衆議院

メインへスキップ



第13号 平成30年2月19日(月曜日)

会議録本文へ
平成三十年二月十九日(月曜日)

    午前九時十二分開議

 出席委員

   委員長 河村 建夫君

   理事 柴山 昌彦君 理事 菅原 一秀君

   理事 田中 和徳君 理事 橘 慶一郎君

   理事 福井  照君 理事 星野 剛士君

   理事 宮下 一郎君 理事 逢坂 誠二君

   理事 津村 啓介君 理事 竹内  譲君

      あべ 俊子君    井上 貴博君

      伊藤 達也君    石崎  徹君

      石破  茂君    今村 雅弘君

      岩屋  毅君    江藤  拓君

      衛藤征士郎君    大西 英男君

      金田 勝年君    亀岡 偉民君

      古賀  篤君    佐藤 明男君

      佐藤ゆかり君    田中 英之君

      高橋ひなこ君    竹本 直一君

      武井 俊輔君    武村 展英君

      津島  淳君    中山 展宏君

      根本  匠君    野田  毅君

      原田 義昭君    平沢 勝栄君

      堀内 詔子君    牧島かれん君

      宮内 秀樹君    務台 俊介君

      村上誠一郎君    盛山 正仁君

      八木 哲也君    山口  壯君

      山本 幸三君    山本 有二君

      渡辺 博道君    阿部 知子君

      青柳陽一郎君    岡本あき子君

      落合 貴之君    川内 博史君

      高井 崇志君    日吉 雄太君

      松田  功君    道下 大樹君

      村上 史好君    山内 康一君

      山崎  誠君    山花 郁夫君

      井出 庸生君    稲富 修二君

      大西 健介君    源馬謙太郎君

      後藤 祐一君    西岡 秀子君

      柚木 道義君    渡辺  周君

      伊佐 進一君    佐藤 英道君

      中野 洋昌君    金子 恵美君

      黒岩 宇洋君    原口 一博君

      畑野 君枝君    藤野 保史君

      遠藤  敬君    串田 誠一君

    …………………………………

   財務大臣         麻生 太郎君

   総務大臣         野田 聖子君

   法務大臣         上川 陽子君

   外務大臣         河野 太郎君

   文部科学大臣       林  芳正君

   厚生労働大臣       加藤 勝信君

   農林水産大臣       齋藤  健君

   経済産業大臣       世耕 弘成君

   国土交通大臣       石井 啓一君

   環境大臣

   国務大臣

   (原子力防災担当)    中川 雅治君

   防衛大臣         小野寺五典君

   国務大臣

   (内閣官房長官)     菅  義偉君

   国務大臣

   (復興大臣)       吉野 正芳君

   国務大臣

   (国家公安委員会委員長) 小此木八郎君

   国務大臣

   (消費者及び食品安全担当)            江崎 鐵磨君

   国務大臣         松山 政司君

   国務大臣

   (規制改革担当)

   (まち・ひと・しごと創生担当)          梶山 弘志君

   国務大臣

   (東京オリンピック競技大会・東京パラリンピック競技大会担当)       鈴木 俊一君

   内閣官房副長官      西村 康稔君

   財務副大臣       うえの賢一郎君

   厚生労働副大臣      高木美智代君

   衆議院法制局長      橘  幸信君

   会計検査院長       河戸 光彦君

   政府参考人

   (内閣官房内閣審議官)  岡本  宰君

   政府参考人

   (内閣官房まち・ひと・しごと創生本部事務局地方創生総括官補)       末宗 徹郎君

   政府参考人

   (内閣府規制改革推進室次長)           林  幸宏君

   政府参考人

   (警察庁警備局長)    村田  隆君

   政府参考人

   (消費者庁次長)     川口 康裕君

   政府参考人

   (総務省自治行政局選挙部長)           大泉 淳一君

   政府参考人

   (法務省民事局長)    小野瀬 厚君

   政府参考人

   (法務省入国管理局長)  和田 雅樹君

   政府参考人

   (外務省アジア大洋州局長)            金杉 憲治君

   政府参考人

   (財務省主税局長)    星野 次彦君

   政府参考人

   (財務省理財局長)    太田  充君

   政府参考人

   (国税庁次長)      藤井 健志君

   政府参考人

   (文部科学省初等中等教育局長)          高橋 道和君

   政府参考人

   (文部科学省科学技術・学術政策局長)       佐野  太君

   政府参考人

   (厚生労働省大臣官房生活衛生・食品安全審議官)  宇都宮 啓君

   政府参考人

   (厚生労働省健康局長)  福田 祐典君

   政府参考人

   (厚生労働省労働基準局長)            山越 敬一君

   政府参考人

   (厚生労働省職業安定局長)            小川  誠君

   政府参考人

   (厚生労働省人材開発統括官)           安藤よし子君

   政府参考人

   (農林水産省生産局長)  枝元 真徹君

   政府参考人

   (経済産業省貿易経済協力局長)          石川 正樹君

   政府参考人

   (資源エネルギー庁省エネルギー・新エネルギー部長)            高科  淳君

   政府参考人

   (資源エネルギー庁電力・ガス事業部長)      村瀬 佳史君

   政府参考人

   (国土交通省総合政策局長)            由木 文彦君

   政府参考人

   (国土交通省鉄道局長)  藤井 直樹君

   政府参考人

   (海上保安庁長官)    中島  敏君

   政府参考人

   (原子力規制庁長官官房核物質・放射線総括審議官) 片山  啓君

   政府参考人

   (防衛省大臣官房長)   高橋 憲一君

   政府参考人

   (防衛省防衛政策局長)  前田  哲君

   政府参考人

   (防衛装備庁長官)    鈴木 良之君

   参考人

   (国立研究開発法人科学技術振興機構理事長)    浜口 道成君

   参考人

   (独立行政法人鉄道建設・運輸施設整備支援機構理事長)           北村 隆志君

   予算委員会専門員     石上  智君

    ―――――――――――――

委員の異動

二月十六日

 辞任         補欠選任

  江藤  拓君     神田 憲次君

  藤井比早之君     宮下 一郎君

  藤野 保史君     本村 伸子君

  遠藤  敬君     串田 誠一君

同日

 辞任         補欠選任

  神田 憲次君     江藤  拓君

  本村 伸子君     藤野 保史君

  串田 誠一君     遠藤  敬君

同月十九日

 辞任         補欠選任

  あべ 俊子君     八木 哲也君

  石崎  徹君     佐藤 明男君

  石破  茂君     武村 展英君

  江藤  拓君     武井 俊輔君

  衛藤征士郎君     大西 英男君

  金田 勝年君     津島  淳君

  原田 義昭君     井上 貴博君

  平井 卓也君     亀岡 偉民君

  山口  壯君     宮内 秀樹君

  阿部 知子君     日吉 雄太君

  青柳陽一郎君     道下 大樹君

  岡本あき子君     山崎  誠君

  山内 康一君     川内 博史君

  稲富 修二君     柚木 道義君

  小熊 慎司君     源馬謙太郎君

  中野 洋昌君     佐藤 英道君

  原口 一博君     金子 恵美君

  藤野 保史君     畑野 君枝君

  遠藤  敬君     串田 誠一君

同日

 辞任         補欠選任

  井上 貴博君     中山 展宏君

  大西 英男君     衛藤征士郎君

  亀岡 偉民君     高橋ひなこ君

  佐藤 明男君     石崎  徹君

  武井 俊輔君     江藤  拓君

  武村 展英君     石破  茂君

  津島  淳君     金田 勝年君

  宮内 秀樹君     山口  壯君

  八木 哲也君     務台 俊介君

  川内 博史君     山内 康一君

  日吉 雄太君     村上 史好君

  道下 大樹君     松田  功君

  山崎  誠君     山花 郁夫君

  源馬謙太郎君     西岡 秀子君

  柚木 道義君     渡辺  周君

  佐藤 英道君     中野 洋昌君

  金子 恵美君     原口 一博君

  畑野 君枝君     藤野 保史君

  串田 誠一君     遠藤  敬君

同日

 辞任         補欠選任

  高橋ひなこ君     堀内 詔子君

  中山 展宏君     原田 義昭君

  務台 俊介君     田中 英之君

  松田  功君     青柳陽一郎君

  村上 史好君     阿部 知子君

  山花 郁夫君     高井 崇志君

  西岡 秀子君     小熊 慎司君

  渡辺  周君     稲富 修二君

同日

 辞任         補欠選任

  田中 英之君     あべ 俊子君

  堀内 詔子君     牧島かれん君

  高井 崇志君     岡本あき子君

同日

 辞任         補欠選任

  牧島かれん君     平井 卓也君

同日

 理事星野剛士君同日理事辞任につき、その補欠として宮下一郎君が理事に当選した。

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 理事の辞任及び補欠選任

 政府参考人出頭要求に関する件

 平成三十年度一般会計予算

 平成三十年度特別会計予算

 平成三十年度政府関係機関予算

 派遣委員からの報告聴取


このページのトップに戻る

     ――――◇―――――

河村委員長 これより会議を開きます。

 理事辞任の件についてお諮りいたします。

 理事星野剛士君から、理事辞任の申出があります。これを許可するに御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

河村委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

 引き続き、理事補欠選任の件についてお諮りいたします。

 ただいまの理事辞任に伴う補欠選任につきましては、先例により、委員長において指名するに御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

河村委員長 御異議なしと認めます。

 それでは、理事に宮下一郎君を指名いたします。

     ――――◇―――――

河村委員長 平成三十年度一般会計予算、平成三十年度特別会計予算、平成三十年度政府関係機関予算、以上三案を一括して議題とし、一般的質疑を行います。

 この際、お諮りいたします。

 三案審査のため、本日、政府参考人として内閣官房内閣審議官岡本宰君、内閣官房まち・ひと・しごと創生本部事務局地方創生総括官補末宗徹郎君、内閣府規制改革推進室次長林幸宏君、警察庁警備局長村田隆君、消費者庁次長川口康裕君、総務省自治行政局選挙部長大泉淳一君、法務省民事局長小野瀬厚君、法務省入国管理局長和田雅樹君、外務省アジア大洋州局長金杉憲治君、財務省主税局長星野次彦君、財務省理財局長太田充君、国税庁次長藤井健志君、文部科学省初等中等教育局長高橋道和君、文部科学省科学技術・学術政策局長佐野太君、厚生労働省大臣官房生活衛生・食品安全審議官宇都宮啓君、厚生労働省健康局長福田祐典君、厚生労働省労働基準局長山越敬一君、厚生労働省職業安定局長小川誠君、厚生労働省人材開発統括官安藤よし子君、農林水産省生産局長枝元真徹君、経済産業省貿易経済協力局長石川正樹君、資源エネルギー庁省エネルギー・新エネルギー部長高科淳君、資源エネルギー庁電力・ガス事業部長村瀬佳史君、国土交通省総合政策局長由木文彦君、国土交通省鉄道局長藤井直樹君、海上保安庁長官中島敏君、原子力規制庁長官官房核物質・放射線総括審議官片山啓君、防衛装備庁長官鈴木良之君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

河村委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

河村委員長 質疑の申出がありますので、順次これを許します。佐藤英道君。

佐藤(英)委員 おはようございます。公明党の佐藤英道でございます。

 冒頭、今月三日から、記録的な豪雪によってお亡くなりになられた方々に心よりお悔やみを申し上げますとともに、御遺族の方々、またけがをされた方々、また、さまざまな形で甚大な被害をこうむっておられる方々に心からお見舞いを申し上げたいと思います。引き続き厳しい積雪に見舞われている地域があり、今後、さらなる注意をお願い申し上げたいと思います。

 また、特に先週末には、豪雪被害の自治体から国土交通省に対して、除雪に関する支援等に関する要請が寄せられました。現地調査を迅速に進め、助成を早期決定するなど、一日も早い復旧に政府を挙げて一層の取組をお願い申し上げたいと思います。

 さて、今回の豪雪で特に被害の大きかった地域、東北の各県や北陸信越地域など、いずれも米どころとして知られる農林水産業の盛んな地域でもございます。これらの地域は、生活の利便性の高い都市部に比べれば、やはり人が住んでいくのに大変な地域も多く、高齢化や担い手不足の課題と直面しながら必死に頑張っておられます。私の地元北海道も同様、大変厳しい環境の中で、二〇〇%以上の食料自給率で我が国の食料事情を支えております。

 こうした頑張っている農家が、今、国際自由貿易の脅威にさらされ、将来への大きな不安を抱えながら日本の食と農を守ってくださっている。政府には、そのことをいま一度しっかりと御認識をいただき、日・EU・EPA、TPP11などで押し寄せる自由化の波によって農家が理不尽に困窮を強いられることのないよう、守るべきは守るという態度をぜひとも貫き通していただきたいと思うのでございます。

 そこで、日・EU・EPAについてお伺いをしたいと思います。

 今回の日・EU・EPAの交渉妥結で最も影響を受ける品目として挙げられるのが、牛乳また乳製品であります。牛肉や豚肉もまた影響の大きい品目として位置づけられておりますけれども、内閣官房の影響試算結果によれば、いずれの品目も国内生産量が維持されるとされておるわけであります。そして、ここの国内生産量が維持される前提として、体質強化対策や経営安定対策を適切に実施することにより、引き続き生産や農家所得が確保されるとされているわけであります。

 つまり、我が国の酪農や畜産を守るためには、政府は、生産や農家所得を確保できるような適切な体質強化対策と経営安定対策をとることをしっかりと約束をした、そのように私は認識をしているところでございます。

 そこで、お伺いをいたしておりますけれども、こうした認識でよろしいのか、ぜひとも齋藤農林水産大臣の御決意も含めて、まずお伺いをしたいと思います。

齋藤国務大臣 かつて農林省で一緒に仕事をさせていただいた佐藤委員とは、全く思いを共有いたしております。

 日・EU・EPA交渉につきましては、厳しい交渉となりましたけれども、当時の山本前農林大臣の大変な御尽力によりまして、乳製品の国家貿易制度や豚肉の差額関税制度の維持、関税割当てやセーフガードなどの有効な措置を獲得し、我が国畜産、酪農の再生産が引き続き可能となる国境措置をまず確保しております。

 それでもなお、生産者の方々、不安や懸念がございますことはよく存じ上げておりますので、皆さんが安心して再生産に取り組むことができるよう、平成二十九年十一月に改定をいたしました総合的なTPP等関連政策大綱に基づきまして、国際競争力強化のための畜産クラスター事業を始めとする体質強化対策のほかにも、関税削減等に対する農業者の皆さんの懸念と不安を払拭するための経営安定対策の充実等、この二本柱で万全の対策を講じていきたいと思っています。

 農林水産省としては、今後とも、生産現場の懸念に十分配慮して、意欲ある生産者が将来にわたって希望を持って畜産、酪農経営に取り組んでいただけるよう、必要な対策をしっかりと講じてまいりたいと思います。

佐藤(英)委員 ぜひともよろしくお願いを申し上げたいと思います。

 先日、二月の三日、私は、北海道の東部、標茶町の酪農家を訪れました。

 ここは、家族経営ながらも、家計と経営を分離しながら法人化も行っており、外国人の実習生も受け入れられている先進的な酪農家でございました。

 現在、搾乳ロボット二台、餌寄せロボット一台なども導入をしているわけでありますけれども、こうした取組の結果、餌を食べる量や搾乳回数もふえまして、一頭当たりの年間の乳量がおよそ一・五倍に増加されたそうであります。

 経営者の方は、結果として労働時間の抑制につながったことで、牛の体調管理や繁殖判断などのための観察に力が注げるようになり、生産性の向上や経営安定が実現したとお話をされておりました。今後は、飼養頭数の拡大や牛舎の増設、搾乳ロボットの増台を行っていく構想だと話しておりました。

 畜産クラスター事業を利用して成功している模範的な地域の中核的酪農家でありましたけれども、この畜産クラスター事業は、大変に効果の高い事業として酪農家の評価も非常に高い、そうした事業であります。

 引き続き、私は、酪農ヘルパーを派遣する事業を手がける中標津町の事業者も訪問させていただきました。

 実に酪農は労働時間が長く、休みがとれないというのが一番の問題であり、酪農ヘルパーの存在は絶対に不可欠なことであります。しかし、職業としての知名度も低く、地域の人口減少などから人材確保がやはり大変に困難であるというお話も伺っております。そのため、ヘルパーを利用するためには半年前から予約しなくてはならない状況にもなっている。

 農林水産省も、いわゆる楽酪事業の創設など、酪農を取り巻く働き方改革を推進していると伺っておりますけれども、これら事業の一層の充実を私は強く求めたいと思います。

 大臣の見解を伺います。

齋藤国務大臣 今回委員が御視察された農場は、まさに畜産クラスター事業を大変有効に活用して、労働時間を抑制しつつ規模拡大をするということで、前向きに取り組む、経営感覚のすぐれた酪農家の方であったなと思います。

 御指摘のとおり、我が国の酪農経営におきましては、労働負担が大きいということが大きな問題になっておりまして、働き方改革の取組を進めていくことが重要であります。

 農林水産省としては、今御指摘の省力化に資する搾乳ロボットの導入等を支援する楽酪事業等を平成三十年度予算案においてもしっかりと計上するとともに、酪農ヘルパー事業につきましては、平成二十九年度から学生インターンシップを創設するなど、ヘルパー確保のための支援を強化しているところでございます。

 今後とも、現場の意見をよく伺いながら、酪農の体質強化や働き方の改革の推進に必要な政策を講じてまいりたいと思います。

佐藤(英)委員 ぜひともよろしくお願いを申し上げながら、次の質問に移ります。

 去る一月三十一日深夜、地元札幌市の東区にある「そしあるハイム」において大規模な火災が発生をいたしました。まことに残念なことに、十一名の方がお亡くなりになり、負傷者も三名となりました。衷心からお悔やみとお見舞いを申し上げたいと思います。

 二月五日に現地に赴き、同僚議員らと現場を視察するとともに、札幌市消防局並びに札幌市の福祉部局から詳しく話を聞いてまいりました。

 今回の事案は、入居者十六名中十三名が生活保護の受給者でありました。受給者十三名のうち、十名が亡くなられ、三名が負傷されたと報告されております。しかも、亡くなった十名中九名、負傷された三名中二名が六十五歳以上であり、避難に配慮を要する方がおられた可能性がございます。

 まことに痛ましい火災事故であり、今後このような事故が二度と起きることのないよう、政府には万全の対策を検討していただきたいと思っております。

 厚生労働省からも、高木副大臣が二月六日、現地を訪れ、現場を確認されました。現場をごらんになって、どのようにお受けとめになられたでしょうか。また、日ごろから福祉政策に大変強い思いを持って取り組んでいるお立場からも、このような痛ましい火災による死亡をなくしていくために、どのような観点から再発防止に取り組むべきと考えていらっしゃるのか、お伺いしたいと思います。

高木副大臣 お答えいたします。

 佐藤委員が御視察されたその翌日、二月六日に、札幌の火災現場である「そしあるハイム」前にて献花をさせていただきました。

 今回の火災の被害の大きさを目の当たりにいたしまして、改めて、お亡くなりになられた十一名の方々の御冥福を心からお祈り申し上げますとともに、負傷された方々の一日も早い御回復をお祈り申し上げます。

 その後、札幌市長を始め札幌市の担当者から今回の火災につきまして説明を受け、その後の意見交換におきまして、一つは、被災された方々への支援、また二つ目に、他の類似施設に対する防火対策の再度の周知につきましてお願いをいたしました。

 厚生労働省としては、こうした痛ましい事故が再び起きないよう、福祉部局と消防部局等が連携した取組が重要であると考えております。これまでも、福祉事務所には、消防による防火安全対策の確認に協力するよう要請をしてまいりましたが、今回の火災を踏まえて、このような対策をより強化する必要があると考えております。

 このために、現在、消防庁等関係省庁と協議を進めておりまして、福祉事務所の職員が生活保護受給者の生活実態の把握のために訪問をする際に、あわせまして、防火の観点からも確認すべき点や、また消防に提供する情報の具体的な内容等につきまして協議を進めているところでございます。

 現在、地元の消防、警察が出火原因の解明に当たっていると伺っておりまして、今後、その調査結果も踏まえつつ、再発防止に向けまして、札幌市や関係省庁と連携して、しっかりと取り組んでまいりたいと考えております。

佐藤(英)委員 こうした痛ましい火災事故がこれまでもたびたび起きており、そのたびに、とうとい命が失われております。

 殊に、七名の方が亡くなられた平成二十二年の札幌市北区でのグループホームの火災については、私の地元の近所で起きたこともございまして、再発防止への思いは一層強いものでございます。

 今回の火災が起きたこの建物については、生活保護受給者が十六名中十三名も住んでいたことで、一見すると福祉施設のようにも見られますけれども、実際には、法的に福祉施設等の類型上の位置づけがございません。また、有料老人ホームの該当性について、札幌市から数度、文書での確認を申し入れたが、回答は得られなかったとのこと。詳しくは調査結果を待たなければなりませんけれども、こうした複数の生活保護受給者を住まわせ何らかの生活支援を行う形態について、明確な法的な位置づけを与えるべきと私は考えます。

 また、今回の事案とは直接関係はございませんけれども、中には、劣悪な住環境や食事しか提供しない事業者も存在しておりまして、こうした悪質な事業者に対する規制強化も私は必要と考えます。

 大臣の見解を伺いたいと思います。

加藤国務大臣 私からも、今回の件でお亡くなりになられた方々に対して、心から御冥福をお祈り申し上げるとともに、入院をされている負傷された方々が一日も回復をされることをお祈りを申し上げたいと思います。

 今委員御指摘のように、今回の施設の法的位置づけについては、基本的には札幌市が御判断されておりますけれども、まず、社会福祉法上の無料低額宿泊所には該当しない一般の共同住宅であるという認識であるということ、また、有料老人ホームに該当するかどうかについては、現在、引き続き調査をしている、このように承知をしております。

 最終的には、札幌市の最終的な判断を待ちたいと思っておりますけれども、無料低額宿泊所あるいは有料老人ホームに該当するものであって、法令に基づく届出がなされていない、こういった場合には、しっかり届出が行われるよう指導していきたいというふうに思いますし、また、今、先ほど副大臣からもありましたけれども、福祉事務所において、こうした生活保護の受給者の方々が生活されておられる施設あるいは住居等においては、消防による防火安全体制の確認の協力、これを強化していきたいというふうに思っております。

 加えて、今の御指摘、いわゆる貧困ビジネスというものに対する対応でありますが、先般、生活困窮者自立支援法の一部を改正する法律案を国会に提出をさせていただきました。

 その中において、無料低額宿泊所におけるいわゆる貧困ビジネスへの規制強化策として、法定の最低基準を創設する、事前届出制の導入、改善命令の創設、こうしたことを行うこととしておりまして、こうした改正によってまた自治体が適時適切に指導を行うことができるようにもなっておりますので、悪質な事業者を排除し、また消防法の遵守などによる安全性の向上を図っていきたいと思っております。

佐藤(英)委員 ぜひともよろしく御検討のほどお願いを申し上げたいと思います。

 さて、平成二十二年の札幌での火災などを受けまして、消防庁は、平成二十五年に消防法施行令の改正を行うなど、自立避難困難者が主に使用している施設への大規模火災の再発防止をしっかりと今取り組んでいるということも承知をしております。

 今回の火災については、詳細は調査結果を待たなければならない部分も多いのでございますけれども、防火安全上のさらなる注意喚起などができていればあるいは防げたのかもしれない、そのようにも思ったりもしてしまうのでございます。しかし、地域に多数ある全ての集合住宅の用途を消防だけの力で把握するのは極めて困難であるのではないかなとも思います。

 しかし一方、そんな中で、福祉部局は、生活保護受給者の訪問などにより、建物の状況を始め、きめ細かい情報に接する機会もあると思います。今後の再発防止のためには、福祉部局により把握された防火の安全性上問題のある建物の情報を積極的に消防部局と共有することは、危険性の高い建物に対する防火対策につなげていくことも有効ではないかなと考えるところでございます。

 ぜひとも密に連携をとられるよう体制整備の必要があると考えますけれども、消防庁の考え方をお伺いしたいと思います。

野田国務大臣 初めに、このような火災が発生したことはまことに痛ましいことであります。委員同様、犠牲となられた方々の御冥福をお祈り申し上げるとともに、お見舞いを申し上げたいと思います。

 このたびの火災を踏まえて、消防庁では、国土交通省及び厚生労働省と連携して、類似の建物に対して防火対策に係る緊急点検や注意喚起を行うよう、二月一日付で全国の消防機関に要請をいたしました。

 佐藤委員御指摘のように、生活困窮者等が多く居住する施設の情報を福祉部局が消防機関や建築部局と共有して、それらの施設で必要となる防火対策の助言や注意喚起などを関係部局が連携して行うことが大変重要だと考えています。このたびの緊急点検の実施に当たっても、福祉部局とよく連携して実態を把握して、適切に防火指導を行うように求めています。

 今後、消防庁としても、防火の観点から、福祉部局が確認すべき点や消防に提供する情報の具体的な内容等について厚生労働省と調整するなど、関係省庁と協力して取り組んでまいります。

佐藤(英)委員 どうか二度とこのような悲しい事案が起こらないよう、政府を挙げて連携しながら取り組んでいただければと思います。

 さて、冒頭、私は、ことしの大雪害について政府の対応をお願いしたところでございます。

 地元北海道を始め我が国の積雪寒冷地帯は、国土の六〇%に及びます。国土交通省は、こうした中、生産性革命の一環として、自動車における安全サポート技術、さらには自動運転技術の実用化への取組を進めているところでございまして、私も大いに応援をさせていただきたいと思っているところでございます。

 そうした中、国土交通省は、北海道の大樹町で、いわゆるペンシルロケットと並んで町をにぎわしている地域でございますけれども、ここで、雪道での、積雪寒冷地域での自動運転の走行の実証実験をスタートされました。また、北海道の中央部を走る高速道路、道央道におきましては、除雪車の自動運転化に向けまして、準天頂衛星を活用した運転サポート除雪車の試験運転も開始をされたところでございます。

 いずれの箇所も私は視察をしてまいりました。例えば、大樹町での自動運転、大きな反響がございました。ある七十八歳の男性の方の感想ですけれども、自動運転の実用化の現実味を感じた、もうすぐ免許を返納しようと考えているので、実用化されれば大いに歓迎したい、返納しようと思っても、北海道だけじゃなくて過疎地域では足がないんだ、返納なんかできないんだと。そうしたやはり高齢者の方々への光明でもあるという話であります。

 さらにまた、七十歳の女性の方。自動運転の自動車が町内を走るようになれば、高齢者の外出の大きな手助けになる、自動運転が過疎地域の交通網を支えるようになる日を待っていると。私も、実際にこのマイクロバスに乗らせていただきましたけれども、本当にこれは冬道の、積雪寒冷地域の希望の乗り物であると私は実感をしたところでございます。

 また、将来、除雪車が自動運転化を進めることになれば、雪で高速道路が閉鎖になったとしても、前が全く雪で見えなくなったとしても、自動運転で除雪をしていることによって、これまで以上に早く、閉鎖となっているその交通機関が再開できるようになる。どれほどありがたいことか。雪国に住む私どもにとっては、本当にうれしい朗報でもございます。何としても成功していただきたいと思っております。

 また、札幌市においては、札幌市初の都市高速とも言える創成川通りの札幌都心と高速道路を結ぶアクセス道路、アンビシャス道路の具体化に向けて着々と議論も進んでいるところでもございます。

 こうした国土交通省、政府を挙げての生産性革命の技術が積雪寒冷地域などの条件不利地域で確実に実用化されていく息吹を感じ、大変に私は希望を持って勉強させていただいているところでございます。豪雪による交通障害を軽減し、安全性を高めることによって、積雪寒冷地における経済の発展は加速するとも考えております。引き続き、移動革命をもたらす新技術の積雪寒冷地仕様への積極的な支援を、ぜひとも石井国土交通大臣、お願いをしたいと思っております。

 現在の取組状況並びに今後への意気込みについて、国土交通大臣の御決意を伺いたいと思います。

石井国務大臣 道路を活用いたしました人流、物流は、あらゆる生産活動の根幹でありまして、我が国の国土面積の約六割を占める積雪寒冷地域におきましても、自動運転等の革新的な技術を活用しながら、安全かつ安定的な道路交通ネットワークを構築することが重要であります。

 このため、今委員御指摘の北海道大樹町におきましては、全国十三カ所で実施をしております道の駅等を拠点といたしました自動運転サービス実証実験の一つといたしまして、昨年十二月に積雪時の自動運転技術の検証を行いました。短期間の実験ではありましたが、おおむね円滑な走行が確認できたところであります。

 さらに、準天頂衛星を活用いたしました運転制御や操作支援の機能を備える除雪車につきましては、今月より、道央自動車道の岩見沢インターチェンジから美唄インターチェンジ間約二十一キロで試験導入をしたところでありまして、一般道路におきましても来年度の試験導入を目指しているところであります。

 また、札幌都心部と札樽自動車道を結びます国道五号、創成川通りにつきましては、特に降雪時に著しく速度が低下する等の課題がございますため、平成二十八年より、国、北海道、札幌市から成る検討会を設置し、機能強化の方策について鋭意検討を進めているところであります。

 国土交通省といたしましては、今後とも、道路の現場、技術と自動車の車両技術、制度を持つという強みを生かしまして、自動運転の早期実現を始めといたします生産性を高める取組を加速してまいりたいと存じます。

佐藤(英)委員 ぜひ大臣、今御答弁がございましたとおり、この事業、加速をしながら進めていっていただければと思います。

 次に、脱炭素化と温室効果ガス削減の取組についてお伺いをさせていただきたいと思います。

 世界の人々を誰一人取り残さない社会の実現を目指すSDGs。世界各国がSDGsに我先にと取り組む時代が到来したのではないかと思います。昨年末、第一回ジャパンSDGsアワードで、北海道の下川町が総理大臣賞をとりました。いずれ世界が「善の競争」を始める時代が来るという先哲の言葉を思い起こし、私も大変に誇らしく思っております。日本におきましても更に取組を加速せねばならないのではないかと思っております。

 今国会の冒頭、安倍総理の所信に対する質疑で、我が党の山口代表が、SDGsの理念に基づいて、地球温暖化対策の長期戦略を早急に策定し、世界をリードする役割を果たすべきと述べました。

 我が国は、二〇五〇年に温室効果ガス排出量の八〇%削減を目標としてはおりますけれども、今のままでは実現は到底おぼつかないのではないでしょうか。世界では既に、再エネ発電への投資額は既に火力発電への投資額の約二倍になり、乗用車に関してもEVや燃料電池車などへの移行が加速するなど、各国の官民は脱炭素化に向けた大胆なシフトを実現させているところでございます。また、ESGの投資やグリーンボンドなど、市場の力を活用した温室効果ガスの排出削減を図るさまざまな取組も、先進国、途上国を問わずに積極的に進められているわけでございます。

 我が国が持つ、世界に誇る多様な環境技術を最大限に生かすこと、脱炭素化と温室効果ガスの大幅削減のみならず、さらには新たな成長、新たな投資やイノベーションの創出で、世界を断じてやはりリードしていくべきではないかと考えます。

 同時に、カーボンプライシングについても、パリ協定以来の世界的な潮流に目を背けることなく、導入への議論を深めるべきと考えているところであります。

 これらについて、大臣の所見をお伺いをさせていただきたいと思います。

中川国務大臣 パリ協定のもとで、我が国のすぐれた技術、ノウハウなどの強みを生かし、国内での温室効果ガスの大幅な排出削減を目指し、同時に世界全体の排出削減に最大限貢献することが重要であると考えております。さらに、二〇五〇年、そしてその先の世界の脱炭素化を牽引していかなければならないと思っております。

 そのためには、脱炭素化の大胆な方向性を示すことによって投資やイノベーションを促すことが必要でございます。

 このように、気候変動対策を契機として、我が国が抱える経済社会における諸課題との同時解決を図り、新たな成長につなげていくための長期戦略を策定してまいります。

 その際、経済社会全体でイノベーションを促進するためには、先生御指摘の、再エネのさらなる促進、省エネ、またESG投資、環境金融といったこと、そしてさらにCO2の排出に価格をつけるカーボンプライシングといったことが重要な経済的手法の一つになるというふうに考えております。

 現在、環境省では、カーボンプライシングにつきまして、有識者から成る検討会において論点を整理しているところでございますが、国際競争力への影響等考慮すべき課題を乗り越えるためにどういった具体的な方策があるのかという点も含めまして、さまざまな角度から多面的に検討しております。

 環境省としては、このように、カーボンプライシングについて具体化に向けて検討を深めるとともに、長期大幅削減の実現に向け、長期低排出発展戦略の策定に取り組んでまいります。

佐藤(英)委員 質問を終わります。ありがとうございました。

河村委員長 これにて佐藤君の質疑は終了いたしました。

 次に、山崎誠君。

山崎委員 おはようございます。立憲民主党の山崎誠でございます。

 本日は、予算委員会での質問の機会をいただきまして、ありがとうございます。

 佐藤委員からもありましたが、冒頭、私からも、豪雪災害に見舞われています皆様、北陸、東北、北海道、雪国の皆様に心からお見舞いを申し上げます。そして、不幸にして命を落とされてしまった方々にも心よりお悔やみを申し上げる次第です。

 全国過疎地域自立促進連盟ほか多くの方々から、豪雪対策の緊急要望をいただいております。まさに記録的な豪雪でございまして、政府の万全な支援体制をおとりいただきますよう、心からお願いを申し上げる次第です。

 麻生財務大臣、済みません、十六日の午後の話なのでちょっと通告ができておりませんが、国税庁、多くの国民の皆さんが抗議行動で集まられました。前代未聞の出来事だと私は思います。確定申告開始の当日、多くの皆さんが集まっている。この事実、財務大臣としてどうお受け取りになったのか。

 財務大臣はいつも答弁で、極力、今、国税の仕事以外のことでいろいろな意見をいただくので、佐川長官をできるだけ表に出さないように、そんな配慮をされている、そんなお話も聞いております。

 大変な混乱が今生じていませんか。隠そう隠そうとすればするほど国民の怒りは膨れて、大きな混乱が発生しているじゃないですか。

 財務大臣、この状況をどうお考えか、一言御答弁ください。

麻生国務大臣 御党の指導で街宣車が財務省の前に当日やっておられたという事実は、私どもも知っております。たしか、御参加されたかどうか知りませんけれども、されているし、各地でそういった話があったと思っております。

 私どもは、御存じのように、この席上でたびたび答弁をさせていただいておりますけれども、この制度のもとで毎年大体二千万から二千三百万件ぐらいの申告がありますので、その中で大体四百万人を超える納税者の方々が大体納税される、税務署とか確定申告をされる場所にお見えになるのは毎年のことなので、その中でさまざまな意見を伺うものだと承知しておりますので、御指摘の行動を含めまして、ことしの確定申告の初日においてもさまざまな御意見があったとは思っております。

 いずれにいたしましても、私どもとしては、納税をされる方々が円滑に申告をしていただけるように、確定申告書の会場の運営というものに関しましては全力で取り組んでいるところであって、今回の場合でも、国税の分野での豊富な経験を生かした佐川という者に関して、その国税の分野において十分にその経験を生かして職責を果たしていっているものだ、私どもはそう認識をいたしております。

    〔委員長退席、柴山委員長代理着席〕

山崎委員 適材適所なんだったら、何で堂々と国民の前に出てきて説明をしないんですか。何も後ろめたいことがないのであれば、堂々と、大臣、説明をする機会をつくったらいいですよ。

 委員長、佐川国税庁長官のやはり国会での説明が必要です。証人尋問を要求させていただきますので、御検討ください。

柴山委員長代理 理事会で協議をいたします。

山崎委員 御質問を続けます。

 今、安倍政権は、森友、加計問題ですとかスパコンの不正疑惑とか、それから、最近発覚しました厚労省の裁量労働にかかわる虚偽データ疑惑により揺れています。

 私は、この根源には、安倍政権のやはり本質的な悪性というか、悪い性質があるんだと思います。まず目標があるんですよ、目標が。目標に向かって、都合のいい事実はどんどん出す、不都合な事実は隠す、隠蔽する、官僚にそんたくをさせる、そうやって、皆さんがやろうとしているのか、安倍さんがやろうとしているかわかりませんけれども、そういう目標を遂行しようとしているんじゃないですか。

 森友学園の小学校、非常に個性的な小学校でございまして、多くの国民の皆さんが望んでいるとは私は思えません。

 例えば、加計学園がつくろうとしている獣医学部、計画のいろいろな不手際、不備が指摘されています。これで本当に国民の命を守る新しい獣医学部ができるとは思えません。

 今回の裁量労働の問題もそうです。これだけ今、過酷な労働が問題になっている、ブラック企業が問題になっている。この中で、この裁量労働でどれだけまた苦しい労働環境が生まれるか、多くの働く人たちは大変心配に思っている。国民の願いとは反対です。

 全てが、目標があって、その目標が百歩譲っていいものだったらいいですよ、国民のためになる目標だったら許すけれども、どうですか。一人、個人であったり、友達であったり、あるいは一団体であったり、その利益のために目標を設定して、情報を隠す。民主主義を壊しているんですよ。私は、徹底的にこの点は追及をしなければいけないと思います。

 私は、これから原発の問題をお話ししたいんです。構造は同じなんですよ。再稼働ありき、原発依存を何とか下げる下げると言いながら、いろいろなデータを調べていくと、いろいろな資料を見ていくと、そうなっていないんですよ。原発依存を残そうとしているんだ。私は、きょう、そのあたりをしっかりと世耕大臣ほかに確認したいと思っています。

 今、私たちは原発ゼロ法案というのをつくろうとしています。速やかに原発を停止して、早く廃炉を決めたい、原発に依存する社会から、再生可能エネルギーやら省エネを徹底して、そういうエネルギー転換を図っていく社会をつくっていきたいと取り組んでいます。この国会の早いうちに原発ゼロの基本法を出そうとしています。

 タウンミーティングを全国十七カ所で開催、昨日も鹿児島で開催しました。十三回目でした。二百五十名の方が、大勢駆けつけていただきまして、徹底的な議論をさせていただきました。皆さん、本当に原発をとめたいと、熱い思いでお集まりいただいています。いろいろな意見をいただいています。

 例えば、電力、電気の安定供給を確保しつつ、原発をとめる、そういう我々の法文に関して、電力の安定確保よりももっと大事なことがあるだろう、原発が奪った命を、奪うおそれのある命を、あるいは生活を、暮らしを、そっちを優先すべきだ、そんな声もいただきます。原発は全てを奪っている。自然も、地域のきずなも、伝統文化も、人々の未来も夢も、そういうものなんだとタウンミーティングで皆さんからお聞きいたしました。

 私たちも、そういう思いを込めて、この原発ゼロは何としても実現しなければいけないと思っています。

 ですが、問題なのは、こうやって集まってきてくださる方以外に、一般の皆さんがなかなかこの原発の問題を理解してくれていない。その理由の一つは、私は、政府のいろいろな情報発信が誤っているからだと思っています。その幾つかを私はきょう御指摘したいと思います。

 私、三つ挙げたいんですが、一つは、アンダーコントロール神話と名づけました。あの事故はもうなかったことにしよう、あの福島の原発事故はもう収束に向かっている、安全なんだ、そういうメッセージ、その神話です。それからもう一つ、コスト、原発は安いんだというコストに関する神話。そして三つ目、安全神話にかわる新規制基準神話というのを今、一生懸命皆さんは宣伝している。

 一つずつ取り上げたいと思います。アンダーコントロール神話です。

 このパネルを見てください、皆さんの資料にございます一枚目。これは、世耕大臣が福島第一原発を視察されたときの、その感想を述べたツイッターの画面でございます。間違いありませんね。

世耕国務大臣 たしか一月十八日だったかと思いますが、私は、福島第一原発の敷地の中に入りまして、いろいろな作業の進捗状況を確認してまいりました。その際に、その翌日ですかにアップをしたツイッター、それともう一つツイートをしているとたしか思っています。

山崎委員 この中に、「敷地内大部分は普通の服装で行動できます。私も通常の工事現場と同様のヘルメットと防塵マスクをしているだけです。」と述べられています。

 このときの空間線量を覚えていらっしゃいますか。

世耕国務大臣 大体百五十マイクロシーベルト・パー・アワーだったというふうに思っています。

山崎委員 百五十マイクロシーベルト・パー・アワーというのはどういう数字ですか。大変な高線量です。

 ここで労働する方々がいらっしゃいます。被曝を何とか避けながら労働はされているんだとはもちろん思いますが、大変厳しい労働環境で仕事をしているんだ。

 このツイッター、つぶやきは何ですか。これを見たら、普通の方々は、ああ、福島の現場は落ちついてきたんだな、そう解釈すると私は思いますよ、普通の工事現場に近づいてきたんだと。何でそういうミスリードするようなことをつぶやくのか。

 百五十マイクロシーベルトといえば、一日例えば三時間作業して、一年間で、五年間で許容されている百ミリシーベルトを超えてしまう。大変な環境ですよ。

 世耕大臣、どうですか。

世耕国務大臣 まず、百五十マイクロシーベルトというのは、私はこの場には五分程度しかいてませんけれども、一時間いたとして、大体、東京―ニューヨークを飛行機で一往復した際の累積被曝量と同レベルというふうに言われています。

 何よりも、当然、作業に当たっている方々の被曝を低減しなければいけません。敷地の除染ですとか被曝低減対策、そういったことはしっかり行った結果、こうなっているわけです。

 それプラス、年間五十ミリシーベルトという法令によって定められた線量の限度をしっかりと満たすのは当然のこと、全作業員の八割以上の被曝量が線量限度の十分の一以下という結果になっています。

 私は、このツイッターでは事実を述べています。現に、九五%のエリアでは普通の作業服と普通の防じんマスクとヘルメットで活動できるというのは事実です。次のツイートでは、私は三号機の上に上がっていますから、ここでは防護服が必要だということをしっかりとツイートさせていただいています。

 きのう、私は福島の皆さんとの協議会に出席してきました。知事や自治体の長、あるいは各種団体の長と協議会に出席をしてきました。皆さんは、大変風評被害に困っておられます。この一Fの作業の現場についても、できる限り正確な事実をしっかり伝えてほしいという切々とした要望をいただきました。

 私は、このとき、訪問したときに、事実を少しでも国民に知ってもらう必要がある、九五%のエリアでマスクと作業服とヘルメットで活動できる、もっと言うと、ここでは書きませんでしたが、マスクをしないで歩けるエリアももう今できているわけであります。そういうことを国民に伝えるのは極めて重要なことだと思っております。

山崎委員 国民の皆さんに判断していただきましょう。

 私も、十二月の日に行ってきました、ここ、同じところに立ちました。百四十マイクロシーベルト・パー・アワー、大変びっくりしました。そういう事実もあるんですよ。

 だから、別に、二つ事実があるんだ、それをちゃんと公表したらいいじゃないですか。何で片方だけ言うんですか。事実ですよ、これは。でも、百四十マイクロシーベルト・パー・アワー、百五十マイクロシーベルト・パー・アワーという大変高濃度の汚染が残っているというのも事実じゃないですか。そうやって都合のいい事実だけ切り取るのはやめてくださいというのが、私の今お訴えしていることです。

 次の質問に行きます。被災者の帰還の政策についてお伺いします。

 今、風評被害という言葉がちょうど出てきました。地域では本当に今分断が始まっていて、苦慮されている方がいらっしゃいます。除染が済んだから戻ってきなさいと言われる、戻りたいけれどもなかなか戻れない、子供たちのことを考えると、まだまだ高線量のスポットが残っていて戻れないという方がいる。でも、もう除染が終わっているんだから早く帰ってこいよと言う地域の人もいる。そういう方々が、今分断されてしまっていますよね。

 被害者の間で、そうやって帰ってこないのは風評につながるから早く戻ってこいよみたいな話になる。戻ってこられない人、戻りたくない人は声を潜めなきゃいけない、肩身が狭い思いをしている。私はそういう話をたくさん聞きました。

 どうして被害者が被害者を責めたりすることがあるんですか。これが許されることですか。

 私は、行政は場合によってはどこかで線を引かなきゃいけないかもしれない、でも、政治は国民の間に線を引いちゃ絶対いけないと思っています。どこまでも被害者ですよ。皆さん大変苦慮しているんだ。寄り添わなきゃいけないじゃないですか。

 こういう地域の分断を何で生んでいるか。早くこの事故をおさめたいと思っているからじゃないですか。早く帰ってきなさいと思っているからじゃないですか。それで事故をなくそうとしているんじゃないですか。

 吉野大臣、どうか、この状況、所見をお聞かせください。

吉野国務大臣 お答え申し上げます。

 町長、村長、市長も含めて、避難を余儀なくされている方々に戻ってきなさいということは一言も言っておりません。ですから、戻ってくるかこないか、これはみずからの判断でございます。

 特に、避難指示を解除しているかどうかというところも、避難指示解除の三要件というのがございます。

 それは、まず、空間線量が二十ミリシーベルト以下になることが確実であること。もう一つ、日常生活に必要なインフラ、必須なインフラ、例えば電気、ガス、水道等々でございます、そして生活関連サービス、これらがおおむね復旧していること、そして子供の生活環境を中心とする除染作業が十分に進んでいること。そしてさらに、県、市町村、住民との協議がなされること。この三つの三要件を踏まえて避難指示を解除しております。

 そういう意味では、みずからの判断で戻るか戻らないかは今やっておりますので、委員のおっしゃることは、強制的に戻れということは一言も言っていないことを申し上げたいと思います。

 以上です。

    〔柴山委員長代理退席、委員長着席〕

山崎委員 御丁寧に答弁いただきましたが、現場は違っているのではないかと私は思いますよ。すごいプレッシャーをかけられて、かかって、それはかけているとは言わないかもしれない、でも、かかって悩んでいる方が大勢いるという事実を、どうかもう一回考えていただきたいと思います。

 次の質問に行きます。

 関連して、国連の人権理事会から日本政府に対して勧告が出ています。資料の二ページ目です。

 原発事故の被災者の皆さんの声を聞いて、四カ国の方々から是正勧告が出ております。時間がないので一件一件読めませんが、オーストリア、ポルトガル、ドイツそしてメキシコ、それぞれ私はすばらしい勧告をいただいたと思っています。特に、ポルトガルの中に、国内避難民に関する指導原則を適用しなさいという指摘がございました。

 外務大臣、この適用の意味をちょっと教えていただきたいんですが、資料としては三ページにもつけさせていただいています。

河野国務大臣 昨年の十一月に定期レビューが行われ、我が国の審査が行われました。四カ国からこうした勧告が出されるであろうということは伺っております。三月に三十七回の人権理事会が行われ、そこで採択をされる予定であろうというふうに聞いております。

 我が国としては、こういう勧告、これは法的な拘束力はございませんが、前向きに対応できるように検討しているところでございます。

山崎委員 前向きな検討をぜひお願いしたいんですが、この指導原則に書いてあるんですよ、三ページ目。計画策定及び管理運営への国内避難民の完全な参加を確保するようにということです。

 私は吉野大臣にお聞きしたかったんですが、先ほどおっしゃったように、三原則に従ってやっていると。じゃ、避難者の皆さんは本当にこの意思決定にかかわっていますか。二十ミリシーベルトだったら帰れる、その意思決定に避難者の皆さんは関与していますか。ごめんなさい、時間がないので答弁を求めません。

 私は、こういう指摘というのは大変重要で、国際的な基準に照らし合わせたら日本は避難者の皆さんに対して人権問題を引き起こしているぞ、その危険が強いぞということが勧告で明らかになったと思います。

 河野外務大臣、この勧告にどういうふうにお応えになるつもりですか。

河野国務大臣 今、政府内で検討しているところでございますので、対応できるようにしっかり検討してまいりたいと思います。

山崎委員 ああ、すばらしい答弁だったと思いますよ。

 私は、外務大臣というのは、日本のことと海外、世界のことをつなぐ役目だ、海外からのいろんな指摘を、海外のスタンダードをちゃんと理解して、国内の問題と照らし合わせて政策決定する、それが外務省の役割だと思いますよ。こういう勧告があります、復興庁の皆さん、どうですか、ちゃんとやっていますから問題ないと答えてください、それが外務省の役目だと私は全然思っていないんだ。

 外務省の担当者と話もしました。国のために勧告に適切に対応しますと言いました。国の体面を保つために、この勧告に適切に対応しますと言いました。

 国って何ですか。どこを向いて仕事しているんですか。避難者のためにこの勧告をどう扱うか、被災者の皆さんのためにどうこの勧告を使うかでしょう。何でそういうことができないんですか、外務大臣。外務省の意味がないじゃないですか。メッセンジャーですか、それ。飛行機に乗って行ってきてくださいよ、メッセージを届けに。

 河野大臣、どうぞ。

    〔委員長退席、柴山委員長代理着席〕

河野国務大臣 済みません、おっしゃっている意味がよくわかりませんが、こういう勧告が三月の人権理事会で採択される予定と聞いておりますので、それに向けて今政府内で対応している、検討しているところでございます。

山崎委員 ちょっと興奮し過ぎて意味がちゃんと伝わらなかったかもしれないですけれども、国内と世界のスタンダードをきちっと照らし合わせて国内の政策をよりブラッシュアップするのが外務省の役目でしょう、そう私は御説明させていただいたつもりです。

 先ほど、一番初めの国税庁前の抗議行動について、何か私たち立憲民主党が主導したというようなお話がありましたが、市民団体主催の行動でありまして、麻生大臣、先ほどの発言は撤回、謝罪いただきたいと思います。

麻生国務大臣 主催者がどなたか存じませんけれども、御党の議員の方々も参加しておられたんじゃないんですか。私どもはそう理解しておりますが、違いますか。(山崎委員「そりゃ参加は誰だってしますよ」と呼ぶ)

柴山委員長代理 山崎君、指名しておりません。

 山崎君。

山崎委員 参加は誰だってしますよ。賛同もしますよ。自民党の皆さんだってしないんですか、そういうことを。同じですよ。

 では、次、もう時間がないんですが、続けます。

 原発のコスト神話について、ちょっと触れさせていただきたいと思います。あと五分しかありませんので、手短に行います。

 世耕大臣、この原発コストをいつももとに答弁されています。この間の菅委員の質問にも答えていました。

 原発のコストは安いんだ、二〇一四年の試算で、十・一円というモデルを出されています。このモデルですが、これはどういうモデルか、どういう想定で何のコストをはじいたのか、正確に教えてください。

世耕国務大臣 このコストの試算は、二〇一一年の民主党政権のもとで行われたコスト検証の基本的な考え方を踏襲しながら、そのとき含まれていた資本費、運転維持費に加えて、賠償や除染、中間貯蔵などの事故リスク対応費用、追加安全対策費用、そして高レベル放射性廃棄物処分費も含めた核燃料サイクル費用、立地対策費や研究開発費といった政策経費など全て含めた試算となっておりまして、原子力の発電コストとして、キロワットアワー当たり十・一円以上という結果を得ております。

山崎委員 これは、私の理解では、いいですか、今、新しいプラント、設備容量百二十万キロワットをつくって、設備利用率が七〇%で運転して、稼働年数四十年、そのプラントを今つくって動き出したときに、理想的な状態で運転したときのコストではありませんか。

世耕国務大臣 当然事故対応費用なども含んでおりますから、そういう意味では理想的という言葉を使うのは私は適切ではないと思いますが、モデルプラントをつくって計算しているということになるわけであります。これは、OECD始め、国際的にも標準な計算の仕方だというふうに思っています。

山崎委員 事故リスク対応費用というこの事故という意味は、福島原発事故の事故対応は入っていませんよね。この後ですよ。このプラントが動き出して、新たな事故が起きたときのリスク対策としてコストを乗せているんです、確率を掛けて。その事故の計算のベースに福島の原発事故のベースをとっているから福島の事故の対応をしているように見せかけているが、この事故は、これから起きる事故のことを想定していて、福島の事故の対応費用は入っていないです。

 福島の事故の対応費用、資料にもつけましたが、今二十一・五兆円。この後五十兆円にも七十兆円にもなるかもしれない、そんなレポートも出ている。この費用はどこに計上されているんですか。

世耕国務大臣 何度も申し上げますが、これはモデルプラント方式という方式で計算しています。これは民主党政権のときに決められた方式であります。

 これからつくるプラントに発生するコスト、いろいろ起こるかもしれないことを確率を掛けて計算しているんです。そのベースになっているのはまさに福島事故の対応費用、それをベースにして、今後起こるかもしれない、起こってはいけないですよ、起こってはいけないし起こさないように全力を尽くしますが、万が一にも起こるかもしれない将来の事故のコストを入れている、これがモデルプラント方式なんです。

 ここに、現実に今かかっている、あるいは今想定されている福島の現実の事故費用を入れた瞬間に、モデルプラント方式じゃなくなるんです。しかも、将来の事故費用を入れているんですから、そこに福島の対応費用を入れたら、これは二重計上になるわけであります。モデルプラントという意味をよく御理解いただきたいと思います。

柴山委員長代理 質疑時間が終了しております。

山崎委員 モデルプラントというのは、現実と離れていいわけないんですよ。現実として、これからあの対策費用は二千億、三千億と毎年毎年かかっていくんですよ。この政策経費と同じように計上しなかったら、モデルにならないじゃないですか。だから、理想的なモデルだなと言っているんですよ。理想的なモデルをつくって、だからコストは安いんだと。まだほかにも言いたいことはたくさんありますが、時間がなくなりました。だからコストが安いんだと。

 もう一つ言いましょう。じゃ、再生可能エネルギーは何で二十年で切ってしまうんですか、太陽光、風力。

柴山委員長代理 質疑時間が終了しております。質疑を終わらせてください。

山崎委員 OECDの試算では、IRRは入っていません。再エネは高くなるように、原発は安くなるように誘導しているじゃないですか。それが皆さんが言っているモデルだ。

 終わります。

柴山委員長代理 次に、川内博史君。

川内委員 おはようございます。

 委員長そして各党の理事の先生方、発言の機会を与えていただきましたことに心から感謝を申し上げさせていただきたいというふうに思います。

 まず、麻生大臣、二月十六日の国税庁前の市民の皆様方というか納税者の皆様方の抗議行動、私どもが、もちろん参加はしました、しかし主導はしておらないので、主導をしたというふうに御発言をされた部分については御訂正をいただきたいというふうに思いますが、いかがでしょうか。

麻生国務大臣 私どもとしては、玄関に出てきたら立っておられた方がおられましたので、はあっと思って見ていただけなので、主催しておられるか主導しておられるか、そこはちょっと私は判断はできませんので、自分たちではない、誰か善意の第三者がやっておられるというふうにしておられるのかもしれません。そこはよく確定しておりませんので、自分たちで主導していないというのであれば、それはそうなります。訂正させていただきます。

川内委員 最後、訂正しますというふうにおっしゃっていただいたので、余りこれについてやりとりをするよりは、森友問題の本質の議論をさせていただこうというふうに思います。

 麻生大臣、それから、きょうはいらっしゃらないわけですけれども、安倍総理大臣も、この森友学園への国有地の売却が、不当に安く値引きをされて売却をされたのではないかという問題に関して、安倍総理大臣も麻生財務大臣・副総理も、累次にわたって、まあ、会計検査院からいろいろ指摘は受けたけれども、法令違反あるいは不当事項の指摘を明確に受けているわけではないんだということを御答弁されていらっしゃるわけでございますが、私どもは、そして多くの納税者の皆さん、国民の皆さんも、不当に安く売却をされたのではないかという疑念を持っているし、総理も、御自身の御夫人がその周辺にいらっしゃったということで疑念を持たれているということに関してはお認めになっていらっしゃるわけでございます。

 そういう意味で、会計検査院の報告書というのは非常に重要な報告書であるというふうに思うのですけれども、一月二十九日の衆議院予算委員会で、会計検査院長は、「近畿財務局に対する実地検査におきまして、森友学園からの損害賠償請求の可能性について行った法律的な検討につきまして、資料を提示した上での説明を求めております。」と答弁をしており、この要求を近畿財務局に対して文字で伝えたと説明を受けておりますが、これはそのとおり、文字で伝達したということでよろしいかということを改めて確認いたします。

河戸会計検査院長 会計検査院法第二十六条では、会計検査院は、検査上の必要により検査を受けるものに資料の提出を求めることができると規定しております。この資料の提出の求めにつきましては、一般的に申し上げれば、文書で行われることも口頭で行われることも、ともにございます。

 お尋ねの、近畿財務局に対する資料を提示した上での説明の求めにつきましては、具体的に文書名を特定して行ったものではございませんが、事前に文字で伝達したとの報告を受けております。

川内委員 そこで、文字で伝達をされた財務局は、窓口は統括国有財産管理官セクション、近畿財務局の管財部であるということだろうと思いますが、それを局内で共有したか。特に、統括法務監査官セクションにその会計検査院からの文字での伝達を伝えたか、聞いたのかということを教えていただきたいと思います。

太田政府参考人 お答えを申し上げます。

 委員からもお話をいただきましたとおり、主として、管財部の第一統括国有財産管理官というところが対応しておりました。

 それで、検査の過程において、質問あるいは議論の内容によってそれでは不十分なところにおいては、ほかの部門にも資料を求めたり、あるいはほかの部門の職員も同席したりということで補足的な説明を行うということは行ってございましたが、当初のその文書の段階でそのことを統括法務監査官の方にお伝えして、それでその資料に統括法務監査官の方が気づくという状況に至らなかったということは事実でございます。おわびを申し上げます。

川内委員 ちょっとよくわからなかったんですけれども。

 聞いたのか、統括法務監査官に聞いたんですかということを私はお尋ねしているわけで、今、聞こうとしたけれども聞かなかったのか、聞いたんだけれども統括法務監査官が気づかなかったのか、ちょっとよくわからなかった。聞いたのかということに、まず明確に答えてください。

太田政府参考人 お答えを申し上げます。

 気づかなかったというのが事実でございまして、聞いていれば気づいたはずでございますので、聞かなかったということだと承知をしております。

川内委員 統括国有財産管理官は、統括法務監査官に会計検査院から伝達された資料要求を聞かなかった、伝達しなかったということになるわけで、これは重大な過失に当たる、財務局への検査ですからね、重大な過失に当たるというふうに私は思いますが、理財局長はどう思いますか。

太田政府参考人 気づかなかった、気づけなかったということは大変申しわけないと思っております。何度か申し上げておりますが、本当に申しわけないと思って、おわびを申し上げます。

 その上で、重過失云々ということは、それは検査院法にのっとるところでございますので、受ける方の立場が、我々がそのことについて云々ということを申し上げる立場ではないんだろうというふうに承知をしてございます。

川内委員 理財局長、検査院法三十一条の重大な過失に当たるかどうかは検査院が判断すればよいことですが、私がここで言う、これは大変な過失ですねというのは、私は検査院の人間じゃありませんからね、一般的に国民が感じる思いとして、いや、それはちょっとまずかったね、聞けばよかったねという思いで、それは大変な失敗ですね、うっかりしましたねということを申し上げているわけで、理財局さんも検査院法を有権的に解釈する立場ではないわけですから、理財局として、あるいは財務省として、これは財務省として大変な失敗をした、聞いておけばよかったわけですから、聞いておけばよかったと御自分でおっしゃったわけですから、今。

 それは、ただ済みませんというふうに謝罪をされるだけではなく、重大な失敗でしたということをお認めになられた上で、だから謝罪しますということになるのではないかというふうに思いますが、いかがでしょうか。

太田政府参考人 聞いておけばよかったと申し上げました。本心そう思っています。聞いておけば、検査院の検査の過程においてもう少し損害賠償云々の話も説明できたと思いますし、それで検査報告書が変わったかどうかということは私どもにはわかりませんけれども、少なくともプラスの方向には働いたのではないかというふうに思っています。

 そういう意味で、大変残念ですし、申しわけない。申しわけない、あるいはおわび申し上げますと言っている私の気持ちは、今委員が再三にわたって済みませんという言葉を使われますが、済みませんというよりももっと重い気持ちで私は申し上げているつもりでございます。

川内委員 聞いていれば検査報告書がもっとよい方向に変わったのではないかというふうにおっしゃられたんですけれども、財務大臣、この法律相談書の、この法律相談の記録というのはいろいろなことを私たちに教えてくれていて、財務省さんが、新たな地下埋設物という、新たなごみが発見されたから大きく値引きますよということを森友学園に対してされたわけですけれども、その新たなごみが発見されたよということに関してもちゃんと法律相談書の中に出ていて、新たなごみというのは財務省の側が言っている言葉で、森友学園側から、学校法人側の主張には、新たなごみという、新たな地下埋設物という言葉は出てこないんですよね。

 で、その近畿財務局の統括法務監査官の方が、その廃棄物混在土壌が、というのは新たなごみが、そもそも本件賃貸借契約第五条記載の本件報告書の土壌汚染、地下埋設物とどのような関係にあるのか、また、なぜ現状のようになっているのかについて、事実関係が本書記載の事実関係のみでは不明であるため、明確な回答は困難であると。要するに、新たなごみというのが一体何なのかようわからぬということをこの法律相談書の中で述べていらっしゃるわけで、私は、この法律相談書が出ていれば、会計検査の報告書というのは、理財局さんが言うような、よく変わったとはとても思えないですね。

 さらに、会計検査院は七月二十日に、会計検査がどのように行われたのかということが、会計検査院さんに教えていただいているんですけれども、四月と六月に近畿財務局に実地検査に行き、七月には本省理財局も実地検査が行われている。もうこの七月二十日には太田さんにかわっているんですよね、理財局長は、佐川さんから。

 私は太田さんも答弁にお気をつけいただきたいというふうに思うんですけれども、この法律相談書というものが実際には存在をしていた、そして気づきませんでしたということに今なっているわけですが、本当に気づいていなかったのか否かというのは大変重要な問題で、佐川さん並びに太田さん、気づく機会があるわけですよね。国会から資料を求められている、大変に問題になって国会から資料を求められている、七月二十日には実地検査も行われている。そういう中で、本当に記録があったのかなかったのかということについては、気づく機会が何回もあった。

 だから、まず前任の佐川さんについて教えていただきたいのでございますけれども、佐川理財局長は、いろいろな記録がない、廃棄しました、決裁文書に集約されているのですという答弁を、財務省を代表して、あるいは政府を代表してこの予算委員会などで答弁をされるに当たって、近畿財務局やあるいは本省の内部においてもそうだし、さまざまなセクションに対して、本当に書類がないのかということを確認したのか、していないのか、確認しようとしたのか、していなかったのかということを教えていただきたいと思います。

    〔柴山委員長代理退席、委員長着席〕

太田政府参考人 お答えを申し上げます。

 基本的に、特にこの法律相談の文書は、私どもが気がつけなかった、あるいは気がつかなかった、気がついたのはこれまでも申し上げているような経緯の過程でありまして、そのことについて、前局長の佐川も、あるいは私も、それまで気づいていなかったことは事実であります。それが至らないと言われれば、それはそのとおりでありますが、事実は残念ながらそういうことでございます。

 その上で、じゃ、これまで、保存期間一年未満のものは、事案終了までが基本的に保存期間なので、それ以降、基本的には決裁文書に集約をしているからということで御答弁を申し上げていました。あるいは、前局長もそういう御答弁を申し上げています。

 これは、基本的にそういうルールであるということを前提にしてお話をしておりますが、ただ、委員がおっしゃるように、理財局あるいは近畿財務局にそういうものがあったかどうかということは当然確認をしないといけませんので、確認をしてやろうとはしています。

 ただ、正直に申し上げれば、昨年の通常国会のこの話が起き始めた二月、三月のころは、連日のように国会で、あるいは新たなという格好で質問もあり、あるいは連日のようにテレビでも報道されておって、そこの方が必死でございましたので、十分できていなかった面があるかもしれません。

 ただ、さきの通常国会でも、ある程度たって、衆議院あるいは参議院の財務金融委員会で、理事会で御協議をいただき、あるいは委員長から御指導いただいて、何も答えていないような印象を受けられていますが、特に四月以降は相当お答えを申し上げているつもりだと思います。

 あるいは、さきの特別国会、今の通常国会でも、音声データと称されるもの、それは真偽のほどは私どもとしては本当は定かではないんですが、こういう状況のタイミングでこういうことをやっていたんだろう、多分こういうスタンスで、多分というか、我々としてはこういうスタンスで臨んでいたということも含めて御説明を申し上げている、そこは一つ一つ丁寧に、至らない、不十分だという御批判は甘んじて受けますけれども、一つ一つ御説明を申し上げているというのが今の実情だというふうに思っています。

 最初の時点で十分でなかったかもしれませんが、ただ、その時点で、基本的に、当然確認もせずにやっておるというスタンスではございません。

川内委員 委員長、長々と答弁を今されましたけれども、ちょっとよくわからないんですよね、私。確認をしていないわけではない、でも確認していませんでした、不十分だと言われればそのとおりだが、一生懸命やっていたんですと。一体何を言いたいのかが、私、よくわからないんですけれども。

 不十分だ、不十分だったというのは恐らくお認めになられるんだろうと。不十分だったというのはお認めになられますよね。ちょっと、どうですか。

太田政府参考人 不十分にしようと思ってやったわけではありませんが、結果的に法律相談文書がこういう形になりましたので、その法律相談文書に気づかなかったという意味では不十分だということだと思っております。

川内委員 予算委員会、あるいはほかのさまざまな、麻生大臣が御出席になられる財務金融委員会等もそうですけれども、正式な議論が行われる場です。佐川前理財局長、現国税庁長官ですね、それから太田理財局長も、委員長に御指名を受けて、委員長としては、政府を代表してきちんと答弁しろよということで指名をされるわけですよね。

