衆議院

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第2号 平成29年11月27日(月曜日)

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平成二十九年十一月二十七日(月曜日)

    午前十時十分開議

 出席委員

   委員長 河村 建夫君

   理事 柴山 昌彦君 理事 菅原 一秀君

   理事 田中 和徳君 理事 橘 慶一郎君

   理事 福井  照君 理事 宮下 一郎君

   理事 逢坂 誠二君 理事 津村 啓介君

   理事 竹内  譲君

      あべ 俊子君    赤澤 亮正君

      安藤 高夫君    伊藤 達也君

      石崎  徹君    今村 雅弘君

      岩屋  毅君    江藤  拓君

      衛藤征士郎君    大西 宏幸君

      加藤 鮎子君    金田 勝年君

      神山 佐市君    木村 次郎君

      黄川田仁志君    小林 茂樹君

      古賀  篤君    佐藤ゆかり君

      繁本  護君    新藤 義孝君

      田村 憲久君    竹本 直一君

      根本  匠君    野田  毅君

      原田 義昭君    平井 卓也君

      平沢 勝栄君    船橋 利実君

      古川  康君    星野 剛士君

      村上誠一郎君    盛山 正仁君

      山口  壯君    山本 幸三君

      山本 有二君    渡辺 博道君

      阿部 知子君    青柳陽一郎君

      池田 真紀君    岡本あき子君

      落合 貴之君    高木錬太郎君

      長尾 秀樹君    長妻  昭君

      堀越 啓仁君    松田  功君

      松平 浩一君    道下 大樹君

      山内 康一君    山川百合子君

      早稲田夕季君    浅野  哲君

      井出 庸生君    伊藤 俊輔君

      稲富 修二君    小熊 慎司君

      大西 健介君    後藤 祐一君

      伊佐 進一君    石田 祝稔君

      中野 洋昌君    篠原  孝君

      原口 一博君    藤野 保史君

      遠藤  敬君

    …………………………………

   内閣総理大臣       安倍 晋三君

   財務大臣

   国務大臣

   (金融担当)       麻生 太郎君

   総務大臣

   国務大臣

   (男女共同参画担当)

   (マイナンバー制度担当) 野田 聖子君

   法務大臣         上川 陽子君

   外務大臣         河野 太郎君

   文部科学大臣       林  芳正君

   厚生労働大臣

   国務大臣

   (拉致問題担当)     加藤 勝信君

   農林水産大臣       齋藤  健君

   経済産業大臣

   国務大臣

   (原子力損害賠償・廃炉等支援機構担当)      世耕 弘成君

   国土交通大臣       石井 啓一君

   環境大臣

   国務大臣

   (原子力防災担当)    中川 雅治君

   防衛大臣         小野寺五典君

   国務大臣

   (内閣官房長官)     菅  義偉君

   国務大臣

   (復興大臣)       吉野 正芳君

   国務大臣

   (国家公安委員会委員長)

   (防災担当)       小此木八郎君

   国務大臣

   (沖縄及び北方対策担当)

   (消費者及び食品安全担当)

   (海洋政策担当)     江崎 鐵磨君

   国務大臣

   (少子化対策担当)

   (クールジャパン戦略担当)

   (知的財産戦略担当)

   (科学技術政策担当)

   (宇宙政策担当)     松山 政司君

   国務大臣

   (経済再生担当)

   (人づくり革命担当)

   (経済財政政策担当)   茂木 敏充君

   国務大臣

   (地方創生担当)

   (規制改革担当)     梶山 弘志君

   国務大臣

   (東京オリンピック競技大会・東京パラリンピック競技大会担当)       鈴木 俊一君

   財務副大臣       うえの賢一郎君

   政府特別補佐人

   (内閣法制局長官)    横畠 裕介君

   会計検査院長       河戸 光彦君

   会計検査院事務総局第三局長            戸田 直行君

   政府参考人

   (内閣官房内閣審議官)  増田 和夫君

   政府参考人

   (内閣府地方創生推進事務局審議官)        村上 敬亮君

   政府参考人

   (内閣府宇宙開発戦略推進事務局長)        高田 修三君

   政府参考人

   (内閣府総合海洋政策推進事務局長)        羽尾 一郎君

   政府参考人

   (財務省理財局長)    太田  充君

   政府参考人

   (文部科学省大臣官房総括審議官)         中川 健朗君

   政府参考人

   (文部科学省高等教育局長)            義本 博司君

   政府参考人

   (国土交通省航空局長)  蝦名 邦晴君

   政府参考人

   (防衛省整備計画局長)  西田 安範君

   政府参考人

   (防衛省統合幕僚監部総括官)           鈴木 敦夫君

   予算委員会専門員     石上  智君

    ―――――――――――――

委員の異動

十一月二十七日

 辞任         補欠選任

  伊藤 達也君     小林 茂樹君

  石崎  徹君     田村 憲久君

  石破  茂君     神山 佐市君

  岩屋  毅君     船橋 利実君

  江藤  拓君     木村 次郎君

  古賀  篤君     大西 宏幸君

  星野 剛士君     黄川田仁志君

  山本 幸三君     繁本  護君

  渡辺 博道君     安藤 高夫君

  岡本あき子君     長妻  昭君

  落合 貴之君     松平 浩一君

  山内 康一君     池田 真紀君

  小熊 慎司君     伊藤 俊輔君

  大西 健介君     浅野  哲君

  伊佐 進一君     石田 祝稔君

同日

 辞任         補欠選任

  安藤 高夫君     古川  康君

  大西 宏幸君     新藤 義孝君

  神山 佐市君     赤澤 亮正君

  木村 次郎君     江藤  拓君

  黄川田仁志君     加藤 鮎子君

  小林 茂樹君     伊藤 達也君

  繁本  護君     山本 幸三君

  田村 憲久君     石崎  徹君

  船橋 利実君     岩屋  毅君

  池田 真紀君     道下 大樹君

  長妻  昭君     岡本あき子君

  松平 浩一君     落合 貴之君

  浅野  哲君     大西 健介君

  伊藤 俊輔君     小熊 慎司君

  石田 祝稔君     伊佐 進一君

同日

 辞任         補欠選任

  赤澤 亮正君     石破  茂君

  加藤 鮎子君     星野 剛士君

  新藤 義孝君     古賀  篤君

  古川  康君     渡辺 博道君

  道下 大樹君     松田  功君

同日

 辞任         補欠選任

  松田  功君     高木錬太郎君

同日

 辞任         補欠選任

  高木錬太郎君     長尾 秀樹君

同日

 辞任         補欠選任

  長尾 秀樹君     堀越 啓仁君

同日

 辞任         補欠選任

  堀越 啓仁君     山川百合子君

同日

 辞任         補欠選任

  山川百合子君     早稲田夕季君

同日

 辞任         補欠選任

  早稲田夕季君     山内 康一君

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 会計検査院当局者出頭要求に関する件

 政府参考人出頭要求に関する件

 予算の実施状況に関する件


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     ――――◇―――――

河村委員長 これより会議を開きます。

 予算の実施状況に関する件について調査を進めます。

 この際、お諮りをいたします。

 本件調査のため、本日、政府参考人として内閣官房内閣審議官増田和夫君、内閣府地方創生推進事務局審議官村上敬亮君、内閣府宇宙開発戦略推進事務局長高田修三君、内閣府総合海洋政策推進事務局長羽尾一郎君、財務省理財局長太田充君、文部科学省大臣官房総括審議官中川健朗君、文部科学省高等教育局長義本博司君、国土交通省航空局長蝦名邦晴君、防衛省防衛政策局長前田哲君、防衛省整備計画局長西田安範君、防衛省統合幕僚監部総括官鈴木敦夫君の出席を求め、説明を聴取し、また、会計検査院事務総局第三局長戸田直行君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

河村委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

河村委員長 基本的質疑を行います。

 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。田村憲久君。

田村(憲)委員 おはようございます。自由民主党の田村憲久でございます。

 久しぶりにこの予算委員会の場で、きょうは一時間ほど質問をさせていただくということでございますが、厳しい質問も幾つかあると思いますけれども、どうかよろしくお願いをいたしたいと思います。

 さて、総理、突然の解散であったわけでありますけれども、我々、結果だけを見ますと、自民党は議席をそのまま維持したということでありました。定数自体が減っておりますので、全体としては比率は自民党はふえたということであるわけでありますから、結果としては自民党は勝ったということが言えるのかもわかりませんが、しかしながら、戦っていた我々、実感はどうもそうでありませんでした。

 といいますのは、解散を宣言されたときにもう既に逆風が吹いていたな、そんな感じを持ちながら選挙戦に備えておった、そんな時期があったわけでありまして、その後、民進党は、希望の党に移られるという話であったんですけれども、いろいろとその中で野党の事情があったようでございまして、三つに分かれられた。結果的に、国民の皆様方が、やはり安心してこの厳しい中でいろいろな困難を乗り越えていくには自民党、政権与党、ここしかないのかな、こういう消極的な選択で我々は議席をいただいた、そんな気がいたしております。

 中身としては、もちろん我々自民党の議員の中にも幾つかいろいろな問題、不祥事が起こりました。これは真摯に我々自民党も反省をしていかなきゃならぬなと改めて私も一員として思うわけでありますが、同時に、やはり森友学園、加計学園の問題が十分に国民の皆様方に御理解をいただいていなかった。そんなこともこの選挙戦を通じて感じたようなわけでございます。

 もちろん、何もないことを証明するのは総理がおっしゃられるとおり悪魔の証明ですから、赤いカラスがいるかいないか、これは、赤いカラスがいないということを証明しようと思うと、全てのカラスを捕まえないと証明できないわけでありますから、非常に難しいことは確かだというふうに思います。しかしながら、国民の皆様方が十分に理解をまだされておられないということは、まだ説明も足らないんだというふうに思います。

 どうか、悪魔の証明ではありますけれども、天使のように、謙虚に、誠実に、そして実直に、これからもこの問題に関して、この後、我が党の菅原議員からも御質問があると思いますけれども、お答えをいただきたいというふうに思いますが、いかがでございましょう。

安倍内閣総理大臣 今回の選挙、私どもが戦う上において、相手の党が、どんどん名前も変わったり、その形が変わっていくという中にあったわけでありますが、私たちは、そうしたことに右往左往することなく、ひたすらに政策を訴えて選挙戦を戦ってきたところでございます。

 北朝鮮の脅威に対して力強い外交を進めていく、そして、進んでいく少子高齢化に対して、思い切って子供たちに投資をすることによって少子高齢化社会を克服していくということを全国で訴えてきたわけであります。

 今回の選挙においては、街頭演説をしておりましても、大変若い方々、高校生の皆さんを含めて若い方々が大変目についたところでございますし、また、子育て世代の皆さんも本当に熱心に演説に耳を傾けていただいた、こう思います。

 その結果、小選挙区においても、あるいは比例区においても、我が党の得票数は私が総裁として戦った三回の総選挙の中で一番多かったのも、これは余り報道されていないことでありますが、一番多くの得票数を獲得したのも事実であります。

 同時に、ただいま田村委員が御指摘されたような問題もあったのも事実であります。そういうことも謙虚に受けとめながら、この委員会を通じて、真摯な説明を丁寧に行っていくことによって国民の皆様の理解を得ていきたい、このように考えております。

田村(憲)委員 友党の公明党には大変御迷惑をおかけした選挙だったのかもわかりません。

 どうか誠実にこれからもよろしくお願いをいたしたいというふうに思います。

 さて、選挙戦、よく二兆円のパッケージということで、消費税、二%これから上げていく、その使い道を変えていく、こういうことを国民の皆様方に訴えてこの選挙戦を我々も戦ってまいりました。

 正直申し上げて、今まで我々が考えてきた消費税の使い道と変わっちゃったものでありますから、公約をつくるときにも、党内でもいろいろな議論がありました。でも、そこは最終的にまとまって、この選挙戦を戦おうということで政策をまとめていったというのはさすがに自民党の底力だなと私も改めて感じておるところはあるんです。

 ただ、やはりそういう意味では、使い道を変えますし、三党合意で、実は幼児教育の無償化は少子化対策にはもともと入っていなかったわけでありまして、私は担当者でございましたのでよく覚えておりますから、それも変えるということでありますから、やはり選挙で国民の皆様方にお訴えをする、信を問う、これは重要であったと思います。

 その結果、やはり結果として我々これだけの議席をいただいたわけでありますから、これを実行していくという段に至っておるわけでありますが、国民の皆様方から非常に選挙戦で心配の声をいただいたのは、それはわかるけれども、一・七兆円、今までよりも余分に赤字国債を発行しなきゃいけなくなるんだよね、すると、財政健全化との関係は大丈夫なんですか。総理も、二〇二〇年のプライマリーバランスの黒字化は難しくなった、しかし、財政再建は諦めていないんだ、放棄していないんだ、このようなお答えをされておられました。

 一方で、まだまだ少子化対策、一・七兆円では足らないんじゃないか、こういう声もあります。高齢者はまだまだピークに向かってふえてまいりますから、こちらの予算もふえてくるんですね。社会保障は今まで自然増を抑えてきておりますけれども、しかし、そもそも高齢者の数がふえてきますから、そういう意味では、なかなかこちらの方もそう簡単には抑えていけない。

 さらには、公共事業。社会資本もそろそろ老朽化、耐用年限のところまで来ていますから、これから道路も橋も、さらには堤防も、もっと言えば、それこそ下水道も水道も、こういうものも含めて更新をしていかなきゃならない。お金がかかります。防災、減災もやっていかなきゃならない。

 歳出も伸びていきますから。そういう意味では、多分総理は、歳入の伸び、税収の伸び以内に歳出を抑えていくことによって、それでプライマリーバランスを回復させていこうというようなお考えだと思いますが、歳出の伸びというものもあるわけであります。さらにアベノミクスを加速して税収をふやしていかなければならないというふうに思うわけでありますけれども、そこのところはいかがでございますか。

安倍内閣総理大臣 安倍内閣では、経済再生なくして財政健全化なしという考え方でございまして、これまでアベノミクスを進めることで財政健全化に大きな道筋をつけてきたことをまず指摘しておきたい。これは委員もよく御承知のとおりでありますが、国、地方を合わせて税収は約二十二兆円増加をし、そして新規国債の発行も十兆円減少することができたわけであります。

 その上で、今般、人づくり革命を力強く進めていくため、消費税率引き上げ分の使い道を子育て世代、子供たちに大胆に投資をしていくとともに、社会保障の安定化にもバランスよく充当することとしたわけであります。

 いわば、消費税の使い道を、全て借金を返済するためではなくて、全て子育てのために使うということではなくて、大体、おおむね半分をいわば子供たちに思い切った投資をしていく、あとの半分は安定化のために使っていくということにしたわけでありまして、これによってプライマリーバランスの黒字化の達成時期に影響が出ることから、二〇二〇年度のプライマリーバランスの黒字化は困難になります。ただ、プライマリーバランスを黒字化していく、それを目指すという目標自体はしっかりと堅持をしていく考えであります。

 そして、基本的にこれは田村委員と考え方を同じくするわけでありますが、今後、人口減少や高齢化に伴う財政上の課題が想定されるわけであります。当然、自然増として社会保障費がふえていくことになるわけでありまして、それが想定されるわけでありますが、プライマリーバランス黒字化目標の達成に向けて、これまでの経済・財政一体改革の取り組みを精査した上で、目標達成時期を決定し、その裏づけとなる計画についても、具体的かつ実効性の高い、国民の信頼を得られるものにしていきたい、こう考えているわけであります。

 今後とも、私たちが進めている経済政策をしっかりと進めていく中において、名目GDPを伸ばしていき、そしてその中で税収をふやしていく。と同時に、無駄な歳出はなくしていく、効率化を図っていく。これまでも、社会保障費についても五千億円以下に抑えることができているわけでございまして、今後とも、質、量を、質はしっかりと維持をしながら効率化を図っていきたい。そうしたことによって財政の健全化も図っていく。同時に、もちろん一番大切なことは経済成長をしっかりと確保していくことではないか、こう考えております。

田村(憲)委員 三年間、自然増を五千億で社会保障を抑えていくということでありましたが、なかなかこれも、だんだん医療の高度化が進んでまいると難しくなってくる部分もあるわけであります。

 いずれにいたしましても、今までは、思ったほど、予想どおりの成長率、名目成長率、維持できていなかったですけれども、税収の弾性値が高かったものでありますから、しっかり予想の税収は確保できた。ただ、昨年度はできなかったですね。ですから、ちょっと弾性値が落ちてきている部分もあると思います。やはり名目経済成長率をぐっと上げていく、これが一番重要なところだというふうに思います。総理は十分にわかっておられると思いますから、しっかりとアベノミクスを、さらに加速をお願いをいただきたいというふうに思います。

 この選挙戦で言われたのは、もう一つ、やはり、安倍第二次内閣になってから格差が広がった、これはよく言われました。野党の皆様方も、子供の貧困率、六人に一人が子供の貧困だ、これは安倍内閣の責任だと、いかにも、そのような言い回し、そうじゃないと言われる方もおられるかもわかりませんが、そのようなイメージをつけるかのような言い回しをされておられました。

 私は違うと思うんですが、総理、安倍内閣になって本当に格差が広がっているのか、広がっていないのか。これは、国民の皆様方が誤解をされている部分があれば、この予算委員会を通じてしっかりと御説明をいただきたいと思うんですが、いかがでございましょう。

安倍内閣総理大臣 これは、田村厚生労働大臣時代に随分議論がなされたわけでございます。

 いわば、格差が固定化しない、許容し得ない格差が生じない社会を構築していくことが重要な課題であろう、こう考えています。

 安倍政権発足後の格差を示す指標の動きを見ますと、所得再配分後のジニ係数は、近年の雇用、所得環境の改善や、社会保障、税による所得再分配が機能した結果、おおむねこれは横ばいで推移をしているわけであります。

 また、長期的に上昇傾向にあった相対的貧困率についても、政権交代後、雇用が大きく増加するなど経済が好転する中で、低下に転じました。これは、田村大臣がまだ内閣におられたころはこの数字は出ていなかったんですが、安倍政権においてこの相対的貧困率の数字が出ていなかったのでございますが、それが出てまいりました。そういう結果になっているということであります。

 特に、子供の相対的貧困率については、昨年公表された総務省の全国消費実態調査によれば、これは十五年前からとり始めているわけでありますが、十五年前が九・二であったものが、十年前に九・七、そして五年前九・九、確かにずっと上がってきたわけであります。そして今回、平成二十六年にとったものでございますが、いわば九・二、九・七、九・九と上がったものが、これが七・九。これは二ポイントも下がったのでありまして、集計開始以来、初めての低下でございます。

 このように、安倍政権で格差が広がったということはないというふうに認識をしているわけでありまして、いわば今申し上げた数値がずっと注目されていたわけでありますが、こういう結果になっている。これは厚労省の数字でも、幅は違いますが同じ傾向になっているということでございまして、こうした動きが持続できるようにしていくことが必要であろうと思います。

 引き続き、アベノミクスをさらに加速させながら、成長と分配の好循環をつくり上げることで、格差が固定化せずに、誰にでもチャンスのある社会をつくっていきたい、このように考えております。

田村(憲)委員 安倍内閣になってから格差は縮まった、そういうようなお話であったと思います。

 ジニ係数という数字は、格差を示す、そういう指標ですが、そもそも、今の状況をほっておけば、高齢者の方々がふえてきていますから、ここはどんどん高齢者も、後期高齢者、まあ後期高齢者という言い方は余りよくないんですが、七十五歳以上に近づいていけば近づいていくほど働くこともだんだんされなくなってきますので、収入が年金が中心になってくる。そうすると、当然ここは、ほっておけば格差が広がるわけであります。ただ、そこを所得の再配分で、税や社会保障で合わせると若干なりとも下がってきておるというのが今の状況ですから、格差自体は広がっていない。

 しかも、子供の貧困率、よくこれは象徴的に言われます。六人に一人というのは、国民生活基礎調査という厚生労働省の数字、今このパネルがありますけれども、平成二十四年一六・三、これが二十七年は一三・九に、これは何と二・四ポイント下がっている。今、六人に一人から七人に一人ぐらいになってきておるということであります。

 ちなみに、平成二十四年は野田内閣でありますから、そう思うと、六人に一人というのは、我々の、安倍内閣ではなかった。それから今、安倍内閣になって下がってきておる。

 これは、やはり一つは、最低賃金というものを毎年大幅に上げてきて、今、二十円以上ずつ上げています。これもあると思います。

 それから、やはり雇用ですね。特に、非正規がふえるふえると言われていましたが、昨今は正規がふえ出して、昨年あたりの数字を見ていますと、大体五十万人ぐらい正規がふえて、非正規が三十七万人ぐらいですから、非正規よりも正規の方がふえ出した。

 普通ですと、正規は今余りふえない人口構造ですよね。というのは、定年退職される方々が新卒で就職される方々よりも大きな人口を抱えておりますから、当然、普通は減っていくんでしょうけれども、それがふえているということは、私は、これは分析してみなきゃわかりませんが、不本意に非正規に行かれておられたバブル崩壊後の方々、今三十代、四十代ぐらいの方々ですかね、こういう方々も正規に移っておられる。こういう中において、ちょうど子育ての世代ですから、そこが生活が安定されて収入がふえてくる、こういう中で子供の貧困率も徐々によくなってきている。

 ただ、これは二つあるんですよね、ここで見ていただきますと。だって、国民生活基礎調査、一三・九といっても七人に一人、こんなにいるんです。ところが、全国消費実態調査は七・九%で、十人に一人いないんですよ。これは私はおかしいと思うんですよね。

 国の指標が二つあるというのはわかりづらいし、どちらに合わせて政策をやっていけばいいのかよくわからないわけでありまして、これに関してもう少しわかりやすい指標をつくっていただきたいなと思うんですが、これに関してどなたかコメントはありますか。総理、どうぞ。

野田国務大臣 担当している大臣なので、先に答弁します。

 総務省の全国消費実態調査と厚生労働省の国民生活基礎調査のことについてのお尋ねだと思います。

 総務省の方の全国消費実態調査というのは、全国の家計の消費や所得、資産などの状況を明らかにする調査です。一方、厚生労働省の方は、保健、医療、福祉、年金などの、厚生労働省が所掌する施策の立案に必要な基礎資料を得ることを目的としています。

 それぞれの調査は、実施の時期とか周期、規模、方法が違います。例えば、全国消費実態調査、総務省の方ですけれども、これは、親元からの仕送りなどで暮らす単身の学生を独立した世帯と考えていません。また、周期も、総務省のは五年、そして厚労省のは毎年というふうに、それぞれいろいろなずれがあります。

 調査対象の捉え方に違いがあるということでこういう数字の違いが出てくるので、御指摘のようにわかりにくくなっているということはあると思いますが、これについて、もう既に平成二十七年に、そういう御指摘を受けて、内閣府、総務省、厚労省の三府省で連絡会議が設けられていて、有識者の皆さんに御相談をいただいたところです。

 結論から言えば、御意見は、両調査の相対的貧困率については、どちらの水準が正しくて、どちらの水準が正しくないとは言えないという結論。そして、調査が異なれば調査方法や調査対象が異なるため、そうした点で調整することが難しい、指標の一本化は難しいという意見をいただいたところです。

 他方で、今総理から御指摘あったように、調査の水準の数字は違っていますけれども、変化の方向性というのは同じであるという評価がありました。先ほど総理がおっしゃったように、低下しているトレンドというのは一緒になっているわけですね。

 ですから、子供の相対的貧困率については、どちらか一方の調査結果だけではなくて、両方の調査の数値がどのように推移しているかとか、変化の傾向を見る、変化の上がり下がりを見ることが重要ではないかと今考えているところです。

田村(憲)委員 何かわからないですね。

 トレンドを見るのはいいのかもわかりませんが、どれぐらい子供の貧困率があるのかというのを見るのは、二つあるとやはりわかりづらい。私、厚労大臣になる前からずっと要望しているんですが、これからもこれは粘り強く一本化を私は要求してまいりたいというふうに思います。

 しかしながら、子供の貧困という問題は、率が下がったからといってそれでいいという問題じゃありません。

 実は、私、子供の貧困対策議員連盟というのをつくっておりまして、これは超党派でございますから、自民党ほか各党全部、皆さん入っていただいておる、そういう議員連盟であります。官房長官にも、夏、御要望にお伺いをさせていただきました。

 この中で、来年度予算に向かって、特に、生活保護のお子さん、高等教育を受けるのに、前提になっていないんですよね。ですから、言うならば、大学に行くことが前提になっていませんから、地元の大学に行くとなると、住宅扶助を外されちゃうんですね。すると、家を出なきゃいけないですよね、住宅扶助が外されちゃうと。こういうプレッシャーの中で、諦めようかというようなお子さんも出てくる。

 そもそも、東京なんかで学ぼうとなると、初めの、イニシャルコストといいますか、要するに、行ったときにいろいろなものが要りますよね。そういうお金がないから、結局、苦しいので、友達のところに間借りしながら、アルバイトしながら、何とかお金がたまるまでアパートを借りられないなんというような、そんなお子さんもおられるというふうにお聞きします。

 そこで、もう八割高等教育を受ける時代になってきたわけであります。大学、専門学校、いろいろなものを入れる、専修学校、短期大学を入れるともう八割でありますから、これに関して、例えば住宅扶助、こういうものに関して生活保護の中において何らかの方策を考えるでありますとか、それから、親元を離れてどこかに行く場合に、学ぶ場合に、それに対して何らかの支援策を考えるとか、こういうことをお願いしたいということで、御要望を、この議員連盟でお願いをさせていただきにお邪魔をいたしました。

 子供がやはりしっかりと高等教育を受けて、そして職業能力をつけて就職をしてしっかりと稼げれば貧困の連鎖は断ち切れるわけでありますし、あわせて、今生活保護に入っておられる家族の方々もその中から引っ張り上げていただけるということもあるんだと思います。

 そういう意味では、何としても私はこれを実現していきたいと思うんですが、厚労大臣、これに関して、いかがでございますか。

加藤国務大臣 先ほどの相対的貧困の話も含めて、やはり子供の貧困をどう把握するか、大変難しい問題があります。なかなか一つの指標ではということで、多面的に見ていく必要があるんだろうと思います。

 そういう中で、今お話がありました大学等の進学率、一般世帯と比べると生活保護世帯等では大変低い、こういう水準でありますので、やはり、貧困が世代を超えて連鎖をしない、そして、どういう家庭の状況でも、その方の意欲そして思いがあればそれが達成できる社会を実現していく必要があるというふうに考えております。

 そういう意味で、田村委員が会長をしておられる議員連盟からも、この五月に提言もいただきました。それを踏まえて、現在、生活保護制度の見直しを検討しております社会保障審議会の部会において、生活保護世帯の子供の進学支援について議論をいただいております。

 具体的には、自宅から大学等に通学する場合、引き続き居住しているにもかかわらず生活保護費、特に住宅扶助費が減ることが子供の進学意欲をそいでいることがあるということ、また、生活保護制度上、進学直後に必要となる諸費用の準備が困難であるということに対して支援を行うべきではないか、こういう指摘をいただいておりますので、これらの議論を踏まえて、生活保護世帯の子供の大学等の進学支援の具体策について、今、三十年度の予算を議論しておりますけれども、予算での対応も念頭に具体的に検討していきたい、こう思っております。

田村(憲)委員 超党派の議連の要望でございますので、よろしくお願いをいたしたいというふうに思います。

 さて、冒頭、二兆円の政策パッケージの話をいたしましたが、これも、ずっと選挙期間中回っておりますと、それぞれ選挙区の皆様方からいろいろなお声をお聞かせいただきました。

 三歳から五歳に関しては全ての子供たちの幼稚園、保育園の費用を無償化するということで、総理がおっしゃって、自民党も公約にこれを入れたわけであります。全ての子供たちの幼稚園、保育園。

 幼稚園、保育園の定義は何ぞやと役所に確認しますと、これは認可だという話になるんですね。無認可は、保育園とは言わず無認可の保育施設ということでございますので、厳密に読むと外れているように見えるんですが、しかし、そう言っちゃうと、これは我々が何か国民の皆様を煙に巻いたみたいな話になっちゃうわけでございますので、やはり無認可も含めて、それから幼稚園も含めて、これに関しては一定のやはり対象というものになるのであろうというふうに思うわけであります。

 一方で、例えば認可の幼稚園であったとしても、新制度に入って公定価格で決まっておる費用を出しておる、そういう幼稚園もあれば、新制度に入らずに、今もみずから言うなれば保育料をいただいておられる、私学助成も入ってくるのかもわかりませんが、そういうような幼稚園もあるわけですよね。そういう幼稚園の中には、そんなに多くはないのかもわかりませんが、かなり高い教育をされて、保育料といいますか授業料といいますか、これが十万というような、十何万というようなところもあるのかもわかりません。そういうところまで全て無償化するとなると、一方で、国民の皆様方から見て、ちょっと話が違うんじゃないのというようなお声もあるのも事実です。

 無償化という中において、無認可の保育園に関しても、これはいろいろと費用が高いところもいっぱいある、こういうものを含めて、この無償化の考え方、どのように考えていけばいいのか。これは本当に、我々も有権者の方々から問われて、これからしっかりと皆様方の、言うなれば国民の評価にたえ得るような制度にしていきたいというふうにお答えをしておったわけでありますが、今総理の頭の中にどのようなイメージがあられるのか、お答えいただければありがたいと思います。

安倍内閣総理大臣 これは、委員もずっと御参加された中において、我が党としては、幼児教育の無償化、段階的に進めてまいりました。

 しかし、このスピードにおいては、進んでいく少子化の中において、しっかりとした対策を立てる、思い切った対策を立てて無償化を一気に進めていくことが今求められているだろう、段階的に進めていったのでは相当時間がかかってしまうという中において、今回、消費税の使い道を変えていく、そして、選挙でそのことについて国民の理解をいただいて一気に進めていく、そういう判断をしたところでございます。

 総選挙でお約束したことは、二〇二〇年度までに、三歳から五歳までの全ての子供たちの幼稚園、保育園の費用を無償化する、ゼロ歳から二歳児についても所得の低い世帯に対して無償化するとの方針のもとで、今現在、具体的な検討を進めているわけでございまして、先週の二十四日にも、委員にも御尽力をいただきましたが、自民党の提言をいただきました。

 この中では、費用が高額の幼稚園については、自由価格体系となっている子ども・子育て新制度への未移行幼稚園、まだ移っていない幼稚園については、公平性の観点から、移行幼稚園授業料の全国平均額を基準に無償化措置を講ずるべきであるとされております。

 こうした提言をしっかりと踏まえて、私もいただいた提言をしっかりと熟読しているところでございますが、政府としては、授業料が自由価格の幼稚園については十二月上旬の経済政策パッケージで取りまとめを図りたいと考えています。

 政府として、認可外保育施設を無償化の対象外とする方針を決めた事実は全くございません。先ほど申し上げましたように、いわば定義として入っていないからそうなんだと言うつもりは毛頭ないわけでございまして、公約でああしたことを公約した以上、国民の皆様方がそうは受けとめておられないわけでありますから、そこはしっかりと考えていきたいと思います。

 このことは先日の衆議院本会議で答弁させていただいたとおりでありますが、自民党の提言では、三歳から五歳までの子供たちの幼稚園、保育園、認定こども園の費用について、認可外保育も含め、無償化を進めるべきであるとされているところでありまして、こうした提言をしっかりと踏まえ、政府としては、無償化の対象範囲、先ほど指摘されたように、やはりこれはいろいろあるわけでございますから、専門家の声も反映する検討の場を設け、現場の状況等も十分に勘案しながら、与党とも連携して、来年の夏までに結論を出していきたいと考えております。

田村(憲)委員 認可外の保育施設に関してもいろいろなものがあります。中には、高度な教育をする、幼稚園と変わらないような形で、学校法人ではありませんけれども、保育をやっておられる、そういうような無認可の、認可外の保育施設もあるわけでございまして、やはり国民の皆様方の評価にしっかりたえ得る制度にしなきゃ、いろいろな御意見がありますから、いけないと思います。そこは、ぜひともこれから専門家の方々の検討会の中でしっかりと国民の皆様方の評価にたえ得る制度をつくっていただきたいと思います。

 もう一つ、幼稚園の預かり保育、要するに、幼稚園のコアな部分じゃなくて、その後何時間か見るという部分もあるわけでありまして、これに関してもいろいろな御意見があります。例えば、親が、要するに、保育が必要じゃないけれども、いろいろなことをやるのに預かってもらっている人もいるじゃないか。いや、保育が必要で、本当は認可保育園に入りたいんだけれども入れないから、そういうような幼稚園を使って何とか仕事を回しているんだという方もおられる。いろいろな方々がおられますから、そういうことも含めて、やはり国民の皆様方の評価にたえ得るような、そんな制度、そういう制度をこれからおつくりいただきたいというふうに思います。

 さて、今、全ての子供というような話がございました。全ての子供の中には、やはり障害をお持ちのお子さん方もおられるわけでございます。幼稚園、保育園には通えない就学前のお子さん方、しかし、例えば通所施設、児童発達支援などに通っておられるお子さん方がおられるんですね。

 全ての子供という話であれば、今、保育園、幼稚園という定義は確かに認可だけれども、認可外の施設に関しても、やはり全ての子供たちだから対応するんだというような、そういう総理のお言葉があったわけでありますけれども、障害をお持ちのお子さん方が通所されておられるそういうような形、これに関しても対象に入るのか入らないのか。これはやはり選挙期間中、障害をお持ちのお子さんをお持ちのお母さん、お父さん方からも心配の声をいただきました。

 児童発達支援など、これに関してはどのような今お考えなのか、お聞かせいただければありがたいと思います。

茂木国務大臣 我々は今回の選挙で、三歳から五歳児については全ての子供を対象にする、まさに言葉のとおりであります。

 確かに、先ほど御指摘いただいたように、費用が高額になる私立幼稚園について例えばどこまで持つか、こういった問題があるわけでありますが、障害児の通園施設についてもきちんと無償化していく、こういう提言もいただいておりますので、十二月の上旬にまとめる新しい政策パッケージでこの考え方を取り入れていきたいと思っております。

田村(憲)委員 今の大臣の御発言で安心をいただいたというふうに思います。

 障害をお持ちのお子さん方をどうか置いてきぼりにしないようにしてくださいね、これだけは。全ての子供ですから、よろしくお願いをいたしたいと思います。

 この五兆円のパッケージの中で、当然、幼児教育それから高等教育に関しても、低所得、所得の低い御家庭においてはそれに対しての支援をするというような、そういうものを公約として我々も入れて戦ってきたわけでありますが、同時に、介護離職ゼロに向かって、介護職員の処遇改善、これも今までもやってまいりましたけれども、同時にやっていかなければならないというものも入っていたわけであります。当然我々もそう思っておりますし、まだまだ介護職員の方々の処遇というものは十分でない、そんな意識があります。今回、報酬改定もございますから、そちらの方もどうあるべきなのか、我々も今いろいろと考えておるわけであります。

 しかし、介護だけではないですね。つまり、介護保険の世界だけではなくて、今障害児のお話をさせていただきましたが、障害の福祉の世界で働く、そういう職員の方々もおられるんですね。今まで大体、介護保険の介護職の方々の処遇改善をしてくると、介護福祉で働く方々、この方々の、職員の方々の処遇改善も一緒にやってきた、そういう歴史があります。これは書いていないんですね。実は二兆円パッケージの中にも入っていないんです。

 これは確かに、消費税を使うとなれば、消費税は高齢者三経費、それから、あと少子化対策、こういうものに使う、こういうような話になっておりますから、なかなか医療、介護、年金、少子化対策以外には使えないということで、これを障害福祉には使えないというのはよくわかるんです。ですから、パッケージの外にはなってしまうのかもわかりませんけれども、これだけ置いていくというのはやはり問題があると思いますので、障害福祉の場で働く皆様方も、同じように処遇改善をしっかりとしていただきたいというふうに思います。

 それと、あわせて、このパッケージの中に入っていないのは、病児・病後児保育、これもまだまだ十分に整備されておりません。お子さんに熱が出た、すると連絡が入ってきて、熱があるのに、そのまま保育所にお子さんにいていただくと、風邪なんかがうつっちゃうと大変ですから、御自宅に引き取ってくださいという話になる。しかし、お父さん、お母さんは仕事がありますからということで、やはり病児保育なんかを整備していかないと安心して働けない、お子さんに対して、安心してしっかりと子育てができないという話になってまいります。こちらの整備もしていただきたい。

 あわせて、医療的ケアが必要なお子さん、これに関しても、今この支援ということで大体二百九十カ所ぐらいあるらしいんですけれども、全体で対象人数が三百三人ぐらいしかないというんですね。ただ、推計すると、全国に、これは推計ですからそれが正しいかどうかわかりませんが、一万九千人ぐらい医療的ケアが必要なお子さん方がおられるというんですね。やはり全ての子供たちが幸せな社会をつくろうと思うと、これにも対応していかなきゃならないと思います。

 つまり、なかなか二兆円のパッケージには入ってこないのかもわかりませんけれども、その外かもわかりませんが、絶対にこれを忘れちゃいけないという部分でありますけれども、これに関してどのようにお考えなのか、お聞かせいただきたいと思います。

茂木国務大臣 我々は、どういう立場にあっても、誰でもが活躍できるような社会をつくっていきたい、そして、今の社会保障制度もそれにあわせて全世代型に変えていく、こういった観点から、十二月に政策パッケージをまとめてまいりますが、その中心は、教育の無償化、幼児教育、高等教育、さらにはリカレント教育を初めとする専門教育の問題、そして介護、そしてまた保育、これは受け皿だけではなくて、人材も含めて大きな課題を解決していきたい、こんなふうに考えております。

 そういったことを中心に二兆円のパッケージについては考えますが、冒頭申し上げたように、どういう立場にあっても活躍できる社会をつくっていく、こういった観点から、田村先生から御指摘いただいた点につきましても、パッケージの内側か外側かは別にして、しっかり検討してまいりたいと考えております。

安倍内閣総理大臣 基本的には大臣から答弁させていただいたとおりでございますが、例えば介護保険については、介護保険がスタートするとき、私もちょうど部会長だったんですが、あのとき、八代英太先生が、介護保険ということで、高齢者の介護はあるだろうけれども、障害者の介護、働いている人たちは大体同じような介護をしているのに、そことの切り分けはどうするんだということで、大変な議論をしたことがございます。

 当然、あのときの基本的な考え方もあるわけでございますから、しっかりと、そういうところでそういう方々が置き去りにされるようなことがないように、しっかりと議論を進めていきたい、また、党の皆様とよく相談していきたい、このように思っております。

田村(憲)委員 ありがとうございます。

 ぜひとも、こういうようなパッケージの外の部分も充実をいただきますようにお願いいたしたいと思います。

 よく野党の皆様方とも議論を、実はこの幼児教育の無償化、させていただく機会があるんですが、よく言われますのが、無償化はわかる、だけれども、そもそも待機児童が解消していないじゃないか、これを解消するのがまず初めだろう、こういう御意見をいただくんですね。今もそういう声がありました。実は、党内でもそういう御意見もあったのも事実であります。

