電用の原子炉が新規制基準に適合しているかの審査に関する業務を限度基準の適用除外とすることについて、これは電力会社から要望があって、当時の労働基準局長が、公益事業の安全な遂行を確保する上で集中的な作業が必要になると判断をして通達を発出したものというふうに理解をしております。

高橋(千)委員 どこですか。

塩崎国務大臣 どこというのは、電力会社のことですか。(高橋(千)委員「はい」と呼ぶ)これは九州電力でございます。

高橋(千)委員 これを見ながらなるほどと思って皆さん聞いていたと思うんですけれども、やはり電力会社からの要望があって基準通達を出したと。

 非常に大変な事態だと思うんですよね。申請から早くても三年ですよね。これだけ長期に残業時間規制を取り払えばどういうことになるのか。もうわかると思うんです。過労死ラインを超えてまで残業して再稼働審査に間に合わせることがなぜ公益なのでしょうか。これが認められるなら、うちだってうちだってと、除外がふえるのは目に見えています。一片の通達でそんなことは許されるんですか、厚労大臣。

塩崎国務大臣 労働基準法第三十六条により認められる時間外労働は限度基準告示でその労働時間の延長の上限が定められているわけで、一方で、一部の事業及び業務については、その特殊性に鑑みて限度基準告示の適用除外としていることは、先ほど御説明したとおりでございます。また、公益上の必要によって集中的な作業が必要とされる業務として先ほど申し上げたように労働基準局長が指定するもの、これについても限定的に適用除外を認めているということで、その上で、発電用の原子炉が新規制基準に適合しているかどうかの審査に係る業務は、電力会社から原子力規制委員会の審査に対応する必要があるとの要請が先ほど申し上げたようにあったことを踏まえて、労働基準局において当該事務の内容を精査した結果、公益事業における業務であって、当該事業の安全な遂行を確保する上で集中的な作業が必要になるとして限度基準の適用除外とすることを認めたものというふうに今回承知をしたところでございます。

 このように、限度基準告示の適用除外は真に必要なものに限られて運用されているわけでございますが、いずれにしても、時間外労働の上限規制の労働基準法のあり方を含めて、長時間労働の是正については、先ほど来繰り返し申し上げているように、今既に始まっております働き方改革実現会議において、労使のトップや、あるいは有識者に集まっていただいて、しっかりと働く人の立場に立って議論を深めてまいりたいというふうに考えております。

高橋(千)委員 なぜ真に必要なのか、意味がわからないです。定期検査と再稼働のための審査は全く違うわけですよね。再稼働のための審査は真に必要なもの、残業時間の規制、基準を取っ払っても。そうですか。これは明らかに国の都合じゃないですか。あるいは、電力会社の都合に厚労省が屈服したことになると思います。断じて認められません。

 総理に、ここまで聞いていただいて、率直な感想を伺いたいと思うんです。

 原発再稼働の是非については、言うまでもなく我が党は反対をしているわけで、今その是非を問うているわけではないんです。

 ですが、住民の間で、裁判も含め大きな反対運動があるなど意見が分かれているときに、もちろん自治体からも声が上がっているときに、総理だって何度も、安全審査を満たすのが条件だと言い、その安全審査とは世界一の基準と言ってきたではありませんか。それを、残業時間の規制を外してまで急げと。おかしくありませんか。

 労働者に無理をさせるということは、労働者の健康確保にとってだけではなく、安全のための審査対応のはずが、作業の確実性も問われることになると思いませんか。見解を伺います。

安倍内閣総理大臣 これは既に厚労大臣からも答弁をさせていただいておりますが、労働基準法第三十六条により認められる時間外労働は限度基準告示でその労働時間の延長の上限が定められております。一方で、一部の事業及び業務については、その特殊性に鑑み、限度基準告示の適用除外としており、公益上の必要により集中的な作業が必要とされる業務として労働基準局長が指定するものについても限定的に適用除外を認めています。

 御指摘の、発電用原子炉が新規制基準に適合しているかどうかの審査に関する業務は、電力会社から原子力規制委員会の審査に対応する必要があるとの要請があったことを踏まえ、厚生労働省において当該業務の内容を精査した結果、公益事業における業務であって、当該事業の安全な遂行を確保する上で集中的な作業が必要になるとして限度基準の適用除外とすることを認めたもの、このように承知をしております。

