衆議院

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第31号 平成29年6月1日(木曜日)

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平成二十九年六月一日(木曜日)

    午前九時開議

 出席委員

   委員長 佐藤  勉君

   理事 高木  毅君 理事 長島 忠美君

   理事 大塚 高司君 理事 木原 誠二君

   理事 牧原 秀樹君 理事 井上 貴博君

   理事 泉  健太君 理事 山尾志桜里君

   理事 遠山 清彦君

      鬼木  誠君    笹川 博義君

      中山 展宏君    橋本 英教君

      藤丸  敏君    牧島かれん君

      宮内 秀樹君    茂木 敏充君

      渡辺 孝一君    小山 展弘君

      津村 啓介君    野田 佳彦君

      馬淵 澄夫君    宮崎 岳志君

      本村賢太郎君    北側 一雄君

      吉田 宣弘君    塩川 鉄也君

      遠藤  敬君    玉城デニー君

      照屋 寛徳君    吉川  元君

    …………………………………

   議長           大島 理森君

   副議長          川端 達夫君

   国務大臣

   (内閣官房長官)     菅  義偉君

   内閣官房副長官      萩生田光一君

   事務総長         向大野新治君

   政府特別補佐人

   (内閣法制局長官)    横畠 裕介君

   政府参考人

   (内閣官房皇室典範改正準備室長)         山崎 重孝君

   政府参考人

   (宮内庁次長)      西村 泰彦君

   内閣委員会専門員     室井 純子君

    ―――――――――――――

委員の異動

五月三十一日

 辞任         補欠選任

  古賀  篤君     茂木 敏充君

  吉田 宣弘君     北側 一雄君

  照屋 寛徳君     吉川  元君

同日

 辞任         補欠選任

  吉川  元君     照屋 寛徳君

六月一日

 辞任         補欠選任

  牧島かれん君     中山 展宏君

  茂木 敏充君     鬼木  誠君

  小山 展弘君     馬淵 澄夫君

  宮崎 岳志君     野田 佳彦君

  北側 一雄君     吉田 宣弘君

  照屋 寛徳君     吉川  元君

同日

 辞任         補欠選任

  鬼木  誠君     茂木 敏充君

  中山 展宏君     牧島かれん君

  野田 佳彦君     宮崎 岳志君

  馬淵 澄夫君     津村 啓介君

  吉田 宣弘君     北側 一雄君

  吉川  元君     照屋 寛徳君

同日

 辞任         補欠選任

  茂木 敏充君     古賀  篤君

  津村 啓介君     小山 展弘君

  北側 一雄君     吉田 宣弘君

同日

 辞任

  玉城デニー君

  照屋 寛徳君

同日

            補欠選任

             大隈 和英君

             鬼木  誠君

    ―――――――――――――

五月三十一日

 天皇の退位等に関する皇室典範特例法案(内閣提出第六六号)

は本委員会に付託された。

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 政府参考人出頭要求に関する件

 天皇の退位等に関する皇室典範特例法案(内閣提出第六六号)

 本日の本会議の議事等に関する件


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     ――――◇―――――

佐藤委員長 これより会議を開きます。

 内閣提出、天皇の退位等に関する皇室典範特例法案を議題といたします。

 趣旨の説明を聴取いたします。菅内閣官房長官。

    ―――――――――――――

 天皇の退位等に関する皇室典範特例法案

    〔本号末尾に掲載〕

    ―――――――――――――

菅国務大臣 ただいま議題となりました天皇の退位等に関する皇室典範特例法案につきまして、その提案理由及び内容の概要を御説明申し上げます。

 この法律案は、天皇陛下が、昭和六十四年一月七日の御即位以来二十八年を超える長期にわたり、国事行為のほか、全国各地への御訪問、被災地のお見舞いをはじめとする象徴としての公的な御活動に精励してこられた中、八十三歳と御高齢になられ、今後これらの御活動を天皇として自ら続けられることが困難となることを深く案じておられること、これに対し、国民は、御高齢に至るまでこれらの御活動に精励されている天皇陛下を深く敬愛し、この天皇陛下のお気持ちを理解し、これに共感していること、さらに、皇嗣である皇太子殿下は、五十七歳となられ、これまで国事行為の臨時代行等の御公務に長期にわたり精勤されておられることという現下の状況に鑑み、皇室典範第四条の規定の特例として、天皇陛下の退位及び皇嗣の即位を実現するとともに、天皇陛下の退位後の地位その他の退位に伴い必要となる事項を定めるものであります。

 次に、法律案の内容について、その概要を御説明申し上げます。

 第一に、天皇は、この法律の施行の日限り、退位し、皇嗣が直ちに即位することとしております。この法律の施行の日は、公布の日から起算して三年を超えない範囲内において政令で定める日としており、その政令を定めるに当たっては、内閣総理大臣は、あらかじめ、皇室会議の意見を聴かなければならないこととしております。

 第二に、退位した天皇は、上皇とし、上皇に関しては、皇室典範に定める事項については、天皇または皇族の例によることとしております。

 第三に、上皇の后は、上皇后とし、上皇后に関しては、皇室典範に定める事項については、皇太后の例によることとしております。

 第四に、上皇及び上皇后の日常の費用等には内廷費を充てることとし、上皇に関する事務を遂行するため、宮内庁に、上皇職並びに上皇侍従長及び上皇侍従次長を置くこととしております。

 第五に、天皇の退位に伴い皇嗣となった皇族に関しては、皇室典範に定める事項については、皇太子の例によることとしております。また、当該皇族の皇族費は定額の三倍に増額することとし、当該皇族に関する事務を遂行するため、宮内庁に、皇嗣職及び皇嗣職大夫を置くこととしております。

 第六に、皇室典範の附則に、皇室典範の特例として天皇の退位について定める天皇の退位等に関する皇室典範特例法は、皇室典範と一体を成すものである旨の規定を新設することとしております。

 このほか、これらに関連いたしまして、所要の規定の整備を行うこととしております。

 以上が、この法律案の提案理由及びその内容の概要であり、平成二十九年三月十七日の「「天皇の退位等についての立法府の対応」に関する衆参正副議長による議論のとりまとめ」に基づいたものとなっております。

 何とぞ、慎重御審議の上、速やかに御賛同賜らんことをお願い申し上げます。

佐藤委員長 これにて趣旨の説明は終わりました。

    ―――――――――――――

佐藤委員長 この際、お諮りいたします。

 本案審査のため、本日、政府参考人として内閣官房皇室典範改正準備室長山崎重孝君、宮内庁次長西村泰彦君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

佐藤委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決定いたしました。

    ―――――――――――――

佐藤委員長 これより質疑に入ります。

 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。茂木敏充君。

茂木委員 おはようございます。自由民主党の茂木敏充です。

 私は、自民党・無所属の会を代表して、ただいま議題となっております、天皇の退位等に関する皇室典範特例法案について質問いたします。

 日本国憲法において、天皇の地位は国民の総意に基づくとされております。このたびの天皇の退位に係る議論、検討は、この天皇の地位を踏まえ、国民の代表たる国会が主体的に取り組む必要があるとの認識のもと、各党各会派が衆参正副議長のもと立法府の総意の形成を目指すという、これまでの憲政史上なかった手法がとられました。

 取りまとめの労をとられた衆参の正副議長の御尽力に心から感謝を申し上げるとともに、考え方の違いを乗り越えて意見の集約に努められた各党各会派の皆さんに敬意を表したいと思います。

 天皇の退位については、当初、各党各会派でさまざまな考え方がありました。三月に入ってから、各党会派で全体会議を開催し、与野党が胸襟を開いて議論を重ね、一致点を見出す努力を行ってきました。真摯な議論の結果、三月十七日の第七回会議において、衆参正副議長による議論の取りまとめにこぎつけることができました。そして、まさに国民の総意の集大成とも言えるこの議論の取りまとめを、同日、衆参正副議長から総理に提出し、これを踏まえた法案作業を進めるよう要請をしたところであります。

 今回の特例法案は、政府がこの国会の議論の取りまとめ、さらに有識者会議の最終報告を的確に法案化し、各党会派による確認を経て、国会に提出されたものであると理解をいたしております。

 以下、今回の特例法がこのような経緯を踏まえた法案であることを前提としつつ、基本的な事項について政府の見解を確認したいと思います。

 まず、今回の特例法案第一条の趣旨で、三つの立法事実が述べられております。

 一つは、天皇陛下が、御即位以来長期にわたり、国事行為のほか、象徴としての公的な御活動に御精励されてこられる中、御高齢になられ、今後これらの活動を続けられることが困難となることを深く案じておられること。

 二つ目に、これに対し、国民は、これらの活動に精励されている天皇陛下を深く敬愛し、この陛下のお気持ちを理解し、共感していること。

 さらに、三点目として、皇嗣である皇太子殿下が、五十七歳になられ、これまで国事行為の臨時代行等の御公務に長期にわたって精勤されておられること。

 今回の法案は、これらの状況に鑑み、皇室典範第四条の規定の特例として、天皇陛下の退位及び皇嗣の即位を実現するもので、今回の立法措置は、法案の第一条の趣旨からしても、今上陛下を対象とした特例法案であると考えておりますが、この点、政府の認識を確認したいと思います。

菅国務大臣 衆参正副議長の議論の取りまとめにおいては、今上天皇が退位することができるように立法措置を講ずることを各政党各会派の共通認識とするとともに、特例法に今上天皇の退位に至る事情等に関する規定を置くことが適当であるとされております。

 政府においては、この議論の取りまとめを厳粛に受けとめ、その内容を忠実に反映させ、退位に至る御事情等を第一条に規定し、天皇陛下の退位を実現するための特例法案を立案したものであります。

茂木委員 今回の天皇陛下の退位等に関する議論の過程では、将来の全ての天皇を対象とする恒久法という意見も一部にありました。しかし、日本国憲法で、「天皇は、この憲法の定める国事に関する行為のみを行ひ、国政に関する権能を有しない。」とされている第四条一項と天皇の意思との関係については慎重な対応が求められること、また、退位の具体的な要件設定について、例えば年齢や職務遂行能力を要件とする場合の問題点など、適切な要件の設定は極めて困難であると考えられます。

 この点も含め、今回、法形式を今上陛下を対象とした特例法とした理由について、改めてお尋ねいたします。

菅国務大臣 政府としては、天皇の意思を退位の要件とすることは、天皇の政治的権能の行使を禁止する憲法第四条第一項との関係から問題があると考えます。

 また、将来の政治社会情勢、国民の意識等は変化し得るものである、そのことを踏まえるならば、これらを全て網羅して退位に係る具体的な要件を定めることは困難であると考えます。

 また、衆参正副議長の議論の取りまとめにおいては、国権の最高機関たる国会が、特例法の制定を通じて、その都度、諸事情を勘案し、退位の是非に関する国民の受けとめ方を踏まえて判断するとされているものと承知をしております。

 政府においては、これらの点を踏まえて、天皇陛下の退位を実現するための特例法案を立案したものであります。

茂木委員 今回の法整備では、皇室典範に新たに、「この法律の特例として天皇の退位について定める天皇の退位等に関する皇室典範特例法は、この法律と一体を成すものである。」という附則を置いています。

 この皇室典範、かつての明治典範が帝国議会の議決を必要としない宮務法だったのに対して、現憲法では、第二条で、国会の議決した皇室典範とされています。すなわち、新憲法下においては、皇室典範も法律の一つであるというのが昭和二十一年十二月十七日の金森国務大臣の答弁。

 金森大臣は、吉田内閣で憲法担当大臣を務め、新憲法草案に関する政府側の答弁を一手に担っていた人物でありますが、この金森大臣の答弁、「皇室典範は法律であることが、第二条に依つて明かであります、」「皇室典範は法律の一種であると云ふ風に了解して、解釈上一点の疑ひはないものと存じて居ります、」との答弁以来、政府の一貫した見解だと考えております。

 その上で、今回あえて、「一体を成す」との根拠規定を皇室典範の附則に置くこととしました。これは衆参正副議長による議論の取りまとめにも沿ったものでありますが、政府としてこの規定を附則に置くこととした理由を改めてお聞かせください。

菅国務大臣 政府においては、憲法第二条は、皇位継承については法律で定めるべきことを規定したものであり、一般的に、ある法律の特例を別の法律で規定することは可能であることを踏まえると、憲法第二条の「皇室典範」には現行の皇室典範の特例を定める特例法も含み得ると考えております。

 一方で、憲法第二条の「皇室典範」は、昭和二十二年法律第三号の皇室典範に限られるという意見があることも事実であります。

 これらを踏まえ、衆参正副議長の議論の取りまとめにおいては、憲法上の疑義が生ずることがないようにすべきであるという観点から、皇室典範の附則に特例法と皇室典範の関係を示す規定を置くことによって、憲法第二条違反との疑義が払拭されることが明らかになるものと考えられるとされたものである、このように承知しています。

 政府としては、この議論の取りまとめを厳粛に受けとめ、その内容を忠実に反映させた法案を立案したものであり、皇室典範の附則を新設する、「一体を成す」との規定により、憲法第二条違反との疑義は生ずることはない、このように考えます。

茂木委員 今回、皇室典範に附則を置く、このことによりまして、憲法第二条違反、この疑義を払拭する、まさに我々もそのように解釈をいたしております。

 今回、天皇陛下の退位に関します議論におきましては、現憲法との関係と何らかの疑義が生じない、こういったしっかりした立法措置を進めたい、こういった思いで各党各会派が努力をしてきたわけでありまして、そういった結果が根拠規定の設置ということにつながっていると思います。

 冒頭確認しましたように、今回の法案は今上天皇を対象とした特例法でありますが、このような法形式をとることは、将来の先例にもなり得るものであると考えております。ただし、この場合も、先ほど官房長官の答弁にありましたように、過度な予見は抑制した上で、その時点での諸事情を勘案し、その都度、適切に判断していくことにより、むしろ国民の総意が適切に反映されるというのが我が党の基本的な考え方であります。

 この点に関します政府の見解を改めて伺います。

菅国務大臣 衆参正副議長の議論の取りまとめにおいては、国権の最高機関たる国会が、特例法の制定を通じて、その都度、諸事情を勘案し、退位の是非に関する国民の受けとめ方を踏まえて判断をすることが可能になり、恣意的な退位や強制的な退位を避けることができることとなる一方、これが先例となって、将来の退位の際の考慮事情としても機能し得るものと考えるとされております。

 政府としても、この議論の取りまとめを厳粛に受けとめて、その内容を忠実に反映させた法案を立案したものであり、この法案は天皇陛下の退位を実現するものではあるが、この法案の作成に至るプロセスやその中で整理された基本的な考え方については、将来の先例となり得るものと考えております。

茂木委員 ありがとうございます。

 今回の特例法では、第三条第一項で、退位した天皇は上皇とすること、また、第四条第一項で、上皇の后は上皇后とすることと定められております。

 退位した天皇の御身位については、太上天皇という意見もあったと聞きますが、象徴や権威の二重性の問題など、今回、上皇を選択した理由についてお答えください。また、これは太上天皇の略称ではない新たな称号と解しておりますが、この点の政府見解を確認したいと思います。

 あわせて、上皇の后についても、皇太后との呼び方も考えられたと思いますが、今回、上皇后とした理由をお聞かせください。

菅国務大臣 退位後の天皇の称号については、歴史上、退位後の天皇の称号として上皇が広く国民に受け入れられ、定着したものであることや、象徴や権威の二重性を回避する観点から、現行憲法のもとにおいて象徴天皇であった方をあらわす新たな称号として、上皇とするものであります。

