衆議院

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第10号 平成31年2月20日(水曜日)

会議録本文へ
平成三十一年二月二十日(水曜日)

    午前八時五十九分開議

 出席委員

   委員長 野田 聖子君

   理事 井野 俊郎君 理事 後藤 茂之君

   理事 坂本 哲志君 理事 田中 和徳君

   理事 堀内 詔子君 理事 宮下 一郎君

   理事 逢坂 誠二君 理事 渡辺  周君

   理事 伊藤  渉君

      秋本 真利君    伊東 良孝君

      伊藤 達也君    石崎  徹君

      石破  茂君    泉田 裕彦君

      今村 雅弘君    岩田 和親君

      衛藤征士郎君    小倉 將信君

      小田原 潔君    大岡 敏孝君

      奥野 信亮君    門  博文君

      河村 建夫君    神田 憲次君

      神田  裕君    木原  稔君

      國場幸之助君    笹川 博義君

      繁本  護君    鈴木 俊一君

      田所 嘉徳君    田野瀬太道君

      田畑 裕明君    竹本 直一君

      土井  亨君    中山 泰秀君

      西銘恒三郎君    野田  毅君

      平沢 勝栄君    福山  守君

      藤井比早之君    藤丸  敏君

      古屋 圭司君    細田 健一君

      村井 英樹君    村上誠一郎君

      盛山 正仁君    山口  壯君

      山本 幸三君    山本 有二君

      吉野 正芳君    池田 真紀君

      江田 憲司君    小川 淳也君

      大串 博志君    神谷  裕君

      川内 博史君    武内 則男君

      長妻  昭君    本多 平直君

      山尾志桜里君    山本和嘉子君

      早稲田夕季君    青山 大人君

      奥野総一郎君    源馬謙太郎君

      後藤 祐一君    階   猛君

      西岡 秀子君    前原 誠司君

      太田 昌孝君    岡本 三成君

      佐藤 茂樹君    笠井  亮君

      藤野 保史君    宮本  徹君

      井上 英孝君    浦野 靖人君

      松原  仁君

    …………………………………

   内閣総理大臣       安倍 晋三君

   財務大臣         麻生 太郎君

   総務大臣         石田 真敏君

   法務大臣         山下 貴司君

   外務大臣         河野 太郎君

   厚生労働大臣       根本  匠君

   経済産業大臣       世耕 弘成君

   国土交通大臣       石井 啓一君

   防衛大臣         岩屋  毅君

   国務大臣

   (国家公安委員会委員長) 山本 順三君

   国務大臣

   (経済財政政策担当)   茂木 敏充君

   国務大臣

   (地方創生担当)     片山さつき君

   財務副大臣       うえの賢一郎君

   政府参考人

   (内閣官房まち・ひと・しごと創生本部事務局地方創生総括官補)       井上 誠一君

   政府参考人

   (内閣官房内閣審議官)  山内 智生君

   政府参考人

   (総務省大臣官房政策立案総括審議官)       横田 信孝君

   政府参考人

   (総務省自治行政局長)  北崎 秀一君

   政府参考人

   (財務省主税局長)    星野 次彦君

   政府参考人

   (厚生労働省大臣官房長) 定塚由美子君

   政府参考人

   (厚生労働省保険局長)  樽見 英樹君

   政府参考人

   (厚生労働省政策統括官) 藤澤 勝博君

   政府参考人

   (経済産業省大臣官房商務・サービス審議官)    藤木 俊光君

   政府参考人

   (経済産業省大臣官房審議官)           島田 勘資君

   政府参考人

   (国土交通省総合政策局長)            栗田 卓也君

   政府参考人

   (国土交通省鉄道局長)  蒲生 篤実君

   政府参考人

   (国土交通省港湾局長)  下司 弘之君

   政府参考人

   (防衛省防衛政策局長)  槌道 明宏君

   政府参考人

   (防衛省整備計画局長)  鈴木 敦夫君

   政府参考人

   (防衛省人事教育局長)  岡  真臣君

   参考人

   (前内閣総理大臣秘書官) 中江 元哉君

   参考人

   (元厚生労働省政策統括官)            酒光 一章君

   参考人

   (日本銀行総裁)     黒田 東彦君

   参考人

   (厚生労働省前政策統括官)            大西 康之君

   予算委員会専門員     鈴木 宏幸君

    ―――――――――――――

委員の異動

二月十九日

 辞任         補欠選任

  田野瀬太道君     高村 正大君

  本多 平直君     矢上 雅義君

  宮本  徹君     田村 貴昭君

同日

 辞任         補欠選任

  高村 正大君     田野瀬太道君

  矢上 雅義君     本多 平直君

  田村 貴昭君     宮本  徹君

同月二十日

 辞任         補欠選任

  秋本 真利君     藤井比早之君

  石破  茂君     福山  守君

  今村 雅弘君     繁本  護君

  衛藤征士郎君     神田 憲次君

  小田原 潔君     神田  裕君

  小野寺五典君     岩田 和親君

  河村 建夫君     小倉 將信君

  笹川 博義君     西銘恒三郎君

  中山 泰秀君     田畑 裕明君

  平沢 勝栄君     門  博文君

  盛山 正仁君     木原  稔君

  山口  壯君     伊東 良孝君

  山本 幸三君     藤丸  敏君

  山本 有二君     細田 健一君

  吉野 正芳君     土井  亨君

  武内 則男君     池田 真紀君

  本多 平直君     江田 憲司君

  早稲田夕季君     長妻  昭君

  奥野総一郎君     前原 誠司君

  後藤 祐一君     青山 大人君

  西岡 秀子君     源馬謙太郎君

  太田 昌孝君     佐藤 茂樹君

  宮本  徹君     笠井  亮君

  浦野 靖人君     井上 英孝君

同日

 辞任         補欠選任

  伊東 良孝君     山口  壯君

  岩田 和親君     國場幸之助君

  小倉 將信君     大岡 敏孝君

  門  博文君     平沢 勝栄君

  神田 憲次君     衛藤征士郎君

  神田  裕君     田所 嘉徳君

  木原  稔君     盛山 正仁君

  繁本  護君     今村 雅弘君

  田畑 裕明君     中山 泰秀君

  土井  亨君     吉野 正芳君

  西銘恒三郎君     笹川 博義君

  福山  守君     石破  茂君

  藤井比早之君     秋本 真利君

  藤丸  敏君     山本 幸三君

  細田 健一君     山本 有二君

  池田 真紀君     山尾志桜里君

  江田 憲司君     本多 平直君

  長妻  昭君     早稲田夕季君

  青山 大人君     後藤 祐一君

  源馬謙太郎君     西岡 秀子君

  前原 誠司君     奥野総一郎君

  佐藤 茂樹君     太田 昌孝君

  笠井  亮君     宮本  徹君

  井上 英孝君     浦野 靖人君

同日

 辞任         補欠選任

  大岡 敏孝君     泉田 裕彦君

  國場幸之助君     村井 英樹君

  田所 嘉徳君     小田原 潔君

  山尾志桜里君     山本和嘉子君

同日

 辞任         補欠選任

  泉田 裕彦君     河村 建夫君

  村井 英樹君     小野寺五典君

  山本和嘉子君     神谷  裕君

同日

 辞任         補欠選任

  神谷  裕君     武内 則男君

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 公聴会開会承認要求に関する件

 政府参考人出頭要求に関する件

 参考人出頭要求に関する件

 平成三十一年度一般会計予算

 平成三十一年度特別会計予算

 平成三十一年度政府関係機関予算

 派遣委員からの報告聴取


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     ――――◇―――――

野田委員長 これより会議を開きます。

 平成三十一年度一般会計予算、平成三十一年度特別会計予算、平成三十一年度政府関係機関予算、以上三案を一括して議題といたします。

 この際、公聴会の件についてお諮りいたします。

 平成三十一年度総予算について、議長に対し、公聴会開会の承認要求をいたしたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

野田委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

 なお、公聴会は来る二月二十六日とし、公述人の選定等の手続につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

野田委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

野田委員長 次に、お諮りいたします。

 三案審査のため、本日、参考人として前内閣総理大臣秘書官中江元哉さん、元厚生労働省政策統括官酒光一章さん、厚生労働省前政策統括官大西康之さんの出席を求め、意見を聴取し、また、政府参考人として内閣官房内閣審議官山内智生さん、内閣官房まち・ひと・しごと創生本部事務局地方創生総括官補井上誠一さん、総務省大臣官房政策立案総括審議官横田信孝さん、総務省自治行政局長北崎秀一さん、財務省主税局長星野次彦さん、厚生労働省大臣官房長定塚由美子さん、厚生労働省保険局長樽見英樹さん、厚生労働省政策統括官藤澤勝博さん、経済産業省大臣官房商務・サービス審議官藤木俊光さん、経済産業省大臣官房審議官島田勘資さん、国土交通省総合政策局長栗田卓也さん、国土交通省鉄道局長蒲生篤実さん、国土交通省港湾局長下司弘之さん、防衛省防衛政策局長槌道明宏さん、防衛省整備計画局長鈴木敦夫さん、防衛省人事教育局長岡真臣さんの出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

野田委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

野田委員長 本日は、外交・防衛・内外の諸情勢についての集中審議を行います。

 質疑の申出がありますので、順次これを許します。西銘恒三郎さん。

西銘委員 自由民主党の西銘恒三郎です。

 きょうは、委員長を始め理事の皆様方、貴重な質問の機会を与えていただきましたこと、心から感謝を申し上げます。

 我が国を取り巻く安全保障環境が大変厳しくなっているという認識のもとに、きょうは質問をしたいと思います。

 まず、米朝首脳会談について総理にお伺いをいたします。

 ベトナムのハノイで二回目の米朝首脳会談が行われます。一九六〇年代のベトナム戦争当時の激しい戦いを考えると、ハノイでの開催は極めて歴史的な場所設定だと思います。私ごとですが、八〇年代の米国留学時代に、アメリカ人の学生の友人が、沖縄の米軍基地からベトナム戦争へ飛び立っていったときのことを恐怖感を交えて話をしていたことが思い出されます。

 さて、今回の米朝首脳会談で北朝鮮の検証可能な核廃絶はどうなるのか。我が国の立場からしますと、そして拉致問題解決の話題が取り上げられるのかどうかを含めて、さらに、総理御自身が施政方針演説でも述べておられるように、北朝鮮との首脳会談を、強い意欲を示しておられます。私は、あらゆるチャネルを使ってでも、あらゆる手段を講じてでも、この次はぜひとも安倍総理と北朝鮮トップとの首脳会談が実現をしてほしいと思っておりますが、総理の強い決意も含めて、いつごろまでにできるかどうか、厳しいとは思いますけれども、御所見を賜りたいと存じます。

安倍内閣総理大臣 昨年の六月の歴史的な米朝首脳会談により、朝鮮半島の非核化についてトランプ大統領と金正恩委員長が合意をし、そして、共同声明に署名をした意義は大きいと考えております。重要なことは、この米朝プロセスを後押ししていくことであろうと考えています。

 来週二十七日及び二十八日にベトナムのハノイで予定されている第二回米朝首脳会談に向けて、本日、トランプ大統領と電話で首脳会談を行います。そして、その中におきまして、北朝鮮の核、ミサイル、また、何よりも重要な拉致問題の解決に向け、密接に方針をすり合わせたいと思います。

 昨日、拉致被害者の御家族の皆様と面会をいたしまして、新しい運動方針や金正恩委員長へのメッセージを受け取りました。これは、この御家族の皆様の、肉親の帰国を強く求める、本当に思いが込められたメッセージだ、このように感じたところでございまして、飯塚会長あるいは早紀江さん、また有本さんのお父さんから、本当に切実な思いを伺ったところでございます。

 こうした皆さんの思いもしっかりと胸に刻みつけながら、まずは、きょうのトランプ大統領との電話会談において、私のこの拉致問題に関する解決に向けての考え方について、しっかりとトランプ大統領にお話をさせていただきたいと思いますし、私がお話をさせていただいたことを金正恩委員長に伝えてもらいたい、こう考えているわけでございます。

 御家族の積年の思いを胸に、何としても安倍内閣では拉致問題を解決をする、あらゆるチャンスを逃すことなく、果断に行動していく考えであります。

西銘委員 私は、いろいろな課題があるにせよ、とにかく国のトップ同士が会うということは、非常に意義があると思っております。

 総理のこれまでの人脈を使って、トランプ大統領、プーチン大統領、習近平、文在寅、あるいはヨーロッパの首脳の方々、どんな手を使ってでも、ぜひともこの北朝鮮との首脳会談を実現をしてほしいということを、心から強くお願いを申し上げます。

 次に、エネルギーの安全保障で、世耕経産大臣にお伺いをいたします。

 経団連の会長が静岡県の浜岡原発を視察をしております。私も、あの二十二メーターの防潮堤を見て、安全対策に全力で取り組んでいる現場を体感をしております。そのほかにも、福島県の第一原発、あるいは青森県、新潟県、福井県、島根県、鹿児島県、数々の原子力発電所の現場を視察をしてまいりました。

 そこで伺いますが、原発立地自治体の要望も踏まえ、安全最優先の原子力政策を、エネルギーミックスの実現をするためにも、私は、政治の力で推進すべきであると考えますが、大臣の御所見をお伺いします。

 あわせて、FIT制のもとでの、国民全体で負担をしている電気料金上乗せ部分の金額についても、御説明をいただきたいと思います。

世耕国務大臣 西銘委員には、昨年秋まで経済産業副大臣として、エネルギー政策に大変な御貢献をいただいてきたというふうに思っています。

 今御指摘のように、原発については、安全最優先で、規制委員会が新規制基準に適合すると認められた原発のみ、地元の御理解をいただきながら、再稼働を進めていくという方針であります。

 そして、今多くの原発がとまっていることによって、まず一つは、やはりCO2の排出量が増加をしているということであります。電力セクターでは四千百万トンもふえていまして、これは日本のCO2排出量全体の三%に相当するわけでありまして、気候変動対策が非常に重要な中、二〇三〇年までに二六%削減の目標を掲げている我が国は、やはりこのCO2削減という視点を外すわけにはいかないというふうに思っています。

 それと、もう一つは、やはり費用の負担の問題であります。

 今、再エネのお話をいただきましたけれども、再生可能エネルギーの導入拡大に伴って、固定価格買取り制度というのがあって、これは皆さんの御家庭の電気料金に上乗せをされているわけですが、この国民負担が現在、年間で二・四兆円まで、消費税一%分ぐらいまで拡大をしてきております。二〇三〇年までには三兆円ぐらいに届くだろうと想定をされているわけであります。

 国民の皆さんに経済的に大きな御負担をかけているという現状を踏まえれば、やはり、低廉な電源である原子力の活用というのは避けては通れないというふうに思っています。

 現に、原発の再稼働に伴って、関西電力は、二〇一七年、一八年に電気料金の値下げを実現しております。また、きのうも、九州電力も同様に、原発再稼働に伴う電気料金値下げの意向を表明したところでありまして、安全最優先ではありますけれども、そして、規制委員会の厳しいチェックをパスするということが前提ですけれども、やはり、日本においては原発の活用というのは避けては通れないんではないかというふうに考えております。

西銘委員 ありがとうございます。

 私が自民党に当選したころ、エネルギー調査会での議論は、地球温暖化防止、CO2削減、原子力が三〇%あるものを、当時、五〇%までいくんじゃないかという議論があったことは懐かしく思い出されますけれども、いずれにしても、安全最優先で、私は、政治の力として、二〇パーから二二パーというエネルギーミックスの目標はぜひとも達成しながら、安定的な電力供給に努めるべきだと考えております。

 次に、TPP11や日・EU・EPAの発効など、我が国の第一次産業との兼ね合い、守りながらも、茂木大臣が苦労してここまで取りまとめていただきましたことを私は高く評価をしております。貿易、通商が活性化することは、平和を維持する大切な要素だと考えます。今後の日米間の二国間の協議も大変厳しいものがあろうかと思いますが、どうぞ、大臣の精力的な取組を希望をいたします。

 そこで伺いますが、TPP11への参加を希望するタイ、インドネシア、あるいは台湾など、新しいエコノミーが加盟を認められるにはどのような経過をたどるのか。また、TPP11が果たす安全保障の役割も含めて、茂木大臣に御所見をお伺いします。

茂木国務大臣 TPP11は昨年の十二月三十日に発効いたしました。発効に当たりましては、西銘先生始め与党の皆さんからもさまざまな形で御支援賜りましたことを、改めて御礼を申し上げたいと思っております。

 TPPにつきましては、今、世界的に保護主義が台頭する中で、TPPの、ハイスタンダードでバランスのとれた二十一世紀型の新たな共通ルールを世界に広めていく、これが世界の経済の安定にもつながっていくというTPP11参加国全ての共通の思いがあるわけでありまして、できるだけ多くの国、地域の参加を期待しているところであります。

 現在、アジアでもタイやインドネシア、南米のコロンビア、さらに、今、英国、こういったさまざまな国、地域がTPP参加に関心を示していることを歓迎したいと思っております。

 私も、タイのソムキット副首相や英国のフォックス国際貿易大臣とも直接お会いをしておりますけれども、参加関心国・地域については、引き続き必要な情報提供を行っていくとともに、参加に必要な調整についても、我が国が主導的な役割を果たしていきたいと考えております。

 ことしの一月には、安倍総理にも御参加をいただきまして、我が国で第一回のTPP委員会、開催をいたしまして、新規加盟候補国・地域との協議の段取り、そして新規加盟への加入の手続、これも決定をしたところでありまして、しっかりとこういった新たなルールを世界に広げていくということについて、日本がまさにリーダーシップをとっていくということが極めて重要だと考えております。

西銘委員 茂木大臣はこれから、日米間の二国間協議、手ごわいライトハイザー、私はライトハイザーから見て茂木大臣の方がもっと手ごわいと思っておりますが、この日米間の二国間協議の中でも、アメリカも含めて、TPP11への、もともとあったアメリカの参加にも御尽力をしていただきたいと思いますが、これから日米間協議に臨む御決意を、御所見を賜りたいと思います。

茂木国務大臣 昨年九月二十六日の日米首脳会談におきまして、日米間で新たな日米物品貿易協定、この交渉を開始することで合意をいたしました。

 共同声明におきましては、農業分野で、我が国がこれまでさまざまな経済連携協定で約束してきた過去の経済連携協定の内容が最大限である、こういったこともしっかり盛り込みました。

 また、自動車の分野を含めて、交渉中はお互いに、信頼関係、これに反する行動はとらないという合意文書が入っております。そして、この趣旨については、安倍総理が首脳会談でトランプ大統領に直接、これは自動車の二三二条は発動しないことだね、このことを確認をして明確になっているところでありまして、しっかりこの共同声明に沿って、ライトハイザー通商代表と交渉を進めていきたい。

 そういった中で、今、さまざまな国際間の問題、通商問題もあるわけでありまして、国際的に、米国も含めて共通のルールをつくっていく、この重要性については引き続き米側にも訴えていきたい、このように考えております。

西銘委員 しっかり頑張っていただきたいと思いますし、大いに期待をしたいと思います。

 かつて、電子政府の先進国と言われたエストニアで、サイバー攻撃がありました。

 話は少しかわりますけれども、今アメリカで話題の小説「大統領失踪」、これはクリントン大統領とアメリカの著名作家の二人が書いた小説でありますが、この小説の中で、アメリカの軍事、電力、金融、交通運輸、水道など全てのシステムがサイバー攻撃を受けた想定になっておりまして、小説とはいえ、かなり現実味を帯びているのかなという思いで、ぱらぱらと読ませていただきました。

 DDoS攻撃、ディストリビューテッド・ディナイアル・オブ・サービスとか、BGPテーブル、ボーダー・ゲートウエー・プロトコル・テーブルの破壊とか、国家や社会の機能が全てストップしてしまうダークエージ、暗黒の時代にもなりかねません。

 そこで、政府参考人にお伺いをいたしますが、我が国のサイバー攻撃対策はどうなっておりますか、御説明を賜りたいと思います。

山内政府参考人 お答え申し上げます。

 一番最初にまず委員がおっしゃったエストニアでございますけれども、二〇〇七年の四月から五月にかけて、政府機関それから民間のネットワークに対して、三週間にわたって大規模なサイバー攻撃が発生をしたと承知をしております。この際、政府機関それから重要インフラ、これはオンラインのバンキングシステムでございますが、こういうものが一斉に機能不全になりました。

 サイバー攻撃がもたらす影響というのは非常に大きい、国としても備えが重要であるということを改めて認識をする契機になりまして、このようなサイバー環境の変化を捉まえまして、二〇一四年に、議員立法によりサイバーセキュリティ基本法を制定をいただいております。

 もう一つ、先ほど委員がおっしゃったDDoS攻撃、それからBGP、ボーダー・ゲートウエー・プロトコルと申します。簡単に申し上げると、電話帳のようなものだと思っていただければと思います。皆様がインターネットをお使いのときに、このテーブル、データを見て、どこに接続をするかというのを教えてもらう、そういう仕組みになってございます。

 この小説を、ちょっと粗筋のところを読みますと、こういうものを使うことによって、それからDDoS攻撃をすることによって、まずは、電話に例えますと、大量の電話をかけて皆様の電話が使えなくなるようにしてしまう、それから、データをわざと改ざんをいたしまして、間違ったところ、どちらかというと悪い人のところに誘導をしてしまう、こういうことをすることによって国の経済なり社会を混乱させるといったことをもくろんでいるという粗筋というふうに私どもは理解をいたしました。

 いずれにせよ、このような攻撃に対しては、技術的な対策がございます。先ほどサイバーセキュリティ基本法で申し上げましたが、それぞれ、国の機関、それから重要インフラ、通信ですとか電力といった方々の責務というものを定めております。こういう方々が連携をして対策を立てるということが非常に重要でございます。

 サイバーセキュリティ基本法のもとで、サイバーセキュリティ戦略本部を中心にいたしまして、関係省庁が連携をして、そして、実際の対策は事業者、それから国民の方々にも関係がございます、こういう方々が連携をしてサイバーセキュリティー対策を進めているところでございます。

西銘委員 ありがとうございます。

 次に、沖縄返還協定について総理にお伺いいたします。

 沖縄の祖国復帰前後、祖国復帰という言葉は、私は、親元に帰るとか、家族のもとに帰るとか、そういうイメージが含まれている言葉だと思っております。この前後の社会状況は、米軍基地の即時全面撤去を求めるいわゆる革新グループ、このグループは沖縄返還協定に反対の立場に立ちました。もう一方は、米軍基地の整理縮小、いわゆる保守、我が方のグループ、このグループは沖縄返還協定賛成の立場に立ちました。

 一九七一年の十月に第六十七回国会、ここで沖縄返還協定を批准する採決が行われますが、当時の記録を見ておりますと、賛成二百八十五票、反対七十三票、定数が四百九十一ですから、百三十三が欠席となっておりますが、もしこの沖縄返還協定が国会で否決をされていたならば、私はちょうど、七一年ですと高校生ですけれども、ドルを使っている時代ですけれども、沖縄返還は実現していなかったのかなと。

 沖縄県民の当時の勢力からすると、全面撤去グループが大きかったですから、沖縄だけで県民投票みたいなことをしていれば否決をされて、私たちはずっとドルを使い続けていなければならなかったのかなということが想定の中で出てきますが、そのところも含めて総理の御所見、否決されていたら当然、条約ですから、実行しないので、返還が実現しなかったと私は想定しているんですけれども、いかがでしょうか。

安倍内閣総理大臣 佐藤総理は、ベトナム戦争や朝鮮半島情勢など、当時の地域の安全保障情勢を踏まえて、沖縄の基地が日本を含むアジアの平和と安全に重大な役割を果たしている現実があり、無条件即時返還では問題は解決せず、まず沖縄の返還を実現することが責務である旨を指摘しています。

 これは昭和四十三年の八月六日の参議院本会議で佐藤栄作の答弁でありますが、「沖縄の早期返還を一番熱望しているのは、二十年余りも他国の支配下にある沖縄百万の同胞であります。」「私は、これらの人々のこの心情を思うとき、まず早期返還を実現することこそ、われわれの責務であると考えるのであります。」と述べているわけであります。

 同時に、佐藤総理は、沖縄返還後の基地のあり方について、現地の要望を考慮し、その整理統合に真剣に取り組む旨述べています。このような考えのもとで沖縄の祖国復帰は実現したと考えています。

 沖縄の負担軽減は、安倍政権におきましても最重要課題の一つであります。今後とも、負担軽減のためにできることは全て行う、目に見える形で実現するという方針のもと、抑止力を維持しながら、沖縄の皆さんの心に寄り添い、沖縄の負担の軽減に一つ一つ結果を出してまいりたい、このように考えております。

西銘委員 沖縄返還は、東西千キロ、南北四百キロの広大な海域、これが、私たちからすると祖国復帰をする、家族のもとへ帰る。この状況を、少し規模は小さくなるんですけれども、普天間の飛行場四百八十ヘクタール、町のど真ん中にあって最も危険と言われている。今、沖縄県は四十一の市町村がありますけれども、私の選挙区に、人口約四万人近くになっておりますが、南風原町といって、海のない唯一の町があるんですけれども、そのぐらいの広さがちょうど普天間飛行場に匹敵する。この部分が、今私たちは辺野古への移設を推進しながら闘っておりますけれども、当時の状況と今の状況が私の中ではダブってくるんですね。

 即時全面撤去、辺野古反対という気持ちは、同じウチナーンチュですからわかりますよ、私も。わかるんです。ベストであれば普天間の飛行場が無条件で返ってくる、これはみんな賛成でしょうけれども、相手があって、さまざまな条件の中で、私たちは覚悟を決めて、普天間の返還を実現するために辺野古移設を推進している、容認しているという立場でありますが、もしも返還協定が否定されていたら、私たちはいまだにドルを使って、日本国民、家族のもとへ帰れなかった。こういう状況が今の状況と全く同じような印象で私の中では出てくるものですから、変わっていないんだなと。

 ですけれども、現実に課題を解決する政治としては、私は、辺野古移設を推進しながらやっていくしかないということを、ぜひとも総理も念頭に置いていただきたいと思います。

 自衛隊の問題について、少し防衛大臣にお伺いします。

 先般、自衛隊家族会五十周年に参加をいたしました。昭和四十四年の設立当初のことを考えると、隊員が、市役所で住民登録ができないとか、あるいは成人式に参加できない、マラソン大会に参加できない、大変厳しい状況でありましたけれども、隊員の努力の積み重ねによって、今では信頼を得ていると思っております。

 地元で募集業務に携わっている方たちがどういうところで困っているのかも含めて、御説明をいただけたらありがたいと思います。防衛大臣の答弁を求めます。

岩屋国務大臣 自衛官募集に際しては、やはり、対象になる方々の情報をもとに丁寧なアプローチを行っていくという以外にないというふうに考えております。

 自衛隊法の第九十七条及び自衛隊法施行令第百二十条の規定に基づきまして、防衛大臣は、全ての都道府県知事及び市町村長に対しまして、公文書により自衛官等の募集に必要な資料の提出を求めておりまして、全体の四割の自治体はこの求めに応じて資料を提出していただいております。

 この資料を提出していただいていない自治体につきましては、別途、やむを得ず、住民基本台帳の閲覧によりまして情報を取得しているところでございます。ただ、この閲覧は、写しが交付されませんし、複写もできませんので、大体数十万件の膨大な情報を隊員が手書きで書き写しているというのが実態でございます。

 自衛官等の募集は、法令によりまして自治体の事務とされておりまして、また極めて重要な事務でございますので、このような隊員の負担も非常に大きいということから、防衛省としては、引き続き、所要の協力が得られるように求めてまいりたいと考えております。

西銘委員 県民投票について触れたいと思います。

 私は、県民投票をやるべきだと考えている人の立場は認めます。一方で、私のように、県民投票をやるべきでないと考えている人も多数いると私は思っております。

 こういう中で、先般、国地方係争処理委員会から県の申出が却下される事態になりました。前の県政と同じ流れになっております。前の県政のときに、福岡高裁判決までにどのくらいかかったのか、あるいは最高裁判決までにどのくらいかかったのか、データとして、事実として、防衛大臣、お答えをいただきたいと思います。

岩屋国務大臣 済みません。御通告がなかったものですから、調べて、また御報告します。

西銘委員 これから法廷闘争になるのであろうと私は推定をしております。そのときに、全く同じ形でありますから、前の県政のときの、福岡高裁の判決までにどのくらいかかったのか、最高裁の判決、私自身の中では最高裁判決以上のものはありませんので、もう普天間飛行場の問題は解決しているのでありますが、どう展開していくかわからないものですから、聞いたわけであります。調べておいていただきたいと思います。

 最後に、総理の平和外交について。

 私は、これまで総理がこなしてきた首脳会談の数々、これを高く評価をします。なぜならば、国のトップ同士の首脳会談というものは、安全保障環境の緩和、もっと具体的に言えば、戦争を防ぐ最大の平和外交であると認識をするからであります。どうぞ総理におかれては、大変国会日程が忙しい中、私は、堂々と地球儀俯瞰の平和外交を進めてほしいと大いに期待をいたします。

 そこで、総理に伺いますが、これまでも七百回、八百回近くの首脳会談をこなしてきたことと思いますが、この回数と、これまでに特にこのトップとの首脳会談で印象深いこと等があれば、今後への決意も含めて、これは子供たちあるいは国民含めて、その辺のところを御決意を聞かせていただければと思います。

安倍内閣総理大臣 首脳会談が行われる場合は、例えば向こうから来る場合でも、こちらから訪問する場合でも、私がただ行って会うわけではなくて、お互いに準備を進めるわけであります。

 その準備を進める中において、両国の関係をいかに発展していこうかという議論を積み重ねていく。その中でさまざまな、こういうことをしましょうね、こういう協定を結んでいきましょうね、こういう交流を進めていきましょうね、安全保障の問題ではこういう協力をしていきましょう、私たちはこういう考え方ですからこういう考え方に協力してくださいねということを進めます。

 ですから、首脳会談を行うということは、これは、外務省、防衛省だけではなくて、文部科学省も含めて、経産省、さまざまな役所と役所が交流を深め、合意点を持っていくということであります。その最終的な形として首脳会談を行うということでございますので、かなり飛躍的に友好関係が首脳会談を行うことによって進んでいくということであります。

 今回、第二次政権発足後、これまで、七十三回外国訪問を行いまして、七十八カ国・地域、延べ百六十カ国・地域を訪問したところでございまして、七百回以上の首脳会談を行ってきたところでございます。それは、つまり、今言ったような作業が行われているということになるわけでございますし、さまざまな出来事に対して対応していくときに、初めましてということにならないわけでございますし、お互いの理解を深めていく、これは極めて重要なことではないかな。

 あるいはまた、先般訪問しましたウルグアイ、パラグアイには、日系人の方がおられます。そこに初めて日本の総理大臣として行った。自分のきずながまだあるんだな、日本とのきずながある、いわば両国のかけ橋として頑張ろう、そういう気持ちになったというお話を伺ったことが、今でもよく印象に残っております。

西銘委員 私は、沖縄県民が平和というものを一番望んでいる場所場所で、安倍総理が好きとか嫌いとかの次元ではない、安倍総理が実際にトップ首脳会談を行っているという政治の行動そのものが、私たち県民が望む平和に貢献をしているんだということを常々申し上げております。どうぞ、自信を持って首脳外交を続けていただきたいと思います。

 ありがとうございました。

野田委員長 この際、竹本直一さんから関連質疑の申出があります。西銘さんの持ち時間の範囲内でこれを許します。竹本直一さん。

竹本委員 おはようございます。

 本日は、質問の機会を与えていただきまして、ありがとうございます。

 きょうは、大阪・関西万博について質問させていただきますので、よろしくお願いします。

 まず最初に、世耕経産大臣に質問させていただきます。

 昨年の十一月二十三日、パリで、世耕大臣と私はパリのBIE総会に出席しておりました。その場で日本の大阪万博の決定がなされたわけでございますが、大変な接戦の結果でございまして、当初、この競争は、フランスのパリも参画した上で、パリとアゼルバイジャンとロシアと日本という四カ国で争うことになっておったんですが、途中でパリが、オリンピックの開催資格を取ったことの関係もありまして、リタイアされました。そこで、結局、アゼルバイジャン、ロシア、日本という三カ国の戦いになったわけでございますが、現実に、二十三日の日には、最初にアゼルバイジャンが脱落いたしまして、最後はロシアと日本との戦いになったわけであります。結果は、日本が九十二票、ロシアが六十一票ということで、決選投票に勝ちまして大阪万博が決定した、こういうことでございます。

 この陰で世耕大臣に大いに働いていただきまして、その結果、こういうすばらしい結果をもたらしたということは、非常に私としてもうれしく思っておる次第でございます。

 さて、この国家的イベントの資格を獲得したということは非常に意味の深いことでございまして、獲得した以上はしっかりとした中身にしていかなきゃならない、このように思っております。現実に国の内外での受けとめ方は結構いいものがございまして、例えば、一月十三日でしたか、日経新聞によりますと、成人の日を迎えた成人の人たちが大阪万博決定をどう思うかということに対しては、未来を明るいと感じるという人々が結構多かった、こういうことを聞いております。

 また、今回の万博は、従来、博覧会と聞くと産業の展示会のような感じがございました。しかしながら、国連が二〇三〇年までに達成するという目標を決めておりますSDGsに貢献する、「いのち輝く未来社会のデザイン」、これをテーマにしたことが、ともにつくる万博としての立場を非常に強く人々の心に訴えたことは間違いないと思っております。

 政府におかれても、安倍総理は、事あるごとにビデオメッセージ等を寄せていただきまして、また、国際会議では必ず大阪万博ということを相手国の関係者に言っていただいたことが、非常に大きい、力強い応援の声となっておりましたわけでございますが、同時に、世耕大臣もBIE総会では御自身の力強い英語で演説されまして、それも非常に受けがよかったように私は思っております。

 我が党は、この大阪万博を誰がやるかということなんですが、我々国会議員としても、特に自民党としては、これは大変なナショナルプロジェクトであるので、全面的にこれを支援しなきゃいけないということの中で、二〇二五年大阪万博誘致推進本部を設置いたしまして、本部長が二階幹事長でございますが、政府と密接に連絡して、世界に存在します百七十の国に対して、議員連盟、たくさん各国別に議員連盟がありますが、その代表の方に、各国にそれぞれ訪問していただきまして、ぜひ、政府も言っておりますが、我々国会議員が全員で頑張っておるのでよろしく、こういうお願いをしてまいったわけでございます。

 そういう意味で、こういった活動の結果、政府も各省も、経済産業省、それから河野外務大臣の外務省もしっかりやっていただいた、ありがたいことでございます。そして、経済界も、地元の自治体、大阪府、市も、我々国会議員の団体もやりました。そして、特に、自民党の推進本部のみならず、超党派の国会議員連盟をつくりまして、その会長に二階先生に座っていただきまして、そして党を挙げて、全体でこの推進を図っていったことが、後日、ケルケンツェス事務局次長が来てくれましたときに、非常にすばらしいことだと。というのは、国によっては、決定してから開催まで十年ぐらいあるので、政権がかわっているときがある、非常に困ることが時々あるんだ、そういう心配は一切ないということを言っていただいたことを非常にうれしく思った次第でございます。

 もろもろ感ずることはたくさんございますが、担当閣僚としてずっとこの問題を扱われました世耕大臣に、今回の成功の原因はどこにあったか、そういうお話をしていただければと思います。よろしくお願いします。

世耕国務大臣 万博は、やはりまず政府がしっかり本気で取り組まなければいけない、そして、それに加えて、地元自治体そして経済界がしっかりとバックアップをしてくれた、それに加えて、さらに、竹本先生も中心的役割を果たされた自民党の万博推進本部、そして超党派の議員連盟の国会議員の皆さん、こういった方々が一致団結して、オール・ジャパン体制で誘致活動を最後まで続けた、これが一番大きな要因だと思います。

 その上で、あとは、やはり我々のプランですね。プレゼンテーションを行った内容も、いわゆるお国自慢型ではなくて、みんなで一緒にいろいろな課題の解決に向けて取り組んでいこう、コクリエーションを訴えたということも大きかったと思います。

 それと、やはり過去の日本の万博を成功させてきた実績、これが高く評価された面もあろうかと思います。特に、最近は初めての国の開催がずっと続いていまして、やはり、ここら辺で少し経験豊かな日本に万博を開催してもらって、少し万博の深掘りですとか方向転換というのをやりたいという機運が各国委員の中にあったんではないかというふうに思います。

 そしてさらに、各国の投票された政府代表というのは、恐らく、二〇二五年、開催地で、開催期間と準備期間、後始末の期間も含めて半年以上暮らさなきゃいけないんですね。そのときに、我々、大阪・関西、和歌山も含む関西というのを訴えかけさせていただきました。大阪の町はもちろんすごく楽しいわけですけれども、それに加えて、関西圏全体で歴史、文化、自然も楽しむことができますよということをアピールできた点も大きかったんではないかというふうに考えております。

竹本委員 本当におっしゃるとおりだと思います。そういう思いを持って、大阪・関西万博という名前にしていただいたわけでございます。

 さて、この万博ですが、いいものにしなきゃなりません。経済効果は二兆円という試算がございますが、インフラ整備等のものを入れますと五・八兆円という話もあります。

 いずれにしろ、大規模なプロジェクトでございますので、しっかりとこの中身を充実させなければなりませんが、そのために、我が大阪・関西万博推進本部、二階先生が本部長のこの団体で、先月二十三日に、第一回会合を開きまして、提言をまとめました。大阪・関西万博の成功に向けた強力な推進体制の構築等に関する提言、これでございます。これに従って、八日の日に万博措置法案を閣議決定していただきまして、今国会で審議していただくわけでございます。引き続き、大阪万博がしっかりとした足取りで前に進むことを強く願うものであります。

 歴史を振り返りますと、一体万博というのはいつごろからやってきたのかとちょっと調べましたら、一八五一年、まだ幕末です。ロンドン万博が第一回なんですが、それから始まっているんですが、日本の参加は一八六七年。六八年が明治元年ですから、その前年に、幕府、それから薩摩藩、佐賀藩、これが初めて参加をしておりまして、開催国の国威発揚を兼ねて元気で頑張った、こういう記録が残っております。

 いずれにいたしましても、今までの万博は産業の展示会でありました。しかし、これからは、人類の英知を絞って、これからの未来社会がどうなるんだということを世界の人々に示すのが万博の役割だろうというふうに思っておりまして、かつてありました愛知万博では、環境志向型の万博ということで非常に受けがよかったのをよく覚えております。

 そこで、そういうふうに万博の役割は変わってきましたけれども、世耕大臣としては、この万博をどういう性格のものにしていきたいと考えておられるのか、御披露をお願いしたいと思います。

世耕国務大臣 御指摘のように、万博の歴史というのは非常に古いものがありまして、十九世紀に始まる万博はやはり国威発揚型でありました。また、二十世紀の万博はやはり産業展示会的なイメージが非常に強かったというふうに思いますが、二十一世紀以降は、人類が抱える課題解決をテーマとするものに変わってきた。この一番の変わり目が、二〇〇五年の愛知万博だったというふうに思っております。

 そして、今世界は、まさにこのSDGsという言葉に象徴されるように、気候変動ですとか、健康、医療の問題、格差の問題、いろいろな問題に今直面をしていて、これをテクノロジーによってどう解決して豊かな世界をつくっていくか、まさに、日本が提唱しているソサエティー五・〇をどういう形で実現していくか、その途上に出てくるのが二〇二五年の大阪・関西万博だというふうに思っています。

 まさに、このソサエティー五・〇が実現する社会の姿をショーケースとして示し、また、世界の皆さんとともに、今世界が直面している課題をどう解決していくか議論をし、あるいは実験をする場にしていきたいというふうに思っています。

 そのためには、やはり途上国の参加が極めて重要だというふうに思っています。途上国を含めた多くの国に参加をしていただいて、多くの、世界じゅうの皆さんに万博を体験していただくことが非常に重要だというふうに思っています。

 いろいろな課題がある中で、世界の人々に夢や驚きを与えるようなすばらしい万博にしたいと思いますし、会場の中に閉じる万博ではなくて、例えば、関西圏の研究機関とか医療施設とかあるいは大学といったものも連携をしたような、広がりのある万博にしていくことも非常に重要だというふうに思っております。

竹本委員 世耕大臣も、BIE総会のときのスピーチの中で、全員参加型の万博にしたいということを強く何回も言っておられた。私、全くそのとおりだと思います。

 特に今、昨年、ちょっと視点が変わりますけれども、入国管理法を改正して、外国からどんどん技術を持った労働者を入れることにしましたけれども、私は大賛成だったのは、やはり今、世界各国を歩きますと、日本に対する憧れを強く若い人たちは持っているんですね。日本へ一度行きたい、日本で働きたい、日本で勉強したいと。かつてはアメリカとかヨーロッパと言っていた人たちまでも、全部じゃもちろんありませんけれども、相当日本に対する憧れを強く持つような状態になっております。

 それは、我々の先輩が、このすばらしい、戦後七十数年、一度も戦争もしていない、そして、教育水準が高い、経済的に非常にパワフルであり、世界第三位の経済大国である、医療、福祉も充実しておる、そして、いろいろな文化が、多様な文化が保存されている、そういうものに接したいという憧れを持たれる国になったんですね。まさに黄金の国ジパングだと思っております。ですから、そのすばらしい憧れのもとを発しているこの我が国でやる博覧会は、魅力あるものでなければいけないというふうに思っております。

 そういう中で、具体的に言いますと、いよいよこれで、来年の五月までに登録申請書を出さなきゃいけませんよね。この準備がどのようになっているのか、そしてまた、その中身についてコメントいただきたいというふうに思います。

世耕国務大臣 万博とオリンピックには大きな違いがありまして、オリンピックというのは自治体が立候補するんですけれども、万博はあくまでも政府が立候補をし、そして政府が開催に関して責任を負うということになりますので、政府の役割が非常に重いわけであります。

 このため、政府が前面に出てこういった取組を一元的に把握して、いろいろな省庁をまたがることも出てきますので、総合調整も非常に重要になってまいります。こうした政府内の体制を整備するために、これは、与党でも御議論をいただいたことも踏まえながら、今回、万博特別措置法案をこの国会に提出をさせていただいております。この法案が成立をした暁には、政府の中に、内閣に国際博覧会推進本部を設けて、政府内の体制を強化して、準備に万全を期していきたいと思っています。

 また、先月三十日には、地元自治体、経済界によって、万博の実施主体となります二〇二五年日本国際博覧会協会が設立をされました。政府は、万博の準備、運営経費の補助や国の職員の派遣を通じてこの協会を支援して、実施体制の強化を図ってまいりたいというふうに思います。

 今後の予定ですけれども、開催五年前となります二〇二〇年五月、来年五月までに、開催計画に当たります登録申請書を博覧会国際事務局に提出をして、そして、その総会において申請書の承認を得ることが重要になります。この登録申請書には、大阪・関西万博のテーマであります「いのち輝く未来社会のデザイン」を具体化した姿を反映させるため、ことし一月から、各分野の専門家や有識者などによる大阪・関西万博具体化検討会を開催して、検討を進めているところであります。

 登録申請書がBIE総会において承認をされると、今度は、世界各国に対して参加を正式に要請することができるようになるわけであります。できるだけ早くこの登録申請書の承認が得られるように、これまた、政府そして関係者一丸となって取り組んでいきたいというふうに思います。

竹本委員 おっしゃるとおりでありまして、実は、東京オリンピックは、東京都、自治体が開催するイベントなんですね。ところが、大阪・関西万博というのは、大阪が開催するんじゃなくて、国が責任を持って開催するイベントである、ただ、開催地が大阪だということなんですが、私の地元なんかでは、大阪が東京と対抗してやるんだというふうに誤解をしている人が結構おりまして、国がばっちり支援して、その結果、開催にまでこぎつけているんだということをもうちょっと、十分理解をしていただかないといけないなというふうに思っておる次第でございます。

 そういう意味で、この万博がいよいよこれから、どういいますか、人々の心に訴えられることがたくさんある万博にしなきゃいけませんが、しかし、博覧会で、しかも半年間やる。オリンピックは二週間か三週間足らずだと思いますが、非常に長くやります。ですから、会場も広大な敷地が必要でございます。だからその準備が必要でございますが、やはりちょっと心配しますのは、外国人訪問客が三千万と言っておりますが、二〇二五年には五、六千万になっているかもしれない。そうなりますと、前の、五十年前の万博は六千四百万人、今回の万博は二千八百万人という計算でございますが、実は、外国人の方がどっと来る可能性も十分あるんじゃないか。そうなると、今の計画、これからのインフラ整備をどうしていくのかがちょっと非常に心配になるわけですよ。

 ですから、その辺、ちょっと国交大臣にお聞きしたいんですが、外国人訪問客も含んだ客が来ることを想定すれば、今後のインフラ整備はどういう方向で進めていかなきゃならないかということについて御意見をお伺いしたいと思います。

 特に、鉄道に関しましては、現在、大阪メトロ中央線の夢洲までの延伸が計画されていると聞いておりますけれども、その進捗状況と今後の見通しはいかがなものかということをお聞きしたいのと、もう一つは、夢洲での大阪万博の開催に対応するため、夢洲にかかる此花大橋というのがあるんですけれども、此花大橋、夢舞大橋など、臨海道路の拡幅が計画されていると承知しておりますが、その進捗状況をお聞きしたい。

 いずれにいたしましても、臨海道路プラス外国人の訪問客、そして万博、あるいは場合によってはIR、こういういろいろな人が押し寄せることを考えますと、それに対応する鉄道、道路もそれなりのサイズを備えていなければならないのではないか、このように思うわけでございますが、いかがでしょう。

石井国務大臣 二〇二五年の大阪・関西万博の開催は、世界各国から来場を目的とする訪日外国人が増加をし、インバウンドの一層の拡大につながるなど、我が国経済にとっても大きな意義を有するものと認識をしております。

 今後、開催に向けましては、会場となる夢洲へのアクセス機能の確保が重要でございます。今、委員御指摘いただいたように、大阪メトロ中央線の延伸、道路輸送インフラの整備、此花大橋、夢舞大橋等の拡幅などの取組を進めていくことが必要と考えております。

 大阪メトロ中央線につきましては、夢洲への鉄道トンネルの整備はおおむね済んでおりまして、延伸に必要な、残された駅舎等の整備については、今後、大阪市を中心に検討が進んでいくものと認識をしております。

 また、道路輸送インフラにつきましても、大阪市を中心に、既設の此花大橋、夢舞大橋等の臨港道路の拡幅の検討が進んでいくものと承知をしております。

 国土交通省といたしましては、引き続き、地元の検討状況を踏まえまして、着実に必要な取組を進めてまいりたいと考えております。

竹本委員 インフラの整備は非常に重要でございますので、いつごろ、どういうふうに整備をしていくかということができるだけ一般の人もわかるように、事前に広報していただくことが必要なんではないかというふうに思っております。

 この万博は、五十年前のと比べますと、実は私は前の万博はアメリカにおって見ていないんですが、時代を変えるというか、がらっと変わったというような感じを与えたように思います。

 当時は、日本のGDPは、あのときでも世界第三位であって、アメリカ、二番目がドイツ、西ドイツですね、三番目が日本、こういう状況でありました。現在はどうかというと、アメリカ、中国、日本という、上からいったら、GDPの数はそうなっておりますし、大体、日本の五倍近くを今でもアメリカが持っておりますし、当時もそうでありました。順位は変わらないんですが、この博覧会を一つのきっかけとして、世の中が大きく変わったような気がいたします。

 月の石を初めて見た人は大変な感激を覚えて、これから宇宙の時代が来るんだということを実感したと思っておりますし、今度、この二〇二五年に博覧会を開催いたしましていろいろな展示をいたしますが、それを見た人がどういう社会が来るのかということを予感するんであろうというふうに思っております。

 特に大阪・関西は医療技術の大変進んだところでございまして、健康、長寿というのが基本的なテーマの一つでございました。ですから、それを果たすにはどうすればいいか。日本の周辺の国は大変、少子高齢化が進んでおります。ですから、それへの、実験都市と言うと悪いけれども、実験国家として、日本はこのように対応するんだ、そのために医療技術はこのような体制にするんだというようなことが世界各国に教えられる大変な指標になるんではないかというふうに私は期待をしております。

 いずれにしろ、どのように人類の幸せを築いていくか、それを世界に示すものがこの国際博覧会だろうというふうに思っております。そのはえある舞台に当選できたことは、その責任は非常に重大であると思っておりまして、国を挙げて、これをしっかりやっていただきたいなというふうに思っておるわけでございます。

 ところで、博覧会でございますが、日本は今までたくさんの博覧会をやってまいりました。その中で、博覧会の開催において、そのときの総理大臣あるいは関係閣僚は大変な努力をしていただいたわけでございますが、過去の歴史をひもときますと、一九六四年の東京オリンピックは、岸信介総理のときに決まっております。また、一九七〇年の、いわゆる前回の大阪万博は、佐藤栄作総理のときに決まっております。

 今回は、二〇二〇年東京オリンピック・パラリンピック、加えて、二〇二五年大阪・関西万博、この二つを安倍総理が実現にこぎつけられたわけでございます。安倍総理が先頭に立って御尽力いただいた結果だと思っております。非常にうれしいことでございます。

 さて、この一九七〇年の大阪万博を契機に、市民生活も大きく変わりました。それは過去の実績であります。二〇二五年の大阪・関西万博も時代を画する万博であってほしいと考えておりますが、この二〇二五年大阪・関西万博開催に向けて、総理の御決意あるいはお考えを御披露していただければありがたいと思っております。よろしくお願いします。

安倍内閣総理大臣 一九七〇年の大阪万博は、その六年前に、一九六四年に東京オリンピックが開催をされたわけでございます。まさに日本が焼け野原になった、あの敗戦からわずか十九年後ということになるわけでございますが、この招致が決まったのは十数年後ということであります。

 そのとき、まさに日本の選手が世界の選手と対等に競技の中で活躍する、私も子供ながらに、本当にわくわくどきどきしたことを思い出しているわけでございますから。その六年後に大阪で万国博覧会が行われた。今よりももちろんはるかに少ないんですが、世界各国からあれだけお客様が来たというのは初めての体験でありまして、こんなにたくさん世界から人々がやってきて、何か日本が世界の中で中心になったような、そんな気持ちになったことを思い出しているわけであります。そういう大きな実感が確かにありました。当時、まだ高度成長期でもございましたし。

 二〇二〇年のオリンピック、パラリンピック、そして二〇二五年の大阪・関西万博もまた、次世代を担う子供たちが、次の時代への大きな躍動感を体に感じるような、未来を切り開く大きなきっかけとしたい、こう考えています。

 今回の誘致におきましても、竹本議員を含め地元の皆さん、あるいは超党派の議員連盟の皆さんには大変な御尽力をいただいた。政府も一丸となって誘致に全力を挙げてきたところでございますが、その中におきましては、今委員がおっしゃったような、まさに地球規模のさまざまな課題もあります。そして、世界でさまざまな問題があり、それぞれの人々においては、それぞれの皆さんの課題がある。

 ソサエティー五・〇というのは、第四次産業革命の、まさにIoTやロボットとかAI等々を生かしながら、そうした課題を解決していく。その課題をどのように解決をしていくか。そして、より人々の生活が豊かになっていく、そういう姿を見せていきたい。世界じゅうの人々に夢や驚きを与えるようなすばらしい万博をオール・ジャパンで実現をしていきたい、このように考えております。

竹本委員 総理、ありがとうございます。

 これで私の質問を終わりたいと思いますが、いずれにしましても、この大阪万博というのは、大阪・関西万博でありまして、地域はそうですけれども、しかし、日本全体で支える万博でありまして、日本の大イベントなんです。ですから、来年の東京オリンピックをまず成功させて、そして六年後の大阪万博を成功させる。

 その中に、日本の経済的発展は言うまでもなく、そこで、今、課題解決型国家という趣旨のお話を総理はされましたけれども、少子高齢化社会に対して、日本がどういうふうに生き残っていくかという手本を示す社会実験であるのではないかというふうにさえ思うわけでございます。

 いずれにしましても、世界が注目している万国博覧会でございます。しっかりとした日本らしい足跡を残して、世界のために貢献をしたいという思いでございます。

 きょうはどうもありがとうございました。

野田委員長 これにて西銘さん、竹本さんの質疑は終了いたしました。

 次に、佐藤茂樹さん。

佐藤(茂)委員 公明党の佐藤茂樹でございます。

 きょうは、予算委員会の集中審議の貴重な時間の中で質問の機会をいただきまして、大変にありがとうございます。

 予定していた質問の順番を少し変えまして、けさほどもニュースになっておりましたけれども、二月の二十七、二十八と、第二回目の米朝首脳会談がベトナムのハノイで行われるわけでございます。けさの報道では、米韓の首脳が電話会談を行ったと。先ほど安倍総理は、きょうにでもトランプ大統領と電話で会談をされる、そういうことを発表されました。

 そこで、私は、その際に、三つのことをトランプ大統領に、日本の主張としてきちっとすり合わせをしていただきたいなというようにお願いをしたいと思うわけであります。

 一つは、きのう、拉致問題のことで拉致被害者の家族会の皆様と面会をされました。もう御家族の皆さんも大変高齢になっておられます。ですから、一回目の米朝首脳会談のときにも、安倍総理が言われたことをトランプ大統領が取り上げていただいたわけでございますが、二回目も、このチャンスを逃さずに、一刻の猶予も許さないんだ、そういう強い決意をトランプ大統領に伝えていただいて、この米朝首脳会談で拉致問題のことをしっかりと取り上げていただく、このことがまず一点目、何よりも大事だと思っております。

 二点目に、ぜひトランプ大統領に言っていただきたいのは、一回目のときに金正恩委員長は朝鮮半島の完全な非核化を共同声明で約束したにもかかわらず、肝心の北朝鮮の非核化というのは全く進んでおりません。国連安保理の最近の専門家パネルの報告書でも、北朝鮮の核・ミサイル開発は無傷で続いている、そういう報告もなされているという報道もございます。

 ですから、大事なことは、前回の共同声明で欠けておりました朝鮮半島の完全な非核化に向けて、いわゆるCVID、完全かつ検証可能で後戻りのできない形での非核化を行うことが重要だということを、ぜひ再度、トランプ大統領にきちっと日本の主張として伝えていただきたい。このすり合わせをぜひお願いしたい。

 三点目に、前回、余りこの問題がどこまで話し合われたのかも共同声明を見る限り明らかではないんですが、ミサイルの問題です。

 今回、さまざまな論調を見ておりますと、トランプ大統領というのは極めて取引を上手にされるということもありまして、結果として、アメリカ大陸まで届く大陸間弾道ミサイル、ICBMの廃棄のみが合意されて、日本を射程におさめるノドンを始めとした中距離弾道ミサイルはそのまま温存されるのではないか、そういう指摘があるわけであります。要するに、日本が置き去りにされるのではないか、そういう懸念が言われているわけであります。

 ですから、電話会談では、あらゆる射程の弾道ミサイルが廃棄されることの合意をしっかりと取り付けていただきたいんだ、そのことをぜひトランプ大統領に方針のすり合わせで訴えていただきたいと思うんですが、この核、ミサイル、拉致問題についての方針をすり合わせることについて、総理の見解を伺いたいと思います。

安倍内閣総理大臣 北朝鮮に対してどう対応していくかということについては、もう今までの首脳会談あるいは電話会談において何回もお話をさせていただきました。

 私、長い間この問題に対応してきましたから、北朝鮮の行動の様式、こういうふうにこちらが行動をとったらどういう行動をとるんだということについても、率直にトランプ大統領からも、それはどう安倍さんは考えているんだ、どういう経験をしてきたんだという話もいただき、私からも率直にお話もさせていただきました。私の知っている範囲内で、経験も踏まえてお話をさせていただいた。

 今委員がおっしゃったように、日本の基本的な考え方というのは、まさに核兵器においては、完全、検証可能、そして不可逆的な廃棄でございます。そして、弾道ミサイルにおきましても、あらゆる射程の弾道ミサイルの廃棄、これは強く求めているところでございます。

 そして、基本的には、我が国としては、核兵器だけではなくて、生物化学兵器等々も含めた大量破壊兵器全般においての廃棄を日本としては求めているということでございます。日本の立場はアメリカに伝えております。

 具体的にどのような交渉をしていくかというのは、まさに交渉を行うトランプ大統領を私は信頼をしております。しっかりとバックアップをしていきたい、こう考えています。

 同時に、拉致問題につきましては、本当に、御家族の皆様、あのメッセージ、金正恩に向けたメッセージというのは、いろいろな思いもあると思いますよ、いろいろな思いもありますが、しかし、まずはとにかく自分たちの娘や息子を取り戻さなければならないという思いの中で、そういう思いを込めてあのメッセージを出されたんだろうな、こう思っています。これを胸に、私の考え方についてトランプ大統領にお話をさせていただきたい。

 トランプ大統領も、第一回目の米朝首脳会談以来、本当にこの拉致問題についてもよく理解をしていただいていて、ホワイトハウスの中におきましても、この問題についての重要性というのをしばしば話をしておられるわけでございます。

 ですから、その意味におきましても、しっかりと今度も私の考え方を金正恩委員長に伝えてもらいたい、こう考えております。

佐藤(茂)委員 今、安倍総理がおっしゃられたとおり、きのうも明らかにされたそうでございますが、家族会の皆さんも、全拉致被害者の即時一括帰国が実現すれば、国交正常化に反対する意思はないというところまで踏み込まれたメッセージを金委員長宛てに出されているわけでございまして、ぜひ総理には、その思いを体して、トランプ大統領との電話会談にしっかりと日本側の主張を伝えていただきたいなというふうに思うわけでございます。

 それで、きょうは、これからお時間をいただきまして、私は、きょういらっしゃいますかね、自民党、小野寺前防衛大臣とともに、昨年末、新たな防衛大綱と中期防について、与党のワーキングチームの、小野寺先生が座長で私が座長代理として議論にかかわらせていただきました。

 私ども議論をしていて、最も大事なことは、この防衛大綱、中期防についても、国民の皆様の御理解と御支持をしっかりといただくということが何よりも大切である、そのように思っております。

 防衛大綱や中期防などの安全保障政策について、そういう観点に重点を置きまして、これから少し時間をいただきまして質問させていただきますので、ぜひ、総理及び関係閣僚の皆様においては、国民に伝わる丁寧な御答弁をお願いしたいと思うわけでございます。

 それで、最初にまずお聞きをしたいのは、今回の防衛大綱というのは、前回の二五大綱から五年で見直しという形になりました。防衛大綱はおおむね十年をめどに策定するということになっていたわけでございますが、この間、政権交代も国内でない中で、五年という短期間での見直しに至った背景と経緯、また理由につきまして、まず防衛大臣にお伺いしたいと思います。

岩屋国務大臣 まずは、今般の大綱、中期防の取りまとめに当たりまして、与党ワーキングチームの座長代理として御尽力をいただいた佐藤先生に、心からお礼を申し上げたいというふうに思います。

 そして、ただいまの御質問ですが、我が国を取り巻く安全保障環境は、前大綱の策定時に想定していたよりも格段に速いスピードで厳しさと不確実性を増しております。特に、宇宙、サイバー、電磁波といった新たな領域の利用が急速に拡大したことで、安全保障のあり方が根本から変わろうとしております。

 具体的には、ただいまも話に出ました北朝鮮の核・ミサイル開発、中国の透明性を欠いた軍事力の強化、東シナ海、南シナ海における力を背景とした一方的な現状変更の試み、あるいは大量破壊兵器等の拡散、国際テロの深刻化、そして新しい領域における課題の顕在化などが挙げられます。

 こうした中でも、我が国に対する脅威が現実化し、国民の命と平和な暮らしを脅かすことを防ぐためには、安全保障の現実に正面から向き合い、従来の延長線上ではない真に実効的な防衛力を構築する必要がございます。

 これらを踏まえまして、昨年一月の総理の施政方針演説において、前大綱の見直しについて方針が示され、与党でも精力的な御議論をいただき、政府として検討を進めてきた結果、新たな大綱、中期防を策定するに至ったところでございます。

佐藤(茂)委員 それで、ぜひ次、総理にお伺いをしたいんですが、今、防衛大臣の答弁にもありました、従来の延長線上にない、こういう言葉が、実は策定前からの今回の防衛大綱のキーワードだったわけですね。

 総理も、例えば、直近では昨年の八月二十九日の第一回の安全保障と防衛力に関する懇談会、有識者懇談会でございますが、そこにおける総理の冒頭所感表明においても、従来の延長線上ではなく、国民を守るために真に必要な防衛力のあるべき姿を見定めていくことが必要ということをおっしゃっていたわけでございます。

 従来の延長線上ではなくというのは、この新たな防衛大綱のどういう点が従来の延長線上にない防衛大綱としての特徴であると、でき上がったものを見て総理は考えておられるのか、総理の御所見を伺いたいと思います。

安倍内閣総理大臣 政府の最も重大な責務は、国民の命と平和な暮らしを守り抜いていくことであります。これは独立国家として第一義的に果たすべき責任であり、みずからの主体的、自主的な努力によってその責任を果たしていくことが安全保障の根幹であります。

 現在、国際社会のパワーバランスは大きく変化をしつつあり、我が国を取り巻く安全保障環境は、格段に速いスピードで厳しさと不確実性を増しています。また、宇宙、そしてサイバー、電磁波といった新たな領域が死活的に重要になっておりまして、陸海空での対応を重視してきたこれまでの安全保障のあり方を根本から変えようとしているわけであります。まさに、今までの陸海空中心の延長線上では国民の命と平和な暮らしは守り抜くことができないという判断をしているわけであります。

 このような中にあって必要なことは、我が国として、みずからを守る体制を主体的、自主的な努力により抜本的に強化をし、みずからが果たし得る役割の拡大を図っていくことであります。特に、陸海空という従来の発想から完全に脱却し、宇宙、サイバー、電磁波といった新たな領域を含む全ての能力を有機的に連携させ、新たな防衛力を構築していく必要があります。

 また、このような未来の礎となる、国民を守るために真に必要な防衛力を構築するため、従来とは抜本的に異なる速度で変革を図っていかなければならないと考えております。

 このように、目指すべき方向とそこへ向かっていくスピード感の双方において、従来の延長線上ではない取組を行っていく必要があると考えております。

佐藤(茂)委員 今、総理からも御答弁いただきましたように、極めて領域も従来の延長線上にない領域を広げ、またスピード感も違うんだ、そういうことを今述べられたわけでございます。

 そこで、ただ、前防衛大綱の二五大綱でも、宇宙、サイバー等の分野というのは触れておられるわけであります。その上で、統合機動防衛力の構築を目指すと前大綱はされていたわけであります。

 今回の新たな防衛大綱というのは、多次元統合防衛力を構築する、そういうようにされていたわけでございますが、この前大綱と今大綱の構築すべき防衛力のあり方について、どういう違いがあるのか、わかりやすく御説明をいただきたいと思います。

岩屋国務大臣 前大綱におきましては、ただいま先生御指摘のように、陸海空の統合ということに重きを置いておりました。多様な活動を統合運用によりましてシームレスかつ機動的かつ持続的に行い得るような防衛力として、統合機動防衛力を構築するとしていたわけでございます。

 しかしながら、現在、我が国を取り巻く安全保障環境は、非常に速いスピードで変化をいたしておりまして、特に、先ほど申し上げた宇宙、サイバー、電磁波といった新たな領域の利用が急速に拡大したことによりまして、新たな領域における優位性を確保できなければ陸海空の力も発揮できないというような状況になりつつございます。

 こういう認識のもとにおきまして、新たな大綱におきましては、陸海空という従来の領域のみならず、宇宙、サイバー、電磁波といった新たな領域の能力を強化し、その全ての領域の能力を融合させる領域横断作戦を可能とする真に実効的な防衛力として、多次元統合防衛力を構築することとしたところでございます。

佐藤(茂)委員 それで、昨年、冒頭申し上げましたように、与党のワーキングチームとして、計八回にわたって活発な議論をさせていただいたところでございます。

 その際、一番力を入れて議論をさせていただいたのは、この後、野党の皆さんからも御質問があるかもわかりませんが、「いずも」型護衛艦を今後STOVL機の運用のために改修することについて中心に八回にわたって議論をさせていただいて、結果として、我が党の強い主張によりまして、専守防衛を堅持する観点から与党間で確認書を交わしまして、そして安倍総理にも直接手渡しをさせていただきました。そして、中期防にも確認書の主な趣旨を盛り込ませていただいたわけでございます。

 その確認書、もう総理もごらんになっていただいたと思うんですが、政府を代表して、その与党のワーキングチームの確認書についての評価を総理からいただきたいと思います。

安倍内閣総理大臣 「いずも」型護衛艦における航空機の運用は、広大な太平洋を含む我が国の海の守りについて、自衛隊員の安全を確保しながらしっかりとした備えを行うため必要不可欠と考えています。

 具体的に申し上げれば、近年、我が国の南西諸島の列島線を越えて太平洋側に進出する戦闘機や爆撃機の飛行が増加するなど、太平洋の空域における軍用機の活動が急速に拡大し、かつ活発化しています。これは、五年前に防衛大綱を策定したころや、それ以前には見られなかったものであり、今後一層の拡大、活発化が見込まれます。

 他方、我が国の太平洋側には、千キロメートル四方を超える海域に我が国領土が存在し、我が国の排他的経済水域の約八割が広がっています。この広大な太平洋において自衛隊の戦闘機が使用可能な飛行場は、硫黄島一カ所だけであります。これは、北海道から沖縄にかけては戦闘機が使用可能な飛行場が十九カ所あることと比べ、極めて脆弱な状況であり、かつ、今後この広大な空域で任務に当たるパイロットの安全確保を図ることも困難です。

 新たな安全保障環境に対応して、広大な太平洋を含む我が国の海と空の守りについて、自衛隊員の安全を確保しながらしっかりとした備えを行うためには、「いずも」型護衛艦を改修し、洋上において航空機の離発着を可能とすることが必要不可欠と考えております。

 この与党ワーキングチームからいただいたものでございますが、「いずも」型護衛艦の改修については与党ワーキングチームで大変充実した御議論をいただいたわけでございまして、与党間の確認書の内容は政府としても同じ考えであり、その趣旨は防衛大綱及び中期防にも反映されています。

 「いずも」型護衛艦は、ヘリコプター運用機能、対潜水艦作戦機能、指揮中枢機能、人員や車両の輸送機能、医療機能等を兼ね備えた多機能な護衛艦であり、確認書にも記載されているとおり、今後これに航空機の運用機能が加わっても、引き続き、多機能な護衛艦として活用していく考えであります。

佐藤(茂)委員 今、総理は相当長く、必要性から含めて御答弁いただいたんですが、あえてこれから、確認書でも確認をさせていただいているんですけれども、具体的なこの「いずも」型護衛艦改修とSTOVL機の導入について、何点かお聞きをしたいと思うんです。

 まず、今総理も御答弁いただいたんですけれども、そもそも、今回、この「いずも」型護衛艦をなぜ改修して、そしてSTOVL機を、高額なものを導入していかないといけないのか。

 これは、岩屋防衛大臣は、防衛省内の委員会で検討されて、防衛政策上の観点から検討してそういう方向にしたんだということでございますが、この必要性について、国民の皆様にわかりやすく御説明をいただきたいと思います。

岩屋国務大臣 その前に、与党ワーキングチームでいただいた確認書、特に公明党さんの御意見を反映していただいた確認書、大変参考になりました。特に、改修された「いずも」型の護衛艦の運用のあり方について明確にしていただいたという意味で、大変感謝を申し上げたいというふうに思います。

 今総理もお答えになりましたけれども、必要性の一つは、太平洋側の防空体制を充実する必要があるということでございます。

 近年、太平洋側に進出する戦闘機や爆撃機の飛行が増加しておりまして、これは今後、更に拡大、活発化することが見込まれております。太平洋側には我が国は硫黄島しか空港がないという状況の中で、改修された「いずも」型護衛艦が太平洋側の防空体制の充実に寄与するものというふうに考えております。

 それから、戦闘機の運用の柔軟性が向上するということでございます。

 この改修された「いずも」型護衛艦に載せる予定のSTOVL機は、短距離で離陸ができて、また垂直に着陸をすることができるということでございますから、国内約四十五カ所の空港で離発着が可能だということでございます。

 そういう戦闘機運用の柔軟性の確保、太平洋側の防空、さらにはパイロットの安全確保、広大な空域で任務に当たるパイロットの安全確保を図る必要があるということで、そういう決定をさせていただいたところでございます。