高橋(千)委員 厚労省が答えたことを言ってくださらなくてもいいんです。政府の推進する政策のためなら残業時間の規制も取り払う、こんなことは絶対あってはならないと思うんです。その点でどうかということを聞いています。

 また、やはり、働き方改革についてずっと議論をしてきましたけれども、労働時間を幾ら規制しても、この事例のように、電力会社から要望があった、では除外しましょう、そして通達一つで除外されるなら、除外はどこまでも広がります。むしろ必要のない除外も本当はあるはずなんです。今こそちゃんと見直すべきではありませんか。

世耕国務大臣 原発再稼働に関する政府の一貫した方針は、あくまでも、スケジュールありきではなく、安全確保を最優先に取り組むべきものと考えております。こうした考え方については、常日ごろから、電気事業者を含め、関係各所にしっかりとお伝えしているところであります。また、その審査の際に電気事業者が労働法規を含む各種法令に沿って対応することは当然だというふうに考えております。

高橋(千)委員 何のために出てきたのかよくわからないんですが、気を取り直して、もう一度総理に答弁をいただきたいと思います。

安倍内閣総理大臣 今、世耕大臣が答弁させていただいたのは、まさに原発についての基本的な考え方を答弁させていただいたところでございますが、この適用除外については、これはまさに公益上の必要、そして集中的な作業が必要とされるかどうかということに鑑み、これは何でもということではなくて、ちゃんとこういう条件に合っているかということの上において労働基準局長が指定するものについても限定的に適用除外が認められている、このように考えております。

高橋(千)委員 極めて重大な事態がわかったのではないかと思います。

 働き方改革ということが最大の目玉だといって、総理はこれまでも何度も、ちゅうちょなく規制をかける、法改正を行う、そこまで踏み込んでお話をされました。しかし、一方では、いろいろな除外があるということを指摘したのに対して、やはり政府が推進する立場ではこうしたこともあり得るんだということがわかったわけなんです。

 あと一言言って、終わります。

 今、経済財政諮問会議でもやられていますが、成長戦略と働き方改革は一体のものだと強調されています。成長つまり労働の生産性を上げることだけに躍起になるのではなくて、生産性を上げるのも、労働者を大切にしてこそではないか、あの手この手の規制除外ではなく、きちんとルール化し、ルールを守ってこそ企業のイメージもアップできるんだ、その立場で取り組んでいただきたい、このことを指摘して、質問を終わります。

浜田委員長 これにて高橋君の質疑は終了いたしました。

 次に、浦野靖人君。

浦野委員 日本維新の会の浦野靖人です。よろしくお願いをいたします。

 きょうも、午前中からずっと質疑を見ていましたけれども、非常に殺伐とした雰囲気がこの委員会に流れていますので、その殺伐とした雰囲気にのまれないように質問していきたいと思います。

 我々日本維新の会は、通常国会のときに民進党の前政調会長から、議案提案権ができてから物事を言ってねと言われましたので、議案提案権ができましたので、参議院で提出をしてまいりました。本日も、十三法案、第二弾、目指せ百本ということで出してきた法案の第二弾を出させていただきました。

 その中で、一つ、きょう取り上げさせていただきたい。被選挙権年齢の十八歳引き下げ法案。

 もちろん、成人年齢が今二十歳で、十八歳に下がるという議論もなされております。それに先行して選挙権年齢が十八歳に引き下がったというところで選挙が行われますけれども、我々はやはり、選挙権が十八歳まで下がるのであれば、被選挙権も十八歳まで引き下げるべきと。

 今現在、各級選挙で立候補できる年齢がばらばらです。これは、いろいろもっともらしい理由をたくさん挙げられていますけれども、例えば年をとっていればいいのか、そういうわけではないと私は思っています。それを決めるのはやはり選挙に行かれる国民の皆さん、投票される方々だと思いますので、わざわざ年齢をそうやって制限する必要は、入り口の制限をかける必要はないんじゃないか、あとは皆さんに選んでいただくというのがいいんじゃないかということで、全ての被選挙権を十八歳まで引き下げるという法案を提出させていただいております。