 そういう中で、政府全体として、記録があったにもかかわらず、ないと答弁をされた。日本国政府として答弁をされたということに関しては、私はこれは、いや、気づきませんでしたということでは済まない重大な過失、重大なミス。重大な過失という言葉が検査院法三十一条にありますから、それは使いたくないということであれば、重大なミスであったということは、これは正式な国会の場で、政府を代表して、ほかに記録はありませんと言ったわけですから。それを、出てきた後で、いや、気づきませんでした、不十分だったことは認めますけれどもねというのでは、それはちょっと通らない御答弁ではないかと私は思います。

 重大なミスであったということはお認めになられたらいかがかと思いますが、どうでしょうか。

太田政府参考人 交渉記録、面談記録というものを我々が承知しておったわけではなくて、現時点でも、そういうものは存在していなかった、いないということだと思っています。

 法律相談文書ということについて、会計検査院からも御要請があり、それに対して、その時点において気づいていなくておくれてしまったということについては申しわけないということを申し上げております。

 面談記録あるいは応接記録について気づいていて、それが出ていなかったという趣旨で言われているとすると、それは、今回の法律相談の文書の中に、御批判をいただく中で、それに類する部分があるのではないかという御批判を承っているのは承知していますが、私どもとすれば、あれはどう考えても、近畿財務局の管財部門、統括国有財産管理官から管財部ではないところの統括法務監査官に法律相談を記録した文書、その中に、経緯について、法律相談にきちんとした正しい結論を得るためにそういう部分が入っていたというものだと思っていますので、前局長が、廃棄した云々、それは決裁文書に集約した云々という部分のところとは、そこと結びつけて、それと一体となって、一緒として御質問いただくと、そこの部分は、いや、そういうことは申し上げておりませんと。

 ただ、いずれにせよ、法律相談文書に気づいていなかった、気づかなかったことは申しわけない、おわび申し上げますと申し上げています。

川内委員 今、理財局長の御答弁は重大なごまかしがあって、法律相談文書の中に交渉経過あるいは面談の記録が、統括国有財産管理部門の事実の経過という記載の中に記載されているわけですね。

 野党として、昨年の通常国会等で、私はいませんでしたけれども、さまざまに要求されているのは、交渉の経過なり面談の記録なりというものがありますか、あったら出してくださいねということを申し上げているわけで、法律相談文書の中に近畿財務局管財部が事実の経過として記載した記録があるわけですよね。それは、法律相談文書そのものというのは私どもは名前がわかるわけないわけですから、その時点において。

 そういうことを管財部自体は、事実の経過を記載している、交渉の記録を記載している、面会でどういう話をしたか、現地でどんな打合せをしたかということについては、事実の経過という形で記載をしているということは知っているわけですから、そのこと自体に気づかなかったことが重大なミスでしょうということを申し上げているわけで。いや、文書の名前が違うから気づかなくても当然だったというように開き直りともとれる答弁をされること自体が、私は、国民の皆さんあるいは納税者の皆さんの信頼を失うことにつながっているのだということを指摘しておきたいというふうに思います。

 さらに、財政法九条に違反して不当に安くしたのではないか。

 会計検査院の院長にもう一度御答弁をいただきたいんですけれども、森友学園への土地売却というのは過大な値引きがされており、私は財政法第九条違反の可能性があるというふうに思うんですけれども、会計検査院は、その可能性はないというふうに言い切られますでしょうか。

河戸会計検査院長 お尋ねの財政法第九条につきましては、その第一項におきまして、国の財産は、法律に基づく場合を除くほか、適正な対価なくしてこれを譲渡し若しくは貸し付けてはならない旨、規定されております。

 また、会計検査院法第二十条第三項におきましては、「会計検査院は、正確性、合規性、経済性、効率性及び有効性の観点その他会計検査上必要な観点から検査を行うものとする。」と規定されております。

 会計検査院は、参議院からの検査要請を受け、学校法人森友学園に対する国有地の売却等に関し、貸付価格及び売却価格並びに価格算定手続の適正性等について検査を実施いたしました。

 この検査に当たっては、合規性、経済性等の観点から売却価格が適正な対価であったのかに着眼して、財務本省、国土交通本省、近畿財務局、大阪航空局等におきまして会計実地検査を行うなどいたしましたが、報告書におきましては、「会計経理の妥当性について検証を行うために必要な事実が確認できず、口頭等による説明によっても、会計経理の妥当性について検証を十分に行えない状況となっていた。」旨を記述したところでございまして、財政法第九条違反であると判断するには至っていないところでございます。

川内委員 検査院長、済みません、確認させていただきたいんですけれども、今、最後の部分で、財政法第九条違反であると判断するには至っていないというふうに御答弁になられたわけでありますが、九条違反と判断するに至っていないという非常に微妙な、いわく言いがたい御答弁なわけですけれども、財政法九条に違反していないとは言い切れない、すなわち違反している可能性があるかもしれない、本件についてはですね、ということでよろしいかということを確認させてください。

河戸会計検査院長 繰り返しの答弁になりますけれども、「会計経理の妥当性について検証を十分に行えない状況となっていた。」と記述しているところでございまして、財政法第九条違反と判断することは困難であると考えております。

川内委員 至っていないから困難であると、何か答弁がちょっと後退したような気がするんですけれども。ちょっと、いろいろなことが確認できないので、財政法九条に違反するかどうかを判断することができない、いろいろな資料がないから、確認できないからと。だから、可能性としてはあるのかということを私は聞いているわけです。

 霞が関のいろいろな官僚用語がありますけれども、国民の皆さんにわかりやすく、この予算委員会というのは伝える場だというふうに思うのでございますけれども、ぎりぎりわかりやすく伝えるとすれば、財政法九条に違反する可能性がないとは言い切れない、すなわち可能性があるということでよろしいかということを、ちょっとわかりやすく答弁していただきたいんです。

河戸会計検査院長 繰り返しの答弁になりますけれども、財政法第九条違反と判断することは困難であると考えております。

川内委員 困難であるというのはいかなる意味ですか。

河戸会計検査院長 お答えいたします。

 私どもの検査結果に基づいて財政法第九条違反と判断することは困難であるという意味でございます。

川内委員 財政法九条違反の可能性がないということを会計検査院としては言い切りますか、最初の質問に戻りますけれども、言い切るんですか、法律違反はないというふうに言い切りますかということについてもう一度答えてください、端的に。

河戸会計検査院長 お答え申し上げます。

 私どもの検査報告の中で判断いたしますと、財政法第九条違反と判断することは困難であると考えております。

川内委員 いや、質問したことに答えていただきたいんですけれども、というか端的に答えていただきたいんですけれども、財政法九条違反と判断することは困難である、その困難であることの前提は、検証を十分に行えない状況となっていたことからということですよね。だから、検証を十分に行えない状況となっていたことから判断するのが困難であるということですよね。

河戸会計検査院長 そのとおりでございます。

川内委員 だから、検証を十分に行えない状況となっていたことから財政法九条違反と判断することは困難である、あるいは至っていないということは、言葉をかえて言えば、私どもからすれば、財政法九条に違反する可能性がある、その可能性についてしっかり本委員会で議論をすることが、政治、行政の信頼というものそのものにかかわるし、納税者の納税意識そのものにかかわるというふうに思うところでございますけれども。

 佐川国税庁長官が、「租税教育に関する取り組み」のインタビューの中で、「次代を担う児童・生徒が、国の基本となる租税の意義や役割を正しく理解し、社会の構成員として、社会のあり方を主体的に考えることは、納税に対する納得感の醸成と民主国家の維持・発展にとって大変重要なことであると考えております。」と、「税理士界」という業界紙のインタビューに答えて、おっしゃっていらっしゃいます。納税に対する納得感の醸成、それが民主国家の維持、発展につながると。これは、私はギャグか、笑かそうと思って言っているんじゃないかというふうに思ったりもするぐらいでございますけれども。

 要するに、会計検査院がきちんと厳密な判断をするに足るさまざまな資料がないと言っている中で、実は、さまざまな検証を可能にする法律相談書というものが存在をしていた。

 今、会計検査院の方でももう一度検討していただいているというふうには思いますが、佐川長官は、前理財局長は、そのさまざまな資料について、いろいろなところに、書類は本当にないのか、記録はないのかということを聞こうと思わなかったんですかね。太田さん、どうですか、佐川さんは思わなかったんですかね。

太田政府参考人 お答えを申し上げます。

 基本的にはやはり管財部の統括国有財産管理官のところが中心なので、そこをメーンにして話をしていたと思います。いろいろな資料、それは国会でも聞かれていましたし、委員の中で、資料があるのであれば、それはある方がいろいろな意味では理解が得られやすいのでという気持ちはあったと思います。

 そういう中でということですが、とにもかくにも、最初の時点、余りにも急激に国会でも審議され、報道されて、十分手が回り切らなかったのは現実だろうと思いますが、前年の通常国会でも、後半部分はそうじゃない状況になったとは思っております。

川内委員 いや、だから、何で思わなかったのか、いろいろなところにあるんじゃないかと。財務省の優秀な皆さんが、これだけ問題になっていることを、どこかに記録があるだろう、捜せと思わなかったことが不思議で、私は。思わなかったということでよろしいんでしょうかね。思ったんですかね。

太田政府参考人 思わなかったということではないと思っています。(川内委員「思ったんですかね」と呼ぶ)思ってやっていたと思います。

川内委員 思っていたのなら、何でこの法律相談書が出てこないんですかね。何で聞かなかったんですかね。思わなかったんでしょう。隠したんですか。どういうことなんですか。

太田政府参考人 思ってやっていたと思います。思ってやっていたときの第一の対象は基本的に管財部の第一統括国有財産管理官のところだったので、そこのところとまず接触をしていますのでということです。

 ほかにも云々かんぬんというところまでは、それは思いが至らなかったということだと思っています。それは私自身も、申しわけありませんけれども、法律相談文書に気づいたのがこういうタイミングでございましたので、思いが至らなかったというのは私も同じでございますので、同じ思いであり、それは申しわけないということでございます。

川内委員 麻生大臣、思いが至らなかった、思っていたんだけれども思いが至らなかったと、正式な国会の場で佐川前理財局長も太田現理財局長も御答弁されていらっしゃるわけですけれども、麻生大臣は部下を御信頼されて御答弁をされていらっしゃるんだろうというふうに思いますが、そういう部下の皆さんが、いや、思っていたんだけれども気づかなかったんですわということに関して、それでよい、国会の場で答えるのはそれでよい、気づかなかったんだったらそれでよいというふうに思われるのか。

 それとも、なぜ気づけなかったのか、なぜ書類を出さなかったのかということに関して、しっかりと総括をし、責任をとるべき方に責任をとっていただくということを、私は、財務大臣として、行政権を一身に背負っていらっしゃる財務大臣として、納税者に対する責任としてもはっきりさせるべきであると。

 適材適所と繰り返していらっしゃるわけですが、私は、その適材適所という言葉だけでは納税者は全然理解、納得されなくて、やはりそこをしっかり検証した上で、ほら、やはり適材適所だっただろうというのか、それとも、いや、これはまずかった、処分しますということになるのか、その辺の大臣としての考え方を改めて聞かせていただきたいと思います。

麻生国務大臣 川内先生、私、あなたほど、人間、大蔵省は完璧とも思っていませんし、人間がそんなに完璧と思ったことは一回もありませんので、したがって、人間というのは、それほど全てうまくいく、大蔵省だから完璧なんてさらさら思うことはありませんので、私どもとしては、人間誰しもある程度間違いがあるという前提でやっていかないかぬものなんだと思っていますよ、基本的な考え方として。

 したがって、私どもとしては、今回の話に関しましては、会計検査院からお話がありましたように、私どもの会計検査院からの対応に関しまして、少なくとも私どもは、その文書、いわゆる法律相談の文書に気がつかなかったということなのであって、その他の文書についてはすべからく全部対応させていただいているんだと思っておりますし、私どもとしては、信頼しないでこういう仕事はやれませんので、長はやれませんから、長というのは大臣とかそういった意味の、職場の長とか何でもそうですけれども、部下に対する信頼がなければ、とても成り立つ立場じゃありませんので。

 そういった意味では、私どもとしては、基本的な考え方として、今、太田がたびたび答弁をいたしておりますように、国会の監査で説明しているものなのであって、法律相談の文書を、検討している内容につきましては、これは殊さらに文書を隠していたというものではない、そう思っております。

川内委員 質疑の時間が来ましたので終わりますけれども、大臣、私も、人間は完璧なものじゃないという点においては、そのとおりだと。私などは特に完璧じゃない人間だと思いますが。だからこそ、組織として仕事をされるときは、確認の上に確認をする、みんな、これでよろしいかということをしっかりと確認した上で国会の場では答弁をされるんだろうというふうに思うんですよね。そういうものだというのが財務省に対する信頼、あるいは納税に対する信頼、納得感というものにつながるんだというふうに思うんですけれども、それが今崩れている、あるいは崩れ去ろうとしている。

 それは、書類が出てこなかったことが、ただ気づかなかっただけ、確認を怠っただけではなくて、ほかに何か要因があったからではないかということを国民の皆さんが、多数の皆さんが疑問に思っているからで、そういう意味で、この問題をしっかりと明らかにしなければ、福田康夫元総理がおっしゃるように、本当に国家がおかしくなるということにつながってしまうのではないかということも、私は同様の思いをしておりますので、引き続き、さまざまに教えていただきながら、事実の解明を政府の皆様方とともに、そして議員の仲間とともに進めていくということをお誓い申し上げて、終わらせていただきたいと思います。

河村委員長 これにて川内君の質疑は終了いたしました。(逢坂委員「委員長、発言を求めたいと思います。よろしいですか」と呼ぶ)どうぞ。

 次に……(発言する者あり)ちょっとお待ちください。次に、高井崇志君。高井崇志君の番であります。(逢坂委員「よろしいですか」と呼ぶ)次の質問者、質問者から言わせてください。質問者から、発言は。次の質問者は、時間が来ておりますので、高井崇志君、席に着いてください。(逢坂委員「委員長、どうぞと言いました。発言、よろしいですか」と呼ぶ)訂正します。(逢坂委員「いや、委員長にどうぞと言っていただきましたので」と呼ぶ)

逢坂委員 委員長、発言させていただきます。委員長のお許しをいただいて発言をさせていただきます。

 先日の総理の答弁の撤回、おわび、それに関連するけさの理事会において、厚生労働省から資料を提出していただくということになっております。現在、その資料についてまだ協議が調っておりません。

 したがいまして、委員長にお願いを申し上げたいんですが、これから野党理事間で厚生労働省と協議をしたいと思いますので、しばしの時間、委員会の休憩をお願いいたします。

河村委員長 本件につきましては、理事会で協議をしていただき、理事間同士で資料の提出等を諮って、協議をいただいていると聞いております。

 高井崇志君。(発言する者あり)

 ちょっととめてください。

    〔速記中止〕

河村委員長 速記を起こしてください。

 午後一時から委員会を再開することとし、この際、休憩いたします。

    午前十一時五十四分休憩

     ――――◇―――――

    午後一時十四分開議

河村委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。

 質疑を続行いたします。高井崇志君。

高井委員 岡山から参りました高井崇志でございます。

 まず、午前中の質疑が中断したわけでありますけれども、ちょっと状況を把握されていない方もいらっしゃるようなので、改めて申し上げておきますが、我々がさんざんこの委員会でも要求してきた資料が、ようやくきょうになって出てきた。しかし、それが不十分であって、私がこの裁量労働制について質問するということになっていましたから、私の質疑までにこれを出していただけるということでありましたけれども、しかし、私の手元には来ていませんでしたし、しかも、それはなぜかといえば、非常に不十分な資料であった。

 そもそも、この平成二十五年三月八日付の資料が理事に提出されたわけですけれども、それをよく読むと、冒頭に、平成二十五年二月十三日付の指示するところでありますがという、つまり二月十三日付のが前提になっている。

 こういう不完全な資料で質問しろということでありますから、これは当然質問できないということで、逢坂委員からも異議を申し上げ、委員長からも理事会で協議しますということであったにもかかわらず、質疑が続行されて、結局、私は質疑時間を十分間、削られるそうでございます。極めて不満でありますけれども、理事間で協議した上ということで、今回は甘んじて受けたいと思いますが、しかし、これは本当に政府の今回の対応が余りにも不誠実である、そのことによって私の質疑時間が十分削られたということは、しっかりとここで申し述べておきたいと思います。

 その上で、まず、今回、裁量労働制に関する質疑において総理が答弁したことを、総理が撤回をされました。これについていろいろ質問をしたところ、加藤厚生労働大臣は、今精査中である、きょうまでに精査をするということでありましたけれども、精査の結果はどうだったんでしょうか。

加藤国務大臣 大変、精査をしなきゃいけない資料を出したことに対しても撤回をさせていただいたところでございますけれども、きょう予算委員会の理事会にも御報告をいたしましたので、ここは大事なところなので、それを読ませていただくということでよろしいでしょうか。

 衆議院予算委員会の御指摘を踏まえ、平成二十五年度労働時間等総合実態調査結果について、調査手法を確認するため、調査に携わった労働基準監督官へのヒアリングや過去に同様の調査を行った際の経緯を調べるとともに、集計データの点検を行った。結果は以下のとおり。

 この調査は、全国の労働基準監督署の労働基準監督官が事業場を訪問し、事業場からの聞き取りを行い、関係書類を確認し、労働時間を調査しているものである。その際の平均的な者とその労働時間の選び方については、次のとおりであった。

 一般労働者については、公表している冊子においては、平均的な者とは、調査対象月において最も多くの労働者が属すると思われる時間外労働時間数の層に属する労働者のことをいうと記載されているが、労働時間の選び方については記載がなかった。この点について精査した結果、当該者の調査対象月における法定外労働時間の最も長い日と最も長い週について、当該労働時間をそれぞれ別個に記入することとなっていた。

 裁量労働制については、労働基準法に規定する労働時間の状況として把握した時間について記入することになっているが、公表している冊子には、単に平均な者と記載されているのみであり、一日の労働時間をどのように選ぶのかは記載がなかった。この点について精査した結果、労働基準法に定める定期報告で報告しているものを転記するか、又は、賃金台帳等の記録により監督官が実際に調べた時間を記入することとしており、一日で見て最も多くの労働者が属すると思われる労働時間の層に含まれる労働者の労働時間を記入することになっていた。

 このように、平均的な者の労働時間について、一般労働者と裁量労働制で異なる仕方で選んだ数値を比較していたことは不適切でありました。深くおわびを申し上げます。

高井委員 不適切であったということでありますけれども、今長々と説明ありましたけれども、肝心な部分の説明はないと私は思うんですね。

 きょう、先ほど委員にもお配りされたこの資料、都道府県の労働局長宛てに厚生労働省の労働基準局長が平成二十五年三月五日で出した、ある意味、調査の方法を指示したもので、その中に、三ページぐらい開くと、別紙一ということで、労働時間等に関する調査的監督付表、これは調査じゃなくて監督の一環でやっているという、このことも極めて、これを調査と言っていることに既に一つ問題点があると思いますが、これを見ると、もう一目瞭然ですよ。

 この一般労働者という欄には、一日の時間外労働の最長時間数、最長時間数と書いていますね。で、一番右の欄には平均的な者とありますけれども、一般労働者は最長時間数なんですよ。そして、裁量労働制の欄を見ると、二つありますけれども、両方とも、平均的な者の状況と。つまり、一般労働者は最長労働時間を出し、そして裁量労働制の方は平均的な数字を出したと。

 これは、そもそも比較すべきものでは全くないじゃないですか。これは、不適切なんという言葉で済む問題なんですか。私は、これは捏造以外の何物でもないと考えますけれども、大臣はいかがですか。

加藤国務大臣 説明は、先ほど読み上げたところになるわけでありますけれども、今の御指摘のところも、上と言ったら、ちょっと、見ていない方には説明しづらいんですけれども、この表がございまして、一般的な労働者については、平均的な者について、一日の時間外労働の最長時間を書けというふうに書いてあるわけであります。

 一方、裁量労働制については、単に平均的な者の状況を書けと書いてあるわけでありまして、したがって、上記については、これを見ることによって、一日の長いということは直ちに理解をするわけでありますけれども、裁量労働制については、そこについては何の記載もなかったということでございます。

高井委員 調査の仕方というか、調査そのものはそうだったのかもしれませんけれども、これを二つ並べて比較して、そしてそれを裁量労働制の労働時間と一般労働の労働時間として一つに並べて、九時間三十七分と九時間十六分という数字を言ったことは、これは明らかに、そもそも比較の対象じゃないものですから、これを一緒に並べたということは、これは捏造と言わないんですか。捏造じゃなかったら何と言うんですか。

加藤国務大臣 捏造という意味を、どういうふうにお使いになっているかわかりませんが、それぞれのデータについて、選び方が異なるものを、対象は平均的な者ということでありましたけれども、それについて異なるデータを比較した。これは不適切でありますし、そのことは深くおわびを申し上げなければならないと思っております。

高井委員 この不適切な中身は更に追及したいと思いますが、本当に疑問がたくさんありますよね。

 この間違いが、この表を見れば一目瞭然なんですよ。で、我々同僚は、みんなこの表を出してくれと言って、それをもう何日間、たしか二月の一日ぐらいに、先ほどヒアリングで厚労省の課長は、二月一日にこの表を知ったと我々のヒアリングで言っていました。

 じゃ、大臣がこの表を知ったのはいつですか。

加藤国務大臣 私のところに報告があったのは、二月の七日の午後でございます。

 このときに、野党の皆さん方からいろいろなこういう指摘を受けているということ、そして、今委員御指摘でありますけれども、一般労働者の記入が一日の時間外労働の最長の時間数となっている、ただ一方で、裁量労働制については、一日、どういうふうに選んでいるのか記載がなく、現段階についてはよくわからない、こういうことでありました。(発言する者あり)

河村委員長 御静粛に願います。

高井委員 今、岡本委員からも声が上がりましたけれども、これを二月の七日に大臣は知ったと。その後、二月の八日のこの予算委員会で岡本委員が、九日に山井委員が、それから十三日に長妻委員、それから十四日に江渡委員、枝野委員、井出委員、そして十五日に逢坂委員、白石委員、山井委員、これだけの、何人ですか、九人の委員がこの問題を取り上げて、それを大臣は、こんな誰が見てもわかる表を知っていたのに、それについては一切言及せず、これを出すことをずっと、精査が必要だから待ってくれと。

 大臣、知っていて答弁しなかったということが、これは虚偽じゃないですか。

加藤国務大臣 ですから、先ほど申し上げましたように、裁量労働制について、どういう形で調べていたのかわからないということでございますので、精査をさせていただくということになったわけであります。

高井委員 精査するのは御自由ですけれども、この表自体を出してくれと言って、もう現物が存在する、もうこれは全国の都道府県の労働局長に全部宛てている文書じゃないですか。これだけオープンになっているこういう資料をずっと出さずに、全くそういったことを答弁しなかったということは、これは普通の社会では隠蔽というんじゃないですか。

加藤国務大臣 ですから、それについて、裁量労働制についてどういうことで調べたのか、それがはっきりした段階でお答えをさせていただいたということでございます。

高井委員 今の説明は、要するに、この紙自体をどう説明するか、どう言いわけするかを一生懸命考えるのに、七日からきょうまで十二日間、十二日間、つじつまを合わせるために時間をとっていた、そういうことじゃないですか。

 それでは、これを総理が知ったのはいつですか。

加藤国務大臣 総理に対しては、まず一つは、委員会で、私が精査をしているということは多分伝わっていたというふうに思います。これはちょっとわかりません。

 その上で、二月十四日朝に官邸に対して、引き続き精査が必要であるということを報告をし、実際、十六日に官邸に状況を説明し、十八日の夜に今回の理事会への報告内容を報告した、こういうふうに承知をしています。

高井委員 一週間ですよね。何でこれ、これだけ総理に報告しなかったんですか。

 そして、先ほどの、隠蔽ではないということの説明は、全く説明として私は理解できないんですけれども、改めて御答弁ください。

加藤国務大臣 ですから、それぞれの選び方がどうであるかということを確定しなければ御説明はできないということでありまして、今申し上げたように、裁量労働制についてはどういう形で選んだかということがさまざまなものではわからなかったので、実際に当たった監督官等々に確認をし、そして、何か資料があるだろうということで調べた結果として出てきた、それを踏まえて委員会に対して御報告をさせていただいたところでございます。

高井委員 いや、誰が見ても、これ一枚見たらわかることですよね。ですから、これについて、まずはこういう調査票があって、それで、なぜそういう説明になったのかということを調べればよかったんじゃないですか。なぜこれをすぐに出さなかったのか、そのことは全く答えになっておりません。

 そもそも、今回問題になっている平成二十五年度労働時間等総合調査、まさにこの調査の中に、この数字自体は入ってこないということかもしれませんけれども、しかし、この調査結果をもとにこの労働等総合調査というものは作成をされていまして、そして、これはまさに、労政審で働き方改革の議論がされているわけですけれども、二〇一三年の九月二十七日の労政審の分科会では、この平成二十五年度労働時間等総合実態調査を、この調査結果がまとまり次第、詳細に御報告申し上げ、議論の出発点にしたいと。

 労政審では、まさにこの実態調査を議論の出発点にしているんですよ。その議論の出発点にしているその調査の大もとのこの調査が、今、不適切だったということは認めたわけですから、これは労政審の議論をもう一回やり直すべきなんじゃないですか。

加藤国務大臣 まず、労働政策審議会には、平成二十五年度の労働時間等総合実態調査についてのこの結果、冊子でまとめたものをお出しをさせていただいたところでございます。

 その冊子の中には、委員も御承知のとおりでありますが、一般労働者に対して、一日に関する記載は一切書いてございません。裁量労働制は裁量労働制として、別途、専門と企画という形で取りまとめた、それを出させていただき、それについて御審議をいただいたということでございます。

高井委員 これは、確かに九時間三十七分とか九時間十六分という数字は出てきていませんが、そもそもこの発端となったのは、この調査が、そもそもこの比較がおかしい、誰が見てもこの一枚、国民の皆さんが見たらおかしいというものを前提にこの実態調査はつくられていて、しかも、労政審の、先ほどの九月二十七日の厚労省が出した資料によると、主な調査項目という中で実労働時間数というのも入っているんですけれども、これは入っていないんですよ、この労働調査の中に。

 ですから、労政審に対して説明したことと全然違う、不十分な、しかも調査方法が極めて恣意的な、こういう調査をもとにできた報告書を議論の出発点としてこの労政審は議論されてきたということはお認めになりませんか。

加藤国務大臣 先ほど申し上げたのは、そうしてそれぞれ違う選び方をした資料を比較したこと、これは不適切だということを申し上げたのでありまして、それぞれの調査が不適切であったということを申し上げているわけではございません。

 したがって、それぞれについて、それぞれをまとめて、そして労政審あるいは分科会で御議論いただいたということでございます。

高井委員 労政審の中の議論では、何度も何度も、一般労働者と裁量型労働の時間の長さの違い、しかも、裁量労働型の方が長いという客観的なファクトは出しながら議論してきて、その中で、その基盤として、この実態調査が使われてきたわけです。

 そして、加えて言えば、この間、我々この国会でもどれだけ裁量型労働制に関する質疑があったか、私、ちょっと調べてみました。全部網羅していないかもしれませんけれども、平成二十七年から始まって、実は、衆参の予算委員会とそれから厚労委員会で、合計延べ三十一人の委員が委員会で質疑をしています。

 ちなみに、予算委員会が二十二名です。予算委員会というのは、総理も入って、テレビも入ったりして非常に注目の高い、その予算委員会で二十二名、そして、厚労委員会で九名の方がこの裁量労働制について質問していて、そして、ほとんどの質問の大半は、裁量労働制で労働時間はふえるんじゃないか、そういう質問に対して、必ずしもそうではないということを政府が反論してきた。

 そういう流れの中で、こんなに、比較が不適切だったとさっき認めましたけれども、その不適切な根拠を持って、今までの国会のこの延べ三十一人の委員会の審議というのは、これはどうしてくれるんですか。前提が全然もう異なるんですから。何分かはわかりませんけれども、これだけの時間を、どう責任をとられるんですか。

加藤国務大臣 重ねて申し上げるんですが、労政審においては、比較をした資料、要するに裁量労働制と一般労働者を比較した資料はお出しをしておりません。それぞれ別々のものを、しかも、先ほど申し上げた、一般労働者について、一日についての資料は出しておりません。

 それから、今お話があった点については、前回も、精査が必要な資料をお出しし、それを撤回したときにも申し上げましたけれども、そうした資料を提出し、そして、実際、資料の選び方が異なるものを比較するということで、不適切なものを御説明したことに対しては、深くおわびを申し上げます。

高井委員 いや、おわびをされても。今質問した、この三十一人の委員会の審議をどうするんですか。

 労政審の話はいいんですよ。いいというか、今、一週間のは出ていたと聞きましたけれども。しかし、この国会でこの議論が、このデータ、しかも、塩崎厚労大臣ははっきり答えていますよね、二回答えていると記憶していますが、こういう答弁をしている、そして、もともとのこの調査票に基づいてつくられた労働時間の比較、こういったものを前提として国会の審議がこれまで行われてきたこと、これに対して、おわびをすれば済むんですか。そんな、三年間も委員会で審議したことを、おわびしたら、もうそれはなかったことにして前に進んでいい、そういうものなんですか。

加藤国務大臣 私の方から申し上げられることは、先ほど申し上げたような精査が必要なデータについて国会で説明をしたり、あるいは、実際、比較が不適当であったものに対して御説明をした、そのことに対して深くおわびを申し上げる次第でございます。

高井委員 いや、全然答えていただいていない。

 おわびはわかりました。撤回、おわびはわかりましたけれども、これまで三年間、三十一人の委員が質問をしてきて、それがそもそも前提が崩れたわけですから、これはやはりもう一度議論をやり直すべきだし、そもそもきちんとした、撤回をしなくても済む適切な調査をやって、それに基づいてもう一回、国会で審議をすべきじゃないですか。

加藤国務大臣 労政審においては、今の点も含めてさまざまな視点に立って御議論をいただく中で、おおむね妥当ということで答申をいただいたところでございまして、今現在、それを踏まえて法案の作成作業を進めさせていただいております。

高井委員 法案をまだ出していないからいいという問題じゃなくて、既に二〇一五年、出しているわけですよね。それについてこれだけ国会で議論をしてきた。

 それから労政審も、さまざまな議論があったといっても、これはやはり大きな一つの論点で、それが全く違う、不適切な調査票に基づいて行われた、その報告書をベースにして、議論の出発点にして行っているんですから、労政審だって本来ならやり直すべきだし、ましてやこの国会の審議は、私は、法案が出ていないから今までのこの三十一人の委員会の質疑はもうどうでもいいんだというのは、到底、国会として、立法府として看過できません。

加藤国務大臣 労政審については、先ほどから申し上げていることの繰り返しになりますけれども、こうした比較をして出したというものではないということははっきりと申し上げたいというふうに思います。

 あと、私の方としては、先ほどから申し上げておりますように、精査が必要なデータであったり、あるいは、それが本来選び方が異なるものを並べた、比較をした、そうしたものであることは不適切であり、そのことに関しては深くおわびを申し上げます。

高井委員 これをつくった現場の責任者、局長、きょう来ていただいていますけれども、局長はこれを知っていたんですか、こういう違いがあるということを。この調査票の存在は知っていたんですか。

山越政府参考人 お答え申し上げます。

 私がこの調査票を知りましたのは、二月の二日でございます。

高井委員 二月の二日に聞いて、大臣に五日間も報告しなかったこと。それから、これだけ議論になって、しかも、塩崎大臣も答弁をし、安倍総理まで答弁をしている、そのもともとの質問票がどんなものだったかを現場の責任者の局長は知らなかったんですか。なぜ知らなかったんですか。無責任じゃないですか。

山越政府参考人 その時点では、調査票が異なるものであるということについては把握したわけでございますけれども、例えば平均的な方について、どのような数値を把握することになっているかということについてはまだわかっておりませんでした。そういうことで、その問題について更に精査をしなければいけないということで、精査をしていったところでございます。

高井委員 局長、ぜひ正直に答弁していただきたいんですけれども、安倍総理が働き方改革、特にこの裁量労働制の拡大、経団連からも強く要望があって、官邸として、総理として、これはぜひやりたい、そういう意向があって、それに反するようなデータは厚生労働省では出せなかったんじゃないですか。そんたくがあったんじゃないですか。そんな、厚生労働省のミスだなんてばか正直に認めないで、きちんと本当のことを言ってください、国会ですから。

山越政府参考人 お答えを申し上げます。

 この資料でございますけれども、二十七年の三月に作成されたものでございますけれども、その後、その資料については……(発言する者あり)二十七年でございます。(発言する者あり)はい、平成二十七年。二十五年の調査でございまして、二十七年三月に御指摘の比較するデータについては表に出されているわけでございますけれども、その二つの平均的な者が異なる意味であるということは、表に出されています冊子の中には書かれていないということもございまして、その後、十分な検証がないままそれを使っていたものでございまして、そのことについてはおわび申し上げたいと思います。

高井委員 これは、局長、そもそも労政審でも何度も議論をしてきた、そして国会でも何度も答弁をしてきた。こういう不適切なデータのまま、このまま法案をつくっていいんですか。現場の責任者、局長として、いいんですか、それで。

山越政府参考人 今回の法案を作成するに当たる労政審の議論でございますけれども、さまざまな資料に当たりまして多面的な観点から議論がなされているものでございまして、その中でおおむね妥当という答申をいただいて、法案作成の作業をしているところでございます。

高井委員 さまざまな論点であっても、重要な論点の一つですよ。国会でもこれだけ、誰が見てもこれだけの過労死されている方がいて、心配をしていて、そのことを労政審の皆さんだって、労政審の皆さんにも失礼じゃないですか。そんな間違った前提に基づいた資料でおおむね妥当といったって、それは前提が違うんだから、今また諮ったら違う結論になるんじゃないですか、局長。

山越政府参考人 この数値でございますけれども、異なる仕方で選んだ数値で、それを比較していたことは不適切であると思いますけれども、それぞれの、裁量労働についての数値、それから一般の労働者についての数値は、それぞれ適正に作成されているものだと思います。それが労働政策審議会に提出をされまして、その上で議論がされたものでございますので、特段の瑕疵はないものというふうに考えております。

高井委員 いや局長、何ら瑕疵がないというのはちょっと言い過ぎじゃないですか。

 論点が幾つかあるのはいいですよ。しかし、その重要な論点の一つを撤回しているんでしょう。不適切だったと言っているのに、労政審の審議には何ら瑕疵がないんですか。本当にいいんですか。何ら瑕疵がないで、いいんですか。

山越政府参考人 それぞれ、この二つの異なる仕方で選んだ数値で比較したことは不適切であると思いますけれども、それぞれ、一般の労働者あるいは裁量労働制を適用される方について作成されたデータについては適正なものであったというふうに考えております。

高井委員 加藤大臣、今局長が何ら瑕疵はなかったと言っていますけれども、大臣も同じ認識ですか。

加藤国務大臣 先ほどから御説明させていただいておりますように、労働政策審議会に出した資料については、裁量労働制は一日の資料を出させていただきました。ただ、一般の労働者については一週間と月と年のデータを出しているだけでございまして、一日のデータを出しておりません。そして、当然その二者を比較するようなものも出していないという意味でございまして、最終的にそれを、その後の段階でありますけれども、比較して出したということは不適切だったというふうに思っております。

高井委員 大臣、これは、もう私は時間がないので後の方がまたやってくれますけれども、そもそも、ただの数字だけの問題じゃないんですよ。九時間三十七分と九時間十六分じゃなくて、この労働基本総合調査そのもののベースが違っているということですから、これは本当に労政審の議論にもさかのぼるし、そして、これまでの国会の議論にもさかのぼって、やはりそれはもう一度白紙撤回していただかないと、我々としては今までの議論の時間は何だったんだということであります。

 これは大臣、法案撤回はもちろんですけれども、私はこれは極めて大きな大臣の責任問題だと思いますが、大臣みずからけじめをつけて、おやめになるという考えはありませんか。

加藤国務大臣 厚生労働省において、さまざまなことに対する責任は全て大臣が負うべきものだというふうに思っております。

 その上で、今回こうした不適切なことがあったこと、これに対して深くおわびを申し上げたいと思います。

高井委員 残念ながら、時間が十分削られてしまいましたので、なくなりました。この問題は同僚議員が引き続き追及いたしますし、私もまた機会をいただいたらやりたいと思います。

 また、きょうは、日米原子力協定の関係で河野大臣と世耕経産大臣にもお越しいただいていましたけれども、そういう事情がありますので、お許しいただきたいと思います。

 ありがとうございました。

河村委員長 これにて高井君の質疑は終了いたしました。

 次に、逢坂誠二君。

逢坂委員 逢坂誠二でございます。

 それでは、早速、引き続きやらせていただきますが、まず、厚生労働省にお伺いしますけれども、今回、総理はこの裁量労働に関する答弁、撤回をしておわびをした。何で撤回したんですか。

山越政府参考人 お答え申し上げます。

 精査が必要なデータに基づいて答弁をされたからだというふうに承知をしております。

逢坂委員 精査が必要なデータに基づいて答弁をした、だから撤回をしたと。

 精査をした結果は何が問題だったんですか。

山越政府参考人 お答え申し上げます。

 これにつきましては、異なる仕方で選んだ数値、それを比較していたことが不適切だったというふうに私どもは考えております。

逢坂委員 異なる仕方でやった調査、それを比較したから適切ではなかったと。

 異なる仕方の具体的なことを教えてください。国民の皆さんは全くわかりません。

山越政府参考人 お答え申し上げます。

 まず、これは一般の労働者と裁量労働制についてのそれぞれ平均的な者の労働時間がどうかという問題でございますけれども、一般労働者につきましては、この平均的な者というのは、その月において最も多くの労働者が属すると思われる時間外労働時間数の層に属する労働者をまず選択し、その者の一カ月の毎日の時間外労働を見まして、その最も長い日を記入するということになっていたわけでございます。

 他方におきまして、裁量労働制につきましては、労働基準法に規定する労働時間の状況として把握した時間を調査票に記入することになっていたわけでございますけれども、これは、精査の結果、一日で見て最も多くの労働者が属すると思われる労働時間の層に含まれる労働者の労働時間を記入することになっていた。

 こういうことで、それぞれ異なるとり方だということでございます。

逢坂委員 もっとわかりやすく言えば、労働時間のとり方、これは一般労働者と裁量型労働者で違う定義で労働時間を調査した。それから、平均的な者、これについても、一般労働と裁量労働、実は、言葉としては平均的な者と言っているけれども、中身の違うものを対象にして調査をした、そういう意味ですか。

山越政府参考人 お答え申し上げます。

 先ほどの答弁で申し上げたとおりでございまして、まず、一般労働者につきましては、平均的な者として調査対象月の時間外労働を見つつ、その者のその月における一日についてでございますけれども、一番長い時間外労働を把握するということでございます。

 裁量労働につきましては……(逢坂委員「同じ答弁を聞いているんじゃないです。私の質問に答えてください」と呼ぶ)はい。

 一日で見て最も多くの労働者が属すると思われる労働時間層に含まれる労働者の労働時間を記入する、その点が違っているということでございます。

    〔委員長退席、田中(和)委員長代理着席〕

逢坂委員 もう一回言いますよ。

 裁量と一般労働者、労働時間の定義が違っている、それから平均的な者の定義も違っている、そういう調査をやった結果をあたかも同じであるかのように比較をした、比較できないものを比較したから、これは適切ではなかった、だから総理の答弁を撤回した、そういうことでよろしいですか。

山越政府参考人 異なる仕方で選んだ数値で比較していたということでございます。その点については不適切であったというふうに思っております。

逢坂委員 そこで、私、先ほどから局長の答弁を聞いていてどうも疑問なんですが、異なる条件で調査したものを比べたから不適切だったと言っているんですが、調査そのものには問題はなかったんですか。

山越政府参考人 調査につきましては、定められた方法に従いまして行われたもので、適正なものであったというふうに考えております。

逢坂委員 まず、今回の調査は調査なんですか。これは、具体的にはどういう名称でこの数値を調べられておりますか。調査ですか。

山越政府参考人 この調査でございますけれども、労働時間等総合実態調査という名称でございます。

逢坂委員 総合実態調査ということで全国の労働基準監督署には通知、通達を出しておられますか。

山越政府参考人 この労働時間等総合実態調査でございますけれども、労働基準監督官が事業場に対する監督をする中で事実を調査するということでございまして、そういう意味で、実態調査と称しているところでございます。

逢坂委員 じゃ、質問の仕方を変えましょう。

 先ほど出された資料ですけれども、平成二十五年二月十三日に出された「監督指導業務の運営に当たって留意すべき事項について」、こういうものが全国の労働局長に出されています。それから、平成二十五年三月八日に全国の労働局長に「労働時間等に関する調査的監督について」という文書が出されております。この中には労働時間の総合的調査という文言は使っておりますか。

山越政府参考人 御指摘の通知でございますけれども、労働時間等に関する調査的監督というものでございますけれども、この調査的監督を行う中で把握された結果を取りまとめたものが、先ほど申し上げました実態調査であるわけでございます。

逢坂委員 すなわち、総合的調査という言い方は現場ではしていない。

 これは、二月の十三日の労働局長宛ての監督指導業務の運営に当たって留意すべき事項の中では何と言っているか。「労働時間等の調査的監督」、こう言っているわけですね。調査的監督なんですよ。監督的調査でもないんですよ。あくまでも監督だと言っているんですよ。こういうものを調査と言えるのか。

 同じく、三月八日、労働時間等に関する調査的監督について、「下記により実施することとしたので遺漏なきを期されたい。」と。調査的監督を行えと労働局に言っているんじゃないですか、これは。

山越政府参考人 お答え申し上げます。

 この調査的監督でございますけれども、労働時間等の実情について調査をするとともに、必要な事業者に対する監督をする、二つの目的を持って行っているもの、それが調査的監督というものでございます。

逢坂委員 調査的監督の結果、それを調査結果とまとめるかどうかは、それは厚生労働省の判断でしょう。でも、現場では、これは調査的監督ということで行っていたというふうに理解せざるを得ないんです、出された資料を見る限りは。

 そこで、調査が適切だったとおっしゃっているんですが、三月と二月のこの二つの通達、通知、これの中には、平均的な者に関する定義あるいは労働時間に関する定義、これはしっかり設けられて、現場に通知されていますか。

山越政府参考人 平均的な者につきましては、これは公表資料の中にもその定義があるわけでございますけれども、これと同じ内容がこの通知の中にも盛り込まれているというふうに承知をしております。

逢坂委員 報告書の中に定義があっても、調査的監督を行う時点で定義がはっきりしていないと、現場では指導的監督を行うことはできないのではないですか。定義が明らかでないものを調査せよと言われても、現場は困るんじゃないですか。

山越政府参考人 調査的監督の方法につきましては、この通知の中でも指示をしておりますし、またそのほかにも、例えば、疑問があれば、地方局からの照会、こういったものにも対応して調査的監督を実施しているところでございます。

逢坂委員 それでは、労働時間等に関する調査的監督について、どこで平均的な者と労働時間のことについて指示をしているのか、ここで明示ください。

山越政府参考人 この労働時間等に関する調査的監督の七ページでございますけれども、その(2)の中に、調査対象月の時間外労働が最長の者とはこういうもの、平均的な者とは最も多くの労働者が属すると思われる時間外労働時間数の層に含まれる労働者という指示がなされているところでございます。(逢坂委員「七ページ」と呼ぶ)七ページでございます。三月八日の通達の七ページでございます。(逢坂委員「七ページってこれですか、三月八日。ちょっと委員長」と呼ぶ)

田中(和)委員長代理 適切に答弁してください。ページを示して。

山越政府参考人 済みません、お答え申し上げます。(逢坂委員「何なんだ、これ。だめだめ、時計とめて。肝心なところだ」と呼ぶ)

田中(和)委員長代理 いや、もう答弁しますから。

 答弁してください。

山越政府参考人 恐れ入ります。済みません。

 別紙二、後ろの方に別紙二がついて、三月八日の別紙二、平成二十五年度労働時間等に関する調査的監督付表記入要領の七ページの(2)の三段落目に書かれているところでございます。

逢坂委員 ちゃんと読み上げてよ。ちょっと探せないんだけれども。三段落ってどこですか。

山越政府参考人 「「調査対象月の時間外労働が最長の者」は、それぞれの労働者の属性ごとに調査対象月の月間の時間外労働が最長の者を選択し、各項目の実績を調査すること。「平均的な者」とは、最も多くの労働者が属すると思われる時間外労働時間数の層に含まれる労働者をいうこと。」と記載されております。

逢坂委員 これは両方の調査に共通ですか。一般的な労働をしている者と裁量労働をしている者、両方に共通する説明ですか。片方だけなんじゃないですか。

山越政府参考人 今申しましたのは、一般の方でございます。

 裁量労働につきましては、同じく十二ページの問三をごらんいただきたいと思いますけれども、「労働時間の状況」という中に、法三十八条の三第一項第四号又は法三十八条四第一項の第四号に規定する労働時間の状況として把握した時間のうち、最長の者及び平均的な者の状況を記入することとされているところでございます。

逢坂委員 これは労働時間の状況ですけれども、平均的な者についてはどこに書いてありますか。

山越政府参考人 お答え申し上げます。

 この点につきましては、本日の精査の御報告の中でも記させていただいておりますけれども、この公表されている冊子あるいは通知におきまして記載されているのは、今申しました内容であるわけでございます。

 そこで、その内容が十分にわからなかったために精査をしていたわけでございまして、その内容につきましては、きょう提出をいたしました精査の内容の別紙二の疑義照会によって明らかになってきたということでございます。

逢坂委員 局長、私、比較したことはそもそももう大間違いだと思っているんですよ。違う条件のデータを比較して、あたかも裁量労働の方が短い勤務時間であるかのような印象を全国に振りまいたことは、これはとんでもないことだと思っています。

 それからもう一つ、調査の内容が適切だ適切だと言っているんですけれども、何をどう調査するのかということをきちんと必ずしも伝えていない、私にはそう思われる。今もらったばかりの資料ですから、中身全部を私も読み切っておりませんけれども、これを見て、すぐ、ああ、そうか、こういう調査をやるんだなということは簡単にはわからない調査のように思えてならない。しかも、裁量労働の方については、平均的な者の定義がどうも見当たらない。こういう状況の中で調査をやって、これが適切な調査と言えるんですか。

山越政府参考人 この平均的な者につきましては、今申しましたように、一日で見て最も多くの労働者が属すると思われる労働時間の層に含まれる労働者の労働時間を記入するということでございますので、こういう方法で調査が行われたというふうに承知をしております。

逢坂委員 だから、それは後づけできょう皆さんが出してきた話であって、三月と二月の通知の中に、どこに書いてあるんですか。

 これは、私、現場でそれぞれどんな方が調査しているのかわかりませんけれども、これを見る限りは適切な調査ができるとは思えない。いかがですか。

山越政府参考人 今申し上げました一日で見る労働時間の算定の仕方でございますけれども、これは、二十五年の前に十七年に同じような調査をやっておりまして、その際の疑義照会で示されておるものでございます。

逢坂委員 十七年のときと監督官は一緒なのかという今やじが飛んでいましたけれども、普通、物事の調査をするときには、これこれこういう項目について調査をする、その調査の内容というのはこういうことをやるんだということを明確にしておかないと、調査としての有意性というのはないんですよ。何を調査しているのかもわからないで、ただ単に勤務時間だけを聞いているということであれば、信用できる調査にはならない。そのことは指摘しておきたいと思います。

 これ、きょういただいたばかりの資料ですから、後でもう少し読み込んでみますけれども。

 それでは、局長、今回の、労政審で答申が出された、その中に、裁量的労働について、多くの人は賛成というふうに言っていますか。裁量的労働について、これは労働時間が長くなるのではないか、懸念の声が出されておりませんでしたか。

山越政府参考人 裁量労働制については、JILPTが裁量労働制についての労働者の意識というものも調査をしておりまして、そういったものにつきましては労政審にもお出しをしているところでございます。

逢坂委員 委員長、質問に答えさせてください。

山越政府参考人 労働政策審議会では、労使からさまざまな観点から多角的な意見が出されたと承知をしておりますし、また、こういった裁量労働制について大臣がヒアリングされた中でも、こういったものについて詰めていくべきだという意見もお聞きしているところでございます。

逢坂委員 局長、何もこれ、あなたにここで考えて答弁してくれと言っているんじゃなくて、事実だけ言ってもらえばいいんですけれども。

 労政審の答申の中では、労働側から、裁量労働制については勤務時間が長くなる、そういう指摘も出ている、懸念も出ている、こういうのが答申に加えられているんじゃないですか。

山越政府参考人 労政審の答申の中で労働側の意見が付記されているのは、そのとおりかと思います。

逢坂委員 すなわち、労政審の中でもやはり裁量型労働については勤務時間が長くなるという指摘がされていた。

 それじゃ、それについて政府はどうやって反論をしたんですか。どうやってそれについて議論をしたんですか。

山越政府参考人 企画型裁量労働制でございますけれども、このみなし時間につきましては労使委員会で決定をされるところでございます。そうしたみなし時間が適正に決定されますよう、労働基準監督署としても指導していきたいと思います。

 また、長時間労働による健康障害を防止するために、今回の法改正案では健康確保措置の充実が盛り込まれているところでございます。

 あわせて、労働時間の客観的な把握も、これに伴って、省令を改正して行うこととしておりまして、そういった対策によりまして、企画型裁量労働制で働く方についても健康が確保されるように進めてまいりたいというふうに思います。

逢坂委員 局長、今おっしゃったのは、裁量型労働を導入した後に、どうやって勤務時間が長くなることを防止するかとか、長くなった場合にどういう対処をするか、そういう事後の話ですよね。

 そうじゃなくて、裁量型労働を導入するときに懸念がある、勤務時間が長くなるおそれがあるんだ、それに対してどういう反論をしているのかということを聞きたいんですよ。

山越政府参考人 お答え申し上げます。

 企画型裁量労働制の方につきましても、これは一般労働者と同じでございますけれども、さまざまに労働時間は分布しているわけでございまして、確かに長い方もおられるわけで、多いわけでございますけれども、短い方もおられるわけでございます。また、そうした分布というのは、一般労働者と重なり合う部分もあるところでございます。

 いずれにいたしましても、長時間労働による健康障害を防止するということが重要だというふうに考えておりますので、先ほど申しましたような対策を講じていきたいということでございます。

逢坂委員 それでは、局長、現場での議論ですから先ほどからずっと局長に聞いているんですが、労政審の中では、裁量型労働に対する懸念、勤務時間が長くなるんだということに対して、具体的な事実や具体的な数値をもって反論、あるいはそれについて議論をしたという経過はないという理解でよろしいですか。

山越政府参考人 この労政審の議論をするに当たりましては、JILPTの行いました調査については労政審に提出されているもの、それから、この調査的監督、労働時間の実態調査でございますけれども、その該当部分については提出をされているところでございます。

逢坂委員 局長、今の二つのその数値、調査、指導的監督も含めて、これはその中で裁量型労働の勤務時間の方が短いというデータがあるんですか、それでは。

山越政府参考人 お答え申し上げます。

 JILPTの調査の中に、勤務時間の状況というのは裁量制についてあるわけでございますけれども、その部分について労政審に出されているわけではございません。

逢坂委員 ちょっと、今の最後、よく聞こえなかったので、最後を明確に言ってください。もう一回答弁をお願いします。

山越政府参考人 お答え申し上げます。

 JILPTの行いました企画型裁量労働制についての労働時間の資料でございますけれども、これにつきましては、労働政策審議会に出されているというわけではございません。

逢坂委員 それじゃ、局長、何に基づいて裁量型労働がいいのか悪いのかという議論をしたんですか。何に基づいて議論をしたんですか。労働の実態も調査していない、仮に調査をしていても比較にならないような調査をしている、よその機関がやったデータもそれは労政審には出していない。何に基づいて議論をしたんですか。

 この話を聞く限りは、何か、とにかく裁量型労働を導入することが目的であって、その結果、勤務時間が長くなったっていいじゃないかというふうにしか思われないような議論に感ずるんですけれども、いかがですか。

山越政府参考人 健康確保措置についての状況でございますとか労働時間の把握の方法などについては、労政審にも資料を出しているところでございます。

逢坂委員 大臣、今のやりとりを聞いていただいて、大臣は労政審の議論の全ての期間において大臣ではなかったはずですから、おわかりにならない、把握していないところもあるかもしれませんが、少なくとも、今私が聞く限りは、比較してはならないデータを比較したということ、それから、調査的監督において、必ずしも定義が十分でない項目の調査、指導的監督を行ったのではないかということ、さらに、労政審の審議においては、裁量型労働が短いんだというデータ、これを示して議論をした実態はどうもないというふうに思われるんですが、大臣、今のやりとりを聞いて、どうお感じになりますか。私は、こういう不十分な状況の中で、裁量型労働、これを導入を決める、踏み切るというのは相当に無理筋だと思うんですが、いかがですか。

加藤国務大臣 まず、比較の話は、最初から申し上げているとおり、労政審においては比較できるような形のものにはなっていなかったということはもう委員おわかりのとおりだというふうに思います。

 それから、これは我々が調べていって、疑義で出している資料の中に、報告を、各企業から裁量制が始まったら半年ごとに報告を出していただくことになっております、これは企業からでありますけれども。その企業から出していただく報告、これは省令で様式は固まっておりますけれども、その中において平均的な時間、最長時間を書くことになっております。したがって、そこから転記すればいいと書いてあるのが実は疑義の中身であります。

 したがって、監督官であれば、こうした資料をもとに常に監督指導に当たっておりますから、この数字を転記すればいいということ、これはいわば監督官の世界ではそういうことだったんだろうというふうに思いますが、ただ、残念ながら本省の我々の方がこのことを十分知らなかったということで今回の経緯になったというふうに私は理解をさせていただいているところでございます。

 それから、裁量が短いという話でございますけれども、したがって、裁量が短いというようなデータをもちろん出していないということは事実であります。その中で、今回の裁量制と専門制について、時間の、一時間ごとにどうなっているのか、それからあと、みなし時間との関係はどうなっているのか、そういった観点からの議論はあったんだろうというふうに承知をしております。

逢坂委員 まず、調査の定義について、この間厚生労働省がこの委員会で明確に答えられなかったというのは、私は相当大きな失点だというふうに思います。これほど重要なことについて、認識が十分ではない。日本の働き方を変える、これは大きなポイントでありますし、今回の働き方改革の大きな柱です。そのある種出発点になると皆さん自身が言っている調査そのものについて把握をしていないというのは、これは相当大きく反省をしてもらわなければならないというふうに思います。

 それから、労政審の議論、私も、全てではありませんけれども、大急ぎでいろいろ見させていただきました。そうしたところ、本質的に、裁量労働制、これを導入することによって時間が長くなるのか短くなるかという議論は余りないように私には見受けられました。

 そうではなくて、導入をしたらこんなことが起こるであろうから時間管理をちゃんとしましょうとか、導入をしたら健康管理をちゃんとしましょうというようなことがあるわけで、導入が前提になっている、そう思わざるを得ないんですけれども、これはいかがでしょうか。

加藤国務大臣 それは、労政審、労働側、経営側の方がそれぞれ意見をおっしゃられた中でありますから、その方々がどういうところに論点を置いてお話しされたのかということなんだろうと思っております。政府において、これについて議論して、このテーマはありますけれども、こういうふうな視点から言ってくれとか言わないでくれとかというものではないだろうというふうに思います。その上で、最終的に答申を出したわけであります。

 その後、連合からの要請をいただいた中には、こうした関係の話は特にございませんでした。むしろ、業務を明確にしてくれということを強く要請されたという経緯がございます。

    〔田中(和)委員長代理退席、委員長着席〕

逢坂委員 改めて確認ですけれども、労政審では、それでは裁量型労働の方が勤務時間が短いといったデータをもとに議論した事実はないということ、大臣もそれはお認めになりますね。

加藤国務大臣 一般労働者と比べて裁量労働制の方が労働時間が短いということですね。

 済みません、一個一個の議論は見ておりませんけれども、それを裏づけるような資料は出していない、こういうふうに認識しています。

逢坂委員 そこで、もう一回局長にお伺いするんですけれども、今回の、二〇一五年ですか、皆さん方が言う労働時間の総合的調査なるもの、私にしてみると調査的監督ですか、このデータというのは、どこで、どの程度使われているんですか。どういうところへお出しになっているんですか、これは。

山越政府参考人 この実態調査の調査結果でございますけれども、労働政策審議会にお出しをしております。

逢坂委員 労働政策審議会で出している。

 それ以外で、国会答弁などでどの程度これを答弁されていますか。いつぐらいから答弁されていますか。

山越政府参考人 今、つまびらかにいつごろということはございませんけれども、これが最初に出されましたのは労働政策審議会に出されておりますので、時期とすればそれ以降ということかと思います。

逢坂委員 しつこいようですけれども、再確認です。

 それでは、今回のこの平成二十五年に実施した調査的監督、調査的監督によって得られた数値、これの信憑性については私はいろいろと疑義がありますけれども、少なくともこの調査的監督によって得られた数値からは裁量労働の方が一般の労働よりも勤務時間が短いということはうかがい知ることはできないということで、局長、いいですね。

山越政府参考人 この調査でございますけれども、一般の方と裁量労働制で異なる方法によって数値を出しておりますので、それを比較するということは適当ではないというふうに考えているところでございます。

逢坂委員 どうして皆さん、質問にきちんと答えないんですか。

 裁量労働の方が一般よりも短い、そういう事実をこの調査的監督からはうかがい知ることはできない、そういうことでよろしいですね。

山越政府参考人 この調査的監督でございますけれども、裁量労働、一般の労働者、異なる方法で数値を出しております。その比較をすることは適当でないわけでございますから、それを裏づけとしてやっていくということは適当ではないのではないかというふうに思います。

逢坂委員 適当でないということですから、そこから裁量労働が短いというデータもあるというのは全くの誤りであるというふうに私は指摘せざるを得ません。

 この間、新聞各紙を見ても、あたかも裁量労働が短いという実態があるかのような印象を国民全体に振りまいている。これは何としても、政府の責任において、その誤った印象を振りまいたものを修正していただきたい、そのことを強く申し上げて、質問を終わります。

 ありがとうございます。

河村委員長 これにて逢坂君の質疑は終了いたしました。

 次に、柚木道義君。

柚木委員 希望の党の柚木道義です。質疑の機会をいただきまして、ありがとうございます。

 冒頭、今の議論の続きから、加藤大臣、入らせていただければと思っておりまして、ちょっと通告も事細かにしておったんですが、その前にこの議論をせざるを得ません。

 まず、加藤大臣、私はちょっと、実際にこういう状況が今、現にしてある中で、やはり責任の所在を明確にせずしては、今後も同じことが繰り返されると思っております。そういう視点から、幾つか伺います。

 まず、私もけさ、厚生労働省の方から、なぜこの本来は比較すべきではないデータを使ってしまったのかという資料の説明を受けました。しかし、大臣からは、いや、後からこれを比較してしまったのは問題だけれども、労政審の段階ではそういったことはしていないから問題ないというようなことの御答弁も先ほどからあるんですが、私は全然違うと思いますよ。二重の意味で大問題だと思いますよ。

 まず一つは、後で比較したことも、これはもう既に大問題ですよ、責任問題ですよ。その前段、労政審にこういうデータを、後から使うんだったら、それを示した上で労政審で議論したものをここで議論しなかったら、まさに労政審の方々は何のためにおられるんですか。二重の意味で、先ほどの答弁は問題だと思いますよ。

 三年前からこういうデータが使われて、確かに私も、塩崎大臣がそういう答弁をされていたり、いろいろ記憶しております。であるならば、現在の厚生労働省のやはり監督責任者である加藤厚生労働大臣には、さまざまな管理監督責任が問われると言わざるを得ません。

 そのうちの一つとして、私は、こういったことがまず現に起こっている。そしてこの間、きょうは山越労基局長にもお越しいただいておりますが、さまざまな経緯が明らかになってきております、時系列で。この直近でも、二月一日以降の経緯、まさにこの数日間の議論は何だったんだという話も含めて、これは実際、大臣御自身の管理監督責任と、そしてやはり事務方も同様に管理監督責任、それぞれあると思いますが、それについて、やはり一定のけじめを検討されるお考えはありませんか。

加藤国務大臣 先ほど申し上げましたように、いろいろな事態が起きたことに対して、最終的な責任は全て私にあるというふうに思っております。

 その意味において、今回こうした事案が、私も認識をし、皆さん方の御指摘からいただきましたので、それを誠心誠意まずは精査をさせていただき、そしてその内容をきょうの理事会と、あるいは今のこうした委員会の中で御説明をさせていただき、そして最終的には、異なる形で選ばれたデータを比較したという意味において大変不適切であったということで、深くおわびを申し上げさせていただいているところでございます。

柚木委員 精査すべき段階はとうの昔に過ぎておりますし、おわびだけではやはり大臣、これは済まないと思うんですね。

 ここに臨むに当たりまして多くの委員の方々が、きょうも含めて、過労死家族会の方々、私も、きょうも先週も、あるいは、まさに寺西代表は何年も前から、厚生労働委員会にもお越しいただいて、こういう制度が導入されれば同じ悲劇が繰り返される、ふえるということをずっと言ってこられている中でのこのデータの捏造ですよ。

 これは資料にもおつけをしておりますが、それぞれ、きょう皆様のお手元の資料、ごらんをいただければと思います。

 私も高橋まつりさんのお母様のお話も直接伺って、そのときには山越局長がまさに御案内いただきましたよね。

 そして、そのほか、十七ページ目以降をごらんいただくと、この東京新聞、「裁量労働 募る不信」「制度乱用で過労、退社」「元編集業務の女性「人を使いつぶす恐れ」」があると。これは直接その方にきのうお話を伺ってまいりました。

 さらには、その次のページもごらんください。

 皆さんももう御存じかと思います。NHKの記者の方、結婚も決まっておられて。そして、きょうも、お母さん、本当に、唯一の望みは、娘が結婚が決まっていて、これから結婚したりお子さんが生まれたりすればますます忙しくなるから、その手伝いをすることだけが唯一の願いだった、希望だった。そんな中で、その直前に亡くなられて、火葬前に婚約者が、亡くなられている未和さんに指輪をはめられる。最後のメールは、パパありがとうと。こういう悲劇も起こっております。

 これらの皆様が一様におっしゃっているのは、まつりさんのお母様も、未和さんのお母さんも、元編集者の方も一様におっしゃっているのは、この裁量労働が導入されれば、同じような、娘の悲劇が、自分の悲劇が繰り返される、そして、裁量労働、自己管理なんというのはできない現実をもっと見てほしいと。

 そういうことを、本当に悲痛な叫びをおっしゃっている中で、今回、こういうデータの捏造が出てきているわけですから。これは、後で比較したのはもちろん問題だし、前に労政審にちゃんとこういうものも出さずに法案を出してこようとしていること、二重の意味で問題でございますので。後で比較したのは大問題、人の命にかかわる大問題なんです。

 ぜひ、やはりこれは、監督責任者である厚生労働大臣、あるいは、この間、三年間過去にさかのぼって、かかわっていた方々全て調査していただいて、いつの時点からこういうデータが出てくることになったのか、ちゃんと責任の所在がわかるように、ちゃんと調査をしてこの委員会に報告をしていただかないと、この先議論を進めるわけにいかないと思いますよ。

 大臣、御答弁ください。

加藤国務大臣 どこから使い始めたかということに関しては、平成二十七年の三月に当時の民主党に資料を提出させていただいた、これが最初だというふうに承知をしております。

柚木委員 その最初のデータは、誰がどのように指示をして出されたんですか。

加藤国務大臣 最初のを出したときには、これは民主党において、この裁量労働制を含めて、多分もう少し幅広い議論があったんだろうというふうに思いますけれども、さまざまな御指摘があり、特に、働く形態、例えば一般的な働き方あるいは裁量労働、多分裁量労働の中にも企画型と専門型があったのかもしれませんが、それぞれについて労働時間はどうなっているのか等々の議論があり、それ以外にもさまざまな御指摘を受けて、たしかその次の週にそれにお答えをするということで数十枚の、二十枚か三十枚の資料をお出しをさせていただいた。

 その資料の中に、今申し上げた裁量労働制の二つ、企画型と専門型、そして、本当は比較すべきではなかった一般労働者についてもそれを比較できるような形でお出しをさせていただいたというふうに承知をしております。

 で、済みません、個々には確認する必要があると思いますが、通常、厚労省の中においては、外部にお出しをするときには、少なくとも課長あるいは局長まで了解をとって出しているのではないかな、こういうふうに思います。

柚木委員 最後の御答弁、通常、課長、局長に了解をとってというふうに、今明確に御答弁いただきました。

 それについては、私は、ちゃんとやはり事実を確認していただいた上で、やはり責任の所在を明確にすべきだと思いますし、確認をしたのはいいですよ。誰が指示を出したんですか。誰が、この最初の時点、二十七年三月。

加藤国務大臣 済みません、ちょっと詳細は調べさせていただきたいと思いますけれども、その場に参画した者が、そういった資料をつくる必要があるということで、残念ながら不適切な形で比較をするような資料が作成され、そしてそれを、これは今申し上げた、これも確認いたしますけれども、通常であれば課長そして局長にこういう形で出しますよという了解を得た上で出しているんだろう、こういうふうに思いますが、済みません、個々については確認させていただきます。

柚木委員 今の確認しますという調査は、委員長、この間、この委員会でも先ほどの高井委員からもありましたけれども、本当に、三十人を超える方が質疑してきている。しかも、この後、まさにこの働き方改革の審議、時間をとってやるというふうなお話も聞いておりますから、その前段で出していただいて、やはり責任の所在が今回わからなければ、どんどんどんどんなし崩し的に前に進んでいって、これは人の命にかかわる問題ですから、ぜひ前段に、私たちがちゃんと理解できる状況で御報告いただくようにお取り計らいをお願いします。