佐藤(茂)委員 今、岩屋大臣からも御説明いただきましたけれども、STOVL機というのは、短距離離陸そして垂直着陸ができる、そういう戦闘機のことでございまして、今までの日本にはそういう装備はなかったわけでございます。

 そこで、このSTOVL機を導入したとして、戦闘機部隊の体制というのはどうなるのか。要は、専ら艦上で運用される、そういう艦載機部隊を新設されるのか。それとも、陸上の航空基地に配備されるのか。さらには、こういう新しい装備であるSTOVL機を導入したとして、このSTOVL機を平素からどういう任務に従事させるのか。そういうことも含めて、防衛大臣に御答弁をいただきたいと思います。

岩屋国務大臣 お尋ねの点についても、自民党そして御党公明党との確認書において明確にしていただいたところでございます。

 STOVL機は、「いずも」型護衛艦に常に搭載することは考えておらず、他のF35A戦闘機やF15戦闘機と同様に、平素における対領空侵犯措置や警戒監視任務、有事における航空優勢の獲得、維持に活用することを考えております。

 航空優勢確保のためには、戦闘機部隊の運用回数を十分に確保することが必要であり、より多くの飛行場から対処を行えるといった柔軟な運用ができる体制を構築することが重要です。STOVL機は、先ほど申し上げたような能力を持っているわけでございます。

 そして、このSTOVL機を常に艦載するという編成は考えておりませんで、十三個の飛行隊から成る戦闘機部隊の一つとして位置づけるものでございまして、配置場所も、戦闘機の運用が行われている陸上の航空自衛隊の基地を拠点として配備することを考えております。

 この趣旨を明確化するために、防衛大綱の別表におきまして、「戦闘機部隊十三個飛行隊は、STOVL機で構成される戦闘機部隊を含む」と明記をいたしたところでございます。

佐藤(茂)委員 今、防衛大臣からもございましたように、STOVL機を導入したとしても常に搭載することは考えていないんだということでございますので、それはどういう場合なのかということを具体的にお聞きをしたいと思います。

 新たな防衛大綱や中期防にも、「いずも」型護衛艦は、必要な場合にはSTOVL機の運用が可能となるよう改修を行う、こうなっているわけでございます。要は、常時搭載、運用が行われるわけではなく、今の答弁のとおり、必要な場合には運用していくということでありますが、この必要な場合にはについて、最終的に、中期防に四つの例示が書き込まれました。一つは有事における航空攻撃への対処、二つ目が警戒監視、三つ目が訓練、そして四つ目が災害対処等と、四つの例示を具体的に中期防に記述されたわけでございます。

 この想定されている必要な場合というのは、原則、この四つの例示の場合に運用していく方針であると考えてよろしいのかどうか。また、その際、最大でどのくらいの機数のSTOVL機を、改修された「いずも」型、「かが」もそうですが、搭載することができる、載せることができるのか。政府の見解を伺いたいと思います。

岩屋国務大臣 これは、中期防にも明記をさせていただいたように、STOVL機の運用は、有事における航空攻撃への対処、警戒監視、訓練、災害対処など、必要な場合に行うことといたしております。

 また、これまでの基礎的な調査研究を踏まえれば、「いずも」型護衛艦は、F35クラスのSTOVL機を十機程度運用し得る能力を有しているというふうに考えております。

佐藤(茂)委員 それで、「いずも」型護衛艦、今「いずも」と「かが」があるんですけれども、これは、現在でも多くの機能を有しているわけであります。

 きょう、パネルと資料を用意させていただいたんですけれども、例えば、左上の航空機運用機能、これは、ヘリ九機を運用可能で、哨戒ヘリ七機を搭載することによりまして、潜水艦に対する警戒監視を実施できることになっているわけであります。また、大規模災害時は、ほかのヘリも着艦可能でございますので、洋上の航空基地として災害時なんかも運用ができるわけであります。

 さらに、その右横にありますが、医療機能というのは、約三十五床の充実した医療機能を有しておりまして、効果的な医療支援が大規模災害時なんかでもできるわけであります。

 さらに、指揮中枢機能というのは、首相官邸危機管理センターとほぼ同規模の中枢機能があって、大規模災害時なんかには政府の現地対策本部等としても活用が期待できますし、何よりも、その下の人員収容機能では、最大四千名収容可能で、大規模災害時なんかにおいては帰宅困難者への支援等も期待ができるわけでございます。

 そういう極めて多様な任務に対応が期待されているわけでございますが、これまでの「いずも」、「かが」といった、この「いずも」型護衛艦のこういう機能を活用した任務の実績というものはどういうものがあるのか、防衛大臣にお伺いをしたいと思います。

岩屋国務大臣 「いずも」型の護衛艦は、ただいま先生が指摘していただいたように、多くの機能を持った護衛艦でございます。

 ヘリコプター運用機能、対潜水艦作戦機能、指揮中枢機能、人員、車両の輸送機能、医療機能等を兼ね備えた多機能な護衛艦でございますが、これまでの実績といたしましては、平成二十八年熊本地震における陸上部隊の被災地への輸送、高知県土佐清水沖における米軍機の捜索救助、また、「かが」につきましては、西日本での平成三十年七月豪雨における呉市での入浴支援に活用された実績がございます。

佐藤(茂)委員 それで、今回、「いずも」型護衛艦を改修されるということなんですが、改修後も引き続き多様な、今言われたような実績も含めた多様な任務に従事させる、そういう役割というのは変更はないのかどうか。

 また、矢印で入れさせていただいたんですけれども、STOVL機の運用によって、従来の多様な任務に加えて、STOVL機を運用することによって新たに期待ができる任務というものはどういうものがあると考えておられるのか、防衛大臣に伺いたいと思います。

岩屋国務大臣 先ほど説明を申し上げました「いずも」型護衛艦の任務に変わりはございません。これまでどおり、多機能な護衛艦として活用していきたいというふうに考えております。

 そこにSTOVL機が運用できる機能をつけ加えるということになるわけですけれども、そのことによって、緊急事態の発生時にはパイロットの安全を確保しつつ戦闘機の運用の柔軟性を向上させる、また、新たな安全保障環境のもとでも航空優勢をしっかりと確保できるようにする、これによりまして、広大な太平洋側を含む我が国の海と空の守りに万全を期すことができるようになるというふうに考えております。

佐藤(茂)委員 そこで、今まで、運用面で具体的な、どういう歯どめがかかっているのか、また、常時搭載ではなくて必要な場合に運用されるんだというようなことを防衛大臣との間で議論をさせていただきました。

 それで、次に憲法との関係について、一つ総理に確認の意味でお伺いしたいと思うんです。

 「いずも」型護衛艦を改修した上でこのSTOVL機を運用するというのが、年末来の各マスコミや有識者の論調、指摘の中で、これは事実上の空母化となり、過去の政府答弁で、憲法上保有を許されない、そういうようにしてきた攻撃型空母に当たるのではないか、そういう御指摘や論調というのがやはりあるわけでございますが、これに対しての政府の見解を伺いたいと思います。

安倍内閣総理大臣 政府としては、憲法上保有が許されない、それは性能上専ら相手国の国土の壊滅的破壊のためにのみ用いられる攻撃型兵器の例として、いわゆる攻撃型空母を挙げてきたところであります。

 これについては、過去、昭和六十三年に、例えば極めて大きな破壊力を有する爆弾を積めるなど大きな攻撃能力を持つ多数の対地攻撃機を主力とし、さらにそれに援護戦闘機や警戒管制機等を搭載し、これらの全航空機を含めて、それらが全体となって一つのシステムとして機能するような大型の艦船については、その性能上専ら相手国の国土の壊滅的破壊のためにのみ用いられるものになり得るのではないかと答弁しているところであります。

 改修後の「いずも」型護衛艦は、F35クラスの航空機を十機程度運用し得るにとどまるものでありまして、確認書にも記載されているとおり、先ほどの過去の答弁に照らしても、性能上専ら相手国の国土の壊滅的破壊のみに用いられる兵器でないことは明らかであると考えております。

佐藤(茂)委員 それで、新たな防衛大綱、中期防におきまして、「いずも」型護衛艦の改修というのは、現有の「いずも」と「かが」護衛艦の二隻のみを改修ということで対応するのか、それとも、この防衛大綱、中期防において、例えば三隻体制によるローテーションを想定してSTOVL機を運用することができる新たな護衛艦を建造する計画があるのかどうか、防衛大臣に伺っておきたいと思います。

岩屋国務大臣 新たな中期防におきましても、STOVL機の運用が可能となるよう、「いずも」型護衛艦の改修を行うとされているとおりですね。現有の「いずも」型護衛艦二隻、「いずも」と「かが」でございますが、これ以外の艦艇を改修したり、新たにSTOVL機の運用が可能な艦艇を導入する計画はありません。

佐藤(茂)委員 今、るる防衛大臣を中心に議論してまいりましたけれども、運用の面でも、「いずも」型護衛艦を改修したとしても、専守防衛に徹した、そういう多様な任務をこれからもやっていくんだ、そういうことを言われましたし、総理からも、憲法との関係でも、過去の政府答弁に比しても、「いずも」型護衛艦を改修したとしても、いわゆる保有できないと言われていた攻撃型空母には当たらないんだ、そういうことを明確に答弁をいただきました。

 もう一つ、今回の防衛大綱及び中期防の、我々が非常に関心のあるのが、防衛費の効率化、合理化及び透明性の向上のことについて確認をしておきたいと思います。

 新防衛大綱の最後の章の留意事項に、「格段に厳しさを増す財政事情と国民生活に関わる他の予算の重要性等を勘案し、防衛力整備の一層の効率化・合理化を図り、経費の抑制に努めるとともに、」ということが明記されました。ぜひ、この防衛費の一層の効率化、合理化ということを図ることに格段の努力をしていただきたいと思うんです。

 具体的に、きょう資料を用意させていただいたんですけれども、まず、右上のところでございます。中期防の所要経費の章で、新中期防では、五年間で必要な防衛力整備の水準に係る金額は、おおむね二十七兆四千七百億円程度をめどとする、しかし、各年度の予算の編成に伴う防衛関係費は、おおむね二十五兆五千億円程度をめどとするということをされております。つまり、約二兆円の削減目標が具体的に掲げられているわけでございます。

 これは二五大綱でもこういう形式をとられたわけでございますが、前中期防では、二兆円ではなくて約七千億円の削減目標ということがうたわれていたわけでございます。今回、約三倍の、こういう合理化による削減目標となっているわけでございます。

 我々が携わっている者から聞いても、これは目標倒れになるのではないか、本当に実現性はあるのかという、そういう心配をするわけでございますが、いかなる方法で合理化、効率化を推進してこの約二兆円の削減目標を達成するつもりなのか、防衛大臣の見解を伺いたいと思います。

岩屋国務大臣 予算につきましては、ただいま佐藤先生から御指摘ありましたとおり、新中期防で我が国の防衛に必要な事業を積み上げた結果といたしまして、おおむね二十七兆四千七百億円程度をめどとするということになっております。この意味するところは、おおむね二十七兆四千七百億円程度の実力は認めるということでございます。

 しかしながら、その上で、一層の効率化、合理化を徹底することなどによって、中期防における五年間の歳出額の総額についてはおおむね二十五兆五千億円程度をめどとする。つまり、予算としては二十五兆五千億円をめどにしか出さないぞということを麻生財務大臣からも厳しく言われているところでございます。

 したがいまして、具体的には、新中期防におきまして、重要度の低下した装備品の運用の停止、あるいは費用対効果の低いプロジェクトの見直し、徹底したコストの抑制や、長期契約を含む装備品の効率的な取得などの装備調達の最適化などを通じて、財源確保を図ってまいりたいと考えております。

 前中期防のときは、七千億円の目標で七千七百億円の削減の実績がございます。二兆円近いというのは高いハードルでございますが、最大限の努力をしてまいりたいというふうに考えております。

佐藤(茂)委員 ぜひ、言葉だけではなくて、最大限の努力をお願いしたいと思うわけでございます。

 今回、もう一つは、この中期防衛力整備計画の構造のところの、今の中期防総額の下のところに、新たな枠ということを資料として入れさせていただきました。

 我が党の主張もありまして、中期防に新たな枠を設けて、中期防五年間で新規に契約する事業の総額、物件費に、この赤枠でございますが、枠を設けまして、平成三十年度価格でおおむね十七兆千七百億円程度の枠内、こういう枠をつけさせていただいたわけでございます。

 この枠をしっかりとつけた狙いと、想定される効果につきまして、防衛大臣に伺いたいと思います。

岩屋国務大臣 防衛関係費の内訳は、大きく、人件糧食費と物件費の二つに大別されます。そして、自衛隊員の定数と給与は法律で定められておりまして、人件糧食費はいわば義務的な経費である一方、物件費は、裁量の余地が大きい、政策的な経費となるわけでございます。

 従来の中期防では、この二つを合わせて五年間の歳出額を明記して縛りをかけていたわけでございますが、装備品の調達、修理のための経費は、契約した年度のみならず、その後も支払いが続く場合が多いものでございます。このため、中期防の期間中に契約しても、実際には、多額の経費の歳出が中期防の期間外になってしまいます。

 したがいまして、この十七兆一千七百億円というのは、五年間に新規契約する物件費の額でございまして、この契約費の額を縛りにすることによって中期防の関係経費の管理の一層の適正化を図ることとしたところでございます。

佐藤(茂)委員 それで、防衛大綱、中期防の議論はこれぐらいまでにしまして、外務大臣、お待たせをしました、最後、あわせて一問お伺いしたいんですが、日ロの平和条約交渉のことでございます。

 ミュンヘンの安全保障会議の際の、二回目の日ロ外相会談がございました。それで、双方が、約一時間四十分間、受入れ可能な解決に向けて突っ込んだやりとりを行ったと外務大臣はおっしゃっているんですが、ただ、ラブロフ外相は会談後、交渉に期限を設けていない、そういうふうに強調されました。さらに、河野外務大臣も、一朝一夕に解決することではない、時間がかかるとの認識をコメントの中で示されているわけですね。

 平和条約というのは、この二人の感想からすると少し長期化するのではないか。六月に来日を予定されているプーチンさんとの間で大筋合意というのはなかなか難しいんじゃないか、そういう報道が伝えられているわけでございますが、外務大臣は、二回目の外相会談をされて、交渉のスケジュール感をどう見ておられるのか。進捗状況は進んでいるのかどうか。

 そのこととともに、もう一つあわせて、ロシアは、INF条約違反だということをイージス・アショアについて言われてきております。これは、防衛大綱、中期防でもそういうことがうたわれているわけでございまして、そういうことをロシアから干渉されて黙っているわけにはいかないと思うんですが、イージス・アショアがINF条約違反だ、そういうことに対して、ロシア側に対してどういう反論をされているのか。あわせて、外務大臣、御答弁いただければありがたいと思います。

野田委員長 佐藤さんの質問時間が終了しておりますので、簡潔に御答弁。

河野国務大臣 ミュンヘンの安保会議に続きまして、近く、政府特別代表間同士の交渉を行わせます。その後、ラブロフ外務大臣が来日をして三回目の交渉をしようというところまで決まっておりますので、粛々と交渉を進めていきたいと思います。

 また、INF全廃条約には日本は入っておりませんので、何ら義務を負っておりませんので、条約違反ということにはいずれの場合でもならないわけでございます。

佐藤(茂)委員 以上、時間が参りましたので、質問を終わります。

 ありがとうございました。

野田委員長 これにて佐藤さんの質疑は終了いたしました。

 次に、本多平直さん。

本多委員 立憲民主党の本多平直です。

 まず、ちょっと通告をしていないんですけれども、今、新しいニュースが入っているようで、航空自衛隊のF2戦闘機が山口県沖でレーダーから消えたという情報を入手いたしました。

 最新の情報を大臣がおわかりになれば、教えていただければと思います。

岩屋国務大臣 本日午前九時十八分ごろ、山口県沖合の日本海洋上で、航空自衛隊築城基地所属の戦闘機F2B一機について、レーダー航跡が消失いたしました。

 現在、当該F2Bの搭乗員二名の捜索救助に万全を期しておるところでございます。また、部外への影響は現時点で確認されておりません。

 地元の皆様に大変御不安を与えてしまったことは、まことに申しわけなく思っております。今後、原因を究明した上で再発防止に努めてまいりますが、まずは捜索救助に全力を挙げていきたいというふうに思います。

本多委員 今お話がありましたとおりですと、しっかりと捜索と救助の対応をしていただきたいと思います。

 それでは、私、きょう、まず辺野古の新基地建設の問題を質問させていただきたいと思います。

 冒頭に、まず、私たち立憲民主党の立場を明確にしておきたいと思うんですけれども、私たちは、日本の防衛のためにも、日米安全保障条約、これは必要でありますし、大変、基地が地元にある皆さんには御不便、御苦労、迷惑をかけているんですけれども、米国の基地が日本国内に必要だというところでは政府の皆さんと変わりはないということを思っております。

 今、大変危険な普天間基地を移設するということに際して、これももちろん賛成でございます。移設を賛成というのではなくて、普天間基地をあそこにこのまま置いておくこと、これはとても許される状態ではない、このことも一致をしています。

 しかし、この代替施設として、今、辺野古、ここに海兵隊の新しい基地をつくる、これは本当に必要なのか。いろいろ私たちも検討して、ほかの道があるのではないか。

 いろいろ過去の経緯も皆さんあるのは十分承知をしています。しかし、国際情勢も変わっています。アメリカ国内の状況も変わっています。そして、何より、沖縄県の民意が大きく動いて、反対の知事を誕生させています。こうした中で、辺野古が本当に唯一の選択肢なのか、そうではないんじゃないか、私たちはこういう立場でこの基地の建設には反対をしていますし、ましてや工事を強引に進めることに反対をしています。この立場をまずは明確にお伝えしておきたいと思います。

 その上で、私は、今、国民の中には、私と同じような考えの方もいらっしゃると思いますけれども、そしてまた、政府と同じように、是が非でもあそこしかないんだという方もいらっしゃっていいと思うんですけれども、何となく、やはり中国もいろいろやっているし、あそこにアメリカの基地が、政府が要ると言うんだから、要るんじゃないかななんていう方もいらっしゃるのではないかと思っているんです。

 そんな方々にも、建設工事としての辺野古問題、これをぜひ理解していただいて、ちょっと普通の建設工事でもあり得ないトラブルが続出をしている、このままいくと大変なことになるんじゃないか。

 ですから、安全保障の観点、もちろん重要ですけれども、土木工事として成り立っているのかということをお話しさせていただきたいと思います。

 この写真の上は、今埋立てをしている図です。そして、下は建設予定の工事の図ですけれども、この埋立予定の地に、マヨネーズ並み、海底の土ですね、つまり、くいを打ち込めない、マヨネーズにくいは打ち込めないですよね、マヨネーズ並みの軟弱地盤がある。このことは、大臣、お認めになりますか。

岩屋国務大臣 お答えする前に、先ほど申し上げたF2Bの搭乗員二名ですが、詳細はまだはっきりしていないものの、生存している模様でございます。まず、そのことをお知らせしたいと思います。

 キャンプ・シュワブ、特に北側地域の海域につきましては、軟弱かどうかというのは、その地盤に実際に設置する具体の構造物等を踏まえて相対的に評価されるものでございまして、構造物を設置した場合に所要の安定性が確保できない地盤であれば、地盤改良などの対策をとることになるというふうに承知をしております。

 今般、地盤の検討に必要なボーリング調査の結果を踏まえて、キャンプ・シュワブ北側海域の地盤の一部は、普天間飛行場の代替施設を建設するに当たりまして地盤改良が必要であるということが確認をされました。そのような意味では、北側海域の地盤の一部は軟弱な地盤であると考えております。

本多委員 埋立工事をしている北側の地盤に、マヨネーズ並みの軟弱地盤があるということをお認めいただきました。

 この辺野古の基地をつくるのに、政府は二千四百億円と、今のところですね、これも、この軟弱地盤がなくてもずるずるふえるんじゃないかと私は疑っているんですが、そのことはさておいて、今、二千四百億円かかると政府は言っています。当然、費用は増大しますね。

岩屋国務大臣 費用は、具体的な設計が明らかになって積み上げてみないと、明確なことは申し上げられないというふうに思っております。

本多委員 ふえますねということを聞いているので、お答えをいただければと思います。

岩屋国務大臣 北側地区の軟弱地盤については、これまで実績のある工法で施工可能だというふうに確認をされておりますけれども、その地盤改良のためのコストはふえる可能性があると考えております。

本多委員 このコストが、二千四百億円のものが、軟弱地盤が見つかりました、二千五百億円になる、こういう話だったら、つくろうとする方々、それはやるんでしょう、百億円を追加して。

 ところが、沖縄県が試算をいたしましたら、二兆五千五百五十億、約十倍に膨れ上がる、こういう試算をしているんです。これへの反論はありますか。

岩屋国務大臣 沖縄県の試算に反論するという気持ちはないんですけれども、その試算を拝見してみますと、着手済みの護岸工事に係る当初見込み額を約八十億円とし、その上で、その護岸の建設のみならず、環境調査や警備など、護岸工事以外の経費も含む今までの代替施設建設事業に係る支出済み総額を、約九百三十億円でございますが、この両者を比較して、当初の見込みよりも十倍以上かかっていますよねということから、当初の埋立工事の見込み額約二千四百億円を機械的に十倍して出された試算なのかなというふうに私ども受けとめております。

 そこまではかからないというふうに考えております。

本多委員 大変いい答弁をありがとうございました。

 素人が試算をしたわけではありません。もちろん、沖縄県は今この工事に反対をしていますから、大きく数字をしたいという気持ちはあると思うんですけれども、立場の違う防衛大臣ですら、そこまではかからない、十倍はかからないと。

 国民の皆さんにぜひ御理解をいただきたいんですが、二千四百億円と言って始めたものが二兆になるかもしれない。その沖縄の言っている話も、今、実は、この軟弱地盤が出てきたからじゃない、既に今工事がおくれながら進んでいる中でも予定の費用よりかかっている、この観点から試算をしている。こんなに大きな予算がかかるということをぜひ御理解を、それでもここにどうしてもつくるのかということを理解していただきたいと思います。

 それから、大臣、答弁の中で、技術的に可能とおっしゃったんですけれども、これにも疑問が出ています。

 今、サンド・コンパクション・パイル工法というんですか、こういう工法で、七十メートルの深さまでの軟弱地盤はやる技術が、世界的にも日本でもあると聞いていますけれども、七十メートルより深いところにも軟弱地盤があるという説も今出ているんですが、本当に技術的にも可能なんでしょうか。

岩屋国務大臣 実際に、どういう規模の、もっと具体的に、どういう深さの地盤改良工事になるかというのは、今後、その設計というものがしっかり定まらないと明らかにできないことだと思いますが、海上土木工事における地盤改良工事の実績につきましては、今先生がおっしゃったサンド・コンパクション・パイル工法の実績として、日本企業が海外において、水面下の施工深度約七十メートルという実績がございます。また、国内では、水面下の施工深度約六十五メートルの実績があると承知をしております。

 いずれにいたしましても、今般、沖縄防衛局において地盤の検討に必要なボーリング調査を行った結果を踏まえて、米軍キャンプ・シュワブの北側海域における護岸等の構造物の安定性等について検討した結果、地盤改良工事は確かに必要であるものの、一般的で施工実績が豊富な工法による地盤改良工事を行うことによって、護岸や埋立て等の工事を所要の安定性を確保して行うことが可能であるというふうに確認されております。

本多委員 今、最後のところ、確認されているんですか。九十メートルだったらできないんじゃないんですか。

岩屋国務大臣 九十メートルというのは、現段階では仮定の数字ということになるわけですが、ボーリング調査結果を踏まえて、これまでの実績のある工法を使って施工することが可能だと、これは土木工学にかかわることでございますので、専門家の知見を踏まえて可能だと確認をさせていただいたということでございます。

本多委員 まあ、七十メートルだったらできるという話を僕はしているんだとそれは思いますよ、その方は。九十メートルでは、まだ今のところ工法も見つかっていない。こんな、非常にお金もかかる、工期も延びる、そして技術もまだ確立されていない、そういう工事が必要になっている状況だということは指摘をさせていただきたいと思います。

 もう一点、この軟弱地盤だけでも大変なんですが、活断層の疑いも出ているんですね。

 この活断層、政府の答弁書では、政府のやった平成二十五年シュワブ地質調査、図中に示された破線は、活断層と断定はされていないが、その疑いのある線構造と分類されているものである、こういう、政府が出した報告書に、今度、軟弱地盤にプラスして活断層の疑いまでこの当時出ているんですが、これは、今出ているいろいろな書物に活断層が載っていないから、ないという答弁をずっとされているんですけれども、それは、今まだはっきりしていないんだから本には載っていないんですよ。今出ている本には、今出版している活断層一覧マップには載っていないんですけれども、これはきちんと調べた方がいいんじゃないですか、こんな巨大な、二兆円かかる工事をするところに活断層があるのかないのか。アメリカ軍も迷惑だと思いますよ。

岩屋国務大臣 ただいま御指摘の点については、防災対策上考慮すべき地震にかかわる国内の知見を包括的に集約し、提供している地震調査研究推進本部が、活断層として整理、紹介している各種の調査結果やデータベースのいずれにも、辺野古沿岸域に活断層の存在を示す記載はございません。

 また、我が国の活断層に関する一万件以上の文献を網羅的に収集し、新しい文献についても随時追加、更新している最新のデータベースであります活断層データベースにも、辺野古沿岸域に活断層の存在を示す記載はございません。

 また、我が国における多数の地質学等の権威によって編集、解説されている活断層詳細デジタルマップにおいても、活断層の存在を示す記載はございません。

 私どもとしては、これら権威のある文献等において、辺野古沿岸域における活断層の存在を示す記載がないということを確認いたしております。

本多委員 そのことは、私、踏まえた上でお聞きをしております。

 今、確定をされていないんだから、そういう図鑑とかデータマップには載っていない。しかし、政府の中で疑いがあるというんだから、私は、調べた方がいいということをしっかりと指摘をしておきたいと思います。

 国民の皆さんにも、軟弱地盤だけじゃなくて活断層の疑いもあるんですよ、まだ。学者も言っているんですよ。それを調査をしない、非常に問題だと思います。この基地をつくった後に、弾薬が積んであって、活断層があったらどうするんですか。

 あと、これは賛否両論がある工事なんですよ。ましてや行政がやっている工事ですよ。手続ぐらいちゃんとやっていただきたい。

 投入をしている土砂の質が、沖縄県と約束した性質と違うんじゃないかということが今話題になっています。細かい数字の議論はいたしませんけれども、もうちょっと簡単に言うと、これは、赤土なんてこんなに入れちゃいけないんですよ。私は素人ですけれども、これは赤土に見えるんです。まあ、空母を空母じゃないと言う政権なのでよくわかりませんけれども、これは赤土じゃないとおっしゃっているわけです。

 沖縄県は単純な一つのことをお願いしているんです。いろいろ過去のやりとりはある、しかし、立入検査させてくれ、砂をとらせて調べさせてくれと。これを何で拒否するんですか。

岩屋国務大臣 今実施しておりますキャンプ・シュワブ南側の埋立工事におきましては、外周護岸により閉鎖的な水域をつくりまして、その中に埋立材を投入する工法によって事業を進めておりまして、土砂による濁りが外海に拡散しないようにいたしております。

 また、沖縄県の赤土等流出防止条例に基づきまして、県に提出した事業行為通知書に記載しております赤土等流出防止対策を実施して工事を進めているところでございまして、埋立予定地の外海の水の濁りのモニタリングにおいては、埋立材による水の濁りの影響は確認されておりません。

 そして、一月三十日に沖縄県の職員による現場への立入り及び現状確認が行われておりますが、そのときに特段の指摘は受けておりません。(本多委員「いつですか」と呼ぶ)一月三十日でございます。

 その上で更に立入りをということでございますので、どういう理由で行われるのかという具体的理由を沖縄県に照会しておりますが、まだお返事はいただいておりません。

本多委員 何を言っているんですか。私、きのう沖縄県の担当者と、皆さんは入る法的根拠がないと拒否しているんじゃないですか。認めてくださいよ、やましくないなら。皆さんは、この土の質が過去に沖縄県と約束をした土の質に合っている、赤土も入っていないと主張するんだったら、検査をさせればいいじゃないですか。何断っているんですか。

岩屋国務大臣 拒否をしているということではなくて、今申し上げたように、一月三十日に既に現状確認が行われていて、そこで指摘はなかったわけでございます。また、防衛局としても、埋立材について必要な性状確認を行って、関係書類を県に提出もしておりますので、その上で更に立入調査というのはどういう理由でしょうかという照会を県にさせていただいているということでございます。

本多委員 一月三十日の調査というのは、何を、その土の調査で入ったんですか、沖縄県の職員は。

岩屋国務大臣 赤土等防止条例に指摘するところの、濁りがないかどうかという確認にお越しになったと承知をしております。

本多委員 濁りがないかの確認は濁りがないかの確認であって、土の性質を検査させてほしいという要請は来ているはずです。そして、沖縄県はまだ諦めていません。ぜひやらせてほしいと言っています。ですから、今拒否しているのは防衛局です。

 とにかく、ここで言い争ってもわからないんですよ。やましくないんだったら、別に法的根拠はないかもしれませんけれども、しっかりと調査を沖縄県に僕はさせるべきだと。そして、土の質が過去の約束と間違っていないから赤土防止条例にも反していないというんだったら、堂々と、私は、検査をさせて、これだけ国民の関心もある工事です、目で見て疑義を感じている国民も多くいらっしゃいます、ぜひ、こういう、きちんと、当たり前の調査をしっかりと認めるべきだと思います。

 私たち、例えばサンゴの問題も、総理、あそこのサンゴは移しているということで、他の議員と、川内議員とも議論をしました。言い方がやはり、あそこのサンゴを全部移しているみたいにとられる言い方を、僕は総理はされたんじゃないかなと思うんですよね。

 だから、総理の、何か全体をばっと言い切るみたいな言い方で、多くの行政の方も、後でその総理の答弁と合わせる説明をしなきゃいけなかったり、国民の側も誤解をする方が出る。

 ですから、サンゴも、まだ移していない方が多いわけですよ。七万四千のうち一群体だけ移しただけなんですよ。あそこという言い方も、たくさんある工事の地域のうちのどこかで、まあ、その説明が違うわけです。

 ですから、総理、あのときの言い方はもうちょっと丁寧に説明すればよかったということだけは言っていただけないですか。

岩屋国務大臣 先に私の方から事実関係だけ。

 現在埋立てを進めているキャンプ・シュワブの南側、辺野古側とも言っておりますが、そこにおけるサンゴについては、護岸で締め切り周囲と隔離されるとその生息に影響が生じるために、一群体、既に移植をしたところでございます。

 総理は、辺野古側の工事については、もうサンゴは移植をしているということをおっしゃったので、御認識は間違っていないというふうに思っております。

 北側には、先生おっしゃったように七万四千群体ございまして、これは全部移植する予定でございまして、まず三万九千群体を沖縄県知事に対して移植の許可申請をしておりますが、不許可と今なっておりまして、残念ながら移植がまだ進んでおりません。

安倍内閣総理大臣 なぜサンゴを移植しなければいけないかということについては、いわばそういうやりとりですから、NHKの中でのやりとりについて、どういう考え方で私がお話をさせていただいたかということでございます。

 南側海域全体について、周囲の海域に影響を与えないように埋立海域全て護岸で締め切った、締め切ったら、当然それは、締め切った段階ではサンゴに大きな影響が出るから、サンゴを移植しなければいけないということであります。

 他方、北側はまだ締め切ってはいないわけでございますから、締め切っていない段階ではサンゴには影響は出ていない。しかし、締め切れば当然サンゴを移植しなければならないということになります。

 この土砂が入っている、要するに北側と……(本多委員「それはわかっているんです。言い方の話」と呼ぶ)

 言い方で、私の説明が常に十分だということを申し上げるつもりは全くありませんが、NHKの中のやりとり、短いやりとりの中でこう申し上げたことについて、私は間違ったことを決して申し上げているわけではありませんし、そのやりとりの中で、では北側はどうなんですかということになれば、北側は、当然それはサンゴを移植しますが、それは締め切る前にはちゃんとやらせていただきますよということをお話をさせていただくわけでございますが、これは、少ないやりとり、やりとりはそこで終わっているわけでございますので、私は別に誤解を何か与えるような言い方を、ということでございます。

 本多委員の指摘、本多委員の考え方としては、もう少し詳しく説明しろよ、こういうお気持ちなんだろうと思う。そのお気持ちはわからないわけでももちろんありませんが、しかし、NHKのその討論会の中、討論会というか私とキャスターだけだったんですが、その中でのやりとり、どんどん話題が移ってまいりますから、私は別に他意があってそう申し上げたわけではなくて、基本的に事実に基づいて申し上げているということでございます。

本多委員 言い方をもっと丁寧にしていただきたいということを私は指摘したいと思います。

 それで、とにかく、この工事ですけれども、安全保障上の議論はまたしっかりとしたいと思うんですが、工事としてもう成り立っていない。十倍かかるという試算も出ている、また、期間もどれだけ延びるのか。こんな状態になって、やり始めて、一度とめる、このぐらいのことはしっかりとすべきだということを私は強く申し上げておきたいと思います。

 さて、次に、自衛隊の募集についての問題に移りたいと思います。前回の続きになります。

 もう一回、これも基本的な立場を、何か部分だけとると誤解をされるんですが、私たち立憲民主党は、自衛隊は憲法違反などとは全く考えていません。合憲の存在で、日本の防衛のためにしっかりと頑張っていただきたいし、隊員の皆さんは本当に苦しい訓練を経て国民のために努力をしていただいているという立場でおります。

 ですから、憲法上問題がないので、それをあえて明記をして、変えると総理が言っていることに対して、それは必要ないんじゃないんですかという議論をしているということは、ぜひ、まず前提としてわかっていただきたいと思いますし、きょう、このパネルを持っている池田真紀議員も同じ北海道ですけれども、自衛隊の基地が千歳や恵庭にあって、たくさんの自衛官の方の地域です。

 私も、前回の国会の答弁で、こんな、憲法で明記して何とかと言う前に、募集も大変かもしれないけれども、トイレットペーパーも自費で買わせているという状況を指摘しました。こんなこと、情報が伝わったら、それは人は集まりませんよ。募集も大変になりますよ。予算をかけるところが間違っているんじゃないかという指摘をさせていただいています。

 そして、募集も、しっかりとこれは自治体の理解を得ながら進めていただくこと、いいと思っているんですよ。ただ、それを上から目線で、何割拒否している、こういう言い方に問題意識を持っているということは、ぜひ御理解をいただきたいと思うんですね。

 これは、ずっと水かけになるかもしれないんですけれども、ちょっと国民の皆さんにしっかりと理解をしていただきたいんです。

 総理は、六割の地方自治体、今、市町村は千七百四十一ありますけれども、総理が望む協力をしているのが六百三十二、三六・三%、そのうち十四はデータでくれているんですね。それから、逆に、すぐ捨ててもらうからありがたいということで、これはちょっと協力の度合いが低い方にしていますが、宛名シールでくれている自治体も四ある。そして、紙媒体が六百十四。

 総理が協力じゃないと、私は「九割以上協力では?」とこの下の方のせりふで、総理はこの「六割以上が拒否」と言っているわけですけれども、これは国民の皆さんに判断をしていただこうと思うんです。総理とやりとりをしても、これは平行線で、一度言ったことは変えないというすばらしい信念の総理ですので、変えていただこうとは思わないんですけれども。

 一つ、事実で、ちょっと総理、この緑のところを見てください。緑のところの「住民基本台帳の閲覧」だけでも、住民からいろいろなことを言われて大変なんですよ、市町村の職員さんは。何で私の高三の息子のところにダイレクトメールが来たんだと、市役所の人が苦情電話を受けて大変な思いを、それも協力だと思います。

 しかし、市町村が抽出というのがあるんですね。これは三三・七%、五百八十七。つまり、全部見て十八歳、十七歳を探すのは大変だから、十八歳、十七歳を市町村の職員が忙しい中抽出して、見てくださいと言っている。これは協力じゃないですか。

岩屋国務大臣 事実関係ですから、私の方から。

 そして、その前に、先ほどのF2Bの搭乗員二名は救助されました。御報告を申し上げます。

 また、事故の詳細については、わかり次第御報告を申し上げたいというふうに思います。

 それから、総理が求めている協力ではなくて、自衛隊法及び政令の規定に基づいて防衛大臣からお願いをしている情報の提供に、残念ながら応じていただいていない自治体が六割あるということは事実でございます。

 それから、今先生は、三三%は該当情報をピックアップして閲覧に供しているから、それも協力ではないかというふうにおっしゃいましたが、閲覧そのものは、これは一私人でも公益に反しない限りは認められるものでございます。そして、閲覧をさせていただいても、やはりそれも自衛隊員が一個一個書き写していかなければならないということでございますので、やはり、ぜひ情報を紙媒体あるいは電子媒体の形でいただきたいというふうに思っているところでございます。

本多委員 ちょっと、岩屋大臣と議論をしていないんですよ。岩屋大臣のような丁寧な言い方で自治体の方にお願いをしていただきたいというのが私のお願いなんです。自衛隊が憲法違反だからなんて思っていないんです。

 今、個人情報が厳しくなって、ちょっとそれから大臣が間違っていると思うのは、かなり昔は住民基本台帳というのは誰でも閲覧できたんです。ところが、二〇〇〇年代の初めから個人情報が厳しくなって、私人が見られる場合の条件は相当厳しくなっているんです、裁判に使うとか。ですから、そこは誤解がないように。これは、はっきり言って警察も見られません。海上保安庁も見られません。自衛隊だけなんです、こうやって網羅的に見られているのは。だから、そこは感謝をしてほしい。

 この住民基本台帳をつくるのに自治体も努力しているわけです。それを閲覧させるというのは重要な協力だし、まして、抽出をしているところが五百八十七ある。私は、でも、岩屋大臣の丁寧な言い方はいいと思っているんです。ただ、総理の拒否というのはないでしょうと。総理と議論したいんですよ。

 抽出している、これは。苦情の電話を受けているわけですよ、何でうちの息子にDMが来たんだと。これは協力しているんじゃないんですか。

野田委員長 岩屋防衛大臣、簡潔にお願いします。

岩屋国務大臣 先生の御認識、ちょっと違うんじゃないかなと思うんですが、住民基本台帳法、これは総務省の所管でございますけれども、他に法令に規定のあるときは、国又は地方公共団体は閲覧することができるという規定がございますので、閲覧をさせていただいていると申し上げておりますけれども、法令に基づいてもともと閲覧ができるという状況にあるということだけ申し上げておきたいと思います。

安倍内閣総理大臣 大臣から答弁させていただいたとおりでございまして、自衛隊法令、自衛隊法及び政令の規定に基づき、防衛大臣は、全ての都道府県知事及び市町村長に対し、直接自衛官募集に必要な資料の提出を求めているわけでありますが、全体の六割以上の自治体は、防衛大臣の求めに応じず、資料を提出していないというのが実態であることには変わりがないわけでございまして、このように、法令に基づき、自衛隊の事務とされている事項について、法令に基づく防衛大臣の求めに対して応じていただいていないことは紛れもない事実でありまして、残念であると申し上げているわけでございます。

 いわば、膨大な作業量がかかるのは事実であります。もちろん、これは自治体に協力をお願いしているという立場ではありますよ。でも、しかし、これは膨大な作業量の中では、もちろん、それはいろいろな苦情が来るということは事実だろうと思いますが、しかし、同時に、最初の資料を提出してください、その資料を提出したときの、これはもっと大きな、これはさまざまな団体等の抗議があったのは事実であります。

 だから、抽出というのは、結構それは、確かにおっしゃるように手間がかかるんですよね。抽出をするぐらいであれば、防衛大臣の求めに応じて資料を出していただいた方がいいのではないかと考える人もいるんだろうと思いますが、しかし、それは大変な、またそこで、現場においてさまざまな大きな抗議運動、活動があったという歴史があったのも事実でありますから、その中でそういう方法をとってきたということだろう、こう思います。この議論がある中において、もう一度、果たしてどうなんだろうということを調べている方々もいます。

 確かに、立憲民主党の立場を表明されました。非常に明快に表明されてよかったと思うんですね。私が議員になった当初は、いわば、当時の社会党、共産党というのは、これは……(本多委員「人の党のことを言うのはやめましょうよ」と呼ぶ)いやいや、いわば自衛隊が違憲だ、こう言っていたわけです。我々と連立を組んだときに合憲に変わったんです。またその後もとに戻って、またちょっとやや戻ったと言われている、そういう中において、そういう運動が展開されていたのは……(発言する者あり)いや、そういう運動が展開されていたのは事実でありますから、そういう中でこういう状況になっているというのは、私は……

野田委員長 総理、簡潔な答弁をお願いいたします。

安倍内閣総理大臣 はい。

 そういうのは事実なんだろうな、このように思っております。

本多委員 総理がそういうふうに、何か、何十年前のどこの党の話か僕はよくわかりませんが、そういう誤解をされるので、毎回毎回質問のたびに私たちの立場を言わなきゃいけない。しっかりとそのことは理解をしていただきたいと思いますけれども、この抽出のところは協力をしているということも、総理、お認めいただきましたので、今後は六割以上が拒否とかという言い方をしない方がいいと思うんですね。

 私は、昔の防衛大臣、今の岩屋大臣、まあ、岩屋大臣もちょっと総理のもとで苦労されているんだと思いますけれども、石破防衛庁長官、こうおっしゃっているんですね。

 情報を提供するかしないか、あくまでも私たちは依頼をしているわけでございますし、私どもが依頼をしても、応える義務というのは必ずしもございません。私どもは依頼をしておるわけでございますし、そのことについては応えられないということであれば、それはそれでいたし方ないということでございます。

 これは二〇〇三年の石破防衛庁長官です。

 それは古い話じゃないかとおっしゃられたら、二〇一五年、つい最近でございます、中谷防衛大臣。法令等を丁寧に説明した上で、地方公共団体が実施し得る可能な範囲での協力をお願いいたしておりますと。

 こういう立派な答弁を歴代の防衛庁長官や防衛大臣はしていますので、ぜひ、この解釈を勝手にねじ曲げないでいただきたい。

 それから、総理、要請している、要請していると言いますけれども、要請の仕方が間違っていると思いますよ。いいですか。紙で出してくださいという話なんですけれども、私、どういう紙で要請しているのかと要請文を見ました。いろいろなこととごっちゃに入っているんですよ。そんなに大事で憲法まで変えるとかなんとかと騒ぐんだったら、きちんと分けてお願いした方がいいと思いますよ。

 いろいろなものがあるんですよ。町内会、青年団、婦人会、消防団、理髪組合等市町村内の各種団体に対する募集広報の協力依頼。随分、理髪組合にまで依頼してくれとか、こんなの、応じていない自治体がほとんどだと思いますよ、忙しいので。応じているところもあるのかもしれませんけれども。

 こういうことが十七項目入っているんですよ、イベントに呼んでくれとか音楽会に呼んでくれとか。その中の括弧十一に入っているんですよ。こんな要請の仕方で、自治体の中も、そんな頼まれた覚えがないという新聞のコメントもたくさん出ていました。

 そもそも、こういう、きちんと法的な位置づけも曖昧なまま、そして、これまではお願いベースでやっていたことを、突然上から目線で、拒否してけしからぬ、こういう空気を変えるために憲法を改正する、こんなむちゃくちゃな理論で地方自治をじゅうりんすることはやめていただきたいと思うんですけれども、いかがですか。

野田委員長 岩屋防衛大臣。

安倍内閣総理大臣 私の答弁の後、岩屋大臣から答弁をさせていただきます。

 先ほど、抽出について、いわゆる私どもが求めている協力では、これはございません。ただ、抽出というのは、作業量としてはあるでしょうから、十八歳から二十二までですか、そういう作業をするのであれば、そもそも、いわばこれは書面あるいはデジタルで出していただいた方が早いのではないのかな。

 でも、なぜそうなっていないかということに原因があるということは、委員もそのところは理解をしていただける。そのことで過去の歴史をちょっと話したわけであって、それが御党と同じだとは、毎回、本多議員、明快に述べておられますから、それを私は混同はしておりませんけれども、ですから、そうやって混同されないように明確に述べられたことはよかったのではないか、こう思っているわけであります。

 かつてはそういう事実があって、役所というのは前例をずっと踏襲しているところが多いわけでありますから、その中でそういう対応が続いてきているのではないか。私のあれとしては、そうした空気を変えていく上においても、そうしたことが大切ではないか。決して私どもも上から目線でやっているということではなくて、私は私の問題意識を示させていただいた。

 今の対応ですね。ちょっと岩屋大臣からの答弁、私によって迷惑をしていると言われている岩屋大臣からも答弁させていただきたいと思います。

野田委員長 私の指名を聞いてから、総理も大臣も答弁に立っていただければと思います。

 それでは、岩屋防衛大臣。

岩屋国務大臣 まず、安倍総理から、私、迷惑は受けておりませんので、はっきり申し上げておきたいと思います。

 それから、今、先生は法令上の根拠が曖昧だというようなことをおっしゃいましたが、自衛隊法並びに政令におきまして、実は根拠は明確なんですね。ただ、確かに、自治体側の解釈と私どもの認識がずれているケースもあったんだろうと思います。そこはやはり丁寧な説明とお願いが必要だと思っておりまして、見直すべきところは見直して、更に自治体との良好な関係を築いていきたいというふうに思っております。

 それから、先ほど石破先生、また中谷先生の当時の答弁を紹介されましたけれども、当時、やはり個人情報保護法との関係でこの問題が議論になったことがございまして、かつては住民基本台帳のさまざまなデータも見ることができたわけですけれども、個人情報保護法の誕生によって、防衛省・自衛隊が取得する情報を四情報、お名前、住所、生年月日、性別だけに限定する旨の指示を文書をもって徹底するということにさせていただいたところでございます。

 そういう状況の中にあって、石破元防衛大臣あるいは中谷元防衛大臣も、ああいうお人柄もあって、丁寧な答弁をされたのではないかというふうに思っております。

本多委員 法律の大事な問題なんです。個人情報保護というのはすごく今大事なことなんです、これから山尾議員も議論すると思いますけれども。ですから、石破防衛庁長官と中谷防衛大臣の方針をしっかりと受け継いで頑張っていただきたいと思います。

 それで、もう一つ。総理が憲法改正の理由として何度もいろいろな講演でもおっしゃっている、お父さんは違憲なのと言って涙を流した自衛官の子供さんがいるという逸話、これは実話かという話を前回の委員会で質問させていただきましたら、なぜか総理が激高しまして私のことを、私をうそつきと言うのかと、私が総理のことをうそつきと言ったかのような画面がテレビでも流れていますが、私は単にどこで聞いたんですかと言ったら、総理はその場ではお答えをいただけませんでした。

 私、いずれにしても、この子が実在しようがしまいが、こんな話が憲法改正の理由になること自体がとんでもなくおかしいと。いじめとか、もし何かあったら、ちゃんとその子に説明をしたり、その学校であったことを解決していくことが先であって、この子がいたから憲法改正が必要だなどという情緒論みたいな話は問題だと思うんですけれども、一応、実話なのかという話を聞いて、御準備をいただいているようなのでお答えいただけますか。

安倍内閣総理大臣 前回、本多委員が私がうそをついているということを前提に質問をいわば組み立てられておりましたので、それはおかしいでしょうということを……(本多委員「私の内心ですから」と呼ぶ)済みません、内心は私わかりませんけれども。(発言する者あり)

野田委員長 お静かにしてください。静かにしてください。

安倍内閣総理大臣 本多先生、済みません。内心ということはもちろんわかりませんけれども、私が推測する上においては、ほとんどそれを前提にしておられるのかな、私はこう考えたわけでありまして、その中でそういうふうに申し上げたわけでございます。

 そこで、この御指摘のエピソードについては、防衛省担当の総理秘書官を通じて、航空自衛隊の幹部自衛官から伺った話であります。航空自衛隊の幹部自衛官ということをここで述べていいかということは、本人に秘書官を通じて確認をしております。

 これ以上詳しいことは、自分と自分の息子も、あるいはそのときの学校の先生にもかかわることなのでこれ以上は述べないでもらいたいと言われておりますので、航空自衛隊の幹部自衛官から伺ったということまででとどめさせていただきたいと思うわけでございますが、秘書官自身が自衛官本人から直接聞いたものである、このように考えております。

 ただ、私が申し上げたかったことは、多くの、ほとんどの教科書にそういう記述があるのは、その記述というのは、違憲論があるということが記述があるのは事実でありますから、そういう記述をなくすということはいわば違憲論争に終止符を打つという考え方で述べているわけでございまして、これは防衛の根本にかかわることではないかと私は考えているところでございます。

本多委員 きょう、その総理秘書官、私、お呼びしているんですけれども、来ていただいていますか。いつごろ、御自身の話なのか、自分の友人の話なのか、それぐらいはお話しいただきたいと思ってお呼びをしているんですけれども。

安倍内閣総理大臣 秘書官はここにおりますが、秘書官を参考人として呼ばれましても、これは、秘書官というのは膨大な職務もありますし、いわば、私の秘書官ですから私が当然答えるのが当たり前であって、私がすぐ聞けばいいだけの話でございまして、今言ったことが全てでございまして、では、これが違うと言うのであれば、その違うという証拠を出していただかなければ、一々秘書官をこのことで、それはどうかということだと思いますので、先ほど言ったことが全てでございまして、秘書官自身が確認をしていることでございます。

 今申し上げましたのも、航空自衛隊の幹部自衛官であるということは申し上げましたが、これは、ここまでは述べていいかということ、だんだん絞られてきますから、ここまで述べただけでも。それで、秘書官からはもう一度確認をしている、どこまで述べていいかということも確認しているということでございます。

本多委員 今、総理秘書官は呼ばないと言っていますけれども、そんな話、通らないんですよ、この政権においては。

 加計学園問題でも、柳瀬さん、総理に言わずにですよ、総理の親友の業者と三回も首相官邸で会って加計学園問題のことをやっていて、それを、記憶にない、記憶にないと言って、やっと私たちが呼んで出てきて、三回も首相官邸で柳瀬秘書官は会っていたことが明らかになったじゃないですか。

 今回だって、今、我々の追及で、これはまだまだ事実かどうかわかりませんよ、中江秘書官、統計問題で厚生省にプレッシャーをかけたんじゃないかと。私はそういう、総理秘書官が重要な役目を果たしちゃっているんですよ、連絡調整を果たすだけじゃなくて。総理の命を受けてというはずなのに、総理と勝手にいろいろやっている。

 ですから、私は、この問題だって、総理に言われてどういう話になっているのかよくわかりませんけれども、呼ぶ必要があるということで指摘をいたしました。

 いずれにしても、こういう子供がいようがいまいが、その問題をしっかり解決することであって、憲法改正につながる理由では全くないということを指摘して、質問を終わりたいと思います。

 以上です。

野田委員長 この際、山尾志桜里さんから関連質疑の申出があります。本多さんの持ち時間の範囲内でこれを許します。山尾志桜里さん。

山尾委員 立憲民主党の山尾志桜里です。

 きょう、私は、今の政府は、行政の情報は隠すことが多いように思いますけれども、国民の個人情報を吸い上げることには随分と貪欲ですね、貪欲に過ぎるんじゃありませんかというお話をしたいと思います。

 それは二つあって、一つは、自衛官募集のためといって自治体から情報を吸い上げること。もう一つは、捜査のためといって民間業者から情報を吸い上げること。

 まず、後者の方からいきたいと思います。ちょっと順番を変えます。

 まず取り上げるのが、民間業者のTSUTAYAさんです。ユーザー人口六千四百万人、国民の二人に一人が持っています。Tカードをお持ちですかというふうに言われると、何げなく出してポイントをためている方も多いと思います。

 でも、ここで改めて考えてみると、このTカードには、レンタル履歴だけでなくて、連携しているお店、ネット上の購買履歴、個人の行動とか趣味とか嗜好とか、そういう情報がかなり詰まっているカードですよね。

 そういう中で、捜査機関からの要請によって令状なしの情報提供に応じていたTSUTAYAが、ことしの二月五日、このように発表いたしました。「基本方針が確定するまでの間は、捜査機関からの要請に対しては、捜査令状に基づく場合にのみ対応することといたします。」ということです。

 もちろん、誘拐犯とか自殺が考えられる場合の緊急事態とかには別途適切な対応をとられるんだと思いますけれども、これは当面、原則、令状を必要とする、まさに原則に戻るという判断、私は、民間企業として一つの英断だと思います。

 というのも、少し説明した後、国家公安委員長に伺いますので、ちょっと聞いていていただければと思いますが、毎日新聞の記事によれば、じゃ、Tカード以外のポイントカードあるいは交通系ICはどうなんだろうと、当然、国民の皆さんは気になると思います。

 この表によれば、Tカード以外の大手ポイントカード会社あるいは大手交通系IC、これは軒並み、令状なし、照会書があった場合、協力する、提供する。まあ照会書も、法令に従って、書面での正式な要請と言えるんでしょうから、上のTカード、これはもう変わりましたけれども、それの下のところは、おおよそ、令状なしで照会でも提供します、こういうことになっているようであります。

 ただし、Tカードが方針を転換したことで、少なくとも現時点では、例えば、どのポイントカード会社を選ぼうという顧客目線、国民目線、私たちが選択するユーザーとして、だったら、きちっと原則を守ってくれる会社がいいなとか、あるいは、それでも、協力、提供するところでもいいなとか、これは選べる状態ができたわけですね。

 公安委員長に伺います。事実関係です。

 TSUTAYAさん、CCCに、令状なしで情報提供に応じてくださいと要請をかけた事実はありますか、ありませんか。

山本国務大臣 御質問でございますけれども、個別案件についてお答えすることは控えたいというふうに思っております。

山尾委員 私どもの部会でも、あるいはきのうのレクチャーでも、しっかり、これは要請はやりましたというお答えをいただいていますけれども、もう一度答弁をお願いします。

山本国務大臣 今、山尾委員お話しのとおりでございまして、CCCについては、要請をかけた事実はございます。

山尾委員 最初の答弁は何だったんでしょうかということですけれども、次に行きます。

 私、答えられないことを無理に答えさせようとしていませんので、ちゃんとやりとりした上で、効率よく時間を使おうと思って問いを組み立てていますので、よろしくお願いします。

 では、TSUTAYA以外にも同様の要請をかけたことはありますか、あるとしたら何社ありますか。

山本国務大臣 お答えいたします。

 警察庁において、通信の秘密に該当する事項などの一部の例外を除いて、捜査関係事項照会に対して必要な回答が得られるように、民間事業者二社に対して協力を要請した事実がございます。

山尾委員 TSUTAYA以外に二社という理解でよろしいのかと思います。もし違ったら、後で言ってください。多分、私はそう聞いています、TSUTAYA以外で二社要請をしたことがありますと。

 では、その要請したTSUTAYA以外の他の二社は、この要請を受け入れましたか、それとも、それは受け入れないという方針ですか。

山本国務大臣 過去に警察庁が要請を行った二社については、現時点におきましては、捜査関係事項照会への対応を変更していないというふうに承知をしています。したがって、今おっしゃったように、要請に応じていただいておりません。

山尾委員 そうなんですね。だから、TSUTAYAさんは、警察の要請で一旦令状なし提供を受け入れたけれども、今は令状必要というふうに戻した。要請を受けたほかの二社も、これは要請をそのままうのみにせずに、原則対応を続けている。

 警察というのは、大手のこういう業者さんに、要するに、令状なしで対応していないよ、原則どおりやっているよというところに、令状なしでやってくれよと要請をかけているわけで、でも、要請をかけたこれまでの三社は、現時点ではその要請に応じていない、みずからの判断で令状主義の原則にのっとっている、そういうことが明らかになりました。

 そこで、質問します。引き続き公安委員長なんですけれども。

 このように、個人情報に対する方針の公開とか透明性というのは、やはり時代の要請だと思うんですね。こういった今の三社のように、みずからの判断で、私どもは令状を必要としますというような方針を宣言したり、プライバシーポリシーで明確化するというところはこれから出てくると思うんですよ。そういう業者に対して、重ねて警察から、いや、令状なしで提供してくれというような執拗な要請をかけるのは、少なくともこれからは控えていただきたいと思うんですけれども、いかがですか。

山本国務大臣 警察におきましては、通信の秘密に該当する事項などの一部の例外を除いて、捜査関係事項照会により、犯罪捜査に必要な事項の回答を民間業者に対して求めているところではございます。

 捜査関係事項照会は、刑事訴訟法の規定に基づく非常に有効な捜査手法であり、迅速、適正に運用することにより、引き続き、犯人の早期検挙、国民の安心、安全、この確保に努めてまいりたいというふうに思っておるところであります。

 控えるべきではないかという今のお話でございますけれども、具体的な事件の態様によりましては、直ちに捜査関係事項照会により捜査に必要な事項、これを入手をして被疑者を特定するなど、捜査を迅速に進めなければ、被害が拡大したりあるいはまた被疑者が逃走してしまうこともあり得るところであり、令状の発付を待っていては捜査に支障が生じてしまうことも想定をされるところでございます。

 警察といたしましては、法令の定めに従い、犯罪捜査に必要な範囲で捜査関係事項照会による情報収集を行うため、民間業者の理解を得られるように要請することはあり得ると思います。

 なお、最終的に、民間事業者の理解が得られなければ……(発言する者あり)

野田委員長 簡潔に。

山本国務大臣 令状を得て行うものというふうに認識をいたしております。

山尾委員 九割方、質問と関係ない長ぜりふをやって、あとの一割でちょろっと関連するようなことを言うのはやめてください。時間がもったいない。でも、その最後のちょろっとの一割も違うんですよ。

 私が言っているのは、もうこれから会社それぞれが、みずからのプライバシーポリシーを顧客にきちっと公開して、私たちはこういう哲学でやっていきますということをやはり明確にしていく時期なんです。それは海外を見てもそうです。ビッグデータできちっと捜査に使いたいというなら、そのルールをきちっとつくらなきゃいけないし、そのルールの範囲の中のそれぞれの民間業者のポリシーは尊重するべきだということを言っているんです。

 だから、そうやって明快に自分のポリシーをはっきりさせている業者に対して、警察がやってほしいことと違うからといって、いや、それでも令状なしでやってくださいよと要請するような行為は控えてくださいと言っているんです。私、照会を一般的に控えろなんて一言も言っていないです。

 もう一度どうぞ。

山本国務大臣 今ほどお答えいたしましたとおり、基本的には捜査関係事項照会、これを今も、現在行っているところでございますけれども、委員御指摘のように、それにお応えしていただけない場合には令状ということに切りかえるような形をとっておるところでございます。

山尾委員 なお答えないんですね。当然のことを今おっしゃっただけですね。任意で応じていただけないときは令状でやりますと。だからそんな、任意でやってくれと。要請を控えてくれと言っているんだけれども、この答えはしないということなんですよね。

 必ずしも令状を必要とはしないけれども、情報公開することによってユーザーに対する説明や社会に対する責任を果たそうとしている会社もあるんです。

 例えば、これはLINEです。半年ごとに公開しています。例えば、二〇一八年六月、千五百七十六件の要請がありました。なっていますね。約七六%、千百九十件には開示しました。これは棒グラフで出ていますね。要請のうち八六%は日本の捜査機関からでした。こういうふうにわかりやすく開示していますね。

 では、このうち、日本の捜査機関からの要請のもので、この半年間で、令状なしでLINEが開示したのは何件かということを皆さんにお知らせします。照会だけで情報開示したのはゼロ件です。要請は千三百四十七あったわけです。そのうち、きちんと令状のある千二十一件には開示をした。でも、令状なしで照会書だけの要請には、少なくともこの半年は開示はゼロです。でも緊急避難は一件。犯罪予告とか自傷行為、みずからを傷つけるとか、そういう予告には令状なしでも対応しました。

 公安委員長、こういう対応も一つの企業の対応として私はバランスのとれた対応だと思うんですけれども、いかがですか。何か、捜査上、具体的に困ることはありますか。

山本国務大臣 これは今ほどお示しいただいた資料でございますけれども、企業でこのような判断をされているということでございまして、それに対して特段私の方からコメントする立場にはございません。

山尾委員 尊重してほしいということなんですね。

 これは、私の手元の資料でお伝えすると、LINEは、二〇一七年の七月から十二月、この前の半年ですね、これも令状なし開示はゼロです。その更に半年前、二〇一七年の一月から六月は令状なし開示が一件です。かなり令状なしの開示に抑制的に見えます。

 こういった情報公開が当たり前になれば、それぞれの会社の方針がユーザーの評価対象となるし、捜査の適正化にも間接的に役立っていく。私は、そういう非常に適切な、いい取組の一つだというふうに思います。

 そこで、次に、総務大臣に伺います。

 LINEのような電気通信事業者が捜査機関に情報提供する際に、法の範囲の中でいろいろなポリシーがあり得るんだけれども、でも、これだけは令状なしで出すのはよくないよというような、内容に着目したルールはどうなっているのかということを総務大臣に伺います。

 今の点をガイドラインで明示しているかと思いますが、どういうふうに記載されていますか。

石田国務大臣 お答えさせていただきます。

 総務省では、通信の秘密に係る情報や個人情報の適正な取扱いに関しまして電気通信事業者が遵守すべき基本的事項を定めた、電気通信事業における個人情報保護に関するガイドラインを公表いたしております。

 御指摘のように、捜査関係事項照会書による照会で提供することが原則として適当ではないとされている事項としては、通信の秘密に係る事項が該当いたします。具体的には、ガイドラインにおいて、通信内容のほか、通信当事者の住所、氏名、発受信場所、受発信場所ですね、等の通信の構成要素を含むものとしております。

 また、これらの通信の秘密に係る事項につきましては、捜査関係事項照会書ではなく、裁判官が発する令状による場合に限り捜査機関に開示することができるものと定めております。その理由は、通信の秘密に係る情報が、憲法の規定を受けている電気通信事業法において保護されているものであり、より厳格な保護が求められることから、裁判所の審査を経た場合に限り開示が許されるとするのが相当と考えられるためであります。

山尾委員 今おっしゃっていただいたように、やはり通信の秘密というのは憲法上も大変重要な保護対象であるから、この通信の内容に関する事項については令状なくては提供しないでくださいよ、こういうガイドラインを総務大臣が示しているということです。

 だから、いろいろな業者の対応があるんだけれども、少なくとも、通信の秘密は令状なしには出されていないというふうに私たちは思ってきたわけです。

 しかしということで、東京新聞一月十四日の掲載です。捜査機関が令状なしにスマホゲーム会社から位置情報を取得しているのではないかという記事です。

 総務大臣に伺います。

 先ほど、通信の秘密の内容として発受信場所と言われましたけれども、これは位置情報だと思うんですけれども、位置情報は通信の秘密に一般的に含まれますか。

石田国務大臣 お答えさせていただきます。

 全ての位置情報が通信の秘密に属する事項に該当するわけではございませんが、通信の秘密に該当する位置情報としては、電気通信事業者が保有しており、個々の通信に関係するものが該当するということであります。

 具体的に申し上げますと、個々の利用者が携帯電話を用いて通話する際に把握される利用者の基地局に係る位置情報、個々のユーザーがWiFiのアクセスポイントから外部と通信を行う際に把握される当該アクセスポイントに係る位置情報などが含まれます。

 なお、ガイドラインでは、位置情報が個々の通信に関係せず、通信の秘密に該当しない場合であっても、高いプライバシー性に鑑み、通信の秘密に準ずる取扱いを求めております。

山尾委員 スマホゲームというとポケモンGOとかを思い浮かべるんですけれども、みんな、新しい卵とかポケモンとかをゲットしたくて、歩数を稼ぐために、スマホを持って歩き回ったりするわけですよね。あるいは、もちろん、ふだんの生活でも、歩数とか移動がカウントされるように位置情報をオンにしていたりだとか、正直、細かい文字は読まずに、知らないうちにオンにしたままということも、当然普通にある、そういう状況にあるわけです。

 そこで、総務大臣に伺います。

 そういうゲームユーザーの位置情報が令状なしに警察に提供されてしまうことが実際に行われているんだとしたら、これは問題があるんじゃないですかということです。

 もう端的に、いい議論をしたいので言いますけれども、スマホゲームの運営会社というのは電気通信事業者には当たるんですか、当たらないんですか。

石田国務大臣 御指摘の点は、通信事業者には当たりません。

山尾委員 総務省の認識はそうなんですね。

 電気通信事業者には総務省の認識としては当たらないということを前提に考えていくと、仮に当たらないとしても、そもそも、さっき言ったように、通信の秘密というのは、やはり憲法上、その秘密を持っている主体の権利としてとても重要な秘密だから、これは令状なしでは提供するのをやめようねと言っているわけであって、提供者に注目しているルールではないと思うんですね。

 つまり、誰が提供するのかということに着目しているのではなくて、その提供されてしまう情報の種類に着目した規定だと思うんです。その情報の種類が通信の秘密に当たる場合には、これはおいそれとは任意で出しちゃいけないよ、こういう趣旨だと思うんですよね。

 だとすると、総務省として、通信事業者の定義や範囲を広げる検討をするだとか、あるいは、先ほど準ずるとおっしゃっていましたけれども、今は直接該当しないという立場に立ったとしても、こういう、事実上、位置情報を網羅的に結局保有しているようなスマホゲーム会社さんもこれをやはり守ってくださいというようなことを伝えるだとか、やはり何か必要があると私は思うんですけれども、その点、いかがですか。

石田国務大臣 個別の事案についてお答えする立場にはございませんけれども、あくまでも電気通信事業法の範囲ということでございますので、御理解いただきたいと思います。

山尾委員 全く理解できません。きちっとそういう個人情報を適切に保護するためにガイドラインを出している所管の大臣が、まさに利益状況が同じことが今生まれているのにそれを放置しておくという立場に立たれるのは、私は全く納得がいきません。

 国家公安委員長に伺います。

 事実関係です。スマホゲーム運営会社に対して、令状なしでユーザーの位置情報の提供を受けたことはありますか。

山本国務大臣 捜査関係事項照会により提供を受けている情報の内容あるいは範囲などの具体的な運用実態については、犯罪を企図している者や既に犯した者に具体的な捜査手法を明らかにすることになることから、公表すべきではないというふうに思っております。

山尾委員 委員長に伺います。

 では、そういう事実があったかどうかをあなたは知っていますか。

山本国務大臣 お答えする立場にはございません。

山尾委員 立場は聞いていません。知っているか、知っていないか、それを答える立場にあるのは委員長一人なので。ほかに答える人がいないので。どうぞ。

山本国務大臣 今ほど申し上げましたけれども、公表すべきではないというふうに認識をしているところでございまして、御理解いただければと思います。(発言する者あり)

野田委員長 山本委員長、再答弁できますか。

 速記をとめてください。

    〔速記中止〕

野田委員長 起こしてください。

 山本委員長。

山本国務大臣 スマホゲーム運営会社に対してという先ほどのお話でございますけれども、これは、照会を受けたかどうかについての報告は受けておりますけれども、この場でお話をすることはできないということを先ほどから申し上げているところでございます。

山尾委員 そういう事実があるかないかについて報告は受けたけれども、その結果については言わない、こういう趣旨ですか。うなずいていますね。そういう趣旨なんですね。

 法務大臣、法務大臣はいかがですか。今のことについて、あったかどうか、それを御存じですか。知っていたら教えてください。

山下国務大臣 お答えいたします。

 具体的な特定の状況下においていかなる捜査手法がとられるかについては、法務大臣としてお答えをすることは差し控えます。

 いずれにせよ、捜査当局におきましては、刑事訴訟法の規定に従って、これはやはり、犯罪防止のためあるいは摘発のため、与えられた権限の中で、個別の事件における捜査上の必要性を踏まえ、適正に証拠収集を行っているものと考えております。

山尾委員 法務大臣も言わないということでありました。

 この問題は、もう新聞報道されているんですね。それこそ、この道五十年で、ずっと一人で、単独ですりをやっていますみたいな高齢の単独の犯罪者ならともかく、犯罪をしている人たちは知っていますよ、この報道は。もうあるものと思って対策を講じていますよ。