 実は、我々は、十八歳に選挙権を引き下げたときに、いろいろな人たち、若い人たちと議論させていただきました。その中でやはり皆さんがおっしゃるのは、選挙権が下がるなら被選挙権も下げて当然じゃないかという意見がかなり多くありました。若い人たちの協議団体も、そういう提案を我々日本維新の会にもされてきました。私たちは、それはやはりそのとおりだろうと思っています。

 このことについて、総理大臣、どうお考えでしょうか。

安倍内閣総理大臣 今般の参議院選挙は、選挙権年齢が引き下げられた初めての国政選挙であったと思います。引き続きこれをしっかりと国民の間に定着させていくことが肝要であると考えておりますが、御指摘の被選挙権年齢は、諸外国の例を見ても、選挙権年齢と必ずしも一致していないなど、そのあり方にはさまざまな考え方があるものと承知をしております。

 いずれにせよ、被選挙権年齢の取り扱いは、まさにこれは民主主義の土台でございますので、選挙制度の根幹にかかわる事柄でもございますので、各党各会派において御議論を深めていただきたい、このように思います。

高市国務大臣 既に総理も答弁されましたけれども、被選挙権年齢の引き下げにつきましては、政治家としての職務の内容ですとか選挙権年齢とのバランスも考えながら、しかしながら前向きに検討をされるべき事項かなと考えております。

 そして、十八歳選挙権、選挙権年齢の引き下げにつきましても議員立法で提出をしていただきましたことから、やはり民主主義の土台に係ることです、各党各会派で活発な御議論を期待申し上げます。

浦野委員 ありがとうございます。

 これからいろいろな議論がされると思いますので、我々は、被選挙権が十八歳になるのに向けて、しっかりと議論していきたいと思っております。

 次に、性暴力被害者についての質疑をさせていただきます。

 これは実は、通常国会で、民進党さん、野党の皆さんの五党で協力をして、法案を提出させていただいております。内閣の方では、一応今の時点では予算をしっかりつけていただいて、その事業に対していろいろ手助けをしていただいております。

 今出させていただいている表なんですけれども、今そういう暴力のセンターが整備されていないところが赤く塗られています。そこで気になるのは、実は安倍総理の地元もそういうところが整備されておりません。高市大臣のところもそうです。さらに、塩崎大臣のところも、実はそういう性暴力に対する被害のセンターが整備されていない県の一つなんですね。加藤大臣のところはちゃんと整備をされております。

 私は、現職の閣僚の皆さんの地元がこういうことではどうかなと。やはり、安倍総理が女性の社会活躍を目指すと言っている以上、こういったところもしっかりと手当てをしていっていただきたい。

 これは今、大阪のSACHICOというところがモデルケースになって全国に広がっていっています。今我々は法案を出させていただいていますけれども、本来はしっかりと根拠法になるものをつくって予算をしっかりとつけていただく、そうしないと全国で広がっていかないんじゃないか、だから、こんなふうに、まだまだできていないところがたくさん起きるんじゃないかと思っています。法律がないから担当の省もなかなか予算を獲得しにくいんじゃないかと思うんですけれども、その点、いかがですか。

加藤国務大臣 委員には、二月、たしか予算委員会でいろいろ御示唆いただきまして、私もSACHICO等も先般視察をさせていただきました。

 性犯罪や性暴力は、女性の人権を著しく踏みにじる決して許されない行為であるというふうに思っております。また同時に、そうした犯罪を起こさせないということはもちろん基本でありますけれども、残念ながら起きた場合に被害者の方々をどう守っていくのか、そういう御指摘なんだろうと思います。

 我々も、第四次男女共同参画基本計画あるいは第三次の犯罪被害者等基本計画に基づいて、関係省庁が連携してその対応に当たらせていただいておりますし、また、被害に遭った方々の負担をできるだけ少なくするということで、被害直後から医療面、心理面などの支援を可能な限り一カ所で提供するワンストップ支援センターを全国各地に整備していきたい。そして、平成三十二年までに各都道府県最低一カ所という目標をできるだけ前倒しに。現在は、三十三カ所、三十二都道府県ということでございます。