 今回、待機児童三十二万人、これを前倒しでやることによって待機児童解消をしっかりやって、それと並行しながら無償化も進めていくんだというのが政府の考え方だというふうに思います。

 ただ、その三十二万人という数字も、これも正しいのかどうなのか、こういう議論もあるんですね。

 私自身は、実は今まで、待機児童の計算の仕方、各自治体からの積み上げでやってきた、これはだめだとずっと言い続けてきたんです。私が大臣のときにも変えられなかった。でも、その前の小宮山大臣のときに私は言っていたんですね。私が大臣のときに変えられなかったのでこれは申しわけなかったんですが、今度、変えていただきました。

 マクロの数字からこれを引き出していただいて、これぐらいやはり子供の数がいるんだから、将来、利用率、女性の就業率を考えるとこれぐらいの数字になるな、これは私は非常に画期的な話だと思います。かなりこの機械的に計算した数字では正しい数字が出てきていると思います。

 しかし、これももっと早くやれという意見もあるんですが、これも物理的な限界があるんですね。というのは、金額だけじゃありません、保育士を確保しなきゃいけない。

 処遇改善すればいいじゃないかと言われるんですが、しかし、連絡帳でありますとか、保育日誌でありますとか、それから保育経過観察記録、こういうものを日々つけているんです。こういう事務的なものも、もっとICT化していかないと。

 それから、やはりちっちゃいお子さんが多いので、お父さん、お母さんも心配ですから、いろいろなことを保育士さんにお聞きになったり、場合によっては、心配で、時には強いことを言ったりなんかされる。そういうことに対してのストレスも、保育士さんはありますから。

 一回結婚でやめちゃったりなんかしますと、もう戻ってこられない。ですから、結果的には、潜在保育士はたくさんおられるんですけれども、現場に復帰いただけない。こういう状況ですから、ただ単に給料を上げただけでは御復帰いただけないという現状があるのも事実。

 そして、都会は土地がありませんから、これは探すだけでも大変でございます。

 私も、大臣をやっていて、それまで大体二万五千から三万ぐらいの保育の人数の確保が毎年限界だったんですが、十万人までふやしました。しかし、十万人が限度なんですね。ですから、最大限やって十万人、三年で三十二万人、本当にこれは目いっぱいの数字だと思います。ですから、これはもう一生懸命やっていただきながら、一方で幼児教育の無償化も進めていくというのは、これはいたし方がないと思います。

 ただ、ここで一つ抜けているのは、東京圏だけ見ても、一年間に十代、二十代で十一万人、人口が流入増なんです。ですから、つくっても、また新しく十一万人入ってこられて、男女が知り合われて結婚されて、子供が生まれる。これはいいことなんですよ、いいことなんですけれども、将来、この三十二万人が仮にうまく確保できて、数字の上ではうまく整合性がとれているように見えても、人の移動によって、地方の保育所があいていって、東京近辺だけはどんどんつくらなきゃいけない。

 全国じゅうから若者を吸い上げ切って、その後は、今度はどんどん保育所があいていくという問題が出てくると考えると、地方創生で若い人たちに地方に残っていただく、これはそもそも地方創生の一番のもとの考え方ですから。これによって、地方も元気が出て活性化する。そして、都心部、東京等々都会の待機児童の解消にも役立っていく。

 私、この車の両輪がうまく回らないと待機児童の解消というのはなかなか難しいという認識なんですけれども、これに関してはどのようにお考えですか。

安倍内閣総理大臣 まず、最初に御指摘のあった待機児童の解消については、安倍内閣の最重要課題でありまして、受け皿については、本年六月に子育て安心プランを策定しましたが、今般、さらにこれを前倒しして、二〇二〇年度までに、御指摘があったように、三十二万人分の保育の受け皿を整備を進めることを決断したところであります。

 政権発足以来、二〇一三年には待機児童解消加速化プランを策定しまして、保育の受け皿整備に取り組んできました。二〇一七年度末までの五年間で約五十九万人分の受け皿が拡大できる見込みでありまして、やれることは全てやるということで取り組んでおります。

 つまり、私どもとしては、まずは保育の受け皿づくりを先行させているのは事実でございます。これを五十九万人分。そして、五十九万人分と三十二万人、これはちょっと一部重なっておりますが、さらに三十二万人分というのは、来年度予算も含めてこれはやっていくわけでありまして、その先に幼児教育の無償化というのは、一九年に我々が消費税引き上げを行った際に、この使い道を変えて、そこで無償化がスタートする。無償化する前に、我々は既にこれを進めていくし、それをさらに強化しているということはまずお話をしておきたい、こう思っております。

 そして、待機児童は都市部に多いとされることを踏まえて、地方創生こそ解決策という委員の御指摘は、これは非常に正鵠を射ているところもある、こう思っております。今後とも、地方における、若い世代にとって魅力ある仕事を地方において創出するとともに、地方創生への新しい人の流れをつくっていくことが極めて重要だろうと思っております。

 例えば、多分、委員の地元の松阪と私の下関は、いわばそういう意味においては待機児童等についても余裕ある対策を打っているわけでございますが、しかし、そこからどんどんいわば都市部に流出していけば、これはいわば当初のもくろみとは違ってくるということになってくるということもあるんだろうという意味においては、大変地方創生は重要だ、このように考えているところでございます。

田村(憲)委員 もう本当に、わかっていただいてありがたいと思います。

 地方創生と、それから保育所をある程度整備していく、この両輪がうまく回らないと、この待機児童の問題は私は解決していかないという認識でありますし、そもそも地方創生がうまくいかなければ、地方は、私の地元の津や松阪もそうなんですけれども、もうこれは将来がないわけでありますから、この少子化対策、これは地方創生こそがその肝にあるということで、内閣を挙げてこれからもこれを進めていただきたい、よろしくお願いをいたしたいと思います。

 一方で、少子化対策は、今回の二兆円パッケージだけでは、先ほど、なかなかこれだけでは解決しないというふうに申し上げました。日本の国の子供たちに使っている費用というものは、これはGDPで比べても非常に低いんですね。

 これは、パネルがここにありますけれども、二〇一一年、ちょっと昔でありますが、家族関係社会支出の対GDP比というのがあります。これを見ていただきますと、フランス、イギリス。フランスが二・八五%、これは出生率二・〇一なんですね。イギリスがGDP比率三・七八%、出生率は一・九二あるんです。

 それで、スウェーデンは載っていませんが、スウェーデンは、この家族関係社会支出が三・四六%あって、やはり出生率が一・九一ということを考えれば、いかに日本の一・三六、これは今般のパッケージで上がると思います、若干上がりますけれども、これはフランスやイギリスには到底及ばないという状況。二〇一一年の出生率は一・四三という数字でございました。相関関係が見えるわけでございます。またまたこの予算を使っていかなければなりません。

 あわせて、これだけではなくて、公立学校の施設整備費、これも今厳しいんですね。小学校なんか、なかなかエアコンも入らない、トイレも洋式にかわらないという話がある。大学なんかも、もう高等教育、これは強化だって言っているんですけれども、大学がもう本当にひどい状況だというようなこともあるわけであります。

 こういうことを考えると、まだまだこういうところに予算をしっかり使っていかなきゃならない、一方で財政再建もしなきゃならない、大変なわけではありますけれども、この数字を見ていただいて、やはり、これから財源をしっかりと見つけていただきながら、ますます子供に対して支出をしていかなきゃならぬなと私は思うわけでありますけれども、いかがでございますか。

安倍内閣総理大臣 いわば量的拡大と質的拡大というのがあるんだろう、こう思います。

 幼児教育、保育、子育て支援の質と量の充実を図るために一兆円超え程度の税源が必要とされておりまして、そのうち消費税率が一〇%に引き上げられたときに実施することとしておりました〇・七兆円のメニューについては、消費税率が八%に据え置かれる中にあっても、子ども・子育て支援新体制が施行される平成二十七年度から全ての事項を実施してまいりました。

 さらに、消費税財源以外の財源により実施するとされております、さらなる質の向上を実施するための〇・三兆円のメニューについては、平成二十九年度において、保育園等の職員給与の改善などメニューの一部を実施したところでございます。

 〇・三兆円メニューについては、骨太の方針二〇一七において、子ども・子育て支援のさらなる質の向上を図るために、消費税分以外も含め、適切に財源を確保していくとされておりまして、こうした方針に基づいて、各年度の予算編成過程において引き続き安定的な財源確保に努めてまいりたい、このように思います。

田村(憲)委員 今、あえて総理からおっしゃっていただきました。

 消費税の中で、もともと少子化対策ということで〇・七兆円、七千億円、その中に内訳がありました。ただ、そもそも少子化対策という意味では一兆円強のパッケージだったんです。ですから、三千億円強、まだ消費税外の中にあった。今回、この二兆円パッケージの中にもそれはほとんど入っていないという状況です。

 もちろん、その三千億円強の中で保育士の皆さんの処遇改善はもう先取りをしている部分が幾つかありますから、それももう三千億円弱になっているのかもわかりませんが、まだまだこれは財源を確保しないとやっていけないわけでありまして、我々厚生労働関係の議員からしてみれば、こちらの方が、実は、二兆円の幼児教育の無償化も大事だけれども、保育の質を上げていく方が先なんじゃないのかなという声もあるのは事実なんですね。

 だけれども、今回は、我々はこれを公約に戦いましたから、だから、幼児教育の無償化も高等教育の支援も必要でありますから、その上でしっかり財源を見つけてやっていかなきゃなりませんし、あわせて公立学校の施設整備、これも本当に厳しい中で予算を切られちゃっているわけでありますから、こういうものに関しても、まさに子供たちが学ぶ場所でありますので、しっかりと予算を確保していかなきゃならぬ。

 財政再建をしなきゃいけない、それと同時にこれをやらなきゃならないんですから、やはり税収を伸ばさなきゃいけない、どこかに財源を見つけなきゃならない。難しいことではありますけれども、その至難の道を、総理、ぜひとも、細い道かもわかりませんが、渡り切っていただかなければ日本の国がもたないわけでありますから、よろしくお願いいたしたいというふうに思います。

 さて、高等教育の話を今いたしましたが、高等教育に関しても、やはり所得の低い御家庭に関しては、これは財政支援をして、無償化、生活支援みたいなものも含めてやっていこうじゃないかというような話であるようでございます。

 高等教育の範囲、なかなかこれは余り議論になっていないんですよね。何か大学だけのようなイメージもするんですが、この高等教育の範囲というのはどういうような範囲であるのかというのを明確にお聞かせいただきたい。

 それから、これをやっているときにやはりいつも議論に出るのが、大学という話になるんですが、成績を問わないというのはいかがなものだろうと。

 誰でもいいのか。要するに、そもそも大学に行くこと自体がいかがであろうというような成績のお子さんがいるかもわからない。だけれども、それが、今、大学がどんどんこれから過剰になってきますから、どんどん、偏差値を下げてという言い方がいいのかどうかわかりませんが、入りやすくなってくるということがあるのは事実だと思います。

 そんな中で、本当に学ぶ意欲があって一定の能力がある子たちをしっかり支援するのは、これは私は重要だと思いますけれども、そうじゃない場合は問題があるんじゃないかと言われる方々がおられるのも事実です。ここに関してどのようにお考えになられておられるか、ぜひともお聞かせをいただきたいと思います。

茂木国務大臣 まず、高等教育、どんなに貧しい家庭に育っても、意欲があれば進学する機会を与えたい、その範囲につきましては、大学、それから短期大学、さらには高等専門学校、専門学校、こういったものを考えております。

 そして、成績は見ないのかという話ですけれども、高校のときの成績と大学等に入学してからの成績というのはあると思っておりまして、高校だけの成績で見ると必ずしも芳しくなくても、その後、専門学校や大学に行ってしっかり頑張る子供もいるわけでありまして、門戸はできるだけ閉ざしたくないな、そんなふうに思っております。実際、専門学校を卒業して世界的に活躍している料理のシェフとか、さらにはお菓子のパティシエ、こういった方もたくさんいるわけであります。

 一方、大学等に進んで、きちんと意欲を持って勉強しているか、これにつきましては、国費で支援をしていくという以上、しっかり成績をおさめているか、このことは入学した後、見させていただきたい、このように考えております。

田村(憲)委員 今、茂木大臣からお答えいただきました。

 確かに、大学と専修学校、専門学校とは違うと思いますね。それは学問的な能力だけで、パティシエやいろいろなものに関して、それに対する意欲とは別であろうと思います。一方で、大学の場合は、基本的に勉学ということになろうと思いますから、本来、一定の学力というものが私は条件になるとは思うんです。

 しかし、なるべく門戸は広げながら、その後の頑張りをしっかり評価しようということでありますから、どうかここも、国民の皆様方の評価にたえ得るような、そんな制度をおつくりいただいて。

 何か、自民党というか政府、自公政権が、いいことをやろうと思って、国民の皆様方に喜んでいただけることをやろうと思ってスタートしたんだけれども、やってみたら、何かこれはやはり問題があるねということがたまにあるじゃないですか、よくとは言いませんけれども。ですから、そういうことが起こらないように、せっかく肝いりの二兆円のパッケージのもとで、これは企業からも御協力をいただきながら二兆円のパッケージを進めていくわけでありますから、ぜひともそういう制度をしっかりとつくっていただきたいというふうにお願いをいたしたいと思います。

 残りあと五分になってまいりました。最後になってくると思いますが、医療の話を少しばかりお話しさせていただきたいと思います。

 薬価差の問題がずっと議論になっておりまして、毎年薬価改定をすべきではないかという議論の中で、今、いろいろな制度設計をつくってきております。

 薬価差、つまり薬が高いと、それは患者の方々の負担にはね返ってまいりますから、やはりそこは適正な価格にするということは、私はこれは重要だと思っております。

 しかし一方で、薬価差益というのがどこに入っているかということを考えますと、これは製薬メーカーに入っているわけじゃないんですよね。これは医療機関の収入になっているわけであります。大体、私も経験上、薬価改定、二年に一回、診療報酬改定をやりますと、一千二百億とか一千三百億ぐらい、必ず同じようなオーダーが出てくる。これは、逆に言うと、それぐらいの収入が入らないと医療機関が回らないんじゃないのかなというふうに思うわけなんです。

 そして、医療経済実態調査が出てまいりますと、病院は、収支差、もう本当にマイナスみたいな数字が出てきているわけなんですね。つまり、それを入れても、もちろんこれは公立病院もあれば民間の病院もありますから、ただ、民間の病院だけとってみてもそんなに収支差が高いわけでもないわけでありますから、そうなってくると、毎年薬価改定で急激な改革をやると、今、医療というのは積み木細工の上で何とか成り立っているんだと思うんですね。一つ積み木を外しちゃってがくんと落ちちゃうと、がたがたがたがたと崩れてしまう、そういうおそれがあるなと心配をいたしております。

 ですから、毎年薬価改定自体は、これはやはり、先ほど申し上げたとおり、国民の皆様方の負担というものを適正にしていくという意味では必要だと思いますが、ただ一方で、急激な大改革をやっちゃいますと、これは大変なことになるということで、今、議論の中で、どれぐらい薬価差があるか、どれぐらいの乖離率があるか、乖離率という使い方をしておりますけれども、これによってこれから薬価を改定するものを決めていこうではないかというようなお話をされておられるようであります。

 これはもう、今お話をさせていただいたこの内容に対する御認識を、中身は聞いても、これから審議会の方でやっていただくという話、中医協の方でやっていただくという話になると思いますから、そういうのじゃなくて、私の認識として、今、薬価差というものがどういう形で医療の中で回って医療というものが成り立っているか、そして今の医療の現状がどのような現状かということに関して、総理の御認識をお聞かせいただければありがたいと思います。

安倍内閣総理大臣 これは突然の御質問でございましたが、いわば薬価差の認識についてであります。

 かつては、薬価が医療費に占める比率が日本は非常に高かったんです。それが大分、欧米並みに下がってはきつつあるんだろう、こう思います。

 そこで、薬価差については、まさにこれは病院のさまざまな経費等に充てられていたのも事実だろうと思います。しかし、その中で、院外処方もずっとふやしていく中において、いわば薬価差における病院側あるいはお医者さん側が得る利益というのは、大分縮小はしてきているということは認識しております。

 と同時に、毎年改定において、毎年改定というのは、合理的な理由は当然あるわけでございます。今、オプジーボ等の大変高いお薬が登場する中において、これは当初は一部のメラノーマ等だけであったものが肺がんにも適応されるということで、相当これが保険医療を圧迫したのも事実でありまして、そういう中において、実態を見ながら改定を毎年毎年していった方がいいのではないかという声もあるわけでございます。

 しかし、認識として、田村委員が御指摘をされた、大変この分野において専門的に、現場の声も吸い上げながら、知識を持っておられる田村委員のお話も傾聴に値するな、このように考えております。

田村(憲)委員 どうもありがとうございました。

河村委員長 この際、菅原一秀君から関連質疑の申し出があります。田村君の持ち時間の範囲内でこれを許します。菅原一秀君。

菅原委員 自民党の菅原一秀でございます。

 一時間の質問時間をいただきましたが、十一時五十四分から天気予報に入りますので、それまでまず一生懸命質問をし、その後も十二時十分まで質問をさせていただきます。

 まず、私の方からは、森友・加計問題について質問をいたします。

 十月二十二日の総選挙は、御案内のとおり、与党が三百十三議席ということで、大きな勝利をおさめることができました。この五年間の安倍政権のアベノミクスへの一定の評価、また地球儀を俯瞰する外交、そして北朝鮮問題や自然災害への対応など、いわば国民が安定した政権を求めた、こういうことの証左であると思っております。

 しかしながら、選挙中も私も地元から言われたのはこのモリカケ問題でありまして、何となく喉の奥に刺さった骨のような、そうした状況であります。選挙が終わったから、あるいは選挙に勝ったからよしとするのではなく、選挙に勝ったからこそ、しっかりと説明責任を果たす、総理みずからがその先頭に立って、言われる謙虚さというものを言葉だけではなく形にする、このことがまず大事だと思っております。

 まず、森友問題でありますが、二十二日に、森友学園への国有地の売却に関する会計検査院の報告書が出されました。この報告書の中には、例えば地中ごみの撤去費用約八億二千万円の積算の根拠や、あるいはごみの深さの三・八メートルの妥当性、あるいはごみの混入率四七・一%について、こうした部分について、検査院の方からは、仮説を立てて、それぞれ妥当性についての指摘があったわけであります。また、この検査を行う上で文書管理が適切であったのかどうか、こういったことにも言及があったわけであります。

 そこで、麻生財務大臣にお伺いしますが、いわば会計検査院というのは、厳格な独立をした機関であります。この検査院からの報告について財務省としてどのようにお受け取りいただいているか、お聞かせをいただきたいと思います。

麻生国務大臣 会計検査院の報告は、これは国会からの要請に基づいて独立した行政機関が実施したものでありまして、その指摘につきましては重く受けとめなければならないのは当然と考えております。

 今回の会計検査院の報告やこれまでの議論も踏まえまして、国有財産の管理、処分につきまして、公共性が高い随意契約は、売却価格を全て公表するなどの手続を明確にすること、売却価格の客観性を確保するため、特殊な事案につきましては、第三者によるいわゆる算定、確認を行うこと、そして、適切かつ十分な文書管理の徹底を図ることという方針で見直しを行ってまいりたいと考えております。

菅原委員 今大臣から、公共随契の価格の公表や第三者機関による客観的なこういうチェックをするという話があったわけですが、とするならば、もっと早くやってほしかったなというのが実直な感想であります。このことを奇貨として、ぜひ徹底した取り組みをお願いしたい。

 この森友問題、国民の関心の高いものの一つに、約一・三億円の売却価格の問題があると思っております。その一億三千万が適正であったのかどうか。そして、その鍵は、国交省、いわゆる大阪航空局が見積もった地中のごみの撤去費用八億二千万が妥当だったのかどうか。

 もう一つの鍵は、籠池夫妻が今逮捕されておりますが、その直前の四月の末から八月にかけまして、報道でいわゆる音声データというのが出ているんですね。この音声データをもとに、近畿財務局の職員と森友側がいわば値段の交渉をしていたのではないか、こういう報道がされているんです。

 その報道によりますと、小学校を建てるための土地の売却をゼロ円に近い形で売ってほしい、籠池氏はこういうふうに迫っているわけであります。その近畿財務局の職員は、一億三千万がラインとして、それを下回ることはできない、こういうふうに説明をしているというふうに報道がされています。籠池氏は逮捕の直前にインタビューで、森友学園が払えるのは一億六千万までといったことを国に伝えたということも言っているんですね。もしこの報道が本当だとすれば、国は森友と事前に価格の交渉をしていたということになるんじゃないでしょうか。

 この音声データ、実は四カ月前に出て、四カ月間、いまだに政府から何の説明もない。おかしい。大阪地検の捜査が進行中でございますから、慎重を期すということも理解できなくはないんですが、こういう対応のおくれが結果として、今日、国民の皆様に不信感を招いている、こう言わざるを得ない。

 ぜひ、この音声データについて確認をされたのかどうか、麻生大臣、お聞かせください。

麻生国務大臣 従来から、これは菅原先生、この委員会等々にてお答えをさせていただいていますように、森友学園への国有地の売却に関する事実関係、これにつきましては現在大阪地検において捜査が行われておりますので、捜査に影響を与えかねないということから、捜査そのものに関することについての答弁につきましては慎重に対応させていただきたいと考えております。

 しかし、この件に関しましては、総理も今国会で質問があれば丁寧に説明する旨発言をされておりますので、事実関係等につきましては可能な限りお答えをしていきたいと考えております。

 したがって、事務方において確認作業を行わせておりますので、確認の結果というものを、答弁を事務方の方からさせていただければと存じます。よろしくお願いを申し上げます。

太田政府参考人 お答えを申し上げます。

 御指摘の、財務局職員の発言に関する音声データは、四十五分程度で、全体が公開をされておりまして、昨年、平成二十八年五月半ばごろのものと思われますが、その内容に関して近畿財務局の職員に事実関係の確認を行った結果は以下のとおりでございます。

 まず、国として有益費の一億三千万円を支払っている以上、それを下回る形での売却はこの土地に関する収支がマイナスになるということを意味し、国としてそのような対応をとることは考えられないという趣旨の話をしてございます。

 また、平成二十八年三月に新たな埋設物が発見をされた後、森友学園側とさまざまなやりとりを行っており、具体的な金額についての記憶はありませんが、大阪府の認可との関係で借り入れの金額に限度があることから、買う場合の金額にも限度があるとの話は森友学園側からはありました。

 いずれにいたしましても、先方とはさまざまなやりとりが行われましたが、不動産鑑定評価額が出る前に先方から買い受け希望価格が提示されたという認識はございませんし、当方から売却価格を提示したということもございません。

菅原委員 正直言って、もっと早く言ってよという感じですよね。

 今の説明を聞けば、森友と近畿財務局の職員がこの価格についての交渉をしていない、していないけれどもそうした言及がそれぞれあったということであります。

 ここでちょっと話をかえますけれども、先週のやはり二十二日、森友学園から提出された設置趣意書、これに関して神戸の大学の教授から情報開示請求が出ていまして、それに対して近畿財務局から開示をされたわけでありますが、この中には、五月九日、朝日新聞のインタビューで籠池氏が、設置趣意書に書かれた小学校の名前は安倍晋三記念小学校、こういうふうに言っているんですね。ところが、この設置趣意書には実際には開成小学校と。開成に小学校なんかあったのかなと思ったんですが。この朝日新聞では、籠池氏のこの発言、安倍晋三記念小学校とそのまま載せているんです。

 言ってみれば、フェークな発言をそのまま載せるとフェークニュースになるというような典型であるわけでありまして、これは、籠池氏が自分は総理と近いんだということを言いたかった。しかしながら、ここにあらわれているように、籠池氏は平気でうそをついて、総理の名前を一方的に勝手に使って交渉を有利に進めようとしたということがうかがえるわけであります。

 しかしながら、一連のこの半年間の議論を聞いていると、野党の方々は、このフェークな発言に基づいて質問をしたり、そういったことが結局間違った方向に国民をミスリードしてきた。これはやはり猛省してほしいと思いますね。

 この問題は、籠池氏が今捜査中で司直の手に委ねられていますから、今後またいろいろなことが、全容が明らかになってくるのではないかな、こう思っております。

 音声データの方に話を戻しますが、先ほど財務省が、この音声データのやりとりがあったということでありますけれども、理財局長に聞きたいんですけれども、土地の売却価格を森友側が求めた金額にするために地中のごみ撤去費用を見積もったんじゃないですか。

 つまり、五月末に、不動産鑑定士が鑑定評価として九億五千六百万というのが出ているんです。先ほどの話によると、森友側に提示した、実際に最初に提示したんじゃなくて、一億三千を下らない云々ということを言ったということなんですが、そのことによって結局ごみの撤去費用を算出したんじゃないですか。そこをはっきりさせてほしい。

太田政府参考人 お答えいたします。

 今ほど御指摘をいただいた売却価格の決定までの経緯について、時系列に従って順を追って申し上げます。

 まず、三月十一日に新たな地下埋設物が発見されたという連絡があった後に、先方から土地を買いたいという要請があって、三月三十日に国が売却するということを決定いたしました。

 その上で、まず先に、同日、三月三十日に大阪航空局に地下埋設物の撤去費用の見積もりを依頼し、当該費用の見積額を四月十四日に大阪航空局から受領いたしました。

 次に、その後に、四月十四日の後、四月二十二日に、複数の業者からの選定を経て、独立した立場で鑑定を行う不動産鑑定士に更地価格の鑑定を依頼し、五月三十一日に鑑定評価額を受領し、それを受け、六月一日に先方に売却価格を提示している、そういうことでございます。

菅原委員 今の答弁だと、ごみの撤去費用、その額が、その後にこの不動産鑑定評価が出たということは、時系列的に見ると、その金額が先に決まっていて、その評価額があって、マイナスして八・二億というんじゃなくて、後で不動産評価が出てきたということの理解でいいわけですね。

 ということは、今まで言われていた議論、ここでまず時系列で考えると、ある意味の整理ができたんだと思うんです。

 ただ、この音声データ、私もメモを見ましたけれども、結局、その金額のやりとりがあるんじゃないかと見られるわけです。つまり、三月に当時の理財局長だった佐川前理財局長がこの答弁で、価格を提示したこともないし、先方から幾らで買いたいといったそういう希望も聞いていない、こういう答弁をしているんですね。

 ところが、このデータを見れば、結局、虚偽答弁だったんじゃないでしょうかね。これは誰が答えるのかな。局長。

太田政府参考人 お答えを申し上げます。ちょっとお時間をいただきたいと思います。

 本件土地売却につきましては、相手方において契約金額を見積もることが難しいと判断をして、見積もり合わせ、つまり価格の交渉をすることなく、国の方で不動産鑑定評価に基づいて予決令上のいわゆる予定価格を作成した上で、その価格を相手に通知し、相手方がその価格を受け入れればその価格で売却価格として契約が成立する。逆に言えば、相手方がその価格を受け入れなければ契約が不成立となる。そういうことであって、森友学園への土地売却は、こういう制度上認められた手続にのっとり行われたものでございます。

 それで、佐川前理財局長の答弁は、以上のような手続を踏まえて、更地の不動産鑑定の結果の九億五千六百万が出ました五月末より前の段階で、この鑑定評価額から埋設物の撤去費用の約八・二億円を差し引いた予定価格、つまり売却価格の一億三千四百万ということを提示することはできず、先方との価格の交渉が行われたこともないということを申し上げたものであります。

 これまで報道においてよく引用されております三月十五日の衆議院財政金融委員会での佐川前局長の答弁は、答弁の最後の部分の、議事録で申し上げますと六十字程度の部分が取り上げられておりますが、議事録に残されている二百三十字程度の全体を読んでいただければ、全文を読み上げるとちょっと時間をいただくことになりますのでそれは差し控えますが、今申し上げた趣旨がわかる答弁となってございます。

 したがいまして、近畿財務局職員に確認した事実関係について申し上げたとおり、先方とは金額を含めさまざまなやりとりがありまして、当方からは、有益費一億三千万、もう少し細かい数字まで申し上げれば一億三千二百万を下回る形での売却は考えられないという考え方を申し上げており、答弁の引用のされ方の問題もあろうとは思いますが、金額についての一切のやりとりがなかったかのように受け取られるのは申しわけないと思っております。(菅原委員「答弁が長い」と呼ぶ)済みません。

 ただ、答弁の意図するところは今申し上げたようなことでございます。

菅原委員 虚偽答弁かどうかというようなことが疑われるということが問題であるんですね。

 そのテープを文章で見ると、結局、その近畿財務局の人物、職員が、幾らで売ると金額は提示していない。だけれども、この籠池夫妻が執拗に、極めて威圧的な言い方で、もうゼロに近い形で売ってほしい、こういうふうに迫っている。

 確かに、そういう問い詰めに、普通の人であれば、なかなか気押されてしまって、非常にセンシティブになってしまう。けれども、その誘導尋問に乗ったかどうかも含めて、結局、一億三千万より下回らないで売っちゃっているわけですよ。これはあってはならない。これは本当に不適切であって、厳に戒めなければいけない、こう思っております。

 この音声テープの報道、確認結果について、会計検査院の報告書の「所見」を見ますと、国有地の売却等について、必ずしも適切とは認められない事態や、より慎重な調査検討が必要であったと認められる事態等が見受けられたという報告が出ています。かつまた、地中のごみの深さや、ごみの処分の単価の内容を確認できる資料がなく、会計検査院みずからが十分な検証を行えない状況というふうに書いているんですね。

 ということは、大阪航空局の試算そのものを会計検査院は根拠不十分というふうに断定しているわけです。その会計検査院自体が、結局、資料やデータがないから十分な検証が行えないという、ある意味ではパラドックスに陥っている。

 私は、このことの方が政府は重く受けとめなければいけないんだと思うんですよ。つまり、会計検査院という独立した機関がデータやあるいは資料がないから検証できない、ある意味ではこれはパラドックスなんだけれども、ここがやはり、起因したということは、結局、資料やデータがない、これが今日までの半年間の、国民にとってよくわからないというこの森友の問題の一つの要因にもなっているわけであります。

 最後に、総理にこの問題をお聞きします。

 これまでの審議を聞いていただいて、会計検査院の結果あるいは報告、そして、先ほど麻生財務大臣からもお話があったように、国有財産の売却業務の見直しを含めて、今後どういうふうにしていくのか、総理のお考えをお聞かせください。

安倍内閣総理大臣 今回の報告は、国会からの要請により、独立した行政機関である会計検査院によって実施されたものであり、政府としては、その指摘については真摯に受けとめなければならないと考えています。

 国有地は国民共有の財産であり、その売却に当たっては、国民の疑念を招くようなことがあってはなりません。今般の会計検査院の報告、さらにはこれまでの国会等での議論の中で厳しい御指摘があったことも踏まえ、私としても、国有財産の売却について、業務のあり方を見直すことが必要と考えています。

 先ほど財務大臣から答弁をいたしましたが、公共性が高い随意契約は、売却価格を全て公表するなど手続の明確化を図ること、売却価格の客観性を確保するため、財務省が提示したような特殊な事案については、第三者による算定、確認を行うこと、そして、適切かつ十分な文書管理の徹底を図ることという方針で財務省等にしっかり対応させることとしたいと思います。

菅原委員 今後、こういうような事案がもう二度と起こらないように、今の方針をきちっと明確に実行に移していただきたい、こう思っております。

 次に、加計問題についてお伺いをしたいと思います。

 この加計問題は、五月の十六日にNHKのニュースで出されて、翌十七日の朝日新聞の一面に出たわけであります。既に半年がたとうとしているわけでありますが、そもそも、この問題の根底には、獣医学部の新設の是非ということがあったわけであります。そして、地方創生につなげていくという視点があったんだと思うんです。

 ところが、この半年間の国会の論戦は、言った言わないということがずっと続いて、しかも、そのいろいろな議論の根底には、つまるところ、安倍総理と加計学園の理事長が友達だから何かあったんじゃないかということがこの根底にあるように思えるんですね。

 そうした中で、去る十四日に林文部科学大臣が、この加計学園における獣医学部の設置構想、設置審の答申を踏まえて認可を出す、こういうような重大な決断をされたわけであります。

 振り返ってみると、この国会の審議でもあったんですが、この五十二年間、獣医学部が一度も認可をされてこなかった。そういう意味では、今回、新たな歴史の一ページが開かれたんだと思うんですが、この半世紀の間、鳥インフルエンザ、BSE、口蹄疫、最近ではヒアリといったものがあって、獣医師そのものの求め、ニーズが高まってきている。

 しかも、ライフサイエンスの研究をめぐるイノベーションの最先端の現場では、結局、獣医師が採用できない、そういう悲痛な声があって、にもかかわらず、関係省庁はこの獣医学部の新設を認めてこなかった、五十二年間。

 しかも、昭和五十年以来、その大学、十六あるんですけれども、東側に十一固まっていて、西側、西日本に五つしかない。それで、定員が九百三十名、全部定員オーバーしている。

 こういう状況があって、こういう状況の中で、七月二十四日の集中審議でも参考人としておいでになった加戸さんですけれども、加戸元愛媛県知事、構造改革特区で十五連敗。十五連敗したら、普通諦めますよ。それでも、やはりこの今治に獣医学部が欲しい、必要だということで、いわゆる国家戦略特区のもとで再び挑戦をすることになったわけであります。

 しかし、その今治の事業主体、その背景には、結局、加計学園、総理とお友達だ、そういう存在がある。そうすると、どうしても国民の目はそっちに行ってしまうわけであります。

 総理、改めてお伺いしますが、本当に、この加計学園の案件で関係者に指示を出したり、あるいは、総理は国家戦略特区の議長でもあります、議長として、この制度のもとに獣医学部の新設といういわば加計学園の思いというものを取り上げさせた、こういったことは本当にないんでしょうか。

安倍内閣総理大臣 加計さんは、私が政治家になる前からの、加計さんとはずっと友人であったわけでございますが、しかし、彼は私の地位を利用して何かをなし遂げようとしたことはこの四十年間一度もなかったわけでございまして、加計さんからこの獣医学部の新設について相談や依頼があったことは一切ないわけであります。

 事実、第一次政権のときにおいては、これは加戸知事が述べておられるように、文科省に加戸知事が足を運んだところ、全くけんもほろろだったということをおっしゃっているわけでありますし、第二次安倍政権が発足してからも五回却下しているわけでございます。

 同時に、李下に冠を正さず、私の友人がかかわる話であり、国民の皆様から疑念の目が向けられることはもっともなことだと思います。

 そうした国民の厳しい目線をしっかりと踏まえた上で、改めて事実に基づいて丁寧にお話をさせていただいてきたところでございますが、国家戦略特区における獣医学部新設のプロセスは、規制改革項目の追加、事業者の選定のいずれについても、民間有識者が加わった特区諮問会議やワーキンググループが主導して適正に行われてきたわけであります。

 無論、私から個別具体的な指示は一切しておらず、さきの閉会中審査においても、担当大臣も、また前川前次官も、誰一人として私から本件について何らの指示も受けていないことは明らかになった、このように思います。

 また、節目節目で農水大臣また文科大臣も会議に出席するなど、関係大臣の間に異論がないことを確認し、合意の上で、関係法令に基づき実施してきたものと理解をしております。

 そして、そもそも国家戦略特区のプロセスは八田座長を初め民間有識者の皆さんが主導して進められておりますが、そうした民間の皆さんが私をそんたくすることなど到底考えられない、こう考えております。実際、今回の規制改革のプロセスにおいて、民間有識者の皆さんは、一点の曇りもない、総理から意向を示されたことは一切ないと明確に述べておられるところでございます。

菅原委員 今、総理から指示もしていない、証拠もない、確かに金銭の授受なんかも全くない、それはそれでわかるんです。

 では、なぜ内閣府はこの獣医学部の問題を、本来、全国的な規制緩和措置にするのではないかというのが普通の考え方なんです、そうじゃなくて、この国家戦略特区制度において実現しようとしたのか。四条件とともに、検討を指示したいわゆる「日本再興戦略」改訂二〇一五、そこの段階では特区で行うということにはなっていなかったはずなんですけれども、梶山大臣、お願いします。

梶山国務大臣 菅原委員の御質問にお答えをいたします。

 国家戦略特区制度においてなぜ獣医学部の設置を実現を図る必要があったのかという御質問であったと思います。

 国家戦略特区は、産業の国際競争力の強化等を図るため、地域を限定することで関係者の合意を得やすくし、長年実現できなかった岩盤規制改革をスピーディーに実現する仕組みであります。

 近年、創薬をめぐる国際競争が激化する中、創薬プロセスの基礎研究、応用研究と、人を対象とした臨床研究との間に行う、実験動物を用いた研究が重要となってきております。また、鳥インフルエンザなどの感染症が国際的に拡大する中、食品貿易を通じた感染症リスクが増大をしております。このように、獣医師に求められる役割は世界的に拡大をしてきております。

 その結果、具体的には以下の二つの大きな課題が発生をしております。

 近年、獣医師のニーズは、動物のための獣医師から、新薬開発で活躍する、人のための獣医師に拡大をしている。新薬開発を担う企業からは、動物を用いた研究ニーズの高まりに応え切れず、医薬品開発のおくれにつながっているとの悲痛な声が寄せられております。獣医学部の新設により、こうした分野に特化して人材を養成し、我が国の創薬産業の活性化を目指すことは喫緊の課題でもあります。

 もう一つ、鳥インフルエンザなどの越境感染症への懸念が高まっているということであります。こういった中、現場に駆けつける産業動物獣医師や公務員獣医師の役割は不可欠であります。しかし、広い範囲で獣医学部がない地域では、いざというときの体制が手薄となるという切実な不安を抱えております。越境感染症への防疫力を高めることが、加戸前愛媛県知事のお話にもあったとおり、切実な課題となっているということであります。

 このように、獣医師を取り巻く状況が大きく変化をし、新たなニーズに応える獣医学部の新設が喫緊の課題である一方、五十年にわたり実現できなかった岩盤規制でもあり、全国的措置として実施するには合意形成に時間を要するおそれがあるということであります。

 このため、まずは地域を限定することで関係者の合意を得やすくし、スピーディーに産業競争力の強化のための改革を実現する国家戦略特区で実現することとしたものであります。

菅原委員 国家戦略特区を使うその理由として、いわばエリアを特定する。先ほどお話ししたとおり、東日本、西日本でいえば、西日本には五つしか大学獣医学部がない、こういう現実もあるんだと思います。

 ただ、とするならば、事業者の選定においては、十五連敗、申しわけないけれども、今治市、構造改革特区で十五連敗した今治市は、内閣府がこの担当でもあったわけですけれども、内閣府にとって、今治市の構想を担う事業者として加計学園が今まで控えていて、結局、その加計学園が裏にあったのはわかっている、推測できたはずだ。言ってみれば、それこそ内閣府にとって加計ありきだったんじゃないですか。そこはどうですか。

