衆議院

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第2号 平成29年1月26日(木曜日)

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平成二十九年一月二十六日(木曜日)

    午前八時五十九分開議

 出席委員

   委員長 浜田 靖一君

   理事 石田 真敏君 理事 菅原 一秀君

   理事 西村 康稔君 理事 葉梨 康弘君

   理事 宮下 一郎君 理事 武藤 容治君

   理事 大西 健介君 理事 長妻  昭君

   理事 赤羽 一嘉君

      伊藤 達也君    石崎  徹君

      石破  茂君    岩屋  毅君

      江藤  拓君    衛藤征士郎君

      小倉 將信君    小野寺五典君

      大串 正樹君    大西 英男君

      奥野 信亮君    門  博文君

      黄川田仁志君    河野 太郎君

      國場幸之助君    佐田玄一郎君

      鈴木 俊一君    高鳥 修一君

      津島  淳君    豊田真由子君

      長坂 康正君    根本  匠君

      野田  毅君    野中  厚君

      原田 義昭君    平口  洋君

      星野 剛士君    保岡 興治君

      山下 貴司君    渡辺 博道君

      井坂 信彦君    今井 雅人君

      小川 淳也君    神山 洋介君

      後藤 祐一君    玉木雄一郎君

      辻元 清美君    中島 克仁君

      福島 伸享君    細野 豪志君

      前原 誠司君    村岡 敏英君

      本村賢太郎君    山尾志桜里君

      伊藤  渉君    國重  徹君

      濱村  進君    真山 祐一君

      梅村さえこ君    大平 喜信君

      斉藤 和子君    高橋千鶴子君

      井上 英孝君    伊東 信久君

    …………………………………

   内閣総理大臣       安倍 晋三君

   財務大臣

   国務大臣

   (金融担当)       麻生 太郎君

   総務大臣

   国務大臣

   (マイナンバー制度担当) 高市 早苗君

   法務大臣         金田 勝年君

   外務大臣         岸田 文雄君

   文部科学大臣       松野 博一君

   厚生労働大臣       塩崎 恭久君

   農林水産大臣       山本 有二君

   経済産業大臣

   国務大臣

   (原子力損害賠償・廃炉等支援機構担当)      世耕 弘成君

   国土交通大臣       石井 啓一君

   環境大臣

   国務大臣

   (原子力防災担当)    山本 公一君

   防衛大臣         稲田 朋美君

   国務大臣

   (内閣官房長官)     菅  義偉君

   国務大臣

   (復興大臣)       今村 雅弘君

   国務大臣

   (国家公安委員会委員長)

   (消費者及び食品安全担当)

   (防災担当)       松本  純君

   国務大臣

   (沖縄及び北方対策担当)

   (クールジャパン戦略担当)

   (知的財産戦略担当)

   (科学技術政策担当)

   (宇宙政策担当)     鶴保 庸介君

   国務大臣

   (経済財政政策担当)   石原 伸晃君

   国務大臣

   (少子化対策担当)

   (男女共同参画担当)   加藤 勝信君

   国務大臣

   (地方創生担当)

   (規制改革担当)     山本 幸三君

   国務大臣         丸川 珠代君

   財務副大臣        木原  稔君

   環境副大臣        伊藤 忠彦君

   政府特別補佐人

   (内閣法制局長官)    横畠 裕介君

   政府参考人

   (内閣官房内閣審議官)  平川  薫君

   政府参考人

   (内閣府政策統括官)   加藤 久喜君

   政府参考人

   (内閣府再就職等監視委員会事務局長)       塚田  治君

   政府参考人

   (宮内庁次長)      西村 泰彦君

   政府参考人

   (財務省主計局長)    福田 淳一君

   政府参考人

   (国土交通省自動車局長) 藤井 直樹君

   予算委員会専門員     柏  尚志君

    ―――――――――――――

委員の異動

一月二十六日

 辞任         補欠選任

  衛藤征士郎君     大西 英男君

  長坂 康正君     高鳥 修一君

  野中  厚君     小野寺五典君

  星野 剛士君     津島  淳君

  井坂 信彦君     中島 克仁君

  今井 雅人君     神山 洋介君

  小川 淳也君     細野 豪志君

  緒方林太郎君     本村賢太郎君

  辻元 清美君     村岡 敏英君

  福島 伸享君     山尾志桜里君

  國重  徹君     濱村  進君

  赤嶺 政賢君     大平 喜信君

同日

 辞任         補欠選任

  小野寺五典君     野中  厚君

  大西 英男君     衛藤征士郎君

  高鳥 修一君     長坂 康正君

  津島  淳君     豊田真由子君

  神山 洋介君     今井 雅人君

  中島 克仁君     井坂 信彦君

  細野 豪志君     小川 淳也君

  村岡 敏英君     辻元 清美君

  本村賢太郎君     緒方林太郎君

  山尾志桜里君     福島 伸享君

  濱村  進君     國重  徹君

  大平 喜信君     斉藤 和子君

同日

 辞任         補欠選任

  豊田真由子君     河野 太郎君

  斉藤 和子君     梅村さえこ君

同日

 辞任         補欠選任

  河野 太郎君     星野 剛士君

  梅村さえこ君     赤嶺 政賢君

同日

 辞任         補欠選任

  赤嶺 政賢君     宮本  徹君

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 政府参考人出頭要求に関する件

 平成二十八年度一般会計補正予算(第3号)

 平成二十八年度特別会計補正予算(特第3号)


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     ――――◇―――――

浜田委員長 これより会議を開きます。

 平成二十八年度一般会計補正予算(第3号)、平成二十八年度特別会計補正予算(特第3号)の両案を一括して議題とし、基本的質疑に入ります。

 この際、お諮りいたします。

 両案審査のため、本日、政府参考人として内閣官房内閣審議官平川薫君、内閣府政策統括官加藤久喜君、内閣府再就職等監視委員会事務局長塚田治君、宮内庁次長西村泰彦君、財務省主計局長福田淳一君、国土交通省自動車局長藤井直樹君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

浜田委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

浜田委員長 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。小野寺五典君。

小野寺委員 自由民主党の小野寺五典です。

 きょうは、質問の機会をありがとうございます。

 まず、昨年、四月に熊本地震、十月には鳥取県中部地震、暮れには糸魚川市における大規模火災など、大きな災害が相次ぎました。被災者の皆様には改めてお見舞いを申し上げます。東日本大震災も含め、一日も早い復興に全力を挙げていただきますよう、総理を初め関係閣僚にはお願いをしたいと思っております。

 さて、それでは、補正予算の審議に入りたいと思います。

 今回の補正予算の審議、実は、安倍内閣になりまして、第三次補正を今回組むわけですが、今までの補正予算というのは、例えば予算が当初の税収見積もりよりも上振れをして、そしていわばアベノミクスの成長の果実を使って補正予算を組んでいたんだと思っております。ですが、今回は税収が一・七兆円減額補正されており、プライマリーバランスを含めて心配される国民もいらっしゃると思います。

 景気は緩やかな回復基調が続いているとは認識しておりますが、今回減額補正を行った原因、そして今後の財政収支の見通しについて、補正予算の前提として麻生財務大臣にお伺いしたいと思います。

麻生国務大臣 二十八年度のいわゆる税収の補正につきましては、直近の課税の実績また企業収益の見通し等々が出ておりますので、政府の経済見通しをもとに、平成二十八年度の当初予算に対して一兆七千億円の減収というので、五十五兆九千億というのを見積もったところです。

 税収補正というか、減額をすることになりました主な理由というのは、二十八年度当初は円高に推移して、二十七年度平均で約百二十円ぐらいで動いておりましたのですが、二十八年の四月―十月の約六カ月を見ますと、それが約百四円まで下がってくるということで、円の値打ちが上がったというべきか、ドルの値打ちが下がったというか、とにかく円高に振れましたので、輸出企業のいわゆる円建ての売り上げが減少して、法人税がまず減収しております。それから、円建ての輸入する企業の減少が続きましたので、当然消費税が減収いたします。そういうことが見込まれましたので、今、減額補正をさせていただいております。

 では、しからば二十九年度の予算をどうするかということですけれども、政府の経済見通しにおいては雇用とか所得環境が改善しますし、当然雇用とか生産というものが増加する傾向を反映して見積もりをさせていただいておりますし、円も去年の十月以降円安に振れて、今、きょうで百十三円ぐらいだと思いますので、そういった意味では、二十八年度の補正後の予算というものを見ますと一・九兆円増加しておりまして、五十七兆七千億円と見込んでおります。

 したがいまして、政権交代以降今回が減ったからといって、別に、その分だけで経済の基調全体が悪くなったということでは全くありません。

小野寺委員 今回は円高要因による一時的なものというふうに理解をしますし、また、現在の円・ドルベースを見れば、これは円安基調にも戻ってきている、そしてまたニューヨークのダウは史上最高値ということでありますので、恐らくこれからも日本の経済も堅調にいくんだと思いますが、ぜひプライマリーバランスをしっかり私どもも注視しながら予算を組むということは大切だと思っております。

 さて、この補正予算の中身に少し触れたいと思います。

 今回、特に注目されますのが、防衛関係費の装備費ということになります。特にその中心が北朝鮮を含めた弾道ミサイル防衛でありますが、特に今回、その中での大きな注目を私がいたしますのは、能力向上型の迎撃ミサイル、PAC3のMSEというタイプの導入ということになります。

 ちょっとパネルを見ていただければと思うんですが、実は、これから日本は、東京オリンピックを含め、国際的なさまざまな国際イベントがございます。当然、そういう場合には、さまざまなテロを含めた守り、想定をすることが大切だと思っています。

 その中で、例えばミサイル防衛なんですが、従来のPAC3、これが今、迎撃の最終の対応ということになりますが、その守備範囲というのは、大体、今、防衛秘密にかかわりますが、東京二十三区ぐらいが守れるぐらいのイメージを私どもは持っております。

 ですから、例えば東京全体、オリンピック全体を守るとすれば複数の地域にこれを展開するのが今まででありましたが、今回、このMSEを新しく導入することによって守備範囲が格段に広がります。ということは、東京オリンピックの、東京周辺の会場全てが防御可能になる。

 ただ、このような装備を導入するということになりますと、導入してその後しっかり運用するには最低数年かかります。今回、補正ということで速やかに入れていただいたということは、私は、東京オリンピックへの備えにも大変重要なことだと思いますので、ぜひしっかりとした形で運用をしていただきたい、そのように思っております。

 さて、きょうは、ここでトランプ大統領との新たな日米関係ということを中心にお話を伺いたいと思っております。

 御存じのとおり、トランプ大統領は、既存の、私どもの抱いている大統領のイメージと大分かけ離れた大統領のような印象があります。発言を聞いても、イスラム教徒に対してとか、あるいはメキシコ移民に対しての発言は、これは国際社会に大きな波紋を投げかけているものだと思っております。

 安倍総理は、その中で、昨年十一月、ニューヨークにおいてトランプ大統領と、当時は次期大統領でありました、いち早く各国の首脳の中で会談を行って、日米同盟の重要さを再認識されたんだと思います。

 私どもも日米同盟の再認識が大切だと思いまして、先週、我が党の茂木政調会長と今津安全保障調査会長とともにワシントンを訪問しまして、トランプ新政権の関係者、上院議員、シンクタンクなど有識者と会談をしてまいりました。その中で、印象的だったことがあります。

 トランプ大統領をよく知る人から、トランプ大統領というのは、自分がビジネスマンとして成功した、そして、その極意は相手に自分の考えを予測させないことなんだ、常々そう言っている、相手が戸惑うような発言を繰り返して、ある面では相手に不安を抱かせ、自分のペースにして、そして交渉を有利に持っていく、これがトランプ流の交渉術なんだ、こういうお話を聞いて、なるほどなと思いました。

 確かに、トランプ大統領の発言を一つ一つ聞くと、時に不安になったり、これはどうなのかなといろいろなことをしんしゃくしたりするんですが、結果として一番大切なのは、その後にあるトランプ大統領の真意、これをしっかり酌み取ることなんだと思います。

 そして、今までのトランプ大統領の発言を聞きますと、トランプ大統領は、アメリカの国益を第一にしたい、これが恐らく向こうの考え方だとします。そうすると、私ども、この大統領と向き合うために一番大切なのは、私たち日本の国益がアメリカの国益にもつながるんだ、日本がよくなることはアメリカにもよくなることになるんだ、このようなことをしっかりと説明する、あるいは、このような政策をしっかり積み上げていって日米関係をしっかり積み上げていく、これが大切だと思います。

 そして、最終的に大切なのは、実は、トランプさんは経営者として成功していますから、常に最終決断はトップダウンということになります。これは、首脳間で最後は政策を決定していく、首脳間の信頼関係が極めて重要だということだと思います。

 私どもが会談した米国関係者から常々言われましたのは、トランプ大統領が就任前に会った首脳は安倍総理だけである、そして大統領は安倍総理に大変好印象を持ったという、昨年の会談についての高い評価でありました。今後ともこのいい関係をつくっていただきたい、そう思っております。

 さて、その中で、少し具体的なテーマに入っていきたいと思います。

 まず、安全保障の問題です。

 トランプ大統領の発言、日本や他の国を守る限りアメリカは大金を失う、我々はサウジアラビア、日本、韓国などを守り続けるわけにはいかない、同盟国との協定を再交渉する必要がある、これは、大統領選でのトランプ大統領の発言であります。これを聞いて、私ども安全保障関係者は大変心配いたしました。

 また、トランプ大統領の就任演説を聞きますと、従来の同盟関係の中でイスラム過激派テロリズムを壊滅させるという発言。そしてまた、新しい国防長官はマティスさん。この方は、もともと米海兵隊で、二〇〇三年のイラク進攻では第一海兵師団を率いて勝利に導いた英雄でもあります。言ってみれば、トランプ政権の外交、安全保障というのは、どうも中東シフトのような印象があります。

 もちろん中東和平や対ISというテロとの闘いは大変重要ですが、日本からすれば、アメリカが外交、安全保障政策で中東に偏るということになりますと、アジア、特に我が国の大変な関心事であります東シナ海、南シナ海、北朝鮮といった地域への関心が薄くなるのではないか。今、私ども、この地域では、台頭する中国、核・ミサイル開発をやめない北朝鮮、そして増強される極東ロシア軍、こういうことを考えても、アメリカの関与は大変重要となります。

 そこで、まず安全保障のことについて稲田防衛大臣にお伺いしたいと思います。

 今後の日米同盟のあり方、特にアメリカの太平洋地域への関与を深く確認するためにも、私は、マティス新国防長官を初め米側といち早く関係の構築が必要だと思いますが、その方針についてお伺いしたいと思います。

稲田国務大臣 今委員が御指摘になりましたように、我が国を取り巻く安全保障環境は大変厳しいものがあります。中国の台頭、そして北朝鮮は、二回の核実験、さらには二十発を超えるミサイルの発射など、新たな段階の脅威に入っていると思います。その中で、我が国自身の防衛力の質と量の強化と同時に、我が国の防衛政策の中核に日米同盟の強化というものがございます。

 米国のマティス国防長官は、初の外国訪問の一環として、二月三日から四日、来週の金曜日から土曜日の日程で我が国を訪問する予定でございます。新政権発足後、非常に早い段階でマティス国防長官が我が国を含むアジアを訪問されることは、アジア太平洋地域における米国のコミットメント、そして関心の高さを示すものだというふうに歓迎をいたしております。

 マティス長官との間でさまざまな課題について率直に意見交換をし、日米同盟の強化、深化、そしてその同盟を確固たるものにするべく会談を行っていきたいというふうに考えております。

小野寺委員 マティス新長官が真っ先に訪問する外国としてこの日本を選んでいただいた、このアジアを選んでいただいたということは大変意義があることだと思っております。新政権がアジアに対してしっかりこれからもコミットしていくということは、むしろこの地域の平和と安定につながる大切なことだと思いますので、ぜひその会談を成功されるとともに、また、これを含めて、今後、安全保障でもトランプ大統領と安倍総理との関係をさらに構築していただきたい、そのように思っております。

 安全保障の問題は今後さらに議論を進めていくことだと思いますが、もう一つ私ども心配しているのは、トランプ政権との経済問題であります。

 トランプ大統領は、アメリカ第一を掲げて、米国製品の購入、米国民の雇用促進を強調し、海外から雇用を取り戻して国内インフラを再構築する、このようなことを就任演説でお話ししております。そして、数日前、これは日本にとっても大きな影響がありますが、TPPから完全離脱をするという大統領令に署名をし、また、NAFTAの見直しをすると言っております。

 日本にも直接言及したことがあります。日本の自動車産業、巨大な船に何十万台も車を積み、米国に売ろうとしている。まるで一九八〇年代の日米貿易摩擦が盛んなころの時代のような認識の発言であります。

 現実を言いますと、現在は、米国で発売される日本車のうち日本から輸出されるのは全体の四分の一、多くはアメリカ国内で生産をされていますし、アメリカ国内における日本の自動車産業での雇用というのは、販売店を含めると百五十万人以上になると言われています。日本の企業がむしろ米国の雇用をつくっているということを、しっかり米国側に伝えていく必要もあると思います。

 ここで総理にお伺いしたいと思うのですが、この経済問題、トランプ発言において日本ではさまざまな不安が起きておりますが、今後、トランプ政権の経済政策に対して日本としてどのような形で対応していくのか。特にTPPについては、大統領令に署名しているということは、これは恐らく考えを変えることはたやすいことではないんだと思います。今後のTPPについて、アメリカ抜きでも今後進めていくのか、その方針についてお答えいただければと思います。

安倍内閣総理大臣 トランプ政権の防衛政策については、だんだん閣僚が決まり、そしてその下のスタッフが決まっていく中において形づくられてくるんだろう、このように思います。

 現時点で米国の方針を予断することは差し控えたい、このように思っておりますが、まずは、日米経済関係をどのように発展、深化させていくか、新政権とさまざまなレベルで議論をしていきたいと思っています。その中で、TPP協定が持つ戦略的、経済的意義についても腰を据えて、もちろん現在の段階でトランプ政権がどういうスタンスをとっているかということはよく承知をしておりますが、その中でも、我々は、腰を据えて米側に働きかけをしていくという姿勢は変えないでいきたい、こう考えています。

 TPPについて言えば、数年間の交渉を経てTPP協定に結実したこの新たなルールは、今後の通商交渉におけるモデルとなり、二十一世紀の世界のスタンダードになっていくことが期待される、このように考えております。これは私だけが考えているわけではなくて、十二カ国の、米国はこういうことになりましたが、それ以外の国々はおおむねこう考えているわけでございます。

 そこで、米国抜きのTPPをどう考えるべきかという御質問でございますが、これについては、確かに、米国が入るということを前提に各国がTPPの交渉を進め、成果を得たわけでございます。

 しかし、同時に、米国がTPPを承認するということに大きく変化する、短い期間で変化するということはなかなか難しい状況、もちろんこれは粘り強く我々も働きかけ続けてはいくんですが、という状況を見据えながら、TPP参加国の中でもさまざまな議論があるのは事実でございまして、今後とも、日本はその中で当然リーダーシップをとっていかなければいけない立場にあります。その中において今後とも各国と意見交換を進めていきたい、このように考えております。

    〔委員長退席、西村(康)委員長代理着席〕

小野寺委員 TPPについては、今こういう状況であります。

 もう一つ、今、トランプ大統領がお話しされているのは、アメリカとしてはむしろ一対一で行うことの方が多くの利益を得られるんだと。言ってみれば、二国間のFTAにかなり今言及をしています。恐らく、今後、二国間のFTAというのが具体的な日米交渉の中に上がってくる可能性もあるんだと思っています。

 その中で一つ心配なのが、既にアメリカとFTAを結んでいる、お隣、韓国の状況です。韓国は、米韓のFTAを結ぶ過程において、特に農産物について大変な譲歩を迫られました。結果的に、今、韓国で残っている関税品目、農産物では米だけです。ほかは、牛肉も豚肉も乳製品も全て、実は関税ゼロの方向で妥協せざるを得ない状況になりました。

 TPP交渉で、甘利大臣、石原大臣に大変頑張っていただきまして、日本としては重要五品目を守ることができた。ですから、TPP交渉におけば例えば農産物に対して一定の関税を残すことができたんですが、今後もし、米国がTPP交渉をやめた中で日米のFTAが交渉として出てくる場合、私どもとして、特に地域に住む農業者としては、TPPで私たちはあの重要五品目の段階でもぎりぎり譲ったんだ、これ以上譲られてはとても日本の農業はやっていけない、そういう心配があるんだと思います。

 総理にお伺いしたいのは、仮に、もし今後、米国が日本との二国間の交渉、いわば日米FTAが来た場合でも、私ども、TPPの段階でアメリカと交渉した例えば重要五品目のラインというのはしっかり守る努力を最大限するんだ、そのような決意をお伺いしたいと思いますが、いかがお考えでしょうか。

安倍内閣総理大臣 例えば、我々、TPPを交渉している中にあっても、日豪で二国間のEPAを締結したわけでございます。

 我々は、先ほど申し上げましたように、粘り強くTPPについてアメリカに働きかけを行っていきますが、TPPの働きかけを行っていけばEPA、FTAは全くできないんだということでは、もちろん、日豪を見ても明らかなように、そんなことはないわけでございます。日本とカナダのEPAもあるわけでございます。カナダも御承知のようにTPPの中に入っているわけであります。

 我々もそうしたスタンスで、これは、日米の間においてはどのような経済連携の関係がよいかどうかということもしっかりと見据えながら議論をしていきたい、こう思っておりますが、その中で、我が国が守るべきものはしっかりと守っていく。

 もしそうした形になったとしても、それは常に、これは例えば日米のEPAだけではなくて、TPPもそうですが、日豪もそうでしたし、日加もそうですし、日・EUもそうですが、しっかりと守るべきものは当然守っていかなければいけないし、また、農業は国の基であるという考え方のもとに、さまざまなそうした二国間の交渉についても我々はしっかりと交渉していきたい、このように思っております。

小野寺委員 山本農林水産大臣を初め農業関係者の皆さん、そしてまた我が党の西川会長、小泉部会長を初め農業関係の党の役員の皆さんが一緒になって、TPPを乗り越えるための強い農業づくりということを懸命にやっております。この前提というのはTPPでできた交渉を前提としておりますので、今後は、万々が一アメリカから二国間の交渉が来たとしても、私どもはこのラインは決して譲らないということをぜひおなかの底にしっかり据えてそういう場合には交渉に当たっていただきたい、そのように思っております。

 さて、このようなお話をする中で、アメリカとのさまざまな向き合い方は、今後、大変大切なことが幾つかあると思います。

 一つは、新トランプ政権の中の閣僚を見ますと、例えばトランプ新大統領は、今まで政治的には、あるいはアメリカ議会との関係というのは非常に希薄なんだと思います。

 ただ、その中で例えばペンス副大統領は非常にアメリカ議会にもたけておりますし、また御出身がインディアナということでありますので、日本の自動車産業が大変進出している地域でもあります。そういう意味では、副大統領との関係はむしろ、従前の大統領の補佐の副大統領ということよりは、トランプ政権においては、議会対策あるいはさまざまな国内対策において、ペンス副大統領の役割も大変大きいと思います。

 このカウンターパートに当たるのは麻生副総理ということになりますので、今後、さまざま首脳会談がある場合、トランプ大統領と安倍総理との会談も大事ですが、ぜひ副大統領との、それぞれのカウンターパートとしての関係もしっかりつくっていただければと思っております。

 そこで、お伺いいたしますが、先ほど稲田防衛大臣の方から、マティス国防長官は来月の初めに日本に来て防衛大臣との会談が行われるということでありますが、大切なのは首脳会談ということになります。安倍総理はトランプ大統領就任前にはお会いをされておりますが、正式に大統領に就任された後、一日も早く日米の首脳会談を行う必要がありますし、できればその場において、あるいは近いうちには副大統領と麻生副総理との会談も必要なんだと思います。このような日米の首脳関係について今後どのようなお考えを持っているのか、あるいは、できればいつそれが行われるのか、そのことについてお伺いをしたいと思います。

安倍内閣総理大臣 トランプ大統領とはできるだけ早く会談を行いたいと考えておりまして、現在、最終調整を行っております。

 トランプ大統領とは既にニューヨークでお目にかかっております。その際にも、私の経済に対する考え方、貿易に対する考え方、あるいは現状についての説明、そして厳しさを増すアジア太平洋地域の安全保障環境と、日米同盟がその中で果たすべき役割についてお話をさせていただいているところでございます。

 そして、来るべき日米首脳会談におきましては、お互いの関心事項について率直に意見交換を行いたいと思っております。

 日米同盟はアジア太平洋の平和と繁栄の礎として不可欠な役割を果たしておりまして、日米双方が利益を享受するものであるということ、そして、日米がともに手を携えて、アジア太平洋地域に二十一世紀にふさわしい自由で公正な経済圏をつくっていく上で主導的な役割を果たしていくべきこと、北朝鮮、東シナ海、南シナ海など、この地域が直面する課題にいかに対処していくべきか、世界の平和と繁栄に日米がともに手を携えてどのように貢献していくか等について、胸襟を開いた率直な会談を行い、そして結果を出していきたい。そして、日米同盟は揺るがないということを内外にしっかりと示すことができるような首脳会談にしていきたいと思います。

 そして、今お話のあったペンス副大統領の存在も極めて重要だと考えております。オバマ政権下におけるバイデン副大統領も、まさに議会対策を一手に担っておられたのはバイデン副大統領であり、TPP交渉においても大きな存在感を示していただいた。また、バイデン副大統領と麻生副総理との間にも太いパイプがあったわけでございますので、そういう意味におきましては、訪米の際も含めて、ペンス副大統領と会談あるいは接触を行う機会を持ちたいと思いますし、ペンス副大統領と麻生副総理との関係も構築していきたい、このように考えております。

    〔西村(康)委員長代理退席、委員長着席〕

小野寺委員 日米の首脳関係がしっかりするということは、これは大変大きなメッセージになると思います。それは東アジア全体に対して、むしろ日米がしっかりしているということはこの地域の安定をもたらし、ひいては日本の平和につながる大切なあり方だと思いますので、これは首脳間だけではなくて、例えば岸田外務大臣には一日も早く、まだ承認されてはおりませんが、ティラーソン次期国務長官でありましょうか、との関係、あるいは経済問題になりますと、どうしても世耕経産大臣や石原経済担当大臣、多くのチャネルで、私ども、日米関係の再構築をしていただくことが大切だと思いますので、ぜひ安倍政権にはそのことをお願いしたい、そのように思っております。

 きょう、日米関係のことについて改めて確認をさせていただいて、安心感を私どもも持ちながらこれからも日本の平和と安全のために仕事をしていきたい、そのように意を強くしているんですが、ここからは、ちょっと私が今回のことについて思ったことについて少し触れさせていただきたいと思っております。

 もちろん、日米の同盟関係は大切ですし、これからも強固な関係をずっとつくっていくことは大切なんだと思っています。ただ、その中で、トランプ大統領の失言、私にとっては、さまざまな発言について、トランプ・ショックともとれるような、そんな印象を持ちました。

 その中で一つ感じましたのは、これはトランプ大統領ということを指して言っているわけではないんですが、例えばアメリカの大統領がかわるたびに、日本として日本の安全保障は大丈夫なんだろうかということに思いをめぐらせたり、あるいは、アメリカ大統領の発言一つを聞いて、この真意はどうなんだろうと、常に私ども、日本の安全保障の中でアメリカを強く意識しなければいけない、そういう状況があるのは事実であります。そのことについて、私の問題意識をきょう少し議論させていただきたいと思っております。

 日本の防衛、安全保障ということの例を少し挙げたいと思います。これは、北朝鮮の弾道ミサイルに対しての対応ということになります。

 北朝鮮がもし弾道ミサイルを発射した場合、当然、発射する場所というのは、北朝鮮の領土内にあるミサイル基地とか、あるいはミサイルの発射装置から発射されます。発射された後、当然、日本に飛んでくることをアメリカの早期警戒衛星で察知した場合、日本に通報があります。そして、それに対して、例えば日本のレーダーでこれを捕捉して、そして速やかに日本海にある日本のイージス艦からミサイルを発射して、弾道ミサイルでまず一義的に迎撃をする。万が一これが防げなかったら、今度は日本の国内にあります航空自衛隊が運用しますペトリオット部隊でもう一度迎撃をする。こういう二段構えで私どもは防いでおります。

 ただ、このミサイルが飛んでくるということに関しては、当然、一発、二発であればしっかりとめることができるんだと思いますが、連続して、あるいは何発も何発も何発も何発も繰り返し来た場合、こういういわば飽和攻撃という状況になった場合に本当に防ぎ切れるか、これは大変心配なことがあります。

 ですから、もし仮に日本が攻撃されるということになれば、一番安全な防御策は、北朝鮮の領土にある、弾道ミサイルを発射するミサイル基地あるいはミサイルを発射しようとする装置をまず攻撃して無力化して、相手に撃たせないこと、これが一番大切なんだと思います。相手に撃たせないこと。

 ところが、これは北朝鮮の領土内にあります。ですから、これを撃たせないようにするためには、日本は実は今まで専守防衛という考え方ですから、相手の領土を攻撃するような装備をあえて日本の自衛隊は持っていません。

 かわりに、日本を狙ってミサイルを撃ってくるミサイル基地をたたいてくれるのは、日米同盟によって米軍がこの役を担ってくれる。ですから、米軍が北朝鮮の発射するミサイル基地をたたいて、日本の防衛のためにミサイルを無力化するというのが具体的な役割ということになります。

 ですから、これを見ると、日本の防衛にとって、この弾道ミサイル防衛一つとっても、アメリカの関与というのが必ず必要ということになります。

 以前の日本が攻められるというイメージであれば、例えば爆撃機が飛んできて日本の上で爆弾をばらばらばらと落とすとか、あるいは大きな軍艦が日本の近海まで来て艦砲射撃で港を攻撃するとか、あるいは沿岸から上陸用舟艇で相手の国の兵隊が上陸をしてきたり戦車が上陸をするとか、そういうような日本が攻撃されるということのイメージがあったんだと思います。ですから、専守防衛というと、来た相手を防げばいいんだ、自衛隊はそういう装備体系になっています。

 ところが、これは十数年ぐらい前の話であって、ここ十年で周辺国の軍事技術は格段に向上して、さまざま、日本が攻撃される想定が変わってまいりました。

 今お話をしたように、例えば北朝鮮は弾道ミサイルを発射して日本を攻撃してくる、これを日本は防ぎますが、最終的に防ぎ切れないこともあります。ですから、相手の領土にある北朝鮮のミサイル基地をたたかないと日本の平和が保たれない。ですが、そこは実は、今まで日本の自衛隊はあえて相手の領土を攻撃する装備を持つことはしなかった、これが現実であります。そして、アメリカがこれをかわりにやってくれる。一つ一つ考えても、日米同盟は大変重要です。ですから、これをこれからも守っていく必要は当然あるんだと思います。

 ただ、もう一つ、アメリカが日米同盟で日本を守っている、この前提があります。それは、アメリカが、今までもこれからも超軍事大国であって、アジアを含めた世界の警察官という役割を持って、そして何より日米同盟を大切にする、この存在があってこそ、実は日本を守るというこのお互いの役割が成り立つわけです。

 ですから、今回、例えばトランプが日本の防衛について心配な発言をすると、恐らく多くの日本の防衛関係者は心配をしました。私自身も大変心配をいたしました。そして、真意はどうなんだろう、アメリカに聞きに行ってこなきゃいけない。あるいは、いろいろなアメリカの閣僚の発言、これはどうなんだろうと。実は私ども、日本の安全保障を考えるたびに、いつもアメリカのことを考えて日本を守っていかなきゃいけない、これが現実であります。

 本当に自国防衛としてこれでいいのかどうか、これをいつも自問自答しているのが恐らく日本の安全保障関係者の考え方なんだと思います。

 安倍総理にお伺いいたします。

 私たちは、この国を断固として守っていく、その決意で、そしてその責任でこの政治の場で仕事をさせていただいています。日米同盟はもちろん大事です。これからもこれをずっと続けていく必要があります。ですが、やはり、アメリカの大統領がかわるたびアメリカの大統領の発言に右往左往する、その安全保障でもよくないんだと思います。

 今後、日本の安全保障をどのように考えていくか、お考えを伺いたいと思います。

安倍内閣総理大臣 確かに、今委員が御指摘になったように、この十数年で我が国を取り巻く安全保障環境は大きく変わったわけであります。これは世界においても大きく変わったと言ってもいいと思います。

 かつて、米ソ冷戦構造時代には、弾道ミサイルを保有していたのは米ソしかなかったわけであります。それが今、相当数の国々が弾道ミサイルを持つようになった。また、核兵器についてもそうであります。

 その中で、北朝鮮については、昨年、二回の核実験を強行するとともに、二十発以上の弾道ミサイルを発射したわけでありまして、SLBM、ミサイルの発射にも成功したということについても報道がなされているところでございます。相当程度、いわば専門家の予測を上回って、彼らの弾道ミサイルについての技術の革新が、技術開発が進んでいると言ってもいいんだろう、このように思います。そして、我が国が射程内に入る核ミサイルが配備されるリスクが時間とともに増大をしていくわけでございます。

 また、飽和攻撃というお話もされましたが、先般、北朝鮮は一度に三発ミサイルを撃って、そして狙いどおりの場所に着水させたという事案もございました。

 このような脅威に対しては日米の共同対処によって我が国の防衛を図ることとしておりまして、その中でいわゆる敵基地攻撃能力、すなわち打撃力の使用を伴う作戦については、委員が御指摘になったように、米国に依存をしているのは事実であります。

 そのような中で、北朝鮮が、弾道ミサイルの長射程化や核兵器の小型化、弾頭化を行うことによって、米国に対する戦略的抑止力を確保したとの過信を持つ危険性があるのは事実であります。つまり、米国を射程に入れる核能力を持ったとなれば、米国は報復しない。いわばほかの国に対する攻撃に対して、その能力を持っている北朝鮮に対しては、みずからの国に撃ち込まれる危険性を冒してまで報復しない。つまり、それが抑止力になったと過信する、誤認する危険性というのがないわけではないだろう、このように思うわけであります。

 もしそうなれば、弾道ミサイルの発射を含む軍事的挑発行為のさらなる増加につながっていく可能性もあるわけでありまして、議員御指摘のように、我が国自身によるいわゆる敵基地攻撃については、政府として、従来から、法理上の問題として、他に手段がないと認められるものに限り、敵の誘導弾等の基地をたたくことも憲法が認める自衛の範囲に含まれ、可能であると考えているわけでございます。

 一方、現実の自衛隊の能力に関して言えば、これはもう防衛大臣を経験された委員はよく御承知のように、現在、我が国は、敵基地攻撃を目的とした装備体系を保有しておらず、また保有する計画もないわけでございます。その上で、我が国を取り巻く安全保障環境が一層厳しくなる中、日米間の適切な役割分担に基づき、日米同盟全体の抑止力を強化し、国民の生命と財産を守るためには我が国として何をすべきかという観点から、常にさまざまな検討は行っていくべきものと考えているわけであります。

 いずれにせよ、今後とも、我が国の防衛の基本的な方針として専守防衛を堅持していくことは当然でありますが、その中において、今、小野寺議員がおっしゃったように、その専守防衛の中において、我々は、大きく変化する中において国民の生命と財産をどのように守り切っていくか、また、そのための抑止力とはどういうものがあり得るのか、専守防衛の中において我が国独自の抑止力はどのようなものがあるかということも含めて、あくまでも日米連携の中ではありますが、考えていかなければいけない、このように考えております。

小野寺委員 もしかして、今、安倍総理と私ども、考えは多分同じところにあるんだと思います。

 総理というお立場ではなかなかお話はしにくいかと思いますが、やはり、アメリカの大統領がすばらしい大統領、いつも私どもはそれを信じておりますし、日米同盟を大切にする大統領ということなんだと思いますが、ただ、もしアメリカの大統領がまたかわって、そしてその方が考えが違うということになった場合、このときに、では日本の安全保障は、しっかり自分の足で立って守っていけるのか。

 そのことを考えると、北朝鮮の弾道ミサイル防衛ですら実は、自分の足で立っていることではなく、むしろアメリカの協力があって初めて日本が守れるというのが、これが現実であります。ですから、いつもアメリカの大統領の考えを気にし、そして発言に一喜一憂する、そういうあり方が本当にいいのかどうか、これはやはり政治の立場で深く議論する必要があるんだと思います。

 そして、例えば自国を守る専守防衛、これは当然大切ですし、日本がこれからもずっと守っていく大切な考え方だと思います。

 ただ、それとは違って、むしろ防衛装備や攻撃の態勢、日本が攻撃されるというあり方がむしろどんどん変わっていくという中で、それに対して私ども、どう専守防衛という考え方を位置づけていくかということを一つ一つ詰めていった場合に、例えば弾道ミサイル。

 この弾道ミサイルはアメリカには絶対撃ちませんから、日本だけですからといって、ある国が攻撃をしてきた。アメリカとしては、日米同盟だからこれは守るというスタンスを維持してくれることを私どもは信じていますが、もし仮にそうじゃない大統領の発言があった場合、このとき日本は、自分たちは自分たちで守れないという問題に直面することになります。

 そのときになって急に慌てるということではなくて、どの国もそうなんですが、自国を守るということは、当然、今のさまざまな脅威に対して備えをするということです。備えをするためには、当然、日本にどんどんミサイルを撃ってくる、そのミサイル基地をたたくのは憲法上でも許されていることでありますし、問題は、やはり日本の政策や自衛隊の装備についてどう考えるかということであります。

 もちろん、これは慎重にやらないと、いろいろな周辺国を含めて国際社会に間違ったメッセージになってはいけないので慎重にやる必要はありますが、少なくともその研究等は私ども内部でしっかりしていくことが必要だと思います。

 そして、その装備を実際に充実するにしても運用するにしても、かなりの時間がかかります。急に日米関係ががらっと変わって、さあ大変だといって準備しても間に合わないんです。

 とすれば、私ども自国民を守る責任ある立場としては、これは、さまざまな研究をし、さまざまな想定をし、どんなことがあっても自分の国で自国民をしっかり守り抜く、そういう意欲があるんだ、そういうことをやっているんだということを常々考えていくことが責務だと思っています。

 あえてやはりこのことを国民にしっかり伝えて、そして現実に直面した安全保障環境、安全保障の整備をしていくことが私は大切だと個人的に考えております。

 今回、日米関係についてさまざまなお話をさせていただきましたが、実は、アメリカに行ったときにいろいろな方から言われた中で一番心に残る言葉がございました。これは、安倍総理に対してアメリカのトランプ周辺の方が言った言葉であります。

 トランプ新大統領、政治経験はまだまだ乏しいんだ、特に、国際社会で、国際会議でこれからいろいろな場面があると思う、そのときも恐らく初めてそういう場に行くので不安もあると思う、そのとき、ぜひ安倍総理に支えになってほしい。

 G7の首脳の中で、安倍総理はもう既に最古参の部類になっています。そして、さまざまな国際会議の中の発言の中では大変重きを持っています。アメリカの大統領であっても、国際会議に出た場合には、これは言ってみれば新人ということになります。トランプ大統領、さまざまな不安もあると思います。その中で、せっかく信頼関係がある日米の関係ですから、そういうマルチの場で安倍総理にぜひトランプ大統領の支えになってほしい。

 そして、こうも言っていました。トランプ大統領がさまざまな判断に悩んだとき、いろいろな国の首脳に相談をしたいとき、真っ先に安倍総理に電話をかけてくる、そういう関係になってほしい。