 さらに今後ともこの整備を進め、現在、平成二十九年度の予算の中においてもこうした整備を進めるための予算も要求しておりますので、それをしっかり獲得できるべく努力していきたい、こう思っております。

浦野委員 総理の地元山口にもありませんけれども、法整備をされるということに関して、総理はどうお考えですか。

安倍内閣総理大臣 性犯罪、性暴力の被害者支援に関する根拠法が必要ではないかという御指摘であります。

 性犯罪、性暴力被害者への支援において最も大切なことは、今、加藤大臣から答弁をさせていただいたように、被害者の負担をできるだけ少なくすることだと考えておりまして、これまでもワンストップ支援センターを整備することとしてきたところでございます。平成三十二年までにこのワンストップ支援センターの設置数を各都道府県最低一カ所とするとの成果目標を設定し、その取り組みを進めているわけでありますが、既に支援センターを整備した都道府県は三十を超えているわけでございます。

 まだここで漏れている、山口県がまだという御指摘、私も山口県にないということは今御指摘されて初めて知ったわけでございますが、これは私がこれを指示してやらせるということでは、地方分権でありますからそうではないわけでありますが、今、山口県の皆さんもこれを見ていて、これはすぐに整備しなければいけないと思っている、こういうふうに私は思います。

 今後とも、支援センターの全国整備の推進、支援センターの支援者に対する研修を初め、性犯罪、性暴力被害者支援をさらに充実させていきたい、このように思います。

 法的根拠等については、まず我々はここでやるべきことをやっていきたい、このように考えているところでございます。

浦野委員 これは警察庁にお願いをして出していただいた数字ですけれども、わかっているだけでこの数字です。これは恐らく氷山の一角であって、まだまだ表に出てきていないたくさんの性犯罪があるんだろうと私は思っています。

 きょうは時間がないので、塩崎大臣、四国は四県とも整備されていませんので、ぜひ塩崎大臣もいろいろと御尽力いただけたらと思います。よろしくお願いをいたします。

 続きまして、きょうは大きな超党派の議連がありました。IR議連という議連がありました。

 国会には超党派の議連がたくさんあります。きょうニュースにもちょっとなっていましたけれども、男女共同参画に関する法案、今これを与野党で用意しているということです。

 これは、さきの通常国会で会期末に、議連の中でまとまりかけた話を実は民進党さんが出し抜いて法案を出す形になりました。議連の会長が実は民進党の先生でありまして、そういった先生が所属している党が何でそんなことをするのかなと。

 私たちは、この国会に参加させていただいてまだ三年。まだ四年たっていません。この議連は十何年かけてこの議論をやってきて、やっと法案提出というところを目前にして、私たち日本維新の会を含まない野党がその法案を提出されました。超党派の議連でそういうことをされると、超党派の議連の意味は何があるのかなというふうに私は思います。

 会長は最後まで、まとめると、一生懸命議連の中でおっしゃっていました。しかし、党がそれをやらせた、指示したんですね。会長さんは、中川先生ですけれども、悪くないとは思いますけれども、私は、こういうことをされると、本当にこれからいろいろな議論ができなくなっていくというふうに思うんですね。

 我々は自公さんの法案に協力をしていますので、法案を提出しております。(発言する者あり)民進党の補完勢力と言われたくないので、そういうことはしませんけれども。

 私は本当に裏切りだと思うんですね。こういったことがほかの議連でも行われているんですね、実は。本当に私はどうかと思います。

 こういう議連のあり方についても、男女共同参画についても、少し意見を聞いておきたいなと思います。

加藤国務大臣 政治分野における女性の参画拡大、これは政治に多様な民意を反映するという意味で大変重要であるというふうに考えておりますし、他方で、現実、委員御承知のとおり、我が国の国会議員に占める女性の割合は、着実に上昇してきているといえども現状一三・一%で、国際基準に比べて決して高い水準ではないわけであります。

 そういう中で、第四次男女共同参画基本計画に基づいて、国政選挙等における女性候補者の割合を高めるよう、各政党に対してポジティブアクションの導入の検討を要請するなどの働きかけを私もそれぞれさせていただいているところであります。