 また、退位後の天皇の后の称号については、旧皇室典範以降、未亡人との意味合いを帯びた称号として受けとめられるようになった皇太后ではなく、天皇陛下と常に御活動をともにされてきた皇后陛下にふさわしい称号となるように、上皇という新たな称号と一対になる称号として、上皇后とすることにしたものであります。

茂木委員 今回の法案の成立後、政府においては、天皇陛下の退位に向けたさまざまな準備に万全を期すことが何より重要であり、まず何よりこれに全力で取り組んでいただきたい、このように考えているところであります。

 その上で、今後の課題について申し上げると、一つは、これは永遠のテーマとも言える皇位の安定的継承の問題です。

 この皇位の安定的継承、基本は、系統の正統性と継承の安定性という二つの要素から構成をされます。そして、継承の安定性のために、歴史の検証等も踏まえ、そこに強制的要因や恣意的要素が入り込まないようにする。今回の退位についての議論でも、退位の強制、恣意性を排除するというのは大きな論点の一つでありました。

 そしてもう一つ、これは当面する課題としての、皇族方の御活動のあり方ということです。

 現在、天皇陛下にとどまらず、皇族方の御活動はかつてないさまざまな分野に及んでおり、全国各地の重要な行事や活動に御臨席をいただいております。そして、その姿に国民が触れ、さらに、発達した現代メディアを通じて、より多くの国民がその御様子に接しているわけであります。これらの御活動を、女性皇族の御婚姻などにより皇族方が減少する中でどのように継続していくのか。また、どういう形で御負担を軽減できるのか。これは、かつてはなかった極めて現代的な課題であります。

 私は、永遠のテーマであります皇位の安定的継承の問題と、今後の皇族方の御公務、御活動のあり方という課題は、その性格からしても切り分けて考えるのが適切であると考えておりますが、この点に関する政府の現時点での基本的な考え方をお聞かせください。

菅国務大臣 平成二十四年十月に当時の野田内閣において取りまとめました皇室制度に関する有識者ヒアリングを踏まえた論点整理においては、女性皇族の婚姻による皇籍離脱の問題の対応策として、女性皇族が婚姻後も皇族の身分を保持することを可能とする場合において、配偶者及び子に皇族としての身分を付与する案と付与しない案、女性皇族に皇籍離脱後も皇室の御活動を支援していただくことを可能とする案、この三案が示されましたが、いずれの案も皇位継承問題とは切り離して検討することを前提としたものである、このように理解をしています。

 政府としては、衆参正副議長の議論の取りまとめを受けた各政党各会派間の協議を踏まえ、国民世論の動向に留意しつつ、適切に検討を進めてまいりたいと思います。

茂木委員 先ほども申し上げましたが、この法案の成立後、政府にまずやっていただくこと、取り組んでいただかなきゃならないことは、皇位の継承、天皇の退位に向けたさまざまな準備、さまざまなことがあると思います、それに万全を期していただく、そして、それに全力を挙げていただくということであると思っております。その上で、残された課題についても、しっかりした検討をお願いしたいと思っております。

 今回の特例法、衆参の正副議長のもとで全ての政党会派が議論を重ね取りまとめた、国会の議論の取りまとめ及び有識者会議の最終報告を踏まえ、それを適切に反映したものになっていると思っております。そして、そこの中で重要な点につきましては、今、質問の中でしっかりと確認もさせていただいたと思っております。

 静かな、静ひつな環境の中で議論を進め、一致点を見出していく、そんな思いで、国会、政府初め多くの関係者が議論に加わり、法案作成に取り組み、国民も大きな関心を寄せる中で、きょう衆議院での審議を迎えることになりました。ある意味、歴史的な一日である、このようにも考えているところであります。

 改めて、衆参の正副議長、各党各会派の皆様、政府関係者や有識者会議の皆様初め、多くの関係者の御尽力に敬意を表し、そして本法律案の速やかな成立を期待して、私の質問を終わります。

 ありがとうございます。

佐藤委員長 次に、馬淵澄夫君。

馬淵委員 民進党の馬淵でございます。

 天皇の退位等に関する皇室典範特例法案の審議、党を代表して質問させていただきます。

 昨年八月八日の天皇陛下のお言葉を受け、退位を含めた皇室のあり方について、ことしの一月十九日より、衆参両正副議長のもとに、八党二会派が一堂にそろい、参加をする全体会議が開かれました。議論を進める中で、ともに各党各会派の意見を陳述しながらも、理解が醸成をされる。また、正副議長におかれましては、三月十七日、こうした積み重ねの結果、天皇の退位等についての立法府の対応に関する衆参正副議長による取りまとめが立法府の総意としてなされたところであります。

 天皇の地位という極めて重大な課題を議論する上で、単に内閣に委ねるのではなく、国権の最高機関たる国会が主体的に議論をしていく、そして法案作成を主導していく、このことは、憲政史上でも例を見ない画期的なことであり、まさに、天皇の地位は、主権の存する日本国民の総意に基づくという憲法第一条、この趣旨にも合致するものだと思います。私も、改めて、衆参正副議長の御努力、御尽力に心から敬意と感謝を表明したいというふうに思います。

 その上で、本法案が、法案名が立法府の取りまとめどおりであること、また、特例法は皇室典範と一体をなすものであると皇室典範附則に明記されること、一般名詞として天皇の退位が明記されること、国民が陛下のお気持ちを理解し、共感しているという記載があることなど、取りまとめに基本的に沿ったものであり、評価できるものであると考えています。

 さらに、取りまとめでは今後の議論とされた退位の時期について、皇室会議の関与について、施行期日を定める場合、「内閣総理大臣は、」「皇室会議の意見を聴かなければならない。」とも規定しており、我々民進党がかねてより退位について皇室会議の関与を主張してきたことも、ある程度、その意を酌んでいただけたものと思っております。

 以上、この立法府の取りまとめに沿った法案自体に私どもは賛同できるもの、このように考えておりますが、一方、本法案の位置づけと今後の運用に関しまして、取りまとめとの整合性を中心に確認をしておきたいというふうに思います。

 先ほども質疑の中で御答弁もいただきましたが、改めて、将来の先例となり得ることについての確認をさせていただきたいと思います。

 我々民進党は、昨年八月八日の陛下のお言葉を重く受けとめ、昨年十月四日に、党内に皇位検討委員会をいち早く立ち上げました。また、皇位継承等に関する論点整理を、昨年の十二月二十一日、どの公党よりも早く取りまとめを行ったところであります。

 そこで、皇室典範本則の改正による退位制度の恒久化が必要と結論づけ、法的には、皇位は、皇室典範の定めるところにより、これを継承すると憲法二条で規定されており、特例法ではなく、あくまで皇室典範改正による制度化、恒久化を打ち出してまいりました。

 また、長きにわたる皇室の歴史を見ても、今上陛下百二十五代、百二十四代まで五十八方の天皇が生前に退位をされています。初めて退位をしたとされるのは第三十五代の皇極天皇で、今上天皇が百二十五代であることを考えますと、この間、約九十代のうち五十八方と、六割以上の天皇が崩御によらず退位をされてまいりました。日本の長い歴史の中で、退位はむしろ恒常化し、常態化し、伝統に合致するという点でも、退位制度の恒久化が必要と私どもは考えました。

 しかしながら、立法府の議論でも、典範本則の改正ではなく、附則を改正して、「この法律の特例として天皇の退位について定める天皇の退位等に関する皇室典範特例法は、この法律と一体を成すものである。」との規定を盛り込むとの合意がなされました。

 そこで、改めての確認です。

 取りまとめにおいては、この規定によって、「一、憲法第二条違反との疑義が払拭されること、二、退位は例外的措置であること、三、将来の天皇の退位の際の先例となり得ることが、明らかになるものと考えられる。」との整理が行われました。

 また、三月三日、全体会議、八党二会派による会議の中では、与党である自民党さんからも、今後、一代限りという言葉は使わないとし、将来の先例になるということはその意味で否定されない、先例となり得るという見解を示されました。

 政府も、この法案には、一体となすという文言しか記されておりませんが、将来の天皇の退位の際の先例となり得るということを、改めて、この国会での議事録としてお答えいただきたいと思います。

 また、さらには、典範附則の規定の最初に出てくる退位という言葉と特例法の名称とが異なって、普通名詞としての退位であるという、将来の退位の際の先例となり得ることの論拠となっている、このように私どもは理解をしますが、そのような解釈でよろしいのか、また、このことによって、一見矛盾に見える、取りまとめの整理である、例外的措置であることと将来の先例となり得ることへの懸念も解消される、このように考えてよいかということについて、政府からの御答弁をお願いいたします。

菅国務大臣 衆参正副議長の議論の取りまとめにおいては、皇室典範の附則に特例法と皇室典範の関係を示す規定を置くことによって、退位は例外的措置であること、将来の天皇の退位の際の先例となり得ることが明らかになるものと考えられる、このようにされています。

 政府としても、この議論の取りまとめを厳粛に受けとめて、その内容を忠実に反映させて法案を立案したものであり、この法案は天皇陛下の退位を実現するものではあるが、この法案の作成に至るプロセスや、その中で整理された基本的な考え方については、将来の先例となり得るものと考えております。

馬淵委員 ありがとうございます。

 将来の先例となり得るものと確認をさせていただきました。

 しかし一方、法案の趣旨と立法府の取りまとめ、この趣旨の部分を比べてみますと、退位に至る事情のところでは少し文言が追記をされております。象徴行為としての全国各地への御訪問あるいは被災地のお見舞いなどの具体的行為の記載、また、八十三歳という今上天皇の年齢に対する言及などがされておられるわけでありますが、このような記述が先例となり得ることの性格を薄めてしまうのではないかとの懸念も指摘をされているところでもあります。

 そこで、改めての確認なんですが、そのような記載の追加自体は、特別の意味を持つものではなく、立法府の取りまとめの趣旨を変えたり、あるいは先例となり得ることを弱めていることはないということ、このことの確認をさせていただきたいということと、さらに、退位に至る事情の中で、お気持ちという言葉が法の趣旨に書かれたことによって、強制退位やあるいは恣意的退位を防ぐ視点も踏まえ、退位が今上天皇のお気持ちに反していないという事情が読み込まれている、このように理解してよろしいでしょうか。

 以上二点、お答えいただけますでしょうか。

菅国務大臣 衆参正副議長の議論の取りまとめにおいては、特例法に、今上天皇の退位に至る事情として、一として象徴天皇としての御活動と国民からの敬愛、二として今上天皇、皇太子の現況等、三として退位に関する国民の理解と共感を盛り込むこととし、このような法形式をとることにより、国権の最高機関たる国会が、特例法の制定を通じて、その都度、諸事情を勘案し、退位の是非に関する国民の受けとめ方を踏まえて判断することが可能となり、恣意的な退位や強制的な退位を避けることができることとなる、また一方において、これが先例となって、将来の天皇の退位の際の考慮事情としても機能し得るものと考えるとされております。

 政府としては、この議論の取りまとめを厳粛に受けとめて、その内容を忠実に反映させて法案を立案したものであります。

馬淵委員 ありがとうございます。

 改めて、このような趣旨の記載も含めまして、取りまとめを忠実に法案化したものだということの確認をさせていただきました。

 次に、法律の施行日についても確認をさせていただきたいと思います。

 附則の第一条一項では、公布の日から起算して三年を超えない範囲内において政令で定める日から施行するものとするとされています。つまり、これは、法の公布の日から最大三年、この間に、退位の日をもって法律が施行されるということになります。

 この三年を超えないという範囲、これについては、長過ぎるのではないか、このような意見がございます。この三年という期間の中で、いわゆる内閣の裁量が大き過ぎて恣意的介入を招くのではないかとの懸念が、一方で私どもの方にも届けられています。ここは、政府として、三年を超えない範囲というものに対して、具体的な努力目標としての年限あるいは期日を明示すべきではないでしょうか。

 また、この施行日を定めるに当たっては、「内閣総理大臣は、あらかじめ、皇室会議の意見を聴かなければならない。」との規定があります。皇族二方、衆参の正副議長、内閣総理大臣、宮内庁長官、最高裁長官及び最高裁判事、この十名で構成される皇室会議の開催に当たっては、単なる形式的な開催とならないように努めるべきだと考えます。

 これについては、事前に準備状況あるいは開催要領などについて、立法府、国会に報告がなされるのでしょうか。その点につきましても、政府の御見解をお述べいただきたいというふうに思います。

菅国務大臣 皇位の継承事由を崩御に限定しております現在の皇室典範は、制度上、退位を予定しておらず、天皇陛下の退位は、今回の法案によって初めて実現をされるものであります。したがって、退位に向けた各方面との調整は法案成立後に開始すべきものであります。

 その上で、天皇陛下の退位は憲政史上初めての事柄であり、退位に向けて準備が必要となる事項は、退位後の補佐組織の編成、退位後のお住まい、これに伴う予算、退位に伴う元号の改正など、多岐にわたることとなるものと考えられます。

 これらは法案成立後に具体的な検討、準備が開始をされるものであることからすれば、これらの検討、準備にどれだけの期間が必要であるのかを現時点において判断することは困難であるというふうに思います。

 また、退位日となる法律の施行日を定めるに当たっては、改元等による国民生活への影響等も考慮しなければならないことも事実であると思います。

 政府としては、これらの事情を踏まえ、法律上、退位日を意味する法律の施行日を政令で定めることとした上で、当該政令を定めるに当たり、国民生活や皇室の事情に関して高い識見を有する皇室会議の意見を聴かなければならないこととしたものであります。

 いずれにしろ、政府としては、宮内庁を中心に、それぞれの所管省庁が十分に連携をとりつつ、適切に検討を進め、天皇陛下の円滑な退位が遅滞することなく実施されるように最善を尽くしてまいりたいと思います。

馬淵委員 具体的な年限、日時というのは、さまざまな退位あるいは譲位に関する事務的な手続等々で、これは判断するのは困難だ、このように御答弁をされましたが、一方で、今、官房長官からは、円滑な退位が遅滞なく実施できるよう最善の努力、このようにお答えをいただきました。すなわち、この御答弁というのは、三年を超えないということではありますが、三年という長期には至らないものだ、このように解すべきものだと受けとめさせていただきます。

 また、皇室会議も、形式的な開催とならないようにと私は申し上げましたが、高い識見を有する皇室会議、このように位置づけていただきました。したがいまして、形式的な意見聴取ではなく、この高い識見を反映させた実質的な皇室会議の関与がなされる、このように理解をさせていただきます。

 そして次に、論点といたしまして、安定的な皇位の継承に資するということについての議論をさせていただきたいと思います。

 退位に関連する重要な問題としては、皇位の安定継承ということでありますが、皇位が男系で継承されてきた歴史的経緯を踏まえつつ、他方で、高齢化や女性皇族の御結婚に伴う皇籍離脱により、天皇陛下及び特定の皇族方に御公務が集中し、皇室の御活動の維持や皇位継承資格者の確保に困難が生じることへの対応が速やかに検討されなければならないと考えます。

 先般、秋篠宮の眞子様の御慶事が報じられました。現行制度では、眞子様が御結婚されれば皇籍を離脱しなければなりません。女性皇族が順次御結婚されれば、皇族方が減少していくことは紛れもない事実であります。

 また、本法案が施行されて皇太子殿下が即位をされれば、皇位継承者の資格のある皇族は、秋篠宮殿下、そして悠仁様、常陸宮殿下と、お三方だけになります。皇位継承について、今起きている現実を踏まえて議論することは政治の責任でもある、このように考えます。

