衆議院

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第5号 平成29年2月2日(木曜日)

会議録本文へ
平成二十九年二月二日(木曜日)

    午前八時五十九分開議

 出席委員

   委員長 浜田 靖一君

   理事 石田 真敏君 理事 菅原 一秀君

   理事 西村 康稔君 理事 葉梨 康弘君

   理事 宮下 一郎君 理事 武藤 容治君

   理事 大西 健介君 理事 長妻  昭君

   理事 赤羽 一嘉君

      青山 周平君    伊藤 達也君

      池田 道孝君    石崎  徹君

      石破  茂君    岩屋  毅君

      江藤  拓君    衛藤征士郎君

      小倉 將信君    大串 正樹君

      岡下 昌平君    奥野 信亮君

      門  博文君    金子万寿夫君

      黄川田仁志君    國場幸之助君

      今野 智博君    鈴木 俊一君

      瀬戸 隆一君    高木 宏壽君

      津島  淳君    辻  清人君

      根本  匠君    野田  毅君

      野中  厚君    原田 義昭君

      平口  洋君    福山  守君

      古川  康君    星野 剛士君

      堀井  学君    前田 一男君

      三ッ林裕巳君    宗清 皇一君

      八木 哲也君    保岡 興治君

      山下 貴司君    山田 賢司君

      和田 義明君    渡辺 博道君

      井坂 信彦君    今井 雅人君

      小川 淳也君    緒方林太郎君

      後藤 祐一君    階   猛君

      篠原  豪君    高井 崇志君

      玉木雄一郎君    辻元 清美君

      福島 伸享君    前原 誠司君

      宮崎 岳志君    柚木 道義君

      伊藤  渉君    國重  徹君

      中川 康洋君    真山 祐一君

      赤嶺 政賢君    笠井  亮君

      高橋千鶴子君    藤野 保史君

      井上 英孝君    伊東 信久君

      下地 幹郎君

    …………………………………

   内閣総理大臣       安倍 晋三君

   財務大臣

   国務大臣

   (金融担当)       麻生 太郎君

   総務大臣

   国務大臣

   (マイナンバー制度担当) 高市 早苗君

   法務大臣         金田 勝年君

   外務大臣         岸田 文雄君

   文部科学大臣       松野 博一君

   厚生労働大臣       塩崎 恭久君

   農林水産大臣       山本 有二君

   経済産業大臣

   国務大臣

   (原子力損害賠償・廃炉等支援機構担当)      世耕 弘成君

   国土交通大臣       石井 啓一君

   環境大臣

   国務大臣

   (原子力防災担当)    山本 公一君

   防衛大臣         稲田 朋美君

   国務大臣

   (内閣官房長官)     菅  義偉君

   国務大臣

   (復興大臣)       今村 雅弘君

   国務大臣

   (国家公安委員会委員長)

   (海洋政策・領土問題担当)

   (消費者及び食品安全担当)

   (防災担当)       松本  純君

   国務大臣

   (沖縄及び北方対策担当)

   (クールジャパン戦略担当)

   (知的財産戦略担当)

   (科学技術政策担当)

   (宇宙政策担当)     鶴保 庸介君

   国務大臣

   (経済再生担当)

   (経済財政政策担当)   石原 伸晃君

   国務大臣

   (少子化対策担当)

   (男女共同参画担当)   加藤 勝信君

   国務大臣

   (地方創生担当)

   (規制改革担当)

   (行政改革担当)

   (国家公務員制度担当)  山本 幸三君

   国務大臣         丸川 珠代君

   財務副大臣        木原  稔君

   政府特別補佐人

   (内閣法制局長官)    横畠 裕介君

   政府参考人

   (内閣府政策統括官)   北崎 秀一君

   政府参考人

   (内閣府沖縄振興局長)  槌谷 裕司君

   政府参考人

   (法務省民事局長)    小川 秀樹君

   政府参考人

   (法務省刑事局長)    林  眞琴君

   政府参考人

   (法務省入国管理局長)  和田 雅樹君

   政府参考人

   (外務省大臣官房審議官) 水嶋 光一君

   政府参考人

   (外務省北米局長)    森  健良君

   政府参考人

   (外務省経済局長)    山野内勘二君

   政府参考人

   (文部科学省高等教育局長)            常盤  豊君

   参考人

   (再就職等監視委員会委員長)           大橋 寛明君

   予算委員会専門員     柏  尚志君

    ―――――――――――――

委員の異動

二月二日

 辞任         補欠選任

  石破  茂君     福山  守君

  岩屋  毅君     瀬戸 隆一君

  衛藤征士郎君     今野 智博君

  小倉 將信君     高木 宏壽君

  佐田玄一郎君     堀井  学君

  長坂 康正君     宗清 皇一君

  野中  厚君     三ッ林裕巳君

  保岡 興治君     金子万寿夫君

  渡辺 博道君     古川  康君

  井坂 信彦君     階   猛君

  今井 雅人君     篠原  豪君

  小川 淳也君     柚木 道義君

  玉木雄一郎君     高井 崇志君

  辻元 清美君     宮崎 岳志君

  國重  徹君     中川 康洋君

  赤嶺 政賢君     笠井  亮君

  高橋千鶴子君     藤野 保史君

  伊東 信久君     下地 幹郎君

同日

 辞任         補欠選任

  金子万寿夫君     保岡 興治君

  今野 智博君     前田 一男君

  瀬戸 隆一君     山田 賢司君

  高木 宏壽君     小倉 將信君

  福山  守君     石破  茂君

  古川  康君     渡辺 博道君

  堀井  学君     和田 義明君

  三ッ林裕巳君     辻  清人君

  宗清 皇一君     八木 哲也君

  階   猛君     井坂 信彦君

  篠原  豪君     今井 雅人君

  高井 崇志君     玉木雄一郎君

  宮崎 岳志君     辻元 清美君

  柚木 道義君     小川 淳也君

  中川 康洋君     國重  徹君

  笠井  亮君     赤嶺 政賢君

  藤野 保史君     高橋千鶴子君

  下地 幹郎君     伊東 信久君

同日

 辞任         補欠選任

  辻  清人君     野中  厚君

  前田 一男君     衛藤征士郎君

  八木 哲也君     青山 周平君

  山田 賢司君     岩屋  毅君

  和田 義明君     池田 道孝君

同日

 辞任         補欠選任

  青山 周平君     岡下 昌平君

  池田 道孝君     津島  淳君

同日

 辞任         補欠選任

  岡下 昌平君     長坂 康正君

  津島  淳君     佐田玄一郎君

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 政府参考人出頭要求に関する件

 参考人出頭要求に関する件

 平成二十九年度一般会計予算

 平成二十九年度特別会計予算

 平成二十九年度政府関係機関予算


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     ――――◇―――――

浜田委員長 これより会議を開きます。

 平成二十九年度一般会計予算、平成二十九年度特別会計予算、平成二十九年度政府関係機関予算、以上三案を一括して議題とし、基本的質疑を行います。

 この際、お諮りいたします。

 三案審査のため、本日、参考人として再就職等監視委員会委員長大橋寛明君の出席を求め、意見を聴取し、また、政府参考人として内閣府政策統括官北崎秀一君、内閣府沖縄振興局長槌谷裕司君、法務省民事局長小川秀樹君、法務省刑事局長林眞琴君、法務省入国管理局長和田雅樹君、外務省大臣官房審議官水嶋光一君、外務省北米局長森健良君、外務省経済局長山野内勘二君、文部科学省高等教育局長常盤豊君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

浜田委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

浜田委員長 昨日の江田憲司君の質疑に関連し、階猛君から質疑の申し出があります。江田君の持ち時間の範囲内でこれを許します。階猛君。

階委員 おはようございます。民進党の階猛です。

 きょうは、共謀罪などについて御質問させていただきます。

 本題に入ります前に、ちょっと明るいニュースを全国の皆さんにもお伝えしたいと思います。

 先週二十七日、春の選抜高校野球の出場校三十二校が決定しました。その中で、私の地元の矢巾町というところから、二十一世紀枠で不来方高校という高校が初出場で選ばれました。たった十人しか部員がいないということで、私たち地方に住む者にとって本当に明るい話題で、これから人口減少が進む中でも、やればできるんだ、勇気と希望を与えてくれる、そんなニュースだったと思います。

 校長先生から私の方にメールが来まして、たった十人ではなくて、十人のいいところがあるというふうにキャプテンは考えて頑張ってきたんだ、こういうお話でした。私はそういう頑張りを大いに応援していきたいと思うんですが、もし総理からも何かコメントがあればお願いしたいんですが。

安倍内閣総理大臣 まさに今、地方はだんだん人口が減っている中で、さまざまな知恵を出し合い、きらっと光っていく、そういう地域のチームが十人で頑張る。ぜひ甲子園で健闘していただきたいと思っております。

階委員 ありがとうございます。

 私も野球をずっとやってきたので、本当にこれは明るい、地方にとってもいいニュースだと思います。

 その上で、共謀罪についてきょうは基本的なことを、その上でというのがちょっと接続詞としてよくなかったかもしれませんが、ここから先は直球勝負でいきたいと思います。

 パネルをごらんになってください。これは、私の方でつくった概念図でございます。

 刑法の犯罪というのは、大体こういう四つの類型に分かれるのではないかと思っています。右に行けば行くほど結果ないし結果発生の危険が高まるということで、右側の既遂罪。殺人罪でいえば実際に人を殺して被害者の方がお亡くなりになったということで、これが既遂罪です。人を殺すという行為はしたけれども、殺すまでには至らなかった、未遂罪。さらにその手前、人を殺そうと思って凶器を準備したけれども、殺す行為、実行行為までには至らなかった、これが予備罪。犯罪によっては、似たようなもので準備罪というものがあります。

 今回問題になっている共謀罪あるいはテロ等準備罪、これは、さらにその手前の段階で合意があったものなどについて処罰するということでございます。

 これは、既遂罪を処罰するというのが刑法の原則なわけですけれども、その何段階も手前で処罰、すなわち結果とか危険の小さい段階で処罰するということが一点目。

 それともう一つ、萎縮効果ということで縦軸に書いておりますが、要するに、話し合って合意した段階で処罰するということになりますと、壁に耳あり障子に目ありということで、自由な会話ができにくくなる。これは憲法上でいいますと、表現の自由とか知る権利の制約要因になると思っております。

 それからもう一つは、団体で集まっていろいろな話をする、この自由な団体活動、これは憲法上でいうと集会の自由や結社の自由にかかわると思うんですが、これが、集まったら一網打尽で、犯罪にかかわった、実際に着手した人じゃなくても処罰されるということになると、これも制約されるということで、自由な団体活動ができにくくなる、こういった萎縮効果があるのではないかと思っております。

 こうした萎縮効果、あるいは結果とか危険の小ささから鑑みると、こうした共謀罪、陰謀罪、今現行法の話をしておりますが、共謀罪、陰謀罪というのは極めて特殊、例外的あるいは補完的なものと考えるべきだと思っております。だからこそ、現行法上、共謀罪は十三、陰謀罪は八しか定められておりません。

 私が今るる申し上げましたけれども、こうした共謀罪、陰謀罪というものは、犯罪の中では例外的、補完的なものであって、他に代替手段がない場合に必要最小限度で設けるべきではないかというふうに私は基本的に考えます。

 基本的な考え方として、ここは総理にまずお伺いしたいんですが、こういう共謀罪、陰謀罪について、例外的、補完的に設けるべきではないかという考え方について御同意いただけますでしょうか。

安倍内閣総理大臣 今回我々が法案を準備させていただいているのは二つ理由がございまして、まずは国際組織犯罪防止条約を締結できないという問題、その要件を満たしていないという中において、これがないと、いわば国際社会の中において犯罪人の引き渡し等々も含め情報交換、いわばそれを防止するというコミュニティーの中に入れないというのは、きのう葉梨委員との議論の中で明らかになった、双罰性の問題もございます、とおりであります。それを確認したところ、そうだということ。

 そしてまた、東京オリンピックを控えて、テロを防止する上において穴はないかということにおいて、やはり穴はある。穴はあるということについては、民進党とも大体合意できているのではないか。

 しかし、そこで、階委員からの今の御指摘は、それを決めていく中においては思想信条の自由または内心の自由等々を侵してはならない、それは当然のことであります。つまり、またそういう疑念も払拭しなければならないという中において、今回の法案は今までの共謀罪とは趣を異なるものとしているわけでございまして、その中で、項目も限っていこうということで議論をしているというふうに承知をしております。

階委員 今の総理の答弁にもありましたとおり、従来の共謀罪とは違うということを強調されるわけですけれども、過去三回は共謀罪という名称で我々は議論してきましたので、我々は共謀罪という言葉でこれから議論したいと思います。

 一方で、外務大臣は、最近は重大な犯罪の合意罪という言葉も使われていらっしゃる。これは、国際組織犯罪条約、TOC条約ともいいますが、こちらの文言をそのまま素直に和訳したのかなと思っております。

 この重大な犯罪の合意罪という名称は、想起されるのは、この四つのパターンでいうと共謀罪、陰謀罪のカテゴリーではないかというふうに思うんですが、そういう理解でいいのかどうか、外務大臣にお尋ねします。

岸田国務大臣 おっしゃるように、重大な犯罪を行うことの合意、すなわち重大な犯罪の合意罪につきまして、こういった言葉を使っているのは、TOC条約第五条の条文をそのまま引用させていただいているということであります。

 その上で、お示しいただきました資料のうち、どこがそこに該当するのかということでありますが、厳密な意味での線引きについてはぜひ法務省の方に確認していただきたいと思いますが、御指摘の部分も含めそれを検討することになると思いますが、いずれにしましても、我が国のこの現状、条約が求めている部分には十分ではないという判断のもとに国内法の整備をお願いしている次第であります。

階委員 現行法でいえば共謀罪、陰謀罪に当たるのかどうかということをお尋ねしましたけれども、今の答弁では、まだ確たることは言えないというふうに受け取りましたけれども、それはそういうことでよろしいでしょうか。

岸田国務大臣 政府としましては、過去三度国内法の提案をさせていただいたわけですが、結局御承認をいただけませんでした。

 新たな法律を今、政府内で検討しております。検討して、その結果については、法律を提出した時点でしっかり御説明すべきことだと思っています。

階委員 それでは、法務大臣にもお伺いしますが、法務大臣はテロ等準備罪という言葉をよく使われますが、この準備罪という言葉から想起されるのは二つ目の類型、予備罪、準備罪、こちらの類型に今回つくろうとしているテロ等準備罪が当たるのではないかというふうに思われるんですが、その理解でいいのかどうか。法務大臣、お願いします。

金田国務大臣 私どもが申し上げておりますテロ等準備罪、これはこの四つの中でどうだ、こういうふうにおっしゃられますと、やはりその考え方として、テロ組織が行うテロ行為というのは、一たび実行された場合には取り返しのつかない結果が生じる可能性が高いわけでありまして、その計画が発覚した段階では直ちに検挙して未然に防止する必要があるということで、必要性が極めて高いわけですね。

 したがって、予備罪等が設けられていない罪はもとより、予備罪が設けられている罪についても、裁判例に照らして予備罪、予備行為とは認められない場合には的確にやはり対処していく必要があるという意味において、私どもが申し上げているテロ等準備罪というものはこの四つとは違う、このように申し上げたいと思います。

階委員 計画段階でというふうにおっしゃいましたので、私は、現行法で言う共謀罪、陰謀罪の類型に当たるのではないかと思いますけれども、そうじゃないんですか。

金田国務大臣 私どもが申し上げているテロ等準備罪に関しまして基本的な考え方を、御理解とは思いますが申し上げますと、犯罪の主体を一定の犯罪を行うことを目的とする組織的な犯罪集団に限定して、合意に加えて準備行為があって初めて処罰の対象とするということを検討いたしております。

 そのような限定によりまして、先ほど委員が御説明になりました、一般の方々が処罰の対象となることはあり得ないということがより明確になるものと考えておりまして、そういう意味において、私が申し上げているテロ等準備罪は準備罪とは違うというふうに申し上げたいと思います。

階委員 どっちかよくわからないんですね。共謀罪とは違うと言って、準備行為が必要だということを言っていますね。これはだから予備罪、準備罪のことを言っているかと思えば、準備罪とも違うということを言っているわけです。

 これは間の話をしているわけです。この間につくる、新たな類型をつくるということをおっしゃっているのかどうか。

金田国務大臣 ただいま申し上げましたのは、共謀罪それから準備罪、この両者とも違う。

 先ほども申し上げましたが、テロ行為が行われるときに、その未然防止という観点に立ったときに、穴を埋めなければいけない、そういう既存の罪で対応できない部分に対応していくという考え方を持っているわけであります。

階委員 さっぱりよくわからないんですが、予備罪で処罰されるためには、当該犯罪の種類、規模等に照らし、犯罪実現のための客観的な危険性という観点から見て、実質的に重要な意義を持ち、客観的に相当の危険性の認められる程度の準備が整えられた場合であることを要する、これが確定した判例です。

 この予備罪の定義よりはもっと手前で処罰する、こういうことであるということは間違いないんですか。

金田国務大臣 委員がただいま言われましたことは、私もそのように考えております。

階委員 一つわかったことは、予備罪、準備罪よりはもっと手前の段階で処罰する、すなわち、結果とか危険が小さい段階、そして萎縮効果が大きい段階で処罰するということで、こうした犯罪類型というのは極めて抑制的に考えなくてはいけないというふうに思います。

 これは総理も冒頭でその趣旨の御発言もされましたので、そういう観点から伺っていきたいんですが、このテロ等準備罪がもし仮に制定されるとすると、まさに抑制的に考えるという観点から、極力、対象となる犯罪の範囲は狭めるべきだと思います。

 それで、これは一月十一日の朝日新聞などを参考にしてつくった資料ですけれども、TOC条約では重大な犯罪を長期四年以上の刑の罪ということで定義しておりますが、条約を批准するためには、この重大な犯罪について、外務大臣の言葉を使えば合意罪というものを定めなくちゃいけないというわけですけれども、一方でテロ等準備罪という極めて例外的なものをつくる、抑制的に考えてつくるということを考え合わせると、こんな、六百七十六、これはそもそも対象とならない四十一を除いても六百三十五あるわけですね。六百三十五全体についてテロ等準備罪の対象とするということは私はするべきではない、こう思っています。

 まさにテロ等準備罪ということであれば、一番上といいますか、テロに関する罪、百六十七個、せいぜいこれぐらいが対象ではないか。これでも私は多いと思って、この点についても後で議論しますけれども、そもそも、テロ等準備罪の対象となるのは百六十七の範囲なのか、それとももっと広い範囲なのか、ここについてまずお答えいただけますか、法務大臣。

金田国務大臣 お答えいたします。

 TOC条約を締結するための法案の具体的なあり方にかかわる部分でございますが、条約との整合性を図りながら、テロ等準備罪の対象範囲をどうするかということを含めて、やはり、条約を所管する外務省と協議しながら、現在、政府部内で慎重に検討しているところをまず申し上げなければいけません。

 したがいまして、私どもは、これを前提に申し上げますと、テロ等準備罪に関する基本的な考え方といたしまして、犯罪の主体を一定の犯罪を行うことを目的とする組織的犯罪集団に限定してというふうに考えていますので、その対象は、そういう観点から、一般の方々が処罰の対象となるようなことはあり得ないということがより明確になるようなスタンスでこの検討を現在行っているところであります。

階委員 答えがずれていますよ。

 私が聞いているのは、この六百三十五のうち、どの部分がテロ等準備罪の対象となるのかということを聞いているわけです。ここは、テロ等準備罪というのであればテロに関する罪が対象なのかなと思うんですが、そうじゃないんですか。もっと広いんですか。

岸田国務大臣 ただいま法務大臣から答弁させていただきましたように、過去の国会審議、膨大な国会審議がこれまでも行われてきました。この国会審議の際に、一般の方々が処罰の対象になるのではないか、こうした心配や指摘が再三行われたわけであります。そして、今、新たな法律を準備しているところです。

 そして、新たな法律の中においては、一般の方々が処罰の対象にならないことを明確にするべきであるということで、今法務大臣からありましたように、主体を特定することでそれができないだろうかなど、今検討を行っています。あわせて、実行の準備行為が行われた場合に限って処罰の対象とする、こういったことも考えられないだろうか、こういったことを検討しています。

 対象の数につきましては、この検討の結果でありますので、今の段階では何も申し上げることはできないと思っています。これはしっかり検討し、しっかり法律をつくった上で国会にお示しし、そして議論させていただく、説明させていただく、これが当然のことではないかと考えます。

階委員 苦しい答弁だと思いますね。

 今の答弁は、過去に別な委員とのやりとりの中でもありましたけれども、要するに、罪の範囲は限定できないかもしれませんけれども、主体を限る、それから準備行為を設けることによって網を狭めていくから問題はなくなるんだというような話なんですけれども、果たしてそうなのかどうか。組織的な犯罪集団というものに限って処罰するという発言もありますけれども、この組織的な犯罪集団に該当するかどうか。

 普通の会社でも、例えば普通の営業をしていました、一般の会社としての営業をしていました、ところが、経営が悪化していく中で、にっちもさっちもいかなくなって詐欺まがいなこともするようになった。その詐欺まがいなことをするようになった瞬間からはもう犯罪集団とも言えるわけで、かつ、そういう犯罪集団に参加しようと積極的な意思を持ってやっているだけではなくて、図らずも、いつの間にかそういう行為を会社がしていた、それを全く認識しないで従来どおり会社に勤務していたという人もあるわけで、そういう組織的な犯罪集団という定義も極めて問題になってくると思うんです。

 この組織的な犯罪集団について限定できるというのであれば、一般市民は必ず組織的な犯罪集団に入らないような定義になるということでよろしいんですか。

岸田国務大臣 今の御質問に対してお答えするとしたならば、まず、今新たに用意している法律は、TOC条約の担保法として十分かどうかということをしっかり検討する、これが大前提であります。その上に立って、先ほど申し上げましたように、従来のさまざまな議論、一般の方々が対象になるのではないかという指摘、こういったことを踏まえて新たな法律を準備しているわけです。そして、その内容として、先ほど、例えば主体を限定することができないだろうか、こういったことを検討しておりますと申し上げました。それを今検討しているわけです。

 御指摘の点について、どのような法律をつくるのか、そしてどのように解釈すべきなのか、こういったことをしっかり今検討しているところでありますので、今の段階で今の御質問について的確にお答えすることは不可能であると考えます。

階委員 組織的な犯罪集団の参考になる判例が、一昨年の九月十五日、最高裁で出ております。

 この判例によると、組織的詐欺罪の成立を認めるためには、団体の構成員全員がみずからその団体の活動に参加する意思を抱いていたり、そのような構成員全員の意思が結合していたりする必要はないという趣旨の判例があるわけです。

 ですから、この組織的犯罪集団という定義が曖昧なままでは一般市民がこれに含まれ得るという懸念も払拭されないわけでして、この点について、私は、今のうちから、懸念は当たらないというのであれば、明確な定義を示していただきたいと思います。

 法務大臣、手が挙がっていましたけれども、この点について何か発言はございますか。

金田国務大臣 先ほど外務大臣から答弁申し上げたとおりなんですけれども、加えまして、組織的犯罪集団とは、私どもは、やはり客観的に犯罪を目的とするか否かを判断することになります。したがって、重大な犯罪等を行うことを目的とする集団をいうわけでございますから、例えばテロ組織、それから暴力団、薬物密売組織といったようなことに限られてくるわけであります。

 したがって、判例については今伺いましたが、しかし、それは団体の活動についてのものであるというふうに受けとめております。

階委員 では、組織的犯罪団体は限られるということでしたけれども、団体に関与するということがどういう意味なのか。関与するということであれば、一般市民も関与し得る場合があるのではないかということを考えますけれども、団体は限定されるとしても、団体の活動に関与するということについては、法務大臣、どのように考えますか。(発言する者あり)

浜田委員長 静粛に願います。

金田国務大臣 まず初めに、これまでも何度か申し上げてまいりましたが、まだ提出のされていない、検討中の法案でございます。その大変細かい部分をしっかりと詰めよと御質問されました。ですから、できる範囲でお答えをしますが、お答えが十分な結論として申し上げられない場合もあるかもしれません。それは御容赦を願いたい。

 そして、ただいまの質問ですが、正当な活動を行っていた集団であれば、団体の意思決定に基づいて犯罪行為を反復継続して行うようになるといったような、団体の性質が一変したと認められなければ、組織的犯罪集団と認められることはない、このように考えております。

階委員 団体に関与したということを聞いているわけでございまして、TOC条約でも、団体に関与という言葉があるわけです。この文言からして、団体は限られても、関与したというところで広く捉えられる可能性があるのではないかと考えます。

 ちょっと次に進みますけれども、こういうテロ対策にとって必要十分な範囲で立法がされているのかどうか、必要最小限の範囲で立法がされているのかどうか、これを厳しく我々はチェックしなくちゃいけないと思うんですが、先ほどから答弁を聞いていますと、罪の範囲も今わからない、組織的犯罪集団の定義もまだはっきりしないということで、懸念が全く払拭されないわけです。

 そこで、総理に伺いますけれども、最初に、この共謀罪については立法目的が二つあるんだ、一つは、国内のテロを防ぐために、穴があるので埋めなくちゃいけない、もう一つはTOC条約の批准ということで、二つのことをおっしゃっていました。

 その一つ目の、国内のテロを防ぐために、穴があるということをおっしゃるんですが、我々、この国会でも仲間の議員が議論してきましたけれども、法務省から挙げられた事例は三つです。そのうち二つについては、前回、福山参議院議員が参議院の予算委員会で指摘したとおり、これは穴とは言えないのではないかというふうに考えております。

 この穴があるということを、もっと具体的に例を複数挙げていただければと思うんですが、ほかにどのような例があるのか、総理からお願いします。

安倍内閣総理大臣 そもそも福山議員は、きのう葉梨委員と刑事局長とのやりとりで明らかになっているわけでありますが、この穴がないという説、いわば予備罪でそれはいけるという説があるわけでありますが、しかし、それは学説であって、四十二年の判決でいえば、これは、国会を襲撃して占拠する、その当面の目的として、例えば人身の殺傷もやむを得ないとして、その目的に向かって、ヘルメットを用意し、防毒マスクを大量に用意し、そしてトラック等を獲得する準備をし、ホテルの予約をしていた、そして、ライフルを二丁、空気銃も用意していたにもかかわらず、これは予備罪にはならなかったわけであります。ここまでやっていて実はならないのが、これは裁判例であります。

 そして、きのう刑事局長が答弁していましたね。つまり、こういう裁判例をもとに我々は判断をする、実務においてはそうだ。ですから、そこで検挙できないということになれば、さらにその進んだ状態で、果たしてそれをとめることができるかどうか、それが結局既遂になってしまうのではないかということでありまして、警察庁の刑事局長もそう答弁をしておりました。

 きのう答弁した警察庁の局長は、かつて福岡県警時代には工藤会という非常に凶暴な暴力団の検挙を実行した人物でありますし、ある県においては知事を逮捕した、そういう実績を持っている人物が、しかしこれではやはり十分に検挙に至れないものがあるということを言っているわけでありますから、我々は、穴がある、このように考えているわけでございます。

 また、薬物につきましても、サリンは規定されていますが、それ以外については規定がないということもあるわけでございますから、そういうもの等についてもしっかりと今議論をしているわけでございまして、まだ法案として出していない。

 確かに、階委員がさまざまな御疑問を出されたわけでございます。しかし、法務大臣がお答えをさせていただきましたように、しっかりとしたまともな会社であったものが、これが急に経営が悪くなったから一部の人たちが悪いことをしたからといって、全体がその対象になるということについては、それはそういうことにならないような方向で今議論しているということであります。

 しかし、例えば振り込め詐欺という団体があって、これで振り込め詐欺行為をやるといってみんな集まっている組織があった。しかも、その集めた金をさまざまなことに使っていこうということもあるかもしれません。そういうことについては、これは入っていくということになるだろう。

 いずれにせよ、今それを詰めておりまして、階委員が言われている指摘も踏まえて、それを詰めた上において法務委員会に提出するわけでありますから、さらにそれを詰める上においては法務委員会で専門的な御議論をいただきたい、このように思う次第でございます。

階委員 詰めた上でテロ等準備罪という名前が出てくるならまだわかるんですが、テロ対策だということが先に出てきていて、何かそれで国民の皆さんに安心感を与えようという思惑が透けて見えるわけですね。

 このテロ等準備罪ということで、どこに穴があるのかということで、今、具体的な総理からの説明がありました。こういった具体的な例を、我々はずっと国対を通じて法務大臣、法務省に、出してください、そして、穴を埋めるための個別の、共謀罪なら共謀罪、あるいは準備罪なら準備罪、こういったものを議論していきましょうということを言っているわけですよ。

 なぜ、法務大臣、今総理がおっしゃったような判例に出てきた事例でもいいですよ、こういう事例は現行法では処罰できないから共謀罪あるいは準備罪が必要なんだということをやられないんでしょうか。資料を出してもらえませんか。

金田国務大臣 ただいま総理からも申し上げました。現在、委員御指摘の点も踏まえて、含めて検討している最中であります。

 したがって、この前お聞きいただいております三つの例とか、そういう事例については、現在政府において検討中のテロ等準備罪について、その成案が得られていない段階で、その検討の方向性を少しでもわかりやすくイメージしていただくためにお示ししたものでありまして、法案がまだ検討段階にある以上は、テロ等準備罪の限界事例等をお示しすることは今の段階では差し控えさせていただきたい、このように考えているわけであります。

階委員 そうはいっても、テロ等準備罪を検討するという中で、多数の罪について網をかぶせるような形でのテロ等準備罪というところは大体固まっているわけですよね。そうじゃないんですか。

 それとも、個別具体的な罪、国家転覆罪とか内乱罪とか、そういった個別の罪ごとに準備罪を定めるということも検討対象にされているのであればそれを待ちますけれども、そうでないというのであれば、やはり今、どうしても、包括的な準備罪というものについては、人権を制約したり、あるいは危険が少ないのに処罰するということで、これまでの刑法の原則とは大分異なってくるわけですよ。だから我々は懸念していて。

 包括的な準備罪ではなくて、個別的な準備罪でいいという考え方も含めて検討しているということでよろしいんでしょうか、法務大臣。

金田国務大臣 繰り返しになりますが、具体的な対象犯罪については現在検討中であります。

階委員 具体的な対象犯罪を聞いているのではなくて、対象犯罪を懲役何年以上とかいうことで広く設けた上で、それについての準備罪を設けるのか、それとも特定の犯罪について準備罪を設けるのか、共謀罪を設けるのか、どちらをとるのかということを聞いているんです。方向性を聞いているんです。

金田国務大臣 ただいまの点も含めて検討中であります。

階委員 これは本当に重要な答弁ですけれども、個別の準備罪、共謀罪ということも検討しているというのであれば、やはり、どういう具体例について検討しているのかということもぜひお示しいただきたいと思います。これはずっとお願いしていることなので、資料を出してください。法務大臣、お願いします。

金田国務大臣 誤解があってはいけません。個別の準備罪については、検討しているとは申し上げていないつもりであります。(発言する者あり)

浜田委員長 速記をとめてください。

    〔速記中止〕

浜田委員長 速記を起こしてください。

 金田法務大臣。

金田国務大臣 私が申し上げている意味は、国際組織犯罪防止条約の締結からくるわけでございまして、この重要な課題、テロ等を含む組織犯罪と闘うという重要な課題について、この条約は、重大な犯罪を行うことの合意または組織的な犯罪集団の活動への参加の少なくとも一方を犯罪とすることを求めているわけであります。

 しかし、我が国には、現行法上、参加罪は存在しない上に、この条約が求める重大な犯罪の合意罪に該当する罪もごく一部しかないわけであります。したがいまして、我が国の国内法はこの条約上の義務を満たしておらない、したがって新たな立法措置が必要であると考えているわけであります。

 加えまして、テロ組織が行うテロ行為というのは、一たび実行された場合には取り返しのつかない結果が生じる可能性が高く、その計画が発覚した場合には直ちに検挙して未然に防止する必要性が極めて高いのであります。

 したがって、予備罪等が設けられていない罪についてはもとより、予備罪が設けられている罪についても、テロ組織の行った行為が客観的に構成要件実現のための相当の危険性の認められる程度の準備に至っていない場合には的確に対処することができない事案があるということで、テロ等準備罪の新設が必要であると私どもは考えておりまして、そういう考えです。

安倍内閣総理大臣 ただいま法務大臣から答弁をさせていただいた趣旨は、国際組織犯罪防止条約を締結するに足る担保法となるかどうかということからの検討がまず一つであります。その際、予備罪がないもの、あるいは予備罪があっても不十分であるものについてどのように対処できるかどうかということを検討しているわけでございます。

 そこで、個別法をどのようにやっていくかどうかということの立法技術的なお話だと思いますが、そういうことを最初から全て排除しているわけではもちろんありません。

 これは、今言った要件を満たせば、十分にそれは満たせばいいわけでございまして、いわば条約との関係においてそれを担保し得るということと同時に、先ほど申し上げましたように、今の予備罪があっても、先ほど申し上げたような、殺人を目的として、国会を占拠するためにライフル二丁を持って、空気銃一丁を持っていて、防毒マスクを百個そろえたって予備罪が適用されないのであれば、明確に予備罪が適用されるようにしなければならないわけであります。

 今、予備罪がないものだけをやっていけばいいということではなくて、予備罪があるものについても明確に、捜査当局がしっかりと捜査し、逮捕し、そして未然に防ぐことができるようにするためにはどうすればいいかということを、まさにそれを今議論しているわけでございまして、最終的な決着点について、最終的などのような決着をしていくかということについて階委員から今御質問がございますが、そこについてはまだそれを検討中ということでございまして、しっかりと姿形を整理して法案を提出する際にお示しをさせていただきたい、このように考えております。

階委員 今の総理の発言も、個別具体的な犯罪についての準備罪というのも検討の対象になるということを言われましたので、ぜひその方向で我々はお願いしたいと思います。

 テロ対策の必要性は我々も認めておりますが、一方で、共謀罪の危険性は冒頭に御指摘したとおりです。必要最小限であるべきだ、ほかに代替手段があればそれでやるべきだと考えておりますから、法務大臣、具体的な事案をまずしっかり精査して、どのような穴があるかを確定してほしいんです。どのような穴があるかという具体例をこの委員会に提出していただきたいと思います。委員長、お願いします。

浜田委員長 理事会で協議いたします。

階委員 もう一点、もう一つの目的である条約の批准との関係で、外務大臣にお伺いします。

 総理も、新しい法整備をしないと条約を締結することはできないという立場で御答弁されているわけですが、この委員会で以前、山尾委員も指摘したとおり、共謀罪や参加罪を設けなくても、留保、宣言を行うなどしてTOC条約を締結している国はあるということです。

 網羅的に我々も知り得ませんので、外務省は既に百八十七カ国について情報を得ているというふうに伺っております、このTOC条約締結済みの百八十七カ国について、共謀罪や参加罪の制定状況の一覧表を出してほしいんですが、これも国対を通じて前々からさんざん言っております。

 改めて外務大臣にお願いします。提出していただけませんでしょうか。

岸田国務大臣 他国のTOC条約への対応につきましては、当然のことながら、主要国の状況については我が国はしっかり把握をしております。

 委員の方から、百八十七全てについて資料を出せということでありますが、百八十七カ国の中には、さまざまな法体系を持っている国が含まれています。そして、実際制定されている法律を見るだけではなくして、どのように運用されているか、それから背景がどうなっているか、それによって実態は変わってきます。よって、全てについてしっかり説明をする、あるいは網羅的に把握をする、これは大変難しいということを従来から説明させていただいていると思います。

 いずれにしましても、どの国もTOC条約に対して国内法をしっかり整備している、担保している、こういった説明はしっかり行っているわけであります。我が国も憲法九十八条二項との関係でしっかりこの担保法を用意しなければいけない、これは全く変わらないと思っています。

 ぜひ、我が国として、このTOC条約、世界百八十七カ国が締結している、国連加盟国の中で締結していない国はもはや十一カ国のみになってしまいました、国連加盟国の中でこの条約を締結していない十一カ国のうちの一つが我が国だというこの現状をしっかり鑑みて法整備をしていかなければならない、このように考えます。

階委員 ぜひこの資料も、百八十七カ国について外務省で調査を行ったということは既に伺っておりますので、この百八十七カ国のTOC条約締結に際しての担保法、どのように考えて手当てしたのかどうかということについても資料の提出をお願いします。

浜田委員長 理事会で協議いたします。

階委員 もう一点、共謀罪について伺いますけれども、この共謀罪ないしテロ等準備罪が制定された後、どのように運用していくのか、捜査はどうなるのかということも大変心配なわけです。

 話し合ったことを証拠として記録するためには、例えば通信傍受の拡大とか、それを又聞きした人を取り調べて証言をとるということで、こういうことがやられるのではないかというふうに懸念しております。通信傍受の対象範囲の拡大ということを考えていらっしゃるかどうか。

 それともう一点、取り調べで、不当に共謀の事実を取り調べによって供述させるということがないように、取り調べの可視化というのもどんどん広げていくべきだと思います。

 こうした捜査方法についてどのように考えられるのか。法務大臣、お願いします。

金田国務大臣 テロ等準備罪の捜査についても、現在行われている他の犯罪の場合と同様の方法で捜査の手がかりを求めて、必要かつ適正な捜査を行うことになるんだろうとは考えておりますが、ただいまその点はまだ法案自体ができていない状態であることをまず御理解いただきますが。