 私は何も、その人たちの手助けになるように、ではそれをどうやって入手しているんですかとか、何か捜査の手口を具体的に聞いているんじゃないんです。実際に、個人情報との関係で、ガイドラインとの関係で、憲法十三条との関係で問題が摘示されている捜査手法だから、そういうことはやっているんですか、やっていないんですかとかなり抽象化して聞いているのに、それをまるで、何か具体的な手口を聞いて、それじゃ犯罪者を利するみたいなことを言われるのはやはり不本意だし、すごく国民にとって意味のない答弁になってしまうと思うんですね。そんな話、していないんですよ。

 では、聞き方を変えます。国家公安委員長と法務大臣、それぞれ。

 スマホゲーム会社に対して令状なしでユーザーの位置情報の提供を受けることは、合法と考えますか、違法と考えますか。

山下国務大臣 繰り返しになりますが、これも具体的な特定の状況下においていかなる捜査手法がとられているかということでございますので、法務大臣としてお答えすることは差し控えます。

 その上で、一般論として申し上げれば、刑事訴訟法第百九十七条第二項に基づく捜査関係事項照会に対して相手方が任意に応じる場合に、その回答を得ることは適法な捜査活動として許容されるものと考えております。

山本国務大臣 お尋ねでございますけれども、捜査手続に関する刑事訴訟法の解釈についてのものであるならば、この場において国家公安委員会委員長としてお答えする立場にはないと認識をいたしております。

 いずれにせよ、警察においては適正に捜査が行われているものと承知をいたしております。

山尾委員 結局、捜査としてやっている可能性を否定していないのに、それが合法かどうかも答弁しないというのは、私はやはり、法務大臣とか国家公安委員長の立場、あるいはこういう予算委員会での答弁の姿勢として納得が得られないし、私も納得、理解ができないんですね。

 この点は、もう一点、もう二つあるんですけれども、両方言います、時間の関係で。

 一つは、最高裁判決との関係でも問題があるんですよ。

 これは、車両にGPSをつけた捜査は、令状がなくては違法だし、今ある令状の類型にも当てはまりがたいので、立法府として立法措置をちゃんとしてくれ、やるならば、こういう判決なんですね。それは、逐一、個人の行動を継続的、網羅的に把握をするGPS捜査だからという理由なんです。

 今のこのスマホゲームでの位置情報も、GPSを使って、逐一、そのスマホを持っている人の行動を継続的、網羅的に把握することを必然的に伴うんですね。だとすると、任意でも許されるのかどうか。任意では許されないんじゃないですか、しかも、今ある令状の中にもそれを認める令状はないんじゃないですか、立法府、ちゃんと立法してくださいよと言っているわけです。

 もう一つだけ。そのことはビジネスにも大きな影響があるということです。

 GDPRの十分性認定をとるためにEUに対して日本政府がした説明を言及している記事です。

野田委員長 山尾さん、質問時間が終了しています。

山尾委員 はい、時間ですね。

 外部からの監督が十分に機能している、プライバシー意識の高まりで企業は余り照会に応じない、こういうふうに日本政府がEUに説明をしているけれども、政府関係者の弁として、その場しのぎの言いわけだったと批判されても仕方がない、十分性認定が更新される二年後が不安だ、こういう記事ですし、私、記事をただ紹介するだけじゃなくて、まあ、そういう面はあるよねということは、きょう、この場の質疑でも一定程度伝わったのではないかと思います。

 時間ですのでここでやめますけれども、この点を曖昧にして法の支配を揺るがしたままいくと、GDPRの関係でも十分認定が取り消される可能性がありますし、本当にこの国は法の支配のきいている、プライバシーが保護されている社会なんですか……

野田委員長 簡潔にお願いします。

山尾委員 というふうになりますので、しっかりと対応していただきたいというふうに思います。

 以上です。

野田委員長 午後一時から委員会を再開することとし、この際、休憩いたします。

    正午休憩

     ――――◇―――――

    午後一時開議

野田委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。

 質疑を続行いたします。

 この際、長妻昭さんから関連質疑の申出があります。本多さんの持ち時間の範囲内でこれを許します。長妻昭さん。

長妻委員 立憲民主党の長妻昭でございます。よろしくお願いをいたします。

 毎勤統計の問題で、統計の正確性というのは本当に国家の基本ですので、これはまだ解明が十分なされていないので、総理も、解明の陣頭指揮をとる、こういう姿勢をとっていただきたい。非常に不十分だと思っています。

 何か変なメールが出てまいりました。厚労省が阿部座長に送ったメールということで、事前に、メール、実態を明らかにしてほしいと厚労省に申し上げておりますが、根本大臣、どんなメールでございますか。

根本国務大臣 厚生労働省から阿部座長に送ったメール、どういうメールという話ですか。厚生労働省から阿部座長に送ったメールだと思います、御質問のメールは。(安倍内閣総理大臣「一旦帰って」と呼ぶ)

 一旦戻ります。

長妻委員 総理、一旦戻れという指示、おかしいですよ。

 メールは何ですかと聞いて、メールありましたといって答えて、それで戻れって、何ですか、総理。総理、何か指揮権発動して、質問するな指揮権ですか、答弁するな指揮権ですか。

 だから、メールの中身を聞いているんですよ。どういう中身ですか、事実ですか。

野田委員長 長妻さん、ちょっとお待ちください。

 総理、以後慎んでください。

 根本厚生労働大臣。

根本国務大臣 中身のメールは確認しておりません。確認できておりません。

長妻委員 メールの存在は確認できたけれども、中身は確認できていないというのは、ちょっと容認できないので、一回とめてください。これは論理矛盾です。(発言する者あり)

野田委員長 では、速記をとめてください。

    〔速記中止〕

野田委員長 起こしてください。

 根本厚生労働大臣。

根本国務大臣 現在、厚生労働省の担当に確認しているところであります。(発言する者あり)

野田委員長 速記をとめてください。

    〔速記中止〕

野田委員長 速記を起こしてください。

 根本厚生労働大臣。

根本国務大臣 そういうメールが阿部座長に届けられた、これは聞いております。

 そして、御質問の通告があったので、阿部検討会座長に、事務方から御発言の内容について確認をいたしました。ですから、阿部座長のところにメールは確かに送られた、阿部座長はそれを見ているわけですから。ですから、阿部座長に厚生労働省から発言の内容について確認をいたしました。(長妻委員「中身」と呼ぶ)

 平成二十七年九月十四日に、事務局である厚生労働省の担当者から、委員以外の関係者から部分入れかえ方式を検討すべきではないかとの意見があったと阿部座長に連絡をいたしました。

長妻委員 総理、答弁しない指揮権を発動しないでください。さっき言わなければ、時間は無駄にならなかったですよ。答弁したじゃないですか。これ、ちょっと総理、やめてくださいよ。

 それで、今おっしゃっていただいたのは、平成二十七年九月十四日に、厚生労働省から、事務局から、毎勤改善検討会の座長である阿部座長に、委員以外の関係者から部分入れかえ方式を検討すべきではないかとの意見があった、そういうメールが送られたと。委員以外の関係者というのは誰ですか。

根本国務大臣 阿部座長によれば、関係者が誰であるかについて具体的な名前は……(長妻委員「いや、阿部座長じゃない」と呼ぶ)まず順番を追って私は申し上げます、聞いていないとのことでした。

 そして、阿部座長については、阿部座長の認識は、具体の経緯は承知していないが、最終的に選択肢を広げようと厚生労働省が判断したこと自体、一定の妥当性があると受けとめたとのことでしたが、これについて当時の担当部長に事務方から確認をしたところ、次のような回答を得ました。

 メール等を確認できたわけではないので詳細は不明ですが、中江総理秘書官のことだと思われるという、担当部長からそういう話を聞いております。

長妻委員 これ、メール、出してください、現物を。個人情報は黒塗りで結構ですので。

根本国務大臣 現時点では確認できておりませんが、その存否も含めて確認させたいと思います。

長妻委員 では、委員長、出してくれるようにお願いします。

野田委員長 後刻、理事会にて協議をいたします。

長妻委員 それで、中江さんには今来ていただいているので確認しますけれども、ちょっとテレビを見ている方は経緯を御存じないと思いますので、九番を出していただければと思うんですが、私は、ずっとこれが不可解だったんですよ。

 平成二十七年の三月に、中江首相秘書官が厚労省の姉崎部長を首相官邸に呼んで、そして、毎勤統計を何とかしろ、そういう問題意識を伝えた。それを受けてこの毎勤統計調査の改善に関する検討会が立ち上がって、最終がこの六回なんですが、皆さん、私は全部議事録を読みました、資料も読みました。すごく専門的なバックデータもあって、緻密に積み上がっています。相当レベルの高い議論であります。

 それで、五回目に、阿部座長が、「ありがとうございます。ほかにはよろしいですか。 では、検討会の方向性としては、総入れ替え方式で行うことが適当であるということにさせていただければと思います。」異議なしということで、これでまとまったんですね。

 この後、九月十六日の第六回に、全く結論が違う形になってしまったんです。

 この間に何があるのかというのがいつも疑問だったんですが、この平成二十七年九月十六日の二日前に、今申し上げたメールが、中江首相秘書官ということでありましたけれども、総入れかえ方式じゃなくて、部分入れかえ方式を検討すべきじゃないの、こういうメールが、念を押して、この阿部座長に入った。

 阿部座長は、報道にこういうふうにおっしゃっておられます、きのうの報道ですが。一旦、総入れかえ方式でいいですよねと言っていたのに、それを大きく変えるというのは通常ないですと。

 通常ないことが六回目の平成二十七年九月十六日に起こったわけで、このときはなぜか、ここにありますが、「阿部座長におかれましては、急遽体調不良により御欠席」。でも、普通は、座長が欠席したら、その座長がまとめているんだから、延期しますよ、別に。

 ところが、ここで開いて、しかも、座長代理がいるんですよ、土屋さん。座長代理。普通、座長代理に差配させますよね、これでいいですかとか。座長代理が出席しているのに、座長代理を無視して、この手計雇用・賃金福祉統計課長補佐が、お役人の方が仕切って、こういうふうに、「サンプルの入れ替え方法についてもう少し議論したほうがいいのではないかといった御意見もあった」。これは中江さんの意見じゃないですか。

 意見があった、まあ、ほかの方の意見も確かにありました。それは議事録を見ました。ただ、大勢は違うということで、こう結論が五回目になったわけでありますが、サンプル入れかえ方法については、引き続き検討することとするということで修正させていただく。五回目に座長の結論が出たのに、課長補佐が変えた。

 しかも、同じ回で念を押して、検討に修正したにもかかわらず、最後、姉崎統計部長が、下にあります、この方が平成二十七年の三月三十一日に中江秘書官に呼ばれて、首相官邸に行って、問題意識を伝えられて、それは驚きますよ。その部長でございますけれども、同じ回で、「サンプル入れ替えのところで総入れ替え方式ではなく、」「なく、」と。だって、検討すると言っているのに、「なく、部分入れ替え方式を検討したい」、こういうふうに念を押して、それで終わっちゃった。

 本当は七回目、八回目がありますと、ここにありますね、皆様には来年の三月まで委員をお願いしておりますので、しかるべき時期に、また検討会を開催させていただきますと。阿部座長によると、六回目が終わって次があるかなと思っていたけれども、一切何の連絡もなかったと、その後。怒っていますよ、委員の方。議事録もない。この前出ましたね、やっと。

 こういうような状況でありまして、これは、中江首相秘書官、どんな話をされたんですか。

中江参考人 お答えいたします。

 どんなお話というのは、済みません、ちょっと話の筋が、私、ちょっと理解できなかったもので。

野田委員長 長妻さん、もう一度質問してあげてください。

長妻委員 どんな話をしたんですか。

中江参考人 メールの関連で、姉崎当時の部長がそういうことを言っているということですから、それの関連でどういうお話をしたか、そういう御質問だと思いますが、このメールは私のメールではもちろんありませんので、そこはちょっと誤解のないようによろしくお願いいたします。

 それで、今の厚労大臣の御答弁にもありましたが、これは中江総理秘書官のことだろうということで、姉崎さんが部下の方にメールを送らせた、そういうことだと思いますが、けさ方……(発言する者あり)

野田委員長 御静粛に。

中江参考人 けさ方厚労省から、けさ方です、官邸経由で、姉崎元部長と宮野元総括審議官が二〇一五年九月十四日に同年六月のボーナスの状況等について説明を行った際に、毎勤統計に関する検討会の状況についても触れたと言っている旨の連絡が私にございました。

 それで、正直、二〇一五年九月十四日に厚生労働省から説明を受けた記憶は私には全くございません。その上で申し上げますと、繰り返しになりますけれども、二〇一五年九月十四日に厚労省が説明に来た記憶は全くありません。

 ただ、当初からの私の問題意識からすれば、専門家の議論に委ねるけれども、あえて申し上げれば、コストの問題もあるでしょうけれども、仮にローテーションサンプリングの方が経済の実態をよりタイムリーにあらわすことができるのであれば、そうした考え方について専門的な検討を進めてもらったらよいのではないかといったことを申し上げたかもしれませんが、私、実は本当に全く、この九月十四日、厚労省が説明に来たという記憶がございませんので、今のも、そうかな、申し上げたかもしれないということでございます。(発言する者あり)

野田委員長 お静かにしてください。

長妻委員 何ですか。ちょっと石崎さん、全然、的外れたことを言わないでください。後ろから、ちょっとやめてください。妨害ですか。

 自民党もちゃんと、本当に事実を明らかにするように聞いてくださいよ。何で私の質問を妨害するんだ。(発言する者あり)ちょっとやめてください。ちょっと黙ってください。

野田委員長 石崎さん、静かに。

 御静粛にお願いします。

長妻委員 後ろから言われると、相当、質問できないんですよ。(発言する者あり)ちょっとやめてくださいよ、石崎さん。ちょっとやめてくださいよ。

野田委員長 注意してくださいね。

長妻委員 ちょっと、何でこんなに私の質問で、後ろからがんがんがんがん言われなきゃいけないんですか。実態を解明するんでしょう、与野党ともに。いいじゃないですか。ちょっと静かにしていただければと思うんですが。

 それで、今のお話だと、平成二十七年の九月十六日に、宮野総審と姉崎部長がいらっしゃったと、中江首相秘書官のもとに、首相官邸の秘書官室に。これは虚偽答弁じゃないですか。

 おとついの月曜日、私は聞きましたよ。平成二十七年三月三十一日以外で、接触したり電話したことはありますか、毎勤統計の件でと言ったら、一切ないと。ただし、この中間的整理が出る毎勤統計の改善検討会の開始は聞いた記憶があると、ここはおっしゃいました、確かに。それだけなんですよ。

 全部洗いざらい、毎勤関係でどういう連絡、電話も含めて何回ぐらいあったのか、ちょっと思い出して、今、記憶の限り御答弁いただけませんか。(発言する者あり)

野田委員長 御静粛に。

中江参考人 お答え申し上げます。

 おととい、長妻委員の御質問に対しまして、検討会については、検討会を始めるという報告を受けましたという御答弁は申し上げました。それで、そのときに、その検討会でどういう議論が行われたとか、その検討結果については、報告を受けた記憶はございませんという答弁もいたしました。

 それから、毎勤統計につきましては、これは厚労省から出向している内閣参事官から毎月数値は聞いておりますが、それ以外について厚労省とやりとりしたことはございませんということを申し上げました。

 それで、今、先ほど私が申し上げました、九月十六ではなくて十四だと思いますが、二〇一五年の九月十四のことについて、厚労省の方が私のところに説明に来たということですが、済みません、それ、私、きょう聞きましたけれども、きょうも記憶がありません。したがいまして、おととい御答弁申し上げたときも、虚偽というか、私の記憶のありのままをそのまま御答弁申し上げて、きょうもありのままを申し上げています。それ以上、ほかに御説明を受けたという記憶は、本当にございません。

長妻委員 そうしたら、ここに、平成二十七年の……(安倍内閣総理大臣「何か悪いことをしている」と呼ぶ)だから総理、悪いことをした、いや、悪いことをしているのと、私は一言も言っていませんよ。悪いことをしているのって、私は言っていませんよ。だから、正直に答えていただければ。今、審議しているんですから。(発言する者あり)

野田委員長 大臣席の皆さん、御静粛に。

長妻委員 それをただ聞いているんですから。

 総理、ちょっと、総理もずっとやじを飛ばしておられますけれども、そこでずっとやじが。これは混乱するんですよ、こっちも。真剣に質問しているんですから、総理、ちょっと黙ってください。(発言する者あり)また質問しますから、ちょっと、一旦黙っていてください。

野田委員長 御静粛にお願いします。

長妻委員 阿部座長が、この平成二十七年の八月七日に、「総入れ替え方式で行うことが適当であるということにさせていただければ」、こういう一つのまとめをした後にお会いしているんですが、この中間的取りまとめ、毎勤改善検討会の話も出たわけですか。(発言する者あり)

野田委員長 中江前内閣総理大臣秘書官。(長妻委員「悪いって言っていないじゃない、聞いているんだから」と呼ぶ)

 御静粛に。お互い御静粛にお願いします。

中江参考人 お答え申し上げます。

 先方の厚労省の方がどういうふうな御説明をされているかは私はちょっと存じ上げませんが、けさ方、厚労省から、姉崎元部長と宮野元総括審議官が二〇一五年九月十四日に同年六月のボーナスの状況等について説明を行った際に、毎勤統計に関する検討会の状況についても触れたとおっしゃっているという旨の連絡がございました。

長妻委員 そうすると、ここで急に結論が変わっているんですね、第六回。その九月十四日に、月曜日は全くおっしゃらなかったことがここで明らかになって、当然、月曜日の答弁も事前に言っていますから相当調べて答弁されたんだと思いますけれども、なぜ漏れているのかというのが、ちょっと考えられないんですが。

 これは阿部座長が、「総入れ替え方式で行うことが適当である」と。五回目、こういう結論が出て、その間、実は九月三日に安倍総理に中江秘書官が毎勤統計のこれは質問レクですね、私も確認しましたら、参議院で質問を受けて、これは議事録も読みました、確かに総理、答弁されています、毎勤の。多分朝、質問レクを受けているんだと思います。

 総理にお伺いするんですが、これについても、月曜日も総理は答弁されています、どういう質問レクだったか。ただ、そのとき若干私が気になりましたのは、調査対象事業所の入れかえの影響があった旨の説明を受けた、総理は。これは誰から、当時、厚労省も同席していたんですか。誰が、何人ぐらい同席していたんですか。

安倍内閣総理大臣 正直言って全く覚えていないんですが。

 きのうこれは、普通、これは予算委員会でしたっけ、この二十七年の九月三日というのは。参議院の……(発言する者あり)厚労委員会ですね。

 普通、総理レク、例えば予算委員会の場合は、秘書官と、あと各省から来ている参事官が同席をいたします。(長妻委員「厚労省は」と呼ぶ)厚労省の人が厚労省から来るということはないですね。官邸に厚労省から来ている人は入りますけれども。私のレクについてはそうだったのかな、こう思っております。

 いずれにいたしましても、そのとき、質問に対して答えるときに、幾つか質問がありますから、その中の一つだったんだろう、このように思います。

長妻委員 それで、総理は、対象事業所の入れかえの影響があった旨の説明を受けて、感想というか、何か御発言はされた記憶はありますか。

安倍内閣総理大臣 答弁に答えるときには、とにかくどういう答弁をするかということだけを説明を受けますから、そこで政策的なやりとりをするという、普通、余裕はないんですよ。何問もいきますし、何問の中には、いわば三十分だと八問ぐらいなんですが、大体二十問ぐらい、皆さん、いっておられますので、答えるのは八問だけれども二十問分のレクを受けますから、そこで一々やりとりしていると、忙しいですから、それはないんですね。

 あと、この年というのは平和安全法制の年で、まだその最中ですから、私は千問ぐらいそっちで質問を受けていますので、そっちで頭がいっぱいだったんだろうと思います。

長妻委員 ただ総理、先日こんなことをおっしゃっているんですね、相当詳しく。三年に一度かえると大きなぶれが出てくるということと、今まで三年間、毎月毎月出していた統計を全部変えるんですよ、毎月統計を示したことに対して分析していく意味が一挙になくなってしまう、さかのぼって変わると。

 そのさかのぼりの影響があったというのを九月三日に受けたわけですが、総理は、では、どんな具体的な説明を受けたんですか。賃金が下がる、さかのぼって、そんなような話だったんですか。

安倍内閣総理大臣 正直申し上げると、そこに書いてあることをささっと読んで、答弁について、ああ、そうですかと、大体それで終わるんですよ、普通。三十秒ぐらいしかかけないですから。

 この前、詳しくお答えをさせていただいたのは、いわば長妻先生のような非常に詳しい方に答弁をしなければいけませんから、しっかり勉強してこいとも言われましたので、勉強した結果、これは、いわば、むしろ総入れかえよりもローテーションでやった方が段差が小さくなるんだなと。毎年毎年たまらないですから、段差が。そうすると、別にそれで大きく見せるわけではなくて、段差がこうなっていく。ああ、それはもっともだなということでお話をさせていただいた、素人的にもそれはもっともだなと感じたということで。

 コストの方はわかりませんよ、その議論があったということでありますが、これは専門家の話なんだろうと思います。

長妻委員 そうしましたら、これは、ちょっとメールの問題とか事実関係とか、記憶が若干曖昧なので、中江秘書官のですね、トータルで、これまで時系列的に、厚生労働省、毎勤関係で、首相官邸サイドがどういうような接触をして、発言をしてやりとりがあったのか、それについて、ぜひ理事会でも資料要求、そして資料作成、メールの実物の提出、お願いします。

野田委員長 後刻、理事会にて協議をいたします。

長妻委員 それで、ちょっとこれだけ、もう一つ大きいテーマがあるので、これはまた同僚議員に譲りますけれども、非常に不可解であります。いろいろな意味で前例のないことが起こっているということで、解明が必要だ。

 総理は、首相官邸の関与はないんだ、何をそんなことをおっしゃっているんだ、こういうふうにおっしゃっているんですが、ないということもまだ証明されていないんですよ。ないかもしれない。でも、ないということを証明しようと思っていろいろ聞くと、月曜日と違う発言がどんどんどんどん出てきたり。それで、さっき根本さんがここで答弁しようとしたら、総理が下がれとおっしゃったり。そして、聞いたら、全部知っているじゃないですか。調べていないと思いましたよ。全部知っていたじゃないですか。そういうようなことはやめていただきたい。

 もう一つは、ベンチマークの件なんですが、これも前回質問して、私は非常に不可解でした。きょうは、西村統計委員長、残念ながら来ていただけないんですが、西村委員長も、事実上ペンディングの状態なんだ、こういう話をされたのに、なぜか結論がねじ曲がっちゃった。

 どういうことかといいますと、毎勤統計では二つギャップが発生します、総理がおっしゃるように。例えば、平成三十年の一月には二つのギャップが発生して、これ、新旧で比べると〇・八でした。一つのギャップは、御存じのようにサンプル入れかえによるギャップ。もう一つは、ベンチマーク更新によるギャップ。これは全く別のものですから。これは混同しがちなので、ぜひちょっと注意、根本大臣もしていただきたいと思うんです。

 それで、ベンチマーク更新のギャップの件について、これは、賃金指数をさかのぼって三角修正するというのをこれまでずっとやっていたんですね。ずっとやっていた。

 ベンチマーク更新というのは、経済センサスという労働者の全数を調べて、そして、毎勤統計はサンプル調査ですのでそれを膨らませて、そして、あたかも全労働者を調査したかのように賃金を膨らませて、そして割り算して一人当たりの平均を出す。こういうもので、この全労働者の業種別、規模別が正確じゃないと復元できないんですね、サンプル調査ですから。これは非常に重要なことなんですが、なぜか平成三十年一月から、ベンチマークの過去にさかのぼる賃金指数のギャップ補正がなくなっちゃった。ずっと長年脈々と続いていたものがなくなっちゃった。

 これについては、平成二十七年九月十六日、先ほどの検討会で、これは明確に結論が出ています。ベンチマーク更新時の賃金指数については、新旧ベンチマークの差に伴う労働者構成のギャップ補正、三角修正方式を行う。行う。ただし、過去の増減率については変更しない。ところが、行うと結論が出たのに、平成三十年一月、行わなくなったんですよ、行わない。

 総理の答弁もこれは問題なんですけれども、ちょっと後で申し上げますが、全部結論が出た後に、総理もちょっと勘違い答弁の可能性も出てくるので。

 まず根本大臣に聞きますけれども、これ、事前にどこで意思決定して、決裁文書とか、統計委員会の報告とか承認とか、そういうものはどこで、どういうふうにあったんですか。

根本国務大臣 そもそも、毎月勤労統計、もう既に委員御案内ですけれども、二、三年に一回、全部総入れかえをします。そして、産業構造の変化を反映するためベンチマーク更新を行ってきました。ここが実は……(長妻委員「委員長、時間がないので、ちょっと私がもう一回言いますが」と呼ぶ)いや、ここは大事なんです。(長妻委員「違いますって。これを言ってください」と呼ぶ)

野田委員長 まず、長妻さん、お座りください。(発言する者あり)傍聴席、お静かにしてください。

 大臣も簡潔に、わかりやすく御答弁ください。

根本国務大臣 過去の統計数値をさかのぼって補正する取扱いをしていたんですけれども、かねてから、これは利用者にとってわかりにくいという問題があったんですよ。

 そして、過去に示した数値は、いろいろな政策判断などに用いられる情報ですから、これが事後に変わるのは関係者の混乱を招きかねない、こういうことがあって、厚生労働省としては、統計利用者のニーズを重視して、統計委員会の議論も踏まえながら、サンプルの部分入れかえ、そしてローテーションサンプリング方式を導入しまして、これについては、ベンチマーク更新を含めて過去の数値の遡及改定を行わない、これは統計委員会のお話もあって、過去の数値の遡及改定を行わないとしたんです。

 こういう、利用者が混乱するという話があったから、ここまでるる議論してきたのは、要は、総入れかえをして段差が生じるから、これをどう統計的により精度を高めるかということでやってきたのが今回の改革であります。

長妻委員 統計委員会の議論を踏まえてとおっしゃいました。

 確かに、事後的に、もうやっちゃった後、去年の夏に統計委員会で議論したというのはそうですよ。統計委員会も、もうやっちゃった後だから、お墨つきを与えましたよ。それはわかります。私も見ています、議事録。それはわかります。だから、事前にということなんですよ。

 つまり、総理もおっしゃっているんですよ、常日ごろ。変更は専門家の検討を経て、統計的な観点から行われたんだと。経てですよ、事後的じゃなくて、経て、こういうふうに変更すると。

 だから、事前に、統計委員会の何月何日に、では議論したんですか。あるいは、厚労省の中で、何月何日、どういう決裁で議論したんですか。日付を教えてください。

根本国務大臣 私は、きちんと答弁したいと思いますが、何で遡及適用をやめたか、これは……(長妻委員「いつだというの、理由じゃない。それは事後的に。ちょっと、時間がないので」と呼ぶ)事後的ではありません。(長妻委員「いつですか、何月」と呼ぶ)

野田委員長 長妻さんも自席でやりとりしないで。

根本国務大臣 二十八年十一月から二十九年一月の統計委員会の審議を経て、統計委員会の答申としては、調査、統計は原則として遡及しないという原則的な考え方に照らして、従前の方法を改め、新旧の数値をそのまま接続し、遡及改定を行わないということで答申されて、二十九年二月に承認されております。

 そして、委員の言った事後的、事後的というのは、ここで答申されているんですよ。その後、この対応については、平成三十年八月の統計委員会の評価において、これは標準的な対応であると評価できる、これは事後的にも評価できるという評価をいただいているということであります。

 まず答申でしっかりこれが出ているということが、私の言っている前提であります。

長妻委員 ですから、大臣、事後的に、それはもうしようがないということでお墨つきを去年の夏、これはそのとおりです。ただ、今大臣が言ったのは間違っていると思うんですよね。

 平成二十八年とおっしゃいましたけれども、平成二十八年の、統計委員会の下部組織である新旧データ接続検討ワーキンググループ、明確に、ギャップには五つある、そのうちのウエート更新、つまり今回のベンチマーク更新については議論しないということになったんです。議論しない。ただし、大臣がおっしゃったように、標本交代による断層は議論するということで、ローテーションサンプリング方式の場合はさかのぼらない、これはいいんですよ。ただ、これについては議論していないんですよ、ベンチマーク更新時。

 それで、大臣、承認があったと言いますけれども、では、平成二十八年十一月十八日に厚労省は、諮問九十七号、毎勤統計の変更についてというのを出しましたよね。この中にこれが入っているんですか、変更。

根本国務大臣 まず、厚労省の方から総務省に話をして、諮問、答申は、統計委員会で諮問、答申をするというのが実はこのプロセスであります。

 そして、毎勤統計のギャップ補正方法については、平成二十七年十二月の統計委員会の基本部会において、厚生労働省から、ベンチマークの更新を含めて、ギャップ補正の問題について、論点の一つとして整理をしております。

 その後、新旧データ接続検討ワーキンググループにおいては、実は標本入れかえの問題の議論が主でありましたが、平成二十八年十月の厚生労働省の変更申請については、標本交換とベンチマーク更新、ウエート更新によるギャップ、断層を一体のものとして変更申請をしております。

長妻委員 これ、今、私持っていますが、平成二十八年十一月十八日、諮問第九十七号「毎月勤労統計調査の変更について」、この中に、ベンチマーク更新時の賃金指数、ギャップ補正、三角修正のさかのぼりはしないという変更の諮問があると今御答弁されましたが、どこにあるんですかね。私、官僚の方に一週間聞きましたが、ないということでありました。

 確かに、一番最後に、一番最後の資料の一ページの図ですね、これはギャップ補正しないという図がありますが、ここに注意書きがありますけれども、ローテーションサンプリング由来のギャップの話なんですよ。ベンチマークじゃないんですよ。つまり、すっ飛ばしちゃっているんですよ。どこに、何ページにあるんですか。

根本国務大臣 委員、もうお手元にありますよね。これは、参考としてワンセットでこれをつけておりますから。統計法施行状況審議を踏まえた確認事項で、賃金・労働時間指数の接続方法の変更ということでお示ししているわけですよ。

 ここは、実は、標本交換とベンチマーク更新によるギャップは、これは一体のものとしてここで示している。変更後で示している、第一種事業所におけるローテーションサンプリングの導入後は、新旧計数をそのまま接続させる。委員のおっしゃられた二つの話がここに入っている、こういうことであります。

長妻委員 根本大臣、これはこんな分厚い資料なんですね。それで、事細かにローテーションサンプリングのことは書いてあるんですよ、それでギャップ補正もしないというのが。ベンチマーク補正、三角補正のことは一切何にも書いていないんですよ。最後に、ギャップ補正しないというこのグラフだけあるんですよ。

 このギャップ補正は、ローテーションサンプリング、つまり、サンプリング由来のギャップの補正のことなんですと私は理解しているんですよ。本当に大臣、それでよろしいんですか。今、答弁しましたから。本当ですね。

 そうしたら、総務省に聞きます。

 これは総務省が審議した変更届でございますが、総務大臣、この中にベンチマーク更新時の賃金指数のギャップ補正、根本大臣がおっしゃるように、三角修正のさかのぼり、これをしないという変更、これも諮問が出ているという理解でいいんですか。

石田国務大臣 お答えをさせていただきます。

 少し整理して申し上げますと、平成二十八年、二〇一六年十一月から平成二十九年一月における毎月勤労統計調査の諮問の審議では、委員会に設置されました新旧データ接続検討ワーキンググループにおきまして、統計調査は遡及改定しないことが接続方法として望ましい方法とされたことに照らしつつ、親委員会の方で検討が行われたところであります。

長妻委員 総務大臣、ちょっとお粗末ですよ。私の質問に全然答えていないし、この新旧データ接続検討ワーキンググループの、遡及的に接続しないというのは、さっきから申し上げているように、括弧三のウエート更新、これは除外した議論だったんですよ。

 だから、大臣に聞いているのはそれでなくて、この一番正式なやつですね、平成二十八年十一月十八日の諮問第九十七号、ここで、これですね、ベンチマーク更新時の賃金指数のギャップ補正、三角修正を過去さかのぼって行うということをしない、行わないという、ずっとこれから新しいことを行わないという、そういう変更がどこの何ページにあるんですかということなんです。(発言する者あり)

野田委員長 速記をとめてください。

    〔速記中止〕

野田委員長 速記を起こしてください。

 石田総務大臣。

石田国務大臣 失礼いたしました。

 諮問には含まれておりません。(発言する者あり)

野田委員長 では、もう一回、長妻さん、御質問してください。とまってしまったら、国民の皆さん、わからないですから、事情が。(発言する者あり)

 では、速記をとめてください。

    〔速記中止〕

野田委員長 速記を起こしてください。

 石田総務大臣。

石田国務大臣 失礼いたしました。

 もう一度整理して申し上げますと、平成二十八年十一月から平成二十九年一月における毎月勤労統計調査の諮問審議では、委員会に設置された新旧データ接続検討ワーキンググループにおいて、調査統計は遡及改定しないことが接続方法として望ましい方法とされたことに照らしつつ、検討が行われました。この結果、平成二十九年一月二十七日の答申におきまして、同統計において遡及改定を行わないこととする取扱いについて、適当と評価されました。

 その際、各委員が、御指摘のウエート更新による断層の補正をどこまで念頭に置いて御議論をされていたかは明確ではありませんが、いずれにしても、平成三十年八月二十八日に開催されました統計委員会におきまして、こうした取扱いについて再度確認され、御指摘のウエート更新に伴う断層の補正のための遡及改定を行わないことについても標準的な対応と評価されたところであります。

長妻委員 おおむね合っていると思います、今の話は。

 ただ、だから、同じことなんですよ。去年の八月にお墨つきを得たということなんですよ。議論していないんですよ。

 接続しないでいいというのは、平成二十八年の話は、おっしゃったことは、ウエート更新は入っていないんですよ。サンプルの標本交代による新旧断層、母集団情報の変更に伴う更新、この二つだけを議論して、ウエート更新は議論しないというのがちゃんと明確にあるわけですよ。

 だから、大臣、大臣に聞きたいのはそこではなくて、一番肝のさっきの話です。全然答えていないんですよ、今のも。平成二十八年十一月十八日の公文書である諮問第九十七号、毎勤統計調査の変更について、諮問、この中に、根本大臣がおっしゃったように、ベンチマーク更新の賃金指数のギャップ補正、三角修正のさかのぼり、これは今後はしません、こういう変更がここの中に入っているんですかということを聞いているんです。さっきは入っていないとおっしゃったんですよ。

野田委員長 根本厚生労働大臣。(長妻委員「総務大臣に」と呼ぶ)

 総務大臣。(発言する者あり)

 では、ちょっと速記をとめてください。

    〔速記中止〕

野田委員長 速記を起こしてください。

 石田総務大臣。

石田国務大臣 ちょっと西村委員長があれされていますので。

 昨日、総務委員会において西村委員長が、統計委員長ですが、答弁をされましたので、そこを少しお話ししますと……(長妻委員「違う、これに入っているかだけでいいんです」と呼ぶ)ちょっと待ってください。(長妻委員「西村さんはいいんです、これに入っているか」と呼ぶ)答弁中です。

野田委員長 長妻議員、ちょっと着席してください。

 簡潔に答弁してください。

石田国務大臣 昨日の総務委員会におきまして西村委員長が答弁したところによると、西村委員長が委員会でペンディングの趣旨を申されましたけれども、その時点ではウエート変更に伴う断層への対応それから遡及改定の是非の審議はしていなかったが、既に統計委員会としては原則遡及改定はしないということを決めていたので、最終的には、二〇一八年八月二十八日に改めて審議を行い、明確に遡及改定はしないことを明らかにしたとのことであったと承知をいたしております。(長妻委員「ちょっとこれはおかしいよ、これをだってさっきから聞いているんだよ。三回ですよ」と呼ぶ)

 それにつきましては諮問には含まれておりませんので、明示的には入っておりませんけれども、先ほど御紹介したような西村委員長の発言を勘案していただければと思います。

長妻委員 だから、その答弁で正しいと思います、私も。初めから言っていた。

 つまり、根本大臣はこの平成二十八年十一月十八日の諮問の変更の中に入っているとおっしゃったから、でも、入っていないと総務相は今おっしゃった。

 西村委員長の話は、それはそのとおりなんです。その話というのは、平成二十八年の新旧データ接続検討ワーキンググループで、ウエート更新については議論していないけれども、それ以外の新旧のギャップについては段差をつくったままにしましょうね、こういう議論があった。それで、これが漏れていたので、事後的に、これもギャップだから議論しようと思って議論して、去年の夏に、まあいいんじゃないのか、もうやっちゃったことだしと。これはいいんですよ、そのとおりなんですよ。

 私が言っているのは、事前に何の議論もないんですよ、実は。そこを私、問題視していたら、根本大臣は、この、正式なものですよ、これは諮問ですよ、ここに書いてあるとおっしゃって、総務大臣は書いていないと言うから、まだ整理されていないんですよ。

 根本大臣、撤回しますか、答弁。

根本国務大臣 委員も御承知のように、幾つかの論点が一緒に提起されていますよ。(長妻委員「ここに入っているんですかと」と呼ぶ)いや、だから、これはワンセットで一緒に提起されていますよ。(長妻委員「だから、入っているんですか」と呼ぶ)

野田委員長 そういうやりとりはちょっと慎んでください。

根本国務大臣 だから、これはワンセットですから、これと。(長妻委員「だから、これは入っているんですか」と呼ぶ)

 そして、だから、これとこの参考はワンセットだと。

野田委員長 お二人とも、私が指名してからやりとりをしてください。

根本国務大臣 私が申し上げているのは、この諮問……(発言する者あり)ちゃんと、そこの中には……

野田委員長 大臣、答弁してから。

根本国務大臣 はい。

 私は、この参考資料も含めてワンセットで出ていますから、その意味では、統計法施行状況審議を踏まえた確認事項で、賃金・労働時間指数の接続方法の変更で、変更後に、第一種事業所におけるローテーションサンプリングの導入後は、新旧計数をそのまま接続させる、理解はしています。

 そして、変更申請については……

野田委員長 大臣、簡潔にお願いします。

根本国務大臣 はい。

 標本交換とベンチマーク更新によるギャップ、これを一体のものとして、そこは区別しないで一体のものとして出している、こういうことであります。

長妻委員 これで質問を終わりますけれども、後の方に迷惑かけても申しわけないので。

 今明らかになった、私、愕然としました。総理はちゃんと議論を経てやっているんだと。やっていないんじゃないんですか、今。つまり、総務大臣はこの公文書に入っていないと言う、根本大臣は入っていると言う。これは統一見解を出して、撤回するなら撤回、後日答弁してください。

 ありがとうございました。

野田委員長 この際、江田憲司さんから関連質疑の申出があります。本多さんの持ち時間の範囲内でこれを許します。江田憲司さん。

江田(憲)委員 立憲民主党と今同じ会派を組んでおります無所属フォーラムの江田憲司でございます。

 きょう、本題に入る前に一つちょっと申し上げたいこともあって、総理にお聞きをしたいんですけれども。

 先日の本予算委員会で岡田克也議員との間で、党大会で総理が、悪夢のような民主党政権、こうおっしゃったんですかね。その悪夢とは何ぞやとか、取り消せとか、そういうやりとりがあったと思いますけれども、そのとき安倍総理はたしか、いや、自分は民主党政権時代の経済のことを言ったんだ、就職氷河期、有効求人倍率も今の半分ぐらいしかなかったし、倒産も多くて連鎖倒産という言葉もはやったというようなことで悪夢と言ったんだというふうにおっしゃったように私は記憶しております。

 ちょっとこのパネルを見ていただきたいんですけれども。

 その安倍さんのロジックに沿って言うと、ちなみに、これは小泉政権のときと民主党政権のときを比較しましたけれども、一々説明しませんけれども、確かに有効求人倍率は多少小泉政権のときの方がいいんですけれども、完全失業率を見ても、倒産件数を見ても、負債総額を見ても、全部民主党政権時より悪いんですよね。

 だったら、総理、総理も、小泉政権といえば官房副長官、幹事長も務めて支えられた。小泉政権時も悪夢だというふうにお思いになりませんか。

安倍内閣総理大臣 ちなみに、小泉政権時は官房副長官と幹事長と官房長官もやっておったわけでありますが。

 そこで、あのときの自民党大会には出ておられませんよね。自民党大会に出て、私の演説全般を聞いていただければもっとよくわかっていただいたんだと思いますが。

 私が、話の中身としては、いわば参議院選挙で大敗をし、そして政治が安定を失った、あれは私の責任だったということを述べ、そして、その後に、悪夢のような民主党政権が誕生した、決められない政治の中において経済は失速をし、そして、若い皆さんがいろいろ頑張ってもなかなか就職できなかった時代があった、そして、今よりも三割も倒産件数が多かった、かつ、その中で連鎖倒産という言葉が日本じゅうを覆っていた、これは事実でありまして、それを述べた。

 今、江田憲司委員は、これも入れろと。この期間も入れた話は実はしているんですね。

 今回の景気回復期は戦後最長となった、先月、そう言われたわけでございますが、前回の戦後最長期は、平成十四年の四月、これは小泉政権のときに始まり、第一次安倍政権を通過し、二十年の二月まで続いたという話をし、しかし、そのときは、残念ながら、長引くデフレの中において、名目GDPは二・五%しか伸びなかったし、そして、いわば地域によって大きな振れがあったという話をさせていただきました。

 日本銀行の地域別業況判断において、逢坂先生の北海道とあるいは四国はずっと実はマイナスで推移したという話をしました。(江田(憲)委員「本題じゃないんだ」と呼ぶ)いや、これは大切なところなんですよ。

 後半の五年間をとっても、ずっとプラスだったのは関東地方と東海だけだったという話をさせていただいた。地方はいわば有効求人倍率等の回復が、伸びなかったけれども、今度はそれが私の反省点だったということを実は党大会でも述べているんです。

 そこで、三本の矢によって、今、九つの地域全てが、この六年間、業況判断によって……

野田委員長 総理、簡潔に御答弁願います。

安倍内閣総理大臣 はい。もうすぐ終わります。

 九つの地域においてプラス、よいが悪いを上回る、これはプラスで変化した。その理由は何かということも述べたいんですが、それはカットさせていただきますが、そういうことでございます。

江田(憲)委員 総理、あの時代の政権がよかった悪かったとか、あの政権と比べていいだ悪いだと、過去のことは国民の皆さんにとってはどうでもいいことなんですよ。国民にとって必要なことは、これからの日本はどうなのか、我々の経済はどうなるんだ、生活はどうなるかなんですから。

 私、以前もこの場で言った覚えがあるんですよ。総理大臣ですから、トップリーダーですから、もっとディグニティーというか、威厳と品格を持ってやってほしいんですよ、全国民の代表なんだから。だから、私は民主党政権に一切かかわりのない政治家ですから、何も弁護する立場じゃないですけれども、もうこういう不毛な議論はやめましょうという一点だけ申し上げたかったんですよ。(発言する者あり)もういい。だから、もう十分おっしゃったじゃないですか。こんなことで時間をとられたくないのでね。

 ですから、何か、きょうで安倍総理は、吉田茂元総理に並ぶ、連続在職日数歴代二位だと。ここまでやられている総理ですから、もう少し、国民のトップリーダーなんですから、品位と威厳を持ってやっていただきたい、これだけを言いたいためにこれを取り上げたので、誤解なきようにお願いします。

 さて、二十四日には、辺野古移設の是非を問う県民投票も予定をされております。

 御承知のように、二十数年前、九六年四月、橋本総理がまさに心血を注いでなし遂げたのが、この普天間返還合意なんですね。

 こんな戦略的な要衝の地を米軍、米国が返すはずがないじゃないかと言われるような中で、まさに、クリントン大統領との初の首脳会談で、沖縄県民の思いは普天間返還だということを事前の発言要領になかったにもかかわらずテーブルに出して、クリントン大統領も三日後にペリー国防長官に指示をされ、ペリーさんも、沖縄の従軍経験があったものですから沖縄の実情も十分理解をされて、モンデール大使も副大統領経験者でした。こういう首脳間の連係プレーで、不可能と言われるものをなし遂げたんです。

 そして、そのバックには沖縄との深い深い信頼関係がありました。当時、私の記憶では、沖縄知事とのさしの会談も含めて実に十七回、数十時間にわたって総理と知事が膝詰め談判をしてなし遂げたという背景もあったんですね。

 そこで、今回、政府に資料要求しまして、一体、安倍総理は沖縄県知事と何回会談して、どの程度の時間をかけているんだろうと。これが表なんですね。皆さん、ごらんください。

 さしで会談したというのはこの水色のたった一回、この前、玉城知事が当選をされたときに挨拶に来られたとき。しかも、所要時間はたった十五分ですよ。では、安倍総理が沖縄に行かれて知事と会談をされたのは何回かなと思ったら、これも、ピンク色、たった一回ですよ。しかも、十五分ですよ。

 何で、安倍総理、沖縄にこんなに冷たいんですか。ちょっとお考えを僕は本当に聞きたいんですよ。橋本総理と彼我の差がある。

安倍内閣総理大臣 お答えをさせていただく前に、先ほどの私の発言について、誤解をされていますから……(江田(憲)委員「誤解していないですよ」と呼ぶ)いや、自民党大会においては、悪夢のようなと言ったのは十秒ぐらいの話であって、あとは、まさにこの国の未来をどうするかという話を延々二十分しているんですよ。二十分しているという……(江田(憲)委員「それはきょうの議題じゃないんです。ちょっと委員長、とめてくださいよ」と呼ぶ)いや、私が全くそういう話をしていないかのごとくの批判をするから、反論させていただきました。

野田委員長 答弁に移ってください。

安倍内閣総理大臣 そこで、品がないということをおっしゃったから、私は、二十分間にわたってずっとそういう話をさせていただいたということを言わせていただきたい。

 やはり、江田さん、批判をしたら、その批判に対して誤解を与えないように、説明はさせていただきたい。江田委員のお言葉ですから、深く胸に刻みたいとは思っておりますよ。

 そこで、私は、総理就任以来、仲井真知事とは普天間飛行場負担軽減推進会議の際など、翁長知事とは集中協議の際など、また、玉城知事とも意見交換の場をセットするなど、さまざまな機会を捉えて、主に官邸において、必要な協議や意見交換を行ってきております。

 安倍政権においては、沖縄基地負担軽減担当大臣を新設し、菅官房長官を任命したところでありまして、私と知事との協議や意見交換の際には、菅官房長官が同席していることが多いわけでございますが、翁長知事が就任された際には、総選挙や組閣などもあり、私自身は知事就任直後にお会いする機会はなかったのでありますが、官邸あるいは政府としてはしっかりと対応してきたところでございます。

 いずれにいたしましても、私も、総理就任以来、沖縄の基地負担の軽減、その中でも、普天間飛行場の一日も早い全面返還を政権の最優先課題として取り組みつつ、一つ一つ目に見える形で実現をしてきたところでありまして、大変、冷たいという話をいただいたんですが、結果を出していくことが私たち政治家の使命だと考えておりますので、例えば、普天間飛行場が有する三つの機能のうち、空中給油機については、十五機全機の岩国飛行場への移駐を実現しました。これは十八年越しの課題であったわけであります。そのためにも、岩国市長を始め岩国市の皆さんにお願いもしましたし、山口県にもお願いをしてきたところであります。

 また、緊急時における航空機の受入れ機能も、九州の自衛隊基地へ移すことを決定しており、そのために必要となる自衛隊基地の滑走路の延長や弾薬庫の設置などの施設整備について、昨年十月、日米合意を行ったところであります。

 さらに、辺野古移設までの間、普天間に残るオスプレイの運用機能についても、飛行訓練の県外移転を着実に進めているほか、定期整備は、千葉県木更津駐屯地において実施をしているところでございまして、今後とも、安倍政権において地元の皆様の御理解を得る努力を続けていきたい、このように思っております。

江田(憲)委員 残念ながら亡くなられました翁長知事、就任した、たしか当選されたのは二〇一四年の十二月。やっと総理がお会いになったのは、ここにもあるように、二〇一五年の四月十七日ですよ。これも、私は不思議なんですよね。

 普天間基地の代替機能の確保というのは、国家安全保障上の課題ですよね。その知事がかわったとなれば、私の感覚では、むしろ総理の方から沖縄に出向いていって、国の問題なんだ、最重要課題なんだ、ぜひ理解していただきたいといって、むしろ会談を求めて沖縄まで行かれるぐらいの姿勢が私は本当だと思うんですよ。

 しかし、今の話にもあったように、官房長官任せでしょう。当時の橋本総理は、重鎮の梶山静六官房長官がおられて、梶山さんも本当に沖縄への思いが強かったけれども、決して官房長官任せにしなかった。これは、トップリーダー同士がやらなきゃだめな話なんですよ、軍事基地だ、抑止力だ、安全保障だという問題は。

 それを、政治というのは人間対人間の営みですから、もう釈迦に説法ですけれども、当選して四カ月以上会わないということ自体にもう沖縄が不信感を持つんですよ、安倍総理の姿勢に。何か反論はありますか。

安倍内閣総理大臣 確かに、橋本政権において当時の大田知事とそうした交渉が行われた、また、江田委員が秘書官として支えられたこと、これは敬意を表したい、こう思っております。

 我々も、しかし、これはいろいろな経緯があるわけでございまして、先ほども申し上げましたように、結果としては、大切なことはまさに成果を出すことなんだろう、こう思っております。

 確かに、普天間の移設を、あのときも県内だったと思いますが、県内の移設を決められた。でも、大切なことは、移設先に行くところとどうするかというところで大変困難な問題に直面をするわけでありまして、今まさに私たちはそこに直面をしているわけであります。

 しかし、その中でも、先ほど申し上げましたように、三つの機能のうち空中給油機を、これは空中空輸機で十五機というのは大変なことなんですよ。それを移設するというのは、これも大変なことなんですよ、それは。それをやってきたということでありまして、そういう努力もしているということでございまして、今後ともそういう努力を重ねていきたい、こう考えているところでございます。

江田(憲)委員 総理、そんなことを否定しているわけじゃないんですよ。この問題は難しい問題だというのはわかっています。

 それから、当時、橋本政権では、五年から七年のうちに移設するということで、地元の名護市長も、最後は、私は切腹して受け入れると言ってまで官邸に来て、合意もしていました。結果は出しましたけれども、残念ながら政権は終わってしまったので、その後、紆余曲折を経てきたことは今総理もおっしゃったとおりですね。

 そこで、お聞きしたいんですよ。

 二十四日の県民投票。先般、十四日の官房長官会見で、こんなことをおっしゃっている。とにかく、投票結果にかかわらず移設を進めるんだと。まだ投票もしていない段階で、結果も出ていない段階で、何でこんなことが言えるのか。私は神経が信じられないんですよ。総理も同じ考えですか、それは。

安倍内閣総理大臣 戦後七十年以上を経た今もなお、沖縄の皆様には大きな基地負担を負っていただいており、この事実を我々は重く受けとめています。このような現状は是認できるものではなく、その負担の軽減を図ることは政府の大きな責任であります。このため、政府としては、沖縄の基地負担軽減に全力で取り組み、一つ一つ着実に結果を出していく考えであります。

 ここのところなんですが、県民投票を行う上において、やはり、住宅や学校で囲まれ、世界で最も危険と言われる普天間飛行場の固定化は絶対避けなければならない、これは共通認識でありますが、このために辺野古の基地の建設をしているということでありまして、それを抜きに、ただいきなり辺野古に基地を建設するということではないということも御理解をいただきたい、こう思うわけであります。

 その上で……(江田(憲)委員「県民投票」と呼ぶ)だから、その上で県民投票についてお答えをさせていただきますと、自治体における独自の条例にかかわる事柄でありまして、政府としては見解を述べることは差し控えたいと思います。

 今後も、地元の皆様とさまざまな形で意見交換や意思疎通を図りながら、基地負担の軽減に全力で取り組んでいく考えであります。

江田(憲)委員 要は、官房長官と同じ考えということでいいですね。一点だけ、イエスかノーか。

安倍内閣総理大臣 私の考え方は、今私が述べたとおりでございます。

江田(憲)委員 投票結果にかかわらず移設を進めるという方針だということでいいですね、安倍政権は。

安倍内閣総理大臣 私が今申し上げたことは、県民投票については、地方自治体における独自の条例にかかわる事柄であって、政府として見解を述べることは差し控えたい、このように思っております。

江田(憲)委員 官房長官はコメントをしているんですよ。では、閣内不一致ですか。

安倍内閣総理大臣 今私が述べたことは、まさに私は、この委員会の場所においては政府として見解を述べることは差し控えたい、このように申し上げているわけでありまして、県民投票について、これは地方自治体における独自の条例にかかわる事柄であるということを申し上げているわけであります。

 他方、今急にこのお話がございましたので、菅官房長官の記者会見における発言の詳細は私も十分に承知はしておりませんが、官房長官として、工事を進めていくかどうかということについて、いわば工事の計画について変更はないということを申し上げたんだろう、このように思います。

江田(憲)委員 では、私が申し上げると、官房長官はこうおっしゃったんです。住環境や生活環境に十分配慮しながら辺野古移設を進める考えに変わりはありませんと。そうですよね。

安倍内閣総理大臣 官房長官は、まさに政府としての方針を述べたということだと思います。

江田(憲)委員 総理も認められましたが、確かに、住民投票、直接投票というのは法的拘束力はありません。しかし、政治家、政治の世界ではやはり重みを持つし、拘束力を持つとも言える話なんですよ。

 これはちょうど、橋本政権のときのことばかり出して申しわけないですけれども、九六年九月にやはり県民投票がありました。そのときは、基地負担軽減と地位協定の見直しですね。圧倒的多数が基地負担軽減と地位協定の見直しに賛成でしたよ。しかし、その二日後に、大田知事とお話をしたときに、当時、橋本総理との信頼関係は本当に一〇〇%、一二〇%ありましたから、そのとき、政策協議会も設置して沖縄の振興策も検討する、五十億円の調整費もつけるということで、本当に感謝する、これは若者の夢が描ける、こんなに沖縄に向き合ってくれた総理はいないと感謝されました。その圧倒的多数賛成の後に、知事はそういう判断を独自にされたわけですよ。

 そして、九七年十二月二十四日、忘れもしない、クリスマスイブのときに名護市長が来られた。その二日か三日前、名護市で住民投票があったんです。そのときは、五四対四六ぐらいで、そんな大差ではなかったけれども、反対が多かったんですよ。しかし、その名護市長も、それをのみ込んだ上で、首長として、自治体の長として、住民投票というのはやはり一義的には首長の判断要素ですよね。それが、さっきちょっとお話をしましたけれども、官邸に来られて、私はここで切腹をする、介錯は家内だ、場所は官邸、遺言状は北部山原の末広がりの発展だと言って、名護市長辞職と引きかえに名護市長は受け入れたんですね。

 そのときは、何が申し上げたいかというと、県知事も市長も、一義的にはそれは地方の首長の判断要素となるべき投票結果は反対なものであったにもかかわらず、のみ込んで、しっかりと時の政権と足並みをそろえた。それほどの信頼関係が橋本総理と沖縄の関係にあったんですよ。

 今、総理、端的に聞きますけれども、どうお考えになっているか。安倍総理と沖縄との関係にそんな信頼関係があるんですか、ないんですか。端的にお答えください。

安倍内閣総理大臣 残念ながら、信頼関係ということについては、我々が進めている方針に現在御支持をいただけていないという状況があるのは私も承知をしております。

 しかし、これは、橋本政権のとき真摯に取り組まれたことは私も敬意を表したいと思いますが、あれから結局それができていないのも事実であります。もうあれから何年たつんでしょうか。普天間を移設すると言って、いまだにできていないのが事実であります。我々はその事実に向き合わなければいけない。

 そして、その中で、進んでいる中において、やはりこれは、民主党政権のことを殊さら言うつもりはありませんが、最低でも県外という中で、残念ながら、県外ということを言い、しかし、あれは最低でも県外ということになった中において、今までいろいろあったけれども頑張ってこれを進めようとしていた人たちも、実はみんな県外だったんですよ、そのとき、我々の党の支持者たちも含めて。県外に行けるんだったら県外の方がいいんですから。そこで県外ということになってしまって、しかし、その後、また鳩山さんがもとに戻った。いろいろなところを検討した結果、もとに戻ってきてしまったということがあって、その中で信頼関係が相当崩れたのも事実なんです。その上で、また再構築をしなければいけない。

 そして、しかし、日米の関係もあるわけですよね。米軍の再編成を行う中において、グアムへの海兵隊の九千名ですかの移転というのも進めてもらい始めています。今まで予算が凍結になっていたことを、米国との関係で、これはいわば進み始めるということになりつつあるわけでありますから、そういう意味におきましては、我々も最大限の努力をしているということは御理解をいただきたい、このように考えます。

江田(憲)委員 鳩山政権時のダッチロールについては、私も痛恨の一事だと思います。それまで築き上げてきたガラス細工のようないろいろなものが、それで一気に崩れ去った。それはいいんですよ。

 しかし、もうあれから十年たっている。安全保障環境は変わるんですよ。確かに、橋本政権のときには、普天間、要衝の地、返すはずがないということ。同時に、海兵隊の削減も要望だったんですよ、沖縄の。しかし、その橋本総理ですら、海兵隊の削減は提起できなかった。

 しかし、どうでしょうか。それから十年たって、二〇〇六年、むしろ米国の方から八千人の海兵隊をグアムに移転するんだという提案があって、合意したじゃないですか。言いたいことは、私は細かいことは言わないんですよ、安全保障環境というのは変わるんです、五年スパン、十年スパンということで。

 それから、総理、これは当然御承知だと思いますけれども、海兵隊の運用というのは、米国本土と、普天間に一年じゅういるわけじゃないんですよ、とにかく、訓練とか実戦とか、その後の研修とかといういろいろなフェーズに分かれて、半年以上、普天間は留守にしていると思います。

 そして、何よりも、最近、米軍の中から声が上がっているのは、北朝鮮のミサイルが二百発、三百発、この日本を狙っている中で、こんな前線の方に海兵隊を置いていくことが本当にいいのか、海兵隊の抑止力という観点から、もっと後方に展開すべきじゃないかという声も出てきているわけですね。

 ですから、私も苦しい立場なんですよ、だって、普天間移設を決定したときの官邸の端っこにいた当事者の一人ですからね。総理のおっしゃることもわからないわけでもないけれども、しかし、もうあれから二十数年たって、進まないんですよ。

 それから、玉城知事は、この前、土砂投入したときに、とにかく、天を見上げて、本当に嘆息をし、どうおっしゃったかというと、本当に胸をかきむしられるような気持ちだと。地元、琉球新聞は、軍隊でおどして琉球王国を潰し、沖縄を南の関門と位置づけた一八七九年の琉球併合と重なるとまで書いているんですよ。もう完全に、安倍総理と沖縄の信頼関係は破壊されているじゃないですか。そういう中でこういう基地建設を本当に強行していいのかどうかという点について、総理、本当に、立ちどまって、もう一度再検証しようという気持ちになりませんか。

 いや、私もよくわかるんですよ、その原点を知っているから。だけれども、何度も言いますけれども、安全保障環境は五年、十年スパンで変わるんです。海兵隊の抑止力の捉え方も変わってくるんです。

 そして、何よりも二〇〇〇年代、この普天間基地移設を進めたキャンベルさんというアメリカの国務省の方は、米軍は決して地元から歓迎されないところに基地を置くことはないんだともおっしゃっているんですよ。

 いろいろな意味で、今、沖縄のことを、国際環境、いろいろなことを勘案して判断をされるのが、私は、総理大臣、トップリーダーの役目だと思いますから、ぜひ、そういうお考えはないのかどうか、この点、再度お聞きしたいと思います。

安倍内閣総理大臣 これまでの経緯についてお話をされたんだろうと思いますが、これは、橋本総理とモンデール当時の駐日大使の会談によって、沖縄県内に代替施設を建設することを前提に、全面返還で一致をしたわけでございます。

 しかし、その後、日米でぎりぎりの交渉を行ってきているわけですよ、一つ一つ。その中で、厳しい安全保障環境のもとで、抑止力を維持しつつ、沖縄の一層の負担軽減を同時に実現するため、普天間の辺野古への移設に加えて、普天間の移設に加えて、在沖米海兵隊のグアム等への移転、これは、八千人ではなくて、今九千人になっています。

 我々の政権の前は、日米が信頼関係が崩れたことによって、予算は凍結をされていたんですよ。この凍結の予算が解かれて、いわば、この九千名、グアムを含めですから、グアムとかハワイも入るんでしょうけれども、それが進んでいくことになったわけでありますし、さらには、嘉手納以南の、これは七年越しだったんですかね、相当規模の土地の返還などを日米で合意をしているわけであります。これは実際に返ってきているわけですよ。普天間の場合はまだ返っていませんが、今言ったところは実際に実現をしている。それを実際に実現させているということは申し上げておきたい、こう思うところでございます。

 そこで、再検討はできないのかということでございますが、この厳しい安全保障環境のもと、日米同盟の抑止力、そして、中核的要素たる沖縄における海兵隊の存在の重要性に変わりはないと考えています。

 おっしゃるように、海兵隊というのは、ローテーションの中で、いろいろなフェーズがありますから、そこで動いているのは事実であります。そして、日米同盟の抑止力の維持と普天間飛行場の危険性除去を考え合わせ、検討を重ねた結果が現在の方針であります。

 先ほども、鳩山政権の例を挙げましたが、一回、最低でも県外と言われた。しかし、県外でも、ほかに、辺野古以外ないかということも、さんざん考えた結果、やはりこれは辺野古ということになったわけであります。その中で、今申し上げたように、あらゆるオプションをゼロベースで幅広く検討するとして、四十数カ所の場所について移設の可能性を探った、これは民主党政権時代なんですが、移設先について。再び辺野古を移設先として決定をしたということでありますから、このような私は混乱を繰り返してはならない、こう考えております。

 我々が、この方針を、こちら側が混乱しない中で方針を進めていることによって、今申し上げた成果は出てきているんですよ。あのままだったら、今の成果は出てきていませんよ。グアムへの移設も、これは凍結されたままになるでしょうし、嘉手納以南の相当規模の土地の返還ということも、恐らく起こらなかったんだろう、こう思っております。

江田(憲)委員 トランプ大統領は、大統領選のときは、一時は韓国からの米軍撤退にまで言及するような大統領が誕生したわけで、その大統領とは、もうノーベル賞を推薦するまでの仲でしょう。そういうのをちゃんと捉まえて、もっと大局的な判断をしていただきたいなと思います。これ以上は言いません。

 私は、総理が初めて翁長知事とお会いになった三日後に、知事公邸でお会いしました。当時維新の党代表でしたけれども。一言だけ申し上げると、知事が一番心配していたのは、本当にこれは、トラック何千台と、土砂を埋立てするときに、人間の鎖で流血事故でも起こったらどうなるんだ、想像もしたくないけれども、本当にこれだけは心配だとおっしゃっていたことを最後、申し上げたいと思います。

 そんなことを私も本当に想像したくもありませんけれども、そんなことが起こったら、もうそれは、アメリカは、そうはいっても建前は人権大国ですから、本当はアメリカだって好ましい事態ではないはずですよ。いろいろなことを総合勘案して、大局的判断を最後、求めておきます。

 さて、今度は日ロ交渉、北方領土問題に移りますけれども、ちょっと時間がどんどんなくなってくるので、もう私が言いましょう。安倍総理とプーチン大統領は、知事との会談とは違って、二十五回も会談をしている。しかも、プーチンさんとさしで、もう何回もやっている。これ、一覧表です。政府に出してもらいました。

 では、日本で、プーチン大統領と何回会見しているのかなと思ったら、このピンク色ですよ、たった一回、総理の地元でやった長門会談だけですね。では、総理が、モスクワでやろうがどこであろうが、ロシアまで行って首脳会談をやったのは何回かなと思ったら、何と十回ですよ。これが水色の帯で書いたところですよね。

 これ、私のときも、クラスノヤルスク合意って、エリツィン大統領と橋本総理で合意したんですけれども、申しわけないけれども、これは常識的に考えて、大体首脳外交というのは相互訪問が原則なんですよ。あっちが来たら今度は向こうに行く、それが対等の交渉というものなんですね。いや、多少、一回行って二回来る、それならいいですよ。事ほど、二十五回会談して、まるでお百度を踏むように、朝貢外交とは言いませんけれども、こんなことをやっているだけで、私に言わせれば、交渉のテーブルに着く前に負けなんですよ。本当に。これは、外交上の常識の類いの話なんですよ。

 総理、この点をどう思われていますか、本当に。

安倍内閣総理大臣 私も、総理大臣になる前は、官房長官とか副長官も長くやりましたし、外務大臣だった父の秘書官も務めておりました。ですから、例えば外務省は、非常にこっちが行ったら向こうが来るということにこだわっていたのは事実であります。

 しかし、ロシアの場合は、それだと交渉は進まないんですよね、全然、それは進まないんです。(発言する者あり)いや、でも、結果が出ていないじゃないですか。別に返ってきているわけではないんですから、返ってきているわけではないんですよ。これはやはり、返ってきて、平和条約を結んで、領土問題を解決をして初めて結果が出た、こう言われるわけであります。もちろん、四島が対象になったということは、それは今までそれを言っていなかったことが一応文書として成ったということは、努力をされたということだと思いますし、敬意を表します。

 しかし、大切なことは結果を出すということなんだろうと思っています。ですから、そこで、向こうが一回来ていないからこちらは行かないのかということになれば、これは進まないんですよ。そうすると、基本的には、これも細かい話ですが、橋本総理、そうおっしゃっている江田さんにしても、モスクワとクラスノヤルスクで、こちらが川奈ということになりますよね。そうすると一対二になるんだけれども、別に、私はそんなの、クラスノヤルスクと、あと……(江田(憲)委員「デンバー、クラスノヤルスク、川奈で一対一対〇・五です」と呼ぶ)モスクワには行っていなかったんだっけ。(江田(憲)委員「クラスノヤルスクと、一回対一回です」と呼ぶ)クラスノヤルスクと……(江田(憲)委員「デンバー・サミットで」と呼ぶ)デンバー・サミット……

野田委員長 そこでのやりとりは自重してください。

安倍内閣総理大臣 デンバー・サミットとクラスノヤルスクで一回ずつ。私も、二十五回の多くは大体国際会議の場等々、それが、例えばウラジオストクで開かれる場合もありますし、サンクトで開かれる場合もあります。

 基本的に、そういう考え方は、いわばやや官僚的なそういう考え方、外交儀礼的なそういう考え方をとっていたのでは、七十年以上残されてきた課題について最終的に結果を出すことは私はできないんだろうと。事実、そうじゃないですか。事実、そうですよね。ですから、そう申し上げているわけであります。

江田(憲)委員 だけれども、結果は出ていないじゃないですか、安倍政権だって。結果が出ればいいですよ、それで。しかし、今の状況は悪化しているじゃないですか。完全に足元を見られているじゃないですか、プーチン大統領やラブロフ外相に。じゃ、何ですか。四島、返ってくるんですか。そんなどころじゃないでしょう。今、二島ですら返ってこないような状況じゃないですか。ラブロフ外相によっては、第二次世界大戦の結果を認めろ、四島の主権はロシアにあると認めろ、それがスタートラインだと言い募っているじゃないですか。結果は出ていないんですよ、安倍政権でも。

 お聞きしたいけれども、プーチン大統領は何をされたんですか、二〇一四年に。クリミアを併合したんでしょう。これは国際法違反じゃないですか。総理だって当時、そういう発言をされていますよ、欧米各国だって。悪いけれども、こんな方に一方で法と正義を唱えて、領土は返ってくるんですか。そういうことをお考えにならないですか。一方ではクリミアを併合している、国際法違反の。こういう方に我々の法的な正義や立場を訴えたって、通用するはずがないじゃないですか。おまけにこうやってやっている。結果が出ればいいですよ。出ていないです。

 私が今心配しているのは、あの長門会談でせっかく、なけなしというか、もう本当に貴重に、プーチンが日本に来た。そのときは、共同声明はおろか、プレス向け声明、一枚紙ですよ、こんな。しかも、その一枚紙に領土の二文字もないんですよ。これが象徴しているんですよ。我々野党や国民は中身を知る由もないから、外見的な徴表で判断する、私は。こうやってお百度を踏んでいる、長門会談を息巻いてやった、しかし一枚の紙切れだ、そこに領土の二文字もない。これが象徴しているじゃないですか。どんどん後退しているんですよ。

 私が今一番危惧しているのは、私はもう完全に二島のみ返還にかじを切ったと思っているんですよ。しかし、それすら危ぶまれているというのが今の現状じゃないですか。率直にお答えください、では。