 本法案も、直接的には天皇の退位を可能にする法案ですが、その背景にある事情として、今後の皇位の継承についての議論は避けて通ることができません。

 皇室の活動をどう安定的に維持していくかという現実に差し迫った重要な課題、これに対しては、過去を見ますと、平成十七年十一月二十四日、小泉内閣において、皇室典範に関する有識者会議報告書が提出をされました。また、平成二十四年十月五日、民主党政権、野田内閣において、この問題に対し、女性皇族の婚姻後のお立場の問題に絞って整理、検討を行い、国民の議論に供するため、皇室制度に関する有識者ヒアリングを踏まえた論点整理を公表したという経緯があります。

 我々民進党としては、以上の経緯等を尊重しつつ、女性皇族が御結婚後も皇族の身分を保持し、当該女性皇族を当主とする宮家の創設が可能となるような皇室典範の改正をすべきだ、このような考えを論点整理でもまとめました。また、皇位継承資格について、女性や女系の皇族に拡大することについても国民的な議論を喚起していくべきだ、このように考えています。

 今回、この立法府の取りまとめにおきましては、「安定的な皇位継承を確保するための女性宮家の創設等については、政府において、今般の「皇室典範の附則の改正」及び「特例法」の施行後速やかに検討すべきとの点において各政党・各会派の共通認識に至っていた」と記載されました。与党も含めまして、皇位の安定継承の確保のための女性宮家の創設等についての検討は喫緊の課題である、こう認識をしています。政府は速やかに検討し一定の結論を出すことが求められるとの共通認識が形成されたと考えております。

 そこで、政府に見解をお尋ねしたいと思います。

 立法府は、この女性宮家の創設等ということについて重く受けとめ、検討を行うべきだ、我々立法府はこのように八党二会派で合意をしたわけであります。政府は、女性宮家の創設等の検討を行うべきということを考えますが、政府の基本姿勢はいかがでしょうか。

 また、我々民進党としましては、女性宮家の創設等に関する検討結果の国会報告の時期については、法案成立後一年を目途とすべきという主張をしてまいりました。附帯決議をしっかりまとめるよう努力もいたします。政府においても、これに沿った議論をして結果を出していただけますでしょうか。いかがでしょうか。

菅国務大臣 女性皇族の婚姻等による皇族数の減少等に係る問題については、皇族方の御年齢からしても先延ばしすることはできない重要な課題であると認識をいたしております。

 また、そのための方策について、今御披瀝ありましたけれども、野田政権当時まとめられた皇室制度に関する有識者ヒアリングを踏まえた論点整理、この中にも示されておりますとおり、いろいろな考え方やいろいろな意見がある。国民のコンセンサスを得るために、十分な分析、検討と慎重な手続が必要であるというふうに考えています。

 政府としては、衆参正副議長の議論の取りまとめを受けた各政党各会派間の協議を踏まえ、国民世論の動向に留意しつつ、適切に検討を進めてまいりたいと考えています。

馬淵委員 ありがとうございます。

 今、長官からは、政府としてもこれは十分な分析、検討が必要との認識を示していただきました。一方で、慎重な手続、これも必要だということで、我々が申し上げた一年を目途とすべきとの主張にはお答えいただけませんでしたが、先延ばしすることができない重要な課題だという認識は確認させていただきました。

 そこで、済みません、改めてさらに問わせていただきますが、安定的な皇位継承を確保するための女性宮家の創設等について、政府において速やかに検討すべきとの点において各政党各会派の共通認識に至っていたというこの立法府の取りまとめ、すなわちこれは、法施行後速やかに検討を行うためにも法施行前に検討を行うべきである、このように私どもは考えておりますが、これはいかがでしょうか。お願いいたします。

菅国務大臣 女性宮家の創設など、皇室制度に関して各種の議論があることは当然承知をしており、これまで、議論の経緯を十分検証するなど、検討を行ってきたところであります。ですから、今、野田政権の際のことについても、私ども、もちろん検証をいたしております。

 政府としては、衆参正副議長の議論の取りまとめを受けた各政党各会派間の協議を踏まえ、これまでの議論の経緯を十分検証しつつ、法施行後の具体的な検討に向けて適切に対応してまいりたいと思います。

馬淵委員 今、重要な御答弁をいただきました。法施行後の具体的な検討に向けてということですから、すなわちは、施行以前から適切に対応する、すなわち検討を始める、このように解される御答弁だったと思います。

 こうした、今、長官の御答弁どおり、喫緊の課題であるということであり、今回の特例法案の審議の中でも、今後どのように取り組むかということは、重要な附帯決議として、やはり今後は各党各会派でまとめていかなければならない課題であります。

 私どもとしましても、安定的な皇位継承を確保するための女性宮家の創設等につきまして、しっかりと党内での議論も行い、また、より先駆けての御提示も進めていきたい、このように考えます。

 我々も、今回の皇室典範の改正ということでありますが、皇室のいやさかということを祈念しながら、両陛下、皇族方のお気持ちを酌み取って、しっかりと、国家の基本にかかわる象徴天皇制を支えるため引き続きの努力をしてまいりますことを決意としてお伝えし、私の質問を終わらせていただきます。

 ありがとうございました。

佐藤委員長 次に、北側一雄君。

北側委員 公明党の北側一雄でございます。

 今回の天皇陛下の退位に関する課題につきまして、各党会派、さまざまな意見がございました。これを議長、副議長のもとで取りまとめをしていただいたわけでございます。私もその経過はずっと当事者の一人として十分に承知をしておりますが、まずは、議長、副議長の御尽力に心から御礼を申し上げたいと思います。

 まず、私の方からは、日本国憲法のもとでの象徴天皇制の意義について若干確認をさせていただきたいと思っております。

 憲法第一条では、天皇の地位は、主権の存する日本国民の総意に基づくとございます。国民主権のもとで象徴天皇制を維持また継承していくためには、象徴天皇制が広く国民に理解され、そして支持されているということが何よりも重要なことと思います。

 昨年八月八日の今上陛下のお言葉、私も何度も読ませていただきました。非常に私自身感銘を受けたところも多々ございます。その中で、このようなお言葉がございました。

 即位以来、私は、国事行為を行うとともに、日本国憲法下で象徴と位置づけられた天皇の望ましいあり方を日々模索しつつ過ごしてきました。天皇が象徴であるとともに、国民統合の象徴としての役割を果たすためには、天皇が国民に天皇という象徴の立場への理解を求めるとともに、天皇もまた、自らのありように深く心し、国民に対する理解を深め、常に国民とともにある自覚を自らのうちに育てる必要を感じてきました。こうした意味において、日本の各地、とりわけ遠隔の地や島々への旅も、私は天皇の象徴的行為として大切なものと感じてきました。

 このようにお述べになられておられます。

 天皇の行為には三つの類型があるというふうによく言われております。一つは、日本国憲法に定められた国事行為です。これは十三項目ございます。そして、もう一つは、象徴としての地位に基づく行為、公的行為と呼ばれます。これは憲法上明文はございませんが、広範な、天皇の御意思に基づく行為として行われております。もう一つは、私的行為を含めたその他の行為です。

 この三つに分けられるというふうに言われておりまして、私は、特に二つ目の公的行為、今の陛下のお言葉からも察せられますように、この公的行為というのは極めて象徴天皇としての重要な行為なんだというふうに位置づけられると私は理解をしております。今回の有識者会議の中でも多様な意見がございまして、その辺の認識についてもさまざまな御意見があったというふうに思います。

 私は、天皇の公的行為というのは、象徴天皇制のもとでの極めて重要な行為なんだというふうに位置づけられると理解をしておりますが、官房長官、どのようにお考えでしょうか。

菅国務大臣 憲法の第一条は、天皇は、日本国の象徴であり日本国民統合の象徴であると定めております。その趣旨というのは、天皇の存在を通じて、そこに日本国と日本国民統合の姿を見ることができる、そういうことであると考えられております。

 お尋ねの公的行為については、憲法上、明文の根拠はありませんが、自然人として行う事実行為のうち、象徴としての地位に基づく公的な立場で行われるものであると考えています。象徴としての地位にある天皇陛下が公的行為として国民に寄り添う御活動に精励されていることは、大変ありがたいものであると感じています。

北側委員 今上陛下のこうした御活動を通じて、多くの国民は、天皇陛下が日本国民統合の象徴として大きな役割を果たしておられる、そのように受けとめていると私は思います。公的行為は、国民とともにある象徴天皇の重要な行為と私は考えます。

 もう一点、確認をしたいのは、先ほども議論が出ておりました憲法四条一項の趣旨でございます。

 憲法四条一項は、天皇は、国政に関する権能を有しない、このような規定が載せられているわけでございますが、これは、なぜこのような規定があるかというと、私は、国民主権のもとで、天皇に政治上の責任問題の生ずるおそれをなくすことによって象徴天皇制を安定的に維持する、こうした趣旨ではないかというふうに考えております。

 これは憲法の解釈の問題でございますので、きょうは長官に来ていただいております。法制局長官の方から御答弁いただきたいと思います。

横畠政府特別補佐人 憲法第四条第一項は、「天皇は、この憲法の定める国事に関する行為のみを行ひ、国政に関する権能を有しない」旨を、また、憲法第三条は、「天皇の国事に関するすべての行為には、内閣の助言と承認を必要とし、内閣が、その責任を負ふ」と規定しております。これらは、憲法上、象徴として位置づけられた天皇と、あくまでも国民主権のもとで行われるべき国政との関係の基本を定めたものであると理解されます。

 すなわち、国家機関としての天皇の行為は、憲法の定める国事行為のみに限られます。これらの国事行為も全て内閣の助言と承認によって行われるものであり、天皇はいかなる意味でも実質的決定権を持たないということであります。

 また、天皇が国事行為以外にいわゆる公的行為を行うことは憲法の否定するところではありませんし、また、私人としての行為をすることも当然でありますが、それらの行為を通じて国政に事実上影響を及ぼすようなことがあってはならないということであります。

 このことの反面として、政治の側からは、いわゆる天皇の政治利用は禁じられているものと理解しております。

 このように天皇と政治を分離するということは、国民主権を前提とする象徴天皇制を安定的に維持する上での基礎となっているものと理解されます。

北側委員 それでは、今上天皇の退位にかかわる問題につきまして質問させていただきます。

 そもそも、皇室典範の四条には、「天皇が崩じたときは、皇嗣が、直ちに即位する。」このような規定になっているわけですね。天皇の終身在位ということをこの四条で定めているわけでございます。

 これは明治典範また現行典範でも同様でございます。明治以降、このような規定になっているわけでございますが、なぜ終身在位としたのかということについて、その当時の趣旨といいますか、理由は何だったんでしょうか。

菅国務大臣 現行の皇室典範を制定する際に、退位制度を認めると、歴史上見られたような上皇や法皇による弊害が生じるおそれがあるのではないかということが一点、さらに、二点として、必ずしも天皇陛下の自由意思に基づかないで、退位の強制ということがあり得ること、三点として、天皇陛下の恣意的な退位があり得ること、こういった観点から議論があり、終身在位制とすることになったものである、このように承知しています。

北側委員 私もそのように理解しています。

 今官房長官のおっしゃったとおり、一つは、権威が二分化されるのではないか、そういうおそれ、二番目に、退位の強制があるかもしれない、三番目に、恣意的退位の可能性もあり得る、こうした三つの理由から終身在位制というふうに位置づけられたと理解をしております。

 私は、今後のことを考えましても、この終身在位制という基本、これはこれからも維持した方がいいのではないかと考えています。このような三つの理由、弊害のおそれという指摘を考えますと、天皇制度の安定ということを考えたときに、やはりこれからも終身在位の基本というのは維持された方がいいのではないか。

 ただし、現代のような高齢社会にあって、今申し上げたそのような弊害の生じるおそれがないと思われる退位については、国民合意の上で許容されてしかるべきではないかというふうに考えます。全国民の代表でございます国会において、その時代時代の国民の意識、社会状況、また、天皇の御年齢と皇位継承者の御年齢、皇室の状況などを踏まえまして、その都度、法律案としてこの国会で慎重に審議をしていく、こういう方法がいいのではないかと私は考えます。

 以上の理由から考えますと、私は、本法案のとおり、天皇の退位に関する特例法というふうにしたわけでございますが、やはりそれが適切なんだというふうに考えますが、官房長官はどのようにお考えでしょうか。

菅国務大臣 このたびの衆参の両正副議長の議論の取りまとめにおいては、特例法に、今上天皇の退位に至る事情として、一つ、象徴天皇としての御活動と国民からの敬愛、二点目、今上天皇、皇太子の現況等、三点、退位に関する国民の理解と共感を盛り込むこととして、このような法形式をとることにより、国権の最高機関たる国会が、特例法の制定を通じて、その都度、諸事情を勘案し、退位の是非に関する国民の受けとめ方を踏まえて判断をすることが可能となり、恣意的な退位や強制的な退位を避けることができることとなる、また一方において、これが先例となって、将来の天皇の退位の際の考慮事情としても機能し得るものと考える、このようにされております。

 政府としても、この議論の取りまとめを厳粛に受けとめまして、その内容を忠実に反映させて法案を立案したものであります。

 この法案の作成に至るプロセスや、その中で整理された基本的な考え方については、将来の先例となり得るものというふうに考えています。

北側委員 特例法とはいうものの、将来の重要な先例に当然なるわけです。ただ、重要な先例になるからこそ、なぜ今回は退位に至るのかというところの事情を法文の中にきちんと書き込むことがとても大事なんだということで、この法案のまさしく第一条にその趣旨が規定をされている。もう詳しくはお話ししませんが、恐らく、整理すると三項目述べられているんだろうと思います。

 今上天皇の御年齢、また、今後の活動が困難となることを案じておられること、そして、そのことに対する国民の理解と共感、三番目に、皇太子殿下の御年齢とこれまでの活動状況、こうしたことが第一条の中に書かれている。これがまさしく将来の先例の判断の要素になっていくんだということだと思います。官房長官、それで間違いないですね。

菅国務大臣 なり得るもの、そのように考えています。

北側委員 そこで、先ほどの憲法四条一項との関係で少しお尋ねをしたいんですが、今回の各会派の議論の中でも、天皇の退位の意思というものを、例えば退位の要件としていくというふうなことも議論をされました。

 これはやはり、退位の意思そのものを退位の要件とするということは、皇位の継承という国家にとって極めて重要な重要事を天皇の御意思に直接係らしめることになるわけでございまして、先ほど申し上げた憲法四条一項の、国政に関する権能を有しないという規定からすると、これに反する疑いがあるのではないかというふうに私は考えます。長官、いかがでしょう。

横畠政府特別補佐人 天皇がその意思に基づいて退位するということについては、憲法との関係において、まず、憲法第一条が規定する象徴天皇制のもとでふさわしいものであるかどうか。第二点として、御指摘の憲法第四条第一項が「天皇は、この憲法の定める国事に関する行為のみを行ひ、国政に関する権能を有しない」と規定していることと抵触しないかどうか。また、三つ目として、憲法上の制度であります天皇、皇室の安定的な維持という観点から問題を生ずることがないのかといった問題があると考えております。