 通信傍受の件でございます。通信傍受の対象犯罪にはテロ等準備罪はなっておりません。したがって、テロ等準備罪の捜査のために通信傍受を用いることは考えておりません。

階委員 通信傍受の拡大は今後もないという理解でいいのかどうか、お尋ねします、法務大臣。今後も拡大しないということでいいですか。

金田国務大臣 まず、テロ等準備罪を新たに設けることに伴いまして、テロ等準備罪を通信傍受の対象犯罪とすることは予定しておりません。

 そして、将来、通信傍受の対象犯罪とするか否かという点までお聞きになっていらっしゃるとすれば、今後、各種の犯罪に関する捜査の実情等を踏まえながら、導入の必要性とかいろいろな観点から検討すべき課題で、その時点の課題であろう、このように思います。

階委員 やはり通信傍受の範囲の拡大の余地もあるということを否定しませんでした。これは大変問題。我々がやはり懸念している、一億総活躍ならぬ一億総監視社会がこれによってもたらされる危険もあるということを御指摘したいと思います。

 時間も限られてまいりましたので、もう一点だけ。

 債権法の改正も、今、大議論になっております。百二十年ぶりに民法の債権法の分野が改正ということで、法務委員会でも議論しておりますが、個人の連帯保証の見直しというのが一つの大きなテーマです。

 これは政府の方針として、日本再興戦略の中にも、担保、保証に頼らない融資の拡大、推進ということが挙げられているわけです。しかし、今回の債権法の改正の中では、公証人役場に行って公正証書をつくれば、第三者も依然として連帯保証をとられるという仕組みになっております。

 これは、ある地銀の個人の連帯保証の徴求状況の例を示したものですが、第三者保証に頼らないという政府の方針もあって、この数字を見ていただきたいんですが、経営者保証は七九・一%ありますが、経営者以外の第三者は保証全体の中の二〇・九%です。そして、その中でも、経営に実質的に関与していない純粋の第三者、下から二行目ですけれども、わずか一・五%。

 こうした純粋の第三者については、もはやこれは保証というものは必要ないのではないかと考えますが、法務大臣、いかがですか。

麻生国務大臣 同じことだと思いますので、私の方から。

 御指摘の第三者の個人保証というのは、これは、現状で例えば経営に実質的に関与していないものの、身内が創業というのをやってきておりますので積極的に支援をしたいといったような方々の例もありますので、そういう実例が存在している以上、法律として全面的に禁止するというのではなくて、一定の例外は除いて、公正証書による意思確認を必要とするといったような民法改正案が審議をされているところと承知をしております。

 制度論については今申し上げたとおりですが、私ども、金融機関を担当する金融行政におきましては、実際に担保の話は金融に直接関係してきますので、金融機関が担保、保証に必要以上に依存するというのはこれまでよくある話ですから、これでは質屋と変わらぬでしょうが、質屋と金融機関とを一緒にするのはいかがなものですかというようなことをこの四年間ずっと申し上げてきたんですが、取引先企業の内容とか、その事業、また、その成長可能性を適切に評価して融資を行うというのが重要なんだと。

 こうした観点から、第三者の個人保証については、これを求めないということを原則とする融資慣行の確立をやれということで金融庁の監督指針というのを設けまして、原則として第三者の個人保証は求めない旨を明記させております。

 金融庁としては、今後とも、金融機関に対し、担保、保証に必要以上に依存しないというような融資を行うように促してまいりたいと考えております。

階委員 では、法務大臣、どうぞ。もう時間が終わっていますから短く。

金田国務大臣 昨年の臨時国会において、階委員が本当にたくさんのいい指摘をされながら、三十二時間以上にわたる債権法の改正の議論をさせていただきました。そのときに非常に御熱心だったのが、この第三者保証の禁止ということをおっしゃっていました。

 だから、その点は、ただいま財務大臣からも言われましたとおりでありますが、私どもは、一方で、行政的な手法も監督指針も改正法案も、行政的な手法を通じたものであるか、民事上の基本的なルールに基づくものであるかの違いはあるものの、いずれも、保証契約については、契約自由の原則に委ねることとはせず、保証がもたらす弊害を念頭に入れて不健全な保証を抑止していこうという趣旨に基づくものである、このように考えております。

階委員 何か金融庁とは温度差がある気がします。

 私は、純粋な第三者の個人保証はこの機会に撤廃すべきだということを申し上げまして、質問を終わります。

 ありがとうございました。

浜田委員長 この際、緒方林太郎君から関連質疑の申し出があります。江田君の持ち時間の範囲内でこれを許します。緒方林太郎君。

緒方委員 民進党、緒方林太郎でございます。

 今の階議員の質問に続きまして、共謀罪について御質問させていただきたいと思います。むしろ、どちらかというと私は、外務省時代の最後、退職するときが国際法局条約課課長補佐で終わりましたので、条約の側から少しこの件を追ってみたいというふうに思います。

 まず、安倍総理に基本的なことからお伺いをいたしたいと思います。

 パレルモ条約、TOC条約、いろいろな言い方がありますけれども、国際組織犯罪防止条約で求められているのは共謀罪か参加罪を犯罪化することであって、そして日本はそのうち共謀罪を採用したということでよろしいですか、安倍総理大臣。

岸田国務大臣 TOC条約第五条において、委員がおっしゃるように、重大な犯罪に対する合意罪あるいは参加罪、どちらか一方を犯罪化することが求められています。

 我が国においては参加罪はありません。そして、重大な犯罪の合意罪については、一部満たす部分はあるものの、不十分であるという判断をしています。よって、それに対応するべく国内法を検討してきているわけですが、過去、御審議をいただいた経緯を踏まえて、今、新しい法律を検討しているというのが現状であります。

緒方委員 今国会、この議論をするときに、必ず出てくる言葉として合意罪という言葉があります。元条約屋さんとしてあれっと思ったことがありまして、合意罪という言葉をこれまで使ってきたのかなと思いまして、国会の議事録で検索をかけてきました、合意罪という言葉を入れて。ヒットした件数はゼロであります。共謀罪という言葉を検索してヒットしたものというのが百五十五件。

 ここからわかるのは、これまでの条約で定められている犯罪を合意罪と呼んで国会で議論したことはなかったはずであります。言いかえていませんか、岸田外務大臣。

岸田国務大臣 その過去の国会審議、全て確認したことはありませんが、私自身がこういった言葉を使っていますのは、TOC条約第五条の中において求められているのは、重大な犯罪を行うことへの合意、そして組織的な犯罪集団の活動への参加、この少なくともどちらか一つを犯罪化するということであります。その二つを犯罪化する、この内容を的確に表現するために、そして国会の審議をわかりやすくするために、御指摘のような、重大な犯罪の合意罪あるいは参加罪、こういった言葉を使用している次第であります。

緒方委員 多分そういう答弁が返ってくるんだろうなと思っておりましたが、法務省は、平成十四年、当初の段階での法制審議会の刑事法部会で、重大な犯罪を共謀することの犯罪化というふうに言っています。そして、国会での質疑でも、法務省の刑事局長は、条約第五条に相当する規定が犯罪化を義務づける共謀罪と言っています。

 そして、岸田外務大臣、昨年の国会審議でこのように述べております。重大な犯罪に係る共謀の犯罪化を締約国に求めている、よって最大の論点は共謀罪の扱いということになりますと答弁しておられます。ちなみに、調べてみたら、塩崎大臣が外務副大臣時代にも、第五条に共謀罪を定めていると述べているものがありました。

 これは、条約の犯罪をどう呼ぶかということであって、国内法とは関係ないです。これまで政府はずっと共謀罪と呼んできたんです。今国会になって合意罪というふうに言い方を変えているんです。これはおかしいんじゃないですかね、外務大臣。

岸田国務大臣 TOC条約の担保法につきましては、過去三度、法律を提出しております。残念ながら国会の御承認はいただけませんでした。

 その審議の際のさまざまな指摘等を踏まえて、今、全く新しい法律を用意しているわけです。これから政府で検討した法律を新たに国会に御承認をお願いしたい、こういったことで議論をしております。その内容等も踏まえて言葉遣い等も使い分けている、こういったことであると承知をしております。

緒方委員 それはおかしいですね。

 この国際組織犯罪防止条約というのは、既に二〇〇三年、国会で承認をされております。国会でこの条約の中身自体はもう既に固まっている。我々国会として承認をしたものでありまして、その条約で犯罪化されている罪の名前が共謀罪というのも、これはもう岸田外務大臣は答弁されているんです。これは共謀罪の扱いだと言っているんです。

 印象操作をしているんですね、政権が。これまで一度として合意罪という言葉を使っていない。そして、今、国内法の整備をすると言いましたが、国内法をどう整備するかによって条約で定められた犯罪の呼び名を変えるというのは、これはよこしまですよ。だめですよ、大臣。

岸田国務大臣 いや、過去に審議をお願いした法律には共謀罪という言葉を使っておりました。その審議との関係を説明する際に共謀罪という言葉を使う、これは当然のことだと思っています。

 新たな法律を、ここでこれから、今準備しているわけです。これは条約の話ではなくして法律。今法律をお願いして、その議論の際に使った言葉について説明させていただいています。これは新たな法律。新たな呼称があって当然のことであると思っています。

浜田委員長 緒方君、もう一回説明して。

緒方委員 当然でも何でもないですよ。私は国内法の話を一つもしていないです。国内法の話をしていなくて、TOC条約第五条に定められた犯罪は共謀罪ですねというのは、岸田外務大臣も法務省もずっと答弁をしてきた内容なんです。

 今回それを、呼び名を変えているというのは印象操作でしょうというふうに言っているんです、岸田外務大臣。(発言する者あり)

浜田委員長 静粛に願います。

岸田国務大臣 TOC条約そのものは、平成十五年、もう既に国会において御承認をいただいております。もうこうした手続は終わっておりますので、これを締結するためにはこの条約を誠実に履行するための国内担保法が必要だという議論を、その後ずっと行ってきたわけです。そして、その議論の中で、提出した法律に共謀罪という言葉を使っていたわけですから、共謀罪という言葉を使って議論をする、これは当然のことであります。

 ただ、残念ながらその法律が御承認いただけなかったわけですから、新たな法律を用意しようということで今検討しているわけです。その法律の中での呼び名が従来の法律と違うといって、これは全然論理上矛盾はないと思っています。

浜田委員長 もう一度、角度を変えて、緒方君。

緒方委員 国内法でそれを共謀罪と呼ぶかテロ等準備罪と呼ぶかという話は、私は全くその話をしていません。その話をしていないです。

 あくまでもパレルモ条約という条約があって、その第五条で定めている犯罪をこれまでどう呼んできたかというと、条約の解釈として、条約のその呼称として何と呼んできたかというと、岸田外務大臣がもう答弁で言っているとおり、重大な犯罪に係る共謀の犯罪化を締約国に求めている。これは条約側が求めているんです。

 岸田外務大臣は、共謀の犯罪化を締約国に求めていると。これは国内法の問題じゃないです。そして、よって最大の論点は共謀罪の扱いということになりますというふうに言っておられて、条約が求めているものを、重大な犯罪に係る共謀の犯罪化を締約国に求めていると言っているので、だから条約が我が国に求めているのは共謀罪ですよねということを聞いているだけであります、大臣。

岸田国務大臣 今の私の答弁についての御指摘でありますが、その説明は、この条約において求めていることはこういうことですということを説明した上で、よって問題になりますのは今国内法として議論をしている共謀罪でありますということを答弁したわけでありまして、これは全然矛盾はないと思っています。

緒方委員 今明確に述べませんでしたが、では、重大な犯罪に係る共謀の犯罪化を締約国に求めている、条約がそういうものを求めているということは、それはよろしいですね。今そう答弁されました。重大な犯罪に係る共謀の犯罪化を条約が締約国に求めている、これはこれでよろしいですね、大臣。

岸田国務大臣 重大な犯罪に対する合意を……(緒方委員「違う違う、参議院でそう言っていない」と呼ぶ)いやいや、条約が求めていること、これは従来から変わっていません。重大な犯罪を行うことの合意、これを犯罪化している。これは当然のことではないでしょうか。これは再三、先ほどからも、そして今までも、同じことを説明させていただいております。(発言する者あり)

浜田委員長 速記をとめてください。

    〔速記中止〕

浜田委員長 起こしてください。

 岸田外務大臣。

岸田国務大臣 この条約においては、金銭的利益その他の物質的利益を得ることに直接または間接に関連する目的のため重大な犯罪を行うことを一または二以上の者と合意すること、このようになっています。その合意を求めている、そのとおりであります。

緒方委員 私も、その第五条の規定はよく存じています。

 しかし、昨年の三月十八日、参議院予算委員会で、岸田外務大臣の答弁として、重大な犯罪に係る共謀の犯罪化をこの条約は締約国に求めているという答弁をしておられます、はっきりとした。議事録にも残っています。なので、それを確認しているんです。重大な犯罪に係る共謀、こうしたものの犯罪化を締約国に求めているということは、これはそれでよろしいですよねと、大臣がかつて答弁したことを確認くださいと言っているんです、大臣。

岸田国務大臣 よろしいですねと言われましたが、これは事前通告がありませんので、その答弁そのものについて確認をしておりません。その趣旨でよろしいですかねと言われても、確認しないことにはお答えすることはできません。(発言する者あり)

浜田委員長 速記をとめてください。

    〔速記中止〕

浜田委員長 速記を起こしてください。

 緒方君。

緒方委員 去年の三月十八日であります、参議院の予算委員会ですね。国際組織犯罪防止条約、これは、内容としまして、重大な犯罪に係る共謀、そして組織的犯罪集団への参加、こうしたものの犯罪化を締約国に求めています、よって最大の論点は共謀罪の扱いということになりますというふうに、これは岸田外務大臣の答弁であります。

 恐らくそういう認識をお持ちだったんだと思います。なので、当時やはり、これは共謀を犯罪化するものだというふうな認識がおありだったんだと思います。

 そして、これまで合意罪という言葉を国会で、このTOC条約第五条で求められる犯罪として使ったことは一度もない。というか、それ以前の問題として、合意罪という言葉について一度としてこの国会で使われたことがないんですね。今国会に入るまで一度もなかったということです。過去二十年間検索をかけていってみて、一個ぐらいあるんじゃないかと私は思いましたが、一個もないんです。

 これは、共謀と言うといま一歩イメージが悪いから、合意と言えばちょっとイメージが変わって受け入れられやすくなるんじゃないかということですが、中身は変わっていないんです。そして、岸田外務大臣も、重大な犯罪の共謀に係る犯罪化を締約国に求めていると答弁したということ。これを全部あわせて考えると、何となく政権の意向が見えてくるような気がするんですね。

 岸田外務大臣、では、共謀を合意に言いかえた理由、そして過去の答弁との整合性、いかにお考えですか。

岸田国務大臣 過去の法律の議論においては、この共謀罪というものが議論されてきました。その共謀罪の議論の中で、一般の方々が対象になるのではないか、こういった指摘が再三行われたわけです。

 そうしたさまざまな指摘にしっかり応えようということで、新たな法律を用意しようとして今議論しているわけですから、従来使っていた言葉ではなくして新しい発想で議論を行う、言葉も、用語についても、新しい用語でしっかり説明させていただき、不安がないように説明する、これは大変重要な取り組みではないかと思います。そういった、新たな法律の内容をしっかりと御理解いただけるためのさまざまな努力だと認識をしております。

緒方委員 つまり、印象が悪いから言い方を変えたということにしか聞こえないんですね。

 何度も言うとおり、私は、国内法でどう受けているかという話を一切いたしておりません。それは次の話でさせていただきます。

 条約というのは、既に先ほど言われたとおりです、平成十五年に国会承認が終わっている。そして、それがどういう中身かということについても、条約としては外務省、法務省の中で鋭意検討されてきた、よくわかります。そして、その積み上げの中に、例えば法務省の刑事局も、第五条で求めている犯罪は共謀罪だと、条約第五条に相当する規定が犯罪化を義務づける共謀罪と言っていますし、法制審議会の刑事法部会でもそういうことを言っているし、これは先ほど余計なことを言ったかもしれませんが、塩崎大臣が外務副大臣時代の答弁を見ても、第五条に共謀罪を定めていると。そういう答弁が山のようにあるんです。第五条で定めている犯罪が共謀罪だと。

 それは国内法がどうであろうとも、第五条で条約が求めている犯罪が共謀罪であるという事実は、国内法がどうであろうともそれは変わらないはずであります。変わらないですよ。大臣、おかしいですよ、それは。国内法がどう施行されるかによって条約の呼び方が変わるというのは、それは印象操作ですよ、大臣。条約が国内に何を求めているかということについて、それは変わらないはずであります。大臣、おかしなことを言っちゃだめですよ。(発言する者あり)

浜田委員長 静粛に願います。

岸田国務大臣 おっしゃるように、条約が求めているもの、これは全く変わりません、条約は全くそのまま存在するわけですから。そして、それが求めているのは当時の法律の議論においては共謀罪だというふうに御説明をしたわけであります。しかし、そういった議論をしましたが、御承認いただけませんでした。

 条約が求めているものは何なのか、これをいま一度検討して、そして今これから法律を提出させていただく。全然論理的に矛盾はないと思っております。

緒方委員 国内法がどうであるか、国内体制をどう整備するかによって条約で求められているものの呼び名が変わるというのは、ちょっと私には理解できないですね。

 条約で求めているものは、重大な犯罪に係る共謀の犯罪化を締約国に求めている。いろいろなところで、国会の中でも、法務省の刑事局長も、五条に相当する規定が犯罪を義務づける共謀罪と。条約第五条が求めているものは共謀罪だと何度も国会で答弁しているわけですよね。

 それを踏まえて、国内でそれを共謀罪と呼ぶか、それともテロ等準備罪と呼ぶかということは、私、そこはまたこの次の議論としてやらせていただきますので、そうではなくて、条約が国内に求めているものが共謀罪ということについてはこれまで累次の国会答弁がございます。それは国内法に影響されないものであります。国内法には影響されません、条約が求めているわけですから。それを、呼び名を変えるということはおかしいですよ。本当におかしいと思いますよ。これはただの印象操作ですよ、大臣。

岸田国務大臣 さっきから申し上げているように、条約の要請は全く変わっていません。そして、それに応えるために、当時は共謀罪が必要だという説明を国会にしていたわけですから、政府として共謀罪が必要だという説明、それは当然のことであります。しかし、残念ながら御承認いただけませんでした。

 ですから、新しい法律で、そして、特に御心配がありました、一般の方々が対象になるのではないか、こういった指摘に応えるために、一般の方々が対象にならないということを明確化することができないだろうか、あるいは準備行為を行わなければ処罰の対象にならないというようなことを通じて、こうした今までの審議における指摘に応えられないかどうかを今検討しているわけです。

 ですから、当時の法案においては共謀罪というものがあり、そしてそれが必要だという説明を政府としてする、それは当然のことであります。今、新たな法律を準備しているわけですから、その法律の中において条約が求めているものをしっかり用意して、国会で御承認いただきたいと考えております。

緒方委員 組織犯罪であることを明確にするとか、対象を絞り込むとか、準備行為が入るとか、そういう行為を入れたことによってなぜ共謀が合意に変わるんですか、大臣。

岸田国務大臣 まず、合意罪という言葉は、先ほど申し上げました、私がTOC条約第五条の中身を説明する際に言葉として使ったものであります。

 共謀罪は、過去、政府として国会に承認をお願いした法律の中で使っていた言葉であります。その法律は残念ながら御承認いただけなかったわけですから、今、新たな法律を用意しています。その際に、先ほど申し上げました、TOC条約第五条を説明する際に合意罪という言葉を使っているわけですから、その間に矛盾はないと思っています。

緒方委員 相当苦しい答弁だなと私は思いましたが、いいです。

 中身に入ります。

 今回検討されているテロ等準備罪というのは、条約に言う共謀罪、合意罪、いろいろ言い方はあるようでありますが、我々は共謀罪と言わせていただきますが、テロ等準備罪というのは条約に言う共謀罪を犯罪化するために過不足なく対応できるものであるというふうに思いますか、法務大臣。

金田国務大臣 テロ等準備罪という呼称でございますが、これは、本罪を新設する趣旨や本罪が対象とする犯罪を端的にあらわすものとして、この呼称を用いております。

 そして、実態を反映した呼称としても、テロ等準備罪においては、対象を組織的犯罪集団、すなわち重大な犯罪等を行うことを目的とする集団に限定して、そして、組織による犯罪で重大なものの典型がテロであるということで、重大な犯罪の合意に加えて実行準備行為が行われたときに初めて処罰されるものとすることを検討した結果の呼称であります。(発言する者あり)

浜田委員長 速記をとめてください。

    〔速記中止〕

浜田委員長 速記を起こしてください。

 金田法務大臣。

金田国務大臣 委員御指摘の、条約を過不足なくカバーするように、内容の準備をただいま検討しているところであります。

緒方委員 それでいいんです。恐らく、多分、読み上げられた答弁書が間違っていたんだろうなと思いますが。

 そうすると、条約自体はもう承認されている。先ほど、岸田外務大臣は留保はしないというふうに言われたと思います。ちょっと、私、外務省の条約課にいたときの感覚からして、条約が決まっている、もうこれは動かない、それに留保を加えない。けれども、国内法で担保するものの内容が物すごく伸縮するわけですよね、物すごく伸縮するんです。普通に考えて、こういうことってないんだと思います。

 私、外務省で条約課にいたときに、この義務規定にはこの法律で対応します、この義務規定にはこの法律で対応しますという、それを一個一個、内閣法制局との関係で詰めるわけですよね。ということは、今回、仮にテロ等準備罪で今のTOC条約に適切に対応できるということであれば、過去に国会に提出したものが過剰だったということではないかと思うんですよね。そうじゃないですか、大臣。

浜田委員長 岸田外務大臣。(緒方委員「国内法ですから、法務大臣ですよ」と呼ぶ)

岸田国務大臣 条約との関係においては、条約の担保法として十分かどうか、こうした観点でずっと議論は続いてきました。しかし、その中でさまざまな心配が、一般の方々が対象になるのではないか等の心配がありました。これに対してしっかり応えるためにはどうしたらいいかということであります。

 過大かどうかということについて、その量については、そういった観点から検討しているということでありますので、これは法律をしっかりとつくった上で、国会に提出した上で、それについて考えるべきものであると考えます。

緒方委員 そのとおりなんですね。条約というのがあって、条約でそれぞれ、第何条の義務についてはこれで応える、これで応えるということで国内法が整備されます。法務省はそうです。内閣法制局との関係でも一個一個整備をしていく。

 けれども、今回、恐らく、過去にこれぐらいのものがあるとしたら、ぐっと数が減ってくると思うんですね。それでもこの条約を過不足なく実施できるというふうに先ほど金田大臣は言われました。ということは、過去に国会に提出したものというのは、過大なものを求めていたということではないですかということを聞いています、金田大臣。

金田国務大臣 条約との関係につきましても今回検討を行って、国内法の内容を詰めているところであります。(発言する者あり)

浜田委員長 速記をとめてください。

    〔速記中止〕

浜田委員長 速記を起こしてください。

 金田法務大臣。

金田国務大臣 条約との関係で、いろいろなオプションがございます。しかし、それを、過去についてお聞きになっていると思いますが、その点については、私どもは当時の経緯を、突然の質問で、承知はしておりません。(発言する者あり)

浜田委員長 速記をとめてください。

    〔速記中止〕

浜田委員長 速記を起こしてください。

 まず、外務大臣から答弁願います。

岸田国務大臣 担保法につきましては、一般の方々が対象になるのではないか等の不安に応えるために、今、一般の方々が対象にならないということを明確にするにはどうしたらいいか、予備的な行為がなければ犯罪化できないということを明らかにする、こういった作業を行っています。

 これは、過去の審議を踏まえて政府としてそういった対応をとっているわけですが、その中で一貫して、このTOC条約の担保法として十分かどうか、こういったことはずっと検討が続いてきているわけであります。

 今、絞り込まれる云々とおっしゃいましたが、結果としてどうなるか。これは、まず国会における国民の皆さんの不安を払拭するためにはどうしたらいいかという観点から今新しい法律を用意しているわけですから、それがTOC条約の担保法として十分かどうかも検討した上で、結果として絞り込めるかどうかはこれから検討してみなければわかりません。これはこれからの検討の結果でありますので、今の段階で絞り込むとかなんとか、結果を予断を持って申し上げることはできないということを御理解いただきたいと思います。

緒方委員 不安を払拭するためにいろいろ検討した結果、内容が変わるんだと思いますね。巷間言われているのは、少し犯罪の量が、少しか多くかわかりませんけれども、削られると。

 削られる部分というのは、不安をあおる部分だったわけですよね。けれども、この不安をあおる部分というのは、条約を実施するために必要かつ十分なものではなかったと判断されるわけですよ、そう考えると。なので、過去に出したものというのは、TOC条約を実施するために、最小限、必要最小限に必要なもの以外のものが国内担保法として入っていたということですねと聞いているんです。

 これは法務大臣ですよ。岸田外務大臣の肩をたたいて、よろしく頼むとかはだめですよ、法務大臣。

安倍内閣総理大臣 先ほど岸田大臣からも答弁させていただき、また金田大臣からも答弁をさせていただいておりますが、まさに今回私たちが準備しているものはテロ等準備罪でございまして、今までのかつて共謀罪と言われたものとの違いは、まず犯罪を目的とした組織が構成されているということの要件をつけ、かつ準備行為があるという要件をつけました。この要件をつけることにおいては、外務省の国際法局も、パレルモ条約との関係において、これを担保することを毀損するものではないという判断をしました。

 さらに、緒方委員がおっしゃっていて今議論していることは、どういう対象にしていくかということで絞るのか、絞ったら、では絞る前のものは余計だったかどうかという議論だろうと思います。

 まだ我々は、その中において、担保する上において最小限のものは何かということについて、今しっかりと国際法局と法務当局において議論をしている最中でございます。その上において、もし絞られていたら、では前のものは余剰だったのかどうかということについては、実際にそうなった段階においてしっかりと私たちは答弁できるように用意をしていきたい、このように思っております。

緒方委員 犯罪の数ではなくて、過去の条約の担保法との関係では、例えば主体を絞り込む、この話がありますね、そして準備行為を入れる。これだけでもう既に、過去に求めていたものよりも少なくとも絞り込まれているわけです。

 過去にそういうことを求めていたことは、条約を担保する今回出してくるものが過不足なくやれるということである以上、論理的に考えて、過去にやった部分は、条約が求めているもの以上のものを国内法でやろうとしたということですよねということを先ほどから金田大臣に聞いているんです、金田大臣。

金田国務大臣 過去の法案も条約の趣旨に沿ったものであります。

 しかし、条約はさまざまなオプションを許容しておりますので、今回はその点を含めて検討をしているものであります。

緒方委員 つまり、いろいろなオプションがある、そのとおりです。義務を実施するためにいろいろな、国際条約というのは一つですけれども、それを国内でどう実施していくかということについては、それは国内に一定の裁量がある、そのとおりです。大臣、そのとおりですね。

 しかし、過去に提出した法案については、今の大臣の説明では、いろいろなオプションの中で必要最小限のものを出してきたということではなかったということを今大臣は示唆されましたね、金田大臣。

金田国務大臣 先ほども申し上げました。過去の法案も条約の趣旨に沿ったものであったわけであります。

緒方委員 趣旨に沿ったということはわかりました。いろいろなオプションがある中で日本の国内としてそれを実施しようとしたわけですが、今回、主体を絞り込む、そして準備行為を入れるという形で、少なくとも答弁でもう絞り込まれていることは明らかですね。過去の法案で求めていたよりも対象が狭められているということは事実です。

 だから、いろいろなオプションを検討した、そのとおりなんです。けれども、過去に求めていたものは少なくとも必要最小限ではなかったですよねということを確認的に聞いているんです、金田大臣。

金田国務大臣 実行準備行為の付加、組織的犯罪集団の関与といったような、いずれも条約がオプションとして許容しているもの、いずれのオプションを選択するか、そういったものも含めて、成案ができた段階で御説明を、整合的に説明していきます。(緒方委員「答えていない。大臣、もう一回」と呼ぶ)

浜田委員長 では、もう一回だけ。緒方君、もう一回確認してください。教えてやってください。

緒方委員 いろいろな可能性があるというのは、それはそのとおりです。私も、どのタイプで条約を実施しようかと頭をひねらせたことは何度もあります。

 今回、犯罪の数を絞り込むというのはこれからだというのはよくわかりました。なので、その話ではないです。ただ、準備行為を入れるということと主体を絞り込むという行為については、少なくとももう既に、何らかの形で絞り込むということが、過去のものよりも狭いということが明らかになってきています。それは、少なくとも説明としてもう明らかであります。

 だから、過去に求めていた残りの差分の部分は政府として条約の範囲を実施するのに必要最小限のものではありませんでしたねということを確認的に聞いているんです。これは別に何か、そんな難しいことではなくて、単なる引き算の問題でありまして、金田大臣、どうぞ。

金田国務大臣 どのオプションを選択するかについてを再検討したものを言っているわけであります。したがって、法案提出後に、かつての法案との関係についても、御指摘の点については十分に説明をしていきたい、このように考えています。(発言する者あり)

浜田委員長 大臣、もう一度答弁願えますか。同じ御答弁でも構いませんが、少しでも前向きの答弁ができれば、そのように願います。(発言する者あり)

 静粛に願います。

金田国務大臣 組織的犯罪集団の関与、実行準備行為の付加は、いずれも条約がオプションとして許容をしているものであります。どのオプションを選択するかについては再検討をしたものであります。法案としてしっかりと成案をいただいた、でき上がった時点で、法案提出後に、かつての法案との関係も含めて十分に説明をしていく、その中で説明を申し上げたいと申し上げたとおりであります。

緒方委員 では、もう質疑時間がそろそろ終わりますので、最後に、資料要求をお願いしたいと思います。

 TOC条約を実施するために国内法を出されました、そのときにどういう国内法を整備したのかということ。どういう義務関係を、この条約の義務に対してこの法律を当てましたという、いわゆる担保表というものをつくります。これは外務省が必ず内閣法制局に出しているものでありまして、しかも、極秘でも何でもなくて、平資料であります。TPPのときは全て出てきました。

 過去の国内担保法を出したときの、個別のTOC条約の義務と国内法の整合関係について作成した担保表、担保法を提出していただきたいと思いますが、では、金田大臣。

岸田国務大臣 資料の提出につきましては、基本的に、理事会の御判断に従う次第であります。

緒方委員 これは秘匿性の全くない資料でありますので、委員会として提出をお願いいたしたいと思います。取り計らい、お願い申し上げます。

浜田委員長 理事会で協議いたします。

緒方委員 これを踏まえまして、質疑を終わりたいと思います。

 ありがとうございました。

浜田委員長 この際、大西健介君から関連質疑の申し出があります。江田君の持ち時間の範囲内でこれを許します。大西健介君。

大西(健)委員 民進党の大西健介でございます。

 安倍総理、施政方針演説の中で、電通の過労自殺に触れられ、御冥福をお祈りするとともに、二度と悲劇を繰り返してはならない、強い決意で長時間労働の問題に取り組むということで、この長時間労働問題、働き方改革を政権の最重要課題と位置づけられて、これをしっかりやっていくんだという強い意気込みを施政方針演説の中でも表明されました。

 ですから、私は、ぜひこの問題については総理がみずからお答えをいただきたいというふうに思っております。私は厚生労働委員でもありますので、塩崎大臣、また何度でもやりとりする機会はありますので、きょうはぜひ総理にお答えいただきたいということを冒頭申し上げておきたいというふうに思っております。

 昨日の夕方でありますけれども、安倍総理が議長を務めている働き方改革実現会議の第六回の会合というのが行われました。きょう、新聞報道等もありますけれども、私も加藤大臣のブリーフというのも見させていただきましたけれども、それを見ますと、例えば、連合の神津会長がこのようなことを言われたというふうに聞いております。

 具体的な上限時間の検討に当たっては、現行の時間外労働限度基準告示の一カ月四十五時間、一年三百六十時間を尊重すべきで、一カ月百時間などと設定することは到底あり得ず、過労死認定ラインとの間の距離感を明確にすることが必要である。

 こういう発言があったということでありますけれども、これは間違いありませんか。

加藤国務大臣 昨日開催いたしました働き方改革実現会議で長時間労働の是正について議論があり、各有識者から御議論をいただく中で、今お話がありました神津議員から、時間外労働時間の限度を定めた大臣告示を尊重すべきである、百時間の基準というのはあり得ない、そして、過労死基準との距離感を明確にすべき、そういう趣旨の御発言がございました。

大西(健)委員 三六協定に定める四十五時間という時間を大事にすべき、これは我が党の大串政調会長も申し上げているところでありますし、これまでの議論でも再三申し上げてきましたけれども、過労死ラインと同じ百時間というのは余りにも長過ぎる、これは全く我々民進党の考え方と同じでありますけれども、この実現会議の議長として、総理、今の連合会長の御意見をどのように受けとめられましたか。

加藤国務大臣 従前から申し上げておりますように、まさにこの場での議論、また、今の神津議員だけではなくて、この会議においては多くの方々から、時間外労働の上限を、法律で強制力を持った上限を設定することは必要だというのは、かなりの方の御意見だったと思います。

 その上で、上限設定に当たっては、労働者の健康確保の観点はもちろんのこと、ワーク・ライフ・バランスや、女性や高齢者が働きやすい環境となる視点が大事だ、また他方、業務の継続性に支障がないよう現場の実態を踏まえた配慮が必要である、また、複数月の平均を含め、脳・心臓疾患の労災認定基準などを参考に柔軟な上限設定をすることが望ましい、こういう御議論が出てきたわけでありまして、これからこうした議論を踏まえて、また次回も実現会議でこの長時間労働の是正について議論をしていきたいというふうに思っております。

安倍内閣総理大臣 この神津議員の発言に対してどういう印象を持ったかという御発言でありますが、神津議員はいわば労働者の代表としての思いを述べられたんだろう、このように受けとめたところでございます。

大西(健)委員 私は、まさに労働者の側に立って正論を述べられたと思いますし、先ほども申し上げましたけれども、私どもの考え方と一致をしているというふうに思っております。

 一方で、これは時事通信の報道ですけれども、これに対し、経団連の榊原会長は、百時間の政府原案をまあまあ妥当な水準と評価というのがあるんですけれども、これは事実でしょうか。いかがですか。

加藤国務大臣 きのうの会議での榊原議員の発言としては、現状、三六協定に関しては、制度上実質的に無制限に残業ができるため、労働者保護の観点から労働時間の上限規制は必要である、こういう御発言はあったと承知しています。

大西(健)委員 これは時事通信の報道ですので、この発言があったかどうかはちょっとわかりませんけれども、確認をさせていただきました。

 それから、きのう、事務方の説明では、次回、二月十四日の会議に事務局案の提出がされるというふうに説明があったということですけれども、これは事実でしょうか。

加藤国務大臣 きのうの議論を得て、総理から、次回の実現会議で法改正のあり方についてより具体的な議論ができるよう、事務局に対して案を提示するように指示があったということであります。

大西(健)委員 次回、事務局案という具体的なものが出てくると。

 一方で、これまでの議論でも、三月をめどに実行計画を取りまとめるということでありますけれども、これは毎週毎週やるのかどうかわかりませんけれども、三月末まで考えても七週しかありませんから、では、これはどれぐらい時間をかけて議論をするのか。

 この時間外労働の上限の話ばかりやっているわけではなくて、例えば同一労働同一賃金の問題とかもやらなきゃいけないので、この上限を具体的に定めるに当たって、せいぜい二、三回ぐらいしかできないんじゃないかと思うんですけれども、どれぐらいの議論を重ねて結論を得るつもりなんでしょうか。

加藤国務大臣 いずれにしても、長時間労働の是正のみならず、同一労働同一賃金等を含めて、今年の三月末を目途に実行計画をつくるということでありますから、それに向けて議論を詰めていく必要がありますので、今の段階でまだ次の日程を確定しているわけではありませんけれども、かなり精力的に御議論をしていただきたい、こういうふうに思っております。

大西(健)委員 どんどん我々の知らないところで根回しがされて、十四日には事務局案が出てきてぽんと決まるみたいなことはあってはならないというふうに思いますので、そのことは申し上げておきたいというふうに思います。

 あわせて、先月の二十九日に、残業上限、月平均六十時間、繁忙期百時間で政府調整という内容の記事が一斉に各紙に出ました。それに先立って、二十六、二十七日だったと思いますけれども、私とそれから井坂委員が続けてこの問題についてこの予算委員会でお聞きをしたときには、上限の具体的な目安については、貝のように口を閉ざして一切答えを拒否するという態度でありましたけれども、マスコミにはリークするというやり方には、私は強く抗議を申し上げたいというふうに思います。

 その上で、その中の新聞記事の一つですけれども、これは朝日新聞の記事でありますけれども、これをごらんいただきたいと思うんです。

 ここに表がありますけれども、改めておさらいをしますと、労働時間については、労働基準法で一日八時間、週四十時間というのが法定の労働時間として定められている。これが、同法、労基法の三十六条に基づく労使協定、いわゆる三六協定ですけれども、これを結べば、四十五時間、年間三百六十時間までは残業が可能になります。さらに、これに特別条項というのをつけますと、最大半年まで無制限で残業させることが可能というのが今現行の制度であります。

 このため、政府は、この労基法を改正いたしまして、今回、新たに、月平均六十時間、年間で最大七百二十時間という上限を設けるとともに、さらに、繁忙期には月百時間、二カ月平均八十時間というのを認めるという案を検討しているということでありますが、これは一部のメディアが報じただけじゃなくて、みんな同じ内容のものを報じていますので、この内容で今調整が進められているんだというふうに思います。

 また、先ほど私が紹介したきのうの実現会議での連合の神津会長やあるいはその他の委員の発言も、この百時間というのを前提にしたこういう議論がなされているわけであります。