安倍内閣総理大臣 先ほどの議論であった、こちらが一回行ったら向こうがやってくる、それは私も十分承知をしておりますが、その上で、こちら側が何回も行っているではないかという非難があることは承知です。しかし、それを承知の上でも、この問題を私は、そういう非難を浴びてもなお解決をしなければいけない、こう決意をしているんです。

 そこで、長門会談における合意の重要性は、文書の名称によって決まるものではなくて、内容で決めていただきたい、こう思うわけでありますが、長門合意では、平和条約問題を解決する両首脳の真摯な決意を声明に書き込むことができたわけであります。

 そして、新しいアプローチで問題を解決するとの方針のもと、元島民の方々の航空機によるお墓参り、これはずっと長年の懸案だったんですよ。これは決して小さな成果では私はないと思っておりまして、元島民の皆さんの本当の悲願だったんです。お年を召されて、あれは船で行くのは大変ですから、それを飛行機で行くということを初めて受け入れて、ことしの夏にもそれを実現しようということになっております。

 そして、四島における共同経済活動の実現に向けた取組を今進めています。これはまさに、北海道の方々も含めて、向こうで一緒に仕事をしようという方々がパスポートを持たずに向こうに行って、向こうの方々と一緒に汗を流して地域をよくしていく、そして富をつくり出していくということを進めていく、これがまさに、この四島も含めて、両国の信頼関係を醸成していく、これはいわば初めての出来事、こういうことが起こり始めているわけでありますから、こういう新しいアプローチを進めていきたい、こう思っております。

江田(憲)委員 共同経済活動というものを新しいアプローチと称して、ソチのところで同意した以降、やはりこれは、ロシアはやっとクリミア併合に伴う経済制裁に風穴をあけられたと一時喜んだと報道されているように、これはどうなんですかね、欧米にとってみて、国際法違反だから経済制裁をして足並みをそろえようというときに日本が抜け駆けをしている。本当に厳しい目で見ていると思いますよ。

 当時、クラスノヤルスク合意ができたのは、いろいろな要因がありますけれども、しかし、やはり、当時のドイツのコール首相がエリツィンに、経済協力で影響力があったものですから、橋本とちゃんと領土交渉をやって平和条約を結べ、クリントン大統領も後押ししてくれた、そういう天の時、地の利、人の和があったんですよ。誰が考えてもわかるんですよ。今、天の時、地の利、人の和がありますか。ないんですよ。欧米だって支援しようなんて、毛頭思っていないですよ。白けた目で見ている。

 プーチンは、どんどんどんどん自分の原理原則、領土は武力をもってとるんだ、私、そんな話も聞こえてきましたよ、長門会談でさしになったときに。晋三、領土というのは武力でとるもの、血を流してとるものなんだ、理屈や会談でとるものじゃないんだ、そう言ったという話も聞こえてきました。もうそれはいいんですけれどもね。

 その結果が、こういうほとんど中身のないものになって、共同経済活動だといったって、お互いの法的立場を害さないって、全く進んでいないじゃないですか。だって、そうでしょう。小渕政権のときに同じことをやって、ついえた、頓挫したんですから。

 ですから、本当に私が今危惧するのは、やはり外交というのはタイミングがあるんですよ。それは、総理が在任中に解決したいという思いは、思いとしてあると思いますよ。しかし、これは国益全体にかかわる話なんですよ。こんなときに、政権にいる間に二島返還のみで決着させようなんて夢にも思っておられないと思うけれども、私も、元島民の皆さんの高齢化、十分認識していますけれども、しかし、だからといって、主権の問題をないがしろにはできないんですよ。

 ぜひ、押してだめなら引いてみるという勇気を、これは外交交渉だから、そのタイミングでないときは待ちの姿勢に、引いてみる。ラブロフ外相が、ずっと大戦の結果を受け入れろと言うんだったら、席を立つ勇気が、今、安倍総理には求められていると思いますが、最後、お答えください。

野田委員長 江田さんに申し上げます。

 質問時間が終了いたしました。

 総理、極めて簡潔に御答弁をお願いします。

安倍内閣総理大臣 はい。

 タイミングを待っても、七十年以上が経過をしています。ここで、いわば、時が経過をしていく、二十年、三十年たって、百年たったら、歴史のかなたに消えていく危険性すらあるんですよ。というのは、だんだん既成事実を重ねられてしまうということになります。今は向こうも、既に代を継いであの四島に住んでいる人々が出てきているわけであります。ここに三代目、四代目と歴史を重ねていってしまって、この現状を変えるというのは、今でも大変ですよ。

 それはしかし、江田委員のお話でありますから、例えば私は私の、一応私も、私とプーチン大統領の手で、決意をしております。しかし、そういう決意がなければ、さまざまな岩を砕くことはでき得ないと思っています。

 ただ、私は、別に功名心でやろうとはこれっぽっちも思っていないということは申し上げておきたいと思います。

江田(憲)委員 歴史に禍根を残さないことを切に望んで、私の質問を終わります。

 以上です。

野田委員長 これにて本多さん、山尾さん、長妻さん、江田さんの質疑は終了いたしました。

 次に、前原誠司さん。

前原委員 国民民主党の前原です。

 まずは、第二次安倍政権六年間の経済運営について質問をさせていただきたいと思います。

 麻生大臣になるのか茂木大臣になるのかわかりませんが、簡潔にお答えください。

 アメリカのムニューシン財務長官が、昨年十月十三日、インドネシアのバリだったと思いますけれども、日本と始める物品貿易協定交渉では、通貨安誘導を阻止するための為替条項を協定に盛り込む、これを求める考え方を明らかにしましたが、為替条項は交渉の対象になるんですか。

茂木国務大臣 日米通商交渉については、昨年九月二十六日に公表されました日米共同声明に沿って交渉を進めるということで日米間一致をしております。

 その上で、為替の問題でありますが、昨年九月の日米首脳会談、麻生副総理も私も同席をしておりますが、そこで話は全く出ておりませんし、今申し上げた共同声明にも為替の話は入っておりません。

前原委員 その後でしょう、ムニューシンの話は。

 ですから、これからの協議で、日本の意思として、為替のこの協議はしないということを明確に言ってもらえませんか。

茂木国務大臣 日米通商交渉、カウンターパートになりますのはライトハイザー通商代表であります。

 そして、我が国として、いかなる国とも国益に反するような合意を行うつもりはございません。

前原委員 答えていないんですよ。

 総理、トランプ大統領との話の中で、自動車、それから農産物、恐らく為替、こういったものをツイッターで言っていますよね、お得意のツイッターで。中国、EU、その他の国々、この通貨安誘導を認めない、こういう発言をしていますね。

 この為替の問題を、もちろん自動車の数量規制とかいろいろあると思います。きょうはそれは触れませんが、この日米の物品貿易協定において為替を入れない、これが日本の国益になる、私はそう思いますが、総理、いかがですか。

安倍内閣総理大臣 為替については、日米の二〇一七年二月の初めての首脳会談ですが、その前の年はまだ正式になっていませんから、初めての首脳会談においてトランプ大統領と合意をしたとおり、専門家たる日米財務大臣間で緊密な協議、議論を行うことになっております。

 いずれにせよ、我が国としては、いかなる国とも国益に反する合意を行うつもりはないわけでございまして、私とトランプ大統領との関係におきましては、為替については財務大臣同士で話をしようということで合意をしております。

前原委員 話を聞いていると、国益に反するということの中に為替のその協定を入れるのか入れないのかということを明言されていないんですよ、二人とも。それをはっきり言ってもらえませんか。ムニューシンは明確に言っているわけですよ。

 為替条項を協定に盛り込むように言うということについて、日本国政府としては、国益に反するかどうかということを聞いているんです。総理、総理。

茂木国務大臣 まず、事実関係から。

 総理からもありましたように、為替の問題については、この通商交渉ではなく、財務の専門家、財務大臣を中心に、そこの間で話をする。そして、通商交渉につきましては、私と、そしてライトハイザー通商代表が窓口となって交渉を行うということであります。

前原委員 同じ答弁を繰り返しているだけじゃないですか。国益になることについてしっかり議論するということについて、為替のことについては入れないということをなぜ言えないんですか、総理。

 総理、総理、全体を、だってこの人は担当じゃないんでしょう。担当じゃない。今、担当じゃないと自分で言っていたじゃないですか。

 担当じゃないことについては、ちゃんと、総理、答えてください。

安倍内閣総理大臣 済みません。私と大統領との間においては、私と大統領がこの問題について議論したり、あるいは、外に向けてドルがどうのこうの、あるいは円がどうのこうのと言うのはやめましょう、これは大きな影響を与える、これはやはり専門家同士に任せましょうということで合意をしているわけでございます。

 そこで、いわばムニューシンがそういう発言をされておられるということでございますが、基本的には、ムニューシン財務長官と対応するのは、麻生財務大臣が対応されるということでございまして、いずれにせよ、茂木さんは先ほど答弁したとおりの姿勢で臨んでいく、こういうことが今決まっているところでございます。

前原委員 これは役所のたらい回しと一緒ですよ。要は、二回答えた茂木大臣は、自分の範疇ではないということを二回答えられた。

 それで、総理が全て、森羅万象まで全部把握されるんでしょう、森羅万象。だったら、日米の物品協定の議論について、為替の項目は入れない、これは日本の国益に反するということを明確におっしゃったらどうですか。そのことを今聞いているんですよ。

安倍内閣総理大臣 そこで、私と大統領との間ではそういうことになっています。今申し上げましたように……(前原委員「違う違う。自分の意思を聞いているんです」と呼ぶ)いやいや、待って。

 順を追うと、為替のことについては財務大臣同士がやろうと。そして、茂木大臣も話しました。これが果たして、では、茂木・ライトハイザーのところにこれがかかわってきたらどう対応していくかということについては、茂木大臣から答弁させたいと思います。

前原委員 もうこれはいいですよ。だって、答えないんでしょう。

 国益になるかどうか、入れるか入れないか、答えますか、本当に。じゃ、答えてください。ちゃんと答えてください。

茂木国務大臣 日米の通商交渉、具体的な協議はこれから始まります。そして、その協議、これは昨年の九月二十六日の日米共同声明に沿って行うわけであります。

 交渉であります。基本的には、いかに自分側の情報を抑えて相手側の情報をたくさんとるか、これが、競争優位に立つ、この上で極めて重要であります。

 今、日本が、この段階で、どんな交渉をするか、手のうちをさらすことによって国益を害することは避けたい、このように思っております。

前原委員 それは詭弁ですよ。だって、為替というのは、これはまさに、後で質問しますけれども、向こうが、中国、そしてEU、その他の国々、日本、こういう国々を名指しをする中で、通貨安政策をしている、これについて是正をさせるんだということを明確に言っていますよね。

 では、これを、今の茂木大臣の話だったら、バーターするんですか、ほかのことと。おかしいじゃないですか。ほかのこととバーターをするような話じゃない。根幹の話ですよ、為替というのは。

 したがって、手のうちを示す、示さないということじゃなくて、為替については根幹のことであって、これについてはしっかりと我々としては協議はするけれども、ムニューシンは為替条項ということで文書に入れようとしているんです。議論はするけれどもこういう条項については入れないと、何で明確に言えないんですか。

麻生国務大臣 スティーブン・ムニューシンという人と二年近くやっていますけれども、ムニューシンから為替の話を直接言われたことはただの一度もありません。これが事実であります。直接言われたことはない。外でしゃべるのは、今の方は皆、全部外に向かってしゃべられますけれども、それを直接私に面と向かって、これでどうだと言われたことはありません。

 基本的に、この人も、いわゆる銀行、金融関係から来られた方ですからね、背景が。したがって、いわゆる為替というものはマーケットに任せてしかるべきで、不当に政府が介入するというのはいかがなものかということに関しては双方で十分理解しています。

 その上で、議会がありますから、こちらの場合はね。いろいろ言われるのに対してどう対応するかというのは、それは大変なことです。

前原委員 甘いですね。全くもって甘い。自分は直接言われていない。そして、為替というのは、当たり前のことで、そういうものはマーケットで決まるものだと。それだったら、明確に為替条項をこの協定の中に入れるなんて言いませんよ。

 まあ、後でロシアの話も時間があったらしますけれども、腰砕けというか、腰抜けというか、こういうことについて、日本の立場はまずこうなんだということを明確に言ってからやるのが私は大事なことだと思いますけれどもね。交渉の駆け引きの材料にする、取引材料にするという茂木大臣の話には、ある意味であきれました。

 次に行きますよ。次というか、同じこと。

 一枚目の資料でありますが、私は、トランプ大統領のやっていることについて、評価をすることもあれば、評価をしないこともいっぱいあります。例えば、しないことについて言えば、パリ協定からの離脱、あるいはイランの核合意、それからエルサレムに大使館を移すこと、さまざまなことについて、私はこの人のやることについては反対であります。

 ただ、私は、日本が円安誘導をしているというこのツイッター、あるいはムニューシンの問題意識については同感なんですよ。つまりは、異次元の金融緩和というのは、結果としては円安誘導なんですよ。

 この表を見ていただきたいんですが、まず緑、これはドル・円の購買力平価です。購買力平価という言葉は何か難しいですが、簡単に言うと、一物一価ですから、一つの物は同じ値段ですから、何の障害もない状況においてはどこで買ってもその物は同じ値段で買える。そのドルと円のいわゆる均衡する点が購買力平価でありますけれども、それは今、大体百円なんですね、百円。そして、この赤の折れ線グラフというのは、これはドル・円相場、為替です。そして、青がいわゆる実質実効為替レートといいまして、ドル・円だけではなくて全ての通貨、貿易をする相手国との量、これを加重平均をして出しているということで、これは通貨の実力ということを言われているわけでありますが、これが実質実効為替レートであります。

 昨年四月にアメリカの財務省が出した為替報告書では、円の実質実効為替レートは過去二十年平均よりも二五%近く円安水準にある、つまり円安にあるということを明確に米財務省は、ムニューシンのいるところは言っているわけですね。

 さて、黒田総裁、来ていただいていますか。

 二%の物価目標達成のために金融緩和を行っている、為替が目的じゃないということはわかっております。しかし、結果として、この異次元の金融緩和というものが円安を招いているということは認められますか。

黒田参考人 委員御案内のとおり、為替レートの決定に関してはさまざまな理論がございますが、非常に長い、二十年とか、超長期については購買力平価説というのが有力であり、景気循環の中では、金利格差とか成長率格差とか株価の格差とか、そういうものが影響するという議論が有力なわけですが、ごく短期、当面のいろいろな為替の動きというのはその他さまざまなことで決まってまいりますので、何か一つの要素で決めるということはできないと思います。

 金融緩和、米国も金融緩和を続けてきたわけですが、我が国は我が国の経済、物価に合わせて大胆な金融緩和を続けているわけでして、そのもとで、金利格差はさまざまに動いていることは事実であります。ただ、金利格差と景気循環を通じた中期的な為替レートがぴったり並行して動いているかと言われると、そうでもないんですね。

 ですから、金融政策の違いあるいは金利の格差というものが為替に影響し得るということはそのとおりだと思いますけれども、今の為替レートについて、我が国の金融政策、金融緩和が為替の下落を引き起こしているとは、私は一概には言えないと思っております。

 したがいまして、委員の問題意識はよくわかるんですけれども、現在の日本銀行の金融緩和というのはあくまでも物価安定目標を達成するために行っているわけでして、その観点からさまざまな要因を見る際に、当然、為替レートというものは影響しますので、それを見ていますけれども、為替レートをターゲットにして金融政策は運営しておりませんし、その点は、米国を含めて各国からの理解は得られているというふうに思います。

前原委員 今の答弁の中で、いろいろおっしゃいましたけれども、いわゆる金融緩和というものが為替の変化の要因であるということは認められたんですよ。いろいろありますよ、ほかにもありますよとおっしゃったけれども、主要な要因であるということは認められたわけです。

 ちょっと二枚目の資料をごらんいただきたいんですが、これは、青がアメリカの金利、長期金利です。そして、赤が日本の金利、長期金利であります。

 黒田総裁になってからしばらくはアメリカの金利も上がっていなかったわけでありますが、テーパリングという資産購入の減少、そして利上げを始めてということで、どんどんどんどん開いていった。それが、言ってみれば、この金利差が開くことによって、円安、まあ、お金を持っている人は金利の高いところで運用しようとしますから、その高いところで運用しようと思ったら、自国の通貨を売って高いところの通貨を買う、これは当たり前ですよね。ですから、今認められたわけですよ。

 さて、問題は、この円安になっているということが、企業にとってはプラスなんですよ、為替効果、そして株、こういうことにとってはプラスなんですが、では、日本の経済にとってプラスになっているのかということを三番目のグラフで見ていただきたいと思います。安倍総理は民主党政権と比べられることが大好きだということで、あえてその民主党政権と比べる表を出させていただきます。

 いろいろな御意見はあると思いますが、実質GDPで申し上げると、上を見ていただくと、民主党政権の年率平均というのは成長が一・六%、それに対して安倍政権は一・二%なんですね。実質の伸び率、年率です。ここの大きなポイントは何かというと、民間最終消費というのが民主党政権のときは一・二で、そして安倍政権では〇・五なんです。GDPの六割が消費ですから、つまりは、消費が上がってこないということが大きなポイントになっているわけですね。これを上が示しているわけです。

 これは何度か示したことがありますから、下をごらんください。

 安倍政権は民主党政権と比べてこうなりましたよということをおっしゃいますけれども、安倍政権の六年間というのは、世界経済が非常によかったんですね。世界経済が非常にいい中でいい数字を得てこられたわけでありますが、下の図の上は、民主党政権の三年間の、いわゆるOECD加盟国三十六カ国の、この三年間の加重平均で名目成長率、実質成長率がどうだったかということをあらわしたものなんです。

 三十六カ国の中で、日本の実質の順位、これは加重平均ですからあくまでも目安でありますけれども、二十位だったんですね。名目は三十二位。では、安倍さんは、口を開けばアベノミクスはよくなったよくなったとおっしゃいますけれども、世界全体で見ると、実質は三十三位に転落しているんですよ。落ちていっているんですね。名目は一歩後退、三十三ぐらいであります。

 これは、安倍総理、私は、先ほどの円安というようなもの、これは輸出企業にとってはいい、インバウンドにとってはいい、しかし、逆に、名目賃金はほとんど上がらなくて、そして円安で輸入物価が上がって、そして実質賃金が下がる、こういう、国民にとってはマイナスだという議論をさんざんさせていただきました。それもあるでしょうし、このグラフを見られて、他の政権と批判をするんじゃなくて、なぜ世界の中で日本はこれだけ成長率が低いのか、あるいは安倍政権の中で落ちていったのか、これはどのように判断されますか。

安倍内閣総理大臣 私が答弁した後、また更に茂木大臣から答弁、私は簡単にさせていただきたいと思います。

 安倍政権としては、極めて短い期間で、デフレではないという状況をつくりました。そこで、名実が逆転している中で、これはかなり早い段階でもとに戻した、正常な状況に戻したのはお認めいただけると思います。

 であるからこそ、名目GDPは一一%以上成長したわけでございまして、その前は、第一次安倍政権を含め……(発言する者あり)済みません、ちょっと、後ろで……

野田委員長 御静粛に。傍聴席からの発言は慎んでください。

安倍内閣総理大臣 長妻さんと同じで、私もしゃべりにくいものですから。

 ここで、いわば、前回の景気回復が最長の期間では、デフレが続いていく間だったものですから、名目GDPは二・五%しか伸びなかったんですが、四倍になった。しかし、確かに、委員が御指摘になったように、OECD加盟国の年平均は二%成長であったのに対し、日本の平均成長率は一%程度と低くとどまっているのも、これは確かに事実であります。

 だからこそ、我が国においては、成長戦略を更に加速させ、潜在成長率を高めていく必要があるんだろうな、こう思っているわけでございまして、企業の、まさに第四次産業革命においてこれを生かして、生産性を向上させていくということが求められていると思います。

前原委員 二つ申し上げたくて、名実が逆転したというのは事実でありますが、これは、隣に座っている麻生総理のときにリーマン・ショックが起きて、あのとき世界経済がどおんと落ち込んだわけです。そして、その中からどんどんどんどん上がっていく中で、GDPギャップというものは民主党政権の中でも縮まっていって、そして逆転が起きたのがこの第二次安倍政権だったということは申し上げておきたいと思います。

 先ほど江田委員がおっしゃっていたように、もう吉田茂さんを抜いて歴代第二位の長い長い期間でやっておられて、そして、成長戦略を加速させというのは、いつからやっているんですか。三本の矢というのは六年前からやっているんじゃないですか。六年前からやっていて、そして、この世界の中でどんどんどんどん順位が落ちていっているということについては、それは、単に成長戦略を加速されということじゃなくて、もう少し本質的に、今の政策が本当に正しいのかどうなのかということも突っ込んで見られた方がいいんじゃないですか。

 経済は成長しないのに、無理やり財政出動だ、金融緩和だということでアクセルを吹かして、そして、その結果として、言ってみれば、実質所得が下がっていることの中で、また、大事な老後やあるいは若い方々への投資というものができない中でこういう状況に至ったのが今の六年間ということをお認めになったらどうですか。

茂木国務大臣 確かに、民主党政権発足前にリーマン・ショックが起こりまして、日本の実質GDP、六%以上、当時でいいますと三十二兆円落ち込んで、それで、そこから戻る期間ですけれども、世界の各国、主要国が二〇一一年で戻っているんですね。それに対して日本の場合は二〇一三年までかかっている、これは事実であります。

 それから、名目と実質の話はしませんが、少なくとも、名目成長が上になっているという健全な姿はできつつある。

 ただ、消費についてはまだ弱い動きがある。これについては、特に若い世代、二十代、三十代の可処分所得、そこの中での消費性向が伸びていない。ですから、我々としては、人づくり革命をしっかり進めることによって、そういった世代に投資をしていきたいと思っております。

前原委員 驚いたのは、こういう話は私は総理がみずから直接答弁をされると思いましたけれども、こういう、何か自信がなくなるとほかの人に振るというのも……(安倍内閣総理大臣「そうじゃない」と呼ぶ)いやいや、そうでしょう。だって、今までこれだけ自分自身の、経済がアベノミクスでこんなによくなりましたよと言って、それは実は、井の中のカワズとは言わないけれども、日本の中での話であって、世界全体で見ると成長率が落ちていたということについて、答弁、何が問題ですかと聞いたら、自分が答えずに経済財政担当大臣に振る。私はこんな総理は、逆に見たくなかったですね。

 やはり、正面切って、どこが問題なのかということをもう一遍検討されたらいいと思いますよ。

 残りの時間で外交問題をやらせていただきたいと思います。

 ロシアの問題でありますが、私は、総理とは当選が同じで、そして、保守政治家だというふうに認識をしております。私も自分自身は保守の政治家だという認識を持っております。

 その中にあって、ラブロフ外相や、あるいはガルージン大使がインタファクス通信のインタビューで、日本側との協議では南クリル諸島の主権をめぐる問題や島の引渡しに関する問題は議題になっていない、議題になっていませんよということを言っているわけですね。そして、多々言われることでありますけれども、要は、負けたんだから、負けたことを認めろ、ロシアの主権である、ロシアの領土であることを認めろ、それから議論だということですね。

 そこまで、まさかと思いますけれども、そういう議論の土壌に乗って、それでも二島を返還してもらうということになると、全く土台が変わってきますよ。

 日ソ中立条約というものをソ連がこれは一方的に破棄して、四一年に結んで、五年間有効、そして自動延長というものを一方的に何の前ぶれもなく破棄して、そして日本の北方領土を不法占拠した。そして、この北方領土については固有の領土ということで、固有の領土というのは今までほかの国の人が住んだことがないというのが固有の領土でしょう、ということをずっと言ってきた。それが日本の立場であったわけでありますが、まさか、この点を百八十度ひっくり返して、いや、ロシアのものでした、だけれども日ソ共同宣言に基づいて二島を返してください、こんなぶざまなことはないでしょうね。

安倍内閣総理大臣 お答えをいたします。

 これは、私どもの認識あるいは法的立場というのは全く一貫して変わりがないということは申し上げておきたい、こう思っております。北方領土は我が国が主権を有する島々でありますし、この立場には変わりはありません。表現は異なりますが、北方領土が置かれた状況についての法的評価は同じであります。

 委員も、北方対策担当大臣のときと外務大臣のときにおいては表現を変えておられるというふうに承知をしておりますが、それはやはり、静かな状況の中で交渉ができるかどうかに、まさに、うまく交渉を進めていくことができるかどうかがかかっているんだろう、こう思うわけでございまして、それは、今、前原委員がおっしゃった発言あるいはその思いというのは多くの国民の皆さんが共有しておられるということは、私はもう率直に認めるところでございますが、今の政府の立場としては、とにかく交渉を前に進めていくことを最優先で考えなければならない、こう考えております。

前原委員 交渉を進めるということと、日本の立場というものをしっかり守った上でそして果実を得るというのは、私は違うと思いますよ。

 そして、まず、私が国土交通大臣兼北方担当大臣だったときと外務大臣のときに使わなかった言葉は、たった一つです。不法占拠という言葉だけ使わなかった。しかし、日本の固有の領土であるということについては、何度も何度も言っていましたよ。そして、四島の帰属を確定しということも言っていましたよ。

 もう時間が来て、次の同僚議員にバトンタッチしたいと思いますけれども、総理、このことだけはぜひ、僣越ですが申し上げておきたいというふうに思います。

 私は、気持ちはよくわかるんです。領土問題、最後の領土問題を解決したいという気持ちはわかるし、そして、ロシアが実効支配をしているんですから、こちらがしっかりと働きかけてやらなければ動かない話だということはよくわかっています。しかしながら、歴史に責任を持つということを総理は考えていただきたいんです。

 歴史に責任を持つということは、そこで二島返ってきました、今まで七十何年間も動かなかったことが動きました、ではなくて、日本の国柄、そして日本が今まで七十数年間しっかりと歴史的な立場として物を言ってきたことを百八十度変えて二島が返ってきて、これはほかの国から笑われますよ。

 それは、多くの国民が望むものでもない。日本の誇り、日本の国柄、そして今までの歴史。元島民の方々も、それで戻ってきて喜ぶ方はおられないと思いますよ。そこはしっかりと日本の立場というものを守った上で、そして交渉を進めるということ、その一線は崩さないということをもう一度答弁いただけませんか。

野田委員長 質問時間が終わっておりますので、総理、簡潔に答弁をお願いします。

安倍内閣総理大臣 先日、北方領土の日に際しまして、北方領土返還要求全国大会に出席をして挨拶を行ったところでございますが、このときに数名の元島民の皆様とお目にかかる機会がありました。私も、何回もそういう方々とお目にかかっております。

 その皆さんは、例えば、二年前の長門会談で私とプーチン大統領が確認した新しいアプローチに基づき、航空機によるお墓参りで現地に行かれた元島民の方は、そのおかげで択捉島の墓地で倒れていた先祖のお墓をきれいに修復することができた。これは、まさに航空機で行くことによって、今まで船で行くのは、あそこは荒れますし、なかなか行けないので大変なんですが、それが可能になったということでございまして、何とか早く、一日も早くこの問題を、自分たちも高齢化している中において解決をしてもらいたい、自分はこのふるさとに帰って朝を迎えたいということであったわけでございます。

 その中で、もちろん、歴史がどう評価するかというのは常に我々政治家が直面することでございまして、まだ、もちろん結果は残念ながら出すことができていませんが、当然それは歴史から厳しく評価される、このように考えております。

前原委員 厳しく評価をされるのではなくて、歴史で正しい評価をされるように交渉することを望みます。

 終わります。

野田委員長 この際、奥野総一郎さんから関連質疑の申出があります。前原さんの持ち時間の範囲内でこれを許します。奥野総一郎さん。

奥野(総)委員 国民民主党・無所属クラブの奥野総一郎でございます。

 きょうは、順序を変えまして、朝の長妻委員の続きをやりたいと思います。

 中江秘書官、きょうもお見えいただいているかと思いますけれども、中江秘書官からまず伺いたいと思います。

 先週の金曜日ですかね、テレビは入っていませんでしたけれども、中江秘書官が最初にこの国会にお見えになったとき、私が真っ先に尋ねたのは、毎月勤労統計の改善に関する検討会について報告を受けましたかということでありました。

 なぜか。三月三十一日に、当時の宮野審議官そして姉崎部長が官邸に来られて、総理秘書官みずからが、関心事項という形で、毎年勤労統計がさかのぼってマイナスになるというのはおかしいんじゃないか、こういう問題意識を表明したということなんですね。

 私も役人をやっていたからわかりますが、秘書官の言葉というのは総理の言葉そのものなんですよ。官邸がそう言っているのに対して、その後何も言わない、要するに宿題を与えたわけですよね、関心事項ということは、要するに、きちんと解決してこいよ、答えを持ってこいよということを暗に言っているわけですよ。それを、打ち返しがなかったというのはあり得ないんですよ。検討会を開くということは聞いたと。たしか、いつかわからないが聞いたとおっしゃっていましたが、その後一切報告がないというのは絶対あり得ないんですよ。そんな無責任なことを役人がするはずはないんです。何らかの形で必ず答えを持ってくるに違いない。

 そこで、私は、この報告を受けましたか、とりわけ、その第五回、第六回の間ですね、この間、八月の七日と九月十六日の間に受けましたかということを二回にわたって伺いました。しかし、そのときの答えは、二回とも、検討会を始めるということとしたという報告を受けましたが、その検討の途中あるいはその検討の結果がどうなっているかという報告を受けた記憶はございません、二回とも、記憶はございません、こうおっしゃられたわけであります。

 そして、その後、我が党の後藤祐一議員が質問をして、記憶の限りではというんじゃなくて、はっきり答えてくださいねというのに対して、厚労省のこの検討会について、私は一切、会の模様とか、どんなことが話し合われているとか、そういうことは聞いておりません、一切聞いておりませんとまで、この国会の場で答弁をされているわけであります。

 しかるに、けさの長妻委員への答弁、いかがですか。記憶はないけれども、言ったかもしれない、自分の思い、さかのぼって下がるのはおかしい、ローテーションサンプルもあるんじゃないか、そういう思いを言ったかもしれない、こうおっしゃったわけであります。

 ここで、再度、もう一度確認をさせていただきますが、我々にした答弁は違ったんですか、うそだったんですか。実際は、朝ありましたように、九月十四日に、宮川審議官そして姉崎部長から話を聞いたんですか。一切ないと今言い切れるでしょうか。

中江参考人 お答え申し上げます。

 先週、奥野委員から、今お話しになられたように、検討の途中の報告を受けた記憶があるかということに対しまして、今お話しになられましたように、報告を受けた記憶はございませんという答弁を二回申し上げているのは事実でございます。

 それから、ほかの、その日、同じ日に、与党委員の御質問に対しましても、会の模様とか、どんなことが話し合われているとかということを聞いておりませんということを御答弁したのは事実でございます。

 それで、けさの、けさというか先ほど長妻委員に御答弁いたしましたように、私、九月十四日に厚労省が説明に来たということですが、実は本当に記憶がございません。そういうことでありますので、先週もそのような御答弁を申し上げましたし、きょうも、実はまだ記憶が、そういうような記憶がございませんので、そういう御答弁を申し上げたということでございます。

奥野(総)委員 今の私が求めている答えは、一切話を受けていないと、後藤委員に答弁したように、一切話を受けていない、内容についても受けていないということを今でも言い切れますかと、端的に、言い切れるか言い切れないかだけ答えていただきたい。

中江参考人 厚労省からそういうお話があったというふうにきょう聞きましたけれども、正直、全く記憶がございません。ただ、厚労省が説明に来たということでございますので、私としては、一切なかったかどうかという、そういう客観的なことについては申し上げられません。

 ただ、私は全く記憶がない、そういうことでございます。

奥野(総)委員 要するに、一切ないとは言い切れないということですね。言い切らなかったわけですから、言い切れないということだと思うんですが。

 さらに、そのとき重ねて、総理に報告をしましたかということも伺ったと思うんですね。普通は、聞いた話で重要な話は総理に耳打ちをすると思うんですよ。自分で温めていてもしようがないわけですから、こうですよという話をすると思うんですよね。とりわけ、この後、経済財政諮問会議でも問題になるわけですし、総理の御関心事項でもある。あるからこそ聞かれたわけですよね。

 これ、全然、全く総理に上げなかったと、九月十四日の話も、それ以前もそれ以後も、全くこの検討会の話について上げなかったとはっきり言い切れるんでしょうか。(発言する者あり)

野田委員長 ちょっと、静かにしていてくださいね。

中江参考人 お答え申し上げます。

 三月に厚労省に問題意識をお伝えしたことについての当時の厚労省とのやりとりについては、総理には御説明しておりません。

 また、その後、九月三日の答弁の勉強会の際については、答弁の中身をそのまま読んで御説明しただけでありまして、過去にさかのぼって三年間大幅に入れかわるとか、その件について厚労省とやりとりをしているとか、そういうお話は、御説明はしておりません。

 それから、きょうの、九月十四日、説明に来たというのは、私、それは記憶がありませんので、総理にも御説明しておりません。

奥野(総)委員 もう一度聞きますが、九月二日、十四日にかかわらず、この件について、一切総理に報告をしたことがないと言い切れますかということなんです。

中江参考人 厚生労働省という一つの省庁の一部局の検討会でございます。私は問題意識を持つようなことでしたけれども、この件については総理には御説明しておりません。

奥野(総)委員 はっきり、一切ないということで、こちらは一切ないということでおっしゃられたということで、確認をしておきたいと思います。

 ちょっと角度を変えますけれども、けさ出てきた資料、決裁文書、この毎月勤労統計の改善に関する検討会の決裁文書がけさ理事会で出てきたんですが、一つ気になるのは、そもそも、これは五回で終わる予定だったんですね。第五回で終了、八月上旬に報告書の取りまとめということで、五回で終わるということで、この報告書が出ていたわけであります。

 ところが、今問題になっているのは六回目の話で、五回目と六回目で結論が変わっているんじゃないかと。ローテーションサンプリングについて、五回目では、とらない、全部入れかえでいくんだと取りまとめをしている。あるいは、ベンチマークについても補正をするという結論をしている、それが、ベンチマークはあれですね。六回目では、ローテーションサンプリングについては引き続き検討ということで、取りまとめが中間的整理に変わったということなんですね。

 この議事録を見ると、六回目が慌てて設定された様子がわかるわけであります。五回目の最後のところで、日程の調整をしますと。これはタバカリさんですかね、手計補佐から、次回は九月の中旬の開催を予定しております、日程調整につきましては、この後速やかに事務局より行うこととしています、こう書いてあるんですね。

 第四回の終わりは、第五回は八月の七日ですとはっきり言っているわけです。普通は、お忙しい先生方ですから、きちんと日程調整をした上で検討会が立てられているはずなんです。五回の予定でやっていて、急遽六回目が立てられたということだと思うんですね。

 この五回目と六回目、なぜ六回目に延期されたんでしょうか。これは昼間通告していますが、厚労省、お願いしたいと思います。

藤澤政府参考人 初めに、五回目の議事録を今御紹介をいただきましたけれども、この補佐の名前はテバカでございます。

 それから、その五回目の議事録で、この手計補佐の発言の前に、阿部座長が、「また、本日出た御意見等も踏まえて、再度素案を事務局と私で議論して、次回の検討会で、また、整理した案を提出して、皆さんに御検討いただきたいと思います。」そういう発言がございました。

 当初、この検討会を設定する際に、五回で、八月の五回で終了するというふうな予定になってございましたけれども、これは検討会の開催を決めた五月時点において、あくまで予定として示したものでございます。

奥野(総)委員 答えになっていないんですけれども。

 これは五回の議事録を見るとわかるんですが、ほぼ取りまとめられているんですよね。取りまとめますと阿部座長が言っていて、ほぼ取りまとめられているんですよ。普通、こんな会議は、修文は、後で直して見てもらえばいいわけでして、わざわざもう一回開く必要はないんだと思うんですね。だから、急遽開かれたということだと思います。

 これはひょっとして官邸に気を使ったんじゃないか、こう推測されるんですが、偶然の一致かもしれませんけれども、首相動静、八月、九月、十月を見たんですが、八月の七日がこの検討会だったんですよ。金曜日なんですね。金曜日の夕方に第五回の検討会が行われているんですが、翌八月十日の月曜日の午前中に、当時の塩崎厚労大臣が官邸に入ったという記録があるんですね。

 これは偶然の一致かもしれないけれども、秘書官に伺いたいんですが、これ、記憶がありますか。

野田委員長 奥野さん、御通告はされていますか。このことについて御通告されていますか。(奥野(総)委員「記憶があるかないか」と呼ぶ)

中江参考人 いや、御通告いただいておりませんので、わかりません。

奥野(総)委員 通告はしていなかったんですが、偶然かどうか、こういう事実があるということです。

 これも通告していないんですが、大臣、いろいろ疑惑が出てきているわけですよ。中江秘書官は記憶にないとおっしゃっていますけれども。結論がなぜ変わったのか。第五回と第六回、なぜ変わったのか。あるいは、十二月十一日の統計委員会の基本計画部会の中で、もういきなり結論が決め打ちで、ローテーションサンプリングと出るわけですよ。それから、ベンチマークも結論が変わってしまっているわけですよ。

 このあたりについて、きちんと厚生労働省の方で、経緯ですね、どういう意思決定がそもそも行われたのか。平場では全然意思決定の過程が見えないんですね、検討会をすっ飛ばして結論が出ていますから。どうやって意思決定が行われたのか、どこに根回しがされたのか、きちんと調査されたらいかがですか。

 そうすると、疑念が晴れるわけですよ。総理は官邸はかかわっていないとおっしゃっていますから、そうであれば、主管の大臣である厚労大臣がきちんと調査をして、これはつまびらかにすればいいじゃないですか。いかがですか。

根本国務大臣 委員、今いろいろなことを言われて、私に質問がありましたが、第五回と第六回の経緯だけ申し上げますと、第五回……(奥野(総)委員「いや、もうそこはいいですから。調べるかどうか」と呼ぶ)いや、これだけ言わせてください。第五回検討会に事務局が提出した素案は……(発言する者あり)

野田委員長 お静かにしてください、傍聴席の皆さん。お静かにしてください。

根本国務大臣 検討会での御意見を踏まえて修正されることを前提とした文書……(奥野(総)委員「調査するかどうか」と呼ぶ)いや、五回と六回とおっしゃられたから。そして、樋田さんはそのとき、ローテーションサンプリングも必要ではないかということを言ったんですよ。そして、阿部座長が修正しますという経緯がありました。その意味では、第五回で完結するようなものではなくて……

野田委員長 大臣、簡潔に御答弁をお願いします。

根本国務大臣 第六回に、第五回の議論を踏まえて、特に樋田委員のローテーションサンプリングの必要性という指摘を踏まえて、修正しますといって、それが第六回の検討の整理案として出された、この経緯があります。

奥野(総)委員 全然そんなこと聞いていなくて、なぜその間に意思決定が変わったんですかということを、みんな、そこが謎なわけですよ。官邸の関与があるのかないのかというのが関心事なんだから、大臣の責務としては、やはり、官邸の関与はない、ないというならないということで、きちんと調査をして世の中につまびらかにすることが厚生労働大臣の職務じゃないんですか。なぜ答えられないんですか。

 いいです、時間がなくなってきたので、次の質問に。

 これも厚労大臣に伺いたいんですが、これは報道資料なんですけれども、最初、十二月二十八日の日に朝日新聞が、「全数調査怠る」、こういう記事が出ました。そして、その後、一月十日になって、「勤労統計 昨年一月から補正」「厚労省、公表せず」、こういう記事になっているわけですよ。これは、大臣が報道発表する前に次々とマスコミから出て、大騒ぎになっていくわけですね。

 石原元室長もおっしゃっていますけれども、何が影響が大きいといって、補正をしていなかったことなんですよ。補正をしなかったことで、統計の数値が上振れをしている、あるいは雇用保険にも影響が出てくるわけですね。この一番重要な話をずっと放置してきた。これは、マスコミに抜かれるまで出てこなかったんですね。

 実は、大臣は、一月の八日に記者会見をしているんですね。これは、恐らく十二月二十八日の報道を受けてお正月明けでやったんだと思いますが、会見の詳細で、冒頭でこの話をしているんですが、ここでは、全数調査をしていなかったということですね、抽出調査を行っていたと事務方から報告を受けておりと、これしか言っていないんですよね。補正をしていなかったことについては、この一月の八日の時点でしていないんですよ。

 これはなぜですか。なぜ、この大事なことを大臣は報告しなかったんですか。一番大事な話じゃないですか。これは大臣の言葉ですよね。大臣の会見で言っていることだから、大臣、自分で答えてください。(発言する者あり)

野田委員長 では、まず事実確認をしましょう。大臣、答えられるんですか。

 では、まず事実関係を役所の方から。

定塚政府参考人 済みません、経緯の事実関係ということで、私からまず説明をさせていただきます。(発言する者あり)

野田委員長 恐れ入ります、傍聴席の方、皆さんの声でやりとりが聞こえなくなるので、御静粛にお願いします。

定塚政府参考人 大臣に、十二月二十日にまず第一報がございました。そのときには、抽出調査を行っていたこと、また、同時に復元処理を行わずに集計していたことというのが、大臣に一報が入ったということでございます。

 その後、十二月二十七日でございますが、これは、復元をしていなかった結果として統計上の賃金額が低目に出ていたということ、それから雇用保険等への影響がある。これは、あくまでも復元していなかったという結果でこういう影響が出てくるということでございますので、こういう影響について見定めるようにという大臣からの指示があって、年末年始、これを財務省と一緒に影響調査してきたということでございます。

 その上で、一月八日の大臣会見のときには……

野田委員長 官房長、簡潔に。

定塚政府参考人 まだ調査中でございまして、大臣からは、徹底的な調査をするよう指示をしたと、今私が申し上げたように、指示をして調査中であるということを説明した上で、一月十日に大臣に、予算の計上をする必要があるとの報告をして……(奥野(総)委員「それは報道が出たからですよね」と呼ぶ)いえ、報告をして、御判断をいただいた。それは十日でございます。

 その上で、十日にそのような御判断があったので、十一日に大臣から公表していただいた、当然、復元ということも含めて公表していただいた、こういう経過でございます。

奥野(総)委員 大臣、確かに、ここに資料がありますけれども、このペーパー、上に書いてありますが、これは厚労省の出してきたペーパーですけれども、十二月二十日には大臣に対して、2の方ですね、適切な復元処理を行わずに集計していたことを報告した、こう書いてあります。そして、これは十二月十九日に、次官、宮川審議官に説明された資料というところでありますが、一番下のところに、数値が低く出ている可能性があると、影響としてここに書いてあるわけですね。この時点で、賃金の統計に影響があるということは、皆さん、認識をしていたわけですよ。

 これを大臣にきちんと上げたんですか。もし統計がずれるというようなことがわかっていれば、これは大臣、判断して、すぐさま発表しなきゃいけないじゃないですか。世の中に対する影響が大きいわけですよ。事務方はこの時点で、統計がぶれる可能性をちゃんと認識しているわけですよね、このペーパーにあるように。大臣に報告したときに、これは報告を受けられたんですか。

 ちなみに、報告書がありますよね、皆さんがまとめられた評価に関する報告書。中立性が疑われていますが、第三者性が疑われていますが、結構正確に書いてあるんですね。例えば、先日、石原元室長は、復元については報告を受けていなかったと。それはちゃんとそのように書いてあります、ここには書いてあります。

 では、ここに何と書かれているかというと、中間報告の記載には、十二月二十日に、東京都の規模五百人以上の事業所が調査計画と異なり抽出調査になっている旨の一報が政策統括官Jから厚生労働大臣になされたと書かれてあって、この記録によれば、復元されたかどうかということは報告されていないように書かれているんです。

 この調査結果、Jというのは大西統括官ですから、これはどういう報告をされたんですか。これの信憑性が問われることなんですが、これが間違っているのか、あるいは、きちんと報告をしなかったのか。今言ったように、十九日に事務方が共有している、復元処理が行われなかったことによって統計に与える影響があるんだというこの問題意識を翌二十日にきちんと伝えなかったんですかという、これは重要なポイントなんですが、どうですか。

大西参考人 お答え申し上げます。

 まず、十二月十三日に私は初めて知ったわけでございますが、十九日に官房幹部に一報した際には、三十年一月以降に復元していることについて明確に触れたかどうかははっきり覚えていませんが、手持ちの資料をお見せいたしまして……(奥野(総)委員「書いてありますね」と呼ぶ)はい。そのときには、説明した内容にはっきりしない点が多いので、官房幹部からは、よく調べるように、引き続きよく調べるようにと言われた記憶がございます。

 二十日の大臣への一報の際には、二つ、五百人以上のところを抽出ということと、抽出調査の結果を必要な統計的処理を行わずに集計していたこと、この二点について一報した、そういうぐあいに記憶しているところでございます。

奥野(総)委員 ということは、大臣は、事の重要性、前もおっしゃっていましたけれども、世の中に与える影響について認識しなかった。事務方は今、きちんと説明したと言っていますよね。重要性について、復元していないということもきちんと説明したと言っていますよね。

 もう一回戻りますが、なぜ八日の記者会見のときにこれを発表しなかったんですか。これは二度とも、二十八日も報道発表なしにマスコミは抜いていますよね。十日も抜いていますよね。では、大臣、抜かれなかったら、きちんとした結果を発表する気はあったんですか。もし、統計委員長も言っていますが、復元していないということを伏せておけば、大した影響はなしということでニュースにならなかったかもしれないんですよ。伏せ続けることができたかもしれないんですよ。ここは重要なポイントなんですね。大臣の判断が問われるわけです。なぜ八日の日に、復元をしていないということを発表しなかったんですか。

根本国務大臣 私は、十二月二十日に一報を受けました。それは今……(奥野(総)委員「そうですね、ちゃんと報告したと言っています」と呼ぶ)具体的に何が報告されたかということですよ、大事なのは。

 私がそのとき報告されたのは、五百人以上規模の事業所において全数調査とすべきところ、東京都において抽出調査を行っていた、そして二つ目が、抽出調査の結果に必要な統計的処理を加えず、適切な復元処理を行わずに集計していたこと、私はこの二点、報告を受けた。ですから、私の方から、経緯、原因などについて速やかに徹底的な調査を行うように指示した、こういうことであります。十二月二十日時点ではそういうことであります。

奥野(総)委員 では、今度は事務方の責任になるわけですけれども、数値が低く出る可能性ありとこの資料に書いてあるんですね、十二月十九日の段階で。これは物すごく大事なんですよね。統計の信頼性が問われる話ですよ。

 では、それを大臣に報告したんですか、しなかったんですか。もう一度、統括官。

大西参考人 先ほど御答弁させていただきましたが、大臣への一報の際には二点、五百人以上の事業所について全数調査すべきところ、抽出調査していたことと、抽出調査の結果に必要な統計的処理を行わずに集計していたこと、この二点を口頭で一報したというぐあいに記憶しております。

奥野(総)委員 ということは、その大事なところは伝えていないということでいいんですね。もう一度。

大西参考人 繰り返しになりますが、先ほど申し述べた二点を口頭で説明したところでございます。

奥野(総)委員 では、一番大事なことを、影響については伝えていないということですよね。大臣はそれを聞いていないわけですね。

 この報告を受けて、大臣は、影響はないのかということは言わなかったんですか。そして、もう一度確認しますが、いつこれを公にするつもりだったんですか。二回ともメディアが抜いていますよね。

 それから、もうちょっと言うと、十二月十四日付で、総務省から報告命令が、参事官へ命令が出ていますよ。これについて答えていないんですね。きのう総務委員会で確認しましたけれども、答えていないわけですよ。

 大臣、初動が遅過ぎませんか。大臣の判断が問われているんじゃないですか。仮に、報告を影響については受けなかったとしても、大臣、きちんと考えて問うべきじゃなかったんですか。これは大臣の判断が問われます。

根本国務大臣 私は、五百人以上規模の事業所において全数調査とすべきところ、東京都において抽出調査を行っている、そして、抽出調査の結果に必要な統計的処理を加えず、適切な復元処理を行わずに集計していた、この二点を聞かれましたから、私は、経緯、原因等について速やかに徹底的な調査を行うよう指示しました。

奥野(総)委員 では、一月八日の報道発表は何だったんですか、これは。

 少なくともお正月はあったわけだから、その指示を受けて、二十日、お正月どころか二十日ですよね、二十日に指示をしていて、一月の八日ですから、何日たっているんですか。十九日、お正月を挟んで十九日もたっているわけですね。しかし、何もその段階において発表できない。どういうつもりでこういう発表をしているんですか。

根本国務大臣 私は、発表というのは、やはり一定の事実関係が明らかになった上で、そしてそれを把握した上で発表すべきだと考えておりました。

 一月八日は、新しい年になって、閣議後の初会見ということになりますが、ここで、毎月勤労統計で、東京都の五百人以上規模の事業所で全数調査と公表していたものについて抽出調査を行っていたと事務方から報告を受け、その事実を徹底的に調査するよう指示した旨を発表しました。この時点では、まだ調査の結果について公表できる状態ではありませんでした。

奥野(総)委員 これはなぜ八日に発表したかというと、十二月二十八日に記事が出ちゃったからですよね。何も対応しないわけにいかないから報道発表したんですよ。少なくとも、それについて調査の結果を発表すべきだったんじゃないですか。

 総理、いかがですか、これ。初動が遅過ぎませんか、こんな大事な話。大臣として適任ですか。どうですか。

 それから、先ほど来、官邸の関与も疑われていますが、厚労大臣がそれをきちんと厚労省の責任で晴らすべきだと思いませんか。どうですか。

安倍内閣総理大臣 根本大臣は、十二月二十日に事案を把握した後、必要な指示を行いつつ、全力で対応に当たってきたものと認識をしています。

 根本大臣には、不足した給付の速やかな支払いや、今回の事案の徹底した検証、再発防止に引き続き全力で取り組んでいただきたいと考えております。

奥野(総)委員 終わりますが、その具体的な処理が決まったのは、一月の十七、十八なんですよね。実に一カ月近くもたってから、初めて払戻しなどの話も出てきています。

 最後に、もう一度集中審議、新たな事実が出てきましたから、この統計問題について集中審議を求め、そして、姉崎さん、石原さんの証人としての出席を求めて、私の質問としたいと思います。

 通告したのに、申しわけございませんでした。

野田委員長 この際、後藤祐一さんから関連質疑の申出があります。前原さんの持ち時間の範囲内でこれを許します。後藤祐一さん。

後藤(祐)委員 国民民主党の後藤祐一でございます。

 我々国民民主党は、国民の皆様からお声を伺って、新しい考えを提案していく、つくっていく、そんな政党でございます。

 きょうは、野党力を合わせて、提案と真実の追求に努めてまいりたいと思います。

 まず、ポイント還元、何度も扱っておりますけれども、これについて、ここは予算案の審議でもございますから、来年度予算案に二千八百億円、その次の年も含めると四千億円の予算、国民一人当たり三千二百円ですよ、このポイント還元予算について伺いたいと思います。

 まず、クレジットカードというのは、大体使える額に上限がございますが、世の中には、一千万まで使えるクレジットカードとか、もっと上限のものとか、いっぱいあるそうでございまして、百万円や二百万円まで上限で使えるクレジットカードはよくあることなんだそうでございます。

 世耕大臣に伺いますけれども、例えば、ポイント還元の対象となる決済事業者のクレジットカード、百万円の上限だというカード、世の中の人、結構な方が持っています。その方が、中小企業たるお店で指輪や絵画といった品を買った場合、ポイント還元の対象になって、例えば百万円だったら五万円ポイントがつくということなんでしょうか。

世耕国務大臣 例えば、中小企業である宝飾店とか骨とう品屋さんとか、そういったところで使用されたら、これは中小企業の対策のためにやっておりますから、ポイントはつくということになります。

後藤(祐)委員 これは前回も前々回もやりましたけれども、みんな税金を取られて、一人当たり約三千円ぐらいの参加費を払って、この壮大なるゲームに参加するんです。

 今、テレビを見ておられる方も、カードなんか使ったことないよという方だとか、落とすと怖いから持ち歩きたくないとか、あるいは、お店の方も、カードというのは手数料がかかるんですね。ですから、例えば四%とか五%の手数料を払っているところも多いわけです、ポイント還元の場合は三・二五以下だそうですけれども。

 どちらかというと生活にゆとりのある方に五万円とか、そういう形で税金からポイントがいくというのは、これはいかがなものかと思いますよ。

 私は、そもそもポイント還元制度はやめるべきだと思いますが、少なくとも、今申し上げたような一定の、百万円とかそういう商品は除くべきだと思うんですよ。

 何らか、一回当たり例えば一万円までとか、あるいは一月当たり幾らまでとか、そういう上限を決めるべきだと思いますけれども、世耕大臣、いかがですか。

世耕国務大臣 御理解をいただきたいのは、あくまでも中小の店舗が対象だということです。

 私の地元にだって、ある意味、商店街で営業されている宝飾店、絵画店というのもあるわけでありますから、そういったことを、中小企業を助けるためにやっているということは御理解をいただきたいと思います。

 上限をつけるべきではないかというお話でありますけれども、今お話しのように、クレジットカードというのは、月ごとの上限がついていたり、一回当たりの上限がついていますし、また、QRコード、プリペイドカードというのは、そもそも、チャージできる金額とか、あるいはアプリによって規制がかかっているという面もあるんだろうというふうに思っていまして、これは、決済事業者によって、ビジネスモデルや、セキュリティーの確保手段とか水準もいろいろ多様であるというふうに思っています。

 今回は、新たなシステムをつくるんじゃなくて、既存の決済事業者のインフラに我々は乗っかってポイント付与をさせてもらいますので、なかなか、いろいろな意味で上限が違っているというところはやむを得ない面があるというふうに思っていまして、一律の方法で上限を設定するというのは少し難しいと思います。

 ただ、一方で、委員もこれまで御指摘になっているように、例えば、ポイントを何回も何回もやりとりして不正に使われるんじゃないかというようなこともあります。

 不正防止の観点からは、やはり、一回で多額という、青天井というのはないんだろうというふうに思っておりまして、各決済事業者に応じて、何らかの一定の上限ルール、セキュリティーの観点から設けてもらうよう、予算の執行に当たっては各決済事業者とよく話し合っていきたいというふうに思っています。

後藤(祐)委員 何らかの上限がつけられるんだったら、例えば、一万円以下のものだけにするとか、一月当たりは数万円までにするとか、できるじゃないですか。全部電子的にやっているんだから、やろうと思えばできるじゃないですか。

 ぜひ、世耕大臣、まだこれから検討の余地はあるでしょうから、今、最後のところは少し上限の話があったと思いますので、庶民感覚で、上限をしっかりつくっていただきたいと思います。

 続きまして、スーパーが実は皆さん困っているんですね。

 というのは、あるスーパーの経営者の方にお伺いしたんですけれども、中小企業というのは、資本金五千万以下だと中小企業に当たります。中小企業のスーパーは世の中にいっぱいあります。そうしますと、あるAスーパーでは五%ポイント還元。その近くにある大企業たるスーパーはどうするかと聞いてみたんです、その大企業たるスーパーの経営者に。当然、対抗措置を打ちます、それは一律五%値下げの場合もあれば、いろいろなやり方がもちろんあるけれども、何もしないで指をくわえてということはあり得ない、ほとんどのスーパーが恐らく対抗措置を打つんじゃないかと言っていました。

 そうすると何が起きるかというと、体力のあるスーパーはそれでいいですよ。ですが、なかなか、例えば、売上高に対して利益の割合が一、二%なんというところもあるわけですよ。それで五パーをやったら、赤字になっちゃうじゃないですか。

 そういう場合は、実は私、経済産業省流通政策課というところにいたので、そういうお話もいろいろ聞いていたんですけれども、例えば卸とかメーカーとか、そういったところに、安くやってくれと。要は、買いたたくということが起きてくるんですね。

 前回も、これはデフレそのものじゃないかというお話を申し上げましたけれども、サプライチェーン全体が傷ついていく。これは全部このスーパーの経営者の方が言った言葉をそのまま申し上げておりますけれども。

 これはできるだけ、先ほど一人一人の決済についての上限の話をしました。この対象となる中小企業も、資本金五千万というと、誰でも知っているような家電量販店とか、東京のターミナルビルにあるような百貨店とか、日本じゅうどこでもあるレストランとか、名前は挙げませんが、幾らでも入るところはあるんですよ。年間の売上高で、今言ったようなところというのは本当に一千億とか売り上げているような会社ですから、上限を切って、こういった、どう考えても大企業でしょうここはと、特にこういう、スーパーとして競合するような、デフレを招きかねないようなところというのは、この対象から外すべきだと思うんです。

 例えば、年間売上高百億とか、あるいは十億とか、こういった、これはいろいろな検討があると思いますけれども、売上高で中小企業の制限をかけるべきだと思いますが、世耕大臣、いかがですか。

世耕国務大臣 基本は、中小企業基本法で定められている中小企業、小規模事業者の定義を利用したいと思っていますが、委員御指摘のように、誰が見てもこれは大企業だよねというような会社も、一部、資本政策の結果、過少資本になっていて、中小企業基本法の定義では中小企業になってしまうというケースもあります。

 こういったことは、過去も、例えば税制を当てはめるときなんかはもう既に問題として起こっておりまして、いわゆる、我々は過少資本企業と呼んでいますけれども、こういった企業については、税制などの観点からこれまでもいろいろな対応を行ってきておりますので、そういったことを参考にしながら、今、売上げの幾つか金額のラインをおっしゃいましたけれども、そのとおりではないとは思いますけれども、一定の適切な基準を設けていきたいというふうに考えています。

後藤(祐)委員 事務方に聞いたら五百億とかいう線を考えているそうなんですが、これじゃスーパー十数社ぐらいしかはじかれないんですね。余り意味ないんですよ。ぜひ、もう少し下のラインで検討すべきだと思います。

 ただ、売上高でも少し考えるというようなニュアンスは感じましたので、ぜひそこは、余り過当競争が起き過ぎないような、デフレにならないような、スーパーは大体対象にならないぐらいな感じにするように、よく検討いただければと思います。

 それと、ちょっと混乱が起きそうなところがあるのではないかということを具体的に提案したいと思います。

 前回、公共料金をコンビニで払った場合、対象になるのかどうかという議論をさせていただきました。あのとき答弁がややよくわからなかったんですが、これは経産省の審議官で結構ですけれども、まず、大企業たる例えば東京電力の電気代を中小企業たるコンビニで支払うのは収納代行に当たって、これは対象にならないという事務方からの説明を伺っています。その確認と、旅行はどうなるんでしょうか。例えば、大企業たるJALだとかANAの航空券を中小企業たる旅行会社で買った場合は対象になるんでしょうか。あるいは、JALの航空券と中小企業たる宿をセットにしたようなパック旅行を中小企業たる旅行会社で売った場合、もちろんキャッシュレスで、売った場合というのは、これはそれぞれポイント還元になるんでしょうか。

 これは事実関係なので、審議官で結構ですよ、お願いします。

藤木政府参考人 お答え申し上げます。

 まず、収納代行の件でございますが、今回の制度では、公共料金についても、中小・小規模事業者との間で電子的にキャッシュレス決済手段等で物品やサービスに対する支払いが行われれば補助の対象となりますが、一方で、コンビニなどにおいて収納代行として公共料金を支払った場合、これは物品やサービスの提供ではなくて代金の収納ということでございますので対象にならないということでございます。

 それから、もう一点御質問ございました旅行でございます。

 旅行には、今おっしゃったように、さまざまな企画であったり手配であったり、さまざまあるわけでございますが、いずれも、これらは今の収納代行とは違いまして、旅行業者と旅行者の間で契約が締結されるということでございますので、いずれの形態によってもこれは今回の補助の対象となるということでございます。

後藤(祐)委員 明確な答弁、ありがとうございます。

 JALの航空券は、中小企業たる旅行会社で買ったら五%ポイント還元がつく。JALで買ったらつかないわけですよ。これはかなり大きな話ですよ。皆さん、中小の旅行会社で買った方がいいですよね。いや、これはかなり大きな話だと思いますよ。

 それと、これはちょっと総理、ここから関係するのでお話を伺っていただきたいんですけれども、旅行は、実は前回消費税を上げたときも同じなんですが、旅行というのは前もって予約しますよね、買いますよね。

 このパネルにあるように、例えば、ことし二〇一九年十月一日に消費税が上がります。その直後に旅行する場合、例えば、私、十月三十日がハネムーンで行ったことがあるんですけれども、例えば十月三十日に旅行する、海外に旅行するという方が、では、その前、いつこの商品を買ったかというので三通りに分かれるんです。

 指定日というのを二〇一九年四月一日に設けて、これよりも前、すなわち来月、三月中にハネムーン旅行を買った人は、これは八%の消費税。Bのケース、四月一日以降九月三十日までの場合は、これは既に消費税が一〇%になっちゃうんです。ですが、ポイント還元にはなりません。Cのケースは、これは十月一日以降に買った場合ですけれども、これは当然消費税一〇%ですが、中小企業たる旅行会社で買った場合は五%ポイント還元になるんですね。これはハネムーンとかいったら何十万円ですから、すごい大きな額になるわけです。

 これはまず事実関係として正しいですか。

世耕国務大臣 消費税のルールはそういうふうになっているというふうに承知をしておりますが、あくまでも、これは別に消費税を正確にトレースする制度ではありませんから、ポイント還元というのは。そもそも消費税は二%しか上がらないのに五%還元するわけでありますから、我々は、このポイント還元制度は、旅行等も含めて、あくまでもキャッシュレス決済がことしの十月一日以降、来年の六月末までに行われた場合、ポイント還元の対象とするという、シンプルなことだというふうに思っています。

後藤(祐)委員 これは正しいということなんですね。

 総理、これは何で総理に聞いていただいたかというと、ことしの四月一日から早くも一〇%で払う人が出てくるんですよ。十月一日以降に旅行する人が四月一日以降にその商品を買った場合は、消費税は一〇%なんです。この旅行以外にも、こういった商品はございます。

 安倍総理は、もしかして消費税を上げるというのを再々々先送りするかどうかという質問を私は何度もしていますが、リーマン・ショック級のことが起きた場合にはそれを否定していないわけですが、これは、四月一日以降に消費税引上げを再々々先送りした場合、もう既に一〇%で日本じゅうで取引が起きちゃっている中で、これは返金するんですか。これはできないと思うんですけれども、総理、いかがですか。

安倍内閣総理大臣 再三答弁させていただいておりますように、リーマン・ショック級の出来事が起こらない限り、消費税の引上げについては法律にのっとって引き上げていきたいし、またそういう経済状況をつくっていきたい、こう考えております。

 そこで、リーマン・ショック級の出来事が起こればどうかということでの御質問なんだろう、こう思うわけでございますが、私ども、現時点でそういう状況は起こっていないわけでございますので、我々は、予定どおり引き上げていきたい、また、そういう引上げにおいて、駆け込み需要、反動減といった状況が起こらないようにしていきたい、このように考えております。

後藤(祐)委員 前回も、半年前には確定していたんですよ。その判断は、リーマン・ショック級のことが起きていないのに、新しい判断と言って、理屈もなく取りやめたんですけれども、ただ、実施までは半年以上あったんです。

 これは、四月一日以降にこの判断をすると、大混乱になりますよ。この四月一日に向けて、例えば今の旅行業でいうと、いろいろなシステムを組みかえたりとかするわけですよ、三月のうちに。ですから、もう二月中ぐらいにやるかやらないかはっきりしないと、世の中を混乱させるんです。

 この消費税一〇%に上げることを前提に、今、来年度予算案はかかっているわけでございますから、ぜひ、この衆議院の予算委員会で来年度予算を審議している間に、上げるか上げないか、結論を出していただきたいんです。

 というのは、これが決まらないと、実は、日本じゅうの市町村で、幼児教育の無償化の予算、全ての市町村の予算に入っているんです。前回の総理の答弁によれば、消費税一〇%に上げることがこの幼児教育無償化の前提であるという答弁をされていますから、仮に再々々先送りをした場合は幼児教育無償化はなくなるわけですから、そうすると、日本じゅうの市町村で予算やり直しという話になって、大混乱ですよ。

 ですから、この二月中には結論を出していただくよう、お願い申し上げておきたいと思います。

 なお、我々国民民主党は、消費税は長期的に社会保障の財源として必要だと思いますが、今回のように、このポイント還元が、非常にお金持ちの方に優遇されているですとか、ずさんなやり方をしているですとか、あるいは複数税率というのはいかがなものかと思いますので、今回のこの引上げには我々は賛成できないということを申し上げておきたいと思いますし、消費税の増収分が結局こういったもので全部返ってくるというんだったら、そんなのだったら、やらなきゃいいじゃないかというのが、日々地元を歩いていての声であります。

 さて次に、統計の話に行きたいと思います。

 きょう、いろいろな議論が起きておりますが、中江総理元秘書官の関与について先ほど来議論が起きておりますが、ちょっと整理をしたいと思います。

 この毎月勤労統計の改善に関する検討会、この第五回の検討会の資料では、もうほとんどここで終わりにしようと思っていて、一番下のところですね、現在の総入れかえ方式で行うことが適当である。この現在の総入れかえ方式でやると、その都度がくんと下がる、しかも前にさかのぼって下がるということで、いかがなものかと、少なくとも安倍政権のどなたかは思っていらっしゃる。

 第六回の検討会資料、中間的整理では、ところが、一番下のところにあるように、入れかえ方式については、引き続き検討と、中立になっちゃった。この間に何があったのかという議論になっているわけですが。

 少なくとも明らかになったのは、この間の九月の三日に総理は参議院の厚生労働委員会でこれに関しての答弁があって、その九月の三日の朝に勉強会があって、厚労省からこの毎勤統計の状況を聞いたということは答弁されておられます。そこで何らかの指示があったのか、あるいはそれ以上の議論があったのか、それはわかりません。

 それと、もう一つきょう明らかになったのは、この九月十六日の中間的整理を行った第六回検討会の二日ほど前に、この検討会の座長である阿部座長が、厚労省の事務局から、これはきのうの朝日新聞の記事にあったことですけれども、厚労省の事務局から、委員以外の関係者から部分入れかえ方式を検討するべきではないかとの意見があったとこの厚労省の事務局から連絡を受けたということを取材に対して明らかにした。きのうの報道ステーションなんかでも流れておりますが。

 この間にある九月十六日の直前、九月十四日ごろに、厚労省の事務局から、委員以外の関係者から、部分入れかえ方式、すなわち、そこまで下がらない、政権にとってはやや都合のいい方のやり方に結果的になる、この部分入れかえ方式を検討するべきではないかという意見を言ったのは、中江元総理秘書官ということでよろしいんでしょうか。これは午前中に確認したことですから、単に事実関係を確認したいと思います。厚労省事務方。

藤澤政府参考人 後藤委員から、通告の際に、阿部座長それから姉崎元部長に確認をとった上で答弁するように、そういうお話を事前の通告の際にいただいておりますので、阿部座長それから姉崎元部長に確認をしてございますので、その回答について申し上げたいと思います。

 初めに、阿部座長でございますけれども、平成二十七年九月十四日に、事務局である厚生労働省の担当者から、関係者から、部分入れかえ方式を検討すべきではないかとの意見があったと連絡を受けたと回答したことは事実であるが、関係者が誰であるかについて、具体的な名前は聞いていないとのことでございました。

 中間的整理案の表現が「サンプルの入れ替え方法については、引き続き検討することとする。」に変わった経緯については、もともと、それまでの議論においても、ローテーションサンプリングについては、実務面での課題が論点の中心であり、手法そのものが否定されていたわけではなかったこと、樋田委員がその方法に肯定的であったこと、同年十一月以降の未諮問統計の確認作業が控える中での総合的な判断であったと受けとめたとのことでありました。また、具体の経緯は承知していないが、最終的に選択肢を広げようと厚労省が判断したこと自体は一定妥当性があると受けとめたとのことでございました。(後藤(祐)委員「姉崎さんに聞いた結果。委員外の関係者が誰か」と呼ぶ)

 姉崎元統計情報部長に聞きました内容につきまして申し上げたいと思います。

 メール等を確認できたわけではないので詳細は不明だが、中江総理秘書官のことだと思われる。当時の部長の記憶によりますと、第六回検討会の直前に官邸に赴き、総理秘書官に対し、同年六月のボーナスの状況等について説明を行った際、毎月勤労統計の……(後藤(祐)委員「長い。もう答弁いただいているので、もう終えてください」と呼ぶ)