 すなわち、天皇の退位という行為が憲法に規定されている国事に関する行為に当たらないことは明らかでありますことから、天皇の交代という国家としての重要事項が天皇の意思によって行われるものとした場合、これを国政に関する権能の行使に当たるものではないと言えないのではないかという問題、また、仮に天皇がその意思によって退位することができるとした場合、将来においてでありますが、いわゆる退位の強制、例えば天皇に対して退位を迫るような行為が行われることや、いわゆる恣意的な退位、例えば政治的な意図を含んだ退位あるいはその表明が行われるといったことが生じないことを制度として担保することができるのかといった諸問題があると考えられます。

北側委員 今御答弁あったとおりで、やはり退位の意思そのものを直ちに退位の要件にしていくということは、憲法上も、また逆に象徴天皇制の安定ということを考えた場合もふさわしくないというふうに私は考えます。

 それでは、安定的な皇位の継承の問題についてお聞きをしたいと思います。

 憲法の第二条では、「皇位は、世襲のものであつて、」このような規定があるわけですね。長官、この世襲というのはどういう意味なんでしょうか。

横畠政府特別補佐人 憲法第二条の世襲とは、皇位が代々皇統に属する者によって継承されるということであると考えられます。

北側委員 皇統という言葉も難しいので、きょうはテレビも入っておりますので、世襲、今それを皇統という言葉にかえられましたが、もう少しわかりやすくおっしゃっていただきますと。

横畠政府特別補佐人 皇統と申しますのは、天皇の血統、血筋ということでございます。

北側委員 憲法上は、皇位の継承の要件を書いているのはこの世襲の部分だけなんですね。その他は皇室典範に委ねられている。国会の議決した皇室典範で定める、こうなっているわけでございます。

 皇室典範でどう書いているかというと、御承知のとおりでございまして、皇位の継承資格は男系男子だということが一つ、これは明治典範から男系男子になっています。それからもう一つは、嫡出。これは明治典範ではなかったんですね。現行の典範から、嫡出ということも、これは六条に書かれているわけでございまして、皇室典範、法律事項としてまさしく規定をされているわけでございます。

 そこで、この皇室典範の第十二条で、「皇族女子は、天皇及び皇族以外の者と婚姻したときは、皇族の身分を離れる。」こういう規定があるわけでございます。皇籍から離脱をするという規定があるわけでございますが、なぜ第十二条が規定をされたのか、なぜ皇籍を離脱しなきゃいけないのか、ここの制定当時の理由は何だったのでしょうか。

菅国務大臣 皇族女子が天皇及び皇族以外の者と婚姻したとき皇族の身分を離れることとされた理由については、皇室典範が皇族女子に皇位継承資格を認めていない、このこと等を踏まえて、旧皇室典範と同様に、婚姻に伴う皇籍離脱の制度を採用したものと考えています。

北側委員 今の官房長官のお話は、当時の答弁でもあるんだと思うんですが、結局、皇位継承資格を男系男子にしたというところにかかわっているんだ、今、こういう説明でございます。

 では、一方で、皇族制度の目的、これも、皇室典範に皇族制度について規定があるわけですが、皇族制度の目的というのは一体何なんでしょうか。

菅国務大臣 皇族制度の意義については、憲法において皇位の継承が世襲によるものと定められていること、天皇の国事行為を代行する制度として委任や摂政が設けられていること、こうしたことから、天皇と一定の親族関係にある方に皇族として法律上特別な地位を認めたものである、このように理解をしています。

北側委員 一つ、一番大きいことは、なぜ皇族制度をつくったかというと、皇位継承者を確保していくということですね。第二条で、皇位は、皇族にこれを伝えると書いてありまして、ですから、皇位継承者を確保していくということが皇族制度の一つの大きな意味。

 もう一つ、やはりありまして、今も少し官房長官からお話がございましたが、皇族として天皇陛下を支え、そして、皇室活動、皇室のさまざまな活動を担っていく、この二つの役割があるんだと思いますが、長官、いかがですか。

菅国務大臣 そのように考えています。

北側委員 女性宮家の問題、今も議論されておりましたが、女性宮家の創設が、これが直ちに安定的な皇位継承につながるわけではありません。まずそこは、私は整理しておいた方がいいと思っております。

 現在、お聞きしましたら、皇族は十八方いらっしゃると聞いております。そのうち、今後、婚姻により皇族の身分を離れる可能性のある女性皇族は七方いらっしゃるというふうにお聞きをしております。そして、現在は、皇族男子は四方いらっしゃって、悠仁親王殿下の世代は殿下お一方のみ、こういう現状にあるわけでございます。

 安定的な皇位の継承をどう確保するのか、そしてまた、皇室制度をどう維持していくのか。これは、先ほど来話が出ておりますとおり、先延ばしができない極めて重要な課題と言わねばならないと思います。

 ただ一方で、これをどうするかということで具体的に考えていったときに、多様な考え方があるんですね。これまでも、平成十七年、平成二十四年、そして今回、平成二十九年と、有識者の方々に集まっていただいて、さまざまな報告書ができたり、論点整理をつくったり、最終報告書が今回出たりとあるんですが、その中でも多様な意見が現実にはあるわけです。

 私は、象徴天皇制のもとで、冒頭申し上げたとおり、大事なことは、国民の理解と支持を得る、これが不可欠なんですね、象徴天皇制のもとでは。だから、国民の理解と支持を得るために、政府において今後、この非常に重要な課題についてしっかりと検討してもらわないといけないと思いますし、国会においても、私ども引き続き、丁寧かつまた慎重な議論を積み重ねていきたいというふうに思っております。

 最後に、官房長官、何か御意見がございましたら。

菅国務大臣 今、委員から御指摘いただきました。皇族の方の御年齢やあるいは現状、そうしたものからしまして、先延ばしすることのできない重要な課題であるということは政府としても承知をしております。

 そういう中で、いろいろな考え方、また意見があり、そういう中で国民のコンセンサスを得るために、十分な分析、検討、慎重な手続、こういうことも必要だろうというふうに思っております。

 いずれにしろ、政府としては、今回の議論も踏まえる中で適切に検討していきたいというふうに思います。

北側委員 ありがとうございました。

佐藤委員長 正午から委員会を再開することとし、この際、休憩いたします。

    午前十時十九分休憩

     ――――◇―――――

    正午開議

佐藤委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。

 本日の本会議の議事の順序について、事務総長の説明を求めます。

向大野事務総長 まず最初に、日程第一につき、西銘国土交通委員長の報告がございまして、共産党及び社民党が反対でございます。

 次に、日程第二につき、浮島経済産業委員長の報告がございまして、全会一致でございます。

 次に、日程第三につき、竹本政治倫理の確立及び公職選挙法改正に関する特別委員長の報告がございまして、共産党及び社民党が反対でございます。

 次に、日程第四につき、丹羽厚生労働委員長の報告がございまして、全会一致でございます。

 本日の議事は、以上でございます。

    ―――――――――――――

 議事日程 第二十四号

  平成二十九年六月一日

    午後一時開議

 第一 住宅宿泊事業法案(内閣提出)

 第二 外国為替及び外国貿易法第十条第二項の規定に基づき、北朝鮮を仕向地とする貨物の輸出及び北朝鮮を原産地又は船積地域とする貨物の輸入につき承認義務を課する等の措置を講じたことについて承認を求めるの件

 第三 衆議院議員選挙区画定審議会設置法及び公職選挙法の一部を改正する法律の一部を改正する法律案(内閣提出)

 第四 児童福祉法及び児童虐待の防止等に関する法律の一部を改正する法律案(内閣提出)

    ―――――――――――――

佐藤委員長 それでは、本日の本会議は、午後零時五十分予鈴、午後一時から開会いたします。

    ―――――――――――――

佐藤委員長 次に、次回の本会議の件についてでありますが、次回の本会議は、明二日金曜日午後一時から開会することといたします。

 また、同日午前十一時理事会、正午から委員会を開会いたします。

 午後一時三十分から委員会を再開することとし、この際、休憩いたします。

    午後零時一分休憩

     ――――◇―――――

    午後一時三十分開議

佐藤委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。

 内閣提出、天皇の退位等に関する皇室典範特例法案を議題といたします。

 質疑を続行いたします。塩川鉄也君。

塩川委員 日本共産党の塩川鉄也です。

 天皇の退位の問題について、私たちは、個人の尊厳という日本国憲法の最も根本の精神に照らして考えるなら、一人の方に、どんなに高齢になっても仕事を続けるよう求めるという現在のあり方には改革が必要であり、退位を認めるべきと表明をしてまいりました。したがって、天皇退位の立法を行うことは賛成であります。

 立法に当たっては、現行憲法の象徴たる天皇の退位を初めて立法化するものであり、広く国民的議論を踏まえ、憲法の規定に適合するものとすべきである、そういう見地に立って議論をしてまいりました。

 官房長官に確認をいたします。

 日本国憲法は、象徴という天皇の地位は、主権の存する日本国民の総意に基づくと規定し、天皇は、この憲法の定める国事行為のみを行い、国政に関する権能を有しないと規定しています。

 退位の立法は、この憲法規定に沿って行わなければならない、そういうことでよろしいですか。

菅国務大臣 日本国憲法は、第一条において、「天皇は、日本国の象徴であり日本国民統合の象徴であつて、この地位は、主権の存する日本国民の総意に基く。」とし、そして、第四条において、「天皇は、この憲法の定める国事に関する行為のみを行ひ、国政に関する権能を有しない。」と規定をいたしております。

 法律が憲法に適合したものでなければならないことは言うまでもなく、退位の立法措置を講ずるに当たっても、当然、これらの規定を含めて憲法に適合するものでなければならないと考えます。

 今回の特例法案は、憲法上の疑義が生ずることがないように十分に配慮して立案したものであり、憲法に適合したものであると考えております。

塩川委員 今回の特例法案の第一条は、なぜこの退位法案をつくるのか、立法に至る事情を書いております。

 今回の立法が、昨年八月八日の天皇のお言葉を契機としていることは事実ですが、この点について、政府は、お言葉という文言を使用しませんでしたが、これは、お言葉に基づき立法することとすれば、憲法第四条第一項に違反するおそれがあるからですと説明をしております。

 そこで、お尋ねいたしますが、お言葉に基づいて立法することとすれば、憲法第四条第一項に違反するおそれがあるというのはどういうことか、御説明をお願いいたします。

菅国務大臣 憲法の第四条第一項は、「天皇は、この憲法の定める国事に関する行為のみを行ひ、国政に関する権能を有しない。」と、天皇の政治的権能の行使を禁止する旨を規定いたしております。

 昨年八月の天皇陛下のお言葉は、これまでの御活動を天皇として自ら続けられることが困難となるというお気持ちを国民に向けて発せられたものであり、退位の意向を示されたものでなく、天皇の政治的権能の行使に当たらないと考えております。

 しかしながら、昨年八月の天皇陛下のお言葉を今回の立法の直接の端緒として位置づけた場合には、天皇の政治的権能の行使を禁止する憲法第四条第一項に違反するおそれがあると考えます。したがって、そのような疑念が生じないよう、趣旨規定の中でお言葉という文言を使用しないこととしたのであります。

塩川委員 お言葉を端緒とすると憲法違反のおそれがあるという御説明でした。

 法案には、御高齢になられ、御活動を続けられることが困難となることを深く案じておられると昨年八月のお言葉の内容を引いた上で、この天皇陛下のお気持ちを国民が理解し、共感し云々と書いております。

 お言葉を端緒とするとだめだけれども、お言葉の内容を書くのはいいということなのか。これは実質的には同じことではないのか。どのように整理しておられるのかについてお尋ねをいたします。

菅国務大臣 繰り返しになりますけれども、昨年八月の天皇陛下のお言葉は、これまでの御活動を天皇として自ら続けられることが困難というお気持ちを国民に発せられたものであり、退位の意向を示されたものではなく、天皇の政治的権能の行使には当たらないと考えます。

 また、国民がこの天皇陛下のお気持ちを理解し、これに共感しているという現状は、この天皇陛下のお気持ちに対する国民の受けとめであり、天皇陛下のお言葉と直接関係するものではないと考えております。

 加えて、政府としては、国民的な議論が高まったことを踏まえて、予断を持つことなく検討を開始し、衆参両院の正副議長による議論の取りまとめを受けて、今回の法案を立案し、提出したものであります。

 こうしたことを踏まえれば、憲法第四条第一項に違反するものとは考えておらず、また、この法案の趣旨規定の中で天皇陛下のお気持ちや国民の受けとめという現状を記載することによって憲法上の問題はない、このように考えます。

塩川委員 お言葉を端緒とすると憲法違反のおそれがあるが、お言葉の内容を引用するという形についてはそうではないということでは、国民から見れば非常にわかりにくい内容だと言わざるを得ません。実質的には同じことなのではないのか。

 天皇は政治的権能を持たない、政治に関与しないという原則を貫くなら、天皇陛下のお気持ちを云々するという、こういう表現については適切ではないと思います。天皇の退位を実現する理由については、高齢となり活動を続けるのは困難となるであろうという客観的な事実に基づき、天皇の退位について国民が理解を示しているということに立法事実を置くべきだと考えます。その点で、法案の修正が必要だと考えております。

 もう一つの問題は、この第一条には、国事行為のほか、象徴としての公的な御活動に精励してこられという記述があります。

 象徴としての公的活動、公的行為を法律に書き込むことについては、例えば、政府の有識者会議でヒアリングの場で発言をされた高橋和之東大名誉教授は、条文上はっきり書くというのは避けるべきではないか、憲法問題になると述べておられましたし、憲法学者の中では、国事行為以外を法律に書くことに疑義が出されております。

 そこで、いわゆる天皇の公的行為について質問をいたします。

 公的行為をめぐっては、そのあり方が国会でも議論になってまいりました。とりわけ公的行為が天皇の政治利用につながるという点であります。

 例えば、一九九〇年五月十七日の予算委員会では、盧泰愚韓国大統領の来日の際の議論が行われました。当時の工藤内閣法制局長官の答弁を引きますと、

 天皇の公的行為の場合にはそこで言う内閣の助言と承認は必要ではない。また、あくまで天皇の御意思をもととして行われるべきものではございますが、当然内閣としても、これが憲法の趣旨に沿って行われる、かように配慮することがその責任であると考えております。

 天皇の公的行為というのは、今申し上げましたような立場で、いわゆる象徴というお立場からの公的性格を有する行為でございます。そういう意味では、国事行為におきますと同様に国政に関する権能が含まれてはならない、すなわち政治的な意味を持つとかあるいは政治的な影響を持つものが含まれてはならないということ、これが第一でございます。第二が、その行為が象徴たる性格に反するものであってはならない。第三に、その行為につきましては内閣が責任を負うものでなければならない。かようなことであろうと思います。

このように述べておられますが、政府として、この立場に変わりはありませんか。

菅国務大臣 お尋ねの内閣法制局長官の答弁においては、公的行為について、国事行為と同様に国政に関する権能が含まれてはならない、すなわち政治的な意味や政治的な影響を持つものが含まれてはならないという旨を答弁したものと承知をいたしております。

 公的行為に関するこのような考え方については、現在においても変わりはありません。

塩川委員 天皇の公的行為に国政に関する権能が含まれてはならない、政治的な意味や政治的な影響を持つものが含まれてはならない、このような答弁でありました。その立場に変わりがないということであります。

 これが原則だと言われたわけですが、二〇一〇年、民主党政権下で、中国の習近平さんの来日の際の天皇との会見をセットするかどうかが問題になりました。

 このとき、野党だった自民党の谷垣総裁は、「特に天皇の公的行為は裁量の余地があって多様だから、天皇が政治的ないろいろなものに巻き込まれるようなことがないようにきちっとしたルールが要るのではないか、」「天皇が政治的行為に巻き込まれるようなことがないように、だから厳格なルールが必要だというふうに申し上げている。」と質問をし、政府統一見解を要求しました。