 ここで一つ確認をしておきたいのは、私たちは、前回、八十時間という話が一部メディアに出たので、八十時間は過労死ラインと同じで長過ぎるんじゃないかという議論をさせていただいたんですが、ここに出ているように、八十時間どころか百時間を認めるという内容が出てきて、私も腰を抜かしました。改めてしっかり確認をさせていただきたいのは、先ほど、連合の神津会長も百時間は到底あり得ないというふうに言われておりますけれども、百時間では、これは働き方改革どころか過労死が続出するんじゃないかと思っているんです。

 これは、出典が書いてありますけれども、「健康で充実して働き続けることのできる社会へ 過労死ゼロを実現するために」という厚労省が出している啓発パンフレットの中から抜粋をさせていただいたものです。

 わかりやすく図にもしてありますけれども、囲みの部分を読ませていただきますと、脳・心臓疾患に係る労災認定基準において、週四十時間を超える時間外・休日労働がおおむね月四十五時間を超えて長くなるほど、業務と発症との関連性が徐々に強まり、発症前一か月間におおむね百時間または発症前二か月間ないし六か月間にわたって一か月当たりおおむね八十時間を超える場合には、業務と発症との関連性が強いと評価される。これがいわゆる過労死ラインと呼ばれるものです。

 つまり、ここに書いてあるように、月百時間、あるいは二カ月から六カ月で一カ月当たりが八十時間ですから、今示されている繁忙期百時間、そして二カ月平均八十時間というのは、まさにこれは過労死ラインそのものですよ。過労死ラインそのものなんです。

 ですから、私は、法律でこれを定めるということは、過労死するまで働かせてもオーケーという間違ったメッセージを発することにつながりかねない。例えば、ブラック企業の経営者が、法律に八十時間働かせていいと書いてあるんだから、こういうことを言いかねないと私は思うんです。

 そういう意味で、この百時間というのは、先ほど私が申し上げました施政方針演説で総理が二度と悲劇を繰り返してはならないと言っていることと矛盾するんじゃないですか。総理、いかがですか。

加藤国務大臣 マスコミの記事のお話がありましたけれども、これについて我々からどうのこうの言う立場ではありません。従前から申し上げていますように、まさにこれから、きのう議論いただいたわけですけれども、働き方改革実現会議で御議論いただくということであります。

 その上で、今議員から、いわゆる過労死の認定基準、通称、野党の皆さん方は過労死基準、こういうふうに言われているわけでありますけれども、こうした過労死基準についてはクリアするといった、健康を確保する、これは当然のことだというふうに我々も思っておりますし、それに加えて、女性や高齢者が活躍しやすい社会、あるいはワーク・ライフ・バランスの実現、そういったさまざまな観点から議論を進めていく必要があるというふうに思います。

安倍内閣総理大臣 野党の皆さんは、この月百時間という数字のみに着目をし、脳・心臓疾患の労災認定基準、野党が言う過労死基準をクリアしていないのではないかと批判をしておりますが、誰に対して何時間の上限とするかを決めるに当たっては、最低限この労災認定基準をクリアするといった健康の確保を図ることが当然のことであります。その上で、女性や高齢者が活躍しやすい社会とする観点や、ワーク・ライフ・バランスを改善する観点など、さまざまな視点から議論する必要があります。

 誰に対して何時間の上限とするかは非常に重要な議論であり、粗雑な議論はできないと考えております。政府としては、働き方改革実現会議において、有識者、労働側、そして使用者側の意見も伺い、実態を見ながらしっかりと議論をして、そして実行計画で明確に結論を出していく考えでございます。

大西(健)委員 先ほど加藤大臣は報道には答えられないと言いましたけれども、きのうの神津会長だって百時間について発言されているんですよ。これが原案なんですよ。

 ですから、これはしっかり議論しなきゃいけないというふうに思いますし、今総理は誰に対して百時間がとか言われたけれども、誰に対しても百時間というのは過労死するラインなんですよ。これが医学的に証明されているラインなんです。

 ですから、医学的にも百時間働くと死んじゃいますよというのがこの過労死ラインですから、そもそも、何時間になるかは私も最終的には実現会議でしっかり議論して決めてもらったらいいと思いますが、ただ、百時間というのは、これは総理が何度も施政方針演説で言われている、二度と悲劇を繰り返さないということにはならないですよねということを確認しているんですが、もう一度、いかがでしょうか。

    〔委員長退席、葉梨委員長代理着席〕

加藤国務大臣 繰り返しての答弁で恐縮でございますけれども、今委員がお示しの、月であれば百時間を超える、二カ月から六カ月にわたっては八十時間を超える、まさに過労死の認定基準ということであります。皆さん方は過労死基準とおっしゃっているわけでありますから、そのことも、当然そうした条件はクリアしていくことによって健康の確保を図っていくことは重要でありまして、そういった観点からしっかりと議論を進めさせていただきたいと思います。

大西(健)委員 総理、先ほど来何回も申し上げて恐縮ですけれども、きのうの連合の神津会長は百時間は到底あり得ないと言っているんです。我々も到底あり得ないと思っているんです、これは過労死ラインですから。過労死、死んじゃう時間ですから。

 ですから、死んでしまうような時間が上限なんというのはあり得ませんよねというのを繰り返し申し上げていますし、これは総理が、何でこの働き方改革をやるのか、そして何で働き方改革の中でこの時間外労働の上限を設定するのか。それは高橋まつりさんの事件を、二度と悲劇を繰り返さないためにやると言っているんですから、百時間はあり得ないですよねということを重ねて申し上げています。

 総理、もう一度お願いいたします。

安倍内閣総理大臣 もう一度答弁ということでございますが、先ほど申し上げましたように、大西委員も今、百という数字のみに着目をして、そして脳・心臓疾患の労災認定基準、野党が言う過労死基準をクリアしていないのではないかと批判をしておりますが、誰に対して何時間の上限とするかを決めるに当たっては、最低限この労災認定基準をクリアするといった健康の確保を図ることは当然のことであるということは再々申し上げているとおりでございます。

 その上において、女性や高齢者が活躍しやすい社会とする観点や、ワーク・ライフ・バランスを改善する観点など、さまざまな視点から議論をしていく必要があるというふうに我々は考えているわけでございまして、誰に対して何時間の上限とするかは非常に重要な議論であり、粗雑な議論はできない、こう考えております。

 政府としては、働き方改革実現会議において、有識者、労働側、使用者側の意見を伺い、実態を見ながらしっかりと議論をし、そして実行計画で明確に結論を出していく考えでございます。

    〔葉梨委員長代理退席、委員長着席〕

大西(健)委員 総理も今、粗雑な議論はできないとおっしゃっていますけれども、十四日にも事務局案が出てきて、ほとんど十分な議論がなされないままにこのことが押し切られてしまうんじゃないかということを我々は懸念しているわけです。

 先ほど来、総理の態度を見ていると、働き方実現会議の議長は総理ですよ、総理が議長なんです。そして、総理が、二度と悲劇を繰り返さないために政権の最重要課題としてこの問題に取り組むとおっしゃり、さらに言えば、我々に対して省令に丸投げしているじゃないかというような批判までされているから、我々はこの議論をさせていただいているわけです。

 そこで、では次のパネルをごらんいただきたいんですけれども、今申し上げましたように、総理が議長を務めている働き方実現会議の名簿と労働政策審議会の名簿を並べてパネルにさせていただきました。

 ここにありますように、この働き方実現会議、労働者側の代表は連合の神津会長ただ一人です。それ以外は、丸をつけましたけれども、経済界の代表の方が七人入っているということであります。

 対して、私たちはかねてから、本来この問題はILO条約に定める三者構成主義に基づいた労働政策審議会の場で議論をすべきだというふうに申し上げてきましたけれども、労政審は、ここにありますように、労働側代表とそれから使用者側代表は十名ずつの同数になっているんですね。

 ですから、下にも書きましたけれども、この両者の違いというのは明らかなんです。働き方実現会議は、一人しか労働側の代表が入っていない、対して経営側が七人いる、こういう状態になっているわけです。

 きのうの会合のブリーフの内容を見ても、経営側からは、先ほど少しお話も出ていましたけれども、硬直的でない柔軟なルールにしてくれ、こういう意見が相次いで出されています。それに対して、働く側に立った意見は、百時間は到底あり得ないという神津会長の意見のみであります。ですから、これを見たときに、やはり、この働き方実現会議の委員構成というのは果たして公正公平なものと言えるのかというふうに私は思います。

 そして、安倍総理は、これまでも、世界で一番企業が活躍しやすい国を目指すと公言されてきましたけれども、これでは、経済界の意向ばかりに配慮して、本当に、総理が繰り返し言っている、二度と悲劇を繰り返さない、過労死をなくすための上限規制の設定が可能なのかと私は疑いたくなるんですけれども、この点、総理、いかがでしょうか。総理、お願いします。

加藤国務大臣 実現会議の委員構成のことでお話があったので答弁をさせていただきたいと思うんですが、まず一つは、これまで労働政策審議会で決して議論されていないわけではないということは、もう委員が御承知のとおりでございます。

 直近でいえば、平成二十七年の二月の建議においても、時間外労働に係る上限規制の導入や、全ての労働者を対象とした休息時間、いわゆる勤務間インターバル規制の導入については、結論を得るに至らなかった、こういう状況があるというのは事実であります。

 そういったことも踏まえて、この働き方改革実現会議で、総理みずからが議長になり、そして、経済界、労働界のトップ、有識に集まっていただいて、レベルを上げて、まさに実行計画で明確に結論を出すということにしております。

 人数に隔たりがあるということでありますけれども、トップに集まっていただくということに意味があって、別にここで多数決で物を決めるわけでもございません。また、私が、あるテレビ番組で連合の神津会長と一緒になったときにも、神津会長からは、一概に一人だから云々というふうに自分は思っていませんよ、こういうお話もいただいたところでございます。

 いずれにしましても、労働側の意見もしっかりと伺いながら、総理が再三申し上げておりますように、働く人の視点、立場に立って議論を深めて合意形成をしていきたい、こういうふうに思います。

安倍内閣総理大臣 ただいま大臣から答弁をさせていただいたとおりでございまして、今まで労政審でこれはずっと議論してきたわけですね。しかし、結論を得るに至らなかったのが事実でございます。それは事実なんですよ。我々は決して軽視しているわけではないわけでありまして、これは平成二十七年二月十三日の労政審の議事録の結果にもそのように書いてあるわけでございますが、そこで、我々は、この働き方改革実現会議では、私が議長になって、労使のトップや有識者の皆さんに集まっていただき、レベルを上げて議論をし、そして実行計画で明確に結論を出す、こう申し上げているわけでございます。

 委員の方々の議論を聞いてみますと、確かに経営者側の代表の方も入っておられます、また中小企業を代表する方々も入っておられますが、しかし、さまざまな、これは経営者、労働者という二分法で二分できない方々にもたくさん入っていただいて、その方々からさまざまな観点から御議論をいただいているわけでございます。

 だから、決して、そういう方々が経営者の論理に立って発言しておられるというふうに私は受けとめてはいないわけでありますが、それは議事録等々で確認をしていただければ明らかになってくるのではないか、このように思うわけでございます。

 いずれにいたしましても、私たちは、この時間外の労働時間を明確に責任を持ってお示ししていくという責任をまず果たしていきたい。そのためのしっかりとした議論を今行っていく。その議論を行っていく上において的確なメンバーを選ばせていただいた、このように思っております。

大西(健)委員 今の加藤大臣、それから安倍総理の答弁を聞いていると、労政審で結論が出なかったからこの委員構成の働き方実現会議にしたんだと。つまり、労政審だと結論が出ないから、その委員構成を労働側一人にして経営者七人にしてやったみたいにもこれは聞こえかねないわけですよ。つまり、ルールを変えるということですよ。こっちのルールでは自分たちの思うようにならないので、ルールを変えてこっちの場でやろうと言っているようにしか私には聞こえません。

 それからもう一つ、加藤大臣から、多数決で決めるわけじゃないんだとおっしゃいました。であるならば、もう明確に、きのうの冒頭から、働く側の代表は一人しか入っていませんけれども、連合の会長は百時間は到底あり得ないと言っているわけですから、それを多数決にしないというんだったらば、押し切って百時間なんということはないですよね。

加藤国務大臣 先ほど申し上げましたように、そうした労働側の意見、また経営側の意見、そしてまたさまざまな有識者の方々にも入っていただいておりますから、そうした方々によって、そして、総理が常に言っておりますように働く人の立場に立って議論を深めて合意形成を図っていきたい、こういうふうに思います。

大西(健)委員 もともと一人しか入れてもらっていないわけですけれども、その労働側の代表の人が百時間は到底あり得ないと言っているわけですから、これはもう何か議論をしたら百時間の話が容認できるという話ではないと私は思いますので、ここはしっかり、その声を数で押し切って決めてしまうみたいなことはないようにしていただきたいというふうに思います。

 この百時間の話、テレビをごらんの皆さんに、またちょっと違う例えでお話をしてみたいと思うんですけれども、例えば、四十五キロという速度制限の道路があるとします。ただ、通勤時は、急いでいる場合は四十五キロを超えて走ってもいいですよということになっていて、車の中には百二十キロ、百五十キロ出して走る車がいるために事故が多発している。こういうことを考えたときに、では、四十五キロなんだけれども、通勤時、急いでいるときは、上限がないから、そこに百キロという上限を設ければ、これは事故がなくなるんでしょうか。なくならないですよね。

 私は、やはり、この場合も、本来の制限速度である四十五キロ、ここから議論をスタート、四十五キロをまずどうやったら守ってもらえるのかということを議論のスタートにするべきだと思うんです。

 ですから、先ほど申し上げましたけれども、我が党の大串政調会長からは、我々は、具体的な労働時間の上限を議論する場合にも、限度基準告示に定める三六協定の限度時間、月四十五時間、年間三百六十時間というこの時間を大事な基礎と考えるべきだと。そして、少なくとも、先ほど言ったように、四十五キロ制限のところを百キロ、急いでいるときでも最低限百キロは守ってくださいねとやったって事故はなくならないのと同じで、百時間では過労死ラインと変わらないわけですから、これは私たちも過労死をなくすことにはなり得ないというふうに思っています。

 そこで、総理、改めてお聞きをしたいんですけれども、時間外労働の上限を今回法律で定めるということは、これは何のためにやるんですか。

加藤国務大臣 これまで申し上げてまいりましたように、その具体的な上限、今はある意味では大臣告示等になっておりまして、その大臣告示においても、特別条項を結べば青天井になっている。そうした状況を踏まえて、そして、先ほど申し上げましたように、各委員からも、上限の設定をしていく必要というのはあるんじゃないか、こういう御議論がありました。

 そういった意味においても、法律に明記することでそうした具体的な上限を設定していく、罰則つきのそうした上限設定をしていく、そのためにも法律という形でやっていく必要がある、こういうふうに考えています。

安倍内閣総理大臣 これは、既に答弁もさせていただいておりますけれども、この大臣告示等々がございますが、しかし、実際、それを超えているという実態があり、あるいはまた過少申告をするように促されているという実態があるという中において、今回は、しっかりと法定で定めて、かつ罰則をつけるという決断を我々はしたところでございます。

大西(健)委員 私は、今の加藤大臣の答弁は間違っていると思っているんですね。

 つまり、確かに、一部に、現在、三六協定を結べば青天井になっている時間外労働に上限ができるんだから、それがたとえ百時間であってもないよりはましだ、こういう考え方があるのも事実ですけれども、上限がないから、そこにとりあえず上限をつくればそれでいいんだというのは、これは私、そんなことのためにやっているんじゃないと思うんです、この議論というのは。

 これは、何度も言っていますように、総理が施政方針演説で述べられたように、二度とあの電通事件のような悲劇を繰り返さないためにやっているんじゃないんですか。だから、過労死をなくすためですよ。それから、もっと言えば、先ほど来、総理も御答弁の中で言われていますけれども、ワーク・ライフ・バランスの充実を図って、女性活躍をする、そういうためにこういう長時間労働規制というのをやっていきましょうと言っているわけですよね。

 百時間というのは、テレビをごらんの皆さんにもうちょっとわかりやすく言いますと、残業時間の上限が繁忙期百時間ということは、月の総労働時間でいうと二百七十三時間までオーケーということなんですね。これを、一カ月二十日間働くと考えて、九時始業の会社で、お昼休みがあると考えた場合には、毎日十一時半過ぎまで働く。毎日十一時半過ぎまで働く、こういうことになると、これはもう家と会社の往復だけですよ。

 これでさっきから言っているように本当にワーク・ライフ・バランスなんて充実するんですか、働き方を改革することができるんですか。単に上限を設定することが目標じゃないでしょう。電通事件の悲劇を繰り返さないこと、ないしは働き方を改革すると言っているんですから、それはとてもじゃないけれども、この百時間では働き方改革にならないんじゃないですか。総理、いかがですか。

加藤国務大臣 まさに、健康の確保をする、これは当然の前提で、その上で、ワーク・ライフ・バランスの確保、また女性や高齢者も働きやすい環境をつくっていく、そうしたさまざまな観点から議論をし、そして議論が実効性のある規制になるように法律の改正をしていこうというのが今我々の趣旨であります。

 したがって、先ほどいわゆる過労死認定基準のお話がありましたけれども、それをクリアしていく、それは当然のことであります。

安倍内閣総理大臣 これは再三申し上げているとおり、また加藤大臣からも答弁をさせていただきましたが、誰に対して何時間の上限とするかを決めるに当たっては、最低限労災認定基準をクリアするといった健康の確保を図ることが当然であります。その上で、女性や高齢者が活躍しやすい社会とする観点や、ワーク・ライフ・バランスを改善する観点など、さまざまな視点から議論する必要があると思っています。

 誰に対して何時間の上限とするかは非常にこれは重要な議論であり、粗雑な議論はできないということは当然のことであろうと思います。政府としては、働き方改革実現会議において、有識者あるいは労働側、使用者側の意見を伺い、実態を見ながらしっかりと議論をし、実行計画で明確に結論を出したいと考えております。

大西(健)委員 先ほど来聞いていて、本当に、議長としての総理のやる気というのを全く感じないんですけれども。私は、先ほど来申し上げているのは、百時間なんというのは、もう死んでしまう、過労死してしまうものなので、これは到底あり得ない。これは連合会長も申し上げているとおりです。

 もう一つ言っているのは、青天井のところにとりあえず上限ができるんだからそれでいいじゃないかということをやるためにこの話をやっているんですか。そうじゃないでしょう。総理も今言われたように、ワーク・ライフ・バランスの充実や女性活躍に資するためにやっているんでしょう。百時間なんといったら、もう家と会社の往復だけで何にもできない、そういう時間ですよ。これが働き方を改革することになるんですかということを申し上げているんです。

 それから、先ほど来、総理が、誰に対してどういう基準をという、何かよくわからない、何を意図しているのかよくわからない答弁が出ているんですけれども、これは例外があるのかなということなんですね。

 その点について言うと、先日も議論がありましたけれども、井坂委員がこういう例えを言われました。いわゆる長時間労働、過労死というものを捕まえるために今網をつくっているんだけれども、虫とり網をつくっている一方で虫かごに穴をあけているんじゃないか。つまり、高度プロフェッショナル制度、時間に縛られない働き方、あるいは裁量労働制という時間把握が難しくなるような働き方をつくって、そこで穴をあけて例外をつくっていくんじゃないかということを井坂委員からも指摘がありました。

 きのうの第六回の働き方改革実現会議のブリーフのメモを私は読ませていただきましたけれども、その中でやはり気になったのは、こういう発言が幾つかありました。例えば、規制改革推進会議の委員もしておられる金丸委員、それから日本商工会議所会頭の三村委員が、上限規制と高度プロフェッショナル制度はセットだとか、あるいは、時間でなく成果で評価する高度プロフェッショナル制度の早期成立をというような趣旨の発言をされているようであります。

 私は、まさに、これは経営側の本音がここに出ているのかなと。つまり、これだけ社会的な問題になっているので上限はつくらざるを得ないけれども、一方で、高度プロフェッショナルのような形で例外をつくって穴を抜いておきたい、こういうことが本音ではないかというふうに思います。

 しかし、残業時間の上限規制と労働時間規制の緩和を抱き合わせにしてしまったら、これは何のための残業規制かわからなくなる、残業規制の実効性がなくなってしまうんじゃないかと私は思いますが、この点、総理はいかが考えていますか。

塩崎国務大臣 これは既に提出させていただいております労働基準法改正案にかかわることでございますので、まず私の方から答弁をさせていただきたいと思います。

 今もう既に提案をさせていただいております労働基準法改正案では、働く方の健康確保をまず図る、そういう意味での労働時間法制の改革ということで、ニーズとか事情とかがさまざまあって、多様化するこの時代に合った多様な働き方を選択できる、そういう労働市場をつくっていこうじゃないかというのが原点であります。

 したがいまして、今お話がありましたが、裁量労働制やあるいは高度プロフェッショナル制度の対象となる方は、あくまでも、業務の遂行手段や時間配分をみずからの裁量で決定できて、自律的で創造的に働くことができる人、長時間労働を強いられる懸念の少ない方々、そういう人たちを対象にした、限られた働き方を新たに選択できるようにしようじゃないかということを申し上げているので、大半の方々は、当然、今総理から何度も申し上げているような、しっかりと法律の中に、時間も書き込んだ法律でもって長時間をしないでいけるようにしようじゃないか、こういうことを申し上げているわけでございます。

 当然のことながら、この裁量労働制の見直し、あるいは高度プロフェッショナル制度の創設に当たっても、例えば高度プロフェッショナル制度にあっては、百時間を超えたときには必ず医師との面談をしないといけない、それをやらなかったらば罰則がかかるという新たな規制もかけています。

 そして、裁量労働制の場合にも、最初に労使委員会で、どういう条件でこれをやりますかということを決める、誰を対象にするかということ、そして本人の同意も確認をする、さらに、導入をした後も定期的に、例えば半年に一遍とか、ちゃんとこの労使委員会で定期的に検証するということをやりながら、長時間労働を防止し、健康を確保するためのさまざまな措置を新たに加えるということで、そういった方々についても健康確保は必ず守られ、そして意に反する長時間労働が強いられないようにしていくということはしっかりと手を打っているところでありますので、御心配の点は全く当たらないということでありますので、全てを一緒くたにされたような、イメージをまぜようというようなことは、レッテル張りはお避けいただけたらいいと思います。

大西(健)委員 先日も厚労大臣が何か、企画型裁量労働制で死んだ人はいないとか言っていますけれども、実は、認定時は管理職になっていたけれども、死ぬ直前に管理職になって、それまでの間ずっと企画型裁量労働制だったという人はいるんですよ。

 あるいは、なかなか裁量労働というのは時間の把握ができないので、なかなか労災認定が最終的におりない、そういう難しさがあるので、本当は申請で見なきゃいけないのに、では、企画型裁量労働制の申請はどれぐらいあったんですかといったら、これもデータがない。直近五年はデータがあるけれども、五年以上さかのぼるとデータがない。なのに、いや、裁量労働制は危なくないんです、高度プロフェッショナルも全然矛盾しないんです、そうやって胸を張って答弁するのは私は違うと思いますが、このことについてはまた厚労委員会で議論させていただきたいと思います。

 しかし、繁忙期月百時間、そして二カ月平均八十時間という水準だと、現状は私は何も変わらないというふうに思います。その上に、上限を超えてしまう場合には高度プロフェッショナルとか裁量労働制で規制の対象外に回してしまえば、現状は変わらないどころか、私はむしろ悪くなるんじゃないかというふうに思っているんです。ですから、これはぜひ考え直していただきたいと思います。

 最後にもう一つ、報道によると、三月に実行計画を取りまとめて、それをもとに法案を作成するということですけれども、今国会の法案提出は絶望的な状況、こういうようなことが書かれています。

 今国会に法案を出さないというのなら、それはそれで私たちは構いませんけれども、だったらば、何度も申し上げていますけれども、私たちは既に昨年の四月に、長時間労働規制法案を国会に提出しております。総理も何度も、野党は批判ばかりで対案がないと。きのう、そのことについては大串政調会長から、そんなことはないということをお話しさせていただきましたけれども、この長時間労働についてもしっかりした対案を出しているんです。

 ですから、すぐ出してくれるならいいですけれども、秋の臨時国会なんということになったら、これはいつまで待たせるんですか。我々はもうこれ以上待てませんので、ぜひこの野党案を審議していただきたいと思いますが、総理、いかがですか。

安倍内閣総理大臣 議員立法についてどのような対応をするかは、まさにこれは委員会で、あるいは議会でお決めになることであろうと思いますが、御党の案については、再々申し上げておりますように、今まさに議論になっておりますのは、時間外労働を何時間まで許されるんだということについて議論しているわけでありますが、そこのところは御党は、それは省令で決めていくということにしているわけでございまして、ですから、やはり、その一番焦点になっている何時間かということを皆さんが責任を持ってまさに法案の中に書き込んでいただけなければ、これは議論のしようが、中身がないのではないかというのが私が今まで再三申し上げてきたところでございます。

 私たちの案については、まさにその一番大切な何時間かということについてしっかりとお示しをするということでございまして、労政審ということをよくおっしゃるわけでありますが、我々は、実現会議で議論し、しっかりとその中身を決めた後に労政審で審議をしていただき、そして国会に責任を持って提出をさせていただきたい、このように考えているところでございます。

大西(健)委員 最後に、先ほど言いましたように、二月十四日、次の会議に事務局案が提示をされるということでございますので、ぜひその後にこの予算委員会で、これは政権の最重要課題ですから、働き方改革の集中審議をお願いしたいと思いますが、委員長、よろしくお願いします。

浜田委員長 理事会で協議させていただきます。

大西(健)委員 時間が来ましたので終わりますけれども、総理は二つの点で言行不一致だと私は思います。

 一つは、もう二度と悲劇を繰り返さないと言いながら、百時間を否定しないんです。それからもう一つは、野党は案を出せと言っているけれども、案を出していたらこれを審議しない。これは言っていることとやっていることが違うじゃないですか。

 働く人の声じゃなくて経営者の声ばかりを聞いて、過労死するまで働かせても構わないという法律をもしつくるのであれば、私は、それは働き方改革ではなくて働かせ方改革であることを申し上げて、私の質問を終わります。

浜田委員長 この際、後藤祐一君から関連質疑の申し出があります。江田君の持ち時間の範囲内でこれを許します。後藤祐一君。

後藤(祐)委員 民進党の後藤祐一でございます。

 まず最初に、外交、安全保障の関連で、特に総理と議論させていただきたいと思います。

 二月十日にもトランプ大統領とお会いされるということになっておるようでございますが、昨日もこれに関連して幾つかの議論、特に為替に関して議論がございました。

 安倍総理はきのう、円安誘導という批判は当たらない、首脳会談の際には、反論すべき点があれば反論していくと、極めて正しい御答弁をされておられます。そのとおり二月十日はやっていただきたいと思いますが、これに関連して、今、TPPからは離脱するとトランプ大統領はおっしゃったので、日米の二国間の通商協定、これが持ちかけられるのではないかというお話があります。

 これに関連して、きのう、我が党の今井委員の質問に対して、麻生財務大臣は、通商協定には為替条項はなじまないのではないか。つまり、通商協定というのは、物の関税ですとかサービス貿易ですとか、こういったことについて規定するものであって、円・ドルレートをどうするとか、そういった為替についての条項を入れるのはなじまないのではないかという御質問をしたのに対して、麻生財務大臣は、その種の話に応じたことはありません、今後ともこの方式はなじまないものだと思っておりますと、極めて正しい答弁をされておられます。

 ところが、安倍総理は、我が党の大串議員の同種の質問に対して、予断を持ってお答えすることは差し控えさせていただきたいという答弁をされておられます。

 お二人で答弁が違います。二国間の通商協定、この中に為替条項を入れることはなじまないという財務大臣の答弁で、安倍総理、同じ答弁でよろしいでしょうか。

安倍内閣総理大臣 本来、この為替については、考え方を述べさせていただいたわけでございますが、向こうも財務長官が任命されるんだろうと思いますが、これは財務長官と我々の財務大臣との間において議論がなされるべきであろう、こう考えているところでございまして、為替ということについて首脳会談でやり合うのは本来私はふさわしいとは思っていないわけでございますが、今の段階では向こうはまだ財務長官が認証されていない中においての発言だろうと思います。

 ですから、まだ財務長官が任命されていませんから、果たして為替・金融政策についてどのような政策がトランプ政権で確立されているかということについては、これはまだ不透明でございまして、ですから、そういう意味においては、我々は、チームが発足をした後、どのような考え方を示していくかということについて注目しているところでございます。

 そこで、先般私が申し上げたところは、一般論として言えば、基本的に我々は二国間で結んだことはないわけであります。なぜ二国間で結んだことはないかということについて言えば、これは既に麻生財務大臣が答弁をしている考え方にのっとって、我々は主張すべきことは主張し、結んでこなかったわけでございます。

 これは昨日もお話をさせていただきましたが、TPPにおいてもさまざまな議論があり、我々は適切に反論をし、結果はそうならなかった。これは二国間ではございませんが、そうならなかったわけでございますが、この考え方には変わりがないということは、もう既に私もそう答弁させていただいておりますが、そういうことでございまして、私と財務大臣の間にはもちろんそごはないわけでございます。

後藤(祐)委員 すき間が少し残っていますね。

 安倍総理、はっきり言ってください。通商協定に為替条項はなじまない、イエスかノーかでお答えください。

安倍内閣総理大臣 我々はそういう姿勢を、通商条約に為替条項というのはなじまないということをずっと、今までも我々は反論として申し上げてきたのは事実でございまして、そういう姿勢には変わりがないということでございます。

 基本的に、これは申し上げておりますように、私たちは、いわば安倍政権になって為替介入ということをしたことは一回ももちろんないわけでございます。と同時に、まあ、それを否定するものではございません、緊急の対応というのはあり得るだろうと思っているわけでございますが、少なくとも安倍政権においては今のところそれはないわけでございまして、いわば三本の矢の政策の一つとして金融緩和政策をしている。これは米国のFRBもやっていることでありますし、欧州銀行もやっている政策であろう。

 その中で為替がどのように変化をしていくかというのは、両国の、日米間の経済の状況等あるいは金融政策のお互いの状況の中でこれは決まっていくものであろう、マーケットも含め決まっていくものであろう、このように考えているところでございます。

後藤(祐)委員 前段のところではっきりおっしゃったと理解をいたします。

 国会でこういったことをきちっと言っていただくことは、言うべきことをきちっと言っていただくという意味でも非常に大事なことだと思いますので、ぜひ手短な答弁をお願いしたいと思います。

 日米通商交渉、これから自動車の話がかなり課題になってくるのではないかというふうに思います。私も経済産業省に十三年ほど勤務しておりました。一九八〇年代あるいは九〇年代、輸出自主規制を求められたり、ボランタリープランをつくれですとか、かなり高目の要求がなされてまいりました。

 このとき、常に日本側のディフェンスの方法として、それぞれの会社、自動車の個別の会社が御自分で判断されることなので政府としては約束できない、だから、そんなことを言われても応じるわけにいきませんよというのが、日本政府側のアメリカに対する一つの大きなカードだったんですね。そういう意味では、余り官民一体ということを言い過ぎると、これはアメリカに対する交渉のカードを失いかねないんです。

 そこで、ちょっと一つ心配なことがあります。

 それは、あした、二月三日に安倍総理がトヨタの社長とお会いになられるという報道が一月三十日になされております、幾つかの新聞に載っておりますが。これは、官邸にトヨタの社長に来ていただくなんということになると、アメリカ側から、だったら、あれやれ、これやれと安倍総理から指示すればいいじゃないかと言われてしまいかねません。

 これは通商交渉の大原則というか、日本側のアメリカに対するディフェンスとしての基本的なツールだと思うんです。裏でいろいろなことがあるかもしれませんよ。ですが、トヨタの社長を官邸にお呼びするといったことはやめた方がいいと思いますが、安倍総理、いかがですか。

安倍内閣総理大臣 私が官邸にトヨタの社長を呼ぶということはございません。しかし、他方、トヨタの社長を私はよく知っておりますから。これは報道が大分違うんですね、実態とは違うんですが。

 これについては、トヨタの社長と食事をしようという計画、これははるか以前からあったわけなんですね。それは相当前からある。

 私の夜の日程というのは、これは結構、自分で言うのもなんなんですが、いろいろな人から申し込まれていまして、これはかなり前から、数カ月前から決めているわけでございます。それはもう随分前から決まっていたものをそのように報道されているわけでございまして、急にそういうことがあったから私と豊田さんが金曜日にさっとということは、なかなかそれはないわけでございまして、それはそういうことではない。

 今、後藤さんが言われたことは当然のことだと思います。我々がいわば企業にこうしろ、ああしろと言うことはできない。これは米国もそう言っているわけですから、米国も自分の企業にはできない、こう言っているわけでありますから、それは当然であろう、このように思います。

後藤(祐)委員 少し安心しました。

 トランプ大統領は、指先で、百四十字で個別の会社に対する投資行動などを半ば強制するような、こういった外交を展開しておられますので、ぜひ、民間企業との距離感、これは外交戦略の一環として、経済産業省の方々も周りを支えておられるようでございますから、うまくやっていただきたいと思います。

 その中で、政府が決められること、あるいは国会で決めればできるじゃないかといったことも当然要求されると思います。

 自動車の関係では、特に軽自動車。これは日本独自のルールだからやめてもらいたい、アメリカの自動車会社が輸出しにくいではないか、税制優遇なんかがあるじゃないか、こんな要求もされるんじゃないかと思いますので、今個別論は申し上げませんが、ぜひこういったところをしっかりと守っていただきたいというふうに思います。

 続きまして、前回、先週の木曜日もイスラム国に対しての議論をさせていただきました。

 イスラム国で戦争が起きる可能性はあります。実際、トランプ大統領は、軍事作戦をつくるようにという指示を既に出しております。

 これに対して安倍総理は、先週、私の質問に対して、イスラム国に対する軍事作戦に対する後方支援を行わないというはっきりした答弁、ちょっと微妙なところはあるんですが、きょう、その続きをやるというよりは、イスラム国に対する、まあ軍事作戦に対するという修飾語をつけてもいいですよ、軍事作戦に対する後方支援を行わないというふうにおっしゃっておられます。

 あした、マティス国防長官が来られます。安倍総理にも稲田大臣にもお会いになられるというふうに聞いておりますが、マティス国防長官が、あるいは、二月十日にトランプ大統領に総理がお会いになられたときトランプ大統領がということもあるかもしれません、イスラム国に対する後方支援をやってほしいと求めてくることがあり得るんじゃないですか。これを求めてこられたらどうされるんですか、総理。

安倍内閣総理大臣 これは既に国会でお約束をさせていただいておるとおり、イスラム国掃討作戦、軍事作戦を行う、我々に対してその後方支援、まあ軍事作戦に対する後方支援をしてくれと頼まれても、私は、記者会見あるいは国会で答弁を既にさせていただいております、政策判断としてそれは行わないということをお約束させていただいておりますから、その約束をたがえることはないということをはっきりと申し上げておきたいと思います。

後藤(祐)委員 一つ一つこうやって国会で明らかにしていくことが日米交渉の、私は総理に頑張っていただきたいんですよ、総理の持つカードというのをふやすことになると思うんです。国会で約束したからそれはのめませんですとか、あるいは民間企業にそんなことを言うわけにはいきませんとか、国内のいろいろなアクターとの関係の中で、アメリカというのは強い国ですから、カードをきちっとつくっていくという意味で、今の答弁は重い答弁だというふうに考えます。

 イラクのサマワに行ったときに給水活動というのを行っていますが、あれはあのときの法律では人道復興支援活動となっていて、恐らくあれは後方支援ということにあのときはなっていなかったんです。ところが、今、法律が安保法制で変わって、両方まとめてこれは後方支援という扱いになってしまっています。

 ああいった給水も含めて後方支援を行わないということで、総理、よろしいんでしょうか。

安倍内閣総理大臣 イラクにおける各国軍隊の活動は、国連安保理決議に基づいて、イラクの安全及び安定の回復や復興の支援を行うものでありました。

 政府としては、これら安保理決議に基づくイラクでの活動を支援するため、その目的に特化した特別措置法としてイラク特措法を制定しましたが、同法は、安全確保支援活動と人道復興支援活動の双方の実施を目的としたことから、自衛隊が行った個別の活動について、法制上、両者を完全に区別する仕組みとはなっていなかったわけであります。

 これに対しまして、平和安全法制においては、二つの活動をいずれも一般法、恒久法の形で整備することとしまして、他国の軍隊に対する後方支援については国際平和支援法を制定し、それ以外の国際的な平和協力活動についてはPKO法の改正を行ったところでございます。

 このように、現在の法制においては活動内容と法律の根拠が明確に分かれておりまして、軍隊に対する後方支援と人道的な支援活動は明確に区別することが可能となっておりまして、この中においては、今申し上げました国際平和支援法というのはいわば軍事活動に対する支援でございまして、この法律を使って行うのは、軍事作戦に対する支援、これは行わないということを明確に申し上げているとおりでございます。

後藤(祐)委員 今の最後の点は、前回曖昧にしたところなんですね。国際平和支援法に基づく後方支援は行わないという答弁、これは非常に大きな答弁だと思います。

 なぜこの話を二度確認したかといいますと、きょうも共謀罪の話が大きく議論になりました。共謀罪はテロのためにあるというふうには必ずしも思いませんが、テロを防ぐために共謀罪が必要なんだという御説明をされるのであれば、まず、その共謀罪云々の前に、日本国内でどういう状況になったらテロが起きるのか、現実的にシナリオを考えてみましょうよ。

 このイスラム国の戦争に日本が何らかの形でかかわっていく、特に後方支援というような形でかかわっていくと、イスラム国からすれば日本は敵だと、最前線で戦っているほかの国の軍隊と日本の自衛隊なんて分けてくれないんですよ、イスラム国は。イスラム国にとっては、後方支援かどうかなんて、そんなの聞いたことない、来ていれば同じだということで、それ行けということで、世界じゅうのテロリストに対して、やっちまえということで、日本国内でテロが起きるリスクを非常に高める可能性があるということは、総理、ぜひよくお考えになって。