 また、そういう流れの中で、今お話があった超党派の議連においていろいろ御議論がされ、そして先般、民進、共産、社民、生活の四党によって法律案が前通常国会に提出をされている、こういう流れであります。

 議連の動きについて政府が一つ一つコメントする立場ではございませんけれども、最初に申し上げましたように、政治分野における女性の参画拡大は大変重要なことだ、そういった意味の促進に向けて我々も努力をしていきたい、こう思っております。

浦野委員 ありがとうございました。これからも我々も協力をしていきたいと思っております。

 最後に一つ、少し時間がないので急ぎますけれども。

 通常国会も、保育士の給与に関していろいろな議論が行われました。同一労働同一賃金という安倍総理のお話もあります。我々がそれを実現する中で、私は保育士の公民格差をまずなくしていったらどうかと思います。公民格差の議論も、今まで厚生労働委員会ではいろいろしてまいりました。

 このデータが公民格差、公私間格差でよく使われるデータなんですけれども、正直言って、公立の保育所の数、五百五十八カ所というふうに書いてあるんですけれども、これは全国の公立の保育所の中で本当に数少ない、ごく少数の数なんですね。

 私はやはり、公立の保育所のデータぐらいは全保育所をとるべきだと思うんですね。そうじゃないと、私もこのデータだけで判断はなかなかしにくいというのが現実です。

 というのは、我々は、現実的に、私立の保育園、公立の保育園の先生方の給料がこの表ぐらいの差しかないというふうには思えません。もっとあります、実際には。その私の感覚とこのデータの数字が余りにもかけ離れているという部分があります。

 私も、ただ、ではこのデータを見てどうこうという判断は、余りにもデータの根拠になる母数が少な過ぎて、はっきりとした議論ができないと思うんですね。まず、そういったデータをしっかりととる。データをとってくださいという質問も、厚生労働委員会で今までさせていただいているはずです。厚生労働省では議論のためにそういうデータを集めるということを言っていただいていたと思うんですけれども、その後どういうふうな状況になっているかというのをちょっとお聞かせいただけたらと思います。

塩崎国務大臣 おっしゃるように、公私の処遇の格差というものが、先生からも御指摘もありましたし、その点は広く指摘をされているわけでありまして、平成二十五年二月時点の調査で月額約三万円の差があって、その際にどういう数のアンケートの結果が返ってきているかというと、公立が七百四十八カ所、私立が八百五十一カ所、これではやはり十分ではないというふうに私も思うところであります。

 ことしは三月時点で保育園の経営実態等を現在調査中でございますけれども、今まで七千七百九カ所に調査票を送りましたが、今回、約一万に近い九千五百八十六施設に調査票を配付し、できる限り多くしようということでやっています。

 しかし、今の御指摘は、公立の保育園のカバーをしっかりやれ、こういうことでありますので、その御意見をしかと受けとめて、今後の調査に生かしていきたいというふうに思います。

浦野委員 時間が来ましたので、これで終わります。どうもありがとうございました。

浜田委員長 この際、伊東信久君から関連質疑の申し出があります。浦野君の持ち時間の範囲内でこれを許します。伊東信久君。

伊東(信)委員 大阪は枚方市、交野市から参りました、日本維新の会の伊東信久です。

 我々日本維新の会は、元祖提案型責任政党といたしまして、今国会、百本の法案提出を目指しております。

 さて、まさに本日、第二弾といたしまして十三法案を出しました。その中でも私が特に関心のある、重要だと思っている地方公営企業民営化要件緩和法案、この法案に関して御質問させていただきたいと思います。

 この法案は、実は、大阪市の市営地下鉄の民営化に関する法案です。

 それで、大阪市の市営地下鉄を民営化する際に、今、市議会の中でもけんけんがくがくと議論になってなかなか前に進まない、このハードルといたしまして、特に重要な公営施設を廃止する場合、議会の出席議員の三分の二以上の同意が必要という。これは本当に非常に高いハードルとなって、足かせとなっております。

 ところが、大阪市の地下鉄、この地下鉄自体がなくなってしまうわけではないんですね。事業が民営化されて、継承されるわけですから。

 今回、我々日本維新の会は、公の施設は、民営化等により他の組織が事業を継続する場合の同意は過半数、つまり二分の一でいいではないかというような法案を提出させていただきました。我が党の足立議員が二月の予算委員会でも御質問しましたけれども、例えば日本政策投資銀行などの国の機関の民営化の場合は過半数で足りる、しかるにこの三分の二というのはどういうわけだろうかということです。