 これに対して出された二月十八日の政府統一見解は、公的行為の性格に応じた適切な対応が必要となることから、統一的なルールを設けることは現実的ではないとし、天皇の公的行為については、各行事等の趣旨、内容のほか、天皇陛下が御臨席等をすることの意義や国民の期待など、さまざまな事情を勘案し、判断していくべきものと考えると述べております。

 この二〇一〇年二月十八日の政府統一見解は安倍内閣も踏襲しているということでよろしいでしょうか。

菅国務大臣 お尋ねの政府統一見解においては、公的行為はさまざまなものがあり、それぞれの公的行為の性格に応じた適切な対応が必要となることから、統一的なルールを設けることは現実的ではない、公的行為については、各行事等の趣旨、内容のほか、天皇陛下が御臨席等をすることの意義や国民の期待など、さまざまな事情を勘案し、判断していくべき旨を示したものであります。

 公的行為に関するこれらの考え方については、現在においても変わりはありません。

塩川委員 天皇の公的行為について、その意義、国民の期待など、さまざまな事情を勘案し、判断するということであります。その判断するというのは、時の政府ということになるわけであります。

 二〇一〇年、当時野党だった自民党の下村博文議員は、「天皇の公的行為について内閣が責任を負うということは、時の内閣あるいは党派の都合や政治判断で天皇を意のままに動かしていいということを意味するものではありません。」「我々は、明らかに今回のケースは政治利用だと考えています。」と述べています。

 この指摘は重要であります。時の政府がさまざまな事情を勘案し、判断して、天皇の公的行為を決めるといいますが、それが政治利用にならない、そういう担保というのはどこにあるんでしょうか。

菅国務大臣 天皇の公的行為には、国政に関する権能が含まれていないこと、内閣が責任をとるという行為でなければならないこと、象徴天皇としての性格に反するものではならないこと、こうした限界が存在をするものと考えております。

 いずれにしろ、これらを踏まえ、各行事等の趣旨、内容のほか、天皇陛下が御臨席等をすることの意義や国民の期待など、さまざまな事情を勘案して判断していくべきものと考えます。

塩川委員 国政に関する権能を有しない、そういうものとして内閣が責任を負うということでありますけれども、天皇の公的行為が憲法の趣旨に沿って行われるよう配慮すべき責任を内閣が負っているということでありますが、二〇一三年、第二次安倍内閣のもとで天皇の政治利用が問題になっています。

 安倍首相が二〇一二年末に政権復帰した翌年、サンフランシスコ講和条約が発効した四月二十八日に、政府主催の主権回復を記念する式典を開催し、天皇の出席を求めました。

 一九五二年四月二十八日に発効したサンフランシスコ講和条約と日米安保条約によって、日本は、形式的には独立国となったものの、実質的にはアメリカへの従属国の地位に縛りつけられていたというのが歴史の真実であります。また、沖縄にとっては、本土から切り離され、アメリカ占領下に置かれた屈辱の日として記憶され、その後の本土復帰運動が始まったのであり、主権回復の日というのは事実と異なります。にもかかわらず、自民党の伝統と創造の会が中心となって主権回復記念日制定議員連盟をつくり、運動をし、野党時代の自民党方針に盛り込んだのであります。

 このような政府主催で式典を開催することについて、国民的合意が存在していないことは明らかでした。これは、下村議員が指摘をした、時の内閣あるいは党派の都合や政治判断で天皇を意のままに動かした政治利用だということになりはしませんか。

菅国務大臣 天皇が行う公的行為とは、自然人としての事実行為のうち、象徴としての地位に基づいて公的な立場で行われるものであり、天皇の御意思に基づき行われるべきものであるが、内閣が、これが憲法の趣旨に沿って行われるよう配慮する責任を負っているものであります。

 さらに、先ほど申し上げましたように、こうしたことを踏まえて、天皇陛下が御臨席する等とすることの意義や国民の期待など、さまざまな事情を勘案して判断すべきものでありますので、判断をしたということであります。

塩川委員 この点についての明確なお答えがありませんでした。

 下村議員の指摘をしているような、時の内閣あるいは党派の都合や政治判断で天皇を意のままに動かした政治利用だ、こういうことになりはしないのか。この点について、改めてお尋ねしたいと思います。

菅国務大臣 今申し上げたとおりです。

塩川委員 沖縄県民にとって、四月二十八日は屈辱の日ということで、祖国復帰を目指して闘い抜いてまいりました。そういう日を、政府主催の式典で行い、天皇の出席を求める。これはまさに国論を二分するような問題で、天皇を引っ張り出すことが問題となったわけであります。このように、公的行為は政治利用に使われてきたという問題が問われています。

 したがって、今回の退位の立法の中に公的行為を書き込み、その全てを肯定するようなことはやるべきではない、このことを申し上げて、質問を終わります。

佐藤委員長 次に、遠藤敬君。

遠藤(敬)委員 日本維新の会の遠藤敬でございます。

 きょうの議論に入る前に、一時は、静かな環境で本当に議論ができるのだろうかという心配をしておりましたが、大島議長、川端副議長、佐藤委員長、そして高木筆頭、泉筆頭に心から感謝を申し上げたいと思っております。

 質問に入らせていただきます。

 我が国は、超高齢化社会を迎え、天皇の制度に関しても、現行の憲法や皇室典範の制定時には想定し得なかった問題が生じています。現在、天皇陛下は八十三歳であられます。一方、皇太子殿下は五十七歳であられ、天皇陛下が即位された御年である五十五歳を既に超えていらっしゃいます。現行の制度のままでは、今後、天皇陛下も、跡を継がれる皇嗣も、ともに高齢であるというような不安定な状態が生じることも予想されます。

 我が党といたしましては、このたびの問題については、天皇陛下の御負担をできる限り早期に軽減してさしあげることが大変重要だという観点から、天皇陛下一代に限った退位の特例法を速やかに制定し、退位を実現すべきだと一貫して主張してまいりました。

 その際、留意すべき点として、日本国憲法はその第一条で、天皇は、日本国及び日本国民統合の象徴であり、その地位は、日本国民の総意に基づくとされ、天皇に関する規定が第一章に定められておりますので、このような憲法の基本を踏まえ、今回の特例法が憲法上疑義が生じないことが重要であると主張してまいりました。

 このような観点から、特例法の合憲性に関して、二点、政府に質問をいたします。

 まず、特例法と憲法第二条との関係についてです。

 憲法第二条は、皇位は、国会の議決した皇室典範の定めるところにより、これを継承するとされております。そのことを踏まえると、我が党としては、憲法上の疑義を生じさせないよう、皇室典範に根拠を設けた上で、天皇陛下一代限りの退位を可能とする特例法を制定すべきではないかと主張してまいりました。

 この点について、政府はどのようにお考えになり、法案でどのように対処されたのか、まずお伺いをしたいと思います。

菅国務大臣 政府においては、憲法第二条は、皇位継承については法律で定めるべきことを規定したものであり、一般的に、ある法律の特例を別の法律で規定することは可能であることを踏まえると、憲法第二条の「皇室典範」には現行の皇室典範の特例を定める特例法も含み得る、このように考えます。

 また一方で、憲法第二条の「皇室典範」は、昭和二十二年法律第三号の皇室典範に限られるという意見があることも事実であります。

 こうしたことを踏まえ、衆参正副議長の議論の取りまとめにおいては、憲法上の疑義が生ずることがないようにすべきであるとの観点から、皇室典範の附則に特例法と皇室典範の関係を示す規定を置くことによって、憲法第二条違反との疑義が払拭されることが明らかになるものと考えられるとされたものである、このように承知しています。

 政府としては、この議論の取りまとめを厳粛に受けとめて、その内容を忠実に反映させた法案を立案したものであり、皇室典範の附則に新設する、「一体を成す」との規定により、憲法第二条違反との疑義が生ずることはない、このように考えます。

遠藤(敬)委員 政府としては、皇室典範に何らかの根拠規定を設けた上で退位を実現する特例法を制定すべきとの主張を十分に踏まえ、皇室典範の附則に、特例法と一体をなすとの規定を新設されたものと理解をいたしました。

 このように、憲法二条違反との疑義が生ずる余地はなくなり、天皇陛下の退位は、正統性に傷がつくおそれもなくなったと我が党も考えております。

 二点目でございます。

 合憲性の観点から質問させていただきます。憲法第四条との関係についてお伺いします。

 特例法の内容について、我が党としては、合憲性の観点から、天皇陛下の意思表明が憲法四条の天皇の国政関与の禁止に違反することにならないようにする必要がある一方で、天皇陛下の御意思に沿わない強制的な退位となることも防ぐ必要があると考えてまいりました。

 この観点から、昨年八月八日の、象徴としてのお務めについての天皇陛下のお言葉は、天皇陛下が退位の御意思を表明されたのではなく、御高齢等に関する御認識を述べられたものであり、その経緯を法案に盛り込むことで、恣意的な退位や強制的な退位を防ぐことができるのではないかと考えております。

 これらの点について政府はどのようにお考えか、法案でどのように対処をされたのか、お答えをお願いいたします。

菅国務大臣 昨年八月の天皇陛下のお言葉は、これまでの御活動を天皇として自ら続けられることが困難となるというお気持ちを国民に向けて発せられたものであり、退位の意向を示されたものではなく、天皇の政治的権能の行使に当たらないと考えています。

 また、国民が、この天皇陛下のお気持ちを理解し、これに共感をしているという現状は、この天皇陛下のお気持ちに対する国民の受けとめであり、天皇陛下のお言葉と直接関係するものではないというふうに思います。

 いずれにしろ、衆参正副議長の議論の取りまとめにおいては、特例法に、今上天皇の退位に至る事情として、象徴天皇としての御活動と国民からの敬愛、今上天皇、皇太子の現況、退位に関する国民の理解と共感を盛り込むこと、このような法形式をとることにより、国権の最高機関たる国会が、特例法の制定を通じて、その都度、諸事情を勘案し、退位の是非に関する国民の受けとめ方を踏まえて判断することが可能となり、恣意的な退位や強制的な退位を避けることができるとされております。

 政府としては、この議論の取りまとめを厳粛に受けとめて、その内容を忠実に反映し、法案を立案したものであります。

遠藤(敬)委員 合憲性の観点からは、憲法四条に反しないように、天皇陛下のお言葉を直接のきっかけとして今回の法改正がなされたということは避けなければなりません。一方で、天皇陛下の御意思に沿わない強制的な退位になってもいけませんし、この両方を同時に満たす必要があるというところが、今回の問題の一番の難しいところの一つだったのではないかと思っております。

 政府におかれましては、天皇陛下のお気持ちや国民の受けとめという現状を趣旨規定に記載することにより、この二つの要請に応えられており、この対応は我が党としても適切なものではないかと考えております。

 次に、退位の早期実現のための諸準備についてお伺いをします。

 我が党としては、天皇陛下が御高齢であられることを踏まえると、できる限り早期に今回の法案を成立させ、天皇陛下の退位を実現すべきだと考えております。

 一方、今回の特例法案では、具体的な退位日について、公布日から起算して三年を超えない範囲内において政令で定めるとされております。

 今後政府が定めることとなりますが、天皇陛下の退位は我が国の歴史において二百年ぶりのことですので、その実現までには、明治以降の前例のないさまざまな準備が必要ではないかと思っております。日本国及び日本国民統合の象徴であられる天皇陛下の退位でありますから、抜かりなく、万全の準備を政府において行っていただく必要があります。

 それと同時に、天皇陛下の御負担の軽減ができる限り早期に図られることを国民は願っていると思います。

 政府におかれましては、今法案の趣旨に鑑み、できる限り速やかに退位に係る諸準備をしっかり進めていただき、円滑な退位を実現していただきたいと思います。

 そこで、お伺いします。

 政府は、このような退位に向けた今後の諸準備と具体的な退位期日のスケジュールについてどのようにお考えか、お答えいただきたいと思います。

菅国務大臣 皇位継承事由を崩御に限定している現行の皇室典範は、制度上、退位は予定しておらず、天皇陛下の退位は、今回の法案によって初めて実現をされるものであります。したがって、退位に向けた各方面との調整は法案成立後に開始すべきものであります。

 その上で、天皇陛下の退位は憲政史上初めての事柄であり、退位に向けて準備が、御発言がありましたように、必要になります。その事項としては、退位後の補佐組織の編成、退位後のお住まい、これらに伴う予算、退位に伴う元号の改正など、多岐にわたるものと考えられます。

 これらは法案成立後に具体的な検討、準備が開始をされるものであることからすれば、これらの検討、準備にどれだけの時間が必要なのかを現時点において判断することは困難であるというふうに思っています。

 また、退位日となる法律の施行日を定めるに当たっては、改元等による国民生活への影響も考慮しなければならないと思っています。

 政府としては、こうした事情を踏まえて、法律上、退位日を意味する法律の施行日を政令で定めることとした上で、当該政令を定めるに当たり、国民生活や皇室の事情に関して高い識見を有する皇室会議の意見を聴かなければならないこととしたところであります。

 いずれにしろ、政府としては、宮内庁を中心に、それぞれの所管官庁が十分に連携をとり、適切に検討を進め、天皇陛下の円滑な退位が遅滞することなく実施されるように最善を尽くしてまいりたいと思います。

遠藤(敬)委員 ありがとうございます。

 各種世論調査からも明らかなように、多くの国民は、退位をできる限り速やかに実現し、天皇陛下の御心労を早く軽減してさしあげたいと願っているのではないかと思います。

 政府におかれましては、ぜひとも、国会を含め関係方面と十分に連携をとりながら、退位に係る諸準備を速やかに進め、円滑な退位を早急に実現できるよう、全力を挙げていただきたいと思っております。

 我々日本維新の会としても、できる限り、微力ではありますけれども、御協力をさせていただきたいと思っております。

 続いて、天皇陛下の退位が実現した際の秋篠宮殿下のお立場についてお伺いをします。

 今回、新天皇陛下が即位された後においては、秋篠宮殿下が次期皇位継承者となられることから、秋篠宮殿下を皇太子とすることも考えられたと思いますが、法案においては、秋篠宮殿下を皇太子とは位置づけておられません。

 そのようになった理由についてお伺いをしたいと思います。

山崎政府参考人 お答え申し上げます。

 天皇陛下の退位後における文仁親王殿下のお立場につきましては、秋篠宮家が三十年近く国民に広く親しまれてきた中、皇太子とすると、内廷皇族となり、独立の宮家として存続しないこととなることを踏まえれば、内廷皇族には位置づけず、秋篠宮家の当主としてのお立場を維持していただくことが適当である、そういうことから、皇太子となっていただかないこととしたものでございます。

 なお、文仁親王殿下には、皇位継承順位第一位の皇族である皇嗣としての御活動の拡大等が見込まれることから、それにふさわしいお立場となるよう、事務をつかさどる組織や予算などについて法律上措置を講じているところでございます。

遠藤(敬)委員 秋篠宮家を維持する観点から皇太子としない、そういうことは理解はできましたが、次期皇位継承者となられることや、秋篠宮家に、先ほど官房長官からも御答弁がありましたように、将来の天皇陛下となられる悠仁親王殿下もいらっしゃることから、しっかりと秋篠宮家に対して、立場にふさわしい組織体制や必要な予算確保、警備体制に万全を期していただきたいと思っております。

