衆議院

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第4号 平成29年2月1日(水曜日)

会議録本文へ
平成二十九年二月一日(水曜日)

    午前八時五十九分開議

 出席委員

   委員長 浜田 靖一君

   理事 石田 真敏君 理事 菅原 一秀君

   理事 西村 康稔君 理事 葉梨 康弘君

   理事 宮下 一郎君 理事 武藤 容治君

   理事 大西 健介君 理事 長妻  昭君

   理事 赤羽 一嘉君

      伊藤 達也君    池田 佳隆君

      石崎  徹君    石破  茂君

      岩屋  毅君    江藤  拓君

      衛藤征士郎君    小倉 將信君

      大串 正樹君    大西 英男君

      大見  正君    奥野 信亮君

      加藤 寛治君    門  博文君

      菅家 一郎君    黄川田仁志君

      工藤 彰三君    古賀  篤君

      國場幸之助君    佐田玄一郎君

      鈴木 俊一君    瀬戸 隆一君

      高橋ひなこ君    中村 裕之君

      根本  匠君    野田  毅君

      野中  厚君    平口  洋君

      福山  守君    星野 剛士君

      前川  恵君    牧島かれん君

      茂木 敏充君    八木 哲也君

      保岡 興治君    簗  和生君

      山下 貴司君    山田 賢司君

      渡辺 博道君    青柳陽一郎君

      井坂 信彦君    今井 雅人君

      江田 憲司君    小川 淳也君

      緒方林太郎君    大串 博志君

      神山 洋介君    後藤 祐一君

      重徳 和彦君    玉木雄一郎君

      辻元 清美君    福島 伸享君

      前原 誠司君    升田世喜男君

      本村賢太郎君    伊藤  渉君

      石田 祝稔君    國重  徹君

      真山 祐一君    吉田 宣弘君

      赤嶺 政賢君    高橋千鶴子君

      宮本  徹君    井上 英孝君

      伊東 信久君    吉田 豊史君

    …………………………………

   内閣総理大臣       安倍 晋三君

   財務大臣

   国務大臣

   (金融担当)       麻生 太郎君

   総務大臣

   国務大臣

   (マイナンバー制度担当) 高市 早苗君

   法務大臣         金田 勝年君

   外務大臣         岸田 文雄君

   文部科学大臣       松野 博一君

   厚生労働大臣       塩崎 恭久君

   農林水産大臣       山本 有二君

   経済産業大臣

   国務大臣

   (原子力損害賠償・廃炉等支援機構担当)      世耕 弘成君

   国土交通大臣       石井 啓一君

   環境大臣

   国務大臣

   (原子力防災担当)    山本 公一君

   防衛大臣         稲田 朋美君

   国務大臣

   (内閣官房長官)     菅  義偉君

   国務大臣

   (復興大臣)       今村 雅弘君

   国務大臣

   (国家公安委員会委員長)

   (消費者及び食品安全担当)

   (防災担当)       松本  純君

   国務大臣

   (沖縄及び北方対策担当)

   (クールジャパン戦略担当)

   (知的財産戦略担当)

   (科学技術政策担当)

   (宇宙政策担当)     鶴保 庸介君

   国務大臣

   (経済再生担当)

   (経済財政政策担当)   石原 伸晃君

   国務大臣

   (少子化対策担当)

   (男女共同参画担当)   加藤 勝信君

   国務大臣

   (地方創生担当)

   (規制改革担当)

   (行政改革担当)     山本 幸三君

   国務大臣

   (東京オリンピック競技大会・東京パラリンピック競技大会担当)       丸川 珠代君

   財務副大臣        木原  稔君

   政府特別補佐人

   (内閣法制局長官)    横畠 裕介君

   政府特別補佐人

   (公正取引委員会委員長) 杉本 和行君

   政府参考人

   (内閣官房日本経済再生総合事務局次長)      宇野 雅夫君

   政府参考人

   (内閣府政策統括官)   田和  宏君

   政府参考人

   (内閣府再就職等監視委員会再就職等監察官)    加藤 眞理君

   政府参考人

   (警察庁刑事局長)    吉田 尚正君

   政府参考人

   (法務省刑事局長)    林  眞琴君

   政府参考人

   (外務省大臣官房審議官) 水嶋 光一君

   政府参考人

   (文部科学省大臣官房審議官)           藤江 陽子君

   政府参考人

   (文部科学省高等教育局長)            常盤  豊君

   参考人

   (再就職等監視委員会委員長)           大橋 寛明君

   参考人

   (日本銀行総裁)     黒田 東彦君

   予算委員会専門員     柏  尚志君

    ―――――――――――――

委員の異動

二月一日

 辞任         補欠選任

  石崎  徹君     八木 哲也君

  岩屋  毅君     工藤 彰三君

  衛藤征士郎君     加藤 寛治君

  長坂 康正君     高橋ひなこ君

  原田 義昭君     瀬戸 隆一君

  星野 剛士君     茂木 敏充君

  井坂 信彦君     江田 憲司君

  小川 淳也君     重徳 和彦君

  緒方林太郎君     神山 洋介君

  後藤 祐一君     大串 博志君

  玉木雄一郎君     升田世喜男君

  辻元 清美君     青柳陽一郎君

  福島 伸享君     本村賢太郎君

  國重  徹君     石田 祝稔君

  真山 祐一君     吉田 宣弘君

  高橋千鶴子君     宮本  徹君

  伊東 信久君     吉田 豊史君

同日

 辞任         補欠選任

  加藤 寛治君     大西 英男君

  工藤 彰三君     岩屋  毅君

  瀬戸 隆一君     山田 賢司君

  高橋ひなこ君     中村 裕之君

  茂木 敏充君     古賀  篤君

  八木 哲也君     石崎  徹君

  青柳陽一郎君     辻元 清美君

  江田 憲司君     井坂 信彦君

  大串 博志君     後藤 祐一君

  神山 洋介君     緒方林太郎君

  重徳 和彦君     小川 淳也君

  升田世喜男君     玉木雄一郎君

  本村賢太郎君     福島 伸享君

  石田 祝稔君     國重  徹君

  吉田 宣弘君     真山 祐一君

  宮本  徹君     高橋千鶴子君

  吉田 豊史君     伊東 信久君

同日

 辞任         補欠選任

  大西 英男君     池田 佳隆君

  古賀  篤君     牧島かれん君

  中村 裕之君     前川  恵君

  山田 賢司君     大見  正君

同日

 辞任         補欠選任

  池田 佳隆君     菅家 一郎君

  大見  正君     原田 義昭君

  前川  恵君     福山  守君

  牧島かれん君     星野 剛士君

同日

 辞任         補欠選任

  菅家 一郎君     簗  和生君

  福山  守君     長坂 康正君

同日

 辞任         補欠選任

  簗  和生君     衛藤征士郎君

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 政府参考人出頭要求に関する件

 参考人出頭要求に関する件

 平成二十九年度一般会計予算

 平成二十九年度特別会計予算

 平成二十九年度政府関係機関予算


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     ――――◇―――――

浜田委員長 これより会議を開きます。

 平成二十九年度一般会計予算、平成二十九年度特別会計予算、平成二十九年度政府関係機関予算、以上三案を一括して議題とし、基本的質疑に入ります。

 この際、お諮りいたします。

 三案審査のため、本日、参考人として再就職等監視委員会委員長大橋寛明君の出席を求め、意見を聴取し、また、政府参考人として内閣官房日本経済再生総合事務局次長宇野雅夫君、内閣府政策統括官田和宏君、内閣府再就職等監視委員会再就職等監察官加藤眞理君、警察庁刑事局長吉田尚正君、法務省刑事局長林眞琴君、外務省大臣官房審議官水嶋光一君、文部科学省大臣官房審議官藤江陽子君、文部科学省高等教育局長常盤豊君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

浜田委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

浜田委員長 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。茂木敏充君。

茂木委員 おはようございます。自由民主党・無所属の会の茂木敏充です。

 いよいよ本日から平成二十九年度予算案の審議がスタートしたわけであります。きょうは、この平成二十九年度予算について、また、昨年秋の臨時国会で質問させていただいたフォローアップとして、経済構造改革、働き方改革についても質問させていただきます。

 まず、総理が積極的に展開をされております外交についてです。日米関係、日ロ関係、二点について質問させていただきます。

 一月の二十日、第四十五代アメリカ大統領としてトランプ大統領が就任いたしましたが、就任演説の中でアメリカ第一主義、アメリカ・ファーストを強調し、オバマ政権とは全く異なる政策を進めることが予想されます。また、トランプ大統領は、理念より実利、国際協調や多国間の枠組みよりも二国間、バイの駆け引き、取引を重視する政治手法を志向していると言われております。米国新政権の政策については国際社会全体が注目をいたしております。

 このような中、我が国を取り巻きます安全保障環境は、北朝鮮の核、ミサイルの開発、さらに中国の台頭など、厳しさを増しているのは間違いありません。日本外交の基軸であります日米同盟、これを強化していくことが喫緊の課題であります。

 私も、一月の中旬、アメリカを訪問いたしまして、向こうの上院議員、そしてトランプ新政権に近いシンクタンクの関係者等々と会談をしてまいりましたが、日米同盟の重要性、これにつきましては米側も認識を共有している、このように感じたところであります。

 一方、トランプ大統領本人は、NATOを初め同盟国にも相応の負担を求める、こういった発言もしています。

 そこで、質問であります。

 総理は、昨年十一月、世界の指導者に先駆けて当時のトランプ次期大統領と非公式の会談を行い、日米同盟の重要性を確認されました。また、先週末の電話会談で、今月の十日に日米首脳会談を行うことで合意をされました。主要国の中ではかなり早いタイミングでの首脳会談になる、このように考えております。

 そこで、今後、トランプ新政権との間でどのように日米同盟、日米関係を拡大そして深化させていくのか、総理のお考えを伺います。

安倍内閣総理大臣 日米同盟関係というのは、日本の外交、安全保障上の基軸でございます。なぜ基軸かといえば、安保条約において、第五条、日本が外国からの侵害を受けた際に共同対処をするということになっております。

 アジア太平洋地域の安全保障環境は厳しさを増しています。委員が例として挙げられたように、北朝鮮はこの数年間で弾道ミサイルを技術的、能力的に相当向上させているのは事実でございます。そして、それに搭載するための核実験も行い、弾頭化が進められているという認識があるわけであります。彼らがもし日本に対してその能力を振り向けてきたときに、もちろんミサイル防衛もございますが、彼らに対して、日本に対するそうした攻撃に対しては米国が必ず報復する。これが抑止力になるわけであります。アメリカの報復を恐れ、結果として日本に対する弾道ミサイルの発射をちゅうちょする、あるいは行わないということになるわけでございます。

 そこで、大切なことは、日米の同盟関係は信頼関係に裏づけされている、日本が攻撃をされれば必ずアメリカも共同対処するし、アメリカは報復する、これを内外に示していくことは日本の抑止力、平和と安定にもつながっていくわけであります。トランプ大統領との間においては、この同盟関係が確固たるものである、確固たる信頼関係の上に成り立っているということを内外に示すものにしていきたい、このように思います。

 また、もちろん経済関係におきましても日米で、ウイン・ウインの経済関係を今までも構築しておりますが、さらに新政権との間に、経済においても両国がお互いに協力をしていく、関係を深めていくことによって両国とも大きく裨益をしていくということを示していくものにしていきたい。

 この二十一世紀に、日米がともに手を携えて地域の平和と安定を確保し、そしてさまざまな課題にもともに取り組んでいく同盟としていきたい、このように思っています。

茂木委員 首脳会談におきましては、日米同盟、このきずながしっかりしている、このことを世界に向けて発信していただきたいと思っております。

 そして、今総理が触れられた貿易政策の関係でありますが、トランプ大統領は、TPPから離脱する大統領令に署名をし、NAFTA、北米自由貿易協定の再交渉も表明をいたしました。米国に雇用と産業を取り戻す、米国にとってより有利な貿易政策を追求する、こういった姿勢を示しております。また、中国、日本、メキシコ、この国の間で貿易不均衡が存在する点、この点を指摘し、日本の自動車市場を批判する発言も行っているところであります。どうも、国際経済を、かなり前の、輸出入だけの狭い世界で捉えているような気もするわけでありますが。

 では、このような状況を踏まえ、世界第一位のGDPのアメリカ、そして第三位の日本、世界経済をリードすべき日本とアメリカが、TPPの取り扱いを含め、どのような経済関係を構築していくのか。まだ首脳会談前で不透明な部分も多いと思いますが、総理の基本的なお考えを伺います。

安倍内閣総理大臣 確かに、今委員が御紹介されたような、日米の貿易関係等々についてトランプ大統領側が見解を示されているということは、私もよく承知をしております。

 その中で、確かに、貿易面だけの結果、輸出と輸入の差額等の認識だけでいいのかどうかということでありますが、決してそんなことではなくて、お互いが経済関係を密にしていくことから大きな利益を上げている、両国が裨益しているということを認識し合うことがまず大切であろう。そして、両国が、貿易だけではなくて、経済はさまざまな側面がありますから、その側面の中でどのような経済関係を構築していくべきかということを、しっかりと腰を据えて、いわばがっぷり四つで話し合っていきたい、こう考えているところでございます。

 例えば、自動車についても、日本の自動車関連企業は米国において、直接の雇用にさらに関連の雇用も含めますと、自動車だけで百五十万人の雇用もつくっているわけでございますし、日本の投資によって直接生まれている雇用だけで八十五万人あるわけでございます。

 そうしたこと等も含めまして、これからいかに日本は米国に雇用を生み出し、そして米国に進出している日本企業も含めた米国産業界全体の生産性の向上あるいは競争力の強化に貢献をしていくんだ、あるいは雇用にどういう貢献をしていくのか、大統領が示しているインフラの整備に日本はどういう形で協力をしていくことができるかどうか等々も含めまして、大きな枠組みの中においてしっかりと話をしていきたい、このように思っております。

 また、TPPにつきましても、我々は、アジア太平洋地域に自由で公正な経済圏をつくるということに大きな価値を見出しているわけであります。これは大きな価値があるという認識においては今も変わりがないわけでありますし、国会で批准をいただいたからこそ、日本の確固たる意思として米国あるいは世界に示していくことができる、このように考えております。

茂木委員 確かに、総理が御指摘のように、自動車をとりましても、一九八〇年代と比べますと今の状況は全く変わっております。八〇年代の半ばぐらいは、日本から三百四十万台輸出して、日本の自動車メーカーは現地では六十万台の生産でありました。それが現在は、現地で三百九十万台の生産体制をつくり、そして、総理がおっしゃるように、ディーラーであったり間接雇用も含めれば百五十万人雇用している。これは明らかに米国経済に対する大きな貢献でありまして、まずはこういったことをしっかり理解してもらうということが必要だと思っております。

 同時に、御指摘のように、日米がこれから協力をしていく分野、AIであったりロボット、こういった新技術もあると思います。エネルギーの分野もあります。そして、アメリカは今、東海岸で高速鉄道を計画しておりますが、これには日本の技術が必要であります。こういったインフラ投資の分野、狭い貿易ではなくて、日米がより幅広い枠組みで協力をしていく、こういったことが重要なんだと思っております。

 米側も総理の早期訪問に期待をしております。ぜひ、しっかりした会談で、日米同盟、日米関係が強固である、こういったことを世界に向けても示していただきたい、このように考えております。

 外交でもう一点、日ロの関係についてお伺いをいたします。

 昨年の十二月、プーチン大統領が訪問いたしまして、安倍総理と実に十六回目となります首脳会談が行われたわけであります。昨年秋の予算委員会でも質問させていただきましたが、ロシアとの関係の改善、これは単に日ロの二国間の関係にとどまらず、緊張する東アジア情勢において、この関係改善というのが極めて地域全体にとっても戦略的な重要性を持っているんだと考えております。

 戦後七十年間全く動いてこなかった、解決できなかった大変難しい課題でありますが、首脳間の対話を進めて、平和条約締結に向けて着実に前進していくことが極めて重要だと考えております。

 その十二月の首脳会談では、四島において共同経済活動を行うための特別な制度について交渉を開始する、そして元島民の方々によります四島の訪問手続の改善を迅速に検討することが合意をされたわけであります。

 総理は、首脳会談後の共同記者会見において、今回の合意を出発点に自他共栄の新たな日ロ関係をともに築いていこう、このようにプーチン大統領に呼びかけられたわけであります。安倍総理がプーチン大統領との間で信頼関係を築き、そして新しいアプローチのもと重要な一歩を踏み出したことは大きな意味を持っている、このように考えております。

 総理はことしの前半にもロシアを改めて訪問することを検討していると聞いております。そこで、新たな制度のもとで共同経済活動に関する昨年の合意をいかに具体化し、領土問題を含む平和条約締結問題の解決につなげていくのか、総理のお考えを伺います。

安倍内閣総理大臣 昨年の十二月にプーチン大統領と首脳会談を行い、二人だけで長時間の会談を行いました。そこで、平和条約問題を解決する両首脳の真摯な決意を声明に書き込むことができたと思います。そして、プーチン大統領自身も記者会見で、最も重要なのは平和条約の締結であると明確に述べました。その意味におきましては大きな成果があったと認識しております。

 今委員が御指摘をいただきました、北方四島における特別な制度のもとでの共同経済活動については、四島において初めて日本人とロシア人が経済活動を行うことになるわけであります。そうした活動を通じて、お互いを理解し合い、そして地元住民の日本への信頼を深めていくという点で、平和条約の締結に向けて大きなプラスになると考えております。そのためにも、お互いの立場を損なわない新しい仕組みをつくるべく交渉を進めていく考えであります。

 もちろんこれは困難な挑戦ではありますが、私とプーチン大統領との間で、平和条約の締結に至るプロセスの一環としてこの交渉を行うことでも合意をしています。

 また、首脳会談では、平均八十一歳と高齢になられる、もう時間がないと語る北方四島の元島民の方々の切実な思いを胸に、人道的な観点から、北方四島の墓地訪問に関する現行の枠組みによる手続を改善することで一致をいたしました。

 元島民の皆さんと話をしたら、何とか今生きているうちに故郷で朝を迎えたいという話をしておられました。今の枠組みではそれはなかなかできないということでございますが、何とかその実現に向けて全力を傾けていきたいと思いますし、この機運に弾みをつけるため、本年の早い時期にロシアを訪問したいと考えております。

 七十年以上動かなかったこの領土問題を解決することはそう簡単なことではないとは思いますが、ぜひ我々の世代でこの問題に決着をつけて終止符を打ちたい、このように思っております。

茂木委員 ぜひ、ことし日ロ関係が新しい朝を迎える、こういう年になるように、総理の活動に期待をするところであります。

 それでは、平成二十九年度予算案について質問させていただきます。

 今回は、我々が政権に復帰をして五回目となる本予算の編成であります。平成二十九年度予算案は、過去最大となります九十七兆五千億円の予算規模で、さまざまな政策を盛り込んで、めり張りのきいた、そしてメッセージ性のある予算になっていると思います。

 平成二十九年度予算案の大きな特徴、ポイントを挙げるとすれば、図の一に示したように、三点になると思っております。

 まず第一に、安倍政権が一貫して進めてきた経済再生と財政健全化の両立をさらに推し進めていることであります。政権交代前と比較して、税収は十兆円以上増加、公債発行額も十兆円以上減少いたしております。

 二つ目に、政策の柱として、一億総活躍社会の実現に向けた施策を充実し、保育の受け皿拡大、保育士、介護職員の処遇改善や給付型奨学金の創設などを行うことといたしております。また、人工知能、ロボット、そして自動走行など、今後の成長分野に予算を重点配分いたしております。

 さらに三番目に、社会保障の持続可能性を高めるため、経済・財政再生計画の二年目の予算として、予算全体の三分の一を占めます社会保障費の伸びを五千億円に抑制する、こういうことにいたしました。そして、この目的達成のために、医療・介護制度改革を実行することといたしました。

 図の二をごらんください。

 平成二十九年度予算案においては、政権交代前と比較して、税収は十四兆円増加、そして国債発行額は十三兆円減少など、経済の再生と財政健全化が大幅に進んでいることが図からも明らかだと思います。

 ただし、平成二十八年度の予算では、税収が当初予算より一・七兆円下回ると見込まれることから補正が行われたわけであります。昨年は、新興国の経済の陰り、そして英国のEU離脱問題など、世界経済の下振れリスクが大きく、また昨年の前半でいいますと、為替が大きく円高に振れたことから輸出企業や海外展開企業の収益が目減りした、こういう側面も大きかったと思います。

 足元ではこの下振れリスクは緩和されていると見られますけれども、世界経済で不測の事態が起こる危険性はゼロではありません。もちろん、まず、不測の事態が予想されたら、昨年の経済対策のように、速やかな対応、まさに機動的な財政政策をとることが必要であります。

 しかし、より根本的な課題として、国際経済の変動にできるだけ影響を受けにくい経済体質にしていくことが重要であります。日本の輸出依存度、現在は大体一四%でありまして、これはヨーロッパ諸国、中国等とも比較して低い水準であります。これをさらに、為替等によります影響を受けにくい内需の拡大、国内での新しいマーケットの拡大、さらには新技術分野への投資などによりまして進めていくことが必要だと思っております。

 この点につきましては、この後、経済構造改革のテーマで質問させていただきたいと思います。

 そこで、一億総活躍社会の実現に向けた施策についてお伺いをしたいと思います。

 女性の就業者が増加を続けている中で、子育てや介護をしながら仕事が続けられる環境を整備することが特に重要でありまして、保育、介護の受け皿の整備が急務であります。

 保育所等の定員は、政権交代前の平成二十四年の四月には二百三十六万人でありましたが、安倍政権では保育所の整備を加速し、ことしの四月には二百八十三万人、実に五十万人の増加となる見通しであります。また、介護施設、在宅サービスにつきましても、二〇二〇年代初頭には五十万人の受け皿を整備することとなっております。

 同時に、保育であったりとか介護の分野は、恒常的な人材不足の問題がありまして、人材の確保、育成が急務であります。

 図の三をごらんください。

 安倍政権におきましては、図に示したように、保育士、介護職員の処遇改善を着実に続けてきました。平成二十九年度予算においても、保育士についてプラス二%の改善を行います。これにより、安倍政権になって合計でプラス一〇%、月額にして三万二千円の処遇改善を行うことになるわけであります。

 そこで、まず、総理に、一億総活躍社会の実現に向けたこれまでの取り組み、成果をどう受けとめていらっしゃるのか、また今後の意気込みについてお聞かせください。

安倍内閣総理大臣 一億総活躍の未来を切り開くことができれば少子高齢化という課題も必ず克服できる、こう考えております。その中で、それに立ちはだかるさまざまな壁があるわけでありまして、その壁を取り除いていかなければならない。例えば画一的な労働制度もそうなんだろうと思いますが、今御紹介いただいた保育の問題もそうです。また、介護の問題もそうであります。介護をしながら、あるいは子育てをしながら仕事もできるという状況をつくらなければならない。そうしたさまざまな壁を一つ一つ取り除いていく決意でございます。

 具体的には、昨年六月に閣議決定したニッポン一億総活躍プランに基づき、希望出生率一・八や介護離職ゼロ、そしてGDP六百兆円に向けた施策を展開してまいります。

 今回の予算案では、今もう既に御紹介をいただきましたが、我々が政権に復帰する前は、例えば介護士や保育士の皆さんの待遇はマイナス一・二%、下がっていたわけであります。そうであれば、なかなか、保育士の道を目指そうという人たちにとって、意欲が鈍ってしまうわけでありますし、士気も低下をしていくということになります。

 そこで、保育、介護の受け皿整備とともに、保育、介護人材の処遇改善として、保育士等については、おおむね経験三年以上で月額五千円、七年以上で月額四万円の加算を行うとともに、全ての保育士等を対象に二%、介護人材については、技能や経験に応じて昇給する仕組みを構築し、月額一万円相当の改善等を盛り込んでいます。こうした取り組みにより、保育士等の改善は政権交代後に合計で一〇%、そして介護人材の処遇は自公政権のもと合計で月額四万七千円の改善が実現することになるわけであります。

 また、保育の受け皿は、安倍政権の三年間で、今もう既に御紹介をいただいておりますが、三十一・四万人分もの整備を進めており、これは年平均で約十一万人増。年平均四万人増だった民主党政権時の二・五倍を超えるペースで今整備を進めているわけであります。

 これに加えまして、今回の予算案では、幼児教育の無償化の範囲のさらなる拡充、給付型奨学金制度の創設、無利子奨学金の希望者全員に対する貸与の実現等を盛り込み、誰にでもチャンスのある教育環境の整備を進めていく考えでございます。

 最大のチャレンジである働き方改革につきましても、同一労働同一賃金の実現、また、いわゆる三六協定でも超えることのできない、罰則つきの時間外労働の限度を定める法改正等に向けて、三月に実行計画を決定し、改革を加速させていく考えであります。

茂木委員 図の三の一番右側をごらんいただければと思います。

 平成二十九年度予算案におきましては、保育士について、全職員を対象とした処遇改善だけではなくて、今総理の御答弁の方にもありましたように、一定のキャリアを積んだ職員に対しては、追加で最大月額四万円の処遇改善を行う予定であります。

 この四万円というのは極めて重要な意味を持つんです。これが、まさにこの四万円というのが保育士と普通の産業の女性の労働者の賃金差に相当する額でありますから、ようやくこれでキャリアを積んだ人についてはほかの産業と一緒のところまで来るという形でありまして、今後も、保育士全体の賃金のボトムアップと同時に、キャリアに応じてそれが給与にしっかりと反映をされる、こういった制度設計が必要だと思っております。

 同時に、保育の分野で頑張っている人たち、本当に意欲を持って頑張っているわけでありますから、そういった人たちが活躍の場を広げて、そしてキャリアアップできるような、キャリアアップへの支援策、こういったことも一層充実をしていただきたいと思っております。

 さて、予算の三番目として、社会保障の持続可能性を高める取り組みについてお聞きをいたします。

 私も、党の政調会長として年末の予算編成に取り組みまして、社会保障費の伸び、自然増でいきますと六千四百億、これを五千億に抑えるという経済・財政再生計画の目安を二年連続で達成することができたわけであります。

 振り返ってみますと、日本の皆保険そして皆年金、いずれも、昭和三十年代、総理のおじい様の岸総理のときに法制化をされたものであります。そのころの日本は働き手が多くて、また、お年寄りの割合は今よりずっと少なかったわけであります。しかし、今は長寿社会が進んでおります。そして、社会保障費は大幅に増大をいたしております。社会保障制度を持続可能なものとして将来世代に引き渡していく、これは我々の世代の責任であります。

 日本近代化の父と呼ばれます渋沢栄一の言葉に、およそ人は自主独立すべきものである、すなわち自営自活の精神は、実に同胞相愛の至情とともに、人生の根本をなすものである、こういった言葉があります。この言葉からは、社会保障制度改革を進めるに当たり重視すべき二つの基本的な考え方が導き出されるのではないかなと思っております。

 その一つは、小さなリスクは自助、大きなリスクは共助、公助という考え方であります。渋沢翁の言葉にあるとおり、小さなリスクにはできるだけ自営自活の精神に基づいて自助で対応していく、そしてこうした自助の努力が共助、公助、すなわち同胞相愛を持続可能なものにするんだと考えております。

 二つ目は、年齢ではなく負担能力に応じた負担という考え方であります。最近は、元気で収入のある高齢者も多く、現役並みの収入がある人がいる一方で、現役でも収入が低い人がいるわけであります。そこで、誰もが自主独立の精神に基づき、負担能力に応じて公平に負担してもらうようにすることが大切だと考えております。

 そこで、塩崎厚生労働大臣にお伺いをいたします。

 私が今お話をしました二つの基本的な考え方を来年度の予算案にどのように反映されているのか。高額療養費の見直しであったり介護納付金の総報酬割の導入、こういった施策、基本的な考え方との対比で、来年度の主要な制度改革の内容を、わかりやすく、そしてできるだけ簡潔にお願いいたします。

塩崎国務大臣 ありがとうございます。

 社会保障の問題につきまして今お話を頂戴いたしましたが、社会全体が高齢化をしていく、そして社会保障費が増大をする、そういう中で、御指摘のような考え方を含めて世代間そして世代内の負担の公平を図る、同時に制度を持続可能なものにしていかなければならない、そして次世代にその制度を引き渡していく、こういうことが大事だということでございます。

 国民の自助を推進する観点からの取り組みといたしましては、本年一月から、健康維持増進や疾病の予防に取り組む方が医療用から市販薬に転用された医薬品を購入した場合に所得控除が適用されますセルフメディケーション税制というのが既にスタートしているわけでございます。また、負担能力に応じた負担という観点からは、平成二十九年度予算におきまして、医療や介護の制度改革を実施することとしております。今御指摘があったとおりであります。

 例えば、七十歳以上の高額療養費制度につきましては、所得の低い方や長期に療養される方に対してはきめ細やかな配慮をする、同時に、現役並み所得区分の方につきましては六十九歳以下と同様の負担上限額とする、そしてまた、一般区分の方々につきましては外来特例と世帯単位の負担上限額を引き上げるといった見直しを段階的に行うことにしておるところでございます。また、現役世代に負担をしていただいている介護納付金につきまして、医療保険者の加入者数に応じた負担から、被用者保険者の間では各医療保険者の総報酬に応じた負担への段階的な移行ということを始めさせていただこうと思っております。

 こうした制度改革を着実に実施するとともに、今後とも、自助、共助、公助、このバランスの視点から公的保険給付の内容などにつきまして必要な見直しを行って、社会保障制度を持続可能なものにして、しっかりと次世代に引き渡していきたい、このように考えております。

茂木委員 想定したのより一分短い、簡潔な御答弁をいただいたところであります。御協力ありがとうございます。

 私は、昨年秋の予算委員会で、日本経済の再生に関連いたしまして、地域中核企業の支援、そしてもう一つ、第四次産業革命の推進など、経済構造改革の必要性を提案いたしまして、政府からも前向きな御答弁をいただきました。

 そのうち、自民党では、経済構造改革に関する特命委員会を設置いたしまして、現場をよく知っている専門家からヒアリングを行うなど、集中的な検討を進め、昨年十二月に中間報告を取りまとめました。総理にも御報告をいたしました。

 図の四をごらんください。

 我が党の経済構造改革に関する特命委員会の中間報告においては、経済的なインパクトが大きく、先行的な実施が望まれる最重点施策として二点、一つは、大企業とともにもう一つのエンジンとしてこれから日本経済を引っ張っていく地域中核企業への重点的支援策の導入、そして二つ目に、第四次産業革命を人々の暮らしを豊かにするために実際に活用していく、実装していく、特に、自動走行システムの世界最速の社会実装と、新技術、システムによる医療・介護革命の実現、この二点を提案させていただきました。

 そこで、まず、地域中核企業の支援について取り上げたいと思います。

 臨時国会で申し上げましたとおり、中核企業は全国に大体二万五千社存在しております。そして、図の五にお示しをしましたように、これらの中核企業は、資本金でいいますと一億円から十億円の企業でありますが、売上高や設備投資で見ても、地域経済の牽引力がむしろ大企業よりも高いと見込まれております。

 実際、リーマン・ショック以降七年間で一企業当たりの売上高は図にありますように二五・四%伸びておりまして、その隣の大企業の〇・八%と比較しても伸びが大きいことがわかります。また、一企業当たりの設備投資額も、赤い括弧で囲んでございますが、一〇〇%近く伸びておりまして、大企業は五〇%の伸び、二倍の伸びということになるわけであります。

 昨年秋の予算委員会でも、こうした地域中核企業の支援策として、予算、税制、金融、あらゆる施策を総動員していく、このために新たな法律を早急に制定すべきと提案をさせていただきました。また、さまざまな施策が各省庁にまたがっております。これを、地域経済の好循環実現、こういった観点から一つにしっかりとまとめて、積極的に活用することが極めて重要だと考えております。

 そこで、質問でありますが、こういった自民党の提案も踏まえて、政府としては来年度の予算や税制改正においてどのような対応をとっているのか、また、既に提案をいたしております地域未来投資促進法につきまして、法案提出に向けた準備状況はどうなっているのか、世耕大臣、お願いいたします。

世耕国務大臣 お答えいたします。

 茂木委員からは、昨年の臨時国会でかなり踏み込んだ質疑をいただきました。また、年末には、党の政調会長として、あるいは特命委員会の委員長として、かなり具体的な御提案をおまとめいただきました。そういったことを踏まえて、経済産業省としても、各省と連携をしながら検討を進めてきたところであります。

 その結果、今国会に、地域未来投資促進法案という法案を提出させていただきます。この法案は、まさに、今、茂木委員御指摘のように、国として予算、税制、金融などあらゆる政策を集中させる仕組みになっております。具体的には、今御指摘の地域中核企業が中心になって地域経済を引っ張っていく事業を地域経済牽引事業として認定いたしまして、そういう事業に対して国があらゆる政策を総動員して応援をさせていただきます。

 具体的には、まず予算面では、内閣府の山本大臣のところと連携をいたしまして、地方創生推進交付金を活用して、こういった地域中核企業を中心とする地域経済牽引事業に支援をさせていただきます。あるいは、リスクマネーの供給。中小企業基盤機構とかREVICを活用して、リスクマネーの供給というのも進めていきます。あるいは、規制の特例。例えば、農地の転用許可ですとか市街化調整区域の開発許可に関して特段の扱いをするというようなこと。あるいは、ビッグデータの活用に関しても、公共機関が持っているビッグデータをこういった事業に対して使っていただけるような用意をする。そして、最後に税制としては、機械装置、建物といったものの投資に関して特別償却を認めたり税額控除を行う、こういうことをしっかりとやっていきたいというふうに思います。

 茂木委員から御提案いただいた地域中核企業を中心として地方経済を活性化するという施策に、国としても全力を挙げて取り組んでまいりたいというふうに思っています。

茂木委員 今、世耕大臣の方からお話のありました地方創生推進交付金、これがこの事業に使えるようになった。山本大臣の御協力もありまして、やはり全省でこの問題に取り組むんだ、こういう姿勢が示せたのではないかなと思っております。

 地域中核企業、全体でいいますと二万五千社ぐらいありますが、まずはこのうち二千社ぐらい、恐らく一市町村で数社になってくると思いますけれども、そういったところを抽出して重点的に支援していく、今後三年間ぐらいでこの二千社の設備投資が一兆円伸びますとGDPは五兆円増大をする、こういった取り組みをしっかりと進めていきたい、このように思っているところであります。

 次に、第四次産業革命の推進についてであります。

 現代社会におけます技術の進歩、目まぐるしいものがあります。人工知能ワトソンが人間の医師が見つけることのできなかった難病患者の病名を探し当て、また囲碁や将棋の世界ではAIが世界のトップクラスのプレーヤーを打ち破る、こういったことが起こっております。こうして日々、新しい技術やサービスが生まれ、アプリケーションの範囲も広がっていく、こういった現実があるわけでありまして、こういった進歩をスピード感を持って人々の生活へ取り込んでいく、社会実装していく、このことが極めて重要だと考えております。

 党の提言では、ロボット、AI、自動走行の社会実装によりまして、医療・介護革命や、地域における高齢者はなかなか今、遠くのスーパーに行くのが非常に困難だ、こういう状況があるわけでありまして、事故等も心配をされるわけでありまして、こういった高齢者の方々にとって安心な生活の足の確保を図り、経済活動や人々の暮らしを向上させる、こういったことを党の提言では打ち出しております。

 もちろん、この分野、民間部門が主体になるのは当然でありますが、政府の側のコミットメント、積極的な取り組み姿勢というのも極めて重要だと考えております。

 そこで、平成二十九年度の予算案では、これらのロボット、AI、そして自動関連の予算、どこまで対応しているのか、お聞かせいただければと思います。

石原国務大臣 茂木委員が委員長として取りまとめられた中で、第四次産業革命を人々の暮らしを豊かにするために活用する、まさにそのとおりだと思います。

 今回の二十九年度予算の中では、ロボット、AI、自動走行関連予算、もちろん省庁をまたがりますけれども、三百八十九億円を計上させていただいております。

 委員御指摘の三つをちょっと具体的に御説明させていただきますと、質の高い医療の実現を含む幅広い出口に向けたAIの応用研究で七十一億円、ICT活用による建設現場の生産性向上、いわゆるi―Constructionでございますけれども、このほか、自動走行システムの世界最速の社会実装と御指摘をいただいております、トラック業界が景気がよくなって人手不足になってきておりますので、ドライバー不足解消のための隊列走行等に向けた自動走行システムの研究開発で二十六億円などなどでございます。

 委員が御指摘いただいておりますように、新しい付加価値を生み出すイノベーションというもの、それを社会実装して初めて国民の皆さん方が日本の技術はこんなにすばらしいんだということを実感していただけますので、やはり予算対応、委員は民間が主体であると。私は、もう一つやはり構造改革、前に御指摘されておりましたけれども、これとあわせて行っていくことが必要だと思っております。

 委員に取りまとめいただきましたこれらの中間答申でございますけれども、政府の方の未来投資会議とも連携をさせていただきまして、年央には成長戦略の中でしっかりと書き込ませていただきたい、こんなふうに考えております。

茂木委員 ありがとうございます。

 この図をごらんください。実はこれは、AI、人工知能によりますレンブラントの新作の肖像画であります。マイクロソフト社とオランダのデルフト工科大学などがチームを組んで、レンブラントの特徴となる絵画の色遣いや構図などをAIに徹底的に学習させまして、最後はレンブラントの絵の具の厚みの特徴を出すために3Dプリンターも使って、レンブラントの新作を昨年完成させたわけであります。

 このように、AIに代表される第四次産業革命はここまで急速に進んでおりまして、我が国としても、これまで以上のスピードで取り組んでいくことが必要であります。まずはやってみることだと思います。AIや第四次産業革命を一つ一つ具体的な成果につなげていくために、政府としてもしっかりと取り組み、予算面、税制の面、規制緩和を進めていただきたいと考えております。

 それでは、働き方改革、こちらに移らせていただきます。

 総理が施政方針演説で最大のチャレンジとされた働き方改革であります。昨年の九月の予算委員会でも、働き方改革の主要政策課題として、図七にお示しをしましたように、五つの課題、一つは、非正規雇用の処遇の改善、二つ目に、長時間労働の是正、三つ目に、より柔軟な働き方への環境整備、四つ目は、希望する分野への就労に向けた人材の育成、最後に、育児、介護の人材不足解消、この五点を挙げ、総理にも質問させていただきました。

 昨年来、自民党でも働き方改革に関する特命委員会を立ち上げまして集中的な検討を進めておりますが、きょうは、特にこの中で二点について、政府の検討状況を確認したいと思っております。

 まず、長時間労働の是正の問題であります。

 一昨年のクリスマスになりますが、電通に入社して一年目の女性社員が過労自殺するという大変痛ましい事態が発生をいたしました。このようなことは二度と起こらないようにしなくてはいけない、このように考えております。