 このイスラム国への軍事活動を各国がするときに日本が何をするのかということについて、全く何もするなということではないと思います。確かに、平和な状態になった後、いろいろなことができるという面はあり得ると思いますので、よくそこは考えた上で、きのう、我が党の江田代表代行の質問の中で、南スーダンに出したときには辞職覚悟でやったんだ、辞職覚悟でやるんですかというようなことに対して、安倍総理は、最高指揮官の立場に立つ上においては、そういう覚悟でやるというような答弁もありました。ぜひ、このイスラム国にどういう対応で臨むのかということについても、そういった覚悟で臨んでいただきたいというふうに思います。

 それでは次に、文科省の天下りの問題に行きたいと思います。

 まず、文科省は今調査を行っておりますが、これの中間的な報告が来週月曜日ぐらいに出てくるというようなお話を伺っておりますが、あのTPPのときのように一枚ぺらみたいなものではなくて、きちんと内容のあるものをぜひ、火曜日に集中審議という話もあったりしますので、月曜日の遅くとも朝には理事会に出していただきたいと思いますが、文科大臣、御答弁いただけますか。

松野国務大臣 調査班の設置に対しての準備を今進めておりまして、現状において、調査が開始をされている、調査班において第三者が入った、メンバーとして加わった状況の中で調査が開始をされているということではございません。

 委員の方から、来週の本委員会の審議の状況に合わせてしっかりと資料提供をというお話がありました。できるだけ早く調査班を発足してスタートさせていただきたいと考えておりますが、その時点で、できる限り委員会からの御要望に関してはお応えをさせていただきたいと考えております。

後藤(祐)委員 はっきり答弁をいただけないんですが、最終的な報告はもう少し時間がかかるのはわかりますよ。ですが、集中審議もありますので、その時点でわかっていることを、できるだけ詳細なものを少なくとも月曜日の朝の段階で出していただけますか。確約してください。

松野国務大臣 調査班の設置につきましては、今、人選等、また御本人の確認も含め進めさせていただいております。私たちとしては、この発足に関しては、できるだけ早く、今週中に発足をさせたいと考えて、そこに向けて準備を進めております。

 それから、調査をスタートいたしまして、調査の内容に関して再就職等監視委員会と調整の上、その時点において出せる資料というのはしっかりと公表させていただきたいと思います。

後藤(祐)委員 これは与野党間で議論している話と随分事情が違うんですが。与党の筆頭理事、今の話、ちょっと違うんですけれども。

 本当に出せないということですか。そうすると、我々は審議がなかなか難しくなってくるんですが。それがないと、その先の文科省についての議論が非常にしにくくなるんですが。予算委員会がとまっちゃいますよ、文科大臣。

 その時点で最大限わかっていることを月曜日の朝の段階で理事会に出していただきたい。それまでに、人選がどうとか、それは文科省の中の事情ですから、わかっていることというのはいろいろあるんですよ、既に。それを月曜の朝の段階で出すということを約束いただけますか。もう一度。

松野国務大臣 委員からのお話の趣旨と私が申し上げたことの方向性がそう違っているとは考えておりませんが、先ほど申し上げたとおり、できるだけ早く、今週中に調査班を発足させて、そして調査に入り、委員から今、月曜日というお話がありましたが、その時点において調査の結果を再就職等監視委員会と調整させていただいて、しっかりとその時点でわかっていることに関して御報告をさせていただくということでございます。

後藤(祐)委員 文科大臣、隠蔽はやめてくださいよ。やれることは何でもやるというんじゃなかったんですか。

 同じようなのが幾つかあります。

 きょう、再就職等監視委員会の大橋委員長にお越しいただいております。

 再就職等監視委員会は、この文科省の案件について非常に調査をされて、立派な報告書をつくられています。ところが、これは文科省に対してしか示されておりませんでして、我々には示されておりません。

 確かに、機微にわたる情報があるんでしょう。そこは多少黒塗りが入ってもいいから出していただけませんかということはかなり前から求めておりますが、これを早く出していただけないでしょうか。大橋委員長、お願いします。

大橋参考人 お答えいたします。

 当委員会の調査報告書というのは、これは公表しないことを前提に作成されたものでありまして、そこには、プライバシーに関する記述であるとか、それから未確定の、まだ調査の途上にある事実を含む、これから文部科学省において全容の解明をしていただく対象となる事案に関する情報であるとか、委員会調査の手法が読み取れる記述であるとか、さまざまなものが多数含まれております。

 もしこれを公表した場合には今後の調査に支障を来しかねないというふうに考えておりますので、現時点では、調査報告書を公表するということは適当でないものと考えております。

後藤(祐)委員 全部出せと言っているんじゃないんです。不都合なところは黒塗りにして結構ですから、この委員会に提出していただくよう、委員長。

 まず、文科省調査の中間的なものを、月曜日の朝の理事会の段階で出せるものを、一枚ぺらとかではなくて、これを文科省から提出いただくこと。

 そして、今の再就職等監視委員会の文科省に対する報告書、これは既にあります、黒塗りをする作業はもう先週の前から、黒塗りでいいからということを求めているんです、これを出していただくということ。

 さらに、全省庁についての報告について、これはこれからだと思いますが、これもこの衆議院の予算委員会での予算審議の中できちっと出していただかなきゃ困りますので。

 この三つについて提出いただけるよう、委員長、お計らいを願います。

浜田委員長 理事会で協議させていただきます。

後藤(祐)委員 いろいろな調査が行われていますが、私も経済産業省の秘書課という、関係するところにいたことがあるのでわかるんですが、天下りのあっせんは法律で、やっちゃいけないことになっていますから、実際やっていたとすると、なかったことにするわけですよ。そうすると、役所が何を考えるかというと、やっちゃっていた場合、パソコンの中から削除するとか資料を燃やしちゃうとか、いろいろなことをやっている可能性があるんですよ。

 再就職等監視委員会委員長、お伺いしますが、文科省から例えばパソコンを押収するですとか、パソコンの中のものを出せとか、あるいは資料を出せとか、このパソコンと資料に関して、どういった情報を出させるためのお願いをしましたか。押収みたいなことをされましたか。

大橋参考人 お答えいたします。

 委員会が行う調査というのは国家公務員法に規定がございまして、規制違反が疑われる職員あるいは職員のOBに質問すること、証人喚問すること、関係書類の調査、それから勤務していた場所への立入検査などが規定されておりますけれども、それ以外にも、必要に応じて任意のヒアリングや当該省庁への照会などを実施いたしております。

 ただ、具体的案件についてどういうことを調査するかということについては、今後の調査に支障を来しかねませんので、詳細についてのお答えは控えさせていただきますけれども、今回の文部科学省事案に関して、詳細は今申したことでございますけれども、概略を申し上げますと、これは、違反の疑いのある職員及び職員OB、それからその関係者への聞き取りを行っております。それから、今の、本人及び関係者の間でやりとりをされたメール、これは多数手に入れて調べております。それから、そのメールに添付された文書というものがございます。具体的には、例えば高等教育局長の教員任用履歴書であるとか、文部科学省が作成した想定問答であるとか、そういったものなどについて確認をいたしております。

 以上でございます。

後藤(祐)委員 メールについて出させた、非常に一端がうかがえたと思いますが、山本行革大臣、今、全省庁調査を始めていますね。全省庁の人事当局のメール、これは出させないと、消しちゃいますよ。このぐらいのことはやっているんでしょうか。

山本(幸)国務大臣 まさに調査はこれからでございますけれども、そういうことも含めてやりたいと思います。

後藤(祐)委員 これからということは、メールを出せということをまだ言っていないということですか。もう消しちゃっているんじゃないですか、そうしたら。今までのところで、メールを出せということを言っていないということですか、そうしますと。

山本(幸)国務大臣 具体的にどういう調査の中身をやるか、事項とかいうことについては、いろいろな不適正な対応を行われる可能性がありますので、その点については答弁は差し控えさせていただきます。

後藤(祐)委員 こんなので調査できるんですか。なかったことにするというのが基本なんですよ、役所側のディフェンスの。だって、法律で、やっちゃいけないんだから。

 メールの削除自体は、これは厳密に言うと証拠隠滅罪ですよ、下手すると。きょうは基本的質疑ですから、全大臣がおられます。大臣、それぞれ人事当局に聞いてみてください、メールを消していないかどうか。メールを消すなよと、ちょっと、きょう終わったら、官房長とかそのあたりに言ってみてくださいよ。これは、消していたら証拠隠滅罪ですからね。

 そして、今まで、既にこの議論を始めてからかなり時間がたっているわけですよ、何をやっていたんですか、山本行革大臣。最初にメールを押さえにいかなきゃだめじゃないですか。

 具体的な話に行きたいと思います。

 さんざん出てきていただきたいと言っております、おやめになった文部科学省の前の前川事務次官。この方はなかなか、きょうも私求めましたが、この委員会の場に出てきていただけません。大変残念です。

 このパネルの中の文部科学審議官と書いてあるのは前の次官である前川さんのことでございますが、この前川さんがやったことの中で再就職等監視委員会が認定したことは幾つかあって、早稲田事案というのもそうなんですが、この中の一と書いてある「地位に関する情報提供の依頼」というのがございます。

 これはわかりにくいので申し上げますと、ある法人のこのポストがあかないかというような情報についてこの法人に対して依頼したということが認定されているんですが、この一のある法人というのは実は、さんざん議論になっている文教協会なんですよ。文教協会の理事長という、もう解散するということを決めたようですが、この文教協会理事長が雨宮忠さんという長い間ここにおられた方で、この方、そろそろどきませんかというようなことを依頼したというふうに伺っておりますが、これで事実関係に間違いないですか、松野大臣。

松野国務大臣 前川前次官は、ある法人に再就職していた文部科学省のOBに対し、後任の他の文部科学省OBを再就職させることを目的として、再就職先の地位に関する情報の提供を依頼したことから、再就職等規制に違反したと監視委員会から認定をされております。具体的には、退任の意向の有無を確認したことが再就職規制に違反したと認定をされております。

後藤(祐)委員 私に対しては、文科省の部下の方はお話しいただいたんですよ。このある法人とは文教協会であり、その地位とは文教協会の理事長であり、そこに雨宮忠さんがついていて、そろそろどいていただけないかというお話をしたというのがこの「地位に関する情報提供の依頼」であったと、私に対しては文科省から説明がありましたよ。これは答えられないんですか、大臣。

 先ほどから文科大臣は、我々に説明いただいたことすらこの場で説明を拒む。隠蔽大臣じゃないですか。大臣、こんなことすら答弁できないんですか。

 時間ばかりかかるので、この雨宮忠さんという人はすごい人なんですよ。この雨宮忠さんという方は、今七十二歳の方ですが、いわゆるわたり、渡り鳥なんですよ。いろいろなところを経由していて、もう全部は申し上げませんが、この中でも、独立行政法人日本スポーツ振興センター、これは大変大きな独法ですよね、そこの理事長。ここは、この当時の給料で、年収千九百万ぐらいになるという説明も文科省からいただいています。

 こういう方を、もうやめさせなきゃいけないんじゃないですか、こういうことを。だから聞いている。入り口のところで隠蔽を図る、これでは、文科大臣、これ以上調査は進まないじゃないですか。大臣、役所から上がってきたことをそのままはいはいと言っていたら、この問題は何も真相が明らかにならないんですよ。

 大臣、こういったわたりを続けるような七十二なんて、もういいじゃないですか。年金をもらえるまでの間、役所をやめてからどこで働くかというのは深刻な問題だと思いますよ。あっせんはやっちゃだめだ。だけれども、自分で探すということに関してはありにしていて、だけれども、もう年金をもらい始めて、こんなにたくさんいろいろなところへ行って、いわゆるわたりでいろいろなところでもらっている。こういうのを根絶すべきだと思いますが、文科大臣の御見解を伺いたいと思います。

松野国務大臣 今回の調査に当たっては、私はもちろん文部科学省の責任者でありますが、国民の皆様からいただいている疑念に対して、これはしっかりと国民視点に立って解明をしてまいります。

 先ほどの法人名に関しては、図書の方、委員の御質問に関して、委員の方の御意思が、この法人に関して御指摘があるかどうかということに関して不明だったものですから、それに関しては委員の御配慮、御思慮のうちかなということで、ある法人という表現をいたしましたが、この法人に関しては、文教協会ということでございます。

 わたりについては、府省庁が退職後の職員を企業、団体等に再就職させることを複数繰り返すということと承知をしております。わたりについて、これまで種々の御批判があることは承知をしております。

 雨宮氏の個別の再就職の経緯については、私、今現状を承知しておりませんが、これは委員からの御指摘のとおり、国民の皆様にその経緯また適性等がしっかりと公表されて透明性が確保されるということが必要であると考えております。

後藤(祐)委員 文科大臣は、一回聞くだけだと隠蔽し、二回聞くと少し話すんですよ。隠蔽大臣はやめてくださいよ。きのうの答弁もこんなのばかりですよ。

 文教協会についてさらに聞きたいと思います。

 今、図書の話がありました。これは我が党の小川議員ですとか玉木議員もこれまで追及してきたことでございますが、この公益財団法人文教協会に対して、今、配付資料の七ページというところにありますが、これまで、二十一年度から二十八年度にわたって一億五千万円ぐらい文科省から予算が交付されています、図書以外も含めて。

 この図書、例えばこれは「全国大学一覧」、大学の連絡先とか誰ですとか、世の中のオープン情報をただ集めただけの冊子、これをこの文教協会はつくっているんですが、もうこういった図書の購入を税金で行うことはしないということで、大臣、よろしいですか。

松野国務大臣 文教協会から、まず、この一覧等を購入することはいたしません。

 同種の、その印刷された資料が、一覧化されているものが、省内の協議、また中教審等を初め外部有識者等の会議に有効に使われているというのも事実であります。今後は、その内容に関して、文部科学省でその原本をつくりまして、それを外部に印刷をかけて使用するという形を考えております。

後藤(祐)委員 そうすると、随分お金は少なくて済みますよね、大臣。あるいは、こんなのはホームページにつくっておけばいいんですよ。まあ、印刷代とか紙代に若干かかるかもしれませんが、今までよりお金は少なくて済みますよね、大臣。

松野国務大臣 これは、編集、工程管理にかかわる労務費は別として、純粋に印刷だけを考えた場合は、その「全国大学一覧」を文部科学省は文教協会から、済みません、今、数字が厳格ではありませんが、三千二、三百円で購入しているかと思います。その印刷費を考えると、ほぼ同程度の印刷費は必要になるものと考えております。

後藤(祐)委員 これは印刷だけで三千二百円しますかね。多少減るんじゃないですか。そこはよく計算していただいて。

 何でこれに私はこだわるかというと、既にこれは、この文教協会から買うことを前提に、昨年十二月の予算の閣議決定で、二十九年度予算案、まさに今審議している二十九年度予算案の中に計上されているんじゃありませんか、大臣。

 庁費で買うというふうに説明を伺っておりますが、この庁費を、その節約される分、減額すべきなんじゃありませんか、大臣。

松野国務大臣 この書籍につきましては、先ほど申し上げましたとおり、文教協会が出版する書籍を購入していたところでありますが、今後は、文部科学省において原稿作成の上、印刷、製本については一般競争入札により発注することを考えております。それに当たっては同程度の予算の手当てが必要になると考えております。

後藤(祐)委員 それは何で同程度かかるのか、これからよく説明していただきたいと思います。

 もう一つ、いわゆるRさんの再就職に関連して、もともと人事関係の、文科省の中にいたOBの元人事課職員ですけれども、この方が、これまでの審議の中で、第一成和という会社に再就職をされて、その第一成和という会社だけが文部科学省のビルに入って損害保険の営業をすることが認められているという答弁が先日ありました。これは利益供与ではありませんか、大臣。

松野国務大臣 まず、事実関係といたしまして、先般、保険代理店として、入館許可証を十五社に与えているうちの一社だけだというふうにお話をしましたが、済みません、これは二社ということで、理事会の方にこれは既に訂正に関して御報告をさせていただいていると聞いております。(発言する者あり)では、ちょっと事実関係はまた確認をさせていただきますが。

 これは便宜かどうかという御判断でありますけれども、この入館許可証を与える目的としては、保険関係、また館内において職員が飲む飲み物等の販売に関して、職員の福利向上のために資するということで許可をしているものでございまして、これをもって直接的な便宜と言えるかどうかに関しては御判断があるかと思います。

後藤(祐)委員 いや、天下りが行っていなければ別にいいんですよ。どこかの会社がそういうのをやるというのは、福利厚生の観点からやる会社があってもいいと思うんですが、これは便宜ですから、天下りが行っちゃだめですよ。しかも、福利厚生に関することというのは人事課の所管なんじゃないですか、大臣。その人事課の所管の福利厚生をこの第一成和に、まあ二社なのかもしれませんけれども、やらせて、便宜供与を与えて、そこに人事課にいたRさんが天下りする。

 これは、便宜供与を与えて天下りを受け取ってもらっている、そういうことじゃないですか、大臣。

松野国務大臣 このR氏が第一成和の顧問についているということは事実でございます。

 そして、これらの、R氏が加わった再就職あっせんに関するシステム、枠組みがあるのではないかという指摘を監視委員会の方からいただいておりまして、今後、その枠組みの全容に関して、調査班を通して、調査班の外部の方も入っていただく形の中でしっかりと解明をしていきたいと考えております。

後藤(祐)委員 午前中は時間が来ましたので、続きは午後に回します。

 ありがとうございました。

浜田委員長 午後一時から委員会を再開することとし、この際、休憩いたします。

    午後零時二分休憩

     ――――◇―――――

    午後一時開議

浜田委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。

 この際、松野文科大臣から発言の訂正があります。松野文部科学大臣。

松野国務大臣 午前中の後藤委員への答弁で、保険代理店の数の修正につきまして、理事会に報告済みと申し上げましたけれども、その時点では理事会への報告が上がっていないということであります。おわびをして訂正をさせていただきます。

浜田委員長 質疑を続行いたします。後藤祐一君。

後藤(祐)委員 後藤祐一でございます。

 テレビをごらんになっている方、今のは何のことやらわからないと思うんですが、文科省の天下りの情報を一手に仕切っていたこの元人事課職員が、文部科学省の建物の中に入って損害保険の営業をする会社にいたんですが、それは一社独占ではないかということに対して、二社ありましたよという、そんなことについての話なんですが、二社あるといっても、実際にそういった営業をしているところは実はこの会社だけだったというお話も聞いておりますので、大した違いではないと思います。

 そこで、一つ残っている大きな話がありまして、先ほど、テレビをごらんの方はこれで切れちゃったと思いますが、この雨宮忠前公益財団法人文教協会理事長の華麗なる遍歴のお話をしました。

 この中で、独立行政法人日本スポーツ振興センターの理事長、当時の年収、約一千九百万ぐらいもらっているというお話がありましたが、こういった独立行政法人の役員なり職員も含めて、ここに対して役所の方が再就職をする、このあっせんというのは、国家公務員法上、法律違反だと理解していいでしょうか、山本大臣。

山本(幸)国務大臣 独立行政法人等の役員人事については、平成二十一年九月二十日の閣議決定「独立行政法人等の役員人事に関する当面の対応方針について」に基づきまして、まず、現在、公務員OBが役員に就任しているポストについて後任者を任命しようとする場合、二に、新たに公務員OBを役員に任命しようとする場合には、公募により後任者の選考を行うこととしております。

 公募は、独立行政法人等の役員について公正で透明な人事を確保する観点から、広く候補者を募った上で、有識者による選考委員会の選考に対して、その中から最も適当と考えられる者を任命権者が任命するために実施する手続であります。

 したがって、そのような公募と選考の手続がとられる場合、選任された者が結果として公務員OBであったとしても、その者が有する能力、識見が当該法人の経営に資するとして公募と選考の手続を通じて適切に評価された結果である以上、いわゆる公務員OBの優遇に当たるものでなく、問題ないものと考えております。

 なお、独立行政法人の常勤役員についている退職公務員の状況を見ると、過去に比べては減少している傾向にあると存じております。

後藤(祐)委員 公務員の方が独立行政法人の役職員に行く場合、トップ、理事長なりに行く場合は、これは大臣が人事権を持っていますから、この場合はちょっと別らしいんですが、それ以外の方に対してあっせんをすると、これは同じように違反になるんですね。

 それで、これは法律違反になるとまずいですから、民主党政権では、平成二十一年九月二十九日に閣議決定をして、公務員OBが独立行政法人の役職員につく場合は、これは理事長も含めてですが、公募により後任者の選考を行うと明確に決めました。例外なくなんですね。民間の方がつく場合は必ずしもそうじゃないんですが、公務員OBの方がつく場合は必ず公募で行うというルールを決めました。

 ところが、安倍政権になって、平成二十六年十二月十七日、これについてはルールが変わって、必要に応じ、公募の活用に努めるとなっちゃったんですね。

 山本大臣、公募でない形でやって、現職の公務員が独法の役職員、理事長以外ですね、についた場合、これは国家公務員法違反でしょう。必ず公募しなきゃいけないということになりませんか。

山本(幸)国務大臣 これは、おっしゃるとおり、二十一年九月ですか、閣議決定で、公務員OBがなる場合には公募にしなきゃいけないということであります。それは、この二十六年のときも当然引き継いでいるわけであります。つまり、役人あるいは役人OBが独法の役員に就任する場合には公募によるという原則はそのまま維持しているわけです。

 ただ、必要に応じて、公募によらない場合というのが書いてありますのは、これは民間人についての取り決めでありまして、それまでは、民間人については公募はしないでやっても結構だと、ある意味でルールなしでいたわけですけれども、公務員OB、公務員については公募でやるということを決めていました。

 その後、しかし、そのときは民間人については何も決めていなかったので、そこをきっちりしようということで、この二十六年十二月十七日の事務連絡では、民間人について、公募によらないということがあるんだけれども、その際でも透明性を確保して、ちゃんとしたやり方でしますよということを決めただけでありまして、公務員については従来のとおりということであります。

後藤(祐)委員 今の解釈は初めて聞きました。この二十六年十二月十七日、独立行政法人の役員人事について、公務員の方がつく場合には、必要に応じ、公募の活用に努めるじゃなくて、公務員OBの場合は必ず公募するという解釈なんだというのは初めて今聞きました。

 では、これが本当に徹底されているかどうか、ぜひ調査してください。今、配付資料の八、九、十ページあたりにこのあたりのことが書いてあるんですが、ちょっとテレビの方はないんですが、十ページには実際に独法の役員に天下った例が、企画官以上から天下った例、たくさん挙がっています。これらについて本当に全部公募をやったのかも含めて、しっかりと調査いただきたいと思います。

 こういったものは、いろいろな形で実はあっせんをしているんです。ところが、あっせんそのものは役所はやっちゃいけないという法律になっているので、建前としてはやっていない、こういう立場に立たざるを得ないんです。

 何でこういった天下りのあっせんが起きるかというと、役所の現職の方あるいはOBの方がいつごろ身があきそうかという人に関する情報と、あとはどこの独立行政法人とか大学とか会社のポストがいつごろあきそうかという情報、こういったものをまとめて役所が、文科省の場合はまとめて人事課あたりから個人情報、こういったものをRさんに流していたわけですね。もうこれはやらないと、総理は先週、明確な答弁をされました。

 そこで、私は、各省、幾つかの大臣に、あっせんをしているかどうかなんて聞いたって、していませんと答えるに決まっているんですよ、あっせんじゃないかもしれないけれども、こういった人に関する情報だとかポストに関する情報を外部に提供していることはないかということについて、おととい、皆さんに調べてくださいというお願いをしました。

 そうしたら、きのうを期限でお願いしたんですが、環境省だけは、そのような事実は確認されませんでしたと、大変立派な体制でやっていることがわかったんですが、ほかの省は、例えば農水省は、国家公務員法に抵触するような情報提供は行ったことはないと。

 これは農水省だけじゃなくてほとんどの役所が、環境省以外が、国家公務員法に抵触するような情報提供は行ったことはない、つまり、あっせんはやっていないけれども、ポストの情報だとか誰がいつごろやめるという情報そのものを外部に提供することはあるかもしれないということなんですね。

 では、農水大臣にちょっと聞いてみましょう。農水大臣、国家公務員法に抵触しない情報提供をしたことはあるんでしょうか。これは、おととい発注しています。

山本(有)国務大臣 お尋ねの点につきまして、事務方に指示を行いまして該当するものを確認させましたけれども、事務方の返答としましては、国家公務員法に抵触するような情報提供は行ったことはない、こういう報告を受けておりまして、それ以外につきましてのお尋ねにつきましては、この委員会のルールに基づく一つの事前のお話ではなかったものですから、それについての確認はいたしておりません。

後藤(祐)委員 わざわざ、国家公務員法に抵触しないものも含めて情報提供を行ったことはありませんかと、きのう、もう一度通告をしています。お答えください。

山本(有)国務大臣 いずれにしましても、山本幸三国家公務員制度担当大臣に対して指示のありました調査にしっかりと協力し、適切に対応してまいります。

浜田委員長 農林水産大臣、もう一度。

山本(有)国務大臣 御質問がどのようなものを念頭に置かれているのか、これにつきまして定かではありません。また、少なくとも過去に国家公務員法に抵触するような行為は行ったことはない、こういう報告でございます。

浜田委員長 速記をとめてください。

    〔速記中止〕

浜田委員長 速記を起こしてください。

 後藤君、もう一回、丁寧にちょっと教えてください。

後藤(祐)委員 天下りに結びついてしまうような、誰がいつごろやめるかという人に関する情報、あるいは、大学だとか独立行政法人とか会社のどこのポストがいつごろあきそうかというポストに関する情報について、国家公務員法に抵触するようなものに限らず、国家公務員法に抵触しないものも含めて、農水省は、事務次官とか農水審議官とか官房長、秘書課長に確認した上でこういった情報提供を行っているかどうか、きのう明確に通告をしております、そしてきょうの紙にも明確に書いてあります、お答えください。

山本(有)国務大臣 国家公務員法に基づく再就職等規制に抵触しない省外部への情報提供の具体的事例を申し上げると、例えば、省内の局長、課室長等の氏名、あるいは当省から在外公館等へ出向している職員の氏名等について外部から問い合わせを受けた場合に、可能な範囲で氏名や所属等を回答することがあるということでございます。

 また、なお、現職の事務次官、官房長、秘書課長に確認いたしましたが、これまで、国家公務員法に基づく再就職等規制に違反する情報提供は行ったことはないという事実でございます。

後藤(祐)委員 今まで情報提供していたということですよね。

 ところが、総理は、総理は過去形じゃなくてこれからの話ですが、役所がこういった情報を渡すことはさせないということでよろしいんですねという私の質問に対して、そういうことは今後させない、当然のことでありますと答弁しているんですね。少なくとも過去はしていた。

 確かに、どうしても必要な場合が本当にあるのかどうかよく詰める必要がありますが、ぜひ、今、質問時間が来ましたので、こういう場合は仕方がないという場合が本当にどういう場合なのか。そして、疑問があるようなケースもあります。そこをきちっと整理して、過去どうであったかをきちっと調べるということと、今後こういうのはしないということを、総理だって一切やらないと言ったんだから、先週。これについて、過去がどうだったかということの調査も含めて、もう時間が来ていますので、総理、お答えいただけますか。

山本(幸)国務大臣 要するに、規制に違反する場合というのは、他の職員またはOBを営利企業等の地位につかせることを目的として、そして、例えば名前や職歴などの当該職員またはOBに関する情報を提供する場合にあっせん規制違反になり得るということで、そういうことは組織的に今後は一切やらせないということでありまして、そのほかの一般的な情報というのを提供する場合については必ずしも違反ということにはならないということであります。

安倍内閣総理大臣 私がさせないと言ったのは、山本大臣のそのときの答弁も受けまして、いわばOBに対して人事情報というのを提供することは今後させないということを申し上げたところでございます。

後藤(祐)委員 先週の総理の答弁と今の答弁は微妙に違います。

 もう時間が来ているので、これまでどうであったか、そしてこれからどうするのかということも含めて整理して、この委員会に紙で提出していただくようお願いしたいとともに、ぜひ、これは疑惑がいろいろな形で深まっています、天下りの集中審議、そして午前中の私の冒頭の方の質疑でもありました、トランプ大統領との会談も二月の十日に予定されていますので、トランプ大統領と会った後、これに関しての集中審議を求めるとともに、午前中要求した三つの調査についての早期の提出、この三つをお取り計らいいただきたいと思います。

浜田委員長 理事会で協議いたします。

後藤(祐)委員 終わります。ありがとうございました。

浜田委員長 この際、福島伸享君から関連質疑の申し出があります。江田君の持ち時間の範囲内でこれを許します。福島伸享君。

福島委員 民進党の福島伸享です。

 きのうまでずっとさまざまなやりとりがありました、トランプ大統領による七カ国の出身者への入国規制を決めた大統領令について、きのうの夜、日本時間の夜ですけれども、イギリスのメイ首相が、トランプ大統領が導入した今回の政策は間違えているということをイギリスの議会で表明いたしました。

 これは何でそうなったかというと、メイ首相は余り立場を明らかにせず、総理と同じように、米国の難民政策は米国の責任であるというふうに言っていたんですね。しかし、国内世論でなぜこれを批判しないんだという声が高まって、議会で明確に、間違えているということをおっしゃいました。

 G7の日本とアメリカ以外の国ですけれども、ドイツのメルケル首相も、テロとの闘いはイスラム教徒ら難民の受け入れを禁止する言いわけにならない。フランスのオランド大統領、難民受け入れの原則を無視しては我々の民主主義を守る闘いは困難である、これはトランプさんとの電話会談で直接おっしゃっています。イタリアの首相も、開かれた社会、多元主義、無差別は欧州の柱だ。カナダのトルドー首相は、ツイッターですけれども、信仰にかかわらずカナダの人はあなたたちを歓迎する、多様性は私たちの力だ、このようなことをおっしゃっています。

 総理は、きのうの段階までの答弁では、国境管理、出入国についてどういう対応をとっていくのか、移民、難民についてどのような姿勢をとっていくのかということについては、内政問題でありますからコメントする立場にはないということを繰り返しておっしゃっています。

 総理、この問題は確かに難民問題や移民問題とかかわるわけでありますけれども、ほかのG7五カ国の首脳が問題にしている本質は一体どこにあるとお考えですか。お答えください。

安倍内閣総理大臣 例えば、オランド大統領は、難民受け入れの原則ということでコメントをしているわけでありまして、あるいはカナダのトルドー首相も、カナダの人はあなたたちを歓迎するということでございまして、まさにこれは多様性の観点から移民政策等々もとっている国としての立場を表明したものだというふうに承知をしているわけでございまして、また、メイ首相もその観点からの発言だったというふうに承知をしているわけでございますが、それは、もう既に答弁をさせていただいておりますように、各国の入国管理政策や委員御指摘の大統領令は基本的には内政事項であり、まさに内政事項であるからこそ、自分たちはどうするという趣旨で基本的には発言をしておられるリーダーが多いということでございまして、コメントは差し控えたいと思います。

 また、日米会談においてはトランプ大統領と率直かつ有意義な意見交換を行いたいと考えておりますが、具体的内容については、予断することは差し控えたいと思います。

 他方、移民や難民問題、テロ対策は世界的な課題と認識しており、国際社会で力を合わせ、こうした課題に取り組むべきことは当然であろう、このように思うわけでありまして、日本のその立場は明確であり、揺るぎないものであります。

 日本としては、難民や移民が出てくるような状況を根絶する、その中で世界が協力をしなければいけないということにおいて、その役割を果たしていきたいと考えております。

福島委員 私は、本質を全く外していると思います。一つ、この一番いい例がドイツのメルケル首相の二つ目の言葉ですけれども、テロとの闘いは、いかなる場合でも、特定の信条の人々に対し一様に疑いをかけることを正当化しない。あるいは、アメリカのオバマ前大統領も、信条や宗教を理由に個人を差別するという概念には基本的に反対だ。

 つまり、テロとの闘いとか、それは大事です。難民問題にどう対処するのかも、それぞれの国にとって非常に大事な問題です。しかし、それ以前の問題として、特定の宗教とか信条をもって差別をしたり、特定の宗教を主とする国だからその国の人全部の入国を禁止するという、人権に触れることに違和感を感じるからこそ、安倍総理とトランプさん以外のG7の首脳は全員これにノーと言っているんですよ。

 私は、そこがこの問題の本質であって、安倍総理からその理念にかかわることが聞けないというのは非常に残念だと思うんですけれども、総理、どうですか、この点。

安倍内閣総理大臣 今申し上げたのは、例えば、フランスのオランド大統領は、今いただいた資料においても、難民受け入れの原則を無視しては我々の民主主義を守る闘いは困難になる、このように発言をしているところだ、このように思うわけでございます。また、メルケル首相も、テロとの闘いはイスラム教徒ら難民の受け入れを禁止する言いわけにはならない、このように述べているわけでございまして、そこで、もちろん我々は、テロとの闘いにおいて難民の受け入れをしないという、あるいはテロとの関連において、特定の信条とか宗教、人種等々において、それを受け入れない理由にはできないというのは当然のことであろう、こう思っております。

 その中において、国境措置あるいは入国管理をどのようにしていくか、難民をどのように受け入れるか、あるいは移民に対しての姿勢等々においては各国それぞれが異なるわけでありまして、日本は日本の考え方を持ってきているわけでございます。

 その中においても、日本は、日本の難民、移民政策の中において、今、国際社会から非難される立場にはないわけでございます。それは、日本が、海外における難民に対する支援あるいは難民を生み出さないための支援が評価されている結果ではないか、このように思っております。

福島委員 全く議論がかみ合わないのは残念だと思います。

 総理は、施政方針演説で、自由、民主主義、人権、法の支配といった基本的価値観を共有する国々と連携するとおっしゃいました。今、世界じゅうのこうしたリーダーの皆さん方が、トランプ大統領が果たしてこの自由とか人権といった基本的価値観を共有するかどうかというのを見きわめているからこそ、この問題でさまざまなコメントをおっしゃっていると思うんですよ。

 きのうの委員会でも、総理は、難民とかテロの話はおっしゃっても、人権を守る重要さとか、そういうのは一切おっしゃらなかった。私は、今まさに世界で……(発言する者あり)いや、当たり前じゃないですよ、言わないんだから。一言も言わないじゃないですか。当たり前だったら言えばいいじゃないですか。

 総理は、うわさによると、アメリカに行ったときにトランプさんとゴルフをするやに聞いておりますけれども、ゴルフをするのであれば、私は、まず、難民政策とかなんとか、政策問題としてやる前にトランプさんにしっかりと、総理がおっしゃる基本的価値観、普遍的価値観を共有しているのかどうかというのを確認すべきだと思いますけれども、それはどうですか。

安倍内閣総理大臣 今も申し上げたとおり、これは申し上げたじゃないですか。人種とか宗教、信条を理由に差別をしてはならない、これは当然のことでありまして、それは日本の価値観でございます。

 常々言っておりますように、自由や民主主義、人権そして法の支配、この普遍的価値を共有する国同士の同盟であるからこそ、日米同盟は強いきずなを持ち、希望の同盟であるということは既に言っているとおりでありまして、そしてまた、きのうの質疑でも申し上げましたように、米国のオバマ大統領とともに真珠湾を訪問した際、寛容の心、そして和解の価値こそ、今、日米でともに世界に発信していく必要がある、このように私は述べているわけでありまして、日米関係が同盟であることに変わりがないということをもちろん確認しなければいけませんが、と同時にそれは不変のものである、このように考えているところでございます。

福島委員 いやいや、こういう措置をやるからこそ、基本的価値をアメリカの新大統領は本当に共有できる人かどうかということを今世界のリーダーが見きわめている段階なんですよ、国連の事務総長もこのアメリカの措置はおかしいということをきょう言っているわけでありまして、何か総理は、この話や、先ほど午前中にあった為替の話も、きのうは日本の立場をおっしゃると威勢よく言っていたけれども、でも、きょうになったら、それは財務長官と財務大臣の話だからといって妙にもごもご始めて、逃げ腰なんじゃないか、そう思うわけであります。

 その観点で見て、通商問題でありますけれども、前回の私との議論の中で総理は、こちらが一方的に収奪されるような協定というのは成り立たないとか、こちらが一方的に譲歩して私たちが得るものがないということにはならない、最初からそんな弱気になっていてはだめなんですね、しっかりと腰を据えて、軸足を置いて話をしていくことが大切なんだろうと。そこまでおっしゃるなら、為替の問題でも、この入国規制の問題でも、はっきりおっしゃればいいと思いますよ。

 総理、まず、二国間もやる可能性があるわけですよね。意気込みはいいと思いますよ、やるんだったら。おやりになればいい。ただ、半年前のロシアの領土の話でも同じような威勢のよさだったなということも思い出すわけでありますけれども。

 そもそも、日米二国間の貿易協定というのは、アジア太平洋の貿易・投資ルールをつくるというマルチのTPPとは全く異なるものだと思います、質的にも異なるものだと思います。アメリカと交渉するとする場合に、日本はアメリカに何を求めるんですか。何を求めることを目的として、相手がもし二国間の交渉を持ちかけてきたら、やろうというんでしょうか。

安倍内閣総理大臣 まず、為替の問題については、あるいは為替条項をこの貿易の条約に入れるかどうか、取り決めに入れるかどうかということについては、本来、トップリーダーがいわば口角泡を飛ばして話す問題ではなくて、これは私はずっと言ってきていることなんですよ、実は。オバマ政権のときにおいても、これは大統領と私がやることではないでしょうと。つまり、そういうことではなくて、しっかりとまずは為替については冷静に議論しましょうよと。