河村委員長 理事会で協議をさせていただきます。

柚木委員 その上で、先ほど、逢坂委員からも、労政審は本当に何のためにあるんですか。大臣、私、最終日伺いましたよ。私が確認した限りでは、私と井坂さんが議員としてはあそこにいたと思います、連合側は、この点については全く納得もしていないし、大反対でしたよ。そのことを明言されておられました、文書も含めて。

 そういう中で、しかもデータが捏造されているという状況ですから、これは本当に、大臣、私は大臣は誠実な方だと信じていますので、そうであるならば、おわびするお気持ちがあるならば、人の命にかかわるデータの捏造ですから、ぜひ審議を労政審からやり直すこと、そして法案の撤回をぜひお願いします。

加藤国務大臣 これは先ほどから申し上げておりますように、労働政策審議会に出した資料、それはお手元に冊子として出しているものでございまして、特段そこの場において裁量労働制とそして一般の労働者について比較をするということはしていないわけでありますし、また、一日について、一般労働者についての資料もお出しをさせているわけではございません。また、当然それに基づく説明もしていないんだろうとこれは思います。

 したがって、今申し上げた個々のデータについては、それぞれ、これまで御説明したような形で調査したものをお示しをさせていただき、また、それ以外についてもさまざまな論点から御議論いただいた結果として、確かに、委員御指摘のように、今ちょっと正確なものを答申を持っていませんから言えませんが、労働側からは懸念が示されたということは承知をしておりますが、その上で、おおむね妥当というこの答申については皆さんが了解をされて出されているもの、こういうふうに認識をしております。

柚木委員 大臣、申しわけありませんけれども、その上でというのはないんですよ、もう今の段階で。既に、その後、このデータの捏造が明らかになって、これが明らかになっていれば、きょうもJILPTの上西教授からもお話を伺いましたけれども、こういうことが労政審の段階で比較対象になっていることがわかっていれば、全く違う議論になっているんですよ。ですから、もうその上でという議論はないんです。

 ぜひ、労政審で改めて審議をやり直しすること。そして、労働者本人が、自分たちがどういう状況なのか、ちゃんと回答しているデータがJILPTにはあるわけですから、それをちゃんと何で使ってもらえないんですか。ぜひ、労政審における検討のやり直しと、JILPTのデータ、労働者本人が答えている。事業者の皆さんは、それは事業者の皆さんのデータ、答えてもいいですよ、でも、せめて両方使ってくださいよ。そうじゃないと、フェアじゃないじゃないですか。ぜひ、労政審のやり直しと、そのデータを労働者本人が答えているものを使っていただくことを、ぜひ大臣、御判断ください。

加藤国務大臣 先ほど申し上げたのは、その上というのは、労働側から意見があったということの上で、全体として、おおむね妥当ということが出ているということを申し上げたということでございます。

 それから、先ほど何回も申し上げておりますが、労政審において、こちらが短い、裁量労働制の方が短いという議論を、私たち、資料を提出しているわけでもございませんし、したがって、いろいろな懸念として、みなし労働時間と比べて実労働時間が長いのではないかとか、そういったさまざまな議論をした上で、先ほど申し上げたような答申を頂戴しているわけでありますので、それを今踏まえて法案の作業を進めさせていただいている、こういうことであります。(柚木委員「データの利用、労働者のデータの利用をお願いします、JILPTのデータをぜひ」と呼ぶ)それは、どういう資料をどういうタイミングで出させていただくのかというのはあるんだろうと思います。

 私、ちょっとそこから細かいことでよくわかりませんけれども、特段、先ほど申し上げたように、私どもは長い、短いという議論はしておりませんから。したがって、その延長線上で、JILのデータも特に求められなかったのではないだろうかと推測しますが、ちょっと済みません、それは当時の人間に聞いていただいた方がより正確だろうと思います。

柚木委員 ぜひ、山越局長、この労政審において、本来であればJILPTの、局長の前に理事をされていたわけですからよく御存じだと思いますけれども、この働く皆さん御本人が答えていたデータがなぜ使われなかったんですか。これは明らかにアンフェアでしょう。事業主側を使うなと言いませんよ。両方のものを同じ机の上に並べずしてこの議論を前に進めるというのは、明らかにアンフェアだと思いますよ。

 何で使われなかったか、事実関係をお答えいただくことは可能ですか。

山越政府参考人 お答え申し上げます。

 労政審でこの裁量制が検討されていましたのは二十六年からだったと思いますので、当時、私は在籍しておりませんでしたので、その労政審でどういう資料がどういう理由で提出されたのか、されなかったかというのは、今直ちには答えられません。

柚木委員 これも重要な、委員長、本当にポイントですから。

 なぜ働く皆さんの答えたデータが使われなかったのか。そして、おおむね妥当じゃないですよ、本当に。こういうものがなぜ使われなかったかについてもちゃんと明らかにしていただかないと、これは本当に予算全体に絡む話ですからね、こういうことも含めたいろいろな予算が関連していますから、これもあわせて、今後の予算委員会の議論を進めるまでに、必ず、私たちがちゃんと理解できる形で報告をしていただくことを求めます。

河村委員長 さきの件とあわせて協議をさせていただきます。

柚木委員 それで、その上で、加藤大臣、先ほどの事実関係を精査していただいた上ででいいんですけれども、ぜひこれは労政審で私は審議をやり直していただきたいです。その暁には、ぜひ労働者本人の答えているデータもあわせて使っていただくことについては、その経緯を調べた上でで結構ですから、その上で、その経緯にのっとって、経緯によって、ちゃんと検討したいということぐらいはここでお答えいただけませんか。

加藤国務大臣 先ほどから御説明しているんですが、労政審において、この平成二十五年度のいわゆる調査、私どもの調査について、一般の労働者の方と裁量労働制の人の労働時間が長いとか短いとかという議論をしているわけではないというふうに思います、それは資料は提出しておりませんので。したがって、その関係もあって、今言ったJILのデータも出ていないんだろうと、これは推測でありますけれども、考えるわけであります。

 議論としてはいろいろな議論があると思います。裁量労働制になったらどうなるんだろうかという議論もあると思いますけれども、それらについても多面的な、特に、みなしの労働時間と実際の労働時間の比較等々においての御議論はなされたというふうに承知はしております。

柚木委員 厚生労働大臣、そういう御答弁のままこの議論が進むと、本当に労政審はもう要らないということになりますよ。

 今、こういう状況が起きているわけですから。当時は、それはそうですよ。こんなものを実際に出されて議論したら全く違う議論になっているということは、もうきょう何遍も議論になっているんです。それがなかった段階で、実際にここでこういう議論が行われる状況になっていることが問題だから差し戻してくださいということを言っているのであって。

 労働側のデータを使うことに何か不都合がおありですか。不都合が何かあるかのように聞こえてくるんですよ、そこまで何かなかなか答弁を、両方並べてくださいということだけ言っているんですから。誰か反対されるんですか。安倍総理とか、反対されるんですか。

 ぜひ、検討ぐらいしていただけませんか、同じテーブルに、今後、審議差戻し、その上で両方をテーブルに置くということを。お願いします。

加藤国務大臣 私どもも、JILにそういうデータがあって、JILのデータ、これは労働者の方にアンケート調査ですかで調査した結果でありますけれども、それを見ると、一般で働く方の平均の、これは平均の時間でありますけれども、裁量労働制で働く人よりも一般の方の方が短い、逆に言えば裁量制が長い、そういうデータがあることは十分に承知をしているところでございます。

 今、両方をという意味がちょっとよくわからないんですけれども、したがって、労政審においては、平均的にどっちが短い、長いという議論そのものに対して私どもがデータを提供したわけでもございませんし、そういった意味においてはJILのデータも提出されなかったんだろう、これはちょっと私の推測ではございますけれども。

柚木委員 この推測を調査していただいた上で、ぜひもう一度、大臣、これは本当にきっちりと御答弁いただきたいです。わかった上でで結構ですから。

 本当に、そういう捏造されたデータを、誰がどのように指示をしてこれが出されたのか、三年前以降の経緯を確認した上で、そして労働者側のデータが何で使われないのか、それも含めて、誰が、いつ、どういう形でそうなったのか、確認の上で、必要な責任の所在、けじめをつけていただきたい。

 その調査を踏まえてそういうことを検討することぐらい、ここで御答弁いただけませんか。

加藤国務大臣 先ほど、どういう経緯で出てきたのかということについては、しっかりと調べさせていただきたいというふうに思います。

 それからあと、さまざま、委員会から御指示いただけることに対しては、誠心誠意対応させていただきたいというふうに思います。

柚木委員 今の議論をさせていただいて、私は改めて本当に感じております。

 もちろん、加藤大臣が就任される前からの問題、山越労基局長が就任する前からの問題。しかし、三年前も当然、今の安倍政権であったわけですね。

 なぜ、こういうデータを捏造までする必要があったのか。何で、こういう比較すべきではないデータを比較してしまったのか。誰が指示をしたのかということもありますが、誰かのそんたくをしてこういうデータを出してきた。きょう私は、これ以降も、まさに前回も議論をさせていただいた準強姦罪の問題、あるいはモリカケ問題、スパコン問題、さまざまな通告をさせていただいておりますが、それらに全部共通するのは、それぞれの役所の方が、正直、安倍官邸の方を見てそんたくしてやっているからこういうことが起こっているんじゃないかという疑念がそれぞれの件で持たれているんですよ。

 この厚生労働省の件も、誰が指示したのか、今すぐ明確に答えられませんけれども、調査結果、もちろん示してもらいますよ。でも、安倍官邸を見て、そして、大臣以下、あるいは事務次官以下、あるいは局長以下、現場がこういうものを出してきた、こういうふうに見られても仕方がないですよ。

 加藤大臣、こういう見られ方に対してどういうふうにお考えになられますか。

加藤国務大臣 いずれにしても、選び方が異なるデータを、本来比較すべきでないものを比較した、このことは全く適切ではなかったということで、おわびを申し上げなければならないと思います。

 あと、柚木委員の御指摘でありますけれども、最初にお出しをさせていただいたデータ、これは表になって出させていただいているんですけれども、もちろん、並べたことは不適切でありました。

 そこにはもちろん平均的な時間も書いてあり、その平均的な時間を見ると、一般と比べて、逆に言えば裁量制と比べて一般労働者の方が長いということが記されております。もちろん、その時間も、実は法定労働時間を超える労働時間に八時間を足したという形でつくったデータであることも、これまで御指摘いただいたとおりでございます。

 ただ、その上で申し上げると、その表を見ると、平均時間のところにマークがついているというよりは、一定の時間よりも短い人がどれだけいるか、一定の時間より長い人がどれだけいるかというところが囲みで強調されている資料でございました。

 その資料を見ると、一定時間より短く働いている人の割合は、一般労働者の方が多い。そして、一定時間より長い方は、裁量労働制の方が多い。こういう表に、そこだけ見ると、そこの部分が強調して書かれているわけでありまして、その表を見る限りでありますけれども、そこからすぐに裁量労働制の方が一般労働者よりも短いんだということを強調したものではないのではないかというふうには思いますけれども、いずれにしても、その点も含めて、どういう経緯で提出されたかについてはしっかり調べさせていただきたいと思います。

柚木委員 強調したものでないものを強調するために使うことはなお問題ですよ、大臣。今の答弁は撤回された方がいいと思いますよ。

 私、ちょっとこのほかの通告もあって、最後に時間が残ればこの問題にもう少し戻りたいんですが、この項目、一問だけ最後に聞いておきます。

 これは通告していますけれども、大臣、この制度、仮に、私はもう撤回すべきだと思いますよ、だけれども、この法案がもし通っちゃったら、働く皆さんの残業時間、どれだけ減るのか、そして企業の残業代はどれだけ減るのか。通告していますから、端的に御答弁いただけますか。

加藤国務大臣 裁量労働制そのものは、委員御指摘のように、自律的な働き方ができるような形で進めていくということでございまして、もちろん、それらを通じて長時間労働の是正を図っていくということは大事だと思いますけれども、一義的には、自律的に働ける状況をつくっていくということでございます。

 具体的に、個々においてどれだけ残業時間が減るのか、あるいはふえるのか、それは個々のケースによるんだろうというふうに思います。それを一義的に、しかもマクロ的に申し上げるのは難しいというふうに思います。

柚木委員 これは、今大臣は実は正直に言われたんですよ。

 わからないんですよ、個々によるということは、実は定量的には。調査できないんです、そんなものは。

 しかし、残業代自体は、これは大和総研も出しているように、これは上限規制だけで、月上限、八兆五千億減る、こういうデータが出ているんですよね。これにあわせて定額働かせ放題が導入されたらもっと減りますよ、当然残業代は。

 しかし、働く皆さんの残業時間が減るかどうかは全くわからない。いや、むしろふえるかもしれないんです。これは誰のための働き方改革なんですか。

 ぜひ、残業代自体が減るのはわかっている、しかし、残業時間は減るどころかふえるという、まさにそれを、逆の、捏造したデータでそうじゃないということまで言おうとしていて、そっちが明らかにならない中でこの議論は当然前に進めない、そのこともあわせて申し添えた上で、ちょっと次の議論に参ります。

 前回も質問をさせていただきましたが、この「総理」という本を書かれたジャーナリストの方、この方と安倍総理が、私、この本を何回も読みましたけれども、山に登ったりゴルフに興じたり、いや、もっと言えば、解散するときのスピーチを聞いてもらったり、きょうは麻生副総理もおいでですけれども、人事を麻生副総理から安倍総理に届けるメッセンジャーの役をされたり、もうそれは誰がどう考えたって、一番記者以上でも以下でもないということは、わかるにもかかわらず、いや、番記者以上でも以下でもないとおっしゃった。

 ところが、これは資料の二ページ目、小川和久さんのツイッターをごらんください。

 これは、実は私も驚きました。皆さんもよく御存じかと思います、軍事評論家の小川和久さんのツイッターです。私の質疑後すぐに、その当日ですよ、ここに書かれている、「あのY記者は安倍さんと最も親しいジャーナリスト。仲人も安倍さんなのだ(笑)。」、この五年以上も前のツイートを私の質問の直後に削除しているんですよ。そして、その理由をわざわざ、ネットが大炎上して、会員、千円払ったら会員になれるんですよ、その人たちだけに言いわけをしているんですよ。

 その言いわけもすごい言いわけなんですよ。そもそも、この削除したことは、安倍総理に迷惑がかかるからと。つまり、認めているんですね、自分が書かれているこの事実関係については。しかも、こういうふうに答弁すればよかったとかいうようなことまで書かれて。

 こういうことが実際起こっていて、これはわかりませんけれども、近々、仲人をされて安倍総理がスピーチをされた、私もその現場に行かれた方々から複数証言をいただいております、スピーチをされた写真まで出てくるというような話も聞いておりますけれども、何でこういう虚偽の答弁をする必要があったんでしょうか。

 親しいなら親しいとおっしゃればよかったと思います。その理由として、やはり私は、この準強姦罪のもみ消し疑惑、近い記者がそういう疑いをかけられている、あるいは、まさにもみ消している当事者として、総理官邸、権力に近い方であれば犯罪までもみ消されるんじゃないかと海外のさまざまなメディアも書いている、国内でも報じているメディアがあります、そういうふうに見られたくないが上にそういう答弁をされたのではないかと疑ってしまう、こういうことをされると。そういうふうに思うわけであります。

 きょうは、国家公安委員長、お越しですね。前回は私の質問を遮って答弁されましたけれども、きょうはちゃんと答えてください。

 今回、この伊藤詩織さんを被害者とする準強姦、もみ消し疑惑と報道されていますけれども、きょう、中村格当時の執行停止命令を出された警視庁刑事局長、おいでですか。

 所管の質問もしているんですよ。都道府県警、広域にまたがるものに関して、過去、総括審議官が答弁しているから、二問。性犯罪の処分事案、懲戒の。あと、まさに性犯罪の対策として、性暴力被害に関する警察官の知識に関する取組の強化、前回安倍総理にも答えていただいた。これは都道府県を本当にまたぐものですから、過去にもこの種の答弁は総括審議官がしているんですよ。来られていますか。

 何で逃げるんですか。これは第二の佐川さんじゃないですか。当事者じゃないとわからないことだから、今の所管は違うかもしれないけれども、なおかつ今の所管に適する質問までしているのに、何で来ていないんですか。

 しかも、詩織さんが、きょうまさに被害者連絡制度についても議論しますけれども、なぜ起訴、あるいはなぜ不起訴だったのか、説明を受ける権利もある。そして、その説明を求めて詩織さんが直接中村格さんに二度にわたって問いかけたら、全力疾走で走って車に乗り込んで、逃げるように立ち去られた。何でそんなことが起こるんですか。

 それこそ、被害者支援のきょうさまざまな議論もお伝えしていますよ。そういった連絡制度、そういうことに鑑みても、私は不適切な対応だと思いますよ。

 こういう、当日に、逮捕執行寸前に、しかも、所轄の高輪署から、裁判所が必要だと認めて逮捕状を発付している、その当日に本庁の刑事部長が執行停止命令を出した事例、過去に幾つあるんですか、国家公安委員長。

小此木国務大臣 お尋ねのことについては、警察庁において具体的な件数等は把握はしておりません。

 逮捕権につきましては、人の体の自由を拘束するものであります。人権に直接関係することから、慎重かつ適正に運用されるものだと私は認識をしています。

 逮捕状を取得している場合においても、証拠の証明力等を十分に吟味をした上で、逮捕が相当でないと判断されるときなどあります。相当であるとき、不相当であるとき、これも判断をするときがあろうかと思います。逮捕状を執行せずに任意捜査することは、捜査を進める中で通常あるものと承知をしています。

柚木委員 そんなことは百も承知しているんですよ。

 私は、この事例、まさに性犯罪で、しかも所轄の事案を逮捕の当日に、しかも本庁の刑事部長が執行停止命令をかけた事案、これは調べたらすぐわかりますよ。こういう本当に前例なき事案が、私が前例がないと何度も申し上げているのは、そういったものは幾ら探しても出てこないし、皆さんとのやりとりの中でも出てこないんですよ。だからそれを調べてくださいと言っているんです。

 一般的にそういうことがあるのは私も承知していますよ。こういう同じような前例があるかないか、ちゃんと一言で答えてください。

小此木国務大臣 御指摘の事案について、警視庁において、これは何度も申し上げておりますが、法と証拠に基づいて必要な捜査を遂げた上で、関係書類及び証拠物を東京地方検察庁に送致しています。検察庁における捜査も経て、不起訴処分になったものと承知をしています。その後、検察審査会においても、所要の審査の上、不起訴相当の議決がなされたものと承知をしています。

 こうした経緯に鑑み、警察においてはそのような調査を行うことは考えていないということも承知しております。

柚木委員 その前提が全て覆る疑念があるから、超党派の議連で今週も何度も警察庁を始めお越しいただいて、これは、立法府というのは、もちろん三権分立ですよ、だけれども、三権分立というのは、まさに行政監視機能、参議院は強化するんでしょう。まさに、行政監視を行うということは、我々立法府の責務でもあるんです。

 警察捜査過程あるいは検察審査会の中のブラックボックス化、事細かにこの間も委員会でもやってきました。そういったプロセスの中で公正な捜査、処分が行われていない疑念が高いから、あえてこうして議論させてもらっているんです。

 しかも、私も今回、きょうは再捜査の必要性についてもぜひ提案させてもらいたいんですよ。

 過去にそういった事例はもちろんございます。

 もう二十一年前、片山隼君、八歳、小学校登校途中、青信号を渡っているところをダンプカーに巻き込まれ、頭が潰れて即死です。世田谷で起こりました。そのとき、所轄は不起訴でしたよ、検察。だけれども、その不起訴であったことの理由も知らせない。そういう対応も含めて、当時、法務委員会で現職の法務大臣が謝罪までされて、再捜査をして、不起訴を取り消して、そして実刑判決ですよ。

 あるいは、警察事案についてもありますよ。それは、東京高検に被害者の隼君の両親が何度も何度も、署名活動、二十一万人集まって、要請、申し入れもした。いろんな経緯がありました。当時、委員会でもやりとりがありました。しかし、同じような事案は警察案件でもあるんです。それぞれ調べました。

 ですから、今回、異例の執行停止命令だけじゃなくて、高輪署が逮捕状までとっているのを中村格当時の刑事部長が執行停止命令を出すのに、高輪署の、いわゆるこれは一件記録というんですね、調査記録、全く精査されていない、高輪署にあったままで。しかも、決め手と言われている防犯カメラすら見ていない。こういう中で、では一体何に基づいて逮捕の中止命令を出したんですか。

 国家公安委員長、こういうようなことで本当に、この前例なき逮捕の中止命令、疑念を持たれないと自信を持って言えますか、最高の責任者の立場として。

小此木国務大臣 性犯罪そのものは憎むべきものだと私も思っております。こんなことがあってはならないと思っています。

 柚木委員がたびたびこうしてこの件について質問されることは、これは国会議員としても一人の人間としても正当なものだと思っておりますが、何度も重ねて申し上げますように、警察とすれば、これは法と証拠に基づいて、法というのは現実にあるもの、そして証拠は捜査の中でいろいろかき集めてくるもの、その証拠も、正しいかどうかというものを確認しながら検察に送致をしている。検察において不起訴になっている。そして、不起訴が本当に正しいものであったのかどうかということを検察審査会において、これは不起訴が相当だということが、一般論としてもこれはあるわけであります。

 今、過去の例も挙げられましたけれども、警察においては、私が今申し上げたような過程の中で、さまざまな捜査から始まって、そして、その過程の中で検察あるいは検察審査会、そういったものが、今、でっち上げだとかもみ消しとか言われましたけれども、そういったことも確認するためにそういう制度が成り立っているんだと私は承知をしております。

柚木委員 そうじゃないんですよ、国家公安委員長。検察審査会自体も、本当に議事録、詳細をごらんいただければ、いかにブラックボックスであるかという、この件だけじゃなくて。

 私は、もみ消しもでっち上げもだめだと両方言っているんですよ。ですから、どちらになってもいけないんです。もちろん、冤罪になっても真犯人が捕まらなくても。

 その上で、残念ながら過去にそういう事例はやっぱりあるわけですよ、警察事案についても。だから、性犯罪の、これは内々の処分も一番多いじゃないですか、懲戒で。そういうことをわかっているから、答弁してほしいと思って中村格さんを呼んだのに、来ていないじゃないですか。

 そういうこともあるし、そして、この検察審査会においても、検察審査員、当然、こういう案件だから男女比重要、男性の方が多い。あるいは、平均年齢高目。そして、まさにくじ引きソフトの疑念。さらには、当事者の意見陳述権、あるいは、審査補助員として入る中立の弁護士さん、こういったことがどれも満たされていなくて、おまけに、出てきた資料は真っ黒黒塗りですよ。

 ですから、こういうことも含めて私は、再捜査だけじゃなくて、再審査が必要だぐらいに思っているんですよ、これは制度上はないけれども。

 なぜそこまで言うかというと、先ほどの片山隼君の事例も、検察審査会は不起訴相当にしているんですよ。それでも実際には、業務上過失致死、懲役二年、執行猶予四年、実刑判決ですよ。これは、まさに当時の東京高検が東京地検に対して、一度不起訴にしたものを再捜査を命じたんです。

 ちなみに、今、その隼君のことが起こって以降、被害者等の通知制度というのができているんです。そして、警察においても同様に、被害者連絡制度というのもできている。これは、まさに被害者の立場に立って、そして、もちろん逮捕されたというのは報道されますからね、なぜ逮捕されなかったのか、不起訴だったのか、これは一生しょって生きていくんですよ。

 理由を知らされなかったり、四日前に、ドイツに仕事に行っているのに、逮捕するから帰ってきてくれと。ここにおられる方は、警察からそう言われたら、誰もが一〇〇%疑わずに信じて帰ってきますよね。ところが直前に、その当日ですよ、目の前をこの方が通り過ぎた、逮捕できませんでした、上から中止命令が出ました、我々全員捜査から離れますと。

 その後、高輪署から捜査一課に移して、防犯カメラも見ずに中止命令を出しておいて、そして、重要な、ホテルに行く前の運転手さんの証言、再聴取していないじゃないですか、本庁に移って。何でそんなことが認められるんですか。

 そして、私は実際、現場のホテルへも行きました。薬物投入の疑いがあると言われる店にも行きました。この方の証言と食い違っていることは多々ありますよ。

 そういうことも含めて、ぜひ、被害者連絡制度、こういったものはあります。

 詩織さん側が、今、防犯カメラについては民事で開示請求をしていますよ、裁判所に、見れるように。それも含めて、近々そういうものが見れる可能性もあります。仮に、新たな証拠、新たな証言、そういったものが出てきたときに、例えば、検察にそういう申入れを詩織さん側がした場合に、検察がそれを認めれば、警察に対して、これは刑事訴訟法上、指揮権があるわけです、個別の。命令が下される可能性もあるんです。そういう正当な手続がもし行われた場合には、警察としては、当然、それに基づいてちゃんと再捜査をしていただけるという認識で、これは一般論で結構ですから、よろしいですか。

小此木国務大臣 仮定のことには答えることはなかなかできませんけれども、正当な手続、こういったものが法治国家、社会にはあろうかと思いますから、そういったことにのっとって行われるべきものであると判断いたします。

柚木委員 これは三月六日だったと思いますね、次の民事訴訟は。防犯カメラの開示請求がどうなるかも含めて、我々超党派議連としても、これはわかりませんよ、真実は、結果が出なければ。だけれども、疑念が持たれていること、世界じゅうから、これは事実です。

 ですから、そういう疑念を払拭する意味においても、私は、今言われたように、正当なプロセスを経てそういう状況に至ればしっかりと再捜査をしていただいて、我が国の警察、検察はちゃんと捜査しているんだということを逆にちゃんと示していただきたい、そのことをこの段階ではお願いをして、次の質疑に入りたいと思います。

 先週の金曜日、これは財務大臣に伺います、初めての確定申告でした。私も財務省前に、これは納税者一揆という形で全国十一カ所で行われたと聞いております、行ってまいりました。

 もちろん、納税は国民の義務ですよ。だけれども、国民は、納税したくないと言っているんじゃないんですよ、納めるなら気持ちよく納めたいんです。

 そして、そういう状況が今起こっている中で、きょうも佐川長官に、先週金曜日に、それぞれ野党の議員の皆さんが、こういう状況について説明を求める、見解を問いたいと行ったら、門前払いというか会ってもらえなくて、その理由を伺うと、要は、まさに確定申告初日で、それぞれの税務署を回っている、そういうことだと聞きましたもので、じゃ、まさに財務大臣が、いろいろな納税者からの反発も想定されるので、そういうことに十分対応を考えておかなきゃいかぬという答弁までされていたから、実態はどうだったのか、そしてそれに対してどういう対応をとっているのか、そのことをきょうここで答弁してくださいと佐川長官にお願いをしたら、来ているんですか、きょう。国税庁長官として、そういう所管の答弁は、過去にも来られていますよ、長官は。所管の答弁にも来られていないんでしょう。

 こういう所管の答弁にも来られない国税庁長官に対して、これは財務大臣として指導されるべきだと思いませんか。

麻生国務大臣 国税庁長官のこの場への出席に関しましては、これまでたびたびお答えを申し上げておりますとおりなので、重ねて申し上げるようで恐縮ですけれども、これは国会でお決めになる話、これが第一点です。

 それから、もう一点の点につきましては、これは、我々としては、これまでの佐川の、国税庁の次長や大阪国税局長として徴税の分野における経験とか、また主税局の審議官等々、税制の企画立案の経験が極めて豊富であることに加えまして、多種多様な課題の解決にかかわってきた人物でもありますので、私どもとしては、国税庁長官として適任だと判断をいたしたということであります。

柚木委員 適任だと皆さんが判断されていても、国民の皆さんが適任だと判断していると、これは財務大臣、自信を持ってこの場でお答えいただくことができると思われますか。

麻生国務大臣 いろいろ御意見はあろうかと思いますけれども、私どもとしては適任だと判断をいたしております。

柚木委員 フジテレビの調査でも、八五%が国会で説明責任を求める、他も同様の傾向ですよね。そういう方々の声は、じゃ、無視されるということですか、財務大臣。

麻生国務大臣 たびたび答弁をさせていただいておるとおりであります。

柚木委員 済みません、無視されるおつもりですかということについて、たびたびじゃなくて、もう一遍、御自分の言葉で。私は初めて伺っておりますので。

麻生国務大臣 たびたびというのは、時間も限られておられるようなので、答弁を短くというつもりで今のような答弁をさせていただきましたが、佐川につきましては、国民の声、いろいろあろうかと思いますけれども、私どもとしては、こういった国民を無視するというのではなくて、私どもの判断として、佐川は長官としての仕事をきちんと今執行いたしておると思っております。

柚木委員 私も、国税の関係者あるいは税理士さん、この金曜日以降、週末も含めて、いろいろお話を伺っていますよ。これは本当に、その全てのしわ寄せが現場に来ているんですよ。

 財務大臣、ぜひ、そういう現場の状況も踏まえて、今何か、混乱は生じていないという認識をされているという紙を渡されたのかもしれませんけれども、私、全国で十一カ所、財務省の前でも、あれは千人ぐらいおられたんじゃないですか。大変な、一般の方々が、本当に子供さん連れもおられましたよ。(発言する者あり)何でそういう、一般じゃないというやじを飛ばされるんですか。一般の方も来られていますよ、本当だったらオリンピックを見たいけれども、それは録画しておいて後で見れるからと。そういうことも含めてここで言っておかないと。

 全国十一カ所で納税者一揆が起こっている、そのこと自体の責任を財務大臣としてお感じになられませんか。

麻生国務大臣 私どもとしては、少なくとも、その現場で見ましたのは、昨日でしたか、国税庁の前で、いわゆる、先ほど、何でしたっけね、市民団体によるものだということでしたけれども、街宣車まで持っておる市民団体というのは珍しいなと思いながら先ほど伺いましたけれども。街宣車というのが出ていたような、ちょっと見ただけなので、確実に写真まで出せと言われても、写真を出しているわけじゃありませんので、そこまでやったわけじゃありませんが、何となく、そういうものが出ているというのは少々普通じゃないなとは思いましたけれども。

 私どもといたしましては、徴税というのは、国民の納税として粛々と果たされている方も大勢おられるという事実だと思っております。

柚木委員 今の財務大臣の発言、私はちょっと看過できませんよ。少々普通じゃないってどういう意味ですか。

 私も一緒にそこに参加してきましたよ。そしてこういう、国民の財産をお友達に横流しするなとか、さまざまな、皆さん本当に、声を上げられておられましたよ、これは十二ページ目。こういうデモ、納税者一揆に参加されている方は普通じゃない方なんですか、財務大臣。

麻生国務大臣 言葉尻をとられていろいろ言われるのは、お好きなのかもしれませんけれども、私どもとしては、大勢の方々が、十一カ所だけを言われましたけれども、全国二千何カ所でやっておりますので、そういったところにおいて多くの混乱が生じたという報告を受けているわけではありません。それがまず第一点です。

 それから、そういった方々がおられるということ、私、それを見ましたから。夕方通りましたので、見ていないわけではありませんけれども、我々としては、大勢の方々というのには、全国二千カ所に及ぶところにおいて、今言われたような、財務省の前で起きたような混乱が起きたというふうには聞いておりません。

柚木委員 これは、ぜひやはり佐川長官に、国民の声に応えるという意味においては、普通の方々が声を上げていますので、ぜひそういう普通の方々に対してこの場で説明責任を果たしていただくことを改めて念押しをして、引き続き財務大臣に、ペジーコンピューティングの問題も含めて、きょう文科大臣、経産大臣もお越しいただいておりますが、残りの時間、答弁をお願いいたします。

 これは、資料の三、年表四、五、それから九、十、十一とそれぞれお示しをしておりまして、この問題は、私は、このペジーの元社長、三件について今起訴されていて、そして、それも問題ですけれども、一番問題なのは、まだ問題が残っているということなんですね。

 JSTの五十二億円、午前中、この前段も質疑があったと思うんですけれども、これは、過去にまさに前例なき、上限額も、そして審査プロセスも、そういったことが起こっている中で、実際に五十二億円の交付が決まるまでの年表もつけておりますけれども、これは理事会で役員の方が反対もされていると聞いているんですよ。

 ですから、そういう不透明な審査過程を明らかにしていただかないと、国民の税金ですから、国民は到底納得できないと思うので、ぜひ、林文科大臣、このJST理事会の議事録を公開していただきたい。そうじゃないと、これは補助金適正化法違反の疑念も持たれている案件だと思いますので、ぜひお願いします。

林国務大臣 お答えを申し上げます。

 エクサスケーラー社の採択に当たってのJSTの理事会議の議事録に関しては、既に法令に基づきまして開示をしているというふうに承知をしております。

 JSTの当該理事会議では、評価委員会における審議内容に関する質問、確認が行われましたが、理事会議としては、評価委員会の審議内容には異論はなく、採択課題とすることが可となった、こういうふうに聞いております。

柚木委員 これは、今度、木曜日にもそういうヒアリングがありますから、それまでにもう少し時間もありますので、ぜひ省内でも御検討いただいて、やはり反対もされている理事も含めてどういう議論があったのかというのがわからないと公正性が担保できませんから、それをぜひ大臣からも御指示をいただいて、木曜日の日にも、もっとちゃんとした資料を持ってきていただくようにお願いしたいと思うんですね。

 これは、まさにそのペジー社関連会社に今回の五十二億円、エクサ社ですね、交付が決まる前の七月の段階、麻生財務大臣・副総理が実際に理研、ペジーコンピューティング関連の会社のコンピューターが使われているということで視察に行かれたときの写真です。

 麻生大臣、済みません、理事会でお許しをいただいたので。これはツイッターから、フェイスブックからとったものです。

 このYさん、元記者の方です、これは準強姦罪の問題でも取り上げた方です。その方が、これは、済みません、顔が隠れていない方は、一人は安倍昭恵さんの実の弟さんです。それで、もう一人は、参議院選挙で二度自民党から立候補されている方です。そこにこういう形で、これは場所はどこかというと、UZUという場所です。これは昭恵さんが経営されているということですよね。

 そういう場所でよく一緒になって、私、いろいろ、いろいろな方から取材をさせていただきましたらば、昭恵さんもこの場にそれは入られますよね、自分の店ですから。そういうこともあるし、時には安倍総理もいらっしゃる、こういうお話も聞いております。

 そういう中で、麻生副総理、実は麻生副総理御自身も、まさにこの帯にも出ておりますけれども、それこそ見方に、人によっては、総理以上に麻生副総理とも親しいんじゃないかというような、そういうことをおっしゃられる向きもあります。この著者の方と、それからペジーコンピューティングの今逮捕されている斉藤さんですね、よく一緒に夜飲みに行かれたり、そういうようなことも含めて報道されておりますが、この山口さん、あるいは斉藤さんと、関係性、あるいは飲みに行かれたりするという関係が事実かどうか、お答えをいただければ幸いです。

麻生国務大臣 この斉藤さんという方は、たしかシンギュラリティという本だったかな、何かすごい本でしたよ。読ませていただいて、あんな厚い本は余り読むことはないんですけれども。

 これはちょっと、少なくとも、自動車が空冷から水冷に変わるときの話も昔読んで、すごい興味があったので、あれぐらいこれはすごいことだなと思っておりましたので、その意味でこの本に関して興味があったので、私は、ぜひ現場を見てみたいなと思って。少なくとも、丸ビルぐらいでかいものが電気洗濯機五台の大きさになって、百五十ペタ超えますなんて話は、とてもじゃないけれども私の頭ではついていけませんでしたので、現場を見せてもらいたいなということで、見せていただきたいという話をしたのがそもそもの最初だったと記憶します。

柚木委員 飲みに行かれる関係だったという点についても、事実であれば御答弁いただけませんか。飲みに一緒に行かれる関係でいらっしゃいますか。

麻生国務大臣 最初に説明してきたところがそこだったというのかな。そんなところだと思います。その後何回ということは記憶にありません。

柚木委員 六本木の、店の名前は出しませんけれども、そういったところで懇親をされたり、時には記者さんも同席をされたり、そういう証言もいろいろなところからいただいておりますが、今、行ったことがあるということはお認めになりました。

 実は、このYさん、この記者の方は、まさにこのJSTの五十二億円、決まるプロセスの中で、きょう経産大臣もお越しいただいているんですけれども、最後の五つ、この間いろいろ説明をいただいた最後の案件についても含めて、いろいろな形で、ペジー社の顧問として、きょう、顧問の名刺もおつけをしております。十一ページ目をごらんください。

 実際、私もペジー社に行って確認をしてまいりましたけれども、この現住所のところに実際にペジー社はもちろんあって、そして、この顧問という形で営業されて、そのときに、先ほどの「総理」という本を出して営業されて、自分は安倍さん、麻生さんとセットできる、もっと言うと、昭恵さんならもっと早くセットできるというようなことまで営業でされて、この年表を見ていただくと、これは本当にペジーありき、かつて加計ありきとかいろいろな話がありました、ペジーありきと言わざるを得ない状況が見てとれます。

 つまり、先ほどの、麻生大臣が視察をされて、JSTの公募が始まるのが十月なのに、八月の段階で文科省がもうこのペジー社、関係のエクサ社に予算をつけるというようなことを言っている。そして、このYさんがそういった営業もされている。そして、そのときにこういうふうにおっしゃっているんですね、官邸が了解しているんだから早く進めてくれと。

 官邸が了解しているんだから早く進めてくれ、この言葉、どこかで聞いた言葉じゃないですか。まさに、モリ、カケ、スパ問題と言われるのは、そういう背景が共通で、そんたくをされて今回も前例なき五十二億円が支給をされているんじゃないか。そして、まさに麻生副総理御自身が国会答弁の中でもわざわざ言及を、聞かれてもいないのにペジー社のことをされる。そういうことも含めて、文科省あるいは経産省がそんたくをされてこういうことが起こっているという見られ方があります。

 きょうの質疑については、私は一貫して、こういうそんたくという構図が行政、税金の私物化につながっているんじゃないかということを申し上げてまいりました。この点について、そんたくが働いているという見方があるんですけれども、御自身の言動も含めて、その点について、逮捕もされています、幾分かでの反省なり、そういうお考えはございませんか。

麻生国務大臣 これは、予算の執行は文部省ですかね、予算の執行の話だと思いますので、執行のことに関しましては担当の大臣に伺われた方がよろしいかと存じますが。

柚木委員 終了なのでもう終わりますけれども、それはもちろん所管のそれぞれのプロセスもさっきお願いしました。しかし、その予算を最終的につけるときに、財務省が合意しなければ予算もつきませんし、その責任者である財務大臣である麻生副総理のさまざまな言動が、今回、前例なき五十二億円の支給につながっているという見方があることについて見解を求めたんですよ。

 そのことについて、実際逮捕もされている方ですよ、ちょっとやり過ぎだったとか、あるいは、そんたくがあったとしたらそれは正しいことじゃないとか、何か一言ぐらい感想をいただけませんか、こういうことが現実に起こっているんですから。

麻生国務大臣 少なくとも、このコンピューターは、省エネ電力世界一というのに二年連続たしかなったすさまじいコンピューターだと思いますので。私ども政府としては、これは極めて大きなプロジェクトの一つだと思ってはおります、結果が出ていますので。

 そういった意味で、執行のことに関しましては、私どもは担当しているわけではありませんので所管の大臣に伺われるというのがよろしいかと思いますが、少なくとも、こういったものができてくるというのは、国のためにとりまして大きな結果を出しているという点もそんたくをさせていただかにゃいかぬところだ、私どもとしてはそう思いますが、今申し上げたように、どうそんたくされたかということに関しては、私どものところから、どうかと言われても、お答えのしようがありません。

柚木委員 最後、十ページ目に朝日の見方が書いています。これで捜査が終結ということであっては、これは本当にお手盛り捜査と言われても仕方がないという見方がありますので、しっかり捜査もいただくこともあわせてお願い申し上げまして、質疑を終わります。

 ありがとうございました。

河村委員長 これにて柚木君の質疑は終了いたしました。

 次に、井出庸生君。

井出委員 希望の党、信州長野の井出庸生です。

 私からも、まず加藤大臣に、裁量労働制の件について伺います。

 結論的な私の今率直な思いを申し上げますと、加藤大臣が今果たさなければいけない職責というのは、まず、提出予定の、二月の二十七日に閣議決定とも言われておりますが、その法案から、裁量労働制度の部分についてはまず提出をしない、見送っていただく。その上で、これまでの労政審、それから国会の議論もそうですが、その中で政府がいかに裁量労働制について誤った認識を披露してきたのか、そういうことも含めて議論を全力でやり直すというのであれば、加藤大臣の立派な職責だと思います。

 そうでなくて、このまま二十七日に予定どおり法案を提出されるというのであれば、それは到底厚生労働大臣の職責にあらず。この三年間、少なくとも国会において答弁が出てきている。私は、これは大変危機的な状況だと思っております。

 御自身の責任がかかっているという、そうした危機感がおありかどうか、まず答弁を伺います。

加藤国務大臣 今委員からの御指摘をいただきました今回のデータについて、精査が必要なデータを使い、また、選び方が異なるものを比較して、それで御説明をさせていただいた、このことは全く不適当、不適切であったというふうに思いますし、この点に対しては深く深くおわびを申し上げたいと思います。

 その上で、労働政策審議会を含めての議論を見る中で、本件の資料をこうした比較するような形で出したものでもございませんし、また、さまざまな観点から労働政策審議会で御議論をいただき、もちろん労働側からはいろいろ御異論もある中で、最終的にはおおむね妥当ということで御答申もいただいたわけでございますので、今はそれにのっとりまして法案の作成の作業を進めさせていただいている、こういう状況でございます。

井出委員 全く危機感の認識に大きな隔たりがある。

 まず、国会の答弁なんですが、精査の必要があるデータに基づいて答弁をしていたので撤回をする、精査をした結果、データは不適切であったと。そうであるならば、総理や歴代厚生労働大臣がされてきた、裁量労働制の方が一般の労働者よりも平均的な時間が短い、そういうデータもある、その事実も撤回をして、一般の労働者より裁量労働制が時間が短くなるというようなデータはない、そこまではっきり修正を、そうした意識で修正をしていただきたいと思いますが、その点についていかがですか。

加藤国務大臣 今のお話、先ほど申し上げましたように、私どもの説明してきたことについては、精査に時間を要するものであって、そして、精査した結果において、異なる選び方で選ばれたデータを比較した、そういった意味では不適切であり、それは撤回をさせていただき、また、おわびを申し上げるということでございます。

 ただ、その上で、この議論そのものは、そうした議論ももちろん国会の中であったのは事実でありますけれども、労働政策審議会を中心にもっとさまざまな観点に立って御議論をいただいて、そして先ほど申し上げたような御答申もいただいて、今それにのっとって法案の作成作業を進めさせていただいている、こういうことでございます。

井出委員 はっきりさせていただきたいんですが、答弁は誤り、虚偽、裁量労働制の方が一般の労働者より時間が短いということはない、そういうことも明言していただけるんですか。そういう認識はないですか。

加藤国務大臣 一つは、いわゆるJILのデータがございます。これは実際に働いている方にアンケート調査をしてつくられたデータでございまして、そのデータにおいては、一般で働く方と裁量労働制で働く方についての平均の時間を比較すれば一般の方の方が裁量労働制よりも短い、一般の方の方が短いというデータがあることは、そのとおりでございます。

井出委員 JILにそうしたデータがあるということはこれまで何度も議論をしてまいりましたが、私が伺っているのは政府の認識であります。

 裁量労働制の方が一般の労働者より労働時間が短い、そうした認識を今も持っているのか、また、そうしたデータをではこれからも探すのか、それともまたつくるんですか。政府の根本的な認識を伺っております。

加藤国務大臣 今申し上げた、平均として比べればそういうことでありますけれども、同じJILのデータを見ても、一定の時間で区切って比較をすれば、その時間よりも短い範囲で働いている人の割合について、一定程度裁量労働制の方もおられるわけでありますから、それを比較すれば、裁量労働制の人は直ちに長いとか長くないということは必ずしも言えないんだろうというふうに思います。

井出委員 御家族が過労死をされた方ですとか、裁量労働制が労働者にとって危険であるということを訴えている方はたくさんいらっしゃいます。しかし、労政審の審議などを見ていても、裁量労働制がいいと評価をしている、そうした声というのはいずれも経営者、事業者を通じた調査から出てきているのではないか。労働者の方がみずから実名、お名前、お顔を出されて、裁量労働制はすばらしい、そうした声は、私は少なくとも承知をしておりません。

 その点で、裁量労働制は時間を区切ればいい面もあるというようなお話をされましたが、政府のその認識は、労働者直接の聞き取りではなくて、事業者とか経営者に聞いて、経営者がいいと言っているからそう言っているにすぎない。根本的に認識が間違っていると思います。そこを改めていかなきゃいけないと思いますが、それを改めるお気持ちはございますか。

加藤国務大臣 今お話をさせていただいたのはJILのデータでありますけれども、労働時間の分布を見ると、企画業務型裁量労働制は、月の労働時間の平均が二百時間未満、残業に換算すると約二十三時間未満の割合が企画裁量型でも五五・二%ということでありまして、もちろん通常の労働時間制の場合は六七・四%でありますけれども、逆に、その時間を超える方も一般的な働き方である方には三〇%ぐらいおられるということでありますから、それは個々個々の企業等において、裁量労働制を採用する場合あるいは一般でやる場合、それはまちまちなんだろうということを申し上げさせていただいたということでございます。

井出委員 会議での説明ですとか委員会の答弁ではなくて、大臣御自身がここで一度、労働者、過労死で御家族を失った御遺族、そうした方の声を直接聞いてみた方がいいと思いますが、いかがですか。

加藤国務大臣 私も先般そうしたシンポジウムにも参加をさせていただいて、そうした子供さんを亡くされた方の御家族の声も直接聞かせていただいたこともございます。

 それから、他方で、実際の裁量労働制でやっている中で、こうした働き方をすることによって、めり張りをつける形で仕事がやれるようになった、子育てに対する時間がとれるようになった、あるいは調子が悪いときに病院に行けるようになった、そういったメリットを主張されている方もおられたということでありますから、問題は、やはりそうした裁量労働制は自律的に仕事ができるというメリット、これはしっかり生かしていく必要があると思います。

 しかし、他方においてこれを悪用したり適正に運用していない事例もあるのは事実でありますから、それをしっかりと我々は監督指導等を通じて是正を図っていかなければならない、こう思っております。

井出委員 きょう理事会に提出されました資料を、追加で資料でお配りしておりますが、平成二十五年の調査に用いた調査事項、調査票ですね。もうるる議論されてきておりますが、一般労働者については、一日の時間外労働の最長時間、これを最長の者と平均的な者で聞いている。それに対して、裁量労働制は、専門型と企画型に聞く対象を分け、それから、最長の者の状況と把握した時間のうち平均的な者の状況と。

 きょうの答弁を聞いておりますと、裁量型の労働者について、時間を、どういうことを聞いたのかにわかに精査ができていなかったと。それで、精査をした結果こういうことがわかったので、不適切、撤回という話であったんですが、労政審の分科会の第百三回、二〇一三年九月二十七日になるんですが、この部分について、政府の方からきちっと説明をしている。専門業務型裁量労働制でございますが、ここで言う最長の者というのは、一日の平均時間が最長の方の最長の日、それが十二時間三十八分、平均的な者の平均値の方は九時間二十分、そういう説明をされているんですが、裁量労働制の方に対してこの調査票の聞き方が精査されていなかったというのは、私は全くの偽りであると。この二〇一三年の労政審の答弁の中できちっと説明をされている、この紙のとおりの説明をされていると思うんですよ。

 これは、きのうきょう、ことしの今月に入ってわかった話ではなくて、もう労政審の分科会が始まったときから、調査の対象と、調査にどういう時間をとって、どういう時間を答えてもらったかというのはこの議事録を見れば明らかだと思いますが、違いますか。

加藤国務大臣 済みません。今の議事録、今おっしゃられたので、ちょっと私は物を持っていないので、間違っていたら御指摘をいただきたいんですが、今御指摘があったのは、裁量労働制の最長の人には最長の時間をということで、そしてそうでない平均的な者の状況ということを書いているだけでありますから、ここに書いたことをそのまま読み上げているのではないでしょうか。

 私どもが言っているのは、一般の方についてどういう選び方をしたのと比較してそこが判然としなかったということで精査をさせていただいたということでございますから、今のお話は、あくまでも裁量労働制の中の者をどういう人をとったんですかということにおいて、最長の者をとったり平均の者をとった、そういう説明だったのではないかと。

 済みません。ちょっと空で聞きましたので、私の認識の違いがあれば御指摘いただきたいと思います。

井出委員 私が伺っているのは、きょう発表されて、冒頭に、先ほど別の方の質疑で大臣が読み上げられた部分なんですが、裁量労働者については、一日の労働時間をどのように選ぶのか、記載がなかったと。その点について精査をした結果、また、一日で見て最も多くの労働者が属すると思われる労働時間の層に含まれる労働者の労働時間を記入することとなったと。

 労政審の最初の分科会、これは最初の回なのかな。議論が始まったときの分科会、百三回だったと思いますが、このことをこの答弁は説明しているんじゃないんですか。

加藤国務大臣 このことをこの答弁が説明しているという意味は、先ほど申し上げたような、裁量労働制における最長の者は最長の人をとっている、平均的な者は平均だという説明というふうに私には聞こえたんですが、もし差し支えなければ、もう一度読み上げていただければと思います。

井出委員 労政審では、その上で、専門業務型裁量労働制(最長の者及び平均的な者)でございますが、ここで言う最長の者というのは、一日の平均時間が最長の方の最長の日、それが十二時間三十八分、平均的な者の平均値の方は九時間二十分と。それから、また次のページに企画型についても説明をされているんですが、そのことと、このきょう御説明になられたことというのは違いがあるんですか。

加藤国務大臣 今、ですから、労政審の今のお話の中では、平均的な者についてはそれ以上何も触れていないというふうに私には聞こえたのでありますけれども、したがって、そこが判然としなかったということで精査をさせていただいた、こういうことでございます。

井出委員 この労政審の説明は、政府の方が冒頭に、労働時間の状況で違和感を持たれる委員もいらっしゃるかもしれませんが、星印にも書いていますようにということで説明が始まっているんですね。

 このことについて説明をしたものではないという今お話がございましたが、きょうのやりとりを聞いていて、比較は間違いだった、一般労働者の一日のもの、データ自体は間違いではない、調査自体は一般労働者の一日の超過勤務時間を調べて八時間に足した、それはデータとしてはれっきとしたデータである、その認識はまだ変わっていないですか。

加藤国務大臣 基本的に、御報告させていただきましたけれども、長時間の中には明らかに誤記ではないかと思われるものが三件でしたかありましたけれども、それらを除けば、基本的に、監督官がその事業所を訪れて、そして聞き取ったデータについてまとめたものであるということであります。

井出委員 この一般労働者の一日の労働時間を調査したものが多少の誤記はあるけれども正しいというのであれば、なぜ労政審に提出をしなかったのか。

 ここの議事録にも書いてありますが、労働時間の状況で違和感を持たれている委員もいらっしゃるかもしれないと、ここは、裁量労働型はみなし労働時間が一日単位だから、それを月でとるとか年でとるとかというよりは、基本的な単位は一日なんですよというような説明をその後されているんですが、労政審に、一般労働者の一日時間の調査、これは正しいと政府が今も思われているんだったら、最初から出しておけばもっと議論が深まったんじゃないかと思うんですが、なぜ出さなかったのか。

加藤国務大臣 この調査においては、御指摘のように、一般労働者の平均的な者及び最長の者について、日、週、月、年の法定労働時間をそれぞれ選んで集計しているわけでありますけれども、実は、今回調べた、いろいろなことを調べているんですけれども、これは全てそこに取りまとめているわけではありません。やはり労働時間についての監督指導を行う。これは、監督指導のためにも使うとともに、労政審での議論に必要と考えられるものを調査結果として取りまとめ提出したということでありまして、特に制度改正の議論に資すると考え得るものを重点的に掲載させていただいた、こういうふうに思います。

井出委員 この一般労働者の一日当たりの調査というものが正しいというのであれば、まさにこれこそが一番必要だったんじゃないのか。比較がふさわしくないということも当然説明しなきゃいけないですけれども、その数字を示すことは、なぜ労政審で数字を示さなくて、その後になって示したかというところはどうしても疑念が拭えない。

 それから、もう一つ労政審について伺いたいんですが、労政審では、この調査について、実労働時間を調査するということをきちっと労政審で配付した資料の中で説明をされている。それも九月の同じ二十七日なんです。

 ここまでの議論を聞いてきますと、裁量労働者については実労働時間を調べたのかもしれない。しかし、一般の労働者の方については、そもそもデータも出していないし、調査自体も超過勤務時間を調べたにすぎないし、実労働時間を調査しました、この説明自体ももはや誤っていた、そう言わざるを得ないと思いますが、いかがですか。

加藤国務大臣 済みません。それは労政審での説明ですか。

 ちょっと済みません。ちょっと前後がよくわからないのであれですけれども、少なくとも、実態で調べさせていただいたのは、法定時間外の労働時間を調べさせていただいたということでございます。

井出委員 九月二十七日の配付資料は、まず、この分科会でやる論点案を出されているわけですね。それから、労働時間法制に関する閣議決定というものも委員に示している。その上でもう一つ、この平成二十五年度の総合実態調査について一枚紙を配られて、「主な調査項目」の中に実労働時間数、そういう記載が二回出てくるんですね。

 実際、一般の労働者についてはそのような調査が、ここまでの議論を聞いていると、されていない。そうであるならば、そもそも、どなたかおっしゃっていましたけれども、この調査が出発点だというようなことをお話しされて、実労働時間数を調査している、この資料に明示をされている、その中身が今大きく揺らいでしまっている、そういうことじゃないですか。

加藤国務大臣 この実態調査結果の中には、法定外の労働時間という書き方で掲載させていただいているところでございます。

 労政審のその資料そのものは、私、ちょっと今手元にないので具体的にコメントできないんですけれども、少なくともそうした実労働時間ということで、あとどういう資料が出ているのか、ちょっと申しわけないんですが、急なことなので、何ともお答えできません。

井出委員 私が事前に聞いている限りでは、その部分についてお示しした資料と説明が違っていたという話も聞いておりますが、委員会の審議の中でしっかりと議事録を残していただくことも大事だと思いますので、早急に確認をしていただきたいと思います。

 それから、もう一つなんですが、先ほどの調査票ですね。その調査票の中で、一般の労働者につきましては、一日の時間外労働の最長時間数、一週の時間外労働の最長時間数、それから月間の時間外労働、年間の時間外労働。それから、裁量労働制については、最長とか云々という話はない。一日のデータについては労政審で議論をしていない。しかしながら、一週間については多少の議論があったやに記憶をしておりますが、一週間の時間外労働の調査も、一般については最長の時間数をとっている。

 厳密に言えば、いや、厳密に言わなくても、明らかに裁量労働制の数字とは今回と同じで比較にならない、そういうことを、やはりこの調査を出発点にするんだったら、事前に説明する、そもそも調査事項、調査票というものを示してそういうことを示さなきゃいけなかった。出発点になぜそういう丁寧な説明がなかったのか、伺いたいと思います。

加藤国務大臣 ちょっと、委員会の中で具体的にどういう資料をどういうふうに出したかまで全部私は承知していないのでありますけれども、今お配りいただいたこの表だと、これは一遍に両方出ているような形でありますけれども、多分、一般の労働者は一般の労働者の資料として、そしてその議論に対して、そして裁量労働制は裁量労働制に対する議論としてそれぞれが資料が提出されたというふうに思いますので、したがって、もともと比較するものではなかった。それを残念ながら私どもが比較をしてしまったというところにおいてはこれは不適切でありますけれども、もともと別のものである。

 したがって、一週間の数字と一日の数字を比較するというのは本来ないわけですね、一日と一週間を比較できないわけでありますから。したがって、それぞれ別々で、裁量労働制は裁量労働制、一般労働者については一般労働者について、それぞれ状況の説明が資料をもってなされたのではないかというふうに思います。

井出委員 その単位が違うので比較がしにくい、比較ができない、そういう御趣旨であろうかと思いますが、調査の説明、質問の問い、そのことをきちっと労政審の場で最初の段階で説明をする、そうであれば、比較できないものであっても、別個の数字として議論をしてもいい。調査をこういう問いでやりました、そういうことをきちっと説明しないで、労政審のときからも、比較のしにくいものだ、そして、ほかの、時間外の支払いはどうなっているんだとか、そうした論点にその後議論が移っていったりしているんですが、この時間の部分が議論が深まらなかったのは、やはり調査票の調査のQ、問いをきちっと説明しなかったことに原因があると私は思っております。

 そういう点では、労政審の議論もスタートからつまずいていた、私はそう言わざるを得ませんが、いかがですか。

加藤国務大臣 先ほどから申し上げていますように、労政審で、一般で働く方とそして裁量制について、例えば一日についてどうなっているのかとか比較をするということで出した資料ではもともとありません。それぞれが別々で議論されていたということでありますので、多分、一般の方は長時間労働是正をどうするかという議論の資料になっていたんだろうと思いますし、裁量労働制は裁量労働制の実態ということで出された資料ということで、もともとが別の形で使われる資料であった、それを私どもが手違いにおいて比較をしてしまったということ、これは不適切だったと思います。

井出委員 比較をしたのは労政審の後ですね、国会の審議の中で。その前、データを別々のものとして出しているにしても、一般の労働者の一週間の時間外労働数というものは最長時間数を聞いているという説明はなかったと思うんです。この調査票と労政審の説明は、私は説明が違っていたと思うんですけれども、その点はいかがですか。

加藤国務大臣 済みません。そこまで労政審の方がどういう認識だったかということを私はここで申し上げることはできません。ただ、平成十七年度も同じような調査をし、同じような議論もしていただいているわけであります。

 そして、議論のポイントは、長時間労働というものをどう捉えるかということでこっちの資料は出してきた、そういった議論であったというふうに思いますし、裁量労働制は裁量労働制として、これと例えばみなし時間とを比較するとか、そういった観点で議論がなされたのではないかな、こういうふうに思いますので、もともと別の観点といいますか、それぞれが別、調査としては同時に実施したものでありますけれども、それぞれがそうした観点、それぞれ異なる議論において使われていたということだと思います。

井出委員 労政審に参加されていたメンバーの認識ではなくて、別々のデータとして扱うべきだとしてデータをそれぞれ出してあったとしても、一般の労働者の一週間当たりの時間外労働は最長を聞いているという説明はなかった、我々は、きょうこの調査票を見て初めてこの事実が明らかになった、そう思っているんですが、そこは違いますか。

加藤国務大臣 済みません。具体的に労政審の場でこの数字に対してどういう説明をしたのか、ちょっと承知をしておりません。

井出委員 私が、ほかの党の議員も聞いておりますが、聞いている限りでは、この部分は説明がされていなかったというふうに伺っております。

 一般労働者の一週の時間外労働の説明のあり方、それから、最初に申し上げました実労働時間というものをきちっと、実労働時間を調べますという調査の資料を示して、果たして使われているそのデータがそれにふさわしかったのか。この点は、我々は今、きょうまでの議論を重ねてきて、明確にそこはスタートでつまずいたと思っておりますので、そこは至急確認をいただきたいですし、このことは、委員長におかれましても、改めて、労政審のスタートが正しかったかどうかの極めて重要なところですので、今後の審議の中でまた我々も取り上げていきますが、そのことにおいて議論をきちっと進めていただけるように取り計らいをお願いしたいと思います。

河村委員長 理事会で協議をさせていただきます。

井出委員 それから、裁量労働制について、この二十五年の調査も、事業者の方に聞き取りをされているんだと思います。それから、これからまた何かその自主点検が始まっているのか、やっているのかというようなことも聞いておりますが、裁量労働制が機能しているかどうかというものを直接労働者に聞くような調査をどうしてしないのか。労働者の声を直接政府が把握する、それも、企業に対して、労働者が企業に気を使って答えをしなくてもいいようにきちっとプライバシーを確保する、そういう調査があって初めてこの裁量労働制の実態というものが出て、議論がスタートすると思いますが、労働者に直接裁量労働制について調査をするという意思があるのかないのか、伺います。

加藤国務大臣 労働者に直接ということにおいては、JILPTの調査が御承知のようにあるわけでありまして、それでは、裁量労働制が適用されている方のうち、満足、やや満足と答えた方が七六・四%いるという数字、これはJILPTのデータにも出ているわけであります。

 私どもは、先ほど申し上げたこの調査は監督指導も兼ねてさせていただいておりますから、当然、事業所に入って、実際それがどう運用されているのか、どうなっているのかということをしっかりチェックしていくということで実施をしたものでありまして、そういった形で実施をした結果のデータが、お示しをさせていただいたデータであります。

 したがって、個々についてということでありますけれども、我々は、そういった面については、事業所に入った中で、日々の監督指導の中で、それがどう行われているのか、裁量労働制がどう運用されているのかということを調べるに当たっては、結果的には個々の方についての実態もあわせて見ているということになるわけであります。

井出委員 私の問題意識としては、裁量労働制に反対をされている労働者の方は、これまでも申し上げてきましたが、実際に文書も公になっているものもありますし、実際そういう活動をされている方もいます。だけれども、裁量労働制がいい、そういうことを公にしているという労働者の方は残念ながら見たことはない、アンケート結果はそういうものがあるかもしれませんが。

 裁量労働制、前回の質疑のときに少し自分の会社員時代の話をしましたが、給料は多少上がるわけですよね。給料は一般の労働者より違うわけですよね。少し多目に払いますよね。その裁量労働制をやってみて、でも、結果としてよかったと言っている人は、私の勤めは七、八年でしたけれども、私は自分の周りでは見たことが、聞いたことがなかったんですね。

 政府はそういう実態を根本から把握していただかないと、私は、裁量労働制についての認識を上っ面しかなめていないんじゃないか、そう思います。いかがですか。

加藤国務大臣 ですから、先ほど私も、実際、裁量労働制で働いている方の声も聞かせていただきました。それから、先ほど、JILPTのデータも、満足、やや満足という方もそれだけの数字がおられるということを申し上げさせていただきました。

 ただ、他方においてやはり満足ではないという方もいらっしゃるのは事実でありますし、また、実際、労働基準監督署が現場に行った中で適切に運用されていないケースも決して少なくないわけでありますから、やはりそういったケースについてはしっかりと是正をさせていくというのは当然だというふうに思いますけれども、ただ他方で、自律的な働き方をしたい、そういった希望がある方もいらっしゃるわけでありますから、そういった希望を持つ方に対してそうした働き方ができるようにしていくということも大事なことではないかな、こういうふうに思います。

井出委員 この問題の最後に伺いますが、前回の質問で指摘しました平成二十七年七月の塩崎当時の大臣の答弁、それから平成二十九年二月十七日の塩崎当時の大臣の答弁もきちっと撤回をしていただくということでよろしいですか。

加藤国務大臣 あのときも申し上げたんですけれども、私自身の答弁であれば私自身が撤回するということは当然のことだと思うんですけれども、そうでない方の答弁まで私が撤回できるかどうかという問題はあるんだろうと思いますが、ただ、申し上げたように、そこで使っていたデータについては、比較すべきでないものを比較して不適切であったということは塩崎大臣の答弁においても言えるというふうに思います。

井出委員 政府の答弁でありますから、大臣が、当時の大臣と現大臣と、発言者個人としての違いはありますが、同じデータに基づいて厚生労働省が作成した答弁でありますから、撤回と言っていただくのが筋だと思いますが、違いますか。

加藤国務大臣 先ほど申し上げたところを前提としながら、私どもが今回撤回をさせていただいたその効果は当然さきの答弁にも及ぶものだ、こう思います。

井出委員 きょうの議論ですと、撤回だけではまだ不十分であって、私としては、裁量労働制の方が時間が短いこともある、その答弁の趣旨自体はきょうの議論では撤回に至っていないかと思いますが、そうですよね、時間帯で区切ればいろいろあるというお話がありましたので。そこは引き続き議論をしてまいりたいと思いますし、労政審が果たして本当に出発点でつまずきがなかったかどうか、その部分も引き続き議論をさせていただきたいというふうに思っております。

 次のテーマに入りたいと思います。ジャパンライフの問題を伺いたいと思います。

 前回少し質疑ができなかった部分でありますが、江崎大臣に伺います。

 この問題で、多くの官僚がその会社に天下っていた、お世話になっていた。消費者庁課長補佐の方、これは、事実自体は一月三十日にお認めになっているかと思うんですが、そのほかにも、経済企画庁長官の秘書官だった方が顧問をされている。それから、当時の内閣府国民生活局長、これは当時の消費者行政の重要な部分を担う組織だったと思いますが、その方もこの会社に就職をしている。

 それから、これは事実関係として報道で出ていることなので伺いますが、元警察官僚の方も、京都府警の本部長などを務められた方と報道されていますが、その方もこの会社にお世話になっているという報道がございますが、今申し上げたところの事実関係をお願いいたします。

江崎国務大臣 井出議員にお答えいたします。

 報道は、私も承知して、何度も目を通させていただきました。

 既に退職して十年以上経過しているかと思うんですが、そのために個人的な見解は差し控えたいんですが、私自身思いますことは、先ほど名前を挙げられた方は、それぞれ名をなした人たちですね。こうした人たちがこのジャパンライフの顧問として名を連ねるということは、まさに広告塔のような役割。特にこうした方たちは、やはりその会社がどんな状態の会社かといったことを熟知しながら、顧問を受けるなら受けるべきであったのではなかろうか、そうした気持ちを強く持っております。

井出委員 強く持っておるのであれば、役所として、大臣として対処していただきたいと思います。

 先日の大西委員との質疑でもそうですし、あと、この問題が発覚した昨年の十二月、大臣の記者会見の中で、そうした天下りがこの被害拡大を助長した、そういうことは全くないと確信を持って言えるというような趣旨のことを御発言されていますが、今の答弁だと、何か全然違う、全く逆のことをきょうはお話しになっているのかなと思います。