 これは、こちらからお願いしている話ではないんです。むしろ、トランプさん周辺の方からそういうお話が来ております。

 私ども、今まで日米の関係というのは、どちらかというと、アメリカの大統領がいて、日本の総理がそれとどう向き合うか、こういう関係だと思いますが、今回初めて、むしろ日本側がアメリカ大統領をある面ではさまざまな形でリードできる、そういうような日米関係がつくれるいいチャンスなんだと思っています。

 これは日本の国益がかかった話ですので、ぜひ皆さんにもしっかり聞いていただきたいと思います。与野党の境を越えて、ぜひ、日米同盟をしっかりすることが何より大切、そのための首脳間の信頼関係が何よりも大切。その日米同盟の関係を強くするためにも、新トランプ大統領との関係についてこれからさらにどう進めていくか、最後に安倍総理に伺いたいと思います。

安倍内閣総理大臣 先ほど小野寺委員からも御指摘があったように、まさに日本が攻撃をされた際には、米国が日本と共同対処をするいわば唯一の国と言ってもいいと思います。日本とともに闘う唯一の国であります。

 この同盟関係というのは、紙に書いてあれば成立をするということではないわけでありまして、お互いに助け合うことのできない同盟関係というのは非常にはかないものであります。日米の場合は、価値観を共有し、そしてしっかりとお互いに助け合っていく同盟であります。

 そして、この同盟は、日本あるいは地域だけにとらわれず、まさに世界のさまざまな課題にともに手をとり合って取り組んでいくという希望の同盟になったと私は考えているわけでありますが、まさにトランプ大統領との間においても、これは二国間だけではなくてさまざまな、今御指摘があったようなG7等々の国際場裏においても、お互いに協力をしていく、認識を一つにして、お互いに目的を達成するために協力していくという関係を構築していきたいと思います。

 日米同盟というのは、まさに日本だけを利するわけではないわけでありまして、在日米軍の基地があるわけでありますが、ここを中心に、いわばアジア太平洋地域において米国はプレゼンスを維持し、そのプレゼンスにおいて米国は大きな利益を得、かつ、この地域は平和と安定を維持する、まさに地域の平和と安定が日米の経済的な発展の礎でもあろう、こうした認識を一つにしながら、確固たる日米同盟の姿を世界に発信していきたい、このように思っております。

小野寺委員 日米の首脳間の信頼がさらに深まり、日米同盟が強固なものとなり、世界の平和に両国が貢献できることを心から願って、質問を終わらせていただきます。

 ありがとうございました。

浜田委員長 この際、高鳥修一君から関連質疑の申し出があります。小野寺君の持ち時間の範囲内でこれを許します。高鳥修一君。

高鳥委員 自由民主党の高鳥修一でございます。

 本日は、質問の機会をいただきまして、ありがとうございます。

 今回の補正予算には熊本や東北の災害復旧の予算が含まれておりますが、それは後ほど質問いたしますけれども、本日は、まず、糸魚川市駅北大火の対応と政府の災害対策について質問をいたします。

 まず、被災された皆様に心からお見舞いを申し上げます。火災はどこでも起こり得るものであり、今回の教訓を共有していただき、今後に生かしていくことが大切だと思います。

 事実関係をまず簡潔に振り返ります。

 昨年十二月二十二日木曜日午前十時二十分ころ出火、出火に気づいたのが八分後、さらに七分後の十時三十五分には消防車が現場に到着し、消火活動を開始。出火原因は、中華料理店の大型こんろの消し忘れ。当日は、フェーン現象による強い南風、最大瞬間風速二十七・二メートルが吹いており、県内全域、長野県、富山県からも応援をいただいて、二日間で延べ消防車二百三十一台、活動人員千九百五十四名による懸命の消火活動にもかかわらず、鎮火まで約三十時間を要し、百四十七棟が焼損、焼失面積は約四万平米という大火となりました。亡くなられた方はおられませんが、負傷者は十七名で、うち十五名は消防団員であります。

 私は、たまたま当日午前中から糸魚川市内におりましたので、現場に駆けつけて、現場から各方面に支援を要請いたしました。

 パネルをごらんいただきたいと思います。

 一枚目は、出火場所から延焼した全体図であります。地図の上が北であります。日本海が目の前のところでございます。

 今回の火災の特徴は飛び火だと言われております。強風によって火の塊、火のついた木片等が飛んでいったと言われていますが、最初の飛び火は、火元から約百二十メートル離れた書店に飛んだとの証言がございます。

 二枚目でありますが、通報から七分後には消防車が到着をして、消火活動が始まっております。

 三枚目でございます。火元から約百三十メートル離れた本町通りの様子であります。写真の右側が山で、左側が海であります。山から海へ強い南風が吹いており、炎が竜のように波打つのを初めて見たと消防団員は言っております。

 四枚目でございます。火元から北へ約三百メートル離れた国道八号線付近であります。この先は海であります。海に近いところほど、大変気の毒でありますが、建物は完全に焼け落ちております。

 五枚目でございます。この写真は、当日の十六時三十九分、私自身が現場で撮影した火元の写真であります。後ろは焼け落ちておりますが、このあたりは建物自体は残っております。

 六枚目は、海の方から火元付近を見た写真であります。写真左側が火元の中華料理店の側であります。向かい側、これは西側になりますが、西側の商店街は、わずか七・四メートルの道路を挟んだ至近距離にもかかわらず燃えていません。北に向かって約三百メートル延焼していったということであります。

 このことから、今回の大火は、強風がもたらした異常な自然現象により生じた被害であることがおわかりいただけると思います。

 総理からは、発災当日、電話でお見舞いをいただきまして、今自分が行くと、市民への対応で多忙をきわめている市役所の皆さんに迷惑がかかるから、年明けの早い時期に視察をするとお話しいただきました。また、二十六日には、官邸で米田糸魚川市長、中村県議とお会いいただき、あらゆる法令、制度を駆使して対応するとお答えいただきました。

 二十八日には、松本内閣府副大臣を団長とする政府調査団を派遣、三十日には、松本防災担当大臣から、今回の火災を自然災害として位置づけるとの発表があり、火災としては初めて被災者生活再建支援法の適用を認めていただきました。心から感謝申し上げます。

 三十一日、党からは、大みそかにもかかわらず、二階幹事長にお入りいただき、年末年始返上で対応する、瓦れき処理については個人負担ゼロにするという力強いメッセージを年を越す前にお届けいただきました。また、伊藤環境副大臣には、二度にわたり現場へお入りいただきました。

 年が明けて一月十一日、外遊前の極めてお忙しい日程の中、総理御自身から、糸魚川市にお入りいただき、直接被災者の声をお聞きいただき、市民を励ましていただきました。多くの市民が総理の来訪に勇気づけられ、感激で目を真っ赤にしている人も見かけました。

 今回、市、県、国が一体となって動いたことが迅速な対応につながったと思います。結果的に百四十七棟を焼損する大火となりましたが、火災発生から鎮火まで約三十時間、時には強風による飛び火のために炎に挟まれそうになりながら懸命の消火活動をした消防署職員、地域の消防団員、自衛隊、警察、行政職員、ミキサー車で給水活動に協力した建設業者、不眠不休で対応した人たちを褒めていただきたいと思います。また、多くのボランティアによる支援、炊き出し、義援金も集まりつつあることを心から感謝申し上げます。

 質問に入りますが、総理、まず一言、糸魚川市民に対して、改めて激励の言葉をいただきたいと思います。

安倍内閣総理大臣 改めて、今回の糸魚川市における大規模火災によって被災された皆様に心からお見舞いを申し上げます。

 また、大変危険な現場の中で消火活動などに当たった消防、警察、自衛隊や、一日も早い復旧に向けて瓦れき処理や被災者の支援などに当たっておられる行政職員や建設業者、ボランティアなどの全ての方々の御苦労と御尽力に敬意と感謝を申し上げたいと思います。

 私は、一月十一日に糸魚川市の現場を訪問し、被災状況を視察いたしました。現地では、火災によって、長い歴史を誇る町の大切な建物、それぞれの家族の歴史やなりわい、生活の拠点が灰じんに帰した深刻な状況を目の当たりにするとともに、今後の生活に大きな不安を抱えながら不自由な生活に耐えている方々の大変な御苦労をお伺いしたところであります。

 そのような中においても、暮らしやなりわいの再建に向けて力強く前向きに取り組んでおられる方々の姿に心から感銘を受けました。町を興していこうという皆さんの姿、特に女性の皆さんでつくっている団体がありましたね、あんな中においても元気に頑張ろうという姿に、本当に、私だけではなくて、一行、みんな感銘を受けたわけであります。

 政府としては、被災された方々が希望を持って前に進んでいくことができるように、被災された方々に寄り添いながら、できることは全て行うという姿勢で、全力で取り組んでいく考えでございます。

高鳥委員 ありがとうございます。

 糸魚川の皆さんは総理に来ていただいたことを本当に感謝していますので、それだけはお伝えをしておきます。

 次に、瓦れきの処理について環境大臣にお伺いをいたします。

 瓦れきの処理について、国からの補助金、特別交付税の支援決定により、個人負担ゼロとすることができました。糸魚川市では三月末をめどに処理を完了するとしていますが、完了までしっかりとした国からの財政支援をお願いいたします。

 また、環境省は木造、非木造を区別しないと説明していますが、非木造で焼け残った建物の解体が進まないと、中心市街地の復興は進みません。

 この解体費用について、全焼の場合は、国の補助対象となり、市の補助とあわせて、結果的に個人負担ゼロとなると考えてよろしいでしょうか。

山本(公)国務大臣 まず、糸魚川の大規模火災で被災された方々にお見舞いを申し上げたいと存じます。

 災害等廃棄物処理事業費補助金は、非木造、木造を問わず、明らかに廃棄物と観念できる全焼した家屋等の実質的な解体を含む撤去を補助対象といたしております。

 糸魚川市では、本補助金の適用を受けられまして、全焼した非木造の家屋等の瓦れき処理を含め、実質的に被災者の皆様の負担をゼロにするものと承知をいたしております。

 環境省としては、災害廃棄物処理が適正、安全に行われるよう、今後とも全力で支援してまいりたいと思います。

高鳥委員 ありがとうございます。全焼の場合は、木造以外の解体費用も個人負担はゼロであるということを確認させていただきました。

 次に、中小事業者への支援について経産大臣にお伺いをいたします。

 被災した商店街、飲食店街は、住居兼店舗が多い地域であります。住む家を失うと同時にお店を失い、収入の道を閉ざされた人たちが住宅を再建するのは容易ではありません。火災は喪失感が強く、心が折れた人たちが再建を諦めてしまうと、糸魚川の中心市街地、飲食店街の復興は難しくなります。

 事業者への補助金等も含めて、円滑に事業を再建するための支援が必要ですが、政府の見解はいかがでしょうか。

世耕国務大臣 まず、被災された方々に心からお見舞いを申し上げたいと思います。

 中小企業も大変、中小あるいは小規模事業者も大変な被害を商店を中心に受けておられるということで、発災直後から、まず、商工会や商工会議所あるいは政府系金融機関を中心に、三十一カ所、特別相談窓口をつくらせていただきました。また、政策金融公庫ですとか商工中金といった政府系金融機関による災害復旧貸し付けですとか、あるいは信用保証協会による通常とは別枠の、一〇〇%保証を行うセーフティーネット保証四号の適用、あるいは既にある借入金の返済条件緩和などについて、きちっと早急に措置を講じてきたところであります。

 また、火災共済というのがあるわけですけれども、被災された方はほとんどその証書とか印鑑を焼失されていますので、そういったものがなくても迅速に支払うよう関係機関に要請をし、そのとおり実施をしていただいてきているところであります。

 また、一月十一日に安倍総理が行かれた際に、知事から、今御指摘の補助金を使わせてほしい、柔軟な対応をしてほしいという御要望をいただきました。総理も、全力で対応する、柔軟な対応も必要だというふうに答えられておりますので、いろいろな対応を我々は考えております。

 特に補助金に関しては、まず、小規模事業者持続化補助金というのがあります。あるいは商店街集客力向上支援事業というのがあります。

 特に糸魚川は、最近、白馬に来ている外国人スキー客、あの地域というのは昭和七年に整備をされたなかなかレトロな商店街ということで、外国人に非常に今人気が出てきていたということでありますので、そういったことも踏まえて、補助金にはそれぞれ申請期限があるわけですけれども、これを少し延長して、あるいは書類をなるべく少なくするとか、そういった柔軟な対応によって、こういった補助金も被災地の皆さんに使っていただけるようにしてまいりたいというふうに思っております。

高鳥委員 よく御理解いただいているようで、大変ありがとうございます。ぜひ丁寧な対応をお願いいたします。

 次に、福祉的な支援について厚労大臣にお伺いをいたします。

 被災によって収入の道を閉ざされた、あるいは激減した方々に対して福祉的な支援はできないでしょうか。例えば、介護保険や医療保険を利用している方が被災した場合、被災者に対してどのような負担軽減が考えられますか。

 それからもう一点、被災者の心のケアであります。私は被災された方から直接お聞きをしましたけれども、やはり一人になると、何で、どうしてという思いが込み上げてきて、自然に涙があふれるということであります。この心のケアが必要だと思いますが、いかがでしょうか。

塩崎国務大臣 まず、私からも、糸魚川の被災された皆様方に心からお見舞いを申し上げたいと思います。

 まず、今、介護保険あるいは医療保険の問題について御指摘をいただきましたが、災害などによって被災をされた場合には、被災状況に応じて、市町村などの判断によって、介護保険そして医療保険の窓口負担そして保険料の徴収猶予などについて減免をすることができるという仕組みになっておりまして、今般、糸魚川市における大規模火災において被災された方の介護保険、医療保険の窓口負担や今申し上げた保険料の扱いについては、昨年の十二月二十二日付で既に、改めて厚生労働省から周知を行っております。

 現時点において、既に糸魚川市では国民健康保険などの保険料について減免が行われているというふうに承知をしておりまして、今後とも、被害を受けた地域の状況を伺いながら、必要に応じてさらなる、何ができるかを考えていきたいと思っております。

 心のケアの問題、大変重要でありまして、特に今回のような大規模な火災によって非常に精神的なストレスがかかっておられる方がたくさんおられるわけで、この心のケアを十分に行うということが必要だというふうに私どもも心得ております。

 今回の大火でも、発生当日の十二月二十二日に担当部局の方から新潟県に連絡をいたしました。被災者の心のケアをどう行っていくかについて協議をいたしまして、国としても協力する旨をしっかり伝えております。

 この結果、今、新潟県が中心となって、糸魚川市、そして糸魚川市にございます新潟県の保健所が連携をいたしまして、保健師による被災世帯の巡回それから健康調査、メンタルチェック、こういったことをやっておりまして、百二十世帯二百二十四名の方々のうちで被災規模が軽微な世帯などを除く百三世帯二百一名に対しまして、訪問あるいは電話連絡などによって健康調査を実施し、うち三十一世帯について継続的な相談支援を行っているということでございます。

 厚生労働省としても、こうした現地での取り組み状況を継続的に把握しながら、被災地のニーズに応じて十分な支援が行えるように、引き続いて新潟県と緊密に連携をしてまいりたいと思っております。

高鳥委員 ありがとうございます。引き続き、市、県と連絡を密にして、対応をよろしくお願いいたします。

 次に、復興の青写真について総理にお伺いをいたします。

 総理は、以前よりもにぎわいのある町にと糸魚川でおっしゃいましたが、復興の青写真を早く市民に見てもらうことが重要であると私は思います。

 市では現在、被災者や商工会議所関係者から意見を聞いているところですが、現時点で既に仮店舗で営業を始めた人、仮店舗などと言わずに、すぐにでももとの場所で再開したいという人。一方、もう借金をして建て直すのは無理なので、顔のわかる人たちで集合住宅で暮らしたいという人。燃え残った家、これはテレビでも報道されましたが、奇跡の一軒というのが、燃え残った家がございます。そして、この際、この地域を道の駅に整理したらどうか。さまざまな意見がありまして、意見の集約は大変な作業であります。

 総理は、糸魚川視察の際、国から復興の専門家を派遣する、それと、糸魚川復興まちづくり推進協議会の立ち上げを表明されましたが、改めて、復興について総理のお考えをお聞かせください。

安倍内閣総理大臣 先般視察をさせていただいた際にも、地元の皆様から、大変なショックであり、果たしてこれからもう一度立ち直ることができるのかどうか、あるいは、お金を借りて投資をして商売を始めてもやっていけるかどうか、そういう切実な声もお伺いをいたしました。

 しかし、それと同時に、被災以前よりもにぎわいのある、よりよいまちづくりをしていきたいという声もたくさん寄せられたわけでありまして、我々は、こういう皆さんの意欲に応えていかなければいけないと思います。被災者の皆様が一日も早く安心して生活できるよう、住民の皆さんの声をしっかりと酌み上げて、夢や希望を持って今後のよりよいまちづくりを実現していくことが必要だと思います。

 このため、現在、糸魚川市においては、本格的な復興、再建について、住民の皆さんの意向を調査しているというふうに承知をしております。

 国としては、まちづくりに精通した国等の職員を市に派遣するとともに、既に我々、東日本大震災を経験いたしまして、被災前よりいい町をつくろうという中において、町の設計をして、事実、今進んでいる、あるいはもう完成しつつあるところもあるわけでありますが、そうした専門家を派遣するとともに、糸魚川復興まちづくり推進協議会を立ち上げて、そして、そこで国と県と市が一体となって復興に取り組んでいくこととしております。糸魚川のあすのまちづくりを強力かつスピード感を持って後押しをしてまいります。

高鳥委員 ありがとうございます。大変心強く思います。

 次に、消防力の強化について総務大臣にお伺いをいたします。

 今回の火災では、消防署員、消防団員らが約三十時間にわたり全力で対応いたしました。一方、このような強風で延焼する火災に対して、消防力の強化、水利の確保や消防団員の装備の充実、負傷された消防団員はほとんど目にすすが入って負傷した、こういう方が多いわけでありますが、その装備の充実をすべきと思いますが、いかがでしょうか。

高市国務大臣 まずは、大変苦しく、つらい思いをされている被災者の皆様にお見舞いを申し上げます。

 そして、今回、大変大規模な火災でありましたけれども、一人も犠牲者や重傷者が出なかったということは、多くの消防職員、団員初め、多くの方々が避難誘導、懸命の消火活動に当たっていただいた結果と考えております。本当に、最大級の敬意を表し、感謝を申し上げます。

 その中で、先ほど来委員がお示しいただいたパネルにもございましたが、大変な強風下での消火活動、それからまた今回の火災のように木造建築物が密集した地域における今後の消防のあり方ということについては、十分しっかりと検討して、改善をしていかなければいけないという強い問題意識を持っております。

 そのため、私から消防庁に対して有識者、専門家による検討会の開催を指示し、あす一月二十七日から検討をスタートさせます。

 この検討会では、木造建築物が密集した地域における消火活動や消防水利の確保のあり方、それから強風下で火災が発生した場合の応援計画、また消火活動訓練、消防活動における消防団員等の安全管理のあり方、そして住民避難や火災予防の対策のあり方といったことについて検討を行いまして、ことしの春までには結論を出し、これを受けて改善を進めてまいります。

 委員おっしゃいましたように、ゴーグルなど消防団員の目を守るような装備品、資機材の充実ということや、消防水利の再点検を踏まえた整備の促進ということについても、検討会の結論を踏まえてしっかりと進めてまいります。

高鳥委員 ありがとうございます。ぜひしっかりお願いいたします。

 次に、税制上の対応についてお聞きします。

 今回の補正予算には、熊本や北海道、東北の災害復旧と農業支援、これは畜舎やハウスの再建支援等でありますが、これが入っているので、早期に成立させることが必要だと考えます。

 先ほど来質問しております糸魚川市駅北大火もあわせて、近年大規模災害が多発しておりますが、このような状況を踏まえて、政府としてどのような税制上の対応を行ったのか、熊本地震により地元が甚大な被害を受けられた木原財務副大臣が出席されているので、答弁をお願いいたします。

木原副大臣 糸魚川市民の皆様方に心からお見舞いを申し上げます。

 現行税制上は、被災を受けられた方に対しましては、一般に適用されるさまざまな特例措置が講じられているところでございますが、それに加えて新たな措置を講じるかどうかについては、これまでは、災害の種類や規模、また被害状況等を踏まえて検討を行って、必要があればその都度その都度ごと特別な立法措置により対応してきたところであります。ですから、毎回毎回検討や手続に時間を要してきたところであります。

 平成二十九年度の税制改正においては、近年災害が頻発していることを踏まえまして、被災者の不安を早期に解消するとともに、税制上の対応が復旧や復興の動きにおくれをとることのないよう、これまで特別立法によって措置されていた災害関連税制のうち、被害の状況や規模などによらず災害一般に適用することが適当なもの、被災者再建支援法などのもと他の支援策が講じられている場合に適用することが適当なものについてあらかじめ規定を整備しておく、災害関連税制の常設化を行うことといたしました。

 例えば、一点だけ申し上げますと、住宅ローン控除について、現行制度上、対象となる住宅に現に居住していることが適用要件とされておりますが、災害により住宅が滅失等しても引き続き住宅ローン控除を受けられるように見直すとともに、被災者生活支援法が適用される災害においては、再取得した住宅に係る住宅ローン控除を重複して適用できるような措置を講じているところであります。

 熊本地震については、特に熊本県から被害を踏まえた追加的な特例措置を創設する御要望もあったことから、これまでのさまざまな災害対応を参考に、被災者や被災自治体の意見なども生かしながら、被害の状況や被災からの復旧状況等を踏まえつつ検討を行い、今般常設化する災害関連税制を基本的に適用できるように手当てすることとしたところでございます。

高鳥委員 ありがとうございます。災害関連税制の常設化というのは重要な視点だと思います。今後も万全の対応をお願いいたします。

 総理、最後に、昨年は、各地で地震、一連の台風災害や火山噴火といったさまざまな自然災害が発生し、大きな被害をもたらしました。政府は、被災地の復旧復興に引き続き全力で取り組むとともに、将来の自然災害から国民の生命財産を守るため、防災対策をさらに強化する必要があります。防災対策の取り組みについて、総理の御決意をお聞かせください。

安倍内閣総理大臣 昨年発生した自然災害のうち、熊本地震については、インフラの復旧や住まいの確保、なりわい、産業の復興をきめ細やかに推進するため、本震発生から一カ月後の五月に第一次補正予算を、十月には第二次補正予算を成立させました。

 また、その後、北海道や岩手に大きな被害をもたらした台風被害や鳥取県中部を震源とする地震を含め、現在御審議いただいている第三次補正予算案や今後御審議いただく平成二十九年度予算案において災害復旧事業費や災害救助費等を盛り込むなど、自然災害から早期の復旧復興に向けて、できることは全て行うとの方針のもとで、政府一丸となって全力で対応していく方針であります。

 また、今回の糸魚川の大規模火災についても、一日も早い生活再建や事業再開のため、被災者生活再建支援法を適用するとともに、瓦れき処理や事業再開の資金調達の支援を厚くするなど、被災地の復旧復興に全力で取り組んでいるところであります。

 今後とも、さまざまな自然災害から国民の生命と財産を守るため、これまでの災害対応のあり方を検証し、そこから得られた貴重な教訓をしっかりと踏まえ、避難に関する情報提供の迅速化や自治体への人的、物的支援の充実、部隊の対処能力の向上など、ソフト、ハード一体となった総合的な防災・減災対策の体系的な見直しを不断に行っていく考えであります。

 また、先ほど申し上げた糸魚川市において、被災する以前よりもにぎわいのあるまちづくりを行っていくということを申し上げましたが、もちろん、地域の皆様からの思いを十分に酌み取った上でそれを実現しなければならないと思っておりますが、伝統をしっかり残しながら、日本じゅう、さらには世界から人々が訪れたくなるような、そして、何よりも住民の皆様が住みやすい、災害に強いまちづくりを行っていきたい、このように考えておりまして、いずれにいたしましても、防災をしっかりと進めていきたいと思います。

高鳥委員 心強い決意をありがとうございました。

 災害からの復旧復興に関連する補正予算の早期成立をお願いして、私の質問を終わります。

 ありがとうございました。

浜田委員長 この際、河野太郎君から関連質疑の申し出があります。小野寺君の持ち時間の範囲内でこれを許します。河野太郎君。

河野(太)委員 自由民主党の河野太郎でございます。

 まず、再就職等監視委員会にお伺いをいたします。

 今回の文科省の天下り問題の発覚のきっかけとなったのは何だったか、手短にお答えいただきたいと思います。

塚田政府参考人 お答えいたします。

 私ども監視委員会は、内閣人事局が四半期ごとに公表しております管理職員の再就職の届け出情報、その他、委員会が入手いたしますさまざまな情報を、鋭意監視を行っております。

 そうした中、平成二十八年三月、当該再就職の届け出が公表され、その中に元文科省の高等教育局長が早稲田大学に再就職した旨の届け出が含まれておりました。

 この公表情報をもとに、当委員会において、文科省に対しまして照会した上、関係者への聞き取り、あるいは証拠書類を精査した結果、文科省の人事課職員が元局長の情報を大学に提供し、また、元局長みずからが在職中に利害関係のある大学に求職活動をしていた疑い、そして、それらを人事課が隠蔽を図ろうとしていたことが認められたというものでございます。

河野(太)委員 総理の指示で、内閣人事局がこの問題を調査するということになっていると思いますが、霞が関が霞が関の問題をただ調査しただけでは世の中の信頼は得られないわけで、この内閣人事局の調査に当然外部の目が入ると考えておりますが、山本大臣、それでよろしいでしょうか。

山本(幸)国務大臣 総理から、今回の事案はあってはならないことであって、したがって、国民の疑念を払拭するために、全省庁に対して徹底的に調査し、その結果を明らかにする必要があるということで、しっかり調査するよう、そして報告するよう、私に対して指示がございました。

 私としても、厳正かつ徹底的な調査を行いたいと思っておりまして、御指摘のように、外部の目もしっかり入るという形でやっていきたいと思っております。

河野(太)委員 文科省が今調査をしていると思いますが、内閣人事局の調査に外部の目が入るという状況の中で、当然、文科省の調査にも外部の目が入るということでよろしいですね、松野大臣。

松野国務大臣 まず、このたび、内閣府再就職等監視委員会の調査によりまして明らかになりました文部科学省における再就職に関する国家公務員法違反行為等につきまして、国民の皆様に、文部科学行政に対する信頼を著しく損ねたことを心からおわび申し上げる次第であります。

 文部科学省としては、省として猛省し、省全体を挙げて信頼の回復に努めていく所存でございます。

 御質問の再就職等問題に関する調査班でございますが、この調査班が行う調査については、国家公務員法第百六条の十八第二項の規定に基づきまして、再就職等監視委員会に対して調査方針や調査項目等の報告を逐次行うことが求められており、その中で公正中立性を確保することが可能であると考えておりますが、委員御指摘のとおり、より国民の信頼回復を図る観点から、公務員制度等の有識者、弁護士等に調査に関与していただくこととしたいと考えております。

河野(太)委員 調査に関与では弱いんじゃないですか。泥棒に泥棒の見張りをさせても意味がないわけですから。

 松野大臣、関与というのは何なんでしょうか。外部の目がきちんと調査をしなかったら、今、国民の信頼を得ることはできないんじゃないですか。

松野国務大臣 先ほど申し上げました公務員制度の有識者、弁護士等の第三者の方に調査班の中に加わっていただく方がより公正性が担保できるのか、また、調査班に対する監視体制を新たにつくり、それを構成していただくことがより公正性が保てるかに関して、今後検討し、早急に結論を出したいと考えているところであります。

河野(太)委員 調査班に入るどころか、調査班を外部の人材でやるのがいいに決まっているわけで、これは役所と相談してもよくなりません。きちっと大臣のリーダーシップでやっていただきたい、外部の目をしっかり入れて調査をしていただきたいと思います。

 自民党が野党時代に、私は影の行政改革担当大臣というのを拝命しておりました。当時の自由民主党が提出をした法案の中には、あっせん禁止に違反をしたら刑事罰をきちんと入れようということを二〇一〇年の自民党案には盛り込んでおりました。

 その後、私が本会議で造反をして役職停止になってしまったものですから、法案とおさらばしてしまいまして、この法案は成立をいたしませんでしたが、こういう状況の中で、やはりあっせん禁止には単なる懲戒処分ではなく刑事罰を盛り込む、あの当時の自民党案を復活させるべきではないかと思いますが、山本大臣、いかがですか。

山本(幸)国務大臣 現在の法制度では懲戒処分ですが、不正な行為がある場合には刑事罰もかかるようになっております。

 私どもとしては、こうした事案が決して起こらないように、今回のような再就職等監視委員会等のそういう活動を含めて、しっかりと対応してまいりたいと思っております。

河野(太)委員 今、野党の皆さんから賛成するという話もございましたので、政府が対応できなければ、議員立法でやることも考えなければいかぬと思います。

 さらに、今の再就職等監視委員会は、再就職等監察官、今、政令で常勤の監察官は一人でございますが、こういう状況でございますから、期間を区切ってでも常勤の監察官をふやすべきだと思います。これは政令で対応できるわけですから、ぜひ山本大臣にリーダーシップをとっていただいて、常勤の監察官をふやしていただきたい。

 さらに、再就職等監視委員会の委員は、今、四人が非常勤でございますが、これは法改正が必要ではありますが、委員の中で常勤の者をふやす必要があるのではないかと思います。

 また、今、役人OBによるあっせんが抜け道になっております。現職の役人のあっせんは禁止されておりますが、役人OBのあっせんは禁止されていない。脱法行為の抜け道になっているという批判もございます。この際、役人OBのあっせんも禁止する、そういった措置をとる必要があるのではないかと思いますが、山本大臣、いかがでしょうか。

山本(幸)国務大臣 大事なことは、まさに、天下りというようなことで、官民癒着を根絶することであります。したがいまして、それをしっかりとやるために、必要なことは何でもやるとの考えで国民の信頼を取り戻していきたいと思っておりますが、どこまでできるのかについては、しっかりと検討していきたいと思います。

河野(太)委員 必要なことを何でもやるならば、何でもやる必要があるわけで、どこまでやれるかなんて、大臣がへっぴり腰では困ると思います。そこはしっかりやっていきたいと思います。

 さて、再就職等監視委員会にもう一度お伺いをいたしますが、今、役所のOBから役所の現職に対して何らかの働きかけを行ってはいけないということになっておりますが、これまで再就職等監視委員会でそうしたことが行われていると指摘したことがございますか。

塚田政府参考人 お答えいたします。

 国家公務員法では、再就職した国家公務員OBが、もといた職場に対して、離職後二年間、職務上の行為を要求したり依頼したりするといった働きかけをすることは規制されております。そうした働きかけを受けた職員は、委員会への届け出義務が課せられています。

 当委員会が発足してからこれまで、当委員会への届け出が寄せられたことはなく、違法を認知した事例は、現在のところ一件もございません。

河野(太)委員 再就職等監視委員会がもしそうしたルール違反を発見できるとすれば、それはどういうきっかけに基づいて発見できると再就職等監視委員会はお考えになっていますか。

塚田政府参考人 一般的には、やはり通報等が考えられるところでございます。

河野(太)委員 通報等がなければわからないというのがやはり現実なんだろうと思います。

 今回の文科省の天下りそのものについても、あっせんがあったかどうか、早稲田側から言われなければわからなかったという現実がある中で、あっせんを禁止しているからいいんだということにはなかなかならないのではないか。違反したことがわからないということであれば、違反を禁止するということは意味がないわけですから、つまり、役所と関係しているところに再就職を何年してはいけないという行為規制のようなものをきちんと入れなければ抜け道を防げないのではないかと思いますが、山本大臣、いかがですか。

山本(幸)国務大臣 これは、先般改正されました国家公務員法で、しっかりと天下りをなくすという原則を打ち立てて、そしてそれを再就職等監視委員会でチェックするということでしっかりとやっているわけであります。まさに、その監視委員会の機能が発揮されたからこそ今回のような事案が出てきたわけでありまして、これは私は機能しているというふうに思います。

 そういう意味で、これはまた徹底し、そうした認識が国家公務員全体でしっかりと確立するというように、改めて調査をして、そうしたことを打ち立てていきたい、そういうふうに思っております。

河野(太)委員 今回、確かに再就職等監視委員会が機能しているということを明らかにしたわけですが、それでも、全て違反をチェックできているかどうかというのはわからないわけです。今、再就職等監視委員会事務局長がおっしゃったように、通報がなければわからないルール違反というのは見逃されている可能性があります。

 ならば、再就職等監視委員会が全部わかっているという前提ではなくて、わからないという前提に立つならば、少なくとも、再就職に関して何らかの規制をする、行為規制そのものをやらなければ抜け道は防げないのではないですか。

山本(幸)国務大臣 それは、改正する前はそういう形が一応あったんですけれども、そのときにやはり官民癒着という問題が指摘されて、我々としては、もう天下りというのは絶対だめなんだ、それで、これが原則ですよという形に法律改正をして、そしてそれがしっかりと守られているかどうかについては監視委員会で監視するという制度で構築し直したわけでありまして、私は、この点をしっかりと厳正にやっていくようにすれば、それは公務員もそういうものだということがはっきりしてくるというふうに思います。

 確かに、その意味では、こうした問題が起こったことは大変重大な問題でありまして、この点を私どもは改めて総理の指示を受けて徹底的に厳正に調査して、今後一切そういうことがないように、そして、御指摘のようなことがないような、また監視委員会のあり方とかあるいは私どもの指導のあり方とか、そういうことをやっていきたいというふうに思っております。

河野(太)委員 内閣人事局の調査あるいは文科省の調査の結果、あっせん禁止違反があったということになれば、あっせんを禁止しているからいいんだということには大きな抜け道があるということになります。そうなれば、行為規制をやらなければ天下りの問題は解決しないということになりますので、きちんと調査をやっていただいて、その調査の結果、あっせん禁止だけではだめだというならば、しっかりと行為規制に踏み込んでいただきたいと思います。

 さて、今回問題になったのは文科省の天下りでございますが、実は、文科省から国立大学法人に極めて多数の現役出向がございます。理事だけで七十六名、幹部職員に至っては二百四十一名を数えます。その他、さらに大勢いるわけです。

 今、文部科学省が各大学に対して運営費交付金あるいはさまざまな補助金等さじかげんを持っている、そういう状況にあって、現役出向がこれだけ大量に国立大学法人に行くというのは、国立大学、かつては文科省と一体でした。それを、独立した組織として国立大学法人化した。全く各国立大学法人は独立していない、単なる文科省の植民地になっているだけではないんでしょうか。

 今回の問題を奇貨として、この国立大学法人への現役出向をやめるべきだと思いますが、大臣の御見解を伺いたいと思います。

松野国務大臣 文部科学省から国立大学法人への出向は、国立大学協会の申し合わせを踏まえ、任命権を有する各国立大学法人の学長からの要請に基づいて行われており、文部科学省から推薦された職員を実際に採用するか否か、あるいはこれらの者の学内での活用方法については学長の判断により行われております。

 文部科学省としては、国立大学法人職員への出向は、文部科学行政で得た知見を学長の意向に沿って大学改革や機能強化の実現に役立てる一方、国立大学法人で現場感覚を養い、その現場感覚を文部科学行政に反映することができるメリットもあると考えており、学長からの要請があれば適切に対応してまいりたいと考えております。

河野(太)委員 それは、国立大学時代に文部科学省が人事権を握っていた、その既得権を残すための、今おっしゃったのは単なる方便でしかありません。誰もそれが事実だというふうには、国立大学法人側も思っていないわけでございます。

 そうおっしゃるならば、国立大学法人への現役出向と国立大学法人への補助金の金額、あるいはその増減、そういったものをきちんと調べて、この予算委員会に提出をしていただきたいと思います。

 委員長、資料の提出をお願いしたいと思います。

浜田委員長 理事会で協議いたします。

河野(太)委員 今現在、国立大学の研究者は、国立大学の事務方がつくるさまざまなローカルルールで苦しんでおります。アマゾンで買えばあした来るようなものを、さまざまな機関を通して、来るのは二週間後、値段は何割高い、あるいは立てかえ払いは認めない、始発で間に合うなら前泊は認めない、さまざまなローカルルールを大学の事務局がつくって、その結果、研究者の研究時間がそがれ、研究効率は大きく低下をしている。

 国立大学の事務局長を見れば、ほとんどの大学で文科省からの現役出向者が事務局長あるいは事務方の高いポジションを占めております。この国立大学法人に対する文科省からの現役出向が大きな問題になっているのは、全ての研究者が共有している問題意識です。そうしたことが文科大臣にきちんと上がっていますか。

松野国務大臣 先ほど申し上げましたとおり、各大学のそれぞれのさまざまな運用に関しては、大学の自治によって決定をされていると承知しております。

 しかしながら、委員からそういった実態をよく把握しろという御指摘もいただきました。その面に関して、また改めて調査をさせていただきたいと思います。

河野(太)委員 大きな問題になっていることは事実でございますので、与党としてもこの問題はしっかりと追及してまいりたいと思います。

 以上です。ありがとうございました。

浜田委員長 これにて小野寺君、高鳥君、河野君の質疑は終了いたしました。

 次に、赤羽一嘉君。

赤羽委員 おはようございます。公明党の赤羽一嘉でございます。

 安倍総理、新しい年、二〇一七年が幕あけとなったわけでございますが、欧米諸国、各国の政治状況を見てみると、戦後七十一年、形成された世界秩序という大前提が少し変わってくるリスクがあるのではないか。不安、混乱のリスクがあるような一年のスタートでございます。

 しかしながら、その中でも我が国は、しっかりと政治を安定させ、そして、国益にかなう政治、また希望が行き渡る社会を目指してしっかりとした政権運営をしていただきたいと思いますし、私たち公明党も、責任ある政権与党としてしっかり政治に取り組んでいく決意でございます。

 きょうは、そうした、国民のための、国益にかなう政治に資する五十分間の質疑をしたいと思いますので、どうかよろしくお願いしたいと思います。

 本来は今回の補正予算また来年度の当初予算についてさまざまなやりとりをしたかったわけでございますが、残念ながら、今話題となりました今般の文部科学省における再就職規制違反について一言質問させていただきたいと思います。

 今回、このニュースを聞くにつけ、私が知る限り、他の省庁の再就職に対する常識とは全くかけ離れた状況であることに大変驚きもしましたし、あきれもしました。与党でありますけれども、今回の事案、全く守る気はありません。しっかりと本当にこのことについては、総理も先日の本会議で発言されているとおり、国民の信頼を揺るがすものであり、決してあってはならないことだ、私もそう思っております。

 そこで、先日、松野文科大臣から、監視委員会からの指摘を踏まえて、文科大臣のもとに再就職等問題調査班を設置して、再就職等規制違反の疑いのある行為等の全容の解明に向けた調査を行うとの御発言がございました。

 この御発言を受けて私たち公明党は、誰もが納得するような調査を速やかに行うためにも、この調査には第三者の専門家を加えるべきだと繰り返し文科省に求めてきたわけでございますが、残念ながら文科省からは、調査においては、国家公務員法第百六条の十八第二項の規定に基づき、再就職等監視委員会に対して調査方針や調査項目等の報告を逐次行うことを求められており、その中で公正中立性を確保していきたいとの答えしか得られなかったのでございます。

 この監視委員会のもとに文部科学省の調査を進めるので中立性が確保されているという理屈は、これは役所の中の理屈として通るかもしれませんが、国民には全く理解を得られることはできない、私たちはそう思っております。