 最後に、皇室に係る諸課題の今後の議論についてお尋ねをいたします。

 眞子内親王殿下の御婚約が近々正式に発表されるとの報道がありました。内親王殿下の御婚約となりますと、約十二年ぶりのこととなりますので、多くの国民から喜びの声が寄せられており、我が党としても、国民の皆様とともに、心より祝福を申し上げたいと思います。

 一方で、現行制度のもとでは、眞子内親王殿下は御結婚後は皇籍を離れられることになります。そうしますと、皇族数の減少の問題は一層重要な課題となってくるものと思われます。

 その対策として、一つは、女性宮家を創設すべきとの意見も見られますが、我が党としては、女性宮家の創設は皇位継承の問題にも影響を与える問題であり、決して拙速に結論を出すべきではなく、静かな環境のもとで、将来もしっかり見据えて慎重に検討をする必要があると考えております。

 今回、附帯決議において、女性宮家の創設も今後の速やかな検討対象の一つとして明記する方向であることが報道されておりますが、我が党といたしましては、皇族数の減少に対する方策については検討すべきものの、女性宮家の創設は、本来対象に含まれることはふさわしくないとも考えております。

 しかしながら、今回、立法府の総意として特例法による退位を実現しようとするに当たり、各党各会派がまとまることを前提として、我が党としても女性宮家の問題を附帯決議に入れることに理解を示したものであります。

 したがって、女性宮家の創設というのはあくまでも、さまざまな方策のある中での例示であり、決して決まったことではなく、特例法案成立後の国会における協議の中で、今後慎重に検討をしていきたいと考えております。

 我が党としましても、まずは政府において、象徴天皇制度の安定的な維持を確保するとともに合理的な制度のあり方を検討し、その結論を国会に報告した上で、当該制度について、国会において協議する場が設けられ、慎重な検討がなされることが一番必要だと考えております。

 これらの点について政府の御見解をお伺いしたいと思います。

菅国務大臣 女性皇族の婚姻等による皇族数の減少に係る問題については、皇族方の御年齢からしても先延ばしすることはできない重要な問題であるものと考えております。

 そのための方策としていろいろな考え方、意見があり、国民のコンセンサスを得るには十分な分析、検討と慎重な手続が必要である、このように考えています。

 政府としては、衆参正副議長の議論の取りまとめを受けた各政党各会派の協議を踏まえて、国民世論の動向に留意をしながら適切に検討してまいりたいと思います。

遠藤(敬)委員 天皇や皇室にかかわる諸問題は、我が国の基本に関する極めて重要な問題であります。日本国憲法第一条において、天皇の地位は国民の総意に基づくとされておりますので、これらの諸問題を検討するに当たっては、政府においては、国会における協議を十分に踏まえていただくとともに、国会においても、今回の退位の課題と同様、率先して問題の解決を導き出すよう、各党が英知を結集して取り組んでいただくことが必要でありますし、我々も努力してまいりたいと思います。

 これで質問を終わります。ありがとうございました。

佐藤委員長 次に、玉城デニー君。

玉城委員 自由党の玉城デニーです。

 きょうの質問、天皇の退位等に関する皇室典範特例法案について質問をさせていただきます前に、私から一つぜひお伝えしておきたい陛下に関するエピソードを皆さんと共有させていただきたいと思います。

 一九七五年七月十七日、沖縄海洋博覧会開会式出席のために初めて沖縄を訪れた当時の皇太子殿下と妃殿下が向かわれたのが、戦後最も早く住民の手でつくられ、約三万五千柱の遺骨が納められた魂魄の塔という慰霊塔です。

 そこは、日本人、アメリカ、韓国、朝鮮人、さらには、軍人、民間人の区別なく、身元不明の戦没者を弔った場所であり、魂(こん)は魂(たましい)を、魄は漂うみたまをあらわしていると言われています。

 その沖縄訪問から帰京された皇太子は、日ごろから、沖縄学の第一人者でいらっしゃる故外間守善法政大学名誉教授から、いわゆる琉球の歌の形式、八八八六の三十音から成る琉歌の手ほどきを受けられるなど、沖縄に対して造詣深いそのお気持ちから、沖縄の言葉で歌をお詠みになられました。

 紹介いたします。

  花よおしやげゆん人知らぬ魂戦ないらぬ世よ肝に願て

意味は、花をささげます、人知れず亡くなった多くの魂に、戦争のないよう心から願って。

 この琉歌は、ふだん私たちの生活では一般的な標準語で詠むことも普通になっておりますが、当時皇太子であった殿下は、あえて沖縄の言葉で、沖縄の人々の思いを受けとめて、このような琉歌を詠まれていらっしゃいます。

 筆舌に尽くしがたい戦争の体験を背景にした県民の複雑な感情が渦巻いていた当時に来県され、住民が戦後の窮乏、極限の状況にありながらも国や人種の別なくみたまを弔った慰霊の塔の前にお立ちになられた思いが、若き日の両殿下の胸に深く刻まれたのではないかと私は思料いたします。

 天皇皇后陛下となられた後も、国の内外を問わず、戦没者への慰霊、被爆による犠牲者への慰霊、あるいはまた、災害で被災された方々、施設に長く暮らす方々、元気に遊ぶ子供たちなどを訪ねられ、励ましていただき、平和を希求する象徴天皇としてのあるべき姿を広く国民にお示しいただいてまいりました。

 戦後からしばらくの時代は天皇という存在に複雑な感情を抱いていた沖縄県民も、今や、両陛下の御心とつながる、国民との信頼と敬愛を、沖縄の言葉で言うチムグクルから、心の奥深くからともに抱いているということをもはや疑う余地はありません。

 ですから、先般の陛下の象徴としてのお務めについてのお言葉の中にはさまざまな思いが込められておりますが、陛下御自身が象徴という言葉を八回述べられております。

 この象徴天皇として陛下が歩んでこられた道のりは、例えば、即位以来、私は国事行為を行うとともに、日本国憲法下で象徴と位置づけられた天皇の望ましいあり方を、日々模索しつつ過ごしてきました、伝統の継承者として、これを守り続ける責任に深く思いをいたし、さらに日々新たなる日本と世界の中にあって、日本の皇室が、いかに伝統を現代に生かし、生き生きとして社会に内在し、人々の期待に応えていくかを考えつつ、今日に至っていますと述べられています。

 そして、その前の文章では、天皇という立場上、現行の皇室制度に具体的に触れることは控えながら、私が個人として、これまでに考えてきたことを話したいと思いますと述べられております。つまり、国事行為以外に政治的な発言をすることはできないという立場から、個人としてこのお言葉を述べられた。

 それは、私が思いますに、象徴天皇としてのあり方を今日まで国民に示しつつ、それは日本国内のみならず、広く海外においても、例えばサイパン、パラオなどの慰霊の訪問もそうですが、そのお気持ちとお姿が、広く世界の方々に、日本の平和的象徴たる天皇陛下のお姿をしっかりお伝えしていただいていることと私は思います。

 では、随時質問させていただきます。

 官房長官にお伺いいたします。

 この天皇の退位等に関する皇室典範特例法案ですが、平成二十八年十月十七日から平成二十九年一月二十三日にわたる九回、天皇の公務の負担軽減等に関する有識者会議で話し合いが持たれています。

 昨年八月、陛下のお言葉を受けてではありますが、当初は、公務の負担軽減等に関するあり方、御公務のあり方について、憲法の規定を踏まえた上で引き続き考えていくべきものだという認識という発言をされていたやに伺っておりますが、御公務のあり方ではなく、退位についての特例法に変わったその経緯とは何でしょうか。理由をお聞かせください。

菅国務大臣 衆参正副議長の議論の取りまとめにおいては、今上天皇が退位することができるように立法措置を講ずることを各政党各会派の共通認識とするとともに、国権の最高機関たる国会が、特例法の制定を通じて、その都度、諸事情を勘案し、退位の是非に関する国民の受けとめ方を踏まえて判断をする、このように書かれております。

 政府においては、この議論の取りまとめを厳粛に受けとめて、その内容を忠実に反映させて、天皇陛下の退位を実現するための特別法案を立案したものであります。

玉城委員 陛下の御発言の中で、このたび我が国の長い天皇の歴史を改めて振り返りつつ、これからも皇室がどのようなときにも国民とともにあり、相携えてこの国の未来を築いていけるようとおっしゃられました。相携えてこの国の未来を築く。象徴天皇の務めが途切れることなく、安定的に続いていくことをひとえに念じとおっしゃっていらっしゃいます。

 今上陛下の退位に即したこの特例法の内容では、このお言葉から察するに不十分と考えますが、いかがでしょうか。

菅国務大臣 繰り返しになりますけれども、政府としては、衆参正副議長の議論の取りまとめ、ここを厳粛に受けとめて、その内容を忠実に反映させて、天皇陛下の退位を実現するための特別法案を立案したものであります。

玉城委員 衆参正副議長による議論の取りまとめで、各党の共通認識というものをお示しいただいております。三点あります。

 昨年八月八日の今上天皇のお言葉を重く受けとめていること。今上天皇が、現行憲法にふさわしい象徴天皇のあり方として、積極的に国民の声に耳を傾け、思いに寄り添うことが必要であると考えて行ってこられた象徴としての行為は、国民の幅広い共感を受けていること。このことを踏まえ、かつ、今上天皇が御高齢になられ、これまでのように御活動を行うことに困難を感じておられる状況において、上記のお言葉以降、退位を認めることについて広く国民の理解が得られており、立法府としても、今上天皇が退位することができるように立法措置を講ずること。そして三つ目は、象徴天皇のあり方を今後とも堅持していく上で、安定的な皇位継承が必要であり、政府においては、そのための方策について速やかに検討を加えるべきであること。これが各党各会派の共通の認識で、一致しているということでお示しをいただいています。

 本来であれば、恒久的な制度を設けるための皇室典範の改正が私ども自由党は必要と考えております。では、なぜ特例法としたのでしょうか。

菅国務大臣 衆参正副議長の議論の取りまとめにおいては、特例法に、今上天皇の退位に至る事情として、象徴天皇としての御活動と国民からの敬愛、今上天皇、皇太子の現況等、退位に関する国民の理解と共感を盛り込むこととし、このような法形式をとることにより、国権の最高機関たる国会が、特例法の制定を通じて、その都度、諸事情を勘案し、退位の是非に関する国民の受けとめ方を踏まえて判断をすることが可能となり、恣意的な退位や強制的な退位を避けることができることとなる一方、これが先例となって、将来の天皇の退位の際の考慮事情としても機能し得るものと考えるとされております。

 政府としては、この議論の取りまとめを厳粛に受けとめ、その内容を忠実に反映して法案を立案したものであります。

玉城委員 その都度の対応、特例法というお考えがありますが、憲法では、天皇陛下の地位は、第一条において、「この地位は、主権の存する日本国民の総意に基く。」とあります。

 では、この法案が、その国民の総意に寄り添うもの、陛下と国民の願うものになっているというふうにお考えでしょうか。

菅国務大臣 衆参正副議長の議論の取りまとめにおいては、国民代表機関たる立法府の主体的な取り組みが必要であるとの認識のもとに真摯に議論を重ねた結果、退位を認めることについて広く国民の理解が得られており、今上天皇が退位することができるよう立法措置を講ずること、このことは、各政党各会派の共通認識であるとされております。

 政府においては、この議論の取りまとめを厳粛に受けとめて、その内容を忠実に反映させて法案を立案したものであります。

 したがって、政府としては、この法案により天皇陛下の退位を実現することは、議論の取りまとめにあるとおり、広く国民の理解が得られている、このように考えております。

玉城委員 では、女性宮家について伺います。

 自由党はこれまでも、天皇制の安定のためには、女性宮家の創設などの議論が早急に必要と考えを述べさせていただきました。

 女性宮家について、政府はどう考えていらっしゃるのか。必要と考えるのであれば、本特措法にも、そのための取り組みについても書き込むべきではないかと思いますが、いかがでしょうか。

菅国務大臣 今回の法案は、天皇陛下が八十三歳と御高齢であられることも踏まえて、天皇陛下の退位を実現するために必要な事項を定めるものであり、女性宮家の創設などの事項はこの法律の対象にはならない、このように考えます。

玉城委員 では、最後の質問ですが、衆参両院議会でも当然、これからは、女性宮家創設も含めた皇室典範本則の改正の議論が喫緊の課題として必要と考えます。きょうの各委員からの発言にもその旨ありました。

 では、政府内において、今後の検討について、この法案は退位の法案なのでここには盛り込んでいないとおっしゃっていますが、今後の検討についてどのように進めるお考えか、お聞かせください。

菅国務大臣 女性皇族の婚姻等による皇族数の減少等に係る問題については、皇族方の御年齢からしても先延ばしすることはできない重要な課題である、そのように考えています。

 また、そのための方策についてはいろいろな考え方、意見があり、国民のコンセンサスを得るために、十分な分析、検討と慎重な手続が必要であるというふうに思っています。

 政府としては、衆参正副議長の議論の取りまとめを受けた各政党各会派の協議を踏まえ、国民世論の動向を留意しながら、適切に検討を進めてまいりたいと思います。

玉城委員 ありがとうございました。

 質問を終わります。ニフェーデービタン。

佐藤委員長 次に、照屋寛徳君。

照屋委員 社会民主党の照屋寛徳です。

 冒頭、委員外発言の機会をいただいたことに対し、委員長、各党理事に感謝を申し上げます。

 我が国の政治制度を律するのは日本国憲法であり、天皇の退位等に関する諸問題についても、憲法に基づく象徴天皇に関する問題であることから、憲法の理念や条文にのっとって検討すべきであります。

 近代立憲主義の普遍的原理として、国民主権原理と調和させる形で日本国憲法が創設した象徴天皇は、第二次世界大戦を経験した我が国の歴史的反省の到達点として、戦前の統治権の総攬者であり、国の元首としての天皇の復活を認めず、憲法の基本原理を体現することが期待されるものとなりました。

 人間が人間として有する天賦人権は、天皇個人に対しても、当然、保障されるはずであります。しかし、天皇という地位やその地位が世襲であるとされていることによってさまざまな人権が制約され、天皇個人に過度の負担が一生負わされているため、退位の自由がない限り、それを正当化することはできません。

 憲法の基本原則の制約は必要最小限にすべきであって、天皇の人権という観点から、退位は認められるべきでありますが、天皇に退位の自由という人権はあるとお考えか、政府に尋ねます。

菅国務大臣 天皇については、憲法上、第一条において、日本国の象徴であり日本国民の統合の象徴であるとされています。また、第二条において、皇位は世襲のものであるとされています。さらに第四条において、国政に関する権能を有しないとされております。

 こうしたことから、その基本的人権については、一般の国民とは異なる一定の制約があるものと理解をいたしております。

 いずれにせよ、天皇の自由な意思により退位することは、天皇の政治的権能の行使を禁止する憲法第四条第一項との関係から問題がある、このように考えております。

照屋委員 今上天皇に限って退位の自由を認めるのであれば、要件に合致する将来の全ての天皇も対象とすべきであり、天皇の人権の観点からも、一代限りとする必然性はありません。また、一代限りの特例として、今上天皇に限って退位を認める場合、制度として安定的な皇位継承とは言えなくなります。したがって、本来、要件に合致する将来の全ての天皇においても適用される制度とするべきであると考えます。