 働く人たちの健康を守るためにも、また子育てなど多様なライフスタイルと仕事を両立させるためにも、長時間労働の慣行を断ち切ることが必要であります。このことが、経営側にもより効率的な仕事のやり方を求めることにつながっていくんだろうと思っております。

 そこで、民進党など野党四党は、長時間労働を規制する法案を国会に提出し、国会審議を求めているわけであります。しかし、野党の法案、この内容をよく見てみますと、時間外労働の上限について、厚生労働省令で定める時間を超えない範囲内としているだけで、具体的に誰に何時間の上限をかけるか全く決めていません。これでは実効性がなく、全く意味がない、このように考えております。

 自民党は、野党の提案している省令、省庁に丸投げではなくて、労働基準法そのものを改正して、月何時間までと明確に時間外労働の上限を法律上定めるべき、しかも罰則つきのものとすべきだと考えております。

 総理のお考えを伺いたいと思います。

安倍内閣総理大臣 ただいま茂木委員長が御指摘をされたように、一年余り前に、入社一年目の女性が、過酷な長時間労働によって、その状況の中でみずから命を絶つという大変悲惨な出来事がございました。

 しかし、長時間労働によって過酷な状況の中でみずから命を絶つ、それは彼女だけではないのは事実でございます。こうしたことにしっかりと終止符を打たなければならないという決意を持って、我々は、時間外労働の長時間労働が何時間かということを決めて、しっかりとこうしたことを防止していくという決意を持って取り組んでいきたいと思います。

 まさに今議論になっているのは、何時間まで許されるのかという時間外労働について、何時間が許されない長時間労働であるかということが今まさに議論の焦点になっているわけですね。であるならば、それをちゃんと法案に入れ込むことによって当然議論ができるわけであります。その時間を出さずに厚生労働省令に丸投げしてしまっているのであれば、つまり、何時間だということを示さないまま法案が出ているのであれば、それは議論ができないということになってしまう。我々政府としては、そのまま出すことは、そういう形で出すことは無責任である、我々はこう考えております。

 そしてまた、野党は、月百時間という数字のみに着目をし、脳・心臓疾患の労災認定基準、野党が言う過労死基準をクリアしていないのではないかと批判をしておりますが、誰に対して何時間の上限とするかを決めるに当たっては、最低限この労災認定基準をクリアするといった健康の確保を図ることは当然のことであります。その上で、女性や高齢者が活躍しやすい社会とする観点や、ワーク・ライフ・バランスを改善する観点など、さまざまな視点から議論する必要があります。

 政府としては、実現会議で取りまとめる三月の実行計画に沿って、法改正に向けた作業を加速し、いわゆる三六協定でも超えることができない、罰則つきの時間外労働の限度について、どのような方に何時間の時間外労働の上限を設けるのかを明記した法案を提出する考えでございます。

茂木委員 ぜひ、省庁任せにするのではなくて、政治のリーダーシップで具体的な上限の時間を示していただきたい、このように思っております。

 もう一つ、希望する分野への就労に向けた人材育成の問題があります。

 雇用情勢は大きく改善いたしておりますが、雇用のミスマッチは依然として続いておりまして、人材の成長分野への移動も進んでおりません。その背景には、民間企業におけます教育訓練費の低下傾向もあるとは思います。希望する分野への就労に向けた人材の育成の強化、これが働き方改革の中でも極めて重要だと考えております。

 昨年末の自民党の中間報告でも、アベノミクスの成果により雇用情勢が改善した結果としての果実、具体的には、労働特会の余剰金を活用して人材投資を抜本的に強化、集中支援を行う未来への人材投資プラン、図の八にその概要をお示しいたしましたが、この未来への人材投資プランを提言いたしております。来年度の予算編成の過程で、厚生労働省もこのテーマにしっかり私は対応していただいたと考えております。

 そこで、自民党の提案が来年度予算にどのように盛り込まれて、今後どのような取り組みをしていくのか、改めてお伺いいたします。

塩崎国務大臣 自民党の未来への人材投資プランにおきまして、具体的な財源並びに対象となるべき分野における人材投資の具体的な提案をいただいております。働き方改革を進めるに当たりまして、人口減少に伴う労働力の供給の制約あるいは人材不足、これを克服するためには、働き手一人一人の能力の開発を通じた生産性の向上というのが実に大事だ、こういう御提案をいただいているわけであります。

 このため、政府としても、働き方改革実現会議での議論そしてまた今の自民党の未来への人材投資プランも踏まえて、人材投資関連の施策につきまして、平成二十九年度、来年度の予算におきましては千七百三十億円、前年度に比べますと四百四十億円多い予算を予定させていただいております。

 具体的には、先進企業の好事例を活用したオーダーメード型の訓練、一人一人に合わせたものですね、中小企業への新たな人材育成支援、個人のキャリアアップや子育て女性のリカレント教育を支援するための専門実践教育訓練給付の給付率を六割から七割に引き上げる、そして女性対象講座の拡充を行うということも予定しております。高レベルなIT資格など、資格を取るのに一年から二年かかるというものがありますが、長期の離職者訓練の新設そしてまた拡充も予定しております。また、託児所がついた職業訓練を含めて、子育て女性の再就職に向けた受講料無料の職業訓練の充実、さらには成長企業が転職者を受け入れて行う能力開発や資金アップに対する助成の拡充、こういったことを予定しておるところでございまして、三月に取りまとめられます働き方改革実行計画、これにもしっかりと入れ込んで、取り組んでまいりたいと考えているところでございます。

茂木委員 とてもいいプログラム、魅力のあるプログラムが盛り込まれていると思います。ぜひ、これからまた職場に復帰したい、いろいろな考えを持っていらっしゃる女性や非正規の方も含めて、この周知を図っていただきたいと思っております。

 そして、こういった取り組み、なかなか一年だけでは十分な成果を上げることができないわけであります。我々は、三年間で総額八千億円規模の対策に集中的に取り組むべき、このように提案をさせていただいております。予算措置でありますので、原則としては単年度ごとの取り組みとなる、このことは理解をいたしておりますが、最近の雇用情勢の改善によりまして、雇用保険の積立金、これは今六兆円になっているわけでありまして、政府はその資金を十分活用して、数年度にわたって集中的な取り組みを進めていただきたい、このように考えているところであります。

 最後に、現在政府で検討されている、テロ等準備罪を新設する法案についてお伺いをいたします。

 二〇二〇年の東京オリンピック・パラリンピックの開催を三年後に控え、テロ対策は最重要課題であります。既に百八十七の国と地域が締結をしております国際組織犯罪防止条約によって、テロを含む組織犯罪を未然に防止するとともに、テロ対策の国際協力が可能となってまいります。ところが、日本はこの条約を締結できておらず、このための国内担保法の早期整備が必要不可欠であります。

 かつて政府が提案をした共謀罪につきましては、一般の民間団体や労働組合等が処罰の対象になるのではないか、また、心の持ち方や思想を理由に処罰をされてしまうのではないか、こういった懸念が指摘をされていました。こういった懸念を払拭するためにも、今回のテロ等準備罪では、一般の人は対象とならない、このことを明確にするとともに、処罰を本来の目的に限定する必要があると思っております。

 そこで、処罰の対象となる組織や犯罪の要件について、また対象犯罪の総数も、これまでの法案では六百を超えるなどと言われてきたわけでありますが、今回のテロ等準備罪ではどの程度まで絞り込まれる見通しなのか。

 時間は十分にあります。金田大臣、しっかりお答えください。

金田国務大臣 御質問にお答えをいたします。

 国際組織犯罪防止条約、いわゆるTOC条約でございますが、この国内担保法のあり方につきましては現在検討中でございます。国民の皆様に、国際組織犯罪防止条約、いわゆるTOC条約を締結しまして国際社会と協力してテロを初めとする組織犯罪と闘うことの必要性そして重要性を御理解いただくとともに、かつての法案に対する国民の皆様の不安とか懸念といったものが解消できるように、法案の内容について詰めの検討を進めてまいりたい、このように考えているわけであります。

 かつて政府が国会に提出をいたしました組織的な犯罪の共謀罪というものに対しましては、過去の国会審議等において、通常の活動を伴う団体も対象となるのではないか、あるいは内心が処罰されることとなるのではないかといった不安や懸念が示されておったわけであります。

 そこで、私どもは、テロ等準備罪に関しましては、基本的な考え方といたしまして、適用対象となる一定の犯罪を犯すことを目的として結合しております組織的犯罪集団を条文の中で定義して限定する、そして合意に加えて実行準備行為があって初めて処罰の対象とする、こういったことを検討しているところであります。

 そのような限定によりまして、さきに申し上げた不安や懸念が取り除かれて、一般の方々が処罰の対象となることはあり得ないことがより明確になるものと考えておるわけであります。

 また、御指摘にございました対象犯罪の数につきましても、条約を所管いたします外務省と協議しながら、政府部内で慎重に検討をしているところであります。

 いずれにしましても、国民の皆様に、国際組織犯罪防止条約を締結し、国際社会と協力してテロを初めとします組織犯罪と闘うことの重要性、必要性を御理解いただきますとともに、かつての法案に対します国民の皆様の不安や懸念というものを解消することができるように、法案の内容について詰めの検討を進めてまいりたい、このように考えておる次第であります。

茂木委員 対象犯罪、しっかり絞り込みをしていただきたいと思っております。

 それから準備行為、いろいろな準備行為があると思うんですけれども、そこの中で、どの部分は対象になるのか、どれは除外をされるのか、このことも明確にお示しをいただきたいと思っております。

 このテロ等準備罪につきましては、この後、同僚の葉梨議員から具体的に質問させていただきたいと思いますが、我が党としては、三年後の東京オリンピック・パラリンピックに向けて、国際条約との整合性を踏まえつつ、国民の理解が得られる法案の内容としなければならないと考えております。政府の側でも、しっかりとした対応、明確でわかりやすい答弁をお願いいたします。

 平成二十九年度の予算案、いよいよきょうから審議がスタートをしたわけであります。一日も早い予算の成立、これが最大の景気対策になってくる。

 安倍政権では、一つ一つ具体的な成果を出す、これに努めてまいりました。まさに、この平成二十九年度の予算を一日も早く成立させ、景気回復の実感を全国津々浦々、地域の隅々まで届けていきたいと考えております。

 最後に、政府においては、きょうのような、国民にわかりやすい、しっかりとした説明をお願いして、質問を終わりたいと思います。

 ありがとうございます。

浜田委員長 この際、葉梨康弘君から関連質疑の申し出があります。茂木君の持ち時間の範囲内でこれを許します。葉梨康弘君。

葉梨委員 おはようございます。自由民主党・無所属の会の葉梨康弘でございます。

 冒頭、文科大臣にお尋ねします。

 当予算委員会でも、文科省職員の不適切な再就職が問題となっています。組織的な再就職あっせんの当事者とされたR氏が代表を務める文教フォーラム、あるいは文教フォーラムとの不透明な関係が指摘された文教協会と、文科省として今後も関係を続けていかれるおつもりでしょうか、お答えください。

松野国務大臣 今回の文部科学省における再就職等違反に関して、国民の皆様の文部科学省に対する著しい信頼を損なうことになったことに関しまして、心からおわびを申し上げる次第であります。

 今回の問題については、公益財団法人文教協会や一般社団法人文教フォーラムの関係を含め、徹底した事態の解明と、その後の関係職員の厳正な処分を行ってまいります。

 その上で、文部科学省と文教協会との関係に、国民の皆様から厳しい御批判をいただいております。私の責任において、文部科学省は、今後、同法人に対して、文部科学省出身者の役職員への就任など人的関係の自粛を要請するとともに、補助金などの国からの支出、書籍等の購入を一切行わないことといたします。

 この件だけでなく、再就職をめぐる国と団体の関係について徹底的に解明し、実効性のある再発防止策を講じてまいります。

葉梨委員 文科省として、しっかりと調査をして解明してください。

 そしてまた、二月六日からの週に予定されている集中審議におきましては、私といたしましても、前川前文科次官、さらにはR氏、嶋貫氏を参考人として呼んでいただきたいというふうに考えます。

 さて、本題に移ります。

 私の選挙区、牛久、龍ケ崎とあるんですが、その選挙区出身の稀勢の里が優勝して、横綱になりました。十九年ぶりに日本人です。私の地元も大変沸き上がっております。

 そこで、本当にスポーツの力というのはすばらしいものだなということを感じるんです。二〇二〇年の東京オリンピック、これは必ずや成功させて、日本国民だけでなく、世界の人たちに勇気を与える大会にしなければなりません。そのセキュリティーを担当するのは国です。

 この東京オリンピックのセキュリティーに万全を期すに当たっての総理の御所見をお願いいたします。

安倍内閣総理大臣 まず、地元出身の稀勢の里関が横綱に昇進したこと、お祝い申し上げたいと思います。あの報道する場面、テレビのニュースで見ましたが、地元も大変な盛り上がりで、小さなお子さんが、僕もあんなに強くなりたい、こう語っていた姿を見て、まさにこれはスポーツの力、パワー・オブ・スポーツだと思います。

 オリンピックは、まさにスポーツの力を世界に向けて発信していく大切な場であろうと思います。日本が、世界の国々の支援によって復興から見事に立ち直った姿を示していく。そして、今こそ、世界各国が理解し合い、そして和解し、平和をつくっていく、その重要さを発信していく、そういう姿になっていく。そして、頑張ることによっていろいろな壁を乗り越えていくすばらしさを発信していく、そういうスポーツの力を発信し、子供たちに夢や希望を与えるような、そういうオリンピックにしていきたい。

 そのためにも、成功させる。それはまずは、安全なオリンピック、安心して観戦できる、家族連れで、子供を連れて観戦できるオリンピックにしなければならない。

 このため、セキュリティーについては、昨今の厳しいテロ情勢を踏まえ、私を本部長とする推進本部のセキュリティ幹事会を中心に、関係機関が緊密に連携し、そして国際的な連携を図りながら、情報収集、分析、水際対策、警戒警備等のテロの未然防止対策を着実に実施するとともに、サイバー攻撃への諸対策を推進してきているところであります。

 今後とも、大会の安全確保のため、政府一丸となって、必要な法制の整備、体制、予算の確保を含め、セキュリティー対策に万全を期し、開催国としての責務を果たしてまいりたい。

 また地元から、横綱だけではなくて、オリンピアンが誕生することも期待したいと思います。

葉梨委員 ありがとうございます。

 テロ対策は、オリンピックの成功のためにも極めて重要です。そのためには、世界で百八十七カ国が批准しています国際組織犯罪防止条約、この批准が必須と考えます。

 ただ、これについて、本来経済犯罪をターゲットとしていた国際犯罪防止条約の国内担保法を、テロのため、オリンピックのためと言うのは目的のすりかえである、そういう意見もあります。

 この見解について、外務大臣から明快な御答弁をお願いいたします。

岸田国務大臣 まず、一般論としまして、テロ組織がみずからの活動資金を得るために国際的な組織犯罪を行うということから、国際的な組織犯罪とテロ活動というのは強い関連性があるということが指摘をされてきました。

 そして、本条約の起草段階において、重大な犯罪について具体的に列挙しリストをつくるべきではないか、こんな議論が行われた経緯があったと承知をしておりますが、その中にテロ活動というものは含まれておりました。

 結果的にはリストはつくられなかったわけですが、この条約は起草段階からテロ活動というものを議論の対象としていたという事実がございます。

 そして、二〇〇〇年にこの条約は採択されたわけですが、二〇〇〇年の国連総会の決議におきましても、国際的な組織犯罪とテロ犯罪との関連性が増大しており、本条約はこのような犯罪行為と闘うために有効な手段である、ぜひこの条約を適用するべきである、こうした決議も行われました。

 その後、アメリカにおきましてアルカイダによります九・一一テロが発生し、そしてISILといった凶悪な集団も登場しました。これを受けまして、二〇一四年には、同じく国連の安保理決議において、各国に対して、テロ防止のために、テロの資金供給源となっている国際組織犯罪への対処を含めた幅広い分野における協力を求める、そしてこの条約の締結を求める、こういった決議も採択されています。

 このように、この条約は、起草段階から国際的な組織犯罪とテロ活動の強い関連性を意識し、テロ活動を対象として議論が行われてきたということであります。

葉梨委員 もともと、主にマフィアを対象としていたものであったことは事実だろうと思うんです。ただし、その後、タリバンの資金源が薬物である、コロンビアのテロの資金源が薬物である、そういうことがどんどんわかってまいりました。現在はまさにテロ対策として、これがテロ対策ではないということは明らかな誤りでございます。

 そこで、衆参の補正予算の段階で、航空機突撃事案、すなわち、テロ組織が、現場指揮役、操縦役、機長やその他の乗客、乗員を制圧する役等の役割を分担して、飛行機を乗っ取って高層ビルに突撃させるテロを計画した上、搭乗予定の航空機の航空券を予約した場合、この場合も、航空券予約の段階で、野党委員から、これは予備罪に当たるんじゃないか、そういうような質疑がなされました。

 確かに、学説にはそのような学説もあります。ただ、学説があるからといって、そのとおり実務が進むわけではありません。夫婦別氏、これを認めないのは違憲であるという有力な学説があります。でも、判例は合憲と認めています。これに基づいて実務が行われます。

 判例に基づきまして、このような航空券予約の段階で予備罪の適用は可能と考えられますか。林刑事局長、お願いします。

林政府参考人 御指摘のように、公刊物に、ハイジャック目的の航空券を購入しただけで常に航空機強取等の予備罪が成立するというような記載があることは承知しておるわけでございますが、刑事事件の実務は、裁判例に従って法律を解釈し、適用しております。

 この予備という意義を明確に判示した裁判例がございます。それは昭和四十二年の東京高等裁判所判決でございます。この判決によれば、予備というのは、構成要件実現のための客観的な危険性という観点から見て、実質的に重要な意義を持ち、客観的に相当の危険性の認められる程度の準備が備えられたことを要する、このようにされているわけでございます。

 この裁判例は、破壊活動防止法上の政治目的のための殺人予備罪と騒擾予備罪の成否が問題となった事例でございますけれども、国会を急襲して占拠することを当面の目標としていた被告人らにつきまして、事案におきましては、ライフル銃二丁や空気銃一丁、また防毒マスク百個、ジープ、トラック、こういった武器、装備が計画実現のため利用可能な状態にあった、こういう事実を認定した上で、それでも、先ほど述べた予備の危険性に関する意義に照らしまして、目的達成のために実質的に重要な準備がなされたものとは言いがたい、こういった判示をして、予備罪の成立を否定した判例でございます。

 この裁判例の考え方に従いますと、例えばテロ組織がハイジャック等を計画した、その上で航空券を予約、購入したという事例におきましても、例えばそのうちの一人が搭乗予定の航空券を予約、購入したのみで、その他の犯行の実現に向けた行為が行われていない場合などは、この航空券の購入という行為それ自体に相当の危険性があるとまでは言えずに、予備罪が成立しない事例も多いと考えられます。

 したがいまして、この裁判例に従って法律を解釈、適用しておりますところ、裁判例によれば、御指摘の事案の中で、個別具体的な事案にもよりますけれども、現行法の予備罪では適切に対処できない場合が多く考えられると考えております。

葉梨委員 法律の第一義的な有権解釈は裁判例に基づいて役所が行うものであって、議員それぞれが行うものではございません。

 さて、組織犯罪集団が航空機突撃事案で航空券の予約をしただけで、実務上は予備罪の適用は難しいという答弁でした。これについて、今回、テロ等準備罪を創設すればこの事案の検挙が可能となりますか。可能か不可能かだけ、大臣、お答えください。

金田国務大臣 テロ等準備罪は……(葉梨委員「可能だと言ってくれれば結構です」と呼ぶ)ええ、もちろんです。そうなんですが、ちょっと待ってください。

 では、まず、可能であります。

葉梨委員 現行法体系では、予備罪の規定は、未遂の段階を罰するもので、限定的な罪について定められています。より多くの罪について予備罪を設ければテロ対策として十分ではないかという見解がございます。これについて、今度は刑事局長から所見を問いたいと思います。

林政府参考人 現在、予備罪というのは非常に限定された罪にしかございません。そして、より多くの罪に予備罪を設けるだけでは、やはり一刻一秒を争うテロ対策としては不十分であると考えます。

 テロ組織が行うテロ行為は、一たび実行された場合には取り返しのつかない結果が生ずる可能性が高く、その計画が発覚した場合には、できるだけ早く検挙して未然に防止する必要がございます。現行法の予備罪の予備というものは、先ほど申し上げましたように限定的に解されておりますので、こういった犯罪の実行の途中の過程で未然に防止するためには十分なものではないと考えます。

 その上で、さらに加えて、国際組織犯罪防止条約第五条というものは、こういった重大な犯罪を行うことの合意を未遂または既遂とは別に犯罪化することを義務づけておるわけでございまして、したがいまして、より多くの罪に予備罪を設けるだけではこの条約を締結することは困難であると考えております。

葉梨委員 さらに申し上げますと、組織的犯罪集団が集団的に行う罪としては、例えば集団窃盗がある、集団詐欺、振り込め詐欺があります。窃盗や詐欺に予備罪を設けたら大変なことになりますね。監視社会になります。ですから、窃盗とか詐欺に予備罪を設けるとするのはできないんです。やはり組織犯罪要件とか共謀要件、これが必要になってくる。

 ですから、別法でやらなきゃいけないんです。百八十七の国のうち特別な法律をつくったのは二つだけで、日本だけが突出しているということではなくて、これはまさに日本の法体系からくる帰結であって、突出しているわけでも何でもないというふうに思います。

 さて、現行法のままでも多分この条約を批准できると考えていたと思われる政治勢力があります。

 二〇〇九年の総選挙に際し、民主党の政策集、インデックス二〇〇九では、「条約は「自国の国内法の基本原則に従って必要な措置をとる」ことを求めているにすぎず、」「条約が定める重大犯罪のほとんどについて、わが国では現行法ですでに予備罪、準備罪、幇助犯、共謀共同正犯などの形で共謀を犯罪とする措置がとられています。したがって、共謀罪を導入しなくても国連組織犯罪防止条約を批准することは可能です。」としておりました。その選挙で民主党は政権をとりました。

 民主党政府は、国際組織犯罪防止条約の批准のために、この主張にあるとおり、特段の国内法の整備は不要と考えていたんでしょうか、外務省。

水嶋政府参考人 当時の答弁を引用させていただきたいと思いますが、平成二十三年五月二十五日及び二十七日の衆議院法務委員会におきまして、当時の江田法務大臣から、「パレルモ条約、国際組織犯罪防止条約ですね。これを締結して、国際社会と協調して組織犯罪を防止し、これと闘うというのは重要な課題であると思います。 その締結に伴う国内法の整備については、これはもちろん進めていくことは必要」、また別の機会に「あの当時出されていた共謀罪でなければこの条約の国内法と言えないのか、あるいはもっと違うものがあるのか、それはこれから関係府省ともよく相談をしながら、また政党の皆さんともいろいろ議論しながら検討をしていきたいと思っているところです。」と述べていると承知しております。

葉梨委員 現在の所管事項について政府参考人から答弁を求めたわけでございます。

 そして、国内担保法の整備がおくれますと、これは大変なことになるんです。

 これはパネル三の事例なんですが、児童買春、児童ポルノ法。

 これは、児童の権利に関する条約というのを一九九四年に日本は批准いたしました。その二年後にストックホルムで児童の商業的性的搾取に反対する世界会議というのが開かれて、当時相当煮詰まっていた児童買春、児童ポルノを処罰するための法律、これを犯罪化する選択議定書、これを日本が何も対応していなかったということを踏まえて、当時社会党の清水澄子参議院議員が団長だったわけですけれども、大変な非難にさらされた。そして、帰国をして、自社さ政権でしたから、社会党の辻元清美先生、さらには自民党ですと野田聖子先生、保岡先生、谷垣先生、さきがけですと堂本先生、ここら辺が中心になりまして、児童買春・ポルノ法、国内法を整備しようというチームができました。当時、私は警察庁少年課の担当官として事務的にお手伝いをしておりました。

 そして、一九九八年になりまして、私のところに招待状が来ました。児童ポルノの関係で情報交換をやっている、警察だけれども、税関の会議にあなた出席してくれないか、オブザーバーでということが来ました。アメリカに行きました。そうしたところが、相当な情報交換をやっているんです。前からやっているんですか、前からやっています、でも今まで日本は国内法がないからできなかったんですよ、こういう情報交換がということなんです。

 ですから、国内担保法の整備ということがおくれますと、国際的な非難にさらされるばかりではなくて、いろいろな情報交換、犯罪捜査協力にも支障を来すという、これは私の実感でございます。

 そこで、一つ警察庁に聞きます。例えば、我が国で犯罪とされている行為を行った外国人、A国としましょう、これがA国に帰国したとき、そのA国ではその行為は犯罪とされていない、当然国外犯の処罰の規定はない、この場合、捜査協力は可能ですか。簡潔に答えてください。

吉田政府参考人 お答えいたします。

 我が国から他国の捜査機関に捜査協力を要請する場合に、当該他国の捜査機関からの協力を得られるかどうかということにつきましては、その当該他国の国内法に基づくところであります。

 そのような場合に、一般論として申し上げますと、双罰性、すなわち当該捜査協力要請に係ります行為が当事国双方の国の国内法令において罪に当たるとされていること、この双罰性が欠けている場合に、捜査協力を得ることは困難であるというふうに考えております。

葉梨委員 そうです、双罰性なんです。

 そして、今、私は日本国内で犯罪が行われた場合について申し上げましたが、このA国が日本なんです。日本で犯罪が行われて、その犯人が自国に逃亡して、何の捜査協力もできない、何のおとがめもない。そのときに日本国民は、日本人はその国のことをどう思うだろうか。そういう思いで世界百八十七の国から日本が見られているんだ、だからこそ、この国内担保法というのをしっかりと整備しなければいけないということを指摘させていただきたいと思います。

 ただ、国際社会への配慮ばかりではだめです。やはり人権への配慮が必要です。余りに広い構成要件、あるいは内心の自由を制限することは許されない。

 ただ、私が懸念しているのは、誤った報道ですとか誤った情報が世間に流布して、国民の不安をあおっているのではないか、このことを非常に危惧しています。

 このパネルは、ある新聞、某新聞と申し上げましょう、ここで、会社の社長を殴ろうと共謀して地図を買うなどの準備行為をした場合、今回のテロ等準備罪に問われるというような報道がありました。こういう報道がひとり歩きしているというふうに思います。

 こんなことはあり得るんですか。刑事局長、お願いします。

林政府参考人 御指摘のような事案でテロ等準備罪が成立することはあり得ません。

 現在政府で考えておりますのは、対象となる団体を重大な犯罪を行うことを目的とする組織的犯罪集団に限定すること、こういったことを検討しているわけでございまして、そういったものを全く除外して、単にその御指摘のような事案においてテロ等準備罪で処罰されるというようなことは全くございません。

葉梨委員 今のところ、まさに厳格な要件、つまり組織的犯罪集団、具体的、現実的な合意、さらに準備行為、これを要件とすることを前提として具体的な法案が組み立てられているということがわかりました。

 もう一つ、論者の中には、犯罪を絞り込むべきである、そしてそれは国際的な犯罪、組織犯罪防止条約なんだから、国際的、つまり越境性ですね、これを行われる犯罪に絞り込むべきだという論者もあります。セントクリストファーネービスという国ではそういう法律をつくっているんだと。

 セントクリストファーネービス、人口五万六千人、広さは西表島と一緒で二百六十平方キロ。越境性が一般的であることは間違いないし、さらには、もう一つの情報によりますと、実定法では犯罪の越境性が要件とされているけれども、これはイギリスからの独立国ですから、判例法の世界、コモンローですね、この世界では国内における共謀罪が犯罪化されている、そういう説明もあるんです。

 ですから、このセントクリストファーネービス、これがあることをもってこの犯罪の要件に越境性を設けるべきだ、この論は余りに例としては不適当であるというふうに思います。

 さらに、この要件面の残された課題、先ほども茂木政調会長からありました。対象となる重大犯罪、主体は絞り込んだ、行為もある程度、準備行為を足すということで絞り込んだ。そして、対象犯罪も、今六百三十五、自由刑、自由剥奪刑で四年以上の刑はそれだけある、これも政府において、この条約が許容する範囲で絞り込むという作業を行っていると聞いています。

 この国際組織犯罪条約が許容する範囲内でこの対象犯罪を絞り込むということは可能なんでしょうか。外務大臣、お願いします。

岸田国務大臣 国際組織犯罪防止条約の国内担保法につきましては、過去三回法案が提出されました。そして、その際に、一般の方々が処罰されるのではないか、こうした指摘が再三行われました。

 こうした過去の法案審議の過程で受けた指摘、こういったことをしっかり踏まえて、一般の方々が処罰の対象とならないことを一層明確にするため、そのために主体を限定する、あるいは犯罪実行の準備行為が行われた場合に限って処罰の対象とする、こういったことについて今検討しているわけです。このことによって憲法九十八条二項に定められております条約の誠実履行義務をしっかり我が国として果たすことができるのかどうか、これを今検討しているところであります。

 法案の数等につきましては、法案を提出させていただいた段階で、法案の内容と本条約の関係についてしっかりと説明をさせていただきたいと思います。

葉梨委員 いずれにせよ、しっかり国民に説明をしていただくということが大事です。この要件にしても、また、なぜ犯罪を絞り込んだかにしてもです。

 この国際組織犯罪防止条約第五条が定める行為、これを犯罪化する過程においては、組織的な犯罪集団その他の関与が要求される場合という条約上の場合に当たるので、この犯罪集団が行う蓋然性のある罪に絞り込みをかけるということは、私は個人的には合理的なことなのかなというふうに思っているわけですが、いずれにしても、しっかりとした検討をお願い申し上げたいと思います。

 そして、冒頭申し上げましたように、東京オリンピック・パラリンピック。パラリンピックが抜けておりました、申しわけありません。オリンピック・パラリンピックは、世界に、国民に勇気を与えるすばらしい祭典です。しっかりと成功させなければなりません。人権に配慮しながら、また国際社会の動向にしっかりと配慮しながら、早急に明確な、理解できる形で国民に国内担保法のあり方を示していただきたいということを最後にお願い申し上げまして、私の質疑を終わらせていただきます。

 ありがとうございました。

浜田委員長 この際、牧島かれん君から関連質疑の申し出があります。茂木君の持ち時間の範囲内でこれを許します。牧島かれん君。

牧島委員 自民党の牧島かれんです。

 本日は、貴重な質問の機会をいただきまして、まことにありがとうございます。

 安倍総理は、施政方針演説におきまして、日本はまだまだ成長できる、その未来をつくると力強いメッセージを発信されました。

 かつて日本では、まだ使われていない資産がある、それは女性の力だと言われていた時代がありましたが、安倍政権において、あらゆる分野で活躍される女性たちに光が当たるようになり、私たちも意識をするようになったと思っています。

 これは経済活動、また商品の開発の部分でも見ることができます。

 例えば車。これは男性の意見が反映されがちだと言われてきた分野ですが、今では、赤ちゃんをだっこしていても、両手に重い荷物を持っていても、鍵を捜さなくて車を乗りおりすることができる。まさに女性の視点が反映された車、世界からも大きな評価をいただいております。

 ウーマノミクスという総理のメッセージが、このように一つ一つの企業に、または基礎自治体にまで至るようになってきたと思います。

 神奈川県でも、神奈川なでしこブランドという認定制度があります。商品の開発におきまして、女性の意見が反映された物やサービスを認定するものです。

 例えば、お母さんの味を継承していきたいとか、高齢者の方、介護が必要な方、障害者の方にとって工夫しやすいような商品にする。また、妊娠中から子育て期に至るまでのサービス、美容や健康に至るものといったように、社会的弱者と言われる方にも温かいまなざしを持って商品開発をする。女性の視点が会社にとっても大きな力になっているということに皆気づき始めていると思っています。

 もう一つ、安倍政権においての大きな変化というのが、M字カーブであります。

 二十代、三十代の女性たちが労働市場から離れていってしまうM字カーブの谷というのが、日本において大きな課題とされてきました。子育てが一段落されるとまたお仕事を再開されますので、アルファベットのMのように戻ってくるとはいえ、このM字の谷を少しでも上げることができないか、こうした施策がこれまでも積み重ねられてきました。

 実際に、この四年間で百四十七万人の女性が労働市場に新たに追加をされています。二十五歳から四十四歳という、働いている、そして子育てをしている世代の方たちが、就業率六七・七%から七二・七%、四年間で五%上がっているんです。なので、このM字の谷は上がってきている、つまりM字カーブという問題も解消されつつあるのではないかという評価もいただいているところです。

 このように、子育てをしながらお仕事をされる女性たちがふえていくと、その環境整備に私たちは真剣に取り組んでいかなければなりません。

 いろいろ課題はありますが、きょうはここで、育児休業という制度について取り上げておきたいと思います。

 お父さんとお母さんが一緒に育児休業をとると、一歳二カ月まで延長することができます。これは、女性が頑張るというだけではなくて、男性にも参加をしていただく、男性の意識改革も必要だというメッセージのあらわれだと私は理解しています。

 しかし、女性の育児休業の取得率は約八割で推移しているのにもかかわらず、男性の育児休業の取得率は二・六五%です。少しずつ数字は上がっているとはいっても、まだ三%にまでも至っていない。これを二〇二〇年までに一三%にするという政府の目標を掲げられていますが、どのように進めていかれるおつもりか、お聞かせください。

塩崎国務大臣 男性の育児参加は極めて大事だということを御指摘いただき、また、残念ながら男性の育児休業の取得率というのは、例えばスウェーデンの九割と比べてみれば、惨たんたる状態と言ってもいいぐらいの状態にとどまっているということであります。

 そこで、男性が積極的に育児を行うためにも、女性の継続就業あるいは出産意欲の向上の観点からも男性の育児休業取得というのは大事だというふうに思っておりまして、私ども厚生労働省としてもしっかりやっているところでございます。

 厚生労働省で、パパ・ママ育休プラスなど、男性が育児休業を取得しやすい制度を周知していくということ、それから、これはプロジェクトとして、企業を表彰しようということで、イクメンプロジェクトというのを、男性が育児に参加をすることについての企業の言ってみればバックアップを表彰する、そういう制度であります。男性の育児休業取得促進に取り組む企業への助成金の支給というものも当然やっています。

 本年一月に施行されました改正育児・介護休業法に基づいて、マタハラの中に、育児休業をとることについても、やはりハラスメント防止措置というものを徹底することになっています。

 さらに、育児休業が取得できることなどを企業が働く方に個別に周知することを盛り込んだ、育児・介護休業法の改正法案を既に今国会に出させていただきました。

 これらの施策によって、目標の達成、今お話にあった一三%、これが当面の目標でございますけれども、先ほどのスウェーデンの九割と比べるとまだまだでありますので、しっかりと取り組んでまいりたいと思っております。

牧島委員 引き続きよろしくお願いいたします。

 もう一点、国際比較があります。六歳未満のお子さんがいる家庭で夫がどれぐらい家事をしているかという時間です。

 スウェーデン、ノルウェー、ドイツ、アメリカ、そうした国々では、毎日三時間家事をしています。そのうち一時間は育児に充てています。

 さて、日本はどうなっているかというと、実は平均一時間です。もちろん、土曜日、日曜日、一生懸命育児しているというお父さんたちもいると思いますが、平均して毎日三十九分という実態です。

 これも、二〇二〇年までに、毎日二時間半、男性の方たちに育児を含めて家事をしていただきたいという目標設定がなされています。

 なおかつ、この日本において、平均がより低い地域がございます。地元のことで恐縮ですが、山口県と九州でございます。なので、山口県の知事と九州の知事が協力して、妊婦の体験をしようということになりました。

 ただ、男性は妊婦さんになることはできませんので、七カ月の妊婦さん、七・三キロの妊婦ジャケットをつけて生活するというプロジェクトです。動画もあります。靴下をはくのもこんなに大変なのか、初めて気づかされたといったコメントもありました。この実証によって妊婦体験をした男性の九六・七%は、自分が育児、家事に協力をしなければならないなと思うに至ったと回答しています。

 ここは、ぜひ総理のコメントをいただきたいと思います。

安倍内閣総理大臣 最初に、女性が社会に参加する意義、意味についてお話しになられました。

 多様性を例えば企業が持つというのは極めて重要であろう、こう思っております。女性の重役がいる企業は破綻する比率が下がっていくという統計もあるわけでありまして、よく私が申し上げるのは、リーマン・ブラザーズがもしリーマン・ブラザーズ・アンド・シスターズだったら破綻しなかっただろう、こう申し上げているところでございます。

 その意味において、夫婦でお互いに協力し合う、家事も育児も協力し合うということは、極めて重要な視点だと思っています。

 第一子が生まれた後、夫が休日にどれぐらい家事、育児をしているか、その時間が長ければ長いほど二人目の子供が生まれている割合が高いということがデータによって明確に示されています。

 山口県、あるいは副総理の地元の九州も比率が低いというのは大変残念なことでありまして、ぜひ変えていきたい。山口県の村岡知事、大変若い知事でございまして、子育て中でもありますから、まさに知事みずから範を示しているんだろう、こう思います。

 私自身も、子供がおりませんから育児はできませんが、家事的な、ごみを出したりあるいはお掃除をしたりとかいうことは、これは私は女房から余り言うなと言われているんですが、結構私もやっているというのも事実でございます。

 ただ、一日平均して二時間半というのは確かに高いハードルでありますが、六歳未満の子供がいる夫は働き盛りの世代であり、目標の達成のためには働き方改革が大前提であろう、こう思っております。

 さらに、意識改革も重要でありまして、先ほど例として挙げていただいた、重い妊婦ジャケットを身につけることで、子供を産んで家事をする女性の苦労について想像力が働くようになるということは大変大切なことではないか、このように思います。

 私の地元も含めまして、日本の男性は家事、育児をしないという、このイメージを払拭していくために力を尽くしていきたい、このように思っております。

牧島委員 総理も家事をされているということでございますので、全国の男性の皆様も、きょうから早速、家事の時間を延ばしていただければと思います。

 女性が職場を離れる、離職を考える理由は、出産だけではありません。四十代、五十代とキャリアを積んでこられた女性が離職をしなければならないかなと考えるその理由は、介護であります。

 介護は、いつやってくるかわからない、どれぐらい時間がかかるかわかりません。私たち四十代に入りました同世代は、育児と介護が同時にやってくる、そんな声も聞こえてきています。