村上政府参考人 お答え申し上げます。

 十五戦連敗というお話がございましたが、このうち五回目までには、提案書の中に加計学園の名前も入ってございます。そういう意味では、私どもとして、加計学園を今治市が想定しているであろうということは推測できる状況にございました。

 また、実際、二十八年九月には加計理事長は山本前大臣に、これは国会でも御説明しておりますが、今治市に提案していると来訪され、言及しているベースもございました。その際、山本前大臣からは、これはいずれにせよ法令上公募であるということをしっかりと言及させていただき、結果的にも、加計学園が制度上応募してこられたのは本年一月十日、その段階でありまして、それまで、内閣府としても、加計学園を前提に政策判断をしたことも、個別案件の状況について総理へ御説明したことも一切ない、こういう状況でございます。

菅原委員 山本前大臣が加計学園側と会っていた、しかし、そこは公募ということをはっきり言った。それは、そういうふうに事実としてあるんでしょう。

 では、大臣でなくて、内閣府の幹部職員、加計学園側と会ったという、あるいはその現場に行ったという事実はないですか。もし行ったとすれば、何のために行ったんですか。

村上政府参考人 お答え申し上げます。

 当時の担当に確認をいたしましたところ、加計学園関係者は、平成二十七年六月五日のワーキンググループで、恐らく有識者としての判断だろうと思いますが、提案者である今治市の判断で説明補助者として同席をされておられました。それから、同年八月六日には、今治市からの紹介で岡山理科大の現地にも訪問してございます。

 それ以降、際立ったコンタクトは特段ございませんでしたが、二十八年以降、九月七日に加計理事長が、先ほど説明したとおり、山本前大臣のところに来訪されたこと、九月十二日の国家戦略特区シンポジウムの際に同席をされていたこと、一月十二日の今治市分科会及び一月二十日の広島県・今治市の区域会議の際、直接お会いする機会があった、これはいずれも一般的な情報交換の範囲であり、規制改革、地方創生行政の通常業務の一環、こういうふうに理解しております。

菅原委員 今答弁で、八月六日という何か話だった。八月六日に幹部が加計へ行っているわけですよ。事前に行っているわけですよ。これというのは制度上問題はないんですか。確認します。

村上政府参考人 お答え申し上げます。

 閣議決定である特区基本方針において、必要な規制・制度改革を確実に実現していくために民間事業者等から意見聴取を行うというのは、これは閣議決定で決まってございます。

 特区事業の認定や事業者公募の前でも、事業者と意見交換や現地視察を行って現場ニーズを踏まえて対応するということは通常行われておりまして、例えば、加計学園だけでなく、他方の当事者であります京産大にも、十月の十七日のワーキンググループの出席、そのほかにも個別に来訪を受けてお会いしている。獣医学部以外でも、例えば秋田県仙北市で、国有林野の活用による農業で提案していた事業者を訪問し、認定前の段階でございますが、現地視察を行った例はある。こういった例はたくさんあるというふうに理解をしております。

菅原委員 京都産業大学も当時同じくエントリーをしていて、会見を私も聞きました。

 ただ、事前にそうやって事業予定者と会うということが、結局、国民からすると、その制度設計に希望者の意向がいわゆる盛り込まれるんじゃないか、そういうことであるし、この制度におけるPRが足りないですよ。

 これは、もっときちっとやらなきゃいかぬ。先ほど梶山大臣も、法律で厳格に公募手続をやる、やったという話がありました。

 しかし、そのオープンなプロセスに水を差すような文書が出てきたんですね。五月の十七日、朝日新聞が掲載した「総理の意向」と書いてある文書であります。

 「総理の意向」と書いてあるんですけれども、この朝日新聞の文書、お手元に資料があると思うんですが、六月に松野前文科大臣が省内でこの文書、二回調査をしたと思うんですが、二百万件ぐらいから出てきたこの文書と、この朝日新聞の記事は同じものと考えていいんでしょうか、文科省。

中川政府参考人 お答え申し上げます。

 御指摘の、大臣御確認事項に関する内閣の回答という文書に関してでございますが、本年六月十五日に結果を発表しました文部科学省による追加調査で存在が確認された文書は、報道された文書と比べまして、下線があるなど様式は異なりますが、文書の内容は同じであると確認しております。

菅原委員 今答弁にあったように、この朝日の記事とこの文科省の二百万から出てきた資料、これは内容は一緒だと。ところが、よく見てください。よく見ると、文科省で出てきた方は小見出しがあって、朝日の方は小見出しがない。微妙にこれは違うんです。

 でも、内容が一緒だとするならば、この朝日の下の方に、この文科省の真ん中の、内閣府の取り扱い、「「国家戦略特区諮問会議決定」という形にすれば、総理が議長なので、総理からの指示に見えるのではないか。」、これはすなわち総理からの指示がないということじゃないですか。ないということですよね。なのに、この上の方には「総理のご意向だと聞いている。」。一方で、「見えるのではないか。」。よくわからない。朝日新聞は、わざとこの下の方を隠したんでしょうかね。

 この文科省の文書にのっとって読むと、いろいろ私も考えをめぐらせたんですけれども、文科省は総理の意向があって困っているんじゃなくて、逆に、当時の文科省の現場が、総理の意向がなければ困る、あるいはあったらありがたい、そういう状況にあったんじゃないか、こんな勘ぐりも出てくるわけなんですね。

 これは文科省に聞きたいんですけれども、総理からの働きかけ、あったんですか。

義本政府参考人 お答えいたします。

 今回の獣医学部の新設につきましては、国家戦略特区を所管する内閣府を中心に段階的にそのプロセスを進めてきたところでございまして、国家戦略特区の枠組みの中で、関係法令に基づき、関係省庁の合意のもとで適切に進められたものと理解しておるところでございます。

 また、松野前文部科学大臣が七月二十四日の衆議院予算委員会で、総理、官邸から私に指示があったことはないと答弁されているように、獣医学部の設置に関しまして、総理や官邸から文部科学省に対し指示はなかったと認識しております。

菅原委員 前文科大臣も、そういう圧力や介入はない。現場もない。では、何でこの春に、文部科学事務次官という要職を退職した前川前次官、このことで、国会でも言っていましたけれども、行政がゆがめられた、こういうふうに発信あるいは喧伝しているわけですよね。

 本当に行政がゆがめられたのであれば、前川さんが現役時代にも、獣医学部の新設に抵抗するなり、あるいはそういう声があって、いわゆる本人が言うところの官邸からの意向を受けて進めている、でもそれは文科省内ではない、こういう理解でいいんですか、現場は。

義本政府参考人 お答えいたします。

 前川前事務次官は、七月二十四日の衆議院予算委員会におきまして、和泉補佐官から呼ばれて具体的に圧力があったというふうにお答えされておりますけれども、前川氏自身が国会において答弁されているところでは、前川氏自身は、当時の松野前大臣に対して和泉氏との面会について報告しなかったということでございます。

 また、前川前次官が主張されておられます当時の文部科学省内の省議、政務三役会議において、国家戦略特区による獣医学部の新設に関する議題を取り上げたことはございませんでした。

菅原委員 七月二十四日、当時、小野寺現大臣が質問されていて、私も目の前で見ていましたけれども、行政がゆがめられたと発したその前川さんが、省内的には大臣にも報告しない、政務三役あるいは省内の中にも報告、問題提起すらしていない。ということは、普通に考えれば本人の思い込み、こういうふうにも見えてくるわけです。

 今答弁の中にもありましたけれども、前回の集中審議の議事録を見ますと、前川前次官が和泉総理補佐官のオフィスに行ったときも、和泉補佐官からは加計学園という名称は一言も出てきませんでしたと本人が言っているんです。コンテクスト、いわゆる話の文脈からして加計学園のことを言っているんだと思ったとこれまた答弁をしているんですね。

 そうなると、普通に考えると、官邸の意思というのは前川さん自身の思い込みで、前川さんが行政がゆがめられたといってばんと机をたたいて辞職願を出したとするならば、これは侍官僚ですよ。しかし、実際におやめになった理由は何ですか。天下りの問題でみずからおやめになった。そして、やめた後に、行政がゆがめられたと言っている。

 これは、言ってみれば、この問題は、このストーリーだとすると、前川前次官の自作自演ともいうような立ち居振る舞いに我々が振り回された、振り回されている……(発言する者あり)

河村委員長 御静粛に。御静粛に願います。

菅原委員 こういうふうにも見えるわけであります。

 ぜひ、この件に関して、林文科大臣、御所見を伺いたいと思います。

林国務大臣 今回の獣医学部の新設につきましては、今お話のあったように、国家戦略特区を所管する内閣府を中心にそのプロセスが段階的に進められてきたところでございまして、国家戦略特区のプロセスの中で、関係法令に基づき、関係省庁の合意のもとで適切に進められてきております。

 この特区のプロセスの中で、学校法人加計学園の獣医学部設置の構想が先端ライフサイエンス研究の推進や地域の水際対策など新たなニーズに対応するものであることが確認され、設置認可の申請に至ったものであります。

 また、設置認可のプロセスにおいても、大学設置・学校法人審議会において専門的、学問的観点から公平公正に審査いただくとともに、これとは別に、学校法人加計学園の設置認可申請の内容が国家戦略特区のプロセスの中で認められた加計学園の構想に沿っていることも確認をしてきております。

 このように、国家戦略特区のプロセス、設置認可のプロセス、ともに適切に進められてきたものというふうに認識しております。

菅原委員 いろいろ議論がありました。ただ、私としてはそういう印象を持っているわけでありますし、この文書以外、何も出てきていないということを考えると、これはやはりもう一度冷静によく見なければいけないと思っております。

 四条件のことについて、もう一回確認します。

 最近、この四条件と同じ論点が設置審の中でもまた指摘をされているんですね。例えば四条件の二番目、新たなニーズの具体化といった要件がありますけれども、林大臣、なぜこの四条件、同じ議論が設置審で繰り返されているのか、この点、お願いいたします。

林国務大臣 獣医学部の新設については、国家戦略特別区域計画に認定されたことを受けて設置認可申請がなされたということでございます。

 四条件というのはその特区のプロセスの中で確認をされておられるということで、設置審の方は、申請された設置計画、これが国家戦略特区構想に合致しているかどうかについて審査する役割、権限を有しておりません。設置審では、大学等の設置等に係る認可の基準に基づきまして出された計画において、人材養成の目的が社会の要請を踏まえたものであるか、新設学部から卒業された卒業生の人材ニーズについて審査をしておる、こういうことでございます。

 設置審の人材需要に関する審査意見は、当初の申請書類に示されていた事業所アンケートの結果の分析が不十分で、三分野あって、それがまとめて出されていたということでございますので、三分野ごとにそれぞれ卒業後の進路の見通しが明確になっていないということで説明が不足しているということでございましたので、そういうことで意見が付されて、それは三分野ごとに出してきた、こういうことでございますから、いわゆる四項目、今御指摘のあったことの充足に対して疑義を呈したものではないということでございます。

菅原委員 国家戦略特区における四条件の議論、今の設置審の議論、非常に、ポイントは同じなんだけれども、いわば文部科学行政マターにおけるエキスパートがこのチェックをしているというようなことにおいては、今の人材ニーズのことはなるほどなと理解はできるわけなんですね。

 この四条件が仮にこうやってクリアされているという中で、また不思議なのは、何でこれは三十年の開設、あるいは一校に絞るという要件が後で追加されているわけですけれども、この要件の追加自体がまたこれは加計ありきなんじゃないかというふうにも見えるんですけれども、その理由を、梶山大臣、お願いいたします。

梶山国務大臣 お答えいたします。

 獣医学部の新設については、これまで繰り返し申し上げてきたとおり、特区の指定、規制改革項目の追加、事業者の選定のいずれのプロセスも特区法、特区基本方針、共同告示などの関係法令に基づいて適切に実施をしており、不公正に意思決定が行われているということは一切ございません。

 平成三十年度に開設とした理由でありますけれども、創薬産業をめぐる国際競争の激化や環境感染症リスクの高まりを踏まえて、いち早く規制改革を活用した具体的な事業を実現させ、効果を実証することが重要であるものと考えたからであります。

 こうした観点から、設置認可までの通常スケジュール、すなわち、開学前年の三月末に設置認可申請、その後、夏ごろに認可という例年のスケジュールを勘案し、最速で事業が実現するスケジュールである平成三十年度に開設としたものであります。

 なお、医学部の新設の際も、同様の考え方から、共同告示の段階で平成二十九年度開設と規定をしておりました。

 次に、一校に限るとしたのは、昨年十二月八日に日本獣医師会から一校とするよう要請があったこと、パブリックコメントにおいて約七割が慎重な御意見であったことなどを踏まえたものでありまして、今治市や加計学園ありきで制度改正をしたわけではありません。

 なお、これらの要件につきましては、京都産業大学も、その記者会見におきまして、京産大外しを意図したものとは考えていない旨述べたものと承知しておりますし、また、その決定につきましても、納得できない部分は特にないとお答えになられていると承知をしております。

菅原委員 ワーキンググループの議論だとかこの特区の議論、おおむね公表されている部分もあるんだと思うんですね。

 ただ、やはり国民にわかりづらい。特区というこの性格上、エリアを区切って、いろいろなマターを議論しながら前に進めていくといったことの、国民にもっとわかりやすい説明をしていくということがより一層求められているんだと思うんです。

 最後に、この問題でちょっと総理にお伺いしたいんですが、結局、さっきの森友もそうなんですが、公文書ですよ、公文書。この公文書管理が極めて劣化しているというか、この問題、今後、公文書管理も含めて、どの論点で、どこからつつかれても全く問題ないんだ、それにはこういう資料があって、こういうデータがあって、公文書として残しているんだと。これをぜひ改革を進めていただきたいんですが、総理、どうでしょうか。

安倍内閣総理大臣 公文書管理については、さまざまな御指摘をいただいたことも踏まえまして、国民への説明責任を全うするという公文書管理法の趣旨をより一層徹底し、公文書管理制度に対する国民の信頼をより一層高いものにするよう、行政文書の作成、保存に関する基準の明確化、文書の正確性の確保等を内容とする行政文書の管理に関するガイドラインの改正を年内に行うこととしております。

 具体的には、政策立案や事業の実施の方針等に影響を及ぼす打ち合わせの記録については文書を作成することを義務づけ、今回も省庁間の、内閣府と例えば文科省との省庁間のやりとりにおいて、いわばそうした形で両省ともしっかりと認識して公文書をつくっていくということも必要ではないかという指摘もあったわけでございますが、文書を作成することを義務づけ、そして意思決定過程や事業の実績の合理的な跡づけ、検証に必要な文書は原則一年以上の保存期間を義務づけ、相手方の省庁と相互に確認するなど、可能な限り内容の正確性を確保することを義務づけすることなどを定めることとしております。

 先ほど申し上げましたように、省庁間で食い違いがないように正確性を確保する、省庁間でこれは相互に確認をすることでそうしたことはなくなっていく、そして、これは公文書であるという認識をしっかりと持つということも大切だろうと思います。

 また、公文書を扱う職員一人一人の意識をより一層高めていくことも重要であることから、各府省職員向けの研修の充実等を図るなど、公文書管理の質を高めるための取り組みを進めてまいりたいと思います。

 こうした取り組みを不断に行う中で、制度の見直しの必要があれば、法改正も含めて検討してまいりたいと思います。

菅原委員 今ガイドラインについて総理からいろいろ御説明がありましたけれども、確かに省庁連携はとても大事、一年以上残すことも非常に大事だと思っています。ただ、どの文書を残すのかというのは、結局それぞれの省庁に判断が任される。しかも、文書管理者のある意味では恣意的な、これは行政文書、これはメモだといったようなことも出てきかねませんから、この辺、しっかりこの年内に示すということであればよく議論していただきたい、こう思っています。

 次に、外国人の土地購入問題についてお伺いをしたいと思います。

 今も全国で我が国の領土が外国人によって買い占めをされている。特に北海道は顕著でありまして、去年一年間で、道庁の調べによりますと、外国人によって森林が購入されたのが五百九ヘクタール。今までの累積で、何と二千四百ヘクタールの森林が外国人等の所有になっている。東京ドームの五百十三個分にも当たるんですね。しかも、そのほとんどは中国資本だ。

 これは、水資源を考えれば我が国にとっては極めて大事な資源であって、これがいわば静かなる侵略にもつながるような買収であるとすれば、我が国は主権国家として絶対にそれは阻止をしなければいけない。これがましてや防衛施設だったらば大変なことです。

 このフリップを見ていただきたいんですが、これは長崎県の海上自衛隊対馬防備隊の地図であります。防備隊の北側、一番、三番、そして二番、これは全部韓国の方の所有という、あるいは登記となっているわけであります。

 地元からはやはり有事の際には極めてリスクを伴うという声も上がっているわけですけれども、ここで、新藤義孝議員を委員長とする我が党の安全保障と土地法制に関する特命委員会、防衛施設の周辺地域の調査をする、こういう法案を今検討中であります。

 そこで、防衛大臣にお聞きしたいんですが、自衛隊の施設及び在日米軍に提供されている施設、あるいは、その周辺において外国人等が土地の買い占めを行った場合には極めて重大な支障が生じかねない。防衛省としてどういうふうに考えていますか。

小野寺国務大臣 御指摘がありましたように、防衛施設は我が国の安全保障に欠くことのできない大変重要な基盤だと思っております。

 この問題につきましては、私が、平成二十五年に防衛大臣のとき、委員と同じく重大な問題と認識をし、御指摘の対馬及び北海道の自衛隊施設等の現地視察も行いました。そして、隣接する土地の調査を実施するように指示をいたしました。

 調査は、自衛隊及び米軍の約六百五十施設を対象とし、約五百三十施設について調査が終わりました。現在引き続き調査を実施し、平成二十九年度、今年度中には一巡目の調査を終わる予定であります。今後とも、引き続き調査をしてまいります。

 また、調査の結果、東京都区内において、住所が外国に所在し、氏名等から外国人と類推される方の土地が四筆確認をされておりますが、現在のところ、自衛隊や米軍の運用に支障が生じるような事実は確認をされておりません。

 ただ、与党において、各種の議論を踏まえて、防衛施設周辺区域における安全保障上の支障のおそれがあるという土地調査に関する法制化の議論が行われるということであります。

 今後とも、この議論も待ちながら、私ども、しっかりこの国を守るための体制を整えていきたいと思っております。

菅原委員 今の防衛大臣の説明にもあったように、その思い、取り組みはわかるんですが、法的な整備はされていない。

 しかも、一方で、法務省所管の外国人土地法、この四条には、安全保障上重要な支障が出る場合は政令で外国人の土地取得を禁止または制限することが可としているんですが、今もってこの政令が出されたことがない。

 いわば、防衛省と法務省の間にねじれ現象が起きている。こういう状況の中で、まさに、この自衛隊の施設、米軍の基地の周辺で土地を外国人が買った場合の我が国のリスクは極めて高い。

 ぜひ、総理、この点、これまでの閣議決定された国家安全保障戦略において「国境離島、防衛施設周辺等における土地所有の状況把握に努め、土地利用等の在り方について検討する。」というふうにおっしゃっていますが、この問題、どういうふうに取り組んでいかれますか。

安倍内閣総理大臣 我が国の安全保障上重要な国境離島や防衛施設の周辺等における外国人や外国資本による土地の取得に関しては、国家安全保障にかかわる重要な問題と認識をしています。

 このため、安倍政権発足後、我が国として初めて策定した国家安全保障戦略にも御指摘のとおり本件について明記したところであり、現在、これに従い、土地所有の状況について政府として計画的に把握に努めています。具体的には、これまで、自衛隊及び米軍の延べ約五百三十施設について調査を実施し、現在、引き続き約三百施設について調査を実施中であります。

 また、与党においても、これまでのさまざまな議論を踏まえて、防衛施設周辺区域における安全保障上の支障が生じるおそれがある土地等の調査について法制化の議論が行われていると承知をしています。

 政府としては、外国人等による我が国の土地取得について、引き続き、関係省庁間の連携を図り、必要な調査を進めるとともに、与党における御議論も十分に踏まえながら、さらにいかなる施策が必要かしっかりと検討していきたいと考えています。

菅原委員 安倍総理の強いリーダーシップを期待いたします。

 最後に一言。もう時間が来ました。

 幼児教育の無償化の議論があります。進めていく流れであります。とするならば、不妊治療、本当に子を授かりたくても、不妊に悩む方々。

 子のいる方には支援をする。授からない方への保険適用は、男性不妊の治療と女性不妊の治療、それぞれありますけれども、ここは保険適用。ところが、人工授精や体外受精や顕微授精、これは保険適用外。これはやはり、厚労省、考え直してほしい。

 以上、そのことを最後申し上げて、終わります。

河村委員長 午後一時から委員会を再開することとし、この際、休憩いたします。

    午後零時十二分休憩

     ――――◇―――――

    午後一時開議

河村委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。

 質疑を続行いたします。

 この際、新藤義孝君から関連質疑の申し出があります。田村君の持ち時間の範囲内でこれを許します。新藤義孝君。

新藤委員 自民党の新藤義孝でございます。

 きょうは、質問の時間をいただいた同僚にまず感謝を申し上げたいと思います。

 そして、閣僚の皆さん、いよいよ本格的な予算委員会、審議が始まってまいります。しっかりと熟議の国会、これを心がけて、私もさまざまな提案をさせていただきたいと思います。ただ一方で、質問の数が少し多いので、全て通告のとおりにいくかどうかわかりませんので、その節は御容赦をいただきたい、このように思います。

 まず、過日の総選挙、私たちはすばらしい成果を得た、そして強く安定した政権をつくらせていただいて、安倍総理は、国難を突破するんだ、私たちの国のこの国難を突破して新しい日本の未来を切り開こうじゃないかと。この思いは皆さんに強く伝わったと思います。

 私も御一緒して、総理の話にみんなが、支援してくれる人ではなくても、総理を見に来た人が、なるほど、日本は、総理大臣はこういうことを考えているのかと強く心を打たれたと私は思っています。さまざまな要因はありますけれども、やはり私たちは、この国をどうやって動かしていくか、その政策の訴えが届いたものだと思います。

 一方で、この数の結果におごることなく、そしてまた甘えることなく、謙虚にしっかりと議論していかなきゃいけません。しかし、明るい議論も必要だ、このように思っています。

 そして、まずは、この国難、総理が訴えて、私たちがお願いをした、このことは一体何を意味するのか、少し深めていきたい、このように思っているんです。

 まずは、何といったって北朝鮮です。

 総理、北朝鮮問題を私たちがお話しすると、町の中ではこういう話をされるんです。北は許せないけれども、でも戦争は嫌だよね、そういう何か圧力を高めるための準備ばかりして大丈夫ですか。それから、まずは対話をしたらどうですか、こんなふうに言う人もいました。だから、私は、違うんですよと申し上げました。

 私たちの言う対話というのは何なんですか。総理はよくおっしゃいます。対話のための対話はしない、そして、圧力を最大限まで高める。私たちがこの北朝鮮問題で高めようとしている圧力は何なのか、どうやってこの問題を克服していくのか、まず総理の思いをお話しいただきたいと思います。

安倍内閣総理大臣 まず指摘をしておきたいのは、いわば挑発行動をとり、世界の脅威となっているのは北朝鮮であり、私も、世界じゅうの誰一人として紛争は望んでいない、戦争など望んでいないわけであります。

 北朝鮮に政策を変えさせるために、あらゆる手段を使って、圧力を最大限にして、北朝鮮の方から対話を求めてくるという状況をつくらなければならないと考えています。

 北朝鮮は、一九九四年の枠組み合意、あるいは二〇〇五年の六者会合共同声明を時間稼ぎの口実に使い、核・ミサイル開発を進めてきたとの反省を踏まえれば、北朝鮮とは対話のための対話では意味がないわけであります。北朝鮮と意味のある対話を行うためには、北朝鮮が、完全、検証可能かつ不可逆的な方法で核・ミサイル計画を放棄するとのコミットメントと、それに向けた具体的な行動を示すことが必要と考えています。

 今回、トランプ大統領訪日の際には、安保理決議の完全な履行、独自制裁の実施、共同訓練の実施、そして北朝鮮との関係の縮小に向けた各国への外交面での働きかけなど、あらゆる手段を使って北朝鮮に対する圧力を最大限にすることでトランプ大統領との間で一致をしたところでございます。

 これを踏まえて、私自身、習近平主席やプーチン大統領との間でも率直な意見交換を行い、北朝鮮による制裁の効果を注意深く見きわめていくことで一致をしました。

 北朝鮮には勤勉な労働力があり、資源も豊富であります。北朝鮮が正しい道を歩んでいけば、国民を豊かにすることもできます。しかし、北朝鮮は、拉致、核、ミサイル問題を解決することなしには明るい未来を切り開いていくことはできないわけでありまして、北朝鮮にその政策を変えさせるために、国民の信任を背景に毅然とした力強い外交を展開して、日米、日米韓で協力をして、中国、ロシアを含む関係国とも緊密に連携をしながら、安保理決議の完全な履行を通じて国際社会全体で北朝鮮への圧力を高めて、北朝鮮の核、ミサイル、そして何よりも重要な拉致問題の解決に向けて、全力を尽くしていきたいと考えております。

新藤委員 要するに、対話のための対話はしない、しかし、解決のための対話はいつでもチャンネルを開いている、こういうことだと思います。

 そして、外務大臣に聞くまでもないので、私が申し上げます。

 北朝鮮は近くて遠い国ですよ。そして、孤立していると言いますよ。それは、確かに私たちとは国交がないから。しかし、本当は聞こうと思ったんだけれども、ごめんなさいね、北朝鮮というのは一体、世界じゅうで何カ国と国交を結んでいるか。百六十一カ国ですよ。世界の一五%を除いてほとんど実は国交を持っていて、平壌に大使館を出しているのは二十四カ国ある。イギリスもドイツも出していますよ。この東アジアで北朝鮮と国交がないのは韓国と台湾と日本のみですよ。あとは全部、実は貿易も、さまざまな外交をやっているわけです。

 ですから、この問題を、国際的圧力を高めなければ、日本が単一のチャンネルでやったって効果が出ないことは明らかなんです。そのことを私たちは言い続けなきゃいけない。

 その上で、今総理おっしゃいました、首脳外交を本当に熱心におやりになっていますけれども、習近平さんと話をした。鍵を握るのは中国です。中国が一体、これから経済制裁でどこまで実効性ある対策を打つか、また行動をとるか、世界が注視している。私はここにポイントがあると思っています。

 総理、差し支えない範囲で結構でございます。日中間で総理がいろいろな話をしているに違いありません。中国はこれからどんな動きになってきますか。

安倍内閣総理大臣 御指摘のとおり、北朝鮮問題の対応に当たっては、安保理の常任理事国であり、六者会合のメンバーであり、そして朝鮮戦争以来の特別な関係を持つ、かつ貿易の九割を占める中国の役割は極めて重要であると考えています。

 先般の習近平国家主席との日中首脳会談においては、北朝鮮問題について率直な意見交換を行いました。私から、国際社会全体で北朝鮮に対する圧力を最大限まで強化していくべきである旨述べ、中国の協力について働きかけを行いました。習主席からは、中国は安保理決議を厳格に履行していく決意であるとの発言があり、これから厳しい冬を迎える中、北朝鮮における制裁の効果を注意深く見きわめていくことで一致をいたしました。

 北朝鮮と中国の貿易は、本年十月には輸出、輸入の双方とも減少しました。輸出入の総額では前月比で約二割減少したとの統計もあります。

 政府としては、中国が、北朝鮮からの石炭、海産物、繊維製品の輸入禁止等、安保理決議を履行する上での具体的な取り組みを実施していることを歓迎しています。

 先般、宋濤中国共産党中央対外連絡部長が訪朝したところでありますが、中国が北朝鮮の政策を変えさせる上で責任ある建設的な役割を果たすよう、引き続きさまざまなレベルで働きかけを行っていく考えでございます。

新藤委員 中国は、九月からですか、北との合弁企業の閉鎖命令も出しましたね。これからいろいろと本格的な動きが出てくる。それには、今お話しされなかったことで、さまざまな日中間の総理のイニシアチブがきいていることを私は承知しています。しっかりと中国の行動に期待をしたい、このように思います。

 それから、最近は、実はアジアの国々でも貿易停止を決断した国もありますね。国際社会のこういう圧力は、今すごい勢いできかせようとしている。この国連のイニシアチブをとっているのは日本です。

 そして、その中でもう一つの鍵を握るのは、やはり何といってもアメリカ。アメリカがこれから、今、空母打撃群、戦略爆撃機による演習を繰り返しています。緊張が高まってきます。その中で、しかし、北朝鮮は最後、どのように行動するのか。愚かな選択をしないことを願います。

 一方で、本当に解決のための対話に入ってきたときに私たちが注意しておかなければいけないのは、アメリカは、ICBM、自分の国に届くICBMが放棄されれば核は容認するなどということはあり得ないと思いますけれども、私たちは、これは絶対に許せない。私たちは、核とそしてミサイルと拉致問題の全面解決、これを必ずなし遂げなきゃいけないわけであります。

 トランプさんとの間でも強力な話し合いがあることを承知していますけれども、アメリカの行動に対して、総理、トランプさんとどんな話をして、どういうことを期待しているんでしょうか。

安倍内閣総理大臣 北朝鮮の核・ミサイル開発は、これまでにない重大かつ差し迫った脅威であります。北朝鮮は我が国を射程におさめるノドンミサイルを数百発保有していると見られますが、これは在日米軍にとっても直接の脅威であります。北朝鮮には、完全そして検証可能かつ不可逆的な方法で核・ミサイル計画を放棄させなければなりません。

 そのために、圧力を最大限まで高め、北朝鮮の側から核・ミサイル開発を断念するので話し合いたいと言ってくる状況をつくっていくことが必要でありまして、日米間では、この方針について完全に一致をしているところであります。

 つまり、ICBM、米国に届くICBMだけを阻止すればいいという考え方をアメリカは持っていないということであります。一部の評論家、専門家の中には、米国はそれを阻止すればいいという理論を述べている人もおりますし、かつての米ソのような形でお互いに管理をしていけばいいという考え方はありますが、そういう考え方はとってはいない。つまり、完全に核そしてミサイルを放棄させるということで、開発を放棄させるということであります。

 米国との間では、私とトランプ大統領を初めとして、あらゆるレベルで緊密に意思疎通を行っており、今後とも日米で緊密に協力をして北朝鮮問題に対応していかなければならない、このように思っているところでございます。

新藤委員 北朝鮮に対して外交的国際圧力をかつてないほどに徹底して上げていく、その中から外交的、平和的解決の目安が見えてくる。私たちの日本が今こそしっかりと働かなければいけない。

 しかし一方で、そうはいいながら、いざというときの備えもしなければいけない。

 まずは、今もこの日本の防衛に黙々と、延々と努力し、頑張ってくれている自衛隊の皆さんには、敬意と感謝を申し上げたいと思います。それから、小野寺大臣にもエールを送りたいと思います。私の知り合いの中年の方が、あなたの顔が見えると安心すると言っていました。やはりそういう揺るぎない防衛体制、これが非常に重要だと思いますよ。

 その上で、平和安全法制の整備が極めて有効で、かつ、今、功を奏していることが幾つかあると思います。平和安全法制を整備した結果、どのようなことが向上したのか、かいつまんでで結構ですから、ちょっと御紹介いただきたいと思います。

小野寺国務大臣 隊員に対しての温かいお言葉、ありがとうございます。

 平和安全法制を成立させていただいており、日米の関係が大変強まりました。平素からの日米のしっかりとした連携体制がとれるようになり、今この瞬間も、日米が連携して北朝鮮の弾道ミサイル対応をしっかりしております。

 例えば、給油という活動があります。今まで自衛隊は、共同訓練の場合には、米側に対してACSAの枠組みで給油の支援等ができましたが、実際に日本を守るために、警戒監視あるいはミサイル防衛体制で日本を守るためにともに行動してくれている米軍に対して、給油を含めた支援ができませんでした。今回、平和安全法制のおかげでこの支援ができるようになりました。

 これからも、日本を守るために、私ども、二十四時間三百六十五日、そして同盟国とともに、この国を守り抜いてまいります。

新藤委員 船は最大能力を発揮してすばらしい防衛体制をつくる、しかし、油が切れて港に戻れば、その間、空白になるわけですよね。ですから、そのときに補給をするというのが極めて重要で、それを今まではできなかったわけですから、わかりやすい例だと思います。

 そしてその上で、もう一つ大事なこと、いざというときの備えです。

 もし朝鮮半島に有事が起きたときには、今度はそこに残っている日本人を退避させなければいけない。これはNEOというんですね、ノンコンバタント・エバキュエーション・オペレーション。これは小野寺さんとは自民党の、延々議論しましたね、三時間ぐらいやりましたね。これをどこまで高めていくか。実は、これも日本は極めて、それを実際に実行する前提にないような法体系になっているわけです。しかし、平安法の整備の一連の中できちんと向上させました。

 この非戦闘員の退避活動、これは、韓国から、朝鮮半島から退避させるとすれば、日本人だけじゃないですよ、世界じゅうのあそこにいる国々が、まず日本が受け皿にならなきゃいけない。だから、自分たちの退避活動も必要だけれども、これは、韓国と、そしてそこにいるその他の国々との連携も必要だ、このように思うんです。

 外務大臣、ロシア出張お疲れさまでした。もう世界を飛び歩いて、すごく頑張って、うれしく、エールを送りたいと思いますけれども、この非戦闘員の退避活動、これは、日本だけではなくて有志国との連携、こういったものも重要だと思うんですが、準備状況、検討状況、差し支えない範囲で教えてください。

河野国務大臣 一般論として申し上げますと、民間の航空機で退避ができないような状況になった場合に、その状況に応じて、政府が保有する航空機あるいは船舶の派遣、あるいは、友好国や国際機関との協力などが必要になってまいります。

 そうしたことに備えて、関係各国とさまざま連携をしながら、邦人の安全の確保、あるいは、必要に応じて関係国の方々の安全の確保に努めてまいりたい、しっかりと連携をしていきたいと思っております。

新藤委員 これは極めて重要ですよ。私たちが実践行動をとらなければいけないことですから、関係省庁、しっかりと連携をとってもらいたい、このように思います。

 その上で、各国との連携が重要だと。この上において、一つ、これは外務大臣、言わなきゃならないんですよ。日米韓がまずはコアになるはずなのに、韓国は一体どうしたんですか。

 先週の金曜日、韓国の国会で慰安婦記念日を定める法律が成立した。それから、その前のトランプ大統領が出かけていった、訪韓したときの晩さん会、竹島のエビ、独島エビというのが出ていると。独島エビなんてないですよね。しかも、あれは新聞社向けの報道用メニューにのみあっただけで、実際の晩さん会のテーブルのメニューにはなかったそうですよ。だから、参加者は誰も知らなかったんです。

 何か、こういうことで一体どうするつもりなの。最終的かつ不可逆的に解決するといった二〇一五年十二月の日韓合意、これは、政府は抗議したと言うんですけれども、どういうふうにするつもりなんですか。状況、それから今後の対応、言ってください。

河野国務大臣 日韓合意は、最終的かつ不可逆的な解決を日韓両国で確認しておりますので、韓国も誠実にこれを履行する用意があるというふうに思っております。

 未来志向でやろうという中で、時々水を差すようなことが起きますが、そのときにはきちんと韓国の政府に対して、この日韓合意を誠実に履行するように申し入れをしているところでございます。

 韓国の外務大臣とは、未来志向の両国関係をきちんとつくっていこうという話し合いをしておりますので、しっかりと日韓関係が前向きに進んでいくように努力してまいりたいと思います。

新藤委員 これは、先週の金曜日に成立しましたけれども、九月から議論して、九月末には韓国の委員会で決議しているわけですよ。ですから、この最終的な判断が出てからではなくて、事前の行動、そしてそれを国民にきちんと知らしめる広報のあり方が重要だと思います。

 尖閣諸島の周辺に中国の調査船が入ってきて、これも逐一報道すべきですが、なぜかなかなか伝わらない。だから、私のフェイスブックで延々と皆さんにお知らせするしかないようなことをやっているんですけれども。

 既に申し入れてあります。外務省、外務省の報道、広報のあり方、ぜひ、今後ともさらに検討してもらいたいと思います。

 そして、その上で、総理、地球儀を俯瞰する外交。就任以来、七十カ国、延べ百二十九カ国を訪れて、首脳会談、五百五十回でしょう。これは質問しません。体を使ってどれだけやっているのか。これは、この北朝鮮問題だけではありません。領土の問題、さまざまな問題、そして外交の交渉。安倍総理だから、安倍総理がいるならば話をさせてくれと。この間のAPECとASEANの会談で行ったバイ会談、十五カ国・地域。この十年間で最高で、前政権時代の倍。

 こういう状況が生まれているということは、それは御本人は言いづらいでしょうから、別によいしょしているんじゃないんですよ、それだけ私たちは、日本の外交は今物すごくイニシアチブをとって力強くやっているんだということ、その中から目的達成をしていきたいと。これは全力で我々も応援させてもらいたい、皆さんも頑張っていただきたい、このように思います。

 その上で、では、次の課題に行きます。

 もう一つの国難、人口減少。少子高齢化・人口減少社会が国難とまで総理はおっしゃった。なぜ国難なのか。人口が減って大変です。でも、国難とまで言えるのか。

 私たちの人口のピークは二〇〇八年です。一億二千八百万になりましたけれども、今、人口減少中。二〇三〇年には約一千万人がピークから減ります。東京都民みんながいなくなってしまうぐらいの、そういう人口減少が始まっていて、そして、ことし成人式を迎えた頼もしい若者、百二十三万人です。でも、同じタイミングで生まれている子供は九十七万人。だから、二十年後の成人式は百万人を超えることは絶対にないんです。

 そういう中で、ボディーブローできいていって、このままいけば、百年後には、甘く見積もっても六千万人まで人口が減ってしまう。生産が維持できない、消費が維持できない、地方が維持できない。国が形成することを、これは、その状態でどういうことが起きるのか、想定もできないほどに厳しい。

 重要なことは、みんなが、子供を産んで育てて、安心して暮らしていく社会を早くつくらなきゃいけない。だから、生産性革命と人づくり革命だ、こう総理はずっとおっしゃっています。

 問題は、ぜひ私たちみんなで、国難なのは何か。根本の数字は合計特殊出生率です。今、一・四四です。人口を維持するためには二・〇七まで高めなければいけません。二〇四〇年代に達成する目標を政府は立てています。

 でも、問題はこれから。二〇四〇年に二・〇七を達成して、そこから本当にこの国の人口減少がとまり、横ばいに行くまでに八十年かかる。今私たちがやっていることは、どんなに頑張ったって、百年たって達成できるかどうかの、そういう状況で、だから一刻も早くやらなきゃいけない。

 フランスは、二〇一五年で二・〇一。私たちの鹿児島の伊仙町は既に二・八を達成している。ですから、政策をきちんと考えればできなくはない。地方創生も、あらゆる政策もそこに行く、こういうことだと思います。