 総理自体は地方創生と一貫しておっしゃっていますので、この大阪の取り組みに関して総理はどのように感じておられるか、お願いいたします。

安倍内閣総理大臣 地方自治体の条例で定める特に重要な公の施設の廃止等については、利用者である住民の利用権を尊重するため、今御紹介いただいたように、出席議員の三分の二以上の同意を要するものとされているところであります。

 確かにこれは高いハードルであろう、このように思いますが、特に重要な公の施設の廃止等に係る特別多数議決制度のあり方については、御党提出の法案も含め、さまざまな議論があるものと承知をしております。住民の利用権を尊重する観点から、地方自治体の意見等を踏まえた十分な検討が必要であるというふうに考えております。

伊東(信)委員 総理、こういった議論の中で、地域の資産が塩漬けされているわけなんですね。加えて、これは大阪だけの問題じゃなく、地域でもこういった問題が沸き上がってきますので、ぜひとも、安倍総理、地方創生ということで、地域の問題をしっかり政府としても認識して、これから委員会も始まりますでしょうから、我々の出した法案が議論されることを望みます。

 時間もないことですので。

 今度、第三弾の法案を我々は実は予定していまして、私自身、外科医でもありまして、社会保障に関してかなり関心を持っております。そして、地元の枚方市、交野市を歩いていますと、地元の皆さんもやはり社会保障に対してかなり高い関心を持っておられます。その中で、今回は歳入庁設置による業務効率化等推進法案について御質問させていただきたいわけなんですけれども、厚生年金の加入漏れ、このことについて御質問させていただきたいんです。

 昨年の十二月に、厚生労働省のアンケート調査による試算によりますと、厚生年金に入りたいのに、入る要件があるのに入れていない方が二百万人。そして、厚生年金に入るべき事業所で入っていない事業所が七十九万カ所あるという試算が、厚生労働省の報告で昨年の十二月にありました。

 この数字に関して、総理、率直にどう思われますか。

塩崎国務大臣 今、二百万人、法人事業所七十九万カ所が厚生年金の加入漏れ、逃れではないかということについてのお尋ねがございました。

 これは、国税庁の法人情報を活用して把握いたしました厚生年金の適用の可能性のある事業所約六十二万に対して、本年三月以降、調査票を順次送付いたしまして、実態の調査を今行っているところでございます。

 この調査では、従業員の人数とかあるいは就労時間だけではなくて、厚生年金保険に加入をしていない理由についても質問項目に入れておりまして、今後、年度末までに回答の全体的な集計、分析を行うということで、この際、厚生年金に加入をしていない理由についても分析していくこととしております。

 私どもとしては、今申し上げたように、六十二万に対して出しておりますけれども、この二百万人というのはあくまでも推計値でございまして、実際はどうなのかということは今実態調査を行っているというところでございます。

伊東(信)委員 総理は常々、財源さえあれば年金もきちっと支給額をアップされたい、そうおっしゃっています。実は、詳細に関して厚生労働大臣を呼ぶべきだということで、私は塩崎大臣に来ていただきました。この財源に関しての御感想を総理にお聞きしたかったわけなんですけれども、最後、大臣は、この二百万というのは推計だとおっしゃいました。

 実は、我々日本維新の会が国税庁のいわゆる民間給与実態統計調査をもとに、実際は加入漏れと思われる人数を試算したのがこのパネルなんですけれども、そうすると、何と、二百万人ではなく、四百九十万人近くの方が本来は厚生年金に加入することができるにもかかわらず加入できていない、こういった実態も浮かびました。ではこの四百九十万人の方が厚生年金の保険料を払ったとして、この保険料を計算すると、三億七千万、三・七兆円になりました。

 この数字というのは、かなりびっくりする数字、国民の皆さんもびっくりされる数字だと思いますし、十分財源になり得ると思うんですよ。

 ただ、なぜ厚生労働省の数字と差があるかといいますと、厚生労働省の統計は、先ほど大臣がおっしゃったように、国民年金被保険者のアンケートをもとに出しているからなんですね。