 記者会見で、こうした天下りが被害拡大を助長したということは全くないとおっしゃっていたその根拠は何なんですか。

江崎国務大臣 ただいまは顧問の話についてでありますが、先回、大西議員からの御質問は、課長補佐、こちらの問題になって、その件に関して、私は、行政処分とかそうしたものが四回にわたりましたが、消費者庁としては、この課長補佐からいろいろアプローチがあったのではなかろうか、一切それはないということを重ねて申し上げます。

井出委員 確信をしているというのは、それは確信するのは自由なんですけれども、だったらその根拠を示していただきたい。

江崎国務大臣 井出議員、業務命令、停止等の不利益処分を行うに当たっては、法と証拠に基づいて法違反行為の有無を慎重に検討する必要があります。事案の内容等に応じて、行政処分までに要する期間は一定ではないのであります。特に本件は、消費者庁にとって初の預託法処分事案であること、さまざまな取引が複雑に絡み合った事実であることなどから、特に慎重な調査を行ったということであります。

 いずれにしろ、消費者庁において適正な調査を行い、収集した証拠に基づいて法違反事実を厳正に認定した上で、可能な限り迅速な行政処分を行ったものであります。

井出委員 慎重な捜査をされた中に課長補佐がいらっしゃったということも当然念頭にあると思うんですけれども、そこは全く違う、全く関係ないと言うのであれば、その根拠、その理由、そこが今の答弁だと説明がないと思うんですが、御説明いただけますか。

江崎国務大臣 お答えします。

 先ほどの顧問の件と課長補佐の件とは全く切り離しておりますし、十年前後を経過しておるんですね、顧問の人たち。そうした人たちがどのような影響を及ぼしたかとかそうしたことは、私どもも決してわかるものではありません。(発言する者あり)広告塔は、確かに業者さんがそれは利用したんでしょう。そういったことです。

井出委員 済みません。消費者契約法が、今国会で改正が予定をされている。消費者契約法というものは当然今回のようなものを防いでいかなければいけないと思うんですが、広告塔に使われたかもしれないけれども我々はちょっとわからないよというのでは、その法改正をしようという政府の姿勢と大臣の答弁は全く逆の方を向いてしまっているというか、大臣は今回の法改正についてどういう思いを持っているのか、ちょっと聞いておきたいと思います。

江崎国務大臣 法改正に当たっては、それぞれ、消費者と事業者との間に、有している特に情報の質、量や交渉力に格差があります。そして、消費者契約法は、このような構造的な格差に鑑み、消費者と事業者との間の契約について民法の規定の特則となる包括的な民事ルールを定めた法律であります。事業者の不当な勧誘行為によって消費者が誤認、困惑した場合等について契約を取り消すことができるということであります。消費者の利益を不当に害する契約条項全体の一部を無効とすることもできるような法改正になっております。

井出委員 今回の、まあ、提出予定であると聞いておりますから、まだ提出はされていないんですが、事前に説明を伺っている範囲では、平成三十年の改正で、消費者契約に関する消費者と事業者の交渉力等の格差に鑑み、消費者契約に関する被害事例等を踏まえ対応すると。

 この被害事例等を踏まえ対応するというところは、まさにこの問題、しかも、顧問が広告塔に勝手に使われたのか、顧問になるぐらいですから、ある程度含みはお互いあってのことではないかと思いますが、そうしたことを十年前であろうと何であろうと徹底的に調査をして、そうしたことを許さないようにしていくのが大臣のお役目じゃないですか。

江崎国務大臣 法改正のときには、そうしたことも十分、私ども、対応できるような改正に持っていくということであります。

井出委員 ジャパンライフの問題は、昔の話だなということもあろうかと思いますが、法改正でその被害事例等というような言葉も入るのであれば、徹底的にこの問題を検証して、まだジャパンライフにその顧問の方がいるのであればそうしたところも少し対処を考えなきゃいけないと思いますし、この問題を大臣御自身の力で掘り下げていこうというおつもりはございますか。

江崎国務大臣 これを消費者庁としてどこまで詰めることができるか、これが捜査の段階に入っているかどうか、これははっきり私どもは承知しませんが、絶えず連携をとりながら、こうした問題が起こらないように、今後、消費者庁としても対処してまいります。

井出委員 今後じゃなくて、この問題にしっかりと向き合っていただきたい。その気があるのかないのかだけ、最後、もう一度お願いします。

江崎国務大臣 井出議員の御期待に応えて、私どもも、消費者庁でできることは消費者庁でできる、そうした決意を持ってこれからも臨んでまいります。

井出委員 期待とかぶせられても困るんですが、私のきょうの思いは余り伝わっていないと思いますので、また取り上げさせていただきたいと思います。

 本日はありがとうございました。

河村委員長 これにて井出君の質疑は終了いたしました。

    ―――――――――――――

河村委員長 この際、お諮りいたします。

 三案審査のため、本日、政府参考人として防衛省大臣官房長高橋憲一君、防衛省防衛政策局長前田哲君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

河村委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

河村委員長 次に、渡辺周君。

渡辺(周)委員 希望の党の渡辺でございます。

 二十七分間という与えられた時間の中で質問をさせていただきます。

 ただいま官房長官が席を外されているということで、ちょっと質問の順番を入れかえさせていただきます。

 まず最初に、小野寺防衛大臣に、今般の佐賀県におけるヘリコプターの墜落の事故につきましてまず伺いますが、佐賀県の目達原駐屯地を立ったヘリコプターが墜落をして、とうとい二人の人命がなくなり、また、民家に落ちるという、最近では例のないような非常に痛ましい事故でございました。亡くなった方には、心から御冥福をお祈りしたいと思います。

 というのは、私も、防衛省で副大臣をしておりましたときに、やはり現役の隊員が不慮の事故で亡くなりまして、そのお通夜に参列をしたことがございますが、残された御家族の思いを、若くして父親を、息子を失った無念さを思うときに、やはりそこは胸に迫るものがございました。もう二度とこのようなことがあってはならないという思いでございます。

 ここで、やはりゆゆしき問題は、新品だと我々も説明を聞いていたことが実は中古品であったといったことでございまして、ぜひその点について、なぜこういう間違った説明がまずされたのか。

 何よりも、今回、さまざまな聞き取り調査が行われるということでございますけれども、富士重工であるとか、あるいは富士重工がボーイングにライセンス生産を受けていたということでございますので、こうしたメーカーから、なぜこのようなことになったのかと。あの映像を見る限りでは、これは操縦ミスというものよりも、やはり、最も心臓部のメーンローターが破損をしたことによって、鉄の塊がそのまま、回避行動をとるまでもなく落ちてしまったというような、あの映像を見る限りはそのような印象を受けるわけであります。

 その点について、今どのように進んでいて、そして、第三者の目を通して、ボーイングや富士重工やあるいは防衛省の、陸上自衛隊の中、陸幕の中だけで結論を出すんじゃなくて、やはり外部の目も入れるべきだ、そして、透明度を高めて、しっかりとした報告を速やかにするべきだと思いますが、現在の防衛省の取組につきまして、大臣の答弁を求めます。

小野寺国務大臣 まず、委員からは、亡くなった二名の隊員に対しての丁寧なお言葉、改めて感謝を申し上げます。二度とこのようなことがないよう、しっかり対応してまいります。

 まず初めに、メーンローターヘッドについての情報についてのお話がございました。

 事故機に使用されておりましたメーンローターヘッドは、新品であったとされておりましたが、その後の調査の結果、過去に他のAH64Dの機体において使用されていた実績があり、製造メーカーにより整備済みとして納品された部品であったことが判明をしております。

 今般の誤りは、事故の初動対応において、さまざまな情報が錯綜する中で、確認不十分な情報をもとに陸幕長が回答してしまったものでありますが、国民の皆さんへの迅速かつ正確な情報提供という基本にのっとり、引き続き適切な対応に努めてまいります。

 他方で、他の機体において使用されていた実績がある整備済みの部品を使用すること自体は、一般的に行われている適正な部品の使用であり、問題はないと考えております。

 防衛省としては、引き続き、事故の原因究明と再発防止に全力で取り組んでまいります。

 また、委員から御指摘がありました、事故調査に第三者が関与すべきではないかという内容であります。

 防衛省としては、今回の事故につきまして、今月五日、陸上自衛隊に航空事故調査委員会を設置いたしました。当委員会は、現在、陸幕副長を委員長に、人事教育、運用・訓練、指揮通信システム、衛生といった、自衛隊におけるさまざまな専門的な知見を有する者から構成をされております。

 今般の事故調査においては、ヘリコプターの製造や整備に詳しいメーカーの知見を得ることはもとより、委員御指摘のように、民間の航空工学等の有識者の専門的、技術的知見を取り入れることも、幅広い観点から事故原因等を分析、検討する上で有意義だと考えております。有識者等の具体的な人選や参加形態については現在検討中でありますが、あらゆる知見を活用して、徹底的な原因究明に全力を挙げてまいりたいと思っております。

渡辺(周)委員 ぜひ透明度を高めて、何か内輪だけで解決をした、よくあるのは、こういう調査報告を求めると、国会が終わったころにそうっと答えが出てきて、何か国民の関心がちょっと色あせてきたようなときにつるっと出てくるようなことがよくあるんですね。ですから、速やかに、できるだけ、私は、今国会中に、また安全保障委員会等でも質疑をしたいと思いますので、この速やかな結論、あるいは中間報告でも結構ですから、出していただきたいと思うんです。

 この問題でもう一つ、先般もまた大阪の八尾駐屯地で部品が落下したのではないかという報道もございました。

 実は、さかのぼること一月ほど前ですけれども、私自身が野党の皆さんと、沖縄の予防着陸という名前の不時着の事案で、沖縄県各地を回ってきました。そして、大臣も遺憾に思うというような御発言をされたと思いますが、普天間の第二小学校にドアの扉が落っこちてきた件、あの学校にも行き、その横の保育園にも行ってまいりました。

 米軍には、責任の所在を含めて原因追求をと我々も申入れをしておりますけれども、あわせて、日本ではもう実際に人家に落ちるというような事故が、そして人命が失われるということが起きていて、これは幾らアメリカに原因究明を求めても、じゃあ日本のヘリの墜落事故はどうなのかということになってしまいますから、ぜひ、この八尾駐屯地での、だから部品がなくなっているということで、この点についても御答弁を求めたいと思いますが。

 こうしたたび重なる事案について、やはり我が国として、どのように今後速やかに、そして公開性を持って、こうした事案があった場合には我が国としての姿勢を国民に対して示していくか、そして、その上で、在日アメリカ軍に対して強く申し入れるか、その思いを大臣に伺いたいと思います。

    〔委員長退席、橘委員長代理着席〕

小野寺国務大臣 まず、今、八尾の一昨日の事案についてありました。

 一昨日、土曜日でありますが、十三時四十四分ごろ、陸上自衛隊の八尾駐屯地において、体験搭乗を実施していた陸上自衛隊の多用途ヘリコプターUH1J一機の部品の一部が同駐屯地のヘリスポットに落下していることを発見し、確認したところ、当該部品を固定していたアルミ製のリベットの頭部、直径約八ミリ、厚さ一・五ミリ、重さ〇・四グラムの頭部が二個ないことが確認をされました。私どもとしては、今後ともしっかり整備、管理に努めてまいりたいと思っております。

 また、今委員の方から事故のことについてお話がございました。本日は、「あたご」が漁船に衝突しまして民間人二名が亡くなったあの事故からちょうど十年がたっているときでもございます。私ども防衛省・自衛隊としては、これからもしっかり、このようなことがないように、今回のヘリの事案も含めて、反省を込めて対応してまいりたいと思っております。

 今回の事案に対しては、国民の命と平和な暮らしを守るべき自衛隊が、住民の方々の安全を脅かし、多大な被害を生じさせたものであることから、安全の確保は最優先の課題ということで、私どもとしては、第三者の専門的、技術的知見も入れて、徹底した原因究明、そして今後とも再発防止にしっかり努めてまいりたいと思いますし、また、私どもがしっかり対応することを含めて、米側にも安全な運航をこれからも求めてまいりたいと思っております。

渡辺(周)委員 ぜひ、この問題については深刻に受けとめて、そして、速やかに国民の皆さんに説明できるような体制をとっていただきたいと思います。

 続きまして、昨年の暮れからの、またことしに入ってからも幾つか事案がございましたけれども、北朝鮮からの漁船の漂着、あわせて、その乗員が上陸をしていたという点につきましてお尋ねをいたします。

 お手元に資料を配付させていただきました。幾つか、もう時間がございませんので、詳細については皆様方御案内のとおりかと思いますけれども、北海道から日本海側、京都の京丹後にかけて、昨年暮れからたくさんの木造漂流船の漂着があった。また、実際、秋田県の由利本荘市では上陸をしていた。これは北海道の松前小島においてもそうでございましたけれども。

 資料の一枚目、これは先日開かれたシンポジウムで、東海大学の海洋学部の山田吉彦先生が、この問題について大変積極的に取り組んでいらっしゃいますけれども、シンポジウムで公表された写真の一部でございます。

 これは、青森県に漂着した木造船の中から、底のつるつるの革靴が出てきた、あるいは英語の書かれたジャケットもあったというようなことで、これが本当に漁民なのだろうか、どう考えても、漁民に必要なものなのかということで、この船に乗っていた漁師は本当の漁師ではない。山田先生の言葉をかりれば、決してこう言ったわけではないんだけれども、あるメディアにこのように出てしまったと。しかし、否定はしておりませんでした。了解なしにこんなふうに出たと。

 もう一つは、秋田県の由利本荘市のマリーナでございます。これはグーグルマップからとったものでありますが、このシンポジウムでも同じような写真が実は紹介されたんですね。

 一カ月間も荒波の中で遭難をして、食料も水も燃料もない、動力もなければ、かじもきかない木造の旧式の船が、どうしてこんな複雑なマリーナの中にぶつかることもなく入ってきたのだろうか、これはどう考えてもおかしいよね、疑問だよねということが、これはメディアの方々もそうですが、こんな複雑なところのマリーナにどうやって本当に入ってきたんだと。これは、実は、松前小島の窃盗事件があった避難場所についてもそうなんです。

 これは国家公安委員長に伺いますけれども、取調べをする中で、どうしてこんなにたやすく、今もあの拉致事件が起きたときと日本に侵入するある意味では容易さというのは変わってないと、私は間違ったメッセージを北朝鮮に与えてしまったのではないかと思うんですが、取調べを今しているとは思いますが、こうした点につきまして、これは工作員では本当にない、しかし、純粋な漁師でもない、ではないかというのが一般的な見立てですが、今、国家公安委員会、警察としてはどのようにこの事案について取り組んでいますでしょうか。

小此木国務大臣 秋田県の由利本荘についてまずお答えいたしますけれども、この件は昨年十一月二十三日の深夜の案件でありますが、秋田県警の警察官が男性八名を発見したという報告がありました。

 警察においては、委員の今の御懸念の点も十分留意をしながら、念頭に置き、当該乗組員に対し、関係当局とともに、予断を持たずに慎重に事情聴取を行ったというところ。ですから、慎重には行っております。で、八名とも一貫して、北朝鮮から漁のために来たが、船が故障して漂着をしたと。

 その後、乗組員の着衣や所持品等も供述と矛盾するものではなかったという報告を受けております。

渡辺(周)委員 確認ですが、工作員ではない、あるいは上陸の意図はなかったということでしょうか、今回の八名については。あるいは、北海道の件はどうでしょうか。その点について。

 これは、警察の三十年度予算の中には、例えば、テロ対策と緊急事態あるいは国境離島等整備事象への対応ということで予算もついているわけなんですね。ぜひ、この点について、ここで言っていただきたい。今回の件は工作員ではなかった、上陸の意図はなかったというふうに警察は判断していますか。

小此木国務大臣 今申し上げた由利本荘そして松前小島両件につきまして、慎重な、予断を持たずに慎重な調査をいたしました結果、北朝鮮から漁のためにやってきたという話が出たということでありまして、国家公安委員長とすれば、そういう報告を受けているということでありますから、そういうことです。

渡辺(周)委員 かつて拉致事件が頻発をしたときに、そんなことがあるわけがないということで、どこかみんなたかをくくっていたというようなこと、夕暮れになったら、余り海辺の方へ行ったら向こうから来た人にさらわれるよなんて、そんなことあるかと。しかし、実際、いともたやすく侵入をしてきて、日本人を次々にさらっていった。今、産経新聞で、当時の取材の記者の方がずっと連載されておりますけれども、予断を持ってということなくと言いましたけれども、実際、でも、これはおかしなことがいっぱいあるわけですよ。

 ですから、国家公安委員長としての公式な答弁はそうかもしれませんが、だけれども、腑に落ちない点は、大臣、もしあるのであれば、これは情報を抱え込まないで、ぜひ関係省庁と共有をしていただきたいと思うんです。時間がありませんから、これは改めてやりますが。

 MDAという聞きなれない言葉、これは海洋状況把握という言葉ですが、実際、九・一一以降のアメリカで検討された取組でございます。要は、省庁縦割りを解消して、関係省庁が連絡調整をしながら事に対応しようということでございます。

 ここで伺いたいのは、警察の中にはこのMDAという言葉が実は入っていないんですね。国土交通省所管海上保安庁には、この実は概算要求にも言葉にしていなかったMDA対応のためのというのが、これは本予算のときには、この事案があったからでしょうけれども、出てきました。しかし、この中には警察との連携という言葉がない、自治体との連携もないということなんですね。水産庁も、水産庁の予算の中にも実は書かれていないんですね。漁業の取締り強化という言葉はあっても、MDAというのが出てこない。

 ですので、これはぜひ伺いたいんですが、情報を共有して、現地の警察でありますとか、あるいは海上保安庁と水産庁等々、この今回の事案にどう取り組んでいくかということについて、ぜひ国土交通大臣、国家公安委員長に伺いたいと思います。

 あわせて、今回の北海道での事案の中には結核菌の保有者がいたということでございます。北朝鮮から脱北したお医者さんから聞き取りをしたという沖縄のお医者さんのインタビュー記事を読んでおりましたら、実は、北朝鮮という国は不衛生で栄養失調もあるということもあって、世界の中で十万人当たりの結核の保有者というのは六番目だと。これは北朝鮮政府が発表する上でワーストから数えて六番目。本当は一番ではないかという案もあるんですが。

 今後こういうことが出てきた場合に、例えば感染症であれば、結核でありますとか、こういうものの対応をどう対応していくかということについて、厚生労働省はどのようにお考えでしょうか。

加藤国務大臣 我が国に外国から不審船等が漂着した場合ということになろうかと思いますけれども、厚労省では、関係省庁と連携して、検疫法や感染症法等の規定がございますので、それに基づいて、検疫所の職員が自治体職員、入国管理局の職員等と連携して不審な人物等の健康状態の確認等を行うこととしておりますし、実際、そうした対応をとらせていただいているところでございます。

渡辺(周)委員 この点について、これは即座に対応しなきゃいけない場合もあるんですね、今回のように。大体、夜中に侵入してきて、やってきて、インターホンを鳴らして、あけてみたら、どこかの、よく言葉もわからぬような国の人が由利本荘市の海岸から一キロも離れたところにいた。その人にもひょっとしたら、これは下手すれば感染したかもしれない。これは、北海道の例だけじゃなくて、いろいろなところで起こり得る。

 この点については、水際作戦も当然なんですけれども、ぜひ、こういう検疫の体制については、どう即座に対応できるか、さらに伺いたいと思います。

加藤国務大臣 正直、検疫所の職員が全国津々浦々にいるわけではございませんので、もちろん、そうした人間が対応できれば、すぐ対応させていただくということになりますけれども、初動としては、例えば、警察、海上保安庁、あるいは自治体の職員の方、こういった方が対応されるということになるわけでありますので、そういった方々には、感染予防策、これについてしっかりと周知をするなど、感染症に対する予防、対応、これをしっかりと取り組んでいきたいと思います。

渡辺(周)委員 国土交通大臣、先ほどMDAのことについて伺いましたけれども、当然、海上、洋上での取締りも含めて、関係省庁との連携については我が国はどうあるべきか。尖閣での監視と、そして大変長い日本海と、この二正面作戦。国土交通省、現員で大丈夫ですか。関係省庁と連携する上で、ぜひ意気込みを聞かせていただきたいと思います。

石井国務大臣 海上保安庁におきましては、尖閣諸島周辺海域を始めとする我が国周辺海域の厳しい状況を踏まえまして、一昨年十二月の関係閣僚会議において決定をされました海上保安体制強化に関する方針に基づきまして、尖閣の領海警備等、大規模事案の同時発生に対応できる体制の整備を進めているところでありまして、委員が御指摘のような二正面作戦にしっかりと対応できるように取組を進めてまいりたいと存じます。

渡辺(周)委員 時間が五分になってしまいましたので、この点についてはまた改めて分科会等でできればと思っております。

 それでは、官房長官もお戻りでございますので、ぜひ伺いたいのは、私も平昌のオリンピックの開会式に日韓議連で行ってまいりました。日本人選手の躍動は本当に胸を打つものがございまして、感動的でございました。

 その上で、今回、千載一遇のチャンスで、北朝鮮の金永南そして金与正、この高位の幹部が来たわけでございます。そこで安倍総理と握手をし、言葉を交わしたと。産経新聞は、拉致についても言った、そして朝日新聞では、これは韓国側、大統領府が明らかにしたというんですが。

 ぜひきょうお見えの官房副長官に伺いたいのですが、同じテーブルに座っていたわけですから、当然やりとりがあったと思います。安倍総理の発言に対して、北朝鮮側はそれに対して何か答えましたでしょうか。

西村内閣官房副長官 お答え申し上げます。

 御指摘のように、二月九日、安倍総理は、文在寅大統領主催のレセプション会場において、北朝鮮の金永南最高人民会議常任委員長との間で、ほんの短時間でありますけれども、言葉を交わす機会がございました。その際、安倍総理から、拉致問題、核・ミサイル問題を取り上げ、日本側の考え方を伝えたところでございます。特に、全ての拉致被害者の帰国を含め、拉致問題の解決を直接強く求めたところでございます。

 若干のやりとりがございましたけれども、これはもう外交上のやりとりでありますので、先方の対応を含めて、差し控えたいというふうに思います。

渡辺(周)委員 外交上のやりとりですからと言いますけれども、私は、北朝鮮という国は、余り国際常識みたいなものをもともと期待していない。ですから、私は、もし向こう側が非礼なことがあったのであれば、それは糾弾すべきだと思います。何か前向きなことでも言ったのであれば、私は中身を明らかにしていいんじゃないかと思いますよ。こういうことを言わないことによって、結果的に、北朝鮮ペースで、今回は平壌オリンピックなどと言われることになってしまった。我が国までも何も口をつぐんでしまうことはないと思うんですが。

 北朝鮮側から何かあったんですか。それとも、まあ一言で言えばシカトされたんですか。これはどうなんですか。

西村内閣官房副長官 お答え申し上げます。

 短時間言葉を交わす中で、安倍総理からは非常に強い意思をお示ししたと思います。その上で、若干のやりとりがございました。これは、私、そばにいた印象でありますけれども、安倍総理の意思は、強い意思、これは伝わったものというふうに思います。

 先方の反応については、外交上のやりとりでありますので、控えさせていただきたいと思います。

渡辺(周)委員 非常に、北朝鮮が何か答えたとは思えないんだけれども。であるならば、私は、何らかの形で、例えば親書でもしたためて、来ることがもうわかっていたわけですから、何か渡すという手段もあったんじゃないかと思うんですけれども、そういうことは日本政府では検討されなかったんです。

 北朝鮮の高位の人間が来る、当然あの開会式のときでも、手前に安倍総理がいて、後ろに金永南、金与正がいた。どこかで、そこは外交上の儀礼だとか、少々それは悪いけれども飛び越してでも、何らかの意思を伝えるなり、何らかのメッセージを渡すことはできたんじゃないかと思いますけれども、それは検討されなかったんですか、日本政府で。

西村内閣官房副長官 お答えを申し上げます。

 平昌オリンピックの開会式、それからその前日のレセプションでありますけれども、北朝鮮側から誰が出席をしてどういう状況になるのかというのは、事前にいろいろ情報をとろうとしておりましたけれども、わかったのは直前でございます。金永南常任委員長がレセプションに出席をするということで、その直前の対応ということでございます。

渡辺(周)委員 時間もありませんが、最後の質問をします。

 これで、北朝鮮のほほ笑み外交によって日米韓の枠組みがどうなるんだろうかということが非常に懸念をされるわけなんです。

 そこで、防衛大臣に伺いますが、防衛大臣がたしか十一月の記者会見で、邦人救出のことについては表立って協議ができるような状況じゃないというようなことを実はおっしゃっていますね。今後、こういう北朝鮮のほほ笑み外交によって日米韓の足並みが乱れることによって、こういう日韓でのいろいろなやりとりが先送りされるんじゃないだろうか、邦人救出の例えば訓練や話合いについても韓国側が先送りしたがるんじゃないかということについて、そういうことはないのかどうか。それは防衛大臣に一点。

 それから、菅長官にぜひ伺いたいんですけれども、今後の日韓関係の中において、拉致問題もそうです、私は、南北対談が進展すれば、どんどんどんどん先送りをされて、韓国がとにかくこの足並みを乱すまいと、日韓あるいは韓米のひびがどんどん入ってくるわけでございます。そういうことになりはしないか。

 特に、江原道、主催した道の崔さんという知事さんは、二〇二一年に冬季アジア大会を、あの平昌の会場の事後活用も含めて検討するというようなことを報道されております。スポーツを通じた交流という名前で、結果的には今回もいろいろな融和策が、万景峰号が韓国の港に停泊をしたり、あるいは、さまざまな支援についてなし崩しになってしまいました。このことで、北の制裁緩和、この北への制裁緩和の、足並みが乱れないか、そのことについて大変懸念するわけですが、日本政府として、今後、今回のほほ笑み外交に対抗するためにどのような手だてを講じていかれるのか、最後に伺いたいと思います。

小野寺国務大臣 朝鮮半島で緊急事態が発生した場合の在韓邦人の安全確保については、外務省を含め政府として、関係国とも協力連携しつつ、いかなる事態にも適正に対応できるよう準備しているところであります。

菅国務大臣 まず、二〇二一年の冬季アジア大会、これはもう大分先の話ですから、それについてはこの場でお答えすることは、言うべきじゃないというふうに思います。

 ただ、いずれにしろ、日米、日米韓、連携をして圧力をかけ続けていく、それは、首脳あるいは外相、さまざまなレベルにおいて、日韓関係の中でしっかりそこは対応して、結果的に北朝鮮に政策を変えさせる、その姿勢で貫いていきたいと思います。

渡辺(周)委員 時間が参りましたので、またこの点については改めて質問をさせていただきたいと思います。

 ありがとうございました。

橘委員長代理 これにて渡辺君の質疑は終了いたしました。

 次に、黒岩宇洋君。

黒岩委員 無所属の会の黒岩宇洋でございます。

 きょうは、裁量労働制につきまして、午前中、厚労省からもヒアリングを受けまして、正直言って、大変この総合実態調査なるものがずさんであった、そして、精査した結果というものも、私からすると大変ふんまんやる方ないような状況でありましたので、きょうはこれについて特化して質問いたしますので、私、野田総務大臣、梶山大臣、お呼びしておったんですけれども、御退席いただいて結構でございます。済みません、ずっと聞いていただいても結構なんですけれども、御退席いただければ。済みません、恐縮でございます。

 それでは、まずは山越局長、お聞きしますけれども、この、データが不適切な比較だった、こういう表現ですけれども、担当課長は二月一日にこの調査結果についての報告を受けたと。二月二日に局長に報告が上がったという話を先ほど局長は答弁されましたけれども、局長までは、その二月二日の時点で、具体的にはどの内容までの報告がもたらされていたんですか。これについて、具体的に、そして明確にお答えください。

山越政府参考人 お答えを申し上げます。

 二月二日の時点で私に報告がありましたのは、この実態調査の調査票についての報告がございました。

黒岩委員 調査票について、具体的に、私、きょう十九日付で理事会に提出された四枚のペーパーを持っていますよ。この中のどこまで上がったんですか。具体的には、この総合実態調査に用いた付表、調査票というものは当然上がっていますよね。

    〔橘委員長代理退席、委員長着席〕

山越政府参考人 お答え申し上げます。

 この調査に用いました付表についての報告をもらったところでございます。

黒岩委員 じゃ、加藤大臣にお聞きします。

 加藤大臣には七日に報告があったと。これも重ねての問いになりますけれども、この付表も含めて、調査実態について具体的な内容が、私どもいただいているこの内容の報告があったという理解でよろしいですね。

加藤国務大臣 その私どもがいただいている内容というのはちょっとわからないんですが、先ほど答弁……(黒岩委員「理事会で提出していただいた」と呼ぶ)ですから、それは、最終的な精査した結果を、理事会ではお示しをさせていただきました。

 七日の段階では、先ほど他の委員からも御質問がありましたけれども、一般労働者の記入欄が一日の時間外労働の最長時間数となっているという一方で、裁量労働制については、一日、どのように選ぶか記載がないということが判明した、こういう報告を受けたところであります。

黒岩委員 大事なところですよ。加藤大臣、一般労働者については、平均的な平均の数字じゃなくて平均的な方の最長の法定外時間労働だということは認識していたわけですね。

 さあ、大変ですよ。大臣、八日以降、予算委員会の質疑等で、大臣、そのことを我々、同僚議員が質疑したときに、おかしいじゃないか、この時間の長い短い、裁量労働の方が短いと言ったときに、おかしいじゃないかということに対して、全く答えないどころか淡々と読み上げて、そして、裁量労働制の方が一般の方よりも時間が短いということだけ答弁していますよ。

 これは、七日の時点で知っていながら八日にこの答弁をしているということは、大臣、明らかにこれは虚偽答弁じゃないですか。

加藤国務大臣 八日以降において、今申し上げたような、どっちが、このデータを使って短いとか長いとかという答弁はしていなかったというふうに記憶をさせていただいているんですけれども。

黒岩委員 いいですか。もともとは、本会議での質問でも、我々は、裁量労働制の方が長時間労働じゃないかという問題意識に立って、そしてこの長い短いについての厚労省の調査結果が、一般労働が九時間三十七分で、そして企画業務型が九時間十六分、裁量労働制の方が時間が短いというのはおかしいじゃないかと、ずっとこれを聞いてきたわけですよ。

 それで、もう七日の日に、これは一目瞭然ですよね。これを見た瞬間に、私たちもきょう説明が要らなかったですよ。この付表を見た瞬間に、ああ、一般労働者は最長の時間を、一日について最長の時間を書かせているんだなと。

 これがわかれば、八日以降の質疑で、我々が今言った同じ問題意識で、この調査、おかしいだろうと。おかしい内容をもう御存じだったんじゃないですか、加藤大臣。どうしてそのことをお答えにならなかったんですか、そして隠蔽していたんですか。

加藤国務大臣 ですから、今申し上げた、一般労働者についてはそういうふうになっている、他方で、裁量労働制についてはどういう形で選んでいるかわからないということでしたから、精査をさせていただくということであります。

黒岩委員 裁量労働制についてはわからないとありますけれども、きょういただいた理事会のこの資料の四ページ目は平成二十五年じゃなくて、その八年前、平成十七年の、この同じ総合実態調査において、これは、兵庫労働局から、実際、裁量労働制の人についてはどういう人を選ぶんですかということに対してしっかりと、平均的な者も一日で見て最も多く労働者が属すると思われる労働時間の層に含まれる労働者の労働時間を書くこととすると。

 これは、労働局から聞かれたことについて厚労省が答えた文書を私どもはいただいているんですよ。こんなものが、精査するのに何でそんなに何日もかかるんですか。

 実際に、今言ったように、二月一日、担当課長はわかっている、翌日に局長もわかっている、もうこんなことはわかっているはずですよ。それを、加藤大臣のところで、今言ったように、二月七日の時点で、もうこんな一目瞭然の付表を見て、それで我々の予算委員会の質問に対してこの事実をおっしゃらなかった。これはもう明らかに虚偽であるし隠蔽である、間違いないんじゃありませんか。

 加藤大臣、このことをしっかり説明してくださいよ。

加藤国務大臣 まず、そうした裁量労働制については、委員は見て一目でおわかりになったかもしれませんが、私は、どういう形で選ばれているのか、そこからは直ちに理解はできませんでした。したがって、そこをきちんと把握するという意味において精査をさせていただくということを申し上げたわけであります。

 それから、今委員がおっしゃった点は、その時点では明らかになっておりませんでした、その疑義照会については。それは、十四日の段階で、夕方、私がそうした疑義照会があるということを聞いたところでありますし、実際、それぞれ、監督官にヒアリングを十二、十三とかけてやっておりまして、その結果を聞いたのも十四日の午後でございます。

黒岩委員 重要なことは、大臣、一般労働者の調査の仕方が平均的な平均ではない。この付表を見ただけで、最も長い、最長の時間を書けと。これは、ここにそのまま書いてあるじゃないですか。一般的に、これを見れば誰もが理解できることですよ。そのことを二月八日以降も全くお答えにならなかった。このことをしっかりと説明してくださいと言っているんですよ。そんな不誠実な、不誠実な隠蔽はあり得ないですよ。

加藤国務大臣 ですから、それは裁量労働制と一般の労働者との比較をしているわけでありますから、それぞれがどういう形で選んできたのかということを確認しなければ説明ができないわけでありますので、私は、裁量労働制についてのそうした、どうやって選んだかということを確認をした上で、きちんと今精査をさせていただいて、そして説明をさせていただいたということで、決して隠蔽するということは、全くございません。

黒岩委員 大臣、これは国会の場ですよ。国民に説明責任を、所管省庁の大臣たるものは持っているわけですよ、大きな責任を。

 そして、今報告として、明らかに平均的な平均でないということがわかるこの付表を受け取って、加藤大臣、もちろん内容を理解していますよね。平均的な平均な方ではない。月において、平均的な方の一日の最も長い法定外労働時間を記入させたと。今までの説明とは明らかに食い違っていることはわかるじゃないですか。

 そのことをわかった時点で速やかにこの委員会に報告しなかったら、予算委員会自体の権威も問われるし、後ろについている国民は納得しないでしょう。

 なぜ大臣は、自分が明確に理解、報告を受けたことを、省庁の大臣として国民に向けて報告しなかったんですか、明らかにしなかったんですか。そのことを私は突いているんですよ。

加藤国務大臣 ですから、今申し上げた点について、裁量労働制についてどうやって選んでいるのか、それについては不明であったということでありますから、そこを明らかにした上で御説明をするということで、精査をさせていただくということを申し上げただけであって、別にそれを隠蔽しているわけではございません。(発言する者あり)

河村委員長 加藤大臣、確認の上で早急に答弁ください。

加藤国務大臣 そういった意味で、裁量労働制についてははっきりしていないということで精査をさせていただくということ、それでお時間をいただいたということでございまして、別に隠蔽しているわけでもありませんし、そしてその結果について真摯に調査をし、そしてそれぞれの監督官にもヒアリングをし、そして資料がないかということで当たった結果として、お手元にございます平成十七年のときの調査のものではありますけれども、そのときの疑義照会に対してこういった資料も出てきている、そういったことも含めて確定したということで御報告をさせていただいたということでございます。(発言する者あり)

河村委員長 黒岩君、もう一度、どこが隠蔽なのか、説明してください。今の答弁に対して、黒岩君、もう一度説明してください。もう一度、黒岩君、もう一度……。黒岩君、もう一度、今の説明してください。もう一度、黒岩君、先ほどの大臣の答弁に対して質問してください。(発言する者あり)

 大臣、もう一度、整理して答弁してください。大臣、整理して答弁してください。その上で、黒岩君、もう一度指摘をしてください。

加藤国務大臣 ですから、同じことになりますけれども、先ほどの段階で、一般労働者については最長ということが二月の七日の段階でありましたけれども、最長労働についてどういうものかわからないということで、それをはっきりさせるということで精査させていただいたということでもございますし、それを含めて、今回、その中身を出させていただいたということであります。(発言する者あり)

河村委員長 今は理事会のことをやっているんじゃないですから。

 黒岩君、今の答弁に対して問題点を指摘してください。質問者はもう一度説明してください、きちっと大臣に。大臣が答弁しているんですから、黒岩君、ちゃんと説明してください。どの点がどうなのか、もう一度。答弁が……。黒岩君、再確認してください。(発言する者、退場する者あり)

 時間が参りました。

 次の質問者へ移ります。金子恵美君。

 金子恵美君の質疑時間に入っております。しばらくこのままで委員会を続行いたします。

 これにて金子君の質疑時間は終了いたしました。

 次に、畑野君枝君。

 これより畑野君枝君の質疑時間に入ります。

 時間をちょっととめてください。

    〔速記中止〕

河村委員長 では、起こしてください。

 次に、畑野君枝君。

畑野委員 日本共産党の畑野君枝です。

 私は、教員の働き方改革について質問いたします。

 安倍首相は、今国会を働き方改革国会と銘打ち、施政方針演説でも、「働き方改革を断行いたします。」と述べました。

 今の日本社会は、職種を問わず過労死を生む過酷な働かせられ方が蔓延しています。教員も例外ではありません。

 林文部科学大臣に伺います。

 大臣は、教員の働き方改革について、何をどう改革しようとされているのでしょうか。

林国務大臣 教師の働き方改革につきましては、昨年の六月より、中教審において、学校における働き方改革に関する総合的な方策について御審議をいただきまして、十二月には中間まとめが取りまとめられております。

 これを受けて、文部科学省では、学校や教師の業務の役割分担や適正化を着実に実行するための方策などを盛り込んだ緊急対策を取りまとめまして、学校における業務改善また勤務時間管理等に係る取組の徹底とあわせて、文部科学事務次官通知により各教育委員会へ周知したところでございます。

 また、学校における働き方改革を推進するために必要な経費を平成三十年度予算案に盛り込んでおるところでございます。

 今後とも、教師の長時間勤務の是正に向けまして、教育関係者と一丸となって対処してまいりたいと考えております。

畑野委員 今、教育の現場で教員はどのような働かされ方に置かれているのかということです。

 教育公務員の一週間当たりの勤務時間は三十八時間四十五分です。

 教員勤務実態調査速報値では、一週間当たりの学内総勤務時間について、小学校教諭で一人平均五十七時間二十五分、中学校教諭で六十三時間十八分という結果が示されました。

 残業が月八十時間を超える、いわゆる過労死ラインを超えるのに相当する教員の割合は、公立小中学校の教諭でそれぞれどれぐらいの割合になりますか。

高橋(道)政府参考人 文部科学省の教育政策に関する実証研究の委託事業として、公立の小学校、中学校の各四百校に勤務するフルタイムの教員を対象として、平成二十八年十月から十一月にかけての連続する七日間に勤務実態調査を実施いたしました。同調査の速報値によると、週に六十時間勤務を超える一般の教諭の割合は、小学校で約三四%、中学校で約五八%となっております。

畑野委員 この数字には持ち帰り残業の時間が入っておりません。

 中央教育審議会の学校における働き方改革特別部会委員の妹尾昌俊氏は、持ち帰り仕事を含めれば、小学校で約六割、五七・八%、中学校で七割を超えて八割近く、七四・一%が過労死ラインを超えると指摘されております。

 そのもとで、過労死や過労自殺、自死する教師が後を絶ちません。

 二〇一四年六月に過労自殺した福井県の二十七歳の中学校教員は、一年生の学級担任や社会と体育の教科指導をしながら野球部の副顧問をしており、休みは月二日から三日、四月から六月の勤務外労働が月百二十八時間から百六十一時間になっていたといいます。彼の残した日記には、今欲しいものはと問われれば睡眠と書かれていました。

 やめざるを得ない教員もいます。二〇一五年九月二十五日付東京新聞では、東海地方に住む三十代の女性の元小学校教諭の証言を紹介しています。

 昨年は高学年四十人クラスを担任。日本語がたどたどしい外国籍の子もいた。子供二人の母親でもある女性は、帰宅後や土日にも授業準備に追われた。部活の顧問として夏休みも指導。夫も仕事が忙しく、育児はほぼ全て女性が担った。ぐずって泣く自分の子供を抱き締める力もないほど疲れていた。退職直前の二カ月間は、県外の母親に自宅に住み込んで家事を手伝ってもらった。だが体調は悪化し、もう限界と辞表を出した。こういう実態が今教員の中にあります。

 そこで伺いますが、今回二〇一六年の教員勤務実態調査では、二〇〇六年の前回調査と比べ校内勤務時間が増加しているという結果になりました。前回調査より教員一人当たりの労働時間の増加が顕著な業務は何ですか。

高橋(道)政府参考人 お答え申し上げます。

 前回平成十八年度調査に比べて、業務内容別に見ると、平日については、小学校では授業、授業準備、学年・学級経営が、中学校になりますと、授業、授業準備、成績処理、学年・学級経営が増加している主要な業務でございます。

 また、土日について見ますと、小学校では大きな変化はございませんが、中学校では、部活動の時間がほぼ倍増するなど顕著な増加を示しております。

畑野委員 授業が増加したと答弁されました。

 前回調査と比べて、授業の時間が、小学校では教員一人当たり二十七分増加しています。一九九八年の学習指導要領改訂以降、授業時数、いわゆる授業こま数はどうなっていますか。

高橋(道)政府参考人 前回の、平成二十年の学習指導要領の改訂により、小学校の年間標準授業時数は、第一学年において六十八こま、第二学年において七十こま、第三学年から第六学年までにおいて三十五こま増加しております。これを学習指導要領に定められた年間の授業週数の標準に基づき週当たりのこま数に換算いたしますと、第一学年及び第二学年においては週当たり二こま相当、第三学年から第六学年までにおいては週当たり一こま相当増加していることになります。

 同様に、中学校におきましては、全ての学年において年間標準授業時数が三十五こま増加しており、週当たりで申し上げますと一こま相当増加しているということになっております。

畑野委員 きょう、資料の一ということで配付をさせていただきました。

 この学習指導要領の授業時数、いわゆるこま数、小学校でどういうふうにふえているか。

 全体でいいますと、一九九八年の改訂、施行は二〇〇二年ですが、五千三百六十七だったものが書かれております。この当時、四十年ぶりに行われた前回の二〇〇六年の勤務実態調査というのがありまして、当時、常態化した教員の深刻な長時間労働の実態を明らかにし、大きな衝撃を与えました。文部科学省も、教員の子供と向き合う時間を拡充することが喫緊の課題だとして、事務負担の軽減や外部人材の活用、ICTの活用などを打ち出してきました。

 この二〇〇二年改訂のときの五千三百六十七のときでさえ、これだけ教員の長時間労働が問題になっていたんです。だから、教員一人当たりのこま数を削減するのは当然だったはずです。しかし、実際はそうではなかった。

 この資料一の真ん中にあるように、今回の調査の結果というのは、二〇〇八年、学習指導要領改訂、施行は二〇一一年に当たりますけれども、ここでは授業こま数を全体五千六百四十五へと、前回よりも二百七十八もふやしました。

 今回、二〇一六年調査の結果は、前回調査よりも授業時間で二十七分増加した。これは、この間の学習指導要領改訂で授業こま数をふやしたのに、それに見合う教員の定数増をせずに、教員一人当たりの持ちこま数がふえたからではありませんか。どうですか。

高橋(道)政府参考人 先ほど申し上げましたとおり、小学校では、授業、授業準備、学年・学級経営の時間が増加している主な要因ですが、その中でも、授業に関連する時間の増加が大きくなっております。平成二十年の学習指導要領改訂による授業時数の増加が主な要因ではないかと考えております。

畑野委員 お認めになりました。

 それでは、そもそも教員一人当たりの持ちこま数はどのような考え方で決められているのかということです。教員の定数を決める、公立義務教育諸学校の学級編制及び教員定数の標準に関する法律、いわゆる義務標準法は、一九五八年の成立当初、小学校の教員の一週間の持ちこま数をどのように想定していたのでしょうか。

高橋(道)政府参考人 お答え申し上げます。

 昭和三十三年のいわゆる義務標準法制定当時は、一教員当たりの指導時数を教科指導週二十四時間と想定しており、一日の勤務時間の半分程度を充てることとしておりました。ちなみに、この当時は、週六日勤務で週四十四時間勤務といった時代でございます。

 勤務時間の残りの半分程度につきましては、学級会等の教科以外の活動の指導や指導の準備、その他の校務に充てるのが適当、そのような考え方であったと承知をしております。

畑野委員 今、教科指導として教員一人当たり週二十四こまと想定していたという御答弁でしたが、そうしますと、教科外を含めますと二十六こまというふうにこの間言われてきたと思うんですが、それでよろしいですね。

高橋(道)政府参考人 先ほどの答弁の補足になりますが、当時の教員定数算定上の一教員当たりの指導時数については、小学校では、教科指導週二十四時間のほかに、学級会などの教科以外の活動の指導週二時間を加えて、合計で二十六時間を想定しておりました。

畑野委員 合わせて二十六こまということです。

 小学校の一時間の授業時間は四十五分です。週二十六こまは、実際の時間でいえば十九・五時間になります。教育公務員の一週間の労働時間が、おっしゃったように週四十四時間と定められていた時代でこの水準でした。

 今回の勤務実態調査では、小学校教員の一人の一日当たりの授業にかける時間は四時間二十五分となっています。この数字を週当たりの持ちこま数に換算すると、約二十九・四こま、二十二時間という計算になるんですが、単純に計算すればこういうことになりますね。

高橋(道)政府参考人 昭和二十八年に実施した教員勤務実態調査の速報値では、小学校の教諭の平日の一日当たりの授業担当時間は、今御指摘がありましたように四時間二十五分になっておりますので、平日を五倍すればそのような数字になります。

 ただし、この中には、主担当として指導している授業時間以外に、チームティーチングなど、昭和三十三年の標準法制定時には想定しなかった指導方法により、補助的に指導をする時間も含まれていることには留意する必要があると考えております。

畑野委員 実態調査について聞いております。

 それで、今の教育公務員の週労働時間は三十八時間四十五分なんです。一九五八年の法制定時の週四十四時間よりも五時間十五分減っているのに、小学校教員一人当たりの持ちこま数は、二十六こまから、実態としては二十九・四こまにふえています。実際の時間でいえば、十九・五時間から二十二時間に増加している。これが実態です。

 中教審の学校における働き方改革特別部会長の小川正人氏は、ことし一月十六日付の読売新聞で、「周辺業務の量も多いが、教員の「本来業務」の時間が増えている。」と指摘をしています。

 ですから、教員一人当たりの持ちこま数を減らすことが必要ではないかと思いますが、いかがですか。

林国務大臣 教職員定数につきましては、平成三十年度の予算案におきまして、新学習指導要領における小学校外国語教育の授業時数増に対応しまして、質の高い英語教育を行うことのできる専科指導教員の確保のほか、教員の負担軽減にも資する中学校の生徒指導体制の強化、こういうのを図るために、合計で千五百九十五人の改善を計上しております。

 学校現場を取り巻く課題が今お話のありましたように複雑困難化している状況の中で、新しい学習指導要領の円滑な実施や学校における働き方改革に向けて、学校の指導、事務体制の効果的な強化充実を図ってまいりたいと思っております。

畑野委員 大臣、確認なんですけれども、今回の勤務実態調査は、さきの学習指導要領改訂に伴っての実態調査で、ふえている、こま数もふえたとお認めになっています。今大臣が答弁されたのは、今ではなくて、今後、学習指導要領でふえる外国語の教員の話ですよね。今ある実態の解決にならないじゃありませんか。

 資料の一で言っているように、二〇一六年改訂、二〇二〇年施行の学習指導要領は、今よりも更にこま数がふえて、五千六百四十五から五千七百八十五にふえるんです。ですから、今後は更に深刻になる。それはとめるのは当然ですよ。

 しかし、今あるこの調査の結果に基づいて、今こま数を減らしていく、一人当たりの持ちこま数を減らさないと改善にならないじゃありませんか。いかがですか。

林国務大臣 先ほどは三十年度予算案の話をさせていただきましたが、確かに先生御指摘のように、今でも働き方改革が必要であるという問題意識のもとで、先ほど冒頭に御答弁申し上げましたようなことをしっかりやって、なるべく先生が教えるところに集中をしていただくという改革はやっていこうということでございますし、これはずっと積み重ねがございますので、しっかりと対応してまいりたいというふうに思っております。

畑野委員 それで、教員一人当たりの持ちこま数を減らしていくということでよろしいですか。

高橋(道)政府参考人 まず最初に、大変申しわけございません、先ほど私、答弁の中で、平成二十八年と言うべきところを昭和二十八年と申し上げたようでございましたので、ここをまず訂正させていただきます。

 それから、文部科学省におきましては、例えば、昨年の三月にも義務標準法を改正しまして、これまで加配定数だったものを基礎定数化する中で、例えば通級指導に対する、あるいは特別の指導が必要な児童に対する教員なども順次改善をしていくということにしております。

 したがいまして、それから、これまでの中でも、前回の学習指導要領の改訂の中で加配定数の改善などには努めてきておりますので、今後ともしっかりとそういった方向で、教職員定数の改善に、配置充実にできる限り努めてまいりたいと考えておるところでございます。

畑野委員 全力で取り組まなければ、これはもう本当に深刻な、一刻も放置できない事態だという認識を持っていただいて進めていただきたい、政府挙げてやっていただきたいと思います。

 それで、資料の二つ目です。ごらんください。

 これは、ある小学校の平均的な一日の流れを図にしたものです。教員の一日の授業時間が四時間二十五分という世界はどういう世界か、平均的なものを示した図です。

 週二十九・四こまというのはどういう状況か。ほぼ毎日六時間授業です。毎日六時間授業だと三十こまになるんですね。ですから、週一日五時間授業があっても、そこには職員会議や校内研修が入る。びっしり六時間が埋まっているという世界です。

 まず、この学校でいうと、朝八時に出勤をしまして、四十五分間の休息時間というのを入れなくちゃいけないということになっている。これはなかなかとれないわけですが、そういう仕組みになって、退勤時間は合わせて十六時三十分ということになっています。

 しかし、実際には、朝八時には子供たちが登校してくるために、教員はその前には出勤をしている。この学校では昼休みに教員も二十分休憩していることになりますけれども、小学校四年生から六年生の下校時刻の十五時四十分以降、退勤時間の十六時三十分まで五十分間しかないんです。そこで休憩時間の残り二十五分をとらないといけないとなったら、二十五分を差し引くと、残り二十五分しかないんです。これがこの表の一番下、ここしかないんです。

 中間まとめは、「適正な勤務時間の設定」というくだりの冒頭で「定められた勤務時間内で業務を行うことが基本」だと言っていますが、二十五分しかないんです。二十五分間でどうやって次の日の授業準備を行えというんでしょうか。文部科学省、大臣、いかがですか。

高橋(道)政府参考人 この問題を議論していただきました中央教育審議会の中間まとめにおいても、「定められた勤務時間内で業務を行うことが基本である」ということを示していただいております。

 文部科学省といたしましても、登下校時刻の設定や、部活動、学校の諸会議等について、教員の勤務時間を考慮した時間設定を行うよう徹底することを昨年末に緊急対策に盛り込んでおり、各教育委員会にしっかりと取り組んでいただくよう通知をしたところでございます。

畑野委員 二十五分しかないんですが、どうやってやれというんですか。

高橋(道)政府参考人 今回の中教審の中間まとめを受けまして緊急対策を設けまして、その中では、勤務時間の業務の効率化でありますとか、あるいはサポートスタッフの充実など、そういった対策も盛り込んでおります。

 こういったことを総合的に実施することによって、しっかりと取り組んでまいりたいと考えております。

畑野委員 業務といいますけれども、業務とは別に、まず授業があるんですよ。授業が六時間という世界なんです、平均。それをやったら、準備の時間は一番最後の二十五分しかない。休みがとれての話ですよ。とれない実態がいっぱいあるというのも知っています。

 だから、この時間じゃ、この持ちこま数では、どうしたって無理だという事態じゃありませんか。この実態をちゃんと見る必要があると思いますが、大臣、いかがですか。

林国務大臣 ただいま局長から答弁いたしましたように、いろいろな工夫をしながらやってまいらなければなりませんし、今回、中間まとめということで、いろいろな御提言もいただいておりまして、それに基づいてこの予算の要求もさせていただいていますので、そういう中で、業務の効率化というものも入れながら対応してまいらなければならない、こういうふうに思っております。

畑野委員 ですから、業務は授業時間以外なので、持ちこま数を、ここを本当に減らしていくということをやらなかったらできないということを私は申し上げているんです。

 それで、これまで政府は、一時間の授業に一時間程度の準備が必要だと言ってまいりました。二〇〇七年の参議院文教科学委員会での我が党の井上哲士議員に対しても、その考えは現在まで引き継がれていると二〇〇七年当時言ってまいりました。

 こうしますと、ほぼ毎日六時間授業という二十九・四こまの世界で、授業と同程度の授業準備時間を確保し、しかも時間内に業務を終わらせるということはできないんですよね。ですから、教員一人当たりの持ちこま数を減らす以外に、どんな方法があるのかと。もう繰り返しになりますから聞きませんけれども、本当にここに手をつけなくてはならないということを申し上げたいと思います。

 ある小学校の教員は、子供たちが下校するまで自分の自由になる時間など全くないと言っております。子供にとっての休み時間は、ここに五分とか二十分とかありますけれども、教師にとっての休憩時間ではない。消しゴムがなくなった、○○ちゃんがけんかしてる、転んで膝をすりむいたなど、子供たちの対応に追われているんです。特に低学年の担任は、トイレに行く時間もとれない。子供たちが下校した後も会議や研修が入り、授業準備や宿題の点検、親への対応などなど、その全ては勤務時間後に行っている。常に時間に追われている。

 働き方改革というのなら、国が責任を持って教員をふやし、一学級の子供の数を少なくしてほしい、さまざまなスタッフが入っても、専門性のない方も多く、かえって担任の負担がふえるケースがあることも知ってほしいと訴えているんです。

 千葉県の教職員の組合が行ったアンケート結果では、これだけ多忙な中でも、七割から八割の教員が、授業準備や教材研究、子供との触れ合いにもっと時間をかけたいと願っています。教員が願っている働き方改革は、教員として本当に必要な仕事に打ち込めるように働き方を変えてほしいということです。

 加藤厚生労働大臣は熱心に私の議論を聞いていただいております。これまで、教員の持ちこま数と労働時間の関係について議論してきましたが、これに対して大臣はどのような御所見をお持ちですか。

加藤国務大臣 教育を含めて、働き過ぎによる健康障害があってはならないですし、もちろん働く方が、その力が十分発揮できる、そうした働きやすい環境をつくっていくことが必要でありまして、そのためにも長時間労働の是正を図っていくということが必要だというふうに考えております。

 厚生労働省としては、過重な労働による過労死等に係る労災請求が行われた事業場に対する監督指導はもちろんのこと、長時間労働を行っていると考えられる事業場に関しては監督指導を実施し、法違反が認められた場合には是正に向けた指導を行っているわけであります。

 きょうは教員のお話をされておられましたが、教員に係る労働基準関係法令の職権行使については、私立学校では労働基準監督機関が対応させていただきますが、公立学校に関しては、一部を除き、労働基準法の適用はありますけれども、実際に対応される職権の行使は人事委員会が行うということになっているわけであります。

 いずれにしても、教員を含め、働く全ての方々が安心して活躍できる環境を整えていく。そのためにも、長時間労働を始め、積極的に取り組んでいきたいと思います。

畑野委員 加藤厚生労働大臣からも、この解決が必要だという御答弁をいただきました。

 資料の三に載せておりますのは、先ほども御紹介しました、中教審の学校における働き方改革特別部会長の小川正人氏の発言です。このようにも述べておられます。学校現場の状況から見れば、教員は不足していて、本来の仕事だけでも過重、負担になっている、本当は教員の定数増を行い、丁寧に子供に向き合える環境を整備すべきだと思うが、厳しい財政事情もあり、そうした正論を核に据えられなかった苦しさもある、このようにその胸の思いを吐露されておられます。本当は教員をふやしたいのに、正論がねじ曲げられたとおっしゃっている。教員の働き方改革を邪魔しているのはあなた方だと、政府だと言わなくてはなりません。

 教員の働き方改革を言うなら、教員一人当たりの持ちこま数を減らし、長時間労働の解消に見合う教員定数増こそ行うべきではありませんか。文部科学大臣、そして麻生財務大臣に伺いたいと思います。

林国務大臣 先ほどの御答弁と繰り返しになってしまうかもしれませんが、まさに、そういう現場の状況、また中間報告も踏まえまして、平成三十年度予算案については、先ほど御答弁申し上げたような改善を、合計で千五百九十五人ほど計上させていただいておるわけでございます。

 一方で、財政状況が厳しいということは我々も承知をしておりますが、引き続きしっかりと定数の改善、確保を図ることによって、働き方改革の方は、核とおっしゃっておられましたでしょうか、そういうことではないという御指摘もあるんでしょうけれども、そちらもあわせて、両方でしっかりと取り組んでまいりたいというふうに思っております。

麻生国務大臣 この教職員の定数につきましては、平成三十年度の予算におきまして、新学習指導要領の要請に向けて、円滑な実施、また学校における働き方改革などに向けて、まず小学校における英語への対応のための専科指導教員の充実、また、いじめ、不登校等への対応など、必要な分野の充実を図っていると私どもは考えております。

 同時に、学校の指導、運営体制につきましては、これは教育現場の実態というものがありますので、そういった意味で、業務の見直し、また外部人材の活用等を通じて、効果的に教育環境を整えていくことも重要であると考えております。

 その上で、今後教職員数の増加が必要となるかにつきましては、これは先ほどお話ありましたように、財政事情もありますが、事実に基づく議論、またPDCAサイクルの確立等々を踏まえてこれはしっかりと検討させていただきたいと思っておりますが、平成三十年度につきましては、定数改善では千二百十人という大宗になっておると存じます。

畑野委員 来年度予算案の話がございました。先ほど申し上げましたけれども、小学校でいいますと、英語の専科、千人ふやすと繰り返しおっしゃるんですけれども、さっき言ったように、これから新学習指導要領に向けて新たにふえる英語のこま数百四十に対応するものなんです。いいですよね。

 今問題になっている、教員実態調査で明らかになったのは、この二〇一一年に施行されてふえた授業こま数、これによって授業持ちこま数がふえた、それが長時間労働になっているんだから、今の時点で改善しないといけないということを申し上げているんです。

 そして、さっき言われた千人の、今後ふやす、毎年、これは定数改善じゃなくて加配ですよね。今、外部人材とおっしゃいました。しかし、授業は教員がやるんです。ほかの人に頼ることはできないんです。その準備も含めて、今後一層教員の質を上げていかなくちゃいけないと政府も言ってまいりました。これでは全く改革にはなりません。

 日本教育新聞が市区町村教育長に行ったアンケート結果では、九七%が教員の定数改善を望むと回答しております。安倍政権は、四年連続で教育予算を削り、教員の抜本増に背を向け続けてまいりました。三十五人学級の促進を途中でとめたのも安倍政権です。

 この深刻な教員の長時間過密労働を解消せずして、何が働き方改革ですか。教員の働き方改革というのなら、教員一人当たりのこま数を減らし、長時間労働の解消に見合う教員定数増、そして一人一人に行き届いて目の届く少人数学級、これを進めることだということを申し上げて、私の質問を終わります。

河村委員長 これにて畑野君の質疑は終了いたしました。

 次に、串田誠一君。

串田委員 日本維新の会の串田誠一でございます。

 まず、この予算委員会が二月二日から二月十三日までの七回の中で、二〇二〇年という答えを政府が何回言ったのかということについて数えました。三十五回、二〇二〇年という話が政府から出てまいりました。

 何を言いたいかといいますと、一九九八年の長野オリンピックの後にも破産事件が大変ふえたわけでございます。二〇〇〇年、二〇〇一年、二〇〇二年は、過去十年間で最高の、破産件数がふえたわけでございます。

 国民は、オリンピックまでは景気がいいだろう、しかし、オリンピックが終われば景気が悪くなるのではないか、こういうふうに思っている方が結構多いのではないかと思うんですが、この点について、経産大臣に所感をお願いいたします。

世耕国務大臣 御指摘のように、過去の他国の例を見ても、オリンピックの前あたりに一つの景気のピークが来て、そしてオリンピックを越えると少しその反動が出るというようなことも言われておりますので、そこへの対応というのはしっかりやっていかなければいけないと思っています。

 経産省としては、特に大阪に国際博覧会二〇二五年を誘致することで、このオリンピックの盛り上がり、モメンタムをそのまま二〇二五年まで続けていくことが重要ではないかというふうに考えております。

串田委員 世耕経産大臣も同じ大阪万博のバッジをつけていただいて、大変ありがたく思っているわけでございますけれども、実は、オリンピックの開催の反動で、大変困ったことになっている業界というのがございます。

 御存じのように、東京ビッグサイトがメディアセンターに利用されるようになりました。これが、展示会の計算によりますと、二兆円の損失が発生する、会社も七万八千社が見本市をできなくなってしまう、こんなようなことがございます。

 メディアセンターが東京ビッグサイトに移転するようになったいきさつというのは、オリンピックを招致するときに、エコをIOCの方で要求したので、これを、東京ビッグサイトがありますよということで手を挙げた。そのときに、東京ビッグサイトで毎年展示されている見本市がどうなるかというのは全く考えていないという、私、大変これは無責任なことではないかなと思っています。

 そして、このような東京ビッグサイトがメディアセンターとして、展示会が二十カ月も一部制限され、又は全面的に制限されるということに対して、何とかしてほしいという署名がもう十五万人も集まっているということでございます。

 なぜ東京ビッグサイトがメディアセンターとなり、そして、このような大きな声があるにもかかわらず、メディアセンターを新設すればいいと思うんですが、それができない理由をオリパラ大臣にお願いしたいと思います。

鈴木国務大臣 先生御指摘のとおり、二〇二〇年東京オリンピック・パラリンピック大会の開催に当たりまして、東京ビッグサイトを大会の国際放送センター、そしてメーンプレスセンターとして使用することになっております。

 これは、招致の段階におきまして、既存施設を活用するとの観点から、東京都と招致委員会で決定をし、立候補ファイルに記載され、IOC等とも調整がなされたものでございます。

 これらメディア関連施設の規模につきましては、IOCと東京都及び組織委員会で締結されております開催都市契約運営要件におきまして、国際放送センターにつきましては、九メートルの天井高、七万五千平方メートルの面積、メーンプレスセンターにつきましては三万平方メートルの面積が求められておりまして、これらを合わせて東京ドーム約二個分超の規模の施設を一体的に提供することが必要とされております。

 このようなスペックを満たす場所について、大会まで二年半を切った今から確保することはなかなか難しいものでありまして、別の場所への代替は困難であると考えております。

 このため、ビッグサイトが利用できない期間を可能な限り短縮して、展示会開催等への影響を最小化する努力を関係者が連携して進めることが必要であると認識しております。

串田委員 この開催の中には、コミケというコミックマーケットもございます。三日間で五十万人という参加者、大変大きな参加が行われる。安倍総理も、従前のオリンピックの際には、招致のときにスーパーマリオであらわれるなどして、今や日本の文化なわけでございます。コミケも、通常の開催ができなくなってしまっています。一番お怒りになっているのは麻生大臣ではないかなと思うんですけれども。

 別の施設が、一・五キロのところに仮設の大会場があって、そして今の東京ビッグサイトで一部開催がなされるということで、今までは開催現場をずっと移動していればよかったものを、一つは東京ビッグサイトの一部が使われ、そして仮設の場所が一・五キロということで、ぞろぞろぞろぞろと一日二十万人のコミケファンが往来するというような、そういう意味でも、交通状態が本当に大丈夫なんだろうか。

 今までの場所であればスタッフも、本当に毎年毎年やっておりますので、手なれたものでございますけれども、初めて一・五キロの仮設と今度は東京ビッグサイトを二十万人の人間が行き来するなんということは、十分それはオリパラ大臣も、ちょっと通告していなかったんですけれども、この点については心配はないものなんでしょうか。

鈴木国務大臣 先ほども申し上げましたけれども、そうした東京ビッグサイトが利用できない期間を可能な限り短縮して、今おっしゃいましたそうした催しに対する影響を最小限に抑えるということが重要であると認識をしております。

 そういう観点に立ちまして、大会開催に伴いまして一定期間東京ビッグサイトで展示会等が開催できなくなることに備えまして、これまで、組織委員会、東京ビッグサイト、そしてビッグサイトの主要株主であります東京都、そして展示会関連事業者、展示会産業を所管する経産省など、関係者が連携して対応を検討してきているところであります。

 こうした中で、東京ビッグサイトにおきましては、東新展示棟、これは一・六万平方メートル、南展示棟、これは二万平方メートル、そして仮設展示場二・三万平方メートルの新設計画を進めておりまして、それらが少しでも長く使えるように、竣工の前倒しでありますとか利用制限期間の短縮等に努力している、そのように承知をしております。

 その結果、当初の想定に比べまして、展示面積の減少を抑えるとともに、全く利用できない期間は大会前後の二カ月弱に短縮される予定になったと聞いておるところでございます。

 いずれにいたしましても、今後とも、そうした展示会開催等への影響を最小化する、そういう努力をしっかりやってまいりたいと思っております。

串田委員 この二十カ月のうちいろいろな制限があるということで、日本ではこれはもう開催できないということで、アジア諸国が手ぐすねを引いて招来を今働きかけているという状況でございます。

 二十カ月たてば必ずしも戻ってくるわけではないということで、分散をしていかなければいけない見本市に関して、経産大臣として、現在の進捗状況というか、政府としての対応をお聞きしたいと思います。