 つまり、大統領やトップレベルに上げるということは政治イシューにすることですから、そういう為替のことについては政治イシューにすることではないでしょうということを申し上げていて、それを私が言わないからといって、これはむしろ、腰が引けているのではないんですよ。つまり、私の見識を示しているわけであって、基本的に、どの国のリーダーとも為替のことなんか私は話し合いませんよ。それはちゃんと財務長官とやってくださいよと。

 ただ、説明を求められたらちゃんとしっかりと話をしますよ、こちらの正当性について。でも、これを私が話さないといって、別に逃げて話さないわけじゃないですから。そこはこういう場ではないでしょう、リーダー同士が話すべきではないでしょうということを申し上げているわけでございます。

 そこで、どういうことを求めるかということでございますが、まだこれは、じかに先方が二国間での通商協定を求めてきているわけではありませんし、商務長官もまだ議会で承認をされていません。承認をされていない商務長官と我々は接触できませんから、商務長官がどのようなお考えを持っているか、あるいはまたそのスタッフ自体も決まっていないわけであります。

 その中において、今それについて私が意見を軽々に申し上げることはできないわけでございますが、ただ、言えますことは、決して国益を削るようなことはしないということでございまして、最善の結果を得ていきたい、こういうふうに思うわけであります。

 TPPについても、日本の国益を失っていると随分御批判もいただいたわけでありますが、しかし、福島委員もこの前おっしゃったように、私はずっとTPPに否定的でありましたけれども、ただ、TPPという多国間の枠組みで議論することによって自動車のアメリカの関税撤廃をとれることができたというのは、それは大きな成果かもしれませんと、福島委員にもその後褒めていただいたわけですね。やるときは、交渉でしっかりとこのような結果を出していきたい。

 これはやはり福島委員の長い経験と御見識の中で述べられたんだろうと思いますが、我々も、しっかりとプラスマイナスを考えながら、どういうことをしていけばいいのかということもちゃんと考えながら、二国間ということを前提とせずに、日米がウイン・ウインの形になる、大きな絵姿で話をしていきたい、このように考えております。

福島委員 まず、冒頭言われた為替の問題、総理の見識はそれはそれで私は結構だと思います。ぜひトランプ大統領に、為替の問題の交渉には私は乗らないよということを明確におっしゃっていただければと思います。

 その上で、二国間をやるときに、私は、とるものは余りないと思いますよ。アメリカで関税がかかっているものの大部分は自動車です。当然、自動車を要求するわけですよね、自動車の関税をなくせと。

 私は、TPPは確かに関税の撤廃までとれたのは一歩前進かもしれないと思うけれども、しかし、三十年もの長期の期間をかけて撤廃というものは、ほかにこっちが与えたものと比べたときに、比較考慮したときに、私は譲り過ぎだと思いますよ、我々は譲り過ぎだと思っていますよ。しかし、それでも関税撤廃までは行ったわけですよ。

 日米二国間でやるときも、当然、車の関税の撤廃を要求するわけですね。どうですか。

安倍内閣総理大臣 まさに、TPPの成果としては大きな成果と言えるかもしれないと、思わず本音でしゃべられたんだろうと思いますよ。

 しかし、まさに我々は、あの結果を国会においても御承認いただいたわけであります。国会で承認していただいたという結果は大変重たいわけでありますから、当然、我々は、国民の承認を得た結果である、この国民の承認を得た結果を、国民の代表たる国会議員で構成する国会によって承認を得た結果をそう簡単に否定することができないという立場です。

 ただ、二国間でやるとか、そういうことはまだ全然決まっておりませんし、そもそも個別の議論を、どういう議論をするかということを今想定して議論するということは差し控えさせていただきたいと思いますが、これを国会で御承認いただいたことは我々にとっては大変大きな資産であろう、こう考えているところでございます。

福島委員 国会で承認を得たから資産だというのは、臨時国会でも同じような答弁をお聞きしました。TPP自体を再交渉するときには、もう国会で批准しちゃったから再交渉に応じられませんというのは、それはわかりますよ。しかし、今トランプが言っているのはそういうことじゃありませんよね。そもそも、TPPがアメリカにとって利益がないから別の道を行くと言っているわけですよ。

 それは何かといえば、今我々が批准してしまったTPP協定がだめだと言っているわけです。それで確定したわけじゃないんですよ。二国間交渉に乗るということは、TPP以上のことを求めて交渉するんだから、その土俵に乗っかることになるから、安易に土俵に乗っかるべきではないと私は前回の審議で申し上げたんですよ。そう思いませんか、総理。

 TPP以外の道を歩んでいて、TPPよりもアメリカにとって利益のない交渉を行うと思いますか。TPPがぎりぎりの、総理もおっしゃるようなガラス細工で積み重なったものだとするならば、トランプがTPPに満足じゃないと言って、交渉を持ちかけられたら、私はそれを拒否すべきだと思うんですけれども、どうですか、総理。

安倍内閣総理大臣 そもそも、いわばTPPが嫌だというのが、TPPの交渉の結果を見てどのように言っているのか。あるいは、こういうマルチの仕組みが嫌だと言っているのかもしれません。ですから、その辺のところがまだわからないわけでありまして、先ほど申し上げましたような、商務長官がどのように考えているのか、通商代表がどのように考えているのか。

 そこで、果たしてその新しいチームがTPPについて十分に、これは根本問題でもありますが、TPPの結果について十分に理解をしておられるかどうかということもあるんだろう、こう思うわけでございます。

 そもそも、日本においても、米国から収奪されていて、アメリカにだまされているんだと言われてきたわけでありますが、今度は、そのだましているんだと言われている人がやらないと言ってきたわけでございまして、ですから、ここのところは、米側がまずどのように現実について分析をしているのか、TPPの何が問題であるのかということについて個別具体的な話は余りないわけでありまして、ですから、まだ我々はそれについてどうこう言う段階ではないんだろうと思いますし、いずれにせよ、私がTPPに入ってくださいと、わかりましたということにはもちろんなりません。しかし、会談においてもTPPの価値については粘り強く、しつこいぐらいに一応話はしていきたい、このように思っております。

福島委員 私がなぜこの議論をしているかといえば、この一週間ぐらいの議論で総理が、二国間の道も閉ざすものではないみたいな道を開いたからなんですよ。いや、結果としてはそういう可能性がゼロとは言わないですよ。ただ、総理の今の言葉として、トランプ新大統領に会う前の段階としてそれを言うというのは、私は交渉ポジションを著しく下げると思いますよ。

 総理は、TPPの結果を理解しているのかどうかも相手に聞くなんて言っていますけれども、失礼なことですよ、それは。相手の人が理解しないでTPPを撤廃すると言っていると思いますか。そんなことはないですよ。わかった上でTPPからの離脱を言っているわけだし、そう言ってアメリカ国民の支持を得て政権をとったわけですから、それは貫くはずなわけですよ。今さらTPPの中身はこうですなんて説明するような、そうした寝ぼけた段階ではないと思います。

 ですから、総理がアメリカに言うべきメッセージは、何か別の交渉に乗るということではなくて、今TPPで妥結したところ、我々は決してそれに満足していませんよ、満足していないけれども、それからびた一文動かないということを明言することなのではないですか。どうですか、総理。

安倍内閣総理大臣 まず、二国間について、その可能性が全くないのかと聞かれたから、これはうそを言うわけにはいきませんから、今、我々は絶対やらないということを閣議決定したわけでもありませんから、それは全くないわけではないというふうにお答えをしたわけでありまして、聞かれなければ、こっちからそんなことは言いませんよ。それと同時に、TPPについて、トランプ大統領が理解していないということは一言も言っておりませんで、新しく構成されるチームがチームとして十分にそれを理解し、そしてその上でこれからどのようなプランを立てていくのかということについてはわからない、その中で果たしてこの新しいチームが十分に理解しているかどうかということについてはわからないということを申し上げているところでございます。

 いずれにせよ、今の段階ではまだ予断を持ってここで申し上げることができないという状況でありますから、この委員会においてそれについて断定的なお話をさせていただくことは差し控えさせていただきたい、こう思うわけでありますが、基本的には、日米の同盟関係の中における通商政策におきましても、経済関係におきましても、どちらかが一方的に得をするというような関係ではお互いに長続きしないのは明々白々でありますから、その中においてお互いが利益を分かち合っている、お互いが裨益しているということを、そういう理解を進めていく、その中で果たしてどのようなプランがこれからあり得るかということについて、前向きに建設的な話をしていきたいと思っているところでございます。

福島委員 聞かれたから答えたと言いましたけれども、外交のことは、聞かれて答えるのは、うそであっても構わないと思いますよ。相手に対するポジションなんですよ。この国会の審議でどう答えるかが交渉に対するポジションを生むことになるわけですよ。ですから、それは、今の段階では、TPPからびた一文譲るつもりはない、二国間交渉を持ちかけられても、そのようなものに応じることはないと答弁すればいいじゃないですか。それを、可能性があるからやると言うのは、私はおかしいと思います。

 民進党に通商政策がないということをおっしゃいますが、我々も、アジア太平洋で包括的な自由貿易ルールをつくろうということはずっと言ってまいりました。(発言する者あり)

浜田委員長 静粛に願います。

福島委員 資料の三、アメリカのTPPの離脱が決まった後に、TPP参加国のいろいろな国からさまざまなコメントがあります。その中には、米国抜きではあり得ないという国もありますし、TPPはアメリカを抜いた形で再交渉すればいいんじゃないかという国もありますし、中国とかも入れてやればいいんじゃないかと、さまざまな意見が各国の首脳から出ております。

 アメリカがTPPから離脱した後、総理は今までずっと、ガラス細工のようなものであるから、アメリカが抜けたようなTPPは考えられないから再交渉はしないんだとおっしゃっておりますが、その考えはこの段階に至っても変わりませんか。

安倍内閣総理大臣 TPPについては、そもそも米国が抜ければこれは条約上成立しないというのは御承知のとおりでありますが、その中で、しかし、それを修正してつくりかえるかどうかということだろう、このように思います。

 今後、いずれにせよ、RCEPさらにはFTAAP、こういう新たな枠組みの中での交渉が進んでいくことになるわけであります。そこで、どのような形がいいのかどうかということについてはしっかりと検討していきたい、このように思っております。

福島委員 私は、その検討をぜひ始めるべきだと思います。TPPがだめだからRCEPという単純なものではないと私は思いますし、アメリカ抜きの十一カ国で合意したある程度の相場観、ルールというものがあるわけでありますし、また、私が非常に日本にとってチャレンジングでよかったなと思うのは日豪EPA。オーストラリアと結んだ自由貿易協定というのは、オーストラリア側の自動車の関税撤廃ですし、日本もぎりぎりのところで農産物も含めてセーフティーネットは守られているという意味では非常にいい協定だと思うんですね。

 既に日本は、アジアや太平洋沿岸の国の多くと自由貿易協定を結んでおります。いきなりRCEPに行くんじゃなくて、ぜひ、日本主導でどういうアジア太平洋のルールをつくればいいかということを、もう一度さらから考えていただきたいと思っております。これはTPP原署名国のGDPの割合ですけれども、アメリカを入れれば確かにアメリカが過半数を占めておりますが、アメリカを抜けば日本が四割以上、多くの地位を占めるんですね。

 ですから、アメリカがTPPから抜けるのであれば、まさに日本が主導して、アメリカと組まなければならないという説もあるかもしれないけれども、日本が主導してできるわけだし、そのモデルとなるような自由貿易協定を我々は多く持っているわけです。それぞれの結んだ二国間の自由貿易協定には、山や谷やでこぼこがあります。それを埋めて我々にとって一番いい水準のものに合わすだけでも、TPPに近い、かなりいいアジア太平洋の自由貿易協定ができるはずでありますので、ぜひともそういったことを検討していただきたいと思います。

 どうしても霞が関の役所というのは、目の前で交渉が始まるものに飛びつきがちなんです。ただ、その舞台をどう設定しようというのはなかなかできないんです。これはやはり政治のリーダーシップが必要だと思っております。我々もこの点は対案をちゃんと示しますから、それで議論しますので、ぜひ、アメリカから帰った後にでも、通商問題に対して集中審議も行っていただいて、根本的なこうした問題を議論させていただきたいと思いますが、総理、いかがでしょうか。

安倍内閣総理大臣 福島委員が言われたように、ここでの議論というのが外交的なメッセージ性を持つというのはおっしゃるとおりだろうと思います。

 その意味において、確かに、まだ米国がレームダックセッション等々を前に最後のチャンスがある段階において、特に強く私も、米国の入らないTPPは意味がないということも申し上げてきました。事実、米国が入らないことによって相当TPPの価値が低下するのは事実でございますし、日本と米国が主導していく、TPPを核にさらにこの価値観を広げていくということにおいては、米国が入らないということは大きな損失であるのは事実でございますが、ここ当分は米国の参加が見込まれない中においては、我々は固定観念ではなくてもう少し広く考えるべきだということを私は思っておりますが、今まさに議論をしているところでございます。

福島委員 ありがとうございます。ぜひ、集中審議の場を設けていただいて、議論させていただければと思っております。

 次に、前回の臨時国会で問題になった、SBS方式で輸入されているお米が、不当な価格が公表されていたという問題です。

 農林水産省の調査の後、いわゆる調整金というリベートで実際に値下げ原資に回すというのをなくした結果、やはり、アメリカ産のウルチ精米中粒米、主に業務用で使うものですけれども、どんどんどんどん値段が下がっております。輸入業者に聞いても、調整金がなくなったらこういうふうに安くなりますよねというのは、みんな異口同音におっしゃっております。

 前回の臨時国会で問題になったのは、余りにも調査が不透明だったんですよ。誰に対してどのような調査をしたのかも言わないで、結論ありきで、調整金の存在によって価格が安くなっていることはないと言っていたのに、調整金を禁止したら、案の定、二割ぐらい価格が安くなっているじゃないですか。何の調査をやっていたんですか。

 大臣、記者会見では、それでもまだ影響は認められないと頑固に答弁しているようでありますけれども、調整金の存在でこれまで輸入米の価格が不当に高く表示されていた、そしてこれまで行ってきた調査は間違いだったと認めるべきではないですか、山本大臣。

山本(有)国務大臣 委員御指摘のSBS米、特に米国産中粒種、資料にありますとおり、百四十五円、キロ当たり。それが前回よりも六円ぐらい下がっております。また、二十七年七回のところと比べましても四十円ぐらい下がっております。

 この下がっているという事実、これは厳然たる事実でございますが、調整金を改善しましてから、禁止しましてから入札を三回行っております。その三回の入札を見ますと、入札枠が三万トンございますけれども、量的には三割から五割程度しか落札がありません。

 言うと、これは必ずしも一般的に物事を断ずるぐらいの資料がまだないというわけでもございまして、また、普通、日本人と食味が同じ米国産短粒種、これに至ってはかなり値上がりしているという事実がございます。そして、国産米の価格の動向につきましては二十七年産をかなり上回っているという状況でございまして、SBS米の中粒種のみでこれを断ずるわけにはいかず、あくまで米の価格というのは品質と需給で決まっているというように考えております。

福島委員 いや、さっき言った短粒種とか、あとタイの香り米とか、ごく少量のマイナーなものは上がっている場合があります。それは規模がちっちゃいからです。メーンで輸入しているのはアメリカ産の中粒米とオーストラリア産の米でありますから、そういうものは下がっているんですよ。

 私がなぜこの例を出したかというと、今回の天下りの話を聞いていて、まさにこのSBSの問題と同じだなと思ったからなんです。調査をします、調査をしますと言っても全然、何を調査しているのかも言わない、そして国会のTPPの審議が終わったころになるとぱっと出してくる、それと体質が同じようなものだと思うから、この例を出させていただきました。

 天下りの問題に移らせていただきます。

 きのうの報道で、公益財団法人文教協会が解散をするという報道がありました。松野文部科学大臣が文教協会にお金を出さないとなった途端にやめると言っているわけですから、この団体というのは文部科学省の丸抱えの団体だったわけですよね。文科省のお金だけで生きてきたから、そのお金がもらえないとなった途端に解散になっちゃうということですよね、そういうことですよね。松野大臣、どうですか。

松野国務大臣 文教協会が今後解散の方向に進むということに関しましては、私どもは報道で承知をしております。

 私がお話をこちらでさせていただきましたのは、文教協会に関して今後文科省が人的な面また契約関係の面で関係することはないというお話をさせていただきました。

 報道の中において、文教協会の方が、文教協会が信頼を損ねた状況の中で今後運営をしていくことが極めて厳しい、その中において解散する方向で今検討に入ったというコメントが出ていたのは私も承知をしております。

 文教協会全体の経常収益が平成二十七年度で一億六百二十万円でございます。うち、出版物の収益が約七千四百四十万円で七〇%でございます。出版物の収益のうち、どの程度が文科省の購入に当たっているかに関して、今手持ちがございませんので、調べてまた御報告させていただきます。

福島委員 信頼かどうかは別にして、大臣がお金をやらないと言ったために解散というわけですから、文科省がなければ成り立たない文科省天下り中核団体というのは、これは確かだと思うんですよ。

 しかし、解散させてしまったら調査できないかもしれませんよ。新たな事実がまだこの団体から出てくる可能性は大いにあります。証拠を隠滅するおそれもあります。

 ぜひ、大臣、報道でしか知らないということでありますが、この団体は調査が終わるまでは解散をさせず、そしてパソコンのデータとか書類等も含めて保全を図るべきだと思いますが、それを直ちに、今すぐにやるべきだと思います。大臣の御見解をお聞かせください。

松野国務大臣 文教協会が今後解散という方向に進まれるのかは今後の理事会において協議をされることであろうと思いますけれども、文協協会、そしてOBのR氏の文教フォーラム、この関係が、監視委員会の方から、文部科学省が再就職違反を潜脱する目的でその枠組みがつくられているという指摘をいただいております。

 ですから、今後、文教協会の方向、解散するか否かにかかわらず文教協会は当然調査班の調査の対象でございますので、しっかりといろいろ調査協力をしていただいて、ヒアリングなり、また書面等も含めて、しっかり調査をしてまいりたいと考えております。

福島委員 これは早くやった方がいいと思いますので、解散という報道が出ましたから、全ての資料の保全を図るように強く求めていただきたいと思っております。

 今回の文科省の調査班が調査する対象というのはどこまででしょうか。監視委が指摘している案件のみなのか、それ以外も含まれてなのか、どちらかお答えください。

松野国務大臣 今回の文部科学省における調査班の調査対象でございますが、監視委員会の方から認定されたものも含め指摘をされている案件、それ以外に、この制度が発足いたしましたのは平成二十年度、十二月三十一日でございますから、それ以来の文科省の再就職について調査をさせていただきます。

 特に、委員からも御指摘をいただいております文教協会、文教フォーラム等のOBを使った枠組み、この内容に関しても、しっかりと全容を解明すべく調査を進めてまいります。

福島委員 ヒアリングして思ったのは、文部科学省というのは文部省と科学技術庁が統合してできた役所です。人事は見事にたすきがけになっていて、文部省系と科学技術庁系で、OB人事も含めて全然別の系統になっているんですね。ぜひ、文部省系だけではなく、科学技術系の天下りの問題も含めて、しっかりと調査をしていただきたいというふうに思います。

 いろいろこれまでの天下りの実態を、全てデータが公表されているものを拝見させていただきました。平成二十年から二十八年まで、ちょっとこれはテレビでごらんになっている方は細かくて恐縮なんですが、手元の資料があると思いますけれども、見てみると、官民人材交流センター、これを通じたものは民主党政権のときからやめておりますから、これ以降はほとんど官民人材交流センターというものは使われておりません。

 しかし、その前の平成二十一年を見ますと、結構多くの役所がそれなりに官民人材交流センターの仕組みを使いながら再就職をやっているということがわかります。これに対する評価は我々はいろいろありますけれども、ただ、私が思うに、官民人材交流センターを使ってやっているところは、この法の趣旨にのっとってやろうとしている誠実な役所であると思うんですね。

 ずっとほとんど使っていない役所があるんですよ。その一つが文部科学省。これまで一件です。例えば法務省。法務省はいっぱい天下りをしているんですけれども、これまで一回も官民人材交流センターを使っておりません。あともう一つは警察。国家公安委員会と一番下の特定地方警務官、地方の県警本部でやめる方もいらっしゃいますから、その方はいっぱいいらっしゃるんですが、官民人材交流センターを全く使っておりません。防衛省に至っては、結構、私の知り合いでも防衛省の関係の方で防衛産業の関係に天下りというか再就職されている方はいらっしゃいますが、一般職ではないということで、ここの数字には再就職者数も官民人材交流センターの援助を受けているかどうかも全然出てきません。

 私は、こういったことも踏まえて、これは省によって様子が全然違うと思うんですよ。一様の調査をやっていてもだめなところがあって、結構、私の出元の経済産業省を見ていると、先輩方こんなところで大丈夫なのかなと思うような、そういう就職をされている方もいらっしゃいますし、昔、私のいたころは……(発言する者あり)いやいや、失礼で言っているんじゃないですよ、それは。失礼で言っているんじゃなくて、昔のようないわゆる典型的な天下りというのは大分なくなっているなというのを実感いたしまして、それぞれ皆さん再就職のルールを守っているところは苦労されているなというのを実感しているんですよ。全然失礼な話じゃないですよ。

 その一方で、そうじゃなくやっているところもあるんじゃないかと推察されるんですけれども、ぜひ、山本大臣、もう一人の山本、農水大臣と同じようにならないためにも、どういう調査をやるのかということを明らかにしてほしいんですよ。(発言する者あり)いや、失礼じゃないですよ。山本農水大臣は、臨時国会で、SBS米について、どのような調査を誰にするのか、一切明らかにしなかったんですよ。ふたをあけてみたらこうなって、失言も繰り返された。

 そうならないためにも、ぜひ、どういう調査をやるのか、何人に聞くとか、そういうのはいいですから、その概要だけは来週の集中審議までにこの委員会に提出いただけないでしょうか。どうでしょうか。

山本(幸)国務大臣 調査の内容については、先般参議院の理事会にも提出いたしましたけれども、必要があれば文書で提出いたしますが、基本的に、三十人強のチームをつくって、外部の目を、弁護士を入れて、そういう疑いのある方々を対象に厳正な調査をしっかりやる。その上で、必要があれば監視委員会と連携しながら、しっかりとした徹底した調査をやっていきたい。

 スケジュールについては、初めにスケジュールありきということではありませんけれども、調査の中身をしっかりと充実することが一番大事でありますので、そういうことでありますが、一方で、結果が出次第、速やかに明らかにしていくことも重要でありますので、私の指揮のもとでスピード感を持ってやっていきたいと思っております。

福島委員 役所にいたときに、期限切れの八十点より期限内の六十点と私は言われまして、何が重要かというと、これは予算に関係することなんですよ。先ほどの後藤委員の質疑にもありましたけれども、天下りによって予算の配分がゆがめられているかもしれないという、そうした問題でありますから、予算の採決の前に、ぜひ、中間報告でもいいから、結果を出していただきたいと思います。

 天下りの集中審議、そして通商問題の集中審議、そして調査の概要の資料の提出、そして調査の中間報告を予算の審議の最中に提出することを委員長に求めまして、質問を終わりとさせていただきます。

浜田委員長 理事会で協議いたします。

福島委員 どうもありがとうございます。

浜田委員長 これにて江田君、大串君、小川君、辻元君、今井君、階君、緒方君、大西君、後藤君、福島君の質疑は終了いたしました。

 次に、笠井亮君。

笠井委員 日本共産党の笠井亮です。

 安倍総理に伺います。

 トランプ米大統領は、就任演説で過激イスラムテロを打倒する、こういうふうに演説したのに続いて、一月二十七日、テロ対策として、全ての国からの難民受け入れの百二十日間の凍結、シリア難民入国の無制限停止、中東、アフリカ七カ国の一般市民の入国の九十日間禁止を命じる大統領令を発しました。

 この措置に対して、米国内はもちろんですが、全世界、世界各地で大きな混乱と批判が起こっており、重大な国際問題となっております。日本航空と全日空も、対象となる人のアメリカ便への搭乗手続を断る方針を決めました。我が国への影響も重大であります。

 難民の入国制限、特定の宗教や国籍者に対する入国制限というのは、難民法を初めとする国際的な人権・人道法に反するものであります。さらに、テロ根絶の国際的な取り組みに対しても、極めて深刻で否定的な影響を与えているのがこの大統領令。

 総理にはそういう認識がおありですか。

安倍内閣総理大臣 各国の入国管理政策や委員御指摘の大統領令は、基本的には内政事項でありまして、コメントすることは控えたいと思います。

 また、日米首脳会談においては、トランプ大統領と率直かつ有意義な意見交換を行いたいと考えておりますが、具体的内容については予断をすることは差し控えたいと思います。

 他方、移民、難民問題そしてテロ対策は世界的な課題と認識をしておりまして、国際社会で力を合わせてこうした課題に取り組むべきことは当然のことであります。日本のその立場は明確であり、揺るぎないものであります。

 日本としては、移民、難民が出てくるような状況を根絶する、その中で世界が協力しなければいけないということにおいて、その役割を果たしていきたいと考えております。

笠井委員 総理は今回の問題は内政事項だと言われましたが、そうではなくて国際問題です。国際社会は、出入国の管理の手続をどの国がどうしているとかいう問題じゃなくて、テロ対策の名で特定の宗教や特定の国の市民を排除していることを国際問題だとして大きく問題にしているわけであります。

 この大統領令が出されたことを、我が国日本では、一月二十八日の夕刊、新聞で、主要紙が一斉に報道しております。そして、その日の、夕刊が出た後の深夜、二十三時過ぎから、安倍総理とトランプ米大統領の電話会談が四十二分間にわたって行われた、これが事実関係。

 外務省が発表した電話会談の概要を見ますと、総理はトランプ大統領に対して、就任直後から精力的に行動され、トランプ時代の幕あけを強烈に印象づけた、こう言われた。さらに、トランプ大統領のリーダーシップによって米国がより一層偉大な国になることを期待している、ここまで言われました。

 この電話会談は、大統領令が出た後、国民みんなも知っている中で、そういう中で行われて、こういう発言を安倍総理はされた。つまり、これは、今回の入国制限措置も含めた評価の言葉だったということになると思うんです。

 総理は、内政事項だからコメントしないと言われますけれども、もうコメントしているんじゃないですか。いかがですか。

安倍内閣総理大臣 つまり、今御紹介をいただきましたが、トランプ政権がスタートしたわけでありまして、そうした中において矢継ぎ早にさまざまな大統領令を出しておられることも事実でありまして、これは強烈な印象を与えていることも事実でございます。

 そのことを述べた上において、偉大な国になっていくことということについては、まさにこれはさまざまな思いを込めて申し上げているわけでございまして、アメリカ的な価値を基盤として、そして世界に範を垂れる偉大な国になっていただきたい、こういう思いを込めて述べたところでございます。

笠井委員 さまざまな大統領令を出しているトランプ大統領じゃなくて、さまざま出しているけれども、とりわけ電話会談の直前にはくだんの問題の大統領令が出た、そのもとで総理がそういう評価をされた、トランプ大統領に対して。まさに、トランプ大統領が国際法に反して特定の宗教や国籍者の入国を制限したという、国際問題となっているさなかのトランプ大統領への評価の発言であります。

 そして、こういう状況だったから、各国はどうかといえば、同じくトランプ大統領と電話会談したドイツ、フランスを初め、イギリス、カナダなど、世界の首脳が次々とこの大統領令への批判や不同意を表明しているということであります。

 ドイツ政府報道官によれば、メルケル首相は、テロとの断固とした闘いが必要だとしても、特定の地域の出身者や特定の信仰を持つ人たち全てを疑いの目で見ることは正当化できないと考えている、このように述べております。

 イギリスのメイ首相は、けさもニュースでやっていました、昨日のイギリス議会で、イギリス政府ははっきりと誤りであるという立場をとっている、あのような政策は対立を生み、間違っている、ロングとメイ首相が強く言っていたのが言葉で流れました。

 政府首脳がだんまりを決め込んでいる主要国は、日本くらいであります。今回の大統領令に対して、明確な日本の首相としてのメッセージを発信すべきじゃないですか、安倍首相。

安倍内閣総理大臣 もう既にこの場において再三答弁をさせていただいているわけでございますが、各国のリーダーのメッセージはそれぞれでございまして、まさに、宗教や人種、信条等によって差別をしてはいけないというメッセージもございます。当然のことであろう、こう思うわけでございますし、また、その国のとっている難民政策あるいは移民政策のもとにこうした難民を受け入れていく、ウエルカムであると。例えば、カナダがそうですね。カナダでは、直ちに迎えるという趣旨の話をしておられるわけでございます。

 という中におきましては、我々としては、いわば出入国に係ること、あるいは難民、移民政策については、それぞれの国の内政問題に係ることでありますからコメントは差し控えているわけでございますが、同時に、先ほど申し上げましたように、今、多くの難民が出てきているという問題、移民の問題もあります。そして、それは欧州に大きな混乱をもたらしたわけでありますが、その中で、各国が協力してこうした問題に対処していく必要があるだろう、憎悪の連鎖を断ちたい、断ち切らなければならないというのが国際社会の一致した認識であります。その中で日本もしっかりとその役割を果たしていくということは全く変わりがないということは、申し上げているとおりでございます。

 また、昨年の真珠湾訪問の際に、和解の力が大切である、和解の力が今求められている、そして寛容の心が大切である、このメッセージを日米でともに発出していくことこそ今求められているということについてスピーチをしたわけでありまして、その考え方には今も全く変わりがないということでございます。

笠井委員 総理はいろいろ言われましたけれども、世界各国首脳は、やはり重大な、内政事項じゃなくて、国際問題だからこそ厳しい批判、議会やあるいは電話会談で直接言っているわけであります。

 難民問題を言われましたけれども、国連難民高等弁務官事務所、UNHCRは、宗教、国籍、人種を問わず、平等に扱われ、保護と支援、再定住のチャンスを受けることができるべきだ、こういう厳しい声明も出している。

 同時に、テロ対策での他国との関係でも、今回の大統領令は重大な問題があります。

 二〇〇六年の国連総会では、国連対テログローバル戦略が、アメリカ、日本を含めて全会一致で採択をされて、全ての人の人権と法の支配の促進、擁護がこの戦略に不可欠ということを明記して、テロをいかなる宗教、文明、民族グループとも結びつけてはならないと述べております。実際、特定の宗教とテロを結びつけてきたことが、これまでテロリストにテロの口実を与えてきたわけであります。

 ところが、トランプ米大統領は、就任演説で特定の宗教とテロを結びつけて、テロ対策として今回の一連の入国制限措置をとったとしている。これは、二〇〇六年の国連総会決議に明記された国際的なテロ根絶の大原則に真っ向から反するものにほかなりません。このことは、テロリストに新たな口実を与えて、テロ根絶にとっても深刻な逆流をつくり出している。

 総理は、今度の日米首脳会談で、この大統領令の速やかな撤回をテロ対策の点でも厳しくトランプ米大統領に求めるべきだと思うんですが、そのことを言うんですか、言わないんですか。

安倍内閣総理大臣 移民政策あるいは難民政策、そして入国管理については、それは内政の問題であろうと思います。

 そして一方、対テロあるいはまた難民の問題、移民の問題等についてはしっかりと議論を行いたい、このように考えております。その中で、先ほど私の考え方について一端を述べさせていただいたところでございますが、その私の考え方にのっとってお話をさせていただきたい、こう思っております。

笠井委員 看過できない重大な国際問題だからこそ、どの先進国首脳も警戒心を持ってトランプ政権に当たろうとしている。

 ところが、今伺っていますと、安倍総理にはそういう基本姿勢というのがまるで感じられないと言わざるを得ません。ともかく早く会ってくれ、日米同盟第一という態度で、トランプ大統領を、この大統領令が出た直後にも天まで持ち上げた。日本の首相ぐらいだと思います。言うべきことも言わない、こういう態度で日米首脳会談に臨んだら、私は、大変なことになると強く警告をしたいと思います。

 トランプ米大統領の米国第一主義には、世界の中で危機感、警戒心、怒りが広がっております。世界一の超大国指導者が軍事、経済両面で自国の利益を覇権主義的に押しつけて、金持ち中心主義を押しつけるなど、危険きわまる、世界の大きな流れへの逆行であり、日本への影響は見過ごせない、看過できない、こういう問題であります。

 そこで、具体的に見ていきたいと思います。

 軍事面ではどうか。

 この間、トランプ米大統領は、同盟国の軍事費負担について繰り返し不満を表明してまいりました。あす来日するマティス米国防長官も、米上院公聴会でこう言っております。全ての同盟国から応分の支援を得る必要がある、こう述べて、米軍駐留経費の負担をふやすべき、こういう認識を示しております。

 安倍総理は、さきの参議院本会議で、我が国としても防衛力を強化し、みずからが果たし得る役割の拡大を図っていく、こう答弁されました。これは、トランプ新政権が在日米軍の経費負担や軍事予算の増額を求めてきた場合、日米同盟第一、こういう立場で応えていこう、こういうことなんですか、総理。

安倍内閣総理大臣 日米同盟が我が国の外交、安全保障の基軸であることについては、トランプ政権との間でも、信頼関係の上に揺るぎない日米同盟のきずなをさらに確固たるものにしていきたい、こう考えている次第でございます。

 それはまさに、厳しさを増す安全保障環境、アジア太平洋地域の安全保障環境は厳しくなっているわけでございますが、万が一日本に対して侵害をすれば、それは米国が来援し共同対処をする、あるいは米国が報復をするということをもって、抑止力を我々はしっかりとしたものにしているわけでございます。

 トランプ政権の在日米軍駐留経費に係る立場について予断することは差し控えるわけでございますが、その後、大統領に就任して以降、日本に駐留軍経費を多く払えと具体的には発言をしておられないというふうに承知をしておりますが、日米安保体制は日米いずれかのみが利益を享受するような枠組みではなくて、したがって、在日米軍駐留経費についても日米間で適切な分担が図られるべきものと考えています。

 もとより、安全保障政策において根幹となるのはみずからが行う努力であるとの認識に基づき、我が国自身の防衛力を強化し、みずからが果たし得る役割の拡大を図っていくことは当然であろう、こう思うわけでございます。つまり、みずからがみずからの国を守ろうと努力しない国に対してそれを防衛する国は、探したって実は世界じゅうにはないわけでございます。そのことの認識は極めて重要だろう、こう思うわけであります。

 同時に、アジア太平洋地域の安全保障環境が厳しさを増す中にあって、日米同盟はアジア太平洋の平和と繁栄の礎として不可欠な役割を果たしておりまして、我が国としても、平和安全法制や新ガイドラインに基づいて、日本としての役割を積極的に果たしていきたいと考えているわけでございます。

 それと、米国も日本に多くの海兵隊を今駐留させているわけでございますが、これは、日本を守るだけではなくて、まさに極東の平和と安定を守り、それは米国の、極東地域、アジア太平洋地域の権益を守ることにもつながっているわけでありまして、この米国のプレゼンスを可能としているのはまさに日本における米軍基地であろう、こう思うわけでございます。

 その大きな貢献抜きには語れないわけでありますから、その中において、日本のみが裨益をしているのではなくて、日米ともに国益の観点からも裨益をしているということについては、これは当然認識を一にしていきたい、こう考えているところでございます。

    〔委員長退席、宮下委員長代理着席〕

笠井委員 では、そこで、資料を配付させていただきましたが、一枚目をごらんいただきたいと思います。「米国の安全保障政策/日米同盟」という資料であります。

 これは、防衛省防衛政策局の調査課と日米防衛協力課が二〇一三年、平成二十五年二月にまとめた文書でありまして、今申し上げたように、「米国の安全保障政策/日米同盟」と題する文書であります。これは、防衛省が私に提出したものであります。全体はA4判で二十三ページにわたりますが、その表紙が資料の一枚目にあります。その表紙の右肩上には取扱厳重注意、席上回収と。つまり、その会議の席上だけで、後は回収するというものであります。

 稲田防衛大臣、この文書は、いつ開かれたどんな会議で出されて使われたものでしょうか。

稲田国務大臣 御指摘いただいた資料については、防衛計画の大綱の見直しに当たって防衛省内に設けられた防衛力の在り方検討のための委員会において、米国の安全保障政策や日米同盟という観点から、防衛力のあり方について防衛省部内での検討を行うために作成された資料でございます。

笠井委員 この資料は、時期でいいますと、平成二十五年二月ということで、二〇一三年二月になりますが、第二次安倍政権が発足した直後のもので、その検討委員会が行われたときに配付されたと。

 そして、その委員会、この文書が配付された二日後には日米首脳会談が行われて、安倍総理はその場で、防衛大綱の見直し、さらには集団的自衛権行使容認の検討を約束されたという経過であります。そして、総理は、その首脳会談について、緊密な日米同盟は完全に復活したと誇ったわけであります。

 そこで、パネルを見ていただきたいんですが、資料でいうと二枚目になります。

 これを見ますと、日米同盟の現状、在日米軍の安定的な駐留のための施策の現状ということで、普天間飛行場移設問題、オスプレイの沖縄配備問題、在日米軍駐留経費負担、HNSなどの各施策の評価が記されております。

 今、議論で問題の在日米軍駐留経費負担に関する記述ではこうあります。二〇一三年度予算案で約千八百六十億円で、他の米軍接受国、米軍基地を受け入れている国ですね、そういう国と比べて我が国の負担率は突出というふうに書いてあります。

 そこで、どれぐらい予算で出しているかという話なので、私も外務委員会で岸田大臣と大分いろいろ議論した経過もありますので、岸田大臣にお答えいただきたいと思いますが、第二次安倍政権発足以降五年間、今度の新年度予算を含めてですが、五年間の在日米軍駐留経費負担というのは、当初予算のベースで合わせて幾らになりますでしょうか。