 そして、その上で、何といったって経済です。経済が上向かなければ地域の暮らしも成り立ちません。マクロ経済ではない、地域経済をきちんと全国に、それぞれの地域の実情に応じて渡していくんだ、これが我々の目的です。

 先週の金曜日、生産性革命推進戦略、これを総理にお届けしました。私たちは、経済構造を変えていく中で生産性革命を実現させるんだと。ここに今、これは五つのミッションです、使命です。そして、その中から、それぞれどうやってこれを実行するか、実現できるかの目標を立てて、そしてここに、アプローチと私は呼んでいますけれども、その政策を書き出させてもらいました。

 肝になるのは、真ん中の、新しいチャレンジを生み出す仕組みづくり。点の支援ではない、面の支援をきちんとやっていこう、そういうことで、自動走行だとか介護ロボット、最先端技術開発、第四次産業革命を社会に実装させる、そのための推進仕組みをつくる必要がある。

 この新しい取り組みに最もブレーキがかかるのは、規制です。規制緩和も思い切ってやらなきゃいかぬ。しかし、全国一律の規制緩和でいく前に、まず本当にそれが効果が上がるかどうかを試してみよう。つくったのが国家戦略特区。初代担当大臣は私でございますから、ですから、そのときの問題意識をよく承知しています。

 さあ今度は、その国家戦略特区の中に、さらに強い、第四次産業革命、イノベーションを巻き起こすためのサンドボックス型特区、地域型とプロジェクト型、バーチャル特区と私は呼んでいるんですけれども、こういう新しい仕組みをすぐに入れようじゃないか。できれば次の国会で法律改正してもらって、国家戦略特区に新しい武器を持たせてもらいたいと思っているんですけれども、こういう取り組み。

 それから、規制緩和は、単一物もあります、企業がやるだけのものもあります。いろいろな種類のものをやるためにも、国全体が新しい技術を導入するための近未来技術社会実装本部という司令塔を新たにつくろうじゃないか、こういう御提案をさせてもらっています。

 これは、もともと言い出したのは茂木大臣です。茂木さんが政調会長で、私たちと一緒に構造改革特命委員会を組んで提案したことなんですから、今度は担当大臣におなりになって、どうですか、次の国会でびしっとやりませんか。

茂木国務大臣 関連法案については、次期通常国会に提出すべく準備を進めたいと思っております。

 新藤先生とは、私が政調会長時代、新藤先生は政調会長代理としてお支えいただきまして、まさに今パネルでも御紹介いただいた第四次産業革命、これを社会実装することが極めて重要だ、こういった提言を党としてまとめ、それを受けて今政府の方でも検討を進めているところでありますが、行政におけるルールづくりであったりとか規制、これまで以上にやはりスピード感を持ってまずはやってみる、こういうルールづくり、実証による政策形成にかじを切らなければいけない、そのように思っております。

 そのための規制のサンドボックス、これをつくっていくわけでありますが、その体制、仕組みも含めて、次期通常国会に提出を予定している法案の中で検討したいと思っております。

新藤委員 ぜひ頑張っていただきたいし、さまざまな結局これも役所内の、所管官庁のせめぎ合いもございます。

 私は今、プロジェクト型とバーチャル型と言いました。これは二つの類型があるんです。この類型をきちんと位置づけるように私はお願いをさせていただきたい。プロジェクト型と地域型です。これは、私、はっきり申し上げておきますから。大臣は御存じです。

 それから次に、もう一つは、介護分野のロボット。ロボットも現実にまず実装してみようじゃないかと。

 ここにある写真は、私が官邸で総合科学技術会議のときに見せてもらった介護ロボットHAL。私、自分でも装着しましたからわかっています。大体、これは、脳でやりたいことを、人間が体を動かす、こうやってやっているのは全部脳の電気信号なんです。この電気信号をロボットが感知して、そしてそれをアシストしてくれる。体感は自分の力の四割程度で物が動く。人を持ち上げるのも物を運ぶのもできる。

 でも、このHALは定価が二百万。リースしても七、八万。こういうものを二年前からもう市販していますけれども、全国施設、七百五十台普及しています。七百五十台しかと言ってもいいかもしれません。

 今二百万ですけれども、どうですか、単純に言って、百倍みんなが使えば価格はどんと下がるんじゃないんですか。ですから、要するに、第四次産業革命は既にもう兆しがあって、それをいかに社会実装するかということが重要だ、そういうことなんです。

 それから、介護ロボットだけじゃありません。今、センサーも非常に介護現場で重要です。ところが、センサーも、センサーだけではなかなか効果が出ないんです。

 私、ある人の話を聞いたことがあって、おばあちゃんなんですけれども、夜眠れないんだと。それは、施設の方が見回りに来てくれるので気になっちゃって眠れないから、ですから来なくて結構です、こういうふうなお話をされている人がいる。施設側は見回りに行かなきゃ心配でしようがない。

 だけれども、それは、センサーをつけて行動分析してみたら、実は、おばあちゃんのところに見に行っているときには、その人は起きていないんです。要するに、夜の眠りが浅いので、自分が寝たつもりがないという状態になっちゃっているんですね。分析してみたら結果がわかったんです、何で夜眠れないのか。それは昼寝しているから。

 その人の行動分析をきちんととって、そして、昼間、満足できる運動や、その人が満足できることをやれば、これは夜ぐっすり眠るんですよ、安心すれば。

 私も今、自分の父親が老健施設に入っていまして、老健施設も一生懸命やっている。だけれども、父親を満足させるために、これはもう介護する人はみんなわかっているけれども、年寄りはなかなか満足してくれないんです。

 ですから、こういうものをきちんと新しい技術を使って理にかなった中でやれば、そのおばあさんは、結局、昼間の活動を改善したので夜は安眠状態になった、こういうことなんです。

 ですから、こういうものを入れるべきなんだけれども、実は、介護保険の報酬の中で加算規定がありません。これをふやそうという規定になっていないんです。これは加藤大臣ですよ。

 それからもう一つ、一緒に言っちゃいますから。ICTの遠隔診療。基本的な診療は病院に行ってやるけれども、通常の経過観察はテレビ電話やICTを使って遠隔でできるんです。でも、対面診療しか原則になっていないから、遠隔診療の導入前提、これも今度は診療報酬改定の中に、やはりさらに促進するための加算制度というのがないんですね。こういうものをきちんと改善することによって、施設側はみんな便利だからわかっているけれども、予算上の問題で入らないことがいっぱいあるんですよ。

 これこそ第四次産業革命、皆さんが喜んでくれることだと思う。加藤大臣、思い切って導入しませんか。

加藤国務大臣 まず、介護の現場で介護ロボットを使ったり、あるいは今言ったセンサーをうまく取り入れることによって、あるいはAIの分析によって、より質の高い、また効率的な介護をしていくというのは大変大事なことだというふうにも思っておりますし、未来投資戦略二〇一七でも、効果実証を着実に進め、その結果を踏まえて次期介護報酬改定の際に具体的な対応を行う、こういうふうにされているところでございます。

 ことしの五月から八月にかけて見守りなどの実証事業をやりまして、実際どういう効果があったか評価をいたしました。その評価を踏まえて、今、社会保障審議会介護給付費分科会において、介護報酬等の取り扱いについての議論において、それも含めて行っていただいているところであります。

 また、遠隔医療についてのお話もありましたけれども、これもどんどんどんどんICT技術等が進んで、画像もすごくよくわかるようになってきています。その辺も踏まえながらしっかり議論していく必要があると思いますが、これも六月に閣議決定された未来投資戦略二〇一七で、対面診療と遠隔診療、これを適切に組み合わせていく、それで効果的、効率的な医療の提供に資するというものについては次期診療報酬改定の中でしっかり評価を行うということで、現在の中央社会保険医療協議会において、例えば慢性疾患患者の医学的な管理など、そうしたものについて、遠隔診療の実態、関係者の御意見も踏まえながら議論を進めさせていただいております。

 いずれにしても、遠隔診療あるいは介護ロボット、これらについて、これはやはり安全とかいろいろな面にかかわりますから、適切かつ有効に活用して、より質の高く効率的な医療、介護、これをしっかり進めていけるように取り組んでいきたいと思います。

新藤委員 次の改定で入りますね。入れましょう。

 答えますか。どうぞ。

加藤国務大臣 今、私がこの段階で断定的なことを申し上げるわけにはいきませんが、今申し上げた視点に立って今議論をしていただいている、また検討していくつもりであります。

新藤委員 それからもう一つのキーワードは、新しい技術を実装する中で、中小企業なんです。大企業はもともと、お手伝いしなくたって世界の最先端でしのぎを削りながら自分たちでどんどんやるんです。でも、地域にある中小企業や地域の中にそういう第四次産業を実装できるかどうか、これは日本の挑戦だと思っているんです。

 その意味で、中小企業の生産性革命、これは二の右の方に入れました。

 まず第一は、中小企業の機械屋さんとか町の中では、本当に、中小といったって、実際は従業員が十人以下の方が一番多いんですから。そういう中で、でも、いい機械を持っていて、親子でとか少人数の職人さんですごく高い技術を使ってやっているわけです。そこに、現場にIoTを入れる、データをリンクさせてどんどん仕事ができるようにする。まずは、第四次産業革命の成果について、こういうものの導入の補助金だとか税制だとか、これを思い切ってやろうじゃないか、これが一つです、ここに提案したのは。

 それともう一つは、それはもうやらせてもらうことを前提にして、その先を行こうと。これは、クラウドコンピューティングによる第四次産業革命の実装、導入プラットホームをつくれないか、ここに提案しているのはそういうことなんです。

 それは、インターネットでつながって、そして、通常は自分のグループや知っている人しか仕事は出ないんですけれども、ネット上にこういう仕事を今やってほしいんだけれどもというのが出ると、それをネット上で見た人が、うちの会社ならできるよ、そして、仕様を送ってくれれば、データリンクできれば、うちがその機械でインプットしてすぐできるよ、こういう仕組みがもうできているわけです。だけれども、どこに行ったらそういう機械があるのか、また、どことつなげたらいいのか、その場がないんですよ、共通基盤が。

 ですから、それを地域の自治体や金融機関、それから業界の皆さんと相談して、新しい、日本のクラウドコンピューティングを使った、インターネットを介在させた、そういう大支援プラットホームをつくったらどうだと。これはいろいろ調べたんですけれども、世界でどこもやっていません。みんな自分のグループだけ。地域や業界ぐるみでやっている国はないんです。だから、これを私たち、やろうじゃないかと。

 そして、当然、そうなると紙の決裁がなくなっちゃうので、契約も、判こだとか印紙がなくても契約できるようにしなきゃならないじゃないですか。そういうルールを決めなきゃいけないし、対面手続原則も変わることになりますよ。これこそ、まさにさっき言ったサンドボックス特区のバーチャル型なんですよ。そういうもので実績を上げたらどうかと思うのでございます。そして、このクラウドコンピューターを入れるということは、そのままセキュリティー対策の強化につながっていく。

 最も詳しい世耕大臣、これは思い切って、世界で初めてなんですけれども、挑戦してみませんか。どうですか。

世耕国務大臣 お答えいたします。

 今までも、中小企業、小規模事業者のIT化というのはいろいろな応援をしてきています。

 例えば、ものづくり補助金で五万社の中小企業の投資、あと、IT導入補助金で一・五万社の中小企業のIT導入、あるいは、中小企業経営強化法で三万五千社の投資の応援をやってきています。

 ところが、現実には、産業データをどれぐらい利用しているかというアンケートをとりますと、日本は一六・四%。アメリカが四一、ドイツが三一というのに比べて、非常におくれているわけであります。

 ただ一方で、やはりこういう今までの支援補助金の影響もあって、現場のいろいろな自動化とかデジタル化というのは大分進んできていて、これはほとんど中小企業を中心とした四千六百社にアンケートをとりますと、工場内でデータがとれていると答えている企業は、去年年末の調査で六六%、その前の年は四〇%でしたから、物すごくふえてきたんです。

 だから、現場で中小企業も含めていろいろデータはとれているんですが、そのデータがほったらかしになっていて、宝の山が眠っている。これをまさに今、新藤議員おっしゃるようにつないで、工場の中に眠っているデータをほかの工場とつないで、あるいは企業と企業をつないで、あるいは業界を超えてつないでいくことによって、ビッグデータとしての価値を生み出して、日本の物づくりとかサービス産業のレベルをもっと上げていくという取り組みが非常に重要だと思います。

 今おっしゃるようなプラットホームは、ぜひつくりたいと思います。中小企業が一体どんな道具があるんだ、このデータをどうやって活用すればいいんだということを身近に相談できるような拠点もつくりたいというふうに思っていますし、十二月一日にスマートものづくり支援機関全国連絡会というのを立ち上げて、大きな動きをつくっていきたいというふうに思っております。

新藤委員 ぜひ期待をいたしますし、私たちも党の立場でこれは徹底的に応援させてもらいたい、またいろいろ提案させてもらいたいと思いますので、頑張ってお互いにやっていきたいと思います。

 その上で、しかし、そうはいいながら、目の前の問題で、これを改善すれば効果が出る、これは中小企業の事業承継税制です。

 景気はよくなりましたけれども、でもやはり廃業する。今廃業している企業の約半分は、黒字のまま廃業するんですね。後を継ぐ人がいない、また、この仕事は継がせるほどのものにはならない。

 だから、そこを、新しい仕事をデータリンクして、ネット上でも仕事がとれるようにして、新しい機械を入れたら先が見えてくる。そのときに、息子が優秀な息子で、でも役所に入ってしまったり企業に行ったりしている。いや、こういう仕事なら、おやじ、俺戻るよ、しかも、サラリーマンをやっているよりこっちの方がまだやりがいが、またさらに見えてくるぞとなると、事業承継税制、これはやはり、なかなか、町の中で、私も、うちの町は中小企業の町ですから、承継税制はせっかくつくってもらったんだけれども使い勝手がいま一つだという声が聞こえます。これこそすぐやるべき、またできることだと思いますが、世耕大臣、いかがですか。

世耕国務大臣 非常にいい技術を持っているのに、あるいはいいお客さんがちゃんとついているのに、後継ぎがいなくて黒字のまま廃業に追い込まれる、こういったことはやはり根絶をしなければいけないというふうに思っていまして、まさに今、政府内でも、あるいは自民党の税調でも御議論いただいていますけれども、与党の税調でも御議論いただいていますが、事業承継を円滑にするために、雇用維持条件などさまざまな要件を一度抜本的に見直していく必要があるんじゃないかというふうに思っております。

 そして、親から子への承継だけじゃなくて、例えば、お客さんはいっぱいいるんだけれども、どうも、もうITにとてもついていけない、であれば、少しMアンドAをしてもらって、別の経営者に譲り渡してそのまま継続をしてもらう、こういう考え方もあると思います。そういったMアンドAという視点も事業承継には重要だと思います。

 今後十年、集中して事業承継を円滑にする取り組みをしっかりやってまいりたいと思います。

新藤委員 親族だけじゃないんですね。やはり自分の会社の優秀な職員に後を継がせたいという場合もあります。こういうものも含めてぜひやっていかなきゃいけません。

 それから、もう一つのキーワードは、個人の所得の向上です。

 今、実は、マイナンバーを使った地域経済応援ポイント、この中にも書いていますけれども、これは物すごく期待しています。まあ、自分で考えちゃったのでなんなんですけれども、すごく期待しています。

 これは、マイナンバーを使って地域経済の応援ポイント、VISAだとかマスターだとか航空会社のポイント、あれは年間四千億円ポイントがあるんです。でも、そのうちの三、四割は使われずに、そのままになっちゃっているんです。大きな、大手のそういったクレジットのポイントをマイナンバーを使って自分のポイントに移行させて、それを町の中の商店街で使えるようにしようと。それから、健康にいいことをやってくれたり運動会に出てくれたら何ポイントとか、私は今、川口で実験を始めているんですけれども、こういう個人の所得、それから消費を上げるための取り組み、絶対的に必要なんです。

 御答弁いただきたいんですけれども、ちょっと申しわけない、時間がなくなっちゃったので。これは総務大臣に今一生懸命やっていただいているので。これだって第四次産業革命なんですよ。身近な、今できる技術をつなぎ合わせることでできるわけですから、ぜひこれは期待をしていますし、また推進をさせてもらいたい、このように思います。

 その上で、今度もう一つ、地方創生の方に行きます。

 地方創生は、一番新しい政策です。KPIという目標を設定して、その達成状況を見ながら次に何を打つべきかというPDCAを回していく、そういう形をつくっていただいた。私もかつてこれの担当をさせてもらっていましたから。

 この中で一つ、担当大臣、ぜひこれを見ていただきたいんですけれども、例えば、ここにある福岡県、五千七百人、東京に流出している。本来は地方と東京の転出入は均衡させなきゃいけないんだけれども、結局十二万人まだオーバーして、しかも拡大しちゃっているわけです。

 五千七百人、福岡から東京に流出超過しちゃっているというんですけれども、この間、地方創生の私たちの会議で、地元の金子元知事、参議院議員がおっしゃいましたよ。福岡、出ていると言うけれども、九州じゅうから二万人福岡に吸い取られているんだと。ですから、九州の中で福岡が吸い取っちゃって、そこからまた東京に連れていっているんだと。ここに出てくる数字ではなくて、この先の細かいことを見ないと、キー・パフォーマンス・インディケーターは有効でないということになるんです。

 そして、例えば北海道も六千九百人出ていますけれども、北海道じゅうから札幌に集中しているんでしょう。そして、全国で出生率ワーストツーが札幌ですから、子供が産み育てづらいところに集中して、東京に全国から集中して、そしてそこが最も子供が産み育てづらいところなんだから、ここの悪循環を、悪循環というか、この流れをやはり改善しなきゃいけない。

 東京に行きたい人は行っていいんです。でも、全体と地域できちんと踏まえる、また、この周辺も含めたそういうKPI、PDCAの確立をきちんともう一回細かくやるべきだ、地域別の所得だって打ち出すべきだと私は思っております。

 その意味において、ぜひこれは今後、これも要望しておきます。もう梶山大臣に積極的にやっていただいていますから。この問題は、実効性を上げるための今はちょうど中間年なんです、五年間の集中期間でちょうど一七年、三年目ですから、さらなる改善をお願いしたいと思います。

 それからもう一つ。地方創生に関しては、地方創生の中でも横串を刺すべきだ。

 私は、この間、常陸太田市へ行ってきました。梶山大臣のポスターがばんばん張ってあったところ。そこで市長さんに話をしてもらった。それは、道の駅で新しい無人走行の実験をやるんだというので、それを見に行ったんです。

 そうしたら、何と、道の駅自体は市がつくりますよね。そして、自動走行で走らせた車に、近所の集落のおじいちゃんたちが自分たちの野菜を積んでいるんですね。野菜を積んで道の駅まで行くと、今度は道の駅で東京都に高速バスを出しているんです。中野区だったかな、中野区と里・まち連携事業というのをやっていて、高速バスのおなかのトランクに貨物を載せて運んでもらっているんです。

 今までできなかったんです、貨客混載。これを規制緩和でやるようになって、要するに人が乗る運賃と同じような価格で外に出すことができる。そして、そこに、この自動運転の予算は内閣府のSIPの予算を国交省が受けて、執行を委託している、それでやっている。そういうふうに、幾つも実はいろいろな工夫をして、規制緩和も絡めてやっている。

 だから、地方創生が独立したものじゃなくて、人づくり革命も独立したものじゃなくて、あらゆる事業を連携させて、その地域に集中させることが重要だ。

 総理、これはひとつ、総理の発想でこれは始まっているんですから、この地方創生や人づくり革命、生産性革命、こういったものを思い切って政府内で横串連携をさらにさせるための指示が必要だと思いますが、ぜひお考えをお聞かせください。

    〔委員長退席、田中(和)委員長代理着席〕

安倍内閣総理大臣 まさに、地方が直面しているさまざまな課題は省庁の縦割りの枠の中には当然はまらないわけでありまして、まさに今、横串を通すためには、省庁間にある壁を倒すか穴をうがつしかないんだろう、こう思うわけでありまして、意味のある成果を得るためには、横串で省庁の壁を打ち破って、真に効果的な事業を実施していく必要があると考えています。

 御紹介のあった常陸太田市の例も、中山間地域の課題を解決するためには、単に農水省の政策の枠では対応できず、自動運転を初め、国交省など他省庁と連携することで課題解決に大きな効果を上げることができたと思います。

 ぜひ、地方の皆さんには、霞が関の縦割りにはとらわれることなく、多くの省庁を巻き込むような革新的な地方創生のアイデアを出してもらいたい、こう思います。

 私もあらゆる場面で縦割りの打破を指示しているところでありまして、国としても、交付金などを活用し、そうした省庁横断的な取り組みを力強く後押ししていきたい、このように思います。

新藤委員 結局、地方創生の担当の人たちは、地方創生の認定事業はこれですと思っちゃうんです。農水省も国交省も総務省も別々の、それぞれ、全部一緒にやる必要はないんです。でも、連携できるものがあるかどうかは、閣僚同士が話し合うのが一番早いんですよ。それをやはり、総理が今御指示いただきました、そういう形で現実に実装させていただきたい。これがいろいろな政策がどんと上に成果が出るきっかけになると思って、期待をしたいと思います。

 では、次に行きます。

 私たちは国難を克服して日本の新しい未来を切り開くんだ、総理はそうおっしゃいました。そこで、幾つか、象徴的になるような明るい、こういうことをやったらどうですかと提案させてもらいたいと思います。

 まず一つは、オリンピックの聖火台です。これもちょっと時間が極めてなくなっちゃったので、端的に言います。

 旧国立競技場の聖火台、実は命がけの聖火台と言われています。これを最初につくろうとした人は、試作機をつくったら、湯を入れたら爆発してしまって、そして、つくった鈴木万之助さんという川口の鋳物師の人なんですけれども、ショックで寝込んで八日後に亡くなっちゃった。そして、息子が、三男の鈴木文吾さんという人が、もう一回つくり直しだといって二号機をつくって、納期があと一カ月しかないのに必死でやって、しかも、親の死を知らせたら動揺するというので、葬儀の日までその人は知らされずに、そして葬儀に間に合わなかった。でも、それから親の死を知って、さらに必死になってやって、そしてぎりぎりで間に合わせた。こういう、これはアジア大会用につくった聖火台だったんです。

 それを聞いた河野一郎当時のオリンピック担当大臣たちが、そういう魂のこもった聖火台を東京オリンピックで使おうじゃないかといって使ったのが、この聖火台なんです。

 これは、オリンピック、パラリンピックが終わった後はレガシーとして残ることが決定しましたけれども、こういうものを、例えばサラエボは、オリンピックの後、そのオリンピックの火を分火して、そして分灯して、平和を祈る永遠の炎として、エターナルフレームで燃やしているんですよ。

 これは、ただとっておくだけじゃなくて、私たちはオリンピックを通じてみんなが一緒になった、そして、国の平和と繁栄を願うその希望のともしびとして、こういうものにやはり国民が参加できるような、そういう国民の思いを込めた聖火台の工夫をしてみてはどうかと思うんですけれども、これは、担当大臣が、どなたに聞きようもないので、総理、どうですか、こういう楽しいことを思い切ってやったらいかがでしょうか。

安倍内閣総理大臣 御指摘の聖火台は、前回の東京大会のシンボルであり、我が国のスポーツの歴史を語る上でも大きな意義を持つものであると考えています。

 この聖火台は、新国立競技場の竣工後、その敷地内に置くこととされておりまして、具体的な活用方法については、所有者である日本スポーツ振興センターが国など関係者と相談しながら検討を行うこととしております。これまでも各種大会やイベントにおいてこの聖火台に点火したとの実績もあり、御指摘も踏まえつつ検討していきたいと思います。

 いずれにせよ、政府としては、同聖火台が、我が国の平和と繁栄、スポーツ振興などの象徴として、またオリンピック、パラリンピックの重要なレガシーとして次世代に受け継がれるように取り組んでいきたいと考えています。

新藤委員 この聖火台は、今、石巻に貸し出していて、石巻の皆さんが磨いてくれているんですよね。今度、一度川口に戻ってきて、最後の仕上げをして、磨いて、そしてお戻しします。そういう心を受けとめて、よく検討いただきたいと思います。

 次に、もう一つ、これは日本の新しい未来、資源大国になるチャンス、南鳥島のレアアース泥です。

 これは、世界で画期的な発見がございました。そして、陸上埋蔵量の千倍が太平洋にあると言われていて、その中で、特に日本の南鳥島のEEZの中に超高濃度のレアアースがある。しかも、このよさは、中国のレアアースは放射性元素を含んでいるが、これには全くない、クリーンな元素。しかも、重レアアースというとても貴重なものがたくさん含まれているすばらしい資源がある。ところが、海底六千メートル下なんですね。それを吸い上げられるかどうか、技術実証を今右下にあるものでやっていますけれども、しかし、既にもうピストンを打ち込んであるんです。

 そのレアアースは、精製すればLEDにできるんです。海洋産のレアアースを実際に器具として取りつけたことは一度もないんです。だから、オリンピックの期間中に、どこがいいかは皆さんで検討いただくにしても、どういうやり方にするにしても、南鳥島産海洋レアアース、そして、世界で初めてLEDをつくって、それをオリンピックの期間中に国民や世界じゅうの人に、私たちはこういう未来を持っているということを示したらいかがかと思うんですけれども、総理、いかがですか。

安倍内閣総理大臣 資源に乏しい我が国にとっては、世界第六位の面積を誇るEEZ内に存在する海洋資源の開発は極めて重要であると考えています。

 特にレアアースは、その大半を海外、とりわけ中国に依存しており、南鳥島近辺だけで我が国消費量の五十年分とも言われる埋蔵量が見込まれるレアアース泥の開発は夢のあるプロジェクトだと考えています。

 レアアース泥の開発には、過大なコストのほか、精製などの技術面でも多くの課題がありますが、議員から御提案のあったLED電球などの試作にチャレンジすること、すなわち、少量でも形にしてみることは、世界へのアピールになると同時に、今後事業をさらに加速していく上でも大変興味深い提案であると思います。

 私はかねがね、二〇二〇年を日本が新しく大きく生まれ変わる大きなきっかけにしていきたいと申し上げてまいりました。そうした意味で、オリンピックで何らかの活用を図るという今回の御提案について、関係省庁において、技術的、経済的な課題も踏まえつつ、何が可能か、よく検討させたいと考えております。

新藤委員 私、突然、点的に申し上げているので、でも、これは、資源確保戦略推進議員連という議員連盟をつくって、レアアースをLEDにできないか、一年以上検討しているんです。それから、もう何年も前から、レアアースやメタンハイドレートや海底熱水鉱床、そういうものを世界で第六位の広さを持つ日本のEEZの中からきちんと取り出そうじゃないかと。この一環として、またそういう象徴として使えないか。先ほどの国立競技場のことも、これは地元の皆さんとずっといろいろ積み上げてきたものです。

 それからもう一つ。日本のフロンティア、世界のフロンティア、それは北極です。

 安倍内閣は初めて、おととし、我が国の北極政策を海洋政策本部で決定しました。本部長は総理です。北極政策は今まで国家戦略になっていなかったんです、残念ながら。これがここできちんとできました。

 私たちは今、北極のフロンティアを考える議員連盟、会長はそちらにいるオリンピック担当大臣の鈴木大臣で、幹事長が上川法務大臣、私は副会長、何年もみんなでこういうことでやってきた。日本には、フロンティアを切り開いていこうといいながら、北極で動かす砕氷船がない。中国は二隻目建造中、韓国も一隻持っている。私たちは、すぐれた科学技術と研究開発能力を持っていながら、フィールドで動かす手段を持っていないんです。もう三年前から、北極の砕氷船、研究船をつくろうじゃないか、こういうことを提案してまいりました。

 今回、概算要求も出していると承知しています。しかし、これも、よほどの決断がなければ簡単にはいきません。皆さんがよく承知をしている「しらせ」は南極しか行けませんから。というか無理です、地球の両方使うのは。用途も違います。

 ですから、ここで日本がそういう新しいフロンティア、北極海航路も、そして膨大な資源、未踏のフロンティアに乗り出していく、その手段を持つべきだと思いますが、これも、いろいろどこにお願いしようかと思ったけれども、総理のリーダーシップで決めない限りなかなか進まない。ここで決めてくれとは言いませんが、お考え、そういうものに踏み出していくお気持ちはございますか。

安倍内閣総理大臣 近年、北極に対しては、米国、カナダ、ロシア、北欧といった北極圏の国だけではなくて、欧州諸国や中国など北極圏以外の国々も高い関心を示し、取り組みを活発化させています。

 北極海航路の利用や北極域の資源開発の可能性、さらには安全保障上の重要性など、北極政策は我が国の国益に直結する極めて重要な課題だと認識をしています。

 政府としては、二年前、我が国初の基本方針となる我が国の北極政策を取りまとめました。現在、この基本方針に基づき、砕氷機能を有する北極域研究船の建造等に向けた検討を行っています。今後、その効果、費用や活用方策も含め、しっかりと検討していく考えであります。

 今後、北極議連の皆様のお力も得ながら、オール・ジャパンで取り組むことによって、北極圏をめぐる国際社会の取り組みにおいて我が国が主導的な役割を積極的に果たしていく考えであります。

新藤委員 いろいろ申し上げました。国難を克服して、新しい日本の未来の扉を開くんだ、切り開いていくんだ、そういう明るい未来に向かったこういう政策をやることが私たちの役割だと思います。しかし、積み上げが必要です。分析が必要です。しっかりと私どもも与党の立場で、議会の立場で応援をさせていただきたいと思います。

 そして最後に、今後の国会運営について、これはもう時間がございませんので、私、思いを申し上げます。

 余りに劇場型、そして、余りに何か、演出とたくらみは紙一重ですよね。私たち国会議員は、与党であろうが野党であろうが、法案を審議して、よりよいものにして、決めて、国を動かしていく、それは野党も与党も変わりません。ぜひ、この原点に我々は戻らなければならない。

 野党の皆さんに言うんじゃないんです。私たち自身だって、野党のときに、三年三カ月、僕らは野党でしたけれども、二百四十二回採決に参加して、二百八回賛成しています。国にとって必要だからです。そして、賛成するためには修正もお願いしました。むしろ、野党の案をほとんどのんでいただいてつくった法律だってある。

 ノウハウは出しました。与党と野党が、最終的には、法案をつくって、国を動かしていくんだという原点に立って、そしてそれぞれの役割分担をする、謙虚に。私たちは聞く耳を持つ。一方で、全員が建設的な態度でやっていかなければ、疑惑の追及はやっていけないわけじゃありません、必要があればやらなきゃいけません。でも、悪魔の証明にならないようにしてもらいたい。

 きちんと議論を深めていって、そして、これから私たちは熟議の国会をやらなければ、これだけの国難を乗り越えていけるのか、新しい未来を開いていけるのか。私は、ちょっと大きなことを言い過ぎかもしれませんけれども、そういう気持ちで、我々、野党のときだってそうだった。皆さんだって、実は民主党もすごく賛成しているんです。やっているんです。だから、そういうことをきちんとお互いに踏まえて、頑張っていこうではないか。

 総理、本当に短くていいので、熟議の国会、気持ち、気合いをいただきたいと思います。

安倍内閣総理大臣 まさに委員のおっしゃるとおりでございまして、しっかりとした熟議の国会にすることで、予算あるいは法案に対する、また条約に対する国民の皆様の御理解を得て、また皆様方の意見も取り入れながら、よりよいものをつくっていきたい、このように考えております。

新藤委員 終わります。ありがとうございました。

田中(和)委員長代理 この際、加藤鮎子君から関連質疑の申し出があります。田村君の持ち時間の範囲内でこれを許します。加藤鮎子君。

加藤(鮎)委員 山形三区選出、自由民主党の加藤鮎子でございます。

 当選二回、期数も浅く、若輩の私にも質問の機会をいただきまして、まことにありがとうございます。

 この時間の主なテーマは農林水産業と伺っておりますので、地方の農村地域に住む方々の気持ちに思いをはせながら、しっかりと質問をしてまいりたいと思いますので、どうぞよろしくお願いをいたします。

 まず、日・EU・EPAについてお伺いをいたします。

 ことしの七月の六日、安倍総理は、日・EU・EPAにつきまして、首脳協議を行い、大枠合意を実現されました。まず、このことの意義や成果につきまして、総理にお伺いをいたします。

安倍内閣総理大臣 日・EU・EPAは、四年以上に及ぶ粘り強い交渉の末に、今委員が御紹介いただきましたように、七月に大枠合意に達しました。保護主義的な動きが強まる中、これは、日・EUが自由貿易の旗を高く掲げ続けるとの世界に対する力強いメッセージになったと思います。

 包括的で高いレベルのバランスのとれたこの協定は、国際貿易・投資の促進に一層貢献し、日本国民、EU市民の双方に大きく裨益するものであり、自由で公正なルールに基づく二十一世紀型の経済秩序のモデルとなるものであります。

 日・EUは、人口六億人、世界のGDPの三割を占める巨大な経済圏であります。日・EU・EPAは、アベノミクスの新しいエンジンであり、政府としては、速やかに協定を署名、発効できるよう、協力していく考えであります。

加藤(鮎)委員 ありがとうございます。

 その日・EU・EPAでありますが、現時点で農水省が作成をしている影響度の定性的な調査を見ますと、幾つか懸念すべき点があるのかなというふうに思います。

 特に、構造用集成材につきましては、国産品と輸入品が競争関係にありまして、国内産のメーカーと、また林業に携わる方々への影響が懸念をされるところであります。関税の即時撤廃は回避されまして、八年かけて段階的に引き下げをしていくということになっていますけれども、オリンピックが過ぎれば、八年後というのは本当にあっという間であります。

 主な産地は広島、岡山、奈良県でありますけれども、私の地元の山形県も林業に大変力を入れておりまして、国内の対策が十分でなければ大変厳しいことになるんじゃないかという懸念の声が聞こえてまいります。

 構造用集成材への対策についての必要性、そして、この後、対策を検討していく予定についてなど、農林水産大臣にお伺いをいたします。

    〔田中(和)委員長代理退席、委員長着席〕

齋藤国務大臣 日・EU・EPAでは、今御指摘のように、構造用集成材等のセンシティビティーの高い林産物につきまして大変厳しい交渉がありました。EUは即時撤廃を強く主張しておりましたが、私ども、力強い交渉をすることによりまして、即時関税撤廃を回避して、今委員御指摘のように、七年の段階的削減を経て、八年で撤廃という大枠合意に達したところであります。

 これによりまして、当面は輸入の急増というものは見込みがたいと思っておりますけれども、構造用集成材等の輸入量のうち約四割をEUが占めているという状況にありまして、国産品はこれら輸入品と競争関係にございますものですから、長期的には関税引き下げの影響が懸念されると考えております。

 このため、十一月二十四日に決定されました総合的なTPP等関連政策大綱、これを踏まえまして、これまでの実績の検証等を踏まえた所要の見直しを行った上で、まずは木材加工施設の生産性向上支援ですとか、競争力のある品目への転換の支援ですとか、あるいは、効率的な林業経営が実現できる地域への路網整備、高性能林業機械の導入等の集中的な実施のほか、さらに、木材製品の国内外での消費拡大対策などの措置をしっかりと講じることについて検討していきたいと思っております。

加藤(鮎)委員 ありがとうございます。ぜひ積極的に国内の体質強化に関しての応援をよろしくお願いいたします。

 日本の農林水産業を取り巻く国際環境は大変大きく変化をしております。今御答弁をいただいた構造用集成材の対策を含めまして、協定発効時に備えた対策をしっかりと進めておくことは大変重要な課題だと思います。

 政府におかれましても、このたびの日・EU大枠合意を踏まえた今後の対策につきまして、先週の二十四日、総合的なTPP等関連政策大綱の方を改定されたと承知をしております。

 少し振り返りますと、TPPの十二カ国による大筋合意がなされたのは二年前の十月でありました。その大筋合意を受けて、政府・与党や省庁間での数々の議論を重ねた結果として、平成二十七年度には三千百二十二億円の補正予算、そして平成二十八年度には三千四百五十四億円の補正予算が計上をされてきました。これらの補正予算のもとに、この二年間、農林水産業の体質強化のための対策がさまざまに講じられてまいりました。また、今この瞬間も全国各地の現場で必死の取り組みがなされているところであります。

 しかし、昨今の報道によりますと、先般、米国を除く十一カ国のTPPが改めての合意に至ったということを受けまして、TPPによる影響が当初アメリカが入っていたときの想定よりも小さくなるであろうから、TPP関連対策の予算の方も縮小、削減するべきではないかという声が上がっていると伺っています。

 私は、日・EU・EPAの大枠合意にも至った今、TPPから米国が抜けたからといって予算を削減する、減額するのではなくて、むしろ、これまで行ってきた体質強化を含む競争力強化、これをしっかり手を緩めずに対策を講じていくべきだと考えますが、これについての総理の御見解を伺います。

安倍内閣総理大臣 TPPや日・EU・EPA交渉においては、農林水産分野について、重要五品目を中心に関税撤廃の例外をしっかり確保し、関税割り当てやセーフガード等の措置を獲得しました。

 それでもなお残る農林漁業者の方々の不安や懸念にもしっかりと向き合い、安心して再生産に取り組むことができるよう、十分な対策を講じていく必要があります。

 このため、平成二十七年のTPP大筋合意以降、TPP対策として、産地の国際競争力の強化や畜産、酪農の収益力強化、農林水産物の輸出拡大などの体質強化対策を実施してきました。さらに、今般、本年七月の日・EU・EPAの大枠合意等を踏まえて総合的なTPP関連政策大綱を改定し、チーズや構造用集成材等についても対策を講じることとしたところであります。

 今後、これまでの実績、検証等を踏まえて必要な見直しを行う。これは、どれぐらい効果があったかということについて当然見直しを行うことは必要だと考えておりますが、平成二十九年度補正予算も含め、農林水産業の強化策等の措置を講じていきます。

 これは、米国が入ろうと入らなくとも、いずれにせよ、農業の強化をしていくことは、体質の強化を図っていくことは重要であろうと考えております。と同時に、輸出力を高めていくことは、これは、農業だけではなくて日本の国力にもプラスになっていくわけでありますから、TPP12が11になったとしても、やるべきことはやっていかなければならない、こう考えております。

 意欲ある農林漁業者が将来に夢や希望を持てるよう、政府一体となって、強い農林水産業の構築に全力で取り組んでいく考えであります。

加藤(鮎)委員 ありがとうございます。

 体質強化の重要度についても御言及をいただいて、前向きに御答弁をいただいたように受けとめさせていただきました。ぜひよろしくお願いをいたします。

 次に、森林環境税の意義についてお伺いをさせていただきます。

 日本国土の約七割を森林が占めています。森林は、国土を守り、豊かな水を育みます。また、大気中の二酸化炭素を吸収して、炭素を貯蔵する役割も果たしておりまして、地球の温暖化防止にも大きく貢献をしています。