世耕国務大臣 やはり、東京オリンピック・パラリンピックのようなビッグイベントをホストするに当たっては、東京で仕事をしている我々も含めて、いろいろな少し困難なことというのが出てくるんだろうというふうに思います。そういった中で、一定期間開催できないというような展示会も出てくるわけでありますから、その影響は最小限に抑える努力を関係者が連携して行っていかなければいけないというふうに思っています。

 今は、展示会場の利用状況について、ともかくみんなで情報を共有しようということで、展示会の主催者と東京都、あるいは千葉県にも大きい展示会場がありますので、そういった関係者を一堂に集めた連絡会議を開催しています。

 あと、全国で、例えば来年には愛知県に大きな展示場ができたりとか、各地で展示場の面積がふえるようなところもありますので、そういったところと密に情報共有を行って、たとえ一時的であっても展示会場の移転を検討しているような展示会に関しては、しっかり情報提供したり、あるいは、経産省も間に入ってあっせんなどの調整を円滑に進めるよう努力をしているところであります。

 いずれにしても、東京ビッグサイトの一時一部閉鎖による展示会産業への影響が最小のものになるよう、関係者とともに努力をしてまいりたいというふうに思っています。

串田委員 これは、実際原因をつくったのは東京都が一番のことでございまして、お二人の大臣はむしろ尻拭いをしているというようなことにもなっているとは思いますけれども、オリンピックによって破産をしたりするような、子供が路頭に迷うようなことがないように、ぜひとも、一・五キロ離れたところからの行き来についても、経費や警備もかかるわけですから、東京都としっかりと政府も話合いをして、その経費負担については特別の御配慮をいただきたいと思います。

 御多忙中のことでございますので、経産大臣とオリパラ大臣については御退席をいただいても結構かと思いますが、委員長、いかがでしょうか。

河村委員長 どうぞ、御退場いただいて結構です。御苦労さまでした。

串田委員 それでは次に、憲法第二十六条についてお伺いをいたします。

 もちろん御存じのこと、周知している条文ではございますが、「すべて国民は、法律の定めるところにより、その能力に応じて、ひとしく教育を受ける権利を有する。」、第二項は「すべて国民は、法律の定めるところにより、その保護する子女に普通教育を受けさせる義務を負ふ。義務教育は、これを無償とする。」となっております。

 そこで、文科大臣にお伺いいたします。

 ここで言う普通という言葉、これは、一般的にどのような場合には普通という状況になるんでしょうか。

林国務大臣 普通教育とは、一般に、全国民に共通の一般的、基礎的な教育をいうもの、こういうふうに認識をしております。

串田委員 昭和二十一年、二十二年における、憲法制定時の就学率についてお答えをいただきたいと思います。

林国務大臣 文部科学省の調査によりますと、高校進学率につきましては、昭和二十五年次が四二・五%であるのに対し、平成二十九年次は九六・八%、また、大学等への進学率については、昭和三十年次でございますが、一〇・一%であるのに対し、平成二十九年次が五七・三%となっております。

串田委員 この昭和二十一年、二十二年当時のいわゆる小学校、中学校、当時は初等教育、青年学校等と呼ばれているようですけれども、当時は合わせて六五%、これを、当時の憲法をつくったGHQは、通っていない子供たちがまだ三分の一いたわけですけれども、普通というふうに呼んだわけでございます。一方、一八八六年の中学校令は、中学校の教育目的を高等普通教育と呼んでいたわけでございます。

 何が言いたいかといいますと、一八八六年の当時は、小学校が普通教育で、中学校は高等普通教育と呼ばれていたわけでございますけれども、先ほど大臣のお答えの中では、現在では高校の進学率が九六%、これはもう普通教育と呼んでいいのではないかと思うんですが、大臣の所感をお伺いいたします。

林国務大臣 今の整理でございますと、高等学校においても普通教育を施している、施すというのは言葉が適切ではないかもしれませんが、行っているということでございます。

串田委員 法律では高校は何というふうに表現されておりますでしょうか。

林国務大臣 法律は、多分学校教育法のことをおっしゃっておられるのかもしれませんが、第五十条におきまして「高等学校は、中学校における教育の基礎の上に、心身の発達及び進路に応じて、高度な普通教育及び専門教育を施すことを目的とする。」と書いてございます。

串田委員 私が普通という言葉にこだわっておりますのは、普通というのは、周りを見るとほとんどが進学をしている、自分だけが進学を経済的な理由でできないという、これが惨めになるかどうかということが非常に問われているわけでございます。

 例えば、千人の学校で、自転車を持っているのがたった一人で、九百九十九人が自転車を持っていなかったらば、持っていない子供たちは惨めだとはきっと思わないと思うんです。しかし、これが逆で、たった一人持っていなかったらば、惨めだな、悲しいなと思っているに違いありません。これは、絶対的には自転車を持っていないというのは同じなんです。

 先週までアルマーニの制服のことがよく問題になりましたけれども、高いとか安いとかという問題ではなくて、任意の選択であるということから、ほとんどの学生が、子供たちがその服を着ているのにかかわらず、自分だけが経済的な理由で着られないという子供を生んではいけないということを親たち、大人たちは心配した議論ではないかと思います。

 修学旅行も今、大変高くなっている、行けない子供も大変ふえている中で、ある校長先生は、去年よりも行けない子供が少なくなったんですよと喜んで言っている。これは逆だと思うんですね。行けない子供が少なくなったということは、それだけ周りの子供たちが行っているという惨めさが増していることを実感できていない教育現場が問題になっていると思うんですが、その原点が、私は、この憲法二十六条、普通教育と義務教育とが一致しているというところが大きな問題ではないかと思うんです。

 普通教育というのは相対的概念、ところが、義務教育というのは絶対的概念で、これを一致させるから、相対的な概念が義務教育によってずっととどめられている。昭和二十一年、二十二年の、そのときの就学率と全く固定されているから、高校を高度な普通教育などという、一般用語からすればかけ離れた言葉になっていると私は思うんですが、文部大臣の所感をお伺いいたします。

林国務大臣 先ほどお答えいたしましたように、学校教育法においては、高等学校は高度な普通教育及び専門教育というふうに申し上げました。

 したがって、普通教育というのは、先ほど申し上げましたように、一般に、全国民に共通の一般的、基礎的な教育を指すものでございまして、これに対して専門教育は、専門的な知識、技能を習得させる教育ということで、高等学校からこれも入ってくるわけでございますので、普通教育というのは高等学校も含んだ概念でございますが、現行法では義務教育の方は小学校と中学校に限定をしているという法律のたてつけになっておるというのが現状でございます。

串田委員 そうはいっても、学校教育法関係で、高校に通うことのできる権利が子供たちにあるという規定は、私の知っている限りではないと思うんですよ。なぜならば、義務教育と普通教育とが憲法第二十六条によって一致されているからです。

 アメリカを見ると、義務教育と無償の教育の年齢差というのは、ずれているわけです。相対的な概念である普通教育は、日本におきましても一八八六年においては中学を高度な普通教育としていたのを、戦後の昭和二十一年、二十二年で中学を普通教育に上げたわけですよ。現在は高校にもう九六%行っているのであれば、その昭和二十一年、二十二年とは教育行政は変わっているわけですから、既にこれは普通教育と呼んで、子供に教育を受けさせる権利というものをしっかりと認めていかなければならないんだと思うんです。

 現在の憲法が英語の直訳だから、てにをはがおかしいから今の憲法はおかしいと言っているわけじゃないんです。一週間でつくったからおかしいと言っているわけじゃないんです。ホイットニーの委員会の二十五名のうち、憲法学を専攻している人がただ一人といないということでおかしいと言っているわけじゃないんです。

 ただ、ホイットニーさんも今生存していれば、九十六条という改正規定を置いたでしょう、昭和二十一年、二十二年のときには子供たちは、中学にも行けない子供がいっぱいいたんだから、それを普通教育として行かせるようにしたけれども、現在、日本という国が九六%も高校に行っているんであれば、皆さんが普通教育として子供に教育を受けさせる権利を、憲法を改正しないのは、国民、あなたたちの政治家のせいじゃないかと私は言われると思うんですが、この点については文科大臣はどのようにお考えでしょうか。

林国務大臣 高等学校までの九年間は、高等学校になると専門教育も入ってまいりますが、普通教育という概念は当てはまっておるわけでございます。

 これは概念でございますので、先ほど申し上げましたように、全国民に共通の一般的、基礎的な教育ということでございますが、中身については社会状況の変化によって変わり得るものでございますので、まさに十年ぐらいごとに学習指導要領の見直しで、教育内容の改定を行っております。

 一方、普通教育と義務教育の関係というのは、現行法上、普通教育であればイコール義務教育かというと、立法政策でございますので、現行法上の義務教育である小中学校の段階の教育に普通教育というものが限定されるものではないわけでございますので、どの範囲を義務教育にするかについては先ほど申し上げましたように立法政策の問題であり、そういう意味では国民の幅広い理解が必要な事柄である、こういうふうに考えております。

串田委員 今、立法行為ということではありますけれども、高校を高度な普通教育という、本当にこれは、憲法がこういうふうに定められているから普通教育と呼べないという、その苦肉の策というのはわかるんですけれども、憲法でしっかりと高校まで子供が教育を受けることを認めていくという姿勢がないと、これはやはり、子供に対する教育行政というのがおくれをとってきているという事実になっているんだと思うんです。

 奨学金を学校卒業までに五百万円も借りて卒業していくという大学生が非常にふえている。そういう中で、年金もどれだけもらえるかわからない。五百万円も借金を背負って社会に出ているという子供たちに未来を夢見てくれというのは、これはやはり難しいんじゃないか。やはり教育行政がおくれているのは、この憲法第二十六条を、昭和二十一年、二十二年の教育の状況のままに放置しているという政治家の責任ではないかと私は考えているわけでございます。ぜひとも、この点について積極的な議論をしていただくことをお願いしたいと思います。

 次に、憲法第九条についてお伺いをいたします。

 防衛大臣も自衛隊員も憲法を遵守しているということは間違いないと思うんですが、防衛大臣や自衛隊が存在をしている憲法上の根拠規定は何条でしょうか。

小野寺国務大臣 これは当然、我が国を守るという、そういうもともとの基本的な自衛権の中で自衛隊というものが位置づけられていると私どもは理解をしております。

串田委員 これは真っ正面からの質問だったので、通告もなかったのでちょっと答えにくかったかもしれませんが、私は、これは憲法第六十五条の「行政権は、内閣に属する。」というところに入るのかなと思っているんですね。

 なぜかといいますと、行政権というものの学説的な定義は、立法、司法を除くもの、控除説というのが恐らく現在の通説ではないかと思いますので、警察や保安庁が憲法上規定がないのと同じように、自衛隊も、根拠の規定はどこかというふうに聞かれれば、この第六条の「行政権は、内閣に属する。」ということになるのではないかなと思うんです。

 そうしますと、今度は、憲法第七十二条で内閣総理大臣は行政各部を指揮監督するということになっているんですが、自衛隊の自衛権に基づく発動は内閣総理大臣の専権事項ということで構わないんでしょうか。防衛大臣にお聞きいたします。

小野寺国務大臣 まず、今、行政権のことに関しては、憲法六十五条ということで承知をしております。

 今言った自衛権の発動につきましては、これは当然、武力攻撃事態が発生した場合に関して、内閣そして国会の承認が必要だというふうに承知をしております。

串田委員 今、六十五条の行政権に入るというお答えをいただきましたが、憲法上は、行政権であるならば、七十二条で行政各部を指揮監督するという内閣総理大臣しか記載されていないのに対して、国会の承認も必要とするというのは、それは法律上制定をしたのでしょうか、それとも憲法上の要請とお考えでしょうか。

小野寺国務大臣 済みません、通告がありませんので、ちょっと相談をさせていただいてもよろしいでしょうか。

河村委員長 速記をとめてください。

    〔速記中止〕

河村委員長 起こしてください。

 小野寺防衛大臣。

小野寺国務大臣 恐縮ですが、もう一度質問をしていただけないでしょうか。

串田委員 自衛隊の憲法上の根拠規定は何条かということになると、これは六十五条に求めるしかないかなと私は思っているんですが、もしそうだとするならば、七十二条で内閣総理大臣は行政各部を指揮監督するということで、国会の承認というのが憲法上出てこないんですけれども、国会の承認が必要であるという安保法制の議論というのは、憲法では要請されていないけれども法律でそれを定めることにしたのか、国会の承認はそもそも憲法の要請であるのかというのは、どちらとお考えでしょうか。

小野寺国務大臣 まず、憲法六十五条において「行政権は、内閣に属する。」と規定されておりますが、国の防衛に関する事務は、従来より、一般行政事務として内閣の行政権に属すると整理をされております。

 防衛省は国家行政組織法上も国の行政機関として位置づけられており、部隊の行動という動的な面から見た場合の概念である自衛隊も含めて行政権に含まれております。

 そして、先ほど来の根拠ということでありますが、私どもとしてはこの国家行政組織法上に位置づけられているということですから、先生がおっしゃるように、六十五条において行政権の中に含まれるということは、それは行政権が内閣に属するということで規定されているとおりであります。

串田委員 憲法上の解釈論はそのようになると思うんですが、ただ、安保法制の中で、国会の承認が必要だという声が非常に政府からも高まってきて、これはシビリアンコントロールの点からもっともなことだなと私は思っているわけでございます。

 当初、自衛隊というのは、警察予備隊から今度は自衛隊になった。警察予備隊というのは警察権でございますので、六十五条の行政権、そして、それが内閣総理大臣の専権事項ということであったとしてもこれは全然問題ないんですけれども、この予備隊が自衛隊ということになって、これが非常に実力というものも世界的にも評価されるようになった中においては、これを国会の承認というものも必要ではないかという議論は、これは憲法の議論としてしていかなければならないというのが立憲主義のあり方だと思うんです。

 これは、このようなことを規定しない方がいいというような人もいます。しかし、それは、法治国家の中で、法律にするとぐあいが悪いからやめておこうという、そういう放置国家と同じなんだと私は思うんです。

 立憲主義というのは、現在の日本においては、成文憲法でございますので、日本国憲法にちゃんと文章を書き示して今の統治組織というものを明確にしていくというのが真の姿でございますので、私は、この自衛隊が内閣総理大臣の専権事項のままでいいのかどうかということをしっかりと議論し、シビリアンコントロールというものを憲法上明記していくというのが立憲主義の本当の真のあり方だと思いますので、政府におかれましても、この点を強く要望しておきたいと思います。

 最後に、先週金曜日の地方公聴会に続き本日の予算委員会で質問を許可してくださった河村委員長に深く感謝を申し上げまして、私の質問を終わります。

 ありがとうございました。

河村委員長 これにて串田君の質疑は終了いたしました。

 各大臣は御退席いただいて結構でございます。お疲れさまでした。

    ―――――――――――――

河村委員長 この際、三案審査のため、去る十六日、第一班岡山県、第二班静岡県に委員を派遣いたしましたので、派遣委員からそれぞれ報告を聴取いたします。第一班福井照君。

福井委員 岡山県に派遣されました委員を代表いたしまして、団長にかわり私からその概要を御報告申し上げます。

 派遣委員は、河村建夫委員長を団長といたしまして、理事津村啓介君、委員古賀篤君、原田義昭君、平井卓也君、平沢勝栄君、藤井比早之君、山口壯君、岡本あき子君、落合貴之君、稲富修二君、伊佐進一君、原口一博君、串田誠一君、そして私、福井照の十五名でございます。

 このほか、現地の会議におきまして元参議院議長江田五月君が出席をされました。

 去る十六日、現地におきまして、岡山駅周辺におけるコンパクトでネットワーク化された都市づくりの現状を視察し、関係者から説明を聴取いたしました。

 次いで、岡山市において会議を開催いたしました。

 会議におきましては、岡山県知事伊原木隆太君、両備グループ代表兼CEO小嶋光信君、特定非営利活動法人就労継続支援A型事業所協議会理事長萩原義文君及び玉野市長黒田晋君の四名から意見を聴取いたしました。

 まず、伊原木君からは、国による質の高い教育政策を展開する必要性、待機児童の増加に留意した子育て支援の充実を図る必要性などの意見が、

 次に、小嶋君からは、地域の公共交通が抱える課題、地域の公共交通の維持のための施策の必要性などの意見が、

 次に、萩原君からは、就労支援事業の一体化を図る必要性、就労継続支援A型事業所における就労困難者の自立支援を目的とした期間限定の受入れの必要性などの意見が、

 最後に、黒田君から、地方の一般財源総額の確保の必要性、地方創生の取組に対する支援の必要性

などの意見が述べられました。

 次いで、各委員から意見陳述人に対し、公共交通機関を継続させるために必要な国の支援、地域の特性に応じた障害者福祉のあり方、両備グループがバスの一部路線廃止届を提出するに当たり国や県等との関係でコミュニケーション不足が生じた理由、地域において感じられる保育の受皿拡大の実感、一括交付金の必要性、東京一極集中の是正のために在岡山の大学への若者の定着を図ることの重要性などについて質疑が行われました。

 以上が会議の概要でありますが、議事の内容は速記により記録いたしましたので、詳細はこれによって御承知願いたいと存じます。

 なお、今回の会議の開催に当たりましては、地元関係者の皆様を始め多数の方々の御協力をいただきまして、極めて円滑に行うことができました。ここに深く感謝の意を表する次第でございます。

 以上、御報告申し上げます。

河村委員長 次に、第二班菅原一秀君。

菅原委員 静岡県に派遣されました委員を代表いたしまして、その概要を御報告申し上げます。

 派遣委員は、私、菅原一秀を団長として、理事柴山昌彦君、田中和徳君、星野剛士君、逢坂誠二君、竹内譲君、委員石崎徹君、神田憲次君、佐藤ゆかり君、青柳陽一郎君、大西健介君、後藤祐一君、黒岩宇洋君、本村伸子君の十四名であります。

 去る十六日、現地において、株式会社ウェルビーフードシステムセントラルキッチン静岡を視察し、関係者から説明を聴取いたしました。

 次いで、静岡市において会議を開催いたしました。

 会議におきましては、一般社団法人静岡県経営者協会会長中西勝則君、前湖西市長・脱原発をめざす首長会議世話人三上元君、静岡商工会議所会頭酒井公夫君及び静岡大学人文社会科学部教授鳥畑与一君の四名から意見を聴取いたしました。

 まず、中西君からは、静岡県の経済指標の現状、静岡県の経済界における働き方改革の取組などの意見が、

 次に、三上君からは、脱原発推進の必要性、湖西市における地方創生の取組などの意見が、

 次に、酒井君からは、中小企業における生産性向上及び事業承継問題、観光促進のための無線通信網等インフラ整備の必要性などの意見が、

 最後に、鳥畑君からは、高等教育への公的支出を充実させる必要性、トリクルダウン型中小企業振興策からの脱却

などの意見が述べられました。

 次いで、各委員から意見陳述人に対し、中小企業における具体的な人材育成の取組、事業承継税制に対する評価、原子力発電の妥当性、幼児教育無償化優先の適切性、中小企業の採用支援に向けた取組、電力の安定供給のあり方、国立大学の運営費交付金拡充の必要性などについて質疑が行われました。

 以上が会議の概要でありますが、議事の内容は速記により記録いたしましたので、詳細はそれによって御承知願いたいと存じます。

 なお、今回の会議の開催につきましては、地元関係者を始め多数の方々の御協力をいただき、極めて円滑に行うことができました。ここに深く感謝の意を表する次第であります。

 以上、御報告申し上げます。

河村委員長 以上で派遣委員からの報告は終わりました。

 お諮りいたします。

 ただいま報告のありました第一班及び第二班の現地における会議の記録は、本日の会議録に参照掲載することに御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

河村委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

    〔会議の記録は本号(その二)に掲載〕

    ―――――――――――――

河村委員長 次回は、明二十日午前八時五十五分から委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。

    午後六時三十五分散会

     ――――◇―――――

  〔本号(その一)参照〕

    ―――――――――――――

   派遣委員の岡山県における意見聴取に関する記録

一、期日

   平成三十年二月十六日(金)

二、場所

   岡山国際ホテル

三、意見を聴取した問題

   平成三十年度一般会計予算、平成三十年度特別会計予算及び平成三十年度政府関係機関予算について

四、出席者

 (1) 派遣委員

    座長 河村 建夫君

       古賀  篤君   原田 義昭君

       平井 卓也君   平沢 勝栄君

       福井  照君   藤井比早之君

       山口  壯君   岡本あき子君

       落合 貴之君   稲富 修二君

       津村 啓介君   伊佐 進一君

       原口 一博君   串田 誠一君

 (2) 意見陳述者

    岡山県知事       伊原木隆太君

    両備グループ代表兼CEO           小嶋 光信君

    特定非営利活動法人就労継続支援A型事業所協議会理事長        萩原 義文君

    玉野市長        黒田  晋君

 (3) その他の出席者

    予算委員会専門員    石上  智君

    財務省主計局主計官   湯下 敦史君

     ――――◇―――――

    午後一時三十分開議

河村座長 これより会議を開きます。

 私は、衆議院予算委員会派遣委員団団長の河村建夫でございます。

 私がこの会議の座長を務めさせていただきますので、よろしくお願い申し上げます。

 この際、一言、委員団を代表いたしまして御挨拶を申し上げます。

 皆さん御案内のとおりでございますが、当委員会では、平成三十年度一般会計予算、平成三十年度特別会計予算及び平成三十年度政府関係機関予算の審査を行っておるところでございます。

 本日は、この三案の審査に当たりまして、国民各界各層の皆様方から御意見を承るために、当岡山市におきましてこのような会議を催しているところでございます。

 御意見をお述べいただく皆様方には、大変お忙しい中御出席をいただきました。まことにありがとうございます。どうぞ忌憚のない御意見を賜りますようにお願いを申し上げる次第でございます。

 それでは、まず、この会議の運営につきまして御説明を申し上げます。

 会議の議事は、全て衆議院における委員会議事規則及び手続に準拠して行い、議事の整理、秩序の保持等は、座長であります私が行うことといたします。発言される方は、その都度座長の許可を得て発言をいただきますようにお願いいたします。

 なお、御意見をお述べいただく皆様方から委員に対しての質疑はできないことになっておりますので、あらかじめ御承知おき願います。

 次に、議事の順序について申し上げます。

 最初に、意見陳述者の皆様方からお一人十分程度で御意見をいただき、その後、委員からの質疑に対してお答え願いたいと存じます。

 なお、御発言は着席のままで結構でございます。

 それでは、本日御出席の方々を私から御紹介を申し上げます。

 まず、派遣委員でございますが、自由民主党の福井照君、古賀篤君、原田義昭君、平井卓也君、平沢勝栄君、藤井比早之君、山口壯君、立憲民主党・市民クラブの岡本あき子君、落合貴之君、希望の党・無所属クラブの津村啓介君、稲富修二君、公明党の伊佐進一君、無所属の会の原口一博君、日本維新の会の串田誠一君、以上でございます。

 また、元参議院議長江田五月君の御出席をいただいております。ありがとうございます。

 以上の皆様の御出席でございます。

 次に、本日御意見をお述べいただく方々を御紹介申し上げます。

 岡山県知事伊原木隆太君、両備グループ代表兼CEO小嶋光信君、特定非営利活動法人就労継続支援A型事業所協議会理事長萩原義文君、玉野市長黒田晋君、以上四名の方々でございます。

 それでは、まず伊原木隆太君に御意見をお述べいただきたいと存じます。よろしくお願いします。

伊原木隆太君 岡山県知事の伊原木でございます。

 本日は、河村委員長を始め衆議院予算委員会の皆様方には、地方公聴会のため、晴れの国岡山にお越しいただき、本当にありがとうございます。

 本日は、岡山県の取組について、十分間で精いっぱい説明させていただこうと思います。

 初めに、平成三十年度の地方財政対策については、地方一般財源総額について前年を上回る額を確保していただき、深く感謝申し上げます。

 本県では、平成九年から行財政改革に取り組み、もともと六千人いた職員を四千人まで職員定数の削減をする、また、最大一〇%の給与カットを断行してきた経緯がございます。ようやく給与カットをやめることができたところでありますが、厳しい財政状況に変わりはないと思っています。

 少し気の早い話ではございますが、地方一般財源総額について、平成二十七年度水準を下回らないようにするルールが平成三十年度までとなっております。

 経済財政諮問会議等において、基金残高の増加をもって地方財政に余裕があるかのような議論がなされておりますが、徹底した行財政改革により捻出した財源を必死に積み立ててきたところであり、社会保障関係費の累増など地方の厳しい状況を御理解いただき、安定的な財政運営のため、引き続き格段の御配慮を賜りたいと存じます。

 本県では、教育県岡山の復活と産業の振興を本県発展の好循環のエンジンとして、子育て、医療、福祉、中山間地域活性化など、県民生活の充実につなげることにより、県民に成果を実感いただけるよう努めております。

 時間の関係から、教育県岡山の復活、産業の振興及び少子化対策の三点に絞って御説明いたします。

 まず、教育県岡山の復活についてでありますが、実は、知事就任当時、本県の学力状況は全国でも低位に位置しておりまして、私自身、学校現場を視察いたしましたところ、暴力行為や学級崩壊などで落ちついた学習環境が整っていない状況が見受けられました。例えば、小学校の学力調査は四十五位、中学校が四十二位、暴力行為の発生割合は四十七位、つまり全国ワーストでございまして、そこで、まずは落ちついて学習できる環境の確保が必要と考え、これまでにない視点に立った新たな取組を始めました。

 例えば、学校警察連絡室という組織を警察本部に設け、現職制服警察官が非常に状況の厳しい中学校に出向き、校内のパトロール等を行う、全国初の取組を開始しました。ありがたいことに効果てきめんでありまして、最初の一年で対象の二十校の非行率が半減いたしまして、四年間で県全体の非行率が半分以下になりました。本当に助かっているところでございます。

 学力の面でも、全国学力調査における全国平均との差が縮小し、特に小学校では、平成二十九年度に、調査開始以来初めて全国平均を上回ったところでございます。ただ、なかなか遅々として進んでいないところもございます。

 引き続き、子供たちの学習意欲の高揚、学習習慣の定着、落ちついて学習できる環境の整備などに取り組むとともに、豊かな語学力やチャレンジ精神などを身につけ、さまざまな分野で主体的に活躍するグローバル人材の育成にも取り組んでまいります。

 さらに、学校における働き方改革を進めるため、働き方改革プランを策定し、モデル校での実践、教員の事務作業を支援するアシスタントや部活動指導を行う指導員の配置により、教員の負担軽減を進めております。

 国においては、人づくりに政策の重点を置くこととされており、県としても大変心強く感じているところでございます。国には、引き続き、質の高い教育を実現するための施策や財政支援の充実をお願いしたいと思います。

 次に、産業の振興について御説明をいたします。

 本県は、温暖な気候、災害の少なさ、交通利便性など、企業にとって恵まれた操業環境を有し、これまで規制緩和や補助制度の拡充を進めてきた結果、五年前の知事就任以来、百三十件近い立地、約二千三百億円の投資と三千七百人を超える新たな雇用を創出することができました。

 地域のGDPの三分の二は第三次産業、サービス業が占めるわけでありますが、第三次産業の規模を決めるのは、御案内のとおり地域の人口と平均所得でありまして、その地域の人口と平均所得を決めるのは第一次、第二次産業の規模であるとよく言われております。岡山県においては、第一次産業はGDPの一%、第二次産業はGDPの約三割でありますので、これからも、岡山県を支える第二次産業、つまり製造業をしっかり振興していきたいと思っているところでございます。

 また、本県でも有効求人倍率が一・八七倍と歴史的な高水準が続いており、大変ありがたい反面、企業の人手不足が深刻な状況となっております。

 また、先般、平成二十九年の住民基本台帳人口移動報告が公表されたところでありますが、岡山県を始め四十の県が転出超過となっている中、東京圏は約十二万人の転入超過となっており、東京一極集中に歯どめがかかっておりません。国全体として人口減少が進む中で、東京一極集中の流れにも立ち向かっている地方の産業の振興、若者の還流、定着につながる政策に一層力を入れていただきたいと思います。

 ここで、直接予算には関係ないかもしれませんが、産業の振興に関連して、地域の実情に応じた効果的な土地利用について一言お話ししたいと思います。

 就任時には百ヘクタールを超える産業用地が余っておりましたが、企業誘致を進めた結果、現在、逆に産業用地の不足を心配している状況でございます。多くの企業誘致が実現したことは、アベノミクスによる効果があらわれてきたものかなと大変ありがたく思っているところでありますが、土地を自由に使えないことで誘致のチャンスを逃しているというのは非常に残念でございます。

 どう逃しているかというのが、インターチェンジ周辺など、企業の立地ニーズが高い候補地の多くが、岩盤規制で守られた優良農地が含まれているということで、工業用地若しくは物流倉庫として使えないということになっております。これは、排気ガスを抑える、事故を抑える、トラックドライバーが今足りない問題を考えても、非常に大事なことだと思っておりますので、こういったことについて地方が困っているということについて、どうぞお知りおきいただきたい、このように考えているところでございます。

 あと、時間が少なくなってまいりました。岡山県も少子化対策に取り組んでいるところでございます。子育て支援についても頑張っているところでありますが、とにかく子供を安心して育てられるためには、保育園待機児童問題、市町村とともに岡山県も必死で頑張っているところでございます。教育費の無償化、これはもう本当にすばらしいことだ、全世代型に切りかえる、本当にすばらしいことでありますけれども、そのすばらしいことをやることで、今、保育所に入れられなくて困っている人が更に不安になることがないように、ぜひ御配慮をいただきたいと思っているところでございます。

 まだまだ実は用意していたことはございますけれども、時間厳守をモットーに岡山県を運営している私、時間ぴったりに終わらせていただきたいと思っているところでございます。

 国の施策と協調して、岡山県、しっかり、住みやすい県にしたいと思っております。どうぞよろしくお願いいたします。(拍手)

河村座長 ありがとうございました。

 本当に、時間厳守いただきまして、ありがとうございました。

 次に、小嶋光信君にお願いします。

小嶋光信君 こんにちは、両備グループの代表をしております小嶋でございます。

 私どもは、西大寺鉄道から百八年、この地域の公共交通を守っております。そして、規制緩和が施行されたときに、将来の公共交通を憂えて、実は、いろいろ調べて、世界の先進諸国の中で地域の公共交通を民間にだけ任せてしまった国というのは日本だけしかない、公共交通のガラパゴスの国であるということを主張していきながら、和歌山電鉄、中国バス、井笠鉄道等々の、いわゆる規制緩和後に経営が悪化した地域の公共交通を再生していきながら、地域公共交通活性化法を宮沢洋一さんと、そして交通政策基本法、その前の交通基本法のときから三日月さんや交通関係の記者の皆さん方と一緒に、法律をつくって、地域の公共交通を守ろうという運動をずっと続けてきたわけでございます。

 その私が、実は、この二月の七日、両備バス三十六路線中十八路線、二月の八日に岡電バス四十二路線中十三路線の廃止届を出しました。これは、全国の地域公共交通を守るため、あえて問題提起をすることによって、地域の公共交通の実情というのをしっかり国に知っていただきたいという願いのためでございます。

 実は、ちょうどこのホテルの下のところを走っているのが両備バスの西大寺線でございます。私も今、バスに乗って、東山峠から歩いて上がってまいりました。お昼をこの沿線で食べたら、そこの店主が、何か知らないけれども、おいしいところだけとる競合会社があらわれて大変だね、そんなおいしいところだけとったら、赤字のところを支えていた両備さんはやれなくなるね、頑張ってね、私たち何でもやるから、署名活動でも何でもするよという温かい声援をいただいて、そして、験づけにといってサクラダイのすしをただで二貫いただいて、食べてまいりました。

 この路線は、西大寺鉄道からの私どもの伝統的な郊外線であって、繁忙時には五分、昼間時でも十分という、全国でも郊外線ではこれだけ十分な、充足された路線はございません。

 しかし、そういう路線であっても、少子高齢化でもって利用が減っていく中、この路線を維持するのに苦労しているところでございますけれども、突如として競合会社が参入をしてきました。それによって、供給過剰、三割もふえ、私どもの運賃よりも三割から五割も安い運賃で申請をしてきて、何とこれが認可をされてしまった。私が廃止届を出した二月の八日午前中に記者発表したら、ばたばたと、二月の八日の夜、本当に異例の認可が出ました。恐らく、認可史上こんなことはなかったというふうに思います。その辺のところをしっかりきょうは聞いていただきたい。

 実は、私どもは補助金をもらわないで、百八年間、一生懸命この地域の交通を支えてまいりました。そして、事業者として健全にやり、税金を払って国を支えるのが我々の務めだというふうに思っております。

 しかし、このような黒字路線を狙い撃ちにした進出が行われれば、実は、私どもの両備バスでいうと、三割の黒字路線でもって七割の赤字路線を維持して、補助金をもらわないで支えている。岡電バスの場合は、四割の黒字でもって六割のいわゆる赤字路線を支えている。実は、多くの地方の公共交通では、財源のない中を、また規制緩和になって実際には苦労している中を自分たちで自助努力で頑張っている。もう一つは、規制緩和の後、十分な補助をいただけなくなった地方自治体は本当になけなしのお金を搾り出しながら地域の公共交通の足を守っているというのが現状でございます。

 よく国は、特別交付税を出しているから地方は二割負担でしょうと。そんなのが現実だと思ったら大間違いでございます。現実には、そういう交付税をもらわないで支えている路線というものが大半でございます。

 しかし、日常生活としてはどうしても赤字路線というものは支えていかなきゃならないんですが、なぜ私がこの廃止届を出したか。実は、この種の路線のクリームスキミングというようなものを認めたら、もう地方の公共交通の路線網はずたずたになってしまいます。

 実のところは、去年の六月までは御当局は私の方に、このようなひどい申請は絶対に却下ですから、小嶋さん、安心してください、通ることはありませんということで安心をしておりましたら、七月か八月に、基本的には審議官も自動車局長も、それから担当の課長もかわり、急転直下、運賃の部分だけを是正して認可をするということになりました。私は、去年の十一月にそれを知って、御当局に対して、何でこんなことをするのということでお話をさせていただいて、それに対する十分な説明をしてくださいということをお願いしましたけれども、そのお願いは聞き届けられませんでした。

 全国でも、この種の競合が出てきたときは、当然のことながら、交通政策基本法の流れによって、国、自治体、市民そして交通事業者が実際にしっかり協議をして、必要の是非を問うていかなければなりませんが、そういう会は一度も持たれることはございませんでした。

 そして、この日常生活の足というものが非常に問題になった、そういう流れの中で、私どもの方としては、今後もこのような、いわゆるクリームスキミング的な路線の認可というのが行われると、どうにも地方の公共交通はネットワークとして維持ができなくなるんだということを国民の皆さん方も知っていただきたいし、きょうの先生の皆さん方も知っていただいて、地方の問題を御一緒に共有させていただければというふうに思っております。

 そして、私は、先ほどの再生を通じていろいろ、地域公共交通についてのことはあれですけれども、交通政策基本法という理念法ですが、その中に法的措置と財政措置という二項目を頑張って入れていただきました。

 今、地方の公共交通を支える財源は、先進国の中で最も劣悪な状況にございます。当然のことながら、国民が公共交通に乗るような施策を国が行うべきでありますし、また、いわゆるマイカーというものを抑制していきながら、公共交通に乗る、また、それを支えるための新しい財源をつくる、そういう努力というものをしていかなければ、いわゆる先進国として、環境や高齢化社会に優しい公共交通は支えられなくなると思います。

 それから、もう一つお願いがございます。もう一つは、先ほど言いました交付税の問題です。

 再生をしていくときに、特別交付税というものをいただきながら再生をしていくんですが、どこの首長さんたちも要らないと言うんですね。特別交付税は私どもとしては信頼できないと。なぜか。交付税の中に全部一緒くたになって入って、どこに入っているかわからない、聞いても教えてくれない、結果的には交付税は減額になるだけだ、だから、小嶋さん、特別交付税を前提にした再生のプランは書かないでくださいというふうに言われます。

 ぜひ、特別交付税という形で出されるならば、別枠にして、見える化をして、そして、地域が安心してその再生に使えるような御配慮をいただければ大変に幸いだというふうに思っております。

 きょうは、こういうふうな機会をいただいて、全国に向かってこの地域公共交通の問題というのをお話しできるチャンスをいただいたことを本当に心から感謝申し上げますとともに、この岡山の苦境というのは、全国みんながひとしく思っている、地方消滅のおそれを抱いている国民の苦しい声だというふうにお聞きをいただいたらありがたいと思います。地域公共交通なくして地方の再生というもの、創生というものはあり得ない。ぜひ、その辺のところをしっかりお聞きいただいて、国政の中に生かしていただくように心からお願いを申し上げます。

 ありがとうございました。(拍手)

河村座長 ありがとうございました。

 次に、萩原義文君にお願いいたします。

萩原義文君 本日は、このような機会をいただき、ありがとうございます。

 私は、障害者の就労について意見を述べさせていただきます。

 昨年の七月、岡山県の倉敷市で障害者の大量解雇が発生しました。資料がありますが、そのときに二百人の方が解雇されました。その際に、解雇された方々に対して、倉敷市、それから労働局、市の福祉の関係のところ、労働関係のところが一体となって支援をしました。その結果、四カ月で百七十人の行く先が決まっております。彼らは、障害者は、解雇されて、七月三十一日に解雇ですが、八月から雇用保険が適用されました。

 障害者には十二カ月の雇用保険が適用されます。そして、就職したら、残り、約半分ですが、お祝い金として出ます。ですから、所得保障、障害者が働くということで、A型事業は最低賃金が適用されます。これが所得保障です。それから、十二カ月という雇用保険、これが身分保障であります。それともう一つ、労災、余り表へ出ないですが、労働災害に入っております。ですから、途中で事故があったり、命の保障ということをしております。もう一つ、有給休暇を、A型事業、福祉の就労でありながら労働三法が適用されております。

 これに入っていたこと、A型であったことで彼らは、社会問題になりましたけれども、さまざまな支援を、福祉の支援、労働の支援で、今はほとんどの方が再就職したり、それから、A型事業だと約四%が一般就労へ行く、目的は一般就労ですが、四%の方が行っている。今回は一五%の方が一般企業へ行っているわけです。ですから、そういう意味では、彼らにとっては本当にいい支援をしていただいたと、倉敷市や県や行政機関、労働局に、障害者に関係する者として本当に感謝したいという思いであります。

 その中で、全ての会に出席してきて、思うことがあります。利用定員の多さであります。

 障害者が大勢で働く、そして障害者に最賃を保障する、一人十万円はかかります。そのときに、最大六十人の定員であると、施設外を入れますと百人の利用になります。余りにも無理な定員のつくりがしてあります。せめて二十人とか三十人。障害者は、大勢で働くことは、個別支援の関係からいっても無理があります。ですから、そういう意味では、定員のことを考えていただきたい。

 もう一つ、送迎ということ。ドア・ツー・ドアをあじさいではなさっていました。彼らが面接会や相談会で、家まで迎えに来てくれるのかと。要するに、地域に出て公共交通機関を利用して働くという地域のリハビリ能力を失っていました。ドアからドアに、ほとんどのところはやっておりません。

 働くということは社会に出ていくことだということで、送迎加算をなくしてほしいというお願いをしました。予算をつけてくれということはいっぱいあるんですが、なくしてほしいと。そうすることによって、地域が障害者を見ていく、目に触れる。障害者も社会で、小嶋社長さんじゃないですけれども、バスを利用していく。大変意義のあることだというふうに思っております。

 それから、私どもの日本国憲法第三章の中で、国民の権利と義務の中に、職業選択の自由ということと、それから勤労の義務、もう一つは納税の義務ということ。

 A型事業に来た人たちは納税を果たしております。A型事業とB型事業というのは同じ就労です。しかし、B型事業は非雇用です。この方々に何の保障もありません。工賃に至っては、平均月額一万五千円です。国の出すお金はA型もB型も一緒です。ですから、B型も含めて労働者にしていただきたい。まず最低賃金を認めていただきたい。雇用保険に入らせていただきたい。それから労災を適用してほしい。この方々が町へ出るときに、交通機関で、通勤で事故に遭ったら、それと有休の権利を取得させてほしい。B型はなかなか大変だ、そうしたら、労働の監督署の減額特例を利用してやっていただきたいという思いがあります。全ての人が労働者になってほしいという思いがいたします。

 それから、その中で、実はA型事業は、労働者を雇用するということで特定求職者の助成金があります。

 今回、この四月に特定求職者の開発助成金を賃金に充当してはいけないという通達がありました。しかし、特定求職者の開発助成金というのは、障害者の賃金の一部に相当するということでハローワークが出しているお金です。ぜひこれを認めていただきたいということをお願いします。

 それから、A型事業所で、生活困窮者や引きこもり、就労困難者を利用させていただきたい。これは三年とか期間を区切って利用させていただきたい。どうしてか。一般的に、行くのはしんどいです。しかし、生活困窮者の制度はありますが、本人に対する所得保障はありません。

 もう一つ、高齢者の就労。企業で働いた高齢者が定年を迎えたときに、次のステージとして障害者の就労の世界で働ける仕組み。定年前に、半年ぐらい前からジョブコーチ、それから障害者の権利条約、差別解消法、障害者基本法とか、合理的配慮、発達障害の特性などを学んでいただいて、定年後に、家にいてじゃなくて、地域に出てきて、障害者も地域の人です、ぜひそこで活躍していただきたいという思いがあります。

 幾つかお願いをいたしましたけれども、私の意見は以上でございます。

 ありがとうございました。(拍手)

河村座長 ありがとうございました。

 次に、黒田晋君にお願いいたします。

黒田晋君 玉野市長の黒田でございます。

 本日は、河村委員長を始め衆議院予算委員会の皆様方には、地方公聴会のため岡山までお越しいただき、ありがとうございます。また、こうした発言の機会をいただいたことに心から感謝とお礼を申し上げたいと思います。

 まず、我々が暮らす玉野市ですが、岡山県の南端中央部に位置し、瀬戸内海国立公園区域を含む海岸線を有した人口六万一千人の港町であります。瀬戸内の美しい海岸線、そしてそれを見渡す山々、日本全国で日照時間二位を誇るなど、自然環境に恵まれた温暖なところです。

 本市の中心市街地にある宇野港は、クルーズ船の寄港港として、また、高松を始め、四国や、アートで有名な香川県の直島など、周辺島々を結ぶ人流港として海上交通の要衝を担ってまいりました。

 また、本市は、三井造船株式会社の創業地であり、造船業や精錬業など製造業を中心とした物づくりの町として発展してきました。

 最近では、瀬戸内海の島々を舞台に三年に一度開催される現代アートの祭典、瀬戸内国際芸術祭の会場の一つとなるなど、宇野港を舞台に、海外からの観光客を中心に大変なにぎわいを見せております。

 さて、本題でございますが、平成三十年度総予算案について、私から三点ほど意見を述べさせていただきます。

 一点目は、地方の一般財源総額の確保についてでございます。

 平成三十年度の地方財政対策におきましては、子供、子育て等の社会保障関係経費や、まち・ひと・しごと創生事業費等の歳出を適切に計上すること等により、一般財源総額について前年度を上回る六十二・一兆円を確保いただくとともに、臨時財政対策債を前年度比〇・一兆円抑制するなど質の改善も図っていただき、大変感謝を申し上げます。

 その一方で、予算編成過程におきましては、地方の基金残高に関してさまざまな議論があったと仄聞しております。

 玉野市は、岡山県下十五の市の中で、平成の大合併時に合併をしていない二市のうちの一市でございまして、平成二十八年度末の基金残高は二十三・九億円で、標準財政規模に対する割合は一六%程度と相当低い状況にあり、大規模な災害が一度あれば枯渇するような財政状況にございます。

 また、合併をしていないもう一つの市である笠岡市も、基金残高は十五・五億円で、標準財政規模に対する割合は一二%程度と大変厳しい財政状況と伺っております。

 一方、合併された団体におかれましては、合併算定がえや合併特例債など合併に伴う財政措置により、基金残高は相当程度余裕を持って財政運営をされており、合併算定がえの終了に伴い、基金を取り崩しながら財政運営をされていくのではないかと想像をしております。

 現在、本市においては、厳しい財政状況を打破していくため、市民センター、公民館の集約化、消防出張所の集約化など、市民の皆さんに御理解をいただきながら行財政改革に取り組み、また新たに、老朽化した市民病院、給食センターの建設経費の財源を何とか捻出すべく、市民の皆さんに御協力をいただいているところであります。

 ぜひともこの地方の厳しい財政状況を皆様方に御理解いただき、特に、合併していない団体こそが基礎自治体の財政状況の実情を端的にあらわしていると私は考えておりますので、委員会の皆様方におかれましては、ぜひとも各地域の合併していない団体の財政状況を御確認いただき、地方の基金残高が増加していることをもって地方財政に余裕があるかのような議論や、各地方団体の行財政改革の意欲をそぐような議論がなされないよう、ぜひとも、次年度以降も、地方の一般財源総額の確保に御尽力をいただくとともに、合併していない団体への財政的配慮を何とぞよろしくお願い申し上げます。

 二点目は、地方創生についてでございます。

 地方財政対策におきましては、まち・ひと・しごと創生事業費を引き続き一兆円確保いただくとともに、予算案におきましても、地方創生推進交付金を前年度と同額の一千億円を確保いただき、全国の市町村における地方創生の実現に向けて各種の措置が講じられていることに改めて感謝を申し上げます。

 玉野市におきましては、地方創生推進交付金を活用させていただき、たまの版生涯活躍のまち、いわゆるCCRC構想を推進しているところでございます。

 今年度、本構想を推進する事業主体として、地元不動産業者と国内旅行業最大手の株式会社JTBを選定し、本市の地域資源である海を最大限に生かしながら、ヘルスツーリズムをきっかけとしたCCRCを推進していくこととなりました。

 高齢者だけでなく、若者、地域住民、障害を持つ方々など、誰もが楽しみながら健康になれるまちづくりを推進し、移住者の増加につなげてまいりたいと考えておりますので、引き続きの御支援を賜りたいと存じます。

 また、当市では、企業版ふるさと納税制度の活用も積極的に行っておりまして、物づくり玉野を支える人材不足に歯どめをかけることを目的といたしまして、六十年の歴史と伝統のある市立玉野商業高等学校を四月から校名変更し、玉野商工高等学校として機械科を新設いたしました。

 この事業の創設に当たっては、三井造船株式会社を始めとし、市内にゆかりがある多くの企業から多くの援助をいただいております。実習で使用する機械や設備等の財源を捻出すること、そして、地元企業の協力によって、資金調達のほか、実習施設の提供や地域の産業を学びの場とするキャリア教育の充実を実現することができ、本市の取組は、産官学が強力に連携した地方創生の好事例として高く評価をいただき、内閣府の企業版ふるさと納税のパンフレットや政府広報にも取り上げていただいているところであり、本年四月から新入生を迎えることとなりますが、本当の意味でのスタートを切ることになりますので、開学に向けてしっかりと準備を進めてまいります。

 こうした、地方が創意工夫を発揮して地方創生に取り組めますように、今後ともの御支援をいただければと存じます。

 三点目は、地方公共交通の維持、確保についてでございます。

 この件については先ほど小嶋会長からもお話がありましたが、国による旅客自動車運送事業の規制緩和に伴い、路線バス事業の新規参入が許可制となりました。これは、事業者間で適正な競争原理を働かせ、我々利用者にとっては選択肢が多様化し、サービス水準の向上を図るという趣旨があったものと我々は伺っております。

 ただ、現状として、当市においてもその影響を大きく受けることとなりました。もし、こうした制度が継続すれば、地方に在住する高齢者の通院、買物、市民の通勤通学など生活に必要な交通手段としてかけがえのない生活の足を失うこととなり、生活に多大な影響を与えることとなりますので、かかる事態を招くことがないように皆様方の強い御協力をお願いいたします。

 終わりに、ことしは瀬戸大橋ができて三十年になります。岡山県下でもそうしたイベントが開かれますが、瀬戸大橋ができて三十年ということになりますと、我々玉野市にとりましては、宇野と高松を結ぶ連絡船が廃線になってちょうど三十年目ということになります。

 本当は、自分の町の紹介をするときに、二十四時間眠らない港、四国へ向かうところの玄関口というフレーズを必ず入れておりましたが、今はそれができなくなりました。何とか事業者が一隻五便の体制で頑張っていただいておりますが、一部の利用者は利便性が向上したのかもしれませんが、地方に在住する住民の生活が失われてしまうという大変な状況に今なりつつあります。

 委員の皆様におかれましては、このような状況を十分に御認識いただき、こうした問題は、岡山県に限らず、全国各地で起こり得る問題であると思っておりますので、特段の御配慮をお願い申し上げ、私からの意見陳述とさせていただきます。

 まことにありがとうございました。(拍手)

河村座長 ありがとうございました。

 以上で意見陳述者からの御意見の開陳は終わりました。

    ―――――――――――――

河村座長 これより委員からの質疑を行います。

 質疑の申出がありますので、順次これを許します。平井卓也君。

平井委員 自由民主党の平井卓也でございます。

 陳述人の皆さんにおかれましては、それぞれの立場で大変貴重な御意見を伺うことができまして、いろいろと考えさせられました。また、伊原木知事とも小嶋社長とも黒田市長とも、もう私、本当に長年いろいろとお世話になっておりまして、いろいろな御縁もあります。

 そんなことで、きょう、皆さんいろいろ問題提起をいただいたんですが、恐らくこれから各委員がそれぞれ役割分担して質問しないと皆さんの意見を全てカバーすることはできないな、そんなふうに思っています。

 まず、共通して一つ問題提起となっていたのは、公共交通機関の重要性と今後のあり方、これは地方にとっては、私、対岸の高松ですけれども、同じような問題は当然あります。琴平電気鉄道も経営がそんなに楽なわけではない。

 しかし、高齢者の方々がますますふえる中で、どうしてもやはり自家用車というのには限界があるわけです。タクシー等々は、需給調整もあり、それなりに地域では落ちついているんですが、今、小嶋会長の話をお聞きすると、完全に自由競争ということで認可がされてきたというようなことだと思います。

 一方で、宇野と高松、今、これは支援をして何とかもたせているというような状況なんですが、こういう流れでいくと、今回の新規参入の問題は別にして、高齢化と人口減少がどんどん続いてきたときに、要するに、事業としての継続性の問題というのは、どちらにしろあるだろう。ですから、そういう意味で、これからの事業継続性を考えながら、どういうスキームでやるのが一番今後安心できるのかというようなことをやはり考えなきゃいけない時期に来ているんだと私も思います。

 そこで、要するに、なかなか、これから公設民営であるとか補助金を出すというのは確かにいろいろな問題もあるんですね。大変苦労しながら、理屈を立てながら、何らかの形で支援をするということがあるんですが、地域の公共交通の重要性に鑑み、それぞれ、例えば県、それから市、そして民間事業者として、話し合うことは今後協議会でできると思うんですが、国に対してどのような形を一番要望していくのか、公設民営というのは本当に可能性としてはあるのか、そのあたりのところを伊原木知事、小嶋会長、そして黒田市長にちょっとお伺いしたいと思います。

伊原木隆太君 平井先生におかれましては、私、経営者時代にも勉強会で先輩としていろいろ教えていただいたわけでございまして、これは本当に大変難しい問題だと思っております。

 広域自治体としてそれぞれの市町村とふだん一緒に仕事をする中で、常に足の確保、地域住民の皆さんの生活の移動の確保ということは問題になり、話題になっているところでございます。これは、中長期的に対応すべき問題と、今回のように、起きている問題に対してどう対応するかというところは、きちんと分けて考える必要があるのかなと思っております。

 残念ながら、私がここで、この問題はこう分析するべきで、こういうふうにすれば答えが出るというような、若しくは、要望はこの一点のみというような明確な答えを持っているわけではございません。議会の場でもいろいろ悩みながら、若しくは庁内でも議論をしながら考えているところでございまして、先生おっしゃられましたように、今、現に岡山県でも、例えばバス路線について、合併前の市町村で完結している路線については基本的に市町村が責任を持って、市町村をまたぐ路線については県も国のスキームを利用させていただき、また、国の範囲を少し超えて、県でも別のスキームをつくって補助をさせていただいているところでございます。

 両備ホールディングスさんの路線も、我々の資料によると四つありまして、そのスキームを使って維持をしていただいているという路線もあるわけですけれども、今回のことにつきましては、もう本当に数日前の発表でございまして、昨日、黒田市長を始め四市の代表の方々が県庁に来られて、この協議の場の設定の要望などをされました。私どもも、とにかく緊密に連携をとり合って、地域の皆さんの足の確保ということをどのように実現していくのか一緒に考えましょうというお話をしたところでございます。ぜひ、それぞれの皆さんのお考えをお伺いして、我々きちんと対応していきたい。

 済みません、お答えになっていないかもしれませんけれども、我々としてもしっかり頑張っていきたいと思っているところでございます。私どもの思い、若しくは困っているところについて適宜お話を聞いていただくというのが現在お願いしたいところでございます。

小嶋光信君 大変大事なことを聞いていただいて、ありがとうございます。

 先ほど、先進国の中で日本は公共交通のガラパゴスだということをお話しいたしました。基本的には、先進諸国は公設民営というやり方を一つとりながら、交通権というのを認めて、広く交通弱者というものが移動に困らないような方策というのをとっているところでございます。

 しかし、十数年前、日本はそれに逆行してしまった。本来は社会的にきちっと守っていかなきゃならないものを、規制緩和をすることによって、競争して負けた会社は潰れなさい、もうからない路線はやめなさいという法律に変えてしまった。全国で三十二社の公共交通の会社が倒れ、三割以上の地域生活路線というものが失われていったというのが現状でございます。

 私はそれを憂えて、公設民営を実証するために、津エアポートラインというところで実証をし、そして和歌山電鉄、そして中国バス、井笠鉄道の倒れた後の井笠バスカンパニーを通じて、どうやったらいわゆる公でもって一番能率のいい再生ができるかということの実証をしてまいりました。

 そして、そのために、地域公共交通活性化法、交通政策基本法という、簡単に言いますと、外堀を埋めていきながらやってまいりましたが、今後の公共交通を守るためにどうしてもやっていかなきゃならないことは二つあるというふうに思います。

 一つは、道路運送法を始めとする交通関連法、これが今のような形をずっととっていくと、いつまででも需要が足りない。需要がたくさんあったところに供給をふやしていくという競争の条件はいいんですが、地方は需要がほとんどない。そこに供給がいっぱいあるのに需給調整の規制を廃止してしまったら、過当競争になって倒れるのは当たり前でございます。これは、経済原則として当たり前のことを理解せずに、実は首都圏の問題も地方の問題も一緒にして規制緩和にしてしまった。

 もうそろそろこの法律を変えていかなきゃいけない。これだけタクシーがあふれ返って生活保護以下の賃金になり、そして、観光バスは二倍にもふえて多大な事故を起こし、人命が失われる、多くの地方路線が失われているという事実のままに、その古い法律をそのままにしていること自体が異常であるというふうに思います。

 したがって、確かに前の法律は、供給者により有利な、既得権益ということが叫ばれましたけれども、有利な法律であったでしょう。しかし、今度は利用者の利益という形で、今度はそれを支える事業者のことは何も考えられない法律になってしまった。そうしたら、利用者の利益は、移動しようとするときに全部事業者が倒れてしまったら、利用者の利益になるんですかと。

 本当に、地方における利用者の利益というのは、運賃が安いとか、要するに、競争してお互いにモグラたたきをするというのではなくて、安心した路線網というのを築くということが基本になるのではないか。したがって、この法律を、供給とそれから利用者と、ともに成り立つような法律に切りかえていかなければ、今回のような化け物は幾らでも出てくるだろうというふうに思っております。これが一つでございます。

 それからもう一つは、日本の今一番の問題というのは、やはり高齢化社会における福祉の問題、先ほどもございました。しかし、公共交通を利用することによって、実は、マイカーから公共交通にやると、メタボが八割減るんですね、八割です。そして、歩行困難、それから老人性の痴呆の発症というものが四分の三近く抑えられるというデータというものが出ております。いわゆる御老人たちを施設の中に閉じ込めるのではなくて、自由に社会の中に一緒に共生することによって、そのツールの公共交通を使うことによって、実は、福祉社会というのを実現する一つの大きな方策ができると思います。

 おまけに、これからの先進諸国は、環境ということに敏感でない国は恐らく尊敬されない国になると思いますが、これが尊敬されるようになる。

 したがって、私が、交通政策基本法に書き込んだ財政措置というのは、実は一個一個の、つまらないということは申しませんけれども、一個一個の財政措置を論ずるのではなくて、この国の少子高齢化という社会の中でどんどん利用者が減り、補助金がふえていくような今の仕組みの中でもやっていけるような交通関連税というものをきちっとつくらなければいけないと思っています。

 この交通関連税については、私は、前の道路目的税と同じように、マイカーの皆さん方はちょうどきせるのように、子供のときから十八歳までは公共交通を使う、七十を過ぎて使わなくなってしまったら公共交通を今度は使う、しかし、真ん中の胴体のところは自分で自由にいわゆる移動して、マイカーで移動しております。この両末端だけを公共交通が自分たちで支えろと言われたって、一番大事なところの収入がないんですから、これは無理でございます。

 したがって、道路目的税でも、旧来の目的税であったもの、二兆五千億円の約一〇%というものを今度は交通目的税のような形にして根本的に支える方法、これを先進国型のようにやることによって、老人にも環境にも優しく、次の時代、次の時代にいわゆる地域をきちっと支えられるような財政基盤というものをつくることこそが、この国が本当に長く地方も元気でいられる大きな理由になるんじゃないかというふうに思っております。

 そういうことで、ぜひ、いろいろなことで御勘案いただければ幸いだと思います。

黒田晋君 平井先生、宇高航路の問題が出て以来、大変御相談に乗っていただいてありがとうございます。

 今の御質問に端的にお答えさせていただくんですけれども、公共交通と我々はずっと言い続けているんですけれども、公共交通とは、やはりそこに住んで暮らす人たちにきちっと移動ということを保障するということだと思っていまして、我々、市であれば、コミュニティーバスであるとかコミュニティータクシーを走らせて、玉野市内での移動は保障ができておりますが、これが市域を超えて、あるいは県域を超えてということになると、正直、政策的な部分だとかテクニカルな部分はわからないんですけれども、そこの考え方で、公共交通として、やはり住んで暮らしていく人たちに移動の手段が保障できるような方策、まさに平井先生がおっしゃったような公設民営のような方向性を今後考えていく必要が私はあるのではないかと思っています。

平井委員 きょうは大変大きな問題提起をしていただいたと思います。これは、予算委員会に限らず、国土交通委員会ほかでやはり議論をしていかなきゃいけない問題で、どの地域も抱えている問題だと思います。そういう意味で、我々大変大きな宿題をいただいたと思っておりますので、またこれからもいろいろと皆様方の御意見を聞かせていただきたいというふうに思います。

 もう時間が余りなくなってしまったので、あと伊原木知事だけにちょっとお話を聞かせていただきたいんですが、岡山市は政令指定都市ということで七十万、そして岡山県。

 神奈川県と横浜市の関係とかいろいろ見ていると、やはり知事としても、政令指定都市があるエリアの知事というと、権限と予算の問題等々で、本来だったらもっとやりたいところがあるんだけれどもちょっとなかなかできないとか、そういうところもあるのではないだろうかなというふうに想像することが一点。

 それと、物すごく企業誘致等々で実績を上げられております。教育問題も頑張っておられますが、我々、もともと民間企業の経営者だったということでいくと、国もそうなんですけれども恐らく地方自治体も、KPIの設定の仕方というのもやはり民間企業みたいにすっぱり割り切れるものではないと思うんですよね。先ほど、サービス産業のこと、その下支えの製造業の重要さを言われましたが、一方で、サービス産業の生産性が極めて低いということがやはり国の弱点だとも言われています。

 そういうところで、民間出身の知事として、そのあたりの自治体のガバナンス、KPIの設け方、そして今後、国と地方自治体の関係において県と政令指定都市の関係、このあたりで何か率直な御意見を聞かせていただきたいと思います。

伊原木隆太君 政令市を抱えている県としてどうかということでございます。

 私自身、経営者として一緒に勉強させていただいているときに、一般論として、それぞれの県で政令市を抱えている方が難しいという話をよく聞いておりました。実際、今こういう立場で仕事をさせていただいて、そういう構造はあるということを感じております。

 私の場合、大変ありがたいのが、当の大森市長、非常に知識経験が豊富でありまして、非常に一緒に頑張ろうというスタンスでやってくださっているので、私自身その弊害というものを感じずにこの五年間やることができましたけれども、もし自分が会社の社長だとすると、一番大きなところが独立に動く場合、それはやりづらいだろうということは率直に思います。本当に大森市長に感謝するのみでございます。

 生産性ということで端的に申し上げますと、役所の生産性も上げなければいけないと感じていますし、頑張ってくれていますし、あと、サービス産業の生産性、まだまだ上げる余地がありますし、上げなければいけないと感じています。ここは我々の腕の見せどころかなと思っております。

 以上です。

平井委員 きょうは本当に短い時間で、またぜひ皆様方の意見を聞かせていただきたいというふうに思います。

 本日は、どうもありがとうございました。

河村座長 次に、岡本あき子君。

岡本(あ)委員 岡本あき子でございます。

 私は、宮城県仙台市が地元の衆議院議員でございます。きょうはよろしくお願いいたします。

 冒頭に、二〇一一年の震災の折に、県を挙げて県民の皆さんからも全面的に支えていただいたことに感謝を申し上げたいと思いますし、特に、私は政令市の仙台市ですので岡山市とも、前は市会議員をしておりましたので岡山市さんとも連携をさせていただきましたし、また、ハーフマラソンつながりで総社市さんに大変お世話になっておりました。感謝を申し上げたいと思います。

 公共交通の件については、今さまざまお聞かせいただいて大変勉強になりました。仙台市でも、過去にタクシーが規制緩和で過剰にふえて、タクシーを規制する逆特区を申請できないかというのを国とやりとりさせていただいて、逆特区はだめだという結論になったんですが、やはり、地元においての需給バランスをどう見るのかというのは非常に大事だと思っております。

 ちょっと、後ほどお時間があれば小嶋社長にも聞かせていただきたいんですが、その前に、障害者福祉の関係でぜひお聞かせいただきたいと思います。

 どうしても、福祉制度の中でいくと、国の基準にのっとってということで、規模だったりとか中身については、それにのっとらないとできない部分はあるんですけれども、私も、自治体にいる中で、地域に合わせた、実情に合わせたやり方を国が認めてくれる、逆に、そういう意味での規制緩和というのがあってもいいのじゃないかと。質を下げるということについては賛同はしませんけれども、規模だったりあるいは提供する対象者だったり、そういう部分について、自治体独自で地域に見合った制度があってもいいのではないかという思いを持っております。

 現場にいらっしゃる立場で萩原さんから、もし、地域特性という部分、それからもう一方で、今、働き方改革で生産性向上という言葉が出ますけれども、障害者の方々も納税者に回ってもらうというのは本当に大事なことだと思っています。その意味で、ハンディキャップを持っている中での生産性の評価というのを一律押しつけられると、どうしても、ハンディがあるということも踏まえて、障害者の方々が逆に少しでも納税者に回れる、そういう仕組みというのは非常に大事だと思いましたので、現場の声をもう一度お聞かせいただきたいと思います。

萩原義文君 障害者が働くということ、十年前まではほとんどありませんでした。A型利用というのは千人もいなかったです。今や六万人いるわけですね。そして、その方々が、じゃ、働けなかったのかということです。能力がなかったのか。能力は誰が決めたのか。要するに、客観性とか公平性の決め方って今やっているのでしょうかということをいつも思います。

 誰が働けないと決めたのか。実は、IQとかそういうもので決まるものではありません。地域の支援と育てた環境とそれから学校。岡山県は、特別支援学校、昨年は二人に一人、五〇%以上の方が就職なさいました。六年前は二〇%ありませんでした。連携協議会をつくって、実習は全て受けますと。

 そして、我々が言うのは、まず一般雇用に行ってください、その後で我々A型が支えますということでやりましたら、昨年でも約半数が就職なさいました。百名が一般雇用へ行きました。七十名がA型です。最賃を得て、一時間七百八十一円を得て六時間働いたら約十万円になるんですよ。必ず変わります。我々もそうですね。十倍の所得を得たらどれだけ変わるか。

 そして、やはり身分保障してさしあげることが私たちの役割じゃないでしょうか。全ての人が労働者になれるというのは、一生に一回もそのような身分になれたことがない、なって、その結果、評価していけばいいんじゃないんでしょうかというふうに私は思っております。はなからだめだめだめという形をとってきているのが今の福祉政策であるというふうに思っております。

岡本(あ)委員 ありがとうございました。

 続きまして、伊原木知事と黒田市長にお伺いしたいんですが、今、経済政策パッケージで幼児教育の無償化の話がありましたが、一方で、やはり待機児童の問題が起きております。

 国は、政府の方の見方とすれば、幼児教育の無償化が待機児童に直接数として余り影響はないんだという見方をしているんですが、地方六団体からは、やはりそれに対しては非常に懸念を表されていると思います。そういう意味で、待機児童の解消という部分について、どちらも大事だというのは重々わかっている上で、待機児童という見通し、予測としてはどういうふうに思われるのかが一点。

 もう一つは、長年地方団体から要望が出ていたのは、まずは子供医療費、単独事業でやっていらっしゃる子供医療費について、少子化のことを考えると、子供の命、健康を守る意味でいくと、乳幼児医療費又は子供医療費助成に関してやはり国が一定程度責任を持つべきだ、あるいは国保の減額措置、まずそれはやめてほしい、そういう要望をいただいていたと思いましたので、その件に関してお考えがあればお示しください。

黒田晋君 まず、玉野市の状態だけ申し上げますと、待機児童、待機の園児はおりません。できるだけそうした状態にならないようにということで、ただ一方で深刻なのが、保育士さんの確保がままならない状態になっておりまして、保育士が十分確保できないと、いずれはそうした状態になっていくんだろうというふうに思っております。