 今回の事案で余りにも大きく傷ついた文部科学省の信頼を回復する一歩とするためにも、我々公明党が今回重ねて主張してきたとおり、今回の再就職等問題調査班が行う調査につきましては、弁護士など法曹資格を持つ第三者の専門家を入れることと、再就職等規制違反の疑いのある行為等の全容解明に向け徹底した調査を行うということが第一点。そしてその調査報告も、三月までというようなことを言っておりますが、こうした感覚ではなくて、期限もできるだけ速やかに行うべきだ、大臣のもとでしっかりやるべきだ、こう思います。

 以上二点について、松野文部科学大臣からの答弁を求めます。

松野国務大臣 このたびの文科省の再就職等の規制違反において、国民の皆さんの文部科学行政に対する信頼を著しく損ねることになりました。省として猛省をして信頼回復に努めていく所存でございますけれども、その第一の前提は、委員御指摘のとおり、徹底した調査を行うことにあるかと考えております。

 その調査班の構成については、先ほど委員からお話をいただいたとおりの方針を当初打ち出しておりましたけれども、より国民の皆さんに御納得をいただくものとして、公務員制度等の有識者また弁護士等にこの調査班の中に入っていただいて、先ほどの、関与ということに具体的にはどうするのかという御質問に関して、検討というお話をさせていただきましたけれども、入っていただく形の中で、しっかりと国民の皆さんから御納得いただける体制を組みながら調査を進めてまいりたいと思います。

 あわせて、調査のスケジュールの問題でございますけれども、この三月三十一日というスケジュールは、調査対象が現役の職員また関係OBにわたるものでありますから、相当大量の調査が必要となりますが、三月三十一日を越えますと、またこれは定年等で退職、再就職をしてしまうこともあり、それまでに調査を終了し厳正な処分を行うことが必要との再就職等監視委員会からの御指摘も踏まえてこの日程を設定しておりますけれども、最大限これは御報告できる調査内容を早めて皆様方に御報告できる体制で進んでまいりたいと思います。

赤羽委員 大変厳しい状況の中で、お手盛り批判が決してされないように、しっかりと、平時ではないんだという前提で指導していただきたい、こう思っております。

 次に、他の省庁で同様の事案がないかどうか、また、そうしたことがあったときに、本当に、先ほどの指摘のあるように、法改正の必要があるのかないのか、こういったことも、やはり政府全体の問題でありますので総理のリーダーシップが必要だと思っておりますが、総理の御見解をお示ししていただきたいと思います。

安倍内閣総理大臣 今回の事案は、あってはならないものであり、国民の公務員制度に対する信頼を揺るがすものだ、このように認識をしております。

 そこで、文部科学省において、全容の解明に向け徹底した調査を行い、再発防止策を講じてもらいたいと思います。その際、今文部科学大臣から明言したように、しっかりと外部の目を入れて行うのは当然のことであろうと思います。

 現行制度による厳格な監視が機能したからこそ本事案が明らかになったものではありますが、本事案で生じた国民の疑念を払拭するため、山本国家公務員制度担当大臣に対して、同様の事案がないかどうか全省庁について徹底的な調査を行うように指示をいたしました。

 今後、準備ができ次第、調査をし、その結果を明らかにしていくわけでありまして、その中において、必要なことは何でもやるとの考え方のもとで、国民の信頼を確保していく考えであります。

赤羽委員 公明党も、引き続き、この件についてはしっかりと監視をしながら対応していきたいと思っております。

 次に、今回の教育費用負担軽減策について、質問を移らせていただきたいと思います。

 公明党は、結党以来、誰もが公平に良質な教育を受けることのできる社会を目指して、義務教育における教科書無償配付を初め、奨学金の抜本拡充など、これまでさまざまな教育費用負担軽減策を実現してまいりました。

 このパネルにございます、お手元の資料にも配らせていただきましたが、平成十年、自自公連立政権参加の直前に自民党の皆さんと結んだ政策協定の目玉は、大胆な少子化対策、子育て支援策の大幅拡充並びに教育費用の負担軽減でございました。

 この平成十年、有利子の奨学金、これまで受給要件に成績要件がありました。これは、しかし、成績にかかわらず学習意欲のある人は奨学金を受けられるようにしようということが、当時、自民党の政調と公明党の政調で合意がなされ、そして、翌年、平成十一年に、きぼう21プランという新しい奨学金が、成績要件にかかわらない有利子の奨学金ができたわけでございます。

 平成十年度は、実は、有利子が十一万人、無利子は二十七万人、計三十八万人の受給状況でございましたが、平成十一年度、きぼう21プランの初年度は、十一万人であった有利子奨学金が二十四万人、倍増以上しまして、五十二万人にふえました。それから、この棒グラフのように、ずっと上昇をして、平成二十五年度には百四十四万人になったわけでございます。今も百三十万人を超えている状況が続いております。

 このように、奨学金制度は大幅に充実をしたものの、他方、貸与総額が大きくなり、不況も重なって、この奨学金の返済困難者の増加、そしてまた家庭の厳しい経済状況から進学そのものを断念する生徒の問題が起こってきているわけでございまして、こうしたことの抜本的な対策が求められているのは、もうこれは総理が重々承知されていることでございます。

 他方、グローバル化や情報技術の急速な進展によりまして、世界を取り巻く環境が急速に変化している中で、特に高等教育段階の充実が求められております。

 私もびっくりしたんですが、OECD諸国の中では、学費はただでありながら、給付型の奨学金が大変充実している国も少なくございません。まさにこれは、学費のための奨学金ではなくて、勉強、学ぶための環境をつくる、アルバイトなんかはしなくて学業に専念できるような状況をつくるんだ、こういったOECD諸国も少なくない。私たちも、しっかりこの点についてはやはり考え方を改めていくべきであるというふうに思っております。

 その中で、今回実現することになりました、パネル二、資料もお手元に配っておりますが、大学等奨学金事業の充実のための三本柱の政策が実現することは、私は大変画期的だというふうに思っております。

 一つ目の給付型奨学金制度、これは、改めて申し上げるまでもなく、我が国で初めての制度でございます。

 さきの衆議院の本会議で、野党の方、民主党の御代表の方から、来年度は、月額四万円、対象人数はわずかに二千八百人、本格実施する再来年度以降も対象規模は一学年当たり二万人にすぎません、これでは余りにも不十分、やったふりをしているだけです、こういう批判がございましたが、御自身たちのことをすぐ忘れてしまうのかな、こう思ったわけでございます。

 お配りの資料一に明らかに事実関係を記しているように、これまで給付型奨学金の我が国の政府のチャレンジは、実は、民主党政権下の平成二十四年度の予算編成のときに、文部科学省から、約二万人の学生を対象とした給付型奨学金百四十三億円の概算要求が出されたわけでございます。しかしながら、それに対して、政府予算案を編成する過程で、必要な財源を用意することができず、結局ゼロ査定となったのが歴史でございました。

 このことについて私はとやかく言うつもりはございませんが、なかなか簡単ではないことが、今回は、私たち公明党の中の、教育改革推進本部、また給付型奨学金推進プロジェクトチーム、そしてまた一億総活躍推進本部というそれぞれのセクションから数次にわたる給付型奨学金の実現の提言をさせていただくとともに、公明党内で十四回、自民党では八回のプロジェクトチームの会合を開き、合同でも開かせていただきました。その中で、具体的な財源を見つけ、提案し、今回の実現にこぎつけたものでございます。

 今回、この法案の成立を待つと再来年度からの支給ということになってしまうために、何とか少しでも早くということで、住民税の非課税世帯の、私立の自宅外生や児童養護施設退所者等の特に経済的に厳しい学生には、来年度から月額四万円を先行実施することを決定したわけでございます。

 また、これだけでは十分じゃない、児童養護施設退所者等の生徒さんは、実際に大学に進学するときには入学金の問題が一番バリアが高い、この入学金に対する支援が必要不可欠と、我が党の強い要望を受けていただきまして、今回、入学金相当額二十四万円も追加支給されるということが実現することになったのは、私は大変高く評価されるべきものだというふうに思っております。

 二つ目の無利子奨学金につきましても、非課税世帯の学生約二万人については、今回、総理の英断で成績基準を実質的に撤廃するということが決まりました。また、これまで無利子の貸与基準を満たしていながら予算上の制約から貸与されなかった約二・四万人のいわゆる残存適格者の皆さんにも、無利子奨学金をこの四月から支給対象とするなど、大変大幅な充実がなされることになりました。

 そしてまた、返済が困難だという返済困難者対策として、新たに、卒業後の所得に応じた返還月額を設定できる所得連動返還型制度という新しい制度を導入することになります。

 お手元の資料二に書かれているように、従来の返還月額は平均が一万四千四百円であるものが、最低返還月額二千円からとしました。年収二百万円で月四千七百円、年収三百万円で月八千九百円と、年収に応じた返還額が決められる大変優しい制度でございますが、その上に、年収三百万円以下の場合は通算で十年間返還猶予を認めることとなっております。

 今回の大学等奨学金事業の充実のための三本柱政策は、私は画期的な第一歩であるとは思いますが、これにとどまらず、これから現場のニーズを調査しながら、規模の拡大や柔軟な運用を進めるべきだと考えますが、この点について文部科学大臣に御答弁をいただきたいということ。

 同時に、もう一つ問題があるのは、もう既に奨学金を借りていて返還が困難になった既存の返還困難者に対する対策については、今回新たに導入される所得連動返還型制度と同様の措置をとるということがやはり大事だというふうに考えております。この点についても、さまざま文部科学省は今取り組みをされていると思いますので、あわせて御答弁をいただきたいと思います。

松野国務大臣 意欲と能力のある学生が経済的な理由によって進学等を断念することがないように、安心して学ぶ環境をつくる、その第一は、学生の経済的な負担の軽減にあるかと思います。

 来年度からの施策に関しましては委員から御説明をいただきましたけれども、住民税非課税世帯の子供たちに係る成績基準の実質的な撤廃をするとともに、残存適格者を解消し、必要とする全ての学生が無利子の奨学金を受けられるようにしてまいります。

 さらに、返還負担を大幅に引き下げるために、お話しをいただきました所得連動返還型奨学金制度を導入することとしております。

 加えて、経済的な理由によって進学を断念せざるを得ない者の進学を後押しするために、貸与型の奨学金に加えて、新たに、返還の必要がない給付型奨学金を創設することといたしました。

 これらの取り組みによりまして、教育の機会均等の実現を図り、一億総活躍社会の実現に向けた大きな一歩としたいと考えております。

 給付型奨学金につきましては、まず、制度を当面、安定的に運用し定着を図ることで、進学の後押し効果を十分に発揮することが重要であります。

 高等教育の負担軽減については、必要な財源を確保しつつ、しっかりと取り組んでまいりたいと考えております。

 既に奨学金の返済に入っている方々に対する軽減策という御質問でありますけれども、現在、奨学金返還中で返還が困難な方につきましては、所得が低い場合に返還を猶予する返還期限猶予制度がございます。返還月額を二分の一に減額をして返還する減額返還制度によって、返還負担の軽減を図っておるところであります。

 その上で、これらの措置を講じてもなお返還が困難な方につきましては、既存の減額返還制度をより柔軟に活用することなどにより、さらに返還負担を軽減すべきとの方向が有識者会議において示されておりまして、同会議の議論を受けて、文部科学省といたしましても、返還月額を今の二分の一から例えば三分の一に減額をし、より長い期間をかけて返還ができる制度へ拡充するなど、返還が困難な方のさらなる負担軽減策について検討を進めてまいりたいと考えております。

    〔委員長退席、葉梨委員長代理着席〕

赤羽委員 今回の奨学金の返還の問題というのは、既存に返せない方が相当いらっしゃるということがそもそもの出発点でありますので、今大臣がお示しになられたような柔軟な、また低減の返還額でできるように実施をしていただきたいし、これは周知徹底が大切だと思いますので、ぜひよろしくお願いしたいと思います。

 加えて、奨学金を充実させるだけで全て事足りるかというとなかなかそうではなくて、例えば、国立大学の授業料は、この三十年間で、三十年前は年間三万六千円だったんですね。今や現状は五十三万五千八百円になっているわけです。やはりさまざまな理由があったと思います。こういった現状の中で、授業料の減免制度というのはやはり大事だなと。奨学金の拡充とともに、二本柱でやっていかなければいけないのではないか。

 このパネルにも出ていますように、着々とこれも増加していただいておりまして、来年度は、国立大学の対前年度比〇・二万人増、全体の学生数の一割強に当たる六万一千人の方が減免を受けられる。私立大学については対前年度一万人の増加でございまして、この点についても、我々もしっかりと求めてまいりますが、御答弁は結構でありますけれども、大臣としても、奨学金だけではなくて減免制度についても手厚い施策を打っていただきたいと本当に強く要望しておきたいと思います。

 この教育費用問題について、最後に総理に御質問させていただきたいと思います。

 今回、総理の施政方針演説では、大変大きな時間を割いて、未来への投資である教育投資について熱を込められて語っていただきました。

 私も、この教育投資というのは国のあり方の根幹そのものでありますし、財源の制約を受けるのはやむを得ないにしても、教育投資が財源の制約で十分に行えない現状は、ぜひとも安倍総理のリーダーシップで突破をしていただきたいと強く思うわけでございますし、公明党としても、その点については最大の協力は惜しまない決意でございます。

 具体的な提案でありますけれども、今回新たに創設されることになりました学資支給基金、これは七十億円で積まれるわけであります。しかし、この基金は民間企業、団体からの出資も可能とされております。欧米の多くの民間企業というのは、社会貢献の一環として独自のスカラシップを形成している企業がたくさんございます。社会に有為な人材づくりというのは、私は、国の仕事だけではなくて、官民挙げての責務として考えるべきだというふうに思っております。

 現在文科省が推進をされております、きょうはパンフレットを皆さんのお手元に配っておりますが、トビタテ!留学JAPAN日本代表プログラム、これは、多くの、百八十社の民間企業、団体が出資、協力をしていただいて、二百億円基金を積もうと頑張っている。うちの樋口政務官も一軒一軒企業を回って頭を下げてお願いしていると承知をしております。

 一万人の留学生、返還が要らない給付型の留学生資金をつくられているということであります。今はまだ百億円ぐらいだというふうに聞いておりますけれども、こうしたことを、今回の学資支給基金にも民間企業にぜひ参加をしてもらいたい。例えば、経団連の所属の企業は千数百社ありますが、一億円と言うと少し多く言い過ぎかもしれませんが、それで一千億円以上の基金ができるわけで、そうなるとがらっと奨学金の世界が変わる、私はそう思っております。

 そうしたことも含めて、ぜひ、総理はこのことについては相当深い思いがあるというふうに承知をしておりますので、総理の御決意を伺いたいと思っております。

安倍内閣総理大臣 日本というのは資源がない国でありまして、まさに人間こそ、人材こそ資源であります。そこで、奨学金等の充実を図っていくことは大変重要であります。

 新たに創設する給付型奨学金については、制度を安定的に運用するため、日本学生支援機構に基金を造成することとしています。この基金には、毎年度、予算の範囲内において政府から補助する資金をもって充てることとしておりますが、御指摘のような政府以外の方々からの寄附等を充てることも可能であります。

 企業や個人からの寄附を促進するため、政府としては、奨学金事業を行う学校法人や公益法人等に対して寄附を行った場合、所得税や法人税を軽減しているところであります。新たに創設する給付型奨学金のための基金への寄附についても税の軽減が適用されることの周知を含め、文部科学省を中心に関係団体に対して広く協力を呼びかけていきたいと思っております。

 このトビタテ!留学JAPAN日本代表プログラム、これは下村大臣のときにこれをやろうということになりまして、なかなかこれは難しいのかなと思ったんですが、大臣みずから随分回っていく中において、御本人が留学経験がある経営者等は、それはぜひ、自分はあのときの経験があるから今日がある、こんなことで賛同もしていただきました。

 やはり民間と一緒にこれを、しっかりと子供たちの未来をつくっていく、そういう決意で頑張っていきたいと思います。

赤羽委員 我が国は残念ながら寄附文化の土壌がまだまだだと思っております。しっかりした企業ならばこの基金に参加しないのは恥ずかしいというような新しい状況をぜひつくっていただきたい、私たちもしっかり応援していきたい、こう思っております。

 次に、災害対策について移らせていただきたいと思います。

 糸魚川の今回の大規模な火災についても質問したいと思いますが、先ほど同様の質問が出ました。今回、やはり消防団員の皆さんが懸命に消火活動に参加をしていただいて、十七名の負傷者のうちの十五名が、消防団員の皆さんがゴーグルをつけていなかったということで、火の粉でけがをしている。

 私、これは、実は平成二十五年の十二月に議員立法で、消防団を中核とした地域防災力の充実強化に関する法律というものが成立をして、その中で、装備品の基準が定められ、地財措置も大幅に拡充されたと承知をしているわけで、このゴーグルなんというのは当然装備されていてしかるべしだ、こう思っております。

 この点について、いま一度、今回の糸魚川の大火災を契機に基準装備品の付与というのが徹底されるべきだと思いますし、同時に、私の地元の神戸でも、消防団の団員というのは大変人手不足というか、なり手がいなくて、維持が大変な状況です。消防団がないとしかしここは本当に大変なことになるので、この人手対策も含めて、総務大臣から御見解をいただきたいと思います。

高市国務大臣 今回の糸魚川の火災で負傷された消防団員十五名のうち、目の痛みを訴えられたり、目に異物が入ったという方が十一名おられます。

 今おっしゃいましたゴーグルも当然の話でございますが、先ほど答弁しました、あしたから開催します糸魚川市大規模火災を踏まえた今後の消防のあり方に関する検討会の検討課題の中で、強風下での消防活動における消防団員の安全管理のあり方も論点の一つでございますから、現在装備されている、確実に装備品として手当てされているもの以外にも必要なものがあるかと思います。しっかりと検討会の報告を踏まえた上で、速やかに取り組んでまいります。

 そして、安全靴、ライフジャケット、防じんマスクなど、消防団の装備の充実を図るために、平成二十六年二月に消防団の装備の基準を改正して、あわせて交付税の措置も大幅に引き上げたんですが、問題は各地方公共団体がそこに交付税を使っていただけるかどうかということでもありますので、消防団の装備の改善を集中的、計画的に進めていただくようお願いを続けてまいります。

 それから、消防団への加入促進ですが、これも、先ほど委員がおっしゃいました消防団を中核とした地域防災力の充実強化に関する法律に基づいて力を入れております。

 私が総務大臣に就任したのは二十六年の秋でございましたけれども、その翌年の二月に、まずは地方公共団体や各経済団体に書簡を発出しまして、またいろいろな会合に私も出かけてまいりまして、被用者や公務員の方々が消防団に加入するための御協力をお願いしたいということ、あとは、被用者の方々が消防団でも訓練をされるとかいう日もありますので、そういった活動への御理解をいただきたい、協力をいただきたいということ、また、消防団活動をしておられることを正当に評価していただきたいということ、また、消防団活動の経験のある学生さんが就職活動に来られたようなときに、これも評価していただきたいというお願いを申し上げてまいりました。

 今、消防団員数の減少幅というのは四年連続で縮小傾向にございます。この理由は、特に女性と学生の加入促進について強力に働きかけをしました。特に大学生などに対する支援の一環として学生消防団活動認証制度を創設しまして普及を図っておりますし、今、女性、学生の消防団員数はふえてきておりますので、引き続き取り組みを続けてまいります。

赤羽委員 今月の一月十七日に阪神・淡路大震災から二十二回目の一・一七を迎えたわけでございますが、この一・一七、毎年、ひょうご安全の日宣言というものが発表されるわけでございます。この中に明記されていることは、阪神・淡路大震災の教訓をもっと生かし、我が国、また、それぞれの地域の防災力を高めるということがいつも強調されております。

 どんな教訓なのかということを私なりに、阪神・淡路大震災のときは新人議員で、みずからも被災者として被災をし、それから二十二年間、日本の防災政策にかかわりながら、防災の現場に足を運びながら思っていたことを、きょう、具体的な提案をさせていただきたいと思います。

 パネルに書いてありますように、大災害が起こりますと、復旧復興の中核は被災自治体が担うわけでございます。被災自治体は、実は、通常業務を行いながら復旧復興、緊急の対応をする。

 具体的には、まず、被災者の安否確認を行う。そして、避難所の設営、運営を行う。また、救援物資の輸送システムの構築、配布を行う。そして、それぞれの被災世帯の罹災証明の発行を行う。また、被災者のこれからの生活再建の支援、相談、そしてそのための情報提供を行う。また、全国から来ていただくボランティアの皆さんの受け入れを行う。そして、仮設住宅の土地を見つけ、設置をし、運営を行う。

 それ以外にも、要援護者への対応ですとか、DMATやDPATといったお医者さんたちが来たところの対応、また、弁護士さんとか税理士さん、建築士さん、不動産鑑定士さん、中小企業診断士さんといった、復旧復興のためのさまざまな士業の皆さんとの連携等々、被災自治体の職員の皆さん自身が被災者でありながら、そして、災害の法制というのに大体は余り精通されていないんですね、日常的には必要が余りありませんから。大体が、実際被災に遭うと、マニュアルを見ながらそれに対応しているというのがもう毎回の常です。

 ですから、よくわからない、不十分な知識の中でやる、時間がかかる、このことによって被災者との間でさまざまなもめごとが起こったり、混乱が起こる。本当にやってこなければいけないこともやり残されてしまうというようなことが繰り返されてきた。これは何とかしなければいけない、私はそう実感をしております。

 阪神・淡路大震災でもさまざまなことを国のもとでやりましたけれども、例えば、震災によって障害者となられた方というのが数多くいらっしゃいましたが、実は、命が助かったからいいじゃないかというような形で、具体的な支援というのはほとんどとられていなかった。もっと正確に言うと、どのくらいの方が震災障害者になられたのかという調査も、実は、発災後十五年目にして初めて、NPOの皆さんの働きかけで兵庫県と神戸市が調査を行ったというのが実態なんです。

 震災障害者の皆さんは、結局、取り残されたという感が強いし、障害を持たれているということで、その苦しみをずっと引きずってきているというのが現実なんです。

 唯一の支援策というのは、弔慰金法の中で、一級障害者に対して、亡くなったと同様の両腕、両足が切断したとかということなので、ほとんど、多くの震災障害者は対象とならないというような現実もあります。

 私は、こうした仕組みをどうにかしなきゃいけないというのはこれまでも委員会で発言をしてまいりましたが、昨年、大水害に遭われました岩手県の岩泉町を委員会として視察をしたときに、やはりこのシステムでは回らないということを確信いたしました。

 岩泉町というのは全国で一番広い面積の町であります。二十三区より広い、広大な面積で、人口が少ないことによって町役場の職員も極めて限られている。この人たちに先ほど言ったような復旧復興の中核を担わせるということは、抜本的に無理だと私は思っております。

 こうした認識というのは恐らく政府とも共有していて、熊本地震のときには、政府のリーダーシップで、各省庁から幹部職員も含めて専門的な人材を幅広く被災地に派遣していただいたということで、私は評価をできると思っております。しかし、残念ながら、全体調整を図る仕組みがなかったり、応援体制の偏りや連携が不足しているというようなことで、やはりつけ焼き刃ではなくて恒常的な組織づくり、また専門人材の育成が必要なのだというふうに私は確信をしているわけでございます。

 今回、先ほどの御答弁にもありましたが、税制については、毎回毎回、災害が起こるたびに税制の支援制度というのは特別立法で措置をしていましたが、今年度からは恒常的に、オートマティカリーに、災害が起こったらとるべき税制は自動的に作動する、これは私は大変よい仕組みができたと思っております。

 しかし、これは、税制だけではなくて、実は、先ほど言いましたような復旧復興、やらなければいけない復旧復興はパッケージとして何があるのかというのは国の責任のもとでつくって、それを実行する部隊、人材を育成して、大災害が起こったときにはその被災地に派遣して、被災自治体に成りかわってルーチンの復旧復興政策をするべきだ、私はそう考えておるところでございます。

 これは私一人で考えているのではなくて、自民党も平成二十六年八月には緊急事態管理庁の提案があったり、自公両党で東日本大震災の教訓を踏まえて防災庁の必要性が提案されたり、また、関西広域連合では、兵庫県、大阪が中心となって平成二十七年に防災庁設置の検討会が実は持たれておりまして、数次にわたる提言もされているわけでございます。

 DMATとかDPATというお医者さんの派遣というのは、やはり専門家じゃないとできないからということで専門家に任せている。しかし、私は、復旧復興のための行政というのは、実はこれも専門家じゃなきゃできないというふうに考えなければいけないんじゃないかと思います。

 防災担当の大臣、多分いろいろ兼務してお忙しいと思いますが、これだけ災害が多発化し、複雑化し、さまざまな対応をしなければいけないんですから、ぜひ専任の担当大臣がトップにつく組織をつくって、強い調整官庁として各省庁の長になって復旧復興の指揮、コントロールができるような組織づくりが私は絶対必要だというふうに思っております。

 加えて、首都圏に一極集中の中枢機能、この維持、継続のためにも、いざといったときのためのリダンダンシーの確保、これは必要な危機管理だと思います。

 なかなか、こういう防災庁云々というと、いきなりは通らない話だと思いますし、すぐ、行政改革と逆行するというようなことで冷たくあしらわれてきましたが、これは、私も政治家として二十二年間命がけでやってきた、政治生命をかけて、必ず必要なものだというのが私の主張でありまして、今すぐにとは言いませんけれども、私のこの主張に総理にはぜひ耳を傾けていただいて、総理のリーダーシップで検討の場をつくってさまざまなことを進めていっていただきたいと強く思うわけでございますが、総理の御見解をいただきたいと思います。

    〔葉梨委員長代理退席、委員長着席〕

安倍内閣総理大臣 委員御指摘のような問題意識を政府としても有しております。

 二十七年三月、関係副大臣会合において、統一的な危機管理対応官庁の創設などの政府の防災機能の強化について議論が行われたところであります、これはもう委員御承知のとおりでありますが。その結果、組織構成にかかわらず、複合災害への対処のあり方を含め、関係省庁が互いに緊密に連携することが重要であることが確認された経緯があります。

 大切なことは、国と自治体の双方において、平素から関係業務に精通した職員を養成し、一たび災害が発生した場合には直ちにこれらの職員を被災地に派遣し、国と自治体との適切な役割分担のもと、被災自治体が早期に復興に取り組める体制を整えることであると認識をしております。

 このような観点から、政府としては、熊本地震の際には、熊本県に設置した現地対策本部に災害対策業務の責任者等を派遣しまして、被災地のニーズを把握して国が行う各種の支援策の連絡調整を行う一方、現地対策本部が把握した被災自治体のニーズに基づき、全国知事会や指定都市市長会に働きかけ、他の自治体職員が被災自治体に派遣されて罹災証明の交付等に従事するなど、災害自治体が復興に向けた体制を早期に構築する上で一定の成果を上げたものと認識をしております。

 政府としては、こうした経験を踏まえて、ワーキンググループを設けて災害対応のあり方について検討を行い、地方公共団体への支援の充実を柱とする報告書を取りまとめたところでありまして、今後とも、その成果を生かして、国、都道府県等の連携による応援職員派遣の仕組みなど、被災自治体への人的、物的支援の充実に取り組むとともに、委員御指摘の専門家による復興支援についても今後検討してまいりたいと思います。

 今回我々がやったことは、まず毎日本部を開く、それで、現地本部と常に連携しながら、ニーズを聞くだけではなくて、我々が国として把握したことにおいてはプッシュ型で地方に支援物資を送る、あるいは、我々が派遣する専門家等についても、こちら側の職員についても、熊本で任務を経験した人物を送り、より緊密に連携するようにしたわけでございまして、そういう意味においては、いろいろな県で発生したときに、その県とかかわりのある人材がいるかいないかということも極めて必要でありまして、そういう人材についてちゃんと把握できているかどうかということも重要なんだろう、このように思います。

 その日その日に機敏に対応しながら判断していけるかどうかがかなり勝負でありまして、当時もたくさんの避難場所が駐車場等々にもできた、それを十分に実は県が把握していないけれども、そこからSNSで発信がされていて、それを捉まえているNGOもいました。そういう彼らとの連携もしながら、こういう場合は被災自治体も被災していますから、かなり国が前面に出ていく必要もあるんだろう、このように思いますが、そうした経験も踏まえながら、また委員からの御指摘も踏まえて、ベストな体制を組んでいくように努力をしていきたいと思います。

赤羽委員 どうもありがとうございます。熊本地震の新たにとられた措置について、改めてやはり総括をしながら、よりよい体制をつくっていただきたい、また私たちもしっかりと取り組んでいきたい、こう思っております。

 次に、昨年秋から、高齢者の方の運転による交通事故が大変相次いでおります。このことについて、安全運転サポート車、仮称ですけれども、この推進政策について質疑を進めたいと思います。

 この事故の原因の多くは、警察庁の調査によりますと、ブレーキとアクセルの踏み間違いなどの操作ミスが大半であったという報告がされております。

 これに対して、自動車メーカーも、また自動車装備メーカーも、自動ブレーキですとか、ペダル踏み間違え時の加速抑制装置ですとか、開発をしっかり進めているところでございます。

 私が改めて驚いたのは、新車においては、自動ブレーキの装備は四五・四%、ペダル踏み間違いのときの加速抑制装置は三五・九%と、かなり高い状況で装備をされている。しかしながら、例えば自動ブレーキも、対車両に対するブレーキはかなりきくけれども、対人、対歩行者に対して自動ブレーキというのはなかなか難しい。それは素人の私もそうだろうなと。加えて、各社が装備しているブレーキ類の性能も相当まばらだというのが現状だということでございます。

 国としてぜひ、性能の安全基準、統一の基準をしっかり定めて、そして私は、高齢者のドライバーの皆さんには、この自動ブレーキですとか加速抑制装置は、義務づけというと役所は答えにくいと言われるんだけれども、それはしっかりつけてもらうように。

 かつて、ETCを装備するときに大変大胆な補助金をつくり、そして今、高速もETCを使用すると相当メリットがある。これは相当効果が出たと思いますが、今、こうしたことを相当可及的速やかにとるべきだというふうに思っておりますが、国土交通大臣の御見解をお伺いしたいと思います。

石井国務大臣 委員御指摘のとおり、自動ブレーキやペダル踏み間違い時の加速抑制装置といった先進安全技術は、高齢運転者による交通事故の防止や事故時の被害軽減の効果が期待をされます。

 このため、国土交通省では、先進安全技術を搭載した自動車の普及啓発を図るべく、関係省庁とともに副大臣等会議を設置いたしまして、昨日、第一回の会合を開催したところであります。これらの先進安全技術は、現在進化の途上にございますので、一定の安全効果が見込まれる水準に達した装置から統一の基準を策定すべく、今後検討を進めてまいります。

 また、市販車の性能を比較、公表する自動車アセスメント制度による先進安全技術を活用した装置の性能評価を一層拡大していくほか、ユーザーに対する啓発、導入促進のための方策につきましても幅広く検討を進め、先進安全技術を搭載した自動車の普及を図ってまいりたいと存じます。

赤羽委員 この自動ブレーキですとか自動走行については、目の前の問題として高齢者の運転の事故対策という問題と、中長期的に、これは経済成長につながる、また、人手不足を解消するとか、過疎化地域の公共交通の担い手となるとか、さまざまな展開が考えられると思います。であるがゆえに、各自動車メーカーもその技術開発に余念がないところであります。

 エコカー減税というのがとられて十年たっていないわけですけれども、エコカー減税は、実は、これをとられて十年たたずして、今の新車の九割以上がエコカーになった。同時に、燃費も格段によくなっているんですね。やはりこうした設備投資というか投資減税的なものというので相当効果が出た。これに倣って、セーフティーカー減税というような、減税がいいのかどうかというのは別にして、やはり研究開発が加速できるような国を挙げての支援策が相当大きな効果をもたらすというふうに私は思っております。

 この点、これからの日本の製造業、さまざま、アメリカに車を輸出しにくくなるかもしれませんし、そんなときにも、世界じゅうのメーカーに追随されないような技術開発というのは、私たちは日本にとって大変大事だと思います。この点について、国を挙げての支援策について、ぜひ総理御自身の御見解をいただければと思います。

安倍内閣総理大臣 委員御指摘のとおり、自動運転技術は、我が国の自動車産業の国際競争力を維持する鍵であるとともに、高齢者の安全な運転を支援するものとなることが期待されるわけでありまして、特に、事故防止の効果が期待される自動ブレーキなどの先進安全技術を搭載した安全運転サポート車を速やかに普及させていきたいと考えています。

 昨日、私の指示を受けて、安全運転サポート車の普及に向け、経産省、国交省など関係省庁の副大臣等による会合が開催をされました。この会合では、先進安全技術の普及に向け、高齢者の方がこうした技術について知り、体験する機会が少ない、安全技術を搭載するには追加コストがかかる、搭載されている車が限られている等の課題が指摘をされました。

 こうした課題を乗り越えるための総合的な対策の検討を集中的に行い、その方向性を年度内に取りまとめていく考えでありまして、このような取り組みを通じて、自動運転技術の開発を促進し、高齢運転者の交通事故の防止に向けて政府一丸となって取り組んでいく考えでございます。

赤羽委員 力強い決意、ありがとうございました。

 以上で終わります。

浜田委員長 これにて赤羽君の質疑は終了いたしました。

 次に、玉木雄一郎君。

玉木委員 民進党の玉木雄一郎です。

 先ほど、小野寺委員とのやりとりで、少し確認したいことが一点ありましたので、通告はありませんけれども、総理にお伺いしたいと思います。

 トランプ大統領になって、TPPが永久離脱ということになりましたけれども、二国間FTAについてどういう態度で臨むのか、いま一度、総理のお考えを聞きたいと思います。

 報道によると、二月十日にも日米首脳会談が行われるやにも聞いておりますが、日米FTA、求められたら、これは拒否されますか、受けられますか。

安倍内閣総理大臣 現在、まだトランプ新政権の貿易チームがつくられていないわけでありまして、そこで、まだ確たる、例えば対日貿易政策ができているわけではありません。この段階で予断を持ってお答えすることは差し控えさせていただきたい、このように思います。

玉木委員 ということは、受ける可能性があるということですね。

安倍内閣総理大臣 仮定の質問にはお答えはできないわけであります。

 いずれにせよ、国益をしっかりと守っていく、そして経済を成長させていく、国民を豊かにしていく、こういう観点から、その時々に適切に、FTAは日米に限ったことではないわけでありまして、先ほども申し上げましたように、さまざまな国々と、日・EUのEPAもありますし、日中韓もありますし、また、先ほどお話しいたしましたように、日豪は既に締結をしておりますが、日加はまだこれから行っていくわけでございます。こうしたことを含めて、それぞれ適切に判断をしていきたいと思います。

玉木委員 適切に判断した結果、日米FTAをやる可能性は排除し切れないということですね。

 日豪EPAの話がありました。日豪EPAが結ばれた結果、対日本市場に対するオーストラリアの牛肉と対日本市場に対するアメリカの牛肉を比べたときに、今のままだと圧倒的にオーストラリアの牛肉の輸入は対日市場に対しては有利になります。そうすると、アメリカは何かをしない限り、これは日本との関係というよりもオーストラリアとの競争関係の中で、今のままではアメリカの牛肉は大変不利な状況に置かれます。そうすると、何らかの、TPPが発効しなければですよ、求めてこざるを得ないと思うし、当然求めてくると思うんですね。

 TPPをあれほど否定した以上、それは、御本人もおっしゃっているように、二国間交渉が中心だというのであれば当然日米FTAを求めてくると思いますし、首脳会談がセットされるのであれば二月十日の主要課題になると思いますので、安易な妥協を入り口からしないでいただきたいということを、くぎを刺しておきたいと思っております。

 一月二十日にトランプ大統領が当選してから、私は容易ならざる時代に入ったと思っています。米国は重要なパートナーでありますけれども、過度な期待は禁物だと思いますし、先ほどもあったように、いつも振り回される関係もこれは見直していかなければならないと思います。その意味では、みずから考え、みずからの責任で行動する時代になったと思いますし、与野党を超えて困難な問題に責任を持って取り組む、そういったことが求められる時代になったのかなと思います。

 ですから、私はきょうは全て提案型でやります。直球勝負でやりますので、総理にも、ぜひ正面から、逃げずにお答えいただきたいと思います。

 まず、天下りの問題についてお伺いしたいんですが、その前に、先般、本会議場で、これは何度もやりとりをしましたけれども、例のプラカードの問題であります。このことを私はどうこう言うつもりはもうありませんけれども、ただ、総理、やはり、意見の違いがあっても真摯かつ建設的な議論をぜひお願いしたいと思います。こちらも心がけます。

 自民党の一期生、二期生の方は昔のことを知らないと思いますが、いろいろなことがありました。調べていて、一つこれは参考になるなと思ったのは、プラカードではなくて、プラカードに書いてあることです。ここ、天下り根絶をなぜやらない。当時野党であった自民党が、我々に対する批判のプラカードとして掲げているわけですね。金田大臣も当時写っておられますよね。時代が変わればいろいろなことがあるなと思いますけれども。

 天下りの問題については、与野党を超えて取り組んでいかなければならない問題であるというふうに思っております。

 それで、今回、先ほど与党の先生方からも質問がありましたけれども、文科省の組織的な違法な天下りが初めて正式に認定されたということだと思います。これは、総理も、天下りを根絶する、あるいは必要なことは何でもやるというふうにおっしゃっていますので、私も、どうしたら根絶できるのかという観点から質問をしたいと思います。

 パネルの一を見てください。

 これは今回の事案の一つの事例です。大きく二つありますけれども、これは早稲田大学に元高等教育局長がいわゆる天下りをしたということであります。なぜ早稲田大学に行くのがまずいかというと、今、国から例えば早稲田大学には百億円以上の私学助成等々の補助金、助成金が入っています。また、許認可権限も持っています。そういった予算や権限を背景に、それをある種大きな力として天下りをするのがだめなので、本人及び役所の天下りのあっせんを法律で禁止しました。しかし、今回のケースは非常にわかりやすい。まさに権限を持つ人が権限のあるところに、しかも百億円を超えるお金が行っているところに天下りをしているというパターン。

 加えて、今回、左に口裏合わせというのがあります。想定問答をつくっても、きょう閣僚の皆さんが並んでおられますが、こうした質問に答えるために想定問答を役所の人がつくると思うんですが、これは、違法な行為を口裏合わせして、もちろん、文科省側と早稲田大学側と、そして架空の仲介者ということをでっち上げて、三者のための想定問答を丁寧につくっているわけですね。よくできているんですよ。こういうふうに、取扱注意というふうな形で。想定問答というのをつくっているというのは、総理、相当悪質だと思うんですね。

 これで私がまずお伺いしたいのは、今回の事案、やはり全容解明してしっかりと再発防止に努めなければいけないんですが、処分が甘いのではないのかなということを感じます。この事案でも、犯罪でいうと相当重いと思うんですよ。あえて申し上げますけれども、小学生向けの学習指導要領にこういうことが書いてあるんですね。第三章、道徳、うそをついたりごまかしたりしてはいけない。文科省が想定問答までつくってやるのは、私は相当重い罪だと思います。それに対して、一番重い処罰を受けている人でも停職三カ月、ノンキャリの室長クラスの方だけなんですね。

 もう一つ、今回の事案で、この早稲田大学、権限があるところに天下ったということと同時に、私が今回実は最も意味があると思っているのは、元人事課のOBの方が、私はきのうちょっと行ってきたんですけれども、文科省から徒歩三分のところに事務所があって、そのOBの方が外部でいわゆるマッチング、退職者の情報をもらい、そして天下りする先の情報をもらってそれを突き合わせて、それを突き合わせた上で本省にいる元上司あるいは上司の方にこんなのでいいですかと了承をとって、脱法行為、法の潜脱行為としてこういう仕組みが行われていたということを監視委員会が公式に認めたということです。今回辞任された前次官はこのスキームに深くかかわっていたということなんです。