野田委員長 藤澤さん、簡潔に済ませてください。

藤澤政府参考人 改善に関する検討会にも触れたとのことでありました。

 では、以上で省略いたします。

後藤(祐)委員 端的にお答えください。

 この八月七日と九月十六日の間に、九月三日に、総理の答弁のときに一回勉強会をやっている。そして、九月十四日には、中江総理秘書官から部分入れかえ方式を検討するべきではないかと意見があったわけですね。

 中江総理秘書官、この部分入れかえ方式を検討するべきであったと意見したんでしょうか、厚労省に対して。

中江参考人 お答え申し上げます。

 この九月十四日に厚労省が説明に来たということでありますが、私、そのような記憶、正直、全くございません。

 したがいまして、もしかしてそういう説明に来たということで私が何か言ったとすれば、私の当初からの問題意識からすれば、経済の実態をよりタイムリーにあらわす方策としてローテーションサンプリングの方があるということであれば、そうした考え方について専門的に検討を進めてもらったらどうかというようなことを申し上げたかもしれません。

 ただ、そこは、私、当日の九月十四日にお会いしたこと自体記憶にございませんので、それ以上は申し上げられません。

 なお、九月三日の答弁での勉強会は……(後藤(祐)委員「いや、そこはいいです」と呼ぶ)よろしいですか。

後藤(祐)委員 本当に記憶にないんですかね。どこかで見た風景ですね。柳瀬秘書官と同じじゃないですか、総理。

 それで、姉崎部長がこの話をしているわけですから、残念ながら、姉崎部長は、きょう来てくださいとお願いしたんですが、お越しいただけないので、姉崎部長、そしてその下の課長と、その下の課長補佐、三人そろっての参考人を要求したいと思います。

野田委員長 後刻、理事会にて協議いたします。

後藤(祐)委員 中江総理秘書官にもう一つ聞きたいと思いますが、こういった各省の検討会、この検討会は厚労省では姉崎部長が事務方ではトップとして参加していたんですが、このぐらいのレベルの方までしか出ないような検討会、そういったものの状況を聞く、あるいは何らかそういった検討会について話を聞くというのは、総理秘書官が聞くというのはよくあることなんでしょうか、それともこれは極めて珍しいことなんでしょうか、中江秘書官。

中江参考人 お答え申し上げます。

 私、この厚労省の検討会の模様について、これまで記憶がある限りでは、やるということは最初に御報告を受けましたが、その途中経過とか結果について伺った記憶がありませんというふうに申し上げておりました。

 それで、局長あるいはもうちょっと上の人が、事務方がトップのそういう検討会を聞くことがあるかどうかということは、ちょっと、いろいろな、ケース・バイ・ケースでしょうから、一概に今すぐにはお答えできません。

後藤(祐)委員 ほかにそういうのがあるかどうか調べて、この委員会に提出していただきたいと思います。理事会でお諮りください。

野田委員長 では、後刻、理事会にて協議いたします。

後藤(祐)委員 それと、中江秘書官が九月十四日にこの意見を言ったということと、阿部座長に対してもこの九月十四日に厚労省は話をしているわけです。この前後関係は大事なんですよね。

 厚労省に、これも事務方で結構ですが、伺いたいと思いますが、この中江秘書官から意見を聞いたというタイミングと、厚労省から阿部座長に対して、メールだと聞いておりますけれども、連絡をしたのは、どっちが先ですか。

藤澤政府参考人 ただいまの御質問の前後関係につきましては、承知をしておりません。

後藤(祐)委員 これはぜひ調べて、この委員会に提出していただきたいと思いますが、委員長、お取り計らいください。

野田委員長 後刻、理事会にて協議いたします。

後藤(祐)委員 でも、これは多分明らかなんですね。阿部座長は、委員以外の関係者から部分入れかえ方式を検討するべきではないかと意見があったと厚労省から連絡を受けているんですから。中江総理秘書官が厚労省に対して意見を言うというのが先にあって、その意見を踏まえて厚労省は、阿部座長に対して、ここに書いてある第六回の中間的整理のこれでいいですかと聞いたに違いないんですよね。

 この前後関係はきちっと確認していただきたいと思いますが、この最後の、このためサンプルの入れかえ方式については引き続き検討することとするというこの結論ががらっと変わってしまった。これは、その九月の十四日に阿部座長に提案されて、阿部座長の了解をいただいたということでよろしいんでしょうか。それより前にはこれはまだ示されていなかったんでしょうか、厚労省、事務方。

野田委員長 速記をとめてください。

    〔速記中止〕

野田委員長 速記を起こしてください。

 厚生労働省藤澤政策統括官。

藤澤政府参考人 失礼いたしました。

 これは、八月の七日の、その前の第五回の検討会の際に委員の発言もございましたので、必ずしもその場で、九月十四日に決めたということではないものと承知をしております。

後藤(祐)委員 そうじゃなくて、この第六回、中間的整理の最後の、このため、サンプルの入れかえ方式については引き続き検討することとするという文書を固めるに当たって、これを阿部座長に提示し、そして阿部座長から了解をいただいたのは九月十四日であって、それより前ではないということでよろしいですね。これは通告していますので、しっかりお答えください。

野田委員長 速記をとめてください。

    〔速記中止〕

野田委員長 速記を起こしてください。

 厚生労働省藤澤政策統括官。

藤澤政府参考人 厚生労働省から阿部座長に連絡をいたしましたのは九月十四日だと承知をしております。

後藤(祐)委員 非常に重要な答弁だと思います。

 最後に、総理に伺いたいと思います。

 総理は、今の……

野田委員長 後藤さん、質問時間が終了していますので、手短にお願いします。

後藤(祐)委員 はい。じゃ、これで最後にします。

 委員の意見があったのでさっきの結論になったと言わんがごとく、こういう答弁をしているんですね。

 八月七日の議事録を見てみますと、これなんですけれども、樋田委員の発言を引用して、この委員が述べて、これに答えた阿部座長は、「そこは修文をお願いします。」と述べている。これはあるんですよ、議事録に。云々という、そういう答弁をしているんですが、阿部座長が「そこは修文をお願いします。」と言った「そこ」というのは、一体どこだと認識して答弁されているんですか。この「そこ」というのは、さっき言った、検討事項にするというところを変えるという形で認識して、総理、答弁しているんですか。

野田委員長 後藤さん、もう一度申し上げます。

 質問時間は終了していますので、終了してください。(後藤(祐)委員「これは通告しています」と呼ぶ)

 終了いたします。もう大分時間が過ぎています。

後藤(祐)委員 はい、わかりました。

 終わります。

野田委員長 これにて前原さん、奥野さん、後藤さんの質疑は終了いたしました。(発言する者あり)いや、もう時間が過ぎていますから、相当。

 次に、笠井亮さん。

笠井委員 日本共産党の笠井亮です。

 全国の全世帯の約四割が加入している国民健康保険について質問いたします。

 全国どこでも、高過ぎる国保料、国保税に住民が悲鳴を上げております。家族構成によっては、保険料負担が健保の二倍にもなる。

 そこで、パネルをごらんください。

 年収四百万円、四人家族、三十代夫婦、子二人の場合、試算してみますと、モデル世帯ですが、年間の保険料は、東京都の特別区で四十二万六千二百円、大阪市で四十一万九千五百円、京都市で三十九万七千四百円、札幌市で四十一万三千五百円。いずれも約四十万円にもなります。これに対して、中小企業の労働者が加入する協会けんぽでありますと、保険料はどこでも二十万円前後となっております。

 安倍総理に伺います。

 この高過ぎる国保の現状について、総理はどう思われているか。そして、なぜこんなに健保より高いんでしょうか。お考えを伺いたいと思います。

安倍内閣総理大臣 国民健康保険は、協会けんぽや組合健保といった被用者保険に比べて高齢の加入者の占める割合が高く、医療費水準が高くなるという一方で、無職や非正規雇用の労働者など、低所得の加入者が多いという構造的な問題を抱えています。したがって、特に所得の低い方にとっては保険料負担が重くなる傾向があるものと考えています。

 そのため、低所得の方々の保険料軽減措置を講じるとともに、保険給付費に対し五割の公費負担を行いつつ、公費を他の制度より手厚く投入するなどの措置を講じてきたところでございます。

笠井委員 構造問題があると。

 同時に、政府はこの間、繰り返し、この保険には事業主負担がない、だから高いんだというふうにも言ってまいりました。そういう点があるから、だからこそ国保ではその分、国が負うというふうに言ってきたわけであります。

 国保制度がスタートした翌一九六二年、当時の首相の諮問機関、社会保障制度審議会は、低所得者が多く、保険料に事業主負担がない国保は、相当額国庫が負担する必要がある、健保と国保の保険料のアンバランスは極力是正すべきだというふうに勧告をして出発したものであります。これが国保制度本来の理念だったと思うんですが、いかがですか。

安倍内閣総理大臣 国保制度はこれまでも累次の財政支援策を講じてきたところでございますが、昨年四月からスタートした国保改革の案を取りまとめる際、全国知事会等との協議の結果、毎年約三千四百億円の財政支援を行うこととされました。

 これを踏まえて、平成二十七年度から、低所得者が多く加入する自治体への財政支援を一千七百億円拡充し、そして、平成三十年度から、医療費適正化に取り組む自治体への財政支援等のため、更に一千七百億円を上乗せし、そして財政支援の拡充を図ってきたところであります。

 こうした取組を通じて、国民皆保険を支える国保制度の安定的な運営に努めていく考えでございます。

笠井委員 一九八四年に、国保法の改定前の国庫負担というのは、給付費でいえば六割だったわけです。それを、国、都道府県と合わせて五割に引き下げてきたもとで現在の事態が起こっている。

 大阪市に住む、月収十八万円の非正規雇用で、子供一人を育てるシングルマザーの国保料の場合、私も伺いましたが、年間二十一万三千円、給与一・二カ月分も納めないといけない。

 それから、退職して年金生活に入って収入が月十万円台になった人が、これは前年の所得になりますから、前年の現役時代の所得に基づいて三十万円、四十万円と年間国保料を請求されて、どぎもを抜かれるという話もよく聞きます。

 そこで、次のパネルですが、こういう現実があるからこそ、今総理が触れられましたけれども、全国知事会は、「国定率負担の引上げ等様々な財政支援の方策を講じる」こと、全国市長会は、「国庫負担割合の引上げなど国保財政基盤の拡充・強化を図り、」ということで求めていて、さらなる公費投入によって保険料の引下げを求めている。この間やってきたけれども、国もやったけれども、更に求めるというのが、この知事会、市長会の要望、要求であります。

 ですから、総理、こういう要求が現実にあるわけですから、この要求に応えて、要請に応えて、国の責任を一層明確に果たすべきではないかと思うんですが、いかがですか。

根本国務大臣 先ほど総理からも御答弁いたしました。昨年四月からスタートした国保改革の案を取りまとめる際、全国知事会等の地方三団体と協議の結果、毎年約三千四百億円の財政支援を行うこととされました。

 全国知事会については、国保改革に向けての議論の過程で、全国知事会において、国保の保険料水準を協会けんぽ並みに引き下げるために必要な公費として、一兆円の財政支援の拡充が必要との意見がありました。その全国知事会も含めた地方三団体との協議の結果、この国保改革に伴い、三千四百億円の財政拡充を行うことになったものであります。

 今後とも、地方団体の御意見も伺いながら、この拡充した公費によって効果的、効率的な財政支援を実施し、国保制度の安定的な運営に努めてまいりたいと思います。

笠井委員 今、総理も大臣も言われたんですが、根本大臣は今、全国知事会の話をされました。二〇一四年に、高過ぎる国保料をせめて協会けんぽ並みに引き下げるべきだということで、一兆円の公費負担の増を要望したということで、その後の国と地方の協議で三千四百億円の投入が決まったということなんですけれども、問題は、三千四百が決まって、そしてそれが昨年実施されたわけですけれども、始まったわけですが、その後もなお、この全国知事会の要望というのは昨年の七月、三千四百入れた後です。市長会は十一月です。

 つまり、そうやっても更に公費投入が必要だという提言を、現場の実態を見て、本当にそういう意味では、知事会一致して、市長会一致して言っているわけで、三千四百億円では高過ぎる現状を改めることができない、だからやってくれと言っているんじゃないんですか。どうですか。

根本国務大臣 委員お話しのように、全国知事会から、最近の要望、平成三十年七月に受けました。新制度の運用状況を鑑み、不断の検証を行いながら国保制度の安定化が図られるよう必要な見直しを行うこと、三千四百億円の財政支援について、今後も国の責任において確実に実施すること、今後の医療費にたえ得る財政基盤の確立のためのさまざまな財政支援の方策を講じること。

 また、全国市長会からは、三十年の十一月に、三千四百億円の財政支援について、継続的に実施すること、医療費の増加に確実に対応できるよう、国による財政支援を拡充し、さらなる国保財政基盤の強化を図ること。こういう要望もいただいております。

 今後とも、地方団体の御意見を伺いながら、三千四百億円、公費拡充しましたが、これからも効果的、効率的な財政支援を実施し、国保制度の安定的な運営に努めてまいりたいと思います。

笠井委員 今、根本大臣が言われたけれども、結局、三千四百入れた、しかし、それにさらなるという要望があると言われたわけですね。今後ともそういうのを聞きながらと言っているわけですけれども、総理、結局、今年度から都道府県化ということがスタートしました後も、高過ぎる国保が更に引き上がる事態が全国あちこちで起こっています。東京なんかでいったら、八二%の自治体で上がっているということになっている。

 まず、三千四百億円の着実な実施と総理も言われました。大臣も言ったけれども、では、今後、更に知事会や市長会から要望が出ている、それを聞きながらということでいったら、国の定率負担とかあるいは国庫負担の割合を引き上げるということで、国としても検討するとか、検討しているとか、そういうことはあるんですか。

 総理、いかがですか。これは総理に。

安倍内閣総理大臣 先ほど私も、また、根本大臣の方も、知事会等の要望も賜りました。

 また、そもそも、最初に申し上げましたように、基本的に国保の構造的な課題があるわけでございます。

 そうしたことを十分に認識しながら財政支援の拡充を図ってきたところでございますが、こうした取組を通じて、今後も国民皆保険制度を支えるという考え方の中において、国保制度の安定的な運営に努めていきたいと考えています。

笠井委員 認識しているけれども、今後具体的にこうした要望について検討しているかといえば、検討するとは言われていない、検討するとも言われない。本当にけしからぬと思いますよ、私は。

 政府は、給付の五割を出している、それ以上は出さないと言いますけれども、かつて六割の国庫負担だったわけです。五割と決めた一九八四年以来、国保の加入者の高齢化とか非正規化、貧困化が急速に進みました。そうした変化からも、更に改革が必要というのが地方の意見であり、現場の意見だと。当然だと思うんですよ。なぜそれをやらないのか、なぜそれを真剣に検討しないのか。

 日本共産党は、昨年十一月に、地方の要望も踏まえて、協会けんぽ並みに引き下げる提言を発表いたしましたが、財源は株主優遇税制の見直しなどで捻出をして、ぜひ抜本的な引下げを国民のためにもやるべきだと強く申し上げておきたいと思います。

 さて、高過ぎる国保は住民生活を圧迫する重大な要因となる中で、生活困窮で国保の滞納を余儀なくされるケースも全国各地で起こっております。

 十分に支払い能力があるのに税金やあるいは保険料を払わない人に対して一定の手だてをとる、これは当然のことであります。それを否定しません。

 しかし、やってはならないことがある。何より、病気や失業、あるいは所得の激減などで生活困窮に陥った場合、そういう世帯に対して更に追い打ちをかける、そういう差押えをしてはならない。まさに命にかかわる問題であります。

 根本厚労大臣に伺いますが、国税徴収法に、生活困窮を引き起こす可能性がある場合、処分の執行を停止する旨の規定があって、そして、国保税の滞納についてもそれが準用される、その例によるということになっていると思うんですが、間違いありませんね。事実だけ。

根本国務大臣 間違いありません。

笠井委員 もう一つ、国税徴収法には、差し押さえてはならない禁止財産があります。給与、年金の生計費の相当分、それから福祉給付されている公的な手当、取り上げられたらなりわいを絶たれるような商売道具などであります。

 特に、児童手当など福祉の給付については、これは具体的にあったわけですが、鳥取県で、地方税を滞納した人に対して、行政が銀行口座に入金された児童手当を、されたらすぐに差し押さえた事件があった。この事件をめぐって、広島の高裁判決が出まして確定をいたしております。

 石田総務大臣に伺いますが、児童手当などの公的手当については、これは狙い撃ち的に差し押さえてはならない、これが確定した判決の趣旨だ。間違いありませんね。

石田国務大臣 平成二十五年十一月二十七日の広島高裁の判決は、差押禁止債権である児童手当が口座に振り込まれることを認識した上で、入金の直後に預金債権を差し押さえた鳥取県の処分が、実質的には児童手当の受給権自体を差し押さえたのと変わりがないため、児童手当法第十五条の趣旨に反するものとして違法と認定されたものと認識をいたしております。

笠井委員 根本大臣、国保の滞納についても同じく狙い撃ちのような差押えはできない、今の趣旨からいってそういうことだということで間違いありませんね。

根本国務大臣 差押禁止財産については、最低限の生活保護等の観点から設けられていて、具体的には委員が先ほど御紹介したとおりであります。

 保険料の徴収に当たっては、市町村において個々の事情に応じたきめ細かな対応を実施しておりますが、差押禁止財産の取扱いについても、全国の自治体職員向けの会議などを通じて周知をしております。

笠井委員 要するに、できないということであります。

 問題は、こうした法の趣旨が現場で守られているか。今、趣旨を徹底しているという話がありましたが。

 厚生労働省は、二〇〇五年に収納対策緊急プランを出して、自治体に取立て強化を指示しております。それ以降、国保税、国保料を滞納した世帯に対する差押えの件数が急増している。

 根本大臣、数字を挙げていただきたいんですが、二〇〇六年度と二〇一六年度の差押えの件数と金額、それぞれ何件、幾らか、数字だけ言ってください。

根本国務大臣 二〇〇六年度の差押件数は延べ約九万五千件、差押金額は延べ約三百九十億円であります。そして、二〇一六年度の差押件数は延べ約三十三万六千件、差押金額は延べ約九百九十四億円であります。

笠井委員 結局、そうやって取り立てるということをやって、十年間で件数も金額も三倍化したということであります。

 現実に何が起こっているか。

 北関東で塗装業を営む四十代の男性は、事業不振で国保が納められずに滞納がかさんでいた。市には分割で払いたいと申し出たけれども、認められず、一括納付を求められた。市の担当職員は電話口で、闇金で借りてでも払えとこの男性に怒声を浴びせたことが地方紙でも報じられております。

 この市内では、職員から、自宅を競売にかけろ、死んで保険で払う人もいる、こちらは完納させるためなら何をしてもいいなどの言葉も投げつけられたという事例も報告されているわけであります。

 九州でも、シングルマザーに対して、先ほど総務大臣も厚労大臣もやってはいけないと言った児童扶養手当の差押えを行ってしまった事例が判決後も報告をされております。現実には問答無用のやり方が横行している。

 根本大臣、現場でこんな事態が起こっているのも、国が出すべきものを減らして、国保が高過ぎて払えなくなったもとで取立て強化を指示している、だからこんなことが起こっているんじゃないですか。

根本国務大臣 国民健康保険は、加入者の方々に負担能力に応じて保険料を負担していただきながら、医療費を支え合う制度であります。そうした中で、保険料を支払う能力があって保険料を納付できない特別な事情がないにもかかわらず滞納している方については、差押えによる徴収などを行う必要があると考えておりますが、ただ、今の委員の話にもありましたが、差押えを行うかどうかを判断するに当たっては、市町村において、滞納者の個別具体的な状況をよく把握した上で適切に対応していただく必要があります。

 具体的には、市町村においては、個々の滞納者の実情をよく把握した上で適切に対応していただきたいと考えております。例えば、滞納者に対しては納付相談を行い、必要に応じて分割での納付を認めるなどのきめ細かな対応を行う、滞納者の個別具体的な状況を踏まえて、生活を著しく窮迫させるおそれがある場合には滞納処分の執行を停止する、このような徴収業務における対応については、これまでも自治体職員向けの会議等を通じて周知しているところであって、引き続き、周知に取り組んでまいりたいと思います。

笠井委員 幾ら言われても、現場では大変なことまで起こって広がっているんですよ。

 きめ細かに生活実態と言われますけれども、そうであるんだったら、二〇一四年の十一月六日の参議院の厚生労働委員会で、我が党の小池晃議員は、生活困窮に追い打ちをかけるような差押えが各地で起き、自治体によって法の趣旨の徹底にばらつきがあることなどを指摘して、差押えに当たっては滞納世帯の生活実態を調査して、特別な事情がある世帯については機械的な差押えはしないという趣旨の通知、通達を自治体向けに出すべきだと求めました。

 パネルをごらんください。

 それに対して、当時の塩崎厚生労働大臣はこう答弁しております。あえてしゃくし定規なことをやるか、温情を持って、ぬくもりを持った行政をやるべく徹底をしていくと答弁したわけですね。五年前です。

 根本大臣、その後、では、徹底するために通達、通知を出したんですか。

石田国務大臣 毎年度、地方税務行政の運営に当たっての留意事項について文書で連絡した中で、滞納者の個別具体的な実情を十分に把握した上で適正な執行に努めていただきたい旨、地方団体に毎年要請をいたしているところです。

笠井委員 違うんです。厚労省の大臣が徹底すると言ったんだから、通達、通知を出したのかと厚労相に聞いているんですよ。塩崎さんがこのようにやっているでしょう。

根本国務大臣 徹底するという観点から、毎年度、同月に開催している全国高齢者医療主管課長及び国民健康保険主管課長並びに後期高齢者医療広域連合事務局長会議、そして夏季にブロックごとに開催しているブロック会議、このブロック会議を通じて、今しっかりと我々も周知を図っております。

笠井委員 温情が全然感じられませんよ、ブロック会議で言ったぐらいの話で。ブロック会議で徹底しているというので膨大な資料を出すそうですよ。その中に説明ペーパーが入っているだけじゃないですか。

 現場では今なおしゃくし定規的なことがやられているのに、保険証取上げの話だったら、資格証明書の問題では通知、通達を何度も厚労省は出しているのに、何で今度はやらないのかということであります。滞納への対応というのは一歩間違えれば命の問題だという真剣さが足りないと、本当に思います。

 住民と接する自治体からは、国税徴収法の趣旨を生かして、生活困窮の滞納者に寄り添って、人権や命を大切にしながら収納率を改善する取組が始まっております。厚労大臣、例えば東京の足立区の取組、私も実際に伺ってきました。

 国保の滞納について、払える人には当然払ってもらうが、生活困窮で払えない人に督促を続けても、滞納額が膨らんで、雪が解けずにこちこちに固まる根雪になってしまうだけだ、そうなるのは区民にとっても区にとってもよくない、だから収納対策のやり方を変えたと。まず、滞納者の相談に乗って、滞納の理由をつかんで、それに応じて対策を立てる。生活困窮とわかった場合に、生活支援策をとりながら、今後の国保の支払いを優先して対応している。そのことによって、大きな滞納額を抱えて暗い顔で相談に来た区民の方が、相談した結果、過去の滞納分の重みから解放されて、頑張ってこれからは払うという明るい表情で帰っていく。収納率も急速に改善したということであります。

 根本大臣、こういう取組、いいと思いませんか。

根本国務大臣 私は、非常に参考になる取組だと思います。

 とにかく、個々の状況に丁寧に対応して、そして、生活を著しく窮迫させるおそれがある場合には、これは滞納処分の執行を停止することができるわけですから、やはり、差押えによって生活が極めて困難になることがないように、各市町村の判断、今のは非常に参考となる事例だと思いますが、差押えの対象としないことができるわけですから、今後とも、真に納付が困難な方についてはきめ細やかに対応が行われるよう、市町村に周知していきたいと思います。

笠井委員 参考になる事例だったら、そういうことが大事だ、温情を持ってやるんだと、通達、通知したらいいんですよ。

 最後に総理に伺いますけれども、足立だけじゃないんです。滋賀県の野洲市も、税金や保険料を滞納した市民が生活困窮とわかった場合には、福祉やさまざまな生活支援につなげております。市の標語は、「ようこそ滞納いただきました」「滞納は生活状況のシグナル」というものであります。

 そこで、総理に伺いますけれども、これらの自治体で職員がおっしゃっているのは、国保行政というのはやり方一つで命にかかわるということです。病気の人から保険証を取り上げたり、失業、倒産に遭った人に追い打ちをかければ、最悪の場合命につながる、だから、高過ぎる国保の滞納者に追い打ちをかける、そういう北風を吹かせるのか、それとも生活再建で払えるようにする太陽か。

 総理は、どっちがいいと思われますか。

安倍内閣総理大臣 国民健康保険は加入者がお互いに支え合う社会保険の仕組みを基本としておりまして、負担能力に応じた保険料を負担していただくことが必要と考えています。そうした中で、所得の低い方については、保険料の軽減措置を講じるとともに、納付相談などを通じて個々の実情に応じた対応を行っています。

 一方、保険料を支払う能力があり、保険料を納付できない特別な事情がないにもかかわらず滞納している方については、差押えによる徴収などを行う必要があると考えておりますが、今、そういう必要があるという方であります。ただし、差押えによって生活が極めて困難になるようなことがないように、各市町村の判断により、差押えの対象としないことができます。

 そこで、今後ともこうした制度が適切に運用されるよう、確かに、国民健康保険というのは、これは運用の仕方においては命にかかわることであるのは、私も、事実だろう、こう思っています。

 今後とも、こうした制度が適切に運用されるよう、厚生労働省において、各市町村に対する周知を徹底させてまいります。

笠井委員 周知徹底するのは大事なことだと思いますが、命にかかわるというのも、そのとおりだと思います。

 ただ、私が伺ったのは、北風か太陽かというふうに伺ったので、はっきり太陽だと言ってほしかったけれども情けない。やはり、政治が国民の太陽になるべきときに、はっきりなぜそれが言えないのかと思います。

 二〇一三年の一月に出された厚労省の文書には、保険料の減免措置を拡大するなど、納付しやすい環境をつくることが収納率の向上につながるという指摘があります。

 国保料、国保税、この抜本的な引下げこそ、住民の命と暮らしを守るとともに最大の収納対策にもなる。まさにそういう観点に立って今しっかりと対応するというのであれば、国民健康保険に対する公費の負担の割合の引上げを、これは全国知事会も言っている、市長会も言っている。それから、それだけじゃないんです、地方六団体、もうとにかく、議長会も含めてそういうことをこぞって十一月の全国大会でも要求している、求めている。

 やはりその背景には、住民の皆さんがいて、本当に生活が困難になったりしている。そして、高齢化とそれから貧困化という話もありましたけれども、そういう事態の中で何とかそうした人たちの命を支えて、そして生活を応援しようという思いから、やはり国に対してもっと抜本的に策をとってほしい、三千四百億じゃまだ足りないよというふうに言っているんだと思うんですよね。

 これに本当に向き合ってしっかりとやるのが政治の仕事だ、このことを重ねて強く申し上げて、質問を終わります。

野田委員長 これにて笠井さんの質疑は終了いたしました。

 次に、井上英孝さん。

井上(英)委員 日本維新の会の井上英孝です。

 もう最後ということで、時間も限られていますので、早速質疑に入らさせていただきたいというふうに思います。

 まずは、外交についてお聞きをしたいんですけれども、本日、けさの報道で、日米首脳電話会談をおやりになられるということを聞きましたけれども、約一週間後、米朝首脳会談というのを前にしたこの時期に、非常に大事な時期だと思いますけれども、当然、総理は何よりも重要な拉致問題の解決に向けて密接に方針をすり合わせたいということでお答えをいただいていますけれども、改めて、この解決に向けた決意をお聞かせいただけますでしょうか。

安倍内閣総理大臣 来週の二十七日、二十八日に、ハノイにおいて二回目の米朝首脳会談が行われます。

 それに先立ちまして、私も、ぜひ日米で、核、ミサイル、そして大切な拉致問題について方針をすり合わせたい、こう考えておりましたが、米側も、ぜひこの私と、また日本側とすり合わせたい、こちら側の考え方をよく聞いておきたいということもございまして、今晩、電話による首脳会談、日米電話首脳会談を行う予定でございます。その際には、核・ミサイル問題、従来から日本の基本的な考え方は既にお伝えをしておりますが、この考え方についてしっかりと伝えたいと思っております。

 そして、拉致問題については、たまたま、きのう拉致被害者の家族の皆さんにお越しをいただきましたので、皆さんからお話をいろいろと、切実な思いについてお話を伺いました。自分たちも随分年をとってきたので早くしてもらいたいというお話も伺いました。

 そしてまた、メッセージを出す上においては、拉致被害者家族の皆さんは金正恩委員長に対してメッセージを発出しましたが、このメッセージには、もう本当に、とにかく一日も早く取り返したいという思いが詰まったメッセージなんだろう、こう思っています。もちろん、御家族の皆さんは言いたいことは山ほどあるんだろうと思いますが、とにかく取り返すということを最優先に置いてあのメッセージを発出された、こう思います。

 この思いをしっかりと胸に刻みながら、トランプ大統領、第一回目の米朝首脳会談においても私の考え方について金正恩委員長に伝えていただきましたが、これまで一年間の経緯も踏まえまして、更にしっかりと私の考え方を伝えてもらいたいということを、電話ではございますが、トランプ大統領に伝えていきたい、こう思います。

 いずれにいたしましても、日米がしっかりと連携をとっていく、また日米韓もそうなんですが、しっかりと連携をとっていくことが、この問題、拉致問題もそうですが、核問題、ミサイル問題を解決していく上で重要だろうと思います。

井上(英)委員 この拉致問題の解決、前進に向けて、今晩の電話会談、ぜひお願いをしたいというふうに思います。

 また、北朝鮮も絡めた、やはり韓国との、今、日韓関係というのが非常に懸念事項の大きいものになっています。その中でも、徴用工の問題に関して、少し経過を踏まえさせていただきながら、質疑に入らせていただきたいというふうに思います。

 昨年十月に韓国の大法院が新日鉄住金に対して、戦時中、徴用工として働かせていた旧朝鮮半島出身労働者三名に対しての慰謝料を払うよう命じたということに端を発したいわゆる徴用工問題というのが、非常に日韓関係を悪化させている。

 先般、二月の十五日、ドイツのミュンヘンにおきましても日韓外相会談が行われましたが、韓国政府からは何ら明確な回答というのがありませんでした。

 現状は、韓国は、差し押さえた日本企業の資産を現金化すべく、資産売却の手続を進めているというふうにもお聞きをしています。

 こういった状況の中で、当然、相手方もあることですし、これがあります、あれがありますと恐らくおっしゃれないとは思いますけれども、このような状況になっているということを、改めて、外務大臣、どのようにお考えか、お答えいただけますでしょうか。

河野国務大臣 旧朝鮮半島出身労働者をめぐる問題につきましては、現在に至るまで、韓国政府が日韓請求権協定違反の状況を是正する具体的な措置をとっておりません。

 委員おっしゃいましたように、原告側による差押えの動きが進んでいるということは、これは極めて深刻に捉えております。日本企業の正当な経済活動を保護するという観点から、引き続き日本政府として適切に対応してまいりたいと思っております。

 一月の九日の時点で請求権協定に基づく協議を要請し、二月の十二日だったと思いますが、回答の督促をいたしました。また、先般のミュンヘンでの日韓の外相会談の中でも、協議に応ずるように求めたところでございます。

 日本政府としては、誠意を持って韓国政府がこの協議に応ずるものと思っておりますが、万が一の場合には、さまざま対策を、対抗策をとらねばならぬというふうに考えております。

井上(英)委員 対策をぜひとっていただきたいというふうにも思うんですね、最悪の場合は。

 ですから、韓国側は、逆に、日韓請求協定というものの土俵に上がってしまうと、日本側に正当性があるということはやはりわかっているんじゃないかなというふうに思うんですね。だからこそ、それには乗らず、慰謝料の請求という新しい切り口が、日本企業にそういう形での支払いを命じたというふうにも言われております。

 しかし、韓国政府が韓国国民に補償を行わなかったことで生じる慰謝料というのは、やはり韓国政府にしっかりと支払いをしていただくということが我々の恐らく思いではないかなと思いますし、また、目に見えるような形で、対抗策と言うと強硬的に聞こえますけれども、やはり今のままでは寛容過ぎるんじゃないかという気持ちもあります。

 先ほど、いろいろな手があるということをおっしゃっておりましたけれども、その中で、よく一般的に言われているのは、国際司法裁判所への提訴だとか、それから日韓請求権協定の中にある仲裁、そういった方法もあるということを改めて確認をさせていただきたいと思うんですけれども、いかがでしょうか。

河野国務大臣 先ほども申し上げましたように、我々としては、韓国が誠意を持って協議に応じてくれるというふうに思っておりますが、万が一の場合には、国際法に基づいて、国際裁判を含めたあらゆる選択肢を検討する、既にしておりますし、万が一のときにはさまざまな対抗策を発動する用意がございます。

井上(英)委員 ぜひ、そういったことも考慮に入れて、総理を含め、外務大臣を含めて、そして外務省の職員も含めて、決してそんな悪くなるようなことを、当然、関係が悪くなることを考えているわけじゃないというふうに思いますし、真摯にやっていただいているというふうにも思います。

 ただ、一方で、今度は、韓国の国会議長によるブルームバーグ通信のインタビューの件も近々にありましたけれども、そういったものをいろいろ聞いていると、やはりちょっと、その件に関しては、私、ちょっと正確な数字はあれなんですけれども、報道ベースでは、八〇%以上の方が議長の発言が不快だったという世論調査も出ているというふうにも聞いています。これは、一国会議員というより一国民としても、やはりちょっとやられ過ぎなんじゃないかなというふうに思うんですね。

 そういったことも含めて、当然、これから韓国との関係をやっていく上において、国際世論というのも大事ですけれども、やはり国内世論、国民一人一人の国内世論の大きい感覚というのも非常に大事にして、今後も事に当たっていただきたいと思いますけれども、外務大臣として国民世論についてどのようにお考えか、お答えいただけますでしょうか。

河野国務大臣 今般の韓国の国会議長の発言は極めて無礼でありまして、外交部を通じ、謝罪と撤回を累次求めてきたところでございます。

 特に、この場合、深刻だと私が思っておりますのは、この人物は、単に国会議長というだけでなく、韓日議連の会長も務めた経験がございます。韓日議連あるいは日本側の日韓議連というのは、これまで、振り返ってみれば、日韓両国関係が難しくなったときに、前へ出てそれぞれ話をすると同時に、国内世論に向けてもこの両国関係の大切さというものを訴えてきたのが韓日議連の先輩方であって、私も、何人もそうした方に韓国でお目にかかりましたけれども、本当に尊敬に値する立派な方々でございました。

 そうした歴史があるにもかかわらず、この韓日議連の会長まで務めた人間がこのようなことを言うというのは、極めて深刻でありまして、先般の外相会談の中でも、この件については本当に驚いたし、残念だということを先方にお伝えをいたしました。本来なら、外交部と韓日議連が、今この問題の取りまとめをしている国務総理を両側で支えているべき人がこういう状況では、本当に日韓関係、心配だ、外交部には、しっかりとこの件、対応をお願いするということを申し上げてまいりました。

 ただ、今、こういう人物でさえこのような発言をするということは、少し強く相手に物を言うと、それに呼応して、わあっと盛り上げる、そういうグループがあって、そこへ向けて発言をするというようなことが繰り返されることになると、日韓両国関係にとっては必ずしも得策ではありません。

 こういう状況ではありますけれども、日韓、昨年、一千万人を超える往来がございました。日本から韓国を訪れる方より、韓国から日本を訪れる方の方が倍以上多いわけですけれども、日本から韓国を訪問する方も二八%ふえたということを考えると、やはり、こういう状況の中でも、お互いの行き来がしっかりあって、草の根で、人的交流の中で、お互いの国民がお互いの国のことをよく理解をするというのは大事なんだろうと思いますので、こういう時期だからこそ、相手をののしるのではなく、少し冷静になって、この両国関係の大切さというものをしっかり認識ができる、そういう対応をきっちりやってまいりたいというふうに思っております。

井上(英)委員 言葉を悪くすれば、国民からは、ちょっと弱腰なんじゃないかというような指摘をされるときもありますけれども、やはり毅然とした態度で、先ほど言われるような、一部の方に受けるためにそういう発言をされているということであるならば、やはり寛容過ぎるんじゃないか。もう少し日本として、適切に返すことは返していくということをやはりやっていくような必要もあると思いますので、ぜひ外務大臣、頑張っていただけたらというふうに思います。

 次に、本年六月二十八日、九日で、日本で初となるG20が大阪で行われます。このG20において、やはり今、TPPからアメリカが抜ける、さらにはEUからイギリスが脱退するなど、国際協調路線というのが非常に崩れそうになっておる中で、日本の存在感というのを際立たせる上でも非常に大事なG20の会議でもありますし、ぜひそこで日本の存在感というのを明確に発揮していただきたいと思いますけれども、総理、このG20に向けてどのようにお考えか、お聞かせいただけますでしょうか。

安倍内閣総理大臣 六月の大阪G20においては、世界のさまざまな課題があります。さまざまな課題に向けてしっかりと議論をする中において、課題解決に向けて日本もリーダーシップを発揮していきたいと思います。

 貿易におきましては、グローバリズム、グローバル化による急速な変化への不安や不満が、時には保護主義への誘惑を生み出し、国と国の間に鋭い対立も生み出しているところであります。だからこそ、さまざまな不安や不満に向き合い、そして、公正なルールを打ち立てていくことで自由貿易を進化させていくことが必要だろうと思います。

 こういう考え方のもと、このG20においては、首脳たちと議論をし、この方向で取りまとめていきたい、こう思っていますが、特にAIやIoT、ビッグデータが世界を一変させようとしている時代に、データこそ新しい付加価値の源泉であります。G20サミットでは、データガバナンス、そして電子商取引に焦点を当てて議論をする大阪トラックの開始を提案し、WTO改革に新風を吹き込みたい、こう思っています。

 このG20には、今、米中の貿易摩擦が懸念されていますが、米国も中国もそれぞれ、トランプ大統領、そして習近平主席が出席を予定しているわけでございますが、さらには、EU、ロシア、さまざまな国々のリーダーが集まるわけでありますから、しっかりと議論をし、この新しい時代に向かってのルールづくりを大阪からスタートしたい、こう思っています。

 また、地球規模的な課題について、例えば気候変動の問題もありますし、そして海洋プラスチックごみ問題もあります。また、質の高いインフラ、また女性、そして保健等をテーマとして取り上げ、国際社会における取組をリードしていく考えであります。

井上(英)委員 G20が成功をするためにも、指導力をぜひ発揮していただきたいというふうに思います。

 次に、消費税の増税について質問をさせていただきます。時間も本当になくなってきたのであれですけれども。

 我々は、やはり身を切る改革ということで、支出を徹底的に見直す、それで財源を生むという考え方というよりは、そういうのを、有権者、国民、さらには役所の官僚の皆さん方にも覚悟、気概というのを理解してもらう、そうやって出るをなしていくことがまずはやはり必要なんじゃないか。よく、入るをはかりて出るをなすという言葉もありますけれども、身の丈に合ったものにしていく、足りないものがあるなら、出ていくお金というのを見直していくということがやはり大事なんじゃないか。

 もちろん、増税によって幼児教育の無償化とか新しい住民サービスというのが提供されるということは、住民サービスが拡充されるということ自体に我々は決して不満を持っているわけではないんですけれども、新たな負担をお願いして新たなサービスが始まるというのは、ちょっと違うのかなと。その前に、やはり、出るをどれだけなせるのかなという議論を我々はふだんからさせていただいているんです。

 今回、消費税が八%から一〇%に上がる。後ほど、非課税取引だとかに触れたいんですけれども、時間がちょっとあれですけれども。ただ、低所得者層に向けては軽減税率を導入するということで、八%の据置きになるもの、それから一〇%になるもの、分けられるわけでありますけれども、その中で、医療費が今回も、一〇%、これは診療報酬という形で引上げ分の二%分上がる。初診で六十円、再診で十円というふうにもお聞きをしていますけれども、こういった医療費、先ほども言いました、低所得者層に向けての軽減税率を八%で据置きにするというのであるなら、この医療費に関しても、低所得者層、それは所得制限するかな、いろいろな方法があると思いますけれども、八%の据置きの医療費であってもいいんじゃないかなというふうに考えるんですけれども、厚生労働大臣、いかがでしょうか。

根本国務大臣 社会保険診療は非課税になっております。その意味では、委員も御承知のとおり、その仕入れに係る消費税額、これは仕入れ税額控除の対象になりませんので、この仕入れに係る消費税相当額を診療報酬に上乗せする形で補填をしております。

 その意味で、この上乗せによる補填、これは、医療機関の負担する総費用のうち、人件費などの課税されない費用を除いた課税仕入れ部分への対応にとどまっていますから、その意味で、患者の自己負担がそれ掛ける一割とか三割になりますので、先ほど初診料の御紹介がありましたが、そこは一般的な課税取引と比べて相当程度抑えられていると私は思います。

 そして、一方で、診療報酬は個々の診療行為に着目して点数をつけるものですから、所得に応じて要は価格を変えるということは、この診療報酬の場合はなじまないと思います。その意味で、低所得者に対しては、例えば高額療養費制度の自己負担限度額の設定などをしておりまして、従前より自己負担が過剰にならないような配慮を行っているところであります。

井上(英)委員 それは重々わかっているんですけれども、ただ、八%で、先ほど言いました非課税取引についても、もちろん社会政策的配慮をした非課税取引というのは当然あるんですけれども、一定、消費税率がどんどんどんどん上がっていくと、やはり限界が見られているんじゃないかなという気もするんですね。その辺、時間がありませんので、ちょっと飛ばさせていただきます。

 先ほどから、結局は、低所得者層に向けては、八%、酒類、外食を除く飲食料品、さらには定期購読契約が締結された週二回以上発行される新聞というのがあります。それを対象に消費税の軽減税率というのがあるんですけれども、生活者の立場、先ほども言いましたけれども、医療にかかる高齢者の、年金だけの受給者の方で低所得者層でしたら、非常に医療費が上がるということも負担になるわけです。それが、だから、診療報酬なのか税なのかなんていうのをお金を払う人は考えませんから、その辺を考えた方がいいんじゃないかという意味なんです。

 電気や水道やガスが、これは一〇%ということになっていますけれども、これについての低所得者層の軽減税率の考え方については、財務大臣、どのようにお思いか、お答えいただけますでしょうか。

麻生国務大臣 これはもう御存じのように、軽減税率の適用品目というか、適用の対象品目ですな、その中で、今言われた電気、ガス、水道というのは間違いなく入っていないんです。

 なぜ入っていないかというのは、これは間違いなく日々の生活に不可欠なサービスということは、もうはっきりしておりますけれども、御存じのように、電気、ガス、水道というのは、過重な負荷にならないようにということで、もともとこれを、仕事をする人については認可制になっていて、きちんとした政府の指導で、これは公共的なサービスであることに含めまして、きちんとした公共料金というのが決められておるというのが実態であります。

 仮に、飲食料品に加えまして電気、ガス、水道といったものを、公共料金が適用対象ということになりますと、これは、御存じのように、電気、ガス、水道は、それを集めたお金で消費税を集めておられる部分がありますので、その消費税収はごとんと、今度はそっち側の収入がごとんと減りますから、そうすると、それによって、消費税率引上げの目的である社会保障と税の一体サービスという点につきましては、これは実現に支障が出てくる、そちらの収入ががたっと減る分だけ、ということになりますので、今回の軽減税率の対象とはしていないというのがその背景であります。

井上(英)委員 財務大臣のおっしゃっているのはわかるんですけれども、結局、低所得者にとっては、帰って夜になれば電気をつけますし、カップ麺をつくろうと思えば、カップ麺は八%で買えるのに、カップ麺のお湯を温めるのには電気かガスが要りますし、それで結局料理を食べるということになれば、やはり、その辺に関しての基盤インフラに対してどのような負担感というのが出てくるかなというのは正直あるんですね。

 だから、先ほども言いましたけれども、支払う人からすれば、本体価格が載っていようが消費税八%据置きになろうが、高く払わないと買えないものになってしまうと、やはりしんどくなるというのが私は感覚じゃないかなと思うんです。

 最後になるかなと思うんですけれども、便乗値上げについて、茂木大臣にちょっと聞きたいんです。

 八%据置きで、当然、財務省も含め、そして閣僚の皆さん方も含めて、けんけんごうごう、かんかんがくがく、今日まで軽減税率の導入に向けて進めてこられたと思うんですけれども、三月からカップ麺が上がるだとか、ジュースが上がるだとか、そして新聞も上がるんじゃないかというような報道もされている中で、先ほども言いました、買われるユーザーにとっては、今まで百円で買えていたものが、結果的に消費税が八%据置きになっても百二十円払わないと買えなくなってしまうと、消費税の八%の据置きというのが、余り効果というか、感覚的に受け入れられない、結局上がるのかと。それが来月の三月ぐらいから始まっていくということになっていきますと、本当に長い時間をかけてこの軽減税率を導入してきた苦労も含めて、飛んでしまうような気もするんですね。

 ですから、少なくとも、ポイント還元やプレミアム商品券、六カ月、九カ月やる間ぐらいはその八%の価格を維持するような、もちろんそれは政府が強制的に物の価格を決めるなんということは、まずそんなことはあり得ないんですけれども、あうんの呼吸で、そういう八%の据置きになることをメリットとして享受できるような期間というのがあってもよかったなと思うんですけれども、その辺については、茂木大臣、どのようにお考えですか。

茂木国務大臣 何度かこの予算委員会でも答弁をさせていただいておりますが、十月一日に引上げを予定しておりますけれども、一律に価格が上がることによってその前に駆け込み需要が起こってその反動減が起こってしまう、こういう事態をできるだけ避けたい、こういう観点からさまざまな対策をとっておりますが、日本の場合、ちょうど三十年前、一九八九年に消費税が導入されて、また、引上げが行われてきたんですが、やはり、その日に上げるものだ、事業者もそういう感覚が定着したんだと思うんですが、諸外国、特に欧州においては、一九六〇年代から七〇年代にかけて、付加価値税を引き上げるときに、それは事業者がそれぞれの経営判断によって行っていいですよ、こういったことが定着をしているわけであります。

 そういった我が国のこれまでの経験や欧州諸国の事例、これも参考にしまして、今回、消費税率の引上げに伴う価格設定のガイドラインを公表したところでありまして、この中では、価格設定について、従来、便乗値上げの抑制、これを求めてきましたが、これは、消費税率引上げ前に需要に応じて値上げを行うなどそれぞれの経営判断に基づいて自由な価格決定をする、このことを何ら妨げるものではない、そういう事情であればいいんですけれども、全くそういう事情がない中で、合理的な理由のない……

野田委員長 茂木大臣、質問時間が終了しておりますので、簡潔に御答弁をお願いします。

茂木国務大臣 いわゆる便乗値上げについては、消費者庁において適切に監視し、対応していく、そのように思っております。

井上(英)委員 本当に時間が来ましたので、これで終わります。ありがとうございました。

野田委員長 これにて井上さんの質疑は終了いたしました。

 各大臣は御退席いただいて結構でございます。

    ―――――――――――――

野田委員長 この際、三案審査のため、昨十九日、第一班長野県、第二班北海道に委員を派遣いたしましたので、派遣委員からそれぞれ報告を聴取いたします。第一班坂本哲志さん。

坂本委員 長野県に派遣された委員を代表いたしまして、団長にかわり私からその概要を御報告申し上げます。

 派遣委員は、野田聖子委員長を団長として、理事宮下一郎君、委員秋本真利君、小田原潔君、高村正大君、鈴木俊一君、中山泰秀君、吉野正芳君、大串博志君、矢上雅義君、西岡秀子君、太田昌孝君、藤野保史君、私、坂本哲志の十四名であります。

 昨十九日、現地において、株式会社WAKUWAKUやまのうちを視察し、関係者から説明を聴取いたしました。

 次いで、長野市において会議を開催いたしました。

 会議におきましては、長野市長加藤久雄君、株式会社桝一市村酒造場代表取締役・株式会社小布施堂代表取締役市村次夫君、一般社団法人長野県建設業協会顧問(前会長)藏谷伸一君及びしらかば会計事務所所長・税理士土屋信行君の四名から意見を聴取いたしました。

 まず、加藤君からは、働く場所と学ぶ場所の確保による地方創生の重要性、住民の安全、安心な生活を確保するための防災、減災、国土強靱化への予算の重点配分などの意見が、

 次に、市村君からは、景観に配慮したまちづくり、地方の創意あるまちづくりに対し、国の補助金等を柔軟に運用する必要性などの意見が、

 次に、藏谷君からは、長野県の建設業界における若手技術者不足の問題、長野県の建設業界における働き方改革の現状などの意見が、

 最後に、土屋君から、固定資産税の評価を実情に合わせる必要性、消費増税及び軽減税率導入の問題点

などの意見が述べられました。

 次いで、各委員から意見陳述人に対し、長野市における健康長寿の取組、特色あるまちづくりにおいて重要視すべき事項、妊娠期から出産、子育てまで一貫した支援を行う長野市版ネウボラの効果、建設業界における高齢化の現状、軽減税率の導入が宿泊、サービス業等に与える影響などについて質疑が行われました。

 以上が会議の概要でありますが、議事の内容は速記により記録いたしましたので、詳細はそれによって御承知願いたいと存じます。

 なお、今回の会議の開催につきましては、地元関係者を始め多数の方々の御協力をいただき、極めて円滑に行うことができました。ここに深く感謝の意を表する次第であります。

 以上、御報告申し上げます。

野田委員長 次に、第二班田中和徳さん。

田中(和)委員 北海道に派遣された委員を代表いたしまして、その概要を御報告申し上げます。

 派遣委員は、私、田中和徳を団長として、理事井野俊郎君、堀内詔子君、逢坂誠二君、渡辺周君、委員伊藤達也君、石崎徹君、今村雅弘君、奥野信亮君、笹川博義君、盛山正仁君、早稲田夕季君、岡本三成君、田村貴昭君、浦野靖人君の十五名であります。

 昨十九日、現地において、三印三浦水産株式会社を視察し、関係者から説明を聴取いたしました。

 次いで、函館市において会議を開催いたしました。

 会議におきましては、北海道経済連合会会長高橋賢友君、松前町副町長若佐智弘君、函館商工会議所副会頭・函館空港ビルデング株式会社代表取締役社長水島良治君及び大間原発訴訟の会代表竹田とし子君の四名から意見を聴取いたしました。

 まず、高橋君からは、北海道の経済の現状と課題、北海道における新産業育成に向けた取組などの意見が、

 次に、若佐君からは、北朝鮮籍漁船の漂着への対策強化の必要性、スルメイカの違法操業対策、太平洋クロマグロの資源管理のあり方の見直し等、水産業を支える取組の必要性などの意見が、

 次に、水島君からは、災害時の空港間連携を促進するための高速道路整備の必要性、函館市における人口減少対策などの意見が、

 最後に、竹田君から、大間原子力発電所の建設を差し止める必要性、核燃料サイクルを見直す必要性

などの意見が述べられました。

 次いで、各委員から意見陳述人に対し、地域の社会資本整備と国のプライマリーバランスとの関係、北海道胆振東部地震の際に発生したブラックアウトの経験から得られた教訓、優先的に実施されるべき人口減少対策の内容、北海道へのIR誘致の経済効果と依存症対策への取組方針、MアンドA等を通じた中小企業、小規模事業者の規模拡大を促進する必要性、北海道における再生可能エネルギー促進の展望、北海道を訪れる外国人観光客を増加させるための方策などについて質疑が行われました。

 以上が会議の概要でありますが、議事の内容は速記により記録いたしましたので、詳細はそれによって御承知願いたいと存じます。

 なお、今回の会議の開催につきましては、地元関係者を始め多数の方々の御協力をいただき、極めて円滑に行うことができました。ここに深く感謝の意を表する次第であります。

 以上、御報告申し上げます。

野田委員長 以上で派遣委員からの報告は終わりました。

 お諮りいたします。

 ただいま報告のありました第一班及び第二班の現地における会議の記録は、本日の会議録に参照掲載することに御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

野田委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

    〔会議の記録は本号(その二)に掲載〕

    ―――――――――――――

野田委員長 次回は、明二十一日午前九時から委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。

    午後五時十一分散会

     ――――◇―――――

  〔本号(その一)参照〕

    ―――――――――――――

   派遣委員の長野県における意見聴取に関する記録

一、期日

   平成三十一年二月十九日(火)

二、場所

   ホテル国際21

三、意見を聴取した問題

   平成三十一年度一般会計予算、平成三十一年度特別会計予算及び平成三十一年度政府関係機関予算について

四、出席者

 (1) 派遣委員

    座長 野田 聖子君

       秋本 真利君   小田原 潔君

       高村 正大君   坂本 哲志君

       鈴木 俊一君   中山 泰秀君

       宮下 一郎君   吉野 正芳君

       大串 博志君   矢上 雅義君

       西岡 秀子君   太田 昌孝君

       藤野 保史君

 (2) 意見陳述者

    長野市長        加藤 久雄君

    株式会社桝一市村酒造場代表取締役

    株式会社小布施堂代表取締役          市村 次夫君

    一般社団法人長野県建設業協会顧問(前会長)  藏谷 伸一君

    しらかば会計事務所所長・税理士        土屋 信行君

 (3) その他の出席者

    予算委員会専門員    鈴木 宏幸君

    財務省主計局主計官   前田  努君

     ――――◇―――――

    午後一時十五分開議

野田座長 これより会議を開きます。

 私は、衆議院予算委員会派遣委員団団長の野田聖子でございます。

 私がこの会議の座長を務めさせていただきますので、よろしくお願い申し上げます。

 この際、派遣委員団を代表いたしまして一言御挨拶を申し上げます。

 皆様御承知のとおり、当委員会では、平成三十一年度一般会計予算、平成三十一年度特別会計予算及び平成三十一年度政府関係機関予算の審査を行っているところでございます。

 本日は、三案の審査に当たり、国民各界各層の皆様方から御意見を承るため、当長野市におきましてこのような会議を催しているところでございます。

 御意見をお述べいただく皆様方におかれましては、御多用中にもかかわらず御出席をいただきまして、まことにありがとうございます。どうか忌憚のない御意見をお述べいただきますようよろしくお願いいたします。

 それでは、まず、この会議の運営につきまして御説明申し上げます。

 会議の議事は、全て衆議院における委員会議事規則及び手続に準拠して行い、議事の整理、秩序の保持等は、座長であります私が行うことといたします。発言される方は、その都度座長の許可を得て発言していただきますようお願いいたします。

 なお、御意見をお述べいただく皆様方から委員に対しての質疑はできないことになっておりますので、あらかじめ御承知おき願います。

 次に、議事の順序について申し上げます。

 最初に、意見陳述者の皆様方からお一人十分程度で御意見をお述べいただき、その後、委員からの質疑に対してお答え願いたいと存じます。

 なお、御発言は着席のままで結構でございます。

 それでは、本日御出席の方々を御紹介いたします。

 まず、派遣委員は、自由民主党の坂本哲志さん、宮下一郎さん、秋本真利さん、小田原潔さん、高村正大さん、鈴木俊一さん、中山泰秀さん、吉野正芳さん、立憲民主党・無所属フォーラムの大串博志さん、矢上雅義さん、国民民主党・無所属クラブの西岡秀子さん、公明党の太田昌孝さん、日本共産党の藤野保史さん、以上でございます。

 次に、本日御意見をお述べいただく方々を御紹介いたします。

 長野市長加藤久雄さん、株式会社桝一市村酒造場代表取締役・株式会社小布施堂代表取締役市村次夫さん、一般社団法人長野県建設業協会顧問(前会長)藏谷伸一さん、しらかば会計事務所所長・税理士土屋信行さん、以上四名の方々でございます。

 それでは、まず加藤久雄さんに御意見をお述べいただきたいと存じます。

加藤久雄君 長野市長の加藤久雄でございます。

 本日は、貴重な機会をいただきまして、本当にありがとうございます。

 野田委員長始め委員の皆様方には、地方公聴会のために長野へお越しいただきましたこと、また、国や地方、そして国民のために日夜御尽力をいただいておりますことを感謝申し上げたいと思います。

 さて、平成三十一年度地方財政対策におきまして、地方財源については、一般財源総額を前年に比べまして〇・六兆円増の六十二・七兆円を確保いただきましたことに対しまして、大変感謝を申し上げます。

 さらに、新年度予算につきましては、子ども・子育て支援臨時交付金の創設を始め、地方創生推進交付金を盛り込んだ政府予算案を提出いただきましたことに、あわせて御礼申し上げます。

 また、今月七日には、平成三十年度第二次補正予算が成立をいたしました。中でも、防災・減災、国土強靱化事業に一兆円以上もの予算が盛り込まれております。

 本市におきましても、市議会三月例会におきまして、国の補正予算を活用させていただいた、道路防災、街路事業、小中学校の大規模改修事業などの補正予算案の提出を予定しているところでございます。

 本市では、今後も、国の制度を十分に活用させていただきながら、人口減少、少子高齢化の加速や増大する社会保障関係経費への対応、市民の生命財産を守る防災対策、また公共施設マネジメントなどの重要、困難な行政課題に対し、あらかじめ備え、対策を図るYOBOUをテーマといたしまして、将来世代へ負担を先送りすることのないよう、しっかりと取り組んでまいりたいと考えております。

 次に、地方創生でありますが、大切なことは、東京一極集中に歯どめをかけることにあります。本市では、長野地域の中枢都市といたしまして、周辺市町村を含めた圏域の人口流出に歯どめをかける防波堤の役割を果たさなければならないと考えております。

 現状を見ますと、長野県内の高等学校から大学に進学した者の八割以上が県外に進学し、そのうち六割以上が県外に就職し、せっかく手塩にかけ育てた子供たちが戻ってきておりません。

 さらに、本市の出生者については、ことし一月に新成人になった平成十年生まれは三千八百九十四人でありましたが、昨年、平成三十年生まれは二千七百十三人で、実に三割以上も激減しております。

 こうした状況に歯どめをかけるため、「カムバックtoながの」を合い言葉に、本市のほか、周辺自治体八市町村とともに、中枢連携都市圏の連携事業といたしまして、官民挙げてUJIターンの促進に取り組んでいるところであります。

 Uターンについては、仕事さえあれば地元に帰りたいという声が大きく、長野出身者と企業との職のマッチングを積極的に進めていくことが大事であります。

 また、地方においては、大学の知の拠点の存在も重要であります。昨年春には長野県立大学が開学し、この春には長野保健医療大学並びに清泉女学院大学の看護学部がスタートすることになっており、本市の十八歳人口に対する大学入学定員の割合を示す大学収容力が二八%から四〇%に上昇いたします。三大学の四学年が全てそろえば、約千六百名の若者が町で活動することになり、町の活気が変わることを楽しみにしております。

 また、うれしい話といたしまして、二〇一一年から二〇一六年まで本市の婚姻数は六年連続で減り続けていましたが、二〇一七年は二十五組のプラスに転じ、明るい兆しが見られたことであります。本市は結婚支援の取組も進めており、結婚機運が高まってほしいと願っております。

 地方創生においては、働く場所と学ぶ場所が大きな役割を果たす重要な役割と考えております。地方創生に関連する施策が更に進むよう、一層の後押しをお願いいたしたいと思います。

 さらに、防災、減災、国土強靱化については、東日本大震災以来、自然災害への備えが我が国にとって放置できない重要課題であります。

 本市は、市域が八百三十四・八一平方キロを超えまして、市道の実延長は四千三百八十六・六キロと中核市一位でありますが、中山間地域がその市域の四分の三を占めるとともに、善光寺平は、千曲川や犀川といった日本有数の河川の流域に位置しております。このため、日ごろから、市民もみずから命を守るための行動をとれるよう、非常時への備えが必要であります。

 浅川ダムの竣工や千曲川堤防の強化などが国や県の協力のもとに進められており、災害に強い道路や河川等のハード整備の重要性は言うまでもなく、防災、減災、国土強靱化への予算の重点配分は、住民の安全、安心な生活を確保するためにも大変ありがたいと考えております。

 加えて、北陸新幹線につきましては、大規模地震などの災害に備え、太平洋側中心の高速交通網の代替補完機能を有しており、大企業のブランチ機能を地方へ誘導するなど、リスク回避のためのバックアップ機能の役割を果たす上においても必要不可欠であります。

 国土の均衡ある発展を図るためにおいても、日本海側の国土軸として、改めて、北陸新幹線の早期整備を進めていただくことを切にお願い申し上げます。

 次に、高齢者も活躍する社会の実現でございますが、昨年九月に、菅谷昭松本市長とともに、人生百年時代を見据えた新しい高齢者の定義について共同提言をさせていただきました。内容は七十五歳以上を高齢者と言いましょうというものであり、長野県知事始め、県内の市町村長に賛同をいただいております。体も意識も若い活動的な高齢者がふえていることに加えまして、人手不足が深刻な状況であり、高齢者が活躍しやすい社会に転換していきたいというのが共同宣言の趣旨であります。

 新年度には、高齢者を対象としたディスコイベントや長野市長杯争奪のカラオケ大会を企画するなど、引きこもりがちな高齢者を社会に引き出す、いわゆるフレイル予防につながる、みんなで楽しめる元気なイベントを始めたいと考えており、現在準備を進めているところでございます。

 また、ハローワークとの連携による高齢者を対象とした就労支援も実施しております。

 こうした事業を通じまして健康寿命の延伸を実現できれば、将来的に、医療や介護などの社会保障費の抑制につながることを期待ができます。

 さらに、健康増進という観点から喫煙防止や受動喫煙対策を進めておりますが、地方自治体は、地方たばこ消費税をいただいている立場であり、喫煙を抑制すると税収が減るという痛しかゆしの部分があります。例えば、たばこ消費税は全て国税にして国から再配分するなど、地方自治体が税収に気兼ねなく健康増進策を進められるよう御配慮いただきたいと思います。

 政府におかれましては、一億総活躍社会の実現に向け、女性の役割も大切にしていただいておりますので、年齢や性別に関係なく活躍できる社会、女性、高齢者活躍社会の実現に向け取り組んでいただきたいと思います。

 なお、念のため申し上げますけれども、共同提言は、これまでの社会保障制度の変更を求めるものではありません。

 終わりに、本市は一九九八年の長野冬季オリンピック・パラリンピック開催都市であり、両大会は長野県民の心のレガシーとなっております。五輪開催都市として、東京二〇二〇に向け、我々も開催機運を盛り上げてまいります。

 どんな時代においても困難があり、競争があり、気概を持って努力し、乗り越えて今があるわけであります。日本の未来のために、私が地方から元気を発信してまいりますので、ぜひとも国政の立場から地方を応援していただくことをお願い申し上げますとともに、皆様の御健康と御多幸を御祈念申し上げ、私の意見陳述といたします。

 ありがとうございました。

野田座長 ありがとうございました。

 次に、市村次夫さんにお願いいたします。

市村次夫君 私は、小布施町と申しまして、ここから、長野市から北東へ二十キロぐらいのところに住んでおります。

 きょうは、そのうち十キロぐらいを意識的に、江戸時代から続く旧北国街道、加賀の前田公も参勤交代の折に通ったという道ですが、それを通ってまいりました。車で通ったにもかかわらず、非常に適度な曲がりぐあい、それから道路の高低差、もう本当に、時間にすればたった十五分か二十分でありますけれども、その道を通るだけで幸せになる、本当に日本人は、本来、空間設計のうまい人なんだなと改めて認識しました。

 私のおります小布施町は、北斎とクリの町ということで、葛飾北斎が晩年を過ごした、あるいはクリ、あるいはクリ菓子と言いますけれども、クリを主原料にした菓子等で有名でありますが、もう一方において、町並み修景事業と申しまして、景観に非常にこの数十年、力を入れている町であります。

 そういう中で、二年前に、私ども、小布施町国道四〇三号新しい市庭通りを創生する会という会を結成いたしまして、私はその委員長をやっております。この構成メンバーですけれども、事務局は小布施町でありますが、メンバーとして、長野県の須坂建設事務所が正式メンバーで、毎月一回の会合には必ず出てくる。それからまた、小布施町、長年面倒を見てくれている建築家を中心にしたデザインチームがいて、そして沿道の商店主、あるいは個人、そういう方々で、おおよそ十二、三名のチーム構成でやっております。

 これは単なる委員会、提言ではなくて、実行に移す委員会でありますので、そろそろそういう局面に差しかかってまいりましたけれども、実際の宅地の移転であるとか、あるいは住居の移築とか、そんなことを具体的にこの委員会がやるという極めて実践的な委員会です。

 本当はその正式メンバーで中部電力さんも入っていただいているんですけれども、一回も出席いただいていないという悲しい現実もあります。なぜ中部電力さんがメンバーで大事かというと、景観と同時に地下埋設をやっていく、非常に重要なところなんですね。それが残念ながら出ていただけないという現状があります。

 では、資料をめくっていただきたいのでありますけれども、車から人へ、都市計画に新しい概念をということであります。これは何を言いたいかというと、言葉をかえれば、全国津々浦々、町の中まで道路になってしまったものを、もう一度道に戻そうと。道というのは実に多機能であります。

 では、資料をめくっていただきますと、そこに小布施町国道四〇三号の歴史という写真がございます、白黒写真ですけれども、これをごらんいただくと、いわゆる街路樹というようなものはいろいろな木が植わっている。植わっているだけじゃなくて、これはそれぞれのお宅が、自前のものなんですね。ですから、私であると同時に公であるというのが日本の本来の姿なんですね。これをやはり非常に参考にいたしまして、四十年ぐらい前から景観に取り組んでいるということであります。

 今回新たに、新しい市庭通り、市庭というのは要するにマーケットの市場ですけれども、創生する会というのは、やはりもう一度道路の楽しさを取り戻そうと。それには、いろいろな商業施設、あるいはオープンカフェ、そういうものが必要になってくるだろうということであります。

 次、めくっていただきますと、小布施らしい道空間をつくりたいということでありまして、このイラストは、九州の「ななつ星」なんかをデザインした水戸岡先生にお願いして描いてもらったものであります。水戸岡先生は、この趣旨に賛成して、これは無料で描いてくださいました。

 次、めくっていただくと、より拡大図であります。ここにいろいろなことが描いてありますけれども、今ある建物を極力壊さない、あるいは再利用するということですけれども、風情が残る奥の空間の活用、これが一番やりたいところなんですね。つまり、歩道、特に道路でも歩道と、それから内部にある空間、こういうものを一体的につなげていきたい、こういう空間設計をやっていきたいということであります。

 更にめくっていただければ、具体的には、歩道などの幅が帯のように一定幅というのが非常にやはり歩いて楽しくないんじゃないかということで、工夫でありますけれども、この道路を十六メートル拡幅した場合と十二メートル拡幅した場合と、二つの買収プランをもって、場所によって引っ込んだりでこぼこにしていくという、基本的に土地の所有をこういうふうな形に変えていく。

 次に、めくっていただきますと、何やら木の歩道のようなものがあって、その中央、下の方に、実はこれは境界くいなんですけれども、これが、ここから左が歩道で右側は民地なんです。でも、ペーブメントをクリの木レンガという同じペーブメントでやるということで、これは実は、この現在私が主宰している委員会よりも前、三十数年前、町並み修景事業の最初としてやったところでありまして、この境界くいから右側は民地であると同時に、このペーブメントは民間負担なんですね、公ではありません。

 それから、もう一つめくっていただくと、こういうふうに歩道に続いた形で空き地のようなものがあります。これがやはり、歩いている人が立ち話などをして、たまる場所です。いわゆる建築家が言うポケットパークとか、そういう仰々しくつくったものではなくて、道の膨らみ。我々、歴史的には、葛飾北斎が天井絵を描いた祭り屋台なんかを飾った町でもありますので、こういう道の膨らみにかつては屋台を飾っておいたりしていたものですから、こういう道の膨らみというのは実に大事だという考え方であります。

 その向こうに見えるのが長野信用金庫小布施支店という銀行でありますけれども、その前に木が生えています。これはヤマボウシという木でありますけれども、この木も、それからこの木が植わっている土地もこの信金さんの土地でありまして、決して道路ではありません。