 我が国の森林は、戦後の復興や高度成長期にたくさん伐採をされまして、その後、植林をされてきました。今、それから数十年たちまして、こうした森林はなかなか手入れが行き届かずに、暗い山や森が多くなっています。森林を豊かにして、そしてその公益的機能が十分に発揮されるようにしていくためには、これまでの施策に加えて、新たに思い切った森林整備施策、そしてそれをしっかり支える財源の措置が必要だと考えます。

 昭和六十年代から、水源税という名のもとに、森林整備のための財源の主張はされてきました。このたび、とうとう三十年越しでありますが、政府・与党、各関係省庁の御努力によりまして、森林環境税という形で実を結ぼうとしております。今まさに議論が、細かいところが詰められているところかと思いますが、これは必ず実現すべき重要な税制であります。

 この森林環境税の創設につきまして、総理のお考え、そしてあわせて農水大臣のお考えもお願いいたします。

安倍内閣総理大臣 我が国の森林資源については、戦後植林されたものが本格的な利用期を今迎えていると思います。しかしながら、十分に利用されず、また適切な森林管理も行われていないという課題に直面をしております。こうした状況に対応するためには、林業の成長産業化と森林資源の適切な管理の両立を旨として、政策の見直しを行うことが必要だと思います。

 このため、政府においては、現在、森林所有者の経営、管理権限を市町村を介して意欲と能力のある林業経営者に集積、集約化するとともに、経済ベースに乗らない森林については市町村等が公的に管理する仕組みの創設について検討し、年内には森林・林業政策の抜本的な改革プランをまとめることとしております。この中で、市町村が行う森林の公的な管理等の財源についても、森林環境税を含めて検討しているところであります。

 林業の成長産業化と森林資源の適切な管理に向けて、実効性のある施策を推進して、次世代への豊かな森林を引き継いでいきたいと考えております。

齋藤国務大臣 我が国は、二〇三〇年における地球温暖化防止のための温室効果ガス削減目標のうち、二・〇%を森林吸収量により確保するということとしておりまして、このためには、間伐等の森林整備を推進することが必要になっています。

 一方で、今総理お話ありましたように、木材価格の低迷による森林所有者の経営意欲の低下等によりまして、条件不利地等において十分な森林整備を進めることが難しく、政府が掲げるこの森林吸収量目標の達成のためには安定的な財源が必要な状況にあります。

 このため、いわゆる仮称森林環境税について、適切な森林整備により地球温暖化防止や国土保全等の森林の公益的機能を発揮させることを目的として、昨年の政府税制改正大綱におきまして、市町村主体の森林整備等の財源に充てる税として検討し、平成三十年度税制改正で結論を得るとされたことを踏まえまして、総務省と連携して検討を進めているところでございます。

 具体的には、森林所有者の経営、管理権限を市町村を介して意欲と能力のある森林経営者に集積、集約化するということとともに、経済ベースに乗らない森林については市町村等が公的に管理する新たな森林管理システムを創設し、この中で市町村が行う公的管理の経費等に森林環境税の一部を充当する方向で検討しているところであります。

 森林環境税の創設につきましては、今後、年末までに議論されて決まるものと考えておりますけれども、農林水産省としては、新たな森林管理システムのもとで市町村主体の森林整備を進めることによりまして、地球温暖化防止に向けた温室効果ガス削減目標の達成などを図るため、税の創設という結論が得られるよう、全力で取り組んでまいります。

加藤(鮎)委員 ありがとうございました。この森林環境税の趣旨が広く国民の皆様に浸透することを切に願います。

 次に、米政策についての質問に入ります。

 私の出身地は、山形県の誇る米どころ、庄内地方であります。日本人の消費するお米は、少子高齢化そして食生活の変化に伴って、毎年八万トンずつ減っています。米がどんどん売れなくなるんじゃないかという不安にあわせて、集落には若い方々の姿がどんどん少なくなっています。

 そんな中、若者が、よし、この地域にとどまって農業を受け継いでいこう、そう思える環境の整備というのは、農村に住む方々の共通した思いなのではないかと思います。そのような声に丁寧に耳を傾けて、そして背中を押すことは、政治の大切な役割の一つだと考えます。

 先月の解散・総選挙におきまして、私が地元の方々から聞いた大きな声の一つは、やはり、生産調整、これが国の旗振りで行われなくなることへの不安であります。オール・ジャパンで生産調整をしなくなるのであるなら、全国でお米をつくり過ぎて値崩れを起こすんじゃないのかなというような不安の声であります。

 そんな中、自民党は以下のような公約を掲げました。「生産者や集荷業者・団体が中心となって円滑に需要に応じた生産が行えるよう、関係者の主体的な取組を促す全国的な推進組織の立ち上げを支援します。」と。この訴えは農業関係者の方々に好意的に受けとめられていたと感じています。

 国は、三十年産以降の米の需給と価格の安定に向けて、引き続きしっかりと取り組むべきだと考えます。全国的な推進組織に対する国のかかわり方について、農水大臣にお伺いをいたします。

齋藤国務大臣 今委員御指摘の全国組織の件ですが、民間団体主宰の全国組織の構成や機能につきましては、現在、全国農業協同組合中央会を中心に検討が行われておりまして、その検討におきましては、その主な機能として、マーケットインに基づく需要者と産地とのマッチングの支援等が考えられているものと私どもは承知しております。

 国といたしましても、産地と中食、外食事業者等との安定取引に向けたマッチングの取り組みへの支援や、全国の需給見通し等の情報提供を通じまして、民間団体主宰の全国組織への支援を行うことができるのではないかと考えているところでございます。

 なお、先ほどの私の森林環境税の答弁の中で政府税制改正大綱と申し上げましたが、与党税制改正大綱の誤りでしたので、訂正させていただきます。

加藤(鮎)委員 ありがとうございます。ぜひ、需要に応じた生産を担保し得る国としての関与を積極的にお願いいたします。

 今、全国組織への関与について、また需給のマッチングの支援についての大臣のお話を伺いましたけれども、そもそも全国組織へ国からの関与を多くの農業関係者の方が切望する理由は、先ほども申し上げた値崩れの心配であります。

 各地域単位でもしきめ細かく需要にマッチした生産がきちんと行われていれば、生産者の方々の不安の種もぐっと減るわけであります。そこをしっかりと力強く支援していくのが水田活用の直接支払交付金であろうと思います。特に、各自治体で自由度が高く活用できる産地交付金は、そのようなきめ細かい需要に合った生産に対しての後押しとして効果的に活用をされております。

 産地交付金の仕組みを平成三十年を迎えるこのタイミングに国としてより力強く拡充すべきだと考えておりますが、三十年度予算要求における産地交付金の拡充の方向性についてお考えを伺いたいと思います。

 そして、あわせて、済みません、二つ続けてお伺いしたいと思いますけれども、水田活用の直接支払交付金の中には戦略助成作物への支援も含まれております。今度、十アール当たり七千五百円の米の直接支払交付金、これがなくなることに対しても、非常に農家の皆さんは今不安を抱えております。

 しかし、その裏腹で、お米の値段というのはここ三年大幅に上がっております。この三年間だけで三千五百五十九円上昇しています。その背景にあるのが、主食用米から飼料用米へと転換が行われていることがあると思います。この飼料用米への転換は非常に効果があると私は考えておりますので、これに関する助成の交付単価の維持、これもぜひ農家の皆さんの気持ちとして訴えをさせていただきたいと思います。

 あわせて、産地交付金の拡充の方向性、そして飼料用米の交付単価の維持、そしてそれをトータルに合わせた水田活用直接支払交付金の予算の拡充に関しての齋藤大臣のお考えをお聞かせください。

齋藤国務大臣 まず、産地交付金でございますけれども、この産地交付金は地域の裁量で活用可能という基本的な仕組み、これは大事だと思っていますので、これをしっかり維持した上で、三十年度概算要求におきましては、新たに、前年度実績よりも転換作物が拡大をし、主食用米の作付面積が減少した場合には、その面積に応じて支援を行う。あるいは、内外の新市場の開拓を図る、輸出なんかも含めてですけれども、米穀の作付面積に応じて支援を行ったらどうか。それから、水田の畑地化面積に応じて支援を行ったらどうか。こういったものの追加配分ができますように、今、産地交付金の予算確保に向けて努力を行っているところであります。

 また、もう一つ、飼料用米のお話がありましたけれども、来年の三十年産から国による配分を行わないことにするということについては、農家の皆さんの不安も大きいんだろうと思っております。

 そのために、今委員御指摘のように、飼料米をどうやって予算を確保していくかということだと思いますが、水田活用の直接支払交付金による飼料用米等への支援は安定的に実施していくということが極めて大事だと考えております。

 三十年度概算要求におきましては、麦、大豆、飼料用米などの戦略作物助成の現行単価を引き続き維持した上で、これらの生産拡大にもしっかりと対応できる額を確保する。それから、今ありました地域の裁量で活用可能な産地交付金についても、基本的な仕組みを維持した上で、転換作物の拡大に対する支援等に新たに取り組むということをトータルでやりまして、来年、新しい生産調整の仕組みに円滑に移行できるように最善を尽くしていきたいと思っております。

加藤(鮎)委員 ありがとうございます。

 ぜひとも、安定的な助成体系の維持、また、そのためにも、産地交付金の留保の仕組みについても、現場の皆さんが見通しのききやすいような適正な運用改善もあわせて求めてまいりたいと思います。

 今し方、大臣からもお話があったように、需要の拡大の一環として、海外への新市場開拓も、これもまたお米の政策の中で重要であります。

 しかし、農産物の輸出の促進は簡単ではありません。商材の魅力や関税というよりも、規格や衛生面、植物防疫などの非関税障壁がネックになっているのではないかと考えております。

 例えば、私の地元にあります酒田港というのは、小さいけれどもきらりと光る港であります。庄内平野という米どころに位置していながら、この酒田港からは、中国に対してお米の輸出は行われておりません。今、庄内平野でつくられているお米で中国に行っているもののほとんどは、一旦、横浜港へ陸路で運ばれて、そして、その横浜港から、ぐるっと中国の方に運ばれている状態であります。

 なぜかといえば、それは、日本国内で、中国が受け入れることを認定している薫蒸施設というのが横浜にしかないからであります。

 全国各地にある薫蒸施設に中国の方からの認定を取りつけることができたら、輸出の拡大にも拍車がかかるのではないか、このように考えますが、こういったことは民間の努力だけではいかんともしがたいものでありまして、ぜひとも、政府として、国として、しっかりと海外、中国に対しても働きかけていただきたいところであります。

 これは一つの例ではありますけれども、このように、非関税障壁に対して政府がぜひとも御尽力をいただけるとありがたいわけですが、これについて、また農水大臣のお考えを伺えればと思います。

齋藤国務大臣 問題意識は全く同感でございまして、中国向け精米の輸出については、中国側が認めた施設で精米加工と薫蒸処理を行うことが必要となっています。

 したがって、中国向け精米輸出の促進のためには、既に輸出を認められている施設の能力を十分活用するほか、新たな精米工場及び薫蒸倉庫の追加が課題となっていると認識しておりまして、このため、薫蒸倉庫等の追加に向けて、中国側へ必要なデータを提出するとともに、機会を捉えて働きかけを行ってきております。

 問題意識は共有しておりますので、引き続き努力をしていきたいと思っておりますが、一方で、パック御飯については植物検疫の制限がございません。炊飯器も不要で、中国への米輸出拡大に有効なツールであると考えておりまして、中国旅行客向け日本産パック御飯の配布、PR等による認知度の向上ですとか、現地でのパック御飯の販売強化の取り組みもあわせて実施していきたいと考えております。

加藤(鮎)委員 ありがとうございます。

 パック御飯の可能性も踏まえて、生産者の方々にも共有しながら頑張っていきたいと思っております。

 一つ質問を飛ばさせていただきまして、次に、最後の質問とさせていただきます。

 ふるさと納税でございます。ふるさと納税は、地方にとって大変ありがたい制度でございます。全国からお寄せいただいた資金、これをいろいろな地域活性化の取り組みに活用することができます。

 例えば、私の地元の山形県新庄市では、ふるさと納税で集まった資金を待機児童の対策、これに積極的に充てることによって待機児童がゼロになった、このような効果があったというケースもあります。

 また、その支援に対するささやかなお礼の気持ち、つまり、返礼品としてお米や果物などの地域の特産品を送ることがその特産品のPRにつながっています。実際にその特産品を食べてみることによって、ああ、またこの品物を買ってみたい、あるいは、こんな地域に実際に足を運んでみたい、こういうふうに思ってもらえる機会もふえると思います。これはまさに生産者の方々にも大きな励みになっております。

 一方、この返礼品につきましては、議論を呼んでいる側面もあります。一部の地方自治体が家電製品や商品券、あるいは宝飾品などを送っているということが報道で大きく取り上げられました。本来のふるさと納税の趣旨とは違うんじゃないかという声も上がりました。

 私自身も、この過熱ぶりを放置しておきますと、ふるさと納税そのものに対する批判につながりかねないという心配をしておりましたところ、政府の方も、通知を発出するなどして、見直しの働きかけをしていらっしゃるというふうに承知しております。

 何がよくて何が悪いかは、さまざまな御意見もありますが、結局は、ふるさと納税が見返りのない寄附であることを前提に、各地方自治体が良識を持って対応するということが大事なのではないかと感じます。その意味で、農産品の試食を通じてPRするということは、社会常識としても理解されるところがあると私は考えます。

 そこで、野田総務大臣にお尋ねをいたします。

 利用者もふえて、地域にとってますます重要となってきたふるさと納税につきまして、地方自治体はどのように対応していくべきか、活用していくべきか、大所高所からの大臣のお考えをお聞かせください。

河村委員長 総務大臣野田聖子君、時間が来ております。簡潔にお願いします。

野田国務大臣 ふるさと納税への御理解をいただき、ありがとうございました。

 ふるさと納税というのは、みずから離れてしまったふるさとを思い、または、みずから縁があって好きになった地方に対して応援をする気持ちの橋渡しをさせていただいています。

 その結果、今お話があったように、地方みずからが財源を得て、そして、その地域に必要なさまざまな施策に対して実現ができるという大変重要な役割を果たしている制度ではないかと思っています。

 返礼品につきましては、ネットサイトとか、または、ふるさと納税の本というのも売っていて、それをごらんいただくと、本当に全国津々浦々のすばらしい農林漁業を初めとするそういうものを一堂に拝見することができて、まだまだ日本の農業の魅力、強みというのを実感することができるいい制度だと思います。

 行き過ぎた返礼品につきましては、今御案内のとおり、四月に通知を出させていただきまして、やはり何が一番地域にとっていいことであるかというのを御理解いただくような努力を進めているところです。

 今後は、今、加藤委員がおっしゃったように、ただ返礼品ではなくて、そこに行ってみたいと思う気持ちから、最終的にはそこに住んでみたいと思ってもらえるような取り組みをしていただくこととか、そこに何かをつくり出してくれる人に対して、クラウドファンディングのように応援していくような仕組みを重ねることによって、本当に地域の頑張り、地方の頑張りが見られるようなよき制度に育てていきたいと思っています。御支援よろしくお願いします。

 ありがとうございました。

加藤(鮎)委員 以上です。

河村委員長 これにて田村君、菅原君、新藤君、加藤君の質疑は終了いたしました。

 次に、石田祝稔君。

石田(祝)委員 公明党の石田祝稔です。

 きょうは、久しぶりにこの予算委員会の基本的質疑で、全ての大臣にお出ましをいただきまして、質問をさせていただきたいと思います。

 先月の二十二日に総選挙がございまして、その後、十一月一日に国会が開かれた。その後、総理が、トランプ大統領を迎える、そしてAPEC、ASEANに行かれて、十七日に所信表明演説がありました。その間、外交の分野で、私が見ておっても、総理は、体が大丈夫かなと思うぐらい首脳会議とバイの会談を大変こなされております。

 ですから、私は、そのトランプ大統領との会談、またAPEC、ASEAN首脳会談、TPPにつきましては後ほどお聞きをいたしますけれども、そういう中で習近平国家主席、また李克強総理とお会いになっている、また、そのほか多くの国とのバイの会談をやっておりますけれども、きょうはそこには触れませんので、特に日中、日韓関係についてちょっとお伺いをしたいと思っているんですけれども、お話しできることもできないこともあろうかと思いますが、日中の関係で、それぞれ大変重要な方とお会いをしているわけですから。

 そしてもう一つは、北朝鮮の問題について、今も新藤議員からお話がありましたけれども、実は、日本と韓国とそして台湾以外、このアジアで北朝鮮との国交がないのはその三つだけだと。ですから、このAPEC、ASEANの会合を通して、総理も、北朝鮮に、それらの国交のある国から、国連の決議を守るように、こういうお話もなさったんではないかと思いますけれども、外交について総理の、APEC、ASEAN等含めての、どういうことであったのか、まずお聞きしたいと思います。

安倍内閣総理大臣 まず、APEC首脳会議においては、自由で公正な通商ルール形成に向けた我が国の積極的姿勢を訴え、各国首脳の賛同を得て、多角的貿易体制の支持、公平な競争条件の確保など、首脳宣言に明記することができたと思っております。

 また、ASEAN関連首脳会議においては、北朝鮮を初めとする安全保障分野の課題について、我が国の立場を強く訴えたところであります。その結果、東アジア首脳会議の議長声明において、北朝鮮については、これまで北朝鮮の文脈では使用されてきていない、非難するとの強い表現が盛り込まれたほか、拉致問題を解決することの重要性も強調されたところでございます。

 私としても、出席国各国に、北朝鮮に対しての認識について強く訴え、しっかりと国際社会が連携して北朝鮮の政策を変えさせることが必要であり、その意味においてはしっかりとした力強い声明を出す必要があると訴えてきたところでございますが、その成果が出てきた、こう思っております。

 そしてまた、日中関係につきましては、今回、習近平国家主席及び李克強総理とそれぞれ日中首脳会談を行いました。日中韓サミットを早期に開催して李克強総理の訪日を実現し、その後私が訪中し、その後には習主席に訪日していただきたい、こう考えています。

 本年は日中国交正常化四十五周年、来年は日中平和友好条約締結四十周年という節目の年であり、戦略的互恵関係のもと、大局的な観点から日中友好協力関係を安定的に発展させていく好機である、こう考えております。

 今回の例えば習近平国家主席との首脳会談においては、同時通訳を使って四十五分でございますから、逐語通訳の一時間半分、かなり内容のある首脳会談を行うことができた、こう思っておりますし、会談の雰囲気は大変率直な、くつろいだ雰囲気の中で率直な、胸襟を開いた意見交換を行うことができた、この日中間の新たなスタートとなった、こう思っております。その意味のある首脳会談であった、こう思っているところでございます。

 韓国につきましては、戦略的利益を共有する最も重要な隣国であり、特に北朝鮮の問題への対応に当たっては、日韓及び日韓米の緊密な連携が重要であります。日韓両国の間に存在する困難な問題を適切にマネージしつつ、さまざまな分野における対話や協力を進め、未来志向の日韓関係を発展させていきたい、こう考えております。

石田(祝)委員 この選挙が終わってから、私は、そういう外交面では非常に大きな成果があったのではないか、こういうふうに思っております。

 それで、今総理もお話があったように、ことしが日中国交正常化四十五周年、そして明年が平和友好条約四十周年と、非常に日中にとりましても節目のことし、来年になると思うんですね。そういう意味では、今までどちらかというとちょっとぎくしゃくしていた感じもありますけれども、これが前向きに進んでいるのではないか、こういうふうに私も評価したいと思うんです。

 ある報道なんかによりますと、以前の総理と習近平さんの写真と最近の写真を両方比べて、随分表情が変わっているじゃないかと。これはいい意味で変わっているということで、やはりどこか関係性というのがツーショットの写真にも出てくるのかなと。ですから、この機会に私はぜひ前に進めていただきたいというふうに思っております。

 それで、今お話もお伺いしましたけれども、これからさらにこれを前に進めていくということで、日中関係をどういうふうに改善なさっていくか、そしてまた、もう一つは日韓関係なんですね。

 今回、韓国の大統領とはお会いをしてお話ししたような形跡がないわけでありますけれども、実は、我が党の代表の山口も二十二日から韓国を訪れまして、韓国の大統領と会談をした。総理からは、これは政府・与党と一体となって外交を進めていこう、こういうお話も承って、親書もお預かりをして韓国に行った。

 そして、その会談の中で、大統領も、早く日中韓サミットで日本に行きたい、こういう希望を持っている、そして、そのサミットについては韓国の大統領からも習近平さんに話をしている、こういうことが我が党の代表の山口との会談の中でも触れられた、こういうお話もございます。

 ですから、まず、日中間、日韓関係について、今お話もいただきましたが、再度総理の前向きな決意をお伺いいたしたいと思います。

安倍内閣総理大臣 文在寅大統領とは、今まで首脳会談も行い、また電話会談等も適宜行ってきているところでございます。

 今回のAPECあるいはEASにおいては、日韓首脳会談は行わなかったところでございますが、さまざまな場で接触する機会はございました。そこでのやりとりについては控えさせていただきたいと思いますが、両国は戦略的利益を共有する最も重要な隣国であり、我々としても関係を改善していきたい、こう思っているわけであります。

 日韓関係の場合は、さまざまな困難な問題があるのは事実でございますが、それをしっかりと両国が適切にマネジメントしていくことが重要であろう、こう考えているところでございます。その意味におきましても、なるべく早い時期に日中韓の首脳会合を行いたい、こう考えております。

 そして、中国につきましては、まさに来年は日中平和友好条約締結四十周年を迎える。ことしが四十五周年でありましたが、来年が条約締結の四十周年でございますので、それに向けまして関係をさらに発展させていきたい、こう思います。関係を発展させていく意味におきましては、先般の習近平国家主席との首脳会談はそのよいスタートとなった、こう考えている次第でございます。

石田(祝)委員 最初に申し上げましたように、アジアの中で北朝鮮と国交がないのは日本と韓国と台湾だ、こういうことを私の前の新藤さんがたしか質問の中でも触れられておりましたけれども、そういう意味では、北朝鮮に対しては、周辺各国とも理解を得て、そして、ある意味では国連決議を守ってくれということをやはりそれらの国からもしっかり言ってもらう、こういうことが非常に私は大事ではないかなというふうに思っております。

 そして、この北朝鮮の問題については、私は中国も非常に大事だと思うんですけれども、ロシアという国も非常に重要な役割を果たすのではないか。そういう中で、総理はプーチン大統領とはもう二十回会われているんですか。二十回も会っている人は余り世界でいらっしゃらないんじゃないかというふうに思いますけれども、北朝鮮問題についてはロシアにもしっかりと働きかけていただくということも、機会があればぜひ話をしていただきたいなと思います。

 それで、私がもう一つお聞きしたいのは、自由で開かれたインド太平洋戦略。これはトランプ大統領も触れ出して、一体いつごろから総理がお話しし出したのかな。随分前からそういうお話もなさっていたように聞きますけれども、この自由で開かれたインド太平洋戦略、これは総理の口から簡単に、こういうことだ、これで日本は外交戦略を立てていくんだ、こういうことをお話しいただければと思います。

安倍内閣総理大臣 この自由で開かれたインド太平洋戦略でございますが、第一次安倍政権の際、私がインドを訪問いたしまして、インドの国会で演説を行いました。

 その際、私は「二つの海の交わり」という題名の演説を行ったところでありまして、これはまさに二つの海、つまりインド洋と太平洋であります。つまり、このインド洋と太平洋において、民主主義国家である普遍的価値を共有する日本とインドが協力をしていくことによって、この海を自由で開かれた国際社会の公共財として地域や世界の繁栄のために活用していこう、その中において日本とインドが協力をしていくことは極めて重要だ、そういう考え方のもとにお話をさせていただいたところでございます。

 その後、日印、日米豪印、この協力も極めて重要であるという趣旨の話も述べてきたところでございまして、また、第二次安倍政権になって以降も自由で開かれたインド太平洋戦略ということを申し上げてきたところでございますが、トランプ大統領が訪日をした際に、かねてより日本が、私も提唱してまいりました自由で開かれたインド太平洋戦略を日米で協力して進めることで一致をしたということでございます。

 東アジア・サミットや各国首脳との会談等でも私からこの戦略について丁寧に説明をし、豪州、インドを初め多くの国から賛同を得ることができました。

 こうした考え方に賛同してもらえるのであれば、中国も含め、いずれの国とも協力していけると考えており、関係国と連携しながら協力を具体化していく考えでございます。

 今申し上げましたように、これは決して排他的なものではないわけであります。もちろん根底には、この海を自由で開かれたものにしていく。その意味におきましては、普遍的価値を共有する国々がしっかりと協力をしてさらにその輪を広げていくことが大切だなという基本的な考え方はあるわけでありますが、この基本的考え方に同意していただける国にはどんどん入っていただきたい。もちろん、中国を初めどんどん多くの国に賛同していただき、そういう海にしていきたい。

 具体的には、航行の自由、法の支配などの基本的価値の普及、定着、インフラ整備等を通じた連結性の強化などによる経済的繁栄の追求、そして、海洋法執行能力の向上支援や、防災等を含む平和と安定のための協力を進めていくということでございます。

石田(祝)委員 インド、太平洋とつながっていきますと、東からいくと太平洋、インド洋、そうしたら、その先にアフリカがあるわけですね。総理も昨年、TICAD6ですか、そこで、アフリカでそのような趣旨の演説もなさっておりますので、ちょっとそれも拝見をいたしました。これはぜひ積極的に進めていただきたいと思います。

 それで、アメリカが北朝鮮をテロ支援国家ということで再指定する、こういう動きがありまして、そして総理もそれについては支持をする、こういうこともおっしゃっておりますけれども、アメリカがテロ支援国家に再指定をして、では具体的にどういうことができるか。

 今までも制裁を随分国連決議を受けてやっておりますから、余りやることがないのではないかと言う人もおりますけれども、このアメリカの北朝鮮に対するテロ支援国家の再指定、これを受けて日本としてどういう行動を総理としてはお考えになっているのか、よろしくお聞かせをいただきたいと思います。

安倍内閣総理大臣 今回のトランプ大統領の訪日に際しまして、トランプ大統領との間で、北朝鮮に政策を変更させるために、あらゆる手段を使って北朝鮮に対する圧力を最大限にしていくことで一致をしたところでありますが、その観点から、私からトランプ大統領に、米国による北朝鮮のテロ支援国家への再指定について働きかけを行ったところでございます。

 これを踏まえて、今般、米国が北朝鮮のテロ支援国家への再指定を決定したことは、北朝鮮に対する圧力を強化するものであり、我が国はこれを歓迎し、支持をするところであります。

 我が国としては、日米、日米韓で協力し、中国、ロシアを含む関係国とも緊密に連携しながら、安保理決議の完全な履行を通じて国際社会全体で北朝鮮への圧力を高め、北朝鮮の核、ミサイル、そして何よりも重要な拉致問題の解決に向けて全力を尽くすところでございます。

 つまり、米国がいわばテロを支援している国家として北朝鮮を指定したという意味は国際的に極めて大きなものがある、こう思います。国連制裁決議のような具体的に何をしていくということを国際社会で決めたものではございませんが、米国が法に基づいて指定しているということは、これは極めて重要な圧力になっていく、こう考えております。

石田(祝)委員 この北朝鮮の問題は、核、ミサイルそして拉致の問題と、我が国にとって解決しなきゃならない非常に重要な課題を抱えております。

 そして、私は最近特に思うんですけれども、だんだんと能力を開発していって、核の開発もしている、そして、それを運ぶ運搬手段のミサイルも能力をどんどんどんどん向上させていっている。このままいったら、ある意味でいえば、北朝鮮を中心にしてコンパスで円を描いたら、ヨーロッパまで入ってくる時代が必ず来るんですね。

 ですから、私は、北朝鮮と外交を結んでいるヨーロッパの国も、これはほっといたら人ごとじゃないぞ、こういう認識はぜひ総理からも、いろいろなところで外交関係の中で申し上げていただきたいなというふうに思っております。

 では、続きまして、私、会計検査院の報告について少々お伺いをいたしたいというふうに思います。

 先週二十二日に会計検査院の報告が出されたわけであります。三月六日に参議院の予算委員会で国会法に基づいて検査を要請されて、その結果が十一月二十二日に発表になった、公表になった、こういうことであります。

 私もこの報告の冊子を二度ほど読ませていただきましたけれども、結果は、検証ができないというんですか、確認ができないという言葉がすごく出てまいりまして、要するに、いろいろなこと、いわゆるこれは一種の公権力の行使ですから、このときに行政が何をしたのか、こういうことを説明して振り返るためには、二つしかないんですね、記憶に頼るか、記録に頼るか。この記憶と記録ということになると、記憶は、それぞれ曖昧な部分もあります、人によっては受けとめ方が若干違ったりする。ですから、やはりトレースするためには記録を残すということが大事なんです。

 しかし、残念ながら、今回、会計検査院のこの報告を見ると、いろいろな意味で、財務省と国土交通省はいろいろとやられてはおるんだけれども、しかし、それの適正性を担保するもの、いわゆる一種の物がない。それは、それぞれの文書管理規程にのっとって処理をされているということは、これも書いてありますけれども、しかし、なくなったものをなかなか復元するのももちろん難しいわけであります。

 ここのところで、私は、会計検査院として、財務省、国交省にさらにこれからしっかりやってもらいたい、最後はこういうことになっておりますけれども、特に、国民の財産である国有財産、その普通財産としてやられているものについての処分、これについてのさまざまな問題でありますから、これは、この問題だけというわけではなくて、では今までたくさんやられているさまざまな手続がどうだったのか、こういうことにもなりかねませんので、ここについては、今後の対応も含めて、まず財務大臣、そして国交大臣にお聞きをしたいと思います。

麻生国務大臣 会計検査院の報告、これは、国会からの要請に基づいて、独立したいわゆる行政機関が実施したものでありますので、その指摘につきましては重く受けとめなければならないのは当然かと存じます。

 今回の会計検査院の報告では、これまでの国会などでの議論を踏まえて、国有財産の管理、処分につきまして、公共性が高い随意契約、これは、売却価格を全て公表するなど手続の明確化を図る、また、売却価格の客観性というものを維持する、確保するために、特殊な事案につきましては、第三者による算定、確認を行う、そして、適切かつ十分な文書管理の徹底を図るという方針で今後見直しを行ってまいりたいと思っております。

 具体的な内容につきましては、財政制度審議会の国有財産分科会というのがございますので、そこにおいて、有識者の意見を踏まえて検討を行わせていただきたいと考えております。

石井国務大臣 森友学園の国有地売却に関します会計検査院による検査につきましては、これまで国土交通省としても最大限の協力をしてきたところであります。

 今回、会計検査院からは、仮定の仕方によっては処分量の推定値は大きく変動する状況にあることなどを踏まえれば、撤去、処分費用を算定する際に必要とされる慎重な調査検討を欠いていたこと、文書の一部が保存されておらず、詳細な内容を確認することができないことなどについて指摘されているところでありまして、国土交通省といたしまして、その結果については重く受けとめなければならないと考えております。

 国土交通省としましては、この検査結果や国会等での御議論も踏まえまして、今後、より丁寧な事務の遂行に努めてまいりたいと存じます。

 第一に、今後、同様の事務を遂行するに際しては、見積もり業務に必要な作業時間をしっかりと確保することといたします。

 第二に、見積もりに係る手続等の明確化を図ります。例えば、地下埋設物の見積もりの根拠を十分に確認することや、見積もりの根拠となる資料を適切に作成し保存することなどについて速やかに検討いたします。

 第三に、行政文書のより適切な管理を図ります。具体的には、見直し後の行政文書の管理に関するガイドラインに基づきまして、行政文書の作成、保存等について、より適切かつ十分な文書管理を徹底いたします。

 国土交通省といたしましては、これらの取り組みを通じまして、より丁寧な事務の遂行に努めてまいりたいと考えております。

石田(祝)委員 これは独立した会計検査院からの指摘、報告だということで重く受けとめる、こういう両大臣からのお答えだったと思います。

 しかし、私も公務員として仕事をしたことがございますけれども、大体、結論を出すとき、どういう形でこういう結論を出したのか、誰に対してこれをやるのかということについては、いわゆる公文書、準公文書というんですか、管理の番号もとって、これは全部裏に必要な書類、そういうものをつけて、それはそれぞれ保存年限というのは決まっておりますから、それに従ってやられたというふうに思いますけれども、残念ながら、振り返ってみると、今回の会計検査院の指摘では、要するにほとんどのところが確認ができなかったになっているんですね。私が最初に申し上げたように、適正性の確認ができない、結局、振り返ってみたときにわからない。ですから、会計検査院もそれなりの数字を出してやっていますけれども、結局、自分たちの数字が絶対正しいということはしていないんですね。

 これは要するに、地面の中のものというのはやはり掘らなきゃ、全部出せば一番わかりますけれども、そんなことはできないので、これについては、作業時間をしっかり確保して、丁寧に慎重にやってもらいたい、こういう結論になっているんですね。

 ですから、これはこういう形で一度検査院から報告が出ましたから、二度とこういうことがあったら、これは要するに、では公権力の行使とは一体何なんだ、こういうことで言われかねないわけですね。最初に申し上げたように、過去をトレースするには記憶と記録しかないんですから、記録の方をしっかりとこれは担保していく、こういうことだろうというふうに思っております。

 これについてもうこれ以上は両大臣にお聞きしませんけれども、こういうことを二度と起こさないという観点で、どういう対応を考えていらっしゃるのか、最後に総理にこの件についてお聞きをします。

安倍内閣総理大臣 公文書管理については、さまざまな御指摘をいただいたことも踏まえ、国民への説明責任を全うするという公文書管理法の趣旨をより一層徹底し、公文書管理制度に対する国民の信頼をより一層高いものとするよう、行政文書の作成、保存に関する基準の明文化、文書の正確性の確保等を内容とする行政文書の管理に関するガイドラインの改正を年内に行うこととしております。

 具体的には、政策立案や事業の実施の方針等に影響を及ぼす打ち合わせの記録については文書を作成することを義務づけ、意思決定過程や事業の実績の合理的な跡づけ、検証に必要な文書は原則一年以上の保存期間を義務づけ、相手方の省庁と相互に確認するなど、可能な限り内容の正確性を確保することを義務づけすることなどを定めることとしております。

 また、公文書を扱う職員一人一人の意識をより一層高めていくことも重要であることから、各府省職員向けの研修の充実等を図るなど、公文書管理の質を高めるための取り組みを進めてまいりたいと思います。

 こうした取り組みを不断に行う中で、制度の見直しの必要があれば、法改正も含めて検討してまいりたいと思います。

石田(祝)委員 年内にまとめられるということですから、これについてはぜひしっかりとお願いをしたいというふうに思っております。

 では、続いて、私、順番を変えまして、教育についてちょっとお伺いをいたしたいというふうに思っております。

 私も、政調会長として、この衆議院選挙、どういうことを有権者の皆さんにお訴えをするか、こういうことで、教育負担の軽減、こういうお約束をして選挙戦を戦ってまいりました。

 ですから、選挙で約束をした、選挙で公約をした、これは非常に私は重く受けとめなければならないし、これについては、私は党の立場として選挙をやったわけでありますけれども、連立政権をつくった以上、政府の側にも、そういう政策を掲げて選挙をやったということをぜひ重く受けとめていただきたいというふうに思っております。

 その中で、今回の選挙をちょっと振り返ってみると、九月の二十五日に総理が記者会見をして、解散をすると。そして、何を問うんだといったときに、全世代型の社会保障にする、そして消費税を一〇%に上げたときの財源の一部で教育に投資をするんだ、使うんだ、こういうお話をされました。

 そして、幼児教育の無償化、高等教育の問題、さまざまお話をされまして、我が党も、これはもともとの社会保障と税の一体改革のときに、いわゆる社会保障にこれから使うんだ、年金、医療、介護。そして、そのときの議論ではいわゆる少子化対策もたしか入ったと思うんですね。そういう中で、少子化対策の中で総理もこれはやろうとされているのかな、こういうふうにも思いました。

 しかし、党としてはこれはしっかり、総理がそういう、ある意味でいえば社会保障のお金を、いわゆる消費税の使い道を若干変えるということ、これについては、これは総理の提案だということで、私たちも翌日、党で政調全体会議を開いて、もともと教育については我が党も、以前の政権合意のときから、段階的にでも幼児教育の無償化もやっていこう、こういうことも合意をしてまいりましたので、方向性としては、私は、総理のおっしゃっていることは我が党と考え方と方向性は同じだ、こういうことで、総理のお考え方については、これは我々としてもそうだ、こういうことになって、我が党もその上に立って教育負担の軽減、こういうことをお訴えしたわけであります。

 それで、私は改めて憲法をちょっと見直してみたんですね。もう皆さん御存じだろうと思いますけれども、ちょっと申し上げたいんですけれども、憲法第二十六条に「すべて国民は、法律の定めるところにより、その能力に応じて、ひとしく教育を受ける権利を有する。」と、ここで「権利を有する。」と書かれております。その次に「すべて国民は、法律の定めるところにより、その保護する子女に普通教育を受けさせる義務を負ふ。」、こういうことが書かれております。そして「義務教育は、これを無償とする。」

 ですから、これはあえて教育と義務教育とを分けているわけですから、最初に書かれている教育というのは義務教育を含むもうちょっと広い概念で、いわゆる能力がある人はひとしく教育を受ける権利があるんだ、こういうことはもう既に憲法に書かれている。

 そして、もうちょっと見てみたら、日本国憲法というのは国民の権利をたくさん書いてありますけれども、義務は、私の知る限り、義務というのは、子供に教育を受けさせる義務、そして勤労の義務、これは権利でもあるんですけれども、もう一つは納税の義務。義務と書かれているのは、私の勉強不足かもしれませんけれども、この三つしかないんですよ。ですから、普通教育を受けさせる義務を国民は全部負っている。

 そういう中で、その対象の子供たちは教育を受ける権利がある、こういうふうに書かれておりますので、幼児教育、そして義務教育、そして高校、高等教育とさまざまな段階がありますけれども、そういう意味では、総理がおっしゃった社会保障を全世代型にしていく、そういう中で教育に力を入れていく、こういうことは私は大変すばらしいことだというふうに思っております。

 それで、私は、ある意味では総理を、ちょっと失礼になるかもしれませんけれども、ちょっと見直したというところが実はありまして、見直したと言うとこれは総理に失礼なんだけれども、実は去年、給付型奨学金、これをぜひやりましょう、こういうことで官邸に参りました。そのときに、総理の反応というんですか、非常に前向きだった。いい意味で私は驚きました。

 いろいろな意味で、世間の人はいろいろなことを言うんですけれども、言っていいかどうかあれですけれども、総理の顔は戦争をしたがっている顔だと言う人がいるんですよ。そんな顔ありますか。私は、会ったときに総理がいかに教育に対して熱心かということをよくわかりました、こういうことを申し上げたことがあります。

 それで、総理の口からぜひ、なぜ教育が必要なのか。要するに、今回は残念ながら政策パッケージで二兆円の、そういうお金の使い方を、教育に使うんだということが余りにも出過ぎて、では教育とは一体何なんだと。