 この介護休業の制度についても、この一月からルールが変わっています。

 介護休業をとるために、要介護認定二以上であればとることができますということが明記された上で、要介護一以下であっても、十二の項目、例えば排せつとか意思の伝達において全面的な見守りが必要な場合、または部分的な見守りでも二つ以上の項目で該当する場合は、介護休業がとれるようになっています。またさらに、扶養し、同居していることという条件が外れました。なので、遠方に住んでいる祖父母のために介護休業をとることもできます。最長九十三日間の介護休業、この日数を三回に分けてとることもできます。

 これだけの制度が整備されていますが、問題は、余り知られていないということです。ぜひ、周知徹底をしていただいて、会社において介護休業、介護休暇がとりやすい環境を整えていただきたい。厚生労働大臣、よろしくお願いします。

塩崎国務大臣 御指摘をいただいた介護休業取得率というのは、直近の調査ではまだ三・二%ということでありまして、極めて低水準と言わざるを得ないと思っております。

 介護休業制度の認知度を上げていく、そして取得促進を図っていくのは極めて大事であるということは今御指摘のとおりでありまして、この分割取得を可能とするなどの見直しを行った改正育児・介護休業法が一月一日から施行になっているわけでありますけれども、これまで、厚生労働省の労働局を中心に企業説明会などを行ってまいりました。そして同時に、新聞広告などの政府広報を積極的に活用した周知に取り組んでまいっておりますが、今御指摘のとおり周知徹底が極めて大事でありますので、企業への指導にしっかりと取り組んで、引き続いてやっていきたいと思っております。

 職場環境の整備について、企業の積極的な取り組みを促すことも同時に重要でありますので、従業員の介護離職を防止するため企業が職場において何をすべきなのかということで、仕事と介護の両立支援対応モデルというのを普及していこうと思っております。

 さらに、従業員の仕事と介護の両立に関する取り組みを行った企業への助成金、これをしっかりしていこうというふうに思っておりまして、こういったことで企業における取り組みを支援しておりますけれども、介護離職の防止のためにあらゆる手を尽くして、全力で頑張らなければいけないというふうに思っております。

牧島委員 広報活動を引き続きお願いさせていただきます。

 誰もがその能力を存分に発揮できる社会をつくる、そのためにも働き方改革、長時間労働という慣行を断ち切っていく、総理は繰り返しこれまでもメッセージとして発信をしてこられました。

 長時間労働是正のために、まずどこから着手をする必要があるのか。加藤担当大臣、お願いいたします。

加藤国務大臣 長時間労働を是正するために、まず、すぐできることという意味においては、監督指導強化ということでこれまでも厚生労働省において取り組まれ、さらに、昨年十二月に「過労死等ゼロ」緊急対策を取りまとめて、労働時間の適正な把握の徹底など、既にやれることはまずやっているということであります。

 そして、それと同時に、やはり実効ある時間外労働の上限をどのようなものにしていくのかという、制度面における議論をやっていくことが必要だというふうに考えております。

 総理も国会でたびたび申しておられますけれども、一年余り前に、入社一年目の女性が、過酷な、特に長時間労働による状況の中でみずからの命を絶つという大変悲惨なことがございました。まさに過労死というこうした悲惨な悲劇を二度と繰り返さない、こういう強い決意で長時間労働の是正に取り組みたいと思っております。

 そのためには、しっかりと問題の構造を突き詰めて、そして働く人の立場、視点に立った議論を進めていくことが重要だと考えております。

 具体的には、政府の働き方改革実現会議において有識者、労働者、使用者側の議員からさまざまな意見を伺って検討していくことにしておりまして、きょう実は夕方、その会議が開催されるわけであります。実態を見ながらしっかり議論し、明確に結論を出していきたいと思っております。

 その際には、脳・心臓疾患の労災認定基準、いわゆる過労死基準をクリアするという、健康の確保を図るということ、これは当然のことでございますが、その上で、先ほどから御議論もございましたが、女性あるいは高齢者が活躍しやすい社会、またワーク・ライフ・バランスを改善するという観点、そうしたさまざまな視点に立って議論をしていく必要があると考えております。

牧島委員 国民も安倍政権に大きな期待を寄せていると思いますので、よろしくお願いいたします。

 家族と過ごす時間が大事、それは私たちが皆考えていることなんですが、一点、気をつけておきたいなと思っていることがあります。

 長時間労働是正のために、お子さんのお迎えのため早く会社を出られるという方がいらっしゃると思います。その分、独身者に長時間労働やまたは過重な労働が課せられてしまうということになってはいけないと思います。

 ワーク・アンド・ファミリー・バランスの先を行った、家族のある方だけではなくて、ワーク・アンド・ライフ・バランスなんだということを広く多くの方にわかっていただきたい。

 結婚していてもしていなくても、子供がいてもいなくても、ライフ、一人一人の時間というものは大事である。そこで自己研さんを積んだり、またはプライベートな時間の中でエネルギーをチャージしていく、ワーク・アンド・ライフ・バランスである。

 このようにお話をすると、それでうちの会社は大丈夫なんだろうか、日本の経済は回っていくんだろうかという不安の声が聞こえてきます。

 では、そこで、現状どうなっているのかというのを見てみますと、労働生産性という一つの指標があります。日本は四十二・一ドル、アメリカの六割強、OECD三十五カ国中二十位。長時間働いている。働いている時間の長さはトップクラスなんだけれども、労働生産性でいうとトップではないという現実があります。もちろん、おもてなしのように値段や価格に反映されていない部分があるという指摘はあると思いますが、このままではいけないという時点に来ているはずです。

 ワーク・ライフバランスの小室社長の言葉をかりれば、長時間労働をしている、そして寝不足になっている、頭がぼうっとしている状態で仕事をすればミスが起きる、クレームが来る、その対応でストレスがたまる、そうすると新しいアイデアも思い浮かばない、だから生産性が下がっていくという負のスパイラルに私たちは入っているんじゃないかという指摘であります。

 なので、ワーク・アンド・ライフ・バランスは、一人一人の働いている人にとってだけではなくて、最終的には会社にとってもプラスになるんだということを多くの企業の皆さんにもわかっていただきたいなと思います。

 このワーク・ライフ・バランスを進めていく方策として、テレワークというものがあります。今では、会社で働くか、在宅で働くかといったことだけではなくて、モバイル型とかシェアオフィス型とか、いろいろなタイプがあります。

 なので、一つ留意点として私が考えていること、それは、テレワークがかえって長時間労働、過重労働にならないようにすることだと思います。

 もう一つは、テレワークをする方と会社に出勤をしている方の人事の評価が公平公正でなければならないということだと思っています。会社に来て遅くまで仕事をしているから頑張っている人と評価される時代から変わっていくわけでありますので、成果、アウトプット、期日までにどれだけの仕事がなされたかといったところが人事の評価の対象になってくる。

 これは日本の企業にとって、また労働環境にとっては大きな変化になってくると思いますので、厚生労働大臣の御所見をお聞かせください。

塩崎国務大臣 テレワークにつきまして、極めて大事なポイントを今御指摘いただいたと思います。

 総理との車座でも、大事な仕事は会社ではやらないという方がおられましたが、当然それは、適正な評価が行われているからこそ家庭でテレワークでお仕事をされているんだろうというふうに思います。

 当然、テレワークというのは、働く方の業務の効率化あるいはワーク・ライフ・バランスの実現、そしてまた企業の生産性の向上、こういったことに資するものでありますので、働き方改革を進めるためにその推進を図ることは重要だというふうに考えております。

 他方、今御指摘のとおり、テレワークが長時間労働をむしろ逆に過重に負荷してしまう、それからテレワーク利用者の人事評価が公正公平に行われないということではいけないので、それはきっちり公正公平な評価、そしてまた過重労働にならないことにしていかなければいけないと思います。

 厚労省では、これまで、企業の労務管理担当者向けのセミナーの実施あるいはパンフレットの作成などを通じて、テレワークを利用する方の労務時間を正確に把握すべきことや業績評価の留意点を周知していこうということで、そして企業や働く方からの相談を受け付けて、いろいろな疑問があると思うので、これにしっかりとお答えできるようなテレワーク相談センター、これをしてまいっております。

 来年度は、新たにテレワークに関するガイドラインを整備、見直しいたしまして、テレワークにおける労働時間管理の留意点というのを明らかにして、働く方のワーク・ライフ・バランスの実現や企業の生産性の向上に結びつくいわゆる良質なテレワークを普及、実現していくようにしてまいりたいというふうに考えております。

牧島委員 テレワークのガイドライン、多くの企業からも期待があると思います。

 日本の働き方改革に大きな影を落としているもう一点が、通勤時間の長さです。平均して一時間十五分……(発言する者あり)はい、神奈川県が一番長くて一時間四十四分であります。こうした生活スタイルを変えようと、地方移住をされた方たちのお話も聞いてまいりました。

 徳島県美波町に行きました。ここのITのサテライトオフィスでは、半IT半Xという生活のスタイルが確立をされています。

 例えば、子育ての時間を十分にとりたいという方は半IT半子育て。または、趣味でサーフィンをやっているんだけれども、都会にいるときには通勤時間が長くてなかなかできなかった、徳島県美波町では存分にできる半IT半波。そして、こちらは女性ですけれども、半IT半ハンティング、鳥獣被害対策を頑張っていただいている女性にもお会いさせていただきました。

 こうしたIT、ICTを活用したサテライトオフィスなど、地方創生にも、このIT時代、いろいろな可能性が広がってきていると思います。ぜひ地方創生担当大臣のお考えをお聞かせください。

山本(幸)国務大臣 委員御指摘のとおり、働き方改革そして地方創生の観点からも、サテライトオフィスは非常に大きな可能性を秘めていると思っております。

 私も、昨年九月に徳島県の神山町と美波町を視察いたしましたけれども、徳島県では、飯泉知事のリーダーシップで整備されました全国屈指の高速ブロードバンドがございまして、今、これを活用して、ICTベンチャー企業のサテライトオフィスが集積しております。

 神山町はちょっと山の方で、美波町が海の近くですが、神山町では、古民家を改修したオフィスで、私が行ったときに、ハンモックに揺られながらパソコンを打っている姿もございましたし、IT系企業の社員と地元住民が交流している、そういう姿も見させていただきました。

 美波町では、海が近いということもあって、サーフィンが好きな、あるいは魚釣りが好きだというような社員が楽しんで仕事もしている、東京や大阪から本社も移した、そして売り上げも上げたというような例もございました。

 お話を聞きますと、こういうIT系の企業では、朝から晩までパソコンを打っていると、うつ病になる社員も出てきたというようなことがありまして、それで社長さんが、これは何かしなきゃいかぬということで探して、そうした神山町や美波町に移転してきた、そうしたら社員の病気も治ったということでもありました。

 また、東京に一度は会社をつくったんだけれども、そうすれば優秀な社員が集まるかと思ったら、零細中小企業にはなかなか来てくれない。ところが、美波町に移って、それが新聞にも報道されて、募集をしたら大変優秀な社員が集まったというようなことで、本社を移してしまおう、そういう企業もございました。

 そしてまた、お話のように、仕事と家庭あるいは趣味というものを、職住近接ですから、ともに楽しめるということで、すばらしい、仕事と家庭あるいは趣味の両立ができているわけであります。

 神山町では十六社、美波町では十五社がもう既に進出して、人口の社会増に転ずる年もあったということでありまして、こういうサテライトオフィスの導入は、地方への移住を初め、地方への新しい人と仕事の流れをつくって、地方創生の実現に大きく貢献するものと期待しております。

 このため、地方創生交付金による支援に加えて、光ファイバー等のICTの利用環境や柔軟な就労環境の整備などについて、テレワークを主導する総務省初め関係省庁と連携して取り組むこと等によりまして、地域におけるサテライトオフィスの一層の推進を後押ししてまいりたいと思っております。

牧島委員 ぜひ地方創生も引き続き推進をしていきたいと思います。

 テレワークを進めるに当たって私が前提になっていると思っているのが、オフィス改革です。

 総務省の行政管理局はモデルルームになっていまして、私も視察をさせていただきました。そこで働いている方たちは、みずからの一人一台のパソコン、そして持ち運びのできる電話、ペーパーレス、電子化された環境の中で仕事をする。オフィス改革が進んだことによって、テレワークの取得率、取得日数も上がりました。そうした仕事の仕方をしていたので、テレワークをしている方とパソコンの向こう側で打ち合わせをする、会議を進めることも難なくできているという様子も拝見させていただきました。

 仕事の効率を上げていく、業務を改善していくという意味でも、ペーパーレス化、電子化、IT化というものは必須の条件になってくると思います。

 総務省からぜひ霞が関改革を起こしていただき、地方自治体にも広げていきたい。期待をさせていただいておりますので、総務大臣、よろしくお願いいたします。

高市国務大臣 去年の春に牧島委員には総務省に来ていただいて、去年の年末だったと思うんですが、お地元の開成町の議会の先生方にも御視察をいただきました。

 テレワークというのは、ライフステージごとの生活スタイルに応じて柔軟な働き方ができる、まさに働き方改革の切り札だと私は確信をいたしております。その中でも、やはり情報通信と行政管理を所管しております総務省というのは、この霞が関の、ICTを活用した働き方改革のまずトップランナーであるべきだという強い思いを持っております。

 現在、総務省では、全職員、テレワーク勤務の対象にしています。また、急に朝、お子さんが熱を出されるというようなこともありますので、その朝申告してもテレワークはできます。また、午前と午後で分けてとることもできます。

 非常に進んでいるんですが、委員がおっしゃったように、やはり書類を電子化して、パソコン一台で働けるということをふだんから、もうそういう環境になれていましたので、テレワークの普及も早かったということでございます。

 数年ぶりに、他の役所に出向していて最近総務省に戻ってきた女性職員とこの間話したんですが、総務省に戻ったらテレワークがすごく普及していてびっくりした、非常に子育てと両立しやすいというお話があったんです。

 それはうれしかったんですが、他方、去年の夏から総務省がテレワークの主管官庁になりましたから、こんなことじゃいかぬな、よそから帰ってきて、いいと思われているようじゃだめだということで、やはり全ての省庁、それから地方公共団体、そして企業に至るまでテレワークを普及する、その責任を私は担っていると思っています。

 特に、国家公務員のテレワーク環境整備のためには、政府共通プラットホームのリモートアクセス環境の整備をしています。

 各省と連携もしながら、ことしから政府税制調査会もペーパーレス化となりました。また、先ほど来出ております、各地でサテライトオフィスを設置したいと考えておられる企業、また誘致したいと思われる自治体への補助金、補助事業も始めました。それから、先進的な事例、民間であれ地方公共団体であれ国であれ、そういったものの普及啓発活動に今力を入れています。また、これから導入したいなという企業、自治体もありますので、テレワークアドバイザーの派遣などもいたしております。

 これからも、電子化も含めてしっかり取り組んでまいります。

牧島委員 先進事例の普及啓発、私たちも一生懸命頑張っていかなければならないと思います。

 以上で終わります。ありがとうございました。

浜田委員長 これにて茂木君、葉梨君、牧島君の質疑は終了いたしました。

 次に、石田祝稔君。

石田(祝)委員 総理、大変にお疲れさまでございます。

 きょうは、時間をいただきましたので、総理並びに関係大臣に御質問をいたします。

 考えてみたら、総理、一月二十日に国会が始まって、施政方針演説をやり、そして、二十三、二十四、二十五と衆参で代表質問を受けられる。そして、二十六、二十七、衆の予算委員会、また、三十、三十一と参議院の予算委員会、そして、きょうからは二十九年度の予算ということでございますので、お疲れであろうと思いますけれども、よろしくお願いをいたしたいというふうに思います。

 まず冒頭、きょうは、米国のトランプ政権について少々お伺いをいたしたいというふうに思います。

 私は朝、ラジオを聞くことが多いんですけれども、朝早く起きたときは五時とか六時、七時、そういうときにラジオのニュースを聞くと、まず出てくるのが、米国、トランプ大統領は、こういう文句なんですね。今までは東京都知事がというのが多かったんですけれども、最近は、トランプ大統領、まずそこからスタートしている、こういうことでございます。

 それで、総理は二月の十日に大統領と会われる、こういうことをお聞きいたしておりますけれども、大統領になってから直接お会いするのは初めてになるわけですね。当選後に一度お会いをされて、また電話でも会談されておると思いますけれども、直接お会いをするのは初めてと。

 そういう中で、さまざまな、日米の関係についての忌憚のない、腹蔵のない、胸襟を開いた話し合いをされると思いますけれども、総理は、どういうことをトランプ大統領と話して、そして、ある意味でいえば、日米の同盟関係の中で確認をしなきゃいけないこと、そういうことはどういうことをお考えになっているのか、まずお聞かせいただきたいと思います。

安倍内閣総理大臣 まず、日米関係というのは、日米同盟関係であり、そしてこの日米同盟は、我が国の外交・安保政策の基軸であると思います。この基軸である日米同盟の重要性について認識を一つにしたい、このように考えております。いわば、この日米同盟によって日本だけが裨益しているのではなくて、米国もこの日米同盟によってアジア太平洋地域における重要なプレゼンスを確保し、そのプレゼンスによって地域の平和や安定を確保し、かつ、さまざまな課題、世界的な課題についても、このプレゼンスによって対応していくことが可能となっているわけでございます。その中においては、日本も大いなる貢献をしているということについても認識を同じくしたい、こう思うわけでございます。

 その意味におきまして、まずはしっかりとアジア太平洋地域のアメリカのプレゼンスの重要性を認識し、そして、先ほどの議論の中でもございましたが、安保条約の中においても、五条、日本がもし外国から侵略された際には日米で共同対処する、アメリカが来援をし、あるいはアメリカが報復をするということについて、もう一度しっかりと確認し、それを内外に示していくことは、日本や地域の平和と安定のためには極めて重要であろうと考えております。

 また、経済問題におきましても、トランプ政権は、貿易、経済政策についてさまざまな発言がございますが、まだ閣僚人事あるいはその下の人事が進んでおりませんので、確固たる貿易政策について明らかになってはいないわけでございます。

 いずれにせよ、この日米関係というのは、ただ貿易の多寡あるいは輸出輸入の関係だけではなくて、日米が経済の中において緊密に、我々がこの関係を高めていくこと、そしてまた協力をしていくことによってどのような利益をお互いに得ることができるか、どのようにウイン・ウインの、雇用においても、成長においても、労働者の収入においても、それをプラスにしていくことができるかどうかという建設的な会談を行っていきたいと思います。

 いずれにいたしましても、重要なことは、この日米同盟関係がこれは微動だにしていないということを世界に示していくという会談にしていきたい、このように思っております。

石田(祝)委員 今総理から力強いお言葉もいただきましたけれども、この日米同盟の問題、また貿易関係、TPPを一体どうするのか、こういう問題もございます。

 これは、たしか二〇一三年、総理がアメリカに行かれて、オバマ大統領と、例外なき関税撤廃はないんだ、こういうことを確認して、そして、それぞれ両国にセンシティブな問題がある、たしかそういう確認をとって交渉に入られたというふうに記憶をいたしております。長年かかって、十二カ国でまとめて、やっとここまで来たかということでありますけれども、どうもトランプ大統領の発言を聞いていると、ちょっとこれは心配だな、こういう気もいたします。

 それと、あと、自動車についても、これはもう私は明確に、トランプ大統領は誤解をしているのか、それともわかっていて言っているのか、そこがわからないんですよね。ですから、そこのところも、私もそういう話を聞いて、車に乗って移動中に、ふと横を見ると、メーカー名は言いませんけれども、ドイツ車が来て、またドイツ車が来て、その次もまたドイツ車が来る。これは、やはりはっきり言って、アメリカが売れるものをつくっていない、こういうことではないかというふうに思います。

 関税にしても、日本からアメリカは乗用車で二・五%、ピックアップは二五%、日本に来るには関税がかかっていない、こういうことであります。

 以前は、たしか私の記憶では、アメリカなんかはもう、アメリカ車に乗るということが一つのステータスになって、我々が学生、ちょうど働き出したころは、ムスタングとかああいう車に皆憧れておったんです。財務大臣も何かほほ笑まれておりますけれども、乗った記憶があるのか、乗っていたのかもしれませんね。

 それで、私が大統領の就任演説でちょっと気になるのが、バイ・アメリカンとハイヤー・アメリカン、こういう言葉をおっしゃっているんですね。これは、アメリカの国内だけで、アメリカ国民に向かって、自国のものを買ってもらいたい、米国人を雇え、こう言うんだったらいいんですけれども、これが外に、日本とかに対してアメリカ製品を買ってくれとか、こういうことになってくるとまた話が違ってまいります。また、さらには、アメリカ人を雇えとなると、これはちょっと違う話になりますので。

 そういう心配はないだろうと思いますけれども、とにかく腹蔵なく、何でも話し合える御関係をつくっていただきたいな、こういうふうに思っております。

 それで、私は一つ感じたのは、総理はたしかゴルフのクラブを贈られましたよね。僕はあのときに、おじいさんの岸総理とアイゼンハワー大統領の関係、要するに、ゴルフは本当に気の合った者じゃないとやらないんだ、仕事は一緒にやる人もいるけれども、そういうお話があったということで、人間関係を岸総理またアイゼンハワー大統領は非常に緊密なものとしてそのときにつくられた、それを総理は御存じでクラブを贈られたのかなというふうにも思ったんですけれども。とにかく、お会いするわけですから、まず人間関係をしっかりつくっていただきたいと思います。

 それで、三日にジェームズ・マティス国防長官が訪日をされます。新聞報道でも、大統領は、非常にマティス国防長官を信頼している、防衛関係についてよく話し合ってもらいたい、こういうお話だったと思うんですけれども、稲田大臣、カウンターパートになるわけですけれども、稲田大臣は、二月三日、どういうお気持ちでこのマティス国防長官を迎えて、どういう会談にしたいのか、お答えをいただきたいと思います。

稲田国務大臣 今、石田委員御指摘になったように、トランプ政権において重要な役割を果たされるであろうマティス国防長官が、政権発足後極めて早い段階で我が国を訪問される。これはまさしく、米国のアジア太平洋地域に対するコミットメント、そして関心の強さをあらわすものとして歓迎したいと思います。

 そして、長官との間では、アジア太平洋地域の情勢について意見交換をして共有の認識を持つ、さらには、日米同盟における諸課題について忌憚なく意見交換をして、この会談が日米同盟の強化、深化につながるよう、そして、先ほど石田委員おっしゃいましたように、しっかりと信頼関係を築いてまいりたいと考えております。

    〔委員長退席、武藤(容)委員長代理着席〕

石田(祝)委員 では、続きまして、天下りの問題についてお伺いをいたしたいと思います。

 特に、まず、松野文部科学大臣にお伺いをいたしたいと思います。

 今までいろいろな場面で厳しく御指摘をされてきたと思いますけれども、やはりこれはあってはならないことだ、やってはいけないことをやっている、このことは間違いないと私は思うんですよ。ですから、やってはならないことをやっているということは、では一体、どういうことをやってきたのか、またそれをどう正していくか、そして今後どういうふうに再発防止をしていくのか、これは私は、まず文部科学大臣としては非常に大きな責任があると。

 なぜかといいますと、文部科学省というのは教育をつかさどるところでしょう。教育というのは教え育むと書いているわけです。教えるべき主体がこんなことでいいのか、何をもって教えるんだ、こういうことにもなりかねないわけでありますが、これについて、とにかく再発防止という点で、大臣の御決意をお伺いいたしたいと思います。

松野国務大臣 このたび、内閣府再就職等監視委員会の調査によりまして明らかとなった文部科学省における再就職に関する国家公務員法違反行為等につきまして、先生から御指摘をいただいたとおり、国民の皆様の文部科学行政に対する信頼を著しく損ねたことを心よりおわび申し上げます。文部科学省としては、省として猛省をし、省全体を挙げて信頼の回復に努めていく所存であります。

 そのためにも、私のもとに再就職等問題調査班を設置し、再就職等監視委員会に対して調査方針や調査項目等の報告を逐次行い、調査の公正中立性を確保するとともに、より国民の信頼回復が図れるよう、再就職等問題調査班に公務員制度等の有識者や弁護士の第三者に入っていただくことにいたしました。全容解明に向け、これらの有識者の指導、判断のもとで調査方針、調査方法を決定いたします。また、制度解釈の妥当性についても御判断をいただきます。

 ヒアリングについては、有識者の参画を基本とし、日程的に可能な限り、いずれかの有識者に参画をしていただくこととしており、仮に日程調整が困難な場合でも、有識者にヒアリングの状況を御確認いただくことといたします。また、調査結果については、有識者の了解を得た上で再就職等監視委員会に報告いたします。

 今後、可能な限り速やかにこれらの有識者の人選を行って、調査体制を整え、全容解明に向けて徹底した調査を進めてまいります。

    〔武藤(容)委員長代理退席、委員長着席〕

石田(祝)委員 過日、我が党の赤羽委員の質問に対して、関与でいいのか、たしか河野太郎議員もそんなことをおっしゃっていたと思うんですけれども、それで、入れます、こういうお話だったというふうに思います。

 関与と、直接入ってもらうということ、これはやはり入ってもらった方が当然いいわけでありますので、ここのところがちょっと今はっきりしない感じもいたしました。

 では、もう一度、ちょっと確認のために答弁をお願いします。

松野国務大臣 有識者の第三者の方に調査班にお入りをいただきまして、その指導監督のもと、しっかりとした調査を進めてまいります。

石田(祝)委員 それで、昨日、山本幸三国家公務員制度担当大臣のもとに三十人強のメンバーで調査チームをつくる、こういうことが発表されました。

 我が党も、昨日、山口代表が記者会見で、再就職問題に関する調査委員会を設置して、政府の調査の進展状況、そういうこともしっかり見ていくんだ、こういうことを決定いたしました。

 それで、山本大臣にお伺いしたいんですけれども、これは、ある意味でいえば、いろいろな組織というのは名が体をあらわすということもあるんですね。ですから、どういう名前になったんですかと聞いても、きのうの段階では、調査チームということしかお答えがなかった。

 そして、具体的なスケジュールはどうするのか。また、弁護士さんについても選任が終わっているのか、いつから動き出すのか。チームの立ち上げは発表したんだけれども、では、具体的にどういうことをやっていくんですか、いつまでにやるんですか。お尻をやはり決めないと、まあ、不十分な調査で発表はできないということかもしれませんけれども、やはりやった以上、途中経過なりなんなりを発表していかないと、本当にやっているのか、こういうことにもなりかねないんですが、そのあたりについて山本大臣の御答弁をお願いします。

山本(幸)国務大臣 まず、チームの名前でありますけれども、特別な名前については今のところ特に考えておりません。再就職規制に関する調査チームということでございます。

 それから、弁護士さんの選任については、今、最終的な調整をやっておりまして、これは、非常勤の国家公務員になってもらわないと、守秘義務を課しますので、その手続もございますので、ちょっと時間がかかります。

 ただ、調査チームは昨日発足いたしまして、事務的な段階での調査とかもできますので、それはすぐにこれから手をつけるということでございます。

 ただ、スケジュールについては、これは、ちょっと今のところ、いつまでというような形でできるようなものではないのではないかと思っておりまして、スケジュールありきではなくて、しっかりとした、中身を充実させるということが大事だということで考えているところであります。

 したがいまして、今のところ、中間報告を行うということは想定しておりませんが、しかし、結果についてはスピード感を持ってやらなきゃいけないということは認識しておりますので、徹底的な調査をしっかりやる、できるだけのスピード感を持ってやるということで効果を上げていきたいというふうに思っております。

石田(祝)委員 山本大臣、ちょっと確認ですけれども、報道によったら、四月に調査結果を取りまとめて公表する方針、こういう記事も出ているんですけれども、これはどうなんですか。

山本(幸)国務大臣 そういう報道について、なぜそういう数字が出てきたのか全く承知しておりません。私どもとしては、スケジュール感を持ってやるということではない、中身をしっかりと充実する、そういうことだと思っております。

石田(祝)委員 スピード感を持ってやっていただきたいというふうに思いますけれども、これはある一定のところで、いつまでにまとめる、こういうことはやはり私は出した方がいいと思いますよ。

 確かに、人選も、弁護士さんが決まっていない、こういうことでもありますけれども、松野大臣はたしか、三月三十一日を越しちゃうと退職する人も出るからとか、何かそんな話も答弁でなさっていたというふうに記憶しておりますけれども、これは国民が注視をしておりますし、山本大臣がやってくれるだろう、こういう期待もしていると思いますので、ぜひ早く、スピード感を持って、全容解明、再発防止、こういうことに取り組んでいただきたいというふうに思っております。

 続いて、きょうは働き方改革についてお伺いをいたしたいというふうに思います。

 それで、きのう厚生労働省から発表があったさまざまな数字がありまして、冒頭ちょっと御紹介を申し上げたいと思うんです。

 二〇一六年の有効求人倍率は一・三六倍、前年比〇・一六ポイント上昇した、一九九一年以来二十五年ぶりの高水準になった。

 そして、総務省が発表した一六年の完全失業率は三・一%と〇・三ポイント改善して、これも九四年以来二十二年ぶりの低さになった、こういう数字もありました。

 また、有効求人倍率の改善は続いておりまして、雇用の先行指標とされる新規求人倍率も二・〇四倍、九一年以来だと。九一年といったら大体まだバブルの余韻が残っているときでございましたので、そのとき以来の有効求人倍率、特に新規求人倍率、こういう数字であった。

 また、完全失業者数も十四万人減少、こういうことでもございます。そして、このことについて、就業者数についてもふえておりまして、今まで働いていなかった高齢者や女性が働き始めたのではないか、こういうことも言われております。

 そして、一六年十二月の有効求人倍率は前月比〇・〇二ポイント上昇の一・四三倍だった、これも九一年七月以来二十五年五カ月ぶりの水準だ。そして、正社員の有効求人倍率は〇・九二倍と過去最高だということも出ております。また、全都道府県で有効求人倍率は九カ月連続で一倍を上回った。失業率は三・一%。こういう数字が昨日発表されました。

 ですから、数字をはっきり見ていくと、これは改善していっていることは間違いないということだろうと思います。

 しかし、いろいろと言われる方は、実感が伴っていないと。なかなか、気持ちの問題のところを数字にあらわすのは非常に難しいわけでございまして、私も新年の会にいろいろ行きますと、企業の経営者の方にもお聞きするんですね。どうですかと言ったら、いや、もうかっているんですと。もうかっているんだったら、もっと大きい声で言ってくださいよと。もうかっている人は大体みんな黙っているんだよね。それで、調子が悪い人だけ声高に政治が悪い、政治が悪いと言うんだけれども、もうちょっと私は、全国のもうかっている人はどんどんもうかっていると言ってもらいたいんですよ。

 ですから、もうかっているなら税金を本当に納めてもらいたいと思います。財務大臣が喜ばれる話だろうと思いますけれども、数字としてはそういう数字も出てきている。

 これについて、通告はしておりませんでしたけれども、塩崎厚生労働大臣、この数字を見て率直にどういうふうにお考えになりますか。

塩崎国務大臣 失業率が今三・一ということで、そしてまた有効求人倍率は、もうこれは総理から何度も言っているように、全国四十七都道府県全部で一倍を超えているということでありますから、それでさらに今改善を重ねている。

 そういう意味ではいい方向に進んでいると思いますが、それでも成長率一・五前後ということが予想をされているわけでありますので、もっともっとまだやるべきことがあるだろうというふうに我々は思っておりますので、引き続いて、経済再生最優先ということで、私どもとしても、やるべきこと、特に、生産性を上げるということで競争力も上げ、そして賃金が上がっていくようにしていくというのが最終的に大事なことだというふうに思っております。

石田(祝)委員 長時間労働についてお聞きしたいんです。

 我が党の井上幹事長も、一月二十四日の代表質問で総理にもお聞きをいたしました。長時間労働とそれからその上限規制、これについては総理も再三の御答弁で、やはり数字をはっきり決めなきゃいけない、それがなくては議論はできないんだ、こういうお話で、働き方実現会議でしっかり議論してもらう、こういう御答弁がずっと続いておりますけれども、改めて、長時間労働というものについて、上限規制も含めて、是正に向けた総理の御決意をまずお伺いいたしたいと思います。

安倍内閣総理大臣 働き方改革において上限規制は極めて重要だ、こう思っています。時間外労働において、どの程度の時間は許され、どの程度は許されないということをしっかりと法定化することが極めて重要だろうと思うわけであります。

 あと、この時期にしっかりと導入しなければ、なかなか導入する時期を失う。つまり、先ほど有効求人倍率の話が出ました。労働市場が非常にタイトになっている、いい条件を出していかなければ人が集まらない。

 例えば、私の地元の下関市は有効求人倍率一・六七倍なんですね。山口県全体では正規の有効求人倍率が一倍を超えているわけでありまして、地方においても間違いなく我々の政策の温かい風は届き始めている、こう思うわけでありますから、この中において、企業がしっかりと従業員の健康管理をし、そしてそれによってむしろ生産性が上がっていくという、経営者も労働側も同じ認識を持ちつつしっかりと進めていく。

 その中において、長時間労働是正のためには、誰に対して何時間の上限にするのかを法律上明確に規定することが重要であります。ですから何時間かということがずっとここで議論になっているわけでありまして、この制限については罰則で担保することが必要であると考えています。働き方改革実現会議においてしっかりと議論し、実行計画を明示したいと思います。その上で、三月に策定する実行計画を踏まえ立案作業を進め、法案を早期に国会に提出したいと考えております。

石田(祝)委員 続いて、これも長時間労働ともかかわるわけでありますけれども、井上幹事長も勤務間インターバルについてもそのときに質問をいたしました。EUでは十一時間とかいうことで制度を設けられている、こういうことも聞いておりますけれども、例外規定もたくさんある、こういうこともわかってまいりました。

 そういう中で、日本は二・二%の企業が導入している。ですから、なかなか、この二・二%の段階で何か強制力を持ったことができるのかということも、これは一つの課題になることだと私は思っておりますけれども、勤務間インターバル制度の導入について総理のお考えをまずお聞かせいただきたいと思います。

安倍内閣総理大臣 働き方改革の目的は、労働者の健康の確保を図った上で女性や高齢者が活躍しやすい社会をつくっていくためのものであり、ワーク・ライフ・バランスを改善していくことでもあります。勤務間インターバルは極めて重要な課題であると認識をしています。

 他方、勤務間インターバルについては、今御指摘があったように、EU指令でも業種などで十四もの例外規定が設けられていることなどからもわかるように、労務管理上の課題があるのは事実でありまして、実施するためには労働時間を短縮することが前提であります。

 このため、法律上明確に罰則つきの時間外労働規制を行うとともに、労使に対しては勤務間インターバルの導入を促し、規制導入についての環境整備を進めていきたいと思っています。そして、就業規則の作成や労務管理用の機器の導入などを行った中小企業に対してその費用の一部を助成する助成金の創設や、好事例の周知を通じて、労使にインターバル制度の導入に対する努力を促していきたいと考えています。

石田(祝)委員 今、私がその次にお聞きしようと思ったんですけれども、総理にお答えいただいたんですが、せっかくですから、大体どの程度二十九年度でそういう中小企業を予定しているか、この助成の対象ですね。まあ、予算ですから当然限りがあるわけですけれども。これは厚生労働大臣にお聞きいたします。

塩崎国務大臣 今総理から御答弁申し上げたとおり、勤務間のインターバルを自発的に導入する中小企業事業主に対して、導入に要した費用の一部を助成する制度を本年度中に開始するということになっておりまして、この助成制度では、まず第一に、対象となる勤務間インターバル時間数は九時間以上、そして、就業規則等の作成、変更、タイムカードなど労務管理用の機器の導入、更新等に係る経費について、上限額五十万円の範囲内でその経費の四分の三を助成する、こういう制度であります。

 対象につきましては、この予算そのものは約四億円を二十九年度で予定しておりますが、対象企業数は千二百件程度を見込んでいるところでございます。

石田(祝)委員 やはり千二百は若干少ない、総理のおっしゃる環境整備という観点からいくと、もうちょっとこれはやっていかなきゃいけないのではないか、こういうふうに思っております。

 それで、とにかくあと私がお聞きしたいのは同一労働同一賃金の問題なんですが、これは正規と非正規の間のことで、日本は今、正規の六割ぐらいが非正規の賃金だ、こうなっています。ですから、これを何とかヨーロッパ並みにしていこうではないか、こういうことを私たちも提案しているんですね。また、総理も、非正規という言葉をなくしたい、こういうこともおっしゃったように私も記憶をいたしておりますけれども、この同一労働同一賃金について、これはやはり長時間労働の是正と並んで大きな、働き方改革の大事な課題だというふうに私は思っておりますが、この点について総理のお考えをお伺いします。

安倍内閣総理大臣 今委員からお話をしていただいたように、私は、非正規という言葉を日本から一掃していきたい、こう申し上げたのは、多様な働き方をしたいと思っている方々は多いわけでありまして、自分のライフステージの中では、この時期にはこういう働き方をしたい。しかし、その中で大きな差があるのであれば、不合理な差があるのであれば、それを阻害していくことになるわけでありまして、それぞれが自分の人生の中で自由に働き方を選べる社会を実現したいという決意をあらわしたものでもあります。

 今回、同一労働同一賃金について、昇給の扱いが違う、通勤などの各種手当が支給されない、福利厚生や研修において扱いが異なるなど、不合理な待遇差を個別具体的に是正するため、賃金にとどまらず、教育訓練や福利厚生もカバーした詳細なガイドライン案を昨年末公表したわけであります。

 私も何人かの方々からお話を伺ったところでございますが、確かに、給与だけではなくて、忌引等についても格差がある。あるいは、これは給与関係でありますが、ボーナスについて、金額がもらえないということと同時に、職場の一緒に働いている人たちが喜んでいる、このボーナス何に使うと言っているのに、一緒に頑張ってきて成果を上げているのに、自分はその会話に参加できないという疎外感、やはりやる気を失っていくことにもつながっていく。一方、そうしたものがない会社で働いている人は、やはりやる気が出てきたという話をしておられたわけでございます。

 公明党の提言も踏まえまして、基本給については、職業経験、能力に応じて支払うもの、勤続に応じて支払うものなど、その趣旨、性格がさまざまである中で、それぞれの趣旨、性格に照らして、実態に違いがなければ同一の、違いがあれば違いに応じた支給を求めることといたしまして、均衡だけではなくて、均衡に踏み込んだものとすることにしております。

 また、各種手当についても、公明党の提言でお示しいただいたとおり、役職手当について、正規労働者と同一の役職、責任であれば同一の支給をしなければならないとし、通勤手当、出張旅費、食事手当について、正規労働者と同一の支給をしなければならないとするなど、新たに多数の考え方を明らかにしたところであります。

 今後、働く人の立場に立ち、そして、不合理な待遇差の是正を求める労働者が裁判で争えることを保障する、実効性ある法制度としたいと思います。働き方改革実現会議の場でしっかりと議論をいただいて、法改正の内容を具体化する考えであります。