 したがいまして、先ほど冒頭に見ていただいた明治時代の写真にあるように、今も小布施は、街路樹じゃなくて、個人がやはり木を管理して植えていこう、こういうことであります。

 実は、今後、私らが取り組み始めたのはこの道路の左側であります。ごらんのとおり、白っぽい四角い建物があります。こういうものをちょっと改めていこうというようなことであります。

 次のページをめくってください。先ほど申し上げましたとおり、この長野信用金庫小布施支店の前でありますけれども、先ほど申し上げましたとおり、この株立ちの木はヤマボウシの木が二本ですけれども、この木もこの土地も民地でありますということです。ですから、歩行者は、歩道が広いなという感覚で歩いているということであります。

 次に、最後の写真をごらんいただきたいんですけれども、これは三十数年前にそういう考えで整備してきた町並み修景事業の結果でありますけれども、ごらんいただくように、画面上の方に、空間を区切るように、電線とか、あるいはほかのケーブルがぶった切った形であります。

 それに対して、それ以外のものというのは、奥に、雁田山と言うんですけれども、びょうぶのように山がある。こういう背後に山があるというのは、やはり住んでいて落ちつく地形ですよね。

 そして、山だけじゃなくて、手前の方に、アイストップとしては、白い壁と土壁の土蔵がある。そして、一番前には、長野信用金庫小布施支店、右側が私ども小布施堂の本店でありますけれども、こういう、新しいけれども古いものと調和した建物がある。

 もう一つ御注目いただきたいのは、このアスファルトの舗道から内部空間へずっと続く、駐車場の誘導路なんですね。これは、厳密に言うと所有者がみんな違うんです。違うんだけれども、ペーブメントをそろえるだけで非常に一体化した、楽しい、それからまた快適な空間ができる、こういうことでありまして、例えば東京でいえば、四〇三号、国連大学のところがあります、奥に青山ブックセンターがありますが、あのあたりがもし、こういう一種類のペーブメントをずっと引いてあって、そしてそのセンターへ行く左右の建物、左側が国連大学なんですけれども、ああいうところの一階が商店になったら、東京でもかなりいい、ある面じゃ代官山に匹敵するような商業空間になり得るんですね。

 ですから、本当に、これは改めて、所有はしっかり区分をつくるとしても、一体的にデザインするということが大変大事になってきたんじゃないかなと思うんです。

 そういう意味で、これから実はふるさと創生資金をお願いしたいと思うんですが、実は事務局の役場はびびっているんですね。なぜかというと、創生資金はおおむね五割ぐらいがソフト事業と言われています、ですから、この委員会が考えているような照明であるとか、あるいはペーブメントの一体化とか、そういう不動産にお金を投じるのはおりないんじゃないかと言うから、そんなことはないと。法律というのは、できた段階はまだわからないから既存の使い方を指定しているだけで、新しい使い方があったら必ずそれに応えるはずであるというふうに、実は職員にハッパをかけている段階であります。

 そして、今回こういう機会をいただいたものですから、ぜひ先生方には、非常にふるさと創生資金、いいんですけれども、既製品の、これは道路だから道路予算で出しなさいとか、これは民地だからとか、そういうつまらぬことを言ってはいけない。あるいは、工学の先生にデザインして、そんなデザイン料なんて無駄だとか、そういう非常にやぼなことはぜひ言わないで使わせてほしいな、こんなふうに思います。

 以上でございます。

野田座長 ありがとうございました。

 次に、藏谷伸一さんにお願いいたします。

藏谷伸一君 建設業協会の顧問を務めております藏谷と申します。よろしくお願いします。

 本日は、当予算委員会の地方公聴会、このような発言の機会をいただきまして、本当にありがたく思います。ありがとうございます。

 私は、長野県の建設産業の現状、データとともに説明をさせていただきたいと思いますので、よろしくお願いをいたします。

 まず、冒頭、平成二十四年の十二月、第二次安倍内閣、自公連立政権ということで発足をしました。七年目を迎えていますが、私ども建設業界においては、まず、改正品確法の制定をいただき、また、毎年毎年、労務単価の引上げをいただき、そして入札制度の改善をいただき、承継比率の引上げもいただき、日ごろから私たちが建設業協会の全国の団体を通じて、国交省さん、財務省さん等にお願いしていることを、迅速に真摯に受けとめていただいて改善をいただいていますこと、まずもって御礼を申し上げます。本当にありがたいです。

 石井国交大臣始め関連の国会議員の先生、また国交省の職員の皆さんにも、大変、私どもの思いを受けとめていただき、本当にこの六年、七年の間、私ども、励みになっています。改めて御礼を申し上げます。

 私ども、地域の建設産業は、当たり前のことではありますが、インフラの維持修繕、あるいは災害対応、今は長野県は除雪でございます。そして、昨今、先週、長野県の宮田村でも、御案内のとおり、豚コレラが発生をしました。新聞には出ていませんが、あの豚を埋める穴は地元の建設業者が掘るんです。鳥インフルエンザがはやった時期もありました。県の指導で、一緒になって、もしも有事のときはここにこういう穴を掘りなさいということで、年に一度、私たちは訓練をしています。いざというときにきちっと対応できるためであります。

 これをやるのは、東京の大手ではありません。地方に根差した私ども地方の中小零細企業が、先ほど申し上げたインフラ整備や災害、あるいは除雪、今回の有事に合わせて、みんな地方の業者がやっているわけでありますが、長野県建設業協会、ピークが平成七年から九年、八百三十社の会員でありましたが、今は四百八十七であります。掛ける〇・五八ぐらいになりますか。それでも頑張って、そういった意味での活動を続けているということを、まずお含みをいただきたいと思います。

 資料の説明をさせていただきます。

 一番最初、長野県の公共事業、落札率、建設業就業者の推移ということであります。

 平成十年に長野冬季オリンピックが開催をされました。その数年前から平成七年度が、長野県の公共事業予算のピークであります。四千百三十五億。ずっと下がりっ放しになりまして、平成三十年度、やっと一千億を超えました。しかし、ピークに比して四分の一という数字であります。

 そして、三十一年度予算でありますが、おかげさまで、三年間の国土強靱化、全体で七兆円という数字が、我が長野県にも、防災、減災を含めて予算化されまして、今回の三十一年度予算は二九%アップということで、一千三百億になりました。私どもも、阿部知事の英断に心から敬意と、感謝をしているところであります。

 落札率も見ていただくとわかります。量の問題と質の問題のお話をしています。量の問題というのは予算であります。質の問題は、落札率あるいは私どもの収益率の話であります。

 恥ずかしながら、平成十五年度を見てください。上の折れ線グラフにしてあります。長野県の平均落札率七三%。やればやるほど赤字だという時代が続きました。昨今はやっと九二・五%ぐらいまで上がっていますが、まだまだ、きちっとした利益が出て賞与を満額という時代には至っていません。

 その内容を、続きまして資料の二、経営状況アンケート調査という表をごらんいただきたいと思います。

 仕事量に関して、一ページ、これは長野県建設業協会、会員数四百九十一、一年前のデータでありますが、八五%の回収率でのデータであります。

 一ページの下段、仕事量に関して、建築の部。建築は七割、八割、九割ぐらいが民間でありまして、公共は率は少ないんでありますが、一番右側、全体を通してまだ余力がある、半分の企業はまだ余力がある、仕事が少ないと。半分がちょうどいいというのが建築であります。

 二ページ目をお願いします。下段であります。これは土木であります。土木の八割、九割は公共事業であります。国、県、市町村等々でありますが、そのうち、一番右の割合を見てください。余力がある、六八%がまだまだ余力がありますよと。適正であるという企業が三一%。まだまだ、公共事業を含めて、私どもはしっかりとした仕事ができますよというデータであります。

 三ページをお願いします。じゃ、どのぐらい土木で余力があるんですかというのが上の表であります。青とオレンジ色とグレーがあります。これは、一割から五割まで、まだまだ余力がありますよというのは、八五%の企業がまだまだ仕事をさせてくださいという意思表示だというふうに思います。

 質の問題を申し上げましたけれども、じゃ、どれだけ賞与を出しているんですか。平成二十九年度の年間賞与、長野県の建設業協会の会員では、支給したが八二%。支給しましたが、四ページをお願いします、どれだけ支給しましたか。一番右側の割合、青が〇・一から一カ月、オレンジが一・一カ月から二カ月。これは二カ月以内の企業が五〇%なんです。二カ月出ていないんですよ。

 ということで、まだまだ質の問題として、ほかの産業に比べて、公共事業、特に土木でありますが、落札率の問題がまだ相当改善をいただかないといけないのかなという資料だと思います。

 そして、五ページ、賃上げの予定率、上の段にありますが、七五%は上げたいと。上げないとなかなか新規採用ができないという意思表示だというふうに思います。

 社員数の過不足でありますが、下段の一番右でありますが、オレンジ色、六七%が不足。仕事はまだまだできるんだけれども何で不足なのという、ちょっと整合性がないので、これはヒアリングをしましたら、若手の新規入職者が少ないというニュアンスで捉えた結果が六七%、若手が不足しているというデータであります。

 週休二日とか働き方改革は、また時間がありましたら、最後にちょっと報告をさせていただきたいと思います。

 続いて、ちょっと小さな数字で済みませんが、A4の縦長の、これは東日本建設業保証会社さんのデータであります。字が小さくて恐縮であります。一番右側の平成二十九年度決算ということで、東日本は一都二十二県ありますので、そのデータであります。

 長野県、自慢じゃございませんが、全部ブービーでございます。二十三分の二十二、総資本経常利益率、売上高経常利益率、売上高総利益率、売上高営業利益率、全部ブービー。そして、一番下の自己資本比率だけが第六位というところに位置していますが、これは長野県の山国の県民性ですよ。堅実で真面目な県民性が体質で出ているのかなというふうに思います。

 お隣の山梨さんが、どべがありましたね、山梨さんに叱られるかもしれませんが。山梨さんは、いろいろな数字が並んだけれども、自己資本率もみんな低いんですけれども、総利益率が山梨さんは、三段目が今トップなんだけれども、ほかの数字が低いので、この辺の整合性がもうちょっと研究しなきゃいけないかなと思っていますが、他県に比べて私どもはこういう状況であります。

 続きまして、働き方改革の休日の問題、円グラフをごらんください。

 今、長野県の六割、七割は四週六休です。隔週土曜日は休みましょうということでやっています。プラス一日ふやそうということで、一昨年からプレミアムサタデーと題しまして、第二土曜日、今、第一と第三土曜日は基本的に休むようにスケジュールを組んでいる企業が六割、七割ありますが、第二も入れましょうということで、第二土曜日は休めましたかという、そのアンケートのデータが円グラフです。

 十月、十一月、十二月、去年であります。これは一番新しい資料でありますが、大体六割が休めましたよという数字でありますが、まだ四割が休めていないということであります。特に十二月、これは年末でありますので、年内に完成しなきゃいけないとか、あるいは雪が降る前に完成しなきゃいけないとか、いろいろな理由なんでありますが、まだまだ週休二日、完全週休二日といいますか、四週八休になるにはもう少し時間がかかるかなというふうに思っています。

 最後は、一番最後の資料でありますが、これが新規入職者の関係であります。

 私どもの長野県は、特にコンソーシアムで、県、教育委員会、それから高校、そして私ども協会とリンクしまして、意見交換をしながら、実際に私どもの企業に、県内の企業に、とりあえずは専門高校の土木、建築の高校生に入っていただきたく、いろいろな活動をしています。

 真ん中の表でありますが、新規学卒者の採用状況ということであります。これが、平成三十年、百五十七名の方が新規採用者であります。全部で、女性を入れますと百八十一名、四百八十五社の会員でありますから、三分の一強の企業しかまだまだ求人が入ってきません。

 三ページをお願いします。一番上が高校生の採用状況であります。一番少なかったのが平成十八、十九、二十年ぐらいはもう十五人から十三人、十人という時代がありました。全県ですよ、四百八十社のうち。そして、先ほど申し上げたいろいろなコンソーシアムで活動しました結果、二十八年度、二十九年度、三十年度、百、六十九、七十五という格好で、少しずつ高校生も入っていただけるようになりました。

 大学は少ないんです。長野県の大学で建築、土木があるのは信州大学だけ。ですから、私立に行きたい人はみんな県外に行っちゃうんです。県外に行った後、戻ってこないんです。

 今、高校にお願いしているのは、まだまだ二倍ぐらいの倍率があるんですが、調整をされて一・一倍ぐらいになっちゃうんですが、既存の高校に土木、建築のクラスがある場合はクラス数をふやしてほしい、あるいは、ない職業高校、専門高校には、建築、土木のカリキュラムをつくってほしいというお願いをしていますが、先生の数も足りないんですね、土木、建築の。

 そういった意味で、時間はかかるかもしれませんが、ぜひ、私どものようなところでは、専門学校、大学生はなかなか来ません。地元の方にお願いをするためには、先ほど申し上げたようなことも、教育委員会さんあるいは県を通じてお願いしているところであります。

 おかげさまで元気が出ています。ことしの長野県も二九%アップしましたし、先ほどありました国土強靱化で、国全体も三年間で七兆円、また国の国交省予算も一五%アップということで、私たちが元気が出る要素がたくさんあります。御期待に沿えるように、しっかりといい仕事をして恩返しをしたいと存じます。

 ありがとうございました。

野田座長 ありがとうございました。

 次に、土屋信行さんにお願いいたします。

土屋信行君 ただいま御紹介いただきました土屋信行と申します。

 きょうの午前中に視察に行かれた山ノ内町で、税理士を開業しています。ことしで十九年目になります。よろしくお願いします。

 山ノ内町は観光と農業の町です。私の事務所の関与先にも観光と農業の方が多くいらっしゃいます。その中でも、観光、特に旅館、ホテル業についてお話をさせていただきます。

 お手元に資料をお配りさせていただきました。表紙は真っ白ですが、右下に私の名前が書いてあるものです。

 一ページをごらんいただければと思いますが、旅館、ホテル業で負担が重いのは、鉄筋など非木造の家屋にかかる固定資産税です。

 この一ページは私が作成したものですが、固定資産税は、市町村が算出した評価額に税率を掛けて計算します。税率は標準税率で一・四%です。

 固定資産税の評価額は、大ざっぱに言えば、再建築価格から経過年数に応じた率を掛けて計算します。再建築価格とはその年に新築したとした場合にかかる金額ですから、再建築価格が上がれば、年数がたっても評価額は下がりません。減価補正率は、非木造家屋の場合、十年経過すれば〇・七三九七ですから、十年経過すれば再建築価格の七四%の評価額に、二十年で約半分の評価額になります。法律で定められた耐用年数は四十五年ですが、四十五年で二〇%になって、その後はそのままです。したがって、再建築価格の二〇%より低くはなりません。

 実例一を書かせていただきましたが、このホテルは、昭和四十七年に四億六千万円で建物を購入しました。平成二十七年で築四十三年、耐用年数まであと二年ですが、評価額は二億四千万になります。これは購入した金額の半分にもなっていません。固定資産税は、一・四%掛けて、年額で三百三十六万円になります。逆算していくと再建築価格が十億七千万円になっているからで、再建築価格がこんなに高いと、耐用年数の四十五年を過ぎて減価補正率が二〇%になったとしても、二億円以上の評価になり、年間三百万円近くの固定資産税を払うことになります。

 さらに、固定資産税の評価額の高さは、建物を売買したときの登録免許税、不動産取得税にも連動しています。

 一番下に太字で書きましたように、住宅以外の建物の場合、登録免許税、不動産取得税は合わせて六%になります。後継者のいないホテルを売却しようとしても、これらと購入後の固定資産税が高過ぎて買い手がつかない例があります。

 すぐ上の実例二は競売です。六百七十万円でやはりホテルの建物が出ましたが、買い手はありませんでした。買おうと思えば六百七十万円で買えた物件です。しかし、固定資産税評価額は一億円を超えていました。もしこれを買えば、登録免許税、不動産取得税で六百万円、固定資産税を年間百四十万円負担することになります。町外の方が新たにホテルを始めようとしても、これが原因で断念する例もあります。

 固定資産税は、売上げが上がってもなくてもかかってくるという意味において、大きな負担となります。また、町税、町の税の六割を固定資産税が占める山ノ内町にとっては、固定資産税の滞納が大きな問題になります。

 二ページ目をごらんください。

 細かくて申しわけありませんが、平成二十八年度の長野県の市町村税の徴収実績です。総務省のホームページから抜粋したものです。一番右の列が、前年からの滞納分も含めた徴収率です。ざっと下へ見ていただくと、九〇%台の数字が並んでおります。

 長野県下七十七市町村のうち、七十三市町村は徴収率が八七%以上です。しかし、そこから約一〇ポイント離されて、七〇%台が四町村あります。赤い色をつけたところです。四町村はいずれも観光地で、山ノ内町はその中でも最下位の七一・四%です。山ノ内町に限らず、観光地にとって固定資産税の負担がいかに重いかおわかりいただけるのではないかと思います。

 固定資産税の評価を実情に合ったものにして、重過ぎる負担の軽減を要望させていただきたいと思います。

 ところで、平成二十四年十二月以来、景気拡大が続いているとされています。

 資料の三ページは、信濃毎日新聞の二月十五日付です。写真の下に棒グラフがありますが、これは山ノ内町の観光客数の推移です。一九九〇年に約一千万人だった観光客数は、二〇一〇年以降ほぼ半分になり、その後は横ばい状態が続いています。

 続いて、資料の四ページですが、これは長野県のスキー場利用者等の推移です。ピークの平成四年度には二千百十九万人がスキーで長野県のスキー場を使っています。それが、二十九から三十年度は六百五十七万人と、ほぼ三分の一になっています。ここ十年間は、横ばいから微減という感じです。

 以上の資料を見る限りでは、景気拡大の影響は山ノ内町の観光には届いていないと言えそうです。そして、それは私の関与先にも反映し、厳しい決算書になっています。

 五ページは、帝国データバンクのTDBというものの抜粋です。これによれば、二〇一八年の旅館、ホテルの倒産は全国で七十九件、都道府県別では長野県が最多の十三件で、そのうち山ノ内町は五件と県内最多になっています。

 以上の状況を見る限り、固定資産税の負担に耐え、十月からの消費税増税を受け入れるのはかなり厳しいと言わざるを得ません。消費税増税で皆さんが家計を締め、その結果、観光客が減るようなことがあればなおさらです。

 旅館、ホテル業は、実質二十四時間営業です。この業界も、現在、人手不足が大きな悩みになっています。限られた人員で経理事務を行うのは大変なことです。旅館、ホテルの経理は、宿泊費、バス代、食事代、売店での販売、館内での喫茶、レストラン、弁当の販売、レンタルスキー、各種立てかえなどさまざまです。さらに、精算も、現金、部屋づけ、クレジット、電子マネー、クーポンなどがあります。消費税の複数税率やポイント還元が導入されれば、事務負担が過重になることも目に見えています。

 言うまでもないことですが、家計に余裕がなければ、なかなか観光には出かけません。したがって、景気の恩恵が回ってくるのは一番最後です。逆に、家計が苦しくなれば、真っ先に削られるのも観光です。

 昨年は、台風の影響によるキャンセルもありました。大雪が降ったり、暖冬でスキー場に雪がなくてのキャンセルもあります。バス事故の影響で、バスでの集客が落ち込んでいます。

 しかし、一方で、新しい取組も始まっています。資料三ページの記事にあるように、県外の方が開業されたり、空き家を改修した飲食店やカフェなどが開業されています。長野電鉄の湯田中駅前も、一時は随分寂しくなりましたが、最近はにぎわいを取り戻しつつあります。

 以上、山ノ内町の様子から、固定資産税の負担が重いこと、消費税増税と複数税率を受け入れられるのはかなり難しいこと、人手不足であること、しかし、新たな取組も始まり、にぎわいを取り戻しつつあることをお話しさせていただきました。

 以上で意見陳述を終了させていただきます。ありがとうございました。

野田座長 ありがとうございました。

 以上で意見陳述者からの御意見の開陳は終わりました。

    ―――――――――――――

野田座長 これより委員からの質疑を行います。

 質疑の申出がありますので、順次これを許します。宮下一郎さん。

宮下委員 予算委員会理事をしております衆議院議員の宮下一郎でございます。

 意見陳述人の皆様には、すばらしい発表をいただきまして、ありがとうございます。お忙しいところ御参加いただいたことにも感謝を申し上げます。

 それぞれ大変示唆に富むお話をいただきましたので、少しずつお話を伺っていきたいと思います。

 まず、加藤市長ですけれども、健康長寿長野県ということで、健康にも着目していろいろな取組をされているということで、資料でも読ませていただきました。そこら辺の取組について、更に補足していただければありがたい。

 それから一つ、この四月に外国人材の受入れが始まります。各市町村において、新しく受け入れた外国人材のサポート窓口のような機能を更に機能強化していただきたいと考えているわけですけれども、それに対して、現状と課題、今後の考え方等々を教えていただきたいということ。

 あわせて、長野はオリンピック開催都市ということで、東京オリンピック開催に向けて、全国でホストタウンの取組とか、どう市民みんなで、東京都民を中心にですけれども、各県においても、長野県においてもホストタウンの取組等で海外の皆さんを受け入れていこう、こういうことでやっておりますが、このオリンピックを成功させるために、アドバイス等ありましたらお願いをしたいと思います。

加藤久雄君 ありがとうございます。

 最初に健康というお話をいただきました。

 やはり健康こそ本当に人生の最大の幸福ということでございまして、そういう意味ではふだんから健康を特に注意しておるわけでございますが、実は私、七十六歳なんですが、先般、先ほどお話ししましたように、もう三分の一ぐらい高齢者になってくる、六十五歳から高齢者としますと。そうしますと、いろいろな意味で、七十五歳、後期高齢者、もうその後はないので末期高齢者、もうだめだ、こういうふうになりますので、やはりその意味では、高齢者に少し元気になってもらおうということの中で、松本の菅谷市長と一緒に、七十五歳から高齢者と呼ぼうよと。まず、気持ちから元気になっていただく。

 長野市では、ベジライフ宣言といいまして、野菜が長野県は多いんですが、まず、できるだけ同じ食事の中で野菜から先に食事をとろう、それからバランスのいい食事、そしてまた適度な運動、特に筋力運動を加えてやっていこうということでやっております。それから、今、ベジライフ一、二、三十というふうに言っていまして、最初に野菜を食べよう、二番目には、握り拳二つ分ぐらいの、どちらにしても野菜を食べよう、バランスのいい食事、そしてまた、ハッピーかみんぐ、三十回はかんでやろう、こんなことを一つの大きなテーマとしてやっております。

 それから、今のお話の、高齢者に対しましては、先ほどの運動等を含めて、できるだけ、特に高齢者の男の引きこもりが多いので、男を引き出すようなことを含めて、ディスコ、カラオケ等も含めて対応させていただいているところでございます。

 それから、今の外国人のことでございますけれども、長野市も、外国から来られている方が昨年だけで、宿泊だけで約八万人ということでございまして、松本市の十五万人等を見ますとまだまだなんですが、これから外国人が来られるということと、今現在、長野市に住んでいる方が三千五百人ほどいらっしゃるわけでございます。そういう皆さんと年一回、いろいろな意味で御意見を聞いたり、一緒になって楽しもうというような催しもさせていただいているところでございます。

 今お話しのように、ただ問題は、外国人の皆さんに自治会の登録、住んでおられる方の自治会の登録が非常によくないわけです。私ども、日本人の方が大体九二%ぐらい各自治会に入っているんですが、外国人の方が一つの大きな課題ではないかなというふうに思っていますし、いろいろ、住民登記していただくときに仮名表記をやはりしてもらうんですが、これに結構時間がかかっております。これも、できるだけ時間がかからないように対応させていただくように、今させていただいているところでございます。

 どちらにいたしても、外国人の皆さんにできるだけ長野に溶け込んでいただく、地域の皆さんも一緒になってやると同時に、一緒になってこの取組を、溶け込んでいただくような対応を今後もしてまいりたいというふうに思っています。

 それから、今お話しの東京二〇二〇でございますけれども、長野市は、今から二十一年前、一九九八年に長野冬季オリンピック・パラリンピックを開催いたしました。長野県民に対して県がアンケートをとりましたら、八〇%以上の方が、本当にいい思い出になっている、そしてまた、あのレガシーを継いでいこうと。非常に大きな長野県民に対してインパクトを与えております。

 それが、ある面では、ボランティア活動が長野県は物すごい。他県と比べまして、オリンピック、パラリンピックを契機にボランティアの数が物すごい、大変すばらしい状況でございまして、特に長野マラソンなんかも、これは非常におもてなしがいい。というのは、ボランティアだけで何千人も出てお手伝いをいただく。毎年やっていただける。エムウェーブなんかも、オリンピックのときにスピードスケートをやったんですが、それ以来ずっと、そのボランティアの方がいまだにいろいろな意味でお手伝いをしていただけるとか、さまざまなことでボランティアが育っているということがございます。

 もう一つは、パラリンピックが、長野パラリンピックを契機に非常に盛んになってまいりました。長野市も、まだ保健福祉部にあった障害者スポーツを、スポーツ振興部の方を一緒に、一般のと一緒にしまして、一緒になってやっていこうよということで、パラスポーツも、昨年はパラスポーツデー等をさせていただいたわけでございます。

 やはり一番は、一校一国運動というのが非常に長野オリンピックで育ったのが続いておりまして、いまだに中学とか小学校で各国とつながりを持っておりまして、たまたま今回、デンマークの水泳チームが長野市に事前合宿を決めていただいたんですが、その大きな要素が、やはり川中島中学とデンマークのツロロ校とずっと行き来しています、そういうことが縁で長野になった。やはりそういう意味でのものがつながれているというふうに感じています。

 ですから、東京オリンピック・パラリンピックにつきましては、やはりこの一校一国運動、ぜひやっていただくことと、やはりできるだけ多くの方が、都民の皆さんなり国民がいろいろなことで参加することによって、この東京オリンピック・パラリンピックが大きなレガシーになってくると思いますし、また、ぜひと思っております。

 ただ、一つだけここでお願いがあるんですが、長野市が今、オリンピック施設を全て持っております。例えば、エムウェーブとかホワイトリング等、非常に、二十年を経過して老朽化してきておるわけでございます。年間の維持費が新年度は十四億円を超えるということでございまして、長野市の予算の中では非常に大きな負担になっておるわけでございまして、国家プロジェクトにかかわるものにつきましては、できれば維持費については国の方でできていただけるような、非常に大きな遺産でございますし、お願いしたいなというふうに思っています。

 ぜひ、東京オリンピック・パラリンピックを契機に、国民全体が、外国との触れ合いも含めて、大きなレガシーになっていただければというふうに思っています。

 以上でございます。

宮下委員 次に、市村社長にお伺いをしたいと思います。

 具体的なまちづくり、写真も交えて大変わかりやすいお話、ありがとうございました。私も一度行ったことがあって、本当にすてきな町並みで、また来たいなと思う町並みでございました。

 事前にいただいた資料で、セーラ・マリ・カミングスさんを社員として受け入れて、そして一緒に、非常に広い目で見て、海外の方に対してもアピールできる町、そして、全国のいろいろなところとつながりを持つというようないろいろなイベントも持っていらっしゃって、それで人口の何倍もの方が訪れる町に生まれ変わっているということで、本当に町おこしのモデルだなというふうに思います。

 そうした中で、長野県各地でも、これから地域をもっと元気にしていきたい、もっとみんなが来てくれる町や村にしていきたいと思っている村はいっぱいあるんですけれども、そこら辺、どういうところを気をつけて、どういう手順で進めていけば、町の宝を生かして、交流もできて、そしてできれば海外の皆さんにも来ていただける地域になっていくのか、そこら辺のアドバイスをちょっとひとついただければと思います。

市村次夫君 小布施の町は、長野県の中で面積が一番小さい町なんですね。約四キロ四方。もうちょっと広い部分というのは千曲川の河川敷でありまして、人の住めるところは大体四キロ四方なんです。そこに一万一千五百人いるんですが、実は大事にしているのは、小布施のたった小さいその中でも、江戸時代の村単位、つまり、小布施の中にも町場があるし、小布施の中にもカントリーサイドがある、この、せいぜい戸数でいえば五十戸、百戸の単位の歴史というものを大事にしている。

 したがいまして、セーラ・カミングスのような異国の人間を迎えるのは、やはり小布施の中でも町場の部分だ。これはもう広く、どんな文化でも受け入れる。しかし、周辺部はちょっとかたくなでいいんだ、それは保守的なものなんだ、その辺のめり張りを大変大事にしております。

 ついでに、先ほどのお話に関して言えば、小布施に限らず地方都市は、実は町の中に街路灯は要らないんですね。

 皆さんお気づきかどうか、この一年以内のことだと思うんですけれども、皇居前広場が、いわゆる街灯というのをほとんどなくして、歩道部分を思い切り明るくしているんですね。あれをやりたいんですね、やはり小布施の町の照明なんかは。

 照明というのは、明かりの絶対値じゃなくて、暗さと明るさのコントラストが大事なんですよね。ですから、そういう意味では、もう一度、やはり小布施の場合には暗さを生かした照明というのをやりたい。そうした場合に、先ほど申し上げたような、道路とそれから民地では行政の担当が違ってしまう、法律も違っちゃう、これを何とかしていきたいということなんです。

 先ほどのセーラ・カミングスなども、そういう意味では、いろいろ問題があっても突破力があったわけですね。

 ですから、先ほど加藤市長のお話の長野マラソン、あれは実は、当初数年は小布施も通っていたんですよ、土屋さんの山ノ内がスタートで、そして長野がゴールで。ところが、陸連のルールが変わって、それだと高低差があるので公認記録にならないということで、それで急遽、長野市を回る、ということは、小布施をもう通らなくなっちゃった。

 それで、じゃ、小布施独自のハーフマラソンをやっちゃえというのが小布施見にマラソンで、これはこれで人気なんですよね。やはり、そんなときに小布施の農村部は、ふだんはお客を招き入れないけれども、マラソンのようなお祭りのときには大いにそういう、閉鎖的な農村部だけれども親切にランナーを迎えるということで、大変人気になっていますね。

 ですから、めり張りが大事だと思います。

宮下委員 ありがとうございます。

 次に、藏谷社長にお伺いをしたいと思います。

 先ほどお話がありました豚コレラが発生したのは私の地元宮田村でありまして、改めて、建設業の皆様にもお世話になっているということを理解することができました。本当に感謝申し上げます。

 今回、国土強靱化予算ということで、三割増しというような、それで三年間で七兆円というようなことで、長野県も本当に、治山治水、砂防、必要な事業が山ほどありますので、それをしっかり県の皆さんと連携をして推進していただければと思っておりますが、その中で、お話のように、品確法であるとか入札改革であるとか単価の引上げをやってきたんですけれども、一つは、私は、仕事の出し方といいますか、工期設定とかそういったもので、安定して仕事をしていただけるように、期末だけにどんと出るようなことがないように、これは国も県も市町村もそういうことでやっていくこと。

 それから、できれば維持管理とかそういうことは、複数年契約とか、ないしは、地域の皆さんがジョイントを組んでいただいて一括で発注するとか、そういったことにも踏み込んで、安定経営を皆さんにしていただける、それで、先を見て人も採用していただくというようなことが必要じゃないかなと常々思っております。

 まだまだ余力はあるよ、仕事はもっとくれればやるよというお話だったので、人手不足ということでいえば、若手が着実に入らなきゃいけないという意味では人手不足だと思いますが、そういった意味で、制度改革について、ここをもう少し、もう一押し頑張ってほしいというようなアドバイスがあればいただきたいと思います。

藏谷伸一君 よく御存じで、建設会社の人かなと思いました。

 一番最初、先生が言われた平準化発注。どうしても、会計年度が三月末で終わるものですから、四月、五月になかなか、市町村は予算がはっきりしないので発注できないという。一番いい時期なんですね、長野の場合、四、五は。だから、できるだけ平準化発注をしましょうということで、早期発注も心がけていただいているんですが、まだまだやはり四、五は仕事量が少ないというのが現状で、より一層平準化発注に心がけていただきたいと思います。

 それからもう一つは、工期設定。今、四週六休でやっているんですが、国交省も県も、物によっては四週八休、いわゆる週休二日で工程を組んでいますよというアナウンスをしますが、やはり実際に現場でやると休めないんですね。

 ということは、発注者の工期設定の技術と、それから受注者の工期設定の技術がいまいちかみ合っていないところがあるということで、冒頭申し上げましたけれども、国交省さんも、じゃ、発注者と工期に関しても綿密な打合せをしながらお互いに改善をしましょうということで、もう既に始まっていますので、こういう方向も大変ありがたいと思います。

 それから、維持管理の複数年契約。これは長野県は始めました。ありがたいことであります、先生のおっしゃるとおり。三年ぐらいを複数年契約でやりますと、一年一年ですと重機はどうしようかなという不安があるんですが、やはり三年向こうを見ますと、設備投資してみようかな、やはりそういった可能性がふえるので、大変ありがたく思います。

 長野県の場合は、九十七のエリアを分けて維持管理をしています。小規模維持修繕というやつでありますが、とりあえずは道路だけなんですよ。それに場合によっては除雪もインクルードしていますが、私どもがお願いしているのは、それに、河川とか、あるいは道路、河川に隣する森林、この整備も全部合わせた段階で複数年でお願いをしたいということを言っています。ここまでは国の道路だから、ここまでは県の道路だから、ここまでは市の道路だから、やはりそれは平面的に全部ならして、区切らないで全部できると非常に効率がいい、除雪されてインフラ整備もできるのかなというふうに思いますので、盛んに今やっていただいていますが、もっと早くやってもらうとありがたいかなと思いますので、よろしくお願いします。

宮下委員 ちょっと時間が少なくなってきましたが、最後に、せっかくですから土屋先生に。

 我々、けさ、山ノ内町を視察してまいりまして、とてもすてきな町だなと思って、もっと山ノ内町が元気になってくださるといいなという思いがしました。

 固定資産税が、なるほど、ああいうところで新しく事業をするには大変なんだなというのもよくわかりました。株式会社やまのうちというところが不動産として持って、それを若い人たちに貸してあげてというのは一つのやはりアイデアなんだなということも同時にわかりました。

 せっかくですので、ことしの税制改正で、事業承継ですね。旅館とかも、個人事業主であれ、中小、未公開の株式であれ、基本的には十年以内であれば納税猶予、旅館の資産もただで次世代に受け渡せるという仕組みがスタートするんですけれども、これについて、先生の御意見といいますか、一言コメントをいただければと思います。

土屋信行君 私の知る限りで恐縮なんですけれども、その納税猶予を使うほどもうかっているところがそんなにないというか、余りこれを言うとうちの関与先に怒られるかもしれないので、ということですね。

 事業承継は、法人も含めて制度は決まったんですけれども、細かいところでまだいろいろ不確定な部分とか、税理士の中でも様子見の部分もありますので、本格化してくるのはこれからだと思うんですが、これから、きょうも視察いただいたように、元気も出てきつつありますので、その事業承継が使えるように元気を出して頑張っていただきたいなと思っております。

 ありがとうございます。

宮下委員 終わります。

野田座長 次に、大串博志さん。

大串(博)委員 立憲民主党・無所属フォーラムの大串でございます。

 きょうは、陳述者の皆様にはお時間をいただき、本当にありがとうございました。そして、貴重な意見をいただきまして、大変勉強になりました。

 午前中は、今お話もありましたように山ノ内町を訪問させていただきまして、まちづくりの力強い取組を見せていただきまして、これも大変勉強になりました。私自身も、二十年ほど前に諏訪市の方に単身で一年間住みまして、長野県内、そのころにくまなく回りました。よさを一年間で通常知り得ないぐらいのところまで知らせていただいたつもりでございますので、皆様とともに、この長野県、あるいはもちろん日本のため、全体に少しでもいい方向に働ければなと思いますので、今後ともよろしくお願いします。

 せっかくですので、私、質問の順番を逆にさせていただいて、土屋先生の方からお問合せをさせていただければと思うんですけれども、土屋先生、先ほど、町おこし、地方の活性化における固定資産税の問題、非常にこれはよくわかりましたし、よく言われている課題でもございます。

 それから、地方税における会費制、会費的性格というところもあり、いろいろな議論があるわけでございますけれども、一方、今回の衆議院の予算委員会でいろいろな議論が今行われていることに、消費税のことし十月からの引上げの問題がございます。

 その中で、消費税に対する影響を緩和するという意味において、消費の平準化策等々も含めて、軽減税率の問題あるいは消費に関するポイント還元制度等の議論も行われているわけでございますけれども、ポイント還元制度に関して大変大きな議論がありまして、地方において、これがどのくらい消費を沸き起こすものになるんだろうか、キャッシュレス決済を行われている業者の方々、中小事業者の方々がどのくらいいらっしゃって、それでポイントを得ていこうとされる地方の消費者の方々がどのくらいいらっしゃるんだろうか、こういうふうな議論も出ているところではあるんですね。

 地方の税務の現場にいらっしゃって皆様の日々経済活動を見ていらっしゃって、消費税引上げに伴う消費の平準化策としてのポイント還元制度、加えて軽減税率の複雑さなんかも指摘されているところでございますけれども、あわせて、どういうふうな課題が地方においてあり得るのか、御指摘をいただけたらと思います。

土屋信行君 ポイント還元制度におきましては、御存じのように、クレジットカードや電子マネーで決済をした場合、お店の規模によって五%、二%をポイントで還元するということなんですが、まず、何分にもポイント還元の期間が九カ月という問題があります。

 やはり、地方においては、先生おっしゃられたように、なかなかキャッシュレスというのが進んでおりません。高齢化も進んでいるところですので、やはり現金決済などが多くを占めているのではないかと思われます。

 お店側の方も、その九カ月のためにどのくらいの投資になるのか、あるいは、その投資をする必要性があるのか、かといって、この店はポイント還元しませんということになるとお客さんが来てくれないのではないかということで、非常に模索している段階だというふうに言えるのではないかと思います。

 まだ、どうしよう、こうしようというのはやはり関与先のところからも聞こえていないんですが、とにかく悩んでいるということについては言えるのではないかと思います。

 以上です。

大串(博)委員 ありがとうございました。

 それでは、藏谷顧問に御意見を承りたいと思いますけれども、もう一つ今回の衆議院予算委員会の中で議論になっているのが、この間の秋からの議論の継続なんですけれども、この四月から導入される外国人労働者への新たなる在留資格の付与の制度が始まるわけですけれども、その具体的制度設計を、法律は通ったんだけれども、更に確認していかなければならないという議論を予算委員会でもやっております。

 私が見るところでは、まだまだ具体的な論点が詰まっていない面があるんじゃないかなというふうに思うんですが、恐らく、建設業の現場においては相当な、先ほども話がありましたように、人材不足があって、今でも技能実習という形で、各地、大変な戦力として活動していただいている外国人の方々もいらっしゃいます。

 恐らく、建設業の皆様におかれては、新しい在留資格を利用して戦力として頑張っていただければというふうに思われるところがあると思うんですけれども、例えば、制度としてこの辺がよくまだわからなくて、もう少し明確になると、雇いやすくて頑張っていただきやすくて助かるんだけれどもなというような思いのあられるところがあれば、教えていただけたらと思います。

藏谷伸一君 今、国交省でキャリアアップシステムというのを始めているんですよ。

 私ども技術職は、CORINSという登録制度があって、どういうキャリアがあるかということを全部データベースで統一して管理していただいているシステムがあります、もう二十年前ぐらいになりますか。

 だけれども、たくみのわざと言われる技能者さんにはないわけです。技能者さんも同じ、どこの現場でどういう実績があったということを、やはりキャリアをデータベース化しようということで、始まったばかりなんですよ。四月、三十一年度から本格的に採用といいますか運用しますが、今は限定運用ということで、日本で二十四の現場で始めています。

 当社も一つの現場で始めるところでありますが、そうすると全部、この人はどこの現場でどういうキャリアがあったかという、これが一番、とりあえず、今いろいろなマイナスの面も出ていますが、外国人労働者に関しては、パスポートとキャリアアップのカードを両方保持することでマイナス面がすごく薄れるのではないかということで、窓口は建設業振興基金さんがおやりになっていますが、これが大いに活用できるはずではないかと思います。

 全部で三十数万人とか言われていますが、実際に今、建設業、維持管理とか、部分的には大変な戦力で受け入れるところがありますので、あとは運用、管理面かなというふうに思っています。

 ただ、余談ですが、失業率が今三%ぐらいですかね、完全失業率。六千万人の就業人口がいて三%ですから、百八十万人ぐらいはいるわけでしょう。そういう方でも、何かいろいろな職業訓練とか、こんなところに私は特技があったんだという可能性もあるわけで、そういった失業の方にも何かちょっと目を向けて、外国人労働者もしかりでありますが、失業者の新たな道を発見する手伝いをするという政策も私は大変重要ではないかと思いますので、老婆心ですが。

大串(博)委員 ありがとうございました。

 それでは、市村社長にもお尋ねさせていただきたいと思います。

 小布施も私は何度も足を運ばせていただいて、大変すばらしい町だなと常々ずっと思っておりました。それで、各地の町おこしの場所も私は訪れるわけですけれども、きょうここに来る前にいろいろな資料を事務局からいただいて、社長がいろいろ述べていらっしゃるところを見せていただいた中で、はっとするところが、私、あったんですね。

 町並みに関するところですけれども、社長がおっしゃったように、各地で暮らして、ゾーニングされていた町は寂しかった、人間の生活というのはそういうものじゃなくて、もっとごちゃごちゃした方が面白いでしょう、こう言っている。はっとして、実は、思いながらきょう来たわけですよ。

 先ほど、社長からのプレゼンテーションの中でも、道の膨らみを利用して、人々がここにたまれるような場所をつくっていくというようなことをおっしゃった。

 私もずっと考えるところがあって、いわゆる都市計画、ル・コルビジェは一九〇〇年の半ばにこれを言って、まあ、これはこれでよかったのかもしれない。しかし一方で、ジェイン・ジェイコブズは、違うんだ、町はもっとごちゃごちゃしていた方がいいんだという考え方をアンチテーゼとして出している。まちづくりに関して、二十世紀はいろいろな思考のあったときだったと思うんですね。

 私自身は、やはり都市計画は都市計画としてあった方がいい場所もこれあり、しかし、にぎわいをつくるには、やはり町はごちゃごちゃしていた方がいいという考え方というのは、非常に今地方において大切じゃないかと思うんですね。

 そういう意味で、まちづくりということを考えるときに、つい、いろいろなソフト面、アクティビティー、どういうお祭りを行うかとか、どういうイベントを行うかとか、どういうふうな観光地をつくっていくか、こういうのを考えがちになります。

 これも非常に大切だと思うんですけれども、はっと気づいたのは、いわゆる町の形、町の構造がどうなっているか、町並みがどうなっているか、これは実は、人がそこに来たいと思うか、また来たいと思うか、たむろしたいと思うか、滞在したいと思うかというのが非常に重要じゃないかと、はっと気づかされました。

 この辺に関する社長の御知見をもう少し教えていただければなというふうに思います。

市村次夫君 実は、私は、昭和四十年代の後半に茨城県の鹿島コンビナートに三年間住んでいました。あれこそゾーニングの町なんですね。はい、ここは工業地帯です、ここは商業地帯です、ここは住居地域ですと。すると、一年、二年ぐらいするともう、いらいらしてくるんですね。つまり、そんなに人間って規則正しい生活なんかできないよと。

 この体験があったものですから、それから十年後ぐらい、十年して小布施へ帰って、やはりいろいろな機能が、当時、言葉がなかったものですから、十年間くらいは、いろいろな生活上の機能は一カ所に多重的にあった方がいいというような回りくどい言い方をしていたんです。ところが、それから十年近くたって、都市計画の世界でようやく混在性という言葉が生まれたんですね。実はこれがキーなんです、町の楽しさ、生活感。

 ちょうど、さすがにやはり大企業というのはすごいなと思ったのは、混在性というのが問題になったときに、どこが小布施を見学に来たかというと三菱地所なんですね。丸の内はそれまでオフィス街だったのを、やはり商業的なものがなきゃということで見に来ました。その次に来たのは、横浜のみなとみらい21。つまり、そういう先端的なところが割と小布施を見に来たというのは非常に印象深かったですね。

大串(博)委員 もう一つお尋ねさせていただければと思うんですけれども、意外と各地、私は九州、佐賀県の田舎なんですね。どこの町でも、例えば、中心市街地の活性化の事業を使って中心市街地を整えていきたい、こういうふうに希望するわけですね。そのときに、でき上がっていく町を見ると、私は、非常に都市計画上のゾーニングの結果に似たような町を見かけるんですね。

 むしろ逆じゃないか、こう思っていて、もっといろいろな機能が混在するような町にした方がいいんじゃないかというふうに私は感じるんですけれども、例えば、行政の皆さんと接していらっしゃって、市街地の活性化も含めたまちづくりをしていくときに、ついつい都市計画的、ゾーニング的な発想に私たち政治、政府、行政の側の人間がなっているなというふうに感じられることはおありになりませんでしょうか。

市村次夫君 そうですね。確かに、それを感じることは多いです。

 逆に、例えば、長野県の例でいうと、飯田市というところが、中心市街地の地盤沈下の対策だと思うんですけれども、建物の二階、三階だったか、市役所の窓口なんかをわざとそこへ埋め込んだり。

 ですから、混在性というのは、何も商業的なごちゃごちゃじゃなくて、公共性のあるものもごちゃごちゃの中に入れるのも混在性でありまして、そうした場合に、ゾーニングというのは、二次元で図面で見ると非常に色分けがされてきれいなんですけれども、しかし、実際の町というのは3Dですから。そうすると、一、二階はこうであっても五階から上はこうだとか、そういうのも混在性の一つだと思いますし、そういう意味では、今後ともずっと楽しさを維持するには混在性だろうと思います。

 でも、おっしゃるとおり、都市計画的な、あるいは秩序、秩序というのは美しさにつながりますので、町のよさというのは、美しさがあり楽しさがあり、欲張るようですけれども、両方必要なんですね。常にそのバランスで、そうしたバランスは、それぞれの町がそれぞれの歴史をお持ちですから、それの延長線上でつくっていけば個性的な町になっていくんじゃないかな、そういうふうに思います。

大串(博)委員 ありがとうございます。

 それでは、加藤市長にお尋ねさせていただきたいと思います。

 七十五歳以上が高齢者なんだという新しいテーゼを松本の市長さんと一緒に繰り広げられていらっしゃる。斬新な切り口だなと思いながら私聞いていたんですけれども、やはり、これだけの少子高齢化の社会になっていくと、長寿で、かつ健康長寿でというところが非常に大切になってくると思うんですね。そこのところに非常に大きな狙いを持っていらっしゃるんだというふうに、先ほど来のお話を聞いて思いました。

 一方で、これだけ長寿の社会になってくると、かつ生産年齢人口が減ってくる中においては、やはり多くの方々が働きやすい社会をつくっていく、これは年齢にかかわらず、性別にかかわらずということになってまいりました。そういった意味でいくと、御高齢の皆さんにも、御希望される方々においては就労をしていただいて、社会の中で生き生きと暮らしていただくというところは非常に今後とも大切になってくるんだというふうに思うんですけれども、なかなかここはまだまだ難しい面が私はあるのかなと実は思っておりまして、地方の現場を見ても。

 市長の目から見ていらっしゃって、御高齢の皆様に、希望をされる方がいらっしゃれば就労して働いていただくということを促進する、促すという面において、何か国の方でもこういうことができたらいいな、この辺がネックだなと思われるところがあったら教えていただければ助かるんですけれども。

加藤久雄君 お答えしたいと思います。

 長野県は今、長寿県として、男性は二番手になっているんですけれども、長らくずっと二十五年間にわたりまして一位、女性はずっと長寿一位。

 この大きな原因の一つは、長野県の企業、これが相当高齢まで雇っているんですね。まずこれは、雇用率が、非常に高齢になっても働いている、中小企業は特に、年齢というよりは人材ということもございますし、そういうことで高齢者の就業率が非常に高い。

 もう一つは、やはり農業を、定年後、帰農して農業を始める。本当に、今から本格的な農業を親の跡を継いでやっておられる方が結構おられるんですね。

 農業をやっている、それから中小企業に就労されている方が多い、これが一つの大きな長寿の原因にもなっていると思います。

 ですから、ある面では、先ほどもちょっとお話ししましたけれども、どうしても、七十五歳、ああ、もう俺はだめだ、俺はもう年だからとか、そういうことがありますので、できるだけこれから、子や人に世話にはならない、健康が第一なんだ。どうやったって、今医学が進歩しておりますので、百歳までになっちゃうんだ。だから、百歳を元気で迎えるか、ベッドで迎えるか、これは今からやはりそういうことをしていこう。

 就労の問題につきましても、できるだけ今、高齢者の就職相談を受ける窓口をつくりまして、対応する形にしております。そのことも含めて、できるだけ、せっかく今、先ほどお話がありましたように、どんどん生産人口減少の中で、女性と高齢者にしっかりと対応できるような環境をつくることが大切だというふうに思っていまして、高齢者に対してもそのような体制を今やっておるところでございます。

大串(博)委員 そこで、追加の質問になりますけれども、今おっしゃった農業の面ですね。

 私も実は、地方である程度の人の豊かさを確保していくためには、農業政策、これが一定程度所得を生むような形をつくっておくというのが非常に大切じゃないかなというふうに思っておりまして、これは実は、御高齢の方の受皿としてだけじゃなくて、若年層が一定程度地方にとどまって働いていくためにも必要じゃないかというふうに思っているんですね。

 農業政策の面からいうと、農業政策は地域地域によって随分産品も違いますし、それぞれの個性があると思うんですけれども、今、長野市周辺における農業政策における課題といいますか、この辺がこういうふうにもう少しなっていればよかったなというような御要望なりがありましたら、教えていただければと思います。

加藤久雄君 今、長野市は、ほかの地区よりも、果物の生産、リンゴ、桃、ブドウ、これが非常に多いですね。これが全農業生産の四割以上を占めている、こういう非常に特色がございます。その中で、今非常に、リンゴ、ブドウ、桃等、ある程度単価が維持されておるという中で、リンゴなんかも、豊野地区というところなんかはもう八桁農家、それからシャインマスカットは、量がふえていて、なおかつ幾らでも売れちゃうという中で、もう八桁どころか九桁農家まで出ている。

 ですから、やはり、ある面では、農家の後継者の問題は、収入さえしっかりと取れれば、あとは、今まで、つらい、厳しい、もうからないというようなことがあったのであれですけれども、そういう方向に転換できてくれば、大きな課題になってきております。

 ただ、まだまだ、果樹につきましても手間がかかるんですね。今、長野市ではお手伝いさん事業をやっておりまして、そういう意味では、できるだけ、一番集中するときに人を、応援するとか、そのようなことをしながらやっているところでございます。

大串(博)委員 ありがとうございました。

野田座長 次に、西岡秀子さん。

西岡委員 国民民主党、西岡秀子でございます。

 本日は、意見陳述人の皆様には、大変お忙しい中お越しいただきまして、大変貴重な御意見をいただきましたことを心より感謝申し上げます。きょういただきました意見を、今後の予算審議、また今後の政策にぜひ生かしてまいりたいと思っております。

 それでは、早速質問に入らせていただきます。

 加藤市長にまずお尋ねをさせていただきます。

 私も、地方、長崎市でございまして、各地方、一番深刻な政治課題は、人口減少、少子高齢化だというふうに思っております。その中で、長野市におきましてもさまざまなお取組をされているというふうに思いますけれども、長野市については、移住相談が大変多い、ナンバーワン、移住相談に来られる方が大変……(加藤久雄君「長野県」と呼ぶ)はい、長野県が多いというふうに聞いておりますけれども、やはり、移住者の皆さん、また、Uターン、Iターン含めまして、移住者の皆様を受け入れるということについて、市長、どのようなお取組をされているのかということが一点。

 今回、東京一極集中を是正するということで、中枢中核都市に、特別に、若者の移住ですとか、新しく仕事の、雇用の場を創出するというための新しい施策を今後展開されることになりましたけれども、なかなか、一度、進学、就職で県外に出た若者が戻ってくるというのは大変難しいところがありまして、各市町村も県もさまざまな取組をする中で、今、一生懸命、何といっても仕事の場がないと若い方が戻ってこられないという状況もありますけれども、市長の方の、その部分でのお取組についてお尋ねをしたいというのが一点。

 ちょっとまた、人口減少にもかかわりますけれども、子育て支援ということで、長野版のネウボラという、これはアドバイスをする場所という意味というふうにお聞きをしておりますけれども、妊娠期から子育て期までの総合的な窓口で、支援窓口を設けられているということでございますけれども、このことについてお尋ねをさせていただきます。

加藤久雄君 お答えいたします。

 初めに、移住のお話でございますけれども、長野県は、ずっと、移住したい県のナンバーワンになっているところでございます。長野県におきましては、全体でいきますと、転入者が転出を上回ったという状況でございます。ただ、長野市でいいますと、前回は非常に大幅に、ちょっと転出が多いという状況でございます。長野市が足を引っ張っているんじゃないかと思うんですけれども。

 そんな状況の中、非常に今、先ほどお話ししたように、長野市から都会の大学に進学した方の六割以上が帰ってこない、こういう状況の中、一つは、「カムバックtoながの」という中で、親世代に対しまして、ぜひ息子さん、娘さん、それからお孫さんは長野に帰ってくるように言ってくださいと。こういう、やはり親から子へをしっかりとする。おまえはどこでもいいからちゃんとしっかりやればいいやと言うんじゃなくて、必ず帰ってきて、長野を元気にしてもらいたい、親も元気にしてもらいたい、こういうことを言ってもらいたい、そんなようなことを含めて言っていること。

 もう一つ、移住者にとりましては、やはり、住むところ、職と、両方必要なんですね。これも対応できるように、今窓口でさせていただいておるところでございます。

 それから、移住に関しまして、私どもの先ほどの、長野へ戻りたい、移りたいという中で、一つ大きな成果がありましたのは、長野市が、今まで社会人採用をしなかったんですが、三年前から社会人採用を始めました。それも、ちょうど二十九歳から三十四、五歳までが非常に採用が少なかったということもあって、県外在住、五年以上ということで絞って、ちょっとチラシを出したんですね。そうしたら、三年前に六十六人、昨年が二十二名、ことしが、東京でやったこともございまして、百数名の皆さんが来られまして、最終的には三十三名の方を採りましたのですが、非常にいい方です。もう、こんなにいい人材がいるかというぐらいの人材であります。

 ですから、ある面では、東京で今までやってこられた方が経験を持ってやれる、そういうふうに職とマッチングすれば必ずチャンスはあるということでございますので、これは商工会議所等も含めて、今、ある程度経験した社会人採用を進めていこうよ、こういうことで進めさせていただいています。

 それから、今のネウボラの話でございますが、長野市は今まで子供に関する政策が三つぐらいに分かれておったんですが、五年前にこども未来部という部をつくりまして、全ての相談はここで一括して受けます、こども相談室も含めてさまざまなものを全て引き受けますということでやっております。

 その中で、やはり、お子さんをお持ちの方が、今、おじいさん、おばあさんと一緒にいるわけではありませんので、さまざまな悩みを抱えて来ている、それを今、ネウボラという形の中で、ことしから四カ所にしまして、今まで二カ所だったんですが、来ております。一日相当数の方が来られまして、相談に乗っていただいているということで、これは非常にいい施策だなというふうにも思っております。

西岡委員 市長、ありがとうございます。

 長崎市も、実は、県庁所在地でありながらダム機能が果たせておりませんで、大変人口減少に今苦悩している都市でございますけれども、その中で、今後、公共交通のあり方というのが、大変、地方にとっては、本当に人口が減っていく中で、高齢者の皆さんの足もなくなっている、また一方で買物するところもなくなっているという中で、特に公共交通を今後どのようにしていくかというのは、ネットワークをつくってやっていかないと、なかなか単独では、持続可能という面でいくと難しいところがあると思うんですけれども、長野市において、公共交通のお取組について、もし御教授いただけることがありましたら。

加藤久雄君 公共交通は、本当に、長野市も非常に、先ほどお話ししましたように、市の域が八百三十四平方キロという中で、中山間地が七五%を占めておるというところでございまして、公共交通がどんどん、過疎化によって減少してきている。それを市の事業も含めて補っているわけでございますが、ひとつ高齢者にもっと出ていただこうということで、おでかけパスポートというものをつくりまして、これですと、幾ら遠くからでも五分の一から十分の一ぐらいの値段でいつでも使えるという中で、これも相当大きな事業でやっております。

 それと、どうしても、先ほどお話ししたように車という形になるんですが、高齢者は車も運転できないという中では、タクシーで迎えをできるような対応も今させていただいております。これは、住民自治協議会が事務局としてその配置をしてから、非常に稼働率がよくなってきたということもございます。

 どちらにいたしましても、長野市は駅を中心として放射状になっていまして、非常に、横の面を含めて大変な状況でございますけれども、しかし、できるだけバスを使っていただけるような、公共交通を使っていただけるような施策を考えております。

西岡委員 ありがとうございます。

 続きまして、市村社長様にお尋ねをいたします。

 本当に大変すばらしいお取組で、大変勉強になることばかりでございましたけれども、社長が今まで長年まちづくりをされていく中で、民間主導でこれだけのまちづくりをしていくというのは大変なことだというふうに思いますけれども、民間主導のまちづくりというものはどこを一番大事に社長が進められてこられたかということをお聞きしたいことと、社長のところは和菓子をされておりまして、私もおいしくいただいたことがありますけれども、食文化というのが大変、地域のこれからのまちづくりの、私は大切なキーワードになるというふうに思いますし、平成二十九年に、芸術基本法の中で初めて、生活文化の中で食文化という言葉が法律に明記をされました。

 その中でも特に、食文化が、これから国際的にも大変大切なまちづくりのキーワードになると思いますけれども、そのあたりのことで御教授いただけることがあれば、ぜひお願いいたします。

市村次夫君 じゃ、ちょっとお答えします。

 民間主導ですけれども、民間主導というのは、公と民間と当然立脚点が違うから目的もやり方も違うんだという前提に立って、その中で大きい目標としては、例えば小布施の例でいえば、町の発展で住んでいる人間が楽しいことが一番だろうと。そういう遠い目的は共通ですから、そのあとは、やはり役場というか、行政は行政、民間は民間で、その辺のめり張りをつけるのも結構大事だと思うんですね。

 ですから、どうしても行政の場合ですと、常に制度ができた場合の制度設計に縛られてしまう。新たなことをやろうというのはやはり民間でやらなきゃいけない。そうした場合に、民間が資本がある場合にはいいんですけれども、ない場合にはやはり何らかの補助金をいただいてというようなことになろうかと思いますが、大事なのは、一体じゃないんだ、役割も、働くやり方は民間と公では違うということの認識が結構大事だと思いますね。

 それからその次に、食文化ですけれども、これはもう全くそのとおりでして、我々ちょっと考えてみて、幾らネットが発達しようが、仕事だけだったら本当にネットで済んじゃうんだけれども、いわゆる外国へ行くとか、あるいは外国から来るとかいう場合に、うまい食べ物があるかどうかというのは非常に行くポイントなんですよね。そういう意味でいうと、それは日本国という国単位でもそうだし、あるいは、日本の中でそれぞれの地方の食文化、とりわけレベルの高いものがあるかというのが一つは重要なポイントですね。

 それから二番目に、地元の食材をうまく生かしているかどうか。この二点だろうと思うんですね。うまく食材を生かしても、うまくなきゃやはり行きたくないし、うまいにはうまいんだけれども、世界じゅうの珍味を取り寄せてというのでも余り魅力はない。この二つは、やはり食文化については大変大事なんじゃないかなと思っています。

西岡委員 ありがとうございます。

 ぜひ私も一度、お伺いしたことがないので、ぜひまた勉強させていただきにお伺いをしたいと思います。ありがとうございます。

 続きまして、藏谷顧問にお尋ねをいたします。

 大変先進的なお取組といいますか、データに基づいたお取組をされているということにも心から敬意を表したいというふうに思います。

 先ほどのお話の中で、建築にかかわる高校をもっとふやすようにというお話がありましたけれども、いわゆる産業高校の充実というのは、これからの地方を考えていくところで私も大変重要なところだというふうに思っております。

 建築の技術もそうでございますし、あと農林水産も含めまして、やはり産業高校で学んだ子供たちが地元の次世代の担い手として大変活躍をしてくれるというところもありますし、すばらしい技術をこれからもずっと、建築のすばらしい、日本が持っている技術を伝承していくという意味でも大変重要なところだと思っておりますので、このあたりで、ぜひ御要望というか、もっとこういうふうにしてほしいという御要望があれば、ぜひ聞かせていただきたいと思います。

藏谷伸一君 ありがとうございます。

 先ほど申し上げましたように、現実問題として、大学、専門学校よりも、職業高校というか、こっちでは専門高校と言っているんですが、専門高校の生徒さんを入職いただくように活動した方が成果が出やすいんですよね。

 結果が出やすいので、どうしてもそちらへ行くんですが、一番懸念しているのが、これから文部科学省さんの方針で、専門高校を減らすという話をお聞きしているんですよ。普通科あるいは専門学校、大学の方に振り向けながら、地域の職業高校は減らしましょうという話が非常に怖いので、私どもの思いと全く逆のことを考えられているのかなと。

 やはり地方は、申し上げましたとおり、データ的には、職業高校、専門高校をふやしてもらいたいということで、文部科学省さんの方針もちょっとアレンジしてもらいたい。正式な話じゃないのでわかりませんが、そんな機会がありましたら、先生の方からぜひお力添えをいただければありがたいと思います。

西岡委員 建築の現場での女性の活躍が、大分今活躍されている方が多いということでデータも出てきておりますけれども、女性の活躍ということにつきまして、特にお取組、長野の方でこのような取組をされているということがあれば、詳しく。

藏谷伸一君 当建設業協会にも女性部という部がありまして、それぞれの支部から代表で出てもらっていますが、そうした技術屋さんの女性は男性よりも元気がいい。すばらしいですよ。

 一番びっくりしたこと。女性は結婚すると基本的には名字が変わるじゃないですか、姓が。そうすると、いろいろな資格を持っているわけですよ、一級建築士とかいろいろな資格、その名前を変えなきゃいけない。これは男性にはわからなかった悩みなんですよ。多い人は十、十五持っているんです、いろいろな資格を。それを全部名前を変えなきゃいけない。これがなかなか時間がかかるし大変だ、お金もかかるし。それを何か旧姓でそのままスライドできるようなシステムにしていただくと大変ありがたいと。これは生の声で、なかなか気がつかなかったので、これはぜひ行動してもらいたいと思います。

 それからもう一つ、女性の要望でいろいろあるんですが、一般的には、都会の女性の技術屋さんと地方と違うんですね、要望が。都会の方はシャワーをつけてくれとかいろいろあるんだけれども、田舎の場合はみんな車で通勤するんですよ。シャワーを浴びる時間がもったいないから早くうちへ帰りたいと。やはり大都市と地方の意見を分けて聞いていただいた方が現実的かなと思います。

西岡委員 ありがとうございます。

 大変時間が少なくなりましたけれども、土屋所長様にお尋ねをいたします。

 私も、先ほど大串委員の方から御質問がありましたけれども、やはり今回の消費税増税に伴う軽減税率、そしてまた景気浮揚策であるポイント還元またプレミアム商品券、これが地方で果たして十分景気浮揚の役割を果たすのだろうかというところで大変心配もしておるんです。

 ちょっと重なった質問になりますけれども、地方でこういう制度をうまく反映していくということでの何か先生のお知恵とかがありますでしょうか。地方においてはキャッシュレスというのがなかなか今進んでおりませんので、大変難しい現実があるのではないかというふうに思っておりますけれども。

土屋信行君 こう言ったら身もふたもないかもしれませんが、増税しないのが一番早いかなというふうに思っております。

野田座長 もう時間ですので。

西岡委員 大変時間がなくなって申しわけございませんでした。ありがとうございます。

野田座長 次に、太田昌孝さん。

太田(昌)委員 きょうは、地方公聴会においでいただきまして、ありがとうございました。先ほど来伺っておりましたが、大変に示唆に富む御意見を頂戴しております。

 また、私、地元の長野県、またこの長野市の出身でございますので、このような形で地元で地方公聴会を開いていただきましたことに、まずもって、委員長を始め委員の皆様方にも心から感謝を申し上げる次第でございます。本当にありがとうございます。

 また、きょうのいただいた御意見をこれからの予算委員会にしっかりと反映をさせていただければというふうに思っております。

 私、ちょっとランダムでまことに申しわけありません、初めに藏谷顧問に伺いたいというふうに思っております。

 冒頭、とりわけ長野県においても、一千三百億と大変に頑張っていただきました。ことしも、国の予算でも、今出している当初予算でも公共事業については前年比一五・五%増、また、二次補正予算でも国土強靱化で一兆円、また、今の本予算でも、第二期分というような形になると思いますが、一兆三千四百七十五億円と、大変大きな予算がついてございます。

 そんな中で、昨年の末でしたか、これから、一九年度から四八年度までに必要なインフラの維持管理・更新費用の推計をまとめたところ、いわゆる予防保全がまず大事だという中で、実際は最大で百九十四兆六千億円余りが必要である。これは、割り返すと毎年毎年六兆円必要だというぐらいの話にやはりなってくるわけですね。

 そんな中で、先ほど顧問おっしゃったとおり、一つの人手不足の問題。先ほどさまざま数値を挙げていただいたのですが、ちょっと一つ一つ詰めるような話でまことに申しわけないんですけれども、そこで出てこなかったのが、今の建設業の高齢化の問題。

 全国的なものは伺っております。三十代以下、二十代以下の比率が大体一一%。一方で、六十以上の人が今大体四分の一いるというのが実態だというふうにも聞いておりますけれども、本当に、そういう意味では高齢化が言われて久しいわけでございますけれども、今の現状などを教えていただければと思います。

藏谷伸一君 長野県のデータは持っていませんが、全国平均よりもまだ高齢化が進んでいるという感じはします。

 特に、若手の資格者が少ない。土木ですと一級土木施工管理技士という国家試験がありますが、二十代はほとんどいないでしょう、新しく取られる方が。試験の難しい云々もありますが、三十代に入っても一桁台ぐらいしか合格していないんじゃないかなぐらいな数字がちょっとよみがえってきますので、そういった意味からも、非常に危惧しておる一つだと思います。

太田(昌)委員 大変に若手が少ないという中にあって、また、ちょっともう一つ。

 先ほど来、いわゆる工業高校であったりとか専門高校という話が一つありますけれども、もう一つ、よく建設業に入っていくルートとして、いわゆる職業訓練校などで訓練をしていくというようなルートがあるわけですけれども、どうもそこら辺も休業がちょっと相次いでいるというような状況の中で、環境が厳しくなっている。そういうところから入ってくる方というのは結構いらっしゃいますでしょうか。

藏谷伸一君 ほとんどいません。行かないんですね、みんな。職業訓練校に行く人は、やはり専門工事だから、職人さんを目指す人がほとんどかな。人数が集まらないで、そういう学校はみんなクローズしちゃうんですよ。一時ほどのやはり活況がない。

 下請の企業がお金を出して、給与を払いながら職人さんの卵を学校に行かせるわけで、経済的といいますか、経営的にも非常に大変なこともあるし、若者もやはり絶対数が少ないということもあるし、長野県もそういった施設を持っていますが、今は下り坂かなと思っています。協会でも、それをどう盛り上げましょうかということも事業の一つとして取り組んでおります。

太田(昌)委員 ちょっと若干深掘りをさせていただければと思うのですが、今、四週八休が基本的には八割程度というような形になっておりました。一方で、プレミアムサタデーがなかなか進んでいないというようなことの中で、今、発注者の連携の中で四週八休を進めるというような形でやっておられる、今、そういう形のお話を結構進めておられるというようなお話がございました。

 当然、そういうことをするということになると、工期の設定であったりとか、労務費あるいはさまざまな諸経費もプラスも考えていかなければならないし、現場管理費も必要になってくるだろうと。こういう中にあって、今協議を進めているとおっしゃっておりましたけれども、これがなかなか進まないところは、どこを改善しなければいけないというような今の御認識でいらっしゃるかということを教えてください。