 総理に伺います。

 これは徹底的に究明したらいいと思うんですが、残念ながら、この通常国会の初日、一月二十日に閣議決定をもって、この当該当事者である前事務次官の方は退職を閣議決定によって認められています。きょうも私、幾つか聞きたい質問があるので参考人で出てきてほしいとお願いしたんですが、与党の皆さんの反対で出席がかないませんでした。

 総理、必要なことは何でもやると総理は代表質問に対する答弁でもお答えになりましたので、ぜひ、この前次官、そして元文科省人事課OB、今は文教フォーラム理事長、このお二人の参考人招致を求めたいので、総理がリーダーシップを発揮していただいて、ぜひ来ていただくように御指導いただくことはできませんか。

安倍内閣総理大臣 常々皆さんは、私は行政府の長なんだから立法府に対して口を出すべきじゃないと、しょっちゅう玉木さんはおっしゃっていて、私も、そのとおりだな、このようにずっと思ってきているところでございまして、まさに参考人を呼ぶかどうかということについてはこの委員会で決めることでありますから、私が浜田さんにそれをやれとか理事にやれと言うことはまさに私ののりを大きく越えていることであって、まさに私自身がそういうことをしてはいけないということではないか、このように思う次第でございます。

玉木委員 総理、冒頭申し上げました、意見の違いがあっても真摯かつ建設的な議論をやろうということを、総理も呼びかけられたし、私もそう思いますからそうしたいと思います。

 いつもそういう定型の答弁をします。立法府の話だから関係ないと。でも、自分の都合のいいことは、例えばプラカードの問題もそうじゃないですか。プラカードを上げることがどうかはいろいろな議論があります。ただ、それは自民党も我々もやむにやまれぬ形でやることがあって、でも、それは立法府のルールの話。そのことに時々、自分が批判したいなと思うときはおかしいおかしいということを言うのに、今本当に、だって総理、これは真相究明して天下りを根絶するんですよね、だったら何で。与党の反対で参考人に来ていただけないんだから、自民党総裁としてですね。ぜひ来ていただきたいと思うんですけれども、総理、だめですか。

安倍内閣総理大臣 私が施政方針演説で真摯な議論を重ねていこうと言ったのは、これはまさにそういう議論を、皆さん立法府と行政府との間で真摯な議論を重ねていきましょう、あるいはまた議員同士でもそうですね、そういうのをやっていきましょうと呼びかけたわけでありまして、何々しろと言っているわけではなくて、これは至極、まさに私たちに求められていることを申し上げたわけでございます。

 また、プラカードについては、これはまさに我々は、野党時代にやったじゃないかということで恐らくお示しになったんだろうと思いますが、過ちて改めざる、これを過ちというんですね。まさに私たちも過去に目を向ければ反省しなければいけない点がたくさんある、その上で私があのように述べたわけでございまして、皆さんもそれを認められたのであれば、蓮舫議員も事実上過ちがあったという趣旨の話をされていましたから、これからはプラカードを掲げられることはやめられた方がいいんだろう、このように思うわけでございます。(発言する者あり)今、大切なことを申し上げているわけでありますから、私の見識を述べているわけでありますから。

 そこで、もう一つ言わせていただければ、まさに、過ちてすなわち改めることについてははばかることなかれでありますから、これは大切なことであろう、このように思います。

 その上において、参考人についてはまさに、参考人を出すべきかどうか、参考人で出てきてここで証言してもらうかどうかということを、総理大臣の私がそれを指示するんですか。これは極めておかしいじゃありませんか。そこは、まさにこれは委員会で決めることであり、ずっとそれは答えてきたことであります。これは御党が与党の時代もそのように答えてきておられるわけでありますから、これはまさに大切なことですから、大切なところですから言わせていただきたいと思いますが、まさにこれは議会の……(玉木委員「総理、私の時間をとらないでください、いっぱい聞きたいことがあるから」と呼ぶ)いや、丁寧に説明しろと言われたから、今、丁寧に説明しているのであって……(発言する者あり)

浜田委員長 静粛に願います。

安倍内閣総理大臣 この委員会においてこれはお決めになることではないか、このように繰り返し申し上げさせていただきたいと思います。

玉木委員 委員長、お願いします。

 今回、特にこのOB迂回ルート、脱法ルートの当事者である前次官、名前はあえて挙げませんが、前次官と人事課のOB、このお二人の当委員会への参考人招致を求めます。

 お二人でしかわからないことがあります。例えば、どの頻度で会っているのか、どういう形で情報のやりとりをしたのか。これは、松野大臣、答えられますか。答えられないんです。

 ですから、お二人に直接来ていただいてやらざるを得ませんので、総理は後ろ向きですけれども、ぜひ委員長の計らいで参考人招致をお願いしたいと思います。

浜田委員長 理事会で協議をさせていただきます。

玉木委員 もう一つ、先ほど河野議員が非常にいい質問をされていましたけれども、ちょっともう一度伺いたいんですが、文科省がこれを究明するチーム。

 全省庁については、山本大臣、官邸主導というか内閣、全体主導でやるということ、第三者も入れるということなんですが、一番問題になっている文科省については、調査チームは内部の人でしか構成されていないんですね。加えて、外部の目も入れるというけれども、調査チーム本体には入らないで、その調査チーム本体の動きを外から監視する役割は外部の人の目、関与も生かすということなんです。

 大臣、もう一回明確にお答えいただきたいんですが、調査班そのものの中に外部の人を、特に弁護士等のしっかりとした調査能力のある人を入れるのかどうか。この点、明言をもう一度お願いいたします。

松野国務大臣 先ほど答弁をさせていただきましたが、より国民の皆様に納得していただける体制をつくっていくということのために、公務員制度の有識者もしくは弁護士等の法律の専門家にこの調査班の中に入っていただいて、調査を進める体制を組みたいと考えております。

玉木委員 一番最初の河野議員からの質問ではそうじゃなかったので、改めて確認をさせていただきました。ぜひ入れていただきたいというふうに思います。

 もう一つは、これも山本大臣とのやりとりでありましたが、OBのルート、OBを経由したルートは、これは潜脱行為というふうに監視委員会は今回書いていますが、確認します。潜脱行為なんですけれども違法行為ではないということですか。

塚田政府参考人 お答えいたします。

 今先生がおっしゃいましたように、私どもは、文科省が国家公務員法に定める再就職規制を潜脱する目的を持って構築し運用していたものと認定をさせていただいているところでございます。したがって、違法とはしておりません。

玉木委員 違法じゃないんですね、これは。

 官民人材交流センターというのをつくりましたよね。今回のケースもそうなんですけれども、一人一人の役人の皆さんは優秀だと思います。ですから、それがきっちりしたルールの中で、民間で能力を発揮されることは私はいいと思うんですが、きちんと法律、ルールに従うということが大事だと思うんです。

 そのことでいうと、官民人材交流センターを使って、これは文科省、そのルートを使って再就職した人は何人今いますか。

松野国務大臣 今のところゼロでございます。

玉木委員 ゼロなんですね。何でゼロかというと、代替する仕組みがあるからなんですね。この人事課OBの方がやっているところが、ある種実質的な官民人材交流センター文科省向けみたいになっているわけです。ですから、ここをしっかり塞ぐ必要があると思うので、今、法律上は必ずしも違法じゃないという明確な答弁をいただきましたけれども、これは明確に違法と位置づけるべきだと思いますけれども、これは総理に伺います。

 山本大臣は先ほど、必ずしもそんなことはしなくていいというような答弁だったと思うんですが、総理、ここは明確に、総理のリーダーシップで、やることは何でもやるとおっしゃったんですから、ここの脱法行為、潜脱行為をしっかり、法律できちんと網をかけていく。潜脱というのは、辞書を調べたら、法令等による規制を法令で禁止されている方法以外の方法により免れること、法の網をくぐると書いています。網をしっかりかけるべきではないでしょうか。

安倍内閣総理大臣 まず、全省庁において、果たして問題があるかないか、このような、文科省のような出来事があるのかないのかということをまずしっかりと調べて、そしてその調査を受けた上において、どういう対策をとっていくことがベストかということを考えていきたいと思います。

玉木委員 いや、総理、再就職等監視委員会、これは政府の組織ですね。その政府の組織が、一月二十日にきちんとした文書を出して、今回のようなケースは、再就職規制を潜脱する目的を持って、当該枠組みを構築して運用していたものであったと明確に報告書に書いているんですよ。でも、検討もへったくれもなくて、これは速やかに法の網をかけるべきではないかと申し上げているんです。

 総理からは必ずしも明確な答弁をいただけませんでしたけれども、冒頭の総理の言い方も含めて、本当にしっかりと天下りを根絶するという思いがあるのかないのかちょっと疑問になりましたけれども、ぜひこれは内閣総理大臣のリーダーシップで、官邸のリーダーシップで進めていただくことをお願い申し上げたいと思います。これは積極的な提案をしていますから、ぜひ、提案型でやりますから、提案を聞いてください。よろしくお願いします。

 次に、補正予算の話に移りたいと思います。

 安倍総理、参議院選挙のときも何度も聞きましたが、アベノミクスを吹かすとか、最大限吹かしてデフレの脱出速度を上げる等いろいろな言葉を聞きましたが、お伺いします。アベノミクスを吹かすということは、具体的に何をいつまでにすることを意味するんですか。教えてください。

安倍内閣総理大臣 何をというのは、まさにデフレからの脱却ですね。二十年間どっぷりつかっていたこのデフレ、これを。しかし、わずかな期間で私たちはデフレではないという状況をつくり出すことができた。そして、この四年間、名目GDPが九%成長したのは事実です。こういう事実を、皆さん、受けとめた方がいいと思いますよ。四十四兆円、名目GDPはふえたんですから。

 さらには、今、実質という声が民進党から上がりました。実質自慢というのはデフレ自慢なんですよ。名目を実質が上回っているというのはデフレ状況ですから、これは笑われますよ、そういうことを言っていると。

 大切なのは、今大きな質問をされましたから、大きく私も答えなければいけないと思います。では、そこで……(発言する者あり)だから、今質問に答えるのは、アベノミクスを吹かすというのは大きな話ですから、まさに三本の矢全部を説明しなければいけない話なんですよ。それを今、短く説明しようと努力をしているんじゃないですか。そこで……(発言する者あり)済みません、私、やじられると、また説明が最初に戻りますから。どこまで言っていたかということがわからなくなりますので。よろしいですか。(玉木委員「総理、真面目にやりましょう」と呼ぶ)真面目にやっていますよ。だから、アベノミクスの四年間をちゃんと、どう見ているかということを示さなければ、何をどうしようとしているのかということを説明できないじゃないですか。

 だから、まず、今、我々は名目GDPについて名実逆転をしました。皆さんの場合が本当の意味での逆転状態のところを正常に戻したんですよ。その中において、名目GDPが九%伸びて、そして四十四兆円ふえましたね。

 そして、さらには、私たちに求められているのは何か。これはやはり、働きたいと思う人がちゃんと働く場があることですね。その意味において、しっかりと全国四十七全ての都道府県において、これは史上初めてのことですが、一倍を超えたわけであります。一人の求職者に対して一人分以上の仕事があるという状況が……(玉木委員「いやいや、結果はいいんです。何をするかです、何をしたいかということ」と呼ぶ)何をしたいかということについて、今、何をしたいかというのは大きな話ですよ。だから当然じゃないですか。そこで大切なことは、もっと……(発言する者あり)

浜田委員長 静粛に願います。

 総理、簡潔に願います。

安倍内閣総理大臣 全国四十七の都道府県で一倍という状況をつくり出すことができましたが、これで満足してはだめなんだということであります。つまり、労働市場においても失業率が一・四一倍になりました。ただ、これはほぼ完全雇用に近いから、ではそこでもう私たちが今進めている政策をとめてしまうのかということではないんですよ。これをもっともっとタイトにしていくことによって、タイトになっていけば給料が上がっていくということであります。

 つまり、この雇用状況をもっとよくしていく……(玉木委員「タイトにしていくって何ですか」と呼ぶ)タイトに。今聞かれましたから答えますと、雇用状況をタイトにしていけば、つまり雇用状況をもっとよくしていけば当然もっと、雇用状況をよくしなければいけませんから、給料が上がっていくわけであります、賃金が上がっていくわけであります。つまり、賃金がもっと上がっていく状況をつくっていく、そういう状況をつくっていく中で我々はしっかりとデフレから脱却をし、経済が成長し、賃金が上がり、さらに国民が豊かになっていく、そういう状況をつくっていくということであります。(発言する者あり)

浜田委員長 静粛に願います。

玉木委員 よく拍手できますよ。

 わかりましたか。つまり、何をするんですか。

 では、今……(発言する者あり)

浜田委員長 静粛に願います。

玉木委員 さんざん、すごくできましたという話をしたので、第三次補正予算の話に入りたいと思います。

 今回の第三次補正予算は、これまで累次、特に安倍政権になってから組んできた補正予算とは全く異なる補正予算です。このことをまず国民の皆さんにも認識してもらいたいなと思います。

 今、総理の話を聞いたら、全部うまくいっていますよね。雇用も経済も最高ですよ。それなのに何で、第二次補正予算、皆さん覚えていますね、昨年の十月にやった、あれから三カ月たっているんですかね、たっていないぐらいで今回三次補正を組んでいるんですけれども、税収が二兆円弱予定より落ちて、赤字国債を二兆円弱発行しなければいけない補正予算なんです。

 今までは、いろいろ理由があっても、例えば利払い費が抑えられたからといって、少し収入がふえたので、ではそれは何に使いましょうか、そういう補正だったと思います、大きく言うと。しかし、今回は全く違っていて、予想した税収が入ってこなくなって、赤字国債を追加で発行しなければいけなくなっている補正なんですよ。

 それで、調べました。いつこういうのがかつてあったかなと思ったら、平成二十一年が最後なんです。七年ぶりですよ、七年ぶり。

 もっとさかのぼってみました。昭和四十年、赤字国債という制度ができてから、調べてみたらいろいろありました、確かに。そうしたら、やはりそれなりの理由があるんです。例えば一番最初、昭和四十年、これは四十年不況、昭和三十九年にオリンピックをやって、その反動でどんと落ちて不況になっていたり、第一次オイルショック、第二次オイルショック、プラザ合意、そして阪神・淡路大震災やアジア通貨危機、ITバブル、リーマン・ショック、これは最新ですね、七年前。どれも内外のビッグイベントがあるわけです。

 しかし、今回、どうでしょう、総理、第三次補正予算、大震災がありましたか。あるいはリーマン・ショック級の、あるいはオイルショック級の、世界じゅうを揺るがせるような、そういうものがあったのかどうか。

 では、今回、なぜ大きなショックもないのに補正予算を組まざるを得なくなったのか。先ほど聞いていたら、円高だと。円高で急に悪くなって、それで補正を組まざるを得ない、赤字国債を発行せざるを得ないということを説明されました。本当でしょうか。

 皆さんよく御批判いただくように、民主党政権下では随分円高でした。でも、それはそれで低い税収見積もりをちゃんと置いて、あるいは低い成長率を置いて予算編成をしてきたんです。いや、総理、笑い事じゃないですよ。全く危機感がないということがよくわかりますよ。財務大臣、そう思いませんか。

 では、財務大臣に伺います。

 当初予算のときのプライマリーバランスと三次補正後のプライマリーバランスは、どれだけ悪化していますか。

麻生国務大臣 二兆六百十三億円です。

玉木委員 間違っていますね。財務大臣が間違うようなので、そういう認識なんだとわかります。それは、二次補正と三次補正を比べたら、この三カ月で二兆円悪化しているんです。

 当初予算は実はプライマリーバランスは十兆超の赤字を見越していて、二十八年度当初予算のプライマリーバランスの赤字と今回三次補正を組んだときのプライマリーバランスの赤字は、何と五・九兆円も悪化しているんですよ。いいんですか、それ。

 二兆円税収が減るというのは、その分はそうでしょう。でも、プライマリーバランスが約六兆円悪化するということは、歳出も四兆円、何だかんだでふやしていって、結局、当初はいつもきれいにつくりますよね。でも、実際、ずっと年度が進行していって年度末になってきたら、つじつまが合わなくなって補正を組んでいる。その結果、二十八年度は当初予算に比べて五・九兆円、約六兆円もプライマリーバランスが悪化しているんですよ。

 そして、昨日発表された中長期試算によると、二〇二〇年のプライマリーバランスの赤字、五・五兆円とか言っていたのが八・三兆円にも拡大しているじゃないですか、去年の七月から比べて。財政運営がめちゃくちゃになってきているんじゃないんですか。

 では、伺います。

 これまで、税収が減少して、そのことに対して赤字国債を発行せざるを得ないような、こういう状況が今回はないのに、税収の減少に伴う補正を打ったのは円高ですということは、アベノミクスというのは、いろいろ説明が総理からあったけれども、円高に極めて弱い、円高に対してもろい政策なんですか。もしトランプ大統領が、今、強いドルが問題だと、つまり強いドルを見直してドル安・円高の方向に持っていった瞬間に、では、アベノミクスというのは崩壊する政策なんですか。お答えください。

安倍内閣総理大臣 今、玉木さんからお話を伺っていて、自分たちのときのは低い成長で低い税収だった、これをちゃんと当てていたじゃないかということを言われたので、私も驚いたんですがね。それを自慢した、自慢されるということに私は大変驚いたわけであります。つまり、低い税収だった、低い成長だったのが問題なんですよ。低い税収と低い成長が問題。

 そこで、私たちは今まで、確かに今回は見積もりが違いましたが、それまではどっちに見積もりが違っていたんですか。ずっと上振れしていたんですよ。大きく上振れをしてきたんですね。上振れをしてきたわけです。今度は残念ながら下振れをしました。しかし、その要因としては、世界経済の状況にもよりますし、そして円高の要素があります。

 アベノミクスが円高に弱いとかいうことではなくて、我が国の経済そのものの構造として、確かに円高だと厳しいんですよ。だから、皆さんの時代には倒産件数はもっと、我々より三割も多かったんですよ。これが事実なんですよ。(玉木委員「また人の悪口ですか」と呼ぶ)今、人の悪口だと玉木さんはおっしゃったけれども、私はファクトを言っている。経済においては、ファクトを見なければ対策は打てないんですよ。だからだめだったんですよ、申しわけないけれども。私たちはそのファクトを見て、その対策を打ってきたんですよ。

 そして、税収は二十二兆円、これは増加しているんですよ、皆さんのときよりも。こういうファクトを見ましょうよ。そして、新規国債発行額が十兆円減少したのも事実ですよ。そして、国の一般会計プライマリーバランスを十四兆円、既に改善させているのも事実なんですよ。私たちが何も改善させていなくて、悪化させているかのごとくの質問はやめていただきたいと思います。我々は、こうやって改善をしっかりとさせています。

 しかし、今回は、今申し上げましたような世界経済の動向や、あるいは為替の要素によって、補正予算を組むに至ったことは事実でございます。

 しかし、今後しっかりと、我々はさらに、私たちが進めている成長戦略を進めながら、そしてやるべきことはやっていく。今回、先般の補正によって、我々は二十八兆円の事業費の予算を組みました。それをしっかりと効果が発現するようにしていきたい、このように考えている次第でございます。

玉木委員 全く問題意識がないですね。困ったら、民主党政権が悪い悪いと。

 総理、私たちと比べるのもいいんですけれども、一国の総理として今の財政の現状は冷静に見た方がいいです。比べるべきは我々ではなくて、安倍総理自身がこの二十八年度当初予算を組むときに定めた目標や、税収や、皆さん自身の目標に。つまり、そのときの安倍総理自身と比べて今それが達成できていないこと、しかも、当初予算に比べて六兆円規模のプライマリーバランスがたかだか単年度で悪化していることに対して、もっと厳しい目を向けるべきだと思いますよ。

 困ったら人の批判で、自分の都合のいいところだけ長演説することはやめていただきたいということをお願い申し上げ、午後の質問に譲りたいと思います。

浜田委員長 午後一時から委員会を再開することとし、この際、休憩いたします。

    正午休憩

     ――――◇―――――

    午後一時開議

浜田委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。

 質疑を続行いたします。玉木雄一郎君。

玉木委員 玉木雄一郎です。

 午前に引き続き質問いたしますが、まず、驚きました。まだ野党の質問が三十分少ししかしていないのに、昼の理事会であすの採決が職権で決められたということを伺いました。

 とんでもないと思いますよ、ちょっと。やはりしっかりと議論を進めていこう、建設的な議論をやろうと午前中総理に申し上げたところなんですが、まあ、今の安倍政権の態度がよくあらわれているなということだと思います。

 午前中、与党の議員からも、文科省の天下り問題については徹底的にしっかりと真相究明しろということがありましたから、採決の前に集中審議を行うことを求めたいと思います。委員長、お取り計らい、よろしくお願いいたします。

 さて、補正予算のちょっと続きをしますけれども、今回の補正は今までとは全く違う補正予算だということを申し上げました。

 それは、税収が予定より減ってしまって、それに対して赤字国債を発行するのは過去何回かやっているんですが、それぞれ国内外の大きなショックがあって、それに伴って赤字国債を発行することはありましたけれども、今回については、総理がきょうも長いお話をされましたが、景気がうまくいっている、緩やかな回復が続いている、雇用もよくなっているのに、何で税収減の赤字国債を発行する補正予算を組むんですか。やはり今回の理由は、円高の理由はもちろん一つあるでしょう、ただ、一つは、当初予算で過度に楽観的な成長率を置いて、すなわち過度に楽観的な税収見積もりをして、それが達成できなかったということではないのかなと思います。

 アベノミクスとは結局、円安頼みの楽観的な成長期待、これにすぎないのではないかなと思います。ですから、円高になったらすぐに化けの皮が剥がれるということで、まさにアベノミクスの化けの皮が剥がれつつある、このことについてはもっと危機感を持って私は向き合うべきだと思っています。

 なぜなら、二兆円弱税収が減っているのに、六千億円も歳出を増加させているんですね。予定したより税収が少ないんだったら、既定経費を見直して、何とかコンコンたたいて、予定した分、入ってこない分を歳出も抑えようとするのが常じゃないですか。にもかかわらず、歳入が減っているのに六千億円も歳出を膨らませている。そのうち災害対策は二千億弱ですよね。あとは防衛省、外務省の、昨年の夏の来年度予算の概算要求に入っているようなものを前倒し計上して、この苦しいのに補正にのせている。

 私は問題だと思います。もう少し真剣に、今回の赤字国債を発行せざるを得なかった現状について、与野党を超えて、真剣にこの現実に向き合って、財政再建に向けた道筋を考えていくべきだと思います。

 そこで、子ども・子育ての予算について一つ質問します。

 これだけ歳入が厳しいという中で、真に必要な予算に限定する必要があると思いますが、これは私はもう何度もこの予算委員会で取り上げていますが、安倍政権が国交大臣に大臣指示を出してまでやっている事業です。いわば子育て支援の目玉事業であります三世代同居住宅支援事業です。これは二十七年度の補正予算からやり始めて、累計、来年度の予算も入れると、関連予算を含めて三百億を超えるんですね。

 石井大臣に伺います。この三世代同居住宅、子育て、出生率の向上につながると言って始めた事業ですが、これによって三世代同居がどれぐらいふえて、その結果、子供がどれだけふえて、出生率がどれだけ上がったか、教えてください。

石井国務大臣 複数世帯が同居しやすい住宅ストックの形成を促す住宅政策の観点から、長期耐久性にすぐれた住宅や省エネ住宅等、良質な住宅の整備の支援に加えて、いわゆる二世帯住宅仕様とするに当たり割高となる工事費を加算して、支援を行ってございます。

 支援措置の実施による効果を検証するために、支援措置を利用された方がどの程度同居を実現されたのか、支援措置が同居を行うきっかけとなったのか等について、工事完了後に事業者等を通じて、順次、居住者アンケートを依頼しております。

 なお、昨年末時点において事業完了しているものは百二戸でございますが、そのうちアンケートに御回答いただいた三十二件について集計したところでは、将来的な予定も含め、皆さん、親族等との同居を予定されているとのことでございます。

 なお、工事が完了し、完了報告が本格化するのは年度末でございますので、アンケート結果の取りまとめについては、年度明け以降、回答が一定程度集まった時点で行うこととしておりまして、引き続きアンケートを通じた政策効果の検証を行ってまいりたいと存じます。

玉木委員 わからないんですね。

 私、不思議なのは、政策効果の検証もしていなくて、それなのにまた来年度の二十九年度予算では予算を増額しているんです。完了していないからわからないとか言いますけれども、結果がわからないのに何で予算をつけるんですか。

 繰り返します。今年度の補正予算でも、予定した税収が入ってこなくて、二兆円弱の赤字国債を発行する現状なんですよ。そんな中で、子育ての支援に役立つのかどうかわからない。この支援は、前も申し上げました、トイレ、風呂、玄関、台所、この四つのメニューから二つ以上、それぞれつける住宅に支援が出るんです。はっきり言って、高所得者向けの、金持ち優遇の支援になるんですよ、これは。

 伺います。この事業は建設国債発行対象経費ですか。

福田政府参考人 国交大臣から御答弁がありましたとおり、耐震性等にすぐれた住宅ストックの形成に関する支援については、良質な資産の継承に資するものでありまして、従来から公債発行対象経費となっておりまして、それにつけ加えるものでございますから、全体として公債発行対象経費となっております。

玉木委員 財務大臣、総理、今、ちょっと皆さん、冷静に考えてみてください。個人の資産形成を建設国債という借金でやるんです。できた資産、例えば橋や道路はなぜ建設国債の発行対象経費になっているかというと、見合いの資産は将来も含めてみんな使うから、将来にも御負担を求めるような、ある種将来へのツケ回しが合理化されるということなんです。

 これでやって、家ができますね。トイレが二つ、浴室が二つついているような、立派なおうちができます。子ども・子育ての政策効果はよくわからない。でも、これでやった家が建ちますよね、個人資産の形成が。全くこの個人の家を利用することがないような将来世代も含めて負担をするのが、本当にこれは合理的な政策ですか。私はおかしいと思いますよ。ちゃんとした財源があるんだったらやればいい。これは借金してこんなことをやっているんですよ、お金がないのに。

 私、先ほど与党の先生の質問の中でありましたけれども、給付型奨学金の創設は我々も求めてきて、高く評価をしております。しかし、来年度の実施は、七十億の基金を積んで、そのうち十五億円。十五億円、二千八百人を対象に行います。

 一方で、この事業、関連事業も含めて三百三十七億円、しかも借金までしてやるんです。この対象事業だけでも補正で十五億円、十六億円ですから、最低でも同じようにそれはつけているんですよ、しかも借金して。私は、こういうことをやめて、本当に必要な、子育てに直結する、教育の支援に直結するようなところに振り向けるべき、これが本来やるべき子ども・子育て施策だと思うんです。

 与野党を超えて教育財源の確保についてはしっかりと議論していかなければならないと思っていますので、我が党内でも議論しています。自民党の中でも教育財源確保議連ができると聞いていますし、政府においても、例えば私は子供国債というアイデアを提案していますけれども、そうしたことも含めて、子ども・子育ての財源について積極的、建設的に議論をいただきたい、そのことを政府でも検討いただきたいと思いますけれども、安倍総理、最後に伺います。

麻生国務大臣 子供国債というものは、実質的に、よく分析すれば、それは玉木先生、親世代の税負担を逃れて子供の世代に借金をツケ回すということと同じことになりかねませんから、そういった意味では、名前を変えた赤字国債ということにもなりかねぬという点も考えておかないかぬところであります。

玉木委員 もう終わりますけれども、きょうは幾つか建設的な提案をさせていただいたと思っています。

 ですけれども、総理、ちょっと残念だったのは、やはり、ずっと自画自賛と野党批判に明け暮れるのはやめていただきたい。そろそろ国民も安倍政権の次の一手を聞きたがっていると私は思うんです。我々も建設的な提案をしていきたいと思いますので、ぜひ総理にも協力いただくことをお願い申し上げて、質問を終わりたいと思います。

浜田委員長 この際、細野豪志君から関連質疑の申し出があります。玉木君の持ち時間の範囲内でこれを許します。細野豪志君。

細野委員 民進党の細野豪志でございます。

 安倍総理を初め閣僚の皆さん、どうぞよろしくお願いいたします。

 私からは、まず、日本という国家の基本にかかわる、天皇陛下の御譲位の問題についてお伺いしたいというふうに思います。

 総理も施政方針演説の冒頭で、陛下の御公務の負担軽減等についてというふうに言及をされました。我が党も、これは極めて重要な問題ですから、皇位検討委員会を立ち上げまして、そこで専門家と議論をしっかりと行いまして、一定の方向性を出しました。

 この問題を考える際に非常に重要なことは、象徴天皇というのは一体どういう役割を担っておられるのか、担っていただくべきなのか、このことだというふうに思っています。

 議論のきっかけは、言うまでもなく、昨年の八月八日の陛下のお言葉ですね。私が陛下のお言葉の中で非常に感銘を受けましたのは、これから読ませていただく部分です。何よりもまず国民の安寧と幸せを祈ることを大切に考えてきましたが、同時に事に当たっては、時として人々の傍らに立ち、その声に耳を傾け、思いに寄り添うことも大切なことと考えてきましたとおっしゃっているわけです。

 我々が政権を担当しているときに、東日本大震災が起こりました。あのときに、いかに陛下が本当に大変な思いをしながら被災地を回られたか、それを間近で拝見してきた人間として、この言葉には私なりの非常に思うところがございました。

 まず、総理にお伺いをしたい。

 象徴天皇の役割というものを総理はどのようなものだというふうに考えておられるか、このことは御譲位の問題を考えるときに極めて重要なことだというふうに思いますので、お答えをいただきたいというふうに思います。

安倍内閣総理大臣 国会においては、衆参両院の議長、副議長を中心に各党各会派からの意見聴取が行われ、静かな環境で議論が進められているものと承知をしています。

 有識者会議において、日本国憲法における天皇の役割についてさまざまな意見が述べられたと承知をしておりますが、政府としては、衆参両院の議長、副議長のもとでの議論をしっかりと受けとめ、さらに検討を進めていく考えでございますので、現時点で、その中の論点の一つでもございますから、予断を与えるようなことを申し上げることは差し控えたいと思います。

細野委員 議論の結論についてここで総理に断定的に述べていただきたいと言っているわけではないんですね、総理。象徴天皇というのはどういう役割を果たしていただいているのかということについて総理はどうお考えになっているかという、極めて国家の基本的なことについてお伺いをしていますので、お答えをいただきたいと思います。

安倍内閣総理大臣 今申し上げましたように、有識者会議においても、象徴天皇のあり方はどういうあり方であるか、それはやはり、役割をどのように担っていくかという機能としての存在なのか、あるいは存在そのものなのかということが議論の中心的な課題であったことは御承知のとおりなんだろう、このように思う次第でございます。

 それはまさに、退位のあり方等も含めて、そこにかかわってくるわけでございまして、まさにそれを議論している中において、そしてかつ、衆議院議長そして参議院議長、これはまさに静かにやろうということでございますから、やじ等は慎んでいただきたいと思います。(発言する者あり)済みません、重ねて申し上げますが、民進党の皆さん、こういう問題でやじり合うのはお互いにやめようではありませんか。

 まさにこれは、衆議院の議長と参議院の議長と両副議長が入って、そして各党からお話を伺う中において議論を進めていこうということでありますから、私たちはその議論をしっかりとまずは見守りながら、その結論を受けて私たちは法案を取りまとめていくということを考えているところでございます。

細野委員 もう少し具体的にお伺いしたいと思います。

 政府でも有識者会議を開いておられまして、多くの方からヒアリングをされています。その中のヒアリング対象者の一人に八木秀次麗澤大学教授がおられまして、十一月三十日にこういう発言をされています。先ほどの総理の御発言とも重なりますので、紹介をします。

 天皇は我が国の国家元首であり、祭り主として存在することに最大の意義がある。祭り主としての存在が最大の意義だと。八月八日のお言葉は、これは陛下のお言葉ですね、存在よりも機能を重視したもので、皇位の安定を脅かすと。これは、陛下のお言葉を真っ向から否定している、そういう言葉を八木教授が述べておられるわけですね。

 先ほど、機能か存在かという話を総理御自身もされましたが、この八木教授の考え方について総理はどのようにお考えになるか。もちろん、先ほどおっしゃったように、これが法律につながるということでありますけれども、有識者会議もやってこられたわけですから、総理としてどうお考えになっているのか、ここを少しはやはり答えていただきたいというふうに私は思いますので、ぜひお願いします。

安倍内閣総理大臣 これは、殊さら違いを強調する必要もございませんし、エキサイトしながら皆さん議論することでもないんだろうと思いますから、お互いに、静かに、思慮深く議論していくべきだろうと思います。

 八木さんが述べられたのは、憲法に、いわば皇位は世襲によって継承されていくという趣旨のことが書かれています。世襲であるのならばこれはいわば能力主義ではないわけでありまして、そして、その世襲の中において男子の皇嗣が継承していくということになっていくわけでございます。

 その中で八木さんがおっしゃっていたことは、いや、こちらの方の方がふさわしいのではないかということになるかもしれないという議論をされたわけでございます。その中において、いわば皇位が不安定化する可能性ということに言及されたんだろうと思います。

 この議論について、私が今どのように考えるかということについて述べるのは差し控えさせていただきたいと思います。八木さんとは別の考え方でも意見を述べておられました。

 つまり、この問題というのは、過去、長い長い歴史があります。そして、これから先の未来を見据えながら、慎重にしっかりと議論していくことが求められているのではないか、このように思います。

細野委員 八木氏は、退位そのものに反対をしておられる、そういう御意見をお持ちなんですね。

 私が有識者会議でやや違和感を覚えましたのは、御譲位について国民の九割が賛成をしているんですね。であるにもかかわらず、ヒアリング対象者十四人のうち六人が退位そのものに反対をする意見を述べられている。これはいかにもバランスが悪くありませんか、総理。

 もう一つちょっと気になる発言を八木氏はしていまして、ここを総理にお伺いしたいんですが、八木氏はある雑誌でこういうことを答えられているんですね。

 八月八日の陛下の会見、その前の週の夕方、官邸から私のもとに電話が入りました、電話をくれた担当者は安倍総理とも打ち合わせをしたということでしたが、お言葉の概略や背景事情を知ることができました、こうお答えになっているんですね。

 総理、八月八日の会見というのは、我々も本当に姿勢を正して聞きました、どういう御発言があるのか。これを事前に、官邸から電話があって、しかも総理了承のもとで聞いているということになると、これは、八木さんは相当影響力を及ぼしたんじゃないかということになりますよね。

 総理、こういう事実はあったんですか。

安倍内閣総理大臣 八木教授に官邸関係者が説明を行ったということは、私は事実を承知しておりません。

細野委員 ということは、八木氏が事実に反することを言っておられるか、もしくは、官邸から電話をしてきたという担当者が安倍総理に言ったよという虚偽のことを言ったか、どっちかですね。

 これは極めて重要なプロセスの問題ですので、八木秀次氏をこの予算委員会の参考人として、きちっと出てきていただいて御説明いただきたいと思いますので、お取り計らいを、委員長、よろしくお願いいたします。

浜田委員長 理事会で協議します。

細野委員 もう一つ総理にお伺いしたいことがあります。

 天皇陛下を含めた皇室の皆さんの人権をどう考えるかですね。やや唐突な質問に思うかもしれませんが、非常に重要なことですので、総理にお伺いをしたいんです。

 天皇陛下は、憲法上の国民に入りますか、入りませんか。それによって、導き出される方向性というのは大きく変わります。総理はどうお考えになっていますか。

安倍内閣総理大臣 今、天皇陛下の人権について御議論をされようということだろうと思いますが、一般の国民とは異なる一定の制約があるものと理解をしております。

細野委員 つまり、天皇陛下は国民ではないということですか。

安倍内閣総理大臣 例えば、我々は全員パスポートを持っているわけでございますが、天皇陛下は持っておられないわけでございます。

 天皇については、憲法上、第一条において、日本国の象徴であり日本国民統合の象徴であるとされておりまして、第二条において、皇位は世襲のものであるとされているわけでございます。さらに、第四条において、国政に関する権能を有しないとされているわけでありまして、一票を投じられるということももちろんありませんし、そして立候補するということももちろんこれはないわけでございます。

 そういうことにおいて、一般の国民とは異なる一定の制約があるという御存在であるということではないかと思います。

細野委員 これは学説もやや分かれていまして、例えば、いわゆる憲法の非常に重要な基本書の一つを書かれている芦部信喜教授は、天皇陛下は国民であるというふうな学説を立てておられる。一方で、私は大学で佐藤幸治先生から憲法を習いまして、この方も非常に重要な基本的な本を書かれている方ですが、佐藤教授は、陛下は門地によって区別されていると。確かにそうですね。したがって、国民ではないが、一方で、人権については最大限尊重されるべきである、こういう考え方を提示されている。

 今総理がお答えになったように、陛下には、例えば政治的な、立候補する権利であるとか、さらには投票する権利は、これはありません。さらには、皇居にお住まいでありますから、居住移転の自由もないわけですね。陛下の役割を職業と見るかどうかは別ですけれども、違う職業についていただくわけにはもちろんまいりませんので、職業選択の自由もない。

 なぜ、これだけの人権を与えられない存在でありながら、特別な存在として陛下にいていただく必要があるのか。ここが一つ重要なんですが、総理、ここはどうお考えになっていますか。

安倍内閣総理大臣 まさにこれは、日本の国の成り立ちの中において、現憲法において象徴として定められているわけでありまして、そして、その地位は国民の総意によるわけでございます。

 そして、同時に、現行憲法が成立する以前から、長い期間事実上いわば伝統的な象徴として存在してこられたわけでありまして、ひたすら国民の安寧そして国の平和を祈り続けてきたのが天皇の御存在であろう、このように思うわけでございます。

細野委員 そこは、総理と私も見解が一致します。やはり伝統の継承者として非常に重要な役割を担っていただいているので、人権という極めて、本当に国民にすべからく与えられている権利がない状態であっても、そういう役割を担っていただかなければならないわけですね。

 ただ、総理、ここはどうですか。そういう存在でありながらも、やはり、お願いをする我々としては、総意として天皇陛下にこれからも役割を担っていただくということを考えたら、最低限、ほとんど、憲法に書いてある人権は陛下にはないんですよ。その中にあって、例えば思想、良心の自由、さらには、全てというわけにはなかなかいきませんけれども、表現の自由、会見なんかはまさにそういう部分に属するところだというふうに思うんですが、そういったことについては国政に関する機能を有しない範囲において最大限にやはり尊重していかないと、現代において天皇制度そのものも存続し得ないんじゃないかと私は思いますよ。

 八木氏の発言は、八月八日の会見は、これは陛下として発言されるべきではなかったのではないかというようなこともおっしゃっているようでありますけれども、そういう人権問題に対する配慮がなさ過ぎると思います。

 総理、陛下の人権について最大限尊重すべきだ、この考え方についてどう思われますか。

安倍内閣総理大臣 天皇陛下の御存在というのは、今申し上げましたように、特別な御存在である、そして、その中においてさまざまな制約があるのも事実でございます。

 確かに、今、言論の自由ということをおっしゃったわけでございますが、国民統合の象徴という立場を当然天皇陛下もよく理解をしておられます。そして、まさに、天皇になるべくしてずっと教育を受け、よき天皇となる努力をずっと長年重ねられ、そして皇太子から天皇となられたわけでございます。その中で、自己的に抑制すべきところは抑制されながら、象徴としての立ち居振る舞い、言動を見事になさってこられたんだろう、このように思うわけでございます。