 それから、まさに言おうとしたことを委員からおっしゃっていただいたんですけれども、幼児教育の無償化であるとかそうしたことが議論されております。委員から御紹介がありましたとおり、我々にとっては、玉野市でいうと子供医療費を義務教育終了まで市独自でかさ上げをして展開しておりますけれども、それによって、国保会計においてペナルティーを受けるという状態で、市長会を挙げてそのペナルティーを外してほしいという訴えをして、今やっと一歩前進したんです。そういう中では、幼児教育の無償化よりも、逆に子育てをされている立場の方々から言わせると、医療費の助成制度のスタンダードをもっと幅を広げてほしいという声の方が実情ではないかというふうに我々は受け取っております。

伊原木隆太君 岡山県内では、岡山市、倉敷市を中心に待機児童が結構いらっしゃるということであります。

 これは、私は的確な御判断だったと思いますけれども、岡山市が待機児童の定義を見直した結果、生活者目線でそれはそうだよなという定義に見直した結果、実は隠れ待機児童のような形で随分困っていらっしゃる方がいらっしゃるということがわかった。これは私も、そういったことの報告があるまでは、そこまで岡山市で待機児童の問題があるということを認識しておりませんでしたので、非常に、みんなで問題を新たに共有しているところであります。

 そういった状況でありますので、今回の方向性とすれば、福祉を全世代型にする、私はすばらしい方向性だと思っておりますけれども、そのすばらしいことをやる過程で待機児童の問題が悪化しないように、ぜひきちんと、制度設計なり財源の手当てをしていただきたいということは強く願っているところでございます。

 それで、子供医療費とどちらを優先すべきだったのかというのは、県内でもそれぞれ強く思われている方がいらっしゃいまして、それぞれの思い、大変強いものがございます。私として、どちらを先にすべきだったかということはなかなか申し上げにくいわけですけれども、それぞれの切実な思いを酌み取っていただければなと思っているところでございます。

岡本(あ)委員 優先順位というのは非常に難しいとは思うんですけれども、ずっと長年自治体から要望されていた最重要のテーマの一つだということは、この子供医療費助成は大きいということは、私としては受けとめさせていただきたいと思います。

 それから、知事にもう一つお聞かせいただきたいんですけれども、経済の活性化の点で、一つは、固定資産税なので一般市町村にはなるかと思いますが、新たに中小企業で設備投資をした場合に固定資産税の減額を自治体で判断できるという一方で、地元の中小企業の皆さんからすると、いや、そこよりもというか、それはありがたいんですけれども、要は、人を雇う上での社会保険関係の負担がどうしても厳しいと。

 そういう意味で、どうしても非正規が、サービス産業の部分は非正規に頼らざるを得ない実態があるという中で、今、正社員化に変えていくよ、労働者の環境も守っていくよ、その上で、地元の中小企業が元気になるという意味でいくと、この社会保険料の負荷という部分に対して、地元の経済界、これは小嶋社長の方が詳しいのかもしれないので、もしコメントがあればお聞かせいただきたいと思います。

伊原木隆太君 固定資産税については、県よりも主に市町村ということで、余りきちんとしたお答えになるかどうかわかりません。

 企業が投資をする、若しくは雇用する際の負担をできるだけ小さくしていただくというのは、経済活性化の上で大変ありがたいことだと思っています。その際、どういうものについてインセンティブを与えるかで、元経営者として、経営者の判断がそれぞれ変わってまいります。

 平時の場合どうすべきかというのはまた別の議論かもしれませんけれども、現在、大変人手不足であって、生産性を投資によって向上させなければいけないというときには、足りないはずの人を雇いやすくするという方向よりは、投資を促進させて、一人一人の能力を上げていく、生産性を上げていくという方向の方がいいのかなということを、これは知事の立場というよりも元経営者の立場で考えますけれども、それにまつわる非常にいろいろ難しい問題があろうかと思いますので、この程度で勘弁していただければと。

小嶋光信君 お聞きいただきましてありがとうございます。

 我々地方では、一番困ったことは、例えば固定資産税でいうと、過去の高いところで高どまっているんですね。評価は変えてくださっているというのは、申請をするとやってくれるんですが、結果的には非常に、バブルのころまでに需要のあった形で、高どまりした形で固定資産税の評価がされている。それに対して各市町村は、それに対するいろいろな設定をやっていますが、やはり税収は減るので、なかなか余り積極的ではない。やはり、企業活動がいわゆる収益を生むような形でもって、そういうものの税負担というものがあるようにすることが好ましいことだというふうに思っております。

 それからもう一つは、やはり法人税その他について、非常に高いということですね。収益の効率のいい大都市と、本当に手間のかかった経営をしてなけなしの利益を上げてきたのと、同じような法人税のいわゆる適用があるというのはいかがなものかなと。基本的には升が違う。例えば、私どもは岡山でも仕事をしておりますし、東京でも仕事をしております。岡山で一の収入を上げようと思ったら、東京でもって四十の収入が上がります、一人の人間で。それぐらい実は生産性が違うんですね。

 そういう流れの中で、そういうふうな負担というものは地方の企業にとって非常に重い。そうすると、やはり地方に来て仕事をしようというふうには思わなくなってしまう。地方に来た方が税制的に安い、そして個人も生活がしやすい、そして移動もしやすい、そういういろいろな大都市にはない魅力というものをインセンティブとして地方につくっていくことによって、地方に企業が集まり人が集まる、やはりそういう仕組みをつくっていかなければならないと思います。

 アメリカを見てみればわかると思います。あの非常に高い不動産のニューヨークには、ほとんど大企業の本店なんてございません。本店を置いてくれたところの地方自治体というのは、いわゆる法人税だとか事業税というのを来てくれたらぐっと低くすることによって、いわゆる大都市から地方への移動を促進することによって、大都市だけの繁栄ではなくて、地方もひとしく繁栄をするような仕組みをつくっていらっしゃる。

 だから、日本も早くそれをやらないと、地方創生だとかそういうことも大事ですが、その中でもやはり一番大事なのは、地方に来た方が産業が仕事がしやすい、企業が自分たちのいわゆる収益、キャッシュフローというものが高まってくる、そういうようなビジネスセンスというものを税制の中に入れていかないと、これからの地方のいわゆる自立、経営というものができなくなっていくんじゃないかというふうに思いますので、ぜひ、いろいろ先進国の事例も研究になって、思い切った対応をしていただければというふうに思っております。

岡本(あ)委員 ありがとうございました。

 本当に、地方創生という意味でいくと、企業も働く場も、それから子育てしやすい環境も、地方の方が付加価値が高いよというのができることこそメリットだと思っています。

 もう一点、知事に。

 今、森林環境税という新税の創設という話があります。これは林業の活性化というところにもなるんですが、ただ、私も、地元に森林を抱えているところでいきますと、大手の、外から来て林業だけ稼いで、それこそ稼げるところだけ稼いで立ち去られるというのは全く地方にとっては意味もない中で、地元からすると、農家の方々、林業も持っていて農業もやっている、そういう里山全体というところに対する期待感も強いと思うんですが、この林業の活性化ということとCO2削減というのが一番メーンの税の目的になってはいるんですけれども、それだけで、あと現場の自治体としてはいいのかどうか、もうちょっと里山の際まで広げて、地元の農家、地元で林業をやっている方々が元気になるような使い道ということも必要なのではないかと考えているんですが、もし、中山間部を抱えている自治体として御意見があればお聞かせください。

伊原木隆太君 森林環境税について、せっかくやるのであれば、いい使い方をしてほしいというのは、これはもう当然であります。

 あと、私どもも気にしておりますし、知事会でも議論になっておりますのが、多くの都道府県が都道府県の独自財源として森林関係の税をもう既に持っているということで、そことのきちんとした整合性をとれるようにしてもらいたい。

 また、よかれと思って市町村の皆さんにお渡しして、それがきちんと使われないということにならないように、ぜひうまく制度設計をしてもらいたいなと考えているところであります。

岡本(あ)委員 ありがとうございました。

 地域交通の件については、先ほどいただいた御意見を踏まえて、過疎地、あるいは足がない高齢者の方々、あるいは障害者の方にとって本当に必要な公共の交通のあり方ということはぜひ持ち帰らせていただきたいと思います。

 あと、岡山県でいきますと、ジーンズの町があったりとか倉敷のブランド化だったり、非常に魅力がある都市だということにとても敬意を持っておりますことをお伝えして、私からは以上とさせていただきます。

 ありがとうございました。

河村座長 次に、津村啓介君。

津村委員 津村啓介でございます。

 きょうは、四人の意見陳述人の皆さん、お時間をありがとうございます。そしてまた、他の同僚議員の皆さん、岡山にようこそお越しいただきまして、ありがとうございました。

 平成三十年度の予算を今審議しておりまして、大変重要な局面を迎えている中で、平成二十九年度に起きたさまざまな社会問題にしっかり光を当てていこう、それがこの地方公聴会の意味で、地方公聴会、平成二十年から始まっているものです。ともすれば、北海道、沖縄、福島といった、ある種特殊な事情を抱えた地域、あるいは非常に過疎の進んだ地域というのがこれまで会場として選ばれてきた経緯があるんですけれども、今回、この岡山というのは、ある意味では、人口とか、先ほど教育の話もありましたけれども、日本の平均的なというか、第一次産業、第二次産業、第三次産業、それぞれしっかり頑張っている日本の縮図みたいなところもございますので、そういう意味で、これから述べさせていただきます地域公共交通、それからA型事業所の問題、まさに全国の、これから必ず出てくる課題を先取りして問題が表に出てきた。

 逆に言えば、ここでしっかり全国の方々にも注目していただきながら、国として、あるいは自治体として、事業者として答えを出していかないと、より一層、日本全国で大きな問題を引き起こしてしまう、そういう危機意識に立って、二つの問題をちょっと掘り下げていきたいというふうに思います。

 地域公共交通の方ですけれども、これはまさに人口がふえている地域、十五年前、十六年前の道路運送法の規制緩和のころは、日本全国、一応、人口はまだ全体としてはふえていた時期ですし、特に大都市圏の人口増加の中で、消費者目線に立った規制緩和ということが趣旨だったわけですけれども、今、日本全国、人口が全体としても減っていますし、減っている地域自体がふえてきている、そういう中で、この岡山というのはちょうどそのはざまにあるんだろうというふうに思います。

 岡山市自体は、中四国で広島に次いで二番目の人口増加をまだ頑張っているところでありますけれども、その周辺部は多くが人口減少という中で、それをつないでいるのが路線バスということですから、まさに、人口がふえている時代の規制緩和というものを十五年間変えずに来た、しかも、全国一律で来たことの矛盾というのがそのつなぎ目の岡山県南で今起きているというのは、非常に時代を象徴するテーマだなというふうに思います。

 そして、もう一つのA型事業所、障害者の大量解雇の問題ですけれども、こちらもまさに、この十数年の障害者自立支援法、総合支援法の流れが時代と少しずれてきてしまったことのあらわれでして、人口が減って財政が厳しい、だからこそ、今の政権与党の言い方で言うと一億総活躍、私たちの言い方で言うとコンクリートから人へという、一人一人が輝かなければこの国は成り立たないよ、そういう時代認識のもとで、A型事業所という新しい工夫が、ある意味では非常に社会に受け入れられてきたんだと思うんですけれども、残念ながら、もう一つの最近の政治の風潮であります、非常に今の景気回復を優先して、ある意味では、将来の財政を中心に課題を先送りしてきた結果、今回のこの大量解雇は、昨年の四月からの、少し経営を厳しく見よう、給料に充ててはいけないよ、補助金を充ててはいけないよという大きな政策転換が余りにも拙速だったために現場を混乱させている。

 そういう意味で、先ほど萩原さんから御紹介があったとおり、A型の事業所が岡山は全国で一、二を争う数あるというところですので、その岡山で象徴的な大量解雇が発生した、こういうふうに理解をしております。

 この二つにつきましてそれぞれ深掘りさせていただいて、来週には、ぜひ予算委員会、中央の場でも、この二つのテーマ、安倍総理にも見解を伺っていこうというふうに思っております。

 まず、小嶋さんに伺うんですが、もしかすると厳しい質問になるかもしれないんですけれども、やはり今回、利用者の方々の間には大変な戸惑いが広がっていると思うんですね。事業者の間ではいろいろな議論がこの半年、一年あったんですけれども、一般の利用者の方はびっくりしていると思うんです。

 先ほど、国、県、市との間で必ずしも十分な意思疎通の場が持てていなかったというお話があったんですが、なぜこうしたコミュニケーション不足が生まれたんでしょうか。

小嶋光信君 実は、昔は、こういう新しい路線の申請があったときには公聴会というのが開かれていたんです。そして、みんなに広く知らしめて、こういう新しい新規参入がありますよ、それに対しては意見はどうですかというものが規制緩和でなくなっちゃったんですね。みんなが知る機会がなかった。

 もちろん、今回の件は、記者に対しては、こういう申請が出ましたよということは出ましたが、新聞記者の皆さん方は、一〇〇%同じ路線を走って運賃を半分でやるという、こんなばかな申請は通るはずがないということで、新聞紙上で一切取り上げなかったんですね。したがって、市民には全く知られないまま今日に来たというのが実態でございます。

 これを何とか知らせなきゃいけないということで、私どもはあらゆる努力をして、国、それから地方局、自治体に対して、協議会を持ってくださいということを五年間言い続けました。しかし、一回も開かれることはございませんでした。

 したがって、この実態をどうやって知っていただくことが一番いいのかということの私の結論は、やはりみんなと一緒に考えてみようと。その考えてみるきっかけを今度は問題提起として出していくことによって、地域の皆さん方も一緒になって、自分たちの地域公共交通というのは自分たちで守っていくんだという意識を持っていただきたい。事業者に任せておけばそのうちに何とかなるさ、自治体が補助金を出して何とか支えてくれるんじゃないかというよりは、実は本当に一生懸命考えるべきだと思います。

 私の方にもいっぱいいらっしゃいます。うちの路線はどうなるんだろう、心配だ、不安だと言うから、不安なら乗ってください、ぜひ公共交通に乗ってください、乗って支えてくださいと。そうしていけば必ず、地域には公共交通が走るようになる。

 基本的には痛みを伴うような感じを伴うかもしれませんけれども、私はことしの正月に、新聞に自分の年頭の所感を発表いたしました。その年頭所感というものの中に、基本的には、この私の差し上げた資料の中の、「サステーナブルな公共交通の復活を目指して!」という、二枚つづった「ご参考」というものの一番下です。ここに、規制緩和が行われたこと、今地域公共交通で起こっていること、そして、最後にこう書いたんですね。「今年は、道路運送法の「規制緩和の弊害」を抜本的に改革すべく、ショック療法を施して、サステーナブルな公共交通の復活を目指し、地方公共交通の未来を明るくしていきたい。」と。

 今、このままでいってしまったら、ほとんどなくなっちゃうんです、地域の公共交通。半分はなくなると思います。しかし、今ここでみんなが一生懸命考えてくれれば、実のところは将来があるというふうに思っています。

 そして、日本は残念ながら、問題が起こらないと本気で考えてくれない。先生方も同じだというふうに思います。一生懸命言っても、馬耳東風とは言いませんけれども、聞き流されている。しかし、問題が起こると、一生懸命その問題に向かって考えてくださる。

 今回のことは、そういうことで、自分たちの地域は自分たちで守るという意識というものをしっかり持っていただくために、あえて、実は厳しい廃止届という形を出しました。廃止をすることが目的じゃございません。不安を持っていただくことが目的ではない。それよりも、真剣に自分たちの公共交通というもののあり方というのを考えていただいて、将来に憂いのないものにしていただく一里塚にしていきたい、そういう思いで、今回の私の提案の仕方になったということでございます。

 いっぱいいっぱい話してくると、実は、今津村さんが言われるように、私は、たくさんたくさん、日本じゅうの難しい地域公共交通を再生して、小嶋さん、自分の地元では路線廃止するのかというので厳しい声が飛んでくるのかと思いました。ほとんどありませんでした。

 私の出したホームページには六千五百を超えるいいねがついて、そして、あらゆるところから連絡があったのは、ようやったな、よく勇気を持って言ったね、本当に地方の困っていることをよくやったというふうに、応援をしてくれている声が多数でございます。

 ですから、私は、国民は確かに賢かったというふうに思います。自分たちの地域のことをしっかり心配していたんだけれども、今までどおりで、こんなものでうまくいくのかしらと思っていたところに、私のが出たことによって、本当に、私のホームページを読んでいただいたら、ああ、これはやはりやらなきゃいけないんだというふうに思ってくださっているというふうに思いますので、ぜひ、このいわゆる不安というものを今度は逆にばねにして、希望に変えていただきたい、どこかに希望の党というのがあると思うんですけれども、いただきたいというふうに思います。

津村委員 全国で毎年九千キロから一万キロの路線バスが廃止になっているという状況でもありますので、これは岡山だけのテーマではないというふうに思います。

 そういう中で、今、問題提起だ、本当は廃止なんかしたくないんだということですから、小嶋代表の思いの中には、今後の半年間の、国、県、市、きょうは十五人の国会議員が与野党から来ていますし、伊原木知事にも来ていただいている、そして地元の黒田市長にも来ていただいているということですから、ある意味ではそろっているわけですけれども、一定の環境が整えば廃止届の撤回も選択肢としてお持ちだと思うんですが、端的に伺いたいんですけれども、どういう条件を整えればいいんですか。

小嶋光信君 実は、この資料の中にもう一つ、私が、二月の十二日、国交省の石井大臣にパブコメを出したものがございます。こういうことが起こったのを御存じですか、そして、このままほっておけば大変な問題になりますよということでお出しをいたしました。その一日後か二日後に、国は、いわゆる協議の場ができれば国も協力するというお話が出ました。国が協力ですか。許認可権限者はどなたですか。協力ではなくて、自分が主宰していかなければならないことだと思います。

 これは、交通網形成計画ができ、再編実施計画というものが交通政策基本法ができた後にできましたが、今これに取りかかっているのはたった三百の自治体だけです。千七百のうちの三百です。そして、後、これが再編実施計画に至るまでは基本的には権限の移譲が行われません。

 行われない間に国が協力だというようなことを言っていて、地域の公共交通の足が守れるんですか。自分たちが主体的に協議の場を要請し、地域の声を聞き、そしてどうあるべきかということをやっていかなきゃならない。だったら許認可権を外しなさいと、基本的には。許認可権を持ったまま地方の方に全部振ってしまうというのはいかがなものかというふうに思っています。したがって、この矛盾を、先ほども言ったように、ぜひ解いていきたいというふうに思っています。

 そして、先ほども言いましたように、道路運送法を始めとする、現状に合わなくなった法案というものに対しても審議をしていくような見通しもつき、そして地方に対する、交通に対する税制的な措置みたいなものについてのいろいろなことの、地方が自由にある程度財源を確保できるような道というものが見えてくると、私は、基本的には、先ほども言いましたように、自立して自分たちの地域の交通というものをできる体制というものが見えてきましたから、それは廃止をするというような形ではなくていいと思います。

 ただ、単純に、今みたいな、協議の場をつくる、こう書いてあったんですね。協議の場をつくり、これから交通網形成計画の策定をし、そして云々と書いてある。何年かかるんですかと。現実、その間は自由な競争で野放しになって、そして、このような、今回出してもいけないような認可がされていく。

 では、これも法律に認められているものかというと、実は認められているものじゃございません。これは、道路運送法六条によって国交省はいわゆる認定をしたということを言っておりますが、これは形式が整っていれば認可をするという法文です。しかし、実際には、それに触れないもの、今度のように、競争者があったり、不当な競争が起こったり、健全な発展を阻害するような競争条件になったものは、それはそのほかの段階でもってきちっと審査をされるべきです。

 その辺のところもきちっと明らかになっていって、きちっと今後も地方の公共交通というものが健全な競争ができるようになれば、私は、自分たちの路線がどうのこうのというんじゃなくて、日本じゅうの地域公共交通に携わっている人たちや一緒になって苦しんでいただいている地方自治体、そして市民の皆さんたちも安心した地域公共交通網をつくる基盤ができたというふうに思いますので、そういうときには喜んで、この廃止届というのを撤回させていただきたいというふうに思います。

 私は、今回の廃止届を出したのは、自分たちの事業の路線を守るために出したわけじゃございません。今の日本の全体の流れを考えたときに、なぜこんな矛盾した法律を、また、法律を解釈する人たちが、論語読みの論語知らずという言葉がありますが、法律読みの法律知らずみたいな裁定を出して地域を苦しめるのか。そんなことについては、絶対断固として許せないというのが私の本来の気持ちでございます。

津村委員 事業者のサイドとやはり利用者のサイド、両方が国を動かしていくんだと思うんです。

 黒田市長、ちょっと時間が押してきたので端的にお願いしたいんですが、これから法定協議会で、特に利用者目線に立ってどういうことを訴えていかれるのか。あるいは、我々国会議員に、もうこれは数カ月で答えを出さないと、少なくとも今回の路線問題、半年後ということになっていますから、端的に我々がやるべきことを教えてください。

黒田晋君 個別具体的に、今何かどうこうという話ではないんだと思っています。我々としても、今回起こった問題提起に対して、少なくとも、先ほど平井先生にもお答えしたとおり、我々は、玉野市民の方々が移動する手段というのを絶対に確保していかなければいけないという思いがあります。

 その中で、今言う、昨日は岡山県にお願いに行き、国土交通省あるいは運輸局の方へはまだお話ができておりませんが、関係団体としっかり話をして、最終目的である、玉野市民の方々がきちっと移動が確保される、そうしたことで皆さん方にいろいろな提案をしたりお知恵をかりたいというのが今の現状です。

津村委員 それでは、萩原さんと、もし時間が許せば伊原木さんに、同じ質問ですけれども、A型事業所の問題ですね。事業所の数が多い岡山で起きたというのは象徴的でもありますし、もしかすると、事業所の数が多いから、行政の数は限られているので十分に目が届かなかったのか。その辺の、特に県と市の行政のあり方。

 今回、このことが起きた後で、厚労省の方から、開業時の監督を強化しろということが出ていますけれども、開業時についてはこれからの話ですからいいんですが、現実に今働かれている方がたくさんいらっしゃって、非常に不安を抱えていらっしゃると思うんですけれども、今後、国からは通達があったり、四月にまた見直しがあったりということのようですけれども、県や市のレベルでどういう工夫ができるのか、するべきなのか、それぞれのお立場で一言ずつお願いします。

伊原木隆太君 私、福祉から就労へということは本当に大事だと思っておりまして、クリントン政権でもブレア政権でも成功した事例、ぜひ岡山県でもと思っている人間でございます。

 きのうも、A型事業所の皆さんに対して県主導のセミナーが行われたところでございまして、ぜひ、それぞれの事業所より経営面を磨いていただいて、採算を改善していただくということが、事業所にとっても、そこで働かれている皆さんにとっても非常に大切なことだと思っています。

 県としてもしっかり取り組んでいきたいと思っています。

萩原義文君 今回の大量解雇の問題は、制度が変わったから起きたことではありません。まだ実際に運用になっておりません。ただ、改善計画を出しなさいというところで、もう解雇したんですね。これは経営者と銀行が、経営能力と銀行の与信能力がなかったということだと思います。

 そして、岡山は人口比に対して一番多いです、働いている障害者が一番おります。ということは何か。イオンに行く人が、イオンに行く障害者が物すごく多いんです。彼らはバスを使って、大量解雇の起きたところはドア・ツー・ドアでした。ですから、職業能力も成長しないんですよ。やはり、公共交通を使う、乗りかえをする、時間をかけて、それがリハビリなんですね。そのことを怠った、怠ってきたということはすごく大きいと思います。

 それからもう一つは、経営能力といいますけれども、余りにも、先ほど申しましたように、定員数、利用者を一事業所で、どんなに考えても二十人か三十人を百人から、それはやはりという。それはなぜか。実は、自立支援法のときに、雇用型、非雇用型、非雇用はないということをやってきた。しかし、途中で、自立支援法はよくない法律だ、そして、廃案にします、障害者総合支援法に変わりましたと。中身は何が変わったんですか。難病がふえただけです。

 ですから、制度は、実は最良の法律をつくったのに、未熟な制度のままなんですね。だから、やっと昨年の四月に出して、この春から、あるいは三年かけてきちんとしていきましょうということを言っているのに、だから、まだ手直しをする段階だということを私は思っております。

津村委員 わかりました。

 時間が参りましたので終わります。大変重要なテーマなので、来週も予算委員会で取り上げていきたいと思います。

 ありがとうございます。

河村座長 次に、伊佐進一君。

伊佐委員 公明党の伊佐進一です。

 本日の地方公聴会におきまして質問の機会をいただきましたこと、まず御礼申し上げたいと思います。

 そしてまた、四人の陳述人の皆様には、お忙しい中でこうして足を運んでいただきまして、ありがとうございます。

 私、大阪から参りましたが、私の母親は岡山県の備前の出身でございまして、私、半分岡山になっておりまして、そういう意味では、ふるさとに帰ってきたつもりで質問をやらせていただきたいというふうに思っております。

 本日、萩原陳述人に、現在の障害者の就労であったりとか、あるいは継続支援A型と言われる事業所の現状について、さまざまお伺いを、より深掘りしてやらせていただきたいと思っておりますが、その前に、伊原木知事に一つお伺いしたいと思います。それは、先ほど来議論になっております待機児童と無償化の問題でございます。

 この無償化については、私の地元の大阪の、地元の十数万人規模の市町村では、日本でこの規模で初めて全て無料にしたんです、幼稚園も保育園も。所得制限もありません。何が起こったかというと、若者がどんどん集まってきたんです。町が物すごく活性化してきました。

 いろいろな現場の声を聞きますと、例えば、保育料が無償になった、子供が大学に行くときにこれを使いたい、非常に助かっている、あるいは、子供に習い事をさせられなかったけれども習い事がさせられるようになった、こういうような声もありまして、この無償化について、知事の方も大事な取組だと評価をしていただいております。

 その上で、待機児童と無償化の優先順位はどうなんだという議論がずっと、今、予算委員会でもございまして、自公政権では、これは両方大事なんだ、車の両輪なんだという言い方で進めております。

 もっと厳密に言えば、無償化自体は、これは消費税財源でやる話ですので、つまり、二〇一九年の十月以降じゃないと財源が出てきません。その後の話なんです。待機児童の問題は、これまで、自公政権になってからずっとこの受皿づくりをやってまいりました。これまでで五十九万人の受皿をつくって、さらに今、子育て安心プランでまた三十二万人つくろうとしている。当然、この三十年度予算にも盛り込まれています。

 そういう意味では、待機児童問題も更に我々最優先の一つとして取り組んできたわけですが、また、保育士さんの話も今、黒田陳述人からもしていただきましたが、処遇改善についても、この五年間、自公政権の間で、一〇%処遇改善をする、あるいはキャリアを積んだ方には四万円上乗せをするというさまざまな措置をやらせていただきました。

 その上でお伺いしたいのは、こうしたさまざまな受皿づくり、あるいは処遇改善の効果が地元でどうなのかどうか、地域までちゃんと届いているのかどうか。つまり、受皿が実際拡大しているのかどうかという点を伺いたいと思います。

伊原木隆太君 国においては、子育てしやすい国づくりということで、大変いろいろ努力をしていただいていると、本当にありがたく思っているところでございます。

 これは岡山県自体が保育所を運営したり監督をしているわけではなくて、市町村で頑張っている。私ちょっと、大森市長、伊東倉敷市長に成りかわって、見えている状況をお知らせするというようなことになるかもしれませんけれども。

 例えば、定義の変更によって急に待機児童がふえた。最初に変えられた年は七百二十九人の待機児童になったと記憶いたしておりますけれども、そこから、さあということで、その七百二十九人分をカバーする、それを上回る新たな受皿を岡山市役所として用意されたわけですけれども、それをまた上回る需要が出てくる。ああ、預けられるんだということで、需要を喚起する面もございます。

 それはそれで、諦めているよりも手を挙げるというのはいいことだと思うんですけれども、その中で、もう預けなければ本当に仕事をやめざるを得ない人と、預けられるんだったら預けると助かるわという人、それぞれ切実さ、度合いは違うと思うんですけれども、需要を喚起した結果、本当に預けられなければ仕事をやめなければいけない、生活が回らなくなるという人がもし預けられなくなったら、これは本当に残念なことであります。

 なかなか、あれだけ努力をされる、県としても、保育士・保育所支援センターというものを設けまして、潜在保育士の掘り起こしに一年前から努めているところでありますけれども、ありとあらゆる関係者が奔走をして頑張っていても、まだ、現在の見通しとして、待機児童がなくなることはないだろうということを、岡山市長、先日の記者会見で見通しを述べられていました。

 ですから、ぜひ、よかれと思ったことで待機児童がふえる、困る人がふえるということにならないような制度設計、我々もしっかり頑張ってまいりますし、どうぞよろしくお願いしたいと思います。

伊佐委員 大変重要な御指摘をいただいたと思います。

 我々が目指すべきものは、決して、ただになったから、ほんなら預けようかという世界ではありません。例えば、自分は本来、ゼロ歳から二歳の間は自分の胸に抱き締めて子供を育てたい、預けるよりは自分で育てたい、そのために少しでもサポートがあればそれができるんだというのであれば、そのサポートをしっかり国としても自治体の皆さんと連携しながらやらなきゃいけないというふうに思っておりますので、ここはしっかりと現場に即した子育て支援をやってまいりたいというふうに思っております。

 それでは、萩原陳述人にお伺いしたいと思います。

 陳述人が今回用意していただいた資料にもございますとおり、就労継続支援A型、この事業所数は、全都道府県で見ても、岡山県、人口当たりは第二位で、利用者数でいけば全国都道府県で第一位。本当に、今、人口当たり、A型の非常に充実しているところだというふうに思っております。

 まず冒頭伺いたいのは、以前、萩原陳述人が、就労継続支援A型が広まれば、地元が、地方が元気になるんだ、こういうことをおっしゃっていたと思うんですが、この思い、この御趣旨について伺いたいと思います。

萩原義文君 私は、自立支援法ができたときに、これは、疲弊する地方の中小零細企業が障害者がいることによって生き返る、そういう制度だと思いました。障害者が働いて、それが、さまざまなお金が地方に来ます。そして、中小零細も、仕事はあります、だけれども、もうからない。しかし、障害者が入って働くことで支援費というものが来る。そして、生産活動で障害者の賃金を払う。そうすることで、地方の中小零細あるいは農業、現実に、岡山で、農業分野で三十事業所、約四百人が働いております。

 そういう意味では、東京が最も少ないです。最も少ないですね。岡山は、障害者が職業を選べる。あの仕事がしたい、この仕事がしたい、職業選択の自由がある県だということです。そして、通える、通っていける。

 そういう意味では、県もここで応援事業を初めてしていただきます、行政機関が。それまでは、全てB型に対して、工賃増額、工賃倍増とかさまざまなことをお金を入れてやってまいりました。初めてA型に、経営者に対してセミナーをしていただいた。それは、最も大事な制度だということを、この制度は、障害者にとって、あるいは地方にとって大事な制度だということを御理解なさった。

 マスコミの方もそうです。最初は、悪しきA型、どうしてこんなあくどいことをと。しかし、賃金の未払いは岡山ではありません。法律違反もありません。あじさいをかばうわけではありませんが、実は、たくさんの方が働ける、あるいは引きこもっていた方が働く機会を得たということを御理解いただきたい。

 だから、先ほど申しましたように、引きこもりだとか生活困窮者が、期間限定でいいから、そこで働く機会を得たら勤労者になっていけるという思いを強くしております。

伊佐委員 これは今、どの地域も、もちろんこの岡山もそうだと思いますが、人材不足、さまざまなところで言われておりますが、先ほど農業の例を挙げていただきました。こうした地方の状況を見て、担い手不足に貢献することもできるし、また、もちろんそれぞれの障害を持たれた方の生活への支援にもなる、また生きがいにもなるということだと思います。

 その上でお伺いしたいのは、先ほど、二百人解雇されたという事件について、通常であれば四%ぐらいの就労率が一五%まで、これは、それぞれの関係機関が一生懸命御努力いただいて一五%までやっていただいたんだと思います。つまり、本気でこれを考えればここまでできるんだという一つの私は証左じゃないかというふうに思っておりますが、その上で、当然、A型の大きな使命としては、いかにこの障害者の皆様に就労していただくかということだと思います。

 三年前に国の制度が変わりまして、どれぐらい就職していただいたか、定着実績によって、六カ月以上働き続けられたかどうか、何人働き続けられたかによって加算をつけるということになりました。

 ただ、実際は、就労して、就職すれば終わりじゃなくて、その後いかにしっかりとケアしていくか、アフターケアというのが非常に大事だというふうに思っておりますが、その点の支援についてお話しいただければと思います。

萩原義文君 定着支援ですね、これは、就労継続、移行であるとか、B型であるとかA型であるとか、一般企業に行って半年間たったら加算をつけますよということです。

 特にA型については、目的は、一般企業へ行くことが目的であります。大きな目的であります。そういう意味では、そのために何をするか、アセスメントをきちんとする、そして個別支援計画を立てる、実はその職員が必要なんです。

 これは、実は、企業で働いていらした方々がおやめになって、定年退職した後に、職業指導員とか生活支援員という、企業のスキームを、企業で養った能力をこの就労事業所へお出しいただきたいという思いが、六十五を過ぎた人が障害者に支援していただくと、大変成長するという思いがあります。

 それから、定着ということは、実は大事なことですが、企業は障害者をコンプライアンスという形で雇用します、僕は、障害者が働くというのはコンプライアンスではないと思っています。財産だと思っています。彼らがそこで、企業にどれだけ利益を差し上げられるか、あるいは、彼らが地域で財産だと、企業でも財産ですよと、その発想で見ていただきたい。それぐらいの能力は持っています。それを、能力を引き出す能力がないだけのことだというふうに感じております。

伊佐委員 そのためには、本当にきめ細かい支援、行政からの支援というのも必要じゃないかと思っております。

 定着支援という観点でいえば、この三十年度予算に、まさしくこの予算から、定着支援をしっかりと評価しようということで新しく制度をつくらせていただいておりますが、この執行に当たってもしっかりときめ細かな対応が必要だということを今感じさせていただきました。

 今、どのA型の事業所も、経営を本当に頑張っていらっしゃるところ、厳しいところはやはり厳しいという状況の中で、いただいた資料の中にもございましたが、岡山県内で事業収益のみで賃金を払えるところというのは今二割のみという状況になっております。基本的には、自立支援給付金、この補助金については、事業所の運営には充てられるけれども賃金には充てちゃだめよというルールになっていると思います。

 今現状、平均賃金についてもどんどん減少しておりまして、平成十八年の平均賃金は十一万三千円だったものが、今、平成二十七年では六万七千円ちょっとという状況になっております。

 去年四月からこのルールが変わって、さっき申し上げたような、原則、賃金の支払いについては自立支援給付金、この補助金は使えません、禁止ですということになった影響をどう考えていらっしゃいますか。

萩原義文君 先ほど申しましたように、特定求職者の開発助成金というのは、賃金の補填の趣旨なんですね。それを賃金に充てたらいけないということ自体が矛盾しているというふうに思っております。だから、訓練等給付は、それは確かに運営に充てなきゃいけません。が、雇用開発助成金であるとかあるいは雇用調整金、それは柔軟に使わせていただきたいという思いがあります。

 そして、実は、賃金が下がっているという表現がありましたけれども、それは全国であります。全国で平成十八年が十一万、これは非常に少ない時代、そして福祉工場時代の賃金であります。岡山県は平成十八年は七万六千円ぐらいです。現在も七万五千円ぐらいで、ほとんど下がっておりません。ですから、それは福祉工場の時代も算入して計算している、だから、A型ならA型で計算したらそんな下がり方はしておりません。

伊佐委員 一つ、少し具体的なものを聞かせていただきます。食事提供についてです。

 A型のそもそもの位置づけは就労支援、もちろんこれは大きな目的の一つですが、それだけではなくて、やはり福祉的な側面もあるというふうに思っております。単なる職業訓練、それだけが目的じゃないと。その一つとして大きな議論になるのが、この食事提供じゃないかと思います。

 この年末年始に当たっての報酬改定の中で、食事提供加算をどうするか、今現状あるものを廃止するかどうかという議論がずっとありました。その中で、大きな議論は、当然、在宅でいらっしゃる方、家にいらっしゃる方というのは食事は自分たちで見ているわけですから、このバランスをどう考えるのかという議論がございました。

 その中で、結果、廃止は見送ったということになりました。見送ったというのは、正確に言えば、三年後もう一回考えましょう、それまで様子を見ましょうということですが、三年後にまたどうせ議論になるわけですので、今回の現場の感覚として、このA型における食事提供加算の必要性について一言いただければと思います。

萩原義文君 私は、廃止すべきだと思います。せめて昼飯ぐらいは自分で食べましょう。

 そして、それはなぜか。障害者基礎年金の中に昼食代は入っております。だから、それと、好きなものを食べる、コンビニで買って帰って、途中で寄って買って、事業所で食べる。せめて一食ぐらいは、朝晩はグループホームがあります、昼飯ぐらいは自分が好きなものを、本人がお金を使うことが私は必要だと思います。それが、所得を得た者が行う権利だと。

伊佐委員 ありがとうございます。非常に貴重な意見をいただいたと思います。

 障害者の皆さんが本当の自立、どういう形で自分が、自分たちで生活をできるようなまた環境をつくっていくことがまさしく大事だという今お話だったんじゃないかというふうに思っております。

 最後に、恐らく、時間の関係上言いっ放しで終わるんじゃないかと思いますが、きょう、小嶋陳述人からもお話しいただきました、この今の公共交通のあり方というのは、都市が縮小していく中でどういう公共交通のあり方が大事か、どうあるべきかというまさしく議論じゃないかと思っております。

 午前中、我々、岡山市のコンパクトシティーというものをずっと見学させていただきました。その中で、マスカット状に都市をつくっていくんだと。マスカットの房一つ一つのブドウの、そこの種の部分までしっかりと交通、公共交通を延ばして、そこに人が集まっていただくということです。

 人口がどんどんふえているときというのは、面でどんどん広がっていくわけで、これは公共交通を考えるのは非常に楽なわけですけれども、人口が縮小する中では、当然これは面で減っていくわけではありません、スポンジ状に穴があいていくという状況ですので、こうしたスポンジ状で減っていくような状況の中での公共交通のあり方、もう一度新しい規制の概念というのが必要だというふうに、私も非常にきょう勉強になりましたので、しっかりとまた国会に持ち帰って議論したいと思います。

 ありがとうございました。

河村座長 次に、原口一博君。

原口委員 民進党の原口一博でございます。

 今回、党の公認を得ずに小選挙区のみで当選をした無所属の会を代表して、四人の陳述人の皆様に心からお礼を申し上げ、また、河村委員長のもとでこうした地方公聴会を岡山で開くことができること、心からお礼を申し上げます。

 私ごとですが、私にとってもこの岡山はホームでありまして、政経塾の同室の先輩が逢沢一郎、私たちのデビューは、天満屋さんの前でマイクを握ることが私たちの政治家デビューであります。また、きょうお見えでございます江田五月参議院議長のもとで、私たちは、市民がつくる政策調査会を始め、さまざまなチャレンジをさせていただきました。本当に岡山県民、市民の皆様にお礼を申し上げたいというふうに思います。

 そこで、四名の方にそれぞれ一問ずつまず質問をさせていただきたいと思います。

 まず、小嶋社長、本当にありがとうございます。クリームスキミング、サステーナブル、さまざまな大変大切なキーワードをお示しいただきました。その中で、やはり、私たちは法の中で交通権、移動の権利といったものをしっかり確立して、そこでもってまさに公共交通を守る、このことが大事ではないかということを、お話から感じさせていただきました。

 特に、特別交付税の見える化についても御提言をいただきました。本当にありがとうございます。

 私たちのもと、民主党政権では一・一兆円交付税をふやさせていただいたんですが、公共交通の運行維持に関する財政需要というのは、地方交付税ではカウントしていません。本来であれば、そうではなくて、社長がおっしゃったように、一部の限られた分野で特別交付税を充てているという現状であります、このこと自体がやはりおかしいんだと思います。地方独自の財源で、交付税で、そして地方のネットワークをしっかり守る、このことが必要ではないか。交通税についても言及がありましたが、移動の権利を保障するための特定の財源、これが必要だと思うんですが、社長のお考えを伺いたいというふうに思います。

 また、萩原理事長、本当にありがとうございます。私たち民主党政権では、チャレンジドをタックスペイヤーにということでやってまいりました。特に、きょうのお話の中で、大事な点が幾つもございました。福祉から就労に、全ての人が労働者になってほしいということで、例えばスウェーデンのサムハル、私たちがモデルにしたものですけれども、二万三千人の従業者のうちの実に二万二千人が障害を持った方々であります。

 私たちは、江田議長のもとで、障害者の権利条約、それから障害者基本法も起草させていただきました。ここには、きょう萩原理事長がおっしゃったリーズナブルアコモデーション、合理的配慮、つまり、合理的配慮を欠いたものは差別であると。合理的配慮は何かというのは、これは英米法のように慣習法で積み上げていくことになっています。ですから、就労が保障されないことイコールそれは差別なんだということを広げていくことに、きょうおっしゃったところのポイントがあるんじゃないかというふうに思うんですが、御所見を伺いたいというふうに思います。

 また、伊原木知事、本当にありがとうございます。天満屋さんのオーナーにここで会えるとは、本当にうれしいです。

 黒田市長ともどもおっしゃっていたのは、一般財源の確保ということでありまして、やはり経済財政諮問会議で、地方には基金が積み上がっているから交付税も減らすんだ、財源を減らすんだと。これは全くの逆さまの議論だと私は思っています。

 特に、このごろ地域主権改革が後退したなと思っているんです。それは、陳情行政、陳情合戦がまたふえている。一回中央にお金を集めてそれを地方に分配する、この無駄は物すごい無駄です。私はそれをやめるべきだと思います。

 私が総務相のときは、知事会の皆様、当時は麻生知事会長でした、麻生知事会長と、国、地方のプライマリーバランス論はとらないと。国と地方とを一つの丼に入れてやってしまうと、黒田市長がおっしゃったように、地方独自の財政改革のモチベーションが生まれません。中央政府がサボっているものを地方に、地方の庭にそのごみを投げ捨てるからです。

 ぜひ伊原木知事にお願いをしたいのは、知事会でも強力に、このごろ言わなくなっているんですよ、国、地方合わせたプライマリーバランス論をとるなということを強力に言っていただいて、地方交付税は地方の独自の財源であるということをしっかりともう一回再確認していただきたい。これは質問というよりもむしろお考えを伺って、国会議員が陳情するのも変ですけれども、提案でございます。

 それから、黒田市長には、まさにおっしゃったとおりで、合併していないところの市町村を中心に考えるべきだと。

 この間、合併特例債が、あと二年ぐらいですか、今延長の議論があるんですけれども、何が起きているかというと、合併特例債の期限が来るから、その間に駆け込み的に箱物をばんばんつくると。国税四税が地方交付税に入っていますから、そうやって穴をあけられてしまえば、結果、国民の税金も無駄なところに使われてしまうことになる。

 だから、黒田市長がおっしゃったように、やはり、大規模災害があれば飛んでしまうような、地方のまさに合併していないところにしっかりと焦点を当てるべきであり、まち・ひと・しごと交付金もお話しになりましたけれども、これも私たちの時代につくらせていただいた一括交付金がなくなりました。私、自民党の県会議員だったんですけれども、五億の予算をとるのに、この予算はひもつき補助金だから、本当は別の、教育に使いたいけれども、ひもがついてくるから、それが地方に回るから、仕方なく採決に立っていました。大変な無駄だと思います。

 今、一括交付金があるのは沖縄県だけです。九百八十億ぐらいですか。その中で、県や市が判断できれば自由に使える、そういう一括交付金をつくるべきだというふうに考えているんですが、黒田市長のお考えを伺いたい。

 まず四点、それぞれの方に御所感を伺いたいと思います。

小嶋光信君 今御指摘していただいたのは大変大事なことで、これからはコンパクトとネットワークということになります。

 市内の中心部から郊外に延ばしていくという形になりますが、お客さんがいるのは市内の中心部だけです。この市内の中心部だけに認可を出されてしまう。おいしいところだけ食べていって、外のところまで行かなくなっちゃうんですね。

 したがって、今、クリームスキミングというのは、基本的にはおいしいダイヤだけを食べるのをクリームスキミングと言っています。それは間違いであって、おいしい路線だけとろう、おいしい区間だけをとろう、これこそが本当のクリームスキミングであって、直ちにこんなものはやめなきゃいけない。

 こんなものを国が認めて、それでもって地方の時代の公共交通をやれということ自体が非常に大きな間違いだと思いますし、また、道路運送法を見てみても、第一条、三十条それから九条に触れる実は考え方であって、実のところは、おいしいところだけとるという認可は、六条でもって合法であるというのは間違いでございます。

 そしてもう一つ、交通権の問題、これは、私が、平成二十四年の十一月、衆議院の国土交通委員会に参考人として呼ばれて、交通政策の基本法を審議したときにも、実は一番の争点になったところでございます。

 私は、文化的な生活というものを保障されている国民として、移動すること、自由に移動するということは、これは国としてきちっとしなければならないというふうに思っています。しかし、そのときの議論は、もし移動権や交通権を認めると、国がいろいろなところで訴訟になって大変だと。議論が違うんじゃございませんか。国が訴えられる訴えられないということを中心にして、基本的な交通権、移動権そのものを認めないという考え方はいかがなものか。そうではなく、大多数の国民が安心できるような形をとって、その中に不条理なことでもって国を訴えてくるという者があれば、それはそれに向かって立ち向かえばいいことであって、それを恐れて本来の交通権、移動権という問題の議論をしないということは間違いだと思います。

 先進諸国の中でこういう議論をしている国は、正直言ってございません。先ほども言いましたように、先進諸国というのは、基本的に交通権、移動権を認めて、国民がひとしく自由に移動できるようにすることが、そのことこそが国のインフラであるというふうに思っております。

 そういうことなんで、ぜひ頑張ってこの問題は進めていっていただきたいというふうに思います。よろしくお願いいたします。

萩原義文君 サムハルですね、二万人、国営の株式会社である。実は、A型事業は六万人以上働いております。そして最賃が保障されております。これは、実は日本の方が進んでいるのではないか。ただし、補助金の出し方がサムハルはちょっと違う。日本の場合は一律手厚くなる、向こうはだんだん少なくなっていきますということです。

 私は、今の障害者総合支援法の中で、株式会社の参入が問題があるんじゃないかと。株式会社は営利追求が、そして株主に対する配当が目的であります。それが、非営利活動、本会計のお金を使ってやる仕事にそこが参入していいものかどうかという疑問を持ちます。

 それから、雇用率の算定のところで、大企業が株式会社で、特例子会社をつくってA型事業所をやってきます。そうすると、これが、その企業が障害者を雇用しているということになります。これは本来の目的と違うんじゃないか。しかし、それが株式会社が認められることによって曲げられていっているんじゃないかなということを思っております。

 障害者がみずから働くために、例えば見える化とか、それから彼らの目線で考えて環境を整えることが支援なんですね。我々は支援するということ。障害者が所得保障や身分保障を受けて、命の保障と、それから有給休暇、権利を取得して権利を使う、生き生きと働くこと、続けることは、私はダイバーシティーの根幹だというふうに思っております。ぜひそのことを制度に生かしていただければありがたいなと。

 全ての人が一度でいいから納税して、会社員となって、そして、退職することも実は権利なんですね。唯一持っている会社員の権利は退職の権利です。それが使えるということを、私はそれもありかなと。そうしたら、たくさんあればまた次へ行ける。人手が足りない。障害者は財産です。障害者はふえてきています。発達障害の方はもっとふえています。この方々をどのような形で財産にしていくかという多様な働き方を、多様な仕組みを構築することがすごく大事なような気がいたします。

 ありがとうございます。

伊原木隆太君 地方の財政については、こう思うということよりも、こう悩んでいるということをお話しするだけでも随分時間がかかる問題でございます。

 岡山県の場合は、自主財源が半分を辛うじて超えております。いろいろ条件のいい面もありますので、もっと自由にさせてほしいという思いもありますけれども、それぞれ独自のやり方でやると、そこまでの企業がない県はなかなかこれは大変だろうなと思ったりもいたします。知事会の中でも、正直、いろいろ意見が分かれているところもございます。

 ただ、私、ここまで国の予算に振り回されているというのは以前企業経営をしているときには想像もつかなかったことでございまして、大体子会社の経営者ぐらいの感覚なのかなと思っておりましたら、ここまで振り回される子会社なんというのはめったに多分日本にはないだろうと思っています。

 というのが、例えば、この問題についてはもう全く財源はないよ、国からの補助もなさそうだよということで、ああそうか、この方面の耐震はなかなか、まだ時間がかかるんだなと思ったら、補正予算で急にどっかんと物すごい有利な制度ができて、それはこの数週間のうちに出さないといけないということで、慌ててうわあっとかき集めてみたいな。これは本当に、ふだん本当に切り詰めて切り詰めて頑張っているのに悔しいなというふうに思ったりもいたします。これは、だからこうしろというほど我々わかっているわけではないわけでありますけれども。

 あと、財政調整基金の話では、岡山県、大体六千七百億円の一般会計予算で、一兆四千億円の、臨財債を含めた借入金を抱えているわけですけれども、そこで、何とかバッファーでつくりたいと思っている財政調整基金が、目標が二百億強でありまして、これはもう一千四百万円の住宅ローンを抱えている家計で、財布の中に一万円札でもあったら、おお何だこれはとかというふうに言われるようなものでありまして、それはもう生活のために、バッファーとしてある程度の現金は持っておかないと本当に怖いわけであります。余裕があるから持っているわけではありません。ちょっと、そこについては、本当のこの切実なところをわかっていただけていないのかなと感じております。

黒田晋君 一括交付金のお話ですけれども、委員おっしゃるように、一括交付金というようなものがあれば、老朽化した施設等が多くある我々自治体にとってはとてもありがたいんですけれども、ただ、それ以前に、やはり、きょうも機会をいただいて訴えさせていただいたんですが、我々基礎自治体は、福祉だとか教育だとか消防だとか、きちっと守り抜いていかないといけないものがあります。

 それで、現状はどうかというと、それを成立させていくだけの十分な財源が今確保できていないのが実態です。その中で、一方で、今、地方創生ということで新たなメニューができ上がりました。我々は、やはり、そういうさっき言ったような本来の業務が円滑に行えている上で、更に地方創生なんだというふうに思っております。

 そういう意味では、繰り返しになりますけれども、一般財源総額をきちっと毎年毎年確保していただくこと、あわせて、国庫補助がなかなかつかない、先生方よく御存じだと思いますけれども、義務教育施設、学校だとかを耐震補強しようとしても十分な補助がつかないという実態もありますし、ましてや、そのいただいた補助は目的外にはなかなか流用できないということがありますから、まさにその一括交付金の考え方を補助あたりにも少し織り込んでいただけると我々はとてもありがたいかなというふうに思っております。

 以上です。

原口委員 ありがとうございます。

 伊原木知事、私がお願いをした、知事会で、国、地方合わせた丼勘定、これはもうやらないと国にしっかりと、国、地方協議の場というのもございまして、それまではなかったものを国、地方協議の場というので、皆様の地域の御意見をしっかりと、今おっしゃったようなことを国に届ける場がございます。そこでもぜひ言っていただけませんでしょうか。

伊原木隆太君 確かに、我々、全国知事会で大いに議論するものの、それを国に伝えるという点で少し控え目だったのかもしれません。強く思っているのであれば、これからぜひ国の方にも伝えさせていただく、そういった行動をとっていかなければいけないなと思いました。どうもありがとうございます。

原口委員 ありがとうございます。

 また、萩原理事長がおっしゃった株式会社の点もすごく大事なことだと思いますね。やはり非営利であるということは非常に大事なことであって、きょう小嶋社長と萩原理事長がおっしゃったことは、公益。公益とは何か。公益を担う者は、やはり官だけではなくて民もなんだ。そして、その公益を担う人たちを、まさに公益を私物化するクリームスキミングの人よりも、より強く守るんだ、より強い権利を保障するんだというのがきょうのお考えだったと思います。

 私たちは、あわせて市民公益税制というのをつくらせていただきました。つまり、一回、中央政府に集めてそこから補助とかいう形じゃなくて、NPOに寄附をすれば、これは地域主権改革的にやらせていただいたんですが、最高五割まで、私の佐賀県は最高五割まで控除されるんですね。そういう形をやって、やはり、市民公益の人たちが障害を持った人たちの権利を保障する、こういう形が必要だと思いますが、お考えを最後に伺いたいと思います。

萩原義文君 実は、佐賀県は、雇用率は日本でも二位、三位。そして、ハローワークが、国の所轄じゃなくて県の所轄、唯一モデルとして。ですから、地方へ物を移していってうまく活用した、本当にすばらしい、障害者が生き生きしている県だというふうに日本全国を回って感じております。やはり、彼らの目線で、彼らが生き生きするというのは、全ての人が働ける。

 あと、B型に二十三万人の方がいらっしゃいます。ということは、三十万人の労働者が、あと二十三万人は可能性があります。そして、それは雇用保険、やはり最終的には、労災が適用される。労災というのは、みんな言わないんですが、本当に命の保障なんですよ。障害者には労災は、B型には労災が適用されない。私、それはあってほしいなという思いがいたします。

原口委員 ありがとうございました。

 終わります。

河村座長 ありがとうございました。

 それでは、最後の質疑者になりますが、串田誠一君。

串田委員 日本維新の会の串田誠一でございます。

 岡山といいますと、我が党の代表が生まれ育ったところでございまして、一番お世話になっている県でございますので、しっかりやってこないと後で怒られるということで、大変緊張しております。

 まず、知事からお聞きしたいと思うんですけれども、昨日、私、党の代表として本会議で質疑をさせていただきました。その中で、東京一極主義の是正というのが一番の課題であるということも指摘させていただいたんですが、今政府で考えているのは、東京二十三区に大学の増員を十年間認めない、逆に言えば、地方で若者が大学に定着してほしいというようなことを政府が今考えているようなんです。

 知事として、岡山県には、ちょっと数は、三十近くあるのか、もっと、もしかしたら数字が間違っているかもしれませんが、いろいろな大学が岡山にもある中で、若者がほかのところに行かずに岡山の大学に来てもらいたいということについて、どんなことをお考えになっているのかお聞きしたいと思います。

伊原木隆太君 これは、十分いただいてよろしいでしょうかというぐらい強く思っていることなんですけれども、本当に大事なことだと思っています。これは岡山県にとって非常に切実な問題でありますし、また日本全体にとっても大事なことだと思っています。

 私は、実際、岡山から東京の大学に出る人が悪いと思っているわけではありません。私自身そうでした。ああいう都会に住みたいという人がいれば、それはそれでいいと思います。自然豊かなところに住みたいという方は、ぜひお越しいただきたい。

 ただ、日本の場合、非常に残念なことに、自然豊かなところに住みたいんだけれども、自分がこの分野で一番の教育を受けたいということを考えると、かなりたくさんの分野で東京の大学が一番レベルが高いということになってしまうから、そこに行かざるを得ない。若しくは、この分野で一番大きな仕事、最先端の仕事をしている会社に入りたいと思うと、なぜかそういった会社の大半は東京に本社、事業所があるということで、自分の教育、自分のキャリアのことを考えると、自由に住む場所が選べないということが、日本と韓国に集中的に起きているということでございます。

 大変残念に思っているところでございまして、これが、もうどこの国でもそれ以外、アメリカであればそれぞれの、例えば航空機産業だったらシアトルがメッカだよ、石油産業だったらテキサス州がすごいよとか、それぞれの分野において満遍なくいろいろな産業があって、それぞれの地域においてすばらしい教育、すばらしい仕事を自然豊かな環境の中ですることができる、私はこれが本当の豊かさなんじゃないかと思っています。

 それを、全部吸い寄せられている。何でそうなっているかというと、会社がそこにあるから大学もそちらの方に吸い寄せられる、若しくは、大学がそこにあるから会社もそこに吸い寄せられる。一つ起きたことが次のことを連鎖反応のようにしていって、これは、ポジティブフィードバック、一旦そちらの方に起きるともうとめることができないということに今なっているんじゃないかなと大変心配しております。

 十分使うと大変迷惑ですので、ここでやめますけれども、ぜひこれは、十年間きちんとモラトリアムをいただいた間に、それぞれの地域の大学を盛り上げていかなければいけないと考えています。

串田委員 ありがとうございます。

 次に、小嶋社長にお聞きしたいんです。

 本当に、黒字の路線と赤字の路線双方をやっているところに、黒字だけのところに参入するというのは、赤字を担当している会社にしてみれば、これはとんでもないというふうにお考えになられるというのもよくわかります。そのときちょっと思ったのは、自動車保険も、事故が起きない層の部分だけ保険料を安くして、若者とか事故が起きるところについては余り力を入れていない保険会社がどんどんふえていって、その結果、若い人たちが無保険になっている、そういう社会的な現象もあるというのとちょっと似たような、要するに、いいとこ取りだけをやってしまうと、社会がもうとんでもないことになってしまうということの一つの現象だと思って聞いておりました。

 きょう、ちょっと視察の中で、岡山駅のところのバスの利用が少なくなってきているというお話を聞いて、むしろ、今、高齢者の交通事故だとかが大変ふえているので、バスの利用者がどんどんふえているのかなと思っていたんですが、バスの利用が減少している理由と、全国的にこれが反映されていくのか、あるいは、公共交通を利用するとしたら、どんなことをするとそういうことがとめられるのか、ちょっと御意見があればお聞かせいただきたいと思います。

小嶋光信君 大変いい質問をしていただいて、ありがとうございます。

 地方はどんどんスプロール化したこと、それから公共交通のバスの部門は定時性がやれなかった、それから岡山の場合は、業者が多くてそこで乱打戦をやっているということで、本当に必要な路線の方、余りもうからないんだけれどもやらなきゃいけないという路線がどんどん消えていくんですね。

 そうすると、山の中で小さな小川がさらさら流れているものが集まって大河ができるんですけれども、このさらさらのところが流れなくなっちゃっているんです、基本的に。そのために、いわゆる公共交通というのは、全国の中でも、ネットワークの少ないところ、そのネットワークの少ないところのまた黒字のところだけを食べてくるということを国が認めるという愚かなことのために、実は、要らないところにたくさんの供給が行って、要るところには行っていない。

 市内のところの真ん中だけごそごそバスが走り回っていて、とり合いをやっている。今度は、延びていくネットワークのところの方はもうからないから、どこも手を出さない。そのために、結局、利用者の方の目から見れば、いわゆる余計なところばかり供給が多くて、必要なところが少ないねという形になっているんじゃないかと思います。

 やはり、岡山特有の構造問題、日本の地方都市の構造問題というほかにもう一つあるのは、国の施策だと思います。国がまだまだマイカーにしがみつく政策というものをずっとやっていらっしゃる。しかし、もう若者は車を持たなくなってきているんですね。スマホは持つけれども車は要らないみたいな、そんな時代になってきている。

 そういう流れの中で、やはりお客様も減っていく、一番いいところは乱打戦をやる、そういう中では公共交通はもちませんから、当然のことながら、ヨーロッパ型のように、都市の中に参入してくる場合に、一人乗りの乗用車に対しては基本的に賦課金をかける。そして二人、三人乗ることを推奨する。そして、公共交通を使ったならば、例えば市民税が安くなるとか、いわゆるそういうタックスプライシングみたいな形も入れていきながら、いわゆる環境と公共に優しいという形に国民を誘導していかなきゃならない。それを実はこの国は何もやっていないんです、全く。先進国の中では珍しい逆行型の、むしろ先祖返りをして、低開発国型になっているのが今の日本の姿だというふうに思います。

 ここでは、やはり国がぴしっとした方針を出して、環境の問題、公共の問題というものをしっかり考えてみて、自分さえよければいいという国民性というものを直していきながら、正直者が得をするような形に、いろいろな、いわゆるタックスのやり方を変えていったり、インセンティブをつけていったりなんかすることによって、公共を大事にする、公益を大事にする国というものにしていかなければならないんじゃないかと思っております。

串田委員 次に、萩原さんにお聞きしたいと思うんですが、先ほど、能力というのは誰が決めるのかというようなことが冒頭でありましたけれども、今まで適任であったというようなこと以外に、将来、こういう分野にも実はどんどん進出できるのに、社会がそれを拒んでいるんだ、そういうようなことがあればちょっと教えていただければと思います。

萩原義文君 実は、岡山駅の中央出口の前に、朝早くからやっている喫茶店があります。朝七時前からやっています。先日、ここで働いている人が私どものところで実習しました。岡大医学部の学生です。彼女は障害者に出会ったことがなかったです。障害者に出会うことがないんですね。どうしてか。特別支援学校なんですね。特別支援学校は十倍の教育費を使って子供を育てます。しかし、それは十倍かけて、そして、片方は働いたことがない、障害者を見たことがない、この人がお医者さんになっていく。

 だから、医学部の生徒が地域でというか実習しなきゃいけないということを、去年から岡山大学医学部が。というのは、人として育たないということ。そこで、障害者から指導を受けて、一緒に働いて、自分の働く能力のなさを感じて、朝六時半から学校が始まるまで働く。びっくりしました。

 それと、支援学校でなくて普通の学校の生徒が実習に来ました、三日間。彼女らが書いたお礼の中に、障害者が自分のお父さんやお母さんと同じように税金を払っているということを聞いてびっくりしました、お父さんに言ったら、そんなことがあるのかと、だから、考えることを変えていきます、みんな働けるんだということをくれました。

 障害者のところで、見学とかじゃなしに、学生が働く体験をして、そこでさまざまなものを身につけていく。今は本当に塾通いで、先ほど言われました、東京へ行くために、優秀な人は東京へ行って、地方からお金を出すだけなんですね。障害者は全部地方におるんです。障害者が東京の学校に行くということはありません。だから、地方が豊かになるというのは、障害者が働く世界をつくることは豊かになる要素なんです。そのことをよく考えていただきたいなと。

 だから、よりよい大人になるために、障害者が何ができない、何ができるということはありません。人は体験から成長するんですね。結局は、心配だとか、心を配らずに、心配、心配と言って、させない。体験からの成長がほとんどだということを御理解いただいて、さまざまな体験をさせていただきたいなと。職場も、さまざまな職場に入っていただきたい。そうすることで、彼らが成長する、財産になっていくというふうに感じております。

串田委員 黒田市長にお聞きしたいんですが、CCRCという、高齢者等が移住して生活をしていく、そういうことをされていて、今、日本じゅうからも注目をされているということなんですが、成功させるコツと、選択を悩んでいる人の一番の理由というのがどんなものであるのか、経験からお聞かせいただければと思います。

黒田晋君 まず、資料を事前にお配りしていない非礼をおわびいたしまして、CCRCというふうに申し上げたんですけれども、玉野版のCCRCは、CCRの後がseaとなります。いわゆる海をテーマにした独自のCCRCの展開をしています。

 それがこのお答えにも関係してくるんですけれども、日本版のCCRC、都会の高齢者を地方へ、住んでもらって元気で暮らしてもらおうということなんですけれども、やはり、これだけやっていくと、移住、定住はなかなか難しいと思います。

 たまたま当市も中央区と非常におつき合いがあっていろいろなやりとりをしているんですけれども、今の便利さ、今の都会のよさになれてずっと暮らしていた方々はやはり都会を離れるということはなかなか難しいだろうというお話をよくいただきます。

 ただ一方で、若者であるとかそうした方々は、今、新しいところを求めて移動する傾向があります。だから、玉野版のCCRseaというのは、発音は同じだけれども、高齢者に特化したものではなくて、若者、それから御長寿の方、そして今、玉野も移住、定住者はかなりいらっしゃいますから、移住、定住してくださる方、そして先ほど来話がある障害を持たれた方との共生をその地域でつくり上げていく、そのことがやはり一番だというふうに思っています。

 御質問の、一番我々がこれから求められるのは、岡山県玉野市というのが、どこに、どういう位置にあって、どういう町で、どういう施策をやっていて、どういう可能性を秘めているというものを、やはりきちっと、今の時代ですから、たちどころに誰でもがわかるような状態にしていかないと、そういう意味での移住、定住策につながっていかないんだろうという思いは持っております。

串田委員 時間の関係上最後の質問になるかと思うんですけれども、知事にお伺いしたいと思うんですが、先ほど視察で、ももちゃりというのを見させていただきました。これは、岡山の平たんが非常にうまく利用されているのかな。私のところは横浜市なものですから、港の見える丘公園等があるのでおわかりのように坂ばかりなので、自転車がなかなか利用されていないというようなところがあって、それをすごくうまく利用されているかなと。

 そしてまた、快晴日本一ということから、自然エネルギーを大いに利用されている。本当に岡山県の方々は賢いな、いろいろなことをすぐに産業やあるいは観光に利用されているんだな、そう思ったんですが、これからまだ秘策があるのであれば、ちょっと知事に御披露いただければと思うんですけれども、どうでしょうか。

伊原木隆太君 秘策があれば今ここで言えということでございまして、でも、ももちゃりは岡山市の施策です。でも、大森市長に成りかわりまして。

 これは大成功しています。大変評判もよくて、使いやすくなってきています。御案内のとおり、自転車というのは環境によくて、観光のためにもよくて、当然健康にもいいということであります。

 ぜひ、一つの問題をそこだけで解決するんじゃなくて、これをすることによってこちらの方にもいい波及効果があるというものを広げていきたいと思っているところでございます。

 県としても、自転車ということでも、サイクリング、今頑張っていますし、それぞれの人たちがうまく協力しながら、いい生活、きちんとした暮らしが成り立つようにいろいろ工夫をしていきたいと思います。