 これはどうしてかといいますと、高齢の方からしたら、消費税を上げた分は、私たちの例えば年金だとか医療だとか介護だとか、こういうことに使ってくれるはずじゃなかったのか、こういう疑問もあるわけです。

 そういう中で、どうしてそこの使い道を選挙をやってまで国民に問うて、そして教育に力を入れていくのか、教育とは一体どういうことなのか、こういう疑問が実は私にもぶつけられたんですね。

 ですから、総理の口から、教育がいかにこれからの日本にとって大事か、このことをぜひお話ししていただきたいということで、質問をいたします。

安倍内閣総理大臣 人間はさまざまな可能性を持っているわけでありますが、しかし、教育を受けることによってその可能性は初めて開花していくんだろう、こう思うわけでございます。いわば、その人が持っている才能を生かし、その人の人生を歩むことができるのは教育を受けてのみ可能となるわけでありまして、その意味においては、義務教育についてはしっかりと国が全面的に、これはまさに国の責任において教育を行っていくということであります。

 と同時に、いわば日本の人口が減少していく中においては、全ての子供たちがその可能性を開花できる、そういう日本にしていかなければ日本として立ち行かなくなるわけでありますし、また、それぞれの日本人がそれぞれの人生を歩む上においても極めて重要であろうと考えるわけであります。

 そして、今般、幼児教育の無償化、そして同時に、どんなに貧しい家庭に育っても専修学校や大学にも行くことができる、そういう日本にしていくべく、我々は今回の選挙においてお約束をさせていただいたところでございます。

 今般、石田先生に私のことを、ちょっとではあったんですが、見直していただいて大変光栄に存ずる……(石田(祝)委員「大いに見直しました」と呼ぶ)大いに見直していただいて大変ありがたい、こう思っておりますが、しっかりと教育の重要性についても訴えていきたい、こう思っている次第でございます。

石田(祝)委員 私も、教育こそ日本の未来を開く、そしてまた本人にとっても、やはり自分自身の未来を開くのは教育しかない、こういうふうに思っております。

 特に高等教育については、高校を出られて自分は働くんだ、社会に出るんだという方もいらっしゃいますから、無理にということはないんですけれども、意欲と能力に応じて、家庭の経済状況に関係なくやはり能力を開花させる、その大きな助けになるのは教育だ、私はこういうふうに思っております。

 私の記憶で間違いなかったら、人間の欲求段階というのは六段階あって、例えば食欲だとか物欲だとかありますけれども、最後のところの一番の本人の欲求というのは自己実現だそうですね。マズローというたしか学者だと思いますけれども、自己実現というのが最大の自分の欲求だと。私は、それはある意味では教育しかない。こういうことを前提にして、それで、先ほど総理に申し上げたこと、ちょっと失礼の段があったらお許しをいただきたいというふうに思います。少々じゃなくて大いに教育に熱心だということがよくわかりましたので、よろしくお願いしたいと思います。

 幼児教育の無償化については、私も全く賛成でございます。

 その中で、これは茂木大臣にお聞きをしたいんですけれども、この政策パッケージに、幼児教育の無償化の中で、この議論の中、午前中にもあったかと思いますけれども、いわゆる認可をされていない保育所、保育施設、こういうところについて対象になるのかならないのか、こういう議論が選挙が終わって出てきたように思うんです。責任大臣として、茂木大臣、いわゆる、一言で認可外というふうに申し上げて、種類はたくさんありますから認可外というくくりでお話をお聞きしますけれども、これについてはどういう議論になっているのか、入るのか入らないのか。どうでしょうか。

茂木国務大臣 まず、我々として、与党で、全ての子供たちについて、幼稚園、保育園、無償化する、これはしっかり国民との約束ですから守ってまいりたい。その上で、幼稚園、保育園、認定こども園以外の無償化の具体的な対象範囲につきまして認可外が入らない、こういった議論をしたことはございません。

 先週、公明党の方からも具体的な御提言もいただいておりますので、それを踏まえて、今後、専門家の声も反映する検討の場、こういったものを設けて、来年の夏までに結論を出していきたい。

 幼児教育は極めて重要でありまして、教育、エデュケーション、もともとはラテン語のエデュコという言葉からきておりまして、エデュコというのは引き出す、まさに能力を引き出すという意味で、幼児教育が持っている意義は極めて重要だと思っております。

石田(祝)委員 適切な結論をお出しいただきたいと思います。

 茂木大臣が、ラテン語ですか、私はラテン語は全然わかりませんけれども、エデュケートというのは引き出す、こういうことだというふうに理解をさせていただきました。

 それで、私は、幼児教育の無償化について、若干、公明党は、ゼロ歳から五歳ということで、〇―二と三―五を分けておりませんでした。これについて、私たちは全体的な無償化をすべきだと思いますけれども、まず〇―二については、待機児童の問題も大事だな、こういうことも考えておりますので、ぜひ来年六月までに適切な結論を出していただきたいというふうに思っております。

 それと、これは選挙で私どものお訴えしたことで、いわゆる私立高校の実質無償化、こういうことを私たちは掲げました。これは、全てという意味ではなくて、年収五百九十万円未満の御家庭で私立高等学校に通わせている御家庭を応援ができないか、こういうことでございます。

 これは、私立高校に行かれている方もたくさん実はいらっしゃるわけですね。全てが全て、家庭にお金があって、また自分が望んでという方ばかりではなくて、やはり、ちょっと点数が足りなかった。しかし、今はもう九八・七%が高校に行っているわけですから、そういうことを考えると、やはり私立高校はなかなか授業料が、今、公立は就学支援金で、大体、公立高校については実質無償化をされている。しかし、私学、私立高校との授業料の差、これは非常に大きいものがありますので、ここを何とか応援していこうではないか。

 私は大学を、総理も高等教育を応援しようと。こういうことは私は大賛成なんですけれども、その高等教育の前に、やはり高校に行かなくちゃいけないんですね。まあ、いろいろな資格を取って行かれる方もいますけれども、普通はやはり高校に行って、そしてそこで勉強して、就職するのか、または大学に進学をするのか。途中で予備校に行かれる方もいるかもしれませんけれども。

 そう考えると、幼児教育の無償化をやる、そして小中は義務教育だ、そして高校がなくて、ぽんと高等教育と。高校のところの、特に私学、私立高校に行かざるを得なくなっている、そういう御家庭をやはり、お金持ちばかりではないので、そこに就学支援金との差を応援するということを私たちは提案して選挙戦をやったわけであります。

 これについては総理も真剣に考えている、こういうこともお聞きをしたこともございますけれども、改めて、総理のお考え、これは私はぜひやってもらいたいと思いますけれども、いかがでしょうか。

安倍内閣総理大臣 どんなに経済的に厳しい家庭に育っても、意欲さえあれば高校や専修学校や大学にも進学できる、そういう日本にしていかなければならないと考えておりますが、私立高校の授業料の無償化については、先般の総選挙の前に行われた党首討論において山口代表からの申し入れがございました。また、御党からも御提言を、石田委員からも御提言をいただいたところでございまして、今後しっかりと取り組んでいきたい、こう考えております。

石田(祝)委員 総理から、しっかり考えていく、こういうことでございますので、ぜひこれを進めていただきたい、このことを私は申し上げておきたいと思います。

 それで、時間の関係もありますので、給付型奨学金についてちょっとお伺いをしたいんです。

 先ほどもちょっと触れさせていただきましたが、この給付型につきましては、財政当局は非常に厳しかったんですけれども、ある意味では総理が御決断をいただいたんじゃないのかな、こういうふうに私は思っております。

 ですから、奨学金については、以前にもこの予算委員会で、通常国会の予算委員会だったと思いますが、私も自分の体験を踏まえて、奨学金がいかに大事か、家計が厳しい方にとって上の学校に進むか進まないかという大きなメルクマールになる、こういうことも申し上げた記憶がございます。

 それで、給付型奨学金が先行的に本年度から実施をされて、来年からは本格的な実施だ、こういうふうになって、来年は大体二万人、こういう規模でスタートする、こういうことになっているわけであります。それをさらに総理は、給付型奨学金については、いわゆる住民税の非課税家庭のような大変厳しいところについては大幅に拡充するんだ、内容も拡充するし、人数もふやすんだ、こういうことを私もお聞きしておりますけれども、改めて、この給付型奨学金について、総理のお考えをお述べいただきたいと思います。

安倍内閣総理大臣 今まで日本は、給付型の奨学金はなかったわけであります。今般、石田先生初め公明党の皆様の御要望、あるいはまた自民党からの要請等もございまして給付型の奨学金を創設したわけでございまして、また同時に、無利子の奨学金も大幅に拡充したところでございます。

 今後、給付型の奨学金あるいは学費の減免等をさらに拡充していきたい、このように考えております。

石田(祝)委員 教育については終わりますけれども、かつて、イギリスのブレア元首相は、一に教育、二に教育、三、四がなくて教育と言ったかわかりませんけれども、やはり教育だ、こういうことをおっしゃったような記憶もいたしております。

 私は、先ほど申し上げたように、自分の未来を開くのも、また日本の将来を開いていくのも教育しかない、こういうことだと思っておりますので、これからもしっかりと取り組んでまいりたいと思います。

 それでは、先ほどちょっと冒頭に申し上げましたAPEC、またASEANのとき、そのときにいわゆるTPPの閣僚会議も開かれて、これについては茂木大臣が非常に頑張っていただいて、ベトナムとの共同議長で難しい交渉をおまとめになった、こういうこともお聞きをいたしております。

 それで、これは、TPP12、アメリカも入ったときに、一番最初、総理は、例外なき関税撤廃を原則としないんだ、こういうことをオバマ大統領に確認して交渉に入った。長くかかってまとめたんだけれども、トランプ大統領が、離脱をするんだ、こういうことで、とにかくイレブンで出発をしよう、こういうことだったと思いますが、このTPP11の今後の見通しについて、茂木大臣からお答えいただきたいと思います。

茂木国務大臣 先日、ベトナムのダナンで閣僚間で大筋合意に至りましたTPP11につきましては、今後、協定条文の翻訳、これは、協定のいわゆる正式な文書、正文が英語に加えてフランス語、スペイン語ですから、その翻訳と、法技術的な検討、リーガルスクラブと呼ばれるものでありますが、これを加えた上で署名いたしまして、その後、六カ国以上が国内手続を完結すればその六十日後に発効、こういう段取りになるわけであります。

 TPP12との関係で申し上げますと、条文はTPP12をほぼそのまま組み込んだものがTPP11でありますが、新協定、こういうことになりますので、TPP11の署名後、しかるべく国会の方に改めてお諮りをするということになります。

 いずれにしても、まずは、ここまで、日本が主導する形でこのTPPを引っ張ってまいりました。これからも関係国としっかりと協力をして、速やかにTPP11の署名、早期発効ができるように努めてまいりたいと思っております。

石田(祝)委員 それでは、続いて、これは外務大臣にお聞きをしましょう。

 日・EUのEPAの今後の見通しについて、外務大臣、いかがでしょうか。

河野国務大臣 日・EU・EPAに関しましては、七月に大枠合意をいたしまして、今、詰めの事務作業を鋭意進めているところでございます。

 今月の十五日には、マルムストローム欧州委員と私と電話会談をいたしまして、なるべく早く署名、発効できるように努力をしようということで一致をいたしました。

 しっかり作業を進めてまいりたいと思います。

石田(祝)委員 私も時々混同するので茂木大臣にお伺いしたいんですが、いわゆる大枠合意と大筋合意、これはどっちがどっちだったのかな。それと、大枠と大筋の違いは何なんだ。

 これを説明できる方は茂木大臣ぐらいしかいないんじゃないかと思いますので、大枠と大筋、これは国民が聞いても、TPPが大筋だ、日・EU・EPAが大枠だ、大枠と大筋はどう違うんだ、こういう疑問もあるんですけれども、これをわかりやすく、茂木大臣、ちょっと説明してくれますか。

茂木国務大臣 こういった経済連携に関します国際的な協定の署名に至ります、その途中段階での各国間の合意に至りますプロセス、段階に一般的な、もしくは一義的な定義があるわけではなくて、その具体的な内容であったりとか、どういう合意であるか、これはそれぞれの交渉ごとに、TPPはTPPで、日・EU・EPAはEPAで決まっていくということになります。

 まず、今回のTPP11の合意につきましては、TPPの閣僚会合において、新協定の条文、そして凍結リスト等を含む合意パッケージについて全閣僚が合意することが大筋合意なんだ、こういったことを事前に共有した上で閣僚間で合意に至っておりますので、大筋合意であると考えております。そして、このTPPにつきましては、協定の条文、それについても合意をいたしております。ほとんど残された作業がない、こういう段階であります。

 本年七月の日・EU・EPAの合意につきましては、協定の条文に関する協議を引き続き行う必要がある。さらに、主要な交渉分野に未合意の事項があるということで、交渉の大枠、全体の大枠は決まったんですけれども、まだ細かいところまで詰まっていないということで大枠合意、こういった形で呼ばせていただいているところであります。

 いずれにしても、協定文が確定をして、国として条約を守る、尊重する責任が伴いますのは最終的合意、これは署名をもってされるということで、これは、TPPにおいても、日・EU・EPAにおいても変わらないと考えております。

 こういった交渉事、しっかり、ここまでできましたねと合意を確認しながらやっていくということが必要でありまして、大筋合意、大枠合意ともにきちんと進捗を確認しているところでありまして、あとは、残された署名、早期発効に向けて全力を尽くしたいと思っております。

石田(祝)委員 ちょっとやはりまだわかりにくいんですけれども、最終的には署名しなきゃだめだ、署名を目指して頑張っていく、こういうことですね。ありがとうございました。

 それで、このTPP11につきましては、GDPの条件を外したということで、半数以上の国が署名すればいい、認めればいい、こういうことになったわけでございます。そうすると、にわかに、この発効について、これは具体的に日程に上ってくる。もちろん、新協定の位置づけになりますから、もう一回国会でやらなきゃいけないのは当然でありますけれども。

 そうすると、やはり影響を受けるところはどこになるんだ。これは、私は、これから補正予算でも十二分な対応をしていただきたいし、また三十年度の予算でも当然そうあらねばならない、こういうふうに思っております。

 それで、普通考えると、どういう影響が出るので、その影響を国内対策でカバーする、そのためにはこれだけの予算が必要だ、これが普通の考え方だと思うんですけれども、どうもそういう順番じゃなくて、これから対策をとった後に経済効果分析をされる。農水省についても、定量的な分析ではなくて、いわゆる定性的な影響評価だと。

 だから、どういう分野で影響がある、この分野はほとんどないだろう、長期的にはこういうところがあるんだ、こういう整理の仕方になっていますけれども、この点について万全な対策をとるという観点で、補正予算も含めて、これは齋藤大臣の決意も含めた御答弁をお願いしたいと思います。

齋藤国務大臣 お答えいたします。

 私どもといたしましては、平成二十七年十月のTPP協定の大筋合意、これはトゥエルブの方ですけれども、これによりまして我が国農林水産業が新たな国際環境に入った、そういう認識に基づきまして、こうした国際環境に我が国農林水産業が対処できるようにするために国際競争力の強化を図る、いわゆる体質を強化するための政策を講じてきたところであります。

 そして、今回、七月に日・EU・EPA交渉も大枠合意に達したということで、これではまたチーズや構造用集成材等の体質を強化する対策も必要となってきているわけでありますので、ぜひとも、今般改定された総合的なTPP等関連政策大綱に基づいて、農家の皆さん、農林水産業をやられている皆さんの不安に万全に応えていくとともに、EUはかなり日本の農林水産物の輸出に可能性があるものですから、攻めの方の対策についてもしっかりと講じていきたい。

 守るべきものを守るための対策には万全を期し、攻めの方は強力に推進していくという考え方で補正予算、当初予算に臨んでいきたいと思っております。

石田(祝)委員 今回のTPP11と日・EUのEPA、特にTPPのときには、例えばチーズも、ソフトチーズというのは余り議題になっていませんでした。そして、木材についても、これはカナダに若干ありましたけれども、余り大きな要素ではなかった。

 しかし、EUについては、チーズは非常に有名なチーズもたくさんある。ソフトチーズについて、これは日本もこれから勝負をしていかなくちゃならない。

 そして、木材についても、非常に木材も、ヨーロッパの方からは乾燥がちゃんとできたいいものがたくさん入ってくる、こういう心配ももちろんされております。そして、あるいは、構造用の集成材、CLTだと思いますけれども、こういうものについても一日の長がヨーロッパにはございます。

 そして、小麦等についても、これはパスタの問題も当然出てまいります。また、砂糖につきましても、これは糖価調整の問題。

 さまざまな課題が、これはTPPのときにないものもあるわけでして、体質強化ということと、それを超えて経営安定、このことも両方考えていただかなきゃならない、私はこういうふうに思っております。

 再度大臣にお伺いしたいんですけれども、補正予算についても、私たちもしっかりとこれは取り組みをしたいと思っています。大臣の決意として、今まで大体三千億を超えておりましたけれども、アメリカが抜けたからそんなに要らないんじゃないかというお話も聞こえてくるような気がしますけれども、そんなことじゃないんだ、体質強化、経営安定、この観点で補正予算でしっかり不安を払拭するという、これは数字が大事なんですよ、その観点から大臣にいま一度御答弁をお願いします。

齋藤国務大臣 石田委員と気持ちは全く一緒でございますので、全力を尽くして、いい数字が出るように頑張っていきたいと思っております。

石田(祝)委員 ぜひ気持ちを行動にあらわしていただきまして、頑張っていただきたいというふうに思います。

 それで、総理に、国内対策について、十分な対策をぜひしてもらいたいということと、アメリカの復帰に向けてどういうふうな働きかけをしていくのか、総理に簡単にお伺いをしたいと思います。

安倍内閣総理大臣 国内対策については、TPP、日・EU・EPAは成長戦略の切り札であります。自由で公正なルールに基づくマーケットを世界に広げることで、手間暇かけてこしらえたよいものがしっかり評価をされて、世界に売り込むことができるようになってくる。また、中小企業の皆さんにも、まさにルールに基づく貿易ができることによって、彼らの権利も守られ、安心して世界に進出することができるようになっていくと思います。このチャンスを最大限に生かすため、地方の中堅・中小企業の海外展開や国内産業の競争力強化、農林水産業の強化などに力強く取り組んでまいります。

 同時に、農家の皆さんの不安や懸念にしっかり向き合い、安心して再生産に取り組むことができるよう、十分な対策を講じてまいります。齋藤大臣からも強い決意が表明されたと思います。

 こうしたTPP、日・EU・EPAを真に我が国の経済成長に直結するため、必要な政策を盛り込み、先週金曜日に総合的なTPP等関連政策大綱を決定しました。今後、この政策大綱に基づいて、農林水産業の強化策など、平成二十九年度補正予算を編成し、万全の対策を講じてまいります。

 そこで、米国の復帰についてどうなんだという御質問でございますが、まず、TPP11が閣僚間で大筋合意に至り、ハイスタンダードな水準を維持できたことで、アジア太平洋地域に自由で公正な二十一世紀型のルールをつくっていく上で大きな一歩を踏み出すことができた、こう思っています。基本的価値を共有する日本と米国こそが、世界経済の中で貿易・投資における高い基準づくりを主導し、そして公正、実効性のある経済秩序をつくり上げる努力を重ねるべきである、我々はこう考えています。

 こうした観点から、米国に対しては、先般の日米首脳会合や日米経済対話等のさまざまな機会に我が国のTPPへの取り組みについて米国に説明をしてきており、我が国が引き続きTPP十一カ国との橋渡しを担っていきたい、こう考えております。

石田(祝)委員 この問題は非常に国内でも心配しておりますので、十二分の対策をとってぜひお進めをいただきたいというふうに思います。

 もう最後になりますけれども、米政策についてお伺いをいたします。

 平成三十年産のお米から、米の直接支払い、十アール当たり七千五百円がなくなります。これについて大変心配されているというのは自民党の加藤議員からもお話があったように思いますけれども、今まで国が生産調整に関与して、ある意味でいえば配分を大体決めておった。そこでまあでこぼこはあったんですけれども、そういうでこぼこがあるということは、もとの基準があってでこぼこがあるということでありますけれども、私たちも選挙の公約で、農業団体が全国組織をつくるのであれば応援をします、こういう公約をいたしましたので、これにつきまして、最後に齋藤大臣からどう国が関与していくのかお答えをいただいて、終わりたいと思います。

齋藤国務大臣 全国組織のお尋ねでございますが、民間団体主宰の全国組織の構成や機能について、現在、全国農業協同組合中央会を中心に検討が行われております。その検討におきましては、その主な機能といたしまして、マーケットインに基づく実需者と産地とのマッチングの支援等が考えられているというふうに私ども承知をいたしております。

 国といたしましても、産地と中食、外食事業者等との安定取引に向けたマッチングの取り組みへの支援、あるいは全国の需給見通し等の情報提供を通じて、こういった民間団体主宰の全国組織への支援を行うことができるのではないかと考えているところでございます。

石田(祝)委員 もう終わりますけれども、質問通告をしておりました大臣、ちょっと時間が足りませんでしたので、失礼いたしました。

河村委員長 この際、竹内譲君から関連質疑の申し出があります。石田君の持ち時間の範囲内でこれを許します。竹内譲君。

竹内委員 公明党の竹内譲でございます。

 私の方からは、まず最初に、学校法人森友学園に対する国有地の売却等に関する会計検査の結果につきまして質問させていただきたいと存じます。

 私どもといたしましては、きょうは、最大のポイントは、本件土地の地下埋設物撤去、処分費用の算定につきまして焦点を絞ってお伺いをしたいというふうに思っております。

 テレビをごらんの方も多いと思いますので、会計検査院の要旨をちょっと簡単に最初だけ紹介をさせていただきたいと思いますが、このようにあります。八十ページでございますが、

 大阪航空局が算定した本件土地における処分量一万九千五百二十トン及び地下埋設物撤去・処分概算額八億一千九百七十四万余円は、算定に用いている深度、混入率について十分な根拠が確認できないものとなっていたり、本件処分費の単価の詳細な内容等を確認することができなかったりなどしており、既存資料だけでは地下埋設物の範囲について十分に精緻に見積もることができず、

このように書かれているわけでございます。その上で、会計検査院は、

 仮定の仕方によっては処分量の推計値は大きく変動する状況にある

として、廃棄物、すなわちごみの量について複数の試算を出しているわけでございます。

 すなわち、五通りの試算を出しておりまして、廃棄物混合土の深さとか混入率など、算定方法の違いにより、最小の場合で六千百九十六トン、その次が九千三百四十四トン、三番目が一万三千百二十トン、四番目が一万三千九百二十七トン、そして最大の場合で一万九千百八トンとしているわけでございます。

 大阪航空局の算定した処分量が一万九千五百二十トンでございますので、その割合は最低で三二%から最大で九八%の範囲にあることを示しているわけであります。一部報道では三割から七割の可能性としておりましたが、正確には三二%から九八%の可能性を示している、こういうふうに言えると思うわけであります。

 そこで、まず会計検査院にお尋ねをいたしますが、この五通りの試算のうちどれが適切と考えているのか、また、そうであるとすれば、その場合、適正な撤去、処分費用の額は幾らぐらいであったと考えているのか、まずお尋ねをしたいと思います。

    〔委員長退席、福井委員長代理着席〕

戸田会計検査院当局者 お答え申し上げます。

 今回、会計検査院は、本件土地における地下埋設物の処分量の試算を行いましたが、処分量を求めるための仮定の仕方によって処分量の推計値は大きく変動する状況となっておりました。このため、報告書には、推計した処分量のうちどれが正しいかについては記述しておりませんが、慎重な調査検討を欠いていたと記述しているところでございます。

竹内委員 それでは、今回の会計検査院報告に対しまして、国土交通大臣はどのように受けとめておられますか。また、地下埋設物の処理費用算定額として約八億二千万円という数字は適正であったとお考えでしょうか。

石井国務大臣 森友学園への国有地売却等に関しまして、参議院からの要請に基づき、会計検査院による検査が行われてきており、これまで国土交通省としても最大限の協力をしてきたところであります。

 今回、会計検査院から、今御紹介ありましたように、仮定の仕方によっては処分量の推定値は大きく変動する状況にあることなどを踏まえれば、撤去、処分費用を算定する際に必要とされる慎重な調査検討を欠いていたこと、また、文書の一部が保存されておらず、詳細な内容を確認することができないことなどについて指摘をされているところでありまして、国土交通省といたしまして、その結果については重く受けとめなければならないと考えております。

 大阪航空局が実施をいたしました地下埋設物の撤去、処分費用の見積もりにつきましては、これまでも国会等において御説明しておりますとおり、売り主の責任が一切免除される特約をつけることを前提といたしまして、その実効性を担保するため、既存の調査に加え、森友学園からの新たなごみの報告や職員による現地確認など、当時検証可能なあらゆる材料を用いて行われたものでございます。

 この当時の大阪航空局の見積もりは、限られた時間の中で検証し、見積もりを報告しなければならない状況でありました。実際には、平成二十八年三月三十日に近畿財務局から見積もりの依頼を受け、四月十四日に報告をしている、約二週間で実施をしたわけですが、こういった状況下で行われたぎりぎりの対応であったと認識をしているところであります。

 ただ、今般の会計検査院の御指摘を重く受けとめまして、今後同様の事務を遂行する場合には、見積もりに必要な作業時間をしっかりと確保した上で、より丁寧な事務の遂行に努める必要があると考えております。

竹内委員 先ほどありましたように、会計検査院としては、適切な見積額については具体的に申し上げられないということでありましたし、その根拠が十分に確認できなかった。その上で、今大臣からお話があったわけでございます。

 私は、国土交通省としても、ごみの深さとか混入率等について、国交省としての一定の合理的な考え方に基づいてされたんだろうというふうに承った次第であります。

 そこで、今回、最大の論点となる部分があると思うんですね。それは、森友学園側との売買契約書において、本件土地に関する一切の瑕疵担保責任を免除する特約条項が付されているということでありまして、この瑕疵担保責任を免除する特約条項を前提に地下埋設物撤去、処分費用が算定されていることだと考えております。

 瑕疵担保責任というのは、法学部の人であれば大体わかりますが、例えば、自宅を購入して、住み始めてしばらくたって、庭をいじっていたらそこから化学物質が見つかったというような場合でありまして、売り主が後で損害賠償の責任を負う、こういうものでございます。

 私どもも独自でいろいろな調査をいたしましたところ、同様の事例が、豊中市とすぐ近くの新関西国際空港株式会社との土地売買で起きていることがわかりました。

 すなわち、平成二十七年六月に豊中市は新関空株式会社から、給食センターを建設する目的で七千二百十平米の土地を約七億七千万で購入いたしました。ところが、平成二十八年九月に豊中市がボーリング調査を実施したところ、そこから大量のコンクリートがら、破片、れんが、アスファルトなどが出てまいりました。豊中市は、これらの地下埋設物、ごみ等の撤去費用として何と十四億三千万円を計上して、現在、新関空会社とその支払いをめぐって協議中と伺っているわけであります。七億七千万で買ったところが、十四億三千万ぐらいの掘り出し費用がかかるというようなことで、もめているわけであります。

 これらとの対比で、今回の森友学園への土地の売却に当たって、もしも今後新たな埋設物が見つかっても、売り主、すなわち国側の責任が一切免除される特約を結んでいるわけでございますが、これを前提とした見積もりの考え方というものを国民の皆さんにわかりやすく説明してもらいたいと思います。大事なところなので、航空局にはわかりやすく、ゆっくりしゃべっていただきたいと思います。

蝦名政府参考人 お答え申し上げます。

 大阪航空局が実施をいたしました地下埋設物の撤去、処分費用の見積もりは、今先生も御指摘のございましたように、売り主であります国の責任が一切免除される特約が付されるということを前提に行われたものでございます。

 最近の裁判例を踏まえますと、このような特約つきの売買契約の実効性を担保するためには、瑕疵の存在につきまして、売り主としてできる限りの調査、説明を行うとともに、売買の当事者間の公平を確保する観点から、地下埋設物の撤去、処分費用を見積もることが必要になってまいります。

 こういうことのために、大阪航空局におきましては、地下埋設物の見積もり範囲としていろいろな仮定が考えられる中で、買い主であります森友学園の方から新たなごみが排出されたという報告を受けまして、既存の調査、土地履歴等調査とかあるいは地下構造物状況調査等で明らかになっていた範囲のみならず、職員によります現地の確認、工事関係者からのヒアリングや工事写真など、当時検証可能なあらゆる材料を用いましてチェックを行いまして、その範囲を限度として見積もりを設定したということでございます。

 先生が今御指摘のございました地下埋設物に関しましては、豊中市の給食センターの事例がございまして、そこでは、小学校と同様の、利用者から安全への配慮が求められるような給食センターが設置されておりますけれども、本件土地のような特約が付されていない中で、売却後に地下埋設物が発見された例でございます。

 この結果としまして、土地の売却価格であります約七・七億円の二倍程度と見込まれます撤去費用約十四・三億円につきまして、現在、買い主であります豊中市と売り主であります新関西国際空港株式会社との間で協議が行われているところと承知しております。

 本件の土地につきましても、当事者間におきましてこうした事態が生じないように、近畿財務局から、売り主である国の責任が一切免除されるとの特約を付すことを念頭に置くように伝えられまして、大阪航空局におきましては、先ほど申しましたような、買い主である森友学園からの新たなごみが排出されたとの報告を受けて、既存調査だけではなく、当時検証可能なあらゆる材料を用いてチェックを行った上で、その範囲を限度として見積もりを設定したということでございます。

竹内委員 今るる説明があったわけでありますが、少し私なりにわかりやすく言うと、もしも今後新たな埋設物、ごみなどが見つかっても追加のお金は一切払いませんよ、追加のお金は払わないという約束で本件土地を売ったという事情があるわけですね、今回は。

 その意味で、過去の調査で判明しているごみに加えて、買い主である森友側が独自で工事をしたところ、新しく出てきたごみもありますから、それにも一定の考慮が必要だったのではないか。しかも、そのすぐ近くで、同じ豊中市のすぐ近くで、売却後に大量のごみが発見されて、相当の、売却価格の二倍近くの費用を請求された事例もあるというようなことも背景にはあったのではないかなというふうに理解をしたところでございます。

 航空局長、大体、私の理解、そういう理解でよろしいですか。はい。それが、瑕疵担保責任を免除する特約条項のちょっと特殊性であるんだろうというふうに思ったところであります。

 そこで、今回、そのほかにも種々御指摘をいただいておるわけでございますが、他方で、会計検査院の御指摘によりますと、本件土地に係る決裁文書などの行政文書では、売却に至る森友学園側との具体的なやりとりなどの内容や、有益費の確認、支払い等に関する責任の所在、地下埋設物撤去、処分費用における本件処分費の単価などの詳細な内容が確認できず、会計経理の妥当性について検証を十分に行えない状況となっていたというようにございます。

 これらを踏まえて、国土交通省としては今後どのような改善策を講じていくのか、大臣、お答えください。

石井国務大臣 国土交通省といたしましては、今般の会計検査院の検査結果や国会等での御議論も踏まえまして、今後同様の事務を行う場合、より丁寧な事務の遂行に努めてまいりたいと考えております。

 第一に、今後同様の事務を遂行するに際しましては、見積もり業務に必要な作業時間をしっかり確保することといたしたいと存じます。

 第二に、見積もりに係る手続等の明確化を図ります。例えば、地下埋設物の見積もりの根拠を十分確認することや、見積もりの根拠となる資料を適切に作成し保存することなどにつきまして、速やかに検討を行います。

 第三に、行政文書のより適切な管理を図ります。具体的には、見直し後の行政文書の管理に関するガイドラインに基づきまして、行政文書の作成、保存等について、より適切かつ十分な文書管理を徹底いたします。

 こういった取り組みを通じまして、より丁寧な事務の遂行に努めてまいりたいと考えております。

    〔福井委員長代理退席、委員長着席〕

竹内委員 やはり行政のやる仕事でございますから、後々の、後世の方々に、百年たっても、千年たっても検証にたえ得る管理というものをやはりしっかりやっていただきたい、このことを求めておきたいというふうに思います。

 さて、次に、地方大学の活性化と地方創生につきましてお尋ねをしたいと存じます。

 現在の東京一極集中の行き過ぎと地方の衰退は、誰の目にも明らかであるというふうに思います。地方創生への取り組みは幾つも政府の方でも検討していただいておるわけでございますが、私は、地方創生の起爆剤としては、例えば文化庁の京都移転ということも重要でありまして、これが今後骨抜きにならないようにまずしっかりやってもらいたいということをまず思うわけでございますが、きょうは、地方大学、私立大学を含む活性化についてお伺いしたいというふうに思います。

 さきの地方大学振興に関する有識者会議の議論では、地域の中での地方大学の役割を明確化し、地域の産業構造などを踏まえた産官学連携を強力に推進する方向が示されているところでございます。

 これは、大学の規模別学校数及び入学定員数の割合でございますが、皆さん余りこれをごらんになったことはないと思うんですね。

 全国の大学というのは七百五十六校あるんですが、何と、小規模大学、これは入学定員が一学年千人未満であります、千人未満の小規模大学が五百八十校で、七六・七%を占めているという事実であります。このうち私立大学が大半を占めている、四百六十校でございます。そして、この一学年定員千人未満の小規模大学の入学定員数は、全体の三四・八%、大体三分の一以上を占めており、このうち私立が大半を占めているというこの事実でございます。

 それから二つ目に、私立大学の規模別・所在地域別の学校数及び入学定員数、下の図でございますが、三大都市圏と比べて、地方における大・中規模大学の数は極めて少なく、小規模大学が大半を占めているという事実であります。地方における入学定員数は小規模大学が大半を占めております。大規模大学というのは入学定員が二千人以上の大学、中規模大学というのは入学定員が千人から千九百九十九人の大学のことをいいますが、この下の図を見ても、ごらんのように、三大都市圏では、わずか四十の大規模大学が大半の入学定員数を占めている、こういう事実。一方で、地方においては小規模大学が大変多いということでございます。

 そこで、地方大学の活性化といっても、国立だけでは不十分だというふうに思います。小規模の私立大学にも目を向ける必要があると考えておるところでございます。小規模大学では、コンパクトでユニークな教育を実践している大学も多いわけでございまして、少人数だからこそ目が行き届き、特色ある教育が展開できているというメリットもあります。

 私もいろいろ調べてまいりましたが、ある小規模大学の国際観光学部では、学生が宿泊プランを考えて旅館やホテルに提案する授業を行ったり、また、子供学部を設置して、キャンパスの一部を地域の子育て支援の場として開放したりしているところもあります。挨拶の実践、挨拶がちゃんとできない子供たちも多いんですね。礼儀正しさとかマナーの体得など、その他さまざまな社会適応力の育成にも力を入れた結果、四年連続で就職率は一〇〇%となり、さらに幼稚園の教員や保育士などにも人材を送り出していると言われております。また、いわゆる知識偏重のIQよりも心の偏差値EQを重視しているところもあると伺っております。

 他方で、こういう小規模大学は大変経営面では苦しいことも事実でございまして、入学検定料、授業料収入が少ないため、広報宣伝に費用がかけられない。経常費補助金の配分方法などにおいて不利な立場に追いやられている。文部科学省の審議会などでも意見を述べる場がない。産業政策としては中小企業支援政策は大変多数ございますが、大学政策としては中小大学への支援政策がほとんどない。世の中は一部の大規模大学だけで成り立っているわけではございません。さまざまな多様な人材で成り立っていることを忘れてはいけないと思うわけでございます。

 それで、質問に入りますが、地方創生の観点から、地域の若者の就業機会の確保や就業を促進するため、地方公共団体や企業と連携しながら、地域に貢献する大学を目指し、みずから改革を進める大学は支援していくべきであると考えております。

 その際には、地方国立大学だけではなくて、中小の私立大学も含めて、地方創生のためにすぐれた事業を行う大学に対する新たな交付金を創設してはどうかというふうに思うわけでございます。

 とりわけ、特色ある教育内容を提供する小規模大学に対しては、EラーニングなどICTなどを活用した国内外の著名な講師による共同講義であるとか、最新の財務システム、教育システムの共同利用であるとか、あるいは、教材、備品、消耗品等の仕入れなど共同購入システムの構築であるとか、さらには、やはり文部科学省において教育行政に意見を述べる場の確保など、そういう支援策が必要であると考えております。

 これらの点につきまして、地方創生のための地方大学の活性化、小規模大学への支援も含めて、ぜひきょうは総理のお考えをお伺いしたいと思います。

安倍内閣総理大臣 この十五年間で、地方から五百万人若者が消失をした、減少をしたわけであります。若者こそが地方の活力の源泉であります。若者が将来に夢や希望を持つことができる元気な地方の創生に、国を挙げて取り組んでいく考えであります。

 地方大学はその起爆剤となり得るものと考えています。山形県の鶴岡市の慶応義塾大学先端生命科学研究所では、国内外のトップレベルの研究者を集めたことで世界じゅうから若者がやってくるようになったということでございます。さらに、若者たちの研究成果の中から世界トップレベルの新しいベンチャー企業が次々と生まれ、地元経済に大きな活力を生み出しています。

 こうした先行事例も参考に、先端科学や観光、農業といったそれぞれの分野で、日本全国からというだけではなくて、世界じゅうから学生が集まるような、きらりと光る地方大学づくりを進めていきます。

 そのため、地方国立大学や中小の私立大学も含めて、産学官の連携による地方創生のすぐれた取り組みを支援するための新たな交付金の創設を検討しています。

 地方大学を核に、地場の中小・小規模事業者の皆さんの知恵も生かしながら、地域経済を活性化していきたいと考えております。

竹内委員 ありがとうございました。

 それでは、最後に、財政再建と地域医療、介護、福祉について、大きな視点で一問だけお伺いしたいと思います。

 今回の選挙戦を通じて実感したことの一つは、地域の高齢化がますます猛スピードで進展しており、地域の医療、介護、障害者福祉などの充実が切実なものとなっていることでございました。働き方改革や女性活躍の前提として、親の世代の医療、介護、また、障害者の方々を社会で支え合うことが十分でなければ、働くこと、また女性が活躍することがそもそも不可能ということになります。

 そのような趣旨から、地域の医療、介護、福祉を充実するための財源確保が重要であり、財政再建のために簡単に一律にこれらを切り捨てていくことのないように、今後の予算編成等に臨んでいかなければならないと考えております。財政再建はもちろん必要でありまして、無駄は省いていかなければなりませんが、財政再建の御旗のために地域の医療、介護、福祉が犠牲になってはならないと考えております。

 これらの点につきまして総理の決意をお伺いして、質問を終わりたいと思います。

安倍内閣総理大臣 安倍政権では、女性も男性も、また若者も高齢者も、また障害のある方も、あらゆる場で誰もが活躍できる一億総活躍社会をつくっていくことが安倍政権の基本的な柱でございます。

 そのためには、子育て、介護など現役世代が抱える大きな不安を解消し、我が国の社会保障制度をお年寄りも若者も安心できる全世代型へと変革するとともに、御指摘のように、国民の皆様が必要とする医療、介護、福祉を身近な地域で安心して受けられる体制の確保が必要であります。