細野委員 陛下がそういうふうに、本当にみずからの役割を全うすべく努力してこられた姿を私も拝見してきました。そこは同じです。

 ただ、今、総理の発言を聞いていると、陛下の人権について、できる限り尊重していくという言葉は残念ながら出なかったですね。これは私は残念だと思います。そういった部分についてやはり政治の世界も最大限配慮をして、できる限りそういったところについて、陛下がやっていただけるような環境を整える努力をもっとすべきではないかというふうに感じたということを申し上げたいと思います。

 その上で、具体的な話に入りたいと思います。

 有識者会議の論点整理が先日出ました。結論は保留をされているんですけれども、実際には、意見の羅列をしている数を見ると、恒久化、すなわち皇室典範の改正については非常に消極的な姿勢がかいま見えます。

 例えば、恒久化、すなわち、今上陛下だけではなくて、これからも陛下に御譲位可能な制度をつくるということに関しては、積極的な意見を書いたものは十、課題、すなわち否定的な意見としては二十三あるんですね。一方で、今上陛下に限ったものとする場合ということについては、こちらは積極的な意見が四で課題が三ということですから、この数を見ると、およそ大体どういう方向だったのかというのがかいま見えるわけですね。

 そこで、やや、やはりこれは見過ごせないなと思いましたのは、有識者会議の御厨座長代理は、昨年十二月のインタビューでこういうことをおっしゃっているわけですね。会議発足の前後で政府から特別法でという方針は出ていた、基本的にはその方向で議論を進めるのだと個人的には思っていた、こう発言されているわけですね。

 総理がおつくりになった有識者会議ですので、ここだけは申し上げておきたいですけれども、天皇の地位は国民の総意に基づくとされています。そして、それを決めるのは全国民を代表する国会ですね。これは四十三条。何の権限もない有識者会議をつくって、そこで勝手に方向性を出すということであれば、この基本的な憲法のあり方そのものにも大きく反しますよ。

 改めて確認をしますが、総理、有識者会議というのは参考意見であって、国会でしっかりと物を決めていくということでよろしいですね。

安倍内閣総理大臣 有識者会議の意味は、この有識者会議、天皇の皇位継承も含め、公務負担の軽減等について御議論いただくにふさわしい方々にお集まりをいただき、かつ、さまざまな方々にお越しをいただいてお話をいただいたわけでございます。

 それについて細野委員から御批判もございましたが、しかし、この問題について長い間研究をし、考え抜いてこられた方々を集めているわけでございまして、それが世論調査の結果とは必ずしも異なる場合もあるわけでございますが、そこでの議論は、傾聴に値する議論は多々あったのは事実でございます。そういう傾聴に値する議論の中からいわば論点が導き出され、その中で論点整理をしたわけでございます。

 つまり、この論点整理について、これを国民的にも、国民の皆様にも参考にしていただき、そして理解が深まっていくものと思うわけでございます。

 つまり、先ほど申し上げましたように、日本の長い歴史に目を向ける、つまり、長い歴史の中で、例えば天皇の継承の中でどういうことがあったのか、そして、今後あり得る普遍的な課題もあるわけでございますから、そういう課題はどういう課題があるのかということをやはり考え抜いていく必要があるわけでございまして、我々、世論調査結果が出て、そのとおりにするというのであれば至極簡単でございますが、しかし、そうではなくて、これからの皇族そして皇室、そして日本のあり方も十分に視野に入れながら思慮に思慮を重ねていく必要もあるわけでございますから、そういう思慮を重ねてきた方々の御意見も参考にするということは当然私は必要となる、こう思っております。

 そこで、この論点整理したものを衆参両院議長にお渡しさせていただきまして、これを参考にしていただきたいということを申し上げているわけでございまして、これはまさに参考ということでございます。

細野委員 参考意見だという話がありましたので、ここからまさに国会でしっかり議論をしていきたいというふうに思いますね。

 この御譲位を特別法にするのか、皇室典範にするのかというのは極めて重要です。

 そこで、改めてちょっと私の方で申し上げたいのは、固有の事情があるから特別法だという議論があるんですが、私は、そこは違うということは明確に共通認識にする必要があるだろうというふうに思うんですね。

 陛下のお言葉を聞いていますと、御自身が疲れたからおやめになりたいとおっしゃっているわけではないんですね。ここは誤解してはいかぬ。そうではなくて、御高齢になると、象徴天皇としてさまざまな機能、行為をすることができなくなるので、その前に譲位をしたいというふうにおっしゃっているわけです。

 もちろん、陛下の言葉があったから即そのままにしろとは言いませんよ。それは、国政に関する機能を有しないということについてしっかり認識する必要があると思います。

 しかし、天皇制度のあり方そのものというのは、これは、天皇というのは特別な地位であると同時に、まさに陛下御自身の人格そのものでもあるし、御家族の問題でもあるわけですね。そのことを考えると、やはり陛下がずっとこうやって天皇の形をつくってこられたことについてはしっかりそんたくをして、その上で何ができるのか。すなわち、特別な事情で特別法でやるということではなくて、恒久的な制度として皇室典範を改正すべきだという結論を私は出すべきだというふうに思います。

 私どもは批判するだけで終わりたくないと思っていまして、こういう要件を立てました。皇嗣が成年になっていること。それがないと天皇制度が続いていきませんので、なかなか。さらには、天皇の御意思があること。そして、皇室会議の議を要件に、高齢譲位を可能にする制度を皇室典範で導入すべきだというふうに私どもは考えております。

 残念ながら総理はこのことについて答弁の中ではお答えにならないと思いますが、我々の考え方としては、しっかりと御認識をいただきたいと思います。

 この点に関して最後にお伺いしたいのが、憲法の問題なんですね。

 憲法二条には皇室典範が法律名として書かれて、皇位継承に関する条文になっている。有識者会議のヒアリング対象の中に大石真教授がいらっしゃる。京都大学の先生で、私も存じ上げています。この大石教授がこうおっしゃっているんですね。憲法二条で皇室典範という単一の名称まで特定した趣旨に合致しないおそれがある、特別法でやると。

 ちなみに、総理、大石教授というのは御存じですか。御存じですね。この方は京都大学の教授をやっておられたんですが、実は、京都大学の憲法学の中でいうとやや保守派に属する方というふうに一般に理解されています。すなわち、憲法改正についても柔軟な考え方を持っておられるし、また、一昨年問題になりました集団的自衛権の憲法解釈の変更についても理解を示された。

 こういう保守派と言われる憲法学者の中で、憲法違反の疑いについて、慎重な物言いではありますけれども、言われているということについてはどう思うかということなんですね。

 総理、ここはしっかりお答えをいただきたいんですが、私が今懸念をしていますのは、いわゆる保守派と言われる方々の中から陛下の人権をないがしろにするような発言が出てきていることが非常に気になる。さらには、憲法上の地位が危うくなるわけですね、仮に憲法違反ということになれば、特別法でやってしまって。そういったことになる可能性が少なくともある。このことが、むしろ皇位の継承なり天皇制度というのを危うくしませんか。少なくとも憲法違反の疑いだけは完全に払拭しておかないといかぬと皇位の継承の観点から私は強く思いますが、総理はどうお考えになりますか。

安倍内閣総理大臣 まず、この国会の議論の場において天皇陛下のお言葉を引用することについては非常に慎重でなければならないと思いまして、それはまさに玉座を胸壁となすことにつながっていくわけであります。つまり、我々はかつてそういう経験をしているわけでございますから、陛下のお言葉を立法のときに、この言葉があったからどうかということについては我々は非常に慎重でなければならない、こう思っているわけでございます。

 そこで、今、特別法でやるのか、あるいはまた典範そのものでいくのかということでありますが、特別法でいくことについて、我々はそこまでは全くこれは決めていないことでありますが、それが果たして憲法との関係がどうなのかということについては、法制局長官から答弁をさせたいと思います。

細野委員 法制局長官の答弁は聞きました、秋の臨時国会で、予算委員会で。ですから、もうそれは結構です、同じ答弁でしょうから。ですから、法制局長官の答弁は、特別法でやっても憲法違反ではないという答弁ですね、確かに。

 しかし、保守派の憲法学者の中にも憲法違反の疑義について言う、そういう意見が出てきている中でやり切ることが本当にいいんですかということを聞いているんです。これは極めて重要です。

 総理、もう一度お答えいただきたいと思います。

安倍内閣総理大臣 大石先生は、安倍政権においてもいろいろと御助言をいただいておりますから、よく承知をしておりますが、しかし、憲法との関係においては、純粋に、行政府としての解釈はかつて法制局長官がもう答弁をしているとおりでございまして、これが政府の立場でございます。

細野委員 総理、それは余りに都合がよ過ぎると思いますよ。だって、集団的自衛権については大石先生の意見を聞いておいて、この問題については大石先生の学説は違います、そういう話ですか。

 少なくとも、集団的自衛権も重要ですよ、憲法解釈を変える変えないは大変重要だったけれども、国家の基本ということに関して言うと、こちらの方がさらに重要ですよね。一点の曇りもなく憲法上しっかり問題ない存在として皇位を継承していただくということでなければ、まさに後世に禍根を残すじゃないですか。それは当たり前でしょう。

安倍内閣総理大臣 今私が言ったことを誤解しないでいただきたいんですが、集団的自衛権の行使変更のときは、そのときも、当然でございますが、法制局の見解というのは安倍政権の見解、安倍政権の見解はまさに法制局の見解でもある、これは一体でございますから。

 今回も一体でございますが、これは皇室典範を変えないということを申し上げているのでは全くないわけでありまして、特別法でやる場合の憲法との関係においての政府としての解釈を申し上げたわけでございまして、今度どのようにこの法制を考えていくかということは、これは立法技術的なこともかなり含まれるわけであります。それについては、まさにそれはこれから考えていくわけでありまして、まさに両院の議長、副議長の間で、各党からお話を聞いて意見を取りまとめていかれるわけでありますから、その前にここで私がどちらでいくということを申し上げることは差し控えさせていただきたいと思っております。

 事実、これは本当に我々は決めておりませんから。それは事実でございます。

細野委員 立法技術上の問題は私も理解します。

 今総理は、皇室典範の改正をしないとは言っていないとおっしゃいましたね。すなわち、皇室典範の改正も含めて幅広に議論して、必要があれば改正するという理解でよろしいんですね。答弁ください。

安倍内閣総理大臣 それは当然、必要であれば改正をするわけであります。

細野委員 わかりました。

 もう一点だけ、この点について聞きたいと思います。

 御譲位が可能となる制度になった場合は、その後どう皇統を守っていくかということが重要になるわけですね。今、一部聞こえてくるところですと、秋篠宮殿下が皇太子に言うならば該当する、そういう地位につかれるということであります。そうしますと、その次のお子さんは悠仁親王でありますから、そこに皇位が継承されていくと考えるのが国民的には自然だし、今の制度ということになるわけですね。

 ただ、男子の親王、皇族ということでいうと、お若い皇族は悠仁親王しかおられないわけですね。そうしますと、悠仁親王に男のお子さんが生まれなかった場合については、現状においては皇位が断絶をされてしまう。この問題について、やはりそろそろちょっと考えていかなければならない時期に来ているのではないかと思いますが、総理、いかがお考えですか。

安倍内閣総理大臣 安定的な皇位の継承を維持することは、国家の基本にかかわる極めて重要な問題であると考えています。

 この問題については、慎重かつ丁寧に対応する必要があると認識をしており、男系継承が古来例外なく維持されてきたことの重みなどを踏まえつつ、今回の公務の負担軽減等の議論とは切り離して、安定的な皇位継承の維持について引き続き検討してまいりたいと思います。

細野委員 私もこの問題にすぐに結論が出るとは思っていません。しかし、逆に言うと、こういう議論が行われるときでないと、こうした議論も正直言うとなかなかやりにくい面があるので、あえてさせていただいているんですね。

 そこで、総理、かつて総理はこういう発言をされていますね。男系を維持するために、希望する旧宮家の皇籍復帰もしくは養子、このやり方を総理御自身が発表されていますが、こういう考えを今でも持っておられるんですか。

安倍内閣総理大臣 これは総理大臣に就任する前の話でありますが、一つの選択肢としてそれはあり得るのではないか、こう考えていたわけでございます。

 と同時に、これは制度として考えることと、非常に個別具体的に考えていくことにもつながっていくわけでございまして、それぞれ対象者の方々がいわば宮家におられるわけでございます、女王の方々がおられるわけでございまして、そういう方々、まさにその方々の未来が決まっていくということにもつながっていくわけでございます。

 ですから、これは制度として考えていくことではあるわけでございますが、その制度をつくっても、これは全く絵に描いた餅にならないようにしなければいけないわけでございますし、そもそも、私が今申し上げたことについても、では果たしてその対象者がどこも希望というか、全てから拒否されるということもこれはあり得るわけでございます。

 いずれにいたしましても、安定的な皇位継承につきましては、今私の考え方を述べることは差し控えさせていただきたいと思います。これも含めて御議論を今後いただければ、また検討していきたい、このように考えているところでございます。

細野委員 正直言って今の総理の答弁は、私は聞いてちょっとびっくりしましたね。一つの選択肢ですか。

 すなわち、皇太子殿下、秋篠宮殿下、この宮家の御家族については、我々も非常によく拝見をしておりますし、大変親しみを持っています。ほかにも幾つか宮家がありますから、大事な役割を担っていただいていますが、国民的にいうと、やはりこのお二人の御家族ということになると思うんですね。

 今、総理が一つの選択肢とおっしゃった。それ以外の宮家の復活、戦前の宮家の復活や、また、そういう御家系で、男系だということだけを理由に養子に迎える、そんなことをやった瞬間に国民の気持ちは天皇家から急激に離れると思いますよ。国民が親しみを持たない方に陛下になっていただいて、今、この現代において天皇制度はもちますか。

 きょうはこれ以上議論しても総理から答えは出てこないようですから、一言だけ最後に申し上げますが、私も、女性天皇、女系天皇をどうするかということについては、簡単に結論を出せないと思っています。

 しかし、少なくとも、皇族の活動というのをしっかりとお支えし、そして、さまざまな可能性やリスクに備える意味では、女性宮家だけはできるだけ早くつくっておいた方がいい。そして、その時期は、秋篠宮殿下の二人のお嬢さんはもう二十代半ばになられているわけですね。愛子様だって、そんなに時間がかからずにそういう年齢に差しかかってくる。そういうことを考えれば、それほど時間がなくなっているということだけはぜひ御認識をいただいて、この議論も並行してぜひやっていただきたい、やっていきたいということを申し上げておきたいというふうに思います。

 では、次の議題に移っていきたいと思います。

 総理の施政方針演説を聞かせていただきまして、その後も改めて読ませていただきました。

 その中で私が一番印象に残ったのは、これからお読みをする部分なんですね。どんなに貧しい家庭で育っても、夢をかなえることができる、そのためには、誰もが希望すれば、高校にも、専修学校にも、大学にも進学できる環境を整えなければなりません。

 こういうことは、これまで歴代総理は言ってこなかった。すばらしい、踏み込んだ発言だ、この点については心からそう思います。

 我々も、十二月十三日に民進党の経済政策をまとめておりまして、こういう、人にしっかり投資をすることが日本経済をよくするものなんだという観点から、教育の無償化についても相当踏み込んだ提案をしました。

 しかし、総理、お配りした資料をちょっとごらんいただけますか。誰もが大学にも進学できる、専修学校にも進学できる環境には残念ながらなっていないと私は考えています。これをごらんいただきたいんです。

 それぞれの御家庭が大学、専修学校に進学しているかどうかの割合を示したものです。全世帯でいいますと、七三%の子供が進学をしているわけですね。しかし、生活保護家庭に限定をするならば三三%、そして児童養護施設に住んでいる子供、家庭的養護が必要な子供ということに関して言うならば二三・三%にすぎない。

 総理、まず端的にお伺いしますが、生活保護家庭においては三〇%、三割、児童養護施設においては二割しか大学もしくは専門学校、専修学校に進学できていないという現状は、総理が施政方針演説で言われたこの目標を満たしているというふうにお考えになりますか。

安倍内閣総理大臣 まさに、まだ残念ながらそういう状況になっていないからこそ、私は、そういう社会をつくっていきたい、このように申し上げたわけでございます。

細野委員 一つ、今回、給付型奨学金を導入されたというのは高く評価したいと思います。

 特に、その中で児童養護施設について、六百人の子供について、二万円から四万円という金額は正直十分ではありません。十分ではありませんが、給付型の奨学金が導入されることになった。

 私は幾つかの児童養護施設の応援をしてきた経験がありまして、そういう子供たちと接すると感じるんですよ。やはり彼らに一番足りないのは、将来、頑張れば自分の希望する仕事につけるかもしれないとか勉強できるかもしれないという希望がないんですよね。ですから、ある施設では、例えば先輩が大学に行って教免を取って教師になった、そうなってくると、その下の子供たちも頑張って勉強しようと思うようになるんですよ。

 児童養護施設、そういう社会的養護が必要な子供というのは四万人います。さきの国会で、そういう子供を里親なんかでサポートしていこうという法案が通ったことは、私はよかったと思う。四万人いるんですよ。六百人というこの数字は、そういう意味では本当に一部にすぎない、希望を与えられるのは。

 ですから、そこはまず総理に、しっかりと児童養護施設の子供についてはこれからも進学の可能性の道を開いていくということについて、前向きな御答弁をもう一度いただきたいと思うんですが、いかがでしょうか。総理にお願いします。

安倍内閣総理大臣 給付型もありますが、無利子の奨学金については成績要件を外させていただいているわけでございますし、また、養護施設の子供たちについては、文科省の予算とは別に厚労省予算から、五万円でしたか、この給付、これは貸し付けでございますが、五年間継続的に仕事を続けられれば返還の義務がなくなるというものも行っているわけでございまして、これは本年度も行いますし、併給することも可能ということでございますが、今後も我々、さらに財源を確保しつつ拡充していきたいと考えています。

細野委員 私も、貸付制度はいい制度だと思いますね。しっかり仕事についたら返さなくていいよという制度が導入された。

 ですから、我々のときも努力したんですけれども、安倍政権になってさらに児童養護施設の問題について取り組んでいることは評価しています。それをぜひこれからも前に進めてもらいたい。

 しかし一方で、総理、生活保護の家庭についてもぜひ考えていただきたいんですよ。

 総理、御存じですか。生活保護の家庭というのは、現状においては大学や専門学校に入ることを認められていないんですよ。

 先日、貧しい家庭の勉強の支援をしている団体に行ってきまして、改めて話を聞いてきました。みんな元気に勉強していましたけれども、生活保護の家庭もあれば、そうでない家庭もありますよ。さまざまな家庭の子供が来ているんだけれども、元気で勉強していたけれども、実際の現実は非常に厳しい。

 そこで、ボランティアをしているある学生と出会いました。その学生の名前は島田了輔君といいます。きょう、たまたま時間がありましたので、昼飯も御一緒して、実はこの委員会も傍聴しているんですが、彼は高知の生活保護家庭で育った。その中で、周りからは非常に、簡単にはそんな大学に行くことはできないよとか、生活保護家庭で本当にできるのかという声がある中で、自力で勉強して、食うものにも困るような生活をしていたそうでありますけれども、高校の修学旅行も行けなかった。自力で勉強して東大に入った。今、教養学部から理学部に転部して、数学者になりたいと。極めて優秀です。

 しかし、聞くと、物すごい反骨精神ですよ。あんな子はいないというぐらいの反骨精神。周りから何と言われようが自分はやるんだといって勉強して、大学受験もやり切った。今も生活している。こういう子供ばかりじゃないですよね。

 ある子供と、高校の二年生の子供ともしゃべりましたけれども、彼は国立の医学部に行きたいといってやっている。しかし、生活保護家庭では大学に行けないんです。世帯分離といって、生活保護家庭から分かれて一つの別の世帯をつくらない限り、大学に行けないんですよ。

 総理、そこだけちょっと聞いてもらえますか。例えば、大学の受験をする場合に受験料がかかりますよね。例えば、高知から東京に来て受験をしようと思ったら、ホテル代や何やかんやでやはり十万ぐらいかかっちゃうわけですよ。そのお金を生活保護費からため込んだら、貯金があるということで、生活保護費を減らされるんですよ。

 この現状は、総理、どうですか。どんな貧しい家庭に生まれようが、誰でも大学や専門学校に、就職ができるという環境になっていますか。総理にお伺いしたいと思います。総理にお願いします。

塩崎国務大臣 制度のお話でございますので、まず私の方から答弁したいと思います。

 もちろん、意欲と能力とをあわせ持った若い人たちが経済的な理由によって進学ができないというようなことはあってはならないというふうに考えておりまして、高等教育についても、家庭の経済状況にかかわらずに、必要とする全ての子供が機会を与えられるようにすることが我々にとって重要であり、また総理が施政方針演説で申し上げたとおりであります。

 そこで、まず、生活保護の場合の世帯分離の話が今ありましたが、これはすぐれて制度として税金の使い方を、どういうふうにして助け合っていくのか、こういう中で、高等学校につきましては、ほとんど全ての子供さんが進学をしているわけでありますので、これは八割ぐらいの子供さんが高校に行くようになった段階でもう既に、全て生活保護費の中でも高校に行けるようにしたということでございます。

 きょうお配りをいただきましたが、大学への進学率につきますと、一般世帯の大学、短大への進学率が今約半分、五一・八%、そして今、専修学校を入れると七三・二という数字であります。そこにとどまっているわけで、現段階の扱いとしては、夜間や通信を除いて、生活保護費を受給しながら昼間の大学に就学する仕組みとはなっていないわけであります。

 しかし、意欲と能力のある子供さんにはぜひということで、子供が生活保護受給世帯と一緒に暮らしていても、運用上、その子供を生活保護の世帯から形式的に分離するという扱いになって、大学に進学はできるというふうになっているところでございます。

 生活保護費で何をカバーするのかということが大事な議論の別れ道でありまして、その子供たちの教育をどう支援するかということにかかわる問題でありますので、今回の給付型奨学金などのさまざまな施策も組み合わせていきたいと思いますし、これまで幾つか生活保護費について、例えば、安倍内閣になって、二十六年度から大学などの入学金にアルバイトで得たお金はカウントする、あるいは学習塾の費用に充てるということも、アルバイトについて二十七年の十月から認めるようになりました。

 それから、奨学金についても……(細野委員「ちょっと大臣、時間がないので。それは聞いていませんから」と呼ぶ)

浜田委員長 大臣、手短に願います。

塩崎国務大臣 大学の入学金に充てる場合は、減額をしないで保護費を支払っていく中で行けるようにするというような努力もして、可能性を開いているわけでございます。

細野委員 総理、今聞いていただきましたか。高校までは行けるんです、生活保護世帯でも。しかし、大学は行けないんです。

 こういう言葉があるんですね、稼働に資する。すなわち、稼げる人は稼がせるというのが生活保護の考え方なんですよ。だから受験料すら出さないんです。子供たちはどう考えるかというと、世帯分離をすると親は一人分の生活保護費をもらえなくなりますから六万円ぐらい減るんですね、親が食べられなくなるかもしれないといって諦めている子供は多いですよ。これは、総理、あそこまでおっしゃったのなら、変えませんか。

 時間がないので、もう一つだけ紹介したいと思うんです。

 これは横須賀市のデータなんですが、それぞれの家庭で経済的な状態がどうなったかを、総理、二枚目をごらんください。中学卒業の場合、その世帯が経済的に自立をして生活保護を廃止している割合はわずか四一%。定時制高校に通った場合は五七%。全日制高校もしくは大学、専門学校まで行っている場合は七七%の世帯が自立をしているんです。

 これはどういうことかというと、より高い学歴、専門学校も含めてですよ、そうなると、専門的な仕事につけるから家計が自立するんですよ。そして、子供だけではなく親も、子供が頑張っている姿を見ると自立しようとするんです。

 ですから、大学の四年間とか専門学校の数年間というのは、確かにその間は六万円だけ余分に生活保護費はかかるかもしれないけれども、長い目で見たときは、必ず彼らが自立をしてくれる、そしてやがては納税者になってくれる。ここを惜しんでいるんですよ、総理。

 ここは制度的に明らかに不備があります。総理、これを変えようというふうにお思いになりませんか。お答えいただきたいと思います。

安倍内閣総理大臣 生活保護を受けている家庭の子供は大学に行っちゃいけないとか、そういうことでは全くないわけでありますから。何となく、ちょっと誤解を受けられる方がおられるのではないかと思いますので……(細野委員「いや、世帯としては行けないんです」と呼ぶ)それは私はそういう意図で言っておられないと思いますけれども、聞いた方で勘違いされる方がおられるといけないのであえて言わせていただきましたが、これは、行ってはいけないということでは全くないわけでありまして、生活保護世帯の方が行かれた場合、その本人分が生活保護の中から引き落とされるということになるわけでございます。

 同時に、細野委員が言われた問題意識については、これは私も共有しているところでございます。しかし、今までずっと、長年これは、ここまで残念ながらそれを全部カバーするということには来ていないわけでありますが、先ほど塩崎大臣の方からもお答えをさせていただきましたように、アルバイトをして得たお金を大学等の入学金に充てる場合、あるいは学習塾の費用とする場合を世帯の収入として認定しないということを、これは安倍内閣でやったわけでございます。

 もちろん、いろいろな議論があることは細野委員も御承知だと思います。十八歳から実際に仕事に行くお子さんも、生活保護世帯の中から実際に仕事に行くということを選ばれる人も、しかしそれは希望して大学に行きたいけれども行けなかった方もおられると思いますが、そういう中において、その公平性についてはどうかということの議論も存在するのは事実でございます。

 それと同時に、これはやはりしっかりと財源を確保していくということも大切でございまして、財源の確保ということも大きな課題であります。それがありますから、これはなかなかどの内閣においても、これはみんなこういうことをできればやりたいと大体考えているわけでありますが、いわば我々としては、しかし一歩一歩前進はしているということは申し上げさせていただきたいと思います。

細野委員 総理、最後に申し上げますが、正確に申し上げますね。生活保護世帯としては、そこの子供、生活保護世帯そのものの子供としては大学にも専門学校にも行けないんです。世帯を分離して別家計にしないと行けないんです。

 私は、先進国として恥ずかしいことだと思いますよ。一九七〇年に高校までは行けるようになったんですよ。それから四十数年たって、貧しい家庭の子供の大学や専門学校に行くという希望すらこの国は実現できないんですか。総理が、どんな貧しい家庭で育っても進学できるとおっしゃった言葉は、今の御答弁なら絵に描いた餅だと思いますね。中身が伴っていない。

 今総理がやや前向きな御答弁をされようとしたというふうに理解をしますので、しっかり検討してください。こういう議論において政策が変わるということが私は国会という場所の役割だと思いますから、しっかりそのことをやっていただきたいということを最後に申し上げて、私の質問を終わります。

 どうもありがとうございました。

浜田委員長 この際、前原誠司君から関連質疑の申し出があります。玉木君の持ち時間の範囲内でこれを許します。前原誠司君。

前原委員 民進党の前原です。

 総理に伺いますが、施政方針演説の中で、格差を示す指標である相対的貧困率が足元で減少しています、特に子供の相対的貧困率が二%減少し、七・九%、十五年前の調査開始以来一貫して増加をしていましたが、安倍内閣のもと、初めて減少に転じましたと述べておられます。

 まずお伺いしますが、こういうことを施政方針演説に御自身の実績として書かれるということは、相対的貧困率を下げることは大切である、政策目的としては重要である、こういう認識を持っておられるということでよろしいでしょうか。

安倍内閣総理大臣 相対的貧困率については、この委員会でも何回か議論になったことがございました。

 その際に、いわば日本の傾向あるいは先進国の傾向として、相対的貧困率がどんどん伸びていっているのではないかということを前提に、前の岡田党首と議論したことがございます。

 そのときに、安倍政権がやっている政策を前に進めていっても、それはむしろこの差は拡大していくのではないかという議論があったわけでございまして、私が言わんとするところはそうではなくて、この相対的貧困率についてもこのように改善が今回見られたということを申し上げたわけでございます。つまり、当然それは、傾向としては、相対的貧困率がいわば政策の結果の全てではもちろんございませんが、指標の一つとしてはしっかりと見ていきたい、このように思っております。

    〔委員長退席、菅原委員長代理着席〕

前原委員 大事な点なので確認をさせていただきますが、相対的貧困率は低い方がいい、下げることをしっかりと政策の目標にすべきだというふうにお考えですか。

安倍内閣総理大臣 この相対的貧困率については、まさに中位の半分以下がどれぐらいになっているかという比較でございますから、絶対値ではないわけであるということは申し上げておきたいと思いますが、その中で、その年々の絶対値ではなくて傾向がやはり大切であろう、こう思うわけでございますから、傾向としては、いわばこれは上がっていくということは社会の安定性から見てふさわしくない、このように思っているわけでございます。

前原委員 全国の皆さん方は御存じないかもしれませんが、相対的貧困率と言われるものが実は二つございまして、総理が今回おっしゃったのは、下の方の、全国消費実態調査と言われるものなんですね。上が、これは筆頭理事をされている長妻さんが厚生労働大臣のときにこれを入れようということで導入した、こういうものでございますけれども、OECDはこちらを採用しているわけなんですね。

 そして、総理が使われた全国消費実態調査においては、確かに二ポイント下がっているんです。しかし、国民生活基礎調査というものについては、これは三年に一度ですから、ことしの夏が発表時期なんですね。いや、下がっているかもしれませんよ、いわゆる国民生活基礎調査も下がっているかもしれないですけれども、この二つを今、厚生労働省、総務省が使っているということの中で、一つをもって下がったんだ、下がったんだということを言われるのは、少し私は、余りにも早計ではないか、踏み込んで言うと、謙虚さが足りないのではないかという気がするんですが、いかがでしょうか。

安倍内閣総理大臣 現在は、この二つの調査ともOECDで認定をしていただいているわけでございます。当初は前原委員がおっしゃったとおりでありますが、今は二つともでございます。

 そこで、まずは二つを見てから考えるべきではないかということでございますが、やはりグッドニュースについては早く国民にお伝えをしようということでございまして、謙虚さが足りないというお叱りは謙虚に承りたい、このように思います。

前原委員 私が申し上げたのは、これは総理は百も御承知だと思いますけれども、この下の全国消費実態調査というのは、一般の調査員が、あなたの所得とそれから消費はどうですかということを調べるわけです。そうすると、言ってみれば、所得が少ない人は恥ずかしいから言わないとか多目に言うとか、こういうような傾向にある。これは総務省の担当者がおっしゃっていました。

 それに対して、この上の国民生活基礎調査というのは、福祉事務所の人間が行って、そしていわゆる生活の実態調査というものを行うということでありまして、だから高目に出ているわけですね。しかも、下の方は単身の学生は入っていないんです。上は単身の学生が入っているんですね。

 そういうようなことを考えれば、やはり、真摯に、謙虚であるべきだということを受けとめますということをおっしゃっていただいたので、これ以上は申し上げませんが、二つのものをしっかりと捉まえながらやるということが大事で、一つだけで判断するというのは早計ではないかということを私はまず申し上げたいと思います。

 ただ、先ほど、この相対的貧困率というものをやはり傾向として下げることが大事なんだとおっしゃったことは、大いに評価をさせていただきたいというふうに思います。

 ここから本格的な議論をしたいというふうに思いますが、総理、二枚目の資料をごらんいただけますか。

 これは、いわゆるOECDが発表したもので、二〇一〇年です。二〇一〇年ですので、これは民主党政権のときですので、今から申し上げることについては、今の政権がどうのこうのということではなくて、今までの、自民党政権、民主党政権も含めた傾向として言えることでありますので、その点は、批判をするということではないということはまず前提で申し上げておきたいと思うんです。

 OECDは何を見ているかといいますと、左の二列は、少なくとも一人が就業する世帯で暮らす貧困率というものが書かれているわけですね。それで、左側が、税と社会移転を考慮に入れない、つまりは、再分配をする前の貧困率というものが書かれている。真ん中の列は、では、その少なくとも一人が就業する世帯で、税と社会移転を考慮に入れた、つまりは、再分配政策を行った後にどれだけ改善したかというものが書かれているのが真ん中であるわけであります。もちろん、再分配政策をするので、日本だって一三・五から一二・九に改善をされているわけなんですけれども、この改善度合いというのが少ないんですね。

 つまりは、再分配政策というものを行っても日本はそれほど相対的貧困率が改善されていないということについて言うと、再分配政策の中身を見直した方がいいのではないかと私は思うんですが、総理はどのようにお考えですか。

塩崎国務大臣 いささかテクニカルなことも入っておりますのであれですけれども、この数字だけで全てを判断するというのは、必ずしも正確に実態を捉えることにならないと思います。

 特に、歴史的に見ますと、日本は失業率が非常に低いわけでありまして、雇用を広く確保して、再分配前の所得格差が比較的低くて、社会保障は高齢期の保障を中心とした経済社会システムが日本の場合には形成されてきたということでありまして、社会保障給付の中で高齢者向けの給付の割合が高くて、現役世代の再分配による改善度が他国に比べて今御指摘のように小さいというのは、このような理由。

 近年、雇用システムの変化によって稼働年齢層における格差の拡大傾向が指摘をされている。ですからこそ、働き方改革で、同一労働同一賃金で非正規の報酬を上げよう。そのことによって、こういった、今お示しをいただいたような、例えば、二人働いていても低くなっているというのはそういうところにもあるのかもわからないということでありますので、そしてまた、一人当たりのGDPを見ていただければ、先ほどお配りいただいたものでもいろいろな形がありますので、貧困問題はさまざまな指標を同時に見ていくことが大事だということだというふうに思います。

前原委員 今、長妻筆頭がおっしゃっていただいたように、これは二〇一〇年の統計ですから、民主党政権のときの統計ですし、トレンドとしてどう考えるかということなので、今の政権を私は責めているわけじゃないんです。つまりは、再分配政策をどう見直していくかということを私はこれから議論していきたいというふうに思っていますので、ちょっと弁解がましい答弁は控えていただいて、前向きにどうしたらいいか。

 今、塩崎大臣がおっしゃったように、これだけで全てを考えていいとは私も思っていないんですよ。ただ、これが一つの傾向をあらわしているのは間違いないんです。

 後でまた資料をお見せしますが、まずちょっとこれを見ていただきますと、例えば、さっき失業率をおっしゃっておりましたけれども、ドイツなんかは非常に失業率の低いところですけれども、ドイツは再分配政策前の八・一から三・三に改善しているんですね。デンマークは九・八から四・〇に改善している。そして、イギリスは一一・六から四・三に改善していて、フランスは一八・〇から六・七に改善している。再分配政策を行うことによって貧困率が改善をしているということで、やはり再分配政策の中身というものを、一つの指標ではありますけれども、私は見直した方がいいというふうに思うんです。

 三番目のパネルを見ていただきたいんですが、総理、三枚目の資料をごらんいただけますか。

 これはまさに、先ほど塩崎大臣が御答弁をされたことなんですね。これは何が書いてあるかといいますと、緑は当初所得のジニ係数。ジニ係数というのは、ゼロから一までで、ゼロに近いほど格差がない、高いほど格差が拡大している、そういうグラフなんですけれども、再分配政策をして緑が赤に変わるということを年齢別に書いてあるわけですけれども、これを見ていただくと、圧倒的に六十歳以上からジニ係数が改善されていくわけです。

 これは、これも先ほど塩崎大臣が御答弁されたように、一番大きいのは年金ですよ。賦課方式ですから、現役世代の保険料も含めて、高齢者、年金生活者に対していわゆる所得が移転される、年金制度において。そのことによって言ってみればジニ係数が改善されていくというのがおわかりをいただけるというふうに思うわけですね。

 そして、四枚目をごらんいただきたいと思いますが、これは、OECDの国々の中で、どれだけ再分配政策の中で現役世代向けの給付と高齢者向け給付の割合の差があるかということを示したものなんです。これを見ていただくと、日本は圧倒的に高齢者向け給付の割合が高い、それに対して現役世代向けの給付の割合が低いんです。OECDの三十三カ国の中でいうと、トルコに次いで低いんです。

 これも、先ほどお話ししたように、いわゆる高齢者が多い高齢者先進国ですから、年金制度は賦課方式であるということですから、高齢者向けの給付がある意味高いというのは当たり前の面があるわけでありますが、それにしても現役世代向けの給付が余りにも少な過ぎるのではないかというふうに私は見ているわけです。

 これは総理、どう思われますか。これは全体の話ですから総理がお答えください。

    〔菅原委員長代理退席、委員長着席〕

安倍内閣総理大臣 確かに、我々の社会保障制度の設計自体が、年金制度、今賦課方式と言われました。そして、これは全体額でございますよね。全体額については、特に、高齢者がその中でふえてきている中において、また、医療費に対する補助、高額療養費の仕組み自体等も含めまして大変高齢者に手厚くなっている結果であろう、このように思います。

前原委員 私がお尋ねしたのは、高齢者に対して厚いというのは、それはそのとおりだと思いますし、私はこれを減らせと言っているわけじゃないんです。むしろ、後で申し上げるように、例えば、この間、年金カット法案、そんな法案はないというようなやじが与党から飛んでいましたけれども、我々もやはり、あれは対案をちゃんと示さなきゃいけなかったと思うんですね。例えば、基礎年金部分についてはマクロ経済スライドから外すということの中で、例えば基礎年金については減らないような仕組みをつくるとか、最低保障機能を強化するとか。そうすると、さらにまた新たな財源が必要になるわけですよ。

 したがって、私は高齢者向けの給付を減らせということを申し上げているのではなくて、むしろ高齢者向けについてもある程度充実させなきゃいけない。

 例えば、先ほど申し上げた年金の充実以外に言うと、もうすぐ介護と医療のダブル改定というのがありますけれども、介護従事者の給与というのは余りにも低過ぎるということの中で、なり手がないということを考えれば、例えばこういったところにもしっかりと手厚くサポートをして、そして高齢者の方々が安心できるような仕組みをつくるということも私は大事だと思いますので、何も高齢者の方々の給付を減らすということ、それをつけかえろということを言っているわけではないんです。

 私が総理に伺いたいのは、現役世代向けの給付が余りにも少ないんじゃないか、それが、私の見立てにおいては、相対的貧困率が解消していない一つの大きな理由になっているんじゃないかと思われますが、総理は私の見立てに賛同されますか。

安倍内閣総理大臣 平成二十六年の所得再分配調査では、再分配による改善度は三四・一%と過去最高になっているわけでありまして、高齢者は年金が生活の主たる糧であるので、高齢世代の改善度が現役世代より高くなるのは当然のことであろうと思いますが、長期的なトレンドで見ると、現役世代においても改善度は上昇しているのも事実でございます。

 しかし、同時に、それは民主党政権時代も含めて、我々も現役世代への給付に力を入れてきているわけでございまして、今回の給付型の奨学金あるいは無利子の奨学金の成績要件を外す等々も含めまして、あるいはまた幼児教育の無償化を進めていく等々も含めて、この現役世代への支援ということについても財源を確保しつつ進めていきたい、このように思います。

前原委員 三四・一%という改善、これはジニ係数の話をされていると思うんですけれども、これは、平成二十六年度に再分配政策でどれだけジニ係数が改善をされたかということを今総理はお答えされたわけであります。

 それで、直接的にはお答えになられませんでしたけれども、若い方々への施策を充実させているということについても言及されましたので、やはりこういった世代に対する支援が必要だということについては御認識をされているというふうに思います。

 直接、数字については質問通告しておりませんのでお答えにならなくても結構なんですが、もし御存じであればお答えをいただきたいと思うんですけれども、五年ごとに国勢調査がありますね。この国勢調査ごとに、男女の未婚比率、結婚されていない方、一度も結婚されていない方の比率の調査をやっているんです。