岸田国務大臣 御指摘の予算は、これは防衛省の予算ですので私から答えるのが適切かどうかわかりませんが、防衛省によりますと、平成二十五年度から平成二十九年度にかけて、在日米軍駐留経費負担の合計額、約九千四百七十四億円であると承知をしております。

笠井委員 この五年間で、新年度予算も含めて一兆円近い予算上の負担をしている。

 安倍総理は、第三次補正予算審議のときに、米側の統計をもとにして、日本の負担の割合というのが七四・五%と他国と比べても高い水準にあるという趣旨で、答弁で認められました。そういうことですね。

安倍内閣総理大臣 この我が国の負担割合については、在日米軍の駐留費、駐留に要する経費全体の捉え方に左右されるわけでありますが、過去の米国の報告書においては七四・五%とされ、主要同盟国中最も高い割合になっております。

笠井委員 そもそも、この在日米軍駐留経費は米国がみずから負担すべきもので、日本に支払い義務はありません。日米地位協定第二十四条は、日本国に合衆国軍隊を維持することに伴う全ての経費は日本国に負担をかけないで合衆国が負担すると。日本国に負担をかけないで合衆国が負担する、こうはっきり協定上定めております。

 それを、いろいろな議論があるということの中で、アメリカも要求するというのがあったりして、日本はわざわざ特別協定を結んでまで負担している。この防衛省の文書を見ましても、資料にありますが、我が国の自主的な判断により、一九七八年度以降負担してきたというふうにあります。

 そして、今、トランプ大統領はもっと負担せよというふうに言ったという経過がある。それを認めたら大変なことになると思うんですね。今でも一兆円近く、条約上も、協定上も義務がないのに負担しておきながら、さらに負担せよという話が出てきている。総理は、これを唯々諾々と認めるんですか。

安倍内閣総理大臣 韓国、ドイツ、イタリア等と比べて、日本が相当高い比率で負担をしているのは事実でございます。ドイツ、イタリア等々としては、彼らはNATO上の義務があるということでしょうし、また、韓国においては、在韓米軍と合同で対処するときには、まさにこれは米側のコマンドのもとに韓国軍が戦うということになっておりますから、それぞれ義務のいわば違いも当然あるだろう、こう思うわけでございます。

 そこで、いずれにせよ、日米安保体制は日米いずれかのみが利益を享受するような枠組みではないわけでありまして、したがって、在日米軍の駐留経費についても日米間で適切な分担が図られるべきもの、こう考えているわけでございます。

笠井委員 総理はいろいろ言われましたが、断るとは言われませんでした。

 日本側の負担はそれだけではありません。在日米軍の関係経費として、いわゆる思いやり予算。これは共産党が言ったんじゃなくて、もともと自民党が言い始めたわけですけれども、大臣。そして、米軍再編経費、SACO、沖縄に関する特別行動委員会関係経費など、昨年度予算だけでも合計七千六百億円超になっている。グアムの米軍基地増強や北マリアナのテニアン訓練場整備など、米領土での基地建設という世界に類例のない負担までしているのが現実であります。

 共同通信社の昨年十一月の世論調査でも、在日米軍駐留経費について、日本の負担をふやす必要はない、こう回答した人が八六・一%。八六・一%と、圧倒的です。当然です。この声を聞くべきです。日米同盟を絶対視して、世界でも異常に突出した駐留経費負担を続けるのではなくて、要求はきっぱりと拒否すべきだと強く言いたいと思います。

 さらに、この防衛省の文書には、もう一つ、辺野古の新基地建設やオスプレイの沖縄配備に関する評価も記されております。「普天間飛行場移設及びオスプレイの沖縄配備ともに依然として沖縄県から理解を得られていない。」とあって、これらについて「沖縄の負担感は極めて強く、万が一の事故の際には全基地撤去運動に繋がりかねない状況」、こう書いてあります。

 万が一オスプレイの事故が起きれば沖縄県民の生命、安全が脅かされると危惧するならわかりますが、しかし、防衛省のこの評価は全く違います。万が一事故の際には全基地撤去運動につながりかねないことを懸念している。

 稲田防衛大臣も同じ認識でしょうか。

稲田国務大臣 先ほど御答弁申し上げましたように、この資料は、防衛省内部での検討を行うために作成されたものであって、必ずしも政府の公式見解を示したものではありません。

 さらに、先ほど委員が御指摘になった、例えば普天間飛行場移設問題についての記述も、沖縄県の埋立承認前の記述でございます。そして、普天間飛行場の危険性の除去というのは今も喫緊の課題であって、普天間飛行場の移設計画について地元の方々の一層の理解を得るべく努力を続けてまいりたいと思っております。

 また、オスプレイの飛行に際しては、安全面の確保が大前提であり、そして米側に対して、安全面に最大限配慮するとともに、地域住民の皆様方に与える影響を最小限にとどめるよう求めてまいりたいと考えております。

笠井委員 私の質問に答えていただいていません。

 私が伺ったのは、内部文書と言われましたが、この文書の中で、万が一の事故の際には全基地撤去運動につながりかねない、こういう認識を持っているわけですけれども、大臣も同じ認識ですかと聞いたんです。大臣の認識はどうですか。

稲田国務大臣 私の認識は、普天間飛行場の危険性の除去が喫緊の課題である、そしてまた、オスプレイの飛行に際しては安全面の確保が大前提である、そして、沖縄の負担軽減のためにできることは何でもやっていくということでございます。

笠井委員 ですから、では、万が一の事故の際にはどういうことになるというのが大臣の認識ですか。全基地撤去運動につながりかねないと思っている、そうじゃない、その辺のところはどうなんですか。

稲田国務大臣 まず、その資料は防衛省内部での検討を行うために作成されたものであって、必ずしも政府の公式見解でもなければ、私の見解でもありません。

 そして、オスプレイの飛行に際しては安全面の確保が大前提であるというふうに考えておりますし、万が一事故が起きた場合には、その再発防止、そして事故の究明が重要だと考えております。

笠井委員 違うんですよ。万が一起きたとき、再発というのは違うんだ。事故が起こったらどういう影響があって、どういうことをもたらすかということについて聞いているんですよ。お答えできないわけですね。だから、違うというふうなことじゃないでしょう、違うんだったらどうと言われないんですから。

 内部文書、内部文書と言われますが、内部文書だからこそ、検討文書だからこそ本音が出るんですよ。そういう文書を出していて、検討材料で、そして副大臣をトップにして会議をやって、その二日後に総理がアメリカと日米首脳会談をやっているんですからね。そんな軽いものじゃないんです。

 現に、昨年十二月十三日に沖縄県名護市でオスプレイの墜落事故が起きました。万が一どころか、起こった。ところが、米軍は、当委員会でも議論がありましたが、事故後わずか六日でオスプレイの訓練を再開して、三週間余りで空中給油訓練も再開をいたしました。

 安倍総理は、事故発生当時、重大な事故を起こしたことは大変遺憾だ、原因の徹底的な究明を強く要請している、飛行の安全確保が大前提だと記者団の質問に答えて述べられました。ところが、米軍の調査でも事故原因が特定されていないのに、訓練の再開に日本政府は理解を表明して容認した。これは実に驚くべきことだと思うんです。あり得ない。主権国家の政府としては本当に恥ずべき態度だと言わなければなりません。

 一体、米軍の最終的な事故調査報告というのはいつ出されると承知しているんですか。

    〔宮下委員長代理退席、委員長着席〕

稲田国務大臣 オスプレイを含め、米軍機の飛行安全の確保は、米軍が我が国に駐留する上で大前提だと考えております。

 先般のオスプレイの不時着水事故については、事故後速やかに私からマルティネス在日米軍司令官に対し、事故原因の究明、安全が確認されるまでの飛行停止等を申し入れ、米軍側において飛行停止と空中給油訓練の停止措置がとられました。

 その再開に当たっては、米軍だけの判断ではなく、日米で協議を行い、日本政府においても、防衛省・自衛隊の専門的知見及び経験に照らして独自に分析をしたところです。

 その結果、本件事故については、引き続き米軍において調査中であり、原因を完全に特定するには至っていませんが、日本政府としては、米側が、事故を引き起こした可能性のある各種要因に有効であると思われる対策を幅広くとっていることを確認したところであります。

 さらに、今後とも空中給油訓練は陸地から離れた場所でしか行わないことも確認をしているところでございます。

笠井委員 あれこれ言われましたけれども、私の質問に何一つ答えていないんですよ、予算委員長。ちょっとこういう審議はおかしいと思うんですね。いろいろと言われた上でもいいけれども、短く言って私の質問に答えればいいのに、結局答えていないでしょう。

 一体、米軍の最終的な事故調査報告はいつ出されるというふうに承知しているのかというのが私の質問です。

稲田国務大臣 原因究明のための調査が行われているものと承知をいたしておりますが、事故原因の調査には通常数カ月を要するものと承知をいたしております。

 なお、平成八年の日米合同委員会合意では、米軍航空機の事故報告書の日本側への提供は、原則、要請の日から六カ月以内に行うこととされており、要請は昨年十二月十九日に行っているところです。

笠井委員 きちっと詰めて確認もしていない、どうなるかというのを詰めてもいないんですね、今のを聞くと。

 通常でいうと数カ月要する。そして、十二月に言ってから六カ月ということでいうと、五月、六月にならないと出てこない。それで、原因も調査報告も出ていないのにオーケーしちゃった。

 米軍がオスプレイ飛行を再開した十二月十九日、防衛省が発したプレスリリースというのがあります。ここにホームページから私も引いてまいりましたが、その中で、事故直後から、在日米軍から情報提供を受け、継続的にさまざまな照会を行ってきた、事故の状況、原因に関しては、これまで米側から得た情報等に基づき、防衛省・自衛隊の専門的知見に照らせば合理性が認められるというふうに書いてありますが、そう書いてありますね、稲田大臣。書いてあるかどうかだけ。

稲田国務大臣 そのように記載されていると承知しています。

笠井委員 では、ここに、防衛省が提出した、航空自衛隊のトップの杉山空幕長の十二月十六日の記者会見の要旨がございます。飛行再開の三日前のものでありますが、これを見ると、杉山空幕長は、墜落事故、今回の事故について問われて、今回の件については、事実関係が米軍から公開されておらず、皆さんと同じ報道ベースでしか存じないため、具体的な分析はほとんどできていない、そういうふうにはっきり答えています。

 今、稲田大臣が確認して書いてあると言った防衛省の発表文書、プレスリリースと矛盾しているんじゃないですか。どうですか。

稲田国務大臣 先ほど御答弁申し上げましたように、防衛省において米側と情報を密に交換して、そして事故の原因、さらには要因についても独自に分析をしているところです。

笠井委員 独自に分析していると言って、空幕長自身が、知らない、報道ベースでしか聞いていないと。新聞を読んで分析しているみたいな話ですよね、これは、独自と言うけれども。

 オスプレイの飛行再開を宣言した米軍のプレスリリースというのがここにあります。これによりますと、杉山空幕長が記者会見を行った同じ十二月十六日に、在日米軍は日本政府に対し飛行の継続を通知したというふうにあります。

 このとおりなら、日本は、事実関係が米軍から公開されず、具体的な分析もできていないのに、米軍から飛行再開の通知を受けたということになります。いわば、言い方はあれですけれども、蚊帳の外に置かれていたことになります。沖縄県民、日本国民の生命や安全を守るために真剣に原因究明する、そういう姿勢が経過から見てもみじんもないと言わなければなりません。

 原因究明を徹底したら、それこそ、この、内部文書と先ほど稲田大臣は言ったけれども、本音が出ている防衛省の中の文書、万が一の事故が起こったら全基地撤去運動につながってしまう、そんなことになったら大変ということを懸念して、アメリカに言われたまま飛行再開を認めただけということになるんじゃありませんか。

稲田国務大臣 今回の飛行再開は、オスプレイの飛行再開と空中給油の飛行再開、二段階に分けて行われました。事故当初から、今回の事故の原因は、オスプレイの機体ではなく、空中給油訓練中に行われたものという認識のもとで、そして、空中給油の再開に当たって、要因の分析等を防衛省で独自に行ったものであります。

 オスプレイの事故に際し、給油ホースとオスプレイのプロペラの物理的な接触を引き起こした具体的な要因は今後米側の事故調査の中で確認されることになりますが、空中給油の再開に当たっては、米軍だけの判断ではなく、防衛省においても、接触を起こした要因についてあらゆる可能性を分析した上で、米側によってとられた教育、研修といった対策が有効であるかについて評価を行いました。

 この結果、防衛省としては、米側が、事故を引き起こした可能性のある各種要因に有効であると思われる対策を幅広くとっていることを確認したところです。

 この防衛省における分析と評価について、八つの項目に分けて具体的に申し上げます。

 第一に、訓練の……(笠井委員「だめです。委員長。問題が違う。そんな対策の具体的な話はいいんですよ」と呼ぶ)

 第一に、訓練の十分な習熟がなされないままに飛行するなど、フライトスケジュールが適切に組まれなかったことにより、搭乗員の練度が十分でなかった可能性については、米側において、搭乗員全てが空中給油に必要な教育訓練を通じ習熟したことを確認した上で飛行日程を組むこととなりました。

 第二に、航空機の搭乗員同士または海兵隊と空軍同士の連携が十分でなかった可能性については、米側において、オスプレイを運用する海兵隊とMC130を運用する空軍がともに今般の事故を検証し合い……

浜田委員長 簡潔に願います、大臣。

稲田国務大臣 相互に連携して安全に活動できるよう、飛行中の連携要領を再確認すること、また、搭乗員同士の意思疎通や連携の重要性について再確認することなどが行われました。

 第三に、緊急事態に対する搭乗員の経験や知識が十分ではなかった可能性については、米側において、空中給油時に発生する緊急事態における……

浜田委員長 大臣、簡潔に願います。

稲田国務大臣 パイロットやその他搭乗員等の経験談及び給油ホースに接触した同様の事例からの教訓が共有されました。

 第四に……

浜田委員長 大臣。

稲田国務大臣 天候の変化を機敏に認識できなかった可能性については、米側において、天候を含む周囲の状況分析と適切な対応について搭乗員の理解が確認をされました。

 第五に、風や乱気流等に対する対応が十分ではなかった可能性については、米側において、風や乱気流等が空中給油に与える影響と適切な対応について搭乗員の理解が確認をされました。

 第六に……

浜田委員長 だから、長い。大臣、簡潔に願います。

稲田国務大臣 給油を行う際の飛行速度が適切でなかった可能性については、米側において、安全に給油を行うための飛行速度について搭乗員の理解が確認されました。

 第七に……

浜田委員長 大臣、長い。大臣、余り長いと、とめますよ。

稲田国務大臣 複雑な夜間の空中給油への対応が十分ではなかった可能性については、米側において、暗視ゴーグルを装着しながら夜間の空中給油を適切に実施する方法について搭乗員の理解が確認されました。

 最後に……

浜田委員長 最後には要らない。

稲田国務大臣 給油ホースまたはオスプレイのプローブが正常に作動しなかった可能性については、米側において、給油器具が適切に作動するための整備方法等が確認をされたところです。

 また、今後とも、空中給油訓練は陸地から離れた場所でしか行わないことの確認をしているところでございます。

浜田委員長 大臣、そこでやめましょう。

 大臣に一言申し上げます。質問に対して答えてください。終わりますから。

笠井委員 私は、日本国民、沖縄県民の立場から、本当に、命と安全を守るためにどうしようかということで真剣に議論しているんですよ。かみ合った議論をしていただきたい。

 いろいろ言われたけれども、先ほど確認したように、事故を起こした米軍自身が調査報告書はまだ出ていないんですよ。原因はわかっていないんでしょう。このことを確認した、あれを確認したと言ったってだめですよ、半年後にならないとわからないと言っているのに。

 そして、空幕長も、先ほど本人の記者会見のことを言いました、事実関係が米軍から公開されていない、皆さんと同じ報道ベースでしか存じないために具体的な分析はほとんどできていないと言っているんですよ。そんな中で、米軍から通告があって、そしてオーケーですと話をしたわけですからね。こんな話はあり得ないと思います。ここに、今の安倍政権の姿勢が示されている。

 オスプレイは、日本全国の重大問題です。日米同盟第一の志向のもとに作成された中期防では、自衛隊への導入が決まった。墜落事故を起こした沖縄配備のオスプレイは、横田、厚木、岩国基地などに飛来して訓練を繰り返しています。横田基地には米空軍のオスプレイが配備されようとしている。日米合わせて五十機、五十一機というオスプレイが日本じゅうを飛び回るほど危険なことはないと思います。オスプレイの撤去を強く求めたいと思います。

 アメリカ・ファーストに対して安倍首相が日米同盟ファーストと言うのは、私は最悪の組み合わせだと思います。軍事も経済もとんでもない道に引き込まれることになる。日米同盟第一でいいのか、真剣に問い直すときです。異常なアメリカ追随外交を根本から見直して、対等、平等、友好の日米関係に切りかえることがいよいよ切実な課題になっているということを強調したいと思います。

 そこで、次の問題に行きます。

 日本経済、国民の暮らしはどうなっているか。安倍総理は確実に経済の好循環が生まれているというふうに言われますが、国民にはそんな実感は全くありません。

 資料三枚目をごらんいただきたいと思います。パネルにしました。

 上場企業の大株主百人の保有株式時価総額がこの四年間でどれだけふえたか、有価証券報告書を当たって調べてみました。四年間で、総額にして、上位百人で五兆四千億円から十四兆九千億円へと、約三倍にもふえております。一番保有しているのが、上位の中で、ソフトバンクグループの社長、二番目がファーストリテイリング、ユニクロの会長、三番目がキーエンス名誉会長、楽天会長、ユニ・チャームのファウンダー、創業者という形で、上位五位、五人について、ここにグラフにしてみました。こういう状況。

 大企業の内部留保も三百八十六兆円へと、過去最高であります。

 その一方で、国民、庶民の暮らしは、四年間で、実質賃金は年にして十九万円減って、実質の家計消費は、今月また、先月あれですから、十六カ月連続で前年比マイナスとなっております。

 そこで、安倍総理、本会議での質問で答えがなかったので、改めて問いたいと思います。

 事実の問題として、今日まで、もう少し長いスパンで、二十年間に、ごく一部の富裕層に富が集中をして、いわゆる中間層が疲れる、疲弊をする、そして貧困層の拡大が進んだ、こういう事実の認識はありますでしょうか。

安倍内閣総理大臣 これは事実の認識でございますから、私も事実でお答えをさせていただきたい、このように思います。

 安倍内閣発足後の所得格差を示す指標の動きを見ますと、今、個別な、ミクロな指標を示されたわけでございます。ああ、なるほど、こうなっているのかなというふうにも思いましたが、しかし、全体を見ていく、マクロな指標もこれは非常に大切であろう、マクロの指標から分析をしていく必要があるんだろうと思いますが、所得再分配後のジニ係数は、近年、雇用・所得環境の改善や社会保障、税による所得再分配が機能したおかげで、おおむね横ばいで推移をしています。

 同時に、相対的貧困率については、昨年公表された全国消費実態調査によれば、集計開始以来初めて低下に転じ、これは集計開始以来初めてであります。特に、子供の相対的貧困率は二ポイント低下したわけでございます。今、厚労省の云々かんぬんという……(笠井委員「それは私は聞いていないですから」と呼ぶ)ああ、そうですか。はい。

 これはまだ発表されておりませんから、二〇一二年、民主党政権のときまでしか発表されておりませんので、安倍政権以降、発表されたら、これは正直にお話をさせていただくのは当然のことであります。

 これは、アベノミクスの成果によって雇用が大きく増加するなど経済が好転する中で、子育て世帯の方々の収入が増加したことによるものと考えておりますし、また、生活保護を受給する、全体としてはいわば高齢化、高齢世帯がふえている中においてふえているわけでございますが、現役世帯は平成二十五年二月のピーク時から約九万世帯減少しているわけでございます。

 ということでございまして、今後、さらにさまざまな政策、どんなに貧しい家庭に育っても、希望すれば進学ができる、そういう状況をつくるために、高等教育についてもしっかりと支援を行っていきたい、このように考えております。

笠井委員 あれこれ数字を挙げられましたが、私が質問した、二十年間のスパンで、富が集中して、中間層が疲弊して貧困層が拡大しているという認識はどうかと聞いたことについてはお答えにならない、そして否定もされないということであります。

 直近の数字についていろいろ言われましたが、私、いろいろ言われるけれども、政府自身の対応でいいますと、新年度予算案の税収を見ますと、昨年度当初よりも、新年度予算の方は所得税で三百億円、それから消費税で五百億円も減収を見込んでいる。つまり、政府自身が、所得も消費もふえない予算をこういう状況の中で新年度に組んでいる。うまくいっていないことの証明だと思います。

 格差と貧困を正して中間層を豊かにする大きな方向転換が必要だ、一%の大金持ち、大企業トップのためではなくて、九九%の国民のための政治が求められていると強く言いたいと思います。

 そして、その中で、長時間労働、過労死をなくして、人間らしい雇用のルールをつくる、働き方の改革を真剣にやることは文字どおり喫緊の課題だ、これはそのとおりであります。

 そこで、具体的に伺います。

 昨年、もう既に、大変な衝撃ということでこの委員会でも取り上げられてきましたが、電通の若い女性社員と、そして関西電力の課長職男性の過労自殺が労災認定をされましたが、こうした問題というのは決して最近のことではありません。

 日本で過労死が社会問題になったのは一九八〇年代の後半、英語には訳せないので、過労死というのがローマ字でそのまま記述されるほど、日本社会の大問題ということが世界で知られています。しかし、その後、事態は改善に向かうどころか、一層深刻になっている。

 数字を二つ伺います。

 まず、塩崎厚生労働大臣、過労死、過労自殺の労災認定、未遂も含みますが、これは、労働基準法が改定された一九九八年度と直近、二〇一五年度でそれぞれ何件になっているでしょうか。数字を端的にお願いします。

塩崎国務大臣 過労死についてお尋ねをいただきました。

 過労死、これは脳・心臓疾患及び精神障害による死亡でございますけれども、この労災認定は、今御指摘の一九九八年、平成十年、この年が五十二件、それから二〇一五年、平成二十七年度が百八十九件でございまして、これは、脳・心臓疾患の労災認定基準というのを二〇〇一年、平成十三年でありますが、に改定したことなどによってさらに増加をしているということだと思います。

 なお、過労死の最近の労災認定状況を見ますと、二百件前後で増減を繰り返しているという状況でございます。

笠井委員 この二十年間近くで四倍近くにもなっている。実に、百八十九件ということですから、二日に一人という過労死、過労自殺の事案が起きている、そんな日本社会になってしまった。

 この件数は、労災申請をして、長時間労働の記録やあるいは証拠が残っていて認定に至ったものだけで、そういう意味では、氷山の一角にすぎないということだと思います。

 もう一点、塩崎大臣に伺います。労災の精神障害の請求件数というのは、それでは、一九九八年度と二〇一五年度でそれぞれ何件でしょうか。

塩崎国務大臣 ただいま、精神障害の労災請求についての件数のお尋ねがございました。

 一九九八年度が四十二件、それに対して二〇一五年度が千五百十五件というふうになっておりまして、一九九九年に精神障害等による判断指針というものを、二〇一一年に精神障害の労災認定基準を策定いたしまして、労災認定の対象となる疾病、そして心理的負荷の評価項目を明らかにいたしまして、これによりまして、請求される皆様方から、働く方々から見て請求の是非が判断しやすくなったということもございまして、請求件数が増加をしているところでございます。

笠井委員 この二十年弱で労災の精神障害の請求件数というのは四十二件から千五百十五件ということですから、数字上見て、実に三十六倍にもなっている。

 二つの点で、事態は加速度的に悪化していると思います。一つは、この二十年間で件数自体が激増したこと、そして二つ目に、かつては主に中高年の方々の問題だったということで問題になってきたわけですが、今や若い世代にも広がって、精神障害がふえて、心身ともに傷つけられているという状況であります。

 そこで、総理に伺いたいところなんですが。

浜田委員長 それでは、速記をとめてください。

    〔速記中止〕

浜田委員長 速記を起こしてください。

 笠井君。

笠井委員 今、この間の過労死、過労自殺の実態、それから精神障害の請求件数が急速にふえているという実態について、塩崎大臣から答えていただきました。

 その上で、総理にぜひ聞いていただきたいんですが、ここに、父親を過労自殺で亡くした当時小学校一年生のマーくんの詩があります。全国過労死を考える家族の会のホームページでも紹介をされておりますが、こういうものです。

   僕の夢

  大きくなったら、ぼくは博士になりたい。

  そしてドラえもんに出てくるような

  タイムマシーンを作る。

  ぼくはタイムマシーンにのって

  お父さんのしんでしまう前の日にいく

  そして「仕事に行ったらあかん」ていうんや

という詩であります。

 安倍総理、これは実は十七年前の事件でありますが、今、実態を厚労大臣からも明らかにしてもらいましたが、この願いがその後通じなかったどころか、その後も悲劇が激増した。この二十年間、事態を悪化させてきた、大きな意味でそういう認識はあるでしょうか。

安倍内閣総理大臣 随分前の話でございますが、二十数年前、私の友人も、営業職でずっと残業が続き、職場で相手先と電話中に心臓麻痺を起こしてこの世を去ったんですが、残念ながら、そのときは労災認定がなされなかったわけであります。遺族に随分そのときのことを話されたことを今でも覚えているわけであります。

 その後、先ほど塩崎大臣が答弁をさせていただきましたが、労災認定における心臓疾患、脳疾患に対する基準が変わり、今まで労災に認定されていなかったものが労災と認定されるようになったこともあり、数がふえているわけでございますが、その以前に同じような基準でそれを認定していれば果たしてどれぐらいだったかということはわからないわけでございます。

 いずれにせよ、過酷な労働状況の中で大切な命を失う人がないように、こうしたことに終止符を打つために、しっかりと長時間労働について罰則規定を持った法整備をしていきたい、こう考えているところでございます。

笠井委員 長時間労働や過労死に対する政治の責任として、二十年間のスパンで事態が悪化してきたかどうかということを伺ったんですが、それに対してはお答えがなかったのかなと思います。

 問題はそれだけじゃないんですね。いわゆる電通ショック後、この一年間にわたってですが、大企業の現場で実態がどうなっているか、つぶさに伺ってまいりました。

 企業側はいわば戦々恐々として、ばれたら困るということで、闇残業が横行して、働く人の自己責任を迫る実態が生まれて、中間管理職に圧力がかかるようになったということであります。

 あちこちの企業で、働き方改革だといって、早く帰れ、会社からもう出ていけ、電気を消せという事態が横行している。人はふえず、一人一人の仕事量はそのまま、成果主義で、目標、ノルマは変えずに月給やボーナスは査定をされる。その結果、室内灯が消えて、個人照明の光で仕事をしたり、会社に隠れて自宅に持ち帰り残業をしたり、会社近くの二十四時間営業ネットカフェ、ファミレス、ファストフード店にパソコンを持ち込んで仕事をせざるを得ないとか、かつてだったら風呂敷残業ということがあったんですが、今はパソコン残業になっている。こんなのは働き方改革でも何でもないと思います。

 総理は、そういう実態になっているということを御存じでしょうか。

安倍内閣総理大臣 今、企業等についてのお話でございますが、この実態がどうなっているかということ等、認識については、これは厚生労働大臣の方からお答えをさせていただきたい、このように思います。

笠井委員 では、もう一つ言います。

 あるIT関連企業では、夜十時以降は仕事禁止としたけれども、それでは納期に間に合わない、仕事が終わらない、納期に間に合わなくなったら上司が取引先に謝りに行けという指示が出ている、上司の査定も悪くなるし、上司を困らせるわけにはいかないということで誰もが思うだろうという事態。結局、無理して働かざるを得ない状態になっていく。

 あるマスコミ関係の会社は、朝七時から夜十時までのみなし労働が八時間となっている裁量労働で、夜十時以降は手当がついていた。それが、働き方改革だからと夜十時以降は原則だめとなったけれども、仕事は終わらない。総理を初め政治家の皆さんのところにも夜回りとか朝駆けで記者の方が来るということがあると思うんですけれども、夜十時以降朝七時前は記者には手当がなくなった上に、交通費も自腹を切って夜回りをしている。会社の経営的には手当や交通費の削減効果があるだけで、実際の仕事は変わらない。

 総理は、働く人の立場に立ってと繰り返し委員会でも言われますが、こんな働き方改革がいいと考えられるのか。実態については厚労大臣からと言われましたけれども、総理自身、そういう実態について、これはだめだとやはりはっきり言われるべきじゃないかと思うんですが、いかがですか。

塩崎国務大臣 少し長いスパンで申し上げれば、失われた二十年と言われるようになりましたが、安倍内閣が出てきたのは、デフレからの脱却という、長期にわたる、きょうよりもあす価格が下がるということで、夢が持てない形でずっとやってきた、今の若い人たちは成長という言葉を知らない、そういう中で、企業が伸びない、しわ寄せが働く人に往々に行きがちだ、そういうことを打破しようということで、経済再生最優先、そしてまた、今、働き方改革を行っているわけでございます。

 今御指摘をいただきましたように、過労死につながるような働き方を強制されるというような事態がかなり見られるというふうに指摘をされていることもあって、「過労死等ゼロ」緊急対策というのを去年の年末に出させていただきました。

 今、笠井委員から御指摘のあったような、実働の時間と表向きの労働時間、このギャップが非常に大きいケースが多々あるじゃないか、こういう御指摘がございました。

 私ども、これは四六通達というのがありました。実労働時間をきちっと適正に把握するということがさらに大事だということで、今までは行政に対する通達を出していただけで、それを広報する形でしたけれども、今回は企業向けの新たなガイドラインという形で、労働時間をきっちり把握するということにさせていただいて、これから、我々のホームページにももちろん載せておりますけれども、企業に対してしっかりと徹底していこうと思っております。

 それと、厚生労働省に私も来て、つくづく、事業場ごとにしか物事を見ないという発想が、いかに企業単位で同じような長時間労働が全社的に行われているということがたくさんわかりました。そこで、企業本社への指導というものを徹底していくということにいたしました。

 もう一つは、是正指導段階での企業名の公表制度で、この企業がこういう長時間労働を強いているということを今までよりも早目にオープンにしてしまうということもやっているわけでございますので、スピード感を持って順次実施に当たっていこうと思っておりますし、また、これら現行法の執行強化を長時間労働の是正に向けてしっかりとやる。

 その上で、今、働き方改革実現会議で議論を深めておりますけれども、さまざまな形で、働く人のために新しい働き方をつくり上げていこうということでございます。

笠井委員 実労働とのギャップを埋めるということが必要だということでガイドラインの話もされましたが、そう言うのであれば、パソコン残業を含めて、実際に働いた時間が把握できるような、誰が見てもわかる制度にしておく必要がある。肝心なのは、労働者一人一人の実際の労働時間をしっかりと把握することだ。それをどうするかということで、それなしに問題は解決しないということは、しっかりやる必要があると思うんです。

 そして、最後になりますが、そういう点でいいますと、総理は、この間の国会答弁で、残業時間の上限を決めることが必要だ、これはこれからやるんだということを言われるわけですけれども、二年前の当予算委員会での我が党の志位委員長の質問には、時間外労働が大臣告示で示した週十五時間、月四十五時間、年三百六十時間などの基準に適合したものでなければならない、これが基本だということを答弁されました。大臣告示が基本だと繰り返し言われました。

 二年前のこの認識というのは今も変わりませんか、基本ということについて、総理。

塩崎国務大臣 これは、現行法のもとで、今お話がございました、労働時間法制が基本であるということは当然のことであって、総理はそのことを申し上げたわけであります。

 しかし、それが今、例えば三六協定も尻抜けになっているこの状況を放置するわけには決していかないという深い認識を持って、これをしっかり直していこうということで、今、法律でもって、労働基準法に長時間労働の上限を書き込むということを議論させていただいているわけでありますので、これについて、さらに三月の計画に向けてしっかりやっていきたいと考えているところでございます。

安倍内閣総理大臣 ただいま大臣から答弁を……(笠井委員「基本かどうかということ」と呼ぶ)はい。基本は基本でございます。

 しかし、それは大臣告示という形で、さらに、三六協定を結べばそれを突破できるという状況がある中においては、今度はちゃんと法定で決めていこう、罰則つきの法定で決めていこうということでしっかりと議論していきたい、こう考えているところでございます。

笠井委員 要するに、基本ということを確認されました、大臣告示が。健康上からもそれが基本だということで大臣告示に出ているわけですから、基本だと言うんだったら、それを法定化する、これが当たり前だと思うんですよ。

 それを、過労死ラインとか何か言って、そして八十時間、百時間、そこまでいかないところをクリアすれば、ぎりぎりだったらいいと言ったら、本当にリスクは高まるばかりで、そんなのは、ちゃんと労働者、国民を守る法律でも何でもないということだと思います。

 この問題をしっかり議論する必要があると、日本共産党、民進党、自由党、社民党の野党四党は、この問題でも、労働基準法改正案ということで衆議院に共同で提出しております。この問題を速やかに審議して、やはり力を合わせて本当に実効ある上限を法律で決める必要がある、国会の責務だと思います。

 委員長に最後に、この問題で、長時間労働の規制に関して、働き方改革に関して、当委員会の集中審議を必ず予算審議の中でやるべきだと強く求めたいと思いますが、いかがですか。

浜田委員長 理事会で協議させていただきます。

笠井委員 終わります。

浜田委員長 この際、藤野保史君から関連質疑の申し出があります。笠井君の持ち時間の範囲内でこれを許します。藤野保史君。

藤野委員 日本共産党の藤野保史です。

 質問に先立って、新潟県糸魚川市の大火で被災されている方々に心からお見舞いを申し上げます。

 私は、大火直後の十二月二十五日に現地に入りました。県知事初め地元の方々が強く求めていた被災者生活再建支援法が適用されることになりましたが、被災された方々の生活再建、なりわい再建はこれからであります。一日も早く再建が進むよう、政府は、店舗、事業所や設備などの再建に対する直接支援など必要とされる支援をやり切ること、さらに生活再建支援法の拡充を行うこと、これをまず求めたいと思います。

 質問に入ります。

 共謀罪についてお聞きします。

 政府は、テロ対策だと強調しています。しかし、当委員会でも繰り返し明らかにされましたが、既に日本はテロを防止するための条約を十三本も締結しております。

 外務大臣に確認いたします。間違いありませんか。

岸田国務大臣 国際社会において、いわゆるテロ防止関連条約について画一的な定義があるわけではありませんが、我が国としては、十三本のテロ防止関連条約を締結していると認識をしております。

藤野委員 パネルを見ていただきたいと思います。いわゆるハイジャック防止条約、航空機不法奪取防止条約など十三本、日本は締結をしております。政府はあたかも日本がテロに対して無防備であるかのように言うわけですが、これだけの条約を締結し、国際社会と連携してテロ対策を行っている。

 また、日本には、未遂以前の段階で処罰できる規定も多数あります。パネルの二枚目を見ていただきたいと思います。これは、法務省から提出していただいた資料をもとに作成したものであります。共謀罪十三、陰謀罪八、予備罪三十七、準備罪八、字が小さくて恐縮ですが、これだけあるということです。

 法務大臣、これは間違いありませんか。

金田国務大臣 ただいま御指摘の、現行法上、共謀罪十三件、そして陰謀罪が八件、予備罪三十七、準備罪が八ということで、お尋ねのとおり、その合計は六十六項であります。

藤野委員 それだけの重大犯罪についての未遂以前の処罰規定がある。これに加えまして、日本はアメリカと違って、いわゆる銃や刀剣の所持自体が禁止をされております。さらに、サリン等も所持自体が禁止をされている。

 これを確認した上で、総理にお聞きしたいんですが、二十六日の当委員会で総理はこういう事例を挙げられました。例えば犯罪を行おうというテロ組織があって、飛行機をハイジャックしようという綿密な計画を立てる、爆弾を持ち込む、あるいは武器を持ち込んでハイジャックをして建物に突っ込むという計画を立てる、こういう例を出されました。

 これは航空機強取等の罪、いわゆるハイジャックの予備罪を念頭に置いてのことだと思いますが、爆弾を持ち込む、こうなりますと、これは、爆弾を持ち込むどころか、爆弾を持ち込もうとか爆弾を使おうとか、それを共謀した段階で、ここにもありますけれども、爆発物取締罰則の共謀罪、これで取り締まることができるんですね。あるいは、武器を持ち込むともおっしゃいました。この場合も、持ち込む以前の武器を所持した段階で、銃刀法違反や凶器準備集合罪、これで取り締まることができるわけです。

 総理、総理が挙げたケース、素手でハイジャックしようとすることでもない限り、現行法で取り締まることができるんじゃないですか。

金田国務大臣 委員お尋ねの件でございますが、爆発物を使用するとは限りませんし、ということを考えております。

藤野委員 いや、私が聞いているのは、爆発物を使おうと共謀した段階で共謀罪があると言っているんです。ですから、今私が聞いているのはいわゆるハイジャック予備罪に当たるのかではありませんし、私が聞いたのは、そういうことを爆発物取締罰則の共謀罪や凶器準備集合罪で取り締まることができるということを指摘したわけです。つまり捕まえることができる、こういうことであります。

 総理はこの間の衆参の委員会でいろいろ答弁されましたが、それは全て、犯罪を実行するという合意、共謀ですね、共謀の存在、これが前提になっていると思います。

 法務大臣に確認したいんですが、犯罪の合意すなわち共謀があるということは誰がどうやって判断するのか。もちろん、最終的には裁判官が判断することになると思います。しかし、捜査段階ではこの合意や共謀は捜査機関が捜査を行う。これで間違いありませんね。

金田国務大臣 捜査過程のうち、捜索、差し押さえとか逮捕といった強制捜査に際しましては裁判官の令状審査が必要となるため、裁判官が法令に従って合意の有無を適切に判断することになると考えております。