藏谷伸一君 工期に関しては、かなり、四週八休の工期で、新年度からはより一層余裕を持たせた形での発注になると思います。

 それから、もう一つは、経費率というお話がありましたが、今、一つ、基準で公契連モデルというのがありまして、建設の場合は直接工事というのがあります。その予定価格の九七%は必要だから入れましょう、これは不可欠だからと。共通仮設も九〇%入れましょう、現場経費も九五%入れましょうと。もう一つは、一般管理費というのがあるんですね、本支店経費。これは五五%という率でやります。全部足すと、大体、平均で九〇をちょっと超えるんですね。データでいうと、大体九〇を超えるのが三分の一ぐらいあるんですよ。ところが、その条文に、一番最後に〇・七から〇・九という数字がありまして、ですから、九〇を超えても〇・九に戻ってしまうんですね。

 これから、働き方改革あるいは担い手育成で、一般管理費が今、五五%しか最低計上いただいていないので、それが六割、七割になる可能性がたくさんあると思うんですよ。それが上がっても、〇・七から〇・九という条文がある限り、そこに落ちてしまう、戻ってしまうわけですよ。ですから、いろいろなことをされても全く意味がないということで、この〇・七から〇・九を削除してくれ、あるいは数字を上げてくれという形で、国交省さん、これは財務省さんも含めて今お願いしているところであります。ぜひ先生からもフォローいただければ大変ありがたいと思います。

太田(昌)委員 また、これは入札率の話ですね。さまざま、そのような形でなっていた中で、結果として、入札率が一番悪いときで七三%。今、でも、長野県については私も随分県議のときもやらせていただきましたけれども、ようやく九二・五前後のところまで何とか上がってきたというようなところにはなりますけれども、まだまだ不十分であると。

 私も、確かにそう思います。必要な予算をしっかりとつけて、しっかりそこは行っていただかなければいけないところが、どうしてもそこで、ある意味、安ければいいんだろうみたいな話がどうしても出てきてしまうわけでございます。

 今、一つは、適正な、会長が考える落札率と、業界の中でも、結構、そこのところでどうしてもダンピング等々もあったりなんかして、なかなかいかないんですけれども、最低価格をできるだけ上げたりとかいろいろなことをやっているけれども、更に必要な手だてということで何かお考えがありましたら、お聞かせください。

藏谷伸一君 公共事業に関しては、先ほど申し上げた公契連モデルの数字の件、それから、説明を省きましたけれども、隣接八県、長野県は八つの県に隣接をしています。埼玉県と愛知県の場合は名古屋と東京の隣接ですから、ちょっと経済構造が違いますので省かせてもらうと、六つの県の落札率、入札率じゃなくて落札率ね、先生。落札率の平均が九五%。長野が九二・五%、六つの県で最低なんですよ。

 落札率というのは予定価格に対しての落札率で、予定価格も一番高い価格でお示しをしているんじゃなくて、平均をとったり真ん中をとったり、場合によっては低い方に限りなく近い方の数字を入れたりする場合、内容によっていろいろありますので、ほかの県に比べても、あるいはいろいろな意味で今の、先ほど申し上げた営業利益率等も含めても、もう少し改善をいただかないとなかなか経営的には大変かなと思います。

 品確法にもありますからね、適正な利潤を確保する予定価格をつくりなさいと。ということは、適正な利潤を含んだ落札をしなさいという意味に置きかえられてもよろしいのではないかと思います。

太田(昌)委員 あと、ちょっとこれも先ほどお話がございました複数年契約というようなことで、道路などには、とりわけ長野県なんかは冬の降雪期には事業ができないというようなことの中で、除雪なども含めて複数年契約、除雪も含めて複数年契約でよろしかったでしょうか。

藏谷伸一君 エリアによって違うんですね。豪雪地域とか、ほとんど雪の降らない地域とか、長野県は先生御案内のとおりいろいろあるので、エリアによってそれは違いますので、一概に除雪も入って複数年ということにはなりませんが、来年度から新しく始まる制度でありますので、これから様子を見ながら、ふえてくると思います。

太田(昌)委員 その場合に、先ほども道路の維持補修、管理関係ですけれども、国と県と市と一体での対応を望むというふうに言われたのですが、それは、国であれ県であれ、それぞれの発注の中で複数年契約を行われるであろうというような認識でよろしいでしょうか。

藏谷伸一君 複数年契約は県だけ、市町村はまだそこまでいきません。国も多分まだいっていないのかなと思います。

太田(昌)委員 あと、もう一つ。

 今いろいろと建設業の働き方改革加速化プログラム、そこら辺からちょっと今、きょう質問をさせていただいているところでございますが、これももういよいよ五年たったということで、担い手三法も含めまして、いよいよこれも五年たつんだというようなことの中で、少し見直しの時期に来ているんだろうなというふうには思っております。

 そのような中で、i―Constructionの取組、長野県は随分とICT活用工事の事例が出てきているというふうにも聞いておりますけれども、今の現状、あるいは受けとめ、あるいは課題について、わかる範囲で結構でございますので、教えていただければと思います。

藏谷伸一君 働き方改革をやるためにはやはり生産性を上げなきゃいけない。そうするともう、どんぴしゃ、石井大臣が常に言っておられる、やはりi―Constructionですよ。一番はやはり3Dといいますか、ICTを駆使した施工、いわゆるドローンを飛ばしてGPSからデータをもらって、それで自動的な工事をするというのが一番佳境になって、長野県は進んでいる県の一つだというふうに思います。

 協会もいろいろ取り組んでいますし、それぞれの企業も力を入れて、新しい技術改革、技術革新に取り組んでいるというふうに思っています。

太田(昌)委員 どんどんどんどん進めていかなければならないのですが、ちょっとなかなか、業界団体としては、今の使えるものを一生懸命使いながらというような話をきっとされるかなというふうに思いますけれども、何というんでしょう、いわゆる事務的な部分では結構役には立っているものでしょうかね。

藏谷伸一君 事務的というのは、どういうふうに捉えたらいいんでしょうか。

太田(昌)委員 一般管理、さまざまな、例えば、きょういただいた中でも、女性の方がシステムで、いわゆる総務的な仕事の中で相当活用されているというような状況もちょっと伺っているんですが、そこら辺の今の活用状況なんかはどうでしょうか。

藏谷伸一君 i―Constructionのドローン云々というのは工事の規模にもよりますので、それを駆使して生産性を上げるためには、ある程度の大きな工事だと効率よくできますが、ちっちゃな工事だとなかなか、経費倒れをしてしまうとか、場合によっていろいろ違います。新しい技術を使える現場と旧態依然の技術しか使えない現場といろいろありますので、ある意味では、私たちの技術職は大変です。

 昔の技術から新しい技術まで幅広い多様性を持たなきゃいけないということで、ある意味では大変な時期かなと思いますが、これを乗り越えないと次のステップはないと思っています。

太田(昌)委員 外国人材の受入れについてもちょっと伺いたいというふうに思います。

 技能実習生から、いよいよ、特定技能一号というような形で四月から始まるということになります。これまでも技能実習生が、三年間という間の中での技能実習であったわけですけれども、そんな中で、技能実習の三号、修了者においてはそのまま特定技能一号の方に移行ができるというような形になります。

 単に三年から更に五年というような形で広がるというのみならず、それだけ、ある意味でいえば、雇用の期間が三年であったものが八年のスパンの中でやはりどう育てていくか、ある意味でいえば、その人の技術をどう向上させていくかということの育て方、育成方法ということも随分と考え方が変わってくると思いますけれども、そこら辺のお取組についてちょっと教えてください。

藏谷伸一君 協会としてはまだそこは手つかずです。これからのやはり新しい課題かなと思います。

 外国人も多いんですけれども、先ほど申し上げたとおり、失業者もたくさんいるわけですし、やはり両方かなという気がしています。

太田(昌)委員 先ほど来、失業者、失業率の中で、建設業の方に来てもらえればなという思いがある、そういうことですね。

藏谷伸一君 そのとおりです。

 百八十万とか百五十万人のうち、あいている、休校の施設もたくさんあるわけですよね。群馬県とかいろいろやっている地域もありますが、そこで板金学校を開いているとか鉄筋学校を開いているとか、皆さん、どうぞチャレンジしてみませんかということで受入れしながら、こういう仕事があったんだと気がついていただく人が一人でも二人でもふえると、失業者の中から技能者が育成できるという可能性は多分にあると思います。

太田(昌)委員 では、次に、加藤市長にちょっとお伺いをさせていただきたいというふうに思います。

 先ほど、長野市はオリンピックを開催した都市ということで、二〇二〇年に向けてということでさまざまなお取組をされているというふうに伺いました。私も組織委員会におりまして、後ろにいらっしゃる方々と一緒に働いていたものでございます。

 そんな中で、今、長野市としては、障害者スポーツについてとりわけ力を入れられているというふうにも伺っております。パラリンピックは本当に長野オリンピックで初めて注目を浴びて、今度の東京オリンピックでは、同じ組織委員会でオリンピック、パラリンピックが開催されるということで、大変にすばらしいことだなというふうに思っております。

 とりわけ、障害者スポーツにおいては、日常的な、やはりそのときだけの一時的な盛り上がりではなくて、継続的な支援がやはり必要だと思いますけれども、そのような中で、今どのような取組をされているのか、ちょっと教えてください。

加藤久雄君 今おっしゃるように、パラスポーツ、ある面では、パラスポーツを振興させることが、身体障害者も含めて、機能回復にも非常に効果がある。

 それから、高齢者に対しても、この間、実は昨年、オリンピック二十周年で、パラスポーツデーも二回ほど開催させていただきました。千人ほど、多くの方が来られたので、さまざまなパラスポーツの種目を、シッティングバレーとかやられたんですが、それを見まして、ああ、こういうことを、パラスポーツを振興させることがさまざまな皆様の機能回復に非常に効果があると改めて思って、やはりパラスポーツを少し振興させようということで、できれば、東京の次の方も選手を出せるようなことまで育てようということで、今、先ほどお話ししましたけれども、文化スポーツ振興部で、パラスポーツも一緒になってやっていく体制で今進めているところでございます。

太田(昌)委員 もう一つ、今度、中核中枢都市という一つの概念が始まるというか、事業が始まってまいりますが、長野県では長野市と松本市が対象になっておるというふうに思います。

 ただ、長野市はこれまでも、いわゆる中枢連携都市というような形の中で、地域の中で今連携をとられているということ、この中枢連携都市から中核中枢都市に向けて、どのような今取組を行われているか、どのような方針でいらっしゃるかということを教えてください。

加藤久雄君 今お話しの中核都市の問題につきましては、まだ詳しく、国の方から、どういう方向にしたいということが決まっておりませんので、できればそれを含めて対応させていただきたいというふうに思っています。

 今お話しのように、長野市は、連携中枢都市圏の核として、周辺の八市町村と一緒にこの連携中枢都市圏をやっております。

 今、先ほどお話ししたように、都会に進学した方の四割も帰ってこないと。この四割も帰ってくる、その人材を、いわゆる、うちの村は隣の村より医療費は高校生まで無料だ、保育料は全部無料にしようというようなことをして、競争をしているわけですね。

 ですから、それはもうやめようよと。隣の町から長野市に人が来ても、長野市から行っても、全体、北信全体で魅力を上げていこうよ、こういうことで、今進めております。

 そういう意味では、長野市が長男として、いろいろな意味でリーダーシップをとりながら、情報交換、例えば、長野がこういうことをしたい、じゃ、ぜひ一緒になってこれはやりましょうとか、それから、先ほどお話しした就職環境を、この連携中枢都市圏で、もう仕事は長野と、一緒になって東京で就職相談をしていこうとか、そんなことを含めてやっているところでございます。

野田座長 質問時間が終了いたしました。

太田(昌)委員 済みません、時間になってしまいました。申しわけありません。

 市村社長、土屋先生、質問できなくて申しわけありません。どうもありがとうございました。

野田座長 次に、藤野保史さん。

藤野委員 日本共産党の藤野保史です。

 きょうは、意見陳述人の皆さん、大変貴重なお時間をいただきまして、貴重な御意見をいただきました。本当にありがとうございます。今後の予算審議にしっかりと生かしていきたいと思っております。

 私も、この長野を始めとする北陸信越ブロック、長野、新潟、石川、富山、福井という比例から国会に送っていただいておりまして、きょうこの長野市で公聴会ということで、大変うれしく思っております。

 また、午前中視察させていただいた山ノ内は、実は子供のころから何度も行っておりました。といいますのも、あそこは全国の保育士の皆さんが交流する全国保育団体研究集会というのが一九六九年から二十三回ずっと行われておりまして、私の母は保育士をしておったものですから、母に連れられて、毎年夏、山ノ内で毎年過ごしていたということを思い出しながら視察させていただいて、若い方が、さまざまな方と力を合わせて、創意ある取組をされて、にぎわいを取り戻しつつあるという姿を拝見しまして、本当に頼もしいなというふうに思いました。

 そこで、きょうはそうしたことも踏まえつつお聞きしたいと思うんですが、まず、加藤市長にお伺いしたいんです。

 先ほど、来年はオリンピックということもありまして、さまざまなレガシーもあるということとあわせて、施設について、やはりその維持費の問題に触れていただきました。私もちょっと聞き取りがあれだったんですが、市が全て持っているというふうにもお聞きしたんですが、ちょっともう少し詳しくといいますか、改めてお聞きしたいと思うんです。

加藤久雄君 お答えしたいと思います。

 今、長野市は、エムウェーブ、それからホワイトリング、アクアウイング、主なものは三つでございます。それからオリンピックスタジアム、これがあるわけでございます。

 そういう中で、全て長野市が所有しております。国はつくるときに、建設のときに大変お世話になりましたけれども、後の維持費はずっとやってきたということでございまして、二十年経過をして、特に収容力が大きいので、そういう意味では、イベントをするときには非常によろしいんですが、現状、維持費等、非常にかかってきつつあります。これから二十年、三十年、今後使っていくには、相当、維持費等を含めて力を入れていかなきゃならないだろうというふうに思っています。

 現在、先ほどお話ししましたように、年々増加しておりまして、十四億円の維持費がかかっておるということでございまして、長野市の今の規模でいきますと非常に大きな負担になっているということでございまして、ぜひこれも、国家プロジェクトということを考えれば、ぜひ国で対応をしていただければというふうに思っております。

藤野委員 ありがとうございます。

 次に、市村公述人にお伺いしたいんですが、先ほどもお話が出ました民間主導のまちづくりということで、午前中も、それこそ若者たちのまちづくりを拝見させていただいたんです。

 先ほど来、行政と民間のめり張りという言葉もありましたけれども、そうしたいろいろなステークホルダーがいると思うんですが、関係者がいらっしゃると思うんですが、とりわけ、ちょっとお聞きしたいのは、例えば、街路に民有地、道路が、木が民有地というお話がありましたけれども、住民の方がどういったような役割を果たされているのか。何といいますか、そこら辺の、住民の果たしている役割というものについてお聞かせいただければと思います。

市村次夫君 やはり、こういう取組を三十年以上やっておりますので、一般民家も、例えば、庭を塀の内側につくるんじゃなくて、道路に対して庭をつくる、その後ろに家をつくる。そうすると、庭を、道行く人にも、自分の庭にも、両方で楽しめるとか、民間は民間でできる範囲でやっております。

 その具体的で一番わかりやすい例が、オープンガーデンというのをやっておるんですけれども、これは、もともと歴史的にお庭御免という地元の慣習がありまして、それをイギリスの貴族の庭園なんかでやっているオープンガーデンと結びつけて、具体的にどういうことをしているかというと、当初は六十世帯、今、百三十世帯ぐらいの個人のお宅と、あるいは企業もあるんですけれども、町が契約を結んで、そして契約を結ぶと、町は木製の看板をくれます。都合の悪いときはそれを裏返すと、きょうは勘弁、入っちゃいけませんという形になるし、そうでないときはどうぞというふうな看板です。

 町の費用としては、その看板を上げることと、あと、毎年毎年その百三十軒の写真入りのガイドブックをつくります。

 これだけなんですけれども、実は、そういう形でお庭を観光客の方が通るときに、やはり人と接する機会がありまして、そういう話の中から、礼状が来てつながりが生まれたり、場合によったら、じゃ、お宅のリンゴを送ってみたいな、そういう農業が直接商売的に結びつくこともあるということで、現在では、そのオープンガーデンのことを町の人間は、形を変えた縁側だねというふうな表現をしているんですけれども、要するに、いわゆる交流の場になっている。

 これなども、積み上げていく景観の一番基礎になる部分の一例だと思いますね。基本的に、だから、民間は景観に対する意識が非常に強いということです。

藤野委員 ありがとうございます。

 次に、藏谷公述人にお聞きしたいんですが、公述人には、私、二〇一二年にお話をお聞きする機会もありまして、当時も長野県の状況について大変示唆に富むお話をいただいたことを思い出してお聞きしておりました。

 先ほど来、ちょっと重なるところもあるんですが、今、国会では、外国人労働者の問題、大変大きな問題になっておりまして、先ほど、長野でも維持管理において大変な戦力という御指摘もいただいたんですが、そこの部分について、もう少し、ちょっと詳しくといいますか、どんな状況なのかという点をお伺いできれば。

藏谷伸一君 私は、協会長を昨年の五月に辞しておりますが、その後の会長さん、木下さんとおっしゃるんだけれども、彼は南佐久なんですが、彼の会社で、ベトナムの外国人労働者、既に十名ほど雇用されています。それは、コンクリートの維持修繕関係の技能職で雇い入れている。やはり派遣社員になるんですね。ですから、ベトナムへ行って、向こうの方のエージェントと話をして、そして日本に送り込んでいただく。

 当然、日本語も片言しかしゃべれないので、彼の会社のいいところは、数年前に雇用した人が一人残っているそうで、その人が新しく来る人たちの世話役をしている。また、その方が帰っても、今度はまたその次の方がそこに残るというような形のサイクルでという考えで今やっているそうでありますが、それほど、そういう企業は長野県では多くはないと思います。

 ですから、協会としても、まだ対応は始まっていません。

藤野委員 ありがとうございました。

 それでは、土屋公述人にお願いしたいと思うんですが、先ほど固定資産税についてのお話と消費税のお話、大変実態がよくわかるお話、ありがとうございます。そこの点で、固定資産税につきまして、実情に合った評価にしてほしいという御要望をいただいたと思うんですが、具体的にはどのような評価がよいとお考えでしょうか。

土屋信行君 法人の決算とか個人事業主の確定申告では、減価償却という方法がとられています。減価償却の場合は、再建築価格ではなく取得価額、すなわち、買ったときの金額をもととしています。そして、この場合、旅館、ホテル、鉄筋の建物は、法定耐用年数が三十九年になります。そして、三十九年経過後は、一円、帳簿に残すのみということになります。

 先ほどお配りさせていただいた資料の事例一に当てはめますと、買った金額が四億六千万ですから、この数字を基礎にして、法定耐用年数が三十九年ですから、毎年三十九分の一ずつ減らしていきます。とすると、三十九年後は一円になります。先ほどの事例一の場合、既に築四十三年ですから、残った金額は一円になり、そこに一・四%掛けても固定資産税はゼロとなります。

 この建物の場合、四十三年たって評価額は二億四千万なんですが、仮に売りに出した場合、大変申しわけないですが、ゼロ円、土地代だけではないかというふうに思います。どれだけ高くても三千万には、多分、ホテルの名前と電話番号をつけて三千万になればいいかなという、大変失礼ですけれども、思います。というのも、旅館、ホテルを中古物件で買った場合、買った方のほとんどはリニューアルをします。ですから、やはりもとのものにお金をかけているとお金がかかっちゃうので、ただ同然の場合が多くなってくると思います。

 以上からも、法人税、所得税、法人や確定申告の減価償却の評価額一円の方が、現実の時価に近いと思われます。

 以上です。

藤野委員 ありがとうございます。

 こちらに来る前に、家計調査、総務省の資料をちょっと見させてもらったんですが、この中に、都市別の一世帯当たり年間品目別の支出のデータがありまして、これは都市別なので長野市もあるんですが、非常に興味深いといいますか、米とかパンとかそばとか、品目ごとに年間の購入金額と量がありまして、お酒とかお菓子とかいろいろなものをちょっと見ていたんですけれども、それぞれやはり一律ではなくて、上がっているものもあるし下がっているものもあるんですが、一つ、目を引きましたのは、小遣いという項目がありまして、この小遣いだけは明確に下がってきております。ほかはいろいろあるんですけれども。

 平成二十二年、二〇一〇年で十四万五百五十円、二〇一一年で十三万四千二百九十八円、二〇一二年で十二万五千二百八十六円、二〇一三年で十一万千五十五円、二〇一四年で十万八千二十六円、二〇一五年で十万四千三百四十一円、二〇一六年は八万二千四百四十九円で、この七年間で大体五万八千円以上、小遣いが減っている。

 土屋公述人にお聞きしたいんですが、別に統計で全てがわかるわけじゃないんですけれども、やはりこうした景気状況が、土屋公述人が御指摘になったように、初めに切られるものが観光であり、そうした支出だということもありましたが、この経済状況のもとで消費税を上げるということによる影響というのは地方にいらっしゃってどのように感じていらっしゃるか、お伺いしたいと思います。

土屋信行君 先ほども申しましたように、観光業が中心で、やはり真っ先に切られるものだと思います。

 実際、消費税増税に備えて景気対策をやられていますけれども、景気対策をやられるということは、消費税を増税した場合景気が悪くなるということを御理解の上でやられていると思うんですが、そうなると、やはりかなり響いてくるかなと思っております。

 私、実感としても、観光客が少しずつでもふえてきているかな、町ににぎわいが取り戻せてきているかなというふうに思っております。逆に、先ほどのグラフはちょっと横ばいだったのが意外なぐらいで、実感としてはふえているような感じはしていました。それがちょっと消費税の増税でやはりがくんとくることは、非常に心配しているところです。

 以上です。

藤野委員 それとの関連で、先ほどもちょっと重なる部分はありますが、御指摘のところで、旅館、ホテル業というのは実質二十四時間営業である、さまざまな事務もあり、支払い方法も多様ということなんですけれども、そこで、ポイント還元等の、あるいは複数税率等の影響というので、事務負担が過重になるという御指摘をいただいたんですが、この事務負担が過重になるという点について、もう少し具体的に教えていただければと思うんです。

土屋信行君 きょうの準備もあって、業界団体の役員の方とちょっとお話しすることがあったんですが、その方によりますと、飲食業の方にとっては人手不足と軽減税率が一番悩みの種だというふうにおっしゃっておりました。観光地は飲食業も多いので、よく話題に上ります。

 よくある話なんですが、オロナミンCは八%なんですが、リポビタンDは一〇%ですね。なぜかというと、リポビタンDは食料品ではなくて指定医薬部外品だからということです。

 コンビニやハンバーガーショップ、これは持ち帰りもできますし、その場で食べることもできます。イートイン、要は、イートインは外食になるので一〇%です。コンビニやハンバーガーショップで買って持ち帰れば八%です。

 すし屋さん、そば屋さんは出前をしてくれますが、出前でとれば八%です。すし屋さん、そば屋さんで、お店で食べれば一〇%です。人手不足のお話もしましたけれども、これが二%節約するために出前をじゃんじゃんとられると、それはそれで困ってしまいます。

 ホテルの場合、レストランやルームサービスで頼む場合は一〇%ですが、部屋の冷蔵庫は八%です。売店で食料品以外のお土産を買う場合には一〇%なんですが、温泉まんじゅうを買う場合は八%です。ところが、売店で温泉まんじゅうを買ってロビーで食べる場合には一〇%になります。

 このようなクイズがいっぱいできるような複雑な仕組みで、これをやっていけば税理士でも全問正解できる方はなかなかいないんじゃないかなというふうに思います。

 あげくの果てに、財務省は、持ち帰りでもイートインでも同じ値段にしていいですよということをおっしゃっています。持ち帰りでもイートインでも同じ値段にするならば、軽減税率の意味はなくなってしまうのではないかと思います。

 特に、旅館、ホテル、サービス業の場合は、営業時間が長いので、自分だけでできず、アルバイトさんにレジを任せる場合もあります。これが、アルバイトさんの教育ですとかマニュアル化で非常に手間がかかります。

 さらに、皆さん心配しているのは、お客さんとのトラブルです。ここが、多少の損よりもお客さんの方のトラブルが大きいというふうに言われています。

 そういうようなことを考えると悩みは尽きないということで、増税はまだ仕方ないけれども軽減税率はやめてほしいという声の方が多いと言われています。

 ついでながら、新聞ですが、新聞販売店が定期購読者に配達する日刊新聞は八%ですが、新聞販売店が新聞社から仕入れる新聞は一〇%です。ですから、零細な販売店にとっては、この二%が自腹ということになってしまいます。

 ついでながら、税理士会も複数税率には反対しております。

 以上です。

藤野委員 ありがとうございました。

 今後の予算審議にしっかり生かしていきたいと思っております。

 終わります。

野田座長 以上で委員からの質疑は終了いたしました。

 この際、一言御挨拶を申し上げます。

 意見陳述者の皆様方におかれましては、御多忙の中、長時間にわたりまして貴重な御意見をお述べいただき、まことにありがとうございました。

 本日拝聴させていただいた御意見は、当委員会の審査に資するところ極めて大なるものがあると存じます。ここに厚く御礼を申し上げます。

 また、この会議開催のため格段の御協力をいただきました関係各位に対しまして、心から感謝申し上げます。ありがとうございました。

 これにて散会いたします。

    午後三時四十二分散会

    ―――――――――――――

   派遣委員の北海道における意見聴取に関する記録

一、期日

   平成三十一年二月十九日(火)

二、場所

   ホテル法華クラブ函館

三、意見を聴取した問題

   平成三十一年度一般会計予算、平成三十一年度特別会計予算及び平成三十一年度政府関係機関予算について

四、出席者

 (1) 派遣委員

    座長 田中 和徳君

       井野 俊郎君   伊藤 達也君

       石崎  徹君   今村 雅弘君

       奥野 信亮君   笹川 博義君

       堀内 詔子君   盛山 正仁君

       逢坂 誠二君   早稲田夕季君

       渡辺  周君   岡本 三成君

       田村 貴昭君   浦野 靖人君

 (2) 意見陳述者

    北海道経済連合会会長  高橋 賢友君

    松前町副町長      若佐 智弘君

    函館商工会議所副会頭

    函館空港ビルデング株式会社代表取締役社長   水島 良治君

    大間原発訴訟の会代表  竹田とし子君

 (3) その他の出席者

    財務省主計局主計官   中島 朗洋君

     ――――◇―――――

    午後零時三十分開議

田中座長 これより会議を開きます。

 私は、衆議院予算委員会派遣委員団団長の田中和徳でございます。

 私がこの会議の座長を務めさせていただきますので、よろしくお願い申し上げます。

 この際、派遣委員団を代表いたしまして一言御挨拶を申し上げます。

 皆様御承知のとおり、当委員会では、平成三十一年度一般会計予算、平成三十一年度特別会計予算及び平成三十一年度政府関係機関予算の審査を行っているところでございます。

 本日は、三案の審査に当たり、国民各界各層の皆様方から御意見を承るため、当函館市におきましてこのような会議を催しているところでございます。

 御意見をお述べいただく皆様方におかれましては、御多用中にもかかわらず御出席をいただきまして、まことにありがとうございます。どうか忌憚のない御意見をお述べいただきますようよろしくお願いいたします。

 それでは、まず、この会議の運営につきまして御説明申し上げます。

 会議の議事は、全て衆議院における委員会議事規則及び手続に準拠して行い、議事の整理、秩序の保持等は、座長であります私が行うことといたします。発言される方は、その都度座長の許可を得て発言していただきますようお願いいたします。

 なお、御意見をお述べいただく皆様方から委員に対しての質疑はできないことになっておりますので、あらかじめ御承知おき願います。

 次に、議事の順序について申し上げます。

 最初に、意見陳述者の皆様方からお一人十分程度で御意見をお述べいただき、その後、委員からの質疑に対してお答え願いたいと存じます。

 なお、御発言は着席のままで結構でございます。

 それでは、本日御出席の方々を御紹介いたします。

 まず、派遣委員は、自由民主党の井野俊郎君、堀内詔子君、伊藤達也君、石崎徹君、今村雅弘君、奥野信亮君、笹川博義君、盛山正仁君、立憲民主党・無所属フォーラムの逢坂誠二君、早稲田夕季君、国民民主党・無所属クラブの渡辺周君、公明党の岡本三成君、日本共産党の田村貴昭君、日本維新の会の浦野靖人君、以上でございます。

 次に、本日御意見をお述べいただく方々を御紹介いたします。

 北海道経済連合会会長高橋賢友君、松前町副町長若佐智弘君、函館商工会議所副会頭・函館空港ビルデング株式会社代表取締役社長水島良治君、大間原発訴訟の会代表竹田とし子君、以上四名の方々でございます。

 それでは、まず高橋賢友君に御意見をお述べいただきたいと存じます。

高橋賢友君 北海道経済連合会の高橋でございます。本日はよろしくお願い申し上げます。

 本日は、田中団長を始め衆議院予算委員会の先生方、北海道までお越しいただきまして、そしてこのような意見陳述の機会をいただきましたこと、まことにありがとうございます。

 私からは、まず最初に、昨年九月の北海道胆振東部地震の際には、激甚災害の指定、ふっこう割の実施、補正予算の編成など、これまでにないスピードで実現していただきましたことに対しまして御礼を申し上げたいと思います。ありがとうございます。

 このたびの震災では、今後の北海道経済の牽引役とも言える観光がダメージを受けました。しかしながら、素早く手当てをしていただいたおかげで、国内客につきましては、昨年末の段階でおおむね地震前の水準に回復しております。海外客についても、さっぽろ雪まつりの入場者数が過去最大となるなど、かなり回復してきております。

 社会資本の復旧など、まだまだ息の長い取組が必要な部分もあります。引き続きの御支援をよろしくお願いいたします。

 北海道経済の状況ですが、先ほど述べた震災の影響による下押し圧力も緩和してきており、総じて景気は穏やかな回復基調にあります。これもアベノミクスの成果によるものかと思っております。

 一方で、北海道は、全国よりも十年早く人口減少社会に転じた地域であります。二〇四五年までの三十年間に生産年齢人口が四割減少するというショッキングな数字も予測されております。このまま推移すれば、北海道経済の将来に深刻な影響をもたらすことは避けられない状況にあると認識をしております。

 こうした問題意識のもと、当会では、今後の北海道経済が持続的に発展していくためには、二つの基本的な視点を重視したいと考えております。

 一つは、国内外に対して優位性のある食と観光の振興、それから、力強い経済の基礎となる物づくり産業の振興、そして、これらを支える社会資本整備などについて着実に成果を上げていくという視点です。

 もう一つは、喫緊の課題であります労働力不足について、女性、高齢者、外国人の労働市場への参加を促すことで生産年齢人口の減少を補う一方、IoT、ビッグデータ、AI等の先端情報技術の導入によりまして、労働生産性を向上させ、問題の解決を図っていくという視点であります。

 それでは、我々が重視します食、観光、物づくり、社会資本整備などについて、幾つか具体的な意見を述べさせていただきたいと思います。

 まず、食に関してでありますが、北海道は、二〇二三年に道産食品の輸出額一千五百億円を目指して、北海道ブランドの浸透や新たな市場開拓等に取り組んでいます。その基盤となる北海道農業は、大規模で専業的な経営が主体となって、我が国の安全、安心な食料の安定供給はもとより、観光業や食品加工業など幅広い関連産業と結びつき、地域の雇用と所得の確保に大きな役割を果たしています。

 しかしながら、農家戸数の減少や農業従事者の高齢化により、農業の担い手不足が深刻化する一方で、農家一戸当たりの経営耕地面積の拡大という課題に直面しています。

 このような中、大型機械による効率的な農作業を実現し、さらなるコストの低減や生産性向上を図り、競争力を一層強化するためには、農業農村基盤整備事業の推進が不可欠であります。このため、規模や期間が不安定な補正予算ではなくて、当初予算による予算総額の安定的な確保をお願いしたいと思います。

 また、省力、高収益な農業を実現するため、ICTやロボット技術を活用したスマート農業に大きな期待が集まっています。

 スマート農業の推進のためには農業現場での通信環境整備が不可欠ですが、農業現場では、採算性の問題から、民間通信事業者による光ファイバー整備が進まない状況にあります。

 総務省予算において高度無線環境整備事業が創設され、予算額も増加し、補助率もアップしておりますが、継続して農業現場での通信環境整備に取り組んでいただきたいと思います。

 観光についてです。

 観光産業は、地域雇用の受皿としての役割を含め、幅広い経済効果をもたらしています。

 道の調査によりますと、二〇一五年度の総観光消費額は一兆四千二百九十八億円、観光消費による生産誘発額は二兆八百九十七億円と推計され、いずれも五年前の前回調査を一〇%以上上回っています。また、雇用誘発者数は約十九万人と推計されており、道内就業者数の八・一%に相当します。

 観光産業のさらなる成長のためには、一人当たりの観光消費単価の高いインバウンドの拡大が重要であると考えています。

 IR、統合型リゾートについては、インバウンドの飛躍的な拡大につながり、観光先進国という国の理念を最適に実現する観点から、北海道での推進に御支援をお願いしたいと考えております。

 また、今回の地震では、特に外国人旅行者が、避難場所や交通情報等の必要な情報の入手が困難であったという声が多くありました。

 非常時における旅行者、特に外国人旅行者の安全、安心の確保のため、各種情報提供の充実が重要です。平常時のみならず非常時も旅行者に優しい北海道を目指してまいりたいと考えております。

 このため、政府には、地域の特性に応じ、創意工夫を生かした取組を実効的に展開するため、国際観光旅客税の財源の一定程度を地方自治体に交付する仕組みの創設について要望させていただきます。

 次に、新産業育成についてであります。

 当会では、将来を見越した新産業育成による物づくり産業のさらなる発展にも注目しており、宇宙、自動走行等の振興に取り組んでおります。

 宇宙については、本道に拠点を置くベンチャー企業による超小型人工衛星打ち上げサービスの事業化を促進するため、大樹町への宇宙活動法に基づく認定射場の整備など、人工衛星を打ち上げる民間事業者等の取組に対する支援をお願いします。

 自動走行の通年実用化、積雪寒冷地対応に向けて、その取組工程を官民ITS構想・ロードマップに明記をし、国が行う実証実験を北海道でも推進するとともに、北海道に公道モデルコース及び積雪寒冷地対応の実証試験施設を整備していただきたい。

 次に、社会資本整備についてですが、北海道開発予算は、前年度の五千五百五十一億円から約一五%多い六千三百五十九億円となりました。当初予算額が六千億台となるのは、平成二十年度以来十一年ぶりとなります。

 重要インフラの緊急点検等を踏まえた防災・減災対策、国土強靱化を始め、社会資本の老朽化対策や道路、港湾、空港などの交通ネットワークの整備、食料等の安定供給に資する農林水産業の基盤整備など、第八次北海道総合開発計画の推進を後押しするものであり、引き続き予算の確保をお願いします。

 物流や観光における鉄路の役割は重要です。JR北海道の経営再生と持続的な鉄道網の維持に向けて、徹底した経営努力を前提に、実効性のある支援をお願いします。

 最後に、国土強靱化についてであります。

 昨年は、北海道胆振東部地震を始め全国で非常に多くの大規模災害が発生し、多くの人命を奪うとともに、生産活動にも大きな影響を与えました。災害から、人命はもちろんのこと、国民生活の礎である生産活動の場を守るには、事前対策が非常に重要です。

 全国の経済連合会が要望してきました国土強靱化税制の整備、創設については、今回の税制改正で、中小企業が行う防災・減災対策投資を対象とする減税制度の創設が盛り込まれ、一歩前進したと考えております。

 次年度の税制改正では、企業規模の対象を問わず、より広範囲の事業者の防災、減災活動を後押しする国土強靱化税制の整備、創設をお願いします。

 以上で私の意見を終わります。本日はありがとうございました。(拍手)

田中座長 ありがとうございました。

 次に、若佐智弘君にお願いいたします。

若佐智弘君 松前町の副町長をしております若佐智弘でございます。町長の石山が出張中のため、私が代理で出席させていただきました。

 まずもって、本日はこのような貴重な場での発言機会をいただきましたこと、心より感謝申し上げます。

 質疑もあるということで、うちの職員に同席を求めましたら、丁重にお断りされましたので、私も精いっぱい皆様の質疑にお答えをさせていただきたいと思います。

 松前町は、北海道最南端の町であります。津軽海峡の西側の海峡口に位置しまして、藩政時代には、北前船による昆布、ニシンなどの交易により、松前、江差の春は江戸にもないとうたわれるほど栄えた地域でもあります。

 北海道における和人文化の発祥の地域ではありますが、類に漏れず先発後進の典型的な地域でありまして、人口も二万人を超えていた時代もありましたけれども、現在は七千二百人程度でありまして、スルメイカ、またマグロを主体とした漁業が基幹産業となっております。

 そしてまた、春には二百五十種類、一万本の桜が、北海道唯一のお城であります松前城を中心に一カ月以上にわたり咲き誇りまして、四月下旬から五月中旬には十五万人からの観光客でにぎわう、北海道唯一の城下町としての観光の町でもあります。

 道南の空港、港湾の物流拠点でありまして、そしてまた、広域的医療機関が存在する函館市までは公共交通機関を使いますと三時間、そして、北海道新幹線、北の玄関口であります木古内駅まで、これも公共交通機関で一時間三十分と、交通体系の弱さがありまして、インバウンド誘致においてもこの点が致命的な課題となって存在しております。

 一昨年の暮れ、当町の離島小島に北朝鮮籍の漁船が漂着しまして、施設の破壊などがあった事件は記憶に新しいことと存じます。また、現在も、遭難した北朝鮮籍の漁船が松前町を始めとして日本海側に数多く漂着し、住民に大きな不安を与えております。

 松前町には海峡の監視を担う海上自衛隊松前警備所もありますが、漁船程度の大きさの船の国籍まで確実に把握することは困難でありまして、当町民のみならず国民全体の安全保障を考えた場合には、早急な監視体制の強化が求められます。

 さらには、松前町は、海岸線を走る曲がりくねった海抜三メートル程度の国道、これが唯一の移動手段であります。津波など自然災害の発生時には陸の孤島となります。企業誘致に向けた物流インフラの整備、国防、防災対応のためにも、松前半島を始めとする高規格道路の整備に特段の御理解をお願いするところでございます。

 また、漂着した船につきましても、住民不安を払拭するため一日も早い処分が求められていますが、現状においては、地方の厳しい財政状況から、国や北海道の補助金が決定しないと処分できないのが実態でございます。これらについては、国の責任において実施されるか、あるいは、翌年度においてその実績、金額に応じた処分費用の交付を約束していただければ、迅速な処分は可能になるのではないかというふうに考えております。

 そして、現在は、海岸の環境美化、景観保全のための処分費用をいただいております、補助ですけれども。ただ、これは、海岸線に漂着した船を再度漂流させないように、重機等を使って安全な場所まで移動させなければなりません。また再び海に流れますと、地域の漁船等が夜でも航行しているときに、それにぶつかって遭難したということのないように、やはり確実にしなければなりません。

 ただ、今の状況の中ではこの処分費用だけが該当になっておりまして、その移動のためにかかる費用、重機等を持っていってかかる費用は全く見られていないというのが現実でございます。

 この辺のところも、そういう費用も含めて対応の方を何とかしていただければということをお願い申し上げます。

 そしてまた、漁獲主体でありますスルメイカにつきましても、研究機関では水温環境の変化が一つの要因として挙げられておりますが、先ほど申し上げました、北朝鮮による大和堆漁場など日本のEEZ内における違法操業が、スルメイカ資源に大きな影響を与えるのではないかと危惧されております。報道などでも、北朝鮮の漁船が網を使ってイカを漁獲している映像が流れます。逆に、日本の漁船がこれらの船とのトラブルを避けるため漁場を変更しなければならないという、本末転倒とも言える状況にあります。

 違法操業によって漁獲されたスルメイカは、隣国で加工され、価格の安価なスルメとして日本に輸入されているのではという話も伺っております。

 松前町は、隣町福島町とともにスルメ生産量が全国トップクラスであり、四年前は約三千トンの生産がありました。この三年間で八八%減少しております。すなわち、八八%になったのではなくて、一二%の生産量になってしまった、こういうことでございます。

 違法操業によって漁獲が減少し、なおかつ、加工業者の経営を圧迫、この二年で、松前町だけでも四軒のスルメ加工屋さんが廃業、休業となっています。加工原料となる生イカを輸入したとしても割高になります。製造コストの面からも、輸入スルメに太刀打ちできないのが現状であります。

 今必要なのは、国際ルールにのっとった漁場の監視と管理であり、この実現が地域経済の発展と我が国漁民の安全操業の基盤になるものと考えます。

 また、松前町の漁獲水産物にはクロマグロもございます。

 平成二十七年から、太平洋クロマグロの資源管理による三十キロ未満の未成魚の漁獲制限が始まり、平成三十年からは、三十キロ以上の大型魚も資源管理対象となり、TACが適用されました。

 当町では、一本釣りとはえ縄漁による操業であり、大型魚を求めて出漁しても、昨年は小型魚が多く、水揚げがゼロという漁業者もおりました。一日ではなくて、シーズンを通してです。中には、一日に七十本以上の小型魚が針にかかりまして、全て放流したという実績もあります。町全体では、約百トン、一億円分の釣り上げたマグロを放流しています。

 決して資源管理を否定しているわけではなく、漁業者も、出漁日数を減らしたり、はえ縄漁の針の数を減らしたりして、その必要性を認めて積極的に取組をしておりますが、他魚種に変更可能な大型船によるまき網漁と、目の前の海にいる魚しかとれない、魚種の限られる沿岸漁業者の漁獲割当て量がほぼ同程度ということはいかがかと考えます。ぜひ、この点につきましては再考をお願いいたします。

 実際、地中海などの大西洋クロマグロの資源管理におきましては、まき網漁に対する漁獲規制を強化し、沿岸漁業者に大きな負担をかけないという手法を選び、資源の復活につながったという話も伺っております。

 このままでは、沿岸漁業は根絶の危機に陥ります。漁業を捨て、おかに仕事を求める漁業者も既に出てきております。我が国の水産業は沿岸漁業者によって支えられているということを再認識していただいて、よりよい資源管理の手法を進めていただきたいと考えております。

 また、財政面につきましては、昨年、地方自治体の財政調整基金残高が多く積まれていることを問題視しているというような報道もありました。

 松前町の財調は決して多い額ではありません。財政健全化を目標に、町民と職員が一体となって、町内会に対する補助金、そして職員の給与、これも職員側からみずから、町民に苦労させるのであれば職員も苦労しなければならないということで、給与の削減を十年程度やってきました。そうして、将来、高度経済成長期において建てた施設の更新、解体、突発的な災害対応のための基金として残したものです。それらの実情も十分に考慮していただきたいと思います。

 また、各自治体により、さまざまな環境があります。一律に国が交付するものだけではなく、国への申請により、自治体が使いやすい、そういう交付金の創設を切にお願いいたします。

 また、松前町は、入院病床百床の町立松前病院を運営しております。先ほど申しましたとおり、高度医療を受診できる函館市内までは公共交通機関で三時間を要しますことから、町民の健康と医療を守るため、将来的にも継続した運営が求められます。

 しかし、病院運営に欠かすことのできない医師の確保が最大の課題であります。当病院は、北海道立病院であったものを当町が経営移譲を受けた病院であり、北海道においても全力で医師確保のお力添えをしていただいているところでございます。

 小さな子供を育てる若い世代、そして高齢者にありましても、松前町に住み続けるための最優先される条件が病院の存在であります。病院がなくなると、人口減少に歯どめがきかなくなることは明白であります。

 国としても、過疎地における医師の確保に向けた取組に最大限の配意をお願いいたしたいと思います。また、過疎地域における医療充実を守るためにも、医療機器の導入や施設の改修に向けた国の財政支援の充実をお願いいたします。

 地方創生の根幹はどこにあるのか、一次産業を主体とする地方にもっともっと目を向けてくださるよう重ねてお願い申し上げまして、松前町からの意見とさせていただきます。

 どうもありがとうございます。(拍手)

田中座長 ありがとうございました。

 次に、水島良治君にお願いいたします。

水島良治君 函館商工会議所副会頭、函館空港ビルデング株式会社、水島良治と申します。よろしくお願いします。

 本日、このような貴重な場での意見を述べさせていただくことに対しまして、心よりお礼を申し上げたいと思います。

 私の方から、まず一番目に、災害についてのお話をさせていただきたいと思います。

 既に皆さん御存じのように、昨年の九月六日、北海道胆振東部地震がありました。この地震により、北海道全体でもって死者四十一名、住宅家屋の全半壊合わせまして千六百七十二棟、それから経済被害が二千八十九億円というような被害となりましたけれども、実は函館市はそんなに大きな被害はございませんでした。ただし、全域停電、いわゆるブラックアウトになりました。

 それでは、私の勤務している函館空港の状況をちょっとお話をしたいと思います。

 函館空港は、ブラックアウトになった瞬間から自家発電が完全作動しまして、その後、十八時間、完全営業をいたしておりました。ここまでは普通の通常業務ですから何ということはないんですが、千歳空港が機能がストップしまして、そこから帰宅難民というんでしょうか、帰れない方が、ずっと一般道を使って、レンタカー若しくはバスで、函館空港まで四時間から五時間かかって下ってきまして、それから、函館空港から羽田空港まで、若しくはそのほかの空港まで帰っていったということで、私もこの空港に来まして四年間勤務しておりますけれども、初めてこんなに混んだ空港を経験いたしました。

 それと、国際便の方は台湾便が飛んでいるんですが、台湾の方から空の飛行機が飛んでまいりまして、そこに、新千歳から来た台湾人の方が三百人乗りの飛行機でもって帰られていきました。ですから、非常に、地震に対しまして、一定の役割を函館空港が果たせたのかなというふうに思っております。この点は非常にありがたかったかなというふうに思っているんです。

 そこで、先生方にお願いしたいというのは、今たまたま北海道が七つの空港が一括民営化ということで、その真っ最中にございます。これもあわせまして、今回私が経験した中でもってぜひお願いしたいというのは、この七つの空港が一括民営化するときに、北海道というのはかなり広うございます。日本の国土の二二%を北海道が占めております。この二二%の地域をきちんと管理できるのは、やはり飛行機なんだろうなと私は思っております。

 それで、七つの空港、端々が実は今回一つの空港になります。函館、稚内、それから釧路、女満別、旭川、帯広、新千歳、この七つの空港が一つになることによって、災害時のときのもっともっと翼になれるなというふうに感じています。そのために何が必要かというと、やはり道路なんです。道路がなければ、幾ら飛行機が飛んだって、飛行場から飛行場までの足がないと、なかなか、ダイバートというんでしょうか、代替ができません。

 ですから、今、例えば千歳から函館までの道路も、途中で実は高規格道路が途切れております。停電になると一般道は信号が消えていますのでなかなか走れませんけれども、高速道路は信号がないですから走れますので、ぜひ高規格道路若しくは高速道路の整備、それからまた未開通のところの早期実現をお願いしたいなと。これは災害対策の一番の重点じゃないのかなと私は個人的には思っています。それによって、きちんとダイバートをして目的地まで運んでいける、これが飛行機の一つの使命かなというふうに思っていますので、この点を何とぞよろしくお願いしたいというふうに思っております。

 それからもう一つ、今度は函館の今の経済状況をちょっとお話をさせていただきたいと思います。

 全国に三十二の日本銀行の支店があるというふうに聞いております。三カ月に一遍、短観、DI、要するに、景気がいいか悪いかという判断数字を出していると思うんですけれども、残念ながら、去年一年間ずっと通しまして、函館の短観、DIは日本で三十二番目でした。一番最後だったんですよ。

 これまでのお話にもあるように、その大きな原因というのは、やはり函館市の代名詞であるイカがとれなかったということだと思います。これに関するイカの加工業者とか、これが函館市はかなりの比重で占めております。そこが全部、イカがとれなかったものですから、当然、加工品も入ってこないし、売っても高い値段だということでもって、非常に苦難の道に立たされているのかなというふうに思っております。

 それで、従来ですと、日本でとれなければ、ペルーとか、向こうの中南米の方まで行って大きなイカをとってくるんですけれども、世界的にイカがとれないというふうに聞いております。ですから、なかなか調達も難しくて、今、ブリがとれています、ブリがとれても、なじみがないものですから、なかなか食べ方がわからないということで、いろいろな加工をしているんですけれども、なかなかこれがまだ地についていないというんでしょうかね、うまくいっていないというのが現在の函館の状況だと思っています。

 そのほかにも、先ほど言ったように、イカが来ないものですから、イカを主食とするマグロが来なくなっているということで、海産の町、函館の一つの魅力というのはやはり食事だと思います、これがなかなか厳しくなっている。この流通につきましても、何とか先生方の力をかりて、スムーズな海産物の流通というんですか、輸入ができるように力添えをいただければ大変ありがたいなというふうに感じておるところでございます。

 それと、函館は、東京に本社のあるブランド総合研究所というところが日本の市町村、千の市町村を対象にアンケート調査をしまして、魅力度の高い土地はどこですかというアンケート調査をしています。この調査で、函館は五年のうち四年間一位になっています。二番目が京都です。三番目が札幌。その後に神戸とか横浜が入っているんです。日本では、函館がすごく魅力度があるということでもって非常な評価をいただいております。

 ただし、海外に行くとまだまだ、海外誘致もしているんですけれども、函館市長と一緒に海外誘致に行くと、函館ってどこにあるんですかと言われて、北海道の一番下ということで、地図を指して示して、ああ、そこですかということで、まだまだ知名度が低いのかなというふうに思っています。

 函館は今、台湾から週十二便飛行機が飛んできております。台湾だけなんです。以前は、一番最初はロシアのユジノサハリンスクというところから飛んできまして、それから次には韓国が飛んできたんですが、東日本大震災があったときに韓国便がなくなっております。それで、去年も韓国に行きまして誘致をしてきたんですけれども、実現ができなかった。これは地震の影響もあろうかなと思います。

 そういった状況で、なかなか函館の今の経済状況は厳しいところがずっと続いております。かといって、特効薬で何かがあるかといったら、何もございません。地道に愚直に一歩ずつ進むしかないのかなというふうには思っておりますが、何かそこら辺でも先生方にアイデアがあれば、一つでも二つでも提供いただければ、全身全霊で取り組んでいきたいなというふうに考えております。

 函館の今の一番の問題は、やはり人口減少です。これは日本各地どこでもそうだと思いますけれども、とにかく人口が年間三千人くらいずつ減っております。何としてもとめたいんですが、なかなかこれが難しい。であれば、何をするかということになりますと、定着人口が少なければ、やはり流動人口に頼るしかない。やはり、海外のインバウンドを引っ張ってきて、少しでも流動人口でもって経済の底上げを図りたい、こういうふうに願っておるところでございます。

 これにつきましても、ぜひ、海外誘致の話は函館も一生懸命やっているんですけれども、何かチャンスがありましたら、また御意見それから御助言をいただければ大変ありがたいというふうに思っております。

 最後になりますけれども、函館は、先ほど言ったように、人口がたくさん減少しております。その原因は、若者が函館で働いて、結婚して、子供を育てて、マイホームを持ってと、こういう夢が持てるような基幹産業が少ないと思うんですよ。ですから、若者が流出していって、人口が減っていくというところになかなか歯どめがかからないというのが当函館市の現状だと思います。

 極端な例ですけれども、北海道は食料自給が二〇〇%の土地でございます。ですから、農林水産省の一部でも函館にどんと置いてくれれば、非常に人口もふえるし、安定するんじゃないかなというふうに考えたこともございます。これは空論でございますから、それに似通った、何か政府の方で人口対策として御努力いただけるものがあれば、ぜひお願いしたいなと心から願っておるところでございます。

 簡単でございますが、私からの御意見とさせていただきたいと思います。

 本日はどうもありがとうございました。(拍手)

田中座長 ありがとうございました。

 次に、竹田とし子君にお願いいたします。

竹田とし子君 大間原発訴訟の会の代表をしております竹田とし子です。よろしくお願いします。

 私は、エネルギーのことに関して、二〇一一年の三・一一、あの福島の第一原発の事故が起こった後、私たちの訴訟は、その前年に裁判を起こして、対岸の函館からフェリーで九十分のあの青森県の大間町につくられようとしている大間原発に対して、つくらないようにという裁判を起こしていた、ちょうどその一年足らずの間にあの事故が起こった。これはもう本当に私たちが恐れていたことが現実になったということで、これで原発はとまるだろうというふうに思えた、そういう事故だったのです。

 ちょうどそのときに、函館地方裁判所の五階で進行協議という、あちらの電源開発とか国の方々の被告たちと私たち原告、それから裁判所の三者の進行協議というそのさなかにあの地震が起こった。

 本当に日本は地震大国です。去年の九月六日もブラックアウトを起こしたような地震に遭ってしまいましたけれども、そういう中にあって、いまだに原発をとめようとしない政策、私は一日も早く原発から脱却していただきたい。

 エネルギーは、今、原発をとめても電気は足りています。自然エネルギーを、昔、日本はニュージーランドに地熱発電を輸出したりして、先進的な時代もあったのです。でも、原子力発電を進めるときに、その地熱発電の、世界でも進んでいた、そういう自然エネルギーに対する方向ではなくて、原発の方に移行してしまったというふうに考えています。

 本当に、地震のときに泊原発が動いていなくてよかった。もう福島のあの事故の二の舞は御免です。ですから、ぜひとも大間の原子力発電所、これは二〇〇八年の四月に、地球温暖化に貢献するといって許可が出てしまいましたけれども、あの三・一一の後では、貢献するどころか、もう厄介者になっているんです。

 それを、電源開発という会社は、単独ではやめられないのでしょうか、ずっとその後もやめるそぶりを見せません。あの後、規制委員会で今審査中になっていますけれども、審査中をこれ以上、もう早くやめた方が電源開発のためだと私たちには見えますけれども、会社の人たちは、ほかの工事をやったりして、やめるそぶりを見せていません。もし自分たちが東京電力のような立場だったら、どうやってそこに住む人々の命を守ることができるかということを電源開発の人たちはどう思っているのか、本当に不思議です。

 私は、健康というのは、病気になって初めてそのありがたみがわかるといいますが、あの原発事故を見て、ああ、こんなに大変だったんだということを思わない人はいなかったと思います。にもかかわらず、今の政治は、それをなかったかのように、子供たちの被曝を見て見ないふりをしているのだろうかと思えるぐらい、私は冷たいと思っています。

 福島の復興予算が何兆かと出ていますけれども、私はそれでは足りないと思っています。おまけに、オリンピックでアンダーコントロールと言った責任はどうとれるんでしょうかと、本当に情けなくなります。エネルギー問題は本当に大事な問題ですが、どんどんどんどんやっていいということではなかったというのがあの福島の原発事故ではないでしょうか。

 おまけに、その原子力発電所を動かした後の後始末、ずっと先送りされています。誰も引受け手がありません。まして、この地震大国で手を挙げる自治体はありません。日本に、ずっととめておけるような、何十万年も管理できるような、動かない断層というのはない。そういうところに、これまできちんと議論をして原発を選ぶということをしないで、いつの間にか気がついたら五十基以上もの原発をつくっていた、そういう日本の原発政策ということに対して、今は私は岐路だと思っています。

 二年前に「もんじゅ」を廃炉にすると決めました。そのときに、私は再処理工場もどうするかということが問われるかと思っていましたが、全然そこには触れられません。日本は不必要なプルトニウムを四十七トンも持ってしまっています。でも、間違って大間が動いたとしても、そのプルトニウムを処理できるほどの運転はできません。

 大間原発は、今まで自然界に存在しなかったプルトニウムをウラン燃料にまぜて使うMOX燃料を全炉心で使う、そういう考え方で二〇〇八年に許可を受けましたけれども、私たちは一生懸命、拙速な許可は出すなというふうに反対して、署名も六万五千筆も集めたり、それからすぐに異議申立てを五千人近く集めて裁判の方に移行してきましたけれども、その思いは、去年の三月十九日の裁判の判決で、結果として負けてしまって動いていません。直ちに札幌高裁に控訴審に訴えて、皆様にお渡ししています意見陳述書、これを読ませていただいて、私たちは控訴審への第一歩を踏み出したばかりですけれども、何とか、国の全体のエネルギーを考えるときに、予算委員会の皆様には、このままこの原子力を進めていいのかという、これから先の未来の人たちにこのツケを回していいのかということを本当に真剣に考えて、今が岐路だということを強く訴えたいというふうに思っています。

 私たちは、大間原発というのは、大間の一町村の問題ではないと。原発を過疎地につくるというのは、やはり東京にはつくれないものなのです。大勢に影響を与えてはいけないもの、それをずっと隠して過疎に押しつけてきた。大間原発は、私たち函館市民にとっては本当に目と鼻の先の、遮蔽物の何もないところに建てられるということで強く反対をしてきていますけれども、いまだに裁判も延々と続いていますが、事故が起こってからでは遅いということを本当に福島の事故を見て痛感しております。もう原発に頼る政策ではなくて、自然エネルギー、持続可能なエネルギーへの転換ということを強く求めたいと思っています。

 私たちは本当に、今の自分たちだけよければという時代でなくて、エネルギーの使い方もこれでいいのかと、きちんと使い過ぎを考えられるような賢い国民になっていかなければだめだと思っています。産業革命以降の三百年の間に、本当に人々はエネルギーをどんどんどんどん使う方向で来ましたけれども、有限な地球環境を考えるならば、本当に日本から率先して、原発というものを平和なエネルギーというふうに思ってはいけないのだというところに立たなければだめだということを発信していかなくてはならないというふうに思っています。

 ICANですとか、本当に、長崎、広島の原爆の影響で、人々が署名活動をして世界に訴えている日本、核兵器は要らないと言ってきた日本、その日本をこれからもずっと進めるために、大間原発もやめ、それから核燃料サイクルということはやはり夢でしかないということ、それをきちんと判断できる国になってほしいなというふうに願っております。子供たちには大間原発は残したくないという一心で私たちは頑張らせてもらっています。

 どうもありがとうございます。(拍手)

田中座長 ありがとうございました。

 以上で意見陳述者からの御意見の開陳は終わりました。

    ―――――――――――――

田中座長 これより委員からの質疑を行います。

 質疑の申出がありますので、順次これを許します。盛山正仁君。

盛山委員 四人の陳述者の皆様方、それぞれの分野において広範な御意見を賜りまして、まことにありがとうございました。

 それでは、まず、高橋さん、若佐さん、そして水島さんのお三方に伺いたいと思います。

 いろいろな御意見、御要望が出ましたけれども、その中で、まず、昨年の九月六日、胆振東部地震、そしてその後の対策というようなお話もございました。

 地域の発展のために、安全、安心の暮らしを支えるためにも、今私たちは国土の強靱化というものに取り組んでおります。つい先日成立をいたしました平成三十年度の二次補正予算も、その前の一次補正もそうでございますし、今現在審議中の三十一年度当初予算においてもそうでございますけれども、国土の強靱化、そのために社会基盤の整備をどのようにしていくのか、そしてそれが我々の安全、安心の生活を守るためには必要であるということで取組をしているわけでございます。

 その安全、安心の暮らしを支えるというだけではなく、きょうもいろいろなお話が出ましたけれども、地域を発展させる、なかんずく、松前の副町長さんからのお話もありましたが、人口が今減少している、そういう中において、北海道全体の、あるいはそれぞれの地域においての人口減少、これを食いとめていくためにも社会基盤の整備というのが必要ではないかなと私は考えるわけでございます。

 まず、全体の話としまして、今、社会基盤の整備、こういったものに対してどの程度国の予算を充てていくのがいいのか。

 もちろん、今、日本の全体の、政府としての債務が大変巨額に上っております。政府としても、プライマリーバランスの確保ということで、できるだけ借金を減らしていかなければならないといったような別のベクトルの話もあるわけでございますけれども、そうはいいましても、例えば道路だけではありません、橋もそうでありましょう、堤防もそうでありましょう、そういった治山治水、国民の安全、安心の暮らしを支えるための社会基盤の整備、こういうものに対しては国債を発行してでももう少し力を入れるべきではないか、こういうような御意見もあるわけでございます。

 まず、高橋さん、若佐さん、そして水島さんのお三方、そのあたりについてどのようにお考えかをそれぞれお答えをいただければと思います。

高橋賢友君 人口減少が全国よりも十年早く進展している北海道は、広域分散型の社会で積雪寒冷地であります。そういった中で、人口減少による影響が一番大きいのは地域であります。地域では、人口減少によって、これまで維持されてきた行政サービス、これも今後維持していくためにはどうしたらいいか、いろいろな課題があるということかと思います。

 そういった中で、北海道は食と観光を牽引として北海道経済の発展を目指している、その食と観光を支えているのが地域ということになるかと思います。そういった地域について、やはり交流人口をふやしていく、そういった中で雇用や所得を生み出していくということが大事かと思っています。

 そういった意味で、鉄路の維持、それから、実は札幌から函館までも高規格道路は結ばれていません。北見もつながっていません。それから、釧路についてもまだつながっていないという状況にあります。二年前の台風、一週間に四つの台風が上陸したときにも、道東方面とは道路が寸断されて人流、物流が途絶えたわけですけれども、高規格幹線道路が開通をしていたということで、一定程度の物流、人流が確保されたということであります。

 プライマリーバランスを守っていくといいますか、財政規律を守っていくことは基本的には大事だということかと思いますけれども、そういった中でも、食と観光で日本を支える北海道の中で、農業基盤の整備、それから社会インフラの整備を一定程度していくということが大事なのかなというふうに思っています。

 北海道開発予算については、以前、一兆円を超えていたレベルまであったわけですけれども、民主党政権のときに四千億台まで低下をし、自民党・公明党政権の中では六千億台まで回復をしたというレベルにあります。農業基盤整備の予算についても、一千百七十億円台までいただいているということであります。

 これは一定程度充足されているのかなというふうに思いますけれども、開発予算については、例えば、何度も何度も台風災害で被災するエリアが、同じところが繰り返されるということがあります。ですから、災害復旧に当たっても、原状回復ではなくて、改良復旧といいますか、そういった部分もこれから考えていく必要があるというふうに考えています。

 社会資本の緊急点検で、三カ年、必要な予算をつけるということであります。北海道も老朽化した社会資本が多く存在するということで、この三カ年の間に、ある程度の、プライマリーバランスは重要かと思いますけれども、優先的に三カ年については社会資本の整備に資金を充当するということが北海道の発展、これは日本の発展のためにもなるということかと思いますので、重要かと思っております。

 以上です。

若佐智弘君 各自治体においても、今お話ありましたように、やはりプライマリーバランスといいますか、財政の状況をしっかり踏まえて、やるべきことはやる、我慢するものは我慢するというような形でやっていかなきゃならないということは十分承知しておりますし、私どもも、町道の整備、いろいろなもの、橋の整備等をしていく上で、今どこに力を入れるべきかということを考えながらやっていかなきゃならないという部分は十分に存じ上げます。

 ただ、今おっしゃったように、社会基盤の整備というのは欠かすことができない。既にそこに昔から住んでいる人たちがおりまして、そこでまた生活を続けていく上で、やはり地域が生き延びるためには必要なものであると感じております。よく経済効果、BバイCとか言われますけれども、それを問い詰めていきますと、やはり都市部にしか社会資本の投資はできないのかというお話になっていくと思います。

 先ほども、ちょっといろいろと諸外国のお話もしましたけれども、海岸線上にたくさんの漁業者が住むことによって、そこには監視の目が光ります。松前町だけで海岸線は六十キロ以上ございます。ここが全く、松前町というところに人が住まなくなると、どこかが見張りをしなきゃいけないという部分になります。そういうものも踏まえて、また、そういう整備が、どちらが先かという話になるのかもしれませんけれども、やはりその辺のところは十分に精査していただいて、必要なものにはしていただく。

 ただ、余り経済効果とかBバイCばかり言われると、田舎の方はやはりどうしようもない、こういう結論になる。ただ、やはり、昔から言われております、国土の均衡ある発展という言葉は、今はもうなくなったのかということも私は感じております。

 そういう観点から、やはり北海道全体、北海道は一次産業の一大拠点です。ここを潰すと、私は、日本人の食がどうなるのか、本当に心配でたまりません。そういうものも、将来的な姿も考えながら、そういう整備の方向性も考えていただければと。

 既に青森の方は、リンゴは将来北海道で栽培することになるだろうとよく言っております。そういう気象環境もございますので、ぜひぜひ将来を見据えて考えていただければということで私の方の意見とさせてもらいます。

水島良治君 先生のおっしゃるお話は十分よくわかっているつもりですし、同じような意見としては、やはり私も、費用対効果を考えながらの設備投資をしていかなければならない、これは当たり前だと思っています。

 それと、もう一つは、やはり単独じゃなくて、橋それから道路、この一気通貫でもって、きちんと滞ることのないような整備をしていくということが何よりも大事だと思います。

 今のお二人の意見にもありましたように、北海道は海産物、農産物、食の王国でございます。この食を、いかに端々の食料を本州に届けるかというのが北海道の一つ使命かなというふうに思っています。先ほども申しましたように、食料自給率が二〇〇%ございます。これをきちんとした道路なり路線を使ってどうやって届けていくのか。それは、さっき言ったように、JRもあるし、それから船もフェリーもオーケー、なおかつ緊急性がある場合については飛行機で運ぶだとか、これ全部を全て考えていかなければならないのかなというふうに思っています。

 何としても、北海道の強みである食を本州方面にどうやって届けるのか、これをきちんとすることによって北海道の使命が果たしていけるんじゃないのかな、私はそういうふうに考えております。

 以上でございます。

盛山委員 ありがとうございました。

 今度は、高橋さんに伺いたいと思います。

 今の御発言の中でも、先ほどの発言の中でもございましたけれども、北海道は食と観光の地域であるというようなお話もありました。また、高橋さんの方からは、国際観光旅客税、平成三十年度、ことしの一月七日から適用されたものでございますけれども、これを地方に回せないか、こういうような御要望も賜りました。また、JR北海道の足の維持というんでしょうか、そんな話もありましたし、今現在、北海道新幹線ということで、新函館北斗から札幌へという路線の整備も行うというようなことで、いろいろな課題がこの北海道にもあると思います。

 観光の振興のためにも、鉄道、高速道路、こういう高規格の高速の輸送機関というのは必要でありますし、そしてまた、地域の方の生活のためにも必要です。それから、先ほど来ほかの方もおっしゃいましたけれども、やはり、地域の過疎を食いとめる、地域の活性化のためには、ある程度のボリュームの高規格の輸送手段、道路であり、鉄道であり、そして空もあります。またフェリーも、これも昔に比べると大分便利に速くなっております。こういったところが必要かと思います。

 そういうことに関しまして、特にJR北海道さんの経営状況との関係で、広い北海道の中の鉄路をどう維持するのか、あるいは北海道の新幹線の整備をどうやって進めていくのか、そのあたりについて御意見をお伺いできればと思います。

高橋賢友君 ありがとうございます。

 それでは、JR北海道の問題ということについて考えていきたいと思っています。

 御案内のとおり、北海道経済にとって、基幹産業である農水産物の輸送、それから交流人口、観光の面における鉄路の役割、これは重要であります。一方で、今、単独では維持困難な路線の問題がありますけれども、持続可能な企業経営ということから見ますと、やはりJR北海道という会社単独で維持困難な路線というのがあるということは経済界として理解をしているところであります。

 道経連の考えとしましては、鉄道は、全体の交通ネットワークを考慮しつつ、鉄道の優位性、大量輸送が可能であるとか速達性とか定時性と言われておりますけれども、そういった鉄道の優位性を発揮できる路線への重点化を図って、それ以外の路線については代替の輸送手段というものも検討していくべきかなと思っています。

 JR北海道の最大限の経営努力、それから沿線自治体、住民の自助努力、これを前提として、それでもなお北海道固有の事情、広域分散型社会であること、積雪寒冷地であること、輸送密度が低い、それから経営安定基金の利回りが低下している、そういった北海道固有の事情によりまして維持困難な路線については、JR北海道さん、沿線自治体、住民、北海道、国が連携して、抜本的な対策を講じていくことが大事かなというふうに思っています。

 昨年七月、JR北海道の経営改善に向けて、国の方から、二カ年、総額四百億円台の御支援をいただくということが発表されております。そういった中でも、二〇二一年度以降についても、期限が来る法律の改正も含めて、北海道新幹線の札幌延伸開業後の効果が発現できるのが二〇三一年でございますので、それまでの経営自立に向けて引き続き御支援を賜ればと思っております。