石田(祝)委員 今総理もお触れいただきましたけれども、我が党も、働き方改革実現推進本部、こういう本部をつくっておりまして、昨年十二月に中間報告の提言もいたしたところでございます。三月に政府がおまとめになるということでありますので、その前に我が党としても考え方をまとめまして、提言をさせていただきたいというふうに思っております。

 とにかく、この働き方改革は最大の課題だ、こういうふうに私も思っておりますので、与党としても全力を尽くしていきたいと思っております。

 法案のスケジュールについては、いつごろ出されるかということも、これは今までずっといろいろな方がお聞きもされておりますし、総理も、早く出したい、こういうことでございますので、そういうことできょうは受けとめさせていただきたいというふうに思っております。

 続いて、教育の問題についてお伺いをいたしたいというふうに思います。

 私は、総理は教育に対して並々ならぬ御決意を持っているのではないか、これは非常に感じました。それで、昨年、我が党も、自由民主党の皆さんと一緒でありますけれども、いわゆる給付型の奨学金を創設すべきだ、こういうことで取り組みをいたしまして、ある意味でいえば総理が御決断をいただいた、こういうふうに私は思っております。

 そういう中で、とにかく教育について、総理が今回施政方針演説で、国づくり、こういうことをおっしゃっておりますけれども、極論というか結論は、国づくりは人づくりだ、私はそういうふうに思っております。ですから、これはもう教育に我が国としては力をさらに入れていかなければならない、こう思っております。

 そして、昨日、この返済不要の給付型奨学金を創設する日本学生支援機構法の改正案を国会に提出された、こういうことが報道にも出ておりまして、これから文部科学委員会でもまた審議になろうと思いますけれども、とにかく、教育について、今後、この拡充ということを目指しての総理のお考え、御決意をお伺いいたしたいと思います。

安倍内閣総理大臣 教育への投資はまさに未来への投資であろうと考えております。どんなに貧しい家庭で育っても夢をかなえることができるよう、誰もが希望すれば進学できる環境を整えていくことは私たちの使命であろうと思います。

 このため、これまでも、幼児教育無償化の段階的推進、奨学金制度の充実、授業料免除の拡大などに取り組んできたところでありますが、来年度からは、幼児教育の無償化や高校生への奨学給付金を拡充するとともに、今まで成績要件があった無利子の奨学金については、成績要件を外しまして、成績にかかわらず、必要とする全ての学生が無利子奨学金を受けられるようにします。さらには、御党からも強い要望がありました返還不要の給付型奨学金制度を新たに創設することとしたところであります。

 教育費負担の軽減については、御党とともに取り組んでいるところでありますが、優先順位をつけて一歩ずつ諸政策の充実を図っていくことが重要であると思います。今後とも、必要な財源を確保しながら、しっかりと取り組んでいく考えであります。

石田(祝)委員 ぜひよろしくお願いをいたしたいと思います。

 きょうは、ちょうど昨年の予算委員会でも、教育の問題について、特に国立大学の運営費交付金について、授業料との絡みでもさまざま御議論をここでさせていただいたところでございます。

 それで、そのとき、もうずっと運営費交付金が下がり続けているじゃないか、この下がったものを授業料でどうやって担保していくんだ、授業料は上がっていくんじゃないか、こういうお話もあって、いや、そうじゃないぞ、この問題については二十八年度は横並びだ、前年並みだ、こういうお話もいたしました。

 その結果、そして我々も努力いたしましたが、このパネルで見ていただきますように、国立大学の運営費交付金は、二十九年度、二十五億円増の数字になったわけでございます。

 これについて、松野大臣として、今後、私は、これでまた三十年度が横ばいというんじゃなくて、伸ばしてもらいたいんですよ。大臣の御決意をお伺いします。

松野国務大臣 学生が経済的な理由により修学を断念することなく学業を続けられるように支援するということは極めて重要であり、委員の思いと同じくするところであります。

 平成二十九年度の予算案においては、授業料減免を含め、国立大学が継続的、安定的に教育研究活動を行うための基盤的な経費である国立大学法人運営費交付金等について、対前年度二十五億円増の一兆九百七十億円を確保しております。このうち、国立大学の授業料減免については、対前年度十三億円増の三百三十三億円を計上し、免除対象人数を五・九万人から六・一万人に増員しているところであります。

 文部科学省といたしましては、国立大学改革をさらに進め、国立大学の機能を十分に発揮できるようにすることが重要と考えており、引き続き、国立大学の授業料減免も含めた国立大学法人運営費交付金等の確保に努めてまいりたいと考えております。

石田(祝)委員 松野大臣、せっかく、二十七、二十八が横ばいになった、二十九年が上向きのベクトルになったんですね。ですから、ベクトルというのは方向性と力の積ですから、これをぜひまた三十年度も、我々も一生懸命お手伝いいたしますし、国立大学の運営費交付金について、これは大学授業料の免除もこの中に入っているわけです。昨年の我が党の党大会で、高等教育の無償化、大学の無償化、それをやはり視野に入れて、これはすぐにできませんから、まずは授業料の免除枠の拡大をすべきだ、こういうことを党大会で決定したわけであります。

 ですから、私は、この運営費交付金の中に授業料の免除枠の予算が一緒に入っている以上は、免除枠の拡大をしていったらほかの予算を食っちゃった、こういうことでは困りますので、両方伸ばす中で免除枠の拡大をぜひしていかなければいけないというふうに思っております。

 この運営費交付金との関係になりますけれども、今若干もうお触れいただきましたけれども、再度、運営費交付金を伸ばす、その中で免除枠も拡大していく。

 そして、今回、今国立大学のことを触れていますけれども、私立も予算を二十九年度は百二億、前年から十六億円ふやして、免除対象、減免対象人数も一万人ふやした、こういうことも私学についても手当てしているわけでございます。ですから、国立大学だけじゃなくて私学についてもやはり学ぶ機会をふやしていく、こういう点で、再度大臣の御決意をお伺いしたいと思います。

松野国務大臣 委員御指摘のとおり、国立、公立、私立に限らず、まず、高等教育の基盤をしっかりと支えるためにも、運営費交付金、また私学助成等、しっかりと確保してまいりたいと考えておりますし、高等教育の充実を図ると同時に、家計における教育費負担の軽減も進めてまいりたいと考えております。

石田(祝)委員 それでは、総理にも、教育全般ではなくて高等教育について、教育費負担の軽減に向けて、総理のお考え、御決意をお伺いいたしたいと思います。

安倍内閣総理大臣 これまでも、意欲と能力のある学生が経済的理由によって進学を断念することがないように、奨学金制度の充実や授業料免除の拡大などに取り組んできたところでありますが、来年度予算においては、授業料免除の一層の拡大に加えて、無利子奨学金について、低所得者世帯の子供に係る成績基準を実質的に撤廃するとともに、残存適格者を解消することとしています。これもずっと言われてきた大きな宿題であったと思っています。

 また、卒業後の所得に応じて返還月額が変わる所得連動返還型奨学金制度を導入することとしております。これによって、返還に追われて生活が厳しいことになることがないように、柔軟な対応が可能となっていくと思います。

 さらに、意欲と能力があるにもかかわらず経済的理由によって進学を断念することがないように給付型奨学金を創設するということは、先ほど申し上げたところでございますが、対象者については、住民税非課税世帯の大学等進学者のうち、給付型奨学金を支給するのにふさわしい学生を対象とするという観点から、無利子奨学金よりも高い学力・資質基準を課すこととしておりまして、二万人を対象としています。

 これら一連の施策を一体的に進めていくことによって、確実に子供の進学を後押しすることが可能となるというふうに考えておりますが、この限られた財源の中ではありますが、優先順位をつけて一歩ずつ諸施策の充実を図っていくことが重要であり、今後とも、必要な財源を確保し取り組んでいきたい、このように考えております。

石田(祝)委員 ぜひよろしくお願いをいたしたいと思います。

 文科大臣に一つだけ最後にお聞きしたいんですけれども、高等学校等の就学支援金、これも充実をしているところでありますけれども、その中で、やはりいろいろな御要望、御意見があります、年収基準があるものですから。しかし、例えば、双子の子供が一緒に行っていたりとか、高校に一年と三年に子供がいるんだ、こういう多子世帯についても同じ基準でいいのか、こういうお声もありますけれども、そういう多子世帯また年収要件について、高等学校等就学支援金について、これは見直していく必要もあるのではないかと思いますが、大臣、いかがでしょうか。

松野国務大臣 高等学校等就学支援金制度については、平成二十五年の法律改正時に衆参両院で決議をされました附帯決議において、改正法の施行から三年経過後、平成二十九年度でございますが、三年経過後に検証を行い、必要な措置を講ずることとされております。

 検証においては、本制度の具体的効果や影響をさまざまな角度から検証することとされており、例えば、各都道府県における授業料減免事業、公私間の授業料格差、委員から御指摘がありました多子世帯における教育費負担等の状況について、実情を十分に把握した上で、専門的見地からの意見も踏まえ、しっかりと検討してまいります。

石田(祝)委員 続いて、中小・小規模企業の支援についてお伺いをいたしたいというふうに思います。

 これは、私は、総理の施政方針演説を見て、多くの中小企業の方は非常にお喜びになったのではないかと。手形の問題であります。

 総理はこうおっしゃっているんですね。先月、五十年ぶりに下請代金の支払いについて通達を見直した、これまで下請事業者の資金繰りを苦しめてきた手形払いの慣行を断ち切り、現金払いを原則とします、近年の下請いじめの実態を踏まえ、下請法の運用基準を十三年ぶりに抜本改定しました、今後厳格に運用し、下請取引の条件改善を進めます、こういう施政方針演説でございます。

 ここで明確に、資金繰りを苦しめてきた手形、ここまで私は言っちゃっていいのかということも正直思ったんですけれども、これはやはり、手形を受け取って支払いまで間がある、裏書きをして、割引料を払って、もらえればいいけれども、結局、もとのところが、振り出したところが倒れちゃって、裏書きをしたところが連鎖倒産する、確かに、こういうことも私も聞いておりますし、そういうこともあるわけであります。苦しめてきた、これを、現金払いを原則とする、私は、この総理の非常に力強い言葉は非常に大事だな、ある意味では、よくぞここまで言っていただいたな、こういうふうに思っております。

 私たちが日ごろおつき合いする方なんかも、私の知り合いで徳島の方がいらっしゃるんですけれども、もう手形はなくすべきだ、現金でやはりやっていくべきだ、こういう論者の方がおります。こういう方が長年そういう説を申し上げて、私も聞かされてまいりましたけれども、今回、大きく五十年ぶりにそういうところを改正するということで、私は、非常にこれは一歩も二歩も前進するのではないのか、こういうふうに思っております。

 きょうは残念ながら時間が余りございませんで、これは総理に全体的にお伺いをしたいと思います。公取の委員長にもきょうは来ていただいておったんですけれども、若干ちょっと時間が足りませんので、お許しをいただきたいと思います。

 総理が施政方針演説でここまでおっしゃったということ、それは私はすごいことだと思いますけれども、総理の率直なお考えをお聞かせください。

安倍内閣総理大臣 石田先生もそうだと思いますが、私も後援者の中にたくさん中小企業あるいは小規模事業者の皆さんがおられる。この皆さんも、やはり、手形によって資金繰りが物すごく悪化するときもあるし、場合によっては、割引を我々が負担せざるを得なくなる場合もあるんだ、これは本当に、大きな声では言えないけれども、なくしてもらいたい、こんなことを言うと、ではほかのところにかわってもらおうか、こう元請に言われてしまうので言えないけれどもという話を随分聞いてまいりました。

 中小企業の中には、みずから発注者として手形払いを利用している事業者が多数あることから、今回の通達では、手形払いを一律に禁止することまではしていないわけでありますが、しかし、仮に手形等を使う場合でも割引料を下請事業者に負担させないこと、そして手形サイトを短縮することを求めています。これによって、発注者にとって手形払いにするメリットが少なくなることから、今後、現金取引の比率が高まっていくものと考えています。

 施政方針演説で述べたとおり、下請代金の支払いについて、これまで下請事業者の資金繰りを苦しめてきた手形払いの慣行を断ち切り、そして現金払いの動きを強く推し進めていくべく、政府を挙げて取り組んでまいりたい、このように思います。

石田(祝)委員 総理の御発言以上のものは私はないとは思いますけれども、せっかく見ていただいている方、こういう手形についても、非常に長いサイトのものもある。昔、支払いが二百十日先だ、台風手形といって、台風が二百十日に来るということなので台風手形なんというのもあったというふうにお聞きしました。

 九九・七%が中小企業であります、それで七〇%の人がそこで働いているということを考えたとき、日本の経済を支えているのは中小・小規模事業者である、こういうことを改めて私たちも認識して、全力で頑張ってまいりたいと思います。

 きょうは大変にありがとうございました。

浜田委員長 これにて石田君の質疑は終了いたしました。

 次に、江田憲司君。

江田(憲)委員 民進党、江田憲司でございます。

 ちょっと、十二時からの休憩まで十二分しかございませんので、まず、昨今、もしかしたら国政よりも注目されているかもしれない都政関連で、二つ取り上げたいと思います。

 一つ目は、国民の非常に期待の強い東京オリンピック・パラリンピックの費用負担の問題につきまして、御案内のように、昨年末、組織委員会の方で、最大一兆八千億円経費がかかるという試算が出ました。そのうち五千億円は組織委員会が持つということですが、残りの一兆三千億円については誰が負担するのか、それは決まっておりませんが、早くこういった費用負担問題を解決しなければ準備も進みませんので、ぜひ早期に、都が負担するのか、国が負担するのか、あるいは関係自治体なのか、決めていただきたいと思いますけれども、総理の見解を伺います。

丸川国務大臣 事実関係を申し上げたいと存じます。

 東京オリンピック・パラリンピック二〇二〇の大会は、東京都が大会を招致して開催する責任を負っておりますので、その準備に当たっては東京都が主導的な役割を果たすということになります。一方、国は東京都及び大会の運営主体である組織委員会の取り組みをバックアップする立場であるという認識でございます。

 現在、関係自治体ごとに、国、組織委員会、東京都、関係自治体による作業チームが設置されておりまして、各競技を円滑に実施するための情報共有を図る作業が行われておりますが、とりわけ、そもそもお互いにどういう認識で会場を引き受けた、あるいはお願いをしたか、そうしたところについての認識の共有を図るということは非常に重要でございます。

 そこから、今後、費用負担の問題について詰めていくことになるわけでございますが、今年度内にも負担の大枠を小池都知事が固める意向であるということを踏まえて、費用負担の問題についてもそれを受けて議論を進めていきたいと存じます。

江田(憲)委員 今年度内に決められるということですね。そして、東京都があくまでも主催なので、東京都なんだと。丸川大臣のこれまでの御発言も、森会長の御発言を見ても、そうおっしゃっている。大臣は、何で国なんですか、都が負担するんじゃないですかという発言もあるので。

 我々民進党が昨年末に政府からヒアリングした結果も、新国立競技場は建設費は国立ですから国が持つ、それ以外は負担をするつもりはございませんという回答でしたが、総理大臣、それで結構ですね。

安倍内閣総理大臣 基本的には、先ほど丸川大臣が答弁をさせていただきましたように、東京都が招致するという決定を下し、そして主催をするわけであります。

 その際、我々は、国としてしっかりと、費用等について問題が起こらないように、それについて国として保証するわけであります。IOC側の要請に対して我々は国として保証するということは決めているわけでございますが、今申し上げましたように、話の筋としては当然、招致し主催をするのは東京都であり、そして運営する組織委員会を国がバックアップしていくという立場であります。

 しかし、そこで、これはおまえだとか、そういうことではなくて、お互いにこのオリンピック・パラリンピックを成功させたいという思いは一つでありますから、もちろん当事者意識を東京都が持っていただくのは当然でありますが、その中で我々が何ができるかということについて、丸川大臣は担当大臣として東京都そして組織委員会としっかりと話し、調整をしていくということになるわけでございます。

江田(憲)委員 本当に多くの国民が期待をしていますから、その費用負担、必要があればしてもいい、都以外も、そういう思いもあると思うんですね。だけれども、重要なことは、早く決着させていただきたいんですね。

 我々が周りから見ていると、何となく登場人物の人間関係がぎくしゃくしているというのが見えるんですよ。それで、いわゆる官邸に近いと言われている政治評論家の方がテレビに出てこられて、私が言っているんじゃないですよ、何か、小池さんは、安倍総裁が総裁になられる総裁選で、当初は安倍さんを応援していたのに、途中でほかの人の応援に回ったから、しこりが残っているから何だかんだと、したり顔で解説をしているわけですね。

 ですから、お願いは、皆さんが本当に期待をしているオリンピック・パラリンピックですから、そういった人間関係はもうぎくしゃくしていない、しっかり連携をとって、早期に費用負担を決めるんだという安倍総理の見解を最後に伺います。

安倍内閣総理大臣 総裁選で応援するかしないか、これは全く関係ありません。この中にも私を応援しなかった人がおられますが、そういう人材をちゃんと、終わればノーサイドになって、我々は協力し合っていく。

 この前も、小池知事にはわざわざこのピンをつけていただいて大変恐縮をしているわけでございますが、目的は一つでありますから、同じ目的に向かって頑張っていきたい、このように思っております。

江田(憲)委員 私が言っているんじゃないですから、政治評論家が堂々とテレビで言っているので。とにかく、私の趣旨は、そういう人間関係をしっかり、連携していただいて、早期に負担も決めて、準備行為に早速入るということをお願いしたいと思います。

 二つ目は、豊洲問題です。

 御案内のように、昨年十一月の移転予定だったものが延び延びとなって、既に設備投資された業者の皆さんの補償問題も起こっております。昨今、残念ながら風評被害がもう出ていまして、豊洲に移るのなら取引は停止するということを通告されている業者の方々も出ている始末でございます。そうした中で、先般は、ベンゼンが基準値の七十九倍出るというような、有害物質の異常値というものがモニタリング調査で出ていまして、本当に豊洲問題というのはいろいろな意味で迷走していると思うんですよ。

 ただ、皆さんはどう思われているか。これは何か都政、都だけの問題だと思ったら大間違いで、実は、最終的には卸売市場の認可という国の権限がございます。したがいまして、これは国の問題でもあるんですけれども、安倍総理、そういう御認識は今までありましたか。

山本(有)国務大臣 最終的には農林水産省の許可になるという位置づけでございます。

江田(憲)委員 市場の認可ということで、安全問題が今クローズアップされていますけれども、もちろんこれは重要ですけれども、やはり卸売市場としての機能を十全に果たせるか。それは経営面でも業務遂行面でも認可されると思うんですけれども、それでよろしいですね、農水大臣。

山本(有)国務大臣 卸売市場の経営面は、事業計画の遂行の確実性、そういったものも判断の中に加えられておりますので、しっかりとこうした業務規程等の内容を精査して決断したいというように思っております。

江田(憲)委員 その意味で、我々も業者の皆さんからヒアリングをしました。そうすると、総理、信じられない話が出てくるんです、あちらこちらから。

 一つは、床の荷重が非常に低い、七百キログラムパー平米で。例えば、冷蔵庫を入れると床が抜けるとか、水槽を入れてもそうだ。フォークリフトは大体二トンぐらい荷物を積みますから、荷重に耐えられないとか。おすし屋さんが入っても、電源の容量が少ないので煮アナゴや煮アワビができないとか。あと、仲卸さんの小さい間口。間口が小さ過ぎるので、マグロ一匹を包丁を使ってやるときに肘が当たってできないとか。あと、荷さばきも、最近のトラックというのは後ろからおろすんじゃなくて横から、アーチ型に開いてこうおろすんですけれども、その対応ができていないとか。

 そもそも、豊洲というのを何で選んだのか。道路で十文字に分かれて、そのコーナーごとに棟が建っているんですね。そうすると、ターレというもので行き来するときに、公道を走るから本当に行き来も不便だと。

 これが本当であれば市場機能を本当に果たせないと思うんですけれども、そういう観点からもしっかり審査をされるということでよろしいですね。

山本(有)国務大臣 まず、開設者の東京都が業務規程の内容等をしっかり策定していただきまして、その業務規程の内容を精査し、さらに関係省庁の法令に適合するかどうかを農水省が判断しまして、総合的に決断をしたいというように思っております。

江田(憲)委員 ぜひ、ちゃんと審査していただきたい。

 それから、最後に一点。

 この前、都が試算を出して、豊洲は稼働すると毎年百億円の赤字が出るんだと。これは経営面でも大変問題だと思いますけれども、そういう観点からもしっかり審査をする。するとおっしゃっていただければ結構です。

山本(有)国務大臣 業務の運営が円滑でなければなりませんし、また、卸売市場法に純資産の報告義務等々、財務についても必ず精査するような仕組み、たてりになっておりますので、しっかりとやらせていただきたいと思っております。

江田(憲)委員 安心、安全のまずその前に、前提として経営面、業務遂行面の確実性という本来の市場の認可というものがあるんだということをここで確認した上で、午後から、安心、安全の問題に移りたいと思います。

浜田委員長 午後一時から委員会を再開することとし、この際、休憩いたします。

    午前十一時五十九分休憩

     ――――◇―――――

    午後一時開議

浜田委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。

 質疑を続行いたします。江田憲司君。

江田(憲)委員 豊洲問題で最大の問題は、食の安心、安全でございます。

 先般のモニタリング調査でも、ベンゼン七十九倍、異常値が出ました。砒素やシアンも検出されたという中で、卸売市場認可に当たって、この食の安心、安全というところは法律上どこで担保されているんでしょうか。

山本(有)国務大臣 直接の明文はございませんが、これは、業務規程、計画、そのほかから業務の適正かつ健全な運営を確保する見地に照らして考える、あるいは、目的であります第一条の、生鮮食料品の取引の適正化とその生産及び流通の円滑化を図り、もって国民生活の安定に資することを目的とするというわけでございまして、食の安全は環境でもあり、そして食そのものについては市場の信頼性あるいは取引の健全性、適正性というものに読み込めるというように考えております。

江田(憲)委員 そこが明文で抜け落ちているんですね、大変大きな問題になっているにもかかわらず。

 ですから、これは提案ですけれども、豊洲の問題はまず一義的には都で対応していただき、いずれこれは農水大臣の認可という場面を迎えますが、それまで一切待ちの姿勢ということではなくて、やはりこういう食の安心、安全を明文で担保する法律改正、そういったものを検討すべきだと思いますけれども、いかがですか。

山本(有)国務大臣 卸売市場法も、成立してからかれこれ三十年から四十年たっております。今後、現在の農産物の生産や流通、加工、あるいは消費者の手に渡る段階等、全て思い切った改革の必要性があると思っております。その段階の中で検討を加えていきたいというように思っております。

江田(憲)委員 前向きな答弁だと思いますが、今ある現行規定の中でも生鮮食品について特掲されている条文があるんですね。例えば、生鮮食料品等の流通の広域化及び情報化の進展に配慮しろという規定もございまして、この条文との権衡上、バランス上、生鮮食品の安心、安全配慮義務というものを入れるのに何らおかしなところはございませんので。農水大臣はうなずいておられるので、総理、ここは、やはりこれだけ大きな問題になっているんですから、今の農水大臣の答弁も踏まえてしっかり法律上明定する。これは一項、一条入れればいい話なので、この点について反対する人は誰もいないと思います。

 ただ一方で、業者の皆さんにヒアリングすると、風評被害で苦しんでいる、それを少しでも軽減するためにも、やはり国の認可でこの食の安心、安全が担保されているんだということで効果を期待している面もありますから、総理、ぜひ前向きに検討していただきたいと思います。

安倍内閣総理大臣 ただいま農水大臣が答弁したとおりでありますが、この認可については、生鮮食品の卸売の中核的な拠点として適切な場所か、そして食の安全を含めた各種法令に適合しているか等の基準に照らして認可の判断をすることになるわけでございますが、都民の皆様が安心していただけるようなきっちりとした認可の手続を行っていくということは当然のことではないか。法令に基づき厳正な審査を行って、適切に認可の判断を行う方針であります。

江田(憲)委員 いや、今お聞きしたのは、法律改正をする検討をしてくれということです。

山本(有)国務大臣 食の安全、それから消費者の信頼、これは現行法の卸売市場法でも目的を全うできる、私はこう思っております。しかし、なお、御指摘の明文化というものも時代に応じて、私はその必要性がないというわけではなくて、検討に値する話だろうというように思っております。いずれ近い将来、この卸売市場法の改正について議論を重ねていく必要がございます。その意味の中で検討を加えたいと思っております。

江田(憲)委員 今、検討という農水大臣の答弁がございましたので、安倍総理、同じ思いと思いますが、一言だけ。

安倍内閣総理大臣 今農水大臣から答弁させていただきましたが、現行法で対応できると考えているけれども、しかし果たしてそれで十分なのかという検討は常に行っていく必要があるだろう、このように思います。

江田(憲)委員 我々民進党も、議員立法という手段がございますから、もう既に検討を始めておりますので、よりよい法律にして、しっかりと食の安心、安全を国も責任を持って担保したんだということをやはり世間に示すことが、一つ風評被害をとっても、それを減じる、防止する策になると思いますので、ぜひ検討していただきたいというふうに思います。

 さて、次に、カジノの問題を取り上げたいと思います。

 この問題は、ギャンブル依存症や、反社会的勢力の資金源になるのではないかとか、治安が乱れる、風紀が乱れる、そういったいろいろな問題が指摘をされております。

 世論調査によると、国民の七割は反対だと。それから、これは珍しいことなんですけれども、全国紙全てが社説で反対の論を張った。例えば、読売新聞は、他人の不幸や不運を踏み台にするような成長戦略は極めて不健全だと題して社説を書いておりますし、産経新聞も、多くの疑問を残したまま駆け込みで事を進めていると。日経新聞も、拙速なカジノ解禁は問題が多いと。全てこれは社説ですけれども。

 私も年末年始、私は横浜ですけれども、地元を回っておりましても、賛成なんていう声は一言も聞きません。特に女性はみんな反対ですよ。大島議長も昨年末、苦言を呈している。国会審議の実情に疑問を感じざるを得ないと。そうした中で、これほど問題の多いカジノ法案をどうしてそんなに、総理、お急ぎになったんでしょうか。

安倍内閣総理大臣 先般議論され成立した法律については、これは議員立法でございますので、政府として進めた法律ということとは趣が違うんだろうと思いますが、いわゆるIR法の目的や基本理念に掲げられているとおり、カジノを含む特定複合観光施設区域の整備については、観光及び地域経済の振興に寄与するとともに、財政の改善に資するものとして、その実施法の内容が検討されるべきものと考えております。

 そして、実施法の検討に当たっては、特定複合観光施設区域に民間事業者が設置及び運営するカジノが含まれることから、賭博に関する法制との整合性等についても、我々は、国会における審議や附帯決議の内容等を踏まえた適切な制度が構築されるように、丁寧に検討を進めていきたいと考えております。

 このカジノ法案、いわゆるカジノにつきましては、今申し上げましたように特定の複合観光施設でありまして、その面積は三%程度であり、ほかは国際会議場であるとかホテルとかレストランとかショッピングモールとかさまざまな施設があり、そしてそういうところによって生まれる雇用もあるであろう、このようなことではないかと思います。岩屋議員が本も出して、どういうものであるかということを説明しているわけでございますが、先般の法律が成立したことをもって、我々は検討を進めていくことになるところでございます。

江田(憲)委員 法案の中身を聞いているんじゃなくて、なぜ急いだのかですけれどもね。議員立法、当然私も承知していますけれども、こんな荒わざができるのは、官邸主導なんですよ。白々しいことは言わないでください、私の前で。

 その証拠に、何ですか、与党公明党ですら賛否を決められなかったでしょう、時間を与えていないんだから。これが象徴しているわけですよ。民進党は反対で、しっかりNCという次期内閣で意思決定をしました。衆議院の段階で採決を阻止しようとしたことも事実。しかし、参議院は採決を受け入れたことも事実。(発言する者あり)

浜田委員長 静粛に願います。

江田(憲)委員 しかし、民進党は一貫してこれは反対なんですよ。

 ですから、その観点から、こういった本当に問題を残す法案をここまで急いだということは、今の安倍官邸による、こんなの自民党国対ができる判断じゃないですからね、公明党を置き去りにするというのは。公明党が悪いんじゃないんですよ。公明党さえ検討する時間が、余裕が与えられなかったということですからね。

 こんな異常な運営をしているということを申し上げた上で、きょうは、いろいろなギャンブル依存症等の問題以前に、一体このカジノというのはどうして、刑法の賭博罪ですから、刑法犯、刑事罰がかかるわけですから、なぜこれが適用されるのか、一点に絞って御質問をしたいと思いますけれども、法務大臣、これまである公営ギャンブル、いわゆる競馬、競輪、競艇等々はこれまでなぜ違法性が阻却されてきたのか、御説明をいただきたいと思います。

金田国務大臣 お答えをいたします。

 賭博等の罪の成立を排除する理由というものを申し上げたいと思います。

 今現在、我が国には、違法性が阻却されている事例として、競馬、競輪、オートレースといったようなものがございます。いずれも特別法に従いまして実施されているものでございまして、刑法第三十五条の法令による行為として違法性を阻却されているものであります。

江田(憲)委員 パネルを出しました。大臣というか法務省見解は、この上に書いてあるとおり、八項目にわたって、これがあるからこそ違法性は阻却されるということです。もっとわかりやすく言うと、公設、公営、そして公益に資するから今まで認められてきたんですね、競馬も競輪もモーターボートも。すなわち、主体は地方自治体とか独立行政法人とか財団法人です。これは公の団体ですね。運営もそうですよ。そして、上がった収益金は、例えば競輪でいうと機械振興、競馬でいうと畜産振興という公益目的のためにこの収益を、だからいいんだということで、これまで違法性阻却をしてきた。

 それが、なぜ今回、カジノ、IRと言おうが何と言おうが、これは民間会社、株式会社がやるんでしょう。全く主体が違う。それから、収益金は全額、国や地方自治体に納付するんですか。とんでもないでしょう、株式会社というのは利益追求なんですから。利益追求じゃないと株式会社はやるわけないので。全くこれまでの法務省、政府の見解と違うようなことを。

 これは政治的なごり押しは通用しませんよ、刑法にかかわる問題ですから。刑法や民法というのは、六法全書と言われるように、六法で、基本法ですから。刑法、民法を変えようと思えば、何年もかかって法制審議会で法律の専門家が議論を闘わせた上で改正案を決めるんですよ。それを一年でやる、こんなことは絶対許されないと思いますけれども、総理、見解を求めます。

安倍内閣総理大臣 いわゆるIR法については、IR法の目的や基本理念にも掲げられているとおりですが、カジノを含む特定複合観光施設区域の整備については、観光及び地域経済の振興に寄与するとともに、財政の改善に資するものとして、その実施法の内容が検討されるべきものと考えています。

 実施法の検討に当たっては、特定複合観光施設区域に民間事業者が設置及び運営するカジノが含まれることから、刑法の賭博に関する法制との整合性のみならず、国会における審議やあるいは附帯決議の内容等も踏まえた適切な制度が構築されるよう、丁寧に検討を進めてまいりたいと考えております。

江田(憲)委員 丁寧に検討を進めても無理ですよ、法律家からすれば。全く違うんですから。

 財政に寄与するって、どのくらい寄与させるんですか。今までは、収益金は経費を除いて全て公益に資しているんですよ。これは成り立ちから明らかですよね。これは、できているのはみんな戦後ですよ、競馬は戦前ですけれども。みんな、戦後の復興期に財政が困っていたからしようがないとこういう賭博を、本当に賭博というのは日本の美風に反するということだったのを例外的に認めてきた。それを厳格に、公営、公設、公益というところで認めてきたのでね。

 これも、この前の違憲の安保法制と同じように踏み出すというなら踏み出して、これは断固、次の衆議院選で争点化しましょう。ばくちで経済成長を図るのか、それとも、ばくちで町をめちゃくちゃにするのかですよ。

 私の横浜市もそうですよ。早速、横浜市長が歓迎の意を表明している。横浜市の財界も一体になって進めようとしている。私は、中学生、小学生、二人の子供を持つ親として、横浜市民として、断固反対していきますから。ことしの八月にも横浜市長選もございますよ。

 菅長官、横浜市民ですよ、官房長官の前に。菅さんのお考えをぜひ聞きたいと思います。

菅国務大臣 私は、観光振興というものを我が国の成長戦略の一つとして今行っていますし、地方創生の柱でもあります。そうしたことを考えたときに、さきの国会で法案が成立をして、政府として今度、実施法の検討に入るわけでありますから、それぞれの委員会の皆様方の附帯決議もありますので、そうしたことに十分配慮しながら、この法案というのは、政府としては今準備に入るというのが政府の方針であります。

江田(憲)委員 この問題は、えいやで事が進む問題ではないということを申し上げておきます。

 さて、次に参ります。

 テロ等準備罪ですか、共謀罪と今まで言われてきた問題でありますが、きょうは細かい問題には入りません。

 ちょっと僕は意外だったことがあって、三十日の参議院の予算委員会で安倍総理がこういう答弁をされていますね。私も何度も法務省、外務省に、条約履行のために本当に法律が要るのかと、これは政権にとっては大きな負担になると思って何度も聞いたんだと。ちょっと意外に思ったよ。僕はてっきり、この法律は安倍総理が主導されているのかなと。誤解されたわけですが、安倍総理はやはりそういうことでいろいろ検討はされてきた、そういう姿勢だったんですね。

安倍内閣総理大臣 いかにも私が主導しそうだと思われているところが私の不徳のいたすところでございますが、いわゆる国際組織犯罪防止条約について我々は締結をする必要がある、これは恐らく民主党政権のときから感じておられたんだろう、このように思います。

 そこで、確かにこれはいろいろな議論が今までありました。かつては、共謀罪と言われたときから、法案の実態とは別に、随分誇大な批判がなされてきたわけでございます。そういう政治的状況を見れば、政治的な負荷が高いわけでありますから、これで果たして本当に、日本は非常に、外務省の国際法局は条約を締結する際には非常にリジッドに見ていきますから、そこは果たしてさまざまなことを留保するということでできないのかということをいろいろ問い詰めたわけでありますが、国際法との関係においてはこれは必要であるというのが外務省の国際法局の確固たる見解でありました。

 であるならばこの条約を締結する必要があるだろうと思い、かつ、現行法でテロを阻止できない、そういう穴もあるのも事実であります。先般、山尾議員との議論の中でもそれはお互いの共通認識にあったんだろう、このように思う中において、今回、法案を提出させていただく予定にしているところでございます。

江田(憲)委員 安倍総理がそういうことで検討してきたことはよくわかりました。

 そういうことであれば、安倍総理も聞く耳を持っておられると思いますので、きょう私は、条約を批准するために今御提案のような法律は必要ないという立場で、条約の条文や立法ガイドに基づいた論証をしていきたいと思います。

 まず、このパネルの上の方を見ていただきたいんです。

 第二条には、組織的犯罪集団という定義がございまして、そこは目的が限定されているんですよ、この条約の対象の。直接または間接に金銭的利益その他の物質的利益を得るため犯罪を行うことを目的として云々ということですから、従来から指摘されておるとおり、この条約というのはもともと、例えば麻薬犯罪、マネーロンダリング、要は経済的な利得を得る例えば暴力団、マフィアのような国際的な犯罪を取り締まる、これは明々白々ですね。しかも、この条約の対象はこれに限るわけですね。

 しかし、すぐわかることですが、こういう経済的利益もあるかもしれぬけれども、その大宗は、例えば宗教的なこと、それから民族的なこと、さらには政治信条でテロというのは起こるわけで、これはこの対象にはなっていないということは確認できると思うんですけれども、外務大臣の見解を求めます。

岸田国務大臣 一般に、テロ組織が行う活動の中には、組織の活動を支えるための資金を獲得するための犯罪行為が含まれると解されています。そして、テロ活動自体が宣伝効果を生んで、そのことによってテロ組織が資金を獲得する、こういったことも指摘をされています。

 従来から、国際的な組織犯罪とテロ活動は深くかかわっているんだということが指摘をされてきました。そういったことから、先ほども答弁の中で申し上げさせていただきましたが、国際組織犯罪防止条約、この起草時点から議論の中でテロ活動ということが議論の対象として挙げられてきたわけです。

 そして、二〇〇〇年にこの条約は採択されたわけですが、その二〇〇〇年の条約が採択された国連総会の決議の中においても、国際的な組織犯罪とテロ活動の関連性を指摘して、この条約を締結することを求める、こういった決議も採択をしています。その後の決議においても、国際的な組織犯罪とテロ活動を指摘した上で、この条約をぜひ締結することを求める、こういった決議が国連の安保理決議等々さまざまなところで指摘をされてきています。

 そして、この条約自身においても、テロ組織の活動は、五条あるいは二条、こうした条約が指摘する犯罪行為の中に含まれるというふうに解されているというのが、この条約の解釈であります。そういったことから、この条約は、テロ組織の活動もしっかりと対象としている条約であると認識をしております。

江田(憲)委員 全く間違いですね。これは、犯罪を罰するという罪刑法定主義、厳格にそこは範囲を決める。そういう議論もされているからこういう犯罪も入れていいだろうと、何でそんな拡張的に解釈するんですか。安倍総理ですら、これは本当に必要なのかと御下問があれば、ここのところは、そんな議論があったところで条約履行義務はないんですよ。

 そこで、これはよくやる常套手段、テロ等準備罪ですか、テロがメーンじゃない条約なのに、わざわざテロを出せば国民が納得するだろうと。だから、メーンは等なんですよ。ここはまさにテロ以外のところの大宗をつかまえる条約なので等なんだ、等が一番重要なんです。それを等にくくっているという。これは本当に、昨年の集団的自衛権を一部認める法案を平和安全法制と称して突き進んだのと同じ手法ですから、もうこういう国民を欺くやり方はやめましょう。

 そこで、私は、条文とか国連が正式に出している文書で論じたい。そんな、いろいろ議論した何だかんだは関係ないですよ、外交の中では。そういう意味で、このパネルの下を見て、これは立法ガイドという国連の、全部でこれだけある、私も読みました、英文を。立法ガイド、ここに驚くべきことが書いてあるんですよ。それを読みますよ。

 この立法ガイドの五十一パラグラフにこう書いてあるんですね。

 この条約というのは、共謀罪は合意罪と犯罪集団の参加罪、この二つなんですね、どちらかをやればいいと書いてあるんですよ。御承知のように、合意罪は英米法体系、参加罪は大陸法体系なんですね。ただ、それのいずれにも属さないような国もあるから、こう書いてあるんですよ、どちらの概念も導入することなく、組織的犯罪集団への実効的な措置が、アロー、許容されると書いてあるんですよ。これが一つ。