 それで、先ほどちらっと理由についてもおっしゃったんですけれども、せっかくアンケートをとっているわけですから、厚生年金に加入できるかもしれないのに加入していない理由、そして事業者に対しても、なぜ加入していないか、その理由というのはもう分析して把握されているんでしょうか。塩崎大臣、お願いいたします。

塩崎国務大臣 まず第一に、これは四百九十万人という随分大きな数字になっておりますが、これは民間給与実態統計調査をもとにお調べいただいているんだろうと思うんですけれども、これは実は厚生年金の対象ではない方々も入っていたりすることもございまして、過大になっているのではないかと私どもとしては思っているところでございます。

 それは、年収百五十万以上の方が厚生年金に加入すべき人だということで先生の資料は仮定をされているわけでございますけれども、その推計でいきますと、厚生年金保険の要件というのは単に年収だけではないんですね。これは、就業状況、例えば、一般社員の労働時間の四分の三以上は働いていないといけない、従業員五人未満の個人事業所あるいはサービス業等の個人事業所は除外されているといったことで、例えばおでん屋さんとか焼き鳥屋さんとか、そういうような形の方々は除外されているなどを勘案する必要がございまして、所得基準だけで適用の可能性があるものを推計できるということは必ずしもないということだと思っております。

 また、今の民間給与実態統計調査に基づいたものでいきますと、調査上、給与所得者には制度上厚生年金の被保険者とはなり得ない、例えば七十歳以上の給与所得者とか、共済に加入すべき私立学校の教職者とか、あるいは郵政会社職員なども含まれていて、やや過大に出ている可能性があるなというふうに思っております。

 調査票において、今厚生年金保険に加入していない理由という例として、私どもとしては、保険料の負担が困難なのか、従業員の同意が得られないのか、手続で面倒なのかとか、あるいは加入にメリットを感じない、加入要件を知らなかった等々、私どもの方で質問を投げかけておりまして、こういったことをしっかりと受けながら、返ってきたものを分析して、しっかりと厚生年金に入るべき皆さんにはぜひ入っていただこうというふうに思っているところでございます。

伊東(信)委員 大臣に御答弁いただきましたけれども、私はまず理由を尋ねたわけなんですね。年金に入る意味がないからとか、政府の方から投げかけて、それをまさに今分析しているところであるのならば、今の実態ということがきちっと調査できていないということになるわけなんですね。そうすると、数値目標も今後の見通しもなかなか立たないと思います。

 加えて、今御指摘いただいた、いろいろな加入要件もこの計算式には入っております。ただ、時間もありませんのでこの詳細については申し上げませんけれども、私が申し上げたいのは、二百万人の厚生年金に入りたいのに入れない方がいて、我々の計算では四百九十万人に及ぶ。二百から四百九十までの幅の中で正確な数字があるやもしれないんですね。ただ、二百万人以上というのは大体推計されるわけで、我々の試算のように国税庁のデータを活用すれば、この実態をまず把握できるのではないか、こういった指摘なわけです。

 国税庁から提供されたデータを利用しながら保険料徴収の増加に取り組んでいると、厚生労働省から事前の聞き取りで聞きました。ところが、ではどれぐらいの頻度でやっていますかと私がお聞きしたところ、何と年に二回しか聞き取りをしていないらしいです。これじゃちょっと少な過ぎるんじゃないですか。やはり毎月聞き取るぐらいじゃないと、しっかりとしたデータも生まれてこないわけです。

 安倍総理、先ほど来、財源があってこその社会保障とおっしゃっていました。我々は、そのどこに無駄があるか、どこに無理があるかということをしっかりと指摘したいわけでございまして、この国税庁からの情報提供、塩崎厚生労働大臣、まずは、年に二回のデータじゃ少ないと思わないかということについて御答弁をお願いいたします。

塩崎国務大臣 日本年金機構で国税庁から提供を受けている情報を活用することで厚生年金の適用の可能性のある事業所を特定して、個別に厚生年金の適用要件について調査、確認の上で加入指導に取り組んでいるのが年金機構でやっていることでございまして、この結果、二十七年度、九万三千事業所を新たに適用いたしました。これは格段に今までよりも多くなっているわけでありますけれども、今年度に入っても、八月末までの五カ月間で既に五万件以上の事業所を加入指導により適用して、取り組みが加速しているわけであります。