 それで、二〇一五年に調査をやったんですね。男は今どのぐらいで女性はどれぐらい、いや、いいんですよ、質問通告していませんから、おわかりにならなかったらおわかりにならないで結構なんですが、実は、男性が二二%ぐらい、そして女性が一四%ぐらいなんですね。一九七〇年、大阪万博があった年は、男性が一・七%だった、女性が三・三%だった。

 それで、この二〇一五年の国勢調査においては、二〇三五年の推計値も出しているんです。どのぐらいだと思われますか。男性は三割、女性は二割がこのままいったら未婚になるということなんですね。

 ただ、若干まだ救われるのは、この方々の約九割、男女とも九割は、いずれは結婚をする、結婚したいと思っておられるんですね。いずれは結婚する、結婚したいと思っておられる。では、何で結婚していないのかという理由は、一つは適当な相手が見つかっていないというのがあるんですが、もう一つの最大の要因というのは経済的な理由なんです。経済的な理由で結婚できていないという方々が多いんですね。これは同じぐらいです。

 先ほど、これから働き方改革の議論がある、そして、本当の意味での同一賃金同一労働の話があるかどうか、こういう話になってくると思いますが、一つは、こういう賃金がどう上がっていくかということと同時に、もう一つは、やはり若い方々には二つ壁があるわけです。一つは今申し上げた結婚の壁、もう一つは子供を持つという壁。

 これも国勢調査で行われているんですけれども、結婚している方々の予定子供数は二を超えているんです。そして、先ほど申し上げた約九割の方々、結婚したいと思っている方々の理想子供数、結婚した場合に持ちたいという子供の数は二を超えているんです。

 ということは、総理、結婚している方、そして結婚していない中の九割の方が、結婚する、したいと思っておられるということになると、その方々の予定子供数、そして理想子供数は二を超えている、これを実現できる社会がつくれれば、簡単に一・八は超えてくるわけですよ、合計特殊出生率は。

 こういうようなことを施策の中で、若い方々の、もちろん先ほど塩崎大臣が答弁をされたように、賃金を上げる、働き方を安定させる。一九八五年が全労働者に占める非正規雇用の割合が一六・三、今は約四割ですね。賃金は上がらない、ボーナスはない、退職金はない、いつ首を切られるかわからない、そういう不安の中で過ごしている方々が四割いるわけですよ。こういう方々を変えていくということも大事ですけれども、総理の新たな的というのは三つでしたよね、GDP六百兆円、一億総活躍、そして一・八の合計特殊出生率実現。私は、これについて何も文句は言いません。

 一・八を本当に実現するということになれば、こういう現役世代、働き方、そして行政の支援というものをより充実させていって、この二つの壁を越えるような施策をもっともっと充実させるということが必要だと思われませんか、総理。

安倍内閣総理大臣 それはまさにそのとおりでありまして、希望出生率一・八ではあるけれども、実際の出生率は一・四ちょっとである。この差は何かというと、それを阻む壁があるわけでありまして、その壁をまさに我々が行政において取り除いていく努力をしていかなければならない、このように思っております。

前原委員 次のパネルを見ていただきたいんですが、これは家族向け支出をあらわしたものです。

 この家族向け支出というものの対名目GDP比というものを書いておりますが、一番左が日本です、一・二六%。一番右がOECD平均、二・一四。五ページです、総理。これだけやはり低いんですね、家族向け支出というのが。

 したがって、今回、ある程度のメニューを整えられて、そして予算をつけられたということはわかりますけれども、私からすると、メニューは多くて、看板は立派、そして量は少ない。ではどれだけ一・八に近づくための実効的なものになり得るかどうかということは極めて疑問だと私は思っておりまして、やはり、これをまずはOECD並みに上げていくような努力をしていく。そして、中身について、まさに与野党でしっかり、政府も検討していただき、我々も提案をし、そして、実は、家族向け支出が上がれば上がるほど、一番下の数字を見ていただいたらわかるように、出生率は正の相関関係が出てくるということは明らかになっているんですね。

 家族向け支出、現物給付がいいのか現金給付がいいのか、それは国によってそのあり方というものをしっかりと見きわめていかなくてはいけませんが、こういうものをまずはOECD並みに目指していくというような一つの目標を立てる、中身についてはしっかりと議論をしていく、そういう方向性が、本当に一・八というもの、一億総活躍というものを実現するためには、総理、必要だと思われませんか。やはり何らかの目的がないとだめだと思うんですよ。いかがですか。総理、総理、総理。いや、大きな話ですから、厚生労働省とか文科省に……

浜田委員長 加藤担当大臣。

 その後に、加藤さんの後に。済みません。

加藤国務大臣 今委員御指摘のように、私どもも、少子化あるいは人口減少という問題には正面から取り組まなきゃいけない。そして、そのために一億総活躍プランを出させていただいて、三つの目標、一つは希望出生率一・八というのを明確に出させていただいております。

 ですから、私どもの目標というのは、むしろ、先ほどお話がありましたように、結婚したい、あるいは子供を持ちたい、こういう壁をどう取り除いていくのかというところがポイントなんだろうというふうに思います。その結果としてどういう予算になるかというのは後の姿なんだろう。

 そういう意味で、今回も、保育士の処遇改善、受け皿整備等々をやらせていただきましたし、さらにこれから、働き方改革、またそういった意味での子育ての環境整備、こういうのを一つ一つやっていきながら、大事なことは、今申し上げた、希望が実現できる社会をどうつくり、その壁をどう排除していくのかというところに力点を置きながら施策を組み上げさせていただきたいと思っています。

前原委員 総理にお答えいただきたいんですが、私、加藤大臣がまとめられた一億総活躍社会のあのレポートを読ませていただきました。中身はすごく立派ですよ。一つだけ大きく足りないものがあるんです。何だと思われます、総理。

 財源が書いてない。つまりは、これを実現するためにはどれぐらいの規模の財源が要るか、そして、そのいわゆる手当てをどのような形にするかということが書いてない。まさに絵に描いた餅になっているんですよ。

 繰り返し申し上げますけれども、やる方向性については我々は必要だと思っている。それをやるためには財源が必要なんです、財源が。その財源というものをしっかりと確保してふやすというような目的を、それはすぐでなくても、ずっとやっていく。そしてその財源についても、税のベストミックスもどうしたらいいのか、あるいは社会保障の保険料と組み合わせるのがいいのか、そういう議論も与野党で闘わせていきましょうよ。

 しかし、そのためには、まずはこの家族向け支出というものについて、何らかの、OECD平均目標までをまずやるというような政治の意思がないと、どれだけ立派なことを文章で書いてあっても、その原動力となる財源がなければ、まさに絵に描いた餅ですよ、今のものは。

 総理、いかがですか。これは総理がお答えください。

安倍内閣総理大臣 金額だけで家族向けのいわば支出とGDP比について書かれているわけでございますが、確かにそのとおりでございますが、中身について、私もきょう資料を初めて拝見させていただいたわけでございまして、精査をしていく必要もあるなと。

 また同時に、OECDの中において、それぞれの国はそれぞれの国の中においてさまざまなそうした家族向けの支出をしているわけでありますし、また、それぞれの国の成り立ちも、社会の成り立ちもあるんだろうと思いますが、我が国においても、限られた財源の中において、ではどのような政策が効率的かどうかということも含めて、よく検討をしていきたいと思うわけでございます。

 お示しをいただいた資料は、まさに世界においてはどれぐらい支出がなされているかということにおいては参考にさせていただきたいと思います。

前原委員 先ほど細野議員が全ての子供にチャンスをという観点からいい指摘をされていたというふうに思いますが、これは何かといいますと、総理、一番上の折れ線グラフだけ見ていただきたいんですよ。この一番上は何かというと、四年制大学の進学率が所得に応じてどれぐらいかということが書かれているんです。

 前提で申し上げると、私は、別に四年制大学に行くことが全ていいことだ、必ずしもいいことだと思っていません。中学を出て、高校を出て、専門学校を出て、自分の手に専門性を、手に職をつけて立派にやっている方はいっぱいおられる。また、そうでないと社会が、みんな四年制大学に行ったら頭でっかちの社会になってしまうというところがあると思いますよ。だから、みんなが行くべきだということではないけれども、これは、四百万円以下の所得の子供の四年制への進学率三一・四、一千万円以上だと六二・四になるんです。ほぼ倍ですよ。これをフラットにする。

 きのう、参議院の本会議で教育の無償化というものに言及されました。憲法改正が必要かどうかというのは、まさにこれは議論したらいいというふうに思いますけれども、少なくとも、どの地域に生まれようが、どのような所得の家に生まれようが、子供にはひとしくチャンスが与えられると総理がおっしゃったようなことをやるためには、まずは、この教育というものについてしっかりと、きのう前向きな答弁をされたように、無償化というものを前提に、ベースに、与野党、スタートラインで考えて、そしてお互い財源を出し合うというようなことを始めませんか。我々はぜひそれをやりたいと思っているんですよ。いかがですか。

安倍内閣総理大臣 まさに無償化に向けて、大切なのは、今委員がおっしゃったように、財源を確保できるかどうかでございまして、これはまさに政府と国会ということと同時に、政党間でいわば政策を競い合う、その中でお互いに学び合うことがあればそれはすばらしい、このように思うわけでございます。

前原委員 もうちょっと何か温かい答弁をしていただきたいなというふうに思いますが。

 それは財源が要りますよ。だけれども、きのう、維新に対してはかなり心のこもった答弁をされているような気がするんですが、党は関係なく、仮にそれは方向性が同じだという答弁については温かみのある答弁をしていただきたいなというふうに、いや、別に私だけに特別扱いしなくても結構ですけれども、それはそういうふうに思います。

 最後のパネルをごらんいただきたいんです。

 私、実は、消費税を二回先送りしたというのは、個人的には反対だったんです。上げておくべきだったというのが私の考えです。いろいろな意見があったと思いますし、党としても、最終的には、まとめた考え方に私は賛成をいたしましたけれども、個人的には、しっかり上げるべきだった、こう思っているわけです。

 その前提にあるのは、もちろん経済というのは生き物ですから、その景気の状況を判断するということは大事なんですが、これは、日本の国民負担率というものを見たときに、最後のページです、所得に占める税と社会保障の保険料を足したものがどのぐらいの比率なのかということを示すものが国民負担率ですが、日本という国は相対的に低いんですね。四三・九なんですね。下から数えて八番目。これは消費税を八%にしたものです。低いんですよ。

 ルクセンブルクは九五・五。九五・五も取られたらどうするんだということなんですが、でも、下を見ていただくと、一人当たりのGNI七万七千ドル、そして五年当たりの平均成長率、実質成長率二・九。ここは非常に小さな都市国家ですから日本とは単純に比較はできませんけれども、国民負担が高ければ経済がだめになるかというと、そうではない。これはまさに、どのような形で国民に負担をいただくか。

 ただ、我々も実は反省があるんです。社会保障と税の一体改革のときに、二段階で五%上げるということを申し上げた。しかし、充実に充てるのは一%だった。五%上げて一%だったら、国民は全然受益感がないんですよ。取られて終わりみたいな感じで、税だけがふえたという感じなんですね。これがせめて半分とか戻ってくるような状況になれば、あっ、これだけ負担は上がるけれどもこれだけ受益がふえるんだ、つまりは、国民負担率は上がるけれども我々が行政サービスを買う負担は減るんだ、そういうものを国民にしっかりと認識してもらうようなバランスが必要だったなという反省は私自身はあるんですけれども。

 そういう中にあって、これでこの国民負担の話は終わりますけれども、例えば五〇%にする。五〇%だったらそんなに高負担の国じゃないわけですよ。しかし、総理、五〇%まで段階的に引き上げるということをやってどれぐらい国民負担がふえるかというと、今の国民所得は三百七十四兆円ですから、六・一を掛けると二十二・八兆円なんですよ。

 二十二・八兆円あって、例えば、十兆円ぐらいは財政健全化に使う、でも十一・八兆円ぐらいは教育の無償化。就学前教育、保育の無償化だったら一・二兆円、高等教育の無償化だったら四兆円かからない、あるいは、国公立大学の文系並みにまず、授業料、先ほど話があった五十四万円ぐらい、これを全て国がまず肩がわりをしようということになった場合に一・六兆円。

 そうすると、本当に教育の無償化というのは現実的に、国民負担を上げて、しかし皆さん方に、負担をしてもらう分、その分しっかりと還元をして、皆さん方がその分行政サービスを買わなくていい、誰もが、全ての子供にチャンスが与えられる社会をつくっていく、こういうような私は考え方。総理、どう思われますか。

 国民負担をしっかり示して、それまでは上げていく。しかし、財政健全化とそして行政サービスの充実で全ての人に希望を与えて、安心を与えて、やる気を与える、高齢者も含めて。こういうような方向性というのはいかがですか。

安倍内閣総理大臣 五〇%に上げていく上において、税をどれぐらい上げていくかということと社会保険料をどれぐらい上げていくかということもあるんだろうと思います。

 その中で、主に税として上げていくのであれば、やはり消費税を上げていくということになるわけであります。

 我々、二回にわたって消費税の引き上げを延期したわけでございますが、一回目の消費税の引き上げにおいて、GDPの落ち込みが非常に大きかったわけでございまして、消費が冷え込み、結果として名目GDPの伸びが大変鈍化をしたわけでございます。

 そこで、ではなぜかということで、前原委員は、国民が、消費税を引き上げるということについて、みんながこれは利益を享受する、それは均てんされるんだなということで前向きに捉えることができないことが、消費がむしろ鈍っていくことにもつながったのではないかという考え方かもしれないなと思ったんですが、むしろそれがちゃんと理解されていれば、いわば現役世代も含めて自分たちにとってそれは返ってくるんだということを持てば、その壁は、いわば消費者の衝撃はより弱くなるということだろう、こう思うわけでございます。

 これは、将来的にはさまざまな御議論の中で、今、前原さんが提案されたような考え方というのも十分に議論されるべきだろうと思いますが、現下においては、まだ残念ながらデフレから脱却をしたという状況ではない中において負担を引き上げていくということの課題は十分にあるのかな、このように思っております。

 ただ、その中で、例えば、先ほどの議論になるんですが、高齢者の皆さんを一律に高齢者ということではなくて、ある程度の収入のある方からはそれなりの負担をさらにお願いし、いわばお年寄りの中でそれをさらに使っていくのではなく、これをまさに若い世代に振り向けていくという努力も、我々は今回もしたところでございますが、これからもそうした努力も含めながら、さらに負担を求めるときには、それは基本的には現役世代の皆さんがその新たな負担に対する給付を享受できる、そういう仕組みを考えなければいけないんだろう、このように思います。

前原委員 デンマークという国は、消費税が二五%ぐらい、しかし、何に使われているかということについて国民に明確に示す、そのことによって、租税抵抗を弱めて、税への理解を深めていく。つまりは、負担増は負担減になるんだ、そして、それがみずからの安心や、あるいはさまざまなやる気などにつながっていくということをしっかりやはり示すことが大事で、我々はそういった考え方をまたしっかりとまとめていきたい。

 そして、選挙のときには、ただ単に与党がだめだということではなくて、我々がどういう社会を目指していくのかということの中で、社会像を選べるような選択肢を示すということをやはりしっかりとやらせていただきたいというふうに私は思っています。

 さて、その中で、次は、トランプ大統領が就任をされたということで、主に二つのことについて質問をさせていただきたいと思います。

 先ほど小野寺議員の質問において、TPPと並行に二国間のFTA、EPAは妨げないということを、日豪、日加を例に挙げられたわけでありますけれども、これについては、時間も限られておりますので、先ほど玉木議員が質問されたことの答弁と同じような答弁になると思いますので、ちょっと違う観点から質問したいと思います。

 私は、トランプさんという方については、それは総理という立場からすると、同盟関係にある大統領ですから軽々なことはなかなか言えない、そして、しっかりとこれからマネジメントしていくという意思を持っていただいていると思いますし、持っていただかなきゃいけないというふうに思うんですが、EUに対する発言を聞いていると、極めて心もとない。EUからイギリスが離脱したことはよかった、EUについては、あれはドイツだけが得する仕組みでだめだ、こういうことをおっしゃっている。まさに、自由貿易、これからどんどんどんどん進めていこうという自由貿易そのものを否定されている論者ではないかという気が私はするわけです。

 つまりは、二国間のFTAについても、徹底的に相手の弱いところを突き詰めて、そして自分たちの考え方をのませるという道具でしかないのではないか、この二国間協議については。だから、全部二国間協議に持ち込もうとしているのではないかというふうに思います。

 APEC二十の国、地域も含めて、ボゴール目標というのがありますね、経済統合。十日に会われるんですか、総理。十日に会われるということになると、TPPもさることながら、自由貿易というものは、第二次世界大戦をくぐって、二度と戦争を行わせない、ブロック化をさせない、そして、平和を保つための、みんなが繁栄をするための大事な大事な礎なんだということをやはりしっかりとトランプさんに安倍さんは示されるべきだと私は思いますが、いかがですか。

安倍内閣総理大臣 まだ日米首脳会談は最終調整の段階でございますが、米国はかつて、戦前には、恐慌に入っていく中において、彼らはいきなり大きく関税の壁をつくったこともあるわけでありますし、そして戦後はガットというものをつくった。

 しかしまた、その中においてNAFTAをつくり、これはいわば地域の経済連携の協定をつくったわけでございますが、これはまた新たな一つの大きな動きになっていって、WTO、みんなでやろうということだったんですが、この動きをアメリカがつくり、それが今回は、例えばTPPという形でアジア太平洋地域のものをつくっていこうとしたわけでございますが、その都度アメリカは新たな提案をしてくるわけでございまして、我々はこれに正しく対応していく必要があるんだろう。日本の国益を守り、また世界の経済をよりよい方向に導いていかなければいけないと思います。

 まさにグローバル経済を進めていく中で、フェアで公正なトレードのルールをつくっていこうというのは、大体これは基本的な考え方として確立をする。それをさらにTPPにおいて確かなものとしようと我々は考えていたわけでございますが、トランプ大統領が、そうではなくて、二国間のFTA中心でということを考えているのではないかという今推測をされている。

 これからずっとそれを進めていかれるかどうかということでございますが、最終的に、貿易政策自体が、どういう体系的なものを考えておられるかということはまだ明らかに、スタッフも決まっておりませんから、なっていないわけでございます。その点のところも次の首脳会談でよく話をしてみたい、こう思っております。

 その際、今の段階ではそれはそう簡単なことではありませんが、TPPの意義はどこにあったかということは、もう既に私も申し上げておりますが、さらにお話をしていきたい、このように思います。

 今はWTOがあるわけでございますから、その中で、恣意的に関税をどんどん、おまえの会社は不愉快だからということでかけることは基本的にはWTO上はできないということは、これはアメリカ側もよく承知をしている、トランプ大統領も含め承知をしておられるんだろうな、こう思うわけでありますが、いずれにいたしましても、いわば日本の国益を守り、そして世界の自由な貿易を、フェアなルールをつくっていく、また維持していく上において、建設的な会談を行いたいと考えております。

前原委員 臨まれる総理としては、そういう方向性、気構えで臨まれるということはそのとおりだと思いますが、私は、多分総理も腹の中は同じだと思いますけれども、相当大変だと思います。

 とにかくディール、そして相手の弱いところから譲歩を引き出す、二国間に持っていく、そういうやり方をやられていくと思うんですが、ただ、これを本当にやり過ぎると、そしてEUもこれからどうなるかわかりません。下手をすればEUが崩れるかもしれない、ことしのいろいろな選挙において。そうなると、本当に自由貿易が、EU離脱、ブレグジットとトランプ誕生において世界の戦後の秩序が変わるような、非常に私は悪い意味での節目になる可能性がある。

 これを何とかとどめなきゃいけないという意味においては、もちろんしっかりと話をしていただくということは大事なんですが、例えば日本・EUのEPAとかあるいはRCEPとか、そしてTPPについても、ほかの国々としっかりと、どういうやり方をするかどうかは別にして、そういう議論をする中でしっかりと脇を固めて自由貿易体制の流れをつくる、そういうものの中で逆に交渉されないと、私は自由貿易というのが死に至る可能性があると思っていますが、いかがですか。

安倍内閣総理大臣 日本としても、日・EUのEPAを進めていきたいと考えておりますし、日中韓のEPAも、経済連携協定もございます、こうしたものの交渉を進めていきたい、こう思っております。

 そして、RCEPでございますが、RCEPは米国が入っていないわけでありますが、しかし、TPPは結実をしているわけでありますから、交渉としては、この中で決めたルールが反映されるような、志の高いものにしていきたい、こう思うわけでございます。

 そして、その先にはFTAAPがあるわけでありますが、TPPについては、関税ということももちろんありますが、それ以上に、ルールをつくったということの重要さがあるんだろうと思います。

 これはまさに、日米でリードしてルールをつくったそのことの意味、意義について、米国にもよく理解をさせていく。ルールに基づいて、いわば法の支配を貫徹させていくということの重要性、これは、世界の経済だけではなくて、世界の平和と安定にもつながっていくんだろう、このように思います。

前原委員 総理、これは国益に照らして私は総理から答弁を引き出そうと思いませんが、このトランプさんが一番日本の弱点としてどこをついてくるのかということについて言えば、例えば貿易の問題一つとっても、最終的には私は安全保障だと思うんですよ。

 つまりは、日本の防衛義務というものをアメリカは持っている。尖閣についての五条の適用、これを認めてもらって今まで来ました。北朝鮮、先ほど小野寺議員との議論の中で、打撃力を持っていない、やられたらやり返す能力がない、危険を察知しても日本からその危険を除去する力がない、これがまさに日本の最大の弱みですよね。こういうものを絡ませてくる中で、アメリカがさまざまな要求をしてくる可能性がある。私は、トランプ大統領はそれぐらいの人だと思った方がいいと思いますよ。

 ということを考えたときに、一朝一夕にはいきませんけれども、安全保障も含めて、みずからのいわゆる交渉能力を高める上での自国の防衛のあり方の見直しということは、早晩どこかでやらなきゃいけない話だと私は思うんですね。それをしっかりとやはり、アメリカとうまくつき合いながら。そんなにいきなり日本だけで守りますよなんということは無理なわけですから。

 これは本当に、総理はこれから大変難しいハンドリングをされるということになると私は思いますけれども、そういった長い目で見たリスクマネジメント。あるいは、吉田茂さんでさえ、ここまで、戦後七十年もたって、アメリカにおんぶにだっこの安全保障体制になっているとは思っておられなかったと思うんですね。

 そういう意味においては、私は、日本のいわゆる弱みというものをできるだけなくしていく、そして、うまくアメリカとつき合いながら、そして交渉能力というものを高めていくということが必要だと思いますが、総理、いかがお考えですか。

安倍内閣総理大臣 日米同盟については私は揺るぎない同盟だと思っておりますが、その中でも、やはり同盟というのは、お互いに助け合うことのできる同盟でなければこれは長続きしない、こう考えてまいりました。

 その意味におきましても、先般、平和安全法制を制定させたわけでございますが、日本を守るという中においては、日米はお互いに助け合うことができるということにはなったわけでございます。そしてガイドラインも見直しをされたわけでございまして、そういう意味では、お互いにお互いがそれぞれの役割をしっかりと果たしていくということにおいては相当向上することができたんだろう、こう思いますが、しかし、基本的にはみずからの国をみずからしっかりと守っていくという精神のもと、日米同盟を有効に機能させていくことが重要だろうと思います。

 ただ、同時に、在日米軍は多くは海兵隊で構成されているわけでございますが、日本を守るわけでございますが、同時にこれはアジア太平洋地域に展開をしていく部隊でありまして、それはアメリカにとって極めて国益を守る上で重要であり、そして、米国の航空母艦の母港として横須賀以外の港をアジアで探すことは恐らくできないんだろうと思います。

 つまり、アメリカのプレゼンスを維持するのは、日米同盟があって初めて維持できる、いわば、米国のアジア太平洋戦略のかなめが日米同盟であるということについても理解をしていただきたい、このように思います。

 その意味において、来週、マティス国防長官が来日をされますが、稲田大臣との間で会談が行われますが、私も会って、この日米同盟の意義についてよく意見交換をしたいと考えております。

前原委員 これで最後にしますが、トランプの言葉です。強い同盟であるためには、必要なときに確かにそこにいると期待できる相手でなければいけない。これはトランプの言葉です。

 私は、その意味においては、安全保障法制はあれほど日米の間合いを詰めるべきではなかった。何で周辺事態にとどめておかなかったんですか、重要影響事態まで広げたんですか。特措法でよかったじゃないですか。恒久法にしたら、いつでも協力しろということで、トランプのような大統領が出てきたときにはより危険な状況になる、危険な任務を担わされることになる、そういう可能性があるということを指摘して、私の質問を終わります。

浜田委員長 この際、大西健介君から関連質疑の申し出があります。玉木君の持ち時間の範囲内でこれを許します。大西健介君。

大西(健)委員 民進党の大西健介でございます。

 冒頭、まだ午前中の質疑が終わった段階で、あしたの締め総、採決が職権で決められたことについて、強く抗議をしたいというふうに思います。

 午前中の与党の質疑の中でも、天下りの問題については大変厳しい御意見がありました。きょうもまだこの後も我が党の委員から天下りについて質疑をさせていただきますけれども、天下りのことばかりやっているわけにはいかないわけですから、これは、仮に補正予算の採決の後でも構いません、本予算の審議入り前にしっかり集中審議をやっていただきたい。そしてまた、先ほど玉木委員からも申し上げましたけれども、このスキームの全容を知る前川次官にやはり出てきていただかなければならないというふうに思っております。

 この二つのことについて、しっかり与野党挙げてこの天下りの問題に本気で取り組むんだという姿勢を見せなければ、これは疑惑隠しをしているのではないかと疑われても仕方がないというふうに私は思いますので、再度、そのことだけ冒頭申し上げておきたいというふうに思います。

 そして、きょう私は、総理が先日の施政方針演説の中で、二度と悲劇を繰り返さない決意で長時間労働の是正に取り組むと表明をした働き方改革について聞いていきたいというふうに思っていますけれども、その前に一つだけ、日米問題についても触れさせていただきたいというふうに思っております。

 正月気分もまだ冷めやらない一月の六日の日でありましたけれども、一気に目が覚めるようなニュースが流れました。トランプ次期大統領が、現地時間五日の日ですけれども、トヨタ自動車を名指しして、メキシコの工場建設をするならば高い国境税を払わなければならない、こういうような発言をしました。

 私の地元愛知県の西三河地域でありますけれども、トヨタ関連を含めて自動車産業の集積地であります。新年会を回っていても、この問題で非常に持ち切りでありました。地元の与党の議員は、実際にやればWTO違反になるんだから心配ないんだみたいなことを言って回っていましたけれども、私は非常に認識が甘いというふうに思います。

 この表を見ていただいてもわかるように、まず実害が出ています。

 このニュースが流れた途端に、トヨタの株は三%以上下がりました。それから、アメリカ国内の企業に対してもトランプ氏は同じような発言を繰り返しているわけですけれども、その的になった例えばフォード・モーターあるいはアメリカの空調大手のキヤリアという企業は、大統領の発言を受けて、実際にメキシコでの工場建設の計画を取りやめています。また、飛行機が高過ぎるということを言われたボーイングやロッキード・マーチンは航空機の値段を実際に下げている、こういうようなことが起きている。そして、トヨタは、メキシコでの工場建設は取りやめませんでしたけれども、今後五年間で百億ドルの投資をする、またインディアナ州の工場に約六億円を投じて、年間四万台分の生産力を補強して、約四百人を雇用するということを発表いたしました。

 実際、そういう形で影響が出ているわけです。私は、これは一民間企業に任せておけばいいという問題ではなくて、しっかり政府としても物を言うべき問題だと思います。

 この点について、世耕経済産業大臣は、政府として伝えるべきことがあれば伝えるが、政権が発足してから検討したいと述べていました。また、我が党の野田幹事長も、これは代表質問でも申し上げましたけれども、日本政府としてきちんと物を言うべきであると。

 一部には、正式に大統領になればこういうむちゃなことは言わなくなるんじゃないかというような楽観論もありましたけれども、皆さん御存じのように、最近も、日本の自動車貿易が不公平だ、こういう批判を繰り返しております。

 先ほど申し上げたように、もし日本の自動車メーカーがこういう批判をかわすためにアメリカ国内での生産をふやすということになれば、これは日本の国内生産が減ることにもつながりかねない、そうすると日本の雇用や下請の中小企業にも影響が及ぶという話なんですね。ですから、私は、トランプ氏が米国の自動車産業や米国の雇用を守ると言っているのに対して、日本の総理大臣は日本の自動車産業や日本の雇用を守るために何も言ってくれないのか、これはぜひ、総理、しっかり物を言っていただきたいというふうに思っております。

 先ほども、今最終の調整をしているということでありましたけれども、二月の十日にも、ぜひ次にトランプ大統領と会ったときにはしっかりと物を言っていただきたい。どのように言われるのか、お答えいただきたいと思います。

安倍内閣総理大臣 今、どのように言うかということはここで申し上げることはできませんが、首脳会談においては、日米の経済関係の意義、現在の実態等について御説明もし、そして言うべきことはしっかりと言っていきたい、このように考えております。

大西(健)委員 私は、はっきりと、おかしいものはおかしいと言うべきだと思うんですね。

 例えば、日本より先駆けて首脳会談を行うイギリス、英国のメイ首相はこんなことを言っています。女性をめぐるトランプ氏の発言の一部について、私は既に受け入れられないと明言をしてきた、今後も受け入れられないと思われる発言があれば、恐れることなくトランプ氏にそれを伝える、こういうふうに語っているんですよ。ぜひ、メイ首相のように、受け入れられない発言については受け入れられないと、あなたは間違っていますよということをはっきりと言っていただきたいというふうに思っております。

 総理は、大統領選後わずか九日後にニューヨークのトランプ・タワーでトランプ次期大統領とお会いになって、信頼できる指導者と確信したと。しかし、その後にこういう発言が起きているわけですから、ぜひ次の首脳会談の折にはしっかりと物を言っていただきたいと期待を申し上げたいというふうに思います。

 それでは、働き方改革の質問に移りたいと思います。

 一昨年の十二月、電通社員の高橋まつりさんが過労自殺をしました。

 この国会の召集日の二十日、同じ日に、電通と遺族の間で合意書が調印をされました。その場で、担当弁護士の川人先生が、ここにありますけれども、「今こそ職場の改革を実現することを訴える 二人の電通社員過労死事件を担当した者として」というペーパーを配付されました。その一部をこのパネルに書かせていただきました。

 政府、行政当局においては、過労死等防止推進法に定める国の責務をしっかりと自覚して、過労死ゼロの社会に向けて具体的な措置を早急に講ずることを求めたい、特に、現在審議されている働き方改革において、時間外労働の上限規制を法律、政令で定めることを強く訴えたい、また、長時間労働、過重労働を促進するような法律の制定、改正は断じて行ってはならない、こういうふうに川人弁護士は言われています。

 そして、下の方をごらんいただきたいと思うんですけれども、これは、その川人弁護士やあるいは全国過労死を考える家族の会の代表の寺西笑子さんも名前を連ねている、過労死等防止推進全国センターが出している声明です。

 ここにあるように、現在、安倍内閣は、高度プロフェッショナル制度と企業業務型裁量労働制の拡大を柱に、労働時間制度の大幅な規制緩和を強行しようとしています、私たちは既に前者に対しては、一定範囲の正社員を対象に、残業代なしに、時間外、休日、深夜の別なく、労働者を無制限に働かせることができる制度であって、過労死、過労自殺を増加させるおそれが大きいという理由で反対声明を発表しています、後者についても、現状でさえも同制度の適用労働者の過労死、過労自殺が後を絶たないことから、改めて反対の意思を表明するものですと言われています。

 つまり、今政府が出されている高度プロフェッショナルそして裁量労働制の拡大というのは、まさに川人先生がおっしゃっている長時間労働、過重労働を促進するような法律であって、そういう法改正は断じてやってはいけないと言っているんです。

 先日の代表質問で、我が党の大串政調会長からも同じことを申し上げました。これは全く逆向きの法改正であると。こういう指摘に対して、総理の答弁は、残業代ゼロ法案といったレッテル張りの批判に明け暮れていれば中身のある議論が行えない、こういう反論に終始をしました。

 今申し上げたように、これは我々野党が言っている話じゃないんです、これは電通事件の担当弁護士の川人先生や遺族、家族の会の声なんです。総理、その声に背を向けるんですか。いかがですか。

塩崎国務大臣 事実関係で重要な間違いがございますので、あえて私の方からまず答えさせていただきたいと思いますが……

浜田委員長 手短にお願いします。

塩崎国務大臣 少なくとも、この川人先生がおっしゃっていることに幾つかの間違いがあると私は思っています。

 一つは、まず第一に、一番下に、後者についても、企業業務型裁量労働制の、こういう形で働いていらっしゃる適用労働者の過労死、過労自殺が後を絶たない、こういうふうに書いてありますが、これは全くの事実無根でございまして、過去五年間で見ても、この企画業務型裁量労働制の対象者の労災支給決定件数というのは、御病気になられた方が、例えば脳・心臓疾患だったらばこの五年間で千四百八十二件ありますが、たった一件しかありません。そして、精神障害も、二千二百五件のうち、たった二件しかございません。そして、亡くなった人はゼロであります。

 過労死、過労自殺が後を絶たないと書いてありますが、これは全くの間違いでございますので、御理解をいただきたいと思っておりますし、そもそも、今もう既に出しております労働基準法の改正は、皆さん御存じのように、年次有給休暇についても五日間の指定というものを使用者に義務づけています。それから、中小企業の割り増し賃金率の引き上げ、五〇%、これも、六十時間超の時間外の労働についての五〇%への引き上げ。それから、働く人の健康を確保しつつ能力を発揮するという働き方の制度でありますし、私は、連合の皆さん方も、私の理解する限りでは、こういった点についてはぜひ通してほしいと思っているのではないかと思っております。

 いずれにしても、裁量労働制にしても、それから高度プロフェッショナル制度にしても、対象となる方は業務の遂行手段とか時間配分についてみずからの裁量がきく方々ばかりでありますので、自律的で創造的に働けるような方々が対象で、これは労使の委員会でちゃんと認めるわけです。ですから、そんなことは、今御指摘のようなことにはなっていないということなので、今お話をいただいているようなことは全く根拠がないわけでありますから、私どもは既に出している法案を撤回するようなことはあり得ないというふうに考えておりますし、むしろ時間法制に関しては……

浜田委員長 簡潔に願います。

塩崎国務大臣 多様化を進める法案だというふうに思っています。

大西(健)委員 私が言っているのは、私たちが言っているんじゃないんです、これは当事者の人たちが言っているんですと。

 では、今の厚労大臣の答弁というのは、川人先生や家族の会がうそをついているということですか。そう言ってくださいよ、はっきり。

塩崎国務大臣 私が申し上げているのは、労災認定の統計を見る限り、この五年間、この裁量労働制のもとで過労死や過労自殺をされた方は一人もおられないという事実を申し上げているだけでございます。

大西(健)委員 私が申し上げたのは、こういう当事者の声に背を向けないでくださいと。当事者の声がこうなんです。当事者は、この高度プロフェッショナル制度や裁量労働制の拡大がまさに過労死をふやし、そして本当に過重労働を増加させるというふうに考えておられるわけですよ。これは我々野党が言っているわけじゃなくて、まさに当事者の人たちが心配をされているわけです。

 ですから、この中身についてはまたしっかり議論させていただきますけれども、先ほど言われたようなことも我々はそうじゃないと思っています。例えば、本当に自分で働く時間について裁量で決められる人がそういう対象になるのか。そうじゃないと思いますよ。今のままでやったら、入社二年目、三年目のような若い人たちだって対象になってしまう、そういうおそれがあるんです。

 その中身についてはまた厚労委員会でも大臣としっかり議論させていただきたいと思いますが、少なくとも、総理、遺族、家族の会の皆さんやこの電通事件の担当弁護士の川人先生がこうおっしゃっているんです、この声に背を向けないでくださいということを私は言っているんです。それを、総理、一言いただけませんか。

塩崎国務大臣 私どもは、今御指摘のように、今回の電通問題については執行面においても厳しく対応しています。

 したがって、言ってみれば、こういう企業文化の犠牲になられた高橋まつりさんのこと、そしてまたその高橋さんを心配されていたお母様を初め、弁護団の皆さん方について背を向けるだのようなことはあり得ないことであります。

 ただ、事実は事実であって、それを裁量労働制のこれから審議する法案と結びつけることは、必ずしもそれは正しくないんじゃないんですかということを申し上げているわけでございますので、我々は、この電通問題についてはきっちりと厳粛に受けとめて、そのように厳しく対応を今しているところでございます。

浜田委員長 総理、一言お願いいたします。

安倍内閣総理大臣 一言。厚労大臣が答弁したとおりでございます。

大西(健)委員 本当に、過労死遺族の声に向き合っていただきたいというふうに私は思います。

 次の質問に移りたいと思いますが、はっきりしたのは、この過労死遺族、家族の会や担当弁護士の川人先生の声に背を向けているというのが私ははっきりしたと思います。

 それから、まつりさんの母、幸美さんは、同じ合意文書の調印のときにこう言われています。三六協定時間の上限規制、勤務時間インターバル制度の導入など、働く人を守るための法律改正をしてほしいと強く希望しますと。

 この点、先日の代表質問で我が党の大串政調会長は、野党四党が既に提出している長時間労働規制法案を一日も早く審議し成立させるか、さもなければ労働時間の上限規制とインターバル規制を含む法案を即刻国会に提出すべきと迫りました。これに対して総理はこう答弁されました。作業を加速化し、早期に法案を提出しますと。ただ、今国会に提出し成立を図るとは明言をされませんでした。

 一方で、去る二十二日、NHKの「日曜討論」で自民党の二階幹事長は、長時間労働を規制する法整備について、今国会最大の重要問題だ、今国会で必ず結論を得るように持っていきたいと述べました。

 今国会に法案を出すということで間違いないですね。ここで約束してください、総理。総理、総理ですよ。

加藤国務大臣 今御指摘がありました長時間労働の規制については、働き方改革実現会議においてこれから議論していただき、そして三月を目途に実行計画としてまとめていきたい。その際には、罰則つきの時間外労働の限度がどのぐらいか、こういったことを具体的に定め、実効性のある規制になるよう、そしてそれを法改正に向けて、総理がおっしゃっているように、早期に作業し提出していきたい、こういうことでございます。

 まずはこの三月の実行計画に、実効性のある規制になるように、しっかり議論を進めさせていただきたいと思っております。

大西(健)委員 二階幹事長は、今国会でしっかりけりをつけると言っておられます。今国会に出すのか出さないのか、イエスかノーか。やります、やりますとそば屋の出前みたいに言っていて、結局、次の国会に先送りするんだったら、それは国民をだましているのと一緒だというふうに思います。もし今国会に提出できないんだったら、我々野党四党が出している長時間労働規制法案を審議したらいいじゃないですか。

 今国会に出すんですか、出さないんですか。どっちですか。

安倍内閣総理大臣 ただいま厚労大臣から答弁させていただいたとおりでございます。

大西(健)委員 総理、今国会に出すと何で約束できないんですか。出せないんですか、出すんですか。どっちですか。

安倍内閣総理大臣 失礼しました。

 加藤担当大臣から答弁させていただいたとおりでございます。

大西(健)委員 簡単なことですよ。総理が施政方針演説で言われたんじゃないですか、施政方針演説で、二度と悲劇を繰り返さない、強い決意で長時間労働の是正に取り組むと。二階幹事長も、今国会で必ず結論を得ると。だから今国会で出したいと思いますと、何で一言言えないんですか。何でそれが一言言えないんですか。