 そのため、政府としては、医療、介護、予防、住まい、生活支援サービスが住みなれた地域で切れ目なく確保される地域包括ケアシステムの構築、そして、介護保険や障害福祉サービスといった制度の縦割りを超えた地域における生活支援サービスの推進などに取り組んでいきます。

 今後も高齢化の進展に伴い社会保障費の増加が見込まれる中で、社会保障の持続可能性の確保と財政健全化を同時に達成していくことも重要な課題であります。このため、限りある財源の中で、適正化、効率化すべきことは実施するとともに、地域の医療、介護、福祉といった必要なサービスはしっかりと確保できるように取り組んでまいります。

竹内委員 以上です。終わります。ありがとうございました。

河村委員長 これにて石田君、竹内君の質疑は終了いたしました。

 次に、長妻昭君。

長妻委員 立憲民主党の長妻昭でございます。

 立憲民主党として初めての予算委員会の質問でございますので、新しい政党でございます、よろしくお願いします。

 我々は、政治の最高の価値は立憲主義、民主主義にある、これを守り抜く、そういう政党でございます。多様性を認め合い、困ったときに寄り添い、お互いさまに支え合う社会を目指しております。特定の価値観を上から押しつけるトップダウン型の政治ではなくて、国民の皆様の草の根からの声に支えられたボトムアップ型の政治を目指してまいります。

 国家権力は、内心の自由を決して侵してはならない。そして、安全保障政策は、近くは専守防衛の範囲内で現実的に対応する、遠くは抑制的に対応する、そして人道支援は積極的に対応する、こういう基本政策を持った政党でございますので、ぜひよろしくお願いをいたします。

 さて、質問でございますけれども、相当与党の質問時間は長いなというふうに感じたところでございまして、本来、今まで八年間、慣例があったんですね、野党と与党の質問時間の分賦。それであれば、この二日間の基本的質疑においては、野党のトップバッターは今まではお昼前に始まっていたところでございまして、与党が質問時間が二倍ぐらい、二倍近く長くなったということでございます。

 これは、総理が直接、萩生田幹事長代行ですか、指示されたと聞いておりますけれども、その質問時間を短くするという狙いというのはどこにあるのでございましょうか。

安倍内閣総理大臣 私が国会の質問時間等について指示をするわけもなく、指示はしておりません。

 また、萩生田議員も、インタビューに応じて、指示は受けていないと明言されたというふうに承知をしております。

長妻委員 これは非常に重要な問題だと思うんですね、国会の監視機能、この問題でございまして。

 そうすると、総理、不思議なんですね。各新聞が、では誤報をしまくっているのかということなんです。

 例えば、総理が熟読しろとおっしゃっている読売新聞、これも十一月十二日に、首相は野党に手厚い質問時間配分を見直すべきだと発言していると報道しておりますし、日経新聞は、見出しで「与党の質疑時間 首相が拡大指示 萩生田氏に」、中身も先ほどのとおりでございます。総理は萩生田氏に、報道によると、これだけ民意をいただいた、我々、これは自民党のことであると括弧で書いてありますけれども、の発言内容にも国民が注目しているので、機会をきちんと確保していこうと指示をされたと。

 各報道というのは間違いということなのでございましょうか。

安倍内閣総理大臣 私からファクトを申し上げます。

 まず、私は指示をしておりません。いわば、私が指示をしていない、その場に第三者がいないんですから、私と萩生田さんしかいないんですが、まず、一方の当事者の私は指示をしていないということははっきりと申し上げておきたいと思います。

 では、それを受けた萩生田氏が何と発言をしているかということでございますが、萩生田光一自由民主党幹事長代行は、先般、NHKの「日曜討論」でこう発言をしております。

 まず、総理から国会の運営について指示があったというのは全くの誤報です、国会のことは国会にお任せしたいという前置きをした上で、私の説明に対して一定の理解を示したということを私がブリーフしたんですね、ですから、NHKのニュースではそのことは放映されておりません、こう述べているわけでございまして、つまり、萩生田氏が私に説明をして、私は聞いていたということでございます。

長妻委員 これほど日本の大新聞が全部そろって誤報するのか。

 しかも、これは不思議なのが、これも報道ですけれども、自民党の吉田参議院幹事長という方が十一月七日の自民党役員連絡会で、総理がこう言っていると言わない方がいいと萩生田氏に苦言を言った、こういう報道もあって、そして、その後、時間配分は国会で決めること、総理が独断専行しているように思われると述べたというふうにあるわけで、総理は否定されておられますし、萩生田氏も今のお話だと否定されておられますから、これ以上は言いませんけれども、そういうニュアンスが総理から相当あったんじゃないかというふうに私は感じるんです。

 総理、言っていないというのであれば、自民党の国対委員長の方に、時間配分は従来どおりでいいじゃないか、こういうことを、ぜひ次回からそうしようというふうにちょっと言っていただけませんか。

安倍内閣総理大臣 今、長妻さんが、私と萩生田さんのやりとりを見てきているわけではないんですから、つまり推測で物を言っておられるわけであります。そこに二人しかいなかったわけでありますが、私は明確に言っていないということを申し上げ、そして萩生田さんもそう申し上げているわけでありますから、それをそれ以上、いわば長妻議員が思い込みで言われても、これは余り建設的な議論ではないだろう、こう思うわけであります。

 そもそも、最初申し上げたように、国会の運営について私は指示をする立場にはないわけでありますから、当然、それをどうこうしろと言うこと自体は、まさにその前提を覆すことであって、いわばあってはならないということを長妻議員が言っているわけでありますから、あってはならないことを私はやってはいけないんだろう、こう思っている次第でございます。

 まさにそれは国会でお決めになることであって、もう既に両党が御議論されて今の五対九になって、今こうやって議論をしているんですから、その中で、長妻さん、建設的な議論をしようではありませんか。

長妻委員 これは思い込みといっても、では、政治部の記者が思い込んで、吉田参議院幹事長も思い込んだということなんですかね。

 総理、八年間続いてきた、国会での野党の質問時間を重視するという予算委員会、これは自民党が野党のときに強力に要請があって、そして当時の与党の民主党が渋々受け入れたことから始まっているんですよ。

 総理、これは本当に監視機能の問題なんですね。国会はもちろん政府の監視だけじゃありません、役割は。ただ、我々はその監視機能も大変大きな役割の一つだと思っておりまして、まさかその監視を受ける政府のトップがその監視を緩めてくれととられかねないような時間短縮の発言をしたとは思いたくはないんですが、ほとんどのマスコミが報道して、参議院の自民党幹事長まで注意をするというようなことでございますから。

 総理、では最後に一言、時間の配分については従来どおり、もとに戻そう、そういうふうに一言だけおっしゃってください。この話はそれで終わりにします。どうぞ。

安倍内閣総理大臣 吉田幹事長は、まずは新聞報道を見て萩生田さんに、こういう報道があるけれども気をつけた方がいいよという話をして、萩生田さんはそもそも私から指示を受けていないということを吉田さんにも述べたというふうに私は承知をしております。

 これは既に政党間で協議をした結果がまさにこの配分なんだろう、その中で私は総理大臣として出席をしておりますから、我々、私もそうですが、内閣のそれぞれ各位は誠意を持って答弁させていただくことによって責任を果たさせていただきたい、このように考えております。

長妻委員 これは予算委員会含め国会の監視機能ということについても、監視を受ける側ではありましょうけれども、総理からそういう指示があったとしたら遺憾でもありますし、そういう指示がないのであれば、もとに戻そうというようなことも、ぜひサジェスチョンを自民党の国対にもしていただきたいというふうに思います。次回からはもとに戻していただきたい。強くお願いをいたします。

 そして、総理、るる午前中もありました森友学園の問題、会計検査院から報告が出ました。我が党の福山幹事長が当時、参議院の予算委員会で提言をして、全会一致で決まって、そして出てきたということでございます。

 総理は、森友問題、この積算について、国会でもずっと、適切だ、適切だ、適切だと、ずっと適切を繰り返してまいりましたけれども、その適切というのが会計検査院の報告で覆されたということでございます。これについて、総理として国会や国民の皆さんへの謝罪等はあるのでございましょうか。

安倍内閣総理大臣 今回の報告は、国会からの要請により、独立した行政機関である会計検査院によって実施されたものであり、政府として、その指摘については真摯に受けとめなければならないと考えております。

 国有地は国民の共有の財産であり、その売却に当たっては、国民の疑念を招くようなことがあってはなりません。今般の会計検査院の報告、さらにはこれまでの国会等での議論の中で厳しい御指摘があったことも踏まえ、私たちも、国有財産の売却について、業務のあり方を見直すことが必要と考えています。

 公共性が高い随意契約は、売却価格を全て公表するなどの手続の明確化を図ること、売却価格の客観性を確保するため、財務省が提示したような特殊な事案については、第三者による算定、確認を行うこと、適切かつ十分な文書管理の徹底を図ることという方針で財務省にしっかり対応させることとしたい、このように考えております。

長妻委員 いや、全く総理、答えておられないんです。これは本当に、総理、真摯な答弁とか謙虚というふうにおっしゃっておられるので、ぜひかみ合うような質疑をしたいと思うんですね。

 それで、結局、今の話も、今後は注意しますと。午前中も、与党の質問に対しても、今後も注意します、与党は、それでいいよ、こんなようなやりとりがあって、私は非常に腑に落ちないわけでございますけれども、総理はずっと、適切、適切に見積もられている、適切だというふうに価格算定についてもおっしゃっておられるので、これについて、ずっと答弁されておられるんですから、国会に対して、これは申しわけなかった、適切ではなかったというようなことは、国民への謝罪も含めて、お認めにならないのでございますか。

安倍内閣総理大臣 さきの通常国会においては、国有地売却の問題について、基本的に処分を担当している財務省や国土交通省から適切に処分していたとの答弁があったところであり、私もそのように報告を受けていました。これまでの私の発言については、そのような理解の上で申し上げたものでありました。

 他方で、国有地の売却価格については会計検査院がきっちりと厳正に調査するものと思っているということ、それも申し上げてきたところでございます。

 政府から独立した機関である会計検査院が検査を行い、今般、国会に報告が提出されたわけでありまして、その報告については真摯に受けとめる必要がある、このように考えております。今後、関係省庁において、業務のあり方についてしっかりと見直しをさせる考えでございます。

長妻委員 ちょっとここまでこの質問がなかなかうまくいかないというのは予想していなかったんですが。

 つまり、財務省から適切だと言われたから、自分は適切だと答弁をしたまでだというふうに今聞こえたわけでございますけれども、でも、適切ではなかったわけで、そういう意味では、国会で何度もいろいろな議員が聞いて、相当な時間を使って、適切、適切とおっしゃったことが違っていたわけでございますから、総理自身の答弁の責任として、謝罪なり、国会に対して、国民に対してそういう発言というのは一切ないのでございますか。

安倍内閣総理大臣 政府のいわば出費、支払い、支出等については、これまでもさまざまな国会でのやりとりをさせていただいているわけであります。その際、それを執行した省庁の説明を私は総理大臣として受ける場合もありますし、受けない場合もあるわけでございますが、しかし、業務の執行においては、それぞれの省庁が的確と判断したものを執行していくわけであります。その際、さまざまな指摘があり、また、会計検査院がさまざまな調査をし指摘をするわけでありまして、それを我々は真摯に受けとめ、今後こういうことがないように、各省庁でそれをしっかりと果たしていく、こういうことになっているわけでございます。

 当然、これは今回も同じことでございまして、先ほど申し上げましたように、価格については会計検査院がきっちりと厳正に調査するものと思っているということを申し上げているわけでございまして、会計検査院が調査することを否定しているわけではもちろんなくて、全面的に協力をさせていただきたい、こう申し上げてきたところでございます。

長妻委員 これはどうなんですかね、トップリーダーのあり方として。部下が適切だと言ったから、自分は適切だと言ったまでであると。しかも、この問題は、確かにいろいろな適切じゃないことはあるでしょう、会計検査院の指摘で。ただ、これだけ、安倍昭恵夫人が名誉校長を務めて、いろいろな問題が提起されている中で、ずっと適切、適切とおっしゃっていて、それが適切でなかったときに今の答弁というのは、これは私は到底国民の皆さんは理解できないと思うんですよ。

 私も国会で質問をした政党の一員として、ずっと適切と言って、それが違っていたときに、いやいや、部下が言ったから、会計検査院が指摘して、真摯に受けとめると、それだけで済まされるというのは、私はこれはいかがかと思いますよ、総理のあり方として。

 これ以上言っても、総理はまた文書を読まれるだけだというふうに思いますけれども、この姿勢こそが、全然直っていないじゃないですか、謙虚な姿勢とか、真摯な答弁とか。そういうふうに私は言わせていただきたいと思うんです。

 そして、これは結局、動機なんですよね。会計検査院も記者会見でおっしゃっておられますけれども、こういう会計の不備、ずさんな見積もり、こういうものについては法令にのっとって指摘をするけれども、ただ、それがどういうメカニズムで起こったのか、動機までは立ち入ることはできない、こういうふうにおっしゃっておられます。

 会計検査院のある幹部は、これは読売新聞でございますが、総理が熟読せよとおっしゃっている新聞でございますけれども、「最初から結論ありきで積算されたと言われても仕方がない」、こういうふうに検査院の幹部が言っているという報道もありますし、朝日新聞、「検査院のある幹部は、「ここまで裏付け資料がないのは珍しい」」「行政機関は普通、資料を残しておくもの。資料がないはずはない」、こういうふうにおっしゃっておられるという報道もございます。

 そういう意味では、何で前例にないようなことが起こったんだろうか。これは、賄賂をもらったという形跡はないというふうに私も聞いておりますから、どういう動機でこういう、ある意味では、チームプレーと言ったら失礼でございますけれども、一人の官僚が独断でやったのではなくて、上から連動したような形でこういうずさんな形が続いたというふうに私は受けとめるわけで、この動機について、何かそんたくがあったのかなかったのかということでございます。

 ぜひ、総理、我々要求をしております証人喚問、参考人、この招致について、ぜひお認めをいただきたいと思うんです。特に、安倍昭恵夫人について、全くやましいことがないのであれば、国会でお話しいただきたいというふうに思うわけでございます。

 安倍昭恵御夫人は、籠池の奥様とメールをやりとりされているということも聞いておりますし、あるいは講演にも行かれたということ、あるいは昭恵奥様付の秘書が問い合わせにお答えしているとか、いろいろなことが言われておりまして、その中身が、報道がありますけれども、その真偽が一体どうなのかということも我々わかりませんので、ぜひ、我々は安倍昭恵御夫人、そして佐川国税庁長官、あるいは池田近財の元統括官、柳瀬経済産業審議官などなど、この問題について国会にお呼びしておりますので、ぜひそれを総理としても前向きに捉えていただきたいと思うんですが、いかがでございますか。

安倍内閣総理大臣 委員会の運営でございますから、委員会でお決めになることだと思います。

長妻委員 委員会であれば委員会で決める。

 では、昭恵御夫人について、記者会見も一切されておられない。記者の皆様方から要請はされているようでございますけれども、一切の公の場でのこの件についての説明はないということ。

 しかし、今月の二十三日のシンポジウムでは、昭恵御夫人が講演をされて、ことしは学校のことでいろいろございましたということで会場の笑いを誘ったという報道がございますけれども、実際、私はその会場にいたわけではございませんけれども、御自身もそういう理解が、認識があると思いますので、では、国会以外の場で全部洗いざらい答えたらどうだ、やましいことがないのであればということをサジェスチョンいただくということはできないんですか。

安倍内閣総理大臣 この問題については、きょうもそうなんですが、さきの通常国会もそうですし、閉会中審査においてもそうなんですが、私がこの場においてお答えをさせていただいているということで御了承いただきたい、このように思います。

長妻委員 総理と奥様は別人格でありますから。自分の言うことを信じろというような御答弁だと思うんですが、今回、会計検査院の報告が出て、信じられないんですよ。適切、適切、適切とずっとおっしゃっていて、あれだけ長い時間、国会での質疑時間を使って我々も質問して、適切ということでかわされて、結局適切じゃなかったじゃないですか、検査院から出た報告が。ですから、総理の言うことについて、ぜひ奥様本人にお答えをいただきたい。

 きょう午前中の質疑の中で、与党の方が、悪魔の証明、こういうことをおっしゃっておられた。この問題については、赤いカラスが、こういう例を挙げられていましたね。赤いカラスがいるのかどうかというのは、全てのカラスを全部捕まえてみないとわからない、だから悪魔の証明なんだ、こういうようなことをおっしゃっていましたけれども、その証明をする努力もされておられないじゃないですか、そうしたら。証明する努力をぜひしていただきたい。

 もし、本当に総理がやましいことが、一点の曇りもないのであれば、これだけ大きな問題になっているわけです、マスコミも含めて。国会でも、長時間使って、時間をかけてやっているわけでございまして、きょう、理事会の中では、自民党の、一切、参考人も証人喚問もゼロ回答という回答が参ったところでありますから、総理、ぜひ、やましいことがないのであれば、それは証人喚問、ここの集中審議などを含めてきちっと開いて、それは全部質問に答えるよ、こういうような指示をしていただけないでしょうか。いかがですか。

安倍内閣総理大臣 最初に国会の運営について指示をするなと言ったのは長妻委員だというふうに承知をしておりますが、国会については、まさに国会がお決めになることであろうと。国会がお決めになったことに対して、政府としては、行政を預かる者としてその責任を果たしていきたい、このように考えております。

長妻委員 では、国会が決めれば、昭恵夫人は国会に出席するということでよろしいですね。

安倍内閣総理大臣 国会がお決めになることであります。

長妻委員 これでは、国会がお決めになるということでも、私も予算委員会の野党の筆頭理事をしておりましたけれども、官邸からいろいろな指示が飛ぶような、そういう話も仄聞をいたしまして、自民党の国対委員長、その上司はやはり自民党の総裁である安倍総理でもありますから、これは、そういう形で逃げていただくということでは、本当に真実がなかなか明らかにならないのではないかというふうに思います。

 そして、加計学園の問題につきましても、私も、議事録についてオープンにしているということで見てまいりましたら、非常に驚きましたのが、六月五日、平成二十七年ですね、議事録がここにありますけれども、実はここに一切、出席者も何にも書いていないという中で、平成二十七年六月五日の金曜日の国家戦略特区ワーキンググループヒアリング、ここに実は加計学園の関係者三人が来ていた。一切発言もないし、出席名簿も、ここに全部ありますけれども、そこだけ抜けているということで、この議事録は出していただけないですか。

梶山国務大臣 お答えいたします。

 ワーキンググループの議事は、原則公開との八田座長の方針に基づき、ルールにのっとって、詳細な議事要旨が作成され、オープンにされています。

 ワーキンググループ提案ヒアリングは、提案者から責任ある説明を求める場であるため、提案者以外の者は正式な出席者とはなっておりません。提案者でない加計学園関係者は、提案者である今治市の独自の判断で同席をさせた説明補助者という形にすぎず、会議の一般則に従い、正式な出席者とはしておりません。その補足説明も非公開であったため、特別に認められた非公式なものであります。

 このため、そもそも正式な出席者や公式な発言を記録する議事録、議事要旨の掲載対象とはならないのは当然であると考えております。

長妻委員 驚く答弁だと思いますね、これは。

 加計学園の関係者三人が、このワーキンググループのヒアリングに同席して発言もしていた。補助者というんですか、普通は発言はないということを聞いております。異例なことで、発言をされておられるということで。

 例えば、二〇一五年六月にワーキンググループの司会役である藤原内閣府の審議官がこういうふうにおっしゃっています。議事要旨はかなり議事録に近い形で、ほとんど発言のとおりに書いている。

 そして、安倍総理は、ことしの七月二十四日の予算委員会で、私の友人がかかわっていることでありますから、疑念の目が向けられていることについて十分考えながら、何ができるのか真剣に考えていきたい、国家戦略諮問会議あるいはワーキンググループの議事録もオープンにされている、こういうふうにおっしゃっておられるわけです。

 私は、ここに出席したというのはたまたまいろいろな関係者から聞いてわかったわけで、ほかの議事録というのはちゃんと公開されているんですか。この議事録を今公開されないというふうにおっしゃりましたけれども、結局、総理、いろいろな問題がなかなか国民の皆さんにすとんと腹に落ちない。

 ちょうどきょうの日経新聞を見ていましたら、日経新聞がきのうまでの世論調査、最新の世論調査をされておられて、学部新設手続をめぐる、加計学園の獣医学部ですね、政府の説明に納得できないという方が七一%、納得できるという方が一〇%、そして加計学園の獣医学部新設の認可について、これを評価するという方が二七%、評価しないという方が六〇%ということであります。

 ですから、ぜひ、これは国会でありますから、総理が率先して、何しろ議事録も含めて全てオープンにしようじゃないか、あるいは、国会にいろいろ参考人も含めて全て、全てとは言いませんけれども、ゼロ回答ではなくて、ぜひ、総理が必要だと思う人、それを呼ぼうじゃないか、こういうようなことを、全てゼロ回答でいくのではないというようなことをぜひ御指示いただけないでしょうか。

安倍内閣総理大臣 先ほどワーキンググループのことについて、何かごまかしているかのような印象を与える御質問だった、このように思いますが、梶山大臣から答弁しているとおりでございまして、特区のワーキンググループは、原則は公開との方針に基づいて、この案件に限らず、このワーキンググループで取り扱う案件については、八田座長を初め民間有識者の皆さんが決めたルールに基づき運営されているものと承知をしております。

 このルール等については先ほど梶山大臣から答えたとおりでございますが、こうした運営ルールにのっとって、まさに全てがオープンにされているとの認識をしているところでございます。

長妻委員 ただ、これは、何度も何度も、ワーキンググループに加計学園の関係者とか、あるいは、いろいろこれまでの政府の中の審議で加計学園がどういうふうに発言でかかわっているのか、どういうかかわりがいつからあるのか、何度も何度も質問を受けているわけで、ここに出席しているというのを何で初めからおっしゃらないのかという疑念も残りますし、そして、こういうことについても全てオープンにするとおっしゃっておられますから、今回の事情の特殊性に鑑みて、総理がそういう後ろ向きな答弁をされているというのは、本当にこれはよくないと思います。

 ぜひ、森友でも加計でも、結局、全て議事録やメモも含めてオープンにしましょう、こういうことを率先して総理が言っていただければいいんですよ。これは何度聞いてもおっしゃられないわけであります。

 そして、菅官房長官、今お戻りになっておられましたので、ちょっとお聞きします。

 山井議員の質問で、菅官房長官が十一月二十四日の内閣委員会で、会計検査院の報告が出た、国会答弁と検査院報告の矛盾をどうするんだというふうに言われて、菅官房長官は、答弁と報告との関係について関係省庁で精査する、こういうふうにおっしゃっておられる。つまり、国会での発言と会計検査院の調査、データに基づく調査のそごについてはちゃんと精査をして、恐らく、精査するというのは報告するということだと思いますので、速やかにこの予算委員会で報告をいただけないでしょうか、いかがですか。

菅国務大臣 私は、内閣委員会で申し上げたのは、まずは関係省庁において、今回の報告書の内容を十分精査した上で、速やかに国有財産処分に関する見直しを行うなど適切に対応する必要があるという趣旨の話をし、具体的には、財務省及び国土交通省は、公共性が高い随意契約は、売却価格を全て公表するなどの手続の明確化、特殊な事案についての第三者による算定、確認などの売却価格の客観性の確保、こうした見直しの方針を示している、このように承知しています。

 それで、答弁については、今回のこの報告書をしっかりと精査した上で、その対応を財務省、国交省で適切に対応する、そういう答弁をしたというふうに記憶しています。

長妻委員 いや、答弁と報告との関係について関係省庁で精査するとおっしゃっております。

 精査されたら、国会で報告してください、ぜひ。この予算委員会で速やかに集中審議を開いて、予算委員会にそのそごがある部分について報告をいただきたいということを、ぜひ、総理、報告するということをお約束いただけないでしょうか。

菅国務大臣 私は、内閣委員会の答弁は今申し上げましたけれども、まず、検査院の指摘を受けたことを精査した上で、財務省、国土交通省で適切に対応させていただきます、こういうふうに申し上げたということです。

長妻委員 いや、それは、でも、精査したら報告はあるんじゃないですか。報告はあるわけですよね、国会か国民の皆さんへの報告というのは。

菅国務大臣 精査した上で、そのかつての答弁と問題があれば、そこは適切に対応するということを私は申し上げたわけです。

長妻委員 精査しても、適切に対応して国会で報告しないというのは許されないことだと思いますし、ぜひ、国民の皆さんに発表もしないんですか。本当に信じられません。

 改めて、理事会で我々野党が要求しておりますのが、証人喚問、森友学園、加計学園の問題では、内閣総理大臣夫人昭恵さん、学校法人加計学園理事長加計さん、内閣総理大臣補佐官和泉さん、元文科事務次官前川さん、そして参考人としては、国税庁長官の佐川さん、財務省近畿財務局管財総括第三課長の池田さん、経済産業審議官の柳瀬さんという七名を要求しております。私も質問の準備をいたしましたけれども、一切ゼロ回答ということでございましたので、ぜひ。

 本当に、解明する努力というか、そういう姿勢がほとんど見られないということでありますから。総理、全然話が本当に、丁寧な説明ということで私も期待してきょうこの質問席に立ったわけでございますけれども、全く前と変わらないわけでありますので、選挙が終わっちまえばこっちのもんとは思っておられないと思いますけれども、ぜひ、総理、本当に真摯な形で、やましいことがなかったら、どんどん答弁していただきたいし、参考人も呼んでいただきたいし、資料も出していただきたいということを強くお願いいたします。

 またあした、野党、仲間も質問いたしますので、あしたはぜひちゃんと答えていただきたい。よろしくお願いします。

 そして次に、憲法の問題でございますけれども、総理、憲法九条について御発言がございました、自衛隊を書き込んでいくと。自衛隊を憲法九条に位置づけて書き込むと、自衛隊の武力行使の限界等々、何か変わることというのはあるのでございますか。

安倍内閣総理大臣 自衛隊が明記されることによってということでございますか。

 私が述べてきた提案でございますが、九条について、これはまだ自民党の中で議論しているところでございまして、まだ自民党の中において、どのような形で九条の改正を行うかということがまとまっていないわけであります。

 また、逐条的に、私は今ここで総理大臣としてこの場に立っておりますので、自民党の案について説明する立場にはないわけでございますが、しかし、あえて申し上げますと、私が提案したことに、つまり一項、二項を残してという形で自衛隊を明記する、明記の仕方にもよるわけでありますが、自衛隊を明記するということの中におきましては、自衛隊の存在が憲法に明記されることによって自衛隊の任務や権限に変更が生じることはないものと考えていることは明確に申し上げておきたいと思います。

長妻委員 そうすると、何にも変わらないというような趣旨だと思いますけれども、何も変わらないのに、なぜ、相当な国民的議論、二分するような形でですね、議論をして提起をされるのかという理由を教えていただければと思います。

安倍内閣総理大臣 選挙戦を通じて何回も御説明をさせていただいたところでございますが、いわば自衛隊については違憲、合憲論争がずっと行われ、今でもあるのは事実でございます。憲法学者の中においても、合憲と言い切る憲法学者は二割しかいないわけでありまして、違憲の疑い、あるいは合憲と言い切れないということを合わせますと、七割を超える憲法学者がそう述べているところでございます。

 そのことによって、教科書についても、違憲の疑いについての記述がほとんどの教科書に載っているところでございまして、自衛隊員のお子さんたちもこの教科書で勉強しているわけでございます。ある自衛官から聞いたのでありますが、お子さんから、お父さんは違憲なの、こう言われたことに胸を切り裂かれる思いだったと言われていた話を私は聞いたことがあるわけでございます。

 そうした中において、今、この緊迫する北朝鮮情勢、安全保障環境が厳しくなる中において、三百六十五日二十四時間、国民の命を守るために精励している諸君たちが、あるいは、災害があれば、まさに国民の命を守るためにみずからの危険を顧みず現場に飛び込んでいく自衛官たちに対して違憲、合憲という議論が残っている、これをなくしていくことが私たちの世代の責任ではないか、このように考えたところでございます。

長妻委員 今の話は、朝日新聞の調査の話を引用されているのであれば、七割というのは数字が違うと思います。

 そしてもう一つ、政府においては自衛隊は合憲というふうに解釈をされておられますし、我々立憲民主党も自衛隊は合憲であるというふうに思っているところであります。

 いやに学者の皆さんの動向を気にされるんですけれども、総理、おかしいのは、おととしの存立危機事態の、集団的自衛権を行使する、憲法を変えないで行使するときに、これも同じ朝日新聞の調査でありますけれども、憲法学者百二十二人中百四人が反対した。明確な反対だけでも八五%が、憲法学者のほとんどが反対して、それを押し切って、そのときは憲法学者の皆さんの意見は余り重視せずに、今回急に、ずっと歴代自民党が合憲、合憲と言って、別に自衛隊を明記するということの提起はなかったにもかかわらず、突然、憲法学者の皆さんの言うことが気になった、気になってしようがない。全く変わらないけれども変えていく、条文の中に盛り込んでいくというのは、私は、どうもその理由について、なかなか腑に落ちないところがあります。

 我々も憲法学者の皆さんと議論をいたしました。仮に自衛隊をいろいろな形であっても憲法九条に明記をすると、これはフルスペックの集団的自衛権を認めることにもつながる、そういう解釈もできる可能性、余地が出てくるんじゃないのか、こういうような指摘も受けたところでございます。

 総理は、フルスペックの集団的自衛権というものについては、中長期的には入れた方がいいというようなお考えもお持ちなのでございましょうか。

安倍内閣総理大臣 これは朝日新聞の調査の結果を申し上げているわけでございますが、これは二割しか、合憲であると言い切る学者は二割しかいないわけであります。

 七割以上かどうかということについては、世論調査の結果を見ていただければわかるんですが、いわば違憲である、違憲の疑いがある、合憲と言い切れないという方もおられるわけであります。それを足していけば七割を超えるわけでありまして、であるからこそ、いわば教科書、ほとんど全ての教科書にこの議論が載っているのは事実であります。相当の量を割いてこの記述を書いている、いわば教科書会社も存在するのは事実であろう、こう思うわけであります。

 その憲法学者の方々が、まさに平和安全法制についても違憲であるということを述べられたわけでございます。そもそも、これは自衛隊に対していわば合憲であると言い切れる人は二割しかいない中における方々のアンケートであるということも申し添えておきたい、こう思うわけでございます。それを同時にやっておりますから、そういうことなんだろう、こう思うところでございます。

 そこで、自民党の中において、二項は削除するべきだと。一項については、これは国連憲章の中にもあるわけでありますし、多くの国々の憲法にも似た記述がある憲法はあるわけでございますが、二項においては、二項を削除するべきだという議論は随分あるのでありますが、しかし、この二項による制約がかかっているのも事実でございまして、いわばこの二項の制約がかかる以上、一項があり、そして二項の制約がかかる以上、自衛隊がなし得ることには変わりはない。

 集団的自衛権の、いわば我々閣議決定をした、一部、三要件のもとに集団的自衛権の行使を容認するという解釈に変更したところでございますが、これは一項、二項の制約を受ける中においての変更であるということでございまして、それに自衛隊が明記されることによって、その制約は変わりはないと我々は考えているところで、制約は変わりはないということでございます。

長妻委員 将来的な集団的自衛権フルスペック、これは総理は導入すべきと思われているんですか。

安倍内閣総理大臣 だから、今申し上げたように、一項、二項の制約がある中においては、いわば現在の三要件がかかる、こういうことでございます。

長妻委員 いや、これも総理の言うとおりではないですよ。

 憲法学者の皆さん全員が全員そうかわかりませんけれども、私がお尋ねした憲法学者の方々は、やはり一項、二項をそのままにして、例えばその次の条文に自衛隊を明記するということをしたとしても、それは後から追加した条文が優先されるということになって、戦力を明確にそこで認めることになって、集団的自衛権、日本が危機がなくても地球の裏側まで武力行使ができる、そういう解釈の余地が出てくる、こういう可能性も否定できない、そう言う方もいらっしゃるわけで、結局、またいろいろな論争がこれは出てくるのではないかというふうに思います。

 我々の立場といたしましては、おととしの安保法制の集団的自衛権、限定的であるにしても解釈の中で入れてしまった、これは我々は容認できないということでありまして、前の状態に戻すべきであるというふうに考えているところであります。

 我々は、立憲主義を大切にするということで、憲法は国家権力にたがをはめる、歯どめをかけるのが憲法の主な役割である、こういうふうに考える政党でありますから、それを強める方向の憲法改正の議論というのはあってもいいんじゃないか。

 例えば、衆議院の解散。総理は、私から見ると自由自在に解散をされておられる。自分が有利なとき、あるいは国会で議論を余りしてほしくないとき、そういうふうな形で非常に自由奔放に解散をされて、歴代の総理大臣はこれほど自由自在な解散というのはなかった、節度があったというふうに私は理解をしているのでございますが、ドイツでもイギリスでも、解散というのは相当制約されているんですよ。

 ですから、そういう意味では、たがをはめていく方向を強めるのはいいですけれども、そうでない、たがを緩めていく方向の改正議論というのは我々は非常に否定的であるということも申し上げておきたいと思います。

 それでは、自民党の憲法草案についての質問も申し上げます。

 自民党の憲法草案については、前回、五月ですか、総理に質問したときに、憲法草案は撤回するんですかというふうに聞きましたら、読売新聞を熟読しろと。ここで出てきたわけでありますけれども、幾ら熟読しても書いてありませんので聞きますけれども、自民党憲法草案は撤回されるということでよろしいんですか。

安倍内閣総理大臣 その後の質疑においても、憲法草案を撤回するのかどうかという御質問がございまして、既にお答えをさせていただいていると思うところでございますが、本来、これは私、ここには内閣総理大臣として立っておりまして、政府として進めていく政策について説明する責任と義務においてこの場でお答えをさせていただいているわけでございますから、党の総裁としてお答えする立場にはございません。

 その上で申し上げますと、御指摘の自民党の二十四年草案、自民党の二十四年草案、これは二十四年草案、何回も繰り返すわけでありますが、このとき私は総裁ではないわけでございます。前総裁のときの草案でございまして、二十四年草案は、平成二十八年十月に党の憲法改正推進本部長方針で整理されたように、党としての公式文書ではあるが、それを手にしてから既に四回の国政選挙を経て議員の構成が大きく変わり、その間に当該草案に対して内外から多くの御意見をいただいてきたことを踏まえ、そのまま国会の憲法審査会に提案することは考えていないと位置づけられているものであります。

 現在、その後の議論の深化も踏まえ、さきの衆議院選挙において公約として掲げた自衛隊の明記、教員の無償化、充実強化、緊急事態対応、参議院の合区解消の四項目を中心として、改正案について党内で検討している状況にあるところということでございます。

 ですから、撤回というのは、憲法審査会に出していれば撤回でありますが、そもそも出してもいないわけでありまして、自民党が議論してきたものとして今言った位置づけになっているということであろうということでございますから、今、内閣総理大臣の私がそれを撤回するかどうかということを言う立場にはもちろんないわけでございますし、そもそも出していないものは撤回するという対象ではないのではないか、こう思う次第でございます。

長妻委員 相当詭弁だと思いますよ。

 与党ですよね。自民党ですよね。今一番大きな政党が、しかも総理大臣も出している政党の憲法の考え方について、憲法九十七条、基本的人権の尊重、最高法規をばさっと全文削除していたり、十一条の基本的人権について、「将来の国民に与へられる。」と現行憲法で書いてある「将来の国民」をばさっと削除したり、あるいは「公共の福祉」というのを「公益及び公の秩序」に変えてしまったり、こういう形で、非常に私たちはこれは問題ありと。これは非常に、こんなことが実際に憲法改正されたら大変なことになるということは、警鐘はこれからも鳴らしていきたいと思いますので、ぜひ、一回白紙に戻すということを言っていただきたい。

 そしてもう一つは、内心の自由にもかかわることなのでございますが、総理も大きく旗を振ったと聞いておりますけれども、来年の四月から、全国の小学生に対して、道徳心や愛国心に対して成績をつけていく、こういうことがいよいよ始まってまいります。

 これは、道徳科が正式な教科になるということに伴っての措置でありますけれども、生徒たちに対する、子供たちに対する評価、成績づけは、点数はつけない、記述式でいく、そしてほかの生徒とも比べない、その子供の成長の過程を評価してあげる、こういうようなことでございまして、そして受験には一切使わない、こういうことが、説明があったわけであります。

 私自身も、愛国心とか道徳心というのは、これは大変重要な価値だと思います。これはもちろんです。そして、道徳心や愛国心も適切に学校で教えるのであれば、私もそれを別に否定するものではありませんけれども、ただ、幾ら何でも、道徳心とか愛国心に対して、来年四月からは小学校、再来年の四月からは全国の中学生に対して、成績をつける、評価をするというのはやり過ぎである、これは本当にやめてほしいと思うんです。

 そして、受験には使わないということを、私も相当文科省に交渉をして、受験には使わないという話になったんですが、実は、これは私もびっくりいたしました。抜け穴があったわけでございます。

 実は、内申書には入れないということになったんです。ただ、通信簿、御家庭にお子さん経由で持っていく通信簿には道徳心、愛国心の評価が入ることになりまして、通信簿は受験校に行かないんだという説明だったんですが、実は、私も知らなかったわけでございますが、任意で、任意でというか、受験のときに親御さんに通信簿のコピーを出させる、そういう私立中学校がたくさんある。

 任意は任意なんだけれども、それは受験するときに出すのが必須でありますから、受験するとき、これを出さなきゃいけないわけでありまして、それを文科省に調べてほしいと言ったら、調べていただいて時間がかかったんですけれども、そういう通知表の写しを求めている学校は、私立の中学校で百八十三校、二四・三%、全体で百八十五校、約二割あったということで、道徳心、愛国心について、受験の参考にそれを本当にしていいのかということについて、総理、どうですか、これはやめた方がいいんじゃないでしょうか。

林国務大臣 今、長妻委員からお話がありましたように、特別の教科、道徳の全面実施に伴いまして、中学校、中等教育学校の入学者選抜に係る調査、通知表の写しの活用実態についてという調査を行いまして、過日、調査結果を取りまとめまして、各都道府県等に周知をしたところでございます。

 やはり委員御指摘のように、これが行ってしまうと、結局それが何か使われるのではないかという御疑念が保護者の方にあろうか、こういうこともあります。ただ、それは非常に簡便なあれでできるものですから、今度は、逆に言うと、それをやらないかわりに内申書なるものをやると、それはまたそれで作業がかかるということで、これは丁寧にしっかり見ていかなきゃいけないと思っておりまして、この具体的な取り扱いについては、関係する団体の皆様とも協議しながら、しっかりと、各学校に対して、道徳の評価を入試に使わない、この趣旨の徹底を図ってまいりたいというふうに思っております。