 二つ目は、もっと驚くべきことが書いてある。四十三パラ。

 国内法の起草者は、立法者は、条約の文言を一言一句逐語的に盛り込むことを企図するよりも、むしろ条約の意味と精神に主眼を置くべきだ、法的な防御や他の法律の原則を含め、新しい犯罪の創設や実施は各締約国に委ねられていると。レフト・ツー・ザ・ステーツ何とかと書いてあるんですよ。そして、したがって、国内法の起草者は、新しい法が国内の法的な伝統、原則及び基本法と合致することを確保、エンシュアと書いてある、確保しなければならないと。要は、日本の刑法体系と合致することを確保しなければいけないと書いてあって、その後ろは省きましたが、なぜならばそれはその国の裁判所とコンフリクトを起こすからと。この州の裁判所が違法だとか違憲だとかいうことを言わないために、それをアボイドするために、避けるために、国内法の原則にのっとるということをしなきゃだめだと書いてあるんですよ。これは極めて多くの裁量を与えているじゃありませんか。

 現に、二〇〇四年の国連事務総長への通知では、少なくとも七カ国、ブラジル、メキシコ、モロッコ、アンゴラ、エルサルバドル、ノルウェー、ベネズエラは、こうした組織的犯罪集団が関与する全ての重大犯罪を適用範囲とはしておりませんという通知を事務総長にしているんですね。

 ですから、私が申し上げたいことは、総理、聞く耳を持つ総理、必ずしも、私が読んでみても、この条約を履行するために今御提案の法律は要らないんですよ。もう言っちゃいますけれども、我々もテロ対策は重要だと思っていますよ、これはテロ対策じゃないんだから、ないんだけれども、条約とは離れていろいろなテロ対策で抜け穴がある、刑法上。それは個別に検討していけばいいんですね。

 だから、これは共謀罪も認めているということでしょうが。本当は例外だけれども、日本の刑法体系では。それはもう、実行行為をめぐって既遂、未遂、そういう体系の中で、共謀罪、予備罪云々、七十認めていますよ、罪を。それで足りないとおっしゃるのなら、我々も一個一個、どこが足りないのか、協議に応じる用意はありますからね、総理。

 ぜひ、今のテロ等準備罪ですかはこの条約履行のためには必要ない、その上で、テロ対策は重要ですから一個一個検討していきましょうという提案ですけれども、総理の御見解を伺います。

安倍内閣総理大臣 まず、いわゆるパレルモ条約と言われている国際組織犯罪防止条約と批准の関係においては、国際法の解釈が委ねられている外務大臣から答弁をさせていただきますが、先ほど答弁をさせていただきましたように、確かにこの条約の成り立ちにおいてはマフィアとの、ああいう国際的な組織犯罪を取り締まる、そしてそうした組織犯罪の金銭的利益や物質的利益を得るためのさまざまな行為を取り締まっていく、違法な行為を取り締まっていくということであります。しかし、その後、九・一一テロが起こり、ISILがこういう状況になっている中において、そうしたテロ組織等々は基本的には資金を集めてからそうしたテロを準備し、行うわけであります。

 先ほど葉梨委員からの質疑の中でも明らかになったように、かつてコロンビアのテロもそうでありましたし、かつてIRAが行っていたテロについても、その資金は広く、米国のマフィアとの関連の中においても資金を集めていたということもあるわけでございまして、例えばイギリスでテロを実行する、しかしその資金は日本で集めるというつながりの中において、それを防止していくという中においては、国際的な認識においては、この条約が意味するところは、単にマフィアだけではなくて、しかもテロに密接なかかわりがあるという中において、主要な目的としてこのテロを防止するというのが大きな眼目にもという性格を帯びているのも事実であろう、こう考えているわけでございます。

 そうした観点からも、これは、外務省がしっかりと分析をした結果、条約を締結する上においては必要だと。

 江田委員の場合は民主党政権のときとかかわりはないんですが、民主党政権も三年三カ月あったわけでありますが、その間、締結していないんですから。重要性は認識していながら締結していないということは、これはぼうっとしていたり、うっかりしていたわけではないでしょうから、できなかったんだと私は思いますよ。条約を締結することができなかったんだろう、こう思わざるを得ないわけでありまして、それは今も変わりがない、こういうことではないかと思いますが、詳しくは外務大臣から答弁させていただきます。

江田(憲)委員 安倍総理、もう批准案を出してください。承認しましょう。我々は賛成しますから。必要ないんだから、こんな法律は。

 それで、長年ほったらかしているのは、自民党だって、民主党だって、責任あるじゃないですか。私はどっちにも属さなかったけれども。同じじゃないですか。何度も何度もそんなことを言うから、生産的じゃない。だから、これは必要ないのでね。

 岸田外務大臣も先般答弁されていましたよ。国際会議の方でも何で批准していないんだと話題に上ります、批判もされますと言うのなら、こんなことをごちゃごちゃ議論している前に、もうこの国会へ早く出してください、批准案を。条約自体には賛成しますから。その上で、ループホール、抜け穴を一個一個塞いでいきましょう、テロで必要なのなら。

 今、安倍総理がおっしゃったことも、それはわからないではないですよ。だけれども、申しわけないけれども、化学兵器やサリンやハイジャックや麻薬や銃砲刀剣については全て今、予備罪が三十五もあって、だから、これで足りないことは検討しましょうと言っているんですよ。細かいこと、足りないところはちゃんと議論すればいいけれども、それは条約の批准とは別に議論しましょう。だから、そこまでおっしゃるのなら、早く条約を出してください。批准しましょう。

岸田国務大臣 委員が御指摘になりました立法ガイドの五十一パラ、そして四十三パラ、これは従来も議論になった点であります。

 そして、それにつきましては、パラグラフ五十一は、条約の第五条で、重大な犯罪の合意罪とそして参加罪、どちらかを犯罪化するように求めているわけですが、この五十一パラの趣旨は、重大な犯罪の合意罪を持っていない国において、もう一方の参加罪を選んだ場合にはもう一つの重要な犯罪の合意罪は必要ないという趣旨。そして、逆に、参加罪を持っていない国が重要な犯罪の合意罪を選んだ場合には参加罪は必要ない、こういった趣旨をあらわしているんだというふうに解釈すべきだということ。これは、立法ガイドをつくった国際連合の薬物犯罪事務所、UNODCに確認をしたという経緯があります。

 そして、パラグラフ四十三の方は、この条約の第十一条六の趣旨、すなわち、本条約に従って定められる犯罪について国内法において具体的にどのように規定するかは、他の国内法の規定との整合性に考慮しながら、締約国の国内法により定められることを示したことにすぎない。これもUNODCに確認をしているわけです。

 結果として、重大な犯罪の合意罪も参加罪も、両方とも犯罪とする必要がないと言っていることを意味してはいないということ、こういったことを既に確認した、こういった経緯があります。

 よって、我が国としましては、憲法九十八条第二項、条約の誠実履行義務との関係において、こういった解釈に基づいてしっかりと担保法をつくらなければならない、こういったことで、政府として国内法の制定をお願いしているということであります。

 ぜひ、こうした内容を御理解いただきまして、政府の対応について御理解いただければと存じます。

江田(憲)委員 そういう解釈を押し通さないとだめなんでしょう。だけれども、ちゃんと書いてあるんですよ。国内法の原則、これは日本が提案しているんですよ。国内法の、刑法の原則によらなきゃいけない、これは日本が最終局面で提案をしたから入っているんですよ。

 ですから、刑法というのは、さっきの基本原則がある、思想信条を罰しない、実行行為に着目している、こういう体系の中でやればいいし、仮に岸田外務大臣がおっしゃることが正しいとしても、留保できるんです、さっきも言ったように七カ国はもう留保しているんだから、適用しませんと。

 それよりも大事なことは批准することでしょうと言っているんです、安倍総理。こんなことを与野党でぐじゃぐじゃやるよりも、十数年ほったらかしているわけですから、お互い、だから早く批准案を出して、出したところでこれは拒否されないので、批准というのは一方的に我々がこの条約に拘束されますという意思表明なので、それを、あなた方、こんなもの批准したらだめですなんと言う権限はないんですよ、締約国会議にも。

 ですから、ぜひ、そこのところは、留保はできる、事務総長に通知はできる、仮に何かあっても私は国益のためには一日も早く条約を批准した方がいいと思いますから、批准した後、思想信条の自由、人権の尊重と、それからテロ対策の必要性をてんびんにかけて、一個一個、やる、やらないというのを決めていきましょう、そういうことを申し上げているということなんです。

 きょうはもう時間がありませんから、だから、組織何とか犯罪法が出てきたときにしっかり議論したいと思います。

 さて、天下りの問題に移ります。

 文科大臣、この前川さんという方、事務次官をやられた方は、もうおやめになったんでしょうか。依願退職ということは退職金をいただくことになると思いますが、幾らいただくんでしょうか。そして、既にもういただいたんでしょうか。事実関係をお答えください。

松野国務大臣 国家公務員退職手当法の規定によりますと、退職手当は職員が退職した日から起算して一カ月以内に支払うことになっていますが、現時点ではまだ支給されていません。

 また、具体的な金額については、個人のプライバシー保護の観点からお答えは差し控えさせていただきますが、事務次官の退職手当額のモデルケース、勤続年数三十七年を前提としてお示しをすれば、定年退職であれば約六千三百万円になり、今回の前川前事務次官のような自己都合退職であれば、定年退職よりも七百万円ほど低くなり、約五千六百万円となります。

江田(憲)委員 この前川前事務次官への処分が減給一〇%二カ月、二カ月給料分一〇%減。こんな軽い処分で、しかも多額の退職金をもらう、これは国民感情からして許されないと思いますけれども、総理大臣の見解を求めます。

松野国務大臣 前川前事務次官は、今回、再就職等監視委員会から、前川前次官自身の行為が国家公務員法に違反すると指摘を受けたことに加え、文部科学省において組織的な再就職あっせん行為が行われたことに対する監督責任があることから、平成二十九年一月二十日付で減給十分の一、二カ月間の処分を行ったものです。

 その上で、前川前次官本人より、これらの責任をとって辞職する旨の申し出があり、これを承認したものであります。

 処分内容につきましては、国家公務員法の規定や過去の事例等を踏まえて決定したものであります。

江田(憲)委員 前川前次官は、みずから、監視委が認める少なくとも二件について、直接、国家公務員法違反行為に加担していたんですよ。そして、組織ぐるみの隠蔽工作と言われているように、それを隠していたんですよ。こういう法律違反の事務次官が、減給一〇%、二カ月処分で終わらせる、もうとてもじゃないですよ、これは。

 私、あえて言いますよ、官僚出身だから。官僚は一生懸命働いて名誉回復している。九〇年代はさまざまな、大蔵省、トップエリート官庁までが、東京地検特捜部がガサ入れまでして、次官となるような人が続々やめたじゃありませんか。そして、ここで口に出すのをはばかられるような接待も受けて、地に落ちたわけですよ、官僚の信頼は。それをいろいろな対策を講じて徐々に徐々に回復しているさなかに、こんなまた旧態依然とした言語道断なことをやっている。

 私は官僚バッシングでこんなことを言っているんじゃないですよ。官僚がしっかりと仕事をしてもらうために、そのためには国民の信頼が必要だ。こんな軽い処分をしたら、国民はまた、やはり官僚は特別な身分だな、別世界だなと思うじゃないですか。

 そこで、皆さん、このパネルを見ていただきたいんです。この処分がいかに人事院の通達からしてもおかしいか。こう書いてあるんですね。

 平成十二年に人事院事務総長から各省庁に指針が行っています、「懲戒処分の指針について」。ここに書いてある、特に組織的に行われていると認められる不祥事に対しては、これは今回ですよ、管理監督者の責任を、次官は管理監督者でしょう、厳正に問う必要があることを留意されたい。

 そして、標準例より重いものとすることが考えられる場合として、一、極めて悪質、結果が極めて重大、本件です。その職責が特に高い、本件です、事務次官ですから。内外に及ぼす影響が特に大、これもそうでしょう。複数の非違行為をやっている、今は二つですけれども、これからどこまで広がるかわからない。

 これは全部適用しろと言っているんじゃないですよ、その一つに該当すれば標準例より重い処分を科せる。

 ちなみに、例えば非行の隠蔽、黙認。上司がみずから手を下さなくても、非行の隠蔽をしただけで免職、減給と書いてあるじゃないですか。この標準例より重い処分を科すこともできるわけですから、今回は、隠蔽だけではなくて、事務次官も違法行為に手を染めているわけだから、当然免職処分ですよ。総理、何でしないんですか。安倍総理、公務員制度改革を進めてこられた立場として。ここは、さっき言った趣旨なんですよ。

 官僚はこのままではもうだめですよ、真面目に働いている連中も。やはり官僚は特別だ、特別の身分で優遇されているとなりますから。今からでも遅くありませんから、厳正な処分を総理に求めます。

松野国務大臣 今回の処分内容につきましては、前川前次官の違反事由に基づき、過去の事例、事務次官という職責の重さを踏まえつつ、さらには御指摘をいただきました指針を参考としつつ、処分を決定したところであります。

 さらに、委員から御指摘がありましたとおり、今後の調査におきまして新たな事案等が出てきた場合においては、その事案に応じて、また対応を検討させていただきたいと考えております。

江田(憲)委員 いや、もう事案は出ているんですよ、さっき言ったように。十分懲戒免職に足り得る事案が出ているんですね。

 こんなことをやって、松野大臣、どんな責任をとったか。びっくりしましたね。大臣給与の二〇%を六カ月間返上だというんです。国民の皆さんは、大臣給与の二〇%といったら、百数十万円の大臣給与の二〇%は大間違いで、議員の報酬プラス大臣にちょっと上乗せしている中の二〇%ですから、返上額は月々十一万三千三百五十六円、六カ月合わせても八十四万円なんですよね。任命権者がこんな軽い処分をしているから、それは部下に示しがつきませんよ。

 これは、総理、大臣も含めた総理の責任なんですから、しっかりけじめをつけていただけませんか。

安倍内閣総理大臣 安倍内閣においては、私の俸給は三割カットしておりまして、既に大臣も二割カットしております。そうしますと、もう既に二割カットしておりますので、残りは十一万三千三百五十九円しかないわけでございまして、三百三十九円については、毎月この一円を残し、あとは全て返納しているわけでございます。

 それ以上につきましては、これは議員歳費そのものになってくるわけでございまして、議員歳費そのものを自主返納することは、公職選挙法の定める寄附行為の禁止に抵触することから、できないこととなっているわけでございまして、法定上許される範囲内からすれば、一円を除いて全て松野大臣は既に返納しているということでございます。

江田(憲)委員 そんなみみっちいことに、あえて言わなかったけれども、では、言いましょう。とにかく辞職にも値しますよ、大臣の。あえて言いませんでしたけれども、責任のとり方は幾らでもあるんですよ。

 総理、今後の進展いかんによっては大臣に責任を求めるというお考えはありますか。

安倍内閣総理大臣 松野大臣においては、こうした事案が発覚をした中において、徹底的な調査をし、そして今後の対策を立てていくことによってその責任を果たしてもらいたい、このように考えております。

江田(憲)委員 ちょっとこれ以上は、また天下りの集中審議がありますからしっかり問いたださせていただいて、きょうは時間がありませんから、次に移ります。

 南スーダンへの自衛隊派遣。昨年の十二月から新任務、駆けつけ警護それから宿営地の共同防護という、まさに昨年大騒ぎした違憲の安保法制に基づいて、これは安倍総理が主導した中で初めて具現化したというか、現実になってきた問題ですよね。

 南スーダン、皆さんが今、外務省のホームページを見ると、スーダンというのはレベル3からレベル4に去年七月にアップされましたね。レベル3というのは、もう渡航はやめてください、国民の皆さん。今あるレベル4というのは、今いる人は退避してくださいと。

 何でこうなっているか。御存じのように、昨年七月にジュバ、首都周辺で政府軍と非政府軍とおぼしき衝突があって、二百七十名の方が戦死した。今でも散発的に首都郊外では戦闘が起こっているという中に、こういった新任務を付与した自衛隊派遣をされた。されたことは総理の判断。その中身は時間がありませんから問いただしませんが、一点、自衛隊の最高司令官は総理大臣ですから。

 こういう危険なところに、自衛隊員に万が一のことも起こるようなところにあえて派遣をされた最高司令官として、もちろんのこと覚悟を持って派遣されたんでしょうね、覚悟を持って。駆けつけ警護といって、空に空砲で威嚇射撃したって何したって、銃声の一発で戦闘が始まることは過去の歴史を見るとおり。そうした中で、こんなことは想定したくはありませんよ、ありませんけれども、もし自衛隊員が殺傷されるような事態になったら、総理、当然責任をとられるんでしょうね。

 当然それほどの覚悟を持って安倍総理なら派遣をされたと思いますけれども、総理のお考えを聞きます。

安倍内閣総理大臣 南スーダンは、国連に加盟した国の中において最も独立して間もない国であり、世界で一番若い国と言ってもいいんだろうと思います。この国が失敗した国とならないように、テロの温床ともならないように、立派に自分の足で立てるように、今まさに六十カ国が参加してPKO部隊を出して、この国の発展のために貢献をしているわけであります。

 もちろん、その中においては反政府勢力の存在や部族間の対立があって、治安情勢は極めて厳しい。治安情勢が厳しいからこそ各国は軍隊を出し、我々は自衛隊を出し、そして貢献をしているわけであります。こうした中においても、断固としてその地にとどまってNGO活動をしている人々もいるのは事実であります。

 そこで、では、覚悟ということでありますが、当然、我々は自衛隊にさまざまな任務をお願いします。私は最高指揮官であるわけでありますが、当然、自衛隊というのは、国民のリスクを低下させるためにみずからリスクをとっている、これは服務の宣誓においてもそれを示しているわけであります。だからこそ、我々は常にその中においても彼らの安全を確保しなければならない、こう考えております。

 私も防衛大学の卒業式に臨み、私の前で服務の宣誓を行うわけでありますが、事に臨んでは危険を顧みず、身をもって責務の完遂に務め、もって国民の負託に応えることを誓うわけでありますが、その中で彼らは任務を全うしている。

 南スーダンにおける活動だけではありません。あるいは、スクランブルをしたときもさまざまな危険が伴う。災害活動においてもそうです。そして、その中で、事実、今までも事故によって亡くなった方もたくさんいらっしゃいますし、レンジャー部隊の訓練というのは相当過酷な訓練であります。(江田(憲)委員「訓練じゃない。戦闘が起こったんだ」と呼ぶ)訓練といっても、これは普通の訓練とは違って、この中では何人も命を落としているんですよ。先般も命を落とされた。今まで一千九百名の方々が命を落とされています。

 私は、毎年必ず殉職職員の追悼式に出席をし、そこには御遺族の皆さんが出席をされ、そこでも涙に暮れておられます。この皆さんの悲しみを私は最高指揮官としてしっかりと受けとめながら、できる限りの安全を確保していきたい、しかし同時に、彼らは国民の生命を守るためにとうとい命を落とし、しかしその職務を全うしたと感謝をしながら御遺族の皆さんのお気持ちを受けとめなければならない、毎回そのように心に誓っているところでございます。

江田(憲)委員 そんなことを言っているんじゃないんですよ。要は、安倍総理が主導された去年の安保法制で新しく付与した任務で派遣をしている。それは訓練とかとは違う話で、まさに安倍総理が主導したことで、自衛隊員というのは戦後、外国人を殺傷したり、殺傷されたりしたことはないんですから、もしそういう危険なところで殺傷されるような、そんなことは考えたくもないけれども、ちゃんと覚悟はあるんですねということをお聞きしたんです。覚悟もないんですか、総理。

 ペルー人質事件のときに何百人もの人が人質になった、テロリストに押し入られて。日本人も多くとらわれたときに、私は覚えていますけれども、橋本総理と梶山官房長官は、もしトゥパク・アマルというテロリストによって一人でも日本人に犠牲が出たら総理か官房長官のどちらかがやめようと話していたことを、これは事実ですから申し上げますよ。

 それほどの覚悟で、一国の総理大臣、官房長官はやるんですよ。そのぐらいの覚悟はあるんでしょう、もちろんこんなところに派遣しているんですから。覚悟はあると何でおっしゃらないんですか。

安倍内閣総理大臣 もとより、最高指揮官の立場に立つ上においてはそういう覚悟を持たなければいけないんですよ。私はそういうことを申し上げている。PKOの活動もそうですよ。

 しかし、それと同時に、さまざまな事態に備えるために相当過酷な訓練を行っているレンジャー部隊の諸君もいますよ。この訓練のレベルを上げていっているわけです、今においても。相当の訓練をしているんですよ。例えば、海の中でナイフを持って格闘するという訓練をしている。これは尋常な訓練じゃないんですよ。

 こういう訓練があって初めて我が国の安全を守るために態様を整えていくことができるわけでありまして、実際その中で命を落とした、私はその家族の方々の気持ちというものも受けとめなければいけないわけでありまして、追悼式に出て、涙に暮れる御家族、小さなお子さんたちを目の前にして、常に自分はそういう立場にある、私の命令で命をかける人たちがいる、そして残された家族、そういう現実に直面することもあるという覚悟を持って当然我々は毎回、指揮官としての責任を負っている、職務を遂行している、そういう思いでございます。

江田(憲)委員 ですから、そういう答弁を最初にお聞きしたかったわけですよ、当然ですからね。

 官房長官、官房長官は梶山静六先生を政治の師と仰いでおられますが、先ほど私が出したエピソードも踏まえて、官房長官の覚悟を問います。

菅国務大臣 今、総理の覚悟というか、常にそうした決意をしながら日々仕事をしているわけでありますから、私どもも、まさにそういう思いの中で、一つ一つ、この国を前に進めるために何が必要なのか、そういう中で日々過ごしているところであります。

江田(憲)委員 自衛隊員の皆さんが本当に危険を顧みず、命がけでそういう業務をされている、よくわかっていますから、それを派遣された最高司令官、政権幹部の方はそれ以上の覚悟を持っておられる、そういう御答弁をいただきました。

 さて、最後に一問だけちょっとやらせていただきたいのは、総理、二月十日の首脳会談、そこでは通商問題、特に自動車問題が取り上げられるということですが、それでよろしいですね。

安倍内閣総理大臣 先般の電話会談におきまして、いわば我が国の自動車の輸出の状況等々についてお話をしたのは事実でございます。例えば、トヨタのカムリにおいては、ローカルコンテンツ比率、つまり米国で部品を調達している比率は七五%であってビッグスリーよりも高い、そういう認識を持って、米国へも貢献していますよということについてお話をさせていただいたところでございます。

 要は、一番の眼目は、日米の同盟関係が揺るぎないということを内外に示すことを主眼としているわけでありますが、その中で、経済全般にわたってお互いがウイン・ウインの関係を構築していく上において、お互いがどういう考えを持って臨むべきかということをしっかりと議論したい、こういうことでございます。必要があれば、そういう説明もさらにしていくということがあるかもしれません。

江田(憲)委員 ちょっと大串議員の時間をとって申しわけないんですが、要は、日米自動車交渉というのがありましたよね。あのUSTRのカンター、橋本のときは、とんでもない要求を突きつけてきました。数値目標ですね、日本車をつくるときの米国部品のコンテンツ率、含有率を何%まで上げろとか、それからディーラーですね、米国車を扱う日本のディーラー数を何店までだ。とんでもないものはクリントン政権でも言ってきましたからね。トランプさんならより一層ひどいことを言ってくるかもしれませんから、ぜひはねつけていただきたいのと、そこで、ポイントを二つ。

 一つは、安全保障と絡めない、原則ですね。経済と安全保障は峻別させる。しかし、トランプさんは損得外交、取引外交ですから絡めてくる。そこはまず確認したい、総理。

 それから二つ目、双方向です、一方的に日本の市場がどうしたこうしたと言われるのではなくて。SIIもMOSS協議もそうでした。私も通産官僚のときに携わっている。一方的なんですよ。日本は要求しない、建前はなっているかもしれないけれども、やらない。今度もし自動車協議になるのであれば、当然、普通自動車に二・五%、ピックアップトラックに二五%の関税を向こうはかけているわけですから、TPPの合意だって、見てみると、二十五年先、三十年先を見たらとんでもないことですから、ぜひ、攻め込まれてきたら双方向、少なくともですよ。アメリカも市場開放してくれと。

 この二つを、一般的な方針です、やる、やらないは別で、方針は同意していただけると思いますので、確認したいと思います。

安倍内閣総理大臣 今委員が御指摘になったように、クリントン政権は数値目標というのを出してきた。また、その後も、例えばオバマ政権の間にも、自動車等々について、TPPの交渉も含めいろいろなレベルにおいてさまざまな要望をしてきたわけでございますが、その要望の中で、現状を十分に認識していない要望も随分ございました。それについてはそれぞれ、私も含めて、正確に反論してきたつもりでございます。

 そこで、まだいわば交渉するということではないわけでございますが、まずは認識を一つにしていく。現状認識はこうなっていますよと、かつて貿易摩擦が起こっていたあの全盛時代とは随分違うんだという認識をお互いに、今までも説明してきているんですが、改めてしっかりと説明し、認識を一つにしていく。

 それと、貿易というのはお互いにウイン・ウインでなければ成り立たないわけでありますから、当然、ウイン・ウインになるためにお互いが交渉していくということは当然であろう。

 と同時に、経済と安全保障というのは当然分けて考えるべきであり、今週マティス国防長官が来日をします。最初の訪問先としてアジアを選び、日本にやってくるわけでありますから、防衛政策の重要性、日本との関係において防衛政策がいかに重要かということは認識しているのではないか。あるいは、そうした趣旨のことを先般もトランプ大統領は述べていたところでございます。

江田(憲)委員 もう時間が過ぎております。最後、一点だけ。

 そこの場で、例の七カ国の入国禁止大統領令について、総理、コメントする立場にないという御答弁なんですけれども、ちょっとこれはおかしいんじゃないでしょうかね。これまで、日米というのは、基本的な価値を共有するんだということで、自由だとか人権の尊重とか民主主義であるとか法の支配と言ってこられたわけでしょう。トランプさんも同じだというのなら、しっかりくぎを刺す、今度の首脳会談で。だって、イギリスのメイ首相だって、カナダのトルドー首相だって、ドイツの首相だって、何でもみんながくぎを刺しているわけですから。

 西側価値、この基本的価値が脅かされているような状況に対して、コメントする立場にないというのはちょっと余りにもひど過ぎませんか。やはりしっかり首脳会談では言うことも言うということでぜひ対処していただきたいと思いますけれども、安倍総理の見解を求めます。

安倍内閣総理大臣 先般申し上げましたのは、国境管理、いわば出入国についてどういう対応をとっていくか、あるいは移民について、難民についてどのような姿勢をとっていくかということについては、これは内政問題でありますからコメントする立場にはないと。と同時に、注視をしているというお答えをさせていただきました。

 同時に、私も述べているはずでございますが、今まさに国際的に難民の問題、移民の問題がある中において、そうした問題を根本的に解決していくと同時に、そうした問題に対応する上において、国際社会がお互いに相協力して、それぞれがしっかりとその役割を果たしていくべきであって、難民についてもそうであります。そういう意味においては、しっかりと役割を果たしていく、国際社会がともにそうした対応を協力しながらとっていくことは当然のことであろう、こう考えているところでございます。

江田(憲)委員 難民だけに限っていないじゃないですか。一般国民、こういう人種であるとか宗教であるとか肌の色で差別しちゃいかぬというのは根幹中の根幹ですからね、そこについて物を言わなきゃ。難民は当たり前です、総理がおっしゃることは。難民に限った、すれ違い、逃げ答弁だと思うんですけれどもね。しっかりとこれはくぎを刺さないと、もう何も言えなくなりますよ、トランプさんに。

 ということを申し上げて、私の質問を終わりたいと思います。何か反論があればやってください。

浜田委員長 この際、大串博志君から関連質疑の申し出があります。江田君の持ち時間の範囲内でこれを許します。大串博志君。

大串(博)委員 民進党の大串でございます。

 早速質疑に入らせていただきたいと思いますけれども、まず、総理の施政方針演説でちょっと気になる点が幾つかありまして、ここでも議論になりましたけれども、ただ批判に明け暮れたり、言論の府である国会の中でプラカードを掲げても、何も生まれません、意見の違いはあっても、真摯かつ建設的な議論を闘わせ、結果を出していこうではありませんか、こうありました。私もそのとおりだと思います。かつ、総理は、これは一般論だというふうにおっしゃいましたね。

 ちょっとお尋ねしたいんですけれども、プラカードの話はこの間ありましたからおいておいて、ただ批判に明け暮れたりという、これは一体どういうふうな状況の国会の議論を指していると考えていらっしゃるんですか。

安倍内閣総理大臣 これはまさに、批判に明け暮れる、建設的な議論をしないということでありまして、それを戒めているわけでありまして、批判に明け暮れてはいけないな、こういうことでございます。論語にいわく、過ちて改めざる、これを過ちというという言葉を我々も拳々服膺しながら、そういうことがあってはならないなということでございます。

 つまり、まさに建設的な議論をしながら国民の負託に応えていくべきだろうという趣旨で申し上げているわけでございます。

大串(博)委員 私たち民進党は、蓮舫代表のもとで、批判だけじゃなく、提案、対案ということをずっと言ってきています。もちろんそれ以前からもいろいろな提案、対案をしてきているんですが、どうも総理は勉強していただいていないみたいで、御存じないのか、対案がないじゃないかということを言われているものですから、ここの、批判に明け暮れたりというのも、まさか誤解に基づいて私たちに対して言われているんじゃないだろうなと思いましたものですから、ちょっときょうは御説明させていただきたい。

 党の政調会長として、私たちがどれだけの国会活動をしているかよく御存じいただきたいというふうに思いまして、例えば昨国会、百九十二国会における私たち民進党の法案等への態度ですね。政府が提出した法案、成立したのが二十四あるんですね。それに対して、私たち民進党が賛成した法案ですよ、賛成した法案は二十。これは八三%。八割以上賛成しているんですね。

 これは、私が地元でもこういうふうに言うと、ああ、そうなのか、そんなふうに国会の議論は進んでいるのかと言われるんです。総理、笑い事じゃないですよ。これは、過去の国会もこういう傾向なんです、大体こういう傾向なんです。

 さらに言わせていただきますと、民進党の……(発言する者あり)ちょっと静かにしていただけますか。

浜田委員長 静粛に願います。

大串(博)委員 質疑しているんですから、お願いしますね、菅原先生。

 民進党の法案提出数、継続法案も含みます、前国会で、政府提出法案は三十本です、民進党が提出した法案は合わせて五十七本。何と、政府の法律より多い法律を私たちは議員立法として提出しているんですね。提案、対案とはまさにこういうことですよ。

 私たちはこうやって、政府が出してきた法案に対して、賛成できるなと思うものは賛成し、しかし、違うなと思うものに関しては提案、対案をしながら反対していく。そして、それ以外にも、こういうふうな日本社会をつくっていくべきだということに関しては、議員立法を出してその意思を示していく、こういうふうにやっているんです。

 総理、私は思うんですけれども、さっき総理がおっしゃった、施政方針演説で言われた、批判に明け暮れたりと。民進党、私たちは批判に明け暮れたりじゃないということを私は総理にも認識していただきたいと思うし、私たちのことじゃないですよね。

安倍内閣総理大臣 最初から私は民進党とは言っていないわけでありまして、批判に明け暮れたりという定義は何かとおっしゃったんですが、これは定義ではなくて、皆、胸に手を当ててみて、批判に明け暮れているかどうか。批判に明け暮れていると思えば、それはまさに過ちですから、これを改めていけばいいんだろう、こう思うわけでありまして、我々も、野党時代も結構高い比率で賛成をさせていただいておりましたが、結構、地元に帰ったら、反対ばかりしているのかという批判もされたところでございます。

 ですから、皆様も地元の人たちにそういう印象をもし持たれているのだとすれば、我々もそのときは思ったんです、これは少し改めていく必要があるなということも含めて、我々もいろいろな反省をしながら、しかし同時に、国民の皆様には御説明をしているところでございます。

 賛成をしていただいていることにつきましては大変ありがたい、こういうふうに思っておりますが、できれば残りの四本も賛成していただきたかったですし、これはもうちょっと建設的な議論があったのかな、そういう批判もないことはないわけでありますが、私としては、民進党の皆様と今後とも建設的な議論をしていきたい、このように考えております。

大串(博)委員 総理にも、私たちが提案している議員立法をよく知っていただきたいというふうに思いますね。

 例えば、前国会で出した法律。先ほど、自衛隊の皆様の必死の御努力の話がありました。私も本当に胸にしみます。それもあり、私たちは、自衛隊の皆様の第一線の救急救命処置、これをしっかりしなきゃいかぬ。何せ、南スーダンに行かれている駆けつけ警護任務を負われたPKOの皆さん、お医者さんの数は四人ですよ。それでこの任務を数百人で負われている。そういうところに対して救急救命をしっかりしようという法律とか、あるいは長時間労働規制、きょうこの後議論させていただきますけれども、法律案。

 あるいは、政治分野における男女の推進、クオータですね、この法律。あるいは、LGBTの皆様の差別の解消に関する法律案。さらには、被災地、東北復興、東日本復興の推進、加速四法案。さらには、エネルギーに関して、地産地消、分散型のエネルギーをつくっていきましょうという四法案。さらには、保育の人材確保の法案。中小企業の皆さんの社会保険料負担、これを軽減するための法案。あるいは、安保法制、この違憲部分を廃止していく法案。さらには、農業者戸別所得補償法案。いろいろ私たちなりの考え方を盛り込んだ法案をたくさん出しているんです。

 こういったこともしっかり総理に知っていただいて、こういうふうに私たちは建設的な議論をしているわけですから、まさに批判に明け暮れるというようなこと、私もないようにします、総理にもないようにしていただきながら、さて、次の議論に入らせていただきたいというふうに思います。

 先ほど江田代行も言われました、トランプ大統領と今度、二月十日に会談されますね。その際に、私も非常に気になったのは、先ほどの、今回のトランプ新大統領の大統領令、七カ国の皆さんの入国制限の話なんですね。

 総理は、基本的な価値を共有する世界各国の皆さんと相手を携えてということをおっしゃってこられました。私、それは非常に感銘するところがあるんです。平和、自由あるいは基本的人権、これを世界じゅうに推し広めていこう、とても大切な考え方だと思うんですね。

 しかし、今、トランプ新大統領が出された大統領令、七カ国の皆さんの入国を一時的にせよ制限する、禁止する、これは一定、非常に、自由とか基本的人権とか、こういったものに対してどうなのかなという気が私はするんです。

 世界各国の、総理が一緒に仕事をされている首脳の皆さん、表でこれに対して発言されていますね。

 フランスのオランド大統領、難民を保護する民主主義の原則が尊重されなければ、民主主義を守ることはできない。これは報道から引っ張っていますけれども、言われています。メルケル首相、ドイツ、特定の出身地や宗教の人々を全て疑うようなやり方は納得していない。

 あるいは、イギリスのメイ首相、この間首脳会談をやられて非常にいい関係を築かれている、でも、言うところは言わなきゃならないということで、賛成できない、英国国民に影響するなら、米国に対して申し入れるとおっしゃっている。カナダのトルドー首相、これはツイッターですけれども、迫害やテロ、戦争から逃れた人をカナダは歓迎する、多様性は我々の強みだとも言われている。

 国連のグテーレス事務総長、世界で最も発展した国々などが余りに多くの国境を閉じているときに、アフリカ諸国の国境は保護を必要とする人々に開かれている、こういうふうに言われているんです。

 下に書かれているように、ビジネス界においてもいろいろな発言があって、フォードのトップも同じような発言をしたというふうになっています。

 安倍総理に改めてお尋ねしますけれども、二月十日に向けて、大統領と会われる際に、今それに向けた状況でございますけれども、七カ国の入国制限をするという大統領令を受けて、総理はコメントしないという態度でいらっしゃいますけれども、本当にそれでいいんでしょうか。先ほど答弁もありましたけれども、例えば自由や平和や人権といった基本的な価値を共有してほしいというぐらいの表現ですら、トランプ大統領に今この場から発信することは日本の総理としてできないんでしょうか。

安倍内閣総理大臣 日本と米国は普遍的価値を共有する同盟であるからこそ希望の同盟である、私はこう申し上げているわけであります。自由、民主主義、基本的人権そして法の支配といった価値を共有している同盟であるというのが、まさに日米同盟でなければならないということでございます。

 そして、入国の管理あるいは難民や移民に対する対応等につきましては、これは内政事項であり、コメントすることは差し控えたいと思いますが、先ほど申し上げましたように、他方、移民、難民問題やテロ対策は世界的な課題と認識をしております。国際社会で力を合わせこうした課題に取り組むべきことは当然であり、日本のその立場は明確であり、揺るぎないものであるわけであります。

 こうした観点は今申し上げましたように明確な日本の立場でありますから、この立場のもとに、こうしたさまざまな国際的な課題についてトランプ大統領とも話をしていくことになる、このように思います。

大串(博)委員 移民、難民、テロ対策に世界で協力して当たっていく、これは当然です。そのことを私は問うているんじゃないんです。

 トランプ大統領の今回の入国制限大統領令、これは、自由とか平等とか基本的人権といった、総理がずっと推し進めてこられた外交の基本的基軸と私は違うんじゃないかと思う。そうであれば、日本とアメリカは同盟関係であるとはいえ、おかしいなと思うところがあれば、日本が推し進めたい基本的価値からしておかしいということを言わなければならない、言うべきときは言わなければならないと私は思うんですね。

 しかも、総理がここでそういった発信をされないとすると、各国の首脳がこれだけきちんと今回のトランプ大統領の措置に懸念の声を上げている中で日本の総理だけがコメントしないというのは、日本の総理だけ受容している、トランプ大統領の入国制限を認めている、是としているというふうに、違いを逆に際立たせることになってしまうんじゃないかと思うんですが、いかがでしょうか。

安倍内閣総理大臣 それはそんなことはありません。それぞれの首脳、私も面識がありますが、私がそういう立場であるというふうには恐らく全く考えていないと思いますよ。それは私は自信を持って申し上げるわけでございます。

 今申し上げましたように、日本も日本としての役割を果たしています。では難民とどのように向き合っていくかというのは、これは重い課題ですよ。

 今ここで簡単に、米国の難民、移民に対する政策について、内政問題について日本が批判的にコメントすれば、大串委員は、それは大向こうから喝采を受けるからいいだろう、そういう観点から恐らくおっしゃっているかもしれませんが、それはそうではなくて、この問題にどのようにそれぞれの国の特性を生かしながら対処していくかということであります。

 日本は日本としてできる限りのことを行っていますが、残念ながら、日本がシリアの多くの難民を、一万とか二万とかのレベルで受け入れることはできないわけでありますから。

 しかし、それよりも、近傍の国々に対してしっかりと支援をしながら、こうした難民が出てくるという原因、根本に対応していく。あるいはまた、近隣の諸国で難民の人々がなるべく衛生的で、よりよい水準の生活ができるような難民の支援をしっかりと行っていく等々の役割を果たし、そして日本がそういう役割を果たしていくことにおいては、国際社会から既に評価をされているのも事実でございます。