 JR北海道については、一方で、収益力のアップにつながる経営ができるようにしていくことが大事、将来の成長戦略が大事だということで、二つ目の質問にありましたけれども、新幹線の札幌延伸。新函館北斗まで北海道新幹線が開通しましたけれども、北海道新幹線は札幌まで来て北海道新幹線と言えるわけであります。そういった意味で、一日でも早い札幌延伸の実現をお願いしたいということ。

 あわせまして、青函共用走行区間、それから盛岡以北整備新幹線区間、こういったところの高速化についても、これはやはりJR北海道の収益力アップにつながるというふうに考えておりますので、ぜひこういったことについても御検討いただければありがたいというふうに思います。

 以上でございます。

盛山委員 ありがとうございました。

 どこまで公共的な部分が関与して税金を入れるべきであり、どこまでを利用者がということはなかなか悩ましい問題でありますが、やはり高速の鉄道というのは必要であると思いますので、それをどう工夫していくかだろうと思います。

 時間が限られてまいりましたが、水島さんに一つお伺いしたいと思います。

 今、空港のコンセッションについて進められているわけでございます。コンセッションと一口に言いましても、いろいろ人によっても考え方が違いますし、地域や場所によっても対応が変わるわけでございますけれども、今進められている空港のコンセッションのあり方について、水島さんの方から国に対する御要望があれば伺いたいと思います。

水島良治君 この問題につきましては、新聞等でもたくさん出ておるんですけれども、何よりも、目的というのが、コンセッションにより民力を入れて、地域に活性化を出すということが主題でございます。つまり、民間委託することによって、受託者が海外からたくさんLCCを呼んできて、地域の発展に寄与するということが一番最初の目的だと思います。当然、そういうことを目指したところが受託者となるものと思っております。

 これが、北海道七空港の場合についてはことしの七月ということになっておりますので、それからが、今度、私どもといろいろな協議が重ねられていくんだろうなというふうに思いますけれども、我々としては、ずっとこの作業に携わっていまして、ぜひ今言った内容を着実に実現していきたい、この一言に尽きると思いますけれども、よろしいでしょうか。

盛山委員 ありがとうございました。質問を終わります。

田中座長 次に、早稲田夕季君。

早稲田委員 立憲民主党の早稲田夕季と申します。

 きょうは、意見陳述を四人の方にしていただきまして、ありがとうございます。

 私も父の実家が函館でございますので、大変、皆様からいろいろな御意見をいただいて勉強させていただきます。よろしくお願いいたします。

 まず、北海道胆振東部地震の被災者の皆様にお見舞いを申し上げ、そして、お亡くなりになられた方に心から御冥福をお祈り申し上げたいと思います。

 時間もございますので、まとめて四方にお尋ねをしてまいりたいと思います。

 経済界の高橋会長の方からは、民主党時代になかなか公共インフラ整備が少し手薄だったのではないかという御意見もいただきましたが、私ども立憲民主党としては、本当に全国各地、インフラが四十年、五十年、老朽化をしております、これをまずしっかりと長寿命化をしていくための予算、それから、もちろん、地域で重要なインフラ整備については、当然ながら、公共インフラの整備として新しいものにも予算をつけてまいりたいという思いでございますので、ぜひ御理解をいただきたいと思います。

 その中ででありますが、このたびの地震で、大変、ブラックアウトで道内停電をされて、企業としてもいろいろな教訓を学ばれたと思いますけれども、このことについて、今後、こういうことが、今までは起こらなかったことが起こったわけですから、ぜひ、その教訓をどのように生かされるのかということを、全国の企業に対してもやはり生かしてまいらなければならないので、教えていただきたいと思います。

 それからまた、経済界として、電力の分散化、地産地消エネルギーとも申しますが、こういうことを経済界としてもリードをしていただく時代ではないかと私どもは考えておりますが、その辺についてのお考えをお聞かせくださいませ。

 それから、松前の若佐副町長に、ありがとうございました。

 人口減少ということで、交流人口をふやしたいということでございますが、このことについては、やはり働く場所が拡充をされていきませんと、なかなか交流も、それからまた若い人がそこに住んで、ずっと住み続けていただくということにもならないかと思いますが、その辺の企業誘致のお考え方を伺いたいと思います。

 それからまた、地方創生推進交付金がございますが、これをもう少し使いやすいようにという意味で御発言をされたのかなと思いますが、私もいろいろ、地元は私は神奈川県なんですけれども、プレミアム商品券とかいろいろございましたけれども、果たしてそれでいいのかな、もっと地域でやるべきことを地域の独自の発想でやっていただくのがよろしいのではないかと常々思っておりましたので、ぜひそこは教えていただきたいと思います。

 それから、副会頭、ありがとうございます。

 十月に消費増税の予定がされておりまして、これに伴いまして、キャッシュレス化ということが今大変予算の方でも審議をされております。キャッシュレス化がポイント還元等で進むとお考えでいらっしゃいますでしょうか。道内の、函館の状況も踏まえて教えていただきたいし、また、商工会議所として何かそれに対する手だてをされているのかどうか、ぜひ教えていただきたいと思います。

 また、竹田さん、大間原発、この発信をされておりますが、ありがとうございます。

 立憲民主党では、御存じのように原発ゼロ基本法案を提出し、今それに向けた工程表をつくっているところであります。

 まさに私も、トイレのないマンションと言われている原発を、何とか再稼働をしないでも、今も再稼働しない状況でこういうふうにやっております、確かに電気代が上がったとかいろいろありますけれども、子供たちの将来に向けては、そういう方向で私はやっていきたいと思っておるのでございますが、そこに向けて、神奈川でも取り組んでいるエネルギーの地域地産地消ということについても、いろいろ市民団体とお話をされている、それからまた実際に行動を起こしていらっしゃることがあれば、教えていただきたいと思います。

 以上四点、よろしくお願いいたします。

高橋賢友君 立憲民主党さんのインフラ整備に関する考え方はよく理解できました。ありがとうございました。

 ブラックアウトについてでありますけれども、今回、道内全域で発生しました大規模停電につきまして、国の検証委員会の方で検証結果が取りまとめられました。苫東厚真発電所の停止と、送電鉄塔倒壊等に伴う水力発電所の停止との複合要因で発生したものと評価をされたところであります。

 北海道の電力事業者であります北海道電力につきましては、燃料の多様化それから電源の分散化等のため、石狩湾新港発電所と北本連系設備を建設していたわけですけれども、運開予定がそれぞれことしの二月、三月ということで、残念ながら今回の事象には間に合わなかったということであろうというふうに考えております。

 今後も引き続き、燃料の多様化それから電源の分散化を考慮した電源開発を進めてもらうということとともに、フル稼働状態の老朽火力発電所が今北海道の電力を担っているという状況にあり、電力は余っているという御意見もあるかと思いますが、九月五日の台風、それから六日の地震、そこで苫東厚真発電所がトラブルが起きたときに、計画停電とか、それから二割の節電要請、これは実際要請されたという状況にあって、やはり今の状況というのは、安定供給が北海道で今後も継続的に確保されるのかというと、非常にリスキーな部分があるというふうに考えております。

 そういった中で、経済界としましては、エネルギーの安定供給と料金の低廉化、これによって企業誘致を図って、北海道経済の発展につなげていくということが重要と思っておりますので、そういった意味では、安全性確保を前提に、原子力発電所の再稼働についても国などに要望していきたいというふうに思っているところです。

 今回の教訓でありますけれども、BCPの重要性ということについてお話をしたいというふうに思っています。

 BCPを作成しますと、的確に見直してきた企業というのが非常に、一定の対応ができていたということが言えます。それが評価されて、その後の平常時の事業にも好影響を与えるのではないかな。今回の事例では、北海道のセコマさんの対応が非常によい例となっていると思っています。

 道内においてBCPを策定済みの企業というのは一〇・九%になっていまして、全国平均一四・三%を下回っているという状況にあります。BCPの策定に取り組むことで、単に災害に備えるだけではなくて、業務の改善、効率化、それから従業員の意識、能力の向上、取引先との関係強化など、経営力の強化にも寄与する効果がありますので、積極的に取り組むべきであるというふうに教訓として考えているところであります。

 以上です。

若佐智弘君 まず、交流人口の増ということに関しましては、幸い、函館の工藤市長も、道南において、北海道文化の発祥の松前、江差、この文化の交流が大事だということで、随分クルーズ船の誘致にも力を入れていただいていまして、また、その方々の松前なり江差なりへの移動というものも随分企画していただいて、また、実際、そういう移動も今だんだんだんだんふえてきておるところではございますが、何分にも、先ほど言ったように、ちょっと移動に時間がかかり過ぎる。限られた滞在時間の中ではなかなか行けないというようなこともあるものですから、そういうものも含めて、やはりいろいろと、この交流人口についてはふやしていきたい。

 また、魅力ある町にするためにも、松前町は今、北海道唯一のお城であります福山城、これを木造で復元したい、再現ではなくて復元でございます。きちんとした図面、そういう根拠がありますので、これで今、文化庁の方とも随分いろいろと協議をさせていただいて進めております。

 そして、以前に、台湾とか香港とか、そういうエージェントの方々とよくお話ししました、北海道にもお城はあるんだよと。大自然と、牛もあるし、山もあるし、スキーも滑れる、お城もあるんです、昔ながらの文化もあるんですと言うと、すごい興味を示してくれるんです。ただ、函館から二時間半かかりますと言ったら、ちょっと待ってくださいという話にやはりなってしまうんですね。けれども、その二時間半を上回るような魅力のあるまちづくりをしていかなきゃならないのかな、そうこうしているうちに高規格道路もできるかなと考えております。

 それで、また、働く場ですけれども、先ほどおっしゃられた地方創生交付金、これを今活用すべく手を挙げております。

 実は、松前の方は、クロマグロと言いましたけれども、うちの町長は山にもマグロがいると言って、黒牛ですね、黒毛和種、これを今、素牛として子供を産ませて、その子供を出荷するということでやっています。これが、皆さん御存じのとおり、九州の方の震災の後とか、数が少なくなって、高値で今取引されております。

 そしてまた、そういうところに就業される若い人たちが、やはり一千万、二千万単位で当初から負債を負って牛を買わなきゃならない、建物をつくらなきゃならないというものを、町の方でそういう施設で研修させて、学びながら給料をもらって、そこで牛をつくっていくわけです。その牛を安くまたその人たちに譲ることによって、その人たちが牛を買いやすくなる。なおかつ、賃貸の牛舎も建設して、そこで経営が安定するまでは賃貸の牛舎で育てていただいて、その後また個人で頑張れるというような感じで、とにかく育て上げるようなものをやろうということで、今一生懸命取り組んでおります。これは今回の二次補正の関係で出しておりますので、何とか本当に実現させたいと思っております。

 そしてまた、使いやすいようなものということのお話もしました。先ほど出ましたが、キャッシュレスとかといっても、田舎の方ではほとんど入っていないんです。けれども、観光の町といいながらキャッシュレスも使えないのということになります。使えるお店、使えないお店がありましたら、当然、使えるお店に皆さんが行くのか。

 また、光回線に関しましても、回線は国道の下に間違いなく通っております。けれども、そこから立ち上げるためには、NTTさんともお話ししたんですけれども、それなりの利用者がいないとだめだと。けれども、ここを町の方で立ち上げると数千万単位のお金がかかって、なおかつ、またそれが、十年たつかたたないかのうちに更新しなきゃならない。やはり将来的な負担もあります。

 そういうところもあって、テレワークとかそういうもので一応、ちょっと移住とかということでいろいろやっていますが、やはり企業にするとそういう点は弱いのかな。けれども、やはりそういうところも、まあ全てが通じていないわけではないので、通じているところに何とかそういうものをつくっていって、また更にその辺のところも宣伝していきたいというふうに考えております。

田中座長 時間の関係がありますので、簡潔にお願いを申し上げたいと存じます。

水島良治君 はい、簡単に。

 十月の消費税の話だったと思います。これにつきましては、函館空港でも今着々と準備を進めております。ポイント還元というのはやはり大きいと思います。

 現在の日本の現金を使っている率が余りにも高くて、八〇%、九〇%がいまだ現金。ただ、我々が感じているのは、最近かなりカード化が進んできているなという実感がございます。ですから、これからは、やはりポイントの点も含めまして、キャッシュレス化が進むと思っております。そういったものを前向きに捉えて、設備投資というか機械の方の投資も進めていかなければならないかな。

 商工会議所の方も同じような考えを持っていまして、これからまだまだ、十月の消費税についてはいろいろなまだ減額部分とかありますので、もう少し勉強しなきゃいけないのかなというふうに考えておりまして、そういう勉強会を通じて会員の皆様にきちんとお話をしていかなければならないかなというふうに考えております。

 以上でございます。

竹田とし子君 直接、私たちと地産地消の団体との交流はないんですけれども、北海道に自然エネルギープロジェクトという、札幌で風力発電をやっているところと函館での自然エネルギープロジェクトというところで連携して風力発電所ができればいいなということは思っています。

 あのブラックアウトで全部消えちゃうというのは信じられないので、やはり分散化というのはこれから本当に取り入れてほしいと思っていますし、あと、市民と自治という雑誌とかで、千葉の太陽光発電、下が農地で、上に太陽光を使って、そういう記事も見たりはしています。

 以上です。

田中座長 次に、逢坂誠二君。

逢坂委員 どうも御苦労さまでございます。逢坂誠二でございます。

 私は地元でありますので、地域の課題をきょうこのような形で、予算委員会の場を通して全国の皆さんに発信できる機会が得られたことというのは本当にありがたく思っています。関係者の皆さんの努力に心からお礼申し上げます。

 また、私自身は、ニセコ町長時代もそうでしたけれども、公共投資を相当やりました。今も、道路、港、空港を始めとする社会資本整備、必要な公共投資は確実に行うべきだというのが私の立場でありますので、また御理解いただきたいと思います。

 時間もありませんので、簡潔に御質問させていただきます。

 まず高橋会長ですが、北海道全体の課題をお話しいただきまして、ありがとうございます。

 北海道の課題の中で、人口減少対策は非常に大きいと思うんですが、人口減少、この一つの対策をやればうまくいくんだというものはないと思いますが、今、優先順位の高い人口減少対策、これが優先順位が高いかなと思うものがあれば、お考えをお知らせいただきたいと思います。

 それから、お二人目、若佐副町長、ありがとうございました。イカのこととかマグロのことを始め地域の課題をお話しいただきました。本当にありがとうございます。

 その中で、自治体が使いやすい交付金という話がございましたけれども、具体的にこれはどういうことなのか、もしこんなものがあればというのがあれば、御紹介いただきたいと思います。

 それから次に、水島社長でありますけれども、ありがとうございます。

 七空港の民営化について、先ほど盛山委員のところでも言及がございましたけれども、七空港の民営化における課題、これがちょっと課題なんだよなというのがあれば、お知らせをいただきたいと思います。

 最後、竹田とし子さん、ありがとうございます。

 大間原発ですが、大間原発で万が一事故が起きた場合、函館地域の皆さんというのは安全に避難できるかどうか、このあたりについて何か御見識があればお伺いしたいと思います。

 以上、よろしくお願いいたします。

高橋賢友君 ありがとうございます。

 人口減少対策ということで、一番の対策は何かということでありますけれども、全国的に今大きな課題でありますが、北海道にとっては、全国よりも速いスピードで減少に転じているということで、生活、産業、さまざまな影響が出ているということであります。

 これの克服につきましては簡単にはいかないということでありますけれども、やはり北海道の強みを更に伸ばしていく、そういった取組が必要であろうと思います。北海道の新たな価値をつくり出す、魅力ある北海道にしていくということが大事だというふうに思っています。

 そういった意味では、基幹産業である農林水産業、ここの成長力をもっともっと高めていく、こういったことで食と観光に結びつけていく、そういった取組が必要なのかなと思います。

 人口が減少していくわけですので、国内需要は減っていくわけです。ただ、それを外に売っていく、海外から稼ぐ、そういったことによって、経済的な発展を通して魅力ある住みやすい北海道にしていく、そういった取組が重要かというふうに思っています。

 以上です。

若佐智弘君 これは、我が町の財政を担当する課長からぜひ話をしてくれと言われた内容でございまして、実は、やはりいろいろと事業をやる際に、国の補助金、交付金、全ていろいろ調べさせていただきます。けれども、なかなかそれに合致したものを探すことも難しい。

 そういった中で、例えば、自治体の総合計画なりなんなりにその目標、目的、効果をうたってあるようなものに対して、あくまでも、うちの担当課長は、きちんと国へ申請して、こういう中身で使いたいんだということを申請したときに、それが効果のあるもの、また現実味のあるものであれば、そういうものに対しての交付金というものは手だてはできないのかということでございます。

 なかなか全ての補助金、交付金を把握するのも難しいところがありまして、何とか、そういう意味での、うちの財政担当者からの強い要望でございます。

水島良治君 逢坂先生から、今、七空港の民営化で課題点は何かと。

 これまで二年間かかって一生懸命やってきていますので、一口ではとても言えないんですけれども、簡単に言わせてもらうと、まず私たちが一番に望んでいるのは全職員の雇用です。これだけはきちんとやってほしい。これは一番最初に願いを出しています。もう一つは、地域のお取引先、これは今までどおりのおつき合いをしてください。この二つです。

 もっといっぱいあるんですけれども、とりあえずこのことでよろしくお願いします。

竹田とし子君 二〇一四年に、函館市長も大間原発に対して、東京地裁に訴訟を起こしたときに、函館市は、国道五号線で、ただでさえ混雑するところを、この避難計画はできないというふうに言って、避難計画だけを求める国のあり方に対して発言をされました。三十分に及ぶ意見陳述をされたのですが、道路が大事だといいながらも、大間で事故が起きたら私たちは逃げるところがないということを本当に痛感しております。そういうところです。

逢坂委員 ありがとうございます。

田中座長 次に、渡辺周君。

渡辺(周)委員 国民民主党衆議院議員の渡辺周といいます。きょうはどうもありがとうございます。

 限られた時間でございます。少し進行がおくれていると思いますので、私から簡潔に質問をしたいと思います。

 まず、高橋会長に伺いたいのですが、先ほどの冒頭、IR、カジノで飛躍的に観光客をふやしたいということでございますが、経済界としての試算は、どれぐらいの経済効果があるか。北海道も既に出しているのが、二千億円の経済効果と二万一千人の雇用ということでございますが、具体的にどういう雇用が生まれて、そしてまた、今、三つか四つの自治体が、釧路と留寿都とそしてまた苫小牧と三つ、そしてさらには、何か札幌の隣接する町も興味を持っている。どんな形で手を挙げる体制を整えるのかということでございます。

 そしてまた、であるならば、あわせて、経済界も、例えば、いわゆる依存症対策等にどういう形で取り組むか、お考えを持っているのか、まずその点について高橋会長にお尋ねをしたいと思います。

高橋賢友君 御質問ありがとうございます。

 北海道の主要産業である観光産業のさらなる成長のためには、一人当たりの観光消費単価の高いインバウンドの拡大が重要であります。

 そういった中で、IRについては、インバウンドの飛躍的な拡大につながって、観光先進国という国の理念を最適に実現する観点からも、北海道での導入を推進していくべきと考えています。

 北海道経済連合会としましては、さまざまな有識者それから関係者の方々からお話を聞くなど、調査研究を進めまして、一月の二十二日に当会の考え方を報告書としてまとめて、公表させていただきました。

 経済界としての試算、これは道の試算をベースにといいますか、を参考にしながら経済界としての意見を取りまとめたということで、独自に試算をしているわけではありません。

 それから、どんな体制で行うのかということにつきましても、まだこれは、自治体が手を挙げる、それから道が判断をするという過程が残っておりますし、その辺のところは今後の課題というふうに考えているところかと思います。

 マイナス面に対する対策ということであります。特にギャンブル依存症についての御質問かと思いますけれども、IR整備法の規制、それからギャンブル等依存症対策基本法の枠組み、それからIR事業者のこれまでの知見やノウハウ、関係する自治体の独自の取組などを組み合わせて対策を進めていけば、パチンコそれから競馬などの既存のギャンブル等も含めた改善が期待できるというふうに評価をしているところでございます。

 また、そうした改善の効果をデータとして国民、道民に示すことも今後重要になってくると考えております。

 以上でございます。

渡辺(周)委員 どうもありがとうございました。

 今お答えいただいた中で、例えば、どういう国の外国人の方に今後北海道全体に来ていただきたいというふうに考えているのか。例えば、国別の観光のニーズを、そこは経済界としてある程度整理して、例えばカジノに行きたいという人もいるでしょうし、自然がという人もいれば、パウダースノーでスキーをしたいとか、あるいは夏場に山を登る方がいいとか、いろいろな方がいると思うんですよね。

 ですから、そういう意味での、例えば国ごとのニーズというのは、今後観光政策を進めていくという中で、把握をある程度はしているのでしょうか。そこだけ最後にお尋ねをして、次の副町長さんに質問したいと思います。

高橋賢友君 北海道に来るインバウンドの大半はアジアからという状況になっております。欧米、オーストラリア、オーストラリアはニセコにはたくさん来ておりますけれども、全体のウエートからすると少ない、これが北海道における観光の課題の一つであります。

 それから、インバウンドの方は冬に来客をするということ。一方で、道内の国内客は夏にピークを迎える。春と秋との季節差、これもまた大きくなっているという状況にあります。

 そういった中で、IRを通じて、世界から観光客にIRに来ていただいて、日本におけるIR法の中で我々が一番注目しているところは、送客施設を持つことというふうに書いてあります。これは、ただ単にコンシェルジュを置くということではなくて、多様な方々のエンターテインメントをそろえるというIRの理念と、それから、IRに来た方をほかの観光地に送客をする、周遊をしていただく、そういった機能が日本のIR法の中に加えられているというふうに考えています。

 そういった意味では、消費単価の高い欧米、オーストラリアの方々を更にふやしていく、それから季節の格差をなくしていく、通年でのインバウンドの増加を期待する、そういった中で全道各地にそのIR効果を広げていく、そういったことを期待しているということであります。

渡辺(周)委員 ありがとうございます。

 それでは次に、松前町の若佐副町長さんに。

 いわゆる木造船漂着の問題ですが、最初にいただいた資料の、これは毎日新聞の地方版、昨年の十二月四日付に、道や関係機関、海上保安庁、警察だと思いますけれども、関係機関が連絡会議を設けることになったと。これは実は私も先般国会で取り上げまして、もう今そこにある危機だと。アメリカに向かって、日本に向かってミサイルを飛ばすよりも、もう既に北朝鮮の人間が木造船で気づかれずに漂着してきて、まさに松前小島から隠岐の島まで、この広い日本海沿岸に造作もなく、わけもなく上陸できている、この震撼させるような出来事がありました。もし、あそこの小屋に万が一誰かいたら、目撃者ということでひょっとしたら、言葉は悪いが、亡き者にされていたかもしれないし、どんな危害を与えられたか、もしかしたら、それこそ拉致をされていたかもしれないということでございます。

 そこで、この問題を私も取り上げましたら、新年度の予算で警察庁は沿岸に暗視カメラ、赤外線で夜間でも見ることができるカメラを置くというんですけれども、これだけ長い距離のところにまさに置いても知れているという中で、こういう本当に実害のあった自治体として、実際、例えばどういうふうな形で、初動対応訓練も起こすというんですけれども、私も実は能登半島に行ったんです、昨年の今ごろに。地域の方がボランティアで警戒はしておりますけれども、何せ、いかんせん人手不足でございます。例えば暗視カメラを置くにしても、果たしてどこまで有効なんだろうかということも一つあります。

 もっと言えば、お巡りさんの数も少ない、パトロールするといっても限りがある。これは当然、第一義的には海上保安庁だと思いますけれども、こうやすやすと漂着していることが水際で阻止できないわけですから、現実問題、自治体として、今後、潮の流れ等によってはまたやってくる可能性はあるわけでございます。

 その蓋然性は高いと思えば、やはり国に求めることはもちろんですが、自治体としての対応、今当面できる対応と、そして、この分野にもっと予算を使って何らかの形の、とりあえず水際作戦をもっとやるべきだ、このことについて、御経験から何か御意見がありましたら伺いたいと思います。

若佐智弘君 おっしゃるとおり、私ども、先ほど申しましたとおり、海岸線が六十キロあります。その部分全てを監視カメラで把握することは困難だということは十分承知しております。そしてまた、六十キロの中ではやはり船が入ることのできない岩場の部分もございますので、どういうところが入りやすいのか、そういう要所要所に一応そういう監視カメラの設置ができればいいなとは思っております。

 一番は、やはり離島小島、大島です。両方とも、離島小島には港が既に完成しておりますし、今、離島大島の方にも、避難港ということで工事を進めております。こういうところには、今の御時世ですので、何とか衛星を使ってでもやはり見られるような、そういうようなものをやっていければと思っております。

 あとは、もう本当に連携をとって、漁業者の皆さんにも、そういうものを見つけたらすかさず通報、放置、近づかないということを、日ごろからこれを周知し、協力のお願いをしているところでございます。そこしか今は早急な手だてはできないかと思っております。

渡辺(周)委員 ぜひ、こういう御経験というか、何ができたかできなかったかということを、やはり何らかの形でぜひ、ちょっとしたレポートをまとめてでも、ホームページでも結構です、何がやはり必要だったか、なぜ気づかなかったのか、そういうことを、これは恐らく、この間、島根県の隠岐の島にもたしか乗組員が上陸をした。本当、どこにどのような形であらわれるかわからない。だから、拉致事件が頻発をしていた昭和四十年代や五十年代と全然景色は変わっていない。普通に潮の流れによってやってくることができるという、しかも上陸もできている。

 この辺の御経験をぜひまとめて、例えば、ホームページ上で何らかのレポートでもしていただいて、我々のみならず、各日本海側の可能性のある沿岸の自治体にぜひ警鐘を打ち鳴らしていただきたいと思っています。

 もう一つ、副町長さんにお尋ねしたいのは、これはちょっと違うテーマですが、ふるさと納税について。

 非常に魅力的なふるさと納税の特典について、先ほどホームページを見たらございました、水産物の。例えば、このふるさと納税のあり方について、松前町としての何か御意見、今いろいろこれからテーマになってくると思いますので、これについて一言。

 時間がもう五分前ですと言われましたので、続けて、では、済みません、水島社長さんにちょっと伺います。

 ロシアの、これは領土問題はちょっとおいておいて、最近ではロシアからの観光客も一時期よりはふえている、六万人ぐらいですかね、これは日本全国ですかね。もともとロシアの平均所得というのはそんなに高いところじゃないので、そんなにインバウンドとして魅力があるあれかどうかわからないんですが、ユジノサハリンスク、かつて樺太と丘珠が、今でも結ばれているんでしょうかね。日本も今ビザの免除を検討していると、つい最近の報道ではございました。そういう中で、ロシアのインバウンドについてはどんなお考えを持っていますか。

 今、そういうさまざまな交流をもっと大きくしていきましょうと、ビザの緩和から、今度はビザの免除というところまで登録をするとできるようになるかもしれないという中で、ロシアの平均月収が六万八千円ぐらいということですから、そんなに富裕層がというわけじゃなくても、何か購入するものも日用品が主だということで、ぜひ、そんなに爆買いをするようなお国柄ではないようでありますけれども、この隣国について、ロシアというところがマーケットとして果たして魅力的かどうか、その点について何か御意見ございましたら伺いたいと思います。

若佐智弘君 松前町のふるさと納税に関しましては、ほとんど目的を持った基金に積んでいるところでございまして、今ふるさと納税と言いましたけれども、多分、今、見たのはふるさとチョイスとかそういうような感じのものだと思います。

 これに関しましては、私ども始めるときに、ちょっと時間もかかったんですけれども、要は、町がお金をもらうというよりは、漁業者が水産物を付加価値をつけて売れるようにして、そしてまた、それを販売する、物産を扱う、そういうところももうかる、しかもなおかつ、これは返品がないよと。ですから、できれば漁業者に対する利益の割合を多くしてやっていただきたいというのが目的でありました。

 ですから、五千円から三千円になったのは、ある意味、私たちはきちんとした目的を持って、町のお金として使うために欲しいんじゃなくて、町民の人たち、漁業者なりそういう人たちにその利益を供与したいという思いで始めたものですから、本当は五千円のままでいっていただければ町民にも喜んでいただけたかなというふうに思っております。

水島良治君 ロシアの方のお話ですけれども、実は函館空港というのはもともと、ユジノサハリンスクの定期航路ができて、国際線をつくったという経緯がございます。やはり、ロシアと北海道、函館もそうなんですけれども、近いです。ですから、私は非常に有効だと思っています、ロシアは。

 逆に、東南アジア、台湾でも、それから香港でも中国でも、南の方、タイでもそうですね、向こうから来ると、日本に行きたいといっても、福岡に来るより倍かかるんですよ、函館まで来るというのは。当然、時間も金も倍かかる。だから、なかなかその誘致が難しいという格好なんですけれども、ロシアでしたら、逆に一番近い日本なんですね、函館。

 ですから、こういうのは非常に魅力があると思うし、ロシアにもいろいろな層があると思います。日本でもいろいろな層があるように、ロシアもいろいろな層があると思います。

 ですから、そこら辺は、ぜひ飛んできていただければ、私たちはもしロシアから来るのであれば大歓迎ですし、当時スタートしたロシア学校も今あるんですよ、まだ函館に。そういうものがあるので、ロシアから来ていただけることの準備は函館は整っているかなというふうに思っております。

 以上です。

渡辺(周)委員 今ので、ぜひ水島さんに伺いたいのは、例えば、函館の商工会議所を挙げてとか、あるいは航空業界とか、あるいは観光業界を挙げて、何らかの形でこの機にロシアに対してもっと積極的にプロモーションしていくという何か戦略は組んでいるんですか。隣国で、まさに非常にもったいないなと。

 今おっしゃったように、雪が珍しい、暑いアジアの人もいるでしょうけれども、やはりすぐ隣の国とどうなんだろうというのは、もし今後プロモーションしていくことがあったら、最後に伺いたいと思います。

水島良治君 残念ながら、ロシアとは今そういう関係は持っていません。それから、そういう交渉の話も出ていません。

渡辺(周)委員 終わります。

 竹田さん、済みません。最後に質問できなくて申しわけございませんでした。

田中座長 次に、岡本三成君。

岡本(三)委員 公明党、岡本三成です。

 きょうは、皆様、貴重な御意見を伺いました。本当にありがとうございました。

 では、まとめて質問させていただきます。もうそれぞれ今、同僚議員の皆さんから御質問もいただいたので、ちょっと違う角度の質問をさせていただくように考えております。

 まず、高橋会長、先ほど若佐副町長のお話の中で、残念ながら、昨年、漁業関係、スルメイカ関係で四社が廃業されたというふうな悲しい情報をお伺いしたんですけれども、今、雇用環境は全体でもよくて、北海道も一・二を超えていて、函館も一を超えているような状況になっている中でも、なかなか賃金が上がらない状況があります。

 それで、日本もそうですけれども、先進国で中小・小規模事業者の中でも給料が上がっているところがあるんですね。その給料が上がっているところを探していきますと、共通項があって、最大の共通項は社員数です。これは相関係数〇・九四、スルメイカの会社でも建設業でも、十人の会社よりも二十人の会社の方がよりもうかっているというのが相関係数〇・九四なんですね。

 これは、私の地元でも実はお願いしているんですが、例えば経済団体ですとか、又は地元の金融機関を中心に、廃業するぐらいだったら、どこか同業種なりシナジーのきく会社と一緒にならないかみたいな動きが実際現場で出ていないのかどうか、出ているんだったら、ぜひ経済団体を中心にそのようなお取組もいただくといいんじゃないかということに関して、ちょっとどういうふうなお考えがあるかということを教えてください。

 若佐副町長、質問させてください。

 いざという震災が来たときに、住民の方の命を守る最前線に自治体の方に立っていただいているわけですけれども、避難所のさまざまな整備を含めて、現状できていること、又は財政的なり何らかの制約があって、やりたいけれどもできていなくて、国の支援が欲しいこと等あればぜひ教えてください。

 水島社長、ありがとうございます。

 昨年の胆振東部のときに、千歳もまとめて函館空港がさまざまな意味でバックアップをしてくださって、自家発電機があったことはすばらしいと思うんですけれども、普通であれば、いざというときのために準備をしておくというのは、企業経営者としてもなかなか判断がしづらい中で、自家発電所を持っていたり、自家発電があるぐらいなので、いざというときのためのことをほかにもいろいろやっていらっしゃると思うんですけれども、今後民営化も予定されている中で、どういうふうな経営哲学ですとか周りの支援があったからこういういざというときのための準備ができていたのかということをぜひ教えていただきたいんですね。加えて、空港は重要インフラですから、他の空港に対しても、こういうふうな体制を函館はとっていますというふうなことでぜひ示唆していただけることがあったら教えてください。

 もう一つ水島社長にはお伺いしたいんですけれども、先ほど、民営化した後であっても、最も守ってほしいのは雇用と地域の会社との取引だということを聞いて、私、すごい感激をいたしました。

 私、議員になる前に二十年ぐらい金融マンだったんですが、いろいろな経営者の方に会うんですけれども、あなたは誰を一番大切にしていますかと聞くと、一流の経営者は大体お客様と言うんですね。二流の経営者は株主と言うんですが、超一流の経営者はみんな従業員と言います。従業員を大切にする経営者が、結局、会社が伸びる会社だと私は思っているんです。

 そう考えると、今回、プロセスの中で四社が残っていて、私、個人的にチャンギが世界で一番好きなので、函館がエンターテインメント化してくれるとすごくいいなと思っているんですが、例えば、そのチャンギとかオリックスとかそういうところだけではなくて、地元の企業であったり、水島社長を中心とされた従業員の方であったり、経済界の方が、一緒にパートナーとしてそのコンセッションを受ける企業の中に入ることが前提としての交渉は私はあってもいいと思うんです。まだ遅くないと思っているんです。

 その方が、どんなに人が来ても地域のためにならないのであれば何の値打ちもありませんので、皆さん方の経営に関与できる権利というものがしっかりと担保できているかどうか、株主となってそこに入るのが一番いいと私は思っているんですが、皆さん方の意見がしっかりと経営に反映できるような仕組みになっているかどうか、なっていないのであれば、何か私たちがお役に立てることがあればぜひ御意見をお伺いしたいと思います。

 最後に、竹田さん、質問させてください。

 今、茨城の東海原発でも話題になっていますけれども、要は、地元の住民の方の御理解というのが何より重要で、そのことなしにさまざまな電力政策というのは行われてはいけないというのがもう世の中のコンセンサスなんだと思うんですね。にもかかわらず、コミュニケーション不足が起きているんだと思うんです。電気事業者は十分にコミュニケーションをとっているといいながら、住民の方が不十分だと言えば、私はそれは不十分だと思っているんです。

 それで、今既に訴訟になっているので、もう既に余りコミュニケーションはないのかもしれませんが、今までの竹田さんのさまざまな活動の中で、電力事業者とのコミュニケーション、コミュニケーションが十分にできても合意できないことがある、それは私はしようがないところがあると思っているんですけれども、皆さんがさまざまに問題提起をしたり質問をすることに対して、電力事業者は十分にそういう対話の場を設けているというふうに感じていらっしゃるかどうか、教えてください。

 以上です。

高橋賢友君 岡本先生の御質問については、中小・小規模事業者の中でも従業員の人数が多い方が利益も大きいし、賃金も多い、そういった意味で、廃業するのではなくて、MアンドAを促すような仕組み、そういったものについて経済界としてどう考えているか、そういう質問かと思います。

 想定アンサーがない質問でございまして、ちょっと個人的な見解、道経連としてまだそういった部分についての正式な見解というのは持ち合わせていないんですけれども、今、後継者不足ということで、さまざまな形で事業承継の仕組みを税制含めて変えていく、それから、経営者になり得る人材を見つけてくるとか、又はその後継者の方の婚活も支援するとか、さまざまな取組が行われています。

 そういった中で、なかなか後継者が見つからないという中で、廃業を余儀なくされる場合も多いわけですので、企業経営としては成り立つのに廃業しなければならない、これは経済界にとっても残念なことでありますので、そういった部分について仲人を立ててMアンドAをしていく、これは非常に企業規模も拡大して、事業規模も拡大するわけですので、非常にいい取組かなというふうに思っています。

 一方で、経営状況がすこぶる悪化して、なかなか再建のめどが立たない、そういった企業を吸収することでかえって問題になる場合もありますので、やはり企業同士の経営状況の中身を見ながら経営規模を徐々に拡大していくというのが経済発展、産業発展の一つの方策かなというふうに思いますし、経済界としても、今後、ちょっと問題意識を持って取り組んでいきたいと思います。

若佐智弘君 まず初めに、スルメイカ工場の減少の関係ですけれども、先ほど申し上げましたとおり、逆ざや状態、原料が手に入っても、その生産だけで、原価だけで三万円近くかかってしまう。中国からの輸入物、大体、当地の値段で二万五千円くらいで入ってきます。ですから、加工屋が一箱から五千円もうけようとすると、もうそこだけで一万円の差が出てきてしまうわけです。

 ですから、人は、もし廃業したところがあれば、高齢者が多いので人手不足になりますので、違う働く場所はあります。けれども、やはり、そこのところでも逆ざや状態で生産を続けることは難しいというのが現状でございます。

 そしてまた、防災に関しましての国の支援でございます。これはもう本当に、松前町は海岸線にありますもので、ハザードマップ、津波の防災マップを見ますと、六割以上の民家を含めて水没してしまうような状況でございます。

 ですから、高台にあるものは、当然、そういうさまざまな避難施設として活用させてもらいますし、また、そこを想定して、皆さんが入れるような巨大なものをつくるわけにもまいりません。学校等あるものをきちんと利用してやっていかなきゃならないですし、ただ、そういうところにある、うちの役場の本庁舎自体もそうなんですけれども、そういうものを高台に移転しなきゃならないと考えたときに、やはり、その辺の手だてをちょっと、緊防債とかいろいろあるんですけれども、手だてをもっと厚くしていただければ助かるなというふうな感じをしております。

水島良治君 岡本先生、銀行員二十年、私は三十八年でございます。大体倍くらい銀行員をやっておりまして、ですから、お気持ちはよくわかっていただけたのかなというふうに思います。

 函館空港は憲法がありまして、会社の経営理念というんでしょうか、「函館空港ビルは 地域と共に歩み お客様と社会のために貢献し 自らが誇れる会社を目指します」。みずからが誇れる会社の従業員は、ぜひ全員、完全雇用していただきたい、こういうふうにイコールになるのかなというふうに思っております。

 実は、停電のとき、たしか九月六日の午前三時七分くらいに地震があったと思います。当然、電気も何もつかなくて、真っ暗な中で、手探りでもって車に行って、家のテレビはかからないものですから、ナビをかけて、そうしたら地震だというのがわかって、それから一時間くらいかかって私は空港に行ったんです。

 びっくりしたのは、私はほとんどもう最後の方だったんですよ、一時間で。全員来ているんですよ。すばらしいなと思いました。ですから、BCP、ビジネス・コンティニュイティー・プランというのがあるんですけれども、これはもう言葉とか文章じゃないと思いますよ。根性ですよ。根性論というか、大変申しわけないけれども、精神論ですね。ほとんど来ているんですよ、何もなくても。だから、これだけ会社を愛してくれる人は完全雇用していただきたいなと思いました、その瞬間に。それがやはり、皆さん、函館空港が十八時間の停電、きちんと全て終われた。食事もとらないでずっとやっていたんですよ。食事の補給がないものですから、食料会社から。その中で見ていて、従業員のすばらしい働きに一人で感激していましたね、当たり前のように働いているというか。

 ですから、特に誇れるものとかなんとかはないけれども、私たちのこの経営理念の憲法が働いたのかなというふうに思っております。

 以上でございます。

岡本(三)委員 ごめんなさい、もう一つ質問させていただいて、民営化された後に皆さんがかかわっていくような仕組みというのはどうなんでしょうか。どこか、例えばチャンギならチャンギがスタートして、皆さんがそこにかかわっていくような。

水島良治君 先ほど先生が四つのコンソーシアムと言われたんですけれども、今はもう二つしかなくなっていまして。そこは推していたチャンギがだめになりまして、今二つになっていまして、二つのところとやっていますけれども、どちらとしましても、函館空港のいいところがわかっていただければうまくやっていけるかなというふうに思っていますので、自信を持ってそれは取り組んでいきたいと思っています。

 以上です。

竹田とし子君 電源開発の方は、訴訟の後では、今係争中なので原告とは会いませんというふうに言われて拒否されていますが、その前、許可が出る前の段階までは、私たちは現地の所長とも話し合いましたし、それから、二〇〇八年の署名を持っていったときには本社で広報担当の方とお話ししています。あと、私たちの会員の中で株主になっている人がいるので、株主総会で発言させてもらったりとかということはあります。

 以上です。

岡本(三)委員 ありがとうございました。大変参考になりました。

 以上です。

田中座長 次に、田村貴昭君。

田村(貴)委員 日本共産党の田村貴昭です。

 意見陳述者の皆さん、本日はありがとうございます。

 最初に、人口減少問題についてお伺いしたいと思います。

 松前町の若佐副町長からは、国土の均衡ある発展というのはなくなったのかという御発言がありました。それから、函館商工会議所の水島副会頭からは、函館の大問題だというお話がありました。

 それで、お二方にお伺いしたいと思うんですけれども、私も国会では、この人口減少の問題の一つにやはり東京圏一極集中の問題があると。そして、地方創生担当大臣も、地方創生の一丁目一番地だと言っているんですけれども、これが全然是正されない。むしろ転出転入の格差は広がるばかりだといったところです。

 東京都圏の人口が一年間で十四万人ふえている。ということは、小樽の規模の人口よりも、毎年そういう都市が東京圏に出現しているという状況については、人口減少の中では、ここはやはり肝だ、是正していかなければならないと思うんですけれども、北海道、この地域におられて感じるところがあったら教えていただきたいというふうに思います。いかがでしょうか。

若佐智弘君 まずもって、さまざまな人口減少対策、私どもは、育児支援、出産のお祝い金だとか、高校に関しても、そこでいろいろな資格が取れるように、特色を出すようにさまざまなことをやっております。

 そういった中に、こういうところで、皆さん聞いたことがあるかどうかはわかりませんけれども、私どもの町では、高校に進学するときに、やはりそれぞれの将来の夢、希望を持って函館の工業へ行きたいとか商業へ行きたいとか、そういう方がいるんです。そうすると、母親が一緒になって函館の方に来るというパターンが最近ふえているんです。というのは、下宿代、三食、二食しかつかなくて八万とかかかるようになる。そうすると、母親も一緒に来て、御飯をつくって、安いアパートを借りて生活した方が経費がかからない。ですから、高校進学のときになると親も一緒についていく。

 この話をちょっと本州方面でしましたら、やはり交通網のたけているところは電車とかがたくさんあるので、一時間、一時間半は通勤圏内というか通学圏内ということなんですけれども、現実、ちょっと松前町の方ではそういう実態もあるということでございます。

 そういった中で、いかにして地元の高校に魅力を感じさせるかということが必要だと思いますし、また、子供たちに地域を学ばせて、その地域の魅力を十分、小さいときからちゃんと教えてあげるということも必要だと思って、そういうような取組に今一生懸命力を入れているところでございます。

水島良治君 先ほどもちょっとお話しさせていただいたんですが、やはり若者が、例えば函館であれば函館に残って、結婚して、子供を産んで、マイホームを建てて、幸せに生活できるというだけの所得をもらえるところがないんじゃないのかなというふうに実はちょっと思っていまして、例えば東京なり札幌なり大学に行って、いろいろな友達と情報交換すると、非常に所得の高い、それから魅力のある企業がたくさんあります。

 先ほど言ったように、函館の主力産業というのは何かといったら、イカの加工品を主体とする、そういう企業がかなり多い。そうでなくとも、例えば料理店だとかそういったところで、将来を本当にかけて、これが決してだめだと言うわけじゃないんですよ。自分の将来をかけてまで、一生涯これで仕事をしていきたいかという情熱をかけられるような、若者が情熱をかけられるような仕事というのがちょっと少ないのかなというふうに感じております。そこがあればまだ、函館を愛する方はいっぱいいますので、地元に住みたいなという方がいらっしゃると思うんですよ。

 ところが、親も、子供に、高校卒業するとき、おまえどうするんだというときに、函館にとどまれと言う方は少ないと思うんですね。若しくは、函館の大学に進学しなさいと言う方が少ないと思います。就職した後、今度、就職先も函館になってしまうということで、一生涯そこでいいのかという、親も少ないと思います。

 つまり、やはり先ほどお話ししたように、大きな基幹産業が一つでも二つでもあるとこれはずっと変わってくると思うんですけれども、そこのところがない。函館の企業でもって東証一部上場というのは、ジャックスは御存じですか、そこだけなんですよ。もう一つ、ジャスダックに登録しているのはテーオー小笠原。上場会社がこの二つだけ。あと、残念ながら、ない。

 ですから、もう少しやはり函館は頑張って、上場できるような企業を目指してつくっていくことも、本当に人口減少の一つの歯どめになるかなというふうには考えております。

 以上です。

田村(貴)委員 私は地元が北九州市で、北九州市は人口の転出そして転入の差が日本で一番大きく、転出超過がもう何年も続いているというところで、政令指定都市にあっても、そして地方の町村にあっても同じ現象が今起きているということは、日本全体として本当に真剣に考えていかなければ。働く場所がそこにあるから、賃金が高いから人が移動するというこの関係をやはり是正していく必要があるんじゃないかなというふうに今感じたところです。ありがとうございます。

 若佐副町長に、漁業のことについてお伺いいたします。

 先ほど、三浦水産の方にもお邪魔させていただいて、大変厳しい現状の状況についてお伺いをいたしました。

 イカがとれない。きょうの日本水産新聞によりますと、昨年の全国のスルメイカの水揚げがとうとう統計史上最低になったという報道であります。五年間で三分の一、前は十四万あったのに今四万トンになったということで、深刻な状況であります。

 いろいろな要因については、きょうお話をいただいたというふうに思います。一つ、海水温が変わってきたと水産会社の方も言われていました。私も全国で漁業者の方に伺うと、とにかくこれだけ水温が上がったら魚のすむ環境が変わっているということを感じています。

 まさに地球温暖化の影響であると思うんですけれども、大自然の中、北海道の中におられて、この地球温暖化が自然に与える影響というのを、浜のなりわいと密接につながっている町を運営されている若佐副町長、感じるところがあったらお聞かせいただけないでしょうか。

若佐智弘君 確かに、四万一千七百トンという数字が、平成三十年のイカの水揚げの量でございます。本当に史上最低でございます。

 ただ、私どもの方の町の加工場はほとんどスルメしかつくっていないところでして、乾燥機ぐらいしか持っていないんです。それ以外の技術のないところがほとんどなんです。今まではスルメがきちんと売れていたということなんですけれども、そういうものも売れないということで、確かに、水温の変化なのか、今まで釣れていなかった魚も松前町の方でも釣れることがある。ノドグロなんかも釣れるようになった、そういう話は聞きます。

 では、それが商売になるだけの量かといったら、一年間で一匹、二匹見るというくらいで、本当に、地球温暖化の影響がどこまで来ているのかというのは、私どもは正直わからないところもあります。温暖化といいながら、きちんとニシン等を放流しているところはニシンが帰ってきている部分もありますし、そういった中で、サケはやはり大量に放流し過ぎなのか、何か回帰率が悪いとか、いろいろなものがございます。

 本当に、かえって、海の方でも確かにそういう話はあるんですけれども、原因がどこにあるのか、やはり一概に言い切れないのかなというふうには感じておりますし、そういった中に合う養殖とかそういうものも含めて、現状に見合う形の中でのそういう取組をしていかなければならないということで、今、ナマコの放流なんかをしていますと、これは実績がだんだん上がってきていますので、そういうものを探し当てるような感じで、漁業者の生活を守っていかなきゃならないかなとは感じております。

田村(貴)委員 引き続き、若佐副町長、クロマグロの問題なんですけれども、日本全国で同じような話を聞いております。そして、御町の漁業者の方が自分たちの配分の拡大を求めて声を上げられていることも私も承知しております。

 先ほどのお話の中で、私が受けとめたところは、漁獲圧の高い大規模漁業、まき網という言葉も出たんですけれども、そこの配分と、それから沿岸漁業に対する配分、ここの関係をもっと変えていってほしいという要望だというふうに伺ったんですけれども、管理期間の問題が出てきて、そして資源割当てが出てまいりました。率直に、水産庁、政府に対する御要望をこの機会にお聞かせいただけないでしょうか。

若佐智弘君 先ほども申しましたとおり、沿岸漁民はその場所から遠くに行くわけではございません。そこでとれるものしか漁獲対象にならない。それに比べて、やはりまき網とかの大型船にすれば、それは場所を変えると、今結構とれている、イワシなんかも随分資源はあるという話も聞いていますし、さまざまな魚種を変更することは可能ですけれども、沿岸漁民は魚種を変更することは困難なんです。そこにいる魚しかとれないんです。それをとれないということが本当に苦しい。

 先ほど言いましたけれども、キロ千円にすると、二十キロのマグロ一本二万円です。七十本放流した人は、平均二万円にしても百四十万を一日で放しているわけです。これは前に言われたんですけれども、資源管理の上でそれは必要だということでやっています。ただ、毎年毎年が、先が見えないんです。あと二年で終わるのか、三年で終わるのか、この辺のところを考えると、沿岸漁民の人たちはやはり継続は難しいのかな。

 何とか、先の見える形、ほかにとるものがない沿岸漁民に対しての割当てをふやすようにしていただきたいというのは、切実な浜の声であります。

田村(貴)委員 ありがとうございます。

 せっかくとれたマグロが小型で、そこでリリースしなければいけないつらさ、悲しみというのは私たちもしっかり受けとめたいと思います。ありがとうございます。

 大間原発訴訟の竹田代表にお伺いします。

 先ほどからのお話は伺っています。私も原発ゼロ法案を、共同提案を国会でしていますし、九州でもそういった社会ができるように活動しているところであります。

 そうはいっても、電力会社の方は、やはり原発を再稼働させなければいけない、北海道電力さんの方もそういうふうにPRされています。なぜならば、理由の一つとして、石炭火力発電所はCO2を放出する。確かに北電管内は石炭火力の占める割合が大きいと思います。それから、再生可能・自然エネルギーは安定感がない、どこでも言われるんですけれども。

 こうした理由をつけて原発の稼働が必要だというふうに主張されているわけですけれども、これに対して竹田さんはどのようにお答えになるでしょうか。教えていただけますか。

竹田とし子君 北海道電力の方々とブラックアウトの後で会う機会があったんですけれども、もう、一つのところで大規模な電力が、そういうところが事故を起こしたときにこういうことになるんだということを北海道電力の方々はまだ認識できないんだなということを感じたんですけれども、自然エネルギーがこれからのもので、しかも、送電線の利用料金で北電はやっていけるというふうに私は思っていますから、もっと小まめな地域ごとの電力というものを考えていっていただきたいなというふうに思っているところです。

 ですから、北海道電力一つの、九電力体制というのが今変わりつつあるんじゃないかなというふうに思いますから、原発は黙っていても冷やしたりとかいろいろなところでお金がかかっていて、やはり今まで思っていた事故なんかと全然違うんだというところをもっと自覚してもらいたい。そういうところが、普通の私たちも、もう原発に頼らなくてもやっていけるよねというあたりのところを、本当に、持続可能なエネルギーを選びたいというところでシフトされればいいなというふうに願っているところです。

 よろしいでしょうか。

田村(貴)委員 私も、北海道地震の後、何度か調査とかでお伺いさせていただいたんですけれども、本当にブラックアウトには衝撃を受けました。やはり大規模系統に頼るということが、非常にこれは教訓だったな、頼ってはいけないなと思います。

 そこで、竹田さんは、北海道という自然が最も豊かなところで再生可能エネルギーが広がってきました。私の住む九州は、ヨーロッパ並みに広がったという状況なんですけれども、逆に、太陽光発電を出力制御しているという問題も浮上しています。

 北海道における再生可能エネルギーの展望について、思うところがあれば教えていただけますか。

竹田とし子君 太陽光と風力のほかに、小水力とか、それから使ったもの、動物のふんとかそういうものとか、地熱とか、いろいろあると思うんです。だから、太陽光、風力だけでない自然エネルギーというのを、もっともっとそっちの方に開発できる予算をつけていただいて、これからやっていけたらいいんじゃないかなというふうには思っています。

田村(貴)委員 ありがとうございました。

 最後に、消費税のことについて、北海道経済連合会の高橋会長にお伺いしたいと思います。

 地震で、家屋にしたら一万五千棟の住宅被害がありました。そして、地震と停電による被害総額が四千億円との報道も見ました。生活となりわいの再建には、被災者の方々、多額の費用を伴ってまいります。

 そんな中で、政府は、十月に消費税の税率を一〇%に引き上げるという方針を持っています。ただ、八%への増税以降、消費支出がやはり下降線にあり、そして実質賃金が低下するといった状況の中で、特に被災者の方においては、生活を更に圧迫するものではないかという懸念も持っています。

 それから、軽々に税率が上がった分を価格に転嫁できない中小企業や中小業者さんにとっても、増税というのはそれなりの大きな負担、影響になってくるのではないか、経営の存亡にもつながりかねない問題が指摘されているところであります。

 北海道経済界において、増税の影響について会長はどのように受けとめておられるでしょうか。また、政府に対する御要望があれば、この際、お聞かせください。

高橋賢友君 ことしの十月、消費税率一〇%への引上げが予定をされています。日本の財政状態を見る限り、財政健全化のための消費増税、これは必要なものというふうに考えています。

 今回の政府予算案におきましては、キャッシュレス決済へのポイント還元制度、それからプレミアムつき商品券、加えて、自動車関連税の減税とか住宅ローン減税の拡充も含まれているということで、手厚い需要変動の平準化策が盛り込まれているというふうに評価をしています。

 また、軽減税率も初めて導入をされるということでありますので、経済界としましては、増税直後の消費の落ち込みが緩和されるものというふうに評価をしています。

 これまで、一九九七年、三%から五%へ上げたときの影響、それから二〇一四年の五%から八%への増税時の影響、その影響に比べまして、しっかりした対策が打たれているということで、実質的な家庭の負担というのは以前の引上げに比べて軽減されている、そのように評価をしております。

 以上です。

田村(貴)委員 この問題は、いろいろな意見があって、まさに国会の熱い焦点でもありますので、私たちも、皆さん方からの御意見も聞きながら、しっかり議論していきたいというふうに思っています。

 時間が参りましたので、これで質問は終わらせていただきます。ありがとうございました。

田中座長 次に、浦野靖人君。

浦野委員 日本維新の会の浦野靖人です。本日はまことにありがとうございます。

 質問の順番が最後で、用意した質問がどんどん減っていって、最後に一番聞きたかったことが残ってよかったんですけれども、インバウンドの話について少しお伺いをしたいと思います。

 私、地元が大阪です。大阪もこの数年は、インバウンド、非常に好調で、観光客がウナギ登りで、百貨店でも、日本で一番売上げを上げている百貨店は大阪の百貨店です。それはもう、ほぼ中国人の方ですかね、が主に化粧品を爆買いをして、今でももうあふれ返っていますけれども、買って帰っているというのが、インバウンドの、今、大阪の好景気を支えています。

 ただ、大阪も昔はそうじゃなくて、いろいろと策をとりました。もちろん、東京一極集中を打破するために地方が頑張らなあかんということで大阪は今までやってまいりましたし、その関連で、まず関西国際空港と伊丹空港をコンセッション方式で統合しました。まさに今、北海道の七空港が目指しているものと、数は違いますけれども、コンセッションということで同じですね。

 もう一つ、観光局というのが、大阪府と大阪市、二つあったんですけれども、それも一つに、行政をスリム化して、一体で観光局を運営するようにしました。

 いろいろともちろん仕掛けをしながら、今、大阪はどんどんどんどんインバウンドをふやしているわけですけれども、結局、大阪自体に世界遺産、今一つ、古墳群を登録を目指していますけれども、それはまだ世界遺産にもなっていません。

 北海道を見れば、知床半島は世界遺産になっています。日本遺産は大阪にもありますけれども、今、松前を含むあの地域の、北前船で日本遺産になっています。

 そういった、やはり魅力のある観光地というのはもちろん重要なんですけれども、それだけではなかなかやはり来られない。我々、大阪が少しラッキーといいますか、よかったのは、世界的にも有名な観光地の京都がすぐそこにある、そして奈良もすぐそこにあるという、立地の条件がいいというのももちろんあるとは思うんですけれども、北海道は観光の資源がまだまだあるんじゃないかと思っているんです。

 そういう意味では、高橋さん、若佐さん、水島さん、それぞれの立場で、このインバウンドをこれからどうやって上げていくのかということを少しお話をいただけたらと思います。

高橋賢友君 ありがとうございます。

 北海道、食と観光ということで、経済発展の牽引役ということで、観光に対する取組強化をしているところです。

 北海道七空港一括民間委託も、これは民間活力を生かすということのみならず、北海道の場合は、北海道全体の観光振興に寄与する、これが七空港一括民間委託の目的の一つにもなっているということで、これを契機に観光振興を図っていくということが大事かなと思います。

 先ほど世界遺産のお話がありました。知床自然遺産があります。去年チャレンジをしました北海道・北東北縄文遺跡群、これは残念ながら世界遺産への候補にはならなかったわけですけれども、ことし改めてチャレンジをしていくということになるかと思います。

 また、二〇二〇年、白老に開設されますアイヌ関連の文化施設、民族共生象徴空間、俗称ウポポイといいますけれども、この開設が来年、二〇二〇年に迫っているということで、例えば、函館に来られた観光客が、縄文遺跡群をめぐりながら、ウポポイのアイヌ文化を見て道央圏に入るとか、そういった周遊観光ルートの形成も見込まれるのではないのかなというふうに思います。

 あと、観光消費単価の高い欧米からの誘客という観点では、道経連としましては、アドベンチャートラベルの推進というものに取り組んでいます。これは、自然、アクティビティー、異文化体験、この三要素のうちの二つを含む旅行形態ということでありまして、北海道においては大きな可能性のある分野ということであります。こういった取組もしていきたいということを考えています。

 そのほか、二〇一九年には、九月にラグビーのワールドカップ、北海道札幌では二試合開催をされるということ、それから、十月にはG20の観光大臣会合、これが倶知安町で開催をされるということであります。

 観光活性化につながるイベント等がありますので、伸び代がいっぱいあるという評価をいただいておりますので、こういったイベントを契機に、しっかり観光振興を図っていきたいというふうに考えています。

 以上です。

若佐智弘君 先ほどもちょっとお話しさせていただきました、やはりインバウンドに関しては、だんだん松前町にも、レンタカーで来る若い人たち、女性の方とかも随分多く見えるようになりました。以前は観光バスが主流だったんですけれども、やはり自由な時間を求めているのかなということは感じております。

 そして、ほとんど、中国の方とか台湾の方というのは、桜好きですし、また、日本の文化にも興味を持っています。ですから、去年、松前神楽というものが国の無形民俗文化財、北海道においてアイヌの舞踊と、この二つなんですけれども、そういうものもやはり披露すると喜びます。ですから、ぜひそういうものを活用しながら、そういう方々が本当に魅力を感じる、甲冑の着つけなんかも本当に喜んでくれているので、これはずっと継続しています。

 ただ、やはり、そういった中にあって、インバウンドの方が、では、お土産品を買うのかとなると、従来あるようなお土産品は、松前漬けの松前でございますので、そういうものを買ってくれるかというと、それはちょっと首をひねるところがありますので、そういう方々に受け入れられるような土産品の開発とかにもこれから取り組んでいかなければならないのかなというふうには考えております。

水島良治君 ちょっとインバウンドについてのお話なんですけれども、実は、私どもはアウトバウンドが大事で、例えば、函館で入って、函館でインとアウトがいってくれると何にも文句はないんですけれども、実は、函館に入って、黄金ルートの登別、それから、そこら辺を通って札幌、千歳から帰るということになると、経済効果はゼロなんですよ。

 インバウンドよりアウトバウンド。ですから、アウトバウンドをどうやって誘致するかが函館経済の発展のためということを考えておりますので、できれば、新千歳に入って、若しくは青森空港に入って、函館空港から帰っていただく、これが私どもの一番の望みでございますので、そういう路線をぜひ引いていきたいなというふうに思っています。

 それからもう一つは、函館というのは、先ほど言ったように、有名地が非常にたくさんあって、文化もあって、食もあって、皆さん喜ぶんですけれども、一つだけ足りないのがあるといつも言われています。香港のイーグルツアーズという会社が、これは最大の香港の会社なんですけれども、ここの袁社長がこの間来られまして話したのは、函館は本当にいい町ですよね、一つだけ足りないのがある、買物をする場所がない。さっき言った、要は、アウトバウンドのときの買物をする場所がないということです。

 千歳が何で混んでいるかといったら、あそこは狸小路がある、それから東急ハンズがある、三井アウトレットがあるじゃないか、ああいうところがあって、最後に買物をして、満足してお客さんは帰るんですという話なんですよ。

 ですから、これから函館のインバウンド、アウトバウンドを伸ばしていくには、やはり一つまとまった買物ができる場所が必要じゃないのかなと私は個人的に思って、商工会議所の副会頭として、そういう方のお話を今皆さんにさせてもらっておるところでございます。

 以上です。

浦野委員 ありがとうございます。

 直接北海道に来られる外国人の方もたくさんいらっしゃると思うんですけれども、例えば、関西でもそうですけれども、関空に来てもらって、大阪で遊んで、京都、奈良、神戸を回って、また帰っていただくという、やはり、一地域だけじゃなくて、広い範囲で皆さんにお金を落としていただくというのが一番重要だというふうに我々も思っているんです。

 例えば、関西に来た人、東京に来た外国人の方々を北海道にまた来てもらう、そういう営業とかも、もちろん、それはされているんですよね。はい、ありがとうございます。

 実は、きょう、地方公聴会は、ここと、あと長野県でやっているんですけれども、私はどっちに行ってもいいですよというふうに言われたので、なぜこっちに来たかというと、こっちのお昼御飯の方がおいしいやろうと思ってこっちを選んでいるんですね。それで、お土産も、こっちのお土産の方がおいしいものを買えるやろうと思って実はこっちに来ているんですよ。

 だから、食べ物とかは、北海道、こっちはおいしいんだというのは、これはもう誰もが思っていることで、そういう意味では、そういったところをもっと海外の外国人の方々にもうまいこと発信できたら、もっとふえるんじゃないかなというふうには思っていますので、またよろしくお願いをいたします。

 竹田さんにも御質問したいんですけれども、我々、昔から、原発が一番コストが安いんだというふうにずっと言われて、小学校、中学校、もちろんそういう原子力発電のことに関しては僕らは教育で受けてきますから、そういうふうに言われてきました。

 ただ、原発事故があって、実はそうじゃないんじゃないかというふうに我々も思うようになってきました。私の党は原発ゼロという党ではないんです、実は。ただ、やることをしっかりやって、例えば、避難の経路をしっかりとつくるとか、避難計画をつくるとか、あと最終処分をどうするのかというのを全て決めてからだったら、原発を動かしてもいいんじゃないかと我々は言っています。

 ただ、そうではあるけれども、やはり、それは原発だけに頼るんじゃなくて、いろいろな発電方法、おっしゃっているような、発電方法はもっとたくさんあるだろう、そういうこともしっかりと割合をふやしていきながら、極力原発を抑えましょうというのが我々の考えなんですね。

 そういう意味では、原発コストというのが本当はどれぐらいなのかというのを少し御披露いただけたらなというふうに思うんです。

竹田とし子君 ありがとうございます。

 私が知っているのは、龍谷大学の大島先生が、原発のコストは安くないとたくさん書かれていますので、それを読んでいただけるといいかなというふうに思います。

 原発の後処理の部分は全然入っていないということで、プルトニウムが資産だというふうな形で計上されたためにMOX燃料まで行き着いてしまったけれども、MOX燃料のその次はどうなるかというと、第二再処理工場をつくるような計画は全くありませんし、行き場所がなくなって、プルトニウムはもうお荷物というふうな、そういう評価になっているのが現在だというふうに思っています。ですから、電力会社にお金を貸していた金融機関とかそういうところとか、いっぱい経済効果を狙っていたところが、やはりこれでは困るみたいにしてずるずると来たのが現状だと思います。

 チェルノブイリの後、イタリアも原発をやめているし、それから、一番新しいところ、ドイツもすぐ、福島の後で、倫理委員会というところで、もうやめますという方向に向かったというところで、あと、アメリカも、一九七九年のあのスリーマイル島の事故の後、原発に対して、やはり使えなくなっているという、そういうこととかで、世界の方向性として、私はやはり原発はこれ以上ふえないだろうというふうに思っています。

 それで、違うやり方で電気はつくれるということが広まってきているというふうに思いますから、経済だけでいったら、大間のMOX燃料なんて本当に高いものについて、会社自体やりたくないだろうというふうには思っています。

 そんなところでいかがでしょう。

浦野委員 ありがとうございます。

 私もドイツには原発のことで一度行ったことがありまして、ドイツの連邦議員の方に、ドイツは原発をやめたとすごく誇らしげに我々に言うんですけれども、でも、今フランスの原子力で発電した電気を買っていますよねと言ったら、いや、あれはフランスだから、僕は関係ないんやということを言うんですね。ドイツってそうなんやと思いながら、ちょっとどうかなと思ったんです。でも、原子力の数は、なかなか先進国ではやはりふえていっていないというのが現状だとは思います。ありがとうございました。

 最後に、食については、先ほど言ったみたいに、北海道の食べ物はおいしいんだというのはもう当たり前の常識ですけれども、逆に、大規模農業がこれからもまだまだふえていくでしょうし、農業の担い手というのは果たして北海道はどういうふうに推移しているのかというのをちょっとお聞かせいただきたいのと、あと、TPPの影響は実際どうかなというのを、ちょっと御意見を伺いたいなと思います。

高橋賢友君 北海道は一次産業が基幹産業というふうに位置づけられておりますので、北海道経済連合会としても、農業を含めた一次産業の振興について取り組んでいるというところであります。

 北海道の農業の特徴は、専業農家が多いということ、それから耕地面積が広い、二十八ヘクタールですね。全国平均が二・二ヘクタールということでありますので、十七、八倍ぐらいある。帯広へ行きますと平均が四十ヘクタールというところ、そういった中で大規模、効率的な農業生産活動が行われているというふうに考えています。

 専業農家が七五%というところで、ここが本州の農家との大きな違いだと思いますけれども、農業従事者はどんどん減っていっているというのが現状であります。戸数も減っている、それから就業人口も減っているというところであります。

 そういった中でも、新規就農者数というのが、二〇一七年の新規就農者数は五百六十九人という数字が出ていて、ほぼ三年ぐらい横ばいの状況になっています。

 その内訳でありますけれども、新規学卒就農者、お子さんがそのまま家の農業を継ぐといいますか、に従事するという場合が百九十三名、それから、一度農業を離れて、就職をして、Uターンして戻ってくる方が二百五十一名、それから、農業以外からの新規参入者、これも百二十五名ということで、そういった意味では、就農者数の減少に比べて新規就農者は横ばいの状況になってきているのかなというふうに思います。

 それから、企業が農業へ参入する状況も徐々にふえてきているということでありまして、こういったところで、農家の高齢化とか就農者数の減少、こういったものに対応していく必要があるのかなというふうに思っています。

 TPPに関しましては、TPP関連政策大綱が取りまとめられております。そういった中で、生産者の不安を和らげる経営安定対策の充実、それから輸出促進、経営体質強化に取り組む生産者を支援する攻めの対策も前面に掲げられているというふうに評価しております。

 これからは、その大綱に盛り込んだ対策、その対策の具体化を早期に進めるということと、これからいろいろなことが起きてくるというふうに考えますので、そういった場合にしっかりと対応をしていただく、これが大事かなというふうに思っております。

 以上です。

浦野委員 ありがとうございました。

田中座長 以上で委員からの質疑は終了いたしました。

 この際、一言御挨拶を申し上げます。

 意見陳述者の皆様方におかれましては、御多忙の中、長時間にわたりまして貴重な御意見をお述べいただき、まことにありがとうございました。

 本日拝聴させていただいた御意見は、当委員会の審査に資するところ極めて大なるものがあると存じます。ここに厚く御礼を申し上げます。

 また、この会議開催のため格段の御協力をいただきました関係各位に対しまして、心から感謝申し上げます。ありがとうございました。

 これにて散会いたします。

    午後三時十九分散会


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