長妻委員 これは使わないといっても、通知表には記載されて、親御さんには渡る。それは、絶対に私立中学校はコピーをもらっちゃいかぬということを本当に徹底できるのかどうか。

 私は、総理、ちょっとぜひ答弁を次いただきたいと思うんですが、いや、細かいことは聞きません。

 文科省に聞きますと、何で入試の、要するに、通信簿に出ているほかの全ての、基本的にはほかの評価は全部使うわけですよ、使っていいわけですよ、評価は。ここだけ使っちゃいかぬという理由は何だと聞きましたら、先生に今教育している、評価のつけ方を先生方に教えているんですね、国が。そこのガイドラインにも書いてございますけれども、客観性、公平性が求められる入試選抜とはこの評価はなじまないんだというふうに書いてあるわけです。

 つまり、みずから、愛国心、道徳心の評価については、客観性や公平性が求められる入試、入学選抜とはなじまないということは、客観性、公平性が求められるものではないというふうにも読めるわけで、であれば、ちょっと評価はやめた方がいいと思うんですよ、総理。総理、これは大きな方針でありますから、これは総理に。

 でも、百歩譲って評価するのであれば、例えば、道徳科の授業のときの発言の態度とか、あるいはどれだけ出席があったかとか、いっぱい手を挙げたかとか、そういうようなことについてのある程度の外形的評価、客観的な評価というのは、私も、よくよく研究しなきゃいけませんけれども、あり得るとは思いますけれども、これは内心まで踏み込むものについて本当に大丈夫なのかということであります。

 これはぜひ、本当にこれで大丈夫なのかということで、その評価のガイドラインも、学校の先生方に教えているところには、子供たちが道徳的価値の理解をさらに深めているかということでありまして、道徳的価値、この中には、国と郷土を愛する心、愛国心もありますけれども、これはやはり、深めたか深めていないかという評価は、何が正しい愛国心、道徳心なのかという基準がなければなかなか評価できないわけであります。その基準を国が先生方に教えて、評価の仕方までガイドラインをつくって教えていくというのは大丈夫なのかという気がしますけれども、総理、ぜひ、ここで即答できなければ、研究するでも結構ですから、お答えいただけないでしょうか。次へ行きますから、総理、答弁してください。

安倍内閣総理大臣 詳しくは文科大臣に答弁させたいと思いますが。

 御指摘の点については先ほど文科大臣が答弁したとおりでございますが、道徳科の評価は、一人一人の成長の様子を認め、励ます観点から、文章により記述するものであります。このため、入試において他の生徒と数値の上での優劣をつけるような扱いがなされることはないものと考えています。

 中学入試における取り扱いを含め、道徳科の評価の趣旨について、その徹底を図ってまいりたいと思います。

 詳しくは大臣から答弁させたいと思います。

長妻委員 ちょっと、じゃ、もう一つ、一点だけ。これは大臣にも聞きますが。

 これも、一時、ちょっと笑い話にもなった話なんですが、私は笑える話ではないというふうに思うんです。

 いよいよ来年四月から成績をつけるというのが始まりますけれども、小学校一年生の教科書の検定です。

 検定について、ある教科書会社が、おじいさんと小学生が地元を散歩して、これは、国と郷土を愛する心というようなものを評価する、そういう物語ということで、最後にパン屋さんが出てくるんですね。

 これは、同じ一年生のお友達の家でした、このパン屋さんは。おいしそうなパンを買って、お土産ですと。これが最後に出てきて、この物語は実は検定でバツになった。理由を見ますと、国と郷土を愛する心が不十分である、こういうことになった。ところが、最後のところを和菓子屋さんに変えたら、これはマルになった。

 私、全部読みましたけれども、ほとんど一字一句同じです。最後の和菓子屋さんかパン屋さんのところが大きく違うところでありまして、これはパン屋さんの業界団体が抗議したということも聞いておりますけれども。

 まあ、これはこれで笑い話にしても私は深刻だと思うんですが、国が、こっちは国と郷土を愛する心が望ましくて、こっちは望ましくないみたいなことを一々チェックし出す。当然、自主的だと言うんですね。マルかバツかは出すけれども、それは教科書会社がみずから考えてほしいということだとは思うんですけれども、こういうようなことも始まっておりますから、ぜひ評価については考え直していただきたいということを強くお願いいたします。

 そして次に、北朝鮮の問題でございますけれども、これについて総理も本当に努力されているというふうには思います。トランプ大統領とも会談して、いろいろ、中国に対する貿易の問題、ことし九月の経済制裁、国連の問題などなど取り組んでおられると思いますけれども、一つちょっと私が懸念しているところがございまして、総理の見解をお伺いしたいのでございます。

 今、いろいろな駆け引きの中でいろいろな情報が飛び交っておりますが、アメリカには、まだ北朝鮮からICBM、大陸間弾道弾、これが届くものが開発されていないと言われております。ところが、日本あるいは韓国については、当然、戦争が起こったときに被害をこうむるようなミサイルというのは開発されているということが濃厚である。

 こういうような温度差がある中で、今回、例えば米朝を含めたいろいろな水面下の駆け引き、やりとりの中で、今回のこの問題について、一定のレベルのところでスタックというかフリーズというか、そういうようなことに結果としてなってしまわないんだろうかというような懸念を持つ人もいるし、私もそういう懸念を持っております。

 アメリカあるいは世界各国は、核については完全放棄をしなければならない、こういう建前というか、こういう主張はもちろんするわけで、我が国ももちろんする。これは、主張だけでなくて、我が国はもちろん本音でそういうふうに考えないといけないわけでありますけれども、現実問題としてそれが難しい場合、途中の段階で、ある一定のレベルでとどまれば云々かんぬんというような、そういう交渉なり、そういう水面下の動きなりがあっては私は絶対ならないと思っておりますので、総理はそういう動きについてどういうふうに対処するか。そういう動きが総理はあると思うのか、ないと思うのか、ここでおっしゃれないとは思いますけれども、そういうことは決してあってはならないということをぜひここで明言していただきたいと思います。

安倍内閣総理大臣 北朝鮮の核・ミサイル開発はこれまでにない重大かつ差し迫った脅威でありまして、北朝鮮は我が国を射程におさめるノドンミサイルを数百発保有していると見られておりますが、これは、我が国はもちろんでありますが、在日米軍にとっても直接の脅威となっております。

 北朝鮮には、完全、検証可能かつ不可逆的な方法で核・ミサイル計画を放棄させなければなりません。このために、圧力を最大限まで高め、北朝鮮の側から核・ミサイル開発を断念するので話し合いたいと言ってくる状況をつくっていくことが必要であり、日米、日本とアメリカとの間ではこの方針について完全に一致をしているところでございますし、私もトランプ大統領に何回もこの基本方針について確かめているところであります。

 確かに、さまざまな論調がございます。いわば、現在の挑発行動をやめて、そしてそれに対応して米韓の軍事訓練等々をやめるという案も、ダブルフリーズもあるわけでありますが、それに近いところでもう凍結しておけばいいという案もあるわけでございますが、日本としては、まさに日本への脅威は全くまだまだ残るわけでございますから、そうではなくて、圧力を最大限まで高める中において、先ほど申し上げましたような、完全、検証可能かつ不可逆的な方法で核・ミサイル計画を放棄させなければならないということでございます。

 また、米国との間においては、私とトランプ大統領を初めとして、あらゆるレベルで緊密に意思疎通を行っており、今後とも日米で緊密に協力して北朝鮮問題に対応していきたいと考えております。

長妻委員 本当に懸念されているようなことにならないように、ぜひ総理、強い意思を持っていただいていると思いますけれども、お願いをしたいと思います。

 そして、中国については、これはきょうの質問でもありましたけれども、原油を、今も輸出がとまっていない。ただ、ことしの九月十一日にかなり厳しい制裁はしたものの、パイプラインはまだ通っているということでございまして、これが北朝鮮の軍事活動の原動力になっているということもございます。

 来年一月前後にはその効果がどれだけ出るのかというのが、一説によると三割程度は絞られているんじゃないかということも言われておりますので、これについて、ぜひ、アメリカと協力して、あるいは総理の個人的な、あるいは外務省のパイプもほかのパイプも含めて、中国に何としても、戦略的に原油を絞って、総理がおっしゃるように北朝鮮がみずから交渉のテーブルに着いてくるような、そういう貿易の絞り込みということについても、ぜひ、日本が大きな力を果たすことができる位置に今いると私は思っておりますので、よろしくお願いをしたいというふうに思います。

 我々立憲民主党は、この北朝鮮の危機については、まさに我が国の危機でございますので、専守防衛を基本として、やるべきことがたくさんあるというふうに考えております。今の外交の問題や、あるいはミサイルを防御する仕組みについても、本当に効果の高い仕組みはどうなんだ。これはあくまでも専守防衛の範囲内でございますので、そういうところについては政府とも積極的な議論をしていきたいというふうには思いますが、ただ、総理の憲法九条の考え方については、到底これは容認できるものではないということもつけ加えておきます。

 そして、最後に、経済社会政策なのでございますけれども、総理、今、格差が成長を損なうというようなことを、私もずっと以前からそういうことをこの委員会でも申し上げてまいりました。格差というのは成長を損なっていくんだ、これが今、世界の経済の専門家では、IMFもOECDもスティグリッツ教授もおっしゃっているようなところでございます。

 やはり格差については、なかなか個人消費、一番限界消費性向の高い低所得者がそれが伸びないとか、あるいは、能力がなかなか発揮できない、一部の人しか発揮できない、こういうような理由で経済の足を引っ張ってしまうというようなことがあって。

 私どもは、やはり、この世に生まれたからには、一度だけの人生でありますから、どなたでも初めは、自分の力を発揮しよう、こういうふうに思う気持ちがあると思います。社会の中で役に立とう、あるいは人様のために役に立ちたいという気持ちは誰でもあると思います。しかし、いろいろな壁が日本は多過ぎて、それがまた厚く高くなって、何度も壁にぶち当たるうちに、もうやる気がうせてしまう。つまり、力の発揮を邪魔する壁が日本社会はたくさんでき上がってしまった。これを取り除くことで、日本はもっとよくなるというふうに私は考えております。

 その中では、一つは、いろいろあるんですけれども、非正規雇用の問題。四割を超える、なかなか力が発揮できない。

 あるいは、教育の問題。きょうも議論がございました。どういう御家庭に生まれるかで、受ける教育レベルが全然違う。アメリカよりも日本は教育費の自己負担比率が高い国です、今。先進国で一番高い国です、比率でいえば。

 そして、例えば男女。性別が単に違うだけで、同じ仕事をしているのに賃金が倍以上違う。こんな国も珍しいし、女性が家庭で育児と介護で潰れている、こういう女性もたくさんおられる。シングルマザーの二人に一人が貧困状態にある。あるいは、六十五歳以上のひとり暮らしの高齢者の女性、二人に一人が貧困状態にあるということです。

 力を発揮しようと思っても、それがなかなか発揮できにくい状況をつくっておいて、一億総活躍、経済成長だと言っても、一部のエリートがもう疲弊してしまう。そんなような、今、全員野球になっていないような私は日本の経済の状況だと。

 総理が生産性革命とおっしゃった。私も、結果としての生産性を上げるというのは賛成でございます。稼ぐ力が日本は先進国で二十位まで落ちてしまった。ただ、手法について、私は総理に大きく疑義があるわけでございます。

 まず一つは、総理は、労働法制を岩盤規制だということで、どんどんドリルで穴をあけていくようなお話もされておられます。でも、果たして労働法制は岩盤規制一方なんでしょうか。今、それを緩めたことで、どんどんどんどん日本の稼ぐ力が落ちた。それも大きな理由だと思います。当然、ICTとかあるいは物流の集約化とかあるいは職業教育とか、そういうのも重要ですけれども、やはり力の発揮を促すような労働法制、こういう観点でぜひ考えていただきたいと思うんです。

 そして、私が、「日本の非常識」、三つ書きました。残念ながら、自民党からは、この「非常識」という言葉はだめだと。私も粘りましたけれども、このパネルを出さない、出すのであればクエスチョンを入れろというので、ここにクエスチョンを入れました、不本意でございますけれども。

 サービス残業減らずというか、サービス残業がずっと放置されている。IMFが、総理、先週、レポートを出しまして、「KAROSHI」というローマ字を書いて、日本の長時間労働を何とかしろという警告までいただくような今ていたらくでございます。サービス残業が放置されている。死ぬまで働く。経済成長はしても、死ぬまで働く、それでいいのかどうか。

 契約社員の雇用、ヨーロッパに比べて、日本は入り口規制がない。ヨーロッパでは、契約社員は原則禁止です、雇用は。日本は平気で、一年、二年、三年、四年雇うことができる。ヨーロッパの諸国では、これは、例えば六カ月のイベント、時限的な仕事、六カ月だけ、あるいは一年で閉まる店舗、そういう、仕事が時限的であれば、その時限に応じた雇用は認められるけれども、ずっと永久に続くような店舗で契約社員というのは原則はできない、こういうようなことになっているところであります。

 そして、二十四時間営業。これはいろいろな議論があると思いますけれども、私が確認したところ、先進国で日本ほど自由な国はない。これも、いろいろな国に行きますと、深夜営業が禁止になっていたり、一部、ガソリンスタンドのついている店舗だけとか、あるいは日曜の営業は基本的には禁止になっていたり。

 もう働く人が相当疲弊するような、非正規雇用の七割を契約社員が占めるわけでございます。

 総理、最後に、もう時間もなくなりましたので、ぜひ一言お願いしたいのは、来年に法案が出てくる、いわゆる我々が言っております残業代ゼロ法案という法案なのでございます。

 これは、営業マンにも裁量労働制を入れるということで、裁量労働制というのは今まで営業マンでは入れることができませんでしたけれども、例えば残業二十時間というふうに決めてしまうと、それ以上働いてもお金は出ない、二十時間分だけ払って。過去、ほかの業種で入れている例を調べると、圧倒的に長時間労働になっちゃうんですね、残業代を払わない形で。そういう残業代ゼロ法案を、総理、もう出すということを政府は決めたというふうに聞いておりますけれども、労働法制が岩盤規制だと。

 そうではなくて、労働法制をうまく活用することで高付加価値を生む、働く人たちを実は育んでいく、そういうツールでもある、労働法制は。そういうお考えのもと、来年の法案についても考えていただきたいし、総理が主導する働き方改革でも、残業時間百時間までオーケーよ、こういうような考え方を打ち出して、私はもう本当に腰が抜けましたけれども、そういうようなことについて、ぜひ、労働法制は岩盤規制一方ではない、生産性を高める、稼ぐ力を高めるためには、労働法制は一つの活用ツールとして、いろいろな規制をむしろ強めるところもある、こういうようなお考えのもと、来年の法案について言及いただければ。

 最後に、総理、お願いします。もう時間がないので。いや、総理、もう最後です。時間がないですから。きょうテレビも入っているので、これはほかにも迷惑がかかりますから。

河村委員長 先に加藤厚労大臣。(長妻委員「いやいや、総理。委員長、時間がもうないんです、ないんですよ」と呼ぶ)一分で答えます。

加藤国務大臣 一言だけ。

 今、働き方改革について言及がございました。

 長時間労働の是正や、あるいは非正規で働く方の処遇の改善、これらにしっかり努めていくことによって、それぞれ事情がある中で、また意欲や能力を十二分に発揮できる、それを働き手の視点に立って我々は進めていきたいと思いますし、今お話があった裁量労働制等も含めて、そういう自律的な働き方をしていく。

 もちろん、健康の確保とか、それから、上にありますような、しっかりとした時間管理をして、過労死を超えるような長時間労働にならない、これはしっかり努めていく中で、今申し上げた、いわば労働法制を使って、人々が安心して働き、それが生産性を上げ、そしてそれが我が国の経済成長につながっていく、それをしっかり目指していきたいと思っております。

安倍内閣総理大臣 時間外労働の上限規制については、これはまさに連合と我々は合意をしたわけでありまして、これは歴史的なことであった、こう思っております。

 具体的には、時間外労働の上限は月四十五時間かつ年三百六十時間と法律に明記する方針でありますし、その上で、労使が合意した場合でも上回ることができない上限を七百二十時間とし、その範囲内において、複数月の平均では八十時間以内、単月では百時間未満と定めているわけでありまして、これは、まず実効性があり、かつ、ぎりぎり実現可能な水準として労使が合意に達した内容であり、それに沿って法定するものであります。

 さらに、労使合意を踏まえて、可能な限り時間外労働を短くするため、新たに労働基準法に基づき時間外労働を適正化するための指針を定め、国が使用者及び労働組合等に対し、必要な助言指導を行えるようにすることを予定しているわけであります。

 このように、今回の改革は長時間労働に対する規制を強化するものでありまして、基本的な考え方についてはただいま加藤大臣から答弁したとおりでありまして、我々、いわば岩盤規制としてそれを砕いていくということではなくて、いわば多様なニーズがあるわけでありますから、多様な働き方を可能にしていくことによって、これは当然生産性も上がっていくだろうと思います。また、長時間労働はむしろ生産性に対してプラスにはならないという考え方を我々持っているということは申し述べておきたいと思います。

長妻委員 これで終わりますけれども、この多様な働き方という言葉の裏には、注意しなきゃいけないのは、多様な働き方、雇用規制、労働法制を緩めるということになると、力関係が違うわけですね、被用者と経営者。そして、どんどんどんどん結局は、非正規雇用のような、非常に、社内教育も十分受けられない、雇用が不安定、そして労働生産性も結果として上がらない、こういう悪循環に陥る過去の歴史があるじゃないですか。

 私は、自民党がこんなに非正規雇用をどんどんふやした責任を感じていないんじゃないかというふうに思うんです。小泉内閣から派遣を本格解禁して、ここまで日本の稼ぐ力が低下した原因の一つ、雇用の緩和し過ぎ、これをぜひ自民党は反省をしていただきたいということを強く申し上げて、私の質問といたします。

 ありがとうございます。

河村委員長 この際、阿部知子君から関連質疑の申し出があります。長妻君の持ち時間の範囲内でこれを許します。阿部知子君。

阿部委員 立憲民主党の阿部知子です。

 本日は、与党の質問が五時間ございまして、その後に立憲民主党、私が二番手になりますが、長時間でございますし、委員長初め皆様にはぜひ協力のお願いをしたいと思います。

 私は冒頭、きょう、与党の質問も含めて、やはり森友問題、加計学園問題が非常に、どなたも取り上げるテーマとなっておりました。実は、さきの解散・総選挙で安倍総理が解散の大義名分として挙げられた教育の無償化、なかんずく幼児教育、保育の無償化などの問題も、教育の問題としては、今大きく問題になっている森友学園、加計学園の問題にきちんと答えを出さないと、国民への説明責任も、また、本当にこの社会が子供たちの教育を支えようという強い意思で臨むこともできないように思いますので、予告外の質問ですけれども、二問、お願いをいたします。

 まず一問目は、麻生副総理・財務大臣にお願いをいたします。

 私は、きょう初めて財務省の役所の方から、昨年の五月に籠池さんと近畿の理財局のどなたかのやりとりのテープということを役所の方からの御説明で伺いましたが、大臣にあっては、このやりとりをお聞きになって、果たして、いわゆる価格を提示したり、あるいは交渉したものではないというふうに佐川理財局長はことしの三月、御答弁でしたが、きょうのお話を聞かれても、麻生財務大臣もそのように思われますでしょうか。私は、明らかに一億三千何がしの価格の提示とゼロ円に近づけろというような話があのテープの中からは聞かれますが、麻生副総理はどうお聞きになったでしょう。

麻生国務大臣 従来からこれはお答えをさせていただいていると思いますが、この森友学園の国有地の売却に係るいわゆる事実関係については、今、捜査はまだいろいろな形で続行中なんだと思いますので慎重に対応させていただきたい、これが基本的なところです。

 しかし、本件に関しては、可能な限りとにかく丁寧にということで総理も言っておられますので、事務方において確認作業を行わせていましたので確認の結果はぜひ事務方の方から答弁をさせていただきたいと思いますので、細かいことをどうかと言われれば、私としては、今事務方が答弁をさせていただいた話を、私どもが別に今からひっくり返して別のことを言うつもりはありません。

阿部委員 質問をよくお聞きいただきたいと思うのですが、私は、事務方がお答えになったことが、これまで佐川前理財局長がお答えになっていた価格交渉あるいは価格提示ではないということと明らかにそごがあると思います。それを、影響するから答えられないというのは、あれだけの報告をされて麻生副総理が判断をなさらない、聞いたものも聞かなかったことにするということなのか、極めて麻生副総理らしくないと思います。

 おっしゃったこと、今もう一度、私の質問の趣旨、あの御答弁を聞けば、あれは価格交渉であり、すなわち金額の提示だと思うのが普通だと思いますが、いかがでしょう。

麻生国務大臣 私の人格についていろいろ言っていただくのは甚だ不必要かと思いますが、いずれにしても、先方とのさまざまなやりとりが行われたんだと思っていますけれども、これは、不動産鑑定評価額が出る前に、先方から買い受け希望価格が提示されたとか指示されたという認識はありませんし、当方の方から売却価格を提示したという意識も全くないと思います。

阿部委員 では、その件も含めて委員長にはお願いがございますが、やはり、きちんと参考人として佐川さんをお呼びして事の経過を明らかにしていただかないと、今、麻生副総理がおっしゃいましたが、その後に金額を提示したんだから、それ以前には何らそういう行動ではないんだと言いますが、御説明と明らかにそごが生じておりますので、佐川前理財局長、現国税庁長官の私も参考人招致を理事会でお諮りいただきたいと思います。いかがでしょう。

河村委員長 理事会で諮らせていただきます。

阿部委員 もう一つ安倍総理にお伺いをいたしますが、私は、先ほどの公明党の竹内議員と総理のやりとりを聞きながら、地方において大学ができるということは大変に地域おこし、また活力にもなるということで、安倍総理の深い思いであるというふうにも理解いたしました。

 そこで、今治における加計学園の創設ということも、恐らく安倍総理のそのお考えの中の一環としてあろうかと思います。あって悪いと言っているのではありません。そうであるならば、加計孝太郎さんの夢あるいは加計学園にかける夢を、これまで長い御親友であった総理が一言もお話しされたことがないということの方がはるかに不自然だと思います。

 私は、話はあっていいと思います。なぜならば、地域でしっかりした大学をつくろうということは大事です。ただ、その上で、加計学園が果たしてそれに値するのかということを証明する資料が何もない。国家戦略特区の諮問会議のワーキンググループで話したというけれども、何も残っていない。だからこそ、大きな疑義が、国民がいまだに納得できないわけです。

 これから加計学園で学ぶ学生がいたら、大きな不幸になると私は思います。意味があるものならきちんと国民の前に提示してその本当の大きな意味を共有できなければ、単に闇から闇に処理された認可問題になってしまいます。

 安倍総理は加計孝太郎さんに、来てお話しいただいたらどうかねというふうに、親友であるからこそお話ができるお立場ではないでしょうか。いかがでしょう。

安倍内閣総理大臣 先ほど、竹内議員と私のやりとりをよく聞いていただければおわかりだと思いますが、あれは学校をつくるということではなくて、いわば地方の大学を活用せよということでございます。

 もちろん、新たにつくって、慶応義塾大学の鶴岡市における新たな試みという、これは新しくできたところでございますが、地方に既に存在する大学をもっと活用していく、あるいは、そうした大学を改革しながら産学の連携による新たな価値を生み出す、そういうやりとりであったんだろうと思いますから、これは新しく大学をつくることだけを申し上げたところではない、こういうことでございます。

 また、この委員会において誰を参考人として呼ぶ等々についてはまさに委員会でお決めになることであろう、このように思っております。

 また、ワーキンググループ等々においては、いわばその議事録については、先ほど申し上げましたような八田さんのルールにおいて全てオープンにされているというふうに認識をしておりますし、そこでしっかりと議論されていることだろう。

 詳細については、梶山大臣、そしてまた、あるいは認可については林大臣に質問していただきたい、このように思います。

阿部委員 既存の大学であれ、これからつくられる大学であれ、私は非常に重要な問題提起だったと思います、先ほどの御質問は。

 その上で、果たして、国際水準の獣医学部なり、あるいは既存の大学がそういうものにエンパワー、レベルアップしていけるかどうかをもっと真剣に、そして国民合意のもと、お金もかかります、でも、私は必要なことだと思うので、加計学園がそれに値するかどうかを本当に論議すべきだと思うけれども、その材料が何もない、だから加計孝太郎さんに来ていただかざるを得ないと私は思います。その方がかえって問題がより前に進んでいくと思います。

 この点も含めて、委員長に、ぜひまた参考人としてお願いをしたいと思います。よろしくお願いします。

河村委員長 理事会で諮らせていただきます。

阿部委員 今の御指摘をした上で、本来の私の質問、準備したものに移らせていただきます。

 総理のお手元にも私の作成したパネルがあるかと思いますが、今回、総理は解散に当たって、消費増税のその使途を教育の無償化、なかんずく幼児教育、保育の無償化に向けるとおっしゃいました。

 そこで、相次いで二兆円のパッケージというものも発表というか、これは新聞報道紙上ですが、恐らく冒頭の田村委員との質疑のやりとりも含めて考えれば大きなそごはないものと思いますので、このようにまとめさせていただきました。

 今、政府の、あるいは安倍総理のと申し上げた方がいいのかもしれません、お考えの内容は、二兆円政策パッケージとして、幼児教育、保育の無償化約八千億、また大学等高等教育の無償化も同じく八千億、保育の受け皿つくりに三千億、そして介護人材の処遇改善に一千億、ここまでで二兆円に既に概算いたしませばなってまいります。

 そこに果たして、冒頭、田村委員とのやりとりで文言は出てまいりましたが、保育士の処遇改善というものはこの二兆円パッケージの内なのか、あるいはほかに、別途に手当てすることをお考えなのか、御答弁を総理にお願いいたします。

茂木国務大臣 資料として「「二兆円政策パッケージ」の概要」ということをお示しいただきましたが、我々が御説明申し上げておりますのは二兆円規模の政策パッケージということでありまして、全体で必ずしも二兆円ぴったしになるということではもちろんございません。

 さらに申し上げますと、来月、この政策パッケージの取りまとめに向けまして今与党からも御提言をいただきながら検討を深めているところでありまして、それぞれの項目についての具体的な額は固まっておりません。

 さらには、例えばいろいろ認可外についての検討であったりとか、幼稚園、確かに、非常にいろいろな教育をされて、高額なところもあるわけでありまして、そこに対する支援の限度をどこにするか、検討しなければいけない課題だと思っておりますが、上限を今の段階で幾らに決めたというわけではございません。

 さらには、大学等の高等教育の無償化につきましても、確かに、所得の低い家庭にあっても、どんな家庭にあっても、意欲さえあれば進学できるような機会を提供する、こういうお約束は申し上げておりますが、それを住民税非課税家庭にするかどうか、その所得制限を完全に決めたわけではありません。

 さらには、これはナマ所得というかセイ所得と読むのかはわかりませんが、多分、低所得の間違いじゃないかなと思うんですけれども……(阿部委員「そうですね、済みません」と呼ぶ)何らかの形の支援も検討したいと思っておりますが、これにつきましても検討中でありますし、こういった問題も含めて、詳細な制度設計といったものは、専門家の皆さん、関係者の皆さんの声も反映されるような検討の場で進めてまいりたい。

 さらに、ここの中には入っておりませんが、リカレント教育であったり、さらには、職業訓練を含めて、何歳になっても、どういう立場でも活躍の場ができる、こういう機会も提供し、同時に、そういう教育を提供する大学の側、この改革もパッケージの中では進めてまいりたいと考えております。

 なお、消費税収一兆七千億、それから企業拠出金三千億、グラフィックに示していただいている左側と右側は必ずしも対称いたしておりません。

阿部委員 内容における詳細な検討というのは今後なされるということは理解しております。

 私が総理にお伺いしたいのは、今、どこの保育現場も、介護の現場もそうですが、大変に人手不足、そしてそのことが待機児童対策にも影を落とし、また保育士さんたちがどんどんやめていく中で、子供にも決していい影響がございません。大きな目標として、保育士さんの待遇改善がきちんと打ち出されること。

 私ども立憲民主党、かつて民主党だった時代に、政府に提言を持ってまいりました。それは、保育士さんの五万円の給与アップ、これでおよそ二億一千五百万内外。もうちょっとあったかもしれません。無認可の保育士さんも入れれば、もうちょっとあったと思います。それだけのお金が現実に必要になります。

 私どもは、それでもそれを最優先と思って提言を持ってまいりましたが、この間、取ってつけたようにつけ足しの保育士の待遇改善では事が本質的に解決いたしませんので、総理の決意のほどを伺いたいと思った質問であります。

安倍内閣総理大臣 保育の人材確保、保育人材の処遇改善については、平成二十九年度予算で全職員の処遇を二%改善し、そして、政権交代後、五年たつわけでありますが、合計一〇%の改善を実現するとともに、技能や経験に応じた月額最大四万円の処遇改善を行ったところでございまして、今までも着々と処遇の改善は、我々、政権を奪還後、行っているということは申し上げておきたいと思います。

 そこで、政府としては、十二月上旬に新しい経済政策パッケージを取りまとめることとしておりますが、この政策パッケージの中に入っているのかどうかという先ほども御質問をいただいたところでありますが、保育士の処遇改善については極めて重要な問題だと認識をしておりまして、与党の提言も踏まえて、しっかりと検討していきたいと考えております。

阿部委員 私の先ほどの説明で間違いがございました。五万円アップで、二千五百十億です。申しわけありません。それくらいの規模の、三千億近い規模のお金が五万円のアップでもかかるということを試算させていただいております。

 安倍総理には、ぜひこの部分、御決意があられるということですから、一丁目一番地として取り上げていただきたい。その理由を以下申し述べたいと思います。

 今回、私は、このパッケージ案、細かなところはまだですよと言われながら、大きな考え方のところで問題かなと思うことがございまして、幾つか指摘をさせていただきます。

 冒頭の幼児教育の無償化ですが、三から五歳の幼稚園並びに保育園の無償化、その一方で、ゼロから二歳については、いわゆる住民税非課税世帯のような低所得者対策としての無償化ということが打ち出されております。三から五歳については、あらゆる子供についてお考えでありましょう、認可外をどうするかはありますが。でも、ゼロから二歳というものは、いわゆる非課税世帯であれば、現状、地方自治体でも児童福祉法にのっとって給付がなされている場合がほとんど、大半であります。わざわざそれを国のお金につけかえて、それで本当に無償化と言えるのかどうか。

 これは、いわゆる待機児童の中でゼロから二歳がもう九割だという表でございます。待機児童、低年齢児というのでゼロから二歳を置くと二万三千百十四人、これは二万六千八十一人分の約九割。一、二歳だけでも七割という。

 すなわち、待機をしている子供たちにとっては、保育園の無償化の恩恵にもあずからないし、保育園に現実に受け皿として受けとめられないということで、一方の三から五の無償化、私は賛成ですから、いいことと思いますが、ここに、ゼロから二と三から五に分断が敷かれて、その親御さんたちも、やっぱりこれって不平等だよねと思うと思います。

 これは安倍総理に伺いたいですが、いかがでしょう。

茂木国務大臣 まず、事実関係につきまして私の方から。

 我々は、二〇二〇年度までに、三歳から五歳まで、全ての子供たちの幼稚園、保育園の費用を無償化するとしておりますが、委員もよく御案内のように、三歳以上については既に九割以上が保育所や幼稚園を利用している、こういったことを考え、これについて十分な対応をしていきたい。

 一方、資料でもお示しいただきましたように、〇―二歳につきましては、喫緊の課題はやはり待機児童の解消なんです。そのための保育の施設であったりとか保育士の処遇改善、これが必要でありまして、そのために、子育て安心プランにつきましては、三十二万分の受け皿を前倒しで整備するということによって待機児童の解消につなげていきたいと思っております。

阿部委員 今、茂木大臣がそうおっしゃいましたが、果たして、これまでも随分論議になっていますが、三十二万人分の受け皿整備で待機児童はなくなるだろうか。これは政府のお示しになったグラフで、ここで待機児童ゼロというのが下段に出てまいりますが、あくまでも現状の待機児童、表に出た待機児童。

 実は、昨年の予算委員会で、元民進党、今、立憲民主党と会派を組んでおります山尾志桜里さんが潜在的な待機児童のことを大きく取り上げて、それが社会問題ともなりました。現在、待機児童としてくくられていない潜在的待機児童は、ことしの春の集計では六万九千二百二十四人。

 そういたしますと、この待機児童ゼロというのはこの潜在的待機児童を含んではいない。この図からも明らかですし、また、三十二万人の試算根拠からも潜在的待機児童が含まれない受け皿数だと思いますが、加藤さん、いかがでしょう。

加藤国務大臣 今資料でお示しをいただいております子育て安心プランの三十二万人というのをどうやって算出したかということなんだと思います。

 一つは、二十五歳から四十四歳の女性の就業率、これが二〇二二年度までに、したがって平成三十四年度末までに八〇%まで上昇するということ。それからもう一つは、就業率と相関して、保育のこれは利用申し込みなんですね。そういう意味で、利用している数じゃないので、そこには、利用申し込みの概念の中には先ほど御指摘のあった潜在のいわゆる待機者は入っております。そこも見込みまして、それも五割を超える水準まで伸びるだろうということで、必要な整備量をマクロベースで推計しているということであります。

 ただ、中にはもう途中で諦めて申し込みをしていない人もいるだろう、そういう御指摘もあるんだろうと思いますが、そういう方に関しては、今、保育コンシェルジュなどを活用して、そうした方々に寄り添うということで進めさせていただいておりますし、また、市区町村ごとに、あるいは市区町村内の保育提供区域ごとに保育の利用意向を的確に把握できるよう我々も支援をしていきたいと思いますし、そして、それを積み上げて、最終的には、市町村が年度年度の中で整備を計画し、それを着実に実行していく、それを支援していきたいと思います。

阿部委員 御丁寧な御答弁でしたが、いわゆる潜在待機児童は三十二万人の中にはこの試算では含まれない、ここははっきりしていただきたい。

 今、申し込んだ数で待機児童が出ています。潜在待機児童には、申し込んでいる人もいない人も両方あります。例えば、育児休業中では、申し込んでいないけれども、潜在待機児童というくくりには入ってきます。そこが大きな数値のブラックボックスになっています。

 また、就業率八〇%で計算されるといいますが、その場合には、本当に、お母さんたちに、もし保育の受け皿があれば働きたいですかということをきちんとアンケートなりなんなりをなさってとって必要数を挙げていかないと、現状の待機児童の延長上の枠しか私は準備されていないと思います。

 またこの点を引き続いて、済みません、時間の関係で、加藤大臣と質疑を重ねたいと思いますが、三十二万人という数値があったり八十八万という数値があったりすることの国民へのわかりやすい説明責任は政府が負っていると思いますので、指摘をさせていただきます。

 私がきょうもう一つどうしても取り上げたいのは、認可外の保育園の問題であります。

 認可外の保育園、今回、三万五千円をそこに支給するかどうかということで、金目の問題は出ています。でも、これを見ていただくと、認可外は大体、今、企業の設置する保育所と純粋認可外というものとベビーホテルなど三パターンありますが、企業型の保育所だとほぼ三万五千円で負担は軽減されますでしょうが、他の二つはそうではない。それ以上に、私は、この間、認可外保育所で起きている保育事故の実態について、ぜひきょうは加藤大臣並びに安倍総理と認識を共有したいと思います。

 二〇一六年に起きた保育事故十三件のうち、三例が内閣府によって検証をされております。お手元に、見ていただくとわかりますが、一歳児がお二人、あと乳幼児が一例。三カ月の赤ちゃんと、一歳二カ月、一歳男児であります。

 三カ月の赤ちゃんは、十一時に預けられて、十二時から寝ていると思われたけれども、実は恐らく窒息。一歳の赤ちゃんも、この赤ちゃんも預けられてから一時間足らずで、十四時に預けられて、十五時二十五分に窒息で亡くなっております。真ん中の一歳二カ月の男児は、これはいわゆる事業所内保育所ですが、同じように、預けられて一カ月で、この子はなかなか泣いて寝ないから隣の部屋に一人で寝かされて、そこで、発見されずに、お母さんが行ったときは心臓もとまり、もう硬直状態であったということで、お母さんが心臓マッサージをしたという事案です。

 預けて一時間や一カ月で子供が死んでいっては、何のためにお母さんたちは子供をそこに預けたのか、悔いても悔い切れない、本当に大きな悲しみが残っております。安倍総理には、こういう現実が今、内閣府が検証する限りにおいても上がってきており、このことをまず何をおいても先に対処していただきたい。

 ここには、おのおのの事故が起きたその事業所が果たして必要とされる人員を配置していたかどうかということが、三例でおのおの区分がしてございますが、正直申しますと、一歳児、二歳児では、現状の六人に一人の保育士さんを置いていてもこの事故が起きています。例えば、ほかの子の食事にかかわっていて子供が寝ているところを見られないとか、現状の、特に一歳児、二歳児の六人を一人で見るということ自身が、もう既に大きな危険をはらんでいる。保育園事故の特徴とも言えるものであります。

 保育園事故の特色をまとめたものをつくらせていただきましたが、これが、いわゆる待機児童解消加速化プラン後、やはりふえているという懸念もございます。ぜひ、総理にあっては、この問題、きょう私が御提示いたしましたので、政府を挙げて取り組んでいただき、特に保育園における事故ということにフォーカスを当てて、何が要因であるのかを、これは加藤大臣にお願いいたしますが、きちんとした例えば研究班をつくるなり、検証体制をつくるなり、お願いをしたいですが、いかがでしょう。

加藤国務大臣 今御指摘にありますように、保育施設での死亡事故等はあってはならない、これはおっしゃるとおりだと思っておりまして、我々は、受け皿整備とあわせて、こうした意味も含めて、保育の質と向上、これはしっかり取り組んでいきたいと思っております。

 これまでも、立入調査等、さらに、平成二十九年度予算では巡回支援指導員の支援を行っていく、あるいは、今月からでありますけれども、認可保育所と同様に認可外保育施設についても省令で事故報告を義務づける、こういったことも一つ一つやらせていただいているところでございます。また、さらには、職員の研修等、そして、今内閣府の資料がございましたけれども、ここで出てきたそうした実態等もよく踏まえて、こうした死亡事故がないようにしっかりと対応させていただきたいと思います。

安倍内閣総理大臣 ただいま大臣から答弁をさせていただきましたが、子育て安心プランのもと、保育の受け皿の拡充とともに、保育の質の確保そして向上を車の両輪としてしっかりと進めていきたい。信頼して預けたお子さんの命が保育施設で失われるということはあってはならない、このように考えております。

河村委員長 阿部知子君、時間が来ております。

阿部委員 ぜひ、不幸な死をなくす国の取り組みを全力でお願いしたいと思います。

 終わらせていただきます。

河村委員長 次回は、明二十八日午前八時五十五分から委員会を開会することとし、本日は、これにて散会します。

    午後五時四十六分散会


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