 そういう観点から申し上げて、今、私が先ほどコメントさせていただいたとおりでございますが、いずれにせよ、同盟関係の中にあって信頼関係を構築していく中において、日本の立場について、あるいは国際社会で米国が求められている行動についていろいろな話をするということは当然あるわけでございますが、今ここで私が大串さんの言うとおりの答弁をすることはできないわけであります。

 しかし、先ほど申し上げていたとおりでございまして、移民や難民問題やテロ対策は世界的な課題と認識をしておりまして、国際社会で力を合わせてこうした課題に取り組むべきことは当然であります。国際社会で力を合わすということを私は言っているわけでありますから、当然、米国も日本も各国も力を合わせてやるということであります。

 日本のその立場は明確であり、揺るぎないものであるわけでありますから、この立場をちゃんと踏まえた上において首脳会談の場に立つということは申し上げておきたいと思います。

大串(博)委員 総理、難民の話は横に置いておいてください。私は、七カ国に対する、ある一定、普遍的な入国制限の問題を問うています。難民の問題ではございません。シリアの難民に関する大統領令の問題じゃなくて、七カ国に対する一般的な入国制限、時限的ではありますけれども、そのことを問うています。だから、難民のことはおいて答弁ください。(安倍内閣総理大臣「おけないよ」と呼ぶ)難民のことはおいて答弁ください。

 難民に対するものじゃなくて、七カ国に対して一般的に入国制限をする、これは、その七カ国に対して一定の多様性を認めない何がしかの判断があるからこそ、こういう大統領令が入れられているんじゃないかとみんなが思っているものだから、これだけ批判的な声が上がっているし、それが、普遍的な価値たる人権とか自由とか平和とか、それと違うという声が上がっているんだと思うんです。難民の問題と違った論点なんです。

 この点について、人権とかあるいは自由とかそういった問題から、難民じゃないですよ、人権とか自由という問題から、本当にトランプ大統領のこの入国制限、何も問題ないと思われますか。

安倍内閣総理大臣 そもそも、端を発したのは難民や移民の問題からであります。その中において各国がどう対応していくかということが、まず根本にあるわけでございます。

 そういう中から今回のこうした出来事が派生的に起こっているわけでございますが、米国の今回の入国上の対応についての判断は内政上の問題である。

 一方、難民とは別ではないんですよ。難民の問題というのは、別という今やじが後藤委員からございましたが、これは別ではなくて、これがまさに深刻な問題なんですよ。この深刻さがわからないようでは、この問題は語れないと思いますよ。まさにこの問題があって、シリアから大量の難民が出て、それが欧州に出ていって、この反作用でさまざまな問題が起こっているんですよ。

 英国のブレグジットも、これは決して、グローバルな経済に対する反発、これは底流としてあるでしょうけれども、端を発したのはやはり、この大きな難民について、これが移動の自由においてイギリスに入ってくることについての反発から起こった出来事であろう、こう思います。

 その現象からまさに米国の大統領選挙におけるさまざまな議論があったわけでありますから、これは別、これは別ということではなくて、今申し上げているとおり、その根本たる難民問題やまた移民の問題についても、日本だけではなくて、アメリカもそうですが、イギリスやドイツや世界各国がお互いに協力してその責任をそれぞれ果たしていかなければならない、このように考えているところでございます。

大串(博)委員 難民の問題が、世界が今抱えている大きな問題で、いろいろな問題に影響しているのは私もよくわかります。だから、それが非常に根底にある問題であることはわかる。

 しかし一方で、この入国制限の持つ世界の基本的な普遍的な価値、人権とか自由とか、それに対する影響の問題を私は問うているわけです。そこの問題が非常に大きいがゆえに、これだけ多くの各国の首脳が声を上げているんだと思う。その中で安倍総理だけがむしろ今それを擁護するような発言をされているがゆえに、やはりかなりその差異を感じるわけです。

 どうも、トランプ大統領に対して物すごく何か遠慮を安倍総理がしているような、気兼ねをしているような、気を使っているような。十一月にトランプ大統領と早速会われた後、信頼に足る方だ、関係を築けるとかおっしゃいました。それは私はそれとして受けとめましたけれども、その直後にTPPからの離脱ということをトランプさんがそのままおっしゃった。あのときも、何か遠慮されているんじゃないかな、何か持ち上げようとしているんじゃないかな、そんな感じを受けましたが、それと同じような、何か遠慮されているんじゃないか、最初から腰が引けたような感じがするんですね。

 これからTPPを含めた話をどうしていくのか。先ほどの安全保障の話やあるいは経済の話、いろいろな話を二月十日にやられるんだと思います。トランプ大統領はビジネスマン出身の方でもいらっしゃるから、いろいろなディール、取引、厳しい話もあるのかなというふうに思います。日本人全員が、二月十日の議論はどんなふうになるんだろうというふうに思っている。その中で、安倍総理が何か遠慮して臨んでしまうんじゃないかなというふうな危惧もあるんですね。

 安倍総理、いろいろな論点が、例えば先ほど江田さんがおっしゃった自動車の問題。TPPがない場合、二国間の貿易協定になるのか、そういった話があるのかもしれない。そういう中で、トランプさんは、その二国間の貿易協定に関して、今、為替の問題も取り上げてきていらっしゃいますね。

 きのうは、その為替の問題をよりダイレクトに取り上げられて、発言の中で、他国は通貨安誘導に依存している、中国は行っているし、日本も何年も行ってきたとか、あるいは、他国は通貨安や通貨供給量で有利な立場をとっている、こんな極めて具体的な発言もされています。これが日本の円相場にも大きな影響を与えたというのは、御存じのとおりだと思います。

 極めて日本の主権たる通貨の政策あるいは金融政策にまで声を出している。これに対してどういうふうに安倍総理が二月十日に向けて言われるんだろうなというのをみんな思っているわけですね。

 日本は、どうですか、安倍総理、何年も通貨安誘導、あるいはそのための通貨供給量のコントロールをしてきたんですか。

安倍内閣総理大臣 ある種のイメージをつくろうとしておられるんだろうと思いますが、私は、七カ国に対する国境措置について賛成なんて言ったことは一言もないんですよ、今。別に遠慮しているわけではないし、日本は今まで、他国のそうした入国管理あるいは国境措置について積極的にコメントしたことはないんですよ。ないんですよ、それは。それは、例えば中国に対してだってそうですよ。それに対して総理大臣がコメントしたことがありますか。ないんですよ、それは。ですから、今あえて私はそれはコメントしない。

 しかし、日本の立場は今はっきりと申し上げたとおりでありまして、意図的にそういうイメージをつくろうというのは、これは建設的な議論と言えないという批判も出るかもしれない、このように思ったところでございます。

 そこで、為替については、従来から為替については議論になったところで、この国会でも議論がございましたが、いわば我々のアベノミクスの三本の矢の政策の一つとして金融政策があります。この金融政策については、二%の物価安定目標に到達するために適切な金融政策を、黒田総裁のもと、日本銀行に委ねているわけでありまして、その中において、まさに彼らが批判しているような円安誘導という批判は当たらないということは、今までも累次申し上げているとおりでございます。

大串(博)委員 どのような話が二月十日にあるのかわかりませんけれども、あれだけ繰り返し大統領選の最中から、あるいは現職になった後も二国間の貿易と絡めて通貨のことをおっしゃっているわけです。

 二月十日にそういう話が出てくるかもしれないし、さらに、その少し前には、二国間の貿易協定をやる際に、為替に関して極めて強い制限をかける条項を入れるというような話もされていらっしゃいます。

 私は、貿易協定の中に為替に関する制限条項が入るということは国際的な常識からしてちょっと考えられないと思うんですね。これも通貨の政策に大きく口を出すトランプ氏の対応の一環だと思いますけれども、まさか、通貨に関して、為替に関して、これを制限する条項を入れようというような話があった場合に、これをのむことはないということは断言していただけますね。

安倍内閣総理大臣 米国政府から具体的な提案もない段階で、予断を持ってお答えすることは差し控えさせていただきたいと思います。

 為替に係る国際協調については、これまでも通貨当局の間においてG7やG20等の場で議論をしてきており、この為替の問題も含め、経済、貿易に関して日米間でよく意思疎通を図っていくことが重要であろう、こう考えているわけでございます。

 まだ向こう側は何の提案もしていないということでありますし、先ほど、日本に対する通貨安誘導という批判は当たらないということを私が述べさせていただいたわけでございまして、必要を要すればそういう説明をしていくことになるんだろう、このように思います。

大串(博)委員 いや、私が心配しているのは、例えばこの入国制限の問題も、先ほどおっしゃったように、基本的には各国の国境措置の問題ですから各国が決めること、それはそのとおりなんですよ。しかし、それにもかかわらず、今回、余りにやはり懸念が強いから各国のこれだけの首脳が声を出している、そういう状況なんです。

 そういう状況であるにもかかわらず、安倍総理がコメントしないという立場を貫かれるものだから、何か遠慮されているところがあるのかな、立場的に遠慮されて、弱い立場にあられるんじゃないかという懸念をする。そうすると、為替に関しても、本当に日本の国益をきちっと言ってくれるんだろうかという懸念を感じざるを得ないんですね。

 TPPを安倍総理は、トランプ大統領が選ばれた後も国会の中で推し進め、採決されました。私は、これはよくないことだったというふうに思います。

 なぜなら、仮に、二国間の貿易協定を標榜するトランプ氏が、安倍総理と二国間の貿易協定の話し合いをしようと言ってきたときに、当然、トランプ氏は安倍総理に対して、TPPのところは国会で安倍さんは通したじゃないか、ここからスタートラインとして、さらに自分たちは満足していないからもっと譲歩してくれないかと言われるスタートラインになる、その懸念が私はあると思うんです。

 これを国会の中で通していなかったとしたら、国内にもいろいろな議論がこれありというところから、まだふわっとしたスタートラインから議論できたはずだと思うんですね。その入り口のところから非常に私は弱くなっているところがあると思うんですよ。(発言する者あり)菅原さん、ちょっとやかましいです。やじはやめてください。総理もいつもそう言われているわけですからね。

 二国間の貿易協定をトランプ氏は標榜されています。二月十日の日に会われたときに何を言ってこられるかわかりませんけれども、もしその際に二国間の貿易協定のことを言ってこられた場合、私、そこは、その場ではすぐのむべきじゃないと思うんです。相手の土俵に乗るべきじゃないと思うんですよ。相手が二国間貿易協定でやろうという土俵をつくっているときに、それにすぐ乗るということはあってはいけないと思うんです。

 二月十日の日に二国間貿易協定をトランプ氏がもし提案してきたときに、安倍総理は、その場で乗るということはない、留保してくるということをこの場で明言いただけますか。

安倍内閣総理大臣 民進党の姿勢はどうなのかなと私も思っているんですが、TPPも反対だし、二国間も反対だし。かといって保護主義ではない、こう言っているわけでありますが、ではどうなのかなというのが率直な印象でございますが、これは横に置いておいて。今のは野党批判ではなくて、私の率直な問題提起ということでおとりいただきたい。

 と同時に、TPPを国会でいわば批准したから弱い立場になるというのは、これは逆でありまして、まさに、私たちが米国とディールしたことについて国会で決議している。決議は重たいんですから。

 この中で交渉して得たもの、ルールも含めて、関税もそうですね、そうしたものをしっかりとこの国会で決議しているんですから、国会で決議したことなんというのはそう簡単に動かせませんよという立場であります。

 これは、日米、そのときの米国政府もいわば承認したものを我々は国会で決議した、そして十二カ国がまさに合意したものであるという重さに、さらに日本が決議したという重さが加わったわけであります。

 国際的に、いわば一対一のFTAだけではなくて、まさに今グローバルな時代で、特に成長著しいアジア太平洋地域においてこうしたマルチのルールをつくっていくことの重要性についてしっかりと日本の認識を国会で決議していただき、これを日本の意思としては確定したわけであるからこそ、米国に対してこのTPPの重要性を説くことができるんですよ。

 あなたがそんなことを言ったって、国内で批准もできていないじゃないか、国会の承認もとれていないでしょう、口だけではないか、こう言われてしまうわけでありますが、口だけではなくて……(発言する者あり)済みません、ちょっと玉木さん、皆さん、静かに。

 民進党のこういう姿勢が、批判に明け暮れるということだと私は思いますよ。今、大串さんと一緒にせっかくいい議論をしているのに、こういう雑音を出して妨害するのは、私、雑音を出されるとなかなか答弁しにくいタイプなので、私がしっかりと答弁できる雰囲気をつくるのにお互いに協力していただきたい、このように思います。

 まさにこれは、こういういわばマルチの形も大変重要であり、この二十一世紀にふさわしいルールをつくっていくということの重要性について国会でもちゃんと承認を私は得ているんだ、私が言っているわけではなくて、国会もそのように、いわば国民を代表する国会議員からも承認を受けている、それが私の立場ですよということで粘り強く交渉し続けていくことについても大いに私はプラスになっている、このように思います。

大串(博)委員 私は、トランプ氏の土俵に乗っていただかないようにというお願いをしたいんです。

 つまり、いろいろな交渉をするときに、自分の土俵をまずつくるというのを、当然、ビジネスにたけた人間ならやると思うんですね。二国間貿易協定というのは、多分、トランプさんはやりやすいからその土俵をつくろうとされているんでしょう。それに乗らない。そうじゃなくて、こちら側の土俵をつくるというような方向から、だから、私は、すぐに飛びつくんじゃなくて、少し時間をかけてこの点に関しては議論していただきたいということを、二月十日に向けてぜひお願い申し上げておきたいというふうに思います。

 次に、経済政策に関して議論させていただきたいと思います。

 アベノミクスに関していろいろな議論があります。今、アベノミクスを受けて、私たちとしては、人への投資、これを前提とした経済政策に転換していくべきだということを申し上げております。

 二〇一四年を経て、私は、大きく変わったと思うんです。IMFとかOECDがいろいろなレポートを出して、格差があることが経済成長にはマイナスになっているという論調が国際的に随分広がりました。格差をなくしていくこと、これが経済成長にプラスであるし、長い経済成長にもプラスである、こういうふうに言われている。

 そのために、私たちは、人への投資、将来不安をなくしていく、これを前提に大きな政策転換をしていこうということで、教育の無償化を柱とした政策を打ち出していきたいというふうに思っています。

 この中で、教育の無償化に加えて、当然、若い世代の皆さんの働き方改革、総理がおっしゃっている雇用の問題、これは非常に大きな問題なので、きょうは議論を進めさせていただきたいというふうに思います。

 働き方改革、長時間労働規制でありますけれども、るる国会でも議論が起こっています。もう一回確認させていただきたいと思うんですけれども、私たちは法案を出しています。それに対して総理が、長時間労働規制の上限を私たちが厚生省令に丸投げしているじゃないかというふうに言われましたけれども、これは違います。明確に否定させていただきます。

 私たちの案は、特別条項、すなわち青天井に残業を認めることをやめて上限をつくる。上限の数字は、労政審という極めて大事な場、労働者と使用者側が同数入って公平な場で議論をする。これはILOの条約の中でも担保されている極めて大事な場です。この場で適正に決め、この決めたものを上限の数字とする、これが私たちの政策であります。

 ところが、これは報道ですけれども、一年間で七百二十時間、二カ月で百六十時間、そして一カ月では百時間という労働時間上限になるという案が報道されていました。それに対して総理は、過労死ラインを下回る、クリアすると言われました。なぜなら、過労死ラインというのは一カ月百時間なんですね。発症前二カ月あるいは六カ月にわたって一カ月当たり八十時間、つまり二カ月で百六十時間、こういうラインなんです。

 過労死ラインと同じようなものを長時間労働規制の上限として置くというのは、ほとんど規制していないに等しいと私は思います。余りにも百時間というのは私たちは長いと思う。だから、私たちは、基本は一カ月四十五時間という三六協定の一カ月の上限規定、これは極めて重要な基礎だというふうに思っています。そういう立場から、百時間は余りに長過ぎる。

 総理は、過労死ラインをクリアする、こういうふうに言われていますけれども、クリアするというのは、どの程度クリアするんでしょうか。

加藤国務大臣 これまでも御説明させていただいていますが、時間外労働の上限については、まさにきょう、働き方改革実現会議を開きますけれども、その場において、有識者そして労働界また経済界の議員の方からさまざまな意見を伺って検討していく、そして実態をしっかりと見ながら議論して明確な結論を出したいというふうに思っております。

 そういう中で、今委員が御指摘のいわゆる脳・心臓疾患の労災認定基準、いわゆる過労死基準、これについても、最低限これらの、これは今二つの基準を出されておりますけれども、そうした基準をクリアするといった健康の確保を図ること、これは当然のことでありまして、その上で、女性や高齢者が活躍しやすい社会とする、またワーク・ライフ・バランスといった観点にもしっかり留意しながら議論を進めていきたい、こういうふうに思っております。

 そして、具体的には、この実現会議で三月末までには実行計画をまとめることとしております、それに沿って法改正に向けた作業を加速していきたい、こう思っております。

    〔委員長退席、宮下委員長代理着席〕

大串(博)委員 百時間というのは、総理、そして二カ月で百六十時間というのは余りにも長過ぎると思われませんか。過労死ラインを前提としたような時間基準というのは基準たり得ないというふうに、規制たり得ないと思われませんか。どうですか。

安倍内閣総理大臣 今、大串委員は、内容は労働政策審議会で審議すべきと、我々の丸投げ批判に対してそう言いながら、いきなり具体的上限を示すべきと指摘するというのは、何となく矛盾しているように感じるのは私だけではないんだろうというふうに思うわけでございますが、野党の皆さんが言っているいわゆる過労死ラインとの関係については、既に働き方改革担当大臣から答弁をさせていただいているとおりでございます。

大串(博)委員 この働き方改革に関しては、総理が一丁目一番地みたいに言われている割には、答弁がいつも、担当大臣が言うとおりと、極めて冷淡なんですね。どれだけ力を込めていらっしゃるのか、極めてその本気度を疑う状況ですね。

 先ほどの答弁の中で、誰に対して何時間の上限にするか議論すると言われました。すなわち、これを聞くと、上限はつくるけれども例外がたくさん出てくるような内容になっちゃうんじゃないかという懸念すらあります。上限はつくったけれども例外がたくさんあるようだったら、それも規制とは言えません。

 誰に対して何時間というのがたくさんの例外をつくるものではないのかどうか、そこについてはいかがですか。

加藤国務大臣 大前提としては、まさにこれからそれらも含めて御議論いただくということでありますけれども、当然、規制をつくり、そして、先ほど申し上げましたように、いわゆる労災の認定基準、そうした基準をクリアするという健康の確保を図っていく、それを前提としているわけでありますから、そういった観点で議論をさせていただきたいというふうに思っております。

大串(博)委員 何でこれを言っているかというと、総理が、厚生労働省令に丸投げじゃないかみたいなことを随分言われたので、私たちは、厚生労働省に丸投げしているんじゃなくて、労政審でしっかり議論してもらって、そこで決めてもらったものを基準とするんだということを言っていることをきちっと申し上げたかった。

 そして、その際には、四十五時間を重要な基礎とする、百時間というのは長過ぎる、このことを申し上げさせていただきながら、ぜひ総理に本気でやっていただきたいんです、本気で。おっしゃっているとおりの、口ばかりではない行動をとっていただきたいということを申し上げさせていただきたいというふうに思います。

 最後に、天下りの問題について一問質問させていただきたいと思います。

 今回、天下りのいろいろな調査が行われていますけれども、私、根本の問題はこれだったと思うんです。すなわち、第一次安倍内閣のときに国家公務員法を改正して天下りの規制を変えました。それまでは、退職後の二年間は利害関係企業には就職しちゃだめだとなっていたんです。それを、安倍内閣で、退職直後でも利害関係企業に再就職が可能なように規制緩和されました。

 当時、安倍総理は、天下りのあっせんは根絶できると言われました。確かに、再就職は可能になったけれども、それに対して、あっせんは禁止するとか、再就職等監視委員会による違反のチェックをするとか、そういうのはつきましたけれども、基本は、退職直後でも利害関係企業等に再就職が可能になった、ここが大きな問題だったと私は思うんですね。

 当時、安倍総理は、一生懸命これを国会の中で代表質問の中でも答弁され、これがいいんだというふうに言われました。しかし、今回の法律の問題はここだったのではないかと思うんです。

 というのは、この後、法律の求めに従って、退職後二年間に就職した人の人数を全部公表されることになっています。法施行後、一万人なんですね、一万人強。そのうち、私たちが調べたら、資料を出してもらったら、何と、退職以降三カ月、非常に短い時間です、退職して三カ月以内に就職した人が七千人もいるんですよ。多くの方々が退職直後に就職されているんです。そういうふうになっちゃった。それが天下りあっせんの温床を生んだんじゃないかと私は思います。

 総理、御自分で提案された法案です。このことが大きな問題だったのではないかと思いますが、いかがでしょうか。

山本(幸)国務大臣 国家公務員の再就職について、問題というのは、官民の癒着につながりかねない公務員OBの口ききや、予算、権限を背景とした再就職のあっせん等の不適切な行為であります。

 一方、法令に違反することなく再就職して、公務部門で培ってきた能力や経験を活用して社会に貢献することには非常に意味があると思っております。

 このために、密接な関係のある営利企業への再就職の一定期間の禁止にかえて、平成十九年の国家公務員法改正により、各府省による再就職あっせんの禁止等厳格な規制を導入するとともに、監視体制として再就職等監視委員会を設置したところであります。

 何が変わったかといえば、二年間はだめだけれども役所のあっせんはいいですよと言っている、そういうのが昔の制度でありましたけれども、この改正で、役所はあっせんを一切やってはならない、全面的に禁止する、そう厳しくしたのが一番の違いであります。そのために監視委員会で監視するということであります。

 この厳格な監視が機能したことで今回の事案が明らかになったということでありますが、本事案で生じた国民の疑念を払拭するために、安倍総理から私に対して、同様の事案がないかどうか、全省庁について徹底的な調査を行うように指示があったところであります。

 今後、徹底した調査をして、その結果をしっかりと明らかにしてまいりたいと思います。

大串(博)委員 これで質問を終わりますけれども、私たちはこの改正自体が大きな問題だったと思っています。先ほどおっしゃったように、退職した公務員が退職前のいろいろな技量を通じてまた再就職することは社会にとっていいことだという理屈からこの改正が行われたわけですけれども、これによって、退職直後からでもどこでも就職できるようになっちゃったわけです。これは当時、大きな問題になりました。その問題が今露呈してきているということだと思います。

 私たちは、今回の問題を踏まえて、当面の対策として、例えばOBによる天下りあっせん、この抜け穴を塞ぎ、あるいは懲戒処分だけになってしまいがちなところを刑事罰も考える、こういった当面の対策も立法として考えなければならないかということも検討し始めています。

 あわせて、より本質的な問題として、本当に、退職直後に就職していい、あっせんしていないかどうかだけチェックしますよ、こんなぬるい現制度でいいのかということに関する提言もさせていただきますことをここに申し上げさせていただいて、私からの質問を終わらせていただきます。

 ありがとうございました。

    〔宮下委員長代理退席、委員長着席〕

浜田委員長 この際、小川淳也君から関連質疑の申し出があります。江田君の持ち時間の範囲内でこれを許します。小川淳也君。

小川委員 民進党の小川淳也です。

 本日の私の役割は、先週の質疑に引き続いて、この天下り問題の全容解明に貢献をすることでございます。

 ただ、総理、その前に一言だけ苦言を呈させてください。

 私は、このトランプ氏の横暴、無謀な振る舞いに大変怒りさえ覚えております。これに対して日本の総理大臣が何も言わないというのは、一人の日本人として非常に歯がゆく、恥ずかしく、情けなく思っております。あの手の指導者に対しては、毅然たる態度で、すきを見せないように、甘い顔をしないように、ぜひとも日本国の総理大臣として御対応をお願いしたい。冒頭、このことを申し上げます。

 さて、きょうから本予算であります。

 まず、麻生財務大臣にお聞きしたいと思いますが、予算書、この分厚いものをいただいております。どう目を凝らしても、この史上最大、九十七兆四千五百四十七億円のうち、幾らが天下り団体に流れるのか、わかりません。

 この総額のうち、幾らが天下り団体に来年度支出されるんですか。

麻生国務大臣 まず、天下り法人の定義というのが私どもとしては不明なので、少々その点に関してはお答えすることが難しい。

 二つ目。この質問は、きょう午前中ですよね、出されたのは。そして、補助金などの詳細を示せと。きょうの午前中言わせてきょうというのは、ちょっとこの委員会のルールを全く無視してやっておるという自覚はまず持ってもらいたい。(小川委員「委員長」と呼ぶ)まだ答弁中。

 いずれにしても、平成二十九年度予算において、補助金などの所要の額というものを適切に計上していると思っておりますが、独立行政法人向けの財政支出だけを取り上げますと、二兆八千二百二十億が総額です。ほかに、特殊法人というのがありますので、特殊法人向け財政支出の六千百三十一億が、今現在で直ちにお答えできるところであります。

小川委員 大臣、これは時間をもちろん置いていただいて結構です。ただし、来週にも天下りの集中審議を行うと言っている以上、それまでには、今、独法のことをおっしゃいましたが、特に今回最大の問題になっているのは公益法人ですから、役所のOBが天下っているところに、この総予算、幾ら流れる予定なのか、それは資料として提出を求めます、委員長。

浜田委員長 理事会で協議します。

小川委員 あわせて、山本大臣、午前中に、全省庁調査を昨日始められたということですが、これをいつまでにきちんと報告するのかということに関しては答弁が明確ではありませんでした。

 そこで、改めてお願いですが、予算審議という今非常に重要な時期です。この予算審議の最中に、この審議に資するためにも、一定の報告をお願いしたいと思いますが、いかがですか。

山本(幸)国務大臣 午前中の答弁でも申し上げましたが、スケジュールありきということでやることではありません。徹底した、中身を充実する調査が必要だというふうに考えております。

 したがいまして、その調査の進行状況、そういうものをしっかりと見きわめていかなければならないと思います。その意味では、調査が徹底して行われて、結果が出れば、しっかりと報告をしたいと思います。

小川委員 中身を充実させるという理屈が、おくらせる抗弁になってはいけないと思いますよ。

 総理にお伺いしますが、この天下りの仕組みについて全容解明は後だけれども、しかし、その資金が流れることが明々白々なこの予算案だけは先に通してほしいというのは虫がいいと思いますので、それはないということを、総理、明確に御答弁いただきたいと思います。

安倍内閣総理大臣 予算案については、まさにこの予算案を早期に通すことが最大の景気対策だ、このように私は確信をしております。また、それを国民は望んでいるわけであります。ある問題があるから予算を通さないとブロックする姿勢は、これは恐らく評価されないと思いますよ。予算のまさに中身をしっかりと審議しながら、適切に予算を成立させてもらいたいということを国民は望んでいるんだろうと思います。

 しかし、それをいわば盾にしてこちらの方を、というか、それを見据えてこの報告をしないとか、そういうことでは全くないわけでありまして、しっかりと徹底的に調査をして、当然、国会において国民の皆様の前につまびらかにしていく、それが私たちの責任である、このように認識をしております。

小川委員 語調が強かったところは評価したいと思いますが、予算の流れ道に深くかかわっているわけですね、これはOBを活用して、各天下り団体は。

 ですから、予算のあり方そのものに深くかかわる問題ですから、やはり予算審議中に、議了前に、これは委員長にお願いしたいと思いますが、天下り団体に幾ら流れる予定なのか、そして、OBを絡めたこの全体のからくり、仕組みはどうなっているのか、ある程度これを明らかにすることが予算を議了させる前提だと思いますし、逆に、それが明らかにならない限りは予算審議を続ける、二つに一つだと思いますが、委員長、いかがですか。

浜田委員長 委員長としては、当然、議論を重ねる中で、結論を出すべきところは結論を出すことが我々の役目だと思いますし、そういった要望に関しては理事会で協議をさせていただきます。

小川委員 とにかく、全力でやるとか明らかにしますとか言っている割には出てこないわけですね。隠しているんじゃないか、隠蔽しているんじゃないかという疑いを色濃く持たれると思いますよ。

 まず、山本大臣、早速きょうの報道でも、全省調査は各省に丸投げじゃないか、こんなもので成果が上がるのか、実効性は見通せないという批評があります。これは私は当を得ていると思う。

 私はてっきり、大臣が直接、チームを編成されるということですから、直接ダイレクトに調査に乗り出すんだと思っていました。各省に委託して自主調査せよといったところで、真相は出てこないんじゃありませんか。

山本(幸)国務大臣 それがどういう新聞の記事かは私もつまびらかに、明らかじゃありませんが、全くの誤報であります。

 この調査は、私ども人事局が陣頭指揮をとって直接やります。各役所に丸投げなんということは一切ありません。

小川委員 直接聞くということですね、対象者に。内閣人事局の職員が直接聞く、各省に丸投げしてその報告を受けるという間接形態ではないということですね。もう一回、確認です。

山本(幸)国務大臣 そんなことは当たり前でありまして、直接やります。

小川委員 心強い答弁でした。ぜひそれは間違いなく実行していただきたいと思いますし、私どもももちろん、しっかり国会の立場から監視をしていきたいと思います。

 それからすると、文部科学大臣は午前中、質疑の中で、少し外部の関与に関して曖昧な答弁だったと私は受けとめています。

 これは、調査班に第三者を入れるのか、第三者が直接調査をするのか。どうも、日程が合わなければ後から報告するとかいうくだりがありましたね。これはどういう意味ですか。第三者にきちんと直接調査をさせるんですね。

松野国務大臣 第三者が今回の調査に参加をいただく形として、調査班のメンバーとしてお入りをいただきます。

 先ほど指導監督というお話をさせていただきましたのは、調査班の中において、その調査の方向性に関して外部の方の御見識を主導的にお聞きしてから設計していくという趣旨においてお話をさせていただいたところであります。言うならば、より外部の方が調査班の中においての方向性の決定に対して主たるポジションについていただくという意味でございます。

小川委員 方向性の決定を外部の方の助言を求めてやるということは、直接の調査は誰がやるんですか。

松野国務大臣 先ほど申し上げましたとおり、ヒアリングに外部の有識者の方に参加をしていただいて進行いたします。それが大原則でございます。

 先ほど報告等々のお話を申し上げましたのは、三月三十一日までにこの結果を取りまとめて公表するということになっております。もちろん、これは、監視委員会等と御相談をしながら、調査に支障がない問題に関しては前広に結果を公表させていただきたいと考えておりますが、そうしますと、日程上の問題、そして、対象が文科省の職員、これは二千人程度になりますし、関係のOB、外部団体等もございますので、それに当たるということになると、有識者の方が、そのスケジュールにおいて、全て日程上参加をしていただけるか、それがなかなか難しい場合もあるかと思います。

 そういった場合においても、きちっとそのヒアリングの内容に関して、先ほど申し上げました制度解釈の問題ですとか調査における方向性等の観点から、外部の有識者の方々に確認をしていただくことも行うという趣旨でお話をさせていただきました。

小川委員 非常にまだ曖昧さが拭い切れません。徹底的にやる意思があるのかどうか、迫力は少なくとも伝わってきません。内部の調査ではなれ合いになることは見え見えですし、外部の方が直接調査に入る、ヒアリングを行うということは徹底していただきたい、そのことは申し上げたいと思います。

 では、文教フォーラム等に関連して、その後、追加で報道された事実等もございますので、改めてここで確認させてください。

 先週の段階では、文教協会による、あっせん団体文教フォーラム、R氏への家賃負担が明らかになりましたが、その後の報道では、別の法人からの事務員、秘書の派遣、それから電話代の負担等が報道されています。これは事実ですか。

松野国務大臣 御指摘の電話代等の負担は文教協会の分室にかかわる負担であり、秘書についても文教協会の参与のために配置していたものという報告を受けております。

 しかし、この文教フォーラムと文教協会の関係に関して、これはもう既に指摘をされているところでありますし、その件も含めて、今後、再就職等問題調査班において全容解明に向けて取り組んでまいります。

小川委員 事務員の派遣あるいは電話代の負担、私、きのう事務的にお聞きした範囲では、大臣、ありますと言っていましたよ、ここで明確にされませんでしたけれども。ちゃんともう確定させてくださいよ。だから言っているんですよ、事実が出てこないと。大臣、ちゃんともう明らかにしてください。

松野国務大臣 先ほど答弁をさせていただきましたとおり、部屋代、室料のほかに、電話代等の負担、また秘書の派遣等があったということは確認をしております。

 その確認内容に関して、文教協会からの現時点における報告、聞き取りによりますと、先ほど申し上げたとおり、分室としての機能に対する電話代の負担、また、文教協会参与としてのR氏に対しての秘書の配置という報告を受けておりますが、しかし、この点に関しても、実態がどうであったかということに関して、今後、調査班を通してしっかりと解明していくという趣旨でございます。

小川委員 最初から本当にきちんと正直におっしゃっていただきたいと思いますし、幾ら正当化するような口実をつけ加えても、怪しいものは怪しいんですよ、大臣。ですから、もう余計な言い逃れとか口上をつけ加えることはむしろ控えていただきたい。

 さらに、今週に入って、このOB、R氏は保険代理店に顧問として再就職をしていたということが明らかになっています。そのOBは昨日辞職したという報道がありますが、これは確認されていますか。

松野国務大臣 確認をしております。(小川委員「わかっているということですか」と呼ぶ)はい。

小川委員 では、加えて、このR氏以前にも、文科省OBがこのD社に対しては再就職していたということも報じられていますが、これも事実ですね。

松野国務大臣 当該保険代理店でございますが、第一成和事務所に問い合わせたところ、この件については個人情報であるため回答は差し控えたいとのことでありました。

 一方、文部科学省において確認をしたところ、再就職に関する現行制度導入前の平成十七年当時、閣議決定に基づく「再就職状況の公表について」において、文部科学省OB一名が第一成和事務所の顧問として就任していた旨公表をしております。また、R氏につきましては、現行制度導入後の再就職の届け出において、平成二十一年七月十四日に第一成和事務所に再就職している旨が届けられ、公表されております。

 文部科学省OBについて現時点においてわかっていることは以上でございます。

小川委員 ですから、R氏以前にも、少なくとも一人確認されているということです。この会社との関係はかなり以前からあるようですね。

 重ねてお聞きしますが、いわゆる職員団体保険をこのD社にお願いした、あるいは取り扱いが始まったのは、最初はいつだと認識されていますか。

松野国務大臣 第一成和事務所は、現在文部科学省共済組合が行っている団体傷害保険の前身となる文部省団体交通事故傷害保険の取り扱いを、一九六七年から開始していると聞いております。

小川委員 この点はD社のホームページからも読み取れるんですが、もう半世紀以上のおつき合いということになるんだと思います。

 これは推計になろうかと思いますが、直接、文教協会が集金事務を行っていたこのD社の保険契約。これは推計になりますが、大臣、大体どのぐらいの規模の保険契約を扱っていたというふうに考えておられますか。

松野国務大臣 文教協会からは、団体扱い火災保険の集金機関として組合員から保険料を集金して、引受損害保険会社への振り込みを行っており、その際、保険料の五%を徴収していると聞いております。

 平成二十七年度の集金手数料収入は六十九万三千四百十七円であり、これに対応する保険料の掛金としては一千三百九十七万八百五十一円になると聞いております。

小川委員 御答弁ありがとうございました。

 ただいままで聞き取ったこと、昨日段階で事務的に聞き取ったことですが、改めてちょっと図式化させていただきたいと思います。

 文教協会から、家賃、そして、きょう御答弁があったとおり、他の団体だと思いますが、人の派遣、そして電話代等の負担がこのR氏に対して行われており、そして、R氏は保険代理店D社の顧問として報酬を得ていた。昨日、辞任です。そして、このD社に対しては、保険契約が五十年来にわたって行われていたと思われますが、文教協会分は推計すると一千四百万円前後ということであります。

 ただ、この文科省関連の保険には、団体保険、もっとたくさん、ほかにもあるんですよね。今大臣が御答弁になった、文科省共済組合団体傷害保険、それから団体自動車保険、そして火災保険、今回、文教協会が扱っているものです。そのほかにも、専修学校等の各種傷害保険、さらにインターンシップやボランティア活動に関する補償制度、そして、全国国立大学附属学校PTA連合会、カンガルー保険、全部でホームページを見るだけで六種類の文科省関連職員団体保険の取り扱いがあります。

 なかなか財務諸表が出てこないんですが、この中の一つ、インターンシップ、ボランティア活動補償制度を扱っている産業教育振興中央会という団体があるようです。そこの決算を見ますと、保険料収入、手数料収入が六百万円を超えています。ですから、文教協会との比較でいうと十倍という換算。それだけ保険契約も大きいということでしょう。

 ですから、今回のこの文教協会取り扱い分以外にも、各種団体を通して、団体保険が、このR氏が再就職をしていた代理店との間でさまざま契約が錯綜していますので、この全容も含めてぜひ調査をいただきたい。そのことをお願いしたいと思います。

 その上で、最後に解明したいのは、文科省本省本体とこのD社との特別な関係についてなんです。

 文科省として、このD社に何らかの便宜を図っておられると私は確信しておりますが、その内容なり根拠、大臣、御答弁いただけるようであれば率直にお尋ねしたいと思います。

松野国務大臣 この第一成和事務所に関しまして、文部科学省が入居しておりますビルに対しての入館許可証等を発行しております。

 これは、文科省に対して、職員の福祉サービスに関し、例えばこの保険でありますとか、また、飲料、飲み物の会社の販売ですとか、そういった十五団体に許可証を発行しておりますけれども、その一社がこの第一成和事務所でございます。

小川委員 五十年前から保険契約、団体契約を行い、そして、文教協会以外にも多数の契約種類、そして、物によってはかなり規模の大きい保険契約。さらに、本省に自由に出入りできるわけですよね。

 確かに、いただいたリストを見ると、飲料メーカーと生命保険がほとんどですよ。しかし、損害保険の代理店は、私はあえてD社と申し上げますが、この一社しかありません。それはなぜですか。

松野国務大臣 御指摘のとおり、保険会社は数社入っておりますけれども、代理店はこちら一社でございます。

 なぜこの社にだけ許可証が発行されているかに関しては、恐らく、先ほど来お話を申し上げていますとおり、一九六七年と申し上げたかと思いますけれども、長い期間においての取引関係があるという経緯においてこの許可証が与えられているものかと思いますが、しかし、その点に関しても、改めて調査をし、整理をし、また公表させていただきたいと思います。