 さらに、二十九年度以降、厚生労働省、日本年金機構と国税庁の間の法人情報の共有についてネットワーク化し、今お話がございました、法人情報の取得頻度を二回ではなくてもっと上げるということによって事業所に対する早期の加入指導が可能になるのではないかというふうに考えて、先生の御指摘のように、この頻度を上げていくということで情報をしっかりと押さえていきたいというふうに思っているところでございます。

安倍内閣総理大臣 厚労大臣を呼んでいただいて、ありがとうございました。大変突っ込んだ議論が進んだのではないかと思います。

 今、厚労大臣から答弁したように、二十七年度は九万三千事業所が適用され、そして今年度は八月までの五カ月で既に五万件。これは十分に成果が出ているわけでありますから、さらに頻度を上げていくというのは当然のことであろう、このように考えます。

伊東(信)委員 安倍総理も塩崎大臣も、大事な答弁をいただいたと思います。

 今の世の中、正直者がばかを見る世の中になってきているんです、残念ながら。正直者が報われる、そんな世の中に我々もしたいと思っていますし、安倍総理も政権与党も思われていると思うんですね。

 先ほど、年に二回の国税庁と厚労省、年金機構のやりとりをふやそうとおっしゃっていた。これは非常に大事なことなんです。しかしながら、やはり持続可能な社会保障を実現するためには財源も必要で、そして国民の皆さんにとっても、ワンストップで税と厚生年金の両方を払うところが一緒だったら。先ほど、塩崎大臣の中で払い方が難しいという話もありましたように、利便性を考えますと、ぜひとも、我々日本維新の会が提案するところであります歳入庁設置による業務効率化等推進法案、こういったことを御検討いただければと思うんですけれども、総理、いかがですか。

石原国務大臣 歳入庁の議論は、政府といたしまして、税と社会保険料の性格が基本的に違うということで、一つにまとめることによって徴税率が上がる、保険料の徴収が上がるというふうには必ずしもならない、こういう整理をさせていただいております。

 ですから、委員と厚労大臣の間で議論がありましたように、国税庁の法人情報をしっかりと、委員の御指摘のとおり、もっと細かく何度も何度も情報を提供し合うということも御答弁でございました。こういうもので実績を上げて財源をつくっていくということにおいては、御党のお考え方、また先生のお考え方と私どもは軌を一にしているのではないかと、議論を聞かせていただいて感じたところでございます。

伊東(信)委員 歳入庁の話というのは以前にもあったようなんですけれども、この歳入庁設置に関する足かせとなる部分というのは、総理、何かあるのでしょうか。

石原国務大臣 実務的なことなのでお話をさせていただきたいと思うんですが。

 国税庁の職員の方には強制的な徴税権限があって、公務員でございます。年金機構の方は非公務員型の独法でございまして、一万二千人の非公務員の方がいる。

 御党は行革を看板政策に掲げておられますので御理解いただけると思いますが、やはり行革の観点、また基本的な性格が違う二つのものを一人の人間が扱うことが果たして効率的なのかという、根本的な問題があるものだと承知をしております。

伊東(信)委員 国民の皆さんは、毎日あくせく働きながら税金も年金も納めているわけですね。その中で、専門家でもないのに勉強されて、自分のお金ですから、支払われているわけです。

 そんな中で、やはり、今の石原大臣の答弁は、残念ながら、役所の縦割り感、これがもう足かせになっているように感じて仕方がないんですね。答弁の内容を見ると。

 そういったところも含めて、もう時間ですので、私は時間どおりにちゃんと終わります。我々日本維新の会は、国民目線で、納税者の目線で、年金を払っている方の目線で、これからも提案し続けることをお誓いして、私の質疑を終わらせていただきます。

 ありがとうございます。

浜田委員長 これにて浦野君、伊東君の質疑は終了いたしました。

 以上をもちまして本日の集中審議は終了いたしました。

 次回は、公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。

    午後五時四分散会


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