 今回、天皇一代限りと主張される政党も、これが将来の先例となると認められているので、取りまとめに協力しました。

 政府も、この法案が将来の先例となると解しているのでしょうか。また、将来、仮に同様の事態が生じた場合、どう対応するおつもりか、尋ねます。

菅国務大臣 衆参正副議長の議論の取りまとめにおいては、国権の最高機関たる国会が、特例法の制定を通じて、その都度、諸事情を勘案し、退位の是非に関する国民の受けとめ方を踏まえて判断することが可能となって、恣意的な退位や強制的な退位を避けることができるようになる、また、その一方で、これが先例となって、将来の退位の際の考慮事情としても機能し得るものと考えるとされております。

 政府としても、この議論の取りまとめを厳粛に受けとめ、その内容を忠実に反映させて法案を立案したものであり、この法案は天皇陛下の退位を実現するものではありますが、この法案の作成に至るプロセスや、その中で整理された基本的な考え方については、将来の先例となり得るものと考えております。

照屋委員 憲法第二条が、皇位について、「国会の議決した皇室典範の定めるところにより、」と定め、特定の法律名を指定していることから、本来、皇室典範を改正して対応すべきであります。

 本法案では、附則第三条に、「この法律の特例として天皇の退位について定める天皇の退位等に関する皇室典範特例法は、この法律と一体を成すものである。」との皇室典範一部改正の規定が設けられました。

 皇室典範と本特例法案はあくまで一体のものと理解してよいのでしょうか。また、皇室典範の改正によらない特例法について、学者の中からは、憲法の重みを無視するもので、違憲の疑いが生じかねないなどという指摘もありますが、今回の法案と、かかる違憲の疑念について、政府としてどう整理をしているのか伺います。

菅国務大臣 政府においては、憲法第二条は、皇位継承については法律で定めるべきことを規定したものであり、一般的に、ある法律の特例を別の法律で規定することは可能であることを踏まえると、憲法第二条の「皇室典範」には現行の皇室典範の特例を定める特例法も含み得る、このように考えます。

 また一方で、憲法第二条の「皇室典範」は、昭和二十二年法律第三号の皇室典範に限られるという意見があることも事実であります。

 こうしたことを踏まえ、衆参正副議長の議論の取りまとめでは、憲法上の疑義が生じることがないようにすべきであるという観点から、皇室典範の附則に特例法と皇室典範の関係を示す規定を置くことによって、憲法第二条違反との疑義が払拭されることが明らかになるものと考えられる、このようにされたものと承知をいたしております。

 政府としては、この議論の取りまとめを厳粛に受けとめて、その内容を忠実に反映させた法案を立案したものであります。皇室典範の附則に新設する、「一体を成す」、この規定によって、憲法第二条違反との疑義が生ずることはない、このように考えます。

照屋委員 この間、社民党は、制度として安定的な皇位継承とする観点から、退位の要件を明確にするべきであることを求めてきましたが、退位に至る事情を書き込むことで事実上担保することになりました。

 事情ではなく客観的な要件規定を盛り込まなかった理由について伺います。

菅国務大臣 まず、政府としては、将来の政治社会情勢、国民の意識等は変化し得るものであることを踏まえれば、これら全てを網羅し、退位に係る具体的な要件を定めることは困難である、このように考えます。

 また、衆参正副議長の議論の取りまとめにおいては、特例法に、今上天皇の退位に至る事情として、象徴天皇としての御活動と国民からの敬愛、今上天皇、皇太子の現況等、退位に関する国民の理解と共感を盛り込むこととし、このような法形式をとることによって、国権の最高機関たる国会が、特例法の制定を通じて、その都度、諸事情を勘案し、退位の是非に関する国民の受けとめ方を踏まえて判断することが可能となり、そして、そのことによって恣意的な退位や強制的な退位を避けることができる、このようにされています。

 政府としては、こうした議論の取りまとめを厳粛に受けとめて、その内容を忠実に反映させたということであります。

照屋委員 最後に、憲法第二条は、「皇位は、世襲のものであつて、国会の議決した皇室典範の定めるところにより、これを継承する。」としているだけで、男女の区別や男系、女系の区別をしておりません。

 女性・女系天皇については、世論の多くも支持しており、皇位継承資格者を男系男子に限ることは合理的根拠もなく、国際的にも民主主義の見地からも問題があると考えます。

 立法府の議論の取りまとめでは、安定的な皇位継承を確保するための女性宮家の創設等については、政府において、今般の皇室典範の附則の改正及び特例法の施行後速やかに検討すべきとの点において各政党各会派の共通認識に至ったとあります。

 政府は、かかる議論の取りまとめを十会派の共通認識として真摯に受けとめ、皇位の安定的継承のため、女性宮家の創設等について早急に議論を開始し、結論を得るべきだと考えますが、検討を進めていく姿勢について、政府の決意を伺います。

菅国務大臣 女性皇族の婚姻等による皇族数の減少等に係る問題については、皇族方の御年齢からしても先延ばしすることはできない重要な課題であると思っています。

 そのための方策についてはいろいろな考え方、意見、さらに、国民のコンセンサスを得るためには十分な分析、検討と慎重な手続が必要であるというふうに考えています。

 政府としては、衆参正副議長の議論の取りまとめを受けた各政党各会派の協議を踏まえ、国民世論の動向に留意しながら、適切に検討を進めてまいりたいと思います。

照屋委員 終わります。

佐藤委員長 これにて本案に対する質疑は終局いたしました。

    ―――――――――――――

佐藤委員長 この際、本案に対し、塩川鉄也君から、日本共産党提案による修正案が提出されております。

 提出者から趣旨の説明を聴取いたします。塩川鉄也君。

    ―――――――――――――

 天皇の退位等に関する皇室典範特例法案に対する修正案

    〔本号末尾に掲載〕

    ―――――――――――――

塩川委員 私は、日本共産党を代表して、天皇の退位等に関する皇室典範特例法案に対する修正案の趣旨を説明いたします。

 天皇の退位を認めるための立法に当たって重要なことは、その条文を憲法の規定に適合するものとすべきだということです。

 日本国憲法は、象徴という天皇の地位は、主権の存する日本国民の総意に基づくと規定し、天皇は、この憲法の定める国事行為のみを行い、国政に関する権能を有しないと規定しています。この憲法規定に照らして、法案第一条の趣旨規定には幾つかの問題点があります。

 第一に、退位を実現する理由について、御活動を続けることが困難となることを深く案じておられると天皇自身の懸念の内容に触れ、この天皇陛下のお気持ちに対する国民の理解と共感に言及しています。

 政府は、天皇陛下のお言葉に基づき立法することとすれば、憲法第四条第一項に違反するおそれがあるとの見解を示してきました。法案は、お言葉という文言は使っていませんが、間接的ではあっても、天皇の意思を法律に盛り込むことになりかねません。こうした部分は不適切であり、削除すべきです。立法事実は、天皇の退位について国民が理解を示していることとするものです。

 第二に、天皇の象徴としての公的な御活動に言及した部分は削除すべきです。

 いわゆる天皇の公的行為については、時の政府による政治利用が問題となってきたものであります。象徴としての公的活動の全てを肯定的に評価する記述は問題であり、退位の立法に当たって、そうした記述を書き込むべきではないし、またその必要もないと考えます。

 以上が、修正案の提案理由です。

 委員各位の御賛同を求め、説明を終わります。

佐藤委員長 これにて趣旨の説明は終わりました。

    ―――――――――――――

佐藤委員長 この際、発言を求められておりますので、順次これを許します。茂木敏充君。

茂木委員 自由民主党の茂木敏充です。

 天皇の退位等に関する皇室典範特例法案については、ただいま質疑が終局したところでありますが、改めて、会派を代表して、簡潔に発言をいたします。

 今回の天皇退位の議論の出発点は、今上陛下が長年にわたり象徴としての御活動を大切にしてこられた一方で、御高齢になられ、これまでのように御活動、御公務を続けていくことに困難を感じておられること、そして、そのお気持ちに国民が共感し、理解し、どうにかできないかと考えていることから、退位について対応する必要があるという基本認識でありました。

 まず、自民党内で議論を重ねた結果、天皇の退位に関しては、憲法四条一項との関係、そして、将来の全ての天皇を対象とする場合は、適切な要件設定が極めて困難になることから、退位の法案は今上陛下を対象とした特例法にすることが適切である、また、今回は今上陛下を対象とした特例法であるが、このような法形式をとることは将来の先例にもなり得る、ただし、この場合も、過度な予見は抑制した上で、その時点での諸事情を勘案し、その都度、適切に判断していくことにより、むしろ国民の総意が適切に反映されるという基本的考え方に至りました。

 先般、三月十七日の国会の議論の取りまとめ、そしてそれを踏まえた今回の政府提出の特例法案は、このような我が党の基本的考え方に沿ったものとなっていると考えております。

 静かな、静ひつな環境の中で議論を進め、一致点を見出していく、そんな思いで多くの関係者が議論に加わり、法案作成に取り組み、国民も大きな関心を寄せる中で、きょう、衆議院議院運営委員会での審議、採決を迎えることができました。

 改めて、衆参の正副議長、各党会派の皆様、政府関係者や有識者会議の皆様初め多くの関係者の御尽力に心から敬意を表し、そして本法律案の速やかな成立を期待しております。

 この法案の成立後、政府においては、天皇陛下の退位に向けた準備、新元号の制定、宮内庁の組織整備を初めさまざまな準備に万全を期すことが何より重要であり、まず、これに全力で取り組んでいただきたいと思います。

 その上で、今後の課題については順序立てて、また性格の異なる課題を明確に切り分けて、慎重に検討を進めることが重要であると考えております。

 今回の議論を通じて、これまでの歴史の検証や現憲法との関係、そして将来がどこまで見通せるのかという命題は、我々に、今なすべき責任と同時に、過度な予見への抑制というものを示唆していたと感じております。今回の立法措置は、このような観点から適切なものであったと評価されると考えております。

 日本国憲法第一条では、「天皇は、日本国の象徴であり日本国民統合の象徴であつて、この地位は、主権の存する日本国民の総意に基く。」とされております。今回の議論に加わり、まさに天皇陛下が長年にわたり象徴として御活動に精励をされ、その天皇陛下を国民一人一人が深く敬愛していることを改めて実感したことを申し上げ、私の発言といたします。

 ありがとうございます。(拍手)

佐藤委員長 次に、野田佳彦君。

野田(佳)委員 私は、民進党・無所属クラブを代表し、ただいま議題となっている天皇の退位等に関する皇室典範特例法案について、賛成の立場から意見表明を行います。

 民進党は、他党に先駆けて、昨年十二月に、皇位継承等に関する論点整理を取りまとめました。昨年八月八日の天皇陛下のお言葉が、国民の理解を得られることを切に願っていますと締めくくられていることを極めて重く受けとめることを我々の議論の起点としました。そして、皇室典範本則を改正して、天皇は、皇嗣が成年に達しているときは、その意思に基づき、皇室会議の議により退位することができる旨の規定を設けるべきとの考え方をまとめました。

 こうした自らの意見をしっかり主張する一方、国民を代表する立法府における総意形成に向けても全力を傾注してまいりました。

 ともすれば、政府が設置した天皇の公務の負担軽減等に関する有識者会議による偏った、密室の議論だけで大勢が決してしまうおそれもありました。しかし、衆参正副議長のもとに、各党各会派が参加する全体会議が開催をされ、党派を超えて共通の理解が醸成され、民進党の主張もできる限り反映する形で、立法府による取りまとめが行われました。

 日本国憲法が、「天皇は、日本国の象徴であり日本国民統合の象徴であつて、この地位は、主権の存する日本国民の総意に基く。」と定められていることにふさわしく、立法府の総意となる取りまとめが行われたことは、大きな意義があり、憲政史上に残る成果となったと受けとめております。

 この場をおかりして、大島議長、川端副議長、そして参院正副議長、各党会派の関係者の皆様のこれまでの御努力に対して心から感謝を申し上げる次第であります。

 政府が提出した法案は、正副議長の取りまとめの基本に沿ったものであります。本日の国会審議におきましても、将来の先例となり得ること、遅滞なく法律を施行することなど、私たちが指摘した主要な論点について政府より確認答弁を得ることができました。よって、法案には賛成すべきものと考えます。

 この法律によって、天皇陛下の退位、皇嗣の即位が実現することになりますが、皇位の安定的継承を初め、皇室、皇位にかかわる現実に差し迫った重要な課題についても引き続き向き合っていかなければなりません。

 皇位は男系で継承されてきた歴史的経緯を踏まえつつ、他方で、高齢化や女性皇族の御結婚に伴う皇籍離脱により、天皇陛下及び特定の皇族方に御公務が集中し、皇室の御活動の維持や皇位継承資格者の確保に困難が生じることへの対応が速やかに検討されなければなりません。

 民進党は、女性皇族が御結婚後も皇族の身分を保持し、当該女性皇族を当主とする宮家の創設が可能となるよう皇室典範を改正すべきであると考えています。附帯決議案に女性宮家の創設等という具体的な文言が入ったことは、正副議長による取りまとめに沿うものであり、関係者の御協力に改めて敬意を表します。

 最後に、皇室のいやさかを祈念し、両陛下、皇族方のお気持ちを酌み取りながら、しっかり国家の基本にかかわる象徴天皇制を支えるため、我が党は引き続き努力を傾注していく決意であることを申し添えて、私の意見表明とさせていただきます。(拍手)

佐藤委員長 次に、遠山清彦君。

遠山委員 公明党の遠山清彦でございます。

 私は、公明党を代表し、ただいま議題となりました天皇の退位等に関する皇室典範特例法案に対し、賛成の立場から意見表明を行います。

 昨年八月八日、陛下は、国民に向けて、象徴としてのお務めについての天皇陛下のお言葉をお述べになられました。この今上天皇のお言葉を重く受けとめるとともに、全国民を代表する選挙された議員で組織をされた立法府においては、天皇の退位等に関する問題を議論するに当たって、国民の総意を見出すための主体的な取り組みが求められました。

 こうした事情を踏まえ、衆参の両議長、副議長の御努力のもと、本年三月、我が党を含む全ての政党会派による真摯な議論の末、一定の共通認識を得、皇室典範の特例法の制定によって、今上天皇の退位を可能とする旨の方向性が取りまとめられました。

 私も、党を代表して、大島議長、川端副議長、また佐藤議運委員長初め関係者の皆様の御努力に心からの謝意と敬意を表するものでございます。

 そして、この立法府の取りまとめの趣旨そのままに、皇室制度に責任を持つ内閣から提出されたのが今般の特例法案であります。私は、これまでの法案提出に至る議論の経過に鑑み、立法府の総意として、速やかに本法案が成立することを強く望むものであります。

 以下、改めて、本法案の重要性について三点述べさせていただきます。

 第一には、本特例法案の立法趣旨が、退位等に関する国民の総意に基づくものとなっている点であります。

 国民は、今日までの、あるいはこれからも続くであろう陛下の象徴天皇としての御活動、お振る舞いに対して、広く共感を持っております。そして、さきのお言葉以降においては、今上天皇の退位を認めることに対しても広く理解が浸透しております。

 そうした国民の思いの中で本特例法案が提出され、また、その立法趣旨が法案第一条に明確に示されていることは、極めて重要であると考えます。

 第二には、現行憲法の象徴天皇制のもとで皇位継承のあり方を検討するに際し、幾つかの制約、課題がある中で、退位にかかわる弊害が生じるおそれのないよう法的な対応がなされている点であります。