小川委員 これも一つ一つ本当に根掘り葉掘り聞いてかなり努力をしないと一つの事実すらなかなか出てきません。そういう状況の中で、内部調査をやるやると言っているのが本当に信頼できますかということを冒頭から申し上げているわけです。

 ちなみに、損保代理店はどのぐらいあるか御存じですか、大臣。あるいは金融担当大臣、御存じですか。御存じなければ、首を横に振っていただいて結構です。麻生大臣、御存じですか。

麻生国務大臣 全く今初めて伺った質問なので。日本じゅうに損保代理店が何百店あるかという御質問ですか、日本じゅう。存じません。

小川委員 二十万社以上あるそうですね。その中で一社だけ自由に文科省に出入りできるということなんです。

 ただ、D社の名誉のために申し上げたいと思いますが、D社が違法行為を行っているわけではないんです。しかし、長年の保険契約を介在した癒着構造の中に再就職の問題があり、顧問料を払い、そしてその人が遠巻きにあっせんを行っていたという構図、構造が問題だと申し上げているわけであります。

 ですから、なぜD社一社のみにこの許可証を交付したのか、それは大臣、説明責任があると思います。それはきちんと調査をして、委員会に御報告をいただきたい、委員長。

浜田委員長 理事会で協議いたします。

小川委員 はい。

 もう再三申し上げますが、なかなか、この内部調査に任せていて本当に出てくるのかという疑念を持ちながら、私どももずっと作業しています。委員長もごらんいただいたとおり、この間の経過については、衆参の国会審議を通してかなり明らかになってきている部分が実際にあるわけですね。

 それからいいますと、これは先週金曜日の報道ステーションのワンシーンをキャプチャーしたものでありますが、私どもが発見をした文教協会、文教フォーラムのあるビルで、文教協会を隠すかのようなシールが張られているわけです。そのシールはいつ張られたのかというインタビューに対して、二、三日前じゃないでしょうかという答えをなさっている。

 これは事実確認をお願いしましたので、ここでお答えください。このシールを張ったのはいつですか。そして、誰の指示によるものですか。

松野国務大臣 この委員の御質問に関しましては、委員から御指摘をいただいて、私どもの方で聞き取りをさせていただきました。

 文教協会分室が入居していたビルの賃貸契約の契約者は、平成二十九年一月一日をもって、公益財団法人文教協会から一般社団法人文教フォーラムとなっております。

 文教協会によりますと、シールの張りかえの件については、文教協会がみずからの判断で、誤解を招かないようシールを張って、ビルの表札を改めたものであると聞いております。

 また、日時でございますが、これも文教協会からの聴取によるものでありますけれども、平成二十九年一月二十三日に張りかえたと報告を受けております。

小川委員 この問題がかなり報道等で扱われるようになり、また、国会が開会した直後にこういうシールが張られた。ちなみに、分室の廃止の決定は前年ですからね。一月まで一カ月、その状態で置いていたわけです。しかし、問題が大きくなる兆しが見えるにつけて、こういうシール張りを行ったということだろうと思います。

 さかのぼると、タイミングが極めて一致し過ぎるのが多いんですよね。ちょっと次の資料をごらんいただきたいと思いますが、ここは山本大臣、安倍総理にもぜひお聞きいただきたいところなんです。

 このR氏が文教協会の参与に就任したのは二十六年の一月です。同月、文教フォーラムが設立され、そして同月、今度は文教協会が虎ノ門に分室を設置し、そして、さきの団体火災保険の取り扱いを開始している、二十六年の一月です。

 二十八年の四月、今度は文教フォーラムが、それまで任意団体だったものが法人登記されました。ですから、さあこれからだと思われたんでしょう。しかし、翌月、監視委員会事務局が任意の調査に着手しました。そうすると、その月の文教協会の理事会で虎ノ門分室の廃止を決定していますね。

 そこから半年、表立った動きはありませんが、十二月、余りにも虚偽答弁や口裏合わせに業を煮やした監視委員会は、強制力のある調査に乗り出した。正しい判断だったと思います。それを受けて、R氏は文教協会の参与を退任、文教協会は分室の廃止を登記、そして不動産契約も、十二月から一月にかけて直接不動産契約に切りかえたわけです。

 いずれも、事が起きるたびに事態を隠蔽するかのようなことが、余りにも日付が一致しながら展開している。この事実をまず率直にお認めいただきたい。

 そして、もっと言えば、一月にシール張りが行われたことは先ほど指摘したとおりです。監視委員会は、一月の二十日に調査結果を、これは概要のみですが、公表しましたね。前川前次官が辞表を提出したのも一月二十日です。内閣がこれを承認したのも一月二十日。そして、国会召集も一月二十日。

 これは、文教協会、文科省のみならず、官邸含めて、政府含めて、見事な連係プレーで、国会開会前に事態を収拾しよう、余計な人たちを余計なところに呼ばれないようにしようという工作を行ったのではありませんか。

 これは松野大臣と菅官房長官からそれぞれ、余りにも一致するこのタイミングはどういうことなのか、御答弁いただきたいと思います。

松野国務大臣 今回の文部科学省の再就職等規制違反に関しまして、監視委員会の方から文部科学省に対して調査報告が伝達されましたのが十九日でございます。その十九日の調査報告の中におきまして監視委員会が既に事実として認定をしている事案に関して、それに即して、過去の事例と照らし合わせた上で、二十日に処分を決定し、九名に申し渡しております。

 その後、本人から辞職の意思が示されまして、今委員の方からお話があったとおり、二十日、当日の閣議によってその依願退職が認められたということが経緯でございます。

菅国務大臣 任命権者であります松野大臣が今答えたとおりだというふうに思っています。松野大臣がその処分を行った後に私どもに相談があったということであります。

小川委員 しかし、外形的に見て、この一月二十日、国会召集を前に関係の次官をやめさせて、もちろん御本人が辞意を申し出たにしても、そして、内閣がそれを承認し、国会審議が始まるや否や、なかなか関係者が呼べないという状況をつくった、その責任は私は政府にあると思います。

 山本大臣、ですから、今ごらんいただいたような経過なんですね。ここには、なかなか内部調査は容易じゃないぞということは少なくとも感じ取っていただきたいわけです。だからこそ、第三者による直接の調査と、そして速やかな公表を改めてお願いしているわけなんです。

 最後に、きょうは、いろいろ国会から、反対意見もあるようですが、あえて改めて歴代の人事課長にも再度お越しをいただいています。そういう環境の中で、この国会での質問に対してはきちんとお答えをいただきたい。

 常盤局長に再度、先週に引き続いてお聞きしますが、R氏のあっせんが始まったのは二十一年七月です。当時人事課長でいらしたのは常盤局長御自身です。ですから、この事実を御存じでしたね。

常盤政府参考人 今御指摘のとおり、私は、平成二十一年から二十二年にかけまして、一年間、人事課長をしておりました。人事課長経験者といたしまして、また幹部職員といたしまして、このたびの事案について、まことに申しわけなく思っております。

 再就職のあっせん問題につきましては、これは前回のお答えと同様で恐縮でございますが、現在、文部科学省として全容解明のための調査を行っておりまして、私も調査には真摯に協力をさせていただきます。組織として調査をまとめましてお答えをさせていただきますので、お時間を頂戴したいということでございます。(発言する者あり)

浜田委員長 速記をとめてください。

    〔速記中止〕

浜田委員長 速記を起こしてください。

 小川君、もう一回、その部分を。

小川委員 では、前回あれっと思っていたので、もう一回、ちょっと別の角度から聞きます。

 先週、我が党の玉木委員が、R氏を御存じですかと聞きました。それに対しても、調査中で答えられないという答弁でしたが、それはないんじゃないですか。

 まず、ちょっとそこは答えてください。R氏を御存じでしたよね。

常盤政府参考人 お答えします。

 前回もお話がございましたけれども、本件についてはまことに申しわけなく思っておりますけれども、前回の審議でも私どもの大臣からも御答弁させていただいておりますけれども、私は、現在の所管業務についてお答えをするという立場で出席をさせていただいているものと理解をいたしておりますので、お答えは控えさせていただきたいということでございます。(発言する者あり)

浜田委員長 質問の意味で、局長の立場で、今の立場でその方を存じているかどうかを答えていただければと思いますが、常盤局長、いかがですか。

常盤政府参考人 申しわけございませんが、職務上の所管事項との関係でのお答えということが私の役割でございますので、その点を御理解いただきたいと思います。(発言する者あり)

浜田委員長 速記をとめてください。

    〔速記中止〕

浜田委員長 速記を起こしてください。

 常盤局長。

常盤政府参考人 私の職務の関連で申しますと、大学一覧を文教協会から購入しているわけでございますけれども、その文教協会の参与としてのR氏については、私は、参与についているということは存じておりません。

小川委員 ちょっと委員長、質疑の前提で、所管事項以外で答弁しない、あるいは国会に出席しないというのは、政策においてはそれはそれで結構だと思います。しかし、過去、違法行為があった可能性がある、あるいは倫理規範にもとる可能性がある場合は、それは属人的に、国家公務員たるに値するかどうか、そういった資質についても国会としてはチェック機能を果たす必要があります。ですから、与野党申し合わせがもしそのような理解をされているのであれば、そこは再整理してください、委員長。まずそれを一つお願いしたい。

 もう一点は、調査中につき答えられないという答弁が繰り返されることは極めて不毛であります。ですから、検察や警察の調査であれば、私どもも理解をいたします。しかし、省内の内部調査を盾にとって事実を答えない、知っていることを答えないというのは隠蔽行為そのものでありますから、委員長、これは国会の権威にもかかわります。省内調査を盾にして答弁回避、答弁拒否はまかりならぬ。

 この二つのルールを改めて理事会で整理をいただけませんか、委員長。

浜田委員長 今までも、理事会で協議をしながらこの問題に対処しているのは事実であります。ただ、その件に関しましてはまだ結論が出ていないというのもあるわけで、取り決めに関して今後議論をするということであれば、理事会で協議をさせていただきます。

小川委員 きょうは時間が来ましたのでひとまず終わりますが、来週、天下りの集中審議をやるということは、委員長、そこに対する委員長なりの本気度を見せていただくことをお願い申し上げて、ひとまず質疑を終えたいと思います。

 ありがとうございました。

浜田委員長 この際、辻元清美君から関連質疑の申し出があります。江田君の持ち時間の範囲内でこれを許します。辻元清美君。

辻元委員 民進党の辻元清美です。

 きょうは、教育と外交について議論をさせていただきたいと思います。

 まず、総理にお聞きをいたします。

 総理は、施政方針演説で教育の重要性、そしてきょうも御答弁で、誰もが希望すれば進学できる社会をつくるのは我々の使命であるとお答えになりました。

 そこで、お伺いしたいんですが、私、ちょっと不思議なことがあるんです。民主党政権時代、私たちは三千億円以上の予算を捻出して高校の授業料の無償化を実現いたしました。これは評価をされるでしょうか。同じような趣旨で実現をいたしましたが、評価していただけますか。

安倍内閣総理大臣 それを評価しているからこそ、現在もその政策を継続しているところでございます。

辻元委員 ところが、当時、自民党は、高校の授業料無償化はばらまきだの大合唱だったんですよ。文科大臣の例えば下村大臣とか、馳大臣も務めていらっしゃいましたけれども、また今の副大臣も含めまして総理も、民主党政権時代には高校授業料無償化はばらまきだとおっしゃっていたんですね。考え方を変えたんですか、いかがですか。

安倍内閣総理大臣 所得制限を設けるべきだというのが我々のばらまき批判の主張の論点でございまして、我々は政権をとって所得制限を導入したというふうに承知をしております。

 しかし、その方向性については御評価をしているということでございます。

辻元委員 ということは、所得制限がない高校等の授業料の無償化はばらまきで、所得制限があればばらまきではない、自民党はそういうように変えたということですね。

 今、憲法改正の議論をめぐりまして、維新の党の皆さんが全ての教育の授業料の無償化ということを訴えております。高校の授業料無償化も、所得制限がない場合はばらまきであれば、維新の党が主張している教育全ての授業料の無償化は大ばらまきとなる、それでよろしいですね、総理。

安倍内閣総理大臣 ばらまき等々の批判については、まさに所得制限ということについて、野党時代、私は余りこういう論戦の場に立ったことがないものでございますからほとんど発言はしていない、このように思いますが、私は、高校の無償化についてはまさに所得制限が入るか入らないかということが大切であろう、こう申し上げたわけでございます。

 と同時に、予算には優先度をつけなければいけません。我々も、所得制限なしで全部できるという、大変財源が豊かであればそれはそうなんだろうと思いますが、さまざまなやらなければいけないことがある中において、幼児教育の無償化、我々は当時は幼児教育の無償化にも力を入れておりましたので、順番としてはそこ、いわば幼児教育であればそこはみんな通っていくところでありますからということも議論の中であったわけであります。

 そして、維新の会が言っていることは、一つの方向性としてはまさに、その中でどういう制約をまた設けるかどうかということは明らかではありませんが、基本的に、教育の無償化ということについては一つの方向性として評価をしているわけでございます。

 ただ、実際に実行する上においては当然財源の手当てもしなければいけませんし、財源の中において、どれぐらい所得制限を果たして設けていくべきかという現実的な議論があるんだろう、このように思います。

辻元委員 私、高校の授業料無償化は実現してよかったと思うんです。やはり、高校の中退者の方もたくさんいらっしゃったんですよ。あのときに、リーマン・ショックの後で、東日本大震災もある中で、財源を捻出するのは本当に大変だったんです。しかし、そんな日本を復興していく、立ち直らせるためにも人が必要だということで、当時、私、国土交通副大臣で、国交省も大分予算を削って実現をいたしました。

 ですから、私、この間から議論を聞いていまして、憲法改正に賛成しそうな維新の皆さんが言うと称賛をして、私たち民主党が言っていたときはばらまきだと。これはちょっと矛盾しているんじゃないかなとずっと思っていたわけです。

 教育の無償化、全ての人が子供のときから、そして大学まで無料で行ける国、ともに目指そうじゃないですか。それは、私たちが高校授業料の無償化を、法律、新法をつくり、そして予算措置をすることで実現いたしました。憲法改正の方便に使うのではなく、やろうと思えば今すぐできるんです。総理から前向きな御答弁をいただきましたので、ともに授業料無償化に努力してまいりたいと思います。

 次に行きます。次は外交で、日ロなんです。

 きょう、実は、モスクワで日ロ外務次官級の協議がなされていると思います。そして、二月には、岸田外務大臣、会談もされる、ドイツのボンでされる予定もあるやにも報道がされております。そんな中で、領土問題をきょうは議論させていただきたいと思います。

 私は、随分前なんですけれども、色丹島に行ったことがあるんです。民間交流でした。ロシアの人たちは本当に温かく迎えてくださいました。ロシアと日本の盆踊り大会をやりまして、本当に人と人との交流というのは大事だと思ったんです。特に冷戦時代は、島民の皆様も四島に戻れない。それと同時に、サハリンには、日本に戻れない、日本人の残留の方もいらっしゃいました。引き揚げ船に乗れなかったんですね。そして、当時、戦争中に植民地にしていた朝鮮半島からサハリンの炭鉱などに労働者として行かれた朝鮮人の方々もいらっしゃったんですね。このサハリンにいる人たちは一時無国籍だったと聞きました。この人たちも含めて、日本への里帰りができないかという人道支援などを民間でやってきた経験もあるんです。

 そして、島民の方々です。ここに暮らす人たちは、国籍とかを超えて、やはり戦争で翻弄された方々だと思うんですね。ですから、私は、今回、総理が元島民の方々が自分の墓参などで帰られるときの条件を改善された点は評価をしております。

 さて、その評価と、もう一つはやはり本丸の領土問題をどう解決していくかが大きな問題になりますので、きょうはその領土問題の方を中心に、事実関係を確認させてほしいと思います。

 私、この中で注目いたしましたのは、2プラス2を、外務、防衛の日ロの協議を開始というようなことも議題に上ったというところなんです。この北方領土の問題は、突き詰めていけば、日米安保条約も含めた安全保障の問題とリンクしていると思うんですね。この2プラス2については、総理、今後検討していこうということでよろしいんでしょうか。

安倍内閣総理大臣 既に2プラス2を我々は安倍政権において日ロの間で行ったのでありますが、中断をしておったわけでございます。

 昨年の十二月の日ロ首脳会談において、アジア太平洋地域の安全保障環境が一層厳しさを増す中で、隣国である日ロ両国が互いの安全保障上の関心事項について率直な意見交換を行い、安全保障分野の対話を進めていくことは重要である旨指摘をしたところであります。

 現時点では、閣僚級の2プラス2の次回会合について具体的なことは決まっていませんが、隣国であるロシアと安全保障分野の対話を進めていく重要性はよく認識をしているわけでございます。何といっても隣国であるわけでございます。

 と同時に、ロシア側も日本の防空識別圏に入ってくることもあるわけでございまして、こちらがスクランブルするという状況のある中において、こうした2プラス2を行っていくということについては意義があるという判断から我々はスタートし、そして今、中断をしているという状況にあるわけでありますが、今後ともこの分野での対話を続けていく考えであります。

辻元委員 これは実際に稲田防衛大臣が臨むことになりますので、領土の問題と日米同盟の関係について、基本的認識をお聞きしたいと思います。

 まず初めに、あさってアメリカの国防長官が来られますが、まず尖閣の問題は安保条約の第五条の適用がされるということを確認するつもりですか。

稲田国務大臣 国防長官との間では、日米同盟の重要な課題について、しっかりと忌憚なく意見交換をしたいと思います。

 そんな中において、尖閣諸島が日米安保条約五条の適用の範囲内であるということについては、米国政府が随時今までも確認をしておりますし、私自身も防衛大臣になりましてからカーター長官から確認をいただいているところでございますので、その点についてはしっかり米国のコミットメントがあるというふうに確信をしておりますし、その点についても確認をしてまいりたいと考えております。

辻元委員 そうしましたら、北方領土との絡みで、北方領土が日本に返還された場合、北方四島、日米安保条約の適用を受けるということになりますが、稲田大臣。

稲田国務大臣 その点についての解釈は、私ではなくて、外務大臣の所管だというふうに思います。

辻元委員 2プラス2も含めて、安保条約の解釈、防衛大臣が解釈は自分の所管じゃないと。それで防衛大臣が務まると思いますか、どうですか。

 そうしましたら、稲田さん一人でアメリカの防衛大臣と議論するときもあるわけですよ。岸田さんに助けてもらえないですよ。防衛大臣が、北方領土が戻ってきたら日米安保条約の適用を受けるかということを答えられないんですか。いかがですか、もう一回。もう一回。稲田さんですよ、これは。ちょっと待って。もういいです、次の質問に行きます。答えられないということ。

 そうすると、稲田さんにお聞きしますが、これはどうですか。稲田大臣はかつて、領土問題にすごく熱心だったんですよ。それで、北方領土は不法占拠されていると言い続けなければならない、ロシアの領有権主張に一片の正義もない、ロシアは我が国同胞を戦車でひき殺したり、婦女陵辱をしたり、そして、武器を置いてから北方領土を略奪したのですよと。ロシアは北方領土を不法占拠しているという認識は変わらないですね。

浜田委員長 稲田防衛大臣。(辻元委員「ちょっと待って、後で聞きますから。総理、それはだめ」と呼ぶ)

 稲田防衛大臣。整理します。

稲田国務大臣 私は、先ほどから、日米安保条約の解釈についての所管は外務大臣であって、私はこの場に防衛大臣でおりますので、その点についての解釈を述べる立場にはないというふうに申し上げております。

 また、北方四島をめぐります領土問題については、我が国は一貫して外交上の経路を通じて平和的に解決すべきであるという立場です。日ロ間では、平和条約問題の解決に向け、引き続き双方の外交当局間において交渉が行われているというふうに承知をいたしております。

 いずれにいたしましても、今の問題についての所管は外務省であると認識をしており、防衛大臣としてこの場で独自の見解を述べる立場にはなく、お答えを差し控えさせていただきます。

辻元委員 こういうふうにもおっしゃっています。不法占拠ということも言えないような政府に我が国の領土は守れませんと。どうですか、防衛大臣。防衛大臣は守る立場でしょう。いかがなんでしょうか。どうですか。

浜田委員長 一旦整理します。外務大臣。(辻元委員「いや、ちょっと待って」と呼ぶ)いや、とりあえず外務大臣の答弁。(辻元委員「防衛大臣、手を挙げています。どうですか」と呼ぶ)一旦言っちゃったから。

 外務大臣、とりあえず答弁願います。

岸田国務大臣 北方領土につきましては、法的根拠のない占拠がなされているというのが政府の立場であります。言葉遣いとして、不法占拠あるいは法的根拠のない占拠、こういった言葉遣いにつきましては、どのような表現を使ったとしても、我が国固有の領土である北方領土が置かれた状況について法的評価は変わらないと考えます。これは政治的な判断であります。

 北方領土については大きな隔たりがあるものの、今、首脳間においても、そして両国のさまざまなレベルにおいて交渉が行われております。こうした状況を踏まえて、法的根拠のない占拠という表現を使っている次第であります。

辻元委員 資料を見ていただきたいと思います。二枚目です。これは、民主党政権のときにメドベージェフ当時の大統領が国後島に上陸したときに自民党が出したものです。

 この六番、民主党政権は北方領土の状態をロシアによる不法占拠と表現しないなど、表立った抗議を避けており、ロシア側への誤ったメッセージであるとか、メドベージェフ首相が上陸したことで、五番、ロシアで開催されるAPECへの野田首相の参加も見合わせろと言ってきたわけです。今まで言っていることと違うんじゃないですか。この間、安倍総理が、政権をとったらそう言われるのはわかりますけれども、さんざん今まで弱腰外交と言ってきたわけですよ。

 それで、安倍総理は努力されていて、私はお気の毒だなと思ったんです。十五回、プーチン大統領と会談をしてきた。一枚目の資料を見てください。そして、いよいよ山口県にプーチン大統領が来られる、おもてなしをしようという直前に、国後と択捉にロシアはミサイルを配備したわけですよ。

 稲田大臣にお聞きします。

 稲田大臣は、メドベージェフ大統領が国後に上陸したときにどういうことをおっしゃっていたか。(発言する者あり)違う、当時は大統領だったんですけれども。そのときに国会では、メドベージェフが二度の国後訪問をしているのに、のこのこと日本の外務大臣がロシアを訪問する、大臣は秋田犬をお土産に、秋田の犬を秋田県が贈られて、のこのことロシアまで行くんですか、犬にあなたがついていって、犬を貢ぎ物にしているふうにというように、さんざん、はっきり言えば罵倒されていたわけです。

 この交渉、十五回交渉して、いよいよ山口というところで国後と択捉にミサイル、これは明らかに現状変更ですよ、三千億円とも言われている官民の経済協力を決めていく。上陸も問題だけれども、ミサイル配備の方が実質的に問題じゃないですか。そして、秋田犬も貴重ですけれども、でも、三千億円の経済協力を決めるということの方が大きいんじゃないですか。

 これは総理に聞きましょう。

 私、総理はお気の毒だと思った。私、腹が立ちましたよ。あんなにウラジミールとか言って頑張っていたのに、土壇場でミサイルを突きつけられて、喉元にやいばを突きつけられた。これは、言葉は悪いけれども、何かちょっと日本はなめられているんとちゃうかと、総理がお気の毒になりましたね。

 現状変更に対して、総理、こんな状況で、これはミサイルを撤去してから今後の交渉、経済交渉なんかも進めていくべきだと思いますが、いかがでしょうか。

安倍内閣総理大臣 まず、大統領自身が、いわば我が国の固有の領土であるという主張に対して、本人がそこに乗り込むというのは相当重大な行為であるのは事実であります。

 そして、ミサイルの配備については、従前からロシア軍は軍を展開しているわけであります。

 先ほど現状変更とおっしゃいましたが、現状変更ということではなくて、この四島は我が国の固有の領土であるということを申し上げているわけでありますから、そもそもその段階で現状を変更されたわけであります。その後の現状変更ということについて我々は言っているわけではないんですよ。そもそも、この四島について、先ほど申し上げました法的根拠のない占拠が行われているという主張でございます。

 そして、軍の配備については、辻元委員、今までも随時さまざまな配備が行われてきているのは事実でございます。

 いずれにせよ、この問題については……(発言する者あり)ちょっと皆さん、静かに。今大切なところなんですから、静かにしてください。北方四島でのロシア軍による軍備強化については、我が国の立場と相入れず、遺憾である旨をロシア側に明確に申し入れているわけであります。

 しかし、だからといって、平和条約締結に向けての交渉の歩みをとめるわけにはいかないのは当然のことじゃありませんか。そのために、今、十五回会談を重ねてきてこうなったということを嫌みたっぷりにおっしゃったわけでありますが、そういう努力を積み重ねていかなければ決して結果は出ないんですよ。批判を恐れるのであれば、努力をしなければいいだけであります。しかし、批判されるというリスクも冒して進まなければ、七十年間一歩も進んでこなかった問題なんか解決するわけがないじゃないですか。七十年間一歩も進んでこなかったわけでありますから。

 そこで、先ほどの経済援助、いわばODAではもちろんないわけですよ。これは経済協力でありまして、多くは例えば民間の融資等もあるわけでございまして、経済界がプロジェクトをやるためには利益が出るウイン・ウインの関係にならなければこれはできないわけでございまして、G8に入っていた国にODAをやるということはそもそもあり得ない話でございまして、確かにJBICも入っておりますが、これは低利ではありますが、ちゃんと利子も取っていって返していただくわけであります。もちろん、有償でやるのは当たり前のことでございます。民間銀行も入っているということは今申し上げたところでございます。

 こうしたことをやってお互いに理解を進めていかなければ、四島には既に一万七千人のロシア人が住んでいるわけですから、この人たちも含めてロシア側が、この問題を解決するということについて、平和条約を結ぶということについて理解が進まなければ、この問題は解決をしないんですよ。だから、今まで解決してこなかったんですよね。

 だからこそ、私たちは、新しいアプローチとして、お互いがこの理解を進めていく、その中においてしっかりと経済におけるお互いの協力も進めていこうということであります。

辻元委員 そうしましたら、その成果物について質問したいんですけれども、今回は岸田大臣にお伺いします。

 成果物として、プレス向け声明というのが出されました。今までさまざまな共同声明なども出されていますけれども、これは首脳両者のサインがない。そして、これは、政府のホームページを見ても、政府当局間の合意文書になっておりません。さらに、プレス向け声明、誰と誰が行ったものなのか。外交文書のレベルを見ても、今までの共同宣言や共同声明よりもはるかに弱いものになっております。

 どうして、両者がサインをした、今までのような宣言や声明が出せなかったんでしょうか。

岸田国務大臣 合意の成果につきましては、両国の間の協議の結果でありますが、要は、重要なのは成果文書だけではなくして、この会議全体の成果であると認識をしています。

 ですから、今資料をいただきましたこの五つの文書につきましては、二〇一三年四月の段階で、上からありますこの五つの文書、こうした全ての文書につきましては、これに基づいて交渉を進めることを既に安倍総理とプーチン大統領の間で確認しています。その上で、今回協議を行いました。そして、先ほど申し上げましたように、その上での今回の会議の成果、この中身が重要だということを申し上げています。

 この成果をどのように公にするか、これは両国の間の協議の結果でありますが、こうした今までの成果文書は全て踏まえた上で協議を行うということが既に確認された上で今回会議を行った、そしてこの会議において大きな成果を上げることができた、この中身が重要だということを申し上げたいと思います。

辻元委員 これは、日本向けと……(安倍内閣総理大臣「いや、ちょっと」と呼ぶ)ちょっと待ってください。これは、日本向けとロシア向けで文章が違うことがあるんじゃないですか。

 私は、今ここに、ロシアのクレムリンの大統領府が同じときの声明をロシア語にしたものを持っております。ここで、日本向けのところには、四つの島、対象となる一番大事な肝です、択捉島、国後島、色丹島、歯舞諸島と入っております。しかし、ロシア側が発表した声明にはこの四島の名前が一切入っておりません。これがここで合意できなかったから。

 この歴代の声明や宣言ははっきりと、両者が確認するために、四つの島の名前を入れたんです。しかし、今回は日本向けとロシア向けと二種類あったわけですよ。ここの表記が一切なされていないのがロシア側の声明です。

 そういうことでよろしいですか、外務大臣。外務大臣に聞いております。

安倍内閣総理大臣 外務大臣から答弁させますが、先ほど委員が示された、鳩山一郎・ブルガーニン、そして海部俊樹・ゴルバチョフ、細川さんとエリツィン、小渕さんとエリツィン、そして森さんとプーチン、こうあって、これは声明が出されているじゃないか、今回はプレス声明ではないかという表記でありますが、重大なものが抜けていまして、二〇一三年に共同声明を出しているんですよ、私とプーチン大統領の間でモスクワにおいて。それが抜けていますよね。これは意図的に抜かしたのかな。

 そこがポイントなんですね。書いていないじゃないですか、ここに。何で書いていないのかな。

 二〇一三年の四月に共同声明を書いていますよ。そこに、先ほど岸田さんが答弁されたように、採択された全ての諸文書及び諸合意に基づいて交渉を進めることを確認しているわけでありますから。つまり、これを全てもう一度確認したんですよ。

 今、今回確認したという後藤委員からの不規則発言が例によってありましたが、これは毎回毎回ではなくて、まさに私とプーチン大統領との間ではこれを基礎にしようということをもう決めたんですよ。決めたの。その中にこれはもう書いてあるわけでありますから、それを基礎にするということの上に、そしていわば私とプーチン大統領との間において取り決めたことについて、これを今回はプレス声明として発出させていただいた次第でございまして、今の御指摘については大臣から答弁させます。

岸田国務大臣 プレス声明として発出した理由については、両国の協議の結果だと先ほども申し上げました。

 そして、去年の十二月の首脳会談後の官房副長官ブリーフで既に明らかにしておりますが、北方四島の呼称が一致しないため、共同声明等の名称を使わず、事前に両国間で十分に調整した内容をそれぞれがプレス声明として発表したものであると。これは既に明らかにしているところであります。

 そして、この記者発表において、今回の発表は平和条約問題に関する我が国の立場を害するものではない旨、これは既に確認をしています。北方四島についてロシア側が自身の発表において異なる呼称を用いたとしても、我が国の立場を害するものではないと考えています。

辻元委員 今、安倍総理がおっしゃった、その前に結ばれたものが署名があるかどうか、ちょっと確認したいので、後でちょっと提出をしていただきたいと思います。あるかどうかですね。

 それで、今、呼称の問題は余り大きな問題ではないというような外務大臣の御発言だったと思います。この前ロシアで合意されたものにも、この四島の名前は抜け落ちているんですよ。安倍総理になってから四島の名前が入っていないんです。

 これはどういうことかといいますと、今まで歴代の、私は領土問題のことを申し上げております、歴代の先輩方が何を努力してきたか、ロシアの呼称を使わせないということですよ。

 これは、今ここに北方四島秘録という外務省の元官僚が書いた本もありますけれども、ゴルバチョフさんのときに、何とかこの四島の名前を両方の文書に明記させる、これが課題だったんです。南クリル諸島というロシアが使っている呼称、名前は、サンフランシスコ講和条約のときにいろいろな解釈があるんです。ですから、一つ一つの日本の名前を明記させるために、歴代の人たち、例えばゴルバチョフ大統領来日の折は領土交渉を簡単にできなかった、当初三回が、さらに三回、そして最後まで、特に国後、択捉、この二島の名前を個別に入れさせると。第一に、何といっても、歴史上初めて国後、択捉の名前を文書に明示できた、これが最大の後世に残した成果だと思うと言っているんですよ。

 外務大臣、先ほどの、ロシア側はロシア側の呼称を使いましたということを一回認めると、例えば韓国と交渉するときに、お互い、こちらは竹島と言っております、韓国側は独島と言っております。韓国側が独島と書いた文書を日本も外務大臣として認められるということ、そういうことにつながるんじゃないですか。

岸田国務大臣 まさにロシア側の呼称を我が国が認めないからこそ、今回、プレス声明という形になったと理解をしています。

 これは、我が国がこの呼称を認めるということではないと考えております。

辻元委員 先ほどの二〇一三年のも私は見ておりますけれども、四島の名前は安倍総理になってから消えているんですよ。今回も、結局これが領土問題の核心ですよ、日本としてはここをしっかりと明記する、そこが決裂しちゃったわけじゃないですか。だから、結局、合意文書ができなかったわけですよ。

 もしも外務大臣が、今までの先輩方がこの四つの名前を入れた共同の文書をつくるということにこだわったかというところ、実際に、これは今後のバトンリレーなんですよ。安倍政権もいつまで続くかわからない。どの政権もそうです。ですから、文書というのはきちんと両者が合意をして、何が焦点かということ、核心の部分は両者一致した文言で書くということなんですよ。ロシア側は別に書いてもらってもいいですよというようなことは、私は、外務大臣としてそういう理解をされているとすれば、外交交渉の基本を踏み外しているんじゃないかというように思いますよ。

 実際に、総理もロシアに行かれるといいます。もう一度やはり両者がしっかりとサインをする。これだけ大型の経済協力もこれからやっていこうということじゃないですか。共同の経済活動をどこでやるか、四島でやろうとしているわけじゃないですか。その基礎になる合意ですよ。

 私は、この共同の経済活動も、相手がミサイルを配備している、これは日本も射程に入りますから、今までと大きく局面が変わったわけですよ、その中でどうやって主権を守って共同の経済活動ができるのかと。非常に難しいと思いますよ。

 ですから、総理、私の質問に対してすぐ反発されるんだけれども、もう一度……(安倍内閣総理大臣「反論ね」と呼ぶ)いや、私の質問に反発しているようでは、プーチンさんやトランプさんに対抗できませんよ、総理。

 総理、早期にロシアに行きたいとおっしゃっていたので、私、これは提案なんですよ。これだけの大型の、リスクも伴いますよ、北方四島での経済活動、いろいろな企業も巻き込んでやるわけですよ。ですから、ここはきちんと、今回、両者がサインできる、そして四島の名前がきちんと明記された共同声明や共同宣言を、ロシアに行ってきちんともう一度交渉されたらどうですか。これが日本の主権をきちっと守って行動するということじゃないですか。いかがですか。

安倍内閣総理大臣 まず、私も、長門で首脳会談を行う上において、改めて、かつての五六年宣言のときの交渉以来の記録をずっと全て読んできました。

 確かに、そうしたそれぞれの共同声明をつくる際の努力というのが当然あったからこそ私の交渉があるわけでございますが、大切なことは、辻元さん、四島の帰属の問題を解決して、そして平和条約を締結することなんですよ。それまでの間は、これはいろいろあるんです、外交ですからいろいろあるんですよ。これが成果といって一瞬それを誇ったところで、結果が出なければいけない。

 私は、バトンを渡そうとは考えていない。私は、私の手で平和条約を締結しよう、こう考えているんです。プーチン大統領との間に平和条約を締結していきたい。そうでなければ、今まではともすれば歴史的な経緯、国際法的な立場についての議論に終始をしていた、こういう議論を続けていても、確かに大切ではありますが、これで領土が返ってくるんですか、返るはずがないじゃないですか。ここで我々がたとえ相手を論破したところで、わかりました、お返ししますというふうにはならないんですよ。そこに難しさがあるんですよ。

 我々は残念ながら七十年間です、七十年間たって、ここには日本人は残念ながら今住んでいないんですよ。向こうは三代目になってしまったという中において、どうやってそれを取り返すかという大きな絵を描いていくことが大切であって、今までの延長線上では返ってこないですよ、辻元さん。それをはっきりと私は申し上げることができると思う。だから、今度は新しいアプローチをとった。さまざまな批判があるのは私は覚悟していますよ。でも、それをやらなければ、もう八十歳を超えた島民の皆さんが自分たちの生まれ故郷に帰ることはできない、こう思っているんです。

 その上において、我々の経済協力についていろいろと御批判をされていますが、まずは四島において日本とロシア人が一緒に仕事をする、そういう経験を島民の皆さんにしていただかない限り、島民の皆さんが日本に帰属が移るということを了解するはずがないじゃないですか。ですから、我々はそこから始めなければならない、こう決意を、大きな決意をしたわけでありまして、これをただ批判だけされるというのは大変残念でございます。

辻元委員 今、島民の皆様に御理解をいただいたら日本に返してもいいかなというような機運が生まれるとおっしゃったんですが、それはずっと総理は記者会見のときもおっしゃっています。プーチン大統領とすごく温度差がありました。島民が了解したら返るんじゃないんですよ、モスクワが決めるんですよ。プーチン大統領が言っているのは、日本の友人たちが、この問題、これは日米同盟に関する話ですよ、日米同盟に関するロシア側の懸念を考慮するように望むと。森総理のイルクーツクのときも、森総理はその後おっしゃっていましたよ、最初に申し上げたことですよ。北方領土が返ってきたときに日米安保条約を日本は適用するのかどうか、ここが焦点なんですよ。機運をつくって、だから、あえてプーチン大統領は雰囲気、雰囲気と言っていましたよ、雰囲気をつくって返ってくるような話ではないんです。

 それで、十一月に谷内局長がモスクワで交渉したときに、ロシア側はこの話を出したんじゃないですか。そして、日本としては日米安保条約の適用外ということは言えないと。日米安保条約、米軍基地を置くことも排除できないということで、そこで一旦決裂したんじゃないですか。

 実際に、この日米安保条約とロシアの北方領土の問題をリンクさせた、ある意味の根回しなり道筋がない限りなかなか難しい、ここが核心だと思いますよ。だから、そこの核心を、まだなかなか解答が見つかっていないときに、最大限の経済支援のカードを切っちゃったわけですよ。次、そこを解決するときにどんなカードを出すんですか。ですから、普通は、日米安保条約と北方領土の問題をどうするかというあらあらの見通しが立って、経済協力のカードを切って交渉していくのが私は外交だと思いますよ。

 幾ら私の代でやりたいと、それは総理の意気込みはわかるんですけれども、私は、ミサイルの配備、これが物語っていると思いますよ。向こうは、のみませんよと、安保条約との関係も了解していませんよというサインじゃないですか。

 この日ロの交渉、総理も十五回もやった、国民の期待値も高まった、引くに引けなくなって、日本が持っている最大のカードを切ってしまった。では、今後、どのようにそのパズルを解決していくのか、そのときにどのカードを切るのか。私は、後退したし、これでこのまま経済交流をしていけば解決するような簡単な問題ではないと思うんです。ですから、先ほどから申し上げているわけです。

 それで、トランプさんとの関係です。ロシアとトランプさんの……(安倍内閣総理大臣「いや、今のところはちょっと」と呼ぶ)いや、総理がそんなに簡単な問題じゃないと言うことに共感しているわけですよ。でも、そこの見通しが立たないのにカードを切ったということは、そして、民主党時代に、大統領が上陸したことで、主権の問題だ、交渉するな、さらにはAPECにも行くなと言っていたのはまさしく皆さんなんですよ。