藤野委員 いや、ですから、裁判官のところは私も認めました。私がお聞きしたのは捜査段階のことであります。捜査段階について、そこはやはり捜査機関が捜査を行う、これで間違いありませんね。これはちょっと、端的に。

金田国務大臣 テロ等準備罪の捜査につきましても、他の犯罪の場合と同様に、刑事訴訟法の規定に従って必要かつ適正な捜査を行うことは当然である、このように考えております。

藤野委員 つまり、捜査機関が行うということであります。

 それで、これをどうやって判断するのかにつきまして午前中の質疑で、階委員の質疑におきまして、今後の盗聴法の適用が否定されなかった、拡大がですね、こういうこともございました。そうしたこととあわせて、きょうは組織的犯罪集団についてお聞きをしたいと思います。

 金田大臣もさきの質疑でこうおっしゃいました。テロ組織、暴力団、薬物密売組織、この三つだと。大臣にお聞きしたいんですが、組織犯罪集団というのはこの三つに限られるんでしょうか。

金田国務大臣 お答えします。

 テロ等準備罪のケースにつきましては、対象となる団体でございますが、重大な犯罪を行うことを目的とする組織的犯罪集団に限定することにしております。例えば、テロ組織、暴力団、薬物密売組織などは対象となるわけでございますが、それ以外のものもこれに含まれる場合はあります。

藤野委員 要するに、三つに限られるわけではないと。つまり、これは例示にすぎないというふうにおっしゃいました。例示にすぎないと。

 こういうことになりますと、テロとかあるいは暴力団、薬物密売組織、いわゆる捜査機関があらかじめ把握している、わかっている集団には限られない、捜査機関が今の時点で把握していない、認識していない、そういう集団も対象になってくるわけであります。

 捜査機関が捜査を行うと先ほどおっしゃいました。そうしますと、大臣、これは、例えば二人以上あるいは複数の人が話し合っている、共謀している、捜査機関がそういうふうに捜査しようと思えば、それは捜査の対象になるんじゃないですか。

金田国務大臣 私どもは、現在、テロ等準備罪を検討中であることは以前から申し上げてまいりました。

 そういう中におきまして、例えば、先ほど申し上げましたように、テロ組織、暴力団、薬物密売組織などは対象となりますが、これは重大な犯罪を行うことを目的とする集団でございますし、一方で、労働組合や市民団体そして民間企業といった正当な活動を行う団体は対象とならないということを、法文上も明確になるように検討を進めようと考えております。

藤野委員 いや、重大な犯罪を目的とするとかおっしゃいますけれども、しかし、その重大な犯罪かどうか、先ほど緒方委員からも指摘がありました。定義が明らかでないし、今その解釈を変えようとしているけれども、その理由もこの委員会ではっきり述べない。結局、何の限定にもならないわけです。まさに目的というもの、犯罪をたくらんでいるその目的を捜査機関が捜査する、その場合は、二人であろうが複数人であろうが、その犯罪の目的が問題になってくるわけであります。

 先ほど、三つ事例を挙げられました。例示だとおっしゃいましたが、これはそもそも例になっていないと私は思うんです。暴力団は一応、暴対法に定義がありますが、もちろん警察は指定暴力団以外も捜査の対象にしております。

 テロ組織はどうなのか。外務大臣にお聞きしたいんですが、テロ組織についての定義というのはあるのでしょうか。端的にお願いします。

岸田国務大臣 テロ組織の定義、国内法の定義ということであれば、これは法務大臣にお伺いしていただければと思います。

 国際的にテロ組織という定義、何か決まった定義があるとは承知しておりません。

藤野委員 そうなんです。一貫した定義は国際的にないということであります。

 では、法務大臣にお聞きしたいんですが、麻薬密売組織の定義というのはあるんでしょうか。

金田国務大臣 お尋ねの麻薬密売組織となりますと、麻薬の密売をなりわいとしている組織というふうに私どもは考えます。

 一方で、先ほどの御質問にもかかわるわけですが、いずれにしましても、何がこの組織的犯罪集団に該当するのかという点につきましては十分に明確になるように条文案を詰めてまいりたい、このように考えているわけであります。

藤野委員 だから、検討していると、国民にはこれでイメージしてほしいと例を挙げられたわけです。例というのはそういうものです。

 それで、今お聞きしたのは薬物密売組織の定義。本当にさっきの定義でいいんですか。なりわいとしている、これは本当にそうなんですか。もう一回お答えください。

金田国務大臣 厳密な定義というような意味において、それが最も適切な定義であるかどうかも含めて現在検討中であることを申し上げたい。そして、成案が出た段階でしっかりと委員会において議論をさせていただきたい、このように考えております。

安倍内閣総理大臣 つまり、例示としては、これはわかりやすい例示として示したわけでございまして、法定上の定義があるわけではありませんが、麻薬密売組織ということにおいては、大体これは、皆さん、どういうものだということはわかると思います。

 それを法定していく中においては、今、金田大臣から答弁をさせていただきましたように、どのような定義をすることがいわば可能かどうかということについては当然今検討中でございまして、例示を示したものは、まさにわかりやすくお示しをしているということでございます。

 先ほどの航空機を強取するという話におきましても、基本的に、謀議をして、例えば謀議があったということと、いよいよその中で航空機を予約、あるいは券を買ったという中においては逮捕できないのは今の段階では事実でありますから、そうしたこと等を明確にするという意味において我々はテロ等準備罪が必要であると。穴があるのは事実であろうというのが私たちの認識であります。その中のさまざまな手段については申し上げたことがあるかもしれませんが、その中で、しかし穴があるのは事実であろう、このように考えているところでございます。

藤野委員 この問題は、刑罰の対象になるかどうか、人権がかかった大問題であります。その問題を議論しているときにこの三つの例を挙げられた。そして、これが組織的犯罪集団だと限定されているとおっしゃっているわけです。ですから聞いているんです。そうしたら、全くわからない。三つ挙げて、そのうち二つ、全く例示になっていないわけですね。刑罰の対象をどう確定していくのか、明確性の原則をどう担保していくのか、この問題について全く限定できていない、こう言わざるを得ないと思います。

 そして、限定されていないもとで犯罪をたくらんでいるかどうか、限定されていないもとでの犯罪の目的、こういうものを捜査しようとすればどうなるのか。まさに内心の問題について、犯罪の目的という、これについて捜査機関は調べることになる。限定されていないわけです。広範な人々の活動、日常、これが対象になる。しかも、先ほど大臣が答弁されたように、この共謀罪が将来仮に成った場合、盗聴の対象となる可能性を否定されなかった。これは大変重要な問題だというふうに思います。

 この点で、この問題については引き続き、厳しく追及したいというふうに思っております。

 そもそも、今捜査機関は何をしているか、実態をちょっと見たいというふうに思います。

 パネルの三枚目を見ていただければと思います。これは、警察庁が自分たちの活動をPRするための広報誌「焦点」。これは毎年出されているわけですが、ここの二〇一三年の二百八十二号の一部であります、この左側が。これは、原子力政策をめぐる動向が特徴になった号でありました。

 これを見ていただきますと、前年、つまり二〇一二年三月十一日の福島での県民集会、六月二十九日のいわゆる官邸前二十万人集会、同七月のさようなら原発十万人集会など、さまざまな集会がいわゆる警備情報として、公安情報として対象になっている。

 この黄色いところを見ていただきますと、子供を持つ女性や若者から高齢者まで、幅広い層の市民がツイッター、フェイスブック等のソーシャル・ネットワーキング・サービスによる呼びかけに呼応して参加するなど、盛り上がりが見られました、こう書いてあります。まさに普通の人たち、こういう人たちを警備対象として監視しているわけです。これは別に、遠く引いた写真だけじゃないわけですね。

 総理にお聞きします。警察庁は今何をやっているかといいますとこういうことをやっている、これが実態じゃないですか、総理。

安倍内閣総理大臣 最初、黄色く書いていただいているところは、別にツイッターとかフェイスブックを監視しているわけではなくて、一般的にこういうものを活用しておられてこの運動が広がっているという、まさに皆さん運動を広げられているんだろうと思いますが、運動が広がっているという実態を示しているということであろう、こう思うわけでございまして、警備というのは、こうしたたくさんの人たちが集まる中において、人々の中に、けがをしたり、混乱の中で危害を加えられたりしないようなことも含めまして対応していくということではないか、こう思う次第でございます。

藤野委員 総理、これは全然違うんです。

 この号の九ページをちょっと紹介しますと、こう書いてあるんですね。警察では、原子力災害や原子力関連施設に対するテロの脅威に的確に対応するため、関係機関との連携、情報収集、警戒警備を強化していますと結んでいるわけです。警察庁は、あまたある団体の中で一番初めにこの運動を挙げている。いろいろな団体がありますよ。けれども、一番冒頭にこの県民集会などを挙げているわけです。

 総理、お聞きしたいんですが、情報収集とかそういうことじゃないんです。情報収集の対象になっている、警察庁の。原発は要らないというママや若者たちの行動が、一体どこが原子力関連施設に対するテロの脅威に当たるのか。総理、ちょっとお答えください。

松本国務大臣 ただいま御指摘のありましたテロに関しましては別項のところで表示をしているところでございまして、ここの写真に出ている、国内の反原発運動という、このページの部分とは全く別項のところでございまして、ここにあるものについてそうだということとは趣旨の違うことになります。

藤野委員 大臣、恐縮ですけれども、恐らく読まれていないと思うんです。

 ここに現物がありますけれども、原発が特集されているんです。特集されていて、これが始まりで、そしてその最後のところで、あまたある団体を見た後に、最後に、先ほど言った、原子力関連施設に対するテロの脅威に的確に対処するためにこういう団体を見ておるんです、情報収集を強化しますと書いてあるんです。ですから、まさにいろいろな理由をつけて、この場合はまさにテロを理由に、ママや若者たちが原発は要らないと言っているその行動を監視の対象にしている、こういう問題であります。

 しかも、原発だけじゃないんですね。このパネルの右側を見ていただきますと、まさに大衆運動全般が対象になっている。これは二百八十五号でありますが、安保法制に対する国会前十二万人の集会、さらには沖縄のセルラー球場での県民集会、そして、ここにはちょっと載っていないんですが、例えば労働者の方々が時給千円以上あるいは全国一律最賃制を求めているメーデーも監視対象になっているんです。

 総理にお聞きしたいんですが、政府に物を言う人たちだけじゃないんです、時給千円以上にしてほしい、当たり前の暮らしをしたい、こういう声を上げただけで警察の監視対象になっている、これが実態じゃないですか。実態をお認めになったらいかがですか。

松本国務大臣 ただいま御指摘の、監視という御表現をされていらっしゃいますが、警察といたしましては、公共の安全と秩序の維持に当たるという警察の責務を遂行するため、大衆運動に伴う違法行為や事故を未然に防止するために必要な警備措置を講ずるとともに、違法行為が発生した際には捜査等の必要な措置を講じているところでございまして、本来の趣旨はその趣旨で、対応させていただいています。

藤野委員 私は、こういう一般の方々が対象になっているということに関連して、総理に一つお聞きしたいというふうに思っております。

 総理は、組織的犯罪集団に限定されるんだ、こうおっしゃるわけですが、同じ説明が戦前、治安維持法をめぐっても行われていた、このことを御存じいただいているかということなんです。

 治安維持法というのは、御承知のように、戦前、治安維持の名のもとに、多くの国民の思想、良心の自由を侵害した法律であります。同法は当初、あの有名な、国体を変革しまたは私有財産制度を否認することを目的とした結社を対象としておりました。当時の国会では、それ以外は対象じゃないんだと繰り返し答弁されておりました。

 パネルの四枚目を見ていただければと思います。これは、一九二五年二月二十日、若槻礼次郎内務大臣の提案理由説明であります。これを見ますと、世間にはこの法律案が労働運動を禁止するがためにできているように誤解している者があるようであります、この法律が制定されますと、労働者が労働運動をするについて、何らかの拘束を受けるというように信じている者があるようであります、このごときは甚だしき誤解でありますと。

 つまり、政府は、治安維持法は労働運動には関係ない、誤解だ誤解だと繰り返し答弁していた。しかし、実際はどうだったか。労働運動のみならず、宗教者も弾圧の対象になりました。自由主義者、学生のサークルまで弾圧の対象になりました。

 総理にお聞きしたいのは、治安維持法は次々と対象が拡大をされていったわけであります。最後は普通の人たちも対象になってきた。この治安維持法の歴史について、総理、どのように御認識になっていますか。

安倍内閣総理大臣 委員は九十年前の内務大臣の答弁を引用されておられるわけでございますが、例えば特定秘密保護法のときには映画がつくれなくなるというキャンペーンをされました。しかし、あれからもう何年もたちますが、つくれなくなった映画が一本でもあるんでしょうか。全くそんなことはないわけでありますし、平和安全法制のときにも私が戦争をしようとしているんだと。そんな準備すら全くないわけでありますから、それは全くの、今我々がやろうとしていることとそれを同じレベルで議論することは、これはいささかどうかと思わざるを得ないわけでございますし、今回はそもそも、犯罪を行うことを目的としている組織ということに限定をしているわけであります。

 先ほど、麻薬組織ということについても……(藤野委員「それは聞いていません。もう時間がありませんから」と呼ぶ)いや、例えばですね、それは麻薬を売ろうと思って考えただけではならないわけでありまして、組織的にまさにそれで生計を立てている、なりわいにというのはそういう意味でございまして、ですから、それは大きな違いがあるということについては御理解をいただきたい。一般市民をこれで対象とするということではないということでございます。

藤野委員 全く質問に答えていないんですね。

 私は、違うかどうかなんて聞いておりません。その前提として、治安維持法そのものについての総理の認識を聞いているわけです。思想、良心の自由、こういうものを考える際のまさに原点中の原点が私は治安維持法だと思います。これについてどういう認識を持っているかというのはまさに今の共謀罪の議論にも直結する、だから聞いているわけであります。しかし、これにも全く答えられない。

 治安維持法そのものについて御認識がないんでしょうか、総理。

安倍内閣総理大臣 そもそも戦前の旧憲法下における法制でございまして、現行憲法下において内心の自由を侵害するということはそもそもないわけでございますし、再三これは答弁しているわけでございまして、そういうイメージをするというのが間違っている。

 まさにこれは、我々は、考えただけ、思っただけで罰せられることはないわけでございまして、犯罪を犯すことを目的とした組織でなければそうはならないわけでありますし、さらに準備行為を行っていなければ対象とはならない。しかし、その中で、実際、現状の中では、かなりこれは整備しているのは事実でありますが、その中でもやはり今の法体系の中においては穴があることについては民進党も認められているわけでございます、それをどのように埋めていくか。そして、パレルモ条約との関係で、批准をしなければ安全が守れないという中において法整備を進めようとしているということについては御理解をいただきたい。

 今申し上げていることを話さないと私がどういう考え方のもとで述べているかということが御理解いただけないんだろうと思って、申し上げているところでございます。

藤野委員 聞いていることには答えずに、聞いていないことをずっとずっとしゃべらないでいただきたい。

 この戦前の歴史があるからこそ今の憲法があるわけです。

 総理、日本国憲法十九条は、世界の憲法にない思想、良心の自由という規定をわざわざ設けております。あるいは三十一条から四十条は適正手続の保障について十条にわたって定めている、これも世界の憲法にはありません。なぜか。

 それはやはり、戦前、法律上、残虐な刑罰あるいは拷問等、禁止されていたにもかかわらずそれが横行した、その反省から法律ではなく憲法の規定にまで高めた。時々の権力者あるいは国会が思想、良心を処罰することがあってはならない、適正手続を法律によって違反することがあってはならない、だから憲法にまで、法律でこれらの権利を侵害しないように憲法上の原則にまで高めている。こういう認識が私は決定的に安倍政権には欠けているというふうに思います。

 最後になりますが、総理にお聞きしたいと思います。

 総理がつくろうとしている日本社会はどういう社会か、こういう問いであります。

 総理は特定秘密保護法をつくられましたが、この特定秘密保護法によって、国民の側からすれば、政府が何を考えているのか、政府が何をしようとしているのか、これが見えなくなってきました。他方で、仮に共謀罪が成立したら、拡大盗聴法とあわせて、政府はその気になれば、国民が何を考えているのか、何をしようとしているのか、これをつかむことができる。

 総理、総理がつくろうとする社会というのは、政府がやっていることは知らせない、しかし国民がやっていることはどんどんつかんでいく。総理、こういう社会をつくろうとされているんじゃないですか。

浜田委員長 安倍内閣総理大臣、時間が来ておりますので、よろしくお願いします。

安倍内閣総理大臣 はい。

 藤野委員はいろいろと妄想されているんだと思いますよ。

 例えば、特定秘密保護法については、ゼロの中からいきなりこの法律をつくって、たくさん、これも秘密、これも秘密ということにしたのではないんですよ。それまでも既に秘密の指定はあったんです、たくさん。たくさんあったんですよ。たくさんある秘密を、秘密の認定をする際、厳格な基準をつくり、それに対しては、しっかりとそれを管理する人たち、そして私もそれに対してしっかりと責任を負うということになったわけです。これができる前は、総理大臣たる私も知らないものがあったんですよ。そうではないという状況をつくることができて、より整理され、より厳格になったわけでございます。

 それと、憲法第十九条の思想、良心の自由及び憲法第三十一条以下の適正手続の保障等はいずれも憲法上の重要な基本的人権であると考えておりまして、その観点から、今回、組織という規定を設け、しかも準備行為を行わなければいけないというものを加えたということで御理解をいただきたいと思います。

藤野委員 終わりますが、テロやオリンピックを口実にして物言えぬ監視社会をつくっていく、共謀罪はまさにその仕上げともいうべき違憲立法であります。しかし、国民はこうしたごまかしを絶対許さない。

 日本共産党は、共謀罪を断固廃止するために国民とともに全力を尽くす。この決意を申し上げまして、質問を終わります。

浜田委員長 これにて笠井君、藤野君の質疑は終了いたしました。

 次に、下地幹郎君。

下地委員 維新の会の下地幹郎でございます。

 きょう最後の私の質問ですから、ぜひ皆さん、慎重にまたお願いをしたいと思います。

 きょうは、本年度の予算委員会、初めての予算なので、我が党の考え方というのをまずお話ししてから質問させていただこうと思いますので、よろしくお願いします。

 我が党は、去年の通常国会で、与党でもない、野党でもない、政策提案型責任政党、こういうことを申し上げました。そのときに、新しい野党の姿をつくりたいというふうに思っているんです。

 野党というのは、今までは、不信任案に反対して、予算に反対して、首班指名で、不信任案は……(安倍内閣総理大臣「賛成」と呼ぶ)賛成してですね。総理、ありがとうございます。それで、予算は反対して、不信任案は賛成して、そして首班指名は自分の党の党首を書く、これが野党の姿でしたけれども、私たちは、補正予算、二回賛成しました。また、不信任案も反対しました。

 そういう意味でも、こういうふうにやると、補完勢力だといってほかの野党から怒られるわけですけれども、ただ、私を初めとして維新の会のメンバー全員は、自民党と選挙区で戦っています。これからは、選挙区で戦うことが野党、与党じゃなくて、政策は政策としてしっかりとやる、選挙は選挙としてしっかりとやる、こういう姿をこれからイメージして、私たちは新しい野党をつくっていきたい。

 特にまた、今、野党の中でも第三党ですから、第一党の野党になりたいというのは当たり前であります。そのためには民進党との違いをいっぱい出す、これが一番大事なことなので、きょうの私の質問も、民進党との違いをいっぱい出してやっていきたいというふうに思っておりますから、よろしくお願いいたしたいと思います。(発言する者あり)はい、出しましょう。

 まず総理、一点目に、この前、パールハーバーを訪問なされました。

 パールハーバーを訪問なされて、総理が和解の力をお話しなされたあの文章を全部読ませていただきましたけれども、非常に私は感動を受けまして、総理が今までいろいろなところでスピーチしましたけれども、一番よかったんじゃないかなというふうに思います。やはり、ハワイにおける、あのパールハーバーにおけるスピーチは、私は歴史的なことだと思うんですね。

 その前に、我が党は式典に公党として初めて参加したんです。私もそこに行かせていただきましたけれども、非常に感動したのは、初めにハワイの地元の方が、宗教家がお祈りをするんです。その次には軍の牧師さんが来てお祈りをする。三番目に誰がやるのかといったら、日本の宗教家が来てお祈りするんですよね。それを、ハワイの四千人の方々、遺族の皆さん、生き残りの皆さんが、全部真剣に日本の宗教家のお祈りを聞く。私の沖縄でいえば、六月二十三日に、慰霊の日に、アメリカの牧師さんが来てお祈りするというようなものですよ。非常に、あれだけ寛容な国というか、こうやって和解をつくり上げていかなければいけないというのを改めて感じることができました。

 また、花火における新潟県長岡市とハワイのホノルルとの交流というのも、いろいろと物語を聞かせていただきましたけれども、総理が最終的にこのパールハーバーを訪問したいという決断をした思いというのは何なのかというのを、まずお聞かせいただきたいと思います。

安倍内閣総理大臣 戦後七十年以上が経過をしたわけでございます。

 戦後七十年に当たって、私は、米国議会で演説をいたしました。そして七十年談話というものを出したわけでございます。その際、和解の力ということを私は強調したところでございます。米国議会に先立って実は豪州議会においても演説を行い、そして、やはり和解の力、寛容の心についてお話をしたわけであります。豪州側の寛容、あるいは米国の寛容、そして、日本と戦火を交えた国々の寛容、アジアの国々の寛容についてお話をさせていただいた。

 そして、今こそ世界に向けて、この寛容の心、そして和解の力、パワー・オブ・リコンシリエーション、これをしっかり世界に対して示していく、この和解の力の象徴が日米同盟であろう、こう考えたところでございまして、オバマ大統領とともにその力を世界に発信することができた、このように認識しております。

下地委員 総理、あそこにボーフィンという潜水艦があるんですよね。総理も見られたと思いますけれども、このボーフィンという潜水艦は、沖縄にとって物すごく思いがある潜水艦なんです。それはなぜかというと、一九四四年の八月の二十二日、沖縄から長崎に向かう疎開船対馬丸を撃沈した潜水艦がボーフィンなんですよ。私も、通って初めて、このボーフィンがそのまま飾られていることに非常に驚くと同時にびっくりしたわけであります。

 この対馬丸記念館というのは、政府がしっかりと予算をつけて、ずっと今までもつくり、そして今もずっと多くの人が記念館に来ているわけですけれども、できたら、長岡市とホノルルが平和協定を結んでこういう交流をやっているように、対馬丸財団とボーフィンを持っている財団が平和協定を結んで、お互い、本当に歴史の中で非常に厳しい、苦しい思いをなされた両方でありますけれども、ぜひ平和協定をするように、ハワイの総領事に話しかけて、何とか総理の力で、七十五年、七十六年目を迎える対馬丸とボーフィンの平和の記念式典、ぜひ総理がお力を入れて、頑張って協定に力を入れていただけないか、これが私の一点目の希望でありますけれども、総理のお考えをお聞かせください。

安倍内閣総理大臣 あの山本五十六を生んだ新潟県の長岡市とホノルル市が戦後に交流を深めてきたのは事実であろうと思いますし、寛容の精神、和解の達成をした一例であろうと思います。

 沖縄では、唯一の地上戦が行われ、そして多くのとうとい命が失われました。我々には、そのことを胸に刻みながら、二度と戦争の惨禍において沖縄の県民もそして日本国民も苦しむことのない時代をつくっていく大きな責任があると考えておりまして、そのための形がどういうものであるかということについては、これはまさに当事者の皆様方が考えていただかなければならない課題であろう、このように考えております。

下地委員 これは当事者がどういうふうな思いであるかも大事だと思いますけれども、もし当事者がしっかりとこの方向でやりたいというようなことを決断したならば、ぜひ、外務省を通して総理が力を入れて御尽力いただきたいというふうに思っております。

 それでは、きょうは、我が党はトランプ国会と言っていたので、トランプ新大統領についてお話をさせていただきたいと思います。

 総理に根本的な話をお伺いしますけれども、トランプ大統領というのは、公正公平のルールに基づいて大統領になられた、そういうような認識でよろしいんですか。

安倍内閣総理大臣 米国の大統領選挙によって、まさに民主的な手続によって大統領に就任された、このように認識をしております。

下地委員 トランプ大統領が就任式で申し上げた言葉、米国第一主義であるとか、米国の製品を買うとか、米国人を雇うとか、強い国家になりたい、この認識論は総理の認識と、どうですか、違いますか。

安倍内閣総理大臣 基本的に、その私の認識というのは、トランプ大統領がそういう認識を持っているという認識ですか。

下地委員 自分の国が強くありたいという気持ち、米国第一主義というその思いと、総理に置きかえれば、日本第一主義であったり日本ファーストであったり、そして、ここにも書いてあるように、日本の製品が売れて日本の雇用がふえる、こういうふうな、政治家の認識論として、総理の考えとトランプ大統領の考えは違いがあるのかということです。

安倍内閣総理大臣 米国と日本それぞれ、また他のそれぞれの国もいるんだろうと思いますが、私は日本国総理大臣として、日本の国益を第一に考える、これは当然のことであろう、こう思っておりますし、国力を増していく、例えば安全保障においてはしっかりとした抑止力を維持していく、これは安保条約も含みますが、と同時に、経済を強くし、そして国民を豊かにしていくということが私の責任であろうと思います。

 と同時に、そういう状況をつくっていく上においては、国際社会とともに手をとり合ってさまざまな貢献をしていく、共通の目標に向かって日本も貢献をしていくということも当然求められるんだろう、こう思うわけでございます。

下地委員 公正公平なルールで選ばれた大統領が自分の国が一番でありたいと言うのも、総理もそのことには間違いないと。

 そして、選挙のときにずっと訴えてきたこと、この訴えてきたことをアピールする、大統領令を出してこれを実現していく。しかも、こうやって、上の方に数字が出ていますけれども、大統領になるまでに、もう七兆二千六百億円、雇用にして百十七万人、新しい雇用も生まれてアメリカの経済が動き始める。大統領令が十八本出ていますけれども、これは全部、選挙のときに本人が言ってきたことなんですよね。だから、この本人が言ってきたことを大統領令としてすぐに出していくというようなことは当たり前で、このことを訴えて選ばれてきたのが今の新大統領、ドナルド・トランプ大統領なんですよね。

 だから、きょうの論議の中でもいろいろなことを言われておりますけれども、私からすると、公式なルールで選ばれて、そして自分の国が大好きだと言って、そして選挙公約に挙げたことを今そのまま実現しようとしているというようなことを考えると、おかしなことを言っているわけではないというふうに思うんですよ。

 だから、この一つ一つを、政府職員に退職後五年間ロビー活動を禁じる、もうワシントン村だけで物事は決めさせないと選挙のときもずっと言っていました。そして、メキシコに国境の壁の建設をする、こういうふうなことも言っていました。

 いい悪いは別にして、政治家としてやろうとしていることは全部実行しているというようなことになるんです。私は、そのことが日本の経済にとってもマイナス要因になるかということをきょうは質問したいんですよ。

 ちょっと次のパネルを見てもらいたいんですけれども、これを見ていただきますと、アメリカというのは人口がこの六十年間で一億八千万人伸びているんですよ。移民が四千万人入っています。その中の五三%がラテン系のアメリカの方々、そのうちの二九%がメキシコから来る移民の数なんですよね。

 これを見ておわかりのように、世界の中で人口が一番伸びたのはインドネシア、その次がアメリカなんです。アメリカは寛容にずっとこれを受け入れて、今の国家が成り立ってきたわけです。

 こういう中で、就労人口というのが今アメリカは一億五千万人ぐらいいますけれども、現在の失業者が五%、七百五十万人、リーマン・ショックのときの失業が一千五百万ぐらいあって、そのとき非常に厳しい状況だったんです。今でも毎年百万人移民が入ってくる、そのうちの五十万人が子供であって、その残りの五十万人は就労しなければいけないというようなことなんです。

 つまり、私が申し上げたいのは、移民政策というのは、経済成長と雇用の拡大と移民政策のベストミックスがないと、移民を受け入れた、受け入れたけれども、そこに働く職場がなくて、そして生活ができないようになるということは、逆に言えば、入れることの責任を放棄していることになるんですよ。だから、移民政策というのは非常に、経済政策とベストミックスでなければだめなんです。

 私は、そういう意味でも、今、毎年これだけの数の移民を受け入れている、トランプ大統領は、経済を活性化してから、一時はとめているけれども、経済の発展と雇用の拡大に伴ってこういう移民政策をやっていこう、こういうふうなことを言っていることが間違いなのかというふうに思うんですけれども、総理、いかがですか。

安倍内閣総理大臣 日本においてはいわゆる移民政策というものを進めていくという考え方はないわけでございますが、米国の成り立ちとして、まさに移民によってつくられた国であるのは事実なんだろう、こう思います。そこで、米国としては移民に対して寛容な政策をとっている。

 経済が成長した、人口がふえるというのはGDPを上げていく上においてはプラスであろう、こう思うわけでございますが、一方、例えば不況な状況、経済が伸びていない中において、需要がないにもかかわらず移民がふえて、しかしそこで職を奪い合う形となってしまっては、これはさまざまな課題が生じてくるということはあるんだろう、このように思います。

下地委員 何か、トランプさんが今やっていることに非常にマスコミは悲観的なんですけれども、私は合理性を感じるんですね。やはりビジネスマンだっただけに、合理的なものを考えるんです。

 また、もう一つ、これを見ていただくと、アメリカ第一主義は日本経済に好循環をもたらすかということが今書いてあります。

 やはり、GDPが世界ナンバーワンの国家、人口が三億人を超えて世界で三番目に大きい国家になっていますから、この国家が強くなるということはどうなのかというと、輸出が強くなるわけなんですね。輸出が強くなると、国民総所得が上がってくる。見ておわかりのように、二位の中国とも一千兆円近くの違いが出てくるわけなんです。

 アメリカという国はまた、私たちの国ともちょっと違って消費大国で、貯蓄というよりも株に回したり土地に回したりという傾向が強い国家なんです。こういうふうな国家になってくると、輸入が増大して、そして世界のGDPが伸びる、こういう循環になってくると思うんです。

 だから、第一主義かどうかは別にして、いいとは言わないけれども、とにかくアメリカ経済が伸びないと、日本という経済もヨーロッパという経済も強くならない、そういう認識は私はあってしかるべきじゃないかと思うんですけれども、総理、お考えはいかがでしょうか。

安倍内閣総理大臣 アメリカと日本との関係においては、同じパイの中でとり合っているのではなくて、両国が経済成長していくことが、まさに今、下地委員がおっしゃったように、経済成長をしていくということは、お互いに消費する力がふえ、そうすればお互いに輸出し合うことも、輸出増にもつながっていくわけでございます。

 そういう意味におきましては、今、日本においては、GDPという考え方もありますが、GNIという考え方もあります。

 トヨタは大きな投資を米国にしている。そして、投資することによって工場をつくり、そしてその工場で働く人たちには雇用が生まれ、利益が上がれば賃金も上がっていく。それは相当広く均てんしていくわけですね。労働者のみならず、その方々が消費することによって栄える商店街もあるでしょう。物件を購入する、不動産もよくなっていくということにおいて貢献します。

 同時に、トヨタが上げた利益等々において、それは日本の利益にもなってくるわけでございまして、国民総所得もふえていくことにも、投資が還元されることによって利益を生んでいく、日本全体の収入もふえていくということにもなるわけでありまして、そうした考え方をお互いが持つことが大切なんだろう。アメリカが成長していくことは必ず日本の利益になるのは間違いないんだろう、こう思っております。

下地委員 総理、最後のところ、黄色いところを見てください。

 直接投資、毎年日本は五兆三千億をアメリカに投資しています。先ほどトヨタの話をしましたけれども、やっています。アメリカは日本に対して〇・五兆円しか投資していないんですよね。それで、百二十七兆円米国の債券を持っているのも、日本が今、一位になりました。それで、在米日系企業の雇用の創出金額というのは、百七十万人。これは総理も国会答弁で言っていますけれども、これも非常に大きいんです。

 最後のところの輸入と輸出のバランスが少し、八兆円と十五兆円と違っているといいますけれども、前の一、二、三を考えると、日本という国家はアメリカの国家に相当貢献していると思いませんか。

安倍内閣総理大臣 これは大変いい資料を出していただいたと思うんです。

 米国側に対して我々もどのような説明をしようかとずっと考えてきているわけでございますが、当然、この直接投資額の差も、これは結構、こんなに差があるわけでございまして、こういうものもお互いにきっちりと見ていく必要があるんだろう。

 まさに日本の米国への投資というのは、例えば、投資というのは、アメリカの企業を買うという投資ではなくて、それもやっていますが、日本の企業は雇用を生み出す。向こうに行って、今までなかった工場をつくり、既にある工場を買うのではなくて、新たに工場をつくり、そして、そこに雇用を生み出し、門前町をつくり出す、そういう大きな貢献としてこうした結果が出ているということ等も含めということもありまして、今まで申し上げているのは、単に貿易差額ではなくて、大きな観点から話していきたい、日米の経済対話をしていきたい、こう考えているところでございます。

下地委員 総理、ここからが民進党と維新の会の違いなんです。

 先ほどの福島さんの話を聞いていると、移民問題に対してコメントを出さなきゃいけないというようなことを言っていましたね。移民問題、きょうの世論調査を見ても本当に拮抗している中において、絶対にコメントを出しちゃいけませんよ。

 これは、人権がどうだこうだじゃなくて、トランプさんという人は、こういうことをやりたいと言って選ばれて、それを実行しているというようなことの段階においては、この政策は、また、先ほど示したように、経済と雇用のベストミックスも考えながら物事をやっていくという中においては、やはり国家としての、国内問題としてのやり方があるんです。ここはひとつ、私は慎重に発言すべきだというふうに思いますね。

 それと、二つ目には、FTAについての話がありましたけれども、FTAを、向こうが交渉を持ってきたら即刻断るべきだというような話がありましたけれども、総理、本当に、TPPはもう大統領令でやらないと言っているこの現状、これからもトランプさんと会ってこのTPPを口説こうと今でも思っていますか。

安倍内閣総理大臣 そう簡単に、私がTPPを考え直してくれと、わかったということにはもちろんなりません。これは相当程度時間はかかるわけであります。

 いずれにせよ、TPPの意義について、意味と言った方がいいかもしれませんが、これはまさに、米国と日本というのは、普遍的価値を共有する国がルールをつくって、アジア太平洋地域で、大きな経済圏の中でそれを確定したルールとしていく。いわば、その中には、例えば労働や環境を規制するルールもあるし、また、国有企業の制限に関するルールもやはりありますよね。国有企業が力を持ってどんどん買収していっていいのというものもありますね。これは結構大切な、大きなポイントなんですよ。これをルールとして確定する意味において、TPPは大きな戦略的な意味を持っているということも含めて理解を深めていく。

 しかし、その中で今後どう反応していくかということについては、これは予測はつきませんけれども、この意義や意味について話し続けていくことは意味があるんだろうなと。入れ入れということではなくて、この意義や意味について、ではどう考えていこうか、今後の世界の貿易のあり方をどう考えていこうか、アジア太平洋地域の経済についてどう考えていこうか、ルールについてどう考えていこうかということをお互いに議論することは意義があることだろう、このように私は思います。

下地委員 私から見ると、トランプさんも安倍総理も、沖縄の言葉で言えばガージューなんです、頑固なんですよ。そう簡単に変わらないと思うんです。だから、無駄な時間だと思うんですね。

 安倍総理は、先ほど見ていただいた数字からしても、十二分にFTAでも僕は闘えると思うんですね。だから、そういうふうな、TPPの説得をするというんじゃなくて、本格的なFTAの交渉をやる。

 私の考えは、FTAの交渉をアメリカとやって、残り十一カ国のTPPの仲間がTPPをやりたいと言うんだったら、TPPの協定も結ぶ。それで、アメリカが後から入ってきたいならば、来る。そして、十一カ国のTPPの国々がアメリカとFTAを結びたいと言うなら、それは結べばいい。しかし、日本みたいにそう簡単に結べる国はないと思うんですよね。日本は、TPPがうまくいくためにも、TPPのほかの国とはTPPをスタートさせて、FTAはアメリカと結ぶ、これの方が私はやりやすい。

 しかも、大事なことは、アメリカの了解をとらないで、このTPPのメンバーとだけTPPをスタートさせることは、日米関係にとって全然よくない。

 だから、私は、FTAをやることとTPPをやることを同時にやったらいいんじゃないかなというふうに思っていますけれども、すばらしい提案だと思いませんか。

安倍内閣総理大臣 先ほども福島委員から、十一カ国でやるということも排除すべきではないという提案をいただきました。いただいたんですよね、大体。これについては、我々も、今の現状をよく見ながら、何がベストかということについては頭をやわらかくしてよく考えていきたい。

 今、実は、この政権の中においてもさまざまな意見があります。もう米国抜きのTPPは、そもそもこれはやはり今においても意味がないしという議論もあります。一方、協定を変えなければいけませんが、結び直すということが必要なんですが、今の十一カ国にさらにどこか入ってくる、このレベルに追いついてくるところを、興味がある国々はありますから、そういう国々を加えて考えてみたらどうかという意見もあります。なかなかこれは複雑ですから、そう簡単ではないんですが。また、米国とどう考えるかという意見がございます。

 今、先ほどの福島委員の御意見を拝聴させていただいたところでございますが、下地委員の御意見も拝聴させていただいたということでございます。

    〔委員長退席、葉梨委員長代理着席〕

下地委員 福島さんより僕の方を選んだ方がいい。

 なぜかというと、やはり制限を持っちゃいけない。今、このトランプさんという今までと全く違ったような形の人が出てきたときに、総理に、あれをやっちゃいけない、これをやっちゃいけない、これじゃなきゃいけない、そういう制限をすると、なかなか交渉は前に進まない。しかも、TPPの交渉のところからFTAをやっても、一歩たりとも下がっちゃいけませんよとさっき言うんですよね。一歩たりとも下がっちゃいけませんよと、こんな交渉を向こうが聞いていてやるわけないじゃないですか。交渉は、譲ったり譲られたりしながら交渉していくわけでありまして。