 済みません、秘策の御披露はできませんけれども、頑張っていきたいと思います。よろしくお願いいたします。

串田委員 秘策ですから、発表はしない方がいいかと思います。

 きょうはどうもありがとうございました。

河村座長 以上で委員からの質疑は終了いたしました。

 この際、一言、御挨拶といいますかお礼を申し上げたいと思いますが、意見を御陳述いただいた皆様方には、御多忙の中、長時間にわたりましたが、貴重な御意見をいただきました。ありがとうございました。

 きょういただいた御意見というのは、先ほど来委員の皆さん、皆申しておりましたが、これからの委員会の審査に資するところ極めて大きいということで、これからの質疑にもというお話もございました。

 私、ここに座っていて、第一委員室を皆さんテレビ等で御案内だと思いますが、それとはちょっと違うんですけれども、何か同じような思いでありますが、ここの方がうまくかみ合っておったんじゃないかと。理事の皆さんがここへ襲ってくるようなこともまずないなと思いながら、大変有意義なお話合いだったと思います。これをしっかり生かしていくことがこれからの委員会の仕事だ、こう思っております。

 また、この会議開催のために、お地元を始め関係者の皆さんに大変御努力をいただいてこのような会になりましたことは、重ねて感謝を申し上げまして、お礼の御挨拶といたしたいと思います。

 これにて散会いたします。

    午後四時十一分散会

    ―――――――――――――

   派遣委員の静岡県における意見聴取に関する記録

一、期日

   平成三十年二月十六日(金)

二、場所

   ホテルセンチュリー静岡

三、意見を聴取した問題

   平成三十年度一般会計予算、平成三十年度特別会計予算及び平成三十年度政府関係機関予算について

四、出席者

 (1) 派遣委員

    座長 菅原 一秀君

       石崎  徹君   神田 憲次君

       佐藤ゆかり君   柴山 昌彦君

       田中 和徳君   星野 剛士君

       青柳陽一郎君   逢坂 誠二君

       大西 健介君   後藤 祐一君

       竹内  譲君   黒岩 宇洋君

       本村 伸子君

 (2) 意見陳述者

    一般社団法人静岡県経営者協会会長       中西 勝則君

    前湖西市長・脱原発をめざす首長会議世話人   三上  元君

    静岡商工会議所会頭   酒井 公夫君

    静岡大学人文社会科学部教授          鳥畑 与一君

 (3) その他の出席者

    財務省主計局給与共済課長           若原 幸雄君

     ――――◇―――――

    正午開議

菅原座長 これより会議を開きます。

 私は、衆議院予算委員会派遣委員団の団長の菅原一秀でございます。

 私がこの会議の座長を務めさせていただきますので、よろしく御指導のほどお願いを申し上げます。

 この際、派遣委員団を代表いたしまして一言御挨拶を申し上げます。

 皆様御承知のとおり、当委員会では、平成三十年度一般会計予算、平成三十年度特別会計予算及び平成三十年度政府関係機関予算の審査を行っているところでございます。

 本日は、三案の審査に当たり、国民各界各層の皆様から御意見を承るため、当静岡市におきましてこのような会議を開催しているところでございます。

 御意見をお述べいただく皆様におかれましては、御多用中にもかかわりませず御出席をいただきまして、まことにありがとうございます。どうか忌憚のない御意見をお述べいただきますようよろしくお願いをいたします。

 それでは、まず、この会議の運営につきまして御説明を申し上げます。

 会議の議事は、全て衆議院における委員会議事規則及び手続に準拠して行い、議事の整理、秩序の保持等は、座長であります私が行うことといたします。発言される方は、その都度座長の許可を得て発言していただきますようよろしくお願いいたします。

 なお、御意見をお述べいただく皆様から委員に対しての質疑はできないことになっておりますので、あらかじめ御承知おき願います。

 次に、議事の順序について申し上げます。

 最初に、意見陳述人の皆様からお一人十分程度で御意見をお述べいただき、その後、委員からの質疑に対してお答え願いたいと存じます。

 なお、御発言は着席のままで結構でございます。

 それでは、本日出席の方々を御紹介いたします。

 まず、派遣委員でございますが、自由民主党の柴山昌彦君、田中和徳君、星野剛士君、石崎徹君、神田憲次君、佐藤ゆかり君、立憲民主党・市民クラブの逢坂誠二君、青柳陽一郎君、希望の党・無所属クラブの大西健介君、後藤祐一君、公明党の竹内譲君、無所属の会の黒岩宇洋君、日本共産党の本村伸子君、以上でございます。

 次に、本日御意見をお述べいただく方々を御紹介いたします。

 まず、一般社団法人静岡県経営者協会会長中西勝則君、前湖西市長・脱原発をめざす首長会議世話人三上元君、続きまして、静岡商工会議所会頭酒井公夫君、最後に、静岡大学人文社会科学部教授鳥畑与一君、以上四名の方々でございます。

 それでは、早速でございますが、まず初めに中西勝則君に御意見をお述べいただきたいと存じます。

中西勝則君 私、静岡県経営者協会の中西でございます。よろしくお願いいたします。

 また、本日は、このような機会を設けていただきまして、まことにありがとうございます。

 私からは、静岡県の経済について少し触れまして、現在経済界の課題であります人手不足と働き方改革につきまして、事例をもって少し説明をさせていただきたいと思っております。

 なお、経営者協会につきましては、二月十四日に連合静岡から春闘要請をいただきました。折しも、現在は春闘の真っただ中という状況でございます。業種だとか地域、それから規模別、こういったところにばらつきはありますが、四年間にわたりまして賃上げが行われてきております。このモメンタムをぜひ景気の好循環につなげていくということで、労使ともによくコミュニケーションをとってこれらの好循環を続けていってもらいたいということで、企業の方に示達させていただいております。

 それでは、静岡県の経済指標を幾つかお話をさせていただきたいと思います。

 昨年の十二月になりますけれども、一番新しい指標でございます有効求人倍率は一・六〇倍、全国が一・五九倍ですので、若干高いんです。これは、十カ月にわたって全国より少し高い状況が続いております。また、一・六倍という数字は二十五年九カ月ぶりということで、大変高い数字を示しております。また、特徴的にいいますと、有効求人、これも大変実数として多くありまして、八万人を超えております。この八万人を超えている数字は四十三年ぶりということになっております。

 ただし、私自身、この数字を見たときに、求職者数、これが若干伸び悩んでおります。これは、人口減、労働人口の減少と相まって伸び悩んでいるというふうに思っておりますが、こうしたことから、経営者といたしましては、人手不足という観点から少し気になっている状況でございます。

 また、日銀が先週発表いたしました静岡県金融経済の動向では、景気は穏やかに拡大しているという形で発表をされております。一年前、景気は基調として緩やかに回復しつつあるという発表から見ますと、大変景気がよくなっているという判断をしているというふうに思っています。アベノミクスから五年がたっておりますが、この一年間で経済指標は確実に上向きになっているというふうに我々は感じております。

 また、静岡県は、二〇〇八年、リーマン・ショックの後、日銀短観のDIで全国ワーストワンになったことがあります。なかなか回復を見せませんでしたが、これも昨年の十二月の調査でございますけれども、全産業で一八ポイントという形になりまして、全国が一六ですから、これも若干上向いております。前年が全産業で八ということでございましたので、ここの一年間の景気の回復は目覚ましいものであるというふうに感じております。

 それでは、ここで本県の働き方改革を、少し具体的な話を入れながら説明をさせていただきたいというふうに思います。

 働き方改革の取組につきましては、一年前と比べますと、かなり潮目が変わってきたなというふうに感じております。特に、経営者の意識といいますか、こういったものがかなり変わってきたのではないかなというふうに思っております。

 一年前は、戦後の経済成長時代の成功体験等を含めまして、経営者の皆さんについては、働くことこそに意義がある、長時間働いていることに意義を持たせているというようなところがありまして、働き方改革によって、有給休暇の取得、それから長時間の削減、こういったことによって競争に負けるのではないかというような気持ち、そういったものが経営者の中にありましたが、ことし、特に最近になりまして、有効求人倍率が一・六倍にもなったということもありますが、社員の退職だとか若者の採用がままならない、特に地方では厳しいものがありますが、こういった現実の中にありまして、女性の活躍推進だとか、それから子育て環境の改善、若しくはこれから問題になってくるであろう介護の問題、こういったものにも真摯に目を向けるようになってきたように感じております。

 そうした中で、少し事例も出てまいりましたので、説明をさせていただきたいというふうに思います。

 最初のは、ジヤトコ株式会社という会社なんですが、この会社は、自動車の変速機、これをつくっている会社でございます。国内に約七千名の従業員がおりますが、去年までは忙しさにかまけて、働き方改革について厳しい意見もありましたが、最近、この会社の役員さん方との話の中では、率先して、従業員に届くような、働き方改革の自分の意見をメールで出しているというようなことが行われているということでありますし、具体的に、ミーティングのやり方、メールのやり方、こういったことを改革しているというふうに聞いております。

 ミーティングのやり方につきましては、まあこれは当たり前かもしれませんが、集まる時間をできるだけ最小限にする、できるだけ紙は使わないだとか、きょうの会議の意義、それから、これからやること、こういったことをしっかり結論を持って締める、短く締めるということをやっている。また、メールについては、まずは、五行以内で書くということ。それから、チェーンメール、行ったり来たりするのをやめて、十回程度続いたらもうしっかり会って話をするとか電話してしっかり話をするとか、こういったことによって、メールの数だけでも一五%ぐらい減ったというふうに聞いております。

 引き続きまして、遠州鉄道、これは浜松にある私鉄でございます、この会社の事例を少しお話しさせていただきたいというふうに思います。

 遠州鉄道におきましては、長時間労働の是正のために、早朝、深夜、休日勤務、こういったものにはその所属長の事前承認が必要だということで、ただ必要なだけではなく、パソコンが起動しないようにされているというような仕組みをつくっております。

 特に特徴的な改革は、グループ内の人のやりくりです。鉄道会社で、不動産だとか観光だとか、多岐にわたった会社をグループ内に持っているわけなんですけれども、特にゴールデンウイークなどの繁忙期には、その繁忙する会社、遠州鉄道では遠州鉄道観光開発株式会社と申しますが、この会社がグループ内に求人を出す、それによって本社がそれを公開して、その日それに携われる人たちを、従業員を回すという形で人手不足等を賄っているというようなことをやっています。もちろん、三六協定等ありますので、全体の三六協定の中で人のやりくりをやっているということでございます。現在、その人のやりとり、五十名程度になっておりまして、リピーターも多いというふうに聞いております。

 また、企業内の保育所を二園ほど持っておりましたけれども、この保育所をつくる、四十五名の収容なんですけれども、そのことによりまして新規採用者の増加につながったということから、現在は、五つの保育所を持っておりまして、百七十九名をその保育園で預かることができるという体制をつくっております。

 まだまだ、こういった人の動きですけれども、働き方の中で、副業を持つとかいろいろありますが、業種によってはこうした好事例がありますけれども、規制によってできない業種もあります。こうした業種に対しましても法律の緩和をお願いしたいというふうに思っております。

 続いて、もう二、三、事例を発表させていただきたいと思いますけれども、株式会社エンチョーというのがありますが、ここはDIYチェーンなんですけれども、閉店、開店時間をその地域のマーケットに合わせて決めたということで、働き方が変わったと同時に費用も減って、効果が大変出てきたというふうに聞いております。

 そろそろ時間のようでございますので、最後に締めさせていただきたいと思いますが、今の事例は、比較的、大企業、中堅企業というところが多い事例でございます。中小企業の中で自前で大変一生懸命やって改善を積み上げているところがありますが、取引先等の納入要請、こういったものの時間的な制約から働き方を自分たちで決められないというようなこともありまして、できれば全国的若しくは社会全体で働き方改革ができるような仕組みをつくっていただけたらというふうに思っております。どうもありがとうございました。(拍手)

菅原座長 ありがとうございました。

 次に、三上元君にお願いいたします。

三上元君 それでは、きょうはお招きいただきまして、このような場で私が意見を述べること、感謝申し上げます。

 まず自己紹介でありますが、一年二カ月前まで、静岡県の一番西、湖西市の市長を務めておりました。十二年間行い、よく静岡にも来ておりました。

 なお、二つ目の肩書は、脱原発をめざす首長会、市町村長の会ですね、この世話人であり、その呼びかけ人として活躍しており、その代表として、原自連、原発ゼロ・自然エネルギー推進連盟の幹事として、毎月、元総理、小泉純一郎さんたちと会っている、こういう私でございます。一月十日の、原発ゼロ基本法をつくれという記者会見には、小泉さんたちと私は同席をしておったわけでございます。

 そして、資料がありますが、まず一枚目の資料、右の方に私の漫画が描いてあるのをごらんいただきたいと思います。

 これは左の下に書いてありますが、藤田祐幸先生、二年前にお亡くなりになりましたが、三十年以上、原発はやめるべきだと主張してきた慶応大学の助教授でございます、この方の図をお借りいたしました。

 七年前の、この資料でありますが、七年前でも、ピークの夏、二割だけ、平日の昼間の電力さえ節約すれば、原発は要らないんです。一番右の図を見てください。動かす順序が原子力から先に動かしていますから、今はベースロード電源ということでしょうが、逆に動かす、火力と水力を動かしていればほとんど足ります。いよいよ足りなくなったとき、原発を動かすぞ、皆さん節電してくださいよ、節電しないとあの怖い原発を動かしますよというのは夏だけなんですね。おどしに使って二割節約すれば、原発はもう七年前から要らなかったわけでございます。それがこの図でございます。

 忙しいので、次に行きます。

 二枚目をごらんになってください。

 ここは、浜岡原発から、静岡、浜松は五十キロ以内でございます。私の住んでいる湖西市は六十キロでございます。

 八つの理由のうちの一つ。人間にはミスがあります。神様ではありません。スリーマイルアイランドもオペレーション上のミスでした。チェルノブイリの事故もやはりミスでございました。

 超電導の権威、北澤宏一先生が湖西市に参ったときに、この私のチラシを見て、三上さん、この順番は考えたんですか、こう聞きました。ええ、考えました、一番を特に考えましたと言いましたら、北澤先生いわく、そのとおりですね、いつミスが起こるかわからない、すると、それは大惨事になるということですね、こうおっしゃったわけでございます。

 二番目は、私は実は、二〇〇一年九・一一テロのときに、これは大変だ、日本の原発も狙われる、日米同盟ですからね、アメリカ憎しは日本憎しに即つながります、テロが危ないと思いました。今、北朝鮮は、もしアメリカが先制攻撃しようものなら、ワシントンまで届かないかもしれないが、韓国と日本の原発を狙うぞとはっきり公言しているわけでございます。

 私は軍人の家系です。国防族ですね、そういう意味では。おやじは陸軍軍医で、医者でありました。おじさんは、最後の空母信濃の生き残り、海軍中佐でありました。

 国防上最も大切なことは、アラビア湾にアメリカ軍を助けに行くことではなくて、原発をなくすこと。これは、自衛隊のOBの人に言わせると、三上さんの意見と同じだという人は山ほどいます。現役は何も言いません。三上さんに賛成だとも言わないが、反対とは誰も言わない。戦争になったら戦えません。

 さて、そこで、いろいろ言いたいですが、次のページをごらんになってください。

 次の言葉には、もはや全く説得力がありません。送電線に余裕がない。原発は安い。最終処分場は間もなく見つかる。見つかるわけがない。「もんじゅ」は失敗したが、六ケ所村の核燃料サイクル工場は成功させる。成功するわけがない。世界一厳しい審査をするのが日本だ。そんなことはありません。三十キロ圏、九十六万人がいる東海村の避難計画は可能だ、避難できる。難しいですね。

 二つ目。もう新しい原発はやめましょう、大間原発も含めて。百歩妥協するなら、ビル・ゲイツが研究中のテラパワー社の次世代原発に注目しましょう。これは、九月に逢坂衆議院議員と一緒にワシントンに行ってまいりましたが、ワシントンの学者二人が同じことを言っていました。今の原発はもう採算に乗らないんだ、しかし新しい原発を我々は研究しているよと言っていました。ビル・ゲイツがやっています。

 三番目。日本のメガバンクを含め世界の主要投資家は、原発に投資する考えはもはやありません。その証拠は、日立がつくろうとしているイギリスのアングルシー島の原発に一・五兆円を貸すに当たり、九〇%の保証つきの貿易保険ですら貸したくないと言うのです。そこで、政府が一〇〇%保証することになって、やっとメガバンクは、それなら貸しましょう、こういうふうになったわけでございます。貸したくないんです。

 四番目。送電会社を別会社にして、公共事業的な位置づけにしましょう。送電線は誰でも使える道路、発電所は工場のようなものなので、民間で構いません。

 五番目。送電に、いつ動くかわからない原発の枠を押さえておくために余裕がないという理由で、飯舘村の飯舘電力に二十億円の送電設備投資をする要求をするという妨害をしたんです。そんなことはやめてください。

 六番目。原発を稼働するときには損害賠償保険に加入する制度にしましょう。五十兆円から七十兆円級の保険です。ロイズ再保険組合は原発の事故も受けるんですが、日本の原発だけは受けません。余りにもリスクが高いから無理だと。だから、政府が受ければいいわけです。保険に加入させましょう。

 七番目。日本経済研究センターは、福島事故処理費の試算をしました。政府試算二十二兆円は甘い、五十兆円から七十兆円が見込まれていますよと。廃炉で三十二兆円、除染で三十兆円、賠償は八兆円というふうに発表いたしております。これを見て新潟県の米山知事はびっくりしまして、ついこの間のスピーチで、私は生で聞いてまいりましたが、こんな危険なもの、こんなコストがかかるものをやらなきゃならないほど原発が大切なもののはずがないとおっしゃっていました。そのとおりです。

 八番目。日本は自然エネルギー大国です。古くは一八九八年訪日したグラハム・ベルが、そして今はエイモリー・ロビンス博士が、日本は自然エネルギー大国だと言ってくれました。日本の電力需要、年間千八百四十ギガワットは、日本の農地四百六十ヘクタールの十分の一に太陽光発電設備を設ければ足りるんです。

 日本のダムにも十分余裕があり、ダムの底に口をあければ、底の土砂も簡単に除ける。ダムのかさ上げを一割すれば二倍の能力になる。これは、この本で私は感動いたしましたが、元国土交通省河川局長竹村公太郎さんがこのことをしっかり言っております。

 九番目。二〇一七年、世界のエネルギー統計では、原子力の発電能力四百ギガワットを太陽光が上回りました。たった一年で前年比三三%伸びたんです。その理由を昨年の十一月十九日、日本経済新聞が伝えておりますが、なぜか。七年前に比べ、発電コストに大きな変化があったわけです。原発は十円と言われていたものが十五円に上がり、太陽光は十八円が五円に落ちました。最近のアブダビの例では、三円台まで登場したわけでございます。

 十番目。自然エネルギー、水力、バイオマス、風力、地熱、太陽のウエートの予測でございますが、二〇一三年の実績が一一・〇%、二〇一六年、三年たちました、一四・八%。三四%伸びたんですね。そして、三年ごとにこの三四%伸ばすとどうなるかといいますと、二〇二八年には四七・七%になります。原発ゼロ・自然エネルギー推進連盟の目標であります、二〇三〇年五〇%という自然エネルギーの目標は簡単に達成できます。今のように、政府が妨害しているという状況、電事連、電力事業者が反対して妨害しているという状況にありながら、三年で三四%伸びている。これを後押ししたら、一気にもっとそれ以上に伸びるわけでございます。

 なお、小泉純一郎さんと毎月会っておりますが、小泉純一郎元総理は、自民党がこんな簡単なことがわからないはずがない、だから自民党は間もなく変わる、これは私の確信であるというふうに述べておったとつけ加えておきたいと思います。

 原発は以上で終わりまして、次に地方創生について述べたいと思います。

 地方創生は、二つが重要なことではないかと思います。

 「地方行政」という時事通信社が出している月刊誌に私を載っけてくれたのが、右の方に書いてあります。左は湖西市と県と全国の統計からでございますが、私が市長に就任して、日本の平均よりも、人口当たり、全国平均が十八件でありますが、湖西市は年間二十件、一割全国平均より多い犯罪率でございました。

 外国人が多いんです。工業の町です。豊田佐吉と豊田喜一郎というトヨタの創業者が二人生まれた町が我が湖西市でありまして、その町でありますので、外国人がかなり働いてくれています。そのせいだという説がありました。そんなはずはない、たかが四、五%しかいないんですから。

 そして、私、三つのことをやりました。ニューヨークの地下鉄に学びました。ごみをなくし、花いっぱいで、抜群の挨拶がある町にしましょう。これを十年間言い続けますと、犯罪がめきめき減ってまいりました。この間、全国も半分に減っておりますが、湖西市は四分の一に減りました。

 安全な田舎、安全な日本を、もっともっとこの三つの運動によって、犯罪のない国にしましょう。そうすると、外国人がやってきます。日本は犯罪が少ない安全な国だということを、そして礼儀正しい国、挨拶がちゃんとできる国であることをPRしようではありませんか。

 次のページ、五ページ目をごらんください。

 ふるさと納税も反対はしません。湖西市もやっておりました。ちょうど世田谷区が流出する分だけを湖西市がもらっているという図式でございまして、世田谷区長と仲よしなので、ちょっと申しわけないなと思っているわけでございますが、これは小さなことです。

 大きなことは、農業です。農業者の所得が低いために、都会に流れます。製造業に働きに行ってしまうわけです。

 これはエコセーフティーコンサルタントから出させた資料で、私の近くに水田があります、仲よしが水田をやっておりますので、そこの試算として、二反半の長方形の水田に上三メートルに太陽光パネルを張ったらどうなるかということを試算してもらいました。そうしますと、これは最近の実績であります、そして十五年間で返済するわけでございますが、きょうおられます静岡銀行さんや浜信さんも一・二五%ぐらいで貸してくれるわけでございます。ここの計算は、一・五%の年利で計算をいたしております。

 そうしますと、収益のところでありますが、お金を全額借りたという計算をしても、返済で二百五十五万円かかりますけれども、初年度から六十九万円が粗利として残ります。一番下に書いてありますが、米をつくりますと、一反で売上げ十万円、コストが五万円かかって、粗利は五万円だそうです。二・五反ですと十二万円ぐらいの粗利になりますが、十二万円の粗利の上に六十九万円が乗るんです。これが、農業……

菅原座長 陳述人、ちょっと、四分オーバーしていますので、おまとめください。

三上元君 わかりました。恐れ入ります。

 というわけで、ふるさと創生のキーポイントは農業であり、農業所得の改善のために、向上のために、ぜひ、農地の上の太陽光パネルを、嫌々認めるのではなくて、農林水産省が積極的に推進すれば、ふるさと創生は間違いないと信じております。

 ありがとうございました。(拍手)

菅原座長 ありがとうございました。

 次に、酒井公夫君にお願いいたします。

酒井公夫君 静岡商工会議所の会頭をしております酒井でございます。

 平成三十年度の予算全般に関しましては、私ども企業が安心して経済活動を行うためにも、国防の問題、安全保障や、あるいは自然災害等に対します防災といったようなものも非常に関心がございます。また、国全体でのプライマリーバランスについても興味があるところでございますけれども、きょうは、商工会議所の立場ということでございますので、この静岡の地域の、特に中小企業に関する問題に絞って発言をさせていただきたいと思っております。

 中小企業にとって最大の問題は、これはもう全国共通でございますけれども、人手不足でございます。先ほど有効求人倍率の話が出ました。全国で昨年の十二月が一・五九倍、静岡県は一・六倍。ただ、静岡市のハローワークで見ますと二・五五倍でございます。非常に人手不足感が強くなっておりまして、この問題の対策はもう待ったなしの状況でございます。

 ただ、人手不足を何回叫んでも人はふえません。もちろん、女性であったり高齢者、あるいは外国人等の多様な人材の確保というものに努力することはもちろんでございますけれども、やはり、このタイミングで、人手不足というものを変革あるいは成長へのターニングポイントにすべきであるということを考えております。そのためには、各企業の身の丈に合ったITの導入あるいはロボッティング等によりまして、業務改善、人材育成等をしなくてはいけないということは共通の認識でございます。

 ということで、本日は、この人手不足に対します生産性の向上の問題と、それともう一つ大事であります事業承継の問題に絞ってお話をさせていただきます。

 まず、生産性の向上でございますけれども、御存じのとおり、日本企業の労働生産性というのは決して高くない。一九九六年から二十年間の生産性の向上を見てみますと、これは中小企業庁の資料でございますけれども、大企業ではある程度の成長がございますけれども、中小企業におきましてはマイナス成長でございます。

 日本の雇用の約七割を担う中小企業の生産性の向上というのは極めて重要である。特に、事業者数の四割を占めますサービス業の生産性が低いということでございますね。どうやって生産性を上げていくかということがポイントになります。

 今回の国の対応を見てみますと、平成三十年度予算のポイントとしまして、生産性革命を掲げていただき、生産性向上のための施策を推進していただいております。

 中小企業関連では、中小企業の投資を後押しする大胆な固定資産税の特例の創設、あるいはものづくり・商業・サービス補助金等、あるいはIT導入の補助金、持続化補助金等の予算措置を拡充していただきまして、そういった意味では、非常に厚い対策を打っていただいているということで、感謝申し上げるところでございまして、これを受けて、県も市もそれに見合った対策を行ってくれておりますので、一体となっての支援が整ったというように感じております。

 しかし、一方で、現実を見ますと、中小企業の中で、ワードとかエクセルとか、そういったようなものがまだ導入されていない企業が四割という数字が出ております。そういった企業にITを導入して生産性を上げろというのは簡単ではございません。

 今回、このような形で予算措置をとっていただきまして、我々商工会議所としましても、行政や、あるいはほかの経済団体、あるいは金融機関、あるいは税理士の皆さんとかとコラボレーションをしてこの部分に取り組むわけでございますけれども、一番大事なのは経営者に対する気づき、気づかせ、この部分が一番大事だと思っております。大事であり、なおかつハードルが高いものと考えているところでございます。よって、予算措置以上に、これからそれをどうオペレーションしていくか、どのように実効を上げていくかということを、また御支援いただけたらと思うところでございます。

 続きまして、事業承継について触れてみたいと思います。

 これも御存じの数字だと思いますけれども、中小企業の経営者の年齢でございますけれども、最も多い年齢の層というのが、二十年前が四十七歳と言われております。二十年たってどうなったかというと、それが六十六歳になっております。要は、二十年間で二十歳、ただシフトしただけといったようなデータがとれております。

 また、今後五年間で、団塊世代の経営者三十万人が七十歳に到達する大事業承継時代を迎えるとも言われております。過去十年間で、事業所が四十万件廃業になっています。理由はいろいろございますけれども、一番多いものが後継者がいないということでございまして、廃業になった四十万件のうち、半分は黒字でございます。黒字の経営をしている、あるいはノウハウがある中小企業が、後継者が見つからないために廃業しているという実態を非常に重く見ておりまして、この問題の解決なくして地方経済の発展はないと思っております。

 こういう中、国としましては、今年度、事業承継税制を抜本的に見直していただきました。これは、日本商工会議所としても強く要望していたことでございますので、画期的な取組であると思っております。内容につきましてはたくさんございますので省略いたしますけれども、地方の問題が国とも共有できたということで、非常に喜んでいるところでございます。また、増大する事業承継の需要に対応しますプッシュ型の事業承継の支援高度化事業、こういったものも創設いただきまして、準備が整ったわけでございます。

 そういった意味で、この部分は評価するわけでございますけれども、先ほどの生産性の向上と同じように、ポイントは気づきでございます。

 経営者が事業承継の必要性を感じてから実際に事業承継を完了するまでに、過去の例を見ていますと、五年とか六年と言われております。ゆっくりやっている時間がないわけでございまして、早くこのことに気づいて次のステップに行くためには、やはり先ほどと同じように、気づきをやるオペレーションをどうするか、予算をつけていただきましたけれども、どういうオペレーションをしていくかということが非常に大事になってまいりました。我々も、気を引き締めてこの問題に取り組んでいく覚悟でございます。

 最後に、観光振興について若干触れたいと思っております。

 観光産業というのは、自動車産業に次ぐ消費規模を持つ一大産業でございますが、その担い手は九九%中小企業と言われております。国は、インバウンド対策ということでいろいろな施策を打ってくれてございまして、インバウンドに対する施策というのは、国内旅行者にとってもプラスのことでございますので、ウエルカムでございます。

 ただ、インバウンドの皆さんの不満がどこにあるかというのは、これも皆さん御存じだと思いますけれども、決して、言葉が通じないとか、生活習慣が違うとか、両替がしにくいとか、そういうことではなくて、一番の不満はWiFiがつながらないという、その通信環境でございます。

 これはインフラの部分でございますので、民間がアクセスポイントをふやしてもなかなか効果がないわけでございますので、面的な整備、エリアにおける面的なWiFiの整備が非常に求められているところでございます。

 静岡は、そういう中で、ILoveしずおか協議会という、これは民間の町おこしの団体でございますけれども、これが主体になりまして、最終的には総務省の予算を使わせていただきましたけれども、このタイミングでようやく面的な整備が整いました。まだ十分ではございませんけれども、全国的にも非常にまれな例でございます。今後も、こういった観光にかかわるインフラ整備につきまして予算取りをよろしくお願いしたいと思うところでございます。

 今回、国際観光旅客税の創設がなされ、それを、例えばストレスフリーで快適に旅行できる環境整備に使っていただけるというような説明がございまして、まさに的を得ていると思うわけでございます。また、クルーズ船の受入れ環境の改善というのにも取り組んでいただけるということで、予算をいただいております。

 当地静岡では、清水港がございます。富士を見ながらクルーズ船が入ってくる港でございまして、クルーズ船の入港は、昨年三十八回、倍増でございまして三十八回でございます。この後、二〇二〇年に九十回までのめどが立っております。その先、百八十回程度を目指しておるわけでございますけれども、やはりこういったものにも民間ではなかなか行えないインフラ整備が求められているところでございまして、インバウンドのお客様、これからFITがふえてくるわけでございますので、こういった個人旅客に対して、エクスカーションといいますか、これを満足していただくためには、どうしてもWiFiの環境整備、港におけるWiFiの整備というのも非常に大事になってくるわけでございます。

 地域ではDMOを中心にこういった動きを展開しておりますが、ぜひ、ハード系だけではなく、インバウンドの皆さんに満足いただけるような、ソフト開発に対しても御支援いただけるような予算取りをしていただけるとありがたいなと思っております。

 各会議所から聞き取りをした中で、いろんなこういう施策がなされておりますけれども、なかなかその広報、周知という部分において十分でないという意見がございます。ぜひ、広報、周知にも力を入れていただきまして、実効性のある予算になるように御指導いただきたいと思っております。

 以上でございます。(拍手)

菅原座長 ありがとうございました。

 次に、鳥畑与一君にお願いいたします。

鳥畑与一君 静岡大学の鳥畑といいます。

 本日は、本公聴会で陳述の機会を与えていただき、ありがとうございます。

 時間もございませんので、お手元のメモを読ませていただきます。また、お配りした図表については説明を省かせていただきますので、後で御参考いただければと思います。

 私は、静岡大学人文社会科学部で消費者金融、地域金融などの問題とともに、近年はカジノ合法化問題の研究をしております。一昨年十二月には参議院内閣委員会でカジノ推進法の参考人質疑で、また、昨年五月には参議院法務委員会参考人質疑で民法改正における第三者保証の原則禁止問題で、発言する機会を得ました。本日は、静岡大学という地方国立大学の一研究者、教育者として、政府が進める人づくり革命のためにも地方国立大学を中核とする高等教育の充実が必要である旨、発言させていただきます。

 先般、週刊東洋経済二月十日号、こちらでありますが、「大学が壊れる」という特集の中で、地方国立大学の悲惨な内情を報じました。その内容は偽らざる大学の現実だと訴えたいと思います。この背景には、国立大学法人化以降の、大学の教育研究基盤を支える運営費交付金の削減があります。

 政府の未来投資戦略二〇一七が強調するように、高等教育への公的支出は未来への投資です。それも、財政ばかりか、社会全体に大きなリターンをもたらす投資です。しかし、この未来への投資がこの間おろそかにされてきたのではないでしょうか。

 OECD「図表でみる教育」によれば、日本は、公費と私費を合わせた教育支出のGDP比はOECD平均並みですが、高等教育においては私費、とりわけ家計負担率が高い水準となっています。高等教育費における公的負担率はOECD平均七〇%に対して三四%であり、家計負担率はOECD平均二二%に対して日本は五一%となっています。この結果、文部科学白書によれば、大学進学者を抱える世帯の教育費負担は極めて高い水準であり、貯蓄率もマイナスとなっています。多くの家庭が貯蓄を取り崩して子供の進学を支えており、このような経済的余裕がない家庭では高等教育の機会が損なわれているのが現実ではないでしょうか。

 この公的負担の低さは、政府財政支出における文教予算率の低さの反映です。しかし、高等教育への財政支出は、個人の所得増等の刺激をもたらすだけではなし、所得増からの税収増加、失業率の低さによる社会保障費の減少などを通じて、公財政にも大きく貢献するものです。OECD「図表でみる教育」二〇〇九では、大学進学による所得増大はOECD平均で十九万ドルであり、大学生一人への公的投資OECD平均二・八万ドルは約八万ドルの経済的リターンを生み出すとしています。

 しかし、本年度予算では、給付型奨学金充実に向けた予算化や授業料免除枠の拡大が行われていますが、国立大学運営費交付金の減少傾向が続いています。これは国立大学の法人化が独立行政法人という枠組みで行われ、行政コスト削減が義務づけされているからです。実際、国立大学運営費交付金は、二〇〇四年度一兆二千四百十五億円から二〇一六年度一兆九百四十五億円に減少しています。附属病院の赤字解消や退職手当減を除いた一般運営費交付金の削減幅は小さいという指摘もありますが、法人化に伴う法定福利費や消費税改定に伴う義務的支出増を勘案すれば、実質一千億円以上の減額というのが実態です。静岡大学においても、法人化以降、運営費交付金は百八億円から九十五億円に減少しています。

 国立大学の予算総額は、さまざまな競争的予算を含めれば維持されているとされますが、運営費交付金削減のもとでの競争的予算増加は、国立大学の財政運営に厳しい現実をもたらしています。研究、教育の機能強化のためのさまざまな研究・教育プロジェクト申請を通じて獲得される競争的予算、補助金は、大学側の自己資金支出を伴う時限つきの予算措置です。大学側はこの自己資金部分を運営費交付金のやりくりで支弁することを迫られ、予算措置が切れれば自己予算でのプロジェクト継続を迫られます。各国立大学は、研究、教育の強化等の大学改革を進めるほど運営費交付金への負担増を招き、運営費交付金における人件費削減を強いられる結果となっています。しかし、常勤教職員の削減と非常勤職員の増大は、その教育研究基盤を大きく衰退化させるものです。

 静岡大学においても、大学改革の推進や研究、教育の機能強化のさまざまな取組のために業務の増大と多様化が進んでいますが、常勤教職員が減少し、非常勤職員の比率は六〇%を超えるようになっています。事務職員の削減は、教員の研究、教育を支える事務機能を弱体化させ、教員の事務的作業も増大し、研究・教育時間を減らす事態となっています。競争的研究費獲得のための書類作成の負担も増大しています。各職場において非常勤職員は欠かせない戦力ですが、財政難による雇いどめの結果、非常勤職員の経験が生かされないことによる職場の効率低下が発生し、過重労働で一人が休職すると周りの労働負担増加で休職が連鎖するドミノ倒しも発生しています。教員削減のため、退職等による教員ポストの補充が十分行われないため、カリキュラム維持が困難になっています。個人研究費の減少は、自由な発想による創造的な研究を損なっています。

 国立大学における競争的予算配分による機能強化は、充実した運営費交付金がなければ機能しません。国立大学の社会的責任を果たすためにも、ぜひ独立行政法人の制約から国立大学を解放していただき、運営費交付金の充実を行っていただきたいと思います。

 奨学金による自己破産の多発が報じられています。実質的にローンと変わらない奨学金ではない、真の奨学金ともいうべき給付型奨学金の選別なき拡充が欠かせません。同時に、授業料の引下げも訴えたいと思います。高学費を前提にした出世払いでは、結局、学生を借金地獄に追いやることになりかねません。

 家計収入減少と学費等教育負担の増加のもとで、多くの学生がバイトに追われる日々の中での勉学を強いられています。本学学生の家庭の平均所得は他の国立大学に比較しても低く、より厳しい学生生活を送っています。高学費や奨学金の返済の重圧の中で、四年生での卒業と、よりよい就職への心理的圧力は高く、就職活動の早期化と相まって、四年制大学は実質三年制大学へと変貌しています。

 昨年九月に、中国・上海のある大学で集中講義を行いましたが、学生の学ぶ環境の彼我の差の大きさに愕然とするばかりでした。

 このような国立大学等の置かれている状況は、静岡等の地方経済にとっても損失です。

 地域に必要な人材の育成と供給、魅力ある大学の存在による若者の大都市部への流出阻止、全国の有能な若者を引き寄せることの効果、地域の生涯学習の拠点としての機能、そして地域経済へのさまざまな知的貢献など、地方国立大学等の高等教育機関の経済的、社会的貢献の大きさははかり知れません。地域経済に根差した人づくりこそが、地域に根差した中小企業を中心にした地域循環型経済の構築に欠かせません。

 最後に、トリクルダウン型中小企業振興策からの脱却を訴えたいと思います。

 政府、未来投資戦略二〇一七では、地域経済好循環システムの構築のために、中堅・中小企業、小規模事業者、サービス産業の労働生産性を高める政策を強調しています。それは、潜在成長率を高める鍵として、労働投入、資本投入とともに、技術革新の反映である全要素生産が重要という視点からのものです。

 その具体的施策は、画一的に生産性の高低やもうける力の強弱で中小企業を選別、淘汰し、トップランナーだけに焦点を当てたものになってはいないでしょうか。廃業率を米国並みの水準に高める数字目標は、適切な新陳代謝を促進するという表現に和らげられましたが、廃業率の低さが創業率向上の妨げとするかのような新陳代謝論の具体化であってはならないと考えます。

 また、地域経済の面的活性化に向けた地域金融機関の目きき強化、いわゆる事業性重視の融資の促進についても、新しい経済パッケージでは、金融仲介機能の発揮のために地域金融機関に対する検査監督を強化するとあり、金融仲介機能のベンチマーク等の活用が強調されていますが、日本銀行のマイナス金利政策等による収益性低下のもとでの行政的強制であってはならないと考えます。

 生産性の高低だけではなく、地域循環型経済において果たしている役割を評価したボトムアップ型の中小零細企業支援の充実、例えば信用保証制度の一〇〇%保証の拡充を訴えて、私の陳述を終わらせていただきます。

 ありがとうございました。(拍手)

菅原座長 ありがとうございました。

 以上で意見陳述者からの御意見の開陳は終わりました。

    ―――――――――――――

菅原座長 これより委員からの質疑を行います。

 質疑の申出がありますので、順次これを許します。柴山昌彦君。

柴山委員 自由民主党の柴山昌彦でございます。

 陳述人の皆様におかれましては、貴重な御意見をありがとうございました。

 私からは、まず、この静岡、先ほど中西陳述人の方から、有効求人倍率が好調だというお話をいただきましたけれども、ちょっと指標を見せていただきますと、県税の税収見込みも、ことしは十億円、今度、三十年度予算ではプラス見込み、そして、何よりも私の目を引いたのが企業立地でありまして、製造業等の企業立地件数が、何と平成二十八年、平成二十九年上期、いずれも愛知や兵庫を抑えて全国ナンバーワンなんですね、静岡というところは。というところで、恐らく、さまざまな環境も寄与しているんだと思いますけれども、企業立地に適した県なのかなということで、大変感銘を受けているところであります。

 そういった恵まれた環境の中にあって、まず中西陳述人にお伺いしたいんですけれども、働き方改革、中小企業に広めていくのは大変難しいのではないかという御意見をいただき、それは私たちにとっての大変重い課題だと思うんですけれども、では、中小企業において働き方改革を実現するために、現場の皆様としてどのようなことをお考えか。

 単なる猶予期間を設けるということだけではなくて、例えば、同じ業種の事業者さんたちが連携をして、大企業だったら人の融通を企業内でできる、先ほど陳述人がおっしゃったとおりなんですけれども、企業の枠を超えて人のやりくりをするということ、また、今マイナス金利というお話もありましたけれども、地域金融がMアンドAを促進することによって企業の再編統合をしっかりとこの好景気環境を活用して行っていくことが必要だと考えるんですが、まずそれについての御意見をお伺いしたいと思います。

中西勝則君 中小企業の働き方改革というのはなかなか難しいということなんですけれども、確かに難しく、特に静岡におけます中小企業、いろいろな分け方があるんですけれども、大きく分けて、ヒエラルヒーのある、例えば、メーカーを中心として下請群を持った中小企業と自分のところで自己完結できる中小企業、二つあると思うんですけれども、特に、ティア1、ティア2、ティア3、ティア4、そういったヒエラルヒーを持った中小企業においては、横のつながり、縦のつながり、それからメーカーの指令、こういったものに左右されるところも多くありまして、全体が働き方改革というものを持っていかないと、下請の、下の方から改革していくということは大変難しいだろうというふうに思っております。

 もちろん我々も金融機関としてMアンドA等やっておりますけれども、MアンドAによって事業承継できないところが生き残るということもあります。それによって生産性が向上する、生産性が向上することによって働き方を変えることができるというような、段階を追っていろいろなことを積み上げていく中で働き方改革ができるかというふうに思いますが、中小企業にとっては、自助努力プラス社会の変革、社会の変化というものがかなり大きな位置づけにあるというふうに思っております。

柴山委員 次の質問に参ります。

 実は、先ほど酒井陳述人から、まさしく中小企業が、人材育成、特に今ITの普及ということで、ワードやエクセルなどを導入されていない中小企業がまだまだ四割ほどあるというようなお話もあったんですけれども、では、具体的に、企業の現場でそういった方々をどういう形で人材育成していくのか。要するに、恐らく、担当される商工会議所の中でたくさん対象企業があるわけなんですけれども、では、そういった人材、現場で通用する人材をどのように確保し育てていくか。

 先ほど、鳥畑教授の方からは地域大学の振興というお話もあったんですけれども、地域で賄うのか、それともよそから引っ張ってくるのか、このあたりについて、商工会議所の方でどのような取組なりビジョンというものをお持ちかということについてお伺いしたいと思います。

 そしてあわせて、その関係で鳥畑陳述人にお伺いしたいのが、確かに、運営費交付金、拡充をしないと大学は厳しいというお話だったんですけれども、いただいた資料にある大学改革、あるいは研究・教育機能強化、さらっと書いてあるんですけれども、実際に貴大学で、学生に選んでもらえるような魅力ある大学づくりというのは本当にどれだけ進められているんでしょうか。

 我々、例えば東京の大学の定数を絞って、要するに東京にこれ以上海外からの進出が起きないようにして、それで反射的に地方に持っていくということを今検討しているところもあるんですけれども、むしろ地域の大学が選ばれる、そういったトップ人材を集めるということをしないと、ただお金をくれ、お金をくれというだけじゃ、それこそ人材育成にならないんじゃないか、それについてお伺いしたいと思います。

菅原座長 それでは、酒井陳述人、鳥畑陳述人の順でお願いいたします。

酒井公夫君 中小企業における人材育成、商工会議所等のやり方ということでございますけれども、中小企業といっても非常に幅がございまして、一番小さいところは一人親方の世界まで入ってまいりますので、そういった意味では、画一的な人材育成というのは、正直言って簡単ではございません。

 その中で、やはり気になるのは、先ほど申し上げましたけれども、やはり経営者のマインドが上がってこないことにはなかなか具体的なところまでいかない。経営者が企業の中でそういう話をしても、その相談に乗ってくれるだけの世代の人間であったりとか社員がいないというのが、本当の零細、小規模にはあるわけです。

 例えば、社長が高齢で、奥様が経理をやっていて、昔からいる方が専務か何かでいて、その規模でやっている企業というのもたくさんあるわけですね。そこでは本当に、失礼な言い方になりますけれども、鉛筆なめなめの世界で今までやってきた部分をいきなりITでというのも難しいと思います。ですから、そういうところには、やはり、経営指導員というのが商工会議所にいて、回るわけですけれども、そういう中でそういうのをだんだん説明して、徐々に上げていくという方法しか今のところないのかもしれません。

 ただ、もう一つは、片方で、ソフトウエアの内容になるんですけれども、やはり、今市場に出回っているベンダーが、大きいソフトなんですね。それが中小企業のニーズに合っているかどうかというと、これはかなり疑問でございまして、中小企業向けに、例えるならば、日本を代表するようなベンダーがスマートフォンの高性能のものを売りに来た。だけれども、もしかしたら、その企業にとって必要なのは、糸電話とは言いませんけれども、ガラ携が欲しいんだ、だけれども商品はこれしかないと言われたときに、なかなかそのメンテナンスであったりとか初期費用が調わない。ですから、これは日本全国の規模でいったときに、もうちょっとソフトウエアを簡素化して安く普及するというようなことがもしできれば非常にありがたいなと思うわけでございまして、それに対して手を打っていただけるというのがあると現実的になってくるのかなという気がいたします。

 あるいは、商工会議所だけではなくて、先ほどから出ておりますけれども、金融機関と一緒になって、あるいは税理士等が入っていただく中で、こういう簡易のパッケージでできるよというようなことをやっていくのが必要だと思いますけれども、ただ、正直言って、商工会議所も組織率が恐らく、平均でいきますと三割とか四割でございますので、そこから外れている中小企業に対してもやっていかなきゃいけないということになると、時間がかかることだと思っています。

鳥畑与一君 お答えいたします。

 学長ではありませんので詳細に答えることはできませんが、ありがたいことに、静岡大学、私の所属する人文社会科学部も、全国から優秀な学生に選んでいただいております。

 例えば、私の学部でいえば、県内出身者は三九%ほどです。北海道から沖縄まで、全国から来ていただいております。それから、アジアブリッジというようなプログラムをつくりまして、外国からの留学生も増大をしております。さまざまな地域貢献についても積極的に取り組んでいることは、県内の企業関係者含めて御存じかなというふうに思っております。

 ただ、私が今回訴えたいのは、そうやって全国から優秀な学生が来て、静岡大学で十分学ぶ環境があったか、そういう場を提供できているかということについて、もっといい環境を欲しいなと。やはりバイトに明け暮れる、十分な勉学時間も確保できないという状況は……。確保していただきたい。

 きょうは話はしませんでしたが、大学内の調査によれば、三分の一の学生がバイトで勉学に障害が生じているというふうに答えている現状であります。

菅原座長 ありがとうございます。

 次に、神田憲次君。

神田(憲)委員 自由民主党の神田憲次でございます。

 陳述人の皆様方には、本当に本日はお疲れさまでございます。ありがとうございます。

 持ち時間も短いですので、早速質問に入らせていただきたいと存じます。

 先ほど、静岡県の県下経済情勢というお話が中西様の方からございました。確かに今、アベノミクスがこの五年間を経て、経済動向という数字、これらは全て良化という方向に動いておりますし、県下における情勢も、先ほど緩やかに拡大しているというふうにおっしゃいました。そんな中、やはりこの日本の経済を支えておるのは、もう紛れもなく就労人口の七割を抱えておる中小企業、それから個人事業主の皆様方という現状があると思います。

 そこで、まず、酒井様にお伺いしたい点です。

 今般の税制改正で事業承継税制が改正になりました。まだこの肝というのは、中小企業の方々にとって株式の評価のやり方という点がもうちょっと緩和されればと、私みずからも思うところはあるのですが、これまでの制度に比べて、随分制度上も深掘りされておりますし、それから納税猶予の割合も一〇〇%というような点、いずれにいたしましても、この新制度がこれからの中小企業にとって大変有効な制度であるというふうに感じている部分があります。

 しかしながら、この中小企業の事業者の株式というのは、そもそも売却というようなことは予定されておりませんから、今こういった後継者難に陥ると、酒井様のことしの年頭のお話のインタビュー記事を拝見させていただきましたが、その五割が黒字にあるんだけれども、しかしながら、結果として、後継者がいないから廃業せざるを得ない状況にあるという状態に陥っているという記事を拝見いたしました。

 その現実は私みずからも地元で痛感しておるところでございまして、今回の事業承継税制を酒井様がどのように評価されていらっしゃるか。また、これまでの承継税制は、事業主の方、それから個人の事業主、法人の中小事業者の方にとって、余り使われていなかった、使い勝手のいい制度とは言えなかった。そして、今回の制度変更が事業承継をしていく上でどういうふうに寄与していくというふうにお考えでしょうか。

酒井公夫君 今お話しいただきましたとおり、今回の事業承継税制の改正というのは、非常に大きな内容であると思っております。もちろん、その個々の内容を捉えていけば、もっとこうしてほしいとかというのが出てくるのかもしれませんけれども、税制である以上、公平性といったような部分も踏まえて議論するならば、かなりレベルの高い改正を今回やっていただいたというように思っております。日本商工会議所としましても、いろいろなところでお願いしたことを取り入れていただいておりますので、そういった意味では本当に感謝するところでございます。

 ただ、これを実効があるものにするためにはということになると、まず一つは、この制度の周知というものがまだまだ十分ではございません。私どもも会員企業に対してそういうものはやるわけでございますけれども、どうしても、商工会議所からの情報伝達に対して全てが反応できるわけではないということ。それと、先ほども申し上げましたとおり、会員の組織率というのが三割、四割の世界でございますので、そういったものにどうやって伝えていくのかということがこれからの課題だと思っております。ただ、本当に一歩も二歩も進んだ内容でございますので、これを機会にそれに気づいていただいて事業承継をしていく。

 あるいは、会議所の役割としますと、マッチングの話。MアンドAという話もありましたけれども。もちろんMアンドAもあるんですけれども、そういった事業に興味のある人と今までの経営者のマッチングというのも実際何件かやっておりまして、実際の効果があるものもございます。そういったものに力を入れていくということに尽きるのではないかと思っております。

神田(憲)委員 ありがとうございます。

 次に、所得税改正で、扶養控除の金額的な壁、いわゆる壁というふうに称されますが、これが拡大された。これまでは百三万の壁、こんなふうに言われたわけです。これが、本年一月から百五十万に引き上げられました。当然、これまでパートをしてきた方々にとってこれは大変有効な緩和、百五十万への引上げであるというふうには感じております。

 そんな中、一方で、国税の方の壁というのは緩和されたわけですが、まだこれは地方税や社会保障の部分との制度的な体系をとらなきゃいけないというふうに私は感じておるところがあります。

 そんな中、その壁という言葉を称して、百三十万の壁とか、それから百五十万の壁というふうに言われます。現状の、人手不足が全国的に蔓延している我が国において、静岡県下も例外ではないと思います。

 この所得税の壁の改正、緩和がどのように地域経済に好循環をもたらすとお考えでしょうか。中西様と酒井様にお伺いできたらと存じます。

菅原座長 中西陳述人、まずお願いします。

中西勝則君 特にパートで働く人たちの問題だと思うんですけれども、税法のあり方について、やはり国税、地方税の考え方の一致というものは大変重要だというふうに思っております。

 それと、今度は百五十万の壁になるというふうに思いますけれども、これは百五十万がいいか二百万がいいかとか、いろいろ壁はあると思うんですけれども、確かに、働いている人たちはここを大変意識している。

 要するに、家計全体の実質の収入、これがどこで一番いい形になるかということを意識してやっておりますので、その意識を外すようなことがなければ、ここからまた、要するに労働時間が長くなる、長くなるといいますか、今まで働けなかった時間をまた働くというようなことを、今、人手不足の中でそういったことをやっていただければ、一部人手不足が解消される部分もあるかというふうに思います。

酒井公夫君 同じでございまして、私どもは自分の会社としてスーパーマーケット等があるんですけれども、やはり、そこで働くパートの女性等が今回のことを受けて、今までの短時間のものを延ばす契約を望んだりとか、そういった部分がございますので、労働集約産業においての効果というのはかなり上がるんじゃないかなと思っております。

 ただ、どこかで壁が出てくるのは制度上避けられない問題だなという気がいたしますので、今回、そういう形で、労働時間が延びるような形の改正になったことはいいんじゃないかなと思っております。

菅原座長 ありがとうございます。

 次に、青柳陽一郎君。

青柳委員 立憲民主党の青柳陽一郎でございます。

 本日は、陳述人の皆様には、お忙しいところ、大変貴重な御意見を賜りまして、まことにありがとうございます。

 質問をさせていただきたいと思います。

 まず、三上陳述人にお伺いしたいと思います。

 エネルギー政策について伺いますけれども、政府は、依然として、原発は安くてクリーンなエネルギーだとして、ベースロード電源に位置づけているわけでございますが、きょうの三上元市長の資料の二枚目の紙の五番目、「原発は安価ではありません。」と。これは色を変えて強調されているわけでございますが、政府の試算と三上先生の試算で何が違って、どうして原発が高いのかということについて、わかりやすく御説明いただけるとありがたいと思います。

三上元君 お答えいたします。

 政府が今まで出してきたものというのは、理論値でこうなるということで、実態と違っていたというのが第一でございます。

 そのことはもう既に、二〇一一年のあの事故のある半年前に、近藤駿介さんが当時委員長でありました原子力委員会で大島堅一さんがレポートしておりますように、私のチラシにも実は書きましたが、もう既に大島堅一さんの計算で、実態の数字として、減価償却費とか燃料費等の直接のコストと、研究費とか安全点検費、そして自治体への交付金ということを入れて、それは既に十・二五円になっているよ、理論値で六円が十・二五円になっているよということで、もう既にこれでは火力より高いということが、八年も前に証明されています。

 さらに、私は大島先生に会いに行って、こういう計算をなぜしてくれないんですかと言ったら、それ以下はやや決め打ち的な形があるので、政治家の皆さんが決めてくれなければいけない問題があると言いましたので、私が乗っけたのが六ケ所村のコストです。この六ケ所村のコストはどこにも入っていないんです。

 もう一つは、十万年保管しなきゃならないといわれていますが、ビュール村には、フランスでははっきり決まっていませんが最終処分場の予定地です、既にそこに年間百万円ぐらいが出されているわけです。そこで十万年の保管料を計算します。

 それから、廃炉のコストに二つありまして、何も事故を起こさない廃炉コストと事故を起こした廃炉コストは全く違うんですね。事故を起こした廃炉コストというものは物すごく高いわけでございます。高い事故を起こした廃炉コストはチェルノブイリが例になっているわけでございますが、そのチェルノブイリの例で乗っけますと、大変なコストになる。

 それから、もう一つは賠償の保険でございます。

 賠償をどれだけするのか、あるいは除染をどれだけするのか、こういう問題について、まるで保険代に入っていない。五十兆円から七十兆円かかるというふうに日本経済研究センターが試算しておりますので、それを何年に一回発生するのかで割れば簡単に出るわけです。それをロイズも受けてくれないんだから日本政府が受ければいい。これを全部乗っければ、明らかに太陽光や火力よりも高くなる。それを日本経済新聞は、少な目に見積もっても十五円と出しているわけですね。世界の水準がそうだということです。一方、太陽光は世界の水準は五円なんですね。五円と十五円、三倍違うんです。

 簡単に言うと、そういう理由で入れていないものがある、そして実態とモデルが違うものがあるということで、政府の試算と大分実態が違うということでございます。

青柳委員 ありがとうございます。

 わかりやすく、大変合理的に御説明いただきました。

 では、なぜ政府はそれを認めないんでしょうかという点と、時間の関係でもう一つあわせて質問させていただくと、ビル・ゲイツが研究中のテラパワー社の次世代原発というのは今の既存の原発と何が違うので三上陳述人もお勧めできるのかについて、これもまたわかりやすく教えていただきたいと思います。

三上元君 まず、政府がなぜ実態の報告をしないのかといいますと、実態の報告をすると高いということがばれてしまいますから高いと言えないという、どうしようもない、最初にうそをつくとずっとつかざるを得ないというジレンマになって言えないだけです。小泉さんは、いつか言うに決まっているから自民党が変わるんだというふうに言っております。

 それから、ビル・ゲイツさんが研究しているテラパワー社は、簡単に言いますと、低コストなのは、劣化ウランを燃料に使うということが決定的に違うわけです。そのために、危険な廃炉物が極めて少ない。ただ、危険であることだけは間違いありませんから、何分の一かには減るけれども、私は余りこれを推進する気はありませんけれども、何とかして原発を少しでもやりたいということであるならば、今のやり方だけはもうだめに決まっていますから、何だったら、ビル・ゲイツさんの研究しているものを研究したいですか、いかがですかと、逢坂先生と一緒に、僕は九月にアメリカでその研究者と会ってきましたよ。今の原発はだめだから我々が研究しているんだと言って教えてくれました。

 以上です。

青柳委員 ありがとうございます。

 我々野党ですから、自民党が変わる前に政権交代を目指して頑張りたいと思っております。

 先生は、既存の原発の研究開発まで全てやめてしまえということなんでしょうか。それとも、研究開発は続けて、商業用の原発はやめろ、こういうことなんでしょうか。その辺のスタンスについても教えていただきたいと思います。

三上元君 まず、原発をつくるという研究と、原発をオペレーションするというノウハウ、そしてもう一つは、廃炉するというノウハウは全く別物でございます。

 それで、今世界に五百基ぐらいあるわけですね。日本には四十数基ですが、世界には日本の十倍あるわけです。これから次々と寿命が来て廃炉になっていきます。今のやり方での原発をつくる国は、あるいは会社は、ほとんどもうなくなりますから。中国やインドすら、もう難しいなと言い始めているわけでございますから、もうこれは将来はないわけですね。ただ、もちろん、ビル・ゲイツの始めた全く新しい仕組みの原発はこれから出てくる可能性はあると思います。安いからというより、危険だけれども安いからという理由は、日本の財界と同じように、危険だけれども安いならやろうか、必ずありますから。可能性はあるわけです。

 ある科学者の方が言っておりましたが、廃炉研究科というものをはっきり大学に出せと。廃炉のマーケットが物すごく巨大であるということから、廃炉研究科ということを打ち出すことによって、そして、これは物すごく大切なことだから、人類のために必要だからと言えば、志を持った若者は来るし、これについては、給料を高く出すよと言うだけで学生は来るんです。学生の人気の企業というのは給料が高いと決まっているんですよ。東京海上がずっと私の時代から一番人気を争っているのかというと、給料が高い、それだけ。ほかに何も理由がないんです。だから、廃炉研究科で、出た人は高い給料を出すと言えば直ちに学生は集まってきますから、廃炉研究科だけに関してはしっかり研究してもらう。

 以上であります。

青柳委員 ありがとうございます。

 我々も今、立憲民主党としても、この国会中に脱原発の法案を提出予定でございますので、またいろいろ御指導いただきたいと思っております。

 次に、景気の現状について中西陳述人にお伺いしたいと思います。

 きょうの意見陳述でもるるありましたとおり、今、景気の回復局面、拡大局面はイザナギ景気超えだというふうにも言われております。数字も出していただいたとおり、有効求人倍率は改善している、そして、株価も好調、大企業の決算もいいということでございますが、一方で、実感なき景気回復ということが多く言われているわけでございます。この実感なき景気回復の原因というのは、実質賃金、実質所得が実際に上がっていない。そして個人消費、これが全く伸びていないということだろうと思っております。

 こうした点について、個人消費を喚起する政策について、どのような御意見をお持ちになっているか、お伺いしたいと思います。

中西勝則君 景気の回復の実感がないというのは、やはり今先生がおっしゃったとおり、個人消費の伸びが鈍いというところにあると思います。特に、これから、介護の問題、子育ての問題、いろいろ問題が起こってくる中で、貯蓄に回している部分、私は銀行の者なんですけれども、貯金は伸びております。預金は伸びております。

 そうしたところで、将来に対する不安、これはなかなか施策だけでは無理かもしれませんが、特に少子高齢化によります人口の構造の変化というものが全ての構造変化、例えば社会構造の変化だとか歳入構造の変化だとか、全ての構造の変化につながっているというところがありまして、一朝一夕に直らないところがあるとは思いますが、現在、処方箋で早く直すとすれば、個人の減税だとかそういうのが必要かもしれません。そういうふうに思っております。

青柳委員 ありがとうございます。

 今の点について、引き続きお伺いしますけれども、中西陳述人と酒井陳述人、お二方にお伺いしたいと思います。

 そういう状況の中で、来年の十月に消費税の増税が予定されているわけでございます。個人消費が伸びていないのが今の景気の一番の病、この処方箋がなかなか見つからない。そういう状況の中で来年の十月に消費税を増税すれば、間違いなく個人消費がまた一段と冷え込むわけでございますが、来年の消費税の増税、このタイミングについてどのようにお考えになるか。

 予算委員会で安倍総理は、来年の消費税の増税は前回と違って上げるパーセンテージが二%だ、そしてさらに、軽減税率を導入する、だから景気に与える、個人消費に与える影響は少ないんだろう、こういう答弁があります。これについての受けとめもあわせてお伺いしたいと思います。

 加えて、もう一点、軽減税率ですね。これは逆進性の解消に資するものだとして導入が図られる予定になっているところでございますが、逆進性の解消という意味においては、軽減税率よりも給付つき税額控除等の方がより効果が高い、こういう意見の方が多いわけでございまして、この軽減税率、これは手続も煩雑になりますし、効果も余り、軽減税率こそが逆進性の解消につながるんだという意見は少ないわけでございますね。これを導入することの受けとめについても御意見をお伺いしたいと思います。

菅原座長 先に、それでは酒井陳述人から。

酒井公夫君 個人消費が伸び悩む中でのこの消費増税でございますけれども、実際に二%云々よりも、マインドの影響というのはかなり大きいと思います。

 一方で、軽減税率の問題もございますけれども、先ほど申し上げましたとおり、私どもスーパーマーケットをやっておりまして、手続が非常に煩雑になります。そういった意味で、個人的には、もうちょっとシンプルな税制にしていただいて、その効果は別のところで求めていただく方がありがたいなという気持ちはございます。

 タイミングにつきましては非常に難しいんですけれども、先ほど、冒頭ちょっと私申し上げましたけれども、そうはいってもプライマリーバランスの問題というものをどういうようにしていくかということがありますので、それとあわせた議論を望むところでございます。

菅原座長 軽減税率の。いいですか。(青柳委員「今お答えいただきました」と呼ぶ)

 では、次に、中西陳述人。

中西勝則君 消費税の問題については、やはり、酒井さんが言っているとおり、実効性の高いといいますか、難しい形で徴収するというよりも、実効性の高い形でやるのが一番だというふうに思っております。

 それと、個人消費の伸び、これは我々はなかなか判断できないんですけれども、長期的に見れば、財政の健全性が我々の安心、安全の気持ちを高めていただければ、マインドも変わってくるかというふうに思います。ただ、近くの問題として見ますと、やはり消費税の引上げというのはマインド的にかなり影響があるというふうに思っております。

 ここを決めるのはなかなか、我々、また先生方にもお願いしたいところでございます。

青柳委員 ありがとうございます。

 それでは、最後に、酒井陳述人と三上陳述人にお伺いしたいと思います。

 きょうの意見の中で多くの陳述人の皆様が、人手不足だということ、これが非常に大きな問題になっていると。これは私もそういう問題意識は共有しておりますが、そこで、女性の活躍ですとか、あるいは高齢者の再雇用をする、こういう対策を打たれていると思うんですけれども、もう一つは外国人の雇用ですね。これはもう急激に、年二割以上の増加率で急激に伸びているわけでございますが、この外国人の雇用についての地域経済に与える影響とか、あるいは、うまくいっているんだとか弊害の方が多いんだとかいう実態を、企業の側からと、それから地方行政の側からの意見をお伺いして、終わりたいと思います。

菅原座長 三上陳述人、酒井陳述人の順でお願いいたします。

三上元君 湖西市は外国人の雇用が多いということを申し上げましたけれども、わずかかもしれませんが、確かに犯罪の率は、よく見ると多少多いということが言えます。

 それと、言葉が十分わからない人が入ってくるために、二つの問題が起きます。災害だとか地震だとか津波だとかいったときに、それをどう伝えるかということで、湖西市では、英語とポルトガル語を同時に三回流す、日本語、英語、ポルトガル語を三つ流すというような形の、一々通訳をしなければならないし、テープレコーダーもいつも入れておかなきゃならないという問題があります。

 それから、地域社会で自治会というのがありますが、自治会になかなか入ってくれない。それをお願いして入ってもらって、自治会費をもらうから一緒に運動会に参加しましょうね、いろいろな地域の行事に参加してくれ、これはなかなか困難だという問題もございます。

 もう一つは、学校に入ってきます。ところが、子供さんの年齢はばらばらでございますので、幼児に来れば早く日本語を覚えるんだけれども、小学校で入ってきた、中学校で入ってきたという人たちもいるわけです。そうなると、学校についていけないから、そこで、浮浪者になってしまったり、ぐれてしまったりという問題が起きるわけでございます。

 そうすると、連れてくるときには学校教育をどうするのかということをちゃんと審査して考えていただくことと、あるいは、それでも連れてきていいならば、国は地方自治体に対して、こういう日本語教育をちゃんとやりましょうねという補助金をつけていただいて、外国人を雇用してくださいと。

 雇用せざるを得ない。我々の立場から見ると、湖西市みたいな工業の町は、外国人を雇用せざるを得ないと思います。そのためのマイナスが生じたことに対して、地方に財政の負担が起きないような形で支援を国にお願いしたいというふうに思います。