安倍内閣総理大臣 時間外労働が果たして何時間かということが一番大切なんですよ。これはしっかりと議論していかなければいけません、大企業だけではなくて、これは中小企業も含めて。そこが一番大変なんですが、それなしで出せば皆さんのように簡単に出せるかもしれない、しかし、私たちはしっかりとそれを詰めて、今真面目に一生懸命やっているところでございます。(発言する者あり)

浜田委員長 静粛に願います。

大西(健)委員 はっきりしたのは、出すということさえ言えないということがはっきりしたんだと思います。

 先ほど来申し上げているように、もし、今国会、まだ今国会は始まったばかりですよ、六月十八日まであるのに出せないんだったら、我々は既に野党四党で長時間労働規制法案を出しているわけですから、これをしっかりベースにして審議をしていただきたいということを重ねて申し上げたいと思います。

 そして、今総理もちょっと触れられましたけれども、先日の大串政調会長と総理のやりとりをパネルにしました。ここで総理は、野党提出の法案について、時間外労働の上限を何時間にするかを省令に丸投げしているというような批判をしています。総理は昨年十二月の蓮舫代表との党首討論の中でもたしか同じようなことを言われていましたけれども、私はそこでも聞いていて思ったのは、総理は労働や雇用について基本的なことが失礼ながらわかっておられないんじゃないか。

 それは何かというと、大串政調会長もこの質問の中で触れていますけれども、ILO、国際労働機関の諸条約において、雇用政策については労使同数参加の審議会を通じて政策決定を行うべき旨の三者構成原則というのがあるんです。ですから、時間外労働の上限については、普通はこの三者構成の労働政策審議会で決定するのが筋なんです。それを丸投げと批判するのは、私は全くの的外れだと思っています。

 ただ、安倍政権は今まで、産業競争力会議とか規制改革会議とか、そういう三者構成じゃない、財界代表だけを入れたような会議でいろいろなワークルールの変更等をやってきた、そういう前科もありますけれども、私は本来は労政審の場でこれは決めるのが筋だと思いますが、しかし、総理がそこまで言われるなら、野党の案を丸投げ丸投げと批判するだけじゃなくて、では総理は何時間がいいと思っているのか、今この場で示してくださいよ。そして、この国会の場で与野党で議論しようじゃないですか。いかがですか。

安倍内閣総理大臣 今、大西さんはおっしゃられましたね、この場で何時間か議論しようじゃないかと。まさに皆さんの法律はこの場で議論できないじゃないですか、何時間と書いていないんですから。そうでしょう。だから、まさにその問題点を今、大西さんは自分で認められたようなものですよ。

 ですけれども、私たちはそうではないんです。私たちはまさに、何時間かということについてしっかりと議論をして、それをちゃんと法律にしてお示しして、この場で時間外労働の上限規制がその時間でいいのかどうかということを御議論いただこうということでありますよ。

 皆さんの場合は、まさに省令に丸投げをするわけでありますから、省令に丸投げするんですから……(発言する者あり)

浜田委員長 静粛に願います。

安倍内閣総理大臣 丸投げじゃないんですか。では、それをここで議論できるんですか。皆さんがその数字を入れていないんだから、議論しようがないでしょう。我々はちゃんとそれを……(発言する者あり)済みません、皆さん、やじはちょっと、しばらく静かにしていてください、子供じゃないんですから。しばらくちょっとゆっくりして……(発言する者あり)筆頭がそんなにやじりまくってどうするんですか。

浜田委員長 静粛に願います。

安倍内閣総理大臣 こちらの筆頭は静かにずっと見守っているじゃないですか。

 そこで、まさに、何時間かを私が今ここで言ってそれを決めるというような、そんな粗雑な議論は私たちはしないんですよ。しっかりとまさに専門家からも聞き、労働界側からも話を聞き、そこで決めていかなければならない。そして、私たちは責任を持って、何時間が長時間労働として、何時間以下にしなければいけない、何時間を上限とすべきかということを議論した末に、ちゃんと法案の中でお示しして皆様に御議論をいただきたい、このように考えているところでございます。

大西(健)委員 ちょっと、もう一回整理しますよ。

 我々は、本来は三者構成の労政審の場でやるべきだと思っているから省令に落としているわけです。ただ、総理が省令に丸投げだと言うんだったらば時間を示してくださいと言っているし、そこまで総理が言われるから、私たちも、我が党の大串政調会長が本会議の場で、ここに、現行の三六協定の一カ月の上限である四十五時間が大事な基礎であることは言うまでもありませんという形で、一つの議論のスタートラインというのをお示ししているわけです。

 我々は、本来は労政審、三者構成でやるべきだと思っているんです。だけれども総理がそこまで言うから、だから、一つの議論のスタートラインとして四十五時間というのを出しています。

 これは、現在、特別条項があれば事実上の青天井になっている残業時間ですけれども、本来は、三六協定の内容というのは時間外労働の限度基準告示に適合しなければならないんですね。その大臣告示というのは、一カ月が四十五時間、一年間だったら三百六十時間等の数字が大臣告示で決められているんです。ですから、例えば大臣告示で定められているこの限度基準を法定化するというのがまず議論のスタートラインですよねということは、私たちはちゃんとお示ししているわけです。

 ただ、私たちは労政審でやるべきと思っているんですよ。でも、総理が省令丸投げだと野党案を批判するから、ここまで、この議論のスタート地点はこういうところから議論しましょうよと言っているんだから、では総理は何時間と考えているんですかと聞いているんですよ。言ってください、早く。

安倍内閣総理大臣 何か一貫性がないですね。労政審でやるべきだと言っておきながら、それはやはり書くべきだと言ったら、それを示してきた。であるならば、労政審でやるべきだということは、むしろその発言を引っ込めていただきたい。いわば……(発言する者あり)

浜田委員長 静粛に願います。

安倍内閣総理大臣 それは、お互いに何時間かということをしっかりと責任を持って出し合うべきだということなんじゃないですか。むしろ、私たちが何時間と出すべきだと言ったから、それに押されて、それをただ出してきたにすぎないわけでございます。

 つまり、何時間をもって問題の長時間労働かどうかということについては、まさにその時間を決めるということが大変な難しい作業であります。

 先ほど申し上げましたように、実態を見ながら、大企業も含めて、中小企業も含めてしっかりとそれは法定するわけでありますから、そこはしっかりと法定する以上、この四十五時間とおっしゃったものはいわば一つの目安として既に示されているものでありますが、法定して果たして成り立つのかどうかということも含めて、我々は何時間が上限としてふさわしいかということを真面目にちゃんと、実態を調査しながら議論していくべきだというのが私たちの考えであります。

 そこで、今、大西さんが言われたからといって、私が何時間かと言えるような問題ではないんですよ、それは。そんな簡単な問題ではないし、そんな粗雑な議論をしてはならないと私は思っております。(発言する者あり)

浜田委員長 静粛に願います。

大西(健)委員 そうですよ。本来は、粗雑な議論をするんじゃなくて、三者構成の労政審で議論するべきなんですよ。

 ところが、働き方改革で、あるいは総理がどんどん議論を引っ張って、我々に対して……(発言する者あり)

浜田委員長 静粛に。

大西(健)委員 数字を示さないと言うから、我々はあえて言っているわけです。

 きのうの毎日新聞の朝刊一面には、政府は月八十時間を軸に調整に入ったという記事が出ていますけれども、では、その八十時間ということでよろしいんですか。どうなんですか。

加藤国務大臣 先ほど申し上げましたように、まさに実現会議においてしっかり議論をしていただいて、またそれを踏まえてこれから法案を出していくということでございますので、これからまさに、長時間労働の是正については、どうやったら実効性のある規制になるのか、しっかりと議論をしていただき、それを踏まえながら、我々として法案提出に向かっていきたいと思っています。

大西(健)委員 いや、さっきも大臣は、法案提出を今国会するかどうかも言えない。我々の野党案に対して時間が入っていないじゃないかと言いながら、ではどういう時間で考えているんですかと言っても、言わない。

 我々は、本来はそうじゃないけれども、今ここにパネルをお示ししましたけれども、先ほどの限度基準告示には四十五時間という数字がありますねと。それで、毎日新聞の一面では政府は八十時間で調整に入ったと書いてありますけれども、この八十時間という数字は、残業月八十時間というのは、俗に過労死ラインと呼ばれているんですね。これは、いわゆる労災認定の際に残業月八十時間というのが一つの判断基準になっている。ですから、過労死ラインの月八十時間をもし上限にするということになれば、過労死ぎりぎりまでは働かせても構わないと。法律でそれを、総理、総理に聞きたいんですけれども。

 ちょっと時間をとめてください。(発言する者あり)

浜田委員長 速記をとめてください。

    〔速記中止〕

浜田委員長 速記を起こしてください。

 今、総理が立たれたときに質疑者と筆頭が確認ができなかったということで、時間をとめました。

 大臣の皆さん方に申し上げますが、お立ちになるときは必ず確認をとってからおいでになるように、よろしくお願いをいたします。こちらです。

 それでは、大西健介君。

大西(健)委員 今も申し上げましたけれども、八十時間というのは過労死ラインなんです。ですから、これをもし上限にしてしまうと、過労死直前ぎりぎりまで働かせても構わないということにお墨つきを与えるようになると思います。

 ですから、私は仮に決めるとしても八十時間というのは長過ぎると思いますが、総理、どう思われますか。総理の基本的認識をお聞きしています。

浜田委員長 その前に、塩崎担当大臣。

 答弁は簡潔に願います。時間が来ております。

塩崎国務大臣 先ほど総理から答弁申し上げたように、実現会議で議論をこれから本格的に始めるわけでございます。

 今のは、新聞が八十時間というのを勝手にお書きになっているわけでありますが、さっき先生からもお話があったように、月四十五時間と年三百六十時間というのが基本にあって、三六協定で抜けられる。それを何とかしようということで、そこで過労死のお話がありましたが、この過労死等の認定についても二つあります。発症前一カ月間に時間外労働がおおむね百時間超、または発症前二カ月から六カ月間の月平均時間外労働がおおむね八十時間超、この場合には業務と発症との関連性が強い、こういうふうに評価をされているわけであります。

 こういうことを念頭に入れた上で、連合の会長さんを含め、経団連の会長さんを含め、大勢の方々に今実現会議においでをいただいていますので、ここでしっかりした議論をして、そして、総理が施政方針演説で申し上げたように、しっかりと罰則つきの法改正を行っていくということでございます。

大西(健)委員 何度も申し上げます。月八十時間、過労死ラインですよ。これは私は幾ら何でも長過ぎると思います。

 では、総理、高橋まつりさんが過労自殺した電通の特別協定は何時間になっていたか、御存じですか。

塩崎国務大臣 個社のことでございますので、ここではお答えを差し控えたいと思います。

大西(健)委員 担当の大臣も知らないというのはちょっと驚きですけれども、特別協定で七十時間になっているんですよ。つまり、八十時間だったら、電通の七十時間を超えているんですよ。

 総理は施政方針演説で、二度と悲劇を繰り返さない、そのために長時間労働是正に取り組むんだと言われているけれども、八十時間は過労死ラインだし、そして電通でも七十時間なんです。ですから、八十時間は長過ぎると思いますが、総理の基本的認識をお伺いします。

浜田委員長 塩崎担当大臣。

 その後に、総理に一言いただきます。

塩崎国務大臣 今、七十時間とおっしゃいましたが、それはそれとして、なぜ今回の高橋まつりさんのようなことが起きてしまったのかということは私ども厚生労働省として今調査をしているわけで、これはもう捜査もやっているわけでございますので、そういう中で、何が本当の原因であったのか。報道ベースではパワハラとかいろいろなことが言われておりますけれども、私たちは、その真相を究明した上で、どうやったらばこのようなことが起きずに企業文化を変えられるか、こういうことをしっかりと考えていきたいと思いますが、時間をどういうふうな限度として法律の中に入れ込んでいくか、これについてもしっかりと実効性のあるものを考えていきたいと思います。

安倍内閣総理大臣 ただいま厚労大臣が答弁させていただいたとおりであります。

大西(健)委員 きょうテレビをごらんになった方はしっかり見ていただいたと思いますけれども、総理は、二度と悲劇を繰り返さない、そのために働き方改革をやると言っているのに、一切私の質問にさえ答えない、この姿勢。そして、きょう明らかになったのは、当事者が過労死をふやすと言っている高度プロフェッショナル制度や裁量労働制の拡大は撤回しないし、過労死ライン、八十時間は長過ぎるんじゃないですかと言っているのに、これに対しても一切否定をしない。さらには、今国会の法案提出についても全く明言をしない、約束をしない。ない、ない、ないばかりじゃないですか。

 やる、やる、やると言って実際には何もやらない、これが安倍政権の本質だということを申し上げて、私の質問を終わります。

浜田委員長 この際、山尾志桜里君から関連質疑の申し出があります。玉木君の持ち時間の範囲内でこれを許します。山尾志桜里君。

山尾委員 民進党の山尾志桜里です。

 きょうは、私の方からは総理と共謀罪について真剣な議論をしたいと思いますが、冒頭、細野議員と総理との、天皇の退位あるいは御譲位に関する議論を聞いておりました。私も民進党の皇位検討委員会の委員の一人でありますので、少しだけこの問題について触れさせていただきたいというふうに思います。

 総理は、この天皇の退位の問題について、二つのキーワードをよく出されます。政争の具にしない、そして静かな議論が必要だと。

 誰も政争の具にしようと思っている者はいないと思いますので、政争の具にしないということはこれ以上おっしゃっていただく必要はないと思います。

 そして、もう一度私が申し上げたいのは、静かな議論と閉ざされた議論は全く別物であります。

 天皇は、総理御存じのとおり、国民総意に基づく国民統合の象徴です。天皇と国民をつなぐ大切な場がこの国会であります。この議論が今回閉ざされた議論になってしまうと、天皇と国民総意との間が遮断をされてしまいます。

 ですから、私は、二点、立法府として、そしてまた総理に申し上げたいと思いますが、一つは、今、衆参両議院の議長のもとで、各党との意見交換の場において意見交換がスタートいたしました。静かかつ開かれた議論が必要だと思います、天皇と国民総意とを遮断しないために。そして、そこでこれから行われていく議論がその時々で国民に開示されて、国民の皆さん一人一人が御自身のこととして静かに考えを深めていただくことが私は大事だというふうに思います。

 ですから、この点、各党との意見交換の場を、その議事録について当面非開示にするというような話も出ているようでありますけれども、これは立法府の一員として申し上げます、その責任を十全に果たすためには、議事録はその時々で国民の皆さんに開かれていく、開示されていくということが必要だと思います。

 そして、それにまつわって、総理にもこの一点だけお伺いをしたいと思います。

 先ほど細野議員とのやりとりで、有識者会議の論点整理に随分重きを置かれているんだなという印象を受けました。しかし、御自身でその人選をされた有識者会議よりも、国民が選んだ、全国民の代表であるこの国会の議論に重きを置いていただきたいと思います。それは、天皇と国民の総意とをつないで、今この国会を経て得られるであろう何らかの結論が国民の総意に基づく結論だという正当性を担保する上で必要不可欠な基本的な考え方だと思います。

 有識者会議の論点整理を参考にしていただくことを否定するものではありません。ただ、憲法の一条を本当にかみしめるのであれば、全国民の代表であるこの国会の場の議論の方に重きを置いていただきたい。その点について、総理の基本的な考え方を一点、お聞かせください。

安倍内閣総理大臣 まず、国会の場において、両院議長、副議長のもとでの議論の進め方については、まさにこれは議長、副議長に言っていただきたいと思います。

 どちらに重きを置くかという御質問でございますが、政府として、私はこの有志の皆様にお願いをしているわけでございますから、この皆様の議論を重く受けとめるのは当然のことであろうと思います。その上において、これを参考に御議論いただいているわけでございまして、その御議論の結果について重く受けとめるのは当然のことでございます。

 いずれにいたしましても、私たちが法案を作成したものは、国会で議論をいただき、国会で議決をされなければ法にならないのは当然のことであろうと思います。

山尾委員 正直言って今の御答弁は、私の危惧感は深まったと言わざるを得ません。なぜなら、有識者会議の判断に重きを置かれるということはおっしゃったけれども、国会の、全国民の代表であるこの場の議論については、議決が必要だということにとどまったわけであります。

 ぜひ、もう一度憲法一条を読んでいただいて、国民統合の象徴であり、国民の総意に基づくこの天皇制のあり方について今大事な議論が始まろうとしているそのときに、国民の総意に基づいた結果を得るために何が必要かということをやはり考えていただきたいというふうに思います。

 中身については多くは申しませんけれども、象徴天皇として十全にその役割を果たしていただきながら、安定的に継続的に天皇制を続けていくことが国家国民にとって大切だと私たちの多くが考えるならば、そして、そういう私たちが静かに落ちついて開かれた議論をするならば、おのずと方向性は、一代限りの特別法ということではなくて、制度としての永続性をしっかり担保する皇室典範の改正、こういう方向性に向いてくるのではないかと私は考えております。

 この点については、また今後の議論に委ねたいと思います。

 きょうの議論、共謀罪。共謀罪の議論について、真剣に意見を闘わせたいというふうに思います。

 まず、総理にお尋ねします。

 これまで、歴代の総理、外務大臣、法務大臣、あるいは局長と言われる役所の方々は、今回問題となっているこの組織犯罪に関する条約、これを批准するためには共謀罪がぜひとも必要だと十数年語ってこられた。しかし、安倍総理は、今回の法案は、共謀罪と呼ぶのは全く間違いです、突然このようにおっしゃった。

 質問します。

 なぜ、これまで歴代政権がこの条約を批准するためには何が何でも、ぜひとも共謀罪が必要だと言ってきたにもかかわらず、第二次安倍政権で、安倍総理のもとでは、共謀罪ではない、テロ等準備罪で批准ができるということになったんですか。

金田国務大臣 ただいまの山尾委員の御指摘にお答えをいたします。

 三年後に迫った東京オリンピック・パラリンピックの開催に向けまして、テロを含む組織犯罪対策について万全の体制を整える必要がある。既に百八十七の国・地域が締結をしておりますTOC条約、これを締結し、国際社会と協調してテロを含む組織犯罪と闘うということは重要な課題であります。

 そういう中で、TOC条約を締結することによって、国際的な逃亡犯罪人引き渡しや捜査共助、情報収集において、国際社会と緊密に連携することは可能になりますし、我が国がテロ組織による犯罪を含む国際的な組織犯罪の抜け穴になることを防ぐことができるわけであります。

 したがって、私どもは、このたびの必要性、重要性を申し上げたく、ただいま答弁に立たせていただきました。

安倍内閣総理大臣 今までの共謀罪と条約との関係でありますが、我々は、もう一度、かつての共謀罪がなければ果たしてこの条約を締結できないのかどうかということを、これは条約の解釈でございますから、国際法局を中心に議論したところでありますが、外務省の見解として、今回、今検討している形において締結は可能であるという結論に至ったものであります。

山尾委員 今回検討されている法案の概要というのは、メディアには出ていますから、私どももそれは多少把握をしているところがございます。そこで、それをもとに、では総理、ちょっと今の議論を続けたいと思います。

 例えば、十人の者が飛行機をハイジャックするテロを計画した、共謀した、そしてそのうちの一人が飛行機の切符を買った、こういう事例を想定していただきたいと思います、総理。そのときに、切符を買うという行為が共謀プラス準備行為に当たる、恐らくこういう説明をされるんだというふうに思いますね。

 総理にお尋ねします。

 この事例で、切符を買っていないそのほかの九人、共謀にしか加わっていないそのほかの九人は、とがめられる対象に入るんですか、入らないんですか。

金田国務大臣 法案について現在検討中でございますから、その点については、法案が詰まり次第、お答えをさせていただきたいと思います。

山尾委員 確認したいんですけれども、先ほどの総理の答弁で、今検討中の法案によって条約を批准できるというふうに判断を変えた、こういうような御趣旨の話がありましたね。ということは、もうその検討中の法案の中身が固まっているんでしょう。

 もう一回尋ねます。

 これは法務省が出してきた事例です。こういう事案が、今のままでは対応できないんだということで、突然出されてきました。共謀罪、十三年にわたって議論をされていますけれども、突然出てきた三事例です。

 このうちの二つ目を見てください。今申し上げた事例ですね。法務省から出てきた資料です。これについて、では法務大臣にお尋ねしましょう。さっきの事案ですよ。切符を買っていないあとの九人、これはきちっと犯罪あるいは処罰の対象になるんですか、ならないんですか。

金田国務大臣 その前に、一言私の方から申し上げておきたいと思います、ただいまの質問にお答えを申し上げますが。

 国際組織犯罪防止条約締結という必要性は先ほど申し上げました。この国内担保法のあり方につきましては現在検討中であることも申し上げましたが、法案として提出した際には詳細に御説明申し上げますが、基本的な考え方だけはあらかじめ申し上げておきたいと思います。

 犯罪の主体を、一定の犯罪を犯すことを目的とする集団に限定をする、そして……(発言する者あり)ただいま申し上げてからお答えします。限定する、そして準備行為があって初めて処罰の対象とするといったことを検討しているところでございまして、このようなテロ等準備罪というのは、共謀したことで処罰されることとされておりました従前の共謀罪とは全く別物でございます。これを共謀罪と呼ぶのは誤りである、この点は申し上げておきたいと思います。

 そして、先ほど、法務省から示した例について御指摘がございました。

 例えば、航空機の強取罪あるいは組織的な殺人罪、そういうものが、現行法では、例えば三つの例のうちの二つ目と言われましたその例は、テロ組織が複数の飛行機を乗っ取って高層ビルに突撃させるようなテロを計画した事案を例にとって申し上げたい、このように思います。このような……(発言する者あり)ですから、お答えをしております。このような行為が実行されれば、現行法では、組織的な殺人罪、航空機の強取罪、航行中の航空機を墜落させる罪といったものは成立することが考えられます。

 そして、組織的な殺人罪や航空機の強取罪には予備罪がありますが、現行法におきましては、裁判例を見ると、例えば役割分担に従って相当数の凶器や乗客の拘束をする拘束具といったようなもの、必要な装備を持って空港に向かうなどしなければ予備罪の成立を認めるのが難しいものがあると考えられるわけであります。それ以前の行為を処罰することは困難であると考えられるわけでありまして、したがって、そのために、それ以前の段階では、捜査において計画を把握しており、犯人らがその計画に従って搭乗予定の航空機の航空券を予約したといった行為があっても、捜査機関が検挙の対象とすることも難しいという状況になります。

 したがいまして、現行法では的確に対処できないと言えるわけであります。そういう問題点を申し上げました。

山尾委員 質問に全くお答えいただいていないんですね。

 私の方からちょっとお話しします。今の二番目の事例ですね。

 これは、誰か一人が切符を買った、これを準備行為と見れば、共謀した者も含めて検挙の対象にできる、こういうことでしょう。準備行為をやっていない人も、一人が準備行為をやれば検挙の対象にできるようにしなければならない、この判断が正しいかどうかは別として、後ろの席から今、そうですというような声が聞こえていますけれども、そういう政策判断でしょう。それを言うなら、したがって、これは共謀罪なんですよね、ほかの九人は準備行為をしていなくても検挙の対象になるんですから。

 もう一つ、切符を予約した行為。

 切符を予約した行為が悪いんじゃないですね。旅行に行くために切符を予約する、家族と会いに行くために切符を予約する、出張に行くために切符を予約する、これは何ら悪いことではないです。では、なぜこの事例では切符を買った行為が準備行為として検挙されるのか。なぜですか。テロを……(発言する者あり)そのとおりですよ。テロを共謀したからでしょう。

 切符を買った行為が悪いんじゃない。テロを共謀し、そのために切符を買ったから、その時点で検挙できるようにすると言っているんでしょう。結局、何が悪いのか。共謀が悪いわけですね。

 私が申し上げたいのは、結局、共謀罪という……(発言する者あり)ちょっと静かにしてもらっていいですか。共謀罪という生身の体は変わっていないんです。それに準備罪という新しい衣装をつけた、テロ等という新しい帽子をかぶせた。

 私は、共謀罪の議論だってやっていいと思うんですよ。出すなということを私たちの政党は言っていません。でも、少なくとも、この問題の本質、ここは変わっていない。生身の体は共謀罪のままだというふうに言わざるを得ないんです。

 もう少し根拠を言いましょうか。

 今、法務大臣は、全く新しいんだ、こういうふうにおっしゃいました。組織的犯罪集団、そういう絞りをかけているとか、準備行為という概念を入れたとか。これは、二〇〇六年に共謀罪の修正案として自民党みずからが出してきたものとほとんど同じじゃないですか。そのときに、テロ等準備罪だとあなた方の政党はおっしゃいましたか。共謀罪の修正案として出してきたんじゃありませんか。

 そのときの自民党は今よりもまだ誠実だったのではありませんか。共謀罪は共謀罪である、ただやはり、組織犯罪から国民を守るという要請、一方で、それをやり過ぎると……(発言する者あり)ちょっと静かにしていただいていいですか。それをやり過ぎると冤罪の危険、やっていない人にまで逮捕や捜索の手が及ぶ、そういう危険性、この両方の要請をきちっとみんなで議論しましょうと。まだそのときは、その当時の自民党は誠実だったから、共謀罪を粉飾することなしに、少なくとも、少しでも解釈を絞り込むように努力をしよう、共謀罪の修正案として準備行為という解釈、概念、そしてできるだけ絞り込むという考え方、団体について。それを、同じようなものを出してきて、今度は何とおっしゃっているんですか。全く違うものだと。

 私は、こういうやり方は、誠実でないし、国民に対してひきょうだと思います。(安倍内閣総理大臣「いや、それは間違いです、全くの間違いです」と呼ぶ)

 全くの間違いですと総理がおっしゃっているので、どうぞ。

安倍内閣総理大臣 それは全くの間違いであります。

 かつての共謀罪は、いわば、共謀して何人かが集まって合意に至ったらそこで共謀罪になるわけであります。今回のものは、そもそも、犯罪を犯すことを目的としている集団でなければなりません。これが全然違うんです。いわば、集団として、組織として構成されていなければいけないんです。それがまず第一ですね。

 そして、もう一つ、準備を実際に行わなければ、犯罪を目的とした組織があって、それが合意をして、そして犯罪の準備をして初めてこれは罪を構成することになります。

 ただ、もちろん今、まだ我々、党内でこれは手続を終えていませんし、与党の合意を終えていませんから詳細についてお答えする立場にはありませんが、今法務大臣もあそこまで答えられましたから補足的にお答えをさせていただきますと、つまり、先ほどの例ですね、切符を買った。いわば切符を買っただけでは、もちろんこれは罪になりません。

 そもそも、これは、例えば犯罪を行おうというテロ組織があって、それは、飛行機をハイジャックしていこうという綿密な計画を立てる。そして、爆弾を持ち込む、あるいは武器を持ち込んでハイジャックをして建物に突っ込むという計画を立てる。これは、例えば共謀罪では、この段階でいわば共謀していますから、アウトになるわけであります。

 しかし、これを実際に準備をする、この準備をする中において集まった人たちは、これは組織ですから、それぞれの役割があります。予約をする人もいれば、あるいはまた、他方、さまざまな資金を調達しなければいけない人もいます。実際に飛行機をハイジャックする人もいます。そういう中において、この予約をした、これは準備とみなし、いわばこれは構成され、そしてここで我々としては、ほかの人も含めてこれを一網打尽にできるわけであります。つまり、テロを未然に防ぐことができる。

 今までの準備罪だけであれば、今までの判例であれば、例えば実際に武器等を持っていよいよ現場に行こうとしている段階でなければ捕まえられないわけですから、事実上、これは犯罪を未然に防ぐことができない可能性がある。このことによってたくさんの人たちが死ぬ危険性があるのは事実じゃないですか。ですから、そこにちゃんとふたを閉めなければならないというのが今回の私たちのこの新しいテロ等準備罪でございまして、それを今度やろうとしているわけでございます。

 そして、今、山尾議員がこだわっておられる前の共謀罪との違いにおいては、共謀罪というのは、まさにここで、例えば、そんな組織的なものでなくても、ぱらぱら集まって今度やってやろうぜという話をしただけでこれはもう罪になるわけでありますが、今回は、まさにそれを目的として、しっかりと目的を持って、そうした犯罪を目的とした組織ということを認定されなければならないわけであります。

 組織として認定される、そしてもう一つは実際に準備を行う、この二つをもって、これはテロも未然に防ぐことができる。これができなくていいと思っておられるんだったら別ですよ。我々はそうは思わない。しっかりと私たちは対応しなければならないと思うわけであります。

 予備罪というものをやればいいじゃないかということをおっしゃる人がいますが、予備罪の場合は、先ほど申し上げましたように、凶器等を持ってその場に行こう、飛行場に行こうという、飛行場に行く途中でなければこれは捕まえられないんですから。そこでは、もしどこに行くかということが把握できていなければもうハイジャックされてしまうことになってしまうということを申し上げておきたいと思います。

山尾委員 安倍総理は過去の共謀罪の議論を余り詳しくは御存じないということが今わかりました。ぱらぱらと集まって、やろうぜと気勢を上げたって、過去の共謀罪でもならないということは皆さんが繰り返し繰り返し答弁されてきたことなんですね。ちょっと勉強不足だと思います。

 それで、組織的犯罪集団に限ったということをおっしゃいますけれども、過去の答弁……(発言する者あり)ちょっと静かにしてもらっていいですか。過去の……(発言する者あり)いいですか。よろしいですか。

 過去の法務省の答弁ですけれども、こう言っているんですよ。犯罪を共同の目的とする組織的犯罪集団だけが対象となるんだから、一般の方々が対象になることはあり得ない。今総理が言っていることと同じことを、過去の共謀罪における、法務省も大臣も繰り返し繰り返しおっしゃっているんです。だから私は申し上げている、共謀罪という裸の中身は同じじゃないかと。新しい衣装をつけて新しくなったと言ってみても、今おっしゃったことは全く過去のこれまでの答弁と同じなんですね。

 それで、申し上げますね。私たちも、テロについては万全を尽くす必要があると思いますよ。今この事例をおっしゃいました。総理は、法務大臣より明確におっしゃった。今の趣旨でいくと、切符を買うというような準備行為を全くしていないその他の人々も、共謀したということをもってしっかり検挙できるんだ、やれるようにしなきゃだめなんだ、こういうことをおっしゃいましたね。一網打尽にするとおっしゃいましたね。だったら、どうして個別の共謀罪をつくらないんですか。

 今、我が国には個別の共謀罪があるんですよね。個別の共謀罪十三、陰謀罪八、予備罪三十七、準備罪八。このさっきの三事例は、本当に万全の体制を尽くさなければならない大変なことじゃないですか、一網打尽にしないとと。だったら、どうして個別の共謀罪をつくらないんですか。

 例えば、今話題になっているこの丸二の事例、これはまさに、二〇〇一年の九・一一のテロを想起させるテロ行為であります。一番上の丸を見てください。これはまさに、日本で起きた一九九五年のサリン事件、これを想起させるテロ事件であります。こういうところに対処しなきゃならない。

 総理が衆議院議員になられたのは一九九三年、九五年にサリン事件が起き、二〇〇一年、九・一一が起きた。それぞれの事件で、だったら、こういうことを、何とか国内法を担保しなきゃならないとわかられたはずです。そして、今の総理の御答弁だと、今ある現行法ではできないんだと。では、そのときからできなかったんですね。では、なぜ十年もほっておかれたんですか。

 そして、二〇〇六年、共謀罪、三回目、廃案になりました。百歩譲って、このときまでは、この条約を批准するために一網打尽の、まるっと共謀罪をつくればこういうものもできるんだ、待ってました、こういうことをおっしゃるとしましょう。でも、もう二〇〇六年、三度目の廃案になったら、さすがにおわかりになったんじゃないですか。

 こういった事案を、条約の批准と抱き合わせで、この三事例にとどまらない、当時でいっても六百十を超え、今でいうと六百七十六を超える、こういう全体を包含する共謀罪、これをつくるのは国内の国民世論からして難しい。では、どうして、二〇〇六年以降、これは難しい、時の小泉総理がこれはもうやめようと一時停止したんですから、何でそれをほっといたんですか、その後十一年も。

 私たちは、まずは、先ほど申し上げたような現行法でどこまで、本当に検挙しなきゃならない時点で適用ができるのか。それは相当できると思いますよ。私だって検事をやっていましたから、ある法律を使って、何かが起きたときに、何が今の法律の中で、当然適法な解釈の中でですよ、やれるのか、やれないのか。そして、やれないという判断を総理はされている。では、どうしてほっといたんですか。

 今からでも遅くない。個別の共謀罪、こういうことを考えたらいかがですか。どうですか。

金田国務大臣 先ほどから申し上げておりますが、このたびの……(山尾委員「先ほどから申し上げたことなら結構です」と呼ぶ)いやいや、私が申し上げていることをもう一度……(山尾委員「先ほどと違う質問をしているんだから」と呼ぶ)実行の準備行為が行われた段階で的確な処罰が可能となって、テロの未然防止に資することになる。

 しかし、過去のそういう状況の中で、我が国において、共謀罪という考え方と全く違う考え方をただいま申し上げているわけでありまして、国内の関係機関が連携して、やはりテロを含む組織犯罪対策に尽力するという観点からいけば、TOCの国内担保法案としては、従来の犯行の計画に加えて、実行の準備行為が行われた段階で的確な処罰が可能となるんだということであります。

安倍内閣総理大臣 ただいま金田大臣から答弁をさせていただきましたように、先ほどの私の答弁も補足させていただきますと、まさにこれは、一定の犯罪を目的とする集団に今度は限定をしているわけでございます。そこが大きな違いであります。かつ、いわば準備を始めるということがあわさる。

 では、何で今まで放置をしていたか。事実、それは、私たちがそれを反省しているからこそ今回出しているわけであります。

 残念ながら、居酒屋で上司の悪口を言ったら捕まる等々の流言が流布されたことによって極めて反発が大きかった中において、歴代これを諦めてきたのは事実であります。民主党政権時代もやってこなかった。

 しかし、今、穴があるのは事実でありますから、この穴は埋めなければいけないということであって、それは、今ある準備罪等を、例えば未遂をぐっと広げるというのはまさに無理があるわけでありまして、そこで、我々はこれを今しっかりと議論している最中でありますから、詳細はちゃんとこの法案が提出をされた後に法務大臣と議論していただきたい、こう思うわけでありますが、私たちは、条約との関係において、それを締結するに足るのは今私たちが準備している法律であるということは申し上げておきたい、このように思います。

山尾委員 今総理は、穴があるなら何とかしなければならない、準備行為をずっと引き伸ばしていくのはよくないとおっしゃった。私もよくないと思いますよ。

 なぜよくないと思うか。そういった概念を制約せずに拡大でぐっと伸ばしていくと、罪刑法定主義にも反するし、明確性の原則にも反するし、国民が、自分が何をやったら処罰され、何をやったら大丈夫なのか、そのラインが見えなくなるからだめなんですよ。

 だから私たちは、同じ理論を持って、個別で対応しましょうと言っているんです。そんな共謀罪というような、六百七十六も対象になるような、そんな一網打尽の、まるっと共謀罪みたいなもので対応するんじゃなくて、一つ一つ丁寧に、穴があるならそれを埋めていきましょう、個別法をきちっとつくっていきましょう、こういうことを申し上げているわけであります。

 私、もう一点お伺いをしたいんですけれども、私たちも条約を批准するのは大事だと思っているんです。私たちはずっと、条約が求めている、明文に、全てそのままきっちり国内法が対応しなければ本当に批准できないんですか、主権国家としてしっかり条約を解釈して、今の国内法、現行法で批准できるかどうか、それを探ったらいいんじゃないですかと申し上げてきた。

 総理、お伺いをします。

 先ほど総理は、批准をできるんじゃないか、ちょっとこんな話をおっしゃいましたね。閣議決定があります、犯罪の性質で選別をしたらこの条約は批准できないと。平岡秀夫議員の質問主意書に対する閣議決定です。これは変えられたんですか。閣議決定を変えなければ、今の総理の答弁と矛盾するんです。選別したら批准できないというのがこれまでの閣議決定です。

岸田国務大臣 御指摘の国際組織犯罪防止法、TOC条約ですが、我が国としまして、憲法九十八条の条約の誠実履行義務に鑑みても、しっかりとした担保法をつくった上で締結しなければいけない、これは基本だと思っています。

 そして、そのために必要な担保法として何が求められるかという議論をずっと続けてきた、これが国会での議論の経緯だったと思っています。そして、過去の議論の経過をしっかりと振り返りながら、国際条約の担保法として必要最低限何が求められるか、このぎりぎりの議論を行ったわけであります。

 そして、かつては、内容において線を引いて、担保法としてここまで必要だという議論を行いました。しかし、その経緯もしっかり踏まえた上で、今度は主体そして準備行為、この二つの観点から改めて整理をして、どこまで必要なのか、今現在、法務省と外務省でぎりぎりの調整、検討を続けている、これが現状であります。

 こういった考えに基づいて、今改めて、この条約を誠実に履行するために求められる担保法はどこまで必要なのか、この議論を行っているのが政府のありようであります。

山尾委員 私たちがずっと主張してきたことに近寄っているのかもしれません。

 だったらば、今ある現行法でもこの条約を批准できるのではないか、そこをスタートラインにするべきだというふうに私は思います。

 ここにあるように、犯罪の実行に着手する前段階で処罰を規定しているものがこれだけあります。六十六ですね。共謀罪が十三ある、陰謀罪が八ある、予備罪が三十七ある、準備罪が八あるんです。これで批准できるのか、できないのか。まずここの検討から入るべきだというのが私たちの考え方なんです。

 ここで、一つ数字を出しましょう。

 百八十七、この条約の批准国があります。このうち、新しく共謀罪をつくってこの条約を批准した国は何カ国あるんですか。

岸田国務大臣 まず、先ほどの議論について、今委員がおっしゃったことについて申し上げるならば、担保法としてどこまで必要なのかということについては、TOC条約第五条に定められております重大な犯罪の合意罪そしていわゆる参加罪、このどちらかを犯罪とすること、これが条約上明確に義務づけられているわけですが、その中で、その重大な犯罪の合意罪の一部を御指摘の犯罪は満たすことになりますが、全体を満たすことにはならない、こういった判断に基づいて今議論を行っています。

 そして、今申し上げました、重大な犯罪の合意罪そして参加罪、少なくとも一つを犯罪とすることを明確に義務づけている、これが条約のありようでありますが、この重大な犯罪の合意罪に関して新たに国内法を整備した国としてノルウェー及びブルガリアがあります。そして、参加罪に関して新たに国内法を整備した国としてニュージーランドあるいはオーストリア、こういった国があります。

 それ以外に、従来から重大な犯罪の合意罪を法制化していた国、米国や英国がありますし、従来より既に参加罪を法制化していた国としてドイツ、フランスがある、こういった状況を把握しております。

山尾委員 百八十七の批准国のうち、新しく共謀罪をつくった国はノルウェーとブルガリアの二カ国だけである。百八十七分の二です。一%に満たないんです。本当に新しく共謀罪をつくる必要がどこまであるのか、しっかり検討すべきだと申し上げています。

 そして、岸田大臣、今まで外務省は、このペーパーについても、共謀罪を新しくつくった国というふうに書いてペーパーを出していますので、そんなに総理に気を使って合意罪とか言いかえる必要は私はないというふうに思います。

 条約を批准するためにどのハードルまで国内法が担保されるべきか、これは大事な大事な議論なんですね。今までは、私たちがどれだけ言っても、水も漏らさずという回答だったわけだ。懲役四年以上の刑と要求されているんだから、それを満たす全てだ、今でいえば六百七十六全てだと。でも、それが、やはり今回、公明党の皆さんのお声があったんでしょう、新聞記事を見ると、三百になった、いや百七十六になると。