 憲法第四条一項の国政関与の禁止規定は、天皇陛下に政治上の責任問題の生ずるおそれをなくすことによって、象徴天皇制を安定的に維持するという意味でも重要です。皇位の継承という国政の重要事を、直接、天皇の意思に係らしめることは困難であります。

 また、皇室典範第四条では天皇の終身在位制を定めておりますが、他方、退位の規定はありません。それは、一つ、権威の二分化、一つ、退位の強制、一つ、恣意的退位の可能性などの弊害が生じるおそれがあることからでありますが、今後も、天皇、皇室制度の安定的な維持の観点からも、終身在位制は基本的には維持されるべきと考えます。

 こうした事情の中、今般、今上天皇の退位に限った特例法という法形式をとることで、その都度の諸事情を勘案し、退位の是非に関する国民の受けとめ方を踏まえて判断することが可能となることから、これらの弊害が生じるおそれは全くないものと考えます。

 第三には、皇室典範附則に、本特例法が皇室典範と一体をなすものである旨の規定が設けられた点です。

 憲法第二条に明文的に、「国会の議決した皇室典範の定めるところ」とありますが、法的には、皇室典範特例法の制定のみでも憲法上の問題は生じないものの、各政党各会派の幅広い合意に向けて、法律上、より明確にしたことは評価したいと存じます。

 日本国憲法制定以来、実質的な意味での皇室典範の改正は、今回が初めてであります。

 特に、今上天皇の退位を可能とする法律とはいえ、皇室の根幹にかかわる制度のあり方を検討するというかつてない試みの中で、立法府はもとより、多くの国民の方々が現行憲法における象徴天皇のあり方を考え、そして見詰める機会となりました。その意義は極めて大きいと考えます。

 現行憲法制定以来、昭和天皇、今上天皇が切り開いてこられた象徴天皇としての御行為は、憲法上明文の根拠はないものの、その時代時代の天皇の思いが国民の期待と相まって形づくられてまいりました。

 特に、今上天皇におかれましては、東日本大震災など大規模災害における被災地への訪問、激励等を初めとする幾多の御公務、御活動によって、まさに国民に開かれた皇室を体現されてこられたのであります。

 象徴天皇として陛下が国民を慈しみ、そして、国民は陛下に深く敬愛の念を持つ。こうした天皇、皇室と国民との関係があったればこそ、このたびの退位をめぐる議論も静ひつな環境の中で行うことができたものであると確信いたします。

 最後に、公明党は、今後、安定した天皇、皇室制度を確保するための課題に対しては、広く国民とともに真摯に議論していくことをお誓い申し上げ、私の意見表明を終わります。(拍手)

佐藤委員長 次に、塩川鉄也君。

塩川委員 日本共産党を代表して、天皇退位法案について発言します。

 日本国憲法は、天皇の地位を主権の存する日本国民の総意に基づくものと規定し、天皇は、この憲法の定める国事行為のみを行い、国政に関する権能を有しないと規定しています。

 天皇の退位の問題に当たって、私たちは、こうした憲法の規定を踏まえて国民的な議論を進めることが何よりも大事であるとの考えを明らかにし、全国民を代表する国会で各党各会派の代表が参加し、国権の最高機関として憲法の根本からよく議論することが大事だと述べてきました。

 退位の問題については、個人の尊厳という日本国憲法の最も根本の精神に照らして考えるならば、一人の方に、どんなに高齢になっても仕事を続けるように求めるという現在のあり方については改革が必要であり、退位を認めるべきだという考えを当初から明らかにし、退位を認めるための立法を政治の責任で検討し、実現すべきだと表明してきました。

 今回の立法は、現行憲法の象徴たる天皇の退位を初めて立法化することになるものです。したがって、その内容は、広く国民的議論を踏まえ、憲法の規定に適合するものとすべきである、そういう見地で議論を進めることが大事だと述べてきました。

 こうした見地で政府提出の法案を見るときに、先ほど修正案を提案しましたように、二つの問題点があります。

 一つは、退位を実現する理由を、御活動を続けることが困難となることを深く案じておられるという天皇陛下のお気持ちに対する国民の理解と共感に置いていることです。これは、間接的ではあっても、天皇の意思を法律に盛り込むことになりかねません。立法事実は、天皇の退位について国民が理解を示していることに置くべきだと思います。

 もう一つは、象徴としての公的な御活動に言及していますが、国政に関する権能を有しないとされた天皇の政治利用の問題など、さまざまな議論があるいわゆる天皇の公的行為を退位の立法に書き込むべきではありません。

 これらについての修正を行い、憲法上の懸念を払拭すべきと考えます。

 天皇退位の立法を実現する本法案には賛成するものです。

 この際、日本共産党の象徴天皇制に関する考え方についても述べておきたいと思います。

 日本共産党は、党の綱領で、現行憲法の前文を含む全条項を、すなわち天皇条項を含む全条項を守る、特に平和的、民主的諸条項の完全実施を目指すとしています。天皇条項については、国政に関する権能を有しないなどの制限規定の厳格な実施を重視し、天皇の政治利用を初め、憲法の条項と精神からの逸脱を是正する、こういう基本的な考え方を示しています。

 最後に、日本国憲法前文は、政府の行為によって再び戦争の惨禍が起こることのないようにすることを決意し、ここに主権が国民に存することを宣言するとしています。さきの侵略戦争の反省の上に立って、天皇は国政に関する権能を有しないと規定し、主権者国民が民主的政治を通じて平和と基本的人権を実現することを求めたのが憲法の核心であります。

 今後の天皇制度のあり方については、この憲法に従って、広く国民的な議論を行うべきだということを述べて、発言を終わります。(拍手)

佐藤委員長 次に、遠藤敬君。

遠藤(敬)委員 日本維新の会の遠藤敬でございます。

 日本維新の会を代表し、天皇の退位等に関する皇室典範特例法案に賛成の立場から意見表明をいたします。

 昨年の八月八日に発表された象徴としての務めについての天皇陛下のお言葉は、国民の心を動かしました。国民とともにある皇室の末永い繁栄によって象徴天皇制度がいつまでも続くように、改めて願わずにおられません。

 今般、陛下のお言葉を契機に明らかになった民意を反映してこうした法案を得たことを、大変喜ばしく思います。御尽力された両院正副議長と各党各会派に心から敬意を表したいと思います。

 本法案は、皇室典範特例法案として、法案の名称に皇室典範という言葉が入っております。また、皇室典範の附則に本法案が皇室典範と一体をなす旨の規定を新設されます。したがって、皇位継承については皇室典範に定めるとしている憲法二条に沿った法案になっていると考えます。

 また、本法案を立法することになった理由は、天皇陛下を思う日本国民の民意であります。陛下御自身も、憲法に定める象徴天皇制度を全身全霊でお守りしようとされて、そのためにお言葉を発せられたのではないかと思っております。

 本法案は、天皇の政治的活動を禁じた憲法四条の関係でも、違憲となる疑いは全くありません。

 天皇陛下が御精励されている被災地のお見舞いや慰霊の旅などのいわゆる象徴としての行為は、天皇陛下と国民のきずなを深め、結果として象徴天皇制を支えることにもなっている重要な活動であります。天皇陛下が御高齢となり、象徴としての行為を遂行されることが難しい場合、生前においても御譲位が可能となる制度が必要であり、本法案はこれに応えるものであります。

 超高齢化社会を迎えた現代にあって、今後、天皇陛下も皇嗣も高齢となる事態も考えられます。こうした皇室典範制定時には想定していなかった事態に対応するためにも、本法案は必要であります。

 象徴天皇制度の安定的な継続のためにどのような制度が合理的か、ついては、今後、政府と国会で速やかに議論が進められるべきことが附帯決議に盛り込まれるものだと理解をしております。議論を速やかに進めなければなりませんが、静かな環境で議論をすべきであり、各党ともに、政局とは切り離して意見を述べ合うべきだと考えております。

 政府及び国会は、伝統と民意を踏まえ、皇位継承のために合理的な制度を早急に整備すべきであります。

 国民とともにある皇室の末永い繁栄を改めてお祈りして、我が党の賛成討論といたします。

 ありがとうございます。(拍手)

佐藤委員長 次に、玉城デニー君。

玉城委員 天皇の退位等に関する皇室典範特例法案に関する自由党の意見を表明させていただきます。

 私たち自由党は、今般の天皇の公務並びに退位等に関する考え方として、天皇の生前退位については、明治維新以降、先人たちが日本国の安定のために一世一元の制を導入した経緯を見ても慎重にあるべきで、本来、昭和天皇も御活用された摂政を置かれることが望ましい、しかしながら、昨年の陛下のお言葉を踏まえると、立法府は国民的な合意を得る努力ができればと考える、ただし、将来の天皇制の安定のためには皇室典範の改正で対処すべきであり、また同時に、女性宮家の創設など、基本的な議論を深めるべきであると主張してまいりました。

 立法府は、日本国と日本国民のためにも、天皇制の安定について慎重かつ迅速な議論を必要とされています。その場合、時の権力に恣意的に利用されるおそれが拭えない一代限りの特例法は、決して望ましい形とは言えない上、今後の悪例になりかねない懸念もないとは言えません。

 昨年八月八日に陛下は、象徴としてのお務めのお言葉で、これからも皇室がどのようなときにも国民とともにあり、相携えてこの国の未来を築いていけるよう、そして象徴天皇としての務めが常に途切れることなく、安定的に続いていくことをひとえに念じ、私のお気持ちをお話しいたしましたと述べられ、国民の理解を得られることを切に願っていますと結ばれました。

 そのためには、やはり本来あるべき形である皇室典範の改正で恒久的な制度を設けるべきです。

 さきの眞子様の御婚約のニュースは国民にとっても大変喜ばしいことですが、男系男子という存在による皇統継続に固執せず、女性宮家の創設、女系天皇の可能性も含めた議論こそが本質的な課題です。

 なお、本特例法には附帯決議が付されるということのようですが、法律の附則に書かないことから法的効果を持たないものであり、案文そのものも、自由党として理解するに至らないものであると言わざるを得ません。

 よって、この法案の採決に当たっては、象徴としてのお務めについての陛下のお言葉と、日本国憲法第一条の、天皇の地位は国民の総意に基づくとの観点とあわせて、自由党として判断させていただくことを述べ、自由党からの意見表明といたします。(拍手)

佐藤委員長 次に、照屋寛徳君。

照屋委員 社民党の照屋寛徳です。

 社会民主党・市民連合を代表し、政府提出、天皇の退位等に関する皇室典範特例法案に対し、賛成の立場から発言を行います。

 天皇の退位等については、政府の有識者会議の議論が先行しておりましたが、衆参両院の正副議長により、全国民の代表機関である立法府として国民の総意を見つけ出すべく、両院合同で取り組むこととし、静ひつな環境で節度ある真摯な議論を各党に求めることとなりました。

 そのことを踏まえ、社民党は、天皇の退位等に関する検討委員会を設け、我が国の政治制度を律するのは日本国憲法であり、天皇の退位等に関する諸問題についても、憲法に基づく象徴天皇に関する問題であることから、憲法の理念や条文にのっとって検討すべきであるとの立場を重視し、有識者ヒアリングや各県連合、民主団体等からの意見聴取等を行い、党内議論を深めてまいりました。

 その上で、社民党は、第一に、人間が人間として有する天賦人権の観点から、天皇個人に退位の自由を認めるべきであること、第二に、今上天皇のみに限定するのではなく、将来全ての天皇を対象とする一般的な恒久制度とすべきであること、第三に、特例法ではなく、皇室典範の改正によるべきであること、第四に、閣法ではなく、国民を代表する衆参両院の合意によって実現を目指すべきであること、第五に、皇位継承問題について引き続き議論をすべきであることとの見解をまとめ、二月二十日、衆参両院の正副議長に報告いたしました。

 その後の各党各会派による全体会議では、真摯な議論が行われ、二〇一六年八月八日の天皇のお言葉を真剣に受けとめ、これを尊重することを国民の総意であるとみなし、各政党各会派が天皇の退位について一致しました。

 社民党としても、各党会派の総意を探り、一致点を見出す観点から、最終的な見解をまとめ、三月十三日に衆参正副議長に報告いたしました。

 さらに、立法府において、三月十七日、「「天皇の退位等についての立法府の対応」に関する衆参正副議長による議論のとりまとめ」がなされ、社民党も大筋了解いたしました。

 また、本法案骨子について衆参正副議長が取りまとめに沿ったものと判断されており、以上を踏まえ、本法案に社民党としてもおおむね了として賛成するとともに、引き続き、女性宮家の創設も含め、憲法の理念や条文にのっとって皇室典範を改正するよう要請し、発言を終わります。(拍手)

佐藤委員長 これにて発言は終わりました。

    ―――――――――――――

佐藤委員長 これより採決に入ります。

 内閣提出、天皇の退位等に関する皇室典範特例法案及びこれに対する修正案について採決いたします。

 まず、塩川鉄也君提出の修正案について採決いたします。

 本修正案に賛成の諸君の起立を求めます。

    〔賛成者起立〕

佐藤委員長 起立少数。よって、本修正案は否決されました。

 次に、原案について採決いたします。

 これに賛成の諸君の起立を求めます。

    〔賛成者起立〕

佐藤委員長 起立総員。よって、本案は原案のとおり可決すべきものと決しました。

    ―――――――――――――

佐藤委員長 この際、ただいま議決いたしました本案に対し、高木毅君外三名から、自由民主党・無所属の会、民進党・無所属クラブ、公明党、日本維新の会の共同提案による附帯決議を付すべしとの動議が提出されております。

 提出者から趣旨の説明を聴取いたします。泉健太君。

泉委員 ただいま議題となりました附帯決議案につきまして、提出者を代表して、その趣旨を御説明いたします。

 案文の朗読により趣旨の説明にかえさせていただきます。

    天皇の退位等に関する皇室典範特例法案に対する附帯決議(案)

 一 政府は、安定的な皇位継承を確保するための諸課題、女性宮家の創設等について、皇族方の御年齢からしても先延ばしすることはできない重要な課題であることに鑑み、本法施行後速やかに、皇族方の御事情等を踏まえ、全体として整合性が取れるよう検討を行い、その結果を、速やかに国会に報告すること。

 二 一の報告を受けた場合においては、国会は、安定的な皇位継承を確保するための方策について、「立法府の総意」が取りまとめられるよう検討を行うものとすること。

 三 政府は、本法施行に伴い元号を改める場合においては、改元に伴って国民生活に支障が生ずることがないようにするとともに、本法施行に関連するその他の各般の措置の実施に当たっては、広く国民の理解が得られるものとなるよう、万全の配慮を行うこと。

  右決議する。

以上であります。

 何とぞ委員各位の御賛同をお願いいたします。

佐藤委員長 これにて趣旨の説明は終わりました。

 採決いたします。

 本動議に賛成の諸君の起立を求めます。

    〔賛成者起立〕

佐藤委員長 起立総員。よって、本案に対し附帯決議を付することに決しました。

 この際、本附帯決議に対し、政府から発言を求められておりますので、これを許します。菅内閣官房長官。

菅国務大臣 ただいま御決議をいただきました附帯決議につきましては、その趣旨を尊重してまいりたいと存じます。

    ―――――――――――――

佐藤委員長 お諮りいたします。

 ただいま議決いたしました本法律案に関する委員会報告書の作成につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

佐藤委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決定いたしました。

    ―――――――――――――

    〔報告書は附録に掲載〕

    ―――――――――――――

佐藤委員長 本日は、これにて散会いたします。

    午後三時二十分散会


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