 ですから、先ほどから四島の名前が明記されていないことを象徴的に挙げましたけれども、では、これからロシア側はロシア側の呼称を使って、この呼称には解釈があるんですよ、ロシアの行政区であれば、南クリルは択捉が入っていませんよ、その呼称を使ってこれからやればいいんですか、それぞれが発表して。そういうことになります。ですから、私は非常に懸念をしているわけです。

    〔委員長退席、西村(康)委員長代理着席〕

西村(康)委員長代理 答弁は。

辻元委員 あるんですか。でも、日米安保条約との絡みでしょう、結局。そこが問題なんじゃないですか。そこが解決しないままにカードを切っちゃったということじゃないですか。

岸田国務大臣 済みません、一つだけ確認させていただきますが、昨年十一月、谷内国家安全保障局長とパトルシェフ安全保障会議書記が意見交換を行った、これは事実であります。そして、幅広い安全保障の関心事につきまして意見交換を行いましたが、その中にあって、少なくとも御指摘のようなやりとりが行われたという事実は一切ないということ、これだけは申し上げておきたいと思います。

安倍内閣総理大臣 それと、最大のカード、最大のカードとおっしゃるんですが、まず、二つに分けて考えていただきたいと思うんですが、極東に対する八項目の経済協力があります。それとは別に四島での経済活動がありますから、これを分けて考えていただいた方がいいんだろうと思います。

 八項目については、これはまさにウイン・ウインの関係になるものを行っていこう。いわば、ロシアにはエネルギーはあるけれども、それを開発していく技術に欠けるところがあるから、日本は技術をもってお互いにその開発をしていこうということも含めてさまざまな協力を行う。先ほども申し上げましたように、これはODAではありませんから、民間の銀行のファイナンス、そしてそれが利益にならなければ彼らもやらないということになるわけでございます。

 そして、四島においては、意味があるのは、お互いの立場を害さないということなんですよ、ビザ等も含めて。今まではそれができませんでしたよね。ロシアのビザをとらなければ入れなかった、だからできなかったんですよ。今度は特別な制度をつくる、これは進歩じゃないんですか。四島で今まで活動できましたか、できないんですよ。完全にソ連の制度のもとでしか活動できなかった。そこから始めなければ、いきなり四島が返るということはないんですよ。

 先ほど、雰囲気だけでは返ってこないと。当たり前ですよ、雰囲気だけでは返ってこない。しかし、その雰囲気がなければ、私が申し上げたのは、四島に住んでいる一万七千人のロシア人を、おまえら出ていけと言うことはなかなかできないですよ。それを前提にしたら、そもそも平和条約交渉はできない。これは断言してもいい。

 だから、四島に住んでいる住民の人たちも自分たちの帰属がかわることを理解しなければ、それはそう簡単にはいきませんよ。最後に決断するのはプーチン大統領であって、モスクワが決断するのは厳然たる事実ですよ。しかし、その決断を行える状況をつくっていくということが極めて重要だろうと思います。

 私は実際、プーチン大統領と長々と、さまざまな問題について話をしました。当然、温度差はありますよ、向こうが今持っているんですから、七十年間持ち続けてきたんですから。日本は返せと言ってなかなか実現できなかったという違いがあるんですよ。厳然たる事実として向こうが持っている。そこで、いわばまさに我々はこれに対して四島の帰属問題を解決して平和条約を結ぶという主張をずっと続けてきて、それにたどり着く一環として特別な制度のもとでの四島の経済活動をやるということについては一致しているわけでありますし、同時に、平和条約が一番大切だということをプレスに向かって、日本国民に向かってはっきりと宣言したのも事実であります。

 こういう点をちゃんと見ていただきたいと思いますし、経済協力だけを優先して平和条約を後回しにすることはないということもはっきり言っているんですよ。ロシアの大統領がそういうことを言ったのは初めてでありますから、そういうところもちゃんと評価をしていただきたい。

 そもそも、最初から相手と根本的に疑り合っていては交渉というのは成り立たないんですよ。そういう中において我々は信頼関係をつくり、交渉を、今までは一歩ずつではありますが、しっかりと進めていきたい、こう思っています。

辻元委員 信じることは大事だと思いますが、私は、先ほど申し上げましたように、十五回も会って、土壇場でミサイルの配備をするかということなんですよ。この意味を、総理、総理は私より人がいいのかしら、よくお考えになった方がいい、ここまでやられて。

 ファクトを申し上げましょう。安倍総理は十五回、プーチン大統領と会談をした。二、土壇場で地対艦ミサイルを国後島と択捉島に配備された。三、ロシア側には四島の名前を明記していない別の声明がある。五、四島の名前を明記した両首脳が署名した文書の合意は結べなかった。六、一方、経済関係などの覚書十二本を結んだ。この半分ぐらいは非公開になっております。

 私は、先ほど申し上げましたように、四島の皆さんとの交流もしてまいりました。そこに住む人たちの気持ちや暮らし、これは非常に翻弄されて、何とかしなきゃいけないと思ってやってまいりました。しかし、今回の交渉は、最後はやはり相手に土壇場で入れ込まれたと思うんですね。

 ですから、総理、参議院の幹事長が、裸の王様になってはならない、苦言をちゃんと聞いた方がいいということを言われました。私、ここまで来てミサイルを配備されているのに、今みたいにどんどん進めればというのはちょっと甘いと思うんですよ。これは私の苦言です。

 私、総理は過信外交になっていると思います。私がやれば何とかなる、個人的な信頼をつくれば何とかなる。トランプ大統領のときも、結局、お会いになった三日後にTPPをひっくり返されたんですよ。

 今回、しっかり発言してほしいと思うのは、トランプ大統領が七カ国の国民の入国を拒否している件について各国の首脳が発言しているのは、自国にテロが及ぶのを恐れているんですよ。いろいろな国、例えばイランの外務省は、過激派とその支持者らに対するすばらしい贈り物になった、結局、トランプ大統領の措置はテロを誘発すると。アメリカはふえる可能性がありますよ。そこに意見を言わないということは、同調していると見られる。

 私は、今度、二月十日にお会いになりますけれども、二月十日に会ったときに、トランプ大統領のテロとの闘いを同盟国として最大限支持しますとか、余りおっしゃらない方がいいと思いますよ。

 私、思い出すんですよ、二年前、ISに人質が殺されたとき、総理はエジプトで演説をされました。演説が引き金になった、そんな指摘もありました。私は演説の内容は悪かったと思いません。しかし、タイミングがあるんですよ。

 各国首脳は、国民の命を守るためにしっかりとした、トランプ大統領の措置に対する異議または批判をしております。総理もしっかりと国民の命を守ろうと思われるのなら、日本にテロを誘発したくないと思われるのなら、コメントを出した方がいいと思いますよ。

 オリンピックは多様性だとおっしゃっているじゃないですか。一言、日本は多様性と共生を、そして私は寛容と和解を大事にしている、トランプさんもそうですよねとおっしゃったらどうですか。提案ですよ。今おっしゃってください、いつも言っていることじゃないですか。

 最後に、総理、多様性と共生、オリンピックでおっしゃっていますね。寛容と和解が大事といつも言っている。日本はそういう国ですと一言言えばいいんですよ。どうですか。

    〔西村(康)委員長代理退席、委員長着席〕

安倍内閣総理大臣 まず、先ほどの、北方四島について我々は決して後退していないのは事実でありまして、まるで後退しているかのごとく決めつけるのはやめていただきたいと思うわけであります。私は確かに辻元さんより人はいいかもしれませんが、しかし交渉力はしっかりとあるんだろう、このように思っている次第でございます。

 その上において、北方四島の問題については、繰り返しになりますが、四島の皆さんのまさに理解を進めるということにおいて、辻元さんはロシアのビザをとって行かれたかもしれませんが、そういういわば相手の主権が及んでいるかのごとくの立場を認めてはならない、このように思いますが、しかし、大切なことは、いわばお互いの立場を害さない形の制度をつくるということにポイントがあって、今まではこれはできていなかったんですから、これができるということは、しかもそれが平和条約締結に向けての一環として行われるということについてまず申し上げておきたい、このように思います。

 そして、まさに日本の国というのは多様性も認めておりますし、寛容と和解の力については、昨年の末の……(辻元委員「共生。ちゃんとしっかり」と呼ぶ)ちょっと済みません、私が今しゃべっているんですから、質問者もやじを飛ばさないというのはお互いの了解だと思いますので。

 そこで、真珠湾においてオバマ大統領とともに演説を行った際、日本の考え方としていわば寛容そして和解の力こそが重要であるということは今こそ発信しなければならない、こう申し上げたわけでありまして、その立場は今も変わらないということでございます。

辻元委員 トランプ大統領は取引外交と言われ、プーチン大統領は強権外交だと思います。私は、人のいい安倍総理が手玉にとられないか心配をしております。

 終わります。

浜田委員長 この際、今井雅人君から関連質疑の申し出があります。江田君の持ち時間の範囲内でこれを許します。今井雅人君。

今井委員 民進党の今井雅人でございます。

 先ほど大串委員がトランプ氏の為替の話をしておられましたので、ちょうどきょう、日銀総裁もいらしていただいておりますので、少しこの話を私もさせていただきたいと思います。

 ちょっと過去の話になりますけれども、私がアメリカ勤務を終えて日本に戻ってきたのは一九九三年。東京で円のチーフディーラーを拝命してやっておりましたけれども、ちょうどそのときはクリントン政権ができた年です。

 日米包括経済協議が始まって、この年のときは一ドル百二十五円でした。それが、当時、フレッド・バーグステンという教授がブレーンでおられまして、日米の貿易不均衡は為替レートで是正できる、こういう考えで、クリントン政権はこの考えを支持しておりましたので、為替圧力をかけてきて、わずか二年ほどで一ドル七十九円までいきました。これが日本にとって大変大きな問題になって、私も本当に日々大変な思いをしたんですけれども、今回のトランプさんの発言、まさに僕はそういうことになりかねないかということをとても心配しています。

 先ほど話がありましたが、整理したいと思うんですね。彼は、他国はマネーサプライ、通貨の切り下げを利用し、我々を出し抜いている、日本がこの数年でやってきたことを見てみろ、彼らは金融市場を利用している、こう言っています。

 日本は実は二〇一一年から為替介入はしていませんので、ここ数年ということは、日本がやっていることは大胆な金融緩和だけです。大胆な金融緩和を金融市場でやっているから円安になっているんだということを言っているんです、これは。まさに安倍政権のアベノミクスの柱を批判しているんですね。安倍さんはこの間のサミットで日本のアベノミクスを世界に広げていきたいとおっしゃいましたけれども、真っ向から否定されているんですね。

 先ほど、金融緩和は、円安誘導になるものじゃなく、デフレを脱却するとおっしゃっていましたが、そのロジックはロジックとしてあっても、これは反論できます。

 なぜかといいますと、例えば、昨年の税収が落ちたというところで補正予算で議論がありましたが、これは円高による減収だというふうに説明をされています。あるいは、これから議論しますけれども、昨年の消費者物価指数、これがマイナスになっています。これの原因も円高だというふうに、円高が一つの要因だと言われています。

 これは、裏を返せば何かというと、物価を高くするためには円安が必要だということなんですね。円高になってしまったから物価が落ちているということは、物価を上げるためには円安にしなきゃいけないということなんです。そういうことですね。

 となると、安倍政権で税収が十四兆でしたか、ふえましたというのも、これも円安によるものであり、そして物価がある程度堅調であったのも円安によるものであったということであれば、大胆な金融緩和をして円安になったから物価も上がるし、税収も上がっている、こういうことに論理的にはなります。

 ですから、トランプさんは恐らくここをついてくると思うんですよ。結局円安になったから日本は回復したんでしょう、円安誘導になっているじゃないですかと、私ならそう言いますね。そういうふうに言われたときに、総理、どうお答えになりますか。

安倍内閣総理大臣 リーマン・ショック以降、米国もQEを行いましたね。まさにこれは、我々がやった政策と同じ政策を彼らはやり、経済を引き上げ、リーマン・ショックを乗り越えたわけであります。我々はやらなかったわけですね。その結果、我々はリーマン・ショック以前に戻ることはなかったんですね。株価も、為替水準もそうかもしれない。

 ですから、我々は、これは米国もやった、そしてまた、事実上欧州銀行もやっている。いわば米国もやっている、欧州銀行もやっている中において、政権を奪還する際、我が国もこのような大胆な金融政策、金融緩和をやるべきではないかと私は発言をしていたわけでありまして、そして、黒田総裁が総裁に就任して、その前の白川総裁と結んだ物価安定目標の二%に向かっていく上においてあらゆる手段をとるというふうにおっしゃって、政策を進めてきております。

 トランプ大統領にも、我々は、まさに経済を上昇させていく上においては必要な政策であり、米国もやっていることを我々もやっている、それで日本の経済がよくなっていくことは米国にとって実はマイナスでは決してないんですよということを、それはもう委員もよく御承知のとおりだろうと思いますが、淡々と御説明もしていきたい。

 ですから、大統領はいろいろな発言をされます、しかし、その基本的な政策がどうなっているのかというのは、まだチームとしてできていませんから、米国のチームとして確固たるものができているかということはまだわかりませんから、我々ももう少し見きわめつつ、しかし、首脳会談の際にはしっかり、もし反論すべき点があれば反論していきたい、このように思っております。

今井委員 ぜひそういう強い態度で話をしていただいて、十日が終わりましたら、どういう議論だったかを、この後、国会で説明をしていただきたいと思います。

 同じことを、今、日銀も要はやり玉に上げられているわけでありますので、日銀総裁にも御見解をお伺いしたいと思います。

 当然アメリカの当局ともいろいろ連携をされていると思いますので、まず、トランプ氏の考え方についての御見解と、それから、今後アメリカの金融当局とどういう協力をしていかれるか、これについてお伺いしたいと思います。

黒田参考人 御案内のとおり、毎回のG20の財務大臣・中央銀行総裁会議で金融政策についても当然議論になっておりまして、そこで、各国の中央銀行が国内政策目的、具体的には物価安定のために金融緩和を進めるということについては、G20の各国とも全て了解しているということであります。

 また、BISの総裁会議等で、当然、米国の中央銀行の方あるいはヨーロッパ、新興国の方ともいろいろ話し合いますけれども、そうした中で、各国の中央銀行が、先ほど総理からも御答弁がありましたように、米国、欧州そして日本その他、実は新興国も含めて多くの中央銀行がリーマン・ショック後、非常に大幅な金融緩和を進めてきておりますけれども、そういったことについての意見交換も常にしておりますし、委員御指摘のような点も含めて、今後とも十分意見交換をさまざまな場で進めてまいりたいというふうに思っております。

今井委員 それで、総理、先ほど大串委員のところで、仮の質問には答えられないということでお答えいただけませんでしたけれども、一般論でちょっとお伺いしますが、一般論として、通商協定に為替条項を入れるというのは、私はあり得ないし、なじまないというふうに思っていますが、総理はどうお考えですか。

麻生国務大臣 今井先生御存じのように、今までのアメリカの財務長官とのTPPに関連してのこの種の話は何回もあっていまして、もう御存じのとおりですから。この種の話はよく出てくる話なので、我々としては、答えもいつもと同じで、ずっと同じことをやって、我々はそのとおりやってきたと思っております。

安倍内閣総理大臣 先ほども答弁させていただいたけれども、G7やG20等において取り決めをしていく、ここで議論していくということになっているわけでございまして、バイの貿易交渉あるいは協定を結ぶ上において、この問題は、そもそも米国から、まだバイでやるということすら全く決まっていませんので、向こう側からそもそもそういう提案も要求もございませんので、今答弁する場にはない、このように思っております。

今井委員 いや、そんな弱気じゃ困るんですよ。

 今、麻生大臣は、この手の話はいろいろなところであって、交渉をいつもしているとおっしゃったじゃないですか。ということは、通商協定の交渉の中で、こういうのを入れてくれということをやっているとおっしゃっているわけですよ。

 だから、総理、僕は一般論と申し上げていますから、仮定の話なんて申し上げていませんよ。一般論として、通商協定に為替の条項を入れるのがなじむかなじまないか、私は入れるべきじゃないという考えなので、総理の意見をお伺いしたいということです。

安倍内閣総理大臣 一般論とは今おっしゃいましたけれども、その前の議論から十分に日米かなという推測をされる中においてお答えすることは差し控えさせていただきたいと思いますが、麻生副総理から答弁させていただいたのは、例えばTPP等の交渉においても我々はそれを入れていないわけでありますから、それが我々の姿勢であるということは御理解をいただきたいと思います。

今井委員 いやいや、そういうところをごまかされるから、本当に大丈夫かなと思っちゃうんですよ。だって、一般論で申し上げているんじゃないですか。私は、自分の意見を申し上げていますよ。通商協定には為替条項はなじまないと思う。

 だから、もう一度お答えください、そういうのを入れるべきか、入れるべきじゃないか。入れることもあり得るんでしょうか、そうしたら。どうなんでしょうか。

麻生国務大臣 これまでも、この種の交渉でアメリカが他国とどうやっているかは知りませんけれども、私がこの四年間、財務長官との間で、為替が、我々は円の独歩安とかわんわん言われてきましたよ、最初のころ。そのときに、為替条項というのは何回も、TPPの話よりも前から聞きました。一回もその種の話に応じたことはありません。今後ともこの方式はなじまないものだと思っております。

今井委員 今、ここで答弁することは国益に反するという何か不規則発言がありましたけれども、こういうのを入れないということが国益なんですから。(発言する者あり)そうですよ。では、入れるということもあり得るんですか。それは私は……

浜田委員長 静粛に。

今井委員 TPPのときでも、国益を守るということは、特に為替というのは、先ほどお話ししたとおり、とてもセンシティブなんです、日本の経済には。だからやはりそういうところは守ってほしいということを申し上げているのであって、総理、もう一回お願いします。そうじゃないと、先ほどの前提の私の話、信用できないですよ、本当にちゃんとそういう交渉をしてこられるのかなという。その強い決意でもう一度答弁していただきたい。

安倍内閣総理大臣 信用されないというのは大変残念で、今井さんに信用していただけないのは大変寂しい思いでありますが、これは、米国との、今までのオバマ政権との間においても再三議論になったわけでございますが、しかし、為替の問題は非常に微妙でもございます。その中において、米国の世論との関係もあるわけでございまして、今ここであえて米国の世論を喚起するべきではないだろう。

 しかし、我々は今までと同じ姿勢で交渉していくということについてははっきりと申し上げて、これは一般論として、基本的に我々は二国間で結んだことはないわけでありますから、そういう姿勢であるということでどうか御理解をいただき、この私の考え方をそんたくいただき、信用していただきたいと思います。

今井委員 これ以上は水かけ論になりますから、もうこれ以上申し上げませんけれども、しっかりと、二月十日が終わってから、そういうことも含めてお話をしていただきたいと思いますので、よろしくお願いしたいと思います。

 もう一個、私は、前回、TPP特委の理事をやらせていただいていて、アメリカは大統領候補が二人とも反対なので、何も日本は焦る必要はないんじゃないですかということをずっと申し上げてきました。

 それで、総理は、自由貿易に対する日本の意思を示すことは大事だったんだとおっしゃいまして、アメリカだって署名をしているというふうにおっしゃっておられましたけれども、これも皆さん御存じだと思いますが、大統領令を受けてUSTRから、事務局を取りまとめているニュージーランドに渡されたレターです。ここには何が書いてあるかというと、我々はTPPに参加する意図はありません、そして、その署名、二〇一六年二月四日に署名したものは、ノー・リーガル・オブリゲーションですから、全く履行する法的な義務はないと言っているんですよ。

 だから、アメリカも署名されていると先ほどから強弁しておられますけれども、我々はそれを履行する義務はないと最初から言われちゃっているわけですよ。

 二月十日に行く前にこんなレターを出されて、それでもTPPのことを説得しに行くとおっしゃるんですけれども、いやいや、TPPの考えについて、できるだけ入ってもらうように交渉するとおっしゃっているじゃないですか。こんなレターをいただいて、それができますか。ちょっとこれは、そういう答弁をされても何か空虚なんですけれども。

 このレターをいただいたことに対してはどう思われますか。

安倍内閣総理大臣 私ももう既に答弁をさせていただいておりますが、そう簡単にすぐに米国がやはりTPPに入るということにはならない、これはそういう認識を示していただいているとおりでございますが、しかし、TPPの意義については訴え続けていきたい、こう思うわけであります。世界においてグローバルな経済が進んでいく中において、バイではなくてマルチで結ぶ意義についてやはりよく話をしていく必要があるんだろうと思います。

 米側の交渉チームは、貿易チームはまだ全部できていないわけでありますが、その皆さんが十分にTPPの内容を全部知悉しておられるかどうかというのは私も承知をしておりませんが、そういう意味においてもしっかりと示していきたい、こう思っています。

 ただ、私が十日に、入ってください、わかりましたということにはもちろんなりませんよ、それは。それはそう簡単に、例えば一年の間に入るということはもちろんないと思いますよ。しかし、世界が進んでいくべき道の一つが、TPPのような大きな経済圏をつくって、そして自由でフェアな経済圏をつくっていくということの意義については訴え続けていく必要があるんだろう、このように思っております。

今井委員 これも、二月十日が終わってから、どういう交渉をされたかということで、またお伺いをしていきたいと思います。

 それでは次に、先週、中長期の財政収支についての大きな発表がありました。簡単に言うと、税収が落ち込んでしまって、プライマリーバランス、財政再建化がもうほぼできないんじゃないかという結果が出ています。このことについてお伺いしたいと思います。

 総理にまずお伺いしたいんですが、毎年、通常国会の最初に施政方針演説をされておられますけれども、実は、平成二十五年から昨年の二十八年までは、施政方針演説の中に、二〇二〇年度のプライマリーバランスの黒字を達成しますというふうに必ずおっしゃっていました。しかし、ことしの施政方針演説はこれが抜けています。何と言っているかというと、引き続き、経済再生と財政再建、社会保障改革の二つを実現しながらと、目標値をここで削除しました。

 この結果を閣議で示されたのは二十一日ですから、総理は、この施政方針演説をしたときにはこのことは御存じだったと思うんですね。これはもう達成できないので、今回は外したというふうにしか思えません。

 総理、なぜ、これまでの施政方針演説では必ずこのことをおっしゃっていたのに、ことしは省いたんですか。

安倍内閣総理大臣 これは、今まで累次にわたって申し上げているので、今回は省いたわけでございます。

 安倍政権へ交代後、名目GDPが九%伸び、そして四十四兆円増加をしたわけでございます。実質GDPも五・一%、二十五兆円増加をし、過去最高水準になっているのは事実でございますし、先ほど十五兆円ふえたというお話をいただきましたが、これは国だけの税収が十五兆円でありまして、国、地方を合わせれば二十二兆円増加をしておりますし、新規国債発行額が十兆円減少し、国の一般会計プライマリーバランスを十四兆円改善し、そして二〇一五年、プライマリーバランス赤字半減目標も達成をしているわけでございます。かつ、加えて申し上げれば、毎年一兆円ずつふえていた社会保障費の伸びを、今年度予算に続き、来年度予算においても五千億円以下に抑えることができたと思います。

 確かに、御指摘のように、二〇二〇年度のプライマリーバランスの赤字が五・五兆円から八・三兆円になったことは事実でございます。しかし、金融政策、財政政策、成長戦略の三本の矢の政策によって経済の好循環の拡大を通じて消費が改善することによって、また金融資本市場の推移いかんによって、税収等が内閣府の中長期試算で示した水準を上回って増加する余地もあると考えております。

 重要なことは、つじつま合わせのためにプライマリーバランスを一時的に改善させるようなことではないわけでありまして、経済をしっかりさせて税収を上げていくことであろう、こう思っているところでございます。

 大切なのは、もちろんプライマリーバランスも大切でありますが、実体経済の中において特に雇用が大切であろうと思います。繰り返し申し上げますが、雇用においては、今、四十七の都道府県全てで一倍を超えているのは事実でございます。

 そこで、今の御質問でございますが、なぜPBについて入れなかったかということについては、このように再三答弁をさせていただきまして、二〇二〇年のプライマリーバランスの黒字化について、そして債務残高対GDP比の着実な引き下げを達成していきたいというのは累次申し上げているとおりでありまして、累次申し上げておりますから今回はあえて入れなかったわけであります。

 きょう、午前中の審議でこのような表を茂木委員が示されて、こういう表が大切だなと思ったんです。税収と新規国債発行額の推移を示していただいたんですが、新規国債発行額は……(今井委員「いやいや、もういいです。長い。もう五分もしゃべっている。五分もしゃべらなくていいですよ」と呼ぶ)では、あと三十秒で。順調に下がりつつ税収はふえているということでございまして、御理解いただきたい、このように思います。

今井委員 では、済みません、イエスかノーでお答えください。

 二〇二〇年度のプライマリーバランス黒字化の目標は堅持する、そういうことでよろしいですか。イエスかノーで。

石原国務大臣 もう既に今井委員に釈迦に説法なんですけれども、グラフを見ていただければ、経済再生しない限り、対GDPの債務なんて減らないわけですよね。実績は、二〇一七から先を見れば債務は減っていく。ですから、我々は、二〇二〇年度のPB黒字化を目指すという方針は変更しておりません。

今井委員 では、石原大臣にもう一つ。

 これはなぜ私が申し上げているかというと、毎年私はやっていて、経済・財政再生計画というのがつくられましたけれども、私は、年度ごとにちゃんと数値管理をしていくべきだというふうに申し上げてきたんです。

 というのは、皆さんがおっしゃっている、確かに税収は伸びましたけれども、その数字が伸びたって絶対届かないという数字なので、税収がふえることを前提に、それでも足りませんよという議論をずっとしてきているんです。ですから、幾らふえたと言われたって、そんなことはわかっているんです。それでも足らないという議論をずっとしてきている。そこをどう埋めるかという議論をずっとしてきた。

 毎年毎年のものを立ててくださいと言ったら、それはできないけれども、では、二〇一八年に一度、中間でプライマリーバランスをGDP比一%というのを目標にしますので、そこで点検しましょうと言われましたので、納得はしていませんでしたけれども、そこでちょっとやりましょうということなんですが、この二〇一八年度の一%めど、赤字というのも、これは目標としては堅持していますか。

石原国務大臣 これは、二〇一五年の経済再生計画の中で、今委員が言われたとおり、二〇一八年の一%、この中間目標を評価する、目安を評価すると。ですから、今のこのスピードからいくと、委員が言うように大変厳しいですけれども、将来的な方向性としては、間違いなく、経済再生なくして財政再建なしということが実証されている図でもあるというふうに御理解をいただきたいと思います。

今井委員 ちょっと答えていないんですけれども、二〇二〇年の話をすると三年後なので水かけ論になりますから、二〇一八年、来年の話をしたいと思います。

 これはなぜ今やらなきゃいけないかというと、この二〇一八年の予算編成はことしやるんですね。ことしの夏から予算編成が始まって、年内には三十年度の予算が決まります。ここでフィックスになるわけです。だから、今議論しておかなきゃいけないんです。

 先ほどの政府の目標、プライマリーバランスの赤字対GDP比、二〇一八年度一%というのがあります。政府の目標どおり経済が成長した場合、三%の名目成長の場合になると、名目GDPは恐らく五百七十兆円ぐらいになります。五百七十兆円の一%程度の赤字ということになれば、五・七兆円です。ここまではいいですね。今回政府が出した試算、十三・八兆円の赤字ということです。その差は、何と八・一兆円です。八・一兆円を埋めないといけないんですね、一年の間に。これは達成可能ですか。

石原国務大臣 これは先ほども答弁させていただいたんですけれども、二〇一五年の財政再生計画の中で二〇一八年度のPB赤字を対GDP比一%を目安とするというのは、改革努力のメルクマールなんですね。メルクマールとして置かせていただいている。ですから、そこで中間評価をさせていただいて、委員の御懸念のような事態に対してはしっかりと対処していく。

 しかし、くどいようですけれども、このアベノミクスによってやってきた経済政策によって経済が成長して、間違いなく、対GDPの債務残高の比というものは二〇一七年以降減っていきますし、現に財政赤字を縮小しておりますし、総理が御答弁されましたように、さらなる歳出、今回も社会保障を一番、一兆円ふえるところを五千億円以下に抑えている。このような努力を積み重ねることによって、この二〇二〇年の黒字化を目指していきたいと考えております。

今井委員 いや、私が申し上げたかったのは、ずっとここで、委員会で質疑をしているときに、二〇一八年まで待ってくれと言われたので待っていたんですよ。それで今、結果が大分見えてきたのでお話ししているんです。そうしたら、メルクマールですか。

 では、これは必ずしも達成する必要はないということで、そういう認識でいいということですか。

石原国務大臣 それは大変間違った考え方で、財政再建の努力目標というものは、先ほど来、税収見通しが一兆七千億下がるということも、正直言って想像できなかったわけです。あんなに、二〇一五から二〇一六になったとき、二十円動きましたよね、為替が。それでまた今回のトランプさんの発言で、けさなんかは百二円まで落ちた。こんなに為替が、ディーラーの専門家として……(発言する者あり)失礼いたしました。

 そういうことはなかなか起こり得ないんですね。だから、不確実性がいろいろなところで高まっている。しかし、この努力の改革目標を私たちがやめましたと言ってしまったら、財政再建なんかは絶対できない。その確信のもと、ともかく経済を大きくして、対GDP比の債務を必ず下げていくという方法を我々は模索していると理解していただきたいと思います。

今井委員 お話を聞いていると、どうやって修正をしようかというか、言いわけを考えようかとか、そういうふうにしか聞こえませんね。

 だって、為替レートとか、そんな外部環境なんて、いつも変わっているわけじゃないですか。別に、特殊なことが起きているわけじゃありませんよ。だって、安倍政権になってから、最初からばあっと二十円か三十円、円安になったじゃないですか。それだって外部環境ですよ。それで税収が伸びたことは自慢しておいて、円高になったら、それは円高のせいだと言うのは、それはおかしいですよ。それはフェアに見ないと。円安になったときも円高になったときも、それは外部環境なんですから。正当に評価しなかったら、片方だけ自分の手柄にして、片方は外部環境のせいだという理屈は通りません。それはおかしいですよ。だから、そういう答弁は本当にやめていただきたいと思います。

 時間も余りありませんので。ちなみに、ちょっと僕がラフに計算したんですけれども、この八・一兆円を税収で賄おうとしたら名目成長率はどれぐらいか、わかりませんよね。まあ、いいです。一一%必要です。一一%の名目成長率をしないと、この八兆円は埋まらないということだけは申し上げておきます。いかに非現実的で、いいかげんな数字かということをちょっとお話ししておきたいと思います。

 それと、担当大臣にお伺いしたいんですが、ことしの秋口に補正予算をもし組んだら、これは来年度のプライマリーバランスに赤字として影響が出ますか、出ないですか。

石原国務大臣 ただいま本予算の審議をしておりますので、この秋に補正予算がどうこうということは全く、これこそわからないわけですけれども、それはどういう予算をつくるかによっても影響が変わってまいりますし、今、一概にお答えすることはできないと思います。

今井委員 仮に税収が上振れしてそれを使った場合は、この税収は二十九年度に反映されます。それから、例えば公共事業をもしやった場合は、公共事業は、それから地方におりて、入札をして何カ月かかかりますから、それは来年度の予算のところに執行ベースでひっかかってきます。赤字国債を出した場合は、それも同じケース。赤字国債の場合は手前で、収入はありませんので、支出だけが来年の方にもひっかかってくるということでありますから、歳入をどうとったとしても、公共事業などをやってしまえば二〇一八年度のPBの悪化要因になる、そういう理解でよろしいですか。

石原国務大臣 今の委員の仮定の置き方でいえば、そのようになると承知をしております。

今井委員 なぜこれを申し上げているかというと、これから、今、本予算の審議でありますけれども、毎年のように結局補正予算が組まれますので、私は常々から、やはり本予算と補正予算、あわせて財政を見ないといけないんじゃないかということを申し上げているわけです。

 今回もありましたけれども、概算要求では本予算に上がっていたものを補正予算でまた入れているということを、またやっているわけです。であれば、これがもうほとんど常態化しているのであれば、補正予算のところも、財政再建という意味で、当然一つ議論はしておかなきゃいけないということでお伺いしているのであって、別に今、本予算だからその話をしちゃいけないという話じゃないと思うので、ここは、今確認しました、補正予算を組むと二〇一八年度のプライマリーバランスの悪化に影響するということを明確に言っていただきましたので、年内にそういうことが起きるかどうかというのはちゃんとしっかりチェックをしてまいりたいというふうに思います。

 次に、きょうは日銀総裁に来ていただいております。済みません、お待たせをいたしまして。失礼いたしました。

 先週、またこれも衝撃的な結果が出たんですけれども、二〇一六年度の消費者物価指数、これが年間でマイナスになっております。

 もともと、ちょっとこの経緯を申し上げると、二〇一三年に黒田さんが総裁になられたときに、消費者物価の前年度上昇比二%の物価安定目標を、二年程度の期間を念頭に置いてというふうにおっしゃっていました。これは二〇一三年の四月ですね。その後、二〇一五年の四月には、今度は少し後ろにずれまして、二〇一六年度前半ぐらいになると、ちょっとこれを延ばしました。その半年後に、今度は二〇一六年度後半ごろになると。翌年の一月には、二〇一七年度前半ごろになると。昨年の四月には、二〇一七年度中になると。去年の十一月には、二〇一八年度ごろになると。だるまさんが転んだ攻撃と僕は言っているんですけれども、ちょっとずつ、ちょっとずつ、ちょっとずつ後ろにずらしていって、当初二年だったのが、はるかに過ぎております。

 来年の春に総裁は任期を迎えられますけれども、任期の間に今まで言っていた目標というのは達成できるんでしょうか。

黒田参考人 委員御指摘のとおり、二〇一三年の四月に、物価安定の目標を、二年程度の期間を念頭に置いて、できるだけ早期に実現するということを目指して、量的・質的金融緩和を導入いたしました。その後、我が国の経済、物価は大きく好転しておりまして、いわゆる物価が持続的に下落するという意味でのデフレではなくなったと思っております。

 ただ、確かに、二%の物価安定の目標は実現できておりません。その背景としては、昨年九月に総括的な検証というのを行いました。これは、量的・質的金融緩和を導入して以来、三年半ぐらいたったところで全体を見通して、どうしてこういうふうになっているのかという分析もしたわけでございます。

 その結果、一つは、原油価格が大幅に下落した。御案内のとおり、二〇一四年の夏ごろから昨年の初めにかけて、七〇%以上の原油価格の下落があったということがあります。それから、消費税率を引き上げた後の需要の弱さというものもありました。また、一昨年の終わりごろからあったんですが、昨年、特に新興国発の市場の不安定化など、さまざまな逆風というものがありまして実際の物価上昇率が下落して、もともと過去の物価上昇率に引きずられがちないわゆる適合型の予想物価上昇率ということで、予想物価上昇率自体も横ばいから弱含みに転じた。こういったことが、二%の物価安定の目標が実現できていない理由であるという分析を示しております。

 こうした中で、日本銀行は、二%の物価安定の目標をできるだけ早期に実現するという方針を堅持しておりまして、必要に応じて政策面での対応を実施してきております。

 具体的には、御案内のとおり、二〇一四年十月に量的・質的金融緩和の拡大を行いましたし、昨年一月にはマイナス金利つき量的・質的金融緩和を導入いたしました。そして、昨年九月には、今申し上げた総括的な検証を踏まえて、それまでの政策枠組みを強化する形で、長短金利操作つき量的・質的金融緩和を導入したわけでございます。

 今後とも、二%の物価安定の目標をできるだけ早期に実現するために、長短金利つき量的・質的金融緩和のもとで、強力な金融緩和をしっかり推進していくという所存でございます。

今井委員 答えていないのでもう一回お伺いしますけれども、ちょっと私の方から一つだけ。

 私は素直に疑問がありまして、物価が伸びないときに、原油価格が下がったせいだとおっしゃいますけれども、原油価格が下がることは日本にとって悪いことでしょうか。原油価格が下がったから物価が上がらないと言うのなら、物価を上げるために原油価格が高い方がいいと言っているのと一緒ですよ。そうじゃないですか。だって、その目標を達成していない原因は、原油価格が下がったからだとおっしゃっている。

 なぜ申し上げるかというと、総裁はいつも、日銀版のコアコア、この基調は伸びているとおっしゃっていますが、足元を見てください。日銀版のコアコアですら下がってきているんです。下がっているんです。ですから、今まで言っていることの論理は破綻しています。だから、とてもこれで任期中にできるとは私は思えません。ですからお伺いしているんです。

 来年の任期中までに目標は達成できますか。(発言する者あり)

浜田委員長 静粛に願います。

黒田参考人 先ほど申し上げておりますとおり、まずは、長短金利操作つき量的・質的金融緩和のもとでの金融緩和を進めることによって、二%の物価安定の目標をできるだけ早期に実現するということであります。

 一番最近の展望レポートで示しておりますとおり、二%の物価安定の目標を達成するのは二〇一八年度ころというのが政策委員の一致した意見でございます。一致したというか、多数の意見でございます。

 なお、石油価格の点について一言だけ申し上げますが、IMF自体も、石油価格が低下したときには、世界の需要が予想より弱くて、石油価格が低下した部分は世界経済にとってはプラスではない、ただ、供給がふえて価格が下がったという部分については消費国にとってはプラスになると言っていまして、その分析もしておりますけれども、石油価格が下がった結果として、先進国、石油輸入国にとって、プラスの面もあったけれども、やはり世界経済の伸びが鈍化してマイナスの面もあったということをかなり詳しく分析しております。

 したがいまして、今、石油価格が少し、五十ドル程度に戻ったことについての効果も、両方あると思います。

浜田委員長 参考人、時間が来ておりますので。

黒田参考人 なお、私の任期は二〇一八年の四月というふうに認識しております。先ほど来申し上げているとおり、政策委員会の多数の意見は、二%程度に達する時期は二〇一八年度ころということでございます。

今井委員 いや、答えていただけないので。

 時間が来ましたのでこれで終わりますが、総裁、それは違いますよ。私、この間展望レポートを見ましたけれども、政策委員の二〇一八年度の物価上昇の見通しは〇・九パーから一・九パー、二%を超えると言った人は一人もおりません。

 ですから、今の話は私は間違っているというふうに思いますので、まあ、日銀の政策委員ですら二〇一八年度はできないという予想をしているわけですから、この物価目標もできない、財政再建の目標もできない、できないことだらけで、本当はきょうほかにできないことをいっぱい持ってきたんですけれども、また別のところで議論させていただきたいと思います。

 では、本日はこれで終わりにします。ありがとうございました。

浜田委員長 次回は、明二日午前八時五十五分から委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。

    午後五時一分散会


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