 バナナのたたき売りじゃないんだから、どこまで下げて批准できるのか。それは結局、政府の恣意的な判断でハードルというのは上がったり下がったりするんですか。そして、今の岸田大臣の答弁を聞いていても、では、その明確な判断の基準、物差し、何を物差しにしてよしとするのかということは、いまだに明らかになっていません。

 私の方から二つ申し上げます。

 一つは、この条約を批准している国の中でも、今、岸田大臣がおっしゃった肝の五条も留保をしてこの条約に入っている国があります。アメリカです。アメリカは、アメリカの中の三つの州において、要求されている共謀罪の一部しか州内の犯罪の対象となっていません。

 一方で、やはり条約が要求しているというふうに日本政府が解釈をしている、国と国をまたぐというようなことを条件にしちゃいけませんよというふうに言われていますよと政府は言っていますね。でも、セントクリストファーネービスという国は、その国と国をまたぐことが必要だというふうに主権国家として判断をして、条約が要求している以上の基準を自国内の担保法としてつくっております。

 そのほか、この前外務省から出てきた資料でありますけれども、国連の事務総長のもとへの報告書で明らかになったことですけれども、要求されている全ての犯罪を共謀罪の対象としているわけではないとみずから申告している国も少なくとも五カ国ある。ブラジル、モロッコ、アンゴラ、メキシコ、エルサルバドル。

 これだけさまざまな国が主権国家として判断をし、場合によっては留保をつけながら、自分の国の刑法あるいは国内法の基本に反しない形でこの条約を批准できないだろうかと考え、そして、その結果、新しく共謀罪をつくった国は百八十七分の二なんです。この数字を受けとめていただきたい。

 もう一つ。では、日本のほかの条約を見てみましょう。

 例えば、子どもの権利条約。これはずっと、いわゆる嫡出子と非嫡出子、子の相続分が違うのはだめですよと言われながらも、そこは無視したまま条約に入ってきたんですね。あるいは、人種差別撤廃条約。これも、いわゆるヘイトスピーチに刑事罰をもって対応すべきということを要求されているけれども、それに応じていないまま入っているんですね。やはりそういうダブルスタンダードはおかしいんじゃないかと私は思います。

 むしろ、今言ったような、子どもの権利だとか人種差別禁止だとかヘイトスピーチだとか、人権を守るための条約の問題について、必ずしも新しい法律は要らないという態度をとり、一方で、今回のように、権力側の権限をどんどん拡大するような条約については、留保はつけない、新しい法律が、共謀罪が必要不可欠だ、こういうダブルスタンダードはおかしいのではないかと思いますけれども、総理、いかがですか。

岸田国務大臣 他国においてそれぞれの事情によって例外が存在するのではないか、こういった御指摘がありました。

 例えば、米国について御指摘がありましたが、米国においては、基本的には連邦及び州法において幅広く共謀罪が設けられています。そして、本条約上の義務が国内的にしかるべく担保されているという実情がありますので、今御指摘があった留保を行ったとしても条約の趣旨に反しない、こういった理解が行われています。

 それ以外の国も、いろいろな事情がありますが、少なくとも基本的に、条約を誠実に履行するためにしっかりと担保法をつくっているという説明をどの国も、百八十七カ国全てが行っています。

 国連加盟国で今締結していないのはあと残り十一カ国だけでありますから、ほとんどの国が自分の国はこの条約をしっかり誠実に履行しているという説明を行っています。その評価についていろいろな議論があるのは御指摘のとおりかもしれませんが、どの国もこの条約について誠実に向き合っているということについては一致をしていると思います。

 我が国も、憲法九十八条との関係において誠実に担保法を用意する、これは当然のことだということで、今ぎりぎりの準備をしているということであります。

浜田委員長 山尾志桜里君、時間が来ておりますので、よろしくお願いいたします。

山尾委員 最後に総理に申し上げます。もしお返しがあればありがたいと思いますけれども、総理はこの前の本会議で、本条約を締結することができなければ、東京オリンピック・パラリンピックを開けないと言っても過言ではありません、こういうことをおっしゃった。その後の答弁では変えましたね。ここを削られました。

 私、本当にお願いをしたいんですけれども、生身の共謀罪をしっかり議論しましょう。そして、準備罪という衣装をつけたり、テロ等という冠をつけたり、そうやって本質的な議論をごまかさずに、本当にこれが必要なのかどうか議論するべきだと思います。

 そして、テロのためとかオリンピックのためとか、これは違いますよ。この条約がスタートしたのは二〇〇一年の前だし、この条約について日本の議論がスタートしたのは二〇〇三年。日本のオリンピックなんというのが議論に上る前の話です。そうやって目的をすりかえて、共謀罪から目をそらして国民をだまそう、そういうひきょうなやり方はやめていただきたいとお願いします。(発言する者あり)

浜田委員長 静粛に願います。

安倍内閣総理大臣 お答えをいたします。

 まず一つは、実際、では、国内のテロを防ぐために穴があるのかどうかということについては、問題があるということは明らかになったんだろうと私は思いますよ。

 そして、条約を締結するに足るかどうかということについては、外務大臣から答弁をさせていただいたわけでございまして、私たちは、新しい法整備をしなければ条約を締結することはできない、そういう解釈をしております。

 その中で、犯罪を絞り込んでいく中においては、当然、どういう理由で線引きができているかということは、これはできてからしっかりと法務大臣がお答えをさせていただくところであります。

 そして、オリンピックとの関係でありますが、オリンピックのような国際的なイベントをテロリストは狙ってくるわけであります。かつて、ミュンヘン・オリンピックで大きなテロがありましたね。ブラックセプテンバーの事件があった。つまり、東京オリンピックについても、そういうテロ組織が自分たちの主張を世界に拡散するために狙ってくる可能性があるんですよ。

 そういう中にあって、法制上、今私が申し上げましたようなああいう重大な穴があるのであれば、埋めるのがホスト国の責任なんですよ。そういう穴を埋めなくてもオリンピックを開けばいいという考えがあれば、それはまた別ですよ。私たちはそういう考え方はとりません。そのことを申し上げて、この議論を終えたいと思います。

山尾委員 重大な穴があるなら、個別で埋める方が適切に対処できると申し上げているんです。

 以上、議論をさらに続けたいと思います。

浜田委員長 この際、後藤祐一君から関連質疑の申し出があります。玉木君の持ち時間の範囲内でこれを許します。後藤祐一君。

後藤(祐)委員 民進党の後藤祐一でございます。

 本日は、半年前、相模原市、相模湖で、津久井やまゆり園で十九人の方が亡くなり、二十七人の方が重軽傷を負った、あの凄惨な事件から半年でございます。私は、まさに地元の選挙区でございます。このお亡くなりになられた方々にお悔やみを申し上げるとともに、今も心に傷を負う入所者さん、そして家族の皆様、一日も早く安心した暮らしを取り戻せるよう、また二度とこういうことが起きないよう、政府に対してもしっかりと万全の対策を講じていただくことをお願い申し上げまして、質疑に入りたいと思います。

 まずは、トランプ大統領が就任して、日本の安全保障、特に自衛隊は一体何をすることになるのか、これに対して大変心配の声が聞かれます。今も共謀罪の議論を山尾さんがされておられましたが、共謀罪で防げるテロよりも、イスラム国で戦争が起き、それに日本が何らかの形でかかわったときにイスラム国が日本を敵視して日本国内でテロを起こす、ローンウルフといったものもあります、こっちの方がよっぽど怖いんじゃないか。そういう観点から、このイスラム国への後方支援について申し上げたいと思います。

 このパネルにありますように、上は、二年前、あの安保法制の始まる前ですね。ISIL、イスラム国に関しましては、我々がここで後方支援するということはありません、これははっきり申し上げておきたいと思います、こうおっしゃっておられました。

 これに対して、おととい、参議院の本会議で、これは蓮舫代表の質問に対するお答えで、政策判断として我が国はISIL軍事作戦に参加する考えは全くなく、ISILに対する軍事作戦への後方支援を行うことも全く考えておりませんと。

 これは同じなんでしょうか、違うんでしょうか。この軍事作戦への後方支援というのは、あらゆる後方支援の中でも軍事作戦への後方支援と何らか限定したものなんでしょうか。この二年前の上の記者会見は、ISILに関するあらゆる後方支援ですよね、これと全く同じ内容なのかどうか、総理にお答えいただきたいと思います。

    〔委員長退席、菅原委員長代理着席〕

安倍内閣総理大臣 政府としては、従来からお答えをしているわけでありますが、ISIL軍事作戦に参加する考えは全くないということと、ISILに対する軍事作戦への後方支援を行うということも全く考えていないということでございます。

後藤(祐)委員 お答えいただいていないんですが、違うということでしょうか。

 では、ISILに関して、日本は後方支援をしないと御答弁いただけますか。

安倍内閣総理大臣 いや、もちろんISILに対しての後方支援というのは……(後藤(祐)委員「関しましてと今申し上げました。関しましてです」と呼ぶ)ISILに関して。では、例えばISILに関してといえば、例えばISILを生み出す原因というのはありますね、それは貧困であったりということがあります。そういう貧困や暴力的過激主義が発生する根本に対する対策等ということがこのISILに関するということになれば、これは関するわけでありますが、我々はそれは当然やっていくわけでありますが、私が申し上げておりますのは、いわば軍事作戦への後方支援を行わないということであります。

後藤(祐)委員 そうすると、この二年前の会見と解釈を変えたということでよろしいですか。

安倍内閣総理大臣 平和安全法制にかかわることとしてのいわば対ISILの作戦についてはこれは考えていないということでありますが、基本的に、それは当然、軍事作戦に対する後方支援はしないということになるわけであります。

後藤(祐)委員 基本的にという言葉が挟まった。

 しかも、軍事作戦以外の軍の行動というのはいろいろあるんですよ。例えばアメリカ軍がイスラム国と戦争する、戦闘行為に入る前に例えば移動したり、兵たんを運んだり、いろいろなことが起きますよね。そのどこからが軍事作戦かなんて微妙ですよね。あの新しい安保法制では、それら全部に対して後方支援できるんですよ。

 この国際平和支援法というのは、テレビをごらんになっている方に少し解説をしますと、イラク戦争のとき、小泉総理でしたね、あのときはこういう法律がなくて、このイラク戦争に日本がどうやって参加するか、個別に法律をつくったんです。その結果、サマワというところで、少し離れたところで給水、すなわち水を提供するということを中心としたイラク特措法、特別措置法というものをつくって対応しました。ところが、二年前の安全保障関連法案の中の一つ、これは新法ですが、この国際平和支援法というのは、一々そうやってつくっていると時間がかかるから、恒久法としてあらかじめこの国際平和支援法というのをつくって、ああいった事態が発生した場合にはこの法律をすぐ適用して行けるようにしましょうということでできた法律でございます。

 今、総理は、安全保障法制との関連でおっしゃいました。イスラム国に関連して後方支援を行わないということに関して、少なくとも国際平和支援法に基づく、別表第一というのは例示ですけれども、例えば給水も入っています、給油も入っています、あるいは下の方の航空機の離発着に対する支援、いろいろなものが入っています、この国際平和支援法に基づく後方支援は行わないということでよろしいですか。

安倍内閣総理大臣 いわばサマワの例とISILの現状とは大分違うわけでありまして、まさにイラクに対する、イラク戦争が終わった後ですね、基本的には、イラクの再建の中で、大変治安が悪い中で、国際社会の中において有志国がイラクの再建に協力をしたものでございます。

 そして、私が申し上げているのは、これは従来から立場が変わらないわけでありますが、ISILに対する軍事作戦で、軍の移動等も軍事作戦の一環でありますから、それを我々が行うという政策判断はしない、それも含めて軍事作戦に対して後方支援をしないということは明らかにしているとおりでございます。

後藤(祐)委員 御質問にお答えください。

 イスラム国に関連して、これは米国を含めて世界各国が戦争するということがあり得るでしょう、そのときに我が国は国際平和支援法に基づく後方支援は行わないということでよろしいですか。二度目です。

安倍内閣総理大臣 イスラム国に対して国際社会が軍事作戦をするということについて、この作戦に対して後方支援をするということは、我々の平和安全法制を使ってそれを行うということはないということは先ほど申し上げたとおりでございます。

後藤(祐)委員 三度目になりますが、軍事作戦に限定していないんです、国際平和支援法は、総理。軍事作戦に限定していないんですよ。イスラム国に関連して、戦争というところまで至るかどうかはともかく、世界各国の軍が集まってくる、いろいろな段階があるでしょう、イスラム国に関連して国際平和支援法に基づく後方支援は行わない、はっきり言えますか。今のお答えははっきり言っていません。

 軍事支援に対するものでないものも含めて、国際平和支援法に基づく後方支援は行わないということでよろしいですか。

安倍内閣総理大臣 イスラム国に対して、これは仮定の話でありますから、本来であれば仮定の話にはお答えしませんが、しかし、政府の立場としては、どのような状況かは明確にしていかなければいけないわけでありますが、基本的に、何回も申し上げておりますように、イスラム国に対する軍事作戦が行われたときに、私たちは後方支援は行わないということは申し上げておきたいと思います。

 そして、ではイスラム国に対してどのような手当てをしていくかということにおいては、例えば周辺国の安定、周辺国を安定させていくということは現在もやっているわけでありますし、周辺国を支援していくということは当然我々はやっているわけでございます。

 ですから、私が申し上げていることは、イスラム国に対する軍事作戦について後方支援はしないということが全てであります。

後藤(祐)委員 国民の皆様はよくわかったと思います。

 来週の週末、マティス国防長官が来られます。このマティス国防長官は、あのイラク戦争のときの司令官ですよ。軍事作戦なのか、そうでないのか、このあたりが大きな議論になると思いますが、アメリカに押し切られないでくださいね、総理。アメリカの言いなりにならないでくださいね。

 本当は、まさにこのイスラム国戦争に対して日本としてどうするかというのは、この国会の場で法律をつくって議論すべきなんですよ。だから、我々は安保法制のとき、これは危ないと言ったんですよ。特措法がよかったんですよ。安全保障法制というのは実はそういう意味があったんだと。

 アメリカというのは強い国です、交渉も強い国です。しかも、トランプ大統領は、高い球を投げて、一〇〇の球を投げて、日本としては五〇ぐらいにおさめたいと思っているものを八〇にも九〇にもしていく、そんな大統領の可能性がありますよ。そのときに、今までの、安保法制の前であれば、この国会の場で例えばイスラム国特措法をつくる、それは国会で大変なんです、マスコミも大変なんです、国民の反対もあって大変なんですという、まさに国会が、国民世論がアメリカに対する交渉の一つのカードになっていたんです。そのカードを最初にテーブルに並べちゃって、法律上はできますよ、そして、今の総理のお言葉にあるように軍事作戦というよくわからない修飾語をつけて、マティス国防長官とどんな交渉をするのか。

 ぜひ、これは後でいろいろ見えると思いますが、実際これをやる場合には国会承認が必要ですから、丁寧な国会承認をお願いしたいと思います。

 では、次に行きたいと思います。

 総理、最初にも申し上げましたが、イスラム国戦争に日本が後方支援を行わない、これがテロを防ぐための一番、今、目の前でできることなんですよ。共謀罪をつくってどの程度防げるのか、それは多少防げるところはあると思いますよ。でも、イスラム国は世界じゅうにテロリストを、各国に置いているわけですよ。知らないうちにテロリストになっちゃうわけですよ。これを抑止力では防げない。抑止力ではテロは防げないんです。イスラム国の思想に共鳴した日本人だってあり得るわけですよ。そういう方が日本でテロを起こすのを防ぐ、それはイスラム国の戦争に参加しないことなんですよ。ぜひそのこともよくお考えになっていただきたいと思います。

 次に行きたいと思います。

 マティス国防長官が来られます。在日米軍経費の話が恐らく話題になるでしょう。トランプ大統領は日本に対して、もっと負担せよということを大統領選の真っ最中からおっしゃっておられましたが。

 これは稲田大臣に、事実関係なのでお聞きしたいと思いますが、日本は在日米軍駐留経費のうちどれだけ負担しているかという数字、これはよく、二〇〇二年のアメリカがつくった資料をもとに、七四・五%という数字がいろいろなところで使われます。マスコミの方もよく使っておられますが、随分古いですよね。しかも、これは、防衛省に確認したら、余り根拠のある数字じゃないと。

 それで、確認していただきました。二〇一五年度における在日米軍駐留経費のうち、日本はどれだけ負担しているか。これはテレビでは皆さんちょっと見えなくて申しわけないんですが、皆さんに配付してあると思います。日本側の負担はFIP、提供施設整備というものを含めると八六・四%、これを除いても八四・九%、つまり約八五%程度は既に負担しているという、これは計算していただいた数字ですが、これで間違いないでしょうか、稲田大臣。

    〔菅原委員長代理退席、委員長着席〕

稲田国務大臣 ただいまの委員の御質問にお答えする前に、先ほどのISILに関して後方支援をしないということは、総理は平和安全法制の前後を通して一貫しておっしゃっているわけであります。したがいまして、一般法ができたかどうかと先ほどのISILの後方支援に参加しないということとの関係では、私は全く関係がないというふうに思います。

 そのことを申し上げた上で……(発言する者あり)日本は主権国家ですから、主体的に、ISILには後方支援しない、非軍事分野で参加をするということを一貫して総理はおっしゃっているわけであります。

 その上で、今の委員の質問に対してお答えをいたしますが、今委員がお配りになっているその資料ですけれども、昨年十一月二十五日の安保委員会の前日に、後藤委員から、在日米軍駐留経費負担を含め、日本側が負担している在日米軍関係経費の経費項目一つ一つについて日本側負担割合を数値化するよう求められたのに対して、防衛省において試算したものでございます。

 したがいまして、この在日米軍駐留経費負担について、日本側が負担をしている経費項目のみについて基づいた割合の試算をしており、在日米軍の駐留に関連する全ての経費がベースとはなっていない、すなわち、分母の中に含まれていないものもあるということでございます。例えば米軍が実施する施設整備に係る経費は含まれていないなど、分母について、含まれていないものがありますので、必ずしも正確な負担割合をお示ししたものではないということでございます。

後藤(祐)委員 この資料は防衛省のつくった資料ですよ。この資料は防衛省のつくった資料なんですが、施設整備関係も含めた数字でいいますと八六・一ですとか、あるいは、その中でFIPを除くと八四・七という数字。配付資料は防衛省のつくった数字なんですが、この資料が違うということなんでしょうか。これは防衛省の資料ですから、稲田大臣に。この資料の数字が間違っているということなんですか。

稲田国務大臣 委員会の中でも申し上げましたように、数字自体は防衛省がつくったものでありますので、数字が間違っているということはありません。

 しかしながら、その分母になる、在日米軍の経費の分母が必ずしも全て入っているわけではなくて、日本側が負担している経費項目のみ、それを分母に入れているということを申し上げたということでございます。

後藤(祐)委員 防衛省の資料でそう言われちゃうと困ってしまうんですが、七五という数字は、少なくともやや古い数字で、正しい数字でないので、しかも、これはマティス国防長官が来る上で非常に大事な数字なので、在日米軍関係経費に関して実際日本はどれだけの負担をしているのか、いろいろな条件はあると思います、アメリカ分のところが計算しにくいという条件づけは幾つかあってもいいですから、資料をこの委員会に提出していただくよう、委員長に御配慮いただきたいと思います。

浜田委員長 その前に……(後藤(祐)委員「委員長にお願いしております。総理の答弁は求めておりません」と呼ぶ)

安倍内閣総理大臣 ちょっと補足説明させていただきますと、防衛省の方では、稲田大臣が答弁させていただいたように、後藤委員からお話をいただいたその項目において駐留軍経費の母数を決めて、そして先ほどのパーセンテージを出したところでございますが、米軍側が言っておりますのは、いわば駐留軍に経費としてどれぐらいかかっているかというのは米側の計算が別途あるわけでございまして、米側の計算においては、日本側は七四・五%とされているわけでございます。

 つまり、これは分母に何を入れるかということでございますが、実際に駐留を行っている米側が入れている分母とはちょっと違うわけでありますが、その結果、米側が出しているものは七四・五%。

 しかし、いずれにいたしましても、韓国は四〇%、ドイツ三三%、イタリア四一%でありますから、日本は高い水準のホスト・ネーション・サポートをしているということでございます。

後藤(祐)委員 その七四・五%という二〇〇二年の数字は、分子、すなわち日本側が払っている経費もどこまで含まれているのかわからないと防衛省はおっしゃったんですよ。むしろその方が曖昧な数字なんですよ。

 いずれにせよ、二〇一五年度なり、二〇一六年度なり、近い年度の数字、いろいろな条件づけがあって結構です、これを防衛省としてこの委員会に提出していただくよう、委員長、お取り計らいをいただきたいと思います。

浜田委員長 理事会にて協議いたします。

後藤(祐)委員 少し時間がかかってしまいましたが、総理にお願いしたいのは、そんな数字の話じゃなくて、マティス国防長官が来たとき、あるいはトランプ大統領にお会いしたときに、これをもっと出してくれという要求に対して、きちんと、それはなかなか難しいと。

 つまり、残っている分はどこがあるかというと、光熱水料とか、本当にシャビーなところなんですよ。本当に出すべきところは日本が一〇〇%負担している項目がほとんどなんですよ。だから、こんなところをさらにというのは非常に理不尽な要求であると私は思います。

 在日米軍経費に関してアメリカからさらなるものを要求されたとき、これはお断りすべきと思いますが、総理、お会いになると思います。マティス国防長官にもお会いになると先ほどおっしゃっておられました。あるいはトランプ大統領にお会いしたときに、これについては難しいというふうに、日本の国益を守っていただけますか。

安倍内閣総理大臣 トランプ大統領は、候補者としては駐留軍経費について発言をしておられましたが、大統領に就任後は日本に対してその発言をしておられない、このように承知をしておるわけでございます。

 いずれにいたしましても、日米同盟は我が国の外交安全保障の基軸であり、トランプ政権との間でも、信頼関係の上に、揺るぎない日米同盟をさらに確固たるものにし、そして現在の日米のきずなを強化していきたいと考えております。

 そして、トランプ政権の在日米軍駐留経費に係る立場について予断を持ってコメントすることは差し控えたいと思いますが、アジア太平洋地域の安全保障環境が厳しさを増す中において、日米同盟はアジア太平洋の平和と繁栄の礎として不可欠な役割を果たしているわけでありまして、大統領との例えば首脳会談を行った場合の最大のテーマは、これはまさに日米同盟は揺るぎないということを内外にはっきりと示すことであります。それ自体がしっかりとした抑止力であろう、私はこのように思います。

 同時に、日米安保体制は、日米のいずれかのみが利益を享受するような仕組みにはなっていないわけであります。したがって、米軍の駐留経費についても日米間で適切な負担が図られるべきものだ、このように考えております。

後藤(祐)委員 適切、適正な負担といったら、もっと負担しなきゃいけなくなる方向になる可能性があるということじゃないですか。

 総理、アメリカ言いなりにならないでください。

 まず第一に、日米FTAの交渉について、全くできないということではないという答弁が先ほどございました。これが一つ。二つ目は、イスラム国と戦争になったときに後方支援するのかしないのか、微妙な答弁がありました。これをやめていただきたい。三つ目が、今の在日米軍の駐留経費。この三点、ほかにもあるでしょうが、日本の国益をしっかり守っていただきたい。

 アメリカとの関係はもちろん基軸です。日米関係は大変大事です。ですが、高目の要求をしてくる政権の可能性があるんです。守るべきものは守るためにも、この三点について、アメリカ言いなりにならないということをお約束いただけますか。

安倍内閣総理大臣 私は、もう既に四年間、第一次政権を入れれば五年間、政権を担っております。そして、私にとってはトランプ大統領は、米国の大統領として交渉する相手としては三人目でございます。さまざまな大統領と私も経験を積んできました。そして、その上においてしっかりと日本の国益を守っていく、これは今までもそうでありますが、これからもこの経験を生かしてしっかりと交渉していきたい、こう思うわけでございます。

 本来、日米同盟関係というのは、まさにお互いがお互いを必要としている価値を共有する、戦略的利益を共有する同盟関係であるわけでありまして、いわば商売をする商売相手とディールをする、そういう関係では本来ないわけでございまして、むしろこの我々の関係の強靱さ、強さをしっかりと示す機会にする。その機会にすることは日本のみならず米国にとっても大きな利益になるわけでありますし、アジア太平洋地域にとってもこれは大きな利益になるわけであります。その認識を私は完全に一致させたい、こう思うわけでございますし、繰り返しになりますが、ISILに対する軍事作戦の後方支援はしないということを再々申し上げているではないですか。

 ISILにかかわることといえば、先ほども申し上げましたように、さまざまな支援があるわけであって、そういう支援は今でも行っているわけでありますし、これからもその責任を果たしていくということは当然のことであろう、このように思うわけであります。

 後ろから給水とか言っていますけれども、例えば軍事作戦にかかわって給水も行いますとか、いや、何か御党の国対委員長から質問がありましたからお答えをさせていただきたいと思いますが、これは場外からでも、御党の幹部からの、国対委員長御みずから聞かれましたから、円満な運営のためにもお答えをさせていただきたいわけでございますが、軍事作戦にかかわる給水活動も、これは軍事活動にかかわる後方支援でありますから、それは行わないということでございます。

後藤(祐)委員 ISILとの関係においては、軍事作戦にかかわるとしつこく言っています。でも、稲田大臣はさっき、すっ飛ばして言っていましたね。これは閣内不一致です。これに関しての、これについての考え方を紙でこの委員会に提出していただけるよう、委員長にお願いしたいと思います。

浜田委員長 何の紙。もう一回ちょっと。もう一度。

後藤(祐)委員 ISILに関し後方支援を行うのかどうかについて、軍事作戦云々ということについて、稲田大臣はそこを入れませんでしたが、総理は常に入れています。これについての政府統一見解を紙で当委員会に提出いただけるよう、お取り計らいをいただきたいと思います。

浜田委員長 その前に、一回答弁させてください。

 稲田防衛大臣。

稲田国務大臣 私が申し上げたのは、平和安全法制ができる前後、一般法ができる前後で総理がおっしゃっていたことの間に矛盾はない、全く同じことをおっしゃっているということを申し上げたということでございます。

後藤(祐)委員 質問していないのに時間を稼ぐのはやめてほしいんですが、天下りの話に行きたいと思います。

 まず、この文科省の天下り問題については、本日、文科省の元事務方トップである前川前次官、そして省外で文科省の天下りに関する情報の一元化というかマッチング作業をされておられた元人事課職員の嶋貫氏、この二人の参考人招致を求めましたが、残念ながら与党の反対で認められませんでした。これに抗議を申し上げたいと思いますし、このお二人のお話を聞かないと、この話は真相究明に至らない。そして、やれることは何でもやると先ほどから再三言っておられます。

 ぜひ、この二人の参考人招致を求めたいと思います。委員長、お取り計らいをいただきたいと思います。

浜田委員長 理事会で、先ほども協議してまいりましたので、これからも協議してまいります。

後藤(祐)委員 まず、松野文科大臣に伺いたいと思いますが、天下りは何で問題なんでしょうか。

松野国務大臣 天下りという言葉の定義が、委員がどういった形でお使いになっているかは私は今現状理解しておりませんが、再就職に関して、これが禁じられているわけではありません。再就職に関して現職職員等が関与することに問題があるということでございますが、これは、一般論として私の見解をお話しさせていただきますと、そのことによって当該の組織と再就職をした組織との間に不当な関係、公平でない関係が生み出されるということに問題があるということだと思います。

後藤(祐)委員 それだけですか。もちろん、特定の民間企業ですとか大学ですとかと癒着が生まれて不公正な行政が行われる、本当はこんなに私学助成をもらえないのに、天下りを受け入れたらたくさんもらえる、学部の新設が認められる、これはまずい。それは、いろいろなもののうちの一つでしかないんじゃないですか。

 これによって、例えば天下りを受け入れているところに対していろいろな形でお金をぶち込んでいて、それが税金の無駄遣いにつながっている、こういった面もあるんじゃないですか。これは過去の質問主意書の答弁としてもあるんですよ。

 あるいは、高級官僚だけがいろいろなところを天下って高い給料をもらって、民間企業はそんなのないのに随分恵まれているねという国民からの批判もあると思いますし、あるいは天下り先の大学でもいいし民間企業でもいいんですが、そこのプロパーでやっている人からすると、突然やってきて余り仕事しないで高い給料をもらって何だという、モチベーションの問題ですとかいろいろあるんです。

 先ほどの不公正な行政、癒着の話だけで大臣はやっているんですか。大変ちょっと心配になりますが、今の、それでもお答えになられた……(発言する者あり)

浜田委員長 静粛に。

後藤(祐)委員 癒着のところに関して申し上げますが、今回、早稲田大学という名前が出ております。天下りを受け入れることによってたくさん私学助成がもらえるんじゃないかとか、そういった疑いがあるかどうか、これはなかなか難しいところがあると思いますが、ちょっと調べてみました。

 平成二十一年度、この法律が施行されて以降二十八年九月までの間に文部科学省の企画官以上の再就職者を受け入れたことのある大学、これが九十一大学あります。そのうち四大学は私学助成をもらっていないんですね。私学助成をもらっているところが八十七大学あります。私学助成は、そもそも二十七年度で総額二千九百四十一億円。五百六十六大学が二千九百四十一億円の私学助成をいただいておりますが、そのうちの八十七大学、一五・三七%の大学が企画官以上の天下りを受け入れている。そして、この一五%の天下り受け入れ大学が、私学助成の総額の三二%、九百三十九億円を受け取っています。

 これでよろしいでしょうか。これは、文科省からいただいている資料をもとに計算したものでございます。

松野国務大臣 平成二十七年度に、私立大学等経常費補助金を配分している四年制私立大学五百六十六校で、二千九百四十一億円を配分しております。また、平成二十一年一月以降平成二十八年九月に企画官級以上の再就職を受けた四年制私立大学は九十一校で、配分額は九百三十九億円であり、全体に占める割合は、学校数で一六%、配分額で三二%となっております。

後藤(祐)委員 倍ぐらいもらえる感じがするんですね。因果関係はいろいろあるでしょう、事実関係を示させていただきましたが。

 いろいろ幾つか示したいと思います。次のパネルに行きたいと思います。

 前川次官がおやめになられましたが、退職金を受け取っておられます。五千六百十万円受け取っておられますが、これは、定年退職した場合だと、通常であると六千三百四十万円もらえるはずなんですね。ところが、今回は、その下のところ、米印ですが、非違により退職した場合は自己都合退職という扱いになって、五千六百十万円に減額というか、自己都合のお金が退職金としていただけることになります。

 さて、では、その前に、早稲田大学に天下った吉田前高等教育局長の退職金はどうだったでしょうか。その下ですけれども、吉田局長のケースは、三十六年勤続して指定職五号俸でやめた場合、定年退職だと五千二百六十万、自己都合ですと四千五百六十万円です。吉田局長は、自己都合でなく、定年退職の五千二百六十万円の方をもらっています。これは何ででしょうかね。吉田局長も、やめた後ではありますが、減給扱いになっていると思うんですけれども、なぜこの吉田局長は定年退職分、つまり自己都合の形にならないんでしょうか、文科大臣。

松野国務大臣 まず、先ほどの質問に関して補足をさせていただきたいと思いますが、私立大学等経常費補助金の金額配分、もう委員も御案内のこととは存じますけれども、この金額は、学生数等を初めとする学校の規模によって、計算式によって算定をされるものであるということは説明をさせていただきたいと思います。

 吉田局長に対するものでありますが、吉田局長の退職時期が本事案が発覚した時点より先に、これはもう吉田局長は退職という形で職を離れているということでございます。

後藤(祐)委員 やめ得ですよね。何らかの懲戒処分に当たるようなことが後で発覚した場合は少しお返しいただくですとか、そういう制度がそもそもないことが問題なんですね。懲戒免職の場合は退職金をもらえません、ゼロです。先ほどのあれにありましたけれども。

 ところが、懲戒免職でない懲戒処分の場合は減額の仕組みはなくて、先ほど言ったように、ちょっとだけ減るだけなんですね。ここは制度の不備だと思いますので、むしろ退職手当法の改正が必要なんじゃないかと思いますが、いずれにしろ、もらい得という形になってしまっているということを申し上げておきたいと思います。

 それでは、本チャンのところに行きたいと思いますが、今回のOBを利用した再就職あっせんの枠組みということが明らかになりました。

 文部科学省の当時文部科学審議官だった前前川次官が、直接、文科省OBのいる法人に対して情報提供の依頼をした、あるいは、元人事課職員、先ほどの一般社団法人文教フォーラム理事長、嶋貫さんという方ですが、この方に対して、これは人事課を経由してですけれども、ある大学がこういう人を欲しがっているということを、まず大学から、ちょっと丁寧に説明しますね、ある大学から当時文部科学審議官だった前川さんがその情報を聞いて、退職予定だったある出向職員の方に意向を打診し、いいですねということになって、ではこの方が行きたがっているからという情報を、人事課を通じてこの元人事課職員に情報提供したということが認定されています。

 それ以外にもいろいろな形があるでしょう。人事課が、いつどの方がおやめになる予定かという情報をバルクで、つまりまとめて人事課から、あるいは人事課以外もあるかもしれない、この元人事課職員に対して求職したいという方の情報を渡して、一方で、大学側あるいはほかの団体なんかもあるでしょう、法人側から直接来るものもあれば、文科省を経由して行くものもあれば、いろいろな形があると思いますが、文科省から、求人、求職に係る情報をまとめてこの元人事課職員に渡している。この元人事課職員がそのマッチングをして、あるいはそのマッチングは文科省の中で実は行われているかもしれない。

 この仕組みを解明しなきゃいけないんです。その上で、前川前次官とこの元人事課職員の話を聞かないとわからないじゃないですか。

 例えば、大臣、先ほどの二のケース、文科審議官がマッチングをして元人事課職員に情報を渡した、それを前川前次官はどの段階で違法だと認識したんですか。大臣、御存じですか。

松野国務大臣 前川前次官が、いわゆるマッチング行為に関して、どの時点でその違法性に気づいたかということに関して、現在、私は承知をしておりません。

後藤(祐)委員 だから、前川さんに来てもらわなきゃいけないんですよ。

 しかも、この次官は、あの一月二十日におやめになったとき、エレベーターへ駆け込むときに、そのときではなかったのは事実なんですけれども、これはもう仕方ありません、監視委員会が認定したことですから、そのまま受けとめますと、何か自分は悪くなかったかのようなことを言っているんですね。どの段階で違法と感じたのか、ぜひここに来ていただいて、説明していただこうじゃないですか。

 あるいは、元人事課職員の嶋貫さん、よく次官室に出入りしていたというような記事もございます。次官室で何を話していたんですか。大臣、おわかりですか。

松野国務大臣 退職者と求人を結びつけるいわゆるマッチングシステムにつきましては、再就職等監視委員会より、その全容が明らかでないために、しっかりと調査を行うよう、国家公務員法第百六条十八の一項に基づいて、文科省に対して要求がなされたところであります。

 これらの事案に関しまして、私のもとに置かれました調査班において、私の責任においてしっかりと全容を解明してまいりたいと考えております。

後藤(祐)委員 この調査に関して、午前中も河野太郎議員あるいは赤羽議員がいろいろお話をされておりましたけれども、これは配付資料の方になっちゃうんですが、十ページに、再就職等問題担当室というものを文科省の中に設け、その中に調査班というものができて、その調査班で調査を行うと。

 きのうまでは、弁護士さんですとか外部の人を入れないんですかという我々の民進党での議論に対して、そういうことはしないというお答えでしたが、先ほど、河野議員のときには、この調査班に対して何らかの関与をするという答弁を最初されました。そして、その後、公明党の赤羽議員のときには、この調査班に入るという答弁をされました。二転三転しているじゃないですか。

 この調査班というのは、文部科学省の中の再就職等問題担当室という組織の中の一つの班です。この班に入るということは、官民出向か何かで来られるんですか。大臣、どういう形でやるんですか、入るというのは。

松野国務大臣 再就職等問題調査班につきましては、当初、国家公務員法の第百六条の十八の二項の規定に基づきまして、再就職等監視委員会に対して調査方法、調査項目の報告を逐次行うことを求めておりまして、その中において公正中立性を確保することが可能であると考えておりますが、しかし、より国民の皆さんの納得をいただく体制の中においてこの調査を進めるべきと御意見もいただきまして、その中において、公務員制度等の有識者、弁護士等の法律を御専門とされる方にこの調査班に入っていただくという表現をさせていただいております。

 当初の答弁時点におきまして、今委員御指摘の調査班に入るという形の、身分問題等も含めてまだ確定をしていない状況でございましたので、関与に関する方法を検討していくという表現をさせていただきましたが、現状におきまして、調査班の中に調査チームとして参加をしていただく、その中において、資格等も含め、どういった環境整備が必要であるかについて早急に検討してまいりたいと考えております。

後藤(祐)委員 二転三転しているわけですよ。さっき、河野太郎議員の答弁と赤羽議員の答弁の間に、何かその辺でいろいろ動いて、官房長官あたりがいろいろ御示唆されたんじゃないんですか。

 大臣、大丈夫ですか、本当に。この天下りの問題は、政治家が役人の言いなりじゃだめなんです。大臣が政治家だからこそ、こういうのを厳しくやらなきゃいけないんですよ。あの河野大臣の勢いでやっていただかなきゃ、今は河野大臣じゃないですか、河野議員のような勢いでやってもらわなきゃ困るんですよ。

 一つだけ、ではどうすればいいのかという話をしたいと思いますが、先ほどちょっと申し上げました。文部科学省は、どういう方がいつごろおやめになるか、あるいは法人なんかがどういうポストがいつごろあきそうかという情報をいっぱい持っています。今は、これをまとめてこの元人事課職員にお渡ししています。これはやめるということでよろしいですか、文科大臣。

浜田委員長 松野文部科学大臣、時間が来ておりますので、簡潔に願います。

松野国務大臣 今後は一切行いません。

後藤(祐)委員 これは物すごく大きな答弁でありまして、総理、ほかの役所も同じように、役所が持っている、どの方がいつごろおやめになるか、あるいは各団体や企業がいつごろどういうポストがあきそうかという情報を、少なくとも役所がこういった元OBのような方に渡すということはしない、あるいはさせないということでよろしいですか。

 最後に総理に。最後ですから、総理に伺いたいと思います。

山本(幸)国務大臣 総理から指示がありまして、徹底的に厳正な調査をやって結果を報告したいと思いますが、その中で、監視委員会から文科省に対してそういう潜脱的なことはやめるようにというような指摘がなされていると承知しておりまして、調査の結果を待ちたいと思いますが、今後は、ほかの省庁についても一切やらないように指導したいと思っております。

安倍内閣総理大臣 今、山本大臣からしっかりと、はっきりと答弁をさせていただきましたように、各省庁でまず調査をして、当然、今大臣も申し上げましたように、そういうことは今後させない。当然のことであります。

浜田委員長 後藤祐一君、時間が来ていますので。

後藤(祐)委員 大変重い答弁だと思います。

 それでは、前川前次官と一般社団法人文教フォーラム理事長の嶋貫和男氏の参考人質疑と、そして、この天下り問題、大変大きな課題がたくさん残っていることが判明しましたので、当委員会における集中審議を求めたいと思います。

 委員長、お取り計らいを願います。

浜田委員長 理事会で協議をさせていただきます。

 後藤祐一君、時間が来ております。

後藤(祐)委員 終わります。ありがとうございました。

浜田委員長 次回は、明二十七日午前八時五十五分から委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。

    午後五時五分散会


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