 以上です。

酒井公夫君 静岡県の人口動態の数字がこの前出たんですけれども、静岡県で申し上げますと、日本人がトータルで流出が五千二百人ぐらい、一方、外国人の流入が差引きでプラスの部分が千二百人ぐらい。ですから、端数はちょっとあれですけれども、五千二百人、日本人が減って、外国人が千二百人ふえて、今の静岡県の人口になっている。そういう意味も含めまして、今、三上さんの方からもお話がありましたとおり、これから、外国人というのは、本当に地域の経済にとっての重要な役割を担っていただかなくちゃいけないというのは明らかでございます。

 一方で、外国人の方に、日本語を教育しないと日常生活が送れないという若者がかなりふえているということで、日本語教育等も求められていますけれども、なかなかその部分も整っていないという環境。あるいは、医療とか保険とかという話になると全くわからない。そういった多文化共生というような観点からの施策というのが非常に求められていると思います。

 一方で、就労の関係で申し上げますと、ちょっと全体を把握しているわけじゃないんですけれども、私、静岡鉄道という会社でございまして、バスもやっておるんですけれども、外国人のバスの運転手というのは、大型二種というのが一応表面上は取れることになっているんですけれども、たしか就労ビザの問題だと思うんですけれども、現実的にできないという部分がございます。

 お客様の案内というのが言われるわけですけれども、例えば工場の工員さんの輸送なんていうシンプルな、二地点をただやるような、こういったようなものなんというのは、そこでお客さんに対してやる必要もない、そういうようなものというのは実は働き方を考えればいろいろあるわけでございますけれども、なかなかそういう規制の中でうまくいかない部分もございますので、外国人の労働者をこれから戦力にしていく、地域経済の発展に一緒にやっていくんだという観点から、規制というのを見直していただけるような動きがあるとありがたいなと思います。

青柳委員 ありがとうございました。

菅原座長 ありがとうございます。

 次に、大西健介君。

大西(健)委員 希望の党の大西健介でございます。

 改めまして、意見陳述人の皆様には、お忙しい中、貴重な御意見を賜りましたことを御礼申し上げたいというふうに思います。既に三人の質問者が質問しておりますので、できるだけ重複がないように質問していきたいというふうに思っております。

 まず初めに、平成三十年度の税制改正の中にも一部含まれておりますけれども、賃上げだとか設備投資を行った場合に法人税を一部減税するというような措置があります。ただ、中小企業の約七割は赤字決算をしているというふうに言われておりますので、法人税減税というのは、そういう政策誘導する上で、中小企業に対してはちょっと効果が薄いところもあるんじゃないかなというふうに私たちは思っております。

 一方で、企業は、赤字でも社会保険料は負担しなきゃいけないということでありますので、むしろ社会保険料を減免した方が中小企業に対しては効果が大きいんじゃないか。

 かつて、我々は、新たに正社員を雇い入れた中小企業に対して、新規増加の社会保険料の負担額の二分の一を十年間国が負担するというような議員立法を実は出したこともあります。

 こういうような、社会保険料の減免という考え方について、酒井会頭の方から御意見を賜れればというふうに思います。

酒井公夫君 明確にお答えできるかどうかわからないんですけれども、昇給の部分と法人税というのは、私も、くっつくという発想は余り持っていません。法人税を意識しながら常日ごろのPLを考えるなんてことはあり得ませんので、そういった意味で、そこが密接に結びついて議論されるという違和感は感じております。

 今の社会保険料等の部分というのは企業負担も当然ございますので、昇給とあるいは赤字経営というものとは同じ土俵の上でございますので結びつきやすい要素かとは思いますけれども、ただ、一方で、社会保険の問題も、それで回るのかという問題も考えてしまいますので、簡単にはいかないのかなという気がいたします。

 ただ、法人税との結びつきというのは、結構頭の中を整理するのに時間がかかる内容だという感じは持っております。

大西(健)委員 ありがとうございます。

 次に、三上陳述人にお聞きをしたいと思うんですけれども、私は、地元が刈谷というところで、まさに豊田佐吉翁の恩恵に浴している地域でありますけれども、自治体の市長さんを三期十二年やられたという御経験があるということですので、お聞きをしたいんです。

 今、与党の方で、幼児教育の無償化というのを進めようというふうなことが言われています。予算委員会の審議の中でも、無償化よりも全入化、まず待機児童をなくすべきではないか、そうでないと、結果として、保育園に入れなかった人と入って無償化の恩恵を受ける人、更に不公平が拡大するという部分もあるんじゃないかというようなことが言われております。

 それと、また、多分この幼児教育の無償化というのは、もともとの考え方というのは、アメリカ中心の研究成果として、幼児期に教育投資をするとその効果が非常に大きいということで、就学前の教育に重点的な社会的な投資を行っていこうということから始まっていると思うんですけれども、それが、無償化というのがいいのかと。

 例えば途上国なんかは、無償化することによって、今まで就学前教育を受けていなかった人たちが受けることになるというところはあると思うんですけれども、日本の場合は、もう、三歳―五歳でいうと、ほとんどの子供たちが幼稚園か保育園に通っているということでいうと、必ずしも、就学前のところに投資をたくさんしようということは私は間違っていないと思うんですけれども、それが無償化というと、所得の高い人も無償化の恩恵を受けるということで、これがどうなのかといういろいろな議論があるんですけれども。

 三期十二年首長をやられた立場から、今のこの幼児教育の無償化という政策についてどのように考えておられるか、御意見を賜れればと思います。

三上元君 無償化したけれども入ることができないというんじゃ、入った人だけ得して入れない人は損しちゃうわけですから、これは順序は明らかに、一、全員入学又は入園ですね。入園、入学ができるという状況になった中で無償にする。順番は間違いなくそういう順番でないと、入れない人が怒っていて入った人だけは無料、これはとんでもないから、順番は明らかにそうだと思います。

 そして、もちろん、幼児教育無償化、これは推進をしていただきたいです、財政に余裕があれば。それと同時に、例えば、先ほど大学の先生もおっしゃいましたけれども、高等教育も、日本は公的支出が少ないですから、もっとしっかり、授業料を下げるということも必要ではありますが、一方でちゃんと、給付型、返さなくていい、あるいは少なくとも利子はないとか、幾つかの、全員というわけにもいかないかもしれませんが、ある学力の段階を踏んで無償でいけるような仕組みに持っていくべきだと思いますので、幼児教育も高等教育も、明治時代はもっと教育に力を入れていたはずでございます、ぜひ力を入れて、三十年後に備えていただきたいと思います。

 以上です。

大西(健)委員 それでは、次に、私の選挙区も自動車産業が非常に盛んで、現在でも人口がふえているような、非常に恵まれた地域ですけれども、それでも最近では、町の中心部なんかに、近くに食品スーパーがなくて買物難民みたいなのも出てきている地域もあります。

 かつて、地域の商店というのは、郊外型の大型の駐車場を備えたショッピングモールとかあるいはコンビニに淘汰をされてきたということが言われていますけれども、最近では、ことしの新年の週刊誌なんか、デス・バイ・アマゾン、アマゾンによる死という特集をしていましたけれども、まさに、もう大型店とかコンビニじゃなくて、送料無料で翌日配達してくれるアマゾンのようなネット販売にどんどん地域の商店が淘汰をされてしまうんじゃないか。

 例えば、私の地元のある布団屋さんと、この間話したら、大西さん、うちの店に来て商品を確認してそれをネットで買う人がいる、そういうことをおっしゃっていました。

 だから、こういうことがずっと進んでいくと、まさに商業が地域に雇用やにぎわいを創出したり、まちづくりに協力する、ライオンズクラブだ、ロータリークラブだというのは地域の商店の人たちが入ってまちづくりに貢献しているんですけれども、商工会議所の会員もそうでしょうけれども、そういう人がどんどんいなくなっていくと、町自体が廃れていく。

 ですから、ちょっと先の将来を考えた場合に、こういうネット通販の拡大が地域のまちづくりとか地域経済に与える影響というのをどのようにごらんになるかということについて、再び酒井会頭にお伺いをしたいと思います。

酒井公夫君 私ども、会社としてショッピングセンターの経営もやっておりますので、今先生おっしゃったとおり、ネット通販での売上げというのは非常に大きくて、それに対応してどうやってやっていくかというのは大きな課題でございます。

 幸い静岡はある程度の消費量がございますので、その中で私どものショッピングセンターは金額を維持しておるわけでございますけれども、例を出されたとおり、物を見に来られて帰ってアマゾンでやるというのは、大いに現実的にある話でございまして、これはやはりとめられないんじゃないかなと思いますね。なぜならば便利だからでありまして、その便利さを上回るだけの利便性といいますか物をやはり商業者は提供しなくちゃいけないわけです。

 参考になるかどうかわかりませんけれども、私ども今、静岡ではプレミアムフライデーの部分をやっております。全国的には何となく下火になっておりますけれども、静岡は働き方改革をあわせてやるんだということで一生懸命やっているところでございます。

 そこでやはり好評なのは、商店の店主が、まちゼミと言っておるんですけれども、自分の商品を説明するんですね、プレミアムフライデーに。例えば、花屋のおやじが、どうやって切り花を長引かせるかなんという講義をするわけですよね、あるいは自分のところの化粧品はこういうふうに使ってもらえると効果があるんだとか、そういうようなことを、ふだん、日常のことをゼミとしてやる。そうすれば、そこで消費者と経営者との接点ができて、売上げにつながっていく可能性もあるということで、プレミアムフライデーの中でそういったものを広げようとしてやっております。

 どれだけ効果があるかはわかりませんけれども、片方でネット通販は否定できないと思いますので、それを上回る商品提供をどうやってやっていくかというのをみんな真剣に考えるべきタイミングかなと思っております。

大西(健)委員 先ほど、たしか酒井陳述人からお話があった観光のところで、クルーズ船がたくさん来ている、あるいはインバウンドで来られる外国人の方々はWiFiにつながることを望んでおられるという話があったかと思います。

 インバウンドなんかで、例えば中国の方なんというのは多いんですけれども、きょう、希望の党からは私とともに後藤委員が参加をしていますけれども、後藤委員はこの間、中国のシンセンに視察に行った話をしてくれたんです。中国も今急速にキャッシュレス化が進んでいて、現金が使えないというか、現金なんか使っている人はいないというようなことを言っていました。あるいは、一つジョークで、今や物乞いまでいわゆる電子マネーでくれと言うというような話があるという話ですけれども、北欧なんかもかなりキャッシュレス化が進んでいる。

 ただ、日本はどうしても現金主義というところがあって、私もやはり財布に一定程度お金が入っていないとちょっと心配になってしまうんですけれども。

 ただ、このキャッシュレス化というのも急速に進んでいくんじゃないかというふうに思いますが、全国地方銀行協会の会長も務められた中西陳述人に、キャッシュレス化に日本がどう対応していけばいいのか、その後、課題みたいなのがあれば、お聞かせをいただきたいと思います。

中西勝則君 電子マネーの問題は、これはインフラと捉えるのか一つの民間の企業のビジネスとして捉えるかということは大きい問題だと思うんですけれども、我々銀行といたしましては、これをインフラとして捉えて、できればオリンピック、二〇二〇年、これまでにできる形のキャッシュレス化というのをかなりやっておきませんと、日本以外のところの国でキャッシュレス化がかなり進んでいます。リトアニアだとか中国だとかというのが有名なんですけれども、そうしたところに対応するのが、既にもうキャッシュではなくて電子マネーだというふうに思っています。

 電子マネーの問題と、それから、時々、仮想通貨の問題をごっちゃにすることがあるかと思うんですけれども、電子マネーは現通貨の電子化ですので、できるだけインフラとして考えたつくり方をしていただく。これは今、政府主導というよりも、決済は民間主導で始まっているところが多いんですけれども、できれば日本も、誰でもが使えるプラットホームとしての電子決済、こういったものをつくっていただければありがたいなというふうに思っております。

大西(健)委員 ありがとうございます。

 それでは、鳥畑意見陳述人にお聞きしたいと思うんですけれども、先ほど大学の話をされて、国立大学法人の運営費交付金がどんどん減らされているという話の中で、非常勤の職員が六割ぐらいいらっしゃるみたいな話がありました。

 働き方改革の中でも、同一労働同一賃金という話もありますが、二〇三〇年問題というのがありまして、我々が、当時の民主党政権ですけれども、労働契約法を改正して、有期契約の労働者が更新を重ねて五年を経過したら無期転換申込権が発生する、雇用主に対して無期雇用してくださいという申込みができるということで正規化を進めよう、こういう制度を入れたんですけれども、その施行からちょうどことしが、四月で五年を迎える。

 これは今、何が起きているかというと、その五年を迎えて、無期転換申込権が発生するのを回避しようとして、雇いどめしているところがあるんです。これは民間でも起こっていますけれども、実は、深刻なのは、全国の大学で起こっていまして、ただでさえ非常勤の大学事務職の人が多い、その人たちが、何年もずっと大学で働いてきて、教授からも非常に重宝がられて、なれている。ところが、五年たって、無期転換申込権が発生するからもう次は更新しませんよということで、雇いどめに遭っている。

 これは全国の国立大学で結構起こっていて、問題になっているんですけれども、静岡大学の方でそういうようなことをお聞きになっておられるか、あるいは静岡大学で何かそういうことに対して対策をとっておられるというのを聞いておられるかどうか、ちょっとお聞きをしたいと思います。

鳥畑与一君 静岡大学でも、就業規則上は無期転換権ができるようになっております。ただ、別途、ガイドラインで、専門的資格がなければだめだということで、非常にその入り口が狭く設定されております。

 ただ、実は私、静岡大学で過半数代表というのを務めさせていただいているんですが、ある職場で、やはり労働時間のオーバーが発生する。その原因は何かというと、常勤職員さんが、要するに休まれる、過労ですね。一時的にいわゆる派遣職員さんを得る。時たま、スーパー派遣社員という表現もするんですけれども、非常に有能な方が来られるんですけれども、仕事がもたないんです。

 やはり大学の業務というのはそれなりの特殊性がありますし、いきなり入って従前の方の仕事をそのままこなすというのは非常にハードなものですので、その方がすぐにやめられちゃった。そうするとどうするかというと、その職場にいた非常勤職員の方にかわってもらう。派遣職員の方にはより簡単なものを担ってもらう。それくらい、本学においても非常勤職員さんは、経験年数がたちますと、本当に常勤職員さん並みにノウハウ、経験を積んで、なくてはならない戦力なんですね。

 ただ、それが、五年が来ると、財政的に制約があるということで、実質的な雇いどめになる。その方がやめられると、職場としてはもう本当に戦力を失う形になって、ほかの方に非常に負担が行く。これは、本学だけじゃなくて、今御指摘がありましたように、全国の国立大学、研究所、それからもちろん私立大学も含めて広範に起きているわけですが、それはもう、そうせざるを得ない大学側の事情がある。

 やはり財政的な措置をやってもらわなければ、我々は本当に悪循環にどんどん陥っている状態だということを訴えさせていただければと思います。

大西(健)委員 ありがとうございます。

 時間的に最後になるかと思うんですけれども、黒田日銀総裁の続投という話が出ていますけれども、異次元の金融緩和によるマイナス金利の導入というのが地域の金融機関にとってはかなり大きな負担になっているということを聞きます。

 一方で、人口減少とかネットバンキングとかで、メガバンクも大規模なリストラとか支店の統廃合をやっているという中で、金融機関にとっては、今、特に地方の地銀なんかはかなり再編が進んでいるということも聞いておりますけれども、これからそういう地銀の再編というのがどう進んでいくのか、また、地銀を中心とする地方の金融機関の果たすべき、メガバンクと違った果たすべき役割というのについて、これも、全国地方銀行協会の会長も務められた中西陳述人に御意見をいただければと思います。

中西勝則君 一つには、マイナス金利、若しくは金融政策全般的に考えますと、今の景気の回復状況等から見て、部分最適で銀行だけ金利を上げてくれというのはなかなか難しい状況だというふうには思っております。

 ただ、この状況が長く続きますと、本来銀行が持っている、貸す、預かるだけではなくて、地域に対する貢献、こういったものがなかなかできなくなる可能性がある。そういった中で、地域の銀行も合併等を考えていくということは、これからも進んでいくというふうに思われます。人口減少というのも含めて、そういったことが起こるかというふうに思っております。

 じゃ、全てが銀行の合併がいいかということだけではなく、メガバンクがこれからいろいろな技術を使って、イノベーションを起こした技術を使って経費を削減する、若しくは人を削減するといっても、首にするよりも自然減だといっておりますけれども、ある意味では人が減っている中で労働人口の流動性が起こるということに、全て反対はしないんですけれども、そういうことも起こってくるだろうというふうに思っております。

 それと、地域で果たすべき役割で一番大きいのは、やはり経済に対する、若しくは企業の経営に対する、それから個人の資産の形成、こういったものに対する後押しをどういうふうな形でできるかというものが、我々は多いと思います。これは、個人だとか企業に対しては相対でやっていく部分が多いんですけれども、地域の経済を見た場合は、やはり地公体それから地域のいろいろな団体、こういったものと一緒になって景気を上げていくということをしていかなければいけませんし、そういったところに対して人を供給する力も持っていなければいけないかなというふうに思っております。

菅原座長 ありがとうございます。

 次に、竹内譲君。

竹内委員 公明党の竹内譲でございます。

 本日は、皆様、改めて、まことにありがとうございました。

 まず、酒井会頭にちょっとお伺いしたいんですが、平成二十八年の十月に新会頭として抱負を述べられている記事を拝見いたしておりますと、人手不足とかいう問題に対しまして、商工会議所としては地域企業の人事部としての機能を果たしていきたいということで、中小企業の場合は専門的に採用を担う人事部門を整える余裕がないと分析をされた、そういう意味で、地域企業の人事部としての機能を果たしたいというふうにおっしゃっておりまして、さまざまな採用支援とか働く人のスキルアップなど取組を強化するというふうに抱負を述べておられるんです。

 大変、私は、記事を拝見いたしまして、これはユニークな発想で、こういう取組は大事なんじゃないかなと思ったものですから、その辺の具体的なお話をまずちょっとお伺いできたらと思います。

    〔座長退席、田中(和)座長代理着席〕

酒井公夫君 なかなか成果という部分では胸を張ってお話しできるようなことはまだないわけですけれども、先ほど申し上げましたように、本当に社員が二、三人の企業とか、社長みずから採用活動をやっているような企業においては、採用のタイミングが終わりますと、継続して採用活動というのはできません。そうすると、最初のタイミングで来てくれないと、もうその一年間無理なんですね。それが三年も四年も続きますと、企業としての中期計画なんて無理です。

 企業経営者から言われたんですけれども、酒井さん、うちの会社、いいかげんに見えるでしょう、そうなんですよ、人が採れない以上、中期計画なんか立てられないんですよと。そういう現実があったので、では商工会議所としてそういう部分を支援できないかというのが、地域人事部の発想でございます。

 ですから、例えば、中小企業であっても、ホームページに採用の面をどういうような形で記載すべきか。例えば、IR的な情報なんというのは必要ないんですよね。どこの銀行と取引しているかなんて新入社員は興味なくて、それよりも、自分が仕事するのはどういうメンバーとどういう顔を突き合わせるんだという情報が欲しいよねと。だから、そういったものがわかるようなものをつくったりとか、あるいは、情報を学生に届けるのになかなかツールがないという中で、静岡では、静岡市内にある高校全てのOB会と提携しまして、そのOB会の名簿で流してもらうということで冊子をつくって情報提供したりとか、そういうものを少しずつやっているところでございます。

 なかなか人が、要員計画がちゃんと整わない企業が中期計画を議論するのは難しい、本当にそのとおりだと思いますので、できるだけそういうものに会議所として貢献できればということで動いているつもりでおります。

竹内委員 それから、そのほかにもいろいろなアイデアを提起されておられまして、二〇一六年の十月の毎日新聞の静岡版ですかにも、拝見しておりますと、首都圏の企業では副業やステップアップのために転職を繰り返す雇用形態が当たり前になっている、そうした多様性に静岡の企業も対応していかなければならない、生涯静岡で働きますという人だけにこだわっていると、狭い範囲で人材を探さざるを得なくなり、他地域に置いていかれると。

 この点も非常に重要な御指摘だというふうに思うんですけれども、この辺につきましても、何か付言することがありましたらお願いいたします。

酒井公夫君 ありがとうございます。

 きっかけはDMO、静岡のDMOの人間を外から採ってくるときに、私も面接をしたんですけれども、最後に残った三人が三人とも、副業でやっていいかという話をしたんですね。何のことかよくわからなかったんですけれども、やはり本業を持っている人間が自分のスキルを生かして副業としてこういうことをやりたいということが非常に印象的でございました。

 その中の一人が言った言葉が、自分は静岡出身で、今大手の企業のマーケティングを担当しているんだけれども、親の介護がそろそろ発生する、そういう意味でいくと、三年になるか五年になるか十年になるかわからないけれども、一週間のうち半分ぐらいは静岡にいて仕事をして、なおかつ今の本業を続けたい、そうなると、どうしても今の雇用形態では難しいのでできたら副業でやりたい、というところで見渡したところ、静岡にそれを受けてくれるような企業はないと。中途採用のルールはあるんですよ。ただ、そういうレベルの人間の要求を満たすだけの給与所得であったりとかその後の福利厚生であったりとか、そういうものを備えたような形の企業がないんですね。

 そのときに、議論をしていたら、静岡でずっと働くことしかできない人間を、広い労働マーケットのほんの一部だけをみんなでとり合っていると。だから、首都圏でそういう人がどんどんふえている中で、副業というのをもっと議論しなくちゃいけないんじゃないかというのを感じたものですから、そのときにそういうように話して、静岡の企業でもそういうのに興味があるところにお話ししたわけでございます。

 最近、政府の方でも副業の部分を就業規則に入れるべく動きがあるわけでございますので、それらを受けて対応していきたいと思っておりますけれども、では自分の会社の人事部にそれを話してすぐできたかというと、できませんでした。やはり、人事部が考える副業というのは、今いる社員をどうしても考えてしまいます。でも、今先生おっしゃっていただいたとおり、これからの労働者をどうするのかという部分において、静岡の企業がそういうものを備えてくることによって、労働の流動性といいますか、人手不足というのが解消できる一つの手だてになる可能性はあると思っていますので、まだこれも続けるつもりでおります。

竹内委員 ありがとうございます。

 そこで、生産性向上の話になってくるのでございますが、先ほどありましたように、ワード、エクセルなしが四〇%もあるというような現状はなかなかやはり厳しいものがあるなと改めて思うんです。

 そこで、中西会長が別のところで、生産性向上は、個別企業で望ましい成果を上げるのはなかなか難しいんじゃないか、それで、限りある労働力を単に奪い合うのではなくて、企業や業種の垣根を越えて連携して、より効率的な働き方の実現に向けて知恵や工夫を結集すべきと考えるということを昨年の七月の静岡新聞に書かれておられるわけでありますが、企業や業種の垣根を越えてというあたりが大事かなと改めて思ったのでございますが、その辺についての御意見を更にあればお願いします。

中西勝則君 特に働き方の中の派遣なんかの、派遣法の問題なんかもありますけれども、例えば、建設業では全く、ほとんど認められていない中で、建設業の現場で働いている人たちというのは繁閑がかなり激しいということから、いろいろの業種だとか、それからいろいろな企業を超えてその人たちがうまく配置されるような、業種若しくは企業を超えて、現場を超えて配置されるようになれば、より効率的な仕事ができるのではないかと。

 今、建設業に限ったことではありませんけれども、時間当たりの賃金は比較的高い業種なんですけれども、工期が重なってしまうようなことが多くて、したがって仕事をする時間が、日数が少なくなってしまう、それで年収が少ないというようなことも起きておりますので、そうした働き方に対する法律の緩和によってそういったことができないか。

 もちろん、もう一つは、今も少しずつやってはおると思うんですけれども、公共事業の仕事の出し方、こういったものによって、人、若しくはその生産性を上げることができるのではないかなというふうに思っております。

 それともう一つ、ヒエラルヒーのある同じ業種、例えば電機業界でも、一番上の製品をつくるところと下請の部品を供給するところ、自動車業界も同じです、こういったところの繁閑をうまく利用できないかなというようなことも考えております。

竹内委員 ありがとうございます。

 もう一度酒井会頭にお願いしたいのでございますが、税制につきましては、私も、与党の税制調査会のメンバーとして、今回、相当固定資産税の特例とか事業承継についても努力したつもりでございますけれども、事業承継につきましては評価していただいてありがたいというふうに思っております。その上で、気づき、気づかせることが大事だ、そのためのオペレーションが大事というふうに先ほどおっしゃっていました。

 この十年の間にこれを一気に進めていくことが必要なんだろうというふうに思っておりますけれども、その辺で、オペレーションとして、例えば具体的に何かこんなことをしてはどうかということがあればおっしゃっていただければと思います。

酒井公夫君 非常に悩んでおりまして、今までも、商工会議所の経営指導員あるいは事業承継のネットワーク等、静岡は割と進んでいる方でございまして、事業承継のネットワークにつきましては、全国大会もこの前静岡であって、静岡を参考にしてもらう、そういうので進んでおるわけでございますけれども、まだまだ不十分でございます。

 やはり、金融機関とのコラボレーションというのが一番大事でありまして、それに対して税理士等の参入といいますかお願いする中で専門知識を提供していただいて、まさに気づかせるというのが大事なんじゃないかなとは思うんですけれども、では具体的にどうやっていこうかというのは、正直言いまして、今そのアイデアを持っている段階ではございません。

 ただ、会議所の方に、経営指導員で回っているメンバーには、やはりスキルを上げないことにはなかなか適切な助言もできないものですから、先ほどのIT化と一緒なんですけれども、税制を正しく理解する、そしてどういうメリットがある、そしてIT化についても助言できるようなスキルアップというものを強く求めているところでございます。

 十分なお答えでなくて申しわけございません。

竹内委員 ありがとうございます。

 更に酒井会頭にお願いしたいんですが、やはり、静岡市を始めとしてコンパクトシティーということもいろいろ提言されて、実際に取り組まれてきた御経験もあるわけでありますけれども、地方創生という意味では、にぎわいをつくっていくということが非常に重要だと思うんですけれども、具体的にどういうふうにこのコンパクトシティーなりにぎわいなりをつくっていくことが大事か、その辺の何か御意見があればお願いいたします。

酒井公夫君 その町それぞれの特徴があると思いますので、一概に一般論では議論できない話だと思っておりますけれども、静岡に関して申し上げますと、静岡の中心市街地というのは、歩いて十五分で全部回れるような非常に狭いところに大型の商業施設が全部集まっておりまして、もちろん、県庁も市役所も総合病院も二つ入っておる。非常にコンパクトなものですから、これを分散させないという努力をいろいろなところでしているつもりでおります。まさにコンパクトにして集中化させる、ここをエンジンとして周りもにぎわせるというようなことを考え方のベースとしてやっております。

 古くからいえば、徳川家康公がつくった町でございまして、もともと、二核ワンモールといいますけれども、今、商業のはやりが二核ワンモール、二つの核になる大きい商業施設の間をモールでつなげるという、これが非常に力があるんですけれども、昭和の初めから静岡は百貨店が二核になっていまして、そこを商店街がモール化している。そういう土壌がありましたので、この土壌を生かしながら、中心市街地というものに徹底的に力をつけさせる、それをもう市民が総出で応援していくというような形をとりたいと思いまして、先ほどちょっとWiFiのところでお話ししたんですけれども、ILoveしずおか協議会というのを六年ほど前に立ち上げました。もう法人格も持たないへんてこりんな組織なんですけれども、そこが今プレミアムフライデーも主力になって動かしているということで、市民団体に育ってきましたので、そういった動きの中でにぎわいをつくっていくということになろうかと思います。

 ただ、本当にこれはもう町によって違うものですから、例えば博多であったりとか天神であったりとか鹿児島であったりとか、そういったものを参考にしながら、みずからいろいろなところで議論をしているところでございます。

    〔田中(和)座長代理退席、座長着席〕

竹内委員 ありがとうございます。

 それで、ちょっと教育の問題にも目を向けたいと思っておるわけでございますけれども、鳥畑先生からいろいろ御意見をいただきました。

 与党としても、公明党としても、給付型奨学金というのは重要視しておりまして、我が党主導でつくったんですけれども、ことしは更に二万三千人ぐらいまで拡充するのでございますけれども、授業料減免枠も今後更に拡大を何とかしていきたいというふうに思っているところでございます。

 それで、やはり地方創生という観点から、地方大学と地域との、自治体、商工会議所等との連携というのを今重視をしておりまして、実は、今回の予算案の中にも、地方大学の活性化、それは、地域の企業やあるいは自治体と連携して地方創生に資する事業を行う場合には交付金を出すということを盛り込んでいるんですね。ぜひ、この辺、またごらんをいただければというふうに思っておりまして、単なる大学だけの問題でもありませんし、きょうは自治体関係者はいませんけれども、経営者のトップの皆様もいらっしゃいますので、ぜひ、その辺の連携が非常に重要ではないかなと思っておるのでございます。

 今初めて申し上げたことなので、この給付型奨学金も含めて、何か更に御意見があればお願いいたします。

鳥畑与一君 ぜひ給付型奨学金の拡充をお願いしたいわけです。

 実は、私の娘は今、私立大学の一年生です。外国語学部におります。やはり、海外に留学して自分の能力を伸ばしたいという夢をたくさん持っているわけですが、残念ながら、地方国立大学の私には、それを支援する財政的な余裕はありません。そうしますと、奨学金がある、奨学金があると。でも、おまえ、それは返さないといけないんだぞ、一体幾らになるんだという話をすると、急にやはり夢がしぼんでいくわけですね。それに限らず、給付型奨学金、本当の意味での奨学金をぜひ抜本的に拡充していただきたい。

 ただ、そこで、新しい経済政策パッケージで、その条件というものが、例えば実務型教員の導入比率でありますとか、いろいろな条件を設ける、ある意味、その条件を満たした大学にだけ導入するような提案がされているかなというふうに思うんですね。

 ただ、現実にやはり大学間の格差というのがあるわけです。よく言われますように、むしろ、国立大学に来ている学生の方が、親の所得が高い、学力が高い。そうしますと、そこをスタートにして、給付型奨学金を支給する大学、しない大学というふうにやりますと、そのまま格差を固定化する、拡大するような気もするわけですね。そういった意味では、そういう条件付で、ある特定の大学だけに導入するようなことは避けていただきたいなというふうに思っているところです。

竹内委員 だんだん時間が少なくなってきましたので、最後、私の方からあとちょっと申し上げておきたいのは、質問ではございませんけれども、やはりどうしても何かをやるには財源が必要でございまして、日本全体としても財政再建が、やはりこれは喫緊の課題でございますし、また、教育を含めて新しい財源が必要でございますので、消費税の引上げというのは、やはりよほどのことがない限りやらざるを得ないのではないかなというふうに思っているところであります。

 そのかわり、今上げた分をできる限り、教育や子育てやその他社会保障という形で、国民に目に見える形で還元していくということがやはり大事なんだろうというふうに思うんですね。それが消費を下支えすることにもなるんだろうというふうに思っております。

 最後に、あと一分ほどですが、先ほど軽減税率の話もありましたので、ちょっと私どもからも申し上げておかないといけないんですが。

 給付つき税額控除とよくこれを検討したんですけれども、消費者の感情論、行動経済学といいますか、そういうところから考えて、やはり一円でも安いところへ動くという消費者の感情論もあります。それから、給付つき税額控除を実現するためにはマイナンバーカードが不可欠でありますし、それを全部導入してもなかなか資産や所得を完全に把握することが難しい。対象者、低所得者というものを完全に把握することが難しいという現状もございました。

 その上で、欧米に倣った形をとらざるを得ないだろうというふうに考えたわけでございます。低所得者に対しては、額ではなくて、率としては逆進性の解消はあるというふうに考えております。

 財源につきましても、今ここで申し上げるわけにいきませんが、確実に確保しつつある、そういうことを申し上げておきたいとも思います。

 そういうことで、消費がマイナスにならないように、しっかりとした体制を整えてやってまいりたいということを最後に申し上げて、終わりたいと思います。

 ありがとうございました。

菅原座長 ありがとうございます。

 次に、黒岩宇洋君。

黒岩委員 無所属の会の衆議院議員黒岩宇洋でございます。

 きょうは、四名の陳述人の先生の皆様方から大変貴重なお話を賜りまして、大変感謝申し上げます。また、午前中には県内の視察もさせていただきましていろいろなことをまた学ばせていただいたことも、あわせて感謝申し上げる次第でございます。

 私は新潟県の選出議員でございまして、この時期は西高東低型で、日本海側はどんよりと曇った、また肌寒い風の吹く中、マフラーとコートで来たんですけれども、静岡は暖かいですね。青空も非常にきれいに爽やかで、私どもも気分よくきょうの公聴会に臨んだ次第なんです。そんな中で、また改めて陳述人の先生にお聞かせをいただきたいんですけれども。

 まず、エネルギー政策、原発のことについて。これはお聞きしたいのは、むしろ経営者側からの感触ということで、中西陳述人と酒井陳述人にお聞きしたいと思っています。

 先ほど、三上陳述人の方からは、非常に明瞭、合理的に、エネルギー政策というのはさまざまな観点から、安全保障の観点からとかいろいろな観点からも捉える面があるんですが、特に経済的な観点からということで、原発は高いんだ、裏を返せば、自然エネルギーに変換していければ安いコストで電力が供給できるんだ、電力を享受できるんだ、こういうお話がございました。

 この場合、仮に、安定的に、そして安価で自然エネルギー、原発以外のエネルギー源で電力が供給されるとすれば、これは経営者とすればウエルカム、迎え入れることが可能なのかどうか、喜んでお受けするということなのか、この点についてちょっとお聞かせいただけますか。特に中小企業の方からは、電力料金の上がることに対する非常に不安な声も聞こえてくることも確かですので、その点の肌合いの感覚も含めてお答えいただきたいと思います。よろしくお願いいたします。

菅原座長 まずは、中西陳述人。

中西勝則君 原発の内容について詳しい者ではないので、経営者の考え方だけを言えば、エネルギーは、安いというのはもちろん大事なことですし、それから安定的で、質ですね、電気の質、こういったものも必要だということで、自然エネルギーそのものの質だとかそういったものもしっかり見る必要があるかなというふうにも思っております。

 それと、ちょっと観点が違うんですけれども、最近、伊豆半島等で、かなり太陽光の、あそこの投資、日照時間が長いということもありまして、できているんですけれども、観光業に関してちょっと景色が悪くなってしまうというようなこともありまして、全般的にエネルギー政策についての原発については経営者の立場としてよくわからないというのが一番なんですけれども、安くて安定して質のいいもの、これを供給していただきたいというふうに思っております。

酒井公夫君 今先生の御質問をそのままメモしますと、安定、安価なエネルギーはウエルカムかという御質問でありましたので、もちろんそれはウエルカムですよね。

 ただ、優先順位はどっちかといったときに、やはりエネルギーは安定供給が一番だと思っておりますので、安定供給という部分をどういうように担保した中で価格を議論するかということだと思っております。

 ですから、原発がいいとか悪いとか、自然エネルギーがいいとか悪いとかというよりも、やはりどうやって安定供給をしていただけるかという前提の中で価格を議論するという方が現実的なのではないかなという気がしております。

黒岩委員 今お聞きすると、中西陳述人のお話ですと、電力の質というのは、風景、景観も含めて、また多分ノイズとか雑音とかそういったことも含めてということだと承りましたけれども、三上陳述人のお話は、非常に経済的な側面に特にスポットを当てて、もちろん、八つの柱で脱原発を訴えているわけですからさまざまな観点ですけれども、ただ、非常に明瞭に、原発は高いんだということでお話をいただいたわけですので、そこに対する経営的な、まさにそろばん勘定という意味でどうお考えになるのか、その点を私はお聞きしたかったんですけれども、中西陳述人、再度お答えいただけませんでしょうか。

中西勝則君 いや、黒岩先生、大変申しわけないんですけれども、高いか安いか、その全体のところを私が本当に数字的にわかっていないところが多くて、明確な答えができないのが残念なんですけれども、今だけの値段じゃなく将来もという三上さんの話もありましたけれども、こういったことも含めて考える必要が十分あるというふうに思っています。

黒岩委員 わかりました。やはり、結構、経済界、経営者からすればなかなか踏み込めない話でもあると思いますし、なかなか積極的には肯定はできない話なのかなと伺っておりまして。

 済みません、では、お手が挙がったので、三上陳述人の方から御意見があるということですので、改めて拝聴したいと思います。

三上元君 まず、安い高いの問題で、自然エネルギーをかつて四十二円で買ったんですね、キロワット当たり。ことし、ことしというのは二〇一八年の四月以降は、十八円に落ちるわけです。半分以下に落ちます。私が先ほど出したものは、十八円で買ってもちゃんと採算に乗るということなんですね。

 消費者の皆さんは、自然エネルギーがふえると、四十円とか三十八円で買っていた時代があるために、賦課金というのが、見ると電気料金に入ってくるわけです、だから自然エネルギーは高いから嫌だとなるんだけれども、原発も本当は高いんだけれども、乗っけていないだけなんですよ。

 原発はもっと高いんですよ。六ケ所村賦課金を乗っけたらどうなるんですか、「もんじゅ」賦課金を乗っけたらどうなるんですか、十万年の保管料積立金を乗っけたらどうなんですかということをやって、乗っけたら原発は高いんだけれども、乗っけていないだけだということです。本当は原発が高い。

 このことを、先ほど中西さんが、私はよく勉強していないから回答を差し控えると言ったんですが、原発を反対していない人たちの多くは勉強していないんです。勉強すれば必ずわかるんです。

 これはまさに、小泉純一郎さんが、役人と電力会社の話だけを聞いていて、私はだまされていた、本当のことを教えてくれなかった、議員をやめた直後だったから私は暇だった、だからもう一回勉強し直したら、勉強すればするほど高いということがわかった、環境破壊の元凶だということもわかった、安全でないということもわかった、三拍子が全部うそだったということが自分で勉強してわかったと言っているわけです。

 だから、まず安いというのはそれ。

 その次、安定供給というのに誤解があるのは、風力は気まぐれだ、太陽も夜は動いていない、あるいは台風になったらだめじゃないかとかいう話が出てくるわけですが、実は、最後の調整は火力発電と水力発電で問題ないんです。ダムに水がたまっています。水をとめれば電力はとまるんですよ。足りなくなったら、水を出せば水力発電はすぐ稼働するんですね。ガスコンバインド発電は、かなり小型なものもあって、動かしたりとめたりするのが容易なんです。だから、最後の調整で安定的に供給するポイントは、水力とガスコンバインド発電、火力発電があれば簡単に安定化させることは、今のコンピューターの時代、全く可能です。それは、ちゃんとドイツがそれをやっているんですね。

 それから、安定という意味で、ドイツはフランスと陸続きだからフランスの原発を買っているというんだけれども、これは全く勉強不足の代表が言われている話でございまして、ドイツは、三輸出しているんだけれども、一しか輸入していないんですよ。三出して一入れているんですよ。全部陸続きだから、あっちこっちから買ったり売ったりしているんですね。トータルするとドイツは輸出している方が多いんですよということを、うそにだまされて、何年か前の話で思っているという。

 まさに、安定して安いということ、このまさに原発推進の側にある日本経済新聞や政府がつくった報道機関であるNHKまでが、NHKアーカイブとかいって、実態はこうですよということを、政府のみずからの側に立つ人たちがこれだけはおかしいと言っているということを皆さん知っていただきたいと思います。

菅原座長 ちょっと待ってください。三上陳述人、それぞれの陳述人の論述等については、政策的な議論は結構だと思いますが、勉強している、していない等はこういったところでは論ずるべきではないかな、お気持ちはわかりますけれども、ということで、一言申し上げておきます。(三上元君「失礼いたしました、わかりました」と呼ぶ)

 黒岩委員。

黒岩委員 三上陳述人ほど私どもも舌鋒鋭くは申し上げる立場にはないんですが、非常に議論が活発化してきておりますし、原発立地地域のみならず非原発立地地域でも、こういったかなり精緻な議論がこれからも進んでいくと思いますので、またその点、リードしていただきたいと思っております。

 済みません、エネルギー政策で時間をとりまして。

 次に、鳥畑陳述人にお聞きしたいんですけれども、今、アベノミクスが非常に堅調な状況になってきているという話が、特に経営者の皆様からお話がございました。ただ、そんな中、鳥畑陳述人は、トリクルダウン型、こういった中小企業の振興については否定的でいらっしゃいますし、研究報告の中でも、ローカルアベノミクスが成長戦略の足かせになっている、こういう表現をされておりました。

 そこでお聞きしたいんですけれども、私ども、多くの一般的な地方は、例えば企業立地だとかそういった部分もかなり海外に移転して空洞化が進む中で、やはり、昭和の時代の、大企業を大都会から地方へ、そして二次請、三次請へと、トリクルダウンというものが全国に回るというのはなかなか難しいなと思っておるんです。

 ただ、この静岡は、私は、大変魅力的で、自動車産業という大きな産業がありますし、そんな中で中小経営者にも明るい兆しが見えてきているのかなと思っておりますが、その静岡でさえ、鳥畑陳述人のような感触であるのか、経済について、中小、地方という点でこのトリクルダウンというのはなかなか起きづらいんだ、そういう認識でよろしいのか、お聞かせいただけますでしょうか。

鳥畑与一君 ちょっと静岡という地方に限定してきょうお話しするだけの準備ができていないわけですが、日本経済全体といいますか、世界経済全体でいいますと、例えば、オックスファムという団体が、昨年、所得増加の八十数%が上位一%に集中をした、貧困による不況という表現をしているわけですね。

 今、経済が停滞している大きな原因は何なのか。ラリー・サマーズという方は長期停滞論ということをおっしゃった。停滞の中で、いわば自然金利、景気を刺激もしない、冷え込ますこともしない金利が下がっている、それで日本ではマイナス金利政策ということになっているわけですけれども。彼自身も、なぜこういう長期停滞が生まれているかといったときに、やはり貧富の格差、巨大な富の集中で需要が生まれていないという話をしているわけですね。

 アベノミクスというのは、供給側、生産側の生産性が不況の原因だという立場ですね。ただ、その生産性を高めるという政策が、結局はこの貧困格差を拡大する、富の集中を促進するような形になっているんじゃないか。だから、そういった意味で、私は、アベノミクスの基本的な政策の枠組みを転換しなければ、世界経済並びに日本経済が直面している大きな問題に対処し得ないのではないかという立場で、そういう発言といいますか、書かせていただいたわけです。

黒岩委員 わかりました。

 一人当たりの付加価値という表現でしたけれども、この大企業や中小企業との格差を狭めていく、こういったような政策転換をしていく、そういう理解でよろしいですね。

鳥畑与一君 私は、中小零細企業、とりわけサービス業が生産性が低い、これが経済成長の足を引っ張っているという議論は、一つ大きな勘違いをしているんじゃないかなというふうに思うわけですね。

 つまり、付加価値というのは、仕入れに対して売上価格、価格が高ければ付加価値はふえる。では、需要が冷え込む中で、要するに、価格転嫁といいますか、価格を引き下げて競争せざるを得ない。それから、中小下請企業というのは、いわゆる下請単価というものをやはり大きく切り詰められるわけですね。これは、付加価値で見た生産性がどうしても低くならざるを得ないわけですね。

 だから、そこの生産性を引き上げる、言ってみれば付加価値を引き上げるという政策が、ある意味何か大きなわなといいますか勘違いに陥っているんじゃないかというのが私の意見ということです。

黒岩委員 わかりました。ありがとうございます。

 時間が限られているので。

 今、政府の方も地方創生ということで幾つかの目標を区切っているわけですけれども、その中で、やはり東京圏一極人口集中、これを是正していこう、いわゆる東京圏の千葉、神奈川、埼玉も含めた地域の転入超過を減らしていこう、裏を返せば、地方からの転出超過も減らしていこうということです。その手法というのはいろいろとあると思うんですけれども、その中の政策の中で、やはり地方の大学を元気にしていこうというのがあるんですよね。

 そこで、ちょっとこれは端的に教えていただきたいんですけれども、静岡大学の卒業生がどのくらい県内にとどまっているのか。また、中西陳述人にお聞きしたいんですけれども、静岡県内の、ある程度以上の企業になるのかもしれませんけれども、県内と、また県外からの新規採用の割合というのは大体どのくらいの比率なのか。それをちょっと教えていただけますか。

菅原座長 どなたがいいですか。(黒岩委員「鳥畑陳述人と中西陳述人」と呼ぶ)わかりますか、数字というか、あるいは、今把握していなければ。

 では、鳥畑陳述人。

鳥畑与一君 申しわけございません。静岡大学、地元学生は四割、県外から六割という数字はわかっているんですが、では卒業生がどれぐらい地元に残っているのか、全国から集まった学生が静岡に魅力を感じて静岡の地元で企業に就職するかという数字は、きょうちょっと、残念ながら持っておりません。

 ただ、私のゼミ生といいますか卒業生の感覚でいいますと、やはり地方から来た学生でも、もちろんUターンもありますけれども、静岡で就職をするという学生も結構おります。

菅原座長 ほかにどなたか、今の数字、把握して……(黒岩委員「いやいや、今度は採用側の方で」と呼ぶ)いいですか。

 では、中西陳述人。

中西勝則君 うちの経済研究所の方で調べた数字があるんですけれども、ちょっと今持っていないのでまたお示ししたいと思いますけれども、静岡へ来た、外から来て静岡の大学に入った人たちの静岡に就職する割合というのは大体二割ぐらいだったと記憶しているんですけれども、外から来た人ですね。

 それから、外から静岡全体の大学に来ている人の八割の人たちを静岡にとどめたいという政策を今いろいろやっておるんですけれども、これが、正確な数字を持っていない中で言うのはあれなんですけれども、企業のよさを知らしめていない部分がありまして、大学生、そういった者に企業のよさ、特に中小企業の持っているよさを示すような、いろいろなセミナーとかを行っております。

 うちの当行でいいますと、大体、銀行で百八十人ぐらい採っているんですけれども、その四割くらいが県外から就職をしております。

黒岩委員 わかりました。

 もう時間がないので私の発言で終わらせていただきますけれども、今の地方創生の一つの大きなメニューが、先ほど申し上げた、地方の大学、これは国公立、私立を問わず、先駆的な活動をしている、取組をしている大学に、簡単に言えば補助金を出していこうということなんです。このことは私はもちろん否定しませんし、ぜひしていただきたいんですけれども。

 ただ、今のお話で、外部から大学に来てもそのうち八割は外に出ていくというのでは、なかなか中長期的な人口の定着ということにはならないのかなというのが今率直に思ったところでありますし、逆に、鳥畑先生のお話でも、静岡大学の卒業生は割かし残っているなと。これは後で私も数字を吟味したいと思いますけれども、本当にこの政策誘導が地方創生になっていくのか。

 もっと私が考えるのは、秋田の国際教養大学のように、大変魅力があって他県から集まるんですけれども、この方たちはどこに行くかというと、海外に行くわけですね。そうなると、かなりグローバルな世界の中で、今言ったように、地方に人が定着するということはなかなか政策としては大変だなということを今実感として思っているということをお伝えして、私からの発言を終わらせていただきたいと思います。

 どうもありがとうございました。

菅原座長 ありがとうございます。

 次に、本村伸子君。

本村委員 日本共産党の本村伸子です。

 きょうは、陳述人の皆様、貴重な御意見を賜りまして、本当にありがとうございます。

 時間もないですので、早速入りたいというふうに思います。

 まず、鳥畑陳述人にお伺いをしたいと思います。

 今、人づくり革命だというふうに言われている中で、二〇一八年度の文教予算というのはまたマイナスになっているということで、これ自体が私はおかしいなというふうに思っております。先ほども給付制の奨学金のお話がありましたけれども、非課税世帯の学生さんだけでも六万人いるわけですが、今回、二万二千八百人ということで、それに届かないのになぜ文教予算を減らすのかという思いがするんですけれども、この文教予算、抜本的な拡充が必要だというふうに思っております。

 この予算案の中で、国立大学の運営費交付金というのは二〇一七年度と同額なわけですけれども、しかし、静岡大学では減らされるということで、大学間の格差があるというふうに思うんですけれども、その弊害についてお伺いしたいというふうに思っております。

 また、この運営費交付金が減らされる中で、基礎研究が大変厳しい状況にあるんだということは、私は、もう十年ぐらい前に名古屋大学の先生からも本当に切実な訴えがございました。基礎研究がかれてしまえば、新しい社会的価値、技術の創造も望むことができないということで、やはりこれは日本の経済全体にとってもかなりの損失になるのではないかというふうに考えております。その点について、鳥畑先生にぜひお伺いしたいと思っております。

鳥畑与一君 ぜひ文教予算の拡大をお願いしたい。

 その前提として、財政難ということが言われるわけですね。やはり借金が非常に多い。限られた資源をどう配分するかということで、先生方は御苦労されているかなというふうには思うわけです。

 ただ、率直に言って、やはり財政が本来果たすべき役割、これは財政の資源の配分機能でありますとか所得再分配機能でありますとか、さまざまなものがあるわけですが、現実に今日本でかなりの富の偏在が進んでいる。いわゆる企業部門の内部留保が四百兆円を優に超えている。これは、国際通貨基金自身が、対日是正勧告の中で、これをどう働き手に還元していくかということが重要であるということを言うような時代になっているわけですね。

 だから、そういった意味では、財政が日本の国の国力、資源を適正に配分して有効に使うということができていないんじゃないか。そういった意味では、そういう富の格差是正の中で財源を確保して、それをしっかり必要な部分に投資をしていっていただきたいということです。

 現状、今、国立大学は基本的な研究経費がどんどん削減されております。私、人文社会科学部の経済学科なんですけれども、学部に割り当てられる予算、さらに学科に割り当てられる予算がどんどん減る中で、個人研究費を何とか確保しようということで、図書購入も含めた共通経費をどんどん削っていって個人に回す。それではいろいろな必要な図書購入ができない状況が現実に起きております。

 学部・学科でいいますと、本当に数万円の研究費しか確保できない。とりわけ理系では非常に深刻でして、理系の先生方に聞くと、科研の採用の発表がある日は、本当にもうみんな心臓をどきどきして待っている。それから外れると、もう自分の研究が継続できなくなる。一旦、それを再開しようとするのは物すごく大変だということで、そういう基礎研究の継続性が今非常に危うくなっているというのが率直なところです。

 あと最後に、私、個人的には、私も研究費が本当に三、四十万ぐらいの水準なんですけれども、例えば、私は本来、金融論が専門です。ところが、社会的要請として、カジノの解禁問題ということで日弁連なんかから要請されてかかわります。それについては研究費が確保できません。そうすると、基礎研究しか頼ることができないんですけれども、それでは足りません。それで、私は、一昨年、アトランティックシティーに調査に行ったときには、自腹で行っております。去年もラスベガスに行きましたけれども、これも自腹で行っております。

 そういう形でも社会的要請に応えようという形で頑張っているわけですが、そういう御苦労をされている先生方が本当にたくさんおられるということをまず訴えておきたいなと思います。

本村委員 ありがとうございます。

 次に、三上陳述人にお願いをしたいというふうに思います。

 原発をなくすために社会に大きくアピールをして大活躍をされているということに、まず心からの敬意と感謝を申し上げたいというふうに思います。

 私も、中部電力管内の愛知県豊田市に住んでおりますので、三上陳述人の行動に大きく勇気をいただいた一人でございます。

 この中部電力管内というのは、二〇一一年五月以降、原発ゼロで六年九カ月ずっとやっているわけです。物づくりの拠点になっているわけですけれども、支障なく動いているという現実がございます。

 政府は来年度予算案でも原発を推進するという立場で予算をつけておりますけれども、三上さんの資料の中で、とりわけ浜岡原発はコストが高いんだという資料もございます。その点について、リスクとコスト、いま一度御認識を伺いたいと思っております。

 もう一つ、先ほどさらっと言われたんですけれども、原発ゼロ・自然エネルギー推進連盟の幹事でもいらっしゃるということで、原発ゼロ・自然エネルギー基本法案というものの、各党回られていると思いますけれども、ぜひポイントをこの場でも披露していただきたいと思っております。

三上元君 では、二つのことについて。

 まず、コストの点ですが、私は、実は共済会の専務理事をやっておりまして、共済会というのは保険会社とほとんど同じです。ですから、保険の問題について私は多少の知識があるわけですね。

 保険のコストというのは、事故が起きたときにどれだけの損害が発生するんですかということを、まず、えいやと決めるということなんですね。どれだけの損害が発生するのか。それから、それが何年後に起こる、何年に一回起こるのかという確率です。

 そして、特に三十キロ圏に何人住んでいるか。この人たちに補償をするというときに、人数が多いほど補償の額が上がりますから、東海村と浜岡というのは、至近距離に物すごくたくさんの人が住んでいますから、事故が起きたら、そのときの除染の費用と賠償のコストはすごく膨大なんです。

 ですから、三十キロ圏で一番人口が多いのが東海村で、九十六万人なんですね。五十キロ圏で一番多いのは浜岡で、百万人を軽く超えてしまうわけです。それは、静岡市、浜松市が入っちゃうから。静岡、浜松を足すと、百五十万人になっちゃうわけですね。もうこれだけで百五十万人。こういう形ですので、この二つの原発を動かすということは、万が一事故が起きた場合には大変なことになるし、そして、首都圏への影響も、両方首都圏を挟んでいますから、風向きによりますけれども、首都圏が危ないんですね。

 そして、浜岡は特に、東海道線、新幹線も両方走っている中で、交通の要衝という問題があるために、日本経済全体に対する影響が莫大であります。そのために、どっちが一か二は僕は言いませんが、浜岡と東海村でいうならば、大きな地震が起きる確率が高いのが浜岡というふうに地震学者が言っているというために、浜岡のコストは東海村よりも高くなってしまうわけでございます。

 何しろ、三十年に八七%の確率で地震が来ると言っていますから。それを頻度に乗っけなきゃならないとなると、一番高いコスト、保険を払った場合ですよ。保険を払わないから、今、何にも。だから、起きたら会社が潰れるよというふうに思ってやっているわけですから。こんなことは株主として許せないから、僕は、中部電力の株主総会にも行って、事故が起きたら株がパアになるなんてやめてくれ、保険を払ってくれ、高過ぎるならやめてくれと言っているわけでございます。

 極端に、保険に入ると思うと、ロイズが受けたら物すごく高くなってしまうという意味で、浜岡が一番保険のコストは高いですよ、二番目に東海村が高いですよ、こういうふうに言っているわけでございます。

 もう一度言いますと、要点は、事故が起きたときにどれだけの損害が発生するのか、それが何年に一回発生するのかというこの二つによってコストが違う。その一、二を争う、コストの高いのが東海村と浜岡である、こういうことでございます。

 二つ目に、原自連に私は幹事として参加をいたしておりまして、一月十日の記者会見にも同席をいたしました。その後、すぐ立憲民主党から対話の集会をやりたいという申込みがあり、その他の政党からも続々と申込みがありまして、共産党さんからも一緒に、共産党さんの六人の議員が出てくれて、私もそれはこちらで参加をしておりました。

 簡単に、原発ゼロを目指そうという骨子は、直ちに原発をゼロにしても日本経済は全く困らない、これが重要なポイントでございます。

 そして、最終処分場を見に行った小泉純一郎さんは、こんなものが日本につくれるのかと。

 過去十万年以上地震がない、地震学者に調査させても、これから十万年先も地震がない、そして、かたい岩盤をくりぬいたお城のようなものをつくる。そして、少し水が出てくるので、この水によって溶かされたらどうしようかという最後の調整をしているわけでございます。

 日本は、地震がないという県が、だから工業立地に適していますよと言った熊本に起きました。すぐに県のホームページは閉鎖しましたね。地震がないという根拠が変わりました。それから、最終処分場の候補であった、東北内陸があります。東北の内陸の地震が私の市長の在任中に起きました。これは最終処分候補に入っていたんですよ。

 要するに、どこに地震が起きるか、日本はわからないんですね。ですから、これからどんどん廃棄物がたまっていった場合、簡単に廃棄物を受け入れてくれる人たちが日本にいるとは思えません。だから、小泉さんは、早くやめなきゃならないんだ、どんどんふえていったらどうなるのということで、最終処分場の問題から早くやめなきゃ大変だ、今問題が起きているから直ちにやめていいと。

 やめたら困るのが、先ほど二人の経済人がおっしゃったように、安定供給と価格です。

 価格は、もう日本経済新聞が世界の価格を伝えたとおりでありますから、これを原発が安いなんて言う人はもう経済人には誰もいません。一部、仕方がなく、政府をそんたくして言っているだけ。もう誰も、原発が高いということは明らかになっていますから、今さらもう言うまでもないだろうと思います。

 そして、ではこれからどのぐらいの長さの時間的なスピードで自然エネルギーをふやしていくのかといったのは、先ほど私の陳述の中にありましたように、三ページ目にありますが、今、このように電力業界や政府が妨害しているにもかかわらず、三年間で三四%伸びたんです。

 世界は、たった一年で三三%、自然エネルギーを伸ばしているんですよ、太陽光を。太陽光だけで三割をどんと一年で伸ばしているという世界の状況を、日本は三年かかって三四%伸ばしているわけです。その今の日本の遅いスピード、世界に比べると大分遅い。これを日本経済新聞は、日本は見誤ったという表現で見出しを出しているぐらいであります。その伸びでずっと伸ばしていっても、二〇二八年で四七%ですから。

 原自連は、二〇三〇年に五〇%以上にしよう、こういう目標を掲げているわけでございます。そういう意味では、何にも無理な目標を掲げているわけではないということです。

 もう一つは、六ケ所村の核燃料サイクル、「もんじゅ」を中心にしていたわけですが、その中心たる「もんじゅ」がだめになったにもかかわらず、六ケ所村を稼働させてどうなるのか。不要なプルトニウムが山ほどたまってしまいます。プルトニウムがたまると、原爆をつくる材料だけがふえるんですね。いつでも核兵器を持とうと思えば、材料だけはふえる。だけれども、材料だけあっても核兵器は簡単にできません。核兵器をつくる技術と原発を稼働する技術は関係がありません。それから、核兵器を持ちたいという論者の人たちも、原発の稼働とは関係ない、こう言っているんですね。ですから、この核燃料サイクルは全くの不要です。

 アメリカに九月に行ったときに言っていたのは、オバマの政策をことごとく否定したトランプが唯一継承したのは、核燃料サイクルはやめようというオバマの意思決定を継いだことである、こんな経済的にばかばかしいものを日本が続けるのは気が狂っているとしか思えないとアメリカ人は言っている。ただ、それは国内問題だけれども、プルトニウムがたまるのは国防の問題であり外交問題になるよ、それに中国が刺激されることが恐ろしいとアメリカは言っています。

 そういう意味で……

菅原座長 陳述人、時間がぼつぼつ。質問がまだあるようでございます。恐れ入ります。

 それでは、本村君。

本村委員 一緒に力を合わせていきたいと思っております。申しわけありません。ありがとうございます。

 そして、先ほど来、陳述人の皆様から、静岡の経済の現状の中で人手不足というものがキーワードになっていたなというふうに思うんですけれども、やはり、全産業と比べて、賃金が低いということとリンクしているというふうに思います。

 業種によってさまざま違うかというふうに思うんですけれども、例えば、介護の分野でいえば、介護報酬を引き上げるとか、あるいは保険料に乗らないように働く皆さんの賃金を上げていく方策をとっていくですとか、運輸であったら荷主が適正賃金をちゃんと払うとか、建設でいえば発注者の段階から工事費とかあるいは安全衛生経費をしっかりと払うとか、そういうことが必要だというふうに思うんですけれども、そのことについて、トップ企業の責任やあるいは国の責任についてお伺いをしたいというふうに思います。

 もう一つ、静岡県というのは人口の転出、流出が多いという問題があるというふうに思います。きょうもこちらに来ておりますけれども、島津幸広前衆議院議員が国会で取り上げました。

 静岡県の最低賃金というのは今八百三十二円で、橋を渡ったらすぐ神奈川県になるわけですけれども、神奈川県は九百五十六円で、百二十四円あるんだと。愛知県でいえば八百七十一円で、静岡県よりも三十九円高いという中で、やはり、最低賃金が高い方に人口は転出をしているというふうな状況を静岡県評の皆さんの表を見てもわかるわけです。

 やはり、私たちとしては、地域経済をよくしていくためにも、中小企業の皆さんに対して社会保険料の減免制度やあるいは賃金助成を行って、全国一律最賃制度をつくるべきだということも思いますけれども、その辺の御意見をぜひ、中西陳述人、酒井陳述人、鳥畑陳述人にお願いしたいと思います。

菅原座長 それでは、中西陳述人。

中西勝則君 確かに、今お話がありましたように、最低賃金は他県に比べて安く、県境においては、特に、昼間の人口、夜の人口、いわゆる社会的な人口の動きというものが激しくなっているというふうに聞いております。

 全体的に、最低賃金が決まるのは付加価値のある産業が集積しているかどうかというようなこともあると思います。賃金の方からそちらの方に動いているのか、産業の種類だとか産業の構造によって賃金が決まっているのかというところがあると思いますけれども、ことしもかなり静岡の方も上がりました。それによって困っている小売店だとか零細企業もございます。そういったこととあわせて適正な賃金を決めていくべきだというふうに思っております。

 それから、人手不足については、やはり、業種別、規模別によってかなり違いがあるというふうに思っております。

 特に大企業に比べ中小企業に人手不足感が強いということから、できるだけ労働人口の流動化、こういったことができるような法案若しくは制度ができれば、更に足りているところから足りない方向性に向かうというようなこともあるかというふうに思っております。

菅原座長 酒井陳述人、お願いいたします。

酒井公夫君 御指摘いただいたとおり、人口流出が多いわけでありまして、その行き先は首都圏と中京圏が多いわけでありまして、そういう意味では、今先生おっしゃった最低賃金とのリンクというのは、なるほどなと思って聞いておりました。

 一方、人がどの世代で出ていくかというのは、静岡の場合、明らかでありまして、やはり十八歳で出ていっております。特に多いのが、女性が十八歳で出ていったまま二十四歳で戻ってこないという、それが静岡の特徴でございまして、女性が安定して働ける、あるいは魅力ある働き場所が少ないというのは、どうも数字上出ているなという感じがいたします。

 これは統計上出ておりませんけれども、自分が周りに聞いた限りにおいて、特に理系の女子においてその傾向が強いというものがございまして、要は、東京で理系で学んで、そのレベルの高いものを生かす就職先が静岡にちょっと欠けているのかなという部分は感じております。

 ただ、学生がその世代に親元を離れてチャレンジ精神を持って一人で生活をしてというのを私は個人的には否定はしないものでございますので、やはりそういう経験を積んで一人でどんどんやっていくというのは必要だなと思っておりますので、出ていくのは別にいいかなと思っております。戻ってこないことは、それはちょっと議論しなくちゃいけないんですけれども。

 ただ、それは最低賃金かというとちょっと違うのかなという感じはしております。

 やはり、企業経営からしますと、社員に対して給料を上げたいんですよね。私は、みんな経営者というのはそう思っていると信じています。ただ、それが企業業績であったりとかと連動した中でどこまでやれるかというのは個々の企業によって随分違いますので、一律で、最低賃金という部分は、ミニマムの部分では必要なのかもしれませんけれども、余り一律というよりは、その地域あるいはその企業において対応したような形の態様の方が自然ではないかなとは思っております。

 一つだけ、本当に社員の給料を上げたいんです、そう思っている人が多いということは御理解いただきたいと思います。

菅原座長 最後、鳥畑陳述人。

鳥畑与一君 私は、グローバルな経済の仕組みとローカルな経済の仕組みは、やはり物の考え方、基準が違うんだろうなと思うんですね。

 つまり、グローバルな投資家から見れば、収益性の高い企業、投資先が必要である。でも、そういった世界では、トリクルダウンではなくてトリクルアップといいますか、逆に富が上に吸い上げられる仕組みになっている。そういうグローバルな中でローカル経済をどうつくるのかということが大きな政策課題になっていると思うんですね。

 そういった意味で、私は、生産性をとにかく上げるというのは一つの何か錯覚じゃないかなと思うんです。言ってみれば、低い売上げでたくさんの雇用をしている、地域経済を支えているという考え方もできるわけですね。

 昔、私の親戚、松下の下請で、下請単価が随分きついのが来た、これを引き受けると赤字なんだけれども、これで従業員の雇用が維持できるから我慢して引き受けるんだという話を聞いたことがあるんですが、そういった中で、雇用を維持することによって、その地域の家族なり地域が守られているという仕組みがあるわけですね。

 だから、そういった中で、そういうローカル経済をつくるためには、何とかしてトリクルダウンといいますか、地域の中でしっかり金といいますか、仕事とか利益が回っていく仕組みをつくっていく。それ自身が、やはり地元の企業の、自分たちの経営基盤を強化するんだということになると思うんです。

 そういったところでは、やはり静岡は賃金は低いです。娘は、おぼんdeごはんというバイト先、東京でやっているんですけれども、静岡のおぼんdeごはんとは、バイトも単価が全然違います。それから、もちろん、下請単価も含めて引き上げていくということがやはり静岡というローカル経済を強めていく上で必要だ、そういった意味で、経営者自身も大きな発想転換が求められているんじゃないかなというふうに思っております。

菅原座長 以上で委員からの質疑は終了いたしました。

 この際、一言御挨拶を申し上げます。

 意見陳述者の皆様におかれましては、大変御多忙の中、長時間にわたりまして貴重な御意見をお述べいただき、まことにありがとうございました。

 本日拝聴させていただきました御意見は、当委員会の審査に資するところ大なるものがあると存じます。ここに厚く御礼を申し上げます。

 また、会議開催のため格段の御協力を賜りました関係各位に心から感謝申し上げます。まことにありがとうございました。

 これにて散会いたします。

    午後三時一分散会


このページのトップに戻る
衆議院
〒100-0014 東京都千代田区永田町1-7-1
電話(代表)03-3581-5111
案内図

Copyright © Shugiin All Rights Reserved.