 そういう意味でも、この経済交渉というのは、正念場をこれから迎えると思いますけれども、ぜひ、総理、自信を持ってやってもらいたいというのが一点です。

 二点目ですけれども、総理、ちょっと数字を見てもらいたいんですけれども、六兆四千億という数字と三兆四千億という数字がありますけれども、この数字は、アメリカの国民が日本に置いているさまざまな装備品、これもアメリカの方々が払っている。言えば、アジアのリバランスのためにアメリカが日本に置いている装備品なんですね。これが大体八兆円から九兆円ぐらい、九兆八千億ぐらいあります。

 この下の方の赤いところ、三千億と一千六百億が、訓練とか人件費とか、これは日本の思いやり予算ではなくて、丸々こういうふうなお金が来ているわけです。この右の方の数字が思いやり予算、これが五千八百億円なんですね。

 これはいわば、私に言わせれば、これだけの金額の装備品を、アメリカの国民が、自分のお金を払って、アジアのリバランスのために日本に置いているわけですよ。これを見て、バランスがいいと思うのかといったら、バランスが悪いと思うのはこれは当たり前のことだと思うんですよね。これはいいとは思いませんよ。

 それで、私はこの前、アメリカへ行きました。この数字を見ながら、アメリカのいろいろな方々と話をしたら、それだったら、この右の方の五千八百億を一兆円にしろとか二兆円にしろとか、こういうことをトランプさんは要求してくるのですかと言ったら、下地さん、そうではないと。それだったら、では、自衛隊をまた南スーダン以外のところの、リビアにもどこにも行かせてドンパチするような、そういうようなことをやるのかと言ったら、憲法九条があるから日本はできないでしょうと。では、何をトランプさんは言おうとしているんですかねと聞いたら、多くの方が、もう自分の国は自分で守れ、そういう方向に日本は行ったらどうかというようなことを言っているんですよ。

 しかし、この数字は簡単な数字じゃありませんよ。次の数字をちょっと見てもらいたいんですけれども、これは日本の防衛予算と中国の防衛予算です。十九兆円近くの防衛予算が中国はあって、人件費が七兆円ありますけれども、装備品が六兆円。日本が、四兆八千億、人件費が二兆一千億、装備品が二兆円程度ですね。これだけ違っているわけです。表に出ている数字がこれだけですから、表に出ていない数字で見ても、相当に日本との違いが出ている。

 だから、アメリカが自分の国は自分で守れというようなことを言って、わかりました、自分たちはどんどん沖縄からもどこからも撤退していきますからねというふうに言っても、この現実から見ると、そう簡単に、はいと言えるような状況ではないんですよね。

 さあ、そこをどうするかというところがこれから大きなポイント。次のパネルまで見てちょっと総理の答えを聞きたいんですけれども、これを見ていただくと、もう伸び率が全然違うんですよ。こういうふうな状況になっていることを考えると、総理、この私の三枚のパネルを見て、総理の率直な意見をちょっと聞かせてください。

安倍内閣総理大臣 最初のお示しをいただいた在日米軍の価値について書いてありますが、例えば、ロナルド・レーガン、八千八百四十億、これは大変な打撃力を持った空母でもございますが、これはしかし、専ら日本を守るためではないわけでございまして、日本の横須賀を母港として、アジア太平洋地域、ひいてはその先ずっと、中東の方に行く場合もございます。

 そして、この空母ロナルド・レーガンをしっかりとメンテナンスもして、出発する際に、まあ五千人ぐらいが乗るわけでありますから、その五千人が出航していく上においてきっちりと整備を、いついつまでにと言われたら、いついつまでに完全に整備も終えて全ての資材を調達できるのは、これはアジアでは日本だけと言ってもいい。世界でもなかなか、米国の空母をちゃんと整備できるという国はそんなにないわけでございます。

 ちょっと長くなりますが、そもそも日本に米国の空母を置くというときに大きな議論があって、果たして日本にその能力があるのかどうかという議論があったわけでございますが、日本はその能力があるという議論が勝って、日本に米軍の空母が母港化したわけでございます。

 また、イージス艦についても、日本を守るためのミサイル防衛等のためにも資するわけでありますが、例えば、ハワイを守る、グアムを守るためにこのイージス機能を生かしているのは事実でございまして、そしてやはり、日本を母港にできるというのは大変大きなアメリカにとっての利点でもあるということも考えなければいけないだろうと思います。

 と同時に、アメリカが求めていることは、日本が日本の役割をもっと果たしてもらいたいということもあるんだろう、こう思うわけでございます。それは、ただ駐留軍経費を払うということだけではなくて、いわば日本の防衛については日本も努力をしてもらいたいということもあるんだろう。

 ただ、日本は、オバマ政権との間において、平和安全法制を制定し、そしてさらにはガイドラインを新たに改定もしているわけでございまして、日本の役割は相当ふえているわけでございますから、そういう新しい形もこれから、今度、マティス国防長官が今週来られますから、そういうことも含めてよくお話をさせていただきたい、このように思っております。

    〔葉梨委員長代理退席、委員長着席〕

下地委員 私は、総理が日本だけを守るわけじゃないという答弁をすることはもう予想していましたよ。しかし、それはそうじゃないんです。やはり、母港が日本にあるということは大きい抑止力になるわけでありまして、そこは、世界じゅうを守っているといいながらも母港を置いているという意味は大きい。

 しかも、これは、この中には数字に入れていませんけれども、核の傘下とかいろいろなことを考えても、まだ大きな数字がアメリカ側が提供している数字の中にあるという認識を持たなきゃいけないというふうに思います。

 それで、私が申し上げたいのは、やはり、GDPの一%枠ということがありますけれども、これはそろそろ明確に、総理、枠を超えて装備を充実させていくというようなことをしていかなければいけないのではないかなと。そして、アメリカがこの国から徐々に撤退していっても、しっかりと自分の国は自分で守れるというような、一%枠を、明確にこれを私たちは超えてやっていくんだということを示すことが、トランプ政権と互角の話し合いをする中においても私は必要だと思うんです。

 経済においては全く私たちは負けていない。経済においては、逆に、アメリカに対して私たちがプラス要因であるというふうに思う。しかし、安全保障においては、先ほど見せた数字のように、いつまでたってもこの数字が変わらなかったら、何かアメリカにおんぶにだっこのような、そういうような雰囲気をつくってしまうということを徐々に変えていくという意味においては、この一%枠というようなもの、実質、中曽根内閣の中でこれはもう変わったというようなことを言っていますが、しかし、全く数字は変わっていない。

 総理がここで本格的にこれを変えていくんだというようなことを言うことが新しいメッセージとなって、トランプさんと二月の十日に会うときから、また違う、日米同盟の真の姿が生まれてくるのではないかというふうに私は思いますけれども、どうお考えでしょうか。

安倍内閣総理大臣 今委員がおっしゃったように、この一%の枠ということについては、既に閣議決定により撤廃をしております。しかし、現在、GDP比一%枠というものがあるわけではないわけでありますが、大体一%で推移しているのは事実でございます。

 この防衛関係費のあり方については、我が国の防衛に必要な人員や装備品等の要因と安全保障環境等の対外的な要因等の双方を踏まえる必要があります。そういう観点から、中国の国防費の、これは異常な伸びと言ってもいいんだろうと思います、それと比較をしていただいたと思いますが、GDPということもあり、GDPと機械的に結びつけることは適切ではないと考えております。この点は明確に申し上げておきたいと思います。

 第二次安倍政権の発足で、防衛関係費は十年連続で削減されてきましたが、第一次安倍政権も含めまして十年連続で防衛費は削られてきたんですが、厳しさを増す安全保障環境等を踏まえて、現在の中期防衛力整備計画では五年間で実質平均〇・八%伸ばす計画になっておりまして、実際、五年連続で増額を図っているところでございまして、こうした点等についても、我々もしっかりと現状を理解していただけるような説明もしていきたいと思っております。

下地委員 今、総理が現状認識と言いますけれども、現状認識はさっきのグラフなんですよ。隣の中国の防衛費の増大は、現状認識からすると物すごく強いんですよね、大きいんです。

 だから、その認識をしっかり持たないと、今言っているような現状認識という言葉が違う意味に働いて、結果が出てこないというようなことになってしまうので、僕はもう一度答弁をいただきたいんですけれども、やはりここはしっかりと、この防衛費のGDP一%の枠を超えて、新しい枠組みをつくりながら、みずからの国は自分で守っていくという方向に行くべきではないかというのに対して、私はぜひコメントをいただきたいと思います。

安倍内閣総理大臣 現在、中期防の見直しをしたわけでありますが、この伸びについても、しっかりとアジアの安全保障環境に対応できる形で、中身も見ていただきたいと思いますが、対応できる形で伸ばしていくことを決めているわけでございます。

 十年間ずっと減ってきたものをプラスにしたというのは大変大きな変化でございまして、いずれにせよ、先ほど申し上げましたように、GDP比で、GDPとリンクさせる考え方はないということは、先ほど適切ではないということははっきりと申し上げていたわけでありまして、あくまでも、やはり対外的な要因もしっかりと見据えていく必要があるだろう、このように思います。その中で、しっかりと我々も対応していきたい。

 そして、同時に、もちろん、我が国を守っていくのは我が国が守っていくんだという気概は持つ必要がありますが、一方、世界のどこを見ても、一国のみで自国を守れるところはないわけでございます。日本は最強の米国と同盟関係にあるわけでございまして、いわば、アジア太平洋地域、いわば日本に駐留する米国の戦力と日本の戦力をしっかりと足して抑止力を強化していくということが大切であろう、その中で日本も応分の努力をしていくということではないかと思います。

下地委員 トランプ新大統領関連の質問は終わりますけれども、経済においては、FTAをしっかりやって、TPPを、入った方がいいというのが私の提案。そして、防衛に関しては、しっかりと、GDP一%の枠を超えて新しい提案をしていくことで、トランプ新大統領との新たな枠組みができてくる。この二つをやらなきゃいけない。

 三番目には、ロシアのことですけれども、とにかく、今回、安倍総理、絶好のチャンスだと私は思うんですよね。今回、日米ロの三角関係の枠組みというのを書いていますけれども、とにかく、プーチンさんとトランプさんが非常に信頼関係ができてくるということは、日本にとっても本当に大きな影響をもたらすんじゃないかと私は思うんです。

 ここは、北方四島についても、返還問題、平和条約に関しても、チャンスだと思うんです。長くは申し上げませんけれども、このチャンスは生かさなきゃいけない。

 私は、どんなにしても、日ロがけんかしている間に北方四島の問題が解決するといっても、なかなかやはり現実的には難しいんじゃないかと思うんですね。今、この関係が修復する、そういうようなことを、このチャンスに、安倍総理が今までプーチンさんとつき合って、その信頼関係をつくってきた成果を出していったら、私は、一挙に、案外うまくいくんじゃないかなというふうに思うんです。それだけ、一言、答弁をお願いします。

安倍内閣総理大臣 例えば、日ロの間において、米ロが関係がよくなると、まるで日ロが進まないのではないかとの俗論がありますが、これは全く間違いでございます。

 かつて、米ソが激しく争っていた冷戦時代には、これは当然、平和条約交渉等々も全く一歩も進まず、しかも、当時は、存在しないということを言われたわけでございます。

 その中において、今回は、米ロが今までよりも関係がよくなる兆しが見えているわけであります。つまり、日本は日米同盟がありますから、日米同盟がある中においての日ロ関係というものがあるわけであります、日米同盟が基軸でありますから。ですから、そういう意味におきまして、米ロが話し合いができる、戦略的な話し合いができるということは、日本にとってもこれは悪くはない、こう考えております。

 また、先ほどパネルで例として挙げておられましたが、イスラム国への対応ということについては、残念ながら、今まで米ロの間でこうした戦略的な対話が十分にできていなかった中において、統一された戦略がない中において、ISILの活動というのがどんどん肥大化してきたのも事実であろうと思います。

 そうした政策調整が行われることがやはり国際社会の中では好ましいんだろう、こう思う次第でございます。

下地委員 この北方四島と平和条約の話を、バイの日ロだけでやるんじゃなくて、北方四島と日ロの平和条約をやるこの会議を、米ロが入った中でやるという、三カ国の枠組みの中でこういう協議ができる、そういう姿ができてくると一挙に変わってくるのかなというような思いもしておりますので、それはぜひ、これからプーチン大統領とトランプ大統領がどういうふうな方向になるかわかりませんが、もしうまくいくようだったらこれはチャンスだということを申し上げておきたいというふうに思います。

 それでは、次、話はかわりまして、憲法問題についてちょっと総理の御認識をいただきたいんです。

 この前、代表質問で、私どもの馬場幹事長が質問をしました。そのときの馬場幹事長の質問は、憲法解散をしたらどうかという話だったんですね。それは決して、解散をする日にちはどうだこうだとか、そういうような話じゃないんです。

 昭和二十年十二月十八日、衆議院が解散され、昭和二十一年四月十日に、女性を含め二十歳以上の国民に選挙権が初めて与えられて、完全選挙による総選挙が行われました。この総選挙で選ばれた方々と貴族院が一緒になって、この憲法ができ上がったというのが背景にあるんですよ。

 しかし、今は国民投票がありますから、こういうことは要らないんじゃないかと言われるかもしれませんが、総理、そうじゃなくて、ホップ、ステップ、ジャンプと書いてありますけれども、やはり、憲法というものを本気で変えたいならば、総理が変えたいならば、解散をするときに、私たちは憲法を改正することを望みますよというメンバーがいて、その選挙をやって、それが三分の二集まってから憲法の論議を深めるべきだ、憲法改正を進めるべきだというのが私の考えなんです。

 選挙のときには憲法改正の話も公約に挙げない、何も挙げないで、たまたま景気の話でうまくいって、そのうまくいった話の中で三分の二が集まったから、これで三分の二が集まったから憲法改正しましょうねということは、私はよくないと言っているわけです。

 だから、明確に、憲法を改正することをしっかりとこの選挙の中に入れて、それで解散をする。そして、その後に、この憲法改正についての審議をして、国民投票をやって、そして改正をしていく。こういうふうなことが、国民にとっては、選挙のときも憲法改正について選ぶことができる、国民投票でも選ぶことができる、こういうようなことをやると、国民がわかりやすい憲法改正のあり方ではないかなというようなことをうちの馬場幹事長は代表質問でお話ししたわけです。

 しかし、総理の答弁は非常に冷たい答弁でした。それは、私は今解散するつもりはありませんといって。つもりを聞いているわけじゃない。つもりを聞いているわけじゃなくて、こういうやり方はどうなんですかというのを私たちは今聞いているので、それをぜひはっきりと明確にした、私たちの党は、憲法改正をするべきだということを、もう旗を上げて次の衆議院選挙をやりたいというふうに考えているので、ぜひそういうメンバーを集めて憲法改正選挙を、次、必ず四年に一回は選挙があるわけですから、そのときにはおやりになった方がいいんじゃないかということなんですけれども、総理のお考えをお聞かせください。

安倍内閣総理大臣 御党のお考えはわかりました。我が党は、既に憲法改正というものは掲げているわけでありますし、党是と言ってもいいわけでございまして、その上で、私の総裁のもとで、四回の総選挙で大きな勝利を得ているわけでございます。

 と同時に、また、国民投票がここであるわけでございまして、その国民投票の際に、さらに逐条的に何を変えるんだということも大きいわけでありますから、そこで国民の皆さんが意思を表明するということであろう、こう思うわけでございます。

 憲法においては、法律はまさに国会において議院が決める、過半数、過半数でこれは成立をする、完結をするんですが、議院の役割は、国民にお伺いを立てるわけですね、三分の二で。では立てることにしようという、そういう役割と言っても、発議するのは、まず発議でございますから、ということだろう、こう思うわけでございます。

 と申し上げておいて、では、解散との関係におきましては、もうこれは任期もだんだん限られてまいりましたので、ここで今、憲法と解散をリンクさせると、何か時期も結構いろいろ推測をされる方もおられると思いますが、全くこの解散については今も考えていないということを申し上げておきたいと思います。

下地委員 総理、解散の日にちは聞いていないんです。解散するときは憲法解散がいいというようなことを、我が党の考え方をぜひ御理解いただければありがたいということであります。

 ちょっとまたかわります。麻生財務大臣に。

 今度の予算に、この前、財務省から資料をいただくと、二十六年度の租税特別措置法の適用額が二兆五千億あるんですよね。我が党はずっと言っているんですけれども、租税を二兆五千億やりますが、この租税がどこに当てはまるのか、どこのところが租税を受けたのか、そういうデータは財務省にはないんですよね。

麻生国務大臣 これによって与えた影響が、経済面においてどういう影響が出て、それによって得た特許、もしくは何とかによってという細目があるわけではございません。

下地委員 我が党で調べたんですよ。そうしたら、決算書を調べなきゃいけないので調べると、一番この租税特別措置法を活用した、研究開発費を活用したのはトヨタで、一千五百億ぐらいありました。その次が日産自動車の四百五十億で、その後企業名が、これはなかなか調べるのが大変なんですよ、表に出てこないですから。

 これを見ていただくとわかるように、二億円の売り上げがありますといって、その一億円の経費が下にありますけれども、研究開発費が二千万かかりましたというふうに言ったら、これは経費で二千万は落ちるんですよね。今度、生産向上設備投資に二千万かけましたと言ったら、それも経費で落ちるんですよ。また、所得拡大促進といって五名以上の人をふやしたら、年収が五百万円ふえましたと言ったら、二千五百万かかりましたと、これもまた経費で落ちるんです。ここまでは経費で落ちるからいいんですよね。

 上に行くと、それの研究開発費が一〇%、生産向上費が五%、所得拡大促進税制が一〇%と、この分だけが出た利益の中から引かれて、そのまま残るというような形になってくるんですね。

 私が申し上げたいのは、同じような企業が同じように残っちゃうんですよね。だから、会社が大きくて、いろいろなことをやっている人は、いろいろな枠組みで、いろいろな仕組みで、税金を払わなくてもいいような形で残ってくるわけなんですよ。そうではなくて、もう租税のこの適用額の二兆五千億をやめて法人税を安くした方がみんなに当てはまるんじゃないですか。その方がいいんじゃないかというのが我が党の考えなんですね。

 だから、この租税特別措置法をやると、限られた企業だけが、三つも四つもこの項目に当てはめられた形でこれをとっていく。しかも、大きい会社にできるだけ行くようにしようと。だけれども、これをやめて、法人税を二三%を二一%、二兆五千億分ぐらい充てると、これはもう地方の企業まで全部当てはまる。そういう中で、地方の企業にとっても法人税が安くなることは非常にやる気をもたらすことになると思うんですけれども、租税特別措置法をやめて法人税を下げるというようなことを予算でやったらどうかというのが私たちの提案なんですけれども、いかがでしょうか。

麻生国務大臣 今言われたところは、大筋数字としては合っております。いや、合っておりますというのは、すごく大事なところですよ。全然いいかげんな前提でされる話というのは幾らでも世の中にありますので、全体として合うとります。

 その上で、税負担にゆがみを生じさせるんじゃないか、特定の企業だけになっちゃうんじゃないかという御懸念というのは、これはもう極めて正しいところなのであって、私どもとしては、その点は、政策課題というものに一つ一つ対応するためにやっていますので、その時々に、たびたびに時限立法で切っていかないと問題になるということなんだと思います。

 今度の、二十五年度の税制改正でいえば、少なくとも、先ほど言われたように、政労使会議などの取り組み等々がございまして、その中で賃金引き上げ率を三年連続二%台にできたというのは、これは促進税制のおかげです。これは大きかったですから。

 その上で申し上げさせていただければ、逆に、二十七年度、二十八年度の税制改正で、研究開発税制の中でやはり租税特別措置で縮減した部分もありまして、今までいいよと言ったものをだめ、その効果はもう終わったでしょうということで減らしていただきました部分がありまして、二十四年でいえば、生産性向上促進税制から二千四百をばさっと切ったりなんかしていますので。

 そういった形のものを得た分で法人税の税制の改正を、少しずつ減らして、今、二三・二ぐらいまで来たかな、それぐらいまで来ていると思いますので、いろいろな意味で、これは、今後とも、やり方だと思いますし、その時代時代に合わせて、租税特別措置法の内容につきましては柔軟に対応していかねばならぬと思います。

 トランプさんが一五に下げるとか、ほうと思いますけれども、一応言っておられますので、イギリスも何とかとかいろいろ言っていまして、世界じゅう法人税下げ競争みたいな話になりますと、これはまた全然別の話になりますから、そういった意味で、我々としては、その対応を考えておかないかぬと思っております。

下地委員 私は、租税をなくして法人税を下げるというのは、法人税下げ競争には当たらなくて、仕組みを変えるだけだというふうに思っていますから、世界各国もそういう意味では納得する。これだけ、研究開発費を含めて二兆五千億出している国家というのは、そう簡単にないですよ。そういう意味でも、わかりやすい税の形に変えていった方がいいんじゃないかというふうに思います。

 それで、我が党が百本法案を出したんですよ。百本法案を出して、一本も通っておりません。なかなか小さい政党ですから前に進みませんけれども、ただ、政党としての姿はしっかりと示していこうと思うんですね。

 話をすると、みんな、議員立法だと思っているものだから、与野党の議員が集まって法案を一本一本つくるというのが今までの議員立法なんです。そうじゃなくて、政党が自分で法案をつくって、それで、自民党にも、民進党にも、公明党にも、共産党には行きませんけれども、そういうふうにやるということが新しい姿になってくると思うんですよね。だから、個人の議員で議員立法をつくるというのではなくて、私たちの考え方としては、党がつくって、党間党で物事をやっていくというようなことをぜひ新しい仕組みとしてやっていきたいと思っていますから、それはぜひ御理解いただきたい。

 その中で、二つだけ説明させてください。

 一つは、個人保証の廃止法案なんですよ。

 今、お金を借りるときに個人保証がついているんですよね。これを今、私たちはどうしても廃止をしたいんです、個人保証をなくしたいんですよ。これは、企業経営者の皆さんだったらよくおわかりだと思うんですけれども。

 法務省、どれだけの個人保証が今ありますか。確実な数字をつかまえていますか。

小川政府参考人 法務省として確実な数字をつかめているわけではございませんが、各銀行ごとに、ある程度の調査がございます。(下地委員「銀行ごとに、何」と呼ぶ)調査の件数はございますが、金額的にどの程度になっているかということを把握しているわけではございません。(下地委員「件数」と呼ぶ)件数は、直接的に私どもで把握しているわけではございません。

下地委員 では、どこが把握しているんですか。金融庁でしょうか。

 では、金融庁、いますか。

麻生国務大臣 あらかじめ言っておかれたらわからぬことはないとは思いますが、かなり時間が要ります。

世耕国務大臣 お求めの数字と合致するかどうかはあれですけれども、まず、政府系金融機関においては、新規融資に占める経営者の個人保証に依存しない融資件数の割合が現在は三三%、金額ベースでは五一%であります。これが民間の金融機関になりますと、件数ベースしか把握できていませんが、今のところ、一四%ということになります。

下地委員 私どもが調べている数字だと、金融機関から借り入れる企業で経営者本人が個人保証を入れているのは八六・七%なんですね。しかも、常用雇用数が二十人以下だと比率が高くなるんですね。大企業だと銀行は保証をとらないんですよ。

 だから、そういうふうなことがずっと積み上がって、最終的に倒産したりすると、倒産金額よりも保証金額の方が高くなって、結局はその本人が廃業というか自殺に追い込まれるというケースが多いので、私たちは個人保証を全面的にもう認めないというような法案を今度出したというのが一点ですね。

 もう一つですけれども、日系四世の入国安易化法案というのがありますが、今は三世までが日系人扱いで入ってきて、二十四時間お仕事もできるし、日本で住めるんです。そして、今、ブラジルからこの国で働いている方々が、十六万九千人、ペルーから四万五千人ぐらいいますけれども、この日系人の数の、三世までの方が日本に来て、今、九万五千人と二万五千人の日系人の方々がお仕事をしているわけであります。これを四世まで広げると、ブラジルにいる四世の方々が二十四万人ぐらい、ペルーにいる方が十万人ぐらい新たにふえてくる。

 総理、今ちまたで人不足だとか言われますけれども、移民政策というのは、うちの国ではなかなかこれは簡単にできるものではありません。そうなってくると、昔、日本が厳しいときに南米に行かれた方々に、もう一回ここに来て手に職をつけてもらうという意味においては、専門職をどうだこうだじゃなくて、同じ血が流れている日本人の四世まで認めて日本に入れて、それで、日本で手に職をつけてまたペルーに戻られる、ブラジルに戻られる、そういうことが国策としてもいいのではないか。それで、そのことが日系企業の交流にもなる。

 ちょっと悪いんですけれども、この前ペルーに行ったら、外務大臣とお会いしたら、外務大臣は、いや、もう車会社に行かないで、大きい日本の車会社に行って工場で働くよりも、鉄筋工だとか、型枠だとか、エステティシャンとか、手に職をつけるところでやってからペルーに戻ってくるとうれしいんですよね、うちには車工場はないんですよという話をするんですよね。そのとおりなんですよ。

 だから、手に職をつけて戻すという意味では、四世までの人を入れてこれをやられるというようなことをやったらいかがかなと思うんですけれども、総理、いかがでしょうか。

安倍内閣総理大臣 日系人の方々は、我が国を祖国とする同胞でありまして、一般的に日本に親類の方も多いなど日本社会と特別な関係があることが多いわけでありまして、また、我が国のよき理解者でもあるなど国として敬愛を持って接することが必要と考えています。

 このため、入国管理において、日系二世、三世の方については、定住者等の在留資格で我が国への入国、在留を認めるなど特別な対応を行っているところであります。

 他方、いわゆる日系四世の方々については、こうした特別な関係性が日系二世、三世の方と同様とまでは言えず、同様の対応をとることは困難と考えてきたわけでありまして、その中で一定の配慮を行っています。

 すなわち、定住者として在留する日系三世の扶養を受ける未成年で未婚の実子に限り、日本への入国、在留を認めることとしているという考え方で今まできたんですが、私も南米の国を回りまして、日系人の皆さんの日本に対する非常に熱い思いがあります。二世、三世の皆さんも、おじいちゃん、おばあちゃん、そしてひいおじいちゃん、ひいおばあちゃんの国である日本への強い憧れを持っているということを本当にそれぞれの国で感じました。私の話に対して本当に目を輝かせて、日本の総理大臣の話を聞きたい、一回行ってみたいという方々の熱意を私も聞きまして、こういう日系四世の皆さんの熱意にも応えていく必要が日本としてあるのではないか、私はこう思います。

 下地委員のこの御質問もございまして、では、四世の皆さんにどういう対応ができるかということをもっと前向きに検討していきたい、このように考えております。

下地委員 これは本当に、南米と日本との関係、それと、オリンピックに向けて多くの我が同胞が日本に来られるようなチャンスをつくるという意味でもいいと思いますので、ぜひ総理、進めていただきたい。

 あともう十五分しかありませんので、菅官房長官が帰ってきたので、官房長官に御質問させていただきたい。

 沖縄の予算を二百億切りましたけれども、一括交付金の数字をちょっと見ていただきたいんですけれども、鶴保大臣、いいですか。

 一括交付金の仕組みなんですけれども、これは、一回市町村から上がって、沖縄県に行って、内閣府に行って、内閣府がジャッジしないと沖縄県にはおりてこないんですよ。これは全部、ソフト交付金もハード交付金もそうなっているんです。下の数字を見ると、繰越金が六百七十九億とか、四十五億円とか、こういうふうに大きくなっていますけれども、これは非常に残念な結果ですね。

 だけれども、官房長官、ただ一点だけ申し上げたいのは、これは沖縄県だけが悪いんじゃないんですよ。これをジャッジするのは内閣府なんです。

 復帰のときに何で内閣府をつくったかといったら、沖縄県の行政能力が非常に乏しい中で、国との調整をする役割を内閣府においてやろうというのがこれのスタートなんです。だから、こういうふうに不用額が出たり繰越額が出たりすると、これは沖縄県の責任にばかりしているんですけれども、違うんです。内閣府も自分の責任だと感じなければいけないんですよね。それが少し足りないんです。

 私も官房長官と同じときに当選して、今もう二十一年。向こうはずっと当選、私は二回落選ですけれどもね。だけれども、今、若い役人たちに沖縄に対する思いがないから、簡単にこういう数字を出してくるんですよ。本当だったら、内閣府の職員たちは、これは自分の責任だと思って汗水流してやるはずなんだけれども、それをやっていない。

 だから、ここはしっかりと内閣府に指示をして、この予算の執行について、絶対的にこの執行をふやしていくというようなことを一点やってもらいたい。

 それと、もう一個。来年度の予算は、この執行がよくなったら沖縄の予算をふやす、戻すということを約束してもらいたいんですけれども。

鶴保国務大臣 先に私の方から、スキームについての説明をちょっとさせていただければと思います。

 下地議員おわかりだと思いますが、一括交付金については、前回の委員との委員会でのやりとりでも申し上げましたが、不用額が出てくるスキームの原因がやはりあると思います。

 これまで、実際の執行状況、執行を、額を決めて、それからその内容について沖縄と内閣府との間でやりとりをするというやり方を踏襲してまいりました。したがいまして、沖縄県としても、年度の早い時期に事業立案ができていない、あるいは準備不足、そしてまた執行実績をもとに積算が行われていない等々の問題が出てきていたことがこれまでの問題であります。したがいまして、虚心坦懐に、これらをどうすれば改善できるかについて鋭意検討をしていかなければならないというふうに考えております。

 したがいまして、一括交付金自体の制度にある程度の制度上の限界がある、こういうふうに内閣府では理解をしております。

下地委員 大臣、官房長官が答えますか。これは、今回予算を減らした原因がこの執行率の問題にあると言ったが、先ほど言いましたように、執行がしっかり大臣が頑張って復活したら予算をふやしていくんですか。

鶴保国務大臣 繰り返しになりますけれども、執行実績を見る前に、執行をでき得るもの、事業計画を立てていくということが非常に大切なわけです。しかしながら、一括交付金の制度自体、まず枠を決めて、その中身を後から決めていくという制度になっておりますので、ここをどうすれば事前に事業計画を県とやりとりをしていけるかについて、虚心坦懐に工夫をしていく必要があるということを申し上げておきたいと思います。

下地委員 時間がないからあれですけれども、大臣、これはあなたが認めた予算なんですよ。内閣府であなたが、この予算を執行しますといって財務省に要求してやった予算なので、これは満額執行しないといけないんですよ。そうでしょう。初めから不用額をつくるとか繰り越しをつくるために予算をつくっているわけじゃないんだから。

 だから、そういう意味で、私が言っているように、満額をしっかりやるというのがこれはもう当たり前の常識なんです。残さないというのが常識なので、それをやったら、今回の予算を減らした理由が不用額が出たものだということになっているから、ちゃんと大臣が頑張って執行したら、沖縄県民のために要求しますよと言えばいいんじゃないか、それだけなんですよ、僕が言いたいのは。

鶴保国務大臣 もちろん決めた予算についての有効な執行は、当然内閣府としても企図しておるところでございます。

 ただ、繰り返しになりますけれども、その中で出てくる不用額等々がこれまでもあったことは事実でございますから、その点についての改善を先ほどから強調しております。

下地委員 もうこれ以上やっても時間がもったいないからやめます。

 もう一つ、酒税を変えましたけれども、五年が二年になりました。これは、特別地域の税制も、泡盛もオリオンビールの税制も全部、今までずっと復帰後五年だったものを二年にしたんですよ。

 私は、政府にも出させていただいたり、自民党にも行って要望書を出させていただきましたけれども、税というのは、成果が出ているものが税金として使われるのが当たり前であって、ずっと泡盛もオリオンビールも、そして特区も、なかなか使われていないということがあるので、ここは内容を変えたらどうですか、内容を変えて二年にするというのも一つの方法ですねといって、二年にはなったんですけれども、全く内容が変わっていないんですよね。

 だから、税というのは、麻生大臣が一番わかるように、無駄なものはやめた方がいいんですね、僕に言わせれば。効果が出ないものはやめたらいいんですよ。しかし、効果が出ないものを残してやる以上は、中身をつくり直さないとこれは意味がないんです。また同じように二年間やりますといっても、では、何をどうするのかというのは全くわからないわけだから、私からすると、単純に二年延長というのは何が意味があったのかというのを言っているんですよね。

 それを何か、応え方がちょっとわからないんです。同じものを五年を二年にしたというだけで何が変わったのか。ここは、五年を二年にするのではなくて、やめるか新しい仕組みに変えてやるか、どっちかだったんじゃないかと僕は言っているわけですよ。

 大臣、五年を二年にした意味というのは何ですか。

鶴保国務大臣 これも昨年、委員会でも委員とやりとりをさせていただいたので、よく御存じだろうと思いますが、五年置きの改定でございます。その中で、けんけんがくがくの議論がございました。そして、下地先生の御意見も当然勘案した上でございます。

 また、地元からの要望等々もこれあり、延長についてはさまざまな御意見があり、そして、この五年を二年にということの趣旨でございますけれども、それぞれの租特について、運用実績、適用実績がかなりばらつきがございます。特に泡盛等々のことにつきましては、沖縄の経済状況等を検証して、これから、今後二年の間に別な振興策等々も考えていかねばならないのではないかという問題意識を共有したところでございます。

 したがいまして、今回、二年という短い期間の中で適用状況を見て、それがいかなる効果があるかを検証していく、そういう趣旨でございます。

下地委員 どういう検証をするんですか。

鶴保国務大臣 適用実績がいかなるものになるか、そしてそれが経済効果としてどれぐらいあったかについて検証したいと思います。

下地委員 大臣、これは検証しなくても、もうわかっているよ。大臣、もう検証しなくても、ずっと下がっているんだから、わかっているって。

 では、あなた、上げるために何をやったんですか。今度の予算で何か組みましたか。

鶴保国務大臣 これは沖縄県選出の下地先生がおっしゃっておられることなのでよく聞いておかなければなりませんが、沖縄の方の中にも、やはりさまざまな御意見がございました。県、そしてまたその当事者もそうですし、また周辺の方々の御意見も勘案してのことであります。各所、各省で、つかさつかさで努力をいただいていかなければならないということを我々強調しておるものでございます。

 なおかつ、これまで、特に、例えば先生が例に出された泡盛のような案件については、経済的な、財政的な援助をすることのみが彼らにとって果たして功を奏するものなのか。もっとそれ以外に、ソフト事業であるとか、さまざまな販売促進の応援であるとか、こういったものができないか。今、何か、泡盛のカクテルなんかをつくってそれを東京で販売しようというようなことも考えておられるようでありますから、こうしたことを総合的にやって結果を見てみたい、そういうことでございます。

下地委員 もう時間がちょっとなくなってきたのであれですけれども、大臣、私が申し上げたいのは、この泡盛の税金とかというものについては、これは山中貞則先生の時代からずっと来て、厳しく見てきたんですよ。それで、初めて五年を二年にするわけですけれども、二年にするとなかなか投資ができないんです。新しい機械を買おうとしても、五年だったらまだ猶予があるからできますけれども、二年だったらできない。

 だから、僕は、二年にするぐらいだったら、やめたらよかったと思う。やめて、頑張れというのが一つの方法としてあった。二年に延ばすんだったら、新しい仕組みをつくって、二年間でやってみて検証するということですけれども、同じ仕組みを残したままで検証しますといっても、同じ結果しか出ないのはもうわかっていますよ、これは。

 だから、大臣に申し上げたいのは、では、本当にこの予算の中で、伸ばすために、今おっしゃったように、どういうふうな予算の枠組みにしてカクテルを伸ばそうとしているのか。

 泡盛コンペティションというのに総務大臣賞を初めて出したのは麻生大臣ですよ。これで東京で初めて泡盛のカクテルコンペティションをやった。開会式にも来ていただきましたけれども。本当にそういうのを地道にやっていくというようなことをやっていかないと、沖縄の産業はなかなか伸びない。

 先ほど話がありましたけれども、世界文化遺産に泡盛を登録しようといって一生懸命頑張っている方々がいますよ、琉球料理とセットにして。そういうものに大臣が力を入れて新しい枠組みをつくるというようなことをやっていただくことは非常に大事なことかなというふうに思っていますから、ここは二年になったけれども、しっかりもう一回伸ばそうというお気持ちになっているんだというのを、もう一言、どうですか。

鶴保国務大臣 基本的にはそのとおりなんですが、まず、二年にしたことによっての効果で最も期待するものというのは、地元の方々、先生も含めての意識を変えていただく、みずからがアイデアを持ち、そしてそれに対して努力を重ねていただく、このことを大いに期待したいというふうに思います。

 先ほどから話題になっております泡盛のカクテルやコンペティション、これらについても、泡盛にかかわる酒造組合の皆さんの方からこんなことをやっていったらどうかという提案があっての話でありますから、それらについて先生の御協力もいただきたいというふうに思っております。

下地委員 官房長官、コメントをお願いします。

菅国務大臣 今、鶴保大臣が答えたとおりであります。私どもは沖縄の振興を応援したいという、それは強い思いであります。

 しかし、残念ながら、五年間ほとんど使えなかったとか、いろいろなことがありましたので、二年間の中でそうしたさまざまなアイデアを出して頑張っていただければ、そこは政府としては当然応えていく、そういう思いであります。

下地委員 ありがとうございました。

 終わります。

浜田委員長 これにて下地君の質疑は終了いたしました。

 次回は、明三日午前九時から委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。

    午後五時散会


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